もう21時か、
2ちゃんねる ■掲示板に戻る■ 全部 1- 最新50  

【TRP】フィジル魔法学園にようこそ!10thシーズン

1 :◇jntvk4zYjI:2012/10/16(火) 22:06:00.59 0
統一基準歴355年。
魔法文明は隆盛を極め、あらゆる場所、場面に魔法が活用されていた。
そんな栄華の果てにいつしか異変が起きる。
確認されたのは20年前にもなるだろうか?

ある属性の魔法に異常なまでの適性を示す。
ある魔法を生まれつき能力として有している。
未知なる力に開眼する。

今までは天才と言われて来た種類の子供たちが、続々と生まれ始めたのだ。
このことに世界は大いに恐れ、憂慮した。

なぜならば、本来数十年単位の修行と研究の果てに身につけていく力を僅か数年の学習で身につけてしまうのだ。
あるいは持って生まれてくるのだ。
修行と研究は何も力を得るためだけの時間ではない。
力を振るう為の経験や知識をも身につけるための時間でもあるのだ。
仮に、今は凡人同然であったとしても、何かのきっかけで潜在能力が一気に発現することもある。

大きな力を当たり前のように使える事への危惧は、やがて現実のものとなる。
世界各地で引き起こされる悲劇に、統一魔法評議会は一つの決定をなした。

魔法学園の開設!

魔海域を回遊するとも、海と空の狭間にあるとも言われるフィジル諸島に魔法学園を開校し、子供たちに学ばせるのだ。
己が力を振るう術を。


―――― 【TRPG】フィジル魔法学園にようこそ!10thシーズン ――――

2 :リリィ ◆jntvk4zYjI :2012/10/16(火) 23:28:10.66 0
■舞台はファンタジー世界。謎多きフィジル諸島にある全寮制の魔法学園です。
フィジル付近は気流や海流が乱れがちなので、島には基本的に、転移装置を使ってくる場合が多いです。

■学園が舞台だからといって参加資格は学生キャラのみではありません。
  参加キャラは生徒でも、学園関係者でも、全く無関係な侵入者でも可。敵役大歓迎。
  また、舞台が必ずしも学園の敷地内で起きるとは限りません。
  いきなり見知らぬ土地に放り出されても泣かないで下さい。 貴方の傍にはいつも名無しさんと仲間がいます。

■当学園には種族制限はありません。お好きな種族と得意分野でどうぞ。

■オリジナルキャラクターでも版権キャラクターでも参加できます。
  完走したスレのキャラを使ってもOKですが、過去の因縁は水に流しておきましょう。
  また版権キャラの人は、原作を知らなくても支障が無いような説明をお願いします。

■途中参加、一発ネタ、短期ネタ大大大歓迎。
 ネタ投下の場合、テンプレは必ずしも埋める必要はありません。
 ただしテンプレが無い場合、受け手が設定をでっち上げたり改変したりする可能性があります。ご了承を。

■名無しでのネタ投下も、もちろん大歓迎!
  スレに新風を吹き込み、思いもよらぬ展開のきっかけを作るのは貴方のレスかも!

■(重要)
 このスレでは、決定リール、後手キャンセル採用しています。
 決定リールとは、他コテに対する自分の行動の結果までを、自分の裁量で決定し書けるというものです。
 後手キャンセルとは、決定リールで行動を制限されたキャラが、自分のターンの時に
 「前の人に指定された自分の未来」を変えることが出来るというシステムです。

例:AがBに殴りかかった。
 その行動の結果(Bに命中・ガード・回避など)をAが書く事が可能です。
 これを実行すると、話のテンポが早くなるし、大胆な展開が可能となります。
 その反面、相手の行動を制限してしまう事にもなるので、後からレスを書く人は、「前の人に指定された行動結果」
 つまり決定リールをキャンセル(後手キャンセル)する事が出来ます。

 先の例に当てはめると、
 AがBに殴りかかった→Bはまともに喰らって受けては吹き飛んだ。
 と決定リールで書いてしまっても、受け手(B)が自分の行動の時に、
 「Bはまともに喰らったように見えたが紙一重で避けていた」
 と書けば、先に書いたレスの決定書き(BはAの拳をまともに受けては吹き飛んだ。)をキャンセル出来るのです。
 ただし、操作する人の存在するキャラを、相手の許可無く決定リールで喋らせるのは歓迎されません。要注意です。

※参加に関して不安があったり、何かわからないことがあったら(説明が下手でごめんね)、どうか避難所にお越しください。
  相談、質問、雑談何でもOKです。気軽に遊びに来てね。


3 :リリィ ◆jntvk4zYjI :2012/10/16(火) 23:43:34.29 0
【TRPG】フィジル魔法学園にようこそ!9thシーズン(前スレ)
http://kohada.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1333383614/
【TRPG】フィジル魔法学園にようこそ!8thシーズン
http://kohada.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1316207939/
TRPG】フィジル魔法学園にようこそ!7thシーズン
http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1302609427/
【TRPG】フィジル魔法学園にようこそ!6thシーズン
http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1294657842
【TRPG】フィジル魔法学園にようこそ!5thシーズン
http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1291300916
【TRPG】フィジル魔法学園にようこそ!4thシーズン
http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1284645469
【TRPG】フィジル魔法学園にようこそ!3rdシーズン
http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1278699028
【TRPG】フィジル魔法学園にようこそ!2ndシーズン
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1273242531
【TRPG】フィジル魔法学園にようこそ!
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1270216495

■避難所
【TRPG】フィジル魔法学園にようこそ!避難所
http://yy44.kakiko.com/test/read.cgi/figtree/1329748719/
【TRPG】フィジル魔法学園にようこそ!避難所 (前スレ。板消滅でデータ消失/wikiにログあり)
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/computer/42940/1295181582
【TRPG】フィジル魔法学園にようこそ!避難所
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/computer/20066/1270211641

規制の巻き添えで書き込めないときは、上記の避難所か代理投稿スレでレスの代行を依頼してみてください。
代理投稿スレ(なな板TRPGまとめサイト、千夜万夜さん内)
ttp://yy44.kakiko.com/test/read.cgi/figtree/1277996017

■テンプレ

名前・
性別・
年齢・
髪型・
瞳色・
容姿・
備考・
得意技・
好きなもの・
苦手なもの・
うわさ1・
うわさ2・

【備考】
全部埋める必要はありません。
テンプレはあくまでキャラのイメージを掴みやすくしたりするものです。
また使える技や魔法も、物語をより楽しむためのエッセンスです。
余り悩まず、気楽に行きましょう。

(外部参考サイト)
TRPに関する用語の確認はこちらでどうぞ
過去ログやテンプレも見やすく纏めて下さっています
(ボランティア編集人様に感謝!)
なな板TRPG広辞苑
http://www43.atwiki.jp/narikiriitatrpg/pages/37.html

4 : ◆jntvk4zYjI :2012/10/16(火) 23:48:23.45 0
テンプレは以上です。
では、引き続き魔法学園生活をお楽しみください。

5 :ルナ・チップル ◆apJGY8Xmsg :2012/10/20(土) 23:41:56.17 0
ルナは逆詰め魔法「ワディワジ」を放った。
その目的は巨大カエルに咥えられたササミを助けるため。

ターコイズブルーの奔流がびりびりとカエルに衝突する。
と同時にその滑った体が光に包み込まれる。
すると、ササミの濡れそぼった体がずるんと抜き出されて宙に舞う。
おまけにリリィもひっついて飛んでゆく。
ルナは一瞬びっくりしたけど二人を目で追い、丘の上での無事を確認。

>「そしてルナ=サンの願いですが、それを現実にするには思いの力が足りないようです。
 ですがこの学園には、生き別れになっていた家族と巡り会えるとの噂もあり。
 この噂が現実になれば、ルナ=サンが探し続ければまた兄弟と出会えるかもしれません。 友情!」

「友情ぉ!」
ルナはユリ(偽)にむかって、ぐっと親指を突き上げた。
なぜならユリが親指を突き出してきたから思わず釣られてしまったのだ。
でもすぐに引っ込めしょんぼりする。その顔には失望の色が滲んでいる。
夢見石ではルナの願いが叶わなかったから。
ルナは肩を落としながら、丘の上にいる二人に向かって歩んでゆく。
その途中で耳に届いたのはササミの声。

>「ルナ、あんたさんやっぱりユリ(偽)とつながっとったんやな!
 カエルの腹から不意打ちかまそうとしたのを察して蜂の巣に突っ込むとはやることがえげつないがね!
 あんたにしてやられたのはこれで二回目だぎゃ…あだだだ…」

「もう!ちがうってばっ…わたしはただ、カエルに飲み込まれたあなたを助けようとしただけよ!」
ルナは声を荒げた。でもすぐに言葉を失った。
なぜなら見上げたササミの顔がハチに刺されて腫れていたからだ。

「腫れてる…ぱんぱんに腫れあがってる。とくに胸が…。あ、そこは元からね」

てくてくと丘をのぼるルナの背後では巨大カエルがカドゥケウスの杖を飲み込み跳躍。
あっとゆうまにルナを抜き去って、リリィとササミに蜂蜜をかけようとしていた。
そこへ間一髪、現れたのはフリード。

>「これを文字通り盾にしてください!!」

「おおおー…蜂蜜と氷の盾とかとってもおいしそうっ!」
目を輝かせるルナ。

6 :リリィ ◆jntvk4zYjI :2012/10/23(火) 17:51:56.32 0
木上に飛ばされたリリィと、木の穴に上半身を突っ込んだ形のササミ。
穴の中から絶叫が聞こえてきたかと思うと、木が石に変わり、さらに透明の刃が何本も突き出てきた。
「ひいっ?!」
刀が顔のすぐ横を通過して言ったのに気づいたリリィも、石のように固まってしまう。
だがそれも、怒りの叫びと共に木を砕き、姿を現したササミを見るまでだった。
「きゃあああ!!出たお化けえぇぇ!ごめんなさいごめんなさい、すぐ立ち去るから祟らないでぇえ!・・・・キャッ?!」
ずるりと足を踏み外したリリィは、あわてて目の前にある足にすがりついた。
顔をぼこぼこに晴らした相手から強い視線を向けられ、思わず絶句する。
「・・・・・え?あれ?まさか・・・・・・サ、ササミちゃん?どうして?なんでこんなにボロボロに?」
ササミは無言でゆっくり下降すると、地面に着陸するなり倒れこんでしまった。
ぎゅう、と下敷きになったリリィは、自分より体格の良い相手の下から、何とか這い出す。

そこに、ユリ改めミヤモト・ムニが、巨大カエルと友に一足飛びにやってきた。
着地音の地響きに、ヒイッとリリィがすくみ上がる。
>「本物のユリ=サンには一時期ニンジュツを教えていましたが、痩せてきたので寮に帰しておきました。
> 後は私に倒されるだけですね。 ムッハッハ!」
経緯はよくわからなかったが、ユリが現在人質になっているという訳ではないらしい。
ユリが無事なのは喜ばしいことだが、それはこちらのピンチが去ったと同義語ではない。
ミヤモト・ムニはササミを倒す気まんまんだ。
(どうする?ササミちゃんでもかなわなかったのに、今の私にあんなのまともに相手出来るわけ無い)

リリィの脳裏に、いくつかの選択肢が浮かぶ。
一つ目は敵前逃亡、二つ目はこの場にいるリリィとササミで応戦、三つ目は、話を引き伸ばしてフリード達の合流を待つ、である。
だが、一つ目はササミがもうろくに動けないのと、昏睡している女性を置いていけないから却下だ。
二つ目はリリィ一人の力で戦うことになるが、正直返り討ちにあうビジョンしか浮かばない。
三つ目が一番現実的だが、果たしてフリード達の合流は間に合うだろうか?

ミヤモトが連れた巨大カエルが口を開けたかと思うと、中から“金色の液体が”がササミに向かって吹き付けられる。
「危ないササミちゃん!」
>「これを文字通り盾にしてください!!」
リリィはササミの前に飛び出したが、なぞの液体はリリィにもササミにも降りかかることは無かった。
その寸前、リリィの前に降ってきた巨大な氷の盾が防いでくれたからだ。
「ルナちゃん!それに・・・・・フリード・・・・・え?あれ?そこの美少女って、まさかフリード君?
 いつの間にボロボロの服に着替えたの?
 あ、いや!何を着てもフリード君なら似合うけど。うん・・・・・似合う似合う大丈夫!」
着替えが無いとかそういった理由だと勘違いしたリリィは、傷口に塩をせっせと塗りこむような真似をした。

少し遅れて、ルナも到着した。
だが、彼女に向けるササミの視線は冷たいものだった。

>「ルナ、あんたさんやっぱりユリ(偽)とつながっとったんやな!
 カエルの腹から不意打ちかまそうとしたのを察して蜂の巣に突っ込むとはやることがえげつないがね!
> あんたにしてやられたのはこれで二回目だぎゃ…あだだだ…」
ササミはぼこぼこに腫れ上がった顔で、それでも眼光鋭くルナを睨み付けた。完全に敵認定である。
>「もう!ちがうってばっ…わたしはただ、カエルに飲み込まれたあなたを助けようとしただけよ!」

「ササミちゃん、ササミちゃん、大丈夫?!やっぱり冷やしたほうがいいのかな・・・・・。
 で、でもね、ルナちゃんが言ったように、わざとじゃないんだよ、ササミちゃんを助けようとしただけなんだから」
>「腫れてる…ぱんぱんに腫れあがってる。とくに胸が…。あ、そこは元からね」
(このときばかりは、リリィも「キィッ!」と顔をしかめていたようだが)

リリィの前に立っている盾からは、甘い蜂蜜のにおいがした。指先で触ってみる。さすがに舐める勇気は無いが。
「ホントだ、蜂蜜。ミヤモトさん、はにーとらっぷでも仕掛けるつもりだったのかな?」
残念!言葉の用途が間違っています。

7 :リリィ ◆jntvk4zYjI :2012/10/23(火) 17:52:52.64 0
「ミヤモトさん、さっき何でもひとつ石の力でかなえてあげるって言ってましたよね?
 じゃあ私の願い事を言います。おとなしく杖と石版を置いて、島から出て行ってください。 
 ねー、フリード君にルナちゃんだってそう思うよね?」
リリィは精一杯の虚勢と胸を張ってそう叫ぶが、しょせんミヤモトとは役者の格が違っていた。
だが、それでもリリィは話を続ける。
それは、少し前のササミとの会話が原因だった。

リリィはミヤモトが高笑いをしているときに、ササミにテレパシーで話しかけていた。
内容はこうだ。
『ササミちゃん、聞こえる?あのね、ササミちゃんは魔界で草食系ですか?』
リリィは高笑いするミヤモトを睨み付けたまま、ササミにテレパシーを送った。
『ミヤモトって人、強いよ。しかも、ササミちゃんを倒す気まんまんだよ。
 その怪我をちょっとでも回復しないと、この場から逃げることもままならないよ。
 ・・・・・・・えっとね、私、昔話の本で読んだことがある。魔界の人の中には、人の血肉を糧にする者もいるって。
 肉はちょっと無理だけど、血ならいくらでも分けてあげる。食料がいいなら、このかばんに少し入ってる。
 何とか動けるくらいに傷を治して、ミヤモトさんを追い払うか、全員でこの場から逃げよう!
 あんな石版、欲しいって言うならあげちゃえば良いよ。皆の安否にはかえられないよ』
リリィはとがった石をこっそり握りこんでいる。
ササミの返答次第では、すぐにも『魔法使い(の卵)の血』を用立てる気なのだ。

「ミヤモトさん、仮に私達ひよっこに勝てても、この島から無事に逃げられると思ってるの?
 島を出るためには、闇払いや先生達の包囲網を突破しなきゃいけないのよ?
 そもそもあなた、どうやって島に入り込んだの?まさかムササビ飛行で飛んできた、なんて言わないわよね?」

リリィはミヤモトに途切れず話しかけている。
別にきちんとした返答を期待しているわけではないが、こんな小細工はそう長くは持たないだろう。

「それに、それに、そうだ!願い事をひとつ叶えるって言うんなら、その石版の願い事もかなえないとフェアじゃないでしょう!
 その石版だって、さっきまでは人間の姿だったんだから!
 ミヤモトさんは、さっきからずっと夢見石にお願いして、願い事叶えてもらってばかりじゃない。
 夢見石の願い事だって、一度くらい代理で叶えたってバチは当たらないでしょう?そうでしょう!」
もう無茶苦茶である。

8 :ササミ ◆/TZT/04/K6 :2012/10/25(木) 22:38:47.58 0
ゾブリ……!
リリィの首元から齧られ食い千切られる音が響いた。



再生力があるといっても血液の入れ替えで弱まっており、さらに蜂毒が体内に残っているために腫れはなかなかひかない。
痛みの為に動くこともままならず巨大カエルに乗って迫るユリ(偽)ことミヤモトとユリを睨むしかできずにいるササミ。
守るはずのリリィに逆に身を挺して庇われながらも何もできない無力感に苛まされるのみであった。

巨大カエルから吐き出された蜂蜜はフリードの氷の盾によって塞がれる。
基本的に戦闘においては自分の戦闘力以外当てにしないため、この思わぬ救いの手に驚き、安堵する。
だが状況が好転したとは言い難い。
フリードやリリィはそんなわけないと言い、ルナ自身も否定しているのだが、状況的に見てとてもそれに同意することはできないのだから。
ミヤモトに対して対抗手段をとるわけでもなく、それどころか親指を突き上げあっている。
これを見ればどうしてルナの言葉を信じられようか。

だがだからと言って今の自分にはどうすることもできない。
いや、できることはある。
それを気付かせたのはリリィからのテレパシーだった。

> ・・・・・・・えっとね、私、昔話の本で読んだことがある。魔界の人の中には、人の血肉を糧にする者もいるって。
> 肉はちょっと無理だけど、血ならいくらでも分けてあげる。食料がいいなら、このかばんに少し入ってる。
その言葉にササミはビクリと体を震わせた。
それとともに全身の痛みは消えてゆき、代わりに冷たい汗が噴き出すのだ。

魔界と交流のある人間を知っているし、そういった者たちに留学前、人間社会の風習や生活を学んだ。
だが人間界に来るのは初めてであり、人間を食べたことはない。
が……リリィの想像通り、魔界の多くの者は人間の血肉を糧にすることができる。
それはササミにも当てはまる。
正確に言えば、人間の血肉ではなく、魔力の宿った血肉を糧にするのだ。
この際細かい分類は差し置いて、ここでリリィの血肉を食らえば体力は回復するだろう。

そのことを想像してササミは体を震わせたのだ。
自分が?リリィを……食べる?
現状においてそれが最も合理的で最善の方法だろう。
できれば血をすするより、その肉体を喰らう方がいい。
単純な話、摂取に要する時間の問題だ。
だが、だが……ササミは迷っていた。

魔界にいた頃の、フィジルにやってきたばかりのころのササミならばなんら迷うことなく即断できたはずだ。
しかし今、ササミの心は大きく揺れ動いていた。
リリィを食べるの、か?

少女のような美少年だったフリードが少女そのものに変わった。
ルナの願いはかなえられなかった。
どちらも害のない(?)ものだ。
今事ここに至り、リリィは夢見石を諦めミヤモトの撃退のみを念頭に身を犠牲にしようとしている。
倒すのではなく、この場から退ける、だけだ。
ならば最初から敵対せずに願いを叶えさせ大人しく去らせるでもよかった。
その選択肢を潰した自分に対し、凄まじい後悔の念が伸し掛かる。


リリィがミヤモトにめちゃくちゃとも言える話をかけ続け交渉を長引かせる後ろで、ササミがゆらりと立ち上がる。
よろめくようにしてリリィの背にたどり着き、大きく開けた口に鋭い牙が月の光に輝いた。

ゾブリ……!
リリィの首元から齧られ食い千切られる音が響いた。

9 :ササミ ◆/TZT/04/K6 :2012/10/25(木) 22:41:02.24 0
ササミが食い千切り貪ったのはリリィの三つ編みのおさげの片方。
金色のおさげ髪は無残に噛み切られ、ほどけて広がる。

一方、おさげを貪り飲み込んだササミの目には光が戻る。
だがそれと同時に言い知れぬ喪失感がササミの胸を満たすのを感じていた。
それがなんなのか、は、今は考えはしない。
やるべきことがあるのだから。
そう思っていてもササミの目からはとめどなく涙が流れ続けるのだった。

まだ全身腫れ上がってはいるが、それでも鋭い動きを取り戻し、枝分刀を14本に分裂させて剣陣を敷いていた。
思考とは別に体は動く。
リリィの前に出ると、剣陣は竜巻のように吹き荒れ、おさまった時にはササミの手に握られた一本以外姿を消していた。

その後、さらに一歩踏み出した途端に蜂蜜を防いでいた氷の盾がサイの目状に分割されその中にササミは突っ込んでいく。
バラバラになって崩れ落ちる氷の中でササミの声が響く。
「魔家百烈が一つ、橙家地走剣!!」
横凪に振るわれた剣閃から繰り出された斬撃は地面すれすれを飛び、巨大ガエルの前足を切り裂くのだ。

それと同時に消えた枝分刀が次々に上空から降ってくる。
先ほど剣陣が渦巻き吹き荒れた時、その動きに紛れさせて上空へと飛ばしていたのだった。
が、それが巨大カエルとその上のミヤモトに当たることはない。
巨大カエルを取り囲むように地に突き刺さるのだ。

もちろんこれがただ狙いを外した、というわけでない事はすぐにわかるだろう。
ミヤモトの耳に流れ込む耳鳴りが凄まじい速さで大きくなっていくのだから。

これはササミの怪音波。
だが、本来ササミの怪音波は閉鎖空間で相手の三半規管を攻撃するか、枝分刀を共振させて切れ味を持たせるくらいの威力しかない。
こういった開けた場所では効果が半減するのだが、今この時点においては話は別である。

巨大カエルを取り囲んだ複数の枝分刀は音叉の役割を果たし、陣となる。
陣内部で怪音波は乱反射して共鳴増幅していく。
それがどういう結果に結びつくかは賽の目切りした氷の中で気持ちよさそうなササミの口から語られる。
「ちょっとべたつきゃーすけど気持ちいいがね。
さあ、九元瘴音陣だぎゃ。乱反射させとるからそのカエルの振動膜も追いつきゃーせんでよー。
ぐずぐずしとったら岩は粉砕して血は沸騰するだぎゃ!」
残虐な笑みを浮かべ、更に怪音波の出力を上げる。
その言葉通り、乱反射した怪音波に巨大ガエルの血は沸き立ち今にも破裂しそうである。
ミヤモトも脱出するか何らかの対策を立てなければ同じ運命をたどるであろう。

どう出るか、ササミは氷に浸かり、蜂毒を冷やしながら一挙手一投足を見逃すまいと見据える。
目的はあくまで撃退。
向かってくるのなら撃退するが、逃げるのであればそれでよいのだ。


ミヤモトに一気呵成に攻勢をかけたササミであったが、ミヤモトだけに集中していたわけではない。
項と背中の目が鋭く見つめる先にはルナがいる。
「ルナ、あたしゃリリィやフリードみたくあんたを信用せえへん。
両手両足くらいはもらうがね!疑いが晴れたらくっつけたるだぎゃ!」
背中の顔の発した言葉は、そのままの意味としてルナに襲い掛かる。

上空から二本の枝分かれ刃がルナに向かって落ちてくるのだ。
ミヤモトを囲んだようにただ落ちてくるのではない。
明確な意思と切れ味をもってルナに上空から襲いかかるのだ。

10 :ルナ・チップル ◆apJGY8Xmsg :2012/10/26(金) 19:19:22.17 0
リリィはミヤモトに、おとなしく島から出て行って欲しいと願った。
それを聞いたルナは人形のような顔。感情を潜めた。
出来るだけ深く、この場にいる誰からも心を読まれないように、
リリィと出会ったころのイメチェンする前の大人しいルナより深く。
わびしく…

でも、次のシーンを見て絹を裂くような悲鳴をあげる。

ゾブリ……!

頭が真っ白になってこめかみがじんじんする。思考停止の一歩手前。
リリィの首筋に喰らいついているササミをみて、目を疑う。
何かの間違いであってほしいと……
案の定、よく見てみればササミがずるずると飲み込んでいるのはリリィのおさげ一本。
それはまるで黄金の味噌スープで、光輝く細めんのように綺麗なしろものだった。

(どうして?ササミ……)
ルナの疑問にはすぐ答えが出た。
リリィの髪を食べて力を取り戻したササミはミヤモトへと猛攻。
そして――

>「ルナ、あたしゃリリィやフリードみたくあんたを信用せえへん。
 両手両足くらいはもらうがね!疑いが晴れたらくっつけたるだぎゃ!」

上空から二本の枝分かれ刃がルナに向かって落ちてくる。

「そうね。ここであんたと決着をつけて、ユリと手を組むってのも大ありかも」
タクトを構えて、全魔力を先端に集中する。

「大いなる力の根源よ、光と闇よ。天の理、地の理、人の理よ。
我は法を破り理を超え反転の意志をここに示すものなり。
反転せよ。反転せよ。反転せよ。繰り返すつど三度。
ただ移り流れるうつし世を反転する!――メガワジッ!!」

詠唱とともにタクトの先端から放たれた光はターコイズブルーを超えて
銀色を超え、真っ白な光龍と化し「ミヤモト」へと迫る。
ルナはササミの枝分かれ刃を避けもせずに両手両足と斬断され芋虫のようにその場に転がる。

「…わたしにとって、リリィは一番のおともだちだから。
リリィがユリを追い払いたいっていうのならそうする。だから
ササミもわたしを信じて……」
ルナは反転魔法でミヤモトの速さを封じるつもりで極大反転魔法を放ったのだ。
だが、力みすぎてその効果は謎。
ただ速さを反転させてミヤモトを遅くすれば、非力なリリィとフリードでも、
弱ったササミでも何とかできるかもと、あとのことを託したのだ。

「わたしの願いはひとつよ。ずっとリリィとおともだちでいること…」
ルナは不敵な笑みを浮かべ、ミヤモトを見据えた。

11 :ミヤモト ◆sto7CTKDkA :2012/10/28(日) 17:20:01.22 O
>5-10
カエルが蜂ではなく蜂蜜を吹き出したのはミヤモトには計算外だったが、氷の盾で防がれては結果は同じ。
ミヤモトとしても邪魔になる盾を放置する気はないが、リリィが話しかけてきたためにそちらを優先する事になる。
敵と決まっていないのに人の話を聞かないのは、シツレイになるのだ。

>「ミヤモトさん、さっき何でもひとつ石の力でかなえてあげるって言ってましたよね?
> じゃあ私の願い事を言います。おとなしく杖と石版を置いて、島から出て行ってください。 
> ねー、フリード君にルナちゃんだってそう思うよね?」
「ワタシの目的が石である以上、杖も石版も渡せません。 イセキ・二チョー!」
アクのニンジャなりに丁寧に事情を説明するミヤモトであったが、リリィは聞かずに言葉を続ける。
リリィの目的が時間稼ぎにあるのをミヤモトが見抜けなかったわけではない。
攻撃しなかったのは、はっきり言ってリリィを甘く見ていたからである。
テレパシーを聞かなかったミヤモトは、リリィが援軍(闇払いや先生)到着を願っていると考えたのだ。
自分の血肉でササミを回復しようなどというのは、悪のニンジャには理解不能だったので。

「ベツジンに変装して島に乗り込むなど、ワタシにはベビー・サブミッションなのです。
 石版の願いなどは聞き出すことも不可能であり……」
律儀にリリィに返答していたミヤモトは、そこで言葉を止めた。
おさげを食いちぎって立つササミの目に光が宿るのを見て、時間稼ぎをしていたリリィの真の狙いを知ったので。
「ドーモ、リリィ=サン。 ミヤモト・ムニです」
ササミにしたのと同様のオジギは、ニンジャにとって戦い前の儀式のようなもの。
ミヤモトは明確にリリィを敵と認定したのだ!

>「魔家百烈が一つ、橙家地走剣!!」
「ムウッ!」
氷の盾を切り裂いて剣閃を飛ばすササミに対応すべく、ミヤモトは妖刀ヘイボンを抜いて身構える。
足を切られて大きく体制を崩すカエルの上で巧みにバランスを取っているのは、タツジンのワザマエであろうか。
しかし、ミヤモトの予想に反して上空から落ちる刃は、直撃ではなく周囲を囲むように落ちてくる。
目的は何か、それはすぐにササミの口から明らかになった。
>「ちょっとべたつきゃーすけど気持ちいいがね。
>さあ、九元瘴音陣だぎゃ。乱反射させとるからそのカエルの振動膜も追いつきゃーせんでよー。
>ぐずぐずしとったら岩は粉砕して血は沸騰するだぎゃ!」

その言葉が事実なのはすぐに身を持って知ることになるが、ミヤモトは動じない。
「ショーシ・センバン! カトン・ジツ!イヤーッ!」
ミヤモトは 妖刀ヘイボンを 天にかざした!
なんと! 妖刀ヘイボンから炎が天に向けて立ち上がった!

炎は攻撃には役立たずだが、目を引ければそれで十分。
本命は巨大カエルの行動だ。

カエルが一瞬口を開いたかと思うと、その舌が電光石火の速さで複雑に伸びる。
狙いは戦闘力の無いリリィであり、舌を避けることが出来なければリリィはカエルの腹の中だ。

「ニンジツ・クナイダーツストーム! イヤーッ!!」
攻撃の成否に関わらずミヤモトの次にする事はササミの攻撃を防ぐ事。
ミヤモトがその場で竜巻のように回転すると、四方八方にクナイダーツが投げられる。
無数にあるかのように投げられるダーツの矢のうち、下に向かうものは音叉の役割をはたす枝分刀を壊すための物。
それ以外の周囲に撒き散らされる物は、無差別に周囲を襲う攻防一体の武器となる。

止めるのが間に合わなかったためにニンポウで呼び出されたカエルは爆発四散したようになるが、そこはニンポウカエル。
体は消え失せ、カエルの腹の中に入っていたものがミヤモトの足下に転がるのみだ。
その後放たれたルナの反転魔法を避けることは無かったが、それは避けた所をササミに狙い撃ちにされるのを防ぐため。
また“何か”を反転されても自分の優位は動かないと確信しての判断だ。
実際ルナの反転魔法を受けて動きが遅くなっても、ミヤモトはクナイダーツを投げ続けている。
ササミはもちろん、フリードやルナやリリィにも無数のクナイダーツが襲いかかるのだ。
ただし、リリィがカエルに食べられていればクナイダーツには当たらないだろう。
クナイダーツストームは、足下にクナイダーツを投げる事はないニンジツなのである

12 :フリードリッヒ ◆cOOmSNbyw6 :2012/10/29(月) 18:40:36.96 0
フリードは防御体制をとっている
グレンは敵を睨みつけている
>「ニンジツ・クナイダーツストーム! イヤーッ!!」
「フリージングシールドラァァァイ!!」
『らぁい?』(猫語)
飛びクナイを止め砕け散るフリージングシールド
だが攻撃を防ぐという役割は十分に果たした
「反撃させてもらいます!フリージングニードル!!」
フリードの目の前に氷柱が出現し尖った方を向けミヤモトへ飛んでいく
「あたれぇぇぇぇぇ!!」
叫んだところで当たるわけが無いと思うのだが
精神力を力に変える魔法ならばもしかしたら効果があるのかもしれない
「連射!連射!連射!!」
次々と新しいツララを出現させ飛ばすフリードリッヒ
このツララには当たったところが凍りつくような追加効果は無いが
しかしながら一発あたりの使用魔力が低いと言う特徴を持ち連射が効くのだ

 僕の背をドワーフよりは高くしてくれた事は感謝しますが・・・・・僕の大切な友達を傷つけると言うのなら
 このフリードリッヒ・カイ・ポリアフ・ザンギュラビッチ・シャーベットビッチ・デューク・ノクターン容赦せん!!」
『貴族ってやたらフルネーム長いよね』(猫語)



はたしてどう戦い抜くのか?

13 :リリィ ◆jntvk4zYjI :2012/11/03(土) 18:00:03.98 0
>「ベツジンに変装して島に乗り込むなど、ワタシにはベビー・サブミッションなのです。
> 石版の願いなどは聞き出すことも不可能であり……」
けっこう律儀なミヤモトの言葉を聴くともなしに聴いていると、ササミの息遣いをごく近くに感じた。
ササミもようやく、リリィの血を使う決心がついたのだろう。
次にくるであろう衝撃を覚悟し、知らずリリィはぎゅっと拳を握り締める。
ゾブリ……!
だが、何かが食いちぎられる音が聞こえても、リリィの身に痛みは訪れなかった。
(・・・・・?)
振り返ると、ササミは何かを租借していた。思わず首筋に触れて、そして知った。
ササミはリリィの血肉ではなく、髪を喰らうことで回復したということを。
(何で泣いてるの?ササミちゃんは私のためを思って、血ではなく髪にしてくれたのに))
リリィは、自分の行動が、ササミにどのような影響を与えたかまるで気づいてない。
だから微笑を向け、ぴっと親指を立ててみせた。
ササミに力が戻れば、全員の力でこの場を切り抜けることがそう難しくないことを知っていたからだ。
だが、リリィの考えは半分正しく、半分は間違っていた。

>「ドーモ、リリィ=サン。 ミヤモト・ムニです」
はは、とリリィはひきつった笑いを浮かべると、知らず一歩後ずさりした。
怖い。
「殺すぞ」と口汚くすごまれたほうが余程ましである。

>「魔家百烈が一つ、橙家地走剣!!」
>「ムウッ!」
体制を立て直したササミの攻撃に、ミヤモトは妖刀ヘイボンを抜いて身構えている。
足を切られて大きく体制を崩すカエルの上なのに、転げ落ちもせず平然としているのは、さすがである。
だが、リリィがちゃんと把握できたのはここまでだ。
このさきリリィは、戦闘以外のことで頭がいっぱいになるのだから。

それは、ササミの宣言から端を発した。
>「ルナ、あたしゃリリィやフリードみたくあんたを信用せえへん。
>両手両足くらいはもらうがね!疑いが晴れたらくっつけたるだぎゃ!」
ササミの枝分かれ刃が、上空から二本ルナに向かって落ちてくる。
とめる暇などあるはずがなかった。
「ルナちゃん!避けて!!」
>「そうね。ここであんたと決着をつけて、ユリと手を組むってのも大ありかも」
>タクトを構えて、全魔力を先端に集中する。
リリィが驚愕に目を見開いた。
この期に及んで、なぜそんな心にもないことを、と。

>詠唱とともにタクトの先端から放たれた光はターコイズブルーを超えて
>銀色を超え、真っ白な光龍と化し「ミヤモト」へと迫る。
>ルナはササミの枝分かれ刃を避けもせずに両手両足と斬断され芋虫のようにその場に転がる。


14 :名無しになりきれ:2012/11/03(土) 18:01:23.64 0
「あああああああ!うわああああ!!」
リリィは大声で叫びながら、ルナに駆け寄った。
足元には、切り落とされたルナの手足が転がっている。

「ルナちゃん!ルナちゃん!何でなの?何であんな馬鹿なことを!」
>「…わたしにとって、リリィは一番のおともだちだから。
>リリィがユリを追い払いたいっていうのならそうする。だから
>ササミもわたしを信じて……」
「ルナちゃん、しゃべっちゃだめ。今血を止めるから。だから・・・・・」
リリィはそこで言葉につまった。顔がくしゃりとゆがむ。
「・・・・・・・馬鹿だ、ルナちゃん本当に大馬鹿だよ。
 あの人はミヤモトって名前のニンジャで、本物のユリさんは別にいるんだよ。
 そんなことも知らされていないルナちゃんが、仲間なんてありえないでしょう?
 なのに、なんで嘘言ったの?なんで避けなかったの?」
わかっている。きっとルナは、ササミに信頼して欲しかったのだろう。
だが、そのささやかな願いが招いた結果はあまりにも重い。
この怪我では、ササミから血を分けてもらう前に、ショック死してしまうかもしれないのだ。
信じてもらう前に死んでしまっては、元も子もないではないか!
「本当に・・・・・・ルナちゃんの天邪鬼!!」

だが、リリィはルナの傷口を消毒しようとして、はっとした。
なぜだろう?これだけの重傷だというのに、出血量があまりにも少ない。
そして、洗い流して現れた切断面は、あまりにきれい過ぎた。まるで鏡のように滑らかで、ありえないほどに。
(まさか・・・・・・)
リリィは切断面同士を目を凝らして確認しつつ、ルナの右腕を慎重に傷口に押し当てた。
足元に応急手当キットを置くと、その中から出した包帯で腕を胴体に密着させるように固定する。
「ルナちゃん、どう?指先は動く?」

>「ショーシ・センバン! カトン・ジツ!イヤーッ!」
「ふぇ?」
>カエルが一瞬口を開いたかと思うと、その舌が電光石火の速さで複雑に伸びる。
次の瞬間、リリィはルナの目前から消滅した。

リリィはニンポウカエルの腹へ消えたが、まだぼろをまとった美少女・・・・美少年フリードが健在だ。
仲間であるルナも、そのシールドで守ったことは想像に堅くなかった。

一方、巨大カエルの腹の中に納まったリリィは混乱していた。
突然真っ暗で、妙に生暖かく湿った場所に放り出されたからだ。
「なにここ・・・・・痛っ!この水、ぴりぴりする・・・・・・」
リリィは手探りならぬ足探りで、水が無い場所を探した。
そしてすぐに、他よりも一段高い場所を見つけた。足場は小さかったが他よりも硬くしっかりしていた。
(ふぅ。それにしてもここどこだろ?何でこんなに地面がぐにゃぐにゃで揺れてるの?
 はっ!もしかして、これも学園の七不思議?!)
リリィは大声で、助けを呼ぼうと大きく息を吸い込んだ。
と、その時。
ぱあっと霧が晴れるように、突然視界が開けた。

「ギャフッ?!」
ニンポウガエルを消したミヤモトの足元に、石版と、謎の杖と、ぼろぼろのリリィが落ちてくる。
リリィは視界の端に、ミヤモトが皆に攻撃しえいるのを捕らえた。
「止めて!」
リリィは石版の上にしりもちをつきながら、思わずそう叫んだ。
「東方の友達からは、ニンジャは正義の味方だって聞かされてたのに!
 私の友達にひどい糊塗するなんて、ただの悪い人じゃない!もうがっかりです!」
そう叫ぶなり、リリィはミヤモトの足元にタックルした。
避けなければ、動きが遅くなったミヤモトは引き倒されてしまうだろう。


15 :ルナ・チップル ◆apJGY8Xmsg :2012/11/06(火) 01:00:43.07 0
>「・・・・・・・馬鹿だ、ルナちゃん本当に大馬鹿だよ。
 あの人はミヤモトって名前のニンジャで、本物のユリさんは別にいるんだよ。
 そんなことも知らされていないルナちゃんが、仲間なんてありえないでしょう?
 なのに、なんで嘘言ったの?なんで避けなかったの?」

「嘘を言ったのは、敵をだますにはまず味方だから…。
避けなかったのは、ササミがほんとに狙ってるなんて夢にも思わなかったんだもん…。
でもおかげで…疑いは晴れたかも……。私が…ミヤモトに攻撃したから……」
血の気の失せた薄い唇が動く。途切れがちの呼気と一緒に次第に消えゆく声。
ルナは、長い睫毛をゆるく閉じたまま微笑んでいた。

>「本当に・・・・・・ルナちゃんの天邪鬼!!」

「……そうだね。わたし、天邪鬼だね。ごめんね、リリィ」

>リリィは切断面同士を目を凝らして確認しつつ、ルナの右腕を慎重に傷口に押し当てた。
>足元に応急手当キットを置くと、その中から出した包帯で腕を胴体に密着させるように固定する。

>「ルナちゃん、どう?指先は動く?」

「……んん、うごく。うごくよぉ」
手の指を、ぞろぞろと動かせて見せるルナ。すると次の瞬間、リリィが眼前から消えた。
なんと、巨大ガエルが彼女を飲み込んだのだ。魂消たルナがタクトを振りかざすも、魔力はゼロ。
ぴちちと静電気のようなものが先っちょから出るだけで逆にニンジャの反撃が繰り出される。
ミヤモトが竜巻のように回転しながらクナイダーツを乱射してくるのだ。

「ふいいいっ!!」
冷たいきらめきがルナを襲う。とっさに突き出した手のひらに痛みが走り
うなじを影が抜けると髪の毛がひとつまみ…、宙に舞い散った。
無数のクナイがびゅんびゅんと飛んで、所かまわず突き刺さっているのだ。
怖すぎる。そう思ったルナが身をすくめたその時…

>「フリージングシールドラァァァイ!!」

「はわわ!!」
氷の盾が出現してルナを守る。そしてフリードの反撃。氷柱の連射。
続けてニンポウガエルを消えて、ミヤモトの足元に、石版と、謎の杖と、ぼろぼろのリリィが落ちてくる。

16 :ルナ・チップル ◆apJGY8Xmsg :2012/11/06(火) 01:10:43.91 0
「リリィーーっ!!」ルナは叫ぶ。
ぼろぼろのリリィ。ぼろぼろのササミ。美少女姿のフリード。
こうなってしまったのもみんなミヤモトのせいなのだ。
ルナは自分の反転魔法で、善忍のミヤモトを悪忍に変えてしまったことなんて知らない。
知りたくもない。

リリィはミヤモトの足元にタックルした。
その努力を無にしないためにも、ルナは駆ける。
ミヤモトのもとに!

そして謎の杖をかすめとり、地に沿って振り回す。 銀光が弧を描く。
石版をゴルフボールのように叩いてフリードにパスするのだ。
彼が守ることが得意そうとルナはふんだのである。
それにリリィに何かあれば、母性本能で猛るササミにミヤモトは攻撃される。

「夢見石は、悪いことに使っちゃだめなのよ!」
ルナは叫んだ。でも、悪い願いも良い願いも、ほんとのことはよくわかっていない。
願い事を叶えられたら幸せ。単純にそんな気持ちしかないのだ。

17 :ミヤモト ◆sto7CTKDkA :2012/11/07(水) 14:34:15.82 O
>12-16
>「反撃させてもらいます!フリージングニードル!!」
>「あたれぇぇぇぇぇ!!」
>「連射!連射!連射!!」
「イヤーッ!」
反転魔法で動きが遅くなったミヤモトだが、その周囲にはニンジュツによって次々にクナイダーツが作り出されていく。
避けられないなら氷針とクナイダーツの相殺を狙うというわけだ。

> 僕の背をドワーフよりは高くしてくれた事は感謝しますが・・・・・僕の大切な友達を傷つけると言うのなら
> このフリードリッヒ・カイ・ポリアフ・ザンギュラビッチ・シャーベットビッチ・デューク・ノクターン容赦せん!!」
「それで勝つつもりかフリード=サン! バットージュツ!」
ニンジュツによって一瞬で抜き放たれた妖刀ヘイボンが、ミヤモトの手に握られてギラリとブッソウな光を放つ。
ミヤモトは妖刀ヘイボンの斬撃で一気に切り返しをはかったのだ。
しかしその一撃は、足を狙ったリリィの不意打ちに阻止される。

>「止めて!」
>「東方の友達からは、ニンジャは正義の味方だって聞かされてたのに!
「グワーッ!」
ウカツ! リリィのタックルを受けたミヤモトは綺麗にすっころんだ!
動きが遅くなっている上に攻撃中ではあったが、タツジンのニンジャともなれば避ける時は避けるのだ。
リリィが捨て身でなかったなら、ここまで見事にタックルは決まらなかっただろう。
それでもヤバイ級ニンジャであるミヤモトは、その隙を狙うルナの行動を見逃しはしない。

>「夢見石は、悪いことに使っちゃだめなのよ!」
「キリステゴーメン!」
跳ね起きるミヤモトの持つ抜き身の妖刀がルナの持つ杖に向かい、石版を打ち渡すのを止めようとする。
結果夢見石を打たれるのを止めは出来なかったものの、妖刀ヘイボンはルナの手から杖を叩き落とした。
そのまま勢いを殺さずに動く妖刀ヘイボンがピタリと止まったのは、近くにいたリリィの首の側。
捨て身であった事がタックルの成功につながったが、それがリリィに取って大きな不利益になったのだ。
速度を落とす効果が終わったのか、もうミヤモトの動きはいつもと同じ速さになっている。

「フリーズ! ニンジュツ、シニガミシールド!」
高らかに宣言するミヤモトの言葉の意味はわからなくても、意図は見る者全てにわかっただろう。
動くな。 下手に動けば人質にしたリリィの命はないぞ。 と!
「なかなかのコンビネーションでしたが、ルナ=サンはまずお友達のリリィ=サンを助けるべきでした。
 ササミ=サンもリリィ=サンもフリード=サンも残念に思っているでしょう。
 ルナ=サンがお友達の命よりも夢見石で自分の願いを叶えるのを優先させた事を!」
場の混乱を願うミヤモトは、思ってもいない事を口にした。
ミヤモトにしてみれば、リリィを連れて行って夢見石を置いていった方が良かったのだ。

「リリィ=サンは杖を拾ってからゆっくりと起き上がってください。
 フリード=サンには、夢見石を置いてゆっくり後ろに下がってもらいましょう。
 ルナ=サンとササミ=サンはリリィ=サンの命が大事なら動かないように。
 人質交換です。 リリィ=サンは石版を持った私が島を離れて安全な場所に行ってから解放します。
 変な気を起こしてワレワレの問題をこれ以上複雑にするのはお互いにやめましょう……カラダヲタイセツニネ!」
嘘である。 悪忍と化したミヤモトは、安全な場所に逃げたらリリィをザンサツする気満々だ! コワイ!

「私も少し前までは仲間や他人の事を優先するのがタイセツだと思っていました。
 しかしわかったのです。 世の中やはり自分が大事であると。
 魔法学園の皆=サンも自分に正直になりましょう。
 他人の事を優先しても死んだら終わりです。 ショッギョウ・ムッジョ!」


18 :ササミ ◆/TZT/04/K6 :2012/11/08(木) 00:48:51.44 0
賽の目切りになった氷に身を浸しながらササミは戦況を見ていた。
九元瘴音陣の超音波領域にいながらミヤモトは動く気配がない。
カエルは前足を斬られほとんど動けず、爆散は時間の問題。
だがかといって、ミヤモトが動けば即座にそこを狙い撃ちにする。
流石にそれを読んでいるのだろうが、ササミはこのままミヤモトを爆散させてもかまわない。
むしろその方が後顧の憂いが断てると思っていた。

それと同時に後方、ルナに対しても注意は怠っていなかった。
だからこそ、ササミの項と背中の目はある意味信じられないものを見てしまった。
なんとルナはミヤモトに極大反転魔法を放ったまま、回避も防御もせずに四肢を切り落とされたのだ。
どんなに隠しても僅かでも背信があれば四肢切断という局面に際して体は動いてしまうもの。
だがルナは一切の動きをしなかった。
すなわち、背信など全くしなかったという事なのだ。
「そうやったかね。ほやったらくっつけたらんとあかんね」
絶叫しながらルナに向かうリリィに「傷口をあてがうだけでくっつく、そのように切ったから」そう告げようとした時、ミヤモトが動いた。

>「ショーシ・センバン! カトン・ジツ!イヤーッ!」
ミヤモトがカエルの上で妖刀ヘイボンを天にかざし炎が天に立ち上る。
「はっ!この距離で当たるとおもやーすか!?」
それに素早く反応するササミだが、その狙いまでは判っていなかった。
いや、それ以上に誰かを背に守りながら戦うという事にあまりにも慣れていなかったのだ。

既に体は十分に冷えて蜂毒も抜けた。
天に立ち上る炎がどのようになろうとも回避できるようにその場から動いてしまったのだ。
「この陣はどこから怪音波を照射しようとも効果は変わらんがね…!?」
ミヤモトも炎がササミに当たるとは思ってはいないだろう。
回避の為に音源が動くことで九元瘴音陣を崩そうとしている、という狙いだとササミは思ってしまっていた。
それが大きな間違いであると、即座に知ることになる。

爆散寸前のカエルの口が大きく開き、電光石火の速さで舌が伸びてルナの手足をくっつけていたリリィに伸びたのだから。
回避さえしていなければその舌を迎撃することもできたかもしれない。
だが、この位置からではどうにもできず、よすぎるササミの動体視力はただただリリィが飲み込まれる様を見送るしかなかったのだ。

歯ぎしりをしたササミの胸に己の不覚という気持ちと共に信じられない感情がうねり顔を出す。
それは「自分の食い物を横取りされた」という感情である。
その感情はササミの反応をさらに一歩遅らせた。

リリィ救出に飛び出そうとした時にはミヤモトが既に攻撃に移っていた。
>「ニンジツ・クナイダーツストーム! イヤーッ!!」
四方八方に打ち出される苦無の嵐!
ある程度距離を取れば躱し叩き落とすこともできるが、近づくことは至難の業。
それと共に次々と苦無は陣を形成する枝分刀を砕いていく。
「〜〜〜!!甘くみやあすなよ!」
崩壊しつつある人に最大出力の怪音波を照射し、カエルが爆発四散したところでミヤモトを囲んでいた枝分刀は全て砕かれてしまった。
元は水晶である。
粉々になった枝分刀はキラキラと月光を反射しながら周囲に舞い上がる。

だがそれでもミヤモトのクナイダーツストームは止まらない。
カエルを爆発四散させたのでその腹に入っていたリリィと夢見石、杖が転がり出たのだが近づけない。
>「反撃させてもらいます!フリージングニードル!!」
氷でシールドを形成しつつ氷柱を無数に飛ばして苦無を相殺していく。
その隙を突き走り出すルナを見てササミは次の手に入った。

19 :ササミ ◆/TZT/04/K6 :2012/11/08(木) 00:50:53.71 0
キラキラと輝く破片の中、フリードの反撃にクナイダーツストリームを止めて妖刀ヘイボンを振りかざすミヤモト。
そんな中、ササミの背ではいくつかの手袋が忙しく印を結び、項と背と両手の甲の口が小さく呪文を刻む。

駆け寄ったルナが手にした杖で夢見石を打ってフリードに。
が、そこまでだった。
リリィの捨身タックルで体勢を崩してフリードに切りかかる事は出来なかったが、ルナの手から杖を叩き落とすミヤモト。
そのままの速さでリリィの首に刃を当ててそれぞれの動きは止まる。

ミヤモトはリリィを人質にとってこの戦闘を終わらせようとしたのだ。
杖と夢見石を置き、脱出できたらリリィを開放する、と。
そして付け加えるようにこう続けた。
>「私も少し前までは仲間や他人の事を優先するのがタイセツだと思っていました。
> しかしわかったのです。 世の中やはり自分が大事であると。

「魔界では、人質は意味をなさんのだがね。
それは逆にいやあ人質を取って交渉できやせんと、もう自力では打開できへんっていっとるようなもんだからだぎゃ。
つまりは弱みを見せとるゆーだけなんだわ」
その言葉と共にササミの体は歪み消えてしまう。
代わってミヤモトの数歩後ろ、枝分刀の破片が煌めくところからササミが現れた。
その小脇にはボロボロになったリリィが抱えられている。

「残念なんておもっとりゃせえへんがや。
ルナが夢見石をはじいとる間に私がリリィを助けたんやからにゃー。
九元瘴音陣は音叉の刀を砕いて破られるような簡単なもんやないんだがね。
破片を使って幻術に移行する二段、三段も構えがあるんやわ」
その言葉と共に首筋に刃を当てていたリリィも輪郭が歪み消えていった。
そして二段、三段と言い放つことで、今見えているササミとリリィは実体であるかどうかもはっきりさせない。

更にササミは言葉を続ける。
「あんたさん、少し前まではって言ったけど、それって何時の話だがね?
もしかしたらあの時、ルナの反転魔法で変わったんやあらへんのか?」
なんとなくではあるが、確信に近いものがあった。
そして今ミヤモトに一番近い位置にいるルナに視線を向ける。
「ルナ、反転魔法でミヤモトが心変わりしたのならあんたの責任やがね。
あんたに魔力がもうないのはわかっとる。
けどな、闘いってのは最後の最後は根性!
精根尽き果て限界を超えたその先に戦士だけが味わえる快感があるんだがね!
限界を超えて根性見せてみやあせ!!」
そう宣言してルナに決着をつけることを強要するのだった。

それと共にルナの四肢を切り落とした二本の枝分刀がゆらりとルナの周りに浮かぶ。
一本はルナを守るために。
一本はミヤモトの動きをけん制するために。

20 :リリィ ◆jntvk4zYjI :2012/11/10(土) 01:45:40.48 0
あ、ありのまま 今起こったことを話すぜ!
「ミヤモトさんへのタックルが成功したと思ったら、いつの間にかササミちゃんの小脇に抱えられていた」
 な… 何を言ってるのか わからねーと思うが、おれも何をされたのかわからなかった…

(何をされたのかわからなかった…みたいな?)
ぶらーん、と、小脇に抱えられたままのリリィはそう一人ごちた。

目の前には、なかなかシュールな光景が広がっていた。
なんと、ミヤモトは『リリィ』に刃を突きつけ人質にとっているのだ!
そして脅している相手は、ルナ、フリード&グレン、そして何と!『ササミ』である!
(じゃあ、ここにいる私達は何なの?ユータイリダツってやつ?)
優秀な魔法使いは、魂だけで飛べると聞いたことがあるが、あいにくリリィはそんな優秀ではなかった。

ミヤモトは一同を制しつつ、人質になっている『リリィ』に杖を拾えと命じている。
(うーん。拾えっていわれても・・・・・・ねえ?)
ちらっとササミのほうを見るが、彼女は微動だにしていない。
どうしたものかと考えているうちに、ミヤモトが刀を突きつけていた『リリィ』は消えてしまった。

>「残念なんておもっとりゃせえへんがや。
>ルナが夢見石をはじいとる間に私がリリィを助けたんやからにゃー」
リリィはなんとも言いがたい顔をしながら「どうも」というように片手をあげた。
声を出さないのは、それが九元瘴音陣にどんな悪影響を及ぼすかわからなかったからだ。

>「あんたさん、少し前まではって言ったけど、それって何時の話だがね?
>もしかしたらあの時、ルナの反転魔法で変わったんやあらへんのか?」

ササミはルナに、もう一度反転魔法を使ってミヤモトを元に戻し、自分の魔法の落とし前をつけろと言った。
リリィは軽い違和感を覚えながら、ササミの言うところの『少し前』を思い出してみた。
状況と会話から察するに、ササミが言っているのは、手足が切断される寸前に放った魔法ではないだろう。
そこまで考えて、リリィはあれ?と首をひねった。
そして声の代わりに、テレパシーを使ってミヤモト以外のメンバーに語りかける。
『ちょっと待ってよササミちゃん。それってさっき、ルナちゃんが手足斬られる直前に放った魔法じゃないよね?
ミヤモトさんが「ルナちゃんに感謝」とか言った時の魔法は、命中、してなかった気がするんだけど
 あの時の魔法が命中したと言うのなら、ルナちゃんが両手足切り落とされる直前に使った魔法も命中してることになるよ。
 でも・・・・・・ミヤモトさん、心境には全っ然!変化なさそうに見えるよ。
 これって、一体どういうこと?』

似たような条件で魔法を発動させても、同じ効果が得られない。ということは・・・・・・
『まさかと思うけど、ルナちゃんの魔法って、毎回違う効果になるの?
 反転魔法を重ねかけして元の状態に戻すためには、前回と同じ状況にしないとだめ・・・・・・とか?』
もしそうだとしたら、再現は至難の業だ。
もしも場所や体調まで同じでないと無理、ということなら、ほぼ不可能と言っていい。
『ま、まさかね』

リリィが想像してしまった『不可能』を『可能』にするもの。
それは、確かに今この場に存在している。しかも、味方の手の内にあった。
だが、リリィはそのことについては何も触れなかった。
当然だ。
大事な友達に、危険なものかもしれないが、とりあえず使ってみろ、などと、どうして言えるだろう?
自分が試すならともかく、である。
それでも、どうしても視線は『それ』に吸い寄せられてしまう。

フリードが受け取った『願い事を何でもかなえてくれる石版』へと。

21 :フリードリッヒ ◆cOOmSNbyw6 :2012/11/10(土) 05:28:16.35 0
>「他人の事を優先しても死んだら終わりです。 ショッギョウ・ムッジョ!」
「そうですよね死んでしまったら御終いですよね・・・・なんて言うと思いましたかこの卑怯者!!」
『さすが忍者汚い!汚い忍者!!』(猫語)

>「残念なんておもっとりゃせえへんがや。
>ルナが夢見石をはじいとる間に私がリリィを助けたんやからにゃー」
「いつの間に!?」
『さすがササミさんすばやい!そこに痺れるあこがれる』(猫語)

フリードに視線を向けるリリィ
「ちょっとそんなに見つめられたら照れるじゃないですか・・・・・って言う冗談はともかく
 こういう何でも願いが適う系のアイテムは何かてひどいしっぺ返しがあるに決まってますので
 あまり多用するのはどうかと・・・・・・いやむしろ破壊すべきかもしれません
 下手をすれば世界が滅ぶ原因になりかねませんので」
『そうかな?そんなに万能でもなさそうだけど』(猫語)
「じゃあもしミヤモトさんを善人にしてくれと願ったらどうなるんですか?
 人間の人格を捻じ曲げるなんて絶対にやってはいけないことの一つですよ?
 人を洗脳して操る悪の結社とやってることは変わらないんですよ」
『そうだねカタルシスウェーブだね』(猫語)

はたしてついかっとなって願ってしまうのか?

22 :ルナ・チップル ◆apJGY8Xmsg :2012/11/10(土) 23:10:34.08 0
>「なかなかのコンビネーションでしたが、ルナ=サンはまずお友達のリリィ=サンを助けるべきでした。
 ササミ=サンもリリィ=サンもフリード=サンも残念に思っているでしょう。
 ルナ=サンがお友達の命よりも夢見石で自分の願いを叶えるのを優先させた事を!」

「それはちがうわよ!リリィは夢見石が悪用されることを心配してた。
だからわたしは、あのこの命よりも心のほうを大切におもったんだから!」
ミヤモトに手を叩かれて、手の甲に一筋の血を滲ませながらルナは叫んだ。
正直、ミヤモトの動きは意外。
ルナはミヤモトが夢見石を追いかけて、リリィから離れると思っていたのだ。
そうなれば動きは特定されて読みやすい。距離が生まれれば間が生まれる。
ササミの広い刃圏にミヤモトが飛んで入れば勝利は必至。そう確信していた。
しかし、ミヤモトのほうが一枚上手だった。
彼はリリィを人質にとり夢見石の返却を要求する。

>「私も少し前までは仲間や他人の事を優先するのがタイセツだと思っていました。
 しかしわかったのです。 世の中やはり自分が大事であると。
 魔法学園の皆=サンも自分に正直になりましょう。
 他人の事を優先しても死んだら終わりです。 ショッギョウ・ムッジョ!」

「人って死んだら終わりだから他人を優先するんじゃないの!?
みんなを思う気持ちが、たくさん絡み合って練りあがっていって
永遠に終わらないものができあがるのよ。だからあなたは、リリィを放したほうがいい。
もしもリリィに何かあったら、ササミもフリードも私もあなたのことを死ぬまで許さないよ」

そういって、ミヤモトをねめつけるルナだったがリリィが人質にとられていてはどうしようもなかった。
口から出た言葉は負け惜しみのようなもの。でも…
状況は一変した。なんとリリィが人質にとられて見えていたのはササミの幻術だったのだ。

>「ルナ、反転魔法でミヤモトが心変わりしたのならあんたの責任やがね。
 あんたに魔力がもうないのはわかっとる。
 けどな、闘いってのは最後の最後は根性!
 精根尽き果て限界を超えたその先に戦士だけが味わえる快感があるんだがね!
 限界を超えて根性見せてみやあせ!!」

「そ、そんなめちゃくちゃな…。わたし、戦士じゃないのに」
二本の枝分刀がゆらりとルナの周りに浮かぶ。 タクトが浮かぶ刀にぴちちと静電気の反応を起こす。
(え?これってもしかして…)
先ほどつかったルナの極大反転魔法が、周辺一帯に帯電するかの如くストックされていたのだ。
発動されないまま。ずっと。

>「じゃあもしミヤモトさんを善人にしてくれと願ったらどうなるんですか?
 人間の人格を捻じ曲げるなんて絶対にやってはいけないことの一つですよ?

「それなら私は、ミヤモトを元にもどすから。ううん、ミヤモトだけじゃなくって
リリィの姿も、フリードの姿も、ササミも、みんなを元にもどすから!」
タクトの先っちょを枝分刀にくっつけるとスパークした魔力が電気のように周辺に迸る。
同時に破れた衣服が元に戻ってゆく。その場にあるものが本来ある姿に戻ってゆく。
それはフリードの手に持つ『それ』も同義だった。

23 :ミヤモト ◆sto7CTKDkA :2012/11/15(木) 17:05:03.81 O
>18-22
>「残念なんておもっとりゃせえへんがや。
> ルナが夢見石をはじいとる間に私がリリィを助けたんやからにゃー。
「アィエエエ! 幻覚!?幻覚ナンデ!?」
ササミの早技に一番驚いたのは、おそらくミヤモトだったろう。
タツジンのニンジャとしての自負があるぶん、気づかぬうちに人質を取りかえされたショックも大きかった。

>「じゃあもしミヤモトさんを善人にしてくれと願ったらどうなるんですか?
> 人間の人格を捻じ曲げるなんて絶対にやってはいけないことの一つですよ?
>「それなら私は、ミヤモトを元にもどすから。ううん、ミヤモトだけじゃなくって
>リリィの姿も、フリードの姿も、ササミも、みんなを元にもどすから!」
「そうはトンヤがオロシません!
 バットージュツ・フルムーンサッポー! イヤーッ!」
狼狽から回復したミヤモトは、満月を描くように刀を振ってルナを切り捨てようとする。
が、それよりもルナの魔法発動の方が速かった。
魔力を浴びたミヤモトは時間が止まったように動きを止め、振り下ろしていた刀を降ろして静かに地面に座った。
ニンジャの座り方のサホーの1つ、セイザである。
落ち着きのある所作から、ルナの魔法が無事に効果を発揮したのは誰の目にも明らかだろう。
悪忍ではなく、善忍ミヤモトの復活だ。

「今回の一件で皆様に多大なる御迷惑をおかけし、誠に申し訳ない。
 かくなる上は不始末のケジメをつけるため、セップクして見事果てる所存にて」
セイザしたミヤモトは刀の切っ先を自分の腹に向けるように持ち帰ると、自害して死のうとした。
止めなければ無事にケジメが終了できる。
逆にセップクを止めた場合には石版と杖を一行に託し、恩は忘れない主旨の事を言った後で素早く姿を消すだろう。
陰の存在である善忍は、人前に姿を現す事を好まないのだ。

24 :ササミ ◆/TZT/04/K6 :2012/11/17(土) 23:12:36.55 0
リリィの救出を完了し、幻影に紛れながら見る先にはミヤモトと対峙するルナ、そしてフリード。
目的の夢見石はフリードにあり、人質はなく、ミヤモトを撃退するだけ。
そんな折にリリィからのテレパシーが送られてくる。
その問いにリリィを抱えている手の甲の口が小さな声で答えた。

「ん?不思議空間でルナがミヤモトに反転魔法を放って空間に穴をあけやーしたやろ?
あの時やにゃーの?勘だけど。ほやけどそれは大した問題じゃないんだがね」
自信満々にルナに言い放った言葉をあっさりと勘で片づけ、あまつさえ大した問題ではないと言い切るササミ。
更に言葉は続く。
「悪に転向したのは間違いあらへんのやし、ルナの反転魔法で戻れば儲けもの。
それより、見てみやーせ。
ああやって煽ったら嫌でもミヤモトの注意はルナに集中するし、夢見石を持つフリードへの注意は薄れるがね。
あとは、わかるだぎゃ?」
リリィが想像しながら口に出すことを憚ったことをササミは言外の言葉で言い放ったのだ。
フリードが夢見石を使ってもよし、そのまま逃走しても目的物の夢見石は無事、という事だ。

当のフリードはそのことを察したか察していないか、迷っているようだがそれでもよかった。
「まあ、心理誘導でルナを囮に使ったゆーわけやけど、大丈夫だがね。
あれでルナは私を何度も痛い目にあわせとるからね、やるときゃやる女やしなも」
フリードが夢見石を使い解決するもよし、ルナが解決するもよし。
二枚重ねで対処するならばなんとかなるし、最悪幻覚に紛れている自分とリリィは無事である、という打算もあった。
が、それ以上に四肢切断を受け入れたことも含め、ルナには何度も痛い目に合わされたからこその信頼というものがササミの中に芽生えていたのだ。

一通り説明する手の甲の顔だが、リリィに見つめられればあわてて目を逸らすだろう。
それ以外の部分の顔も一切リリィを見ようとはしない。
様々な計算の上に導き出された行動ではあったが、今リリィに対して湧き上がる感情に戸惑っていたのだ。
それは【食欲】
リリィの髪を齧り貪った時の喪失感。愛する者を必要とはいえ貪ったことにより自ら【獲物】としてしまった。
必要性を超えその甘美なる味に酔ってしまった自分の業にササミは慄いたのだ。
今目を合わせると、どんな目でリリィを見てしまっているか、自分でも自信がない。

己の業を隠しながら事態の推移を見守ると、ササミは知ることになる。
ルナに痛い目にあわされた回数がまた増える事を!

先ほどルナが放った極大反転魔法は発動がされていなかったのだ。
ミヤモトの動きを遅くしたのは余波による作用でしかなく、強大な魔法はその場にとどまっていた。
それが今はなった小さなルナの魔力を呼び水にして発動する。

もちろんそれが知覚できたわけではないが、身をもってその効果を知る。
「ん?お?どういうわけだがね!?」
突如として発生する全身の痛み。
しかもこの痛みは先ほど味わったばかり!
叫びと共に抱えていたリリィを落としもだえるササミの身体は体中蜂に刺されたように腫れていく!
だがそれもすぐに収まって、いや、刺される前の状態に戻っていく。

「どうなっとりゃーす?これはまさか、事象の逆流?」
ルナの得意とする【反転】魔法と体に起こる現象からササミは事態を察して総毛だつ。
もし予想が当たっているのであれば次に起こる現象も判ってしまっているのだから!

ササミの身体から血が抜けていき、弱弱しく崩れ落ちる。
更にその体は人の形を保てず、巨大な七本首の怪鳥へと!
「あぢぃ〜〜〜〜!!」
背中が熱湯でもかけられたかのように沸き立ち、ササミの絶叫がこだまする。

ここでようやくササミの【巻き戻り】の終焉を迎えた。
血が抜け落ち衰弱し、正体を露わにしてしまったあの時点で。
「恐ろしい魔法だがね…。どうせなら夢見石に割られた光物が戻るまで巻き戻ってほしかったぎゃー」
ぐったりと呟くササミにミヤモトが正座し謝罪するのが見える。
どうやらミヤモトも巻き戻り善忍に戻ったのだろう。
けじめを取るために切腹をするとの事だが、それに対して何らかのアクションが取れるような余力はササミには残っていなかった。

25 :フリードリッヒ ◆cOOmSNbyw6 :2012/11/20(火) 14:36:55.28 0
>22-24
>「今回の一件で皆様に多大なる御迷惑をおかけし、誠に申し訳ない。
 かくなる上は不始末のケジメをつけるため、セップクして見事果てる所存にて」
「ちょっと!ここで死んだら誰があなたの死体を片付けるんですか!
 止めてくださいよ!!」
『死ぬんだったら誰も見てない所でやってよね
 それとも止めて欲しいの?』(猫語)
まさに外道である

さてフリードリッヒが持っている夢見石
それの元々の姿
それは何もかも絶望したような一人の少年であったはずだ
はたしてどこまで戻ってしまったのだろうか?
人型まで戻っていたのならフリードはどうやって支えればいいのだろうか?

