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【TRPG】フィジル魔法学園にようこそ!9thシーズン

1 : ◆jntvk4zYjI :2012/04/03(火) 01:20:14.03 0
統一基準歴355年。
魔法文明は隆盛を極め、あらゆる場所、場面に魔法が活用されていた。
そんな栄華の果てにいつしか異変が起きる。
確認されたのは20年前にもなるだろうか?

ある属性の魔法に異常なまでの適性を示す。
ある魔法を生まれつき能力として有している。
未知なる力に開眼する。

今までは天才と言われて来た種類の子供たちが、続々と生まれ始めたのだ。
このことに世界は大いに恐れ、憂慮した。

なぜならば、本来数十年単位の修行と研究の果てに身につけていく力を僅か数年の学習で身につけてしまうのだ。
あるいは持って生まれてくるのだ。
修行と研究は何も力を得るためだけの時間ではない。
力を振るう為の経験や知識をも身につけるための時間でもあるのだ。
仮に、今は凡人同然であったとしても、何かのきっかけで潜在能力が一気に発現することもある。

大きな力を当たり前のように使える事への危惧は、やがて現実のものとなる。
世界各地で引き起こされる悲劇に、統一魔法評議会は一つの決定をなした。

魔法学園の開設!

魔海域を回遊するとも、海と空の狭間にあるとも言われるフィジル諸島に魔法学園を開校し、子供たちに学ばせるのだ。
己が力を振るう術を。


―――― 【TRPG】フィジル魔法学園にようこそ!9thシーズン ――――




2 : ◆jntvk4zYjI :2012/04/03(火) 01:21:09.38 0
■舞台はファンタジー世界。謎多きフィジル諸島にある全寮制の魔法学園です。
フィジル付近は気流や海流が乱れがちなので、島には基本的に、転移装置を使ってくる場合が多いです。

■学園が舞台だからといって参加資格は学生キャラのみではありません。
  参加キャラは生徒でも、学園関係者でも、全く無関係な侵入者でも可。敵役大歓迎。
  また、舞台が必ずしも学園の敷地内で起きるとは限りません。
  いきなり見知らぬ土地に放り出されても泣かないで下さい。 貴方の傍にはいつも名無しさんと仲間がいます。

■当学園には種族制限はありません。お好きな種族と得意分野でどうぞ。

■オリジナルキャラクターでも版権キャラクターでも参加できます。
  完走したスレのキャラを使ってもOKですが、過去の因縁は水に流しておきましょう。
  また版権キャラの人は、原作を知らなくても支障が無いような説明をお願いします。

■途中参加、一発ネタ、短期ネタ大大大歓迎。
 ネタ投下の場合、テンプレは必ずしも埋める必要はありません。
 ただしテンプレが無い場合、受け手が設定をでっち上げたり改変したりする可能性があります。ご了承を。

■名無しでのネタ投下も、もちろん大歓迎!
  スレに新風を吹き込み、思いもよらぬ展開のきっかけを作るのは貴方のレスかも!

■(重要)
 このスレでは、決定リール、後手キャンセル採用しています。
 決定リールとは、他コテに対する自分の行動の結果までを、自分の裁量で決定し書けるというものです。
 後手キャンセルとは、決定リールで行動を制限されたキャラが、自分のターンの時に
 「前の人に指定された自分の未来」を変えることが出来るというシステムです。

例:AがBに殴りかかった。
 その行動の結果(Bに命中・ガード・回避など)をAが書く事が可能です。
 これを実行すると、話のテンポが早くなるし、大胆な展開が可能となります。
 その反面、相手の行動を制限してしまう事にもなるので、後からレスを書く人は、「前の人に指定された行動結果」
 つまり決定リールをキャンセル(後手キャンセル)する事が出来ます。

 先の例に当てはめると、
 AがBに殴りかかった→Bはまともに喰らって受けては吹き飛んだ。
 と決定リールで書いてしまっても、受け手(B)が自分の行動の時に、
 「Bはまともに喰らったように見えたが紙一重で避けていた」
 と書けば、先に書いたレスの決定書き(BはAの拳をまともに受けては吹き飛んだ。)をキャンセル出来るのです。
 ただし、操作する人の存在するキャラを、相手の許可無く決定リールで喋らせるのは歓迎されません。要注意です。

※参加に関して不安があったり、何かわからないことがあったら(説明が下手でごめんね)、どうか避難所にお越しください。
  相談、質問、雑談何でもOKです。気軽に遊びに来てね。


3 : ◆jntvk4zYjI :2012/04/03(火) 01:33:18.36 0
【TRPG】フィジル魔法学園にようこそ!8thシーズン(前スレ)
http://kohada.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1316207939/
TRPG】フィジル魔法学園にようこそ!7thシーズン
http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1302609427/
【TRPG】フィジル魔法学園にようこそ!6thシーズン
http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1294657842
【TRPG】フィジル魔法学園にようこそ!5thシーズン
http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1291300916
【TRPG】フィジル魔法学園にようこそ!4thシーズン
http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1284645469
【TRPG】フィジル魔法学園にようこそ!3rdシーズン
http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1278699028
【TRPG】フィジル魔法学園にようこそ!2ndシーズン
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1273242531
【TRPG】フィジル魔法学園にようこそ!
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1270216495

■避難所
【TRPG】フィジル魔法学園にようこそ!避難所
http://yy44.kakiko.com/test/read.cgi/figtree/1329748719/

【TRPG】フィジル魔法学園にようこそ!避難所 (前スレ。板消滅でデータ消失/wikiにログあり)
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/computer/42940/1295181582
【TRPG】フィジル魔法学園にようこそ!避難所
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/computer/20066/1270211641

規制の巻き添えで書き込めないときは、上記の避難所か代理投稿スレでレスの代行を依頼してみてください。
代理投稿スレ(なな板TRPGまとめサイト、千夜万夜さん内)
ttp://yy44.kakiko.com/test/read.cgi/figtree/1277996017

■テンプレ

名前・
性別・
年齢・
髪型・
瞳色・
容姿・
備考・
得意技・
好きなもの・
苦手なもの・
うわさ1・
うわさ2・

【備考】
全部埋める必要はありません。
テンプレはあくまでキャラのイメージを掴みやすくしたりするものです。
また使える技や魔法も、物語をより楽しむためのエッセンスです。
余り悩まず、気楽に行きましょう。

(外部参考サイト)
TRPに関する用語の確認はこちらでどうぞ
過去ログやテンプレも見やすく纏めて下さっています
(ボランティア編集人様に感謝!)
なな板TRPG広辞苑
http://www43.atwiki.jp/nanaitatrp/pages/80.html

4 : ◆jntvk4zYjI :2012/04/03(火) 01:36:32.61 0
「ざ・ぱんでみっく」
フィジル魔法学園最大の危機!?〜学園の命運は劣等生たちに託された!〜


「成程…わかった、が…少々遅かったな」
分析結果に目を通しながら保険医は肩で息をしながらうなだれた。
もはや椅子から立つ力すら残っていない。

「それ」が生まれたのは三週間ほど前だろう。
しかし「それ」が姿を現したのは二週間前。
流行の風邪と同じような症状で静かに、そして瞬く間に学園に蔓延してしまった。
次々に倒れていく学園関係者たち。
今になって「それ」がなんであるか突き止めたのだが、あまりにも遅すぎた。

「それ」は魔力の高い者ほど早く広く感染し、症状も重い。
「それ」は魔力や気等を有する生命体に感染する為、人、人外、人造、問わず感染する。
「それ」にかかった者は大幅に魔力が衰弱し、能力も減退する。
「それ」に気づいた時には学園教師や上級生たちはもはや起き上がれない程になっていた。
魔力が高いがゆえに。


〜〜親愛なるフィジル魔法学園生徒諸君〜〜
諸君らも身をもって知っているであろう。
今フィジル島に蔓延する奇病。
これは魔界から持ち込まれた未知なるウィルスが人体に入ったことにより突然変異して生まれたものだとわかった。
感染力は凄まじく、魔力が強い者ほど重篤な症状に見舞われる。

故にこの手紙を受け取るものは普段魔力が低かったり、病に侵されても何とか動ける者であろう。
己の力のなさを自覚している者や、ウィルスにより力の減退を感じている者だと思う。
いまフィジル魔法学園でまともに動けるのはこの手紙を受け取った諸君らのみなのだ。

学園は重大な危機に陥っている。
その危機を救う手段は解明された。

この未知なるウィルスの抗体を持つ者がいる。
魔界からの留学生「ササミ・テバサコーチン」の。彼女の生血が必要なのだ。
彼女は現在この学園において唯一万全の存在といえる。

ウィルスに侵された者やウィルスの影響をほとんど受けない者にササミ・テバサコーチンの捕縛は難しいかもしれない。
だがしかし、繰り返し言うが、動けるのは諸君のみなんだ。
学園の命運を握る存在になった気分はどうだろうか?
保険医としてあるまじきことだが、フィジル魔法学園の精神にのっとり言わせてもらおう。
協力し、奮戦せよ!今日の主人公は君たちだ!

各自ササミ・テバサコーチンに説得もしくは捕縛を試みるのもよいだろう。
しかし万全を期したい者は保健室に来たまえ。
部外秘故に出せぬササミ・テバサコーチンに関する資料を用意しておこう。


手紙を書き終えると、保険医は紙を優しく撫でる。
紙は無数に分裂し、それぞれ折れ曲がり、畳み、広がり、様々な動物を模した折り紙となって学園中に散らばっていった。
保険医もウィルスに侵され衰弱しているので、折り紙たちは途中で力尽きるかもしれない。
だが何割かはまだ健在そうな魔力を嗅ぎ当て、その者の元へと届くだろう。
一斉テレパシーや校内放送を使わなかったのは補足対象であるササミに学園の動きを察知されないようにだった。

手紙を受け取ったフィジル魔法学園の生徒たちの奮闘が今ここに始まる!

5 : ◆jntvk4zYjI :2012/04/03(火) 01:38:03.35 0
保健室に行けば保険医がベッドで横になっている。
症状が進んだ為か、問いかけても返事はなく、そしてそれに対処するすべもないのも既知のことである。
できる事と言えば、手紙に書かれた通り、ササミの生血を手に入れる事なのだ。

机の上に魔法陣が描かれ、手をかざせば資料が浮かび上がるだろう。

【部外秘】

ササミ・テバサコーチン

体力 A・血中の再生酵素もあり、多少の怪我はダメージにならない。
魔力 A・魔力は高いが、切り札の儀式魔法用に温存する傾向があり、普段は小魔法しか使わない。
持久力C・長時間連続の活動には向かない

攻撃力A-
斬撃 A・超振動ブレードによりなで斬りに特化している。
打撃 D・なで斬りに特化しているため打撃は殆どない
格闘 C・ヒットアンドウェイが基本で格闘能力は低いが足技には注意

守備力C
対物理C・再生酵素を含む血を持っているが、それでも防御力は低い
対魔法C・魔法への抵抗力は低く、特化防御属性はない

機動力A-
飛行能力AA・超高速飛行が可能。旋回能力も高く、守備力の低さを補って有り余る。
地上 C・歩くのには向かない
水中 D・飛び込むことはできるが泳げない

特殊能力
石化ブレス・
石化ブレスを各所の口から吐き出すがその射程距離は息を吹きかけるのと同じ距離であり1Mほど。
有効射程距離に至っては50pほど。
ただし、空気より重いので上空から散布の場合はその限りではない。
また風向きに影響を受ける

怪音波
怪音波を各所の口から発するが、超振動による破砕が可能なレベルではない。
音波を重ね合わせることにより打撃も可能であるが、座標演算が難しいため実践的ではない。
ただし、怪音波による三半規管への攻撃には注意が必要だが、発声と同じく長くは続かない。
また、怪音波を発することによって水晶体である枝分刀を共振させて超振動ブレードとすることができる。

七面体
種族特性として七つの顔を持つ
視力、動体視力は優れており、室内に張り巡らされた糸を躱しての高速飛行をしたとの報告もあり。
各面の視界を共有しており、死角はないものと思われる
七面と手袋操作により七人分の呪文詠唱と魔法動作ができ、多人数による儀式魔法を単独で行使可能。
ただし魔力はあくまでひとり分なので多用はできない模様
多頭類の類に漏れず再生能力が高い。
血に再生酵素が含まれているためだが、傷は回復できても体力や魔力までは回復できない。

戦法
全天視界と高速飛行、枝分刀による多刀流を用いた高速機動剣術は強力といえる。
剣術といっても機動力をかんがみればその間合いはロングレンジと言って差支えがない。

性質
光るものが大好きで、集める習性がある。
磁場の変化に弱く、平衡感覚を失うらしい。

次世代魔王候補生と言われるだけあって、強力な個体といえる。
魔界にて学園創設の動きがあり、学園というものの視察および人間の危機に対する行動の観察を目的としていると思われる。

6 : ◆jntvk4zYjI :2012/04/03(火) 01:45:50.44 0
興味を持ってくださった方へ。
学園校舎内に手袋がばら撒かれており、その指先でササミのいる方向を知ることができます。
現在参加している方も、この先乱入する方も折り紙と手袋拾えば即参戦可能です。
ただし、参加する方は全員ウィルスに感染していることになります。
能力に比例して体調も悪くなります。
思い通りにならない不自由さを、学園の仲間とともに心行くまで楽しんでいただけたら幸いです。



テンプレは以上です。
では、よき学園生活を!

7 :ルナ ◇7CpdS9YYiY :2012/04/03(火) 01:49:04.21 0
混濁した意識のルナはトイレ内でグレンを見かけたような気もしたけれど
そんなことをするような変態少年ではないと信じ、見間違いと思って廊下に出る。
扉を開けるとぐにゃっと世界が回っているような気持ちがした。

「ふぇ…ふらふらする……」
廊下の状況はよくわからなかったけど目の前には紙くずのように四散しているフリードの作った罠の籠。
それと魔法武士のエンドウユウキ。やはりリリィの姿はなくペンギンがいるだけ。
もちろんササミもいる。トモエと何かを話している。
目をしぱしぱし凝らして見ると、手袋の指し示す方向にだけ集中し過ぎて前方不注意のプリメもいるようだ。

「セラはどこだよ〜?あいつは回復魔法が使えるんだろ?
オレのふらふらを治しやがれぇ…こんちくしょ〜。う、うっぷ…」
酔っ払いのようにふらふらと千鳥足のルナ。
ちなみに周りに人が大勢いると舐められないように乱暴な言葉遣いになる。

ゆらりと立ち尽くしたルナは、虚ろな視線でササミを射抜く。
兎にも角にも七個も顔があればどれかとは目が合うだろう。

「てめぇこんにゃろー、さっき無視してトイレから出ていかなかったかぁ?
感染源女のくせにでけー乳、じゃなくて顔しやがってさ!みんなを病気持ちにもしちゃってホントに邪魔なやつ。
おめーがいなかったらこんなことにはならなかったんだぜっ!わかってんのかよーっ!?」
叫び終わったルナは頭に血が昇り過ぎたせいかフラつき倒れそうになる。
でもビジュアル系なので人前で無様に倒れることを良しとしない。
ペンギンの頭を支えにしたりフリードの大切な部分を手摺りの代わりにしたりと
吉本新喜劇のおじいちゃんみたいにあっちへふらふらこっちへふらふらしつつ耐えた。
先程のササミの怪音波は、ルナの三半規管やら脳的なものをダメにしてしまっていたらしい。
そして体の制御を失ったルナは、足をもつらせながらササミへむかって転がるように倒れこむ。

8 :◇70VgGM3HY6 :2012/04/03(火) 01:50:03.68 0
前スレ>228-250
>尖塔まで来ていたクリスは急降下してくる熱源に気付いただろう。(略)
上から、何かが来る。猛烈な勢いで、凶暴な風を伴って。
「……ハハッ」
乾いた笑いを漏らしたのも束の間、暴風とも呼べるそれに
元々華奢な上拒食症に陥っていてすっかり鶏がらに逆戻りしたクリスは
ほんのわずかな抵抗も出来ず吹き飛ばされてしまう。
結果、左肩を強打し脱臼。応急処置と称して外れた肩を壁に打ちつけ
無理やり骨を嵌め直したのだった。本来は右手で左腕を押さえてやる行動、
支えもなく行えば必然歪みが生じる。きちんと嵌ってないせいか、腕全体が痺れている。
「一応、動く。万々歳じゃないか」


>「これって、もしかして…ササミの場所を指し示してるんじゃ?あ!ごめんなさい!」
崩れた屋根板を避け、降り立った先には先程保健室にいた……誰かがいた。
熱で存在を認識できるクリスだったが、それは大雑把であり瞬時に個人を特定できる物ではない。
……片割れが近くで何かを拾ったかと思えば、気付いた時には鼻を塞がれていた。
塞いだ張本人は平謝りしながら去っていき、残されたクリスはと言えば……
「……クック…鈍った、な。あの程度にも反応できない。
 役立たずの、ゴミクズだな」
強烈な自嘲を吐出し、後を追う。傍にいたプリメは、本人だと気付かぬまま。


>「フィジルのみんな!ササミ・テバサコーチンだてよぉ。(略)
ルナの後を、残熱を頼りに追っていると今回のターゲットであるササミからのメッセージが響く。
それを聞いたクリスは……肩を震わせ、声もなく笑う。
「……鶏肉の化け物が、何を偉そうに。
 まったく、どうにも鳥の化生と言うのには碌なのがいないらしい……クハハ」
罵倒にも取れる呟きは、やはり自嘲へと帰結する。
精神状態が不安定と言うレベルを超えているとしか思えない。
もしかしたら、りりぃの考えるとおり……またしても『何かに憑かれた』のかも知れない。


>「女子便所だと……」
>「ぼ、僕男の子だよ!女子トイレなんて入れないよ!
着いた先は女子トイレ、そしてその前に立ち尽くすのは……声から判断するに
炎道勇気とフリード。れっきとした男子(?)であるこの二人には、女子トイレと言う場所は
踏み込みがたい禁域なのだろう。そんな二人を確認したクリスは、あろう事か挑発をかます。
「クク、一体何をしているのやら……
 誇りだとかなんだとか、命と引き換えにするような物なのかね……
 私にはわからんよ、そんな物を後生大事に抱えて首を落とされるのを待つなどと。
 ……そんな物に拘って、本当に大事な物を失う。阿呆だな」
クリスは三週間、一度たりとも部屋からでなかったし炎道が訪ねる事も無かった。
編入初日に出会った、どこかぼけた少女のあまりの変貌、炎道は何かを思うのかそれとも?


>「どいつもこいつもこんな手しか思い浮かばせえへんのきゃ!出てきて捕まえてみやーせ!」
>「正面から行かせてもらうわ。それしか能がないもの。」
女子トイレでの一悶着は、トイレ前に場を移した様である。
つまらない手練手管におかんむりのササミ、それを見つけて正面から挑むトモエ。
……クリスは瞬間的に、『魔術』で、自分の、姿を、匂いを、音を消し、自らの経験で気配を消した。
瞑った瞼の奥に目は無いが、あればそこには獲物を狙う獣の光が宿っていただろう。
(「なら私は背中からだ……まぁ、当たりはしないだろうがな」)

クリスの左手には、錆びた短剣が握られている。
握力が弱まっているとは言え、数年来の付き合いだ。嫌でも手に馴染む。
そのままササミの背後から『心臓』を狙う……ありきたりな殺気を、わざと乗せて。


9 :シャオロン ◆sto7CTKDkA :2012/04/03(火) 11:25:27.39 O
「頭痛……」
朝。 シャオロンは自室として与えられた部屋で、いつものように目を覚ました。
シャオロンがこの学園に無理やり転入させられてから、およそ3週間。
そろそろ学園の状況にも慣れてきた頃だ。
最初はどんな田舎だと馬鹿にしていた学園も、慣れてみればなかなか悪くは無い。
住めば都とはよく言ったものである。
ただ、今朝の目覚めは、シャオロンが学園に来てから一番最悪の目覚めだ。
理由は彼女の独白にあった、頭痛と倦怠感。
額に手を当ててみるに、熱もありそうだ。
思い当たるのは、最近学内に流行っている奇妙な風邪のこと。
風邪にかかるのは普段の鍛錬が足りないからだと豪語していたシャオロンには、別の意味で頭の痛い状況といえよう。

「風邪…? 私としたことが不覚な……
 まあ、あれよね……弘法にも筆の誤りってやつよね…」
自分に都合の良い言葉を口にしながら起き上がったシャオロンは、ゴーレムを操って着替えと水を手元に持ってこようとする。
彼女のゴーレムは自立型ではないので操作はしなければならないが、面倒な作業を省けるのはありがたかった。
……ゴーレムが正常に作動していればの話だが。
部屋の中にいた手足の生えた雪だるまのようなゴーレムは、普段の3倍の遅さでぎこちなくシャオロンの操作に従った。
どう考えても自分で動いた方が速いスピードだ。
シャオロンは起き上がってゴーレムの手から服を奪い取ると、その丸い胴体に回し蹴りを叩き込んだ。
吹き飛んだゴーレムは壁に激突してあっけなく潰れ、土塊に戻った。

「私の指示にちゃんと従えないなんて、やっぱり急ごしらえの粗雑品じゃダメね。
 今度からは家事用のゴーレムも手抜きしないで作る事にしないと」
腰に手を当ててそう言い放ってから、シャオロンはシャワーを浴びるために浴室に向かった。
頭をすっきりさせれば風邪も治るかもと考えたのだ。

「あ〜……やっぱりダメだわこれは……」
結局、シャワーを浴びて頭はすっきりしたが、頭痛は収まりはしなかった。
当たり前である。
恥を忍んで今日は寝ていようと心に決めたとき、シャオロンは、浴室に入る前には無かった物がゴーレムの残骸の上に乗っているのを見つけた。
それは、保険医が最後の力で放った手紙だった。

10 :シャオロン ◆sto7CTKDkA :2012/04/03(火) 11:29:19.75 O
無言のままにシャオロンは手紙を読み、終えると同時に、ぐしゃりと手紙を握りつぶす。
「……そう、これはあいつの持ち込んだ病気ってわけね……」
あいつ。とは言わずと知れたササミの事。
偶然とはいえ、ササミはシャオロンと同時期の転入生だ。
親しく会話した事はなくとも、顔や名前は知っている。
当然、ササミが魔界出身であることも。

「前から怪しい奴だとは思っていたけど、ついに本性表して侵略を開始したってとこね。
 そうはいかないわよ。
 私より先に世界征服なんて……ゆ る さ ん!」
身勝手な怒りに燃えながら部屋を出ようとしたシャオロンは、別の可能性を思いついて足を止めた。
これがササミの侵略ではなく、教師たちの仕組んだ試験かなにかである可能性だ。
あるいは手紙に書かれている事は真実で、なおかつササミに侵略の意図がないのなら……?

あれこれ考えてはみたが、とにかく情報が足りない。
となると、最初に保健室に向かうべきだとシャオロンは結論を出す。
「トラコウ! アクライ!」
出かける時にゴーレムを用意するのは、ゴーレムマスターの基本だ。
呼びかけに応じて動き出したスライム型のトラコウを鷲掴みにして窓を開けたシャオロンの前に、竜型のアクライが頭をもたげてくる。
大きすぎて寮に入らないアクライは普段は寮の外にいるので、上に乗って外出するときは実に便利なのだ。
スライム型のトラコウは肩に張り付けて落ちないように固定して。
お気に入りの竜型ゴーレムの頭の上に乗り移ったシャオロンは、アクライを操って保健室に移動を開始した。

11 :シャオロン ◆sto7CTKDkA :2012/04/03(火) 11:31:27.95 O
ササミの宣戦布告を聞いたのは、ふよふよという擬音が聞こえてきそうな速度で保健室に向けて飛行中の時。
なかなか痛烈な皮肉入りではあるが、ほいほい釣られるほどお間抜けではない。
罵声で相手を怒らせるなど中つ国では初歩の初歩の戦術である。
「吠えてなさい吠えてなさい。 すぐにそんな事言ってられないようになるから」
涼しい顔で挑発を受け流して保健室にたどり着くと、シャオロンは窓をアクライの頭で突き破って室内に入った。
いちいち入り口から入るのが面倒だったのだ。

周囲を見回して保険医以外に誰もいない事を確認し、シャオロンは机の上の魔法陣から情報を引き出す。
展開される詳細かつ貴重な情報を見ながら、シャオロンはしばし考え込んだ。
まともに相対しては撃破は難しいだろうが、ササミが本当にゲーム感覚でいるなら……?
シャオロンは、保険医が仮病ではないことを確認するために保険医を(文字通り)叩き起こそうとした。
重症で寝込んでいる保険医にはいい迷惑である。

「ふん……ササミの奴魔王候補なんて言われてるけど、鳥なき里のコウモリなんじゃないの?」
保険医が本当に動けないのを確認したシャオロンはササミに対する失礼な感想を述べ、安全を確認してから保険室を出る。
今度は校舎内を移動して職員室に向かうつもりなのだ。
保健室に頭を突っ込んだまま動かなかったアクライも、主人の意向を受けて職員室方向への移動し始めた。
もちろんこちらは校舎の外を。だ。

12 :フリードリッヒ ◆cOOmSNbyw6 :2012/04/03(火) 11:58:04.41 P
前>244-250>8-11
>「にゃ〜って。女子トイレに入ってくるような男にはこれだぎゃ!」
『うぎゃぁーフリードリッヒィ!!』(猫語)
古代象男の回転牙を食らった戦争男のような断末魔をあげるグレン
説明しよう耳が四つもあるグレンは
耳を抑えて怪音波を回避するということができないのだ!
すなわちまるごとダメージを食らうのである

「グレンの魔圧が・・・・消えた!?」
『ちょっと死んだみたいなこと言わないでよ!!』(猫語)
どうやらなんとか生還したらしいグレン
「おかえりなさい、どうやらひどい目にあったみたいですね
 だから女装しろって言ったのに」
『男としてのプライドが許せなかったんだ』(猫語)
「恥や外聞でご飯は食べれないでしょうに」
貴族として言ってはいけないことを平気で言うフリードリッヒ
こいつ本当に貴族なんだろうか? 

>「なめとんのきゃーー!」
何故かまんまと鳥の罠に引っ掛かるササミ
「う〜んせめて鉄の鍋にしたほうが良かったですかねぇ?」
だがそれだと概念的なものが弱まり引っ掛かりもしなかっただろう
>「どいつもこいつもこんな手しか思い浮かばせえへんのきゃ!出てきて捕まえてみやーせ!」
「だが断ります!正面からぶつかるなんて事は戦士にでも任せておけばいいんです
 だって僕らは魔法使いなんですからね、戦士の仕事をとっちゃいけません」
だがここは魔法学園である・・・・すなわち戦士なんて居ない
>「正面から行かせてもらうわ。それしか能がないもの。」
そして魔法使いなのに真正面から突っ込んでいくトモエ
「ちょっと今みんな弱体化してるってこと忘れてるんじゃないですかやだぁ!?」
 普通に考えて勝てるわけ無いのだが・・・・さて?

>フリードの大切な部分を手摺りの代わりにしたりと
「ちょっと何処触ってるんですか!変態!変態!変態!!」
『え?何で?』(猫語)
とさわさわと同じ所を触るグレン
「あなたまで触らないでくださいよ」
『何がどういけないのかさっぱりわからないよ』(猫語)
やはり猫と人とは感性が違うようだ

後ろからササミを狙うクリス
「確かササミさんって顔がいっぱいあったような・・・・・・」
はたして死角なんて存在するのだろうか?
「一応怪我を直してもらった恩がありますから
 タバスコの霧で全部の目をっていう手はあまりにもあれですよね・・・・・・」
グレンは耳が増えたから防御しきれなかったのだ
ササミもあれだけ目があるのだから何処か一箇所はダメージを受けるだろう
だがそれは想像するだけでも痛すぎる
故にフリードはその手を封印した
『あのでっかい肉の塊の下とかどうよ?』(猫語)
猫であるグレンにとっては巨乳なぞ単なる肉の塊に過ぎないようだ
胸の下とかどうやって潜り込めというのだろうか?
「小さいことは便利ですからね
今一番小さいリリィペンギンさんならもしかして?」
はたして貧乳は巨乳を凌駕できるか?それが勝利への鍵である


13 :リリィ ◆jntvk4zYjI :2012/04/03(火) 18:28:23.63 0
前スレ>246-250 >7-8 >111-12
ササミ曰く、彼女は魔界から来たスパイスらしい。
(退屈な日常生活にちょっとした潤いとアクセントを、という意味・・・かなぁ?)
ちょっと言葉の齟齬があったようだ。

まあササミは魔界の住人だ。
今回の騒動を通じて、人間というものがどういう行動をするか観察したいという気持ちもわからなくもない。
もし捕まえられなかったらどうなるのか?と聞こうとして、止めた。変にその後のことについて考えられても困るからだ。

今のところ、ササミの目的は観察だ。つまり、対象者が全員息絶えては意味がなくなる。
つまり、ササミは、どんな形であれ血液を渡す気はある、ということだ。
変に意識させたり気持ちを拗らせたりするよりは、今のままそっとしておくほうがいいだろう。
また、リリィを抱っこしているササミは両手がふさがることになる。
リリィは意識していなかったが、これは、ある意味ハンデと言えるだろう。

(それにしても、ササミちゃんって饒舌だったのね。それとも、同じ鳥のよしみってことなのかな?)
まさか母性補正までかかってるとは、夢にも思わないリリィだっただった。

ササミはルナのヒカリモノトラップに引っかかって、ふらふらと女子トイレへ。
その後は、まるで目まぐるしい舞台劇のようだった。
ルナが何もないところから現れたり、ササミがよろけたら今起きたことを全部忘れたり。
突如グレンが女子トイレに入って来て、ばったり倒れたり。
「ピー!!(グレン、いったいどうしたのー!!)」
耳を押さえられているリリィは、何があったかさっぱりわからなかった。
「ピピイ!(訳:とりあえず、ルミちゃんじゃなくてルナちゃんなんだからね?)」
かなりずれた事を話すリリィは、空気が読めないペンギンだった。

「ピー!」
トイレから出たリリィは歓喜した。
なんと彼女の目の前には、おいしそうなご馳走が待っていたのだ!
「わーいわーい!ご飯だごはんだぁ!」
リリィはササミの腕をすり抜け飛び降りると、わーいわーいと大喜びで皿に飛びついた。
食べ物に夢中になっているリリィは、周りが全く見えていなかった。
「ピギッ?!」
ルナに押し付けられ、皿に顔を突っ込むリリィ。
その直後、ひょいとササミの小脇に抱えられる。
(ちなみに、今回も捕獲したのではなく捕獲されたため、鬼ごっことしてはノーカウントである。)
そう遠くない場所で、何かが破壊されたような音と振動(>11)がしたが、今はそれどころではなかった。

「待たせたわね、ササミさん。」
ササミがその声のする方へ視線を向ければ、ふらふらとした足取りで階段を降りてきた無表情の少女、
トモエ・ユミと視線が合うだろう。
『あ、ほらほらトモエ!笑うんだろう?』
「ピイイイイイイイイ!!!!」
ぶわっ!とリリィの羽毛が逆立った。

真正面から迫るトモエ、よろけて突っ込んでいくルナ、そして背後から近づくクリス。
エンドウとフリード、セラと、別行動のシャオロンははたしてどう動くのか?
興味は尽きない。

一方のリリィといえば。
「ピー・・・・・(訳:め、目が回るー!!)」
食べた直後に上へ下へと激しくシェイクされることになり、目をぐるぐる回していた。
フリードに何か考えがあるようだが、死角を狙うなら、まずペンギンリリィに何をするか指示する必要があるだろう。

14 :炎道勇気 ◆hCjEHNrkek :2012/04/04(水) 13:02:35.59 0
炎道勇気に女子便所を覗く趣味はなかった。
いや、覗く趣味があっても困るんだけど……


>「あ、炎道さんこんにちはってここは・・・・・」

「よう、フリード。ササミはおそらくこんなかだ、ってどうやらそんなことはわかってるみたいだな」

なぜか冷静さを装っている勇気くん、カッコ付けたがりなんでしょう
女子トイレの前でカッコつけても意味は無いですが、むしろかっこ悪い

とまあ、なんやかんや小芝居があって女子トイレに突入するグレン
どうやら中にササミはいたようです
>「きっと理性では抗っても本能には逆らえないはずです」

その間にフリードが用意したのは罠
野鳥を捕まえるのに誰でも作れるかごの罠である
「いや、さすがにそれは引っかからないだろ
むしろ罠にかかったほうが嫌な気持ちになるぜ」

>「なめとんのきゃーー!」

「ほらみろ!怒らしただけじゃねーか」

>「クク、一体何をしているのやら……
「うぼぉ!クリスどうしたんだ、そんな思春期特有の病気にかかったみたいな口調は!お前にはまだ早いんじゃねぇか?
それにしてもひっさしぶりだな〜元気だったか?いや〜変な病気がかかってれるけど、このササミの鳥野郎のせいだな!!」
などと勘違いも甚だしいことを言っております

一瞬引っかかったかもと思った自分が恥ずかしくなった勇気くんでした

>「待たせたわね、ササミさん。」

「誰だてめぇ!……え、おばさん?」
二十代後半の女性はもはやおばさんに見えるのです!!

>「ふぇ…ふらふらする……」

「おいおい、大丈夫かルナ
あんまりむりすんなよ。この総代!総代である俺!炎道勇気様が来たからにはササミなんてチョチョイのちょいでやっつけてやるぜ!」
大事なことなので2回言いました。ちょっちょいのちょいでやられないことを祈るばかりです

>「だが断ります!正面からぶつかるなんて事は戦士にでも任せておけばいいんです
 だって僕らは魔法使いなんですからね、戦士の仕事をとっちゃいけません」

「なら俺!魔法武士の俺が相手だ!なぜか魔力は使えないけどな!そんなこと武士には微塵も関係ないぜ!
俺の愛刀のサビにしてやるぜ!!」

勇気は刀を抜いてササミに上段から斬りかかる。特になんの考えもなく
(クリスが後ろから斬りかかってることには気づいてません)

15 :プリメ・インアップ ◆EcivAn2BM46z :2012/04/05(木) 01:33:23.24 0
前スレ>247-249
>「危ないわ。」
あまりの危なかっしさからか、トモエが見るに見かねてプリメの肩を抱き寄せる。
当人のプリメも思わぬ行動にビクっと体を強ばらせるが、決して不快そうではない。
いや、むしろどことなく嬉しそうですらある。トモエの気遣いが嬉しかったのだろうか。

そうして手袋の指さすままにトモエに支えられながら歩いていくと、
あっけないほど簡単にササミを発見することができた。
どうやらすでに結構な人が集まっているようで、保健室で見かけた少年達や途中で合流したと思われる男子生徒の姿もある。
>「どいつもこいつもこんな手しか思い浮かばせえへんのきゃ!出てきて捕まえてみやーせ!」
そう吼えるササミの手には水晶でできたシミター、更に周囲に浮かぶ手袋もまた同じように刃を携えている。
それらは周りを警戒するように周囲を回っており、その姿を見た瞬間、恐怖からかプリメは後ずさりする。
先ほどは調子のいいことを言って見せたが、いざ面と向かってみると、やはりどことなく恐ろしい雰囲気が漂っている。


>「待たせたわね、ササミさん。」
しかしトモエは気圧されることもなく、威圧することもなく、
いつもどおりの無表情と平常心を保っているようだ。
暑苦しい赤毛の男子生徒からおばさん呼ばわりされても、その顔は一切歪まない。
というより、言われ慣れているのだろうか?
>『あ、ほらほらトモエ!笑うんだろう?』
「お、おいトモエ……その笑い方なんか気持ち悪いぞ……」
それどころかプリメでさえも思わず引くような。不気味な笑みを浮かべる。
トモエの少しばかし何かが欠落したような雰囲気にプリメは違和感と不安を感じた。

>7-9>14
そうしていると、トモエを始めとして一斉が動き始める。
意を決したのか真正面から突進するトモエ、先ほどの少女はちどれ足でササミへと倒れこみ
更に暑苦しく芝居がかった口上を述べながら男子生徒は刀を抜いてササミへと切りかかる。
このままでは乱戦は必須、最悪味方同士でぶつかり合うことすら考えられる。

「よ、よしお前たち!やってしまえーっ!あ、あとトモエは無茶するなよ!」

最もこれだけの数がいれば何とかなると思ったのか、プリメは懲りずにササミを指さし高らかに宣言する。
このまま他力本願のまま傍観を決め込もうとしたプリメだったが、予想外の出来事が起こる。
指さした手が本人の意思とは関係なく暴れ始めたのだ。
「ひぃっ!な、なんなのこれぇ〜!?」
いきなりのことにプリメは錯乱し、暴れている方の手を押さえつけようとしている。
だがよく見ると手ではなく、異常な動きを見せているのは手袋のほうだ。
何かが作用したのか、手袋は主人であるササミの元へと戻ろうとしているようだ。

「だ、だれかこれなんとかしてぇっ!!」
プリメの懇願は聞き届けられず、手袋の力は増すばかりで、足を踏ん張っても耐えられないほどになる。
そしてとうとう手袋はプリメごと、とんでもない勢いでササミ達の方角へと飛んでいく。
「いやぁぁぁぁぁッ!!」
このままではササミに正面衝突してしまう。
そうでなくても誰かに思い切りパンチを食らわせてしまうのは必然かもしれない。

16 :シャオロン ◆sto7CTKDkA :2012/04/05(木) 18:05:26.91 O
目的地に到着したシャオロンは、道中拾ったササミの手袋を手に職員室の中に入った。
手袋を踏んだり蹴ったりしたり結果と騒ぎの音を照らし合わせたりした結果、手袋の効果は把握済みである。
「こんなものばらまいて自分の居場所を教えて回ってるなんて、あれね。
 ササミの奴本当にゲーム気分なのね。
 そんなので魔王候補なんて、魔界もずいぶんおめでたい奴らが揃ってるものだわ。
 ……ま、その方がこっちも都合が良いんだけど」
体調が悪くとも機嫌は良くなってきたシャオロンは、教員用の机の上に目当ての物を見つけて、それを持ち上げる。
“それ”は、広域連絡用の魔道具だった。

魔道具が正常に動くことを確かめたシャオロンは、外にいるアクライに校舎を飛び越えて反対側に回るよう指示を出す。
アクライの移動用に少し間を置いてから、シャオロンは魔道具を作動させて校舎中に聞こえる演説を始めた。

「ササミ・テバサコーチン討伐隊の諸君。 討伐隊隊長シャオロン様から連絡よ。
 まずは降伏勧告から。 ササミは私の声を聞いているなら、つべこべ言わずにさっさと血をありったけ差し出す事。
 従わない場合、学園への反逆行為とみなして討伐隊員による一層の武力行使を行うからそのつもりでいなさい。
 それからササミと交戦していない隊員は、速やかに校舎内を職員室側に移動するように。
 ……ササミと一緒に丸焼きになりたくなかったらね!」

短い演説終了の合図の代わりに、校舎内に大きな音が響いた。
職員室から反対側に回り込んだアクライが、尻尾で校舎の壁を強く叩いたのだ。
もちろんこれは挨拶代わりで、本命の行動はこの後のものである。
尻尾の一撃の後校舎から少し離れたアクライは、校舎に向けて炎を吐きかけ始める。
校舎は頑丈に出来ているが、窓が壊れたり開いている場所には校舎内にも炎が入り込む。
可燃性の物があれば燃え上がるだろうし、壁が火に炙られた場所の温度も急上昇するだろう。
学園に放火しているのと大差ない無茶であるが、シャオロンからすればこれも敵の行動範囲を狭める作戦のうち。
悪いのは病気の原因のササミであって、シャオロンではないのだ。

「ま、これだけやってれば誰か釣れるでしょ」
教員の机の上に魔道具と手袋をぽいと放り投げ、シャオロンは窓にもたれて誰かが来るのを待つことにした。
病気のために歩き回って探すのが大変なら、あちらから来るように仕向ければ良いという考えだ。
ちなみに誰も来なかったら、アクライに火炎放射の場所を広げさせる予定である。
腕組みするシャオロンの肩の上で、スライム状のトラコウが、龍に花にと次々と形を変えていた。

17 :ササミ ◆/TZT/04/K6 :2012/04/05(木) 23:32:49.54 0
>「待たせたわね、ササミさん。」
「きやーしたかね、魔法熟女!」
籠の残骸が散らばるその中心に立つササミの前に現れたのはトモエだった。
無表情の顔を無理矢理笑ったように作るのはリリペンギンの悲鳴を上げさせるのに十分なものだった。
が、ササミはそれ以外のものに意識が向かう。
それはトモエの魔力。
尖塔であった時は衰弱していたはずなのだが、どうやったか今はかなり回復している。
「…魔力が回復しとりゃあすけど、どうしたーね?」
注意深く観察しながらトモエの肩越しのプリメに視線を巡らせにたりと笑った。

その時トイレの扉が開き、ルナが千鳥足で出てきて文句をつける。
>「ピピイ!(訳:とりあえず、ルミちゃんじゃなくてルナちゃんなんだからね?)」
「あ、あー、思い出した!」
リリペンギンに言われて思い出したのはルナの名前だけではない。
トイレで天井から突然落ちてきて気づいた時には消えていた事。
そしてそれ以前に、遺跡でのルナの特徴を思い出したのだ。
天性の隠密体質(影が薄いだけ)それも自分の視界からいや、認識から外れるほどの。
一度は脅威と認識し、殺害まで考えた事を。

「ひゃっひゃっひゃ!因果を突き詰めて吼えりゃーすな。
今ある現状にケリつけてみやーせ。できるんならやけど!」
挑発するように応えたのは自分の認識からルナが外れないようにだ。
数人に囲まれた現状であっても最大の脅威はルナなのだから。
いくら目に映っていても認識できないのなら見えていないのも同然なのだから。

ようやく自分の思った展開となり、ペースを取り戻したかのように見えたが実はまだ取り戻せていなかった。
フリードの籠の罠とルナという存在がいつもの注意力と観察力を低下させていたのだ。
その証拠に、散らばった籠の破片が不自然に潰れ、その位置が近づいてきているのに気付いていない。

>俺の愛刀のサビにしてやるぜ!!」
勇気の啖呵と共に全員が一斉に動く。
トモエが正面から突進し、ルナが千鳥足で近づく。
勇気は上段から切りかかる。

それらに対してササミは的確に戦術を立て、迅く、的確に行動に出た。
ただし、姿と音と匂いと気配を消したクリスの存在に気付かぬままに。
それに気づいたのはササミの第一手、枝分刀を持った三つの手袋が勇気に殺到してからだった。

白々と見える殺気に足元で潰れる籠の破片。
不可視の何かが攻撃を向けているのがわかった時には既に手遅れだった。
が、それを救ったのは勇気だった。
何も考えず踏み込んだ勇気の足が姿を消したクリスの背中に躓き、殺気は霧散する。
それと共にササミの背中は錆びたナイフの振るった波動を感じた。
「あっぶ!」
思わず口をつく言葉と共にササミは急上昇した。

タイミング的には完全にナイフを突き立てられていたのだが、連携の拙さに救われた格好だ。

勇気に殺到していた三本の枝分刀は本来その動きを止めるだけのつもりだったが、状況が変わった。
クリスに躓き体勢の崩れた勇気を押込め後退させる。
めまぐるしくしかも同時に三方から放たれる斬撃を捌くのは至難の技だろう。

急上昇することで転がるように倒れこむルナを躱す。
トモエからすれば急な上昇に消えたように感じるかもしれない。
たとえその動きを察知できたとしても、この動きについてくることはない。
なぜならば、その背を強く押されるのだから。

プリメが手袋を嵌めているのをいいことに、背後からの伏兵として利用したのだ。
>「だ、だれかこれなんとかしてぇっ!!」「いやぁぁぁぁぁッ!!」
悲痛な叫びが届くころにはその手はトモエの背中を押して、倒れこんでいるルナの上にくんずほぐれつ仲良く倒れこむことになった。

18 :ササミ ◆/TZT/04/K6 :2012/04/05(木) 23:33:22.82 0
そして直上から降り注ぐ石化ガス。
ルナ、トモエ、プリメが折り重なる中、その更に下にガスが避けていく透明なスペース。
すなわち透明になったクリスが浮かびあたったのだった。
「あひゃひゃひゃひゃ!やっぱり本命がいやーしたかね!
おしーけど連携がなっとりゃせんがね!」
正面のトモエ、派手な動きで注意をそらすルナ、背後からの勇気は全てお取りで本命は姿を消したクリス。
その前のフリードの罠も含め一連の作戦は評価に値すると思ったが、タイミングの取り方が悪かった。
今回の包囲をササミはそう分析評価し、自分の目的である観察を遂行していく。

「ガスの濃度は薄めてあるけど、あんまりゆっくりしとると服が石になるだぎゃーよ。気をつけんせえ」
面白そうにそう告げると天井付近から勇気に向かい飛び去っていく。
四人が折り重なるように倒れているので起き上がるのも手間がかかるだろう。
濃度が薄めてあるので体が石になることはないだろうが、服は別だ。
服が石になれば布の柔軟性は失われ、またその薄さ故に石の頑強さもないも同然。
つまるところ、速く石化ガス圏内から出ないと、動くだけで【服】は粉々に砕け散ってしまうという事だ。

そんな姿を想像しながら三本の枝分刀に牽制されている勇気の隣を猛スピードで抜き去った。
抜き去る瞬間、四本の刃が超振動の切れ味をもって勇気を襲う。
が、その斬撃を受ければ勇気ならばわかるだろう。
殺気が込められていない、いやそれ以前に、面白半分にあしらわれているだけだ、と。
その証拠に避け切れなかった刃もその身を斬ることなくあえて服だけを切っているのだから。

すれ違う瞬間、ササミの左手の甲に着いた顔と視線がぶつかる。
凝縮され間延びした時間間隔の中、確かに聞くだろう。
「顔や肩書はかっこいいのに、ガッカリだがね」
すれ違うほんの一瞬ではあるが、確かに聞こえたはずだ。
そのあとに続くつまらなさそうなため息までも!

勇気の脇をすり抜けた後、フリードの横も通り過ぎてから一旦止まった。
背中に着いた顔がフリードに声をかける。
「ボクは捕まえようとしないの?君にならおねーさん捕まえられてもいいかもしれないんだけどなー?」
セリフが終わるか終らないかですでにササミの姿は遠く離れていた。

廊下の突き当りまで一気に飛び、振り返る。
「結果だけ見れば間抜けやけど、中々やりゃーすがね!
正直なめとったし、もう少し難易度アップするでねー!」
よく通る声で正面玄関トイレ前の面々に叫ぶと、一旦リリペンギンを降ろす。
スカートを構成していた手袋が次々と分離し複雑な印を結んでいく。
七つの顔が異なる旋律の呪文を唱え一つの儀式魔法を完成させた!

ササミは煙に包まれる。
その煙が晴れた時、二人のササミが浮いていた。
「「さあ、どっちが本物やと思うー?あひゃひゃひゃひゃひゃ!」」
ササミの執り行った儀式魔法は【複製魔法】
己の体を複製し、二つに分けたのだ。
ただの複製ではなく、見分けるのは至難の業、少なくとも今動ける者たちに判別する術はない。


ササミが二人に分かれたところで校内にシャオロンの声が響き渡る。
挑発的な物言いに二人のササミは全く同じような笑みを浮かべる。
シャオロンの言葉を証明するように大きな音と共に衝撃が走る。

「あはっ!つまり職員室に来いってことかね!面白いがねー!」
ササミA(便宜上)はふわりと浮きあがると、職員室の方向へと飛んでいく。
「ほしたらこっちはアリーナ席のおやつの魚でも取りにいこまい」
ササミB(便宜上)は食堂に向かって飛んでいく。

別方向へ向かう二人のササミ。
手袋は人差し指が食堂方面に、中指が職員室方面を指すのだが、手袋をハメたプリメは大丈夫だろうか?

19 :ササミ ◆/TZT/04/K6 :2012/04/05(木) 23:34:14.49 0
ササミA【職員室】
廊下を滑るように職員室に進むササミ。
校舎から出られないので移動速度が速くとも時間はかかる。
正面玄関から中庭を突っ切り職員室に向かえばササミと到着時間は変わらないかもしれない。

職員室の扉に幾本かの閃光が走った直後、扉は細切れになって落ちる。
その向こう側に佇むのは枝分刀を両手に持ち、更に手袋が四つ同じく枝分刀を持ち浮遊していた。
お蔭でスカートは股下から数えた方が早いくらい短くなっているが気にした様子はない。
「シャオロン、あんたも意外と回りくどい子やねえ。
あがーな大がかりな事せんでもやり合いたいならきたったに!」
不敵な笑みを浮かべながら職員室へと入っていった。
好戦的なオーラが噴出し、周囲が歪んで見えるほどに。


ササミB【食堂】
食堂へ向かう途中、窓の外に巨大な龍が見える。
放たれる炎にササミの顔は歓喜に満ちる。
校舎から出ないという条件がある以上、校舎ごと燃やす。
実に合理的な考えだ。
こういった手段に出るシャオロンを少なからず気に入ってしまう。

校舎に浴びせかけられる炎は開いた窓から侵入し、廊下を嘗め尽くす。
リリペンギンを大事そうに抱え、炎の中旋回し風で散らしながら進むのだ。
いつまでも耐えられるものでもないが、炎もいつまでも続かない。
なぜならば、ウィルスによって魔力や能力が減退するのは命ある者のみ。
それが負の者であっても偽りの者であってもだが、命無き無機の物には影響がない。
すなわち、学園の防御機構は健在なのだから。

炎を浴びせかけられた校舎から突風が吹き荒れ炎を吹き飛ばす。
また、各所に備え付けられた無数の魔導砲が攻撃者であるアクライに向かい一斉掃射される。
ガーディアンゴーレムもすぐに現れるだろう。

一方廊下では天井に等間隔に備え付けられた消火装置が雨のように水を降らしていた。
炎の勢いは瞬く間に弱まり、間もなくして消えるだろう。
だがそれはいいことばかりではない。
ササミにとって、いや、飛行にとって雨は障害以外何物でもない。
更に大量にフル水滴に視界は遮られ、石化ガスは叩き落され流され、怪音波もほとんど効果を出せないだろう。

かなり不利な条件となっているのだがササミの関心事はそこにはない。
「ペンギンは水浴び好きやろー?気持ちえーかね?
さ、もう食堂やし、お魚たべーや。」
降り注ぐ水滴を垂らしたがら食堂へと入った。

【まとめ】
職員室:ドアを切り刻んでササミ登場。中庭を抜ければ正面玄関からショートカット可能
食堂:食堂から廊下一体消火用の水が降り注ぐ。校舎外では学園防衛システムとアクライの怪獣バトル?

20 :フリードリッヒ ◆cOOmSNbyw6 :2012/04/06(金) 12:23:32.04 P
>13-19
>「ピー・・・・・(訳:め、目が回るー!!)」
「ダメだ!使いものにならない!?」
『小さいからだで死角を突いてもらおうにもこれじゃあね』(猫語)

>「なら俺!魔法武士の俺が相手だ!なぜか魔力は使えないけどな!そんなこと武士には微塵も関係ないぜ!
 俺の愛刀のサビにしてやるぜ!!」
「う〜んせめて僕も本物の剣を持ってくれば・・・・・・」
フリードリッヒの剣は剣ではなく柄だけのサーベルに魔法で生やす氷の刃
今生み出したとしてもペーパーナイフ程度の大きさでしか生成できないだろう
『そもそも今の体力でまともに使えるの?』(猫語)
「ライトレイピアまでならなんとか・・・・・」

>「いやぁぁぁぁぁッ!!」
何故か突っ込んでくるトモエ
「危ないグレン!?」
『おわぁ!?』(猫語)
グレンを突き飛ばし一緒に転がるフリード
もしかしたらそのまま当たってた方が楽だったかもしれない

>「ササミと一緒に丸焼きになりたくなかったらね!」
「さてどうしましょうか?」
『どうしましょうかってフィー坊って氷の魔法使いじゃんやばくね』(猫語)
氷の弱点は炎・・・ではなく電気なのだが
そんな事はどうでもいい人間は焼ければ死ぬのだ
「病気のウィルスも焼け死ねばいいのに・・・・・」
『サウナで死ぬ程度のウィルスなら誰も苦労しないよ』(猫語)

>「ボクは捕まえようとしないの?君にならおねーさん捕まえられてもいいかもしれないんだけどなー?」
「すみませんせめて哺乳類でお願いします」
まさに外道である
『じゃあ僕とかどうよ』(猫語)
「野郎は却下の方向で」
『まあくだらない冗談はともかくこのままじゃ服が使い物に何なくなっちゃうよ
 まあ僕は一向にかまわないけど猫だから』(猫語)
「あなた今は人間の姿でしょうが!とりあえず困ったときはユニオン(合体)です
 合体すれば能力は倍以上になるはずです!!」
『今の倍って普段の何分の一よ?』(猫語)
ユニオンすれば衣装が変わるぞ!つまり全裸は避けられる
原理はあれだシンデレラのドレスだ

「学園に火が付けば消化活動をせざる終えませんね」
とか何とかグダグダ言っているうちに消火装置が雨のように水を降らし始める
「学園が・・・泣いている!?」
『これで氷作り放題だねフィー坊』(猫語)


21 :フリードリッヒ ◆cOOmSNbyw6 :2012/04/06(金) 12:24:13.93 P
>「「さあ、どっちが本物やと思うー?あひゃひゃひゃひゃひゃ!」」
二手に分かれ逃げていくササミAとB
「・・・ええとどうしましょうか?」
『とりあえず食堂の方へ行こうよ』(猫語)
「グレンはお腹空いてるだけでは?」

『おばちゃん焼き魚定食一丁!』(猫語)
「今の時間そんな人いませんよグレン・・・・ってササミさんがいた!?」
『よしササミさんを捕まえるふりしてリリィペンギンさんの魚を強奪だ!』(猫語)
まさに猫である
「真面目にやってくださいよグレン
 僕の病気が治らなくていいんですか?」
『え?だって人間の体便利だし』(猫語)
「僕は普段の”猫の”グレンが好きなんです!!」
とぐだぐだな会話を繰り広げる二人
本当にこんなのでササミを捕まえられるのか?

22 :青葉草介 ◆UeaUYwi1Nw :2012/04/07(土) 12:15:20.66 0
「こほ…体がだるい」
魔法薬調合と、空間移動などの補助魔法を得意とする魔法使い、青葉草介もウィルスの影響を受けていた
「魔力を抑える薬、『魔力抑制薬(アンチウィザードリキッド)』でウィルスの影響を少なくしてるけど…それでもきついな」
勿論、魔法使いを一般人に変える禁薬、『魔女狩りの狂薬(マグライズリキッド)』も製薬(つく)れるのだが、材料が足りない

23 :ルナ・チップル ◆7CpdS9YYiY :2012/04/07(土) 21:13:34.06 0
>13
>「ピギッ?!」
「おめぇ〜、もしかしてササミの使い魔か?可愛い姿で油断させて保健室でスパイしてやがったな」
>12
>「ちょっと何処触ってるんですか!変態!変態!変態!!」
「うひひ…手摺棒にしてはちょっち小さいねぇ」
>14
>「おいおい、大丈夫かルナ
あんまりむりすんなよ。この総代!総代である俺!炎道勇気様が来たからにはササミなんてチョチョイのちょいでやっつけてやるぜ!」
「なにぉ〜?あいつぁオレの獲物だぜぇ。おめーは総会でも開いて檀家さんとお茶でも飲んでやがれ」

>8-22
>「ひゃっひゃっひゃ!因果を突き詰めて吼えりゃーすな。
>今ある現状にケリつけてみやーせ。できるんならやけど!」

「お、おらー!やってやんぜ!」
空元気と同伴のルナは、狂った平衡感覚を操り何とかササミへと倒れこむ。
しかしササミは宙へ回避。虚しく床(?)に張り付いたルナの上にはプリメとトモエが覆い被さった。
おまけにそこへ石化ガス。

>「ガスの濃度は薄めてあるけど、あんまりゆっくりしとると服が石になるだぎゃーよ。気をつけんせえ」
「うそー!?あわわわわ…ん?ひ、ひぃいいい!!」
ルナは驚愕した。床と思っていたのは煙で浮き彫りになった透明のクリス。
上に覆いかぶさっている人物をよく見たら無表情のトモエ。その上には背後霊のようにプリメもいた。

「いやぁあああ!」
四肢をバタつかせるルナ。

>「「さあ、どっちが本物やと思うー?あひゃひゃひゃひゃひゃ!」」
すると遠くからササミの声。

「……ペンギンを持ってるのが本物よ」
安易過ぎる勝手な結論を出しながら、ルナは転げるように人間サンドイッチから這い出て四つん這い。
石化ガスの視界不良のなか消化水の雨のなかを、ほうほうのていで脱出し食堂へとむかう。

24 :ルナ・チップル ◆7CpdS9YYiY :2012/04/07(土) 21:16:22.03 0
食堂についたルナは半裸の状態だった。
衣服は生乾きのように所々石化していて壊れやすい状態。
ずぶぬれの体からは水が滴る。

「ん〜…私一人の力ではササミを捕まえるのはムリかも」
先程ササミから受けた怪音波の影響で、まだルナの頭はおかしかった。
「よし、誰かを利用しよう」
フリードの肩に手をおくと、本人に利用すると宣言。
天井の消火用のスプリンクラー指差す。

「なあ、あのパイプの中を流れてる大量の水をさ、ササミの胃袋にオレが逆詰めするから
おめーはそれを凍らせてくれよ。オレの予想だと大きな氷柱の中にササミを閉じ込めることができるはずだぜ。
ちょっとの水を凍らせたくらいじゃササミの動きを封じることはたぶん出来ねえと思う…。たのむぜフリード坊や」
実際にどうなるのかは予想はつかない。しかしルナの瞳は根拠のない自信で輝いていた。

「いくぜ!」
と、タクトを取り出しワディワジを使うその前にルナはあることに気がつく。
――ペンギンリリィのグルグルメガネ。

「あー!おめえなんだよ。そのメガネはリリィのじゃねえか。
どこで手に入れたんだよ?リリィはどこにいんだよ!?」
今さらであるが、ペンギンリリィが気になったルナは彼女の元へ駆けた。
そしてササミの手袋を踏んでしまい、滑って転んでリリィの目の前で尻餅。
半石化状態の衣服がパリーンと粉々に砕け散る。

「きゃ、きゃぁあああああ!!み、見ちゃらめー!」
パニックになったルナはペンギンリリィで体を隠しながら食堂を右往左往し始めた。

25 :リリィ ◆jntvk4zYjI :2012/04/08(日) 03:17:29.75 0
>14-21 >23
ササミが操る枝分刀の猛攻により、後退を余儀なくさせられたエンドウ。

そして、床に倒れてしまったトモエ、プリメ、ルナと、もう一人透明な刺客達を襲う石化ガス。
>「ガスの濃度は薄めてあるけど、あんまりゆっくりしとると服が石になるだぎゃーよ。気をつけんせえ」
>「うそー!?あわわわわ…ん?ひ、ひぃいいい!!」
ルナの悲鳴や、
服が石になって剥がれ落ちたとしたら・・・・・・きっとトモエの相棒フォクすけ☆は狂喜乱舞にちがいない。
だがそうなる前に、自身が石化する可能性を視野に入れる必要があるだろう。

空を自由自在に飛ぶ時は平気でも、自分の意思と無関係で上下左右にシェイクされれば目を回す。
人間・・・否、ペンギンとは不便な生き物である。
>「結果だけ見れば間抜けやけど、中々やりゃーすがね!
>正直なめとったし、もう少し難易度アップするでねー!」

床に下ろされたリリィペンギンはふらふら2、3歩たたらを踏んだ後、ばったりとその場に倒れた。
「きゅー」
ぐるぐるメガネの下の目もぐるぐる回っているようだ。

そうしている間に、ササミは儀式魔法を執り行い・・・・・・なんと二人に増えてしまった!
>「「さあ、どっちが本物やと思うー?あひゃひゃひゃひゃひゃ!」」
「・・・・・・・ピ!(だっこ!)」
リリィは両羽を上に向け、「だっこして」のポーズを取った。
分身の術か、本当に分裂したのかまではリリィにはわからない。
だが、おそらく自分を連れて行くほうが「強い方」のササミだ。漠然とだが、そうリリィは考えていた。
(だってササミちゃん、「芸夢をアリーナ席で楽しませてあげますよ」って言ってたもんね)
ササミはきわめて合理的で、有言実行派だ。
それは最初に出会った遺跡内での行動から、嫌というほどよくわかっていた。
そのササミが、リリィを楽しませると言ったのだ。
そのためには、リリィが、最後の最後までササミの芸夢を見られる位置にいるのが必須条件になるのだ。

>「……ペンギンを持ってるのが本物よ」
「ピー!(ルナちゃんすごい、何でわかったの?!)」
再び片方のササミに抱っこされながら、はーい!とばかりに片羽を上げていた。

26 :リリィ ◆jntvk4zYjI :2012/04/08(日) 03:19:11.77 0
そこに、シャオロンの恐るべき発言が響き渡る。
>「(略) それからササミと交戦していない隊員は、速やかに校舎内を職員室側に移動するように。
> ……ササミと一緒に丸焼きになりたくなかったらね!」
「ピィイィィィィ!!」
おたおたと慌てふためくペンギン一羽を尻目に、ササミーず達は楽しくて仕方ないという顔をしていた。
一人は嬉々として、文字通り職員室へと飛んでいってしまった。
残されたリリィはまだおたおたしている。
「ピー(ペンギンは肉食だよぅ、丸焼きにしてもおいしくないよぅ)」

だが、そんな狼狽ぶりも、ササミの放った
>「ほしたらこっちはアリーナ席のおやつの魚でも取りにいこまい」
という一言で霧散してしまった。
「ピッ!(わーいわーい、おやつおやつー)」
リリィは大喜びだ。
・・・・・なんだかもう、人としてどうなの?という領域まで来てしまった気がする。

ササミB(便宜上)は食堂に向かって飛んでいく。
途中、窓の外に巨大な龍が見える。
放たれる炎にササミの顔は歓喜に満ちるが、リリィの顔からは血の気が引いていく。
「ピィイ!ピピピピピ!!(死ぬ!死ぬ死ぬ死ぬー!!)」

巨大な龍が吐き出す炎を、ササミは器用に避けていく(ようにリリィには見えた)。
頭上からは滝のような水が落ちて火勢を落としていく。
「ペンギンは水浴び好きやろー?気持ちえーかね? 」
「ピー!(うん!気持ちいいよ!ササミちゃんはどう?)」
わーいわーいとはしゃぐペンギンを連れて食堂へたどり着くササミ。

だが、魔界育ちのササミはまだ知らない。
服というのは、水にぬれるといろいろドッキリイベントが起こってですな・・・・・・。

食堂のおばちゃんは不在だったが、ちゃっかり新鮮な魚をせしめたリリィ。
皿に盛られた魚を前に、見てるのが恥ずかしくなるほどの喜びようである。
「ピー!(いただきまーす!)」

27 :リリィ ◆jntvk4zYjI :2012/04/08(日) 03:19:31.01 0
そこに颯爽と登場したのが、二人の少年だ。
>『おばちゃん焼き魚定食一丁!』(猫語)
>「今の時間そんな人いませんよグレン・・・・ってササミさんがいた!?」
「ピ!(あっ!フリード君にグレン!」
>『よしササミさんを捕まえるふりしてリリィペンギンさんの魚を強奪だ!』(猫語)
がああん!!と大ショックを受けているリリィ。
「・・・・・・・・。」
うるうるとなみだ目になりながら、皿に盛られた魚のうちの一匹を、断腸の思いでグレンの方に押しやる。
(どうやらこの一匹が、グレンの取り分らしい)

だがグレンは魚を取りにくるわけでもなく、フリードと漫才を繰り広げている。
「ピー・・・?(魚、いらないなら食べちゃうよ?)」
ルナとフリードとの間で何らかの作戦が立てられたかもしれないのだが、リリィが知る由も無かった。
「ピー?(食べちゃってもいいよね?答えは聞いてない)」

>「いくぜ!」
リリィの困惑を吹き飛ばすように、タクトを握り締めたルナの声が食堂に響く。
ルナの服はあちこち破れていて、ひどい有様だった。
「ピ?(ルナちゃん?どうしたのその格好!!)」
>「あー!おめえなんだよ。そのメガネはリリィのじゃねえか。
>どこで手に入れたんだよ?リリィはどこにいんだよ!?」
「ピー!!」
あまりの剣幕に驚き、リリィが両羽をばたばたさせた。
その羽の先に、水を吸って重くなっていたササミのチューブトップが引っかかる。
「・・・・・・・ピ?」
羽先に変な違和感を感じたのと、パリーン!という乾いた音とともに、ルナの服が砕け散ったのは同時だった。



今さらであるが、ペンギンリリィが気になったルナは彼女の元へ駆けた。
そしてササミの手袋を踏んでしまい、滑って転んでリリィの目の前で尻餅。

>「きゃ、きゃぁあああああ!!み、見ちゃらめー!」
>パニックになったルナはペンギンリリィで体を隠しながら食堂を右往左往し始めた。
「ピー!!(ルナちゃん落ち着いて!グレンは男の子だけど猫よ!裸を見られてもノーカウントよ!)」
・・・・・・・・いろいろな意味で問題発言である。
「カーテン!カーテンがあるじゃない!!)」
残念ながら、リリィの話すペンギン語は、この場にいる猫と人間には通じなかった。

(そ、そうだ!私の箒!!)
保健室に忘れてきた箒には、リリィの鞄がくくりつけてあった。
あの鞄の中を探せば、何かルナの助けになるような品があるかもしれない。

リリィは片翼を上げると、箒を召喚すべく高らかにこう唱えた。
「ピー!!(来い!)」と。

だがここでの最大の問題は、ペンギン語で唱えた呪文に効力があるかどうかである。
箒が来なければ、ルナが落ち着くのを待ってから、リリィ以外で体を隠すものを探す必要があるだろう。


28 :シャオロン ◆sto7CTKDkA :2012/04/08(日) 14:30:06.97 O
>19
窓枠にシャオロンがもたれてからすぐ、机の上のササミの手袋が奇妙な動きを見せた。
人差し指と中指が別々の方向を指し示したのだ。
「……何よこれ…。 陽動?」
真っ先に思い浮かぶのは、手袋の動きを利用したかく乱作戦の可能性。
さすがにシャオロンも、まさかササミが分身したなどとは考えられなかったのだ。
何にせよ、これはササミが自分の演説を受けて動いた結果だと考え、シャオロンはそれなりの準備をした。
した事といえば心構えとアクライの呼び戻し、そして肩のトラコウの変化をバラの花の形で止めた事ぐらいだったが。

>「シャオロン、あんたも意外と回りくどい子やねえ。
>あがーな大がかりな事せんでもやり合いたいならきたったに!」
「私くらい大物になったら、やることなすこと全部大がかりになっちゃうものなのよ。
 あんたこそ、ウイルスばら撒いて学園ごと病気に感染させるなんてなかなかやるじゃない。
 ちょっと見直したわ」
扉を切り裂いて姿を見せたササミに不敵な笑顔でそう返すシャオロンだが、内心はそこまで穏やかでもなかった。
切り札になりうるアクライは校舎の向こう側で、おそらくはガーディアンと交戦中だろう。
今頃は、校舎の外でドラゴン対巨人の怪獣大決戦が行われているに違いない。
移動が遅い上にそんな妨害にあっては、すぐの援護は不可能。
さらに来たのが当面ササミだけで1対1となれば、どうしても苦戦は免れない。
本っ当に使えない奴らね!とシャオロンは心の中で他のササミ討伐隊隊員(仮名)に悪態をつく。

「まー、でも、魔王候補にしちゃ芸武だなんて志が低すぎるんじゃないの?
 まさかとは思うけど、魔界の魔王候補の連中ってお互い競争した後で
 『みんな頑張ったんだから全員1位で…』なんて言いながら相手の健闘を称えたりとかしてるんじゃないでしょうね?」
ササミの前進に合わせるように、シャオロンも一歩二歩と距離を詰め、近くの机の端に手を乗せる。
ただでさえ複数の刀を操るササミには相性が良くない上に、シャオロンは病気療養中の身。
戦いが長引けば不利になるばかりだ。
となると、不意打ちが一番の選択肢となる。

「昔の魔王の奈良セントだかナラシンハだかは、地上侵略に来たんでしょ。
 追い返されたのはざまあとしか言いようが無いけど、あんたも同じくらいの気概は持ちなさい……よっ!!」
どんと音がして、シャオロンが手を置いていた机が回転しながら天井近くにまで真上に飛び上がった。
”気”を使った中つ国の武術の応用だ。
「覇!!」
目線の高さにまで落ちてきた机に、シャオロンは気合と共に掌を叩き込む。
机はまっすぐササミに向けて、猛スピードで飛んでいくだろう。
こちらは目くらましで、シャオロンの本命の攻撃は別にある。
飛んでいく机の影から、バラの花と化していたトラコウが槍状になって伸びるのだ。
いかに全方位視界であろうとも、正面からの飛行物体の影までは見えないだろうと考えての攻撃である。

29 :フリードリッヒ ◆cOOmSNbyw6 :2012/04/08(日) 18:32:45.99 P
>23-27
>「たのむぜフリード坊や」
「ちょっと待ってください魔族の胃って何処に在るんですか?」
『大丈夫だよ間違っても体に流れている血を凍らせたりは出来ないから』(猫語)
たぶん超高位の氷の魔法使いなら触るだけで相手の体液をすべて凍らせたり
服だけ凍らせてパリンパリンとかいろいろ外道なことが出来るだろう
だがしかしそんなことは普段の健康なフリードにすら出来やしない
所詮天才といわれようが学生風情であるからだ
「ササミさんがお腹を冷やして下痢になったりしなければいいんですが・・・・」
さすがのフリードもそれはあまりにもあまりだと思ったようであるが
そもそも体の中の液体を凍らせることなど出来るのだろうか?

すってんと転んで服がメリメリバリーンと破けるルナ
>「きゃ、きゃぁあああああ!!み、見ちゃらめー!」
「これはいけない!グレンお脱ぎなさい!!」
とグレンの服を脱がしに掛かるフリードリッヒ
『やだよフィー坊が脱げばいいじゃん』(猫語)
だが断ると拒否するグレン
「グレンあなた普段は全裸の癖に・・・・仕方がありません僕のマントも半分石化してますけど」
とフリードリッヒは魔法使いのマストアイテムであるマントを脱ぎ
「落ち着いてこれを羽織りなさい」
とルナに投げ渡す

>「ピー!!(来い!)」
突然飛んできた箒に投げたマントを攫われてしまうフリードリッヒ
どうやら例え呪文が何語であっても魔法は効果があるようだ
『あれだねバットタイミングってやつだね』(猫語)
「ええと代えのマントって在りましたっけ?」
『フィー坊の箪笥の引き出しの二番目だよ』(猫語)
「仕方がありませんではこの帽子で体を隠してください」
と今度は頭にかぶっていた魔法使いの三角帽子を投げるフリード
『半分石化してるから途中で重さで落ちるんじゃね?
 って言うかよく今までそんな重いものをかぶってたね』(猫語)
「普段からグレンを頭に載せてますからね
 首は丈夫なんですよ」
と言いつつ帽子を投擲するフリード

そして次の瞬間
『げぇーーーーー!?さっき帽子を投げ捨てたはずのフィー坊が帽子を被ってる!?』(猫語)
「予備ですよ、マントの予備は持ってくるのを忘れましたけど」
はたしてルナは体を隠すことができるのだろうか?
そしてササミを捕まえる件はどうなったのか?

