1 名前:名無しになりきれ [sage] 投稿日:2010/07/10(土) 03:10:28 0
今日までのあらすじ

学園入学を果たした消灯後の学園。
「総裁の周りをかぎまわる人間が次々姿を消す」という噂を聞きつけ、物見高い生徒たちは、総裁のお宅拝見ツアーなるチームを結成する。
無事屋敷も発見し、一同は陽動係と潜入係を決めたのだが、陽動係メンバーには、姿を見せない大蜘蛛の脅威が迫る!
麻痺毒で倒れたユリ、メイションをかばいながら、果たして目的は達成可能なのだろうか!!
また、侵入係のユーリ、リリ、グレンは屋敷の外壁布巾までたどり着くが、今頃になってリリィは今頃になって怖気づく。
「侵入しないでこのまま帰ろうよー」と言い出したリリィに対し、ユーリの反応は・・・・・・?!

一方、メイションを捜し夜の学園をデー・・・・・・捜索するエンカとセラエノは、神の話を発端にギクシャクし始める。
そこに現れたのは、ユリの友人ミク。
ミクは自分の操る蜘蛛を密かに使い、なぜかセラエノを襲撃しようとする!

蜘蛛の麻痺毒を受けたセラエノ、エンカの運命やいかに!


2 名前: ◆jntvk4zYjI [sage] 投稿日:2010/07/10(土) 07:46:49 0
統一基準歴355年。  
魔法文明は隆盛を極め、あらゆる場所、場面に魔法が活用されていた。  
そんな栄華の果てにいつしか異変が起きる。  
確認されたのは20年前にもなるだろうか?  

ある属性の魔法に異常なまでの適性を示す。  
ある魔法を生まれつき能力として有している。  
未知なる力に開眼する。  

今までは天才と言われて来た種類の子供たちが続々と生まれ始めたのだ。  
このことに世界は大いに恐れ、憂慮した。  

なぜならば、本来数十年単位の修行と研究の果てに身につけていく力を僅か数年の学習で身につけてしまうのだ。  
あるいは以って生まれてくるのだ。  
修行と研究は何も力を得るためだけの時間ではない。  
力を振るう為の経験や知識をも身につけるための時間でもあるのだ。  

そして大きな力を当たり前のように使える事への危惧は現実のものとなる。  
世界各地で引き起こされる悲劇に、統一魔法評議会は一つの決定をなした。  

魔法学園の開設!  

魔海域を回遊するとも、海と空の狭間にあるとも言われるフィジル諸島に魔法学園を開校し、子供たちに学ばせるのだ。  
己が力を振るう術を。  


―――― 【TRPG】フィジル魔法学園にようこそ!2ndシーズン ―――― 


■舞台はファンタジー世界。謎多きフィジル諸島にある全寮制の魔法学園です。  
■学園が舞台だからといって参加資格は学生キャラのみではありません。  
  参加キャラは生徒でも、学園関係者でも、全く無関係な侵入者でも可。敵役大歓迎。  
■当学園には種族制限はありません。お好きな種族と得意分野でどうぞ。  
■オリジナルキャラクターでも版権キャラクターでも参加できます。  
  完走したスレのキャラを使ってもOKですが、過去の因縁は水に流しておきましょう。  
  また版権キャラの人は、原作を知らなくても支障が無いような説明をお願いします。  
■途中参加、一発ネタ、短期ネタ大大大歓迎。  
 ネタ投下の場合、テンプレは必ずしも埋める必要はありません。  
 ただしテンプレが無い場合、受け手が設定をでっち上げたり改変したりすることになります。ご了承を。 

■(重要) 
 このスレでは、決定リール、後手キャンセル採用しています。 
 決定リールとは、他コテに対する自分の行動の結果までを、自分の裁量で決定し書けるというものです。  
 後手キャンセルとは、決定リールで行動を制限されたキャラが、自分のターンの時に 
 「前の人に指定された自分の未来」を変えることが出来るというシステムです。 

例:AがBに殴りかかった。  
 その行動の結果(Bに命中・ガード・回避など)をAが書く事が可能です。 
 これを実行すると、話のテンポが早くなるし、大胆な展開が可能となります。  
 その反面、相手の行動を制限してしまう事にもなるので、後からレスを書く人は、「前の人に指定された行動結果」 
 つまり決定リールをキャンセル(後手キャンセル)する事が出来ます。 
  
 先の例に当てはめると、 
 AがBに殴りかかった→Bはまともに喰らって受けては吹き飛んだ。 
 と決定リールで書いてしまっても、受け手(B)が自分の行動の時に、 
 「Bはまともに喰らったように見えたが紙一重で避けていた」 
 と書けば、先に書いたレスの決定書き(BはAの拳をまともに受けては吹き飛んだ。)をキャンセル出来るのです。 

ただし、操作する人の存在するキャラを、相手の許可無く決定リールで喋らせるのはマナー違反です。気をつけましょう。

3 名前: ◆jntvk4zYjI [sage] 投稿日:2010/07/10(土) 07:50:38 0
※参加に関して不安があったり、何かわからないことがあったら、どうか避難所にお越しください。
  相談、質問何でもOKです。 

 ■過去スレ 
【TRPG】フィジル魔法学園にようこそ!2ndシーズン(前スレ)
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1273242531/
【TRPG】フィジル魔法学園にようこそ! 
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1270216495/

■避難所 
【TRPG】フィジル魔法学園にようこそ!避難所  
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/computer/20066/1270211641/

■テンプレ  

名前・  
性別・  
年齢・  
髪型・  
瞳色・  
容姿・  
備考・  
得意技・  
好きなもの・  
苦手なもの・  
うわさ1・  
うわさ2・  

【備考】  
全部埋める必要はありません。  
テンプレはあくまでキャラのイメージを掴みやすくしたりするものです。  
また使える技や魔法も、物語をより楽しむためのエッセンスです。  
余り悩まず、気楽に行きましょう。  

(参考サイト)  
各キャラクターのプロフィールやTRPに関する用語の確認はこちらでどうぞ  
千夜万夜  
PC:ttp://verger.sakura.ne.jp/
携帯:ttp://verger.sakura.ne.jp/top/top.htm

※アクセス規制の巻き添え等、書き込めない時の代理投稿依頼スレもあります。  
 自分で書き込めない場合は、代理投稿スレで代行をお願いしてみましょう。  

代理投稿スレ(なな板TRPGまとめサイト、千夜万夜さん内)  
ttp://yy44.60.kg/test/read.cgi/figtree/1277996017/

【なな板】書き込みたい人のレスを代行しようず!【過疎阻止】(なな板避難所内)  
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/computer/20066/1265360933/

4 名前:名無しさん@そうだ選挙に行こう [sage] 投稿日:2010/07/10(土) 07:51:38 0


――――テンプレは以上です。
では、引き続き学園生活をお楽しみください。

5 名前:ミク ◆sto7CTKDkA [sage] 投稿日:2010/07/10(土) 16:11:06 0
前スレ>218 >228 >230
>幹を蹴り、枝へと飛び移るグラディス。高さは大蜘蛛の位置とほぼ同じ。
>夜闇の中でも見通せる人狼の眼は、しかと捕らわれたユリを見据えた。
樹上に上がったグラディスの見たものは、複雑に木の間に張り巡らされた蜘蛛の巣だった。
この蜘蛛はエンカやセラエノを襲った蜘蛛とは違い、巣を張って獲物を捕らえるタイプの蜘蛛だったのだ。

>ベキッ!と枝が折れる音と共に、グラディスは乗っていた枝から跳ぶ。
>「うるぁぁああああああああ!!」
グラディスの声と木の枝の折れる音に反応し、蜘蛛は地上に向けて放っていた糸をグラディスに向けて放つ。
だが糸が当ったかどうかにかまわず、素早く大蜘蛛は巣の上を移動して侵入者から距離を取り始めた。
これはグラディスの攻撃から身を守るための行動だったが、結果的に大蜘蛛はユリから大きく離れることになる。
ユリを助ける絶好のチャンスだが、敵は大蜘蛛だけではなかった。
糸でくるまれて目を回しているユリの周りに、小さくても様々な種類の蜘蛛が群がっていたのだ。
突進するグラディスに、蜘蛛たちは恐れることなく飛びついて噛みつこうとする。
自身の安全など顧みず、まるでユリを守ろうとするかのように、だ。
そのほとんどは噛まれても痛いだけで実害はない蜘蛛だが、中には明らかに毒蜘蛛とわかる種類のものもいた。

>「グラディース! とっとと済ませて戻ってこいよ!
> いつまで待っても帰ってこないから探してみたら仲良く蜘蛛の餌になってましたとか
> そんなヘマやらかしたら許さねぇからなー!」
一方、グラディスから距離を取った大蜘蛛は、中空に張りめぐらされた巣を自在に走りながら糸を吐き出す。
狙いは地上にいる桜花とレイヴンだが、しかし糸は当らない。
ついに蜘蛛は、動き回るのをやめて動きを止めた。
あきらめたのではない。
一瞬の溜めの後、大きい投網のように大量の糸をレイヴンに向けて吐き出したのだ。
そして、蜘蛛自身は巨体に似合わぬ素早さで、空中から桜花に向かって飛びかかる。
大蜘蛛の体の後部から、糸が巣までつながっているのに気づけるだろうか。
単に避けるだけなら大蜘蛛は再び巣に戻り、再度空から攻撃を仕掛けようとするだろう。


6 名前:ミク ◆sto7CTKDkA [sage] 投稿日:2010/07/10(土) 16:19:14 0
前スレ >223-227
>「判っていたわ。あなたから悪意が流れ込んできたから。
>だから用意はしていた。蜘蛛だったのは残念ね。」
セラエノの言葉に、ミクはやっと足を止め、後ろを見た。
そこにあるのは、さっきまで使い魔の蜘蛛を通して見ていたのと同じ光景。
大蜘蛛に押し倒されたセラエノと、その側で立っている砕けた石を握ったエンカ。
ただ、大蜘蛛はもう動かない。
代わりに、蜘蛛の下から動けないはずのセラエノが立ち上る。
なるほど、蜘蛛に不意打ちされても落ち着きを失なわず的確に対処するとは、神を名乗るだけのことはある。
ミクはそう考えながら、セラエノの動きに意識を集中する。
エンカの動きから、彼がすでに毒に侵されているのは見て取れた。
エンカよりセラエノを警戒した最初の見立ては、間違っていなかったという事だ。

セラエノのスカートの下から、奇妙な形状の魚が5匹飛び出した。
魚はセラエノを守るように動きながら、正確な狙いで人形の頭を打ちぬく。
中に隠れていた蜘蛛は人形から飛び出して茂みに消え、蜘蛛糸の支えを失った人形は枯れ木に戻って崩れ落ちる。
>「いい機会だから説明を続けるわ。(中略)
>だから信仰も迫害も受けていない私の力はこの程度。」
>「あなたはご利益があるかも、といったけど、エンカは私を信仰していない。(中略)
>だから私がエンカに与えられるの神としてのご利益ではなく、友人としての助けだけよ。」
自身の存在について説明しながら、セラエノは指先に2つの炎を灯す。
ミクにはその違いがはっきりと理解できた。
存在しないはずの場所に、存在しないはずのものを作りだす能力。 それを奇跡と呼ばずになんと呼ぼう。
ミクは、壊れた人形の残骸から鉈を拾いだした。
悪意を感じ取るセラエノにどこまで通じるかはわからないが、視覚に訴える方法の有効性をミクは知っていた。
武器を目の前にして、それに注意しないものはいないからだ。
使い魔の攻撃の威力と速さには気を付けなければならないが、血に濡れた手が、セラエノは無傷ではないことを教えている。
主人を倒せば、使い魔がどれほど強かろうと恐れるに足りない。

>「悪ぃな、セラエノ。友人として助けられてやりてぇところだけどよぉ。
> 俺はお前が支えるには重過ぎるみてぇだ…」
>「セラエノ、さっき話しかけてたみてぇだけど、ミクは無事なのか?目が見難くなってきた。
> あいつに伝えてくれよ。ここは危ねぇから早く逃げろってなぁ…」
まだミクの本性に気づいていないエンカの言葉に、ミクは声を立てずに笑う。
他人の心配をする前に、自分の心配をすべきなのに。
そうしないエンカを、ミクは笑う。

「あなたは思い違いをしているわ。セラエノ。
 神は、人に作られるような存在ではない。
 神を前にして人にできるのは、恐れ、怯え、敬い、贄となって神にささげられる事だけ。
 人が神の存在を左右するのではなく、神が人の生死を自由にもてあそぶの。
 エンカが言った通り、人は自分より強い存在に翻弄され続ける弱い生き物なのよ」
そう言ってから、ミクは自分の言葉に自嘲気味に笑った。


7 名前:ミク ◆sto7CTKDkA [sage] 投稿日:2010/07/10(土) 16:21:23 0
ミクは、手にした鉈を大きく振りかざし、振りおろした。
途端に周囲に十重二十重に張り巡らされていた強固な糸が、セラエノに向けて襲いかかる。
ミクが歩きながら張っていた糸には、脆い探知用の物と、敵を裁断する攻撃用の物の2種類があったのだ。
恐るべき力と速さで操られる糸は、使い魔ごとセラエノを締め上げ、輪切りにしようと殺到した。

ミクは同じように、エンカも糸で輪切りにしようとした。
しかし、エンカを切断するはずの糸は途中で止まり、それ以上操られることなく地に落ちる。
心に引っかかっていたエンカの一言が、ミクの動きを止めたのだ。
それは、大蜘蛛が飛び出す前のエンカの言葉。
浦島太郎が幸せになる方法を考えてみよう、の一言だった。
時に言葉は人を刺し、時に言葉は人を縛る。
あの時、どうすれば“浦島太郎”は幸せになれたのか?
はるか昔に置いてきたはずの疑問を、エンカの言葉でもう一度ミクは思い出してしまったのだ。

「まったく、つまらない昔話なんてするものではないわね。
 興が削がれたわ。 今は、食事はこの役立たずで我慢しましょう」
ため息とともに吐き出されたその言葉と共に再び糸は動きだし、地面に倒れたまま眠っていた大蜘蛛を解体する。
ミクはバラバラになってもまだ動いている足の1本を拾い上げ、体液の滴る切断面にかじりついた。
暫く噛み、肉を呑み込み、足の残りをセラエノに向かって放り投げる。
「食べなさい。 あなたもこんな危険な森で、体がわずかでも麻痺したままなんて困るでしょう。
 その肉は解毒剤になるように変えておいたから。
 悪意が読み取れるなら、私の言葉に嘘が無いことも見抜けるはずよね?」
蜘蛛神となっているミクには、蜘蛛の体から解毒薬を作り出すなどわけの無いことだ。

「必要と思うなら、エンカにも食べさせてあげなさいな。
 もっとも、好都合にも麻痺していて動けない生贄を食べたい、と思うなら話は別だけど。
 あら、それともまだ人間を食べたことがないのかしら?
 あなたみたいな駆け出しの神が力を増すには、能力のある生贄を食らうのが一番の近道よ。覚えておきなさい。
 …人間から迫害も信仰も受けられるから、その面でもあなたの目的に適うわね」
ミクが合図を送ると、木の上から数本の糸が降りてきてすぐにミクを引き上げ始めた。
茂みに消えたミクの使い魔が、樹上から引き揚げているのだ。

「私は先に進むことにするわ。
 あなたたちがまだ危険な夜の散歩を続けたいなら、糸を目印に石畳の道に出なさい。
 その先に、メイション達がいるはずよ。
 もっとも、次に会った時に私とまた敵同士かもしれない事は、忘れない事ね」
ミクの姿が見えなくなった後も聞こえていた声は、それを最後に消えた。
ただ、ミクの立っていた場所から、夜目にも見えるほど太い蜘蛛糸が森の中に伸びている。
その糸をたどれば、総帥の家に迷わず進めることだろう。


8 名前:黒い猫その名はグレン ◆cOOmSNbyw6 [sage] 投稿日:2010/07/10(土) 17:21:02 P
前229
>「私、寮の部屋を抜け出した時に使った縄持ってるでちゅ!
  あ、だけど・・・・・・煙突っていうのは、この建物のどの辺にあるんでちゅかね?」
「煙突は常に一番上にあるよ」
(にゃおん)
木に登って煙突の有無を確かめるグレン
どうやら二本あるようだ
「煙が出てる煙突と出てない煙突なら出てない方を選ぶよ」
(なにゃにゃーにゃにゃ)
煙が出ているということは使用中ということであり
その中に入れば猫の丸焼きの出来上がりである
ロープを口でくわえ木を伝って屋根に飛び移り煙突にロープを結わえようと・・・・・
・・・・・・・ロープを結わえようと
・・・・・・・・・・ロープを(ry
だがしかし猫であるグレンにはロープを結わえるという器用な真似は無理であった
「積んだ・・・・・」
(にゃあ・・・・・)

果たして猫の肉球でロープを結べるだろうか?いや結べまい
いざとなったらこれを使って逆召喚して手伝わせるか?
と何処からともかくカードのようなものを取り出し眺めるグレン
ttp://web2.nazca.co.jp/nekomusi/FRED.png
だだよく考えたら今主人は全裸である
猫は裸でも平気だが人間は裸を恥ずかしがるはずだ
仕方が無いので下に降りて行くグレン
「この手じゃ結べないから代わりに結んでよ」
(にゃにゃにゃおん)
とリリィに頼み込むのであった

>「このまま潜入しないで、グラディス君達と一緒に寮に戻りまちぇんか?
 私達が屋敷に入らなければ、道に迷って、たまたまここに来て、蜘蛛に襲われたと言い訳できるでちゅ。
 ・・・・・・・ちょっと苦しいでちゅが」
どうやらリリィは出直すつもりらしい
「まだお屋敷に潜入して残り物漁りもしてないのに?」
(なにゃあ?)
やはりグレンは食べ物に生きているようである


その頃フリードはまだ普通にすやすやと寝ていた
「姉さん止めて・・・・・僕をモデルにそんないかがわしい本を描かないで・・・・」


9 名前:ユーリ◇gIPsgrF.N6 [sage] 投稿日:2010/07/11(日) 07:16:50 0
>>229
「・・・・・・で、これからどうするでちゅか?」
屋敷の様子を陰からそっと伺っていると、おかしな口調でリリィがそう質問してきた
「さあ?実はあんまり考えてなかったり」
とユーリは笑ってみる。その実笑いつつ色々考えている訳ではあるのだが
「私的には、こうやって窓からお屋敷の中を見られたし、大満足なんでちゅが。
ユリたんのことも心配だし・・・・・・・」
「それじゃここまで来た意味がないでしょ
………かと言って総裁殿に直に訊くのも馬鹿みたいだし」
リリィの言葉に難しい顔のままに自身の額を抑えながら突っ込む
こういう時、あるかないかは別にしてセオリー通りに行くと盗聴だろうか
などああでもない、こうでもないと考えを巡らせていると、窓の向こうにメイドが右往左往しているのが目についた
(給仕に化けるのもアリか……)
と何とか屋敷に潜り込む算段をしているとリリィから意外な言葉が飛び出した
「このまま潜入しないで、グラディス君達と一緒に寮に戻りまちぇんか?
(中略)
・・・・・・・ちょっと苦しいでちゅが」
その言葉にユーリは顔色を変えずに考えを巡らせる
ついさっきは意外。と言ったがリリィは元から乗り気じゃなかったのかも知れない
そうだとすれば「戻ろう」という言葉は意外でも何でもない
「そうね。どうせ手詰まりっぽいし、今日のところはさっさと戻ってさっさと寝ましょうか」
先程までの難しい顔を感じさせぬ笑顔であっさりリリィの提案を肯定してしまう
さらに
「じゃあ私は先に寮に戻るから」
と踵を返し手をヒラヒラさせてその場を去ってしまう

戻る。と言ったがアレは嘘だ。リリィたちが蜘蛛を退治した後、何らかの形(治療を受けるか捕まるか)で屋敷に入るかも。という予感がした
だから空間の歪みに身を隠して蜘蛛退治を見物しようという算段だ


10 名前:グラディス ◆e2mxb8LNqk [sage] 投稿日:2010/07/12(月) 00:14:58 0
前スレ>228>>231
ちょっと時間を戻す。
>「・・・やれやれだな、出さなくてもいい無粋な音楽を奏でる事になるとは」
>「グラディース! とっとと済ませて戻ってこいよ!
> いつまで待っても帰ってこないから探してみたら仲良く蜘蛛の餌になってましたとか
> そんなヘマやらかしたら許さねぇからなー!」
「おうおう、二人ともいい感じだなー!信用してるぜー!」
にひひと笑うグラディス。人狼の姿は威圧感たっぷりのはずである。
が、ファンキーな感じが勝ってある意味滑稽だった。
これもグラディスの人格が為す技か。

>5
そして現在。
案の定、大蜘蛛の放つ糸は地上組からグラディスへと放ってきた。
「やっぱりなッ!んなもん予想してたぜえええっ!」
身動きの利かない空中にて、それを爪で逆袈裟に切り裂く。
無論完全には切り裂けず、引き裂いた左腕に残骸が纏わり付いた。
粘着質なベチャリという気持ちの悪い音がするが、グラディスは意に介した様子を見ない。
すたりとユリのいる木の枝へと降り立つ。

降り立ってすぐにキョロキョロ見渡すと、大蜘蛛は張り巡らされた巣に移動している。
グラディスには、ユリの周りには何も無いように見えた。
「チャンス!……ぬわぁっ!?」
チクリと刺すような痛み。すかさず痛みの元を見てみれば、小さな蜘蛛。
確認してすぐに、ガサガサと物凄い勢いで大量の何かが迫る音がする。
見るまでも無い。大量の蜘蛛である。
「ちくしょっ、厄介だー!」
素早く手で払ったり足で蹴ったりとやっきになって落とそうとするが、一向にその成果は上がらず。
毛むくじゃらの体が見る見る間に纏わり付かれ始めている。
そもそも狼の体は小さすぎる相手と戦えるような風には出来てはいない。
故に、同じような体を持つ人狼にとって蜘蛛は意外な強敵なのである。

「……あーっ、くそっ!くそう!邪魔っちい!虫とか反応し切れねーっ!
 ああもう、邪魔!邪魔!!邪魔だぁっ!チクショウ、強行突破ああああッ!」
4秒後、グラディスは蜘蛛の集団との戦いに音を上げた。
蜘蛛たちを振り切ることを諦めて、すぐさまユリを救出して蜘蛛から離れることを選択。
勢いの続く蜘蛛たちを意識して無視し、木の枝をへし折りつつユリを救出に向かう。
「どぉぉぉぉけぇぇぇぇッ!」
待ち構えていた蜘蛛が雪崩れ込んでくるが、それすらも意固地に無視。
あちこちを刺される感覚はあるが、幸いにも即効性の毒は回っていない。
ギリギリ腕の射程圏内へと入ったユリへ、右手を伸ばし……!

「……ッ!取ったっ!うおりぃぃぃぃあああああああああああっ!!」
雄叫びを上げながら、掴み取ったユリを抱えて蜘蛛のいない地面へと旅立つ。
体は蜘蛛まみれでお世辞にも格好良いと言えはしないが。
「きゅーしゅつ成功ぉー!……おぶぅ!?……」
木から下りたグラディスは、自らの体で着地。足は地面の在らぬ方向へと差し出されていた。つまり着地失敗である。
その姿はかなり痛そうだが、ユリは抱えられていたので無事に隣に転がっている。
軽い打ち身はあるかもしれないが。

しかし、精一杯とはいえども、人狼が木から下りた程度で体を打つなどというのはまずありえない。
それぐらい人狼とは身体能力は高いはずなのだが、何故着地に失敗したのだろうか。
その原因は……
「……おろ?おろろ?なんで……って、やばい、眩暈?」
見れば分かるだろうが、蜘蛛の中には毒々しい色合いの、まさしく「毒持ってるZE☆」と自己主張極まりない者もいる。
そいつらがグラディスのあちらこちらに点在していた。即効性、遅効性とあるだろうが、あとは言わずもがな。
「まずった……毒蜘蛛とか普通にいるよなー……うげえ」
ぐるぐる回る視界の中、気持ち悪そうに撃沈した人狼が地面に転がりつつ溜息を吐いた。

11 名前:セラエノ ◆LGeruanYjI [sage] 投稿日:2010/07/12(月) 22:52:24 0
>「悪ぃな、セラエノ。友人として助けられてやりてぇところだけどよぉ。
> 俺はお前が支えるには重過ぎるみてぇだ…」
「引き上げる手や方向を示す指、為になる言葉。そんなものなくてもいいのよ。
立場、向かう方向、力が違っても、同じ心の場所に共に立ち一緒に進んでいれば。
だから、あなたが非力であろうと神を否定していようと私たちは友達よ。」
蜘蛛の麻痺独によって動けなくなりながらも話すエンカに答えるセラエノ。
エンカの言葉に強い共感を抱きながら。

エンカは自分自身が圧倒的に大きな何かに翻弄されて生きていくしかない一人だと言った。
それはセラエノにも、いや、セラエノにこそ当てはまる事なのだから。
だがその事について今は話している時間はない。
打ち抜かれた人形から鉈を拾っているのだから。

ミクの視覚に訴えるという狙いはセラエノには通用しなかった。
元々目抜きもない鏡の仮面を被っているセラエノは視覚に頼っていない。
強力なテレパシーによって直接周囲を把握しているのだから。
だからこそ、真なる狙いを察知ていた。
またそれに対する手段が自分にもないことも。

「可哀想に」
神と人の関係について語り自嘲気味に笑ったミクに憐憫の言葉を返す。
そして振り下ろされる鉈を高圧の水弾が打ち砕く。
それがセラエノに出来得る最後の抵抗。
僅かとはいえ麻痺毒に犯された身体では呪文を紡ぐ事はできず、出来たとしても今の状況を脱する魔法は持ち合わせていない。
ガンフィッシュの高圧水弾では周囲から殺到する糸を断つことも防ぐ事もできない。

最早手詰まりとなったにも拘らず、セラエノには輪切りにはされなかった。
糸を、ミクを止めたのは強力な魔法でもなく、使い魔の力でもなく、エンカの言葉の力。
結局のところミクの気まぐれによって救われたようなものだが、危機を脱したのだ。
既に敵意のない事を察したセラエノは投げられた大蜘蛛の足を拾い口に運んだ。

> あなたみたいな駆け出しの神が力を増すには、能力のある生贄を食らうのが一番の近道よ。覚えておきなさい。
> …人間から迫害も信仰も受けられるから、その面でもあなたの目的に適うわね」
樹上に引き上げられながらアドバイスを投げかけるミクに小さく、小さく呟くように答える。
「知っているわ、そんな事」
そう、セラエノはミクの言葉の意味を、その行為を、知っていた。
信仰も迫害も受けていないセラエノが曲りなりにも奇蹟を発現させる事が出来る理由は…
唯一セラエノを神と認めた両親のその行為による為なのだから。
生贄は恐れと畏れを産み神の力を増していく。
太古から神が行ってきたオーソドックスな方法なのだ。

既に姿の消えたミクを追う様に視線を宙に向けながら、微かだが喜びの感情を味わっていた。
なぜならば、ミクはセラエノを神と認めてその前提で話をしていたのだから。

12 名前:セラエノ ◆LGeruanYjI [sage] 投稿日:2010/07/12(月) 23:00:04 0
ミクが去った後の夜の森の中。
冷たく刺さるような月光に照らされながら麻痺し気絶しているらしいエンカを膝枕で介抱するセラエノ。

「カテゴライズの問題なのよ。
例え私が他人の痛みがわかったとしても…
あなたが瞼を開き、目に映るものが見えてしまうように。
私を信仰する万の人間がそれを意識無意識問わずそれを願えばそれを実現してしまう。
そういう装置のような存在なのよ。」

強大な人々の意思の力を吸い上げそれを実現せざる得ない。
そこに己の意思はなく、あったとしても一人のちっぽけな意思など大海の一滴の水も同じ。
蜘蛛が糸を紡ぐ術を知らずとも糸を紡ぐ力を有するように。
神は人々の信仰と意思を制する術を知らず、ただ実現する力を持つ。
信仰を、畏怖を得なければ存在し得なく、存在する為に信仰を集める。
人がパンを食し生きる活力とするのと同じように。

麻痺し気絶状態のエンカにこの言葉が届いているとは思っていない。
これは独白。
理由もなくただ口から零れた…
エンカが言った「圧倒的に大きな何かに翻弄されて生きていくしかない」という言葉。
正にそれはセラエノ自身に言えることなのだから。

そうした後、麻痺するエンカの口に蜘蛛の肉を咀嚼して流し込んだ。


「与えられた役目を否定し、自分で望むお話を作るという発想はなかったわね。」
解毒剤となった蜘蛛の肉が効果を表し、エンカが気付くと微笑みながら言葉を発する。
そのセラエノの手には太い蜘蛛糸が握られており、横にはコイノボリがゆったりと浮かんでいた。
「大丈夫?ミクは先に行ったわ。目印の糸を残して。
まだ痺れが残っているのなら帰りましょう。大丈夫なら、糸を辿るけど?」
エンカが起き上がるとこれからについて尋ねる。

エンカが帰るといえば森を後にして寮に帰るだろう。
逆にエンカが進むといえばコイノボリに乗り糸を辿っていく事になる。

13 名前:名無しになりきれ [sage] 投稿日:2010/07/13(火) 08:11:34 0
ワンワン!

14 名前:リリィ ◆jntvk4zYjI [sage] 投稿日:2010/07/13(火) 18:19:34 0
>8-9
>「この手じゃ結べないから代わりに結んでよ」 (にゃにゃにゃおん) 
一生懸命訴えるグレン。
フリードでなくても、ぐりぐり頬擦りしたくなるくらいかわいい。
リリィはこっくり頷くと、縄に細工を施した。
「ところでそのカードはなんでちゅか?もしかしてフリード君のプロマイドでちゅか?」

そして現在。

>「まだお屋敷に潜入して残り物漁りもしてないのに?」 (なにゃあ?) 
「残り物って・・・・・・もしかしてグレン、おなかすいてるでちゅ?晩御飯食べてないでちゅか?」
1人と一匹の間に、変な沈黙が流れた。

>「そうね。どうせ手詰まりっぽいし、今日のところはさっさと戻ってさっさと寝ましょうか」 
「はい!一階の配置図の記録も、ユーリ先輩の頭脳ならばっちりですもんね!
 下見としてはこれで十分かと」

>「じゃあ私は先に寮に戻るから」
「はい!・・・って?!・・・・・・・ええええええっ?ちょ、待っ!!」
リリィが引きとめようとしたが、時、既に遅し。
ユーリの姿はどこにも無かった。

>ワンワン!
どうやら犬が放たれたようだ。
まあ、あれだけ派手に騒いでいれば、当然の結果だろう。
大型犬のようなものが3匹、グラディス達が居る茂みの方へと突進していく。
その後を、黒っぽい服に身を包んだ男性達が追っていった。
彼らの手には鈍器のようなものが見て取れた。

3匹の犬らしき影は、グラディス達を見て一瞬ひるんだようだ。
だが、怯えながらも一番近くに倒れていたメイションに飛び掛かる。
だがメイションに飛び掛る直前、犬は彼の触手の先端を踏んだ。

「ああ、大変なことに・・・・・・どうしよう、どうしよう・・・・・・そうだ!!
 グレンたん、あなたは今のうちに逃げるでちゅ!
 もしも私達の身に何かあったら、どうか助けを呼んで欲しいでちゅ。さ、早く行くでちゅ!」

この後リリィは、驚くべき行動に出た。
「すみません!すみません!どなたかいらっしゃいまちぇんか?」
リリィは両手で窓を叩き始めた。
「友達が森の中で蜘蛛に襲われたでちゅ!このままじゃ皆、食べられちゃうでちゅ!
 お願いでちゅ、どうか助けてくだちゃい!!」 

15 名前:エンカとメイション ◆jWBUJ7IJ6Y [sage] 投稿日:2010/07/13(火) 21:21:51 0
>12
> 「与えられた役目を否定し、自分で望むお話を作るという発想はなかったわね。」
> 解毒剤となった蜘蛛の肉が効果を表し、エンカが気付くと微笑みながら言葉を発する。
「…なんだ!?俺は…助かったのか?」
エンカはそう言ってがばっと起きた。もしも自分がセラエノに膝枕されていたとわかっていたら、
もう少しゆっくり起きただろうに。
「いや待てよ。おかしいんじゃないっすか?たぶん俺は質の悪い毒蜘蛛に噛まれたはずっすよ?
 そんなに都合よく回復できるのかぁ?もしかしてこれも幻覚なのかよ?」
エンカは今自分が見ている景色が夢が現か疑った。
> 「大丈夫?ミクは先に行ったわ。目印の糸を残して。
> まだ痺れが残っているのなら帰りましょう。大丈夫なら、糸を辿るけど?」
「そうっすね。俺達はメイションを探しに行かなきゃならねぇんだったよな〜。
 夢だろうと現実だろうと、そこんとこは変わらねぇぜ。」
エンカは先に行くことに決めた。
「へぇ、そのコイノボリ空を飛ぶのかよ。(やっぱり俺、夢ってんのかぁ?)」

>14
> 3匹の犬らしき影は、グラディス達を見て一瞬ひるんだようだ。
> だが、怯えながらも一番近くに倒れていたメイションに飛び掛かる。
> だがメイションに飛び掛る直前、犬は彼の触手の先端を踏んだ。
メイションの触手、上海ハニーの先端を踏んだ犬が、
パシャっという音をたてて崩壊した。
メイションの周りに琥珀色の液体が飛び散る。そう、犬は全身が液状化したのだ。
あえてその液体に触れてみようとする者もいないだろうが、別に触れても無害である。
味も見ておこうとする勇敢なチャレンジャーがいれば、それがハチミツのように甘い事がわかるだろう。
上海ハニーはひと味違うのである。

16 名前:ユリ ◆sto7CTKDkA [sage] 投稿日:2010/07/14(水) 16:16:33 0
>10 >15
>「……ッ!取ったっ!うおりぃぃぃぃあああああああああああっ!!」
「ふにゃぁぁぁぁぁ……目が回る…。 目が、目がいっぱいギラギラ…ガブリ……」
毒の効果で悪酔いしているため、ユリの反応は要領を得ないものだった。
それもそのはずで、ユリの毒は彼女の体の頑強さを知っているミクが、特別に用意した物だ。
この毒は命に別状はないが認識能力を乱し、標的に何が起こったかを理解させない効果がある。
囮代わりのユリの再利用のため、蜘蛛が関係している事をあまり知られないようにと使ったはずだったが。
あるいはミクに、自分でも気づかないような、何か別の感情が働いたのかも知れない。
使われた毒はどう考えても必要十分な量ではなく、ユリは起きていることをある程度認識しているからだ。

>「きゅーしゅつ成功ぉー!……おぶぅ!?……」
>「まずった……毒蜘蛛とか普通にいるよなー……うげえ」
「う〜…グラディスの顔が1、2、3、たくさん… みんなで助けに来てくれたんだね…ありがと……」
グラディスの横で仰向けに寝転がったまま、助けてもらった事を理解したユリは礼を言った。

>メイションの周りに琥珀色の液体が飛び散る。そう、犬は全身が液状化したのだ。
琥珀色の液体は、仰向けに寝ていたユリの顔にも飛び散った。
「ん…なにこれ… いい匂い……」
基本的に食欲魔人であるユリは、条件反射的にその液体を舐めとった。
ある意味勇敢なチャレンジャーと言えるかもしれない。
液体は蜂蜜のように甘かった。
当然ユリの脳は、その液体が極上の蜂蜜であると解釈した。
「あまうま…」
動けなかったはずのユリは、ごろりと転がって飛び散った蜂蜜の続きを舐め始めた。


17 名前:黒い猫その名はグレン ◆cOOmSNbyw6 [sage] 投稿日:2010/07/15(木) 00:25:19 P
>14
>「ところでそのカードはなんでちゅか?もしかしてフリード君のプロマイドでちゅか?」
「これはね・・・・・・」
(にゃんお・・・・・・)
とカードの説明をするグレン
1、使い魔契約の時に出現した物である
2、天に掲げキーワードを唱えると一瞬でカードに描かれた持ち主を召喚できる
3、その時に相手の都合はガン無視である
4、本来ならば描かれているのは使い魔の方である
5、フリードが術式を少し変え逆に主人を呼べるように変えた
6、その為元ネタと違ってマジックアイテムは呼び出せない
7、グレンがその説明を受けたのは食堂から男子寮に移動する間の書かれていない空白の期間である
とのことである


>ワンワン!
「に”ぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!?」
突然現れた犬に心底驚いたグレン
基本的に猫は犬が苦手である
狼は平気なのか?と言われるかも知れないが
彼は人間ベースの狼男であるから大丈夫なのであろう・・・多分

>「ああ、大変なことに・・・・・・どうしよう、どうしよう・・・・・・そうだ!!
 グレンたん、あなたは今のうちに逃げるでちゅ!
 もしも私達の身に何かあったら、どうか助けを呼んで欲しいでちゅ。さ、早く行くでちゅ!」
言われなくてもスタコラサッサだぜとばかりに全力で逃げるグレン
全力で走る小動物の速度はマッハを超える・・・・・のか?
よく分からないがとにかく早い速度で逃げるグレン

目指すは保健室である
保健室には医者がいたはずだ
医者がいるなら怪我をした人間がいてもなんとかなるはずだ
それに保険医は大人である大人なら何とかしてくれるはずだ
だが保健室にも・・・・・・・・・
「に”ぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!?」
そこには犬がいた・・・・先程のドーベルマンのような犬種ではないが
それでも犬であることには違いない
やはりスタコラサッサだぜとばかりに全力で逃げるグレン

今度は一路フリードの眠っている男子寮に逃げるグレン
入れ違いにぐったりした幽霊の先生の足を・・・・・どうやら西洋の幽霊には足があるらしい
足を引きずった保険医とすれ違ったがそんな事はお構いなく全力で逃げるのであった
何処が戦闘能力皆無やねん!!


18 名前:黒い猫その名はグレン ◆cOOmSNbyw6 [sage] 投稿日:2010/07/15(木) 00:28:07 P

「といあ!!」
(にゃあ!!)
全力で体を伸ばし寮のドアノブを回すと中に入る、中には完全に睡眠をむさぼっている己の主人
やはり全裸である!このままでは戦力にならない!!

「そうだ!僕にいい考えがある!!」
(にゃあ!にゃにゃにゃー!!)
そう言ってグレンはブリーフをタンスから取り出しフリードに履かせ
続いてシャツズボン等を器用に・・・・・器用に履かせようと思ったが
猫の手では限界がありズボンのチャックでつまずいた
仕方が無いのでチャックやボタンのない服を探し・・・・・
「これだ!」
(にゃあ!)
見つけたのは男子用の体操服
これならゴムなのでチャックを閉めたりボタンをはめたりしなくていい
寝ている間に体操服を着せられたフリード

「主従逆転下克上合体!ソウルユニオン!!」
(にゃにゃにゃ!にゃにゃん!!)
寝ているフリードと強制合体し翼の生えた長靴をはいた猫の騎士の姿になると元の場所に走って戻るのであった


19 名前:名無しになりきれ [sage] 投稿日:2010/07/15(木) 22:22:32 0
>14
「お前、一体どこから入りこんだんだ!」
「怪しい奴、地下牢にでも放り込んでおけ」
リリィは両脇を抱えられ、屋敷の中に引きずられていった。

>10 >15-16
「犬が蜂蜜に変わっただと?!お前らいったい何をした!」
犬の後から現れた3人の男は、全員棒状の武器を持っていた。
棒の先端は帯電しており、たとえ掠っただけでもスタン状態となるに違いない。

男達は、まだ立っている者達に襲い掛かった。

20 名前:ベッドフォード ◇k4Jcxtcj [sage] 投稿日:2010/07/16(金) 21:28:18 0
「失礼致します総裁、屋敷に何者かが侵入した模様です 
報告によれば侵入者は子供 恐らく学園の生徒ではないかと」 

薄暗い部屋に姿は見せず男の淡々とした声のみが聞こえる 

「そうか…恐らく彼らは我が計画の雛型達だ… 
状況はどうなっている?」 

「はい、警備の者が対応に当たっております 
先程 >>14>>19侵入者の一人である少女を確保し地下牢に捕らた様ですが…」 

「分かった だがくれぐれも殺さぬようにな」 
老人は男の報告を途中で遮った 部屋からは男の気配が消え 時計が時を刻む音のみが響く 
この屋敷は仮にも最重要人物の屋敷 外の男達は全力で彼らに向かってくるだろう 
学園の生徒達が皆 魔法の素質に溢れた天才達とは言え ここで彼らが死んでしまえば計画は水泡に帰す 
だからこそ殺さぬよう厳命した 
「まだ命を懸けさせるのは少し早い… 
幾許かの戦いを経させ見極めねばなるまい」 
手に握った杖の先でそっと叩く 
すると>>14少女が捕らえられている牢の鍵が金属音を立てゆっくりと開いた 
外の喧騒とは打って変わり何故か屋敷の中は誰一人おらず鎮まり返り返っていた 

21 名前:セラエノ ◆LGeruanYjI [sage] 投稿日:2010/07/16(金) 23:18:27 0
>15
「彼女の目的が何で、何を思って攻撃を止めたかは判らない。
でも彼女は嘘は言っていないわ。この糸を辿ればメイションのところに辿り着くはずよ。」
コイノボリの上で糸を辿りながらエンカが気絶している間の事を話し、こう締めくくった。
蜘蛛をけしかけたのはミクであり、糸での攻撃で二人は輪切りになるところだった。
だが突然攻撃をやめ、解毒剤を渡した上に案内の糸を残した事まで。
自分のテレパシーの能力で判別するにそれが嘘ではない事も。

前スレ>202
そう話しているうちに、それは偶然、だった。
月明かりを反射する地上の月。
草むらに隠れるファンブルマンのスキンヘッドを見つけたのは。

「こんばんは。確か、ファンブルマン先生、でしたね。
何か騒がしいようですが、何をしているのですか?」
茂みの中のファンブルマンに声を駆け、その先の騒ぎに目をやる。
そこには入り乱れて戦う混乱が広がっていた。
「セラエノです。お昼にお世話になりました。
こちらはエンカ。彼の叔父を探しに来たのですが…なんですか、あれは!失礼します。」
カオスな状況にセラエノの口元が歪む。
樹上の大蜘蛛にミクの影を感じたのだった。
ファンブルマンに事情を話した後、コイノボリを降り、大股でそこへと近づいていく。


倒れるユリ、グラディウス、メイション。
戦うレイヴン、桜花、そして警備の男たち。
謎の猫の騎士グレンと木の上に蠢く大蜘蛛。
混乱の場の中心に突如として光球が出現した!

それは眩い光ではなく、あたりを優しく照らす光。
夜闇の森を明るく照らし出す。

元々視覚に頼っていないセラエノは状況を見るために光球を出したわけではない。
カオスな場を停止させ、注目を一点に集める為だ。
そしてそこに響くセラエノの声。
テレパシーを併用したその言葉は余す事無く一体の者たちの耳に流れ込む。

「静まりなさい、何事ですか!
私はセラエノ・プレアデス。ベッドフォード邸に行っているエンカの叔父、メイションを探しに来ました。
館の関係者は取次ぎをお願いします。
そして、樹上の大蜘蛛は明確な敵意を持っています。
まずはそれの排除を!」
胸を張り高らかに宣言をした。

【エンカに事情を話しながら移動。
ファンブルマンを見つけ声をかける。
光球を出現させ辺りに自己紹介と共に蜘蛛の撃退を依頼】


22 名前:エンカ ◆jWBUJ7IJ6Y [sage] 投稿日:2010/07/17(土) 06:57:20 0
>21
> 「彼女の目的が何で、何を思って攻撃を止めたかは判らない。
> でも彼女は嘘は言っていないわ。この糸を辿ればメイションのところに辿り着くはずよ。」
> コイノボリの上で糸を辿りながらエンカが気絶している間の事を話し、こう締めくくった。
「マジかよ!?あの女、次に蜘蛛をけしかけてきたら二度と許さねぇ!」
とエンカ。
> そう話しているうちに、それは偶然、だった。
> 「こんばんは。確か、ファンブルマン先生、でしたね。
> 何か騒がしいようですが、何をしているのですか?」
「先生?何してるんすか?こんなところでよぉ。」
エンカとファンブルマンはこの時が初対面である。
セラエノの方はファンブルマンと面識があるようだった。
大股で歩くセラエノにエンカもついて行った。

> 混乱の場の中心に突如として光球が出現した!
> それは眩い光ではなく、あたりを優しく照らす光。
> 夜闇の森を明るく照らし出す。
セラエノにとってはともかく、エンカにとっては状況を見るのに役にたった。
動かないメイションを見つけたエンカは、すぐに彼に近づいた。
「おい、メイション!どうなってんだ!?しっかりしろよなーっ!」
メイションは口から泡を吹いて動かない。エンカにとってはどうしようもない。
同時にセラエノはテレパシーで周りの人間に呼びかけていた。
> 「静まりなさい、何事ですか!
> 私はセラエノ・プレアデス。ベッドフォード邸に行っているエンカの叔父、メイションを探しに来ました。
> 館の関係者は取次ぎをお願いします。
> そして、樹上の大蜘蛛は明確な敵意を持っています。
> まずはそれの排除を!」
「セラエノ!たぶんメイションは蜘蛛の毒にやられてるぜーっ!
 ああ…いや、グラディスとユリの様子もおかしい!セラエノ、さっき使った解毒剤は…
 セラエノ!近づくな!番犬がいるぞ!」
セラエノのテレパシーは人間の言葉を解する者にはともかく、
犬や蜘蛛には意味が無さそうだとエンカは思った。
幸いエンカとユリは、さきほど犬を一匹崩壊させたメイションのそばにいるため、
少なくとも犬からは警戒され、近づこうともされなかった。
「なんだこのベチャベチャしたものはよーっ!?」
エンカはふとセラエノの蜂蜜酒を思い出した。

23 名前:リリィ ◆jntvk4zYjI [sage] 投稿日:2010/07/17(土) 08:48:29 0
>17
「つまりそれって、フリード君召喚用カードってこと?でも普通それって使い魔召喚用だよね?
 普通と逆じゃない?」
リリィはうーん、と考え込んだ後、
「そうか・・・・・フリード君って、骨の髄まで猫好きなのね。グレン、あなた愛されてるわよ」
と言って、うんうん頷いた。

グレンが走ってその場を去った後、屋敷の窓を叩いたリリィ。
だが。
>「お前、一体どこから入りこんだんだ!」 
「フ、普通に歩いて・・・・・」
>「怪しい奴、地下牢にでも放り込んでおけ」 
「待って、友達が蜘蛛に噛まれて・・・・・・お願いです、治療してあげてくだちゃい」
だが屋敷の人間は聞く耳を持たなかった。
>リリィは両脇を抱えられ、屋敷の中に引きずられていった。 

そして現在。

>20
真っ暗な部屋に放り込まれたリリィの後ろで、重々しい音を立てて扉が閉まる。
部屋の中はじめじめして、カビと血と動物の匂いが混じったような異臭がした。
「待って!行かないで!友達を助けて!
 ちゃんと治療しなかったら、蜘蛛の毒で友達が死ぬかもしれないの!!」
どんどんと両手で叩くも空しく、足音は遠ざかっていった。
「行かないで!行かないで!皆は何もしてないの!」
リリィの叫びを聞くのは、暗い通路に置かれた明かり取りのランプだけだった。

「・・・・・・・どうしよう」
廊下側に作られた、食事用の小窓から外を覗くが、既に全員去って久しい。
リリィの声はもうどこにも届かない。

リリィは堅く閉ざされた扉の前に、ずるずると座り込んだ。
次第に目が慣れてきたようで、部屋の中の様子も見えてくる。
部屋の右側には石造りのベッドらしきものの上に、粗末な麻で出来たボロ布が置いてあった。
左側の壁際には、手枷と足枷が壁に吊り下げられている。

一気に頭が冷えたリリィは、ようやく自分の置かれた立場を自覚し、震え上がった。
「ああ、どうしよう・・・・・・!」
今頃になって自分の行動を悔やんでも、後の祭りである。

ピチョン、ピチョンと水の滴る音がする。
リリィは石造りのベッドに座り、肩を落としていた。
「皆、どうしたかな」
ここに自分以外運び込まれていないところを見ると、うまく逃げおおせたたのかもしれない。
そうであってくれれば良いと思う。
「これから、どうなるのかな・・・・・・」
入学したばかりだと言うのに、早くも退学だろうか?それとも
「フホーシンニューとか、ショーガイとかアンサツミスイでタイーホされちゃうでちゅか・・・・・・ん?」
静まり返った牢の中に、鍵が外れたとしか思えない音がした。
リリィは慌てて扉に飛びついた。
「誰かいる?カラs・・・・・・みんな、なの?」
仲間の名前を大声で読んだらまずい、というくらいの知恵はあったようだ。
堅く閉ざされていたはずの扉は、驚くほどあっさりと開いた。
リリィはそっと廊下の様子をうかがったが、相変わらず人の気配は全く感じられない。
釈然としないものの、チャンスは今しかない。
リリィは足音を忍ばせ、一目散に逃げ出した。

24 名前:リリィ ◆jntvk4zYjI [sage] 投稿日:2010/07/17(土) 08:53:25 0
屋敷の中は広く、まるで迷路のようだった。
壁に並んだ彫刻や鎧、古めかしい肖像画。
名のある物かもしれないが、招かれざる客としては、どれも不気味にしか思えなかった。
「変ね、なんでこんなに人の気配が無いの?」
さっきユーリ先輩と中の様子を覗いた時には、忙しく働くメイド達の姿が見えたのだが、
今の屋敷の中はメイドはおろか、物音一つしない。

「どういう事なの?私、夢でも見ているの?」
赤い絨毯が敷かれた廊下、同じような扉、古めかしい調度品。
リリィは次第に、同じところをぐるぐる回っているような錯覚に襲われてしまった。
「・・・・・・部屋の窓から、外の様子とか見えないかな?」
リリィは、他よりも豪華な装飾が施された扉に手をかけ、そっと押してみた。
「ここは・・・・・・?」

25 名前:ユリ ◆sto7CTKDkA [sage] 投稿日:2010/07/17(土) 22:49:52 0
>17-22
>「静まりなさい、何事ですか!
>私はセラエノ・プレアデス。ベッドフォード邸に行っているエンカの叔父、メイションを探しに来ました。
>館の関係者は取次ぎをお願いします。
>そして、樹上の大蜘蛛は明確な敵意を持っています。
>まずはそれの排除を!」
寝転がったまま無心に蜂蜜を食べていたユリは、セラエノのテレパシーと大声と光で覚醒した。
しぼりたての雑巾くらいには。だったが。
「あれ…私なんでこんなとこで寝てるんだっけ…
 えーと、確かいきなり木の上に引っ張り上げられて、何かに噛まれて…
 グラディスが助けに来てくれて…
 そーだ! グラディスは!? 大丈夫!?
 …ありゃりゃりゃりゃ〜 なんか体に力が入らないよう…」
跳ね起きようとして、やっぱり力が出ずにユリはその場に突っ伏した。

>「セラエノ!たぶんメイションは蜘蛛の毒にやられてるぜーっ!
> ああ…いや、グラディスとユリの様子もおかしい!セラエノ、さっき使った解毒剤は…
> セラエノ!近づくな!番犬がいるぞ!」
セラエノの事は知らないが、後から聞こえてきた声はエンカだとユリにもわかった。
「あー…エンカ来てくれたんだ…
 私としたことが、不意打ちに気づかないでやられちゃうとは不覚…」
まだ毒の効果は残っているため、ユリはほとんど動けない。
>「なんだこのベチャベチャしたものはよーっ!?」
「それ蜂蜜…美味しいけど食べるのは後にして、先に毒を魔法で消せないかな…
 私もグラディスも、毒でやられちゃったみたいで…
 メイションは大丈夫…?」
魔法をよくわかっていないユリは、魔法使いは万能であると本気で思っていた。

光に照らされて、木々の間に張られた巣を動き回っていた大蜘蛛が良く見えるようになった。
光から逃げるように蜘蛛は動こうとするが、見えない糸に拘束されたようにすぐにその動きが止まる。
動かなくなった大蜘蛛は、代わりに1本の足を大きく振り回し始めた。
館から出てきた警備員が一人、悲鳴を上げて宙を舞い始める。
大蜘蛛はリリィを狙った時と同じように糸を伸ばして警備員を振り回しているのだ。
振り回される警備員と糸に当たれば、弾き飛ばされるか警備員と一緒に空を飛ぶ事になる。

26 名前:ミク ◆sto7CTKDkA [sage] 投稿日:2010/07/17(土) 22:50:51 0
時はその少し前にさかのぼる、
樹上を移動してきたミクは、少し離れた木の上から大蜘蛛の戦いを眺めていた。
エンカとセラエノが臆病風に吹かれて帰っていれば、戦いに介入しようと考えていたのだが。
どうやらその必要は無かったようだ。
セラエノの光が戦いの場を照らし、その声が響くのを聞いて、少しだけミクは笑う。
「2人ともこちらに来たのね。 そんなに叔父との出会いが大事なのかしら。
 それとも友達が心配だったのかしら?
 どちらにしても、派手に名乗りを上げてから共通の敵を作るなんて、見事な手際ね」
ユリが向かったこの屋敷は、学園の重要人物にして有名人のはずだ。
堂々と乗り込めば、逆に自分の立場を守ろうとして下手な手出しができなくなる事は十分に考えられた。
相手が強引に事実をもみ消そうとしなければ。

ミクは状況を自分に有利にするために、複数の細い糸を大蜘蛛に巻きつける。
それまで木々の間に張られた巣を走りまわっていた蜘蛛は、磔にあったように動きを止めた。
これが、急に蜘蛛が動きを止めた原因だった。
時間が経てば糸はさらに締り、大蜘蛛を輪切りにするだろう。
その前に蜘蛛が倒されても、それはそれで良し。
要はしばらく注意を集められれば、それで蜘蛛は役目を果たすことになるのだ。

地上の戦いにはそれ以上干渉せずに、ミクは張り渡した糸を使って空中から総帥の館に移動した。
何回か粘着質の糸を貼りつけてから窓を壊し、館の中に侵入する。
特に目的があるわけではなく、単なる好奇心からの行動だった。
仮に総帥とやらがごく普通の善人なら、適当に悪事の証拠らしきものをでっちあげるのもいいだろう。
本当に悪事の用意があれば、ユリたちより先にその情報を掴むのも悪くない。
とにかくミクは、楽しみに、刺激に飢えていたのだ。
館の中を散策しながら、ミクは硬い糸と柔らかい糸を張っていく。
糸は獲物を捕らえるのに必ず役立つはずだ。
それが館の住人か、後からこの館に乗り込んでくる者かは、まだわからないが。

27 名前:グレンSUフリード ◆cOOmSNbyw6 [sage] 投稿日:2010/07/17(土) 23:41:00 P
木を伝い屋根を駆け抜け元の場所に戻ろうと走るグレン
体のサイズは大きくなっても猫としての能力は変わらない

念のために保健室に寄るグレン
そこにいたのは犬っころと取っ組み合いを演じるゴーストの教師であった
ゴーストなのに物理的に殴り合えるとはよほど強力な霊に違いない
加勢しようと犬に近寄るグレン
ただの猫では勝ち目はないが今のグレンはフリードと合体しているため負けはない
そうグレンは考えたのである
「その犬に近づいては駄目だ!」
とグレンに警告する保険医
「何故故?」
(にゃん?)
なぜ近づいてはいけないのかと保険医に問うグレン
保険医は犬の能力を斯く斯く云々と説明する
「なるほど・・・・・・」
(にゃ・・・・)
と肉体を持たぬ幽霊である彼だからこそその能力を無効化出来ると納得したグレン
「そんな事より蜘蛛が毒で大変なんだ!!」
(にゃにゃにゃにゃ〜な!!)
と毒蜘蛛がいるからすぐに毒消しを持ってきてくれと保険医に頼むグレン
果たして保険医は来てくれるのだろうか?

>23
「やや?リリィさんがいない!?」
(にゃにゃ?にゃにゃにゃにゃ!?」
しばらく経って戻ってきたはいいが肝心のリリィが居ないことに驚くグレン
「一体全体どこに行ってしまったのだろう?」
(にゃにゃお?)

蜘蛛を見ると同行していた保険医はおもむろに消毒用アルコールの瓶をぶん投げ
「毒は熱消毒だぁ!!」
と火の点いたマッチを投げ捨てた
まさに外道である
誰かこのレズば・・・・・・お姉さんを何とかしてやってくれ
それを見たグレンは・・・・・ああこの人も性格は考慮せず能力だけで呼ばれたんだな
と妙な方向で納得したようだ
もしこの保険医が強力な攻撃魔法が使えたならばダンジョンのボスをダンジョンごと吹っ飛ばしたに違いない
「そんな事より転がってる人の毒を消してよ」
(にゃにゃにゃおん)


28 名前:ベッドフォード ◇k4Jcxtcjwo [sage] 投稿日:2010/07/19(月) 22:47:21 0
「ええい!なぜ俺にすぐ報告をしなかった!
敷地内への侵入を許すとは怠慢も甚だしい!」
緑色の軍服の上からコートを肩に羽織り颯爽と廊下を歩く銀髪の細身の男
男は部下を叱責しながら帽子を被りつつ身仕度を整えていた
「申し訳ありません!我々も謎の蜘蛛対応に追われておりまして…」
「言い訳は良い!万一総裁の御身に何かあれば我々は只ではすまんぞ!」

「オワゾー殿はどのみち当てにはならん
私が不埒者の相手をしてくれる…」

>>21 >>26

>「鎮まりなさい!…」

「くっ…なんだこのテレパシーは…
蟲使いもいるとは厄介だ」
男は窓の外に目をやり樹上に蜘蛛を探していた最中 背後にいた部下の悲鳴と共にガラスが割れた
屋敷内にも張り巡らされた蜘蛛の糸が部下を窓の外へ引きずり出したのだ
「屋…屋敷にも糸は張り巡らされているのか…」
窓の外を始め至る所で部下達の悲鳴が響いている 蜘蛛にやられているかまたは別の侵入者にやられているのかは男に分かるはずも無い
「こうなれば蜘蛛であれ誰であれ叩き斬ってくれよう…
この私、アドラス・ヴィエーダーが相手をしてくれるっ!」
アドラスは腰から剣を抜くと雄叫びをあげ窓から外へと飛び出した


29 名前:ベッドフォード ◇k4Jcxtcjwo [sage] 投稿日:2010/07/19(月) 22:48:02 0

>>24
リリィの目前には見覚えのある一人の老人がいた
壁一面ガラス張りの大窓から後ろ手に手を組み外を眺めている
「来たか…どうやら侵入してきたのは君達だけでは無いようだな」
振り返る事もせず窓の外を見続けたまま言葉を発していた
大窓からは時折閃光が差し込み 薄暗い部屋を瞬く照らす
「だが、あの蜘蛛は君達の覚醒を促す良いきっかけとなってくれるだろう…
誰であれ役に立てばそれでよい」

「さあ、かけたまえ」

老人はゆっくりリリィの方を振り向くと 目前にあるソファーへ座るよう促した
「手荒く扱った無礼を詫びよう


さて、何故ここへ来た?」
老人の目はまるでリリィを突き刺すかのように鋭くなり、じっと彼女を睨みつけるかのようだった

30 名前:エンカ ◆jWBUJ7IJ6Y [sage] 投稿日:2010/07/20(火) 21:10:07 0
>25>27
> 「それ蜂蜜…美味しいけど食べるのは後にして、先に毒を魔法で消せないかな…
>  私もグラディスも、毒でやられちゃったみたいで…
>  メイションは大丈夫…?」
「メイションも毒にやられた!それに悪いが、俺には毒を消すような魔法はできないっすよ!」
エンカはメイションの背中から生えた触手に触れないように気をつけた。気味が悪いからである。
「なんでこんなところに蜂蜜がぶちまけられてんだよーっ!?」

> 蜘蛛を見ると同行していた保険医はおもむろに消毒用アルコールの瓶をぶん投げ
> 「毒は熱消毒だぁ!!」
> と火の点いたマッチを投げ捨てた
「なんてクレイジーなんだ!それに、よく見たら保険医さんじゃないっすか!?」
エンカは彼女の治療を一度受けているので、彼女の顔を知っていた。
> 「そんな事より転がってる人の毒を消してよ」
「まず蜘蛛から始末するってのは考え方としてはおかしくねぇ。」
エンカは保険医の行動を肯定した。
点火された蜘蛛に驚いて犬達が逃げ出したのもありがたかった。
「お前こそなんだよ!?俺はおめぇみてぇな奴知らねぇぞ!?」
エンカはグレンに言った。
「さっきリリィがどうのこうの言ってたよなーっ!?
 どういうことか教えろよ!退散するか突入するか決められねぇからよーっ!!」

31 名前:リリィ ◆jntvk4zYjI [sage 総裁了解!姉弟さん、いつでも戻ってきてね!他の皆もだよ!] 投稿日:2010/07/21(水) 06:29:40 0
薄暗い部屋の中、窓際には人影が立っていた。>
>「来たか…どうやら侵入してきたのは君達だけでは無いようだな」 
「その声は、 ベッドフォードさん・・・・・・ですか?」
驚きのあまり、自身の口調がいつのまにか元に戻っていることにも気づいていないようだ。
(どういうことなの?閉じ込められたのは、ベッドフォードさんの指示じゃなかったの)
リリィは先程まで、侵入者として地下牢に閉じ込められていた。
なのに指示した筈の人間は、自分の姿を見て人を呼びもせず、無防備な背を向けているのだ。
もっとも、たとえ背後を取ったとしても、リリィに何が出来るわけでもなかった。
入学式の時に見た壇上の姿よりも圧倒的な存在感と威圧感に、言葉すら満足に出てこないのだから。
まるで、蛇に睨まれたかえるのようだ。

だがそんな状態も長くは続かなかった。
>大窓からは時折閃光が差し込み 薄暗い部屋を瞬く照らす 
その光が、リリィがどう行動するべきか教えてくれた。
「あの!」
リリィは畏れを振り払うように、ぎゅっと拳を握り締めた。
「あの・・・・・・私たち、見たことも無いような蜘蛛達に襲われて・・・・・・。
 動けない子もいるのに、警備の人が犬をけしかけてるのを見ました。私、友達を助けて欲しくて。
 噛まれて毒を受けた子もいるみたいなんです。
 勝手にお屋敷の敷地に入ってしまったのは謝ります。本当にごめんなさい。
 ですが、私達、ベッドフォードさんに危害を加える気なんて無いんです。
 だからお願いします。私の友達を助けて!!」
>「だが、あの蜘蛛は君達の覚醒を促す良いきっかけとなってくれるだろう… 
>誰であれ役に立てばそれでよい」 
「そんな・・・・・・」
リリィは絶望的な思いで、ベッドフォードの後姿をみつめた。
話し合いは無駄なようだ。
リリィはくしゃっと顔を歪めると、皆の所に戻ろうとドアへと駆け寄った。
「・・・・・・・?!」
だが何度試しても、ドアはまるで壁のように重く、ピクリとも動かない。

>「さあ、かけたまえ」 
>老人はゆっくりリリィの方を振り向くと 目前にあるソファーへ座るよう促した
リリィは怯えた顔で、弱弱しく首を横に振った。
(あ・・・・・何で?体が勝手に・・・・・・!!)
リリィは操り人形のようにふらふらと動き、豪華なソファへと身を沈める。 

>「手荒く扱った無礼を詫びよう 


>さて、何故ここへ来た?」 
「と、友達と学内探検をしてて、たまたまこの場所に・・・・・・・きゃあああ?!」
突如リリィの足元に魔法陣が浮かびあがったかと思うと、八方から黒い影が伸び、彼女に襲い掛かった。
「いやあ!やめて!私の中に入ってこないで!!・・・・・誰か・・・だれ・・・・・か・・・」
助けを求めるように伸ばされた手も見る見るうちに漆黒に染まる。
光の消えたリリィの目から一粒涙が零れ落ちた。
やがて影は完全にリリィを飲み込み、室内には静寂が戻った。

リリィはゆらりとソファから立ち上がった。
「ここを訪れたのは、総帥の身辺をかぎまわる人間が消えるという噂の真相を確かめに、です。
 ユリという名の少女の発案のようです。子供の肝試しの延長に近いかと思われます。
 同行者の名前は、ユリ、グラディス、響桜花、レイヴン、メイション、鋼、そして猫のグレンです」
リリィは抑揚の無い声で質問に答えた。
「今現在私の使える魔法は、飛行術と発信のみのテレパシーです。」

リリィはベッドフォードに歩み寄ると、彼の足元に跪き、靴にキスをした。
「何なりとご命令を。――――我が君」

32 名前:ユーリ◇gIPsgrF.N6 [sage] 投稿日:2010/07/21(水) 20:56:45 0
>>30
>「さっきリリィがどうのこうの言ってたよなーっ!?
どういうことか教えろよ!退散するか突入するか決められねぇからよーっ!!」
計画通り遠巻きに見ていたがこのまま退散されちゃ面白くない。そう思ったユーリは行動に出る
「リリィなら―――」
つい今さっき戻ってきた風を装って木陰から飛び出る
「屋敷の中に運び込まれた………」
と最後は消え入るように呟き、小刻みに震える体を抱き顔を伏せ
「私、これ以上怖いのはもう嫌っ、無理っ!!」
と言葉を絞り出して走り去ってしまった
………ように見せかけてまた木陰から空間の歪みに身を隠す
(まさか、リリィちゃんの方が当たりだったなんてなぁ)
と先程とはうって変わってケロッとした顔で頭を掻く。念のためにリリィの方も覗いていたらこんな結果になるとは
しかし、これでリリィを助けに行かせるように煽り、かつユーリは退場したかのような印象つけを出来た訳だ
あとはエンカ達が勇気(或いは蛮勇)を発揮してリリィの奪還に行けば、それに便乗する算段だ

33 名前:グレンSUフリード ◆cOOmSNbyw6 [sage] 投稿日:2010/07/21(水) 22:51:57 P
>30>32

>「お前こそなんだよ!?俺はおめぇみてぇな奴知らねぇぞ!?」
「僕の姿はなんども見ているはずだよ」
(にゃあん)
「まず大きさの概念を捨てるんだ!そして黒い猫を思い浮かべるんだ
 この学園で見たことある二足歩行する猫と言ったら?そうそれが僕さ」
(にゃにゃにゃぁお!にゃん にゃんにゃんなや〜)
正体隠す気全く無しのグレン
「好きな言葉は下克上!それが僕グレン・ダイザーさ」
(にゃん!にゃにゃ〜ん)
サブキャラであるグレンがメインキャラであるフリードの出番を根こそぎ奪っているので下克上は大成功であろう

>「さっきリリィがどうのこうの言ってたよなーっ!?
  どういうことか教えろよ!退散するか突入するか決められねぇからよーっ!!」
「よくわかんないけどさっきまでいたはずの場所に居ないんだ」
(にゃな〜)
斯く斯く云々と一匹で応援を呼んだこと等を説明するグレン
「毒を消すなら医者ってわけだよ」
(にゃ〜ん)

>「リリィなら―――」
>「屋敷の中に運び込まれた………」
>「私、これ以上怖いのはもう嫌っ、無理っ!!」
確か彼女は上級生でありフリードの姉と同程度の実力を持っているはずだ
まあフリードの姉なら「もうめんどくさいから屋敷ごと吹き飛ばして気絶したリリィさんを回収しましょう!」
とか言い出しそうである
実際そんな事を出来るかどうかグレンは知らない
私だって知らない・・・・・そんな事が出来たら早く卒業しろと突っ込みたい
そんな彼女が怯えるベッドフォード卿・・・・・一体どんな化物なのだろう?

「そんな事どうでもいい!毒の治療をさせろ!この新薬を試させるんだ!!」
そう言って紫色の怪しい薬の入った注射器を取り出す保険医
絶対マッドだこのババァ!?
「毒は完全に治るだろうが・・・・・・幼女になる!
 死ぬかTSか選べ!!」
しかもロリコンだこのババァ
ちなみに普通の毒消しも当然持っているのだが彼女は趣味に走っているようだ

「まあ当然返してもらいに行くよね?」
(にゃあ?)
ババァを見なかったことにしつつリリィを助けに行くのだろうと尋ねるグレン
フリードが起きていたなら「ここで助けないなら男じゃありません!!」と言っていたに違いない


その頃、グレンSUフリード内で爆睡中のフリードの夢のなか
「変身!!」
スワン!キャット!(電子音)
「僕は一人と一匹で一人の魔法使いだ!!
 さあお前の食べずに捨てたパンの耳の数を数えろ!!」
 僕は人を殺さない!その心を殺す!行くぞ!マインドブレイクだ!!」(廃人確定)
キャットマジカルマキシマム(電子音)

相変わらず意味不明の夢を見ているようである


34 名前:セラエノ ◆LGeruanYjI [sage] 投稿日:2010/07/21(水) 23:47:34 0
ベッドフォード邸付近の森では激しい戦いが続いていた。
樹上の大蜘蛛は身動きが取れないまま糸を飛ばし、屋敷の警護の者たちはそれに交戦する。
毒に犯され動けない者達。
火炎瓶を投げつつ毒に苦しむ者に究極の選択を迫る保険医。
月明かりの指す森の中、場はカオスそのものであった。

そんな中、セラエノは何をしているかというと…
血溜まりの中で倒れていた。
その原因は、混乱の最中にエンカの届いた一言。
>「セラエノ!たぶんメイションは蜘蛛の毒にやられてるぜーっ!

アルビノの美少年が蜘蛛の毒に犯され…犯され…犯…
賢明な読者は何が起こったかは既にわかっているだろう。

################################

線の細くアルビノの美少年が蜘蛛の巣に磔になりもがいている。
身動きが取れないままもがく姿がそそられるが、それだけでは終わらない。
じっくりと身動きの取れない美少年に近づく醜く巨大な蜘蛛。
ここ、醜いというところが重要なので読み落さない様に!
美しいものが醜いものに蹂躙されるこのギャップが(ry
毒液の滴る牙がゆっくりと近づき、怯える美少年。
その表情を楽しむかのように剛毛に覆われた足が美少年の頬を撫で、その首筋にゆっくりと牙を立てていく。

【10行ほどの妄想が続きますが、自主規制のためカットされました】

毒で弛緩しても美少年の美しさは損なわれない!(←ここは譲れない)
蜘蛛の糸が美少年の裸体を締め上げ、亀甲縛りのまま吊るされるのだ。
最早なすがままの美少年に蜘蛛は圧し掛かる。
産卵の為に…!

##############################

勿論こんな事はない!
これはセラエノの脳裏に流れるヴィジョンという名の妄想である。

自分で妄想しておいて鼻血を噴出して倒れていては世話はない。
しかしいくらセラエノがショタ好きとはいえ、ここまで変態趣味はなかったはずである。
ベッドフォードが望む形とはかなり方向性が違ってしまっているが、何か覚醒してはいけないものに覚醒しそうなセラエノだった。

物語は切迫したシーンだというのにこんなのでいいのか?
よくない!言い訳がない!
だがこれで良いのだ!