「どうしましょうこれ・・・・とりあえず関節技の実験台にでもなってもらいましょうか?」
『やめてあげてよ!間接が捻じ切れちゃう!!』(猫語)
「ふん・・・・まあいいでしょうきりきり歩いてもらいますよ七不思議の元凶さん」
『ああそういえば七不思議の謎を解くって話だったね
 忍者のせいですっかり忘れてたよ』(猫語)


忍者との激闘を終え無事に学園の建物内に戻ってきたフリード達
「ササミさん大丈夫ですか?それにしてもすっかり日も暮れて・・・・・ない
 いったいどういうことです!ほとんど時間が経ってないじゃないですか!!」
と時計の針を見て驚愕するフリードリッヒ
『まあ謎空間にいたんだし不思議じゃないよね』(猫語)
魔法の世界では常識と非常識が逆転することもよくあることである

「で、誰がこの女の人を保健室に連れて行くんですか?
 ササミさんもだいぶ大変なことになっているみたいですし」
『それはあなたです』(猫語)
この女の人・・・と言うのは元スケルトンで元姫のことである


保健室に行った彼らが見たものとは
「あれ保健室にいたんですか姉さ・・・・ん?」
すっかり小学生のようになってしまった自身の姉とその服を無理やり脱がそうとしている保険医(女性)であった
「・・・・なんですかこのカオス?」

26 :ルナ・チップル ◆apJGY8Xmsg :2012/11/25(日) 12:47:52.75 0
空間に停滞していたルナの反転魔法は、巨大風船を針でつついたかのように爆発し辺りに流れ出していた。
それはタクトによってお尻を叩かれた暴れ馬とも言えた。少しだけルナの意識で方向性を見つけたものの
巨大なエネルギーを制御しきれないまま暴走していたのだ。

視線を落とせば怪鳥へと捲き戻ってしまったササミの姿。血も失っていて元気もない。
それを見たルナは肩を落とす。よく考えてみたら、どうしてこんな極大魔法を使ってしまったのだろう。
それほどまでにミヤモトに追い詰められてしまっていたのだろうか。
心の奥底で蠢動する後ろめたい気持ち。

>「今回の一件で皆様に多大なる御迷惑をおかけし、誠に申し訳ない。
 かくなる上は不始末のケジメをつけるため、セップクして見事果てる所存にて」
>「ちょっと!ここで死んだら誰があなたの死体を片付けるんですか!
 止めてくださいよ!!」

「そ、そうよ、やめなさいよ。みんなに迷惑をかけたのはどうしようもない事実だけど自殺することなんてないわ。
自殺は自分に対しての最大のいじめよ。……っていうかほんとにやめて、私のためにも」
語尾が小さくなって震える。ルナもうすうす気付きはじめていたのだ。
ササミが独り言のように言っていることから、リリィがテレパシーで何かを会話しているということ。
反転魔法がミヤモトに及ぼしたであろう影響のこと。それが事実なら諸悪の根源は自分自身だということに。

リリィの後頭部をじっとみる。本当のことをリリィは知っている。
あの小さな頭のなかで考えている。もちろんササミも知っているのだろう。
ミヤモト本人も気付いているけど黙っていてくれてるのかも知れない。
そんなことを考えてるとルナの胸は締め付けられ良心の呵責にも耐え切れなくなる。

「……う、ごめんなさい!」
刹那、口から言葉が飛び出した。深々とお辞儀をしてじっとそのまま。
そしてそっと体を起こす。でもそこにミヤモトの姿はなかった。

ルナは言葉を失ってしまう。風が吹いて、立ち尽くしている少女の髪だけが揺れる。
ざわざわと梢をもみ、緑の林を嘆かせ、つれない風がすさぶ。
風の行方を目で追い、雲間からこぼれた陽射しのまぶしさに、ルナが目びさしをすると
光を浴びた雲はゆるゆると青い空を流れていた。何事もなかったかのように正常に。

27 :ルナ・チップル ◆apJGY8Xmsg :2012/11/25(日) 22:48:54.74 0
ミヤモト・ムニとの戦いも終わって学園に帰ってきた生徒たち。
ルナは保健室に行くまえに職員室にいき、簡単に今まであったことを先生に説明すると
保健室で再び皆と合流する。

>「・・・・なんですかこのカオス?」

「カオス?どうゆう意味?フリードって双子だったの?」
カオスという言葉に嫌な予感しかしない。
まさかフリードの姉も捲き戻ってしまったのだろうか。
それはさておき、少女の衣服を女医が脱がそうとする行為は、保健室ではそれほど珍しい行為ではないと思う。
患者の汗で湿った下着を取り替えることはよくあること。それを嫌がる子どもの姿も。
だからルナはフリードの姉を他の人に任せて見過ごすことにした。

かぶりをふり、氷の担架に乗っけた姫をベッドに移動するのに手伝う。
じつは夢見石の美少年が、姫を保健室まで運ぶのを手伝ってくれていた。
(夢見石は、ルナの極大反転魔法で少年の姿まで戻っていた)
彼は終始無言だったけど、まるで召使のようにテキパキとはたらく。
もともとは夢見石という古代兵器で、自分のことを学園の生徒と錯覚している不気味な存在。
おそらくは七不思議を起こした元凶。でも夢見石がどうして人の姿になっているのかは今もって謎。
なぜ偽りの記憶をもっていたのかも。疑問が胸を渦巻く。記憶を改変されているのだろうか。
何者かの意図によって。

ルナは、彼のことにはあまり触れずにササミに視線を移す。

「大丈夫?またリリィのおさげを食べたりなんてしないよね?
あ、私の髪なんて食べても美味しくないよ。腐った蕎麦みたいな味がするかも」
うすい笑みを浮かべながら踵を返すと、とことこと戸棚に向かって歩く。
そして、リリィの治療に使う骨生え薬を探して指先を硝子に這わす。

「あっ!あった。これね?骨生え薬って。……先生、これって骨生え薬ですよね?」
戸棚から薬を取り出して、ふたを開ける。
スプーンで蜂蜜のようにトロトロな液体をすくう。

「あーんして、あーん」
自分も口を開けながらリリィの口に差し出し、
彼女が飲み込むのを確認して「骨、生えた?」と問う。

いっぽうで夢見石の美少年は、姫をじっと見たまま椅子に座っていた。

「あの姫ってなにものなの……」
ルナは眉をひそめてつぶやいた。

28 :リリィ ◆jntvk4zYjI :2012/11/27(火) 18:06:52.41 0
ササミは、ルナをけしかけはしたが、結果にはあまり期待していなかったようだ。
むしろルナよりは、フリードが持つ石版の力が本命らしい。
それは、リリィが口にするのをためらった内容そのものでだった。

「それなら私は、ミヤモトを元にもどすから。ううん、ミヤモトだけじゃなくって
>リリィの姿も、フリードの姿も、ササミも、みんなを元にもどすから!」
「でも・・・・・ルナちゃんは、やるときは絶対にやる子だよ?」
まあ、そんなことは口に出さなくても、ササミならとっくに承知のことだろうが。

>「ん?お?どういうわけだがね!?」
「ふぎゃっ?!」
ぼとっ、と何の予告もなく地面におろされたリリィは、鼻を打ちつけ痛みにうめいた。。
何で、と思いながら顔を上げると、すぐ隣には、全身の痛みにもだえ苦しむササミの姿があった。
「ふぁ、ファファミしゃん?なんれ、ろうひて?」
見えない蜂に全身を刺されている!と思ったが、それも潮が引くように痕跡が消えていく。
>「どうなっとりゃーす?これはまさか、事象の逆流?」
「それって、時間の撒き戻りみたいなもの?・・・・・え?ま、まさか!
 は、早く魔法発動範囲の外へ!早く!」
リリィはササミを担ぎ上げてその場を離れようとしたが、間に合わなかった。
ササミは、巨大な七本首の怪鳥へと戻ってしまった。
彼女に肩を貸していたリリィとしては、たまったものではない。
「うわあっ!ササミちゃん重い!重いよぅ!!」
ササミの翼の下敷きになったリリィは、その場でじたばたともがいていた。

彼女達の状態に関係なく、事象の逆流はなおも続く。
そしてとうとう、リリィの手に、具現化させた杖が吸い寄せられるように収まった。
すうっと薄れていく杖に、全身の血が音を立てて引いていく。
「嫌っ!!」
リリィは思いっきり杖を振り払った。と同時に、彼女の胸元で何かが砕けたような音がした。
杖はすんなり彼女の手を離れ、草むらの中へと転がっていった。

さて。
どうにかササミの下から這い出したリリィは、自分の状態を確認した。
カエルの胃に入ったせいで、生地のあちこちが痛んだTシャツとスパッツと、擦り傷だらけの手足。
めがねはどこかになくしてしまったようだ。
そして・・・・・・・片方だけ残ったままのお下げ髪。

どうやら、事象の逆流は、多少の個人差があったようだ。
ササミが食べたお下げ髪は元には戻らなかったが、ササミ自身は、髪を取り込む前の状態まで戻ってしまっている。
リリィの髪がどこに消えたのかは未だ謎のままだが、戻ろうが戻ろうまいが、彼女は頓着しないだろう。
なぜならそれは、リリィがササミに食べさせたものだからだ。

29 :リリィ ◆jntvk4zYjI :2012/11/27(火) 18:09:16.25 0
(あの杖は、どうなったのかな?)
消えたのだろうか?それとも、元の場所にもどったというのだろうか?
いずれにしても、二度と係わり合いになりたくない。
その杖が何か全くわかっていないくせに、リリィは漠然とそんなことを考えていた。

だが、彼女の物思いはそう長く続かなかった。
彼女の目の前には、すっかり弱りきったササミの姿が。
リリィは片方だけ残ったお下げと、ササミを見比べた後、カバンから小刀を取り出した。
そして何のためらいもなく、片方だけのお下げ髪の根元に刃を滑り込ませる。
「ササミちゃん。これ」
リリィは切り取ったばかりの髪の束を、ササミの口元へそっと運びささやいた。
「どっちみち切ろうと思ってたんだ。片方だけ残っててもバランス取れないしね。
 その姿じゃ学園に帰れないでしょ?だから、嫌かもしれないけど、これ食べて。動けるようになったら、一緒に帰ろ」
リリィは髪の束を押し付けると、ササミから離れミヤモトのほうへと移動した。

さて。
ルナの魔法を食らった「悪のニンジャミヤモト」は、神妙な顔つきで、地面に跪くような形で座っていた。
今のミヤモトは、先ほどとはまるで別人だった。剣呑なオーラなど微塵もない。
その姿は、静寂な竹林を思わせた。

>「今回の一件で皆様に多大なる御迷惑をおかけし、誠に申し訳ない。

> かくなる上は不始末のケジメをつけるため、セップクして見事果てる所存にて」
セイザしたミヤモトは刀の切っ先を自分の腹に向けるように持ち帰ると、自害して死のうとした。
「うわあっ!ちょっと待って、早まらないでぇ!!」
あわあわ、とリリィは手を振ってミヤモトを制そうとした。
>「ちょっと!ここで死んだら誰があなたの死体を片付けるんですか!
> 止めてくださいよ!!」
「ちょっとフリード君、悪気ないのはわかってるけど、ぶっちゃけ過ぎ!ぶっちゃけ過ぎだから!」
>『死ぬんだったら誰も見てない所でやってよね
> それとも止めて欲しいの?』(猫語)
「グレン黒いっ、黒いよ!そこは素直に止めようよ!!」
>「そ、そうよ、やめなさいよ。みんなに迷惑をかけたのはどうしようもない事実だけど自殺することなんてないわ。
>自殺は自分に対しての最大のいじめよ。……っていうかほんとにやめて、私のためにも」
「ルナちゃん・・・・・・」
どうやらルナは、ササミの発言を聞いて、リリィが何を話していたか察してしまったようだ。
「ち、違うってば!そんなのルナちゃんのせいじゃないわよ!
 私達は生徒で、未熟なんだから。だからこそ、今、学園にいるんじゃない」
>「……う、ごめんなさい!」
ルナは、泣きそうな声で謝罪した。みんなの視線が彼女に集中する。
「・・・・・・・あれ?ミヤモトさんは?」
まるで煙のように、ミヤモトの姿はそこから消えていた。

30 :リリィ ◆jntvk4zYjI :2012/11/27(火) 18:09:46.23 0
さて。
ミヤモトが消えた後は、フリードリッヒが持っていた夢見石の変化、という問題が残っていた。
夢見石は、少年の姿に戻っている。
「どうしましょうこれ・・・・とりあえず関節技の実験台にでもなってもらいましょうか?」
『やめてあげてよ!間接が捻じ切れちゃう!!』(猫語)
「そんな。やめたげてよ。ていうか、こんな薄着の相手に関節技かけたら、いろいろまずいって!!」
フリードの姉は狂喜するかもしれないが。
「とりあえずフリード君、執事さんに頼んで、上着でも貸してあげたら?」

少年は特に抵抗するでもなく、フリードの後ろをとぼとぼとついてきた。
そしていわれるままに、不思議空間から救出した女性を運ぶ手助けをする。
「い、意外と力持ちね」


忍者との激闘を終え無事に学園の建物内に戻ってきたフリード達
>『ああそういえば七不思議の謎を解くって話だったね
> 忍者のせいですっかり忘れてたよ』(猫語)
「えー、結局七不思議ってなんだったの?
 七不思議の原因は全部、この男の子が原因でした!って連れて行っても、信じてもらえるのかなぁ?」
どこからどう見ても、今の彼は男の子である。
もっとも、不思議空間では気づかなかったが、今改めてみると、少年の体の一部には石版がむき出しになっているのだが。
(まあ、服着ればそんなに目立たないよね。学園には変わったセンスの人多いし。
 石版くっつけてても、これはファッションだと言い張れば、意外といけるかもしれないしね)
実際に石版を顔に持つ友人は、変わった仮面をつけることで問題をクリアしていたからだ。

だから、リリィは気づかなかった。
少年の体の一部が、未だ石版のままで見えているのが自分だけだ、ということは。

>「ササミさん大丈夫ですか?それにしてもすっかり日も暮れて・・・・・ない
> いったいどういうことです!ほとんど時間が経ってないじゃないですか!!」
と時計の針を見て驚愕するフリードリッヒ
『まあ謎空間にいたんだし不思議じゃないよね』(猫語)
魔法の世界では常識と非常識が逆転することもよくあることである
「あれっ?私の貼ったメンバー募集のポスターがない!
 っていうか、ほかの募集ポスターも全部剥がされてる?なんでー?
 ちゃんと掲示許可印だって貰ってたのに!」

>「で、誰がこの女の人を保健室に連れて行くんですか?
> ササミさんもだいぶ大変なことになっているみたいですし」
>『それはあなたです』(猫語)
「あ、私も手伝うよ!指の骨生やさなきゃいけないし!」

31 :リリィ ◆jntvk4zYjI :2012/11/27(火) 18:10:33.38 0
保健室に行った彼らが見たものとは
>「あれ保健室にいたんですか姉さ・・・・ん?」
「あれ?なんでフリード君が二人いるの?っていうか、先生何してるんですか?」
リリィは目の前の少女が、小さくなったフリージアだと気づかなかった。
「・・・・なんですかこのカオス?」

「とりあえずこの女の人、ベットに運びますねー」
リリィは、ルナや少年達と一緒に、女性をベットに運んだ。
「まあ、落ち着いたら状況説明するよ。センセー、骨生え薬、ちょっと貰いますねー」

>「大丈夫?またリリィのおさげを食べたりなんてしないよね?
>あ、私の髪なんて食べても美味しくないよ。腐った蕎麦みたいな味がするかも」
「た、た、た、食べてないよ!うん!
 あれはキンキュージタイだったから仕方なかったんだよ!
 それと、髪は元に戻らなかったから、バランス取るために切ったんだよ。ただのイメチェンだから、イメチェン!」

>「あっ!あった。これね?骨生え薬って。……先生、これって骨生え薬ですよね?」
「そだよー」
よく怪我をするリリィが、保険医の代わりにそう請け負った。
>「あーんして、あーん」
「・・・・・・・・・あーん」
リリィは意を決したように、ぱくっとスプーンを口に含んだ。
そしてそのままの姿勢で固まり、脂汗をだらだら流し始める。味は相当ひどいようだ。
>「骨、生えた?」
「う、うん・・・・・・今日は・・・折れたんじゃなくて盗られちゃってるから・・・・・もう少し時間かかる、かな。
 保健室で休むほどのことじゃないから、後で部屋に戻るよ」

リリィは痛そうに顔をゆがめながら、さらに続ける。
「女の人の件は、あとで保険医さんに学園の行方不明者を検索してもらえれば、きっと身元わかると思う」
スケルトンが学園外に出て、一般人を襲うことは考えにくい。
おそらくは生徒か、学園関係者のいずれかだろう。
「ねえ、今回の七不思議の件だけど、これ、どこに話を持ち込めばいいんだろう?
 なんかこの男の子と引き換えに食券貰うのも人身売買みたいで嫌だし・・・・・彼の処遇も考えないとだし・・・・・。
 でも、今までのこと全部話しても、信じてもらえるのかな?」

夢見石の美少年は、姫をじっと見たまま椅子に座っていた。

32 :ササミ ◆/TZT/04/K6 :2012/11/28(水) 23:22:08.29 0
七首の怪鳥の姿に戻り朦朧となったササミには自分の下敷きになったリリィに気づく余裕すらなかった。
意識がはっきりしたのはリリィが自分の下から這い出て小刀で残ったおさげを切り取って巨大な嘴に差し出したところだった。
急激な意識の覚醒は食欲の名を持ちそのおさげをつまみ上げる。

時同じくしてフリードがミヤモトに外道名言葉をかけてルナとリリィがあわてて止めにかかる。
だがササミにはどうでもいいことだ。
ルナの反転魔法の影響であろうがミヤモトが転向し驚異でなくなったのであればあとは自害しようがこの場を晦ませようが同じこと。
目的である夢見石の防衛が成ったのであればそれでいいのだから。
目的外のものにも気を配り新たなる目的として自害阻止にむかい動けるほどまだササミは人間というものに染まっていなかった。

そんな事よりもササミの中では猛烈な葛藤が生まれていたのだ。
嘴に摘まんだ子の髪を味わい、食べたい。
しかしそれをしたが最後、完全にリリィとの、いや、人間との関係は食うものと食われるものになってしまう。
それを本能的に感じて葛藤していたのだ。

首が持ち上がり嘴に摘ままれたおさげを飲み込もうとした瞬間、他の六つの首が一斉に持ち上がって飲み込もうとした頭に嘴を突き立てる!
餌を取り合っているのか、食する事を阻止しようとしているのか。
判断の付きにくい争いのあと、結局はリリィのおさげは食べられることなく終結した。

>「ササミさん大丈夫ですか?それにしてもすっかり日も暮れて・・・・・ない
「何とか動けるくらいにはなったがね」
ミヤモトの一件が決着し、フリードが移動を促すころにはササミも人型の姿に戻っていた。
変わったところと言えば、腰のあたりにリリィのおさげがぶら下げられていた事と、頭にいくつものこぶができていたくらいか。
以前は体中に宝物である光物をつけていたのだが、不思議空間での戦いで砕かれてしまった。
だがそれらすべてを引き替えにしても十分すぎる光物を手に入れたのだ、とササミは満足していた。
実際、他に光るものがないので金色に輝くおさげはよく目立つ。


保健室に行くと幼女の服を脱がそうとしている女医の姿。
>「・・・・なんですかこのカオス?」
フリードの言葉が全てを余すことなくあらわしている状況である。
本来ならば何らかのツッコミを入れる状況なのだろうが、あまりにカオスすぎてササミの手には余るのでそっと14の目を閉じてみなかったことにして。

>「大丈夫?またリリィのおさげを食べたりなんてしないよね?
>あ、私の髪なんて食べても美味しくないよ。腐った蕎麦みたいな味がするかも」
ルナの言葉にギクリとし、ふと考えが過る。
もう食べないつもりではあるが、確約はできそうにない。
腰につけているおさげからは常に誘惑されるし、リリィ自体も食べてみたいという衝動がないわけではない。
そしてその衝動はルナの言葉によってリリィを超えて他の【人間】にも及んでしまったのだから。
リリィが旨いのか人間自体が旨いのか。
凝視してしまいその意図が伝わったのか、あわてて「腐った蕎麦」と自分を表すルナ。
その言葉を聞いてササミはそう思う事にした。
確証も実践もなく根拠もなくそう思い込むことに。
本来ならばあるまじき思考ではあったが、そう思わなければ衝動に抗えそうにないのだから。
人間の世界には「食べてしまいたいくらい好き」という言葉があったことを思い出してまで。
だがこれは、食人衝動をリリィに集中させてしまう事になり、ササミの葛藤はまだしばらく続きそうである。

>「た、た、た、食べてないよ!うん!
葛藤しているササミに代わってリリィが取り繕うように応える言葉にようやくササミは思考の迷宮から抜け出した。
「あ、そやな。記念にもらってここにぶら下げとるがね」
確かに記念ではあるし、身に着けることはササミの宝物であることを現している。
だが、食べなくてもそのまま手放せない事もまた事実なのだった。

「まーとりあえず疲れたし、少し横になるがね」
そういって保健室のベッドにもぐりこむササミ。
これ以上起きていて余計な事を考えないように。

33 :フリードリッヒ ◆cOOmSNbyw6 :2012/11/30(金) 16:58:12.81 0
>「カオス?どうゆう意味?フリードって双子だったの?」
「これ・・・・・姉さんです」
つまりこの小さな・・・と言ってもフリードリッヒと同じぐらいの背はある少女は
フリードリッヒの姉であるフリージアということなのだ
「ちょっと!これとは何ですの!これとは!!」
弟にこれ扱いされたフリージアはご立腹のようだ
姉曰く風邪気味で眠っている間に保険医にエターナルチャイルドを仕込まれたらしい

「いつか仕返しをしてやりますわ!!」
フリージアさんに復讐フラグが経ちました
「やめてよ姉さん!そんなことしたら往き様様に幼稚園にでも忍び込むに決まってるじゃないですか!!」
必死で止めるフリードリッヒ
「駄目だ!姉さんは強い!!」
あっと言う間に逆転され関節を決められるフリードリッヒ
『君たち・・・魔法使いだよね』(猫語)

>「ついにやってやったぞ!ついにだ!!」
そんな会話を無視して目論見が大成功したロリコンでガチレズの保険医は大いに喜んでいる
>「後は男に効かない様に改良すれば・・・・うふふふふ
  そして後は空気感染するようにして・・・」
このままでは薬害事件が起きてしまう誰か保険医を止めてくれ

>「あっ!あった。これね?骨生え薬って。……先生、これって骨生え薬ですよね?」
との疑問にああそうだが?
と答える保険医

>「女の人の件は、あとで保険医さんに学園の行方不明者を検索してもらえれば、きっと身元わかると思う」
>「任せろ!幼女じゃないから残念だが・・・・・まあ何年か前なら幼女だろうしな」
と請け負う保険医
まさに変態である

>「まーとりあえず疲れたし、少し横になるがね」
「起きたら小さくなってなければ良いんですが・・・・・」
フリードは心配するが・・・・まあ大丈夫だろう
そもそも人類種用のエタチャイが効くかどうかも不明であるのだし


そして下校時間が過ぎ慌ただしかった一日も終わる
「今週末の休みにどっか遊びに行きたいですよねグレン」
『そうだねグリーンだね』(猫語)

34 :ササミ ◆/TZT/04/K6 :2012/12/03(月) 21:51:31.04 0
カオスな状況な保健室に新たなる来訪者が現れた。
静かに開いた扉には鏡の仮面をつけ、黄色いローブをまとった女生徒、セラエノ・プレアデス。
その後ろに教師と見知らぬ黒服の男を引き連れて。

直後、保健室にキーンという耳鳴りを伴う音が短く響いた。
「この共鳴、やはり…」
黒服のつぶやきを背にセラエノが夢見石の少年に近づいき手を差し出す。
仮面に覆われない口元はいつもの柔和な笑みではなく、固く閉ざされている。

セラエノの出現に呼応するように夢見石の少年は立ち上がり、その手を取った。
保健室のカオスな状況もリリィをはじめルナやフリード、起き上がったササミがまるで存在しないかのように二人は手を取り保健室を出ていく。
黒服は二人について去り、残された教師は
「この件についてはあとは学園が処理します」
説明になっていない一方的な宣言だったが、それ以上有無を言わせない何かが言葉には籠っていた。
「わかりました。こちらも私が」
カオスな状況を作り出していた女医も佇まいを正して姫の方へ視線を向けるのであった。

35 :リリィ ◆jntvk4zYjI :2012/12/05(水) 02:50:48.86 0
>「あ、そやな。記念にもらってここにぶら下げとるがね」
「そうそう・・・・・・ええっ?!」
リリィも相槌を打っていたが、意味を知って飛び上がった。
そう、ササミの『記念品』は確かに目立っていた。
なぜならササミを彩っていた宝石の数々は、皆を守るために惜しげもなく使ってしまったからだ。

リリィはしゅんとなった。
素人のリリィにさえ、ササミの宝石は高価なものだったことくらい理解できた。魔力が篭められていたとしたら、それこそお高いに違いない。
(これじゃ全然釣り合いが取れてないよね)
ササミは記念品をとても喜んでくれたようだし、もちろん、リリィも演技だとは思っていない。
だからこそ、申し訳ないと思った。

>「これ・・・・・姉さんです」
>「ちょっと!これとは何ですの!これとは!!」
「うわー・・・・・・・あのフリージアさんがこんなお姿に・・・・・・」
フリードと保険医、そして謎の幼女ならぬフリージアの言い争いは続いている。
姉曰く風邪気味で眠っている間に保険医にエターナルチャイルドを仕込まれたらしい
「・・・・・・美少女って怒ってても美少女なんだね」
怒り心頭のフリージアを、フリードが必死に止めている。
>「駄目だ!姉さんは強い!!」
あっと言う間に逆転され関節を決められるフリードリッヒ
>『君たち・・・魔法使いだよね』(猫語)
「何を言うのグレン。魔法で勝負なんかされたら保健室なんて跡形もなくなっちゃうじゃない!」
ジルべリア人の一般人は、普通の人間から見えれば逸般人でる。いわんや魔法使いをや。
>「後は男に効かない様に改良すれば・・・・うふふふふ
>  そして後は空気感染するようにして・・・」
リリィはこめかみを押さえた。
「・・・・・・・アリス先生に報告しとけば大丈夫よね」
薬害事件はそれで回避できるだろう。・・・・・・・・多分。
リリィは保険医とフリージアの戦いの仲裁はする気が無かった。
なぜかと問われれば、こう答えるだろう。
「スフィンクスとスノードラゴンの戦いを、素手で仲裁なんて無理無理。
 一般人は巻き込まれないうちに、尻尾巻いて退散するのが身のためだよ」
保険医は謎の女性の素性を当たってみてくれるといった。
変態な本音駄々漏れでしょうがない人だが、一度請け負ったのだから任せて問題ないだろう。

「まーとりあえず疲れたし、少し横になるがね」
>そういって保健室のベッドにもぐりこむササミ。
>「起きたら小さくなってなければ良いんですが・・・・・」
「小さくって、ペンギンとか?変な薬飲まなきゃ大丈夫だよ。そもそもササミちゃん、薬飲む必要ないし」
リリィはササミがもぐりこんだベット脇の椅子にちょこんと座った。
そして、不思議そうにササミの頭を覗き込む。

「・・・・・・何でこぶが増えてるの?」
リリィは頭に触ろうとして手を止め、かわりにササミの手を両手で握った。
「ササミちゃん、今日は守ってくれて本当にありがとう。
 ・・・・・・・でも、これからはあんまり無茶しないでね
 いくら回復力強くても、傷ついて痛かったり辛かったりするのは、人もササミちゃんも同じだと思うから。
 ササミちゃんは、自分にも他人にも躊躇しないから、ちょっと心配だよ」
リリィはちょっと考えた後、手の甲に顔を寄せ、囁きかけた。
「人は弱いから。いくら魔法みたいな血で傷は完璧に治せる!っていっても、心の傷までは無理なんだからね。
 せっかく学園に来たのに、ササミちゃんって人を知ってもらう前に怖がられたらもったいないよ。
 ・・・・・あ、ルナちゃんは多分平気だと思うよ。見かけによらずタフだしね」
それ以前に、ルナの服装と気弱はどう考えても無縁に思えるのだが、リリィはそうは思わなかったようだ。

36 :リリィ ◆jntvk4zYjI :2012/12/05(水) 02:51:28.45 0
>カオスな状況な保健室に新たなる来訪者が現れた。
>静かに開いた扉には鏡の仮面をつけ、黄色いローブをまとった女生徒、セラエノ・プレアデス。
「セラエノちゃん?何でここに?やっぱりこの子の」
知り合いか?と良いかけたが、後から入ってきた教師と見知らぬ黒服の男に気づき言葉を飲み込んだ。

>直後、保健室にキーンという耳鳴りを伴う音が短く響いた。
>「この共鳴、やはり…」
リリィは、セラエノが少年を連れ出し、黒服の男が部屋を去るまで微動だにしなかった。

>「この件についてはあとは学園が処理します」
>説明になっていない一方的な宣言だったが、それ以上有無を言わせない何かが言葉には籠っていた。
>「わかりました。こちらも私が」
>カオスな状況を作り出していた女医も佇まいを正して姫の方へ視線を向けるのであった。

だが、リリィはそこで引けなかった。
セラエノは不思議空間で、たくさんの血を流し、沢山の宝石を犠牲にしている。
セラエノだけではない。ルナもフリードもグレンもリリィも、大変な一日になったのだ。
あんなひどい目にあったのに、何一つ報われないのでは救われない。
「えっ!あの!でも!七不思議を解き明かしたら、お食事券がもらえるって話が・・・・・」
じろりと教師ににらまれたリリィは、ひっと首をすくめた。
ここでようやくリリィは、掲示板に貼られたポスター類がすべて消えていた理由に思い至った。
おそらく依頼は無効にされている。
今日得た情報は誰にも話せないし、仮に話したとしても、提示されていた報酬は手に入らないだろう、と。

教師はしばし考え込んだ後、懐から小さな紙片を取り出し、さらさらと何か書き込んだ。
「これで良いだろう」
ぽいと投げ渡された名刺サイズの紙をあわあわと受け取る。
「ねえ見てみて、これって?」
そこには、「この名刺を持ち込んだグループに、1回だけ好きなものを食べさせてやって欲しい」という趣旨のことが書いてあった。

「じゃあササミちゃん、私は寮に戻るね。お大事に。
 フリード君、えーと。暴れてもいいけど保健室壊さないでね」
リリィはひらひらと手を振りながら、目配せでルナに「一緒に帰らない?」と誘った。
一緒に帰らなかったとしても、ルナならきっと保健室の入り口までくらい来てくれるだろう。

「ところでルナちゃん、さっきササミちゃんに言ってた腐ったソバってあれ何?」
リリィは暫くルナを凝視した後、はあっ、とため息をついた。
「そんなこと言わなくても、ササミちゃんはルナちゃんの髪の毛食べたりしないよ。
 だいたいササミちゃんは確かに私の髪の毛食べたけど、あれはあくまで緊急避難みたいなものだからね?
 私は、本当は、怪我をしてるササミちゃんに血を分けるよって言ってたんだから。」

リリィは顔を上げると、にこっと微笑んだ。
「私はルナちゃんの髪の毛、とっても好きだよ。可愛くて」


さて。明日はどうしようか。
ササミが起き上がれるようになったら、食堂でパーティもいいかもしれない。
外出許可をもらい、街へショッピングに繰り出すのも悪くない。
「そうだ、ルナちゃん。素敵なアクセサリーショップってしらない?」
リリィは楽しそうに明日の予定を語りだした。
変化は確実に訪れているのに、明日もあさっても同じ一日が続くと思っているようだった。

37 :名無しになりきれ:2012/12/09(日) 00:55:48.03 0
>「私はルナちゃんの髪の毛、とっても好きだよ。可愛くて」

「にひひひ…」
リリィの言葉を思い出したルナは、鏡の前で艶然と微笑んでいた。
ここは女子寮のルナの自室で、今日はリリィとアクセサリーショップにいく約束の日。
そして午後からは食堂でパーティの日。

ルナはしなやかな動きで微細なアイラインをひくと、次に唇の形を修正し、
頬紅をはき、シャドーを入れて鼻筋をすっきりとみせる。

(あ、ゆっくりしてたら約束の時間に間に合わないかも!)
カバンを掻っ攫って駆け足。
そっと玄関の扉を開けて外に出ると冷たい風が頬をなでる。

(うぎ、さむい!)
見上げると鉛色の空だった。赤や黄色の色鮮やかだったはずの木の葉の絨毯は雨風で腐食し
石畳をこげ茶色に装飾していた。もう間近に冬は迫っていた。

ルナはリリィと合流したあと街に出る。

「おさげもいいけど短いのも似合うかも」
リリィの髪を見ながら言った。おさげがなくなってしまったことを後悔しても仕方ないと思うし
リリィが望んだ結果を否定するのも野暮と思ってのこと。それが心意気というもの。

通りの両側に並ぶ街灯は重々しい空を支えるかのようにアーチを描いている。

「あの靴屋のかどを曲がった先に、たしかボレアースっていうアクセサリーショップがあるはずよ。
すぐ隣は喫茶店になってるの。そこのコーヒーがとっても美味しくて器も綺麗なの」
指をさした方角には木造の田舎家があった。一部を仕切って店舗にしてあるようだ。

「あ、ササミも誘えばよかったかも。いつもササミなりにがんばってるし、
だってあのこも光物好きじゃん。
あ、でもあんな高価な宝石を普段から身につけてるってことは、
こんなちっちゃい店のアクセサリーなんてササミにとっては玩具かも。
てかあのコお金持ちなの?こっちはなけなしのお小遣いを切り崩してるってのにさ」

アクセサリーショップ「ボレアース」に到着し扉を開けて店内に入る。
ひんやりとした外気が店内に侵入して、天井から吊り下げられている色とりどりの紙風船をゆらゆらと揺らめかす。
ルナは店員に会釈をして、店内を物色し始めた。

「きれいでしょう?」
カウンターの向こうから店員が笑顔を向けている。
ルナは手にしていた首飾りを掲げて見せた。
それはまるで雪の結晶のような形の、見事な首飾りだった。

「でも、高そう。って私どうして持っちゃってるんだろ…。
こんな高価そうなもの。ぜったいに私のお小遣いじゃ買えないし…。
それに見栄張ってお洒落したって、見せる男がいないもの。
ちびすけのフリード一人に見せるだけじゃあもったいないし」
ルナは悲しげに目を伏せた。店内には美しいアクセサリーがたくさん飾ってあった。

38 :名無しになりきれ:2012/12/09(日) 12:52:34.81 0
煮汁魔法学園にようこそ!

39 :名無しになりきれ:2012/12/09(日) 13:31:48.06 0
長い。3行で

40 :名無しになりきれ:2012/12/09(日) 13:34:13.46 0
拙者…拙者、ちんぽビンビン丸でござる…

41 :名無しになりきれ:2012/12/09(日) 13:37:41.25 0
文章まとめられない奴は逆にバカ

42 :ササミ ◆/TZT/04/K6 :2012/12/13(木) 23:43:39.25 0
ベッドから起き上がったササミは大きく伸びをし、首を二、三度横に振る。
コキコキという音と共にふわりと浮きあがり室内を見回した。
小さなテーブルとベッド。
そして壁と言わず床と言わず散乱する光物。
高価な宝石や魔石から、瓶の欠片やペンの蓋まで。
光れば何でもいいかのように節操なく集められた光物。
そして中央にはT字状の止まり木と、そこに立てかけられている枝分刀。
それがササミの部屋の全てであった。

散乱する光物の内、その日に気に入ったものを身に着けて出かけるのだが、しばらくしてはいない。
ここしばらくササミが装飾品として身に付けるのは金色に輝くおさげ髪……そう、切り取られたリリィの髪の毛だけであった。
石化したり痛まないように魔法的処置を施したのち、腰に結わえてぶら下げておく。
ただ光るだけ以上のものをこの髪に見出しているのだ。

身支度を整えた後、窓から外へと出ていく。
その先はいつものササミの指定席。
学園で一番高い尖塔の上だ。
いつものように高みから学園を見下ろしていると、異変に気付いた。
吐く息が白く、首筋のあたりに冷たい風が吹き抜ける。
「フリードきゃ?」
冷気に思わず思い浮かぶ名前を呼んでみるが、全天をカバーするササミの視界にフリードの姿はいない。
それと共に直上から舞い降りてくる白い小さな粒。
落ちてくるのをじっと見ながら、自分の鼻に舞い降り解けて消えたのを確認し驚いた。

「こりゃ、雪ってゆーもんだがね!」
直上に意識を向けると、先ほどのひとひらを皮切りに、音もなく無数の雪が舞い降りてくる。
雪というものを知らなかったわけではない。
魔界にも寒冷な地域はあり、冷気を操る者もいる。
しかしササミは魔界でも亜熱帯の地域を生息域としていたため、気象としての雪というものは初めての経験だった。

「これが雪かね!つまり冬って事だがね!」
初めて見る雪に、初めて経験する冬にササミの声は弾み、体は浮き上がる。
雪が降り注ぐ中、ワルツを踊るようにクルクルと回りながら学園上空を舞うのだ。
「冷たいぎゃー。面白いがね!どこからきやあした?(来たの?)」
歌うように問いかけるとともに、ササミは一気に上昇する。
雪がどこから来るか、それを確かめるために。

数分後。
フィジル諸島にどんよりと重くのしかかった雪雲から雪にまみれたササミが降りてきた。
「さ、さ、さ、寒い……が、ね……雪の巣は、どえりゃーところだったがね……!」
先ほどまでの浮かれた気分は雪雲の中で吹き飛ばされてきた。
ガタガタと震えながら体についた雪を払い、自室へと戻り、ベッドへと潜り込むのであった。


「ぶあっくしょん!げっほ!ごほっごほっ!!」
しばらくしたのち盛大なくしゃみと咳と共にベッドから起き上がるササミ。
七つある顔の全ての目は充血し、鼻からは鼻水が垂れてきている。
フラフラと止まり木へと移動した。
「こっちで寝るのは久しぶりだがね」
そういって目をやったベッドはほとんど石と化していたのだ。
くしゃみや咳をすると意に反して石化ブレスが出てしまい、柔らかなベッドは見る影もない。
七つも顔があると咳やくしゃみも防ぎようもなし。
また、各所に顔がついている関係上服装も肩や背中を盛大に露出したチューブトップに限定されるので暖をとる事もできず。
すっかり風邪をひいてしまったササミの明日はどっちだ!?

43 :リリィ ◆jntvk4zYjI :2012/12/14(金) 01:51:15.58 0
リリィは、ドアの外においてあった制服を手に取ると、小さくため息をついた。

これは、リリィが七不思議究明の折、事件に関わったと思われる女性に貸したものだ。
あちこちぼろぼろだったのだが、今日戻ってきたものは新品になっていた。
割れた金色の手鏡も荷物に混じっているが、見覚えが無い。
メモなども一切無い。
仮に問い合わせたとしても、この件に関しては誰も答えてくれないだろう。
例の女性も、夢見石の化身と思われる少年も、リリィはあれ以来姿を見ていなかった。
変な杖がどうなったのかもわからない。

もっとも、夢見石の少年に関しては、もしかしたら友人の女子生徒に聞けば何かわかるのかもしれない。
だが、まだ行動を起こすかどうかは考えあぐねている。
友人と少年の間に複雑そうな事情がありそうで気後れするのもあったが、単純にリリィがしばらく体調を崩していたせいでもあった。

学園があるフィジル諸島は、気流や海流が乱れがちなので、気候も大きく変化しやすい。
体調不良の理由は、保険医によると、「体内の魔力バランスが大きく崩れたせい」とのことだった。
もっともリリィは、もっとシンプルに風邪をひいたせいで魔力バランスが崩れたのだろうと考えていた。
ゆえに、保険医が勧めた怪しげな薬は口にしていない。
よほどの問題が発生してない限り、怪しげな成分が混じっているかもしれない薬を飲む勇気はなかった。
目が覚めたらペンギンだった、などというショッキングな体験は、一度で十分だ。

(まあ、薬なしでも元気になったんだから。万事オッケーだよね)
リリィは作り付けの鏡の鏡を覗き込むと、顎のラインで整えられた髪を両手ですいた。
分厚いレンズの伊達眼鏡を先日無くしてしまったので、今は裸眼である。
余計なものがなくなったせいか、世界が以前よりクリアに見える気すらした。
(眼鏡を外せば絶世の美女!・・・・・・だったら良かったのになー)
そんなものは、フィクションの中だけだよね。
鏡に写った少女は、学校指定の黒コートとマフラー姿で苦笑いを浮かべていた。

リリィはルナと合流したあと、外出許可を得て街に出た。
街には学園生徒の姿がちらほら目に付いた。リリィ達の他にも、街に繰り出した生徒がいるのかもしれない。



―――― 【TRPG】フィジル魔法学園にようこそ!11thシーズン ――――
                          Dancing with the north wind

44 :リリィ ◆jntvk4zYjI :2012/12/14(金) 01:55:28.08 0
>「おさげもいいけど短いのも似合うかも」
「ホント?!ありがとう!でも短いと髪が纏まりにくくて」
待ち合わせ場所でルナと合流したリリィは、弾けるような笑みを浮かべると、ゆるく波打つ髪を手で押さえた。
「ルナちゃんは、今日も気合い入ってるね」
ちょっと怖いと思っていたメイクやファッションも、見慣れてしまえばそう違和感もない。
それに・・・・・・・この姿は、ルナなりの自己表現なのだから。受け入れるのはちっとも苦ではなかった。

白い息を吐きながら石畳の街を歩くと、冬のにおいがした。
足元からしんしんと冷気が昇ってくる。
革靴でなく冬用のブーツを履いてくれば良かったと後悔し始めた頃、ルナお目当ての店が見えてきた。
ボレアースという木造の田舎家風の店は、隣に喫茶店を併設しているらしい。
>「そこのコーヒーがとっても美味しくて器も綺麗なの」
「それはひゃのしみ(楽しみ)」
リリィはマフラーを手で押し上げながら、赤くなった鼻を押さえた。

>「あ、ササミも誘えばよかったかも。いつもササミなりにがんばってるし、
>だってあのこも光物好きじゃん。
>あ、でもあんな高価な宝石を普段から身につけてるってことは、
>こんなちっちゃい店のアクセサリーなんてササミにとっては玩具かも。
>てかあのコお金持ちなの?こっちはなけなしのお小遣いを切り崩してるってのにさ」

「今日は外出許可取った人、そこそこいたみたいだけど、ササミちゃんは違うみたい」
本性が巨大な鳥だから、許可下りにくいのかもしれないと思ったが、口には出さなかった。
リリィは今日、アクセサリーの完成品ではなく、パーツを買うつもりだった。
完成品はそれなりに(リリィ基準では)高価だが、パーツなら乏しいお小遣いでも何とかなりそうだからだ。

「それにさ、ササミちゃんは確かに光物好きだけど、値段で身に着けてるわけじゃ無いと思うよ。
 要は好きか嫌いか、気に入ったか気に入らなかったか、じゃないかな?」
そう言い切ってしまってから、リリィははっとして頬をかすかに赤らめた。
そして、「い、いや、好きって別に変な意味じゃ無いし気に入ってもらえてるなら別に」などとぶつぶつ言っている。
挙動不審の理由はきわめて簡単だ。
最近のササミは、リリィが渡したお下げ髪をアクセサリーとして身に着けているからだ。
それを見るたび、リリィはくすぐったいような、うれしいような、居たたまれないような気分になる。

アクセサリーショップ「ボレアース」に到着し扉を開けると、暖かでどこか懐かしい空気が頬を包んだ。
揺れる紙風船を興味深げに眺めていると、ルナは顔見知りらしい店員に会釈し、店の奥へと進んだ。
「可愛いお店ね」
上を見ながら歩いていたリリィは、ディスプレイのテーブルにぶつかりそうになり肝を冷やした。
あははは、と笑ってごまかすと、こほんと咳払いをし、店員に細工ボタンはどこかと尋ねる。
「ショールに使うのですが、このくらいの大きさのものを探しているのです」
リリィは指でボタンのサイズを示すと、店員は愛想良く頷いた。
そして奥から、小さな引き出しをいくつか抜いてリリィの前に並べる。
「むー」

45 :リリィ ◆jntvk4zYjI :2012/12/14(金) 02:05:13.07 0
>「おさげもいいけど短いのも似合うかも」
「ホント?!ありがと!」
待ち合わせ場所で合流したリリィは、弾けるような笑みを浮かべた。そしてゆるく波打つ髪を手で押さえる。
「でもね、短いと髪が纏まりにくくて。ルナちゃんは、今日も気合い入ってるね」
ちょっと怖いと思っていたメイクやファッションも、見慣れてしまえばそう違和感もない。
それに・・・・・・・この姿は、ルナなりの自己表現なのだから。受け入れるのはちっとも苦ではなかった。

白い息を吐きながら石畳の街を歩くと、足元からしんしんと冷気が伝わってくる。
革靴でなく冬用のブーツを履いてくれば良かったと後悔し始めた頃、ルナお目当ての店が見えてきた。
ボレアースという木造の田舎家風の店は、隣に喫茶店を併設しているらしい。
>「そこのコーヒーがとっても美味しくて器も綺麗なの」
「それはひゃのしみ(楽しみ)」
リリィはマフラーを手で押し上げながら、赤くなった鼻を押さえた。

>「あ、ササミも誘えばよかったかも。いつもササミなりにがんばってるし、
>だってあのこも光物好きじゃん。
>あ、でもあんな高価な宝石を普段から身につけてるってことは、
>こんなちっちゃい店のアクセサリーなんてササミにとっては玩具かも。
>てかあのコお金持ちなの?こっちはなけなしのお小遣いを切り崩してるってのにさ」

「今日は外出許可取った人、そこそこいたみたいだけど、ササミちゃんは違うみたい」
本性が巨大な鳥だから、許可下りにくいのかもしれないと思ったが、口には出さなかった。
リリィは今日、アクセサリーの完成品ではなく、パーツを買うつもりだった。
完成品はそれなりに(リリィ基準では)高価だが、パーツなら乏しいお小遣いでも何とかなりそうだからだ。

「それにさ、ササミちゃんは確かに光物好きだけど、値段で身に着けてるわけじゃ無いと思うよ。
 要は好きか嫌いか、気に入ったか気に入らなかったか、じゃないかな?」
そう言い切ってしまってから、リリィははっとして頬をかすかに赤らめた。
そして、「い、いや、好きって別に変な意味じゃ無いし気に入ってもらえてるなら別に」などとぶつぶつ言っている。
挙動不審の理由はきわめて簡単だ。
最近のササミは、リリィが渡したお下げ髪をアクセサリーとして身に着けているからだ。
それを見るたび、リリィはくすぐったいような、うれしいような、居たたまれないような気分になる。

アクセサリーショップ「ボレアース」に到着し扉を開けると、暖かでどこか懐かしい空気が頬を包んだ。
揺れる紙風船を興味深げに眺めていると、ルナは顔見知りらしい店員に会釈し、店の奥へと進んだ。
「可愛いお店ね」
上を見ながら歩いていたリリィは、ディスプレイのテーブルにぶつかりそうになり肝を冷やした。
あははは、と笑ってごまかすと、こほんと咳払いをし、店員に細工ボタンはどこかと尋ねる。
「ショールに使うのですが、このくらいの大きさのものを探しているのです」
リリィは指でボタンのサイズを示すと、店員は愛想良く頷いた。
そして奥から、小さな引き出しをいくつか抜いてリリィの前に並べる。
「むー」

46 :リリィ ◆jntvk4zYjI :2012/12/14(金) 02:05:58.70 0
ルナはペンダントを吟味しているようだ。
>「きれいでしょう?」
リリィにボタンを出した店員が、ルナに笑顔を向けている。
>ルナは手にしていた首飾りを掲げて見せた。
>それはまるで雪の結晶のような形の、見事な首飾りだった。
>「でも、高そう。って私どうして持っちゃってるんだろ…。
>こんな高価そうなもの。ぜったいに私のお小遣いじゃ買えないし…。
>それに見栄張ってお洒落したって、見せる男がいないもの。
>ちびすけのフリード一人に見せるだけじゃあもったいないし」
リリィは笑った。確かに、「着飾った美少女以上に美少女な」紳士フリードに見せても仕方ない、かもしれない。
「フリード君はきっと、とっても可愛いですって褒めてくれると思うけどね。
 でもさ、そう思えるならいい機会じゃない?
 そろそろルナちゃんは、フリード君以外の男の子とも交友関係を広げるべき・・・・・じゃないかなぁ?」
リリィは水晶のボタンを手に取りながら、「今日はパーティもあるんでしょ?」と畳み掛けた。

>「そういう事なら、少し勉強いたしますよ?」
店員が柔らかな笑みを浮かべて、ルナを促している。
「あ、じゃあ、私も私も。このボタンを4つ。お値段はこのくらいで何とか・・・・・・・」
リリィは指を2本立てて、困惑顔の店員にそこを何とかと値切りはじめた。

「ああ、いい買い物できた。お茶代が残ってホントに良かったよー」
喫茶室の窓際に腰掛けると、リリィは嬉しそうに戦利品である紙袋を抱きしめた。
中身はチェーンと、ルースの貴石と、飾りボタンがいくつかだ。
「今日買った細工ボタンは、ササミちゃんにプレゼントするのに使うんだ。
 ほら、ササミちゃんっていつも薄着でしょ?今日も寒い格好で尖塔の上に止まってたし。
 服とかだと、背中とかの顔が隠れちゃうから、ショールを編んでみたの。
 最初からいくつかわざと穴を開けててね、ボタンの開閉で開いたり閉じたりするの。
 だから一枚もので使ったり、マフラーにしたり、羽織った時には背中とかの顔が出せるようにって思って。こんな感じで」
リリィはテーブルの上に指で書いてみたが、多分ルナにはうまく伝わらないだろう。
「あとはボタンつけるだけだから、今日ササミちゃんに持っていくんだー」

「・・・・・・あ、とうとう降ってきたね」
曇天からひらひらと粉雪がちらつき始めた。
白い雪は見る見るうちに、石畳の落ち葉の上を覆い隠していく。
あの上を知らずに踏んだら、滑って危ないかもしれない。
飽きもせず窓の外の景色を眺めていたリリィだったが、誰か知り合いを見つけたようだ。
曇る窓を紙ナプキンで拭くと、こっちこっちと手招きしている。

外を熱心に眺めていたリリィだったが、人の気配と濃厚なコーヒーの香りに、やっと視線を店内に戻す。
目の前には、アンティークなカップに注がれたカフェラテがおかれていた。
ふわふわの泡の上には、雪だるまをモチーフにした絵が描かれている。
リリィは目を輝かせ、すまし顔のマスターに満面の笑みで会釈した。
見て見て、とルナにコーヒーカップの中を指差し、「可愛くて飲めない」とちょっぴり眉を寄せた。
 
「・・・・・・・ところでルナちゃんは、結局何を買ったの? もしかして、さっきの雪の結晶みたいなペンダント?」
ルナにシュガーポットを勧めながら、リリィはうきうきとルナの手元を覗き込んだ。

47 :エンカ ◆jWBUJ7IJ6Y :2012/12/14(金) 19:11:31.01 0
「うぉおっ!?」
学ランを来たちょんまげ頭の男子生徒が、突然バランスを崩してコケそうになった。
その男子生徒は何事も無かったかのように三歩進み、そして後ろを振り返る。
どうやら雪に隠された落ち葉で足を滑らせてしまったようだ。
「気に入らねーぜっ!」
彼はびしっと自分が足を滑らせた跡を指さした。
「どうせならすっきり転んでたらよ〜話のネタにもなるってもんだぜ!
 だが、足を滑らせてハイ終わりってんじゃあよぉ、何の笑いにもなんねーじゃねぇか!」
そしてくるりと向きを変え、彼は元の道を進み始めた。
「ま、俺は怪我がなけりゃそれでいいけどよ」

>46
「な〜んか知った顔が手招きしてると思ったらよぉ、リリィじゃねぇか。
 相変わらずマヌケな面しやがってよ〜」
男子生徒は、笑いながらボレアースの喫茶店に入ってきた。
リリィとは学園入学当初からの知り合いなのだ。
「いや、マヌケ面ってのは嘘だぜ〜。しばらく会ってなかったけどよぉ、
 ちょっと印象変わったよなー。眼鏡がねぇ方が美人なんじゃね?」
へへへ、と笑っていた彼は、すぐにルナの存在に気づく。
彼はさも当然のように彼女に話しかけた。
「へぇ、なかなかマブいねぇ、そこの彼女ォ。リリィのツレか?名前はなんてーの?」
男子生徒は名乗った。
「俺の名前はエンカ・ウォン。この学園の全ての生徒と友達になる男だ!」
ただし可愛い女子に限るけどな〜、とエンカは心の中で付け足した。

48 : ◆e2mxb8LNqk :2012/12/14(金) 21:03:36.97 0
フィジル島の街。
はらはらと雪の粉が舞う中、敷き詰められた石畳の上を歩く影が一つあった。
フードを目深に被った男は、街の建物の間をふらふらと歩いていた。
古ぼけた旅行鞄を片手にあっちへふらふら、こっちへふらふらと、道行く人にも怪奇の目を注がれる。

「い…………。池は、こっちか……?」
白い息も出さずにうわ言を呟く。
彼の眼には、あと5軒ほど向こうの小さな池が映っていた。
そこへ行こうと、彼は覚束ない足つきでよろよろと進む。

しかし、悲しいかな、最早言うことを聞かぬ足はあらぬ方向へと彼を進ませる。
よろけた先には喫茶店の窓。
倒れるまいと、手を伸ばして体を支えようとするが。

バァンッ!!!

意図せず掌を叩き付けて、大きな音を出してしまった。
その拍子に建物の中をちらと覗くと、驚いた表情の男女3名。
一瞬の後に驚かせた事への罪悪感が芽生え、「すまん」と口の動きで伝えようとしてみる。
直後、彼はバランスを崩し、ぎいいいっと嫌な音を生じて窓に深く爪痕を残し、無様に倒れこんだ。
冷たい雪と石畳にぶるりと体を震わせた後、死人の如く冷たい肌のまま動かなくなってしまった。

辛うじて意識はあるが、動かす気力はほぼなく、彼の前に人が立てば
「み……水……」
とだけ呟くだろう。もっとも、このままでも死ぬことはないのだが。

49 :フリードリッヒ ◆cOOmSNbyw6 :2012/12/15(土) 18:23:55.60 0
まるで神の作った人形のように美しい少年
そんなフリードリッヒの朝は一杯の牛乳から始まる
「なんで毎日飲んでるのに背が伸びないんでしょうねえ」
雪のような白い肌金糸のような美しい髪
サファイアのような青い目、そして薔薇のように赤い唇
そんな美しい少年フリードリッヒにも欠点はある
もう14歳だと言うのにまるで小学生のような低い身長である

窓から外を見ていたフリードリッヒの使い魔グレン
正式名称グレン・ダイザー
彼は使い魔の定番黒猫でありそんなに珍しい存在ではない
普通の黒猫と違うとしたら二本の足で歩行しなんだか赤い物を頭に被っていると言う点である
そんなグレンはいつもと違う外の様子に驚いた
『ねえ見てよ外、真っ白だよ』(猫語)
「雪ですか・・・・なんだかジルベリアを思い出しますね」
ジルベリアに雨は降らない
あまりにも寒いためにすべて雪か雹になってしまうからだ
そんな国で生まれ育ったフリードリッヒにとって雪は懐かしいものであると言えよう
『僕知ってるよすごく冷たいんでしょ・・・・外出たくないよ』(猫語)
「そうですか?ジルベリアに比べればだいぶ暖かいと思うんですけど
 この程度の寒さで怯んでいたらジルベリアの大地は踏めませんよグレン?」
何でもかんでも自分の故郷と比べてしまうのはフリードリッヒの悪い癖である
そしてその使い魔であるグレンはフリードリッヒの卒業後ジルベリアに連れて行かれる
運命を背負っているのだ
「それにグレンには例のあれがあるでしょう」
例のあれ・・・・それは背中に背負うタイプの特別な防寒具
それを背負ったグレンはもはや寒さに負けることは無いだろう
その名も「万能式動物用コタツ スペイザー」
そこ猫なのに亀っぽいとか言わない!!

外に出たフリードリッヒと何故か宙に浮いているグレンは不思議なものを見つけた
いわゆる一つの行き倒れである
>「み……水……」
「分かりましたちょっと待っててください!」
と地面を掘り起こそうとするフリードリッヒ
『ミミズじゃないしここは石畳だから掘り起こしても出ないと思うよ』(猫語)
「おっといけない水でしたねそこの池になら・・・・・って完全に凍ってる!?
 まあジルベリアでも良くある事です」
と懐から瓶を取り出し
「僕の国では水がすぐ凍ってしまうのでお酒を水代わりにうんぬんかんぬん」
『いいから早く飲ませてあげてよ死ぬよこの人!!』(猫語)
「仕方ありませんね・・・・そぉい!!」
と酒の瓶の蓋を素手(!)で外し手渡すフリードリッヒ
はたしてどうなってしまうのか?

50 :ルナ・チップル ◆apJGY8Xmsg :2012/12/17(月) 00:43:40.01 0
>「ルナちゃんは、今日も気合い入ってるね」

「えへへ、そうでしょ。やっぱこういうメイクの良さがわかるのってリリィだけね。
私の場合、気合い入れてメイクをがんばんないと存在感ゼロなんだもん」
リリィの何気ない言葉にルナは破顔。
うれしく思いながら冬の冷気の停滞する石畳を歩む。

>「それにさ、ササミちゃんは確かに光物好きだけど、値段で身に着けてるわけじゃ無いと思うよ。
 要は好きか嫌いか、気に入ったか気に入らなかったか、じゃないかな?」

「えー…、なにその価値観。ざっくりしちゃってるw。まあ、ササミらしいっちゃササミらしいけど…」
ルナがそう言い返した視線の先には、何故か頬を赤らめているリリィがいた。
その様子にルナは、やはりササミを連れてこなかったことに後悔する。
たぶん、リリィはササミのことを憧れているのかもしれない。もしかしたらそれ以上の感情…。
ルナにもその気持ちはわからなくもなかった。
実際、マイナスから始まったササミとの関係も今ではほんの少しプラスに傾いている。
まるで心が溶け出した氷のように。これも学園のみんなのおかげかもしれない。

そして、ボレアースに二人は到着した。
ルナは氷の首飾りを手にとってみる。

>「フリード君はきっと、とっても可愛いですって褒めてくれると思うけどね。
 でもさ、そう思えるならいい機会じゃない?
 そろそろルナちゃんは、フリード君以外の男の子とも交友関係を広げるべき・・・・・じゃないかなぁ?」
 リリィは水晶のボタンを手に取りながら、「今日はパーティもあるんでしょ?」と畳み掛けた。

「え!?なにそれ。ふざけてるの!」
真っ赤な顔でルナは声を荒げた。
そんなつもりで言ったわけじゃ…と返したかったけど、考えてみればそうなのだ。

51 :ルナ・チップル ◆apJGY8Xmsg :2012/12/17(月) 00:52:28.42 0
ほんのりと頬を赤らめたまま、しばらく首飾りとにらめっこ。すると…
>「そういう事なら、少し勉強いたしますよ?」
「えぇ!ほんとにぃ!?」
店員が伝えてくれた首飾りの値段にルナは驚愕する。
安すぎるのだ。不気味なほどに、低価格なのだ。

※               ※               ※

>「ああ、いい買い物できた。お茶代が残ってホントに良かったよー」
ルナもこくこくとうなずきながら喫茶店の椅子に腰をおろす。
リリィも嬉しそうに戦利品である紙袋を抱きしめている。
> 「今日買った細工ボタンは、ササミちゃんにプレゼントするのに使うんだ。
> ほら、ササミちゃんっていつも薄着でしょ?今日も寒い格好で尖塔の上に止まってたし。
> 服とかだと、背中とかの顔が隠れちゃうから、ショールを編んでみたの。
> 最初からいくつかわざと穴を開けててね、ボタンの開閉で開いたり閉じたりするの。
> だから一枚もので使ったり、マフラーにしたり、羽織った時には背中とかの顔が出せるようにって思って。こんな感じで」
> リリィはテーブルの上に指で書いてみたが、多分ルナにはうまく伝わらないだろう。
> 「あとはボタンつけるだけだから、今日ササミちゃんに持っていくんだー」
「へー…。やっぱリリィってやさしい。
それじゃあ私も何かプレゼントしようかなー。かわいいくつしたとか」
>「・・・・・・あ、とうとう降ってきたね」
>曇天からひらひらと粉雪がちらつき始めた。
「……うん」
ルナはちょっと悲しい気持ちになる。
>見て見て、とルナにコーヒーカップの中を指差し、「可愛くて飲めない」とちょっぴり眉を寄せた。
微苦笑したあとルナもコーヒーカップの中をみてみる。
するとそこにはシロクマがいた。
ルナはリリィと一緒にマスターに会釈。
>「・・・・・・・ところでルナちゃんは、結局何を買ったの? もしかして、さっきの雪の結晶みたいなペンダント?」
>ルナにシュガーポットを勧めながら、リリィはうきうきとルナの手元を覗き込んだ。
「じゃーん!」
満面の笑み。手元で冷たく光る首飾り。
ルナは両手を首の後ろにまわして首飾りをかけてみせる。
と同時に自分の体が急速に縮んでしまったかのような錯覚に陥り身震いしてしまった。
そして嘆きや悲しみにも似た雄たけびが耳の奥に聞こえたような気もした。
「……」
そこへ現れたのはエンカという男子生徒。
>「へぇ、なかなかマブいねぇ、そこの彼女ォ。リリィのツレか?名前はなんてーの?」
「…ルナ・チップル」
>「俺の名前はエンカ・ウォン。この学園の全ての生徒と友達になる男だ!」
「……え、えっと、がんばって」
苦笑いでエンカにそう返すと、困惑した顔でリリィをみる。
ていうか先ほどリリィが言った言葉のせいで変な意識が生まれてしまっていたのだ。
今まで接してきた男子生徒とといえば、ほとんど美少女にしか見えないフリードだけ。
それゆえに、ルナは男子生徒に対しての免疫が少ないのかもしれない。
>バァンッ!!!
突然の大きな音にびくりと体を竦ませる。
>「み……水……」
>「分かりましたちょっと待っててください!」
音のした方向、窓の外を見ると何者かにフリードがお酒のビンを手渡していた。

52 :ルナ・チップル ◆apJGY8Xmsg :2012/12/17(月) 00:57:31.73 0
「あんたたちなにやってるの!?」
外に出ると遠く風の音が聞こえる。それはひどく物悲しい音色だった。
目前に迫った「冬」の到来に身構えたフィジルの島々が交わす囁き声のようにも
この世界の奥底に封じ込められた巨大な存在が、外の世界を思って続ける慟哭のようにも聞こえる。
じっと耳を傾けているとそれだけで鈍い痛みの形をした感情が止め処なく胸の奥底から滲みだして来そうな感覚。
ルナは一瞬目眩のようなものに襲われたが、気を取り直して目の前の光景に意識を集中する。

「その人、喉が渇いてるの?じゃあリリィの口移しで…。
なーんて上手い話があるわけないじゃん!
この私が反転魔法であなたのお口にお酒を詰め込んであげるけど、
苦情は受け付けないからね!」

タクトから迸る稲妻。
フリードリッヒの持つ酒ビンにワディワジを放つ。
それを受けた酒ビンからは液体が噴出しフードの男の口元に迫る。

刹那、凍えた風が切れ味の良い刃物の鋭さで顔を切りつけてきた。
冷たいのも痛いのも通り越し、逆に熱く痺れたような衝撃でルナの頬を叩く。

いつのまにか雪は降りしきっている。
まだ昼だというのに視力を支える光の絶対量そのものは夜のそれに近かった。
墨を溶かしたような黒い空間をその純白の粒で埋め尽くそうとするように
雪は激しく狂おしく乱れ舞っている。

「…これってなんかやばくない?」
どんどんと降り積もってゆく雪が足に重い。
一呼吸ごとに喉を焼く冷気。

「このままじゃパーティーに行けなくなちゃう!下手したら寮にも帰れなくなっちゃう。
みんな、はやく学園に帰ろう!フリード、あなた寒い国出身なんでしょ?なんとかしてよ!」
ルナはいち早く学園に戻ることを選択する。他にも選択肢はあるかも知れない。
リリィとエンカの手を握って無理やり引っ張ってゆく。が、その手は氷のように冷たかった。
皆の頭上、吹雪の奥、漆黒の空から無数の馬の嘶きが聞こえたような気もした。

53 :エンカ ◆jWBUJ7IJ6Y :2012/12/17(月) 21:24:03.02 0
>48>49>51
> 「……え、えっと、がんばって」
ルナの返答はそっけないものであった。
シャイなのかな?エンカがそう思った時、
> バァンッ!!!
突然喫茶店の窓からそんな音がした。
「な、なんだぁ!?」
外を見ると男が一人、窓に爪痕を残しながら倒れこむ様子が見えた。
その傍で、その男に瓶のようなものを手渡そうとしている美少年にエンカは見覚えがあった。
フリードだ。

>52
> 「あんたたちなにやってるの!?」
エンカもルナに続いて外に出た。
「穏やかじゃあねーよなーっ!この文明開化の世の中に、行き倒れなんてよーっ!」
謎の男の介抱はどうやらフリードとルナの二人がしているようだ。
エンカは謎の男が窓に残した爪痕をそっと撫で、その深さを確かめる。
「…こいつぁ、くせぇ。トラブルの匂いがプンプンするぜ」

トラブルは間もなくやってきた。
まだ昼だというのに空は暗くなり、激しい風雪がエンカ達を襲う。
「おいおい、早速かよ!?スノーボーダー大歓喜なこの大寒気!
 虎が震えるほどのこの冷気は、まさにトラブルだぜ!」

> 「このままじゃパーティーに行けなくなちゃう!下手したら寮にも帰れなくなっちゃう。
> みんな、はやく学園に帰ろう!フリード、あなた寒い国出身なんでしょ?なんとかしてよ!」
ルナはそう叫んでリリィとエンカの手を引っ張った。
「じょ、冗談じゃねーぜルナちゃん!?俺もリリィもフリードと違ってパンピーなんだぜ〜!
 この吹雪の中を学園まで突っ切るのは、控えめに言っても無茶ってもんだぜ!
 安全な場所で吹雪が過ぎるまで待つかよぉ、
 テレポートとかそういう安全に移動できる手段を考えた方がいいんじゃねぇか〜?」
エンカはそう提案した。はたしてそう都合よくいくだろうか?

54 :リリィ ◆jntvk4zYjI :2012/12/18(火) 00:25:36.43 0
>「じゃーん!」
満面の笑みで、ルナは手に入れたペンダントを見せてくれた。
雪の結晶がついた首飾りは、ルナの手元で冷たい光を放っている。
>ルナは両手を首の後ろにまわして首飾りをかけてみた。
「わあ!すごく素敵!」
リリィは単純に喜んでいたが、なぜかルナの表情は冴えなかった。
(あ、パーティのこと思い出して、変に緊張しちゃったのかな?)

その時、入り口のドアが開き、男子生徒が店内に入ってきた。
>「な〜んか知った顔が手招きしてると思ったらよぉ、リリィじゃねぇか。
> 相変わらずマヌケな面しやがってよ〜」
「もー、さすがにマヌケはひどいんじゃない?エンカったら・・・・・・」
リリィは笑いながら振り返り・・・・・・・そして、そのまま固まってしまった。
エンカはリリィの変化に気づくことなく軽口を続け、そして親しげに初対面のルナに話しかけている。
顔にワイルドな傷を持つエンカに話しかけられ、ルナは少し戸惑い気味だった。
普段なら間に入って二人の自己紹介をするところなのだが、あいにく今は、自分の考えで頭がいっぱいだった。

彼女の動揺の原因は、エンカの顔にあった。

エンカの顔に走る三本の傷は、どう見ても人間の手によるものではない。
猛獣か、獣人か、あるいはそれ以外の何かよって刻まれたものだ。
そしてリリィには、彼に傷をつけたものに心当たりがあった。
召喚主と同じ嗜好であるため、エンカ(の左手だけ)をこよなく愛する、キラー・チューンという名の悪魔だ。

キラー・チューンは以前、エンカの左手を手に入れようと目論んだが、紆余曲折の末没収され、エンカの腕に戻された。
だが、召喚主と正式な契約を結んでいなかったキラーチューンは、そのまま拘束を振り切り逃亡してしまった。
彼女は、去り際にこういい残していた。
>『馬鹿な奴らめ。今ここであたいを消しておけば良かったものを。あんた達をいつか全員血祭りにしてやる。
> それまで…あたい以外の誰にも殺されるなよ?』

あれからずいぶん時間がたっている。
キラー・チューンが態勢を立て直し、再びエンカを襲撃していてもなんら不思議ではないのだ。
だが、初対面のルナの前で、エンカの顔煮付けられた傷を問い詰めるのも憚られた。
だからリリィは、テレパシーを使うことにした。
内容はこうだ。
『エンカ、その顔の傷はどうしたの?まさか、またキラー・チューンに襲われたんじゃ・・・・・。
 あ、でも、左手はちゃんと残ってるから違うか。
 別に、憧れのスフィンクスと生活してるなら、それで良いんだけど』
もしもキラー・チューン絡みなら、リリィにも事情を聞く権利はあるだろう。
なにせキラーチューンの血祭り予定リストには、リリィの名もはっきり記載されているのだから。

55 :リリィ ◆jntvk4zYjI :2012/12/18(火) 00:26:49.59 0
> バァンッ!!!
突然喫茶店の窓からそんな音がした。
>「な、なんだぁ!?」
ギギギギ、と窓を爪で引っかく音がした。
ひいい、と耳を押さえていると、窓を引っかいていた人物が消えた。倒れたのだ。
『後でいいから、話、ちゃんと聞かせてね』
ルナとエンカが外へ飛び出していった。
リリィも続きたかったのだが、代金を払っていたため、外の出たのはルナが魔法を唱えた後だった。

リリィはフリードが手に持っていたビンを見るなり、
「やだルナちゃん、それ、ホントに飲ませちゃったの?
 フリード君ったら、またそんな高いお酒を水代わり・・・・・ゴホッゴホッ!!」
凍った風を胸いっぱい吸い込んでしまったリリィは咽てしまった。

>「…これってなんかやばくない?」
「すごい吹雪。冬ってこんなに寒いものだったのね」
>「このままじゃパーティーに行けなくなちゃう!下手したら寮にも帰れなくなっちゃう。
>みんな、はやく学園に帰ろう!フリード、あなた寒い国出身なんでしょ?なんとかしてよ!」
ルナは、リリィとエンカの手を握って無理やり引っ張っていこうとする。
「え、あ、ルナちゃんちょっと待ってよ。どうしたの?なんか変だよ」
>「じょ、冗談じゃねーぜルナちゃん!?俺もリリィもフリードと違ってパンピーなんだぜ〜!
> この吹雪の中を学園まで突っ切るのは、控えめに言っても無茶ってもんだぜ!
> 安全な場所で吹雪が過ぎるまで待つかよぉ、 」
「そうだよ。それに、具合が悪くて行き倒れてる人がいるのに。
 フリード君だけに全部押し付けて、私達だけ立ち去るなんて出来ないよ。
 この人見たところこの街の住人って感じじゃないし、家を持ってるって感じじゃなさそう。
 宿屋かどこかで休ませてあげたらいいのかな?」

> テレポートとかそういう安全に移動できる手段を考えた方がいいんじゃねぇか〜?」
「外出許可証出してるから、待ってたら学園の保有する乗り合い馬車に乗れるかもしれないね」

56 :フリードリッヒ ◆cOOmSNbyw6 :2012/12/18(火) 12:05:12.24 0
>50-55
>「やだルナちゃん、それ、ホントに飲ませちゃったの?
 フリード君ったら、またそんな高いお酒を水代わり・・・・・ゴホッゴホッ!!」
「まあいいじゃないですか命でお金は・・・・もといお金で命は買えないんですよ
 こんなものでこの人の命が助かるなら安いものです」
『急性アルコール中毒で死んだら笑うけどね』(猫語)

>「このままじゃパーティーに行けなくなちゃう!下手したら寮にも帰れなくなっちゃう。
みんな、はやく学園に帰ろう!フリード、あなた寒い国出身なんでしょ?なんとかしてよ!」
>『じょ、冗談じゃねーぜ    中略
 テレポートとかそういう安全に移動できる手段を考えた方がいいんじゃねぇか〜?」
『え?あの学園に通ってる時点で同類なんじゃないの』(猫語)

「移動手段?うふふふふ♪まぁかぁせぇてぇ♪てけててん♪ソリ!!」
物理的にありえない大きさのソリを懐から取り出すフリードリッヒ
まるで例の青タヌキの四次元袋のようだ
『で、それどうやって動かすの?』(猫語)
「気合と魔力と根性で」
超精神論だった
「まあごく一般的な何の変哲もないソリですが
 僕は雪の精霊さんと仲良しなのできっとたぶん自由自在に動くはずです」
『きっととかたぶんとか言わないでよ』(猫語)

>「外出許可証出してるから、待ってたら学園の保有する乗り合い馬車に乗れるかもしれないね」
「おお!その手がありましたか!!って乗れるのは僕たち学園の生徒だけでこの人は乗れないんじゃ?」
フリードはそのことが心配だった
「で、結局あなたはいったいどなたなんですか?」
とフードの男に尋ねるフリードリッヒ
「おっと人に名を尋ねる前に自分から名乗るべきでしたね
 僕の名はフリードリッヒ!フリードリッヒ・ノクターン!!
 またの名を氷結剣フリード!格好良いい二つ名を考える会、会員No2515011です」

57 :テオボルト ◆e2mxb8LNqk :2012/12/18(火) 13:43:36.02 0
>49>51-53
見るからに行き倒れの人物の前に、一人と一匹が立ちはだかる。
>「僕の国では水がすぐ凍ってしまうのでお酒を水代わりにうんぬんかんぬん」
「お、おお……?」
金髪の美少年が、酒瓶を手渡してくる。
震える手で男がその瓶を受け取り、口に運ぼうとした。

>「あんたたちなにやってるの!?」
>「穏やかじゃあねーよなーっ!この文明開化の世の中に、行き倒れなんてよーっ!」
そこに、二人の男女が駆けつけてくる。
どうやらそこの窓の傍にいた3人の内の二人であるようだ。
焦点の合わぬ目で見ると、随分とカッコいい化粧の少女に、いわゆる東方のマゲの頭の男子であるらしい。
>「(省略)この私が反転魔法であなたのお口にお酒を詰め込んであげるけど、
>苦情は受け付けないからね!」
そう言って少女の方が手のタクトを振ると、酒瓶から中身が飛び出し、なんと男の開いた口に押し込まれた!
「ガボッ!?ガボガボッ、ガボォ……!」
突然のことに反応もできず、為すがままに喉の奥へと押し込まれる酒!
彼は文字通り、酒に溺れる羽目となった。

58 :テオボルト ◆e2mxb8LNqk :2012/12/18(火) 13:46:13.09 0
>52-53>55-56
男が溺れている内に、粉雪は風を伴い吹雪となっていく。
日の光は彼らを射すことなく雪に散らされ、昼も夜と見紛うような暗さとなる。
後から遅れて出てきた少女を含め、4人が少しの間話し合ううちに男が幽鬼の如く立ち上がった。
>「で、結局あなたはいったいどなたなんですか?」
>とフードの男に尋ねるフリードリッヒ
>「おっと人に名を尋ねる前に自分から名乗るべきでしたね
> 僕の名はフリードリッヒ!フリードリッヒ・ノクターン!!
> またの名を氷結剣フリード!格好良いい二つ名を考える会、会員No2515011です」
美少年が名乗ると、男は体に付いた雪を払い、大きく息をついた。

「フー……助けてもらった感謝か、それとも酷い目にあった文句か、どちらを述べればいいんだろうか?
 ……まあ、助けてもらったのは間違いない事だ。とりあえずは感謝の意でも送ろう。ありがとう、とね」
一先ず乱れた服装を整え、改めて4人と向き合う。
「私はジェナス、テオボルト・ジェナス。残念な事に二つ名は無い。
 おっと、自己紹介だというのにフードも外さないのは些か失礼だったか」
そう言ってフードを脱ぐと、丁度雪を欺く白髪と赤い目の青年が現れた。
外見上は4人とは大きく変わらない年齢だろう。

「ええと、確か、学園の乗り合い馬車に乗るんだったかな?
 君達のお邪魔じゃあないなら私もついて行っても構わないだろうか、何せこちらには来たばかりで…」
言葉を切ると、自分の旅行鞄を持ち上げる。                      ...
「きっと私も乗れるだろう。なあに、心配はいらない。私は魔法学園の転入生らしいので。
 さて、その馬車は向こうにあるアレでいいんだろうか。5人も乗れるといいがね」
骨張った指で、吹雪の向こうの馬車を指す。
5人だけなら十分乗れるが、他にも多く人が乗るなら乗れるかどうかも怪しい大きさである。少なくとも見た目は。

59 :ルナ・チップル ◆apJGY8Xmsg :2012/12/18(火) 22:25:08.17 0
>>53-56
>「じょ、冗談じゃねーぜルナちゃん!?俺もリリィもフリードと違ってパンピーなんだぜ〜!
 この吹雪の中を学園まで突っ切るのは、控えめに言っても無茶ってもんだぜ!
 安全な場所で吹雪が過ぎるまで待つかよぉ、
 テレポートとかそういう安全に移動できる手段を考えた方がいいんじゃねぇか〜?」

>「そうだよ。それに、具合が悪くて行き倒れてる人がいるのに。
 フリード君だけに全部押し付けて、私達だけ立ち去るなんて出来ないよ。
 この人見たところこの街の住人って感じじゃないし、家を持ってるって感じじゃなさそう。
 宿屋かどこかで休ませてあげたらいいのかな?」

「はあ?」
ルナは不機嫌になっていた。焦燥感に苛立ち。
はやくここから逃げなければ行けない。閉塞感から解放されたい。
そんな気持ちが胸を締め付けていた。それは自分でもわけのわからない感情だった。

>「外出許可証出してるから、待ってたら学園の保有する乗り合い馬車に乗れるかもしれないね」

>「おお!その手がありましたか!!って乗れるのは僕たち学園の生徒だけでこの人は乗れないんじゃ?」

「乗れないのならあなたの出したソリにでも乗っけたらいいじゃん。
馬車の後ろにヒモつけて引っ張ったら問題ないわよ」
ルナは見下した目でとんでもないことを言う。

>「おっと人に名を尋ねる前に自分から名乗るべきでしたね
> 僕の名はフリードリッヒ!フリードリッヒ・ノクターン!!
> またの名を氷結剣フリード!格好良いい二つ名を考える会、会員No2515011です」

フリードが自己紹介し、テオボルトとが答える。

>「きっと私も乗れるだろう。なあに、心配はいらない。私は魔法学園の転入生らしいので。
 さて、その馬車は向こうにあるアレでいいんだろうか。5人も乗れるといいがね」

「へー、テオボルト君も転入生なら問題ないわ。私の名前はルナ、よろしくね。
それじゃあ早速馬車に乗りましょうよ。ここにいたら凍え死んでしまうもの。
はやくあたたかいところへいきましょ」
ルナは馬車に乗り込んだ。
席に座ると両手をクロスしてガチガチと体を震わせる。
馬車のなかは暖かいはずなのにおかしい。
少しずつ魔力が吸い取られてしまう感じもする。

そして生徒たちは会話を始めた。エンカに対するリリィの問いや詳しい自己紹介など
その内容は様々だった。それを馬車の中でなんともなしに聞きながら
ルナは気分が悪いのを我慢していた。

しばらくして……

「さむい…」
瞼を閉じてころんと転がるルナ。
周囲の音が小さく聞こえる。意識が遠くなってきたらしい。

そのときだった。お馬の嘶き。後方から近づく蹄の音。巨大な影。
いつのまにか雄雄しい馬たちが馬車と並走している。
力強い胴体。大地を蹴る四本の脚。その躍動感には神々しささえ感じ取れる。

どん!体当たりしてくる馬たち。それは明らかに普通の馬ではない。
その体からは魔力を感じる。
おまけに天から駆け下りてくる巨馬。雷鳴のようの轟く嘶き。
それはガイステスブリッツ(霊的雷光)を纏いながら、
蹄で馬車の屋根を蹴り破らんと迫っていた。

60 :エンカ ◆jWBUJ7IJ6Y :2012/12/19(水) 22:23:09.45 0
>56
> 「移動手段?うふふふふ♪まぁかぁせぇてぇ♪てけててん♪ソリ!!」
> 物理的にありえない大きさのソリを懐から取り出すフリードリッヒ
「これに乗って学園まで帰るナリね!」
となぜか某サムライ型からくり人形風の口調になるエンカ。
> 『で、それどうやって動かすの?』(猫語)
> 「気合と魔力と根性で」
「じょ、冗談じゃねーぜ!?俺が一番嫌いな言葉は『気合と魔力と根性』で、
 次に嫌いな言葉が『だが断る』なんだぜーっ!」
結局ソリには乗らず、エンカ達は学園の乗り合い馬車に乗ることになった。
「やれやれ、これでくつろいで学園まで帰れるな。
 一時はどうなるかと思ったこのエンカ・ウォンが午後3時をお知らせするぜ」
チーン♪

>58
「ところで、お前転入生なんだって?俺はエンカ・ウォンっつーケチな野郎だけどよぉ」
エンカがテオボルトに話しかけた。
「転入してきて早々行き倒れるなんてよーっ、さい先良くねぇよなーっ!
 この学園の生徒はよぉ、もっとタフじゃねぇとつとまらねぇぜ〜。
 ま、このエンカさんをよく見習うことだな〜」
エンカは無駄に先輩風を吹かせた。

>54
「ところでリリィ、さっきのテレパシーの件だけどよぉ・・・
 やっぱりお前には隠し事できねぇよな〜。
 お前は俺の妹分みてぇなもんだしよ〜」
エンカはリリィの耳元で小声で囁いた。
「お前が考えている通り、この顔の傷はキラー・チューンにやられたもんだ。
 俺はあいつと仲良くしようとしているんだけどよぉ、なかなかあっちがその気にならなくってなー」
エンカはヘヘヘと笑った。
「そう心配そうな顔すんなよ、リリィ。あいつとはそのうち仲良くなれるさ。」
そう、うまくやれるさ。
エンカは声に出さずにつぶやいた。

>59
「お?寒そうだなールナちゃん。なんなら俺が体を温めるツボを押してやろうか?」
エンカは寒そうにしているルナにそう話しかけたが、
間もなく彼女は> 「さむい…」と一言だけ言って転がってしまった。
「お、おいおい。こいつぁ、マジでやばいんじゃねーのか!?」
とその時、どん!という音がして馬車が大きく揺れた。
動揺しつつも窓の外を見たエンカは、
いつの間にか自分達の乗っている馬車と並走していた馬達にこの時初めて気づいた。
「なんだあいつらー!?俺にもわかるくらい、あきらかにおかしな馬共だぜ!
 『馬によるトラブルだけにトラウマもんだ』なんてクダらねーこと言うつもりはねぇけどよーっ!」
再び馬が馬車に体当たりしてきた。
馬車が大きく軋み、車輪が悲鳴をあげる。
こんな力で何度もぶつかられては馬車がもたない!
「おい転入生!」
エンカがテオボルトに叫んだ。
「ここは汚名返上といこうぜーっ!あのおかしな馬共をよぉ、パパーッと魔法で追っ払っちまえよなーっ!」
次にフリードに叫んだ。
「馬車が壊れたら氷で修復を頼むぜフリード!俺は壊れた物を治すような魔法は使えねぇからなーっ!」
この時エンカは、天より駆け下りてくる巨馬の存在にまだ気づいていなかった。

61 :リリィ ◆jntvk4zYjI :2012/12/22(土) 03:02:32.87 0
>56-60
値段が高・・・・・じゃなかった、アルコール度数が高い飲み物を、苛ついたルナの魔法で強引に飲まされたフードの男性。
>「ガボッ!?ガボガボッ、ガボォ……!」
文字通り彼は酒に溺れかけた。
が、天候の急変のせいで周りに気づいてもらえなかった。合掌。

>「乗れないのならあなたの出したソリにでも乗っけたらいいじゃん。
>馬車の後ろにヒモつけて引っ張ったら問題ないわよ」
「・・・・・・・ルナちゃん?どうしたの?本当に変よ?」
リリィは戸惑った顔でルナを見つめ返した。
お店ではあんなに上機嫌だったのに、いったいどうしたというのだろう?