「ええと落ち着いたところでルナさんに残念なお知らせがあります
 そのペンギンさんがリリィさんです」
『でもそれってトモエさんが言ってただけなんでしょ?』(猫語)
「魔力には波動があります・・・・そしてそれは一人ひとり違う
 そう・・・・まるで指紋のように・・・後は分かりますよね」
『ああだから僕を知らない男の子じゃなくて僕って分かったのね納得』(猫語)


30 :魔法少女トモエ・ユミ ◆jWBUJ7IJ6Y :2012/04/09(月) 20:09:13.23 0
トモエがササミに飛びかかっていくと、彼女は急上昇してトモエの体をかわした。
「逃さないわ。」
トモエは手袋を取り出した。先程、東方の銀貨を詰めた方の手袋だ。
ササミを視線で追い、彼女に向けて魔法を放とうとした。
「キロ・バレッt…「いやぁぁぁぁぁッ!!」
魔法は失敗した。後ろからプリメに押されて倒れてしまったからだ。
トモエはすでに倒れているルナに覆いかぶさるように倒れこんだ。
> 「いやぁあああ!」
> 四肢をバタつかせるルナ。
なかなか脱出できないのは、トモエの上に、さらにプリメも乗っているからだ。
『まるでケモノのようなプレイだね。』
とフォクすけ☆。
トモエはうつぶせに倒れているので表情は見えないが、恥ずかしいらしく、耳まで真っ赤になった。

ササミは石化ガスをまき、その場から離脱した。
早くそこから離れなければ、服が石になって砕けてしまうらしい。
トモエは首だけを回して、なんとか脱出したルナの服の様子を見た。
『服だけを破壊するガスとかwこの世の春がキター(゚∀゚)―!
 …って、うわああああっ!?』
「フォクすけ…!」
魔法少女トモエ・ユミの頼れるパートナー、フォクすけ☆は所詮ぬいぐるみである。
そう、石化ガスによって彼の体はボロボロに崩壊してしまったのだ。
トモエは自分のセーラー服をボロボロにしながら、フォクすけ☆を持ってガスの圏外に脱出した。
『…ごめんよぅ、トモエ。ずっと君のそばにいてあげられたら、って思ってたのに。
 トモエの友達は僕だけだっていうのに…』
「……もう、何も言わないで。」
トモエは座り込み、もう動かなくなった(別に動いていたわけではないけど)フォクすけ☆の遺骸をぎゅっと抱きしめた。
学園の校舎内の天気は雨。トモエはもう一人なので、傘はささなくてもよかった。


31 : ◆jWBUJ7IJ6Y :2012/04/09(月) 20:11:53.56 0
その時、不思議なことが起こった。
トモエ・ユミの体が暗闇に包まれたのだ。その暗闇はすぐに消え、
トモエは白い着物姿、つまり魔法少女に変身する前の姿に戻った。
誰が言ったか、シンデレラのドレスの原理である。
彼女の手には、フォクすけ☆の背中に付いていた四次元ポケットが握られていた。
トモエはそれに手を入れて、中から鉄の輪が不規則に嵌められた大きな木刀のようなものを取り出した。
「………」
彼女の顔はいつものように、笑いも、怒りも、悲しみもなかった。
彼女の顔にはいつも、雨の中で薫り立つ、菖蒲の花のような静けさしかなかった。
だから彼女に誰が何を話しかけても、きっと彼女は何も応えないだろう。
四次元ポケットを帯に挟み、トモエは職員室に向けて歩いて行った。

「…ササミさん、あなたは二人いたのね?」
職員室にトモエがついた時には、既にササミとシャオロンの闘争が始まっていた。
「ササミさん、実は私も二人いるんです。
 一人は魔法少女のトモエ・ユミ。そして、もう一人は…」
トモエはゆっくりとササミに近づいて行った。
トモエには殺気が無いが、ササミがトモエに近づいたなら、
トモエは、ただ死ねばよい、とばかりに攻撃をするだろう。

32 :炎道勇気 ◇hCjEHNrkek:2012/04/10(火) 20:11:46.75 0
名前:炎道勇気 ◆hCjEHNrkek [sage] 投稿日:12/04/10(火) 19:30:57 ID:???
うおりゃぁぁぁぁぁぁぁぁっと威勢良く切り掛かったところまではよかった……が!

「うがぁぁつ!」
踏み込んで迫り来る3振りの枝分刀をさばこうとしたのは勇気に取っては幸か不幸かなにかにつまずいてこけてしまった
そこを見逃すことはササミがすることはなかった
同時に三方向から絶妙のタイミングで打ち込まれる残撃に勇気は防戦一方

「3刀流かよ!魔界流か!」

勘違いしつつもなんとかさばいているが他のことには集中出来ていない
襲い来る攻撃に四苦八苦していると
>抜き去る瞬間、四本の刃が超振動の切れ味をもって勇気を襲う。
他を丸め込んだササミがその場を向けだそうしての行動だった

「いったいぜんたい何刀流なんだよ!」
勇気はそのほとんどを受けることが出来たがそれは当然
「全然殺気が乗ってないだと……」
その証拠と言わんばかりに切られたのは制服の袖だけだった
さらに追い打ちをかけるように
>「顔や肩書はかっこいいのに、ガッカリだがね」
ため息まで聞こえたきた日には

「……」

勇気は黙って下を向いているだけ

「駄目だ、完全にキレちまったよ……ぶっちぎりになぁ!!」

さて、完全にササミにこけにされた勇気は怒り沸騰、怒髪天をつくといったようす
真っ赤な髪は山火事かといった感じ
怒り狂った勇気は雄叫びをあげながら食堂に向かった
野生の勘としかいえないご都合主義でササミを発見した勇気は開口一番

「ぶっ殺す!!」
物騒な言葉と血走った目でササミを睨みつける

「焼き鳥にしてやる!!」

勇気は刀を抜き、鞘を投げ捨てるとさっきとは違う殺すつもりで刀を振る

33 :ルナ ◆7CpdS9YYiY :2012/04/11(水) 23:57:19.73 0
>「落ち着いてこれを羽織りなさい」
「お〜フリード!こころの友よ〜」
宙に舞うフリードのマントを羽織るべく、全裸のルナはペンギンリリィを床において万歳。
広げた両手でマントを掴まんとした。しかしその時、信じられないことが起きる。
なんと箒がマントを攫って行ってしまったのだ。

「なんだあの箒はよー?邪魔しやがってぇ!」
と目を三角にして怒るルナに、すかさず三角帽子を投げ渡してくれるのはフリード。
でも半分石化されている重さで帽子は床に落ち砕け散ってしまう。
それを見たルナは、なんだか悲しくなって逆ギレる。

「てめえら冷やかしてんのかよぉ!そんなにオレの裸が見てえのかよー?」
眉根を寄せ握り拳固を振り上げる。とそこへ宙を旋回して戻ってくる箒。
そして箒にぶら下がっていた鞄はルナの後頭部に見事にぶちあたった。

「ふきゅ〜!」
カランと箒は床に落ち鞄もゴトンと一緒に床に落ちればルナもペタンと床に倒れこむ。

>「ええと落ち着いたところでルナさんに残念なお知らせがあります
 そのペンギンさんがリリィさんです」

「えーなんだってー?よくも真相を教えてくれちゃったなフリードやろう〜、名探偵ポワロも真っ青だぜ。
これからの展開で、ペンギンをリリィとは露知らずにオレの心のうちに秘めた心情を吐露する名場面を考えてったつーのによ!(うそ)
やっぱリリィもウイルスにやられちまってたのかよ。おのれササミめぃゆるさねぇですねい〜!」

ルナは床に落ちている鞄に手をかけペンギンリリィを見つめながらジェスチャー。
開けていい?と手真似し、ぺこりとお辞儀。
別にリリィは人間の言葉はわかるのだからジェスチャーにまったく意味はなく
逆に普通に喋ればいいのだが、ルナはコクコクと頷きながら身に着けられるものがないものかと鞄チェックを始める。

「……リリィの服、小っちゃい」
内容は割愛してなんとか着替えたルナは、首から下が人間リリィと同じ姿となった。

34 :ルナ ◆7CpdS9YYiY :2012/04/11(水) 23:58:49.47 0
そこへ現れたのは炎道勇気。

>「焼き鳥にしてやる!!」

「あは〜焼いたら美味しそうな匂いとかするんだろうなぁ…って抜け駆けはさせねえぜ!」
ルナは天井の消火用スプリンクラーに逆詰め魔法を使用するためにタクトを構える。
詰め込み先はササミの胃袋。通常、逆詰めは詰め込み先が満タンになった時点で終了する。
しかし詰め込み先がそれを拒絶し隙間スペースを内部に作っている限り、詰め込むことを指定されているものは
ルナが魔法の使用をやめるか魔力が尽きるまで内部に侵入を繰り返そうとする。そうアホのように。

「リリィはオレの友達だー!ササミになんか抱っこさせねえ!」
ルナのタクトから雷のように放出された光が消火用スプリンクラーに当たると
噴出した大量の水は水龍のようにササミに向かって押し寄せてゆく。
果たしてササミは炎道と交戦しつつワディワジで生み出された水龍から
逃げ続けることが出来るであろうか。ちなみに水龍の追尾時間は十秒弱。
十秒ほどでルナの魔力は半分ほどになる。これで捕らえ切れなかった場合、
ルナは魔力を温存するためにワディワジの使用を中止することだろう。

35 :ササミ ◆/TZT/04/K6 :2012/04/13(金) 22:19:10.73 0
ササミB【食堂】

無人の食堂に着いたササミはさっそく厨房の中へ。
廊下は滝のように散水が続いているが、食堂内の散水は既におさまっており、一息つけたというところだった。
リリペンギンが魚を漁る間に自分も食べるものを探していると、追跡者たちが追いついてきた。

>『おばちゃん焼き魚定食一丁!』(猫語)
グレンの猫語はササミにはニャーとしか聞こえないが、魚の一匹を押しやるリリペンギンをそっと制して。
「魚は売り切れだぎゃー。これでも食ってちょーせ」
そういいながらグツグツと煮えたぎる味噌煮込みうどんをカウンターの上に乗せる。
知らぬとはいえ猫のグレンにアツアツお鍋のうどんを出すのは外道の所業であろう。

とはいえ肝心のグレンはフリードと漫才中。
それならばとズルズル音を立てながら味噌煮込みうどんを食べだした。
つかの間のお食事タイムだ。

はふはふ言いながらアツアツの味噌煮込みうどんを食べているササミが食堂に到着し作戦を立てるルナに気付くだろうか?
いいや気づきはしない。
よほど注意していないと存在を認識できないのに、熱いうどんに立ち向かっている時に気付けるわけがない。
その存在に気付いたのは手袋を踏んですっころび、悲鳴が上がった時になってからだった。

「うぉ!?いつのまにって、あひゃひゃひゃひゃ!恥ずかしい奴だぎゃー!」
転んだ衝撃で半ば赤化した服が粉々になったルナに驚きながらも大笑い。
だが笑っていられない事に気付いたのはその直後だった。
ルナの剣幕に驚いて羽根をばたつかした拍子にチューブトップが引っかかってしまったのだから。
元々乳圧でパンパンになっていたものが水を吸って重くなっている状態ではほんの少し引っかかっただけでバランスは崩壊する。
弾けるように魔乳が飛び出しチューブトップが下に下がってしまう。
「ちょっ、ぎゃああああ!!!」

あわててチューブトップを引っ張るが、水を吸って重くなっており引き上げられない。
ルナの方もマントが箒にさらわれたり帽子は石と化して砕け散ったりでどうにもならない。
女二人でいったい何をやっているのかカオスな状態に怒りの炎で燃え盛った男が現れた!
正面玄関女子トイレ前でコケにされた炎道勇気である!

>「焼き鳥にしてやる!!」
怒りに燃えた勇気に本来ササミとしてはしてやったりなのだが、今はそれどころではない。
チューブトップの引き上げは諦めたが、両腕で抱えてもまだ有り余る魔乳に対応もおぼつかない。
「ちょっ、今はダメ〜!」
大きすぎる乳はチューブトップに収まっている時はまだ固定されてよいのだが。
一旦その封印を解かれるとその重さに体の軸はブレ、素早い動きが出来なくなるのだ。
もちろんササミとてうら若き乙女である。
そういった実用性以上に胸を男に見られるのは耐え難い羞恥なのだ。

なんとか勇気の一撃を躱すことができたのだが、そんな状態でルナの放った水龍を躱せるはずもない。
羞恥に混乱するササミはここでミスを犯した。
迫ってくるのが水龍だとわかっていながら枝分刀を振るったのだ。
超振動ブレードとなった枝分刀は斬る事に特化しているがためにそれ以外の打撃力などは皆無に等しい。
水龍を正確にとらえたのだが、その鋭さ故に水飛沫一つ上げることなく水龍を素通りしてしまう。
そして水龍は何事もなかったかのようにササミの胃の中へと詰め込まれていった!

ササミのお腹は見る見るうちに膨らんで、はいかない!
風船でもないので簡単には膨らまないのだ!
が、それでも詰め込まれる水の量は膨大でその容量は許容量を遥かに超えている!
「うぅ〜!仕方がにゃーでよ!ありがたくくらやーせ!」
ぎろりと勇気を睨んだササミが急加速を始めた。

36 :ササミ ◆/TZT/04/K6 :2012/04/13(金) 22:20:02.46 0
魔乳モロ出し状態で急加速ができたのにはわけがある。
大量に詰め込まれ続ける水を項と背中の口から噴出させその反動で急加速したのだ。
どういった構造で胃からそれぞれの口に繋がっているのか?なんて野暮なことを気にしてはいけない!
ファンタジーな生き物でしかも魔界の怪鳥が人間の姿をしているだけなので不思議構造でもいいのである!

兎にも角にも勇気からは視界を覆い潰す魔乳が見えるだろう。
傍から見ればボディープレス、おっぱいミサイル。
おっぱいで体当たりして勇気を押し潰し、バウンドしてルナ、フリード&グレンそしてリリペンギンの近くへ着地。
「自業自得やでおこりゃーすなよ!」
その言葉と共に七つの口から一斉に詰め込まれた水を放出するのだった。
その勢いはもはや水砲とでも言えるだろう。
噴水像と化したササミが全方位に向かって放水しルナとフリード&グレンを押しのける。

詰め込まれた水をすべて出し切った時、ササミの胸は手袋が六つ張り付いていた。
文字通り手ブラなのだが、おかげでスカートはすっかりなくなってパンチらどころかパンモロである。
胸もパンツも晒すのは恥ずかしいが、胸を固定しないと禄に動けないという判断が働いたようだ。
「なかなかやるでにゃーの。これは健闘賞だぎゃ」
いつの間にかリリペンギンを小脇に抱えたササミハそういって羽を投げてルナの髪にさした。
ルナの攻撃に敬意を表したわけだが、もちろんそれだけではない。
この羽は一種のマーキングなのだ。
存在感が薄く認識から外れがちなルナに自分の羽を一枚身につけさす事で認識から外れないように、と。

「それにしてもあんたぁリリィやったんね!可愛いわけだわ。このまま私と一緒の鳥ってのも悪くあらせんね」
フリードとルナのやり取りをしっかりと聞いていたようだった。
ペンギンがリリィと知って上機嫌に声をかける。
そしてルナに向き直り鼻で笑いながら
「おみゃーさんがリリィの友達という事と私がだっこしちゃいかへん因果関係がさっぱりだがね。
理屈の通らんことを押し通したかったら力づくで奪い返してみやーせ。
それからそっちの二人、イマイチやる気がなさそうやけどどうしたら本気になるん?
どっちか片方石になったらやる気になりゃあすかねえ?」
ルナに続きフリード&グレンを脅すように睨みつけた。

「まあそれより先に、乙女のおっぱい味わった代償を払ってもらわにゃーね。こんくらいでリタイアはせえへんのやろ?」
先ほどおっぱいアタックで押し倒した勇気に向かって声をかける。
だがそのササミの背中と項の顔が目を回している事に気づくだろうか?
詰め込まれた水を一気に噴き出した負担で気絶しているのだった。
水を猛烈な勢いで吐き出すのはそれほど負担であり、目を回しているのは二つの顔だが体力消耗も激しいようで肩で息をしている。


37 :ササミ ◆/TZT/04/K6 :2012/04/13(金) 22:20:56.59 0
ササミA【職員室】

> 『みんな頑張ったんだから全員1位で…』なんて言いながら相手の健闘を称えたりとかしてるんじゃないでしょうね?」
「頑張ることに意味があるんだきゃ?それに競争し合った後、負けた奴はいなくなってる訳だし、讃える必要って?」
じりじりと距離を狭める緊張感の中、シャオロンの挑発に純粋に首をかしげる。
合理的で成果主義な魔界から見れば目標達成が第一であり、そこに至るまでの過程や努力はさほど重視されない。
言ってしまえば努力しようとしまいと結果さえ達成できれば同じなのだから。
そして生まれて20年に満たないササミの世代であっても競争に負ける=死が常識であることを表していた。

しばらく首をかしげてから思いついたように首を戻した。
「そうやねぇ、魔界に必要なのはそういうものなんかもしれせんね!
気概?気概や強さだけでは勝てなかったから、私らの世代は人間に学ぶことにした。
だから私がフィジルに来たのよっっ!」
ほとんどノーモーションで机を宙に上げたシャオロンはそのまま机に掌打を叩きこみ、砲と化す。

それに反応しササミは急速に後退。
だが後退したのはササミだけで、四本の枝分刀は飛来する机を迎え撃つ。
凄まじい速さで交錯する刃は机をバラバラにし、その陰に隠れたトラコウの姿を露わにさせる。
「はっ!この程度で!」
机の迎撃地点とササミの位置は数歩分しかないが、それでもトラコウに対処するには十分な距離である。

伸びてくるトラコウを見切り半身躱して切り払い、一気に間合いを詰める。
その間にも机を切り刻んだ四本の枝分刀はシャオロンへと殺到しているのだ。

だが、枝分刀の切っ先がトラコウを捉えた瞬間、ササミは大きく横に飛びずさる。
トラコウに触れた切っ先を介し、その手ごたえから粘土状だとわかったからだ。
超振動ブレードは切れすぎるが故に、粘土やゲル状のモノを切ることができない。
斬ったそばから切り口がくっついてしまうのだから。
振動しているので刀身が絡め取られる事はないとはいえ、切り払いが出来ないのは危険なのだ。
槍の形状してはいてもそこからどんな変化が起こるかもわからない。

警戒し大きく距離を取ったところでトモエが現れた。
「ササミさん、実は私も二人いるんです。
 一人は魔法少女のトモエ・ユミ。そして、もう一人は…」
トラコウからの回避運動のその軌道上にトモエが近寄り、凄まじい一撃を繰り出した。

尖塔からこちらまで、穏やかな印象を受けていたこと。
先ほど正面玄関トイレ前の攻防で苦も無く躱したこと。
そしてあまりにも殺気がなさ過ぎたこと。

様々な要因が絡みつき、その一撃への対処を誤った。
絶妙なタイミングと躊躇のない一撃に回避が間に合わず思わず枝分刀で受けてしまったのだ。
切れ味に特化したその刃は代償として脆さを背負っている。
振るわれた木刀は受けに回った枝分刀を砕き、ササミの体ごと吹き飛ばした。
ササミは悲鳴と共に吹き飛ばされ、職員の机を砕く弾丸となったのだ。
それと共にシャオロンに襲いかかっていた四本の枝分刀が消えうせる。
枝分刀の枝分かれした刀は本体より10メートル以上離れると消えてしまう。
すなわち、ササミがトモエに吹き飛ばされ、限界距離の10メートルを超えたからだ。

「あはっ!あははははは!」
砕けた机の残骸から歓喜の笑い声と共に浮かび上がるササミ。
左の二の腕と手首は不自然に膨らみ曲がっており、骨折していることがうかがえる。
左手の甲についた顔も目を回しているようだ。
全身打ち身や切り傷で血を流している。
その姿は一撃で満身創痍と言えよう。

38 :ササミ ◆/TZT/04/K6 :2012/04/13(金) 22:22:00.36 0
だが、それぞれの口から溢れ出るのは喜びの笑い。
「やるがねー!ようやくやる気になったきゃ〜」
トモエに向かい満面の笑みを浮かべる。
これほどの一撃を放てるとは思っていなかった。
それを引き出せた自分を、そしてそれを持ち出したトモエに喜んでいるのだ。

「強力な一撃を食らわせたはええけんど、追撃せえへんとすぐに回復するでよ〜」
その言葉通り、ササミの血に含まれる再生酵素が傷を回復させていく。
切り傷などは既に血が止まっており、打ち身を表す痣も薄くなりつつある。
骨折も時間はかかるであろうが、治っていくだろう。
「でも、追撃待つほど気長じゃにゃーでよぉ。
いいこと教えたるで聞きんさい」
そういいながら右手に持つ枝分刀をトモエとシャオロンに突きつける。
その刀身に先ほどまでとは違い、灰色の靄がかかっていることがわかるだろう。
更によく見れば右手の甲についた顔が石化ガスを吐き出し、そのガスが振動によって刀身に纏わりついているのだ。
しかしそれは石化ガスを吐く口と怪音波を出す口、一本の刀に二つの顔を使用している事を表していた。

「見ての通り、石化ガスを刀身にまとった私の奥の手だぎゃ。
シャオロンのスライムはええアイディアやけど、この石化刃を使えば、わかるやあね。
もちろん、あんたら二人もこれだとカスリ傷一つで石化だきゃら気おつけんさい」
ギラリとした笑みを浮かべ二人を睨むササミだったが、大きな勘違いをしていた。
石化ガスは有機物と結合して石化させるものである。
木やスライムなどには有効ではあるが、粘土が材質なトラコウには意味をなさない。
ササミはトラコウをスライムの亜種だと思っていたのだ。

手袋を呼び寄せ、枝分刀を増やすが、今回は三本だった。
そして分離した枝分刀は石化ガスがまとわりついていない。
石化ガスを纏わりつかせるには近くから石化ガスを流さなくてはならないので、手元から分離している分に関しては不可能なのだ。
そして何より、石化刃には石化用と怪音波用の二つの口が必要となる。
更に呼吸用の口を確保するとなると、どうしても本数が限られてくるのだった。

「さ〜て、どっちからいこまいかねえ〜」
ゆらりゆらりと浮遊しながら二人の間を行き来しながら間合いを詰める。
再生するとはいえ先ほどの一撃のダメージは大きく、普段の機動力は期待すべくもない。
ならば緩急をつけた動きで相手の間合いとタイミングを外し、虚を突き一気に勝負に出るのだ。

ぐらりと体がトモエに傾いた瞬間、三本の枝分刀を残しササミの姿は消えていた。
残された三本の枝分刀はそのままトモエに突進していく。
ササミはそれまでの緩慢な動きとは打って変わり素早い動きでシャオロンへと向かう。
途中トラコウで妨害されても石になって砕け散れと言わんばかりにその刃を振るうだろう。

窓の外からは大きな音と共にアクライと数体のガーディアンゴーレムが職員室へと近づいて来ていた。


39 :シャオロン ◆sto7CTKDkA :2012/04/15(日) 17:39:37.89 O
>31 >37-38
ササミに攻撃を仕掛けた姿勢はそのままに、シャオロンは肩で息をしながら固まっていた。
半病人なのに無理をした結果がこれである。
>「はっ!この程度で!」
視界の先でササミが、机を切り裂きながら自身は後方に跳んで難を逃れたのが見えた。
体力的にも状況的にも、反撃を避けるのは不可能。
ならば死中に活を求めるしかないと判断し、シャオロンはトラコウの形を変えて迫るササミを迎え撃とうとする。
だが、ササミはその思考を読んだかのように、トラコウから大きく距離を取ったのだ。
それでも、ササミが操る刀だけは勢いを変えずにシャオロンに殺到する!
「こんの……!」
絶体絶命の危機に、さしものシャオロンもササミを睨みつける以外に打つ手がなかった。
しかし、助け船は思わぬ場所からやってきたのだ。

>「ササミさん、実は私も二人いるんです。
現れたトモエの一撃を受けたササミが、受けた刀を砕かれながら吹き飛ばされる。
同時に、シャオロンの身体を切り刻む寸前だった4本の刀が霧のように消え失せたのだ。
助かった。と思うと同時に助かった理由について考えたシャオロンは、それが“距離”ではないかとの仮定を立てる。
本体から離れさえすれば多刀による攻撃を消せるなら、それは有用な情報だろう。
ササミの速度からして容易ではないという点に目をつぶれば、距離を取って戦うのが最善だとわかったのだから。

仮説を立て終わってからシャオロンは、ようやくトモエに目を向ける。
「遅い! いつまでのんびりしてるの!
 この私がもう少しで開きになる所だったじゃないのよ!」
命の恩人に対してあまりの暴言ではある。
槍状に伸びたトラコウを肩に戻しながら言いたい放題言っていたシャオロンは、恩人がトモエだということにようやく気づいた。

「……あなた確か、トモエ……だったっけ?
 普段は昼行灯のくせに、ササミを防御の上から吹き飛ばすなんてなかなかやるじゃない。
 ま、それも私が命を張っておとりをしてたからなんだけどね。
 それより、さっきササミが2人とか言ってたのはどういう意味?
 他にササミと戦ってる奴はいないの?
 前に持ってた妙なぬいぐるみはどこに置いてきたのよ?」
矢継ぎ早に質問を投げかけておいたのに、まあいいわ。とシャオロンは会話を適当に切り上げる。
笑い声と共に起き上がって来たササミは戦意を失ってはいない。
満身創痍に見えてものんびり会話している場合ではないのだ。

40 :シャオロン ◆sto7CTKDkA :2012/04/15(日) 17:41:03.54 O
>「やるがねー!ようやくやる気になったきゃ〜」
まだまだ余裕があるように見えるササミは、自身の再生能力を(シャオロンからすれば自慢気に)説明する。
>「見ての通り、石化ガスを刀身にまとった私の奥の手だぎゃ。
>シャオロンのスライムはええアイディアやけど、この石化刃を使えば、わかるやあね。
>もちろん、あんたら二人もこれだとカスリ傷一つで石化だきゃら気おつけんさい」
続く石化刀の奥の手の説明は、ササミなりの芸武説明のつもりだろうか。
ははあ、本物のスライムと勘違いしてるわけね。と内心ほくそ笑むシャオロンだが、事はそう簡単でもない。
石化はしなくても、ゴーレムであるトラコウは本物のスライムよりも弾性の面で大きく劣るのだ。
普通に切り払われて、体勢を立て直す前にこちらがばっさりという可能性が極めて高い。

>「さ〜て、どっちからいこまいかねえ〜」
「出来るだけ時間を稼いでくれたら、こちらの援軍に焼き払わせるわ。
 別に臨機応変にさっきの要領で倒してくれちゃっても構わないけど」
顔は近寄るササミに向けたまま、シャオロンはトモエに話しかける。
ゆらゆらと近寄ってきていたササミが、一気に速度を上げてシャオロンとの距離を詰めてきた。
先ほどの攻撃の影響かその速度は最高速にはほど遠いが、今のシャオロンには十二分に脅威となる速さだ。
こうなるとシャオロンとしても、自身の身の安全を図るのが第一でトモエへの援護は出来ない。

「これでも……くらいなさい!」
後ろに跳んで窓に背中を預け、シャオロンは足下の床に肩からむしり取ったトラコウを叩きつけた。
トラコウは薄く広がって壁のようになり、シャオロンを守るような動きを見せる。
ササミが近づけば、鋭いトゲが伸びてササミを攻撃するだろう。
無論、トラコウが棘ごと切られて防御壁としては役に立たないことは予想のうち。
ササミがトラコウを切って迫ればすぐに、シャオロンは窓から校舎の外に逃げ出すのだ。
ササミは校舎の外に出ないと言ったが、そんな約束をした覚えはないシャオロンにはある意味安全地帯と言えるだろう。
さらにササミが窓側に近づけば、トラコウがロープのように姿を変じてササミを縛り上げ、動きを封じようとする。

「来たわね!」
ガーディアンゴーレムと一緒にとはいえ、近づくアクライに気づいたシャオロンは凶暴な笑みを浮かべた。
策がうまく運んでトモエがササミを切れればよし。
失敗してもアクライで部屋ごと焼き払ってよしだ。

41 :リリィ ◆jntvk4zYjI :2012/04/16(月) 01:38:33.80 0
>29 >32-36
>「魚は売り切れだぎゃー。これでも食ってちょーせ」
ササミが戻した魚をもぐもぐしながら、煮えたぎる味噌煮込みうどんを啜るササミ。
ササミの顔はたくさんあるが、とりあえず食べるときは、首の上についた口から食べるようだ。
(ほかの口は文句言わないのかなぁ?)
じーっとササミの胸元の顔を見つめるが、目が合ったので慌ててそらした。

「うぉ!?いつのまにって、あひゃひゃひゃひゃ!恥ずかしい奴だぎゃー!」
大笑いしていたササミだったが、いつの間にかぺろんとチューブトップがずれてしまった。
>「ちょっ、ぎゃああああ!!!」
「ピイイイイ?!(うそーん!!)」
大慌てで服を直そうとするササミ。
服がなくなってしまったルナ。
フォクすけ☆がこの場にいないのが、返す返すも残念である。

こんなときだと言うのに、貴族らしくフリードは冷静に対処した。
服が砕けていまったルナに、自分のマントを投げ渡そうとする。
だが、なんとも間の悪いことに、リリィが呼んだ箒がマントを掻っ攫ってしまった。
>「なんだあの箒はよー?邪魔しやがってぇ!」
「ピー!(ご、ごめんよー!今こっちに戻すから!)」
怒っているルナに、すかさず三角帽子を投げ渡してくれるのはフリード。
でも半分石化されている重さで帽子は床に落ち砕け散ってしまう。
>「てめえら冷やかしてんのかよぉ!そんなにオレの裸が見てえのかよー?」
「ピー!!(あ、ルナちゃん危ない!!)」
リリィが呼び戻した箒にぶら下がっていた鞄は、ルナの後頭部に見事にぶちあたった。
「ピー(あわわわ。ルナちゃんしっかりしてー)」
右往左往するペンギン。

>「ええと落ち着いたところでルナさんに残念なお知らせがあります
> そのペンギンさんがリリィさんです」
「ピ!」
そうです!とばかりに片方の羽を高く掲げる。
それをみて、ぷんすか怒り出したルナ。
「ピー(そんな・・・見ず知らずのペンギンに話すなら、元に戻った私に聞かせてよ。
 事件が解決したら、パジャマパーティなんてよくない?)」
残念ながらウィジャ盤を使ってないため、リリィの言葉はササミ以外には通じていない。
そのためか、ルナは、リリィが人間の言葉を解さないと勘違いしたようだ。
ジェスチャーで許可を取り、鞄からリリィの着替えを取り出し身に着ける。

>「……リリィの服、小っちゃい」
があああん!とショックを受けるリリィ。
・・・・・・どの部分か、とはあえて言うまい。
服はそれなりにゆとりのある黒ワンピースだったのだが、小柄なリリィの服は、ルナには少々きつかったようだ。


42 :リリィ ◆jntvk4zYjI :2012/04/16(月) 01:39:06.86 0
そこに現れたのはエンドウだった。
挑発に乗った彼は怒り心頭で、赤い髪はまるでそれ自体が燃えているように見える。
>「焼き鳥にしてやる!!」
>「あは〜焼いたら美味しそうな匂いとかするんだろうなぁ…って抜け駆けはさせねえぜ!」
>「ちょっ、今はダメ〜!」

「ピー!!(うわー!私は焼いてもおいしくないよ!!)」
自分のことかと右往左往するリリィを尻目に、タクトを構えるルナ。
>「リリィはオレの友達だー!ササミになんか抱っこさせねえ!」
わーいわーい、友達友達!と喜んだ後、「・・・・・?」と小首をかしげるペンギン一羽。

その後の状況はめまぐるしく変化した。
ルナのワディワジが発動したとたん、エンドウと交戦しているササミに大量の水が襲い掛かった。
(もしもエンドウが、炎系の魔法剣を使っていたとしたら、ご愁傷様である)

ルナのタクトから雷のように放出された光が消火用スプリンクラーに当たると
噴出した大量の水は水龍のようにササミに向かって押し寄せてゆく。
ササミの枝分刀は大量の水の前にはなすすべもなく、彼女の口へと詰め込まれていく!

>「うぅ〜!仕方がにゃーでよ!ありがたくくらやーせ!」
顔以外の口から言葉を発したらしきササミは、水を浴びつつぎろりと勇気を睨み急加速。
(ほかの口から水を吐き出し方向転換、ということは、リリィにはわからなかった)
エンドウにボディプレスという名のおっぱいミサイルを食らわせる。
「ピー!!(エンドウ君!ササミちゃんを捕まえてー!!」
だがエンドウの上に乗っかったのはほんの一瞬で、あっという間にササミは距離を取り、大量の水を吐き出した。
「ピー!・・・・・ピ?(わーいわーいお水だー!わーいわーい・・・・・あれ?)」
ペンギンの本能で大喜びしている間に、ササミがひょいとリリィを小脇に抱えた。

>「それにしてもあんたぁリリィやったんね!可愛いわけだわ。このまま私と一緒の鳥ってのも悪くあらせんね」
「ピ(あ、胸の顔にちゅーしちゃったのは、なんというか不幸な事故で故意というわけでは・・・・!」
テンバってしまって、ササミと会話が全くかみ合っていないリリィ。
顔が赤いのは、かわいいと言われたせいである。
もっとも、リリィは、今の自分がペンギンだからとかわいいと解釈していたのだが。
なぜなら、ササミにはお世話になったものの、そのあと親しく会話する機会に恵まれていなかったからだ。

ササミと一緒に行動しているリリィは、考えていた。
先ほど箒の召還に成功した。ペンギン語でも、魔法が使えるということだ。
ということは、テレパシーもうまくすれば通じるのかもしれない。
テレパシーで皆に逐一状況を教えれば、きっと芸武も少しは有利に進められるかもしれない。
(やってみる価値、あるよね?)
リリィは、ササミ以外の者に向かって、無差別にテレパシーを発した。
『えっと、聞こえますか?
 私は、ペンギン姿になったリリィです。今はササミちゃんと一緒に行動しています。
 実はササミちゃん、どういう魔法か知りませんが、今は二人に分裂して行動してます』
このテレパシーは、学園校舎内にいるササミ以外の者に一方的に送りつけられるテレパシーだ。
もし感じ取れたら、リリィが見聞きした事は逐一報告が行き、常に情報を共有することになるだろう。

「ピ(とりあえず、ササミちゃんはどこかで服を調達したほうがいいよ。
 今のままじゃ皆、目のやり場に困って、全力で戦えないよ?
 建物内だと、運動場近くの女子更衣室か、職員室隣の職員準備室に着替えがあると思・・・・・」
リリィは絶句した。
なぜなら、遠くの窓の外側に、巨大な金色の龍とガーディアンゴーレムが音を立てて移動していくのが見えたからだ。
「(な、なに今の?!龍が、本物の龍がいる!!)」
もしかしてリリィ達を焼き鳥にしようとしたのは、あの龍だろうか?
「(しょ・・・・職員準備室に行くのはやめたほうがいいかも・・・・・・)」


43 : ◆jWBUJ7IJ6Y :2012/04/16(月) 20:44:46.52 0
>37>38>39>40>42
ササミが射程距離に入ると、トモエは持っていた白鞘拵の刀を抜いた。
居合。刀を鞘に収めた状態から抜刀と同時に斬りつける東方の剣術である。
トモエの抜き打ちは甲高い音と共にササミの枝分刀で受けられた。
が、すぐにトモエはその上から鞘を叩きつけた。
> ササミは悲鳴と共に吹き飛ばされ、職員の机を砕く弾丸となったのだ。

> 「遅い! いつまでのんびりしてるの!
>  この私がもう少しで開きになる所だったじゃないのよ!」
シャオロンに怒鳴られながらトモエは、しかし全く気にしていないように布で刀身を払った。
> 切れ味に特化したその刃は代償として脆さを背負っている。
それはトモエの刀も同じであった。ササミの枝分刀と打ち合った箇所が少し刃こぼれしていた。
“折れず、曲がらず、よく斬れる”とは東方の刃物の売り文句だが、その耐久性神話はだいたい幻想なのである。
> 「……あなた確か、トモエ……だったっけ?
>  普段は昼行灯のくせに、ササミを防御の上から吹き飛ばすなんてなかなかやるじゃない。
>  ま、それも私が命を張っておとりをしてたからなんだけどね。
>  それより、さっきササミが2人とか言ってたのはどういう意味?
>  他にササミと戦ってる奴はいないの?
>  前に持ってた妙なぬいぐるみはどこに置いてきたのよ?」
シャオロンは立て続けにトモエに質問をした。
トモエは音をたてずに刀を鞘に収めた後口を開きかけたが、思わぬところからその返答が飛んできた。
> 『えっと、聞こえますか?
>  私は、ペンギン姿になったリリィです。今はササミちゃんと一緒に行動しています。
>  実はササミちゃん、どういう魔法か知りませんが、今は二人に分裂して行動してます』
「…これでお察しください。フォクすけは、そう、あなたの考えている通りですよ。シャオロンさん。」
トモエもまたシャオロンのことを知っていた。それぞれに事情は異なるが、
奇しくもここにいる三人はほぼ同じ日に学園に通い始めた仲なのだ。
もっともシャオロンがそうであるように、トモエも今呑気にお喋りをするような気分ではなかった。

> 「あはっ!あははははは!」
> 砕けた机の残骸から歓喜の笑い声と共に浮かび上がるササミ。
> 左の二の腕と手首は不自然に膨らみ曲がっており、骨折していることがうかがえる。
> 「やるがねー!ようやくやる気になったきゃ〜」
> トモエに向かい満面の笑みを浮かべる。
トモエはササミに笑い返そうとは思わなかったので、無表情のまま彼女の説明を聞いていた。
> 「さ〜て、どっちからいこまいかねえ〜」
とササミ。
> 「出来るだけ時間を稼いでくれたら、こちらの援軍に焼き払わせるわ。
>  別に臨機応変にさっきの要領で倒してくれちゃっても構わないけど」
> 顔は近寄るササミに向けたまま、シャオロンはトモエに話しかける。
「…正面から行くわ。」
> ぐらりと体がトモエに傾いた瞬間、三本の枝分刀を残しササミの姿は消えていた。
> 残された三本の枝分刀はそのままトモエに突進していく。
トモエもまたササミに向けて突進した。ちょうどシャオロンに迫るササミを後ろから追いかける形だ。
トモエの動きは防御など、まるで考えていない動きであった。
最短距離を、まっすぐ、無駄のないように、ただ速やかに相手を斬り捨てるためだけの動きだ。
三本の枝分刀はまともにトモエの胴体を貫き、すぐさまそこから石化が始まる。
しかし、体が石化しきるまでには“少しの時間”がある。トモエはその“少しの時間”に今の自分の全てを賭けた。
「南無阿弥陀仏…!」
トモエは鞘から刀を抜いてササミに突きを放った。
この攻撃に成功しようが失敗しようが、すぐにトモエは石化して動かなくなるだろう。

44 :ルナ ◆7CpdS9YYiY :2012/04/17(火) 23:04:12.76 0
ササミのチューブトップをリリペンギンがずらしてあられもない姿にさせたあと、炎道勇気がササミに斬りかかった。
その隙をついてルナは間髪入れずに逆詰め魔法。ここまでは良かった。
あとはフリードの氷結魔法でササミを水龍ごとどうにか固めてもらってルナがササミにタッチ。
そんなご都合主義全開のルナ・チップルだったが物事はそんなに上手くいかない。

「ひゃ!」
目の前では恐ろしいことが起きていた。
なんとササミのおっぱいアタックが炎道に炸裂したのだ!
(あわわ…、人体の中で一番柔らかいであろう場所で反撃するなんて、
恐るべし!ササミ・テバサコーチンっ!!)

「うくく…」
ワディワジの効果はほとんどなかった。逆詰め魔法を停止させ瞠目するルナ。傍らに降り立つササミ。
その七つの口からは一斉に詰め込まれた水が放出される。

「あばばばっ!」
まさに水砲とも言えるその攻撃は、その圧力でルナを軽々と吹き飛ばし
食堂のテーブルや椅子を巻き込んで壁際まで押し退けてゆく。

>「なかなかやるでにゃーの。これは健闘賞だぎゃ」
壁を支えに立ち上がるルナの髪に、ササミの投げた何かがささる。
ルナがコンパクトの丸い鏡で見てみると綺麗な羽がふわふわと揺れていた。
ササミの投げた物が羽じゃなくて針的なものならコロッと死んでいたのだけれど
ルナは頬を朱に染めて口角を緩ませてしまう。(これってササミが私を認めたってこと?)
「も…もらっといてやるぅ」口をちょこんと尖がらせて呟く。

>「おみゃーさんがリリィの友達という事と私がだっこしちゃいかへん因果関係がさっぱりだがね。
>理屈の通らんことを押し通したかったら力づくで奪い返してみやーせ。

「あーやってやるぜ。言われなくたってやってやるぜーっ!」
化粧の剥げかけた顔を細かく引き攣らせ、ルナは憤懣やる方ないといった様子でササミをねめつける。

45 :ルナ ◆7CpdS9YYiY :2012/04/17(火) 23:06:31.91 0
―――そもそも存在感の薄いルナはアイドルのように注目を浴びたかった。
そのためにはササミに鬼ごっこで勝ち抗体を手に入れる必要があった。
救世主として学園に名を轟かせて有名人になるために。

でも、事情は変わってきていた。ルナはリリィがペンギンになってしまっていることを知ってしまった。
目を閉じれば瞼の裏にリリィの優しい眼差し。(ぐるぐるめがねの奥深く)
リリィは存在感のないルナをじっとりと見てくれる一番のお友達。
だから、どんなことをしてでも守りたいと決意を新たにする。

ルナはササミの一部の視界が奪われたことに気がついていない。
だからこのままリリィがササミにくっ付いていた状態では炎道もフリードも思い切ったことができないと思案する。
二人もつむじと背中の顔の気絶に気がついていないとしたら、
焼きペンギンか蒸しペンギンが出来上がってしまうかもしれない。
どうにかしてササミからリリペンギンを引き剥がさなければ。

(にしてもあのパンモロには考えらせられちゃったなあ。ローライズとミニスカートが同時に流行っちゃったみたい。
もうスカートの定義が破綻しちゃってるもの。つか今のササミの姿を男の人に変換したらあの格好はやばい。特に手ブラが……。
男の人のものの根元がみえてるくらいに匹敵してる)

と決意してすぐにルナがどうでもいいことを考えているとリリィのテレパシーが飛んでくる。
リリィはペンギンの姿になっているというのにテレパシーで皆にお得なササミ情報を伝えようとしてくれているのだ。
その献身的な姿勢にまるで一喝されてしまったかのようにルナは思考を元に戻すと
厨房の冷蔵庫から巨大な大タコを持ってきてササミに抱っこしているリリィに突き出した。

「リリィ…こっちへおいで。このタコはきっと美味しいよ。それにササミに抱っこしてると危ないから」
袖に隠したタクトの先端からタコにむけて、ジジジと静電気のように魔法が流す。
もちろんそれはワディワジだった。

「ササミもリリィのことを大切に思うのなら離してやれよ。
それとも困ったときに盾にするつもりかよ?ほーんと、魔族らしい考え方だぜ」
そう言い終えた刹那、ササミの視界の一部は漆黒に染まるかもしれない。
ルナは詰め込み先を指定せずにタコの墨袋にワディワジをかけて、ササミにむけて適当に噴出させた。

46 :ササミ ◆/TZT/04/K6 :2012/04/21(土) 00:05:43.80 0
ササミA【職員室】
それは刹那の出来事だった。
緩急をつけた動きから一気にシャオロンとの間合いを詰める。
取り残された三本の枝分刀はそのままトモエへと向かう。

必殺の間合いに入る直前、シャオロンが床に叩きつけたトラコウが薄く広がり防壁となる。
そのまま鋭い棘が現れるこの一連の流れをササミの驚異的な動体視力はまるでコマ送りのように捉えていた。

伸びる棘を悠々と躱し切り落とし、防壁となったトラコウを切り裂く。
切り口が石化しない事に小さく舌打ちしつつも防壁の向こう側にいたシャオロンへ横薙ぎの一線を……
この段に至りてササミの動きが一瞬にぶった。
トラコウがロープへと変じ、ササミに絡みついたからである。
「ちぃいい。見誤ったぎゃ!」
シャオロンは一瞬の差で窓の外へと飛び出し、石化刃が空を切る。
石化させれば、という思い込みをした痛恨のミスを恨みながらその先を見ていた。

「個人の武技など所詮は匹夫の蛮技、将たる者としてむしろ恥たる心得…
なんてゆーても、逃げの一手ゆーのは情けにゃーでいかんわ」
勢い余り窓の縁に足をかけながら吼えるが、そのセリフとは裏腹に口調と表情には非難の色はない。
輝く目を見せながら勢いを利用して方向転換。
後ろから迫るトモエを迎え撃つ為に!


ササミの項と背中に位置する顔は刹那に起こったその一部始終を見ていた。
三本の枝分刀が突き進む先のトモエの行動が。
それは単純明快一直線。
もしかしたらトモエには三本の枝分刀が、いや、それどころかササミ以外見えていないのではないのだろうか?
そんな考えが浮かんでしまうほど躊躇いのない動きだった。
迫りくる枝分刀を避けようともせず、実際に刺さろうとも一切の反応がない。
痛みや恐怖というものを感じていない、まるで鮫や鰐のような原初の攻撃本能の塊かのように。

回避運動皆無のその動きに枝分刀はやすやすとその身を捉える。
服を突き破り柔肌に刷り込むように沈んでいく水晶の刀身は吹き出る血潮と共にその切っ先から消えていく。
所詮はわかれた枝であり、ササミの胸先三寸で消すことができるのだ。
深さ一センチほどの傷をつけ柄だけがトモエの体に押し付けられる形となっていた。

だがたとえ刀身を消さずそのまま貫いたといえども突進は止まらなかっただろう。
その確信と共に絡みつくトラコウをそのままに身を翻したササミはその遠心力も利用してトモエの首に刃を一閃させた!
もしトラコウがササミの動きを阻害していなかったら?
いや、三本の枝分刀を突き刺していたら?と同じように、結果は変わらなかっただろう。
最速で最短距離を一切の躊躇も微塵の迷いもなく突き出されたトモエの刃。
振られた一閃がその首に触れたところで既にササミの左胸に深々と突き刺さっていたのだから。

「あんたは、『何』なんだがね?
まあええわ。リリィがパジャマパーティーやるってゆーてるからそん時にゆっくりと聞かせてもらうしぃ」
二人の激突の瞬間。
圧縮された時間感覚の中、トモエに声をかけ、満面の笑みを浮かべた。

そして時は解放され、通常の動きを取り戻す。
トモエは首筋から急速に石化が始まり、ほどなくして石像となるだろう。
ササミはトモエの首に赤い筋を残し、左胸に刺さった日本刀ごと吹き飛び窓を突き破る。
その時既にトラコウのロープによってがんじがらめになっており、その勢いを殺すことはできなかった。

「まさか半病人二人にやられるとはおもっとらせんかったがね。
シャオロン、将を気取るならトモエを助けてやりゃーせよ。
ま、これは残念賞だぎゃ。うけとりぃ。」
この言葉を最後に、ササミはポンという破裂音と共に煙に包まれた。
職員室に現れたササミは魔法によって複製されたもので、負けを認めて消滅したのだった。
あとに残されたのは刺さっていたトモエの刀と小さなケース。
それは石化状態を解除するアイテム「金の針」十本セットだった。

47 :??? ◆70VgGM3HY6 :2012/04/21(土) 12:28:59.08 0
>9-46
結果としてササミへの奇襲は失敗に終わった。
連携などはなから考えてないし、考えてたとしても即興で連携できるほど
互いの関わりが深いわけでもないのだから。無論、そんな事ササミがしる訳も無い。

その後少年少女三人に圧し掛かられる形となったクリスは、
全員がどいた後もしばらくの間身じろぎ一つしなかった。
ガスで姿が浮かび上がったが、あくまで『ガスの色が消えてしまう』から分かるだけであり
意識を失っている間も何故か術は解けていない。そのまま周囲と同化したまま時間は過ぎ……
唐突に何も無い空間に校舎に燃え移った火が吸い込まれていく。
その中心にいたのは……『クリス』ではなかった。

石化ガスの影響だろう、制服は崩れ落ちていて。
視線こそなかれど公共の場で裸身を晒したそいつは……『男』だった。
もっとも吸収した炎が局部を隠しているので辛うじて猥褻物陳列罪に問われる事はなさそうだが。
「……『あいつ』もえげつない事をする。
 いくら計画のキモとは言え……そんなに『寄る辺』を得て欲しくないのか。
 まぁいいさ、どの道今のままじゃ事を成す前に…『死ぬ』だけだもんな」
そんな独り言を呟く間も男に炎は吸い込まれていき、最終的に鎮火させてしまう。
吸い込んだ方は、羽が炎を纏っており見方によっては羽が燃えている様だった。

「人形、ね……俺もそうなんだろうよ。
 三文芝居にも程がある、役を終えた筈の役者に無理矢理役を与えて
 また舞台に立たせるなぞ。これも、生き恥と言うのかねぇ…?」
ぶつくさと呟きながら食堂に向かう、その男の右腕は『鈍い金色の甲冑』じみていた。


食堂のドアを蹴り開けると、そこもてんやわんやだった。
後の事を何も考えてない、ある意味羨ましい連中である。
「こんな所にいやがったか悪たれども。
 そろそろお遊びも終わりにしようじゃないか。もう十分だろ?
 ……遊びたきゃ、元気になってからやれや」
言い放ち、ササミに向かって途中の障害物を片手で払い除けながら向かうスッパの野郎一人。
ササミにとっては、先頃自分に殺気を向けてきた透明な奴そっくりの気配を漂わせる
そいつは……ペンギンと猫と飼い主にとっては『もういないはずの人間』だった。
どう見ても柔らかそうには見えない右手はしっかと握られており、何をしようとしているかは
明白だった。すなわち『まっすぐ行って右でぶっ飛ばす』である。

48 :炎道勇気 ◆hCjEHNrkek :2012/04/22(日) 17:31:39.52 0
冷静さとは真逆の位置にある現在の勇気
いつものササミなら子供扱いでちょちょいのちょいで倒して-いたのだろうが、それがどうしたことか動きが悪い
怒りに任せた一撃を危機一髪で避けたところまでは良かった
しかし、そのあとの水龍に飲まれた、いや飲んだ
ササミからしたら胸を見られて恥ずかしいらしいがいまの勇気には魔乳ですらめには入っていなかった

>「うぅ〜!仕方がにゃーでよ!ありがたくくらやーせ!
勇気を睨みつけたと思うと弾丸のように飛んでくるササミ

「きやがれこのとりや・・・・へぶらっ!!」
無駄に迎撃しようとするにもその高速あんど魔乳の圧力に怒りの勇気も気圧される
衝突、圧倒的肉厚、乳圧に潰される勇気
その圧倒的圧力によって吹っ飛ばされる勇気

>「まあそれより先に、乙女のおっぱい味わった代償を払ってもらわにゃーね。こんくらいでリタイアはせえへんのやろ?」

通常ならご褒美といえる光景だが怒り心頭の勇気はそれに
ガブリ
噛み付いた。噛み切るぐらい、まるでスッポンのように噛み付いた
もはや獣とかした勇気はササミにかぶりつく
噛み付きながらも時折獣のような叫び声をあげながらササミを離さない


49 :ササミ ◆/TZT/04/K6 :2012/04/23(月) 22:47:25.05 0
【食堂】

おっぱいミサイルで倒れた勇気に刀を向けて啖呵を切ったものの反応がない。
フリードもどこかへ隠れたのか、攻撃する様子がない。
けげんに重い首をかしげたところでリリペンギンから疑問の回答が寄せられた。

>「ピ(とりあえず、ササミちゃんはどこかで服を調達したほうがいいよ。
> 今のままじゃ皆、目のやり場に困って、全力で戦えないよ?
> 建物内だと、運動場近くの女子更衣室か、職員室隣の職員準備室に着替えがあると思・・・・・」
「……!」
今まで戦闘モードだったので気にしていなかったが、言われてようやく気が付いて声にならない悲鳴を上げた。
今の自分の姿がどういったものか。
戦闘中ならばそんなものどうという事もないのだが、一旦気がそれ気づいてしまうとやっぱり気になってしまう。

手袋の手ブラに水に濡れて腹巻状態のシャツ、そして下はパンモロと来たものだ。
集中力が切れたことにより、色々と余計な事に考えが巡ってしまう。
儀式呪文二つで魔力は殆ど残っていない。
先ほどの水龍噴射で腹の中もからっぽだ。
職員室に向かった複製はシャオロンとトモエとの激闘の果てに打ち取られた。

「あー、そやねえ。収穫はいろいろあったし、えー加減つかれてしもーたし。
どこかで落としどころ見つけて芸武の記録見ながらパジャマパーティーもえーなもなし」
ぽつりと呟いたところでルナが大きなタコをもって現れた。
>「ササミもリリィのことを大切に思うのなら離してやれよ。
>それとも困ったときに盾にするつもりかよ?ほーんと、魔族らしい考え方だぜ」
タコでリリィを誘い、ササミに解放するように挑発じみた言葉を発するのだった。

ルナの言葉に従いリリィを降ろしたが、その視線はルナから離れはしない。
何かを仕掛けようとしているのは明白。
はげた化粧からのぞく素顔に書いてあるのだから。

もちろん普段なら気づきはしないのだが、先ほど渡した羽飾りによってルナに対する認識力が高まっている。
それ故に見落とすことなくわずかな変化から察することができたのだ。
「何度もそんな不意打ちが効くとおもやーすなよ!」
ワディワジによって噴出されたタコ墨を華麗に避けて一気に間合いを詰める。

リリペンギンを掻っ攫い運動場近くの女子更衣室に案内させようとしたのだ。
流石に今の心理状態でこのままの姿をさらし続けるのには抵抗がある。
が、その思惑は乱入者によって打ち砕かれた。


50 :ササミ ◆/TZT/04/K6 :2012/04/23(月) 22:49:26.74 0
食堂のドアが蹴破られ、現れたのは炎を纏う羽を持つ男(真っ裸)
一思いに一糸まとわぬ姿ならば彫刻のような美しさを感じたかもしれない。
だがしかし、局部を隠す炎のお蔭で逆に卑猥さをアピールしているかのようだ。

もちろん現れた瞬間からその視界に入っているササミは全身の毛を逆立たせながら悲鳴を上げる。
「ぎゃーーーー!!HENTAI!!!!!」
片手で障害物を払いのけながら何気にかっこいい事を言う乱入者だが、その姿では全くの逆効果。
かっこいいセリフで決めれば決めるほどその姿と局部の炎がセリフ自体滑稽に貶める。

真っ直ぐ進んできた乱入者は金色の甲冑じみた右腕を振りかぶり、風を切るように繰り出した。
轟音を立てる拳を躱し懐に潜り込んだササミはそのままカウンターを放つ。
さすがに素手で触るのは乙女の恥じらいが許さない。
テーブルにあったドレッシングの瓶を至近距離から目の前の局所を隠す炎に投げつけたのだ。

「は!あかへんわ!リリィ!こんなもん見ちゃダメ!」
カウンター投擲をした流れのまま乱入者をすり抜けたササミが最初にそして唯一思ったことがこれだった。
突然現れた全裸のHENTAIからリリィを守る。
それ以外の事は頭になかった。
悶絶しているであろう乱入者も、タコを与えているルナも。
そしてもちろん、怒り心頭の勇気すらも。

リリペンギンに向かい低空で飛ぶササミに飛びつく勇気。
ガブリと魔乳を噛まれてそのまま縺れて落ちた。
すぐに起き上がり引き離そうとするがスッポンの様に噛みついた勇気は離れない。
「ギャーー!こっちはケダモノだぎゃーーー!
はなしゃーせ!あんた前もおっぱいに噛みついて、まだ噛みつくんか!
痛いぎゃ!強く噛めば喜ぶとか妄想しとるクチなんか!?
大体あんた婚約者いるでねーのきゃ!
こんなケダモノだなんて!欠片でも良い男と思ったあたしがタワケやったわ!はなせしゃー!」
口汚く罵りなんとか浮き上がろうとするが、魔力も体力もない今のササミに勇気を引き離すことができない。

というか、半裸状態の女のおっぱいに噛みつき離れない男の図。
絵面的にはかなり危険な構図なのだが大丈夫なのだろうか?

そしてこの事が後日婚約者に伝わった時、勇気の運命はどうなるのだろうか?

51 :シャオロン ◆sto7CTKDkA :2012/04/25(水) 16:57:28.66 O
>43 >46
>「個人の武技など所詮は匹夫の蛮技、将たる者としてむしろ恥たる心得…
>なんてゆーても、逃げの一手ゆーのは情けにゃーでいかんわ」
「敵と己を知れば百戦危うからずってね
 猪武者相手は罠にかけるのが一番ってことなのよ!」
非難の色の無い言葉にそう返し、身を翻して窓の近くに戻ったときには勝負は決していた。
トモエの捨て身の突きが、ササミの身体に深々と突き刺さっていたのだ。
勢いを殺せずに外に吹き飛ばされたササミに、シャオロンは慌てて目を転じる。
相手の戦意の有無を確認しないことには、うかつに目も離せない…のだが。
すでにササミから闘気は失せていた。

>「まさか半病人二人にやられるとはおもっとらせんかったがね。
>シャオロン、将を気取るならトモエを助けてやりゃーせよ。
>ま、これは残念賞だぎゃ。うけとりぃ。」
煙と共に手品のようにササミの身体は消え、後にはトモエの刀と小さなケースが残された。
シャオロンは、警戒せずに残された刀とケースを拾い上げる。
ササミの性格から、後に罠を残していくような事はしないだろうとわかっていたから。

「……金の針…ねえ?」
10本の針の中の1本をつまみ上げ、シャオロンは光にかざして見た。
彼女の母国には、色々と冗談のような技術を持った人々が存在する。
針一本で万病を治す『ゴッドヴェイドー』の使い手や、スーパードクターKADAと言われる天才医師などなど。
残念ながらシャオロンにはそんな技術はなかったし、金の針を使った事もなかった。
果たしてこれで石化を治せるのだろうか?
「ま。 やってみればわかるわよね」
どーせ自分の身体じゃないんだし。と続けながら、シャオロンは気楽にトモエに金の針を使ってみることにした。
ササミに言われるまでもなく、トモエの治療はするつもりでいたのだ。
見捨てるほどに薄情でもなかったし、”念のために”手は多いほうがいいのだ。

52 :シャオロン ◆sto7CTKDkA :2012/04/25(水) 16:58:10.01 O
「ふ〜ん…上手くいったみたいね。 気がついた?」
トモエが石化から戻れば、右手で”普通の”針をくるくる回す機嫌良さそうなシャオロンが見えるだろう。
肩にはトラコウが戻っており、外からドラゴンと巨人が争う音ももう聞こえない。
今は必要なかろうと、シャオロンが一度アクライを校舎から遠ざけてガーディアンから引き離したのだ。
「それにしても驚いたわ。 いくらなんでも石化を気にせず突撃するなんてやりすぎなんじゃないの?
 あーいうの、神風アタックとか言うんだっけ?
 それとも桜花? 回天? まあ何でもいいわ。
 私が石化から治してあげたんだから、感謝しなさいよ。
 普通なら石化して砕け散って、葬儀屋を呼ばなきゃならないところなんだから」
饒舌に語りながら、左手に持った刀をシャオロンはトモエに差し出すした。

「こっちに来てたササミは、偽者の方だったみたいね。
 ま、職員室には私がいるってわかってるんだから、危険な方に偽者を回すのは当たり前よね。
 あれでササミもなかなか頭が回るじゃないの。
 肝心の血を置いていかなかったのは気が利かないってものだけど、鳥頭にそこまで求めるのもかわいそうよね。
 こっちは頑張ってるんだから、さっきのテレパシー組の方が頑張ればすぐに血も手に入るでしょうよ。
 ……。 ところで。
 トモエにちょっと相談があるんだけど?」

上機嫌に話を進めていたシャオロンは、そこで雰囲気を改める。
「ササミのウィルスの効果は、こっちで確かめさせてもらったわ。
 間抜けでも無能じゃない教師陣が、本当に寝込んじゃってるのも。
 …抗体が手に入ったら、色々と使い道がありそうだと思わない?
 有能な保険医が見抜けなかったウイルスだもの。
 あのウイルスをフィジル島の外にばら撒けたら、抗体で金儲けでもなんでもできちゃうわよね」
トモエの関心についてあまり詳しくないシャオロンは、出来る事をぼかして告げる。
興味ないから。という断り文句は、あまり好ましいものではない。

「あんたの噂は幾つか聞いてるわ。
 噂の内容が事実かどうかに興味はないし、あんたがしてる事もどうでもいい。
 重要なのは、あんたにも得になる話だって事なのよ。
 どう? 私に協力する気は無い?
 今なら特別に分け前を3割もあげちゃうから」
ウイルスを島の外にばら撒く事にトモエが同意しようがしまいが、シャオロンの次にする事は決まっている。
ササミの血の採取、である。

53 :リリィ ◆jntvk4zYjI :2012/04/26(木) 19:24:54.79 0

>44-45 >47-52
> 「あー、そやねえ。収穫はいろいろあったし、えー加減つかれてしもーたし。
> どこかで落としどころ見つけて芸武の記録見ながらパジャマパーティーもえーなもなし」
「ピ!(ホント?!芸武終わり?やったやったー!・・・・・・あ、でも、記録見ながらって何のこと?」
ササミは、記録係でも用意したのだろうか?それとも、どこかの取材でも引き受けたのだろうか?
リリィは、やり手と評判の「学園新聞のスタッフ」を思い浮かべていた。
彼らは、今回のウィルス騒ぎは大丈夫だったのだろうか?

ルナが、巨大な大タコを持ってきてリリィに突き出した。
>「リリィ…こっちへおいで。このタコはきっと美味しいよ。
「ピー(タコー!全部もらっていいの?わーいわーい、食べる食べるー!!」
リリィは大喜びで、両羽をばたばたさせた。
野生の本能(食欲)の前では、すべてが色あせて見える。
ルナの挑発するような台詞もまったく耳に入らない。
「ピッ♪(タコ♪ごちそうタコ♪煮ても焼いてもおいしいよー♪)」
頭上で飛び交う火花もなんのその、ペンギンリリィはうきうきしながら、ルナのほうへとよちよち歩いていく。

そこで新たな人物が、ドアを蹴破って現れた。
現れたのは炎を纏う羽を持つ男(真っ裸)
「・・・・・・・ピ?」
リリィは歩を止めた。
濡羽色の羽根っぽい髪。
黒目がちな釣り目。
長身の男性は、確かにリリィやフリード、グレンの知る男性だった。
だが、決してこの場に現れるはずのない男性だった。
『フリード君大変!死んだはずの人が生き返って炎を纏ってユーレイになっちゃった!!
 えっ、でもユーレイって炎にも強かったっけ?!はっ!もしかしてこれもササミちゃんのウィルスの副作用?! 
 ユーレイにもウィルスって効果あるの?!魔界ウィルスすごーい!!』
あまりに驚きすぎて、裸は完全にスルーである。
>「ぎゃーーーー!!HENTAI!!!!!」
が、当のレイヴンは、ササミからドレッシング瓶でのカウンターを食らいそうだ。
ちなみにドレッシングの中身の何割かは油である。
まあ、瓶が割れるほどの衝撃を受けたなら、いくら炎が平気でもなかなか厳しいものがあるだろうが。

>「は!あかへんわ!リリィ!こんなもん見ちゃダメ!」
「ピ?(えっ?)」
>こちらに向かって低空で飛ぶササミに飛びつく勇気。
>ガブリと魔乳を噛まれてそのまま縺れて落ちた。
『キャー!!HENTAI!!エンドウ君それセクハラ!婚約者がいるくせに何してるのー!!』
すぐに起き上がり引き離そうとするがスッポンの様に噛みついた勇気は離れない。
ササミとエンドウは、床の上でどったんばったんしている。
もしもこのことが婚約者に知れたら、エンドウだけでなくササミの命も危ないだろう。


54 :リリィ ◆jntvk4zYjI :2012/04/26(木) 19:25:52.00 0
しばらくササミとエンドウの格闘を見ていたが、ふとリリィは気づいた。
『ね、ね。フリード君にルナちゃんにレイヴンさん、これってもしかして、総代のエンドウ君がササミちゃん捕まえたってことだよね?』
リリィはつぶらな瞳で一同を見上げた。
『ということは、芸武はこれにて終了?皆、元に戻る?』

リリィは振り向き、まだ揉みあっているササミとエンドウを見てため息をついた。
『・・・・・・・・・・誰か、あれ、止めてきてくれないかなぁ?』
ゲームが終わったのだとしたら、あの姿のササミを拘束しているエンドウは役得・・・・否、大変外聞が悪いに違いない。
だが残念ながら、いくらリリィでも、あの間に割り込むだけの度胸がない。
せいぜい吹き飛ばされるのがオチだ。

「ピ。(ユーレイのわりに元気そうでよかった。お久しぶりです、レイヴンさん。
 ところで・・・・・クーちゃ、クリスにはもう会われました?)」
リリィはテレパシーでなく、ペンギン語で挨拶をした。
果たしてレイヴンはペンギン語が理解できるだろうか?それ以前に、会話できる状態、だろうか?

「・・・・・・・・ピッ!ピーッ!!」
シリアスな話は長くは続かない。
ペンギンとなったリリィは、人としての理性より本能に忠実だからだ。
リリィはルナの足元に移動すると、羽をばたばたさせながらぴょんぴょん飛び跳ねている。
どうやら、ルナの持っているタコ足に食いつこうとしているようだ。

55 :ルナ・チップル ◆7CpdS9YYiY :2012/04/26(木) 23:45:43.95 0
>「ピー(タコー!全部もらっていいの?わーいわーい、食べる食べるー!!」
リリィは羽根をバタつかせて嬉しそうだった。
そんな姿にルナが破顔すると、ルナの目に映っている食堂は蕩けだし綺麗なお花畑に変わってゆく。

>「ピッ♪(タコ♪ごちそうタコ♪煮ても焼いてもおいしいよー♪)」
「リリィ〜〜〜〜♪」
リリィは一番のお友達。リリィは心のオアシス。リリィは納豆についている醤油。

>「ぎゃーーーー!!HENTAI!!!!!」
すると、空想を突き破るササミの悲鳴。ルナが現実に戻るとケダモノと化した炎道がササミの魔乳に齧り付いている。
さっき裸になったルナを笑った報い…と思いたかったけど流石にこれは可哀そうだった。

>『ね、ね。フリード君にルナちゃんにレイヴンさん、これってもしかして、総代のエンドウ君がササミちゃん捕まえたってことだよね?』
>リリィはつぶらな瞳で一同を見上げた。
>『ということは、芸武はこれにて終了?皆、元に戻る?』

「じゃねーの。ちっと尺に触るけど、さすが総代ってとこだな」

>『・・・・・・・・・・誰か、あれ、止めてきてくれないかなぁ?』
と続けてリリィのテレパシー。

「……やってみっか。止まんないかもしれねーけど」
ルナは合点承知と胸を軽く叩いて見せると、炎道にタクトで魔法をかける。
それはいつもの逆詰め魔法ではなく、その素となる反転魔法。
だからドレッシングで凄いことになっているであろう炎道の局部は氷の属性に反転され
そこから水龍によって水浸しにされた食堂がカチカチと凍り始める。
そして出来上がったのはペンギンリリィが喜びそうな氷の世界。

「半裸じゃ風邪ひくぜササミ。炎道も少しは頭を冷やしやがれ」
ふんと鼻から息を吐いて、二人を蔑むような目で見下ろすルナだった。

>「・・・・・・・・ピッ!ピーッ!!」
安堵のルナは、足元で啼くリリペンギンにタコを与える。
でもちょっと悲しくなる。こんどはリリィが、タコに夢中で自分を見てくれないから。

(こんなの…リリィじゃないよ……)
タコに抱きついているようなリリペンギンを抱きかかえているルナの胸に去来する思い。
それは虚無感だった。

「はやく元に戻してあげるからね」
ペンギンの頬にすりすりと頬を寄せるルナ。 涙がほろほろと流れ落ちる。

「おら!保健室にいくぞササミ!その血から抗体を作って、みんなを元にもどす!いいよなっ!?」
ルナの目からは黒い涙が流れていた。

56 :レイヴン? ◆70VgGM3HY6 :2012/04/27(金) 00:29:08.89 0
>48-51、>53-55
>「ぎゃーーーー!!HENTAI!!!!!」
>真っ直ぐ進んできた乱入者は金色の甲冑じみた右腕を振りかぶり、風を切るように繰り出した。(中略)
>テーブルにあったドレッシングの瓶を至近距離から目の前の局所を隠す炎に投げつけたのだ。
元より男に文字通りの鉄拳を直撃させる気など無かった。
当たられちゃ困るからこそ、小細工全部ぶん投げて真正面から向かっていったのだから。
……その代償がHENTAIの烙印と急所へのクリティカルと言うのは実に割に合わない。
「ーーーーーーーー!!!!!!!」
ササミのそれとはベクトルの異なる声にならない悲鳴を上げ、拳を突き出した格好のまま
若干内股になって痛みを堪える男だったが、その外見は唐突に変化を始めた。

男は一言で言えば不安定な状態であった。それを何とか安定化させようと無意識さんがログインした時
股間部に強い衝撃が加わり、男は『男』に生まれた事を悔やんでしまった、のかどうかは
知らないが……傷だらけで脂肪分の足りない野性的かつ角ばった肉体は若干丸みを帯び
ガチガチの胸板にはその体躯にしては大きめの脂肪の塊が二つ出来上がっていた。
腰みのの如く纏わりつく炎のせいで確認は出来ないが、
恐らく股間部の無駄に完成度の高いネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲は
消失しているのだろう。そんな自分の変化に、『元男』は激痛にかまけてて気づかない。

>『ね、ね。フリード君にルナちゃんにレイヴンさん、これってもしかして、総代のエンドウ君がササミちゃん捕まえたってことだよね?』
ようやく痛みが引き、周囲に気を配れる様になった『元男』……レイヴンは
ペンギンことリリィから発せられているテレパシーを受け取り考え込む。肘に
相当に柔らかい感触がある筈なのにまだ自分の肉体の変化に気付かないでいる。
「そうなんじゃないか? あの空飛ぶフライドチキンはヘロヘロで逃げられそうにないし、
 真っ赤なスッポンは逃がすつもりもないだろうし。しかし……ひどいザマだ」
レイヴンの声は、声帯も変化してしまったのだろう、元の姿からは想像も出来ないレベルに
可愛らしくなってしまっていた。髪もショートからロングになっていて、どこからどう見ても『女』だった。
……それだけに、女の姿になっても消えない全身の傷と脂肪分の足りない筋肉質な体つきは
普通の少女と呼ぶには二の足を踏ませる。腹筋とか綺麗に八つに割れてるしね。

57 :レイヴン? ◆70VgGM3HY6 :2012/04/27(金) 00:29:16.87 0
>「ピ。(ユーレイのわりに元気そうでよかった。お久しぶりです、レイヴンさん。
> ところで・・・・・クーちゃ、クリスにはもう会われました?)」
最後、リリィは何故かペンギン語で話しかけてきた。普通に考えれば学のないレイヴンが
ペンギン語など聞き取れるわけないのが分かるだろうに……所詮は鳥畜生の脳みそか。
だがしかし、何とも信じられない事に
『ピィィ。(ああ……確かに久しぶりだ。
 クリス、か。随分と他人行儀にあいつの事を呼ぶんだな?)』
レイヴンはペンギン語で返事をしたのだ! 今の姿のお陰でその可愛らしい鳴き声には
違和感が無かったが……内容は質問に答えないばかりか返答に困る様な代物だった。
リリィを見つめるその瞳はスッと細められ、複雑な表情を覗かせる。言いたい事が多そうだ。

>『・・・・・・・・・・誰か、あれ、止めてきてくれないかなぁ?』
>「……やってみっか。止まんないかもしれねーけど」
「どうせ誰も触りたくないんだろ? 痴女の確保は任せろ」
先程までバタバタとくんずほぐれつギシギシアンアンしてた破廉恥男女に音もなく忍び寄り
背後から思いっきり首根っこを掴んで両者を持ち上げる。いくらムキムキと形容できそうな
腕をしているとは言え人一人を支えるには心許ない細さに変わりは無い。
しかし、現実にはびくともしていないのだ。そんな力あったっけ?
「しかし、この寒さはいささか堪えるな……色々な意味で。
 さて破廉恥女、観念して血清作成の為に血液を提供して頂こうか。
 それとな……痴女に変態呼ばわりさせる筋合いはねぇ!」
そういう自分も今では立派な痴女なのだが、まだ気付いてない。当然自覚も無い。
しかもルナの反転魔法のせいで炎は既に消えており局部もはっきり見えてしまっている。
……ネオアー(ryも含めて、『生えてなかった』。属性を反転されたのに凍らねーしな!
「それと炎道、お前には山ほど説教がある……乳に噛み付くとは何事だ。
 乳とはなぁ、食い千切るもんじゃない甘噛みするもんだ。
 ほれ見ろ、歯形が付いちまってるじゃないか。こんな事されて喜ぶのは
 真性マゾヒストだけだ。確証も無いのにこんな事しちゃダメじゃないか!
 ……それになぁ、嫁入り前の少女だぞ。傷物にしちまったら責任取るのか? 取れるのか?」
唐突に変態的な説教を始めるスッパの『女』一人。至って大真面目なのが救えなさバツ牛んである。

58 :ササミ ◆/TZT/04/K6 :2012/04/27(金) 00:32:27.97 0
魔乳に噛みつかれて縺れる勇気とササミ。
怒りで正気をなくした勇気は獣の如き唸り声をあげて離さない。
ササミの罵声も耳に届いていないかのように。
消耗した魔力と体力では引きはがすことができず、たとえ体力が万全であってもこうなっては力が出ない。
無理矢理引きはがそうとすれば魔乳が伸びてしまい、今までの魔乳維持の努力が水泡と化してしまうからだ。

羞恥と怒りの中、妙案もなくただもがくだけだったが、そこにリリィの核心をつく言葉が放たれた。
>『ね、ね。フリード君にルナちゃんにレイヴンさん、これってもしかして、総代のエンドウ君がササミちゃん捕まえたってことだよね?』
>『ということは、芸武はこれにて終了?皆、元に戻る?』
その言葉にはっと我に返るササミ。
そう、今の状態はまさに捕まった状態。
すなわち鬼ごっこという芸武はササミの敗北で決着がついたのだ。
もはや言い訳の仕様がない。

ルナは場を収めるべく属性反転魔法を使い、乱入者を纏う炎の属性が反転し氷ついて行く。
その余波は食堂全体に及び、勇気とササミが縺れている周囲も氷ついて行くのだ。
氷で勇気の怒りの炎も鎮まるだろうか?
>「おら!保健室にいくぞササミ!その血から抗体を作って、みんなを元にもどす!いいよなっ!?」
だが、ルナの放った終結の言葉は周囲の氷とは裏腹にササミの胸の内に黒い炎をともした。

元々勝ち負けは気にしていない。
抗体を作るために血が必要ならば分け与えるのは吝かではない。
ウイルスで弱体化した人間たちがどのような行動に出るかは十分に観察できた。
だが、だが…
「う〜〜〜〜〜〜〜〜…こ、こんな負け方……納得できやせーへんわーーーー!」
勇気にかじりつかれながら敗北を突きつけられたササミの声がこだまする。
そして怒りに燃えたササミが意を決し、その言葉を放つ!
「ホルスタウロスの迷宮の試練の果て、神乳の恩恵、今ここに返上すっ!!!!」
それはササミが苦労の末手に入れた魔乳との決別の言葉。

言葉を言い切った直後、ササミはピンクの煙に包まれた。
その煙の中で勇気は今まで噛り付いていたモノが突如として消えたことを知るだろう。
口と手から今まであったものがすり抜けた事を。

煙はすぐ晴れ、床には噛り付いていたままの体勢の勇気が。
中には怒りに燃える瞳のササミがあった。
しかしササミは今までとは大きくその姿を変えていた。
変化はただ一点にして最大のもの。
そう、胸につけた魔乳が跡形もなく消え失せ、手袋の手ブラも一つで有り余るようになっていた。

ササミの生来の胸はまな板というに相応しいAAカップ。
膨らみを感知するのが至難の業なほどの。
コンプレックスに感じていたササミは魔界にあるホルスタウロスの迷宮の試練に打ち勝ち、その中心部にいた神乳のホルスタウロスの恩恵で魔乳を得ていたのだ。
敗北の在り方を受け入れられぬササミは恩恵を投げうち、魔乳を捨てて本来の姿となって宙へと帰還したのだ。

59 :ササミ ◆/TZT/04/K6 :2012/04/27(金) 00:32:43.27 0
「こ、こんな負け方、認めへんだがね!絶対にいいいい!!!」
絶叫と共に消えるササミ。
とほぼ同時に食堂の床と言わず天井と言わず壁と言わずテーブルと言わず。
あらゆる場所が爆ぜるように砕け、直後に食堂内を吹き荒れる暴風!
乱れ飛ぶテーブル、椅子、その他もろもろ。

暴風の中、見ることができるだろう。
全身打ち身で血を流すササミの姿を。
その姿から何が起こったかを推測することができる。

この同時多発爆発と暴風はササミが移動した事で引き起こされたのだ。
魔乳を捨てた事で、本来のスピードを取り戻したのだ。
だがあまりの速さにササミ自身の感覚が追いついていない。
方向転換はどこかにぶつかることで可能となっているのだろう。

「もう小細工はなしだがね!捕まえられるのなら捕まえてみやーせ!!!」
ありえない敗北の仕方と魔乳を切り捨てた事によりもはやササミに正気は残っていない。
文字通り目にもとまらぬ速さで食堂を飛びぬけ、その勢いのまま食堂、購買部、談話室などいくつかの壁を突き破る。
壁に開いた穴は後を追うように発生した衝撃波と真空刃で砕け散りワンフロアーぶち抜きにする勢いで部屋を広げていく。

もちろん体当たりしての破壊活動なのでこのままじっと待てば自爆して終わるだろう。
だがそれまでに校舎がどこまで破壊されるか。
もちろん破壊されるのが校舎だけとは限らない。
身を守るためにも、それよりも何よりも、トチ狂った魔界の者に目にもの見せてやってくれ!