なぜならば、血溜まりの中倒れるセラエノの口元は幸せそうに笑っているのだから。

35 名前:ユリ ◆sto7CTKDkA [sage] 投稿日:2010/07/22(木) 16:38:55 0
>27-28 >30 >32-34
>「メイションも毒にやられた!それに悪いが、俺には毒を消すような魔法はできないっすよ!」
「ええー…魔法使いなのに?
 魔法使いって、ごにょごにょって呪文唱えたらなんでもできるんじゃなかったの?」
とんでもない偏見だが、ユリのいた地方での魔法使いのイメージはだいたいそんなものだ。

蜘蛛退治のために保険医は火を使う。
森の中で火を使うのは危険極まりない行為だが、そこは変態でも学園教師。
炎は木に燃え移ることはないよう計算されている。
> 「そんな事より転がってる人の毒を消してよ」
>「まず蜘蛛から始末するってのは考え方としてはおかしくねぇ。」
「その考えおかしいよ絶対…毒消しを先にくれないと、私達狙われたら危ないじゃん…」
脅威の始末は重要だが、毒で困っているユリたちからすれば治療を先にお願いしたいのが人情というものだ。

>「お前こそなんだよ!?俺はおめぇみてぇな奴知らねぇぞ!?」
>「好きな言葉は下克上!それが僕グレン・ダイザーさ」
>「リリィなら―――」
>「屋敷の中に運び込まれた………」
>「私、これ以上怖いのはもう嫌っ、無理っ!!」
「う〜〜いいから、先に毒消しお願い〜」
行われる話し合いの中、いつもなら元気に会話に加わるユリも、毒で頭クラクラ状態ではそうもいかない。

>「そんな事どうでもいい!毒の治療をさせろ!この新薬を試させるんだ!!」
救いの神は患者を忘れていなかった。
患者のためというより自分のためかもしれないが、ユリからすれば毒が治ればそんなことはどうでもいい。
>「毒は完全に治るだろうが・・・・・・幼女になる!
> 死ぬかTSか選べ!!」
「幼女でいいから早く薬…」
座り込んでいたユリは毒々しい色の注射器を受け取り、針を引き抜くと、一気に薬を口の中に流し込む。
「……まっず〜い! もう一杯!」
容量も用法も正しくない使い方だったが、薬は幸いすぐに効果を発揮し始めた。
毒消しと幼女化、両方の効果を。 正確に。

36 名前:ユリ ◆sto7CTKDkA [sage] 投稿日:2010/07/22(木) 16:40:39 0
「よっし!これで完璧!!
 ありがとう先生! 私はもう大丈夫だよ!
 他の人の毒も治療してあげて!」
少し後、ユリは手刀で適当に切った忍者服を身にまとい、引っ張って破った袖を帯代わりに腰に巻きつけた。
幼女化によって着ていた服がだぶだぶになって動きにくくための、やむを得ない措置だ。
危険な治療薬がなくなった今、メイションやグラディスにはまともな毒けしが使われるだろう。

「それじゃまずはあの大蜘蛛を倒そう!それから…あっ!」
ユリがそう言った時、明かりと燃える火に照らされていた大蜘蛛の動きに異変が起きた。
最初に地面に落ちたのは、警備員を振り回していた足だ。
もちろん切断されたのは足だけではない。
後を追うように蜘蛛だった体が、バラバラに輪切りにされて巣から地面に落ちていく。
ミクが用済みとなった蜘蛛を始末したのだが、ユリにそんなことはわからない。
「蜘蛛がバラバラになっちゃった… これってもしかして、エンカと一緒に来たセラエノって人の魔法?
 …ってあああああ!死んでるー!?
 どうしたの!? 大丈夫!? しっかりしろ傷は浅いぞ!」
血だまりに倒れたセラエノを見て、ユリは慌てて駆け寄り抱き起す。
その顔は幸せな夢を生きた者らしい安らかなものだったが、ユリは空気を読まなかった。
「せんせーい! 怪我人の治療お願いします!
 体中血まみれのちょー重傷患者です!!!」

ひとまず危機から脱して安心したユリは、エンカに聞きたい事があった。
「そういえばなんでエンカここにいるの?
 私達総裁の館に行くなんて言ってたっけ?」
もちろん、危険は去ったように見えるだけであり、実際には新たな危機が迫っていた。
館から剣を抜いたアドラスが向ってきたのだ。
呑気に話をしている場合ではない。

「えーとえーと、私達忘れ物を取りに来て森に迷い込んで、ここで蜘蛛に襲われて…って人の話聞いてるー!?」
リリィからのテレパシーを思い出して言い訳を始めるユリだが、剣を持つ相手に説得が通じるかは疑問に思えた。
「グレン! さっきリリィを助けに行くかって聞いてたよね!
 もちろん私は行くよ! ここで逃げたら女がすたる!」
熱血直情馬鹿のユリの辞書に、逃走の2文字は無い。
闘争の文字があるのみである。
幼女化してもそれは変わらない。
ユリの右手に、魔法で呼び出されたデッキブラシが現れる。
今のユリに使える、数少ない魔法のうちの一つだ。
「それじゃあいっくよー! 敵陣一番乗りはわたしだーっ!!」
ひらりとデッキブラシに飛び乗ったユリは、館に向けてブラシを急加速させる。
位置的に、ちょうど館から出てきたアドラスの正面だ。
「とっつげきぃぃぃぃぃぃl!!!!」
アドラスが突撃を避ければ、ユリは窓ガラスをぶち破って館に侵入するだろう。

37 名前:ミク ◆sto7CTKDkA [sage] 投稿日:2010/07/22(木) 16:42:55 0
>29 >31
「騒がしくなってきたわね」
館の中を歩きながら、ミクはユリの周辺の会話を聞いていた。
十分大蜘蛛は注意をひきつけたわけだ。
「お疲れ様。 あなたは本当に役に立ってくれたわ」
ミクは大蜘蛛に巻き付いていた糸を操り、締め上げる。
今頃はバラバラになった大蜘蛛が、外の人間に目撃されているだろう。
なにかあったら、あの時助けてあげたのにと恩を売ることもできるわけだ。
死んだ後まで役立つとは、よくできた蜘蛛ではないか!

ただ、歩きながらも館内に警備の人員がいないことが、ミクは気がかりだった。
外に警備員がいるのだから、館の中にも配置していなければおかしいはずなのに。
考えられる可能性は2つある。
1つは館の主人が底抜けの間抜けであること。
もう一つは…
そこまで考えて、ミクは歩みを止めた。
少女が1人、ミクには理解できないほど豪華な扉の中に入っていくのを見たからだ。

ミクは扉の前まで行くと、中の会話が聞き取れないものかと耳を澄ませた。
何も聞えなかった。
ため息をついてミクは1本糸を取り出すと、片側の端を自分の耳に当て、反対側を扉に当てる。
糸を使って内部の会話を盗聴しようというわけだ。
2方向で盗聴というわけにはいかないのでユリたちの会話は聞こえなくなるが、これは仕方がない。

>「だが、あの蜘蛛は君達の覚醒を促す良いきっかけとなってくれるだろう…
>誰であれ役に立てばそれでよい」
聞えてきたのは、糸を通して聞いたことのある総裁の声だった。
いきなり当りを引いたというわけだ。
>「と、友達と学内探検をしてて、たまたまこの場所に・・・・・・・きゃあああ?!」
会話を聞いていたミクは、リリィの悲鳴に眉をひそめる。
中で何が起こったか、盗み聞きしているだけのミクにはわからなかったのだ。
それでも、リリィを助けるために中に入ったりはしない。
事の顛末を聞きとろうとミクは盗聴を続ける。

>「何なりとご命令を。――――我が君」
生気のない口調で全てを話すリリィの声を聴いて、ミクは事情を理解した。
つまり護衛は配置されていないのではなく、必要ではなかったのだ。
ミクは声を立てずに楽しそうに笑うと、扉を叩いて来訪を告げ、返事も待たずに中に入る。
「夜分お楽しみの所失礼しますわ。ベッドフォード総裁。
 私はこの学園の新入生、初音美紅と申します。
 今後ともよろしく」
リリィを跪かせたベッドフォードに笑いかけ、頭はさげずに本題に入る。
「実は私、友達のユリがあなたの事を調べようとしているのを止めに来ましたの。
 あの子ったら止めても聞かなくて…
 もちろん総裁に、調べられて困るような後ろ暗いことなどありませんわよね?
 総裁の周りを調べていた者が姿を消すなんて、根も葉もない噂話ですもの」
そんな事は露ほどにも思っていなかったが、ミクはそう言った。

「それで私、総裁にお願いしたいことがありますの。
 好奇心から出たいたずらでも、罪は罪。
 でも、私の友達のユリを見逃して下さるなら、私が総裁のお手伝いをさせていただきますわ。
 ユリ以外の者達はご自由にしていただいて結構ですから」
むろんユリ以外の者には、操られているリリィも含まれる。
リリィを助けに部屋に入らなかったのはそのためだ。
「よろしければ先ほど言われていた【覚醒】の事、もう少し詳しくお聞きしてもよろしいかしら。
 それとも、私の助力なんて必要ないと思っていらっしゃるのかしら?」

38 名前:エンカ ◆jWBUJ7IJ6Y [sage] 投稿日:2010/07/22(木) 23:07:25 0
>32>33>36
> 「よくわかんないけどさっきまでいたはずの場所に居ないんだ」
> 斯く斯く云々と一匹で応援を呼んだこと等を説明するグレン
「なるほど、丸々牛々っつーわけっすね。」
何故か理解したエンカ。
> 「リリィなら―――」
> つい今さっき戻ってきた風を装って木陰から飛び出る
「あんたはユーリ!リリィ達と一緒だったのかよ!?」
木陰から飛び出たユーリにエンカが聞いた。
> 「屋敷の中に運び込まれた………」
「なんだってーっ!?そいつはめっちゃまずいっすよーっ!」
> 「私、これ以上怖いのはもう嫌っ、無理っ!!」
> と言葉を絞り出して走り去ってしまった
「あ!コラッ!逃げてんじゃねーっすよーっ!」

> 「そんな事どうでもいい!毒の治療をさせろ!この新薬を試させるんだ!!」
「あ…あぁ、そうっすよ!早くメイション達を元気に…」
> 「毒は完全に治るだろうが・・・・・・幼女になる!
>  死ぬかTSか選べ!!」
「ハァ!?」
保険医の言葉に当惑するエンカ。エンカには彼女が冗談でそれを言っているようには見えなかった。
> 「まあ当然返してもらいに行くよね?」
「リリィは助けにいくっす!でも、メイションをほっといたらこの保険医に幼女にされちまうじゃねーかっ!」
しかし、メイションを性転換させられる心配はすぐに無くなった。その薬を使ったのがユリだったからだ。

> 血だまりに倒れたセラエノを見て、ユリは慌てて駆け寄り抱き起す。
> 「せんせーい! 怪我人の治療お願いします!
>  体中血まみれのちょー重傷患者です!!!」
「気をつけろユリ!魔法による攻撃かもしれねぇぞ!」
とエンカ。
> 「そういえばなんでエンカここにいるの?
>  私達総裁の館に行くなんて言ってたっけ?」
「知らなかったのか?メイションが食堂の掲示板に書き込んでたんだぜ?」
> 館から剣を抜いたアドラスが向ってきたのだ。
> 呑気に話をしている場合ではない。
> 「えーとえーと、私達忘れ物を取りに来て森に迷い込んで、ここで蜘蛛に襲われて…って人の話聞いてるー!?」
「ユリ!その剣士はおめぇに任せるぜーっ!俺は他の奴らの相手をする!うぉおおおおっ!」
そう言って突撃したエンカは、警備の三人組にあっさり捕まってしまった。

39 名前:ベッドフォード ◆k4Jcxtcjwo [sage] 投稿日:2010/07/23(金) 10:27:41 O
>>31

>「なんなりとご命令を…」

「ならば君達の仲間にテレパシーで伝えるのだ
私に捕まり、身の危険を感じていると、な」

>彼の足元に膝まずき靴にキスをした

老人は腰を屈め靴に口づけをするリリィの頬をねっとりとそして優しく右手で撫でる
「怒りこそ最大の要因になるやもしれん
ふふ 良い子だ…私の為に働いておくれ 可愛い雛型よ……」
彼はゆっくりと立ち上がり 意味ありげな笑みを浮かべひざまずくリリィを見下ろしていた

>「夜分お楽しみの所失礼しますわ私は新入生の…」

突然現れた謎の少女は簡単に自己紹介を済ませると早々に本題へと話を進ませた

>「それで私 総裁にお願いしたい事が」
>「宜しければ【覚醒】の事」

招かれざる来訪者を前にしても老人は眉一つ動かさず言葉を発する

「良かろう…君の好きにするが良い…」
ミクの願いはいとも簡単に許された
だが、老人はただし…と言葉を繋げる
「見た所、君は只の生徒ではないな…?
是非君の正体を教えて貰いたい
さすれば【覚醒】が何であるか全てを話そう」


>>36
>「とっつげきぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!!!」

自分の目の前にはブラシに跨がり 猛スピードで突っ込んでくる謎の少女
剣を抜いてはいるもののこの速度は正直恐ろしい
剣が耐えられるか その前に自分にぶつかれば大怪我では済まない などとアドラスは色々な想像を頭の中を駆け巡らせていた
「避けるべきか…避けぬべきか…………」
アドラスは剣を構えたまま立ちすくむ
もし屋敷に突撃を許せば隊長である己の責任 なにより制裁が恐ろしかった

「屋敷へはネズミ一匹通さぬぞぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!!!!!」

剣に風魔法を付着させ横に薙ぎ払うとユリをブラシから振り落とさんばかりの強風が轟いた


40 名前:レイヴン ◆70VgGM3HY6 [sage] 投稿日:2010/07/23(金) 22:15:56 0
>5
大蜘蛛は空中に複雑に張られた巣を駆け回り、糸で捕らえようと仕掛けてくる。
鴉は刀で糸を斬り、桜花は『音』で糸を避ける。何度か繰り返されたそれはしかし、
大蜘蛛の唐突な行動の変化で途切れる事になった。

>一瞬の溜めの後、大きい投網のように大量の糸をレイヴンに向けて吐き出したのだ。
なんと、今までは点での攻撃しかしてこなかった大蜘蛛が面での攻撃に切り替えてきたのだ。
所詮は獣と蜘蛛を侮っていた鴉はそれに対処しきれず下半身に引っ掛けてしまう。
蜘蛛の糸は極めて高い剛性と柔性と言う相反する特性を両立した物質であり、
生半可な膂力では引き千切る事などできはしない。

>そして、蜘蛛自身は巨体に似合わぬ素早さで、空中から桜花に向かって飛びかかる。
そして鴉の動きを封じ込めたのを確認してから、大蜘蛛は桜花へと飛び掛った。
前に出るべく足を踏み出そうとするが……糸が邪魔で動けない。
しかも大蜘蛛は後部と巣を糸で繋いでおり、初撃を避けたからと言って
脅威が去るわけでもない。己の無力さを呪い、無意識に刀を握る手に力が入ってしまう。

……瞬間、全身に流れる『何か』が急速に失われ右手に、もっと正確に言えば
刀に流れ込んでいく感覚に襲われた。せめて刀を投げる程度の妨害を、と
振り上げた手はしかし刀を手放す事はなく、代わりに青白い光のようなものが
刀身から放たれて大蜘蛛を一撃で両断してしまった!
驚いて刀を見ると……うっすらと先ほどの青白い光を放っており、
手をかざすと何故か熱を感じた。しめたとばかりに足に絡みついた糸をその熱で焼き切り、
自由を取り戻す鴉。だが蜘蛛に苦戦している間に、事態は大きく動いていたのだった。


>19>21>28
流石に騒ぎすぎたのか、屋敷から警備兵が犬と共に現れたのだ。
警備兵はそれぞれが棒のようなものを持っている。一見貧弱に見えるが、
仮にもベッドフォード財団所属、その棒もただの警棒ではあるまい。
人死にを出さずに済ませるのは無理かも知れない、と気を入れ直した矢先

>「静まりなさい、何事ですか!(中略)
>まずはそれの排除を!」
頭の中に声が響く。その声は昼に、自分の服の記憶を見せてくれた
自称神様、セラエノのものだった。
「普通ならいいタイミングなんだが……どうも今回は外れらしい」

>「こうなれば蜘蛛であれ誰であれ叩き斬ってくれよう…
>この私、アドラス・ヴィエーダーが相手をしてくれるっ!」
屋敷の窓をぶち破って、警備兵の統括らしき男が登場したのだ。
律儀に門から出てきてくれたならまだ違うのだろうが、今回に限って言えば
こちらの言い分はまず通らないだろう。
「参ったね、こいつは……面倒ばっかり増えやがる」

41 名前:レイヴン ◆70VgGM3HY6 [sage] 投稿日:2010/07/23(金) 22:16:43 0
>32>36>38-39
>「リリィなら―――」
>「屋敷の中に運び込まれた………」
>「私、これ以上怖いのはもう嫌っ、無理っ!!」
リリィと一緒に屋敷に潜入すると言って姿を消したユーリだったが、
衝撃的な内容を伝えた後怯えたように走り去っていった。
……鴉はその言動に強い違和感を感じた。入学式の時も出発直前であった時も、
大よそこの程度で怯むようなノミの心臓じゃないと思い込んでいたからだ。

普段なら『女らしい一面もあるんだな』で済ませるのだが、この非常事態で
鴉の警戒心や猜疑心も大きく高まっており、ユーリのそれを演技ではないかと
思ってしまったのだ。もっとも、内容を偽っていると言う可能性は考えていない。
ウソをついてユーリが得をする理由が鴉には思いつかないからだ。

>「とっつげきぃぃぃぃぃぃl!!!!」
そんな事を考えている内に、酷い副作用つきの解毒薬でょぅι゛ょと化したユリが
警備兵統括アドラスに向かってデッキブラシに跨りながら突撃していた。
ユリの実力は疑う余地がないが、今は薬のせいで子供になってしまっている。
そんな状態で全力を出せるかと言うとまず無理だろう……急激なサイズの縮小から来る
リーチの差や、未発達な筋肉を無理やり酷使する事になればいつもより限界も早いだろう。

>「ユリ!その剣士はおめぇに任せるぜーっ!俺は他の奴らの相手をする!うぉおおおおっ!」
助太刀しようと思った矢先、エンカも同じように突撃したようだが……
あっさりと警備兵に取り押さえられてしまった。あのままだとエンカが人質に取られる恐れがあると
踏んだ鴉は、ユリへと向けかけた足をエンカの方へと向け走り出す。
「おいっ、そこのあんた! ここは俺たちで抑える!
 あんたは屋敷に連れてかれたリリィを探してくれ!」
ミクの張り巡らせた糸の罠を知らない鴉は、エンカにリリィ捜索を依頼するのだった。

42 名前:リリィ ◆jntvk4zYjI [sage] 投稿日:2010/07/24(土) 14:00:47 0
>39
リリィはテレパシーで、総裁に捕まり、身の危険を感じている旨を外の仲間達に連絡した。

>「怒りこそ最大の要因になるやもしれん 
>ふふ 良い子だ…私の為に働いておくれ 可愛い雛型よ……」 
「お心のままに」
意味ありげな笑みを浮かべるベッドフォードを、まだ涙の跡が残る顔のままじっと見上げる。
「仲間達には連絡を済ませました。次のご指示を」

>「夜分お楽しみの所失礼しますわ。ベッドフォード総裁。 
>突然現れた謎の少女。
リリィはふらふらと立ち上がり、ベッドフォードの盾になれる位置に身を置いた。
 
謎の少女は「ミク」と名乗った。
彼女は、ユリを助けるのを条件に、総裁に助力を申し出た。
つまり、それ以外の人間はどうなってもいい、という事だ。
>「良かろう…君の好きにするが良い…」 
>「見た所、君は只の生徒ではないな…? 
>是非君の正体を教えて貰いたい 
>さすれば【覚醒】が何であるか全てを話そう」 

リリィはどんな話を耳にしても微動だにしなかった。
ただガラス玉のような目で、じっとミクを見つめているだけだ。

新たな命令を受けない限り、リリィはベッドフォードの傍を離れないだろう。

43 名前:ルイーズ ◆jntvk4zYjI [sage レイヴンさん復帰オメ!また楽しもう!レス楽しみ&頼りにしてるよ!] 投稿日:2010/07/24(土) 14:10:09 0
「・・・・・・何の騒ぎにゃ、これは」
草葉の陰、もとい、草木の蔭から騒ぎを見物している三毛猫獣人。
そう、先程セラエノ達のデート(?)を邪魔したルイーズだ。
彼女はファンブルマンを捜す(という名目の散歩)をしている最中、とんでもないモノを目撃してしまったのだった。

「あ、ファンブルマン先生みっけ」
こちらも偶然による発見なので、ファンブルマンを見ることが出来た。
「セラエノたんは、えらいことになってるニャー。
 でもこんな騒ぎに巻き込まれたら、下手したら退学ニャー。どうしたもんかニャー」
>「そんな事どうでもいい!毒の治療をさせろ!この新薬を試させるんだ!!」 
「まあ、先生方が同行しているから、さほど心配は要らないニャー」
ルイーズは楽観的だった。

>38
>「ユリ!その剣士はおめぇに任せるぜーっ!俺は他の奴らの相手をする!うぉおおおおっ!」 
>そう言って突撃したエンカは、警備の三人組にあっさり捕まってしまった。 
>「ヒャッハー!こいつもさっきの小娘と同じ地下牢に放り込んで・・・・・・ぐはっ?!」
べしゃっと水っぽい音がして、警備達の顔に何かがぶつかった。
>「何だこれは?」
>「腐った果物だ!ちくしょう、前が見えん!」
エンカを拘束していた警備の手が緩んだ。

「・・・・・・腐ってないウホ。ちょっと熟れすぎただけウホ」
草陰に隠れているのは、両腕だけを野生のゴリラに変化させた三毛猫獣人だった。
(別にグレンとキャラが被るから変化させたわけではない。多分)
「全く、世話がやける連中ウホホ」

>鴉は、ユリへと向けかけた足をエンカの方へと向け走り出す。 
>「おいっ、そこのあんた! ここは俺たちで抑える! 
> あんたは屋敷に連れてかれたリリィを探してくれ!」 
「同行者が毒に犯されてたら身動き出来な―――― ウホッいい男」
1人突っ込みを入れていたルイーズは、倒れている男性陣の姿に気づいたようだ。

「勿体無いけど仕方ないウホ。後できっちり借りは返してもらうッホ」
ルイーズは、なけなしの毒消しを取り出し、比較的狙いやすい位置にいるメイションにぶつけた。
何回か呼吸すれば、体の痺れは取れるはずである。

【リリィ:仲間達にベッドフォードに捕まり身の危険を感じている旨をテレパシーで連絡。
 ベッドフォードの盾代わりに傍に待機中。指示待ち】
【ルイーズ:高みの見物。エンカを拘束していた警備員に腐った果物で目潰し攻撃。
 メイションに吸引式の毒消しをぶつける】

44 名前:グレンSUフリード ◆cOOmSNbyw6 [sage] 投稿日:2010/07/25(日) 02:45:00 P
>34>36>38>41>43
>「ユリ!その剣士はおめぇに任せるぜーっ!俺は他の奴らの相手をする!うぉおおおおっ!」
あっという間に捕まるエンカ
「まあ子供一人が大人3人を相手にすればそうなるよね・・・・常識的に考えて」
(にゃお・・・ん)
>「ヒャッハー!こいつもさっきの小娘と同じ地下牢に放り込んで・・・・・・ぐはっ?!」
べしゃっと水っぽい音がして、警備達の顔に何かがぶつかった。
>「何だこれは?」
>「腐った果物だ!ちくしょう、前が見えん!」
>「全く、世話がやける連中ウホホ」
「猫とゴリラのヒューザー?」
そういうグレンは背中から羽根が生えている
>「おいっ、そこのあんた! ここは俺たちで抑える!
  あんたは屋敷に連れてかれたリリィを探してくれ!」
「達ってことは僕も入るわけだね」
(にゃあん)
「そこの警備員A僕が相手になるよ!」
(なにゃあ!)
>「最初に言っておくが私は一種の特異体質でね一切の攻撃魔法が通じないのだ。君たち魔法使いは私を傷つけることは出来ない」
とはったりか本当か不明なセリフを吐く警備員A
後ろのほうでBとCがおい聞いてないぞとかどうせはったりだろ?とか言っているが聞かなかったことにしよう
「僕・・・・魔法使いじゃないんだけど」
だがそもそもグレンは魔法を使えなかった
>「えっ」
「えっ」
>「なにそれこわい」
だいたい魔法使いは魔法が使える人であって魔法しか使えない人ではない
ぶっちゃけ魔法が効かないなら殴ればいいのである
「フィー坊が言ってた・・・・魔法が効かないなら殴ればいいって
 という訳で食らえ!ショルダーブーメラン!!」
(にゃあ・・・にゃん にゃあ!にゃなあ!!)
背中に生えた翼をぶっちぎって警備員Aに投げつけるグレン
ぶっちゃけ翼は飾りでしか無いので投げても問題はない
>「ぜんぜんショルダーじゃないじゃないですか!やだぁ!!」
というセリフを言い残す警備員A
別に死んでないけどさ


保険医がセラエノを治療している
世にも珍しいショタコンを治療するロリコンの図である
「少女はいいぞぉ・・・女同士だから一緒にお風呂入り放題だぁ」
「なんか洗脳っぽい事し始めた!?」
(にゃあ!?)
あっと驚くグレン
どっちにしても成長するので賞味期限が短いのは同じである
「安心しろ私は天才だ!」



45 名前:桜花 [sage 代理投稿gt;gt;!26-127] 投稿日:2010/07/25(日) 05:32:50 0
(不快だ…実に不愉快な音がする) 
地面に倒れている桜花はぼんやりとした頭でそんな事を考えていた 
桜花は先ほどの大蜘蛛から空からの奇襲を受け、地面に倒れているのだ 
右脇腹から血が滲んでいる。致命的な致命傷ではないが消して浅くもないだろう 
(ドラムの音が大きすぎる…なんだこの演奏は… 
まるで物語になっていない…素人の演奏以下だ…) 
どうやら周りで行われている戦闘の音が今の桜花には演奏に聞こえるようだ 
(違う…そこはソロパートじゃない… 
そこは周りの音と協調性を… 
あぁ…違う違う。何もかもが違うよ) 
そんな桜花の頭をいっぱつで覚醒させる音が響く 

>リリィはテレパシーで、総裁に捕まり、身の危険を感じている旨を外の仲間達に連絡した。 

ガバッと頭を上げる桜花 
(うぐっ…!!痛い…なんだ?何が起きているんだ? 
いや、それ以前にリリィさんが捕まった?なぜ?どうして?) 
戦闘を遠目で見ながら必死に頭の中を整理する 
(私は…そうだ、蜘蛛からの奇襲を避け切れずに吹き飛ばされたんだ 
この傷はその時の物か 
リリィさんは確か屋敷に侵入して…クソ、落ち着け私、私に焦るなどと言う事はない 
落ち着いて素数を数えるんだ…) 
みんなも慌てた時は素数を数えて落ち着こう  

46 名前:桜花 [sage] 投稿日:2010/07/25(日) 05:34:22 0


(…よし、落ち着いた。 
この状況をどうにか切り抜けるんだ。 
幸い、剣を握っている人物はまだ私が覚醒している事に気付いていない。 
…コンバスは無事か?…うん、幸い弦は切れていないようだな。なら私だけでも屋敷に侵入する事は可能だ。) 
寝そべりながら桜花はコントラバスの弦に指を掛ける 
(私の曲は…地面を走る) 
桜花が指だけで弦を弾くと違う場所で音がなる 
遠かったり近かったり、様々な場所から楽器の音が奏でられる 
一瞬、剣を持った人物の注意が逸れた。 
脱兎の如く駆け出す桜花 
屋敷に飛び込み、息を整える 
「私の声は風に流れる」 
屋敷前で戦闘をしている人物全員に桜花の声が風に乗り聞こえる事だろう 
「みんな済まない。私はリリィさんが心配だ。 
私は一足先に屋敷に入らせてもらう。」 
全員にメッセージを送ると屋敷の探索を始める桜花 
(ちっ…思ったより広いな…反響音が聞き取りづらい) 
とりあえず屋敷の中を走り始める 
(どこだ?何処にいるんだ?) 


47 名前:ユリ ◆sto7CTKDkA [sage] 投稿日:2010/07/25(日) 11:35:57 0
>38-46
時はユリが館に向かって突撃する少し前の、エンカとの会話だ。
>「知らなかったのか?メイションが食堂の掲示板に書き込んでたんだぜ?」
「えーっ!? あの書き込みを読んでここに来たの!?
 はっやーい! やっぱりエンカもメイションと会いたかったんだね!」
あんな夜中に、わざわざ食堂前の掲示板を見に行くとは思っていなかったユリは驚いた。
見るにしても早くて明日の朝だろうと思っていたのだ。
初対面でも親族は親族。
エンカとメイションの互いを思う心に感動するユリだった。
これで再び、時間軸はユリの突撃時に戻る。

>「ユリ!その剣士はおめぇに任せるぜーっ!俺は他の奴らの相手をする!うぉおおおおっ!」
「まかされたーっ!!」
止まる時のことなど考えない猛スピードで、ユリはアドラスに迫る。
>「屋敷へはネズミ一匹通さぬぞぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!!!!!」
迎え撃つアドラスは、その突撃を避けなかった。
「そんなところで剣なんか振ったって当らな…わぁぁぁぁぁ!?」
魔法の知識に疎いユリが魔法剣の効果など知っているはずもなく。
突然の突風に耐える間もなくデッキブラシから振り落とされる。
乗せていた主人を失ったブラシは大きく軌道を上に変え、館の上部に当たると光となって消えてしまった。
「いったーい!!…うぐぐぐ…」
一方振り落とされたユリも無事では済まない。
身体が小さくなっている分、衝撃にも弱くなっているのだ。
思いっきり背中を打ちつけてうめくユリに、リリィからのテレパシーが聞こえてきた。
それは、総裁に捕まって身の危険を感じている。 という内容のものだった。

「リリィ!?」
そのテレパシーを聞いて、ユリはがばっと跳ね起きた。
直情的で熱血系の性格の人間は弱点も多い。
しかし、時に感情の高ぶりをエネルギーに変え、普段の数倍の力を発揮したりもする。
今のユリがまさにそれだ。
友達を助けようとする思いが、力に変わるのだ。

>「おいっ、そこのあんた! ここは俺たちで抑える!
> あんたは屋敷に連れてかれたリリィを探してくれ!」
>「みんな済まない。私はリリィさんが心配だ。
>私は一足先に屋敷に入らせてもらう。」
「リリィが大ピンチだよエンカ!
 こっちは任されてるから、エンカも桜花と一緒にリリィを助けに行って!!
 はぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!!!」
エンカと桜花にリリィを任せ、ユリが雄叫びと共に地面を踏みしめると、小さな爆発と共にその体が光を帯びる。
俗にパワー爆発と呼ばれる、一時的に自身の戦闘能力を高める技だ。

「ボンガロ兄さん直伝! サニーゲイザー!!!
 リリィを助けるのを邪魔したいなら!! 私達の屍を越えていけぇぇぇぇ!!!!!!」
ユリが拳を地面に叩きつけて気を流し込むと、間欠泉のようにアドラスの足元から光となった気が噴出した。
まるで小さな太陽が出現したかのように、夜の森が明るく照らし出される。
技の威力は申し分ないが、欠点はユリがまったくペース配分というものを考えていない事だろう。
気の噴出が止まると同時に、ユリはものも言わずに前のめりにばったり倒れてしまったのだから。

48 名前:ミク ◆sto7CTKDkA [sage] 投稿日:2010/07/25(日) 13:12:36 0
>39 >42
>「良かろう…君の好きにするが良い…」
「総裁の御好意に感謝しますわ」
>だが、老人はただし…と言葉を繋げる
>「見た所、君は只の生徒ではないな…?
>是非君の正体を教えて貰いたい
>さすれば【覚醒】が何であるか全てを話そう」
正体を知りたいとの老人の言葉に、ミクは笑ってスカートを両手でつまむ。
勘の良いものならすぐ気づくだろうし、いつまでも隠せるとは思っていなかったから。
「ふふ…正体などとそのようなたいしたものではありませんわ。
 私は只の、この学園に巣を張るバケモノですのに」
ミクが少しスカートを持ち上げると、その中から2本の足が新たに伸びてくる。
人の足ではない。 うごめくそれは、黄色と黒の巨大な蜘蛛の足だ。
蜘蛛の足はしばらく動いた後、ミクが下ろしたスカートに隠れて見えなくなる。
「普段は人形遣いを称していますけど、これが私の本当の姿ですわ。
 ご満足いただけたかしら?」

外の騒動が大きくなり、館の中にいても外で戦闘がおきているのがわかるようになってきた。
ミクは、張っていた探知用の糸が切れるのを感じ取る。
館の中のものの可能性もあるが、今は侵入を許したと考えるのが妥当な線だろう。
リリィのテレパシーを聞いていたミクは、真っ先に乗り込んできそうなユリの状況を知ろうと糸を手繰る。
盗聴用の糸は、何も伝えてこなかった。
ユリが急激に動いたために糸が千切れたに違いない。

ミクは少し迷ってから、罠に使おうと館の中に張っていた硬質の糸を緩める。
ユリが飛び込んできたのなら、まず確実に罠に突っ込むだろう。
ここでそうなるのはまずい。
「館に侵入してきた者がいるようですわ。
 総裁にお聞きしたいのですけれど、彼らをここに迎え入れて【覚醒】について聞かせるおつもりかしら。
 それとも、彼らに気かせる必要は無いとお考えかしら?
 聞かれたくないのでしたら、今、私だけに【覚醒】についてお話し下さいな。
 その後で侵入者を追い出してまいりますから」
そう言いながらもミクは、侵入してきた者達はすぐにでもこの部屋を突き止めてくるだろうと思っていた。
選択肢は多くても、選ぶ時間はあまり残されてはいない。

49 名前:エンカ ◆jWBUJ7IJ6Y [sage] 投稿日:2010/07/25(日) 19:24:27 0
>41>43>44>46>47
> >「ヒャッハー!こいつもさっきの小娘と同じ地下牢に放り込んで・・・・・・ぐはっ?!」
> エンカを拘束していた警備の手が緩んだ。
> 「・・・・・・腐ってないウホ。ちょっと熟れすぎただけウホ」
「その声はキンタローかっ!?」
違う、ルイーズである。そもそもエンカが名付けた名前を呼ぶにしても、タマタローの間違いである。
> 「おいっ、そこのあんた! ここは俺たちで抑える!
>  あんたは屋敷に連れてかれたリリィを探してくれ!」
「誰だか知らないっすけど!言われなくてもよーっ!!」
警備員Aはグレンが相手をして倒した。
残っているのはルイーズに果物をぶつけられた警備員Bと、
彼が離してしまったエンカを再び拘束しようとしている警備員Cである。
「言っとくけどよぉ、俺一人だけでもてめぇら三人を倒せるんだぜ〜?」
>「小僧が偉そうなことを…ってなんじゃこりゃーっ!?」
エンカに触れた警備員Cが悲鳴をあげて彼から離れた。
>「狂ってるのかてめぇ!?体に毒蜘蛛をくっつけとくなんてよー!?」
「それほどでもねぇぜ?俺は毒蜘蛛の抗体が体に既にできてるからよぉ。」
警備員Cは間もなく小さな毒蜘蛛に噛まれ、体がしびれて動けなくなった。

> 「みんな済まない。私はリリィさんが心配だ。
> 私は一足先に屋敷に入らせてもらう。」
「オウカの声が聞こえるぜーっ!?」
> 「リリィが大ピンチだよエンカ!
>  こっちは任されてるから、エンカも桜花と一緒にリリィを助けに行って!!
>  はぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!!!」
ユリがエンカにそう言った。
「俺にもリリィのテレパシーが聞こえたぜ!だから、そうしてぇけどよぉ…」
エンカの前には警備員Bが立ちふさがっている。
「なんでてめぇは俺に触れてたのに平気なんだよ!?まさかてめぇも毒の抗体を持ってんのかーっ!?」
>「違う!しかし、問題ないんだぜ!」
警備員Bは上着を脱ぎ、マッチョムキムキの上半身をむきだしにした。
>「俺はハードニングという魔法が使える!肉体を鋼のように硬化させる魔法だ!
> だから俺には蜘蛛の牙が刺さらないんだぜ!」
「きたねぇっすよ!俺だってチクチク刺されるのを我慢してるのによーっ!」

その頃、メイションもルイーズの投げた毒消しにより体の痺れが取れていた。
>>「リリィお姉ちゃんが…危ない…!?」
彼にもリリィとオウカのメッセージが届いたようである。

50 名前:グラディス ◆e2mxb8LNqk [sage] 投稿日:2010/07/25(日) 22:32:34 0
「気分悪ぃ気分悪ぃ気分悪ぃ――……」
揺れることすらしなくなった人狼がブツブツと呟いてた。
保健医は女子の方を優先しているし、警備員が出てきて治療も満足に出来ない。
そもそも毛むくじゃらのグラディスは一見すればどちらからも敵に見えてしまう。

とどのつまり、グラディスの毒消しの優先度は低いのだ。
「あうあうあうあ――あうあうあうあ――あ――あ――……」
頭痛がするし吐き気もする、このグラディスはあんまり立てない状態である。
意識がしっかりしてるあたりはマシだろうか。

>42
「あ――……んあ……?」
突如、脳裏にリリィの声が響き渡る。
テレパシーだろうそれは、リリィの今の状況を伝えてくる。
「げ、げげ……不味いなー……」
状況の悪さを悟っても、グラディスは未だ毒が回っている状況。
普通ならこのままだろう。普通なら。


しかしグラディスは普通でない部類に入る。
人狼という種族は毒に対する抵抗は人並みだが、無理をするということに関しては中々融通が利く。
焦点はどこか微妙に合ってなく、毛の奥の肌はきっと青ざめてる。
不調でふらふらとしていて、しかし全てを飲み込み我慢して立ち上がった!
「ここで倒れたら……よー!
 男として!カッコがつかねーぜー!っぷ……」
しかし片手をきちんと口に添えてある。

>49
>「俺はハードニングという魔法が使える!肉体を鋼のように硬化させる魔法だ!
> だから俺には蜘蛛の牙が刺さらないんだぜ!」
>「きたねぇっすよ!俺だってチクチク刺されるのを我慢してるのによーっ!」
「んじゃあ、思いっきりぶつけたらどうなんだ。ちょいと実践して教えてくれやー」
グラディスはふらりとエンカの横に現れ、倒れるように右の掌を地面に叩きつけた。
すると、警備員Bの足元から小さな氷柱が生成される。
先は丸くしてあり、触っても凍傷以外には怪我することもないだろう。
「悪いと一個、最悪二個とも潰れるかもしんない。気をつけろよー?」
もう一度掌を叩きつけると、氷柱が一気に肥大化して―――


警備員Bの股間に、棒なり玉なり潰れそうなぐらいの勢いで突き刺さった。

51 名前:セラエノ ◆LGeruanYjI [sage] 投稿日:2010/07/25(日) 23:29:10 0
      ピシッと割れる音がした。
  血は沸き立つように沸騰し、ブクブクと泡だてる。
         そして血に赤黒く染まった本からそれは溢れ出す。
      覚醒の顕在として!


血溜まりの中、朦朧としたセラエノは見た。
血に染まった自分を抱き起こし叫ぶ幼女を。
その姿を見て、ただ思う。
…凛々しく美しい、と。

血が足りない。
大量に吹き出た血のお陰で思考が纏まらない。
だからこそ、セラエノは周囲の状況が全て見えていた。
いや、流れ込んできたのだ。

ユリが凄まじい勢いで突撃し、窓を破って現れたアドラスが強風を巻き起こし迎撃する。
その結果、叩き落されるユリと主人を失ったまま館の上部にぶつかり光となって消える箒。
直後、桜花の走らせた音と交錯するようにアドラスの足ものから吹き上がる閃光。
力尽き倒れるユリ。
その隙に館に駆け込む桜花。

一方、エンカは館に向かうも三人の男にあっさりと捕まっている。
何処からか飛んで来た腐った果実に怯む男たち。
颯爽と現れ自らの羽根を毟りぶつけるグレン。
エンカの思いがけない反撃と、倒れていたはずのグラディスが立ち上がり、氷柱を形成しえげつない攻撃を繰り出している。

館から流れ出るテレパシーはリリィの危機的状況を伝えていた。

様々な情景が流れ込むが、セラエノは反応しない。
反応できるだけの血が足りないのだ。

そこへ現れた保険医が治療と共に怪しげな言葉を紡ぎだした。
朦朧とし鈍った思考には効果的な洗脳といえるだろう。
言葉と共に先ほどの幼女化したユリの姿がフラッシュバックしてきたのだった。

そして…

52 名前:セラエノ ◆LGeruanYjI [sage] 投稿日:2010/07/25(日) 23:30:51 0
ピシッと割れる音がした。
音の源はセラエノの鏡の仮面。
位置的には左目の上を縦断するように細い皹が入っていた。
「お、おお、お…ぶふっ!!!」
むくりと身を起こすとうめき声と共に盛大に鼻血を噴出した。
両膝両手をつきき血を垂れ流しながら呟いた。
「うふふ、高くなった血圧もこれで正常ね…!」
滴り血の池を形成し、大事そうに持ってきた何冊かの本は赤黒く染まっている。
血は沸き立つように沸騰し、ブクブクと泡だてる。
「よ…幼女!幼女は…いい!!」
呟きは徐々に大きくなり、最後には叫びとなって辺りに響く!
保険医の洗脳により、ショタ+加虐趣味にロリ+レズの趣味が加算されたのだった!
先ほどの鼻血はユリの姿に興奮しすぎて噴出したのは今更言うまでもないだろう。

そして血に赤黒く染まった本からそれは溢れ出す。
覚醒の顕在として!

血に染まった本から溢れ出したのは茨!
その茨からは全く魔力は感じられない。
つまり、召喚されたものでもなく、魔法によって作られたものでもない。
純然たる茨ではあるが、その量たるや最早津波。
剣で、魔法で防ぐ事もできるが、あまりの量の多さに追いつかないのだ。

茨の濁流に飲み込まれた犬や護衛たちがたちどころに倒れていく。
この茨の棘に触れたものは即座に深い眠りに落ちてしまうのだから。

際限なく溢れ出る茨だがエンカは避けて進むのはセラエノの意識がエンカを友人だと認めているからだろう。
そして倒れたユリも茨に埋め尽くされる事はない。
その理由は…わざわざ書く必要あるか?
洗脳によってロリレズ属性になったのだが、ショタSMな趣味も忘れたわけではない。
だからメイションは勿論、グレンにも茨が近づかないのは最早本能としか言いようがない。
そしてもう一人。
セラエノの横にいる保険医にも茨は近づく事はない。
同類だからなのだろうね、うん。
なんにしてもここに小さなオトモダチには危険すぎる神が誕生したのかもしれない。
男児にとっても女児にとっても。

辺り一帯を埋め尽くした茨はそれでも勢いが収まらず、ベッドフォード邸にも這い進んでいく。
館全体を飲み込むかのように壁一面に張り付いていく。
ベッドフォード、リリィ、ミクのいる部屋の窓が打ち破られた。
窓から雪崩れ込む茨が三人に襲い掛かる。

【治療と洗脳を受けショタSM+ロリレズの変態に目覚める。
本から茨が溢れ出し、幼女、美少年、エンカ、保険医以外の全てに襲い掛かる。
●茨の棘に触れると強力な眠りに落ちます。
●這いながら伸びるので宙に浮くか、美少年、美少女、エンカ、保険医の周りにいれば安全。
●茨からは魔法力を全く感じず、自然の茨と同じ強度です。
●但し際限なく溢れ出るのでキリがない】

53 名前:ルイーズ ◆jntvk4zYjI [sage] 投稿日:2010/07/25(日) 23:42:07 0
>「猫とゴリラのヒューザー?」 
「ウホッ?!ばれた?!」
がーん、とショックを受けるルイーズ。
>「その声はキンタローかっ!?」 
「違う、ニャンタローだウホ」
全員不正解である。
「あっ!間違えた。・・・・・・・あーあー。私タダノ通リスガリアルウホ。私カワイイ森ノ動物ウホね」
どう見てもかわいくないです本当に(ry

背中に生えた翼をぶっちぎって警備員Aに投げつけるグレン 
「ちぎった?!しかも投げた羽が元の場所に戻ったウホッ!!」
いろんな意味で凄すぎである。

「・・・・・・はっ、驚いてる場合じゃないウホ。次はあっちの男ウホッ」
いろいろ度肝を抜かれつつも、ルイーズは闇に乗じてグラディスの方へと移動した。
ちなみに、ルイーズにはリリィからのテレパシーは届いていない。
(リリィとは面識が無いため、仲間ではなく屋敷の関係者として認識されたのだろう)

「保険医ー。洗脳よりも回復のが重要ウホー。
 というより、ライバル増やしてどーするウホー」
ルイーズはこっそり突っ込んだ。
まあ、仮に大声で言っても保険医が聞き入れるとは思えないのだが。

「ふふーん。『お返しは三倍返しで』っと。これでいいウホッ!」
ルイーズは毒消しのカプセルにそう書き込むと、早速グラディスの背中めがけて投げつけた。
毒消しの中身はメイションのものと同じだが、今のグラディスは、氷魔法発動の真っ最中である。
魔法の呪文は集うには集中力が必要なのだが――――
「まー何とかなるウホ。このくらいで気が散るとかありえないウホッ」
ルイーズは、やっぱり楽観的だった。

「そこのあんちゃん、そう、あなたウホ」
ルイーズはほれほれ、とレイヴンに合図を送った。
「さっさと戦わないと、おいしいところ全部持ってかれるウホ。
 ほら、そこでかあいい幼女が力尽きてるウホ。
 ここは幼女をかばいつつ、男らしく凛々しく戦うところウホ!」
ルイーズは小声でレイヴンをけしかけている。
「さあ、薔薇のように気高く咲いて美しく散るウホ!!
 私は森の動物だから、ここで一部始終を見てるウホ!」
すっかり存在がバレているというのに、本人だけはまだ隠れてやり過ごせると思っているようだ。
「・・・・・グッドラック♪」

だがそんなお茶目な発破も、セラエノ覚醒までのほんの余興に過ぎなかった!

54 名前:ベッドフォード ◇k4Jcxtcjwo の代理 [sage] 投稿日:2010/07/26(月) 22:11:35 0
>>42>>48>>52

>意味ありげな笑みを浮かべるベッドフォードを、まだ涙の跡が残る顔のままじっと見上げる。
「仲間達には連絡を済ませました。次のご指示を」

老人は先程と変わらぬ笑みを浮かべリリィの涙の跡をゆっくりと指先で撫でる
頬から目元へと中指を這わせ リリィの目を覗き込んだ
「共に雛型達を待つとしよう…彼らから私を守る盾となっておくれ…」

>「ふふ…正体など大した物ではありませんわ……
ご満足頂けましたかしら?」

ミクの正体を老人は始めから知っていたのだろうか リリィから視線を変えうごめく蜘蛛の足を驚くそぶり見せず、じっと見つめている
「やはりな…君も私の正体に気づいているのかな…」
老人はどこか納得したように笑い リリィの頭を優しく撫でるとまた喧騒が響く大窓の方へと体を向けた

>「館に侵入してきた者がいるようですわ……」

「いや、雛型達は全員この部屋に迎え入れるつもりだよ…
無論、まだ【覚醒】について知らせるつもりはないがね…
まあ君にだけ話す時間は十分にあるだろう
見ていたまえ面白い余興が始まるぞ…」

突如 大窓のガラスを突き破り茨達が室内へと雪崩混む
瞬く間に部屋は茨に侵食されて行き 高価な調度品は茨が絡みその原形をなしえなくなっていく

「予期せぬ事態ではあるが…この力恐らく…」
握られた杖の魔力か 茨は老人の足元を避けていった
「蜘蛛よ…では覚醒について話すとしよう………」

55 名前:ベッドフォード ◇k4Jcxtcjwo の代理 [sage] 投稿日:2010/07/26(月) 22:13:10 0
>>47
「ふっふっふ……ははははっ!!!!我が剣技の前にはあらゆる手段も児戯に等しいっ!!!!」

見事に技が決まり突風にブラシから吹き飛ばされたユリは地面に疼くまり たたき付けられた衝撃の痛みに耐えていた
そんな彼女をざまあみろと言わんばかりに不敵な笑みを浮かべたアドラスは剣を握りしめ 一歩一歩ユリの方へと歩みよる

「ふふふ…死ぬ前に言いたい事はあるか娘?」

先程とは打って変わり少し冷静さを取り戻したのか落ち着いた声で台詞で決めるべく剣を突き差そうとした途端ユリは突然跳ね起き 剣から逃れた

「ほお…よく逃げ回るネズミだ…
まあいい、私の最強の剣技を味わい そして…」
確かに出で立ちと台詞回しは 見られる程度には決まっていた
落ち着きを取り戻し余裕を見せるアドラスの辞書から失敗の文字は既に消えさっている

>「ボンガロ兄さん直伝!!!サニーゲイザー!!!!!」

「のわぁぁあああぁぁぁぁあ!!!!!!!!!!!!」
光の気がまるで滝のようにアドラスの体を直撃した
帽子はどこかへと吹き飛び ネクタイは半分が千切れ糊の利いた軍服はもはや見る陰も無い

「この…小娘が……やってくれる………
馬鹿なガキだ…魔力を使い果たして倒れ…」
足を引きずってユリの方へ進み捨て台詞を吐く余力はあったのか 言い終えるとアドラスもユリの隣で急に倒れた

56 名前:グレンSUフリード ◆cOOmSNbyw6 [sage] 投稿日:2010/07/26(月) 23:38:53 P
>52>53>55
>「さあ、薔薇のように気高く咲いて美しく散るウホ!!
 私は森の動物だから、ここで一部始終を見てるウホ!」
「僕も森の動物なんだけど・・・・」
(にゃお・・・・・)
だが今は飼い猫である

「後で復活してきたらややこしいから縄でしばっちゃおうよ」
(なにゃあ)
と倒した敵をどう処理するか提案するグレン
自分でやればいいと思うのだが残念ながらグレンは縄を持っていない

「よし!」
といって医療カバンから荒縄を取り出しユリに近づく保険医
セラエノを洗脳することに成功し満足したようである
お前はいつも縄を完備しているのか!?
まあ患者が暴れないようにするためのものだろう・・・・たぶん
保険医の目は血走り息は荒い
誰か突っ込んでやれ縛るのはユリじゃなくってアドラスだって

ワン!ワン!
だがそれを阻止せんと立ちはだかる犬A犬B
「おい!誰かこの犬達を何とかしてくれたまえ!!」
なんども言うようだが保険医に戦闘能力はない

「僕は猫だよ・・・・・犬に勝てるわけ無いでしょ」
(にゃお・・・・・にゃ)
さっきの人間のほうが犬より数倍強いのに尻込みをするグレン
相手は犬の姿をした悪魔ブラックドックとか地獄の番犬ケルベロスではない
だがそれでも猫である以上相性的に犬は苦手なのだ
果たして誰がピンチを救うのか?

ちなみにフリードはこの騒がしい中爆睡中である
故にグレンと交代することはないだろう

「取り敢えず言っておく!僕は微妙に強い!!」
(にゃあ!にゃおん!!)
そう言って決めポーズをするも指が微妙に震えている
だがまだフリードの目覚めの時ではない

57 名前: ◆jntvk4zYjI [sage] 投稿日:2010/07/27(火) 20:31:30 0
>50
警備員Bの股間からキーン!と金属的な音が響いた。

「勝ったウホ」
「ああ」

一人二役で勝利宣言をするルイーズ。
確かに、ハードニングという魔法は、肉体を鋼のように硬くする。
しかし、それだけなのだ。

>「よし!」 
>といって医療カバンから荒縄を取り出しユリに近づく保険医 
>保険医の目は血走り息は荒い。
「あら〜ん♥」 
顔を隠して照れたルイーズだが、指と指の間からしっかりユリと保険医を観察している。
>誰か突っ込んでやれ縛るのはユリじゃなくってアドラスだって 
「常識?なにそれおいしいの?」 

>ワン!ワン! 
>だがそれを阻止せんと立ちはだかる犬A犬B 
「ちっ、戻ってきたウホッ。
 おのれワンコめ、胸熱で萌え萌えの展開に水を差すとは・・・・・・許せんウホッ!
 そこの猫少年、行け!かかれっ!」
>「僕は猫だよ・・・・・犬に勝てるわけ無いでしょ」 
「さっきの人間の方がよっぽど強かったウホッ!大丈夫、君ならきっとやれるウホッ!!」

>「取り敢えず言っておく!僕は微妙に強い!!」 
「手が震えてるウホッ。あーあ、かわいそう〜。
 誰かぁ〜グレンがピンチよ〜。おねがぁい、助けてあげて〜(棒読み)」
そう言いつつ、ルイーズはレイヴンと鋼を代わる代わるじーっと凝視している。
グレンをけしかけておきながら、自分は戦う気ゼロのルイーズだった。

>46
屋敷の中に潜入した桜花の前に、甲冑の鎧が立ちはだかった。
しかし、鎧の中から人の気配は無い。もしかしたら、ゴーストが何かが憑依して操っているのかもしれない。
甲冑はぎしぎし音を立てながら、手に持っていた大斧を振り上げた。
このままでは、桜花の体は無残に両断されてしまうだろう。

セラエノ覚醒まで、残りあと僅かである。

58 名前:リリィ ◆jntvk4zYjI [sage] 投稿日:2010/07/27(火) 21:03:19 0
>見ていたまえ面白い余興が始まるぞ…」
彫像のようにベッドフォードの傍に控えていたリリィが、ぴくりと身じろぎした。
>突如 大窓のガラスを突き破り茨達が室内へと雪崩混む 
>瞬く間に部屋は茨に侵食されて行き 高価な調度品は茨が絡みその原形をなしえなくなっていく 

>茨は立ち尽くすリリィにも襲い掛かり巻きついたが、リリィが眠りに落ちる事はなかった。
>なぜならば棘が刺さった場所はその豊満な胸だったから。 
茨はリリィの服を引き裂き、彼女の体から何かを剥ぎ取る。
だがそこまでだった。
茨は興味を失ったようにリリィを解放すると、潮が引くようにリリィから離れていった。
後には、糸の切れた人形のように床に転がる少女が残された。

>「蜘蛛よ…では覚醒について話すとしよう………」 
リリィは床に手足を投げ出したまま、ゆっくりとミクの方に顔を向けた。
そして言った。
「その前に・・・・・・あなたは、20年前からの異変についてどうお考えですか?」

乱れた前髪のせいで、リリィの表情は全く見えない。
だが妙にクリアな声でミクには聞こえただろう。
リリィはゆっくりと唇を湿らせると、けだるい声で続ける。
「20年前から現れ始めた・・・・・・天才と呼ばれる存在のことですよ」

59 名前:エンカとメイション◇jWBUJ7IJ6Y の代理 [sage] 投稿日:2010/07/27(火) 21:56:13 0
>50
> 「悪いと一個、最悪二個とも潰れるかもしんない。気をつけろよー?」
> もう一度掌を叩きつけると、氷柱が一気に肥大化して―――
>「あおぉぉぉぉぉぉぉっ!?」
警備員Bがそう叫んだ通り、彼は顔を青くして、股間を抑えつつ倒れた。
何がどうなったかは具体的に説明したくはない。
「ひえ〜、キレてるぜグラディス!」
とエンカ。

>52
茨の濁流が始まったのはそのすぐ後だった。
「くそっ!なんだ!?どうなっちまってんだよーっ!?」
茨が自分を避けているとは思いもよらないエンカはその場から動けなくなってしまった。
「さっきの警備員も茨に巻き込まれちまったみてぇだ!だが、なんで俺達は平気なんだ!?
 それがわからねぇとよーっ!うかつに身動きがとれねぇぜ!」
グラディスにそう話しかけるエンカ。
エンカの側にいる限り、グラディスも茨に巻き込まれる心配はない。

さらに少しすると、メイションが茨の濁流を突っ切ってエンカ達の前に現れた。
「メイション!おめぇ、どうやって茨を避けてきたんだ!?」
>>「わからないけど、茨の方が僕を避けてるんだ。」
メイションはエンカとグラディス達もまた茨に避けられていることに気づいた。
>>「たぶんお兄ちゃん達も茨を突っ切れると思う。けど、一体これはどういうことだろう?」
「わからねぇ!わからねぇけど、もしかしたら俺達にとって都合が良いかもなーっ!
 このまま茨と一緒に屋敷の中に突っ込むぜーっ!
 だが、メイション!おめぇは茨の濁流をさかのぼって正体を確かめてくれねぇか!?
 俺達に害意があるような奴なら、例え今は安全だとしても、後で困るかもしれねぇからよーっ!」
>>「OK、いいよ。ところで、お兄ちゃんの名前…」
メイションはエンカの名前を聞こうとしたが、エンカはすぐに茨の向こうへと見えなくなってしまった。
屋敷に向かって走っていったのだ。
>>「とにかく、この茨をなんとかしなくちゃ。そうしなければならないとしたら。」
メイションは茨の濁流をさかのぼっていった。

【エンカ:屋敷に向かって移動】
【メイション:茨の上流に向かって移動】



60 名前:レイヴン ◇70VgGM3HY6 [sage] 投稿日:2010/07/27(火) 23:10:52 0
>42>47>49-50>52-53>55-56
エンカを押さえ付けている警備兵を打ち倒そうと一歩を踏み出した鴉だったが
目に飛び込んできた光景に足を止めてしまった……


>「悪いと一個、最悪二個とも潰れるかもしんない。気をつけろよー?」
グラディスの魔法が炸裂したのだ……男にとっては最悪の形で。
思わず竦み上がってしまった鴉を責める事は、同じ男ならば出来ないはずだ……。
「ちょとそれsyレならんしょ……」
「グラディス! そんな見る方も痛い攻撃するなよ!?
 見ろ、すっかり芋虫と化してるじゃねぇか!」
ついつい敵であるはずの警備兵の容態を心配してしまうのだった。

「……って、んな事言ってる場合じゃない!」


>リリィはテレパシーで、総裁に捕まり、身の危険を感じている旨を外の仲間達に連絡した。
先ほど伝わったリリィからのテレパシー……鴉はきな臭さを感じていた。
きちんとした人となりを知らないとは言え、危険な状態にもかかわらず冷静に
状況を伝える事が出来るような性格を、リリィはしてなかったはずだからだ。

服の記憶を手繰っても、森の中でテレパシーを受け取った時もかなりうろたえていたのだ。
それよりも直接的な危機に晒されていながら、先のテレパシーからは焦りとか怯えと言った
感情がまるで感じられない……そして総裁に捕まったという部分。
「……ワナ、か。十中八九、いや確実に、だな……。
 まぁいいさ、どの道避けて通れないなら食い破るまで。
 鴉の狡賢さを見せてやろうじゃないか」

61 名前:レイヴン ◇70VgGM3HY6 [sage] 投稿日:2010/07/27(火) 23:13:32 0
>気の噴出が止まると同時に、ユリはものも言わずに前のめりにばったり倒れてしまったのだから。
>足を引きずってユリの方へ進み捨て台詞を吐く余力はあったのか 言い終えるとアドラスもユリの隣で急に倒れた
>そして倒れたユリも茨に埋め尽くされる事はない。
>「そこのあんちゃん、そう、あなたウホ」
突如太陽が現れたかのように森が明るくなる。
その光に、闇に慣れきっていた鴉の目は眩んでしまう。
数秒後光が収まった時、そこには大技に全力を注ぎ込んで倒れてしまったユリがいた。
大技の直撃を受けたアドラスも、捨て台詞を言うだけ言って倒れてしまう。
「……配分を間違えたのか。元の姿なら何とかなったんだろうが……
 参ったな、こんな時に……相討ちなんて、今時流行らないぜ?
 (*´ω `*)こんな顔並みに、な……」
そしてこのあるさま。

エンカの方はグラディスの援護もあり問題ないだろうと考え、ユリを抱き起こそうとして……
いきなり茨の津波が襲い掛かってきた!が、何故かユリとたまたま近くにいた鴉を避けて行く。
様子を伺うと、メイションやエンカ、そして先ほどからフリーダムに暴れまわる保険医以外は
例外なく茨に襲われており、しかも茨に触れたものは強い眠りに落ちているようだ。
「どういう原理か、誰の仕業か、そんなのはどうでもいいな」

そんな事を呟きつつユリを背負ったところで謎の生物に声をかけられた……
鴉は不覚にも数秒思考停止状態に陥ってしまったが、続く言葉を聞いて苦笑する。
「……悪いが俺にはあんたみたいな知り合いはいないぞ……同類でもない。
 んで、おいしいところだって? そんなもん、欲しい奴がもってけばいい。
 報酬が出るわけでも減算される訳でもないんだから。……んじゃ何故助けるかって?
 ……善意に理由が要るなんて初めて聞くな」
ルイーズの発破は時化ってて使い物にならなかった!
そして相変わらず自覚なしにイタイ台詞を吐く鴉。多分これが素なのだろう。


>誰か突っ込んでやれ縛るのはユリじゃなくってアドラスだって
天の声に導かれたか、縄を持ち目を血走らせながらユリに近づく
不埒な保険医にツッコミを入れる恥知らずな鴉がいた!
「……ふんじばるならそこでぶっ倒れてる警備隊長を頼む。
 触りたくないって? ならその縄は不要だな」

保険医に冷ややかに接する鴉。恩を忘れたわけじゃないが、いつ自分も
この保険医の歪んだ性癖の矛先を向けられるか分かったもんじゃない。
自分にあまり拘りを持ってるわけじゃないが、どうも生理的にダメらしい……
腹立ち紛れに犬AとBを茨に蹴り飛ばしてやった。これで少しは大人しくなってくれればいいのだが。


「……さて、屋敷に向かうとするか。
 グラディスは……立てないか。鋼、シルヴァ嬢、悪いがグラディスを頼む」

【レイヴン:ユリを背負い、エンカと桜花の後に続く様に屋敷に向かう】

62 名前:ミク ◇sto7CTKDkA代理 [sage] 投稿日:2010/07/28(水) 20:35:11 0
>52 >54 >58
>「いや、雛型達は全員この部屋に迎え入れるつもりだよ…(中略)
>見ていたまえ面白い余興が始まるぞ…」
「余興…ですの?」
総裁の言葉の意図をミクが考える前に、余興が押し寄せてきた。
それは、セラエノが作り出した大量の茨の波だった。

糸が風を切る音と共に、窓からなだれこむ茨の先陣が切り払われた。
だが大量の茨はその程度では止まらない。
瞬く間に壁も床も天井も、茨に覆われて見えなくなっていく。
>「予期せぬ事態ではあるが…この力恐らく…」
「魔法の茨ではありませんから、これはおそらくセラエノの奇跡でしょうね。
 御存じかしら? 新入生の彼女、奇跡が使える神でしてよ」
大量の茨に囲まれた部屋の中、平然と立ち続けるベッドフォードに、ミクは空中から話しかける。
別に空を飛んでいるわけではない。
茨が防ぎきれないのを見て瞬時に糸を張り巡らし、室内を自身の巣と変えたのだ。

壁や床に付いた糸が伸びる茨に切られても、すぐに新たな糸が茨の上にまで張り巡らされ。
糸同士は絡み合ってより強固な糸となり。
結果茨と様々な太さの蜘蛛糸のため、絢爛豪華だった室内は無残にも廃屋のように様変わりしている。

>「蜘蛛よ…では覚醒について話すとしよう………」
>「その前に・・・・・・あなたは、20年前からの異変についてどうお考えですか?」
思わぬ方向から話しかけられて、ミクは怪訝そうにリリィの顔を見た。
操り人形には何もできないだろうと考えて、リリィの事は意識もしていなかったのだ。
リリィの顔は、前髪に隠れて見えはしない。
>「20年前から現れ始めた・・・・・・天才と呼ばれる存在のことですよ」
最初ミクは、ベッドフォードがリリィの口を借りて言わせているのかと考えた。
次に、これも【覚醒】の一種であるのかと考えた。
どちらにしても、原因を知る方法をミクは持たない。
ミクは寮の自室の近くで同じ問題について語り合っていた、赤服、黒服、白服の3人組の事を思い出した。
あの3人はそれぞれ違う考えを持っていたが、白服の娘の考えは自分の考えに近かった。
あの娘はなんと言っていただろうか?

「ふふ…そうね…。 今までは考えられなかった事ですものね…。
 あなたたちのように集められるほどに天才がいる、なんてことは。
 私の考えでは、誰かが天才を求めたから天才が増えたのよ。
 時代か、人々か、あるいは神と呼ばれるようなもっと大きな意志かが天才を求めたの」
白服の少女は「だから期待に応えられるようにお勉強がんばろーね」で話を閉じていた。
しかしミクの考えは、その先は違うものだった。

「人の世は昔から問題に直面する時、それを乗り越える能力を持った人物を排出するもの。
 そして能力を持たない者は、嵐の中の船のように能力を持つ者に翻弄されるもの。
 私のように道と時間を踏み外さない限りは…ね。
 あなた達が集められたのも、案外近い将来に起きる事に備えるためかもしれないわよ?
 自分が持つ者の側にいることを喜んで、日々精進なさいな。
 能力を持つ者は、持たない者の全てを手に入れることが出来るのだから。
 総裁もそうお考えでしょう?」
弱肉強食。それがミクの考えの根底にあった。
支配し支配され、奪い奪われ、結びついては離れていく。
人の世は同じ事の繰り返しだとミクは思っている。
今まで見てきたように、これからも。何があっても。

63 名前:ユリ ◇sto7CTKDkA [sage] 投稿日:2010/07/28(水) 22:07:36 0
>61
「うゃ〜…頭がガンガンする…ちょー頭痛い…」
ユリはレイヴンの背中で気絶から目を覚ました。
目を覚ましたと言っても気絶から回復しただけで、本調子からは程遠い。
目の前で揺れるレイヴンの背中をしばらく見ていたユリは、おもむろにギュッとしがみついた。
「お兄ちゃんの背中…暖かいよ…」
小さかった頃、兄に背負われた事を思い出しているのだ。
回復まではしばらくかかりそうだが、幼女に抱きつかれても特殊な趣味以外の人はあまり嬉しくないかもしれない。


64 名前:グラディス ◆e2mxb8LNqk [sage] 投稿日:2010/07/29(木) 00:25:59 0
>52>53>59>60
>「あおぉぉぉぉぉぉぉっ!?」
>警備員Bがそう叫んだ通り、彼は顔を青くして、股間を抑えつつ倒れた。
無常且つ残忍な魔法に、一部の味方(主に男)からもブーイングが巻き起こる。
>「ひえ〜、キレてるぜグラディス!」
>「グラディス! そんな見る方も痛い攻撃するなよ!?
> 見ろ、すっかり芋虫と化してるじゃねぇか!」
「うっせー、威力調整も何も出来るもんじゃねーんだよー……ぢくしょー気持ぢわるっ」
手を突いたままぜぇはぁぜぇはぁ息を荒げて、吐き気をどうにか抑えようと試みるグラディス。

そんな必死なグラディスを無視して、茨が洪水と化していく。
しゅるしゅると気分の悪い音が周りを
>「さっきの警備員も茨に巻き込まれちまったみてぇだ!だが、なんで俺達は平気なんだ!?
> それがわからねぇとよーっ!うかつに身動きがとれねぇぜ!」
「俺に聞くなよー……ぜぇ、はぁ、こーいうことには、ぜぇ、疎いんだ。聞くんだったら他にしてくれー……」
半分投げやり気味に、回る視界との苦闘中の毛むくじゃらは答える。

「……お?」
が、突然息をしていると頭痛がぐんぐん引いていく。
吐き気も気だるさもみるみるうちに解消していってるのが手に取るようにわかるのだ。
辺りを見れば、『お返しは三倍返しで』などと書かれたカプセルが転がっていた。
「おー、誰だか知らないけどありがてー……あーでもまだ収まりきらねーなー」
しかし持ち主が誰か知らないので、カプセルを拾っておくことにする。あとで誰かに確認すればいい。

>「メイション!おめぇ、どうやって茨を避けてきたんだ!?」
>>「わからないけど、茨の方が僕を避けてるんだ。」
「あん?……おー、本当だ。エンカとメイションを中心に茨がいないなー」
>>「たぶんお兄ちゃん達も茨を突っ切れると思う。けど、一体これはどういうことだろう?」
>「わからねぇ!わからねぇけど、もしかしたら俺達にとって都合が良いかもなーっ!
> このまま茨と一緒に屋敷の中に突っ込むぜーっ!
> だが、メイション!おめぇは茨の濁流をさかのぼって正体を確かめてくれねぇか!?
> 俺達に害意があるような奴なら、例え今は安全だとしても、後で困るかもしれねぇからよーっ!」
そう言い残すと、エンカは屋敷へと走っていく。

しかし、エンカは気付いていない。グラディスは茨の動きと関連していないことに。
茨がエンカとメイションを再び隔てたとき、グラディスはエンカ側に残る。
そして危うく茨に触れそうになりつつも、エンカを追う。
「とっとっとー!?おいおいエンカー!俺は茨に敵視されてらー!?
 ってか痛いトゲに毛がぶちぶち抜かれて痛ぇー!に、人間モードぉー!」
背伸びする演出無しのゴキゴキという音を鳴らして、犬耳の青年へと戻るグラディス。


「そーいやエンカ。気付かんかったけどよー、いつ来たんだ?それになんでこんなとこに。
 俺らはベッドフォード財団に探りを入れようとしてきたんだけどさー……おっと?ストップ」
屋敷の玄関の前に来たところで、グラディスはエンカの歩みを止める。
「んー……桜花の雰囲気っつーか、においっつーか、そんなのがこっちからする。
 んで向こうに三人くらいが集まってる。多分総裁とリリアーナと、残りの一人が兵士か秘書かなんか?
 どうするどっちいく?俺一人じゃ行動できねーからさー」
グラディスはエンカの選択に従うつもりである。

65 名前:桜花 [sage] 投稿日:2010/07/29(木) 19:39:24 0
表は大分カオスな事になっている事はいざ知らず桜花は屋敷を走り回っている 
時々よろけるのはきっと脇腹の傷から血が流れているので若干貧血なのだろう 
(全く…私がこんなになって走り回っているんだ 
リリィさんを見つけたらお説教だな) 
考えている事とは裏腹に口元に笑みを浮かべる桜花 
その時 

>屋敷の中に潜入した桜花の前に、甲冑の鎧が立ちはだかった。 

「………!」 
慌ててブレーキをかける桜花 
(敵!?でも…) 

>しかし、鎧の中から人の気配は無い。もしかしたら、ゴーストが何かが憑依して操っているのかもしれない。 
甲冑はぎしぎし音を立てながら、手に持っていた大斧を振り上げた。 

「……!」 
慌てて身をかわす桜花 
(危なかった…) 
しかし、音があるのなら桜花にとっては先ほどの大蜘蛛と大差はない 
「残念だったな、ゴースト。 
生身?のままなら音が聞こえず私も苦戦をしたかもしれないが 
貴方の敗因は音の鳴る物を身につけていた事だ!」 
かんぱつ入れず繰り出される斧の斬撃をするすると避ける桜花 
「単調…!そんな曲では聞き手は楽しめない」 
拳を握りしめ、鎧の腹を見据える、そして 


メゴッ!!!! 


鈍く潰れたような音が屋敷に響く 
桜花は拳を振り抜いた姿のまま鎧の方を見ている 
鎧の方はまるでハンマーでも叩きつけられたように腹部の装甲が大きく凹んでいる 
「痩身と侮ったな… 
音楽家の握力なら私でもゆうに五トン… 
は言い過ぎだな…えっと……二トン位なら出せる!(キリッ」 

66 名前:グレンSUフリード ◆cOOmSNbyw6 [sage] 投稿日:2010/07/29(木) 19:58:42 P
>61
>「……ふんじばるならそこでぶっ倒れてる警備隊長を頼む。
  触りたくないって? ならその縄は不要だな」
「そう言われてしぶしぶと全く好みではない男を亀甲縛りにする私であった」
とナレーターの真似をしつつふんじばる保険医
こんなに出ずっぱりなのに彼女には名前の設定はないのである
ついでに小さなカードにこう書いて貼っておく
”この者幼女暴行実行犯”

「あ、蹴った」
茨に絡め取られるワンコx2を手を振って見送るグレン
「さらば犬っころ二度と会うことはあるまにゅい」
どうやら口調変換薬が切れてきたようであるこのままだと猫語に戻ってしまうだろう

>「……さて、屋敷に向かうとするか。
 グラディスは……立てないか。鋼、シルヴァ嬢、悪いがグラディスを頼む」
「よし!お屋敷のにょこり物を漁りにのりこみゅにゅ!!」
どうやらな行が発音できなくなってきたようだ

保険医は
「他人の家に勝手に入り込むのは犯罪ではないのかね?」
と突っ込んむがそんなことは今は重要ではない
「誘拐犯のアジトに入り込んで人質を解放にゃら問題にゃいにゅ」
物は言いようである

そして保険医は
「さて・・・・毒の治療が残ってるものはもう居ないな・・・では私は帰らせてもらう」
彼女が保険医室に戻ったらまだゴーストの教師と犬が格闘中だったりするがそれはまた別の話である
>64
>「そーいやエンカ。気付かんかったけどよー、いつ来たんだ?それになんでこんなとこに。
 俺らはベッドフォード財団に探りを入れようとしてきたんだけどさー……おっと?ストップ」
「にゃにゃ〜な」
(僕はおいしいものが食べられると思って参加したんだよ)
どうやら完全に薬が切れたようである

そしてグレンは屋敷の”食堂に向かって”全力で走りだした
「にゃあん」
(この匂いはヒラメのムニエル)
やはりこの猫食べることしか考えていない

グレンの中のフリードは途中で少し目が覚めた
目の前にはなんか怪しげな触手があった
「え?茨の触手?・・・・・夢ですねこれは起きないと」
夢だと思ってまた目を閉じた


67 名前:セラエノ ◆LGeruanYjI [sage] 投稿日:2010/07/29(木) 22:48:57 0
ベッドフォード邸から少し離れた場所。
溢れ出る茨の中心にセラエノは立っていた。
血に塗れまだらになった黄色い衣。
一筋のヒビの入った鏡の仮面。
その姿であって背筋を伸ばし手を広げ、その前には血に染まった本が浮いている。
開かれたページが微かに光、そこから溢れ出るように茨が這い出るのだ。

半トランス状態で茨を生み出していたセラエノが不意に意識を戻す。
その原因は茨の濁流を遡ってきたメイションの存在。
トランス状態より美少年への反応の方が強かったのだ!