> 「移動手段?うふふふふ♪まぁかぁせぇてぇ♪てけててん♪ソリ!!」
学園の馬車に乗せてもらえないかもしれないフード男の身を案じ、フリードは巨大なソリを出現させた。
> 物理的にありえない大きさのソリを懐から取り出すフリードリッヒ
>「これに乗って学園まで帰るナリね!」
帰れるー!と、リリィは手をパチパチさせた。
> 『で、それどうやって動かすの?』(猫語)
> 「気合と魔力と根性で」
>「じょ、冗談じゃねーぜ!?俺が一番嫌いな言葉は『気合と魔力と根性』で、
> 次に嫌いな言葉が『だが断る』なんだぜーっ!」
「細かい事に気にすると人間のスコールが小さくなるの」
リリィは大真面目な顔でそう返した。

>57
リリィ達が今後どうするかについて話し合っていると、フード姿の男性は起き上がった。
とりあえず、飲み物を飲んで人心地ついたのかもしれない。
>「で、結局あなたはいったいどなたなんですか?」
フリードは紳士らしく、まず自分から自己紹介をした。
行き倒れていたフード姿の男性は、 ジェナス、テオボルト・ジェナスと名乗った。
フードを取ったテオボルトは、まるで雪の精のように真っ白だった。美少年フリードと並ぶと、なかなか壮観である。
エンカは学園の転入生と聞いて、早速先輩風を吹かせている。
・・・・まあ、街で行き倒れは恥ずかしいだろうと思った、彼なりの場の和ませ方なのかもしれないが。

>「きっと私も乗れるだろう。なあに、心配はいらない。私は魔法学園の転入生らしいので。
> さて、その馬車は向こうにあるアレでいいんだろうか。5人も乗れるといいがね」
「人数に合わせて中も広くなるから、大丈夫ですよ」
>「へー、テオボルト君も転入生なら問題ないわ。私の名前はルナ、よろしくね。
>それじゃあ早速馬車に乗りましょうよ。ここにいたら凍え死んでしまうもの。
>はやくあたたかいところへいきましょ」
ルナは早口でそう言うと、さっさと馬車に乗り込んでしまった。
(えーっ?!テオボルト君に、それだけ?)

リリィは、ルナが消えた馬車のドアとジェナスを交互に見た後、遅れて馬車へ乗り込もうとするジェナスに小走りで近寄った。
「えと、初めまして。テオボルトさん。私はリリィです。よろしくです。
 先ほどは手違いで溺れさせてしまってごめんなさい。ルナちゃんに悪気は無かったんです。
 で、でも!お酒、お強いんですね。良かったです!
 それからですね、私、さっきのお話聞いて思ったんですけれど・・・・・」

リリィは、ずっと動かしていた両手を開いた。
「また喉が渇いたら、雪を齧ったらいいと思うんです。良かったら、これどうぞ」
差し出されたのは、バターロールサイズの雪玉だった。

62 :リリィ ◆jntvk4zYjI :2012/12/22(土) 03:06:29.88 0
馬車に乗り込むと、3人がけでも十分過ぎる広さの座席が、向かい合わせになっていくつか並んでいた。
街に出かけていたらしきいくつかのグループが、座席の半分くらいを埋めている。
天井は意外と高く、中はストーブをたいているかのように暖かかった。
革靴に入った雪を払いながら、リリィはふと、先ほどのエンカとの会話を思い出していた。

エンカの顔の傷は、リリィが危惧したとおり、キラー・チューンがつけたものだった。
どうやら、エンカはキラー・チューンと「仲良く」したいらしい。
危ないことを!と、思わず怒鳴りつけそうになったが、
>「そう心配そうな顔すんなよ、リリィ。あいつとはそのうち仲良くなれるさ。」
そう言った時のエンカの表情を見てしまっては、それ以上何も言えなかった。
「・・・・・・わかった。じゃあ、何か力になれることがあったら、その時はちゃんと頼ってね。
 まあ、私じゃあんまり頼りにならないかもしれないけど」
リリィはため息をつくと、重い空気を振り払うように、がらりと表情を変えると
「でもエンカ、私が妹分ってのは無いわ。私の方が絶対大人っぽいもの。
 これからは親しみを込めて、リリィお姉ちゃんっ、て呼んでいいからね」と笑ってみせた。

>59
「ルナちゃん寒いの?私のマフラー使う?」
>「お?寒そうだなールナちゃん。なんなら俺が体を温めるツボを押してやろうか?」
だがルナは返事をせず、「さむい…」と一言だけ言って転がってしまった。 エンカは心配そうだ。
「もしかして風邪かな?そう言えば、さっきから様子がおかしかったし。
 辛いのかな。さっき触った手だって、すごく冷たかったのよね」

ルナの額に手を当てようとしたところで、どん!と馬車が大きく揺れた。
「な、何の音?」
>「なんだあいつらー!?俺にもわかるくらい、あきらかにおかしな馬共だぜ!
> 『馬によるトラブルだけにトラウマもんだ』なんてクダらねーこと言うつもりはねぇけどよーっ!」
「寒い寒いよエンカ!」
リリィも窓の外を覗き込み、驚く。馬車に併走した馬が、こちらに向かって体当たりをはじめたのだ。
ドン!と大きく揺れるたびに、車内からは悲鳴と怒りの声があがった。
「ていうか、あの馬本当におかしいよ!誰かに召還でもされてるの?何のために?!」

>「ここは汚名返上といこうぜーっ!あのおかしな馬共をよぉ、パパーッと魔法で追っ払っちまえよなーっ!」
>「馬車が壊れたら氷で修復を頼むぜフリード!俺は壊れた物を治すような魔法は使えねぇからなーっ!」
「・・・・・・あれ?エンカは?」
リリィは自分のコートでルナを包みながら、素朴な疑問を口にした。
が、そこまでだった。

雷鳴のような音が鳴った直後、馬車の天井から大きな風船が割れるような音がした。
強力な魔力同士がぶつかり、馬車の天井に張られていた魔法障壁が消し飛んだのだ。
電撃だけはどうにか相殺されたようだが、物理的な衝撃を阻むだけの力までは残っていない。
巨大な足で踏みつけられた天井は大きくゆがみ、空席だった後ろ側二つの座席が押しつぶされた。
今の衝撃で後輪が破壊されていれば、このまま走り続けるのは難しいだろう。

だが、この馬車は魔法の暴発の可能性がある生徒を乗せるためのものだ。
内部の安全装置は徹底している。
今の衝撃によって、行動不動になるほどの大怪我を負うような生徒は、まず出ないはずだ。

大穴からは、冷たい吹雪が容赦なく吹き込んでくる。
ルナにコートもマフラーも掛けてしまったリリィは、がたがた震え始めた。
寒すぎて言葉も出ない。

外にいる馬はどうなっただろうか?巨大な馬は?
馬車には教師も乗り込んでいるが、大穴を明けるほどの馬を一人で相手するには、少々荷が重いかもしれない。

また、走行距離から考えれば、彼らは今、学園からそう遠くない位置にいる。
この場に残るか、学園に逃げるか、早急に決める必要があるだろう。

63 :テオボルト ◆e2mxb8LNqk :2012/12/22(土) 19:04:05.26 0
>59-62
>「人数に合わせて中も広くなるから、大丈夫ですよ」
「ほう、それは凄い。まさしく魔法の所業、魔法学園にふさわしいな?」
外見上は普通の馬車であるが、その辺りは流石に学園所有の馬車と言うべきか。
珍しげにとくとくと眺めて、感心していた。

>「へー、テオボルト君も転入生なら問題ないわ。私の名前はルナ、よろしくね。
>それじゃあ早速馬車に乗りましょうよ。ここにいたら凍え死んでしまうもの。
>はやくあたたかいところへいきましょ」
女子生徒、ルナは随分と冷たく言うと、返事も聞かずにさっさと馬車に乗りこんでしまった。
その態度に思うものがありつつも、テオボルトは自分が何かすることもないと判断を下す。

とりあえずは自分も後に続いて乗り込もうとすると、もう一人の女子生徒が近寄ってきた。
>「えと、初めまして。テオボルトさん。私はリリィです。よろしくです。
> 先ほどは手違いで溺れさせてしまってごめんなさい。ルナちゃんに悪気は無かったんです。
> で、でも!お酒、お強いんですね。良かったです!
> それからですね、私、さっきのお話聞いて思ったんですけれど・・・・・」
>リリィは、ずっと動かしていた両手を開いた。
>「また喉が渇いたら、雪を齧ったらいいと思うんです。良かったら、これどうぞ」
>差し出されたのは、バターロールサイズの雪玉だった。
雪玉を見て、テオボルトは苦笑を浮かべる。
「こちらこそよろしく。そしてご厚意はありがたい……が。
 雪を食べてもかえって喉が渇くと聞いたことがあるのでね?その雪は遠慮しよう。
 なあに、先の酒でいくらか元気は出た。学園に着くまでなら我慢も出来る、心配ご無用」
そう言って、今度こそ馬車に乗り込んだ。

64 :テオボルト ◆e2mxb8LNqk :2012/12/22(土) 19:06:06.48 0
>「ところで、お前転入生なんだって?俺はエンカ・ウォンっつーケチな野郎だけどよぉ」
>「転入してきて早々行き倒れるなんてよーっ、さい先良くねぇよなーっ!
> この学園の生徒はよぉ、もっとタフじゃねぇとつとまらねぇぜ〜。
> ま、このエンカさんをよく見習うことだな〜」
先輩風を吹かすエンカに、それならとばかりにテオボルトはフンと鼻息を鳴らす。
「体の頑丈さなら些か自信はあるのだがねぇ。どうにも燃費が悪いのだよ、燃費が。
 まあ、幸い頼りになる先達も居ますので。その姿を見てよ〜く勉強させていただきましょうかね、エンカさん?」
少し厭味ったらしい煽りである。言い終えて一瞬間を開け、プッと吹き出す。
テオボルトなりの冗談の言葉だったのだ。エンカがどう思うかは知らないにしても。


さて、馬車の中で談笑している内に、ルナがさむいと一言呟き横になる。
エンカやリリィが心配していると、突如馬車が何かにぶつかられたように大きく揺れた。
原因は先ほどから横で並走していた、怪しげな馬だったらしい。
テオボルトは座ったまま腕を組み、呑気に窓の外を眺めている。
「うーむ、何だあの馬。送り狼ならぬ送り馬かと思ってたんだがなぁ……」
的外れの想像に気落ちし、ため息をついた。

再び馬が体当たりし、再び馬車が揺れる。
今度は車体や車輪の軋む音が聞こえてきた。
皆がこのままだと拙いと感じ始め、車内は混乱の様子を呈してきた。
>「おい転入生!」
>エンカがテオボルトに叫んだ。
>「ここは汚名返上といこうぜーっ!あのおかしな馬共をよぉ、パパーッと魔法で追っ払っちまえよなーっ!」
「うん? 私か? 転入生たる私よりも、先達たるエンカさんがやるべきではないですかね?」
先ほどと同じく厭味を返し、しかし、何とかするべく馬車のドアに手をかける。
「ああ、そうだ。誰か私のカバンを見ておいてくれ。大したものは入ってないがね」

65 :テオボルト ◆e2mxb8LNqk :2012/12/22(土) 19:07:22.91 0
その時、風船の割れるような音に続け、後ろから馬車が破壊される音が聞こえた。
流れ込んでくる冷たい空気に逆らい後ろを向くと、押しつぶされた座席が見える。
「問題は上にもあるというわけか。どれ、どういうことだ?」
ドアを開いて空を見上げると、灰色の雲の下で雷光を伴う巨大な馬が空を駆けていた。
あの巨体で馬車を攻撃されれば、確かにたまったものではないだろう。
「ええい、このままだと学園まで持たないな。まずは横から片付けるぞ」

片手で馬車につかまり、並走する馬達に違う手を向ける。
「稲妻の餌食となるがいい!『サンダー・ボルト』!!」
掌から放たれた雷は見事に大方の馬達を貫き、痺れさせて転倒させた。
すぐさま上を向き、懐から小さな杖を取り出して巨馬へと向ける。
「電撃は効きそうに無いしな。仕方ない、気絶しててもらおう!『ステューピファイ』!」
杖先から赤い閃光が迸り、巨馬に突き刺さる。

……が、効果は全く無いらしく、身動ぎ一つもせずに駆け続けていた。
「……ダメだ、私じゃあ手の施しようがない!」
そう叫ぶなり、すかさず馬車を牽引する馬へと飛び乗る。
同時に、巨馬が再び馬車を踏みつぶした。

66 :ササミ ◆/TZT/04/K6 :2012/12/22(土) 22:37:48.65 0
ぜー……ヒュー……という不自然な呼吸音が学園女子寮廊下を移動していく。
口元からあふれる灰色の息は随分と色が薄く、石化効果はほとんどない。
それを見てササミは止まり木から飛び立ち、移動し始めたのだ。

目的地は学園第三食堂。
学園の縁に位置するこの第三食堂は女子寮から通路を伝い直接学園内へとつながる位置にある。
故に登校前の忙しい時間帯にテイクアウトされていく光景がよく見受けられる。
だが大食堂に比べれば規模は小さく、特に今日のような日には利用者もまばらである。
だからこそ、ササミは第三食堂へと来たのだ。
近い、通路内にある、そして利用者が少ない。
今の状態ではあまり人の多い所にはいきたくなかったからである。

「お、おばちゃん。ステーキセット、レアで一つ頼むがね!あと味噌煮込みうどんも」
カウンターに齧りつくようにして注文を済ませる。
ササミの持論であるのだが、病気の時こそ病気に対抗するためのエネルギーが必要である。
だからこそ、栄養価が高い食料を大量に摂取するのだ!
消化や吸収を考えておかゆにする、などという選択肢は存在しないのだ!

カチカチと七つの歯から音を奏でながら運ばれてきた料理に天を仰いだ。
すっかり風邪をひき食欲のない今のササミにステーキセットやグツグツと音を立てる味噌煮込みうどんはあまりにも重すぎる。
しばらく天を仰いだのちに覚悟を決めると手袋が7対浮かび上がり、七つの顔で一斉に食べ始めるのだ!


数分後……
汗だくになりながらも何とか完食したササミは窓の外を眺める。
窓に張り付いた雪や荒れ狂う吹雪で視界はすこぶる悪い。
その吹雪は雲の中で見た雪の巣と遜色のない荒天。
「これは凄いがね。雪というのは魔力と熱を奪うような力をもっとるんやねえ」
血の滴るようなステーキと煮えたぎるような味噌煮込みうどんを食べた直後なので、体は熱いが体調不良なのは紛れもない事実。
寒風と雪の力をしみじみと思い浮かべていた時、ササミの超視力は吹雪の向こう側の異変を捉えていた。

馬車に体当たりし、伸し掛かる巨大な馬たち。
発せられる紫電と赤い閃光。
「な、なんだぎゃ!?」
尋常でないその光景にササミは立ち上がり窓に張り付いて目を凝らす。

67 :エンカ ◆jWBUJ7IJ6Y :2012/12/23(日) 21:03:56.40 0
>62>65
「上から来るぞ!気をつけろーっ!!」
後部座席の天井に大きくあいた穴から風雪が吹き込んでくるのを見てエンカが叫んだ。
普段のエンカならばこういった明らかに危険な匂いがするものには近寄らないだろう。
しかしふと、がたがたと震えるリリィを見たエンカは、先ほどまでの彼女とのやりとりを思い出した。
> 『でもエンカ、私が妹分ってのは無いわ。私の方が絶対大人っぽいもの。
>  これからは親しみを込めて、リリィお姉ちゃんっ、て呼んでいいからね』
(ちんちくりんのくせに生意気いいやがってよ〜。
 ここは男らしいところの一つや二つ、見せつけてやんねーとな〜)

エンカは馬車の天井にあいた大穴をよじ登って、屋根の上に出た。
「なんだあの巨大な馬はーっ!?」
空を駆ける巨大な馬は、再び馬車に攻撃をしかけるべく戻ってくるようだ。
> 「稲妻の餌食となるがいい!『サンダー・ボルト』!!」
テオボルトが馬車と並走していた馬達を雷の魔法で一蹴する。
「おおーっ!やるじゃねぇか、転入生!ちったぁ見直したぜ!」
次にテオボルトは懐から取り出した小さな杖で、
巨大な空飛ぶ馬に赤い閃光を放ったが効果は薄いようだった。
余談だが、以前エンカは同じ魔法をとある魔女からくらったことがあるため、
その魔法が力不足ではないということは十分理解していた。
> 「……ダメだ、私じゃあ手の施しようがない!」
「どうやら簡単な相手じゃあなさそうだな…
 だが安心しな転入生!あの巨大な馬はこのエンカ・ウォンが直々にぶちのめす。
 裁くのは俺の悪魔だ!」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・
エンカのまわりの空気が震え始め、ピリピリとしたプレッシャーがあたりを包み込む。
エンカの傍から何かが出ようとしている。その瞬間!
「……………!??」

何も起こらなかったのだ。張り詰めていた空気はいつの間にか消え去り、
エンカの顔に刻まれた傷跡から、たらりと血がしたたり落ちる。
そして、巨大な馬の攻撃は止まらない。
「イ゙ェアアアア!?」
馬と接触したエンカは激しく真上に吹き飛ばされた。
おそらく、馬の眼中にはエンカなど入っていなかったに違いない。
再び馬車を踏み潰した際、たまたまそこにあった障害物といった程度の認識なのだろう。
エンカを一瞥することもなく、ひたすらにその目的を果たそうとしている。

馬車の上から弾き飛ばされたエンカは深く積もった雪の上にそのまま投げ出された。
幸い厚くつもった雪がエンカの体を優しく受け止めてくれたが、
やはりそれ以前に受けたダメージが深刻なようだ。
「……どうして…俺の言うことを聞いてくれなかった……?」
エンカは見えない何かにそうつぶやきながら天を仰いだ後、そのまま気を失ってしまった。

68 :ルナ・チップル ◆apJGY8Xmsg :2012/12/24(月) 00:26:09.47 0
馬車と並走していた馬たちはテオボルトのサンダーボルトで次々と打ち倒された。
雪原に転倒した馬たちが無数の雪煙を巻き上げる。
と同時に巨馬の咆哮。それは明らかに怒りを孕んでいた。

>「電撃は効きそうに無いしな。仕方ない、気絶しててもらおう!『ステューピファイ』!」

馬車馬の上でテオボルトが杖を振る。赤い閃光がきらめく。
巨馬の冷徹な双眸は彼を捕らえていた。自分の分身たる馬たちを屈辱的に打ち払ったテオボルトの姿を。
猪突しながら巨馬は眼前に青白い光球を出現させる。そして再び咆哮。
すると上に向けて放たれたそれは漆黒の空で弾け四散し、降り注ぐ稲妻となった。
無論、その稲妻の奔流はテオボルトへと降り注ぐのだ。

>「イ゙ェアアアア!?」
巨馬はテオボルトの生死を確認することもなくそのまま重戦車の如く馬車の屋根を押しつぶす。
テオボルトのステューピファイではほんの一瞬だけ巨馬を気絶させただけに過ぎなかった。
不運なのはその気絶したほんの一瞬の間に吹き飛ばされたエンカだろう。
巨馬はエンカを吹き飛ばしたことにも気付くこともなく、馬車に前足を突き刺すと、
とうとうその自重で、走る馬車を止めてしまった。

馬車の中で、リリィのコートに包まれたルナは震えている。
ぽたぽたと床に落ちる水滴。それは汗ではなかった。
よく見たらわかるだろう。氷の首飾りがとけ出していたのだ。
ルナの魔力を吸い、古の眠りから目覚めたそれは慟哭を始めていた。

それを感じた巨馬の顔には明らかに恐怖の色が現れていた。
巨体を揺らしながら馬車にできた穴に首をねじ込んでくる。
大口を開き、ルナの頭を噛み砕かんとしている。

69 :フリードリッヒ ◆cOOmSNbyw6 :2012/12/24(月) 06:33:00.56 0
>「馬車が壊れたら氷で修復を頼むぜフリード!俺は壊れた物を治すような魔法は使えねぇからなーっ!」
「任せてくださいこの馬車を立派なチャリオットに仕立てて差し上げますよ
 銀色に輝くチャリオットにね」
誰も魔改造しろとは言ってない

馬車の屋根を押しつぶす巨馬
「これは天井にスパイクを取り付ける必要がありそうですね」
普通に天井に空いた穴から攻撃呪文をぶっぱしたほうが早いと思われるが
フリードリッヒは天井の穴を塞ごうと呪文を唱え始める

天井の穴に首を突っ込みルナの頭を齧ろうとする巨馬
「フリージングニードル!!」
天井に刺をくっつけようと氷の針を放つフリードリッヒ
そのタイミングが重なりかなりスプラッタな状況になってしまったようだ
「す、すいませんこんなつもりはなかったんですが・・・・まあルナさんの命が助かったからいいとしましょう」

70 :ルナ・チップル ◆apJGY8Xmsg :2012/12/24(月) 12:23:07.66 0
>「フリージングニードル!!」
>天井に刺をくっつけようと氷の針を放つフリードリッヒ

「!!」
ガチンガチンと歯をかみ合わせる音が馬車の中で鳴り響く。
間近でルナの髪が揺れている。馬の荒々しい鼻息は室内に空気の対流を巻き起こしていた。
巨馬の動きは止まっていた。
フリードが放ったフリージングニードルが巨馬の体と馬車の屋根を凍らせて固定したのだ。
しかし巨馬に氷のダメージはない。
ただ巨大な氷の華に囚われその鋭利な花弁にその身を突き刺され身動きのとれない状態。

馬車を捨て、脱出するには今しかないだろう。
拘束から逃れんと暴れる巨馬は、室内にきらきらと氷の破片を降らし続けている。
フリージングニードルの結界が破られるのも時間の問題だ。
いやそれ以前にリリィたちは気付くだろう。帯電した空気の焦げ臭いことを。
巨馬の眼前に出現した光の球がばちばちと稲妻を宿し始めていることを。

そう、彼らの行動は冷酷だった。目的のためなら人間の命など取るに足らないのである。

暗い吹雪のなか、馬車の窓からは小さな明かりが見える。学園の明かりだろうか。
その小さな光は林を額縁とし少し見下ろすような形で見えた。
いま馬車は少し傾斜のついた丘の上にいるのかも知れない。
それに雪に埋もれたエンカはどうなってしまったのだろう。
そして馬上のテオボルトは。

巨馬が極大電撃魔法を放つまでには数ターン要するらしい。
さきほどテオボルトに一撃放ってしまったため再びチャージするには時間がかかるのだ。

71 :リリィ ◆jntvk4zYjI :2012/12/25(火) 03:23:44.23 0
>63-65 >67-70
>「ああ、そうだ。誰か私のカバンを見ておいてくれ。大したものは入ってないがね」
「わかった!」
リリィは古びた旅行カバンを引き寄せると、ルナの隣に並べた。
持ち手に軽くひざを乗せ、カバンが動かないようにする。
その後馬車の後部が破壊され、車内には雪が吹き込んできている。
凍えたリリィはまともに話せる状態ではなくなった。以後の呼びかけはテレパシーになる。

ルナの顔色はどんどん悪くなっている。
『ルナちゃん、しっかりして。何で・・・・・こんなに衰弱するなんて、風邪にしたってさすがに変だわ』
リリィはぺちぺちとルナの頬を叩く。反応はない。

エンカはそんなリリィ達を一瞥すると、馬車の天井にあいた大穴をよじ登って、屋根の上に出た。
>「なんだあの巨大な馬はーっ!?」
空を駆ける巨大な馬は、再び馬車に攻撃をしかけるべく戻ってくるようだ。
>「ええい、このままだと学園まで持たないな。まずは横から片付けるぞ」
馬車の扉から大きく身を乗り出したテオボルトが、暗い外に向かって呪文を詠唱し始めた。
>「稲妻の餌食となるがいい!『サンダー・ボルト』!!」
ぱっと窓の外が明るくなり、風の音に混じって何かが倒れるような音がした。
>「おおーっ!やるじゃねぇか、転入生!ちったぁ見直したぜ!」
馬車の周りにあった馬らしき気配が消え、エンカが快哉をあげた。
が、まだ上空から何か大きなモノが迫っているのは、リリィでも感じ取れた。

>「電撃は効きそうに無いしな。仕方ない、気絶しててもらおう!『ステューピファイ』!」
>杖先から赤い閃光が迸り、上空の巨馬に突き刺さる。
>「……ダメだ、私じゃあ手の施しようがない!」
>「どうやら簡単な相手じゃあなさそうだな…
> だが安心しな転入生!あの巨大な馬はこのエンカ・ウォンが直々にぶちのめす。
> 裁くのは俺の悪魔だ!」

(悪魔?まさか・・・・・・)
天井の上にいる、エンカのまわりからピリピリとしたプレッシャーが伝わってくる。
リリィの脳裏に、羽根が生えたライオンの姿が浮かび上がっていた。
強く、ただ強く、傲慢で、自分を証明するためにエンカを夫に迎えようとしていた悪魔だ。

だが、張り詰めていた空気はあっけなく霧散した。
>「イ゙ェアアアア!?」
エンカの悲鳴が遠ざかっていった。
ほぼ時を同じくして、デオボルトが車内から姿を消した。
「------ !!」
リリィが声にならない悲鳴を上げた。二人とも、馬車から投げ出されたと思ったのだ。

リリィの混乱などお構いなしで、馬車に、巨大な蹄が再び突き刺さった。
馬によって馬車は強引に停止する。
>「これは天井にスパイクを取り付ける必要がありそうですね」
そういう問題ではないが、突っ込む気力もない。
大穴が開いた天井からは、巨大な馬の顔が見えた。
口から吐き出される息が、リリィ達の顔を撫でていく。
『こ、こっち来ないで・・・・・!!』
リリィはルナを抱きかかえ、じりじりと通路を後ずさりした。
リリィがルナの首に巻きつけていたマフラーが外れ、湿っぽい音を立てて床に落ちる。
馬は恐ろしい目でこちらをにらみつけると、大きく口を開いてリリィ達に襲い掛かった。
殺される!
思わず目を閉じるのと、フリードの魔法が発動するのは同時だった。

>「フリージングニードル!!」
>フリードが放ったフリージングニードルが、巨馬の体と馬車の屋根を凍らせて固定したのだ。
しかし巨馬に氷のダメージはない。
>「す、すいませんこんなつもりはなかったんですが・・・・まあルナさんの命が助かったからいいとしましょう」
>リリィは巨大な口からルナを引き離すと、グッジョブ、と言いたげに、ぐっと親指を立てて見せた。

72 :リリィ ◆jntvk4zYjI :2012/12/25(火) 03:24:36.43 0
『フリード君ありがと!助かった。この大きい馬が馬車の天井に縫い付けられているうちに、私たちも逃げよう!
 さっきの攻撃で、エンカとテオボルトさんが外に投げ出されたみたいなの!助けてあげて!
 私はその間に、ルナちゃんを外に連れ出すから』

リリィは解けたマフラーを拾ったが、ぐしゅっとした水の感触に眉をひそめる。
(何これ。何でルナちゃんの首に巻いていただけなのに、こんなにびしょ濡れなの?)
ルナが首に怪我をしたのかと思ったリリィは、あわてて首を確認し・・・・・・・・息を呑んだ。
(何よこれ?ルナちゃんのペンダント?!何で溶けかけてるの??)
リリィの脳裏に、喫茶店から今までのルナの行動が走馬灯のように浮かんだ。
ルナは明らかに様子が変だった。彼女らしからぬ言動、行動、そして突然の衰弱。
思い当たるのはこのペンダントしかない。
だけど、今は巨大馬の危機が差し迫っている。今は何か出来る状況ではない。

リリィはよろよろとルナをおんぶしながら車外へ出てきた。
『グレン、テオボルトさんのカバンを運んであげて!・・・・・・え?無理じゃない!そこは努力と根性で』

馬車の窓から見えていた小さな明かりは、外に出るといっそう明るく輝き、リリィ達を誘っていた。
外に出てハッキリしたが、ここは光の方角に傾斜がついている。
先ほどフリードが出して見せたソリがあれば、何とかなるかもしれない。
『誰か来て!ルナちゃんの首飾りが変なの。もしかしたらこれ、カーズアイテムなのかも・・・・・』
リリィは呪いの可能性を口にしているのに、不用意にも首飾りを引きちぎろうと手を伸ばしている。
どうやら低体温で、相当思考が鈍っているようだ。

73 :テオボルト ◆e2mxb8LNqk :2012/12/25(火) 10:29:13.50 0
>67-72
テオボルトが馬上に出ると同時に、巨馬もまた行動を起こしていた。
青白い光球を咆哮と共に空へと繰り出し、弾けた光球は稲妻となって彼に襲い掛かる。
「ぐわあああああああああっ!!?」
咄嗟の事に反応も出来ず、その身を雷に貫かれた。
馬に雷を落とした彼が、馬に雷を落とされるというのは何という皮肉であろうか。

エンカの魔法が不発に終わり、雪の中へと投げ出される。
同様にテオボルトもまた馬上から落ちて雪に埋もれた。
エンカは気を失ったようではあるが、片やテオボルトは辛うじて意識を保っている。

「……何の容赦もない、な。下手したら……死んでいた」
息も絶え絶えながら、ずりずりと馬車へと向かう。
ただの人間であれば即死していたであろう攻撃に耐えたが、体の状態は全く持って酷い。
雷の凄まじい電圧を掛けられた身体はあちこちが酷く火傷を負っている。
加えて痺れも残っているにも関わらず動く彼は、ただの人間であれば奇跡的だろう。

馬車に手をかけ、体を支えて立ち上がったところで、テレパスが聞こえた。
>『誰か来て!ルナちゃんの首飾りが変なの。もしかしたらこれ、カーズアイテムなのかも・・・・・』
「何……? どういう……ことやら……。事態の原因は……それなのか?」
疑問を浮かべど、それよりもバチバチという音と窓やドアから漏れる光の方も危ういとしか言いようがない。

少し逡巡してから、馬車から離れたリリィ達へと握りしめていた杖を向ける。
「おい!……その首飾りとやらを……こちらに向けろ!私が……破壊する!!」
雷系統の魔法では間違いなくリリィ達まで巻き込む。
先の気絶呪文であれば、閃光自体にパワーを持つ。そのためペンダントを破壊できるかもしれない。

巨馬が電撃を放つ前に、リリィがこちらにペンダントをしっかり向けていようがいまいが、それに照準を定める。
「『ステューピファイ』!!」
大量の魔力を込めた閃光が放たれた。

74 :ササミ ◆/TZT/04/K6 :2012/12/25(火) 23:10:57.71 0
「なんだがねありゃあ……げふっげほっ」
吹雪の向こう側に稲光が煌めき雪煙が立ち上がる。
それを見たササミの前身の毛が逆立った。
思わず叫んだ後に急き込んでしまったが、そこで倒れるわけにはいかない。

腰につけたリリィのおさげが告げている。
そこにリリィがいる、と。
そして危険にさらされている、と。
ただの勘ではあったが、それはササミにとっては確信も同然。

枝分刀を無数に分裂させ自分の前に円錐状に展開させ飛び立った。
轟音と共に第三食堂の窓が砕け散ったのは、既にササミが学園敷地外へと飛び出した頃であった。

円錐状に展開した枝分刀が吹雪を切り裂くように蛇行する。
食事をしたとはいえ変わらず風邪をひいており、熱で苦しむササミはまっすぐ飛ぶことができないでいたのだ。
こまめに修正だを利かし、蛇行しながらも目的物へと向かう。
目的は雪に埋もれたエンカである。
風邪で喉をやられ怪音波も出せない、すなわち、枝分刀に超振動による切れ味を与えられない。
第三食堂の窓を斬らずに突き破ったのもその為なのだ。
尤も風邪でなくともこの吹雪では怪音波は拡散してしまい効果を期待できなかっただろう。
つまりはササミには武器が必要だったのだ。

通りすがりに速度を落とさず野兎を狩る猛禽類のように右足で雪に埋まったエンカの足首を掴む。
エンカを引き抜いたまま馬車の扉を打ち破り、中へと滑り込んだ。

先ほど巨馬が放った極大電撃魔法は周囲の磁場を狂わせていた。
本来磁力はササミの平衡感覚を奪うのだが、こと風邪をひいて既に平衡感覚が失われている状態ではかえって正常に作用させる役割をなしていた。
故に高速で雪に埋もれたエンカを掴み、場所の扉を違うことなく打ち破れたのだった。

が、既に場所の中は無人で、反対側の開け放たれた扉からリリィとルナの姿が見えた。
上には氷の華で固定された巨大な馬の首と稲妻の光球!
このまま放っておくわけにはいかない!
氷によって動けないとはいえ追撃されることは必定なのだから!
「かあああ”あ”あ”っぅぇっあっあ”!!!」
天井の巨馬を見据え、威嚇するような声と共に回し蹴りを放つのだ。
正確に言えば足で掴んだエンカを巨馬の鼻っ面に叩きつけたのだ。
ダメージを期待したわけではない。
術の行使中にその集中力を乱されるようなことがあれば……魔法使いならば誰でも知っている。

そのままエンカを引きずり反対側の扉から飛び出していく際
「行きがけの駄賃だがね。ナニモンかは知らんけど死にくさりゃーせや!」
稲妻の光球に幾本もの枝分刀が突き刺さしていった。

枝分刀の刀身は水晶でできており、水晶に電気を流すとクォーツ振動を始める。
術者の集中力を乱し、形成中の雷球を複数の振動でかき乱せばあとは自爆するのみ!

爆発を起こす馬車を背に、リリィの下へと辿り着いた時にはテオボルトが赤い閃光を放つ直前だった。
尖塔からいつも学園生徒を観察しているササミではあるが、転入生で今日来たばかりのテオボルトの顔までは知ろうはずもない。
前後の事情を知らずこの場面だけ見れば攻撃者でしかないのだ。
「や・・・ややらぜやぜんがね!!!」
ガラガラな声で叫び枝分刀をかざしてステューピファイを受け止めた。
状態が閃光である以上、水晶のプリズム効果で虹色となって屈折しその軌道を変えるのだ。
閃光を防いだとはいえ、ササミとしても攻め手がない。
未だ状況の判っていないのに、ここで武器(エンカ)を投げつけるという愚は冒せはしない。
ならばすることは一つのみ。
「な、なんや知らんげど、無事やね。一旦逃げるなも!」
リリィとルナを抱え、エンカを足で掴み飛び上がろうとしたが、ついにエンカが雪から離れることはなかった。
よろよろっと飛び立つも、すぐに高度は落ち、雪原に着いてしまう。

抱えられたリリィとルナは気づくだろう。ササミの体温が異常に高い事に。

75 :リリィ ◆jntvk4zYjI :2012/12/27(木) 18:25:27.06 0
>73
テオボルトの背後では、バチバチという音とともに、窓やドアから光が漏れていた。
リリィのカーズアイテム発言と、背後の巨大馬。
本来なら巨大馬を優先するところだろう。
だが、リリィの切羽詰ったテレパシーに何かを感じとってくれたのか、テオボルトはルナを優先してくれた。

>「おい!……その首飾りとやらを……こちらに向けろ!私が……破壊する!!」
リリィは震える手で、ルナのペンダントをつかみ、テオボルトのほうへと向けようとした。
「・・・・・・・・・!!」
と同時に、冷たい手で心臓を鷲づかみされるような衝撃が走る。
(何これ・・・・・・まさか、ペンダント・・・の、せい・・・・・・?)
リリィは歯を食いしばると、残る力を振り絞ってペンダントを持ち上げる。

>74
テオボルトの背後の馬車内からは、怒号と轟音が二、三度響いた。
その後破壊音とともに、何かが飛び出してきた気配。
例の巨大な馬ではない。
では、まだ馬車に残っていた誰かが、巨大馬と戦っているのだろうか?
(・・・・・・・誰か?誰かって、誰?)

ぼうっとした頭でリリィはそんなことを考えていた。
今にも意識が飛びそうだが、テオボルトも満身創痍で、ルナも動けない。
消えたエンカのことも気になる。無事だろうか?
フリードがもし怪我していなかったとしても、この場にいる全員の面倒をグレンと二人(?)で見るのは骨だろう。
ルナのペンダントを破壊し、馬から逃げ切るまで、リリィも倒れるわけには行かないのだ。

テオボルトの杖先から赤い閃光が迸り、まさにペンダントに直撃すると思われたその瞬間!
>「や・・・ややらぜやぜんがね!!!」
聞き覚えのない声とともに飛び込んできた黒い影が、枝分刀をかざしてステューピファイを受け止めた。
(え?・・・・・・・何?まさかササミちゃん?!)
一瞬誰だかわからなかった。
が、わしっと抱えられたとき感じた、大きく柔らかな弾力に、ああ、ササミちゃんだだなと確信する。

>「な、なんや知らんげど、無事やね。一旦逃げるなも!」
>リリィとルナを抱え、エンカを足で掴み飛び上がろうとしたが、ついにエンカが雪から離れることはなかった。
>よろよろっと飛び立つも、すぐに高度は落ち、雪原に着いてしまう。

ササミの様子がおかしい。それに熱い。声も変だ。
変だとは思ったが、頭の芯まで凍えきったリリィの中で、まだ全部が結びついていなかった。
それよりも、まず優先しなければならないことがあったからだ。

この状況では、テオボルトはどう考えても攻撃者にしか見えないだろう。
そしてササミは、敵には容赦ない。今テオボルトに問答無用で枝分刀を叩き込まなかったのは幸運だったくらいだ。
『違・・・・・・この人・・・友達・・・・・敵・・・・・馬・・・・・』
テオボルトとササミに呼びかけようとして、リリィは顔をゆがめた。
テレパシーを送るための集中も、そろそろおぼつかなくなってきた。

リリィは意を決し、目を閉じてササミの胸元の顔に、自分の額を押し付けた。
ササミが抵抗しなければ、彼女は心のガードを解き、今までの自分の記憶をそのまま直接流し込むだろう。
リリィが過去体験したことを、ササミは見ようと思う分だけ見られるはずだ。
運がよければ、テオボルトが敵でないことも理解してくれるかもしれない。

ただ、問題は、リリィが掴んだままのペンダントだ。
彼女はササミだけでなく、ペンダントに対しても完全に無防備になるだろう。

76 :ルナ・チップル ◆apJGY8Xmsg :2012/12/28(金) 00:45:25.75 0
「僕はね、風景を求めてるんだ」

と言って、夢見石の少年は微笑んだ。
ベッドの上だった。
肌触りの良い毛布と柔らかい大きな枕。
快適に暖められた室温。

一方で、対照的に外は大吹雪だった。
少年のうすく開いた目は、窓の外に爆炎の華を捉える。

「ふふふ、自分が身を置くべき風景。
その中にいて、この僕という存在の意味をもっとも実感できるそんな風景。
原風景とでも言ったらいいのかな。そう、そんな風景を僕は探している。
それは忘れてしまった子どものころの記憶かもしれないし、
生まれる前の混沌の中で見たものなのかもしれない。
……ねえ、先生はわかってくれるかい?」

保険医は困った顔をしながら赤いルージュの唇を窄めた。
頬がもごもごと動いている。キャンディーを頬張っているらしい。

「なんだろう…、僕と似たようなものが外にいる。
……魂が共鳴している。人じゃないものが近くにいる」

※  ※  ※  ※  ※  ※  ※  ※  ※  ※  ※

大爆発。

巨馬はササミの奇襲によって仰向けにひっくり返った。
大地が震える。しかし次の瞬間、その巨体が嘘のように素早く起き直った。
その両眼は怒りで燃えている。視線の先にはササミ・テバサコーチン。
彼女は巨馬の怒りを買ってしまったらしい。

ただ、問題は、リリィが掴んだままのペンダントだ。
それはリリィの魔力を吸い、体温を奪い、氷の封印を自ら解こうとしていた。

何を隠そうルナの買った氷の首飾りの正体は「クロノストーン」
クロノスがタルタロスに落とされる前に、己の体から排出し、
禍々しい力を込めて世に放ったという狂気のカーズアイテムだ。
もともとはクロノスに喰らわれるはずのゼウスの変わりに食べられてしまった石である。
それは北風の神ボレアースによって氷の封印を受けたはずであったのだが
罷り間違ってアクセサリーショップで売られてしまっていた。

ペンダントに触れてしまっているリリィにはクロノストーンの記憶が流れ込んでゆくことだろう。
ゼウスと戦い敗れ、タルタロス(奈落)に落とされた屈辱などである。
ルナは薄れた自分を取り戻しながら、クロノストーンの記憶を語る。

「……この石、大昔にボレアースっていう神さまに氷の中に封印されてバラバラに砕かれちゃったみたい。
だからお返しにボレアースたちを馬の姿のままでいるように呪いをかけたの。
石はとんでもなく強力な力をもってるわ。だからいますぐに封印しなおさなきゃ…」

氷の首飾りの封印はどんどん解けつつあった。
リリィやルナ、そしてササミ。間接的でも触れている人間の魔力を吸って
復活を果たそうとしているのである。

77 :フリードリッヒ ◆cOOmSNbyw6 :2012/12/28(金) 09:55:03.13 0
>70-76
>『フリード君ありがと!助かった。この大きい馬が馬車の天井に縫い付けられているうちに、私たちも逃げよう!』
「言われなくてもすたこらさっさですよ!」
と扉をフリージングサーベルでぶった切るフリードリッヒ
”言われなくとも”のタイミングで刃のないサーベルを鞘から取り出し
”すたこらさっさですよ”のタイミングで斬る寸前に氷の刃を生み出し扉を切り裂く
一瞬馬車から手が飛び出し真剣白刃取りをしようとしたように見えたが気のせいだろう
難なく切り裂かれる
「この馬車を操っていた御者さんは・・・・・もうすでに地面に脱出してるみたいですね」
いいえ落ちただけです

>『グレン、テオボルトさんのカバンを運んであげて!・・・・・・え?無理じゃない!そこは努力と根性で』
いや重いから無理だってと首をふるグレンだったが仕方がないのでスペイザー(空飛ぶコタツ)の天板の上にカバンを載せる

>「『ステューピファイ』!!」
>「や・・・ややらぜやぜんがね!!!」
>「行きがけの駄賃だがね。ナニモンかは知らんけど死にくさりゃーせや!」
どうも様子がおかしいササミ
どうやらテオボルトを敵と勘違いしているようである
>「な、なんや知らんげど、無事やね。一旦逃げるなも!」
>『違・・・・・・この人・・・友達・・・・・敵・・・・・馬・・・・・』
「一時的な状況判断による行動は危険ですよ!
 年若き少女が常に善で巨漢の大男が常に悪とは限らないんですから!!」
もしかしたら悪漢と被害者の少女ではなく万引き少女と警備員かもしれないのだ

ルナの話によるとあの馬はボレアースという神が変化させられたものらしい

「大変です!あの馬は神様らしいんですって!
 これは伝説の武器チェーンソーでも用意しなくては勝ち目はありませんよ!!」
別に勝つ必要は無く生き残ればそれでいいはずである
『もしかしたらダブルクレセントハーケンなら・・・・・
 でも駄目だよ!神様殺したら永遠に天国に行く事も地獄に行く事も出来なくなっちゃう』(猫語)
たった猫缶十個でレンタルできるお手軽な神々の武器ダブルクレセントハーケン
だが神官の息子であるグレンは神殺しの罪だけはどうしても避けたいようだ

その時空から一枚の紙が降ってくる
そこには”死なない程度にボコればいいんじゃね?
     そんな事より猫缶プリーズby猫神パテスト”
とメッセージが書かれていた

『・・・・僕信者辞めようかな』(猫語)
あまりに適当な神のメッセージにちょっと不信感を抱くグレンであった

「そんな暴力でなんでも解決しなくても」
と言いつつフリージングフォールという呪文を唱えるフリード
その呪文は一種の召喚術であり
巨馬の頭の上に巨大な雪だるまを降らせるというものだ
人間だったらその質量で首が曲がってはいけない方向に曲がってしまうだろう
だが相手が相手なので牽制程度にしかならない

「あのペンダントを言われたとおりにもう一度封印すれば・・・・・」
だがフリードは結界師でも何でもないただの氷の魔法使い・・・・・氷に閉じ込めるぐらいしか封印の方法は思いつかない
はたしていかに封印するつもりなのか?
「氷の棺桶に閉じ込めてフィジル島の海にでも沈めてしまいましょう」
まるでギャングの制裁みたいな方法だった

78 :エンカ ◆jWBUJ7IJ6Y :2012/12/29(土) 09:24:25.88 0
なされるがままだったエンカが、ピクリと動いた。
彼は意識をもうろうとさせながら懐からクシを取り出し、
ササミに振り回された際に無茶苦茶になった自慢のヘアスタイルを整える。
そしてぶつぶつと何事かを唱え始めた。
「……我は、汝、悪魔を呼び起こさん。至高の名にかけて、我汝に命ず。
 あらゆるものの造り主、その下にあらゆる生がひざまずくかたの名にかけて、万物の主の威光にかけて。
 いと高きかたの姿によって生まれし、我が名に応じよ。
 神によって生まれ、神の意思をなす我が名に従い、現れよ。
 アドニー、エル、エルオーヒーム、エーヘイエー、ツアバオト、エルオーン、テトラグラマトン、シャダイ、
 いと高き、万能の主にかけて、汝、悪魔よ、しかるべき姿で、いかなる悪臭も音響もなく、
 すみやかに現れよ」
エンカが呪文を唱えても、やはり何も起こらなかった。
しかし、リリィの心には変化が起こったかもしれない。
そして、もしもササミがリリィの記憶を読めるのならば知識として知るだろう。
これはとある魔道書に書かれているプレイヤー(祈祷文)であることを。

その魔道書の名は『アナベル・ガトーの鍵』、悪魔召喚のための書である。
注意が必要なのは、この書に書かれている悪魔が、
現実に種族として存在する悪魔を意味しているわけではない点である。
人間には意識と無意識がある。
意識は無意識と比べればちっぽけな力しかないが、無意識には隠された大きな力が秘められている。
その無意識の持つ力こそが、『アナベル・ガトーの鍵』に書かれている“悪魔”なのである。
とある魔女はかつてこの魔道書を使って自分の心をアンロック(開錠)し、
凶暴なライオンの姿をした悪魔を召喚した。
そしてリリィは…

そう、彼女もこのプレイヤー(祈祷文)を唱えたことがあるのである。
そして彼女はその際に悪魔を召喚したと“錯覚”したと思っている。
“客観的な事実”として悪魔を召喚したことは無いと思っている。
あの日目の前に現れた、金髪で、美しい白いドレスをまとった女の悪魔は幻想だったと思っている。
しかしそれでも、“主観的な事実”が消えることはない。
目の前に現れた、顔だけが真っ暗になっているその悪魔の姿を忘れることはない。
魔法使いにとって本当に重要な“事実”はどちらなのか?
それをリリィが望むのなら悪魔は再び彼女の前に現れるだろう。
今のリリィの精神に、最もふさわしい形となって。

どうでもいいが。すこぶる、どうでもいいが。
エンカはヘアスタイルを整えた後、クシを懐にしまってから再び気を失ってしまった。
彼は何の役にもたたないだろう。

79 :テオボルト ◆e2mxb8LNqk :2012/12/31(月) 19:38:54.34 0
>74-78
爆発音が発される中、杖から放たれた赤い閃光が冷たい空気を貫きペンダントへと突き刺さらんとした。
その時!
>「や・・・ややらぜやぜんがね!!!」
「!?」
失神呪文は、空から舞い降りた何者かによって防がれた。
水晶の枝分刀を透過した閃光は、虹色の光と化して地面を彩るだけとなった。
防いだのは普通ではない容姿の女性。腰に翼をもち、体のあちこちにいくつもの顔が張り付いている。
>「な、なんや知らんげど、無事やね。一旦逃げるなも!」
そう言ってリリィ、ルナ、向こうにいたエンカを抱えて飛び去ろうとする……が、すぐに墜落した。

「く、化生か……! タイミングから察するに、首飾りの守護者のようなものか……?」
爆発する馬車から離れ、足取りは少々危ういながら、きちんと雪原を二本の足で歩く。
時間が経つにつれ、テオボルトの体は明らかに回復していた。人ではありえないほどの速さで。

途切れ途切れのテレパスと呟くようなルナの語り、それを伝えるフリード。
そして先ほどの女性に向かって走り出さんとする巨馬。
纏まらないどころか、先ほどは薄れかかった意識をなんとかせんとするテオボルト。
「(ダメだ、頭が混乱している。『首飾り』『巨馬』『神』『封印』『謎の化生』……! どうやって切り抜ける、この場面……!)」
冷たい空気を飲み込み、冷えたままの息を吐き出す。
「私には目的がある! それは『生きること!』『テオボルト・ジェナスが何者か』を知ることだ……!
 ゆえに、ここで死んでは元も子もない……訳の分からん馬や首飾り如きに阻まれる訳にはいかん」
再び杖を上げ――再び巨馬へと向ける。

テオボルトには記憶が無い。今ある記憶の原初は、一人で放浪していたところである。
古ぼけたカバンと僅かな貨幣、二、三の魔導書、魔法学園への書状。
少ない持ち物から自身を辿るため、彼は学園へとやってきた。
ほとんど唯一の手がかりといってよい学園への書状。自分が何者かわからない不安から逃れるために、やってきている。

「(今、大きな問題になってるのは『巨馬』と『首飾り』。
  生き残るだけなら逃げてもいいが……逃げたところで追ってこない保証はない。逃げ切れる確証もない。
  あの三人が動けない今、フリードとここで何とかするのが得策、か?)」
今ある魔力を根こそぎかき集めて杖先に集中させる。魔力はテオボルトの持つ雷の属性を帯び、バチバチと音を立てる。
「(そしてフリードは首飾りの傍! ならば首飾りはあちらに任せて、私は馬の相手をした方がいい……。
  馬には気絶呪文こそ効かなかったが、『切り裂き呪文』のような物理的な攻撃の方が効き目はありそうだ)」
杖先には暴走寸前まで溜められた魔力が、紫電が漏れ始めている。
この魔力で放たれる魔法は相当な威力が出るだろう。おそらくは、巨馬をも害しうるほどの。

80 : ◆apJGY8Xmsg :2013/01/02(水) 00:01:03.29 0
猛吹雪のなか、巨馬の咆哮が冷え切った生徒たちの肺腑を貫く。
それはまさに魂までも凍らせるような恐怖の嘶きだった。

二本の前足を天に掲げ巨影は立ち上がる。
次の瞬間に雪原を疾駆しササミごとすべての命を奪うために。
リリィの持つペンダントにこれ以上魔力が供給されるのを防ぐために。

だがしかし
フリードの召喚した魔法の雪だるまが天から降ってきた。
巨馬は驚愕し前足でそのだるまを蹴り飛ばす。
空中で二つに割れた雪だるまは雪原に落ちるとゴロゴロと坂を回転、
更に巨大さを増しながらササミの胸に顔を埋めるようにしているリリィに迫る。

「きゃあああ」
ルナはリリィとササミを鷲づかむ。
誰かが彼女たちを守らなければ、それか自力でなんとかしなければ
新年早々、フィジル魔法学園はその長い歴史の幕を閉じるのだ。

巨大雪玉に押しつぶされてしまえばみんなおそらく死ぬだろう。
気絶しているエンカも、たぶん雪国育ちのフリードでさえも。
となれば残る者はテオボルトのみ。
巨馬は生き残るために必死なテオボルトの命を試してみたいと意識を集中させる。
すると開いた口から一本の巨大な氷の槍が生えてくる。
全身を硬く凍らせながらも巨馬はテオボルトの心意気に乗ったのだった。

そして、体内に凝縮された魔力で氷の槍を空気鉄砲のように打ち出すのだ。

81 :ササミ ◆/TZT/04/K6 :2013/01/03(木) 23:56:00.90 0
吹きすさぶ吹雪の中、ササミは雪に膝をついていた。
風邪で体力が落ちているうえこの荒天ではリリィ、ルナ、エンカを抱えて飛ぶことは不可能だったのだ。
その背後では爆発のダメージもほとんどないかのように起き上がる巨馬を背中の目が捉えている。

目で見る以上に突き刺さる巨馬の怒りの波動を背で感じつつ、ササミは状況を理解した。
リリィが送ったテレパシー。
光線を放った男はフィジル魔法学園への転入生であり、原因と思しき首輪を破壊する為に攻撃しもので、自分が判断を誤りそれを台無しにしてしまったのだ、と。
これによりササミの中での相関図が大きく入れ替わる。

更にルナの語る首飾りと巨馬ボレアースとの関係を聞き、総毛だった。
「上等!!!どこの田舎神族かは知らせんけどお!世代交代のごたごたを勝手に持ち込んどる言う訳やがね!!」
白い息とともに吐かれるササミの気迫。
ササミは魔界では次世代魔王候補の一人である。
それはすなわち、次の世代での神々との戦いを担う事を意味する。
襲撃した巨馬もその原因を作った首飾りに封印された旧神も神々の敵対者であるササミにとっては敵なのだ。

とはいえ、ササミは高速機動戦を得意とするが、風邪と吹雪とリリィ、ルナ、エンカの三人を抱えそれができない。
逆にどこまでも不向きな拠点防衛を強いられる闘いとあっては勝機どころか逃げる事すら難しい。

この厳しい状況の中、ササミは即座にできる事を始める。
右手の顔が舌を噛み、大量の血を手袋に染み込ませてテオボルトへと飛ばす。
自分がまともに動けない以上、味方を増強する必要がある。
吹雪の中でも届と、痛んだ喉を振り絞りテオボルトに叫ぶ。
「事情は把握じだがね!再生酵素を含んだ血を染み込まぜた手袋やがら!傷口にあでるか飲むがじやーせ!」
手袋の血を得ればテオボルトの傷は癒えるだろう。

手袋を飛ばしていると、足元でエンカが櫛で髪型を整えていた。
「きづきゃーたか?使って悪いけど……?」
声をかけようとして様子がおかしい事に気が付いた。
まるでトランス状態での呪文詠唱のように、何かを唱える。
それが何かは、リリィのテレパシーによって繋がるササミにリリィの記憶として流れ込んできた。

アナベル・ガトーの鍵の祈祷文。
人の意識領域の更に下層にある無意識領域の力を引き出すもの。
それを知った時、ササミの脳裏には人の想いや願望、集団的無意識を具現化する夢見石の少年の姿が過った。
「あんた、それって……」
ササミの言葉は途中で途切れる。
エンカがヘアスタイルを整えた後、また気絶ししてしまったからだ。

これによりどういった変化が起こるかはまだわからない。
だが身に迫る危険はすぐ目の前に来ているのだから。

フリードが召喚した巨大雪だるまは巨馬の攻撃を止めてくれたが、蹴り飛ばされた雪だるまの片割れはこちらい向かってきているのだから。
しかも文字通り雪だるま式に大きくなりながら!
「フリード!ひろってちょーよ!って、ルナ!離しゃーせ!」
エンカを投げつけ、それをクッションとしてリリィを投げつける。
あとは雪上行動が得意そうなフリードに任せれば二人は巨大雪玉から回避できるだろう、という算段だった。
だが巨大雪玉にパニックを起こしたのか、ルナがしがみ付き投げられない!
「あ〜〜〜こうなったら一蓮托生だぎゃあああ!!」
本来ならば首飾りに選ばれたルナと神の敵対者であるササミだけでするつもりだった。
だがこうなっては仕方がない。
リリィの持つ氷の首飾りに寒さと熱で震える手を重ねる。
「神同士潰しあってりゃぁええがね!!!」
ササミは魔力を首飾りに注ぎ込む!

巨馬ボレアースの目的は首飾りの封印すなわちクロノストーンの欠片を封じること。
だったら封印を解き、勝手に戦っていてもらおうという事なのだ。
現状で巨馬ボレアースを自力で撃退ですることが難しい以上、利用できるものは利用するというわけだ。
とはいえ、神々の封印がそう簡単に解けるとも思っていない。
封印の綻びからクロノストーンの力の一部でも漏れ出て巨大雪玉でも壊してもらえれば十分なのだから。

82 :リリィ ◆jntvk4zYjI :2013/01/04(金) 21:13:51.66 0
フリードがペンダントの封印を提案している。
リリィの手はペンダントに張り付いたまま動かすことが出来ない。
せめてルナだけでもと思い、ペンダントをはずすよう伝えたかったのが、体力だけでなく魔力まで急激に低下したのではどうしようもない。

薄れていく視界で、エンカが起き上がったのが見えた。
彼は乱れた髪を整えると、独り言のように何事かを詠唱し始めるのを感じる。
(・・・・・・『アナベル・ガトーの鍵』の祈祷文?何で・・・・・・これを今?)
最後まで詠唱を聞き終える前に、リリィの意識は闇へと沈んだ。

気絶したリリィの体から、白い靄のようなものが立ち上り始めた。
それらは集まり、淡く発光しながら白いドレスを着た女の姿をとり始める。
金髪の女の顔は真っ暗で、大きな空洞になっている。
姿ははっきりしないようで、時々ノイズのように輪郭がぼやけた。

顔の無い女は、幽霊のようにササミとリリィにしがみつくルナの周りを浮遊しはじめた。
ササミは意識を失ったエンカをフリードに任せ、次にリリィも渡そうとしていたが、ルナにしがみつかれたため適わない。
幽霊のような白い女は、ササミがペンダントに魔力を供給し始めるのを見計らったように、けたたましい笑い声を立てた。
>「あ〜〜〜こうなったら一蓮托生だぎゃあああ!!」
そして、ルナとそのペンダントに両手をかざした。
白い女の手から、50センチ程の薄い六角形のガラス板としか見えないものが浮かび上がった。
それらは見る間に数を増やし、ルナ達の周りをくるくる周回し・・・・・背丈ほど巨大化した後、一気に圧縮される!