60 : ◆jWBUJ7IJ6Y :2012/04/27(金) 07:32:29.08 0
>52
> 「ふ〜ん…上手くいったみたいね。 気がついた?」
石化から回復したトモエの目に最初にうつったのは、
右手で”普通の”針をくるくる回す機嫌良さそうなシャオロンだった。
トモエは石化する直前のことを思い出そうとした。
確かに自分の放った突きはササミを貫いたはずだが、刀もササミもどこへ行ったのやら。
> 「それにしても驚いたわ。 いくらなんでも石化を気にせず突撃するなんてやりすぎなんじゃないの?
>  あーいうの、神風アタックとか言うんだっけ?
>  それとも桜花? 回天? まあ何でもいいわ。
>  私が石化から治してあげたんだから、感謝しなさいよ。
>  普通なら石化して砕け散って、葬儀屋を呼ばなきゃならないところなんだから」
「…殺すつもりの無い武器なんて、恐れるに足りない。そうじゃありません?」
トモエは切先の消滅している枝分刀を体から抜きながらそう言った。
カッコ悪いので「私冷静さを失ってましたのよー!」とは言えなかったからだ。
「ありがとう、シャオロンさん。なんだか私たちって、お友達…みたいね。」
シャオロンから刀を受け取ったトモエの顔が赤くなったのは病気のせいだけではなさそうだ。
だが、すぐに真顔に(いやずっと無表情だけれども)もどったトモエは刀を持ち替え何かを探し始めた。
ササミの死体だ。

> 「こっちに来てたササミは、偽者の方だったみたいね。(後略)」
「さっき斬ってしまった方が偽物でよかった。安心しました。」
トモエは心にもないことを言うと、死体探しをやめてシャオロンの“相談”に耳を傾けた。
曰く、ササミのウイルスと抗体で金儲けやらができるのではないかということだ。
> 「あんたの噂は幾つか聞いてるわ。
>  噂の内容が事実かどうかに興味はないし、あんたがしてる事もどうでもいい。
>  重要なのは、あんたにも得になる話だって事なのよ。
>  どう? 私に協力する気は無い?
>  今なら特別に分け前を3割もあげちゃうから」
「…誘ってくれて、どうもありがとうございます。確かに、悪い話ではないのでしょうね。
 ですが、申し訳ありません。お断りいたします。」
トモエのシャオロンに対する態度が急によそよそしくなったのは、シャオロンがトモエの噂を聞いたと言ったからだろう。
トモエには普段の品行からは考えられない暗い噂が絶えず学園中で囁かれていた。
曰く、人殺しである。
曰く、人間の内蔵を抜き取ってそれを材料にした薬を販売している。
曰く、正義と称して何の罪もない人間を殺している。
曰く、エトセトラ、etc,etc………
「シャオロンさん。あなたが私のどんな噂を聞いたのかは存じ上げませんが、私も一つ噂を聞いたことがあります。
 世の中には、お金を払えば人を殺してくれる仕掛人という人達がいるそうです。」
トモエは、あくまでも噂であり、自分とは無関係とばかりに話を続けた。
「はらせぬ恨みをはらし、許せぬ人でなしを消す。いづれも人知れず、仕掛けて仕損じ無し。人呼んで仕掛人。
 お互い、余計なトラブルとは無縁でいたいと思わない?…今回の話は聞かなかったことにしておきます。
 仕掛人がどこにいるかわからないもの。そう、例えばあなたのすぐそばにもいるかもしれない。」

その時、遠くから壁でも突き破っているかのような破壊音が聞こえてきた。
その音は少しずつこちらに近づいてきているようだ。
トモエは音をたてずに刀を鞘に収めた。
「とにかく、今はゲームを終わらせましょう。………あ、待って」
すぐにでも職員室を出てササミを追うところであったが、なぜかトモエは引き返した。
見ると、トモエは女性教員の机の上に置いてあるヌイグルミに興味津々のようだ。
ネズミの着ぐるみをかぶったネコのようなそのヌイグルミをトモエは手に取った。
『ミャンちゅう☆だミャ〜ん!』(※トモエの腹話術です)
トモエの顔がちょっと赤くなった。…たぶん、あまり相手にしない方が良いだろう。

61 :フリードリッヒ ◆cOOmSNbyw6 :2012/04/28(土) 00:21:08.92 P
「げぇーレイブンさん!?」
『成仏したとばかり思っていたよ』(猫語)
はたして彼は本当にレイブンなのだろうか?
それともまた別の霊なのだろうか?
だがそのレイブンは何かが違っていた
・・・・そう本来男であるはずのレイブンは女の体になっていたのだ
「まあ元の体であるクリスさんが女の子だから本来はこれで正しいのかもしれませんね」
『裸の女を前に冷静だねフィー坊』(猫語)
「まあ女の人の裸は姉さんで慣れてますから」
つい最近まで一緒にお風呂に入っていたらしいフリードリッヒとフリージア
だが身内の裸と他人の裸を一緒にしてしまって良かったのだろうか

何を考えたのかササミの胸に噛み付く炎道
そして急に貧乳と化すササミ
どうやらそれが本来の姿のようである
そして本当は貧乳な事がばれたのがショックだったせいか
まるで暴風のように暴れだすササミ
「赤い蝶は周りに飛び散ってますけど生血じゃないと意味が無いんですよね」
血を赤い蝶と例えるフリードリッヒ
確かに例え血を流していても壁や床に飛び散ってしまえばもう生血とは言えないだろう
『そんなことはどうでもいいから追いかけるよフィー坊』(猫語)
「分かってますよ!」
と靴の下に氷の刃を生み出し目の前を凍らせてスケートの要領で追いかけるフリードリッヒ
果たしてこの方法で追いつけるのだろうか?
ちなみに魔力の低下のせいで生み出した氷の道は人一人分の幅しかなく
他のメンバーの邪魔にはならないだろう

62 :リリィ ◆jntvk4zYjI :2012/04/30(月) 18:35:54.89 0
>55-61
>「げぇーレイブンさん!?」
>『成仏したとばかり思っていたよ』(猫語)
「ピー(私も、私も!』

>『ピィィ。(ああ……確かに久しぶりだ。
> クリス、か。随分と他人行儀にあいつの事を呼ぶんだな?)』
「ピ(・・・・・・クーちゃん、で通じなかったら、気まずいじゃないですか。
 この間大怪我してから、クーちゃんにはちょっと・・・・避けられてる感じで」
まあ、外見がレイヴンでも中身が彼女なら、リリィ=ペンギンとわかった時点でこの場を立ち去っているだろうが。
「ピ(鳥の言葉が通じるのなら、やはりレイヴンさんで間違ってないみたいですね。:

ルナはエンドウとササミの頭を冷やさせるために、逆詰め魔法で食堂を氷の世界に変えた。
>「どうせ誰も触りたくないんだろ? 痴女の確保は任せろ」
そしてレイヴンは、エンドウに食いつかれていたササミを持ち上げて確保し、エンドウと彼女の両方を説教している。
『全裸の人に説教されたくないと思うよ、うん』

>「う〜〜〜〜〜〜〜〜…こ、こんな負け方……納得できやせーへんわーーーー!」
それはそうだろうな、とリリィも思った。
>「ホルスタウロスの迷宮の試練の果て、神乳の恩恵、今ここに返上すっ!!!!」
>言葉を言い切った直後、ササミはピンクの煙に包まれた。
そして、の煙が晴れると、ササミの胸は風船のようにしぼんでいた。
急に質量がへったせいで、レイヴンの拘束も解けてしまっている。
『えっ!!レイヴンさんその体どうしたんですか?!
 はっ!もしかしてササミちゃんの魔乳って譲渡可能だったの?!
 ずるいっ!なんでよりによってレイヴンさんにあげちゃうのよー!!いらないでしょ普通!!』
そういう問題ではない。
あと・・・・・・今頃レイヴンの性別変化に気づくとは、鈍すぎである。

>「こ、こんな負け方、認めへんだがね!絶対にいいいい!!!」
絶叫と共に消えるササミ。
とほぼ同時に食堂の床と言わず天井と言わず壁と言わずテーブルと言わず。
あらゆる場所が爆ぜるように砕け、直後に食堂内を吹き荒れる暴風!
乱れ飛ぶテーブル、椅子、その他もろもろ。
『風の魔法?!一瞬で食堂がめちゃくちゃになったよ!!あ、でもなんでササミちゃんあんな怪我しえるの?
 暴風の魔法は、生傷とか青あざを対価に発動してるの?』
テレパシーで見たままを実況しているが、少し考えれば暴風の正体に気づくだろう。
それに食堂から移動したササミは、全ての壁をぶち破る勢いで移動している。
ササミの動向をテレパシーで伝えなくても、彼女の居場所は誰の目にも明らかになっていた。


63 :リリィ ◆jntvk4zYjI :2012/04/30(月) 18:36:21.64 0
「ピ!(あっ!血の跡が!)」
>赤い蝶は周りに飛び散ってますけど生血じゃないと意味が無いんですよね」
『そ、そうか・・・・・な?』
リリィはがっかりした。そして、回復系の授業を受けているのに、はっきりした結論が出せない自分にがっかりする。
『ああ、ここにセラがいてくれたら・・・・・・』
そういいかけて、やめた。
セラを頼るのはよくない。そもそもリリィがもっとしっかりしていれば。
『ごめん、今の忘れて・・・・・・』
セラはどこに行ってしまったのだろうか?この暴風に巻き込まれず、どこかで休んでくれているといいのだが。

>靴の下に氷の刃を生み出し目の前を凍らせてスケートの要領で追いかけるフリードリッヒ
「ピ!(来い!)』
リリィは片方の羽を高々と上げると、彼女の箒が戻ってきた。
箒には、ぼろぼろになったフリードのマントが引っかかっている。
(途中、箒にぶら下がっていた鞄が、エンドウの横っ面にぶつかった気がしたが、きっと気のせいだろう)
『私たちも後を追いましょう!
 ササミちゃんを追うつもりなら、レイヴンさんは、そのぼろ布で大事な場所を隠してください!』
水着くらいの布地分しかないようだが、無いよりはマシだろう。

『それからルナちゃん、ルナちゃん、体は大丈夫?』
ちょうどルナの腰の位置に、リリィの箒がふよふよ浮いていた。
乗れ、ということなのだろう。
『ササミちゃんを追いかけよう!
 この箒は一人乗りだけど、私と一緒なら飛べるよ。
 ルナちゃん魔法たくさんつかったでしょ?少しでも体を休めてて』

去り際、リリィはエンドウを一瞥した。
『ササミちゃん、今回のことを記録してるみたいだよ?
 婚約者のマコトちゃんが元気になって今回の記録みちゃったとしたら、どんな顔するかな?』
返事は期待しないまま、そのまま食堂を去る。

『ササミちゃん!どんな形であれ負けは負けだよ!
 納得できないからって、自分で決めた約束事を破るなんていけないことだよ!』
破壊音を立てて移動しているササミに、必死で呼びかけてみる。
ササミは食堂、購買部、談話室をめちゃくちゃにしつつ、かなり早い速度で移動していた。
幸い、今のところ巻き込まれて大怪我を負ったものはいないようだ。
『えー、聞こえますか?リリィです。
 ササミちゃんは、購買、談話室をぶち壊しつつ講堂方面へと向かっているようです。
 体調の悪い人、戦闘できない人は、今すぐ直線上コースから退避してください!』
そういえばプリメは無事だろうか?
もし体調が悪化して保健室付近で休んでいるなら、直撃コースから外れている。安全だろう。

>トモエさん、シャオロンさん
リリィはテレパシーで警告しつつ飛んでいたが、職員室付近で見覚えのある人物と再会した。
『トモエさん!無事でよかった!・・・・・・あれ?』
彼女の持っていたぬいぐるみが無いことに気づく。
そしてちょっと考え、両羽をぽんとたたいた。
『もしかしてこの子、トモエさんのぬいぐるみが変身した姿ですか!すごい!かっこいい!』
いろいろ地雷を踏んでしまっているが、リリィは気づいていない。
『ササミちゃんは講堂方面に移動してます!早く追いついて捕まえないと、寮に突っ込んだら大惨事です。
 それに、いくら回復能力が高いからって、血を流しすぎたら死んでしまいます。
 早くとめないと!どうか協力してください!』
まさか目の前の人物が「討伐隊長」その人だと思いもしないリリィは、いいたいことだけ言うとそのまま箒を先に進めようとする。

64 :シャオロン ◆sto7CTKDkA :2012/05/01(火) 17:50:02.37 O
>60 >63
>「…誘ってくれて、どうもありがとうございます。確かに、悪い話ではないのでしょうね。
> ですが、申し訳ありません。お断りいたします。」
「あっそ。 ノリの悪い奴」
シャオロンが見るからに不機嫌そうになったのは、別によそよそしい態度をとられたからではない。
基本的に思い通りに行かないのが嫌いなだけである。

>「シャオロンさん。あなたが私のどんな噂を聞いたのかは存じ上げませんが、私も一つ噂を聞いたことがあります。
> 世の中には、お金を払えば人を殺してくれる仕掛人という人達がいるそうです。」
「ああん?」
急に何を言い出すのか…と、相変わらずの不機嫌な表情で答えるシャオロンは気にせず。
トモエは言葉を続ける。

>「はらせぬ恨みをはらし、許せぬ人でなしを消す。いづれも人知れず、仕掛けて仕損じ無し。人呼んで仕掛人。
> お互い、余計なトラブルとは無縁でいたいと思わない?…今回の話は聞かなかったことにしておきます。
> 仕掛人がどこにいるかわからないもの。そう、例えばあなたのすぐそばにもいるかもしれない。」
「ふうん…仕掛け人が側に……ねえ?」
先刻までの機嫌の悪さは消えうせ、今度は面白い話を聞いた。という表情で、シャオロンはトモエを見返した。
そういう奇特な連中がいることは、シャオロンも噂に聞いたことがある。
もちろんそれは噂であって、実際の所そんな都合の良い連中などいないだろうとシャオロンは思っていた。
社会的弱者のあこがれる正義の味方などそうそういるものではないし、いれば”噂”ではなくなるだろうから。と。
しかし、この状況で一見関係無いように見える噂を持ち出すトモエに、シャオロンは大変興味を引かれた。
平たく言えば、「私は仕掛け人です」と自己紹介されたと考えたのだ。

外から随分と豪快な破壊音が聞こえ、それはどんどん近づいてきているようだった。
ササミの本体の方が暴れていると考えてまず間違いないだろう。
>「とにかく、今はゲームを終わらせましょう。………あ、待って」
「何? 仕掛け人が聞き耳でも立ててたのに気づいたの?」
部屋を出る足を止めて軽口を叩くシャオロンに、トモエは微妙なぬいぐるみを見せた。

>『ミャンちゅう☆だミャ〜ん!』(※トモエの腹話術です)
顔を赤らめるトモエに、シャオロンは世にも複雑怪奇な表情を返した。
トモエの言動が、シャオロンの想像の範疇を(斜め上方向に)遥かに超えるものだったからだ。
「そ、そうね…わりと可愛い……んじゃないかしら…。
 気に入ったなら、病気が広がるのを食い止めたお礼にもらって帰ってもいいかも……」
どう言っていいものかと迷ったシャオロンは、珍しく断定せずに、あさっての方向を見ながらもっともらしい事を口にする。
「ま、まま、まずはササミから生き血を絞り取ってきましょうか。 ね!」
反応に迷うまま、シャオロンは強引にそう締めくくって職員室を出た。
なぜか、あまり相手にしない方が良いように思えたのだ。

自身の考え出したトモエ=仕掛け人説に大きな疑問符をつけながら歩くシャオロンは、次に見たものにも驚かされた。
「なによこれ!? どうなってるのいったい!」
先刻と同じテレパシーが危険を知らせてくるが、目撃していないのでは詳しい事情などわかろうはずもない。
破壊された校舎に唖然としているうちに、テレパシーを発していた張本人(らしきペンギン)が箒に乗って近寄ってきた。

>『トモエさん!無事でよかった!・・・・・・あれ?』
>(中略) 早くとめないと!どうか協力してください!』
「ちょっと待ちなさいペンギン」
それまで黙って聞いていたシャオロンは、先に行きかけたリリィの頭を問答無用で捕まえる。
「討伐隊隊長のシャオロン様に状況説明もしないでどこに行く気?
 そちらで何があったのか、手短に正確に説明しなさい!」

65 :リリィ ◆jntvk4zYjI :2012/05/01(火) 18:56:35.62 0
>64
「ピー!(ひー!話します話します!お願いだから食べないでー!!)」
恐怖のあまりパニックになったリリィは、立て板に水とばかりに説明しはじめる。
ただし・・・・・・ペンギン語で。

シャオロンが鳥の言葉に明るくなければ、誰か別の人から説明してもらう必要があるだろう。




66 :魔法少女トモエ・ユミ ◆jWBUJ7IJ6Y :2012/05/03(木) 08:20:34.02 0
>63>64>65
> 「そ、そうね…わりと可愛い……んじゃないかしら…。
>  気に入ったなら、病気が広がるのを食い止めたお礼にもらって帰ってもいいかも……」
とシャオロン。
「私と一緒に来る?」
トモエはぬいぐるみにそう語りかけた。
『もちろんだミャ〜ん!』
> 「ま、まま、まずはササミから生き血を絞り取ってきましょうか。 ね!」
> 反応に迷うまま、シャオロンは強引にそう締めくくって職員室を出た。
すぐにトモエもそれに続き、そして破壊された校舎内の様子をシャオロンと共に見た。
> 「なによこれ!? どうなってるのいったい!」
詳しい事情はわからないが、どうやらこれもササミの仕業らしいことが、
先刻から聞こえてくるテレパシーによって知ることができた。
ほどなく、そのテレパシーの発信源らしきペンギンが二人の前に現れた。

> 『トモエさん!無事でよかった!・・・・・・あれ?』
「あなた、たしか保健室で会いましたね?」
トモエは未だにそのペンギンが女子生徒のリリィだとは知らないのだ。
> 『もしかしてこの子、トモエさんのぬいぐるみが変身した姿ですか!すごい!かっこいい!』
『それは違うんだミャ〜ん!シャオロンちゃんはミー達の同級生なんだミャ〜ん!』
とミャンちゅう☆。
> 『ササミちゃんは講堂方面に移動してます!早く追いついて捕まえないと、寮に突っ込んだら大惨事です。
>  それに、いくら回復能力が高いからって、血を流しすぎたら死んでしまいます。
>  早くとめないと!どうか協力してください!』
> 「ちょっと待ちなさいペンギン」
> それまで黙って聞いていたシャオロンは、先に行きかけたリリィの頭を問答無用で捕まえる。
> 「討伐隊隊長のシャオロン様に状況説明もしないでどこに行く気?
>  そちらで何があったのか、手短に正確に説明しなさい!」
> 「ピー!」
シャオロンに捕まえられたペンギンはパニックを起こして、人間には理解できないペンギン語で事情を説明し始めた。

突如二人(一人と一匹?)のすぐそばで強烈な光が輝いた。
光が消えると、そこには白いセーラー服姿に変身したトモエ・ユミが現れる。
そう、彼女こそは学園の正義を守る使者、魔法少女トモエ・ユミなのだ!
「魔法少女トモエ・ユミ……!」
彼女が魔法少女に変身するタイムは、僅か0.05秒に過ぎない!
では変身プロセスをもう一度見てみよう!
「ロック先生がいない今、学園の正義は私が守る。変身…!」
トモエはババッ!とポーズを決めると、足元に浮かぶ魔方陣から生まれた光に包まれた。
光のベールに包まれたトモエはいつの間にか白いセーラー服姿に変わる。
そう、彼女こそは学園の正義を守る使者、魔法少女トモエ・ユミなのだ!
「魔法少女トモエ・ユミ……!」(※大事なことなので二回言ったわけではありません)

「ペンギンさん、事情はわかりました。あとは私にまかせてください。」
トモエはさっぱり事情がわからないが、リリィにそう言うとササミの手袋を取り出した。
トモエがあらかじめ東方の銀貨を中に詰めた手袋だ。
その手袋が未だにササミの方向を指さしていることを確認したトモエは、中の銀貨に魔法をかけた。
「プリメさん。あなたの魔法の力、使わせてもらうわね。…キロ・バレット!」
銀貨の詰められた手袋は弾丸の魔法によりササミめがけて放たれた。
射線上にある物を破壊しながら、銀貨は手袋が破れないかぎりササミを追いかけ続け、彼女を撃つだろう。
「あれだけでササミさんを止められるか、自信はないわ。すぐに後を追うわよ。」
テンションが上がってきたトモエは4次元ポケットからマジカル木刀(※特に魔法はかかってない)を取り出し、
少しふらつきながら銀貨の後を追った。

67 :ルナ・チップル ◆7CpdS9YYiY :2012/05/04(金) 19:21:58.85 0
>>57
>「それと炎道、お前には山ほど説教がある……乳に噛み付くとは何事だ。

「うん。説教してあげて」
化粧の剥げた顔を、くしゃりと崩して、寂しそうに微笑むルナ。

>>58-59
>「こ、こんな負け方、認めへんだがね!絶対にいいいい!!!」

「……ササミが感情を、トロしてる?」
障子のように破れてゆく校舎の壁を見上げながら、ルナは独語していた。
その顔は、涙で落ちたマスカラが、頬に黒い筋を残していた。
だからルナの気持ちはどんどん落ちてしまう。
ああダメだ…化粧をなおして、強気をとりもどさないと。
そう思ったルナは、化粧をハンカチで拭いて化粧セットを取り出してみた。
でもそれは全部水でどろどろになっていたし、ところどころ石化していた。

(ああ、だめだ……おわった………)

魔乳を自ら捨てたササミは、暴風の如き素早さを得て、校舎を破壊している。
なんということだろ。なりふりかまわないで…彼女は自分を守るために自分を傷つけている。
これが魔族なのだろうか。

>>61
>ちなみに魔力の低下のせいで生み出した氷の道は人一人分の幅しかなく
>他のメンバーの邪魔にはならないだろう

「死なないで、絶対死んじゃだめよフリード」
滑っていく小さなフリードの背中に不吉な言葉を投げかける。

>>62-63
>『ああ、ここにセラがいてくれたら・・・・・・』

「わたしがばばあって言ったから、ヘソまげちゃったのかな…」
決してそんなことはないって思いたい。ルナのこの言動は作られたキャラだから。
ほんとうは暴言を吐くたびに心が痛んでいる。

>『それからルナちゃん、ルナちゃん、体は大丈夫?』
>ちょうどルナの腰の位置に、リリィの箒がふよふよ浮いていた。
>乗れ、ということなのだろう。
>『ササミちゃんを追いかけよう!
 この箒は一人乗りだけど、私と一緒なら飛べるよ。
 ルナちゃん魔法たくさんつかったでしょ?少しでも体を休めてて』

「うん、ありがとう。でも、タコ食べるの早いね。タコの早食い大会があったら一等賞になれるね。
もうルナは身も心もボロボロだもん…。箒に乗っかって、ちょっと休ませてもらうね」

68 :ルナ・チップル ◆7CpdS9YYiY :2012/05/04(金) 19:24:13.66 0
>>64-66
>「討伐隊隊長のシャオロン様に状況説明もしないでどこに行く気?
 そちらで何があったのか、手短に正確に説明しなさい!」

(隊っていっても二人じゃん…)
化粧の剥がれたルナの存在感はノミほどもないのかも知れない。
シャオロンは箒に乗っているルナには目をくれず、リリィの頭を掴み問う。

>「ピー!(ひー!話します話します!お願いだから食べないでー!!)」
恐怖のあまりパニックになったリリィは、立て板に水とばかりに説明しはじめる。ただしペンギン語で。
シャオロンはルナに気がついていないみたいで、驚かせてしまってもいけないと、
思慮深く慈愛に満ち満ちたルナは、貝のように押し黙っていた。

>突如二人(一人と一匹?)のすぐそばで強烈な光が輝いた。
>光が消えると、そこには白いセーラー服姿に変身したトモエ・ユミが現れる。

>「ペンギンさん、事情はわかりました。あとは私にまかせてください。」
>「あれだけでササミさんを止められるか、自信はないわ。すぐに後を追うわよ。」
>テンションが上がってきたトモエは4次元ポケットからマジカル木刀(※特に魔法はかかってない)を取り出し、
>少しふらつきながら銀貨の後を追った。

ルナもリリィたちと同行して銀貨を追う。

69 :ルナ・チップル ◆7CpdS9YYiY :2012/05/04(金) 19:25:14.48 0
箒に乗っかりつつ、柔らかい髪とササミの羽飾りを揺らしながら、ルナはふとリリィの言葉を思い出していた。

>『ササミちゃんは講堂方面に移動してます!早く追いついて捕まえないと、寮に突っ込んだら大惨事です。
>それに、いくら回復能力が高いからって、血を流しすぎたら死んでしまいます。
>早くとめないと!どうか協力してください!』

そして、ひあっと思うとぞっとする。

「寮の壁なんかに突っ込んじゃったらササミも死んじゃうかも…!なかで寝てる人も死ぬかも…」

ササミの暴走は絶対に止めなくてはならないと誓うルナ。
しかし、あのササミのスピードに追いつく方法は?
ササミは己のスピードをコントロールしきれずに、
壁を破壊しつつ、どうにか方向転換をしているようだった。
壁に開いた穴は後を追うように発生した衝撃波と真空刃で砕け散り
ワンフロアーぶち抜きにする勢いで部屋を広げていく。

だったら、いちかばちか……。
ルナは自分の頭に突き刺されたササミの羽根を引っこ抜き、
しっかり手に握るとその羽根に逆転魔法をかける。
これで、魔法をかけられた羽根はササミの元へ戻るはず。

「ササミに近づく方法がない人はリリィの箒につかまって。みんなで箒に乗っていこう」
ササミの羽根は本人に戻ろうとして、ルナごと箒をひっぱってゆく。
ぐんぐんと近づいてくるササミの背中。終いには並列してあと少しで手が届くくらいに近づく。
でも目の前にはリリィの予想通りに寮の壁が近づいていた!

70 :ルナ・チップル ◆7CpdS9YYiY :2012/05/04(金) 19:28:01.96 0
危機が迫っている状態で、ルナは不思議な気持ちになっていた。
ササミはホルスタウロスの迷宮の試練の果てで手に入れた神乳の恩恵を返上してまで
あんな負け方はいやと暴走している。
ササミの魔乳と自分の厚化粧が重なって見えたルナは、なんともいたたまれない気持ちでいた。
あのササミがコンプレックスを抱えて生きていると思うとにらにら感がはんぱない。
ササミがぐっと自分のもとへと降りて来た感じ。
だから今は、ササミが嫌いだった気持ちはとても和らいでいる。
ルナは最低な子だった。

「なんて気持ち悪いのかな。わたしって…。リリィは私のことをどう思う?」
問うてはみたものの、待っているのは、ただ自分を気持ちよくしてくれる言葉だけ。
一瞬、自責の念に囚われそうになって眉根を寄せてしまったルナだったが、かぶりをふって

「えーい、うるさい私!私は気持ち悪くない。ササミを助けることは哀れみとかじゃない!たぶん…」
タクトを振りかざして目の前の寮の壁に逆転魔法をかける。
すると堅い壁は、柔らかい壁に逆転された。
ササミがこのまま壁に激突しても、柔らかくてゴムみたいに伸びる壁に減り込んで怪我をしないかもしれない。

71 :フリードリッヒ ◆cOOmSNbyw6 :2012/05/05(土) 08:24:26.12 0
>62-70
>「死なないで、絶対死んじゃだめよフリード」
『フラグが立った!フラグが立ったよフィー坊!!』(猫語)
「フラグはフラグでも死亡フラグの方じゃないですかやだぁ!」

「雪と氷の精霊よ我が命により神の敵対者(悪魔)の足を留め給え!フリージングスネア!!」
フリードは氷の腕を地面から生やしササミの動きを止めようとする
だがその腕は小さく赤ん坊の腕のようなサイズだ
やはり弱体化している状態ではこんなものなのだろうか?
「ちょっと小さいですね・・・・・小さければ数で攻めましょう!
 フリージングスネア!フリージングスネア!おまけのフリージングスネア!!」
『ちょ!?フィー坊魔力使いすぎじゃね!?』(猫語)
「足らなかったらあなたの魔力を寄越しなさいなグレン」
いくら猫の姿じゃないからってそれは酷くないかフリード?
大量の赤ん坊サイズの腕がササミを襲う
まるで透明な水子の霊に襲われてるみたいでビジュアル的に怖いぞ

「よし今だ!炎道さんと合体攻撃で!」
『それ炎と氷で±0になるんじゃ?』(猫語)
「いえきっと多分メドローア的な効果が得られるはずです!!」
『それはそれでササミさんの命がマッハでヤヴァイから却下の方向で』(猫語)

>「えーい、うるさい私!私は気持ち悪くない。ササミを助けることは哀れみとかじゃない!たぶん…」
「これでもダメならレイブンさんに何とかしてもらいましょう
 同じ鳥系なら猛禽類のほうが強いはずですから」
(ヒント:烏は雑食で猛禽類じゃありません)
『ペンギンだって肉食だよフィー坊?』(猫語)
「だって強いイメージ皆無じゃないですかペンギンも白鳥も」
何故ここで白鳥が出てくるのか?それはフリードのモチーフが白鳥の王子だからである
『フィー坊って完全に二番手主義だよね』(猫語)
「どうせ僕は永遠の二番手ですよ!」


72 :レイヴン? ◆70VgGM3HY6 :2012/05/07(月) 20:34:40.87 0
>58-59、>61-71
>「げぇーレイブンさん!?」
>『成仏したとばかり思っていたよ』(猫語)
「相変わらずのゆでクオリティで迎えてくれてありがとうよフリード。
 そして……ああ、いつもフリードが喋りかけていたのはお前だったのかグレン。
 俺はてっきり自分にしか見えていない妖精さんとお話しする可哀想な子だとばっかり。
 成仏、ね。した筈だったんだがな?
 何で袖に引っ込んだ役者がまた出てくる破目になったんだろうな、ああ?」
挨拶もそこそこに、まるでお前らのせいだと言わんばかりの事をのたまう♀鴉。
一応異性の裸体を前にしても普段と変わりないフリード、まさかつい最近まで
実の姉と普通に風呂に入ってたなど知れる筈も無く。まぁ♀鴉はまだ気付いてないのだが。

>「ピ(・・・・・・クーちゃん、で通じなかったら、気まずいじゃないですか。
> この間大怪我してから、クーちゃんにはちょっと・・・・避けられてる感じで」)
「ピ、ピ。(散々あいつの事をクーと呼んでおいて今更その心配はおかしいだろう。
 ……ふん、まぁそうだろうな。さて、大怪我なのは果たして体だけかねぇ?
 あの時、お前達の間に何があったのか……俺が知らないと思うか?)」
♀鴉のペンギンを見る目はクリスのそれとは違うが、同じ様にも見える。
相変わらずの遠回しで本題に入らない言い回しは、周囲に本人であると思わせるには十分だろう。

「ピュイ(まぁ今分かるのはざっと鳥に猫に……そんな事はどうでもいい)」
よく分からないネタの乗り方をするのも相変わらずであった。

>言葉を言い切った直後、ササミはピンクの煙に包まれた。
>『えっ!!レイヴンさんその体どうしたんですか?!
> はっ!もしかしてササミちゃんの魔乳って譲渡可能だったの?!
> ずるいっ!なんでよりによってレイヴンさんにあげちゃうのよー!!いらないでしょ普通!!』
説教を聞いてない風なササミだったが、やはりと言うかなんと言うか。
敗北を受け入れられず、何事か喚きだした。それに気付いた時には既に煙に包まれ
手に感じていた首根っこの感触も消え失せていたのだ。
「ゲホッゲホ……煙幕とは卑怯なり! 尋常に勝負いたs……あん?
 リリィお前何を言って……」
そこでようやく♀鴉は自らを顧みた。『考える振りをしている人』と言う
有名な彫像並みの体つきが、『トレーでリレーをしている婦人像』みたいになっていた。
その際の挙動と心境は、表現するならばこうである。

  ( ゚д゚)  「なん……だと……」
_(__つ/ ̄ ̄ ̄/_ 
  \/    /
     ̄ ̄ ̄
 
  ( ゚д゚ )  「ま、いいか」
_(__つ/ ̄ ̄ ̄/_ 
  \/    /
     ̄ ̄ ̄

あまり気にしていないらしい。
男女の身体的特徴の差異による弊害云々を知らないが故の能天気。これはひどい

73 :レイヴン? ◆70VgGM3HY6 :2012/05/07(月) 20:35:02.11 0
>「こ、こんな負け方、認めへんだがね!絶対にいいいい!!!」
そうして重たそうな脂肪の塊を文字通り捨てたササミは♀鴉の目でも捉えられない。
凄まじい暴風と衝撃波を間近で受けた♀鴉だったが、羽ばたいて姿勢を正した。
「気持ちは分からんでもないがな……しかし、速い。
 尖塔付近で吹っ飛ばされた時のそれとは比較にならん。
 これは押さえ込むのに、ジガチで骨の一、二本は覚悟せにゃならなそうだ」
若干気だるげに呟いて、炎道を掴んでいた手を放した。

>『私たちも後を追いましょう!
> ササミちゃんを追うつもりなら、レイヴンさんは、そのぼろ布で大事な場所を隠してください!』
ペンギンに無茶振りされるなど人生で一度でもあったらそれは凄い事だと思う、うん。
「いや、これじゃあチラリズムをいたずらに刺激するだけだろ……
 仕方ない、応急処置しときますかね」
右手を開いたかと思うと、一瞬で閉じた。瞬間的に圧縮された空気が弾け、
軽い衝撃波を生みだし♀鴉の羽根をいくらか散らす。その散った羽根が胸部と股間部に集まり……
最終的にレザーかラバーかと言いたくなる様な光沢を放つスポーツブラとブーメランショーツになった。
しかし諸君、よく考えてほしい。見た目こそ衣類だが、羽根である事はなんら変わっていない。
衣類として加工したわけではない、そして羽根は体毛の一種であり衣服ではないのだ。
何が言いたいかと言うと、結局スッパは改善されて無いと言うこと。ただそんだけ。

>「討伐隊隊長のシャオロン様に状況説明もしないでどこに行く気?
> そちらで何があったのか、手短に正確に説明しなさい!」
追いかけようとした所でペンギンが何かに捕まった。
名乗りを聞くに、さっき偉そうにしてた女だろう。まためんどくさいのが来たなぁと
内心思いつつ、食堂にあったペンとメモを手に取る。

……そして、シャオロンは自分が捕まえているペンギンの小さな額に
いつの間にか一枚のメモが、ご飯粒で貼り付けられているのを見るだろう。
そのメモの表にはデカデカと『いいか、俺は面倒が嫌いなんだ』とだけ書かれている。
……ここで逆上して破かずに裏を見れば、お望みの情報が手に入るだろう。
もっとも、内容は相当に分厚いオブラートに包まれているが。
(ササミの手ブラパンモロ、炎道のおっぱい噛み付き等々)
古今、面倒嫌いを公言する人物ほど細かい事に気がつきそれを解決するものである。
面倒嫌いは、やる面倒とやらない面倒のどちらが本当の面倒かを知っているからだ。

>『ササミちゃん!どんな形であれ負けは負けだよ!
> 納得できないからって、自分で決めた約束事を破るなんていけないことだよ!』
リリィはテレパシーでササミに説得を仕掛けている様だが、止まる気配は無い。
当たり前である、この程度で大人しくなるならこんな事する訳ないんだから。
「頭に血が上ってるんだ、呼びかけたって届かないさ。
 こう言うのは、直に送り込んでやらないとな。中継してやる、
 俺が何とか接触してな」
背中に立派な翼があるのに、何故か走って追いかけている♀鴉。
胸部の余分な脂肪があって走りにくそうに思えるが、本人は気にしていない様だ。

>「なんて気持ち悪いのかな。わたしって…。リリィは私のことをどう思う?」
その独白はリリィに向けたものであって自分には関係のない事である。
しかし、年長者の悪癖である説教にこの一言は燃料投下以外の何物でもない。
「そう思えるならお前は正常だ。人間って奴は、自分の事がこの世でもっとも好きで、
 そしてもっとも嫌いな物だからな。だがそれを感じる事が出来て、その事に
 向き合おうとする奴はいつか嫌いの分まで好きに変える事ができる。
 ……それすらも出来ない奴なんて、お前が知らないだけで五万といるし
 それすらもしたくても出来ない奴はもっと多い……はっきり言おう、お前は幸せ者だ。
 お前自身は否定するだろう、それは間違ってない。お前が自分を不幸と言うならそうなんだろう。
 だがな、それでもお前は人間として生まれ人間として生きてこられたんだろ?
 そんなのはお前にとっては当然でも……俺にとっては素晴らしい事だ。羨ましくすらある。
 ……乗り越えていけばいい。一人で出来ないなら二人、二人でダメなら三人。嫌か?」
お前そんなキャラじゃないだろとツッコまれかねないほどまくし立てる。
♀鴉なりに思う所があったのだろう。これでほぼ全裸でなければカッコも付いたのだろうが……

74 :レイヴン? ◆70VgGM3HY6 :2012/05/07(月) 20:36:03.30 0
>「これでもダメならレイブンさんに何とかしてもらいましょう
> 同じ鳥系なら猛禽類のほうが強いはずですから」
「同レベルだといいけどなぁ……つーか、もしかしたら俺の方が不利かもよ?」
丸投げされる事にすっかり慣れ切ってしまったのか、当たり前の様にツッコミしかしない。
そもそも魔界出身とは言えあちらの鳥としての種類が何なのかはっきりしていない。
まぁ弱肉強食当たり前の魔界出身者だ、人間からすれば化け物レベルだろう。
対する♀鴉は、言ってしまえばただの鴉である。神格化され、実際にとんでもない力を持っていても
結局『鴉』である事は否定の仕様がないのだ。この差は大きい。今のササミとついさっきまでのササミの差くらい。

>「雪と氷の精霊よ我が命により神の敵対者(悪魔)の足を留め給え!フリージングスネア!!」
>ササミがこのまま壁に激突しても、柔らかくてゴムみたいに伸びる壁に減り込んで怪我をしないかもしれない。
>『フィー坊って完全に二番手主義だよね』(猫語)
>「どうせ僕は永遠の二番手ですよ!」
「ようやく目が慣れてきた……あちらさんも暴れすぎてガス欠が近いんだろうが。
 そして追撃のマドハ○ンドならぬフリージングスネア、これは速度落ちるね。
 弱っててもいい仕事するフリードの、そう言う所が好きだよ俺は。だからそんなに腐るなぃ」
男が男に好きとか言っちゃうと腐っちゃったお姉さん方が黄色い悲鳴を上げるのは確定的に明らか。
しかしビジュアル的にはおね○ショタ、でもTS分入っててやっぱり腐ってるじゃないですかやだー!
「……ああ、なるほど。色んな物に作用して色々反転させる魔術なんだな。
 使い手次第だが、いい術だ、感動的だな、そして有意義だ」
どこぞのニーサン的な言い回しだが、ストレートにルナを褒める♀鴉。
ルナは確かに存在感が薄いのかも知れない、が極めて特殊な環境で生きてきた♀鴉は
実は一般人とルナの存在感に差異を一切感じていない。薄い、程度では通用しないのだ。
だからこそ、『クリス』もまたルナの存在をきちんと感知していたのだから。
……指の粗相? あれは常識に囚われてたクリスが悪い、と♀鴉は言うだろう。

「そして……捕まえた、でいいのかこれ?」
フリードの妨害により、ただでさえ消耗が激しく速度を落としていたササミは
更に速度を落としてしまう。最初の頃の姿は見る影もなく、改めて見ると酷い重傷だった。
そんな速度で柔らかくなった壁に突っ込んでもそんなに強烈に減り込んだりはしないが、
この壁も抜けると思っていたササミは事態を把握するのに少々の時間を要してしまう。
脳に、思考に回せるエネルギーもそんなに残っていないだろうから仕方ないのだが、
殊隙に関しては容赦ない♀鴉を前にその時間は致命的である。
思いっきり腰を右腕でホールドして逃げられなくし、左手でササミの頭を掴んで……
何故か谷間で顔を挟む形になってしまっている。何でそうなったのか、誰にも分からなかった。

75 :ササミ ◆/TZT/04/K6 :2012/05/08(火) 22:06:59.38 0
 縦  横  無  尽  !
校舎内というのにこの言葉が適切なほどササミは猛り、壁を、天井を突き抜け破壊しながら飛び回る。
学園内の防御機構の発動が追い付かぬほどの速度で。
あとに残るのは瓦礫の山、山、山。

猛スピードで飛びながら、背後から迫るルナにササミは気づいていた。
その為に持たせた羽なのだから。
あと僅かで届くというところで体を捻らせる。
最も注意すべき存在ルナの魔法を避けるとともに、体を捻らせることで衝撃波が波打ち、背後のルナを弾き飛ばすのだ。
狙い通り背後のルナの気配は消えたが、その時ルナは目的を達していたことは知る由もない。

そんなササミの速度を僅かに遅らせたのはリリィの叫び。
超高速で移動するササミにもテレパシーなら届く。
そしてそれがリリィの声だからこそ、僅かとはいえ速度を遅らせることができたのだ。
>『ササミちゃん!どんな形であれ負けは負けだよ!
> 納得できないからって、自分で決めた約束事を破るなんていけないことだよ!』
言われることはまさに正論。
だがそれを突き抜ける闘争心が止めることを許さない。
が、僅かの遅れとはいえ背後に迫る銀貨入りの手袋が追い付くには十分だった。

弾き飛ばされたルナの後ろから突き進んできた銀貨入り手袋は、速度をそのままにササミの後頭部に直撃する。
全天視界を持つササミであったが、後方を担当する項と背中の顔が目を回していてはそれを察知することはできない。
後頭部を強打し体勢を崩すが、速度が遅くなったとはいえまだまだ高速域。
後頭部強打により一瞬意識を失ったことで加速が出来なかった。

一瞬のあと、意識を取り戻したササミの視界には自分に迫る無数の手。
赤ん坊サイズとはいえ、これだけ数が迫ってくるとかなり怖いものがある。
しかも全天とはいかないとはいえ、それでも広い視野を持つササミにとってはかなりクルものがあるのだ。
「どっっ、だっ!ぎゃああああ!!」
半ばパニックになりもがくササミ。
小さな手はササミに掴みかかるごとに砕けていくが、フリードは気づくだろう。

自分の魔力消耗が思ったほどでもない事に。
それはササミを追ってきた全員も感じる事だ。
ウィルスに侵されてからの倦怠感や魔力減少が僅かばかりではあるが和らいできている事に。
グレイは少年の姿から徐々に猫の割合が増えていく。
リリィも同様にペンギンからやがて鳥人くらいに割合が変わっていくだろう。

ササミが各所にぶつかり赤い蝶をちりばめてきた。
それはササミの血。
その中に含まれる抗体が空気中に散り、各人の病状を和らげているのだった。

ともあれ、無数の赤子の手にパニックになったササミは氷の腕を砕きそのまま直進を加速する。
もはや前に何があるかも見えていない。
目の前にあるのは女子寮の壁。
再加速したササミが突き破るかと思いきや、その壁はルナによって柔軟性を与えられており、包むようにへこんだ後、強力な反発力によって吹き飛ばした。
壁は大きく抉られた跡を残し、ササミはくるくると宙を舞い、元に戻った。
地面に叩きつけられなかったのは一応魔王候補の意地というものだったろう。

76 :ササミ ◆/TZT/04/K6 :2012/05/08(火) 22:07:31.12 0
久しぶりに停止したササミの姿は停止しているにもかかわらず輪郭がぼやけて見える。
全身の各所から血を噴霧させ、まるで血の羽衣を纏っているかのようである。
ともあれ、超高速移動が止められたその隙を逃す女鴉ではなかった。
停止したところであっさりとササミを捕まえホールドする女鴉。
がっちりつかみ身動きとれぬようにし、顔は谷間で挟んでしまっている。
この体勢からもはやできる事はない、はずだった。

「こんのぉ…!ど、こ、むぅ、あ、でも…こんなあああぁ!!!!」
魔乳を誇ったササミではあったが、それは天然のものではなく試練を乗り越え恩恵を受けたもの。
貧乳のコンプレックスの裏返し。
合理性を重んじる性質を乗り越え、機動力や戦闘能力を犠牲にし、魔乳維持の為日常生活に支障をきたしても是とするほど深いコンプレックス。
魔乳を捨てた今のササミに胸の谷間で挟むなどコンプレックスを大爆発させるに十分すぎる拘束方法だったのだ。

ササミとくっついている女鴉はその身をもって知るだろう。
突如として波打つ自分の胸と直後に来る波動によって。
そして女鴉を見た者たちも理解するだろう。
ササミの秘密を。

何故耐久力に劣るササミが壁を突き破ってもその勢いを止めることがなかったのか。
何故加速状態でもないにもかかわらず、フリードのフリージングスネアが砕けたのか。
そして何故柔らかくなった女子寮の壁が大きく抉れていたのか。
先ほど停止した際、なぜ輪郭がぼやけ血が噴霧していたのかを。

それは、ササミの怪音波。
水晶体である枝分刀を怪音波で共振振動させることによって切れ味を持たせる。
それを自分の体でやっていたのだ。
体内で怪音波を反響させ、体そのものを超振動体とさせ、触れるものをすべて打ち砕く。
もちろんそんなことをすれば体が無事に済むはずもなく、噴霧する血がそれを表している。
またぶつかったものを砕ききれぬ分はそのまま体のダメージとなる。
もしも女子寮が柔らかくされていなければ、振動で抉れなかった分の厚みはササミの体を打ちのめす壁としてダメージを与えていただろう。
つまり、自身の持つ血の再生酵素を利用した一種の超振動自爆技と超高速移動で学園を破壊していたのだった。

密着していた女鴉はダイレクトに振動波を当てられ、ササミを拘束し続ける事は叶わないだろう。
即座に離せば僅かに痺れる程度で済むが、無理矢理抑え込もうとすれば全身痺れてしまうはずだ。

女鴉の拘束から抜けたササミはそのままもう一度女子寮の壁へ突進し、怪音波を止めて壁に大きくめり込んだ。
故に今度は壁は抉れることなくササミを強く弾き飛ばした。
飛ばされた先は講堂の壁。
反転し行動の壁に着地すると、壁を蹴った反動を利用して自分を追ってきたメンバーたちへ向かい突進した。

だがこの行動は、もはや壁の反動を利用しなければいけないほど消耗している事を知らせてしまっている事にササミは気づいていない。
「これで最後だぎゃああああ!全員まとめてふっとびゃーせ!!!!」
壁の反動+高速飛行+怪音波による全身超振動体と化したササミが衝撃波と真空刃を引き連れる破滅の魔弾となって迫るのだ!
恐るべき攻撃ではあるが、今なら捉えられない程ではない。
ましてやササミがまき散らした血の為回復しつつある者たちならば対抗もできるはずだ!

77 :シャオロン ◆sto7CTKDkA :2012/05/10(木) 16:55:10.37 O
>66-73
>「ピー!(ひー!話します話します!お願いだから食べないでー!!)」
「は? なに言ってるのか全然わからないわよ。
 さっきみたいにテレパシーで は な し な さ い よ!」
鳥語を理解できなかったシャオロンは、リリィペンギンを掴んだまた手を上下に振り出した。
振り回されるリリィはテレパシーどころではないかもしれないが、シャオロンのその動きはすぐに止まることになる。
(シャオロンにとっては)唐突に、トモエが閃光と共に変身したからだ。

>「魔法少女トモエ・ユミ……!」
「は……?」
変身プロセスを全く見ていなかったシャオロンは、毒気の抜けた表情でそう言った。
>「ペンギンさん、事情はわかりました。あとは私にまかせてください。」
「え? ちょっと。 うそでしょ? 今の説明で本当にわかったの?
 ……ちょっと! 何!? トモエには教えて私には教えないってわけ!?
 あんたどーゆーつもりなのよ!!」
トモエの言葉をそのままの意味で解釈したシャオロンは、最初に倍するスピードでリリィペンギンをぶんまわした。
そしてぶんまわしているうちに、今度はリリィの額に張られたメモに気づいて動きを止める。

「なんだ。 ちゃんとメモも書けるんじゃない。 どれどれ……」
リリィを離したシャオロンは、メモに書かれた文字を声に出して読んだ。
>『いいか、俺は面倒が嫌いなんだ』
シャオロンの中で、“何か”がぶちっと音を立てて切れた。
メモを書いたのはリリィだと思ったシャオロンは、蛙を見つけた飢えた蛇みたいな目でリリィを見た。
怒りのままに半分ほどメモを引きちぎり、そこでシャオロンは裏に書かれた伝言の続きに気づく。

今度は無言のままに内容を読み、シャオロンは満面の笑みを浮かべた。

「事情はわかったわペンギン。あとは私にまかせ……って、わかるわけないでしょうがこの内容で!!」
湧き上がる怒りのままにシャオロンは、今度こそメモをびりびりに引き裂き、投げ捨て、何度も足で踏みつける。
あのカオスな状況を見ていない者が完全に理解するのは難しかったのだ。
「要するに! 人が死ぬ気でササミの分身と戦ってる間に、あんたたちはのほほんと遊んでたってわけ!?
 ふっざけんじゃないわよ―――――っ!!!
 いい!? この先は、あんたたちが責任もってササミの血を搾り取ってきなさい!
 あたしは手を貸さないけど、失敗でもしようものなら一生許さないからね!」

ササミを追いかける者たちにそう言って、シャオロンは後からついていく事にした。
これなら自身消耗が激しくても戦わなくてすむからだ。

ササミを追う者たちを見送ってから、シャオロンは首を何度か傾げた。
思い返しているのは、リリィの箒に乗っていたルナの事だ。
「あいつ、いつの間に箒に乗ったのかしら……?」
案の定、ルナに気づいていなかったシャオロンであった。

78 :リリィ ◆jntvk4zYjI :2012/05/11(金) 08:08:47.28 0
>66-77
話は少しさかのぼる。
シャオランに状況説明をせかされ、ペンギン語でしゃべっていたら、突如まばゆい光があたりを照らした。
「ピ(うおっまぶしっ!!)」

>「魔法少女トモエ・ユミ……!」
「ピ(トモエさん・・・・・!)」
いつの間にかトモエは、今までとは違う衣装に身を包んでいた。
>「ペンギンさん、事情はわかりました。あとは私にまかせてください。」
「ピ!(ありがとう、マ ホウショウ ジョ トモエユミ!)」
文節が間違っています、0点。

>「え? ちょっと。 うそでしょ? 今の説明で本当にわかったの?
> ……ちょっと! 何!? トモエには教えて私には教えないってわけ!?
> あんたどーゆーつもりなのよ!!」
リリィはぶんぶんとシャオロンによって空中遊泳する羽目になった。
「ピ-!(マ ホウショウ ジョ トモエユミ!お願いだからこっちも助けてー!!)」
だがトモエはササミを追って先に行ってしまった。残念!

リリィの口から魂が抜けかけたところで、シャオロンは揺さぶる手を止めた。
いつの間にかリリィの額にくっついていたメモに気づいたからだ。
>「事情はわかったわペンギン。あとは私にまかせ……って、わかるわけないでしょうがこの内容で!!」
・・・・・・・だが、状況説明は火に油を注ぐだけの結果になった。
リリィ達はがんばったのだが、説明だけ聞けば遊んでいるようにとられても仕方がないのかもしれない。

>「いい!? この先は、あんたたちが責任もってササミの血を搾り取ってきなさい!
 あたしは手を貸さないけど、失敗でもしようものなら一生許さないからね!」
「ピー!!(そ、そんなぁ・・・・・・!!)」
言葉は通じなくても、ペンギンが大ショックを受けているのはわかるだろう。

そして現在。
『どーしよう。ササミちゃんに説得が無意味なのは、さっき試してみてわかったし・・・・・』
テレパシーだけでなく、レイヴンに中継もしてもらっても効果がなかった。
こうなると、言葉での説得は完全にお手上げである。
『ササミちゃんは、負けるなら完膚なきまでに負けたいんだよねきっと。
 精一杯やったその先の結果じゃないと、受け入れたくないんだ』
エンドウは確かにササミを捕まえたが、いささかタナボタ的だったのは否めない。
しかもセクハラされたのでは、拳を下ろすタイミングを見出すのも難しいだろう。

>「ササミに近づく方法がない人はリリィの箒につかまって。みんなで箒に乗っていこう」
「ピ!」
ルナが魔法をかけたらしく、箒のスピードがぐんと上がった。
「・・・・・・すごいッス、何の指示もないのに、箒が勝手にササミちゃんを追いかけてるッス」
あれ?とリリィは首をかしげた。
「ルナちゃん、言葉、通じてるッスか?・・・・・・あれっ?なんか言葉が変?!」
リリィは人の言葉をしゃべれるようになった。
心なしか、リリィペンギンの体も徐々に大きくなっているようだ。


79 :リリィ ◆jntvk4zYjI :2012/05/11(金) 08:09:27.00 0
>「なんて気持ち悪いのかな。わたしって…。リリィは私のことをどう思う?」
「・・・・・・・へっ?」
リリィは面食らった。
ルナが先ほどから何かを考えているのはわかったが、なぜ今、「気持ち悪い」という言葉が出てきたのか理解できなかったのだ。
リリィはペンギン顔の下で、ない知恵を絞って必死でルナの気持ちを考えていた。
(もしかして・・・・・・・・・・化粧が落ちちゃったことを気にしているのかな?)
確かに化粧は剥げ落ち、マスカラも溶け出してひどいことになっている。
そういえば、さっき化粧を直そうとしたが、コンパクトが使えなくて肩を落としていた姿を思い出した。

レイヴンがルナに対し、長い話を聞かせている。
だが、化粧が落ちたことを慰めるにしてはちょっと変な話だった。やはり『元・男性』だったせいだろうか?
>「えーい、うるさい私!私は気持ち悪くない。ササミを助けることは哀れみとかじゃない!たぶん…」
「そうッス!がんばるッス!ササミちゃんと病に苦しむみんな、一緒に助けるっス!」
リリィも気勢を上げた。
箒がさらにスピードを上げた。

フリードの「小さな氷の腕でササミの動きを止める」作戦は、残念ながら成功とは行かなかった。

リリィがぼそぼそとルナにささやきかける。
「ルナちゃん、私のカバンには言ってるポーチに、ハンカチとリップクリームがあるッス。
 『化粧は女の戦装束だ』って、お世話になってた宿屋のおかみさんが言ってたッス。
 コンパクトの代わりには程遠いけど、これを使って、もうちょっとがんばって欲しいッス」
ちょっと背が伸びて、皇帝ペンギンサイズまで育ったリリィが「お願い」と言うように頭を下げた。

「同情でも、何でも、いいじゃないッスか。
 今こうやってぼろぼろになっちゃって、でも、それでも逃げずにササミちゃんの後を追う原動力がそれなら。
 なんだかんだいって、ルナちゃんがいつでも一生懸命がんばってること、私、ちゃんと知ってるッス」
てへ、とリリィが恥ずかしそうに顔を伏せた。
「ルナちゃんのイメチェンしたファッション、本当はちょっと怖かったけど、今の姿はすごくかわいいと思うッス。
 ・・・・・・・・・・・・あ、これ、同情なんかじゃないッスよ!」

さて。
魔法少女トモエ・ユミのロケットパンチがササミの後頭部を強打するも、
「どっっ、だっ!ぎゃああああ!!」
フリードがササミを足止めに放った小さな手も、ササミの足を決定的に止めるまでには至らない。
最後にモノを言ったのは、羽毛ビキニを着用したレイヴンだった。(リリィ「パパパ、パンツはいてくださーい」)

>「こんのぉ…!ど、こ、むぅ、あ、でも…こんなあああぁ!!!!」
>「そして……捕まえた、でいいのかこれ?」
しかしそれを見たリリィの顔色が変わる。
「レイヴンさん駄目ッス!・・・・・・・フリード君!ルナちゃんを受け止めて欲しいッス!」
リリィは箒を急旋回させ、ルナをフリードの方向へ弾き飛ばした。
フリードなら絶対受け止めてくれる、だからルナのことは心配していない。
まだ自覚していないようだが、この場にいる全員が、低下していた魔力を回復し始めている。
怪力を魔力で補正していたフリードだったが、つぶされるようなことはないだろう。

そしてリリィ自身は、弾丸よろしくササミを拘束しているレイヴン?とササミに突っ込んでいく。
「レイヴンさん、ササミちゃんから離れるッスー!!」
捨て身の攻撃にしか見えない特攻は、ササミへのダメージ目的ではなく、レイヴンを彼女から引き離すためのものだった。
なぜか。
リリィはこのとき、ササミの操る枝分刀がレイヴンを襲うと思っていたのだった。
そしてレイヴンの性格では、自分がどれだけ傷つこうと、目的を達するためならばまったく厭わないことも。

もっとも、実際のササミから受けた反撃方法は、リリィが考えていたものとは少し違ったようだが。

「だ、だめなのら・・・・・ッス」
特攻後、床に落ちたリリィの頭からは、ぷくっとたんこぶが生えてきた。


80 :リリィ ◆jntvk4zYjI :2012/05/11(金) 08:10:18.78 0
「レイヴンさんにルナちゃん、フリード君も・・・・・・大丈夫だったッスか?」
リリィペンギンが、なみだ目になりながらも起き上がった。
その姿は元のサイズまで戻ったものの、ペンギンの着ぐるみを着た姿に戻っていた。
「あ、ラッキー!これなら箒が握れるッス!」

リリィはちらっと背後のシャオロンを盗み見た。
「い、一緒に戦って欲しいなー・・・・・・ッス」
(こ、こわい・・・・・・)
ササミ討伐隊長の彼女は、どうやら本当に手を出さず高みの見物を決め込むつもりのようだ。
・・・・・・・少なくとも今のところは。

そして前方、ササミに対峙しているトモエ(とミャンちゅう☆)に視線を移す。
「トモエさん、もしかして体調少し回復したッスか?」
今はトモエではなく魔法少女トモエなのだが、リリィは気がきかなかった。
それはさておき、心なしか、魔法少女トモエは、先ほどまでのふらつきが改善されたように感じる。
(そういえば、さっきロック先生の代わりに正義を守る!って・・・・・もしかしてトモエさん、ホワイト・クイーン様の仲間?)
ホワイト・クイーンとは、学園の平和を守るために日夜活躍する、ドリルのような巻き毛がチャームポイントの覆面少女である。
(それとも、ロック先生の関係者かな?今使った魔法も、先生と同じ物体操作系だよね?)
落ちついたら、後で聞いてみるのもいいかもしれない。

ルナの反転魔法で、女子寮の壁にぎりぎりめり込んでいたササミが高速で跳ね返ってきた。
>「これで最後だぎゃああああ!全員まとめてふっとびゃーせ!!!!」
壁の反動+高速飛行+怪音波による全身超振動体と化したササミが、衝撃波と真空刃を引き連れてきた。
リリィはササミ以外のメンバーにテレパシーで言った。
『上空に回避するよ!』
リリィはぎゅっと目をつぶると、箒を握り締めた。
魔力を集中して急上昇し、ササミの捨て身広範囲攻撃を回避するつもりなのだ。
回避だけでなく、うまくいけば、上空からの反撃ができるだろう。
「約束どおり最後まで見せてもらうッス!ササミちゃんの芸武!アリーナで!」


81 :フリードリッヒ ◆cOOmSNbyw6 :2012/05/12(土) 21:16:41.32 0
>72-80
『やった耳が一組だけになったから耳を防ぎきれる』(猫語)
と対超音波防御に耳を防ぐグレン
人間の耳が消え中途半端に猫の要素が戻ってきたため
守らなくてはいけない点が減ったのだ

>『上空に回避するよ!』
「僕は姉さんと違って飛行系の魔法使えないんですよね」
とフリードリッヒ
「仕方ありませんフリージングウォール!!」
分厚い氷の壁を目の前に作り出し防御態勢を取るフリード
ある程度は回復したようだがそれでも普段の3分の2ほどの厚さだ
ちなみにこの呪文相手の下や上に生み出せば凶悪なギロチンのような刃物と化すのだが
フリードリッヒはビジュアル的にグロいという理由でそのような使い方は一切しないだろう
「更に重ねフリージングウォール!!」
何枚もフリージングウォールを生み出し複合装甲のようにするフリードリッヒ
「防御は僕に任せてください!皆さんは反撃の準備を!!」

欲しいのは血なのだから魔法剣士系の斬撃が一番の攻撃方法だろう
フリードも同系列だが今は防御に徹している
『アトミックレーザークロー!!』(猫語)
猫の手に戻ったのをいい事に爪で斬りかかるグレン
せめて神の武器を召喚出来ればいいのだがここは室内であるため無理である
グレン・・・・・・・・無茶しやがって

82 :ルナ・チップル ◆7CpdS9YYiY :2012/05/13(日) 20:13:12.22 0
リリィたちが箒に乗って飛んでゆく前。

>「いい!? この先は、あんたたちが責任もってササミの血を搾り取ってきなさい!
 あたしは手を貸さないけど、失敗でもしようものなら一生許さないからね!」
>「ピー!!(そ、そんなぁ・・・・・・!!)」

シャオロンの剣幕に、リリィはショックをうけているようだった。
でもシャオロンの態度ももっともだ。そして箒は飛んでゆく。

>「これでもダメならレイブンさんに何とかしてもらいましょう
 同じ鳥系なら猛禽類のほうが強いはずですから」
とフリードがレイヴンに話をふれば…

>「同レベルだといいけどなぁ……つーか、もしかしたら俺の方が不利かもよ?」
と彼女は答えた。するとルナは、目をぱちくりさせて

「えっと…、時系列的にはここのシーンって色々と答えても無意味なのね?
なんか喋っても次のシーンにいっちゃってるから飛ばされちゃうし。まあ皆さん頑張って」
と、頬をぽりぽり。

>「どうせ僕は永遠の二番手ですよ!」

「そんなかなしいこと言わないの。つか言いたいこと言って、それが伝えたい人に伝えられたら
一番も二番も関係ないんじゃないの?しっかりしてよチ美少年」

>「そう思えるならお前は正常だ。人間って奴は、自分の事がこの世でもっとも好きで、
                    (略)
……乗り越えていけばいい。一人で出来ないなら二人、二人でダメなら三人。嫌か?」

「いやではないんだけど。一生かかっても出来ないかも…。
ほんと、自己嫌悪も魔法で反転できればいいのに」

83 :ルナ・チップル ◆7CpdS9YYiY :2012/05/13(日) 20:15:13.77 0
>フリードの「小さな氷の腕でササミの動きを止める」作戦は、残念ながら成功とは行かなかった。
>リリィがぼそぼそとルナにささやきかける。
>「ルナちゃん、私のカバンに入ってるポーチに、ハンカチとリップクリームがあるッス。
 『化粧は女の戦装束だ』って、お世話になってた宿屋のおかみさんが言ってたッス。
 コンパクトの代わりには程遠いけど、これを使って、もうちょっとがんばって欲しいッス」
>ちょっと背が伸びて、皇帝ペンギンサイズまで育ったリリィが「お願い」と言うように頭を下げた。

「……う、うん」
ぼろぼろの顔と同じ不器用な返事。
リリィのリップクリームには、ルナの化粧道具のように魔力はこもってない。
化粧をしてもメイクの影響で性格が変わることはないだろう。
でもルナは、汚れをハンカチで落として、リップクリームをキュッと唇に塗ってみる。

>「同情でも、何でも、いいじゃないッスか。
 今こうやってぼろぼろになっちゃって、でも、それでも逃げずにササミちゃんの後を追う原動力がそれなら。
 なんだかんだいって、ルナちゃんがいつでも一生懸命がんばってること、私、ちゃんと知ってるッス」
>てへ、とリリィが恥ずかしそうに顔を伏せた。
>「ルナちゃんのイメチェンしたファッション、本当はちょっと怖かったけど、今の姿はすごくかわいいと思うッス。
 ・・・・・・・・・・・・あ、これ、同情なんかじゃないッスよ!」

「え、っと…、ありがと…。ありがとうリリィ……」
ルナの心の中にはもっと大きな言葉や思いのようなものがあった気がした。
でもリリィの言葉が津波のように頭の奥に逆流し、ルナの言葉を詰まらせていた。

――気がつけば、ルナは宙に舞っていた。
ササミの衝撃波によって吹き飛ばされたのだ。

>「レイヴンさん駄目ッス!・・・・・・・フリード君!ルナちゃんを受け止めて欲しいッス!」

「だめ。そんなことしたらフリードが潰れちゃう!」

ゴン!骨がコンクリートに当たる鈍い音とともに、ルナは床に叩きつけられた。

「………」

――人間は様々な幻想を抱いて生きている。その幻想を抱く対象は綺麗な星々だったり国家だったりあるいは神様だったりする。
そして時に人は、その幻想を特定の誰かと同調させ合うこともある。
その時、人は自分でも他人でもない存在とめぐり合うことができるらしいけど
それはあくまで別々の幻想に過ぎず、同じ幻想を共有することはないのだという。
すべては自己幻想が見せる錯覚であり、幻想は永遠に孤独なのだ。

84 :ルナ・チップル ◆7CpdS9YYiY :2012/05/13(日) 20:17:35.67 0
>「これで最後だぎゃああああ!全員まとめてふっとびゃーせ!!!!」

「……」

>『上空に回避するよ!』

「……」

>『アトミックレーザークロー!!』(猫語)

「……」

床に張りいたルナが床を血で赤く染め上げる。
その頭上には赤い蝶が舞っている。蝶と共に舞うリリィの姿もある。
ササミは最後の攻撃を繰り出している。

「……わたし、勘違いしてたんだ」
小さな破片を持って、ルナはよれよれと立ち上がると、堅い床を柔らかくし、トランポリンの要領で跳躍。

「ササミ・テバサコーチン。私は貴女を目の上のタンコブとか、みんなに甚振られて可哀そうとか思っていたけど
それは私の勝手な想像だったのよ。貴女のことを真剣に考えてみてわかったわ。
貴女は誇り高き魔族。生き恥を晒すくらいなら死を選ぶ人。
水戸黄門って知ってる?その物語に例えたら貴女は印籠を見せてもひれ伏さない悪代官さま。
それならこんな私でも貴女の気持ちに答えてあげなきゃね」

ルナは握った石壁の破片に逆転魔法をかける。
すると石壁の破片は再生を始めて、空中のルナの足元に巨大な石壁を再構築させた。

「これが貴女の墓標よ!ササミ・テバサコーチン!!」
巨大な石壁がササミの頭上に迫る!ルナはその後ろからひょっこりと顔を覗かせている!