「あら、あなた、メイションね?はじめまして。私はセラエノ・プレアデス。
エンカの友人で一緒にあなたを探しに来たのよ。」
(く〜〜、写真より実物の方がかわいい!なにこの白さ?ああ、そんな赤い瞳で見詰めないで〜)
にっこりと微笑みながら握手の為に手を差し出すが、その手は微かに震え、声も微妙に裏返っていた。
手早く自己紹介と事情説明と共に美少年の手を握ろうという下心は隠しきれなかったようだった。

「無事に会えてよかったわ。エンカはどこへ?」
軽く鼻血を吹きそうなのを堪えながらエンカを探す。
先ほどの言葉からエンカは毒に倒れたメイションを見つけたはずだが一緒にいない。
本来の目的を果たし(更にリリィとユリを食べたふうでもなく大満足)たのでここに特に用はないのだが。
とはいえ、たとえエンカがここに居たとしてもこのまま帰ることも出来ないだろう。

「まあいいわ。これだけの騒ぎを起こしたのだし、このままにはしておけないから、一緒に行きましょ。」
胸元で開いていた本をパタンと閉じ、足元に散らばる魔道書や辞書と一緒に抱えると握手した手を離す事無くそのまま館に向かって歩き出す。
館に向かいまっすぐ歩くが茨はその歩を阻む事はできない。
セラエノの身体は茨をすり抜けていくのだ。

本を閉じた瞬間、全ての茨は動きを止めその存在感が薄くなった。
半透明になり触れる事も出来ない、まるでゴーストのように薄い姿だけを残す事になる。
もう暫くすれば茨自体完全に消えてしまうが、それまでは既に刺された者の眠りの効果は続くだろう。
セラエノの胸に抱えられる茨を生み出した本。
それは魔道書でもなんでもない。
魔力のひとかけらすら感じられぬ単なる絵本。
血に染まってはいるがその題名は何とか読めるだろう【眠り姫】と。

半透明の茨でびっしりと覆われた館。
その玄関に到着すると、よく通り声で発する。
「夜分遅く騒ぎを起こしてすいません。
私は学園新入生のセラエノ・プレアデス!
御挨拶と事情説明に参りました。どなたか取次ぎをお願いできますか?」

茨に覆われた外観と違い、玄関から中はそれほど茨の浸食を受けていない。
だがそれでもセラエノの言葉に応えるものは居なかった。
変りに、メゴッ!!!! という激突音が館の奥から響いて来た。

その音に首をかしげながらも、それでもまだメイションの手は離さないで居るセラエノだった。

68 名前:ルイーズ ◆jntvk4zYjI [sage] 投稿日:2010/07/30(金) 07:52:05 0
「な、何だこれウホ?!」
突然の茨の濁流発生に驚くルイーズ。
茨に飲み込まれた人々は次々深い眠りについていく。
特定の人間だけは茨の方接触を避けているようだが、ルイーズは対象外のようだ。
茨は容赦なくルイーズに迫る!
だがしかーし!
「・・・・・・ 変 身 !」
ルイーズの体がまばゆく光ると、次の瞬間には巨大なウサギに変身していた。
「うひゃひゃひゃ!これで茨なんかへっちゃら!――――ぬおー?!」
確かにウサギは茨と相性がいい。
天敵から逃れるため、ウサギが茨の茂みに逃げ込むほどに。

確かに、ウサギに変身したルイーズに眠りの呪いが降りかかることは無い。
だが茨の奔流には勝てず、そのままどんぶらこ、どんぶらこと押し流されていった。

茨の上をゴムマリのように弾みながら流されていくルイーズ。
だがその移動は、始まりと同じく唐突に終わりを告げる。
「うひょー!!!」
突然茨が半透明になった。
ルイーズの体は茨をすり抜け、地面へと叩きつけられた。
「あいたたたた・・・・・・。ああ、ひどい目にあった」
ルイーズが身を起こすが、既に騒ぎを起こした生徒達の姿は無い。
保険医やファンブルマンもどこかへ行ってしまったようだ。
「んー。・・・・・・ファンブルマン先生も消えたし、これ以上巻き込まれる前に逃げるかー」
まだ当事者の自覚が無いルイーズだった。
遠くに見える屋敷は半透明の茨に絡みつかれ、静かに佇んでいる。
「あーどうするかー」
他の生徒たちを見捨てることも出来ず、さりとて面倒事に首を突っ込むのも躊躇われた。
ルイーズは心を決めかねたまま、その場で行ったり来たりしている。

>65
>鎧の方はまるでハンマーでも叩きつけられたように腹部の装甲が大きく凹んでいる  
>「痩身と侮ったな…  
>音楽家の握力なら私でもゆうに五トン…  
>は言い過ぎだな…えっと……二トン位なら出せる!(キリッ」
  
目の部分が物言いたげにちかちか点滅を繰り返している。
だがやがて光は薄れ、鎧はバラバラになって床に転がった。
黒いもやのようなものが鎧から離れていったが、はたして桜花は気づいただろうか?

やがて桜花の耳に、仲間たちの足音が届くだろう。

69 名前:エンカとメイション◇jWBUJ7IJ6Y [sage] 投稿日:2010/07/30(金) 13:50:18 0
>64
> 茨がエンカとメイションを再び隔てたとき、グラディスはエンカ側に残る。
> 「とっとっとー!?おいおいエンカー!俺は茨に敵視されてらー!?
>  ってか痛いトゲに毛がぶちぶち抜かれて痛ぇー!に、人間モードぉー!」
「おん?」
エンカも、エンカは茨に避けられているが、グラディスはそうでないことに気づいた。
「この茨は何かを見て攻撃する対象を選んでるみたいっすね。」
エンカはこの茨が遠距離自動操縦タイプの魔法だと考えた。
しかし、何をトリガーにして攻撃対象を選んでいるのかはわからなかった。
> 「そーいやエンカ。気付かんかったけどよー、いつ来たんだ?それになんでこんなとこに。
>  俺らはベッドフォード財団に探りを入れようとしてきたんだけどさー……おっと?ストップ」
> 屋敷の玄関の前に来たところで、グラディスはエンカの歩みを止める。
「俺はお前らがそんな事考えなけりゃここに来る予定じゃなかったんすけどねーっ。」
> 「んー……桜花の雰囲気っつーか、においっつーか、そんなのがこっちからする。
>  んで向こうに三人くらいが集まってる。多分総裁とリリィと、残りの一人が兵士か秘書かなんか?
>  どうするどっちいく?俺一人じゃ行動できねーからさー」
> グラディスはエンカの選択に従うつもりである。
「当然リリィの方っす。さっきテレパシーで、危ねぇって言ってたんだからよーっ。」
エンカはリリィの救出を優先するつもりだ。
「それにしても人間の姿でも鼻が効くんだなぁ?お前は本当にグラディスか?
 …悪く思うなよ?俺はさっきから幻覚に振り回されてるんだ。
 いつの間にか本物のグラディスから偽物にすり替わっていて、
 リリィの居ないところに誘導されちゃ困るからよ〜。
 お前だって、俺がいつまでも本当の俺だと思うなよな〜?」

>67
>>「(この人…一体何なんだ…!?)」
セラエノを見たメイションはそう思った。
血に濡れた黄色い衣に鏡の仮面。
マジックミラーという発想のないメイションには、彼女の格好は奇妙にしか見えなかった。
しかし、はっきりとわかっていることが一つある。茨を生み出したのは彼女だということだ。
> 「あら、あなた、メイションね?はじめまして。私はセラエノ・プレアデス。
> エンカの友人で一緒にあなたを探しに来たのよ。」
> にっこりと微笑みながら握手の為に手を差し出すが、その手は微かに震え、声も微妙に裏返っていた。
≫「こんばんはセラエノさん。メイションです。」
メイションは少しよそよそしい態度でセラエノの握手に応えた。
> 「無事に会えてよかったわ。エンカはどこへ?」
≫「?」
無事に会えてよかった、というのはセラエノが自分と会えたことが良かったという意味だろうか?
エンカに会えた事実を認識していないメイションはそう思わざるを得なかった。
≫「あなたがエンカ君と僕を捜しに来たのなら、どうしてエンカ君の居場所を知らないの?」
メイションは状況的に、セラエノをまだ信頼していなかった。
> 「まあいいわ。これだけの騒ぎを起こしたのだし、このままにはしておけないから、一緒に行きましょ。」
セラエノが本を閉じると茨が薄くなっていく。
メイションは、なぜ彼女が茨を出したのか?そして何故今それを消すのか?
その理由を考えながらセラエノと一緒にいた。
> 「夜分遅く騒ぎを起こしてすいません。
> 私は学園新入生のセラエノ・プレアデス!
> 御挨拶と事情説明に参りました。どなたか取次ぎをお願いできますか?」
> 代わりに、メゴッ!!!! という激突音が館の奥から響いて来た。
≫「やっぱり茨はあなたが出していたんだね?それに怪我してるみたいだけど、大丈夫なの?
≫ …それともその体についた血は他の人の血なのかなぁ?
≫ もしもあなたがリリィお姉ちゃんやユリお姉ちゃんに害意があるなら、
≫ 僕はこの場であなたを倒さなくちゃならなくなる。」

70 名前:ベッドフォード ◇k4Jcxtcj [sage] 投稿日:2010/07/31(土) 18:47:00 0
>>62 
>「ご存知かしら?新入生の彼女、奇跡が使える神でしてよ」 

「やはりな この力は少し強力すぎると思ったが神なら合点が行く…では…」 

老人が言葉を続けようとした瞬間 突然リリィが口を開き 彼の話を遮った 
リリィは20年前に現れた天才の事についてをミクへと投げ掛ける 

>「私の考えでは……総裁もそうお考えでしょう?」 

ミクの考察に老人は不敵な笑みを浮かべながら耳を傾ける 
時折、不気味な笑い声を小さく漏らすも話の腰を折る事無く相変わらず静かに窓の外を見続けていた 

「持たざる者は持つ者に支配される…君の言う通り世の理とも言える…… 
では、話の続きだ…まずは彼女の質問から答えよう」 
ゆっくりと後ろを振り向くとリリィの方へと視線を向けた 
「20年前から現れた天才達…全ては私の予想通り、いや正しくは写本の記述を準えていたよ… 
この天才達の発生こそが私の計画の大元を成すのだからな… 
【覚醒】は過程の一部にすぎぬ…」 

「蜘蛛よ お前も【覚醒】の一端を担ってはどうだ? 
ただ戦い、感情を刺激すればよいだけだ…」 

71 名前: ◆jntvk4zYjI [sage] 投稿日:2010/08/01(日) 05:54:03 0
>67
屋敷の扉が、音も無くゆっくりと開いた。

>ALL
セラエノ達が中に足を踏み込んだ途端、屋敷の照明が一斉に落ちた。
すぐに復旧はしたものの、灯りはなぜか、一部の廊下や階段だけを明るく照らしている。
まるでこの先に進めと言っているかのようだ。

もし灯りの指示に従ったなら、迷わず総裁の部屋へとたどり着けるだろう。

72 名前:ベッドフォード ◇k4Jcxtcj [sage] 投稿日:2010/08/01(日) 17:42:33 0
「そう焦ってはいかん…話にはまだ続きはある…」
【覚醒】について中々話さぬベッドフォードに対する苛立つミクの気持ちを見越したかのように老人は諌めるかのような口調で話を核心へと導いていく
「結論から言おう…【覚醒】とは彼等自身が持つ力の限界を縛る制約から目覚めさせる事だ…
無論、幾重もの戦いを経ねば簡単には目覚めぬがね…」
老人はまたミクへ、にやりと不気味に笑いかける
「だが、それだけでは不十分だ…
完全に【覚醒】させるには遺物(アーティファクト)の力を解放し彼等に注がねばならん…
その時、彼等は真に目覚めた己の力に酔いしれる事だろう…」
老人は一端間を置くと手に握られた杖へと視線をやった
握られたその杖からは溢れんばかりの禍々しい魔力が感じられる
「だから、私は彼等天才達の出現をずっと待っていたのだよ
写本の記述に従い下準備を進めてきたのもこの日の為にな……
遺物と漆黒の鎧は【覚醒】と計画には欠かせぬ存在なのだ…
この機会を逃せば、また数百年いや数千年待たねばならぬ…」
灯の明かりに従い、扉の前に辿りついた雛型達
茨に覆われた部屋の中には老人、ミクそしてリリィが彼等を待っていた
「待ちわびたぞ雛型達…心より歓迎しよう…
さあリリィ…彼等にご挨拶なさい」
杖で床を軽く叩くとリリィの体は魔力により締め付けられ、リリィは痛みを堪えられずに嗚咽を漏らした
「ふふふ…さあ怒りに身を任せるのだ雛型達よ…
これは覚醒への一歩だよ…」

73 名前:セラエノ ◆LGeruanYjI [sage] 投稿日:2010/08/01(日) 23:01:38 0
≫ もしもあなたがリリィお姉ちゃんやユリお姉ちゃんに害意があるなら、
≫ 僕はこの場であなたを倒さなくちゃならなくなる。」
メイションの毅然とした言葉にセラエノは握っていた手を離し、糸が切れた人形のように崩れ落ちた。
膝を付き俯き、呼吸は荒く、その足元にはポタポタと血が滴り落ちる。

(はうぅぅぅ!なんてかわいいの!そんな目で見られたら私…!
駄目!これ以上手を繋いでいたら本当にきゅん死にしちゃうかもしれない!)
きゅん死にとは、あまりにも可愛いものを目の当たりにした時、胸がきゅんとなって死んでしまうことを言う。
メイションと手を繋いでいるだけでも鼓動が早鐘のように打っていたのに、ここに来てこの健気な言葉にセラエノの限界に達したのだった。

「はぁ…はぁ…だ、大丈夫よ。
私、ちょっと血圧が高くって、鼻血が出やすい体質なの。
服に付いた血も返り血ではなく鼻血よ。」
流石に、あなたがあまりにも可愛くてハァハァ興奮して鼻血出しちゃった、テヘ!とは言えないセラエノ。

深呼吸を数回繰り返したあと、ようやく立ち上がりメイションの問いに答え始めた。
「そうね、順を追って話しましょうか。
図書館からの帰りにエンカに会って、あなたを探しているというので一緒に探す事にしたの。
手がかりを得る為に掲示板を見に行ったらそこであなたのメッセージを見たわ。
そのあとミクという子にベッドフォーフォ邸の場所を教えてもらってここまで来たの。」
そしてその後の説明を続ける。
夜闇での蜘蛛との戦闘の最中、エンカは毒で痺れたメイションを見つけたという声を上げたがセラエノはその姿を見ていない。
また、その最中にはぐれてしまった、と。
テレパシーも交えての説明なので、メイションはエンカの顔を認識する事になるだろう。

更に続くセラエノの説明。
「茨は私が生み出したもの。
私の持つ特殊な力を応用したものだけど、その力を認識したのはついさっきなの。
だから仮説は立てられるけど、正確な事は私にもわかっていないわ。」
図書館で司書によって認識させられたセラエノの力。
その原理は奇蹟の力を応用したものだが、まだそれを認識して一日と立っておらず、セラエノ自身もよくわかっていないのだった。

「リリィやユリに害意はないわよ。
本来あなたを迎えに来たのだけど、リリィが危機的状況なのであれば救い出すつもり。
それから・・・」
一通りの説明が終わると、メイションの両肩に手を置き、ぐっと力を入れる。
「私のこともセラエノ【お姉ちゃん】でいいのよ?」
一連の説明の中で結局これが言いたいのは秘密だ!
でも実際にメイションに面と向かって【セラエノお姉ちゃん】などと言われてしまったらまた鼻血が噴出してしまうであろう事は想像に難くない。


話が終わるのを待っていたかのように館の扉が開いた。
メイションに夢中になっていたセラエノの意識が引き戻され、慌てて両肩に置いた手を外し、佇まいを正した。
「ん、んん。では、行きましょう?」
気まずそうに咳払いをしたあと、扉を潜る。
直後に屋敷の証明は一瞬落ち、まるで道案内をするかのように一部の廊下や階段だけが照らされ浮かび上がる。
「随分と趣向の込んだ案内ね。」
メイションを安心させるようにクスリと笑うと、照明に従い進んでいく。
ベッドフォードたちのいる部屋へと。

74 名前:グレンSUフリード ◆cOOmSNbyw6 [sage] 投稿日:2010/08/02(月) 00:13:04 P
グレンは食堂を目指している

何事も無くたどり着くグレン
マニトゥ料理長が1匹現れた
「にゃあ!にゃあ!」
グレンはご飯を強請っている
「・・・・・・・・なんぞこのでかい野良猫!?」
全長130cm以上ある二足歩行する巨大な猫に驚く料理長
「なにゃあ!」
(否飼い猫である!)
グレンはおいしいもの頂戴とばかりに料理長に擦り寄った
「ゴロゴロゴロゴロ・・・・」
料理長の白衣に黒い毛が着いた
「うっとぉしいわ!」
マニトゥ料理長の攻撃
グレンは回避した

数分後・・・・・・
「ぜぇぜぇ・・・・」
マニトゥ料理長はだいぶ疲れたようだ
「これやるから出て行け!!」
グレンの勝利!グレンは少しの経験値と
グレンはヒラメのムニエル(残飯)を手に入れた

>71
残り物を食べてお腹いっぱいになったグレン
「にゃなぁ!?」
今頃になって本来の目的であるリリィ救出を思い出したグレン
屋敷の照明は一部の廊下や階段だけを明るく照らしている
多分何かの罠だと思われるが猫であるグレンは大して考えもせずに明かりの指示に従うのであった

>72
「にゃにゃ!にゃんにゃにゃ!!」
(僕!参上!!)
とばかりに総帥の部屋に飛び込むグレン
そこにいたのはいかにも大ボスっぽい老人であった
>「待ちわびたぞ雛型達…心より歓迎しよう…
さあリリィ…彼等にご挨拶なさい」
>「ふふふ…さあ怒りに身を任せるのだ雛型達よ…
 これは覚醒への一歩だよ…」
グレンはなぜかその膝の上でゴロゴロしたい衝動に駆られた
悪の大ボスの膝の上には黒猫というお約束に負けそうになったのだ!
だがグレンはその衝動を乗り切り
「にゃあな!」
(リリィお姉ちゃんを離すか僕を膝の上に乗せてゴロゴロさせるんだ!)
・・・・・・どうやら乗り切れてないようである

グレンの中のフリードは
「ZZZZZZZZZZZZZZzzzzzzzzzzz・・・・・・・・おじいちゃんこのノート何?
 え?おじいちゃんの恥ずかしい過去だから見ちゃ駄目?
 黒歴・・・・これ以上読めないや」
また変な夢を見ていた


75 名前:グラディス ◆e2mxb8LNqk [sage] 投稿日:2010/08/02(月) 00:56:57 0
>69
>「当然リリィの方っす。さっきテレパシーで、危ねぇって言ってたんだからよーっ。」
「そーだな。桜花の方は、後から来てもらうかねー」
しゃーねーしなーと言わんばかりに頭をかくグラディス。
桜花の無事を信じていないわけではないが、ちょっとだけ引け目を感じるのだ。

桜花のいるであろう方向に目を向けていると、疑惑の視線を感じる。
視線の元は、当たり前にエンカだった。
>「それにしても人間の姿でも鼻が効くんだなぁ?お前は本当にグラディスか?」
「……あん?」
何か疑われるようなことをしただろうかと色々思い起こしても、それらしきことはない。
うんうんうなって考え始める前に、エンカが説明を続ける。
>「…悪く思うなよ?俺はさっきから幻覚に振り回されてるんだ。
> いつの間にか本物のグラディスから偽物にすり替わっていて、
> リリィの居ないところに誘導されちゃ困るからよ〜。
> お前だって、俺がいつまでも本当の俺だと思うなよな〜?」
「あーあーなるほど。まー大丈夫大丈夫、そんな雰囲気もねーからなー。
 ……幻術系には適正の欠片も無いからわかったもんでもねーけど!大丈夫に決まってらー!にひひ」
笑うグラディス、やっぱり楽天的に考えていた。

>67>65>71>72
さあ向かおう、というところで茨が半透明になる。
「んー?こりゃー……」
手を伸ばせば、触れるはずの手がすり抜けた。
グラディス自身の様子も変化した様子も無い。
「おっ、ラッキー!丁度いい、さっさと行くぜー!多分こっちだ!」
付いてこーいとばかりに駆け出すグラディス。駆け出すといっても、本当に常人が走るのと同じレベルで。
エンカが付いてこれるために、それと一応警戒はしてるためだ。
警備員がまだいるかもしれない。ちょいちょい警戒はしておいて損は無いだろう。
桜花の居る筈の方面でメゴッ!という強い音がしたが、兎に角総裁の居る部屋へと走る二人。
すると突然、屋敷の灯りが消える。と思った次の瞬間には、すぐに灯りが再点火された。
しかしその灯りは廊下の奥で消えており、まるでそこに誘うかのような光の道。
その部屋とは、間違いなくリリィのいる部屋。
「……どうにも『歓迎』されてるみてーだなー。そんなら上等ぉー!」

目前にまで見えた扉を見れば、ごてごてとは言えないが明らかに豪華な意匠や飾りを為された様子が見て取れる。
領主の扉、主人の扉、ラスト・ボスの扉、そんな感じが相応しい。
高まる緊張を落ち着け、扉に手をかける。
「よし……開けるぜ、エンカ!」
ぐっとゆっくり力を入れていく。
古めかしそうな割には、物音一つ立てずに扉が開いてゆく。

部屋の中に見えたのはまず、2つの人影。女性的なものと、男性のもの。
次に、一面ガラス張りの壁。時折ガラスの向こう側が見える。
そして、一番重要な、床に体を投げ出した友人の姿。
「リリィちゃん!」
駆け寄りたい感情が湧き出るが、それを抑える。流石にこの状況では不味い。
下手すればあっというまに人質になりかねない、いや、既に人質のようなものだ。
部屋に入ってきた二人を見て、人影の一つ――ベッドフォードが口を開く。
>「待ちわびたぞ雛型達…心より歓迎しよう…
>さあリリィ…彼等にご挨拶なさい」
>杖で床を軽く叩くとリリィの体は魔力により締め付けられ、リリィは痛みを堪えられずに嗚咽を漏らした
「!おい、てめーら何してやがる!リリィちゃんを放せっつーの!」
>「ふふふ…さあ怒りに身を任せるのだ雛型達よ…
>これは覚醒への一歩だよ…」
「あー?雛形?覚醒?なんだか知らねーが、やられてーんならやってやるぜー!
 そっちが友達痛めつけてきたんだ、大火傷しても文句はねーよなー!?」
右の掌を掲げ、熱気が集まって小さな火種が点く。小さな火は瞬く間にボール台の大きさの炎へと拡大。
メラメラと火の粉を飛ばす炎をベッドフォードに突きつける。
「すぐにリリィちゃんを放せ、さもなくばこいつをぶっぱなすぜー!屋敷も燃えちまうかもなー!」

76 名前:リリィ ◆jntvk4zYjI [sage] 投稿日:2010/08/02(月) 08:28:04 0
>62 >70
リリィの問いにミクが答えても、リリィは無反応だった。
彼女だけでなく、主であるベッドフォードから声をかけられても同様だった。
リリィは労のように青白い肌で、死体のように床に転がっている。
だがそんなことを他の二人が気に止めるはずも無く、話は覚醒の核心へと移っていく。

部屋のドアが開き、仲間たちが姿を現した。

仲間達の呼び声に、リリィはわずかに身じろぎした。
彼女の目にかすかに光が戻ってくる。
「あ・・・・・・皆・・・・・・みんな!助け」
>さあリリィ…彼等にご挨拶なさい」
>杖で床を軽く叩くとリリィの体は魔力により締め付けられ、リリィは痛みを堪えられずに嗚咽を漏らした

>「ふふふ…さあ怒りに身を任せるのだ雛型達よ…
>これは覚醒への一歩だよ…」
>「にゃあな!」
>「あー?雛形?覚醒?なんだか知らねーが、やられてーんならやってやるぜー!
> そっちが友達痛めつけてきたんだ、大火傷しても文句はねーよなー!?」
>「すぐにリリィちゃんを放せ、さもなくばこいつをぶっぱなすぜー!屋敷も燃えちまうかもなー!」
グラディスの言葉に反応するように、体を締め付けていた魔力が首へと回った。
返答いかんによっては、彼女の首が落ちるかもしれない。

『君たちは何か勘違いしてるんじゃないかな。
 この娘は、総裁の屋敷を墓石、暗殺未遂を企てたテロリストだよ。こんな扱いを受けても当然だろう。
 それとも何かい?もしかして、君たちも彼女の仲間なのかい?』
リリィを助けに来た彼らの脳裏に、テレパシーが届いた。
声は、男とも女ともつかないものだった。
だが、セラエノをもってしてもどこから発せられたものかは分からないだろう。
『この娘が気に入ってるなら、それなりの代償が必要じゃないかな。
 ところで知っているF・総裁はアンティークの収集家としても有名なんだよ』


77 名前:エンカ ◆jWBUJ7IJ6Y [sage] 投稿日:2010/08/02(月) 19:34:29 0
>72>75>76
> 「んー?こりゃー……」
「おん?グラディス、平気なのかよ?」
どういう理由かしらないが、茨が徐々にその存在感を失っていく。
> 「おっ、ラッキー!丁度いい、さっさと行くぜー!多分こっちだ!」
「ちょ、待…おいーっ!」
エンカはグラディスを追いかけながら思った。
やはりあの茨を出した何者かに害意があり、メイションがどうにかしたのだろうか?と。

> 「……どうにも『歓迎』されてるみてーだなー。そんなら上等ぉー!」
エンカとグラディスは扉の前にいた。急に消えた灯りは、この扉の前までの道しるべとして再点火されたのだ。
これは罠だろうか?それとも、誰かが自分達を助けようとしているのだろうか?
> 「よし……開けるぜ、エンカ!」
「あーよ。」
二人そろって扉を開けると、探していた人物はすぐに見つかった。
> 「リリィちゃん!」
「よせグラディス!」
エンカはグラディスがしたいことがすぐにわかったので彼を抑えようとした。
> 「待ちわびたぞ雛型達…心より歓迎しよう…
> さあリリィ…彼等にご挨拶なさい」
> 杖で床を軽く叩くとリリィの体は魔力により締め付けられ、リリィは痛みを堪えられずに嗚咽を漏らした
> 「!おい、てめーら何してやがる!リリィちゃんを放せっつーの!」
とグラディス。
> 「ふふふ…さあ怒りに身を任せるのだ雛型達よ…
> これは覚醒への一歩だよ…」
総裁がそう言った途端、エンカは素早く身を低くした。そして叫んだ。
「本っっっっっ当ぉぉおぉに!!すみませんでしたーーっっ!!」
土下座で謝ったエンカと、屋敷ごとベッドフォードを吹き飛ばさんとするグラディス。
エンカとグラディスは、互いに何やってんだ?といった目で顔を見合わせた。
「何やってんだよ!?おい!?」
エンカの方から聞くことになった。
「考えてもみろよ!?俺達は強制的にここに連れてこられたわけじゃあねぇ!
 自分達で勝手に人の家に押しかけてんだぜーっ!?
 警備の奴らもちょうど俺達三人でやっつけちゃったしよーっ!
 総裁が怒るのも無理ねぇじゃねぇかよ!」
エンカはふとミクの存在に気づいた。
「あ、おめぇこんなところで何やってんだよ!?
 また何か悪いこと企んでんじゃねーだろうなぁ!?
 今度俺を蜘蛛のエサにしようとしたら承知しねえぞーっ!?」

> 『君たちは何か勘違いしてるんじゃないかな。
>  この娘は、総裁の屋敷を墓石、暗殺未遂を企てたテロリストだよ。こんな扱いを受けても当然だろう。
>  それとも何かい?もしかして、君たちも彼女の仲間なのかい?』
エンカはそんな声が頭に響いたのでビックリした。
そして、どうやら様子を見るかぎり、その声が聞こえたのはエンカだけではないようだった。
エンカは、総裁の仲間がもう一人いて、姿を隠したままテレパシーを出しているものと理解した。
「そうっす!俺達はそこにいるリリィの友達だ!もしもリリィ一人を罰して気がすまねぇならよーっ!
 俺達も一緒に罰してくれよなーっ!!」
エンカが総裁に叫んだ。
> 『この娘が気に入ってるなら、それなりの代償が必要じゃないかな。
>  ところで知っているF・総裁はアンティークの収集家としても有名なんだよ』
「お、マジかよ!?…ところで、あんたにもこのテレパシー聞こえてるんすよね?」
エンカには総裁の表情が読みにくかったので、一応聞いておくことにした。
「もしもあんたの気持ちがそれで収まるならよぉ。俺達、あんたのアンティーク収集を手伝ってやるぜ〜?
 生憎俺は今のところ何も持ってねぇんだけど、学園の外にある森とか廃墟を探せば何か見つかるかもな〜?
 そうそう、俺も森で古い魔道書を見つけたんだぜ〜?」

【エンカは、総裁のアンティーク収集を手伝う代わりに、不法侵入の罪を許してもらえないかと提案した。】

78 名前:メイション ◆jWBUJ7IJ6Y [sage] 投稿日:2010/08/02(月) 19:36:03 0
>73
「あ…えぇっ!?」
突然崩れ落ちてしまったセラエノにメイションは驚いた。
> 「はぁ…はぁ…だ、大丈夫よ。
> 私、ちょっと血圧が高くって、鼻血が出やすい体質なの。
> 服に付いた血も返り血ではなく鼻血よ。」
「ご、ごめんなさい。そんなに体調が悪い人を疑うなんて、悪かったよ。」
> 深呼吸を数回繰り返したあと、ようやく立ち上がりメイションの問いに答え始めた。
> 「そうね、順を追って話しましょうか。
> 図書館からの帰りにエンカに会って、あなたを探しているというので一緒に探す事にしたの。
> 手がかりを得る為に掲示板を見に行ったらそこであなたのメッセージを見たわ。
> そのあとミクという子にベッドフォーフォ邸の場所を教えてもらってここまで来たの。」
メイションはセラエノを通じて、セラエノとエンカのこれまでの経緯を知ることができた。
(メイション「あのお兄ちゃんがエンカ君だったなんて!」)
> 更に続くセラエノの説明。
> 「茨は私が生み出したもの。
> 私の持つ特殊な力を応用したものだけど、その力を認識したのはついさっきなの。
> だから仮説は立てられるけど、正確な事は私にもわかっていないわ。」
「あぁ、うん。よくわからないなら、仕方ないね。」
相槌を打つメイション。
> 「リリィやユリに害意はないわよ。
> 本来あなたを迎えに来たのだけど、リリィが危機的状況なのであれば救い出すつもり。
> それから・・・」
> 一通りの説明が終わると、メイションの両肩に手を置き、ぐっと力を入れる。
> 「私のこともセラエノ【お姉ちゃん】でいいのよ?」
メイションは、何だかこの人、ちょっと怖いなと思った。

> 話が終わるのを待っていたかのように館の扉が開いた。
> 「随分と趣向の込んだ案内ね。」
まるでどこかへ案内するように、その道にだけ証明の光が落ちていた。
「ねぇ、ちょっと待って。」
メイションはセラエノを止めようとした。
「いくらなんでも様子がおかしい。だって、僕らは勝手に押しかけてるんだよ?
 これは道案内なんかじゃなくて、罠なんじゃないの?エンカお兄ちゃん達がやったことでなければ!」

メイション達に件のテレパシーが聞こえたのはこの時である。
> 『この娘が気に入ってるなら、それなりの代償が必要じゃないかな。
>  ところで知っているF・総裁はアンティークの収集家としても有名なんだよ』
メイションは焦った。リリィお姉ちゃんは今虐められているのかもしれない。
しかし、この道案内は罠である可能性がある。
「何とかならないの!?セラエノお姉ちゃん!?」

【メイションは、言ってはいけないことを言ってしまった。】

79 名前:レイヴン ◇70VgGM3HY6 [] 投稿日:2010/08/03(火) 01:45:39 0
>63>66>71-72>75-77
>「そう言われてしぶしぶと全く好みではない男を亀甲縛りにする私であった」
……内心見当が外れたが、言われたとおりアドラスを縛り上げる保険医。
しかし、しかしだ。
「なぜに亀甲縛り……あまり見栄えがよろしくないぞ?
 いやまぁ、他の縛り方とか本職じゃない俺には分からんけど……」

>「よし!お屋敷のにょこり物を漁りにのりこみゅにゅ!!」
先ほどまではしっかりと人語を話していたはずの謎生物だったが
だんだんと発音が怪しくなっていく……
「おいィ? なんだか喋りが怪しくなってきたんですがねぇ……?
 おい馬鹿やめろ、このシリアスは早くも終了ですね」
その一助となっている事に当事者の鴉は気づかない!気づきにくい!
結局すっかり猫に戻ってしまった謎生物(やっとフリード&グレンという事に気づいた)は
おそらく食い物を求めてどこかへと行ってしまった……たぶん食堂だろう。


>「うゃ〜…頭がガンガンする…ちょー頭痛い…」
ユリが目を覚ましたようだが、案の定調子は悪いようだ。
「……目が覚めたか。大丈夫k」
声を掛けようとしたが、続いた言葉に口をつぐむ。

>「お兄ちゃんの背中…暖かいよ…」
……どうやら誰かと間違えているようだ。
それでも鴉はそれを訂正する事はなかった。
「……そうか。じゃあ、ユリが嫌になるまでおぶっててやる。
 好きなだけそうしてるといい……」
そう言って、まるであやすようなテンポで歩く鴉。
子供をあやした事など片手で数えられるほどしかなく
それもここに来る直前、『アイツ』にしてやった程度の経験しかないと言うのに。
父性でも沸きあがってきたのだろうか?
その割に、鴉の表情は暗い……何かを思い悩んでいるようだ。


>もし灯りの指示に従ったなら、迷わず総裁の部屋へとたどり着けるだろう。
不意に照明が落ち、また点いた……まるで誘うように一部の道筋だけを浮かべて。
「……やはりワナか。まるで俺たちが来る事を知ってたかのよう……
 ふん、気に入らないな」

>杖で床を軽く叩くとリリィの体は魔力により締め付けられ、リリィは痛みを堪えられずに嗚咽を漏らした
そうして着いた部屋では最悪の歓迎が待ち構えていた。
鴉は入学式に参加しなかったため顔を知らないものの、その人物こそ
この館の主であり学園の理事長でもあるエーリッヒ・ベッドフォードに違いないだろう。
そのベッドフォードが、全員が部屋に入るなり杖から魔力を放ってリリィを痛めつけたのだ。
当然、血気盛んな周りの男連中は色めき立つ。


80 名前:レイヴン ◇70VgGM3HY6 [sage] 投稿日:2010/08/03(火) 01:46:39 0
>「すぐにリリィちゃんを放せ、さもなくばこいつをぶっぱなすぜー!屋敷も燃えちまうかもなー!」
特にグラディスの取った行動は下策中の下策だった。
血が上りかけた鴉に冷水を浴びせたと言う意味ではそうでもないのだが……
「よせグラディス! 屋敷を燃やしたらここにいる全員焼け死ぬぞ!?
 こんなクソジジイと心中なんぞ俺はゴメンだ!」
怒りに任せて後先考えられなくなると、こんな簡単な事すら考えから抜けてしまう。
そんな事例を山ほど見てきた鴉だが、グラディスが先にキレてなければ
先走っていたのは鴉だっただろう。


>「本っっっっっ当ぉぉおぉに!!すみませんでしたーーっっ!!」
なおもグラディスはいきり立っていたが、エンカの渾身の土下座を見て気が逸れた。
エンカは非は自分達にあるから謝罪は当然、と言っているが……
「この手の輩に弱味を見せる、自分から折れるって行動は絶対に取っちゃいけないんだぜエンカ……。
 そうやって言質をとった瞬間、骨までしゃぶられるのは確定しちまうんだからな。
 ……ウソだと思うか?」
経験こそしていないものの、それに極めて近い結果は何度も見ているのだ。
「謝って済むなら争いなんか起こらないんだ。
 ……その土下座は、彼女の親に『娘さんを下さい』って言うときにでも取っておくべきだと
 俺は思うがね。その方がよっぽど有意義だ」


>『君たちは何か勘違いしてるんじゃないかな。
> この娘は、総裁の屋敷を墓石、暗殺未遂を企てたテロリストだよ。こんな扱いを受けても当然だろう。
>『この娘が気に入ってるなら、それなりの代償が必要じゃないかな。
> ところで知っているF・総裁はアンティークの収集家としても有名なんだよ』
落ち着かせる為にしょうもない事をのたまっていた鴉だったが、
どこからか聞こえてきた言葉に露骨に顔をしかめた。
「テロリスト、だと? ……でっち上げる気か、
 それも結構。お前らの計画がおじゃんになっても構わないならな……」
先ほどからの相手の言動から、鴉は連中が自分達を利用したがっている節があると読んだ。
そうでもなければ、わざわざどうでもいい趣味の話なんぞ持ち出すわけがないのだ。

「……じゃあ、ビジネスの話に入ろうか。
 厚かましい? 実に結構。人間、見返りがあった方が作業にも身が入る。
 どうせ不法侵入云々は初めから眼中にないんだろう?
 だったらお為ごかしする必要もないだろ……」
いつの間にかおぶっていたユリを下ろした鴉は屈んでユリと目線を合わし頭を撫でながら
「すまないなぁ、俺は自分から約束を破るダメな兄ちゃんだ……
 埋め合わせは帰ったら必ずするから、いい子にしてるんだぞ?」

いい終わって鴉が次に取った行動は……刀を投げ捨ててゆっくりと
椅子に座る総裁へと近づいていく事だった。


81 名前:ユリ ◆sto7CTKDkA [sage] 投稿日:2010/08/03(火) 16:26:24 0
>79-80
>「……そうか。じゃあ、ユリが嫌になるまでおぶっててやる。
> 好きなだけそうしてるといい……」
「うん…ありがと…」
ユリはそう言って、安心しきってレイヴンの背中に体を預ける。
毒は抜けきっているのだが、直前の戦いで少なくなった力を完全に使い切っているのだ。
夢の中にいるように、リリィのテレパシーを聞いても、苦しむリリィを見ても。
ユリはほとんど反応しなかった。
ただ、徐々に力が回復するにつれて、意識もやはり回復にと向かってはいる。

>「すまないなぁ、俺は自分から約束を破るダメな兄ちゃんだ……
> 埋め合わせは帰ったら必ずするから、いい子にしてるんだぞ?」
「お兄ちゃん…どこに行っちゃうの…?」
焦点の合っていない目が、ぼんやりとレイヴンの歩む先を見た。
その先に見つけた親友(ユリはそう思っていた)の顔に反応し、ユリの意識は現実にと戻り始める。
「あれ…ミク…? なんでここにいるの…?」

82 名前:ミク ◆sto7CTKDkA [sage] 投稿日:2010/08/03(火) 16:29:00 0
>70-81
笑みを浮かべながら総裁の話を聞いていたミクだが、『写本』と聞いた時には少し考えるそぶりを見せた。
写本である以上原書があるはずであり、ベッドフォードがどんな本から覚醒について知ったか気になったのだ。
ベッドフォードの言葉を信じるならば、その本にはリリィが言う異変の原因についても記されているに違いない。
>「蜘蛛よ お前も【覚醒】の一端を担ってはどうだ?
>ただ戦い、感情を刺激すればよいだけだ…」
「それは結構なお話ですこと。
 でも、その簡単なお仕事の結果はお聞きできませんの?」
ミクからすれば、感情が刺激されて覚醒すればどうなるのか。
というのはなかなか重大な問題だ。
藪を突いて蛇が出るのはいいが、自分が藪を突く役目を果たすのは気にいらないからだ。

>「そう焦ってはいかん…話にはまだ続きはある…」
>「結論から言おう…【覚醒】とは彼等自身が持つ力の限界を縛る制約から目覚めさせる事だ…
ベッドフォードは覚醒の結果について語り、戦う事に加えて鍵が必要なのだと述べた。
杖に視線を向ける老人を見ながらミクは、あるいはあの杖が遺物なのだろうかと考える。
>「だから、私は彼等天才達の出現をずっと待っていたのだよ(中略)
>この機会を逃せば、また数百年いや数千年待たねばならぬ…」
「【覚醒】についてのご教授、感謝しますわ。
 私も総裁の目的達成のため、微力ながらご助力いたします」
ミクは総裁にそう言って笑いかける。
【計画】の内容についてはわからなかったが、退屈しないで済みそうだというのは良くわかった。
ミクからすればそれで十分だ。

>「にゃにゃ!にゃんにゃにゃ!!」
>「リリィちゃん!」
>「あ・・・・・・皆・・・・・・みんな!助け」
扉が開いて入ってきた仲間の声に反応し、リリィが助けを求めようとする。
しかし、その声は最後まで続けられることはない。
>「待ちわびたぞ雛型達…心より歓迎しよう…
>さあリリィ…彼等にご挨拶なさい」
>「!おい、てめーら何してやがる!リリィちゃんを放せっつーの!」
苦しむリリィを見て怒るグラディスを見て、ミクはなるほど上手いやり方だと思う。
リリィに同情するつもりはない。
蜘蛛はカマキリに捕まった蝶を見ても、同情しないものだからだ。

>「ふふふ…さあ怒りに身を任せるのだ雛型達よ…
>これは覚醒への一歩だよ…」
>「にゃあな!」
>「すぐにリリィちゃんを放せ、さもなくばこいつをぶっぱなすぜー!屋敷も燃えちまうかもなー!」
>「よせグラディス! 屋敷を燃やしたらここにいる全員焼け死ぬぞ!?
> こんなクソジジイと心中なんぞ俺はゴメンだ!」
部屋に入ってきた者のうち、何人かの行動は予測済みのものだった。
最悪すぐにでも攻撃されるものとまで思っていたのだが、約1名、予想外の行動を取った者がいた。

>「本っっっっっ当ぉぉおぉに!!すみませんでしたーーっっ!!」
>「何やってんだよ!?おい!?」
ミクは何をやっているのか聞きたいのは自分だと思った。
後の説明は確かに理にかなっていたし、そう行動してもおかしくない。
しかし、しかしだ。
助けに来た友達が苦しむのを目の前にして、相手に土下座するというのはミクの想像の範疇を超えていたのだ。
>「この手の輩に弱味を見せる、自分から折れるって行動は絶対に取っちゃいけないんだぜエンカ……。(中略)
> 俺は思うがね。その方がよっぽど有意義だ」
幼女を背負った男の言葉に、ミクはその通りだと思った。
リリィに蜘蛛糸を巻きつけて精神的に揺さぶろうと考えていたのもすっかり忘れて、そう思った。

83 名前:ミク ◆sto7CTKDkA [sage] 投稿日:2010/08/03(火) 16:31:34 0
>「あ、おめぇこんなところで何やってんだよ!?(中略)
> 今度俺を蜘蛛のエサにしようとしたら承知しねえぞーっ!?」
「お久しぶりねエンカ。
 他の人たちには初めましてでよろしいかしら。
 私は初音美紅。
 あなたたちのお知り合いのユリの友達よ。
 こちらにおられるのはこの館の主、ベッドフォード総裁。
 と言っても、今更自己紹介が必要な状況でもないかも知れないわね」
ミクは自己紹介はしたが、エンカの蜘蛛に関する言葉はわざと無視する。
別に知られて困るようなことではないし、ほぼ敵味方に別れた状況で言うべきことでも無かったからだ。
言わなければならないことは、他にある。

「実は私人質を取られて脅されていて、あなたたちと戦わなくてはいけないの。
 苦しむリリィを助けたいでしょうけど、私も負けるわけにはいかないわ。
 悪く思わないでちょうだいましね」
人質を取られているとは思えないほど楽しそうに、ミクは笑う。
実際問題ユリが人質かと言われると疑問符が付く所だが、ミクにその事を教えるつもりはない。

>「そうっす!俺達はそこにいるリリィの友達だ!もしもリリィ一人を罰して気がすまねぇならよーっ!
> 俺達も一緒に罰してくれよなーっ!!」
急にエンカが妙な事を言い出したので、ミクは不審の目でエンカを見る。
テレパシーはミクに聞こえていなかったのだ。
>「お、マジかよ!?…ところで、あんたにもこのテレパシー聞こえてるんすよね?」
その言葉に、ミクは総裁を見た。
他の者の反応を見るに、自分にだけテレパシーが聞こえていないのだと思えたのだ。

>「もしもあんたの気持ちがそれで収まるならよぉ。俺達、あんたのアンティーク収集を手伝ってやるぜ〜?(中略)
> そうそう、俺も森で古い魔道書を見つけたんだぜ〜?」
>「……じゃあ、ビジネスの話に入ろうか。(中略)
> だったらお為ごかしする必要もないだろ……」
アンティーク。 先ほど総裁が語っていた遺物の事だろうか。
あるいは漆黒の鎧の事だろうか。
総裁はテレパシーを使って、彼らにそれを探すように強制しているのか?
ミクには、まだそう考えるだけの余裕はあった。
だから、糸を張ってレイヴンの動きを封じ、それ以上の総裁への接近を阻もうとした。
「そこのあなた、それ以上進まずに止まりな…」
>「あれ…ミク…? なんでここにいるの…?」
余裕がなくなったのは、元気を取りもどしつつあるユリが呼びかけてからだった。

驚いて声の主を見るミクの視線の先で、幼女化したユリがぐしぐしと目をこすっていた。
幼女化の程度を知らない上に、熱血直情型の性格を知っていたために、まったく気づかなかったのだ。
「う…」
ミクももちろん、ユリが来た時の対処法は考えていた。
その場で言いくるめるか、今は黙らせておいて後で言いくるめるかのどちらかだ。
問題は、ユリに気づいたタイミングが最悪だったいう事だ。
言いくるめれば、他の侵入者が怒りの感情で戦うのは難しくなる。
黙らせれば、仲間を攻撃された侵入者たちが怒って交渉はご破算になるだろう。
ベッドフォードにユリの事をお願いしている立場上、その意志を無視して行動するのは今はまずい。
ミクは先ほどより余裕のない表情でベッドフォードを見、戦いか交渉かの意思表示を待った。


84 名前:セラエノ ◆LGeruanYjI [sage] 投稿日:2010/08/03(火) 22:59:07 0
「あら、どうして?」
メイションの罠ではないかという懸念にセラエノは理解が出来ないと言うかのように首を傾げる。
セラエノからすれば勝手に押しかけたわけではない。
メイションを探しに着てみれば蜘蛛との戦闘になっており、更に館の護衛との入り乱れた戦闘になった。
最中に茨を大量に生み出し館を覆ってしまったことへの事情説明に来たのだ。
その口上は既に済ましており、その返答として扉が開いた。
ゆえに押し入ったという前提は成立せず、罠にかけられるという事すら考えていない。
つまり、セラエノは自分の正しき理に絶対の自信を持っており、全ての行動は正当なものなのだから。

メイションの心配など気にする風でもなく一歩踏み出した時、テレパシーが届いたのであった。
セラエノはテレパシーを声のように感じる事が出来る。
察知すれば大体何処から発せられたのかは把握できるのだが、このテレパシーは何処から届いたのか把握できない。
しかも内容は驚くべき事であったのだが、次の瞬間には吹き飛んでしまう事になる。

このたった一言の為に。
>「何とかならないの!?セラエノお姉ちゃん!?」
(セラエノお姉ちゃん?お姉ちゃん?
お姉ちゃんってお姉さんより親近感UP!UP!よね!
しかも美少年が懇願する目つきで私のことをセラエノお姉ちゃん!?)
この間0.03秒。
くるりと振り向いたセラエノの仮面からは滂沱の鼻血が滴っており、胸に抱える本を更に赤く染めていた。

「お、お姉ちゃんに任せなさい!さあ、私の腰にしっかりと捕まって!」
ちょっと強めな笑みを浮かべ、メイションを引き寄せるセラエノ。
それと同時に半透明になっていた茨が色を取り戻し、蠢動をはじめる。
美少年の懇願する一言がセラエノを開眼させた瞬間だった!
そして、ベッドフォード邸玄関に巨大な茨の蛇が出現した!

###################################

ゴゴゴゴゴゴ!!

悠然と佇むベッドフォード。
締め上げられ嗚咽を漏らすリリィ。
土下座をし、何とかリリィの罪を軽減しようとするエンカ。
怒り火球を発生させるグラディス。
猫の本能の衝動と戦うグレン。
刀を捨てゆっくりとベッドフォードに近づくレイヴン。
未だ焦点の合わないユリ。
思わぬ状況に困惑し、状況を見守るミク。

それぞれの思惑が交錯する部屋に地鳴りとともにそれは入ってきた。
打ち破られた窓に突っ込んできた巨大な蛇の頭。
否、茨の塊り。
それとともに室内の茨も色を取り戻し、脈動を始める。

85 名前:セラエノ ◆LGeruanYjI [sage] 投稿日:2010/08/03(火) 23:02:47 0
「お待ちなさい!全員動かないで!
あなた、まず火球を消して。そちらの方はそれ以上近づかないで!
それ以上すれば本当に暗殺者として成立しますよ。」
その言葉とともに茨は鉄格子のようにレイヴンとグラディスを取り囲みその動きを牽制する。
声とともに茨の塊りがほどけ、その中からメイションとセラエノが現れた。
部屋をぐるりと見回すと、大きく息を吸いあえてゆっくりと言葉を紡ぐ。

「はじめまして。私はセラエノ・プレアデス。
館を覆う茨は私の力が暴走した結果の事。まずはお詫び申し上げますわ。
こちらはメイション。
急を要するようでしたので窓から失礼しますわ。」
リリィからのテレパシーを感じた時からリリィが何処にいるかはわかっていた。
今になって窓から直接乗り込んだのは、礼儀よりリリィの身の危険、そして何より美少年の懇願の為。

「早速ですが、私とそちらのエンカはこのメイションを探しに来ました。
彼らが何故ここに来たかは知りませんが、そこのリリィがベッドフォードさんを暗殺に来たとの事。
もしそれが事実ならば一同手出し無用。
法に基づき適正に処罰されるべきでしすから。
即ちこのような私刑ではなく、彼女は私と同じく学園新入生ですので学園に一度預け追って然るべき処罰を。
故にエンカ、そんな土下座は無用だし、アンティーグの代償で法を捻じ曲げる事は罷りならないわ。
そしてそれを持ちかける事自体にも不信感を持ちます。」
一旦息を継ぎ、更に言葉を続ける。

「リリィが暗殺を目論むテロリストだとの事。
そう断じるにはそれなりの証拠がおありでしょうね。
今すぐその提示を。
私の力で彼女の服の記憶を読み、彼女の行動の全貌は明かせられますが…?」
最後の言葉は捏造は通じないという釘。

「私が見る限り、彼女は館の周辺で蜘蛛に襲われ戦っていただけで、館に侵入はしていなかったようですが?
館周辺で護衛に連れて行かれる事はあっても…
もし手違いでしたら今すぐ彼女の解放を。
私はメイションを探すという目的も果たしましたので明日からの学園生活の為、騒ぎを収めてみんなで帰りたいのです。」
毅然と言い放つセラエノだったが、あまり余裕はなかった。
血に塗れ判り難くはあるが、その肌は蒼白。
保険医の造血治療があって立っていられるのだが、大量の血を流しすぎているのだ。
そしてこれほどの大規模な茨を生み出し操作するという始めての体験に力は尽きようとしている。

明日から学園生活が始まる。
2週間後には浮遊島でのバトルロイヤル&フィジル大海孔見物などイベントは目白押しだ。
イベントにやたらとバトルが付いて回るのはベッドフォードの差し金なのかもしれないが、今はまだわかりようはない。

その事を考えれば明らかなオーバーワークだが、それでもセラエノを支えるのは…
美少年と美少女の存在であるのは言うまでもない。

86 名前:グレンSUフリード ◆cOOmSNbyw6 [sage] 投稿日:2010/08/03(火) 23:10:15 P
>75>76>77>80>81>83-85
>「すぐにリリィちゃんを放せ、さもなくばこいつをぶっぱなすぜー!屋敷も燃えちまうかもなー!」
「なあ、にゃあん」
(もう男の人ったらすぐに暴力で解決しようとする)
だがしかし猫語なので誰にもわからない
しかもグレンも雄である

> 『君たちは何か勘違いしてるんじゃないかな。
>  この娘は、総裁の屋敷を墓石、暗殺未遂を企てたテロリストだよ。こんな扱いを受けても当然だろう。
>  それとも何かい?もしかして、君たちも彼女の仲間なのかい?』
「にゃあん?」
(テレパシーしか使えない戦闘能力皆無なリリィお姉ちゃんがテロリスト?)
何気にひどいことを言うグレン
だがしかし猫語なので誰にもわからない
>「そうっす!俺達はそこにいるリリィの友達だ!もしもリリィ一人を罰して気がすまねぇならよーっ!
 俺達も一緒に罰してくれよなーっ!!」
「にゃあ?」
(もしかしてMなの?)
またまた何気にひどいことを言うグレン
だがしかし猫語なので誰にもわからない

>『この娘が気に入ってるなら、それなりの代償が必要じゃないかな。
 ところで知っているF・総裁はアンティークの収集家としても有名なんだよ』
助けて欲しければお宝よこせという謎の声
「にゃあん?」
(これじゃ駄目?)
とばかりに伝説の猫缶を取り出すグレン
もちろん駄目に決まってるし伝説の猫缶は伝説の缶切りがないと食べられないのである
っていうか総帥猫じゃないし

>「テロリスト、だと? ……でっち上げる気か、
 それも結構。お前らの計画がおじゃんになっても構わないならな……」
どうやらレイブンははったりをかまして何とかするつもりらしい
「にゃにゃあ」
(ここでの会話はすべて録音されている外で待ってる球形ロボによって)
グレンもはったりをかますがそもそも猫語なので(ryである

>「俺達、あんたのアンティーク収集を手伝ってやるぜ〜?」
総帥のアンティーク収集を手伝うことによって今回のことをなかった事にしようというエンカ
>「すまないなぁ、俺は自分から約束を破るダメな兄ちゃんだ……
  埋め合わせは帰ったら必ずするから、いい子にしてるんだぞ?」
刀を捨てて総帥に近づくレイブン・・・・何か考えがあるのか?
だがしょせん猫の頭では何をするつもりなのかはわからなかった



87 名前:グレンSUフリード ◆cOOmSNbyw6 [sage] 投稿日:2010/08/03(火) 23:12:03 P
>「あれ…ミク…? なんでここにいるの…?」
>「う…」
どうやら知り合いらしいが・・・・・・なんか事情がややこしそうなので
「にゃあん?」
と鳴いてごまかしておいた

という状況の中で侵入してくる茨
やはり中にフリードがいるため避けるようだ
知らないうちに盾にされているフリード

そしてその頃グレンの中で寝ているフリード
「エターナルフォースブリザード?お祖父様なんですかこれ?
 え?わしが若い頃に考えた最強の呪文?相手は死ぬ?」
まだ変な夢を見ていたようだ

どうやら茨の持ち主はセラエノのようである
セラエノを見たグレンはもうひとつのお宝を思い出した
「にゃなぁ!!」
(ちゃちゃちゃん聖杯!!)
それはセラエノの血を受けたコップである
だがたかがコップされどコップ当然貴族の子息であるフリードのコップである
結構いいものであり当然とばかりに純銀製である
「にゃあ」
(これでどうだ)とばかりに総帥に聖杯(仮)を差し出すグレン
多分駄目だろうな

88 名前:ベッドフォード ◇k4Jcxtcj [sage] 投稿日:2010/08/04(水) 20:50:48 0
>>75>>77>>78>>79>>80>>82->>87 


部屋に入ってきた雛型達の反応は多種多様 まさに様々であった 
望み通り怒りに身を任せる者 土下座し取引を持ち掛けてくる者など 
最も放たれた火は杖から発せられた力で見事に消されてしまったのだが 
当の老人は子供が持ち掛けるビジネス等に乗る気は無く話を聞く耳すら持っていないという素振りで雛型達に背を向け窓の外を向いてしまった 
その時、老人が見ていた壁一面の大窓は巨大な蛇 いや茨の塊により突き破られる 
ガラスが飛び散り普通の人間であれば怯むような状況でさえ 
老人は動じる事無かった 

>「早速ですが…(略)」 

セラエノの話を茨の蛇を眺めながら聞いているも 
老人の興味は話の内容よりも彼女自身に向いている 
「流石は神と言った所か お前の力は実に素晴らしい… 
なら私に協力したまえ さすれば他の者は不問にしよう」 
急に振り返りセラエノを見る目は気味悪い程輝いている 
すると老人はやっとミクの方へ目配せをする 
「神が断れば 動け」」 
そうテレパシーを送られたようだった 

>「にゃあ」 
老人の足元に差し出された銀の杯 
杯を見るやまたも老人は目の色を変えた 
「これは…まさかブリュンヒルデの杯!!」 
グレンから強引に杯を奪い取る 
「これぞ失われた遺物の1つ これと対になる水差しはどうした?」 

89 名前:グラディス ◆e2mxb8LNqk [sage] 投稿日:2010/08/04(水) 21:56:37 0
グラディスが怒りに任せて炎を出したそのとき。
>「本っっっっっ当ぉぉおぉに!!すみませんでしたーーっっ!!」
突然、エンカがDOGEZAの体勢に入った。
『は?』とばかりにお互いを見やるエンカとグラディス。
横でレイヴンが何か言ってるが、聞こえているのはエンカとの対話のみ。
>「何やってんだよ!?おい!?」
「エンカ、君こそ何をやってんだっつーの!?」
>「考えてもみろよ!?俺達は強制的にここに連れてこられたわけじゃあねぇ!
> 自分達で勝手に人の家に押しかけてんだぜーっ!?
> 警備の奴らもちょうど俺達三人でやっつけちゃったしよーっ!
> 総裁が怒るのも無理ねぇじゃねぇかよ!」
「知るかっての!ただ少し忍んだだけでこれはねーだろーが!
 挙句に人質取った悪人みてーな風にリリィちゃん使ってんだから容赦しなくてもいーだろ!
 ってか、易々と頭下げてんじゃねー!せめてもーちっと溜めてから使えよー!」
>「謝って済むなら争いなんか起こらないんだ。
> ……その土下座は、彼女の親に『娘さんを下さい』って言うときにでも取っておくべきだと
> 俺は思うがね。その方がよっぽど有意義だ」
「そーそー、レイヴンのいうとおりだ!……あれ?いつ来たんだ?気付かんかったなー」
ガン無視しておいてこれである。

>「あ、おめぇこんなところで何やってんだよ!?
> また何か悪いこと企んでんじゃねーだろうなぁ!?
> 今度俺を蜘蛛のエサにしようとしたら承知しねえぞーっ!?」
老人ではない、もう一つの影に向かってエンカが叫ぶ。
見たところ、女の子らしいが。
「……蜘蛛ぉ?ってこたー……この子が、もしかしてあのでかい蜘蛛の首領!?」
>「お久しぶりねエンカ。
> 他の人たちには初めましてでよろしいかしら。
> 私は初音美紅。(略)
> 悪く思わないでちょうだいましね」
「知るかっつーの!よくも蜘蛛で俺達を……」
>『君たちは何か勘違いしてるんじゃないかな。
> この娘は、総裁の屋敷を墓石、暗殺未遂を企てたテロリストだよ。こんな扱いを受けても当然だろう。
> それとも何かい?もしかして、君たちも彼女の仲間なのかい?』
グラディスの不満たらたらの言葉は、突然のテレパシーによって止められた。

>「そうっす!俺達はそこにいるリリィの友達だ!もしもリリィ一人を罰して気がすまねぇならよーっ!
> 俺達も一緒に罰してくれよなーっ!!」
「仲間だけど、テロリストだあ?随分と誇張表現が大好きじゃねーの!
 何処をどう見て暗殺を企てているように見えんだかねー!妄想に捕らわれてんじゃねー!」
>『この娘が気に入ってるなら、それなりの代償が必要じゃないかな。
> ところで知っているF・総裁はアンティークの収集家としても有名なんだよ』
「ふ、ざ、けんなっ!濡れ衣被せといてそれかよ!?腹立った、てめーぜってー燃やしてやる!」
ギャースカギャースカテレパシーの主にキレるグラディス。
目の前のベッドフォードよりも気に入らないらしい。

90 名前:グラディス ◆e2mxb8LNqk [sage] 投稿日:2010/08/04(水) 21:57:29 0
と、突如、ガラスが割れ砕ける音がした。
音の出所は探さずとも目に付く、壁の一面のガラス。
そこには龍とそこに乗った神が居た。
否、大量の茨と仮面をつけた何者かが居た。
>「お待ちなさい!全員動かないで!
>あなた、まず火球を消して。そちらの方はそれ以上近づかないで!
>それ以上すれば本当に暗殺者として成立しますよ。」
「うっ?……もう消えたぜー」
やってもいない暗殺の罪には問われたくない。
そう思うグラディスの手には、ベッドフォードの杖から発する威圧に消えていた。

>「はじめまして。私はセラエノ・プレアデス。
>館を覆う茨は私の力が暴走した結果の事。まずはお詫び申し上げますわ。
>こちらはメイション。
>急を要するようでしたので窓から失礼しますわ。」
仮面――セラエノが簡単な自己紹介を終えて、すぐさまベッドフォードに説得・説明へと入る。
エンカとセラエノはメイションの捜索に来たことや、もしリリィが暗殺に来たなら法で裁かれるべきということ。
行動の全てを見せることができること、暗殺を目論む明確な証拠の提示の要求。
>「私が見る限り、彼女は館の周辺で蜘蛛に襲われ戦っていただけで、館に侵入はしていなかったようですが?
>館周辺で護衛に連れて行かれる事はあっても…
>もし手違いでしたら今すぐ彼女の解放を。
>私はメイションを探すという目的も果たしましたので明日からの学園生活の為、騒ぎを収めてみんなで帰りたいのです。」
カッコ良く場を纏めたセラエノにグラディスから賞賛の視線が送られる。
先程までの不機嫌はどうしたのか、すっかりセラエノに傾倒していた。
「ほおお……すげー、かっけー……!マジすげー……!」

>「にゃあ」
これでどうだと言いたそうに、銀色の杯を掲げるグレン。
銀の魔除けの雰囲気から、グラディスはうっと後ずさる。
「うげえ……銀かよー」
>「これは…まさかブリュンヒルデの杯!!」
行き成りベッドフォードが、猫のグレンから強引に杯を奪い取った。一体どうしたというのだろう?
>「これぞ失われた遺物の1つ これと対になる水差しはどうした?」
「……はぇ?え、何それ怖い……でもすげえ猫!なんでそんなもん持ってんだー?」
グレンの前足を持って持ち上げるグラディス。
「そーいやこいつって何だっけ?誰のペット?随分と賢いよなー」
ぶらーんぶらーんと前に後ろに振り子運動させる。

91 名前:名無しさん@自治新党スレでTATESUGI値審議中 [sage] 投稿日:2010/08/04(水) 23:39:22 0
床が崩れるぞー

92 名前:リリィ ◆jntvk4zYjI [sage] 投稿日:2010/08/05(木) 07:16:54 0
>77
『僕の声は、トクベツな人達にしか聞こえないんだ』
テレパシーは笑みを含んだ声で、土下座をしているエンカに囁いた。
『残念だったね』

>80 >90
>「テロリスト、だと? ……でっち上げる気か、 
> それも結構。お前らの計画がおじゃんになっても構わないならな……」 
『正直、僕はもうどっちでも構わないのさ』
刀を投げ捨て総裁へと近づくレイヴンの背に、笑みを含んだ声が届く。

>「ふ、ざ、けんなっ!濡れ衣被せといてそれかよ!?腹立った、てめーぜってー燃やしてやる!」 
『それは結構。だが総裁は、彼女を気に入っているようだ』
声の主は、わざとグラディスを煽るような物言いをした。

だがセラエノの次の一手により、場の状況は一変する。



>「リリィが暗殺を目論むテロリストだとの事。 
>そう断じるにはそれなりの証拠がおありでしょうね。 
>今すぐその提示を。
セラエノは知らないが、実はリリィの入学受付には問題があった。
なにせ、時間切れで受け取れないと言われているにもかかわらず、
『お願いします受け取ってください』と強引に書類を押し付けてきたのだから。 
だがそれ以前の問題で、テロリスト云々のテレパシーはベッドフォードには届いていないのだが。

>老人の興味は話の内容よりも彼女自身に向いている  
>「流石は神と言った所か お前の力は実に素晴らしい…  
>なら私に協力したまえ さすれば他の者は不問にしよう」  
協力、と言えば聞こえが良いが、実際のところは脅迫である。
リリィを締め上げる魔力は強くなりこそすれ、弱まっている様子はないからだ。

>91
>「にゃあ」 
これでどうだと言いたそうに、銀色の杯を掲げるグレン。 
>銀の魔除けの雰囲気から、グラディスはうっと後ずさる。 
>「うげえ……銀かよー」 
>「これは…まさかブリュンヒルデの杯!!」 
>「これぞ失われた遺物の1つ これと対になる水差しはどうした?」 
>「……はぇ?え、何それ怖い……でもすげえ猫!なんでそんなもん持ってんだー?」 
グレンの前足を持って持ち上げるグラディス。 
興奮した様子のベッドフォードに、その場にいる皆の注目が集まる

>床が崩れるぞー 
度重なる破壊のためだろうか リリィが横たわっている部屋の床に穴があいた。
芋虫よろしく転がっているリリィは、そのまま落ちるしかないだろう。

93 名前:エンカ ◆jWBUJ7IJ6Y [sage] 投稿日:2010/08/05(木) 08:14:53 0
>80>84>85>88>90>92
「おっ、と!」
エンカはレイブンが投げ捨てた刀をキャッチした。
その後、ゆっくりと総裁に近づくレイブンにエンカが言った。
「待てよ!何するつもりだよ!おめぇの言うこともわかったが、
 変に強気なことしたらリリィがもっと痛い目にあうかもしれねぇのによーっ!」
> 当の老人は子供が持ち掛けるビジネス等に乗る気は無く話を聞く耳すら持っていないという素振りで雛型達に背を向け窓の外を向いてしまった
「(あのジジィ、俺達なんか眼中にねぇって感じだ。でも、だったら一体何がしたいのかわからねぇぜ?)」
エンカはそう思った。

> ゴゴゴゴゴゴ!!
「なんだこの音は!うおぁああっ!?」
> それぞれの思惑が交錯する部屋に地鳴りとともにそれは入ってきた。
> 打ち破られた窓に突っ込んできた巨大な蛇の頭。
> 否、茨の塊り。
> それとともに室内の茨も色を取り戻し、脈動を始める。
> 「お待ちなさい!全員動かないで!
> あなた、まず火球を消して。そちらの方はそれ以上近づかないで!」
> 声とともに茨の塊りがほどけ、その中からメイションとセラエノが現れた。
「セラエノ!?メイションも一緒…ということは、この一帯の茨の正体はセラエノかよ!?」
≫「おかしいですよ、セラエノさん!?」
たぶん、メイションはもうセラエノ“お姉ちゃん”と呼ぶことはないだろう。
≫「リリィお姉ちゃん!!」
「待てメイション、セラエノが説得してくれるみてぇだからよーっ!」
セラエノの説得(あるいは説教?)に対する総裁の反応は、エンカにとっては気に入らなかった。
> 「流石は神と言った所か お前の力は実に素晴らしい…
> なら私に協力したまえ さすれば他の者は不問にしよう」
「良かったなぁ、セラエノ?おめぇを神として敬意を払ってくれてるみてぇだぜこの人は?
 銅像でも彫ってもらって玄関に飾らせたらどうだ?」
エンカはセラエノに皮肉を言った。
「だいたい気に入らねぇのはよぉ!俺が地面に落ちた小銭を拾おうとして爪の間にゴミが入る事より気に入らねぇのはよぉ!
 おめぇが俺の知らないことを知りすぎてることだぜーっ!
 なんでこの部屋に入ってきたばかりのおめぇが、俺が総裁に謝ったことを知ってんだ!?
 なんでリリィが蜘蛛に襲われただの、館に侵入していなかっただのって知ってんだ!?
 俺はそんなおめぇに不信感を隠せねぇよなーっ!俺達はずっと一緒に歩いて来たのによーっ!」
メイションも同じようなことを思った。そして、もしかして自分の頭の中にある情報を読んだのだろうか?と思った。
もしもそうだとしたら、メイションはセラエノが嫌いになっただろうが、
しかし、リリィが連れていかれた時よりずっと前からメイションは蜘蛛の毒で意識を失っているので、
それはないだろうなと思った。黙ってセラエノの返答を待つことにした。

エンカがふと総裁の方を見ると、今度はグレンの差し出した銀の杯に夢中になっていた。
「(なんだよこのジジィはよぉ…不思議な薬でもキメてんのかーっ!?)」
> 「そーいやこいつって何だっけ?誰のペット?随分と賢いよなー」
> ぶらーんぶらーんと前に後ろに振り子運動させる。
「グラディス、かわいいからやめとけよ。
 そいつはグレン・ダイザー、下克上が好きらしいから、グレンのペットが飼い主だぜ?
 さっきまでは普通に喋れてたんだがなぁ?」

> 度重なる破壊のためだろうか リリィが横たわっている部屋の床に穴があいた。
> 芋虫よろしく転がっているリリィは、そのまま落ちるしかないだろう。
「やっべ!リリィが!?…う、わーっ!!」
落ちそうになったリリィを助けようと走ったエンカだったが、今度はエンカの足元の床に穴があいた。
特別な力を持たないエンカは、そのまま落ちるしかなかった。
しかし、2mほど落ちたところでエンカの体が止まった。彼を受け止めたのは蜘蛛の糸だった。
「ミク!どうして俺を助けた!?てめぇだって人質を取られてるはずだろうがっ!?」
エンカにはミクを含めた他のメンバーが見えなくなったので、当てずっぽうに叫んだ。
厳密に考えればミクの蜘蛛の糸に引っかかったからといって、
本当に助けてもらったのか、偶然なのか、また蜘蛛のエサにされそうなのかわからないのだが。

【エンカ:レイブンの刀を持った状態で穴に落ちる。ミックミクにされる予感】

94 名前:ミク ◆sto7CTKDkA [sage] 投稿日:2010/08/05(木) 15:18:54 0
>84-93
思わぬ事態に困惑するミクの耳にも、地鳴りのような音は聞こえてきた。
窓から飛び込んできたのは蛇の頭とも見える茨の塊であり、自然のものではないのは明らかだ。
ミクは茨に対応するために体を少し巣の上部に持ち上げ、脈動し始めた茨から身を遠ざける。
>「お待ちなさい!全員動かないで!
声と共に茨の中から出てきたのは、ミクの予想通りセラエノだった。
館を覆った茨がセラエノの仕業だったという仮説は、これで証明された。

セラエノは自己紹介の後、事態が適法に処理されるよう告げ始める。
内容はミクから見ればお笑い種だ。
人食いサメに食べられる前にすべきなのは、念仏を唱えるか退治する事で説法を聞かせることではない。
そしてベッドフォードはミクの見た所、人間よりも人食いサメに近い存在なのだ。
もちろん、ミクはセラエノに感謝したい事もある。
一つは、服の記憶を読み取れるという自分の能力をセラエノが明かした事。
もう一つは、ミクに必要だった動揺から立ち直る時間を稼いでくれたという事だ。
ミクはユリの様子をうかがった。
思った通り、ミクとは違う意味でセラエノの言葉を理解できていないようだった。

>「神が断れば 動け」」
ベッドフォードの意思表示に、ミクは無言で笑いかけて了解の意思を伝える。
それに合わせて音もなく、手のひらほどの大きさの蜘蛛がミクの作った巣の上部に移動を始めた。
セラエノは総裁の誘いを断るだろうと考えて、使い魔を戦いやすい位置に配置したのだ。

>「だいたい気に入らねぇのはよぉ!(後略)
エンカはセラエノが知りすぎている事に不信感を抱いたようだが、ミクはそうは思わなかった。
セラエノが神である以上、何らかの方法で知っていてもおかしくないと思っているからだ。
もちろん知りすぎている事に反感を持つ者もいるだろうが、特殊能力者が理解されないのは世の常だ。
少しはセラエノを理解してあげないと、彼女の心が闇の側に落ち込むわよエンカ。
そんな事を考えられるほど、ミクは落ち着きを取り戻している。

>「にゃあ」
>「これは…まさかブリュンヒルデの杯!!」
「ブリュ…なんですって?」
ミクにとって意外な事に、ベッドフォードは二足歩行する猫の差し出した杯に興味を示した。
>「これぞ失われた遺物の1つ これと対になる水差しはどうした?」
>「……はぇ?え、何それ怖い……でもすげえ猫!なんでそんなもん持ってんだー?」
>「グラディス、かわいいからやめとけよ。
確かにその猫は可愛くておいしそうに見えたが、ミクにとっては老人の心変わりの可能性が気になった。
セラエノが誘いを断っても、遺物探しのために交渉を始めるのではないかと思えたのだ。

総裁の部屋に大穴が開いた時にミクが真っ先にした事は、ユリに糸を飛ばして彼女を引き寄せることだった。
>「やっべ!リリィが!?…う、わーっ!!」
エンカの声がした方は一瞥したが、すぐに視線をユリに戻す。
落ちないように糸で捕らえておけば、後で何とでもできるからだ。
「ユリ。 もう良い子は寝る時間よ。
 詳しい話は明日してあげるから、今日は何もかも忘れて、ゆっくり寝なさい」
>「え。え? えーと。確かミクって寮に残ってたはずだよね…? でもここは総裁がいて…あれ?
> ね、ねえミク、なんか顔が近いよ? それに真顔だしそれにそれに…むーっ!?」 
ミクはユリの顔を両手で挟んで引き寄せると、そのまま強引に唇を重ね合わせた。
突然の事にユリは目を白黒させてむーむーと言いながら暴れていたが、しばらくするとおとなしくなる。
口移しで催眠性の毒を飲まされたのだ。

>「ミク!どうして俺を助けた!?てめぇだって人質を取られてるはずだろうがっ!?」
すぐにはその問いに答えずに、ミクはユリを糸で縛って使い魔の蜘蛛に引き渡す。
後は使い魔に任せておけば、当面はミクもいろいろ安心というわけだ。
誰かがユリを起こそうとすれば目が覚めるだろうが、それは蜘蛛が邪魔しようとするだろう。
ユリの体が巣の上に引っ張り上げられていくのを見届けてから、やっとミクはエンカを見る。

95 名前:ミク ◆sto7CTKDkA [sage] 投稿日:2010/08/05(木) 15:22:38 0
「まるで助けられては困るような言い方ね。
 こんな時には、まず命の恩人に礼の一つも言うのが礼儀というものではないかしら」
するすると自分の体を支える糸を伸ばし、ミクはエンカの止まっている位置まで下りてくる。
「人質を取られているからこそ、あなたを助けたのよ。
 私が総裁に協力している以上、総裁を助ける協力者になりそうな者を助けるのは当然。
 そうではなくて?」
ミクはそう言って、足下の穴を覗き込んだ。
「下まではかなり深そうね。
 続きは降りながら話をしましょう」
エンカを支える足場が下に降り始め、ミクも同じ速度で穴を下に降り始める。

「他の者達と違って、あなたは総裁に土下座してリリィを助けようとしたでしょう?
 それに、ベッドフォードに協力しても良いという意思表示も見せた。
 単刀直入に言うと、エンカも私と同じように総裁に協力する気はないかという事よ。
 そうすれば、リリィやメイション君、それに他の仲間の助命も嘆願できるでしょう。
 総裁は学園の有力者だから、協力すれば今後の学園生活が有利になるかもしれないわね。
 悪い話ではないと思うのだけれど、いかがかしら?」

話しているうちに、ミクたちは穴の下に到着した。
そこは石造りの、自然にできたとも人工的にできたとも思える洞窟のような場所だった。
「欠陥住宅ではないでしょうから、何かの考えがあってこの上に館を立てていたと考えるのが普通でしょうね。
 私達を下に落として、あの老人が何をしたいのかは知らないけれど。
 …他の者達も近くに落ちているのかしら?」
ミクは糸を離れて床に降りると、エンカをひっかけていた蜘蛛糸を外して自由にする。
これは、エンカが協力を受け入れても拒んでも変わらない。
「そういえばあなた、森で魔導書を見つけたとか言っていたわね。
 もしかしてこの騒ぎ、その魔導書が原因なのではなくて?」 
周囲を見回しながら、ミクはエンカにそう尋ねた。
エンカの持つ刀にまったく警戒していないように見えるが、もちろんそんな事はない。
攻撃すればミクの周囲に張られた蜘蛛糸に捕らわれることになるだろう。

96 名前:グレンSUフリード ◆cOOmSNbyw6 [sage] 投稿日:2010/08/05(木) 17:16:41 P
>88>90-93
>「これぞ失われた遺物の1つ これと対になる水差しはどうした?」
「にゃあん」
(こんなものフィー坊なら 36個持ってるよ)
んなわけがない伝説の遺物なのだ
だが世界には写しただけで複製品を創り出すと言われているシャドーミラーも存在する
本物が本物のまま増やされていないとは限らない
「にゃあおん」
(水差しなんて知らないよ)
と律儀に答えるグレン
まあフリードの所有物の事なんてフリードしか知らないので
もしかしたら持っているかも知れない

>「……はぇ?え、何それ怖い……でもすげえ猫!なんでそんなもん持ってんだー?」
びろ〜んと伸びる猫
狼男に前足を握られて重力に足を引かれびろ〜んである
>「そーいやこいつって何だっけ?誰のペット?随分と賢いよなー」
「うなぁ」
振り子のように振られるグレン
ちょっと気持ち悪くなってきた

中にいるフリード
「・・・・・・うえっぷす」
まだ目が覚めていないがなんだか気分が悪くなってきたようである

>「グラディス、かわいいからやめとけよ。
 そいつはグレン・ダイザー、下克上が好きらしいから、グレンのペットが飼い主だぜ?
 さっきまでは普通に喋れてたんだがなぁ?」
「にゃあん」
(夢は使い魔と主人の地位を逆転すること)
出番的意味でもう成し遂げられていると思われる

>床が崩れるぞー
なにこれ?手抜き工事?姉歯?ってな具合に抜ける床
転がり落ちるリリィ
取り戻すなら今のうちである
>「やっべ!リリィが!?…う、わーっ!!」
一緒に落ちていくエンカ

「にゃあん?」
(飛び込むべきか飛び込まざるべきか?)
だがしかしグラディスの腕につかまれているせいで身動きがとれないグレン
「にゃああん」
(オープンユニオン)
フリードと分離しその手から逃れるグレン
ぽむっと床に落ちる体操服短パンで寝ているフリード
ただいま爆睡中である
「にゃあん」
(チェンジユニオンスイッチオン)
またしてもフリードと合体し羽根の生えた長靴をはいた猫の姿となるグレン
「なあにゃ!!」
(早く助けなきゃ!!)
と言って穴に飛び込もうとするグレン
はたして誰か止めようとするのか?
それともそのまま飛び込んでいくのか?