その時、気絶していたはずのリリィの頭が、だらりとルナのほうに覆いかぶさるように崩れてきた。
直後リリィは姿を消し、後には硬質なボール状の物体が転がっていた。

白いドレスの女は、「次はお前だ」とばかりにルナを指差す。
しかし、巨大馬とテオボルトとのバトルはともかく、流れ弾ならぬ巨大流れ雪だるまが来たのだからたまらない。
女はルナと雪玉を見比べるような仕草を見せた後、とりあえず雪玉を優先させることにしたようだ。
自分の周りに数え切れないほど六角形の物体を、雪玉が来る方向の地面へと放った。
六角形の物体は背丈ほどに膨れ上がり、壁状に変わった。
どうやら真っ向から雪玉を止めるのではなく、六角の板を並べることで進行方向へ介入し、直撃を回避するつもりのようだ。

83 :フリードリッヒ ◆cOOmSNbyw6 :2013/01/06(日) 07:01:40.51 0
>78-82
迫りくる巨大雪玉
「まさかこんな結果になってしまうとは…予想外です」
『言ってる場合じゃないよ!どうするの?』(猫語)
「自分だけ助かる手段ならいくらでもありますがそういうわけにもいかないでしょうし
 姉さんならフリージング・ディストラクションの一撃で雪玉を粉砕して終わりでしょうけど
 僕にはそんな極大破壊呪文は使えませんし」

>「フリード!ひろってちょーよ!って、ルナ!離しゃーせ!」
とりあえずエンカを受け取るフリードリッヒ
「さてと、横に避けるか上に飛び越すか地面に潜るか
 こんな時に炎使いがいれば楽なんですけど今居ませんし
 残念なことに僕は空を飛べませんちょっと強引ですが………」
と呪文を唱え始める
「グレン!僕にしっかりつかまってくださいよ!!
 フリージングアッパー!!ぷげら!?」
呪文の効果により生み出された巨大な氷の腕がフリードリッヒをアッパーカットで
吹っ飛ばし迫りくる巨大雪玉を飛び越え逆方向まで吹き飛ばす
頭を地面に叩き付けられるいわゆる車田落ちをするフリード
「いたたたた……ライフバーが半分減りましたけど即死よりはましですよね」
『ちょっと!エンカさんのライフバーってフィー坊の何分の一!?」(猫語)
それでも雪玉に潰されるよりはましである

「うーんこれで僕が気絶でもすれば雪玉の核である雪だるまのパーツが召喚元に戻り
 雪玉が崩壊してめでたしめでたしだったはずなんですけど…………
 僕が頑丈すぎたのが敗因ですね」
ちなみに雪だるまを召喚した元の世界は一年中クリスマスという異世界サンタワールドである
『そのアッパーで雪玉のほうを攻撃すればよかったんじゃ?』(猫語)
「せいぜい人間二人と猫一匹を吹っ飛ばす威力しかないのにあの大きい雪玉をどうしろと……」
とりあえずエンカとフリード、グレンは雪玉の脅威から脱出に成功したようである
残りのメンバーはどう避けるのだろうか?
「だれか僕に斜め45度ぐらいで当身お願いします
 僕が気絶すれば雪玉が崩壊しますので」
『ねえあの雪玉の進行方向って総統の屋敷じゃない?』(猫語)
「あれ?そうでしたっけ?」

84 :ルナ・チップル ◇apJGY8Xmsg:2013/01/06(日) 07:07:10.82 0
巨馬の黒瞳に映る紫電の光。視線の先には杖を持ち決死の覚悟を決めるテオボルト。
ボレアースは、このような人間(?)が実在しているということに驚きの色を隠せないでいた。
その覚悟と秘められた魔導の才に…。そう言えば、風の噂で聞いたことがある。

ある属性の魔法に異常なまでの適性を示す。
ある魔法を生まれつき能力として有している。
未知なる力に開眼する。
今までは天才と言われて来た種類の子供たちが、
続々と生まれ始めているという噂を。

なるほど、このような人間が増え始めているというのなら
神に対する信仰心などが減少しているということも頷けた。
しかし、まだ早い。ボレアースは全身に力をこめる。
神の前では人はまだまだ無力なのだということを、この世界に示さなければならない。
人が神にとって代わるなどあってはならぬことなのだ。

そのときだった。

>「神同士潰しあってりゃぁええがね!!!」
ササミの声が頭の中で何度も反響する。魔力の放出を感じる。「まずい」と巨馬は思う。
しかし、氷の槍を放つべく、氷の魔力を最大限まで宿した体はまるで固定砲台。
自らの強力過ぎる魔力のために凍てついて動けないのだ。射線上に立つテオボルトに氷の槍を放つまでは。
続けて両耳が捉えたのは僅かな時空震。
なんということか。リリィの体から幽霊のような女が浮かび上がっている。
それは六角形の物体を連続し壁を展開させると、巨大雪玉の軌道を大きく変えることに成功する。

これはボレアース最大の失策だった。
ササミの魔力を吸収した首飾りに亀裂が生じる。
その僅かな隙間から無数の触手が噴出した。「蔦」だった。
それは魔力の高いものを求め彷徨うように広がると身動きのとれないボレアースを捉える。
捲きつき固定するとその巨体に突き刺さり呪いを解く。
そして神の姿に戻したあとにエネルギーである神気というものを飲み込んでゆく。

「うおおおお!吸われるのじゃあああ!きさまらが邪魔をしたせいじゃ。
クロノストーンが復活してしまうぞいいいいい!!」
神の姿に戻ったボレアースは髭もじゃの初老の姿をしていたが、みるみるうちにやせ細ってミイラのようになってしまった

85 : ◆apJGY8Xmsg :2013/01/06(日) 17:09:16.70 0
頭がキンキンする。冷気で血が淀んでいる。
だからルナの思考は鈍くなっていた。

ボレアースに蹴飛ばされ、二つに割れた雪だるまの片割れをどうにかするべく
フリードは自分自身を氷の腕で吹っ飛ばす。
なんという元気だろうか。否、それは元気というものを超えている。
彼は術者である自分を気絶させて雪玉を消すつもりだったのだろう。
ルナはフリードの心意気に感化され、腰に下がったタクトに手をかける。
もう自分たちでなんとかするしかない。こうなったらわずかに残された魔力で、
足元の雪原に反転魔法をかけ、冷たさを熱さに変え穴を開けるしか…

しかしその表情は凍りつく。
幽霊の女の出現。続いて

>「あ〜〜〜こうなったら一蓮托生だぎゃあああ!!」
なんとササミが首飾りに魔力を供給しはじめたのだ。
と同時に負ぶさってきたリリィが丸い物体になってころりと落ちる。

「ひっ!!」
ルナは生首が落ちてきたと思ってびっくりした。
しかしすぐに首飾りを外してササミから離れると、丸いものを拾い上げて反転魔法を流そうとする。
時間を捲き戻してリリィを再生するつもりなのだ。
でも魔力も少なく、まして時間に干渉するほどの力をルナはもっていない。

「なにこれ!どうなっちゃってるのよ。誰かなんとかして!!」
パニックになり金切り声をあげたが、その声は自分でも驚いてしまうほど小さい。
気道も肺も寒さで縮み上がっているのだ。声など出ないのだ。

そして目の前に現れた白いドレスの女が、「次はお前だ」とばかりにルナを指差す。
ルナは負けじと迫り来る雪玉を指差す。すると女は雪玉の排除を優先させ
女が出現させた壁は雪玉の軌道を変える事に成功する。

「た、たすかったっ!」
とりあえず雪玉という目の前の恐怖は去った。
だがササミの魔力を吸収した首飾りには亀裂が生じていた。
その僅かな隙間から無数の触手が溢れ出して来る。それは「蔦」だった。

蔦の主タナトストーンは、ボレアースをわざと神に戻し、純正の神気の吸収に成功すると
次に生徒たちの魔力に反応しざわざわと触手のように動きだす。

86 : ◆apJGY8Xmsg :2013/01/06(日) 17:13:53.01 0
「我が世の春が来た!ハッハッハッハ、このときをどんなに待ち望んでいたことか。
母なる大地よ。小生は帰って来たぞっ!!」
蔦の中心から男の声がする。男はぼさぼさでこげ茶色の髪を振り乱し泣きながら叫んでいた。
古代ギリシア人のような出で立ちで背には翼。右手に持った大きな鎌で
自分の左手を突き刺していた。蔦が生えているのはその左手からだった。
背丈はササミより一回り大きいくらいだろうか。
まだ完全ではないがタナトストーンが復活したのだ。

「んんん、漲ってきた!少々黴臭かったがボレアースの荒々しい神の力。確かに頂戴した。
それとこの魔界の者の魔力は、じつに香しい味だったぞ。狂おしく酔ってしまいそうな味であった!
田舎神族と侮蔑した無礼はそれで帳消しとしよう!」
タナトストーンは左手をササミの腰にまわし、生えている蔦で体に絡み付けている。空は青空。
風で舞った粉雪が雪原に光の波を立てる。

「おおそうだ。魔界の小娘、もといササミさんよ。わが国の最初の民とならぬか?
小生はこの世界のすべての大地を田畑に変えたい。小生は農耕の神の力を持っている。
我が国の民となったあかつきには子々孫々永遠に飢えることはないであろう。どうだササミさんよ?
それと他の者たちもだ。農民となり小生を永遠に信仰し続けるのだ。悪い話ではあるまいが」

ルナはあわあわと立ちすくんでいた。タナトストーンの言葉の意味がわからない。
それにササミが捕まってしまっているからだ。 胸元には球体となってしまったリリィを抱きしめている。
どうしよう…、思考を働かせようとした次の瞬間、その体はひっくり返る。

「ルナさん!君もそうだ。農民となって大地とともに生きてはみぬか!?
それとも死んでその身を大地の肥やしと変えるか?さあどっちーーーーー!?」
問いかけのあと、クロノストーンは雪原を滑空する。
ボレアースのミイラとルナを結婚式のとき車の後ろにつける缶のようにして。
ササミは抱いたまま。球体となったリリィはルナが抱きしめたまま。
そして彼はフリードとエンカの前に降り立つのだ。

「逃がさんぞ。フリード君。君は小生を氷漬けにして海に沈めるとかなんとか言っていたが、
そんなことが出来るのかね?このタナトストーンを…もう一度封じられると思っているのかああああ!!?」
泣き声と混じったヒステリックな声をあげ、タナトストーンは右手にもった大鎌を振り下ろすのだった。

87 :テオボルト ◆e2mxb8LNqk :2013/01/06(日) 18:08:51.19 0
フリードの雪だるまに潰されかけた馬は、それを蹴飛ばしてリリィらに転がす。
それから残りで唯一巨馬を攻撃せんとしているテオボルトに対峙し、大きく開けた口から氷の槍を撃たんとしていた。
テオボルトも巨馬に杖を向けたまま、タイミングを計っていた。
「ち……どちらが先手を打つか、だな」
今『切り裂き呪文』を放っても巨馬に当たるだろうが、その場合カウンターで放たれた氷の槍に体を貫かれる。
テオボルトが戦略的に勝利するためには、相手の呪文を貫いて巨馬を倒さねばならない。
互いに、慎重に機を窺っていた。

そこに、先ほど知り合った4人ではない声が飛んできた。
>「事情は把握じだがね!再生酵素を含んだ血を染み込まぜた手袋やがら!傷口にあでるか飲むがじやーせ!」
ガラガラ声の方向を横目で見ると、血で真っ赤な手袋が飛んできていた。
異形の女性がどうやら状況を把握したらしい。
「再生……寿命を延ばすユニコーンの血に似ているな? 恩に着る!」
空いている手で手袋をつかむと、そのまま噛んで血を吸う。

途端、テオボルトに幾つもの変化が起き始めた。
ササミの言葉通り火傷が癒え始めるが、それに加えフラフラしていた体に力が戻る。
杖の先で暴走寸前だった魔力の制御が不思議と簡単になる、どころか何処からか漲った魔力が加算されていく。
紫電も先ほどの比ではないほど強く迸っている。
「(血を飲むだけでこれほどとは……血に魔力が宿っていたのか?)」
自身でもおかしいほどの調子であり、気付いてはいないが、ずっと感じていた喉の渇きも一時的に治まっていた。


そこで、異変は起きた。
白いドレスの女が現れ、リリィが消え、ルナの胸元――正確にはペンダント――から蔓が噴出した。
瞬時にテオボルトは首飾りの封印が解けてしまったことを悟る。
蔓は巨馬を絡め取り、それを振り解こうと慌てて氷の槍を放ってどうにかしようとした。
だが、巨馬が何とかする前にエネルギーを吸われ、老人の姿となってしまった。

「……!? くっ、『セクタムセンプラ』ッ!!」
テオボルトがカウンターに呪文を放ち、放たれた閃光が氷の槍を粉々に砕き散らす。
閃光は馬の姿のままであれば直撃したであろうが、向かった先は蔓であった。
大量の魔力を孕んだ閃光は効果を発揮し、蔓の一部をずたずたに、それこそ細切れとなるほどに切り裂く。
しかし、活動は支障はないようで、老人のエネルギーを吸い続けた。
>「うおおおお!吸われるのじゃあああ!きさまらが邪魔をしたせいじゃ。
>クロノストーンが復活してしまうぞいいいいい!!」
老人が恨みたっぷりに叫ぶも、カラカラのミイラと化してしまった。

「な……何事だ? 何が……? っと、『セクタムセンプラ』!」
蔓は老人だけでは物足りなかったか、テオボルトにも蔓を伸ばし始めた。
切り裂き呪文で伸びてくる蔓を片っ端から切断しているが、気を抜けばあっという間に捕まるに違いない。

88 :テオボルト ◆e2mxb8LNqk :2013/01/06(日) 18:44:55.95 0
>87修正
×
>「な……何事だ? 何が……? っと、『セクタムセンプラ』!」 〜 捕まるに違いない。

>86
>「我が世の春が来た!ハッハッハッハ、このときをどんなに待ち望んでいたことか。
>母なる大地よ。小生は帰って来たぞっ!!」
>蔦の中心から男の声がする。男はぼさぼさでこげ茶色の髪を振り乱し泣きながら叫んでいた。
>古代ギリシア人のような出で立ちで背には翼。右手に持った大きな鎌で
>自分の左手を突き刺していた。蔦が生えているのはその左手からだった。
>「んんん、漲ってきた!少々黴臭かったがボレアースの荒々しい神の力。確かに頂戴した。
>それとこの魔界の者の魔力は、じつに香しい味だったぞ。狂おしく酔ってしまいそうな味であった!
>田舎神族と侮蔑した無礼はそれで帳消しとしよう!」

大層な演説をする男が現れたのに、テオボルトは呆然とした。
耳障りな声で叫び、ササミとルナを勧誘し、二人とミイラを連れてエンカとフリードの前へと降り立つ。
>「逃がさんぞ。フリード君。君は小生を氷漬けにして海に沈めるとかなんとか言っていたが、
>そんなことが出来るのかね?このタナトストーンを…もう一度封じられると思っているのかああああ!!?」
>泣き声と混じったヒステリックな声をあげ、タナトストーンは右手にもった大鎌を振り下ろすのだった。

「『セクタムセンプラ』!」
閃光がタナトストーンの右手に突き刺さる。
同時に、右手から血飛沫が上がった。呪文の効果でズタズタに切り裂かれたのだ。

「……おや? 化生や女生徒には誘いをかけるのに、私には無いんだな。男としてはわからんでもないがね」
ザッザッと雪を踏みしめて、テオボルトが歩いてきていた。
口からササミの手袋をぶら下げ、片手に握った杖はタナトストーンに向け、空いた手ではバチバチと雷の魔力が音を立てていた。
「名前が知りたければ教えて差し上げよう。テオボルト・ジェナス。自分探し途中のただの魔法使いだ。
 封印されてたのは貴様か? 封じられるのが嫌なら、そっ首落としてそこらの森の獣の餌にしてくれよう」
タナストーンの首元に杖先をずらす。
テオボルトは血の如く赤い眼をギラギラ光らせ、口元を釣り上げた。

89 :エンカ ◆jWBUJ7IJ6Y :2013/01/06(日) 19:32:02.45 0
なされるがままだったエンカが、ピクリと動いた。
彼は意識をもうろうとさせながら懐からクシを取り出し、
フリードの出した氷の腕に殴り飛ばされた際に無茶苦茶になった自慢のヘアスタイルを整える。
エンカのライフバーはフリードの1/4だが、
どうやらヘアスタイルを整えることでライフポイントが1だけ残る効果が発揮されるらしい。
また、エンカにはたいした魔力は無いのでクロノストーンの蔦からは無視されたようである。

>88
やっと目を覚ましたエンカが最初に見たのは、右手から血を流す…オッサンだった。
今まで気絶していたエンカに、そのオッサンが一体何者であるか知るよしもない。
「…なぁ、オッサン。右手からよぉ、すっげ〜血が出てるぜ?
 何があったか知らねぇけどよぉ、手当てが必要なんじゃあねぇのか〜?」
クノロストーンからすれば滑稽極まりない少年に思えるだろう。
なにしろ自分がさきほど攻撃しようとした少年が、
あきらかに自分よりも治療が必要そうな少年が怪我の心配をしてくれているのだから。

90 :ササミ ◆/TZT/04/K6 :2013/01/06(日) 22:16:29.19 0
首飾りに魔力を注ぎ込み、封印を解除しようとするササミ。
クロノストーンの封印を解除してボレアースにあて、共倒れを狙おうとしているのだ。
そんなさなか、リリィの身体から白い靄が立ち上り金髪の女の姿を取った。
顔の部分が真っ黒な空洞という異形の姿でけたたましく笑いリリィを小さな玉に変えてしまう。

一瞬枝分刀を振りかけたササミだが、思いとどまる。
実体をもたない霊体を斬りつけても無駄、というだけではない。
そう、これは突如現れた敵ではなく、先ほどのアナベルガトーの祈祷文によって呼び出された悪魔。
すなわちリリィの無意識領域から引き出された力の具現なのだから。
そう考えればこの行動も危険な状態からリリィを封印することによって身の安全を確保したと解釈できるからだ。

リリィの安全はとりあえず確保されたのだが、かといって状況が変わったわけではない。
巨大雪玉は変わらず迫ってきており、ササミ立ちより前にいるフリードとエンカに迫っているのだから。
封印解除にはまだ時間がかかるらしく、それに対応する術はない。
氷結魔法を専攻するフリードなら、と期待を寄せたが、フリードはササミの斜め上の発想で雪玉を回避した!
なんと自分にフリージングアッパーを食らわせることで吹き飛び飛び越えたのだ!
もちろんこれでフリードが気絶すれば召喚主と相殺されて核となる雪だるまが消え、巨大雪だるまも崩壊という算段もあったのだろう。
だがそこは逸般人たるシルベリア出身のフリード。
ライフポイントを半分に減らした程度で普通に立ち上がってきてしまった。
>「だれか僕に斜め45度ぐらいで当身お願いします
> 僕が気絶すれば雪玉が崩壊しますので」
「そこまで行けるなら雪玉なんて勝手に転がせとけばえーがね!」
思わず突っ込むササミ。
そんなササミは見た。
フリードのライフポイントを半分減らすほどのフリージングアッパーを共に受けながらも髪形を整え命を取り留めるエンカの姿を。
どれだけ丁髷にこだわっているんだ!というツッコミをする前にいよいよ封印が解けそうになってきて、魔力注入に集中する。

封印が解ける直前。
僅かに巨大雪玉の方が早いのがわかったが、今更どうにもできない。
が、どうにかしたのはリリィ、から生まれた金髪の女幽霊だった。
六角形の結晶体を並べ、巨大雪玉の軌道を変えることに成功したのだから。

ちなみに軌道を変えた巨大雪玉が総帥の館へ一直線に向かっていったのだが、激突の瞬間木端微塵に砕けて飛び散った。
強力な結界が張ってあったのであろう、とササミの項の顔がその一部始終を見ていたのだ。

巨大雪玉の回避が成功した後はこちらのターンである。
封印にほころびが生まれ、そこから蔦が溢れ出る!
蔦は高い魔力に反応して巨馬ボレアースを捉えた。
絡みつき、突き刺さり、神気を吸収する蔦。
ボレアースはそれにより馬の姿から神の姿となり、吼え声をあげた。
>「うおおおお!吸われるのじゃあああ!きさまらが邪魔をしたせいじゃ。
>クロノストーンが復活してしまうぞいいいいい!!」
「やかましいはどたーけ!己らの管理が悪いせいだがね!ざまーみ晒せ!」
たーけとは田分け。
田を分割することで作業効率を落してしまう愚か者の事である。
どはドレッドノート級、すなわちすんごいという事だ。
すなわち、どたーけとは超お馬鹿さん!という罵倒語なのである。

ササミがミイラのようになっていくボレアースとの応酬をしている間についにクロノストーンが復活した!
ボレアースがミイラ状態になったおかげか、吹雪も止み、むしろ小春日和のような暖かさを感じる尾はクロノストーンの力だろうか?
復活したクロノストーンは嬉しげにササミの腰に左手を回し、蔦を巻きつけ動きを封じる。
>「おおそうだ。魔界の小娘、もといササミさんよ。わが国の最初の民とならぬか?(略
上機嫌に勧誘しながら更にはルナにも蔦を巻きつけ、農民となるか死んで肥やしとなるかという無茶苦茶な要求を突き付けるのだ。

それと共にフリードとエンカの前に降り立って、封じ込めようとした恨みを晴らすかのように大鎌を振り下ろす!
が、その直前、鎌を持ったクロノストーンの右手に閃光が走り、ズタズタに切り裂いた!
迫る蔦を切り裂き一撃を与えたのはテオボルト!
血が染み込んだ手袋を加えながら赤い目をギラギラと輝かせ、啖呵を切る姿にはどことなく闇の狂気を感じさせるものだった。

91 :ササミ ◆/TZT/04/K6 :2013/01/06(日) 22:17:00.90 0
さて、そんな中ササミは何をしていたかというと。
クロノストーンに抱えられ蔦に絡め取られながら青い顔をして頬をふくらましていた。
激しく揺れる一連の移動や行動に、いよいよ限界が来ていた。
そこにテオボルトの一撃で右手を引き裂かれ痛みで一瞬左手の力が緩んだ瞬間。
「ぼええええ〜〜〜〜〜!!げほっがほっ・・・・うべえええええ〜〜〜〜!!」
ササミの身体の各所に着く七つの顔が一斉に嘔吐した。
咳と共に石化ガスが意図せず出たように、派手な嘔吐と共に濃厚な石化ガスがササミを中心にクロノストーンの姿が見えなくなるほどに充満したのだ。

流石に神であるクロノストーンを石と変える事はできずとも、ササミに絡みついた蔦は石となる。
石化ガスの煙幕の中、バキバキという破壊音が響き、ササミが拘束を解き緩んだ左腕からすり抜けて飛び出した。
ルナとボレアースを絡め取る蔦もその力を失うだろう。
石化ガスはそこまで及んでいなくとも、根元部分が石化してしまえば切り取られたも同然なのだから。

「あ”〜〜〜吐いてすっきりしたがね
封印とかれたてにしてもボケるのも大概にしやしゃーせや!
神々の敵対者である魔族の魔力で復活したのに喜ぶって神としてのプライドはあらせんのか!
たとえおみゃーさんが気にせんでも他の神々からは神の癖に魔族によって救われたゆー烙印を一生背負わされるんだぎゃ!」
神としてのアイデンティティーを崩壊させるようなことを言い放つササミ。
そのままルナと玉と化したリリィの下へと着地し、ボレアースから距離を取ろうと引き寄せる。

「そっちの爺さんも!封印の管理者ならぼやいとりゃせんでさっさと戦やーせ!
エンカ、神同士の戦いは勝手にやらせときゃえーし、ほっときゃええがね!」
エンカに忠告しながらクロノストーンに向きかえる。
石化ガスも拡散し、姿が見えるようになったクロノストーンに侮蔑の視線を向けながら。
「魔族に蘇らせてもらった穢れた神さんもだがね!
あんたがやる事は自分を封印した張本人である神への復讐だがね!
こんなところで人間ども相手にはしゃいでないで、天界に行って暴れるのが筋だろーがや!
それもできんようなボケ神が信仰を集めようなんぞ片腹いたいぎゃ!」

烈火の様にまくしたて、二人の神を煽り立てるササミ。
風邪で体力を失い、思考力が低下し、魔力を注いだためにそれすらも低調な今、ササミができることは弁舌による攻撃しかないのだから。

92 :リリィ ◆jntvk4zYjI :2013/01/09(水) 03:01:21.81 0
>83-91
白い女の幽霊はふわふわ浮遊していたが、クロノストーンから噴出した蔦に触れたとたん霧散してしまった。
だが、結晶化したリリィは以前そのままの状態である。
さて、そのリリィ本人といえば。

最初に頭に浮かんだのは、「寒くない」ということだった。
「う・・・・うーん、あれ?ここどこ?」
くらくらする頭を抑えながら起き上がると、そこは薄暗い、丸い部屋の中だった。
広さは寮の寝室くらいだろうか?壁は六角形が無数に集まったような模様がついていて、天井は丸いドーム状になっている。
窓は無い。
そして部屋の中央には、一抱えもありそうなサイズの砂時計が置かれていた。
砂時計の砂は、すでに半分以上落ちていた。
(えー。いったい何がどうなって?確か、何か変な女の幽霊に指差されたのまでは覚えてるんだけど・・・・・・)
リリィはぺちぺちと頬を叩いてみた。痛い。
(ということは、まだ死んでないってことだよね?皆はどうしちゃったんだろう?)

寒くないせいか、体に力が戻ってきている。
リリィは立ち上がり、ふらつかず普通に立てることに安堵した。
「おーい!誰かいませんかぁ?ササミちゃーん、ルナちゃーん!
 エンカにフリード君にテオボルト・・・・テオポルド?あ、あれ?・・・・・・・・。・・・・・・・・・・・・。」
どうやら、テオボルトの正確な名前が分からなくなったようだ。
「フリード君にテオ君!いませんかー?」
返事は無い。
「もう!何なのよここは!外はいったいどうなってるのよー!!」
そう喚いた瞬間、世界が開けた。
もっとも、部屋の壁が透明になったのだと気づくには、一呼吸ほどの時間が必要だったが。

最初に見えたのは、壁の一部を覆っている巨大な手だった。
その手は今にも部屋を押しつぶそうとしているようだ。
「キャー!イヤー!!つぶさないでぇ!!」
リリィが頭を抱え砂時計の後ろに隠れたがが、いつまでたっても何も起こらない。
恐る恐るもう一度外を眺めてみる。すると、手の持ち主が巨大化したルナであることが分かった。
(ルナちゃんだけじゃないわね、さっき見えたササミちゃんも巨大化しているし・・・・・・)
自分が親指姫サイズ並に小さくなっている、などとは、夢にも思わないリリィだった。
リリィはルナにおーい!と両手を振って見せたが、反応が無い。
もしかしたら、外からは中が見えない仕掛けなのかもしれない。

93 :リリィ ◆jntvk4zYjI :2013/01/09(水) 03:03:05.61 0
>「名前が知りたければ教えて差し上げよう。テオボルト・ジェナス。自分探し途中のただの魔法使いだ。
> 封印されてたのは貴様か? 封じられるのが嫌なら、そっ首落としてそこらの森の獣の餌にしてくれよう」
「キャー!かっこいい!そかそか、テオ君の名前はテオボルト君だったのね。今後は間違えないようメモメモ・・・・・・じゃなくて!
 テオ君ったら、神様を挑発してどーするのよぉ!!」
きいい!と一人突っ込むリリィ。

>「逃がさんぞ。フリード君。君は小生を氷漬けにして海に沈めるとかなんとか言っていたが、
>そんなことが出来るのかね?このタナトストーンを…もう一度封じられると思っているのかああああ!!?」
「フリード君逃げてー!超逃げて!!グレン、早く猫缶捧げるのよ!」

その時、空気を読まない・・・・・否!絶妙なタイミングでエンカが割って入った。
>「…なぁ、オッサン。右手からよぉ、すっげ〜血が出てるぜ?
> 何があったか知らねぇけどよぉ、手当てが必要なんじゃあねぇのか〜?」
「エンカ危ない離れて!っていうか血が!何でそんなに血が出てるの!貴方が一番手当て必要でしょうよ!」

>「あ”〜〜〜吐いてすっきりしたがね
>封印とかれたてにしてもボケるのも大概にしやしゃーせや!
>神々の敵対者である魔族の魔力で復活したのに喜ぶって神としてのプライドはあらせんのか!
>たとえおみゃーさんが気にせんでも他の神々からは神の癖に魔族によって救われたゆー烙印を一生背負わされるんだぎゃ!」

>「魔族に蘇らせてもらった穢れた神さんもだがね!
>あんたがやる事は自分を封印した張本人である神への復讐だがね!
>こんなところで人間ども相手にはしゃいでないで、天界に行って暴れるのが筋だろーがや!
>それもできんようなボケ神が信仰を集めようなんぞ片腹いたいぎゃ!」
そういうものなのかな?とリリィは首を傾げた。
神様同士の関係はよく分からない。巨大馬と仲が悪そうだということは理解できたのだが。
(そう言えば、あの馬はどこに行っちゃったのかな?・・・・・・まさか、あのぺらぺらのミイラみたいなやつ?)
まさかね、とリリィは首を振った。

「信者の魔力と祈りを糧にした、ってことにしたいんだろうなあ・・・・・。信者なら人種とか関係なさそうだし。
 忘れられた神様って、殆ど信仰されてないから力弱ってそうだしなあ・・・・・はっ!
 じゃあ、学園に乗り込まれでもしたら、すっごくまずくない?
 生徒達の魔力を、あの蔦みたいなので根こそぎ吸い取られちゃうかも!」
外に声が届いていないと思っているリリィは、一人で皆の話に突っ込んでいる。
実際にはとても声が小さくなっているだけで、耳を済ませてもらわないと、結晶の中の声が届かないだけなのだが。

「おーいルナちゃん!神様!誰でもいいから私をここから出してよー!」
リリィは、懇親の力で見えない壁を叩いている。
背後の砂時計は、そろそろ砂が落ちきってしまいそうだ。

94 :フリードリッヒ ◆cOOmSNbyw6 :2013/01/09(水) 09:06:50.59 0
>「逃がさんぞ。フリード君。君は小生を氷漬けにして海に沈めるとかなんとか言っていたが、
>そんなことが出来るのかね?このタナトストーンを…もう一度封じられると思っているのかああああ!!?」
>「フリード君逃げてー!超逃げて!!グレン、早く猫缶捧げるのよ!」
だがその声は小さすぎて聞こえない

>「『セクタムセンプラ』!」
>閃光がタナトストーンの右手に突き刺さる。
「相手の武器は大鎌!ならば!!」
今がチャンスとばかりに相手の懐に飛び込もうとするフリードリッヒ
ポールウェポン系の武器はリーチが長いがその分懐に入られると弱いものである
「子孫断絶脚!!」
思いっきり男の急所めがけて蹴りを食らわせようとするフリード
そもそも神に性別があるのかは知らないが声からして男だろう

「ちょっと肩に傷がついてしまいましたがまあこれぐらいは問題ないでしょう
 見せてあげますよ人類のインフレというものを!!」
『よし僕もコールゴットしちゃうよ』(猫語)
「辞めてくださいよグレン!その呪文使ったら死ぬ奴じゃないですかぁ!!」
コールゴット……神降ろし
自らの肉体に神を憑依させる神聖系最大呪文の一つ
ただし神の霊気に肉体が耐えられずに漏れなく死ぬ

>「…なぁ、オッサン。右手からよぉ、すっげ〜血が出てるぜ?
 何があったか知らねぇけどよぉ、手当てが必要なんじゃあねぇのか〜?」
「いやこの人…いえ神……いや信仰を失った神は妖怪に堕ちるらしいから
 妖怪ですかね?とにかく敵なんですってば!!」
>「こんなところで人間ども相手にはしゃいでないで、天界に行って暴れるのが筋だろーがや!
 それもできんようなボケ神が信仰を集めようなんぞ片腹いたいぎゃ!」
そのセリフの後一枚の紙がひらひらと落ちてきた
『え〜と何々……天界で相手すんのめんどくさいので地上で何とかしてくださいby猫神バースト
 追伸 いいから猫缶寄越せよ信者ども』(猫語)
「グレンのところの神様っていったい」
『神は僕らが何があっても神が何でもしてくれると思って
 努力することを止めるのを防ぐためにギリギリまで頑張って
 ギリギリまで頑張ってどうにもどうにもどうにもならないとき
 初めて力を貸してくれるんだそうだよ本神いわく』(猫語)
「それってめんどくさいって意味なんじゃ……」
『ただし代償を捧げれば別だけどね』(猫語)
頭に被っているなんだかよくわからない赤い被り物から猫缶を取り出そうとするグレン
はたして無事に生贄を捧げることに成功し
神の武器ダブルクレッセントハーケンを召喚できるのか?

>「おーいルナちゃん!神様!誰でもいいから私をここから出してよー!」
だがその声は聞こえないあまりに小さすぎるからだ

95 :タナトストーン ◆apJGY8Xmsg :2013/01/10(木) 22:00:08.54 0
>>87-88
テオドールの魔法でズタズタに破壊されるクロノストーンの右腕。噴出する真紅の鮮血。
フリードに打ち下ろされんとしていた大鎌は、握力を失った主のもとからすり抜けて、雪原へと突き刺さる。

>「名前が知りたければ教えて差し上げよう。テオボルト・ジェナス。自分探し途中のただの魔法使いだ。
 封印されてたのは貴様か? 封じられるのが嫌なら、そっ首落としてそこらの森の獣の餌にしてくれよう」

「ほほう、君はテオボルトというのかね?自分探しの旅をしている?
ふむ、では聞こう。君が小生の首を落としたところで、探し物はみつかるのか?
たぶん見つからないだろう?それなら君は農民になるといい。
大地を耕し自分を耕せ。虫を見つけ自分を見つけろ。
そうすればいつか君は、輝かしい黄金の自分と出会えるはずだああ!
ハッハッハッハッハー!」
怒れるテオボルトを見つめながら、クロノストーンは叫び返す。

>>89
>「…なぁ、オッサン。右手からよぉ、すっげ〜血が出てるぜ?
 何があったか知らねぇけどよぉ、手当てが必要なんじゃあねぇのか〜?」

「そのやさしさに感謝するぞエンカ君!我が名はクロノストーン。農耕の神である。
君の言動は馬車の中で注目していた。君はクラスメイト想いのやさしい少年だ。
それならいっそクラスメイト想いの野菜少年にならぬか?
そう、君は優しい野菜農家になったほうがいい。そして心のうちに潜む獅子など一生眠らせてしまえ。
そのほうがよかろう?そうなってしまえば、もう誰も傷つけることはない。君も傷つく心配もないのだ!!」
エンカの無意識に、荒ぶる獣の力を感じつつクロノストーンは言った。
その言動は彼なりの真実でもあり、エンカを惑わすつもりでもあった。

96 :クロノストーン ◆apJGY8Xmsg :2013/01/10(木) 22:08:00.09 0
>>90
>「あ”〜〜〜吐いてすっきりしたがね
 封印とかれたてにしてもボケるのも大概にしやしゃーせや!
 神々の敵対者である魔族の魔力で復活したのに喜ぶって神としてのプライドはあらせんのか!
 たとえおみゃーさんが気にせんでも他の神々からは神の癖に魔族によって救われたゆー烙印を一生背負わされるんだぎゃ!」

「おお、考えてみればそれは困るな。なによりガイアが悲しむ。
しかしササミさんよ。君はどうして魔族になど生まれてしまったのだ。
小生はこの大地をこよなく愛している。できれば君とともに、この大地と生きたかったぞ」
目を細め、微笑しているクロノストーン。

>>91
>「そっちの爺さんも!封印の管理者ならぼやいとりゃせんでさっさと戦やーせ!
 エンカ、神同士の戦いは勝手にやらせときゃえーし、ほっときゃええがね!」

「…な、なんじゃとぉ。小鳥がようほざいたわぁ」
ボレアースはよれよれと這い蹲っている。
思えばクロノストーンによって、ボレアースの運命も狂わされてしまったのだ。

封印しようとして呪いをかけられ、馬にされてしまったあと
彼は恥ずかしくて天界に戻れないでいた。なので山の奥にひっそりと暮らしていた。
それに年々と薄れてゆく人々の信仰心。年金暮らしの老人のように細々とした生活。
そこへ過去から現れた因縁の宿敵クロノストーン。
退治出来てなかったと皆が知ってしまえば、恥の上塗り。
何としてでもこのことは内密に処理しなければならないのだ。

「ひょおおおお…」
ボレアースは最後の気力で立ち上がる。

97 :クロノストーン ◆apJGY8Xmsg :2013/01/10(木) 22:10:50.28 0
>>92-93
ササミの石化ガスのおかげで、ルナはクロノストーンの拘束から抜け出した。
手に持っていた球体も、今は胸に抱きしめている。
お化けによって、リリィがどんな魔法をかけられたのか理解できないでいたルナは、
球体を割るとかそんな発想は出来ずにいた。

でも…球体の中から音がするのに気付く。

>「おーいルナちゃん!神様!誰でもいいから私をここから出してよー!」

「リリィ!?」
小さな声がする。ルナは球体をまじまじと見つめる。
穴や隙間、シールみたいなものがないか調べる。

「リリィ、大丈夫?…かわいそう。
あのお化けがボールの中に閉じ込めちゃったのね。
ねえ、怪我はない?私、どうしたらいいの?あのお化けったらなんだってこんなこと…」
ルナは球体に耳をぴたっとつける。

>>94
>「子孫断絶脚!!」

「ぐはーーーーっ!!」
悶絶。吐血。血の雨。虹の橋。

>「いやこの人…いえ神……いや信仰を失った神は妖怪に堕ちるらしいから
 妖怪ですかね?とにかく敵なんですってば!!」

「否!小生は神である。それに敵か味方かなど君の一存で決められることなのかね?
そうだよなあ、みんなー? ハッハッハッハー!
さあ、どっちだ?小生は敵か味方か?さあどっちーーーー!!?」
口から血を流しながら狂気の笑み。
こんなわけのわからない者が味方なわけがないだろう。

98 :クロノストーン ◆apJGY8Xmsg :2013/01/10(木) 22:15:54.95 0
>「魔族に蘇らせてもらった穢れた神さんもだがね!
 あんたがやる事は自分を封印した張本人である神への復讐だがね!
 こんなところで人間ども相手にはしゃいでないで、天界に行って暴れるのが筋だろーがや!
 それもできんようなボケ神が信仰を集めようなんぞ片腹いたいぎゃ!」

「うぬぬぬ…」
クロノストーンは唸った。ササミの侮蔑の視線は彼にとって耐え難いものだった。
モノには順番がある。そう言い返したかったのだが、その前に神特有の矜持が立ちはだかる。
さらにテオドールに攻撃を受け放り投げてしまった大鎌との距離10メートル。
目の前にはテオドール。視線を移せば、猫神と交渉しているフリード。未知の力を秘めているエンカ。
学園との距離は50メートルはあるだろうか。校内には無数の魔力を感じる。
それを吸収できればさらなるパワーアップが可能なのだが。
そう逡巡した刹那

「クロノストーン!!」
ボレアースが死に物狂いで猪突して来るのが見えた。
唾棄し、クロノストーンは大鎌を回収すべく大地を蹴る。
そして二神は衝突。お互いにもんどりうって吹っ飛んだ。

「ぐほっ!」
腹部に衝撃を受けたタナトストーンの口から濡れた石が顔を出している。

「あ、あれじゃ、あれが奴の本体の石ころじゃ!大昔にタナトスがゼウスと間違えて飲み込んだという石じゃ。
あれを何かに閉じ込めてしまえば奴をもう一度封印できるはず!」
力を使い果たしたボレアースは、すでに半透明になっていたが、最後の力を振り絞って神の力を放つ。
すると、もよもよとした直径50センチくらいの霧のようなものが生まれた。

「その霧の玉に触れて願うのじゃ。さすれば冷気を生み出す道具を生み出すことができよう。
それで奴との戦いを優位にもってゆくのじゃ。…たのむ。たのんだぞ」
そう勝手なことをいい遺して、ボレアースは消えてしまった。

「むもももも!」
一方のクロノストーン。彼はは口から顔を出した石を手で押し込んで再び飲み込んでいた。
その背後、学園の窓に映る小さな顔。保健室の窓から外をじっと見ている夢見石の少年。
だがそれは本筋と関係ない。ただ見ているだけである。

「小生に従う者は、力をかせい!だが邪魔するものは大地の肥やしと変えてやろう!」
クロノストーンは翼を羽ばたかせた。
生じた小さな竜巻は邪魔するものを吹き飛ばすだろう。
と同時に天高く舞い上がった彼は、大地に突き刺さっている大鎌を取らんと舞い降りるのだった。

99 : ◆apJGY8Xmsg :2013/01/10(木) 22:24:37.20 0
>>95
すみません。
コテ名を間違えてしまいました。
タナトストーンではなくクロノストーンでした。

>>98
×大昔にタナトスがゼウスと間違えて
○大昔にクロノスがゼウスと間違えて

すみません。

100 :エンカ ◆jWBUJ7IJ6Y :2013/01/11(金) 21:36:54.11 0
>95
> 「そのやさしさに感謝するぞエンカ君!我が名はクロノストーン。農耕の神である。
> 君の言動は馬車の中で注目していた。君はクラスメイト想いのやさしい少年だ。
> それならいっそクラスメイト想いの野菜少年にならぬか?
> そう、君は優しい野菜農家になったほうがいい。そして心のうちに潜む獅子など一生眠らせてしまえ。
> そのほうがよかろう?そうなってしまえば、もう誰も傷つけることはない。君も傷つく心配もないのだ!!」
「よくわかんねーけどよぉ、オッサン農家の人だったんだな〜。
 野菜作りって面白そうだよな〜。いいぜ、オッサン。俺手伝うっすよ」
クロノストーンにあっさり同意するエンカ。
クロノストーンの意図はともかく、エンカはそういうのが好きなのである。
エンカの将来の職業が決定した瞬間であった。

>91
> 「そっちの爺さんも!封印の管理者ならぼやいとりゃせんでさっさと戦やーせ!
> エンカ、神同士の戦いは勝手にやらせときゃえーし、ほっときゃええがね!」
「げっ!?そういうお前はササミ・テバサコーチン!ササミ・テバサコーチンじゃねぇか!?
 また何か悪いことしようとしてんじゃあねーだろうなーっ!?」
エンカとササミは初対面だが、どうやらエンカからの印象は悪いようだ。
それはきっと某インフルエンザ事件のせいだろう。
「ていうか、なんで俺の名前を知ってるんだ!?
 初対面なのによぉ、そんなに俺の事が気になってたのかぁ!?」
エンカはささっと再び髪型を整えた。

>94>97
> 「子孫断絶脚!!」
> 「ぐはーーーーっ!!」
「こらーっ!フリード!農家のオッサンに乱暴してるんじゃあねぇぜーっ!!」
クロノストーンの金的を蹴り上げたフリードをエンカが叱った。
> 「いやこの人…いえ神……いや信仰を失った神は妖怪に堕ちるらしいから
>  妖怪ですかね?とにかく敵なんですってば!!」
「フリード、フリードよ〜?神様だからってそんなに毛嫌いしちゃあいけねぇぜ?
 いや、確かに俺も昔は神様なんて嫌いだって言ってたけどよぉ、
 やっぱりそういう偏見を持った目で見ちゃあいけねぇよな〜?
 ちゃんとそいつの本性を見定めなくっちゃよ〜」
と、エンカはしみじみとした様子で言った。
> 「否!小生は神である。それに敵か味方かなど君の一存で決められることなのかね?
> そうだよなあ、みんなー? ハッハッハッハー!
> さあ、どっちだ?小生は敵か味方か?さあどっちーーーー!!?」
口から血を流しながら狂気の笑みを浮かべるクロノストーン。
「…あーちょっと前言撤回。このオッサンなんかやべぇかも」

その後ボレアースが死に物狂いでクロノストーンへ突進するのをエンカは離れて見ていた。
「こいつはやべぇよな〜。ササミちゃんが言う通りよ〜、関わり合いにならない方が良さそうだぜ」
エンカはクロノストーンとボレアースのどちらの味方にもつかなかった。
エンカが気にしたのはルナだ。
「よぉ、ルナちゃん。さっきまで具合が悪そうだったけどよぉ、大丈夫か〜?
 なんなら保健室まで連れて行ってやるぜ?」
何度も言うがその必要があるのはエンカの方である。
ルナが奇妙な球体を持っているのを不思議に思ったエンカが事情を聞くと、
どうやら中にリリィが閉じ込められているらしい。
「なぁ、ルナちゃん。『北風と太陽』の話って知ってるか?
 北風がバイキングを育てたって話だ。…あー違ったかな?
 とにかくよぉ、こういう時は暖めてみたら問題が解決するんじゃねーかな?」
エンカはルナからリリィの入った球体を取り上げると、懐からライターを取り出し、球体を火であぶり始めた。
果たしてこんな方法でリリィを開放することができるのだろうか?

101 :テオボルト ◆e2mxb8LNqk :2013/01/12(土) 20:27:51.44 0
>89-91>94-95>98>100
切り裂き呪文で大鎌を手放したクロノストーンは、テオボルトを見る。
テオボルトは油断なく、杖を構えたままであった。
が、
>「ほほう、君はテオボルトというのかね?自分探しの旅をしている?
>ふむ、では聞こう。君が小生の首を落としたところで、探し物はみつかるのか?
>たぶん見つからないだろう?それなら君は農民になるといい。
>大地を耕し自分を耕せ。虫を見つけ自分を見つけろ。
>そうすればいつか君は、輝かしい黄金の自分と出会えるはずだああ!
>ハッハッハッハッハー!」
状況が状況であるのに、テオボルトの目を見返して、クロノストーンは叫び、高笑いを上げた。
それを見てテオボルトは、眉を顰めて笑みを消す。
単純に呆れたのだ。こいつ、どんだけ農業好きなんだよ、と。

歩みを止めて、目の前の寸劇を眺める。
エンカはクロノストーンを心配するも、言動から狂い様を認識し、
ササミは何やら石化のブレスで蔓から抜け出して、クロノストーンや周りにまくし立てており、
フリードは急所を蹴りつけて悶絶させて、
ルナは手に持った球に耳をぴったりとくっつけている。
そして肝心のクロノストーンは狂人の所業そのもの。しかも農業大好き。
テオボルトは急にこの状況が阿呆みたいに思えてきた。先ほどまで死ぬような思いであったはずなのだが。
今の敵にはどうにも危機感が感じられない。
テオボルトは現在、傷が癒えてきたことで、明らかな慢心を抱いていた。

>「あ、あれじゃ、あれが奴の本体の石ころじゃ!大昔にタナトスがゼウスと間違えて飲み込んだという石じゃ。
>あれを何かに閉じ込めてしまえば奴をもう一度封印できるはず!」
>力を使い果たしたボレアースは、すでに半透明になっていたが、最後の力を振り絞って神の力を放つ。
>すると、もよもよとした直径50センチくらいの霧のようなものが生まれた。
>「その霧の玉に触れて願うのじゃ。さすれば冷気を生み出す道具を生み出すことができよう。
>それで奴との戦いを優位にもってゆくのじゃ。…たのむ。たのんだぞ」
そう言い残すと、老人は跡形もなく掻き消えた。老人が消えたところと、霧とを見比べる。
「ほーう……まあ、いいか。雷撃を一発当てて、それで終わりだ」
霧を無視し、クロノストーンへと向き直る。

>「小生に従う者は、力をかせい!だが邪魔するものは大地の肥やしと変えてやろう!」
「む!」
竜巻を生じさせ、クロノストーンは羽ばたく。テオボルトは咄嗟に屈み、吹き飛ばされまいとしながら空を仰ぐ。
クロノストーンの向こうには、雪の消えた青空が見えた。
テオボルトは小さく舌打ちをし、杖を放り捨ててフードを被る。
「晴れたか。……間の悪い」
呟き、改めてクロノストーンを見やる。先ほど取り落とした大鎌を取らんと舞い降りようとしていた。
「ええい、さっさと去ね! 『サンダー・ランス』!!」
無造作に向けられた掌から、電撃の槍が放たれた。

102 :リリィ ◆jntvk4zYjI :2013/01/14(月) 10:06:15.65 0
>94-101
「あっ!ルナちゃん!やっと声が届いた!」
ルナはリリィの入った玉を探っている。
リリィからは見えないが、玉は半球を張り合わせたような模様がついている。
また、中央にはスイッチのような突起があった。
今現在、ルナはまだ突起を押す気は無さそうだが。

>「リリィ、大丈夫?…かわいそう。
>あのお化けがボールの中に閉じ込めちゃったのね。
>ねえ、怪我はない?私、どうしたらいいの?あのお化けったらなんだってこんなこと…」
「何だろね?私にもよくわかんない。でも、今のところぴんぴんしてるよー。
 この中、外と違って寒くないせいかな?怪我どころか、ぐっすり眠った後みたいに元気になった気がする。
 ただね、気になることがひとつあってね。
 部屋の真ん中におっきな砂時計があるんだけど、砂がそろそろ全部落ちそうなの。
 これ、何か意味があるのかな?」

リリィがルナと会話している間にも、状況は刻一刻と変化している。
クロノストーンに痛そうなことをしているフリードと、それをいさめるエンカ。
猫神と交渉をしているグレンと、挑発して神同士の共倒れを目論むササミ。そして、好戦的なテオボルト。
かなりカオスな状況を見ていたリリィだったが、口を開いたとき発言したのは、そのどれでもなかった。

「吹雪が止んでわかったけど、私達、意外と学園の近くまで戻ってきてたんだね。
 でもさ、なんかちょっとおかしくない?
 私達以外にも馬車に乗っていた生徒は、学園に避難したはずだよね?
 彼らから、馬車が巨大馬の襲撃を受けたことは聞いたはずなのに、どうして誰も出てこないの?
 先生のうちの一人くらい、そろそろ助けに来てくれたっていいはずなのに」
もしかしたら、こちらに駆けつけられないような事情があるのかもしれない。

>「げっ!?そういうお前はササミ・テバサコーチン!ササミ・テバサコーチンじゃねぇか!?
 また何か悪いことしようとしてんじゃあねーだろうなーっ!?」
「ちょっとエンカ!今日のササミちゃんは悪だくみなんかしてないわよ!」
リリィはぷんぷん怒っているが、彼女のササミに対する発言もかなりアレである。

>「こらーっ!フリード!農家のオッサンに乱暴してるんじゃあねぇぜーっ!!」
>クロノストーンの金的を蹴り上げたフリードをエンカが叱った。
> 「いやこの人…いえ神……いや信仰を失った神は妖怪に堕ちるらしいから
>  妖怪ですかね?とにかく敵なんですってば!!」
妖怪だったんだ!と驚くリリィをよそに、エンカはフリードを諭している。
>「フリード、フリードよ〜?神様だからってそんなに毛嫌いしちゃあいけねぇぜ?
> いや、確かに俺も昔は神様なんて嫌いだって言ってたけどよぉ、 (略)
> ちゃんとそいつの本性を見定めなくっちゃよ〜」
リリィは、しみじみとした様子でしゃべるエンカを思わず凝視した。
お天道様今日もありがとよっ!、と軽い調子で拝みそうなエンカなのに、神様が嫌いだったことが意外だったのだ。

さて、神様ことクロノストーンの野望をあっさり許容したエンカだったが、会話しているうちにクロノストーンの異常性に気づいたようだ。
ルナとササミは高みの見物、フリードとグレン、そしてテオボルトは完全に臨戦態勢だ。
神同士の戦いを、ルナに抱えられてリリィも見守っている。
そうしていると、エンカがルナに興味を示したようだ。彼は結構フェミニストである。
>「よぉ、ルナちゃん。さっきまで具合が悪そうだったけどよぉ、大丈夫か〜?
> なんなら保健室まで連れて行ってやるぜ?」
「ちょっとエンカ、人の心配より自分の心配しなさいよ!ルナちゃんよりあなたの方が酷い状態じゃないのよ!
 髪型気にするくらいならせめて止血しなさいよ!ハンカチくらい持ってるんでしょ?」
だが、リリィの声はエンカまで届かない。
「ルナちゃん、エンカに、その怪我どうにかしろって言ってやってよ!」

103 :リリィ ◆jntvk4zYjI :2013/01/14(月) 10:06:57.12 0
キイキイ叫ぶリリィをよそに、エンカとルナの「リリィ救出作戦会議」は進行する。
「なぁ、ルナちゃん。『北風と太陽』の話って知ってるか?
 (略) とにかくよぉ、こういう時は暖めてみたら問題が解決するんじゃねーかな?」
「え?ちょっと、エンカ何する気なの?」
>エンカはルナからリリィの入った球体を取り上げると、懐からライターを取り出し、球体を火であぶり始めた。
リリィが足元に視線を向けると、床は透明になった。
リリィの入っている球体は小さいため、ライターの火は巨大な炎となって彼女の足元を嘗めようとする。
「キャー止めて!燃える燃える燃えるううう!!」
リリィはぴょんぴょん飛び跳ねて炎から逃れようとする。
実際には熱さなど感じていないはずなのだが、目から入った情報に踊らされて、そこまで気づいていないようだ。

その時。
部屋の中心にあった砂時計の砂が、完全に落ちきった。
チーン!という軽快な音が球内に響き渡り、リリィは思わず奇妙なダンスを止める。
「へ?」
瞬間、リリィの足元が喪失した。
足元だけではない、天井も壁もリリィから離れていく。
球体だった部屋が真っ二つに分解したのだ、と気づくのには、少し時間がかかった。
「キャー!落ちる!死ぬ死ぬ死ぬ!」

外で球体を炙っていたエンカとルナは、さぞ驚いただろう。
球体が光ったかと思ったら、中からリリィが飛び出してきたのだから。
至近距離にいたルナやエンカにボディアタックを食らわせることにならないか、実に心配である。

「と、とにかく、何とか出られたよ、多少荒療治だったけど。ありがとう、エンカにルナちゃん。それとササミちゃんも。
 ていうか、エンカ!あなた応急手当位しなさいよ!血だって出てるし、見てるほうが痛いでしょうよ!」
リリィは小さなポーチから、薬草のシートらしきものを取り出しエンカの手に押し付けた。
「それとササミちゃん、もしかして風邪引いてるんじゃないの?そんな薄着で・・・・・・。
 ルナちゃん、悪いけど私が貸したコート、ササミちゃんに渡してくれない?
 ササミちゃん、ちょっと小さいかもしれないけど、このコートよかったら使って。何なら穴をあけてもかまわないから。
 それと、薬はもう飲んだ?前に保険医さんからもらった風邪薬しかないけど・・・・・・・ど、どうする?」
リリィは急に歯切れが悪くなった。
保険医の薬は劇的に効くが、人によっては副作用が出るようなのだ。
以前リリィはペンギンになったことがあったのだが、その原因について話した内容を、ササミは覚えているだろうか?

リリィは臨戦中のフリードとテオボルトに視線を移した。
>「その霧の玉に触れて願うのじゃ。さすれば冷気を生み出す道具を生み出すことができよう。
>それで奴との戦いを優位にもってゆくのじゃ。…たのむ。たのんだぞ」
「えー!神様なんだから、後始末は自分でやってよおお!
 冷気を生み出す道具なんて、凡人が使ったら凍え死んじゃうでしょ!!」
まあメンバーの中には、冷気などそよ風程度にしか感じない美少年が一人いるのだが。

巨大馬のほうは力を使い果たして消えたが、まだクロノストーンが残っている。
クロノストーンは豊作の神様らしいが、農民スカウトはこんな場所でなく荒地や砂漠の民にするべきである。
「それにしても、何であの神様・・・・・妖怪?は、信者作りにあそこまでこだわるんだろう?人が恋しいのかな?」
口から顔を出した石を手で押し込んでいる姿は、パンを詰まらせたおじさんのようだ。
神々しさとは程遠い。

>「小生に従う者は、力をかせい!だが邪魔するものは大地の肥やしと変えてやろう!」
>クロノストーンは翼を羽ばたかせた。
「キャー!!」
内心でおじさん扱いしていた罰が当たったのか、リリィは木の葉よりも軽々と吹き飛ばされた。
このままでは頭から雪面に激突し、足だけがにょっきり生えている死体になるだろう。

104 :ササミ ◆/TZT/04/K6 :2013/01/14(月) 12:25:24.16 0
二柱の神のアイデンティティーを崩さんと言わんばかりの発言にも微笑しているクロノストーンにササミの全身が鳥肌立つ。
大いなる神の愛ゆえなのかもしれないが、いかんせんササミは魔族。
どこまでも相性が悪いのだ。

そんな中微妙に神より(?)なエンカはササミの登場に警戒感を抱いている様子。
当然と言えば当然の反応である。
以前ウィルスパニックを良い事に学園中を巻き込んだ騒動を起こしているササミである。
初対面であろうが警戒するのは当然。
ササミ本人もむしろ望むところと言わんばかりに邪悪な笑みを浮かべて応酬するのだ。
「当たり前だがね!悪とは生存欲に基づく能動的意志の一面!生命の中のみに悪は存在し、悪に基づき悪を求める生命の力の組織化!
それが魔であり、魔とは情熱の一つ!
魔族である私が悪い事をしてなーにが悪いんだがやー!」
高笑いに魔族である事を宣言したのだ。
そう、本人もすっかり忘れていたが、人間の学校なるものを観察しそれを魔界に取り入れるためのスパイなのだった。
そんなササミにエンカは更なる言葉を

>「ていうか、なんで俺の名前を知ってるんだ!?
> 初対面なのによぉ、そんなに俺の事が気になってたのかぁ!?」
せっかくいい気分で悪と魔について語っていたのに出た言葉がこれである。
しかも髪形を整える姿にササミも思わずずっこけてしまった。
「あ、アホかーーー!
わたしゃ人間を観察する為に毎日尖塔のてっぺんから学園を行きかう生徒や教師を見て顔と名前を一致させとるんだがね!
おみゃーさんみたいに面白い頭しとりゃ嫌でも覚えてしまうがや!」
起き上がりながらエンカに突っ込むのだった。

そんなやり取りをしている中、フリードが子孫断絶脚をクロノストーンに放ちエンカが窘める。
だがササミはもちろんフリードの味方である。
「神である時点で敵だぎゃ!フリードええがね!もう一発やったりゃーせ!」
エンカの言う偏見全開でフリードの応援に回っている。
その後のクロノストーンの言動にエンカも引いたところで気分よく距離を取っていった。
なぜならば、最後の力を振り絞ってボレアースが突進を始めたからだ。
ササミとしては神同士が潰しあうのならば願ったりかなったりなのだ。

距離を取ったところではルナがリリィが閉じ込められたという球体を開封しようと四苦八苦している。
それを見たエンカが『北風と太陽』の逸話を持ち出し、球体を温め始めるが、それを見てササミは眉を潜ませる。
「ちょーまちーや。北風と太陽てあれだがね。旅人の服を脱がせようと北風が風を吹かし、太陽が温めたけど、服を脱がない。
そこに悪魔がやってきて旅人を女に変えたら旅人は自分から服を全部脱いだってやつだがね」
どうやら魔界に伝わる『北風と太陽』の話は少々違っていたらしい。

この一連のやり取りの中、リリィも球体の中で声をあげていたのだが、とても小さくササミの耳まで届かなかった。
結局気づいたのは、球体が割れてリリィが元気に表れてからだった。
その背後では二柱の神が激突し、ボレアースが冷気の弾を生み出し、後を託して消えて行っている。
人間に後始末託して力尽きるなんざ神失格!と追い打ちをかけたかったのだが、ササミ喉の口からもその言葉は出なかった。

吹雪が止み、神の一柱が消え、何よりリリィが元気な姿で現れたところで今まで張っていた気が緩んでしまったのだから。
もともと風邪の状態であったことは変わりない。
ただそれを気力で忘れさせていただけであり、悪化した症状が一気に表に出たのだから。
「だ、だいじょうぶ、だだだだが・・・ね。もうくさtt神も片付きそうやし、ずぐぬぅえっぷ」
青い顔を通り過ぎ土気色になった顔色でガタガタと震えだし力なく蹲ってしまった。

かろうじて意識を保つ中、ササミは自分が竜巻により吹き飛ばされていることに気づけていない。
ただ暴風と荒れ狂う雷の槍に身を任せるままに。

105 : ◆apJGY8Xmsg :2013/01/15(火) 03:05:01.96 0
ルナの問いかけに、球体の中のリリィは答える。
顔のない女のおばけには見覚えがないということ。
球体の内部が結構快適だということ。
それに学園からの救助が今もってないということ。
「そういえば…」とルナはいぶかしむ。

そこへ現れたのはエンカだった。エンカは顔の傷口から血を垂らしている。
でもエンカは自分のことなど省みずにルナの心配をしてくれた。
そのエンカの様子にリリィは驚いて…

>「ルナちゃん、エンカに、その怪我どうにかしろって言ってやってよ!」

「 そ、そうよね、止血しなきゃ!えっと、首を何かで縛ったらいいのかな?
うー…そんなのダメよね。血は止まるけど呼吸も止まっちゃう…。じゃあ一緒に保健室にいく?」
そんなことを言っていると、エンカは北風と太陽の話をはじめる。
ルナがその話をなんか変と思っていると、ササミがさらに魔界に伝わる北風と太陽の話を付け足す。

「なにそれ…怪談?」
ルナの顔は青ざめた。悪魔はいったいどこからやってきたのだろう。
考えるルナ。するとエンカはルナの手から球体を取り出し炙り始める。

>「キャー止めて!燃える燃える燃えるううう!!」
「キャーやめてあげてーっ!!」
悲鳴をあげてルナがあわあわしていると球体が光りリリィが出てきた。

「ふぎゅ!」
下敷き。リリィに潰されて雪原に埋まるルナの顔。

>「それとササミちゃん、もしかして風邪引いてるんじゃないの?そんな薄着で・・・・・・。
 ルナちゃん、悪いけど私が貸したコート、ササミちゃんに渡してくれない?

>「だ、だいじょうぶ、だだだだが・・・ね。もうくさtt神も片付きそうやし、ずぐぬぅえっぷ」

「もうやせ我慢なんてしないの!はやくみんなで保健室にいこう!死んじゃうと悪いもん」
コートを脱いで、蹲っているササミに被せようとする。
しかしその前にコートが強風で吹き飛ばされる。続いてルナも。

「きゃああああ!おたすけえええ!!」
悲鳴をあげていると、空中にリリィとササミも舞っているのが見えた。

106 : ◆apJGY8Xmsg :2013/01/15(火) 03:08:02.18 0
大鎌を取り戻さんがため、クロノストーンは飛翔、降下、眼下を仰ぐ。
農耕神の誘惑に、一度は友好的な態度を見せたエンカではあったが
少年はルナのもとへと去ってしまっていた。

(む、邪魔もしなければ、応援もしないということか。
それもよかろう!さらばだエンカ君!)

――風の音と一緒に少女たちの悲鳴が聞こえる。
飛翔するときに生み出していた竜巻は、リリィ、ササミ、ルナの三人を巻き込んでいた。
だがしかし間一髪竜巻を回避し雷撃を放つはテオボルト。

>「ええい、さっさと去ね! 『サンダー・ランス』!!」

「これが君の答えか!テオボルト君!!」
タナトストーンが大鎌の前に降り立つのと、
テオボルトの雷撃の槍が彼の腹部を貫くのは同時だった。
大股を開きながら左手を獲物に伸ばす。震える指先が柄に触れる。
だが腹部は弾ける様な音を立てて煙を上げている。
帯電した空気がちりちりと焦げた匂いを放っている。

「がは!!」
吐血とともに雪原に転がる石。
そう、クロノストーンは本体である石を吐き出したのだ。

「い、いやだ…封じられたくない。封じられたくなんかないよぉ。
あんな暗いところに一人っきりなんて、さみしいんだよぉ…」
クロノストーンはうつ伏せに倒れると、石に手を伸ばして呻いていた。

【テオボルトさんのサンダーランスの行動判定がないと
フリードさんが書きにくいと思って先に投下させていただきました】

107 :フリードリッヒ ◆cOOmSNbyw6 :2013/01/15(火) 17:20:23.55 0
エンカは球体を火で炙っている
>「キャー!落ちる!死ぬ死ぬ死ぬ!」
なんと中からリリィが飛び出してきた!?

>「その霧の玉に触れて願うのじゃ。さすれば冷気を生み出す道具を生み出すことができよう。
それで奴との戦いを優位にもってゆくのじゃ。…たのむ。たのんだぞ」
「いけない氷雪系と氷雪系で被ってしまった・・・・・って僕は元々雪と氷の魔法使いだから
 元々の能力と被ってなんの意味もないじゃないですかヤダァ!!」
>「えー!神様なんだから、後始末は自分でやってよおお!
 冷気を生み出す道具なんて、凡人が使ったら凍え死んじゃうでしょ!!」
少なくとも雪国出身で尚且つ冷気系の呪文が使えない人間にしか意味が無いだろう
『宗教上の理由で信仰対象の神以外の神の助力は受けられないんですよ』(猫語)
なんだかんだ文句はいってもちゃんとパステト信者としての心は持っているグレン
そんなグレンの目の前に落下してくるダブルクレッセントハーケン
『来た!これで勝つる!!』(猫語)
サクッと雪の中に沈んでいくダブルクレッセントハーケン
『沈んでいく!重すぎたんだ!!』(猫語)
慌てて雪を掘り進んでいくグレン
こういう神の武器は選ばれし者以外が使おうとしても重くて碌に動かせないのが定番であり
信者であるグレンが持てば軽々と扱えるだろうが本来の重さは尋常じゃないため
地面の上に覆いかぶさった雪に沈んでしまったのだ
『ダブルクレッセントハーケン!!』(猫語)
やっとのことでサルベージに成功し雪まみれになりながら武器を構えるグレン
はたして神の武器は神そのものに通用するのか?

>「小生に従う者は、力をかせい!だが邪魔するものは大地の肥やしと変えてやろう!」
「だが断る!僕の一番好きなことは自分が強いと思っている奴にノーと言ってさし上げることです!
 それに自慢じゃないですが僕はこれまで自分より強い相手とは何度も戦ってるんですよ!
 それでも今の今まで生き残ってきたんです!今回もそうさせていただくまでです!」
『自分の信じる神以外の神には何してもいいというのが信者クオリティというわけでとっとと封印されちゃえ
 我が神パステト様も地上で何とかしてって言ってるしね』(猫語)

>「ええい、さっさと去ね! 『サンダー・ランス』!!」
>「がは!!」
>「い、いやだ…封じられたくない。封じられたくなんかないよぉ。
あんな暗いところに一人っきりなんて、さみしいんだよぉ…」
「そんな事僕が知るものですか!とっとっと封印されておしまいなさい!!
 万能なるマナよ!雪と氷の力を僕に与えよ!!
 安らかなる永遠の眠りを!美しき氷の棺を!『フリージングコフィン』!!」
フリードの眼の前に現れる氷の棺桶
誰も触っていないのに勝手に開く棺桶の蓋
完全に透明なので吸血鬼にはおすすめできない死者のベッドである
「姉さんは何故かこの中で眠るのが好きみたいですが・・・・・・・
 本来は死者を収め埋葬するための魔法です
 さあ貴方をこの中に封印して差し上げますよ!」
『ヒャッハー!棺桶デスマッチの始まりだ!!』(猫語)
鎌には鎌をとばかりに二本足で雪の上に立ちダブルクレッセントハーケンで襲いかかる
赤長靴をはいた猫
空飛ぶコタツで浮いていればよかったのにわざわざ降りてきたのはそれだけ本気なのだろうか?
『フィー坊!!』(猫語)
タッチをしてパートナーと交代するグレン
「フリージングサーベル!早い突きが躱せますか?セイセイセイセイセイセイヤァァァァァ!!」
フリードは刃の無い鍔のみのサーベルに氷の刀身を生み出し突きを繰り出す
フリードリッヒは魔法剣士!決して魔法拳士では無い!
今まで格闘や魔法、変なアイテムばっかりでまともに剣を使ったことがないような気がするが
これが本来の戦い方である
「それそれぇ〜ちゃんと避けないと凍っちゃいますよ〜」
フリードのサーベルは冷気を浴び、刺さったところは凍りつくのだ!!
はたして少しはダメージを与えられたのだろうか?

108 :エンカ ◆jWBUJ7IJ6Y :2013/01/16(水) 00:32:14.75 0
>103>104>105>106>107
> 「ちょーまちーや。北風と太陽てあれだがね。旅人の服を脱がせようと北風が風を吹かし、太陽が温めたけど、服を脱がない。
> そこに悪魔がやってきて旅人を女に変えたら旅人は自分から服を全部脱いだってやつだがね」
とササミがリリィ入りの球体を火であぶるエンカに話しかけた。
「そーそー、それでその裸の女が踊ったら閉じこもっていたアマテラスが出てくるんだよな〜」
とエンカ。もう無茶苦茶である。
> 「キャーやめてあげてーっ!!」
> 悲鳴をあげてルナがあわあわしていると球体が光りリリィが出てきた。
> 「ふぎゅ!」
ルナは突然現れたリリィの下敷きになる。
「お〜、仲がいいっすね〜。出てきた途端二人して絡みあうなんてよ〜」
エンカはリリィとルナの二人をそう言って茶化した。
> 「と、とにかく、何とか出られたよ、多少荒療治だったけど。ありがとう、エンカにルナちゃん。それとササミちゃんも。
>  ていうか、エンカ!あなた応急手当位しなさいよ!血だって出てるし、見てるほうが痛いでしょうよ!」
「おぅ、サンキューな!」
リリィから薬草のシートを受け取ったエンカは神々の戦いに視線を移した。
先ほどクロノストーンへ突進した老人が、今はやけに存在感が薄くなっていることに気づく。
> >「その霧の玉に触れて願うのじゃ。さすれば冷気を生み出す道具を生み出すことができよう。
> >それで奴との戦いを優位にもってゆくのじゃ。…たのむ。たのんだぞ」
> 「えー!神様なんだから、後始末は自分でやってよおお!
>  冷気を生み出す道具なんて、凡人が使ったら凍え死んじゃうでしょ!!」
リリィが悪態をつく横で、エンカはどうでもよさそうに老人の言葉を聞き流していた。
もしも誰かがその神の力を手に入れるとしても、それは自分ではないとこの時思っていたからだ。
エンカ・ウォンは静かに暮らしたいのだ。

「やべぇ!竜巻が来るぞ!みんな、よけろーっ!!」
> 「キャー!!」
> 「きゃああああ!おたすけえええ!!」
完全な傍観者に徹したかったエンカだがそうもいかなくなった。
クロノストーンが発生させた竜巻がこちらに向かって飛んできたからだ。
エンカはたまたま立っていた位置が良かったため竜巻を間一髪で避けられたが、
リリィ・ルナ・ササミの3人が吹き飛ばされてしまった。
「じょ、冗談じゃあねーぜ!あんな高さから落っこちたらよ〜、死んじまうじゃねぇかーっ!!」
そこでエンカは考えた。果たして自分はあの3人の内1人でも助ける能力があるのかを。
答えは否である。
「おい!フリード!テオボルト!大変だ!リリィとルナちゃんとササミちゃんが吹き飛ばされた!」
エンカはフリードとテオボルトに助けを求めた。が、再びエンカは考える。
フリードとテオボルトなら3人を助けられるのかを。
そう、問題は吹き飛ばされた人間が3人いることだ。
もしも3人が同じ場所に落ちるのならフリード1人でも何とか出来るかもしれない。
しかし、そうならないかもしれない。
フリードが巨大な氷の腕を出現させて、キャッチできるのは1人だけかもしれない。
残りの2人。その内1人はテオボルトが何とかしてくれるだろうか?
生憎エンカはテオボルトの能力を十分把握していない。わからない。
そして残ったもう1人は………?

109 :エンカ ◆jWBUJ7IJ6Y :2013/01/16(水) 00:34:33.45 0
エンカは間もなく気づいた。自分達だけでは3人全員を確実には助けられないことに。
「ド畜生がーっ!!こいつはメッチャ許せんよなーっ!!」
エンカが激昂した。
「フリード!テオボルト!お前らは手をだすなーっ!
 このオッサンは、この俺が止めをさす!!」
付き合いが短くないフリードでも、これほど好戦的な態度をとるエンカを見るのは初めてだろう。
エンカはすぐにボレアースの霧の玉に左手をかざすと、その義手に冷気の力を蓄えた。
「あんたが神様だっていうんならよーっ!読んでみろよ、俺が今から何をしようとしているのかをよーっ!!」
エンカはフリード達がリリィの救出に動いたのを確認してすぐに、クロノストーンに向かって走った。
> クロノストーンはうつ伏せに倒れると、石に手を伸ばして呻いていた。
その様子を見下ろしながらエンカは石を拾い上げると、クロノストーンに向かってこう言った。
「さっきアンタに止めをさすって言ったな。スマン、ありゃ嘘だ」

エンカは拾った石をクロノストーンが望むようにした。
間もなくクロノストーンのお腹に収まる本体の石。
そしてエンカはさらに、リリィからもらった薬草のシートをクロノストーンの傷口に当てがった。
「俺はアンタに止めをささない!なぜなら、アンタは今から俺の仲間になるからだ!
 そして俺はアンタにお願いしたいと思っている。リリィ達を助けてくれと!」
フリード達から見ればエンカの行動は裏切り行為以外の何ものでもないだろう。
先ほど激昂してみせたのも、全ては演技だったのだから。
それでもエンカがそうしたのは、自分達だけでは難しくても、
クロノストーンの力を借りれば3人が助かる可能性が高いと考えたからだ。
都合が良いことに、クロノストーンは自由に空を飛べる。
「あんたに対する取引材料は何もない!ただのお願いだ!
 返事や質問は聞かないぜ〜?今はちょっとの時間も無駄にできねぇからよ〜。無駄無駄…」
そう言ってすぐにエンカはすぐそばで大破している馬車へと駆け寄り、適当な板切れを剥ぎ取った。
「即席のスノーボードだ!」
エンカは板切れに左手に宿した冷気の力で両足を固定すると、
雪原の上を滑らせて吹き飛ばされたリリィ達を追いかけた。
エンカはもしもクロノストーンが力を貸してくれなかった場合、
自分が落ちてくるリリィ達をうまくキャッチできるとは思わなかった。
ただそれでも、落ちた彼女らを一刻も早く保健室へ運んだ方がいいに決まっている。
だからエンカは急いで彼女らを追いかけるのだ。
果たしてリリィ達は助かるだろうか?