85 :魔法少女トモエ・ユミ ◇jWBUJ7IJ6Y :2012/05/15(火) 18:28:42.41 0
>76>80
「ハァ…ハァ…」
魔法少女トモエは息をきらせながらササミの後をふらふらと追い掛けていた。
箒に乗ったリリィ達と、基礎体力に大きな差があるシャオロンにはあっさり追い抜かれ、ササミを追う者達の最後尾は彼女である。
「ハァ…ハァ………?」
魔法少女トモエがササミを撃ったであろう銀貨入り手袋を拾った時、彼女は自分の体に生じた変化に気づいた。
「体が軽い…」
周りを見渡し、その変化の理由を把握できる程度には明晰さを取り戻したトモエはそうつぶやいた。
『ところで、病気が回復してきて普段のペースに戻るわけだから、こんな気持ちは初めてというわけじゃないよミャ〜
 だ か ら、死亡フラグは回避どぇ〜す!』
ミャンちゅう☆がそうフォローした。

「そこまでよ、ササミさん…!」
魔法少女トモエがササミ達に追い付いた時には、既にササミはレイブン(?)による拘束から逃れていた。
>「トモエさん、もしかして体調少し回復したッスか?」
ペンギンの着ぐるみを着た少女にそう聞かれたトモエは、自身の万全さをアピールするべく、
無駄に洗練された無駄なステップを決め、実にヒーローヒーローしたポーズと共に名乗りをあげた。
「魔法少女トモエ&ミャンちゅう☆の、この世に悪がある限り、生きたいと望む未来の光を守る方、
 魔法少女 トモエ・ユミ…!」
『いつもニコニコでみんミャ(みんな)の側に、混沌とどけるミャンちゅう☆だミャ〜ン!』
さすがに戦闘の邪魔になると判断され、ミャンちゅう☆は物体操作の魔法でトモエの側に浮かんだまま固定された。

『オオゥ!?オオゥ!?ササミちゃんの姿が消えたミャ!』
実際には魔法少女トモエが名乗りをあげている間にササミが既に反転していただけである。
>「これで最後だぎゃああああ!全員まとめてふっとびゃーせ!!!!」
「私の背後をとるとはさすがね…でも、惜しかったわね。バレット!」
トモエはササミに背を向けて名乗りをあげていたマヌケさをごまかすようにそう言うと、
持っていた木刀をササミに放ちながら振り向いた。
無論こんな木刀程度では全身超振動体と化したササミを止められないだろう。
魔法少女トモエは両掌を前につきだし、次の魔法を準備した。
「ササミさん、これが最後の勝負よ。今度は魔法少女として、正面から行かせてもらうわ…!」
『目標をセンターに入れてオ゙オ゙オ゙ン!目標をセンターに入れてオ゙オ゙オ゙ン!』
「ヘクト・プレッシャー!!」
トモエの両掌から百倍圧力波がササミに向けて放たれた。
ササミの投影面積に比例して彼女を押す力が発生し、吹き飛ばせないまでも押し返す程度のことはできるだろう。
『ところで、上から来るルナちゃんはいいとして、真正面から飛込んでいったグレンが巻き込まれちゃいそうミャけど…
 そんな魔法で大丈夫か?』

86 :ササミ ◆/TZT/04/K6 :2012/05/17(木) 23:01:36.87 0
公式が如何に複雑であっても解答は初めから決まっている。


たとえば炎道勇気。
彼は赫灼たる炎と轟武な剣技を操る剛の者。
だがその力故に慢心し、慢心は油断に繋がり挑発によって怒りが発する。
怒りに猛る力はその威を高めるが容易く流れが狂う。
流れの狂った力は自分を傷つけ自滅する。

それと同様の公式がササミにも当てはまるのだ。
何時からだろうか?
勇気に魔乳に噛り付かれた時?
フリードのふざけた罠に調子を狂わされた時?
トモエの説明に芸武という返答をした時?

何時から公式が始まったかを断ずることはできないが、フリードの予言は現実のものとなる。
からかいまくられペースを崩し、敗北という解を持つ公式をササミは解いたのだ。


87 :ササミ ◆/TZT/04/K6 :2012/05/17(木) 23:02:29.55 0
背後に衝撃波と真空刃を引き連れ突進するササミは猛スピードの中にあっても周囲の状況をスローモーションの様に見ていた。
驚異的な動体視力だけでなく、極限まで集中した精神が時間間隔を引き延ばしていたのだ。
攻撃範囲から外れ上昇するリリペンギン。
氷壁を張り巡らせるフリード。
そして爪を伸ばし迫るグレン。
木刀を投げつけてくるトモエ。

そのどれもがササミの行動を変えるに値するものではなかった。

木刀が当たるに合わせて体内超振動を一気に高めて粉砕。
その反動で一瞬体内振動が止まり、グレンに顔を引っかかれるが今さらこの程度で止まることもなし。
僅かに顔を上げることでグレンを吹き飛ばし、箒に乗るリリペンギンの方へと弾き飛ばした。
だがこの動きが直後に重大な結果を生み出すとは誰が気付こうか。
矢のように突き進んでいた体勢が、わずかながらに体勢を崩し、結果トモエの術の効果を上げる事になるのだから。

もはや遮るものなし、というところで唐突にササミの突進が止められたのだった。
不可視の壁にぶつかったかのようにゴンと音が響き、凄まじい圧力がササミにかかる。
ヘクト・プレッシャーの圧力障壁によって完全にササミの推進力が止められてしまったのだ。
が、それでもササミが吹き飛ばない訳は、背に引き連れてきた衝撃波にある。

つまり、全面からの百倍圧力波と背後からの衝撃波の板挟み状態になってしまっているのだ。
亀甲状態で押し合うが、それはあくまでササミの投影面積内での話。
ササミの体の輪郭から外れた衝撃波と真空刃は本体を追い越し吹き抜ける。
ペンギンリリィやグレイのように上に逃れていない者たちはその猛威をまともに受ける事になる。
ササミの二の手ともいえるべき効果だったのだが、それも多層式フリージングウォールに阻まれ、大きな脅威とはなりそうにはないようだ。

地上に衝撃波と真空刃が吹き抜ける中、ササミは宙に完全停止していた。
もはや体内振動も高速移動もない。
顔は宙を仰ぎ、リリペンギンとグレイ、そしてルナを見ている。

>「これが貴女の墓標よ!ササミ・テバサコーチン!!」
トドメの言葉に目が見開き、大きく口が開かれる。
そこから吐き出されるのは怪音波でも石化ガスでもなく、それはそれはよく通る声だった。

「水戸黄門はしらぁせんけど、返礼に魔界の口伝を一つ教えたるでよぉ!
『悪とは生存欲に基づく能動的意思の一面である。
生命の中のみ悪の因子は存在する。
魔とは悪に基づき悪を求める生命力の組織化である。
魔とは熱情の一つである。』や!」

巨大な石壁が頭上に迫る中、全ての顔の目が見開き、自分を追いつめた芸武参加者たちをそれぞれの目が見つめる。
「「「「「「「えー芸武やったわああ!!」」」」」」」
七つの口が満足気にそれぞれに向けて同じ言葉を発した後、ササミは姿を消した。

残ったのはルナの言葉通り、巨大の墓標の如き石壁。
その下からじわわわ〜と滲み出る血は確かにササミが『そこ』にいる事を表している。


石壁をどけてみると蛙のように潰れたササミが見つかるだろう。
スプラッターになっていないのは地面にめり込んでいるお蔭だ。
全ての顔が目を回しており、完全に気絶状態である。

伸びているササミを保健室に引きずっていけばミッションクリアーである。

88 :リリィ ◆jntvk4zYjI :2012/05/19(土) 09:25:09.77 0
ササミの攻撃を回避するため、リリィは急上昇で回避した。
だが
「わっ・・・・・・ちょっ?!」
バキッと大きな音がした。
余裕があった人間が見上げたとしたら、リリィの首から下が、天井からぶらんとぶら下がっているのに気づいただろう。
見ようによっては、頭だけ食われたような天井に間抜けな姿である。
どうも高速飛行と怪音波で全身超振動体となったササミが気流を乱したらしい。
回避し反撃のはず、が天井に頭から突っ込むという自爆技を披露したのが事の顛末のようだ。
幸いにも、こちらはササミの技の影響で、天井じたいもろくなっていたようだが・・・・・。
リリィの手足が二度、三度と揺れた後、重力に引かれて頭が抜けた。
大きな穴からは、フィジルの空と白い月がぽっかりのぞいていた。
もう少し穴があくのが早ければ、グレンは彼の神に猫缶を・・・・・じゃなくて、祈りを捧げる余裕があったかもしれない。
なんともしまらない幕切れだが、人生というのは、常にままならないものである。
とにもかくにも、天井から落っこちてきたリリィは「ササミの墓標」の上に落下した。

長かった芸武も、これでようやく終了である。

「うう・・・・・・ひどい目にあったわ」
むくりと起き上がったリリィの頭には、大きなたんこぶができていた。
たんこぶだけですんだのは、ササミの血によるものが大きいだろう。
むき出しになった腕や足からはまだ打撲や切創が見て取れるが、それもぐんぐん回復しているようだ。
リリィは今、ペンギンを模したワンピースに、羽型手袋と足型靴を着ている格好になっていた。
グレンも元のかわいい猫の姿に戻るのは時間の問題だろう。
「いたた・・・・みんな、ありがとう。私はここぞという時に、ぜんぜん役に立てなかったよ・・・・・・。
 ところで、ササミちゃんは?姿が見えない人もちらほらいるようだし、もしかしてもう誰かが保健室に連れていったの?
 そうだね、ササミちゃん開催のゲームはおわったんだもんね。
 一刻も早くササミちゃんの血を分けてもらって、学園の皆を元気にしないといけないもんね。
 さっすが皆、仕事が早いなー」
リリィはニコニコしながら、うんうんと一人頷いていた。

「え?違うの?!」
リリィは足元に視線を落とし、足元の岩の下からじわじわと滲み出る血に気づき仰天した。
「ぎゃー!!あのササミちゃんが!!ぺちっとされた蚊みたいになってるー!!」

リリィは岩壁から飛び降りると、巨大なそれに手をかけうんうん持ち上げようとしている。
「は、早く岩を持ち上げるの手伝って!芸武に負けたって納得したんだから、岩を退けたって絶対逃げないよ!
 いくら驚異的な回復能力があっても、このまま潰されてたんじゃササミちゃんが死んじゃうよ!
 手を貸す元気がない人は、ここのササミちゃんの血溜まりを使って回復していいから!お願い急いでー!!」

まさかもろくなっていた地面にめり込んでいるなどと、神ならぬリリィが知る由もなく。
彼女はひたすら焦りまくっていた。
本当はいろいろ話したいこともあるが、それは、ササミを保健室につれて行った後でも間に合うだろう。


89 :フリードリッヒ ◆cOOmSNbyw6 :2012/05/21(月) 10:57:52.58 0
>82-88
>「は、早く岩を持ち上げるの手伝って!」

「魔族なんですからこの程度じゃ死にはしないと思うんですが・・・・・・・
 ふう・・・・やれやれ仕方がありませんね
 このフリードリッヒ・ノクターンが力を貸しましょう」
と岩を持ち上げようと手を貸すフリードリッヒ

『がんばれ〜』(猫語)
とほぼ完全に猫に戻ったグレンは近くで応援する
応援している暇があるなら手伝えと思うだろうが
猫の前足では岩を持ち上げるなんていう芸当は難しいだろう
「フリージングパワー全開!!」
謎のエネルギー名を叫び力を入れるフリードリッヒ
果たして持ち上げるのか?いや持ち上がらないわけが無い
『フィー坊は見た目は小さいのに何でこんなに力があるの?』(猫語)
「これも魔動力の引用に過ぎません」
物理的に考えてこんな小さくて細っこい子供に岩を持ち上げる怪力が在るわけが無いだろう
だが魔法の力はそれを可能にするのだ
つまり常時バイキル○状態ということである

「さてあとは保健室に連れて行くだけですが・・・・・・・
 果たしてガチレズでロリコンの保険医に引き渡して無事に帰ってこられるのでしょうか?」
『大丈夫保険医は見た目年齢12歳より上には安全だよ』(猫語)
はたしてササミの運命はどうなるのだろうか?
ちなみに保険医は小さいころ妹を亡くしたとか言うトラウマがあるわけでなく
ナチュラルに元から変態である
匂いだけで女装少年と女の子を嗅ぎ分ける程度には変態である
ただ能力があったから保険医になった人物である

もしかしたら人格を度外視して能力で人を集めた弊害・・・・なのかも知れない

「あっという間に保健室の前ですね」
『学園内は広いようで狭いからね』(猫語)



90 : ◆jWBUJ7IJ6Y :2012/05/21(月) 21:23:14.96 0
>87>88>89
> 『悪とは生存欲に基づく能動的意思の一面である。
> 生命の中のみ悪の因子は存在する。
> 魔とは悪に基づき悪を求める生命力の組織化である。
> 魔とは熱情の一つである。』
ササミが最後に言ったこの言葉をトモエは反芻していた。
正直、どういう意味かトモエにはわかりかねた。
生きたいという欲求が悪を生むのだとしたら、生命を守ろうとする魔法少女は永遠に悪と戦い続けるのだろうか?
「私はこれからも魔法少女として戦い続けるわ。私が死ぬか、より適した後継者が現れるまで…
 安らかに眠りなさい。ササミ・テバサコーチン…」
魔法少女トモエはササミの墓標に向かって静かに手を合わせた。(※ササミは死んでいません)

『おぉっとぉ!以外なところでフラグ回収ぅ!マミったー!!』
> 「うう・・・・・・ひどい目にあったわ」
ミャンちゅう☆が騒いでいると、天井に頭をかじられていたリリィが落ちてきた。
> 「いたた・・・・みんな、ありがとう。私はここぞという時に、ぜんぜん役に立てなかったよ・・・・・・。
>  ところで、ササミちゃんは?姿が見えない人もちらほらいるようだし、もしかしてもう誰かが保健室に連れていったの?
>  そうだね、ササミちゃん開催のゲームはおわったんだもんね。
>  一刻も早くササミちゃんの血を分けてもらって、学園の皆を元気にしないといけないもんね。
>  さっすが皆、仕事が早いなー」
「いいえ、ササミさんは保健室にはいないわ。まだ、ここにいるのよ。そう、みんなの心の中に・・・」
ニコニコしながらうんうんと一人頷いているリリィに、魔法少女トモエは少し的外れな訂正をいれた。
> 「え?違うの?!」
『ぶっちゃけ、今岩の下敷きになってるんだミャ〜ん!』
とミャンちゅう☆。
> リリィは足元に視線を落とし、足元の岩の下からじわじわと滲み出る血に気づき仰天した。
> 「ぎゃー!!あのササミちゃんが!!ぺちっとされた蚊みたいになってるー!!」
> リリィは岩壁から飛び降りると、巨大なそれに手をかけうんうん持ち上げようとしている。
リリィが一生懸命に叫び、その呼びかけにフリードが答えている。
しかし、その声がトモエにはすごく遠くのように聞こえた。

変化が起こったのは、トモエが岩の下からじわじわとにじみ出るササミの血を見た時からだった。
「血が…こんなにたくさん……」
トモエの体が暗い闇に包まれ、ほどなく白いセーラー服姿から同色の着物姿に変わったトモエが現れた。
額にたくさん汗をかき、息は荒く、頬は紅潮し、瞳孔が開いていた。
「ハァ……ハア………」
どう見ても血をみて興奮しているようにしか見えないトモエは、
地面に落ちたミャンちゅう☆にも、他のメンバーからの問いかけにもまともに応えず、
「ごめんなさい、ちょっと疲れました…失礼します…!」
やっとそれだけ言うと、急いでその場から去っていった。
まるでササミの血から自分の意識を遠ざけようとするかのごとく…

91 :ルナ・チップル ◆7CpdS9YYiY :2012/05/21(月) 23:14:57.66 0
>「「「「「「「えー芸武やったわああ!!」」」」」」」
耳朶を打つササミの絶叫。それを聞いたルナ・チップルは、墓石の上でにっこりと笑顔。

「へへ〜、えーことしちゃった」
薄化粧のルナは、頭を撫でられた猫のように目を細めていた。
でも、ササミの最期の言葉が心のどこかにひっかっかってもいた。
――悪とは生存欲に基づく……なんちゃらかんちゃら。。

気がつけばトモエが墓石に合掌をしている。ルナは彼女を見つめて…

「生きたいという欲求が悪を生むのだとしたら、生命を守ろうとする貴女は永遠に悪と戦い続けなきゃいけないのかも…」
悲しそうに呟いた。そしてササミの言葉に底知れぬ闇を感じ、それ以上考えることはしなかった。

「はぁ…」
小さく肩を落とし墓石の下から流れる血を綺麗と思いながら目を伏せる。
今、ここにいるのは理想の自分じゃないのかもとか考えてみたけど、答えは皆の病気が治るってことで万々歳。

そこへ落ちて来たのはリリィ。

>「いたた・・・・みんな、ありがとう。私はここぞという時に、ぜんぜん役に立てなかったよ・・・・・・。
>「え?違うの?!」
>「は、早く岩を持ち上げるの手伝って!

リリィはウンウンと墓石を持ち上げようと必死だった。
その様相を見ても、ルナは暢気にぽりぽりと頬を掻いていただけだったけど
あることに気がついて顔を蒼白に変える。ササミは、負けるくらいなら死を選ぶなんて一言も言ってない。
ぜんぶルナが勝手に妄想したこと。ただの自己幻想に過ぎなかったのだ。

「やば…」
ルナはカタカタと体を震わせた。喉が渇いて頭が真っ白になる。どうにかしないと!
でもこうなってしまってはあとの祭りで、今はササミの回復力と仲間たちの迅速な救命蘇生術に頼るしかない。
だから祈るような気持ちで目を閉じていた。すると

>「ごめんなさい、ちょっと疲れました…失礼します…!」

「え?」
小声が聞こえたので目を開けて見るとトモエがいなくなっている。
ほんのりとした線香臭さと不気味さを残して魔法少女は消えていた。
そんなトモエの態度に、ルナは塩を撒きたい気分になったけど塩がなかったので我慢する。
こんな石くらいスパッと斬っていけばいいのに!とも思ったけど次の瞬間には、そんなことを思う必要もなくなっていた。

>「フリージングパワー全開!!」
>「あっという間に保健室の前ですね」
>『学園内は広いようで狭いからね』(猫語)

「やったーフリードさま〜、えらーい♪すてきーかっこいー♪」

――フリードが石を持ち上げてササミを救出。 あっという間に保健室の前へ。
そしてルナは、ベッドにササミを寝かせてもらうと顔についた血と埃を蒸しタオルで丁寧に拭き
隣のベッドで横になっている保険医の半開きの口の上で絞って血を垂れ流す。

「うーん。なんか雑だけど大丈夫だよね?」
抗体のことも保険医のこともよくわからないルナだった。

92 :シャオロン ◆sto7CTKDkA :2012/05/23(水) 03:01:37.57 O
>78-91
>「ハァ…ハァ…」
「…無理して変身しなくて良かったんじゃないの……?」
ふらふらのトモエを追い抜きながら、シャオロンは素直な本音を漏らした。
華麗に?変身したくらいだから、トモエは回復しているのだろうと考えていたのだ。
が、やっぱり世の中はそんなに甘くはなかったらしい。

「あんな微妙な連中ばっかりでササミを抑えられるのかしらね……ん?」
ササミを(一応)追いかけているシャオロンは、先刻より体力が戻りつつある事に気づく。
顔色を見るに、他の者たちも回復しつつあるようだ。
それはペンギンと化していた、リリィも同じ事である。
今更ながら、人に戻りつつあるリリィを見てようやくペンギンの正体に気づくシャオロンだった。
知っていても、行動は何も変わりはなかっただろうが。

>「い、一緒に戦って欲しいなー・・・・・・ッス」
「否!断じて否!!」
シャオロンがリリィの協力要請を即答で拒否するには理由がある。
他の討伐隊メンバーに手柄を立てる機会を与えたかったのだ。
……というのは建て前で、本当は労少なく獲物は最上を狙っているのだ。

さすがに危なくなったら加勢するつもりではいたが、そんな心配はなさそうだった。
ササミの最後の攻撃は通じる事無く、逆に【芸武】参加者の能力がササミの動きを食い止める。
ササミの作り出した衝撃と真空刃を、シャオロンはトラコウを盾のように変化させて防いだ。

>「「「「「「「えー芸武やったわああ!!」」」」」」」
満足の声を上げながら、ササミは巨石の下敷きになって倒れた。
試合終了を確認してから、シャオロンもササミを押しつぶした石に近づいていく。
丁度、石に向かって合掌するトモエにルナが話しかけているところだった。

>「生きたいという欲求が悪を生むのだとしたら、生命を守ろうとする貴女は永遠に悪と戦い続けなきゃいけないのかも…」
「あんな与太話を真に受けてんじゃないわよ。
 いーい? 悪ってのは支配者への反逆または敗者の事。
 どんなに良い事してもどんなにがんばってもどんなにギリギリの戦いでも、負けたら全部御破算ってものよ。
 要するに、勝ったあたしたちが正義で負けたササミが悪!
 悪の集まる魔界は負け犬の巣窟って事よ! わかった?」
勝てば官軍負ければ賊軍的思考であるが、価値観の違いとはこんなものだ。

93 :シャオロン ◆sto7CTKDkA :2012/05/23(水) 03:02:48.46 O
>「ぎゃー!!あのササミちゃんが!!ぺちっとされた蚊みたいになってるー!!」
> 手を貸す元気がない人は、ここのササミちゃんの血溜まりを使って回復していいから!お願い急いでー!!」
「そんな慌てなくても死んでたら手遅れだし、生きてたら多少遅れても問題ないわよ」
わたわたと慌てるリリィに呆れながら、シャオロンは布を手にして血だまりに浸す。
いくら何でもこんなものを飲む気にはなれないし、浴びただけでも多少の回復効果はあったのだ。
なら、当面は血濡れの布を持っているだけで十分だろう。
急きも慌てもしなかったシャオロンは、トモエに生じた変化にもすぐに気がつく。
もちろん服装以外の変化にも。だ。
>「ごめんなさい、ちょっと疲れました…失礼します…!」
「あ! ちょっと!」
ミャンちゅう☆と名付けた奇妙なぬいぐるみも落としたまま、シャオロンの制止も聞かずにトモエは走り去ってしまった。

>「フリージングパワー全開!!」
フリージング関係無いじゃない。と謎のパワーで石を持ち上げるフリードに内心ツッコミをいれつつ。
シャオロンはトモエの落としたミャンちゅう☆を拾い上げ、もう片方の手に持つ布をもう一度血に浸す。
「ここは片付いたみたいだから、私はトモエにこいつを届けてくるわ!
 あんたたちは責任持って保健室に行ってササミの血を絞って抗体作ってみんなを治して来なさい!」
面倒事をリリィたちに丸投げし、シャオロンはトモエを追いかける道を選んだ。
ミャンちゅう☆を届けるという目的もあったのだが、もう一つ確かめたいことがあったからだ。

「ちょっとトモエ! いきなり走り出す事無いじゃないの!
 大事な友達が置いてきぼりじゃない!」
トモエに追いついたシャオロンは、ミャンちゅう☆をトモエに少々乱暴に押し付けた。
何となくこのぬいぐるみを持っていると、不幸な事故が起きそうな気がしたのだ。
……例えば、卵かけご飯を作る程度の事を失敗するとか。

「それから……」
最初の用事を済ませてから、シャオロンは世にも人の悪い笑顔を見せる。
「あんた、さっきササミの血で回復してなかったわよね……?
 だめじゃない。 ちゃんと回復しなきゃあ」
言いながら取り出したのは、先ほど持っていたササミの血の滴る布切れだった。
「せっかくわざわざ持ってきてあげたんだから、早く回復しなさいよねぇ? ほらほら。 ほらほら〜」
シャオロンは赤い布を、トモエの鼻先にずずいっと近づける。
親切らしい事は言っているが、血を見たトモエの反応を確かめるためにわざとやっているのだ。
反応が無ければ、先刻の行動は血ではなく血の量が原因なのだとわかる2段構えのまさに外道な行動である。

94 :リリィ ◆jntvk4zYjI :2012/05/25(金) 20:27:06.11 0
>81-92
>「そんな慌てなくても死んでたら手遅れだし、生きてたら多少遅れても問題ないわよ」
石壁の下敷きになったと聞き、慌てふためくリリィにシャオロンは一喝した。
それはそうだ、と思い、はっとする。
ササミの怪我をことさらに騒ぎ立てては、死力を尽くし戦った皆への配慮がかけるのではないか、と。
(さすがは隊長さん・・・・・私とは大違いだわ)

>  ふう・・・・やれやれ仕方がありませんね
> このフリードリッヒ・ノクターンが力を貸しましょう」
「ありがとフリード君」
フリードが力を化してくれれば、百人力である。

>「血が…こんなにたくさん……」
いっぽう、魔法少女らしく、いつの間にか着替えを終えたトモエは、明らかに具合が悪そうだった。
「どうしたの魔法少女トモエさん、顔色が悪いけど・・・・・・もしかして、血が苦手とか?」
>「ごめんなさい、ちょっと疲れました…失礼します…!」
「えっ?!ちょ・・・・・トモエさん・・・・・・ああ、行っちゃった。
 今から保健室に行くんだから、一緒に来れば良かったのに・・・・・・」
疲れて具合が悪いのだと考えたリリィは、心配そうにトモエの背中を見送った。
「あっ、ミャンちゅう☆ちゃん忘れてる!」

>「ここは片付いたみたいだから、私はトモエにこいつを届けてくるわ!
> あんたたちは責任持って保健室に行ってササミの血を絞って抗体作ってみんなを治して来なさい!」
「それはもちろんだけど、学園への報告はどうすれば・・・・・あああ、隊長さんも行っちゃったぁ」
隊長が自称だと知らないリリィは頭を抱えた。
このままでは、一連のササミ騒動での説明が大変そうだ。

>「フリージングパワー全開!!」
掛け声とともに、大きな墓石・・・じゃなかった、岩壁が持ち上げられる。
>「やったーフリードさま〜、えらーい♪すてきーかっこいー♪」
「あれ?ルナちゃん何で棒読み?」

>『フィー坊は見た目は小さいのに何でこんなに力があるの?』(猫語)
>「これも魔動力の引用に過ぎません」
「ジルベリア人が皆おっそろしく力持ちな理由は、それだったのね」
実際には違うが、リリィはすっかりフリードの説明を曲解してしまったようだ。
「というわけでルナちゃん、フリード君はササミちゃんの血で回復したから腕力も戻ってきたんだよ。
 だから、戦ってる時に手を抜いてたわけじゃないんだよ」
岩壁の下から救出されたササミの状態を確認しながら、リリィはそう語った。
「どうやら、痛んでいた床がクッションの役割を果たしてくれたみたいだね。
 見た目派手に出血したみたいに見えるけど・・・・・・」
リリィはほっと安堵の息をつき、ルナを振り返った。
「ササミちゃんって見た目以上に頑丈かも。
 うん、大丈夫だよ。良かったね、ルナちゃん」

>「さてあとは保健室に連れて行くだけですが・・・・・・・
> 果たしてガチレズでロリコンの保険医に引き渡して無事に帰ってこられるのでしょうか?」
>『大丈夫保険医は見た目年齢12歳より上には安全だよ』(猫語)
「今日はフリード君が一緒にいるし、大丈夫じゃないの?」
リリィは素で失礼なことを言った。


95 :リリィ ◆jntvk4zYjI :2012/05/25(金) 20:27:49.15 0
>「あっという間に保健室の前ですね」
>『学園内は広いようで狭いからね』(猫語)
>そしてルナは、ベッドにササミを寝かせてもらうと顔についた血と埃を蒸しタオルで丁寧に拭き
>隣のベッドで横になっている保険医の半開きの口の上で絞って血を垂れ流す。

>「うーん。なんか雑だけど大丈夫だよね?」
「ルナちゃんったら・・・・・・うわぁ?!」
カッと目を見開き、保険医が飛びおきた。驚きのあまり、リリィがぺしゃっと床にしりもちをついた。
>「OH!フリード!マイスイートハニー!!
> 君のほうから私に愛に来てくれるなんて、とうとうロリ少女になる決心がついたようね!
> 大丈夫心配しなくても優しく性転換するから!
> 安心して、全てを私の手にに委ねてくれればノープロブレム!
> さあさあ、いざ行かん目くるめく愛の世界に!!」
起き抜けのせいか、それともササミの血のなせる業か。
いきなりテンションMAXである。

「あ、あのぅ、ササミちゃんを連れてきたのですが・・・・・・血清は・・・・・・・」
残念ながら、まったく聞いていないようだ。

「・・・・・・まあ、大丈夫だよね。
 一応保険医さん、名医だし、ササミちゃんの血しぶきは風に乗って学園中に飛んだみたいだし。
 ルナちゃんやフリード君の体調も戻ってきてるみたいだし」
リリィはぽりぽりと頬を指先でかいた。
「あはは、グレンもすっかり猫に戻ってるね。かーわいい。
 ・・・・・・・ん?そういえば、なんか私、体がスースーするような・・・・・・」

リリィは視線を落とし、自分がペンギンから人間に戻ったことに気づいた。
それはつまり・・・・・・・・・・・・ペンギンの羽毛がすっかりなくなったわけで・・・・・・・・。
「キャーーーーー!キャーーーーー!!うそーーーー!!」
完全にお約束である。

   〜このまましばらくお待ちください〜

「・・・・・・ご、ごめんね、すっかり取り乱しちゃって。で、これからどうしよう?」
ようやく落ち着きを取り戻したリリィは、その場に残っている人間に問いかけた。
「女子寮に戻ろうかとも思ったんだけど、隊長さんもまだ戻ってこないし、私はササミちゃんに付き添うよ。
 多分、学園関係者の人が聞き取りに来るだろうし」
もしかしたら、関係者以外にも、芸武を始めたササミに悪感情を持つ人間も。
口には出さなかったが、リリィはそう考えていた。
だが留学生のササミは、人間界へ来て日が浅く、常識が少々ずれている。
下手をすれば、相手の怒りに油を注ぐような事態になりかねない。
そのあたりも含めて、とりなす人間が必要だろう。
(もっとも、ササミは多分、そんな事は気にもとめないだろうが)

「保健室のベッドはたくさんあいてるけど、皆はどうする?」


96 :ルナ・チップル ◆7CpdS9YYiY :2012/05/26(土) 11:26:15.45 0
>「あんな与太話を真に受けてんじゃないわよ。

「……」
シャオロンから、人それぞれの価値観で変化する悪の定義を聞いたルナは、
自分にとっての悪とは何かと考えてみた。
キリストさまみたいな心を持っている人でも、ルナの顔をみるたびに
棍棒を持って追いかけて来たらその人はルナにとっては悪。
ルナ自身は、わたしって悪い子だからキリストさまが怒ってるんだ。
と自分のことを悪と思ったりする。じゃあ悪も自己幻想の一種なのかも知れない。
そんなことを思っているとトモエを追いかけるようにシャオロンもどこかへ行ってしまった。

(あのふたり…なかよしなんだ…)
ルナがちょっとだけ羨ましくも思っていると

>「あれ?ルナちゃん何で棒読み?」

「んえ?べ、べつに…」
突然のリリィの問いにドキッとする。棒読みなんてどこにも書いてないのに、そんなことを指摘するリリィがちょっと怖い。
いつもとぼけているような感じなのに、メガネの奥の瞳がキラリと光って心根を見透かされた感じ。
(そっか、今は薄化粧だから表情が読まれやすいのかも)

>「というわけでルナちゃん、フリード君はササミちゃんの血で回復したから腕力も戻ってきたんだよ。
 だから、戦ってる時に手を抜いてたわけじゃないんだよ」

「ふーん。そうなんだー」
個人的には氷炎コンビの超絶戦闘とかも見たかったけど、
総代はササミのおっぱいに頭がやられちゃってたしそれも今さらって話。

>「ササミちゃんって見た目以上に頑丈かも。
 うん、大丈夫だよ。良かったね、ルナちゃん」

「うん、圧死しなくてよかった…。殺人罪で捕まっちゃったら洒落にならないもん」

97 :ルナ・チップル ◆7CpdS9YYiY :2012/05/26(土) 11:28:42.50 0
飛び起きた保険医がフリードに変態的な言葉を吐けば
いつのまにかグレンが元の猫の姿に戻っている。
そして、リリィは真っ裸になって大騒ぎ。

ルナはリリィの服を借りていたので、脱いで服を返すと自分は体操着に着替えてくる。
ほとんどノーメイクで体操着のこの姿は、リリィがよく知るルナの姿だった。

>ようやく落ち着きを取り戻したリリィは、その場に残っている人間に問いかけた。
>「女子寮に戻ろうかとも思ったんだけど、隊長さんもまだ戻ってこないし、私はササミちゃんに付き添うよ。
 多分、学園関係者の人が聞き取りに来るだろうし」

「はい、わたしも付き添う」
ベッドに体育座りのルナは小さく片手を挙げた。
ササミを放っては置けないというか、喉に何かが引っかかっている感じというか
自分でもよくわからない感情が心のどこかにあった。
気に入らない存在のはずのササミが逆に自分に近づいてしまっている。
嫌悪感が反転してしまっている感じというか、出会ったころと比べたら
ルナの心の中では、ササミがわけのわからないものに変化してしまっている。

「学園の関係者が聞き取りに来たら、ササミは悪くないって言ったらいいかも。
なんかよくわかんないけど、問題を解決した私たちがそう言うんだからプラマイ0だと思うし、
ぜんぶチャラになるかも」
こんなルナでも居ればとりなす人間の一人になれるかも知れない。

>「保健室のベッドはたくさんあいてるけど、皆はどうする?」

「え??」
リリィの質問の意味がわからなかった。寝て待てということなのだろうか。
真意はよくわからなかったけど、ルナは大人しくベッドに入って横になり
隣に寝ているササミをじっと見てみた。

(ササミって敵なのか友達なのかはっきりしなくて気持ち悪い。
かと言って今日から貴女は私のお友達よ。とか言えそうにもないし…)

「化粧をしたら言えるかな…」
とても小さな声で呟くルナだった。

98 :青葉草介 ◆UeaUYwi1Nw :2012/05/26(土) 14:09:34.76 0
「こほ…やれやれ、意識を失っていました…。かなり大変ですね、この症状」
魔法薬を飲みながら、呟く青葉
「とは言え…なんとかしなくてはいけませんよね…。やれやれ、材料さえあれば魔女狩りの狂薬を製薬れるのだけど…やれやれ、魔法がまともに使えない今の状況だとね…」
重い足取りで歩く。白衣の中には大量の魔法薬を忍ばせている。『テレポート』が使えない今、持ち運ぶ術はそれしかないのだ
「だけど、もしかしたら他の人がササミさんを見つけてる可能性もあるよね…連絡してみようか」
そう呟き、携帯電話を取り出す青葉。しかし、しばらく携帯を操作した後固まり…
「そう言えば僕、皆の番号知らない…」
その場にへたりこむ青葉。青葉のアドレス帳には、家族の名前と蟲野しかなかったのだ…

99 :フリードリッヒ ◆cOOmSNbyw6 :2012/05/27(日) 17:24:31.07 0
>90-98
>「さあさあ、いざ行かん目くるめく愛の世界に!!」
「僕が女の子になったらもう完全に姉さんの下位互換になっちゃうじゃないですか
 やだぁ〜!!」
『唯でさえ低い男女比の男の比率がさらに下がるしね』(猫語)
「っていうか姉さん若返らしたほうが早いですよね」
『頭脳は大人体は子供のあれだね』(猫語)
この一言によって保険医が学園全体にエターナルチャイルド(見た目を子供にする薬)
をばら撒こうとする事件が起こるのだがそれはまた別の物語である

>「あはは、グレンもすっかり猫に戻ってるね。かーわいい。
 ・・・・・・・ん?そういえば、なんか私、体がスースーするような・・・・・・」
『ん?なんかおかしいの?』(猫語)
猫は普段から裸なので異常事態に気が付いていないようである
「あれ?そういえばグレンの着ていたはずの僕の服は?」
どうやら人間から猫戻った時に無くしてしまった様だ


「・・・・・ぺろ・・・これはフリードちゃんの服」
その頃風によって飛ばされた血液の効果により復活したフリージアさんは
グレンが脱ぎ落としたフリードの服を回収していた
だが何故に舐める必要があったのか?
「グレンちゃんの毛が付いてますし後でお洗濯でもして返せばいいですわね」
と懐にその服を仕舞いこむフリージアさん
いやその理屈はおかしい



>「保健室のベッドはたくさんあいてるけど、皆はどうする?」
>「え??」
「僕はちゃんと自分の部屋で眠りますけど?」
『いや別にそこまでぐっすり寝る必要はなくね?』(猫語)
「明日は友達と学園七不思議の探索をする予定なんですよ」
『誰もそんなこと聞いてないって』(猫語)
「じゃあ商店街探索のほうがいいんですか?」
そういう問題ではない


100 : ◆jWBUJ7IJ6Y :2012/05/27(日) 21:35:05.34 0
結論から先に言うならば、トモエにとって問題だったのは血そのものではなく、その量の多さだった。
一般的に女の子は大量の血をみたら目眩を起こすものだが、
トモエが動揺したのはもっと逸般的な理由によるものだった。
トモエはその理由を、学園の誰にも知られたくなかった。だから慌てて立ち去ったのである。

トモエは校舎内の談話室にある水飲み場で桶いっぱいに水を溜めると、
その中に顔をつけ、ほてりを冷まそうとしていた。
「ぷはぁー……ハァ…」
桶から顔を出すと、正面にある鏡が無表情な自分の顔を写していた。
その顔にはこう書いてあった。「こんなものでは“乾き”は癒えない」と。
『お前は天使か?それとも悪魔か?』
誰かにそんなことを聞かれた気がしたトモエは答えた。
「ただの人間よ。」

>93
> 「ちょっとトモエ! いきなり走り出す事無いじゃないの!
>  大事な友達が置いてきぼりじゃない!」
「シャオロンさん…わざわざ、ミャンちゅう☆を届けに来てくれたのですか?」
トモエは自分を追いかけて来たシャオロンに驚いた。
いや、トモエはシャオロンが自分をおいかけて“来てくれた”ことに驚いた。
さっきの自分の態度を振り返るに、そんなことをしてもらえるとは思ってもみなかったのだ。
> 「それから……」
> 最初の用事を済ませてから、シャオロンは世にも人の悪い笑顔を見せる。
> 「あんた、さっきササミの血で回復してなかったわよね……?
>  だめじゃない。 ちゃんと回復しなきゃあ」
> 言いながら取り出したのは、先ほど持っていたササミの血の滴る布切れだった。
> 「せっかくわざわざ持ってきてあげたんだから、早く回復しなさいよねぇ? ほらほら。 ほらほら〜」
> シャオロンは赤い布を、トモエの鼻先にずずいっと近づける。
トモエは差し出されたシャオロンの手をガシッと両手で掴んだ。
「………」
何が何だかシャオロンには理解しがたいかもしれないが、すぐにフォローが入った。
『おぉーっと〜トモエ・ユミ選手!シャオロンちゃんの心遣いに感動して言葉がでませぇ〜ん!』
と実況中継風に説明するミャンちゅう☆。
どうやらトモエはシャオロンに意地の悪い思惑があるとはつゆとも思わず、顔にこそ出ないが素直に大喜びしているのだ。
シャオロンが人の悪い笑顔を見せようが、トモエにとってはまさに天使のほほ笑みである。
トモエは思った。
ああ、なんて優しい良い子なんだろうか!と。
さらにトモエは思った。
どうしたらシャオロンの気持ちに全身全霊で応えることができるだろうか?と。
その答えを悟ったトモエは、すぐさま着ていた服を脱ぎ始めた。
『オオゥ!トモエ・ユミ選手、いきなり服を脱ぎ始めました!
 これは全身全穴をもって、ササミの血を飲み干さんとする心意気なのでしょうか〜!』
「………」
トモエはシャオロンからササミの血に染まった赤い布を受け取り、頭の上でそれをぎゅっと絞った。
『……これはひどいwww』
トモエはもっと体中を濡らすくらい血を浴びるつもりでいたが、
よく考えたらたかが布切れ一枚にそこまで血を吸い込めるはずがなかった。
絞り出したササミの血はトモエの頭を濡らす程度の量しか出なかったのである。
『つまり、服を脱いだ意味がなかったということ。ミャンちゅう☆です!』
「…お見苦しいものをお見せしました。」
トモエはそそくさと服を着直した。

「魔法少女としての私の出番はもう終わりました。後は彼女達にまかせておけば大丈夫でしょう。」
トモエは特に何も無ければ寮の自室に帰るつもりだ。
「シャオロンさん、今日はあなたと“お友達”になれて、すごく、嬉しかったです。またお会いしましょう。」
トモエはシャオロンの事情を無視してお友達宣言した後、その場を後にした。

101 :ササミ ◆/TZT/04/K6 :2012/05/28(月) 21:52:09.57 0
顛末

ひとしきりハイテンションで騒ぎ立ててエターナルチャイルド散布を思い立った後、保険医は本来の職務に立ち返った。
その手際は素晴らしくよく、ササミの右腕に増血剤投与のチューブを刺し、左腕には採血のチューブを刺す。
採血している間に保健室のメンバーに説明を始めた。
明日には正式発表する事だが、活躍した君たちに一足先に教えておこう。という前置きをして。

実のところササミの血は人間の血と交っても今回のようなウィルスになることはない。
このフィジル島の特殊な力場がただの混じった血をウィルスに変貌させたのだ、と。
つまりは島外に出れば全くの無害なもの。
シャオロンの目論見はこの時点で破綻する事になるのだが、本人がそれを知るのは明日を待たなければならないだろう。

ウィルスは魔力の減退、体調不良を引き起こすが、決して魔力が消滅するわけではない。
蓋をされたように抑え込まれるので、ササミの血を飲みウィルスを撃退すれば一時的に超回復状態。
たとえば先ほどの保険医の様にハイテンションになったりもするのだ。
リリィやグレンのように変異を引き起こしたのはまだ謎だが、ウィルスを排除すれば治ることからして大した問題ではないだろう。

爆発的な感染力を持つウィルスに当然ササミも感染している。
しかしオリジナルの血を持つササミの血は変容し、アンチウィルスを形成。
これから先フィジル島で人間にササミが血を与えたとしてももはやウィルスが発生することはない。
ササミのアンチウィルスは感染力は低く、血の近くかもしくは直接摂取するかでないとその恩恵は受けられない。

つらつらと説明を並べた後、血のたまったビーカーを手に保険医は言葉を続ける。
「これだけあれば十分だな。
感染力が弱いアンチウィルスに今島内に蔓延しているウィルス以上の感染力を持たせるのがこの薬品!」
ビーカーに怪しげな薬品を入れると小さな爆発音と共に赤い煙が立ち上り、やがて色を薄めて消えていった。
「これで明日の朝には島内のウィルスは一掃され、全員が回復するだろう!」
勝ち誇ったように高笑いする保険医はまさにマッドサイエンティストそのものの様である。

「さて、ウィルス対策はこれで完了。
あとは諸君らだが、ま、一晩寝れば十分だろう。
明日の夜には事の顛末の発表が成されるだろうし、その時にはササミ君の記録映像も貸してもらう事になるだろうがね。」
「あー、パジャマパーティーの肴にしようとおもーてたけど、まーえーがね。」
何時からか目を覚ましていたのか、ササミが保険医の言葉に応える。

「ん?何時の間に?って顔してやーすな。
玄関前で儀式魔法で広域伝達魔法やったやろ?
伝達するだけやったらテレパシーの出力あげて無差別におくりゃあえぇがや。
わざわざ儀式魔法使ったのは伝達するだけやのーで伝達されるのも必要やったからやね。
島内で大きな動きがあったらその映像音声はうちの部屋にある幻灯機に送られるてゆー寸法なんやわ」

話し終わるとふらふらとササミは浮き上がり、自分の胸元を見る。
「……魔乳…でっぱりがなかったから石の下敷きになっても大丈夫やったのかもしれんにゃあ」
どことなく乾いた笑みのあと、保健室にいるメンバーを見回し
「ま、得たもんもおおきかったし、ええやろ」
満面の笑みを浮かべた。


翌日、大食堂に集まった生徒たちに事の顛末が説明され、一連の出来事が幻灯機から流された。
「競い合った後にみんなで仲良くってのも悪くあらせんねえ」
と、トモエの石化を金の針で治した後、普通の針を見せながら恩着せるシャオロンが映る場面で言ったとか。
勇気がササミの魔乳に噛り付く場面では大食堂の一角でグラスを握り潰す音と共に怒りの波動が立ち上ったとか。
その後の悲喜劇を引き起こしたのだが、それはまた別のお話。

それから暫く、ササミは以前より学園生徒たちとの交流を持つようになったのだが、突如として姿を消すことになる。
【無くしたものを取り戻しに行ってきます】
一言の書置きを残して。

場所は魔界。ホルスタウロスの迷宮。
フィジル島に戻るとき、ササミは魔乳を身につけているだろう。

102 :シャオロン ◆sto7CTKDkA :2012/05/30(水) 11:48:45.88 O
>100
>「………」
「な、なによ……」
血濡れの布を差し出した手を無言のままにトモエに掴まれて、シャオロンは一瞬怯んだ。
トモエの意図を計りかねたからだが、その行動の意味はすぐにミャンちゅう☆のフォローで理解する。
>『おぉーっと〜トモエ・ユミ選手!シャオロンちゃんの心遣いに感動して言葉がでませぇ〜ん!』
「はあ!?」

シャオロンが素っ頓狂な声を上げたのも無理はない。
意地悪を言っている自覚はあったし、それを隠す努力もまるでしていなかったのだ。
それなのに、どこをどう見れば心遣いに感動できる要素があったのだろうか!

>『オオゥ!トモエ・ユミ選手、いきなり服を脱ぎ始めました!
> これは全身全穴をもって、ササミの血を飲み干さんとする心意気なのでしょうか〜!』
「ちょっ……! 馬鹿! 往来で何して……!」
服を脱ぎ始めたトモエに慌てて左右を見回すシャオロンだが、もちろん右にも左にも人影はない。
からかいに来たつもりが完全に立場が逆転した格好だ。

>「…お見苦しいものをお見せしました。」
そそくさと服を着直すトモエを、シャオロンは陸に上がったマグロみたいに口をパクパクさせながら見ていた。

>「魔法少女としての私の出番はもう終わりました。後は彼女達にまかせておけば大丈夫でしょう。」
>「シャオロンさん、今日はあなたと“お友達”になれて、すごく、嬉しかったです。またお会いしましょう。」
シャオロンが正気に戻ったのは、トモエが立ち去ってしばらくしてからだった。
「な、な、何なのよあいつ……! 人を馬鹿にしてるの!?」
腹立ち紛れに壁を蹴るシャオロンだが、トモエが『本当に』感謝していたのは明白だ。
目は口ほどにものを言い。 というやつである。
「あーもう! イライラする! あれじゃ職員室にいた時とまるっきり別人じゃない!」
怒りに任せて髪の毛を片手でぐしゃぐしゃにしながらふと、シャオロンは自分の言葉の重大さに気づいて手を止めた。
確かに、今のトモエは初対面でササミと戦っていた時とはまるで別人に見えた。
まるで別人。
そういえばトモエは、ササミに切りかかった時に何かを言っていなかっただろうか?

「ふーん……なるほど。 やっぱり何か訳ありってわけね」
機嫌が直ってきたシャオロンは、腕を組んで壁にもたれかかりながら考えを整理する。
トモエは血濡れの布には反応しなかった。
つまりそれは、『血』ではなく『血の量』にトモエは反応した事を意味している。
「ただの血じゃなくて量が必要なのか……そっちはちょっとハードルが高そうね……」
シャオロンがいるのは、一応付きでも学園だ。
大量の血が流れる状況は考えにくい。
「ま、いいか。 そのうち機会があったら血も流れるでしょ」
世にも物騒な事を言いながら、シャオロンは壁から身を離した。
彼女がトモエの秘密にこだわるのは、別に怨みがあっての事ではない。
トモエの『仕事人』発言がきっかけの、猫も殺す好奇心を満たすためだけの行動なのだ。

「保健室は……行っても指示以外出来る事もないわよね。
 抗体の作り方なんて知らないし、保険医が倒れてるくらいだから事情聴取も明日だろうし。
 ……ま、部下を信頼して大きな仕事を回すのも上司の責務ってやつよね」
丸投げの理由を適当にでっち上げた自称ササミ討伐隊隊長は、無責任にも自分も部屋に帰って寝ることにした。
成功したら手柄の横取り、失敗したら責任の押し付けという手法なのだ。

103 :シャオロン ◆sto7CTKDkA :2012/05/30(水) 11:49:44.27 O
>101
次の日。
大食堂に他の皆と一緒に集められたらシャオロンも、一連の出来事の説明を受けた。
ウィルスばらまきの実行が不可能という情報は、多少残念ではあってもさほどの落胆は無い。
専門知識を要する行動ではあったし、保険医が回復すればどのみち無理な選択肢なのだから。
問題は幻灯機の録画の方だ。
完全な証拠物件なのだから、手柄の横取りなど論外になってしまうではないか!

>「競い合った後にみんなで仲良くってのも悪くあらせんねえ」
「ふん……魔界出身のくせに皆兄弟みたいな事言ってんじゃないわよ」
ササミの言葉に不機嫌そうに返したり、発せられる殺意の波動に驚いたりしながらシャオロンは思った。
ここでの生活も、悪くはないか。と。

104 :リリィ ◆jntvk4zYjI :2012/05/30(水) 18:26:56.26 0
>「はい、わたしも付き添う」
リリィに服を返すため体操着に着替えたルナは、そう言って遠慮がちに手を上げた。
リリィが、はじかれたように顔を上げた。
そこには、リリィがよく知るルナがいた。
>「学園の関係者が聞き取りに来たら、ササミは悪くないって言ったらいいかも。
>なんかよくわかんないけど、問題を解決した私たちがそう言うんだからプラマイ0だと思うし、
>ぜんぶチャラになるかも」
ルナの複雑そうな、戸惑った表情を見ていたリリィは、次第に口元の笑みを深くしていく。
彼女は、リリィと一緒に、ササミのことをとりなしてくれるつもりなのだ。
お化粧も、華やかな衣装という名の鎧も、今は失っているというのに。
「うん・・・・・・うん、そうだよね!」
リリィはうれしそうに笑った。
「ありがと、ルナちゃん。・・・・・・大好きよ」

だがその後、リリィが言った言葉は少々まずかったかもしれない。
「え??」
彼女は、「体調が万全ではないのなら、しばらく保健室で休んで言ったらどうですか?」と言ったつもりだったのだが、
少々言葉が足りなかったようだ。
だがルナは特に不平を言うでもなく、黙ってベッドにもぐりこんだ。
「あ、いや、べ、別に変な意味で言ったんじゃないんだからね!!」

>「僕はちゃんと自分の部屋で眠りますけど?」
「あ、フリード君。今日も災難だったね」
正気に戻った(?!)保険医は、プロらしくササミの腕から血液を抜き取っている。
>『いや別にそこまでぐっすり寝る必要はなくね?』(猫語)
「うん、お部屋で休むのが絶対いいと思うよ!
 フリード君保健室で泊まったりしたら、次にあったとき年下の後輩になってそうだし!
 あ、それともフリード君、私達とパジャマパーティする?」
保険医の説明を妨げないよう、リリィはひそひそと小声でフリードに返した。

>「明日は友達と学園七不思議の探索をする予定なんですよ」
「え?それって、ありえない場所に突如現れるなぞの小部屋とか、死霊科に出る、きれいな鎧の女の子の噂のこと?」
>「じゃあ商店街探索のほうがいいんですか?」
「はいはい!私、あったかいパンチ?っていう名前のジュース、飲んでみたい!」
お酒は二十歳になってから、である。

保険医の説明は要約すると、明日には全部解決しているということだった。
>ビーカーに怪しげな薬品を入れると小さな爆発音と共に赤い煙が立ち上り、やがて色を薄めて消えていった。
>「これで明日の朝には島内のウィルスは一掃され、全員が回復するだろう!」
>勝ち誇ったように高笑いする保険医はまさにマッドサイエンティストそのものの様である。
「なんでかなー。・・・・・ちゃんと一件落着したはずなのに、嫌な予感がひしひしする・・・・・・」
リリィの悪い予感は、エターナルチャイルド散布をもって現実となるのだが、それはまた別の話である。

105 :リリィ ◆jntvk4zYjI :2012/05/30(水) 18:27:39.85 0
>「さて、ウィルス対策はこれで完了。
>あとは諸君らだが、ま、一晩寝れば十分だろう。
わーいわーい!これで皆元気になる〜!と喜ぶリリィ。
>明日の夜には事の顛末の発表が成されるだろうし、その時にはササミ君の記録映像も貸してもらう事になるだろうがね。」
>「あー、パジャマパーティーの肴にしようとおもーてたけど、まーえーがね。」
あれぇ?と首をかしげるリリィ。
「ササミちゃん、いつから起きてたの?!気分はどう?」
リリィは心配そうにたずねたが、当のササミは、ちょっと昼寝から覚めた風にしか見えない。

>「ん?何時の間に?って顔してやーすな。
玄関前で儀式魔法で広域伝達魔法やったやろ?
伝達するだけやったらテレパシーの出力あげて無差別におくりゃあえぇがや。
わざわざ儀式魔法使ったのは伝達するだけやのーで伝達されるのも必要やったからやね。
島内で大きな動きがあったらその映像音声はうちの部屋にある幻灯機に送られるてゆー寸法なんやわ」
今、一方通行のテレパシーしか使えない者とっては、大変耳寄りな話だった気がする。
が、当のリリィがしたり顔で頷きつつ口にしたことといえば
「それじゃあ、学園新聞の記者さんが記録してたわけじゃなかったんだぁ、残念・・・・・・」だった。

>「……魔乳…でっぱりがなかったから石の下敷きになっても大丈夫やったのかもしれんにゃあ」
リリィは無言だったが、
【三頭身のササミの上に落ちてきた岩壁を、魔乳クッションがバイーンと弾き飛ばす】
という、なんともばかばかしいイメージがを思い描いていたのは、ここだけの秘密だ。

>「ま、得たもんもおおきかったし、ええやろ」
リリィもつられて笑ったが、はっとわれに返り、ササミの手を軽くぺちっと叩いた。
「その前に、今回の騒動で皆に迷惑かけたこと、ちゃんと謝らなきゃだめなんだからね!」

ルナのように、ササミと直接戦った人間がとりなしてくれる。これは、とてもありがたい話だ。
だが、人の感情というものは、それだけでは収まるものでもない。
騒動が広がったのは、ササミの予定外の行動によるところが大きいのだから。

「ササミちゃんの世界での常識も、こっちじゃ全く通じない事だっていっぱいあるんだよ。
 『郷に入ればGOに従え』って知ってる?
 観察もそりゃ大事だろうけれど、いろんなことを知るために、ササミちゃんは学園へ留学しに来たんでしょ?
 頭っから拒絶されちゃったら意味がないでしょう?
 ・・・・・・私もアリーナで芸武を見た【共犯者】だから、ササミちゃんと一緒に謝るから、ね」

学園に拒絶されても、ササミは全く気にしないかもしれない。
が、観察しているだけでは分からないことだって、世の中にはたくさんあるのだ。
リリィはササミに、もっと世界を知って欲しかった。

翌日、大食堂に集まった生徒たちに事の顛末が説明され、一連の出来事が幻灯機から流された。
「あ、フリードくん来て来て!この幻灯機不思議でしょ?どうやって動いてるのかな?!
 はっ!もしかしたら、中に妖精さんか小人さんが入ってて動かしてるとかっ?!」
リリィは幻灯機の上をぽこぽこ叩いて、皆の顰蹙を買っていた。

>「競い合った後にみんなで仲良くってのも悪くあらせんねえ」
>「ふん……魔界出身のくせに皆兄弟みたいな事言ってんじゃないわよ」

「ササミちゃん、昨日私が言ったこと覚えてる?これが終わったら、ちゃんと一緒に謝るのよ?!
 ・・・・・・・あっ!ルナちゃん見て!ここのササミちゃんを押しつぶした岩壁、どうやって出したの?!」
後の面倒ごとのことはいったん忘れ、リリィは手に汗握りながら幻灯機から、映し出される皆の活躍を観ていた。

こうやって、毎日てんやわんやしているうちに、ササミもきっと気づくに違いない。
魔界の口伝は間違いではない。
だが、それが全てではないということを。

これからも似たようなトラブルが起こり、そのたびに怒ったり困ったりと忙しい日常が続くのだろう。
まあ、それも悪くない。
大切な仲間達が一緒ならば、きっと。

106 :魔法少女トモエ・ユミ ◆jWBUJ7IJ6Y :2012/06/03(日) 20:57:39.18 0
ササミが仕込んでいた幻灯機上映会が済んだ後、
トモエは魔法少女仲間であるブランエン(88歳)の部屋を訪ねていた。
本当は“お友達”のシャオロンを誘いたかったが、上映会の後に見失ってしまったのだ。
「ただいまー」
>「あら、おかえりなさい。」
テーブルにはブランエンの得意なパスタ料理が並んでいた。
トモエは思ったよりブランエンが元気そうだったので安心した。
今回のウイルスもそうだが、それ以前にもブランエンはストレスのせいか寝込んでしまうことが多かったからだ。

>「そう、お友達ができて良かったじゃない。」
トモエはブランエンに今回のウイルス騒動の顛末を話した。幻灯機上映会のこともだ。
「私、魔法少女として有名になったみたい。これからも皆の笑顔のために頑張るわ。」
実際どういう編集か知らないが、魔法少女トモエ・ユミの変身シーンは綺麗に撮れていた。
しかも専用のBGM付きである。
もっとも、偽ササミを本気で殺しにかかるシーンのせいで普通にドン引きされていたことにトモエは気づかなかったようであるが。

>「ところで…本当にスカウトするの?魔法少女に?」
トモエは幻灯機の映像で見た何人かの魔法使い達を自分の仲間にしたい旨をブランエンに話した。
その中にはリリィとフリードが含まれており、その二人を知っているブランエンは難色を示した。
>「フリード君は…」
男の子である。そう言いかけたが、トモエが無言で見せた魔法少女コスチューム案のスケッチを見て、
なんとなく見てみたいと思ってしまい、それ以上言わなかった。

>「最近、妙な噂を聞いたわ。学園の裏にある森で、魔族も眠る午前4時44分44秒、鬼女が現れるんですって。」
「鬼女?そんなものがいては、みんな安心して森に近寄れないわね。」
ブランエンはトモエに鬼女の噂について詳しく話してくれた。
体長は六尺(180cm)を超え、鋭い角と爪を持ち、森で迷子になった者を八つ裂きにして食べてしまうそうだ。
恐ろしい顔をしており、うっかり眼があったら最後、個人情報を特定されて魔法ネットに流されてしまうらしい。
「なんだかすごく尾ひれのついてそうな噂。」
>「噂なんてそういうものよ。だけど、魔法少女として見過ごせないんじゃない?」
「わかったわ、ブランエン。調べてみる。ロック先生がいない今、学園の正義は私が守るわ…!」
トモエはちょうど明日の朝、森に行く用事があったので都合が良いと思った。

107 : ◆jWBUJ7IJ6Y :2012/06/03(日) 21:01:16.18 0
翌日。
夜族も眠る午前4時。女子寮の一室にポッと光が灯った。
学園の女子生徒、トモエ・ユミの部屋である。
白い着物姿のトモエ・ユミは、自室の仏壇の前に置かれた二本のロウソクの炎に向かって合唱する。
「南無阿弥陀仏」
彼女は静かに念仏を唱えた。


>>「もうすぐ午前4時44分だぜ…」
小学部のジョージは、同じ小学部のキャサリンにそう囁くと、
呼びかけられたキャサリンはビクッとして手に持っているカメラを落としそうになった。
>「ねぇ、ジョージ。本当に大丈夫なの?」
これには二つの意味があった。一つは、小学部の学生がこんな時間に森に入るのは当然禁止されているということ。
もう一つは、もしも噂の鬼女の姿を激写し、学園新聞のトップを飾れるとしても、自分達が無事に帰れるかということだ。
ジョージはキャサリンの問いかけに答えるかわりに、姿勢を低くして自分についてくるように手招きした。
>>「見ろ……」
ジョージにならって身をかがめて茂みに入ったキャサリンは、ジョージと同じものを見て後悔した。
>「ああ…やっぱり来るんじゃなかった…」
茂みの向こう側に見えたのは、首から上の無い二人分の死体、
そしてその死体に何かをグチャグチャと突き立て、今まさにお腹を捌いている鬼女の姿だった。
どうやら鬼女は自分達に背中を向けているらしい。
あたりが暗いのは、グロテスクな光景をありありと見ずに済むという幸運でもあったが、
同時に写真に鬼女を収める点については不運であった。無論、身の安全を考えればフラッシュは使えない。
>>「やれよ、キャサリン…!」
しかし、今が絶好の機会だ。キャサリンは静かにシャッターを押し、鬼女の後ろ姿を撮った。
>>「なんとか鬼女の顔を撮れないかな……おい…!キャサリン…!」
カメラから突如ジジジーッという大きな音が響いた。どういうわけか、フィルムが逆回転を始めたのだ。
キャサリンは混乱してカメラから出る音をなんとか止めようとしたが、
茂みの小枝を折ってしまい、その音がとうとう鬼女の耳に入ってしまった。
黒いシルエットが、ジョージとキャサリンのいる方向へ顔を向けた。
>>「やばい、逃げるぞ!!」
>「いやあああああっ!!」
ジョージとキャサリンは大慌てでその場から逃げ出した。


同時刻。
トモエはジョージとキャサリンの悲鳴を聞いた。
「子供の悲鳴…!鬼女の噂は本当だったのかしら…!?」
トモエは“解体道具”をすぐに片づけ、悲鳴のした方向へと向かった。
はたしてトモエは鬼女から子供たちを守ることができるのであろうか?

to be continue・・・

108 :フリードリッヒ ◆cOOmSNbyw6 :2012/06/05(火) 09:38:04.28 0
>105
>「あ、フリードくん来て来て!この幻灯機不思議でしょ?どうやって動いてるのかな?!
 はっ!もしかしたら、中に妖精さんか小人さんが入ってて動かしてるとかっ?!」
「そんな訳がないでしょうきっとからくりがあるはずです」
とフリードリッヒ
『機械仕掛ってわけ?でもどう考えても魔法仕掛のほうがコスト面も利便性も上だよね』(猫語)
とグレン
どうやらグレンは魔法万能説信者のようである
でも神官の息子がそれでいいのか?
「世の中には魔法が使えない方もいるんですよグレン・・・・・」
フリードは別に魔法は使えて当たり前で使えない人は魔法が不自由な人という
魔法文明の人間にありがちな差別意識は持っていない
フリードが差別するのはゴブリンとコボルトだけである


寮への帰り道

「鬼女?既婚女性がどうかしたんですか?」
と妙なうわさ話を耳にするフリード
「ちゃうねんその鬼女やないねん」
とうわさ話をしていたホビットの見た目は少年、中身は壮年がアキンドシティ弁で突っ込んだ
「何や知らへんけど人間をバリバリ食うらしいで、ワイやあんさんはホビットやから関係ないけどな」
どうやら年齢に対して見た目が小さすぎるフリードを同族と勘違いしているようである
「僕はホビットでもドワーフでも無く人間ですよ!!」
『人間限定で食べるの?何そのグルメ?』(猫語)
と猫なのでまるで関係ないグレンはそう感想を述べた
「もしかしたらこの前の図書館で戦ったオーガの生き残りなんじゃ・・・・・
 まあどっちにしろ明日やることは決まりましたね」
『フル装備確定だね』(猫語)


さあ明日はどんな事件が待っているのだろう?
はたしてフリードは生き残ることが出来るのだろうか?
そしてフリージアさんからメインキャラの座を守り切ることは出来るのだろうか?
それは誰にもわからない・・・・・・

109 : ◆70VgGM3HY6 :2012/06/11(月) 20:57:12.67 0
至近での振動波によって内外を問わず大ダメージを負ったレイヴンだったが、
当の本人は余力がありながら起き上がりはしなかった。
(「……お膳立ては全部済ませたからな。
  終わった奴が、いちいちしゃしゃり出るのはお門違いだ。
  そう、俺がいなくともあいつらは大丈夫……その筈なんだがな」)
事が終わり、騒動の中心にいた者達がその場を離れ誰もいなくなってから
レイヴンは壁から身を起こした。寄りかかっていた壁や床にはべったりと
血が付着しているし、吐き捨てた唾も真っ赤であるが……

(「何だろうな、この内側からドロリと這い出て来る様な、粘っこくて重い……
  ドス黒い何かは……怨霊の残りカスにでも引き摺られているのか。
  ……いやこれは……そうか。そういう事か……呼び水こそあれど
  元々持っていたものだ。まったく、あいつらと俺、どっちが子供なのやら……」)
口角を吊り上げるだけの自嘲の笑みを浮かべ、レイヴンは自室へと帰っていった。

翌日の上映会、レイヴンは『女生徒の制服』で参加していた。
もっとも、最後尾で壁にもたれかかり、あまり興味なさそうではあったが。
当然スッパも見られたが、当人はその時の周囲の反応と自分を見る目に対しても
一切反応せず。終始うわの空でいる姿はどこか最初の頃のクリスそっくりだったと言う。



海原に浮かぶ一枚の板、掴まり命を永らえられるのは一人だけ……
明けぬ夜、止まぬ雨はない。されど……さ迷い、揺蕩う弱き者に光は見えぬ。
光という名の闇に閉ざされ、抗えぬまま流される男と少女はどこへ行くのか……
答えを知る者は嗤い、呟く。虚無、と。

110 :名無しになりきれ:2012/06/12(火) 22:44:21.13 0
今学園は空前の七不思議ブーム!
既に何組かが検証に乗り出してはいるがいまだに解明はできておらず謎は深まるばかり。
そしてついに学園随一の情報機関デイリーフィジルが動き出す!
【学園七不思議を解き明かせ!解明者には幻のS定食食券を進呈!】
デイリーフィジルの一面を飾った見出しに生徒たちは沸き立った!
元々物見高い生徒たちにさらにS定食食券という超高級な人参がぶら下げられたのだ!
生徒たちは噂を漁り夜の闇へと飛び出すのだった!



―――― 【TRPG】フィジル魔法学園にようこそ!10thシーズン ――――






111 :リリィ ◆jntvk4zYjI :2012/06/12(火) 22:45:02.89 0
放課後。
リリィは寮の自室に戻り、学園で配られていた「デイリーフィジル号外」に目を通していた。
これは、学園のあちこちに張り出してある壁新聞と内容は同じものだ。
内容は、今学内でブームを巻き起こしている学園七不思議の記事が目白押しだ。

曰く、学園の裏にある森で、魔族も眠る午前4時44分44秒、鬼女が現れる。
曰く、温室を徘徊する謎の鎧に魅入られたものは、食われて鎧の一部になる。
曰く、図書館には異界に通じていて、そこにある書物は幽霊少女が管理している

一言で七不思議といっても、明らかに眉唾なから、妙に現実的なものまで幅広い。
さらにいえば、記事に書かれているものは、リリィが友人から聞いたものとは違っていた。
いったいこの学園には、どれだけの「七不思議」が存在するというのか。

「ふむふむ・・・・え、学園七不思議を解き明かせ!解明者には幻のS定食食券を進呈?!」
がたん!とリリィは椅子を蹴立てて立ち上がった。
S定食。それは、存在自体が伝説である。
食堂のメニューには無く、お金を払っても買うことはできない。
ただ、食券を手に入れたものだけが食すことができるという幻のメニュー。
そのおいしさもさることながら、食べたものは皆、恋だろうが勉強だろうが何でも思いのまま!
・・・・・・・というのが、専らの噂だ。
「これは、参加するしかないよね!」

「まずは情報収集、っと!
 うーん。でも、どうやって調べよう?学食に行けば耳寄り情報聞けるかな?」
リリィは、ウィルス騒ぎのときに使っていたカバンを引っ張り出そうとして、はたと手を止めた。
中から、見慣れない分厚い本がのぞいている。
「あちゃー・・・・・・すっかり忘れてた。今からでもまだ大丈夫かな?」
どちらにしても図書館で調べ物をするのだ。その時返却すれば多分問題ないだろう。


リリィは図書館へと向かい、カウンターへ例の本を差し出した。
「すみません、本の返却お願いします」

112 :青葉草介 ◆UeaUYwi1Nw :2012/06/13(水) 18:38:23.11 0
「うーん……
すっかり体調も良くなりましたねぇ」
ウィルス編で全く活躍できなかった青葉である。魔法薬使いなのに。魔法薬使いなのに。
「やれやれ、こんなことならしっかり在庫を用意しておくんでしたねー…反省反省」
さて、話は変わるが今学園は七不思議で盛り上がっている
「さて…学園七不思議か…そうなるとやっぱりこういうのはあの子が詳しそうですね…」
「そうだねぇ。まぁ、協力してくれるかどうか分からないけど…」
隣にいる蟲野が同意する
「ま、考えていても仕方ないし頼んでみますか!
ダメならダメで手はあるわけだしね」
「そういうんならテレポーとできる青葉君に任せるよ。僕はその間、虫で情報収集してるから」
「おーけー。じゃ、図書室で落ち合おう!」
「了解!」


113 :リリィ ◆jntvk4zYjI :2012/06/17(日) 10:59:46.57 0
青葉が図書館に到着する時、ちょうど本を返却し終えたリリィが中から出てきた。
「あ、青葉おにぃちゃん!こんにちは。元気してた?先月のウィルス騒ぎでは、お互い大変だったよねー」

リリィは親しげに手を振りながら、ひょこひょこ近寄ってきた。
「私はね、今、学園七不思議について調べてたんだよ。
 でね、今夜メンバーを募って、学園探索に出かけるんだよ」
リリィはえへへ、とちょっと得意顔で、手にした張り紙を青葉に見せた。
張り紙には、丁寧に書こうと努力の跡が伺える筆跡で、こう記されていた。

『学園七不思議探索しませんか?メンバー募集のお知らせです』

学内の七不思議を調査して、デイリーフィジルから幻のS定食食券をゲットしませんか?
一人じゃ不安・・・じゃなかった、同行者募集します。

(条件)
・七不思議に興味がある人。
・デイリーフィジルから提供された報酬は、メンバー皆で山分けです。
・当方飛行スキルありです。いざとなったら飛んで逃げましょう。
・幻灯機や念写機お持ちの方大歓迎

メンバーになってもいいよって方は、今日の消灯後、学園玄関の掲示板前に集合してね。
待ってます。

「ど、どうかな?これを学食前と玄関前にある伝言板に、張ってくるつもりなの。
そうだ、 おにぃちゃんは今夜開いてる?もし時間があったら、おにぃちゃんも一緒に行かない?」
リリィはがさがさと張り紙を丸めつつ、はにかんで笑った。

「・・・・・・・あ、やだ!もうこんな時間?!早く張らないと間に合わなくなっちゃう!
 じゃあおにぃちゃん、考えてみてね!ばいばい!」
リリィいいたい事だけ言って手を振り、あわただしく学食のほうへと歩き始めた。

特に何事もなければ、この後掲示板にリリィのメンバー募集のポスターが貼り出されるだろう。


114 :ササミ ◆/TZT/04/K6 :2012/06/19(火) 21:50:34.49 0
前回のウィルス騒動から数日後。
ササミは魔界に帰っていた。
騒動で得た人間の行動に感じる事があり、それを報告すべき一軒だと判断したからだ。
というのは建前で、本当は失った魔乳を復活させるべく魔界に帰っていたのだ。
そこでのホルスタウロスの迷宮の試練はまた別に語られるべきことではあるが、ササミは無事試練を突破。
完全体の速度やバランスなどによる戦闘力の低下を引き起こす事も厭わず魔乳を見事復活させたのであった。
そうして再度フィジル魔法学園へとササミは帰ってきたのだった。

>>113
食堂はいつも以上に混雑していた。
理由はもちろん七不思議の情報交換とS定食の下見である。
そんな人混みの中でもササミの目は食堂に入ってきたリリィを逃しはしない。
自覚はしていないがササミはリリィに対して友人以上の感情(刷り込み母性)を持っているのだ。
「リリィやないのー!久しぶりやねえ!」
混雑する食堂をありえないスピードで、それでいて一切ぶつかることなく飛来するササミ。
魔界に帰っていた為、会うのは久しぶりと言えた。
取り戻した魔乳を誇示するようにリリィの前に現れ、掲示板に張ろうとしていた張り紙を見ながらにんまりと笑みを浮かべた。

「リリィも七不思議の調査やるのかねー。
食堂はその話で持ちきりだがね。」
そういいながら食堂で得た七不思議の情報を七つの顔が次々に並べ立て始めた。

115 :ササミ ◆/TZT/04/K6 :2012/06/19(火) 21:52:27.80 0
・午前4時44分44秒に学園裏の森に出没する鬼女。
体長は六尺(180cm)を超え、鋭い角と爪を持ち、森で迷子になった者を八つ裂きにして食べてしまう。
恐ろしい顔をしており、うっかり眼があったら最後、個人情報を特定されて魔法ネットに流されてしまうらしい。

・学園廊下に現れる人柱
突如として現れる石造りの柱を見たものはたちまち柱に取り込まれてしまう。
柱に取り込まれるのは七人で八人目が取り込まれると最初の一人が排出されるが生気を吸い取られ骨しか出てこない。

・理科室の動く白骨標本
死霊課から逃げ出したスケルトンが理科室に隠れている。
見つけてしまったら骨を抜かれてスケルトンが代わりに入ってしまう。

・無限回廊
学園の廊下のどこかに入り込むと永遠に抜け出せない回廊になってしまう。
一年に一度元の場所に繋がるがそこにたどり着けた者はいない。

・学園を守る魔法少女
白装束の魔法少女が人知れず学園の悪を斬る。
その正体を知ったものは死ぬか魔法少女になるか二つに一つ。

・幻惑の魔女
大嵐の夜に性悪の魔女が現れ、気に入られた生徒は言葉巧みに惑わされる。
決して嘘は言わないが、言葉の真意を汲もうとしても翻弄され酷い目にあう。

・地下フィジル学園
学園地下にフィジル学園と全く同じ敷地、設備を持つもう一つの学園がある。
どこかに入り口があるらしい。

・獣の音楽会
周囲に獣の気配を感じたら注意しなくてはいけない
四方を囲まれたら世にも恐ろしい音楽があなたを襲うから。

・審判のボート
カップルがフィジル公園の池のボートに乗ると、好きという気持ちが少ない方が引きずり込まれる。
両方とも同じだけ隙という気持ちの時には永遠の絆が約束される。

・魔剣ヶ原
魔剣を持つ者は注意をしなくてはならない。
霧に誘われ魔剣が無数に突き立てられた野に辿り着き、永劫の斬り合いに巻き込まれてしまうから。

・黒づくめの男
学園の七不思議を調べて核心に近づくとどこからともなく黒づくめの男が現れる。
捕まったら記憶を消されるか存在を消される。


「七不思議っていうのに七つ以上あるのも不思議な話だがね。
他にもまだありそうやったけど、知ってりゃーす?
フリードや他何組かもう調査したらしいけど、まだ究明には至ってないみたいやね。」
食堂では虚実入り乱れ、また新たなる七不思議を生み出しながら情報が錯綜しているのだった。

116 :シャオロン ◆sto7CTKDkA :2012/06/20(水) 16:36:32.14 O
「ふん!」
気合いだかなんだかの声と共に、シャオロンは持っていた情報誌を床に叩きつける。
「なによこれ! まともな情報が1つもないじゃないこの与太新聞!」
ここは学園の寮にある彼女の自室であり。
罵倒しながらぐりぐりと踏みにじっているのは、デイリー・フィジルのバックナンバーだ。
今話題の学園の七不思議解明にシャオロンも興味があった。
興味の対象は限定商品のS定食券。
自分の願いを食べ物に託そうと思ったわけではない。
幻と言われる料理を食べたとなれば、自分の偉大さが学園中に広まるであろうという(彼女流の)深謀遠慮あっての事だ。
ただ、学園に来てまだ日が浅いシャオロンには、七不思議と言われてもどこから手を着ければ良いかもわからない。
そこでシャオロンは、デイリイ・フィジル編集部に押しかけ、過去の七不思議関連の記事を軒並み渡すよう要求したのだ。
彼女の傲岸不遜かつ傍若無人な態度に、応対に出た修道服の少女が露骨に不快そうな顔をしたが、シャオロンは気にもしなかった。
目当ての物は手に入れたので機嫌が良かったからだ。
その機嫌の良さも、長くは続かなかったのだが。

何しろ目撃者の情報も曖昧ながら発生条件も曖昧で、これだ!と特定出来そうな情報が一つも無いのだ。
そんな物が特定出来ればとっくに解明されているだろうから、これは当たり前なのだが……
シャオロンの機嫌を悪くするにも、十分すぎる理由になったのだ。
「やっぱりこんな記事しか書けない連中じゃダメね。 私が自分で調べてやらないと」
さんざん貴重な参考資料を踏みにじって気が晴れたシャオロンは、準備してあった筆を手に、机の上に置かれた紙に向かう。
自分が憂さ晴らししている間に、ゴーレムに準備させていたのである。

しばらく後、シャオロンは掲示板の前で腰に両手を当てて仁王立ちしながら、満足そうに自分の貼った紙を見ていた。
邪魔な他の張り紙を排除して掲示板の中央に張られた紙には、以下のように書かれていた。

【求む! 優秀な部下!
 今話題の七不思議解明のために、手足となって働く部下を募集します。
 報酬は七不思議を解明した栄誉
 その他の細かい条件は応相談
 詳しい情報は天才ゴーレムマスターのシャオロンまで
 冷やかし厳禁!】

117 :フリードリッヒ ◆cOOmSNbyw6 :2012/06/21(木) 08:17:31.22 0
どこからともかく会話が聞こえてくる
話しているのは女生徒3人と少年が一人
女生徒の一人はフリードリッヒの姉であるフリージア
少年はフリージアの使い魔であるギズモの人間形態である

「ねえ赤マントって知ってる?」
「ああ、あれでしょ赤いマントは好きかねって突然聞いてきて”はい”って答えると
 全身血塗れの状態にされるっていう・・・・・」
「それなら私が返り討ちにしましたわオーホッホッホ!!」
「「!?」」
「もっと普通の学園の生徒を狙えばやられずにすんだものを・・・・・」
「じゃあ青半纏って知ってる?」
「知ってる、青い半纏が好きと答えると殴られて青痣を付けられるっていう・・・・・」
「なかなかの強敵でしたわ・・・・・」
「でも勝ったんだよね」

どこもかしこも七不思議の話題でひっきりなしのようである
「いやあ学校の会談系って力在る者が相手だと色々と台無しになっちゃいますよね」
『普通は恐怖の対象なのにね』
さてこちらは毎度おなじみのもすとでんじゃらすコンビ・・・・
もといフリードリッヒとグレンである

>『学園七不思議探索しませんか?メンバー募集のお知らせです』
「どうやらリリィさんのほうの準備は万端のようですね」
『七不思議たって色々あるよね』
「4時44分44秒に合わせ鏡をすると平行世界の自分が覗き込むって言うのを僕は聞きました」
『僕は男子トイレのミスフラワーさんの噂を聞いたよ
 明らかに痴女だよねそれって』
「細かいことは気にしたら負けですよ、細かいことは」

>「おのれあの金髪ドリル女め!よくもこの私を・・・・・・・」
ボロボロの赤マントを着た長身の男が学園の廊下を彷徨っている
「あ!赤マントですよ!赤マント!!」
『こんな簡単に遭遇していいのか七不思議』
>「おお!お譲ちゃん、赤いマントは好きかね?」
「僕は魔法使いですのでマントは黒派です!そして僕は男です!!」
「黒いマントが好きと言ったか!ならば墨汁をぶっ掛けてから殺してくれるわ!!」

さあ戦いか!?