97 名前:セラエノ ◆LGeruanYjI [sage] 投稿日:2010/08/05(木) 23:00:13 0
ベッドフォードはセラエノに、協力すれば他の者は不問にすると明言した。
本来ならば破格の条件。
だが、セラエノの露出した口元に笑みが浮かぶ事はない。
恐らくミクが想像した通りであろう言葉が紡ぎだされる。

「学園の生徒である以上、事と次第によってはあなたに協力するのは吝かではありません。
しかし!これは事と次第に当てはまりません。
罰せられるべきならば適正に罰せられるべきであり、法と正しき理を捻じ曲げて救済するなど言語道断!
そして、罰せられるに値する証拠を提示できないのであれば、これは単なる脅迫でしかない。
故に彼女を救出し、お暇させていただきます!」
毅然と言い放つセラエノ。
その言葉に一遍の澱みもなく、茨がその意思を汲み動き出す。

その茨の動きを止めたのはエンカの皮肉だった。
投げつけられた言葉に注意が向いたところに更に言葉は続けられる。
>「だいたい気に入らねぇのはよぉ!俺が地面に落ちた小銭を拾おうとして爪の間にゴミが入る事より気に入らねぇのはよぉ!
> おめぇが俺の知らないことを知りすぎてることだぜーっ!
> なんでこの部屋に入ってきたばかりのおめぇが、俺が総裁に謝ったことを知ってんだ!?
> なんでリリィが蜘蛛に襲われただの、館に侵入していなかっただのって知ってんだ!?
> 俺はそんなおめぇに不信感を隠せねぇよなーっ!俺達はずっと一緒に歩いて来たのによーっ!」
「エンカ…私は…あなたが目で見るように、耳で聞くように、残気を感じる事が出来るの。
だからこの部屋で少し前に何が起こったかを一望すれば把握できるのよ。
リリィについてはこの部屋に着いた時に、既にサイコメトリーで彼女の行動を把握したからよ。」
残気とは生命体が発する気の残り。
誰がどのように動いたか、残像のようにセラエノは把握する事が出来る。
そしてリリィの罪の証拠提示を求めた時には既にリリィの行動を把握していたのだ。
証拠提示の際に捏造されないように。
全ては理に乗っ取った行動であり、一片の後ろめたいところはない。
にも拘らず…
セラエノの胸には小さな痛みが生まれていた。

エンカは自分が神である事自体が気に入らないのだろうか?
いや、それでもいい。いいはずなのだ。
自分が神である事はどうにもならない事。
それを拒否する気持ちはやがて迫害へと至り、セラエノの望むべく形になるのだから。
なのに胸が痛むのは自分自身でも理解できないでいる。

理解されない、不信に思われる。
慣れているはずなのに、望んでいるはずなのに、エンカの皮肉とその後に続く言葉に胸が痛むのだ。
神の視座は往々にして理解されない。
そう判っているはずなのに…
セラエノの声は揺らぎ、説明をしているだけなのにどこか言い訳がましくなってしまっている。
ベッドフォードに対する言葉とは比べ物にならないほどに。

この感覚に戸惑い、理屈立てようとするが上手く行かなかった。
上手く行くはずがないのだ。
初めての感覚に精神的にも肉体的にも消耗しつくしている。
そんな時に考えてもマイナスな考えは生まれてもプラスの考えは生まれるはずはない。
呼吸は浅く、速くなり、肉体にもその影響が現れ始めていた。

98 名前:セラエノ ◆LGeruanYjI [sage] 投稿日:2010/08/05(木) 23:03:09 0
更に追い討ちをかける事が起きる。
床に穴が開き、落ちそうになったリリィを助ける為にエンカが駆け出したのだ。
次の瞬間エンカも足元に開いた穴に落ちてしまうのだが、その時セラエノの胸に去来したものは…
黒い粒子が棘のように刺さった痛みから滲み出るような感覚。
それがなんなのかは今のセラエノは知る事はできない。
ただ、部屋に入った時、状況把握などで気に留めなかった【あの言葉】が鮮明に蘇る呼び水となったことだけは確かだった。

≫「おかしいですよ、セラエノさん!?」
≫「リリィお姉ちゃん!!」
(……あれ?セラエノ【さん】?リリィお姉【ちゃん】?
え…どうして……
エンカ…メイション…どうして、リリィ…なの?)
あらゆる事象を、感情を理屈をつけ理論立てコントロールしてきたセラエノ。
だが今は棘の痛みから噴出した黒い粒子が胸全体に広がり塗りつぶしていく。

元々体力、精神力ともに消耗しつくしている状態で、美少年の懇願というドーピングが突然消えうせる。
それがどういった事を引き起こすのかは最早考えるまでもない。
糸が切れた人形のように崩れ、両膝を付く。
あたりを埋め尽くしていた茨も全て消えうせてしまった。
最早今のセラエノにはなんの力も残っていない。

ゆっくりとそのまま倒れふそうとするセラエノだったが、だがここで倒れるわけには行かない。
神の威厳の為にも倒れるわけには行かないのだ。
美少年ドーピングが切れ、理解不能の黒い粒子に胸中を塗りつぶされたセラエノを支えるのは神たる自覚。
何とか踏みとどまろうとした時、それは起こった!
>「にゃああん」
>(オープンユニオン)
グラディスの手から逃れる為に分離したグレン。
ぽむっと床に落ちる体操服短パンで寝ているフリード
「び、美少年の寝姿(体操服短パン)〜〜!?」
凄まじい勢いで鼻血が噴出し、その勢いで体が起き上がってしまうセラエノ。
ドンだけの勢いなんだよ!というツッコミは喜んで受けよう。

ともかく期せずして立ち上がれたのだが、グレンがすぐに合体して長靴を履いた猫姿になってしまったので最早これまで。
いや、美少年の寝姿を下手にチラ見させられたのでその落差は更に大きい。
力も血も使い果たしたセラエノは今度は仰向けに倒れ起き上がる事はできなかった。

【セラエノ、大量の鼻血を噴出して仰向けに倒れて気絶】

99 名前:レイヴン ◇70VgGM3HY6 [sage] 投稿日:2010/08/06(金) 01:11:11 0
>80-82>85>88>92-93>98
>「お兄ちゃん…どこに行っちゃうの…?」
「……ユリのお友達が泣いてる。
 だから助けに行くんだ。ユリだって、お友達が泣いてるのは嫌だろう?」
背中越しに語る内容は、あまり間違っていない。
ただ鴉にとっての誤算は『総裁の近くにいる少女』もユリの友達だったと言う事だろう。

>人質を取られているとは思えないほど楽しそうに、ミクは笑う。
少女の自己紹介と、それに続く言動のあまりの乖離ぶりに鴉は不信感を募らせる。
十中八九ウソ……ではないにせよ、誤解曲解を招くような言い回しをしていると感じたのだ。
仕事柄騙し騙されは茶飯事だった為、特にそうした部分に対する勘が
自然と養われたわけだが……

>ミクは先ほどより余裕のない表情でベッドフォードを見、戦いか交渉かの意思表示を待った。
故にか、ミクの表情の変化にいち早く気づいた。
ユリの友達と言っておきながら、ユリがミクに気づくまでミクはユリに気づかなかった。
……詮無き事か、今のユリは薬の副作用で幼女化しており知らなければほぼ別人である。
だが気づいてからのミクは、先ほどまでの余裕が鳴りを潜めていた。

>「待てよ!何するつもりだよ!おめぇの言うこともわかったが、
> 変に強気なことしたらリリィがもっと痛い目にあうかもしれねぇのによーっ!」
>その言葉とともに茨は鉄格子のようにレイヴンとグラディスを取り囲みその動きを牽制する。
そんな考え事をしていると茨がまるで鉄格子のように展開し道を塞いだ。
続く声を聞くに、この茨を操っているのはセラエノだろう。
「……揃いも揃って勝手な事を言ってくれるよ。
 言っただろう、ビジネスの話をすると。部屋の端と端で話すなんて
 不自然な状況を終わりにしたかっただけなんだがな……」
もちろん、ウソである。本当はリリィの様子を間近で確認する為に
距離を詰めようとしただけである。

>「良かったなぁ、セラエノ?おめぇを神として敬意を払ってくれてるみてぇだぜこの人は?
> 銅像でも彫ってもらって玄関に飾らせたらどうだ?」(略)
「うるさいぞエンカ!」
あえて苛立っている様な声色で怒鳴る鴉。
「黙って聞いていれば、グダグダと……女の腐ったような事しか言えないのか!
 セラエノが神様だろうが、お前の知らない事を知っていようが、そんな事はどうでもいい。
 ……必要なのは『敵か味方か』だけだ。少々的外れだが、セラエノは第三者的な立場で、
 いやどちらかと言えばこちらよりの立ち位置で場を収めようとしているだろうが……
 痴話喧嘩も結構だが、帰ってからやれ。犬も食わないもんを俺達に食わせる気か?
 ……いいから黙ってろ。ヒステリーは女の特権だ」


100 名前:レイヴン ◇70VgGM3HY6 [sage] 投稿日:2010/08/06(金) 01:11:52 0
>雛型達に背を向け窓の外を向いてしまった
>老人の興味は話の内容よりも彼女自身に向いている
>杯を見るやまたも老人は目の色を変えた
「……聞く耳もたずか」
長生きしてる割には人の使い方が下手だな、と思う鴉。
その上、人が変わった様にころころと興味の対象を変える……

(「まさか……」)
鴉に浮かんだ疑問、それへの解答候補は三つ。
・既にイカレてる
・多重人格者
・……黒幕が別にいる

(「どれも根拠が薄い……今はそれよりも……」)
茨の檻の中で、鴉はリリィを一瞥する。やはり動きはない。

>『正直、僕はもうどっちでも構わないのさ』
響く声はどことなく総裁の心中を表しているようにも感じられた。
ならば、『もうどっちでも』と言う言い回しはしないはず。
だが完全に一致と言うわけでもないようだ。
(「ちっ……場を引っ掻き回すだけの道化師か。クソ忌々しい」)

>度重なる破壊のためだろうか リリィが横たわっている部屋の床に穴があいた。
>芋虫よろしく転がっているリリィは、そのまま落ちるしかないだろう。
>あたりを埋め尽くしていた茨も全て消えうせてしまった。
気が逸れたその瞬間を狙いすましたかのように
突如部屋が崩壊し、リリィが転がり落ちそうになった。
エンカも駆けつけようとしたが、足元に開いた穴に飲み込まれていく!
だが鴉はリリィを優先した。この屋敷には縦横無尽に蜘蛛の糸が張り巡らされていた。
特に意識しなくても引っかかるだろうし、エンカ自身も意識があるから
そこまで深刻な事態にはならないだろうと――――。

崩落と共に消え失せた茨の事を気にする暇もなく駆け寄った鴉は精一杯手を伸ばし
「……っ!」
奈落の底に落ちかけたリリィを辛うじて捕まえる事に成功したが、
片手で脱力した人間を引き上げるほどの膂力を鴉は持ち合わせていない。
そんな状態はリリィ側にも相当の負担を強いるだろう……
もっとも、それ以上に深刻な異常が鴉を襲っているのだが。
「ぐっ……!っ、く、くっ……」
リリィの自由を奪っていた総裁の魔力が、許可なく触れた鴉を痛めつけているのだ!
無理な体勢の中、拷問に等しい痛みを受け続けている鴉。
崩落は自身の近くにも及んでおり、恐らく長くは保たないだろう……!


101 名前:レイヴン ◇70VgGM3HY6 [sage] 投稿日:2010/08/06(金) 01:12:57 0
―――――一方その頃―――――


>「他の者達と違って、あなたは総裁に土下座してリリィを助けようとしたでしょう?
> それに、ベッドフォードに協力しても良いという意思表示も見せた。
> 単刀直入に言うと、エンカも私と同じように総裁に協力する気はないかという事よ。
> そうすれば、リリィやメイション君、それに他の仲間の助命も嘆願できるでしょう。
> 総裁は学園の有力者だから、協力すれば今後の学園生活が有利になるかもしれないわね。
> 悪い話ではないと思うのだけれど、いかがかしら?」
「止めておきなさい、少年よ。君の目の前にいるのは無慈悲なる蜘蛛神。
 異界の神を由来とする滅びを紡ぐ者の甘言に呑まれれば、君も異形と成り果てるだろう。
 道は己で決めるもの、踊らされ踏み外す事努々無きよう」
その声はエンカに向けられていた。声のした方を向くと、ミクの張った蜘蛛糸をまるで
枝の様に掴みながら一羽の白いハヤブサが、陽光の様な淡い光を放ちながら止まっていた。
その言葉はどこか曖昧で、真意を伝えようとする意思は感じられなかい。

「この姿では初めましてですね、初音美紅殿。
 まさか、貴女ほどの方が直接人心を惑わしておられるとは……
 退屈は長命の最大の敵とはよく言ったものですな。
 黄衣の女神と言い、近年は人の姿を取るのが流行りなのでしょうかね?」
どうやらこのハヤブサはミクやセラエノの事をよく知っているようだ。
世間話をしているように軽い調子だが、その眼光は獲物を狙っているかのように鋭い。


102 名前:グラディス ◆e2mxb8LNqk [sage] 投稿日:2010/08/06(金) 22:36:09 0
>「うなぁ」
>「グラディス、かわいいからやめとけよ。
> そいつはグレン・ダイザー、下克上が好きらしいから、グレンのペットが飼い主だぜ?
> さっきまでは普通に喋れてたんだがなぁ?」
>「にゃあん」
「ほほー。そいつぁびっくりだなー、すげー猫!」

そんなこんなしていると、更なる異変が皆を襲う。
>「やっべ!リリィが!?…う、わーっ!!」
>「……っ!」
「リリィちゃん!エンカ!レイヴン!」
グレンを持ち上げたまま三人の名前を呼ぶが、一番近いエンカはグラディスの魔法の及ぶ範囲から外れている。
どんな風に穴が開いているかもわからないために、迂闊に飛び込むことは出来なさそうだ。
>「にゃああん」
猫の鳴き声。同時に行き成りグレンから誰かが分離する。
そこにいたのは、前に見たことのある美少年!
「んな!?えーっと、ショタメン君じゃねーか!?」
名前は覚えていない。流石に人名を一辺に覚えるのは難しいのだ。
グレンが再度鳴き、フリードと合体を果たす。
>「なあにゃ!!」
「あっ!?待てコラー!」
言うが遅し、既にグレンは穴へと飛び込んでいってしまった。
>「ぐっ……!っ、く、くっ……」
レイヴンはギリギリでリリィを捕まえているが、苦しそうに呻いている。
向こうを見ると、メイションの傍にいるセラエノが血塗れで倒れている。

グラディスはどうしようかと一瞬迷った挙句、床に掌底を叩き込んだ!
自分を中心として、床の抜けた部分に氷柱を作り出し、床を補強するつもりなのだ。
ピキピキと急速に氷の固まる音を聞きながら、グラディスは注意を促す。
「レイヴン!そいつにリリィちゃんを『バキバキバキィッ!!!』置いて……ぅえ?」
急に発せられた音は、何か木材が大量に壊れる音。
よく見ると、レイヴンの立つ部分に氷柱が思い切り刺さっている。魔法の加減を間違えたようだ。
崩落の危険性は益々上がっているようにしか見えない。

そして更に不味いことに……
「げげ、やべー……『バキッ!』うおう!?『バキッ!』『バキッ!』ややや、やばい!まずった!」
次々に破壊音が鳴り響く。その音はセラエノやメイションの方からも聞こえてきていた。
氷を作り出すということは、氷のあるところに更なる質量が掛かる。
ちなみにグラディスは『ちょっとした』手違いで、床の下に氷柱で出来た大きな大きな逆の針山を形成している。
グラディスの周りは氷を作ったお陰で少し補強が掛かっているので、一番負担が掛かっているのは壁周りの床。
こうなれば、この一室の床の全てごと落ちる可能性もどんどん高まっている。
「……なんか、俺『バキッ!』の居る位置がどんど『バキキッ!』ん下がってるような……」
止まる気配の無い木材の破壊音。逃げるにも固定するにも既に手遅れらしい。
「えーと、こういう時に『バキバキッ!』言う言葉『メキメキメキ……』は……」
一息吸う。


「…………やっチッたぁ―――ッ!!!」
残った木材が全て折れる轟音と共に、全ての床が抜けた。

103 名前:グレンSUフリード ◆cOOmSNbyw6 [sage] 投稿日:2010/08/07(土) 10:59:11 P
>102
キャット空中大回転
とすん・・・と地面に落ちるグレン
助けるはずだった人物ははるか上の蜘蛛の巣である
「にゃなぁ?」
(なにこれダンジョン?)
目の前に広がる謎の洞窟
多分男子寮の地下にあるというダンジョンの一部であろう
こんなところにも繋がっていたのかと感心するグレン
取り敢えず蜘蛛の巣まで上がらないと話に関われないであろう
と一生懸命木の根っ子っぽいものを辿り上に登るグレン
「にゃなぁ」
(木登りは得意でね)
誰もそんなことは聞いていない

>「…………やっチッたぁ―――ッ!!!」
という声と共に上から降ってくるグラディス
「ぶぎゃぁああああああああああ」
グラディスに押し倒され落下するグレン
これではもう一度登り直しである

>95
>「下まではかなり深そうね。
 続きは降りながら話をしましょう」

だがそうこうしているうちに肝心の本人たちが降りてきてしまった
>「そういえばあなた、森で魔導書を見つけたとか言っていたわね。
  もしかしてこの騒ぎ、その魔導書が原因なのではなくて?」
猫の聴覚は人間より鋭い
狼男であるグラディスも同等であろう
魔道書・・・・それが今回の事件の鍵であるようだ
「にゃあ?にゃあん」
(魔道書?まさか猫神バーストの書)
んなわけがない
ちなみにエジプト神話の神パテストの暗黒面の神であるバーストはグレンにとっても当然信仰対象である
こう見えてもグレンは信仰心が高くそれなりの奇跡・・・・と言っても武器が空から降ってくるだけだが
が起こせるほどである
「にゃあ!」
(今回の作戦はリリィお姉ちゃんの回収及び屋敷からの脱出!)
自分がすべきことを再確認するとリリィを探し始めるグレン
まだ上にいるのかとも思ったが・・・・・・上空を見ると天井が見えた・・・・あったはずの屋敷の床がなかった
床がすべて抜けたということは空を飛べる人間がいない以上すべての人間が落ちたということである
当然上にいたはずのリリlや総帥やレイブンも・・・・名前は鳥っぽいが人間なら落ちているはずである
だがあんな高いところから落ちて骨折とかしていないのだろうか?
こんな時に限って保険医はいないし



その頃保険医はゴーストの先生が犬を追い払うのに成功したのを喜び
でっかい試験管に頬ずりをしていた
中にいる人はなんか嫌そうな顔をしていたような気がするがきっと気のせいだろうとゴーストの先生は思った


よし!こんな時こそ神様を頼ろうと猫の神様に祈り始めるグレン
ひらひらっと落ちてくる神・・・もとい紙
そこにはこう書かれていた・・・・・・本日営業時間終了 byBast
「にゃっっぁああああああああああああああああああああ!!」
(神様っっっぁあああああああああああああああああああ!!)
猫は夜行性のはずなのにもう猫神さまは寝ちゃってるようである
しょせん猫か!!

104 名前:リリィ ◆jntvk4zYjI [sage] 投稿日:2010/08/07(土) 17:20:00 0
穴に落ちそうになったリリィを助けようとして、足元が崩れ同じく落ちたエンカ。
ユリを『寝かしつけた』ミクは、助けたエンカと一緒に地下に掘られた穴へと降りていく。
同時刻、リリィを助けようとしたグレンは、グラディスのぶらーん攻撃(?)を合体解除でかわす。
穴へ飛び込む僅かな間、出現した体操服姿も悩ましい美少年。
そして、なぜか盛大に鼻血を噴出す神様。
>「ぐっ……!っ、く、くっ……」 
>リリィの自由を奪っていた総裁の魔力が、許可なく触れた鴉を痛めつけている。
>崩落は自身の近くにも及んでおり、恐らく長くは保たないだろう……! 
さらには、不安定な足元を補強しようとして失敗するグラディス。

――――そして。
>「…………やっチッたぁ―――ッ!!!」 
>残った木材が全て折れる轟音と共に、全ての床が抜けた。 
――――暗転。


「――――・・・・・・・ん・・・・・・んんん?」
ようやく目を覚ましたリリィは、舞い上がる埃をうっかり吸い込んでしまい、盛大に咳き込む。
「あ・・・・頭痛い・・・・・・あれ?何で私、こんなところに?」
なんとか思い出そうとするが、記憶は夢の中で見た出来事のようにおぼろだった。

「ここどこ?あれ、私、何してたんだっけ?
 確か地下牢から逃げて、豪華な部屋で総裁様にあって・・・・・・あって・・・・・・・それから・・・・・・?」
まるで、そこだけ記憶が切り取られてしまったかのようだ。
思い出せない。
それでも、総裁の姿を思い浮かべるだけで頭痛がして、恐怖に全身が総毛だった。

空を見上げると、遠くに小さく蝋燭らしき灯りがぼんやりとかすんで見えた。
だが落ちてきた場所は遠く、リリィにはとても上れそうにない。
「もしかして、あそこから落ちてきたのかな?」
箒を持っていないリリィにとっては、落ちたらとても無事ではすまない高さだった。
というより、ミクの張り巡らされた蜘蛛の糸やレイヴン達の助けが無ければ、絶対に死んでいたに違いない。
「まさか、ね」

「・・・・・・・あっ!レイヴンさん!?大丈夫ですか?」
暗闇に目が慣れたリリィは、今頃になってやっとすぐ傍にいたレイヴンに気づいた。
リリィを苦しめていた総裁の魔力は、今は効果を失っている。
リリィがレイヴンに触れても、痛みを感じることはないだろう。

「大丈夫ですか?立てますか?
 それと、私、総裁様のお宅にいたはずなのに、一体なぜこんな変な場所に?
 ――――っていうか、ここ、一体どこなんですか?」
いまだ混乱し、空気も読めないリリィは、矢継ぎ早に質問を始める。
レイヴンにとってはたまったものでは無いだろう。

だが、いつまでもこうして入られない。
「皆どこなの?無事でいる?私とレイヴンさんはここよ!皆、大丈夫なの?!」
リリィはおもむろに仲間を大声で呼び、立ち上がろうとした。
だがうっかり瓦礫に足をとられ、盛大にすっ転んだ。
「ああっ、レイヴンさん、ごめんなさいごめんなさい!
 もう、何でここ、こうもゴミだらけなの?!おまけに暗くてよく見えないよ――――!!」

105 名前:エンカ ◆jWBUJ7IJ6Y [sage] 投稿日:2010/08/07(土) 18:17:13 0
>95>101
> 「まるで助けられては困るような言い方ね。
>  こんな時には、まず命の恩人に礼の一つも言うのが礼儀というものではないかしら」
> するすると自分の体を支える糸を伸ばし、ミクはエンカの止まっている位置まで下りてくる。
「上等だ!ありがとよーっ!」
エンカはミクにそう怒鳴った。
「だが俺を助けたことで人質が痛い目にあったらどうするってんだ!?」
> 「人質を取られているからこそ、あなたを助けたのよ。
>  私が総裁に協力している以上、総裁を助ける協力者になりそうな者を助けるのは当然。
>  そうではなくて?」
> ミクはそう言って、足下の穴を覗き込んだ。
> 「下まではかなり深そうね。
>  続きは降りながら話をしましょう」
「あ…」
エンカは今なお自分が危機的状況にあるのを理解し、あまりミクを刺激しないよう努めた。
> エンカを支える足場が下に降り始め、ミクも同じ速度で穴を下に降り始める。

> 「他の者達と違って、あなたは総裁に土下座してリリィを助けようとしたでしょう?
>  それに、ベッドフォードに協力しても良いという意思表示も見せた。
>  単刀直入に言うと、エンカも私と同じように総裁に協力する気はないかという事よ。
>  そうすれば、リリィやメイション君、それに他の仲間の助命も嘆願できるでしょう。
>  総裁は学園の有力者だから、協力すれば今後の学園生活が有利になるかもしれないわね。
>  悪い話ではないと思うのだけれど、いかがかしら?」
「なるほど、確かにいい話っすね〜。だけど、あのジジィがそういう話に乗ってくれるんすかね〜?
 さっきも聞く耳持たずって感じだったし、謎のテレパシーは総裁と無縁そうだしよ〜?」
> 「止めておきなさい、少年よ。君の目の前にいるのは無慈悲なる蜘蛛神。
>  異界の神を由来とする滅びを紡ぐ者の甘言に呑まれれば、君も異形と成り果てるだろう。
>  道は己で決めるもの、踊らされ踏み外す事努々無きよう」
「何だぁ!?誰の声っすか?」
> その声はエンカに向けられていた。声のした方を向くと、ミクの張った蜘蛛糸をまるで
> 枝の様に掴みながら一羽の白いハヤブサが、陽光の様な淡い光を放ちながら止まっていた。
「喋る動物には慣れてきたところだけどよぉ。やっぱりまだ気味が悪いよな〜。」
ハヤブサが今度はミクに話しかけた。
> 「この姿では初めましてですね、初音美紅殿。
>  まさか、貴女ほどの方が直接人心を惑わしておられるとは……
>  退屈は長命の最大の敵とはよく言ったものですな。
>  黄衣の女神と言い、近年は人の姿を取るのが流行りなのでしょうかね?」
「最近の鳥の間では、デートの邪魔をするのが流行ってるらしいっすね〜?」
エンカはハヤブサに嫌味を言った。この時点でエンカは誰の味方をするか決めていたからだ。
「まぁ、あんたが誰のペットで、どうして俺に話しかけてくるのかわからない以上は、
 信用されなくても仕方ねぇよな〜?」

106 名前:エンカ ◆jWBUJ7IJ6Y [sage] 投稿日:2010/08/07(土) 18:17:56 0
> 話しているうちに、ミクたちは穴の下に到着した。
> そこは石造りの、自然にできたとも人工的にできたとも思える洞窟のような場所だった。
> 「欠陥住宅ではないでしょうから、何かの考えがあってこの上に館を立てていたと考えるのが普通でしょうね。
>  私達を下に落として、あの老人が何をしたいのかは知らないけれど。
>  …他の者達も近くに落ちているのかしら?」
> ミクは糸を離れて床に降りると、エンカをひっかけていた蜘蛛糸を外して自由にする。
「単純に考えれば、俺達はグラディス達を敵にまわしちまってるわけだよな〜?
 失望しねぇように先に言っとくけどよぉ。俺は魔法なんか使えねぇから、
 奴らと戦うようになったらどうにもこうにもならねぇ…ってのは知ってるよな?」
よく考えたらエンカは既にミクに襲われてるのだから言う必要もなかった。
> 「そういえばあなた、森で魔導書を見つけたとか言っていたわね。
>  もしかしてこの騒ぎ、その魔導書が原因なのではなくて?」 
「もともとユリが総裁の家を覗きに行こうって言ったのが事の発端だけどよぉ、
 ユリとその魔道書に因果関係はねぇと思うぜ〜?」
エンカはポケットから青い蜘蛛を出した。ミクの蜘蛛、エンカが持っている最後の一匹だ。
「なんかこいつさっきから動かねぇんだけど…弱ってんのかなぁ?
 名前付けてもいいか?タチコマとか…」
もしかしたら蜘蛛にはミクが一匹一匹名前を付けてるのかもしれない。
「…メイションは無事なんだろうか?最後に見たときはセラエノの側にいたんだよな〜。」
【エンカがミクの仲間になった。エンカのミクへの好感度が+5された。】

107 名前:ベッドフォード ◇k4Jcxtcj b [sage] 投稿日:2010/08/09(月) 18:48:10 0
「…水差しと対にならねば、これはただの杯にすぎぬ
やはり原典の回収は急ぐべきだったか…」
グレンから顛末を聞いた老人は少し落ち着きを取り戻したかのように呟いた
「残念だな神よ、だが 時間はまだある
いずれ互いの力が必要になる時が来る事を期待しよう」
協力を拒まれた事を知るやいなや老人は会話を足早に切り上げ、杖を新たに握りしめると抜けた床を見上げる
「蜘蛛よ…動け」
そう命じようと瞬間 老人の視界に一羽の白いハヤブサに現れた
ハヤブサが神であるセラエノや人外であるミクの事を知っているように
老人もこのハヤブサの事を知っているのかもしれない
「だが、目的があれば退屈などせぬものだ
むしろ 私は長い年月 この時が待ち遠しくてならなかったよ」
鋭い眼光を彼はじっと見つめた

108 名前:ユーリ ◆xhl1mMpBWH4A [sage] 投稿日:2010/08/09(月) 18:48:46 O
>>104

>「(略)
暗くてよく見えないよ――――!!」
「あら、暗いのでしたら、明かりを灯せば良いじゃない」
総裁とのやりとりを始終傍観していたユーリだったが、このぐだぐだ具合を流石に耐えかねたのかあっさりリリィの前に現れる
「魔法使いというのは大変面倒なものだけれど、利点といえば松明やランプが要らないって点じゃない?」
掌に煌々と燃える火の玉を作り出してリリィにふんわり笑いかける
「元気してたかしら?
それにしてもリリィちゃんのお仲間も中々上手くいかないみたいね
あんな爺の一匹や二匹、ちょちょいと退治するものだとばかり思ってたのに」
冗談半分、本音半分でちゃらけて愚痴ってみせる
「爺の目が離れた今、寮に戻るという選択肢もあなたにはあるのよ?
こんな距離、私にとっては問題にならないのだし」
平たく言えばリリィが望めば逃げる事も叶う。という事だ

109 名前:桜花 [sage] 投稿日:2010/08/09(月) 18:50:27 0
奏桜花は困っていた 
彼女はリリィの身を案じ一番最初に屋敷に踏み込んだのに 
いまだにリリィたちの元にたどり着けていない 
総裁が気を利かせて?導くように灯りをつけてくれたが全盲である桜花には見えない 
奏桜花は困っていた 
彼女はとてつもなく聴力がいい 
それこそアメンボが動かす間接の音を聞き取れるほど耳がいい 
だが場所が悪かった 
確かに他の仲間たちが話している声はきこえるのだが 
建物の至る所で音が反響してしまい、声の発信源にたどり着けないのだ 
(クソ!耳がやたらに良いというのも考え物だな) 
散々走り回った桜花は壁により掛かり息を整えている 
右脇の傷からはジワリと血がにじみ、白かったワイシャツの半分を赤く染めていた 
(マズいかな…血が足りなくなってきているか 
頭がクラクラする) 
一度頭を振る桜花 
(しっかりしろ、桜花。 
今でもみんながピンチかも知れないんだ!) 
深呼吸をし、頭を落ち着かせる 
(もうあまり走り回る訳にも、時間をかける訳にもいかない… 
………周りには誰もいないな…) 
コントラバスを壁に立てかけ、両目に手を当てる 
誰も周りにいないが思わず呟いてしまった 
「あぁ…嫌だな、この目を見せるのは」 
呟いてから思いきり両目に魔力を込める 

しばらくそのまま停止していたが唐突に手を目から離す 
桜花の目が開いていた。 
その瞳の色は赤くも見え青にも見える。見る位置によって桜花の瞳の色が変わっているのだ 
目を開いた桜花に周りの景色が見えてくる 
勿論、総裁がつけた部屋に続く光も見えている 
「相変わらず、気味の悪い色なんだろうな…」 
苦笑を浮かべ、灯りが導く先へ向かっていく 


110 名前:桜花 [sage] 投稿日:2010/08/09(月) 18:51:19 0
ゴールが見えてきた 
恐らく総裁の部屋だろう。 
(どうする?…中では戦闘になっているかもしれない 
……蹴破って入るか) 
助走をつけ、扉を蹴る桜花。しかし桜花の予想は外れ扉はすんなりと開く 
さらに… 
(床がない!?) 
蹴破った勢いのまま床にポカリと開いた穴に落ちていく桜花 
その姿はまさにボッシュート 
重力に引かれるままに落下運動を続ける桜花。大変だ、このままでは潰れたトマトの完成になってしまう! 
「私の音は周りを弾く!」 
コントラバスの弦を弾くと桜花の真下に音符が現れる 
地面に音符が当たると音符は弾け、若干桜花の身体が浮かせる 
床に桜花は落ちるが若干浮いたためそのまま直に落ちるよりも少ない衝撃ですんだようだ 
「げほっ……げほっ……!」 
胸を打ったのか若干咽せる桜花 
「全くどうなっているんだ… 
これが罠だとしたら幼稚な上にたちが悪い。」 

>「ああっ、レイヴンさん、ごめんなさいごめんなさい! 
 もう、何でここ、こうもゴミだらけなの?!おまけに暗くてよく見えないよ――――!!」 

「リリィさん?リリィさんなのか!?」 
桜花は慌てて走り出す 
やっと見つけたという気持ちと状況の混乱から自分の目を閉じるのを忘れながら 
「あぁ、リリィさん…やっと見つけた… 
どこか怪我はないか?総裁に酷い事をされてはいないか? 
―――?どうした?私の顔を不思議そうに見つめて……。」 
リリィは桜花の顔を見つめている。そして恐らく近くにいたレイヴンは不振そうな顔をしているだろう 
そこで桜花はやっと気付く、自身が気味の悪いと評価している目が開いたままだと言うことを 
「………すまない、気分の良くないものを見せた」 
すぐにクルリと後ろを向き、目を閉じる 
二人はどう思っただろうか?きっと桜花と同じく気味の悪い目だと思っている事だろう 

111 名前:レイブン代理 [sage] 投稿日:2010/08/09(月) 23:37:21 0
>102>104-106>108-110
>「レイヴン!そいつにリリィちゃんを『バキバキバキィッ!!!』置いて……ぅえ?」
>「…………やっチッたぁ―――ッ!!!」
グラディスの狙いは分かった。氷で崩落しようとする床の補強を
行うつもりだったのだろう。着眼点、機転の利かせ方は悪くなかった……
だがしかし、のっぴきならない状況では、むしろそういう時こそ
繊細さが重要になってくる……本人には悪いが、繊細さとはおよそ無縁な
グラディスに加減を期待するのが間違ってるのだろう。

「……バッカヤローーーーーー!!!!!!!
 これで死んだら末代まで祟ってやるからな、覚悟しやがれグラディース!」
崩落に巻き込まれ、リリィと一緒に落下中。痛みも忘れて恨み節を叫ぶ鴉だった。

「……クッソ……ッ!」
せめてリリィだけでも無事に済ませようと、苦戦しながらも
自身の背中を地面側?に向けてリリィを抱きかかえる鴉。
普通ならドキマギしたりするんだろうが今は普通じゃないですしおすし。

>「あ・・・・頭痛い・・・・・・あれ?何で私、こんなところに?」
>「・・・・・・・あっ!レイヴンさん!?大丈夫ですか?」
どれだけ落ちただろうか、不意に背中をしたたかに打ち付けてしまい……
意識を手放す直前に見た光景は、傷一つないリリィの姿だった。

はっと気づいた時、聞こえてきたのはリリィの声。
正直リリィに起こされたようなものだ。
「……ああ、大丈夫だ。リリィ嬢は……っツ!」
起き上がろうとして、腕に力が入らない事に気づく。
感覚はあるし一応動きもする、折れたわけじゃないようだ。
……総裁の魔力の雷に短時間とは言え打たれ続けたせいだろう。

ひどく緩慢に体を起こし、周囲を確認しようとした鴉は痛みに顔をしかめた。
……左目が開けられない。そっとまぶたに触れてみると激痛が走る。
傷から流れた血が入ったか、それとも眼球が潰れたか……自分では分からなかった。

>「皆どこなの?無事でいる?私とレイヴンさんはここよ!皆、大丈夫なの?!」
「……っぐ…! い、いや、構わない……だが、大きな声は出さない方がいい。
 何がいるか分からないからな……いたずらに、自分の居場所を知らせるのは危険だ……!」
はぁっ……と、肺の空気を搾り出すような息を吐き、深呼吸して

「ここは、総裁の屋敷の……地下、だろうか?
 ……掲示板に張ってあった、探し物とやらに関係する場所だと思うが……
 学園の地下とは聞いてたが、こんな所にまで通じてるものなのかね?」
推測を口にするが、明らかに言葉に力がない。


112 名前:レイブン代理 [sage] 投稿日:2010/08/09(月) 23:38:10 0
>「爺の目が離れた今、寮に戻るという選択肢もあなたにはあるのよ?
> こんな距離、私にとっては問題にならないのだし」
「……ユーリ先輩か」
肝心な時にいないくせに、と無責任な事を並べ立てるユーリに鴉は内心憤っていたが
それをぶつけたところでかわされるのがオチだしそんな事する意味もないと自制した。
「じゃあ、リリィだけでもいいから連れて帰ってくれ……
 情けない話だが、今の俺じゃ自衛どころか保身も出来やしない。
 他の奴も、見つけ次第連れてってくれると有難いんだが……」


>「………すまない、気分の良くないものを見せた」
そう提案した矢先、桜花が飛び込んできた。文字通り、上から。
「桜花嬢も無事だったか……ひどい怪我だ。
 ちょうどいい、ユーリ先輩が寮に連れてってくれるそうだ。
 ……先に帰っててくれるか? 俺は、他の面子を探す……
 こんな所に残していけないからな」

そうは言うものの、先ほどから鴉は違和感を感じていた。そしてすぐにその正体に気づく。
それは、桜花の目が開いている事だ。そしてその目が不思議な色をしているのを見て
「……盲って言ったのは、それが原因か?
 まぁ、気持ちは分からなくもない……確かに、普通じゃないだろうな」

そう言った鴉は、ため息を吐き二の句を告げる。
「だが、それが何だって言うんだ? 見てみろ、俺の目なんか白目だってないんだぞ。
 どっちかって言うと俺の目の方が気味悪いだろ……だけどその事で気味悪がった奴なんか
 一人としていなかったぞ……つまり、そこまで卑下する必要はないってこと。
 それにだ、そんな目をしてるからって桜花嬢が何か違う生物にでもなるのか?
 ……なろうがなるまいが、少なくとも俺にとっては桜花嬢は桜花嬢のままだよ。
 リリィ嬢とユーリ先輩は、どう思う?」
喋ってる内に痛みが引いてきたのか、或いはただ夢中になってるだけなのか
ともかくも鴉の声に力が戻り始めた。体の調子は上向かないが、
何とか立って歩くぐらいはできるだろう。

113 名前:レイブン代理 [sage] 投稿日:2010/08/09(月) 23:38:51 0
            ―――― 一方その頃 ――――


>「最近の鳥の間では、デートの邪魔をするのが流行ってるらしいっすね〜?」
>「まぁ、あんたが誰のペットで、どうして俺に話しかけてくるのかわからない以上は、
> 信用されなくても仕方ねぇよな〜?」
「おお、おお、これは失礼をした。逢瀬の只中であったならば、確かに無粋至極。
 ……しかし、君は子供なのだね。それも、どうしようもないほどに」
ハヤブサはエンカを子供と言った。

「君は度重なる不条理な事態に不信感を募らせた。
 そして今君は『質問する』と言う選択肢を捨ててしまった。
 ……私は聞かれれば答えるつもりだったよ。全てを明かす事は出来なくとも、ね」
エンカにしてみればただの揚げ足取りでしかないだろう。
ハヤブサも、それを分かった上で言ったのだ。

「それを、君は負の感情に任せるままにして見過ごした。
 子供、それも分別を弁える事もまだ知らぬ幼子のやる事だよ、それは。
 ……故に、そんな君を見捨てる事は出来ないね。私も同行させてもらおう」
ハヤブサはこれまたとんでもない事を言い出した。
散々偉そうに説教しておきながら、付いて行くなどと―――。
エンカの肩に止まり、目と鼻の先でハヤブサはまくし立てる。

「なに、これも『私達』の仕事の一環なんだ。
 過度に直接的な助力はできないが、君を死から遠ざける程度の事は出来るよ。
 ……? ああ、逢瀬の邪魔などもちろんしないよ?
 今から君が彼女を押し倒して〜となったら私はすぐに見る事も聞く事も
 できない距離まで退散するからその辺は安心してくれ。
 覗きや盗み聞きは、趣味じゃないのでね」
何を勘違いしたのか突っ込んだ事まで口にするハヤブサだった。
(それもエンカのデート発言が発端なので実は自業自得なのだが……)
この調子ではたとえ断っても勝手についてくるだろう……


114 名前:ミク ◆sto7CTKDkA [sage] 投稿日:2010/08/10(火) 16:48:50 O
>>96-113
それは穴を降りる途中、エンカを助けた少し後の時の事だ。
>「止めておきなさい、少年よ。君の目の前にいるのは無慈悲なる蜘蛛神。(中略)
> 道は己で決めるもの、踊らされ踏み外す事努々無きよう」
>「何だぁ!?誰の声っすか?」
急にかけられた声に驚くエンカ同様、ミクも声の主を目線で探した。
声の主はすぐにわかった。
それは光るハヤブサで、ミクの張った蜘蛛糸を意に介さないように澄ましている。

>「この姿では初めましてですね、初音美紅殿。(中略)
> 黄衣の女神と言い、近年は人の姿を取るのが流行りなのでしょうかね?」
「どなたかとお間違えで無いかしら?
 高く評価していただいたのは嬉しいけど、私が滅びをもたらすものだなどと買い被りですわよ」
軽くそう返したものの、ミクはそのハヤブサがセラエノのものでは無いかと疑った。
セラエノを黄衣の女神、と表現したからだ。
ミクは、セラエノはお宅訪問の面々からも神らしい扱いを受けていないように感じていたのだ。

>「まぁ、あんたが誰のペットで、どうして俺に話しかけてくるのかわからない以上は、
> 信用されなくても仕方ねぇよな〜?」
「そうね…エンカの言うとおり、これでは信頼されないの無理はないわね。
 もう少し説得の方法をお勉強して、出直してきなさいな」
だが、ハヤブサにそのつもりは無いようだった。
エンカの揚げ足取りにもめげず、その肩に止まってついて行こうと言い出す。
「随分懐かれたようねエンカ。
 動物に好かれるのは良い人の証拠よ。
 良かったじゃない」
エンカをからかうようにそう言って、ミクはハヤブサから視線を外した。
不確定要素の存在は好ましくないが、エンカは協力の姿勢を崩していない。
ハヤブサは邪魔になれば切り捨てればよいが、当面はより明確に敵になる者達がいる事だ。
今は泳がせておいて、後で対応を考えようと思ったのだ。

その後、地下に到着した時の事だ。
魔導書が騒ぎの原因ではないか、との質問にエンカは答える。
>「もともとユリが総裁の家を覗きに行こうって言ったのが事の発端だけどよぉ、
> ユリとその魔道書に因果関係はねぇと思うぜ〜?」
「まあそうでしょうね」
ミクはあっさりうなずいてその考えを肯定する。
ユリを知る者からすれば、普通に考えて魔導書とユリの関係など蜘蛛糸より細いものである。
エンカの考えに同意するしかない。

>「なんかこいつさっきから動かねぇんだけど…弱ってんのかなぁ?
> 名前付けてもいいか?タチコマとか…」
「その蜘蛛に触っても大丈夫なのね。 驚いたわ」
エンカが取り出した蜘蛛を見たミクは、そんな感想を口にした。
エンカが持つそれは毒蜘蛛である。
噛まれないとも限らないし、毒を差し引いても蜘蛛を平気で触れる人間というのはそれほど多くは無い。
そしてミクに、操る蜘蛛に一匹一匹名前を付けるような発想は無い。
どうせ死んでもかまわない捨て駒なのだ…名前など付けてなんになるだろうか。
「その蜘蛛はもともとあまり動き回るような蜘蛛ではないのよ。
 急に持ち運ばれて、環境の変化に戸惑っているのかも知れないけど。
 タチコマでもエイコマでも好きに名前を付けて、かわいがってあげなさいな。
 むやみに刺激して噛まれなければ、強力な毒蜘蛛でもそう恐れる必要は無いでしょうから」

115 名前:ミク ◆sto7CTKDkA [sage] 投稿日:2010/08/10(火) 16:50:05 O
>「…メイションは無事なんだろうか?最後に見たときはセラエノの側にいたんだよな〜。」
「セラエノの側にいたなら無事でしょうよ。
 彼女の力、あなたも見たでしょう?
 あれだけの茨を操れるなら、床が抜けたところでどうという事もないでしょうね」
言いながらミクは、何人かが上の部屋から落ちてきたのを感知する。
一番警戒すべきセラエノの居場所はわからないが、リリィの居場所はその大声ですぐ特定できた。
その仲間が数人、側にいるのも。
さしあたり情報はそれで十分だ。

「エンカ。 私は総裁から、彼らを怒らせて戦わせるように言われているの。
 取引をしている以上私はそうするから、あなたはその手助けをして頂戴。
 持っている魔導書が飾りでないのなら、それを使うのもいいでしょう。
 手助けの方法が思いつかないなら、自由に行動してかまわないわ。
 戦闘であなたの力を借りようとは思っていないから、安心しなさいな」
そうささやきかけてから、ミクはエンカから離れた場所に移動する。
エンカに戦闘力が無いのは、ミクもよく知っている。
側にいるより離れていた方が、ミクも能力を使いやすい。

耳を澄まして聞いていると、彼らは目が気味悪いかどうかという点を熱心に話し合っているようだった。
その余裕を軽く笑ってから、ミクは蜘蛛糸を一直線に飛ばした。
蜘蛛糸は宙を走り、操るミクの狙い通りリリィの首に巻き付いた。
「お話し中御免なさいましね。
 私の用事がまだ終わっていない間に帰られてしまっては大変と思って、割り込ませていただきましたの」

ミクは、ぐいとリリィの首に巻き付いた糸を手繰り寄せる。
「先ほどのセラエノの言葉、覚えていらっしゃるかしら?
 大変理にかなった提案でしたから、総裁はあの言葉を受け入れることになさいましたわ」
もちろん総裁はそんなことは言っていない。
しかし、それを確かめる方法がない以上、大事なのは事実ではなく、事実に聞こえることだ。

「リリィは学園新入生なので、学園に一度預け追って然るべき処罰を与えましょう。
 つまり、学園関係者である総裁の元で一時お預かりさせていただくわ。
 セラエノは総裁の邸宅を茨で破損した罪で、同じ処遇を。
 他の者はおとがめなし。
 そちらの先輩に引率していただいて、空間操作で自由に寮にお帰り下さいな」
丁寧な口調で言いながらも、ミクは人間離れした力でぐいぐいとリリィを自分の方に引っ張り続ける。
「総裁の寛大な決定に感謝しなさいな、リリィ。
 あなたとセラエノがおとなしく罰を受ければよし。
 さもないと、他の者も罪をかぶる事になるだけよ」

116 名前:グレンSUフリード ◆cOOmSNbyw6 [sage] 投稿日:2010/08/10(火) 18:40:19 P
>104>107>108>115
>「…水差しと対にならねば、これはただの杯にすぎぬ
  やはり原典の回収は急ぐべきだったか…」
「にゃ〜ん」
(こういう対のアイテムはひかれあうんだよ)
どこからともかく聞こえてきた総帥の声にさもお約束であるように答えるグレン
片方を持ってさえいればいつかもう片方と出会う運命なのだと言いたいらしい

>「皆どこなの?無事でいる?私とレイヴンさんはここよ!皆、大丈夫なの?!」

どこからともかく聞こえてきたリリィの声
「うなぁぁぁぁぁ!」
と一声鳴いて居場所を知らせるグレン
だが暗くて良く見えない

突然姿を現すユーリ
そういえばこの人の能力はワープ系だったっけと思い出すグレン
>「爺の目が離れた今、寮に戻るという選択肢もあなたにはあるのよ?
 こんな距離、私にとっては問題にならないのだし」
「にゃあん」
(すごくテロに向いた能力です)
どうでも良い感想を述べるグレン
全くこの人が敵じゃなくてよかった
だってこの人の能力って爆弾設置する→ワープで逃げるのコンボが素で出来るのだもの

>「リリィは学園新入生なので、学園に一度預け追って然るべき処罰を与えましょう。
 つまり、学園関係者である総裁の元で一時お預かりさせていただくわ。
 セラエノは総裁の邸宅を茨で破損した罪で、同じ処遇を。
 他の者はおとがめなし。
 そちらの先輩に引率していただいて、空間操作で自由に寮にお帰り下さいな」
「なにゃあ!」
(リリィさん返さないなら杯も返してよ!)
どうでもいい個人的なことを言うグレン
って言うか人のものを勝手に他人にあげるのは良くないと思う

「にゃあんにゃおん」
(どっちにしろ明日の放課後にはこの洞窟に眠っている箱を探さなきゃいけないんだ)
と明日の予定を言うグレン
たぶんこの洞窟はファンブルマンが言っていた箱のある洞窟と繋がっている
いやむしろ同じ洞窟の一部であろうとグレンは考えていた
同じ島にそう何個も曰く有りげな洞窟があってたまるかというのが理由である

>「総裁の寛大な決定に感謝しなさいな、リリィ。
  あなたとセラエノがおとなしく罰を受ければよし。
  さもないと、他の者も罪をかぶる事になるだけよ」
「にゃあん」
(落ちた床も直さないといけないよね)
グレンは想像したリリィとセラエノがハンマーとくぎを持って大工仕事で床を直している図を・
・・・

「にゃあお・・・にゃ」
(床を直すならうってつけの人がいるけど・・・呼ぶ?)
と某縦ロールを呼んで床を氷で修復してもらおうと提案するグレンだった

117 名前:エンカ ◆jWBUJ7IJ6Y [sage] 投稿日:2010/08/10(火) 19:20:12 0
>113>115
「人の事をバカにしやがって!勝手なこと言ってくっついてくるんじゃねぇぜ!」
エンカはハヤブサを追い払おうとしたが、無駄だった。
ミクはただエンカをからかうのみである。

ミクとエンカは、リリィ達が洞窟の先の方にいることがわかった。
> 「エンカ。 私は総裁から、彼らを怒らせて戦わせるように言われているの。
>  取引をしている以上私はそうするから、あなたはその手助けをして頂戴。
>  持っている魔導書が飾りでないのなら、それを使うのもいいでしょう。
>  手助けの方法が思いつかないなら、自由に行動してかまわないわ。
>  戦闘であなたの力を借りようとは思っていないから、安心しなさいな」
> そうささやきかけてから、ミクはエンカから離れた場所に移動する。
「死ぬなよ、ミク。」
エンカはミクの背中にそう言った。
「リリィ達も、おめぇの人質も、俺達自身も、生き残る方法をこれから考えるんだからよぉ。」

「俺が魔道書を持ってるわけじゃあねーっすけどね。」
ミクとわかれたエンカはそう誰に聞かせるわけでもなくつぶやいた。
エンカが森で拾った魔道書はリリィが持っているのだ。
ではエンカは今何をするのか?蜘蛛の糸集めである。
ミクが先程までいた場所に蜘蛛の糸が張り巡らされていたのである。
「この刀を持っていたあの野郎…」
エンカはレイブンの刀でぶちぶちと蜘蛛の糸を切って集めた。
「俺がヒステリーをおこす女の腐った野郎だとぉ?ふざけやがって…」
しかし、とエンカは思った。
「セラエノに言い過ぎちまったかもな〜?今度会ったら謝るっきゃねぇよな〜。」
エンカは集めた糸で縄を作り、両端に握り拳ほどの石をくくりつけた。
タチコマ(とエンカが名付けた青い蜘蛛)も彼の真似をして小石を自分の糸の両端にくっつけている。
「ところで、マジな話、あんたって何者なんすか?
 さっきはミクの手前だったからひどい事を言っちまったけどよぉ、
 俺はあんたのことを悪い奴だとは思ってねぇんだぜ〜?」
エンカはハヤブサに話しかけた。

118 名前:セラエノ ◆LGeruanYjI [sage] 投稿日:2010/08/10(火) 22:13:56 0
コイノボリ
魚を模した擬似生命体であり、セラエノの使い魔。
普段は巻物状態でスカートの中に収納されているが、使用時には広がり立体を得る。
立体を得た姿は筒状の布であり、鯉のペイントがしてある。
その内部は特異空間となっており、ちょっとした部屋であり、使い魔カプセルのように回復作用を持つ。
主な使用法は移動の為の騎乗。
魔力との反発力を利用し、地上1mを浮き泳ぐように移動する。
であるからして、反発力を得るために地面はなるべく平らな場所が好ましい。

そのコイノボリがゆらりと身をくねらせユーリの灯した光に浮かび上がりリリィ達の側へと近づいてくる。
浮いてはいるが腹の部分が無残にも裂け、何本もの布を垂らしている。
床から落下した際、その下にあったのは氷の剣山。
その上を浮遊する事はコイノボリにとってあまり良い事とはいえなかった。
幾つも傷を受けながら辿り着き、弱々しくその頭を下げる。

筒状の口からメイションとセラエノを転がりだすと力尽きたようにただの布へと戻ってしまった。

ミクがリリィの首を絞める中、セラエノは未だ気絶し横たわったまま。
回復作用のお陰で顔色はよくなってきているが、まだ起きる気配はない。
黄色い衣は血で斑になり、鏡の仮面は細かくひび割れまるで蜘蛛の巣のようだった。

何らかの意図があったのか、偶然か。
ここに引き渡すべき二人が揃ったのだった。

119 名前:リリィ ◆jntvk4zYjI [sage] 投稿日:2010/08/11(水) 08:24:38 0
>108-114
>「……ああ、大丈夫だ。リリィ嬢は……っツ!」 
「私は何とも。レイヴンさんが庇ってくれたおかげです。
 でもそのせいで、レイヴンさんが・・・・・・」
リリィは半べそになりながら、レイヴンの瞼からの出血を止めようとハンカチで押さえた。
レイヴンがいるのなら皆も周囲にいる、そう判断したリリィは、大声で皆を呼び始めた。
>「リリィさん?リリィさんなのか!?」  
>「うなぁぁぁぁぁ!」 
「桜花さん?!それにグレンも?私はここ!レイヴンさんも一緒です!」
リリィは真っ暗な闇に向かって呼びかけた。
だがその直後、レイヴンにたしなめられ口を噤む。
桜花やグレンの声がした方向へと目を凝らしてみたが、何も見えない。
だが彼らなら、聞こえた声を頼りに来てくれるに違いない。

>「ここは、総裁の屋敷の……地下、だろうか? 
> ……掲示板に張ってあった、探し物とやらに関係する場所だと思うが…… 
> 学園の地下とは聞いてたが、こんな所にまで通じてるものなのかね?」 
「分かりません。私は、総裁のお宅には地下牢があったとしか。
 じゃあここは、もっと深い場所なんでしょうか。
 レイヴンさんがここにいるという事は、他の皆も・・・・・・」
レイヴンの背を支えようとしていたリリィは、ぬるりと滑る感触にはっとした。
(どうしよう、ひどい怪我・・・・・・私のせいだ)

>108
>「あら、暗いのでしたら、明かりを灯せば良いじゃない」 
聞き覚えのある声と共に、暗闇にぽっと明かりが灯った。
>「魔法使いというのは大変面倒なものだけれど、利点といえば松明やランプが要らないって点じゃない?」 
>掌に煌々と燃える火の玉を作り出してリリィにふんわり笑いかける 
「ユ、ユーリ先輩?!どうしてここに」
まるで、ピンチに颯爽と現れるヒーローに向けるような眼差しだ。
>「爺の目が離れた今、寮に戻るという選択肢もあなたにはあるのよ? 
>こんな距離、私にとっては問題にならないのだし」 
「本当ですか?!じゃあ、ぜひお願いします!!
 レイヴンさんもひどい怪我をしてるし、毒蜘蛛に噛まれた皆だって早くつれて帰らないと!」
リリィは即座にユーリの提案に飛びついた。
「にゃあん」 
(すごくテロに向いた能力です) 
「グレン!ああ、良かった!
 貴方がここにいるっていう事は、毒蜘蛛に噛まれた皆も助かったのね!?」
リリィはきょとんとしてるグレンには気づかず、ぎゅっと抱きしめた。

>「じゃあ、リリィだけでもいいから連れて帰ってくれ…… 
> 情けない話だが、今の俺じゃ自衛どころか保身も出来やしない。 
> 他の奴も、見つけ次第連れてってくれると有難いんだが……」 
「私だけなんて絶対嫌です!それに、怪我したレイヴンさんを置いてなんか行けません!
 ユーリ先輩、少しだけ待っていてくださいますよね?私、皆と一緒に学園へ戻りたいんです」
リリィは捨て犬のような目で、「お願い」とユーリを見上げている。

120 名前:リリィ ◆jntvk4zYjI [sage] 投稿日:2010/08/11(水) 08:26:11 0
>「あぁ、リリィさん…やっと見つけた…  
>どこか怪我はないか?総裁に酷い事をされてはいないか?  
>―――?どうした?私の顔を不思議そうに見つめて……。」  
リリィは現れた桜花を、ぽかんとした顔で見上げていた。
リリィはこんな時だと言うのに、桜花の顔から視線を外すことができなかった。
なぜなら、桜花の瞳は、今まで診たこともないような不思議な色をしていたからだった。

レイヴンが怪我を理由に先に帰るよう促したが、桜花はそれには答えず、すぐにクルリと後ろを向いた。
「えっ?えっ??」
リリィは意味がわからず焦っている。
>「……盲って言ったのは、それが原因か? 
> まぁ、気持ちは分からなくもない……確かに、普通じゃないだろうな」 
リリィはそこでようやく、気分の良くないものが桜花の瞳だったということに気づいた。
「レイヴンさん、なんてこと!」
>「だが、それが何だって言うんだ? 見てみろ、俺の目なんか白目だってないんだぞ。 
> どっちかって言うと俺の目の方が気味悪いだろ……だけどその事で気味悪がった奴なんか 
> 一人としていなかったぞ……つまり、そこまで卑下する必要はないってこと。 (略)」
田舎育ちのリリィは知る由もないが、世の中には、赤い目を魔物や悪魔憑きの証と見なす地域がある。
レイヴンのことだ、きっとそれを踏まえた上での発言なのだろう。

>「リリィ嬢とユーリ先輩は、どう思う?」 
「・・・・・・レイヴンさんのは、つぶらな瞳っていうんだよね」
リリィはまぜっかえしたが、すぐに真顔に戻った。
「私は、桜花さんの瞳、好きだよ。
 自分だって怪我してるのに、人のことばっかり気遣ってる桜花さんが好きだよ。
 気分悪いことなんて、一つも無い」
ユーリの視線が痛い。
そんな状況ではないのも百も承知なのだが、これだけはどうしても、きちんと言っておきたかったのだ。
桜花なら、リリィのいう事が本心かどうか、きっと伝わるだろう。


「桜花さん、知ってのとおり、総裁のお部屋が抜けて大変なことになってるの。
 怪我してるところごめん、他の皆がどこにいるか分かる?
 瓦礫の下敷きになってる人はいないかな?」


121 名前:リリィ ◆jntvk4zYjI [sage] 投稿日:2010/08/11(水) 08:30:09 0
>115
>ミクは、ぐいとリリィの首に巻き付いた糸を手繰り寄せる。
突然首が絞まった上にバランスを崩したリリィは、受け身も出来ずにその場に倒れた。 
>「先ほどのセラエノの言葉、覚えていらっしゃるかしら? 
> 大変理にかなった提案でしたから、総裁はあの言葉を受け入れることになさいましたわ」 
ミクは処罰が決まるまで、リリィの身柄を学園関係者である総裁の元で一時お預かりすること、
セラエノも邸宅を茨で破損した罪で、同じ処遇を与えること、
それ以外は無罪方面と説明した。
>「なにゃあ!」 
>(リリィさん返さないなら杯も返してよ!) 