110 : ◆apJGY8Xmsg :2013/01/16(水) 02:07:33.12 0
>「そんな事僕が知るものですか!とっとっと封印されておしまいなさい!!
 万能なるマナよ!雪と氷の力を僕に与えよ!!
 安らかなる永遠の眠りを!美しき氷の棺を!『フリージングコフィン』!!」
 
>「姉さんは何故かこの中で眠るのが好きみたいですが・・・・・・・
 本来は死者を収め埋葬するための魔法です
 さあ貴方をこの中に封印して差し上げますよ!」

「うう、くやしいぞ…。ここまできて、こんな小さな美少年に封印されようとしているとはなぁ〜!!」
クロノストーンは這い蹲ったまま大鎌を横に薙ぐ。
刹那、硬質な音がフィジルの空に鳴り響く。グレンのダブルクレッセントハーケンとクロノストーンの大鎌が衝突したのだ。
クロノストーンは左手一本で大鎌を振っていたのだが、猫と男の重量差は一目瞭然。
グレンは後ろに大きく体制を崩してしまう。だがそのまま後退するとフリードとタッチ。
パートナーと体を入れ替えることに成功。

>「フリージングサーベル!早い突きが躱せますか?セイセイセイセイセイセイヤァァァァァ!!」
 フリードは刃の無い鍔のみのサーベルに氷の刀身を生み出し、容赦なく突きを繰り出してくる。

>「それそれぇ〜ちゃんと避けないと凍っちゃいますよ〜」

「うっ、おおーっ!!」
瞠目。焦燥。一匹と一人の見事な連携。
完全に虚をつかれたクロノストーンの肩口にサーベルの突きが入った。
身を起こし、間合いをとるまでにさらに攻撃を受けた。
それは翼を凍らせ砕き、胸を幾度となく突き刺す。
そして傷口からは飛び散った血液が、雪のように煌き舞い散るのだった。

「くっ…やるじゃないかフリード君。君は今まで何度も強敵と戦って生き残って来たと言ったな。
見た目とは裏腹に幾度となく死線を潜り抜けてきた百戦の魔法剣士といったところか…。
……だがなぁ、おまえごときにゃこのクロノストーンは倒せねぇんだよぉっおお!!
よみがえった小生とこの大地の絆は誰にも断ち切ることはできんのだ!!誰にもなぁーっ!!」

雪原から何本もの蔦が噴出し、フィジルの生徒たちを拘束せんとする。
大地に突き刺さってクロノストーンに回収されるそのときまでずっと、
大鎌は雪の下に蔦を張り巡らせていたのだった。

しかし。

>「ド畜生がーっ!!こいつはメッチャ許せんよなーっ!!」
エンカが激昂し走って来る!その背後に少年を拘束せんとする無数の蔦をひきつれながら。
>「フリード!テオボルト!お前らは手をだすなーっ!
 このオッサンは、この俺が止めをさす!!」

「ハッハッハ!戦うと元気になるなエンカ君!それは死を意識して生を実感するからだ!!
だが悲しいことに君の運命は、決まっている!!そうだ、君は大きな木の下に埋めてやろう!
死んでしまった可愛いペットのようになぁ!」
そう叫ぶと、力を振り絞って石に手を伸ばす。
虚勢を張っていたものの、フリードやテオボルト、
要するに人にこれほどまでに辱めを受けたという情報は神の精神体に深いダメージを残していた。
このままでは封印されるまえに己が維持できないだろう。

111 : ◆apJGY8Xmsg :2013/01/16(水) 02:12:06.43 0
――先に石を手にしたのはエンカだった。
クロノストーンはついに観念した。

>「さっきアンタに止めをさすって言ったな。スマン、ありゃ嘘だ」
>エンカは拾った石をクロノストーンが望むようにした。

「…!?」

>間もなくクロノストーンのお腹に収まる本体の石。
>そしてエンカはさらに、リリィからもらった薬草のシートをクロノストーンの傷口に当てがった。
>「俺はアンタに止めをささない!なぜなら、アンタは今から俺の仲間になるからだ!
>そして俺はアンタにお願いしたいと思っている。リリィ達を助けてくれと!」

「ああ、リリィ…あの少女か。魔力を奪う時、なぜかあたたかい力を感じた不思議な少女」
おもてを上げ天を見上げる。
竜巻は、ぐるぐると学園の少女三人を巻き上げ続けていた。
飛翔すれば何とか助けられるかもしれないが、
今の彼には砕け散った翼の根元しかなかった。

>「あんたに対する取引材料は何もない!ただのお願いだ!
 返事や質問は聞かないぜ〜?今はちょっとの時間も無駄にできねぇからよ〜。無駄無駄…」

「願い…」
人の祈りや願い。
久しく忘れていた感情がクロノストーンの心に芽生える。
エンカの純粋な思いが胸をくすぐる。

「ハッ…ハッハッハー!」
よろめきながらクロノストーン大鎌を振るう。
しかしそれはテオドールめがけてでもなく、フリードでもない。
己の心の臓をめがけ一突き。

「ガイアよ。母なる…ガイアよぉ…。小生に最後の力を……」
心臓を貫いた大鎌から、クロノストーンの肉体は樹木そのものへと変化させてゆく。
大地に根をはり、葉を覆い茂らせて巨大な木へと。

リリィやササミ、おまけにルナはその巨木の枝をクッションとして捉えることが出来るかもしれない。
その枝にたわわに実っているのは甘い匂いのするおいしそうな果実。太古に滅んでしまった幻の果実。
一口食べてみたらわかるだろう。その美味しさがあなたたちを魅了することに。

112 :テオボルト ◆e2mxb8LNqk :2013/01/16(水) 22:05:50.02 0
>106-111
>「がは!!」
テオボルトの魔法は、難なくクロノストーンの腹部を貫く。
本体の石は吐血と共に吐き出され、雪原に転がった。
「大雑把にしか狙いをつけてなかったが……ふぅ。存外、当たるものだな」
心底意外そうに、そして安心したように、テオボルトは呟いた。
ちなみに、彼は未だに手袋を口に銜えたままである。

猫とフリードが連携によって、倒れた所を更に追い詰めていく。
>「フリージングサーベル!早い突きが躱せますか?セイセイセイセイセイセイヤァァァァァ!!」
>フリードは刃の無い鍔のみのサーベルに氷の刀身を生み出し突きを繰り出す
>「それそれぇ〜ちゃんと避けないと凍っちゃいますよ〜」
>「うっ、おおーっ!!」
悪役染みた台詞で襲い掛かる凶刃を、クロノストーンが必死に捌こうとしていた。
しかし、身体のあちこちに傷ができているのを見て、とどめを画策している者もいた。
「よし、間合いが開いた所にもう一度……だな」

>「(略)よみがえった小生とこの大地の絆は誰にも断ち切ることはできんのだ!!誰にもなぁーっ!!」
>雪原から何本もの蔦が噴出し、フィジルの生徒たちを拘束せんとする。
幸い蔦の伸びる速度は速足程度であり、簡単に捕まる事もないが……
「追い詰められることもあり得るか。早急に片を付けねば、」
>「ド畜生がーっ!!こいつはメッチャ許せんよなーっ!!」
>エンカが激昂した。
>「フリード!テオボルト!お前らは手をだすなーっ!
> このオッサンは、この俺が止めをさす!!」
「む……わかった、任せた!」
クロノストーンは既に傷つき、始末するにも苦戦はしない。
そう判断したテオボルトは二つ返事で了承すると、すぐさま蔦の間をすり抜けて前レスで投げ捨てた杖を拾い上げる。
切り裂き呪文で雪原の蔦を切り裂き、安全地帯を確保するためだ。
適当に呪文を乱発し、ついでにエンカに迫る物も切断した。

エンカは無事にクロノストーンの前にたどり着くと、何を思ったか、本体の石を飲み込ませた。
>「俺はアンタに止めをささない!なぜなら、アンタは今から俺の仲間になるからだ!
> そして俺はアンタにお願いしたいと思っている。リリィ達を助けてくれと!」
その言葉を聞いて、チ、と舌打ちをするテオボルト。
何故だか動きが鈍くなっている蔦を放っておき、再三にわたり片手から紫電を漏らし始める。
次にクロノストーンが行動を起こした時に、自ら止めを刺すための魔法だ。

>「ハッ…ハッハッハー!」
エンカが即席スノーボードに乗って離れると、クロノストーンが笑い声をあげた。
そして……自身の胸へと大鎌を突き立てた。
>「ガイアよ。母なる…ガイアよぉ…。小生に最後の力を……」
>心臓を貫いた大鎌から、クロノストーンの肉体は樹木そのものへと変化させてゆく。
>大地に根をはり、葉を覆い茂らせて巨大な木へと。
巨木はおそらくその枝で上空から降ってきている三人を受け止めるだろう。
クロノストーンにのみ注意していた、つまり、戦闘外にいた人に一切注意を払っていなかったテオボルトだが、
クロノストーンの樹木の生長を見上げたこの時になって、初めて飛んで行っていた三人に気が付いた。
「おや、いないと思ったらあんなところに。……そういえば、エンカ君が何か言っていたか」
テオボルトは、割と脳筋であったのだ。

「しかしこれで終わり、かな? 馬車は壊れてしまったが、どうやら学園はもう近いようだし」
手の中の魔力を霧散させ、少し遠くの学園を遠目に見て、巨木の枝の下で雪の地面に座りこんだ。
ついた手と尻が冷たい。
「少し休んでから向かうか……はぁ、疲れた」
ササミの手袋をようやく吐き出して、もう一度枝葉を仰ぎ見る。
どうでもいいことではあるが、今座っている場所はルナの予測着地点の真下である。

113 :リリィ ◆jntvk4zYjI :2013/01/18(金) 18:35:07.86 0
竜巻に巻き込まれたリリィは空高く舞い上がり、ぐるぐる旋回していた。
クロノストーンが生み出した、人が舞い上がるほどの暴力的な風と轟音の力場。
自然の猛威の只中に凡人が巻き込まれたら、外部の情報など得られるはずもない。
体が引きちぎれそうな痛みに耐えながら、せいぜい走馬灯を見るのが関の山だ。

永遠に続くかと思われた回転が緩み、ぱあっと空が晴れた。
重力に引かれて地面へと落ちていくのを頭の片隅で感じていたが、箒を呼ぼうにも声すら出せない。
いくら雪が積もったといっても、この高さから落ちたとしたらさすがに無事では済むまい。
エンカやクロノストーンの声が聞こえてくるが、ふらふらの頭では何を言ってるのか聞き取ることもできなかった。
(ああ、このまま死んじゃうのかな・・・・・・)
今まで散々危険な目にあってきたが、今回はとびきりだ。
空を飛べるしか能のない魔法少女の死因が墜落死とは、なんとも間抜けな話だ。
(ササミちゃん、せめてルナちゃんだけでも受け止めて・・・・・・)

その時、ふとリリィは、自分のすぐそばに大きな存在に気づいた
それはほんの一瞬のこと。
彼女が認識する前にすり抜けてしまったが、確かに感じた暖かな何か。
(え?何?えええ)
バキバキバキ、と木の枝が折れるような音とともに、リリィは背中といわず腕といわず痛みを感じ始めた。
クロノストーンが、最後の力で伸ばした枝先をクッション代わりにへし折っていたと理解出来たのは、すべてが終わった後の話だ。
このまま落ちれば、やっぱり頭から雪の上に突き刺さるだろう。

114 :ササミ ◆/TZT/04/K6 :2013/01/18(金) 21:59:38.95 0
たとえ風邪で意識がもうろうとしていようとも!
竜巻と雷の荒れ狂う中木の葉のように舞い上げられていようとも!
全天視野を持つササミはその全てを見るのだ!
見たからと言って動けるかどうかはまた別問題だとしても、だ。

錐もみ上に舞い上がったササミは、リリィとルナが同様に舞い上がっている事を見ていた。
ルナに飛行能力はあっただろうか?
リリィは箒で飛べたはずだが、この状態で体勢を整え箒を呼べるだろうか?
巡らせる考えは幾らでもあるはずなのだが、このコンディションでは思考が動かない。

そうこうしているうちに竜巻は収まり、体を舞い上げていた力が消えうせてしまう。
下方ではクロノストーンの腹をテオボルトの雷が貫き、フリードとグレンが見事なコンビネーションで畳み掛ける。
そしてエンカが恐ろしいほどの形相で駆け寄っている。
もう決着は近い。
自分が手を出すまでもない。
などと思っているが、実は自分が一番危ない状況である事に気づくのは数瞬後だった。

竜巻が収まったという事は自然と落ちるという事である。
にも拘らず体は凍え、強い虚脱感と吐き気に動けない。
今まで呼吸をするかのように当たり前に飛んでいた、それが全く機能しないのだ。
魔族の中でも多頭種であるササミの再生力は強く、この高さから落ちても死にはしないだろう。
だが、怪鳥である自分が地面に墜落というのは種の沽券に係わる問題である。

その事に気づいたササミの視界には同じように落ちているルナとリリィが映っていた。
二人とも墜落の真っ最中であり、人間であればこの高度は致命のモノとなる。
それに気づいた時、ササミの目に光が戻ったのだが、その光は一瞬にして消えてしまった。
この一瞬に、ササミは考えてしまったのだ。
『アレを食べれば力が戻る!甘美なるモノ。髪であれほどの力を得られたのだからその血肉はどれだけ力を得ることになろうか』
極限状態にあってリリィを助けるより、リリィを食料として、己の力の源として考えてしまったのだ。
その自分の考えの悍ましさに戦慄し、生命の危機に漲った力を霧散させたのだ。

「ぢ、ぢがう!あだじあ……!」
自分に言い訳をするように痛んだ喉で叫んだ瞬間、ササミはそれに受け止められた。
それが何なのかもササミは見ていた。
エンカに封印されなかったクロノストーンが自らの心臓に鎌を突き立て変化した巨木。
柔らかな新芽としなやかで弾力のある枝の群れが幾層にも重なり落下の衝撃を受け止めていく。
「わっぶっ……や、やめやーぜ!神に救われるなんて!」
朦朧としたササミでもこれが意味するところは理解していた。
クロノストーンが巨木となってリリィやルナ、そしてササミを受け止めたのだ。

確かに一命を取り留める結果にはなるのだが、これはササミにとっては屈辱以外何者でもない。
墜落することは怪鳥たる種の沽券に係わるのだが、神に救われるなどという事は魔族としてあるまじきことなのだ。
それはクロノストーンに魔族によって封印を解かれた事が屈辱であろうと言い放ったササミの言葉がそのまま自分に返ってきたようなものである。
甘く良い香りが鼻をくすぐる事すらも今のササミには拷問に等しい。

「こんな意趣返しするなんてやっぱり神は最悪だぎゃああ!!」
枝に引っかかったササミは最後の力を振り絞り枝を折り、自らそこから落ちていくのであった。

115 :フリードリッヒ ◆cOOmSNbyw6 :2013/01/19(土) 18:05:48.16 0
>108-114
>「俺はアンタに止めをささない!なぜなら、アンタは今から俺の仲間になるからだ!
 そして俺はアンタにお願いしたいと思っている。リリィ達を助けてくれと!」
「そんな!どうして!?オンドゥルルラギッタンディスカー!?」
あまりのことに呂律が回らないフリードリッヒ
『やめてよ仲間になんかしたら
 次にもっと強い敵が現れた時にそいつの強さを見せるための咬ませ犬になっちゃう
 敵のまま終わらせたほうが彼にとって幸せだよ』(猫語)
混乱したのか意味不明の理論展開を始めるグレン

>「ガイアよ。母なる…ガイアよぉ…。小生に最後の力を……」
「突然クロノストーンが自害して木に変化した!?」
『急だ』(猫語)
よくわからないが勝った・・・・・ということだろうか?
「・・・・・結局彼はただの寂しがり屋だったんですね
 エンカさんはそれに気が付いて・・・・・・
 ちょっと彼に酷い事をしてしまったかもしれません」
>バキバキバキ
『そんなことよりリリィさんがやばいよ!!』(猫語)
スライディングで飛び込みリリィのクッションになろうとするフリードリッヒ
固い氷の掌で受け止めれば逆にダメージが増えると判断したのだ

「ぐふっ!・・・・・リリィさん大丈夫ですか?」
『フィー坊は大丈夫じゃなさそうだよね』(猫語)
「大丈夫問題ありませんジルベリア人の体の丈夫さを舐めないでください
 ・・・・やれやれこれから学園に歩いて通わなくてはいけませんね」
盛大にぶっ壊れた馬車・・・・・ばしゃ?・・・かぼちゃだこれぇ!?
あっと驚くフリードリッヒ
意外!乗合馬車の正体はかぼちゃ!!
さっきまで馬車の残骸があったはずの雪上にはバラバラになったかぼちゃが散乱していた
「いくら経費削減のためだからって魔法でかぼちゃを馬車にしてたとは」
『じゃあ馬は鼠だねじゅるり』(猫語)
「グレン…ご飯はもう食べたでしょ」

116 :エンカ ◆jWBUJ7IJ6Y :2013/01/19(土) 22:02:12.80 0
>111>114>115
エンカは振り返ることなく吹き飛ばされた3人を追いかけた。
だからエンカはクロノストーンが何をしたのかを見ていなかったのだ。
彼の視界に入ったのは空高く伸びる巨大な樹木の枝だった。
「すげぇぜオッサン!あの枝に3人を引っ掛けて助けようって寸法だな!」
エンカは知らなかった。このためにクロノストーンが何を代償にしたのかを。
エンカは疑っていなかった。クロノストーンと一緒に野菜作りをする約束を…

巨大な樹木の枝は落ちる3人を受け止めはしたが、しかし完璧に落下を防ぐことはできなかった。
リリィとササミは枝に引っかかることで落下スピードを落とすことこそできたが、
不可抗力と故意の違いはあれど枝が折れ、再び落下を始めたのだ。
リリィの方はフリードがスライディングしながらキャッチすることで事なきを得た。
しかし、あれはフリードの体力が常識外だからこそできる芸当である。
同じようにしてエンカが落ちるササミをキャッチできわけがないことをエンカは承知していた。
それでも彼はまっすぐササミに向けて突き進む。
「冷気のオッサン!あんたの力、借りさせてもらうぜ!」
エンカがボレアースの力を宿した左手の義手を前方に向けると、前方に氷のジャンプ台が出現した。
そう、これを使って空中に飛びあがり、落ちるササミをキャッチしようという寸法だ。
「やぁあああああってやるぜぇ!!」
エンカはひときわ勢いをつけ、ジャンプ台から空中へ飛び上がった。だが…
「ああ!?そんな…!?」
エンカのもくろみは失敗した。確かに空中で受け止めた方が地上で受け止めるよりエンカの負担は少ない。
しかし、自由落下する物体に放物線運動をする物体を重ねるのはもっと別な意味で困難だったのだ。
エンカとササミの座標はズレ、ササミは地面へ、エンカは空中へと離れていく。

ササミが地面に激突する寸前、彼女の体が突如ピタリと止まった。
見ると彼女の足首に、先端に鉄球のついた革紐が絡まっていた。
それは中国の武器の一つ、流星錘であった。
「やれやれ、なんとかうまくいったな」
流星錘の紐はまっすぐエンカの手から伸びていた。
エンカは上下逆さまの状態で、即席のスノーボードをクロノストーンの枝に引っかけているのだ。
そう、エンカはその状態から流星錘を飛ばし、ササミの足首に絡めて落下を止めたのである。
「策士ってのはよ〜、いつも二手三手先の事まで考えて計画を実行に移すんだぜ?
 少なくとも魔界のお嬢さんに地上の泥をキスさせない程度になー」
しかし、残念ながらエンカは四手先までは考えていなかったみたいである。
「……あれ?この場合、俺はどうやって地上に降りたらいいんだ?」

117 :ルナ・チップル ◆apJGY8Xmsg :2013/01/21(月) 19:16:09.18 0
農耕の神が生み出した竜巻に巻き込まれながら、ルナは苦しんでいた。
風が強すぎて息が吸えないし、おまけに目も開けられない。
風の音も聴覚を遮断して不安感を煽る。
果たして、リリィとササミは無事なのだろうか。

不安で胸がいっぱいになる。とても苦しい。苦しい時間は長く感じるものだ。
何分、何十分、過ぎたのだろう。
風が弱くなってゆく。それと同時に落下してゆく体。
薄く目を開けてみると、眼下に落ちてゆくリリィとササミが見えた。

「いやあああああああ!!」
ルナは絶叫し、届かないはずの手を虚しく伸ばす。
リリィもササミも絶対失いたくない。
繋がっている絆。生まれつつある絆。どちらも大切な絆。

でも、もう手遅れのようだ。

「みんな、死んじゃっても、ずっとお友達でいようね」
諦念の色も隠せずに、ルナは呟く。
大人になったら子どもを産んで、リリィの子どもと仲良しにさせる夢もここで儚く散るのだ。
こんど生まれたらすごいナイスバディに生まれて、怖いものなしー、
みたいな人生だったらいいな。頭もよくて三カ国語くらい喋れるの…。

「…ははは」
微苦笑したあと、瞳を閉じて死が訪れるのを待つ。
全身を雪原に叩きつけられる衝撃が訪れるのを…。
でも…。
葉擦れの音が耳朶を打つ。
柔らかな新芽としなやかで弾力のある枝の群れが幾層にも重なり落下の衝撃を受け止めていく。
クロノストーンが巨木となってリリィやルナ、そしてササミを受け止めたのだ。

118 :ルナ・チップル ◆apJGY8Xmsg :2013/01/21(月) 19:19:00.40 0
が、いきおいは止まらない。
枝を掴むといういとまもなく、ルナはお尻から落っこちた。
強打したお尻や腿にぱきぱき音を立てて折れた小枝が突き刺さる。

「痛いっ、あいたたたた」
痛いということは生きているという証。なにか不思議な力が働いて、ルナは助かった。
今まで無かったはずの大木の枝がクッション代わりになり落下速度を軽減してくれたのだ。
少し離れた所では、足首に革紐を捲きつかせたササミが枝からぶら下がっているのが見えた。
その向こうにリリィも。最終的にはフリードが受け止めてくれたらしい。

ルナは胸を撫で下ろす。足をさすり怪我がないのを確かめる。
すると手に何か、くしゃっとした感触を感じた。
犬?疑問を感じて視線を落とす。その後、驚愕。

「えっ、誰!?」
尻餅をついたさいに、誰かを下敷きにしていたのだ。
そう、テオドールである。彼は雪に顔をつっぷしたまま動かない。
ルナはびくっとして立ち上がり…

「あの、もしもし?」
おそるおそる声をかけてみた。

119 :ルナ・チップル ◆apJGY8Xmsg :2013/01/21(月) 19:28:21.99 0
>「……あれ?この場合、俺はどうやって地上に降りたらいいんだ?」
一方で、エンカは降りれなくなっているらしい。
そのとき、風がすさぶ。葉擦れの音が声となってエンカたちの耳に届く。

『凍てついた時の中、暗く寂しい場所で、小生は絶望の鉄鎖に繋がれていた。
いつの日か、この獄鎖を引きちぎり、再び陽光を浴びる日が来ることをずっとずっと夢見てきたのだ。
だがそれも今日で終わる。
そうだ、エンカ君よ。君が小生を救ってくれたのだ。
人と神、進む道は違えど、君はともに歩むと誓ってくれた。
その気持ちが嬉しかった。だから確信したかった。 君が認め合える人々の存在を。
だがかなしいことに、もはや君と共に大地を耕すことは叶わぬ。
それゆえに小生は、ここに根を張り、君の見える場所に常に立っていようと思う。
どんな風が吹き、時の流れがこの身を朽ち果てさせようとも、小生はここから一歩も動かないであろう。
それが君と、小生との大切な絆だからだ……』

エンカの頭上の枝から、羽の生えた種がくるくると落ちてくる。
その種はきっとエンカを地上に降ろしてくれることだろう。

ルナは大木を見上げながら目びさしをする。

「……さみしかった気持ちはわかるんだけど、わかるんだけど」
神様のわがままで皆が死にかけて、自己満足みたいな感じで終わるとか
もう、ただのいい迷惑。と言いかけてやめる。

「…ああもう!首飾りはなくなっちゃったし」
でも、良かった。ルナの大切に思う人たちは全員無事だったから。
そう、絆は守られた。みんなの力で、絆は守られたのだ。

>意外!乗合馬車の正体はかぼちゃ!!
>さっきまで馬車の残骸があったはずの雪上にはバラバラになったかぼちゃが散乱していた
>「いくら経費削減のためだからって魔法でかぼちゃを馬車にしてたとは」

「かぼちゃ?それならパンプキンシチューでも作ってこれからみんなでパーティーね。
きっとぽかぽかに温まるから…って、ちょっと!男性陣はササミを助けてあげて!
枝に吊るされて、ハングドマンぢゃないんだから!」
ルナはレスの順番てきにテオドールに向かって話しかけた。すでにルナは元気を取り戻していた。
なぜならクロノストーンの呪縛から解き放たれている今は熱もない。ただ魔力を失っているだけ。
リリィのコートもちょうど近くに落ちていたので拾い上げ、リリィに手渡す。
ササミのことはリリィに任せて、自分はカボチャのかけらを拾い集めるのだった。

「おいしいパンプキンシチューをつくりましょー♪
おいしいパンプキンシチューをつくりましょー♪」
黒のロングコートのポケットが、みるみるうちにパンパンになってゆく。

120 :テオボルト ◆e2mxb8LNqk :2013/01/22(火) 21:11:08.70 0
>113-119
落ちてきた女生徒3人は、無事に木の枝で落下スピードが緩み、そこに各々助けが入った。
リリィは滑り込んできたフリードがクッションとなり、ササミはエンカが自身の武器を使って地面激突をさける。
そして残ったルナはといえば、偶然ではあるものの、テオボルトが落下地点直下にいた。
「ぐぶっ!!?」
枝を抜けてきたルナに反応することなく、見事に緩衝材と成り果てたテオボルト。
ふと力を抜いてうつむいた瞬間に背中に落ちてきたため、そのまま顔面を雪にうずめた。

>「えっ、誰!?」
テオボルトに触れて初めて気が付いたらしく、ルナは驚いた声を上げる。
>ルナはびくっとして立ち上がり…
>「あの、もしもし?」
>おそるおそる声をかけてみた。

「………………」
雪の中にあった頭を無言で持ち上げ、軽く頭を振ってルナを少し恨みがましげに見る。
「……はぁ。まあ、なんだ。不可抗力だから仕方ないな。大丈夫さ、大丈夫とも。
 ああ、そうだ。そちらも怪我は……うん、ないようだな? 人生、息災が何よりだからよかった」
鼻が特別利く訳ではないが、すんすんと嗅覚を働かせても、特に血の匂いはしない。
もう一度、腕をつっかえ棒にして背を反り、枝葉を仰いで力を抜いた。


クロノストーンの、エンカへの語りかけの後。
>「いくら経費削減のためだからって魔法でかぼちゃを馬車にしてたとは」
うん? と、フリードの呟きで馬車に振り向くと。
「うわ、本当だ。かぼちゃ製の馬車か、随分と安上がりでファンタジックな」
緑色と橙色の破片が雪原にまき散らされていた。
少々もったいないと思っていると、先ほどまでとは打って変わって、ルナに元気な声を掛けられた。
>「かぼちゃ?それならパンプキンシチューでも作ってこれからみんなでパーティーね。
>きっとぽかぽかに温まるから…って、ちょっと!男性陣はササミを助けてあげて!
>枝に吊るされて、ハングドマンぢゃないんだから!」
「かぼちゃシチュー? ふむ、美味そうでいいな! ……とと、私も参加してもいいものか」
会って数時間の人物が行ってもいいのかと思いつつ、せかせかと言われた事をしに行く。

テオボルトはササミの前に立つと、手早く足の革紐を外し、地面に下ろす。
先ほどまでは戦うのに必死であまり見ていなかったが、幾つも顔があるのには少し驚いたが。
「さて、無事とも言いにくいが、とりあえず改めて礼を言わせてくれ。先の血液は助かったよ、ありがとう。
 それと、私の名はテオボルト・ジェナスだ。学園の生徒なんだろう? 宜しく頼むよ、先輩」
右手を差し伸べて、握手を求めた。その時、一瞬だけ、血の味を思い出して、見えないように舌なめずりをして。

「あ、そういえば私のカバンは?」
突然思い出したカバンは、どこへやら。誰へというわけでもなく、質問した。

121 :ササミ ◆/TZT/04/K6 :2013/01/22(火) 22:07:47.19 0
神に救われるくらいならば死を選ぶ!的な魔族の矜持を貫き、引っかかった枝から落ちるササミ。
それを救ったのはエンカであった。
思えば初接触で武器代わりにボレアースに叩きつけるという暴挙に晒されているのに自らの危機を顧みず救いに来たエンカの男気はあっぱれである。
が、それが相手に通じるかどうかはまた別の話。

凍え動けぬまま落下するササミにタイミングを合わせることなどできず、二人はすれ違っていく。
そのままササミが雪原に人型の窪みをつけると思われた瞬間、落下が止まったのだった。
クロノストーンの枝に引っかかったエンカが逆さ吊りになりながらも流星錘を放ってササミの足首に絡めて落下を防いだのだ。
それは周囲の者が見れば美しいと感じる危機の瞬間であって欲しい!
決して絵面的には血抜きの為に逆さに吊るされたチキンなどと気付いてはいけないのだ!

兎にも角にもササミは危機一髪のところで激突を免れたのだ。
「……あ、うぅ……」
全天視界を持つササミは自身の置かれた状況を把握していた。
弱っていて声はまともに出ないが、自由な方の足がひょこひょこと動いている。
これが何を意味するのか?
そう、ササミは自身の置かれた状況を把握しているのだ。
逆さ吊になってスカートが捲り上り(下がり?)パンチラどころかパンポロ状態になっていることに!

残念、エンカの男気通じず!
粗暴で魔族で好戦的で合理思考であっても中身は乙女。
身体が動かないながらもこの状況は恥ずかしすぎるようだった。
挙句にその救助をあっさりと男性陣に任せるルナの声に【元気になったら仕返ししてやるリスト】が一行増える事になるのだ。


この恥ずかしい状況を終わらせたのは新入生のテオボルトだった。
>「さて、無事とも言いにくいが、とりあえず改めて礼を言わせてくれ。先の血液は助かったよ、ありがとう。
> それと、私の名はテオボルト・ジェナスだ。学園の生徒なんだろう? 宜しく頼むよ、先輩」
「ううぃい…こちこそ邪魔して悪かったがね。風邪で血の効果も弱っているはずやのに思った以上に効いて良かったがね。
ササミ・テバサコーチンだがね。見ての通り魔族だぎゃ」
逆さ吊りから解放され、声が出るまでには回復したのでテオボルトに返事をしながら訝しみながらその顔を見る。
体調を崩しており、血液の再生酵素も弱っているであろうのに、テオボルトは想定を超える回復を見せた。
そういった体質なのか、何か理由があるのか。
本来ならば気にかかるところなのだが、今のササミにはそれを気にかけられるほどの余裕がない。

風邪で体調を崩しているから。
血をテオボルトに与えたため貧血気味だから。
魔力をクロノストーンに吸わせた為に枯渇しているから。
闘いが終わり緊張感が解けたから。
それらも確かに大きな要因ではあるが。

最も大きな理由は、周囲全てを視界に納めるゆえに、フリードの上に落ちたリリィの姿もその視野に入ってしまっているからだ。

病気の時は精神力も衰えてしまうものである。
今まで意志の力で考えないようにしていた事が、今止めどもなく鈍った嗜好に渦巻いているのだ。
人を食べたい。
リリィを食べたい。
思考は身体を揺り動かし、実行に移そうとする。
そんな揺れ動く身体を両手で押さえながら、学園に向かって歩き出す。
否が応でも視界に納めてしまう自分の七つの顔、全天を収める視野を呪いながら。

誰かが話しかければ弱弱しく笑みを浮かべながら
「終わったみたいやし、疲れたから部屋に帰って寝るがね」
と言い残して進むだろう。
だがもしリリィが話しかけたら?
おそらく飛べもしないのに全力で逃げ出し、散歩走ったところで何に葛藤していたか忘れてぼんやりと立ち止まり、そして白目をむいて倒れるだろう。

122 :リリィ ◆jntvk4zYjI :2013/01/23(水) 18:41:55.19 0
>114-121
「魔法少女、竜巻に巻き込まれ墜落死!」という派手な学園新聞の見出しが今にも見えるようだった。
リリィは覚悟を決め、ぎゅっと目を瞑った。
サキダツフコウヲオユルシクダサイ。
だが、雪面と激突する瞬間、二本の腕がリリィとそれとの間に滑り込んできた。
>「ぐふっ!」
がくん、と身体は大きく揺れたものの、覚悟していたほどの痛みも衝撃も感じない。

「・・・・・・・・・・・・あれ?」
>「・・・・・リリィさん大丈夫ですか?」

おそるおそる目を開けたリリィの至近距離には、雪まみれになったフリードの顔があった。
「はわわわわわ!え?何なになに」
リリィは混乱した様子で、転がるようにフリードから離れた。その顔は真っ赤である。
見慣れてそれなりに耐性はついているものの、やはり美少年のドアップを直視するのは心臓に悪いのだ。

混乱から立ち直ったリリィは、この場の状況から、巨木とフリードに命を救われたことに気づく。
「あ、ありがとフリード君。箒も呼べない状態だったから、おかげで命拾いしたよ」
>『フィー坊は大丈夫じゃなさそうだよね』(猫語)
「やっぱり?ああ、どうしよう!フリード君、腕を見せてよ。手当てしないと」
>「大丈夫問題ありませんジルベリア人の体の丈夫さを舐めないでください
「・・・・・・本当に?やせ我慢とかしてない?」
リリィは上目遣いでフリードを見ているが、なんでもないように腕をくるくる回している姿を見て、ようやく安心したようだ。
そして顔を上げたリリィは、彼女を天高く舞い上げた神の姿が見えないことに気づく。
(いないね・・・・・・・もう、戦いは終わった、の・・・かな?)
さっき混乱していたときに、神様の声が聞こえていたような気がしたのだが、リリィは聞いちゃいなかった。
ただ、ずいぶんと穏やかな語り口調だったのだけは気になっていたのだが。

リリィががぼんやりしていると、フリードとグレンは、乗合馬車の残骸らしきカボチャを見つけて驚いている。
>『じゃあ馬は鼠だねじゅるり』(猫語)
>「グレン…ご飯はもう食べたでしょ」
「使い魔鼠だったら、食べちゃうと後で大目玉かもよ?さすがにそれはまずいよー」
苦笑いをしながら、服についた雪や葉っぱや小枝を払って立ち上がる。
「ホント竜巻とか勘弁してほしいよ。ここに大きな木が生えてて助かったー!
 ・・・・・あれ?でも、こんなところに木なんかあったっけ?
 ああ、なんか、すっごく美味しそうな匂いがするー。何て名前なのかな?」

>「かぼちゃ?それならパンプキンシチューでも作ってこれからみんなでパーティーね。 」
「あ、ありがとうルナちゃん」
ルナからコートを渡してもらったリリィは、湿っているのにも構わず袖を通した。
>きっとぽかぽかに温まるから…って、ちょっと!男性陣はササミを助けてあげて!
>枝に吊るされて、ハングドマンぢゃないんだから!」
>「かぼちゃシチュー? ふむ、美味そうでいいな! ……とと、私も参加してもいいものか」

123 :リリィ ◆jntvk4zYjI :2013/01/23(水) 18:42:24.68 0
盛り上がってるなー、などと思いながら、ササミのいるらしき方向を何気なく見たリリィは、・・・・・・そのままの体勢でフリーズした。
なんと、ササミはさかさまに吊られ、その脚線美を惜しげもなくさらけ出しているではないか!

「うわあああっ?!何でササミちゃんが逆さ吊りに!
 ササミちゃんの手袋!スカートの手袋!何でこういう時に、ささっと動いて隠すとかしないのよおおぉお!!」
リリィはそう責めたが、無理な話である。
確かに、ササミの履いている大量の手袋を張り合わせたようなスカート。
ここから離れた手袋は、普段は自在に動いて水晶の剣すら難なく振るう。
だがそれも、元はといえばササミの能力。
本体が消耗して動けないのだから、手袋だけが自発的に動けるわけがないのだ。
「エンカ!エンカも何だってそんなところに?何?もしかして、二人セットで吊られちゃってるの?」

泡を食っているリリィの横では、テオボルトが平然とした顔でササミの足の革紐を外している。
だがササミのおっぱ・・・・胸についた顔に気をとられたのだろうか?
なんと、テオボルトは手にしていた紐を
「あ!だ、ダメー!!テオさん待って離しちゃだめええぇぇぇえ!!」
手放してしまった。
「うわああああっ!エンカ危ない!」
リリィは大慌てで飛びつき、どうにか紐をつかんだ。
「フ、フリードくん、グレン・・・・だ、だれでもいいから、おねがいてをかして・・・・・・ぇ」
ぐぐぐぐ、と渾身の力を込めて引っ張っているが、リリィの身体は今にも宙に浮きそうだ。

「ああ、えらい目にあった。エンカも大丈夫だった?」
リリィはぜいぜいと肩で息をしながらぼやいた。
テオボルトは自分のカバンを探しているが、グレンがいるから安心だ。

「でも、神様もいなくなってくれたみたいだし、これで無事解決、でいいのかな?
 ああ、神様だけあって、本当にめちゃくちゃしてくれたよねー」
大事なメッセージを聞き損ねたリリィは、どこまでも不遜だ。

リリィは視界の隅で、ふらふらとその場から離れていこうとするササミに気づき、あわてた。
「ササミちゃん、部屋に帰るなら私の箒で送るよ、危ないから・・・・・・って、えええ?!」
ササミはいきなり走り出そうとした後、白目を剥いて倒れてしまった。
「ササミちゃん、ササミちゃん?しっかりしてよ!」
抱き起こして頬を叩いてみるが、反応がない。
「・・・・・・・やっぱりここは、多少のリスクには目を瞑ってでも、風邪薬飲ませたほうがいいよね!うん!」
リリィはドクロマークのついた、保険医印のアンプルをササミの口に流し込もうとする。

「鳥だけあって、ササミちゃんの体重が軽くてよかった。これなら人間でも運べそう」
リリィの呟きを聞いたとしても、テオボルトやエンカには何のことかわからないだろう。
ササミの本性が、七つの頭を持つ巨大な鳥だということは、あまり知られていないのだ。
「・・・・・あ、いや何、こっちのこと!
 カボチャパーティの前に。病気のササミちゃんを部屋まで運んでくれる紳士は誰かなーと思って!
 ・・・・・・・あれ?エンカ、なんだか顔色悪いみたいだけど大丈夫?
 ん?その、手に持ってるのはなあに?」

124 :エンカ ◆jWBUJ7IJ6Y :2013/01/23(水) 23:07:15.95 0
>119>123
流星錘にくくられていたササミは無事地上にいるテオボルトに救助されたようだ。その時である。
> 「うわああああっ!エンカ危ない!」
リリィが大慌てで流星錘の紐を掴んだ。
> 「フ、フリードくん、グレン・・・・だ、だれでもいいから、おねがいてをかして・・・・・・ぇ」
そう言ってリリィは流星錘の紐を思いっきり引っ張っている。
「じょ、冗談じゃねーぜリリィ!?なんか勘違いしてんじゃあねーか!?」
流星錘を通して引っ張られたエンカは即席のスノーボードと一緒に枝のしなりで上下に激しく揺れる。
そのうちバリッという音がして、エンカの足が枝に引っかかっていた即席のスノーボードから剥がれてしまった。
「うおおおおおおおっ!?」
真っ逆さまに地上に落ちるエンカ。その時、不思議なことが起こった。
何者かがエンカに呼びかけてきたのである。

> 『凍てついた時の中、暗く寂しい場所で、小生は絶望の鉄鎖に繋がれていた。
> いつの日か、この獄鎖を引きちぎり、再び陽光を浴びる日が来ることをずっとずっと夢見てきたのだ。
> だがそれも今日で終わる。 』
「…この声はオッサン!?農家のオッサンかよ!?」
溺れる者は藁をも掴むという。
落ちるエンカが思わず手を伸ばして掴んだのは、羽の生えた種だった。
その種はエンカの体重を支えるべく羽をはばたかせたので、エンカはゆっくりと地上に降りることができそうだった。
> 『そうだ、エンカ君よ。君が小生を救ってくれたのだ。
> 人と神、進む道は違えど、君はともに歩むと誓ってくれた。
> その気持ちが嬉しかった。だから確信したかった。 君が認め合える人々の存在を。
> だがかなしいことに、もはや君と共に大地を耕すことは叶わぬ。
> それゆえに小生は、ここに根を張り、君の見える場所に常に立っていようと思う。』
「な、なんだって!?じゃあ、この木そのものがオッサンだったのか!?」
その事実に初めて気づくエンカ。そして彼は怒った。
「勝手なことをしてくれるよなーっ!!確かに俺はリリィ達を助けてくれって言ったけどよーっ!
 オッサン自身を犠牲にしろなんて言ってねーぜっ!迷惑だぜ!俺の身の周りで、俺のために、俺達のために…」
エンカは言葉につまり涙目になった。泣いてはいけない。それが男の子のルールなのに。
> 『どんな風が吹き、時の流れがこの身を朽ち果てさせようとも、小生はここから一歩も動かないであろう。
> それが君と、小生との大切な絆だからだ……』
エンカの掴んでいた種の羽ばたきが少しずつ弱まり、最終的には倒れこむようにしてエンカは地上に降りた。
エンカの掴んでいた種はそんなに大きくないので、遠目からでは一体何がエンカを降ろしたのかよくわからないだろう。

125 :エンカ ◆jWBUJ7IJ6Y :2013/01/23(水) 23:09:22.91 0
> 「ああ、えらい目にあった。エンカも大丈夫だった?」
ぜいぜいと肩で息をしながら、リリィが心配そうに駆け寄ってきた。
「ああ、俺は大丈夫っすよ。…俺は大丈夫っすよ」
エンカは泣きそうになったのをリリィに悟られないように、顔をゴシゴシこすりながらそう答えた。
> 「でも、神様もいなくなってくれたみたいだし、これで無事解決、でいいのかな?
>  ああ、神様だけあって、本当にめちゃくちゃしてくれたよねー」
「そうだよな…」
エンカはテンションが低かったが、リリィが満身創痍のササミを介抱しに行った後、
突然クロノストーンの木に駆け寄って飛び蹴りをくらわせた。
「本当に!めちゃくちゃしてくれたよな〜!これでちったあスッキリしたぜ!
 謙虚すぎるぜ〜オッサン!見ているだけでいいなんてよ〜。
 いいぜ、見ててくれよ。俺も時々見に来るからよぉ!」
エンカはそう言ってクロノストーンの木に笑いかけた。
どうやら気持ちを切り替えることができたようだ。

> 「・・・・・あ、いや何、こっちのこと!
>  カボチャパーティの前に。病気のササミちゃんを部屋まで運んでくれる紳士は誰かなーと思って!
>  ・・・・・・・あれ?エンカ、なんだか顔色悪いみたいだけど大丈夫?
>  ん?その、手に持ってるのはなあに?」
「ほらよ!」
エンカは手に持っていた果物のようなものをリリィに投げて渡した。
エンカはもう一つ同じ果物を手に持っている。
それはエンカがついさっきクロノストーンの木を蹴った際、上から落ちてきた果物であった。
その果物はいかにも甘そうに熟しており、口にするのに都合が良さそうである。
エンカはさっそく一口ほおばった。
「なんだこれはぁあああっ!?ンまいなぁあああっ!!」
エンカの体はボロボロだったが、少し元気になった。

126 :フリードリッヒ ◆cOOmSNbyw6 :2013/01/26(土) 16:52:54.25 0
リリィはエンカが何か持っていることに気が付いたようだ
>「ん?その、手に持ってるのはなあに?」
どうやら何か果実のようである
エンカはそれをリリィに投げ渡す

>「なんだこれはぁあああっ!?ンまいなぁあああっ!!」
「本当にそれを食べて大丈夫なんですか?」
フリードリッヒは安全性を疑っているようだ
『体に角が生えたりしない?』(猫語)
どこのミュータントミートボールだ

「さてこれから学園まで行くんですが・・・・・
 かぼちゃはシチューにされるようですしもう乗り物がないですよね」
楽しそうにかぼちゃを拾うルナを見ながらこうつぶやく
『歩いて行けばいいじゃない
 親からもらった大切な二本の足があるんだから』(猫語)
「それにしてもあれほどの騒ぎがあったのに学園からは何の救助も無かった
 ・・・・・まさかとは思いますが学園でも何か別の事件が起こっているのでは?」
『テロリストが学園を占拠とか?』(猫語)
そんなベタな展開があるわけがない
「まあたとえそうであっても学園には僕の1.5倍は強い姉さんがいるから安心ですね」
『でもフィー坊のお姉ちゃんってまだ子供のままなんじゃ・・・・』(猫語)
そう前回の話から今の今までフリージアは小さいままであった
そのためフリージアがヒーロー活動をしてい時の姿ホワイトクイーンはあの時から出現していない
「サイズが変わろうが強さまで変わるわけじゃありませんから大丈夫ですよ」
『あ、これ小さくなって下水道で鼠とかゴキとかと戦うフラグ立ったな』(猫語)
「そんな底辺の冒険者の仕事みたいな出来事ありえませんよ」
はたして学園ではどんな事件が巻き起こるのだろうか?
それとも平穏無事で一日を過ごせるのだろうか?
それはまた別のお話である

127 :ルナ・チップル ◆apJGY8Xmsg :2013/01/28(月) 00:42:53.30 0
「あまい果実の香り…。狂ってしまいそうだね」
大樹の枝に美しい少年が座っている。そう、いつの間にか保健室から移動した夢見石の少年である。
彼は大樹の洞に鎮座しているひび割れた石をそっと取り出すと、瞳を閉じてキスをする。
すると石は蜃気楼のように溶けて少年の柔らかい唇に吸い込まれるようにきえてしまった。

「かなしいキスだよ。石の想いは僕の心のうちに。そして神の残留思念は天に還った。
今や古代樹の種の化石はその夢を叶え、フィジルの地に新たなる名所を生み出している。
僕たちは小石を蹴るけれど、小石もまた、僕たちを投げ飛ばしているのだね。
小石からみた現実を、僕たちは学ばなければいけないね……」

その時だ。エンカの強烈な蹴りが大樹を揺らす。
夢見石の少年は体勢を崩して無数の果実と一緒にエンカの背後へと落下。
その体を半分ほど雪に埋没させるのだった。

「僕は、小石ならよかったのにな…」
哀切な眼差しで、少年はエンカの背を見つめる。
その瞳の奥にクロノストーンの輝きを孕ませながら。



>「あ、そういえば私のカバンは?」

「あ、これかも」とルナ。
カボチャの欠片を拾いながら偶然見つけたテオボルトの鞄。
よいしょと拾い上げ彼に手渡した。

「体、冷えちゃっただろうし、カボチャのシチューを食べて皆で暖まったらいいよ。
みんな貴方のこと知りたがってるし、それにもともと今日はパーティーの日なんだから」
そう言ってルナは小さく笑った。エンカも果実をほお張りながら元気そうだし、フリードたちも無事。
もちろんササミは殺したって死なないだろう。ルナはそんな変な信頼感を胸に抱き始めていた。

「でも、エンカ君ったらそんな変な果物を美味しそうにほお張っちゃって、
パーティーの前にお腹がいっぱいになっちゃったらどうするの?」
小首を傾げるルナ。続けてリリィに視線を移し…

「あのぅ、ごめんねリリィ。今日もみんなを変なことに巻き込んじゃって。 このお礼は必ず返すから許して」
そんな言葉を口にする。
ルナはまだリリィが気を使って、湿ったコートを羽織っていることには気が付いていない。
ただそんな優しいお友達が、墜落死を免れたことに、これ以上なく安堵しているのみだった。

ルナはリリィを大切にしようって思う。はてしなく手をつないで、歩いていきたいって思う。
かぎりあるところまで……。



「さあ、男性諸君。ササミさんを運んであげようよ。暖かいベッドのなかへ」
夢見石の少年は悲しげな顔。その背に無限大の空を背負って

沈黙。

128 :リリィ ◆jntvk4zYjI :2013/01/29(火) 17:53:46.20 0
>124-127
>エンカは手に持っていた果物のようなものをリリィに投げて渡した。
「わあ、何これ見たことない果物だね。でも・・・・・・うう、すっごくいい匂い!」
>「なんだこれはぁあああっ!?ンまいなぁあああっ!!」
「ホント?じゃ、じゃあ私も・・・・・・・」
ちょっと元気になったエンカを見て安心したのか、あーん!とリリィも大口を開けた。
>「本当にそれを食べて大丈夫なんですか?」
「え?」
>『体に角が生えたりしない?』(猫語)
「え・・・・ええっ?!角??」
リリィは果実を手に、おろおろしている。
アフタヌーンティを楽しみ損ねた上に、なけなしの魔力も吸い取られてしまって出がらし状態、正直はらぺこである。
だが、角が生えるのは怖い。鬼女になってしまう。

>「さてこれから学園まで行くんですが・・・・・
> かぼちゃはシチューにされるようですしもう乗り物がないですよね」
楽しそうにかぼちゃを拾うルナを見ながらこうつぶやく
>『歩いて行けばいいじゃない
> 親からもらった大切な二本の足があるんだから』(猫語)
「私達は良くても、けが人は厳しいと思うよ?
 というわけでフリード君、馬車に乗る前に言ってたソリ、使える?」
魔法学園は広い。
敷地に入ってからも、女子寮まではそこそこの距離があるのだ。
もしもソリが使えないようなら、ササミを箒に載せて移動することになるだろう。
(箒に固定して運ぶ姿を見ても、「鳥の丸焼きになる直前」などと連想してはいけない)
「ササミちゃん具合悪そうね。鳥インフルエンザ再び、ってことは、無いよね?」

>「あ、そういえば私のカバンは?」
>「あ、これかも」とルナ。
「あ、グレン。これ大事な乗り物でしょ?折れた木の枝の下敷きになってたよ」
リリィは、「万能式動物用コタツ スペイザー」 をグレンに渡した。
「私が落ちるときへし折った枝かも。ごめんね。ぱっと見た感じは壊れてないみたいだけど・・・・・・・。
 はっ!テオさん、カバンの中身は大丈夫でした?高価な壊れ物とか入ってませんよね?」
ササミを移動させる準備をしながらも、テオボルトのカバンを心配そうに見つめている。

>「あのぅ、ごめんねリリィ。今日もみんなを変なことに巻き込んじゃって。 このお礼は必ず返すから許して」
「何言ってるのよ。ルナちゃんだって、今回巻き込まれただけじゃない!
 悪いのは危ないものを売りつけたお店だよ。後でゲンジューに抗議しないとね!」
もっとも、後日店を見つけることができなかったリリィは、願いをかなえることができないのだが。
「それよりもルナちゃん、素が出てるよ。お化粧が落ちるといつもそうだね。うふふ。
 ・・・・・・・まあ、私はそっちのルナちゃんも好きだけどね」
怖いメイクのルナと存在が希薄なルナ。
どちらも極端すぎるので、足して二で割るくらいでそのうち落ち着いたらいいなぁ、と思っているのはここだけの秘密だ。

129 :リリィ ◆jntvk4zYjI :2013/01/29(火) 17:57:50.95 0
>「それにしてもあれほどの騒ぎがあったのに学園からは何の救助も無かった
> ・・・・・まさかとは思いますが学園でも何か別の事件が起こっているのでは?」

「多分、彼が原因でしょ。皆も、気づいてたとは思うけど」
リリィは巨木の裏側に回りこむと、人の型をした雪穴の中から、真っ白になった少年を引っ張ってきた。
「さっきから神様とは知り合いっぽいこと、一人でぶつぶつ呟いてたしね。
 どーせ頼まれて便宜でも図ったんでしょ。石繋がりだし。ほらほらそうなんでしょ」
少年にしてみればとばっちりもいいところだが、この場に現れてしまったのが運のつきである。
「いたずらっ子にはお仕置きです!」
そう言って少年のほっぺをぐりぐり指で押したあと、リリィは髪についたままの雪を払った。

>「さあ、男性諸君。ササミさんを運んであげようよ。暖かいベッドのなかへ」
「人事みたいに上から目線で語るんじゃないの。君は元気なんだから、けが人を運ぶの手伝ってよね!
 ・・・・・・あ、念のため言っておくけど、自分の両手を使って手伝うって意味だからね?
 それとこれはわけのわからない願い事じゃなくて、人として当然の「お手伝い」だから。ちょっと、聞いてるの?」
相手が黙っているのをいいことに、リリィはお姉さんぶってあれこれ言って聞かせている。
もっとも、相手の反応は今ひとつはっきりしないものだったのだが。

「じゃあ、ひとまず学園に戻ろうか。パーティ間に合うかなあ?あ、でもパンプキンシチューは楽しみ」
とはいえ、パーティは顔出しだけで、長く出るつもりは無いのだが。
保健室を敬遠するササミには、看病する人間が必要だろう。
それが余計なお世話ということを、今のリリィは知らない。

130 :エンカ ◆jWBUJ7IJ6Y :2013/01/29(火) 21:15:47.91 0
>126>127>128>129
> 「本当にそれを食べて大丈夫なんですか?」
> フリードリッヒは安全性を疑っているようだ
> 「え・・・・ええっ?!角??」
> リリィは果実を手に、おろおろしている。
「別に俺の体には何も問題は無いぜ?フリードも食いたかったらよ〜、
 自分でとってこいよなー。まだ木にたくさんあるみてぇだからよぉ」
とエンカは言った。
> 「さてこれから学園まで行くんですが・・・・・
>  かぼちゃはシチューにされるようですしもう乗り物がないですよね」
> 『歩いて行けばいいじゃない
>  親からもらった大切な二本の足があるんだから』(猫語)
> 「私達は良くても、けが人は厳しいと思うよ?
>  というわけでフリード君、馬車に乗る前に言ってたソリ、使える?」
「くれぐれも気合と魔力と根性がいらねぇやつを頼むぜフリード。
 俺達ぁもうクタクタだからよ〜」
エンカはそう言うと大げさにその場にヘタリ込んでみせた。

> 「でも、エンカ君ったらそんな変な果物を美味しそうにほお張っちゃって、
> パーティーの前にお腹がいっぱいになっちゃったらどうするの?」
「お〜ん?パーティー?なんスかそりゃ〜?」
念のために言うが、エンカはパーティーという単語の意味がわからないわけではない。
事情を説明すれば、彼は簡単についてくるだろう。
> 「あのぅ、ごめんねリリィ。今日もみんなを変なことに巻き込んじゃって。 このお礼は必ず返すから許して」
> 「何言ってるのよ。ルナちゃんだって、今回巻き込まれただけじゃない!
>  悪いのは危ないものを売りつけたお店だよ。後でゲンジューに抗議しないとね!」
「とりあえずルナちゃんも大事なくて良かったよな〜。
 別にお礼というほどのことは望まねぇけどよ〜、今度二人で一緒にお茶しようぜ〜?」
誰もルナがエンカにお礼をするとは言っていない。

> 「それにしてもあれほどの騒ぎがあったのに学園からは何の救助も無かった
>  ・・・・・まさかとは思いますが学園でも何か別の事件が起こっているのでは?」
> 『テロリストが学園を占拠とか?』(猫語)
「じょ、冗談じゃ…」
> 「多分、彼が原因でしょ。皆も、気づいてたとは思うけど」
> リリィは巨木の裏側に回りこむと、人の型をした雪穴の中から、真っ白になった少年を引っ張ってきた。
「おん?なんだその子は?リリィの知り合いか?」
>「さあ、男性諸君。ササミさんを運んであげようよ。暖かいベッドのなかへ」
「お、おう…?」
> 「人事みたいに上から目線で語るんじゃないの。君は元気なんだから、けが人を運ぶの手伝ってよね!
>  ・・・・・・あ、念のため言っておくけど、自分の両手を使って手伝うって意味だからね?
>  それとこれはわけのわからない願い事じゃなくて、人として当然の「お手伝い」だから。ちょっと、聞いてるの?」
「やれやれ、とりあえずササミちゃんを運ぶのを俺も手伝うぜ。
 だけどよぉ、俺もクタクタだから、もう一人くらい手伝ってほしいよな〜」
そう言ってエンカは倒れているササミに近寄った。
「(そういやぁ結構無理やり流星錘を引っ掛けたからなぁ。関節が外れたりしてなければいいが…)」
そう考えたエンカはそっとササミのスカートをめくって彼女の足首を見て触れて確認しようとした。

131 :ササミ ◆/TZT/04/K6 :2013/01/29(火) 22:19:46.60 0
赤、青、紫、緑、土気色
この色はササミの体調によって変化する顔の色である。
現在緑を超えて土気色になってしまっているこの色を見ればリスクを承知で保険医の風邪薬を口に流し込んだリリィは正しかった。
確かに副作用も出るのだが、いや、出たからこそ一命を取り留めたと言えるだろう。
後に夢見石の少年と共に現場に到着していた保険医は語る。
変態ではあってもまぎれもなく天才であり、仕事をしっかりと保険医はこなしていたのだ。

白目をむいて倒れたササミに風邪薬を流し込んだあと、その効果はすぐに表れる。
荒い息は多少なりとも落ち着き、顔色も紫色くらいにまでは回復。
とりあえずは安心できたと思えるだろう。
が、その時既に副作用はササミの内部から現れ始めていた。
鳥だけあって軽い体重が、体相応にずっしりと重みをもち始めているのだから。

そしてその副作用はエンカがササミのスカートをめくり、足首を見て触れようとした時に一気に外に溢れ出る!

ササミの足は黄色い鱗に覆われ、前に三本、後ろに一本枝分かれして鋭い爪を持つ。
そう、足は猛禽類のそれと同じなのだ。
その足首にエンカがふれた途端、うっすらとした光に包まれ、猛禽類の足は溶けてその姿をとどめておけなくなるのだ。
光が引くとともに新たに顕れたのは、人と同じ、柔らかな足だった。
ごつごつとした猛禽類の足首よりはエンカも持ち心地はよくなっただろう。
副作用は足だけではない。
額、胸元、両手、項、背中についていた顔が体内に沈み、やがて完全に消えてしまった。

そう、七面鳥ササミではなく、人間となったササミがそこに現れたのだ。


「フィジル島を襲った吹雪はボレアースがクロノストーンの封印を守るために発生させたもの。
つまりはただの吹雪ではなく神の吹雪だったのね。
神の強大な気は人間もあてられることがあるけれど、神の敵対者である魔族にとっては猛毒も同じ」

保健室でカルテを見ながら保険医が一連の事情を説明する。
雪珍しさに雪雲の中に入っていったのだが、それは神の雪雲であり、風邪ではなく被毒状態と言えたのだ。
もちろんその後、クロノストーンに抱きかかえられたりもそれに拍車をかける事になる。

毒はササミを蝕み続けあのままでは命にかかわったかもしれない。
が、それを救ったのが風邪薬であった。
風邪薬自体は全く効果はなく、状態を改善させるものではなかった。
当然である、あくまで風邪の治療薬であり、神の気に毒された魔族には何の効果もあらわさない。
が、その副作用で人間になったのがササミの命を取り留めたのだ。
魔族にとっては猛毒であっても人間にとっては強すぎると当てられる程度のものなのだから。

「副作用が切れるて魔族に戻るころには神の気の影響もなくなっているだろうし、もう大丈夫でしょ。
しばらく慣れない人間の身体で大変かもしれないけどね」
保険医の説明はこう締めくくられた。


しばらく後に目覚めたササミが視界の狭さにパニックを起こしたり、無意識に飛ぼうとして墜落したり。
再生酵素が消失しているので傷がいつまでも治らず愕然としたり。
三歩歩いてもモノを忘れなくなっていたり、部屋に帰ってみたらベッドが石になっていて呆然としたり。
だが、最も大きな変化は、人間になる事でササミの食人欲求がなくなったことなのかもしれない。

人間になったササミが魔族に戻るまで、いや、部屋に戻るまで様々な騒動が起きるのだが、それはまた別のお話。

132 :テオボルト ◆e2mxb8LNqk :2013/01/30(水) 23:35:44.09 0
>「ううぃい…こちこそ邪魔して悪かったがね。風邪で血の効果も弱っているはずやのに思った以上に効いて良かったがね。
>ササミ・テバサコーチンだがね。見ての通り魔族だぎゃ」
気分も悪そうだが、テオボルトの自己紹介に対しササミも名乗った。
「ふむ? 魔族、魔族か。まあその調子を見る限り、ヒトとさして変わらないのだろうな」
適当な推測をしてから、頭の片隅で予想以上の回復について思いを馳せる。
とはいえ、大した事を考えられるわけでもない。おそらく効きやすい体質だったのだろうと結論付けた。

さて、テオボルトがカバンを探すべく辺りを見回していると。
>「あ、これかも」とルナ。
「む……おお、これだこれだ」
雪にまみれた古ぼけたカバンを受け取ると、すぐに中身を確認。そこにリリィが声をかける。
>「はっ!テオさん、カバンの中身は大丈夫でした?高価な壊れ物とか入ってませんよね?」
「ええと……大丈夫だな。中身も壊れにくいものばかりだし、最悪濡れてるだけで済むだろう」
幸い、無事な様子であった。少ない荷物ではあるが、流石に失うと気分が悪い。
安堵の表情を浮かべて、カバンを閉じる。

>「体、冷えちゃっただろうし、カボチャのシチューを食べて皆で暖まったらいいよ。
>みんな貴方のこと知りたがってるし、それにもともと今日はパーティーの日なんだから」
「パーティ……ああ、そういえば言っていたなぁ。
 うむ、先程ので腹も減ったことだ。全く丁度いいものだ、交友も深められるようであるし」
ルナの提案に、理屈っぽく同意する。

「……今日だけでも波乱万丈の一日だったが、この先も全然退屈しそうにないな?
 此処に来たことを喜べばいいのか、嘆けばいいのか。それが問題だ、って感じか」
ササミが人間になってしまったのを見ながら、先行きの少々の不安と大層な期待を覚えるテオボルト。
それが現れたのが先の一言であろう。

この先も、フィジル島で何が起きるのか。それがわかるのは誰もいない。


この後、パーティでテオボルトが中々の健啖家であることを見せるが、それは関係のない余談である。

133 :リリィ ◆jntvk4zYjI :2013/02/03(日) 00:36:16.47 0
>130-131
>夢見石の少年にくどくど言って聞かせるリリィをよそに、けが人のエンカは次の行動を起こしていた。
>「やれやれ、とりあえずササミちゃんを運ぶのを俺も手伝うぜ。
> だけどよぉ、俺もクタクタだから、もう一人くらい手伝ってほしいよな〜」
「あ、じゃあ私手伝うよ。ササミちゃん見た目よりずっと体重軽いから、大丈夫」

エンカは倒れているササミに近寄ると、いきなりスカートを捲った。
「キャー!何堂々とスカート捲っちゃってるのよ!エンカのえっち!」
もしエンカが怪我人でなければ、怒りの鉄拳をお見舞いしていただろう。
リリィが大慌てでエンカに駆け寄り、ササミのスカートを元に戻そうとした。
その結果、幸か不幸か、リリィもササミの急激な変化を目の当たりにすることになった。
淡い光が消えた後のササミは、どこをどう見ても普通の人間に見えた。
「えーと・・・・・・・エンカ、もしかしてあなたササミちゃんに何かした?」
そんな余裕があっただろうか?
「そんなわけないよね。じゃあやっぱり、さっき飲ませちゃった風邪薬の副作用・・・・・・?
 で、でも緊急事態だったし!顔色緑色だったし!」
あわあわあわ、と焦りまくっているリリィだったが、とりあえず保健室に移動するべきだろう。

リリィはササミを運ぼうとしたが、思った以上の重量に困惑する。
「あれ?何これ、ササミちゃん急に重た・・・・・おも・・・・・」
体重が増えている、などと、女の子同士の間では口が裂けてもいえるわけがない。
「おも、おも・・・・・おもちかえりしましょーがくえんに。
 少年、フリード君、テオ君、誰でもいいよ、私じゃちょっとおぼつかないから、手が空いてる人、エンカを手伝ってー」

保健室への道すがら、リリィは先刻のエンカの問い、夢見石の少年について答えることにした。
「実は、まだ名前も知らないのよね。知り合いっていうよりは、顔見知り程度って感じかな?
 あ、綺麗な顔してるけど、彼、男の子らしいよ。
 まー美少年はフリード君で散々見慣れてるだろうから、いまさらその程度で驚いたりはしないだろうけど」
話が逸れるのは、どう切り出していいか迷っているからだ。
「んー、まあ、ざっくり言うと、困った人をほうっておけないタイプ?
 自分と波長の合った人の願いを知ったら、全力で叶えようとするんだけど・・・・・」
リリィは美少年をちらりと見て、大きなため息をついた。
「なんというか、本人ものっすごく世間知らずみたいなのね。
 そのせいか、願い事以外の部分ではとんでもないことが起きて、皆が困ったことになる、みたいな。
 だから今回の神様の件も、彼が手を貸したんじゃないかって思ったの。
 ・・・・・・あ、エンカ達は、今回思いっきり巻き込まれちゃったから、この話したんだからね。
 あんまり大っぴらにできる話じゃないから、できれば他言無用にしてもらえると助かる」

リリィは一区切りつけるようにぱん、と手をたたくと、先ほどエンカが渡してくれた果実にかぶりついた。
「おいしー!本当においしい。なんて名前の果実だろ?
 そうそう、言い忘れてた。エンカ、さっき馬と戦ってたとき、魔法不発だったでしょ?
 練習と本番じゃ勝手が違うから、あんまり気にするなよね、と、お姉様は思っているわけであります」

「まあそれはそれとして、エンカ、この後はどうするの?せっかくだから、ササミちゃんと一緒に保健室で見てもらおうよ。
 結局、さっき渡した傷薬だって使ってないんでしょ?
 その後パーティに出たらどうかな?ルナちゃんはかぼちゃ使ってお料理作ってくれるらしいよ?」
リリィは、パーティの件をエンカとテオボルトに説明した。
二人とも好感触だ!」

134 :エンカ ◆jWBUJ7IJ6Y :2013/02/04(月) 19:40:19.82 0
>133
> 「えーと・・・・・・・エンカ、もしかしてあなたササミちゃんに何かした?」
「お、俺は何もしてねぇぜ!?これがササミちゃんの本来の姿なんじゃあねーのか!?」
ササミが突然人間の姿になったのでリリィとエンカの二人は驚いた。
「ま、まぁとにかく、足に怪我がねぇみたいでよかったぜ」

エンカは砕け散った馬車の屋根、今となってはただの大きなかぼちゃの破片だが、
その上にササミを載せてズルズルとひこずっていると、リリィが謎の少年について説明してくれた。
> 「実は、まだ名前も知らないのよね。知り合いっていうよりは、顔見知り程度って感じかな?
>  あ、綺麗な顔してるけど、彼、男の子らしいよ。
>  まー美少年はフリード君で散々見慣れてるだろうから、いまさらその程度で驚いたりはしないだろうけど」
「なんだ?名前を知らないなら聞いたらいいじゃねーか。
 おーい、坊や!
 君のお名前なんてーの?俺の名前はエンカ・ウォン!学園屈指の色男!」
エンカは歌うようにして少年に名前を訪ねた。
そのとなりで、リリィは何か迷っているようだ。
「なんだよ?『学園一の色男』って言わないだけ謙虚だろ〜?」
たぶんそんなことではない。
> 「んー、まあ、ざっくり言うと、困った人をほうっておけないタイプ?
>  自分と波長の合った人の願いを知ったら、全力で叶えようとするんだけど・・・・・」
> リリィは美少年をちらりと見て、大きなため息をついた。
> 「なんというか、本人ものっすごく世間知らずみたいなのね。
>  そのせいか、願い事以外の部分ではとんでもないことが起きて、皆が困ったことになる、みたいな。
>  だから今回の神様の件も、彼が手を貸したんじゃないかって思ったの。
>  ・・・・・・あ、エンカ達は、今回思いっきり巻き込まれちゃったから、この話したんだからね。
>  あんまり大っぴらにできる話じゃないから、できれば他言無用にしてもらえると助かる」
「………??」
エンカはリリィの言うことがよく理解できなかった。
願い事を叶える過程で、具体的にどんな不具合があるのだろうか?
だが、他言無用と言われた以上、リリィに質問するのはもうやめておこうとエンカは考えた。
「まぁ、もう済んだ話なんだろ?いいよ、それで」

> リリィは一区切りつけるようにぱん、と手をたたくと、先ほどエンカが渡してくれた果実にかぶりついた。
> 「おいしー!本当においしい。なんて名前の果実だろ?
>  そうそう、言い忘れてた。エンカ、さっき馬と戦ってたとき、魔法不発だったでしょ?
>  練習と本番じゃ勝手が違うから、あんまり気にするなよね、と、お姉様は思っているわけであります」
「このー、偉そうにお姉さんぶりやがって〜。言っとくけどな〜、俺の悪魔が本気を出せば、
 あんな馬の一匹や二匹簡単にやっつけられるんだからなーっ!」
エンカは虚勢を張った。
「…それにしてもよ〜、俺の悪魔がもうちょっと俺に対して従順だといいんだけどな〜」
エンカはそう言って大きなため息をついた。

> 「まあそれはそれとして、エンカ、この後はどうするの?せっかくだから、ササミちゃんと一緒に保健室で見てもらおうよ。
>  結局、さっき渡した傷薬だって使ってないんでしょ?
>  その後パーティに出たらどうかな?ルナちゃんはかぼちゃ使ってお料理作ってくれるらしいよ?」
> リリィは、パーティの件をエンカとテオボルトに説明した。
「いいっすね〜、パーティ!おいしい料理と麗しい乙女達が俺を待っているぜ!
 そうと決まればよ〜!早く保健室に行かなくっちゃなーっ!」
エンカは保健室での用事が済めば、すぐにパーティに参加するだろう。

135 :ルナ・チップル ◆apJGY8Xmsg :2013/02/06(水) 19:32:02.22 0
夢見石の少年はササミの体の変化を、じっと見ていたあと、
白く形の整った足を見て、その足の裏を指でこちょばす。

すると、ぴくんと足が動く。
網膜に焼きつくほど、白い足。
生まれたての足。

>「おも、おも・・・・・おもちかえりしましょーがくえんに。
 少年、フリード君、テオ君、誰でもいいよ、私じゃちょっとおぼつかないから、手が空いてる人、エンカを手伝ってー」
リリィは上手くごまかしながら皆に頼みごと。

「……」
少年は首肯して、エンカのひこずっているカボチャの破片に紐をくくりつけて引っ張り始める。
ササミは可愛らしくカボチャの皮に寝ている。まるで三日月のハンモック。
グレンも手伝おうとしたけどサイズ的に無理と断られていた。

「よいしょ。よいしょ」
少年は紐を引っ張る。そして彼の背中はみるみる小さくなる。置いてけぼりにされるているのはエンカ。
そう、途中でカボチャから紐がほどけてしまったため、少年は紐だけを引っ張っていってしまったのだ。

いっぽう、時と場所が変わってパーティー会場。
ルナはテオボルトに約束通りパンプキンシチューをご馳走していた。

「お口に合うといいですけど……」
ルナの心配そうな顔。テオボルトに対しては遠慮もあるのか口数も少ない。
こういうときにリリィがいたら上手くフォローしてくれるのに…。
そう思いながら向かいの席に視線を流すとフリードが
「ブランディ持ってきてください一番強いやつ」とか無茶なこと言っている。

「未成年でしょ?だめよ〜」
ルナはペロっと舌を出して甘酒を彼の前のテーブルに置く。

「それではみなさま。どうかご歓談ください」と言い残して保健室へ。
それを聞いて、ちゃっかりパーティーに参加していた夢見石の少年はフリードのほっぺを指でぐりぐり。
そう、彼はリリィにされたことをマネしているのだった。

廊下からルナの鼻歌が聞こえてくる。
両手で持つはトレイ。その上には三皿のパンプキンシチュー。
保健室で養生しているであろうササミ。
それを看病しているであろうリリィとエンカに
ルナの作ったあったかいパンプキンシチューが届くのはまた別のお話。

136 :ルナ・チップル ◆apJGY8Xmsg :2013/02/14(木) 00:22:56.61 0
放課後、新校舎(旧校舎はササミとの戦いで粉々になってしまった)の二階の端っこのトイレ。
新校舎の二階は礼法室、資料室がある階だからトイレもがらがら。特に放課後は誰もいない。
だからというかなんというか、ルナたちステレオポエミーのメンバーたちは、
たとえ火急の場合でも毎日ここに来ることを決めている。
で、身支度をしていた。身支度というのは髪をとかしたり眉を描いたり、靴下をたるませたり。
ルナたちはそういうことはちゃんとやる方だから鏡を見ながら楽しくおしゃべり。
その内容はライブの話だった。

でもルナはそんなことも上の空で、窓から外を見ている。
掃除の済んだトイレは結構きれいで、窓から夕方の風が入るし、かすかに漂白剤のにおいもする。
黄昏るのもわかるけどルナがぜんぜん返事をしないので、友達はちょっと怒った感じ。

「ちょっとあんた聞いてるの?」
そう言って噛んでいたガムをぱちんと鳴らした。
そしたらルナは驚いたふうもなく、

「あー…海がみたい」と言ったのだった。

「海?」
うん、海。と言ってルナは口をつぐむ。
ステレオポエミーのメンバーたちは目をぱちくり。

「どうして海なの?」
一人の子が聞くとルナは壁際に立ったまま

「海亀ってさ、幸せを運ぶ守り神なんだって。そう先生が言ってたの」

ふうん…。メンバーたちは鏡にうつったルナの顔を見ながら一斉に頷いた。
なんとなく取り残された気分になりながら。


廊下に出ると、ドアが背後でぱたんと閉まる。
静かな廊下に響く足音。
廊下を歩いているとき、ルナはほとんど喋らなかった。

「じゃあ、またあした」
校門を出ると、にっこり笑って手を振って、皆と別れる。
涼しい空気がどっとルナの胸に流れ込んでくる。
夕焼けを背に屹立する学園の尖塔。
目線の先には、おそろいの制服を着た知らない人たちが、
だらだら連なって下校している。

137 :青葉草介 ◆UeaUYwi1Nw :2013/02/19(火) 17:53:45.86 0
「出来た…!」
新しい魔法薬の調合に成功しました。早速試してみましょう
以前作った『身体を性転換させる薬』『精神を性転換させる薬』そして今回調合したのが…
「『魂を性転換させる薬』…! これと以前作った二つの薬と一緒に摂取しよう」
効果が切れる時間は全て同じタイミングになるように調整しておきました
「ごくごくごく…」
…頭がボーっとしてきた。体が熱い。肩が重い。
ああ、意識が遠のく…
………。
……。
…。
「ん…。どうやら成功したみたいですわね…」
私の髪はさらさらに伸び、体つきも柔らかくなっていました。
声も完全に女性のそれで。心も魂も女の子になった気がします。
…え? 胸? その話は禁則事項ですわ
「さて、と。いつまでも男子制服(こんなかっこう)していられませんものね。着替えましょう」
こうして私は女子制服に着替え、校内を徘徊することにしました

138 : ◆jntvk4zYjI :2013/02/20(水) 00:43:33.11 0
魔法学園があるとされるフィジル諸島は、謎に包まれた場所だ。
島の周囲は魔海で危険すぎて船もまともに近寄れない。
空を飛ぼうにも奇怪な暴風や魔法無力帯があったりするので危険だ。
正確な位置は誰にもわからない。
本島への移動は、転移魔法陣を用いて行われているからだ。


学園や商業区が置かれている本島の周囲には、大小さまざまの島が点在している。
それらがどんな場所なのかは、学園生徒も詳しくは知らされていない。
教師の研究島や、問題児への処罰棟、生徒への課題用の島などがある、というのがもっぱらの噂だ。

さて、ルナが放課後を友人達と過ごし、青葉が学園内を徘徊している頃。
彼らも含め、一部の学園関係者の自室には、一通の封書が届いていた。
表現や注意事項には多少の差があれど、内容はだいたい以下のとおりだった。

・明日、別紙の地図に書かれた転移用ゲートの場所まで赴き、集まった者たちと一緒に転移すること。
・行き先の小島では当日、翌日と「清掃活動」に励むこと
・島内の設備は自由に使ってもいいが、食料などは自前で調達すること
・野外活動(サバイバル)の準備は怠らないこと
・「清掃活動」以外の時間は自由にすごしてもよい
・課題をこなせなかったものには、ペナルティが課せられる

139 :リリィ ◆jntvk4zYjI :2013/02/20(水) 00:45:20.33 0
そんな封書を受け取った生徒の一人、リリィは手紙を読み終えた後、同封されていた地図をまじまじと眺めた。
どうやら転移魔方陣がある場所は、商業区を抜けた先にある、古びた灯台にあるらしい。
「あんな何にもないような場所に、転移ゲートなんかあったんだ。知らなかったなー。
 ・・・・・あれ?行き先の地図が入ってない?何で何で?」
落としたかと思ったリリィは、手紙を開けたテーブルや床を一通り探して見たが、地図は見当たらなかった。
彼女はため息をつくと、手紙が入っていた封筒を改めて眺めた。
封蝋には魔法学園で使われる印璽が押されており、便箋も魔法学園の名前が入っている。
いたずらではなさそうだが、行き先の地図がないというのは問題だ。
手違いで同封されなかったのだろうか?