118 :ルナ・チップル ◆7CpdS9YYiY :2012/06/21(木) 20:03:33.97 0
騒がしい食堂内に黒づくめの集団。
それはルナとその仲間たちの組んだビュジュアル系ガールズロックバンド
「ステロヨポエミー」
彼女たちもまた最近ちまたを賑わせているいう七不思議に興味深深だった。
ドラム担当の少女がカレーを頬張りながら怖い噂話をしている。

「そして…ルミちゃんは学園の屋上から落ちて死んだそうです。
自殺とも事故ともつかない最期だったとか。どんな飛び下り方をしたのか
顔がすっぱりと断ち切られ、お面のように壁に張り付いていたそうです。
その顔はやすらかで苦悶に満ちてもおらず、ただぽかんと口と目を開けて
虚空を見つめていたといいます」

「屋上から落ちたときに、電線とかに顔を持っていかれちゃったのかもね」とギターの子。

「………」
ルナ・チップルは口を真一文字にしてその話を聞いていた。なんか怖い。
七不思議というより怪談みたいだし、
ルミって名前が自分と一文字違いでそこが気になってあんまり話にも集中できなかった。

「てか七不思議がいくつあんのかって話よ!増えちゃってるじゃん。
調べても調べても増えちゃってんなら永遠に解明できないよ。
そもそも何を解明すんのかもわかんないし」
バンっテーブルを叩いて立ち上がる。
ルナもステロヨポエミーの仲間たちも、そんなにおつむの出来はよくない。
ただルナの兄は、神隠しにあって行方不明になっているので
そんな不思議話は半ば習慣的に聞き入ってしまうルナがいた。

「ふむむ。どうしよう」
ルナが困っていると掲示板に張り紙をしているリリィの姿が目に飛び込む。
しめたっと思ったルナは人込みを縫うように進みながら声をあげて手をぶんぶんと振る。
すると横槍をいれるかのようにあの女が現れた。

119 :ルナ・チップル ◆7CpdS9YYiY :2012/06/21(木) 20:04:39.00 0
>「リリィやないのー!久しぶりやねえ!」

「ぎゃーっ!ササミ・テバサコーチン!あいつ帰ってきていたの!?」
悲鳴をあげてテーブルの下に隠れる。変な緊張感で胸がどきどきしている。
知らない人と廊下ですれ違うのならいっこうに構わない。
挨拶なんかされなくったってそれは無視されたことにはならない。
でもササミの場合はルナと知っていて無視をする。そんなことは許されない。
心がこわれてしまうから。

「だいじょうぶ。ササミと二人っきりというのなら問題大だけど、
リリィもいるし…。ここは自然に対処すれば…」
かちこちになりながらも、ルナは二人の前に躍り出た。

「よー、ひさしぶふぃ」
そしていきなり噛んでしまったけど、豚のマネが流行っているのだと誤魔化す。

>「七不思議っていうのに七つ以上あるのも不思議な話だがね。
>他にもまだありそうやったけど、知ってりゃーす?
>フリードや他何組かもう調査したらしいけど、まだ究明には至ってないみたいやね。」

「あ、しってる。壁に張り付いた女の子の顔と美術室の人形の話。
まーそれだけだけどさ。リリィは他に何か知ってる?」
ルナは話に夢中になっていた。
だからシャオロンが張り紙を排除したことに気がついたのは、
彼女が仁王立ちして満足そうに自分の紙を見ているところだった。

「なんだよこの張り紙は!?こんな高飛車な内容じゃ集まるもんもあつまらねーだろっ!?
おめーは岩男の大群でも従えてりゃいいんだよ。このチンクシャ女」
ルナはたぶん排除されたであろうリリィの張り紙(破損部分は逆転魔法で再生)の端を持って
掲示板にべたんと貼り付けようとする。でも壁には変な凹凸があり生暖かい微妙な感触がする。
その理由はお約束というか前方不注意で、張り紙と掲示板の間にリリィを挟んでしまっていたからであった。

「ぎゃー!!ごめんねー!」
張り紙パックをされてピクピクしているであろうリリィに謝るルナ。
しょんぼりしているとある違和感に気がつく。なんかササミにおかしな所がある。

「あれれ…ササミのあんなとこに顔なんかあった?」
怪訝に思っているルナの思考を破って現れたのは赤マント。

「お、七不思議のほうからのこのこと現れやがったぜ。
思うに、この増殖する七不思議って怪異自体が妖しいんだよな。
木を隠すなら森。なんか隠されてる気がするぜ。やっちまいなおめえら!」
大きな声をあげるルナは屁っ放り腰。
――と言ったところで今回のレスはおしまいだった。

120 :リリィ ◆jntvk4zYjI :2012/06/22(金) 17:49:17.11 0
>114-119
リリィは食堂前の掲示板にポスターを貼った後、今度は玄関前掲示板にポスターを貼るつもりだった。
だが、食堂に入っていく人ごみにうっかり流されてしまう。
「ちょ、出ます。すみません、通してください」
あちこちにぶつかりながら廊下へ出ようと悪戦苦闘していると、横合いから声がかかった。

>「リリィやないのー!久しぶりやねえ!」
「ササミちゃん!」
リリィはとても驚いた顔をした後、うれしそうに笑った。
(本当はこの場にはルナもいたのだが、彼女が本気で隠れてる以上、リリィに見つけ出せるわけがなかった)
「・・・・・・あぁ、良かったぁ。ウィルスの責任取らされて学園辞めたってやっぱりただの噂・・・・・ゲフンゲフン!
 いやなんでもないよ!本当になんでもないからね!
 本当にお久しぶり!いつ帰省から戻ってきたの?!」
リリィはうれしそうな顔だったが、ササミの顔から胸に視線が降りたところで、目が釘付けになった。
驚いたり、考え込んだり、冷や汗をかいたりと散々百面相した後、彼女は絞り出すような声で
「さ、ササミちゃん、む、胸型、変えたんだねぇぇ・・・・・・心なしか、前よりおっきい気がするなー・・・ははは・・・・・。
 わ、私とおそろいだねー」
と言って、自分の胸を両手で押さえた。
・・・・・・・今日は、いつもより多めに盛ってあるようです。

>「リリィも七不思議の調査やるのかねー。
>食堂はその話で持ちきりだがね。」
>そういいながら食堂で得た七不思議の情報を七つの顔が次々に並べ立て始めた。
「うん!S定食食券っていうすごいご褒美も出るから、がんばってみようと思って。
 ササミちゃんも食べたことないでしょ?もちろん私もなんだけどね!」

ササミの収集した話は、リリィが集めた情報よりずっと濃密だった。
リリィは最初こそご機嫌にメモをとっていたが、次第にその表情は曇り、無口になってきた。
(ナニコレ・・・・・・こわい・・・・・・魔法学園怖すぎる・・・・・)
彼女の話の中で、無関係なものといえば、魔剣ケ原と審判のボートくらいか。
「審判のボートを私とササミちゃんとで試しても、お互い水の中に引きずり込まれることはなさそうだねー。
 あっ!そうそう、鬼女の話は私も聞いたよー。
 撮影しようとした生徒の話では、なぜか機材が壊れて撮影できなかったんだって。怖いよね!」

>「よー、ひさしぶふぃ」
「あっ!ルナちゃん!今日はバンドの人たちと会って話するって聞いてたけど、もう終わったの?
 じゃあこの後あいてる?ヒマ?」
リリィはうれしそうな顔で、手にしたポスターをルナに見せた。

>「七不思議っていうのに七つ以上あるのも不思議な話だがね。
>他にもまだありそうやったけど、知ってりゃーす?
>フリードや他何組かもう調査したらしいけど、まだ究明には至ってないみたいやね。」
「うん。なんかね、いろんな話が七不思議って言われてるみたいなの」
>「あ、しってる。壁に張り付いた女の子の顔と美術室の人形の話。
>まーそれだけだけどさ。リリィは他に何か知ってる?」
「なにそれこわい。
 私が知ってるのもそんなに無いよー。夜を連れてくる黒騎士と、図書館に住む幽霊管理人の話。
 夜、どこからともなく現れる黒騎士と問答してはいけない。 
 気に入られると一方的に勝負を挑まれ、負ければ鎧の一部にされるっていうの。
 図書館の幽霊は、まあ・・・・・単なる噂よ噂。私もよく知らないの」
リリィはお茶を濁した。それは噂でなく真実なのだが、下手にしゃべって『幽霊管理人』に迷惑がかかるのは困るからだ。

「あ、あと赤いまんじゅうの男の話も知ってるー。 
 なんかね、突然赤いまんじゅうは好きかと聞かれうっかり”はい”って答えると 全身血塗れの状態にされるんだって。怖いよね!
 でも、まんじゅうって何なんだろうね。お花かなにかかな?」
微妙に間違った情報を得意げに話しながら、リリィは小首をかしげた。


121 :リリィ ◆jntvk4zYjI :2012/06/22(金) 17:52:11.79 0
「そうそう、ササミちゃんの言うとおり、フリード君も、この間友達と七不思議の調査したらしいの。でもまだ詳しい話は聞いてないんだ。
 出来れば、フリード君にも一緒に調査してもらえたら心強いんだけど・・・・・・あ!」
リリィははっと口をつぐむと、ちょっともじもじした。
そして居住まいを正し、コホンと咳払いをして手に持ったままの自作ポスターを指差した。
「まだちゃんと言ってなかった。あのね、ササミちゃんにルナちゃん、今日は時間あるかな?
 二人がよかったら、なんだけど、今日、私と一緒に七不思議探索に行きませんか?」

リリィが違和感に気づいたのは、紙が破れるような音と、掲示板前が急に騒がしくなったからだった。
仁王立ちして掲示板前に立つチャイナ服姿の金髪少女。
その背後の床には何枚かの張り紙が落ちていて、その中にはリリィのポスターも混じっていた。
「あ、あれぇ?」
ちゃんと貼ったはずなのに何で床に落ちてるの?とフリーズしているリリィをよそに、ルナが金髪少女に食って掛かった。
>「なんだよこの張り紙は!?こんな高飛車な内容じゃ集まるもんもあつまらねーだろっ!?
>おめーは岩男の大群でも従えてりゃいいんだよ。このチンクシャ女」

そういってルナはリリィのポスターを拾い上げると、金髪少女の方を見たまま掲示板に貼り付けようとする。
その直後リリィは「きゅぅ?!」、と変な声を出した。
なぜなら、どんくさい彼女は、ポスターと掲示板の間に挟まってしまい、ルナに壁へとぎゅうぎゅう押し付けられていたからだ。
(や、やめてー!そんなことされたら・・・・)
ルナが違和感に気づいたのと、ぱん!と風船が破れるような音がしたのは同時だった。

「ぎゃー!!ごめんねー!」
「う、ううん。ルナちゃん気にしないで・・・・・・。あ、討伐隊長さんお久しぶりです・・・・・。
 そうだ、よかったら、隊長さんも私達と一緒にななふしぎのたんさくしませんか・・・・・」
リリィは茫然自失のまま、反射的にそう答えた。
(ちなみに、リリィのいう討伐隊長とは、シャオロンの事である)
ちょっと前に発せられたルナの叫びを注意深く聞いていれば、シャオロンもメンバーを集めていると分かっただろう。
だが今の彼女にとっては、「胸に穴があいた」ことのほうが大問題だったのだ。

そう、耳がいいものなら、リリィの体、主に胸のあたりから、空気が抜けるような異音を聞き取るだろう。
そして彼女の胸が、どんどんしぼんでいることも。
「はは、ほら見て、このポスター今ならジャストフィットだよー。掲示板みたいだよね。あははは・・・・はは・・・」
リリィは自虐ねたを披露し空笑いして見せた後、ルナと一緒になってしょんぼりした。

>「あれれ…ササミのあんなとこに顔なんかあった?」
ん?と顔を向けると、ササミの向こう側にフリードの姿が見えた。
「あっ!フリードくんにグレン!・・・・・と、あの赤マントの人ってハイド先生・・・じゃないよね。
 顔がよく見えないけどイケメンじゃなさそうだし。じゃあ、誰だろ?」

>「おお!お譲ちゃん、赤いマントは好きかね?」
「まんじゅうじゃなかったんだ・・・・」とどうでもいい突込みをするリリィ。
>「僕は魔法使いですのでマントは黒派です!そして僕は男です!!」
>「黒いマントが好きと言ったか!ならば墨汁をぶっ掛けてから殺してくれるわ!!」
「えええ、本物?!こんな昼間から!?というより、あれじゃ不思議じゃなくてただの殺人狂じゃないのー!!」
いろいろショッキングな事実である。
>「お、七不思議のほうからのこのこと現れやがったぜ。
>思うに、この増殖する七不思議って怪異自体が妖しいんだよな。
>木を隠すなら森。なんか隠されてる気がするぜ。やっちまいなおめえら!」
「お、おおー! ・・・・・・えっと、この場合あの赤マントを捕まえたら、七不思議解明になるのかな?そうなのかな??」
どこからとも無く取り出した「魔法の箒」を構えるリリィ。
ちなみに、魔法の放棄の攻撃力は、手に持った場合普通の竹箒を振り回した時と同じである。

「しゅ、しゅきありー」
リリィはへっぴり腰で、赤マントの背後から頭部を叩こうとした。
が、あっさりかわされてしまい、勢いのままべしゃっと床に倒れた。
「いたた・・・・・・もう、なんて凶暴な奴なの!」
よろよろと起き上がろうとするリリィは隙だらけだ。

この中で一番最初に赤マントを着せられるのは、どうやら彼女で決まりのようだ。

122 :名無しになりきれ:2012/06/23(土) 22:28:27.01 0
保守

123 :ササミ ◆/TZT/04/K6 :2012/06/23(土) 22:35:37.32 0
「昨日帰ってきたばかりだがね」
りりぃとの再会を喜ぶササミ。
学園に入ってまだ一か月ほどのササミが昨日の今日でどうしてこうも学園の七不思議に精通しているのか。
答えは単純、この食堂に情報が溢れているからだ。
そしてササミは七つの顔を持ち、同時に七つの話を聞くことができるのだから。

そんなことを話しているとルナが加わり新たなる七不思議、壁に張り付いた女の子と顔と美術室の人形がもたらさられる。
七不思議に足る話ではあるが、やはりいつ、どこで、などという確定情報に乏しい。
リリィからも黒騎士と図書館に住む幽霊管理人、赤い饅頭の話が加わる。
「これだけあるとかえってどこから手をつけてええかわからせんえぇ」
ため息とともに思わず零れる言葉。

そんなササミを見てか、リリィが改めて正式に七不思議探索に誘うのに一瞬きょとんと。
ササミの中では既に一緒に行くことになっていたのだから。
「水臭いわぁ。ほんなもんええに決まっとるがねぇ!」
と快諾しながらリリィの頭をぐりぐりと撫でる。

探索が決まったところで掲示板前でざわめきが起こる。
掲示板に張ってあった紙を破り、自分の手下募集のチラシを貼り付け満足気なシャオロンが立っていた。
それに口を挟もうとしたが、それより先にルナが食って掛かる。
あまりの剣幕にササミハ口を出しそびれ、毒気を抜かれてしまい傍観することに。

ルナはシャオロンに啖呵を切ってその流れのままに破られたチラシを再生。
そのままリリィごと掲示板に張り付けるという荒業を繰り出すのだから手の施しようがない。

貼り付けから救出されたリリィはダメージはないようだったが、それ以外の場所に致命的なダメージを受けていたことを見逃しはしない。
小さく空気が抜ける音と共に凹んでいくリリィの胸。
>「はは、ほら見て、このポスター今ならジャストフィットだよー。掲示板みたいだよね。あははは・・・・はは・・・」
そんな自虐ネタで空笑いしたリリィを見て、あまりの痛々しさにササミはそっと目を閉じた。
今でこそ魔乳を誇るササミだが、本来の姿はリリィに負けず劣らず絶壁胸。
コンプレックスは深く、今のリリィの姿はそっと気づかないふりをしてやるのが精いっぱいだったのだ。

>「あれれ…ササミのあんなとこに顔なんかあった?」
「…は?」
言われている事が判らず、意味を聞くこともできずに呆けた返事をした直後。
フリードとフリードに飛び掛かるボロボロのマントの男が現れた。
その状況とリリィの言葉から噂に聞いた怪人赤マントだとわかったが、ササミはこの噂には懐疑的だった。
怪談ではなく単なるマントを纏った変質者だと思っていたからだ。
「なあ、あれって怪談でええのん?単なる変質者じゃ?」
ん〜と首をかしげながらシャオロンに問いかけてみる。

>木を隠すなら森。なんか隠されてる気がするぜ。やっちまいなおめえら!」
大きな声を上げるルナを見ながらもイマイチ乗り気にはなれずにいた。
どうしようか迷っている間にもリリィは怪談赤マントと断定し、箒を振り上げ飛び掛かっていった。
あえなく躱され勢いのまま床に倒れたリリィを見た瞬間、ササミの迷いは消えた。
「なんやのそのへっぴり腰は。私を押し潰したルナはもうちーと骨があったがね。
ちゃんと受け止めやーせよ」
という言葉をルナに残して。

客観的に見ればリリィの自滅でしかない。
だが刷り込み母性フィルターを通せばそんな理屈は通用しない。
「よくもリリィを!フリード、ちょっとどいとりゃーよ!」
超高速でリリィの頭の上に移動したササミは、よろよろと起き上るリリィの肩を足で掴んでルナの方へと投げつけた。
それと同時に額、顔、胸元、両手の口から高濃度の石化ブレスを怪人赤マントに向けて吐きかけたのだ!

石化ガスは怪人赤マントを中心に一メートル四方の煙の玉となる。
濃度が高い為、その中に入れば僅かな時間で石と化すだろう。
そしてそのガスは一分ほどその状態を維持することとなる。

124 :シャオロン ◆sto7CTKDkA :2012/06/26(火) 17:48:28.69 O
>117-123
>「なんだよこの張り紙は!?こんな高飛車な内容じゃ集まるもんもあつまらねーだろっ!?
>おめーは岩男の大群でも従えてりゃいいんだよ。このチンクシャ女」
「ああ!?」
自身の張り紙の出来映えに満足している時に投げかけられた言葉に、シャオロンは怒りを込めて答えた。
声をかけた相手のルナは探すまでもなく掲示板のそばに行き、何も無かったように落とした張り紙の1つを戻そうとしているではないか!
「こいつ! 何勝手な事して……!」
シャオロンは、口は早いが手も早い。
当然のように武力行使を敢行しようとしたのだが、そこでぐっと言葉に詰まってしまう。
理由は、最近見た夢にあった。
夢の中でシャオロンはなぜか気弱になっていて、ルナの行動を止めることが出来なかった。
もちろん所詮は夢の話であり、現実には何も影響しないはずなのだが……
シャオロンの出身地では【夢のお告げ】なるものが広く信じられていて、彼女もその話は何度か聞いたことがあった。
そのために一瞬反応が遅れ、結果的にリリィの張り付けを見逃す事になってしまう。

>「ぎゃー!!ごめんねー!」
>「う、ううん。ルナちゃん気にしないで・・・・・・。あ、討伐隊長さんお久しぶりです・・・・・。
> そうだ、よかったら、隊長さんも私達と一緒にななふしぎのたんさくしませんか・・・・・」
「え。 あー。 うん。
 久しぶりは良いんだけど……それ、大丈夫なの……?」
友達も一緒に張り付け前に気づけよ!とルナにツッコミを入れるのはさておき。
肉体より精神的ダメージが大きそうなリリィに、傍若無人のシャオロンも安否を尋ねないわけにはいかなかった。
>「はは、ほら見て、このポスター今ならジャストフィットだよー。掲示板みたいだよね。あははは・・・・はは・・・」
「大丈夫じゃなさそうね……」
落ち込むルナとリリィに、それ以上かける言葉が見当たらないシャオロンであった。

>「あれれ…ササミのあんなとこに顔なんかあった?」
「あんなとこって……見た目別に増えてないけど、どこ?
 というか、ササミもいつの間にさらっと帰ってきてるのよ。
 負けが込んで自信喪失して、魔界からもう出て来ないのかと思ってたのに」
ルナの言葉に、シャオロンはようやくササミの帰還に気づいた。
教師陣にもフルボッコにされて逃げ帰ったのだと(半分本気で)思っていたのだ。

125 :シャオロン ◆sto7CTKDkA :2012/06/26(火) 17:49:37.77 O
フィジル魔法学園の七不思議は、意外に身近に存在するものである。
少なくとも、廊下でばったり遭遇するくらいには。
>「えええ、本物?!こんな昼間から!?というより、あれじゃ不思議じゃなくてただの殺人狂じゃないのー!!」
>「なあ、あれって怪談でええのん?単なる変質者じゃ?」
「白昼堂々変質者が暴れ回ってる時点で十二分に怪しいじゃない。
 七つに入るかどうかしらないけど、たいしたことなくても不思議は不思議なんじゃないの」
リリィとササミの疑問にそう返したが、シャオロンとしても不満が無いわけではない。
こんなに簡単に遭遇する七不思議では、たとえ解決しても“ありがたみ”に欠けるではないか!

>「お、七不思議のほうからのこのこと現れやがったぜ。
>思うに、この増殖する七不思議って怪異自体が妖しいんだよな。
>木を隠すなら森。なんか隠されてる気がするぜ。やっちまいなおめえら!」
「だからなんであんたが仕切ってるのよ!?」
ササミとは違う不満点を今回はちゃんとルナにぶつけるシャオロンだが、先に赤マントに攻撃をしかけはしない。
他人の戦いを見て相手の手の内を知るのも戦略だからである。

>「いたた・・・・・・もう、なんて凶暴な奴なの!」
>「よくもリリィを!フリード、ちょっとどいとりゃーよ!」
少々自爆気味にすっころんだリリィを見て、ササミが逆ギレ気味に赤マントを石化ガスで攻撃した。
ガスというものはなかなか恐ろしいもので、予備知識の無い相手には特に強力な攻撃手段となる。
石化ガスが晴れた後にはあっさりと、赤マントそっくりの石の像が出来上がっていた。
赤いマントが石化していない以外は、どこからどう見ても石の彫像だ。

「なーによ、あっさり終わらせちゃって。
 もうちょっとこう、見せ場とか何かを作るって考えは無かったの?
 わざと負けかけるとか、対抗して赤マントを身につけるとか」
実戦に無茶な願いを口にしながら、シャオロンは“元”赤マントの像に歩み寄った。
ボロボロになっていても赤マントだけは石化していないのは、ある意味七不思議と言えなくもなかった。

シャオロンは赤いマントをしばらく見つめた後、像から取り外しておもむろに身に付けた。
それから早足でフリードに近づき、怪人赤マントみたいな目をして言った。
「お坊ちゃん、赤い饅頭は好きかね?」

126 :フリードリッヒ ◆cOOmSNbyw6 :2012/06/27(水) 09:22:26.21 0
>「お、七不思議のほうからのこのこと現れやがったぜ。
  思うに、この増殖する七不思議って怪異自体が妖しいんだよな。
  木を隠すなら森。なんか隠されてる気がするぜ。やっちまいなおめえら!」
「いやあなたも戦ってくださいよ」
『男なんだろフィー坊だけ戦えよ』(猫語)
「男女同権は女尊男卑とは違うんです
 男だろうが女だろうが自分の危機には自分で身を守らないと」

>「私も男児だろうが女児だろうが分け隔てなく殺すぞ」
それは遠慮してほしいものである

>「しゅ、しゅきありー」
「なんだお前は先に赤いマントを着たいのか?」
あえなく躱され勢いのまま床に倒れるリリィ

>「よくもリリィを!フリード、ちょっとどいとりゃーよ!」
あっと言う間に石になる赤マント
所詮凶器を持った唯の人間なのだろうか?
「おかしいですね・・・・・噂だと不死身の筈なんですが・・・・まさか!?」
フリードの脳裏に剣に体を乗っ取られた炎の魔剣士の事が思い浮かぶ

>「なーによ、あっさり終わらせちゃって。
 もうちょっとこう、見せ場とか何かを作るって考えは無かったの?
 わざと負けかけるとか、対抗して赤マントを身につけるとか」

そんなフリードの不安を他所にいとも容易くマントを着てしまうシャオロン
「そんな怪しい物要りませんよ!それより大丈夫なんですか?
 体乗っ取られたりしないんですか?
 この前の誰かさんみたいに」
『あまりにも迂闊だよね』(猫語)

もしかしたら本体はマントの方で石になったのは憐れな犠牲者かもしれないのだ
割とよくある話である
「そういえばこの顔・・・・・・いえ見たことない顔ですね」
『そうだよね見てても思い出せないような戦闘員Aって感じの雑魚顔だね』(猫語)
まあこの後にでも警備員に突き出してしまえばこの件は解決・・・・・なのだろうか?

127 :レイ ◆70VgGM3HY6 :2012/06/27(水) 21:23:52.71 0
ウィルス騒動の最中、とある少女から本の代返を一方的に押し付けられたリリィ。
義理など本来なら微塵もないのに律儀に返却しに行く彼女が底抜けのお人好しなのは疑う余地が無い。
……まぁ、事情を知っているとこの考えは覆さざるを得ないのだがそこは割愛。

……しかし、本を返しに図書館へと足を踏み入れたリリィを待ち受けていたのは
『いまだ落ちた蔵書や倒れた本棚が放置されたままの図書館内部』だった。
暫定的に管理を任された教師は、リリィを一瞥すると本を受け取り帳簿に記録する。

「一月前の地震とほぼ同時に大図書館の管理機構が原因不明の機能停止を起こしたのは
 君たちもしっているな……見ての通り、いまだに復旧の見通しは立たず
 蔵書の確認やら何やらの雑務も進展しているかどうかも分からない。
 学園成立と同時に起動し、彼の日までこの膨大な質と量を整然と管理していた
 管理機構が唐突に停止するなど、誰も思っていなかったのだろうな」

「……そう言えば、学生達の間で七不思議などと言う荒唐無稽な噂話が流行しているらしいな。
 この図書館の管理機構もその一つと聞いたが……馬鹿馬鹿しい」
教師陣の中でも一握り、ごくごく限られた者達しか知らない『管理者』の存在。
それを知っている数少ない例外が目の前の女生徒だとは、この教師は当然知らなかった。

現在の図書館は
・貸し出し及び館内での読書、教材としての使用禁止
・読書は臨時に併設された読書室でのみ行い使用後は即時返却
・地震以前に借りていた蔵書は即時返却
と言う、由々しき事態となっており早期の復旧が望まれている


そして。

石化した元怪人赤マント、今やすっかり精巧な石像となったそれが小刻みに震え始めた。
「……まったく、容赦の無い。もう少しネタに付き合ってくれてもいいじゃないか、
 と言うのはこちらの我儘だな。まぁいいさ」
聞き覚えのあるハスキーボイスが石像から響いてきたかと思うと、
石像にひびが入り……やがて鈍い音と共に中から『マッパの少女』が出てきた。

「お前らな、冷静に考えてみろ。怪人赤マントなんているわけないだろjk。
 まぁ、余興としても三文だったが腹ごなしにはちょうど良かっただろ?」
そんなアホ臭い事を、ニヤリと笑いながらほざきやがる変態の正体は
数週間前のウィルス騒動の時に三度姿を現した鴉……レイ(ヴン)だった。
とりあえず、服着てない姿で格好付けてもつかない事にはまだ気付いてない様だ。

128 :ルナ・チップル ◆7CpdS9YYiY :2012/06/28(木) 20:01:16.67 0
ルナとそのバンド仲間たちの話していた七不思議の噂は、ササミの手に入れた七不思議の噂と一部重複していた。
それに付け加えてリリィの知ってる七不思議は、夜を連れてくる黒騎士と、図書館に住む幽霊管理人の話と赤いおまんじゅう。
ふーんとルナは感心して張り紙を貼り付けようとする。そして起きる胸パン(破裂音)事件。

ルナは驚愕の色を隠せないでいた。

大好きなお友達のリリィの胸を萎ませてしまった!あーこれはあれだ。綺麗な薔薇には棘がある。
しかし薔薇の美しさを守っているのもその鋭い棘。美しいルナの心の棘がリリィの胸に突き刺さってしまったのだろう。
自分でも言ってる意味がわからなかった。

そして現れる赤マント。 ふと感じるデジャヴ(既視感)
(あれ…この場面、わたししってるかも…)
突如、こみ上げて来る得体の知れない焦燥感。

>「いやあなたも戦ってくださいよ」
>『男なんだろフィー坊だけ戦えよ』(猫語)
>「男女同権は女尊男卑とは違うんです
> 男だろうが女だろうが自分の危機には自分で身を守らないと」

「ちゃっちゃと戦いやがれ、この全身かわかむり!」
思い出せそうで思い出せないことに、苛々して変なことを言ってしまう。

>「だからなんであんたが仕切ってるのよ!?」
しかし、飛んでくるシャオロンの金切り声に、錯覚のような微妙な意識は飛んでしまった。

「なんだよ、おめーが仕切りてえのかよ?じゃあ先に行けばいいじゃん!」
ロングスカートの内側に隠されたルナの両足は生まれたての小鹿のように震えている。
それは何かを変えようとする無意識の悲鳴にも似ていた。

>「なんやのそのへっぴり腰は。私を押し潰したルナはもうちーと骨があったがね。
 ちゃんと受け止めやーせよ」

「ふぇ…」
小さく呻くと、飛んでくるリリィを受け止めるルナ。
でも一緒に窓の外に飛ばされる。パニックになった箒が二人を引っ掛けて
向かい側の二階の窓ガラスにそのまま放り込んだのだ。

「いたたたた…、たいじょうぶリリィ?」
腰を摩りながら起き上がると、目の前のロッカーの扉に赤い文字で
『スケルトンに注意』と口紅で殴り書いてあった。どこかで見覚えのある文字で…。

「これって、七不思議じゃ?」
どうやら二人は理科室に飛び込んでしまったらしい。
向かい側の食堂ではシャオロンが赤マントを羽織り、フリードに何かを言っている。

>「お坊ちゃん、赤い饅頭は好きかね?」

「こら!変なじょうだんならやめやがれ!おめーが何かに取り憑かれて敵になっちまったらすんげえやっかいだろうが。
七不思議を解明するとか張り紙に書いてたくせに、自分が七不思議になっちゃ世話ないぜ。
ちゃっちゃとマントを脱ぎやがれ!」
シャオロンの真意はわからない。でも深読みできないルナは二階の窓から叫んでいる。

>『あまりにも迂闊だよね』(猫語)
フリードもよくある話といぶかしんでいるようだ。

>「そういえばこの顔・・・・・・いえ見たことない顔ですね」

「え〜、なんかどっかで見たような…」
変態鴉…レイ(ヴン)…。もう嫌な予感しかしない。

129 :ルナ・チップル ◆7CpdS9YYiY :2012/06/28(木) 20:04:00.82 0
するとカラカラカラカラ…背後から渇いた音。ルナの背筋はさらに凍りつく。

「…ぁ…ぅ…み、みちゃだめ…だぜ。スケルトンだ。きっと」
噂によれば隠れているスケルトンを見つけなければ問題はない。
しかしその噂を誰がながしたのだろう。骨を入れ替えられた犠牲者なのだろうか。
どこか腑に落ちないがそこまでルナは頭がまわらなかった。

ガタン!バタン!突然背後で音がする。
理科室に誰かが入ってきたのだったが…

「きゃあ!たすけてー!」
ルナは恐怖に慄いて二階の窓から飛び降りようとする。
するとその悲鳴に、リリィの箒がパニックになって暴れまわって、
どこかに隠れているスケルトンをほじくり出してきた!

目の前には箒にぶら下がった白骨の標本が宙ぶらりん。

「ぎゃ!」
スケルトンを見つけてしまったルナの頭からは、ずずずと白くて丸い物が出てくる。
骨がでてるのだ!思い出すのはササミの言葉。

>私を押し潰したルナはもうちーと骨があったがね。

「ほぇ…骨が、まじなくなっちゃう……うっ…もうだめ……リリィ、これを…。
……それは魔法の口紅よ。このまえ拾ったの。それも七不し…はぇふぁが…」
ルナは真紅の口紅をリリィに放り投げた。もう全身の骨は飛び出して体がふにゃふにゃになっている。
いっぽうのスケルトンは、肋骨の隙間に突き刺さっている箒を引っこ抜いてルナの体にしがみ付かんとジャンプ。
今まさに、骨の交換が行われようとしていた。

【追加七不思議:魔法の口紅。女子トイレに忘れられていたとても綺麗な色の口紅。
それをつけて噂話をすると尾ひれ背びれがついてとんでもない実話にかわることがあるという】

130 :ササミ ◆/TZT/04/K6 :2012/06/30(土) 23:29:55.83 0
怪人赤マントに石化ガスを吐きかけた後、臨戦態勢で相手の出方をうかがう。
逃げるにしても他にどんな対処をされようとも、石化ガスがその動きを知らせてくれるのだから。
それと同時に項と背中の顔は投げつけたリリィと投げつけられたルナを追っていた。
勢い余って窓から吹き飛び、そのまま箒に引っかけられて隣の棟の二階に突っ込んだのだ。
だがルナが窓から顔を出している事から心配はないと判断。

一方で目の前の石化ガスが晴れた後には石像となった怪人赤マントがそこにいた。
>「おかしいですね・・・・・噂だと不死身の筈なんですが・・・・まさか!?」
>「なーによ、あっさり終わらせちゃって。
「いや、意味が分からんがね。
まあ、不死身というだけなら、こんなもんじゃないん?」
シャオロンの文句に返しながら、ササミも心の中である種の同意をせざる得ない気持ちでいっぱいだった。
不死身というのは単に死なないというだけで、身体機能の破壊さえすれば攻略は十分可能である。
石化もその一つ。
とはいえ、七不思議と言われるくらいだからもっと怪異を想像していたのだが、こうもあっさりと終ってしまうとは拍子抜けである。
そうなるときになるのはフリードの終わりの言葉と石化していない赤いマント。

当然辿り着く結論は一つなのだが、その時にはシャオロンは魅入られたようにその赤いマントを身につけてしまっていた。
目つきが変わりフリードに言う。
>「お坊ちゃん、赤い饅頭は好きかね?」
「微妙にセリフが違っとるがね!」

フリードに変わり突っ込みを入れていると、石化した怪人が小刻みに震えはじめる。
>「……まったく、容赦の無い。もう少しネタに付き合ってくれてもいいじゃないか、
呆れたような口調のハスキーボイスが石像から流れるとともに石像は砕け中から『マッパの少女』が出てきた。

>「お前らな、冷静に考えてみろ。怪人赤マントなんているわけないだろjk。
> まぁ、余興としても三文だったが腹ごなしにはちょうど良かっただろ?」
「ぎにゃああああ!HENTAIだがねえええ!!」
ドヤ顔で登場したセリフの終了直後、取り外された掲示板がレイの脳天に叩きつけられた。

薄いべニア板でできた掲示板をレイの頭は突き抜け、肩のあたりで止まる。
そのあと真っ二つに折れ、レイはまるで看板を着たサンドイッチマンのような状態になっていた。
登場早々ひどい扱いだが考えてみて欲しい。
男がフリチンで現れたら急所に調味料の瓶でも叩きつけられても文句は言えまい。
女だからと言ってマッパが歓迎されるとは限らないのだ!

「ふ〜これでまあええがね。
て、いたずらやったの?人騒がせやがね。シャオロンも乗りすぎだぎゃ。」
とりあえず猥褻物陳列罪の危険がなくなったところで思考が落ち着く。
考えてみれば白昼堂々とこんな人の多い食堂に七不思議の赤マントが現れるのも突拍子なさすぎなのだ。
だがシャオロンの雰囲気は明らかにおかしい。
「シャオロン、もおええ
『ゲッゲッゲッゲ!くだらない噂にちょっとした悪戯心。そんな隙間に紛れ込む本物』
もうタネは割れたからもういいと言わんばかりにもう一度呼びかけるが、そのセリフは別の声に遮られる。
聞く者が不快になるような仕上がれた声の出どころは
ササミの右肩にできた醜い顔だった。
ルナがササミの見た不自然な位置の顔はこれだったのだ!

131 :ササミ ◆/TZT/04/K6 :2012/06/30(土) 23:31:06.14 0
「え?えええええ??八つ目の顔?てことは私は七面鳥じゃなく九顔鳥やったってこと??」
いや、明らかに違うだろう。
七つの顔が皆同じような顔に対し、その顔は疣が集まってできたように醜く、ササミの意思を離れて喋っているのだから。
『あれはもう怪人赤マントなんだよぉぉぉ!犠牲者を血まみれにしその血でさらに赤くそまるぅぅぅ!
そしてあたしは人面瘡。今は肩だけだけど、徐々に広がってあんたを乗っ取ってやるのさぁ!』
不快な声で然もおかしそうに叫ぶと、フリードとグレン、そしてレイに毒液を吐きかけた。

突然のことに戸惑いつつもこの人面瘡のいう事が事実だと実感していた。
なぜならば既に右腕が思うように動かないのだから。

>「きゃあ!たすけてー!」
危機的状況に集中する嗜好を遮ったのは隣の棟から響くルナの声。
直後に続く悲鳴はあちらも尋常ではな状態であることを示していた。

こうなれば決断から思考も躊躇も消えうせた。
枝分刀で人面瘡を自分の右肩ごと斬り飛ばす。
『げひゃひゃひゃ。無駄無駄あああ!』
斬り飛ばされた人面瘡は食堂の壁に叩きつけられながらも不快な声で笑い続ける。
その姿に食堂は一瞬にしてパニック状態に。
【壁に張り付いた女の子の顔】は食堂内でやり取りされた噂の七不思議の中ではメジャーな部類だ。
それが今ここに現れた!と。

一方肩を人面瘡ごと斬り飛ばしたササミは宙に舞いあがっていた。
「シャオロンの事は二人に任せるがね!」
そう言い残し、隣の棟の二階に飛び去った。

二階の窓に足をかけた時、ササミの目に飛び込んできたのは…
足元に落ちるルナの全身の骨。
そしてルナの体にしがみつく骨格標本!
まさに七不思議で噂された骨を入れ替えるスケルトンそのままである。
「リリィ!ルナ!無事かや……おぎゃああああ!こっちはめちゃくちゃホラーやがね!」
恐るべき光景に思わず叫ぶササミ。
『ぐひっ!あっちもそっちも大変だけど、こっちも忘れでないでよ〜』
切り落とした肩がボコボコと泡立ちながら人面瘡のまた現れ笑う。
ササミの血には再生酵素が含まれているが、それにしてもこれほど早く再生することはないはずなのに!

132 :リリィ ◆jntvk4zYjI :2012/07/01(日) 08:27:04.41 0

>123-131
超高速でリリィの頭の上に移動したササミは、彼女の肩を足で掴んでルナの方へと投げつけた。
「え?・・・・・・っきゃー!!」
ぽーんと宙を舞うリリィ。箒を抱えたままの姿というのが、なんとも間抜けである。
だが箒は、この飛び方はいささか気に入らなかったらしく、じたばたと暴れ始めた。
そして彼女たち二人を引っ掛けた挙句、向かい側の二階にある理科室へそのまま放り込んでしまった。

「いたたたた…、たいじょうぶリリィ?」
「う、うん・・・・・ルナちゃんこそ大丈夫?ああ、ひどい目にあった。
 なんかさ、私の箒、最近すっごく凶暴なんだよね・・・・・。
 前回修理したとき出力上げたんだけど、どうも微調整間違え・・・わっ!」
リリィの話に怒ったのか、箒が容赦なくびしびしリリィを叩きはじめた。
「嘘ですごめんなさい、とってもやさしくて美人な箒さんです!!」
悲鳴にちかいおべっかによって、ようやく攻撃を止める。

ふー、とリリィが一息ついていると、ルナが目の前にあるロッカーを凝視している。
「何なにルナちゃん?・・・・え、『スケルトンに注意』?・・・・・・えっ!や、やだ、ナニコレ」
>「これって、七不思議じゃ?」
リリィの脳裏にも、おそらくルナと同じものが浮かんだだろう。
先ほど学食で、ササミがくれた七不思議のひとつ。
死霊課から逃げ出したスケルトンを見つけると、スケルトンが自分の骨の代わりに入ってしまうというものだ。
おりしもココは理科室。
「ややや、やだな、た、たちの悪い誰かのいたずらだよ、そそそ、そうに決まってるもん」
リリィはぶるぶる震えながらそう答えた。
そして、自分達が飛び込んできた窓の外へと視線を向ける。
赤マントと対峙していた、皆はどうなっただろうか?

133 :リリィ ◆jntvk4zYjI :2012/07/01(日) 08:28:43.91 0
掲示板付近では、出来立ての石像が立っていた。
先ほどの、「赤マント」の犯人だということは想像に難くない。きっとササミの石化ブレスで、勝敗がついたのだろう。
だが、話はそこで終わらなかった。
石化した犯人が纏っていた「赤いマント」だけは、何故か石にならなかったのだ。
>「なーによ、あっさり終わらせちゃって。
> もうちょっとこう、見せ場とか何かを作るって考えは無かったの?
> わざと負けかけるとか、対抗して赤マントを身につけるとか」

そういって、討伐隊長ことシャオロンは、おもむろにその赤マントを羽織ってしまった。
そして先ほどの赤マントと同じように、フリードに声をかけている。
>「そんな怪しい物要りませんよ!それより大丈夫なんですか?
> 体乗っ取られたりしないんですか?
> この前の誰かさんみたいに」
「珍しい、いつも鷹揚なフリード君が焦ってるー」
>「こら!変なじょうだんならやめやがれ!おめーが何かに取り憑かれて敵になっちまったらすんげえやっかいだろうが。
>七不思議を解明するとか張り紙に書いてたくせに、自分が七不思議になっちゃ世話ないぜ。
>ちゃっちゃとマントを脱ぎやがれ!」
ルナもフリードと同じくらい焦っているようだ。
「あはは、大丈夫だよルナちゃん。
 だってシャオロンさんの問いかけの言葉、さっきの赤マントと台詞違ってたもん。演技だよ、演技ー。
 じゃあ、あの石像をデイリー・フィジル編集部に突き出せば、お食事券ゲットだね!ラッキー」 
リリィはお気楽だった。
だがそれも、石像が割れて、中からよく見知った人物が出てくるまでだった。

>「お前らな、冷静に考えてみろ。怪人赤マントなんているわけないだろjk。
> まぁ、余興としても三文だったが腹ごなしにはちょうど良かっただろ?」
>「ぎにゃああああ!HENTAIだがねえええ!!」
>ドヤ顔で登場したセリフの終了直後、取り外された掲示板がレイの脳天に叩きつけられた。
>「え〜、なんかどっかで見たような…」
「あー、うん。そうだね・・・・・・・あの・・・・なんかごめんね」
リリィが思わず謝ってしまったが、多分ルナには訳がわからないだろう。
もっとも、何故かを語る気にはならない。
ルナのことは大好きだが、他人の秘密が絡むと大っぴらに語れないこともあるのだ。
「獣人族はさ、全裸にたいしてあんまり抵抗ないみたいだよ。
 ほら、獣化してる時は羽根とか毛皮があるから服着てない状態じゃない?だから、さ」

そんな事を話していると、不意にカラカラカラカラ…と、背後から渇いた音。
リリィは何の警戒心も無く振り向こうとして、ルナに制止された。
>「…ぁ…ぅ…み、みちゃだめ…だぜ。スケルトンだ。きっと」
びくぅ!と飛び上がるも、ははは、と乾いた笑いで返すリリィ。
「えー・・・・・・・、ま、まさかぁ、脅かさないでよルナちゃん。まだ日も高いよ?」

ぞぞーっとなったところで、彼女達の背後から突然音がした。
>「きゃあ!たすけてー!」
「ルナちゃん危ない!ここ2階だよ!落ちちゃうよ!!
 スケルトンは直接見なければ大丈夫って、ササミちゃんも言ってたじゃない!」
窓から飛び降りようとするルナを、床に視線を固定したまま必死で制止しようとする。
だが、今日のリリィの運勢は最悪だった。
否、リリィではなくルナが、かもしれない。
なぜなら突然暴れだした箒が、スケルトンを引きずり出しルナの前にぶら下げたからだ。


134 :リリィ ◆jntvk4zYjI :2012/07/01(日) 08:29:38.15 0
「ぎゃ!」
という悲鳴が上がったのと、ルナの指先がくにゃっとなったのはほぼ同時だった。
>スケルトンを見つけてしまったルナの頭からは、ずずずと白くて丸い物が出てくる。
「キャ――――――ッ!キャ――――ッ!誰か来てぇ!!
 スケルトンが!スケルトンのせいで、ルナちゃんが!ルナちゃんが骨抜きになっちゃうよぅう!!」
半狂乱になってルナから骨が出て行かないよう手で押さえるが、物理的な抵抗ではどうにもならなかった。
理科室に並ぶ薬品棚のガラス面を鏡代わりにしてスケルトンの動きを目で追ってはいる。
暴れる箒で串刺しになっているスケルトンだが、自由を取り戻すのも時間の問題だろう。

>「ほぇ…骨が、まじなくなっちゃう……うっ…もうだめ……リリィ、これを…。
>……それは魔法の口紅よ。このまえ拾ったの。それも七不し…はぇふぁが…」
「ルナちゃん?!ルナちゃーん!!やだよぅ、うわああああっ!!」
リリィは半狂乱になっていた。だが、骨が抜ける直前のルナから口紅を託されれば、受け取るほかに無かった。
その色は、ロッカーに殴り書きしてあったものとよく似ていた気もする。
(もっとも今は、その口紅について深く考えるほどの余裕は無いのだが)

>「リリィ!ルナ!無事かや……おぎゃああああ!こっちはめちゃくちゃホラーやがね!」
「ササミちゃん!大変なの、ルナちゃんが骨抜きに・・・・・っ!!その肩どうしたの?!」
ササミは右の肩を血で染めながらも、大して気にとめていないようだ。
まあ、彼女の再生能力なら、多少の傷などあっという間に治ってしまうのだが。
>『ぐひっ!あっちもそっちも大変だけど、こっちも忘れでないでよ〜』
>切り落とした肩がボコボコと泡立ちながら人面瘡がまた現れ笑う。
「な、何よあれ!」
ササミを見て驚く一方で、リリィは、ササミの一連の行動を見て、何かが引っかかった。
(何この違和感は?今ので何がおかしかった?
 肩の人面瘡以外で、私はなにに引っかかっているの?)
今の出来事を早回しで思い出し、そして気づく。

(そうか!ササミちゃんも今スケルトンの姿を見たのに、ルナちゃんみたいに骨抜きにならないことだ!)

そのことを説明出来る仮説は、リリィが今思いついたのは二つだ。
一つは「スケルトンが骨を抜けるのは、魔界人以外であること」
そしてもう一つは「目撃者の骨は、複数同時に抜くことが出来ない」だ。

いっぽうのスケルトンは、肋骨の隙間に突き刺さっている箒を引っこ抜いている。
そして、ルナの体にしがみ付かんとジャンプ!
このままでは、ルナの中にスケルトンが入り込んでしまう。
(そんなの駄目!)
「来い・・・来て下さい!」
リリィは必死の形相で、自分の(じゃじゃ馬化している)箒を召還した。

スケルトンに放り投げられた箒は、猛スピードでリリィのほうへと飛び・・・・・動線上にあるスケルトンに接触した。
弾みで、スケルトンの動きが阻害される。
(大丈夫、まだスケルトンは、ルナちゃんの体に入り込んではいない!)
まだ間に合う。

「スケルトン、私もお前をばっちり見ているわよ!!どうしたの、骨を抜かないの?」
リリィは大急ぎで箒にまたがりながら、次に、ササミへと叫んだ。
「もし失敗したら、骨は拾ってね!」と。

リリィは床を蹴ると、再びルナに飛び掛ろうとするスケルトンに体当たりをした。
そしてスケルトンに抱きついたまま、窓の外に落とそうとする。
だが、反撃が無いはずがない。
下手をするとスケルトンごと向かいの建物や地面に激突するか、骨を抜かれて終わりだろう。

135 :シャオロン ◆sto7CTKDkA :2012/07/02(月) 18:06:43.09 O
>126-134
>「そんな怪しい物要りませんよ!それより大丈夫なんですか?
>「珍しい、いつも鷹揚なフリード君が焦ってるー」
>「こら!変なじょうだんならやめやがれ!おめーが何かに取り憑かれて敵になっちまったらすんげえやっかいだろうが。
>『あまりにも迂闊だよね』(猫語)
>「微妙にセリフが違っとるがね!」
赤マントを装備したシャオロンに、他の者たちはそれぞれの反応を示した。
が、シャオロンの方はそのどれにも返事を返さない。
さらに言うなら、石像が割れて中からレイが出てくるという驚きの登場にも、特に反応を示さなかった。
なぜならば。

>『あれはもう怪人赤マントなんだよぉぉぉ!犠牲者を血まみれにしその血でさらに赤くそまるぅぅぅ!
そう。 人面瘡が言っているように、今の彼女は怪人赤マントになっているからだ!
シャオロンの名誉のために言っておくと、別にマントを着たから乗っ取られたわけではなく。
乗っ取られたからマントを着た。と言うのが順番的には正しい。
もちろん、この場合なんの関係もない話ではあるが。

「諸君! 私はあえて言おう! 赤くない世界は屑であると!」
ササミの指摘したように言っている事が先ほどから違うのは、乗っ取る相手に合わせて言葉が変わるからだ。
相手の趣味趣向に合わせる事で乗っ取りやすくする赤マントの乗っ取り術である。
結果、赤マントの赤を渇望する思いと、シャオロンの世界征服の野望が見事に融合してしまったのだ!

「世界には赤が足りない! もっとだ! もっと赤を! もっともっと赤を!!」
仁王立ちで力説するシャオロンの言葉に合わせて、校舎の一角に真っ赤な火の手が上がる。
シャオロンのドラゴン型ゴーレム“アクライ”が炎のブレスで校舎を焼きだしたのだ。
学園の消火システムも防衛ゴーレムもすぐに動きだすので、さして大事にはならないだろう。
だがそれはしばらくでも、怪人赤マントと化したシャオロンの心を満たすには十分の光景であった。
「あーっはっはっは! 見たか! 平和にあぐらをかいて怠惰に暮らす豚共への正義の鉄槌を!
 赤は変化! 赤は進化! 赤に染め上げられた世界こそ真に人の暮らすべき楽園なのだ!
 お前たち! 赤が好きか!? 好きだな!? 好きだろう!!
 喜べ! これからこの学園は赤の学園として生まれ変わるのだ!!」
どっちが乗っ取られたのかわからない勢いで、怪人赤マントは宣言する。
早くなんとかしないと、本当に大変な事になるだろう。
「これから毎日校舎を焼こうぜ!」
言わなくてもわかるだろうが、本気である。

136 :青葉草介 ◆UeaUYwi1Nw :2012/07/05(木) 19:11:53.74 0
>>113
「あ、リリィさん久しぶりー。
ごめんね、ウィルス騒動の時何も出来なくて…何のために魔法薬学勉強してたのか分からないよね…」

>「私はね、今、学園七不思議について調べてたんだよ
「実は僕もなんだよ。これから、七不思議とか怪談とか、都市伝説とかに詳しい友達の友達に会いに行く予定なんだ」

「勿論僕も協力するよ。で、友達の友達にも協力してもらえれば万々歳だよ。
それじゃ、僕も行くね」

【旧校舎・三階】
「さて、ここの階だね。旧校舎の旧3年4組の教室、窓際の一番後ろにある席に行って、こう唱える」
「『お話聞かせて、友達の友達』」
青葉がそう唱えると、誰も居なかったその席に、忽然と一人の少女が現れた
「やぁ、僕を読んだかい? 友達の友達」


137 :フリードリッヒ ◆cOOmSNbyw6 :2012/07/06(金) 15:29:10.10 0
>131
毒液を吐き出す人面瘡
「フリージングウォール!!」
目の前に氷の壁を生み出し毒液を防御するフリードリッヒ
それにしてもたかが防御するのにいちいち気合入れすぎである

「それにしても赤マントに人面相、さらにスケルトンまで・・・・
 いったいどうなってるんでしょうか?」
『とりあえずターゲットを一匹に絞って一体ずつ撃破していこうよ』(猫語)
「では一番やりやすそうなスケルトンをターゲットに・・・・」
フリードリッヒは今までの情報から多数で挑めば何とかなりそうなスケルトンを相手にすることにした

>「スケルトン、私もお前をばっちり見ているわよ!!どうしたの、骨を抜かないの?」
「ああ!またリリィさんが無茶しようとしてる!?」
『それを助けようとしてまたフィー坊が怪我するんですね分かります』(猫語)

スケルトンごと窓の外に飛び出していくリリィ
「フリージングチェーン!!」
それを何とかしようと氷の鎖を生み出しリリィに巻きつけようとするフリード
元々は姉であるフリージアがフリージングドールマリオネットを操るのに使う氷の鎖
だが人間一人ぐらい引っ張るのはわけない丈夫さは持ち合わせている

「スケルトンを倒すには腰骨をハンマーで砕くか高温で燃やし尽くす事です!
 魔物図鑑に書いてあったから間違いありません!!」
『そうなのかぁ?』(猫語)
なぜか口調が一定しないグレン
これは猫語を人間語に翻訳した為に起こった弊害である
つまり氷の剣で戦うフリードには相性の悪い・・・・・
「フリージングフォール!!」
フリードリッヒはスケルトンの上に60cmクラスの氷の塊を落とす
「氷でハンマーを作っても僕には扱い切れませんが・・・・
 単純に物を落とすだけなら僕にも出来ます!!」
ちなみに姉であるフリージアが同じ技をやると1mクラスのが落ちてくるらしい
「言って置きますが僕はこの中で一番弱いんですよ?主に立場が!!」
『いやいや立場の低さなら使い魔の僕にはかなうまいよ』(猫語)
「それでもやらなきゃいけないんですよ男の子ですからね!」
はたしてスケルトンを何とかできるのだろうか?


138 :ルナ・チップル ◆7CpdS9YYiY :2012/07/07(土) 15:22:13.07 0
ササミに取り憑いていた人面瘡。
それはこの前のウィルス騒動で、ルナがササミを潰した瓦礫にくっついていたものかもしれない。
そしてシャオロンもまた赤マントに取り憑かれてしまっており
おまけにルナもスケルトンの怪異の真っ只中にいた。

>「スケルトン、私もお前をばっちり見ているわよ!!どうしたの、骨を抜かないの?」
骨抜きになったルナを助けようとしてくれているリリィの姿を見て
ルナはその身をクラゲのようにぷるぷると震わせながら感動している。
かたやスケルトンは、リリィに体当たりをされながら口をカタカタ。
声帯もそれを震わす呼吸器もない骨格模型(?)は骨を鳴らすしかないのだろう。
リリィに見つめられたスケルトンは逆に彼女の左肩を掴み返す。
するとルナの体に自身の骨がつるんと戻り
そのかわりにリリィの左腕の骨が、ぶらんと体外に飛び出した。
そう、スケルトンはターゲットをリリィに変更したのだ。

>「フリージングフォール!!」
でも間一髪。繰り出されたフリードの氷結魔法。
60センチの氷塊がスケルトンの頭蓋骨を衝撃で一階に跳ね飛ばすと、
スケルトンの体は落ちる頭蓋骨を追いかけて炎の海へ。
これで骨抜きの怪異は解除された…かのように見えた。

139 :ルナ・チップル ◆7CpdS9YYiY :2012/07/07(土) 15:22:58.05 0
いっぽう、ササミの肩の人面瘡は、血色の唇をバカバカと開閉しながらササミをまくし立てている。
その息は、まるで墓場の土のように冷たかった。

「げひゃひゃ。もうあんたの右腕はあたしのもんさ。ほらぁ!」
人面瘡に支配されつつあるササミの右腕が、自身の後頭部に手刀を繰り出す。
その攻撃は、ササミが意志の力で踏ん張るか、なにかの物理的な力でどうにかしないと
もの凄く痛い目を彼女にみせてしまうことだろう。

「ぐひっ、あんたの体に取り憑くなんざ、至極ぞうさないことだったねぇ。
え?それはなぜかって?ふふん、簡単なことさ。なぜならそれは、あんたが望んでいたことだからよ。
あの中国女や真っ裸の女と同じく、心の隙間に入り込んで同化する…それがあたしたちのやり方なのさぁ。
げひゃひゃひゃひゃ」
こだまする下卑た高笑い。続けて人面瘡は、支配した右手でササミの左手を掴み押さえつける。
それは肉体を完全に支配するまでの時間稼ぎだった。ササミに何らかの策を講じられては厄介だからである。

「ぐひひっ。大人しく観念しな。あたしに支配されるのはあんたの隠れた願望なんだよ。
たった一つの体に七つも顔があるんだ。どれか一つで統一したいって気持ちも沸いてくるんじゃないのかい?
美味しい物を独り占めにしたい。大好きな彼氏のキスを独占したい。
喜びはすべて七分の一…。さぞかしつらかろうねえ?
……それにあんたはもう一つ、大きく矛盾した願望を心の内底に秘めているのさ。
あたしがあんたを完全に支配したらそれを解放してやるよ。げひゃひゃひゃ!」

意志の統一化。はたしてそれがササミの隠れた願望なのだろうか。
心の裏に影のように存在する思いをササミは消すことが出来るのだろうか。

140 :ルナ・チップル ◆7CpdS9YYiY :2012/07/07(土) 15:23:44.84 0
よれよれとルナは立ち上がると目を瞠る。
火の海と化している一階で独裁者のようになっているシャオロン。
目の前にいるササミの肩の人面瘡。そして、箒に乗ったリリィが
窓の外へと猛スピードで飛んでゆくさまに。どれもこれもまさに悪夢。

「リ、リリィーッ!!」ルナの叫びが空しく響く。
リリィは暴れる箒を制御しようとしているのか、いったん箒は大人しくなると
くるんくるんとゆっくりとリリィと一緒に火の海へ落ちてゆく。
それは窓から落とそうとしたスケルトンがいなくなってしまい、つっかえ棒を失ったことと、
最近不機嫌なじゃじゃ馬の箒が生み出した悲劇だった。

「えっと、リリィのあーいうのって自業自得っていうんだっけ?
ち、ちがうわ!。リリィは私を助けてくれたんだもの!」
兎にも角にもこの騒動を終わらせるためには、まずリリィを助ける。
七不思議を解決する。ルナには少し目星がついていた。
スケルトンが逃げ出してきた死霊課がなんとなく怪しい。
自分が持っている口紅の七不思議は誰かが問わなければ思い出すこともないだろう。

「てやー!」
ルナは窓から火の海に飛び込む。
そして反転魔法で炎を氷に変えながらスーパーマリオのように氷の道を前進。
リリィと一緒に死んだようになった箒を掴んで炎で作った氷柱の天辺に確保する。

でも、炎の勢いは増していき囲まれてしまう。
ルナも反転魔法で足元の氷柱を維持するのでいっぱいいっぱいだ。

「ごめんねリリィ。たすけられないかも…」
ルナはリリィを守るために体に覆いかぶさった。

141 :ササミ ◆/TZT/04/K6 :2012/07/09(月) 23:28:23.49 0
二階の状況は混沌としていた。
骨抜きされクラゲのようになったルナに憑りつこうとしているスケルトン。
それを防ごうとするリリィとフリード。
体当たりを敢行し、スケルトンごと窓の外へと飛び出していくリリィ。

そこまではよかったが、今度はリリィがスケルトンの入れ替えの対象になってしまったようだ。
リリィの左腕の骨が抜き出されたのを視界にとらえたササミの毛が総毛立つ!
しかし間一髪、フリージングフォールによってシャレコウベを叩き落され、それを追っていく骨の体。
落ちるリリィも氷の鎖で絡み取ったのを見て
「フリード!素晴らしいがね!男前やがね!ってあかんがねええ!」
喜んだのもつかの間、荒ぶる箒によって氷の鎖が砕かれ、リリィは落ちていく。
しかも落ちていく先は火の海と化している!
「シャオロンの仕業か!?赤マントは血まみれにしてナンボやのに火まみれってどういうことやが!?」
シャオロンの大きな自我に赤マントすらも影響を受けている事も知らず吼えるササミ。
そして氷の鎖を道にして滑り落ちていくルナ。

すぐにでも落ちたリリィを追っていきたいところだったが、ササミは動けなかった。
右肩憑りつき今や右腕を支配下に置いた人面瘡が攻撃を仕掛けてきているのだから。

繰り出される手刀に項と背中の口が怪音波を発して迎え撃つ。
それぞれ違う波長の怪音波は一点で重なり衝撃波を生み出し、手刀を弾き飛ばす。
脊髄への一撃は防いだものの、右手は暴れ左手を抑え込む。
下卑た高笑いと共にササミの心の闇を抉り出す人面瘡の言葉に、ササミの12の金眼火睛が大きく見開かれた。
「ふざけた真似を!次世代魔王候補のあたしを舐めやあすなよ!」
唸り声のような声と共にスカートを構築する手袋が分離し、分裂した枝分刀が一閃した。

それぞれ右手首、二の腕を貫き壁に磔にし、肩の人面瘡の口を串刺しにするように塞いだ。
「フリード!私の右腕を凍らせてちょうよ!後でこの人面瘡にはいろいろ喋ってもらうでよ!」
腕を串刺しにした痛みに脂汗を浮かべながらフリードに叫んだ。

スケルトンや赤マントと違い、この人面瘡には意思があり喋れる口がある。
今突然巻き起こった複数の七不思議についても知っている口ぶりから、後でじっくり尋問するつもりなのだ。
スケルトンにしてもただのスケルトンに骨抜きなどできるはずがない。
あれもまた【七不思議】なのだ。
ただのスケルトンとして対処しても効果があるか疑問でしかない。
なんにしても情報が足りなすぎるのだ。

切り落としても復活し、支配領域を広げていく。
ササミの肉体をベースとしている以上石化も効果が期待できない。
となれば、封じ込めるには凍らせるのが効果的だと判断したのだった。

炎の中に飛び込んでいったリリィとルナが気がかりだったが、とりあえずこの右腕をなんとかしなくては!

142 :リリィ ◆jntvk4zYjI :2012/07/10(火) 20:58:19.34 0

>135 >137-141
スケルトンごと窓の外に飛び出していくリリィ。
飛び出した衝撃で、リリィの腕から空飛ぶ箒から離れてしまった。
>「フリージングチェーン!!」
>それを何とかしようと氷の鎖を生み出しリリィに巻きつけようとするフリード。
氷の鎖はリリィの服と空とぶ箒に絡みつき、落下を食い止めた。
反動でスケルトンの拘束からも離れられた!と思ったのはほんの一瞬。
「キャッ!!」
リリィの足がぐん!と重たくなった。
恐る恐る下を見ると、なんと、リリィの足にスケルトンが絡みついていた。
「キャー!キャー!!嫌ー!!」
リリィはじたばたと足をばたつかせ、スケルトンをけり落とそうとする。
だがスケルトンはカタカタと歯を鳴らしながら、じり、じりとよじ登ってくる。

> 「スケルトンを倒すには腰骨をハンマーで砕くか高温で燃やし尽くす事です!
>『そうなのかぁ?』(猫語)
腰骨!と聞いてリリィは、藁にもすがる思いでスケルトンに蹴りをお見舞いしようとする。
が、密着した状態で与えるダメージなどたかが知れていた。

そして-----とうとうスケルトンは、リリィの肩をつかみ、再び視線を合わせた。
「ひっ?!」
リリィは竦みあがった。彼女の左肩から、つるりと骨が飛び出した。
骨を抜かれても痛みはない。ただ、感覚ごと全て切り取られたような違和感があるだけだ。
「もうだめ!私もルナちゃんみたいに骨抜きにされちゃうんだ!うわああん、私にも炎魔法が使えたら!!」
スケルトンに入り込まれた人間は、その後どうなってしまうのだろうか?
リリィの皮をかぶったスケルトンになるのか、それとも・・・・・・・

>「世界には赤が足りない! もっとだ! もっと赤を! もっともっと赤を!!」
>仁王立ちで力説するシャオロンの言葉に合わせて、校舎の一角に真っ赤な火の手が上がる。
リリィは爆風に煽られ、蜘蛛の糸にかかった木の葉のように揺れた。
「わっぷ!!・・・・・え?ちょ、もしかしてこれは火を吐くドラゴン?!
 も、もしかして、スケルトンから私を助けるためために?」
リリィの淡い希望を打ち消すように、シャオロンのドラゴン型ゴーレム“アクライ”が炎のブレスで校舎を焼き始めた。
ブレスが直撃した後は、燃えるのではなく灰になりそうな勢いだ。
その威力を目の当たりにしたリリィの顔から、さーっと血の気が引いていく。
「キャー!そんなの食らったらスケルトンどころか骨も残らないよ!やめて、考え直して焼け死んじゃう助けてー!」
みっともなく命乞いをするリリィの横を、ドラゴンのブレスが通り過ぎていった。
一拍後、どぉおん!と足元から凄まじい爆風があがった。
恐る恐る地面を見ると、足元は既に火の海と化していた。


143 :リリィ ◆jntvk4zYjI :2012/07/10(火) 20:58:49.84 0
>「あーっはっはっは! 見たか! 平和にあぐらをかいて怠惰に暮らす豚共への正義の鉄槌を!(略)」
>そんな馬鹿な、と笑い飛ばしたかったが、シャオロンが本気だということは目を見ればわかった。
>「これから毎日校舎を焼こうぜ!」
「毎日毎日校舎焼いてたら、学園が無くなっちゃうじゃないですか!
 そんなことより、私もうすぐスケルトンになっちゃう、お願い助けてー!」

リリィの叫びもむなしく、-----とうとうスケルトンは、彼女の肩をつかみ、再び視線を合わせた。
「ひっ?!」
リリィの左肩から、つるりと骨が飛び出した。
骨を抜かれても痛みはない。ただ、感覚ごと全て切り取られたような違和感があるだけだ。
「もうだめ!私もルナちゃんみたいに骨抜きにされちゃうんだ!うわああん、私にも炎魔法が使えたら!!」
スケルトンに入り込まれた人間は、その後どうなってしまうのだろうか?
リリィの皮をかぶったスケルトンになるのか、それとも・・・・・・・?

>「フリージングフォール!!」
>でも間一髪。繰り出されたフリードの氷結魔法。
60センチの氷塊がスケルトンの頭蓋骨を衝撃で一階に跳ね飛ばすと、
スケルトンの体は落ちる頭蓋骨を追いかけて炎の海へ。
直後、リリィから飛び出ていた骨が、すっと彼女の体中に戻っていった。
「た、助かった・・・・・!ありがとう、フリードくん!」

だが、彼女の悲劇はこれで終わらなかった。
ビリビリ、と布が裂ける音に、リリィは青くなった。
見なくてもわかる。フリージングチェーンがしっかりつかんでくれた彼女の服。
それが、一連の乱暴な扱いや熱風の洗礼を受けて、とうとう悲鳴を上げ始めたのだ。

「・・・・・・キャー?!」
とうとう布が裂け、リリィは再び宙に投げ出された。
とっさに自分の箒をつかんだが、鎖の隙間からすっぽ抜けてしまう。
「わーん、箒こらえ性なさすぎでしょ!
 ・・・・うわあ、ごめんなさい失言でした!揺らさないで!落ちる!落ちるから!!」
とたんに箒の抵抗が切れ、ぴくりとも動かなくなった。
くるんくるんと箒とリリィはゆっくり落下していく。
地面は一面炎の海だ。飲み込まれたら一たまりもない。
(もうだめ・・・・・・!!)