丁寧な口調で言いながらも、ミクは人間離れした力でぐいぐいとリリィを自分の方に引っ張り続ける。 
リリィは釣られた魚のように、ミクのほうへと引きずられて行った。
息苦しさに、必死で喉を掻き毟るのだが、蜘蛛の糸は細すぎてどうすることも出来ない。
>「総裁の寛大な決定に感謝しなさいな、リリィ。 
> あなたとセラエノがおとなしく罰を受ければよし。 
> さもないと、他の者も罪をかぶる事になるだけよ」 
「あ・・・・・ぐ・・・・・・あう」
『罰?・・・・・・私、何か悪いことした?』

そこに現れたのは、セラエノの使い魔コイノボリ。
>筒状の口からメイションとセラエノを転がりだすと力尽きたようにただの布へと戻ってしまった。 
セラエノは気絶し横たわったままだ。
>黄色い衣は血で斑になり、鏡の仮面は細かくひび割れまるで蜘蛛の巣のようだった。 
相当なダメージを受けたのだと、リリィが考えるのも無理は無い。

>118
(セラエノさん?なんでこんなところに?お屋敷を破壊したって、まさか、あの茨は彼女が?!)
断片的な情報を頭の中で必死に繋ぎ合わせてみるものの、状況は今ひとつ良くわからない。
総裁のお屋敷には助けを求めに行き、地下牢に閉じ込められた。
その後、総裁のお部屋を訪ねたまでは覚えているが、その先の記憶が彼女には無かった。
この少女の話では、警備の人をやっつけて、お屋敷が壊れたと言う。
もしも、失われた記憶の間に罪を犯したと言うのなら、自分で償わなければならない。
『逃げない・・・・・だから、首、ゆるめて』

『私、何も覚えてないの。でもきっと、何かいけないことをしたのね。
 だから、ちゃんと謝ってくる。
 皆はもう学園に帰って、怪我の治療を受けて。』
リリィはぎこちないながらも笑顔を見せた。
不安で一杯だが、入学したばかりの皆を自分の罰に巻き込むことは出来ない。
気絶したセラエノが真実を話せない以上、リリィの決心は覆らないだろう。

『私、一緒に行きます。でも、グレンの杯は返してあげて下さい。
 それと、セラエノさんも今夜は皆と一緒に帰して下さい。
 セラエノさんは真面目な人だから。絶対逃げ出すようなことはしません。だから、お願いです』

『・・・・・・そんな顔しないで、私は大丈夫だから』
リリィは目が合ったメイションに、にこりと微笑みかけた。
内心は不安で一杯だが、小さな子に心配をかけるわけにも行かない。
彼女にとっては精一杯の虚勢だった。
『そうだ、これ、エンカの本。無事に会えたら、メイションから返してくれないかな?』
リリィは、預かっていた本をメイションに渡そうとした。

>116
呼べるものなら呼んで欲しい、とリリィは思った。
だがもし召喚が成功したら、グレンは下克上どころでは無くなるだろう。

【ミクと同行することを承諾。一同に学園へ戻るよう説得。
 ミクに、セラエノを連れて行くのは明日まで待つのと、グレンの杯を返すよう頼む。
 メイションに、エンカの本を託けようとする】

122 名前:メイション◇jWBUJ7IJ6Y [sage] 投稿日:2010/08/12(木) 12:26:39 0
>118 
セラエノのコイノボリからメイションとセラエノが転がりでた。 
メイションは目を回していたが、回復するとセラエノに駆け寄った。 
「セラエノさん?セラエノさん…!セラエノさぁーん!!」 
セラエノは目を開けてくれなかった。 
メイションは落ちる前の事を思い出した。 
そして、これはエンカのせいではないかと考えた。 

>121 
> 『私、何も覚えてないの。でもきっと、何かいけないことをしたのね。 
>  だから、ちゃんと謝ってくる。 
>  皆はもう学園に帰って、怪我の治療を受けて。』 
> リリィはぎこちないながらも笑顔を見せた。 
メイションも何となく現状を把握した。 
いや、そもそも現状を把握する必要はあまりなかった。 
> 『・・・・・・そんな顔しないで、私は大丈夫だから』 
メイションがリリィを手放したくないなら、そうするだけなのだから。 
> 『そうだ、これ、エンカの本。無事に会えたら、メイションから返してくれないかな?』 
> リリィは、預かっていた本をメイションに渡そうとした。 
「そんな風に!もう会えないような言い方しなくたって、自分で返せばいいでしょ!」 
そう言うやメイションの体から、長さ2mの触手が無数に噴き出た。 
「上海ハニー!」 
その内の2本が、リリィの首からミクに向けて伸びている蜘蛛の糸に、螺旋状に絡みついた。 
そしてメイションは、そのまま触手の力まかせにぐいぐいとミクの方を引っ張る。 

メイションの触手、上海ハニーは、近距離パワータイプの触手である。 
これでもうリリィの首がしまることはないだろうし、ミクがメイションに十分近づけば、 
メイションが上海ハニーでミクを叩くだろう。 
「2回もお姉ちゃんを取られてたまるもんか!」 

123 名前:ミク ◆sto7CTKDkA [sage] 投稿日:2010/08/12(木) 17:57:11 0
>116-122
>「にゃあお・・・にゃ」
>(床を直すならうってつけの人がいるけど・・・呼ぶ?)
「…呼ばないでくださるかしら」
人外の存在であるミクは、ある程度はグレンの猫語を把握することができる。
できるが、今は特に猫の手を借りたい状況ではない。
そのために杯を返せとの呼びかけも意図的に無視していたのだが、今回の質問には反応した。
なんとなく修復より破壊が得意な相手が出てきそうな気がしたのだ。

ゆらゆらと、傷ついたコイノボりがリリィに近づいてくる。
先刻セラエノの使い魔を見ていたミクには、それがセラエノの持ち物であろうことは予想がついた。
鉈を砕かれた水撃を警戒するものの、コイノボリはメイションとセラエノを吐き出して、力尽きたように消える。
>「セラエノさん?セラエノさん…!セラエノさぁーん!!」
メイションが目を覚ましたのを見て、ミクは少し笑った。
感情的に動いてくれそうな者が一人増えたわけだ。
論理的に話をすすめるセラエノが気絶していることもあるし、この状況は都合がいい。
ユリたちを『お姉ちゃん』と呼んでいたメイションが、どうしてセラエノをそう呼ばないのかは少し気になったが。

>『私、何も覚えてないの。でもきっと、何かいけないことをしたのね。
> だから、ちゃんと謝ってくる。
> 皆はもう学園に帰って、怪我の治療を受けて。』
「ふふ…いい子ね。 こんな時でも友達の心配ができる余裕があるなんて。
 いつまでその余裕が続くのか、試してみたくなったわ」
首をゆるめてほしいと懇願されても、ミクは糸を引く力を緩めない。
>『私、一緒に行きます。でも、グレンの杯は返してあげて下さい。
> それと、セラエノさんも今夜は皆と一緒に帰して下さい。
> セラエノさんは真面目な人だから。絶対逃げ出すようなことはしません。だから、お願いです』
「それは総裁がお決めになることよ。
 あなたはそんなことをお願いできる立場にないの。
 おわかりかしら?」
リリィの苦しむ姿にミクは嗜虐心を刺激され、首を絞める力をさらに強くした。
窒息死などしないように力の調整はされているが、それでリリィの苦しみが和らぐわけではない。

>『そうだ、これ、エンカの本。無事に会えたら、メイションから返してくれないかな?』
>「そんな風に!もう会えないような言い方しなくたって、自分で返せばいいでしょ!」
>「上海ハニー!」
リリィが本を渡すのを止めようとしたミクは、メイションの触手を見て動きを止めた。
触手はリリィの首を絞める糸に巻き付き、逆にミクを引っ張ろうとする。
触手の見た目以上の強い力に、ミクは内心驚いた。
ミクは人間よりはるかに力が強いはずなのに、このまま綱引きをしていては糸ごと引き込まれかねない。

>「2回もお姉ちゃんを取られてたまるもんか!」
ただ、ミクにはまだ余裕があった。
ユリとメイションの保健室のやり取りを聞いていたので、触手の攻撃範囲をある程度知っていたからだ。
必要以上に近づかなければ恐れる必要はない、というのがミクの当面の判断だ。
「メイションくんはお姉ちゃんが取られるのが嫌なのね。
 それでは、お姉ちゃん以外の人を連れて行くのはどうかしら?」
血まみれで気絶しているセラエノの体に糸が巻き付き、上に向かって持ち上げ始める。
上を見れば、一同が降りてきた穴に蜘蛛の糸が張り巡らされ、巨大な蜘蛛の巣となっているのが見えるだろう。

ミクは引きずられないように、一度リリィの首に巻き付いていた糸を切る。
あきらめたわけではない。
その証拠に、リリィの身体に新しく2本の糸が巻き付き、上方に持ち上げはじめたのだ。
「それでは皆様ごきげんよう。
 今夜の事は忘れて、明日の朝からの学園生活を楽しんでくださいましね」
言葉と共にミクの体も糸に釣られ、総裁の館目指して昇って行く。
セラエノやリリィが連れて行くのを止めようとすれば、ミクは粘着性の糸を放って阻止しようとするだろう。
自分が狙われれば、他人より自分を守るのを優先するだろうが。

124 名前:グレンSUフリード ◆cOOmSNbyw6 [sage] 投稿日:2010/08/12(木) 23:13:05 P
>119-123

>「…呼ばないでくださるかしら」
ミクに静止されて呼ぶことをやめたグレン
どうやら広範囲攻撃呪文 通称マップ兵器による総帥のお宅全壊は免れたようである………危ないところであった

「さっきからうるさいですねえ………」
と今頃起きだしたフリード
だがしかし案山子身動きがとれない
どうしても動けなかったためフリードは起きるのをやめた
「おやすみなさい」

>『私、何も覚えてないの。でもきっと、何かいけないことをしたのね。
> だから、ちゃんと謝ってくる。
> 皆はもう学園に帰って、怪我の治療を受けて。』
>「ふふ…いい子ね。 こんな時でも友達の心配ができる余裕があるなんて。
  いつまでその余裕が続くのか、試してみたくなったわ」
「にゃあ!?」
(なにしやがるんだ!?)
首を締める力を強めるミクに俺の怒りは爆発寸前スピルバンになるグレン
だがしかし案山子頼みの猫の神様はもう寝ている
蜘蛛の糸を何とかしようにも爪で引掻いたってびくともしないだろう

>「2回もお姉ちゃんを取られてたまるもんか!」
>「メイションくんはお姉ちゃんが取られるのが嫌なのね。
  それでは、お姉ちゃん以外の人を連れて行くのはどうかしら?」
どうやら彼の名前はメイションというらしい
賢い猫であるグレンは名前を覚えた

>「メイションくんはお姉ちゃんが取られるのが嫌なのね。
  それでは、お姉ちゃん以外の人を連れて行くのはどうかしら?」
>「それでは皆様ごきげんよう。
  今夜の事は忘れて、明日の朝からの学園生活を楽しんでくださいましね」
そしてリリィとセラエノを連れ去って行こうとするミク
「にゃぁぁぁん!!」
蜘蛛の糸の弱点は炎!だがグレンに炎を操る力はない
それに炎を放ってリリィやセラエノを盾にされてはかなわない

もしここにフリードの姉がいたならば3人丸ごと氷漬けにしてから味方2名を掘り起こすであろう
………本当にいなくてよかった

するするっと上に登っていくミク
だがグレンには空を飛ぶ能力もない
その翼は飾りなのである
「にゃにゃ〜!!」
(ショルダァブゥメラン!!)
一応翼を投げてはみるが飛距離が足りずミクには届かない
「にゃ〜」
(積んだ)

125 名前:レイヴン ◇70VgGM3HY6 [sage] 投稿日:2010/08/13(金) 00:42:08 0
>114-124
>「私は何とも。レイヴンさんが庇ってくれたおかげです。
> でもそのせいで、レイヴンさんが・・・・・・」
「気に、するな…………俺は、人殺し、だ。
 殺す、事しか、してこなかった……それしか、出来なかった。
 ……誰かを守る為に、この命が、役に立てるなら……」
偽善であり独善、贖罪にしても都合のいい考えである。
以前の鴉ならばそう斬って捨てただろう……

>「私だけなんて絶対嫌です!それに、怪我したレイヴンさんを置いてなんか行けません!
> ユーリ先輩、少しだけ待っていてくださいますよね?私、皆と一緒に学園へ戻りたいんです」
「……ダメ、だ! ……さっきの大声で、総裁か、あのミク、とか言う女に、
 気づかれてる、かも知れない……グズグズ、してたら、手遅れに、なる……!」
出血で身体機能が徐々に低下して言っているせいだろう、
息が上がり意識も遠のき始めていたが、それでもはっきり急げと言う鴉。
力ずくの選択肢が取れたら、と歯噛みせざるを得ない。


>「総裁の寛大な決定に感謝しなさいな、リリィ。
> あなたとセラエノがおとなしく罰を受ければよし。
> さもないと、他の者も罪をかぶる事になるだけよ」
しかし案の定と言うべきか、リリィの大声が祟りまたしてもミクに襲撃される。
怪我が酷く、意識も混濁し始めていたせいで鴉はまったく気づく事ができなかった。
……その内容には、本来相反するはずの理性と感情が同じ結論を瞬時に叩き出した。
「……ふざ、けるな……!」
血が足りず、体力も削げ落ちきった鴉は立ち上がる事もできず、
しかししっかりと拒絶を示す。だがそれが限界、意志に体がついてこないのだ。

>『罰?・・・・・・私、何か悪いことした?』
>『私、何も覚えてないの。でもきっと、何かいけないことをしたのね。
> だから、ちゃんと謝ってくる。
> 皆はもう学園に帰って、怪我の治療を受けて。』
「……ふざける、なぁっ!」
怒りの力で、動かない体を無理やり動かし立ち上がる鴉。
ふらふらと重心も定まらない状態だが、それでも倒れない。
「いいか、リリィ……! お前は何もしちゃいない!
 お前はただ巻き込まれた、だけだ……! それに、なぁ……
 グラディスも、桜花も、鋼も、ユリも、エンカも、セラエノも、シルヴァも、メイションも!
 ここで、見捨てるようなら、こんな所まで、来る訳ねぇだろ!」
ゴホッゴホッ……と血を吐きつつも鴉は叫ぶ。
痛みも疲れも体は忘れている、叫ばねば、動かねば、二度と目を覚ませないだろう。

「……リリィ、お前がしなきゃ、いけない事は、なぁ!
 ここまで、してくれた連中に……無事な姿を、見せる事だ……!
 誰も、怒ってねぇし、怒ったりしねぇ……俺たち全員、『トモダチ』なんだろ!?」
自分にこんな熱い所があったのかと思うほどの事を鴉は叫んだ。
……だが、それとは別に体中から血が失われてるにもかかわらず
体から熱が発せられている事に……その場の誰もが、鴉自身も気づけない。

>「2回もお姉ちゃんを取られてたまるもんか!」
「見ろリリィ……メイション、諦めてねぇぞ。
 ……お前も諦めるな」
メイションの上海ハニーによってミクの動きが止まった。
綱引き状態になっている内に近づこうとして……
しかし、女郎蜘蛛はどこまでも狡猾だった。


126 名前:レイヴン ◇70VgGM3HY6 [sage] 投稿日:2010/08/13(金) 00:42:52 0
>「それでは皆様ごきげんよう。
> 今夜の事は忘れて、明日の朝からの学園生活を楽しんでくださいましね」
セラエノまで連れて落ちてきた穴へと上っていく姿に心が焼かれていく。
目の前は真っ白な闇に包まれ、何も映そうとしない。

「……うああああああああああああああああああああ……!!!!!!!!!!!!!」
己の無力さにうちのめされ、肉体を動かしていた怒りの力が失われた鴉の体は
糸の切れた操り人形の様にその場に……うずくまった。


              『……力が欲しいか?』

              『……お前には力がある』

              『……目覚めるがいいよ』

           『……三千世界、遍く天地を照らす力』

            『……古を灰燼に帰した、天上の光』

             『……太陽の力を受け継ぐもの』


動かなくなった鴉だったが、その体からは煙と思わしきものが立ち上り始める。
同時にその肉体は痙攣し、まるでスライムの様に輪郭すら定かにならなくなってしまう。
……数秒後、そこに『あった』のは『一羽の巨大な漆黒の鴉』だった。
よく見ると完全な鴉ではなく、鳥の獣人のようだが……
その容姿は、左腕は人のままだが右腕は金属の様な光沢を放つ何かに変化しており
右足は赤い液状の何かが幾重にも走った太い筋に沿って鈍い光を放つなど
明らかに普通じゃない状態であった。辛うじて頭部と背中の翼が鴉じゃないかと思わせる程度の、
太陽の様な光を放つ『レイヴンだった何か』はその場に取り残された一同を
一瞥するとミクを追う様に羽ばたき、上昇していった。


>「どなたかとお間違えで無いかしら?
> 高く評価していただいたのは嬉しいけど、私が滅びをもたらすものだなどと買い被りですわよ」
何の事やら、とはぐらかすミクだったが、ハヤブサとて自分の言った事を
素直に認めるなどとは最初から思っていない。
「……そうでしょうか? ならば何故あの少女を絡め取っているのか。
 蜘蛛は捕らえた獲物を非常食として保存しておく習性を持っている。
 ……友達と思っているのは、彼女だけなのでしょうね」
ハヤブサはわざとユリの話題を出した。自身の存在意義にも直結する為、
後回しにもできない……もっとも、こんな単純なけん制に乗るとも思っていないが。
そうこうする内に、ミクは別の場所へと移動していった。
自分が監視している鴉たちを襲うつもりなのだろう。

(「……嫌な予感がする。彼の負傷が酷すぎるのはさておいても
  この状態であの蜘蛛神がやり過ぎたとしたら……」)
最悪と言う言葉すら生温い結末に至るのは必至。


127 名前:レイヴン ◇70VgGM3HY6 [sage] 投稿日:2010/08/13(金) 00:43:49 0
>「俺がヒステリーをおこす女の腐った野郎だとぉ?ふざけやがって…」
>「セラエノに言い過ぎちまったかもな〜?今度会ったら謝るっきゃねぇよな〜。」
「ふぅ……謝罪をしようという気持ちは尊いものだがね。
 それならば、感情に任せて罵詈雑言などぶつけなければ良かったじゃないか。
 ……君は女神様の事をどう思っているかは知らないが、その心根は
 君が想像している以上に『ただの少女』だよ」
ハヤブサはやれやれと、肩を竦める様な動作をする。
実に鳥らしからぬ、人間くさい動きであった。

>「ところで、マジな話、あんたって何者なんすか?
> さっきはミクの手前だったからひどい事を言っちまったけどよぉ、
> 俺はあんたのことを悪い奴だとは思ってねぇんだぜ〜?」
「おや、そんなにストレートに謝罪するのか。うん、私も大人気なかった」
一人と一羽が暴言のぶつけ合いを謝り合う、何ともシュールな光景だった。

「……まず前提として、君にとってはまったく気分の良くない話になる。
 それを承知で私は自分の事を説明するから、聞くだけは聞いてくれ」
断りを入れてから、コホンとこれまた人間くさい咳払いをするハヤブサ。

「私は、氷原の太陽であり砂漠の監視者でもある、とある神様の使い走りだよ。
 とても職務熱心な方でね、信仰されている場所の民全てを見守っておられる。
 ……あまりに職務熱心すぎて、世界に目を向けてしまったわけだ」

「女神様も仰っていたと思うが、神というのは信仰と迫害によって力を得る。
 主様を信仰している者だけを救うならば、まったく問題ない……しかし、
 世界に目を向け救うべき者の多さに愕然とした主様は自身だけでは
 手が足らないとして……私の様な使い走りを多数お造りになられた。
 私達は職務を全うする為の力と裁量権を与えられ、世界中を飛び回っているわけだね」
ぼかしてはいるものの、かなり突っ込んだことまで語るハヤブサ。
エンカに根付いている神様不信を少しでも和らげられれば、と言う思いゆえに
グラディスの時よりも多くを語ったのだが……


(「……ついに、目覚めてしまったか。
  彼に、旧神ですら御せなかったあの力を扱えるわけがないが……
  まさか、ベッドフォードはこれを見越して? ……ありえん。
  主様ですら偶然に頼らねば見つけられなかったと言うのに。
  それに制御できぬ力など求めた所で、いや、まさかそれこそあり得ない!
  ……どちらにせよ、このまま放置は出来ないか」)

先刻の『嫌な予感』が的中してしまい、内心頭を抱えるハヤブサ。
ミクに最上級の危険が迫っている事、それを止め得るだろう術を伝えようとしたが、
「……本気なのですか?」
ハヤブサは主人からその行動を止められてしまう。
主である神の意向は分からないが、無意味な事をしないのも知っている。
「分かりました……もう少し様子を見ます」


128 名前:ユーリ ◆xhl1mMpBWH4A [sage] 投稿日:2010/08/13(金) 03:54:27 O
>>123

桜花の眼についての話は
「まぁ、それも個性よね。コンプレックスだというのなら少し鍛錬して部分変身を身につければいいのでなくて?」
とまあ無難な回答に留めておく。本音を漏らすのは失礼な気がしてならないから

このままのほほんとと帰宅準備が整えば良かったのだがそうもいかないらしい
吊り上げられていくリリィ達を見ながら
(攫われヒロイン属性でもあるのかしら?)
と首を傾げ、ため息吐いて散漫な動きでブラウスのボタンを緩める
と、飛び立つ鳥っぽいものが見えて急いで跳躍しよかと思ったが、多分それじゃ間に合わない
やっつけの眼測りで自らの足元とリリィとエラセノの頭上の空間を固定して空間跳躍をし、一瞬でエラセノとリリィに肉迫する
落下する勢いのまま二人に絡まる糸を空間に干渉する魔力を込めた鷲手で捻り切った
そのままユーリは二人を抱き寄せて庇い、背中から地面に激突する
やや高い位置から二人(うち一人は完全に体重を預けきっている)分の重みで叩きつけられたユーリは「あぐっ……」っと苦しげに呻く

『今のうちにどさくさに紛れて逃げちゃおっか?』
という軽口は頭では意識すれども口からは出てこない。魚の如く口をパクパクさせるのが限界だ
痛みに慣れてしまえばいつものユーリになるだろうが

129 名前:ルイーズ ◆jntvk4zYjI [sage] 投稿日:2010/08/14(土) 06:05:11 0
>94
その頃、巨大ウサギことルイーズは困っていた。
「ああ、大変だー」
セラエノの茨によって破壊された屋敷は、外からでも総裁の部屋の様子が見えるようになっていた。
そのため、糸で縛られ蜘蛛に委ねられたユリの姿も、ルイーズから丸見えだ。
蜘蛛の巣の上で眠る幼女は、いつ蜘蛛に食べられてもおかしくない(ように見えた)

ルイーズは腕だけゴリラに変身させると、屋敷の瓦礫を拾い集めては蜘蛛に投げつける。
「そこの彼女起きるウホー、蜘蛛に食われるウホー!」
蜘蛛の反撃をかわしつつユリに呼びかけるが、果たして声だけで目覚めるものだろうか?

130 名前:レイヴン ◇70VgGM3HY6 の代理 [sage] 投稿日:2010/08/15(日) 22:48:12 0
>128
もう少しで追いつくだろう所で、ユーリによって二人は
とりあえずミクの手から解放された様だ。もっとも、落下するユーリの状況からして
受身を取る事はできないだろうが……背中から落ちれれば死にはしない程度の
高さであるし空間跳躍できるユーリが無様に落下するとも思えない……


           現実は非情であった。


ミクを見上げる程度の高さでカラスは止まり、ミクを進ませまいと全身で威嚇する。
その体は発光と同時に発熱しており、既に数百度にまで温度は上昇していた。
その熱を逃がしているのか留めておけずに漏れているだけなのか、高温に晒された
空間には陽炎が発生していて、誰の目にも危険な状態である。

カラスはおもむろに左手を持ち上げ、人差し指を上に向けた。
すると指先数十cm上に、目に見えるほどのエネルギーが収束し
急激に膨らんでいくのがミクの目に映った。やがてそれは眩い火の玉となり
なおもエネルギーを吸い込んでいく。その輝きは、まるで太陽であった。


放っておけば、カラスはその玉で何かをするだろう。
十中八九、ミクにとって好ましくないだろう事を―――――。

131 名前:グレン&?フリード ◆cOOmSNbyw6 [sage] 投稿日:2010/08/16(月) 00:25:51 P
>128-130
「…………これは夢でしょうか?セラエノさんがでっかい蜘蛛さんに連れていかれています」
今頃本格的に起きたフリード……はたしてこれから失われていた出番を取り戻せるのだろうか?
そしてこんな中途半端な時間に起きて明日の授業の一限目は大丈夫なのだろうか?
「にゃあ!?」
(まずいフィー坊が起きた!?)
焦るグレン

まずは体の主導権を取り戻さなければと融合を解くフリード
「ユニオン………‥アウト」
融合を解除するフリード
「事情は知りませんがどうやら大変なことになっているみたいですね
 行きますよグレン!ソウル・ユニオン!フリードSUグレン!!」
「にゃなぁ!?」
(僕の出番がぁ!?)
光りに包まれる一人と一匹、光が止んだ時
そこに現れたのは猫耳猫尻尾のフリードであった
「さあ魔力が完全な僕の力見せてあげます!」
「にゃなあ」
(次の日魔力切れで苦労するんですね分かります)
「さあ!ビーストウォーズの始まりです!!」
確かにゴリラ、狼、猫、カラスで敵側に蜘蛛だけど・・・・ちゃうねん!
ちなみにこの場合後半に蜘蛛が仲間になります
だが力を発揮する前にユーリに助けられるリリィ
「・・・・・・・僕の出番」
そう言って再び眠りに入るフリード
「一時期どうなるかと思ったよ」
とフリードの体を完全にのっとった状態のグレン
どうやらこの形態ならば言葉を自由にしゃべれるようである
がしかし・・・・・コロンっと転がるグレン(見た目フリード+猫耳)
どうやら体のバランスが違うのでまともに動け無いようである
喩えるならば普段ゲッター2に乗っている隼人がゲッター1に乗るようなものでうまく体が動かせないのだ
「ユニオン!アウト!!にゃにゃんな」
仕方が無いので分離して再合体するグレン
「なにゃ〜なにゃな」
(グレンSUフリード)

>「・・・・・・・レイヴンさんが時間を稼いでくれてる間に、私達はこの場を離れよう。
  動ける人は手を貸して。私はユーリ先輩を運ぶから。
  ああ、グレン、大事な翼を貸してくれてありがとね」
「なにゃ〜」
(問題ない)
と背中に生えた翼を見るグレン
そしてあっちの方に転がってる翼を見つめるグレン
「・・・・・・・にゃあ!?」
(・・・・・・・増えてる!?)
人型になれる使い魔が脱衣し動物に戻りまた変身すると脱いだ服がそのままでまた新しい服を着ているという現象である
「にゃあん」
(この遺跡を進んでいけば男子寮につながってるはずだよ)
もちろん男子寮の地下ダンジョンとここが同じダンジョンならばという前提でである
端の方にそれっぽい箱があるがきっと別物であろう
穴に落ちたらそこは目的の宝物がありました♪なんて都合が良すぎる偶然が何度もあるわけが無いのだから
だが上にはミクがいる……そしてどこにいるかはよくわからないが総帥も居るだろう
果たしてどう脱出するべきなのだろうか?

132 名前:リリィ ◇jntvk4zYjI [sage] 投稿日:2010/08/16(月) 11:40:21 0
>122-125
首に巻きついたは緩むどころかますます締まり、リリイを苦しめていた。
>「にゃあ!?」 (なにしやがるんだ!?)
ミクに連れて行かれた後、自分がどう扱われるかは、この扱いで嫌でも理解できた。
逃げない獲物ながらも、苦痛に弱々しくあがくさまは、きっとミクも楽しませたことだろう。
出せない声のかわりに発していたテレパシーも、皆を心配させないための精一杯の虚勢も、そろそろ限界のようだ。
そんなリリィに、怪我を押してレイヴンが檄を飛ばす。
何も悪いことはしていないと。皆、自分のために来てくれたのだと。
>「……リリィ、お前がしなきゃ、いけない事は、なぁ!
> ここまで、してくれた連中に……無事な姿を、見せる事だ……!
> 誰も、怒ってねぇし、怒ったりしねぇ……俺たち全員、『トモダチ』なんだろ!?」
リリィの目に、苦痛以外の涙が浮かんだ。

>「そんな風に!もう会えないような言い方しなくたって、自分で返せばいいでしょ!」
>そう言うやメイションの体から、長さ2mの触手が無数に噴き出た。
>「上海ハニー!」
締め上げられていた首の糸が、ふっと緩んだ。
リリィは体をくの字に折り、盛大に咳き込んでいる。
>「2回もお姉ちゃんを取られてたまるもんか!」
>「見ろリリィ……メイション、諦めてねぇぞ。
> ……お前も諦めるな」

>「メイションくんはお姉ちゃんが取られるのが嫌なのね。
> それでは、お姉ちゃん以外の人を連れて行くのはどうかしら?」
>血まみれで気絶しているセラエノの体に糸が巻き付き、上に向かって持ち上げ始める。

突然拘束が緩んだリリィはバランスを崩し、目の前にいたメイションにぶつかることになる。
「メイショ・・・・・・」
表情を緩めたリリィは何か言おうとしたようだが、それは新たに巻かれた二本の糸によって遮られた。
リリィの体がセラエノと同じく、宙に浮きあがっていく。
>「それでは皆様ごきげんよう。
> 今夜の事は忘れて、明日の朝からの学園生活を楽しんでくださいましね」
>「にゃにゃ〜!!」 >(ショルダァブゥメラン!!)
>一応翼を投げてはみるが飛距離が足りずミクには届かない
だが、リリィのところまではギリギリ届いた。
リリィはグレンの翼で、蜘蛛の糸をなんとか切断しようとあがき始めた。

直後。
一度にたくさんのことが起こった。


>131 126
グレンが猫耳フリードに変身した。
レイヴンがいたあたりから突然鴉のような生き物が出現し、ミクの方に向かって飛んできた。
リリィ達の目の前に突如ユーリが出現し、体に巻きついていた糸を切った。
>そのままユーリは二人を抱き寄せて庇い、背中から地面に激突する
>「あぐっ……」
「ユーリ先輩っ?!ああ、そんな、私達を庇って・・・・・・!お願い!目を開けて!」
口をパクパクしているユーリを見て、リリィは半べそになっている。
空間跳躍が出来るユーリが体を張ったのは、もしかしたら昼間、リリィ達を運んだ時に手違いがあったことが一因かもしれない。


133 名前:続き [sage] 投稿日:2010/08/16(月) 11:41:45 0
「他の人達は・・・・・怪我してたレイヴンさんはどこ?まさか、あの鳥みたいなのがそうなの?」
瀕死の状態から別人に変身したレイヴンを知っているグラディスだったら、少しは彼の変貌に耐性があったかもしれない。
もっとも、さすがのグラディスも、今のレイヴンの姿は想定外かもしれないが。
「・・・・・・・レイヴンさんが時間を稼いでくれてる間に、私達はこの場を離れよう。
 動ける人は手を貸して。私はユーリ先輩を運ぶから。メイション君とグレンは他の人をお願い。
 桜花さん、グラディス君も歩ける?」
リリィはユーリに肩を貸すと、表情を改め一同を見た。
「それと皆、―――― 色々本当にごめんね」

リリィはメイション目を留めると、少し恥ずかしそうに笑った。
「ありがとう、メイション君。
 ・・・・・・・・エンカの本、もう少しだけ私が預かっててもいいよね?」

「グレンも、大事な翼を貸してくれてありがとね」
>「なにゃ〜」 (問題ない)
「良かった、ちゃんと元通り背中にくっついたんだね」
>そしてあっちの方に転がってる翼を見つめるグレン。それを目で追うリリィ。
>「・・・・・・・にゃあ!?」 (・・・・・・・増えてる!?)
「え?!もしかしてその翼、何度でも生えてくるの?」
トカゲの尻尾みたいだとリリィは思ったが、もちろんそんなわけが無かった。

>「にゃあん」 (この遺跡を進んでいけば男子寮につながってるはずだよ)
「え、この遺跡、男子寮に繋がってるって?
 じゃあグレンにグラディス君、道は分か・・・・・・きゃん?!」
リリィは瓦礫に足を取られ、転びそうになった
「ユーリ先輩が出した灯りのおかげで少しは見えるけど・・・・・・何とか、逃げる方角だけでも分からないかな。
 男子寮が無理でも、どこかで地上に出られればいいんだけど」
(早く、皆を安全なところに運ばないと)
致命傷ではないにしても、桜花も血を流しすぎている。
セラエノが目を覚まさないのも気になった。仮面にヒビが入っているし、どこかで頭でも打ったのかもしれない。
そんな考えで頭が一杯のリリィには、残念ながら端の方にある箱のようなものまで気づく余裕は無かった。

>130
上ではミクにレイヴンだったものが何か仕掛ける気のようだ。
だが位置的に、攻撃を放てば、ミクだけでなく地上のユリにも地下の人間にも被害が及ぶのは必至。
(もしかして、我を失ってるの?!)
「皆、とにかく急いで!」

リリィは移動しながら、上空のレイヴンを険しい表情で見上げる。
『レイヴンさんやめて!もういいから!このまま続けたら、皆が死んじゃう!
 ねえ、助けに来てくれたんじゃなかったの?お願いレイヴンさん、目を覚まして!!』
自分に出来る精一杯の強さでテレパシーを試みたが、果たして今の彼に届いているのだろうか?
そして――――ここまで派手に騒いでいれば、エンカもミクが去った方向で何かあったと気づくかもしれない

134 名前:エンカとメイション◇jWBUJ7IJ6Y の代理 [sage] 投稿日:2010/08/16(月) 23:38:03 0
>127
> 「……まず前提として、君にとってはまったく気分の良くない話になる。
>  それを承知で私は自分の事を説明するから、聞くだけは聞いてくれ」
ハヤブサが断りを入れたとおり、それはエンカにとって気分の良くない話だった。
「事情はわかったっす。」
エンカはハヤブサの説明が終わったのでそう言った。
「俺がなんで神様って奴を嫌ってるか教えてやろうか?
 それは神様って奴が自惚れが強いからだ。
 そうやって自分一人の意思と力で世界を変えられると思っている。
 だが、俺はそんな風に思ってねぇし、思いたくもねぇよ。
 もしも人間に救いが必要なら、それは人間の力で解決しなけりゃよ〜、
 俺達自身で乗り切らなけりゃ、知的生命体って言えねぇだろうが。」
ここまではハヤブサが仕えている神についての意見である。
次にエンカはハヤブサに対して言った。
「さっきセラエノは普通の少女だって言ってたよな〜?
 確かに俺が何も言わなかったらあいつもどうとも思わねぇかもしれねぇ。
 だが、文句の一つも言えねぇのは友達じゃあねぇだろうがよぉ?」

エンカは自作した武器を試してみた。
武器といっても、長い蜘蛛の糸の両端に石をくくりつけただけのものであるが、
遠心力を利用すれば、その力は馬鹿にならない。
東方で言うところの鎖分銅、宇宙世紀で言うところのガンダムハンマー、
中国で言うところの流星錘のような武器であった。
「まずまず、いい感じの武器ができたぜ。
 俺はミクに加勢しに行くからな。邪魔すんじゃねぇぞ?
 分別のある人間は蜘蛛の巣にかかった蝶を逃したりしねぇんだからよ〜。」
ミクが行った方では騒ぎが大きくなっていた。
その原因は、ミクを助けに現れたエンカにもすぐにわかった。
「なんだありゃ!?まさか、ヤタガラスって奴か!?
 東方のカミ様であんなのいたよな〜!?」

>128>130>133
リリィとセラエノは、ユーリのとっさの行動のおかげでミクにさらわれずにすんだ。
> 「他の人達は・・・・・怪我してたレイヴンさんはどこ?まさか、あの鳥みたいなのがそうなの?」
「うん、まるで妖怪みたい…だとしたらまずい!理性を失ってるのかもしれない!」
> リリィはメイション目を留めると、少し恥ずかしそうに笑った。
> 「ありがとう、メイション君。
>  ・・・・・・・・エンカの本、もう少しだけ私が預かっててもいいよね?」
「僕が決めるようなことじゃあないよ。だって、それはエンカ君の本だもの。」
メイションにとって、リリィの預っている本は今は問題ではなかった。
それよりも気がかりなのは、ミクを追いかけるレイブンだった何かである。
そして、レイブンだった何かの放つ熱エネルギーは、
メイションにとって、とても悪いことを連想させずにはいられなかった。
「やめてよ!その人はまだユリお姉ちゃんを隠してるし、
 僕はミクお姉ちゃんとも仲良くなりたいんだから!!」
その時である。
≫「なんだありゃ!?まさか、ヤタガラスって奴か!?
≫ 東方のカミ様であんなのいたよな〜!?」
「ヤタガラス…?」
洞窟の奥からエンカが顔を出した。
「エンカ君!なんとかしてよ!このままじゃあ、ミクお姉ちゃんが死んじゃうよぉ!!」
≫「なんとかするったって!どうにかするに決まってるじゃねぇかよーっ!
≫ 俺はそのために来たんだからなーっ!!」
エンカは特製流星錘を振り回すと、レイブンだった何かに向けて先端を投げつけた。

135 名前:ミク ◆sto7CTKDkA [sage] 投稿日:2010/08/17(火) 16:43:58 0
>124-128 >130-134
>「にゃにゃ〜!!」
>(ショルダァブゥメラン!!)
「そんな力では届かないわよ?」
自分を狙ったであろうグレンの羽が届かなかったのを見て、ミクはさらに上昇する。
リリィがその羽を受け取って逃げようとしているが、何ほどのことがあるだろう。
怒りの感情で生徒の覚醒を促す総裁の策は、失敗だったのではとミクが思い始めた時だった。

>「……うああああああああああああああああああああ……!!!!!!!!!!!!!」
下から聞こえた声に、下から感じる力に、ミクは目と耳を奪われる。
人だった存在が、巨大な烏にその身を変じているのだ。
太陽のような光を放つ”それ”から注意を逸らせるほど、ミクも愚かではない。
当然ユーリがリリィとセラエノを助けるのを止めることもできないが、今は他人より自分だ。
「これが覚醒なのかしら…
 …どうやら、外れくじを引かされたようね」
ミクはそう言って少し自嘲気味に笑った。
総裁の意図にはかなったのだろうが、自分が思っていたよりも厄介な相手を敵に回したことに気づいたのだ。
ただ、すぐにこちらを攻撃しないで仲間を守るような動きをしたため、ミクにも他の相手を気にする余裕ができる。

>「事情は知りませんがどうやら大変なことになっているみたいですね
> 行きますよグレン!ソウル・ユニオン!フリードSUグレン!!」
>「にゃなぁ!?」
>(僕の出番がぁ!?)
>「・・・・・・・僕の出番」
>「ユニオン!アウト!!にゃにゃんな」
同じく覚醒したように見えた猫は、一人漫才に忙しそうだ。
攻撃を仕掛けてこないのはいいが、ミクは見ているだけで疲れそうになった。
ある種の精神攻撃かもしれないと思いながら、目をそらす事にする。

セラエノとユーリを始め、他の者も積極的に攻撃する意思は見せていない。
つまり、目の前の高熱を放つ大烏にミクは集中できるという事だ。
口で言うほど簡単な事ではない。
体温が相当な高温に達しているであろう”それ”は、さらに太陽のように輝く火の玉を作りはじめたのだ。
真正面からその火球を受けて無事で済むとは、ミクにもとても思えなかった。
ミクは、さっきのハヤブサとの会話を思い出す。
友達だと思っているのがユリだけだ、という点にはミクも同意できた。
それでは、ミクにとってユリは、一体なんなのか?
答えは出なかったが、このままだとユリは焼け死ぬだろう事だけはわかった。
「…どうやらこの辺りが潮時のようね」
なぜか、ミクはユリをこのまま見捨てる気にはなれなかった。

>『レイヴンさんやめて!もういいから!このまま続けたら、皆が死んじゃう!
> ねえ、助けに来てくれたんじゃなかったの?お願いレイヴンさん、目を覚まして!!』
>「やめてよ!その人はまだユリお姉ちゃんを隠してるし、
> 僕はミクお姉ちゃんとも仲良くなりたいんだから!!」
下からレイヴンに呼びかける声が聞こえるが、メイションの言葉にミクは苦笑した。
明らかな敵対行動を取った後なのだから、いまだに仲良くなりたいと言ったのが滑稽に聞こえたのだ。
「敵にまで優しいのね。 ふふ…本当に面白いわ」

エンカがレイヴンに流星錘を投げると同時に、ミクは行動を起こした。
ミクの体が穴を上に向かって急上昇を始め、入れ替わりに上からユリを捕まえていた蜘蛛が降ってくる。
降ってくる蜘蛛はみるみる大きくなり、レイヴンと火球に飛びかかる。
並の蜘蛛よりはるかに強靱だが、炎に強いわけではない。
レイヴンが正気に戻らなかった時、上に注意を引きつけるため、一瞬でも時間を稼ぐために捨て駒にしたのだ。
正気に戻っていたら単に蜘蛛に襲われるだけになるが、それはミクの知った事ではない。

136 名前:ユリ ◆sto7CTKDkA [sage] 投稿日:2010/08/17(火) 17:31:16 O
>>129
>「そこの彼女起きるウホー、蜘蛛に食われるウホー!」
蜘蛛は瓦礫に当たらないように動き回り始めるが、いつまでも逃げきれるものではない。
そのうちに、投げられた瓦礫の1つがユリの頭にクリーンヒットした。
「う…うーん…なんか頭痛…」
呻き声を上げながら目を開けたユリは、しばらくしてから現状を把握する。
「あっれー!?なんで私こんな所で吊されてるの!?
 ちょっとちょっとちょっと!誰かいないの!?
 ねえってば――――っ!!」

ユリがじたばた暴れ始めたのを知って、蜘蛛はユリを吊す糸を右に左にぐるぐる回し始めた。
吊られたユリの体も、しばらく右回転してから今度は左回転と行った感じで回り続ける。
回されている方はたまったものではない。
「ち、ちょっと待…これまずいってシャレにならないから…
 うぷ…きもちわるい…吐きそう…」
とりあえず、ユリがぐったりしておとなしくなると蜘蛛は回すのをやめた。
このままユリが暴れるたびに同じ事が繰り返されるはずだったが、事態の進展はそれを許さない。

穴から輝き出す光が、ルイーズにも見えるようになるだろう。
それは覚醒したレイヴンが作り出した、極小の太陽にも似た火球の光。
ユリが放ったサニーゲイザーよりもはるかに強い光だ。
「うわっ!まぶし!
 なんなのこれ……って、え?え?」
真下に輝く光の側に人影を見たユリが目を凝らしたとき。
ミクの使い魔の蜘蛛はユリを窓から館の外に放り投げ、穴の中に飛び込んでいった。
予想外の行動に反応が遅れ、身を守る技も失敗したユリは頭から地面にダイブする。
「いった〜い!!
 さっきからなんなのさも〜う!」
縛られたままうつぶせに倒れ。
それでも元気に上体を起こして、夜の森に向けて怒りをぶつけるユリだった。

137 名前:レイヴン ◇70VgGM3HY6 の代理 [sage] 投稿日:2010/08/17(火) 23:34:35 0
>131-136
>「俺がなんで神様って奴を嫌ってるか教えてやろうか?(中略)
> 俺達自身で乗り切らなけりゃ、知的生命体って言えねぇだろうが。」
「……君がそう思うならそうなのだろう」
ハヤブサのエンカへの返答は実に当たり障りのないものだった。
(「偏見に満ちた今の彼には何を言っても無駄だね……
  これからも色々な事を経験するだろうし、その過程で視野が広がってくれるのを期待しよう。
  ……そもそも、私の言葉すらまともに理解しようとしているかすら怪しい、か」)
見れば、聞けば、そして知れば、変わっていくだろう。
学習し応用し適応する事も人間の強さなのだから。

>「さっきセラエノは普通の少女だって言ってたよな〜?
> 確かに俺が何も言わなかったらあいつもどうとも思わねぇかもしれねぇ。
> だが、文句の一つも言えねぇのは友達じゃあねぇだろうがよぉ?」
……エンカの心情と思わしき部分に考えを及ばせたハヤブサだったが、
遠慮する気もなかった。彼自身が既にそうしているのだから――――
「その意見には賛成するがね、それならそれでもう少しオブラートに包んだ言い方をするべきだった。
 いきなりケンカ腰とか君はバカですか? 文句を付けるにしても、段階を踏むのが
 筋と言うものだよ、あんな調子じゃただ君が勝手にキレただけでしかないのだからね。
 そんな事をしていると、女の子にモテませんよ?」
……何故か、最後の一言は子供を宥める母親のような声色だった。


>「まずまず、いい感じの武器ができたぜ。
> 俺はミクに加勢しに行くからな。邪魔すんじゃねぇぞ?
> 分別のある人間は蜘蛛の巣にかかった蝶を逃したりしねぇんだからよ〜。」
「邪魔などするつもりはないよ。傷ついた人がいたら助けるけれどね。
 ……さてさて、果たして蜘蛛の巣に引っ掛かったのは蝶なのだろうかね?」
こうして話している今も、万物照覧の目によってハヤブサは事の始終を見ている。
もって回ったような言い回しもここに起因するのだ。

>「なんだありゃ!?まさか、ヤタガラスって奴か!?
> 東方のカミ様であんなのいたよな〜!?」
「……物知りだねエンカ君。だが君は、いや神話そのものが間違っているのだから
 君を責めても仕方ないね。『アレ』は、神様などではない……『アレ』は
 旧神を焼き尽くし神世を世界から滅した終焉の使徒。『神々の黄昏』に記される
 『終末の炎』は、『アレ』の事だ……旧神ですら御せなかった『太陽のかけら』なんだよ」
ハヤブサの口から語られる驚愕の事実。まだ神が肉体を持っていた頃より存在し
その時代を消滅させてしまったものが目の前にある、と――――。


>エンカは特製流星錘を振り回すと、レイブンだった何かに向けて先端を投げつけた。
>降ってくる蜘蛛はみるみる大きくなり、レイヴンと火球に飛びかかる。
加熱と廃熱を繰り返した結果、大カラスの周囲は鉄も溶け出すほどの温度にまで上昇しており
また中心にある火球は集めたエネルギーによってほとんど太陽と遜色ない状態になっていた。
そんな中投げつけられた石は高熱に晒され徐々に赤熱しやがて『溶け始めた』。
溶けた石は大カラスの左腕に接触する頃には『溶岩』になっていて……腕に張り付く。

周囲を取り巻く高熱には影響されないが、直に、局所的に叩き付けられた高温は逃がし切れず
大カラスの左腕は溶け落ちてしまった……瞬間、動きのなかった火球から光が放たれ
壁や地面に赤い線を残す。光の正体は熱線で、当たった部分は超高温によって溶岩化してしまった!

138 名前:レイヴン ◇70VgGM3HY6 の代理 [sage] 投稿日:2010/08/17(火) 23:37:03 0
腕がもげた事にわずかに意識を向けたのか、大カラスはミクから視線をはずす。
その瞬間、入れ替わる様に大蜘蛛が飛び掛ってきたが、無数の熱線に自ら飛び込む形になり
熱で溶断され発火温度を超えた部分から燃え盛り、瞬く間に灰になってしまった……
大カラスはそれを無視してミクを追おうとしたのだが


>『レイヴンさんやめて!もういいから!このまま続けたら、皆が死んじゃう!
> ねえ、助けに来てくれたんじゃなかったの?お願いレイヴンさん、目を覚まして!!』
>「やめてよ!その人はまだユリお姉ちゃんを隠してるし、
> 僕はミクお姉ちゃんとも仲良くなりたいんだから!!」
下から聞こえてきたいくつかの声が届いたのか、残った右手をどこか緩慢さを感じさせる速度で
無差別に熱線を撃ち出す火球に向けると、熱線が止みあれだけのエネルギーを蓄えた火球が
見る見るうちに小さくなって……突然消えてしまったのだ。

その光景を見たハヤブサは己の目を疑った。
(「制御、したのか……!? あり得ないと思っていた事が起こるなんて……
  ベッドフォードは、どこまで見えていたのだ? これすらも想定内だとするなら……
  いや、あまりにも危険だ。偶然でないとするならば、余計に―――!」)

改めてベッドフォードの計画の危険性を認識するハヤブサ。
もしこの力を完全に制御できるようになったとしたら、それは神を超えた事になるのだから。
(「人間は……種としてそこまでの域に達していない。
  そんな状態で神を超える力を手にしたら……!」)
悪い未来ばかりが見えてしまい、そっと身震いするハヤブサ。


やがて大カラスはミクを追うのを諦めたのか、一行の前に降り立つと巨大な翼を畳み
うずくまる様な姿勢を取った。その姿は腕があるにも拘らずただ大きいだけの鴉が
止まり木で羽を休めている様に見えただろう……そして、再び捻じ曲がった時計盤が現れた。
グラディスが見るのは二度目になるそれは、一分もしない内に収まったが……


大カラスが消えた場所に倒れていたのはどう見ても10歳前後の子供だった。
全身傷だらけ、しかも碌なものを食べられなかったのか腕も足も
骨に皮がへばり付いているのではと思うほど細く、頬はこけ髪も真っ白。
衣類はボロボロだが肌は黒く……その黒さも満足に汚れを落としていないが故の黒さで
その上形容しがたい異臭を放つなど酷い姿だった……両手に握られている
刃毀れと錆塗れの短剣以外は―――――。

139 名前:グレン&?フリード ◆cOOmSNbyw6 [sage] 投稿日:2010/08/18(水) 21:11:59 P
>133-138
>「え、この遺跡、男子寮に繋がってるって?
 じゃあグレンにグラディス君、道は分か・・・・・・きゃん?!」
クンクンと鼻を動かすグレン・・・・本来こういうのは猫より犬の役目なのだが
向こうのほうから男子寮特有の男臭い香りが・・・・
「ぐふぅ!?」
もろに嫌な匂いを嗅いでしまったグレン
効果はばつぐんだ!!
「にゃ・・・・にゃあ」
(間違いないよ・・・・・この道は男子寮に繋がっているよ)
どうやらこの遺跡はファンブルマン先生が言っていた”箱”のある遺跡と同一の物のようだ
と言うことはあそこにある箱はファンブルマン先生の求める箱と同一なのではないだろうか?
そしてその中身は総帥が求める遺物の一つなのではないのだろうか?
だがそんな偶然あるわけが・・・・・そう思いながらもグレンは
そんなことより今はこの場を脱出する方が肝心と心を決めるのであった
第一ここで箱を手に入れてしまったら明日のイベントが無くなってしまう

上の方はどうやら一段落したようである
力を使い果たしたのか気絶したレイブンが
なんだか魔法薬エターナルチャイルドを飲んだがごとく子供化していたが
「にゃあん!?にゃなぁ!?」
(縮んでる!?まさかセラエノさんの全校男子生徒ショタ化計画!?)
とんだ濡れ衣を切れられるセラエノであった

地下遺跡のはずなのに腐っても居ない新品同様の扉が目の前にあった
変だなと思いつつ扉を開けるグレン
ギィ………ガチャン
「お父さんお誕生日おめでとう!!」
「やあゴブ美ゴブ太郎ありがとう」
ゴブリン一家の家族団らんを見なかったことにしてすぐさま扉を閉じるグレン
知らない間に偶然に遺跡にはゴブリンが住み着いていたようである
いやむしろ必然かもしれないダンジョンには罠がつきものであり
その罠を整備する人員は必要だろうからである
つまり彼ら一家はダンジョンの罠の管理人なのであろう

「にゃあん」
(向こうにも扉があるや)
せっかくだからとばかりに赤い扉を開けるグレン
どうやらこっちは正解の扉のようだ
多分この近くにあるはずの振り出しに戻るの罠を踏めば男子寮のダンジョン入り口まで戻れるはずである
以前伝説の猫缶を探した時にもあったのだから間違いない
ボスの部屋前まで来たのにスタート地点に戻らされる鬱陶しい罠だが
こういうボスに勝てなくて逃げなくてはならないときには便利極まりない罠でもあるのだ
「にゃあん」
(LV1(入学したて)で魔王(総帥)のところに行けば当然こうなるよね)
と必死に逃げるための罠を探すグレンであった

今の状況を考えると落とし穴に落ちた(床が崩れた)ら目的の宝箱とボスの居る部屋だったという状態である
宝箱は部屋の端の方に見えるあれだろうが・・・・・・はたして遺跡のボスはどこに行ってしまったのだろうか?
やはり総帥がこの屋敷を立てるときに倒してしまったのだろうか?


140 名前:ルイーズ ◆jntvk4zYjI [sage] 投稿日:2010/08/19(木) 07:36:12 0
>136
>蜘蛛は瓦礫に当たらないように動き回り始めるが、いつまでも逃げきれるものではない。
>そのうちに、投げられた瓦礫の1つがユリの頭にクリーンヒットした。
「ウホッ!!こここ、子供に当ててしまった」
これはまずいとオロオロするルイーズ。
>「う…うーん…なんか頭痛…」
幸いなことに、幼女は石頭だったようだ。

>「あっれー!?なんで私こんな所で吊されてるの!?
> ちょっとちょっとちょっと!誰かいないの!?
> ねえってば――――っ!!」
「これ幼女、大きな声出したらだめウホ、攻撃される・・・・・・ああ、言わんこっちゃない」
蜘蛛にぐるぐる回されて具合が悪くなったユリを見て、ルイーズはため息をついた。
「まずはあの蜘蛛を倒して、蜘蛛の糸を切って逃げるウホ。
 それにしても総裁のお宅がここまで壊されて、その上幼女が吊るされてるってのに、誰も駆けつけてこないってどういうことウホっ?」
全員あの眠り茨に押し流されたというのだろうか?
それにしても、だったら総裁の屋敷の中にいた人間はどこへ行ったのだろうか?
これだけ大きな家なのだ、管理する人間は両手の数では足りないはずなのだが。
それに、いくら学園が広いとはいえ、学園の権力者の邸宅でここまで騒ぎを起こしておいて、学園の治安関係が全く動かないのはどういうことなのだろうか?
「まさか、この程度の騒ぎは日常茶飯事ウホッ?!」


突如穴から噴出した光。
>それは覚醒したレイヴンが作り出した、極小の太陽にも似た火球の光。
>ユリが放ったサニーゲイザーよりもはるかに強い光だ。
「ウホッ?!」
>「うわっ!まぶし!
> なんなのこれ……って、え?え?」
突然大蜘蛛が、幼女を窓から館の外に放り投げ、穴の中に飛び込んでいった。
「ウホッ?!」
>予想外の行動に反応が遅れ、身を守る技も失敗したユリは頭から地面にダイブする。
「ウホ――――!!!!!!」
ルイーズは全速力で幼女を受け止めようとヘッドスライングした。
だが無事キャッチしたものの、木に激突して幼女を取り落としてしまう。

>「いった〜い!!
> さっきからなんなのさも〜う!」
「そ、それはこっちの台詞ウホ・・・・・・・死ぬかと思ったウホ・・・・・・・」
ユリのそばでは、ウサギの体にゴリラの両腕を持った妙な生き物が転がっていた。
その頭には、でっかいこぶが出来ている。

「おお幼女、私は決して怪しいものではないウホッ、私は通りすがりのかわいい森の動物ウホッ」
ユリの目の前で、ウサギとゴリラの怪物は三毛猫の獣人に姿を変えた。

「幼女、今はとにかくこの場を離れるニャー。まだ学園の治安関係が動いてないけど、それも時間の問題ニャー。
 学園に入学した当日、退学処分なんか嫌すぎるニャー」
ルイーズは縛られたままのユリを担ぎ上げると、えっさほいさと逃げ出した!
「幼女は助けるが、これ以上トラブルに巻き込まれるのはごめんニャー」
大変だ、このままではユリが怪しい三毛猫にお持ち帰りされてしまうぞ!

141 名前:リリィ ◆jntvk4zYjI [sage] 投稿日:2010/08/19(木) 22:49:52 0
>134-135 >137-139
>「にゃ・・・・にゃあ」
>(間違いないよ・・・・・この道は男子寮に繋がっているよ)
「さすがはグレンね!さあ、急いで逃げましょう!!ユーリ先輩ももう少しがんばって!」
リリィはよいしょっとユーリをゆすりあげると、よろよろとグレンがさした方角へと移動する。
ユーリの足が地面を引きずられているが、身長差のためなので許してほしいところである。
「どうしたのグレン?落とした翼が気になるなら拾って拾って」
こんな騒ぎを起こしたのだ、明日どころか、もう二度とここまでは立ち入れないかもしれない。
だったら悔いの残らないよう行動するべきだろう。

通路の奥から颯爽と現れたエンカはレイヴンだった大ガラスに攻撃を仕掛けた。
同時に、ミクは行動を起こした。
ミクの体が穴を上に向かって急上昇を始め、入れ替わりに上からユリを捕まえていた蜘蛛がレイヴンへと襲い掛かる。
そしてどういう理屈かは分からないが、エンカが命中させた武器は大ガラスの腕を溶かし落とした。
「あ、危ない!」
大ガラスに襲い掛かろうとした蜘蛛はあっというまに燃え上がり、灰になる。
>「やめてよ!その人はまだユリお姉ちゃんを隠してるし、
> 僕はミクお姉ちゃんとも仲良くなりたいんだから!!」
「えっ!ユリさんまでさらわれたの!?」
相変わらず話が見えていないリリィだったが、この場にいないユリも大ピンチだということは分かった。

メイションやリリィ達の声が届いたのか、大ガラスは無差別に熱線を撃ち出す火球を消してくれた。
そして地下にいる一同の前に下りた大ガラスは、翼を畳み、変身をといて元のレイヴンの姿に戻・・・・・。
「うそ――――?!」
元の姿には・・・・・・戻らなかった!!

大カラスが消えた場所に倒れていたのは、10歳前後の子供だった。
おまけに全身傷だらけな上に、がりがりで、汚れて、ひどい異臭を放っていた。
「ななななんで?!!?黒くなったのって熱線で焦げたからってわけじゃないよね?」
>「にゃあん!?にゃなぁ!?」 (縮んでる!?まさかセラエノさんの全校男子生徒ショタ化計画!?)
「ええっ、そうだったの?!セラエノさんって、こういうガリガリで傷だらけの子供がタイプだったんだ!!」
とんだ濡れ衣である。

濡れ衣はともかく、今はガリガリ少年をこのまま放置するわけには行かない。
「男性陣!悪いけど、怪我してるユーリ先輩をお願い!
 今なら先輩をお姫様抱っこできる権利も漏れなくついてくるわよ!」
そう言ってリリィはユーリを背中から降ろすと、倒れている少年に駆け寄り状態を確かめる。
「大丈夫!この子、ひどく衰弱してるけど・・・・・・うん、左手だってくっついてるし、ちゃんと人の姿に戻ってる。
 あんまり良くはないけど、ひとまず良しとしよう!」
リリィは躊躇無く上着(といってもかなりボロボロだが)を脱ぐと、少年の体を包んだ。
「ここは危険だから移動するわ。しばらく背中に担がせてね」
そうささやくと、リリィは少年を背中に負ぶった。
少年の両手に握られた短剣はそのままだったが、リリィはあまり気にしていないようだ。
「ところで、あのユリさんが隠されたってどういうこと?毒蜘蛛って、もしかして野生のものじゃなかったの?
 そもそもユリさんと彼女との関係って、どんなの?」

>ゴブリン一家の家族団らんを見なかったことにしてすぐさま扉を閉じるグレン
「ん?どうしたのグレン。・・・・・・あれ?なぁにこのドア・・・・・・・え?開けちゃ駄目なの?」
グレンの表情で何かを悟ったリリィは、それ以上閉じたドアには触れなかった。

>「にゃあん」 (向こうにも扉があるや)
せっかくだからとばかりに赤い扉を開けるグレン
>「にゃあん」 (LV1(入学したて)で魔王(総帥)のところに行けば当然こうなるよね)
「ところで、さっきからグレンは何を一生懸命探してるの?
 男子寮へは、この道をまっすぐ行けばいいわけじゃないのかな?」

「それと皆、何かいい考えがあるのなら、教えてくれない?
 私?私は一刻も早く全員で寮に帰って、怪我人を治療したい。
 ガリガリで小汚いレイヴンさんも綺麗に洗って、手当てして、お腹いっぱいにしたい。
 で、暖かいシャワー浴びて、ふかふかベッドでぐっすり寝たい」

142 名前:名無しさん@自治新党スレでTATESUGI値審議中 [sage] 投稿日:2010/08/20(金) 11:04:54 O
狼と音はまた消えたのか
残っているのはリリ、演歌、蜘蛛、烏、氷、神だけ?

143 名前:ベッドフォード ◆k4Jcxtcjwo [sage] 投稿日:2010/08/20(金) 21:56:20 O
「ついに太陽の力が現れたか…
雛型達の覚醒を促すだけのつもりが、こうも早く目覚めてくれるとはな…」

老人は雛型達とは少し離れた位置 地震により大穴が空いた際に崩れた床の上から戦いを眺めていた

「あの力…あの姿…かつて、この目で見た時より全く変わっておらん
まさに神に等しき力か…
だが、本物の神はどうでるかな………」
今にも崩れそうな床の上で老人は誰に聞かせるでも無く独り言を呟く
「太陽の力の目覚め…雛型達と共に完全なる覚醒はそう遠くない
後は原典の発掘を待つのみだ…」
そう言い終えると老人の姿はいつの間にか消えている
「蜘蛛に神々…その力は果たして過ちを繰り返すのか…」
誰も立つ者が居なくなった床は音を立てて底へと崩れていった


144 名前:エンカとメイション◇jWBUJ7IJ6Y [sage] 投稿日:2010/08/20(金) 21:59:21 0

>137>138>139>141
エンカが投げた流星錘は、小さな太陽に突入する過程で溶岩となり、大カラスの腕を溶かして落とした。
「せ、切断するつもりは…!?」
しかし、その瞬間放たれた熱線が岩を溶岩化するのを見て言葉を失った。
「じょ、冗談じゃないっすよーっ!?なんなんだありゃあよーっ!?意味がわかんねーっすよ!?」
エンカはハヤブサにそう叫んだ。『太陽のかけら』などと言われても納得できるわけがない。

> やがて大カラスはミクを追うのを諦めたのか、一行の前に降り立つと巨大な翼を畳み
醜い10歳くらいの子供になってしまった。
「あの化物の正体が、あんな子供だってのかよ…!」
>>「子供はみんな怪物なんだよ。大人はそれをいつも忘れようとしてるけど。」
メイションがつぶやいた。
≫「どうにかなってよかったよ。」
> 「にゃあん!?にゃなぁ!?」
> (縮んでる!?まさかセラエノさんの全校男子生徒ショタ化計画!?)
> 「ええっ、そうだったの?!セラエノさんって、こういうガリガリで傷だらけの子供がタイプだったんだ!!」
> とんだ濡れ衣である。
「えっと…リリィお姉ちゃん?この猫の言ってることがわかるの?
 うん、まぁ…魔女だから不思議じゃないけどさ。」
とメイション。メイションはセラエノの側へ行った。

> 「男性陣!悪いけど、怪我してるユーリ先輩をお願い!
>  今なら先輩をお姫様抱っこできる権利も漏れなくついてくるわよ!」
「断る!!」
エンカはリリィの言葉を拒否した。
「そいつは俺達がピンチになってる時に逃げ出した野郎だぜ!?
 今更ノコノコと戻ってきやがってよーっ!歓迎できるわけねぇっすよ!」
エンカはかわりにセラエノに近寄った。実際こちらの方が深刻に見えた。
≫「セラエノに折檻しないで。この人、血を流しすぎて衰弱してるんだ。」
「折檻なんかしねぇよ。友達だから心配で見に来ただけっすよ。」
メイションは落ちる前の二人のやりとりを見ていたので心配したが、
エンカがセラエノを傷つけたいと思ってないことを知ってホッとした。
エンカはふと、セラエノの側に『眠り姫』の本が落ちていることに気づいた。
エンカとメイションは顔を見合わせた。
≫「これって、アレだよね?王子様が眠り続けるお姫様を起こすために…」
「みなまで言うなメイション!こいつはやってみるしかねぇよなーっ!」
エンカは…つまり…その……セラエノにキスを試みた。

> 「ところで、あのユリさんが隠されたってどういうこと?毒蜘蛛って、もしかして野生のものじゃなかったの?
>  そもそもユリさんと彼女との関係って、どんなの?」
≫「ユリお姉ちゃんとミクお姉ちゃんは友達なんだよ。さっきキスをしてるの見たから…その…
≫ うん、すごく親密なお友達なんだよ。」
メイションはユリがミクの蜘蛛に連れていかれた事を簡単に話した。
一刻も早く寮に帰りたいというリリィにメイションが言う。
≫「怪我人は早く連れて帰った方がいい。だけど、はぐれた人達も探さないといけない。
≫ 両方やらなくちゃいけないのが、僕達のつらいところだね。」
「だったら、怪我人を連れて帰る組とはぐれた奴らを探す組に別れたらいいっすよ。
 俺ははぐれた奴らを探す組に入るぜ〜。」
なんだか様子がおかしいエンカがそう提案した。


145 名前:名無しさん@自治新党スレでTATESUGI値審議中 [] 投稿日:2010/08/20(金) 22:21:04 O
なのはまだ?

146 名前:セラエノ ◆LGeruanYjI [sage] 投稿日:2010/08/21(土) 00:45:21 0
コイノボリによって合流した時から気絶していたセラエノだったが、覚醒の時は近づいていた。
大きな異変や戦いが過ぎ、ひとまずの脅威がなくなりようやくだった。
しかしそれは余人の知りうる事ではない。
更に目抜きもない鏡の仮面を被っているのである。
エンカがセラエノを起こすためにキスを試み、身を沈めた瞬間にその目が開いた事など気付く筈もない。

横になるセラエノとエンカの唇の距離が約1cmでセラエノは覚醒し、反射的に身を起こそうとする。
その結果、**ガチリ**というお互いの前歯がぶつかる小さな音を立て二人の色気ないキスは成立してしまった。
エンカが唇に痛みを感じ仰け反るまでのほんの数瞬。
しかし永遠にも感じられる数瞬にセラエノは硬直し、直後その動揺を物語るようにひび割れていた鏡の仮面は完全に割れて落ちた。

身を起こすセラエノの露になった素顔。
意志の強さを表す様な太い眉、少し垂れ目がかった大きな目と髪の毛の色と同じ金色の瞳。
耳どころか首まで真っ赤にして立ち上がるその表情は険しく、目には涙が浮かんでいる。
微かに震えに手は強く、強く握り締められている。
「……エンカ、心配してくれたのね。ありがとう。落ち着いたら行くから先行ってて…」
小さく押し殺すような声で短く礼を言い、この場を去るように促した。

セラエノは呼吸をするように、音を聞くように残気を感じその場の少し前のことならば把握できる。
故に気絶していた自分を起こす為にエンカがどのような判断をして何故にこのような行動をしたかわかるのだ。
だからこそエンカを責められない。
頭では礼を言うべきだし、気することではないとわかっていたのだが。
それでもファーストキスをこのような形で、と。
落ち着くには暫しの時間が必要だったのだ。
図書館からの本をスカートの内側にしまうと、大きく深呼吸を繰り返す。

#########################################

エンカがリリィ達とこれからの話をしていると、落ち着いたセラエノがやってきた。
「みんな、心配かけたわね。コイノボリの治療効果で回復したから私は大丈夫。
ただ、そのコイノボリも破れて使い物にならなくなっちゃったけど、ね。
ああ、私はセラエノよ。」
始めて素顔で接する事もあり、改めて名乗る。
スカートの裾をつまみ一冊の本を取り出しながら。

「怪我人も多いことだし、運ぶのも手間でしょう。」
本来ならばコイノボリで運ぶのだがセラエノの持ってきた巻物シリーズの使い魔たちは全て壊れている。
グレンに三枚におろされ、ミクの糸で切り刻まれ、落下衝撃から守る為に盾となり。
故にセラエノは新たなる力を発現させる。

セラエノの手に収まっているのは魔道書でもなんでもないただの古びた絵本。
題名を【虎バター】という。
強欲な三匹の虎が見逃す代わりに少年の持ち物を次々と剥ぎ取り、最後はそれを取り合いお互い争ってバターになる、という物語。
ただの古びた絵本だが、セラエノにとってはあらゆる魔道書を凌駕する力の源なのだ。

物には記憶が宿り、それをサイコメトリーで読み取る事が出来る。
同じように、多くの人々から愛された物語にはその本に対する想いが蓄積される。
セラエノは自身の神血を媒介にその想いを具現化させることができるのだ。
信仰や迫害という形で各意識階層への回廊を開く奇蹟の力の別ベクトルの発現法。
一種の思念獣に近い形で。
故に【眠り姫】からは眠りを誘う茨が顕在化したのだ。
大量の血に見合う大量の茨が。

147 名前:セラエノ ◆LGeruanYjI [sage] 投稿日:2010/08/21(土) 00:48:10 0
そして今、強く握り締められた拳から滴り落ちる血が顕在化させたのは巨大な三匹の虎だった。
虎たちはセラエノの血斑になった黄色い上着を受け取ると、その対価として傷ついたユーリ、桜花、グラディスをそっと咥え身を伏せる。
メイションとエンカ、グレン、そして薄汚い子供になったレイヴンを抱えるリリィに乗るように促すかのように。

「あなたたちはその虎に乗って帰りなさい。暫くは顕在し続けるから。
エンカ、あなたもよ。魔法を使えないあなたがいてもできる事はないでしょう?」
探すのがユリ一人ならば自分一人で十分だ、とエンカの探す組みに入りたいという意見を切て捨てる。
虎は背に乗るもののいう事を忠実に実行するという事も添えて。

そのあとセラエノはリリィへと向きかえる。
上着を脱ぎYシャツ姿で更に背筋を伸ばすセラエノの胸は強調され突き出されるかのようだった。
「リリィ。あなたは罪を犯した。
おっぱいには夢と希望が詰まっているわ。
だからと言って絶望しないで。
あなたの胸には未来と可能性が詰まっているのだから。
なのにあなたは欺瞞と虚栄という嘘でそれに蓋をしていた。
これからは自分の未来と可能性に自信を持ちなさい。」
胸元に破れ目が入り、当初より驚くほど体型が変ったリリィに言い放つ。
しかし何故今これを?
やはりリリィが心配したように頭を打っているのだろう。

しかし、言い放つ言葉よりもリリィには…、リリィだけには驚くべき事があるはずだ。
なぜならば、全員に見えているものとは違ったものが見えているのだから。
太い眉、大きな垂れ目、金色の瞳、整った鼻。
誰が見ても、視覚以外の音、匂い、探査魔法、どのような把握方法でもそのように認識されるセラエノの素顔。
しかしリリィにはそうには見えない。
なぜならば、仮面が外れることによって強力なテレパシーが発せられ、いかなる把握法を持ってもそのように認識させられてしまっているのだから。
セラエノの姿形を強制的にそして気付けないほど自然にテレパシーで見せられているのだ。
だが、テレパシーの受信能力のないリリィには真の姿が見えている。

セラエノの口元から上、髪より下の仮面で隠されていた部分は
まるで石碑のような石であり、文字とも絵ともつかぬそこに刻まれた文字は脈動し僅かながらに動いていたのだから。
その石碑は【原本】と呼ばれるものだとはセラエノ自身も、まだ知らない。

「元々私は屋敷を壊した責もあるので一旦戻るつもりだったの。
だから事後の事は任せて帰りなさい。」
新たに手に収まるのは【ジャックとマメの木】
滴る血と共に巨大なマメの木は伸び、セラエノを上へと押し上げていった。

【セラエノ覚醒しエンカと前歯ぶつけながらキス。
絵本と神血を媒介に虎を顕在化させみんなに帰るように促す。
自身はマメの木を顕在化させて館に戻る為上昇。
素顔はテレパシーによって見せているものであり、本当の素顔は原本である石版
テレパシー受信能力のないリリィだけがそれを見られる】

148 名前:グレン ◆cOOmSNbyw6 [sage] 投稿日:2010/08/21(土) 16:09:08 P
>141>>144>147

>「えっと…リリィお姉ちゃん?この猫の言ってることがわかるの?
  うん、まぁ…魔女だから不思議じゃないけどさ。」
「にゃあん」
(ケットシー語は受験で使えるよ)

>「ところで、さっきからグレンは何を一生懸命探してるの?
  男子寮へは、この道をまっすぐ行けばいいわけじゃないのかな?」
いくら探しても振り出しに戻るの罠が見つからないためグレンは探すのを諦めた
「にゃなあ」
(行ってもいいけど罠あるから危険だよ)


セラエノが呼び出した虎
そこに猫が虎に乗るという微妙極まりない図がそこに出来上がる
「にゃあん?」
(おじちゃんこれ載っけていい?)
と返事を聞かずいつの間にかくすねていた”『金属製の小箱』”を背中に載せるグレン
これが本当の泥棒猫である
きっと明日ファンブルマンの依頼で宝探しに来たメンバーは困惑するであろう
目的の『金属製の小箱』がないのだから
それにしても寮の地下迷宮のゴールが総帥のお屋敷の地下にあるなんて・・・・・
「にゃんなぁ」
(さあ脱出だ)
何気に冒険を一つ潰したグレン
本当にこんなことをやっても良かったのだろうか?
これはいわばダンジョンの上から穴をあけて爆弾を投げ込んで地下の大ボスを殺すような反則行為である
または魔王を外から攻撃呪文で住んでる城ごと吹っ飛ばすような行為である

フリードはグレンが持ち帰ったそれを寮の地下にあるという『金属製の小箱』だと気がつくのだろうか?
それとも気づかずに地下への入口を探し入っていってしまうのだろうか?
そしてあるはずのない『金属製の小箱』を探すのであろうか?
それは明日になるまでわからない
そういえば箱の中身はなんなのだろうか?本当にファンブルマンに渡して良い代物なのだろうか?
数多くの謎を残しつつも長い一日は終わろうとしていた


「にゃにゃあ」
(おやすみなさいまた明日)
保険医に怪我人を押し付け
「治癒魔法ぐらい習っておくべきだと思うがね」という保険医をガン無視しつつ

寮に戻りバタンと扉を閉めフリードをベットに戻しその上で丸まって寝るグレン
ベット脇の机に載った金属製の小箱
この子箱が何か事件を引き起こすのか?
それとも普通にファンブルマンの手に渡るのか?
それはまだわからない
わかることは明日は授業があるということだ
はたしてこの濃い面々でまともな授業ができるのだろうか?
そして担任となる先生は一体誰なのだろうか?
まあ猫であるグレンには関わりのないことだろうが

149 名前:リリィ ◆jntvk4zYjI [sage] 投稿日:2010/08/23(月) 08:19:34 0
時間は、少し遡る。

>142-148
「えっと…リリィお姉ちゃん?この猫の言ってることがわかるの? 
 うん、まぁ…魔女だから不思議じゃないけどさ。」 
「ああ、グレンが使ってるのはケットシー語だから。ホントグレンって、頭のいい猫よね〜」
リリィには、グレンがケットシーだという発想は無いようだ。
「他にも多少なら異種族の言葉わかるよ」
もっとも、セラエノのように接触テレパスも使えれば、そんなものは意味無いのだが。
>「にゃあん」 (ケットシー語は受験で使えるよ) 
「グレンがケットシー語は受験で使えるって」
>メイションはセラエノの側へ行った。 

いくら探しても振り出しに戻るの罠が見つからないためグレンは探すのを諦めた 
>「にゃなあ」 (行ってもいいけど罠あるから危険だよ)
「罠かぁ・・・・・・そうね、ロクな装備も無しに、怪我人連れて行くのは厳しいかも」 

傷ついたユーリを運ぶのをきっぱり拒絶したエンカ。
>「そいつは俺達がピンチになってる時に逃げ出した野郎だぜ!? 
> 今更ノコノコと戻ってきやがってよーっ!歓迎できるわけねぇっすよ!」 
「えっ、そうだったの?!」
事情を知らないリリィはびっくりした。
「で、でも、置き去りになんて出来ないよ。
 それに、逃げたはずの先輩が、こうして私達を助けてくれたって事実も大事だと思うし・・・・・」
エンカの剣幕に押されたリリィは、その背中に小さく呟くのが精一杯だった。

そして現在。
>「ユリお姉ちゃんとミクお姉ちゃんは友達なんだよ。さっきキスをしてるの見たから…その… 
> うん、すごく親密なお友達なんだよ。」 
「え?・・・・・・そ、そう・・・・・・ししし親密なお友達、ねえ」
リリィの顔がかーっと赤くなった。メイションの方がよほど大人である。

>「怪我人は早く連れて帰った方がいい。だけど、はぐれた人達も探さないといけない。 
> 両方やらなくちゃいけないのが、僕達のつらいところだね。」 
「でもさ、今までの話を総合すると、そのユリさんを連れてった蜘蛛はミクさんの使い魔で決まりよね?
 となれば、ミクさんに保護されたユリさんは安全ってことじゃない?」
そこでリリィはミクの容赦ない攻撃を思い出し、身震いした。

「でもミクさん、ユリさんと友達なら、何で私をあそこまで痛めつけようとしたんだろ?
 ・・・・・・はっ!もしかして、私のことユリさんの新恋人と誤解したとかっ?!」
いやーん!とリリィは一人身もだえしていたが、背中の少年が小さく呻き声を上げたため、ぴたりと静かになった。
「あ、起きたのかな?レイヴンさん大丈夫?しっかりして。おなか空いてない?何か食べる?」
背中の少年を下ろし、リリィは軽くその体を揺すってみた。

>「だったら、怪我人を連れて帰る組とはぐれた奴らを探す組に別れたらいいっすよ。 
> 俺ははぐれた奴らを探す組に入るぜ〜。」 
言葉はシリアスだが、その顔を見てリリィは絶句する。
「ど、どうしたのエンカ、その顔、何かあったの?!」

150 名前:リリィ ◆jntvk4zYjI [sage] 投稿日:2010/08/23(月) 08:23:29 0
>142 144
「何この声?もしかしてゴースト?こらぁ、隠れてないで出てきなさいよね!!」
リリィは勇ましく叫んだが、足元が震えてるのはご愛嬌である。

そしてその直後、意識を取り戻したセラエノが現れた。
だが、リリィには、セラエノの言葉も全く耳に入らなかった。
なぜなら、彼女の目には、口元から上に石板を載せた人間が喋っているようにしか見えないからだ。
固まっているリリィをよそに、謎の人物は3体のトラを出現させ、怪我人をそっと咥え身を伏せる。 
>「怪我人も多いことだし、運ぶのも手間でしょう。」 
>探すのがユリ一人ならば自分一人で十分だ、とエンカの探す組みに入りたいという意見を切て捨てる。 
>虎は背に乗るもののいう事を忠実に実行するという事も添えて。 
(い、石が喋ってる。もしかしてさっきのゴーストが化けて出てきたの?!
 でもでも、あの石頭、セラエノさんと声が同じじゃない)
周りの人間は平然とセラエノの言葉を受け入れている。
リリィはますます混乱した。
(もしかして、本当にセラエノさんなの?
 はっ!神様だから素顔を見られたらダメとかそう言う理由!?あれはモザイクなの?!
 だ、だったら、横に移動したら横顔が見えるんだわそうだわきっとそうに違いないわ!!)

リリィは少年を抱え、そろそろとセラエノの横に回りこんでみた。
だがそこには、セラエノの横顔や頭部ではなく――――石板の側面が見えるだけだった。
(頭部が・・・・・・・・・無い?!)
リリィの体ががくがくと震え始めた。

>「リリィ」
「ははははいぃいっ!!!!!」
びくぅっ!っとりリィが飛び上がった。その声は完全に裏返っている。
>「あなたは罪を犯した。 
>おっぱいには夢と希望が詰まっているわ。 (略)
>これからは自分の未来と可能性に自信を持ちなさい。」 
胸元に破れ目が入り、当初より驚くほど体型が変ったリリィに言い放つ。 
「き・・・・・・・」
リリィは残った勇気を振り絞り、叫んだ。
「き、気安く呼ばないでよ!このおっぱいお化け!
 いくら仮面で素顔を知らなかったからって、セラエノさんがそんな姿のわけ無いでしょ!!
 皆は騙せても、私は騙せないんだから!!この偽者め!!
 いつの間にセラエノさんと入れ替わったのよ!いいえ、それよりどこに彼女を隠したのよ!!
 早く言いなさいよ!言わないと・・・・・・・」
リリィはセラエノに石を投げようとしたが、バランスを崩しひっくり返ってしまった。
「きゅー・・・・・・」
あっさり自滅したリリィは、その場にのびてしまった!!