(・・・・・まあ、いいか。明日、集合場所に来た人に見せてもらえば。
 そっかあ、小島で清掃活動か・・・・・え?ってことは、つまり・・・・・・)
「そうよ!本で読んだことあるわ!これって課外授業!いわゆる林間学校ってやつよね?
 清掃活動以外の時間は自由時間、ってことは・・・・・海で遊んだり、かくれんぼしたり、キャンプファイヤーしたりして良いってことよね?
 やったやったー!林間学校だ!何を着ていこうかなっ?!
 もう、こんな急な話じゃなかったら、おやつとか花火とか、いろいろ用意しておいたのに!」
リリィは小躍りしながら部屋の中をくるくる回った後、大喜びで、古びたカバンに荷物を詰め始めた。
「小島なんだから、釣竿と水着は外せないわよね?あと虫よけの薬もっ!」
フィジルの周りは魔海と呼ばれる場所で、とても遊泳可能とは思えないのだが、はしゃいだリリィはすっかり失念しているようだ。
それ以前に、この手紙には、林間学校とは一言も書かれていないのだが・・・・・・。

「うーん、バナナはおやつに入るのかな?おっと、そうだ!食堂のおばちゃんにお弁当作ってもらわなくちゃ!
 ササミちゃん達は一緒に行くのかな?でもでも、もし一緒に参加じゃなかったら、やっぱり残念だよね。
 ここは黙っていたほうがいいのかな」
こうして、リリィの楽しい夜は更けていった。

そして翌日。
灯台の前には、制服に麦わら帽子、そしてサングラス姿のリリィが立っていた。
彼女の足元には大きな鞄と古びた箒。ランチバックと、そしてなぜか、膨らんだ浮き輪と釣竿が置かれている。
「おかしいなあ、待ち合わせ場所はここでいいんだよね?」
古びた灯台の前に立ちながら、リリィは時計を確認した。
「・・・・・・やっぱり、ちょっと早く来すぎたかなぁ?」

【転移ゲートがある灯台前。同行する生徒達を待っている】

140 :エンカ ◆jWBUJ7IJ6Y :2013/02/20(水) 07:52:48.27 0
>139
灯台の前で待っていたリリィの方へ、タンポポ色をした丸っこい塊がトロトロと向かってきた。
それは見方によっては馬車のようにも見えるが、それを引く馬は見えない。
それは四人乗りの自動車であった。
もちろん魔法世界には、普段の足として使うような自動車というものは存在しない。
存在したとしても、それは想像の産物である。
では想像したのは誰か?エンカである。
「よぉ、リリィ!」
運転席の窓が開き、そこからエンカが身を乗り出した。
「見てくれよ、俺が作ったんだぜ〜。
 このあいだのかぼちゃの馬車を参考にしてよぉ、ブリキと木と竹でこしらえたんだ。
 自動で走る馬車だから、さしずめ自動車ってところだな」
車から降りたエンカは、車体の前にあるトランクルームを開けた。
そこにはエンカの荷物が少し入っている。
「なかなかイカした格好してるじゃねぇかリリィ。お前の荷物を乗せるぜ?
 送って行ってやるからよ〜、助手席に乗ってろよなーっ!
 目の前に輪っか(ハンドル)が無い方の席だぜ」
エンカはリリィの返答を聞かずに彼女の荷物をトランクルームに詰め込み始めた。
「楽しみだよな〜林間学校!」
エンカの頭の中もだいたいリリィと同じらしい。

もしもリリィがエンカに言われた通り助手席に座ったなら、
彼女は思いもしなかった人物と再会することになるだろう。
車の後部座席に既に誰かが座っていたのだ。
リリィは後部座席にいるその女子生徒を知っている。
いや、もっと厳密に言えばリリィはその女子生徒のドス黒い執着を知っている。
後部座席に座っていたのはロゼッタだ。
リリィにとってロゼッタと再会するのが喜ばしいことなのかどうかわからないが、
幸いにもロゼッタは後部座席でスヤスヤと寝息をたてていた。

ロゼッタのお尻と座席シートの間に、魔法学園の便箋が挟まっていた。
おそらくリリィが受け取った書類一式と同じものだろう。
もしかしたら、こちらには行き先の地図が入っているかもしれない。
後部座席の窓から外を見るとエンカの姿が見える。
彼は手にクランクを持って、一生懸命に車の後部に取り付けられたエンジンのゼンマイを巻いているところである。

141 :フリードリッヒ ◆cOOmSNbyw6 :2013/02/21(木) 22:45:44.89 0
まるで雪のような白い肌金糸のような美しい髪サファイアのような青い目、そして薔薇のように赤い唇
彼は美しかった、まるで神の作った人形のように
まるでキャラデザイナーが彼の性別設定を勘違いしたかのようだ
だがあくまで彼は男である

「さて林間学校というわけですが・・・・・・・」
と荷物をまとめているフリードリッヒ
『ねえ林間学校に鎧とかフリージングサーベルとか本当に必要なの?』(猫語)
そのまとめられている荷物の中に不審なものを見つけるグレン
「何を言ってるんですか林間学校と言えばキャンプ
 キャンプといえばホッケーマスクを被った殺人鬼ですよ
 念には念を入れ装備を整える必要があります」
彼のキャンプのイメージは随分と偏っているようだ
見た目と違いフリードリッヒはだいぶあれな男の子であった

『ホッケーマスクの殺人鬼ぐらいフィー坊ならワンパンじゃね?』(猫語)
そんな彼にツッコミを入れるのは使い魔の二本足で歩く猫グレン
そもそもそんなのが出るわけがないとさらに突っ込んではいけない
常識と非常識の壁は人が思っているよりも薄いのだ
特にこの魔法のある世界ではなおさらである
どれくらい薄いかというとこの世界が丸でも平面でも無くサイコロのような形をしているかもしれないという
普通なら気が正気か疑われるようなことが本当である可能性があるぐらい薄いのである

「今まで出会ってきた敵対者はだいたい僕よりも強かったですし
 今度もきっとそうに違いありません力が足りないなら装備で補うまでです」
なんというバトル脳
戦闘なしで平穏無事に終わる可能性なんて欠片も考えちゃいない発言
そこに痺れない憧れない
ちなみに鎧は毎度おなじみ悲劇のブレストアーマー
女の子が身につけると胸のサイズがどんどん減っていくという曰く付きな品物である
男であるはずのフリードリッヒが何故着られるのかは永遠の謎である

「その他の装備は・・・・・まあいつもの服と冒険者基本セットぐらいですかね?」
ちなみにいつもの服とは半袖半ズボン
ベタな魔法使いの帽子マントそしてとんがり靴である
『食料はどうするのさ?』(猫語)
「なあにいざとなったら熊でも倒しますよ」
明らかに魔法使いの発言ではない脳筋なことを言い出すフリードリッヒ
ほんとうに大丈夫なのか?
「さあ灯台へ向けて出発です歩いて!!」
『歩きで!?』(猫語)
はたしてリリィ達と無事に合流できるのだろうか?

142 :リリィ ◆jntvk4zYjI :2013/02/21(木) 23:51:14.92 0
だが、本人は全く懲りていないようだ。
「それと、目的地の地図、持ってる?私のには同封されてなかったのよね」
灯台の前でぼうっと待っていると、タンポポ色の丸い物体がこちらに向かってきた。
(何だろあれ、なぞの生き物?いや、乗り物?馬車・・・・・・・じゃないよね、馬がいないし)
困惑しているリリィの目の前に来るころには、それが乗り物だとわかった。
なぜなら、中に見慣れた顔が見えたからだ。
>「よぉ、リリィ!」
「エンカじゃない!ねえ、どうしたの、それ」
>「見てくれよ、俺が作ったんだぜ〜。
> このあいだのかぼちゃの馬車を参考にしてよぉ、ブリキと木と竹でこしらえたんだ。
> 自動で走る馬車だから、さしずめ自動車ってところだな」
「すごーい。これ、ジドウシャっていうんだ!いつの間にこんなの作っってたの?
 馬無しで走る馬車なんて初めて見たわ。エンカってば意外と器用なのね!」
エンカはジドウシャについた前方の扉を開け、リリィの荷物を持ち上げた。
>「なかなかイカした格好してるじゃねぇかリリィ。お前の荷物を乗せるぜ?
> 送って行ってやるからよ〜、助手席に乗ってろよなーっ!
「わーい、ありがと!エンカも髪型ばっちり決まってるわよ?ではお言葉に甘えて!」
リリィは好奇心を抑えられない表情で車に乗り込み、ぐるりと周囲を見渡した。
そして、ふと背後からの気配に気づき、何気なく振り向き・・・・・・。
「ひいっ?!」
反射的に飛び上がった彼女は、天井にしたたか頭を打ち付けた。
ゴン!と、ジドウシャ全体も彼女の動きにあわせて揺れる。
「ロ、ロゼッタちゃん・・・・・じゃなかった、ロゼッタ先輩?!何でここに!!
 わ、私はただジドウシャに乗っけてもらっただけで、何も悪いことは・・・・・・あ、あれ?」
リリィは焦った様子で矢継ぎ早に言い訳を始めたが、帰ってきたのは規則正しい寝息だった。
「寝てる・・・・・のかな?」
そのまま息を殺してロゼッタの様子を伺っていたが、今のところ目を覚ます様子はない。
(あ、お尻に敷いてる封筒、私のと同じじゃない?)
行き先の地図が書いてあるかも、と、好奇心に引かれリリィはいったん身を乗り出しかける。
だが幸いなことに、今ロゼッタが目を覚ました時の惨事に思い至り、軽率な行動を止めることができた。
目的地の情報は欲しいが、そのせいで五体をバラされてしまうのでは、あまりに割があわない。

とりあえず助手席に小さくなって座っていたリリィだが、彼女の脳裏には、たくさんの疑問が渦巻いていた。
なぜここにロゼッタがいるのか?なぜ、あれほど拗れたロゼッタを、エンカはジドウシャに乗せたのか?
ロゼッタが生み出した悪魔をエンカが使っていることと何か関係があるのか?
なぜ、ロゼッタの荷物(車椅子)が荷物置きに見当たらなかったのか?
そしてなぜ、エンカの左手がロゼッタに奪われずに使えているのか?
(何か協定でも結んだのかな?)

だが、一人で悶々とそんなことを考えても埒が明かない。
リリィは早々に謎解きをあきらめ、本人の口から直接答えを聴くことにした。
彼女はそうっと助手席から降りると、ぜんまいを巻いているエンカに「何か手伝おうか?」と声をかける。
助手席から降りた場所で直立不動なのは、ロゼッタから変に勘ぐられるのを防ぐためである。
「ロゼッタ先輩とは仲直り出来たの?その・・・・・・違ってたらごめんね、
 その・・・・・・・エンカとロゼッタ先輩は、結婚を前提としたお付き合いをされてるのでしょうか?」
エンカの反応を見たリリィは、慌てて手を左右に振った。
「や、ごめん。だってジドウシャにロゼッタ先輩の車椅子乗ってなかったし!
 てっきりエンカがお姫様抱っこして、移動の「足」になってあげるのかなぁ・・・と思っちゃって」
あはは、ごめーんとリリィは頭をかいた。
「秘密なら仕方ないけど、話せるだけの事情でいいから、教えてくれない?
 何でここにロゼッタちゃんが?
 エンカは男だから、行けない場所だってあるでしょ?そういう時、手伝ってあげたいし」
リリィは、ロゼッタにはあまり好かれていない(最悪、興味すら持たれてないかもしれない)のだが、まだ懲りていないようだ。

143 :エンカ ◆jWBUJ7IJ6Y :2013/02/22(金) 21:04:30.55 0
>142
> 「何か手伝おうか?」
エンカは助手席から降りたリリィを見た。
「いや、大丈夫だ」
エンカの表情が少し硬くなった。
やはり何も言わずにリリィとロゼッタを会わせたのはまずかっただろうか?
そう思ったからだ。
> 「ロゼッタ先輩とは仲直り出来たの?その・・・・・・違ってたらごめんね、
>  その・・・・・・・エンカとロゼッタ先輩は、結婚を前提としたお付き合いをされてるのでしょうか?」
「じょ、冗談じゃねーよ!?いきなり何言い出すんだよリリィはよーっ!?」
エンカはリリィに質問攻めされるとは予想していたが、あまりにも予想と違った質問に狼狽した。
> 「や、ごめん。だってジドウシャにロゼッタ先輩の車椅子乗ってなかったし!
>  てっきりエンカがお姫様抱っこして、移動の「足」になってあげるのかなぁ・・・と思っちゃって」
> あはは、ごめーんとリリィは頭をかいた。
> 「秘密なら仕方ないけど、話せるだけの事情でいいから、教えてくれない?
>  何でここにロゼッタちゃんが?
>  エンカは男だから、行けない場所だってあるでしょ?そういう時、手伝ってあげたいし」
「…車椅子は必要ねぇよ。もうロゼッタは自分の足で歩けるようになったからな」
エンカにはどういう理屈かわからなかったが、
とにかくロゼッタが魔法を強化した代償として歩けなくなっていた件が無かったことになり、
悪魔は呼び出せなくなったが自分の足で歩けるようになった事をかいつまんで話した。
ではその悪魔はどうなるのか?エンカはリリィが質問するより早く自分から話した。
「そうだぜ、リリィ。お前の思っている通りだよ。
 ロゼッタが生み出した悪魔、キラー・チューンは、今は俺と共にいる」
エンカはその事実がリリィにプレッシャーを与えると承知していたのですぐに話題を変えた。
「そうそう!なんでもよぉ、ロゼッタの空間切断魔法は距離が離れすぎると
 切断した箇所が本当にちぎれてしまうらしいんだぜ〜。
 だからあそこに見える転移ゲートをくぐる必要がある間は俺の左手は安全ってわけだ。
 ロゼッタだって、俺の左手が損なわれることは望んでねぇからなーっ」
エンカはそう言って自動車の前方にある転移ゲートを指さした。

> 「それと、目的地の地図、持ってる?私のには同封されてなかったのよね」
「便箋を開封した時に机の裏にでも落としたんじゃねぇか〜?ほらよ」
エンカはリリィに目的地の地図を渡した。
「俺達がこらから行くのは○○○○○だ」
残念なことにエンカの中の人はネタを考えすぎて力尽きてしまった!
画面の前のみんな!○の中に好きな場所を入れてみてくれ!

144 :アムリーテ ◆apJGY8Xmsg :2013/02/23(土) 13:03:16.80 0
とある小さな島。砂浜を歩いている少女がひとり。
背中に大きなカゴを背負い、ゴミ拾いをしている少女の名前はアムリーテ。
ゴミだらけの海岸のゴミをトングで拾い上げてはポイポイと背中のカゴに放り込んでゆく。

「このゴミたち。どこからくるですか?」
いつも不思議に思っている。それに霧の晴れたとき、沖に見える○○○○○。
あの不思議な○○○○○はいつも見えるわけではなかった。時々沖に見えた。
なんとなくだけど、これは勘だけど、あそこからゴミがくるのかもしれない。
そして行方不明になってしまったあの人があの○○○○○にいるかもしれないと思う。
だからアムリーテは手紙を書いて風船につけて飛ばす。

カエッテ・コイとか。
だがそれだけでもなく、他にも手紙の内容は様々。
コドモ・ミタイとか色々。

なぜアムリーテが子どもをみたいかと言うと
彼女は子どもというものは可愛い生き物と教えられたからだ。
そう、行方不明になってしまったセンセイに。

それに遠くに、ざわめきのように子どもたちの気配を感じるのも事実で
その子どもたちの気配は集まったりバラバラになったり消えてしまったりしているのを感じている。
だからアムリーテは、どこかに不思議な場所があるのだといつも想像している。
なにかよくわからないものがどこかにあると。

145 :パピスヘテプ ◆/TZT/04/K6 :2013/02/24(日) 00:04:19.46 0
絢爛豪華。
その椅子を一言で形容するならばこれ以外の言葉は出まい。
煌びやかな装飾を施され、背もたれには神話のレリーフが彫られている。
意匠を凝らした各パーツは目を見張るものがあるのだが、椅子そのもののインパクトが強すぎてそれに目をつけられるものは少ないだろう。
そう、その椅子は総黄金作りなのだ。

これほど豪華な椅子ではあるが、部屋の主が座ることなく、代わりに骸骨を模したカンテラが怪しく紫の炎を揺蕩わせている。
しかもあろうことか、部屋の角に置かれ、椅子ではなくカンテラ置きとして使われているのだ。
贅を凝らした椅子だがそれゆえに、背もたれは直角で、黄金の硬さは座るのには適してはいない。
本来の意義を見失い家具から装飾品へと堕落してしまったのだ。

さて、その椅子の主はというと、巨大なビーズクッションに身を沈め、大理石のローテーブルに置かれた手紙を長い手を伸ばして摘まみ上げていた。
この部屋の主、パピスヘテプである。
慣れない人間にとっては少し気になってしまうアロマの臭いが充満する室内で、空気はゆっくりと動く。
影獣でもあるケロべロスの毛皮のコートをまとい、グラスを傾けながらその内容に目を通す。

・転移用ゲートまで赴き、集まったものと一緒に転移。
・島内の設備の利用可能だが、食料は自前調達
・サバイバルの準備を怠らない
・清掃活動をすること
・課題を熟せなければペナルティを課せられる

「はんっ!外周の小島で清掃活動?回りくどいったら……」
パピスヘテプは鼻で笑いながら紙を弾き飛ばして立ち上がる。
分類としては新入生である。
フィジル魔法学園で過ごした時間が長いというわけではないが、それでも今までの経験では、この類のものが額面通りであったためしがない。
食料を自前で調達しなければならず、サバイバルの準備が必要であると予告されているのだ。
清掃活動などと書いてあるが、抽象的な表現と見なければならないだろう。
そう、これはただの林間学校などではないはずだ。
「だから……だからこそ!冒険の匂いがプンプンとするわね!」
パピスヘテプは目を輝かせて誰もいない室内で声をかけた。

いや、誰もいないわけではない。
いるのだ。見えはしなくとも。
パピスヘテプには少女の霊が憑りついている。
墓守の一族の出であり、死霊科に籍を置き、対アンデッドの心得のあるパピスヘテプではあるが、極力除霊ではなく昇天させたいと思っている。
学園生活や冒険活劇に憧れ短い生涯を終えた少女の霊の残念、心残りを全うさせることで昇天させるつもりなのだ。
故に、今回のような学園でのイベントは慰霊行為に値する。
もっともそれだけでなく、墓守という役割上静寂を貴んできた反動で、パピスヘテプ自身も好奇心旺盛で冒険が大好きなのだから。

「さて、食料は自力調達、とはいえ念の為用意は必要よねー。肉の壺に酒の壺に……」
パピスヘテプの部屋の基本的な収納は壺である。
体質上大量の食糧が必要なので部屋に大量に常備してあるのだが、それを次々に壺ごと自分の影に放り込んでいくのだ。
パピスヘテプは影使いであり、その影は自身の体積と同じだけの収納スペースとなっているのだ。
その他に必要になりそうなものを一通り影に放り込むと

「そうよね、行先が小島というか、海なら身軽じゃないと」
そう応えながら身に着けていたブレスレットやアンクレット、豪勢な首飾りなどを外していく。

パピスヘテプの出身国は南方域でも名高い金の算出国家である。
先ほどの金の椅子だけでなく、装飾品などにはふんだんに金が使われている。
が、比重の重い金を大量に身に着けて海に行くのは自殺行為に等しい。
最小限の装備品と、影に詰め込んだ大量の荷物で身軽に出発するのだ。

146 :パピスヘテプ ◆/TZT/04/K6 :2013/02/24(日) 00:06:50.31 0
幅1メートル、長さは実に10メートルにも及ぶ黒い板が森を走る。
いや、板ではない。
キャリーロプレウラという巨大なヤスデなのである。
板を思わせるその形状と地上10センチを無数の足で安定した速度で走るこの巨大昆虫は虫使い達によって荷物の配送手段として使われている。

このキャリーロプレウラも学園食堂に食材を搬入した帰りで、商業区に戻るところなのだ。
無数の足が忙しく駆け回り、一人の少年を抜かしていく。
その長い身体が完全に抜き去った時、その最後尾に黒いモノが起き上がった。
「あ、フリード君?おーい!」
黒いものは毛皮のコートをまとったパピスヘテプである。
フリードに声をかけ手を振り、先頭にいる虫使いに声をかけると、キャリーロプレウラが止まる。

「フリード君、その荷物からすると、林間学校なんでしょ?私もなの。
丁度学食に来ていた搬入の人が帰りついでに灯台のゲートまで乗せてってくれるっていうから、一緒に乗っていきなよ!」
いいタイミングで旅は道連れ、と言わんばかりにフリードの手を引くパピスヘテプ。

フリードが同行すればキャリーロプレウラの上でパピスヘテプはグレンにニボシを与えようとするだろう。
猫に対する羨望と妬みが微妙なぎこちなさを生み出すが、結局のところ猫に憧れてしまっているのだ。

その後、灯台までに同じく林間学校に行くような生徒を見かければ声をかけて同行を申し込むだろう。
そして灯台で待つリリィやエンカ、ロゼッタの前に巨大なヤスデが出現することになるのだ。


【パピスヘテプ登場!林間学校から冒険の臭いをかぎ取りウキウキ】
【空を飛べないので定期便に便乗で灯台に向かう】
【途中でフリード君を見つけて同乗を促す。他にもいたら誘っちゃうよ】

147 :???:2013/02/24(日) 16:22:17.23 0
その時、同時刻に校門を潜る者がいた。
【ここか・・・】
男の名はジャック・グスタフ。
性別は男、上級雷撃呪文の使い手。
瞳は淡いターコイズ・ブルーで、
近寄り難い雰囲気を発している。
【俺より強い奴はここにいるのか・・・?】
男はそう言い、森へと足を運ぶ。
【少し威嚇してやるとするか】

バリバリバリバリバリバリバリバリバリ!!!!!!!!

男は、身体から森中に見えるほどの大雷撃を放った。
森にいた者達は、全員振り向く。
【さて、どんなカモが釣れるかな・・・?】

148 :フリードリッヒ ◆cOOmSNbyw6 :2013/02/25(月) 08:44:51.68 P
>146
ダカダカダカダカ・・・・・・・・

妙な足音を立てながら高速で移動するフリードリッヒ
『ねえその上半身を一切動かさずに足だけ高速で動かす走り方やめようよ
 絶対そんなのおかしいよ』(猫語)
そのフリードリッヒの頭の上に乗っかりながら突っ込みを入れるグレン
「いいじゃないですか早いんだから」
いわゆる素敵走りである
この走法をマスターすれば一説によれば通勤通学における
ありとあらゆる乗り物が一切不要になるとされている

それを追い抜いていく巨大なヤスデ
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・・
やはり見様見真似ではこの走り方は無理だったらしい

>「あ、フリード君?おーい!」
「あれパピスヘテプさん」
『フィー坊よく名前を噛まないで呼べたね』(猫語)

どうやら彼女はフリードに同行を求めるようだ
「それは助かりますねさすがに走るのは疲れましたし」
『一切呼吸を乱してなかったのに疲れたの!?』(猫語)

グレンにニボシを与えようとするパピスヘテプ
ニャーニャーと普通の猫のように反応するグレン
「まるでグレンが普通の猫のように煮干しに反応を!?」
いや待て普段から食べ物に対してはこんな反応だろう

149 :フリードリッヒ ◆cOOmSNbyw6 :2013/02/25(月) 08:49:30.81 P
>142-143
『そんなことよりあれリリィお姉ちゃんじゃね?』(猫語)
煮干しを齧りながらリリィを見つけるグレン
「それにあれはエンカさんに・・・・・・ロゼッタさん!?」
意外なメンツに驚くフリードリッヒ
『乗ってる妙なものはどうでもいいの?』(猫語)
「もしかしたらもう驚くという感覚がマヒしてるのかもしれませんが 
 少なくとも姉さんの使い魔グレムリンのギズモが見たら嬉々として分解したがるに違いありません」
グレムリンは機械を見ると構造を知りたがって分解しようとするが
元通り組み立てることはできない厄介な存在である
本人曰く機械族の絶対殺害者でありマスケット銃からイデ○ンまで分解できない機械はないそうな
『イ○オンってなんだろう?』(猫語)
「さあそんなこと知りませんよ」
少なくともジドウシャにギズモを近づけてはいけないことは確かである

>147
>バリバリバリバリバリバリバリバリバリ!!!!!!!! 
「なんだか危険そうな人がいますよ・・・・アドラスさんよりは弱そうですが
 まあ見なかったことにしましょう」
『フィー坊はアドラスを過大評価しすぎだと思うよ』(猫語)

はたして彼はいったい何者なのだろうか?

150 :テオボルト ◆e2mxb8LNqk :2013/02/25(月) 17:42:43.20 0
「うん……? 雷撃、か」
随分と遠くで空気を引き裂く電撃の音に、白髪の男が振り向く。
マントのフードを目深に被り、太陽から身を隠すようにして彼は森を歩いていた。
上下問わず長袖、両手には薄い手袋、携えられた古い鞄、口元にはスカーフ。
一切の肌の露出を許さないその格好は、一目で怪しい人物であると指差されることだろう。
場所がいくら変人の巣窟・フィジル島であるとはいえだ。

「ふむ。同じ雷の魔法を使う学生としてはどんな人物が放った物か気になるところではあるけども……。
 『清掃活動』に赴かなければならないしな。ううむ、至極残念。思うようにいかないのが学生の難点だよ」
怪しい服装をした彼、テオボルト・ジェナスは首をもたげた好奇心を押し込める。
気になった雷撃の出所を探るのをすっぱり諦め、道程を進むことにした。

本日はフィジル本島から離れ、ある小島にて課外授業を行う。
一部の学生が行うモノであるが、ご多分に漏れずテオボルトもその命を承った生徒である。
そんな彼だが、どういう訳だか日光に弱い。肌を晒せば、光の弱い冬ですら1時間足らずで真っ赤となる。
日の光の強い海など言語道断。しかしペナルティはコワイ。
というわけで、苦肉の策がこの怪しげな格好だ。これなら日の下でも長時間活動できよう。

雷撃から程なくして、テオボルトは海岸沿いに出る。
森と浜の間の草地に一度出て、辺りを見渡してみると、右を向いたときに灯台が視界に入った。
このまま海岸に沿って向かえば、無事に灯台に着けそうである。
「よし。スタート地点に並ぶことは出来そうだな。課題に手を付けられない、なんてことは避けられる。
 しかし、何故学園内にゲートを設置しないんだか。そう遠くないとはいえ、わざわざ距離を置くなんて面倒な……」
ぶつくさと文句を言いながら灯台へ足を運ぶ。
無事に到着すれば、丁度リリィにエンカ、フリードやパピスヘテプと出会えそうだ。
まず怪しい人物だと指差されそうだが。

151 :パピスヘテプ ◆/TZT/04/K6 :2013/02/25(月) 21:51:22.22 0
「そうよねー。うちの地方の名前はこちらの方では呼びにくいっていうのに」
噛まないであっさりと自分の名前を口にしたフリードに感心するパピスヘテプ。
もちろんかわいいもの大好きで、猫には大好き以上に複雑な気持ちを持つ関係上、猫の言葉もマスターしている。

感心しながらも、あえてここははっきりさせるべきと言葉を続ける。
「噛まないで呼べたのは凄いし嬉しいけど、パピちゃんと呼んでねっていったでしょう?
パピちゃん、ね!ちゃん。……その方が呼びやすいでしょ?」
これで何度目になるかはわからないが、それでも繰り返すのだ。
自分の事をパピちゃんというように、と。
自分が可愛い存在とはかけ離れているのは自覚している。
だがそれでも呼び名くらいはかわいくちゃん付けにしてもらいたいと願うのは乙女心なのだ。
最後に「呼びやすいから」と言い訳じみた理由を付け加えたことも含めて。

もっとも相手がそこらの美少女くらいなら裸足で逃げ出しそうな美少年と猫である。
フリードが女ならばまだ諦め(?)もつきそうなものなのだが、どうしても男なのだ。
妬みと僻みと羨望と、あらゆるものを内包しながらパピスヘテプは軽く悶絶してしまう。
複雑な気持ちは猫であるグレンに対しても同じで、ニボシを与えながらも撫でることもできず微妙な距離を取ってしまうのだった。


さて、しばらく進むと目的の灯台まで到着。
虫使いのおじさんにお礼を言い、その地に降り立つのだった。
「リリィ、エンカ。ラグーン島林間学校のメンバーはあなたたちなのね。って、なにこれ?」
初めて見るジドウシャを覗き込みながら訪ねるのだが、小さな悲鳴と共にパピスヘテプの頭が仰け反った。
その訳は、後ろの席で吐息を立てる一人の女生徒の存在である。
「ちょちょちょ、リリィ、後ろの人ってロゼッタっていう先輩じゃないの?なんかすごい噂は聞いているけど……?」

直接面識があるわけではないが、悪評高いロゼッタの事は耳にしていた。
リリィに耳打ちするように小さな声で確認しようというのだ。
が、その時森の方から大きな雷鳴。
森から天に駆け上るその稲妻に思わず振り向くのだった。
「うーん、なんだろ?森の方だけど」
気にはなるがこれから森に戻るわけにもいかず、それ以上深く考えることもなかった。

それよりも、新たに灯台に来た人物に注意が注がれたからだ。
「あ、えーと、あんたもラグーン島林間学校のメンバー?
あたしはパピスヘテプ。パピちゃんと呼んでね。
あんたは?とりあえず名前と顔くらい見せてほしいんだけど」
お決まりの挨拶と自己紹介をし、新たなる来訪者テオボルトに自己紹介を促した。

152 :リリィ ◆jntvk4zYjI :2013/02/26(火) 01:34:53.20 0
>「そうだぜ、リリィ。お前の思っている通りだよ。
 ロゼッタが生み出した悪魔、キラー・チューンは、今は俺と共にいる」
「・・・・・・・・・・。」
リリィは黙っていたが、その顔には「何なに?それ、どういう事?」と、でかでかと書かれていた。
多少なりともロゼッタとキラー・チューンの関係を知っていれば、驚かない方がおかしいくらいだ。
それを察したのか、エンカはすぐに話題を変えた。

>「そうそう!なんでもよぉ、ロゼッタの空間切断魔法は距離が離れすぎると
> 切断した箇所が本当にちぎれてしまうらしいんだぜ〜。
ひえええ、とリリィは顔をしかめた。
> だからあそこに見える転移ゲートをくぐる必要がある間は俺の左手は安全ってわけだ。
> ロゼッタだって、俺の左手が損なわれることは望んでねぇからなーっ」
それはつまり、転移ゲートをくぐった先では危ないということだ。
「・・・・・・ロゼッタちゃんには、なんかうまい事言って自重してもらわなきゃだね。
掃除の時に片手だと不自由だろうし」

> 「それと、目的地の地図、持ってる?私のには同封されてなかったのよね」
>「便箋を開封した時に机の裏にでも落としたんじゃねぇか〜?ほらよ」
「ありがとー」
>「俺達がこらから行くのは○○○○○だ」
「異国の古い言葉みたいだね。なんだっけ、Raccon Island・・・・・ラク・・・・・えと、ラグーン島?
 ラグーンってことは、古い言葉で珊瑚の島のことだよね?海はきれいなのかな?
 海岸線は、崖と砂浜が半々だね。丘の上にあるのは、古い洋館みたい。
 この地図にある、砂浜を掃除しろってのが今回の課題でいいのかな?」

リリィはいくつか勘違いをしているようだ。
だが、本人がそれに気づくとしたら、もっとずっと後の事になるだろう。

遠目では黒いじゅうたんのようにの見える巨大ヤスデ。
その上に載った友人達に気づき、リリィは両手で「おーいおーい、皆、ここだよー!」と手を振った。
見える範囲でだが、ヤスデには、パピスヘテプの他にフリード、グレンが同乗しているようだ。

>「リリィ、エンカ。ラグーン島林間学校のメンバーはあなたたちなのね」
「そうだよー。ハピちゃん、フリード君にグレン、今回一緒になれてうれしいよー。
、今日はずいぶんと軽装なんだね。
 まあ、海で金のアクセサリーなくしたら大変だもんね。
 フリード君にグレン、こんにちは。 ・・・・・・・グレン、あなた何を食べてるの?」
「って、なにこれ?」

「えっ、何って、エンカが作ったジドウシャっていう乗り物」
「ちょちょちょ、リリィ、後ろの人ってロゼッタっていう先輩じゃないの?なんかすごい噂は聞いているけど……?」
あー、とリリィは天を仰いだ。
ロゼッタと言えば、男性の左手フェチで有名な、いわゆる電波系の先輩だ。
「あー、まあ、そうだけど。まあロゼッタ先輩は彼の担当だから」
そう言ってリリィは、エンカを指差した。
もっとも、正確には、エンカ(の左腕)担当なのだが。

その時、森の方から大きな雷光。 直後、無数の鳥が飛び立っていった。
>「うーん、なんだろ?森の方だけど」
>バリバリバリバリバリバリバリバリバリ!!!!!!!! 
三拍遅れて音が追いついてきた。
「何だろうね?雷魔法が得意な誰かが、魔法実験に失敗したのかな?テオボルト君とか!」
ちなみに、灯台は学園や森とは全く別方向である。
いくら好奇心がうずいても、今から転移ゲートを潜り移動するリリィ達には、確認するすべが無かった。

153 :リリィ ◆jntvk4zYjI :2013/02/26(火) 01:36:38.39 0
「ちょっと皆、変な人がこっちに来るよ!!エンカにフリード君、出番よ!」
リリィは箒を握り締めると、そそくさとパピスヘテプの背後に隠れる。
「だってだって、あんな見るからに怪しい格好の人だよ?怖くて声なんてかけられないもん!!」
リリィにしは珍しく、服装だけで変な偏見を持っているようだ。

>「あ、えーと、あんたもラグーン島林間学校のメンバー?
>あたしはパピスヘテプ。パピちゃんと呼んでね。
>あんたは?とりあえず名前と顔くらい見せてほしいんだけど」

リリィは不審者の声を聞いて驚いた。
「テオボルト!テオ君じゃない!元気だった?あれから少しは自分のことわかったの?
 それと、何でそんな怪しい格好でふらふらしてるの?」

ひとしきり自己紹介が終わったころになったら、時計を気にしていたリリィが口を開くだろう。
「じゃあ、そろそろ転移ゲートで移動しよっか。
 エンカ、皆を車に乗せて!・・・・・って、これ4人乗りだったね?」

紆余曲折の末、彼らの転移は何とか無事終了したようだ。

154 :エンカ ◆jWBUJ7IJ6Y :2013/02/26(火) 19:33:06.96 0
>151>152>153
> 「・・・・・・ロゼッタちゃんには、なんかうまい事言って自重してもらわなきゃだね。
> 掃除の時に片手だと不自由だろうし」
「そうだなぁ、首輪でもつけてくくっておくか?」
とエンカは冗談で言った。ロゼッタの空間切断魔法の射程距離は短い。
だからどこかに拘束しておけば安全は確保できるかもしれない。
「もっとも、その首輪を切断されたらどうしようもねーけどな」

「おん?なんか黒いのが近づいてくるぜ?きっと学園を往復しているキャリーロプレウラだな。
 ずっと気になってたんだけどよ〜。あのキャリーロプレウラってオスなのか?それともメスなのか?」
まさかメスなら口説こうと思っているのだろうか?
> その上に載った友人達に気づき、リリィは両手で「おーいおーい、皆、ここだよー!」と手を振った。
「おー!パピちゃんとフリードじゃねぇか!」
> 「リリィ、エンカ。ラグーン島林間学校のメンバーはあなたたちなのね。って、なにこれ?」
「すげーだろ?俺が作ったんだぜ!自動で走る馬車だから、自動車って名前だ!
 動力はゼンマイ仕掛け!四人乗りだぜ〜」
その時、小さな悲鳴と共にパピスヘテプの頭が仰け反った。
どうやら後部座席のロゼッタに気づいたようだ。
無理もない反応だとエンカは思った。その理由を嫌というほど経験しているエンカなのだから。
> 「ちょちょちょ、リリィ、後ろの人ってロゼッタっていう先輩じゃないの?なんかすごい噂は聞いているけど……?」
> 「あー、まあ、そうだけど。まあロゼッタ先輩は彼の担当だから」
> そう言ってリリィは、エンカを指差した。
「俺ぇ!?」
エンカも自分を指さしてすっとんきょうな声をあげた。
「おいおいおいおい冗談じゃねーぜ、リリィ!人を猛獣使いみたく言ってんなよなーっ!」

> 「うーん、なんだろ?森の方だけど」
突然森の方から聞こえてきた大きな雷鳴に一同が振り返った。
> 「何だろうね?雷魔法が得意な誰かが、魔法実験に失敗したのかな?テオボルト君とか!」
「いや、あいつはそんなに間抜けじゃあねーと思うぜ?どうせ誰か決闘の真似ごとでもしてるんだろうよ。
 くだらねぇぜ!そんなことより、俺達は思いっきり林間学校を楽しまねぇとなーっ!」
その時、車内の後部座席で寝ていたロゼッタが大きな雷鳴のせいで目を覚ました。
彼女はまぶたを開き、目だけを動かして状況を確認すると、再びまぶたを閉じて静かになった。
まるでずっと眠っているかのように、だ。

155 :エンカ ◆jWBUJ7IJ6Y :2013/02/26(火) 19:36:01.82 0
> 「ちょっと皆、変な人がこっちに来るよ!!エンカにフリード君、出番よ!」
> リリィは箒を握り締めると、そそくさとパピスヘテプの背後に隠れる。
「おいおい、リリィ!?確かにあんまり見ない格好だけどよ〜!
 ここに来たってことは俺達と同じ学園の生徒じゃあねーのか〜!?
 あとフリードをけしかけるのは危険だからやめたげろよぉ!」
案の定、そこに現れたのは学園の生徒だった。
しかもエンカもリリィもフリードも彼を知っていた。テオボルトだ。
「おいおい、太陽が苦手だって〜!?こいつは先が思いやられるぜ。
 言ったはずだぜ?この学園の生徒はタフじゃなきゃあ務まらねぇってよ〜」
エンカはまたしてもテオボルトに先輩風を吹かせた。

「さぁて、もうそろそろ予定の時間なんだけどな。
 とりあえず、今集まっている俺達だけで先に行こうぜ?他に来る予定の奴らもきっと後から来るだろうしよぉ」
今回のイベント中は、ラグーン島からフィジル島までの移動は勝手にできないが、
フィジル島からラグーン島までの移動は転移ゲートでいつでもできるようになっている。
他の生徒や教師もすぐに後からやって来れるだろう。
> 「じゃあ、そろそろ転移ゲートで移動しよっか。
>  エンカ、皆を車に乗せて!・・・・・って、これ4人乗りだったね?」
「そうだぜ。だからよぉ、男共は自分の足で歩いて行けよなーっ!」
エンカはうやうやしく助手席のドアを開けた。
「さぁさぁ、こっちに乗りなよパピちゃん。荷物あるの?いいよ、いいよ、俺が車に積むからよ〜」
そしてエンカはリリィに言った。
「あ、じゃあリリィは後部座席に乗ってくれよ。ロゼッタの隣な。
 大丈夫、大丈夫。ほら、まだロゼッタ寝てるみてぇだし」
さっきまで助手席にリリィを乗せる予定だったのだから、あんまりと言えばあんまりの仕打ちであるが、
見ず知らずのパピスヘテプより顔見知りのリリィの方が、
目を覚ましたロゼッタにバラバラにされる可能性が低いと考えた上での選択である。
もっとも、パピスヘテプとお近づきになりたいと考えているエンカの都合があってのこともあるが。
「それじゃあ安全運転でよ〜、ラグーン島へ出発だぜ!」

転移ゲートを抜けた先は砂浜だった。
フィジル島周辺の海とは違い、ラグーン島の海は穏やかな表情を見せ、
遠くにポツンポツンと小さな島がいくつか点在するのが見える。
「ボートがあれば向こうの島にも行けるかもな〜」
エンカは車を運転し、砂浜を何度か往復してみた。
「見たところそんなにゴミが散らかっているようには見えねぇな。
 なぁ、先にあの洋館に行って荷物を降ろさねぇか?
 島の中の施設は自由に使ってもいいって話なんだからよぉ」
エンカは丘の上にある洋館を指さした。
砂浜から林を抜けて、途中にある大きな湖を迂回すれば洋館に到着するはずである。

156 :アムリーテ ◇apJGY8Xmsg:2013/02/27(水) 22:32:21.23 0
遠く、はるか遠くに大気の鳴動を感じたアムリーテ。
どこかに雷が落ちたのだろうか。少し嫌な予感がする。

(雷、きらい。雨も、きらい)
アムリーテは雷が苦手だった。なぜなら雷は、アムリーテを目掛けてよく落ちてくるからだ。
センセイの言うことには頭の飾りがピカピカしているから雷を引き付けるのだという。
雷を受けた時の衝撃をアムリーテは忘れない。頭が真っ白になって心がなくなってしまう感じ。
あんな体験はもうまっぴらだった。 だから、ゴミ拾いをやめて遠くを見つめる。
でも雨雲らしきものがアムリーテの小島に近づいているようすもなかったので
アムリーテはほっと胸を撫で下ろしゴミ拾いを続けようとした。
そのときだった。

ラクーン島に複数の気配を感じた。子どもレーダーが何かに反応しているのだ。
それも瞬間的に現れた。

(こども。こどもの気配ですか?これは?)
そわそわしながら海岸を駆ける。砂に足をとられて何度か転びそうになったけど何とか進む。
そしてアムリーテはその目を疑った。
霧が晴れると、目と鼻の先にラクーン島があったからだ。

(島が、動いたです!)
目をぱちくり。その後、凄まじい衝撃が地から襲い掛かってくる。
それは地震のようなものでアムリーテはその場に尻餅。
実際問題、ラクーン島が動いたのかアムリーテの小島が動いたのかは定かではなかった。
が、眼下の海原には、激突の衝撃で隆起した岩盤が、その濡れた地肌を水面に露出させている。
アムリーテはそれを目掛けて跳躍。というか落下。
高鳴る気持ちをおさえつつ、島をがきゅんがきゅんと駆け続けるのであった。

157 :テオボルト ◆e2mxb8LNqk :2013/03/01(金) 18:27:13.41 0
>151>153>155>156
灯台に到着すると、毛皮のコートの女生徒が真っ先に話しかけてきた。
>「あ、えーと、あんたもラグーン島林間学校のメンバー?
>あたしはパピスヘテプ。パピちゃんと呼んでね。
>あんたは?とりあえず名前と顔くらい見せてほしいんだけど」
「む、君も同件か。事情があるとはいえ、顔も見せないのは失礼か」
口元のスカーフを引き下げ、フードを僅かに上げる。
「私はテオボルト・ジェナスだ。ま、呼びにくければテオで構わない。今後ともよろしく、パピさん」

その声に反応したのがリリィだった。
驚いた様子でパピスヘテプの後ろから出てくる。
>「テオボルト!テオ君じゃない!元気だった?あれから少しは自分のことわかったの?
> それと、何でそんな怪しい格好でふらふらしてるの?」
テオボルトは手袋をはめた手を軽く上げて挨拶をする。
「おや、久しく。ここしばらくで捗ったのは学業くらいだな。自分探しは気長に行ってるよ。
 この格好は、その、なんだ。太陽の光がどうにも苦手でね……日焼けしやすい体質なのさ」
>「おいおい、太陽が苦手だって〜!?こいつは先が思いやられるぜ。
> 言ったはずだぜ?この学園の生徒はタフじゃなきゃあ務まらねぇってよ〜」
「フ、仕方ないだろう? 流石に体質まではタフではない。というか、なれん」
エンカの言葉に、軽く笑って肩をすくめた。

そうやって話している内に、そろそろ時間が差し迫ってきているらしい。
> 「じゃあ、そろそろ転移ゲートで移動しよっか。
>  エンカ、皆を車に乗せて!・・・・・って、これ4人乗りだったね?」
>「そうだぜ。だからよぉ、男共は自分の足で歩いて行けよなーっ!」
エンカの車は乗れないらしい。初めから期待はしてないが、少々あんまりだと思わないでもない。
3人が乗り込んだ車は、テオボルトとフリードを先に行ってしまった。
「……だ、そうだな。フリード、私達も行くとしよう」
再びフードを下げて、太陽を見ないように歩き出す。


転移ゲートを抜けると、島の砂浜へと出たようだった。
海の模様はフィジル島とは随分と違っているらしく、押し寄せる波すら穏やかである。
「ふむ、清掃活動などと書いてあったが……流木やら何やらはあるものの、中々綺麗なものじゃないか?」
日光は苦手だが、穏やかな波は少し見ていたい気もする。
少し思案すると、砂浜を往復していた車に歩み寄り、運転席のエンカに話しかける。
「エンカ、洋館に行くのか? それなら、私のカバンも持っていってくれよ。私は少し……」

テオボルトが言いかけたその時、凄まじい地震、否、衝撃が足元に響き渡る。
やってきた方向を見れば、一つの小さな島がすぐそばにあった。
遠くで何かが落ちていくような動きを見せる。岩か何かかもしれないが、跳躍してるようにも見える。
「……私は少し、アレを見ていよう」
小島を眺めるテオボルトの口元は、驚きで少し引き攣っていた。

158 :名無しになりきれ:2013/03/01(金) 20:42:56.47 0
【だれも釣られん...事情でもあるのか?】
先程雷光を放ったジャックは
誰も来ないと知り、少し嘆息した。
【まあいい.....誰も来ないのなら】
ジャックは、体に力を込める。
【こちらから行くまでよ】
プラズマ・ソナー
【電磁反射探知】
ジャックは、電磁波で他の者を探知した。
【灯台......か。】
【彼処だな.......】
ジャックは、灯台へと足を運んだ。

159 :ジャック・グスタフ:2013/03/01(金) 23:00:00.14 0
灯台に着いたジャック。そこには、
転移ゲートがあったが、彼にはそれが
何なのか解らない。
【何だこの光るタイルは.....調べて......
!?ぐっ.....!!】
ジャックは、転送されてしまった。そこは......リリィ達とは少し離れた海岸だった。
【ここは何処だ?】
ジャックは、周りを調べる。すると、
さっきまで居たと思われる島があった。
【どうやらあのタイル、乗った者を転送
する事が出来る様だな】
【ここに来た時も同じ様なので来た様な
気がするな。】
【まずは人を探さなければ.....】
ジャックは、リリィのいる方へと
歩いていった。

160 :アムリーテ ◇apJGY8Xmsgの代理投稿:2013/03/01(金) 23:11:43.90 0
青い空と海を背にして駆けてくる少女。
波の音に微かに混じる地響き。
秒を増すことにそれは近づいてくる。

静寂の小島に突如として現れた機械人形、その名はアムリーテ・クラスタ。
彼女は眼前にテオドールを捉えると急停止した。
だがその呼吸は何故か荒い。
間断なく律動を続けている心肺器が超鋼の胸郭を上下させている。

「……はあ」
アムリーテは小さく声を上げると、突如として動きを凍りつかせてしまう。
まるでカラクリ人形の発条(ぜんまい)が切れてしまったかのように。
しかしその直後、再起動。
体の間接部分、隙間という隙間から強い熱風を放射。
そう、体内に混入した砂塵を体外に吐き出しているのだ。

「わたしの名前は、アムリーテ・クラスタ。あなたはこども、ですね?
センセイは、こどもはとてもかわいいものとおっしゃっていました」
清流のように澄んだ声で言って、アムリータはテオボルトのフードに手をかける。
彼女はフードをとってテオボルトが可愛いかどうか確かめるつもりだった。
その顔に悪意はなかった。灰色の瞳に鏡のように映るテオボルトの顔。

161 :リリィ ◆jntvk4zYjI :2013/03/02(土) 09:56:37.03 0
>154-157
不審者の正体は、以前雪の日に出会ったテオボルトだった。
>「おいおい、太陽が苦手だって〜!?こいつは先が思いやられるぜ。
> 言ったはずだぜ?この学園の生徒はタフじゃなきゃあ務まらねぇってよ〜」
>「フ、仕方ないだろう? 流石に体質まではタフではない。というか、なれん」

「いやいや、それ苦手って言うレベルじゃないでしょ!・・・・・・日焼け止めクリームあるけど使う?」
おそらく、そういう問題ではないだろう。

>「さぁさぁ、こっちに乗りなよパピちゃん。荷物あるの?いいよ、いいよ、俺が車に積むからよ〜」
エンカはいそいそとパピスヘテプの世話を焼くのを、ぽつねんと見守る。
(フリードと同じくらい女の子に親切なのに、なぜか紳士には見えないのよね。
 何が原因なんだろ?・・・・・・・・・やっぱり髪型?!)
外見が問題ならば、フリードは紳士でなく完全に美少女だ、その理屈はおかしい。。

>「あ、じゃあリリィは後部座席に乗ってくれよ。ロゼッタの隣な。
「えー!!でもでも、私達を乗せるかもって、あらかじめロゼッタちゃんに話してないんでしょ?」
> 大丈夫、大丈夫。ほら、まだロゼッタ寝てるみてぇだし」
リリィはエンカとロゼッタ、そしてパピスヘテプを見た後、はーっとため息をついた。
このとき考えたことは、エンカと同じにちがいない。
同時にこれが、「太陽が苦手」というテオボルトに、席を譲らなかった理由でもある。
>「それじゃあ安全運転でよ〜、ラグーン島へ出発だぜ!」
「エンカ、鼻の下伸びてる。
 パピちゃん、大丈夫だよ。何かあったときには、エンカと私がを説得するから」
話が通じないかも、という現実は、今は伝えないほうがいいだろう。

リリィは窓を開け、フリード達に声をかけた。
「フリード君にテオ君、悪いわね。グレン、あなただけなら乗れるかもよ。こっちに来る?」

162 :リリィ ◆jntvk4zYjI :2013/03/02(土) 10:00:23.58 0
転移ゲートを抜けた先は砂浜だった。
>「ボートがあれば向こうの島にも行けるかもな〜」
エンカは車を運転し、砂浜を何度か往復してみた。
>「見たところそんなにゴミが散らかっているようには見えねぇな。
> なぁ、先にあの洋館に行って荷物を降ろさねぇか?
> 島の中の施設は自由に使ってもいいって話なんだからよぉ」
「賛成!っていうか、課題はごみ拾いじゃなかったんだね。じゃあ、洋館の掃除だったのかな?」
リリィも窓を開けて身を乗り出した。海の香りと暖まった砂浜の匂いを胸いっぱいに吸い込む。
>「さっさと済ませちゃて、泳ぎにいこうよー。ねえねえ、ハピちゃんは水着持ってきた?」
リリィはすっかりバカンスモードだ。
同じように砂浜を見渡しているテオボルト達に手を振る。
「まずは洋館へ行って、荷物下ろさないかって」
>「エンカ、洋館に行くのか? それなら、私のカバンも持っていってくれよ。私は少し……」
「ちょっと!なにあれ!!」
そう話しているうちに、海全体が大きく盛り上がってきた。
その向こう側に大きな何かが見える。圧倒的質量を持つ何かが接近して来ているのだ!
「何か知らないけどまずいよ!エンカ、早くジドウシャを出して!皆も高い場所に移動して!!」
砂浜の近くには6,7メートルくらいの崖がある。
ジドウシャでは無理だが、フリードならテオボルトの荷物を持って登りきれるはずだ。

ドオン!とすさまじい地響きを立てて島全体が揺れた。どうやら小島らしきものがぶつかったようだ。
地響きがある程度収まった後、リリィが口を開いた。
「皆、うまく逃げられたかな?フリード君がついてるから大丈夫だと思うけど・・・・・様子を見に行く?」
リリィの座っている位置からでは、小島で動く人影は見えていないようだ。

【島海岸→洋館までの道中(林の中)。津波を避けるためにフリード、テオボルトとは別行動に
 小島のアムリーテにはまだ気づいていない。】

163 :青葉 華菜 ◆UeaUYwi1Nw :2013/03/02(土) 11:17:49.53 0
あ、ちなみに勿論下着も女性のもの――ドロワーズに替えてありますわ
「そういえばさっき部屋でこんなものを見つけましたわね…」
読んでみましょう。えーと、何々…
「ふむふむ、林間学校で清掃活動ですか。なるほど…と、なれば持ち物を用意しなくてはなりませんね」
部屋に戻りましょう。当然、向こうで薬の効果が切れたときのために予備の薬は必須ですわ
そしてサバイバルナイフ、薬草を数種類、調合に必要な道具、替えの服、その他諸々用意して…よし
「さて、確か転移用ゲートに集合でしたわね。えーと、別紙の地図は…ここですわね」

164 :パピスヘテプ ◆/TZT/04/K6 :2013/03/03(日) 00:55:14.02 0
灯台にてエンカ、リリィそして車内のロゼッタと合流したパピスヘテプとフリード。
「海でのサバイバルだし、なくせるならまだいいけど重みで溺れたら笑えないでしょ?」
笑顔でリリィに返す言葉。
そこに両者の金に対する価値の違いと、今回のイベントに対する認識の違いが見え隠れしていた。
が、あくまでこの時は見え隠れしているだけであり、その差に気づくのはもう少し先である。

それよりも興味は初めて見たジドウシャとその中で眠りロゼッタに。
彼が担当だからというリリィの言葉に口をとがらすエンカ、そんなやり取りを楽しそうに眺めているところに新たなる生徒。
テオボルトと名乗り挨拶をした後の言葉にパピスヘテプが笑顔で顔を近づけ
「パピちゃん、ね。同級生なのにさん付けなんてくすぐったいわ」と。

顔を近づけテオボルトの顔をまじまじと見つめていた。
>「テオボルト!テオ君じゃない!元気だった?あれから少しは自分のことわかったの?
>「おいおい、太陽が苦手だって〜!?こいつは先が思いやられるぜ。
しばらく顔を見つめていたが、リリィとエンカの言葉に合点がいったように頷き立ち上がる。
「改めて、よろしくね」
そう笑いかけるのだった。


出発の段になり、エンカに自動車に乗るように促されたのだが、二の足を踏むパピスヘテプ。
理由はもちろん後部座席で寝ているロゼッタである。
同じ空間にいるという事すら躊躇してしまうほどだったのだ、ロゼッタの噂というのは。
結局のところ、リリィの言葉と自動車への好奇心が勝り、エンカの隣のへと座る事になるのだった。

>「さぁさぁ、こっちに乗りなよパピちゃん。荷物あるの?いいよ、いいよ、俺が車に積むからよ〜」
「荷物?ああ、全部私の影の中に入れてあるからいいわ。手荷物とかだとなくしたり動きが取れなかったりするじゃない?」
パピスヘテプはこのイベントはバカンスなどではなく、過酷なサバイバルと認識しているのだ。
荷物を抱えるのは制限にしかならないほどの。
ここに至り、徐々に認識の差を感じてきているのだが、元より好奇心旺盛な身である。
初めて乗った自動車に興奮が隠しきれないでいた。
「すごいわエンカ。本当に全部作ったの?外から見るより中は広いのね。
あ、すごい、動いてるのに全然魔力を感じないわ」
すっかり舞い上がり、エンカに尊敬の眼差しすら向けるのであった。



ゲートをくぐり到着した砂浜を車内から眺めるが、特にゴミもなく、綺麗な砂浜でしかない。
林を抜けて湖を迂回すれば洋館に到着する。
>「見たところそんなにゴミが散らかっているようには見えねぇな。
> なぁ、先にあの洋館に行って荷物を降ろさねぇか?
> 島の中の施設は自由に使ってもいいって話なんだからよぉ」
>「さっさと済ませちゃて、泳ぎにいこうよー。ねえねえ、ハピちゃんは水着持ってきた?」
こんな二人の会話にそれまで微かに感じていた違和感がはっきりと感じられパピスヘテプは口を開く。
「ねえ、清掃ってそのまま言葉通りゴミ拾いとかお掃除って思ってる?
この学園に来て色々イベントやったけど、その経験上さっさと済ませられるような簡単な……」

そこまでだった。
突如として盛り上がる海。
悲鳴にも似たリリィの叫び。
そして凄まじい地響きとともに大きく揺れる島。

地響きが収まった後、周囲に何とも言えぬ柔らかな香りが立ち込める。
高まる鼓動を鎮め、穏やかになる香を焚いたのだ。
「う〜ん、まあ、学園のイベントでゆっくりバカンスはないと思ってたけど、流石にこれは想定外だったわ」
小島らしきものがぶつかったのを見て、驚きが隠せないパピスヘテプだが、その口元に笑みが浮かんでしまっているのは冒険への期待から。
それでも落ち着いて判断を下すのは香の効果であろう。

「島に来てまだ何もわかっていないし、まずは安全な拠点確保が先だと思うわ」
その視線の先には洋館が見えていた。

165 :フリードリッヒ ◆cOOmSNbyw6 :2013/03/03(日) 09:34:25.73 P
>「ちょっと皆、変な人がこっちに来るよ!!エンカにフリード君、出番よ!」
「いやぁ僕もなるべく変な人とは関わりたくないんですけど」
だが意外その怪しい人物はテオボルト
>「テオボルト!テオ君じゃない!元気だった?あれから少しは自分のことわかったの?
 それと、何でそんな怪しい格好でふらふらしてるの?」
「そうですねあまりにも怪しすぎますよね」
『これから林海学校に行くのにベタな魔法使いルックなフィー坊も人のことを言えない気がするよ』(猫語)
「格闘ばっかりで剣士でも魔法使いでもないって言われかねないのでせめて服装だけでも魔法使いしておこうと思いまして」

「それにしてもラクーン島ですか・・・・・・なんだかゾンビとか出てきそうな名前ですよね
 グレン、パピちゃんさん一応念のために対アンデッド用の戦闘準備だけはしておいてください
 なあに今回はレイブンさんもいないので味方のアンデットへの被害は考えなくても大丈夫です」
フリードリッヒはテオボルトの正体に全く気が付いていないようである
『そういえば結局今はどっちなのかな?』(猫語)
「性別が変わったり人格が変わったりいろいろ忙しい方ですからねあの人は」
ちなみにグレンはフリードを裏切り車に乗った
「おのぉれぇグレン・ダイザー!!」

「それにしてもあの洋館・・・・やっぱりアンデッドが出そうな予感がしますね」
遠くに見える洋館を見ておかしなことを言いだすフリードリッヒ
そのそもアンデッドなら友達にもいるだろうが

>「そうだぜ。だからよぉ、男共は自分の足で歩いて行けよなーっ!」
どうやらフリードリッヒは自動車に乗れないようである
>「……だ、そうだな。フリード、私達も行くとしよう」
「そうですね親からもらった二本の足で歩いて行きましょうか」

166 :フリードリッヒ ◆cOOmSNbyw6 :2013/03/03(日) 09:35:38.27 P
小島がぶつかり分断されるメンバーたち
そこでフリードたちが出会ったのは機械で出来た少女であった
>「わたしの名前は、アムリーテ・クラスタ。あなたはこども、ですね?
センセイは、こどもはとてもかわいいものとおっしゃっていました」
「機械の御嬢さんですか・・・・・うーん知り合いにも機械の方は一人と一体いますけど
 みんな全然違いますねえ」
そのうち一人はゾンビを生体部品に使っておりもう一体はそもそも人型をしていない
そういう意味では純人型の純機械の少女は初めてである
「機械の御嬢さん油断は禁物ですよ世の中には外見は子供でも実年齢が大人なな方が存在しますから
 主にホビットとかホビットとかたまに悪魔とかです」
ショタ爺とかロリ婆は例外中の例外である
がフィジルはそういった例外ばかり集まった所である
ジルベリア程ではないが非常識が常識な所だ
「おっと申し遅れました僕の名前はフリードリッヒ
 本当の名前はもっとずっと長いんですけど長すぎるから省略させていただきます
 ちなみに僕は人間です小さいからってホビットでもドワーフでもないのでお間違え無く」

167 :エンカ ◆jWBUJ7IJ6Y :2013/03/03(日) 20:00:01.77 0
>157>162>164
> 「賛成!っていうか、課題はごみ拾いじゃなかったんだね。じゃあ、洋館の掃除だったのかな?」
まずは洋館へ行くことに対して異論はないようだ。
> 「さっさと済ませちゃて、泳ぎにいこうよー。ねえねえ、ハピちゃんは水着持ってきた?」
「俺は二人が泳いでるところを見てるだけでいいぜ?」
とエンカ。自慢のヘアスタイルが崩れてしまうので海水浴などもってのほかなのだ。
バカンスモードの二人とは裏腹に、パピスヘテプはシリアスな顔をしている。
> 「ねえ、清掃ってそのまま言葉通りゴミ拾いとかお掃除って思ってる?
> この学園に来て色々イベントやったけど、その経験上さっさと済ませられるような簡単な……」
「まー入学試験でいきなり学園の外にある危険地区に説明無しで放り出すような連中だからなぁ。
 パピちゃんが心配するのもうなずけるぜ。だが、俺達はそれを問題無く片付けて、くつろいでバカンスを楽しむ。
 そういうつもりで行こうぜ〜」

> 「エンカ、洋館に行くのか? それなら、私のカバンも持っていってくれよ。私は少し……」
まぁそれぐらいなら、とエンカがテオボルトのカバンを受け取った時、それは起こった。
> 「ちょっと!なにあれ!!」
リリィが指さす方向から海全体が大きく盛り上がり、迫ってくる。
エンカも一瞥してすぐに事態を把握した。大波だ。
> 「何か知らないけどまずいよ!エンカ、早くジドウシャを出して!皆も高い場所に移動して!!」
「グレン、こいつを持ってろ!それにみんなもしっかり掴まっていろよなーっ!!」
エンカはグレンにテオボルトのカバンを預けると、すぐにギヤを入れて自動車を急発進させた。
> 砂浜の近くには6,7メートルくらいの崖がある。
自動車でそれを直接登ることは無理なので、
エンカは砂浜と崖の境界にあるゴツゴツした坂道を迂回して登らなければいけなかった。
大波はすぐそこまで迫っている。
「このまんまじゃ追いつかれる!奥の手を使うぜ!!」
エンカはハンドルの横にある赤いボタンを押した。
すると自動車の車体後部のハッチが開き、そこから無数のロケット花火がその尻を露出する。
車のタイヤに連動して動く火打石がカチカチと火花を散らし、ロケット花火につながれた導火線に火をつけた。
「ロケットエンジンだ!うおおおおおおっ!!」
点火されたロケット花火が、前輪が浮きあがる程の急加速を自動車に与えた。
バックミラー越しに見えていた大波が徐々に遠ざかり、エンカ達の乗る自動車は間もなく林の中へと突入していく。

> 「皆、うまく逃げられたかな?フリード君がついてるから大丈夫だと思うけど・・・・・様子を見に行く?」
> 地響きが収まった後、周囲に何とも言えぬ柔らかな香りが立ち込める。
> 高まる鼓動を鎮め、穏やかになる香を焚いたのだ。
> 「う〜ん、まあ、学園のイベントでゆっくりバカンスはないと思ってたけど、流石にこれは想定外だったわ」
>「何か妙な匂いがすると思ったら、あんたが香を炊いていたのか。
> ここはあんただけの空間じゃないのに、ずいぶん図々しいことをしてくれるじゃないか」
後部座席からそんな声が聞こえてきたのでエンカは振り返った。セリフの主はロゼッタだった。
今の彼女はパッチリと目を開いている。
「なんだ、起きてたのかロゼッタ。まぁこの騒ぎだから無理もないけどな」
エンカは妙に落ち着いた口調でそう言った。お香の効果だろう。
>「その地球人のメスは何だ?」
「パピちゃんだ。後で説明する。それより、今はお香がどーのこーの言っている場合じゃあねぇっすよ。
 さっきロケット花火による急加速で難を逃れたが、ロケット花火の火はまだまだ消えないし、消せない。
 そしてあんまりにも車を前に押すパワーがあるもんだから前輪が浮いて車の向きを変えられない。
 そんでもってブレーキも、ロケット花火のパワーが強すぎて車を止めれない。
 つまり、その、なんだ。困った」
お香をきめたエンカの説明だといまいち緊迫感が伝わらないだろうが、つまり自動車は今暴走状態なのである。
このままでは林の木にぶつかるか、運良く林を抜けたとしても洋館との間にある湖につっこんでしまうだろう。

168 :ベッドフォード ◇k4Jcxtcjwo:2013/03/04(月) 02:18:58.08 0
[フィジル諸島 ベットフォードの邸宅]

「では、雛型は確実に成長している。相違は無いのだね。ブレ?」
革張りの重厚な作りの椅子に腰掛けた老人はテーブルを挟んだ先にいる大男へと視線を向けた。
「はい、思いの外、成長が進んでおります。完全覚醒へは、しばし時間がかかりますが、確実に目覚めつつあるかと。」
大男ブレは整然とした口調で淡々と返答をする。
「だが、一刻も早く完全覚醒へと導かねばならん。もはや写本はあてにはできんよ。
原典の回収すら未だできてはおらんのだ。」
老人はそう言うとテーブルの上に鎮座している幾つかの宝物へと目線を下ろすと大男もテーブルの上の宝物へ目をやった。

「遺物が写本にあった本来の場所と位置が食い違っていたのには私も驚きましたわ、フィジル諸島では無く、まさか外の世界にあったとは・・」
「左様、これは明らかに本来の予定が狂い始めている証拠だ。写本が間違っていたのではない。何者かが・・予定を書き換えたのだ・・・
遺物はこれで約半分、回収に手間取ったせいで、いい時間をさせてしまった」
些か悔しそうな表情を滲ませる老人だが、ブレは微動だにしない。
「あの男をあちらに残しておいて正解でしたわね。彼も、私と''彼女''に劣らない実力者、いずれ彼も呼び寄せるおつもりで?
ところで、''彼女''の姿が見えませんが・・」
ブレは部屋の周りを見渡し老人に尋ねると、老人は微笑を浮かべ答えた。
「必要とあればもちろん呼びもどすつもりだ。ああ、あれの事か?彼女も退屈しているのだろう。外出を許したよ。ラグーン島という所へな」

169 :テオボルト ◆e2mxb8LNqk :2013/03/04(月) 21:49:46.99 0
>160>162>164>166-167
テオボルトのカバンは、受け取ったエンカからグレンに回された。
その後、車内の4人+1匹はロケット花火の勢いで洋館方向の林へと突っ込んでいく。
テオボルトはフリードと共に、崖へと登った。幸い、怪我などもない。
「フー……しかし、なんだ? 島? 背中が小島の亀なんていう御伽話も聞くが……」

とくとくと島を眺めていると、先ほど見えた落下物が近づいてきていた。
それは人の形をしていた。
サークレットのついたボブカットの黒髪、足にはブーツ、そして水着姿をした少女らしきもの。
ただ、あちこちが機械めいているのを除けばただの少女に見えないこともなかっただろう。
彼女がテオボルトを目の前にとらえた瞬間、急に止まってしまった。
「……えーと、お嬢さん?」
呼吸を乱しているまま佇んでいられると、テオボルトも声をかけづらかった。

>「……はあ」
そしてその呼吸の動作さえも一瞬止まる。直後、熱風を身体から吹き出す。
テオボルトが硬直していると、突然彼女はフードに手をかけた。
>「わたしの名前は、アムリーテ・クラスタ。あなたはこども、ですね?
>センセイは、こどもはとてもかわいいものとおっしゃっていました」

フードに手を掛けられた瞬間、テオボルトは反射的に手首をつかむ。
渋い表情で、慣れたように言葉を紡ぐ。
「残念だが、私は見かけほど若くな……あー、いや。子供ではない」
自分の零した言葉の違和感に気が付き、頭を振って訂正した。
そして握った手をフードから離し、一先ず身なりを整る。

>「おっと申し遅れました僕の名前はフリードリッヒ
> 本当の名前はもっとずっと長いんですけど長すぎるから省略させていただきます
> ちなみに僕は人間です小さいからってホビットでもドワーフでもないのでお間違え無く」
「ふむ、では私も名乗ろうか。テオボルト・ジェナスだ。
 この前からフィジル学園の生徒をしている。以後お見知りおきを、機械のお嬢さん」
フリードに倣ってアムリータに名乗ると、テオボルトは顎に手を当てて考え込み始める。
「しかし、ミス・クラスタ。見たところ君は機械だが、誰に作られたんだ?
 どこで、どうやって? そこの島で何をしていたんだ? 教師陣の指示か何かで来てたのか?」
と、質問攻めにし始めた。

170 :青葉 華菜 ◆UeaUYwi1Nw :2013/03/05(火) 00:06:06.76 0
「灯台から移動するんでしたわね。よし、荷物も用意できましたし…」
灯台までテレポートしますわ。蟲野君と友達の友達も誘いましょう
「ふぅ。こういうときテレポートを使えると便利です」
え? だったらそのまま島まで飛べって? 多分出来ないですし、出来ても何かのルールに触れると思いますわ
つまりここは素直に装置を使うが吉ですの
「どうやら僕たち三人だけみたいだよ?」
友達の友達が言います。…完全に出遅れましたわね
「僕の蟲で探ってみたけど…近くには誰もいなかったと思うよ」
蟲野君も言います。では仕方ありません
「ゲートをくぐりましょうか」
こうして私はゲートをくぐりました

171 :青葉 華菜 ◆UeaUYwi1Nw :2013/03/05(火) 00:32:46.88 0
ゲートをくぐると、私たちは砂浜に飛ばされました

「ここは…あら?」
私は見知った顔を見つけましたわ。これで安心です
「おーい、フリードさぁーん! 貴方も来てたんですね!
…あら? そちらの方々は?」
と、声をかけるのですがフリードさんは戸惑った表情をしています
『え…? 誰…?』みたいな。まったく、私って忘れられるほど印象薄いかしら?
まぁ、一応女性化はしていますが…
「おやおや、随分と機械的な少女じゃないか。生メカしい肉体が魅力的だねぇ…」
友達の友達は口角を上げながら言います。いや、誰も上手いこと言えとは言っていませんし
「おっと失礼。自己紹介が遅れたね。僕の名前は霊園言葉。親しみをこめて『友達の友達』って呼んでよね」
「私は青葉華菜ですわ。特技は薬の調合です」
「蟲野蝶矢だよ。好きなものは蟲。よろしくね」
とりあえずまずは自己紹介ですわね

172 :アムリーテ ◇apJGY8Xmsg:2013/03/05(火) 07:55:19.69 0
フリード、テオボルト、アムリーテの三人は崖の上にいた。
その6〜7メートルある崖の周りは、津波による海水で囲まれてしまっている。
差し詰め一時的に出来た超小島。本島であるラク(グ)ーン島との距離は約数十メートル。
時間が経てば、じきに潮は引くであろうが、アムリーテ以外は多分泳げるはず。
それゆえに問題はないだろう。

その一時的に出来た超小島の上で、アムリーテはドキドキしながら、
テオボルトのフードを剥がそうとしていた。しかし、彼は…

>「残念だが、私は見かけほど若くな……あー、いや。子供ではない」
そう言ってアムリーテの手をフードから引き離そうとする。
その言葉にアムリーテは無抵抗だった。そう、100万馬力で抵抗することも出来たのだが
彼が子どもではないと言うのなら抵抗は無意味なことだ。

(言われてみれば、この人は子どもレーダーに反応していません)

アムリーテは、くるっと首だけを動かして、こんどはフリードを見つめる。

>「機械の御嬢さんですか・・・・・うーん知り合いにも機械の方は一人と一体いますけど
 みんな全然違いますねえ」

「……機械の方。他にもいるですか」
問うというよりも納得する感じのアムリーテ。

>「機械の御嬢さん油断は禁物ですよ世の中には外見は子供でも実年齢が大人なな方が存在しますから
 主にホビットとかホビットとかたまに悪魔とかです」

「ご忠告、ありがとうございます。ですが私の子どもレーダーに反応する人は、子どもです。
今回は貴方と彼を間違えてしまったようです。所謂ドジッ娘属性が発動したようです」

>「おっと申し遅れました僕の名前はフリードリッヒ
 本当の名前はもっとずっと長いんですけど長すぎるから省略させていただきます
 ちなみに僕は人間です小さいからってホビットでもドワーフでもないのでお間違え無く」

>「ふむ、では私も名乗ろうか。テオボルト・ジェナスだ。
 この前からフィジル学園の生徒をしている。以後お見知りおきを、機械のお嬢さん」

「はい、よろしくです。フリードリッヒさんに、テオボルトさん」

173 :アムリーテ ◇apJGY8Xmsg:2013/03/05(火) 07:57:20.90 0
>「しかし、ミス・クラスタ。見たところ君は機械だが、誰に作られたんだ?
 どこで、どうやって? そこの島で何をしていたんだ? 教師陣の指示か何かで来てたのか?」

「はい、残念ですが、1番目から3番目の質問にはお答えできません。
所謂企業秘密、トップシークレットです。
ですがあの島で体験していたことにはお答えできます。
そうです。貴方の察する通り、私はセンセイの指示を受けていました。
あの島で私は、センセイから沢山のことを教えていただいていたのです」
声のトーンをやや低くし、アムリーテは悲しげな顔。
その人口樹脂で出来た顔はほとんど少女であり、人形のような美しさも同居していた。
そしてアムリーテはフリードに一歩近づく。

「センセイは子どもは可愛いとおっしゃっていました。
そして今、私は可愛いを理解しました。フリードリッヒは可愛い子どもであると。
ですが、頭部に生えた毛は要らないと思います。毛がなければ最高の子どもと思います…」

言い終えて、アムリーテは本島であるラクーン島に視線を移す。

「あの島のどこかに、行方不明になったセンセイがいると思うです。
私はあの人にもう一度会いたいです。ですが周りは海です。困りました」

崖の上に避難したまでは良かったが、津波による水位の上昇により三人は孤立。
果たしてどうなってしまうのか。

174 :リリィ ◆jntvk4zYjI :2013/03/05(火) 18:57:39.17 0
>164 >167
「まー入学試験でいきなり学園の外にある危険地区に説明無しで放り出すような連中だからなぁ。
 パピちゃんが心配するのもうなずけるぜ。だが、俺達はそれを問題無く片付けて、くつろいでバカンスを楽しむ。
 そういうつもりで行こうぜ〜」
「エンカ、水着なんか無くったって、きっと楽しいよ。元気出して」
どうやらリリィは、エンカが海に入らない理由を自分なりに解釈したようだ。

>「このまんまじゃ追いつかれる!奥の手を使うぜ!!」
「奥の手?!」
>エンカはハンドルの横にある赤いボタンを押した。
>「ロケットエンジンだ!うおおおおおおっ!!」
点火されたロケット花火が、前輪が浮きあがる程の急加速を自動車に与えた。
「うわあああああああ?!」
その影響で、グレンがテオボルトのカバンごと後ろ座席に飛び込んできた。
顔面と腕でそれを何とかキャッチし、抱え込んで衝撃をやり過ごす。
>バックミラー越しに見えていた大波が徐々に遠ざかり、エンカ達の乗る自動車は間もなく林の中へと突入していく。

>地響きが収まった後、周囲に何とも言えぬ柔らかな香りが立ち込める。
高まる鼓動を鎮め、穏やかになる香を焚いたのだ。
>「う〜ん、まあ、学園のイベントでゆっくりバカンスはないと思ってたけど、流石にこれは想定外だったわ」
「ホント、びっくりだよぉ。あれ?なんかいい匂い」
リリィはくんくん鼻を鳴らしていたが、この場にグレンがいることを思い出し、はっとした。
あわてて車の窓を細く開ける。
>「何か妙な匂いがすると思ったら、あんたが香を炊いていたのか。
> ここはあんただけの空間じゃないのに、ずいぶん図々しいことをしてくれるじゃないか」
「わああ、ごめんなさいロゼッタちゃん。悪気は無かったのよ。窓開けるから怒らないで」
>「なんだ、起きてたのかロゼッタ。まぁこの騒ぎだから無理もないけどな」
「ロゼッタだって!おお、ラブラブだー。ところで今回ロゼッタちゃん・・・・ロロロロゼッタ先輩も、課題で来られたんですか?
 もうね、今すっごい大変だったんですよー。なんと、なぞの島がラグーン島に激突したんです!
 エンカ、このジドウシャについてる奥の手ってすごいわね!あれが無かったらかなり危なかったかもよっ?」