>「てやー!」
「ルナちゃん?!」
窓から飛び込んできたルナは、反転魔法で炎を氷に変えながら、一直線にリリィの元へ。
>リリィと一緒に死んだようになった箒を掴んで炎で作った氷柱の天辺に確保する。
>でも、炎の勢いは増していき囲まれてしまう。
>「ごめんねリリィ。たすけられないかも…」
ルナはリリィを守るために体に覆いかぶさった。
「ううん。ううん。ルナちゃん、私こそごめん。
 ルナちゃんを助けたかったのに、結局何にも出来なかった・・・・」


144 :リリィ ◆jntvk4zYjI :2012/07/10(火) 21:00:23.20 0
そんな愁嘆場を演じていると、何の前触れもなく冷や水を浴びせかけられた!
「ガボガボガボ!」
比喩ではない。本当にものすごい勢いで水をかけられているのだ。
周りの炎が見る見るうちに鎮火していく。
「よかった・・・・・・学園の消火システム、やっと動き始めたみたいだね」
この分なら、防衛ゴーレムが到着するのも時間の問題だろう。

「スケルトン、燃え尽きちゃったのかな?ルナちゃんはどう思う?」
濡れ鼠になりながらそんなことをつぶやいていると、理科室からササミの緊迫した声が聞こえてきた。
>「フリード!私の右腕を凍らせてちょうよ!後でこの人面瘡にはいろいろ喋ってもらうでよ!」
リリィは驚いて顔を上げた。いったいどういうことだろう?と。

一方、反対側の校舎、学食と掲示板があった場所からは、いまだにシャオロンの高笑いが聞こえてくる。
「シャオロン隊長、赤マントにのっとられちゃったのかな?
 赤いまんじゅうどころか、赤が好きだろうとか言って赤をごり押ししてたよね?
 あれ、素なのかな?それとも七不思議の赤マントにのっとられちゃってるのかな?」
シャオロンの「赤がすき宣言」を余さず聞いたわけではないリリィは、半信半疑のようだ。
「ねえ、ルナちゃんの反転魔法を使ったら、シャオロンさん元に戻るんじゃないのかな?」
リリィは、あまり深く考えずにそう言った。
だがもし実行するとしたら、慎重を期す必要があるだろう。
なぜなら、シャオロンの自我が赤マントを押さえつけて現状ならば、逆転魔法で主導権が入れ替わる可能性も否定できないからだ。

シャオロンと“アクライ”の元に、学園防衛用のゴーレム3体が到着した。
ここで交戦するとなると、怪獣大決戦のような状況になるのは受けあいだ。
踏み潰されたりとばっちりを受けたりする前に、安全な場所に避難する必要があるだろう。

145 :シャオロン ◆sto7CTKDkA :2012/07/13(金) 01:11:24.09 O
シャオロンのドラゴン型ゴーレムアクライの狼藉も、そう長くは続かない。
学園のガーディアンや消火装置が作動し、放火を止めようとするからだ。
一方怪人赤マントとなったシャオロンは、今のところ止める者が誰もいなかった。
「権力者の走狗がもう現れたかっ!」
ガーディアン接近を知ったシャオロンはすぐにドラゴンゴーレムを操作し、これを迎え撃つ。
ガーディアンゴーレムは数が多くても自立型であり。
対するアクライは、シャオロンが直接操作しているためにより以上に的確な対応を取る。
そのために、数では劣勢でもアクライは防衛ゴーレムを圧倒する動きを見せていた。
アクライの尻尾を掴んで動きを止めようとした一体のゴーレムが、逆に振り回されて校舎の一角に投げ飛ばされる。

「無駄無駄無駄ァ! お前たちの血で墓場を染めてやろう!!」
御機嫌の怪人赤マントことシャオロン本人は、一見無防備に見えた。
が、仮に無防備ではなかったとしても、怪人の天下は長くは続かないだろう。
騒ぎを聞きつけた教師陣が駆けつければ、赤の反乱はすぐに鎮圧されるであろうから。

146 :ルナ・チップル ◆7CpdS9YYiY :2012/07/14(土) 20:33:18.15 0
>「スケルトン、燃え尽きちゃったのかな?ルナちゃんはどう思う?」
「燃え尽きちゃったのかも…」
消化装置が作動し始めたのでルナは安心しながら答えた。
気が抜けすぎて乱暴な言葉使いも消えている。
二階ではササミはフリードに緊迫した声で話しているのが聞こえる。

>一方、反対側の校舎、学食と掲示板があった場所からは、いまだにシャオロンの高笑いが聞こえてくる。
>「シャオロン隊長、赤マントにのっとられちゃったのかな?
 赤いまんじゅうどころか、赤が好きだろうとか言って赤をごり押ししてたよね?
 あれ、素なのかな?それとも七不思議の赤マントにのっとられちゃってるのかな?」
>シャオロンの「赤がすき宣言」を余さず聞いたわけではないリリィは、半信半疑のようだ。
>「ねえ、ルナちゃんの反転魔法を使ったら、シャオロンさん元に戻るんじゃないのかな?」

「うん。じゃあやってみるね」
ルナもリリィと同じく何も考えないで魔法を使うと決めた。
ルナにはもとから気配がないのでこそこそしながら
シャオロンの背後をとるのは容易だった。

>「無駄無駄無駄ァ! お前たちの血で墓場を染めてやろう!!」

「この、血だるまも火だるまもまっぴらごめんだっつーの!」
タクトを振りかざせば、反転魔法の稲妻がシャオロンにむかい飛んでゆく。

147 :リリィ ◆jntvk4zYjI :2012/07/17(火) 02:43:06.77 0
>145-146
>アクライの尻尾を掴んで動きを止めようとした一体のゴーレムが、逆に振り回されて校舎の一角に投げ飛ばされる。
どぉん!と派手な悲鳴と土煙が上がった。
>「無駄無駄無駄ァ! お前たちの血で墓場を染めてやろう!!」
「はひいっ!たいちょー!お願いだからやめさせてください!」
ご機嫌なシャオロン&赤マント対照的に、どん底のリリィは頭を抱えた。
「これ以上校舎を壊すと、反省室送りになっちゃいますよー!」
リリィがわかりきったことを大声でペラペラ叫んでいるのには、一応意味がある。
それは、シャオロンの注意を引くことだ。
彼女の注意を自分に向けさせることで、シャオロンの背後に回り込もうとしているルナの援護をしているのだ。

>「この、血だるまも火だるまもまっぴらごめんだっつーの!」
>タクトを振りかざせば、反転魔法の稲妻がシャオロンにむかい飛んでゆく。
「当たった?!」
リリィの目には反転魔法が命中したように見えたが、実際にはどうだっただろうか?
「隊長さん聞こえますか?えっと、まだ、赤は好きですか?!
 赤いまんじゅうって一体何ですか?」

リリィがシャオロンに呼びかけていると、周りの野次馬の声もちらほら耳に入ってくる。
「まだ風紀委員は来ないの?」
「ファンブル先生がこっちに向かってる。みんな、魔法使うなよ?!ゼッタイに使うなよ?!」
まずい、とリリィは思う。
今話題に出たファンブルという教師が使う魔法は、『失敗』の運命操作魔法なのだ。
もっと詳しく言えば、見える範囲の他人の行動を、その気さえあれば必ず大失敗させることができるという恐ろしいものだ。
それ以上に恐ろしいのが、この能力によってどんな大失敗を呼び込ませるのか、ファンブル本人にもわからない、ということだ。

「シャオロンさん、風紀委員に拘束されると大変なことになるよ。とにかく、いったんこの場を離れましょう」
そういってリリィは、窓の外に見える理科室を指差した。
あちらと合流しよう、ということなのだろう。
リリィは完全に、シャオロンは赤マントの呪いから解き放たれたのだと考えていたのだった。

リリィは壊れた窓から、向こう側の校舎にいる人影に向かって叫んだ。
「ササミちゃん、怪我の具合はどう?フリード君、そっちの状況を教えて?」

148 :怪人赤マント ◆sto7CTKDkA :2012/07/18(水) 14:35:34.49 O
>146-147
>「この、血だるまも火だるまもまっぴらごめんだっつーの!」
ルナの放った反転魔法の稲妻に撃たれたシャオロンこと怪人赤マントは、実際の雷に撃たれたように動きを止めた。
赤マントとしても不意打ちに警戒していなかったわけではないが、シャオロンのゴーレムが自立型ではないのが災いする。
細かな指示が可能な一方で、操り手が気づかない攻撃を防御する事が出来ないのだ!

>「隊長さん聞こえますか?えっと、まだ、赤は好きですか?!
> 赤いまんじゅうって一体何ですか?」
「……。 すんませんでしたあっ!!」
しばらく硬直していた赤マントは、リリィの言葉に弾かれたように土下座した。
「今まで何も知らずに身勝手な事をしてきて誠に申し訳ない!
 自分の事はこれからは、道端に落ちて風雨にさらされた糞のようなものだとお考えください!
 隊長も赤も赤まんじゅうも考えただけで恐ろしいものです!
 これからは皆様の世界平和のために尽力する所存であります!」

>「シャオロンさん、風紀委員に拘束されると大変なことになるよ。とにかく、いったんこの場を離れましょう」
「はいっ! わかりました!」
それまで這いつくばっていた怪人赤マントは素早く立ち上がった。
反転魔法の効果で驚くほど素直である。
>「ササミちゃん、怪我の具合はどう?フリード君、そっちの状況を教えて?」
「ご友人のお怪我の具合はいかがでしょうか!
 重傷ならば自分のゴーレムで治療できる場所まで運びますが!?」

リリィと一緒にササミに声をかけているのは、シャオロンではなくあくまでも怪人赤マントである。
マントを脱がさない限り赤マントの支配は解けないのだ。
マントを脱がせるつもりなら、今なら多少抵抗されても簡単にできるだろう。
もちろん、世界平和のために赤マントを脱がさないでそのままおいておくのも構わない。

149 :フリードリッヒ ◆cOOmSNbyw6 :2012/07/18(水) 20:11:34.20 0
>138-148
>「フリード!私の右腕を凍らせてちょうよ!後でこの人面瘡にはいろいろ喋ってもらうでよ!」

「あまり友達の体を傷付けるような行為はしたくはないのですけど・・・・・」
と文句を言いつつ魔力を身に纏い氷の呪文を唱えるフリードリッヒ
「フリージングリング!!」
氷の輪がササミの右腕を締め付けるように覆う
「元々相手の相手の動きを封じる呪文ですので殺傷力は皆無のはずですが・・・・・・
 万が一凍傷になられても困りますので早めに別の方法を考えた方が良いと思いますよ」
ちなみに役割の被るフリージングスネアは下半身
こっちは上半身担当である
「もっと僕が優秀なら相手を傷つけること無く止められるスリープクラウドとか使えるんですけどね・・・・
 あれ?でもあのオワゾーさんにも使えないぐらいですからやっぱり遺失呪文なんでしょうか?」
『基本的に魔法使いしか居ない学園じゃ抵抗されて終わりなだけなんじゃね?』(猫語)
逆に言えば非魔法関係者ならイチコロである
「じゃあ精神魔法系に抵抗できなかった炎道さんやシャオロンさんの立場はなんなんですか?」
『それは相手が悪かったということで』(猫語)
どうやら赤マントは相当強力な呪いの類のようである
それも以前のアドラスの剣と同じレベルで・・・・・
まあどちらにせよスリープクラウドは簡単にかかると強すぎる気がするのでまず効かないだろう
「そういえばグレンは呪いとかは・・・・」
『神官の息子≠神官だから無理だよ』(猫語)
どうやら解呪は門前の小僧レベルでは無理なようである
それに浄化なんてしたら味方のアンデット系も影響を受けてしまうだろう
主にレイブンなどがである

>「隊長さん聞こえますか?えっと、まだ、赤は好きですか?!
> 赤いまんじゅうって一体何ですか?」
>「この、血だるまも火だるまもまっぴらごめんだっつーの!」
>「ご友人のお怪我の具合はいかがでしょうか!
 重傷ならば自分のゴーレムで治療できる場所まで運びますが!?」
自分の不利を知ると急に卑屈になる赤マント

>「ササミちゃん、怪我の具合はどう?フリード君、そっちの状況を教えて?」
「なんとか僕の氷呪文で静かにさせることに成功しました」
『そのうち復活してまた暴れるんじゃね?』(猫語)
何故か主語を言わないフリード達

なんだかおとなしくしている赤マントを見て・・・・
「こんなの僕が知ってるシャオロンさんじゃないです
 僕が知ってるシャオロンさんは僕の姉さんと同じレベルで無駄に偉そうなはずです!!」
と失礼なことを口走るフリードリッヒ
こんな事だから顔だけいい男とか呼ばれてしまうのである


150 :ササミ ◆/TZT/04/K6 :2012/07/19(木) 23:00:05.04 0
>>149
>「あまり友達の体を傷付けるような行為はしたくはないのですけど・・・・・」
フリードの言葉に痛みと危機的状況による脂汗を忘れて思わずきょとんとするササミ。
人面瘡の浸食と動きを止めるために効率的で当たり前の行動を、友達の体を傷つける、と認識している事に驚いたのだ。
全く思いもよらぬ認識にまた一つ人間の不思議さを噛みしめるササミの顔は思わず綻びた。

「優しい男やね。ほやけどこれは治療と思ってちょーせーよ。
スリープクラウドは私も寝てしまうからあかんがね。
凍らせて固めるのが一番だぎゃ。
凍傷になる前に場所を移動して解凍するからええがや。」
右腕が氷の輪に覆われていくのを見ながらフリードに応え、笑って見せた。


完全に右腕が凍ったころには、フリードが窓から身を乗り出してリリィに応えていた。
その後ろからひょいと顔を出すと、いろんな意味でカオスであった。
消火の為に降り注ぐ水と、勢いが衰えていく炎。
ドラゴン型ゴーレムアクライにガーディアンゴーレム。
ルナとリリィの無事を知りホッとするが、それらを塗り潰すようなカオスがそこにあった。
「ぶひゃひゃひゃひゃひゃ!なんやねシャオロン!
頭でもぶつけたー?」
思わず大笑いしながら三つの口が呪文を唱え始めた。

凍った右腕を引きずるようにふわりと浮きあがると、呪文によって現れた黒い塊と共に飛び立った。
黒い塊は虻の群れ。
大量の虻は食堂内を飛び回り混乱を増長する。
しかしこの虻は降り注ぐ雨に落とされることなく、まだ残る炎に舐められることもない。
なぜならば、幻影によって作り出されたものだから。

食堂が混乱しているのをしり目に足でルナとシャオロンの襟首をつかむ。
健在な左腕でリリィを抱えると、再度飛び立った。
「シャオロン、デカブツで移動しても目立ってしゃーないがね。
陽動に残していきやーせ。
場所を移動して邪魔の入らんところで七不思議を解明するでよ」
三人を抱えてフリードの待つ隣の棟の二階へと舞い戻ったのだった。

シャオロンを運ぶ際、ササミの足はその襟首をつかんでいた。
重みでマントが外れるかどうかは微妙なところだろう。

151 :リリィ ◆jntvk4zYjI :2012/07/22(日) 18:27:04.93 0
>147-150
ルナの反転魔法をもろに食らった「隊長」ことシャオロン。
>「……。 すんませんでしたあっ!!」
恐る恐る声をかけたリリィは、彼女が突如土下座したことに仰天する。
「えっ?え。あ、あの?」

>「今まで何も知らずに身勝手な事をしてきて誠に申し訳ない!
> 自分の事はこれからは、道端に落ちて風雨にさらされた糞のようなものだとお考えください!
> 隊長も赤も赤まんじゅうも考えただけで恐ろしいものです!
> これからは皆様の世界平和のために尽力する所存であります!」

( ゜д゜) ・・・・・・。 

( ゜д゜ )

「あー・・・・・でもでも、ルナちゃん。
 隊長さんが操ってたゴーレムの動き、止まったみたい、だね?
 だったら、今は隊長さん、このままの方がいいよね?・・・・・ちょっとイロイロ後が怖いけど」
反転魔法中のシャオロンの記憶が飛んでいることを、今は祈るばかりである。
「ていうか、赤まんじゅうってそんなに恐ろしいものなんだ・・・・・どんなんだろ?・・・・・魔物?」
リリィは脳内で、赤く得体の知れないモンスターを勝手に想像し、身震いした。

フリードにササミの状態を尋ねると、傍らの隊長が口ぞえする。
>「ご友人のお怪我の具合はいかがでしょうか!
> 重傷ならば自分のゴーレムで治療できる場所まで運びますが!?」

>「なんとか僕の氷呪文で静かにさせることに成功しました」
>『そのうち復活してまた暴れるんじゃね?』(猫語)
「えええっ!!フリード君、ササミちゃんを凍らせて静かにさせたの?!」
仲間思いで紳士なフリードが、ササミ相手にそんな荒療治をするとは。
そこまで状況が切迫しているのだろうか?
 
リリィが固まっていると、フリードがやけに卑屈なシャオロンを見て驚いている。
>「こんなの僕が知ってるシャオロンさんじゃないです
> 僕が知ってるシャオロンさんは僕の姉さんと同じレベルで無駄に偉そうなはずです!!」
>「ぶひゃひゃひゃひゃひゃ!なんやねシャオロン!
>頭でもぶつけたー?」
「あ、あれ?!ササミちゃん?凍らされてたんじゃ・・・・・・・?!」
よく見ると、ササミの右腕の一部が氷の輪をつけたように凍らされている。
「なぁんだ。ササミちゃんに憑りついた変な顔だけ凍らせたのね。ああ、びっくりした」
それでも、体の一部を凍らせていることがササミの負担になっていないわけが無い。
早めに保健室に担ぎ込むなり、他の治療法を探すなりしなければならないだろう。
そして、他に選択肢が無かったとはいえ、その方法を取ったフリードの内心を思うと、リリィは複雑だった。
「頭ぶつけたんじゃないよ!ルナちゃんの反転魔法だよ!
 ササミちゃんも、そんなに笑うこと無いじゃない。赤マントのせいでこうなっちゃったんだから!!
 ・・・・・・って、何ササミちゃん。そのブンブン言う黒いの?」


152 :リリィ ◆jntvk4zYjI :2012/07/22(日) 18:28:04.57 0

黒い雲は食堂に吸い込まれるように入っていった。
>「ぎゃー!アブよ!なんでこんな大量に!刺されるー!」
>「虫は炎系に弱いんだ!焼き払え!」
>「なんだこれ、全然数が減らないぞ!」
>「お残しは許しまへんでー!!」

食堂の中の混乱に気を取られていると、ササミがすぐ傍に来ていた。
「う、うわっ?!」
ひょいっと抱えあげられると、次の瞬間には空を飛んでいた。
「や、私重いし空も飛べるから!」
ササミの首筋にすがりつきながら、リリィは必死で訴えている。
あまりに驚いたので、左手の異常を隠すだけの余裕も無かった。
ササミにはたくさんの顔がついている。
リリィの左手の指三本の骨が戻っていないことは、もうばれてしまっただろう。
これは炎の中に落ちたスケルトンが、まだ完全に消滅していないことを意味していた。
『これ以上広がる様子は無いからとりあえずは大丈夫。・・・・・・皆にはナイショだよ?
 あとでササミちゃんの黒手袋、ひとつ借りてもいい?』
リリィは、しーっと唇に手を当てながら、テレパシーでササミにだけ語りかけた。

「フリード君おまたせ。ササミちゃんのことありがと。
 あと、あんまり気にすること無いよ。私なんか、何も出来なかったんだから」
リリィは、合流したフリードの肩を、ぽんとたたいた。

「ねえねえ隊長さん。幽霊とか人面そに憑依された人を元に戻すにはどうしたらいいの?」
直球でずばっと本人に聞いてしまうあたり、リリィは心理戦などとは無縁の人種だった。

「ルナちゃん、体は大丈夫?骨は全部体に戻ってる?
 とりあえず、赤マントに反転魔法かけても元に戻らないって言うのがわかっただけでも収穫だよね。
 ところでササミちゃん、こんな場所で、どうやって七不思議を解明するの?
 憑依されたっていうのなら、死霊科とかに駆け込んだほうがいいのかな?]


153 :シャオロン ◆sto7CTKDkA :2012/07/27(金) 21:03:36.27 O
>149-152
>「こんなの僕が知ってるシャオロンさんじゃないです
> 僕が知ってるシャオロンさんは僕の姉さんと同じレベルで無駄に偉そうなはずです!!」
>「ぶひゃひゃひゃひゃひゃ!なんやねシャオロン!
>頭でもぶつけたー?」
> 「頭ぶつけたんじゃないよ!ルナちゃんの反転魔法だよ!
> ササミちゃんも、そんなに笑うこと無いじゃない。赤マントのせいでこうなっちゃったんだから!!
「はっ。 恐縮です」
シャオロンの影響を受けて無駄に偉そうな性格になっていた所に、反転魔法を受けたのだ。
おかげで怪人赤マントはすっかり卑屈な性格になってしまっている。

>「シャオロン、デカブツで移動しても目立ってしゃーないがね。
>陽動に残していきやーせ。
>場所を移動して邪魔の入らんところで七不思議を解明するでよ」
「はっ。 了解であります」
襟首を捕まれてもなすがまま。
命令されても揉み手すり手で唯々諾々。
フリードがこんなのおかしいよと言うのも無理のない状態の、怪人赤マントであった。
ちなみに、襟首を捕まれてもマントが離れることはなかった。
それだけは離してなるものかと、怪人赤マントがしっかり押さえていたのだから。

>「ねえねえ隊長さん。幽霊とか人面そに憑依された人を元に戻すにはどうしたらいいの?」
「それはもう。 憑依している原因を、叩き潰すか切り離せばよろしいのでございます」
静かな所に移動してのリリィの質問に、赤マントはそう答える。
もちろんそれは一時しのぎの方法だ。
潰しても離しても原因が消えるとは限らないし、また別の相手に憑依するかもしれないのだ。
ただ赤マントとしても自分が憑依体である以上、一般論以上のことを話すつもりはないようだった。
いかに反転魔法の影響下にあっても、自身の存在に関わる話をあまりしたくないのは当然だ。
だが1つの解決策は、次の瞬間示される事になる。

ゴツンと鈍い音がして、怪人赤マントとなっているシャオロンは悲鳴もあげずにぶっ倒れた。
怪人の後ろにはいつのまにか少女が立っていて、怪人の後頭部を手にした十字架で力いっぱいぶん殴ったのだ。
怪人のマントと同じ真っ赤な色の修道服を身につけた少女は、慣れた手付きで倒れたシャオロンから赤マントを剥ぎ取った。
奪ったマントはすぐに脇に置かれた透明の箱に入れられ、手際よく箱の蓋が封印される。
端的に見ると、7不思議の横取りとも見えるだろう。

「私は学園教師陣の依頼を受けて行動中のマリアです。
 今回の事件の重要参考人と証拠品は、こちらで預からせてもらいます。
 この決定に異論のある方は、7日以内に文章の形で教師同盟に提出してください。
 それ以外のいかなる抗議も異論も一切認められません」
冷たい目で一同を見ながら事務的かつ一方的に語る少女を、知っている生徒もいるかもしれない。
少女……マリアは以前、リリィやフリードと一緒に、ある事件解決のために協力した事があったからだ。
ただ、今のマリアの対応は知り合いに対するものではなかったし、口調も態度も決して友好的とは言えなかった。
ちなみに抗議は文章でなどと言っているが、本気で言っているのではなく、ただの時間稼ぎの口実である

一方的に話を終えると、マリアは左手で赤マント入りの箱を持ち。
右手でシャオロンの襟首を掴んで引きずりながら、その場を立ち去ろうとした。
先ほども言ったように異論も抗議も無視するだろうし、無理に引き止めようとすれば実力行使に訴えるだろう。
そのかわり、マリアは数歩歩いた所で立ち止まり、振り返ってじっとリリィの顔を見つめた。
それから、理解できないといいたげな表情で口を開く。
「全部持って行こうと取りにくるでしょうから、速くなんとかしないと大変よ」
リリィとササミにはそれが骨の事だとわかるだろうが、わからなくてもマリアはそれ以上何も言いはしない。
“何が理解できないか”を理解されなくても気にはしない。

言いたい事を言ったマリアは、また気絶したシャオロンを軽々と引きずりながら先に進み始めた。
今度は何があっても、足を止めることはないだろう。

154 :ルナ・チップル ◆7CpdS9YYiY :2012/07/29(日) 20:45:02.85 0
>「ルナちゃん、体は大丈夫?骨は全部体に戻ってる?
 とりあえず、赤マントに反転魔法かけても元に戻らないって言うのがわかっただけでも収穫だよね。
 ところでササミちゃん、こんな場所で、どうやって七不思議を解明するの?
 憑依されたっていうのなら、死霊科とかに駆け込んだほうがいいのかな?]

「うん、もどってる…かも。よくわからないけどないとこはないかも。
でも、リリィのほうこそだいじょうぶ?どこも怪我ない?」
ルナは、リリィの骨が戻っていないことに気がついていない。
ササミから二階の理科室におろされると、少し安堵して…

「ねぇ、それなら死霊科に行こう?スケルトンの噂の出所だよね。
つーか、そもそもその死霊科ってなに?」
とリリィたちに質問。廊下側のドアノブに手をかける。すると背後で鈍い音。
振り返ればシャオロンがマリアという女に引き摺られながら廊下に出てゆくのが見えた。
大人の事情というやつだろう。

「まったくやれやれだわ。あ、そうだ。フリードさま。こんかいはあなたが先頭よ。
肉壁となって七不思議からか弱い女子たちを守るのよ。それと言っておくけど私に美少年って設定は通用しないから。
甘やかしたりなんて絶対にしないからね。私はね、この世で唯一の美少年キャラは私のお兄ちゃんだけって思ってるの。
あしからず」

廊下に出ると向こう側からマリアが歩いてくる。

「…あれ?あのこ…。あっちに歩いてったんじゃ。道、間違って戻ってきちゃったのかな?」

マリアとすれ違い、ルナは廊下を歩いてゆく。
向かう先は死霊科の教室。廊下にコツコツと響く足音。
それ以外は静寂が停滞する学園の午後。ルナは我慢しきれず口を開く。

「うーん…。とりあえずそのササミにとりついてる人面瘡の弱点ってみんなはなんだと思う?
弱みとか掴めたら言うこと聞くようになるかも。
まあそのままほっといて七不思議を解決しちゃうのもありかもだけど」
ササミを横目で見ながらしばらく廊下を進むルナ。
気のせいか、廊下が長く感じる。

155 :フリードリッヒ ◆cOOmSNbyw6 :2012/07/31(火) 08:55:00.20 0


>「憑依されたっていうのなら、死霊科とかに駆け込んだほうがいいのかな?]
「ネクロマンシーカリキュラムの所ですよね
 僕はあの人達は苦手なんですけど・・・・・・・・・」
『死者の魂はそっとしてあげるべきだよね神官の息子的に考えて』(猫語)

>「私は学園教師陣の依頼を受けて行動中のマリアです」
とあっさりと赤マントを格納してしまいシャオロンを連れて行ってしまうマリア
「まあ確かに体を乗っ取られたのは彼女の不注意で招いた事態ですけど
 一応被害者でもあるのであんまり酷い事しないでくださいよ」
酷い事ってなんだろう?

>「場所を移動して邪魔の入らんところで七不思議を解明するでよ」
>「まったくやれやれだわ。あ、そうだ。フリードさま。こんかいはあなたが先頭よ。
肉壁となって七不思議からか弱い女子たちを守るのよ。それと言っておくけど私に美少年って設定は通用しないから。
甘やかしたりなんて絶対にしないからね。私はね、この世で唯一の美少年キャラは私のお兄ちゃんだけって思ってるの。
あしからず」
「ネメシスプライム!?」
ネメシスプライム・・・つまりブラックコンボイ
ブラコンという意味である
『やっぱフィー坊の知り合いのブラコンみたいに兄のパンツとか盗むのかな』(猫語)
そんな変態は滅多に居ない
「まあ確かに世の中には僕より綺麗な男の人っていくらでも居るような気もしますし
 ステータス的な意味でエルフとかには勝てませんが
 美形は心構えだと思いますので・・・・・・・」
『魅力値は顔の良さじゃないよ魅力を総合したものだよ』(猫語)
そもそもフリードリッヒは年齢の割に肉体が幼すぎ背が低すぎるのが欠点である

>「うーん…。とりあえずそのササミにとりついてる人面瘡の弱点ってみんなはなんだと思う?」
「やっぱり本体を守らないと自分も危ういって所ですかね?」
『独立した自分だけの体を持たないことかな?』(猫語)
それは倒す方法とかじゃ無い
「試しにタバスコとか口のあたりに塗ってみましょうか?」
『それササミさんも辛くない?』(猫語)
まさに外道である

「とりあえず僕が先頭ということで防御を固めさせていただこうと思います」
とどこからともかく美しい鎧を取り出し身に付け始める
『・・・・・それって呪われた防具”悲劇のブレストアーマー”じゃ』(猫語)
悲劇のブレストアーマー・・・・それは身に付けるとどんどん胸が減っていくという呪いの鎧であり
かつてアドラス戦にも使われた装備でもある
「男の僕には関係ありませんしサイズも合うんで・・・・・・
 それにすでに呪われていれば呪いの重複はありませんからね」
ちなみに自ら進んで呪いの防具を着てしまうのも呪いの効果であるのだが
フリードはそのことに気がついていない


156 :ササミ ◆/TZT/04/K6 :2012/07/31(火) 23:17:03.27 0
「ここじゃ七不思議を解明しようにもおつつきゃーせんし、邪魔が入るとあかせんやろ?
アブの群れの幻覚魔法でみんなが混乱しているうちに抜け駆けといこまいて」
ルナとシャオロンを足で掴み、リリィを抱えて浮かび上がるササミ。
軽く笑みを浮かびながら意図を伝えたのだが、その笑みはすぐに打ち消されることになる。

首筋にしがみついたリリィの左手から指三本の骨が出ているままであることをうなじと背中の顔が確認するや否や表情が一変する。
険しくなった表情に気づいてか、リリィがテレパシーを送ってきた。
何かを言おうとしたが、唇に手を当てしーっとしているのを見て、応える代わりに顔の剣が取れ、少し悲しげな顔になる。
無言でテレキネスを使いリリィに左手用の手袋を渡して、そのままフリードの待つ隣の棟の二階へと舞い戻ったのだった。

「さて、憑りつかれているとはいっても七不思議が二つも手中にあることやし、反転魔法で素直になっとるなら話は早そうだがね。」
自分の肩の人面瘡とシャオロンに憑りついた赤マント。
しかもルナの反転魔法でやたらと素直になっている赤マントがいるので情報は引き出し放題だろう。
リリィの問いに一般論的な答えを返すシャオロンを見ながらどう根掘り葉掘りしていこうかと思っていたら……

突如として現れたマリアにシャオロンは殴り倒され昏倒。
赤マントをあっさりと剥ぎ取って有無を言わさぬ口調で横取りしていってしまうのだ。
突然のことに唖然としてしまい、反応をしようとしたときには更なる言葉が。
その言葉はササミをとどめるに十分すぎるものだった。
>「全部持って行こうと取りにくるでしょうから、速くなんとかしないと大変よ」
リリィにかけられた骨抜きの呪いはそのままなのだ。
今は左手の指三本であっても、このままで終わるはずがない。
そして今、それに対処する術を知らないのだから。

結局のところ怪奇現象や呪いの専門である死霊科に行くことになったのだが、本来ササミは死霊科へ行くことは反対だった。
食堂から離れたのも、同じ理由。
七不思議を解明するのはあくまで自分たちでなければならない。
死霊科へ持ち込めば、マリアがシャオロンと赤マントを持ち去ったように七不思議の解明も攫われてしまうのでは、という危険性を感じていたから。
だが、事態はそれどころではない。
このままではなすすべもなくスケルトンにリリィの骨を抜かれ入れ替わられるかもしれないのだから。

>「うーん…。とりあえずそのササミにとりついてる人面瘡の弱点ってみんなはなんだと思う?
ルナの言葉にササミも考え込む。
協力的になっていた赤マントが横取りされた以上、人面瘡から情報を引き出さねばならぬのだが、そうそう簡単に引き出せるとは思えない。
今は凍らせ動きを止めているが、情報を引き出すのに時間をかければ右腕だけでなく全体も乗っ取られかねないのだから。
>「試しにタバスコとか口のあたりに塗ってみましょうか?」
「あかんがね。口だと喋れなくなるかもしれせんし、目の方がいいがね。でもタバスコとか持ってるんきゃ?」
戦闘を歩きながら外道な提案をするフリードの言葉に、合理性を乗せてみる。

そんな話をしながらふと気が付いた。
廊下が妙に長い。
いや、長すぎる。
超視力を持つササミをもってしても廊下の先が見えないほどに。
さらに廊下の左右に並ぶ壁やドアが延々と続いているのだ。

「なあ、フィジル魔法学園の廊下ってこんなに長いもんなんきゃ?」
フリードの肩に手をかけふわりと浮きあがると、枝分刀を分裂させ周囲に展開。
完全なる戦闘態勢である。
「なんやしゃん嫌な予感がするから、ちょっと先を見てくるなも。ここでまっとってちょーよ」
そう言い残し、矢のようなスピードで飛び去って行った。

それから数分後。
三人は背後から飛来するササミに気づくだろう。
ササミの顔には疑念と焦燥が浮かんでいる。
「まっすぐ飛んだはずやのに……幻術に嵌められとるか、七不思議「無限回廊」か……とりあえず!」
六本の枝分刀が超振動を得て輪郭をぶれさせながら竜巻のように荒れ狂う!
その刃は壁と言わず扉と言わず切り刻んでいく!
廊下をまっすぐ飛んでも戻ってきてしまうのであれば、壁やドアを膾斬りにして新たなる進路を作ろうというのだ!

157 :リリィ ◆jntvk4zYjI :2012/08/04(土) 15:21:12.46 0
>「うん、もどってる…かも。よくわからないけどないとこはないかも。
>でも、リリィのほうこそだいじょうぶ?どこも怪我ない?」
「大丈夫。心配要らないよ」
リリィは細心の注意を払いながら、なんでもないように答えた。
今「中指、薬指、小指の骨がない!」と大騒ぎしたところで、どうなるものでもないからだ。
それはスケルトンが完全に消滅していないのを意味していたが、幸い、リリィの骨の消失は止まっている。
いわゆる現状維持というやつだ。
炎の中に消えたスケルトンを探し回って時間を浪費するより、ササミの人面その方を何とかするのが現実的だ。
今のところ骨が今以上に消える気配はない。
それはつまり、炎の中に消えたスケルトンが完全に消滅したのではないということを示していた。
しかし、今のリリィには、まだ消火の終わっていない炎の中に分け入り、スケルトンと対決する気はなかった。
指程度の欠落なら、今のところ問題はない。
どこにいるかわからないスケルトンを探し回って時間を浪費するよりは、ササミの人面瘡を何とかするほうが前向きだろう。
(死霊科に行けば、スケルトンだけじゃなく人面瘡についても何かわかるかもしれないしね)
リリィにかかれば、スケルトンも人面瘡も憑依でひとくくりされてしまうようだ。
「死霊科っていうのは、フリード君が言ってたとおり、ネクロマンシーカリキュラムの所だよ。
 幽霊とか、アンデットとか、憑依とか、そういうのに詳しいはずなんだ。
 あ、フリード君、そんな嫌そうな顔しないでよ。
 あ、もしかして、可愛い女の子の霊でも憑依させられて、女の子としてデート!なんてことがあったとか?
 ああは、まさかね!」
ことさら明るく笑いながら、リリィはササミの手袋をつけた左手を、そっとポケットに隠した。

>「それはもう。 憑依している原因を、叩き潰すか切り離せばよろしいのでございます」
「そっか、じゃあ赤マントさんを剥ぎ取ればシャオロンさんは元に戻るんだ。
 でもそれだと、今度は剥ぎ取った人が赤マントさんになっちゃうじゃない。
 マント相手じゃ踏みつけてもあんまり意味無いし。
 それにさ、切り離してもまた生えてくる人面瘡だったら、今の話ぜんぜん役に立たないよ。踏まれたら今度はササミちゃんが痛いじゃない?
 私は、もっとほかの方法を知りたいんだけど?」
途中から、赤マントへの質問が人面瘡のものと混同してしまっている。アホである。
>だが1つの解決策は、次の瞬間示される事になる。


>ゴツンと鈍い音がして、怪人赤マントとなっているシャオロンは悲鳴もあげずにぶっ倒れた。
>怪人の後ろにはいつのまにか少女が立っていて、怪人の後頭部を手にした十字架で力いっぱいぶん殴ったのだ。
突如現れた友達(※リリィ視点)の鮮やかな手際に、リリィはあんぐりと口を開けている
「マ、マリアちゃん?!い、いったい?
 あ、だめだよ!赤マントに触ったら、今度はマリアちゃんが赤マントに・・・・・・!?」
>は、慣れた手付きで倒れたシャオロンから赤マントを剥ぎ取った。
>奪ったマントはすぐに脇に置かれた透明の箱に入れられ、手際よく箱の蓋が封印される。
>「私は学園教師陣の依頼を受けて行動中のマリアです。
> 今回の事件の重要参考人と証拠品は、こちらで預からせてもらいます。
> この決定に異論のある方は、7日以内に文章の形で教師同盟に提出してください。
> それ以外のいかなる抗議も異論も一切認められません」
「マリアちゃんは触っても大丈夫なんだ・・・・・よかったー」
かみ合ってるんだかかみ合ってないんだかわからない会話を続ける。
「あれ?でもここでマリアちゃんに赤マント持ってかれたら、私達がゲットするはずだったお食事券はどうなっちゃうの?」
リリィが首をひねっていると、赤マントとシャオロンの襟首を掴んで引きずりながら、その場を立ち去ろうとした。
「あ、待ってよマリアちゃん」
リリィの質問を完全に無視した形のマリアは数歩歩いた所で立ち止まり、振り返ってじっとリリィの顔を見つめた。
>「全部持って行こうと取りにくるでしょうから、速くなんとかしないと大変よ」
「え・・・・・・」
リリィがぎくっと肩を揺らした。
ササミからもらった手袋では、さすがのマリア様までは通じなかったようだ。
「ね、ねえ。マリアちゃんが後ろからボカッって殴ったら、私やササミちゃんも何とか出来る?」
シャオロンさんみたいに、というリリィの囁きは、残念ながら完全に黙殺された。


158 :リリィ ◆jntvk4zYjI :2012/08/04(土) 15:21:47.40 0
「あーあ、行っちゃった。
 でもまあ、シャオロンさんのことだから大丈夫だよね、イロイロと。
 マリアちゃんっていうのはね、ちょびっと融通利かないところがあるけど、小さいのにがんばってるいい子なんだよー」
マリアが聞いたら怒られそうだが、この場にいないのだから問題ないだろう。

フリードを先頭に、といったルナは、珍しく家族のことを口にした。
>「私はね、この世で唯一の美少年キャラは私のお兄ちゃんだけって思ってるの。
あしからず」
「へえ、ルナちゃんお兄ちゃんがいたんだ。しかも美形だなんて初耳。お兄ちゃんも魔法が使えるの?」
リリィは軽い気持ちで質問してしまい、すぐに後悔した。
「そ、そういえば、ササミちゃんも兄弟とかいるの?
 フリード君はね、超がつくくらい美人なお姉さんが上の学年にいるんだよ」


>「まあ確かに世の中には僕より綺麗な男の人っていくらでも居るような気もしますし
> ステータス的な意味でエルフとかには勝てませんが
> 美形は心構えだと思いますので・・・・・・・」
>『魅力値は顔の良さじゃないよ魅力を総合したものだよ』(猫語)
「そうだよ!それに、エルフにステータスが勝てないなら、次は男装の麗人でがんばればいいじゃない!!」
励ましてるんだか背後から刺してるんだかわからない励ましである。

>「うーん…。とりあえずそのササミにとりついてる人面瘡の弱点ってみんなはなんだと思う?」
>「やっぱり本体を守らないと自分も危ういって所ですかね?」
>『独立した自分だけの体を持たないことかな?』(猫語)
それは倒す方法とかじゃ無い
>「試しにタバスコとか口のあたりに塗ってみましょうか?」
>『それササミさんも辛くない?』(猫語)
ルナの言葉にササミも考え込む。
協力的になっていた赤マントが横取りされた以上、人面瘡から情報を引き出さねばならぬのだが、そうそう簡単に引き出せるとは思えない。
今は凍らせ動きを止めているが、情報を引き出すのに時間をかければ右腕だけでなく全体も乗っ取られかねないのだから。
>「試しにタバスコとか口のあたりに塗ってみましょうか?」
「あかんがね。口だと喋れなくなるかもしれせんし、目の方がいいがね。でもタバスコとか持ってるんきゃ?」
「聖水や解毒剤なら持ってるよ。人面にも効果あるのかな?
 あ、ルナちゃんの反転魔法で、赤マントさんみたいにイロイロしゃべってもらうってのもアリかも。」
ササミの腕の氷がはずされたら、リリィは聖水や解毒剤を、目と言わず口と言わず人面瘡にぶっ掛けるだろう。

>「とりあえず僕が先頭ということで防御を固めさせていただこうと思います」
>『・・・・・それって呪われた防具”悲劇のブレストアーマー”じゃ』(猫語)
>「男の僕には関係ありませんしサイズも合うんで・・・・・・
> それにすでに呪われていれば呪いの重複はありませんからね」
「確かに胸は減らないと思うけど・・・・・・・・」
それ以外の部分が減っているのでは、たとえば身長とか。という考えが脳裏をよぎったが、黙っていることにした。

>「なあ、フィジル魔法学園の廊下ってこんなに長いもんなんきゃ?」
>「なんやしゃん嫌な予感がするから、ちょっと先を見てくるなも。ここでまっとってちょーよ」
「あ、ちょっとササミちゃん!」
あっという間にササミは見えなくなってしまった。

それから待つこと数分後、ササミは戻ってきた。
ただし、前方からではなく後方から。
>「まっすぐ飛んだはずやのに……幻術に嵌められとるか、七不思議「無限回廊」か……とりあえず!」
>六本の枝分刀が超振動を得て輪郭をぶれさせながら竜巻のように荒れ狂う!
その刃は壁と言わず扉と言わず切り刻んでいく!
「うわああ!!」
頭を抱え床に身を伏せたリリィのすぐ脇に、ビシっとひびが入った。
「え・・・・うそおおおお!!」
ササミの攻撃に耐え切れなかったのか、嫌な破壊音とともに、足元の床が砕け、消滅した。
「う、うそでしょー!!」
リリィはまっさかさまに奈落へと落っこちていった。

159 :ルナ ◆apJGY8Xmsg :2012/08/05(日) 20:22:47.74 0
>>155
>『やっぱフィー坊の知り合いのブラコンみたいに兄のパンツとか盗むのかな』(猫語)

「人聞きの悪いこといわないでよ。私はそんな変態じゃないし。
つか盗みたくってもお兄ちゃんは…」
ルナはうつむいてる。

>「試しにタバスコとか口のあたりに塗ってみましょうか?」
>『それササミさんも辛くない?』(猫語)

「あ、言われてみたらそうね。…じゃあどうしよ」

>「とりあえず僕が先頭ということで防御を固めさせていただこうと思います」

「うん。それじゃあじゃんじゃん守っちゃって」

>「男の僕には関係ありませんしサイズも合うんで・・・・・・
 それにすでに呪われていれば呪いの重複はありませんからね」

「え?呪いは重複しないの?へー、それは盲点かも。
そう考えてみると世の中には三重苦の人とかがいるから呪いよりよっぽど大変ね」

>>156
>「あかんがね。口だと喋れなくなるかもしれせんし、目の方がいいがね。でもタバスコとか持ってるんきゃ?」

「うっんと…、ササミが辛いのはべつに構わないのね。
でもタバスコがないという…。じゃあ他の生き地獄を考えないと」
それから数分後。 ルナは背後から飛来するササミに気づいた。
ササミの顔には疑念と焦燥が浮かんでいる。

>「まっすぐ飛んだはずやのに……幻術に嵌められとるか、七不思議「無限回廊」か……とりあえず!」
――破壊。ササミの持つ六本の枝分刀が、超振動を得て竜巻のように荒れ狂う。

>>157-158
>「へえ、ルナちゃんお兄ちゃんがいたんだ。しかも美形だなんて初耳。お兄ちゃんも魔法が使えるの?」

「え、まあね。でも、まだわたしがちっちゃかったときに
お兄ちゃんは行方不明になっちゃったから顔とかしか印象にないんだ」
>それから待つこと数分後、ササミは戻ってきた。
ルナはササミの異変に気がつく。

「あ!人面瘡が…!!」
指をさししめしたさきには氷が融解しかけている人面瘡。
なんとササミの体温で氷が溶けかけているのだ。

「げひゃっ、ほんと…おそろしい悪魔みたいなやつらだね。
目にタバスコとか鼻山葵以上の罰ゲームじゃないかい!
そんなわるいこたちにはお仕置きだよっ!」
ササミの意志に逆らうべく、 人面瘡に支配されたササミの腕は
無限回廊の破壊を停止する。その時だった。

>「うわああ!!」
>頭を抱え床に身を伏せたリリィのすぐ脇に、ビシっとひびが入った。
>「え・・・・うそおおおお!!」
>ササミの攻撃に耐え切れなかったのか、嫌な破壊音とともに、足元の床が砕け、消滅した。
>「う、うそでしょー!!」
>リリィはまっさかさまに奈落へと落っこちていった。

160 :ルナ ◆apJGY8Xmsg :2012/08/05(日) 20:26:17.17 0
「リリィーっ!きゃあ!?」
廊下に入った亀裂は蜘蛛の巣のように広がるとルナを巻き込んで一斉に砕け散った。
奇しくもこれで「無限回廊」はクリアというところか。
しかしルナは考えてみる。無限回廊の無限の理由を…。

「…あ、もしかしたらメビウスの輪!そんな空間が何らかの力で作り出されているのかも。
って、誰がなんのために?あ、そっか。先に進めないように何かを隠しているのかも!」

「ちっ!!」舌打ちをする人面瘡。
ルナは直感で、嘘や噂で塗り固められた現実から真実が垣間見えたような気もした。

奈落の底へ落ちている途中。ルナは空中を泳ぎながらリリィに近づくと
その手を握って違和を感じる。片方の手がすかすかなのだ。

「……リリィのバカ。骨がないのどうして隠してたの?
でも、もしかしたら七不思議の謎は私たちが解けるかも。だって…
…ぎゃ!」
呻き声。脊椎に感じる圧迫感。
なんと人面瘡に支配されたササミの腕がルナの首根っこを押さえつけていた。
このままだと、ササミとルナは丸ごと奈落の底に激突してしまうかも知れない。

「フリード…。みんなをたすけてあげて…」


161 :ササミ ◆/TZT/04/K6 :2012/08/06(月) 23:11:20.39 0
壁と言わず扉と言わず、あたり一帯に吹き荒れる斬撃の嵐。
それは空間にひびを入れ崩壊を導き出す。
彷徨って消耗するよりは何かやってみようという意図だったのだが、予想以上の成果を上げたといえる。
だが予想外の成果もあげてしまった。
回廊探索のための高速飛行と超振動斬撃の使用により、右腕を封じていた氷を崩壊させてしまったのだ。

既に支配された右腕だけでなく、人面瘡の宿る右肩を中心にササミの胸や首、頬の血管が浮き上がる。
それはまるで体内に根が張っているようにも見える。

凍らせていたという安心感から抵抗力の低下の隙を突き、一気にササミを支配したのだ。
「あ…うぅ…」
「無限回廊は延々と続く回廊に疲れ果て消耗し尽くすのがお約束だろうに!全くとんでもない奴だ!
だがまあいい!この体、盗ったあああ!」
微かな呻き声とともにササミは落下するルナとリリィに迫り、ルナの首根っこを押さえたのだった。

>「フリード…。みんなをたすけてあげて…」
「あーっはっはっは!無駄無駄無駄ああ!あたしを攻撃したらこの体が傷つくんだよおお!
大切なお友達の体がねええええ!あの坊やにはそんなことできやしないさあああ!」
ササミの体と一心同体になった人面瘡は勝ち誇ったような下卑た笑みをフリードに向ける。

そうして落ちていくその空間は不思議なところだった。

真っ暗ではあるがそこかしこから声が聞こえる。
「尖塔に上る階段の142段目を踏むと空間の歪みに囚われるんだってさ」
「赤マントが捕獲されたらしいぞ」
「うそ、まじかよ!誰が捕まえたんだ?」
「食堂の壁に女の顔が浮かび上がったって」
「登っても登ってもたどり着けない」
「ちげーよ。捕獲されたのは偽物で本物の赤マントは別にいるんだってさ」
「壁の女の顔はアブの群れを吐き出すんだってよ」
「本物の赤マントは裏地に刈り取った仮面がびっしりつけられてんだってよ」
「どこのパーフェクト超人だよ!俺が聞いた話じゃ赤マントの裏地は青色で三途の川に引き込まれるってのだったぞ」

老若男女、様々な声が無数に行きかう空間。
その声がひときわ集まる場所場ぼんやりと光りだす。
「あー知ってる知ってる。赤マントで血まみれにして、そのまま三途の川に投げ入れられるんだってな」
「なに、それって死神ってこと?」
「でもそれだと赤マントでいいのか?青マントじゃねえの?」
「リバーシブルマントでいいじゃん」
声が集まり、溶け合い、一瞬ぼんやりとした光が消えた後、それは現れた。

目深かなローブをまとう骸骨。
手に持つは巨大な鎌であり、その姿は死神を連想させる。
しかし肩に羽織るのは裏地が青色の赤マント。
その怪しげなものは揺らめきながら色を薄め、消えて行った。

162 :フリードリッヒ ◆cOOmSNbyw6 :2012/08/07(火) 05:57:11.76 0
>155-161
>「なあ、フィジル魔法学園の廊下ってこんなに長いもんなんきゃ?」
いやそんなはずがない
もっと短く狭いはずだ
>「あ、ちょっとササミちゃん!」
「ちょっと僕は飛べないんですよ!!」

>「まっすぐ飛んだはずやのに……幻術に嵌められとるか、七不思議「無限回廊」か……とりあえず!」
と道を文字通り切り開こうとするササミ
「妖精のいたずらか?それとも空間魔法か何かの影響か?」
『誰かが空間を弄繰り回した副作用じゃね?』(猫語)
とグレン

>「あ!人面瘡が…!!」
氷が溶け復活の人面瘡

>「う、うそでしょー!!」
そして無茶しすぎたのか崩壊する床板
「だから飛べないんですってば!!」
>「…あ、もしかしたらメビウスの輪!そんな空間が何らかの力で作り出されているのかも。
って、誰がなんのために?あ、そっか。先に進めないように何かを隠しているのかも!」
「つまりこの先に七不思議の秘密が!?」
と落ちながら話すフリードリッヒ

>「フリード…。みんなをたすけてあげて…」
「だから僕は飛べないと・・・・・・」
と言いつつフリージングチェーンを生み出し
天井に貼り付けるフリードリッヒ
「これじゃカンダダの蜘蛛の糸ですねもっと太くしないと・・・・・・
 ミクさんみたいには行かないものです」
はたしてフリードの魔力で作られたチェーンはみんなの体重を支えられるのか?

>「あーっはっはっは!無駄無駄無駄ああ!あたしを攻撃したらこの体が傷つくんだよおお!
大切なお友達の体がねええええ!あの坊やにはそんなことできやしないさあああ!」
『うんでも僕には関係ないし』(猫語)
フリードの頭を足場にしつつおもむろにタバスコを取り出すグレン
どこから取り出したのか一切分からないところが魔法の神秘である

『それだけ目があればかわせないよね☆』(猫語)
そう言ってタバスコ瓶を空けぶん投げるグレン
ずいぶんと器用になったものである


163 :青葉草介 ◆UeaUYwi1Nw :2012/08/07(火) 20:28:31.38 0
「ええ、呼びましたよ。助けてください友達の友達」
「ほう。助けてください、ね。僕としては、友達の友達からのお願いとあっちゃあ断れないな。
いいよ、詳しく聞かせてご覧?」
「ありがとうございます。えっと…七不思議キャンペーンは知っていますよね?」
「なるほど、把握したよ」
「これだけで!?」
「はは、余計な言葉は必要ないのさ――僕ら、友達の友達だろう?
さて、七不思議――七つだけじゃないけど、あいつらは僕の魔法で生み出したものだよ。さて、少し七不思議の様子を見に行こうか」
「え? 貴方が生み出したものって…。まあ、実物を見ないことには、ですもんね。テレポーテーション」
友達の友達を連れ、蟲野の元にテレポートする青葉
「協力してくれるみたいだよ」
「ん、ナイスだよ!」
「さて、都市伝説って言ったら旧校舎だよね…理科室、保健室、トイレあたりが狙い目だよ☆」
「了解です…そいつらは全部一階ですね。テレポート!」
保健室、理科室などのある、旧校舎の一階にテレポートした一行
「ふふ、ここだよ…今にも出そうだろう? 良いよねぇこういう雰囲気…ぞくぞくしちゃうよ…」
「そうですね(棒)」
「そうですね(棒)」
「何その反応!? 君達にはこの良さが分からないのか!?」
こんな風に歩いていると。理科室の方に怪しい影が…
「お、七不思議の気配…え?」
『ぐるるるるるるるるる…』『カラララララ…』
見るとそこには。鮫の剥製と熊の剥製が合わさったものに、骨格標本が跨った…世にも奇妙な妖怪が佇んでいた
「えっと…友達の友達? アレも貴女が生んだんですか?」
「いやいやいや、そんなわけ無いだろう! なんだあれ…!」
「と、とにかく何とかしないと…襲ってくる!」
そんな奇妙な妖怪…仮に剥製騎士としておこう。それが三人に襲い掛かってきた


164 :ササミ ◆/TZT/04/K6 :2012/08/07(火) 22:30:53.96 0
辛味とは味覚ではなく痛覚を刺激して感じるものである。
そんな豆知識を身に刻む事態が発生した。
七つ、いや、人面瘡を含めれば八つの顔を持つササミの視界はあらゆる方向を網羅し視界に納める。
フリージングチェーンにぶら下がるフリードの頭の上からグレンのふりまく赤い液体ももちろん視野に入っている。
だが今は人面瘡が支配しているとはいえ、ササミの意識を押さえるせめぎあいを続けている状態。
降り注ぐタバスコに対して瞬時に適切な判断をし行動できるはずもなし。

状態としてはリリィ、ルナの上にササミが押さえつけるようにいるので、タバスコの大部分はササミにかかることになる。
額、顔、胸元に位置する顔はまだしも、その他の部分はタバスコシャワーをもろに浴び、それを防ぐには手が足りなすぎる。
手なのに足とは如何に?などと言っている場合ではない。
「うぎゃああああ!!しみるううう!!!痛い!つか熱いいいいい!」
目と言わず鼻と言わず口と言わず、各所についた顔の粘膜にタバスコはしみこみ悶絶するササミ。
そんな状態でルナを押さえ続けることなどできるはずもなく、あわてて離れ宙に浮くのだった。

しばしの叫びの後、ササミの動きが止まり、
「きょ、強烈だがねえ!おかげで支配から抜け出られたぎゃ!」
どうやら人面瘡の支配から抜け出られたようだった。
しかしそれも一時のことなのはわかっている。
その前にササミは大声で叫ぶ。

「一度支配されたおかげで判ったことがあるがね!
この人面瘡は生物としては寄生植物に近いんだわ!
液体状の根を宿主の血管に這わせて養分としとりゃーすわ。
ほやから人面瘡の部分を切り取っても花を摘むようなもんやから根がある限り再発する!
だからルナ!あんたの逆詰魔法で私の血を…ぐぎぃぃぃ…
はよぉしてちょーよ!しにゃあせんか…ら…やってちょーよ!」
存在自体は別としても、生物的な特徴を把握した以上、攻略法を見つけるのも簡単である。
首でも掻っ切って血液を放出してもいいのだが、再生酵素が働いてしまうために放出より先に切り口は塞がりまた支配されてしまう。

だが、そういった問題を解決できる能力者が目の前にいるのだ。
ササミはルナに全身の血抜きを頼むのだが、やるのならば急いだ方がいいだろう。
今度完全に支配され、逆詰魔法での血抜きを狙われると人面瘡がわかっている以上、回避行動をとることになるのだから。
ササミの機動力を利用されれば逆詰魔法を当てることは至難になる。
今は支配に抵抗し動けない状態だが、ササミの表情や状態を見ればいつまでもつかはわからないのは容易に想像できるはずだ。


165 :リリィ ◆jntvk4zYjI :2012/08/09(木) 02:39:21.94 0
>160 -164
落下する直前、ルナは無限回廊の存在についての推理を口にした。
それを聞いた人面瘡が、軽く舌打ちするのが、落下するリリィの耳にもやけにはっきり届いた。
>「つまりこの先に七不思議の秘密が!?」

落ちていく途中、ルナが手袋を着けた方の手を掴んできた。
その顔が訝しげなものから、驚きに変わる。
・・・・・・完全に不意をつかれたため、ごまかしようも無かった。
>「……リリィのバカ。骨がないのどうして隠してたの?
「ササミちゃんの後でも間に合うかなって思って・・・・・・」
>でも、もしかしたら七不思議の謎は私たちが解けるかも。だって…
>…ぎゃ!」
>呻き声。脊椎に感じる圧迫感。
>なんと人面瘡に支配されたササミの腕がルナの首根っこを押さえつけていた。
当然、ルナのそばにいたリリィも同様の扱いを受けることになる。

「ササミちゃん、何を・・・・・・」
叫びかけたリリィの言葉は続かなかった。
ササミは狂気を孕んだ形相で、こちらを見下ろしている。
瞳には、人面瘡と同じ色が浮かんでいた。
見れば、腕の人面瘡は拘束を解かれ、放射線状に細い根のようなものをササミの体内に張り巡らせている。
その醜悪さに、リリィは身震いした。
今のササミが普通の状態でないということは、誰の目にも明らかだった。

「やめ・・・・・ササミちゃ・・・・・正気・・・戻っ・・・・・!!」
>「フリード…。みんなをたすけてあげて…」
>「あーっはっはっは!無駄無駄無駄ああ!あたしを攻撃したらこの体が傷つくんだよおお!
>大切なお友達の体がねええええ!あの坊やにはそんなことできやしないさあああ!」
リリィはじたばたと全力で暴れてみたが、実際にはわずかに身じろぎしただけに終わる。
もともとササミとリリィでは、基本的なスペックが違いすぎるのだった。


166 :リリィ ◆jntvk4zYjI :2012/08/09(木) 02:40:35.77 0
(あ・・・・・私、今度こそ死ぬのかな・・・・・・・・)
死んだら、その後、自分の体はどうなるのだろう?
骨を抜きかけているスケルトンは、死体にも入り込むのだろうか?となると、リリィが死んでも、スケルトンが彼女の人生を生きるのだろうか?
・・・・・・・心なしか、不思議な光景がのがやけにはっきりと見えてきた。
リリィは最初、それが世に言う『走馬灯』なのだと思っていた。
だがやがて、それはとんでもない勘違いだったということに気づく。
なぜなら、その映像には、走馬灯だというのに、リリィ自身がまったくといっていいほど出てこなかったからだ!

・・・・・・だが、接点がまるで無かったわけでもない。
赤マントにアブを吐く女の顔。赤マントに三途の川。死神。そして青マント。話、声、噂。
>老若男女、様々な声が無数に行きかう空間。
>その声がひときわ集まる場所場ぼんやりと光りだす。
それからの一部始終を目の当たりにしたものの、リリィは状況をよく理解できていなかった。
(え?いったいどういう事なの?これじゃあまるで、七不思議は・・・・・・)
現れた死神のような骸骨が消える瞬間、目があったような気がして、リリィは冷や水を浴びせかけられたような気分になった。

>フリードの頭を足場にしつつおもむろにタバスコを取り出すグレン
>『それだけ目があればかわせないよね☆』(猫語)
そう言ってタバスコ瓶を空けぶん投げるグレン。まさに外道・・・・いや何でもないです。
>「うぎゃああああ!!しみるううう!!!痛い!つか熱いいいいい!」
>目と言わず鼻と言わず口と言わず、各所についた顔の粘膜にタバスコはしみこみ悶絶するササミ。
>そんな状態でルナを押さえ続けることなどできるはずもなく、あわてて離れ宙に浮くのだった。
ルナはすかさずフリードが支えてくれたようだ。
リリィも拘束は解かれたものの、落ちる寸前、ササミの左足にセミよろしくしがみ付いて事なきを得た。

>「一度支配されたおかげで判ったことがあるがね!
>この人面瘡は生物としては寄生植物に近いんだわ!
>液体状の根を宿主の血管に這わせて養分としとりゃーすわ。

どの解決法として、ササミは恐ろしい事を、事も無げにルナへと提案してきた。
ありえない!と思う反面、ササミがなぜそうしなければならなかったのかも理解できた。
「フリード君、ササミちゃんが正気のうちに、鎖で拘束してしまおうよ!」
細い鎖がどこまで耐久性があるのかは疑問だが、気休めくらいにはなるだろう。


167 :リリィ ◆jntvk4zYjI :2012/08/09(木) 02:42:27.05 0
「大丈夫だよルナちゃん、思いっきりやっても、ササミちゃんは平気だから」
そういって、ぐいっと親指を立てる。
わずかに手が震えているのは、ご愛嬌である。
「不安なら、グレンが持ってるビンにつめればいいんだよ」
何を、とはいえない。人面瘡も聞いているからだ。

リリィは少し考えた後、ササミと鬩ぎあっているであろう人面瘡に「今からお前の邪魔をしてあげる」と突きつけた。
「そうやってって?こうするのよ」
効果があるのか無いのか、リリィにはわからない。
(でも、やらないよりましだよね)

リリィは、テレパシーを使って、なるべく遠くまで声が届くよう力を込め、こう叫んだ。
『学園の皆様に、デイリイ・フィジル編集部からお知らせです。
 七不思議の候補として挙げられていた赤マントは、教師連盟に証拠品として回収されました。
 また、人面瘡の噂は完全なデマであったということが、同連盟からのリークでこのたび明らかになりました。
 皆様は、それ以外の七不思議を解明するようがんばってください!以上です』

これは、マリアから聞いた事実と、リリィの故意に流そうとするデマが混じったものだった。
ひいては、先ほどの走馬灯のようなものの真偽を確認するための行動でもある。
もし先ほどの走馬灯が事実なら、人面瘡にもなんらかの影響が出るのは間違いないからだ。
仮に失敗しても、後でリリィが教師から咎められるだけの話である。
もっとも、ササミにしがみ付いた状態で危害を加えられれば、避けようが無いのだが・・・・・。

168 :ルナ ◆apJGY8Xmsg :2012/08/09(木) 13:06:28.16 0
黒で塗りつぶしたような漆黒の空間。落下感覚がルナを恐怖に陥れる。
無限回廊の砕け散った先は奈落。そう、フィジルの生徒たちは奈落に落ちていた。
老若男女、様々な声が無数に行きかう空間。まるで影が凝縮されて出来た空間だ。

「…こころの影?みんなの裏の願望?」
ルナは耳を覆いたい衝動に駆られた。なぜなら不気味すぎる。
繰り返される平淡な学校生活に、渇望された黒い幻想。
これが七不思議の正体なのだろうか?

「え、うそよ。待って。まだきっと何かあるはず。この怪異の発端となった引き金が」

>声が集まり、溶け合い、一瞬ぼんやりとした光が消えた後、それは現れた。
>目深かなローブをまとう骸骨。 手に持つは巨大な鎌であり、その姿は死神を連想させる。
>しかし肩に羽織るのは裏地が青色の赤マント。
>その怪しげなものは揺らめきながら色を薄め、消えて行った。

「…あれね?あれがすべての元凶?くっ…ササミ、はなして!!」
悶えるもののササミの力は尋常ではなかった。
そこへ窮地を救うべく、投げつけられる真紅のタバスコ。

>『それだけ目があればかわせないよね☆』
>「うぎゃああああ!!しみるううう!!!痛い!つか熱いいいいい!」
>目と言わず鼻と言わず口と言わず、各所についた顔の粘膜にタバスコはしみこみ悶絶するササミ。
>そんな状態でルナを押さえ続けることなどできるはずもなく、あわてて離れ宙に浮くのだった。

「やったわフリード!フリードにはフリードのやり方があるってことね。少し見直した!」
フリードとその傍らのフリージングチェーンにしがみ付くルナ。
そこへタバスコによって人面瘡の支配から逃れたササミが叫ぶ。

>「一度支配されたおかげで判ったことがあるがね!
>この人面瘡は生物としては寄生植物に近いんだわ!
>液体状の根を宿主の血管に這わせて養分としとりゃーすわ。
>ほやから人面瘡の部分を切り取っても花を摘むようなもんやから根がある限り再発する!
>だからルナ!あんたの逆詰魔法で私の血を…ぐぎぃぃぃ…
>はよぉしてちょーよ!しにゃあせんか…ら…やってちょーよ!」

「で、でも、血を抜いちゃったら普通は死んじゃう…」

>「大丈夫だよルナちゃん、思いっきりやっても、ササミちゃんは平気だから」
リリィの親指は震えていた。ルナは唇を噛んでグルグルめがねを見つめる。
額には玉の様な汗。

169 :ルナ ◆apJGY8Xmsg :2012/08/09(木) 13:09:06.63 0
「ほんと…?そうよね。本当のことに決まってる。
友達がだいじょうぶって言ってるんだから信じなくてどうするのよ!!」
タクトを取り出し大きく息を吸う。

「ワディワジー!!」
思いっきり叫べば、タクトの先端から稲妻が放出されササミの体へぶつかる。
すると大量の血液が龍のように漆黒の空間を舞う。詰め込み先の予定はグレンの持つビン。
しかしまだ指定はしていない。それゆえに迷走し宙を舞い続けるササミの血液。

「フリード!液体状の根を探してやっつけて!!」
再びフリードへのむちゃぶり。
血を抜かれている当人のササミにものを言うのも酷な話であるし
戦いの苦手そうなリリィに頼むことも出来ないから必然的にそうなるのだ。

気がつけば、人面瘡はわなわなと顔を震わせている。

>「そうやってって?こうするのよ」
「おまえ、なにを!?」
突如、浮かび上がる苦悶の表情。人面瘡はリリィをねめつける。

「ぐぎゃぎゃ…。きえる…あたしが…きえる…。
あたしがあたしでなくなってしまう。やめろ、やめろおまえたち!」
刹那、ササミの血液から液状の根が飛び出すと、
それは巨大な生首を紡ぎだし闇を泳ぎリリィに迫る!

「あたしはデマのにせものなんかじゃない。消えてたまるものかっ。
それにササミ、お前はゆるさない。大人しくあたしに支配されていたら
お前は魔界から受けるすべての期待の重圧から解放されたことだろうにね。
どうしてあたしを拒絶したのさ!?
悔しいから、あんたの一番たいせつなものを柔らかジューシーな肉塊にかえてやるよ!
覚悟しなササミ!」
真っ赤な唇が開かれると、そこには無数の鋭い歯。
ササミが液状の根の秘密を知ったかのように、逆に人面瘡もササミの大切なものを理解していた。
このままでリリィは、ササミごと食べられてしまうことだろう。

「それとフリードとやらには優しさだけではどうにもならないっていう現実ってものをみせてやろうじゃないか。
そして友達を殺されてあたしを憎む下卑た人間の本性をむき出しにしてみせておくれよ」
人面瘡は大口を開いてリリィに迫る。

170 :ササミ ◆/TZT/04/K6 :2012/08/11(土) 23:15:00.40 0
「なあ、魔界から来たっていうササミってなんであんなに顔があんの?」
「体中になるよね。いくつあるんだっけ?」
「5.6個かな?よく見たことないからわかんね」
「あれって人面瘡なのかな」
「えー、こわっ。いつの間にか顔が増えてたりしてw」
ササミの知らぬところでささやかれていた噂。
それが始まりだった。
噂は増幅され、やがて真実として形を顕すのだ。


ササミの提案にリリィの後押しを受けてルナの魔法が迸る。
ワディワジーの呪文の声と共にササミの血は体から抜け出て龍のように宙を舞う。
液体であり更には再生酵素を含むその龍は打撃全劇を無効にする特性を持ちながら人面瘡の意志も有する。
抜き出された後に行先を指定されたかったが為に自由を得て新たなる宿主を探して彷徨うのだ。

一方、ササミは全身の血を抜かれて干物のように干からび力なく落ちていく。
魔王候補のモンスターの面目躍如ともいうべきか、この状態でも死にはしていない。
だが、さすがに意識を保つのが精いっぱいで動くこともかなわない。

そのササミの肩についていた人面瘡もまた根を切り取られた花のように養分が足りずに干からびている。
その上リリィが発したテレパシーによって噂の否定をされてしまっているのだ。
とはいえ、否定ではあっても多くの人々の意識に人面瘡の存在を強く印象付ける結果となったのだ。
だからこそ、干からびた状態から一時的に回復し、血液の龍から液体状の根を顔の化け物として繰り出せたのだった。
とはいえ、あくまで否定的な情報による印象付けであるからあくまで一時的なもの。
ガセとの認識が広まれば人面瘡はその存在を保てなくなるのだ。

リリィに迫る大顎を前に干からびていたササミの目が見開かれる。
「重圧から解放されたい気持ちがあることは否定せーへんけどな、わたしゃそんなに単純じゃあらぁせーへんのや!
一面だけ見てわかったよーな口を利かれてもええ迷惑だがね!
重圧を背負うも降ろすも自分自身で決める!
あんたの出る幕なんてありゃあせーへんわ!
それに!一番大切なものに手ぇ出すなんてとろくせー事やらせるわけあらへんやろ!」

人面瘡の言う「友達を殺されて人面瘡を憎む下卑た人間の本性をむき出しに」というのは人間観察を目的とするササミの目的と合致する。
ササミの大切なものを把握したように、これもまたササミの内面を理解したがゆえに出た言葉なのかもしれない。
しかし子を守る母の力は何者にも勝る。
もちろん干からびている状態で動くことはできない。
だが意識がはっきりと覚醒さえしていれば、身を動かさずとも攻撃する手段はあるのだ。

念動力によって飛ぶ手袋が7つ、それぞれに枝分刀をもって迫る顔の化け物に次々に突き刺さる。
もちろん液体ゆえに突き刺しても効果がないのだが、刺さっていることに意味があるのだ。
「「「「「「「・・・・・・・・・・・・・!!!!!」」」」」」」
ササミの七つの口が大きく開き、聞こえぬ怪音波を最大限に発するのだ。
突き刺さった七本の枝分刀はそれを受け振動し、その振動は液体を伝い錯綜し、増幅し、駆け巡る!
液体内で増幅し続ける怪音波はやがて高温となっていくのだ。
顔の化け物は沸騰して膨らみ、リリィにその牙をかける前にはじけ飛ぶことになる。

「フリード、そっちの方は任せたなも。
残りの根を潰せばこいつは生物的に終わりだがね。
存在的にも思念獣に近いから、さっきのテレパシーでもう存在を保てなくなるはずやから…」
力を使い果たしたササミが声を振り絞ってフリードに声をかけた。

それと共にササミはピンクの煙に包まれその正体を現すことになる。
血を抜かれているために再生能力も失い、もはや人の形を保てなくなった本来の姿、七本の首を持つ巨大な怪鳥。
リリィを足に大事そうに抱え、翼を広げて沸騰し破裂した飛沫からその身を盾にして守るのだ。
翼を広げているためか、ゆっくりと羽が舞い降りるようなスピードで降下していった。

再度血液を生産し、力が回復するまでにしばしの時間がかかるだろう。

171 :フリードリッヒ ◆cOOmSNbyw6 :2012/08/12(日) 19:30:41.28 0
>164-170
>「それとフリードとやらには優しさだけではどうにもならないっていう現実ってものをみせてやろうじゃないか。
  そして友達を殺されてあたしを憎む下卑た人間の本性をむき出しにしてみせておくれよ」
「だが断ります!僕は誰も殺させやしません!ただしゴブリンは除く!!」
といつものごとくリリィを庇おうと飛び出そうとするフリード
そんなにゴブリンが嫌いなのか?
いつものパターンならリリィを庇い大怪我を負う所だが?