〜そのまましばらくお待ちください〜

「ん・・・ここは?・・・・・・っ!!あいたたた・・・・・」
目を覚ましたリリィは、ずきずき痛む頭の痛みに顔をしかめた。
「ああ、こんなに頭ばっかり打ってたら、今に馬鹿になっちゃうよ」
――――自覚が無いのは、実に幸せなことである。
「あれ?ここはどこ?皆は一体・・・・・・」

【セラエノの姿を見て混乱し、偽者と騒いだ挙句頭を打って気絶。
 意識を取り戻すが、目覚めた場所は不明。】

151 名前:ベッドフォード ◇k4Jcxtcj [sage] 投稿日:2010/08/23(月) 22:07:36 0


【フィジル諸島 ????】 

「雛型達の覚醒には至らなかったが、太陽の力は目を覚ましつつある」 

「完全に覚醒する為には、もう少し時間が必要か… 
とは言え、こう早く目覚めただけでも十分すぎる収穫だな…」 
真っ暗闇に点在する燭台の燃え盛る炎は老人の姿を朧げに写す 
石造りの広大な広間には一人立つ老人と壁一面の巨大な壁画、老人はその壁画を見上げている 
「“生命の大樹”…我が計画の要にして神々が造りあげた最高の遺物 
やはり、こちらにも私がいた世界と同等の物が残されていたか…」 
壁画には荒れ果てた地面にうずくまる人々、天からは雷が降り注ぎ、画の中央には黄金に輝く巨大な樹木がそびえ立つ、そして樹上には描かれた二人の男女 
「…後はオワゾーの原典の確保を待つのみ 
万一にはあの仮面の神の助力を願うとしよう…」 


152 名前:エンカとメイション◇jWBUJ7IJ6Y [sage] 投稿日:2010/08/23(月) 22:12:01 0

>146>147>149 
時間は少し遡る。 
> 横になるセラエノとエンカの唇の距離が約1cmでセラエノは覚醒し、反射的に身を起こそうとする。 
> その結果、**ガチリ**というお互いの前歯がぶつかる小さな音を立て二人の色気ないキスは成立してしまった。 
エンカも何が起こったのか理解した。 
「ノーカウント!ノーカウントっすよ!」 
口元を抑えながらエンカがわめくと、セラエノの鏡の仮面が崩壊し、 
エンカは首まで真っ赤になったセラエノの素顔を見ることになった。 
エンカは気まずそうに、セラエノの割れた鏡の破片を集めた。 
> 「……エンカ、心配してくれたのね。ありがとう。落ち着いたら行くから先行ってて…」 
「…あーよ。」 
エンカは気まずい気分のままその場を後にした。 
なにげなく、鏡の破片を目に当ててみた。 
「マジックミラーじゃなかったんすね。」 
今のエンカにとって、もうそれは驚くようなことではなかった。 
> 「ど、どうしたのエンカ、その顔、何かあったの?!」 
「なんでもないっすよ!」 
エンカはリリィにそう返した。 
リリィの横でメイションが笑った。 

そして現在。 
巨大なマメの木が伸び、セラエノを上へと押し上げて行く。 
その彼女の足元から男の声が聞こえてきた。 
「そうやってお前は、永遠に他人を見下すことしかできねぇのかよ?」 
エンカである。伸びるマメの木に残った流星錘を引っ掛け、一緒に登ってきたのだ。 
「おめぇの考えてることはわかるぜセラエノ?特別な力なんかなくたってよぉ。 
 おめぇはユリを助けるつもりでいる。ユリだけを助けるつもりでいる。 
 何故ならユリを助けることは正しい行いで、場合によってはミクを助けるのは正しくねぇと考えているからだ。 
 だから俺はミクを助けにいくんだ。俺は俺のパートをする。お前はお前のゲームをすればいいぜ? 
 悪には悪の正義があるなら、それは理由になるからよぉ。」 
エンカはセラエノの顔をじっと見た。そして、首を捻った。 
「なんでリリィはあんな事を言ったんだろうな〜?」 
エンカには理由がわからなかった。 
なぜリリィは、エンカがそう考えていないように、セラエノを偽物だと思ったのか? 

>150 
> 「ん・・・ここは?・・・・・・っ!!あいたたた・・・・・」 
> 目を覚ましたリリィは、ずきずき痛む頭の痛みに顔をしかめた。 
> 「ああ、こんなに頭ばっかり打ってたら、今に馬鹿になっちゃうよ」 
> ――――自覚が無いのは、実に幸せなことである。 
> 「あれ?ここはどこ?皆は一体・・・・・・」 
≫「みんなセラエノさんが出した虎に乗ってるんだよ。」 
メイションはリリィに、リリィが気絶する少し前の事を話した。 
≫「どうかしちゃったの?セラエノさんが偽物だなんて… 
≫ あの人は僕とずっと一緒にいたんだよ? 
≫ 上海ハニー(メイションの触手の事)の射程距離内にいたんだから、 
≫ 偽物と入れ替われるわけがないよ。」 
そして、メイションはエンカがセラエノの提案を無視して彼女と行った事を話した。 
≫「エンカ君に本…返しそこねちゃったね。 
≫ その本、特別なんでしょ?なんとなくわかっちゃうよ。」 

153 名前:セラエノ ◆LGeruanYjI [sage] 投稿日:2010/08/23(月) 23:18:07 0
>152
上昇を続ける豆の木に掴まっていると、下からエンカの声。
流星錘を引っ掛け一緒に登ってきているのだ。
そのエンカの行動自体理解不能であったが、かけられた言葉にも驚いた。
「見下す?私は事実を述べたまでよ。」
なぜエンカが自分の言葉を見下しているように思ったか理解できないのだ。

事実エンカは飛翔術も使えず、この豆の木がなければ館に戻る事すら侭ならないだろう。
しかも館に戻ったあと、ユリをどうやって見つけ助けるというのだろうか?
自分の言葉に一点の間違いもないと思っているので、エンカに言葉と行動の意味がわからなかった。
しかしそれに続くエンカの言葉は更に不可解だった。
ミクを助ける?それは正しくない以前にそれをする理由がないからだ。
悪はそこに正義がないからこそ悪であり、故に前提が崩れた以上理由にもなり得ない。
エンカの言葉はセラエノにとって全て理解不能なことばかりだった。

そうしている内に豆の木は館に到着した。
「私には、ミクを探す理由も助ける必要性も感じられない。
でも、あなたがそうしたいのであれば止めはしないわ。」
そうエンカに告げると、浮遊術を使い豆の木から離れて宙を歩き出す。
床が前面抜け落ち足場がないので室内は当然だが、館全体に人の気配が感じられなかった。

>136>140
辺りを見回し残気を感じ、ユリが石を投げつけられ、蜘蛛に室外に投げ出された事を知る。
ユリの後を追う様に窓へと浮遊していく。
打ち破られた窓の縁に立ちながら後ろを振り返る。
「リリィがなぜあれほどに取り乱したのかは判らない。
もしかしたら胸の事を言われたのが彼女の逆鱗に触れたのかもね。
でも…彼女が私を否定し攻撃するのであれば…それでも、私の望む形だから…。」
とんだ誤解である。
しかしセラエノにとってはそれは一つの望む形には違いない。
信仰か迫害か。
それこそが神たる力を引き出す鍵なのだから。
たとえそれが胸に忸怩たる痛みを伴おうとも。

「エンカ、その豆の木はそれほど長くは持たずに消失するわよ。
あなたの提案通り私はユリを探しにいく。あなたはあなたのパートをすればいいわ。」
そう言い残すと窓から身を翻し、セラエノは夜の闇へと消えていく。
その後、豆の木は横への成長を始め、窓の縁と部屋の出入り口まで枝が伸び、橋を形作るのであった。


館から出たセラエノは周囲を注意深く見回す。
「獣人?いえ…変身術?…こっちね。」
おぼろげにユリを抱えて逃げ出すルイーズの残気を追い、飛行術で地を滑るように進む。

154 名前:ユリ ◆sto7CTKDkA [sage] 投稿日:2010/08/24(火) 16:53:37 0
>140
>「そ、それはこっちの台詞ウホ・・・・・・・死ぬかと思ったウホ・・・・・・・」
「あっ!ごめん! 受け止めてくれたんだね?
 ありがとー!助かったー!
 …えーと。ウサゴリラさん?」
状況からして自分を助けてくれたであろう相手にお礼を言いかけて、ユリは首を傾げた。
相手がウサギの体にゴリラの腕という、ユリが見たことも聞いたこともない生物だったからだ。

>「おお幼女、私は決して怪しいものではないウホッ、私は通りすがりのかわいい森の動物ウホッ」
言いながら、謎の生物ことルイーズは三毛猫の獣人に姿を変える。
余計に怪しい。
一般人ならそう思う所だろうが、ユリの頭は一般的なものではなかった。
「そうなんだー! ありがとう森の動物さん!」
ルイーズの言葉をすっかり信じ込んでしまったのだ。
フェイントには必ず引っかかり、嘘はほとんど見抜けない。
それがユリ・オオヤマなのである。

>「幼女、今はとにかくこの場を離れるニャー。まだ学園の治安関係が動いてないけど、それも時間の問題ニャー。
> 学園に入学した当日、退学処分なんか嫌すぎるニャー」
「えっ? 入学当日に退学なんてあるの?
 そんなの困るよ!」
ユリは慌てて周囲を見回すが、治安関係者の姿も気配も無いようだった。
ほっと胸をなで下ろすユリを、ルイーズは縛ったまま担ぎ上げる。

>「幼女は助けるが、これ以上トラブルに巻き込まれるのはごめんニャー」
「退学にならないように助けてくれるんだ!
 ありがとう親切な森の動物さん!」
担ぎ上げられたまま喜ぶユリはふと、一緒にお宅拝見に来た仲間がいないことに気づいた。
先に帰っているなら良いが、まだ残っているなら退学になるかもしれない。
「ねえねえ。 私が目を覚ます前に、近くに他に誰かいなかった?
 友達と一緒に館に入ったはずなんだけど、誰もいないみたいなんだ。
 先に帰ってるなら良いんだけど…」
ユリは縛られたまま、ルイーズにそう尋ねた。

155 名前:ミク ◆sto7CTKDkA [sage] 投稿日:2010/08/24(火) 16:55:05 0
>137-138 >140
ミクの見る前で、落とした蜘蛛はたちまち灰になる。
それはミクの想定内だったため、問題になるのは烏のその後の行動だ。
追って来るか、あるいは正気に戻るのか…
上昇を続けて穴から抜け出したミクは、追撃に備えて身構えた。
下からの攻撃は無かった。
ミクが溜めていた息を吐き出すと、するりとその体から出ていた数本の蜘蛛の足が引っ込む。
自分のためならともかく、他人のために面倒事に巻き込まれるほど嫌なものは無い。

「手駒は全滅、厄介な敵は増える。
 今日は良い日だったとは言い難いわね。
 それでも、少しは収穫があったのを喜んでおいた方がいいかしら。
 神の他にもこれほど力を持つものがいるなんて、ここは良い島だわ」
高い力を持つ生贄を得ることは、そのままミクの力につながる。
まだ今日はこの島に来た初日なのだ。
焦る必要もない。

「それにしても残念な事。 あのリリィという娘、なかなかに美味しそうだったのに」
釣り逃がした魚を思い返しながら、ミクはユリを探した。
みのむしのように地面に転がっているはずなのだが、見回しても近くにユリの姿はなかった。
まさか飛び跳ねてどこかに行ったのかと思い始めたとき。
ミクはようやく、ユリを担いだまま森の中を退散しようとしている怪しい獣人を捉えた。

歩くルイーズのすぐ横に、音を立てて硬い糸をより合わせてできた槍が突き刺さる。
もちろんそれは、急いで後を負ってきたミクの作り出した槍である。
「そこの泥棒猫さん…あなた……な に を し て い る の か し ら?」
一語一語はっきり区切られた言葉には、人の獲物を横取りするなという強い怒気が込められていた。
どちらかと言えば怒気というより殺気と感じられたかもしれない。

>「あ!ミクだ! 無事だったんだね良かったー!」
ルイーズに助け船を出したのは、背中に背負われたユリだ。
最初こそ事情を把握していないようなユリだったが、さすがにすぐにミクの勘違いに気づく。
>「あ。 もしかして、何か勘違いしてない?
> 違うよー! 森の動物さんは、私を助けてくれたんだから!」
「そう…それはそれは御親切に。
 それでは親切な森の動物さんに、何かお礼をしなければいけないわね」
口では言いながら、ミクの機嫌は少しも良くなっていなかった。
その証拠に、顔は笑っていても目はちっとも笑っていない。
助けたのが事実だろうがなんだろうが、ルイーズを無事に返すつもりが無いのは明らかだ。

本来なら、ミクはそのままさっさとユリを奪い返していただろう。
しかしセラエノが地上に伸ばしてきた豆の木に気づいたため、ミクは作戦を変える必要を感じた。
「…下から敵も追ってきたことですし、今はそれどころではないかしら。
 ユリ。 あなたはその女と一緒に、女子寮に先に戻っていなさいな。
 そこの三毛猫姿のあなたも、危ないからすぐにユリを連れてこの場を離れなさい。
 言う事を聞けなかったりしたらどうなるか…おわかりでしょうね?」
にこやかにほほ笑みかけながら、ミクはルイーズの横に刺さったままだった糸を引っ込める。
>「敵!? どんな敵なの!?」
「人は姿を変えても魂までは変えられないものよ。
 そのことを忘れないで、一つしかない命を大切にお使いなさい」
ユリの質問は軽く無視して、ミクはすぐ来た道を戻り始める。
もちろんユリも黙っているわけではない。

>「敵が来てるのに黙って帰れないよね!
> 私たちも戦いに戻ろう!
> この糸を解いてくれたら、私も一緒に戦うよ森の動物さん!」
ルイーズの背中で、ユリはじたばたし始めた。
縛られていなかったら、すぐに飛び降りて駆け出していただろう。

156 名前:ミク ◆sto7CTKDkA [sage] 投稿日:2010/08/24(火) 16:58:10 0
>152-153
飛行術で進むセラエノの前に、大きな蜘蛛の巣が立ちはだかる。
セラエノには、それがミクのものだとすぐにわかるだろう。
「またお会いしましたわね。 自分の罪を悔いて戻って来るとは、殊勝な心がけですこと。
 リリィが来ていないようだけど、彼女は逃げたのかしら?」
ミクも無論、そんな子供だましにセラエノが引っかかるとは思っていない。
足止めに使っただけなのだ。

ミクは仮面のとれたセラエノの姿に一瞬不思議そうな顔はしたが、追及はしなかった。
セラエノの正体を見破れてはいないのだ。
「総裁はどこかにお出かけのようですから、すぐにあなたの罪を追及されたりはされないでしょう。
 私はそれより、もっと有意義なお話をしたいの。
 あなたと私、双方に益のあるお話を…ね」
ミクはそこで少し間を置き、話を続けた。

「私と手を組むつもりは無いかしら。
 あなたは神の力を増したい。 私も自分の力を増したい。
 目的も利害も一致していますわ。 
 あなたは表から、信仰と迫害を集める。
 私は裏からそれを手助けする。
 悪い話ではないでしょう?
 あなたは法を重んじているようだけど、明文化された法は昔の権力者によって作られたもの。
 新しい力を持つ私たちに書き換えられたとしても、何の不思議もないでしょう。
 人の心の道徳を重んじているなら、それほどあやふやなものは無いはずよ。
 時により場所により、何が正しくて何が間違っているかは変わるものだから。
 あなたの守るべき法とは、どんなものかしら?」
暗に非合法な手段を取ることもほのめかしつつ、ミクはセラエノにそう尋ねる。

「どう答えるにしても、あなたは私の力になってくれるはず。
 でも今は、よいお返事を期待していますわね」
最後の言葉は、断ればこの場で殺すとの脅しだ。
ミクの考えに合わせるように、蜘蛛の巣から無数の糸でできた針が現れてセラエノに狙いをつけた。

157 名前:リリィ ◆jntvk4zYjI [sage] 投稿日:2010/08/24(火) 21:42:31 0
>152
>「みんなセラエノさんが出した虎に乗ってるんだよ。」  
「えっ!!」
絶句しているリリィに、メイションは彼女が気絶する少し前の事を話した。  
「じゃあ、このトラも、あのセラエノさんが用意してくれたのね」
リリィの声に、虎がちらりとこちらに目を向けた。
反射的に身構えるものの、虎の目は澄んでいて攻撃の意思は全く伺えない。
>「どうかしちゃったの?セラエノさんが偽物だなんて…  
> あの人は僕とずっと一緒にいたんだよ?  
> 上海ハニー(メイションの触手の事)の射程距離内にいたんだから、  
> 偽物と入れ替われるわけがないよ。」  
「だって!だって!!メイション君だってあの人の顔見たでしょ?
 あの人がセラエノさんのわけが無いわ!あんなの変よ、絶対おかしい・・・・・」
そこまで言って、リリィは自分の言葉がいかに矛盾に満ちているかに気づいた。
桜花の目や上海ハニーや人狼や黒目ばかりの目は良くて、石碑の頭はなぜダメなのか、と。
――――そう、そもそもセラエノは最初から、はっきりそう明言していたではないか。

「そっか、そうだった。セラエノさんは人じゃなくて、神様だったのよね。
 じゃあメイション君の言うとおり、あの人は本物のセラエノさん・・・・・・」

リリィはがっくりと肩を落とすと、両手で頭を抱えた。
「ど・・・・・・どうしよう。私、おっぱいお化けとか偽者とか思いっきりひどい事言っちゃった。
 だって、私知らなくて。セラエノさんとは今日初めて会ったばかりだったから。
 だからまさか、セラエノさんがあんな・・・・・・あんな・・・・・・」
リリィはしばし黙り込んだ。
「――――でも、だめだよね、人を見かけで判断したら。
 桜花さんだって綺麗な目の色だったのに、人と違うからコンプレックスみたいだし。
 グラディス君だって人狼だけど、あれで結構面倒見が良いし。
 メイション君も上海ハニー持ちだし、と一緒だけど、とっても優しいし。
 それに極めつけはレイヴンさん。なんたって――――」
リリィは、薄汚れた少年に視線を落とし、微笑んだ。
「大鴉になったかと思ったら、今度はガリガリの子供に変身しちゃうんだものね。
 それに比べたら、ちょっと石頭なくらい、カワイイものよね」

そしてリリィは、はあ〜っ、とひときわため息をついた。
「やっぱりセラエノさん、傷ついたよね。
 公平な人だから心の底から謝ったら許してそうだけど・・・・・・ああ、私のばか馬鹿バカ!!」
リリィはぽかぽかと自分の頭を叩いた。

158 名前:リリィ ◆jntvk4zYjI [sage 明日来れないから、先に投下。ごめんね鴉さん] 投稿日:2010/08/24(火) 21:44:10 0

>メイションはエンカがセラエノの提案を無視して彼女と行った事を話した。  
>「エンカ君に本…返しそこねちゃったね。 」 
「そうなの。また返し損ねちゃった。明日になったら返せるかなぁ?」
> その本、特別なんでしょ?なんとなくわかっちゃうよ。」 
「うーん。トクベツ・・・・・・なのかな?
 本を乾かした時、うっかり中の呪文読み上げちゃったんだけど、なーんにも起こらなかったんだよね」
やっぱり持ち主が使わないとだめなのかな?とリリィは笑った。
「あ、私が中を見ちゃったことは、エンカには内緒にしてね。わざとじゃなかったのよ。
 そうそう、メイション君もやっぱり魔法に興味あるの?」
リリィはエンカの魔道書を取り出し、濡れた跡の残る表紙を撫でた。
「そういえば上海ハニーのこと、ごたごたして聞きそびれちゃってね。
 さっきミクさんに首を締められたときも、すごい力で引っ張って助けてくれたよね。
 上海ハニーにもありがとうってお礼言いたいけど、どこら辺に向かって言えばいい?」
どうやらリリィは、上海ハニーとメイションの関係は、フリードとグレンの関係と同じだと思っているようだ。

明るい月明りを浴びて、淡く輝く学園の時計塔が見えてきた。
「虎さん、消灯後の外出って本当はダメなのよ。
 だから、人目につかないようこっそり保健室まで連れて行ってくれないかな?」

そろそろ森を抜けようかという時、突然リリィは素っ頓狂な声をあげた。
「しまった、どうしよう!!
 ねえメイション君、エンカの寮の部屋番号、ちゃんと聞いてる?
 だってさっきの話だと、エンカはいつ頃寮に戻るか分からないって事よね?」

「――――まあ・・・・・・最悪、掲示板に伝言残して私の部屋に来れば良いんだけどね。
 あっ、その前に保健室かな?」

159 名前:レイヴン ◇70VgGM3HY6 の代理 [sage] 投稿日:2010/08/24(火) 22:51:21 0
>147>149-158
>「あ、起きたのかな?レイヴンさん大丈夫?しっかりして。おなか空いてない?何か食べる?」
「…う……っ!?」
少しだけうめいたかと思うと、猛烈な勢いで顔を上げ覗き込むリリィと目が合った。
……少年の目は先程までの鴉のそれと同じなのに、まるでぽっかりと穴が開いてるかのように
暗く、また表情というものがなかった。

少年はその痩せ細った体のどこにあったのかと思うほどの力で跳び退り、
全員を見渡せる瓦礫の上で全身を使って威嚇する。
「……う゛ぅ……ぐぅぅぅっ……!」
人間の声と思えぬ唸り声と相まって、その姿は獣を連想させるものだった。


>セラエノの口元から上、髪より下の仮面で隠されていた部分は
>まるで石碑のような石であり、文字とも絵ともつかぬそこに刻まれた文字は
>脈動し僅かながらに動いていたのだから。
>リリィは残った勇気を振り絞り、叫んだ。
どうやらリリィにはセラエノの本当の姿が見えているようだ、とハヤブサは思う。
そうでなければ、仮面の下にあるはずの仮初めの素顔を見て普通に接するだろうから。
(「……源流を知っていれば、その姿は正しいのだろう。
  その源流を知る人間など……ベッドフォード、はもはや人ではないだろうな……」)

一方小烏もまたセラエノの素顔を見れていた……が、その事自体には
さして興味を持っていない。元より動くものは敵と断じて生きてきたのだ、
いちいち他者の姿形など気にする必要などなかった。
……小烏は、セラエノの神性に『畏れ』を抱いたのだ。
手を出していい相手じゃないと察知し、身動きが取れなくなったのだが―――



リリィが気絶し、残った人間が虎に乗ってどこかへ向かっている。
小烏は、初見でセラエノを本能的に逆らってはいけない存在だと認識し
言われるがままに虎の背に乗った……いつでも動けるような姿勢のままで、だが。
リリィとメイションが喋っているが、小烏は一切気を向けない。
……人間の言葉が分からない上に敵意の類も感じていないから。

『少なくとも今は敵じゃない、それに殺したらアレの怒りを買って殺される』
小烏の思考じみたものを通訳するとこんな感じである。
そして、リリィの『レイヴン』と言う言葉にも一切反応を示さない。
この少年に名前はないのだから―――。

160 名前:レイヴン ◇70VgGM3HY6 の代理 [sage] 投稿日:2010/08/24(火) 22:53:16 0
          一方その頃


>「そうやってお前は、永遠に他人を見下すことしかできねぇのかよ?」
心情は理解してやれるが、あまりにも我慢を知らない
エンカの物言いに、ハヤブサは横からエンカの頬を嘴で強めにつついた。
「いい加減にしなさい。君は……あのメイションと言う子よりも子供だ。
 気に入らない事があるとすぐに喚き散らし、自分の言っている事だけが正しいと思っている……
 その姿勢と思想を改善しないつもりならばそれでもいい、だが忠告しておくよ。
 ……孤独と孤高は似て非なるものだ、とね」
そう言ってハヤブサはエンカの肩に掴まるのを止めて羽ばたいた。

「神は皆自惚れている、と言ったね。
 ……無知は幸福であり、そして重き罪でもある。
 君が思うように何でもできるのならば、君がそう思う事自体ないよ。
 君はあまりにも子供で、あまりにも物を知らなさ過ぎる。
 そんな君に、他の存在や思想を否定する資格はない」
そのままハヤブサはセラエノを追うように飛び去ってしまった。
……立ち位置の違いと言うものは、相互理解を妨げると一人ごちながら。
その言は、まさしく皮肉である。


>ミクの考えに合わせるように、蜘蛛の巣から無数の糸でできた針が現れてセラエノに狙いをつけた。
セラエノを追うハヤブサの目に飛び込んできたのは、ミクが危険な誘いをしているところだった。
内容も、とてもではないが看過できないもの……自身の使命を果たすべく、
ハヤブサは上空から語り掛けようとした、その瞬間一帯を物理・精神両方に圧し掛かる
重圧が包み込んだ。並の人間では立ち上がる事も出来ないほどのそれは、
太陽と同質の輝きを放つハヤブサから放たれているものだった。

「……外なる者……異界の旧神……滅びを紡ぐ蜘蛛……名状し難き黄衣の王……
 何故、この地に降り立ったか……」
先程までのハヤブサとは明らかに気配が違う……その正体は、神性だった。
ハヤブサの主が、横槍を入れてきたのだ。神と呼ばれる者だけとなる、その時を待っていたのだろう。
ハヤブサが一鳴きすると、その周囲に黒い火球が無数に現れ、漂っている。
無理やり重圧を撥ね退けようとすれば、それに焼かれる事になるのは間違いない。

161 名前:ルイーズ ◆jntvk4zYjI [sage] 投稿日:2010/08/25(水) 00:13:16 0
>154-155
>「ねえねえ。 私が目を覚ます前に、近くに他に誰かいなかった? 
> 友達と一緒に館に入ったはずなんだけど、誰もいないみたいなんだ。 
> 先に帰ってるなら良いんだけど…」 
「変な茨に押し流されたからニャー。
 戻ってきた時には誰もいなかったニャ。居たのは幼女とでっかい蜘蛛だけニャ。
 それにしても幼女、見かけの割に重たいニャー」
猫人はえっさほいさと移動し始めた。

>歩くルイーズのすぐ横に、音を立てて硬い糸をより合わせてできた槍が突き刺さる。 
ルイーズの全身の毛がビリビリと逆立ち、尻尾などは通常の二倍くらいに膨らんでいる。
>「そこの泥棒猫さん…あなた……な に を し て い る の か し ら?」 
「わ、私は森のかわいい動物ニャ。
 とあるお屋敷で、幼女が蜘蛛に食べられそうなのをハケーンしたから助けただけニャ」
ミクの目が縛られたままのユリへと向けられる。
「つ、爪じゃ蜘蛛の糸は切れないから、仕方なくそのまま運んでるだけニャー!!」
言い訳がましい上に、外見からして胡散臭いことこの上ない。
ミクの殺気は相変わらずだ。
――――ルイーズ、絶体絶命のピーンチ!

>「あ!ミクだ! 無事だったんだね良かったー!」 
ルイーズに助け船を出したのは、背中に背負われたユリだ。 
>「あ。 もしかして、何か勘違いしてない? 
> 違うよー! 森の動物さんは、私を助けてくれたんだから!」 
ルイーズはユリの救いの言葉を受け、こくこくこくこく、と首を縦に振りまくっている。

>「そう…それはそれは御親切に。 
> それでは親切な森の動物さんに、何かお礼をしなければいけないわね」 
(ウニャ――――!!すごい殺気ニャ――――!!)
殺される!絶対殺される!!ルズはガクガクブルブルしている。

――――が、ルズにとっては救いの手が、巨大な植物と共にやってくることで風向きが変わった。
>「…下から敵も追ってきたことですし、今はそれどころではないかしら。 
> ユリ。 あなたはその女と一緒に、女子寮に先に戻っていなさいな。 
> そこの三毛猫姿のあなたも、危ないからすぐにユリを連れてこの場を離れなさい。 
> 言う事を聞けなかったりしたらどうなるか…おわかりでしょうね?」 
ドコオッ!と音を立て、ルイーズの横に刺さったままだった糸がミクの元へと帰っていく。
>「敵!? どんな敵なの!?」 
>「人は姿を変えても魂までは変えられないものよ。 
> そのことを忘れないで、一つしかない命を大切にお使いなさい」 
「あ、あいさー」
(た、助かったあああああ!!!)
ルイーズは、その場にへなへなと座り込んだ。

>「敵が来てるのに黙って帰れないよね! 
> 私たちも戦いに戻ろう! 
> この糸を解いてくれたら、私も一緒に戦うよ森の動物さん!」 
ルイーズの尻尾が3倍くらいの大きさに膨らんだ。
「あほニャ!!冗談じゃないニャ!!
 そんなことしたら、間違いなく私があの女に殺されるニャー!!」
ルイーズはさっさとその場を立ち去る気まんまんだ。

「そもそもさっきも言ったように、私の爪では蜘蛛の糸を切れないニャ!
 分かったら、今日はもうあきらめるニャ」
こんな場所に用は無いと、再びルイーズは歩き始める。

ひき止めるなら今だ!

162 名前:ベッドフォード ◇k4Jcxtcjwo の代理 [sage] 投稿日:2010/08/25(水) 21:51:05 0
「ええい!まだか!まだ見つからぬのか!」
図書館の地下深く 生徒達の利用は固く禁じられている区域 禁書の間
普段は立ち入る人すら無く厳かな雰囲気漂う場所に今日はオワゾーの金切り声が響いていた
「ここにある事は間違いない!構わん!本棚や壁を片っ端から叩き壊すのだ!」

魔導師達は連れてきた数十匹のオーガ達に命じて貴重な書物が納められている棚、禁書の間の壁や床を大金鎚で叩き壊させる
「まだまだ手緩い!原典なる物はそこいらに落ちてはおらぬぞ!必ず隠されているはずだ!」
オーガ達の怪力により書棚はばらばらに粉砕され、美しい彫刻が刻まれた壁床は無惨な姿に変わり果ててしまった
「ミスター・オワゾー!壁の向こうに通路を発見しました!」
部下の報告を聞き 喜び勇んで文字通り飛んでいったオワゾーは狂喜乱舞した
目の前には大理石で出来た台座の上に鎮座する一枚の石版
「これが探し求めていた原典なのか…?
やった!やったぞ!すぐにお届けしなければ…!!!!」
オワゾーは石版を台座から持ち出すとすぐに老人の元へと向かった。

163 名前:エンカ◇jWBUJ7IJ6Y の代理 [sage] 投稿日:2010/08/25(水) 21:52:04 0
>153>160>161
> エンカの物言いに、ハヤブサは横からエンカの頬を嘴で強めにつついた。
> 「いい加減にしなさい。君は……あのメイションと言う子よりも子供だ。
>  気に入らない事があるとすぐに喚き散らし、自分の言っている事だけが正しいと思っている……
>  その姿勢と思想を改善しないつもりならばそれでもいい、だが忠告しておくよ。
>  ……孤独と孤高は似て非なるものだ、とね」
> そう言ってハヤブサはエンカの肩に掴まるのを止めて羽ばたいた。
「他人の言葉尻を捕まえて!揚げ足をとって!反論するために都合のよい解釈をして!
 未熟者のレッテルを貼り!他人の正義にぶら下がることしかできないお前が言ってるのかよ!?」
エンカはハヤブサにそう言い返した。
> 「神は皆自惚れている、と言ったね。
>  ……無知は幸福であり、そして重き罪でもある。
>  君が思うように何でもできるのならば、君がそう思う事自体ないよ。
>  君はあまりにも子供で、あまりにも物を知らなさ過ぎる。
>  そんな君に、他の存在や思想を否定する資格はない」
「そういう考え方が!神が人を虐げる歴史を繰り返す原因になったことを、
 どうして素直に認めることができないんすかーっ!?」
飛び去ってしまったハヤブサから、文字通り肩の荷が降りたエンカへ返事は帰ってこなかった。
> そうしている内に豆の木は館に到着した。
セラエノの豆の木が橋となったので、エンカが部屋の出入口まで行くのに特別な才能はいらなかった。
「死ぬなよ、セラエノ!」
エンカは闇に消えた彼女に叫んだ。
「俺はお前が言う正義を必ずしも肯定するわけじゃあねぇ。だが、
 お前の正義を悪とするもう一つの正義に、お前が消される事なんかあっちゃならねぇんだ!
 でもそれは、ミクにとっても同じことなんだぜ!
 もしもこの世界がたった一つの正義に塗りつぶされたら、
 俺達は倫理的な葛藤を因習と快楽への効用で押しつぶし、
 勇気と知性を緩やかに滅ぼすしかなくなるんだからよぉ!」
エンカにとっての正義とは、多様な思想のぶつかり合いを肯定することだった。
唯一絶対神、つまり全知全能たる一個体を想定することで、
正義への答えを唯一無二とする宗教や団体を信じないエンカにとって、
それはごく当然の論理的帰結であった。
他人の思想を否定はするが、抹殺は許さないのである。

「タチコマ、俺を導いてくれよな?」
エンカはタチコマことミクの蜘蛛を自由にさせ、後を追った。
そうすれば、エンカはミクと会うことができると思ったからだ。
しかし、エンカが出会ったのはミクではなかった。ユリとルイーズだ。
「何やってんだよ!?お前らはよーっ!?」
エンカにはルイーズがユリを縛っているようにしか見えなかったが、事情を知るとレイブンの刀を抜いた。
「動くなよユリ?こうやってこじてやりゃあ蜘蛛の糸は切れるんだぜ〜。」
エンカは刀でユリを縛っていた蜘蛛の糸を切断した。
「おめぇらもさっさと帰れよな?他の奴らは皆帰っている途中だぜ?
 だが、俺はこれからミクを探してくるっす。」
そうしている間にもタチコマはミクを探して移動していたのだが、どういうわけか途中で止まっていた。
エンカもタチコマの側に近づき、そしてタチコマが止まった理由を知った。
「これは…?なんっすかこの大きなプレッシャーは!?」
”重圧”はエンカをセラエノとミクへと近づかせなかった。

164 名前:メイション◇jWBUJ7IJ6Y [sage] 投稿日:2010/08/25(水) 21:53:07 0
>158>159
そのころメイションはリリィとの会話を堪能していた。
> 「うーん。トクベツ・・・・・・なのかな?
>  本を乾かした時、うっかり中の呪文読み上げちゃったんだけど、なーんにも起こらなかったんだよね」
本、とはエンカが拾った魔道書のことである。
「どうかな?もしかしたら目に見えない効果なのかも。」
> 「あ、私が中を見ちゃったことは、エンカには内緒にしてね。わざとじゃなかったのよ。
>  そうそう、メイション君もやっぱり魔法に興味あるの?」
「…まぁね。別にエンカ君が怒ることもないんじゃない?まぁ、内緒にしとくけどさ。」
> 「そういえば上海ハニーのこと、ごたごたして聞きそびれちゃってね。
>  さっきミクさんに首を締められたときも、すごい力で引っ張って助けてくれたよね。
>  上海ハニーにもありがとうってお礼言いたいけど、どこら辺に向かって言えばいい?」
メイションはリリィを触手でぐるぐる巻にしたい衝動に襲われたが、
「気にしなくていいよ。」と一言言って我慢した。

突然リリィが素っ頓狂な声をあげた。
> 「しまった、どうしよう!!
>  ねえメイション君、エンカの寮の部屋番号、ちゃんと聞いてる?
>  だってさっきの話だと、エンカはいつ頃寮に戻るか分からないって事よね?」
メイションは首を横に振った。
> 「――――まあ・・・・・・最悪、掲示板に伝言残して私の部屋に来れば良いんだけどね。
>  あっ、その前に保健室かな?」
「僕よりもあの子の方が深刻じゃないかな?だって、まるで自分が何者なのか、
 わかっていないように見えるんだもの。」
メイションはレイブンをさしてそう言った。

165 名前:グラディス ◆e2mxb8LNqk [sage] 投稿日:2010/08/25(水) 22:04:08 0
>147>158
「ふが……」
森の中、虎の上、一人の少年が呻く。
少し目を開けて、再び目を閉じる。
そして、また目を開けた。

「……あり?ここどこ?俺は……グラディス。
 んー……?なんだこりゃ……あ、逆さまなのか。森かー……?んで虎……?」
逆さまの視界のまま状況を確認。
なんだか記憶があいまいだ。誰かに呼ばれた気もするし。
落ちないように気をつけつつ、むくりと起き上がる。
ぼけーっとしながら、記憶を辿る。
「学園……あ、それから探検で……屋敷……屋敷?」
辿っていくうちに、何かが気になった。
更に思い出して。



「…… あ゛ あ あ あ ぁ ぁ ぁ ぁ ――――――――― ッ !!!」



衝動的に叫んだ。それはもう遠吠えよろしく夜の森に響き渡る。
学園までもう少しかという距離だが、そんなことなど気にしないどころか気付いてすらいない。
幸い、遠くで聞く分には遠吠えにも聞こえるが。

「あわわわ、屋敷思いっきり壊しちまったー!てか皆大丈夫なのかー!?
 うぉーい!誰か、っていた!皆居る!?何があったー!?」
きょろきょろ周りを見ると、リリィとメイション、あとは傷ついた皆がいる。
目に付いたリリィに話しかけてみる。
「リリィちゃーん!なんか俺寝てたみたいなんだけど、何があったー!?
 うわ、てか俺学ランぼろぼろ!汚れもひどー!虎は何!?何なんだー!?」
傷ついた見た目よりもずっと元気らしい。頭の螺子はどうなのかはわからないが。

166 名前:セラエノ ◆LGeruanYjI [sage] 投稿日:2010/08/25(水) 22:38:19 0
>156
触れれば切れそうな冷たい月明かりが木々の隙間から差し込む森の中。
セラエノはミクと対峙していた。
罪について問われたセラエノの目には冷たい光が宿る。
「…私は、リリィの服の記憶を見たのよ?」
総裁の部屋で三人のやり取りの一部始終を、即ち今回の騒動が半ば意図された事だという事を。
短い一言にその意図を込め、更に言葉を続ける。
「あの場で私が手違いならばすぐに解放を、と言ったのは、双方の立場を円満にしながら騒動を治める為。
もし真に罪に問うというのであればそれは早々に破綻し、逆に罪に問われるでしょう。
私は今ユリを探し、保護する為にここにいるのよ。」
ベッドフォードの計画の全貌は未だわからないが、その為に【戦わさせられた】のは明白。
リリィはもとより、その望んだ戦闘によって被った被害はベッドフォードは甘受すべきものであり罪に問われるべき事ではないのだから。

キッパリと言い切ったセラエノにミクは次なる話を向ける。
この澱みない流れから、ミクも本気で罪に問うつもりもなく、己の注意を向ける為だったのだろうと察した。
そして語られるミクの【双方に駅になるお話】が進むにつれ、セラエノの眉が釣り上がる。
法と秩序を何より重んじるその身には受け入れられる余地は一切ない言葉だったのだから。
「私は私に内在する法と理をもって事を成す。
それが私の存在理由であるのだから!」

セラエノは自分が神だという事を自覚している。
そして神は信仰と迫害という己に寄せられる想いを回廊として各意識階層の力を奇蹟という形で流出させる。
その存在もまた同様のもの。
神は人々の願い、想いの集大成として存在し、生み出されるのだから。
自身がどのような想いを以って神として生み出されたのかは知らないが、確かに己の中にその法はあるのだから。

「法と理を外れた言葉を恫喝と脅迫を以って迫る。
そのようなあなたには断固として、い…!!!!」
ミクの言葉の意味も、何をされるかも判っていた。
だがそれでも揺らぐ事無くセラエノは完全と否と言い放つはずだった、が…
その台詞が最後まで紡がれることはない。

>160
突如として冷たい月明かりも夜闇も塗り潰すような眩い光。
まるで光そのものが重量をもったかのように物理的、精神的に一帯を押し潰しにかかったのだ。
その重みに耐え切れずセラエノは片膝を付き、言葉も途切れる。
>「……外なる者……異界の旧神……滅びを紡ぐ蜘蛛……名状し難き黄衣の王……
> 何故、この地に降り立ったか……」
「…!!神性?…これほど、の…」
押さえつけられ顔も上げられずとも、感覚としてそれを理解していた。
己が欲していながら未だ得られぬもの。
一体どれだけの思想基盤があればこれ程の力を発揮できるというのだろうか?

無数の黒い火球が漂う中、跪いた状態のままただ歯を噛み締めていた。
驚愕と嫉妬が入り混じる胸を鎮めようと勤めながら。

167 名前:ユーリ◇gIPsgrF.N6 の代理 [sage] 投稿日:2010/08/26(木) 22:57:00 0
「………ったぁ」
いつの間にやら寝ていたユーリは寝返りを打とうとして、ゴテっと虎から転げ落ちる
「………どこ?ここは」
近場にいる親切な誰かかから説明を受け、漸く修羅場から離れられたのだと安心した
「夢見心地でも随分聞き慣れない言葉を耳にしたよ。神が云々って」
先刻強烈に打ち付けた腰を軽く叩きながら頭をやれやれ。といった感じで振る
「困るよね
魔法なら何とかなるけど、神様なんかに出て来られたらもう入り込む余地がないもの」
やりきれない。と言わんばかりの薄ら笑いを浮かべて、ユーリは言葉を続ける
「神様って何なんだろう?
凄くファンタジックに筋の通った考え方をしてみると
ごく初期の宗教は人智の届かぬものを讃え、畏れ、崇めた。それは言うならば神様の雛型
その雛型にはやがて名前が付き姿が出来る。それが気の遠くなるような時間を掛けて人々の想いを吸い取る
想いとか精神力とか、所謂メンタル的なパワーっていうのは魔力の素みたいなものだから
それを吸い取った空想の産物は人々が思うような形で、人々が思うような力を持ってやがて具現化した
なんていうのは?」
2人を落下から庇った時にどこか打ったかな?自覚してしまうほどの長広舌だ
所謂、取り留めのない会話。という奴である
「にしても酷い臭いね」
烏の臭いを指していっているのだが、ユーリ自身には誰の何が原因かは判らない

168 名前:リリィ [sage] 投稿日:2010/08/27(金) 07:56:36 0
>164
>「僕よりもあの子の方が深刻じゃないかな?だって、まるで自分が何者なのか、 
> わかっていないように見えるんだもの。」 
「あー、うん。ただこの感じじゃ、環境になじむまで、そっとしておいた方がいいのかも。
 それはそうと、2人に着せられるようなパジャマかわりの服、あったかな?」
セラエノが聞いていたらきっと平静ではいられなかっただろうが、幸いここに彼女は居なかった。

「それしても、この虎もセラエノさんが魔法か何かで出したんでしょ?
 あの子、よく素直に虎の背中なんかに乗ってくれたね。
 きっと自分の名前どころか、言葉自体も通じてないっぽいのに」
そこでリリィは何か迷案が閃いたようだ。
「そっか!きっとセラエノさんは、テレパシーを使って事情を説明したんだわ!
 じゃあ私も、テレパシーであの子に呼びかけてみる!!
 そしたら敵意がないとか、傷の手当てするよとか、何か食べようとか、体をきれいにしようとか伝わるよね!」
リリィは目を閉じ、一生懸命テレパシーでレイヴンに呼びかけている。
・・・・・・いきなり頭の中で声がしたら相手がどう思うか、とか、
論理的思考が出来ない相手には、テレパシーは漠然としか伝わらない、とかまでは考えが至らないようだ。

>163
だがその試みは、突如上がった遠吠え、もとい叫びで中断されることになる。
>「あわわわ、屋敷思いっきり壊しちまったー!てか皆大丈夫なのかー!? 
 うぉーい!誰か、っていた!皆居る!?何があったー!?」 
「・・・・・・」
リリィは、無言で自分のポーチの中を漁った。
「リリィちゃーん!なんか俺寝てたみたいなんだけど、何があったー!? 
 うわ、てか俺学ランぼろぼろ!汚れもひどー!虎は何!?何なんだー!?」 
「夜なんだから大声出さない!」
リリィは騒ぐグラディスに、クッキーの包みを投げつけた。
当然あたるわけも無く、ねらいを外れたそれはレイヴン少年の方へと飛んでいく。
「避けちゃダメ!っていうか起きるのが遅すぎ!もう全部終わっちゃったよ!
 あと、グラディス君の服がボロボロなのは、お屋敷の床が落ちたから!
 虎はセラエノさんので、今、怪我した皆を保健室まで運ぶとこ!
 私も所々よく覚えてないから、詳しくはメイション君から聞いて!」
・・・・・・、こういう時、静かにしろという本人が一番煩いのはお約束である。
一気にまくし立てたリリィは、そこでふっと表情を緩めた。
「良かった、見た目よりずっと元気そうで」

リリィ達を乗せた虎は、保健室のある建物の近くで止まった。
身軽なグレンが一足先に保健室に行って、例の保険医に話をつけてくれるらしい。
「意識の無い女の子、預けても大丈夫かなぁ?」
リリィは少し不安になった。

>165
>「………ったぁ」 
>いつの間にやら寝ていたユーリは寝返りを打とうとして、ゴテっと虎から転げ落ちる 
「わっ!!ユーリ先輩が落ちた!!」
虎の背から転げるように降りたリリィは、腰を摩るユーリの元へと駆け寄った。
「大丈夫ですか、ユーリ先輩!」
だがぱちりと目を開けたユーリは
>「困るよね 
>魔法なら何とかなるけど、神様なんかに出て来られたらもう入り込む余地がないもの」 
>やりきれない。と言わんばかりの薄ら笑いを浮かべて、ユーリは言葉を続ける 
「・・・・・・・ユーリ、先輩?」
ユーリがよどみなく神について話し始めたのを見て、リリィは他の一同と顔を見合わせる。
>「(略)それを吸い取った空想の産物は人々が思うような形で、人々が思うような力を持ってやがて具現化した 
>なんていうのは?」 
「じゃあ人が生まれる前、神という存在は居なかったんでしょうか?・・・・・・・はっ、いけない。
 そうですね、きっとユーリ先輩のおっしゃるとおりだと私も思いますです。
 さあっ、一刻も早く保健室に行きましょう!先生に頭もちゃんと見てもらわないと!!」
リリィは思いっきり失礼なことを言いながら、ユーリを引き起こそうと悪戦苦闘している。

169 名前:ユリ ◆sto7CTKDkA [sage] 投稿日:2010/08/27(金) 17:00:34 0
>161-163
>「あほニャ!!冗談じゃないニャ!!
> そんなことしたら、間違いなく私があの女に殺されるニャー!!」
「そんなこと無いって! ちゃんと話せばミクもわかってくれるから、大丈夫大丈夫!」
ユリは自信満々に間違った答えを返した。

>「そもそもさっきも言ったように、私の爪では蜘蛛の糸を切れないニャ!
> 分かったら、今日はもうあきらめるニャ」
「えー!そんな〜
 あ、じゃあさ! 私を敵に向かって投げつけてくれたら、合体攻撃になって凄い威力が…
 ねえねえちょっと聞いてるのー!?」
足をじたばたさせて抗議するものの、ルイーズは全く取り合う気はなさそうだった。
ユリも蜘蛛糸を切る手段を持っていないので、このままだと担がれて帰るしかない。

>「何やってんだよ!?お前らはよーっ!?」
「あっ!エンカ! 良い所に来てくれた!!
 蜘蛛に襲われていた所を森の動物さんに助けてもらったんだけど、体に巻き付いた糸が切れないのー!
 後を追いかけてきた敵との戦いに行ってるミクの加勢に行きたいのにー!
 この蜘蛛糸切って切って切ってー!」

ユリの説明で事情を悟ったエンカは、持っていた刀を抜く。
>「動くなよユリ?こうやってこじてやりゃあ蜘蛛の糸は切れるんだぜ〜。」
「おおー! ほんとだー!! エンカありがとー!!」
じたばたするのを辞めて糸を切ってもらったユリは、ぴょんとルイーズの肩から飛び降りた。
>「おめぇらもさっさと帰れよな?他の奴らは皆帰っている途中だぜ?
> だが、俺はこれからミクを探してくるっす。」
「だが断る!
 ミクは私の友達なんだよ!
 友達を置いて帰れるわけ無いじゃん!
 それに帰るんなら、糸切ってなんてお願いしないよ!
 森の動物さん今までありがとう! 私、行かなきゃ!」
その場駆け足をしながらそう言って、ユリはミクが去っていった方角に走り出した。
それはつまり、ミクを探すタチコマが進んでいるのと同じ方角だ。

だーっと走り出したユリだが、すぐに壁にぶつかったように走るのを止める。
ハヤブサの放つ重圧に行く手を阻まれたのだ。
「むむむっ……このプレッシャーはっ…!?」
>「これは…?なんっすかこの大きなプレッシャーは!?」
「きっとミクが言ってた“敵”がいるんだよ!」
根拠の全くないユリの返事は、エンカにはどう受け取られるだろうか。
どんな反応が帰ってくるにしてもユリがとる行動はただ一つ、前進あるのみである。

「うぬぬぬぬ……あ痛っ!
 えぇーいっ! まっけるもんか――――――っっ!!」
無理に押し入ろうとして圧力で地面に押し倒され、それでもユリは前進を止めない。
うつぶせに倒れたまま、ずりずり前進を始めたのだ。

170 名前:ミク ◆sto7CTKDkA [sage] 投稿日:2010/08/27(金) 17:01:37 0
>160 >166
>「私は私に内在する法と理をもって事を成す。
>それが私の存在理由であるのだから!」
セラエノの返事には一片の迷いも見られず、ミクとしても懐柔策をあきらめるしかなかった。
残念と言うより、今は邪魔者もいないので楽しみが増えたという気持ちなのだが。
>「法と理を外れた言葉を恫喝と脅迫を以って迫る。
>そのようなあなたには断固として、い…!!!!」
しかし、返事をすべて聞き終わる前にミクが針を放とうとした時、見計らったように邪魔が入る事になる。
圧倒的と言えるほどの、物理的、そして精神的圧力。
セラエノのように膝をつくことはなかったが、それでも行動は大幅に制限される。
これほどの圧力を受けては、糸を使った行動はほぼ無意味となる。
横槍を入れてきた邪魔者はすぐにわかった。
それは太陽のように輝く一羽のハヤブサ。
先ほどまでとはまるで違う気配を持つその鳥が、今のこの場の主役だった。

>「……外なる者……異界の旧神……滅びを紡ぐ蜘蛛……名状し難き黄衣の王……
> 何故、この地に降り立ったか……」
>「…!!神性?…これほど、の…」
セラエノの反応は、ミクには少し意外なものだった。
てっきりあのハヤブサはセラエノの使い魔か何かだろうと思い込んでいたのだ。
こうなるとハヤブサを放置していたのは失敗だったという事になるが、今はそれを悔いる時ではない。
この乱入者の対処法が問題だ。
あれだけ大量の火球と、この重圧を同時に操れるのだ。
よほどの実力者に違いない。
なら、その目的は?

「他人の獲物の横取りとは、良いご趣味です事。
 ハヤブサにそんな習性があったとは存じませんでしたわ」
セラエノの足止めに張った蜘蛛の巣が圧力に耐えかねて崩れるのを見ながら、ミクは言った。
「ご挨拶がまだでしたわね…もうご存知でしょうけれど、私は初音美紅。
 こちらにいるセラエノと同じ、この学園の新入生ですわ。
 よろしければあなたのお名前と、目的をお聞きしたいのですけれど、いかがかしら?
 先に言っておきますけれど、『人助けが趣味の通りすがりだ』 などという類の冗談はやめてくださいましね」
ミクとしても、受け答えほどに余裕があるわけではない。
それでも、このハヤブサが誰の差し金で動いているのか。 という疑問の答えは知りたかった。
それによって今後の行動予定を大きく変える必要があるかも知れないからだ。


171 名前:ルイーズ ◆jntvk4zYjI [sage] 投稿日:2010/08/27(金) 23:37:40 0
>「何やってんだよ!?お前らはよーっ!?」 
「私は森の動物ニャ。蜘蛛に襲われたょぅι゛ょを助けただけで、決して怪しいものでは」
はっきり言って滅茶苦茶うさんくさい。
「あっ!エンカ! 良い所に来てくれた!! 
 蜘蛛に襲われていた所を森の動物さんに助けてもらったんだけど、体に巻き付いた糸が切れないのー! 
 後を追いかけてきた敵との戦いに行ってるミクの加勢に行きたいのにー! 
 この蜘蛛糸切って切って切ってー!」 
だが幸いにも、ユリの説明で誤解は解け、事情を悟ったエンカは持っていた刀を抜く。
(ふぎゃ〜〜〜!!!)
>「動くなよユリ?こうやってこじてやりゃあ蜘蛛の糸は切れるんだぜ〜。」 
蜘蛛の糸が解けたユリは喜び、ぴょんとルイーズの肩から飛び降りた。 
>「おめぇらもさっさと帰れよな?他の奴らは皆帰っている途中だぜ? 
> だが、俺はこれからミクを探してくるっす。」 
「あいさー」
>「だが断る!」
ルイーズは絶望的な表情でユリを見た。 
>「ミクは私の友達なんだよ! (略) 森の動物さん今までありがとう! 私、行かなきゃ!」 
「止めるニャ、行ったら絶対マズイニャ。
 友達が来るなといったのは、見られたら困ることがあるからに決まってるニャ!」
ルイーズは必死で止めたが、結局2人ともミクの後を追ってしまった。
「・・・・・・ああ、いっちまったニャ。もう馬鹿ばっかりニャ!私はもう知らんニャ!!」
ルズはずんずんと学園の方向へと立ち去っていった。

が。
その1分後、再びこの場所に足音も荒々しく猫人が戻ってくる。
「本当にアホニャ!付き合いきれないニャ!!
 下手に巻き込まれて幼女達が死んだら夢見が悪そうだから、付き合ってるだけにゃ!!」

ルイーズがユリ達に追いつくと、その場に居る全員が隼によって強いプレッシャーを浴びている最中だった。
(なんニャありゃ・・・・・・)
隼の力で地面に縫い付けられている一同を見て、ルイーズはしばし状況を見守る気になったようだ。

172 名前:レイヴン ◇70VgGM3HY6 b [sage] 投稿日:2010/08/28(土) 12:02:47 0
>163-171
>リリィは目を閉じ、一生懸命テレパシーでレイヴンに呼びかけている。
揺れる虎の背にありながら、虚空を見据えたまま身じろぎ一つしなかった小烏が
周囲を訝しげに見回す。リリィのテレパシーは届いているようだが……
小烏にその内容はまったく届いていなかった。
やがて小烏はその声の正体を探る事を諦めたようで、元の姿勢に戻ってしまう。

>「…… あ゛ あ あ あ ぁ ぁ ぁ ぁ ――――――――― ッ !!!」
>「にしても酷い臭いね」
>当然あたるわけも無く、ねらいを外れたそれはレイヴン少年の方へと飛んでいく。
三匹の虎は、保険医がいるであろう建物の前に止まった。
そして、計ったように目を覚ますグラディスとユーリ。俄かに騒がしくなった事が
小烏の意識を引きつけたのか、虎の背から降りた小烏が振り向いた瞬間!
リリィが投げたクッキーの包みが小烏に直撃してしまったのだ。

「うぐぅっ!? ぐぅぅ、ぐるるるっっっ……!」
本能だけしかない小烏にとって、投擲は明確な敵対行動でしかない。
だが同時に、セラエノにケンカ売って五体満足なリリィもまた小烏にとって
本能的に逆らいがたい存在であり、狼の様な低い姿勢を取って威嚇するのが精一杯だった。
……その姿に狼の獣人であるグラディスはみょうちきりんな対抗心が、芽生えるのか?

>「神様って何なんだろう?
>「じゃあ人が生まれる前、神という存在は居なかったんでしょうか?
そんな小烏の威嚇を気にも留めず、リリィとユーリは神について語り合っていた。
「うがっ!?」
神、と言う単語を耳にした瞬間、小烏は短く鳴き声をあげて硬直した。
まるで雷に打たれたかのように全身が強張ったかと思うと……全員の頭に直接声が響いた。

『神と言うのは、今よりもはるか昔に栄えた種族の事だ。
 むろん今人が信仰する神の中には……ユーリ、と言ったか。
 お前さんの言う様な存在も少なくない。
 だが、人を生み出したのは……お前さん達の言葉を借りれば紛れもなく神と言う連中だ』
どこからか送られてくるテレパシー、その発信元を、リリィは何故か分かってしまった。
それは、小烏からだった……どうやら今までの体験でリリィは
テレパシーの受信や送信元の特定とか出来るようになってしまったのかも知れない。
そして、小烏の額には『第三の眼』がしっかりと浮き出ていた。

『まず、中に入って寛いだらどうだ?』
謎の気配に包まれた小烏はそう言葉を送ると先に建物の中に入っていってしまった。
……まるで鳥の様な動作をしながら。


173 名前:レイヴン ◇70VgGM3HY6 b [sage] 投稿日:2010/08/28(土) 12:04:26 0
>「これは…?なんっすかこの大きなプレッシャーは!?」
>「きっとミクが言ってた“敵”がいるんだよ!」
>(なんニャありゃ・・・・・・)
「ケケッ、人間にしちゃあ勘が鋭でぇじゃねぇ〜か?
 そうさそうさ、この先にはなぁ……ケケケッ、おめぇら人間のでぇっきれぇな
 『神様』って奴が雁首揃えて鎮座ましましてるんだぜぇ〜? ケカカカッ」
プレッシャーに阻まれて立ち往生していた三人の耳に突如不愉快な声が叩きつけられる。
……いつの間にそこにいたのか、一つ目のハゲタカが完全に見下した調子で枝に止まっていたのだ。

「クケケッ、人間って奴ぁまぁったく、アホしかいね〜よナァ〜。
 昔ぁアンだけ神様を忌み嫌ってたってぇのにヨ〜、『太陽のかけら』に
 ぜぇンぶ燃やされて姿形が無くなったら手の平返しやがってヨォ、テメェの都合のいいよ〜に
 神様奉って利用してぇ……ケケケ、やっぱ失敗作だナァ、人間はヨォ〜、カァ〜ッカッカッカァッ!」
見るのも聞くのも不愉快なハゲタカは、翼でエンカを指(?)差した

「そこのボーズ、あのいけすかネェハヤブサヤローに、未熟者だとかガキ呼ばわりされたテメェだよ。
 あンなやっすい挑発に乗って喚き散らすバカガキヨォ、テメェ中々おもしれぇな?
 クカカ、テメェの言うと〜りヨォ……『旧神』の奴らはなぁ、テメェらの先祖を
 奴隷として使役してたんだゼェ〜? ケッケッケ、ド〜ヨクソガキ。
 テメェの持論が正しいって証明されて嬉し〜カァ? 嬉し〜ダロォ〜?」
エンカの言葉を待たず、今度はユリに向かって

「止めときなションベンガキ、最悪死ぬゼェ?
 まぁべっつに俺サマーは構わねぇ〜がなぁ〜……ケッケ、テメェが死んだら
 俺サマーのお仕事が増えるだけだからナァ〜? ケーッケッケッケ」
……口ぶりから察するに、このハゲタカも神々に近しい存在なのだろう。
それも負の方面……悪神や邪神と呼ばれる様な、相当に性質の悪い―――。

「オゥ、ネコ又のお戻りカァ〜?
 ケッケ、そーそー、そーやって大人しくしときゃ〜何事もなく済むゼェ?
 ……あのヤローは邪魔されンのがきれぇだからナァ。
 怒らせんじゃネェぞ〜? 俺サマーもとばっちり受けたくネェからヨォ」
不愉快なハゲタカだったが、何故か最後の方は殊勝な事を言っていた。
どうやらただの不愉快な存在ではないらしいが……? b

174 名前:レイヴン ◇70VgGM3HY6 b [sage] 投稿日:2010/08/28(土) 12:05:13 0
>「…!!神性?…これほど、の…」
>「他人の獲物の横取りとは、良いご趣味です事。
セラエノと、主にミクの動きは止められた。
いまや『旧神』に最も近い存在である二柱の女神、その無益な衝突は避けねばならなかった。
……特に『外なる者』に連なる以上有益であろうとこの世界での争いは到底看過できないのだ。

「……生憎、名乗るべき名前がなくてねぇ?
 『人助けが趣味の通りすがりのお節介焼き』、オセちゃんとでも呼んでくれると嬉しい。
 それが嫌ならイレ・ギュラー・テ・レ・ベルジャネーゾでもいいよ?」
重圧はそのままに、いきなり砕けた口調で返事したハヤブサ。
その姿は見る間に人そっくりになった。真っ白な髪、完全な白目、病的に白い肌、
アルビノも真っ青のその姿を人と呼べるのならの話だが―――

「目的と言われてもね、見目麗しいお嬢さん方がキャットファイトで
 傷だらけになるのが嫌だっただけなんだけど。もっと平和的に行こうじゃないか。
 …・・・ねぇ、『黄衣の女神』様?」
ハヤブサだったその存在は、セラエノの顎に手をかけ、顔を上げさせると
元々セラエノがつけていたのとよく似た仮面を取り出した。

「せっかくの美しい素顔を見れなくなるのは残念ですが……
 神様はやっぱり神秘性とか超然とした雰囲気とかがないと務まらないでしょう?
 なのでこの仮面をプレゼントいたしますよ。女性は秘密が多い方が魅力的だ」
ニッコリと微笑んだ『ソレ』は仮面をセラエノの前に置く。
自分でつけた方がいいだろうとの配慮だが、今のセラエノにとっては屈辱以外の何物でもないはず。
一方的に跪かせられた挙句施しを受けるなどと―――。

「それに、君もだよ『紡ぐ者』。
 そんなにトゲトゲしくしていると、友達が出来ないよ?
 ……あの子と彼だけじゃあさすがに交友関係が狭すぎる。まぁ一般論でね?」
飄々とおどけてみせる『ソレ』は、ほんの僅かだけ重圧を緩めた。

「交渉は既に決裂しているんだろ?
 つまり、君たち同士のお話は終わっているわけだ……じゃあ、今度は僕の番。
 質問に答えてくれ。何で君たちはこの世界に来たんだい?
 『神世』は終わりを告げ、肉の身を焼かれ、信仰をなくした神は消え去る宿命のこの世界に」
口元こそ笑みをたたえているが、その目はまったく笑っていなかった。

175 名前:メイション◇jWBUJ7IJ6Y [sage] 投稿日:2010/08/28(土) 20:35:33 0
>165>167>168>172
> リリィ達を乗せた虎は、保健室のある建物の近くで止まった。
それまでの道中でグラディスも目を覚ましたし、
グレンが保険医と話をつけるころにはユーリも起きた。
メイションはボン・ジョビを警戒してそっと保健室の中を覗いたが、既に追い払われているようだ。
メイションがリリィのもとへ戻った時、ユーリは神について次のように話していた。
> 「神様って何なんだろう?
> 凄くファンタジックに筋の通った考え方をしてみると
> ごく初期の宗教は人智の届かぬものを讃え、畏れ、崇めた。それは言うならば神様の雛型
> その雛型にはやがて名前が付き姿が出来る。それが気の遠くなるような時間を掛けて人々の想いを吸い取る
> 想いとか精神力とか、所謂メンタル的なパワーっていうのは魔力の素みたいなものだから
> それを吸い取った空想の産物は人々が思うような形で、人々が思うような力を持ってやがて具現化した
> なんていうのは?」
> 「じゃあ人が生まれる前、神という存在は居なかったんでしょうか?・・・・・・・はっ、いけない。
>  そうですね、きっとユーリ先輩のおっしゃるとおりだと私も思いますです。
>  さあっ、一刻も早く保健室に行きましょう!先生に頭もちゃんと見てもらわないと!!」
> リリィは思いっきり失礼なことを言いながら、ユーリを引き起こそうと悪戦苦闘している。
「人という種が生まれる前にも“知性”は存在したと思うよ。
 その“知性”が寄り集まって“意思”をつくり、それが神の原型になったのかも。」
メイションはリリィがユーリを引き起こすのを手伝った。

> 「にしても酷い臭いね」
その臭いの原因、リリィがレイヴンと呼ぶ子供が硬直したとたん、
全員に対してそうであったように、メイションの頭の中にも直接声が響いてきた。
> 『神と言うのは、今よりもはるか昔に栄えた種族の事だ。
>  むろん今人が信仰する神の中には……ユーリ、と言ったか。
>  お前さんの言う様な存在も少なくない。
>  だが、人を生み出したのは……お前さん達の言葉を借りれば紛れもなく神と言う連中だ』
「さっき総裁の部屋でもこんなテレパシーがあったよね?でも、それとはちょっと違う感じがする…
 見て!リリィお姉ちゃん!ユーリお姉ちゃん!あの子の額!」
メイションはレイヴンの額を指さして叫んだ。
> そして、小烏の額には『第三の眼』がしっかりと浮き出ていた。
> 『まず、中に入って寛いだらどうだ?』
> 謎の気配に包まれた小烏はそう言葉を送ると先に建物の中に入っていってしまった。
> ……まるで鳥の様な動作をしながら。
メイションは地面に落ちたままになっていたクッキーの包みを拾った。
「あの子本当に大丈夫なのかな?だって、さっきの妖怪みたいな姿…忘れたわけじゃないでしょ?」
メイションは事情を知らないであろうグラディスに、鴉の怪物のことを話した。
そしてメイションは、レイヴンがもしもまたあの時の姿になったらどうしようかと思った。




176 名前:エンカ◇jWBUJ7IJ6Y [sage] 投稿日:2010/08/28(土) 20:36:40 0
>169>171>173
> 「きっとミクが言ってた“敵”がいるんだよ!」
「そんなわけないっすよ!だって、今ミクが誰かと争うとしたら、
 それはセラエノしか考えられないっすよ!?第三勢力でも現れない限りはよーっ!」
> 「うぬぬぬぬ……あ痛っ!
>  えぇーいっ! まっけるもんか――――――っっ!!」
エンカの言葉に関係なく、ユリはエンカよりも先に進んでいた。
単純に言えば、エンカよりユリの方が強いのだ。
その時、突然不愉快な声が枝の上から聞こえてきた。
> 「ケケッ、人間にしちゃあ勘が鋭でぇじゃねぇ〜か?
>  そうさそうさ、この先にはなぁ……ケケケッ、おめぇら人間のでぇっきれぇな
>  『神様』って奴が雁首揃えて鎮座ましましてるんだぜぇ〜? ケカカカッ」
ハゲタカである。少なくとも、見た目は自然動物のそれだが、
先程までハヤブサと一獅セったエンカには、そのハゲタカも“同類”であるとすぐにわかった。
「どういう事っすか!?まさか、このプレッシャー!?てめぇらの親玉のせいだってのかよ!?」
> 「クケケッ、人間って奴ぁまぁったく、アホしかいね〜よナァ〜。
>  昔ぁアンだけ神様を忌み嫌ってたってぇのにヨ〜、『太陽のかけら』に
>  ぜぇンぶ燃やされて姿形が無くなったら手の平返しやがってヨォ、テメェの都合のいいよ〜に
>  神様奉って利用してぇ……ケケケ、やっぱ失敗作だナァ、人間はヨォ〜、カァ〜ッカッカッカァッ!」
「ユリ、こいつは神様の使いって奴だ!さっきまで俺はハヤブサの姿をした奴と一獅セったが、
 どうやらあの一匹だけじゃなかったらしいぜ!」
エンカはユリにそう説明した。
> 見るのも聞くのも不愉快なハゲタカは、翼でエンカを指(?)差した
> 「そこのボーズ、あのいけすかネェハヤブサヤローに、未熟者だとかガキ呼ばわりされたテメェだよ。
>  あンなやっすい挑発に乗って喚き散らすバカガキヨォ、テメェ中々おもしれぇな?
>  クカカ、テメェの言うと〜りヨォ……『旧神』の奴らはなぁ、テメェらの先祖を
>  奴隷として使役してたんだゼェ〜? ケッケッケ、ド〜ヨクソガキ。
>  テメェの持論が正しいって証明されて嬉し〜カァ? 嬉し〜ダロォ〜?」
嬉しいわけがねぇだろうが!とエンカは思ったが、
ハゲタカは言葉を待たずにユリに話しかけたので、思うだけになった。
だからハゲタカには伝わらかなかった。エンカは奴隷云々の話は初耳であるし、
それは今はどうでもいいと考えたことを。


177 名前:エンカ◇jWBUJ7IJ6Y [sage] 投稿日:2010/08/28(土) 20:38:33 0
エンカは重圧に屈して三歩後ろに下がった。
神の見えざる力によって人間のエンカがどうにもできない様子は、ハゲタカにとって面白いのかもしれない。
しかし、エンカは何も考えずに後ろへ下がったわけではなかった。ハゲタカを見てエンカは気づいたのだ。
ハゲタカが止まっている枝のように、人間達以外はプレッシャーを受けていないということを。
「まずは大切なことからだ。お前が探しているユリは今俺の側にいる。タマタローも一獅セ。」
エンカは流星錘を取り出すと、なぜか独り言を喋り始めた。
「それから…これは俺の勝手なつぶやきだから聞いても聞かなくてもいいけどよぉ、
 お前の事、いろいろと悪く言っちまったことを謝りてぇんだ。すまなかったと思ってる。
 だが、俺はどうしてもああ言うしかなかったんだ。」
エンカは鏡の破片のような物を取り出した。ハゲタカがそれを見るならば、
醜い自分の姿が目に入るだけである。
取り出す時に鏡の破片で指を切ってしまい、流星錘の先にエンカの血が垂れた。
「こうやってお前に近づくこともできない無力さが、神の力への反感を募らせてるのかもしれねぇ。
 そこんところは否定できねぇよ。だが、俺が本当にいけないと思ったのは、
 お前が神らしく振舞おうとして、無理に自然な自分を隠そうとしていることだぜ?
 こんな鏡張りの仮面をかぶっているのは、普通じゃあねぇ。
 でも、こういう仮面は神秘的だから、お前は他人から神として見られるために被っている。
 もうそういうのはやめにしねぇか?
 俺達は生まれの宿命を変えることはできないが、生き方は自分で自由に決めていいはずだ。
 お前が神としての生き方を捨てなくても、あの唇と唇が触れ合ったときに恥じらったような、
 ごくありふれた少女としての生き方だってできるし、それがお前の魂が求めている生き方のはずだ。
 だからこそ、この仮面はあの時割れたんだからな。
 …好きだぜ、セラエノ。俺は仮面を外したお前の側にずっといたい。」
エンカは流星錘を振り回し、プレッシャーが来る方向へそれを投げ飛ばした。
もしもセラエノのもとへその流星錘が届けば、彼女はそれに込められた記憶を読むことができるだろう。
「そういやぁ、お前の主人は邪魔されるのが嫌いなんだって?
 お前がとばっちりを受けても俺サマーは知らねぇけどよ〜?ケーッケッケッケ」
エンカはハゲタカを馬鹿にした様子でそう言った。


178 名前:レイヴン ◇70VgGM3HY6 [sage] 投稿日:2010/08/29(日) 10:28:37 0
>177
>それは今はどうでもいいと考えたことを。
横目でエンカの表情をチラ見してみたが、あまり変化はなかった。
どうやら奴隷云々についてそこまで興味があるわけじゃないらしい。

(「ありゃァ、外れカァ〜? マァ、べっつにいいけどナァ〜
  俺サマーにとってもどーでもいい事だもんヨォー。
  んなん、神学者辺りでもネェと食いつきゃしネェわナァ〜、カカカカッ」)

>「そういやぁ、お前の主人は邪魔されるのが嫌いなんだって?
> お前がとばっちりを受けても俺サマーは知らねぇけどよ〜?ケーッケッケッケ」
ハゲタカはここに至ってエンカの勘違いに突っ込むことにした。
さっきのエンカのセリフから誤解してるのは分かってたがあえて放置してたのだ。
理由は単純、いちいち返答するのがマンドクセかったからだ。
「ハァー? ナ〜ニ寝言ほざいてンだクソガキぁ。
 俺サマーとあのクソハヤブサヤローを一緒くたにすんじゃネェヨォー!
 ……あんな偽善と独善の塊みてぇなヤローとヨォ……!」

ハゲタカから目に見えるほどの殺気が放たれる……が、その理由はどうやら
エンカに馬鹿にされたからじゃなくてハヤブサのお仲間扱いされた方の様だ。
「俺サマー達のボスはヨォ、人間なンぞにゃあかかわらネェのヨォ……
 生きてる人間にゃ、絶対にヨォ? 『太陽のかけら』に黒焦げにされてからぁ
 今までそしてこれからも、ボスはただ『お仕事』するだけなのヨォ。
 まぁそりゃあ俺サマーも同じなンだがヨォ? クカッ」

が、そんな殺気も『ボス』の話になったとたん霧散してしまう。
どうも鳥連中は喋くるのが好きらしい。
「……エンカつったかクソガキ、言っとくガァんなもンは邪魔にならネェヨォ?
 あのヤローはむしろ狂喜乱舞するほど喜ぶンだろ〜ゼェ。
 アイツァマゾだからヨォ……人間に打ち殺されたってェのに、人間が
 アホやらかしてンの見てホクホクしやがってヨォ、気味わるくね?
 ……ンまぁ、ドッチみちとばっちりは受けなくて済みそうだがヨォ。カカッ」
何故かエンカに同意を求めるハゲタカだったが、エンカにしてみれば
何言ってんだこいつ状態である事はまるでアウトオブ眼中なんだろう……


179 名前:続き [sage] 投稿日:2010/08/29(日) 10:29:35 0
やがて、エンカの血がついた流星錘がプレッシャーの中心に落ちる。
だが狙いが甘かったようで、一番距離が近いのは『白い奴オセ』だった。
……オセはプレッシャーの端の方で起きた事を『眼』で見ていたし、
当然エンカの独り言もしっかり聞いていたのだ……オセは
その内容を聞くにつけ見る間に幸福そうな表情になり、地面の流星錘を
見る頃には慈しみの感情がオーラとなって見えるほどになっていたのだった!
その様子はセラエノ、ミク両名にとって不可解極まりないものだったろう。

「……やれやれ、それが君の本心だったのかい?
 そうならそうと、最初から思いを伝えれば良かったんだよ?
 偽らざる想いはどんな存在にも届くのだからね……ふふっ、喜ばしい話だ。
 できればこの幸せいっぱいな状態のまま、穏便に事が終わってくれればいいんだけどね?」
そう呟いてオセは流星錘を拾い上げ、それもセラエノの前へと置く。
今セラエノの前にあるのは、『神の仮面』と『人の石』。それぞれの道の標と言える物だ。

「手に入れられるのは一つだけですよ。
 二兎を追う者は一兎も得ず、と人の格言にありますからね。
 ……貴女の望む様になさい。後悔なきよう、よく考えて選ぶ事をお勧めしますよ」
もしセラエノが『人の石』を拾ったなら、その瞬間に『神の仮面』は
ただの仮面でしかなくなるが……オセとしては、神であろうと人であろうと
セラエノの仮面の下にある『原本』を人目につかせたくないのだ。

(「……しかし、気づかれずに済ませるのは無理なのだろう。
  ならば、これ以上の干渉はせず、傍観に徹するべきなのか……?」)
そうしたいのは山々なのだが、ミクの今までの行動を振り返るにつけ
これからも余計な手出しをせざるを得なくなるのだろう、と嘆息する。
「どうしますか、『紡ぐ者』初音美紅。
 少なくとも、貴女のやり方では信仰も迫害も得られませんよ。
 ん、何故断言できるかと? ……僕はですね、同じ事をして失敗した存在を知っているのです。
 同じ轍は踏みたくないだろう? 『先輩』のアドバイスは聞いておくものだと思わないかい?」
どこまでが本気でどこまでが冗談なのか、オセの様子からそれを探るのは難しそうだ。