175 :リリィ ◆jntvk4zYjI :2013/03/05(火) 18:58:32.12 0
>「島に来てまだ何もわかっていないし、まずは安全な拠点確保が先だと思うわ」
>「その地球人のメスは何だ?」
「えっ、あの、ハピちゃんとエンカとは初対面だよ?だから、やきもちの必要は・・・・・・」
>「パピちゃんだ。後で説明する。それより、今はお香がどーのこーの言っている場合じゃあねぇっすよ。
エンカの話では、難を逃れるため奥の手を使ったせいで、ジドウシャが暴走中らしい。
「えー!つまりこのジドウシャは、今まさに走る棺桶になってるってこと?!」
一足先に窓を開けたせいか、リリィは普段に比べればマシなものの、少々落ち着きをなくしている。

「つまり前輪を地面におろして車の向きを変えるか、推進力であるロケット花火を何とかするしかないのね?
 よし!ロゼッタちゃん、出番よ!あなたの切断技で花火を切り落としちゃって!
 ・・・・・・あ、いやその、出来ましたら先輩のナイスな魔法で、切り落としてくださると嬉しいな・・・ミタイナ・・・・・・・?」
まさに蛇ににらまれた蛙。獅子の前に飛び出たペンギンである。

「わーん!パピちゃんにグレン、何かいい案は無いの?!」
重圧に耐え切れなくなったリリィは、パピスヘテプに泣きついた。

もしロゼッタの助力もパピスヘテプの案も無かった場合。
「そうだ!前部分を重くすれば車輪が下がるかも!グレンもおいで!あなたはエンカの膝に乗るのよ!」
と大真面目な顔で言いながら、パピスヘテプの膝の上に乗ろうととするだろう。
それでもだめなら、屋根伝いにボンネットに移動して重石になる気だ。
なぜなら、万が一彼女が車から振り落とされても、空を飛ぶ手段が一応あるからだ。
・・・・・・この速度と高度の中で、うまく飛べるかどうかは別にして、だが。

176 :パピスヘテプ ◆/TZT/04/K6 :2013/03/06(水) 21:45:00.18 0
エンカの【奥の手】により波との距離はぐんぐんと開いていく。
危機を脱したのだが、初めての自動車に初めてのこの急加速。
香を焚いて落ち着こうというのも自然の流れだった。
が、その自然の流れは新たなる危機を呼び起こすのだった。

>「何か妙な匂いがすると思ったら、あんたが香を炊いていたのか。
突如として後ろから響くその声にパピスヘテプが「ひっ」と小さく悲鳴を一つだけで反応できたのは鎮静の香のおかげだろう。
と言っても香は意識を操るものではなく、あくまで『そういう気分』にさせる補助剤である。
状況や感情、耐性などにより効果のほどは変わってくる。
なによりも、死者への使用が本来の使い道なので、生身のものにとっては……

「は、は〜い、初めまして。ロゼッタ先輩。パピスヘテプです。パピちゃんと呼んでね。
エンカ君とは友人だけど恋愛感情は全くないです」
香を吹き飛ばすような不穏なロゼッタの空気にひきつりながら挨拶を。
直後宣言通りにリリィとエンカのフォローが入ったのもありがたいモノだった。
が、エンカの口からは衝撃的な事実が語られるのだった。

【奥の手】のロケット花火による加速は終わっておらず、それを止めることができない。
前輪も浮いてしまっており、車の向きを変えられない、というのだ。
これから先は林に入り、さらにその先は湖である。
木に激突するか、湖に突っ込むか。
どちらも避けたいところ。

リリィがロゼッタに花火を着るように依頼するのだが、その声はか細くあまりにも頼りない。
ロゼッタの醸し出す空気の重さに耐えきれず、パピスヘテプに泣きつくのだ。
>「わーん!パピちゃんにグレン、何かいい案は無いの?!」
「ええ、こういう時こそ落ち着いて考えなきゃね。
溺れる者は藁をも掴むっていうけど、藁は藁だもの。
溺れているからこそ助けになる選択をしないと!」
力強く宣言すると、大きく香を吸い込み心を落ち着け状況と能力を考える。

半ば空を飛ぶ自動車の内部。
後部に動力源のロケット花火。
タイヤを地につけ制御を取り戻すか、動力源の除去が必要である。

顧みて自分の能力。
霊体との対話、対アンデッドへの特攻効果、礼葬、封葬、吸引、ストローゴーレム。
影術は投影面が必要であり、更に自身が影に触れている必要がある。
この状況で自体を改善させる手段は……

後部座席に振り向き、半ば懇願するようなリリィに
「うん、私がこの状態をどうにかできる術はないわ」
絶望的な、しかしどうしようもなく事実を伝えるほかなかった。

しかしそんな絶望的な事実にリリィは次なる手段を考え付いていた。
>「そうだ!前部分を重くすれば車輪が下がるかも!グレンもおいで!あなたはエンカの膝に乗るのよ!」
「え?ちょっと、リリィ、流石にきついぃ…」
いくら思ったよりも広かった車内ではあってもやはり車の中である。
この加速状態の中這いずるように前の席へと移動というのは、如何にリリィが小柄であっても窮屈であった。

くんずほぐれつな状態でも何とかリリィはパピスヘテプの膝に収まった。
が、それでも前輪は浮いたままなのであろうか?事態に変化が見られない。
「リリィ!どこ行くつもり!?ダメ!」
さらに前方で重しになろうとパピスヘテプの膝から移動を開始するリリィを慌てて抱きかかえて阻止するのだ。
「こんなスピードの中に出たら吹き飛ばされちゃう!……てゆーか、小ぶりだけど結構いいお尻ね」
抱えたリリィのお尻の形の良さに非常事態である事も忘れて思わず呟いてしまうのだった。

パピスヘテプはオシリス神というお尻好きな神を信仰しているので、お尻の形などにはつい目が行ってしまうのだ。
決して百合的な感覚ではなく、神聖なものである、たぶん。
ヒンヌー教徒と呼ばれる一部の生徒たちに密かに聖女と呼ばれるリリィだが、身近に新たなる勢力オシリス(キ)神が現れたのだった。

177 :エンカ ◆jWBUJ7IJ6Y :2013/03/07(木) 21:36:16.31 0
>175>176
> 「は、は〜い、初めまして。ロゼッタ先輩。パピスヘテプです。パピちゃんと呼んでね。
> エンカ君とは友人だけど恋愛感情は全くないです」
パピスヘテプがそう言って挨拶をしたので、ロゼッタはそれに応える。
「猫の眼(まなこ)と♪犬のお耳で♪あなたに〜♪ごあいさつ〜♪」
ロゼッタは両掌を自分の頭の上にかざしてピコピコさせながら短い歌を歌った。
「ね?」
とロゼッタはパピスヘテプに何か同意を求めたが、たぶん意味がわからないだろう。

> 「つまり前輪を地面におろして車の向きを変えるか、推進力であるロケット花火を何とかするしかないのね?
>  よし!ロゼッタちゃん、出番よ!あなたの切断技で花火を切り落としちゃって!
>  ・・・・・・あ、いやその、出来ましたら先輩のナイスな魔法で、切り落としてくださると嬉しいな・・・ミタイナ・・・・・・・?」
とリリィが恐れながらとロゼッタにうったえた。
>「うーん」
ロゼッタはなんだか煮え切らない態度をとった。
「ロゼッタ、今リリィが説明した通りだ。
 今この状況でロケット花火の方をどうにかできるのはお前しかいねぇだろう。
 何を迷ってんだ?下手したらみんな死ぬんだぜぇ?」
リリィがパピスヘテプに泣きついている間にエンカが落ち着いてロゼッタにそう言い聞かせようとした。
>「あぁ………うぅ」
それでもロゼッタは動かない。
「そうかよロゼッタ、やっぱりお前は自分に都合のいいことしかやらねぇんだなーっ…!
 見損なうぜ、まったくよー。もう頼まねぇ、勝手にしやがれってんだ」
>「………」

> 「そうだ!前部分を重くすれば車輪が下がるかも!グレンもおいで!あなたはエンカの膝に乗るのよ!」
> 「え?ちょっと、リリィ、流石にきついぃ…」
リリィは前輪を地面につけるための対策を始めた。
グレンとテオボルトのカバンはエンカの膝の上に収まり、
> くんずほぐれつな状態でも何とかリリィはパピスヘテプの膝に収まった。
> が、それでも前輪は浮いたままなのであろうか?事態に変化が見られない。

178 :エンカ ◆jWBUJ7IJ6Y :2013/03/07(木) 21:38:16.25 0
> 「リリィ!どこ行くつもり!?ダメ!」
リリィはさらに前方に移動しようとするがパピスヘテプが彼女を止める。
> 「こんなスピードの中に出たら吹き飛ばされちゃう!……てゆーか、小ぶりだけど結構いいお尻ね」
「そうだぜ、今車から飛び出すのは自殺行為ってもんだ。…しかし、もうちょっとで前輪が接地しそうなのによぉ」
リリィとグレンが前に移動したことにより前輪はその前よりもずっと地面に近づいたが、まだ足りない。
結局エンカ達の乗る自動車はコントロール不能のまま林の中に突入してしまった。
まずいことに、早速暴走する自動車を遮るように大きな木が迫ってくる。
「やべぇ、このままじゃぶつかる…!」
エンカは死を覚悟した。
彼の頭の中で、まるで走馬灯のように今までの出来事が浮かんでは消え、消えては浮かぶ。
ロゼッタに初めて左手を切断された入学式の日…
ロゼッタに人目につかない場所でバラバラにされたパーティーの夜…
そしてロゼッタの娘とも言うべき悪魔に乱暴された日々…
自動車の中に少しだけ風が吹いた。

「俺は女難のままで死ねるかよぉおおっ!!」
そう叫んでエンカが思い切りハンドルをきると、自動車は先ほどまで操舵不能だったのが嘘のように機敏に大木を躱した。
「お、おぉー!なんだか知らねぇが、前輪が地面にちゃんと着いたみてぇだな!行けるぜ!
 このまま林を突っ切るからよー!舌を噛まねぇようにしっかり構えてろよなーっ!!」
例え操舵可能になったとはいえ、ロケット花火の火はまだ消えていない。
自動車は猛スピードで木々の間をスラロームしながら林を駆け抜けていく。
時々、危なっかしい場面もあったが自動車は無事に林を抜けることができたのであった。

ロケット花火の火がようやく消えたのは、林を抜け湖の周りを迂回している途中でのことだった。
エンカは動力をゼンマイに切り替え、ゆっくりと自動車を流す。
「もうちょっとで洋館だなー。リリィ、もう後部座席に戻ってもいいぜ。
 一時はどうなるかと思ったが、全員無事に洋館までたどり着けて良かったよな〜」
とその時、何か驚いた様子でエンカが急ブレーキをかけた。
エンカの心臓が激しく鼓動し、彼の額から汗が流れる。
「“全員無事”…“全員無事”だとぉ…!?冗談じゃあねぇ、ロゼッタはどうした!?どこへ行ったんだ!!?」
後部座席。そこにいるはずのロゼッタの姿がどこにも見当たらなかった。
エンカは聞いた。「誰かロゼッタがどこへ行ったか見なかったか!?」と。
しかし、もしも誰一人として彼女がどこへ行ったのか見ていなかったとしても、
すぐにこの結論へと辿り着くだろう。
ロゼッタは自動車から飛び降りたのだ、と。
それで後部が軽くなったから前輪が地面に接地したのだ、と。

179 :フリードリッヒ ◆cOOmSNbyw6 :2013/03/09(土) 08:59:12.53 P
>「センセイは子どもは可愛いとおっしゃっていました。
そして今、私は可愛いを理解しました。フリードリッヒは可愛い子どもであると。
ですが、頭部に生えた毛は要らないと思います。毛がなければ最高の子どもと思います…」
「いえいえ髪の毛は重要ですよ、あるのとないのでは大違いです
 たまになんで頭にわかめ載せてるのとか言われますけど
 こういう髪質なんだから仕方がありません
 本当は腰まで伸びていればいざというときに首を守る防具になったり
 サバイバルするときに釣り糸代わりに使えるんですけどね
 やっぱり男らしくないからこの長さに留めてあるんですよ」

>「あの島のどこかに、行方不明になったセンセイがいると思うです。
 私はあの人にもう一度会いたいです。ですが周りは海です。困りました」
「こういう時は僕に任せてください
 周りは海ですが海は水の塊です、そして僕は冷気を操るユニークスキル
 もとい魔法を最も得意にしています
 水を凍らせて氷にしてしまえば足場にして渡る事が出来るはずです」
とフリードリッヒは呪文を唱え周りの水を凍らせ始める

凍らせた水の上を渡りしばらく移動した砂浜で意外な人物と出会う

>「おーい、フリードさぁーん! 貴方も来てたんですね!
 …あら? そちらの方々は?」
「ふぇ?」
>「おっと失礼。自己紹介が遅れたね。僕の名前は霊園言葉。親しみをこめて『友達の友達』って呼んでよね」
「友達の友達は知らない人じゃないですかやだぁ」
>「私は青葉華菜ですわ。特技は薬の調合です」
「青葉・・・・まさか青葉さんブレさんの同類になったんですか!?
 でも女の人って月のモノとかあるし……月のモノがなんだかは知りませんが
 ずいぶんと思い切りましたね」
姉であるフリージアから女の子は大変であると聞かされているフリードリッヒ
正直なぜそんな苦労をしようと思ったのか理解できなかった
>「蟲野蝶矢だよ。好きなものは蟲。よろしくね」
「僕もカブトムシとか甲虫系は好きですけどうねうねした類はちょっと」
誰もそんなことは聞いていない

180 :くろねこ グレン ◆cOOmSNbyw6 :2013/03/09(土) 09:10:12.48 P
>「わーん!パピちゃんにグレン、何かいい案は無いの?!」
>「ええ、こういう時こそ落ち着いて考えなきゃね。
  溺れる者は藁をも掴むっていうけど、藁は藁だもの。
  溺れているからこそ助けになる選択をしないと!」
『そんなものはないよあるわけないよ』(猫語)

> 「そうだ!前部分を重くすれば車輪が下がるかも!グレンもおいで!あなたはエンカの膝に乗るのよ!」
> 「え?ちょっと、リリィ、流石にきついぃ…」
『生き残るためだし仕方がないね』(猫語)
とよじのぼるグレン



>「もうちょっとで洋館だなー。リリィ、もう後部座席に戻ってもいいぜ。
 一時はどうなるかと思ったが、全員無事に洋館までたどり着けて良かったよな〜」
しばらくして何とかピンチを脱出したかに見えた一行だったが・・・・・
>「誰かロゼッタがどこへ行ったか見なかったか!?」
『自分の身を守るのに精いっぱいでそれどころじゃないよ』(猫語)
と答えるグレン
『まさかあのロゼッタさんが自己犠牲を・・・・まあこの学園超人だらけだし
 無事だとは思うけど』(猫語)
グレンはフリードリッヒと一緒に過ごしすぎたせいで基準がおかしくなっている
周りが超人しかいなければその超人が普通であると認識してしまう逆井の中の蛙症候群
確かにロゼッタはすぐれた能力を持った魔法使いかもしれないが肉体までそうとは限らないということを忘れているのだ

181 :名無しになりきれ:2013/03/09(土) 19:33:05.35 0
え?























え?

182 :テオボルト ◆e2mxb8LNqk :2013/03/09(土) 22:24:28.06 0
>170-171>173>179
>「はい、残念ですが、1番目から3番目の質問にはお答えできません。
>所謂企業秘密、トップシークレットです。
>ですがあの島で体験していたことにはお答えできます。
>そうです。貴方の察する通り、私はセンセイの指示を受けていました。
>あの島で私は、センセイから沢山のことを教えていただいていたのです」
「センセイか。ふーむ……その人が君を、っと。秘密だと言っていたな」
テオボルトはアムリーテの答えに、再び質問しようとして、取りやめた。
そしてフリードと話す彼女を尻目に、頭に考えが浮かんでいく。
「(センセイっていうのは、教師じゃなくて博士かもな。
  しかし、そいつは一体何者やら……いや、今考えても仕方がないな)」

>「あの島のどこかに、行方不明になったセンセイがいると思うです。
>私はあの人にもう一度会いたいです。ですが周りは海です。困りました」
少しだけ困った顔を見せたアムリーテ。しかし、こちらには氷の魔法使いをいる。
>「こういう時は僕に任せてください
> 周りは海ですが海は水の塊です、そして僕は冷気を操るユニークスキル
> もとい魔法を最も得意にしています
> 水を凍らせて氷にしてしまえば足場にして渡る事が出来るはずです」
「おっ、頼むぞ。海水で濡れると後でべとつくし、こういう時はフリードのような魔法使いがありがたい。
 ……それとミス・クラスタ。島を探索するなら、しばらく私たちと来るか?
 いずれ我々も島を見て回らなければなさそうだし、人が多ければ作業の手間も幾らか省けるだろうしな」
そう言うと、フードの下で口元に僅かな笑みを浮かべた。


さて、凍らせた海を渡り砂浜へ降り立つと、フリードの
知り合いらしき三人の女生徒と出会う。
友達の友達を自称する霊園言葉、薬の調合を得意とする青葉華菜、虫好きの蟲野蝶矢。
一通り自己紹介を聞き終えると、テオボルトもまた口を開く。
「私はテオボルト・ジェナス。この格好は気にしないでくれ、日光が苦手なものでね」
改めて自分の身なりを確認する。
革靴、黒スラックス、長袖のワイシャツ、白い手袋。
そして極めつけにはマントに付いたフードを被り口元にスカーフを巻いた姿。
「……まあいい。さて、お嬢さん方も要件は課題なんだろう? 丘の上に見える洋館に行こう、何かありそうだ」

そこで一息つき、付け加える。
「私としては、エンカに預けた荷物が無事なのかという方が気になるがね」
とんでもない勢いで林に飛んで行った(比喩)車を見ているのだ。
何処かで事故を起こしてしまったIFが容易に思い描ける。
ぞっとしない考えを浮かべつつ、テオボルトは早足気味に木々の間へと足を運ぶ。
当然ながら彼らの移動手段は徒歩である。洋館まではしばらくかかりそうだ。

183 :アムリーテ ◆apJGY8Xmsg :2013/03/10(日) 00:46:47.87 0
>「いえいえ髪の毛は重要ですよ、あるのとないのでは大違いです
 たまになんで頭にわかめ載せてるのとか言われますけど
 こういう髪質なんだから仕方がありません
 本当は腰まで伸びていればいざというときに首を守る防具になったり
 サバイバルするときに釣り糸代わりに使えるんですけどね
 やっぱり男らしくないからこの長さに留めてあるんですよ」

「男らしくない?それではフリードリッヒは男の子なのですか。
……うーん、子どもの性別の判定は難しいものです。ひよこの選別と似ています」

>「こういう時は僕に任せてください
 周りは海ですが海は水の塊です、そして僕は冷気を操るユニークスキル
 もとい魔法を最も得意にしています
 水を凍らせて氷にしてしまえば足場にして渡る事が出来るはずです」
>「おっ、頼むぞ。海水で濡れると後でべとつくし、こういう時はフリードのような魔法使いがありがたい。
 ……それとミス・クラスタ。島を探索するなら、しばらく私たちと来るか?
 いずれ我々も島を見て回らなければなさそうだし、人が多ければ作業の手間も幾らか省けるだろうしな」

「はい、ありがとうございますフリードリッヒ。私の身体は機械ゆえ水が苦手なのです。
それとテオボルトさん。喜んでご同行させていただきます」
アムリーテは笑顔。そんな中、フリードリッヒは海上に氷の道を作ると先に進んでゆく。
なのでアムリーテも恐る恐る氷上を歩んで行き本島へ。
氷の道は、アムリーテの重さでヒビだらけになってしまったが渡り終えるまでは何とかもった。
最後にピョンと飛ぶと流氷になって流れていく。

そして砂浜には誰かがいた。

>「おやおや、随分と機械的な少女じゃないか。生メカしい肉体が魅力的だねぇ…」

「はい。私のボディは自慢の超鋼。それに肉体部分は魔法の人口樹脂なのです。
しかし、生メカしいとは…。お褒めにいただき、まことにエレキ照レルでございます」

>「おっと失礼。自己紹介が遅れたね。僕の名前は霊園言葉。親しみをこめて『友達の友達』って呼んでよね」
>「私は青葉華菜ですわ。特技は薬の調合です」
>「蟲野蝶矢だよ。好きなものは蟲。よろしくね」
>「僕もカブトムシとか甲虫系は好きですけどうねうねした類はちょっと」

「はじめまして。私の名前はアムリーテ・クラスタといいます。よろしくお願いいたします。
それと私も虫が好きです。堅い甲殻は私とボディと御揃いです。
キラキラとした光沢を放ち、それでいて身を守る強靭さを兼ね備えています。
それはとても美しく素晴らしいことと私は信じています」

184 :アムリーテ ◆apJGY8Xmsg :2013/03/10(日) 00:51:57.95 0
>一通り自己紹介を聞き終えると、テオボルトもまた口を開く。
>「私はテオボルト・ジェナス。この格好は気にしないでくれ、日光が苦手なものでね」

(日光が…苦手)
その言葉に反応したアムリーテは斜め後ろからテオボルトを見つめている。

>「……まあいい。さて、お嬢さん方も要件は課題なんだろう? 丘の上に見える洋館に行こう、何かありそうだ」

(課題…)
どうやらここにいる子どもたちは何かの任務を受けている。
アムリーテはそう思考する。

「あの、先ほど高速で移動する四人の子どもの反応が、私のレーダーにありました。
ですがその中の一人の子どもがどこかに取り残されてしまっているようです。
残りの三人の子どもは無事に洋館に辿りついているようですが。。
もしかして一人の子どもだけ捨てていかれたのでしょうか?
私にはそのようなことは見過ごせません。
センセイは友愛というものはとても大切と教えてくれたからです」

そう言ってアムリーテは突然駆け出す。と言っても、がきゅんがきゅんと間接から音を出しながら鈍足。
最大でも100メートル25秒くらいの速さ、というか遅さ。
果たしてアムリーテは、ロゼッタを見つけ出すことが出来るのであろうか?

185 :アムリーテ ◆apJGY8Xmsg :2013/03/10(日) 01:56:59.12 0
すいません。訂正です。

×残りの三人の子どもは無事に洋館に辿りついているようですが。。
○残りの三人の子どもは無事に洋館に辿りつきつつあるようですが。。

ごめんなさい。勘違いしちゃってました。

186 :リリィ ◆jntvk4zYjI :2013/03/10(日) 18:04:01.95 0
>176-178 >180-181
> 「リリィ!どこ行くつもり!?ダメ!」
「だってだって!このままじゃ皆ただじゃすまないよ!私なら大丈夫だよ、一応箒で空も飛べるし!」
リリィは窓の外に身を乗り出し、自分の箒を召還しようとした。
>「こんなスピードの中に出たら吹き飛ばされちゃう!……てゆーか、小ぶりだけど結構いいお尻ね」
「なっ・・・・・ななな何を言い出すのこんな非常時に・・・・・・!!」
>「そうだぜ、今車から飛び出すのは自殺行為ってもんだ。…しかし、もうちょっとで前輪が接地しそうなのによぉ」
「だから私がもっと前に移動して・・・・・・ひやっ!!」
耳まで真っ赤になっていたリリィだが、突然小さな悲鳴を上げて頭を引っ込める。
車のすぐ脇を、伸び放題になっていた太い枝が掠めていった。
>結局エンカ達の乗る自動車はコントロール不能のまま林の中に突入してしまった。
「あ、危なかったぁ・・・・・・わああ!エンカ、前!前!!」
>「やべぇ、このままじゃぶつかる…!」
「わーん!こんなことなら厚焼きステーキ定食、我慢しないで食べとけばよかった!!」
リリィは両手で顔を押さえると、パピスヘテプの膝の上に乗ったまま小さくなった。
>自動車の中に少しだけ風が吹いた。

>「俺は女難のままで死ねるかよぉおおっ!!」
>そう叫んでエンカが思い切りハンドルをきると、自動車は先ほどまで操舵不能だったのが嘘のように機敏に大木を躱した。
>「お、おぉー!なんだか知らねぇが、前輪が地面にちゃんと着いたみてぇだな!行けるぜ!
> このまま林を突っ切るからよー!舌を噛まねぇようにしっかり構えてろよなーっ!!」
「りょ、了解だあうあうあうガヘッ」
リリィは口元を押さえて涙目になった。どうやらエンカの忠告は無駄だったようだ。
リリィ達は前座席で、かき混ぜられたシチュー鍋の中のような状態になりながら長くて短いドライブをやり過ごした。
>時々、危なっかしい場面もあったが自動車は無事に林を抜けることができたのであった。

>ロケット花火の火がようやく消えたのは、林を抜け湖の周りを迂回している途中でのことだった。
>「もうちょっとで洋館だなー。リリィ、もう後部座席に戻ってもいいぜ。
> 一時はどうなるかと思ったが、全員無事に洋館までたどり着けて良かったよな〜」
リリィはぐったりとしながら片手を挙げた。まだ目が回っているようすで、ちょっとくたっとしている。
だが、突然車が急停車した。
>「“全員無事”…“全員無事”だとぉ…!?冗談じゃあねぇ、ロゼッタはどうした!?どこへ行ったんだ!!?」
「ふぇ?・・・・・あれっ、ロゼッタちゃん?」
>後部座席。そこにいるはずのロゼッタの姿がどこにも見当たらなかった。
このときのリリィの心境は、まさに>181そのものである。
>「誰かロゼッタがどこへ行ったか見なかったか!?」と。
>『自分の身を守るのに精いっぱいでそれどころじゃないよ』(猫語)
「ごめん、私もグレンと同じでそれどころじゃなかった。何?いつの間にロゼッタちゃん消えたの?どういうこと?!」
だが、理由はともかく、ロゼッタの動機と行動は一目瞭然だった。
ロゼッタは車の制御を取り戻すために、自動車から飛び降りたのだ、と。

187 :リリィ ◆jntvk4zYjI :2013/03/10(日) 18:06:22.52 0
>『まさかあのロゼッタさんが自己犠牲を・・・・まあこの学園超人だらけだし
> 無事だとは思うけど』(猫語)
「私のせいだ、私が切断魔法使って、なんて言っちゃったから。
 ロゼッタちゃん、きっと調子悪かったんだ。だから切断魔法だって使えなかったんだ。なのに、責任感じて・・・・・」
リリィはなきそうな顔をしたが、ぐっと唇をかみ締め、こらえた。
「エンカごめん、ジドウシャに入れた私の荷物出して!私、一足先にロゼッタちゃんを探しに行く!!」
リリィはすぐにでも大荷物の中から治療バックを取り出し、箒で空から捜索に向かうだろう。

「エンカ、大丈夫だよ。ジドウシャで探しにいくにしても、もうちょっと広い場所で方向転換をしないといけないでしょ?
 だから一足先に探しに行ってくるよ。
 ・・・・・・大丈夫だよ、道の両脇は草いっぱい生えてるところ多いもの。
 クッション代わりになるし、きっとひどい怪我にはならない。
 テレパシーで呼びかけながら探すから、きっとすぐ見つかるよ。そしたらがんばって応急手当するから!」

リリィはパピスヘテプに目配せし、テレパシーを送った。
『どうかエンカのことをお願いね。
 きっと彼も、今回のロゼッタちゃんのことでは責任感じてると思うから・・・・・』
そう伝えたリリィは、無言のままで頭を下げた。
「グレン、よかったら一緒に来て!あなたの鋭敏な耳と鼻がたよりなのよ!」
(グレンの様子が普段どおりなので、リリィはフリード達の心配はまるでしていなかった)

荷物を持ったリリィは今にも倒れそうなひどい顔色をしていたが、それでも箒にまたがると、親指をぐっと立てて見せた。
「じゃあ行くね!また後で!」
リリィを乗せた箒はふわりと浮き上がったかと思うと、そのままロケット花火のような勢いで飛び出していった。

「『ロゼッタちゃーん!大丈夫?無事なの?お願いだから返事してー!』」
テレパシーと声の両方でロゼッタに呼びかけながら、海までの道を辿っていく。
海岸線は押し寄せた海水のせいでずいぶん様変わりしたが、そのうち潮は引くだろう。

>179 >182 >184
『フリード君にテオ君、無事ですか?ジドウシャは今洋館の近くです。
 実は、ロゼッタちゃんがジドウシャから転落したの。今私は、空から彼女を探してます!
 怪我をしてるかもしれないから、皆も一緒に探してください、お願いします!』
リリィは姿の見えないフリード達にとどけとばかりに、全方位に向けてテレパシーを送った。
声よりも遠くまで届くテレパシーは、島にいる者に対し無差別に届くだろう。

188 :パピスヘテプ ◆/TZT/04/K6 :2013/03/10(日) 23:00:51.68 0
暴走加速の危機を乗り切り安堵と共に落ち着きを取り戻した車内が凍りつく。
後部座席に乗っていたはずのロゼッタの姿が消えているのだ。
それがどういう事か。
考えるまでもない。

「え、えええ?どうして?ロケットを切断魔法で切ればよかったのにどうして?」
思わず素直に疑問を口から出してしまったが、それはリリィを追い詰める言葉であったかもしれない。
>「私のせいだ、私が切断魔法使って、なんて言っちゃったから。
> ロゼッタちゃん、きっと調子悪かったんだ。だから切断魔法だって使えなかったんだ。なのに、責任感じて・・・・・」
泣きそうな顔で呟くリリィに
『まさかあのロゼッタさんが自己犠牲を・・・・まあこの学園超人だらけだし
 無事だとは思うけど』(猫語)
「そうそう、切断じゃなくて飛び降りたのは意味があるだろうし、後の事考えずに飛び降りるなんて……アルヨネ、割トヨク」
グレンの言葉に乗っかるようにしてフォローしようとしたのだが、残念だが効果的とは言い難かった。

パピスヘテプが普段接する霊たちは視野狭窄に陥り驚くほど簡単な理由で命を投げ出したものも多い。
それぞれなりの価値観や意味を見出しているのだろうが、それが理解できるわけでもない。
車内での意味不明なロゼッタの挨拶はそういった全く異なった価値観に通じるものがある、と感じてしまっていたから。

リリィは即座に治療バックを取り出し、箒で捜索に行こうとしている。
パピスヘテプもコートのフードをかぶろうとした時、リリィの目配せに、そしてテレパシーに気が付いた。
その内容はエンカのケア。
そういわれて初めて気が付いた。
今まで落ち着いているつもりでも混乱していた自分と、この状況下でロゼッタだけでなくエンカの事まで考えていたリリィの凄まじさに。
確かにロゼッタの彼氏である(パピ認識)エンカの胸中は穏やかではないだろう。

グレンを連れて箒にまたがり親指を立てるリリィ。
「ちょっとリリィ!あんたのテレパシー送信専用でしょ!これを持ってきなさい!」
浮き上がったリリィの背中に藁人形を投げつけた。
直後ロケット花火のような勢いで飛び出したのを見送ってパピスヘテプは大きく息をついた。

「ふぅ、自分が倒れそうな顔しながら大したものだわ。
あれがどれほど役に立つかはわからないけど……」
藁人形はパピスヘテプ謹製のストローゴーレム。
こちらのテレパシーを拾いリリィに伝えるだろう。
また、香木が仕込んであり鎮静効果を持つのだが、大きなテレパシーからするととても効果は期待できそうになかった。

「さ、エンカ君。私達もできることをしましょ。
テオ君やフリード君もテレパシー拾って合流するだろうし、リリィはロゼッタ先輩を連れてくる。
だから私たちは洋館で受け入れられる体制を整えておきましょ」
柔らかな香りと共にエンカに寄り添い、洋館へ向かおうと促した。

189 :エンカ ◆jWBUJ7IJ6Y :2013/03/11(月) 21:49:59.94 0
>187 >188
ロゼッタが飛び降りる瞬間を目撃した者はいなかったようだが、
やはりどう考えても飛び降りたとしか考えられなかった。
> 「え、えええ?どうして?ロケットを切断魔法で切ればよかったのにどうして?」
とパピスヘテプが言うと、リリィは泣きそうな顔をしながら言った。
> 「私のせいだ、私が切断魔法使って、なんて言っちゃったから。
>  ロゼッタちゃん、きっと調子悪かったんだ。だから切断魔法だって使えなかったんだ。なのに、責任感じて・・・・・」
「いいや、リリィ!俺のせいだぜ!俺がよぉ、あいつのこと自分勝手な奴って言ったからよ〜、
 傷つけちゃったのかもなーっ!あいつに心から詫び入れねぇと、俺の心に後味の良くねぇものが残るぜ!」
そう言ってエンカはすぐに車を反転させようとした。その時だ。
> 「エンカごめん、ジドウシャに入れた私の荷物出して!私、一足先にロゼッタちゃんを探しに行く!!」
「な、なんだってぇ!?」
どうやらリリィは箒で空を飛び、ロゼッタを探しに行くつもりらしい。
> 「エンカ、大丈夫だよ。ジドウシャで探しにいくにしても、もうちょっと広い場所で方向転換をしないといけないでしょ?
>  だから一足先に探しに行ってくるよ。
>  ・・・・・・大丈夫だよ、道の両脇は草いっぱい生えてるところ多いもの。
>  クッション代わりになるし、きっとひどい怪我にはならない。
>  テレパシーで呼びかけながら探すから、きっとすぐ見つかるよ。そしたらがんばって応急手当するから!」
エンカは心苦しそうな表情をしたが、リリィを信頼していたので彼女に任せることにした。
「頼むぜ、リリィ!ロゼッタに会ったらよぉ、俺がすまねぇって言ってたことを伝えてくれよなーっ!」

エンカとパピスヘテプは飛び去るリリィを見送った。
リリィがグレンも連れて行ったので二人きりである。
> 「さ、エンカ君。私達もできることをしましょ。
> テオ君やフリード君もテレパシー拾って合流するだろうし、リリィはロゼッタ先輩を連れてくる。
> だから私たちは洋館で受け入れられる体制を整えておきましょ」
「わかったぜ、パピちゃん。ところでよぉ、さっきリリィの背中に投げつけた藁人形。
 あれは一体何なんだ?」
エンカはパピスヘテプのストローゴーレムの説明を聞きながら運転し、洋館の前に自動車を停めた。
「近くで見ると、思ってたよりも大きな建物だよな〜」
エンカは洋館の正面玄関の扉をノックした。返事は無い。
鍵はかかっていないらしく、エンカは扉をそっと開けた。中は暗かった。
「頼もー!頼もー!………誰もいねぇのかな?」
エンカは車のトランクから預かっている荷物一式を取り出した。
そして自分の荷物の中から提灯(ちょうちん)を二つ取り出し、一つをパピスヘテプに手渡す。
「暗いから用心して入ろうぜ?」
一応エンカは男の子なので、パピスヘテプの前に立って洋館の中へと入っていった。
はたして用心しなければならないのが暗さだけならよいのであるが…

190 :ロゼッタ ◆jWBUJ7IJ6Y :2013/03/11(月) 21:52:53.84 0
> 「『ロゼッタちゃーん!大丈夫?無事なの?お願いだから返事してー!』」
ロゼッタが目を覚ましたのはリリィのテレパシーが聞こえたからだった。
ロゼッタはまわりの様子をうかがってみた。どうやら今自分は林の中にある茂みに突っ込んでいるらしい。
今一体どうして自分が林の中にある茂みに突っ込んでいるのかわからないので記憶をたどってみる。
そして「そうだそうだ」とロゼッタは思い出した。
自分はエンカの自動車に乗っていたのだ。彼の自動車がコントロール不能となり、
ロゼッタは自分を助けるために自動車から飛び降りたのだ、と。

そう、ロゼッタは自分を助けるために自動車から飛び降りたのだ。
決してリリィ達を助けようと思ってとった行動ではない。
このまま自動車もろとも木にぶつかるよりも安全であると考えて茂みに飛び込んだ結果、
リリィ達を助けることになったなどロゼッタは夢にも思っていなかった。

> 『フリード君にテオ君、無事ですか?ジドウシャは今洋館の近くです。
>  実は、ロゼッタちゃんがジドウシャから転落したの。今私は、空から彼女を探してます!
>  怪我をしてるかもしれないから、皆も一緒に探してください、お願いします!』
リリィはテレパシーを全方位に飛ばしていたので、ロゼッタもこのテレパシーを聞き、そして考えた。
どうやらリリィはロゼッタが意図せず自動車から転落したと考えているらしい、と。

リリィはまもなく上空から、茂みから空を見上げて
両掌を自分の頭の上にかざしてピコピコさせているロゼッタを発見できるだろう。
体のあちこちに擦りむいた痕が見えるが、体に別状は無さそうだ。
「(……秒速4mで何かが近づいてくる。一体何だろう?)」
この時ロゼッタは、自分がアムリーテのこどもレーダーに補足されていることもまた夢にも思っていなかった。

191 :アムリーテ ◆apJGY8Xmsg :2013/03/12(火) 23:00:01.28 0
子どもレーダーでロゼッタを捕捉したアムリーテ。
彼女は林の中の茂みを何個か突破しながら、ロゼッタの元へ突き進む。
そんな中、どこからともなく聞こえてきたのはリリィのテレパシーだった。

>『フリード君にテオ君、無事ですか?ジドウシャは今洋館の近くです。
 実は、ロゼッタちゃんがジドウシャから転落したの。今私は、空から彼女を探してます!
 怪我をしてるかもしれないから、皆も一緒に探してください、お願いします!』

子どもレーダーの範囲を広げてみれば、接近中の反応が一つ。
どうやら茂みの中にいる子どもの名前はロゼッタ。それも捨てられたのではなく転落したとのこと。
アムリーテは後ろからロゼッタへと近づくと、その腰を両の手で掴み持ち上げる。

(おとしもの。ひろいました)

そしてそのまま茂みを抜け、湖のほとりへ。
ロゼッタを小枝などで傷つけないように高々と持ち上げたまま歩む。
しかし、上空から見ているリリィにはその姿が何と見えるだろうか。

【アムリーテ:ロゼッタさんを持ち上げながら湖のほとりへ。
結果的には他の生徒から離れて孤立。その後、リリィさんと合流かも?】

192 :パピスヘテプ ◆/TZT/04/K6 :2013/03/13(水) 22:44:42.92 0
リリィを見送った後、エンカと共に洋館へと向かう。
勝手の判らない島で、しかも島がぶつかる様な異常現象が起こる中、安全な拠点の確保は急務なのだから。
そして何より傷ついているであろうロゼッタを落ち着いて治療できる場所も。

>「わかったぜ、パピちゃん。ところでよぉ、さっきリリィの背中に投げつけた藁人形。
> あれは一体何なんだ?」
「ちょっとごめんね、お腹すいちゃって。エンカ君も食べる?」
道中エンカがリリィに投げた藁人形についての質問に、パピスヘテプは影からLサイズのホットドッグを取り出しながら答える。
「あーあれね、藁人形っていうストローゴーレムの一種よ。
あの子(リリィ)テレパシーの発信はできても受信はできないでしょ?だから受信機代わりに。
それと……真っ先に飛び出ていったけど、あの顔見たでしょ?
鎮静作用のある香木が仕込んであるから、少しは落ち着けばいいと思ったけど、どこまで効果があるかは怪しいよねー」
落ち着いた様子で笑いを交えながら話す。
あまり笑える内容ではないのだが。

それとともに、ストローゴーレムについての講釈が続いた。
土、木、鉄、ゴーレムの強さは材質に大きく左右される。
もちろんストロー、すなわち藁を取材にしたゴーレムの強度は他に比べるべくもないし、簡単に燃えてしまうという欠点もある。
だが反面、ストローゴーレムは【念】の受信能力が高く、五寸釘はそれを更に高める。
呪いや術の核に適しているのだ。
今回の様にテレパシーの中継も活用の場の一つと言える。
そして何より、低コスト簡易制作小型軽量が魅力なのだ。


そんな話をしていると自動車は洋館の前に停車。
遠目で見るより大きな洋館を前に、一歩踏み出そうとした時、エンカから提灯を渡された。
「え、あ、うん、ありがとう。エンカ君って優しいのね」
彼女(ロゼッタ)が安否不明であるにもかかわらず、明かりを用意し、前を歩くエンカに驚き、感心。
その気遣いをありがたく受け、パピスヘテプはカンテラをそっとコートの懐に隠して歩くのだった。

館内は薄暗く、広いエントランスの左右には対になって弧を描く階段。
そして正面の奥には重々しい如何にも何かありそうな扉には【入り口】と記されていた。
【この先テレポートなど空間魔法使用不能】
【この先内部破壊を禁止する。戦闘には注意を払う事】
との注意書きと共に。

「……なに?これ。入口?
それになんだろう。気配がするわ。嫌な気配じゃないけど、どこからか特定できない。
いえ、あらゆるところに気配がある様な?」
奥の扉を前に不思議な感覚に首を傾げるパピスヘテプ。
危険だったり【厭】な感じではないのだが、どうにも判別がつかない。

「とりあえずここは触れずに他の部屋を確認しましょ。
念の為見張りに藁人形を一体置いておくわ」
言葉と共に藁人形が影から這い出て、扉の前に立つ。
何かがあれば藁人形がテレパシーで知らせてくれるだろう。

その後、二階に上がり、いくつもの客間、キッチン、ダイニングと暮らすのに不自由のない設備が整っていることを確認するのだった。
「洋館っていうか、ちょっとした宮殿って言ってもよさそうな感じね」
探索の途中で魔法装置を見つけ、館内に光がともったところでパピスヘテプの口からこぼれた感想がこれだった。

193 :フリードリッヒ ◆cOOmSNbyw6 :2013/03/13(水) 23:10:15.53 0
グレンの目はフリードの目
フリードの目はグレンの目
使い魔と魔法使いはお互いの見たものを共有できる
片目をつぶったフリードはその能力を活用しグレンのいる場所を大体把握した
「え?空?なんで空に!?」
意外!グレンがいるのは空!!

『なんでと言われても・・・・ってここからじゃ聞こえないか
 リリィお姉ちゃんフィー坊いたよ』(猫語)
視線を共有することでフリードの居場所を把握するグレン

「それにしても・・・・・・アムリーテさんって普通に歩いて移動するんですね
 もっとローラーダッシュとかホバーとかジェットとかないんですか」
フリードよお前は彼女に何を求めているのだ
そしてどこからそんな知識を得た
そういえば友人のクレイの相棒ロボであるトレスは浮いていたな
あれ地味に重力制御じゃね?とかいろいろ考えているうちに

「っていつの間にか居ないじゃないですかやだぁ!!」
アムリーテとはぐれてしまうフリードだった

194 :リリィ ◆jntvk4zYjI :2013/03/16(土) 16:32:00.51 0
>190-191 >193
グレンを連れて箒にまたがり親指を立てるリリィ。
>「ちょっとリリィ!あんたのテレパシー送信専用でしょ!これを持ってきなさい!」
フルスロットルで飛び出したリリィの背中に、パピスヘテプが放った何かがくっつく。
何気なく掴んで確認しようとしたリリィの指に、五寸釘がぷすっと刺さる。
「痛っ!・・・・・・何これっ、不良品?! 釘が飛び出てるなんて危ないなあ、もう!」
藁人形を知らないリリィは、深く考えないまま釘を抜き取ってしまった。
そして、その両方を胸ポケットに押し込む。ほわんとパピスヘテプの香りが漂う。

「とととっ!!」
よそ見したせいで木に激突しそうになったリリィは、少し高度を上げた。
だが木が密集しているため、林の中に落ちたロゼッタを確認することはできなかった。

>『なんでと言われても・・・・ってここからじゃ聞こえないか
> リリィお姉ちゃんフィー坊いたよ』(猫語)
「そか、よかったー!
 ま、まあ、いつもフリードと繋がってるグレンがいつも通りだったから、心配なんかしてなかったけどね!
 うーん・・・・・・林は木が密集してるね、上から確認するのは無理かー」
『フリード君、テオ君と一緒なの?私は今、丘の上にある洋館近くにいるからねー』
「グレン、危ないからしっかりつかまっててね。ねえ、ロゼッタちゃんのにおいする?」
リリィは高度を下げ、再び道なりに飛び始めた。

そんなテレパシーを送りながら、ロゼッタ捜索をしていると、遠くでロゼッタが「いつもの」ポーズをしているのが見えた。
「居たっ!ロゼッタちゃーん!・・・・・んんん??」
リリィがさらに近づくと、そんな彼女に背後から接近する影が見えた。
「危ないロゼッタちゃん!」

リリィは二人の周りをぐるぐる回りながら、腕を振り上げた。
「そこのからくりの人!ロゼッタちゃんをどうするつもりなの?さっさとその手を離しなさい!
 さもないと、痛い目を見るわよ!」
『エンカにパピちゃん、ロゼッタちゃん居たよ!でも、見覚えないからくりの人に絡まれてる!』
リリィは片手でカバンに手を突っ込むと、最初に触れたキャンディ袋を掴んでアムリーテに投げつけた。

195 :テオボルト ◆e2mxb8LNqk :2013/03/16(土) 17:43:54.84 0
海岸から、所変わって林の中。
「おや?…………おかしいな、はぐれたか」
リリィからテレパシーを受けた海岸組一行だったが、まずアムリーテが駆け出した。
その後を早歩きでもってテオボルトは追いかける。
だがしかし、お約束の如く途中で見失い、フリードや青葉達ともはぐれてしまった。

その結果、あちこちに生徒が点在するような形となってしまっている。
今はロゼッタの近くに集まってきているようであるが、テオボルトは彼女らまでの道筋を反れていた。
革靴では少々歩きにくい地面だが、学園から灯台までも難なく歩いてきた彼だ。
早足のペースも落とさない、疲れ知らずの様子を見せながらざくざくと歩き続けていると。

「お、終わりが見えてきたかな。どれ、何処に着いたか……」
木々の間から、外の光が漏れてきた。
フードの位置を直し、日光を浴びぬように気を付けてから、駆け足で林から出る。

現れたのは大きな湖。テオボルトの居る位置の対面には丘、その上の洋館。
そして、遠目からでも停車されているタンポポ色の塊がよくわかる。
林を抜けた少しの達成感を湖の周りを見回してみるが、誰もいない。
海岸組では、テオボルトが一番乗りらしい。
「……参ったな、団体行動っていうのも存外に難しい」
ちょっとだけ難しい顔をした。

「さて、私は館に向かうかな。件の人も、おそらくミス・クラスタが見つけるだろう。心配は無用だろうし……」
探知系の魔法は修めていないテオボルトが今向かっても、悪戯に二次災害が起きるだけだろう。
そういう判断を下し、テオボルトは当初の予定通り館へと足を進めることにした。

196 :名無しになりきれ:2013/03/16(土) 21:53:57.23 0
館を探索していると、どこからか足音が小さく、しかしはっきりと聞こえてくる。
それは確かに人の物だろうが、今館にいるであろう人物の物とは一致しない。
そして明かりが点いた事で、床にうっすら積もった埃と真新しい足跡が露になった。
どうやら先客がいるらしい。

197 :アムリーテ ◆apJGY8Xmsg :2013/03/16(土) 22:44:31.69 0
青葉たちにフリードリッヒ、そしてテオボルトと逸れてしまったアムリーテ・クラスタは
空から箒で接近するリリィにむけて、ロゼッタを拾ったと高々と持ち上げてアピールする。
しかしリリィは、アムリーテがロゼッタを襲っていると勘違いし
腕を振り上げながら二人の周りをぐるぐると旋回。
そんなリリィの思いもよらない行動に、アムリーテはアイフィルター内の照準レクティルで彼女を捕捉。
観察を重視した。

――不気味に風でなびく金色の髪に、箒に乗せた猫(二人乗り)
おまけに胸ポケットから覗く藁人形。
その姿は所謂「魔女」ちいさい魔女だった。

(この子なんですか?とてもこわい子です。不良なのでしょうか…」
その身に戦慄を覚えたつつも、アムリーテは動けないまま。
子どもにも色々な種類があることを理解する。

>「そこのからくりの人!ロゼッタちゃんをどうするつもりなの?さっさとその手を離しなさい!
 さもないと、痛い目を見るわよ!」

(ええ?)
突然、キャンディ袋が飛んできた。きっとあれは、アムリーテに痛い目を見せるものなのだ。
すでに回避は間に合わない。ならばフォトン・レイを応射し迎撃しようか?
否、それは否である。センセイに子どもを傷つけてはならないと教えられた。
必殺兵器の射線上には怒りで顔を上気させているリリィの姿がある。
それにあの袋がアムリーテを破壊するほどの威力を持っている代物ならば、
この手で掲げあげているロゼッタもただではすまないだろう。
だからアムリーテは、ロゼッタを地に下ろすと覆いかぶさり、彼女の盾となった。
続けてその背中にボサッと落ちるのはキャンディ袋。
びくっとなったアムリーテの背中から全身に戦慄が走る。
しかし、しばらく経っても何も起こる様子はなかった。
不発?手を後ろに回して袋の中を確認する。だがその中には複数の小さな球体が入っているのみ。

「だいじょうぶですか?ロゼッタ。はやくここから逃げてください。
あなたのお友達は、私を破壊するつもりです」
四つん這いで背中にキャンディ袋をのせたままアムリーテはロゼッタに言い
次にリリィを見つめて強い口調で言う。

「私はこの島で行方不明となったと思われるセンセイに、もう一度お会いするまで、破壊されるわけにはまいりません。
それゆえ子どもの貴女と戦うことは不本意ですが、このままスクラップとなるわけにもまいりません。
ですからお仕置きモードを発動いたします!覚悟しなさい不良のこども!」
とは言ったものの、四つん這いのまま何もできないアムリーテであった。

198 :ロゼッタ ◆jWBUJ7IJ6Y :2013/03/17(日) 19:38:19.90 0
>191>194>197
> 「危ないロゼッタちゃん!」
ロゼッタは自分に接近してくる何者かに叫んだ。
「あ た い に 近 寄 る な ー ー っ!!」
ロゼッタは、自分にこうも迷いなく近づいてくるのは保険医しかいないと思っていた。
一般の生徒や教師はロゼッタの性格と魔法を知っているので軽々しく近づかないし、
保険医はガチレズの変態だからだ。ロゼッタはそんな保険医が大嫌いである。
だからここまで拒否反応を示したのだが、現れたのは保険医ではなかった。
「うわーっ!?何なんだ、あんたはーーっ!!」
アムリーテは軽々とロゼッタを持ち上げ彼女の運搬をはじめる。
ロゼッタは肘鉄で彼女の顔を打ったが、
まるで堪えていないどころかロゼッタの肘の方が真っ赤になっている。

> リリィは二人の周りをぐるぐる回りながら、腕を振り上げた。
> 「そこのからくりの人!ロゼッタちゃんをどうするつもりなの?さっさとその手を離しなさい!
>  さもないと、痛い目を見るわよ!」
> リリィは片手でカバンに手を突っ込むと、最初に触れたキャンディ袋を掴んでアムリーテに投げつけた。
> (ええ?)
> アムリーテは、ロゼッタを地に下ろすと覆いかぶさり、彼女の盾となった。
> 続けてその背中にボサッと落ちるのはキャンディ袋。
> びくっとなったアムリーテの背中から全身に戦慄が走る。
ロゼッタにはこれらの一連のやり取りの意味がまるでわからなかった。
ロゼッタ目線では、突然知らない女に押し倒されたも同然である。
ロゼッタにそっちの趣味はないのだ。
> 「だいじょうぶですか?ロゼッタ。はやくここから逃げてください。
> あなたのお友達は、私を破壊するつもりです」
「………??」
ロゼッタは言われなくてもアムリーテから逃げるつもりだ。
アムリーテの下から仰向けのまま這い出ると、一目散に林の中へ走っていった。
エンカの自動車が走ったルートから逸れた、もっと樹木の生い茂った方向へ、である。

199 :エンカ ◆jWBUJ7IJ6Y :2013/03/17(日) 19:41:18.36 0
>192>196
> 館内は薄暗く、広いエントランスの左右には対になって弧を描く階段。
> そして正面の奥には重々しい如何にも何かありそうな扉には【入り口】と記されていた。
> 【この先テレポートなど空間魔法使用不能】
> 【この先内部破壊を禁止する。戦闘には注意を払う事】
> との注意書きと共に。
> 「……なに?これ。入口?
> それになんだろう。気配がするわ。嫌な気配じゃないけど、どこからか特定できない。
> いえ、あらゆるところに気配がある様な?」
> 奥の扉を前に不思議な感覚に首を傾げるパピスヘテプ。
「どう考えてもよぉ、入ったら何か危ない目に会いそうな匂いがプンプンするよなーっ。
 この中に化物でも住んでるんじゃあねーのか?関わり合いになりたくねぇぜ、俺はよ〜」
とエンカ。
> 「とりあえずここは触れずに他の部屋を確認しましょ。
> 念の為見張りに藁人形を一体置いておくわ」
> 言葉と共に藁人形が影から這い出て、扉の前に立つ。
「頼んだぜ、ジロー」
エンカはパピスヘテプの藁人形にそう勝手に名前をつけると、その場をパピスヘテプと共に後にした。
ちなみにリリィに張り付いている方の藁人形は、エンカの頭の中で勝手にイチローという名前がつけられていた。

エンカ達は洋館の二階に上がった。パピスヘテプはいくつもの部屋の様子を確認している。
エンカは客間の一室に入り、持ってきた荷物一式を部屋に置かれているアイテムボックスへ預けた。
エンカはこの時知らなかったのだが、このアイテムボックスはマジックアイテムで、
別の場所に設置してあるアイテムボックスからも預けたアイテムを取り出すことができるようになっているのだ。
つまり、館内のマジックボックスは全て繋がっているのである。

突然部屋に明かりが灯った。パピスヘテプがそのための魔法装置を見つけたからだ。
エンカはもう不要となった提灯(ちょうちん)をしまい、部屋の様子を改めて確認した。
部屋にはアイテムボックスと、机とベッドが置かれている。
ベッドメイクはきちんとされており、特にエンカがロゼッタを寝かせるために手をかける必要はなさそうだった。
机の上にはタイプライターとインクリボンが置かれている。何やら文章が打たれているが、エンカの興味をひかなかった。
> 「洋館っていうか、ちょっとした宮殿って言ってもよさそうな感じね」
そんなパピスヘテプの感想が部屋の外から聞こえてきた。
エンカは客間の外へ出て彼女の姿を探したが、見えなかった。
「パピちゃ〜ん?」
エンカは足音を頼りに彼女を見つけようとした。小さいが、しかし遠くからはっきりと足音が聞こえてくる。
> 『エンカにパピちゃん、ロゼッタちゃん居たよ!でも、見覚えないからくりの人に絡まれてる!』
「な、なんだってーっ!?」
リリィのテレパシーを聞いたエンカは驚きの声を上げたが、リリィに聞こえようはずがない。
リリィと交信するにはパピスヘテプの藁人形が必要である。
「パピちゃん!さっきリリィからテレパシーが…」
そう言いながらエンカは遠くから聞こえる足音を追いかけた。
それがパピスヘテプの足音でないと気づかずに………

200 :パピスヘテプ ◆/TZT/04/K6 :2013/03/17(日) 23:34:17.71 0
>『エンカにパピちゃん、ロゼッタちゃん居たよ!でも、見覚えないからくりの人に絡まれてる!』
そのテレパシーを聞いたのは館の詮索の途中。
広いキッチンで影から今日二本目のホットドッグとワインを出して口に運んでいるところだった。
あまりの内容に口に含んでいたワインを吹き出すほどに。

「え?ええ?ロゼッタ先輩に絡む?いくらからくりだからってそんな命知らずな!」
絡まれたロゼッタよりもロゼッタに絡むからくりがいる事に驚いたのだ。
意識を集中し、リリィの持つ藁人形にシンクロさせていく。
同調させることで藁人形の視点から様子を見ようとしたのだ。
が、うまくいかなかった。
知らずとはいえリリィが藁人形の五寸釘を抜いてしまっていた為、受信感度が悪くなっていたのだ。

「あれ?ああ、仕方がないわね。
『リリィ、すぐにエンカ君に行ってもらうから、フリード君やテオ君が来るまで空から見てて位置を中継してね。
ロゼッタ先輩に絡めるくらいのからくり人形なんてきっと恐ろしく危険よ!』」
意識を飛ばせないのであればせめて返答だけでもと念を送るのだが

####################################

リリィの胸ポケットに入れられていた藁人形がもそもそと這い出してくる。
それはまるで墓場から出てきた幽鬼のような頼りない動きでありながら、それでも確実に。
顔の部分が大きく割れて口の様にカパカパと動き、オドロオドロシイ声が流れ出す。
『リリィ…ザッザザ……逝ってザザ……空ザッ…ぃてて……イチ…し…ね
ロゼッタ……あ…ばせ……ザザザザ……危険……』

五寸釘を抜いたおかげで感度も悪く、所々ノイズが入り中途半端な受信になってしまった。
そして藁人形は胸ポケットから上半身をはみ出させ、片手に持った五寸釘を振るのだった。
もちろんこれは五寸釘を抜かれてしまった藁人形が原因を伝えようとしているのだが、この行動がどのように映るかはわからない。

#####################################

リリィにテレパシーを送った後、パピスヘテプは部屋を出る。
「おーい、エンカ君。リリィのテレパシー聞いたよね?
ロゼッタ先輩に手を出せるようなからくりって結構危険かもしれないし、ここは見ているから迎えに行ってあげてくれない?
こっちらかも向かうって藁人形通じて伝えておいたから」
自分の彼女の消息が知れた途端に襲われているとなっては彼氏としては胸中穏やかではないだろう。
パピスヘテプとしても冒険の予感にうずうずしてしまうところだが、やはりここは彼氏であるエンカを行かせてやるべきだと思ったのだ。

この声は謎の足跡を追いかけるエンカに届くのだろうか?

201 :フリードリッヒ ◆cOOmSNbyw6 :2013/03/18(月) 20:56:40.24 0
>194
>『フリード君、テオ君と一緒なの?私は今、丘の上にある洋館近くにいるからねー』
とりあえずグレンのもとに向かうことにしたフリードリッヒ
謎の洋館も気になるがやはり自分のパートナーが第一である
「まあいざとなったらグレンの持ってる契約カードで呼んでもらえばいいんですけどね」
だがしかし案山子今グレンはリリィの持っている魔法の箒の上
すなわち空中である
故に今フリードを召喚なんかしたら呼ばれたフリードは地面に向かって真っ逆さまに落ちてしまいかねない
よしんば魔法の箒をつかむことに成功しても重量オーバーでリリィやグレンを巻き込んで落ちてしまうだろう
「まあ話によれば洋館の近くに居るらしいのでどちらにせよ方向は同じでしょうが」
と遠くに見える洋館をめざしダカダカダカダカ・・・・・・・・と妙な足音を立て上半身を一切動かさずに走り出すフリードリッヒ
いいから普通に走ってほしいものである

しばらく走るととんでもないものを見つけてしまった
なぜか四つん這いになっているアムリーテとそれを威嚇しているリリィである
「パートナーであるグレンの魔力の波動を追ってきてみればいったいどういう状況なんですかこれ?
 っていうかグレン僕と感覚を共有してるんだからアムリーテさんが危険な存在じゃないって知ってるはずですよね?」
『黙ってたほうが面白そうだったからついカッとなってやった
 特に反省はしていない』(猫語)
まさに外道である
「アムリーテさんもそのポーズはなんですか?トランスフォームの途中かなんかですか?」
『3体合体6変化ぐらいしてくれそうだよね』(ケットシー語)
「まあ僕たちも合体ぐらいできますから不思議じゃないんですけど」
『で・・・・残りのみんなは?』(猫語)
「さあ?途中ではぐれました・・・・・・でもこの地面に残っているフルプレートアーマーの人が歩いた跡みたいな
 足跡を手繰れば自然に此処に着くんじゃないですか?」
全身金属製の体の人が歩けば地面に深い足跡が付く
故にアムリーテを探すのは簡単なはずである
と言ってもフリードが捜していたのはあくまでグレンであってリリィでもアムリーテでも無いのだが
「そういえば前々から思ってたんですがロゼッタさんって僕らを地球人とか言いますけど
 この世界って本当に地の球なんでしょうかね?そもそも丸いんでしょうか?」
『少なくとも土星には猫がいるよ。地球制服を狙ってるよ』(猫語)
ぶちゃけファンタジーなんだからガチで亀の上の象が世界を支えていてもおかしくないのだが
一般的にそれは基地外の発想である
「まあ僕は先に洋館のほうに行ってますからグレンは頑張ってリリィさんの誤解を解いてくださいね」
『え〜正直めんどくさいよ』(猫語)
そうして洋館の方角へ走っていくフリードリッヒ

そして洋館の前に立ったフリードリッヒ
> 【この先テレポートなど空間魔法使用不能】
> 【この先内部破壊を禁止する。戦闘には注意を払う事】
「ええと戦闘に気を付けろ・・・・って戦闘になる要素があるってことじゃないですかやだぁ!!
 でも内部破壊禁止ってことは何かペナルティがあるんでしょうか?
 単純に弁償とかじゃなくて家具を傷つけたら家具と同じダメージを食らうとか・・・・・・」
フリードリッヒは考えすぎなのだろうか?いやしかしこの世界は魔法の世界何があるのかわからないのだ

202 :リリィ ◆jntvk4zYjI :2013/03/20(水) 01:54:48.52 0
>1197-198- 200-201 

>「私はこの島で行方不明となったと思われるセンセイに、もう一度お会いするまで、破壊されるわけにはまいりません。
それゆえ子どもの貴女と戦うことは不本意ですが、このままスクラップとなるわけにもまいりません。
ですからお仕置きモードを発動いたします!覚悟しなさい不良のこども!」
「えー・・・・・・・・え?あれ?何で私が不良なのよ?
 だいたい貴方が、ロゼッタちゃんを捕まえて、無理やりどこかに連れて行こうとしてたから!
 私はロゼッタちゃんを助けようと思っただけで、別に貴方を壊したいなんてこれっぽっちも思ってないし!!」
 
やいのやいのと言い合っていると、そこに天使のような美貌の救世主が光臨した。
彼は、とても人間とは思えないフォームで走って来たのだが、馴れっこのリリィがその程度で動じるわけが無い。
「フリード君大変なの!
 ロゼッタちゃんを誘拐しようとしたからくりの人が、私が不良だからお仕置きするって言うの!」
>「パートナーであるグレンの魔力の波動を追ってきてみればいったいどういう状況なんですかこれ?
> っていうかグレン僕と感覚を共有してるんだからアムリーテさんが危険な存在じゃないって知ってるはずですよね?」
>「『黙ってたほうが面白そうだったからついカッとなってやった
> 特に反省はしていない』(猫語)
「・・・・・・・・・・。」
リリィは話についていけず、ぽかんとした。

203 :リリィ ◆jntvk4zYjI :2013/03/20(水) 01:56:13.41 0
彼女を置き去りにして、フリードはからくりの人に、アムリーテさんと呼び、友好的に話しかけている。
どうやらすでに、フリードとからくりアムリーテの間には面識があるようだ。
(・・・・・・・・・)
リリィが無言でぷるぷる震えていると、フリードとグレンの間で何らかの話がついたようだ。
>「まあ僕は先に洋館のほうに行ってますからグレンは頑張ってリリィさんの誤解を解いてくださいね」
>『え〜正直めんどくさいよ』(猫語)
「めんどくさいじゃないわよグレン、つまり、あのアムリーテってからくりの人とフリード君は、すでに友達だったの?
 じゃ、じゃあ、もしかしてアムリーテさんがロゼッタちゃん捕まえてたのって、まさか私のテレパシーを聞いたから?
 わーん、どーしてそういう大事なことを早く教えてくれないのよー!!」
もし、アムリーテの口から事の経緯を聞かされれば、リリィはすぐに彼女の言い分を信じ、館へ行かないかと誘うだろう。
逆にお仕置きモードが実行されるとしたら、リリィは隙を見てとっとと逃げ出すだろう。

204 :アムリーテ ◆apJGY8Xmsg :2013/03/21(木) 01:04:29.09 0
>198
>「………??」
「あ!待ってです」
ロゼッタはアムリーテの下から這い出ると、一目散に林の中へ走っていった。
エンカの自動車が走ったルートから逸れた、もっと樹木の生い茂った方向へ!
そして、それを見たアムリーテは申し訳ない気持ちでいっぱいになってしまう。
あろうことかロゼッタを驚かせてしまった。
それに驚いてしまった彼女は、樹木の生い茂った方角へとさらに逃げ出してしまう始末。
だからアムリーテの頭からは煙がのぼる。

(困ったですセンセイ、わたしはどうしたらよいですか…)

>202>203
>「えー・・・・・・・・え?あれ?何で私が不良なのよ?
 だいたい貴方が、ロゼッタちゃんを捕まえて、無理やりどこかに連れて行こうとしてたから!
 私はロゼッタちゃんを助けようと思っただけで、別に貴方を壊したいなんてこれっぽっちも思ってないし!!」

「あなたは痛い目をみせると言って、私に謎の袋を投げつけました。
それに箒に二人乗り。それも私の大嫌いな毛むくじゃらの猫と。
おまけに胸ポケットには不気味な藁の人形を詰め込んでいます。
そう、その姿はまるで悪魔、悪魔の子です。不良で悪魔の子です!」
真っ直ぐな目で睨みつけるアムリーテ。
その視線の先。リリィの胸ポケットから這い出してきた藁人形は
不気味な呪詛のような言葉を紡ぎだしており
なんだか「しね」とか言っているようにも聞こえる…。
そんな不快な感じにアムリーテは灰色の瞳を赤い攻撃色に変化させるのだった。

>201
そんななか、現れたのはフリードリッヒ。
彼はリリィにアムリーテが危険な存在ではないことを説明してくれていた。
いっぽうのリリィはというと、そんな会話を聞いてか聞かずにぷるぷると震えている。

>「アムリーテさんもそのポーズはなんですか?トランスフォームの途中かなんかですか?」
>『3体合体6変化ぐらいしてくれそうだよね』(ケットシー語)
>「まあ僕たちも合体ぐらいできますから不思議じゃないんですけど」

「……いえ、フリードリッヒ。これは防御体勢です。
私は四つん這いになって背中の傾斜角度を調整することにより
攻撃物の装甲面に対する運動エネルギーを分散させるつもりでした。
なので決してこれはトランスフォームでも合体行為でもありません」

大真面目に答えるアムリーテ。赤かった瞳が灰色に戻っている。
二人の会話でなんとなくアムリーテにもことの成り行きがわかってきたようだ。
今までのことはアムリーテの恐ろしいほどの勘違いだったことに。

「すいません。どうやら勘違いさせてしまったのは私のほうでした。ごめんなさいです」
そう言ってアムリーテは四つん這いからさらに縮こまって綺麗な土下座をみせた。
きっとリリィは傷ついている。そう思うと居た堪れなくなる。
まして、子どもを見てくれで悪い子と判断してしまうなんてセンセイに会わせる顔がない。
でもそんなアムリーテに、リリィは館へ行かないかと誘ってくれた。

「ありがとです。それでは私も館にいきます。あなたたちには本来の目的があるのですよね。
それならば私は、みなさんのお役に立ちたいです。
ですがロゼッタはどうしましょう。私は彼女を驚かせてしまいました。
彼女の位置は子どもレーダーで捕捉することはできますが、私の足では最早捕らえることはできないでしょう」

205 :アムリーテ ◆apJGY8Xmsg :2013/03/21(木) 01:09:53.47 0
アムリーテが洋館に辿り着いたのは、時間的にはいつごろになるのだろうか。
フリードリッヒの後になるには確かなこと。それに逸れてしまったテオボルト、青葉たちは?
子どもレーダーは洋館の中にいくつかの反応を示しているが、確定はできないでいた。
それに子どもレーダーも、とあるものの内部に存在する子どもだけは見つけられない。

洋館の入り口にはエンカのジドウシャがあった。
アムリーテは辺りに人がいないか確かめたあと、頬を赤らめながら指先でそのボディを撫でる。
その後、フロントに頬をすりすり。まだちょっとエンジンがあたたかい感じが心地よくて
その場にぺったりと尻餅をついてしまう。が、人目を気にして早々に立ち上がると洋館の中へ。

>【この先テレポートなど空間魔法使用不能】
>【この先内部破壊を禁止する。戦闘には注意を払う事】

洋館のなか、煌煌と輝くシャンデリアが照らすエントランス。
その最奥の扉には入り口と記されており、上記のようなことわりがあった。
あやしい。そう思う。もしかしたらこの先にセンセイが?
かすかな期待が沸き起こるが、勝手なことをするのも気がひける。
エントランス内にはフリードリッヒもいて何やら考えているようだった。

少し前にテオボルトは、子どもたちは課題があってこの島に来たと言っていた。
それは何か。もう少し詳しく聞いてみよう。そう思ったアムリーテはフリードリッヒに近づこうとする。
が、そのとき、足元が気になった。ふと床を見ると、埃まみれの中に足跡がある。
はて、この洋館は今まで人が住んでいなかったのだろうか。
それとも主が掃除が嫌いだった?そんなまさか…

「く、くしゅん!」
舞い上がった埃がアムリーテの鼻腔を刺激する。
100万馬力のクシャミが空気砲となってエントランスを直進する。
埃はアムリーテの天敵なのだ。

「ここは、だめです!この埃は絶対にダメです!子どもたちの肺が汚れてしまいます!」
アムリーテは階段の下に扉をみつけて奥に進む。たぶんトイレなどの横に清掃道具もあるはず。
そしてしばらく下のフロアをうろちょろしたあと、モップを見つけるとエントランスの清掃を開始。
まるでこの洋館に住む気まんまんの様子でせっせと掃除を始めたのである。

206 :青葉 華菜 ◇UeaUYwi1Nw:2013/03/21(木) 01:46:43.87 0
>「友達の友達は知らない人じゃないですかやだぁ」
「ははは、しかし僕は『そういう存在』だからね。近すぎず遠すぎない。そういう存在なんだよ」
>「青葉・・・・まさか青葉さんブレさんの同類になったんですか!?
 でも女の人って月のモノとかあるし……月のモノがなんだかは知りませんが
 ずいぶんと思い切りましたね」
「月でも星でもいいですけれど、今の私は『肉体』のみならず『精神』『魂』も『女性化』していますの。
……人間が『肉体』『精神(霊)』『魂』の三原質で構成されていることは錬金術で勉強しましたよね?
つまり今の私は完全に女性というわけですわ。…まぁ、まだテスト中なんですけどね。自分の体で投薬実験ですわ。
もしよろしければあなたも実験台になってみます? 勿論副作用もありますわ。
というか月とやらが何なのかは私も知りませんけどね。記憶や知識はそのままですもの」
女性化した青葉はそう答える。まあ、会話の流れからしてフリードが実験台に名乗り出ることはないだろう
>「僕もカブトムシとか甲虫系は好きですけどうねうねした類はちょっと」
「僕は蟲なら何でも好きだよ。キラキラしてようがうねうねしてようがうじゃうじゃしてようがカサカサしてようがね」

>「私はテオボルト・ジェナス。この格好は気にしないでくれ、日光が苦手なものでね」
「日光が苦手…? もしかして君、ヴァンパイアか何かかい?」
言葉がそう尋ねる。彼女は無類の妖怪・怪談・都市伝説マニアなのだ
>「……まあいい。さて、お嬢さん方も要件は課題なんだろう? 丘の上に見える洋館に行こう、何かありそうだ」
「ええ、もちろんですわ」
青葉が答える

>「はい。私のボディは自慢の超鋼。それに肉体部分は魔法の人口樹脂なのです。
しかし、生メカしいとは…。お褒めにいただき、まことにエレキ照レルでございます」
「魔法の人工樹脂…。しかしエレキ照レルとは可愛いな。ふふふ」

>「はじめまして。私の名前はアムリーテ・クラスタといいます。よろしくお願いいたします。
それと私も虫が好きです。堅い甲殻は私とボディと御揃いです。
キラキラとした光沢を放ち、それでいて身を守る強靭さを兼ね備えています。
それはとても美しく素晴らしいことと私は信じています」
「おやおや、話が分かるじゃないの! お礼に後でかっこいい虫たちを沢山見せてあげるよ!」
若干テンションが上がる蟲野

>「あの、先ほど高速で移動する四人の子どもの反応が、私のレーダーにありました。
ですがその中の一人の子どもがどこかに取り残されてしまっているようです。
残りの三人の子どもは無事に洋館に辿りついているようですが。。
もしかして一人の子どもだけ捨てていかれたのでしょうか?
私にはそのようなことは見過ごせません。
センセイは友愛というものはとても大切と教えてくれたからです」
「そうだね、じゃあ僕の蟲を飛ばして調べてみようか。探索は得意分野だからね」
蟲野の体から大量の蟲が這い出て飛んでいく。蟲嫌いは卒倒しかねない光景である
「もしまずい状況でしたら私のテレポートで移動してあげましょう」

そしてなんやかんやでアムトリーテとはぐれ、そんなこんなで洋館の前にたどり着いた。

> 【この先テレポートなど空間魔法使用不能】
> 【この先内部破壊を禁止する。戦闘には注意を払う事】
「え、何ですのこれ。私に不利なルールではありませんの…」
「僕にも不利だよ。シロアリ出したら終わるじゃん…」
「僕には特に被害はないね」

207 :エンカ ◆jWBUJ7IJ6Y :2013/03/21(木) 21:16:15.07 0
>200
> 「おーい、エンカ君。リリィのテレパシー聞いたよね?
> ロゼッタ先輩に手を出せるようなからくりって結構危険かもしれないし、ここは見ているから迎えに行ってあげてくれない?
> こっちらかも向かうって藁人形通じて伝えておいたから」
残念ながらパピスヘテプの声はエンカに届かなかった。
エンカが謎の足音を追って彼女から離れてしまったからだ。
いや、もしかしたらもうこの時から事態は動いていたのかもしれない。
パピスヘテプの声が、エンカへ届かないように…

「お〜い、パピちゃ〜ん!」
エンカは何度も足音の方へ向けてそう呼びかけた。
こうやって何度も呼びかけているのだが、向こうからの返事は一切無い。
ヒタヒタ、ヒタヒタ……足音は時に早く、時にゆっくりと、まるでエンカを館の奥へ奥へと誘っているようだ。
「パピちゃんよ〜、遊んでいる場合じゃあないんだぜ〜?
 リリィと交信できるのはパピちゃんだけなんだからよ〜」
その時、足音が曲がり角の先でピタリと止まった。
エンカは自慢の髪型を整えると、もったいぶった様子で曲がり角から顔を出した。
「まったく、パピちゃんたらお茶目さんなんだからよぉ。
 ……………!?」
曲がり角の先を見たエンカの目に飛び込んできたのは、パピスヘテプの姿ではなかった。
エンカは目の前のそれが何なのか全くわからなかった。
しかし、エンカの五感が確かな事実をエンカへ伝える。
これは危険である、と。
「じょ、冗談じゃあねーぜ…!早くみんなにこの事を教えねぇと…!」
エンカはすぐにその場から逃げようとした。
が、その瞬間黒い影がエンカに飛びかかった。
「うおおおおおおっ!?」
残念ながらエンカの悲鳴は誰にも届かなかった。
エンカが謎の足音を追ってみんなから離れてしまったからだ。
もうこの時から事態は動いていたのだ。
エンカの叫びが誰にも届かないように…

> 広いエントランスの左右には対になって弧を描く階段。
> そして正面の奥には重々しい如何にも何かありそうな扉には【入り口】と記されていた。
> 【この先テレポートなど空間魔法使用不能】
> 【この先内部破壊を禁止する。戦闘には注意を払う事】
> との注意書きと共に。
エンカが再び姿を現したのは、しばらく時間がたってからだった。
というのも、既にアムリーテがエントランスの掃除を始め、
フリードや青葉達が【入口】の前に立っていた。
「よーっ!お前らやっと来たのかよ!あんまり人を待たせんなよなーっ!」
見るとエンカはエントランスの右側の階段を歩いて降りてくるところだった。
「なんだ、なんだぁ!?お前ら何つっ立ってんだよ?もしかして、この注意書きを見てブルってんのかーっ!?
 こんな注意書きはこけおどしだっつーの!ほらよ!」
エンカは【入口】の前まで来るとそう言って注意書きを叩き、重い扉を押して開いた。

【入口】の向こうにあったのは大きなテーブルだった。
その上には目にも鮮やかなご馳走の数々が乗っていた。
テーブルは大きく、椅子の数も、今洋館にいるメンバーが座るには十分あった。
「さぁさぁ!こうやってご馳走が用意されてるんだからよーっ!みんなでたらふく食べようぜーっ!」
エンカは手近な椅子に腰掛けると、目の前のポークステーキをむしゃむしゃと食べ始めた。
勘の良い者ならエンカがおかしいことに気づくかもしれない。
しかし、何かしらの方法で調べたとしても、彼は間違いなくエンカであると知るだろう。
「どうしたんだよーっ!?みんな食べねぇのかぁ?…それとも、何かおかしなところでもあるのかよ?」
エンカは恐い目をしてみんなを見た。

208 :パピスヘテプ ◆/TZT/04/K6 :2013/03/21(木) 22:32:28.48 0
広い館内をエンカを探し無為に時間を浪費する間に事態は大きく動いていた。
それに気づいたのはエントランスでアムリーテのくしゃみという名の爆発音が響き館が揺れた時の事であった。
「えーとっ……何がどうなったの?」
ほどなくしてアーチ状の階段の左側の上に姿を現した。骨付き肉を咥えたパピスヘテプの目に映ったものは
凄まじい勢いでお掃除をしているカラクリゴーレム
見慣れる少女二人と、一応顔は見たことがある程度の蟲野、そしてフリードだった。

「フリード君、すごい音したけど何があったの?
それにリリィのテレパシー聞いた?ロゼッタ先輩やリリィはどうしたの?
後エンカ君がどっかいっちゃって探しているんだけど」
とりあえずは一番顔見知りのフリードに問いかける。
エントランスで何があったのか?
見張りに設置しておいた藁人形は百万馬力のくしゃみで木端微塵になって既にアムリーテに片づけられており、知る術がないのだから。
そしてリリィとロゼッタのその後について。
まさか今お掃除しているアムリーテがロゼッタに絡んだカラクリとは思いもしていなかった。

「えーと、蟲野君、だっけ。それからこちらの女の子は、どこかで見たことがあるような?」
蟲野とは顔を知っている程度ではあるが初対面ではない。
青葉ともそれなりに顔見知りなのだが、今は記憶以外女体化している為、本人だとは気付いていないようだ。
「そちらは初対面よね。はじめまして、死霊科のパピスヘテプよ。よろしくね。
あとお掃除しているあのゴーレムは二人の内どちらかのなの?」
霊園とは完全に初対面。
青葉ともどもに挨拶をし、自己紹介を終えてから、アムリーテを見ながら二人に尋ねた。
パピスヘテプはアムリーテをカラクリゴーレムとして認識しており、自我があり一個の意志があると気付いていなかったのだ。

右側の階段の上からエンカが現れたのは、それぞれと挨拶をしているところだった。
>「なんだ、なんだぁ!?お前ら何つっ立ってんだよ?もしかして、この注意書きを見てブルってんのかーっ!?
【入り口】の前に来たエンカの行動にパピスヘテプは驚いた。
何の躊躇もなく、それどころかみんなを焚きつけるかのようにその思い扉を押し開いたのだから。

「え?ええ?エンカ君どうしたの?
さっきは危険な臭いがする、化け物でも住んでいるんじゃねえの?関わりあいたくないって言ってたのに?」
豹変ぶりに驚きの声を上げるパピスヘテプ。
だが、だからと言って止めるわけでもなく、エンカに続き扉をくぐってしまう。

役割的にも生来的にもパピスヘテプは冒険や厄介ごとに首を突っ込むのが大好きなのだ。
実をいうとこの扉には見た時から惹かれてやまなかった。
今まではロゼッタの事もあり自重していたのだが、事ここに至ってはその足を止める事などできはしない。

大きなテーブルに豪華な御馳走。
思わず目を輝かすのだが違和感を感じた。
「……入口の注意書きってブラフだったみたいね。でも、何のために?」
そういいながら影からワインを取出し、食前酒と言わんばかりに一口飲んだ。
「私の影は私の体積と同じだけ亜空間になっていてこうやって荷物入れたりしていられるんだけど、一応空間魔法の一種なのよね」
つまり入口に掲げられていた注意書き【この先テレポートなど空間魔法使用不能】が偽りであったことを現している。

一つ疑念が生まれると様々な疑念が生まれるものだ。
わざわざ注意書きがしてあった意味。
この館に到着する時間もはっきりしていないのに、出来立ての御馳走が用意されていること。
なによりも
>「どうしたんだよーっ!?みんな食べねぇのかぁ?…それとも、何かおかしなところでもあるのかよ?」
「おかしいって、エンカ君心配じゃないの?自分の彼女であるロゼッタ先輩が自動車から飛び降りたっていうのに。
リリィのテレパシーも聞いたでしょ?
すぐに助けに行ってもらおうと思ったけど見つからないし、もしかして先に一人で行っちゃったかもと思ってたのに」

灯台で合流してから自動車に乗るように勧めるエンカ。
ロゼッタが自動車から飛び降りたのを知り自責に駆られ焦燥するエンカ。
館についてから提灯を渡し、自分の前にでて探索するエンカ。

これまで見たエンカから受けた印象からは想像できないエンカの行動に、そして睨みつける怖い目に疑問を持たずにはいられなかった

209 :フリードリッヒ ◆cOOmSNbyw6 :2013/03/22(金) 10:43:25.24 0
>202-208
>「ここは、だめです!この埃は絶対にダメです!子どもたちの肺が汚れてしまいます!」
「ほうほうあれが有名なメイドロボというやつですか」
何か納得をしたような顔をするフリードリッヒ
「どうやらアムリーテさんは家事をするために作られた存在のようですね」
ンなわけがないだろう

>「フリード君、すごい音したけど何があったの?
それにリリィのテレパシー聞いた?ロゼッタ先輩やリリィはどうしたの?
後エンカ君がどっかいっちゃって探しているんだけど」
「つまりかくかくしかじかいあいあふるぐあんというわけですよ」
とフリードリッヒはいままであったことを説明する

>「私の影は私の体積と同じだけ亜空間になっていてこうやって荷物入れたりしていられるんだけど、一応空間魔法の一種なのよね」
「本当だ僕の懐の魔法陣も使えます」
フリードの胸に刻印されている魔法陣は”家族共有”の亜空間 通称物置 に繋がっている
今まで明らかに入るわけがない大きさのものをフリードが取り出せたのはこの為だ
決してフリージアさんが意味の無い胸チラをするための設定ではないよ!本当だよ!!