>「「「「「「「・・・・・・・・・・・・・!!!!!」」」」」」」
ササミが自分の体に巣食う寄生生物に超音波を発する事により
リリィは教われずに済み
フリードも怪我をせずに済んだ
>「フリード、そっちの方は任せたなも。
 残りの根を潰せばこいつは生物的に終わりだがね。
 存在的にも思念獣に近いから、さっきのテレパシーでもう存在を保てなくなるはずやから…」

フリードリッヒは考えた・・・・果たして液体状の敵を倒せるのか?
凍らせれば簡単に粉砕はできるだろう・・・・だがしかしそれで倒したことになるのだろうか?

フリードは刃なき剣に氷の刃を生み
さらに生み出した刃に魔力を上乗せした
刃に上乗せされた魔力は強い冷気と化す
その刃が触れれば凍結しそのまま断ち斬られてしまうだろう

「これが僕の必殺技です!フリージングサーベル!サーベルストレート!!」
真っ二つになってしまう人面瘡の液状の根
その後に崩れ落ちる氷の刃
上乗せされた魔力に刃が持たなかったのだ
連続で使えない・・・・・これがこの技の欠点である

「急激に温度が変われば成分が変化して元とは違う性質になるはずです
 簡単に言えば寒さで死ぬって事です
 ゆえに倒したと言ってしまっていいでしょ・・・・たぶんう」
本当は超高温の熱で処理したほうが確実なんですけどね・・・・と小さくつぶやくフリードリッヒ
だが残念なことに超高温の熱は超低温の熱の専門家であるフリードリッヒには無理な芸当である

魔力を使い果たしたのか人間の姿を保てなくなってしまったササミ
「これがササミさんの本当の姿なのでしょうか?
 まあ別に恐ろしい姿ってほどじゃありませんが人間が見たら奇異に感じるかもしれませんね
 幸いここは魔法学園・・・・・普通じゃないものが普通なここでなら・・・」
みんな受け入れられるでしょうと続けるフリードリッヒ
そもそも人間じゃない姿が本当の姿なのはササミだけではないのである
例えばヤタガラスが本性のクリスなどだ
「もしかしたらクリスさんやササミさん以外にも意外な正体(肉体的な意味で)の持ち主もいるかもしれませんね
 例えば保険医とか」
残念ながら保険医は一応人間である
ちなみにミクも人間の姿は擬態なのだがフリードリッヒはそのことについて知らない
『何でわざわざ人間の姿になるの?』(猫語)
と疑問を持つグレン
猫のプライドを持ち猫の姿で生活するグレンには不思議なことのようである
「人型の生物中心の社会では人型のほうが便利だからじゃないのでしょうか?
 あと人間大のほうが食費が掛からないとか」
とそれっぽい理由を言うフリードリッヒ
真相は本人以外誰にも分からないものである


172 :ルナ ◆apJGY8Xmsg :2012/08/14(火) 15:58:08.16 0
>「重圧から解放されたい気持ちがあることは否定せーへんけどな、わたしゃそんなに単純じゃあらぁせーへんのや!
>一面だけ見てわかったよーな口を利かれてもええ迷惑だがね!
>重圧を背負うも降ろすも自分自身で決める!
>あんたの出る幕なんてありゃあせーへんわ!
>それに!一番大切なものに手ぇ出すなんてとろくせー事やらせるわけあらへんやろ!」

血を抜かれ魔力を失い、人間の姿が保てなくなっていたササミは、
本来の姿、七面鳥の姿で叫んでいた。その全身はしわしわに干からびていた。
しかし――
子を守る母親の心は何者より勝る……

ササミの念動力により、巨顔と化した人面瘡の本体へと侵入する七つの手袋。
唸る怪音波。高温によって膨張を始める人面瘡の本体。

>重圧を背負うも降ろすも自分自身で決める!

「…いいねぇ、そのつよい意志。あたしとちがってあんたはブレやしない。
それに比べりゃあたしは、噂に翻弄され続ける奴隷みたいなもの…。かなしいったらないよ」
巨顔の化け物からは、はらはらと涙が流れ落ちたように見えた。
そして涙は一瞬で蒸発し、闇に消える。
巨顔の化け物は体内を沸騰させながら悶え苦しみ消えてゆく。

それを観察していたフリードは考える。果たして液体状の敵を倒せるのか? と…。
だが、その考えは取り越し苦労だ。フリードは次の瞬間叫ぶ…

>「これが僕の必殺技です!フリージングサーベル!サーベルストレート!!」

氷の刃が敵を斬断。刹那、砕け散る敵。
銀色の破片が雪のように舞い落ちた。

>「急激に温度が変われば成分が変化して元とは違う性質になるはずです
 簡単に言えば寒さで死ぬって事です
 ゆえに倒したと言ってしまっていいでしょ・・・・たぶんう」

「え、そうなの?よくわかんないけど…。恐竜が絶滅したのとおなじ原理なのかな?
っていうか私たちって、まだ落下してる途中なんじゃ…」
ルナは落下しながら正座。小首をかしげている。

173 :ルナ ◆apJGY8Xmsg :2012/08/14(火) 16:06:24.21 0
>「人型の生物中心の社会では人型のほうが便利だからじゃないのでしょうか?
>あと人間大のほうが食費が掛からないとか」
>とそれっぽい理由を言うフリードリッヒ
>真相は本人以外誰にも分からないものである

「そう、真相は本人以外は誰にもわからないものさ」
落下する一同の中心に立つ白き影。やわらかな微笑。
そこにはちょんまげを結った少年が立っていた。
それは少年の、峻烈な突然すぎる登場だった。

「有名な怪談話のお岩さんだって、江戸で評判の美人がモデルだって言うしね。
真実なんて時と場合によって変化するもの。とてもとても脆弱なものなんだよ」
少年は骸骨の死神の人形を片手にはめてそれにむかって話しかけている。
が、おもむろに面をリリィにむけると

「そうはおもわないかい?ぐるぐるめがねのお嬢さん。いや、リリィ…。ひさしぶりだね」
少年がもつ骸骨はカタカタと口を震わせていた。まるで腹話術のように。
そして少年は、静かな湖面のような目でリリィを見つめている。

「きみたちは嘘つきだ。厚化粧。豊胸。鳥。猫。みんな偽りの姿で生きている。
嘘ばかりついて、真実でさえ自分の都合のいいように塗り替える。
ほんとうに醜い生き物だよ。人間って生き物は…」

いつのまにか生徒たちは黒い箱の上にいる。まわりを見渡せば赤い海。空も血の様に赤い。
宙には黒い小さな箱が浮いており、それには生徒たちの姿が映し出されていた。
所謂テレビのようだった。

「だからボクは美しい真実の存在を造りだしたいのさ。どういう意味かわかるよね?
穢れのない完全で美しい人間を造り出して、ボクは神様になるのだよ」

「だから君の骨ちょうーだい。一番形のいい骨を…」
骸骨がリリィを見つめる。同時に骨が引きずり出されるような感覚が彼女を襲う。

「なにやってんのよ、あのちょんまげ!やめなさい!リリィを助けてササミにフリード!」
ルナは宙にストックされていた血の球をササミに詰め込む。
すると少年の手を包み込んでいた「死神」は歌いだす。レクイエムを…。
その鎮魂歌は赤い海と共鳴し、同時に生徒たちの耳を劈く振動波を生み出した。

「これはボクのいのり…。希望みたいなものさ……」
フッと寂しそうな笑みを浮かべ、少年は宙に浮いているテレビに腰をかけている。
【不思議空間に到着。謎の少年が現れる】

174 :フリードリッヒ ◆cOOmSNbyw6 :2012/08/15(水) 17:31:34.46 0
>173
>「きみたちは嘘つきだ。厚化粧。豊胸。鳥。猫。みんな偽りの姿で生きている。
 嘘ばかりついて、真実でさえ自分の都合のいいように塗り替える。
 ほんとうに醜い生き物だよ。人間って生き物は…」
『猫は関係ねえだろうが猫は!!』(猫語)
何故かキレるグレン
「すいません人間じゃない人も多いんですけど」
本当にどうでもいいことを突っ込むフリードリッヒ

>「だからボクは美しい真実の存在を造りだしたいのさ。どういう意味かわかるよね?
 穢れのない完全で美しい人間を造り出して、ボクは神様になるのだよ」
『え?あんな俗な存在に成りたいの?』(猫語)
グレン・・・・お前神官の息子じゃ?
まあグレンの信仰する神はいちいち奇跡に代価を求める俗な存在だから仕方がないかもしれない

「何を言ってるんですか完璧でない混濁併せ持った存在こそが人間じゃありませんか
 僕に言わせれば穢れのない美しいだけの存在なんてそんなものは人間とはいえませんね」
純粋なだけの欠点のない存在はすでに人間とは言えないとフリードは主張する
『あれだねピノキオは人間になれて本当に幸せだったのか・・・だね』(猫語)
人間になるとは人間の悪の部分を受け入れると言うことでもあるのだからである

>「なにやってんのよ、あのちょんまげ!やめなさい!リリィを助けてササミにフリード!」
「言われなくとも自分の大切な存在を守ろうとするのは人間として当然のことです!」
『猫にとってもね』(猫語)
「友達と言うものはすでに自分の一部、いわば自分自身!
 守るのに理由は不要です!!」
とその理屈はおかしいだろうということを言うと呪文を唱え始める

>「これはボクのいのり…。希望みたいなものさ……」
「氷壁!フリージングシールド!!」
パリーンと割れるフリージングシールド
ああ衝撃波のなんという威力か
『普通こういう時攻撃呪文じゃね?』(猫語)
「細かいことは気にしないでください
 それに防御を忘れては戦いには勝てませんよ」
『だからって女物の鎧はどうかと思うよ?』(猫語)
「これが一番防御力高いから仕方がないんです!!」

いいから喋ってないで攻撃しろよ!!



175 : ◆apJGY8Xmsg :2012/08/16(木) 21:23:02.99 0
リリィが学園生活を始めたころ。女子寮の大掃除で見つけた箱。
それを管理人は捨てろと忠告したが、気になったリリィは箱を開けてみた。
するとその中には東洋の人形が入っていた。殿様と姫。一体ずつ。
翌日、人形の美しさに見蕩れた彼女は女子寮の玄関に飾った。
しかしその日から起こる様々な事件。女子たちは人形のせいにして大騒ぎ。

そして数日後、人形は消えていた。
ルナもその事件のことは知っている。でもなぜか記憶はすっぱりとない。
黒いマントでそこだけを隠されているかのように記憶が消えているのだ。

>「氷壁!フリージングシールド!!」
>パリーンと割れるフリージングシールド
>ああ衝撃波のなんという威力か

「ふふふ、むだだよ。ぼくのソリタリーレクイエムは、
この世に存在するものなら壊せないものはないんだ」
少年の操る死神の人形は歌うことをやめない。
赤い海は巨大なスピーカー。漣をうみだし破壊を産みだす。
音の届く範囲内で、固有振動周波数が重なるものは
破壊から逃れることはできないのだ。

「それにしてもキミはやさしいね、フリード。好意にあたいするよ。
でも守ってるだけじゃ戦いは勝てない。すぐに後悔することになると思うよ」
少年は目を細め三日月のような笑みを浮かべる。
すると歌の音域が変化し、ササミの身に付けている宝石が粉々に砕け散る。

「ふふふ、次はササミの剣かフリードの鎧を破壊しよう。
リリィの骨を抜き取るまで、キミたちには大人しくしてもらうよ」
死神の人形はカタカタと顎を動かした。

176 :リリィ ◆jntvk4zYjI :2012/08/19(日) 01:47:26.26 0
青葉が旧校舎一階で、友人達と一緒に剥製騎士の襲撃を受けていた頃。
リリィ達はリリィ達でひどい目にあっていた。
いくら七不思議を調べていたとはいえ、七不思議のうちの『赤マント』『人面瘡』『無限回廊』、
そして無限回廊を破壊して現れた、奈落とそこで垣間見たなぞの風景。
こうも立て続けに遭遇しているのは、ただの幸運か、それとも・・・・・・。

人面その支配を断ち切るため、ササミはルナに、逆詰め魔法で体外に血液を抜き出せと頼んだ。
ひとつ間違えばササミを殺してしまうかもしれないという恐怖の中、ルナは勇気を振り絞り、魔法を発動させる。
>「ワディワジー!!」
彼女のタクトから稲妻が走り、ササミの血液が龍のように漆黒の空間を舞う。
そしてルナはフリードに、液体状の根を探すようルナが叫んでいる。
ろくな攻撃方法も持ち合わせていないリリィの出番ではない。

一方血液を抜かれたササミは干からびてしまったが、幸いまだ生きていた。
人間ではとても考えられない状態だが、ササミは特別なのだろう。
「大丈夫!皆、ササミちゃんは生きてる!」
リリィはササミにしがみついたまま、手探りで、下げたカバンの中から銀のナイフをつかみ出した。
「ササミちゃん、ごめん!」
おっかなびっくり、干からびた「醜い顔のほうの」人面瘡に触れてみる。・・・・・・・変化はない。
リリィは苦しい体制のままナイフを持ち替えると、干からびたそれを切り取ってしまった。
すでに人面瘡はササミの血液と一緒に体外に排出され、おそらくこの顔は無害、なのだろう。
だが抜け殻とはいえ、油断は禁物だと彼女は判断したようだ。


177 :リリィ ◆jntvk4zYjI :2012/08/19(日) 01:56:12.88 0
さきほどリリィは、最大出力のテレパシーを使って、人面瘡の存在を否定した。
直後、人面瘡の顔が苦痛に歪み始める。
>「ぐぎゃぎゃ…。きえる…あたしが…きえる…。
>あたしがあたしでなくなってしまう。やめろ、やめろおまえたち!」
「き・・・・効いてる・・・・・・?」
どうやら本当に、この不思議な「場」は、現実に干渉するものらしい。
いったい誰が、何のために?という疑問がちらりと脳裏を掠めるが、深く考えるだけの余裕はない。
ササミの血液の中から液状の根が飛び出し、巨大な生首となってこちらに向かって来たからだ。

>「悔しいから、あんたの一番たいせつなものを柔らかジューシーな肉塊にかえてやるよ!
>覚悟しなササミ!」
>真っ赤な唇が開かれると、そこには無数の鋭い歯。
>「だが断ります!僕は誰も殺させやしません!ただしゴブリンは除く!!」
「うそ・・・・・・!冗談じゃないわよ!『来い!』『来い!』『来てください箒様ぁ!!』」
リリィは必死の面持ちで箒を償還しようとしたが、残念ながら間に合わなかった。
だが、救いの手は思わぬところから伸ばされることになる。

>「重圧から解放されたい気持ちがあることは否定せーへんけどな、わたしゃそんなに単純じゃあらぁせーへんのや!
>(略)あんたの出る幕なんてありゃあせーへんわ!
>それに!一番大切なものに手ぇ出すなんてとろくせー事やらせるわけあらへんやろ!」
>念動力によって飛ぶ手袋が7つ、それぞれに枝分刀をもって迫る顔の化け物に次々に突き刺さる。
「刃が刺さった?!」
その後は、いろいろなことが同時に起こった。
だが、枝分刀に貫かれた顔の化け物は沸騰して膨らみ、リリィにその牙をかける前にはじけ飛んだ。
それと同時に、リリィの手からササミの体が消えうせ、視界一面がピンク色になった。
「・・・・・・?!何が・・・・・いったい・・・・・・」
混乱していると、何か硬いものが体をつかんでいた。

煙が消えると、ササミの姿はどこにもなかった。
「皆!どうしよう、ササミちゃんが!ササミちゃんが消えちゃったよぉ!・・・・・ぉ?」
リリィは、自分を捕まえている巨大な鳥の存在に今頃気づいた。
 鳥!!!嘘、おっきな鳥があああ!!人面瘡が今度は干からびた大きな鳥に?!
 やだ、今度こそ食べられちゃうよぅ!誰か助けて!!」


178 :リリィ ◆jntvk4zYjI :2012/08/19(日) 02:00:02.98 0
パニック状態だったリリィを正気に戻したのは、羽を伝って落ちてきた血の一滴だった。
「あつっ?!なにこれ熱い?!」
よく見ると、巨大鳥は全身血まみれだった。
・・・・・・否、鳥自身の怪我ではない。返り血のようだ。
目を凝らすと、血からは湯気が立ち上っていた。まるで熱湯を浴びたように。
(あれ・・・・・?)
リリィは先ほど襲ってきた、巨大な顔の化け物の最期を思い出していた。
まるで、沸騰するように泡立ち、はじけ飛んでいたではないか?
(---沸騰?!)

リリィは暴れるのを止め、自分をつかんでいる大きな鳥を改めて見上げた。
一言で言えば、極彩色の羽根を持巨大なつハゲワシのような姿だった。
ただし、今の羽はくすみ、干からびたようにやせ細り、首が7本もついているが。
七つの首がもつ嘴は、リリィなど一撃で仕留められそうな大きさだが、その目には殺気がまるで無い。
(・・・・・・・?)
見えにくいが、先ほどリリィがササミを傷つけたのと同じ位置に、まだふさがっていない傷が残っていた。
「も・・・もしかして・・・・・・ササミ、ちゃん?」

そこに、人面瘡の液状の根を真っ二つにしたフリードの声がかかった。
>「これがササミさんの本当の姿なのでしょうか?
> まあ別に恐ろしい姿ってほどじゃありませんが人間が見たら奇異に感じるかもしれませんね
> 幸いここは魔法学園・・・・・普通じゃないものが普通なここでなら・・・」
(うわああああ!どうしよう!どうしよう!!さっきめちゃくちゃ怖がっていろいろ叫んじゃったよぉお!
 ササミちゃん聞いてたよね?絶対聞いてたよね??)
リリィは、ササミの顔をまともに見れなかった。
瀕死の状態で、それでも残る力を振り絞って助けてくれた命の恩人だったのに、
彼女は人面瘡の化身だと勘違いして、みっともなく取り乱してしまったのだ。
ササミは、大事(な友達)だと思っていてくれてたというのに。


179 :リリィ ◆jntvk4zYjI :2012/08/19(日) 02:04:12.43 0
(き・・・・嫌われちゃった・・・・・・?
 どどど、どうしよう・・・・・・知らなかったとはいえ、人面瘡の変身した姿と間違えちゃった、なんて言ったら不愉快だよね。
 怖がってると思われたらどうしよう。
 じゃ、じゃあ、もっと自然な感じで言ってみる?
 ササミちゃん普段から胸おっきいと思ってたけど、本当はものすごくおっきかったんだね!世界一だね!とか?
 ばかばかばか、私の馬鹿!それじゃただのセクハラだよぅ!!
 ああ、どうしたらいいのこんな時!
 ササミちゃんを傷つけないで謝りたいけど、なんて言ったら良いのかぜんぜん分からないよぅ!!)

リリィがぐるぐる悩んでいるのをよそに、フリードはなぜササミが人型なのかルナと仮説を話している。
これほど悩んでいる精神状態でなければ、「きっとさ、寮や教室に入れないからじゃない?」と言っただろう。

「ご、ごめn>「そう、真相は本人以外は誰にもわからないものさ」
ようやく口にしたリリィの言葉をかき消すように、少年の声が響いた。
>落下する一同の中心に立つ白き影。やわらかな微笑。
> そこにはちょんまげを結った少年が立っていた。

「だ、誰・・・・・?」
おそらくその場にいた全員が同じことを思っただろう。
「あ、あなたもしかして、エンカのお友達なの?あなたもここで迷ってたの?」
だがそれには答えず、少年は手にはめた死神の人形に語りかけている。
内容はよく分からないところもあったが、真実はうわさと同じくらい変質しやすいといいたいらしい。


180 :リリィ ◆jntvk4zYjI :2012/08/19(日) 02:06:30.33 0
>「なにやってんのよ、あのちょんまげ!やめなさい!リリィを助けてササミにフリード!」
>ルナは宙にストックされていた血の球をササミに詰め込む。
>「言われなくとも自分の大切な存在を守ろうとするのは人間として当然のことです!」
>『猫にとってもね』(猫語)
「友達と言うものはすでに自分の一部、いわば自分自身!
 守るのに理由は不要です!!」
「みんな・・・・・・」

>「これはボクのいのり…。希望みたいなものさ……」
.>「氷壁!フリージングシールド!!」
>パリーンと割れるフリージングシールド
(嘘・・・・・・こんなにあっさりフリード君のシールドが破られるなんて)
>『普通こういう時攻撃呪文じゃね?』(猫語)
>「細かいことは気にしないでください
> それに防御を忘れては戦いには勝てませんよ」

>「それにしてもキミはやさしいね、フリード。好意にあたいするよ。
>でも守ってるだけじゃ戦いは勝てない。すぐに後悔することになると思うよ」
何かが砕けるような音がした。

>「ふふふ、次はササミの剣かフリードの鎧を破壊しよう。
>リリィの骨を抜き取るまで、キミたちには大人しくしてもらうよ」
リリィはがくがく震えながら、怯えきった目で少年を見つめた。
彼の魔法は、この世に存在するものなら壊せないものは無いらしい。

リリィは、必死で考えをめぐらせた。
スケルトンは、少年の持っている人形に姿を変え、リリィの骨をぬこうとしているのだろうか?
(多分そうよね。あの異国の少年は、私の骨を欲しがってるんだから)
スケルトンが噂どおりの存在なら、被害者の骨を抜き、代わりに体内に入り込むという。
骨を抜くまでは、スケルトンと少年の利害は一致するわけだ。

となると、リリィの骨を抜いたあと、あの死神が彼女の中に入るのだろうか?
(それは無いわね、私の心が混じったら、完璧なんかとは程遠い人間になっちゃう)


181 :リリィ ◆jntvk4zYjI :2012/08/19(日) 02:11:25.83 0
では、もしスケルトンがリリィの抜け殻に入ってきた場合、リリィの心はどうなるのだろう?
スケルトンによって消滅させられてしまうのだろうか?
その後リリィの体に入り込んだまま、ほかの新たな被害者を見繕うのだろうか?
(どちらにしても・・・・・・。(冗談じゃないわ)

リリィは歯を食いしばり、頭を振って恐ろしい考えを締め出した。
そして楽しそうな少年と、口をかくかくさせている骸骨マント人形を思い切り睨みつける。
(怖がってちゃ、だめだ)
状況を整理することで、リリィは少し冷静さを取り戻した。
真偽のほどはわからないが、少なくともフリードのシールドはたやすく壊されてしまった。
その気になれば、フリードやササミ、ルナの体も砕けるという。実際に可能なのだろう。
(だからこそ、フリードが氷魔法の使い手だとわかった上で、海が魔法のからくりだ、などと話せたんだわ)
もしもフリードが海を凍らせようとするのなら、成功させる前に、氷ごとフリードを砕いてしまえばいいのだから。
(・・・・・・!いや、あるわ。何でも砕ける少年にも、まだ砕いてはいけないものが!)
それを使えば、もしかしたら一瞬の隙を作れるかもしれない。

深く物思いにふけっていたため、彼女は、背後から急接近してきた物に全く気づけなかった。
「ぎゃんっ?!」
結果、背後から不意打ちで激突され、まるで蹴鞠のようにころころ転がっていく羽目になる。
「なっ、なっつ・・・・・あ、箒!私の箒!遅いよ!今までどこほっつきあるいて・・・・・って!
 痛い!ごめんなさいごめんなさい!嘘です嬉しいですありがとうございます箒様ぁ!」
リリィはこうして、愛用の箒---移動手段を取り戻した。

リリィは箒を抱え込むようにして、その場に立っていた。
先ほどの続きだが、砕けないものは、ある。
(でも・・・・・・これやったらきっと、皆、絶対に私のこと、馬鹿だと思うよね)
リリィは、血まみれになっているササミを見つめた。
(だけど・・・・・いっぱい助けてもらったもん。七不思議調べたいからって言って、こんなひどい目にあわせちゃった。
 ・・・・・・私でもできること、あんまりないけど、でも・・・・・無駄かもしれないけど、逃げちゃだめだよね)

182 :リリィ ◆jntvk4zYjI :2012/08/19(日) 02:13:12.93 0
リリィは、なるべく冷静な態度で少年に質問をした。
「私の骨を抜いたら、その後どうするの?ここにいる皆を地上に戻してくれるの?
 あなたの願いをかなえたとして、骨が無くなった後、私はどうなるの?」
一番最悪なのは、リリィの能力をスケルトンに使われてしまうことだった。
彼女の使っているテレパシーはちょっと特殊なタイプで、心を相手に見せることで、自分の意思を伝えている。
だがら言葉が通じない相手にも、自分の意思を翻訳なしで伝えることができるのだ。
この方法のテレパシーは、やり方と出力の調整しだいでは、洗脳に近いことも広範囲でできてしまう。
万が一にもスケルトンに使われては大問題だった。

そう問いかけながら、リリィは仲間に向かってテレパシーで呼びかける。
『フリード君にルナちゃん、今から私が一瞬の隙を作る。だから、その間に何とか海を使えなくしてくれないかな?)

「そりたりーれくいえむで、壊せないものはこの世にないって、?」
話しているそばから、リリィの右肩の部分が、服の上からでもわかるほど明らかにへこんだ。
「ううん、ある。今からそれを教えてあげる!」
そう叫ぶなり、リリィは少年に向かって箒を発進させた。
リリィは箒の加速を使って、少年に体当たりする気なのだ。
もちろん、回避されるのは承知の上だ。
(そもそも、こんなばかげた特攻作戦が成功するわけないのよ)
だが、無意味だとは思わない。
ほんの一瞬だけでも、少年の興味がフリード達からそれればいいのだから。

183 :ササミ ◆/TZT/04/K6 :2012/08/19(日) 22:57:01.07 0
巨大な怪鳥という正体を晒したササミ。
大顎を沸騰破裂させ、リリィを守った以降の出来事を知らない。

リリィの動揺とその後の葛藤を。
落下していたところ、黒い箱の上に移動していたことを。
ちょんまげの少年が微笑みながら現れたことを。
少年の語った言葉と目的を。
周りが赤い海と化していることを。

血を抜き取られ限界を超えた攻撃をしたことにより、精根尽き果てて気絶してしまっていたのだから。
気絶している間に少年は行動に移る。
リリィの骨を抜き取ると宣言し、骸骨がリリィを見つめ骨を引きずり出し始めたのだ。

>「なにやってんのよ、あのちょんまげ!やめなさい!リリィを助けてササミにフリード!」
ルナによって血を詰め込まれたササミだが、干からびていた体が多少膨らんだだけで動きはない。
いや、微かに目を開けていることから意識は戻ったようだが、まだ動けないのだ。
それでも14の目は周囲を観察し、状況を把握しようと努める。

少年の手を包み込んでいた骸骨は歌いだし、赤い海と共鳴して振動波を生み出した。
それはフリードの作り出した氷壁をいとも簡単に砕くほどの!
少年の言葉と共にササミの宝石が粉々に砕けるのを見、目は細められていく。
まだ圧倒的に血が足りないのだ。
しかし、その目が大きく開かれることになるのは言うまでもない。
>リリィの骨を抜き取るまで、キミたちには大人しくしてもらうよ」
少年の言葉はササミの搾りカスをさらに絞るのに十分すぎる言葉なのだから。

>『フリード君にルナちゃん、今から私が一瞬の隙を作る。だから、その間に何とか海を使えなくしてくれないかな?』
フリードとルナに向けられたものであったが、ササミもそのテレパシーをキャッチしていた。
だがその行動を止める間もなく、いや、今の状態では止めようもなくリリィは放棄を発進させてしまったのだ。

リリィの背を見送りながら、その行動が理解不能だと思っていた。
だが、理解不能だからと言って不快ではない。
それは自分にはない人間独自のものであり、認めるところでもあると思っているのだから。
とはいえ、それを自分もやろうとも思わない。
消耗した体でできる事とやりたい事の接触点を見極め、実行する。

「不本意やけど、ルナ!私の代わりに……頼むがや!」
七本の巨大な首の一本が持ち上がり、嘴がルナの襟を咥える。
本来ならば自分以外の者の力を当てにしたり、ましてや代わりに頼む、という事はあり得ないことだった。
だがここに至りルナを頼るのはササミも人間界に来て影響を受けているという事なのだろう。

ルナを咥えた首が大きく振られ、嘴は開かれた。
結果、ルナは人間砲弾よろしくリリィの後を追い飛んでいく事になる。
飛行しながらルナは気づくだろうか?
流れ続けていたレクイエムが止んでいる事に。
決して骸骨がその歌声を止めたわけではない。

ササミの背面に位置する項、背中、両手の甲の顔はタバスコシャワーを浴びてとても歌える状態ではない。
だがしかし、額、胸元、メインの前面に位置する顔は…
蹲り動けぬ巨大な怪鳥の三つの首が骸骨のレクイエムと同じ波長の怪音波を発しているのだ。
一つの首がメインの旋律を奏で、もう一つの首が修正し補完する。
最後の首は波長を変えられたときに対処できるように骸骨をその超視力で観察している。

赤い海と共鳴し巨大な振動波を生み出せるといっても発生源は骸骨の歌である。
発生源に同じ波長をぶつければ相殺し、衝撃波は生まれない。
碌に動けぬ自分にできる最大にして最上の行動。
そして、自分が動けずとも他に動いてくれる者がいる!
「フリード!男を見せてみやーせ!」
相殺音波によって静寂に満ちた空間にササミの声が響いた。

184 :名無しになりきれ:2012/08/21(火) 17:35:26.32 0
保守

185 :フリードリッヒ ◆cOOmSNbyw6 :2012/08/21(火) 17:45:28.06 0
>175-183
>「ふふふ、次はササミの剣かフリードの鎧を破壊しよう。
>リリィの骨を抜き取るまで、キミたちには大人しくしてもらうよ」
「この僕の鎧を破壊するですって!?
 やれるものならやってみなさいな!!」
本当は破壊されたほうがいいのかもしれない・・・・呪い的に考えて

>『フリード君にルナちゃん、今から私が一瞬の隙を作る。だから、その間に何とか海を使えなくしてくれないかな?)
「フリージングサーベル!」
リリィのテレパシーとともに新しい氷の刃を生成するフリードリッヒ
>「フリード!男を見せてみやーせ!」
「この世に絶対に壊せないものがひとつあります!それはせいぎちょうじ・・・・・もとい人と人との友情です!!」
フリードリッヒは魔力を高め周りの赤い海を凍らせ始める
『割と簡単に皹入るけどね』(猫語)
余計な茶々を入れるグレン

「あまりこれをやると後で面倒なんですけど・・・・・」
魔力を高めたフリードの髪の毛は腰の辺りまで伸びていく
『覚醒ってやつだね』(猫語)
「そうです・・・と言ってもまだ小覚醒に過ぎませんがね」
覚醒・・・・小覚醒から始まり大覚醒に至る覚醒と言う現象
フリードはその小覚醒に至っている
詳しくは過去の物語を参照にするといいだろう

「僕の力ですべての水は氷に変わる
 そしてお約束どおりなら人形を持った敵の本体は大体人形そのもの・・・・多分ですが」
フリードは回りにある水分から氷の槍を生み出し
それを射出目標は少年の持つ人形だ
『そんなわけねえだろ・・・・』(猫語

「あたれぇ!フリージングランス!!」
勢い良く氷の槍を発射するフリードリッヒ
果たして当たるのか?


186 :名無しになりきれ:2012/08/23(木) 15:11:52.53 0
保守

187 :名無しになりきれ:2012/08/23(木) 21:38:43.28 0
保守

188 :ルナ ◇apJGY8Xmsg:2012/08/24(金) 01:22:23.10 0
182リリィ
「私の骨を抜いたら、その後どうするの?
(中略)私はどうなるの?」

「君の体は、このこ(スケルトン)のものになる。
そして君の骨は、新しい人間を生み出す材料になるのさ。
君も知ってるよね?イヴはアダムの肋骨から生まれた。
これから僕が造り出す新しい人間は、汚れなき少女の骨から生み出される。
新しい人間たちには、君のテレパシー能力も受け継がれるはずだよ」

ちょんまげの少年はスケルトンの人形を天にかざす
それはレクイエムにより、すべてが無力化される寸前だった。
箒に乗ったリリィの特攻攻撃。
スケルトンにはリリィの体を得るという目的がある。
それゆえに彼女を壊せない。もはや、この肉弾は受け止めざるおえない。
逃すわけにもゆかぬ。少年は手を広げ構えた。
その時…、ササミの怪音波がスケルトンの歌を相殺。

→「不本意やけど、ルナ!私の代わりに頼むがや!」

「きゃあ!!ちょっと待って。まだ心の準備が…」
ササミに飛ばされるルナ。リリをおうかたち。
で、最初にリリィの頭が少年の腹部に激突。
続けてルナも少年に激突。少年は女二人の下敷きになりながら

「魔界の怪鳥ササミ…。おとなしく人面そに支配されていれば
僕の下部として永遠に鎮魂歌を歌うことを許してあげたのに…
魔界の民は愚かだね。」
柔らかく唇を動かしていた。目は虚ろ。

→「あたれぇ!フリージングランス!!」

「ぎゃあう!!」
スケルトンをかばい、フリードの攻撃を受ける少年。
彼は動かなくなる。よくみれば頭にはちょんまげがない。
弾けとんだスケルトンのフードはとれて長い黒髪が流れおちる

189 :ユリ ◆sto7CTKDkA :2012/08/26(日) 04:55:23.09 O
「ワザマエ! オミゴト!」
少年とスケルトンの脅威が去った後、謎空間に感嘆の言葉と拍手が響いた。
声の主は暗褐色の服を身にまとい、面頬で顔を覆っている。
知っているものがいれば、その服装が東洋でニンジャと呼ばれる職業の者が好んで身につけるものだとわかるだろう。
面頬のために表情はわかりにくいが、見たところニンジャは十代半ばの容姿に見えた。
このニンジャ、別に突然沸いてきたのではない。
戦闘のどさくさに紛れて気配を消しつつ戦いを観察していたのだ。

「ドーモ、魔法学園のミナ=サン、ユリ・オオヤマです」
オジギと共に自己紹介するニンジャの名前に、聞き覚えのある者もいるかもしれない。
ユリ・オオヤマは魔法学園の生徒であり、リリィやフリードと共に行動していた事もあるからだ。
あるいは、同じ学園で学んでいる者どうし、以前学園内で見知った者もいるだろう。
だが、仮に見知った相手であってもユリの対応は、完全に初対面の相手に対するものだった。
それについて誰かが問い詰めれば、ユリはこう答えるだろう。
「あ〜、ごめん。 少し前に森でニンジャの修行をしているうちに頭を打って、記憶がちょっと飛んじゃったんだ…」と。
答えるユリの表情は相変わらず面頬でよく見えないが、記憶を失って困った様子は感じられなかった。

ユリを知っているものなら、以前とは服装も雰囲気も激変していると感じるだろう。
記憶喪失の上に厳しいニンジャ修行を積んだのが原因かもしれない。

「実は私、ニンジャの御師匠様の命令で、7不思議の原因を探ってここまで来たんだよ。
 御師匠様に、これだけ一度に7不思議が出てくるのはオカシイ!
 悪忍がアンヤクしてるかもしれないから、善忍のワレワレが原因を止めるべき!
 なんて言われちゃったんだ……
 だからオネガイシマス!
 報酬は何にもいらないから、7不思議が大量発生してる原因を一緒に探させて!」
そう言ってユリは、また深々とオジギをした。
ちなみに善忍とは善のニンジャであり、悪忍とは悪のニンジャである。

190 :リリィ ◆jntvk4zYjI :2012/08/27(月) 09:55:30.39 0
汚れなき少女の骨、と評され、リリィの口元がぴくりと引きつる。
だが少年の語る今後の展望など論外である。
リリィにとっても、ほかの誰にとっても、だ。


ちょんまげの少年はスケルトンの人形を天にかざす 。
歌が途切れた。
そして、その原因は、フリードが海を凍らせ始めただけではなかった。
満身創痍で、なお奮い立つササミの援護もあったからだ。
>「不本意やけど、ルナ!私の代わりに……頼むがや!」
>「きゃあ!!ちょっと待って。まだ心の準備が…」
意識を取り戻したササミは、ルナをこちらに向けて放った。
「フリージングサーベル!」
リリィのテレパシーとともに新しい氷の刃を生成するフリードリッヒ
>「フリード!男を見せてみやーせ!」
>「この世に絶対に壊せないものがひとつあります!それはせいぎちょうじ・・・・・もとい人と人との友情です!!」
>フリードリッヒは魔力を高め周りの赤い海を凍らせ始める
>『割と簡単に皹入るけどね』(猫語)
リリィは箒からずり落ちそうになった。こんな状況でも、グレンの突っ込み魂は健在のようだ。

ふいに、スケルトンの歌が途切れる。
理由は、フリードが海を凍らせ始めただけではなかった。満身創痍でなお奮い立つササミの援護だ。
すでに、骨の1/3までがスケルトンに抜かれていたが
(まだ、飛べる!)
少年の薄く笑みをひいた顔がぐんぐん近づき、そして・・・・・・。

結果。
逃亡を許すことも、肉体を破壊することも躊躇った少年は、箒ごとリリィの体を受け止めることになった。
続けてルナも少年に激突。少年は女二人の下敷きになりながら、焦る様子もなく平静を保っている。
>「魔界の怪鳥ササミ…。おとなしく人面そに支配されていれば
>僕の下部として永遠に鎮魂歌を歌うことを許してあげたのに…
>魔界の民は愚かだね。」

立ち上がろうとする少年の足にすがり付き、必死の形相でルナへと叫んだ。
「ルナちゃんも手伝って!こいつを逃がしちゃだめ!!」
>「あたれぇ!フリージングランス!!」

>「ぎゃあう!!」
>スケルトンをかばい、フリードの攻撃を受ける少年。
>弾けとんだスケルトンのフードはとれて長い黒髪が流れおちる。
「なっ?!スケルトンじゃない?!」
タイミングと位置的に最悪だった。
避けられなかったリリィは、落ちてきた黒髪を頭から被り、少年と一緒に、再び倒れこんだ。

リリィは倒れたまま、黒髪に切り取られた光景を見て、思った。
以前に、どこかで、これと同じものを見たような気がする、と。
そこで、彼女の意識は途切れた。

目を開けると、目の前で異国の服を着た少女が自己紹介していた。
名前はユリ・オオヤマというらしい。
「はじめまして、ニンジャさん。私はリリィよ。ヨロシク」
リリィは服の埃を払いながら立ち上がると、自己紹介をした。
「一緒に捜索するのは別にいいけれど、ここに来るまでの間、何か目新しい情報は掴んでないの?
 ニンジャってそういうの得意な集団だって、以前トモダチから聞いてたんだけど?」

次に、リリィは少年を見下ろし、続ける。
「彼を締め上げて、スケルトンのことを、もう少し詳しく聞き出せないかしら」


191 :ササミ ◆/TZT/04/K6 :2012/08/28(火) 23:31:07.82 0
スケルトンのレクイエムを無効化していたササミの怪音波は徐々に弱まりやがて途切れる。
消耗しきった体では長く続けることはできなかったのだ。
だがそれでも十分だった、
無効化している間にフリードは赤い海を凍らせ、リリィとルナは少年に体当たり。
倒れたところでフリージングランスがその髷を落とし少年は動かなくなったのだから。

とはいえ、実質的なダメージは体当たりのみ。
人化できる程度に回復するまで、もどかしい時間を過ごすことになった。
が、それも杞憂に終わったようで、少年は立ち上がることはなかった。

「終わったんかな?フリード、いこまい」
発した声は割れた鐘のようにしわがれており、回復が未だなっていないことを現していた。
フリードの手を取り浮かび上がり、リリィとルナ、そして少年の倒れているテレビの上へと飛んでいく。

「リリィ、骨は抜かれてへんようやね。よかったわ」
テレビの上に到着すると開口一番リリィの身体に手を当て、安どの言葉を漏らす。
そして倒れている少年に視線を移した時、感嘆の言葉と拍手が響いた。
現れたのは暗褐色の服と頬面で顔を覆った少女だった。
ユリ・オオヤマと名乗った少女はニンジャの師匠の命令で七不思議の原因を探っていたこと。
そして原因を共に探らせてくれと申し出る。

「……そっ>「はじめまして、ニンジャさん。私はリリィよ。ヨロシク」
>「一緒に捜索するのは別にいいけれど、ここに来るまでの間、何か目新しい情報は掴んでないの?
> ニンジャってそういうの得意な集団だって、以前トモダチから聞いてたんだけど?」
ササミが言葉を発しようとしたところでリリィが起き上がりユリに返事を返す。
そして少年を見下ろし言葉を続ける。

その様子に思わずユリに対する言葉が引っ込み、ただ短く自己紹介をするのみにとどまった。
枝分刀を倒れた少年の首に突き付けながら、額の顔はスケルトンを見ていた。
「髪の毛が生えているスケルトンって初めて見たがね。
まあええわ。フリード、何があるかわからせんし、この骨氷漬けにしといてちょーよ」
未だに両手の甲、項、背中の顔は使い物にならない。
健在な顔も喉が嗄れ戦力は激減と言える。
額の顔がスケルトンを、メインの顔が少年を、そして、胸元の顔はリリィを見ていた。
それぞれ注意対象物として。

ユリへの対応、少年への尋問。
どれも理にかなった正しい対応といえる。
もしもササミがリリィの立場だったら同じような対応をするだろう。
だからこそ、ササミはリリィに言い知れぬ違和感を感じていた。

ササミから見ればリリィは理不尽不可解の塊だ。
それがこうも理にかなった行動をしている。
特に少年を見下ろし尋問をしようとする姿に不安にも近い違和感を感じたのだ。

戦闘で高揚したリリィの姿なのかもしれない。
消耗し、戦力と視界を大幅に減じたために自分が余計な不安を持ったのかもしれない。

不安を振り払うように声を上げる。
「ルナ、はよ起きやーし」
自分以外の判断を求める程に不安になっていることは自覚していない。

192 :ルナ ◆apJGY8Xmsg :2012/08/29(水) 02:44:56.33 0
>「彼を締め上げて、スケルトンのことを、もう少し詳しく聞き出せないかしら」

少年を見下ろしているリリィは、彼がゆっくりと瞼を開けてゆくことに気付くだろう。
そして、少年は静かに放心した表情でリリィを見つめる。女の子かと見違えるほどの整った容貌。
物憂げに翳った瞳は長い睫毛に縁取られ、肌は白くなめらかだった。
彼はササミの枝分刀を首に突きつけられながらも、リリィに視線を据えて微笑んだ。
くらくらきそうな笑顔だった。まさに美少年。掛け値なしの。

「……かわいそうに。あの人形は壊されてしまったんだよ。
あの日、女子寮の大掃除のときに、君に見つけられて飾られて…
偶然悪いことが重なってしまったから、呪いの人形と噂されて、人間たちに叩き壊された…」
少年は悔しそうにうなだれる。その切れ長の瞳に涙が滲んでいる。

「あの日偶然、ボクは死霊科の物置小屋でバラバラに壊された殿様の人形を見つけた。
たぶん人形を壊した生徒たちは、日本人形なんて気味が悪いから死霊科の物置小屋に投げ捨てたんだろうね。
可哀相な話さ。人形はボクに助けを求めてきた。あの寂しい物置小屋で長い間ひとりぼっちで、最期にボクに助けを求めてきたんだよ。
初めて彼を物置小屋でみたときボクは鳥肌がたった。あんな怖い…冷たい…気味の悪い場所は他に知らない。
そこに捨てられた彼は人間を憎んでいた。怨念を撒き散らしながら、この世を呪い尽くしていた。
つまり彼を怨霊に変えたのは君たちだ。お人形は世を憎む鬼業になってしまったんだよ。ただそれだけの話なんだ」
きっとリリィは思い出すことだろう。大掃除の時に見つけた綺麗な日本人形の姿を。
凛々しい殿様と姫様の美しい黒髪を。
リリィの足元にはスケルトンにこびり付いた長い黒髪。
フリージングランスによってバラバラに四散した丁髷の残骸。

「かわいそうに…誰からも理解されず、誰のことも理解しないまま彼は逝ってしまった。
あの日本人形たちが、仲良く一緒に飾られることはもう永遠にないだろうね。
呪いの人形という汚名をかぶったまま時の中に沈んでゆくのさ」
少年は微笑んだが瞳の色は暗かった。

>「髪の毛が生えているスケルトンって初めて見たがね。
>まあええわ。フリード、何があるかわからせんし、この骨氷漬けにしといてちょーよ」
「その髪の毛は姫人形の髪の毛がスケルトンにこびりついてるのさ。
彼女は体が欲しかったんだろうね…。でももう潮時だね。氷漬けにしてあげるといいよ。」
少年は半眼でササミの様子を伺っているようだ。

>「ルナ、はよ起きやーし」
「もう起きてるってば。だけどなーんかよくわかんない話ね。結局七不思議ってなんだったの?
もしかして思考が七不思議にとらわれすぎちゃってるのかな?七不思議はタダの副産物で
実は噂が現実になる空間が学園にできちゃってるとか?じゃあ誰が何のために?
嘘が現実になるとか誰得?まがい物が本物になりたいとか、夢を叶えたいとかそんな何かしらの意思が働いてるのかな?
つーか、あなたは何者?」
ルナは少年に問う。

「くす、君たちと同じ学園の生徒だよ。何もかもが終わるとこを見ていたい。
絶望の心地よさを知っているただの生徒さ。捨てられてた日本人形が不憫だったから体を貸してやっただけだよ…」

「へんなの…。きもちわるい」
少年に対して興味を失ったルナは、ずっとお辞儀をしているユリ・オオヤマに視線を移す。

「あなたって記憶がないの?じゃあ私の魔法を試してみる?私の名前はルナ・チップル。反転魔法の天才なの。
記憶がないのなら頭の記憶を逆回転しちゃったらいいのよ。――じゃあ、試してみるわよ」
タクトが歪む。蜃気楼のように揺らぎ空間が渦巻く。

「くらいなさいっ原初回帰ー!!」
光の奔流がまるで龍神のごとくオオヤマに襲い掛かる。魔法の効果は実験段階なので不明である。

193 :名無しになりきれ:2012/08/31(金) 08:09:04.55 0
オナ学

194 :ユリ ◆sto7CTKDkA :2012/09/02(日) 17:21:51.96 O
>190-192
>「……そっ
>「はじめまして、ニンジャさん。私はリリィよ。ヨロシク」
> 「一緒に捜索するのは別にいいけれど、ここに来るまでの間、何か目新しい情報は掴んでないの?
> ニンジャってそういうの得意な集団だって、以前トモダチから聞いてたんだけど?」
「うんうん、そのとおりだね!」
各自の自己紹介にオジギを返して回ってから、ユリはリリィに元気良く返事した。
聞いて欲しい事を聞いてもらって満足したのである。
自分の事を詳しく知っている人物がいない上に、仲間入りさせてもらえた喜びもあるのかもしれない。

>「彼を締め上げて、スケルトンのことを、もう少し詳しく聞き出せないかしら」
「じゃあインタビューしよう! 新しいかもしれない話はその後どね!」
ユリは少年にインタビューするための道具を、いそいそと取り出し始めた。
すなわち携帯式のノコギリやクナイダーツやシュリケンやニンジャブレードなどなどである。
しゃべって死ぬか黙って死ぬかと歌いながらなので、学園の生徒にあるまじきサツバツさを感じるかもしれない。

>「もう起きてるってば。だけどなーんかよくわかんない話ね。結局七不思議ってなんだったの?
「御師匠様は古代兵器の力じゃないかって言ってた。
 人間の思いを集めて現実に変える神様を作ろうとして失敗しちゃったから、この島に閉まってあるんだってさ。
 7不思議が一気に起きてるのはその力が漏れ出してるからで、早く壊さないと大変な事になるかもって。
 さっきリリィ=サンが聞いてた新しい情報って、これなんだけどね」
インタビューの準備をしながら、ユリはルナにそう言った。
事実かどうかはさておき、これがユリの目的なのは間違いないだろう。
結局、インタビュー自体は少年の自供(?)によって必要なくなるのだが。

>「あなたって記憶がないの?じゃあ私の魔法を試してみる?私の名前はルナ・チップル。反転魔法の天才なの。
>記憶がないのなら頭の記憶を逆回転しちゃったらいいのよ。――じゃあ、試してみるわよ」
「頭の記憶を逆回転?」
ルナの言葉を聞いたユリの気が張り詰める。
そんな事をされてはたまったものではない。
>「くらいなさいっ原初回帰ー!!」
龍神のような光の奔流から、ユリはひらりと身をかわした。
ニンジャになりたてのヒヨコはともかく、タツジン級のニンジャなら造作もない事である。ワザマエ!

標的に当たらずに飛び去った原初回帰の光の後には、不思議空間にぽっかりと穴が開いていた。
「空間を反転させて脱出口を作るとはオミゴト!
 私の記憶は別に戻らなくても大丈夫大丈夫だから、出口が閉まる前にここを出よう。
 ニンジャに過去は不要だよ! でもその前に禍根は断たないと」

ニンジャブレードを抜きはなったユリは、スケルトンに加勢していた少年の側に立って武器を大上段に構えた。
ニンジャブレードに刻まれたルーンカタカナが、静かに青い光を放っている。
「ハイクを読め。 我が妖刀ヘイボンでカイシャクしてやる」
ユリは少年にトドメを指す前に、遺言を聞いてやる事にした。
負けた相手に恨まれて禍根を残さないようにとの合理的判断と、ブッダのような慈悲の両立である。
誰かが止めない限りどう返事しても少年はサツガイされるが、これもインガオウホウだろう。

195 :リリィ ◆jntvk4zYjI :2012/09/07(金) 16:31:26.96 0
>「もう起きてるってば。だけどなーんかよくわかんない話ね。結局七不思議ってなんだったの?
>「御師匠様は古代兵器の力じゃないかって言ってた。
> 人間の思いを集めて現実に変える神様を作ろうとして失敗しちゃったから、この島に閉まってあるんだってさ。
> 7不思議が一気に起きてるのはその力が漏れ出してるからで、早く壊さないと大変な事になるかもって。
> さっきリリィ=サンが聞いてた新しい情報って、これなんだけどね」
「閉ざされていたはずのこの場に、私達が辿り着けてしまった事そのものが、大問題なのかもねえ。
 かといって、どこを壊していいか皆目見当もつかないし・・・・・・ササミさん、なんか感じるかな?」
リリィは相変わらず、ササミを気遣うそぶりも見せない。

>「じゃあインタビューしよう! 新しいかもしれない話はその後どね!」
リリィは、携帯式のノコギリやクナイダーツなどを取り出し、物騒な歌を歌うユリをにこにこ眺めている。
だが、ユリのインタビューは残念ながら不発に終わった。
少年が、自ら語り始めたからだ。

「お人形には、とても気の毒なことをしたね」
リリィは足元に落ちた人形の一部を見下ろした。
見る影もないが、確かにリリィが飾った人形の一部に間違いないだろう。
「この島には、有名な人形職人がいたはずだ・・・・・・誰だったか・・・・・まあいい。
 ほかのパーツは、まだ物置小屋に?姫のものは、別の場所にまだ残っているのかな?
 ・・・・・・・・綺麗なお人形だったのに、かわいそうに」
リリィはそうつぶやくと、美貌の少年に視線を向けた。
「・・・・・・・綺麗といえば、君も、お人形みたいに綺麗な顔だね」
フリードに負けず劣らずの美貌だ。
魔法学園の女子の間で騒がれてもおかしくないのだが、不思議と見覚えのない顔だった。


記憶がないというユリに、ルナが反転魔法を掛けようとした。
だがユリがそれを回避し、飛び去った原初回帰の光の後には、不思議空間にぽっかりと穴が開いていた。
「おー」とリリィがぱちぱち拍手をした。
>「空間を反転させて脱出口を作るとはオミゴト!
> 私の記憶は別に戻らなくても大丈夫大丈夫だから、出口が閉まる前にここを出よう。
> ニンジャに過去は不要だよ! でもその前に禍根は断たないと」

>ニンジャブレードを抜きはなったユリは、スケルトンに加勢していた少年の側に立って武器を大上段に構えた。
>ニンジャブレードに刻まれたルーンカタカナが、静かに青い光を放っている。
>「ハイクを読め。 我が妖刀ヘイボンでカイシャクしてやる」
「いやいやいや、本人の話では魔法学園の生徒らしいし、それは勘弁してください。
 ユリさんも、学園に来て早々闇払いのお世話になるのは困るだろ?ここは穏便に」
リリィはやんわりとユリを静止した。

196 :リリィ ◆jntvk4zYjI :2012/09/07(金) 16:32:12.58 0


「それよりも、お人形の話だよ。気にならないかい?
 そりゃ、一般の人達なら、呪いの人形だって疑いだけで壊したりすることもあるかもしれない。
 でもさ、ここ、魔法学園だよ?喋れる人形の一人や二人、トモダチの中にいたっておかしくない。
 そうだよね、フリード君?」
リリィは意味ありげな笑みを浮かべ、フリードを見つめた。
彼らには共通の「友人」がいるのだ。

「皆はどうかな、仮に呪いの人形があったとしたら、いきなり壊したりする?
 ユリサン・・・・だっけ?ユリさんならどう?カーズアイテムいきなり破壊するって、リスク高いっていうか無謀だと思わない?」

リリィは皆の反応を聞いた後、さらに続けた。
 「一番不思議なのは、異国の人形が消えた後の記憶がないこと。皆は何か覚えている?」
リリィが気に入って人形を飾ったのだ。消えたら大騒ぎするだろう。
それ以前に、壊されるほど嫌われた人形なら、リリィの元に何かしらの苦情が来てないとおかしい。
それすらさっぱり覚えていないとは、どういうことだろうか?

考えられるとすれば、大々的な記憶操作だ。
だが、魔法学園の生徒相手に、教師に気づかれることなく、これほど大掛かりな魔法を発動させることが可能だろうか?
「この件、ちょっと裏がある気がするね。
 フリード君、スケルトンの対処が終わったら、この人形のパーツも頼むよ。ここに置いて行くわけにはいかないしね。
 ・・・・・・まあ、まったく同じにはならないだろうけれど、少しは手を尽くしてみないとね」
リリィは、再びなぞの少年に視線を戻した。
「君はどうする?同情して体を貸したくらいなんだ、もう少し詳しく調べてみない?」

リリィはササミと視線を合わせると、猫のように微笑んでテレパシーで語りかけた。
『そんなにじっと見つめられると、怖くて泣いちゃいそうだよ』

リリィは、ルナが空間にあけた穴を覗き込んだ。
「これ、出口は本当にフィジル魔法学園につながってるんだよね?
 いきなり「ここはオナ学園だよ!」とか言われたらしゃれにならないんだけど。
 ・・・・・・・ためしに、石でも穴に投げこんてみる?」
リリィは少し及び腰だ。
「ところで・・・・・・七不思議の調査に関しては、スケルトンを引き渡せば食券もらって終了かい?」
その辺は,実際に聞いて見ないとなんともいえないだろう。


197 :フリードリッヒ ◆cOOmSNbyw6 :2012/09/07(金) 20:38:48.66 0
。188−196
>まあええわ。フリード、何があるかわからせんし、この骨氷漬けにしといてちょーよ」
「その髪の毛は姫人形の髪の毛がスケルトンにこびりついてるのさ。
彼女は体が欲しかったんだろうね…。でももう潮時だね。氷漬けにしてあげるといいよ。」
「僕の魔力でしっかりと封印しておきますよ
 まあ同じ以上の能力を持った炎の魔法使いなら解除できるでしょうが
 好き好んでやる人はまずいないでしょうし」

>「くす、君たちと同じ学園の生徒だよ。何もかもが終わるとこを見ていたい。
 絶望の心地よさを知っているただの生徒さ。捨てられてた日本人形が不憫だったから体を貸してやっただけだよ…」
「絶望か・・・・そんなものは10年も前に経験をしましたよ
 10年前に生まれたばかりの従妹がゴブリンにチェンジリングされたと言う絶望をね」
『誰も不幸自慢始めろなんていってないからフィー坊』(猫語)

>「ハイクを読め。 我が妖刀ヘイボンでカイシャクしてやる」
>「いやいやいや、本人の話では魔法学園の生徒らしいし、それは勘弁してください。
 ユリさんも、学園に来て早々闇払いのお世話になるのは困るだろ?ここは穏便に」
「ちょっと待ってくださいよ!
 その人は今回の事件の重要参考人なんですから勝手に殺してもらっては困ります!!」
『拷問する楽しみが減るもんね』(猫語)
「姉さんじゃあるまいし僕はそんなドSじゃありませんですよ!」

>「それよりも、お人形の話だよ。気にならないかい?
 そりゃ、一般の人達なら、呪いの人形だって疑いだけで壊したりすることもあるかもしれない。
 でもさ、ここ、魔法学園だよ?喋れる人形の一人や二人、トモダチの中にいたっておかしくない。
 そうだよね、フリード君?」
「でも彼女はもともと人間だったわけで・・・・・・いえそういえばそうですね
 非魔法文明の常識はここでは通用しないこの魔法学園
 言葉を話す人形ぐらいで動揺する人間がいるとは思えません」
>「皆はどうかな、仮に呪いの人形があったとしたら、いきなり壊したりする?
 ユリサン・・・・だっけ?ユリさんならどう?カーズアイテムいきなり破壊するって、リスク高いっていうか無謀だと思わない?」
「世の中には変わった事にカーズアイテムをコレクションしている好事家だっていますしね
 売ってお金に換えてやろうと良からぬことを企む人間がいても
 いきなり壊そうなんてする人は居ないでしょう」
>「一番不思議なのは、異国の人形が消えた後の記憶がないこと。皆は何か覚えている?」
「いえ・・・・何か記憶操作の術でも掛けられたのでしょうか?
 いえそれなら違和感があるはずです僕らは学生と言えど魔法使いですからね」

>「フリード君、スケルトンの対処が終わったら、この人形のパーツも頼むよ。ここに置いて行くわけにはいかないしね」
任せてくださいとサムズアップして答えるフリードリッヒ
本当に大丈夫なのか?
>「・・・・・・まあ、まったく同じにはならないだろうけれど、少しは手を尽くしてみないとね」
「人形やからくりなら商店街のゼベット爺さんですよ」
『ああそういえばそんなのいたね』(猫語)
「ついでに床屋に寄れば完璧です」
むしろそっちが本来の目的っぽいぞフrイード

>「これ、出口は本当にフィジル魔法学園につながってるんだよね?
 いきなり「ここはオナ学園だよ!」とか言われたらしゃれにならないんだけど。
 ・・・・・・・ためしに、石でも穴に投げこんてみる?」
「そして先生に命中して怒られるんですね分かります」


198 :ササミ ◆/TZT/04/K6 :2012/09/09(日) 00:21:06.85 0
ササミの言葉に答えフリードがスケルトンを氷漬けにするのを見て小さく安堵の息をついた。
まずはひとつ厄介ごとの対処が終わったのだから。
謎の多い今回の騒動では気がかりは一つずつ、片づけられるものから片づけていかないと。
並行作業していたのではいつまでも終わりは見えてこないだろうから。

次の気がかりは七不思議の首謀者であろう少年である。
喉が未だ回復せずに突きつけた刃は切れ味を持たぬではあっても、突きつけられていればそれなりの効果もあるだろう。
だが、少年はまるで気にする様子もない。
ユリがインタビューと称する拷問の用意をしている時ですら。
首に触れる刃を通して感じる反応は全くと言っていいほど何もなかった。
むしろ不自然すぎるほどに。

少年の口から語られる日本人形の話。
リリィ達の入学当初の話であるからササミは知らぬことであってもその状況は把握できる。

呪いの人形と噂され叩き壊された。
物置に打ち捨てられているところを少年が見つけた。
人形は恨み、怨念をまき散らし遂には怨霊となった。
スケルトンが本体なのではなく、髪と髷が本体という事だ。

なるほど怨霊としての筋は通っているが、いくつかピースが欠けたパズルのような印象を持つ。
そしてその欠けたピースはユリやリリィとルナ、フリードの話の中に隠されていた。

少年の独白が終わるとともに、ユリは妖刀ヘイボンを突き付ける。
しかしフリードとリリィがそれを止めるのだが……
いや、止めることは自然なことだ。
フリードの言う重要参考人をここで殺してはまずいし、学園生徒ならば処置は教師に任せるべきだ。
が、ここで更なる違和感。
リリィだ。
ササミの知るリリィであればこんな時、やんわりと制止するような真似はできない。
目を回して慌てふためき少年をかばい始めるだろう。
そのあまりにも冷静な制止方にルナとフリードに目配せをしようとした時。

>『そんなにじっと見つめられると、怖くて泣いちゃいそうだよ』
まるでササミの思考を読んだかのように視線を合わせ猫のように微笑みながらテレパシーを送ってきたのだ。
このタイミング、この語りかけに違和感は疑念に、そして確信へとたどり着く。

だが、その前に、対処は順番に一つずつ、だ。
「ん、あ、あ、うんっ。大分喉も回復してきたがや」
喉をさすりながら咳払いをし、少年の首に突き付けていた枝分刀を引いて少年に向きかえる。
そして言葉を紡ぎだす。
「今までの話を総合すると、一つ心当たりがあるんだわ。
怨霊やある種の神って共通点があるって知っとりゃーす?
恨みか信仰心かの違いはあってもどっちも思念を力に変えたり思念が実体化するんだわ。
人面瘡もその一部やし、七不思議やその子の話やと件の人形もそうらしいやね」
そこまで話すと、全く違う話を始める。

「私はフィジルに来てから暇があれば一番高い尖塔にいたわけやけど、ただ風に当たってたわけやないよ。
学園を行き来する教師生徒の顔をずっと見とったんや。
ルナのような高度な隠行術使えたり室内に籠ってたりしたらわからへんけど、あんた出歩いてたっていっとたよな?
そんな目立つ顔しとるのにさっぱり見覚えがあらへんのやわ。
単に見落としてたらちゃんと治したるから、動くんやあらへんで!」
動くんじゃないと言いながらも動くような時は与えない。
神速をもって枝分刃は少年の中心線に一閃を走らせた。
喉が回復し、刃に鋭さを宿らせて。

199 :ササミ ◆/TZT/04/K6 :2012/09/09(日) 00:21:38.70 0
真っ二つの開きにされた少年からは血飛沫の代わりに光が溢れあたりを照らしていく。
「やっぱり思った通り、夢見石やわ。
ほやけどこんなに大きいのは初めて見たわ」
ササミに感嘆の声を上げさせたのは、開きになった少年の中に現れた一枚の石版だった。
黄色い布にくるまれた人の顔程の石の板。
その表面には何かが書かれているが読むことはできなかった。

少年の体が消えうせ、残った黄色い布に包まれた石板を見下ろしながらササミは一堂に話す。
「思念を食ったり思念そのものが形作るとき、結構の割合で核になる石があるんだわ。
思念の方向性をそろえて一定のベクトルに誘導する。
夢見石って言われとりゃーすんやけど。
たぶんこいつが七不思議の噂や人形の怨念に形を与えとったという事やがね。
人形の事を誰も覚えていないのも思念の方向性をこれが操作した結果やろうね」
そしてそれがユリの師匠が言っていた古代兵器なのだろう、というようにユリの方へと視線を向けた。
だが、この閉ざされていた場にたどり着けた訳はそれでは説明できない。
が、リリィやフリードだからこそたどり着けたのかもしれない。
正確に言えば、導かれた、のかも。
だがそれはササミが知り得ることではなかった。

「これを学園に持って帰れば七不思議解明でええんと違うかな?」
(フリード、ルナ。あんたらだけにテレパシーをおくっとるから返事も何もせずに聞いて。
リリィの様子がおかしない?
あんな反応する子やないはずやし、憑りつかれとるかもしれへんから。
ここで騒ぎ立ててもややこしいから学園に戻るまで目を離さんといて)
直接触れないように念動力で捜査した手袋で黄色い布を掴みみんなに声をかけたが、同時にフリードとルナにテレパシーを飛ばしていた。
「どの道あの穴しか出口がないなら行くしかしゃあないやん
とりあえずいこまいか。
リリィは箒があるし、ルナ、乗せていってもらいーや。
フリードは私が連れてくし、ユリは飛べるん?」
穴が閉じないうちに脱出しようとみんなを促した。


200 : ◆apJGY8Xmsg :2012/09/09(日) 20:40:19.21 0
ササミに切り開かれた美少年の不思議そうな顔。
不思議そうな、でもぞっとするくらい暗くさみしい顔。

この少年には夢も希望もなかった。もとから心ががらんどうだったのだ。
だから恨みを抱いていた日本人形にあっさりと体を与えた。

そして夢を見させた。

しかし、自分自身には夢なんてない。希望なんてない。
不安…苛立ち…気が狂いそうだった。
いっそ世界が滅んでしまえばこの焦燥から逃れられる。
だから何もかもが終わるのを見ていたい。それが少年の望みだった。

今、少年の瞳に映っているもの、それは光。
斬断された自身の体から溢れ出した眩い光。
ある意味これは願望通りの展開なのだろう。

視界が白く弾ける。何も見えなくなる。何も聞こえなくなる。
もはや重力も感じない。死神の如く訪れる虚無の海。

≪蟲が鳴く…夏の終わりに…消える僕……≫

皆、振り仰げば気がつくであろう。
異空間の赤い空に少年の遺した辞世の句が浮かびあがっているということに…

【ちょっと投下しました。ルナ主観のレスは、ごろごろしながら書くから
深夜ころに出来上がるかも】

201 :ルナ・チップル ◆apJGY8Xmsg :2012/09/09(日) 22:47:03.32 0
「夢見石?」
眉根に縦皺を寄せながら、ルナはササミに視線を移す。
するとササミの視線はユリの方向に向いていたからユリのほうを見てみる。
ユリは古代兵器の力が溢れ出しているから危険と言った。
夢見石は、ササミが言ったとおりに古代兵器と関係しているのだろうか。
足元の石板は妖しく光っている。見つめていると背中が寒くなる気がした。

「なにか布に書いてある…。私には読めないけど、これって文字よね?
でもこんな文字、読める人っているの?」

>「これを学園に持って帰れば七不思議解明でええんと違うかな?」

「え?」
ササミにしてはあっさりしてるというか
違和感を感じて面をあげてみれば、聞こえてくるササミのテレパシー。
その内容はリリィの様子がおかしいということだった。
言われてみれば、たしかにそうだった。
ちょっとあれで、イライラしてるくらいに思っていたけど
ササミが言うのならやっぱりおかしいのだろう。
ルナは目だけでわかったと合図を送る。

>「どの道あの穴しか出口がないなら行くしかしゃあないやん
 とりあえずいこまいか。
 リリィは箒があるし、ルナ、乗せていってもらいーや。
 フリードは私が連れてくし、ユリは飛べるん?」

「う、うん。わかった」
体をカチコチ緊張させながら箒を拾いにゆく。
途中でユリに話しかける。

「ユリさん、あなたはこの島のどこかに古代兵器が閉まってあるっていってたけど
いったいどこに閉まってあるのか知ってるの?もし探さなきゃダメなのなら私も手伝うから。
島に大変なことが起きちゃったらリリィが悲しむもの」
ルナはユリに寂しく微笑みかけ、拾い上げた箒さえも悲しく見つめていたが
覚悟を決めたかのように踵を返すとリリィに向かって大股で歩いてゆく。

「はい箒だよ。一緒に帰ろう学園に」
怪しんでいるのがばれない様に普通通りにしようと意気込む。
でも取り憑かれているとしてもいったい何に?いつどこで?
考えてみても心当たりはない。

「あ、フリード、お人形のパーツを私にちょうだい。
ゼペット爺さんのとこには私が持っていってあげるから。
ってかあの爺さんまだ生きてたの…」
リリィの箒の後ろに乗って、ルナはひらひらと手を振っている。

【いったんここで止めておきます】

202 :ユリ ◆sto7CTKDkA :2012/09/11(火) 17:58:39.17 O
>195-201
>「いやいやいや、本人の話では魔法学園の生徒らしいし、それは勘弁してください。
> ユリさんも、学園に来て早々闇払いのお世話になるのは困るだろ?ここは穏便に」
>「ちょっと待ってくださいよ!
> その人は今回の事件の重要参考人なんですから勝手に殺してもらっては困ります!!」
仲裁を聞いたユリの目がギラリと尋常でない光を放ったが、それも一瞬の事。
「う〜んそうだね。 ちょっと気が早かったかな」
素直に仲裁を聞き入れたユリは、妖刀を鞘に収めた。
さっきからどうにも反応がおかしいのは、もしかすると反転魔法の影響かもしれない。
実験段階の魔法にはよくある事だ。

>「皆はどうかな、仮に呪いの人形があったとしたら、いきなり壊したりする?
> ユリサン・・・・だっけ?ユリさんならどう?カーズアイテムいきなり破壊するって、リスク高いっていうか無謀だと思わない?」
>「世の中には変わった事にカーズアイテムをコレクションしている好事家だっていますしね
> 売ってお金に換えてやろうと良からぬことを企む人間がいても
> いきなり壊そうなんてする人は居ないでしょう」
「確かにいきなり壊そうとするなんて無謀すぎるよね。
 壊したらしめやかに爆発四散して、封じられていたノロイの力が暴走するアイテムもあるみたいだし。
 やっぱり事前準備は欠かせないよね!」
呪い人形の顛末について詳しくは知らないユリであるが、その手のアイテムの危険性は知っている。
準備無しでのいきなりの破壊には賛成できない。

>「今までの話を総合すると、一つ心当たりがあるんだわ。
「心当たり……とは?」
ササミは怨霊と一部の神との類似点について説明した後、少年を両断する。
両断された少年の体内から出てきたのは、ササミが夢見石と呼ぶ石版だった。
夢見石の説明と共に自分を見るササミに、ユリも頷いてそうだという意志を返す。
その石版の特徴は、ユリが聞いていた情報と一致するからだ。

ユリは消えた少年の姿を追って、念のため周囲を見回した。
>≪蟲が鳴く…夏の終わりに…消える僕……≫
赤い空には、少年の残したものであろうかハイクが浮き上がっている。
「ポエット!」
ユリは小さく、そんな感想をもらした。

>「ところで・・・・・・七不思議の調査に関しては、スケルトンを引き渡せば食券もらって終了かい?」
>「これを学園に持って帰れば七不思議解明でええんと違うかな?」
ササミのテレパシーを盗み聞き出来たわけではないが、面頬から見えるユリの表情が厳しい物になる。
>「ユリさん、あなたはこの島のどこかに古代兵器が閉まってあるっていってたけど
>いったいどこに閉まってあるのか知ってるの?もし探さなきゃダメなのなら私も手伝うから。
>島に大変なことが起きちゃったらリリィが悲しむもの」
「むむむ……」
ルナの言葉にその場では明確に答えずに、ユリは風呂敷を取り出して手に持った。
ニンジュツ【ムササビジュツ】で飛んで帰る準備である。
しかしその前に、ユリにはやることがまだ残っていた。

「待たれよ」
学園に帰ろうとするのを邪魔するように、ユリは両手を開いて出口の穴の前に立つ。
「学園に帰る前に、夢見石が本当に7不思議を起こす力があるか確かめた方が良いんじゃないかな。
 同じ穴にムジナとフェレットの言葉にあるように、もしかしたらその夢見石は7不思議の原因じゃない偽物かもしれない。
 本物なら、その石は思念を現実化する古代兵器の可能性が高い。
 対策を取らずに持ち帰るのはルナ=サンが言うように危険すぎる。
 まずは夢見石の力を確かめるために、学園に危害が及ばないここで、石に思念を集めるべきだと思うんだよ。
 ……リリィ=サンは思念を扱う素質があるみたいだから、ちょっとその石に念を集めてくれないかな。
 ルナ=サンもさっき言ってたけど、島に大変な事がおきたら大変ですからね。
 真贋を見分けるのって大事だよね!」

形の上ではお願いであるが、ユリは妖刀の柄に手をかけて寄らば切る!的雰囲気を隠そうともしていない。
お願いを聞かずに強引に帰ろうとするなら、戦いは避けられないだろう。

203 :リリィ ◆jntvk4zYjI :2012/09/13(木) 17:01:36.22 0
スケルトンは、フリードが氷で封印した。
人形の修理は、ルナがゼベットの店に持ち込むことで話がついた。
そして、なぞの美少年は、ササミによって真っ二つにされてしまった。
しかし血飛沫は上がらず、彼の中からは黄色い布に包まれた石版が現れる。
ササミの話では、それは夢見石というらしい。

>「思念を食ったり思念そのものが形作るとき、結構の割合で核になる石があるんだわ。
>思念の方向性をそろえて一定のベクトルに誘導する。
>夢見石って言われとりゃーすんやけど。
>たぶんこいつが七不思議の噂や人形の怨念に形を与えとったという事やがね。
>人形の事を誰も覚えていないのも思念の方向性をこれが操作した結果やろうね」
>「なにか布に書いてある…。私には読めないけど、これって文字よね?
>でもこんな文字、読める人っているの?」
「どうだろうね」
リリィは、夢見石とよく似たものを「顔」に持つ友人を知っている。
だから、本来ならササミの行動を大いに咎めるべきところなのだが(友人の首を刎ねられてはたまらない!)