180 名前:ミク ◇sto7CTKDkA [sage] 投稿日:2010/08/29(日) 20:35:10 0
>174 >179
>「……生憎、名乗るべき名前がなくてねぇ?
> 『人助けが趣味の通りすがりのお節介焼き』、オセちゃんとでも呼んでくれると嬉しい。
> それが嫌ならイレ・ギュラー・テ・レ・ベルジャネーゾでもいいよ?」
馬鹿にしたような物言いに、ミクの目が細くなる。
名乗るべき名が無いなどと、にわかには信じられなかったのだ。
ミクの目前で、ハヤブサは人の姿に変化する。
ミク自身人の姿をしているのだから、ハヤブサが人になってもおかしくはない。

>「目的と言われてもね、見目麗しいお嬢さん方がキャットファイトで
> 傷だらけになるのが嫌だっただけなんだけど。もっと平和的に行こうじゃないか。
> …・・・ねぇ、『黄衣の女神』様?」
オセの目的を聞いて、ミクは少し考え込んだ。
平和的に場を収める。 それが目的なら、この者は学園の関係者かもしれない。
いい加減大きくなった騒ぎを鎮めるために、使わされた学園関係者。
いかにもありそうな話ではないか。

>「それに、君もだよ『紡ぐ者』。
> そんなにトゲトゲしくしていると、友達が出来ないよ?
> ……あの子と彼だけじゃあさすがに交友関係が狭すぎる。まぁ一般論でね?」
余計なお世話だという気持ちを込めて、ミクはオセを睨み返す。

>「交渉は既に決裂しているんだろ?
> つまり、君たち同士のお話は終わっているわけだ……じゃあ、今度は僕の番。
> 質問に答えてくれ。何で君たちはこの世界に来たんだい?
> 『神世』は終わりを告げ、肉の身を焼かれ、信仰をなくした神は消え去る宿命のこの世界に」
「……何ですって?」
オセの質問の真意を読めずにミクは思わず問い返し。
その瞬間、ふとさっきから感じていた違和感の答えらしきものが閃いた。
もしや、ハヤブサは勘違いしているのではないかと。

森から飛んできた流星錘が、オセの近くに落ちる。
流星錘についている血の匂いから、それがエンカのものだとミクにもすぐわかった。
ただし、それを見るオセの慈しみの感情は、ミクには理解不能なものだった。
エンカの感情が読めなかったから、だけが原因ではない。
ミクの慈しみの感情は、すっかりすり減ってほとんど残っていなかったからだ。

>「どうしますか、『紡ぐ者』初音美紅。
> 少なくとも、貴女のやり方では信仰も迫害も得られませんよ。
> ん、何故断言できるかと? ……僕はですね、同じ事をして失敗した存在を知っているのです。
> 同じ轍は踏みたくないだろう? 『先輩』のアドバイスは聞いておくものだと思わないかい?」
「…ふふ…やっぱりあなた、どうやら人違いをなさっているようですわよ?
 だって私は、『紡ぐ者』などではない。 …昔は蜘蛛神でさえない、ただの人間だったのですから」
ミクは、簡単に自身の生い立ちを説明する。

昔、ミクは普通の人間であり、蜘蛛神の生贄として選ばれたものだった事。
生贄として運ばれた先、蜘蛛神は想像に反して危害をくわえることはしなかった事。
ただ3日3晩山にとどまり、今後は決して人を憎み恨むことの無いようにと言われた事。
約束の3日後に解放された時、人の世ではすでに相当の年月が経過していた事。
行くべき場所も戻るべき場所もなく、依るべき場所も人もなく。
事実を告げれば狂人のように扱われ、時に石で追われた事。
右も左もわからなかった少女は、自分の境遇を呪った。
自分をこんな目に合わせた蜘蛛を。 自分を生贄に選んだ村の者達を。
自分を受け入れなかった人々を呪い、憎み、恨んだ。

181 名前:ミク ◇sto7CTKDkA [sage] 投稿日:2010/08/29(日) 20:36:37 0
「……そして気が付いた時、私は蜘蛛になっていた。
 御想像の通り、かつて私が住んでいた土地にいたもの達を皆殺しにして。
 今から考えれば、本当に間の抜けた話でしょう?
 でも、あの時の私には、他にどうすることも出来なかった。
 おそらくあの蜘蛛神は、最初からそうなることがわかっていたのでしょうね。
 ……長々とくだらない昔話を聞かせてしまって御免なさいましね。
 でも、これで納得していただけたかしら?
 あなたがおっしゃっていた『紡ぐ者』は、おそらく私を蜘蛛にしたあの蜘蛛神の事。
 私はあれからあの蜘蛛神には会っていない。
 あなたはやはり、人違いをしているのよ」

なぜ過去の事を他人に話す気になったのか、ミクにもわからなかった。
エンカの話した浦島太郎の話のせいかも知れない。
あるいはオセの持つ神性のせいかもしれない。

「あなたは引く気が無いようですし、私もあなたと正面から戦うつもりはない。
 この場はあなたの顔を立てて、引かせていただきますわ」
ミクは踵を返そうとして、そこで思い直して足を止めた。
「少しのことにも先達はあらまほしき事なり。
 『先輩』にお聞きしたい件があったのを思い出しましたわ。
 私は力を得るのに、信仰や迫害など必要とはしません。
 人が他の生き物を食べて自身の血肉とするように、生贄を喰らって力を増すものですから。
 『先輩』のような力を得るにはどれほどの生贄を喰らえばよいのか、御教授いただけるかしら?」


182 名前:ユリ ◇sto7CTKDkA [sage] 投稿日:2010/08/29(日) 20:37:55 0
>173 >178
>「ケケッ、人間にしちゃあ勘が鋭でぇじゃねぇ〜か?
> そうさそうさ、この先にはなぁ……ケケケッ、おめぇら人間のでぇっきれぇな
> 『神様』って奴が雁首揃えて鎮座ましましてるんだぜぇ〜? ケカカカッ」
「誰!?」
急に話しかけられたユリが仰ぐその先には、1匹のハゲタカがいた。
>「ユリ、こいつは神様の使いって奴だ!さっきまで俺はハヤブサの姿をした奴と一だったが、
> どうやらあの一匹だけじゃなかったらしいぜ!」
「神様の使い!? なんでそんなのがここにいるのさ!」
1つ目のハゲタカは確かに自然の存在とは思えなかったが、ユリには神様の使いには見えなかった。
ユリのイメージでは、神の使いとはもっと神々しい存在であり。
すくなくともこんな話し方をするとは思えなかったのだ。

最初にエンカに話しかけたハゲタカは、次にユリにも話しかける。
>「止めときなションベンガキ、最悪死ぬゼェ?
> まぁべっつに俺サマーは構わねぇ〜がなぁ〜……ケッケ、テメェが死んだら
> 俺サマーのお仕事が増えるだけだからナァ〜? ケーッケッケッケ」
「お断りします!」
死ぬと言われても、ユリの意思は変わらない。
それどころか逆に、行く気がさらに強まった。
「私が行ったら死ぬって事は、ミクも死んじゃうかも知れないって事でしょ!
 だったら余計にいかなきゃ!!
 ここで逃げたら女がすたるーっ!」
ちなみに、ユリはエンカに話したハヤブサの言葉の意味を、半分も理解していない。
理解したところで、そんな昔の話なんか今は関係ないよ! で済ませるだろうが。

ユリはハゲタカの登場で止まっていた腕を再び動かし、前に向かって進み始める。
>「まずは大切なことからだ。お前が探しているユリは今俺の側にいる。タマタローも一だ。」
エンカが独り言を始めても、その動きは止まらない。
ただ、エンカが投げた流星錘が頭上を飛び越えていくのを見た時、またまた前進が止まった。
「あーー!ずるーい!!  人が死ぬ気で進んでるのにーっ!
 石なんかに負けてられない!! 私も急ぐ!!!」
エンカの投げた流星錘に先を越されたのがよほど悔しかったのだろう。
ユリは今までより速度を上げて前進を再開した。

速度を上げたといっても亀より遅いが、進み続けてついにユリは目的のミクを見つけた。
「見つけたーっ!」

183 名前:グラディス ◆e2mxb8LNqk [sage] 投稿日:2010/08/29(日) 22:46:36 0
>168
>「夜なんだから大声出さない!」
「うひぃ!?」
グラディス目掛け何かの包みが飛んでくる。
避けることもなく狙いを逸れて違う方向へと飛んでいくが、それも気に入らないらしい。
リリィはグラディスに負けんばかりの大声で返答を始める。
>「避けちゃダメ!っていうか起きるのが遅すぎ!もう全部終わっちゃったよ!
> あと、グラディス君の服がボロボロなのは、お屋敷の床が落ちたから!
> 虎はセラエノさんので、今、怪我した皆を保健室まで運ぶとこ!
> 私も所々よく覚えてないから、詳しくはメイション君から聞いて!」
「い、イエスマム!」
ビシッと敬礼一つ、元気に返すグラディス。
それを見ながら、ふっとリリィの表情が緩まった。
>「良かった、見た目よりずっと元気そうで」
こう安心されると、グラディスとしても何か罪悪感めいた気分が湧き出てくる。
ポリポリ頬をかきながら、謝罪。
「うー、なんかごめーん」

>172
そうするうちに聞こえた唸り声。虎の歩みも止まっている。
虎から颯爽と降りてなんとなく振り向くと、薄汚れた少年の姿があった。
鼻の利くグラディスにとって、この体臭はかなり厳しいものがある。思わず顔をしかめてしまった。
獣のような姿勢で警戒している。対抗心は……
「……誰?警戒してるみてーだけど、言葉は通じんのかなー?」
ない。あるのは好奇心と疑問と臭いの不快感。
グラディスは今、ただのと言うにはいくらか語弊があるが、まったく人間に近い。
二足歩行とはいえ獣に近い獣人姿だったなら、もしかしたら対抗心の欠片も芽生えたかもしれないが。
じりじりと少年の警戒の範囲を見極めつつ、かさかさ横歩きをする。
傍から見れば馬鹿っぽい。実際、グラディスは結構馬鹿なのだが。

>165>175
>「……さあっ、一刻も早く保健室に行きましょう!先生に頭もちゃんと見てもらわないと!!」
>「人という種が生まれる前にも“知性”は存在したと思うよ。
> その“知性”が寄り集まって“意思”をつくり、それが神の原型になったのかも。」
「ん?あれま、誰だっけ?先輩だっけ。どーしたん?頭でも不味いの?」
何気に酷い言葉を吐きつつ、リリィとメイション、そしてユーリの方に視線を向ける。
「うがっ!?」という少年の声には気付いてはいたが、大して気は払っていなかった。
一瞬硬直したのも気付いていなかった。

184 名前:グラディス ◆e2mxb8LNqk [sage] 投稿日:2010/08/29(日) 22:48:06 0

3人の方に気を取られた瞬間だった。
>『神と言うのは、今よりもはるか昔に栄えた種族の事だ。
> むろん今人が信仰する神の中には……ユーリ、と言ったか。
> お前さんの言う様な存在も少なくない。
> だが、人を生み出したのは……お前さん達の言葉を借りれば紛れもなく神と言う連中だ』
「ぬわー!?何々テレパシー!?」
なんとなく方向がわかったグラディスが、そこを向く。皆も同じ方向を向いた。
少年だ。あの獣のような振る舞いをしていた少年だ。
>「さっき総裁の部屋でもこんなテレパシーがあったよね?でも、それとはちょっと違う感じがする…
> 見て!リリィお姉ちゃん!ユーリお姉ちゃん!あの子の額!」
額にはどういうわけか、変なのがあった。それは眼、なんだろう。

>『まず、中に入って寛いだらどうだ?』
鳥みたいな変な動きをしながら、少年が建物の中に入っていく。
あんまり着いていきたくもないが、誘われて入らないのもどうかとグラディスは思う。
>「あの子本当に大丈夫なのかな?だって、さっきの妖怪みたいな姿…忘れたわけじゃないでしょ?」
「んん?妖怪?何それ」
何も知らぬグラディスがメイションに尋ねる。
>メイションは事情を知らないであろうグラディスに、鴉の怪物のことを話した。

「……なんだそりゃー。てか、あれレイヴン?また若返ったの?
 ああっと、そーいえば知らなかったっけ?とりあえず、歩きながら話そうぜー」
不思議そうに首を傾げながら、少年レイヴンを後をついていく。
「俺はさー、まず廃墟でレイヴンに会ったんだ。そん時は普通の学生みたいな年齢の見た目だったなー。
 次に、黒騎士の……ああそうだ、ゼルフェルド卿とやり合ってる時に会った。此処から妙なんだけどよー」

眉をひそめて顎に手を当て、一息ついてからまた口を開いた。
「何故か中年のおっさんになってさ!いやびびったー、実はおっさんなの?って感じでさ!
 そんで変な鳥、確かハヤブサ?が来てから、行き成り時空魔法っぽいものが起きて若返って。
 それから門まで連れてって、そこで別れて、この探検の出発前に再会したのさ。あとは……そだな、メイションの言うとおりなんだろー?」
確認を求め、聞きながらメイションに目配せした。
返答を聞くと、一人でうむうむと頷く。
「あいつ、意味わかんねーなー。変な奴だよなー。なー皆、他に知ってることある?」

185 名前:セラエノ ◆LGeruanYjI [sage] 投稿日:2010/08/30(月) 01:24:08 0
ハヤブサは白い人型となって本気とも冗談ともつかぬ口調でオセと名乗った。
砕けた口調とは裏腹に場を支配するプレッシャーは一向に収まる様子はない。
ギリギリのところで耐えているセラエノに、オセは顎に手をかけ顔を上げさせ、仮面をその前に置く。

無理やり押さえつけておいて顎に手をかけて顔を上げさせるのも十分屈辱的だが、それにも増してセラエノを抉る言葉が添えられていた、
>神様はやっぱり神秘性とか超然とした雰囲気とかがないと務まらないでしょう?
その言葉に疲弊していたセラエノの瞳が大きく見開かれる。
神秘性とは知られぬからこそ成り立つものである。
セラエノが神であらんと必死で繕っていたものを裏から見透かされたように感じたのだ。
仮面の目的を知られるだけならまだしも、そのうえで施すとは。

屈辱にまみれてもセラエノができるのは大きく目を見開くのみ。
もっとも、オセには目を見開くという表情ではなく、顔の部分の石碑に刻まれた不可解な文字が蠢いているように見えるのだが。
それ以外の行動の一切はオセの放つプレッシャーにより押し潰されていたのだから。

その後プレッシャーを僅かに緩め、なぜこの世界に来たのか、と尋ねるオセ。
問いに対する応えはセラエノは持っていた。
『望まれたから。』
その一言に尽きるのだ。
救済・英知・擁護・闘争・恐怖…シンプルで揺るぎない寄りかかっても倒れない指針がほしいから、人は神を作るのだ。
祈り、願い、神を形作っていく。
その工程はまるで…
己が神であることを自覚した時、セラエノは考え、途中で止めた。
止めたのは自己防衛本能のなせることなのだろうが、途中までの結論は出ている。

しかし、それを言う事はない。
もっとも、言おうとしても言えはしなかったのだが。


問いに応えぬまま跪いた体制で、ミクの生い立ちを遠くから流れる鐘の音のように聞いていた。
耳には入っていたが殆ど頭に入っていない。
前に置かれたエンカの流星錘とオセの差し出した仮面。
その二つを前に迷っているかのようにも見えただろう。

だが実際には、どちらもほとんど見えていなかった。
僅かに緩めたとはいえ、オセの放つプレッシャーはセラエノの肉体と精神を消耗させ続けていたのだ。
その結果、気を失うように倒れ伏した。
倒れる際に一切の防衛行動すら起こせず、流星錘の石に頭突きするような状態で。

流星錘に向かって倒れたのはまさに偶然そのもの。
単純に仮面より後から差し出され、そちらに顔が向いていたというだけの話。

結局のところ石に頭突きして倒れたようなもので、伏した頭部からは血の領域が広がる。
「そう…そうなの…」
小さな呟きとともにだくだくと広がる血の池とともに、セラエノのスカートが濡れる。
失神の拍子に失禁したと思うかもしれないが、それはほんの一瞬でしかないだろう。
失禁というには多すぎる、どこまでも止まらず溢れる水と、周囲を包む潮の香り。
やがてそれは大瀑布となって吹き上がる!

セラエノのスカートからあふれ出したのは海そのもの!
一気に高さ20メートルほどの海の領域が作られ、なおもその幅を広げる。
だが不思議なことに海に飲み込まれたとしてもミクやオセが呼吸に困ることはないだろう。
感覚は海の中には違いないのだが。
さらに異変は続く。
セラエノの背後に巨大な宮殿が出現したのだ。
這いずってたどり着いたユリを呑み込むように。

186 名前:セラエノ ◆LGeruanYjI [sage] 投稿日:2010/08/30(月) 01:28:17 0
突如現れた【海】と【海中宮殿】。
その存在はオセのプレッシャーと拮抗し、黒い火球と鬩ぎ合うように随所で泡立っている。
そんな中、セラエノの真後ろに聳え立つ門がゆっくりと開く。
門から出てきたモノは、巨大な女。
ただし下半身は東洋の龍となっており、その姿はナーガに近いかもしれない。
だがそれをナーガと思うものはいないだろう。
少なくとも【浦島太郎】を知っている人間は迷うことなくそれが【乙姫】と認識してしまう。
そして門に掲げられた看板の文字が読めなくとも、その宮殿が【竜宮城】であると認識するだろう。
なぜならば【浦島太郎】に向けられた想いの集合体の具現がこれなのだから。

力尽き頭を割ったセラエノの血と、スカートにしまわれていた【浦島太郎】の絵本が反応し、この顕在化現象を引き起こしたのだった。

おとぎ話の海の中、乙姫の小脇にはユリが抱えられている。
乙姫に抱き起されたセラエノは、顔を染める血をぬぐいながら立ち上がる。
「私の目的はユリを探し出し、保護する事。
目的を果たしましたし、私を待ってくれている友達もいますので、これにてお暇します。
こちらは、ありがたく頂いておきます。」
オセの仮面を手に、セラエノは宣言する。
そのあと乙姫はその長い体をうねらせ、オセとミクを置き去りにして竜宮城へと泳ぎ去る。
ユリとセラエノを抱えたままで。


【浦島太郎】の世界はオセのプレッシャーの隅まで広がっていた。
具体的に言えば、エンカの目の前まで【海】の領域であり、そこに【竜宮城】の看板が掲げられた門が聳え立つ。
門はゆっくりと開き、出てくる乙姫。
乙姫はユリとセラエノをエンカの前に置くと、海とともに朝露のように消えてしまった。

大量の神血と【浦島太郎】という古く広く読まれてきたおとぎ話。
だがそれだけではこれだけ大規模な顕在化現象は起こらない。
エンカの血に込められたメッセージがセラエノを呼び起こした一つの奇跡なのだから。

「エンカ…ありがとう。」
エンカの前に立ったセラエノは穏やかな表情で礼をいい、抱きついた。
本来ならば言うべき事、言いたい事、語り尽くせぬほどあったはずなのだが、実際に出たのはそれだけだった。
包み込むような抱擁の後、ゆっくりと離れオセより渡された仮面を被る。
「無理も不自然も既に私の一部。
この生き方は私が望んでいることなのだから。
でもあなたの気持ちは、嬉しいわ。」
最後の言葉は揺れて小さくなったが、胸を張りはっきりと…
そのまま後ろに倒れた。

血を流しすぎたのだ。
トラの位置からリリィたちが保健室にいる事を告げ、再度気を失うセラエノ。
幼女形態のユリを見ても何の反応もしなかったのは流しすぎた血と共に同性愛の小児愛という特殊属性が流れ出たからかもしれない。
もしくは立て込んでいてそちらに気を回す余裕がなかっただけかもしれないので、油断は禁物だ!

ともあれ、気絶したセラエノは満足げな笑みを口元に浮かべていた。

187 名前:リリィ ◆jntvk4zYjI [sage ルイーズは様子見] 投稿日:2010/08/30(月) 03:00:30 0
>175 >183-184
>「さっき総裁の部屋でもこんなテレパシーがあったよね?でも、それとはちょっと違う感じがする… 
> 見て!リリィお姉ちゃん!ユーリお姉ちゃん!あの子の額!」 
「そうなの?!私全然覚えてなくて・・・・・・って、どうしたの?」
>メイションはレイヴンの額を指さして叫んだ。 
 >そして、小烏の額には『第三の眼』がしっかりと浮き出ていた。 

「いつの間に・・・・・・全然気づかなかった!!」
> 『まず、中に入って寛いだらどうだ?』 
> 謎の気配に包まれた小烏はそう言葉を送ると先に建物の中に入っていってしまった。 
> ……まるで鳥の様な動作をしながら。 
>メイションは地面に落ちたままになっていたクッキーの包みを拾った。 
>「あの子本当に大丈夫なのかな?だって、さっきの妖怪みたいな姿…忘れたわけじゃないでしょ?」 
>「んん?妖怪?何それ」 
メイションは事情を知らないであろうグラディスに、鴉の怪物のことを話した。 
>「……なんだそりゃー。てか、あれレイヴン?また若返ったの? 
> ああっと、そーいえば知らなかったっけ?とりあえず、歩きながら話そうぜー」 
「怪我人運ぶのもちゃんと手伝ってねー」
リリィはすかさず釘を刺した。

グラディスは、黒い騎士と戦いの後、何が起こったのかを話してくれた。
「・・・・・・そうだったの。私達を逃がした後、そんな事があったの。
 つまりレイヴンさんは死にそうになると、レイヴン以外の『何か』に変身しちゃうって事なのかなぁ?」
>「あいつ、意味わかんねーなー。変な奴だよなー。なー皆、他に知ってることある?」

リリィはテレパシーで
『子供レイヴンには言葉だけでなくテレパシーも通じなかったこと』を根拠に、
『人間というよりは獣に近い思考パターンを持っている』という仮説を話した。
また、『レイヴンという名前に反応しなかった事』から、今の彼は名無しか、全く別の名前という仮説も口にする。

「でもまあ、仮説ばっかり話しててもしょうがない!
 本人目の前に居るんだし、小細工無しで直接聞こう!直接!」
・・・・・・・決して、考えるのが面倒になったわけではない。・・・・・・と思う。

リリィはユーリを背負ったまま、
『すみませーん、子供レイヴンさん・・・・・の中にいる鳥みたいな人。
 貴方はどなたですか?子供レイヴンさんとレイヴンさんと、あの烏人みたいな彼とどういうご関係で?
 っていうか、レイヴンさんって何者なんですか?』
と、テレパシーでたずねた。
いくら何でも直球過ぎである。

もちろん当のリリィも、全部の質問にレイヴンが正直に答えるとは思っていない。
むしろ彼女にとっての本題は、この後だ。

子供レイヴンの反応を見たリリィは、うんうん一人頷いた後、にっこり微笑んだ。
「良かった、言葉、ちゃーんと通じてるみたいで。
 というわけで申し訳ないけれど、私達と一緒に来てくださいません?」

「だって!こんなひどい状態の子供放って置けるわけ無いじゃないですか!!
 傷の手当てして、ご飯だっておなか一杯食べさせないと。トリガラじゃ無いんですから」
もっとも食堂は閉まってるので、振舞うのはご飯でなく携帯食になるのだが。

「あっ、そうそう、お風呂だって着替えだって重要ですよね!
 でないと、とても一緒のベッドでは寝られないもの。 ねえ、皆だってそう思うでしょ?」
・・・・・・・いつのまにか、リリィの話は完全に明後日の方向へ向かっているようだ。

「本当によかったぁ、話の分かる方で。
 獣みたいなその子のお世話は、なかなか骨が折れそうだなーって思ってたんですよぉ!」
この場合言葉は通じていても、意思疎通が完璧であるかは甚だ疑問である。

188 名前:オセ ◇70VgGM3HY6 [sage] 投稿日:2010/08/31(火) 06:50:36 0
>180-187
>「私が行ったら死ぬって事は、ミクも死んじゃうかも知れないって事でしょ!
> だったら余計にいかなきゃ!!ここで逃げたら女がすたるーっ!」
「おいションベンガキ、おめェバカだロォ? いやぜっテェバカだ。
 おめェの場合は体の中身が潰れて死ぬってことだっテェの。
 あのヤローはそうさせやしネェダロ〜がヨォ……おいおい、バカってこえぇナァ〜。
 並の人間だったら潰れたカエルみテェになって身動き取れネェ……?
 ……ニャろ〜、圧を弱めやがったナァ〜?」
ハゲタカの言うとおり、オセはプレッシャーを緩めていた。
中心部は誤差程度だが、周辺部はかなり弱まっており、おかげでユリは
苦戦しながらも先に進めたのだった。

ょぅι゛ょがハァハァしながら向かっている時、中心部では―――


>余計なお世話だという気持ちを込めて、ミクはオセを睨み返す。
「おっと、余計なお世話なのは自覚しているよ? それでも僕は願って止まないのさ。
 ……君が、友達や仲間と他愛のない日々を過ごす事だけで満たされるのをね」
オセの偽らざる本心である。だからこそ余計なお世話なのだがオセ自身もそれを自覚しているだろう。

>あなたがおっしゃっていた『紡ぐ者』は、おそらく私を蜘蛛にしたあの蜘蛛神の事。
>私はあれからあの蜘蛛神には会っていない。
>あなたはやはり、人違いをしているのよ」
ミクの語った過去はとても悲しいものだった……事実、オセはその表情こそ
変わっていないものの石で追われた事を聞いた辺りから涙を流していたのだから。
その涙が草に触れた時、草は見る間に劇的な変化を起こし……
大きな葉っぱを何枚もまとった人の様な存在となってしまった!

―――古来より、神話においては神は自身の一部から新たな命を生んだと言う。
   それは髪の毛であったり爪であったり涙であったり―――

オセはその新しく生まれた命を、我が子の様に抱きかかえながらミクへと言葉を返す。
「……辛く悲しい過去を話してくれてありがとう。
 君にとってはとても話しづらいものだったろうに……でもおかげで確信がもてたよ。
 ミク、君はやはり『紡ぐ者』だ……より正確に言うならば、その継承者と言ったところかな」
オセの腕の中にいる子供の様な存在(仮に草人とする)は、つぶらな瞳でミクを見ている。

「確かに君の言うとおり、その蜘蛛神こそが『紡ぐ者』なのだろうね。
 ……だが、君は『紡ぐ者』の手によって蜘蛛となった。
 既に君は『紡ぐ者』の血脈、それも直系に位置する存在になっているんだよ。
 まぁ、ざっくばらんに言ってしまえば『紡ぐ者』とは君たちの種その物を表す名称と言うわけだ。
 もっともっと簡単に言えば、ファミリーネームみたいなものと思ってもらってもいいだろうね」
散々もったいぶった事を言っておきながら、結論は大した事がなかった……草人(仮)は小首を傾げながらまだミクを見ている。

「『彼』は今もきっと何かを紡いでいるのだろう。
 君は、今に至るまで悲しい半生を紡いできたわけだが……これから先は、
 喜びと楽しさに満ちた道を紡いでもらいたいと、先ほどよりも強く願っている。
 ……正の力を受ければ、君はきっと運命すら紡げるだろう。
 それが、君の『覚醒』なのかも知れないね……」
真面目な話など露知らずとばかりに、草人(仮)はオセの腕から抜け出すとミクの方へ歩いていき……
スカートの裾を掴んだ。ミクがそちらに視線を向けると、草人(仮)は人懐っこい満面の笑顔を咲かせた。

「おや、どうやら僕の子に好かれたみたいだね。
 まるで花が咲き乱れそうな、いい笑顔だと思わないかい?」


189 名前:オセ ◇70VgGM3HY6 [sage] 投稿日:2010/08/31(火) 06:51:54 0
>「あなたは引く気が無いようですし、私もあなたと正面から戦うつもりはない。
> この場はあなたの顔を立てて、引かせていただきますわ」
どうにかミクの毒気を抜く事には成功したようだ。
「賢明な判断と、私の顔を立てて下さった事に感謝します、が……」

>「少しのことにも先達はあらまほしき事なり。(略)
ミクはいまだに力を得る為に他者を喰らう事を諦めていない様だった。
「……やれやれ、どうしても諦める気はないんだね。丼勘定でよければだけど、
 とりあえず計算してみるか……うーん、ざっと三つの大国の住人を根こそぎ喰い尽くせば何とかかな?
 力あるものが混じっていれば、程度によるけど上手くいけば国一つは省略できるはず……だけど、
 ついさっきまでなら何とかなっただろうが、今はもう無理だよ? ……『太陽のかけら』が目覚めたからね」
そんな雰囲気をよそに、草人(仮)は立ち去ろうとするミクのスカートの裾を握ったまま
一緒について行こうとしている。その表情は、どこか捨てられそうになっている子犬を連想させるようなものだった。

>「見つけたーっ!」
そんな中、ようやくユリが中心部にやってきた。
プレッシャーを物ともせずに叫んだ一言は……すごい音量だ。
「おや、見つかってしまったかな?
 さてさて、それでは今宵の歓談会はこれにてお開きといたしましょう……っと?」

>セラエノのスカートからあふれ出したのは海そのもの!
>一気に高さ20メートルほどの海の領域が作られ、なおもその幅を広げる。
プレッシャーを解除しその場を去ろうとしたオセだったが、それより先にセラエノが行動を起こしていた。。
しかしオセは動かない。その異変に敵意は感じないし、下手に動くと余計にセラエノを
消耗させてしまうだろうと言う配慮からだった。

「……おお、これは素晴らしい光景だ。
 これを肴にお酒が呑みたいねぇ……熱燗をクイッ、ああたまらないねぇ〜」
まるで緊張感がないが、目を見ればそうでない事は分かっただろう。
オセはあれだけ屈辱的な事をしておきながら、内心心配しているのだから。

>「私の目的はユリを探し出し、保護する事。
> 目的を果たしましたし、私を待ってくれている友達もいますので、これにてお暇します。
> こちらは、ありがたく頂いておきます。」
「長々と引き止めて悪かったね。持つべきは友、君は恵まれているよ。
 その友達は大切にするんだよ。掛け替えの無い宝物でもあるんだからね。
 ……私の顔を立てて下さった事に感謝を。でき得れば、永く愛用して頂けると嬉しいのですよ。
 (そう、人がその石碑に秘められた内容を、正しい方向へと使える様になる、その日までは)」
最後の一言を、オセは自分の心の内に留める事にした。
セラエノ自身がその秘密に気づき、乗り越えなければならないと思うから。


「さて、それでは今度こそお開きだ」
オセが指を鳴らすと、中空に漂っていた火球が一斉に消えてしまった。
同時に熱も引き、後には……海水にまみれてしゅんとしている草人(仮)がいた!
「……あぁ〜……参ったね。真水で洗わないとダメだなぁ」
オセが草人(仮)に手をかざすと、その姿が一瞬にしてその場から消えてしまった。
「しばらくはお家で大人しくしててもらわないとね……じゃあミクちゃん、まったね〜ノシ」
最後まで緊張感の無いまま、オセはハヤブサに戻って乙姫と同じ方角へと飛び去っていき
……そして、何食わぬ顔でエンカの肩に止まったのだった。


190 名前:ヤタ ◇70VgGM3HY6 [sage] 投稿日:2010/08/31(火) 06:53:09 0


                一方その頃


>『すみませーん、子供レイヴンさん・・・・・の中にいる鳥みたいな人。
> 貴方はどなたですか?子供レイヴンさんとレイヴンさんと、あの烏人みたいな彼とどういうご関係で?
> っていうか、レイヴンさんって何者なんですか?』
リリィからドS(ストレート)な質問が飛んできた。しかもテレパシーで。
『とりあえず最初に言っておく。今はお前達が普通に喋っても聞こえているから
 わざわざテレパシーを使う必要はない。私はそうもいかないのだが。
 ……そして、話が長くなるのは好ましくないだろう? 掻い摘むからな』
前置きをしてから、謎の声は質問に答え始めた。

『私は……『神世』には『太陽のかけら』と呼ばれていた。
 今では『八咫烏』と呼ばれ、崇められているが……正直そんな大層な物じゃあない』

『この子との関係か……言うなれば、私はご先祖様なのだろう。
 この子は分かりやすく言えば、烏の獣人……東方で鴉天狗と呼ばれる種族の、
 私の直系の最後の生き残りだ』
とんだ大物が出てきたものだ、とグラディスとメイションは思っただろう。
太陽神の使いと言われ、東方で広く知られている八咫烏がまさかこんな所にいるなどと―――。

>「良かった、言葉、ちゃーんと通じてるみたいで。(中略)
> でないと、とても一緒のベッドでは寝られないもの。 ねえ、皆だってそう思うでしょ?」
リリィの暴走はさすがのヤタをして閉口せざるを得ないものだった。
『あー……そろそろいいか? 一緒に行くのは構わないし、
 色々厚意で施してくれるのもありがたいと私は思うが……私はすぐに引っ込んでしまうぞ?』
この一言でリリィの当てが外れるのだろうと、ヤタは思いつつも

『そもそも今の私は、この子の背後霊の様な物でしかない。
 今の姿ではこの子の魂が私の存在に耐えられないし、私の力を制御する事など到底不可能だ。
 ……それに、この子は獣だ。かつて人だった下地はあるとは言え、ね。
 この子を人間に戻せるのは、私じゃなくてお前達だよ……だから、無責任を承知で頼む。
 この子を、人間に戻してやってくれないか。確かに手は掛かるだろう……しかし狼少女よりは
 楽なはずだし、先ほども言ったとおり私ではこの子の存在を消してしまうんだ……』

言葉を紡ぐ内に、頭に響くヤタの声が震えていくのがその場の全員に分かった。
耳で聞くのと違う為判然としないが、恐らくヤタは泣いているのではなかろうか?


191 名前:エンカ◇jWBUJ7IJ6Y [sage] 投稿日:2010/09/01(水) 04:34:17 0
>178>186>189
> 「……エンカつったかクソガキ、言っとくガァんなもンは邪魔にならネェヨォ?
>  あのヤローはむしろ狂喜乱舞するほど喜ぶンだろ〜ゼェ。
>  アイツァマゾだからヨォ……人間に打ち殺されたってェのに、人間が
>  アホやらかしてンの見てホクホクしやがってヨォ、気味わるくね?
>  ……ンまぁ、ドッチみちとばっちりは受けなくて済みそうだがヨォ。カカッ」
「一体お前は何を言ってるんすか?」
エンカにはハゲタカの言葉の意味が理解できなかった。

少しすると、エンカの目の前に竜宮城と掲げられた門が現れた。
不可解な現象だが、確かにそうなったのである。エンカには理由がすぐにわかった。
ゆっくりと開いた門から乙姫が、ユリとセラエノを彼の前に置いたからだ。
> 「エンカ…ありがとう。」
> エンカの前に立ったセラエノは穏やかな表情で礼をいい、抱きついた。
「…あーよ。」
言いたい事を全て言ったエンカに残された言葉はそれだけだった。
セラエノはエンカと離れると、どうやって手に入れたのか不明だが、鏡の仮面を顔につけた。
> 「無理も不自然も既に私の一部。
> この生き方は私が望んでいることなのだから。
> でもあなたの気持ちは、嬉しいわ。」
セラエノがそのまま後ろに倒れてしまったのでエンカは慌てた。
「無理しすぎたんだ!お前はよーっ!」
エンカは、セラエノがトラを出してリリィ達をそうしたように、
セラエノを背負って保健室へ運ぶことにした。
ユリの方はタマタロー(ルイーズ)に任せるしかない。
いつの間にかタチコマの姿が見えなくなっている。
どうやらプレッシャーが消えたので、そのままミクを探しに行ったようだ。
「(これでミクが笑顔で戻ってくれりゃあパーフェクトなんだけどな〜?)」
> ともあれ、気絶したセラエノは満足げな笑みを口元に浮かべていた。
いつの間にか戻ってきていたハヤブサとエンカの目があったが、
エンカは何も言わず、保健室へと歩き始めた。

192 名前:メイション◇jWBUJ7IJ6Y [sage] 投稿日:2010/09/01(水) 04:38:57 0

>184>187>190
> 「何故か中年のおっさんになってさ!いやびびったー、実はおっさんなの?って感じでさ!
>  そんで変な鳥、確かハヤブサ?が来てから、行き成り時空魔法っぽいものが起きて若返って。
>  それから門まで連れてって、そこで別れて、この探検の出発前に再会したのさ。あとは……そだな、メイションの言うとおりなんだろー?」
「うん。」
話を聞いて不思議がるグラディスにメイションがうなづいた。
> 「あいつ、意味わかんねーなー。変な奴だよなー。なー皆、他に知ってることある?」
「同じかどうかは知らないけど、エンカ君の肩にもハヤブサがとまってたよ?」
> リリィはテレパシーで
> 『子供レイヴンには言葉だけでなくテレパシーも通じなかったこと』を根拠に、
> 『人間というよりは獣に近い思考パターンを持っている』という仮説を話した。
> 「でもまあ、仮説ばっかり話しててもしょうがない!
>  本人目の前に居るんだし、小細工無しで直接聞こう!直接!」
> リリィはユーリを背負ったまま、
> 『すみませーん、子供レイヴンさん・・・・・の中にいる鳥みたいな人。
>  貴方はどなたですか?子供レイヴンさんとレイヴンさんと、あの烏人みたいな彼とどういうご関係で?
>  っていうか、レイヴンさんって何者なんですか?』
> と、テレパシーでたずねた。
思ったよりも簡単に返事は帰ってきた。
レイヴンは鴉天狗で、ヤタガラスの子孫らしい。
メイションは、エンカがヤタガラスが東方のカミだと叫んだのを思い出し、
とんだ大物が出てきたものだと思った。

> 『そもそも今の私は、この子の背後霊の様な物でしかない。
>  今の姿ではこの子の魂が私の存在に耐えられないし、私の力を制御する事など到底不可能だ。
>  ……それに、この子は獣だ。かつて人だった下地はあるとは言え、ね。
>  この子を人間に戻せるのは、私じゃなくてお前達だよ……だから、無責任を承知で頼む。
>  この子を、人間に戻してやってくれないか。確かに手は掛かるだろう……しかし狼少女よりは
>  楽なはずだし、先ほども言ったとおり私ではこの子の存在を消してしまうんだ……』
「エゴだよそれは!」
メイションはリリィがそう思ったとおり、レイヴンを人間らしくするのは大変そうだと思った。
大昔の人が野生動物に対してそうしたように、エサとムチとでペットにする方がきっとまだ簡単だろう。
それにメイションには、人間らしさと力の制御の因果関係が不明瞭に感じた。
「レイヴンが人間になっても、魂があなたの存在に耐えられないなら意味がないでしょう!?
 どうして人間らしくなれば魂があなたの存在に耐えられると保証できないなら、
 あなたがどっかに消えるしかないじゃないですか!?」

193 名前:ベッドフォード ◇k4Jcxtcj [sage] 投稿日:2010/09/01(水) 04:39:46 0


【フィジル諸島 ????】

「…誠に…も、申し上げる言葉もございません…」
老人より数段低い位置で膝まずいているオワゾーからは歯切れの悪い言葉や冷や汗と共に憔悴の色が滲み出ていた
「あ、あれだけの人員と、き、期待をよ、寄せてい、頂いたのに…」
切れ切れの言葉を発するオワゾーは今にも倒れる寸前である
それもそのはず、かなりの人数の魔導師やオーガを用い図書館の禁止区域を荒らして探し回ったと挙げ句
見つかったのはお目当ての原典ではなく既に財団が持っている写本にすら遠く及ばないただの石版であった
「無かったのであれば仕方あるまい あの場所に無いとすれば予想は付いている…」
何かしらの罰を予想していたオワゾーは老人の思わぬ態度に少し拍子抜けした
「覚醒にはまだ時間はかから…うっ……ぐっ…うぅ…」
先程まで憮然としていた老人は急に胸を抑え呻き声をあげた
オワゾーも思わず駆け寄り老人の懐から青い液体の詰まった小瓶を飲ませる
「…もはや肉体は限界が近いか…
オワゾー、私はあの男をフィジルに呼んだ…」
あの男にオワゾーの顔色が強張る
「あの…地獄の警備部長…猛牛を呼んだのですか……」


194 名前:ユリ ◆sto7CTKDkA [sage] 投稿日:2010/09/01(水) 16:39:30 0
>185-186 >191
ずりずりと前進するユリが見つけたのは、ミクとセラエノと、そしてもう一人、真っ白な人だった。
人というより 人型の何か。 と表現した方が正しいかも知れないが。
状況からして、プレッシャーの犯人は白い人だ。 とユリは目星をつける。
しかし、ユリが行動する前に、想像を超えたことが起きた。
セラエノの呼び出した海が、見る間にユリを呑み込んだのだ。

「ぎゃぼー! く、くく、くるし……あれ? 息ができる?」
完全に体は海中に沈んでいるはずなのに、息ができた。
驚いたことに、怪奇現象ともいえるそれはまだ続く。
今度は巨大な竜宮城が現れて、そこから巨大な乙姫が現れたのだから。
さすがのユリもこの驚きには開いた口がふさがらない。
乙姫に抱えあげられても、セラエノの口上を聞いても。
ユリは驚きのあまり声も出せなかった。

>「無理しすぎたんだ!お前はよーっ!」
「…今起こったことをありのままに話すよ。
 私はミクたちの所に行こうとしたら、いつの間にか竜宮城にいて乙姫に抱えられていた。
 ……魔法使いってすごすぎる……」
話を聞かせているというよりは、独り言に近い言葉がユリの口から漏れ出た。
魔法使いなら何でもできるというイメージは持っていたのだが、予想をはるかに超える驚きの体験だったのだ。

「待ってよエンカ! 保健室に行くの!?
 なら私もついて行く!」
セラエノを背負って歩き出すエンカに並んで、ユリも保健室目指して歩き出す。
消耗しているセラエノとは違い、ユリは自分の足で歩けるぐらいには体力が残っていたから。

「ねえエンカ。 さっき神様の使いのハヤブサと一緒だったって言ってたよね。
 もしかして、そのハヤブサがそうなの?」
地面を見つめながらエンカにそう尋ねるユリには、いつもの元気が無かった。
本当に聞きたい事は、そんな事ではなかったからだ。

「…さっき私を助けてくれた猫さんがね。
 私に、『ミクは見られたら困ることがあるから行くな』って言ってたんだ。
 私がミクの所に行ったら、真っ白い人がいて、きっとあの人がプレッシャーを放ってるんだと思った。
 それはそうだったのかも知れないけど、セラエノが竜宮城と乙姫を呼び出した時。
 セラエノは、ミクや白い人から私を守ってくれてるような気がしたんだ。
 なんだかおかしいよね。 白い人はともかく、ミクは私の友達なのに。
 ねえエンカ。 さっき、ミクが誰かと争うなら、セラエノか第三勢力意外に考えられないって言ってたよね。
 あれってどういう意味だったのかな。
 ミクは敵が来たから逃げるようにって私に言ったのに。
 ミクとセラエノって仲悪いのかな。 それとも…」
それともなんなのか上手く表現できなかったので、ユリは言葉を濁した。

ユリは昼間保健室に行ったことがあるので、うつむきながらでも迷わず歩いている。
虎の足よりは遅くても、それほど時間をかけずに保健室に到着するだろう。

195 名前:リリィ ◆jntvk4zYjI [sage] 投稿日:2010/09/01(水) 21:13:16 0
>190 >192
『あー……そろそろいいか? 一緒に行くのは構わないし、
 色々厚意で施してくれるのもありがたいと私は思うが……私はすぐに引っ込んでしまうぞ?』
「え?」
『そもそも今の私は、この子の背後霊の様な物でしかない。(略)
 先ほども言ったとおり私ではこの子の存在を消してしまうんだ……』
>「エゴだよそれは!」
リリィが口を開くよりも早く、メイションが叫んだ。
>「レイヴンが人間になっても、魂があなたの存在に耐えられないなら意味がないでしょう!?
> どうして人間らしくなれば魂があなたの存在に耐えられると保証できないなら、
> あなたがどっかに消えるしかないじゃないですか!?」

「あー、ちょっと待って。難しすぎて頭痛くなってきた。
 つまりこういうこと?
 レイヴンさんはヤタガラスとかいう謎の種族の末裔で、直系では最後の生き残り。
 死ぬほどのダメージを受けると、回復と引き換えに、学生レイヴンさん以外の存在にランダムで変身する。
 例えばグラディス君が見たおじさんレイブンや、今みたいな子供や・・・・・運が悪いとカラス怪人化。
 変身した時は外見だけでなく、その時間まで中身も変身する、と。
 そしてカラス怪人に変身する力は、背後霊――――はあんまりだな。ヤタさんでいい?ヤタさん(仮)のせい。
 今までの話を総合してそう理解しましたが、ここまでは間違ってない?」
ヤタの添削や皆の話を聞いた後、リリィは話を再開する。
「で、貴方が抜けた後の子レイヴンさんは、カラス怪人の能力とか持ってるんですか?
 最初にはっきり言っておきますが、一時的な保護ならともかく、私達がこの子を人に戻すのは無理ですよ。
 お忘れかもしれませんが、私達は今日学園に入学したばかりの新入生なんですから。 
 私が何を言いたいのか、お分かりですよね?」

リリィはこう言った後、メイションとグラディスにはテレパシーで
『ただのはったりよ。心配しないで。
 私を助けるためにこうなったのよ?本気で放っておけるわけ無いでしょ?』
と伝えた。
まだ必要な情報が得られるまでは、ヤタ(仮)に甘い顔をする気は無い。
他の2人と違ってヤタガラスを知らないからこその傍若無人ぶり、とも言えるが。
(まあ彼女程度の本心など、既にヤタ(仮)にはお見通しかもしれないが)

リリィはさらに、
『子レイヴンさんの反応、狼みたいよね。もしかしたら彼、人でなく狼か何かに育てられたのかもしれないわ。
 だから、もしかしたらグラディス君なら、今の子レイヴンとの意思疎通も可能かも』
ともテレパシーで語った。

「で、ヤタさん。具体的に何をどうすれば子レイヴンさんは元に戻るんです?
 グラディス君が見た大人レイヴンさんの時は、わりとすぐに戻ったみたいですけれど。
 まさかそんな方法は無い、とか言わないで下さいよ?本気で怒りますからね」
リリィはそういいながら、保健室の扉を開けた。
「失礼し」
>「汚物は消毒だー!!」
「きゃ――――?!」
入室した途端、大きな筒状の何かから得体の知れない何かが噴射された!


196 名前:ユーリ◇gIPsgrF.N6 [sage] 投稿日:2010/09/02(木) 18:03:54 0

>>168>>175>>192>>195 

>「じゃあ人が生まれる前、神という存在は居なかったんでしょうか?」 
>「人という種が生まれる前にも“知性"は存在したと思うよ」 
ユーリを引き起こしつつ、ユーリ自身与太話と思った話題に食いついてくれた二人に笑顔を返す 
「まあどちらにしろ仮定の話だから」 
そして立とうとしてリリィに寄りかかる。 
「やっぱりまだ本調子じゃないみたい」 
と苦笑いするユーリを見かねたリリィがおぶり、勇ましく言葉を紡ぐ 
>「さあっ、一刻も早く保健室に行きましょう!先生に頭もちゃんと見てもらわないと!!」 
ユーリは後半の言葉をじゃれているのだと解釈し、ふざけ倒す 
「そうねぇ、そうねぇ。ついでに体重も絞る術がないか聞いてみたいね」 
とはしゃいでいると 
『神と言うのは、今よりもはるか昔に栄えた種族の事だ』 
どこからか声が聞こえてきた。念話の一種だろうか 
『むろん今人が信仰する神の中には……ユーリ、と言ったか。 
お前さんの言う様な存在も―――』 
したり顔でベラベラ喋る声にユーリは無性に腹が立った。エリーゼという名は嫌いだが、敬愛する初代青薔薇の魔法使いの名を易く呼ばれるのもゴメンだ 
『私の頭の中に勝手に入ってきてその振る舞いか』 
届くか否かは判らないがそう思って顔をしかめた 
その後、その声についてやいのやいのしていたがリリィの 
>「怪我人運ぶのもちゃんと手伝ってねー」 
との言葉に反応した 
「今は柔らかい女の子の体がいいなぁ」 
とリリィの耳朶に甘い息を吹きかけながら囁く 
そんな調子でリリィが小烏相手に何かを仕掛けているであろう時もふざけている 
ふざけていながらもリリィの後頭部と小烏とをしっかり見据えて咄嗟の事態には備えているのではあるが 
>『私は……『神世』には『太陽のかけら』と呼ばれていた。 
今では『八咫烏』と呼ばれ、崇められているが……正直そんな大層な物じゃあない』 
リリィとヤタガラスのやり取りでここだけ鮮明に頭に残ったのは何故だろう 

一連の話が終わった後メイションの口から義憤にでも駆られたのか 
>「エゴだよそれは!」 
という言葉が飛び出た 
ユーリはそんなメイションを宥める 
「落ち着きなさい。誰かを責めて何とかなる話ではないでしょう」 
そしてリリィの話にも耳を傾ける。出来る出来ないの話に興味はあまりないが……… 
「テレパシーを聞こえる相手にテレパスでひそひそ話しても意味ないんじゃないかな……」 
テレパスに疎いユーリはそう呟く 
そして今更ながらふと思った。テレパスは魔法じゃなくて超能力の類じゃないの?と 
>「汚物は消毒だー!!」 
というモヒカン風味な不意打ちは容赦なくリリィを盾にして防ぐ事にした 
本調子ならば「俺は嘘が大っ嫌いなんだ」と高らかに叫んで相手に膝蹴りをかます所なのだが、まだ腰が痛む 

197 名前:ルイーズ ◆jntvk4zYjI [sage] 投稿日:2010/09/02(木) 18:57:27 0
>186 >191
変な鳥とは目をあわさず、物陰から一部始終を見ていたルイーズ。
途中スペクタクルな魔法がいくつも発動したようだが、
最終的には、なぜかユリがセラエノに回収され、エンカ達と合流することになった。
ルイーズは、ユリが再びミクの元へと走るのかと身構えていたが、ユリは意外にもエンカ達と戻る気になったようだ。

>「(略)、セラエノが竜宮城と乙姫を呼び出した時。 
> セラエノは、ミクや白い人から私を守ってくれてるような気がしたんだ。 
> なんだかおかしいよね。 白い人はともかく、ミクは私の友達なのに。(略) 
> ミクは敵が来たから逃げるようにって私に言ったのに。 
> ミクとセラエノって仲悪いのかな。 それとも…」 

「友達なら、本人に直接聞けば良いことニャ」
ルイーズは少し離れた位置からついて来ていたのだが、思わず口を挟んでしまった。
「総裁のお屋敷で私はユリを助けたつもりだったが、今から思えば、蜘蛛はユリを守ってた気もするニャ。
 それに、攫われたと誤解して追いかけてきたミクの鬼気迫る迫力は、子供を取られた母熊そっくりだったニャ」
ご馳走を横取りされた狼にも似ていた気がするが、口には出さない。
とにかくユリのミクに対する心証が悪くなったら、命が無い気がするルイーズは必死だった。
「今日入学してきたもの同士、まだまだ気心知れないのは当たり前ニャ!
 喧嘩したり仲直りしたりして、これから少しずつお互い分かり合えば良いニャ!」
それに、とルイーズは続ける。
「そもそも神様同士なら、お互いライバルみたいなもんニャ!
 ライバルは、殴り合って分かり合うもんニャ!エンカもそう思うニャ?」
あえてハヤブサをスルーするのは、関わると色々面倒そうだと野生の勘が告げたからだ。

「ユリ、そろそろ気を利かせたらどうニャ?
 私らお邪魔虫が居たら、2人があーんな事やこーんな事が出来ないニャ」
ルイーズは馬に変身した!

「・・・・・・ん?セラエノも私の背中に乗せて走るヒヒン?お前もか?
 私は男を乗せない主義だが、仕方ないヒヒン」
ルイーズは、聞いているようで意外と人の話を聞かない人だった。
まあ、子供一人と少年少女2人、鳥一羽なら、何とか乗せて走れるだろうが。
「だが最初に言っておく!私の上でえっちなことは一切禁止ヒヒーン!」

【ミクを擁護(?)。一同を運ぶべく馬に変身】

198 名前:エンカ◇jWBUJ7IJ6Yの代理 [sage] 投稿日:2010/09/02(木) 23:46:14 0
>194>197
> 「待ってよエンカ! 保健室に行くの!?
>  なら私もついて行く!」
> セラエノを背負って歩き出すエンカに並んで、ユリも保健室目指して歩き出す。
> 「ねえエンカ。 さっき神様の使いのハヤブサと一緒だったって言ってたよね。
>  もしかして、そのハヤブサがそうなの?」
「さあ、どうなんだろうな〜?そもそもお前が聞きたいことはそんな事じゃあないんじゃないっすか?」
> 「…さっき私を助けてくれた猫さんがね。
>  私に、『ミクは見られたら困ることがあるから行くな』って言ってたんだ。
>  私がミクの所に行ったら、真っ白い人がいて、きっとあの人がプレッシャーを放ってるんだと思った。
>  それはそうだったのかも知れないけど、セラエノが竜宮城と乙姫を呼び出した時。
>  セラエノは、ミクや白い人から私を守ってくれてるような気がしたんだ。
>  なんだかおかしいよね。 白い人はともかく、ミクは私の友達なのに。
>  ねえエンカ。 さっき、ミクが誰かと争うなら、セラエノか第三勢力意外に考えられないって言ってたよね。
>  あれってどういう意味だったのかな。
>  ミクは敵が来たから逃げるようにって私に言ったのに。
>  ミクとセラエノって仲悪いのかな。 それとも…」
> 「友達なら、本人に直接聞けば良いことニャ」
> ルイーズは少し離れた位置からついて来ていたのだが、思わず口を挟んでしまった。
> 「総裁のお屋敷で私はユリを助けたつもりだったが、今から思えば、蜘蛛はユリを守ってた気もするニャ。
>  それに、攫われたと誤解して追いかけてきたミクの鬼気迫る迫力は、子供を取られた母熊そっくりだったニャ」
「おん?」
エンカはユリとミクが友達同士なのを知らなかった。
「まぁ、お互いに正しいと思う事が違えば争うことだってあるだろうよ。
 だが、俺達はそういう事を繰り返しながら、少しずつわかり合っていくしかないっすよ。」
エンカもルイーズと似たようなことをユリに言った。

「変に気を使ってくれなくてもいいっすよ?
 セラエノはこれからもずっと背負い続けていくんだから、
 今ぐらい俺が背負ってやればいいんだからよ〜。」

199 名前:レイヴン ◇70VgGM3HY6の代理 [sage] 投稿日:2010/09/02(木) 23:47:06 0
>192>195-197
ハヤブサは無言のままエンカの肩に掴まり
共に保健室へと向かっている。ハヤブサとしては、自省する時間が欲しかったので
エンカがあえて気を回さないのは助かっているのだが……保健室で起こっている事を見ている
ハヤブサに、自省の時間はまだ与えられないらしい。

>(略)「だが最初に言っておく!私の上でえっちなことは一切禁止ヒヒーン!」
声が聞こえたので意識を戻すと、どうやら不思議な生き物が今度は馬に化けて全員を運ぼうとしているらしい。
その中に自分も含まれている事にハヤブサは気づき、負担は少しでも減らした方がいいと
エンカの肩から離れ羽ばたいて

『お気持ちはありがたいのですが、仮にも女性の方に余計な負担は掛けたくありません。
 私は自分で飛びますので、私の分を他の方々に回してあげて下さい。
 ……私は少し先を飛びます。安全確保くらいならできますからね』
とテレパシーでルイーズ(タマタロー)にだけ語りかけ、先導するように飛ぶ。
……内心の焦りやらを押し殺しながら。


     一方その頃


>「エゴだよそれは!」
>「レイヴンが人間になっても、魂があなたの存在に耐えられないなら意味がないでしょう!?
> どうして人間らしくなれば魂があなたの存在に耐えられると保証できないなら、
> あなたがどっかに消えるしかないじゃないですか!?」
メイションは先ほどの話に納得がいかないらしい。
あるにはあるが……根拠と言えるほどの根拠ではない為、
あえて言わなかったのが逆効果になった事にヤタは歯噛みする。
何故自分はそんな簡単な事にすら考えを巡らせられないのか、と。

『……できるならとうにやっている』
メイションの怒りに満ちた言葉に、ただ一言だけ返すヤタ。
……そのテレパシーにはある感情が混じっていた。それは悔しさと、悲しみ。

『……できないんだよ。私を起こしたのは、この子なんだから……
 この子の、今よりも大人に近づいた頃の意思が私を縛り付けているから。
 ……私が、あの術の影響を受けなかったのも、無力な己を呪い、
 命と引き換えにしてでも力が欲しいと渇望したこの子の意思なのだろう。
 ……今の私は、自分の意志で消える事を許されていない……』
テレパシーに明らかなノイズが混じり、一部が聞き取りづらくなってしまう。
まるで平静と程遠いヤタの精神状態が如実に現れていた。

200 名前:レイヴン ◇70VgGM3HY6の代理 [sage] 投稿日:2010/09/02(木) 23:47:53 0
>「あー、ちょっと待って。難しすぎて頭痛くなってきた。(略)
核心に何も触れない説明ほど誤解を生むものはない。
リリィの言葉を聞いて、必要な事を何一つ伝えられていない事に頭を抱える。

『……違う。ヤタガラスは種族名ではなく人間が私に『与えた』名前。
 この子の種族は獣人だ。直系の件はその通り……
 変身、とは違うらしい。この子には、時間魔法の素養があるようだ……
 若返ったり、年取ったりするのはそれが原因だろう……
 つまり、この子の今の姿も当人が望んだ事かも知れないという事。
 ……何故その姿なのか、何がしかの意図はありそうだが……』
言葉を濁しているのも、情報を出し惜しみしているわけでなく
純粋に分からないからなのだが……それは誰にも伝わらない。
中途半端に知っている事が裏目裏目に出ているのだ。

『怪人の姿は……私の力にこの子の血が反応した結果、一時的に本来の姿になっただけ。
 あの姿でないと、私の持つ『太陽のかけら』の力を完全には制御できないから、
 この力を望む限り、ああなってしまうのは仕方ない……』
それでもヤタは誤解を解こうと、訥々とだが言葉を紡ぐ。
テレパシーを通じて伝わっていく感情の揺らぎからは、とても神の側の存在とは思えない。

『……面倒事は御免こうむる、と言う事か……
 まぁ、そうだろう……人の善意に甘えようとした私が愚かだったよ。
 ……すまなかったな、忘れてくれ』
リリィの、必要な情報を得る為にあえて突き放すと言う行動は有効な手段ではある。
相手が必死であればあるほど、成果が上がる可能性は高まるもの……
だが今のヤタにリリィの本心を見抜く余裕はなく、
また、ヤタはテレパスの送受信を両方できるが、同時にはできない。
ヤタ自身が喋り始めていた為、リリィのテレパシーもヤタには届かず……
結局ヤタは、リリィの言葉を額面通りにしか受け取れなかった。

>「で、ヤタさん。具体的に何をどうすれば子レイヴンさんは元に戻るんです?(略)
『……分からない。時間を操る力を持つ者がいなければすぐにとはいかないだろう……
 少なくとも、私にはもう……この子に、してやれる事など、何も、ない……!
 後は、この子の、色んな意味での成長に、期待するぐらい……だが、人に戻れないのなら
 そんなもの、ただの……皮算用でしかないんだ……』
そして、一度思い込んでしまうとそれを解くのにひどく時間が掛かってしまう性格でもあった。
ヤタにとっては、一縷の望みも絶たれた今できる事は暴走による巻き添えを少しでも
少なくする事しかない……その誤った思いに完全に囚われてしまっていた。


>「汚物は消毒だー!!」
ヤタがそんな早合点をした直後に消毒と言う名の何かをされたリリィは
小烏の手を離してしまう……思い余ったヤタはそのちょっとした混乱に乗じて
小烏に来た道を全速力で逆走させ外に出させようとした……得体の知れない何かを
体の一部に浴びながら。

201 名前:セラエノ ◆LGeruanYjI [sage] 投稿日:2010/09/02(木) 23:57:25 0
「ありがとう、エンカ。もういいわ。」
保健室近くまで来たところでセラエノがエンカの肩越しに声をかけおりた。
意識は随分と前に戻っていた。
背負われて程なくして気づいていたのだ。
そのことはエンカも当然わかっていたであろう。
意識のある者とない者とでは体重のかかり方があまりにも違うのだから。
にもかかわらず今まで黙って背負われてきたのは、エンカとユリとルイーズの会話の中でこぼれた言葉に対する応えであった。
が、当然それを言うことはない。
それを言うほど野暮ではないというわけでない。
むしろ本来のセラエノならばしっかりきっちり説明し尽くして礼を言ったであろう。
そうしなかったのはそれなりにセラエノにも変化が訪れていたからに他ならない。

保健室近くではセラエノの上着を中心に三頭の虎がぐるぐると周っている。
お互いの尻尾をめがけて走りながら中心にあるセラエノの上着を独り占めしようと狙っているのだ。
だが三頭共に隙を見せずその回転はさらに速くなり、やがては輪郭がはっきりしないほどの速度に達し…
やがて虎たちはあまりの速さに体が溶け始め、最後には良い匂いを漂わせるバターの水溜りとなってしまった。
辺り一帯も良い匂いに包まれるはずなのだが、何やら異様な匂いが立ち込めていた。
匂いというものは様々な要素の集合体であり、異物が一つ混じるだけでも途端に不快な匂いになったり深い匂いになったりするものなのだ。

セラエノは念動力で上着をとると佇まいを正すが、鼻血で斑になった黄色い上着に肩をすくめる。
「リリィ達は中にいるようね。それにしても…?」
残気を見て先行した一行が既に保健室にいる事を確認し、中に入ろうとした瞬間、飛び出してくる影。
とっさに後ろに飛びずさりながら影は見えざる力によって空中に固定されていた。

「あなたね、この匂いの元は!」
虎バターによって良い匂いが充満するはずのところに違和感を感じていた。
その原因を突き止めた喜びがセラエノの胸に広がる。
すえた臭いを漂わせる子供レイヴンを見ながら小さく息をつき、歩みを再開する。
「坊や、あなた誰?
まあいいわ。こんなに不潔で臭くてはまともに話なんてできないから。
大浴場って消灯後でも入れるのかしら?」
念動力で子供レイヴンを空中に固定したまま引き連れて。

気やある程度の感情が読み取れるセラエノが子供レイヴンの中にいるヤタについて気づかなかったのはやはり血が足りないせいか、ヤタの力の為か。

「みんな、今夜はもう遅いわ。初日だというのにいろいろあったし、ここで解散しましょ。
リリィ達は保健室にいるわ。私はこの子を洗ってくるから。
お風呂に入った後、この子の処遇については私が考えるから。
今日はありがとう。おやすみなさい。」
ユリとエンカとルイーズに伝えながら。
騒動は一段落している。
あとはこの不潔な子供を洗ってゆっくりとお風呂に入って…蜂蜜酒を飲んでゆっくりと体を休めたい。
そんなことを考えながら。

202 名前:レイヴン ◆70VgGM3HY6 [sage] 投稿日:2010/09/03(金) 23:35:59 0
>201
もうすぐ外に出る所まで来たが、追いかけてくる気配は無い。
当然だろう、とヤタは思う。面倒を背負い込む事を拒否した者が、
面倒のタネを追いかけてどうしようと言うのか……
過去の自身の行いは間違っていたのだと思うと、魂が軋む感覚が襲った。

>とっさに後ろに飛びずさりながら影は見えざる力によって空中に固定されていた。
先ほど入ったばかりの扉を開け放ち、飛び立とうとしたが……
何か見えない力に掴まれた様な感じがして、跳躍した状態のまま動きが止まってしまった。

『……!!!!』
力の正体と、それを行っている存在を認識した瞬間ヤタは意識の奥底に引き篭もってしまった。
自分の意識を取り戻した小烏は、身動きできない事が不快なのか暴れようとしたのだが……
目の前に『決して逆らってはいけない存在』であるセラエノがいるのに気づいて
見る間に萎縮し動きを止めてしまった。

>「あなたね、この匂いの元は!」
>「坊や、あなた誰?(略)
セラエノに問われても小烏には言葉が通じない為答えようが無い。
ただ、威圧する存在が迫ってくる事に本能的に恐怖を感じ身を縮こまらせる。
うめき声一つあげもせず、そうしていると……見えない手に掴まれたままどこかへ運ばれていく。
その間も小烏は目を瞑りさらに体を縮こまらせていた。
……セラエノから見たら、その姿は悪い事をして捕まった子供の様にしか見えない。


……もしセラエノが服に触れたらば、サイコメトリーを使ってもいないのに
記憶が流れ込むだろう……目を背け耳を塞ぎたくなる様な、その子供の凄惨な過去が。
そして気づくだろう。その記憶には『フィジル島に関する部分がまったく無い事』に。
そして気づかないだろう。この子供が、レイヴンと名乗った少年である事に。

203 名前:リリィ ◆jntvk4zYjI [sage ヤタさんごめんよー。] 投稿日:2010/09/05(日) 00:11:26 0
>196 >200 >202
>『……分からない。時間を操る力を持つ者がいなければすぐにとはいかないだろう…… 
> 少なくとも、私にはもう……この子に、してやれる事など、何も、ない……! 
> 後は、この子の、色んな意味での成長に、期待するぐらい……だが、人に戻れないのなら 
> そんなもの、ただの……皮算用でしかないんだ……』 
「その割には、随分あっさりと撤回しましたよね?この子のお世話の話。
 ヤタさん、実は自分の立場に酔ってるだけで、この子の事はあんまり大切じゃ無いのでは?」
リリィはつんけんしている。
レイヴンの過去や、ヤタの境遇を知らないリリィとしては仕方の無い事かもしれなかったが、これではあんまりである。

(馬鹿じゃないのこの人。
 レイヴンさんが子供になったって証言はできるけど、私達は生徒で、最終的な決定権がないっていう話でしょ!
 まして授業中とかどうするのよ!絶対おとなしくしてないこの子を一人部屋に残して勉強なんかできるわけないでしょ!
 この場合なら、君たちで無理ならもっと上の人―― 例えば保健室の先生とか!―― に掛け合ってくれって言うのが筋でしょ!)
リリィは内心でヤタを罵倒した。
身のほど知らずここに極まれり!である。
お互いにとって不幸だったのは、ヤタが絶望的なまでに世俗に疎かった事と、
リリィがレイヴンの過去を全く知らなかった事、かもしれない。
「ちょ、ユーリ先輩ったら・・・・・やだ、くすぐったいです。
 あ、空間魔法と時空魔法は仲良しって聞いたことがあるんですけれど、レイヴンさんの話を聞いてどう思われます?
 この子を元の姿に戻すには、どうしたらいいんでしょうね?」

背中のユーリの悪戯を笑顔でかわしつつ、リリィは内心でなおも毒づいている。
(だいたい、本当に面倒事はご免だって言うなら、例のカラス怪人になった時点でとっくに逃げ出しているっての。
 あの姿と破壊力を見た上で、子供に巻き戻って、おまけにその子の背後霊とも普通に会話してるのよ?
 エライ人なら、もう少し色々察して欲しいわ、本当に!)