>「どうしたんだよーっ!?みんな食べねぇのかぁ?…それとも、何かおかしなところでもあるのかよ?」
「何もかもすべおかしいですよ
 何故かすでに用意されている料理とか
 もしかしたらミュータントミートボールの類かもしれませんし
 そんな怪しい料理に手は付けられませんよ」
食べたら羽とか角とか生えないだろうなと疑うフリードリッヒ
もしここにグレンがいたらフリードが止めるのを聞かずに肉に齧りつくだろう
なぜならグレンは腹ペコキャラだからだ
「とりあえずセンスマジックを掛けて魔法が掛かってるか調べましょう
 僕は使えませんがこれだけ魔法使いが揃ってるんだから誰かが使えてもおかしくない筈です」
フリードリッヒはタング(知らない筈の外国語を読む魔法)とかセンスイービル(悪意を知る魔法)とか
スリープクラウド(眠りの魔法)などのコモンマジックは苦手なのだ
普段から魔法は単なる戦いの道具じゃないと主張しているフリードリッヒにとってつらい事実である
ああ氷特化型の魔法使いの悲しさよ
ちなみにセンスイービルを掛けるのは魔法使いにとってとても失礼な行為に当たる
なぜならお前悪者だろうと言っているのと変わらないからだ

『わぁ美味しそうな料理だいただきます』(猫語)
やっと来たグレンだが・・・・・いきなり肉に齧りつこうとする
「やめておきなさい豚じゃなくてオークの肉のステーキだったらどうするんですか」
嫌過ぎることを言うフリードリッヒ少々警戒し過ぎではないだろうか?

210 :テオボルト ◆e2mxb8LNqk :2013/03/22(金) 20:42:18.35 0
>206
少し時は遡り、林を歩いているときに三女子の一人に言われた言葉を思い出す。
>「日光が苦手…? もしかして君、ヴァンパイアか何かかい?」
その時は苦笑いで流したが、一瞬手袋に染みついた血を吸っている記憶がよぎった。
フィジル島に着いた日の出来事であるが、アレは魔族の血の効能あっての行為だ。自分の中で不問とする。
テオボルトは、未だに自分をただの人間と認識しているのである。

>205-209
さて、それから森を出て、テオボルトは一人湖畔を歩いて洋館の前に辿り着く。
ひょいと車の中を覗くが、彼の荷物は運びだされているらしい。
ならばと思い、洋館の中へと足を踏み入れる。

館では、大勢の人間がそろっていた。
その中には先ほど別れたはずのメンバーが、なんとテオボルトよりも先に到着していた。
「……おや? 諸君ら、随分早いじゃないか。さっさと森を抜けたはずなんだが……。
 なんだろうな、もしかしてあの林では少々流れる時間がおかしかったのかもしれん」
湧き出た疑問に適当に自己完結すると、今度は皆の視線の先を見る。

エントランスの先の部屋の中には、大きなテーブルと大量のご馳走が!
そして怖い目をしてそれを食べるエンカの姿もあった。
何処かに違和感があるものの、テオボルトはさらりと流してしまう。
「驚いたな、こんな食事があるなんて……誰が作ったんだ? 料理専任の屋敷しもべ妖精でもいたのか?」
事情を知らないテオボルトは、突っ立っている人達を抜けてエンカの隣に座った。
そして渇いている喉を潤すべく、すぐ傍のワイングラスを飲み干してしまう。
「……うん、これは美味い! 何かわからんが美味いじゃないか!
 この料理も……むぐむぐ、うん! 美味い、美味い、じゃあこれは……?」
そしてエンカと一緒になり、次々に料理に手を出していく。
なにやら、更に不穏な雰囲気になってきている。

211 : ◆jntvk4zYjI :2013/03/23(土) 17:56:32.82 0
(臨時避難所)
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/internet/17427/1364028620/

212 :リリィ ◆jntvk4zYjI :2013/03/23(土) 23:41:18.81 0
>204-210
>「すいません。どうやら勘違いさせてしまったのは私のほうでした。ごめんなさいです」
「やだ、やめてください!私の方こそ勘違いした挙句に、焦ってお菓子ぶつけちゃってごめんなさい。
 数々の失礼、許してくださいますか?」
リリィはその場に座り込み深々と頭を下げると、アムリーテを起こそうとした。
(もちろんびくともしなかったのだが)

リリィが館にアムリーテを誘うと、彼女は快諾してくれた。
ほっとした彼女は、自分たちががこの島に来た理由や、ほかのメンバーが館にいることをアムリーテに説明する。
>「ありがとです。それでは私も館にいきます。あなたたちには本来の目的があるのですよね。
>それならば私は、みなさんのお役に立ちたいです。
>ですがロゼッタはどうしましょう。私は彼女を驚かせてしまいました。
>彼女の位置は子どもレーダーで捕捉することはできますが、私の足では最早捕らえることはできないでしょう」

「うん。わかった。じゃあ私は、もう少しロゼッタちゃんを上空から探してみるよ。
 テレパシーでアムリーテさんの事をロゼッタちゃんに説明した後で館に向かうから」
リリィはアムリーテに館の位置を説明し、送り出した。
彼女が十分遠ざかった後、リリィは肩口に乗ったグレンに耳打ちする。
「グレン、悪いけれど、アムリーテさんに気づかれないように館に向かってくれる?
 本当は一緒に行って欲しかったんだけれど、どうも彼女は猫が苦手みたいだから。
 あっ!気を悪くしないでね、きっとカラクリの人だから、猫の毛が体内に入ると壊れるとかそういうことなのかもよ?」

リリィはロゼッタが消えた木々の上空を旋回しながら、彼女にテレパシーと肉声で呼びかけた。
『「カラクリの人・・・・・アムリーテさんは敵じゃないよー。
 ロゼッタちゃんがけがしたかもってテレパシーを聞きつけて、探してくれただけなんだよー。
 だから怖がらないで出てきてー。
 皆、丘の上の洋館に集まってるよ、エンカもそこにいるから、ロゼッタちゃんも行こうよー。
 ・・・・・・ねえ、一人で大丈夫なの?魔法、ちゃんと使えてる?」』
とりあえず、ロゼッタの骨には以上が無かったようだが、彼女は本当に大丈夫なのだろうか?
リリィはロゼッタの一連の行動から、少なくとも空間魔法に関しては、十分実力を発揮できる状態に無いと考えていた。
そうでなければ、ロゼッタを捕まえたアムリーテは、有無を言わさずばらばらにされた筈だからだ。
空間魔法以外にも、ロゼッタに身を守るための魔法があればいいのだが。
(残念ながらリリィは、彼女がロゼッタが使える魔法を全部把握しているわけではなかった)

一通り呼びかけた後、リリィはひとまず皆の所に戻ることにした。
ロゼッタが落ち着くまでに時間が必要かもしれないと思ったのと、皆の意見、(特にエンカの)を聞くためだ。
リリィはロゼッタ

それに、もしかしたらリリィが探している間に、ロゼッタが別ルートから館へ向かった可能性も捨てきれないのだ。
リリィは後ろ髪を引かれる思いで、館までの道を急いだ。

ジドウシャのボンネットがなぜかべこっと凹んでいるのを訝しがりつつも、リリィは洋館へ無事到着した。
どうやら彼女が一番最後だったようだ。
「皆、いる?ロゼッタちゃんは来てる?」
皆の話し声が聞こえてくる「入り口」と書かれた扉の中に、リリィは迷わず駆け込む。
あまりに急いでいたので、外に書かれた言葉の意味を今考えるだけの余裕は無かった。

優雅な晩餐、というにはいささか緊張した雰囲気の中に飛び込んだリリィは、一瞬自分がとてつもなく場違いに思えて怯んだ。
だが、すぐに気を取り直して矢継ぎ早に話し始める。

「あのっ!皆聞いて!
 ロゼッタちゃんは見つかったんだけど、カラクリ・・・・あの、あそこでお掃除してる、アムリーテさんに驚いて逃げちゃったの。
 その時ちゃんと走ってたから、多分骨とかには異常無いみたいなんだけど。
 上空からしばらく探してはみたんだけど、どうしても見つからなくて。
 一応、テレパシーと声で、アムリーテさんのことを説明して、洋館に来るよう伝えたんだけど・・・・・・皆、どうしたらいい?」
リリィはエンカに向かってさらに続けた。
「ねえエンカ、どうしよう?ロゼッタちゃんこんな島に一人きりじゃ危なくないかな?」
リリィ走らなかったが、エンカの返答いかんでは、彼への疑惑をさらに深めることになるだろう。

213 :アムリーテ ◆apJGY8Xmsg :2013/03/24(日) 20:38:58.71 0
エントランスの掃除に夢中になっているアムリーテ。
ふと気がつけば周りには生徒たちが集まっていた。
テオボルトに青葉たち。そして初対面のパピスヘテプ。
彼女は毛皮のコートを纏っていた。
それにモデル体型のため、アムリーテには彼女がどうしても子どもには見えなかった。

>「そちらは初対面よね。はじめまして、死霊科のパピスヘテプよ。よろしくね。
 あとお掃除しているあのゴーレムは二人の内どちらかのなの?」

彼女の名前はパピスヘテプというらしい。
大人のような子どももいるものと、アムリーテは不思議に思った。

そんななか現れたのはエンカ。
彼は扉を開けると室内に用意されていた料理を食べ始めた。

>「どうしたんだよーっ!?みんな食べねぇのかぁ?…それとも、何かおかしなところでもあるのかよ?」
>「おかしいって、エンカ君心配じゃないの?自分の彼女であるロゼッタ先輩が自動車から飛び降りたっていうのに。
 リリィのテレパシーも聞いたでしょ?
 すぐに助けに行ってもらおうと思ったけど見つからないし、もしかして先に一人で行っちゃったかもと思ってたのに」

エンカという子どもリリィたちと同じ生徒らしい。
アムリーテは彼のことをまったく知らないし、彼もアムリーテのことは知らないはずだ。
しかし何か違和感を感じたアムリーテは、先ほどリリィに教えられたことを思い出す。
出発する前にリリィが読んだ手紙のことを。

・明日、別紙の地図に書かれた転移用ゲートの場所まで赴き、集まった者たちと一緒に転移すること。
・行き先の小島では当日、翌日と「清掃活動」に励むこと
・島内の設備は自由に使ってもいいが、食料などは自前で調達すること
・野外活動(サバイバル)の準備は怠らないこと
・「清掃活動」以外の時間は自由にすごしてもよい
・課題をこなせなかったものには、ペナルティが課せられる

「課題をこなせなかったものには……ぺナルティ…」
アムリーテは復唱する。そして気がついた。
食料などは自前で調達することになっているのにと。
この子達はそれに反しているのではないかと。

「君たち!食べるのをやめなさい!!
君たちは食料などは自前で調達しなければならないと伝えられたはずです!」
アムリーテは眉根を寄せて怒鳴りつけると、テーブルを持ち上げて壁にたたき付けてしまう。

214 :エンカ ◆jWBUJ7IJ6Y :2013/03/24(日) 21:39:59.33 0
>208>209>210>212>213
> 「おかしいって、エンカ君心配じゃないの?自分の彼女であるロゼッタ先輩が自動車から飛び降りたっていうのに。
> リリィのテレパシーも聞いたでしょ?
> すぐに助けに行ってもらおうと思ったけど見つからないし、もしかして先に一人で行っちゃったかもと思ってたのに」
とパピスヘテプ。
「パピちゃんよ〜、とりあえず訂正すっけどロゼッタは俺の彼女じゃあないぜ?
 さっきこの館の主に会ったんだ。ご馳走をしてくれるってよ〜、料理は冷めねぇうちに食わねぇとなーっ」
> 『わぁ美味しそうな料理だいただきます』(猫語)
> やっと来たグレンだが・・・・・いきなり肉に齧りつこうとする
> 「やめておきなさい豚じゃなくてオークの肉のステーキだったらどうするんですか」
「ニシンのパイもあるんだぜ〜?いらねぇのか〜?」
エンカはフォークでニシンのパイのひと切れを突き刺し、グレンの前でひらひら見せびらかせた。
「いらないなら俺が食っちゃうもんねーっ!」
エンカはニシンのパイを頬張った。
すると、なぜかゴリゴリという骨が砕けるような音と小さな悲鳴がエンカの口の中に響いた。
それを耳にした者がどれだけいるだろうか?

> 「驚いたな、こんな食事があるなんて……誰が作ったんだ? 料理専任の屋敷しもべ妖精でもいたのか?」
> 事情を知らないテオボルトは、突っ立っている人達を抜けてエンカの隣に座った。
> 「……うん、これは美味い! 何かわからんが美味いじゃないか!
>  この料理も……むぐむぐ、うん! 美味い、美味い、じゃあこれは……?」
> そしてエンカと一緒になり、次々に料理に手を出していく。
「おおっ!転入生!いい食いっぷりだねぇ、寿司食いねぇ」
エンカはテオボルトに次の料理を勧める。
すると間もなくリリィが現れた。ロゼッタは一緒ではないようだ。
エンカは片方の眉をひそめながらリリィの話を聞いた。
> 「あのっ!皆聞いて!
>  ロゼッタちゃんは見つかったんだけど、カラクリ・・・・あの、あそこでお掃除してる、アムリーテさんに驚いて逃げちゃったの。
>  その時ちゃんと走ってたから、多分骨とかには異常無いみたいなんだけど。
>  上空からしばらく探してはみたんだけど、どうしても見つからなくて。
>  一応、テレパシーと声で、アムリーテさんのことを説明して、洋館に来るよう伝えたんだけど・・・・・・皆、どうしたらいい?」
> リリィはエンカに向かってさらに続けた。
> 「ねえエンカ、どうしよう?ロゼッタちゃんこんな島に一人きりじゃ危なくないかな?」
「まぁ、大丈夫なんじゃあねーの?腐っても俺達より一年先の先輩なんだからよぉ。
 そうかー、リリィの話だとロゼッタが来るのはもう少し先になりそうなのか。
 残念だなぁ…」
エンカはロゼッタの安否よりも、この洋館に来るか来ないかを気にしているようだった。
「それより、リリィ!お腹すいてるんじゃねーか?
 ロゼッタを一生懸命探してくれたんだもんなーっ!
 プリン好きだろ?ほら食いなって!」
エンカはテーブルからプリンの入った皿を取ると、そう言ってリリィに差し出した。

215 :エンカ ◆jWBUJ7IJ6Y :2013/03/24(日) 21:42:39.60 0
その時である。
> 「君たち!食べるのをやめなさい!!
> 君たちは食料などは自前で調達しなければならないと伝えられたはずです!」
> アムリーテは眉根を寄せて怒鳴りつけると、テーブルを持ち上げて壁にたたき付けてしまう。
エンカは驚いた様子で立ち上がり、壁にたたき付けられたテーブルを見た。
すると、テーブルの上にあった料理の残骸から黒い色をした小さなサソリらしきものが無数に飛び出し、
蜘蛛の子を散らすように物陰へ逃げた。
エンカがグレンに勧めたニシンのパイからも、
同じくテオボルトに勧めた寿司からも黒い小さなサソリらしきものが這い出てくる。
エンカはゆっくりとその場にいるメンバーの顔を眺め、そして学園から配布された手紙を眺めた。
「あー、なるほどな。確かにそう書いてあるなー。
 まったく、エンカの奴こういうのちゃんと読まないからなー。
 皆で仲良くワイワイ林間学校するんじゃあないんだぜ〜?」
エンカは手紙を放り捨てた。
「ま、さすが魔法学園ってところか。俺もそう簡単に片付くとは思ってなかったしよぉ。」
エンカがリリィに差し出したプリンから、おそらく他の料理にも仕込まれていた黒いサソリらしきものが、
内側からプリンを破って表面に現れたので、リリィはその詳細な外見をよく見ることができるだろう。
それは確かにサソリのようであったが、腕を除いた上半身は人間の女性と同じ外見をしていた。
プリンを破って現れた人間サソリがすぐさまリリィの口元に向かって飛びかかった。
何も対策をしなければ、そのまま彼女の口の中へ入って行くだろう。

エンカは、ペッ!と何かを吐き捨てた。
それはニシンのパイごとエンカの歯ですりつぶされた人間サソリの遺骸である。
「おっと、妙な真似はするんじゃねーぜ?俺を攻撃するってことは、エンカを攻撃することになるんだからな〜」
部屋の入口が勝手にバタンと閉まり、鍵がかかった。どうやら外からは開けられるが、中からは開けない仕組みのようだ。
「もっとも、俺はエンカがどうなろうと知ったことじゃあねぇけどよ〜」
ゴゴゴゴ…という低い音がし、天井がゆっくりと降りてきた。
トラップである。このまま一同をペシャンコにするつもりのようだ。

216 :フリードリッヒ ◆cOOmSNbyw6 :2013/03/25(月) 21:31:15.89 0
>210-215
>「君たち!食べるのをやめなさい!!
  君たちは食料などは自前で調達しなければならないと伝えられたはずです!」

料理の中から現れた人間サソリ
「アンドロスコーピオン!?にしては小さいですね
 彼らをモデルにしたホムンクルスか何かでしょうか?」
資料で呼んだ蛮族に似た姿の怪物に驚くフリードリッヒ
「そういえば清掃活動とかありましたね
 で、掃除するのはエンカさんに憑りついた何かですか?
 それともアンドロスコーピオンモドキですか?」
清掃活動っていうのはすなわちそういうことなのだろうとフリードリッヒは判断したようだ

>「もっとも、俺はエンカがどうなろうと知ったことじゃあねぇけどよ〜」
「あれ?でもこれってあなたもペチャンコになるんじゃ?」
憑りついている何者かは精神生命体か何かで肉体を持たないのだろうか?
「もし姉さんならエンカさんごと吹っ飛ばしてあとで謝れば良いって判断するんでしょうが・・・・・
 僕は基本的に偽善者なんで友達を吹っ飛ばすことなんてできません」
あの人ならむしろ外から建物ごと吹っ飛ばしかねないだろう
本当に居なくてよかった
『友達じゃなかったら平気で吹っ飛ばすんですねわかります』(猫語)

「その小さいアンドロスコーピオンは虫扱いでいいんでしょうか?
 だったら蟲野さんの領域でしょう・・・・ならば僕は!!」
と天井と壁の間の隙間を凍らせ始める
「これでちょっとは天井が降ってくるのを遅らせることが出来るでしょう 
 あとは天井を止める隠しスイッチを見つけるだけです
 惜しむらくは僕らはみんな魔法使いでこういうのが得意なシーフが居ないってことですね」
姉であるフリージアならここで天井すべてを凍らせてしまうのだろうが
まだレベルの低いフリードリッヒにはそこまでの力はない
 
「僕の力では10分ぐらいが限界です
 その間に何とかしてください!!」
『床をぶっ壊して地面に逃げるとかね』(猫語)

『ねえその虫って美味しいの?』(猫語)
サソリ人間入りの料理をバリバリ食べていたテオボルトにそんなことを聞くグレン
まさに外道である

217 :パピスヘテプ ◆/TZT/04/K6 :2013/03/26(火) 21:40:02.35 0
「ええ?カクカクシカジカでいあいあふぐあん?……えええ?」
フリードの説明を聞き驚愕を隠せないパピスヘテプ。
ギギギギと音がしそうな動きで青葉を見つめ
「あなた、青葉君だったの?どーしてまたそんなに念入りに?
いや、そういう趣味の人はいるのは知ってるけど青葉君ってそうだったんだ」
そういわれればどことなく青葉の面影がある。
だが姿形のみならず精神や魂まで女性と化しす意味が分からないのだった。個人の趣味と言えばそれまでなのだが……
パピスヘテプは死者への理解や許容は大きくとも生者へのそれは少々狭かったようだ。

あっけにとられていたため、あとから到着したテオボルトに警告を発するのが遅れてしまった。
気付いた時にはモリモリとテーブルのごちそうを口に運んでいるではないか。
その見事な食べっぷりは見ているだけでも食欲が刺激されるというもの。
明らかに不自然だとわかっていても対誘惑に駆られそうになる。
が、その食欲を一瞬で吹き飛ばすもの。
それはエンカの口の中から聞こえてきた小さな小さな悲鳴。
耳にできたものが少ないかもしれないが、幼き頃より死者と対話してきたパピスヘテプは聞き逃さない。
なぜならば、それが断末魔の叫びなのだから。

「エンカ、それでその館の主人は?それに今あなたのく……」
>「皆、いる?ロゼッタちゃんは来てる?」
エンカが語ったロゼッタが彼女ではないという事に驚きを覚えつつも、まずは確認をしようとした。
館の主人の事、そして断末魔について口にしようとした時、リリィが部屋に飛び込んできた。

リリィによって語られるロゼッタのその後のこと。
大きなけがをしていないという事なのでほっと一息。
腐っても一年先輩で大丈夫だろうという事はエンカと同意見だった。
とりあえずはこちらの問題に専念できるという事なのだから。
だがそれゆえにエンカに対する疑念は最大限のものになっていた。
ロゼッタに謝らなければと言っていたエンカ。
たとえ彼女出なかったとしても、その言葉から今の態度はどう考えてもおかしい。

エンカがプリンをリリィに差し出した時、アムリーテが動いた。
恐るべき怪力でテーブルを持ち上げ、上に乗った料理ごと壁に叩きつけたのだ。
散らばる料理の残骸から黒い小さなサソリらしきものが飛出し物陰に散っていく。
それと共に雰囲気特徴を一変させるエンカ。
もはや隠そうともしていない、明らかに別人!
>「おっと、妙な真似はするんじゃねーぜ?俺を攻撃するってことは、エンカを攻撃することになるんだからな〜」
ゴゴゴゴと低い音と共にゆっくりと天井が下がってくる。
あまりスピードがあるわけではないが、フリードの氷結工作によって更に降下速度は遅くなる。

天井を見上げた後、視線をエンカに戻してパピスヘテプは犬の頭を模したフードを深々と被り、カンテラを懐から取り出した。
香を焚き鎮静効果のある香りと光がエンカとパピスヘテプを包む。

「うん、色々整理しよっか。
魔法学園の生徒と知って罠を仕掛けていたからには私たちの敵対者、という事よね。
あなたがエンカがあったという館の主人、かな?
エンカの体自体は本人のもので、つり天井の罠の中に一緒にいる、攻撃してもエンカの身体が傷つくだけ、どうなろうとかまわない。
以上の言動からあなたは寄生体ではなく憑依などの精神体と言えるわけね。
それと、入口に書かれていた注意書きだけど、あれの意味を考えていたの。
テレポートなどに対応できないから最初から使わせないように書いておいたんじゃないかって。
そうすると、内部の破壊禁止というのも、この建物自体があなたの身体だから傷つけないようにするための誘導なのではないかな?
もちろん推理でしかないけど試す価値はあると思うの。
それでね、以上の事を踏まえて、まずはお話をしましょう。
なぜあなたは私たちを襲うのか、襲う必要があるのか。
話すことでお互い得られるものがあるかもしれないから、ね?」

フリードが必死に稼いだ10分をのんびりとした話し合いで費やそうとするパピスヘテプ。
だができうる限り話し合いで解決を試みるのが彼女のやり方なのだから仕方が合い。
エンカを見つめながら一言付け加える。
「グレン、そこは聞かぬが武士の情けよ」と。

218 :テオボルト ◆e2mxb8LNqk :2013/03/26(火) 22:39:29.26 0
>212-217
>「おおっ!転入生!いい食いっぷりだねぇ、寿司食いねぇ」
勢いよく食べるテオボルトに、エンカが寿司皿を渡す。
受け取って食べるつもりだったが、寿司のネタの刺身を見て躊躇った。
「……む、生魚、か。食べた事はないんでな、少し……」

そこに、ロゼッタを探していたはずのリリィが飛び込んでくる。
アムリーテが原因ではぐれてしまったらしい。
話を聞いたエンカは楽観視しているようで、リリィにプリンを勧め始めた。

その時!
>「君たち!食べるのをやめなさい!!
>君たちは食料などは自前で調達しなければならないと伝えられたはずです!」
>アムリーテは眉根を寄せて怒鳴りつけると、テーブルを持ち上げて壁にたたき付けてしまう。
間一髪、テオボルトは寿司皿だけは手に持って避難させていた。
驚いた面持ちでテーブルを見ていると、黒い何かが這い出てくる。
>同じくテオボルトに勧めた寿司からも黒い小さなサソリらしきものが這い出てくる。
出てきたサソリらしきものをひょいと捕まえて、寿司を放り投げる。
「これは、単なるサソリ……じゃない? 半身が人間だ」
手の中で身をよじる人間サソリを見て、背筋に寒気が走った。
料理の中から出てきたのだから、おそらくは……と。

フリードが壁と天井の間を氷で埋めて、時間を稼ぐ。
そして何かに憑りつかれたエンカに対峙するパピスヘテプ。
話し合いで解決しようとしているらしい。
>『ねえその虫って美味しいの?』(猫語)
>「グレン、そこは聞かぬが武士の情けよ」
その横で、グレンがテオボルトに中々鬼畜な事を聞いているのに一言口を挟む程度には落ち着いているようだ。

質問を受けたテオボルトは、もう一度まじまじと人間サソリを見つめ、なんと口の中に放り込んだ!
ベキベキという破壊音と小さな悲鳴を口の中でしばらく響かせた後、壁際に吐き捨てる。
「料理は美味かったが、コイツ自体はヒトと虫の味しかせんよ。しかし、まあ、異物混入は許されざるな。ん?」
機嫌悪そうに杖を抜いて、扉へと向かうテオボルト。

そして鍵のあるだろう場所に杖を突きつけて魔法を唱える。
「開錠せよ、『アロホモレ』!……ん? 『アロハモレ』だったか?」
しかし魔法はうろ覚えで効果はない。何度か唱え、一応正解のワードも出たが開かない。
単純にテオボルトの技量が追いついていないらしい。
「ええい、こうなれば力づくッ!!」
ドバキャッ!
「………………」
思い切り取っ手を引っ張り、ドアから取っ手を引きはがしてしまった。
テオボルトはぽかんとした表情で周りを見た。どうしよう、とでも言いたげな顔である。

219 :リリィ ◆jntvk4zYjI :2013/03/28(木) 00:25:29.55 0
>「まぁ、大丈夫なんじゃあねーの?腐っても俺達より一年先の先輩なんだからよぉ。
> そうかー、リリィの話だとロゼッタが来るのはもう少し先になりそうなのか。
> 残念だなぁ…」
エンカの反応の薄さに、リリィは戸惑わずにはいられなかった。
車の中にいた時のエンカと、今の彼は、まるで別人のようだったからだ。
>「それより、リリィ!お腹すいてるんじゃねーか?
> ロゼッタを一生懸命探してくれたんだもんなーっ!
> プリン好きだろ?ほら食いなって!」
「え?え・・・・・・ああ、うん。・・・・・・・え?」
反射的にプリンの皿を受け取ってしまったリリィ。
確かにプリンを含め甘いものは大好きだが、今はロゼッタのことが気がかりだった。
困惑顔の彼女は、一同の顔を見渡す。

エンカは妙にハイテンションなまま、料理を口にしている。
テオボルトはエンカに勧められるまま、ご馳走に舌鼓を打っている。
先ほどまで猛烈な勢いで掃除をしていたアムリーテは、何やら考え込んでいる。
リリィより先に館に到着していたグレンは、ご馳走を食べようとしてフリードに窘められている。
なんとなく親しみがもてる顔つきの女子生徒と、見覚えのある(多分青葉おにぃちゃんの友達だよね?)生徒。
そしてパピスヘテプは、厳しい顔でエンカを凝視していた。

再びエンカに視線を戻すと、彼はことさらおいしそうに料理を頬張っていた。
(エンカ、なんだかちょっと変だけど、皆のためにあえて明るく振舞ってるのかな?)
だとしたら、リリィもエンカの意図を汲んで、陽気に振舞うべきだろう。
リリィは手元に視線を落とした。
皿の上に鎮座しているプリンは、おいしそうにプルプル震えている。
甘い香りにつられて、リリィは、自分が空腹だということを思い出す。
「わ、わあ、おいしそうなプリンだよね!いただきまーす!」
リリィは糊の利いたテーブルクロスの上に鎮座している、デザートスプーンを手を伸ばそうとした。
だがスプーンは、リリィの指が触れる寸前消えてしまう。
「・・・・・・・・?」
否、消えたのはスプーンだけではない。スプーンどころか、テーブルそのものが吹き飛んだのだ。
>「君たち!食べるのをやめなさい!!
>君たちは食料などは自前で調達しなければならないと伝えられたはずです!」
「・・・・・・・えええええ!!」

220 :リリィ ◆jntvk4zYjI :2013/03/28(木) 00:26:30.97 0
一方のエンカは、ゆっくりとその場にいるメンバーの顔を眺め、そして学園から配布された手紙を眺めた。
彼はまるで、自分がエンカではないような発言をしながら手紙を放り捨てた。
>「ま、さすが魔法学園ってところか。俺もそう簡単に片付くとは思ってなかったしよぉ。」

想定外の事態に呆けていたリリィだったが、料理の残骸から無数のサソリが沸いたのを見ては平静ではいられない。
「何あれっ!ご馳走に混じってたの?!」
あまりの気味悪さに全身に鳥肌が立ったが、その直後、ある可能性に気づき戦慄する。
「ま、まさか・・・・・・」

リリィは恐る恐る手元のプリンに視線を落とした。
その時、ちょうど中から這い出てきた、人間の女性とサソリの小型キメラ(?)と、ばちっと目が合ってしまう。
「ひええええええ!!」
サソリが飛びかかろうとしたのと、驚いて皿を放り投げたのはほぼ同時だった。
そのためサソリは目測を誤り、リリィの口ではなく、服の胸元に飛び込むことになる。
『きゃああああ!!虫が服の中に!中に!誰か取って取って取ってよおお!!』
何とかサソリを追い出そうと床の上を転がりながら、リリィはテレパシーで悲鳴を上げていた。
体内に入り込まれないよう、頬杖をつくような形で両耳と鼻の穴を押さえ口を閉じててはいるが・・・・・・。
>「これは、単なるサソリ……じゃない? 半身が人間だ」
『おっぱいサソリだよおっぱい!きっもち悪いぃぃ!!』
床を転げ回る姿も残念なら、叫んでいる内容もかなり残念である。

その後、エンカの口から発せられたのは、さらに残念なお知らせだった。
>「おっと、妙な真似はするんじゃねーぜ?俺を攻撃するってことは、エンカを攻撃することになるんだからな〜」
>「もっとも、俺はエンカがどうなろうと知ったことじゃあねぇけどよ〜」

ゴゴゴゴ…という低い音がし、天井がゆっくりと降りてきた。
>「あれ?でもこれってあなたもペチャンコになるんじゃ?」
もし人間サソリがエンカの頭を乗っ取っていたとしても、あの大きさだ、リリィ達がぺしゃんこになっても隙間から逃げられるのかもしれない。
だが、エンカ(の中の誰か)がリリィ達を殺そうとする理由はなぞのままだ。

フリードは、天井と壁の間の隙間を凍らせ始める
>「僕の力では10分ぐらいが限界です
> その間に何とかしてください!!」
パピスヘテプは、その間エンカ(の中の人)と対話するつもりのようだ。
しかし俗物のリリィは、とてもそのような悠長なことをしていられない。

開錠の呪文を唱えるテオボルトの傍に立ち、リリィはドアをドンドンと叩いた。
>「ええい、こうなれば力づくッ!!」
ドバキャッ!
>「………………」
「・・・・・・・・・・・・・・]
思わずテオボルトと顔を見合わせる。
「そ、そうだ!昔何かの本で読んだことあるよ!
閉じ込めるための扉が、一番つくりが頑丈なんだって。だったら、それ以外の場所を壊せばいいのよ!」
リリィは嬉々として、ドアノブが捥げた扉から少し離れた壁(ホール側)に体当たりをした。
「きゅー・・・・・・・・・」
残念!扉ほどの硬度ではなくても、リリィを閉じ込めるには十分すぎるようだ。

221 :アムリーテ ◆apJGY8Xmsg :2013/03/28(木) 01:34:16.38 0
>「もっとも、俺はエンカがどうなろうと知ったことじゃあねぇけどよ〜」
「どうやらあの子は、何者かに操られているようですね。
たぶんあの子を利用して、子どもたちを罠にかけようとしていたようです。
…でもいったい何のために?」
>ゴゴゴゴ…という低い音がし、天井がゆっくりと降りてきた。
>トラップである。このまま一同をペシャンコにするつもりのようだ。
「まずいです。作戦が失敗した彼は子どもたちを潰しにかかりました。
それならばここは私の百万馬力で!」
>と天井と壁の間の隙間を凍らせ始める
>「これでちょっとは天井が降ってくるのを遅らせることが出来るでしょう 
 あとは天井を止める隠しスイッチを見つけるだけです
 惜しむらくは僕らはみんな魔法使いでこういうのが得意なシーフが居ないってことですね」
「さすがはフリードリッヒ!偉い子です。そうですね。あとは隠しスイッチを…」
>天井を見上げた後、視線をエンカに戻してパピスヘテプは犬の頭を模したフードを深々と被り、カンテラを懐から取り出した。
>香を焚き鎮静効果のある香りと光がエンカとパピスヘテプを包む。
>フリードが必死に稼いだ10分をのんびりとした話し合いで費やそうとするパピスヘテプ。
>この建物自体があなたの身体だから傷つけないようにするための誘導
(パピスヘテプの推理。気になります。私も何か試してみましょうか?
先ほどテーブルを壁にぶつけた時、エンカには何の反応もなかったはず。
それはエンカの微妙な反応を見過ごしてしまったのでしょうか、
それともただ単に衝撃が弱すぎただけなのでしょうか)
>「ええい、こうなれば力づくッ!!」
>ドバキャッ!
>「………………」
>思い切り取っ手を引っ張り、ドアから取っ手を引きはがしてしまった。
>テオボルトはぽかんとした表情で周りを見た。どうしよう、とでも言いたげな顔である。
「……」
アムリーテは無言。ただテオボルトの心配はしていた。
彼は人間サソリを食べてしまっている。
エンカの中にいる者の目的はそれを食べさせることだったはず。
ならば彼はこれからどうなってしまうのだろう。
>「そ、そうだ!昔何かの本で読んだことあるよ!
>閉じ込めるための扉が、一番つくりが頑丈なんだって。だったら、それ以外の場所を壊せばいいのよ!」
>リリィは嬉々として、ドアノブが捥げた扉から少し離れた壁(ホール側)に体当たりをした。
>「きゅー・・・・・・・・・」
>残念!扉ほどの硬度ではなくても、リリィを閉じ込めるには十分すぎるようだ。
「だいじょうぶですか!?不良の子ども!無茶はいけません!
壁を破壊したいというのなら私に任せてください」
アムリーテは胸元のリボンを解き目を閉じて祈りをささげる。
(センセイ。お許しください)
胸元に現れたのは綺麗な宝石。そこから近くの壁へむけて、圧縮されたエネルギーを放出する。
すると壁に人一人が潜れるような綺麗な穴が開く。
もしかすると身体のどこかが痞えてしまうかもしれないような穴だったが。
「みなさん、はやく…に…げ……て………」
アムリーテの動きが鈍くなっている。好奇心から、時間も忘れてこの島に来てしまったので
電池の充電を忘れてしまっていたのだ。(だから穴は小さかった)
それでも、きゅーと倒れているであろうリリィを持って穴に詰め込む。
「は…ぅ……」
アムリーテの活動限界まではあとわずか。

222 :エンカ ◆jWBUJ7IJ6Y :2013/03/28(木) 19:43:20.53 0
>216>217>221
> 「あれ?でもこれってあなたもペチャンコになるんじゃ?」
「えー!?本当かよー!?知らなかったなー!教えてくれてありがとなー!
 お前って頭がいいんだなー!」
エンカがフリードに、さも今初めて知って驚いたようにそう言った。
皮肉である。エンカの中の人は、つまり承知の上での行動なのだ。
> 「僕の力では10分ぐらいが限界です
>  その間に何とかしてください!!」
フリードは天井と壁の間の隙間を凍らせることで時間稼ぎをしようとしている。

エンカはパピスヘテプの問いに答えた。
「俺は建物そのものの霊とか意思とか、そんなんじゃあないぜ?
 内部破壊禁止の件はまぁ、ここは俺の住んでいるところだし、そうも書くだろうよ。
 もっとも、俺はお前らの敵だからよ〜、正しい事を言うとは限らねぇ。
 信じるか信じないかはお前らの勝手だ。

 せっかくなんで、自己紹介をさせてもらうぜ〜?
 俺の名前はマリアベル・ホワイト。
 この館の主、アンチラスト・ホワイトのメッセンジャー。
 使い走り、あるいは嬢王蜂に対する働き蜂みてぇなもんだ。
 んで、要するにお前らを始末するよう承ったわけっすよ。
 アンチラストはお前ら人間が大嫌いだからなーっ!」

エンカ改めマリアベルは壁に閃光が走るのを見た。
アムリーテがエネルギーを放出して、ここから逃げるための穴を開けたのだ。
> 「みなさん、はやく…に…げ……て………」
「おぉーっとぉー!?勝手に人の家の壁を壊してんなよなーっ!」
マリアベルはパピステヘプを突き飛ばし、壁まで全力でダッシュすると、リリィとアムリーテを掴んだ。
「一緒に潰れようや、なーっ!?」
マリアベルは二人を引っ張り、ここから出させないつもりだ。
「お前らを仕損じたら、アンチラストに怒られるからよ〜!
 また地下まで行って頭を下げなきゃならないなんて、御免だぜー!」

223 :パピスヘテプ ◆/TZT/04/K6 :2013/03/29(金) 00:17:40.85 0
テオボルトがドアノブを?いだり、小サソリを食べるなど異様性を見せたり。
リリィが転げ回り、壁に体当たりして目を回したり。
そんな状況下でもパピしヘテプはエンカことマリアベルとの会話に集中していた。
「ありがとう、こちらも自己紹介しましょうか。
私はパピスヘテプ。パピちゃんと呼んでちょうだい。死霊科の生徒よ。よろしくねマリアベルさん。」
自己紹介を返しながら、得られた情報を頭の中で整理していく、

・この館の主はアンチラスト・ホワイト
・人間を嫌っており抹殺するようにエンカを操るマリアベル・ホワイトに指令
・マリアベルホワイトは霊や館の意志などではない。

嘘か真かは置いておくにして、何も知らなかったところから随分と知る事が出来た。
それに対して返答をしようとしたところで閃光が走る。
アムリーテが壁に穴をあけ、そこから脱出しようとしているのだ。

振り向いた時にはあいた穴にリリィが詰め込まれているところだった。
>「おぉーっとぉー!?勝手に人の家の壁を壊してんなよなーっ!」
もちろんそれはマリアベルにも知られることとなり、彼はパピスヘテプを突き飛ばして全力で走りだす。
小さく悲鳴を上げて大きく体制を崩したパピスヘテプは大きく遅れることになる。
が、それが故に有用な情報を得られることになったのだ。

>「お前らを仕損じたら、アンチラストに怒られるからよ〜!
> また地下まで行って頭を下げなきゃならないなんて、御免だぜー!」
リリィとアムリーテを掴み逃がさまいと引っ張るマリアベル。
そんな彼の力が突如として抜け、倦怠感が襲うだろう。

原因はマリアベルの足首に絡みつく影。
「影は勢いを減退させ、精力を削ぐ……」
その言葉の主はパピスヘテプ。
先ほど突き飛ばされ大きく体制を崩し、倒れる寸前の姿勢のまま一直線に近づいてくる。

あまりにも不自然な体制での移動術ではあるが、何のこともない。
自分の影で倒れかけた体を支え、そのまま影を動かすことで体を運んでいるのだ。

パピスヘテプが近づくにつれマリアベル(エンカ)の身体を影が這い上がり、浸食し、締め上げ、力を、精力を吸い取っていく。
「突き飛ばすなんて乱暴ね。
それにせっかくいい格好でお尻が嵌っているのに抜こうとするなんて無粋な……いや、そうじゃなくて
館の主人アンチラストさんは地下にいるのね。
ぜひとも話をしたいわ」
穴が小さかったが為に熊のぷーさんの様にお尻が引っ掛かってしまい、壁から生えるお尻状態のリリィ。
オ尻ス神信者であるパピスヘテプは一瞬我を忘れそうになるが、マリアベルを絡め取りつつ脱出を講じる。

小柄なリリィですら引っかかる穴である。
通れるのはグレン位のもの。
いや、フリードも通れるだろうが、通れてしまってはリリィの女の沽券に関わってしまうのでグレンくらいのものでいいのだ。
「壁抜けはできないけど、穴さえ空いていれば広げるくらいはできるわ」
穴の周囲にパピスヘテプの影が伸びるとリリィはスポンと抜けたように壁の向こう側へと転がり出ることになる。

パピスヘテプの影は自身の体積と同じだけの亜空間になっている。
つまり穴の縁に影を伸ばして亜空間を開き、引っ掛かりをなくす、というか穴を疑似的に広げることができるのだ。
荷物が入れてあるとはいえそれなりの体格であるテオボルトやパピスヘテプがくぐる位の猶予はあるというものだ。

「さあ、みんなくぐっちゃいましょ。
テオ君、マリアベルとはもっとお話ししたいし、エンカの身体も潰すわけにはいかないからお願いできる?」
影による吸精で弱体化させているとはいえ、抵抗されればエンカだけでも潰されるかもしれない。
テオボルトに穴から押し出すようにお願いし、自身は調子が悪そうなアムリーテの手を引くのだが……

「あ、お、重い〜。小さくて人型なのにゴーレムはゴーレムね。無理だわ。自力でくぐれる?」
引っ張ろうとするがアムリーテの重量はパピスヘテプの力ではびくともしなかった。

224 : ◆jntvk4zYjI :2013/03/29(金) 18:49:45.50 0
【TRP】フィジル魔法学園にようこそ!11thシーズン
http://kohada.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1364549700/

225 :アムリーテ ◆apJGY8Xmsg :2013/03/29(金) 21:51:17.05 0
>「一緒に潰れようや、なーっ!?」

「残念、、、です、、、、が、、、、私は、、、、つぶれません…。
みな、さん、、、、、、はやく………逃げて、、、、、ください。
さあ、はやく!あの……みなさん、わたしの、話を、聞いて…いるの……ですか?」

話のペースがゆっくり過ぎて、真面目に聞いていたら天井に押し潰されてしまうことだろう。

>「あ、お、重い〜。小さくて人型なのにゴーレムはゴーレムね。無理だわ。自力でくぐれる?」
>引っ張ろうとするがアムリーテの重量はパピスヘテプの力ではびくともしなかった。

「は………い……。ご…め…い……わ……くをおか……け……し…て…すいま…ぜ……ん」
穴の外にでる。穴の外といってもどこかの中かも知れない。

「す・・・・・い・・・・・ま・・・・・・せん・・・・・・・・・
充電・・・・・・・・・・・電池・・・・・・・・・太陽・・・光」

アムリーテの背中の丸いフタが開いて中から電池の頭がぴょこんと飛び出した。
その乾電池のプラスのボッチみたいのに太陽光が当たれば少しは気力が充電される。
電池は取り出して持ち運びも出来る。
もしも充電がダメでもアムリーテはゴースト状態となってふわふわと皆についてゆく。

>>224スレたて乙です。差し込ませていただきました

226 :フリードリッヒ ◆cOOmSNbyw6 :2013/03/31(日) 21:48:26.97 0
>217−225
>「アンチラストはお前ら人間が大嫌いだからなーっ!」
『人間が大っ嫌いなのはいいけど
 猫である僕まで殺そうとするなんて絶対に許さないよ』(猫語)
「そもそも人間かどうか怪しい人も多いですしねフィジルは
 まあ戸籍の種族欄に人間と書いてあれば何の血が混ざっていようが人間ですけど」
下手すると自分が人間だと思い込んでるだけで実は変な血が混ざっている可能性も否定できないのだ
ただジルベリアには戸籍の概念があるという事は確かなようである

>「さあ、みんなくぐっちゃいましょ。
テオ君、マリアベルとはもっとお話ししたいし、エンカの身体も潰すわけにはいかないからお願いできる?」
>「す・・・・・い・・・・・ま・・・・・・せん・・・・・・・・・
 充電・・・・・・・・・・・電池・・・・・・・・・太陽・・・光」
「え?太陽光で動力を!?」
即席の氷のレンズを作り出し光を当てようと試みるフリードリッヒ
はたして成功するのか?

「ヒャッハー外だぁ!!」
外に出ることに成功し大喜びのフリードリッヒ
『で、どうやってエンカさん救うの?』(猫語)
「前に似たようなことになった時どうやって解決しましたっけ?」
『あの時は魔剣に憑りついていたから直接憑りついていたわけじゃないから』(猫語)
それは黒い霧がフリードの友人であるエンカを操った時のことである
「確かその時もアムリーテさんじゃなかったけどからくりの人が居ましたよね」
『確かシャイナさんだよね』(猫語)
シャイナさん元気にしてるかなとエンカが乗っ取られている今の現実から逃避しかけるフリードリッヒ
はたして本当にどうすれば助かるのだろうか?

「そうだ!とりあえず死なない程度に凍らせて時間を稼ぎましょう!!」
いい考えだとばかりに手をポンと打つフリードリッヒ
『それよりボスが地下に住んでるってわかってるんだから適当に床に穴開けて
 なんだかドロドロとした怪しげな物体を流し込もうよ』(猫語)
いったい何ガロン必要なのだろうか?
「ああそれいいですね食堂にあるダグザの大釜(レプリカ)から出てくる
 無限に近いお粥とかで
 まあフィジルに帰った後でっていう話ですけど」
そんなことをやったら人間嫌いが加速すると思われる
っていうか外道か!!
「それにしてもいくら人間が嫌いだからっていきなり殺そうとするのはどうかと思いますよ
 僕だってゴブリンやコボルとは嫌いですけどいきなり襲いかかったりはしないですし
 平和のインテリジェンスがない野蛮な種族じゃあるまいし」
いやぁ野蛮な人って嫌ですね
『でもゴキブリはいきなり殺そうとするよね』(猫語)
「だって実害ありますし病原菌のホスト的な意味で」
アンチラストにとって人類はゴキブリなんだろうか?

227 :テオボルト ◆e2mxb8LNqk :2013/04/01(月) 23:38:21.17 0
>220-223>225-226
リリィが壁に体当たりして気絶、アムリーテが壁に穴をあけ満身創痍。
そこへマリアベルが来るも、パピスヘテプの影の術で捕えられる。
色々あったものの、現状は微妙なもの。
「女子一人が挟まる程度の穴一つ、さてどうするかな」
正直な話、テオボルトがやれることは『強力な雷魔法ブッ放して扉をブッ飛ばす』ぐらいである。
今後何があるかわからないことと、スマートでないためにあまり気が進まないのだが。

>「壁抜けはできないけど、穴さえ空いていれば広げるくらいはできるわ」
と、パピスヘテプ。
>穴の周囲にパピスヘテプの影が伸びるとリリィはスポンと抜けたように壁の向こう側へと転がり出ることになる。
「影を操る術かぁ。こんな所でお目にかかれるとは」
影を操る魔法というのは、その便利さ故に覚えたがる人が多いが習得してる人はあまり多くない、ある種レアなものだ。
彼女の『それ』が一般的なそれであるかどうかは別にしても、影を操るというのは中々に凄い。

さて、パピスヘテプの先導の下に、フリード達、マリアベルinエンカ、それを押し込むテオボルト。
そしてパピスヘテプが穴を抜けて、アムリーテが辛そうに穴から出てくる。
フリードが氷のレンズによってアムリーテを充電していると、猫・グレンがポツリ。
>『それよりボスが地下に住んでるってわかってるんだから適当に床に穴開けて
> なんだかドロドロとした怪しげな物体を流し込もうよ』(猫語)
それにフリードが便乗する。
>「ああそれいいですね食堂にあるダグザの大釜(レプリカ)から出てくる
> 無限に近いお粥とかで
> まあフィジルに帰った後でっていう話ですけど」
「そういうエグいのはやめい! この館を使用不能にする気か!」
珍しくテオボルトがツッコミに回る。この主従何気に怖い、と今更ながら感じるのだった。

「……マリアベルの主人にして館の主が確か、アンチラスト、とか言ったか?
 そいつは地下にいるんだったな……さっさと引きずり出さないと、おちおち休めん。
 課題中で連絡できないから教師陣の応援も当てにできんし、此方から出向くか」
テオボルトはそうぼやきつつ、周りを見る。
未だ目を回しているリリィと、まだ動くには辛そうなアムリーテが目に入る。
もうしばらくすれば二人とも動けるだろうが。
「ふーむ。二人を放っておけないし、マリアベルとの『お話』もある。
 なら……パピさん、私は先にアンチラストを探しに行ってくる。大した活躍もできていないし、な」
パピスヘテプに言い残すと、彼は迷いなく階段の下の扉へと歩みを進める。制止の言葉があっても聞かないだろう。


階段の下の扉から行ける下のフロアは、アムリーテが清掃道具を見つけた場所である。
上に建つ洋館の広さに応じて、そのフロアも部屋もそれなりに広いが、数はあまり多くないようだ。
大体がワインセラーや物置といった風に使用されているように見える。

「さて、こういう時はこういう所からかな……けほっ、埃だらけだ」
テオボルトは杖の先に明かりを灯し、とりあえず見つけた物置を探る。

228 :エンカ ◆jWBUJ7IJ6Y :2013/04/02(火) 21:37:14.27 0
>223>226>227
「……!?なんだ!?エンカの体力が……抜けていくーっ!?」
> リリィとアムリーテを掴み逃がさまいと引っ張るマリアベル。
突如としてそのマリアベルの力が急速に抜けてきたのだ。
見ると、何かが足首に絡みついている。影である。
それはパピスヘテプが仕掛けた魔法だった。
> 「影は勢いを減退させ、精力を削ぐ……」
> パピスヘテプが近づくにつれマリアベル(エンカ)の身体を影が這い上がり、浸食し、締め上げ、力を、精力を吸い取っていく。
「くそっ!エンカだって知らなかったぜ!お前がこんな魔法を使うとはなーっ!」
> 「突き飛ばすなんて乱暴ね。
> それにせっかくいい格好でお尻が嵌っているのに抜こうとするなんて無粋な……いや、そうじゃなくて
> 館の主人アンチラストさんは地下にいるのね。
> ぜひとも話をしたいわ」
パピスヘテプはアムリーテが開けた穴を魔法で広げた。
なんとか全員脱出できそうである。
マリアベルは暴れたが、既にその力は弱く、簡単にテオボルトによって外に放り出された。
「貴様らーっ!この俺に尋問するつもりだなーっ!?エロ絵草紙みたいに!!エロ絵草紙みたいに!!」
おそらくそんな趣味の者はここにはおるまい。

> 「ヒャッハー外だぁ!!」
> 外に出ることに成功し大喜びのフリードリッヒ
> 「それにしてもいくら人間が嫌いだからっていきなり殺そうとするのはどうかと思いますよ
>  僕だってゴブリンやコボルとは嫌いですけどいきなり襲いかかったりはしないですし
>  平和のインテリジェンスがない野蛮な種族じゃあるまいし」
「でも敵だと認識したらまったく容赦しないよな、お前」
とマリアベルがフリードに言った。
もう皆気づいているかもしれないが、マリアベルはエンカの知識を参照できるのだ。
あの日見た子孫断絶脚をエンカは忘れない……

> 「……マリアベルの主人にして館の主が確か、アンチラスト、とか言ったか?
>  そいつは地下にいるんだったな……さっさと引きずり出さないと、おちおち休めん。
>  課題中で連絡できないから教師陣の応援も当てにできんし、此方から出向くか」
> テオボルトはそうぼやきつつ、周りを見る。
> 「ふーむ。二人を放っておけないし、マリアベルとの『お話』もある。
>  なら……パピさん、私は先にアンチラストを探しに行ってくる。大した活躍もできていないし、な」
テオボルトは聞く耳持たずの様子で階段を降りて行った。
「んで、この俺に何しようってーの?お嬢さん方よ〜?」
マリアベルはパピスヘテプ達を睨んだ。

229 : ◆jWBUJ7IJ6Y :2013/04/02(火) 21:39:34.73 0
テオボルトは階段の下の扉から行ける下層エリアへと移動していた。
> 「さて、こういう時はこういう所からかな……けほっ、埃だらけだ」
> テオボルトは杖の先に明かりを灯し、とりあえず見つけた物置を探る。
物置の隅にはアイテムボックスが置かれていた。
エンカが洋館に到着した直後、客間にあるアイテムボックスへ
テオボルトのカバンを含む荷物一式を預けたのは覚えているだろうか?
洋館の各所にあるアイテムボックスは全て繋がっており、
テオボルトにその知識があればそこからエンカが預けたアイテムを取り出せるだろう。

物置の中ではどこからともなく、ヒタヒタ…ヒタヒタヒタ……という足音が聞こえてくる。
それはどうやら小型の生物の足音のようだが、暗いこともあり、なかなかその姿は見えない。
テオボルトの後ろで、突如ガチャンと音がした。
見ると、床に幻影機が落ちていた。たまたま棚に置かれていたものが落ちたようである。
落ちた拍子に中の部品に不具合が生じたらしく、再生ができないようだ。
メカに強い者がその場にいれば、それを直すことができるかもしれない。

230 :パピスヘテプ ◆/TZT/04/K6 :2013/04/03(水) 22:59:32.02 0
無事に脱出できた一同だったが、アムリーテは太陽光を求める言葉を残して機能を停止。
太陽光を求められてもどうにもできないと困っていたところ、それに応えたのはフリードだった。
氷をレンズにして光を当てる姿にパピスヘテプの胸中は……
感心しつつも羨望しつつも嫉妬するという複雑な思いが去来していた。

なんといってもサラサラヘアーの美少女(と見間違われんばかりの美少年)が美しく光を操る姿。
まるで自分とは正反対なのだから。
だがそんな複雑な感情もグレンとの会話に「うあ〜……」という引き気味な気持ちに塗り潰されるのであった。
テオボルトの様に言葉に出してツッコむ事はなかったが、流石にエグイ。

「あ、凍らせるのはダメよ。回復させるのが大変でしょう?
死なない程度に影でエナジードレインし続けているからそれで、ね。
これならあとからヤモリの黒焼きと赤まむしドリンク飲ませれば回復できるから。」
エンカの処遇については流石に制止をしておいた。
今もエンカの身体は影により拘束されており、同時に吸精されているのだ。

「え、いや、それより一旦外に出て落ち着きたいのだけど」
そんな言葉も聞かずにテオボルトは地下へのルートを見つけようと行ってしまった。

落ち着いて治療もできる拠点として思っていたところが実は敵の本拠地だったのだ。
罠を用意してまっていられるほどの。
そして今、罠の部屋から脱出したとはいえ館の内部。
リリィは気絶したままだし、エンカは乗っ取られたまま。
アムリーテの充電がどれだけかかるかもわからないので、一旦外に出たかったのだが、こうなってしまっては仕方がない。

くるりと視線をマリアベルに向けた。
>「貴様らーっ!この俺に尋問するつもりだなーっ!?エロ絵草紙みたいに!!エロ絵草紙みたいに!!」
「え?いいの?そのお尻に……ジュルリ」
犬を模したフードを目部下に被っているのでその表情は見えないはず、だが、その口元の歪みとちょっと垂れてしまった涎で十分にわかってしまうだろう。
微妙にそんな趣味な者がここにいたりしたと!
とはいえ、流石にそれをここで実行してしまうにはパピスヘテプはまだ若かった。

「ゲフンゲフン、それは大変魅力的な提案だけど、それだとエンカ君の身体が大変なことになるので自重します」
>「んで、この俺に何しようってーの?お嬢さん方よ〜?」
「室内での言動や、シャドードレインで力が弱まった事や、エンカの記憶を読み取っているなどの事からマリアベル、あなたが精神体である事は間違っていないと思うの。
だからまず、エンカ君の身体を返してもらうわ。
私は死霊科で墓守の一族で、浄霊や憑きもの祓いの術に結構長けているのよ」
マリアベルに応えながら、エンカの身体に荒縄を撒きつけ、その先端に藁人形を結びつけていた。

「肉体は魂を守る砦であり、同時に魂を囲う檻でもあるの。
憑きもの祓いの基本は肉体を衰弱させて檻の隙間を広げ、外に引きずり出すのね。
今こうやって精気を吸収しているみたいに。
肉体と魂の同調率が違う異物は荒縄を伝ってこちらに移動する、という寸法よ」
パピスヘテプはマリアベルという憑物を藁人形に移し替えようとしているのだ。
事情説明した後、高らかに憑物祓いの呪文が唱えられる。

成功すればマリアベルは無力な藁人形へと移り、エンカは解放されるだろう。
もちろん衰弱しきっているのでパピスヘテプからヤモリの黒焼きと赤マムシという栄養ドリンクを口に突っ込まれることになるのだ。


「ねえマリアベルさん?私達を罠にかける事に失敗したのだから、地下のアンチラストさんに叱られに行かなきゃいけないのでしょ?
でも安心して、テオ君は一足先に言っちゃってるけど、私たちも一緒に行って謝ってあげるから。
だから案内してちょうだい?」

術が終わった後、パピスヘテプはマリアベルにそう囁きかけるのであった。
この島に来たばかりでパピスヘテプ達は何も知らないのだ。
島の激突、突然の敵対者、小サソリの罠、マリアベル、アンチラスト、そして課題。
少しでも知るためにもアンチラストにも会わねばならない。

というのは建前で、こんなドキドキイベントを前に首を突っ込まずにはいられないのだった。

231 :アムリーテ ◆apJGY8Xmsg :2013/04/03(水) 23:10:23.20 0
>「え?太陽光で動力を!?」
>即席の氷のレンズを作り出し光を当てようと試みるフリードリッヒ。

氷のレンズによって、外の太陽の光がアムリーテに振り注ぐ。
でもアムリーテはその光景を外側から見ていた。

(どうやら、ゴーストモードに切り替わってしまったようです)

アムリーテの魂は、すでに抜け出てしまっていた。
それはアムリーテが行動不能に陥ってしまった場合に、
戦闘データの保存、回収のために付けられている機能だ。

でも本体への充電はフリードがやってくれたので、しばらくしたらアムリーテは復活できることだろう。

(しかし、どうしてアンチラストは人間が嫌いなのでしょう?)
考えても他人のことなどわかるわけがない。
でもアムリーテの嫌いなものは自分を敵視するもの。不気味で怪しげなもの。
その理由は単純にアムリーテが兵器だからだ。かつて敵だったものが怪しげなものだったのだ。

(私は今起きていること、この事態そのものが子どもたちに与えられた課題。と認識します。
多分子どもたちはどのような選択をするかが試されているのでしょう)

フリードはマリアベルと会話。
テオボルトはアンチラストを探しに行く。

>「んで、この俺に何しようってーの?お嬢さん方よ〜?」

>「ねえマリアベルさん?私達を罠にかける事に失敗したのだから、地下のアンチラストさんに叱られに行かなきゃいけないのでしょ?
 でも安心して、テオ君は一足先に言っちゃってるけど、私たちも一緒に行って謝ってあげるから。
 だから案内してちょうだい?」

「そうですね。パピチャンは言いことを言いました。お友達になりましょう。つまり、お友達作戦です。
私のセンセイも皆仲良しお友達という価値観を私に教えてくださいましたのです」
なんと気絶しているリリィが突然喋りだす。そうだ、アムリーテがその身体に取り付いたのだ。

(…あむぅ、でもこれが、人間の身体というものですか?
まるで…どこかに浮かんでいる感じがしますぅ)
海の中、といったほうが正しいかもだが、アムリーテは水の中を知らない。
リリィの身体をまさぐったあと、可動域が気になってエビゾリのヨガのポーズ。
しかしビクンとして…

「これって…なんですかぁ!?」
涙をポロポロと流している。それはアムリーテが初めて感じる「痛み」というものだった。

232 :リリィ ◆jntvk4zYjI :2013/04/05(金) 14:53:39.15 0
アムリーテがリリィの体に入り込んだとき、運悪く無防備だったリリィの魂は、体の外に押し出されてしまった。
器を乗っ取られたリリィの魂は、たまたま近くにあった空っぽの体ににとりあえず入り込んでしまう結果となった。

「ああもう、ひっどい目にあったよー。壁って意外と硬いのね」
活動停止していたアムリーテだったが、フリードのおかげでわずかながらも充電できたようだ。
回復した彼女は、どこか様子がおかしい。とはいえ、その違いが分かるほど皆はアムリーテと深く知り合えていないかもしれないが。

「おお!でもちゃんと壁を体当たりで壊せたのね!ちょっと穴は狭かったみたいだけど、皆もあの天井トラップから逃げ出せてよかった。
 うんうん、そっか、人間死ぬ気でやれば何とかなるものなのね!
 そういえば、テオ君はどこ行っちゃったんだろう?ついさっきまでここにいた筈なのに」
アムリーテは腕組みして、一人満足げに頷いている。

「・・・・・・・あれ?フリード君にグレン、何変な顔してるの?私よ私、リリィだってば。
 ・・・・・はっ!もしかして私、顔が変とか?やっぱり壁にぶつかったから?」

あうあう、と一人焦っていたアムリーテだったが、ふと視界の隅にリリィを見つけ、仰天する。
「ああ!!なによそれ、何で私のそっくりさんがこんなところに!
 皆、だまされないで!いくら姿かたちを似せていようとも、私が本物のリリィよ!パピちゃん、私を信じて!
 だいたい私は、こんな場所で、あーんなおかしなポーズ取るほどお間抜けさんじゃないわ!」

リリィはずかずか縛り上げられたエンカに近づくと、その襟首に掴み掛かった。
目線の高さがいつもと違うな、とか、エンカ軽いな、という思いが頭の隅を掠めたが、今は深く考えるだけの余裕が無い。
「ちょっとマリアベルとかいう人!よくも私のそっくりさんを勝手に作ったわね!
 でもあいにくね、私はもっと発育がいいんだから!皆だって、すぐに偽者って分かっちゃうんだから!
 さあ、何もかもあなたの仕業ってことは分かってるわ!おとなしく親玉のところに連れて行きなさい!
 ・・・・・・で、親玉はどこだっけ?・・・・・・地下?じゃあ地下にレッツゴー!」

リリィはエンカの耳を引っ張りながら、地下への階段を探し始める。
・・・・・・・自分と、アムリーテの体が入れ替わっているということには、まだ全然気がついていないようだ。

233 : ◆jntvk4zYjI :2013/04/05(金) 15:03:02.35 0
                                   
                               
                               
                            
                             
                            
                            
The next season↓    


【TRP】フィジル魔法学園にようこそ!11thシーズン
http://kohada.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1364549700/

500 KB [ 2ちゃんねる 3億PV/日をささえる レンタルサーバー \877/2TB/100Mbps]

新着レスの表示

掲示板に戻る 全部 前100 次100 最新50
名前: E-mail (省略可) :


read.cgi ver 05.0.7.9 2010/05/24 アクチョン仮面 ★
FOX ★ DSO(Dynamic Shared Object)