そして現在。
「やだ、何よこれ!ちょっと口に入っちゃ・・・・・た・・・・・・・・・・にゃー・・・・・・・」

ユーリに盾にされ、全身くまなく『消毒』されたリリィは、見る見るうちに顔が紅潮してきた、
どうやら吹きかけられた消毒液には、アルコールも入っていたようだ。
がくん、と足の力が抜けたリリィは、怪我をしているユーリに体重を預けてしまった。
「あー、ごめんユーリしぇんぱい、なんか私、フラフラするろ。
 あれぇ?ちっちゃいレイヴンさんはぁ〜?手をにぎってたのに??てじならー」
リリィは突然ケタケタ笑い出した。
「やーん、メイションくんがふえてるー!グラディスくんはちぢんでるー。
 ねえせんせー。けがにんらよー。おうかさんもみんなもけがして痛いろー」
リリィはふらふらと保険医に近づくと、倒れこむようにして抱きついた!
「せんせー・・・・・・。おねがいらから、みて?」

――――このままでは「顔近いぞ顔!」とクレームが来るかもしれない。
まあ、場所が場所だけに、いろんな面で回復は可能だろうが。

204 名前:ミク ◇sto7CTKDkA [sage 代理投稿] 投稿日:2010/09/05(日) 08:35:38 0
>185-186 >188-189
>「……辛く悲しい過去を話してくれてありがとう。
> 君にとってはとても話しづらいものだったろうに……でもおかげで確信がもてたよ。
> ミク、君はやはり『紡ぐ者』だ……より正確に言うならば、その継承者と言ったところかな」
自身の過去について話した時のオセの悲しげな表情は、ミクにとっては不快なものだった。
何も同情されたくてこんな話をしたわけではない。
話づらかったというより話す機会がなかっただけだという思いもある。
だが、オセの涙が生物を生み出したことは。
そして、ミクは紡ぐ者の直系になったという言葉には、関心を向けないわけにはいかなかった。
涙だけで草から生物を生み出すなど、ミクには想像も出来ない芸当であり。
目の前にいる者が相当な実力者であることを、再認識させられるものだったからだ。

紡ぐ者の直系という点については…ミクは今までそんな事は考えたこともなかった。
仮にそうだとしたら、あの蜘蛛は自分にすべき事を告げるはずではないか。
だが聞いている事と言えば『人を憎むな』の一点だけであり、その言葉を守っていれば今の自分はいないだろう。
そんな馬鹿げた話があるだろうか。
しかしオセの実力の一端を見たためか、その言葉はミクには正確なものに思える。

>「おや、どうやら僕の子に好かれたみたいだね。
> まるで花が咲き乱れそうな、いい笑顔だと思わないかい?」
そのためかどうか、草人にスカートを掴まれても、ミクはすぐに振り払う気にはなれなかった。

> ついさっきまでなら何とかなっただろうが、今はもう無理だよ? ……『太陽のかけら』が目覚めたからね」
そして。
ミクの問いに律儀に答えるオセの言葉は、ミクにとっては少し意外なものだった。
太陽のかけらが目覚めた。
それがよほどの大事であるかのように聞こえたからだ。
「……太陽のかけら? それはあの大烏の事を言っているのかしら?」
ミクは縦穴の中で自分に向かってきた、太陽のような光を放つ鳥人を思い浮かべる。
確かに強力な存在だろうが、オセが気にするほどの力を持っているのか?という疑問があったからだ。

>「見つけたーっ!」
しかしその疑問の答えを知る機会は、ユリの乱入によって失われた。
這いよってきたユリを見て、ミクは軽く目を細める。
あの三毛猫姿の女は、ユリを連れて逃げろと言っておいたのに失敗したのだ。
次に会った時には、自分の失敗をしっかり悔やんでもらう事になるだろう。

205 名前:ミク ◇sto7CTKDkA [sage 代理投稿2レス目] 投稿日:2010/09/05(日) 08:36:22 0
>「そう…そうなの…」
突如として、セラエノの体から水が。 いや海が溢れ出す。
オセとは違い、ミクにはさすがにこの状況で平静さを保つほどの力は無い。
「…これはっ…!?」
とっさに糸を張って海から逃れようとし、すぐにミクも異変に気づいた。
海中にいるはずなのに、地上と同じく息が出来るのだ。

>「私の目的はユリを探し出し、保護する事。
>目的を果たしましたし、私を待ってくれている友達もいますので、これにてお暇します。
>こちらは、ありがたく頂いておきます。」
不可思議な海の中、竜宮城と乙姫を作り出し、セラエノはその場を去っていく。
セラエノはユリと敵対しているわけではないので、ミクに後を追うつもりは無い。
だが、セラエノの力が明らかに最初出会った時より増しているように思える事は問題だ。
最初の戦いで、セラエノに力を出し惜しみしている様子は感じられなかった。
なら、この短期間でセラエノは急激にその力を増したことになる。

>「しばらくはお家で大人しくしててもらわないとね……じゃあミクちゃん、まったね〜ノシ」
オセの軽い言葉にも、考え事をしいていたミクは特に反応しなかった。
一つだけ、以前と今のセラエノの違いに思いあたったのだ。
仮面 である。
オセがわざわざ作り出して渡したあの仮面。
あれがセラエノの力を抑えていたのではないか。 と考えたのだ。
それは的外れな考えだったが、セラエノの素顔に興味を持たせるには十分の理由だった。

ミクは、空に浮かぶ月を見上げた。
少なからず時間が経過している事だし、ここに残っている理由も、もう何もない。
「まったく…私は何をしているのかしらね」
軽く嘆息して寮に戻ろうとしたミクは、足元に来ていた それ に気づいた。
ミクを探しに来たタチコマだ。
「あら……あなた、エンカと一緒だったのではなかったのかしら?」
ミクの問いかけに答える術を持たないタチコマは、ミクの作った糸を伝ってするすると肩口まで登ってきた。
タチコマを肩に乗せたまま、ミクは糸を使ってするりと空中に浮きあがる。
門限を過ぎた女子寮に戻るには、あまり目立たない方が良い。
そのためには、魔法を使わずに空から部屋に戻る方が安全だろうと考えての事だ。

206 名前:ユリ ◇sto7CTKDkA [sage 代理投稿3レス目] 投稿日:2010/09/05(日) 08:37:44 0
>197-198 >201-203
>「友達なら、本人に直接聞けば良いことニャ」
ユリは伏せていた顔を上げて、ルイーズの方を見た。
>「総裁のお屋敷で私はユリを助けたつもりだったが、今から思えば、蜘蛛はユリを守ってた気もするニャ。(後略)
「……ミクが?」
ルイーズの言葉を聞いて、ユリは母熊の着ぐるみを着込んだミクを想像した。
想像の中のミクの憮然とした顔に、ユリは思わず笑ってしまう。

>「今日入学してきたもの同士、まだまだ気心知れないのは当たり前ニャ!(中略)
> だが、俺達はそういう事を繰り返しながら、少しずつわかり合っていくしかないっすよ。」
「そっか……そうだよね!
 ありがとエンカと森の動物さん!
 別に殺し合いをしてたわけじゃないもんね!
 女子寮に帰ったら、ミクと話してみるよ!」
単純なユリの顔に、満面の笑みが広がった。
ユリの中でのライバルと言えば、戦いを通して互いを強くし合っていく友である。
『強敵』と書いて とも と読んだりもする。
帰って何を話すかまではまったく考えていないが、ともかくユリの心の黒雲は晴れたようだった。

>「ユリ、そろそろ気を利かせたらどうニャ?
「え?お邪魔虫……?」
男女仲に疎いユリはしばらく言葉の意味を考えて、それから顔を真っ赤にした。
あーんな事やこーんな事を詳しく知っているわけではないが、まるで知らないわけでもない。
ともかく邪魔にはならないようにしようと、ユリはルイーズの背中によじ登る。

>「変に気を使ってくれなくてもいいっすよ?(中略)
> 今ぐらい俺が背負ってやればいいんだからよ〜。」
「ほええ…大人だ…」
エンカの言葉に感心しながら、ユリはルイーズの背中に乗って後に続く。
>「ありがとう、エンカ。もういいわ。」
セラエノがそう言ってエンカから降りた時、ユリはセラエノに何か言おうとして止めた。
セラエノの体調は心配だが、エンカとの仲を邪魔するわけには行かない。

保健室の側では、3匹の虎がぐるぐる回り続けてついにはバターになってしまった。
「あれ? これってどこかの絵本で見たような…確か格闘技の名前の…?
 ん―――…あっ!思い出した! なんとかサンボだ!!
 あの虎って森の動物さんの友達なの?
 浦島太郎の次はなんとかサンボの世界まで見れちゃうなんて、魔法の世界って凄いなー!!
 あの虎がいた場所の液体ってバターだよね?良い匂いがする〜…ん。
 ……なにこのにおひは……」
バターの香りに混じる異臭にユリが顔をしかめて鼻をつまんだ時。
保健室から飛び出してきた臭いの正体が、セラエノの力に拘束された。
ユリは鼻をつまんだまま数歩下がる。
強敵には怯まないユリでも臭いには勝てないのだ。

>「みんな、今夜はもう遅いわ。初日だというのにいろいろあったし、ここで解散しましょ。 (中略)
> 今日はありがとう。おやすみなさい。」
臭いに圧倒されかけていたユリは、セラエノの別れの言葉ではっと我に返った。
「あっ!うん!今日はありがとうセラエノ!
 私ももう行かなきゃ! でもその前に……みんな!大丈夫―――!?」
ユリは騒々しく保健室に突入して、館探索隊の無事を確認しようとした。
そこでユリが見たのは、ろれつが回らない状態で保険医に抱きつくリリィだった。
「リリィどったの!? どこか悪いの!? 頭!? 頭が悪いの!?」
幼女ユリはリリィを女医から引きはがすと、頭を両手でもってガクガク揺さぶった。

207 名前:セラエノ ◆LGeruanYjI [sage] 投稿日:2010/09/08(水) 23:25:08 0
>>202
「そ、そんな…!なんていう…!」
大浴場更衣室でセラエノは薄汚い少年を前に絶句していた。
身元不明の少年であるが、そのあまりの汚さ、匂いに事情を聴くにしろなんにしろ洗浄が必要だと判断し連れてきたのだ。
何を問うても畏縮した状態の少年に業を煮やし服を引きはがそうとした時、それは流れ込んできた。

テレパシーやサイコメトリーなど、神のシステムの副産物として思念系の能力に秀でているセラエノ。
それ故か、いや、それなのに、か。
少年の服に触れた途端に流れ込んでくる記憶。叩きつけられる凄惨な過去。
それはセラエノの持つ言葉で表せられぬ程の為、もはや絶句するしかないのだった。

どれだけの時間が経っただろうか?
肩で息をしながら半裸になった少年に向きかえる。
「あ、あなた一体どんな…いえ、今はいいわ。
神としてどんな凄惨な、地獄のような過去でも丸ごと受け止めてみせる!」
強じんな精神力でセラエノは少年からの凄惨な記憶に打ち勝ったのだ。
いや、本当はそうではない。
あまりに凄惨な過去にセラエノの精神は自己防衛を働かせ、思考を停止しただけなのだから。
あとから落ち着いて思い出せばその遮断した記憶も甦るだろうが、今は気づいていない。
無意識に差し止めた記憶の中にはフィジル関係の記憶がない事、そしてこの少年がレイヴンである事も含まれていた。

意を決して少年を丸裸にすると、自分も服を脱ぎ浴場へと入っていった。

既に夜も深く消灯時間もとうに過ぎているというのに、大浴場はもうもうと湯気が立ち水音が響いている。
その水音の元を見るといかにも温泉といった風情でライオンを模した彫刻の口から湯が注がれ続けていた。
「さ、これで先ず綺麗になりなさい。」
桶から取り出したスクロール。
これは戦闘や移動用のスクロールではなく、生活用の使い魔。
広げられた巻物から剥がれるように小魚の疑似生命体が子供レイヴンへと群がった。

この疑似生命体は【ガラ・ルファ】といい、浴室という限定空間のみで効果を発揮する。
その効果は、既に人の形なく泡玉となった子供レイヴンを見れば一目瞭然。
ガラ・ルファは全身のあらゆる汚れを浮かせ貪りとる洗浄魚。
分泌液は洗剤であり、瞬く間に綺麗にする優れものなのだ。

「もういいかしら?」
泡玉の上からおもむろに大量の湯を落とすセラエノ。
洗い流された泡から出てきた子供レイヴンを見た瞬間、そこに地獄が出現した。
凄惨な記憶は受け止められても、『それ』はそれ以上の衝撃を与えたのだから。

吹き出る鼻血の勢いにのけぞるセラエノ。
悲しいかなここは浴場。とても滑りやすいのだ。
のけぞった拍子に足を滑らせ宙を舞い湯に突っ込む刹那の間に思った。
(な、なんてことなの!こんなことなら直接私が洗うべきだった!)
綺麗になった子供レイヴンがどういったものだったかはこれで推して知るべし。

大浴場に血の池地獄を出現させたセラエノだったが、本当の地獄はこれからだった。
セラエノは美少年を見るとアレな方向に覚醒してしまうのはベッドフォード邸で立証されたばかり。
今回も多分に漏れず覚醒してしまっていた。
覚醒内容は記憶の再構築。
防衛本能で認識を拒否していた事を認識できてしまったのだ。
すなわち、この美少年がレイヴンである、と。

「〜〜〜〜〜〜!!!!!」
声にならない悲鳴を上げるセラエノ。
年端もいかぬ少年だからこそ気にもせずに混浴できたわけだが、中身が同年代のレイヴンとなれば話は全く違ってくる。
衝撃と周知のあまりブクブクと湯船に沈むセラエノ。
気を落ち着けお風呂から顔を出すまでしばらくかかりそうな感じであった。

208 名前:リリィ ◆jntvk4zYjI [sage 遅くなってごめんね。展開次第ではもう一度来るかも。] 投稿日:2010/09/09(木) 01:02:57 0
「とりあえずユリたんはミクと話し合うニャ。
 その時には、ユリたんによく話し合うようさとしたのは森の動物。森の動物だとちゃんと伝えておいて欲しいニャ〜」
大事なことだから二度言いました。
ルイーズにとっては死亡フラグ回避のために必死だが、果たしてユリは覚えているだろうか?
「では、動物は森に帰るのニャー。さらばニャー!!」
そろそろ限界だったようだ。
ルイーズは鼻を押さえ、窓から逃亡していった。

一方。
>「リリィどったの!? どこか悪いの!? 頭!? 頭が悪いの!?」 
「はははこやつめ・・・・・私はかしこいよ!1たす1がわかるもん!・・・・あえ?」
あっという間に幼女ユリはリリィを女医から引きはがすと、頭を両手でもってガクガク揺さぶった。 
「らめ・・・・・揺らさ無・・・・・・・目が回る・・・・・あぅ・・・・気持ち悪い・・・・・・」
リリィは弱々しく抵抗していたが、やがてぐったりして動かなくなった。
ユリがその後なんと声をかけようが、リリィは目をあけないだろう。

「おお、これはいかん。この少女は泥酔状態ではないか」
怪我人の治療に追われていた保険医は、リリィの状態を見て目を輝かせた。
「アルコール中毒も命に関わることもある。さっそく治療してやらなくてはな!
 なあに案ずるな、このくすりのこうかはばつぐんだ!」
保険医の手には、紫色の怪しい薬の入った注射器が握られていた。

「さて。治療が終わって自力で動ける者は、各自部屋に戻ってもいいぞ。私が許そう」
リリィが泥酔状態でも、メイションは再会出来たエンカの部屋で休めるだろう。
本当は、リリィはエンカの魔道書を返さなくてはならないのだが・・・・・・今の状況ではとても無理そうだ。

209 名前:レイヴン? ◆70VgGM3HY6 [sage] 投稿日:2010/09/09(木) 21:22:42 0
>207
>意を決して少年を丸裸にすると、自分も服を脱ぎ浴場へと入っていった。
セラエノに服を脱がされそうになった小烏は、さすがにそれに抵抗するものの
体格や年齢差などの要因によって手を止めさせる事はできなかった。
結局丸裸にされ浴場に放り込まれる小烏。
少し遅れて同じく服を脱いだ姿のセラエノが入ってきた。

……小烏の着ていた服は、まるでセラエノに記憶を見せる為だけにあったかのように
誰にも気づかれぬまま灰になってしまった。元々がボロボロだった上、ろくすっぽ
洗いもせず風雨や血、脳漿などの体液塗れだったのが良くなかったのだろうか……


>「さ、これで先ず綺麗になりなさい。」
>広げられた巻物から剥がれるように小魚の疑似生命体が子供レイヴンへと群がった。
羞恥心こそ無いものの、状況がまったく飲み込めず困惑するように
浴場を見回すが、湯気のせいでいまいちよく見えず……仕方なしにセラエノに
向き直った瞬間無数の小魚のような物が、自分に群がってきた事に驚いた小烏は
それらを引っぺがそうとするも滑って上手くいかず、やがて泡に埋もれていった。


>泡玉の上からおもむろに大量の湯を落とすセラエノ。
少しの間泡と小魚にまみれていた小烏だったが、不意打ち気味に
上から湯で打たれてビクッと体をすくませへたり込む。
今は全裸だが、それでもずぶ濡れになるのは好きじゃないらしい。
髪の水気を飛ばすように激しく頭を振ってから上を……セラエノを見上げる。
その構図と素顔の破壊力によって、セラエノは気付かない方が良かった事に気付いてしまうのだった。


>綺麗になった子供レイヴンがどういったものだったかはこれで推して知るべし。
小烏の全身を覆っていた汚れは、数年分の垢に加えて
埃や泥、血などの体液など色んな物で構成されていた。
皮肉にもそれらが層となって、小烏の地肌を直射日光や更なる汚れから守っていたのだ。
ガラ・ルファによってその汚れの層は剥がされ、出てきたのは真っ白な肌。
だがその白さも、脂肪の足りない体だとむしろ痛々しさを感じさせるだけだった。

目元はこの頃からツリ目だった様だが、今はさすがに垂れ気味である。
……全身には既に大小様々な傷があり、特にはっきりと分かるのが背中のもの。
まるでそこにあった何かを力ずくで毟られた様な痕がくっきりと残っていた。


>気を落ち着けお風呂から顔を出すまでしばらくかかりそうな感じであった。
セラエノが湯の中で悶絶しているのを見て、小烏は首をかしげる。
……そろそろと、湯船に近づき湯に触れた小烏だったが
「!」
熱かった様で手を引っ込め大仰に振り回して必死に冷ました。
仕方なしに湯船の端から恐る恐るセラエノを覗き込む小烏……


だが、セラエノにはこの後更なる衝撃が待ち受けているのだった。
……肋骨がはっきり見えるほど痩せ細っているにも拘らず、何故か胸部には
脂肪の塊が二つある。さらに、裸にした時には確かにあったはずの
『男なら生まれつき持っている一本の棒と二つの玉』がなくなっており
それらがあった場所には一本のスジがあるだけと言う……


そう、小烏は『男の子』から『女の子』に変わってしまっていたのだ……!

210 名前:ヘルミーネ ◇kUnRad7n/s [sage] 本日のレス 投稿日:2010/09/12(日) 08:28:25 0
私は部屋の鍵を閉めました。
ルームメイトはまだ帰ってきていません。今日は他の子の部屋に泊まってくるそうです。
寮長の目はうまくごまかせたでせうか。こちらはもう済んでいます。
実は私も誘われたのだけれど、お断りしました。

窓からフィジル島の木々が見えます。
今日は入学式の前後の時間を使い、その森を調べて回りました。
中でもナラの木が懐かしくて。もちろんこの島に来たのは今回が初めてです。

それはある麗らかな午后のことでした。
私は先生の言うとおり、見たままにナラの木の風景を写生しました。
かなり苦労したことを憶えています。
だって、ナラの木の周りをシーオークが踊っていたんですもの。
あの子たちのお洋服はとてもかわいくて、けれどとても描きにくいのです。
半分と少しくらいを描いた頃には、クラスメイトはもう皆描き終えてしまっていました。

そして、手持ちぶさたなクラスメイトの一人が、私の絵をのぞいたのです。
「先生、ヘルミーネちゃんがまた落書きしてます」
そんなことありません。本当にいたんだもん。
けれど、クラスメイトの絵は全て、ただナラの木だけが描かれていました。
そうか。みんなには見えていなかったんだ――

私のまわりではよくあることでした。
ふつうは偉大です。例外者たる罪はひとえに例外者のみが背負えばいいのでした。
それに、村においては例外者である私も、野に交わればシーたちの輪の中にいました。
『ソレイヌ書』の教えからは少し反れるけれど、色々なことを教わったのです。
けれど、いつの日からか、かれらの姿は野原から消えていました。
小さいころにガンコナーとした結婚の約束も、もう守ることはできないのでしょう。
変わったのはきっと、私のほう。

フィジル魔法学園への入学を決めたのは他ならぬ私自身。
建学の精神を、優れた魔法適正を示す者にその制御法を教授すること、と置いている
だけあって、入学に際して特に変わったことも聞かれませんでした。
両親も娘の放り先が決まり安堵していることでせう。
人の出入りの少ないへき地において、例外者の存在はかくも厄介なものなのです。

「……そろそろ、仕舞いにして寝ようかな」

グラスの底で少しのぶどう酒が、星明かりを溶かして光り波うっていました。
窓辺に置いたもう一つのグラスには、誰も手をつけていないのでした。

名前・ヘルミーネ・ハントケ
性別・女
年齢・19
髪型・ブルネットのアップヘア、オフの日だけ耳の前に少し垂らす
瞳色・琥珀色
容姿・授業日は伊達眼鏡に濃紺のアカデミックドレス、オフは主に擬ロココ調のドレス
備考・孤高の♀を気取るが、心技体とも自分で思っているほど優れてない
 登校はするもの気が向いたときにしか授業に出ない
得意技・あらゆるものの存在を転換する程度の能力(≒錬金術)
 火など魔法にも有効。意志を持つもの等や、目標に直接作用するような技等には無効
好きなもの・怠惰な時間
苦手なもの・教条主義、律法主義
うわさ1・ダブル・ディグリーではなくリメディアル課程らしい
うわさ2・なにやら商売をしているらしい




211 名前:朝シャンするフリードリッヒ ◆cOOmSNbyw6 [sage] 本日のレス 投稿日:2010/09/12(日) 08:35:53 P
リリィ達が総統に捕まるという大事件があったその翌日

「ふんふふふふ〜ん♪」
一人暮らしの生活には欠かせないバスルーム
早朝5時に起床し朝っぱらからシャワーを浴びるフリード
だがしかし美少年とはいえ男のシャワーシーンなど誰が特をするのだろうか?

全く不純物を含んでいない熱い雨
その人工の雨がフリードの体を濡らす
まるで雪のような白い肌金糸のような美しい髪サファイアのような青い目、そして薔薇のように赤い唇
彼は美しかった、まるで神の作った人形のように
一目見て人は彼を美しい少女であると認識するだろう
だがその下半身には少女にあってはいけないものがぶら下がっていた
何とかランドわぁい♪である

「やはりシャワーは朝に限りますね♪」
全くもって文明バンザイである
一つ文句を言いたいとすればトイレと風呂が同じ空間にあることぐらいだろうか?

「にゃにゃにゃにゃにゃ〜ん♪」
一緒になってシャワーを浴びるグレン…………グレン!?
こいつ絶対に猫じゃねえ!?
猫は普通水を浴びるのを嫌がるものなのだ
だが平然と湯を浴びるグレン
足元にはカメラ……科学の力で作られた姿を記録する装置の残骸が転がっていた
盗撮されてた!?
男のシャワーシーンで特をする人種は確かに存在していたようだ
だが男なら「一緒に風呂に入ろうぜ」の一言ですべて済むはずである
その一言で裸を合法的に見放題だ
つまり犯人は女………ガクガクブルブル

寮の部屋の鍵を閉め教室のある建物へ向かうフリード
正体不明の金属製の小箱は部屋に置きっぱなしである

「さあ今日から授業ですvどんな人が担任なのか楽しみですね♪」
ガラガラと教室の扉を開けるフリード…………当たり前のように教壇に立っている保険医
見なかったことにしてピシャンっと扉を締め直すフリード

「………………………‥!?」
確かめるように恐る恐る扉をガラガラっと開けるフリード
「…………‥‥気のせいであって欲しかったです」

オー人事オー人事♪
残念ながらフリードの担当はロリコン女保険医のようである
「まだ10歳の時の雪山一人でサバイバル10日間よりましですが…………‥不運すぎです」
他にも眼力だけで熊を退散させる修行とかやらされたけれどそれは今は関係ない話である

212 名前:その頃のグレン ◆cOOmSNbyw6 [sage] 本日のレス 投稿日:2010/09/12(日) 08:37:44 P
その頃男子寮では
ここはフリードの部屋
フリードのいない間にパシャッと怪しい音を立て突然足を生やす金属製の箱
「に”ゃ!?」
(トランスフォームした!?)
それを見て尻尾をブワッとさせるグレン
しかも毛だらけの汚いおっさんの足だ!?
ぴょーんと窓から飛び出す金属製の箱
「に”ゃぎゃぁぁぁぁ!?」
あっと驚くグレンちゃん
テケテケテケと逃げ出す金属製の箱(?)
「にゃあ!」
追いかけなくちゃと窓から飛び出すグレン
はたして金属製の箱はどこを目指しているのだろうか?

男子寮の階段をがしがしっと蹴り始める金属製の箱
「にゃにゃぁ……………‥にゃ」
(こっこれは帰巣本能……………‥元の場所に戻ろうというのかにゃ)
本来生徒が見つけなければいけない地下ダンジョンへの入り口を自ら探し出し元の場所に帰ろうとする金属製の箱
とっととふぁんぶるまん先生に引き渡さないから…………………
にゃあん………………‥」
姿を消す金属製の箱を見つめつつ呆然とするグレン
とりあえず頭の赤い部分を取り外し中から出したチョークで場所を記録するのであった

213 名前:ユリ ◆sto7CTKDkA [sage] 本日のレス 投稿日:2010/09/12(日) 12:00:46 0
>208
>「はははこやつめ・・・・・私はかしこいよ!1たす1がわかるもん!・・・・あえ?」
「うそだっ! じゃあ1+1は何か言ってみてよ!」
何気に失礼な事を言いながら、ユリはさらに激しくリリィの頭を揺さぶった。
>「らめ・・・・・揺らさ無・・・・・・・目が回る・・・・・あぅ・・・・気持ち悪い・・・・・・」
「寝るなーっ! 寝ると死んでしまうぞーっ!」
意識を失いそうなリリィを、ユリは寝かすまいとする。
このままだと本当に危ないところだったのだろうが、幸い保健室の主人はリリィの容態を見逃さなかった。

>「おお、これはいかん。この少女は泥酔状態ではないか」
「え? 泥酔って事は…酔っぱらってるの?」
保険医の言葉に一時動きを止めていたユリは、また何度かリリィを揺さぶった。
しかしリリィが目を覚まそうとする様子は無い。
>「アルコール中毒も命に関わることもある。さっそく治療してやらなくてはな!
> なあに案ずるな、このくすりのこうかはばつぐんだ!」
「先生! お願いします! 私の友達を助けてください!」
ユリはためらわずにリリィを保険医に差し出した。
自分の毒を消したことから、この薬の効果が抜群である事は知っている。
何しろ命がかかっているのだ…副作用で”子どもの姿になるくらい”どうという事もない。

>「さて。治療が終わって自力で動ける者は、各自部屋に戻ってもいいぞ。私が許そう」
「あのー、ちょっと先生に聞きたいんですけど……。
 総裁の館に行った人たちは、全員無事何ですか…?」
帰れと言われたものの、ユリとしてはそれが気がかりだった。
総裁の館をのぞきに行こうと提案したのはユリなのだ…さすがにそれを確認するまでは帰れない。

幸いにも、保険医の答は全員の”生命の”無事を告げるものだった。
本来なら知るはずのない所まで知っているのは、変態に見えてもさすがに学園教師の一員といったところだろうか。
生半可な腕前では、この学園の教師は務まらないのだ。
「良かったー! 教えてくれてありがとう先生!
 みんなの治療、よろしくお願いします!」
笑顔で頭を下げるユリは、机の上に置かれた空き瓶に目をやった。
「えーとえーと…もひとつお願いがあるんですけど…
 この空き瓶、1個だけもらっちゃだめですか……?」

214 名前:ユリ ◆sto7CTKDkA [sage] 本日のレス 投稿日:2010/09/12(日) 12:02:22 0
夜の女子寮の自分の部屋で、ミクはカーテンのように蜘蛛の巣に区切られた一角に座って今後の事を考えていた。
総裁の動きもそうだが、セラエノとオセと名乗った神の事など、考える事はたくさんある。
動くべきか、潜むべきか。
状況によって臨機応変に行動すべきなのはわかっているが、考えないわけにもいかない。
明かりもつけずに闇の中で思いを巡らすミクは、誰かが扉を叩いた事に気づいて思考を止めた。
普段とは違って遠慮がちに扉を叩いているのが、ユリだと気づいたからだ。

「あら…… あなた、まだ子供の姿のままなのね。」
扉を開けてユリを見て、ミクは真っ先にそう感想を述べる。
保険医に元に戻してもらうのだろうと思っていたので、少し意外だったのだ。
「うん。 急いできたから。
 ミクに早く会っておきたくて……」
へへへと笑うユリを見ながら、ミクは何を聞かれたらどう答えようかと考える。
早く会いたいのは早く聞きたいことがあるからだろうが、聞かれそうなことがありすぎて的を絞れない。

「えーとね。えーと……今日はありがと。
 早く寝たかったのに、私を心配して来てくれたんだよね?
 ケガとかしなかった?」
「気にしないでちょうだいな。 私も他にいろいろ用事があったついででしたから」
最初は当たり障りのない事を言うだろうというのは予想通り。
次はミクの正体についてか、あるいはセラエノとの関係についての質問か…

「これね。 さっき虎がバターに変わっちゃったのを少しもらってきたんだ。」
内心身構えるミクに、ユリは瓶に入ったバターを見せた。
「ミクは、こっちの料理をあんまり食べたこと無いって言ってたよね。
 明日の朝ホットケーキ焼こうと思ってるから、一緒に食べよう。
 このバターで食べたら絶対ものすごく美味しくなるよ〜。
 ……それじゃまた明日。 お休みなさい」
それだけ言い終わると、ユリはクルリと後ろを向いて帰ろうとする。

「……ユリ。 言いたいことはそれだけで良いのかしら?
 なにか私に聞きたいことがあって、ここに来たのではないの?」
ミクが呼び止めると、ユリは困った顔をしながら振り向いた。
「うーん。 森の動物さんにも、ミクとよく話し合った方が良いって言われたんだ。
 でもほら。 私ってバカだから。
 いろいろ考えたんだけど、話すことが思いつかなくなっちゃって」
「そう…あの時の親切な動物さんが……ね」
ユリの返事を聞いて、ミクはルイーズの意図を悟る。
人の言いつけも守れないのに、保身にだけ長けた動物など必要ない。
やはり親切には“親切”で返すべきだ、とミクは心中思いを新たにした。
そんなミクの内心は知らないユリは、また言葉を続ける。

「で、思ったんだ。 友情に言葉はいらないって!」
夜の寮なのでさすがに声量こそ押さえられていたが、ユリは力を込めてそう言った。
「私とミクは友達だから、一緒にいるだけできっと大切な事って伝わると思うんだ!
 だから、いっぱい話し合うよりもいっぱい一緒にいた方が良いよ!
 今日はもう遅いから、また明日の朝来るから! おやすみなさい!」

言いたい事だけ言って手を振りながら走り去るユリを、ミクは呆気にとられて見送った。
ユリの話は言いたい事はわかったが、同意はできそうもない内容だった。
話し合わなくても思いが伝わるなら、壊れる友情など存在しないだろう。
ユリはただのアホの子ではなく、正真正銘赤丸付きのアホの子だと認識を改めて、ミクは室内に戻った。

窓から差し込む光につられて見上げれば、空には変わらず月が浮かんでいる。
ミクはユリとの会話や、仲良くなりたいと言ったメイションの言葉を思い出す。
月は、なぜか総裁の館に向かう時よりも綺麗に見えた。
「……嫌だわ…私まで平和呆けに毒されたのかしら。
 馬鹿も阿呆も感染するのね……」
1つため息をついて、ミクは背中を蜘蛛糸に預けて目を閉じた。
窓枠に飛び乗ったタチコマが、まるで眠ったミクの代わりのように夜空の月を眺め続けていた。

215 名前:ユリ ◆sto7CTKDkA [sage] 本日のレス 投稿日:2010/09/12(日) 12:03:43 0
ミクと別れたユリは、出来るだけ急いで出来るだけ静かに自分の部屋を目指していた。
すでに眠っている人もいるであろう寮内で、必要以上に騒ぎを起こすほどユリもバカではない。
特に問題もなく自室の近くにたどり着き、ユリが部屋に入ろうとした時。
隣の部屋の住人が、慌ただしく外に出てきた。
「ほらほら、早く行こうよ姉さま。
 男子寮に不審人物が入ったって情報が入ったし、大浴場が血まみれになってるみたいだし。
 急がないと特ダネに乗り遅れちゃうよ?」
最初に出てきた真っ赤な修道服の少女が呼びかけると、部屋の中から答が返る。

「まてまてまてちょっと待て! 服が引っかかって取れな…よっし取れた!今いく!」
次に部屋から飛び出してきたのは、真っ黒な修道服の少女だ。
周りの迷惑などまったく考えていないように、騒がしくどこかに走り去ろうとする。
ユリがその間に自室に戻ろうとした時、後から出てきた黒服がユリを見つけて呼びかけた。

「あ! ちょっとちょっと! あなた、ユリ・オオヤマ!?」
「え? 私?」
急に初対面の相手に名前を呼ばれて戸惑うユリは気にせず、黒修道服はダダダとユリに駆け寄る。
「やー、会えて良かったー! 入園式の時に怪しんでた総裁のお宅はどうだった?
 何か怪しいものは見つかった? 背が大分縮んだみたいだけど、大丈夫?」
矢継ぎ早の質問に面食らいながらユリは、少女が入園式の時に近くにいたのを思い出した。
それでも総裁の家に行くことは知らないはずだし、子どもになった自分を見てすぐ反応したのもおかしい。
そもそも総裁の館で起きたことを他人に話して良いとは、ユリにも思えなかった。

「えーっと、えーっと…」
挙動不審気味に目をさまよわせるユリに、少女は強引に握手しながら紙切れを握らせる。
「ま、ま、あたしも今は急いでるしさ! 詳しい話はまた後日って事で! じゃ!」
走り去る少女を、ユリは茫然と見送った。
寮内に静けさが戻ってしばらくして、ユリは渡された紙切れを見た。
紙切れにはこう書かれていた。

【怨霊物の怪困った時はぜひお気軽にご相談を! 何でも相談請け負います!
  学園新聞でいりぃ・ふぃじる記者 にして 神と真実に使える シスターミルク】


216 名前:リリィ ◇jntvk4zYjI [sage] 本日のレス 投稿日:2010/09/12(日) 20:20:55 0
赤のナイトは、これからエレベーターで屋上に向かうと言った。
屋上に向かうということは、つまり真雪を置いていく可能性が高い。
「まっ…て…」
「喋っちゃだめだよぅ、噛んじゃって顔の水疱を破ったりしたら大変!
大人しくしてて、大丈夫だから、後で聞くからね」
せめて自らを簡易担架に乗せ運ぼうとする誰かに伝えなければ、と声を発した。
しかし、ほんわりとした空気を纏う看護士に止められる。
後でじゃダメなのに、間に合わないのに、と柚子は内心で悶えた。
伝えるタイミングは、すぐ訪れた。エレベーターに乗ってしまえば、僅かな隙が出来る。
「それで、どうしたの? 何か言いたいみたいだったけど」
看護士が微笑むと、柚子は一言途切れ途切れに呟いた。
「ゆ…ユキちゃん、は? ……置い、て…ゃうの…?」
「…会いたいの?」
看護士の言葉に、柚子は小さく頷く。その様子に、看護士は悲しげに溜め息を吐いた。
「…ごめんなさい…」
その一言だけで、柚子は理解する。もう、会えないかもしれない。
突きつけられた事実に柚子が泣きそうになったとき、エレベーターの扉は開いた。
そして、聞こえた。これこそが、待ち望んでいた声。彼女こそ、月崎真雪。
兔からは良い返事をもらった。ほう、と息を吐き、画面に残る兔の番号を登録する。
(これで…あとは飛峻さんに連絡して…)
そこまで考えてから、目の前のエレベーターを見る。
正確にはエレベーターでは無くその上、エレベーターの位置を示すパネル。明らかに、動いている。
10階で一旦留まり、再びエレベーターは動き出す。やがてぽん、と音が鳴り、目の前の扉が開いた。
「うわわっ!」
真雪は邪魔に鳴らないように身を引く。
派手な格好をした女性が先導していて、その後ろに男性二人…片方は飛峻が担架を担いでいた。
その隣には看護士が付き添っている。
そして、見つけた。これこそが絶望的事実。
顔を半分焼かれ、痛々しく担架に横たわる柚子を。
「…ユッコ!」
男は、困窮していた。調理の才を持ち、それを自覚し、更には使いこなす事の出来る。
いずれは世界で右に出る者などいない料理人となる筈だったのだ。その自分が一生を牢獄の中で暮らすなど到底耐えられない。認められない。
彼にとって進研に身を置き悪事を働くと言うのは、目的では無い。あくまでも、最上の料理人となると言う目的の為の、手段なのだ。
「……おいおい、悪いが俺はこの一線を譲るつもりは無いぜ。
 自白剤や拷問で吐いた証言で、進研が落とせるか? 中途半端に手を出せば、大火傷するのはアンタらだぜ」
進研は至る所に文明を貸し出している。規模を問わず国内の企業や、一部の公的機関にもだ。
一撃でトドメを刺せるだけの材料が無ければ。
例えば文明回収のストライキでもされてしまった日には、世論は公文への批判に傾くだろう。だが、だからこそ。
「進研の事なら洗い浚い吐いてやる。あんな二人が何だ。何の取り柄もない、クズが二匹死んだだけじゃないか」

彼は自身の証言が金の価値を持つであろう事を知っている。
下手に出ながらも何処と無く滲む不遜さや、双子に対する暴言は、そうであるが故だ。

「あんな奴らを殺したからと言って世界が、社会が変わる訳じゃない。だが俺は違う。
 いずれ俺は各国の財界人、高級官僚、王族、ありとあらゆる人間が俺の飯を食う為に駆け回るんだ。
 愉快痛快だろ? そうなったら、アンタにゃ特別席を用意してやったっていい。さっきの女もだ。だから……」

しかし不意に、男が口を噤んだ。不穏な沈黙が、訪れる。そして男は急に胸を押さえ、目を見開いた。
流暢に回っていた口は苦悶の形に歪んで呼吸は止まり、ただ水面に腹を浮かせた魚のように開閉のみが繰り返される。
ついには彼は直立の体勢すら保てなくなり、倒れ込んだ。
胸と喉を押さえながらのたうち回り、だがそれも長くは続かず、彼は小刻みに痙攣するのみとなる。
しかくして最後に上へと伸ばした手が掴もうとしたのは、都村か。それとも、『錬金大鍋』――彼の未来か。
いずれにせよその手は届かず虚空を掻き、彼は生き絶えた。進研は悪い組織ではあるが、悪の組織ではない。
ボスに対して表立って逆らう者はいないが、決して皆が恭順である訳でもない。進研をただの手段、踏み台としか考えていない者もいるだろう。
寧ろ、その方が多いくらいかも知れない。裏切りを防ぐ為の仕掛けは、当然施されているのだ。
「……ふむ、愚か者が一人。何処かで息絶えたか。まあ、私にとってはどうでもいい事ではあるが。それよりも」
暗がりの中で、一人の男が呟いた。  
それから声の音量を僅かに上げ、呼び付けた部下に命を飛ばす。

217 名前:リリィ ◇jntvk4zYjI [sage] 本日のレス 投稿日:2010/09/12(日) 20:21:31 0
「例の異世界人を、ここに連れて来たまえ。五本腕と、猫人間、だったかな? それと先程確保したと言う、淑女もだ。
 目が覚めぬようなら、覚醒剤でも打ってやればいい。下らぬ道徳心とやらは無用であるから、心するように。
 もしも反抗するのであれば、君も晴れて愚か者の仲間入りだと、世話人に告げたまえ」
命を受けた部下はただ一言。
「了解しました。ボス」
ただ一言そう返して、彼の部屋を後にする。そうして、一人の男だけが残された。
暗闇に溶け込む黒のスーツに、無造作に掻き上げた長髪。
薄暗い中で煌めく小振りな眼鏡が、冷冽な眼光により一層の研磨を掛けている。
さて、君達はボスの呼び付けに従ってもいいし反抗してもいい。
ただしそれらの行為が己の身に何を招くかは、推して知るべしである。
何せボスには、『才能』があるのだ。例えば秋人や柊が文明に非ざる力を持っているように。
料理人の男が、裏切りを切欠として突如事切れたように。人に『何か』を植え付ける才能が。
そしてその『何か』は、彼に近しい人物なら誰しもが植え込まれている。
命令に背けば、またしくじれば、愚か者の仲間入りとされてしまう。
それでも尚逆らおうと言うのならば、相応の対応がされる事を覚悟すべきだろう。

【ボスお借りしました
 ついでに秋人やらが文明じゃない異能を持ってるようだったので理由付けでも
 もし彼らがただの文明だとか実は異世界人だって言うなら、訂正しますので指摘をお願いします】

起き上がった彼の耳に入ってきたのは獣の唸り声のような、魘されるような声だった。
少しだけビクリ、として、しかし誰の声なのかと自分のベッドの隣を見る。
開けてしまえば楽なのだが、全く知らない人間だった場合の反応に困るだろうと少しだけ悩む。
そして数秒か、もしかしたら数分経ったその時に聞こえてきた声に彼はハッとする。
それは間違いなくテナードの声であり、そして彼がこの世界で無意識ながらに信用した二人目の人物である。
彼はベッドを仕切っているカーテンを開けて、テナードのベッドを見る。
「猫、」
久和はそうポツリと呟いて彼の所在無さげな左手を握る。
何故そうするかは分からない、だがそうした方がいいと、彼は思ったのである。
「……猫」
また名前を呼ぶ。そして魘される彼を不安げに見ながら、久和はテナードが起きてくるのを待つことにしたのであった。
弓瑠は不満げであった。お兄ちゃんの裸を見るのをジョリーに邪魔され、お兄ちゃんと風呂に入りたかったのに邪魔され、結局彼はあの黒猫と入る始末である。
むぅ、と頬を膨らませながら黒猫とハルニレを見やる。黒猫はあろうことかハルニレに傷を付けたのだ、許すまじ、と黒猫の耳を引っ張る。
「お前は可愛くないわ、ロマ」
いつの間にか彼女が黒猫に名付けていた名前を呼ぶ。そして彼女はハルニレを見て、
「今日私と一緒に寝よ、お兄ちゃん」
とニッコリ笑うのであった。弓瑠はその小さな身体で彼に抱き着く。そしてそのまま――といったところでジョリーのお帰りである。
「…む」
不満げに声を漏らし、ジョリーに声をかけた後彼女は言った。
「お腹がすいた」『あれ?』
「うまくいった?」       
いや、と歯切れ悪くペリカンが答える。兎は眉を潜め、もたれ掛かっていたヘリから身を離して振り返った。
『上手くいかない。座標も特定できてるし、特に拡散するような要因は無いし。……おかしいな』
「どっちが?まさか、どちらも?」
『いや、成川遥の方は圧縮できそうだけど、異世界人の方が……』
ペリカンの複合文明、“Hello World!!”は物体を圧縮する機能を持っている。物質を0と1に置き換えて、生ま
れた数列を圧縮、保存する機能。座標さえ合えば生きている物でさえそのまま捕らえる事のできるこの文明。
だが“Hello World!!”は文明そのものを圧縮する事はできない。
『まさか、この異世界人、文明持ってる?』
ペリカンの疑問に、そんな馬鹿なと兎は呟いた。ミーティオ・メフィストはつい先ほどまで監禁されていたのだ。
監禁?
「……首輪を付けられてるのかもしれない、もしかしたら。成川遥と共に監禁されていたなら」
『ん?』
「成川遥は成龍会首領の娘よ。どう言う経緯で一緒に監禁されていたのかは知らない、けれどそんな要人を異世
界人なんて化け物の近くに拘束しただけで置くかしら?」
『殺してほしかったのかも』
「かもしれない。でも、そうだとしても、何らかのイレギュラーに対しての策が必要だわ」
それが首輪か、とペリカンが呟き、どうする?と兎に尋ねた。このまま何もしないわけにはいかない。
「しょうがないわ、成川遥だけでも捕まえて頂戴」

218 名前:リリィ ◇jntvk4zYjI [sage] 本日のレス 投稿日:2010/09/12(日) 20:22:01 0
鰊は必死に足止めしていた。やつらの突撃は凄まじい。もう何人殺されたかわからない。
実際のところ、彼らは帰ろうとしているだけなのだが、鰊にそんなことがわかろうはずも無い。
職務に誠実であれ。鰊の考えだった。職務以外の事には特に注意を払わない彼だったが、職務についてだけは、
変質的なまでに拘りを貫いてきた。
やらないこととやることが解っていただけだとも言える。慇懃で無礼な男だった。
(おや)                          
突撃の指向性が変わる。見れば、ついさっきまでいた美少女の片割れが消えていた。疑問を抱き、解決に向かう。
すなわち鰊は電話をした。
「兎、どう言うことだ」
「片方しかうまくいかなかった」
「どうすればいい、捕まえるか?」
「イ`、捕まえなくていいわ。妹でもないのに爆発されたら困るし」
そこでその鰊は死んだ。頭上から鉄パイプが降ってきたのだ。ふむ、と鰊は思う。よくわからないが、このまま
足止めすればいいらしい。肉の壁で押し止めている現状、そう長くは持たないが。
脳が劣化してきている。鰊は薄々感づいていた。コピーし過ぎたのだ。歩みは遅いが、根本的な死が近付いてき
ている。潮時だ。
「良ーい?今度弓瑠ちゃんに手を出したら、絶対に通報してやるからね!このロリコン!」
「サッキカラ一々ウルセーゾ、ジョリー!分カッテルッツッテンダロ、何度モ言ウナ!!」
雨の降る繁華街の中、弓瑠を挟んで口論するハルニレとジョリーの姿があった。
服も新しい物に着換え、弓瑠の要望で、傘を差して三人はとあるレストランへと向かっている最中だ。
二人の口論の内容は、察して解るように弓瑠の事である。
時間は少々遡る。猫と共に風呂に入り、ひっかき傷の山をこさえて猫を洗い終えたハルニレ。
弓瑠はハルニレに傷を付けた猫の耳を引っ張り、「お前は可愛くないわ、ロマ」 と叱りつける。
「オイオイ、女ノ子ガソンナ乱暴ナ事シチャ駄目ダロ」
ハルニレは弓瑠の手から猫を取り上げてたしなめる。しかし弓瑠は反省してないのか、ハルニレを見上げ、満面の笑みを浮かべる。
明るい声でそう言うと、ハルニレの体に抱きついた。彼女の心境を知る由もないハルニレはその細い首に手を回し、笑顔で返す。
「良イゼ、何ナラ寝ル前ニ面白イ話デm「あ、アンタ何してるのよォオ―――――――ッ!!」
常識人のお帰りだった。ジョリーが帰って来た瞬間目にしたものは、ほぼ全裸のロリコンと幼女が抱き合うという衝撃的なシーン。
二人にどんなやり取りがあったか知らない彼女は、真っ先にハルニレを悪だと判断。
結果として、現在ハルニレの右頬に真っ赤な痛々しい掌の跡が残る事となった。
「クソー、思イッキリビンタシヤガッテ……コレダカラ年増ハ」
「何 か 言 っ た?」
「べッツニー………………ン?」
何かに気付いたハルニレの足が急停止する。
雨の中、傘を差さない一組の珍妙な男女がいる事に気付いたからだ。 
一人は、巨大な棺桶を担いだ奇妙な少女。もう一人は、先程出会ったばかりの人間。
「オイ、テメー!」
確か、ドルクスと呼ばれていた男。しかし、様子がおかしい。
ハルニレと戦闘していた時の覇気が、全くといっていいほど感じられない。 まるで別人だった。
それに、一緒にいたあの少女……エレーナは何処へ消えたのか。 代わりに一緒にいる少女は何者なのか。
この空気を読めない、場違いで呑気な音が鳴り響く。少女の呟きを聞いたジョリーが、反射的にハルニレを見上げる。
どうしろってんだ、と怒鳴り散らしてやりたい気分だったが、この男にも色々と聞きたい事がある。
「オ嬢チャン、俺ガ飯食ワセテヤルヨ。ドルクストヤラ、テメーニモ色々ト聞キテエ事モアルシナ」
『す、すばらしくカオス』
ひくりひくりと顔をひきつらせながら蛍光色の猫は呟く。
このビル内において神の如き視点を所持する彼は、その様相を端的にそう言い表した。
『どうしよう、なんかもうおれ全然ついてけない。つっこみとか入れる余地もない。色んなものに対応する気力もわかない』
「ご愁傷様です、小鳥」
『うん……』
素っ気ない合成音声。その主は一心で一つの窓をのぞき込んでいた。
遊のようになってしまう。短い前足で空を掻きながらその肩にたどり着いた。
『……子供?』
窓の中では、小さな子供がふらふらとビル内の廊下をさまよっていた。
迷宮化が解除された際、あらぬ場所に移動させられてしまったらしい。
荒い画質ではわかりづらいが、その不安そうな様子は見て取れた。
「葉隠准尉が保護していた者と見られます。迷宮化解除の際にはぐれたのでしょう」
『あ、ああ、あの何かものすっごいおにーさんね』

219 名前:リリィ ◇jntvk4zYjI [sage] 本日のレス 投稿日:2010/09/12(日) 20:22:33 0
言ったKu-01の瞳が淡い緑に発光する。高度AIの情報処理に発生するそのエフェクトに、小鳥は目を輝かせた。
『やっだなにそれ格好良い、おれもやりたい!』
「サイバーダイブを解除します。小鳥、回線使用の許可を」
『えー? 帰んの? もうちょっと遊んでってよ』
「お断りします」
『に、にべもない! わ、わかったよ……どうせ許可しなくてもあんた出れるじゃんよう』
 器用に猫の口を尖らせながら、管理者権限を発動する。
 接続されたデバイスを確認。認識終了。
 そのデータをこっそりと記録して、『じゃあばいばい』と"退室"の準備をするKu-01
に呼びかけた。
『また遊びに来てよ。場所用意するから』
「……物理空間を用意していただけるならば、考えなくもないです」
 そうして、Ku-01は傾いた視覚領域を立て直す。かしゃりとモノアイが音を立てた。
 接続良好。異常はない。
 エネルギー残量にもまだ余裕がある。
「運行に問題なし」
 機械に繋がっていたウィップコードを抜き去り、少し考えてから三つ編みを解く。
 癖もなく広がった人工頭髪を、頭頂より少し下で結い直した。
「それでは行動を開始します」
廊下を駆ける八重子。一向に訛祢が見つからない事に、彼女は焦燥していた。
まさか、手遅れだったのか。しかし、運は彼女に味方したらしい。
「はぁ、はぁ、琳樹さん!」
琳樹の肩越しに八重子の姿を視認したKは、踵を返す。そして、八重子が向かって来る方向とは逆の方へ去っていった。
八重子はKの存在には気づかず、琳樹の目の前で一旦ストップし、肩で息をする。
現在地を確認し、八重子はゾッとした。なんと、彼は危うく「ゼミ」の敷地内に入ってしまう所だったのだ。
「(か、間一髪ってまさにこの事ね……)」
ハァーッ、と長く深い溜息を吐く。安堵と疲れからくるものだった。額の汗を拭い、琳樹に微笑みかけ、彼の腕を掴んだ。
「戻りましょう、琳樹さん。色々と説明したい事もありますし」
ゼミの敷地内から離れるように、もと来た道を歩き始める。こんな所に長居は無用だ。
そろそろ、あの猫人間や五本腕も目を覚ましている頃だろう。
腹も空かせているだろうし、スープを持っていってやる事にしようと思い立った。
「八重子!」
後方から声がかかる。二人分のスープ皿とコップを載せた盆を持ったまま振り向いた。
Cだ。より露出度の高いボンテージとピンヒールに着替え、訛祢を挟むように並んで足並みを揃える。
手に、カルテではない書類を手にしていた。
「その書類、何なの?結構ぶ厚いみたいだけど」
「ああ、これ?あの猫頭、右腕に妙なモノ仕込んでたみたいだから、研究班に解析を頼んだのよ」
Cの話を要約すると、こういう事である。
猫頭の彼、テナードの傷を治療する際、次々と文明が使用不可能になるというアクシデントが発生。
まさかと思い解析すると、彼の右腕が文明の効力を無効化させてしまう事が判明。
やむを得ず、右腕のみを分離して治療したという。
「で、これがその報告書って訳──……っと、着いたわね」
ピタリとCの足が止まる。2、3度のノックの後、Cはドアノブに手をかけた。
「(………………?)」何かが左手に触れるのを、テナードは直感的に理解した。
霞が掛かったような脳で、無意識にそれが人の手である事を理解した。特筆するものでも無いが、左手も義手だ。
感触や物を掴んだりする事は出来るが、温度や気温といったものを感じる感覚は既に存在しない。
故に、彼は少し驚いていた。失われた筈の「人の温度を感じる」感覚が、左手に戻っていたから。
この手は誰のものだろう。それを確かめたくて、ゆっくりとぎこちない動きで手を握り返す。そしてそのまま、テナードは静かに覚醒した
「……ここ、は……?」               
喉が渇いているせいで、掠れたような酷い声が漏れた。起きぬけの寝ぼけ眼で、起き上がろうとする。
「いっ!…………っ痛う……」
起き上がった瞬間、腹部に数瞬痛みが走り、反射的に身体をくの字に折り曲げて強張らせた。
痛みに耐えられず、右腕で体を支えようとして違和感を覚える。
右腕が、無い。肩から先が、まるで最初から何も存在しなかったかのように、消失していた。
朧気な記憶の中、誰かが自分の右腕を取り外した事を思い出す。
参ったな。そんな事を呑気に考え、フと自分の左手と繋がれた相手を見る。
「い、色白……?」
驚きが入り混じった声が出る。手の主は、所々に包帯を巻いて患者服を着た、色白の五本腕だった。
「…………えっ、と。……お…おはよう?」
何と言えば良かったのか分からず、何故かおはようの挨拶をしてしまった。

220 名前:リリィ ◇jntvk4zYjI [sage] 本日のレス 投稿日:2010/09/12(日) 20:23:03 0
「食べながらでいいから、私達の話を聞いてくれる?」
暫くして、八重子がそう切り出した。食べる手が止まり、八重子を凝視する。
「私達は「進捗技術提供及び研究支援団体」、通称進研。まあ、簡単に言えば色んな所に「文明」を貸し与えたりする組織ね。
 ここは、進研が所有する建物の一つ。貴方達、相当酷い傷だったから此処に運んだのよ」
唯一医療施設があったから、と締めくくった八重子の言葉を、今度はCが引き継ぐ。
ピンヒールの踵を鳴らし、ガーターベルトに仕舞っていた鞭を片手に教鞭を取る。
「進研には、数多のサポーターと彼等に指令を出す20人余りの幹部、そしてボスという構成で成り立っているわ。
 他にも幹部達をまとめる幹部長、ボス直属の部下や極秘任務実行隊なんてのも存在するらしいけどね。
 サポーターは進研の敷地内では規定の団員服を着用する事を義務付けられ、幹部ごとにチーム編成される。
 それなりの功績を残して幹部に昇進すれば、ボスに認められた証として"アルファベット"を名乗る事を許され、様々な特権を与えられるわ。
 ……ま、わざわざアルファベットを名乗らずに幹部をやってる奇人もいるけど」
そう言うと、肩を竦める。成程、アルファベットが書かれた腕章を付けた人間は幹部という事か。
「ああそうだわ。肝心な事を忘れるとこだった」
ヒュン、と鞭が鳴る。指示棒のように振り回すのは彼女の癖なのか。 耳障りな音だが、敢えて何も言わず静聴する事にする。
「この組織にはね、内部に幾つか派閥が存在するわ。正確な数までは知らないけどね。
 それぞれが、それぞれの野望や志を持って活動している。反りが合わない幹部やその部下達は、無論お互いに非常に仲が悪いの。
 それこそ、小競り合いなんて日常茶飯事レベルね」
それは組織として如何なものか。危うく喉まで出かけたツッコミを飲み込み、Cの説明に耳を傾ける。
「その中で、私達は「チャレンジ」という派閥に属しているわ。進研の中では、かなり異端な存在ね」
「進研の殆どが、荒くれ者で悪事を働いたり暴れる事が好きな連中が多い。
 けど、「チャレンジ」ではそういうのは一切御法度なの。ま、リーダーの意向ね。
 お陰で他の派閥に見下されたり、ボスからの信用も低いわ。だからこそ、出来る事もあるんだけどね」
静かな病室に、ピンヒールが床を踏み鳴らす音がよく響く。
喉が渇いたのか、鞭で器用にマグカップを取り、中身を一気に飲み干した。
「で、ここからが本題よ。私達は、通称「ゼミ」と呼ばれる過激派組織と争ってるわ」
「…………それが、何だ?」
「貴方達の力を、貸してほしいの。勿論、タダでとは言わない。
ここに住む間の生活面は、私達が全面的にサポートするわ。 食事も衣服も寝床も、貴方達の身の安全も、私達が保証する」
テナードは他の面子に目配せする。 ああは言っているものの、彼女らが何を考えているのか、皆目見当がつかない。
「…………もし、断ったら?」
「どうもしないわ。どちらにせよ、私達は貴方達を保護する義務がある。
 ただ、貴方達の身の安全の保証は無くなるかもしれないけどね」
まるで脅しだ。可愛い顔して、結構えげつない女である。ここは、今は黙って彼女らに従うのが得策だろう。
彼女らの領域に居る限り、自分達の命は彼女らの掌の上とも考えるべきか。
「…………分かった。協力すると約束しよう。但し、元の世界に帰るまでだ」
「ア、アァ。了解ダ」
有り合わせの道具で瞬く間に簡易担架を組み立てた少女「佐伯零」に促され、飛峻は慌てて持ち手を掴む。
有無を言わさぬその口調に半ば反射的に従ってしまったが、飛峻と対面のオサム君以外の三人は医療の心得があるのだから適材適所と言えよう。
「……アンタも色々と大変そうだナ」
「ハハハ……」
思わずオサム君と苦笑いをしつつ、続けて響く合図の声で同時に担架を持ち上げる。
向かう先はエレベーター。屋上で待機している手筈の兎たちの下へ柚子を搬送するためだ。
既に展望ホール内のヤクザは掃討されており、飛峻たちの行く手を阻む者は居ない。
地面に伏したヤクザたちの内、まだ息のある者が時折苦しげな呻き声を挙げるが誰も気に留める様子はなかった。
先頭を行く佐伯を眺めながら飛峻はため息をつく。     
気がかりなのは彼女の言った言葉。柚子を助けることに夢中でその可能性をすっかり失念していたのだ。
つまり、彼女達と兎達が敵対しているかもしれないという可能性をである。
武術を修める者ならば種類はなんであれ、相手の立ち居振る舞いから実力を推測することは出来る。
ましてや裏社会で活動していた経験もある飛峻にとって、その能力は研ぎ澄ませざるを得なかったものだ。

221 名前:リリィ ◇jntvk4zYjI [sage] 本日のレス 投稿日:2010/09/12(日) 20:23:33 0
目の前の不思議な力の気配を醸し出す少女は、名をシノと名乗った。
奇抜な格好から(というよりも背負った棺桶を)見るに、彼女も異世界人だと私は判断した。
しかし、これだけ近距離にいて禁書の気配を感じない。
つまりは、彼女は無理矢理召喚されたわけではないのだろう。…恐らく。
私はシノから視線を逸らした。なんとなく、彼女に見透かされている気がした。
……何を?これは幸に入るのか、それとも不幸に入るのか。
私達にかけられた声は、聞き覚えのある特徴的なダミ声。
「ハ、ハルニレ!何でココに!?」
問題発生。こういう時に限って遭いたくない奴と遭遇するなんて!
最悪だ。彼ことハルニレは、少なからず(今は私だけど)ドルクスに敵対心を持っているに違いない。
ここでもう一度戦闘を仕掛けられたらどうなるだろう。
魔法を使いこなしきれない私にとって、圧倒的不利な戦いとなるだろう。それだけは避けなければ!!
「ハルニレ!今私は貴方と戦う気はないわ、落ち着いて話しあいまsy……」
「…………………ほぇ?」
ハルニレ達は歩きだす。私は一人取り残されそうになったのに気付き、慌てて追いかける。
色々ツッコミ所がある筈なのに無視なんだろうか。これは私が突っ込まなきゃいけないんだろうか。
「…………………………………………どうしてこうなった?」
ここに来るまでの道中、Tから様々な事を教えてもらった。
この世界に存在する「文明」、「進研」についてetc。長いので割愛させてもらう。
「さて、着いたぞ」
白い扉の向こうから、声が聞こえる。複数人の声。エレーナ様の魔力を使い神経を集中させる。
……何人か、禁術の気配を纏っている。まさか、この中に異世界人が?更に集中し深く探ろうとした時、Tの手がドアノブに掛けられた。
「ちょま」
「はーッハハハHAHAHAHAHAHAHAHA!失礼するよチャレンジと愉快な仲間達諸君!!」
今にも破壊しそうな勢いでTは無礼講にもドアを乱暴に開ける。
「病室では静かに」のポスターは完全無視かこの黒子野郎。
Tが出入り口を塞ぐように立っているから、入るどころか中の様子を見ることすら難しい。
「そんなに警戒しないでくれ賜えよ!嗚呼それともこの私の美貌に酔いしれているのk「ねーよ!」
分かりきっていてもツッコまずには居られなかった。クッ、恐るべしエレーナ様のツッコミ体質。
「そんなにハッキリ言わなくても…まあ良いか。
 皆が溜息を吐く程に見とれる私の美貌と、今回こんな狭っ苦しい病室を訪れた理由にさしたる因果は無いからね」
どうしてそうなる。幸せな脳味噌の持ち主なんだろうな、ある意味羨ましい。
「ほほう、君達が噂の異世界人達かね。ん?そこの少年、私の顔に何か付いてるかな?
 私?ああそうだ、自己紹介しなくてはね。私の事は「T」、とでも呼んでくれ。
 派閥は改革派「赤ペン」。夢に出るまで脳に刻みつけておくといい」
「夢に出るとか悪夢のレベルだろjk…」
「ところで、だ。こんな場所に敵対関係である筈の私が何の用かと言いたげな顔だね!
 入っておいで、エレーナ君!彼らは、君と同じく異なる世界からの訪問者達さ!」
俺のツッコミは無視され、手を引かれて病室へとエスコートされた。男だけど。いや今は女だけど。
特徴のない平凡そうな少年。優しそうな顔立ちをした女性。猫の頭を持つ片腕の男。
露出度の高いボンテージを着た女。余計に腕の生えた(恐らく)女性(いや、男か?)。
………濃い。濃すぎる。一部を除いて誰が異世界人だか分からないぞ、このレベルは。
そして最後の1人。眼鏡を掛け、キリン柄の妙な服を着た、俺。俺?
「え、エレーナ様!?」
仰天し、脱兎の如く駆け寄る。
「そんな、折角精神交換してまで貴女を逃がしたっていうのに……!」
まさか、エレーナ様まで捕まっていたとは、何とトロ臭いお方か。しかし、自分はこんな珍妙な格好をしていたっけか。
自分はこんな髪の色だったか。まず、眼鏡なんて掛けていただろうか。彼は、エレーナ様では無かったのだ。
失念していた。"並行世界の異なる自分"の存在が居ることをすっかり忘れてしまっていた。
「"エレーナ様"?一体どういう事かな、エレーナ君?」
案の定、疑念の視線を含んだTの言葉が俺にふりかかり、額に冷や汗がぶわりと湧き出る。
「……エレーナ君、人は嘘を吐くと汗の味が変わるらしいのだが、一体どんな味なんだろうn」
「スイマセン嘘吐いてましたサーセンだから舌舐めずりしながらコッチ来ないで欲しいッスーーーー!!」
変態から一番離れた、地味な少年のベッドの側へと逃げ込む。
しばらくの間変態との睨み合いが続いたが、諦めたかのように視線を逸らしたのだった。

222 名前:リリィ ◇jntvk4zYjI [sage] 本日のレス 投稿日:2010/09/12(日) 20:24:03 0
進研にて各々の時を過ごす君達の元に、人影が訪れる。
それらはどれもが同じ体格、同じ格好、そして同じ性能をしていた。
それらは、人間では無かった。文明『人型傀儡』≪マリオネット≫。
主に危険な工事や救助の現場にて使用される、人型の物に宿る文明である。
然程珍しい物では無いが用途が用途である為に、個人や企業で大量に保有している事はまず無い。
例えば文明を取り扱う企業の、頂点に立つ男でもなければ。
『諸君、今すぐ異世界人を私の元に連れて来たまえ。
抵抗や下らぬ温情などは誰の為にもならぬので、見せぬように』
自律意思を持たないマリオネットは託された音声を再生しながら、君達の手を引く。
そうして君達は進研のビルの最上階へ、進研の『ボス』の元へと招かれた。
都市を一望出来る――分り易い『支配者』の、『勝者』の空間がそこにはあった。
「いい部屋だろう?……歓迎の挨拶は省かせてもらうよ。既に各々受けているだろうからね」
君達の正面、部屋の中央よりも少し奥に設けられたデスクに腰を掛けた男が言葉を紡ぐ。
「君達をここへ呼び付けた事には、当然幾つかの意味がある。まず初めに……これらを見るといい」
言いながら、彼はデスクから腰を上げて一歩横に動く。
そうしてデスクに並べた幾つかの物品を君達に見せる。純白の刀、魔法の本、機構の右腕。
「どれも、君達がこの世界へ持ち込んだ物だ。今や所有者は我々……と言うより私だがね。
もしも返せと言うのならば……その通りにしてあげよう。
そして、改めて奪わせてもらうよ。君達をこの場、このビルから追い出してね」
一息の沈黙を置いて、彼は続ける。
「と、これが君達を呼び付けた理由の内の二つだ。
 つまり君達の財産は今や私の財産である事を明確にして。
 並びに、この世界での君達の立場を教えておこうと思ってね」
微かな嘲笑を、彼は零す。
「さあ、良いのだよ? 別に「自分の財産を返せ」と叫んでも。
ただその行為の果てに君達が辿る末路について、私は一切の保証をし兼ねるだけだ。
 この現代にて、君達がどれだけ生き永らえられるのか見物ではないか」
君達には、ただ一人でこの世界を生き抜く術があるだろうか。
化物としか言いようの無い姿形で、人の世を生きていけるだろうか。
何の才覚も無しに、社会を渡り切れるだろうか。
特別な『才能』があったとしても、それは君が遍く無限の『敵』から身を守るに足る物だろうか。
「――不可能だろう?」
彼の声には、現実の音律が含まれていた。
「もっとも君達が我々よりも遥かに下劣な連中に下り、
 豚の餌よりも劣悪な庇護を貪ると言うのならば、或いは……だがね」
それもまた、一つの選択肢ではある。だがその道を選ぼうものなら君達は。
この物語から遥か彼方の闇に沈み、歩んだ道も名も残らぬだろう。
「そのような結末は嫌だろう? だが、そうなる。
 私の機嫌を損ね、この進研から追い出されようものならば。
 この世界において必要な物とは、無二の至宝でも一騎当千の力でも無ければ特異な才覚でも無い。
 揺るがぬ立場なのだよ。他の物は、あくまでそれを得る為の物に過ぎないのだ」
そして、と彼は言葉を繋ぐ。
「君達三人はそれを、宝を持っていた。持って来た。ならば私は、君達に立場を与えようではないか。
 この進研の中で、少しばかりの実験を我慢すれば人並み以上の待遇が得られると言う、立場を」
三人と言うのはつまり久和、テナード、訛祢の事である。
「分かったね? それでは君達は帰ってよろしい。君達の身辺の世話は当面、
 チャレンジの連中に任せている。……まったく、現状に甘んじるとはつまり、停滞ですら無い。
 周りを取り巻く環境が不変でない以上、退化でしか無いと言うのに。連中ときたら。
 まあ、仲良しこよしの下らん連中だが、却って適任と言った所か」
僅かな嫌悪を表情に滲ませて、彼は言う。
しかして多少話が逸れたが今度こそ、君達三人に部屋を出ろと手振りを交えて命じた。
「あぁ、重ね重ね言っておくが。妙な気は起こさぬ事だ。
 この世界には連帯責任と言う言葉があってだね。君達が罪を犯せば、
 その罰が及ぶのは君達のみに留まらない。例えば猫面君、君は随分とここの面々と仲良くなったようだね?
 そして五本腕君、君はどこぞのビルで愉快な双子と関わりを持ったようじゃないか。
 最後に……訛祢君だったかな? 君は確か……そのビルの近くで一人の少年と心安らぐ一時を過ごしていたね。
 それに、今も眠り続けているあの少女……と言っていいのかは少々剣呑であるが。
 とにかく実はだね、彼女にはこの場に並んでもらいたくて覚せい剤を使用したのだよ。

223 名前:リリィ ◇jntvk4zYjI [sage] 本日のレス 投稿日:2010/09/12(日) 20:24:31 0
次に言葉を繋ぐ声は、「さて」だった。
「ところで君達は『イデア』と言う物を知っているかな?
 少年の方は、『アイツ』から名称くらいは聞いているかね。
 『君』は……故郷の伝承に或いは、と言った所か。まず、伝承を伝える物自体が失われてしまってはいるだろうが。
 あぁそうだ。故郷と言えば、三代目の王女はお元気かな? 逃げ延びた事までは知っているのだが、それ以降は流石にね。
 幾ら『君』達の種とは言え、もうお亡くなりになってしまっただろうか。エメラルドブルーの瞳が麗しいお方だったが」
ふと過去を思い返すように、彼は視線の焦点を消失させる。
しかしそれも、長くは続かない。
「……話が逸れたな。イデアとは、君達に探してもらう物の事だ。
 とは言えこの世界の人間も、深くは知らない。
 精々名称だけ、それもお伽話の類だと断じられている」
言いながら、彼は先程見せた『宝』の内の一つ。純白の刀を君達に見せ付ける。
「……この刀が何故『宝』であるか分かるかね?
よく切れるから、折れず欠けず曲がらぬから、脂に汚れぬから……ではない。
そのような物が、この世界で何の役に立つ。文明を用いれば再現すら可能ではないか」
見たまえと、彼は一言。そして部屋の中央に彼の言う三つの『宝』を置いた。
取り分け純白の刀は床に深く、突き立てられている。
「時に、一般的な……哲学におけるイデアがどのような物かは、分かるかね。
……一般教養の域からは少々逸脱しているが故に、一応は説明をしようか。
甚く単純に述べるのならば、イデアとはこの世の万物を影とした時に、物体――原型に当たる物だ。
例えば花。花にはそれこそ様々な種類があるが、それらは全て影に過ぎないのだ。
そして無限の花々、影を辿った先にはイデア――つまり花の原型がある」
言いながら、彼はデスクの横に立て掛けてあった、この世界の刀を手に取る。
それを抜き、刀剣の方を床に放り捨てた。刀は小気味いい音を奏で――それからひとりでに、床を這い始めた。
純白の刀を中心に、円を描くように動いたそれは、ある一点に達すると途端にぴたりと静止する。
余談ではあるが、この現象は『イデア』を知る者にしか呼び起こせぬ物だ。
イデアには『心の目で見る』物である側面があり、つまりそれは『認識』に繋がる。
自分やその持ち物が『イデアから伸びた影の上にある物である』と強く認識しない限り。
この現象は起こらない。つまり異世界人同士が対峙したからと言って、どちらか一方が転んだりはしないと言う事だ。
また異世界人の多くは特異な『才能』を持っており、場合よっては人間であるか怪しい風体も。
挙句の果てには人の形をしてはいるが人間でない者さえいる。
彼らは『人型のイデア』から生まれてはいるが、それぞれ別の影の上に立つ者達だ。
故にそれぞれが干渉し合う事はない。
三浦啓介が尾張をイデアへの指標と見定めたのは、
彼が『特殊な才能はなく、しかしこの世界からかけ離れた世界の存在』であるからなのだ。
「分かるかね。この直線の、いずれかの彼方には……『イデア』がある筈なのだ。
武器の、機械の、本の『イデア』がね。君達にはそれを探してもらう。
無論用意な事ではない。様々な妨害が入るだろう。『イデア』の事は知らずとも、
『私の命を受け動く君達』を捕捉するくらいは、他の組織とて可能である筈なのでね」
しかし、君達にはそれに逆らう術はない。
「だが、見事その命を果たしてくれた時は、私は相応の対価を惜しまないよ。
この世界で極上の立場を求めるも良し。……元の世界へ帰りたくば、叶えよう。
『アイツ』に出来て私に出来ぬ事など、一つしか無いのでね」
――今は、まだ。
「それでは、そろそろ君達も去りたまえ。良い働きを期待しているよ」
(……結局、アレで良かったのかしら…?)
ううん、ううんと言う特有の駆動音と共にエレベーターは上層に向かっていく。
その不協和音に耳を傾けながら零は思案していた。内容は荒海について、……
(荒海銅二が死んだ。か。やったのは殉也……じゃあないわね。
……もし、私がその場に居たらきっと足手まといになっていたかもしれないけど、けど)
後味の良い物ではない。
深い知り合いと言う訳ではないが人が一人。零にとって名前のある、顔のある、形のある人が一人死んだのだから。
しかし、それを責める事が出来る者などは居はしない。だが、だからこそ零にとっては、自ら己を責めるに足る事だった。
(出来なかったんだ)
そして、無力を噛みしめる。それに死んだのは恐らく荒海だけでは無い。
少なくとも荒海やあのコックの攻撃を受けた怪我人は一人残らず死亡したとみて構わないだろう。

224 名前:リリィ ◇jntvk4zYjI [sage] 本日のレス 投稿日:2010/09/12(日) 20:24:56 0
赤のナイトは、これからエレベーターで屋上に向かうと言った。
屋上に向かうということは、つまり真雪を置いていく可能性が高い。
「まっ…て…」
「喋っちゃだめだよぅ、噛んじゃって顔の水疱を破ったりしたら大変!
大人しくしてて、大丈夫だから、後で聞くからね」
せめて自らを簡易担架に乗せ運ぼうとする誰かに伝えなければ、と声を発した。
しかし、ほんわりとした空気を纏う看護士に止められる。
後でじゃダメなのに、間に合わないのに、と柚子は内心で悶えた。
伝えるタイミングは、すぐ訪れた。エレベーターに乗ってしまえば、僅かな隙が出来る。
「それで、どうしたの? 何か言いたいみたいだったけど」
看護士が微笑むと、柚子は一言途切れ途切れに呟いた。
「ゆ…ユキちゃん、は? ……置い、て…ゃうの…?」
「…会いたいの?」
看護士の言葉に、柚子は小さく頷く。その様子に、看護士は悲しげに溜め息を吐いた。
「…ごめんなさい…」
その一言だけで、柚子は理解する。もう、会えないかもしれない。
突きつけられた事実に柚子が泣きそうになったとき、エレベーターの扉は開いた。
そして、聞こえた。これこそが、待ち望んでいた声。彼女こそ、月崎真雪。
兔からは良い返事をもらった。ほう、と息を吐き、画面に残る兔の番号を登録する。
(これで…あとは飛峻さんに連絡して…)
そこまで考えてから、目の前のエレベーターを見る。
正確にはエレベーターでは無くその上、エレベーターの位置を示すパネル。明らかに、動いている。
10階で一旦留まり、再びエレベーターは動き出す。やがてぽん、と音が鳴り、目の前の扉が開いた。
「うわわっ!」
真雪は邪魔に鳴らないように身を引く。
派手な格好をした女性が先導していて、その後ろに男性二人…片方は飛峻が担架を担いでいた。
その隣には看護士が付き添っている。
そして、見つけた。これこそが絶望的事実。
顔を半分焼かれ、痛々しく担架に横たわる柚子を。
「…ユッコ!」
男は、困窮していた。調理の才を持ち、それを自覚し、更には使いこなす事の出来る。
いずれは世界で右に出る者などいない料理人となる筈だったのだ。その自分が一生を牢獄の中で暮らすなど到底耐えられない。認められない。
彼にとって進研に身を置き悪事を働くと言うのは、目的では無い。あくまでも、最上の料理人となると言う目的の為の、手段なのだ。
「……おいおい、悪いが俺はこの一線を譲るつもりは無いぜ。
 自白剤や拷問で吐いた証言で、進研が落とせるか? 中途半端に手を出せば、大火傷するのはアンタらだぜ」
進研は至る所に文明を貸し出している。規模を問わず国内の企業や、一部の公的機関にもだ。
一撃でトドメを刺せるだけの材料が無ければ。
例えば文明回収のストライキでもされてしまった日には、世論は公文への批判に傾くだろう。だが、だからこそ。
「進研の事なら洗い浚い吐いてやる。あんな二人が何だ。何の取り柄もない、クズが二匹死んだだけじゃないか」

彼は自身の証言が金の価値を持つであろう事を知っている。
下手に出ながらも何処と無く滲む不遜さや、双子に対する暴言は、そうであるが故だ。

「あんな奴らを殺したからと言って世界が、社会が変わる訳じゃない。だが俺は違う。
 いずれ俺は各国の財界人、高級官僚、王族、ありとあらゆる人間が俺の飯を食う為に駆け回るんだ。
 愉快痛快だろ? そうなったら、アンタにゃ特別席を用意してやったっていい。さっきの女もだ。だから……」

しかし不意に、男が口を噤んだ。不穏な沈黙が、訪れる。そして男は急に胸を押さえ、目を見開いた。
流暢に回っていた口は苦悶の形に歪んで呼吸は止まり、ただ水面に腹を浮かせた魚のように開閉のみが繰り返される。
ついには彼は直立の体勢すら保てなくなり、倒れ込んだ。
胸と喉を押さえながらのたうち回り、だがそれも長くは続かず、彼は小刻みに痙攣するのみとなる。
しかくして最後に上へと伸ばした手が掴もうとしたのは、都村か。それとも、『錬金大鍋』――彼の未来か。
いずれにせよその手は届かず虚空を掻き、彼は生き絶えた。進研は悪い組織ではあるが、悪の組織ではない。
ボスに対して表立って逆らう者はいないが、決して皆が恭順である訳でもない。進研をただの手段、踏み台としか考えていない者もいるだろう。
寧ろ、その方が多いくらいかも知れない。裏切りを防ぐ為の仕掛けは、当然施されているのだ。
「……ふむ、愚か者が一人。何処かで息絶えたか。まあ、私にとってはどうでもいい事ではあるが。それよりも」
暗がりの中で、一人の男が呟いた。  
それから声の音量を僅かに上げ、呼び付けた部下に命を飛ばす。

【TRPG】フィジル魔法学園にようこそ!3rdシーズン

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