>蟲が鳴く…夏の終わりに…消える僕……≫
だが今の彼女は特に何を言うでもなく、少年の遺言めいた言葉に、軽く肩をすくめただけだった。

>「これを学園に持って帰れば七不思議解明でええんと違うかな?」
「そうだね、無事解決だね」
>「どの道あの穴しか出口がないなら行くしかしゃあないやん
>とりあえずいこまいか。
>リリィは箒があるし、ルナ、乗せていってもらいーや。
>フリードは私が連れてくし、ユリは飛べるん?」

とりあえず脱出で話はまとまり、ルナはリリィの箒を拾いにいった。
>「ユリさん、あなたはこの島のどこかに古代兵器が閉まってあるっていってたけど
いったいどこに閉まってあるのか知ってるの?もし探さなきゃダメなのなら私も手伝うから。
島に大変なことが起きちゃったらリリィが悲しむもの」
リリィが器用に片眉をあげた
「はい箒だよ。一緒に帰ろう学園に」
「リリィが悲しむ、ね。・・・・・・では、君自身はどうなんだい?
 まあ、そんなことは今どうでもいいか。
 一緒に飛ぶのはかまわないけれど、この箒の暴れっぷりじゃあ、途中で振り落としてしまうかもしれないね。
 ユリサンと一緒に移動したほうがいいかもしれないね」
リリィは、布らしきものを準備しているユリにちらりと視線を送った。
ただ、口ではそういっているものの、特にルナを排除しようとする気は無いようだ。

>「待たれよ」
学園に帰ろうとするのを邪魔するように、ユリは両手を開いて出口の穴の前に立つ。
>「学園に帰る前に、夢見石が本当に7不思議を起こす力があるか確かめた方が良いんじゃないかな。 (略)
 ……リリィ=サンは思念を扱う素質があるみたいだから、ちょっとその石に念を集めてくれないかな。 (略)」
面頬で表情はよく見えないが、なんとなくノリノリな気配を感じるのは気のせいだろうか?

204 :リリィ ◆jntvk4zYjI :2012/09/13(木) 17:02:24.71 0
「・・・・・そうだね、じゃあ、できるかどうかわからないけれど、試してみるよ。
 ササミさん、その石版を渡してくれないかな?」
リリィは微笑を浮かべながら、ササミに手を差し出す。

ただ、ササミは今の彼女に明らかな違和感を感じている。
ほかの人間ならごまかせても、ササミの警戒を解くことは難しい。
現状では、いくらユリが「お願い」したからといって、古代兵器かもしれない夢見石を、今のリリィに渡すことはまず無いだろう。
そう、普通の説得では。

『その石を渡してくれないかな?そうしたほうが、多分話が早いと思うんだ』
リリィは、テレパシーでササミだけに呼びかける。
『姫か・・・それともスケルトンかな?まあどっちでも興味ないけどね。
 とにかく『彼女』は目的を果たした。ようやく手に入れた器だ、そう簡単に手放す気は無いだろうね。
 このままじゃ学園に戻って治療する前に、リリィとしての人格は食われてしまうかもしれないねえ。
 ああ、そうだった。君の血は、どんな傷でも癒せるんだった!・・・・・・でもその力は、精神にも有効なのかな?』
リリィは笑みを深め、さらに続ける。
『まあ、実体化できる体を与えられれば、もしかしたらこの器から出て行くかもしれないね。
 とはいえ、所詮は人間のことだ。多少中身が入れ替わっていようがいまいが、君には関係ないか』

リリィが語る内容としては、あまりにおかしく矛盾だらけだ。そもそも全て真実を語っているかどうかの保証も無い。
だか、残念ながら、当人以外には、真偽のほどを確認することは出来ないだろう。
『夢見石の力で具現化したら、もうリリィに用は無い。喜んで彼女から出て行くけど、君はどうする?』

仮にササミが石を渡した場合、彼女は人と、一本の杖を具現化させた後、力尽きて昏倒するだろう。
石を渡さなければ、状況が落ち着いた後、ルナを後ろに乗せ、出口に向かうことになるだろう。

205 :フリードリッヒ ◆cOOmSNbyw6 :2012/09/18(火) 09:37:58.16 0
>198-204
>「フリードは私が連れてくし、ユリは飛べるん?」
「そろそろ本格的に空を飛ぶ方法を考えるべきでしょうか?」
『別に人間が飛ぶ必要なくね?』(猫語)
フリードは考えた・・・・フリージングチェーンを使えば空が飛べなくても上昇することは出来るのではないか?・・・・・と
だがそれをするにはチェーンを引っ掛ける場所が必要だろう

>「あ、フリード、お人形のパーツを私にちょうだい。
ゼペット爺さんのとこには私が持っていってあげるから。
ってかあの爺さんまだ生きてたの…」
「まあ一時期絶対に死なない妻を作るんだって
 亡くなった奥さんとそっくりなオートマータしか作らなくなった時期もありましたけど
 今は正気に返ってますよ」
『なにそれ不安・・・・・」(猫語)
と言いつつ素直に人形のパーツを手渡すフリードリッヒ

>「真贋を見分けるのって大事だよね!」
「そうですよね本当にそれが七不思議の原因かどうかなんて分からないんですから
 ぜひ一度やってみてはくれませんか?
 念を送るぐらいはリリィさんなら簡単に出来るはずですよね」
>「・・・・・そうだね、じゃあ、できるかどうかわからないけれど、試してみるよ。
 ササミさん、その石版を渡してくれないかな?」
「別に念を送るぐらい触らないでも出来るのでは?」
『あれ?リリィさんってそんなに強い念能力者だっけ?」
「だってテレパシー使うときはいちいち体に触らないじゃないですか?」

「まあとにかく真偽のほどを確かめたら早く戻りましょう
 そうしないと保険医あたりがまた厄介なことを企てるかもしれませんし」
『私だけのアリス計画だっけ?』
私だけのアリス計画・・・それは自分好みの少女を人造的に作り上げようという
冒涜的で変態的な計画である

「ええ今頃は魂無き冒涜的な少女の様な形をした怪物が保健室に出来上がってるかもしれませんし」
『あのガチレズロリコン禁忌を禁忌だと思ってない節があるからね』(猫語)
「見た目だけ整えても魂が無ければ意味が無いって言うのにあのマッドは・・・・・・・」
『でも多分別の生徒が解決してるんじゃね?』(猫語)
別にこの学園の厄介事引受人は自分達だけではないのだ
今回の事件に係わってない彼らもいるだろうしたぶん大丈夫だろう

206 :ササミ ◆/TZT/04/K6 :2012/09/19(水) 22:18:38.72 0
≪蟲が鳴く…夏の終わりに…消える僕……≫
「ふん、いつから生徒でいる気でいたか知らんけど、夢は夢に還るだがね」
虚空に浮かび上がる辞世の句にササミは振り返りもしなかった。

消えた障害に気をやれるほど余裕はないのだ。
ササミにとっての最大の懸案であるリリィの異変。
それに集中して対処するために邪魔を排除したに過ぎないのだから。

障害という意味ではこの怪しげな空間もそうだった。
夢見石の少年が作り出した七不思議の中心地ともいえる空間。
何が起きるかもしれぬ空間を脱し、学園で、できれば教師陣も交えて万全を期したいところ。
にもかかわらず、更なる障害が立ちはだかる。

ユリである。
ユリもリリィの異変に気付いたのだろう。
この場で夢見石の真贋を確かめる、とは言っているが、リリィを指定するからにはそれなりの確信があっての事だろう。

確かに七不思議の核であるか否か、真贋を見極める必要はある。
学園に影響が及ばないこの空間で、というのも筋が通っている。
リリィの異変を確かめることもでき、一挙に何得もある。
だがそれは学園を守り古代兵器を封じるという立場ならばこそだ。

しかしササミはその立場に立っていない。
リリィの異変を解除するという一点のみを行動原理にしているのだ。
ゆえに他の事案を考慮に入れるユリとは決定的に相いれないのだ。

穴の前で寄らば斬る!的な雰囲気を隠そうともしないユリとササミとの間に緊張の微粒子が満ちていく。

>「・・・・・そうだね、じゃあ、できるかどうかわからないけれど、試してみるよ。
> ササミさん、その石版を渡してくれないかな?」
ササミの手が枝分刃の柄にかかったところで、リリィの口から思いがけない返事が流れ出る。
夢見石は思念を具現化する危険な魔石。
たとえリリィが正気でも触れさせられないようなものを、今の状態のリリィに渡せるわけがない。

いっその事怪音波で全員を怯ませた隙にリリィに当身を食らわせそのまま穴に飛び込もうかとの思いもよぎっる。
だがその思考に流れ込むリリィのテレパシーにササミの目がかっと見ひらかれた。

リリィからのテレパシーはあからさまな脅迫。
だがやはりリリィは憑りつかれていた、という確証とともに、その矛盾に満ちた内容に少々混乱してしまう。

スケルトンに憑りついていた姫がリリィに憑りついていると思っていたのだ。
ゆえにルナをリリィと同行させ、いざとなれば逆転魔法でリリィと姫の意識の支配率を逆転させられると踏んでの事だった。
だが、言葉からすれば姫が憑りついているのだが、これを発するのは姫以外の何者か。
状況がわからない以上、逆転魔法を持ってもリリィの人格を食われるのを防げないかもしれない。
石を渡したとして、新たな体を具現化させ姫が出て行ったとしても、今言葉を発している者は?

207 :ササミ ◆/TZT/04/K6 :2012/09/19(水) 22:19:14.29 0
思考が錯綜し、額に脂汗が浮かび上がったとき、ふと力が抜けた。
フリードが猫を相手に一人話している。
ササミは猫語が判らないのでフリードが一人漫才しているように見えるのだ。

すっと力が抜け、自分を振り返る余裕ができたのだ。
「ははっ・・・なんでかにゃー」
自嘲気味に呟き、夢見石をリリィに差し出した。

魔界にいたころ、人質というものは意味がないモノだった。
人質に取られた時点で取引は成立しない。
ずるずると要求を飲み、一方的に搾取されるようなもの。
ならば人質に取られた時点で殺されたものとして、次の行動をとる事こそが合理であった。

にもかかわらず自分は今これだけ分析と選択に苦しんでしまっている。
ここまで迷い苦しむのなら、いっその事そのまま流れに任せてみよう、そんな気にされてしまったのだ。

夢見石を受け取ったリリィは念を集中し、光が当たりを覆っていく。
闇の中にあって視界が効かぬように、眩しすぎる光の中でもまた視界は効かないのだ。
光が収まった時、リリィの足元には人と一本の杖が具現化されていた。
直後、力尽き崩れ落ちるリリィの膝が床に着く前にササミはリリィの横に移動しており、倒れぬように支えていた。

昏倒し意識のないリリィを抱えながらササミはリリィより受け取ったテレパシーの内容を余さず一堂に伝えた。
「言葉が正しけりゃ、この中にはスケルトンに憑りつい取った姫がはいっとりゃーす。
判らへんのはテレパシーで脅迫した奴だがね。
まだリリィの中におるんか、そもそも何者なんか。
この夢見石も含めて、どうみやあす?」
ユリ、ルナ、フリードの順に視線を巡らせた。

208 :リリィ ◆jntvk4zYjI :2012/09/22(土) 08:19:47.39 0
>「言葉が正しけりゃ、この中にはスケルトンに憑りつい取った姫がはいっとりゃーす。
>判らへんのはテレパシーで脅迫した奴だがね。
>まだリリィの中におるんか、そもそも何者なんか。
>この夢見石も含めて、どうみやあす?」

リリィが具現化したのは、二つ。
ひとつは、リリィと背格好がよく似た、だがもう少し年上に見える女性。
そしてもうひとつは、羽と蛇が絡みついている、奇妙な形の杖だった。
昏倒している彼女の方は、当分目を覚ます様子はなさそうだ。
学園に戻れたら、保健室に担ぎ込んだほうがいいかもしれない。

「うう・・・・頭痛いぃ・・・・・・」
意識を取り戻したリリィは、額を両手で押さえながらくぐもった声をあげた。
 
「その人を傷つけないで。姫がその中にいるのは本当・・・・・・だと思う。
 でも、中にいるのは姫だけじゃないの。過去にスケルトンの犠牲になった人も入ってる」
リリィのそばに倒れているのは、彼女と背格好が似通っているが、もう少し年長の女性。
昏倒している女性は、目立った内容は無い。だが、当分目を覚ます様子はなさそうだ。
「調べてみないとわからないけど・・・・・ううん、やっぱり何でもない」
妊娠しているかもしれない、などというデリケートな話題は、今ここで出すべきことではないだろう。

少し顔をずらすと、妙に寝心地のいい枕がぽにゅっと沈んだ。
(気持ちいい・・・・・それに、何だかとってもいい香りが・・・・・・ん?!)
ばちっと至近距離で、ササミと目が合ってしまった。
「うわあっ!さ、ササミちゃん?!
 ・・・・・・あ、あれっ?もう体は大丈夫なの?どこも痛くない?まだ人面瘡が憑りつかれてる・・・・って事は無いよね?」

「ねえ皆、あの綺麗な男の子はどこに行ったの?あ、あとスケルトンは?」
ちょっと、どころか、かなりの記憶が抜け落ちているようだ。
仮に、ササミへの脅迫の件を問うても、「少年にぶつかった後の事は、気絶してて一切覚えていない」と返ってくるだろう。

次にリリィは手元に視線を落としたかと思うと、飛び上がらんばかりに驚いた。
「わあああ!セラエノちゃんが!セラエノちゃんが首だけになってる!ひどい!なんで?!
 これも七不思議のひとつなの?!一体、誰がこんなひどいことをー!!」

わああ、と泣き崩れるリリィだったが、周りには何のことだかさっぱりわからないだろう。
ちなみにセラエノというのは、鏡仮面を常に愛用している、一風変わったリリィの友人だ。
素顔を知っている人間も、僅かながら存在する。
彼らがこの場に居合わせたとしたら、口をそろえて「セラエノの素顔は、このような石とは似ても似つかない」と答えるはずだ。
だが、テレパシーを受信できないという特異体質のリリィが知っているセラエノの素顔は、他人とは少々違っていたのた。

状況の説明を受け、事情を飲み込めたリリィは、やがて夢見石が『友人の生首』ではない、という事を悟り、落ち着きを取り戻すだろう。
だが問答無用で少年を斬って捨てた、と知れば、ササミの行為を咎めるような視線を少なからず向けるだろう。
「何もいきなり斬らなくたって・・・・・・。
 あの少年は、悪意なんて全然無かったはずだよ。・・・・・かわいそうな事しちゃったね」

そして、もうひとつ具現化した奇妙な杖を見つけたとしたら、驚いてこう叫ぶだろう。
「あれ?私、さっき見た変な夢の中で、この杖見た気がする。
 金色の鳥籠の中に閉じ込められた大きな蛇の夢。何度か見た夢なんだけど、今日はちょっと変わってて・・・・・・。
 やっと出られるって言って、ものすごく喜んでた。
 なのに、檻から出たとたん、その蛇、小さな棒になっちゃって・・・・・・そう、こんな感じの杖だったような・・・・・・・。
 そういえばその蛇、妙においしそうな名前だった気が。えっと・・・・・・・・カドゥ・・・ガドゥケ・・・・・ガトゥケーキ?」
どう見ても食べられないよね?とリリィは不思議そうに指先で杖をつついた。

「ごめんね、皆。余計な時間をとらせてしまって。
 で、この石どうする?
 あ、言っておくけれど、もう一回この石使ってみろって言われたって絶対無理だよ?
 そもそも私、そんな力なんて無いはずなのよ。
 送信専用のテレパシーと、空飛べる以外の能力なんて無いんだし」

209 :リリィ ◆jntvk4zYjI :2012/09/22(土) 08:20:44.64 0
リリィが混乱したせいで少々余計な時間を取ってしまったが、ルナが空けてくれた『穴』がいつまでももつとは限らない。
早急にこの場を立ち去るのが得策だろう。
「この人、置いていくわけにも行かないよね」
だが、連れて行く人間が一人増えてしまった。
連れて行くかどうかの判断は、別の人間が最終判断を下すかもしれない。
それはそれとして、今は全員でこの場から抜け出す算段をするべきだろう。
リリィは、フリードを先に外に運んでから、気絶している女性を氷の鎖で一本釣りしてもらおうと一瞬思ったが、すぐにそれを打ち消した。
妊婦(かもしれない)相手に、そんな無茶はさせられない。

「とりあえず、私、穴の外に出てみるよ。ルナちゃん、一緒に行ける?
 フリード君、ここはササミちゃんに頼んで運んでもらおうよ。
 ・・・・・・で、その女の人だけど、氷の鎖を使って、タンカみたいなもの作れるかな?
 怪我が治ったササミちゃんが二人抱えるのは厳しくても、私とササミちゃんの二人でなら、何とか穴の外に運び出すくらいは出来ると思うの。

 ・・・・・・それとルナちゃん、私、さっき意識飛んじゃったでしょ?
 でね、・・・・・その・・・・・まだ、変なのに憑りつかれてるかどうか、自分自身にもわからないの。
 もし気持ち悪かったら、私以外の人に頼んでもいいんだからね?」

ルナにそう断った後、リリィは箒に乗って、穴の中に飛び込んだ。

210 :ルナ・チップル ◆apJGY8Xmsg :2012/09/22(土) 23:45:00.63 0
>>202(穴の前に立ちはだかるユリ)
>「学園に帰る前に、夢見石が本当に7不思議を起こす力があるか確かめた方が良いんじゃないかな。
 (略)
 真贋を見分けるのって大事だよね!」

(……んー。こんな小っこい石が古代兵器かもしれないなんて)
俯き加減のルナは夢見石をチラ見。怪訝な表情を隠している。

>>203(疑惑のリリィ)
>「リリィが悲しむ、ね。・・・・・・では、君自身はどうなんだい?
 (略)
 ユリサンと一緒に移動したほうがいいかもしれないね」

(私自身はねぇ、リリィの悲しむところを見たくないのが一番。
それに思念を現実化する兵器なんて危なっかしいって思ってる。今はね。
だって、七不思議の事件で学園はあんなにすっちゃかめっちゃかになっちゃってるんだもの。)

>>205(一人漫才のフリードリッヒ)
>「まあ一時期絶対に死なない妻を作るんだって
 亡くなった奥さんとそっくりなオートマータしか作らなくなった時期もありましたけど
 今は正気に返ってますよ」

(人間ってかなしいいきものね…。わたしもみんなが死んじゃったらかなしいもの)

>>207(ササミのテレパシー)
>「言葉が正しけりゃ、この中にはスケルトンに憑りつい取った姫がはいっとりゃーす。
 判らへんのはテレパシーで脅迫した奴だがね。まだリリィの中におるんか、そもそも何者なんか。
 この夢見石も含めて、どうみやあす?」

ルナは具現化された女性と奇妙な杖を見て

「夢見石は本物…かも。ってことはつまり…、そういうことよね?ユリさん」
ユリを見る。続けてリリィ。
リリィはササミと抱き合うようにしていた。

>「何もいきなり斬らなくたって・・・・・・。
 あの少年は、悪意なんて全然無かったはずだよ。・・・・・かわいそうな事しちゃったね」

「あんまり気に病むことはないよ。もともと生き物でもないみたいだし
なんか不気味な感じが私はしたから」

>「ごめんね、皆。余計な時間をとらせてしまって。
 で、この石どうする? (略)
 送信専用のテレパシーと、空飛べる以外の能力なんて無いんだし」

「石に反転魔法をかけて、現実化できないようにしちゃったらいいんじゃないの?
ちょっと難しいかもだけど、私の魔力が夢見石の力に勝ったらできるかもしれないよ」

>「とりあえず、私、穴の外に出てみるよ。ルナちゃん、一緒に行ける?
(略)
>もし気持ち悪かったら、私以外の人に頼んでもいいんだからね?」

「うん、ありがと。それじゃあ私、あとから行くから」
微苦笑してルナは小さく手を振った。箒にのったリリィの背中が遠のいてゆく。

「みんなっはやく脱出して!穴が小さくなってゆくわ。
私はこっちの世界から穴が塞がるのを抑えているから」
ルナは小さくなってゆく穴にむけて、タクトから稲妻のような魔力を送る。

211 :ユリ ◆sto7CTKDkA :2012/09/26(水) 18:00:12.77 O
>203-210
>「そうですよね本当にそれが七不思議の原因かどうかなんて分からないんですから
>「・・・・・そうだね、じゃあ、できるかどうかわからないけれど、試してみるよ。
> ササミさん、その石版を渡してくれないかな?」
フリードとリリィの同意を得られたのは、ユリにとっては強力な援護となる。
なぜなら肝心要の夢見石を持ったササミが石の使用に消極的であり、ユリの説得に簡単には応じそうになかったからだ。
妖刀ヘイボンをいつでも抜き打ちに出きるよう身構えるユリと葛藤するササミの間に、緊張が高まる。
だが緊張はあくまで2人の間だけのものであり、回りにはあまり影響を及ぼしてはいなかった。
いや、あるいはそれは、フリードとその使い魔ならではの技なのかもしれないが。

>「まあとにかく真偽のほどを確かめたら早く戻りましょう (中略)
>『でも多分別の生徒が解決してるんじゃね?』(猫語)
張り詰めた空気もどこ吹く風とばかりの会話に、ササミから感じる気の力が抜ける。
>「ははっ・・・なんでかにゃー」
夢見石がリリィの手に渡るのを見てから、ユリは妖刀の柄にかけていた手を降ろした。
余談になるが、ユリも別に猫語が理解できるわけではない。
毒気を抜かれなかったのは、真贋の見極めがユリにとっては天下分け目のような一大事だったからである。

リリィが夢見石の力を使うのを見ながら、ユリは満足そうに目を細めた。
やはりこの石は“当たり”だったのだ!
>「言葉が正しけりゃ、この中にはスケルトンに憑りつい取った姫がはいっとりゃーす。
>判らへんのはテレパシーで脅迫した奴だがね。
>まだリリィの中におるんか、そもそも何者なんか。
>この夢見石も含めて、どうみやあす?」
>「夢見石は本物…かも。ってことはつまり…、そういうことよね?ユリさん」
「夢見石は本物に相違ないね。
 脅迫したのは、リリィ=サンの体から出て来たもの、つまりはその奇妙な杖だと思う。
 無論その脅迫人の『喜んで彼女から出て行く』という言葉が事実なら……ですが」
ササミに促されて、ユリは自分の意見を述べた。
杖が姫で女性が脅迫人という可能性もないではないが、杖の持つ力を感じ取りながらユリはそれはないだろうと思う。
夢見石を探していて思わぬ掘り出し物を見つけ出した形である。

しばし気を失っていたらしいリリィも、大事はなかったようで目を覚ましてきた。
話の内容からするに、少々記憶が抜け落ちてはいるようだが。
>「ねえ皆、あの綺麗な男の子はどこに行ったの?あ、あとスケルトンは?」
「インガオウホウ」
後は察してくださいとばかりに、ユリは短く答えた。
死ぬなり消えるなりした者の事を長々と語るのは、無意味と考えての事だ。

>「わあああ!セラエノちゃんが!セラエノちゃんが首だけになってる!ひどい!なんで?!
> これも七不思議のひとつなの?!一体、誰がこんなひどいことをー!!」
「落ち着いてリリィ=サン。
 これはセラエノ=サンの首ではなく、先ほどの少年をササミ=サンがキリステ・ゴーメンにした時に現れた石です。
 正体は夢見石と呼ばれる古代兵器で、セラエノ=サンという人とは実際無関係」
セラエノの事を“知らない”ユリがそう答えたのは、リリィが少年をセラエノとは呼ばなかったからである。
ユリとしては、その石がセラエノではないとは必ずしも思っていなかった。
少年を形造っていた石版が、前は別人の姿でセラエノと名乗っていた可能性はあるのだ。
(もっとも、顔が石版の友人という言葉は理解しがたくはあったが)

212 :ユリ ◆sto7CTKDkA :2012/09/26(水) 18:02:03.25 O


その後、落ち着きを取り戻したリリィの言葉を色々と聞いたユリは、やはり杖が強い影響力を及ぼしていたのだとの確信を強める。
夢見石の力を使えたのも、その杖あればこそなのかもしれない。
杖の名称も能力もユリにはわからなかったが、名のある魔道具であることに間違いなかった。

>「ごめんね、皆。余計な時間をとらせてしまって。
> で、この石どうする?
「使えない石を持っていてもリリィ=サンの邪魔になるだろうから、私がしばらくあずかるよ。
 古代兵器についての里に伝わる伝説からいろいろ知ってるから、扱いも完璧だしね!」
そう言い終わった時には、夢見石はすでにリリィの手からユリの手の中に移動していた。
目にも留まらぬ早技も熟練のニンジャならではである。 ワザマエ!
手にした夢見石を透かしてみたり読めない文字に目を通したりしながら、ユリはうんうん頷いた。
これなら“なんとかなりそう”なのを確認したのだ。

>「みんなっはやく脱出して!穴が小さくなってゆくわ。
>私はこっちの世界から穴が塞がるのを抑えているから」
「かたじけない。 それでは私は一足先に失礼。
 こちらの女性を連れ出す術は持たぬ故、処遇はお願いいたします」
ユリは再び風呂敷を取り出すと四方を両手両足で持ち、ムササビのように飛び出してひらりと穴の外に降り立つ。
「空間が閉まる前に中から杖を持ち出すのもお忘れなく!」
外に出たユリは出てきた穴にそう呼びかけると、後は一心不乱に夢見石に集中し始めた。

213 :フリードリッヒ ◆cOOmSNbyw6 :2012/09/28(金) 17:29:19.18 0
>209
>「・・・・・・で、その女の人だけど、氷の鎖を使って、タンカみたいなもの作れるかな?」
「姉さんに比べるとだいぶ精度は落ちますが・・・・・」
と一言前置きしてから呪文を唱え始めるフリードリッヒ
「我は想像し想像する!!」
氷の鎖は縦糸と横糸となり一枚の布の様な物に変わる
「後は両端に氷の棒をくっつけて・・・・・よし出来上がりです」
新たに生み出された断面を見ると六角形の雪の結晶になっている棒を両端にくっ付けるフリード
「ちょっと冷たいのが難ですけど人を運ぶと言う役割は達成できるはずですよ」
とフリードリッヒは言うのだがそんなものを素手で触って大丈夫なのだろうか?
「まあ心配でしたらここにハンカチーフがありますのでそれで持つ所を包んでから使ってください」
ハンカチとちり紙は持っていることが基本である



「外に出たはいいんですが・・・・・ここは本当に学園内なのでしょうか?」
『ワープとかしてなかったらそのはずだよ』(猫語)
この学園何があるのか分からないからとても不安である
はたして本当にここは学園内の敷地なのだろうか?

214 :名無しになりきれ:2012/09/30(日) 19:27:19.41 i
さあ、コラーゲンを差し上げよう

215 :ササミ ◆/TZT/04/K6 :2012/09/30(日) 22:49:29.42 0
気絶したリリィを抱えながら夢見石についてそれぞれの見解を問うていたらリリィが目を覚ます。
胸元にも顔があるササミなのですぐにそれに気づいたが、少々微妙な顔。
思ったよりもリリィが早く目覚めたからだ。
正直な気持ちを言えば、リリィが目覚める前に夢見石の見解と処遇を決めてしまっておきたかった。
このような事態を引き起こした夢見石をこれ以上リリィに関わらせたくなかったからだ。

だがそれは過保護というものだったと知ることになる。
目覚めて間もなく、まだ本調子でもないに関わらずリリィは自分の事よりも夢見石によって作り出された女性について語ったのだから。
そしてリリィにしか知りえぬ杖の事も。
事態収拾に大きな一歩となる情報だが、その分析よりも
「それどころじゃなかろーに」という半ば呆れた気持ちがササミの胸に去来していた。
分析よりも先にそんな気持ちが生まれる自身の変化にも少々呆れていたが、そんな気持ちも吹き飛ばされてしまうのだ。

次にリリィが発したのはササミの状態への気遣い。
そして夢見石を見て突然泣き崩れ始めるのだから。

事情を聴いて落ち着かせたのだが、泣きはらしためで咎めるような視線を送られて
「いや、あれはそもそも生き物でもにゃーし…」
あれだけのことをしでかし、自身も体を乗っ取られかけたというのに。
反論しようとしたが、二の句は噤まれる。
この理不尽さこそ、リリィなのだ、と逆に安心してしまったのだから。

ともあれ、一応の決着はついたのだ。
リリィを乗っ取ろうとしていた【姫】とその犠牲者たちは具現化されたこの女性に。
リリィの中にいた金色の鳥かごの中の蛇は杖に。

「やめときやーせ。古代兵器レベルの石に力で勝てるとは思えへんし、どんな反作用があるか分かったもんじゃないがね」
ルナの反転魔法で夢見石を封印する案をあっさりと切って捨てる。

ユリは夢見石を持ち穴から出ていく。
もともとの目的がこれである以上、妥当な行動だろう。
その処遇も既に決まっていそうなので構わない、が、ひとつ気がかりがあった。
リリィの語ったセラエノという女生徒。
おそらくそれもあの少年と同じく夢見石自身が具現化した器なのだろう。
あれだけの大きさの夢見石がもう一つあるとは思いたくないが、実際にあるのならば偶然とは思えない。
具現化した器が女生徒という点から、雌雄一対の夢見石なのかもしれない、と。
それが何を意味し、何を引き起こすのか。
気がかりではあったが、今はそれを考える場合でもなかった。
ルナのあけた穴が既に小さくなってきているのだから。

リリィが箒で穴に向かうのを見送り、ルナはもう一度穴をあけるために魔法を発動させる。
フリードは氷で担架を作り、具現化された女性を乗せている。
「手だけ貸すがね」
そういって手袋を一対念動で飛ばし、担架の一端を持ち上げ穴に向かって飛ばすのであった。

「さて、ルナ?そうやって先に行けってーのは一人取り残されるフラグってしっとった?
たぶんあの杖は私じゃ触れへんやろーでもってちょーせー」
残されたルナにササミが話しかける。
リリィの話とその形状からすればこの具現化された杖は神器カドゥケウス。
強力な治癒の力と空間を操る力を持つ神の器。
魔族であるササミには触ることはできないだろうから。

リリィ、ユリ、フリードが穴から出たのを確認し、ルナに杖を持たした後、ルナを抱えて穴へと飛び上がるのであった。
「はー、今回は血抜きもしたりして疲れたがね。
お肌もカサカサになってもーて。コラーゲンたっぷりのスープでも飲みたいがねー」
ため息ながらに呟き、ルナの顔を見て笑みを浮かべた。
問題は山積しているのだろうが、目の前の障害は一応片づけられたのだから。

216 :ルナ・チップル ◆apJGY8Xmsg :2012/10/02(火) 00:31:52.65 0
>「かたじけない。 それでは私は一足先に失礼。
 こちらの女性を連れ出す術は持たぬ故、処遇はお願いいたします」

「お礼なんていいのよ。人気者のルナが、お友達を助けるなんて当たり前のことなんだからっ」
そういうと、ユリはムササビのように穴にむかって飛んでゆく。
無事に飛んで行くのを見届けて、ルナはほっと一息ついて視線を落とす。
視線の先には氷で作られた担架に寝ている女。
(いったい、なにものなの?)

>「やめときやーせ。古代兵器レベルの石に力で勝てるとは思えへんし、どんな反作用があるか分かったもんじゃないがね」

「ふむー…。じゃあやめとく。夢見石のことのはユリさんが詳しいみたいだしね」

謎の女を乗せた担架は、ササミの念動力の宿った手袋の力などで、うまいこと引き上げられてゆく。
ルナは今回の事件が、みんなの友情や私利私欲が合わさって見事に片付けられたのだ…と思う。

>「さて、ルナ?そうやって先に行けってーのは一人取り残されるフラグってしっとった?
 たぶんあの杖は私じゃ触れへんやろーでもってちょーせー」

「ふひひ、知ってたもん。不思議空間に一人取り残される美少女。離れ離れになって号泣するお友達。
これがルナの総合演出なの。まー頃合をみて、ちょいちょーいって脱出するつもりだったんだけどね」
目を半分ほどに薄めて笑っていると、ササミが杖を渡してきた。
受け取ったルナは目をぱちくり。
すると浮かび上がる体。ササミがルナを抱きかかえて穴へと飛び上がったのだ。

>「はー、今回は血抜きもしたりして疲れたがね。
 お肌もカサカサになってもーて。コラーゲンたっぷりのスープでも飲みたいがねー」

「うん飲みたいっ。鳥の手羽先、うなぎ、鱶鰭、もう想像しただけでおなかが空いてきっちゃった。
…って、ササミ、あんたっ」
私を見て微笑んでる!という言葉が、喉まで出かけたけどなんとか飲み込んだ。
良いことなのか悪いことなのか、ササミにとってのルナの存在感が増量されている。
それに今ごろ気付いたルナ・チップルは少し怖くなる。

――穴の外。

>「外に出たはいいんですが・・・・・ここは本当に学園内なのでしょうか?」

「学園であって欲しいよ。だってこの人、意識がないみたいだし、それにみんな疲れきっちゃってると思うし」
心配しているフリードにルナが話しかけ、担架に横たわっている女を心配そうにみつめる。
次にユリに視線を移すと彼女は夢見石に意識を集中していた。
何をしているのか不思議にも思ったが、彼女は多分、ここにいる誰よりも夢見石に詳しい人間。

「がんばってユリ」
と親指をぐいと突き出す。

そういえば、リリィの指の骨は治っているのだろうか。たぶん治っていないはず。

「どうしよー…」
もっている杖に自然に力がこもる。すると杖が輝き始めた。
「えーなにこれ!?なんか…あったかい…。力がわいてくるみたい…」
ルナが自分のおでこに杖のさきっぽを寄せてみると、あたまがすっきりしてきた…気がする。
これはもしかして…。恐る恐るリリィの手に杖の先っぽを寄せてみる。

「リリィだいじょうぶ?もしかしたら手の骨が治るかも。うまくいったらあの女の人も治せるかも」
夢見石が生み出した神器カドゥケウスにいかなる力があるかはわからない。
単なるルナの気のせいでまったく効果がないかもしれない。それかいっかい使ったら砕け散ってしまうかもしれない。

217 :リリィ ◆jntvk4zYjI :2012/10/04(木) 11:26:18.77 0
>210-216
>「使えない石を持っていてもリリィ=サンの邪魔になるだろうから、私がしばらくあずかるよ。
> 古代兵器についての里に伝わる伝説からいろいろ知ってるから、扱いも完璧だしね!」
「あ、じゃあよろしくお願い」
お願いします、と言い終わる前に、夢見石はリリィから離れ、ユリの手の中へと移動していた。
(はやーい・・・・・・)
だが、渡すことに異論などあるわけが無い。
ユリが夢見石を管理できるというのなら、喜んで!というのが正直な気持ちだ。
また、ルナが早まらず、夢見石に反転魔法を使わずにいてくれたのは僥倖だった。
人間まで具現化できる力を持つ石など、既に神の領域だ。
人の手には余る。

>「我は想像し想像する!!」
フリードの作り出した氷の鎖は縦糸と横糸となり一枚の布の様な物に変わる
>「後は両端に氷の棒をくっつけて・・・・・よし出来上がりです」
「わ。すごい!」
氷でできているとは思えないほど立派な担架だ。
>「ちょっと冷たいのが難ですけど人を運ぶと言う役割は達成できるはずですよ」
「ありがとう、フリード君。さすがね!」
>「まあ心配でしたらここにハンカチーフがありますのでそれで持つ所を包んでから使ってください」
といってハンカチを差し出す。
リリィの使っている木綿のハンカチとは違い、フリードのそれは、素人目から見ても明らかに高価だと分かる品だった。
「あ、ありがと。でも、本当にそんなことに使っちゃっていいのかな。はは・・・・・あっ!しまった!忘れてた!
 ごめん皆、女の人担架に乗せるの、ちょっとだけ待って!」
リリィはえいやっとばかりに、着用していた制服を脱ぎ始めた。
「や、このまま担架に乗せたら絶対冷たいかなって。下に制服一枚分でも布があったら、ちょっとはマシかなー、なんて。
 ・・・・・・・・・・あ、あんまりこっち見ないでね。な、なんか、恥ずかしいから」
そう言って、下着姿


・・・・ではなく、(制服の下に着用していた)Tシャツと黒スパッツ姿になったリリィはもじもじした。


218 :リリィ ◆jntvk4zYjI :2012/10/04(木) 11:26:49.93 0
>「かたじけない。 それでは私は一足先に失礼。
> こちらの女性を連れ出す術は持たぬ故、処遇はお願いいたします」
「了解です」
ユリは再び風呂敷を取り出すと四方を両手両足で持ち、ムササビのように飛び出してひらりと穴の外に降り立つ。

「じゃあルナちゃん、外で会おうね!」
ルナは、リリィと一緒の箒には乗らなかった。
(脱出用の穴をもたせるために残ったんだよね、ルナちゃんは)
ルナの好意は分かっている。皆が安全に脱出できるために残ったのだと。
だが。
もしも・・・・・・もしも「気持ち悪い」と思われていたら?などという考えがちらりと脳裏をよぎる。
(ルナちゃんは皆が安全にここから出るために残ったんだから。失礼にも程があるわ)
リリィはぽかぽかと頭をたたこうと思ったが、あいにく、両手が箒と担架でふさがっているので出来なかった。
集中していなかったせいか、ぐらりと箒が傾いてしまった。リリィは気を取り直し、集中して箒を飛ばすことに専念しようとする。
いくら馬力があるとはいえ、気難しい箒のバランスを取りながら、人を運ぶ、といいうのはなかなか骨が折れ作業なのだ。
(お、重いかも・・・・・・)
一生懸命バランスを取っていると、不意に、ふわっと重みが減った。
見ると、ササミの手袋がひとつ、担架を運ぶ助っ人として添えられていた。
あまりのタイミングのよさに、リリィの顔が、思わず綻んだ。

>「空間が閉まる前に中から杖を持ち出すのもお忘れなく!」
「えっ!」
穴の外に出てきたユリの言葉を聞き、リリィは、露骨に戸惑った顔をした。
あの杖は、なぜかあのまま置きざりにしたほうが良い気がしていたからだ。
一方のユリは、一心不乱に夢見石に集中し始めている。
「あ、あの・・・・・ユリさん、何してるんですか?」

そうこうしているうちに、フリードとグレン、その後ササミがルナをつれて穴から出てきた。
>「外に出たはいいんですが・・・・・ここは本当に学園内なのでしょうか?」
>『ワープとかしてなかったらそのはずだよ』(猫語)
「わーぷ?何それスープの仲間?おいしいの?」
どうやら、リリィはおなかがすいているようだ。

>「学園であって欲しいよ。だってこの人、意識がないみたいだし、それにみんな疲れきっちゃってると思うし」
「そうだね。でも多分大丈夫じゃないかな?ここ、森の中っぽいし」
森だからといって学園とは限らないのだが、リリィはそう請け負った。
>「はー、今回は血抜きもしたりして疲れたがね。
>お肌もカサカサになってもーて。コラーゲンたっぷりのスープでも飲みたいがねー」
>ため息ながらに呟き、ルナの顔を見て笑みを浮かべた。
(おお!いつの間にかササミちゃんがルナちゃんといい感じになってる!なんかとっても仲良しっぽいかも!)
リリィがぐっとこぶしを握り締め、知らずガッツポーズをした。
合理的で、あまり人を寄せ付けない雰囲気があるササミの交友範囲が広がる事は、リリィとしても喜ばしいことである。


219 :リリィ ◆jntvk4zYjI :2012/10/04(木) 11:27:58.18 0
ユリはまだ夢見石に集中している。
>「がんばってユリ」
と、ルナが親指をぐいと突き出す。
「な、何してるんですか?ユリさん」
リリィが恐る恐る、先ほどと同じ質問を繰り返した。

「えーなにこれ!?なんか…あったかい…。力がわいてくるみたい…」
ルナの声に何気なく振り向く。すると、ルナが持っていた杖の先がぼんやり光り始めているように見えた。
硬直しているリリィの顔から完全に血の気が引いているが、ルナはまったく気づいていない。
>「リリィだいじょうぶ?もしかしたら手の骨が治るかも。うまくいったらあの女の人も治せるかも」
「だ、だめ!!」
リリィは普段の動きとは別人のようなすばやさで体当たりすると、右手を振り下ろし杖を地面に落とそうとする。

「ルナちゃん!大丈夫?どこも痛くない?変な声が聞こえたとか、気持ち悪くなったなんてことは無い?!」
リリィはひとしきりルナの体を確認し安堵の息をついた後、目を吊り上げてルナを怒鳴りつけた。
「なんって危ないことをするの!よく分からないものをいきなり使おうとするなんて!
 その杖、下手したら呪われてるかもしれないのよ!
 最悪、杖に魔力や魂を食い尽くされて死んじゃうかもしれないのに!ルナちゃんのバカバカバカ!!」

リリィにしてみれば、杖の名前どころか効果もよく分かっていないのだから、この言葉は仕方が無いといえば仕方の無いことだった。
巷に溢れる杖によっては、魔法をかけた相手だけではなく、本人に悪影響を及ぼすものもあるのだから。
また、リリィはそこまで思い至らないだろうが、この杖が仮にとても貴重な品なら、所有権を巡って血みどろの争奪戦が行われる場合もある。
たとえば、現所有者が死ぬことでしか次の希望者に所有権が移動しないマジックアイテムなどがそうだ。

まあいずれにしても、よく分からない夢見石(もの)を使って、よく分からない杖を具現化した張本人にだけは、ルナも言われたくなかっただろう、
だが、残念ながら記憶が無いので、リリィ本人としてはノーカウントのようだ。
なんともひどい話である。

「ルナちゃん、よかったらこの杖、フリード君に氷漬けにしてもらってから持ち歩くのはどうかな?
 ハンカチで持てばそんなに冷たくないよ、きっと」
リリィはそう言ってルナにハンカチを取り出そうとしたが、無理だった。
別に忘れてきたわけではない。彼女のそれは、制服と一緒に女性の敷き毛布の代わりを務めていたからだ。

「で、でも!心配してくれてありがとね、ルナちゃん。
 左手はまだ完治してないけど、保健室でちゃんと治療を受けるから大丈夫だよ」
骨生え薬はかなりの苦痛を伴うが、明日にはきちんと元に戻るだろうから否やは無い。
「大丈夫なんだからね。
 だから、ササミちゃんはおいしいスープでも飲んで、きっちり身体を労わってくれなきゃ怒るよ?」
 というわけでフリード君、この女性を保健室まで運びたいんだけど・・・・・えーと、その、一緒に来てくれる・・・・・かな?」
 保険医に、悪い意味で心底惚れ込まれているフリードの事情は知っているだけに、リリィの声も小さくなる。

「・・・・・・・ところでユリさん、さっきから夢見石に何をお願いしてるの?」
リリィは三度同じ質問を繰り返した。
今度教えてもらえなかったら、さすがに涙目である。


220 :ニンジャ ◆sto7CTKDkA :2012/10/08(月) 15:57:02.76 O
>>213-219
>「がんばってユリ」
>「な、何してるんですか?ユリさん」
ルナの応援にもリリィの再度の呼びかけにもニンジャは何も答えずに、夢見石に意識を集中している。
夢見石の力を引き出すのは始めてなので、聞こえているが返事を返す余裕がないのだ。
しばらくして、夢見石からリリィが石を使った時と同じ光が出始めてからやっと、ニンジャは夢見石から目を上げた。

>「・・・・・・・ところでユリさん、さっきから夢見石に何をお願いしてるの?」
「お願いではなくて確認していたのです。
 まずはこれをご覧ください。 ニンポウ、ガマガエルジュツ!」
指で印を組んだニンジャがジュツを使うと、その姿は足元から破裂音と共に吹き出した白い煙に隠されてしまう。
煙はすぐに晴れたが、ニンジャがいた場所には牛よりもさらに大きい巨大なカエルが座っていた。
ニンジャ本人は、呼び出されたカエルの頭の上に立ってリリィたちを見下ろしている。

「私には元々カエルを呼び出す能力はありませんが、夢見石の力を使えばこのとおり。
 ニンジャは巨大カエルを呼び出して戦うものだ、と考えている人々の思いを現実にできるのです。
 さあ、コラーゲンを差し上げよう」
煙と破裂音が再び起こった後、巨大な蛙の横には人間の身長ほどのスライムが出現していた。
全てのスライムがそうではないにしても、このスライムのゼラチン質の体には大量のコラーゲンが含まれているに違いない。

「このように夢見石を使えば夢のような生活が待っているのです。
 魔法学園の生徒に変装してみな=サンについていき、夢見石を簡単に入手できたのは成功でした。
 しかし、私がこのように夢見石を私事に使おうと思うようになったのも、ルナ=サンの助けあっての事。
 ルナ=サンには感謝しなければなりませんでしょう。」
ルナの行動がニンジャにどう変わるきっかけを与えたのか?
それは、記憶を戻そうとして使った反転魔法だった。
あの時実験段階だった魔法の光の奔流を、ニンジャは確かに避けたように見えた。
だが、魔法は確かにニンジャの精神を反転させていたのだ……善忍から悪忍へと。

「この夢見石は私が頂戴していきますが、学園の生徒と偽って同行していたシツレイもある事です。
 1人1つまで、夢見石の力で叶う範囲なら願いを叶えてあげましょう。
 願いが無いならそれでも結構、私はお先にシツレイいたします」
特に用がなければ、ユリに変装していたニンジャはカエルに乗ったまますぐにその場を離れるだろう。
願いを叶えてもらうなら、願いを口にすればニンジャは願いを叶えようとする。
だがニンジャを攻撃したり、夢見石を取り返そうとするなら注意しなければならない。
ニンジャは十分に不意打ちに警戒しているし、カエルは動く物に素早く反応できるからだ。

221 :フリードリッヒ ◆cOOmSNbyw6 :2012/10/08(月) 20:38:19.21 0
>214-220
「というわけでフリード君、この女性を保健室まで運びたいんだけど・・・・・えーと、その、一緒に来てくれる・・・・・かな?」
うへぇとあからさまに嫌そうな顔をするフリード
「別にいいですけど・・・・・」
『大丈夫フィー坊は雄だから無害だよたぶん』(猫語)
いくら見た目が少女のようでもフリードリッヒは男の子
保険医に襲われるなんて心配は無い・・・・・はずだ

その頃の保険室
「ちょっと何ですのこれ!?
 体が縮んでまるで小学生じゃありませんの!?」
と声を発するはごーいんにまいうぇいでおなじみのフリージアさん
だがその背丈はまるで小学生の様になってしまっている
「ついに念願のエターナルチャイルドの生成に成功したぞ!!
 これで学園中の女性をみんな子供にすれば・・・・」
やはり貴様か保険医!!
「やらせはしませんわよ!やらせは!!」
「止められるかな私のふぃじる魔法小学校計画を?」


>「がんばってユリ」
だが本当に彼女はユリなのだろうか?
あまり彼女と係わりが無いフリードリッヒには分からない

「魔法学園の生徒に変装してみな=サンについていき、夢見石を簡単に入手できたのは成功でした。」
「ってちょっと待ってくださいよ!偽者なんですか!?本物のユリさんはどこに行ったんですか!?」
本物がどこに行ったのか大変心配である

>「この夢見石は私が頂戴していきますが、学園の生徒と偽って同行していたシツレイもある事です。
 1人1つまで、夢見石の力で叶う範囲なら願いを叶えてあげましょう。
 願いが無いならそれでも結構、私はお先にシツレイいたします」
「別にいいですけど・・・・願いは自分で叶えなければ意味が無いものですし
 でも出来るならば人間としておかしくない背の高さが欲しいです」
『明らかに設定ミスだもんねフィー坊の背丈』(猫語)
グレンはデットプール病なのか?

「そういえばこの夢見石って総帥が欲しがっていた遺物なんでしょうか?」
『もしそうなら忍者さん命ヤヴァくね?』(猫語)
まあ別に友達でもなんでもないあかのニンジャスレイヤーだからどうでもいいのだが


222 :ササミ ◆/TZT/04/K6 :2012/10/10(水) 23:18:11.65 0
ルナと穴を出るとそこは森だった。
先に穴から出ていたメンバーもそろっており、ようやく一息つけると軽口をルナと叩いている。
するとリリィがそれを見てガッツポーズしている。
七つある顔のうち一つは常にリリィの方へ視線を向けているためにその動きもササミの目に入っていたが、その心の内までは見ることはできない。
何故にガッツポーズなのか?
僅かに気になったが、疲れているせいもあり、深く考えることもなかった。
そう、無事に全員脱出できた喜びの表れだろうと自分で結論付けてしまったのだった。

夢見石に意識を集中しているユリに問いかけるリリィ。
そのリリィの手にカドゥケウスの杖をかざして治療するルナ。
何でもないような光景だが、ササミは驚いた。
そのリリィの反応の鋭さと反応そのものに。

ササミの想定をはるかに超える速さでルナに体当たりし、杖を叩き落とそうとする。
あまりに突然で割って入ることも、それ以前に思考が追いつかない。
「リ、リリィ?どうし…」
ようやく声が口から流れた時にはすでにリリィがルナを怒鳴りつけていた。
それは正体不明のマジックアイテム使用に対する危険性への危惧の叫び。
ルナを慮るが故の怒りだった。

消耗した状態でササミ自身ですら流してしまっていた危険性に即座に気づき、リリィにしてはあり得ぬ速さで適切な対処をしたのだ。
これに驚かずして一体何に驚くというのか。
落ち着きを取り戻し氷漬けにして運ぶことを提案するリリィにようやく思考が追いついたササミが近寄り頭を撫でた。
「あんたさんは人を心配する時は凄い力を発揮するんやねえ。
いつも驚かさせるぎゃー」
誰か大切な者の為に120%の力を発揮する、それが人の強さだとしり、またその影響を確実に受けているササミ。
だがこうして目の当たりにすればやはり改めて感嘆の息を吐いてしまうのだ。


223 :ササミ ◆/TZT/04/K6 :2012/10/10(水) 23:19:29.75 0
フリードと共に保健室に行くことが決定した後、リリィは未だ夢見石に集中しているユリに三度目の同じ質問をした。
三度目にしてようやく顔を上げたユリはどことなく雰囲気が変わっていた。
まずはご覧下さいと牛より大きな巨大カエルを具現化し、その上に立ち見下ろすユリ。
その姿にササミの中で違和感が首をもたげ不信感へと成長していく。

そのユリが人間大のスライムをコラーゲンといって具現化したが、悪乗りが過ぎると笑う余裕は既にササミにはない。
うぞうぞと寄ってくるコラーゲンの塊のスライムに石化ガスを吹きかけ固めながらユリへの視線は外さない。

違和感はさらに増大し、それを肯定するような言葉がユリから語られるのだから。
> 魔法学園の生徒に変装してみな=サンについていき、夢見石を簡単に入手できたのは成功でした。
> しかし、私がこのように夢見石を私事に使おうと思うようになったのも、ルナ=サンの助けあっての事。
> ルナ=サンには感謝しなければなりませんでしょう。」
この言葉にササミの中でスイッチが入る。
学園生徒ユリと名乗り近づいたこの女は夢見石を回収するのではなく己が使う事を宣言。
その原因はルナの助けという事。
ルナが助けた?
空間に穴をあけたこと、ではどこか不自然である。
だが、穴から出てきた後のルナの行動を思い起こせば…

思い起こした瞬間、ササミはリリィの肩を掴み超速度でルナから距離を取った。
「そういえばルナ、あんた穴から出た後「頑張ってユリ」って親指を突き出してやーしたな。まさか…」
ルナの反転魔法が放たれても避けられる距離、約10歩の距離でルナをギロリと睨みつける。
これだけで断定はできないが、だからと言ってユリ(偽)とルナの繋がりがないとも断定できないのだ。

どちらかわからない時はより安全な選択肢をする。
それによって仲間内に亀裂が生じ、権謀術策に長ける忍者の思惑にはまってしまう、という可能性はここでは排除される。
フィジルに来て人や人の絆というものに影響されているとはいえ、基本弱肉強食の魔界で育ったササミにはこの選択肢しかありはしないのだった。

>「ってちょっと待ってくださいよ!偽者なんですか!?本物のユリさんはどこに行ったんですか!?」
リリィをさらに散歩下がらせ、叫ぶフリードの隣に立つ。
「もともとユリとはあそこで初めて会ったわけやし、偽物でも大した違いはありゃーせーへんけど。
ルナとどういった繋がりがありゃーすかないのかも確かめられへんけど、その石は七不思議の原因として回収して封印するという算段だぎゃ。
それを阻むあんたは敵ってことははっきりしとりゃーすがね!」

その言葉と共に一気に加速を始めたササミだが、回復しつつあるとはいえ血抜きをし、消耗した体である。
加速にいつもの精彩は見られず、いとも簡単に巨大カエルから伸びた舌に絡め取られてしまった。
次の瞬間、ササミの姿はそこになく、探せば巨大カエルの口からはみ出る右足だけを見つけることができるだろう。

224 :ルナ・チップル ◆apJGY8Xmsg :2012/10/12(金) 23:43:35.53 0
ダッて走ってきたリリィはまるで電光石火。ルナに体当たりをくらわし
右手を振り下ろすと持っていたカドゥケウスの杖を叩き落とす。
ルナは一瞬の出来事に座り込んで呆けていた。
どうしたのリリィ?どうしてそんなに怒っているの?どうしてそんなに悲しそうなの?
子犬のような顔でリリィを見上げる。彼女の言うことには、分からないアイテムを使ってしまうと
呪われてしまったり、魂を奪われてしまったりするのだそうだ。

>「ルナちゃん、よかったらこの杖、フリード君に氷漬けにしてもらってから持ち歩くのはどうかな?
 ハンカチで持てばそんなに冷たくないよ、きっと」

「……わかったわ。じゃあ、お願いフリード」
フリードに視線を送り、ルナは落ちている杖をつんつんと指差した。

>「で、でも!心配してくれてありがとね、ルナちゃん。
 左手はまだ完治してないけど、保健室でちゃんと治療を受けるから大丈夫だよ」

「うん。おともだちのことを心配するのは正しいことだもん。
ぜったいで、たしかで、安心していられることなんだもん」
胸の奥底が、ふわっと暖かくなる。
リリィがものすごい剣幕でルナを怒るのは友達を大切に思っているからなのだ。

一方のユリは、夢見石に意識を集中していた。
そしてルナに感謝したあと、夢見石の素晴らしさなどをみんなに説明してくれた。

>「この夢見石は私が頂戴していきますが、学園の生徒と偽って同行していたシツレイもある事です。
 1人1つまで、夢見石の力で叶う範囲なら願いを叶えてあげましょう。
 願いが無いならそれでも結構、私はお先にシツレイいたします」
>「別にいいですけど・・・・願いは自分で叶えなければ意味が無いものですし
 でも出来るならば人間としておかしくない背の高さが欲しいです」

「あ、じゃあ私は…神隠しにあって行方不明になっちゃったお兄ちゃんに会いたい!」
それはルナの切実な願いだった。あの日、兄が消えてしまった日から、
ルナの家族はおかしくなってしまったのだ。
あの日に時間を捲き戻せたら、ルナはかくれんぼなんてしない。
ルナを探しにいったまま、兄は帰って来なくなってしまったのだから。

>「そういえばルナ、あんた穴から出た後「頑張ってユリ」って親指を突き出してやーしたな。まさか…」

「あの…えっと、それには大した意味なんてないの。
ユリが夢見石を握ってがんばってたから、反射的に応援しちゃった。
夢見石って兵器なのかもだけど、実際問題、ユリはカエルとかスライムを出しただけだし…。
そりゃ七不思議的なことをやられちゃったら困るけど、ユリはそんな悪いこじゃないよね?」



225 :ルナ・チップル ◆apJGY8Xmsg :2012/10/13(土) 00:56:57.26 0
ササミはルナと距離をとっていた。疑心が空気となって二人の間に漂う。
ササミは、ユリとルナが、裏で繋がっている可能性があると疑っているのだ。

「ちょっと待ってねササミ。夢見石を封印してしまうのは、
私の願い事を叶えてからにしてちょうだい」
視線がぶつかる。
ユリの語った具体的な夢見石の効用が、ルナの欲望をかきたてていた。

「古代兵器だって、いいことに使うのなら悪くないよね?」
リリィたちに問いかける。と同時に自分の心にも。

でも次の瞬間、ルナは目を疑う。
巨大ガエルからはみ出しているササミの右足。

「あわわわわわわ!!せっかくわかりあえてきたのに…」
カエルはトンボやハエなど虫を食べる。ルナにもそれはわかっていた。
でも目の前にいる巨大カエルはササミを食べた。つまり無差別。
(どうしようぅ…)

「ね、ねえリリィの願い事って…なに?」
ルナは心の中でササミの命と兄を天秤にかけていた。
今なら、さっき言った願い事をキャンセルしてササミの救出を願うことが出来るかもしれない。
または、リリィの願いごとでササミを助けてもらうことができるかもと。
でもそれが上手くいかなかったら?ルナは迷う。

やっぱり自力で助けるしかないのだ。二兎を追うものは一兎をも得ないのは
二兎しか追わないから一兎も得られないのだ。
ルナは十兎追いかけてせめて一兎は捕まえたい。そんな心意気。
深呼吸をしてカエルにタクトの先っぽを向ける。
胃袋に詰まっているササミを丘の上の気の穴に詰め込むのだ。

「ワディワジー!」
ターコイズブルーの稲妻がカエルへと迸る。

226 :リリィ ◆jntvk4zYjI :2012/10/16(火) 21:27:59.95 0
>220-225
「……わかったわ。じゃあ、お願いフリード」
リリィの鬼気迫る勢いに毒気を抜かれていたルナだったが、杖を氷漬けにすることには応じてくれた。
>「うん。おともだちのことを心配するのは正しいことだもん。
>ぜったいで、たしかで、安心していられることなんだもん」
(えっ、えーっ?!)
声に出すことは無かったが、リリィは内心でかなり焦っていた。
派手なイメチェンの時も相当驚いたが、初対面の頃の物静かなイメージとも違う、
子供のような無防備な顔を向けられたからだ。
そういえば、ルナの化粧は殆ど落ちてしまっていた。
(きっと、疲れてるってのもあるんだろうな・・・・・今日一日で魔法連発させちゃったし)
もしかしたら、今のルナは普段の虚勢がとれて、素の状態に近いのかもしれない。
もちろんそんな事は口が裂けても言わないが。
きっとフリードもそうだろう。彼は紳士なのだ。

>「お願いではなくて確認していたのです。
 まずはこれをご覧ください。 ニンポウ、ガマガエルジュツ!」
ユリと名乗った忍者が何か呪文を唱えたかと思うと、ぼわんと白い煙に包まれる。
それが晴れたときには、ユリは突如出現した巨大なカエルの頭上に立っていた。

>「私には元々カエルを呼び出す能力はありませんが、夢見石の力を使えばこのとおり。
> ニンジャは巨大カエルを呼び出して戦うものだ、と考えている人々の思いを現実にできるのです。
> さあ、コラーゲンを差し上げよう」
現状を把握しきれず、頭の上にクエスチョンマークを浮かべていると、何の前触れも無く、巨大カエルの横にスライムが出現した。
「召還魔法じゃないんだ。これはこれはご丁寧に・・・・・ってこれまだ生きてるじゃない!
 しかも巨大スライムじゃない!こっちがおいしく食べられちゃうじゃない!」
あわあわと逃げ腰になっていると、ササミがふうっと石化ガスを吹きかけ事なきを得た。
「あ、ありがとうササミちゃん」

227 :リリィ ◆jntvk4zYjI :2012/10/16(火) 21:28:51.56 0
>「このように夢見石を使えば夢のような生活が待っているのです。
> 魔法学園の生徒に変装してみな=サンについていき、夢見石を簡単に入手できたのは成功でした。 」
>「ってちょっと待ってくださいよ!偽者なんですか!?本物のユリさんはどこに行ったんですか!?」
その一言で、ニンジャユリに向けられていたササミの鋭い視線が、きりりとルナへも向けられる。
「えっ?ええっ?!」
> しかし、私がこのように夢見石を私事に使おうと思うようになったのも、ルナ=サンの助けあっての事。
> ルナ=サンには感謝しなければなりませんでしょう。」
その一言で、ニンジャユリに向けられていたササミの鋭い視線が、きりりとルナへも向けられる。
リリィをさらに三歩下がらせると、前に立ちふさがるようにしてフリードの隣に立つ。
>「もともとユリとはあそこで初めて会ったわけやし、偽物でも大した違いはありゃーせーへんけど。
>(略)その石は七不思議の原因として回収して封印するという算段だぎゃ。
>それを阻むあんたは敵ってことははっきりしとりゃーすがね!」
「ちょっと待ってササミちゃん、もしかしたらニンジャさんは、魔法学園生徒のユリさんになりすまして学園に潜入したのかも。
 そうなると、本物のユリさんはどこかに換金されてるってことじゃない?」
考えがこんがらがっているリリィは、さらに場が混迷するようなことを言い出した。
ユリという名前はかなり珍しい。学園生徒全員の名を知っているわけではないが、そう何人も居るとは考えられない。
だとしたら、入れ替わったユリの居所を聞き出さなければならない。何が何でもだ。
(もっとも、さすがにユリが記憶喪失になった後、ニンジャになったという発想は無かったようだ。
ユリの身体スペックが相当高かったのは知っていたのだが・・・・・)

>「この夢見石は私が頂戴していきますが、学園の生徒と偽って同行していたシツレイもある事です。
 1人1つまで、夢見石の力で叶う範囲なら願いを叶えてあげましょう。
 願いが無いならそれでも結構、私はお先にシツレイいたします」
>「別にいいですけど・・・・願いは自分で叶えなければ意味が無いものですし
> でも出来るならば人間としておかしくない背の高さが欲しいです」
「もうフリード君、何さらっとナチュラルにお願い事言っちゃってるのよ!
 わ、私だってそりゃ人並みに欲しいものはある・・・あわわ、とにかく!今はだめでしょ!」
>「あ、じゃあ私は…神隠しにあって行方不明になっちゃったお兄ちゃんに会いたい!」
リリィの言葉に被さるように発せられた願い事に、思わず言葉を失う。

228 :リリィ ◆jntvk4zYjI :2012/10/16(火) 21:29:51.28 0
ササミは、ルナがユリを応援したことを指摘し、ユリと通じていたのではないかと詰問した。
だがルナの返答は、がんばってたから応援した、というシンプルなものだった。
ルナは、ユリの良心を信じたいようだが、あいにくササミはそういった希望的観測にすがる気は無いらしい。
>「ちょっと待ってねササミ。夢見石を封印してしまうのは、
>私の願い事を叶えてからにしてちょうだい」
視線がぶつかる。
ユリの語った具体的な夢見石の効用が、ルナの欲望をかきたてていた。

「古代兵器だって、いいことに使うのなら悪くないよね?」
「・・・・・・・・」
リリィはとっさに答えられなかった。
そうだ、と言ってやりたい。だが、そもそも「いいこと」の基準とはなんだろうか?
言葉を失っていたリリィの目の前で、戦闘モードだったササミが突如姿を消した。
「さ、ササミちゃん!?」

巨大カエルの口からはみ出しているササミの足を見つけ、リリィは仰天した。
「ひどいよユリさん、なんてことを!ササミちゃん弱ってるのに!
 このカエルめーっ!ササミちゃんを放しなさーい!!」
リリィは巨大カエルに一瞬ひるんだものの、すぐに気を取り直しササミの足に飛びついた。
そのまま渾身の力を込め、ササミを救出しようと顔を真っ赤にしている。
>「ね、ねえリリィの願い事って…なに?」
「ルナちゃん、フリード君、手を貸して!ササミちゃんを助けるわよ!!
 その後は、ニンジャさんから本物のユリさんの居場所を聞き出して探し出さなきゃ!」
リリィは険しい顔でそう叫んだ。(しかも叫んでいるユリに関する内容は、誤解がかなり混じっている)
ルナのように切実な願いを持たないリリィには、願い事を考えられるような心理的余裕は無かったようだ。

>「ワディワジー!」
>ターコイズブルーの稲妻がカエルへと迸る。
その瞬間、リリィの足場が無くなった。とっさにつかんでいたササミの足に縋り付く。
同時にごうっと暴風が吹き、リリィは目を開けていられなくなった。

「・・・・・・・ん?」
暴風が去った後、足場が戻った。
リリィは恐る恐る目を開けた。足元にはがっしりとした太い木の枝が見えた。
森の中に居たはずなのに、すっかり視界が開けている。
その頃になって、ようやく木の上に瞬間移動したのだと気づいた。
「な、なんで私、こんな高いところに?!・・・・・はっ!そうだ、ササミちゃん!!」
リリィは、木のうろからはみ出しているササミの足をつかみ、引っ張り出そうとしている。
「ササミちゃん、ササミちゃん!しっかりして、大丈夫?
 なんか私たち、突然木の上に飛ばされちゃったんだよ!ここ、どこだろ?」
まさかルナの魔法で、丘の上まで飛ばされたとは夢にも思わない。
落ち着きを取り戻せば、眼下の風景を確認する余裕も出来るだろう。

229 :ササミ ◆/TZT/04/K6 :2012/10/16(火) 23:04:25.56 0
弱って動きが鈍っているササミはいとも簡単に巨大カエルの舌に絡め取られ、口の中へと引っ張られてしまった。
だが弱っていてもその眼力は衰えておらず、自分の状況を的確に把握している。
次の瞬間視界は真っ暗になり、柔らかな圧迫感が全身を覆う。
今ササミは巨大カエルに丸呑みにされたのだ。
だが、ササミはこの状況においても冷静さを失わない。
「牙のないカエルが丸呑みで助かったがね。逆にこれは好都合だぎゃ!」
カエルの腹の中でササミの14の目がギラリと光る。

次なる行動に移ろうとした時、足に何かが触る感触。
外では取り乱したリリィがササミを引っ張り出そうと必死になり、ルナは葛藤していたのだがカエルの腹の中までは声が届かない。
カエルの鳴き声を発生させる振動幕が音声を吸収してしまっているからなのだ。
足の感触を気にしつつもやることは既に決定している。
大きく口を開けた瞬間、ササミの体はターコイズブルーの光に包まれた。

光が収まった時、ササミは相変わらず暗闇の中にいた。
だが先ほどまでの柔らかな圧迫感はなく、甘い匂いと共にブーンという無数の羽音。
状況を確認しようとするが、足を引っ張られてそれに抵抗するために状況確認が遅れてしまう。

俯瞰的に見ればササミを救出しようと奮戦したリリィとルナの行為の結果。
カエルの腹の中から丘の上の木の穴に詰め替えられたのだが、当のササミには状況が判らない。
そんな時にその羽音は一斉にササミに殺到した!

「あだだだだだ!!!うぎゃああああ!!!」
木の穴から響くササミの悲鳴!
しばらくすると声は悲鳴はおさまり、木は色を失って石と化していった。
つづいて木から生える数本の透明の刃。
「ぬああああ!!何がどうなっとりゃあすうう!!」
ササミの怒りの叫びと共に石と化した木はバラバラに切り刻まれて四散し、ササミが現れた。
だがその姿は全身無数の腫れができ、ボロボロの状態で。
ギロリと周囲を見つめ、ササミは状況を理解する。

巨大カエルに丸呑みにされたササミはこれを好機にカエルの体内からユリ(偽)に不意打ちを試みたのだ。
ササミの持つ枝分刀はササミの怪音波に共鳴することで超振動を起こし切れ味を持つ。
だがカエルは振動幕を持っており、ササミの怪音波を吸収してしまう。
そこで石化ガスを吐いてカエルを石にしてから内部から切り刻みユリ(偽)の足を斬って機動力を奪う。はずだったのだ。

だがルナの詰め替え魔法によってカエルの腹に詰め込まれていたササミは丘の木の上の穴に詰め替えられた。
その穴には何があったのか?
それは蜂の巣である。
蜂の巣にたっぷりたまった蜂蜜がササミの代わりにカエルの腹に詰め込まれたのだ。
さて、蜂にとっては災難もいいところである。
大切な蜂蜜が突然亡くなり代わりにササミが巣穴に突っ込まれたのだ。
当然のように蜂蜜泥棒としてササミは蜂の攻撃を受けることになったというわけなのだ。

ササミは全身蜂に刺されながらも予定通り石化ガスを振りまき蜂と木を石にして、木を切り裂いて脱出したのだが、被害は甚大である。
全身の痛みにのた打ち回りたいところだが、足にしがみついているリリィを見てそうもいかない。
ゆっくりと下降し、リリィの足が地面についたところでどさりと落ちる。

リリィを下敷きにしながらササミの目はルナに向く。
「ルナ、あんたさんやっぱりユリ(偽)とつながっとったんやな!
カエルの腹から不意打ちかまそうとしたのを察して蜂の巣に突っ込むとはやることがえげつないがね!
あんたにしてやられたのはこれで二回目だぎゃ…あだだだ…」
そこらじゅう蜂に刺されて腫れ上がった顔で睨まれるのは気持ちいいモノではないだろう。
だがササミの言葉には怒りはあっても恨みは籠っていない。
弱肉強食の世界では卑怯と言う言葉は存在せず、ルナの戦略がササミの戦闘力を上回ったというだけの話だから。

全身の痛みでしばらく動けそうにないが、それでもルナが敵と確定した分だけ収穫と言える。
「次はもうこんな不意打ちはききゃーせーへんでー」
ササミはルナを完全に敵として認定したのだった。

230 :ニンジャ ◆sto7CTKDkA :2012/10/17(水) 19:54:32.07 O
>221-229
>それを阻むあんたは敵ってことははっきりしとりゃーすがね!」
ユリに関するフリードの言葉には反応しなかったニンジャだが、敵であるとはっきりササミが明言した時は目つきが鋭くなった。
ニンジャもまた、ササミを敵であると認定したのだ。

>「別にいいですけど・・・・願いは自分で叶えなければ意味が無いものですし
> でも出来るならば人間としておかしくない背の高さが欲しいです」
>「もうフリード君、何さらっとナチュラルにお願い事言っちゃってるのよ!
> わ、私だってそりゃ人並みに欲しいものはある・・・あわわ、とにかく!今はだめでしょ!」
>「あ、じゃあ私は…神隠しにあって行方不明になっちゃったお兄ちゃんに会いたい!」
願いを聞きながらもササミから目を離していなかったニンジャは、ササミがカエルの舌に捕らえられるのもしっかり見届ける事ができた。
「インガオーホー」
ニンジャは、それはササミの自業自得である的意味合いの事を口にした。

>「ひどいよユリさん、なんてことを!ササミちゃん弱ってるのに!
> このカエルめーっ!ササミちゃんを放しなさーい!!」
「『弱ってきたら囲んで棒で叩け』 敵に情けは無用です」
リリィの言葉も行動もまるで意に介さないニンジャは、まずはフリードとルナの願いを叶える事にしたようだ。
夢見石が光り始めると、フリードの身体が刹那煙に覆われ、ほんの少しだけ身長が伸びる。
だが、夢見石の効果はそれだけではなかった。
おお!見よ!
なんとフリードの服装がフリフリの物になり、“少女のような顔立ちの少年”ではなく。
“少女にしか見えない少年”になっているではないか!

「夢見石は強い思いを現実に変える石であり、現在の学園でのフリード=サンの身長に関する思いではこれが精一杯のようです」
服装について何も言わないのは、ニンジャが服装を気にしない性格だからである。
しかし、どうしてこんな事になってしまったのだろうか。
それはこの思いに、今保健室で幼女のようになっているフリードの姉の愛情が関係しているからだった。
わずかでもフリードの夢を叶える力になったのだから、実に姉弟愛というものは美しいものである。
例えそれが、一般的な姉弟愛からずれている愛情だったとしても。

「そしてルナ=サンの願いですが、それを現実にするには思いの力が足りないようです。
 ですがこの学園には、生き別れになっていた家族と巡り会えるとの噂もあり。
 この噂が現実になれば、ルナ=サンが探し続ければまた兄弟と出会えるかもしれません。 友情!」
右手の親指を立ててルナに友情と呼びかけたのは、無論ササミの推測が正しいと思わせるため。
ニンジャの戦いは、利用できそうなものは何でも利用する戦いなのだ。

231 :ミヤモト ◆sto7CTKDkA :2012/10/17(水) 19:56:05.14 O
「『毒フグを食べたときは皿の上に残さず食べろ』です。 この杖もいただいていきましょう」
目にも留まらぬ速さでカエルの舌が動き、リリィのが具現化させた杖はカエルの腹の中に呑み込まれる。
そして用は済んだとばかりに、巨大カエルはニンジャを乗せたまま向きを変え。
驚異的跳躍力でたちまちササミとリリィの近くに移動する。

「ドーモ、ササミ=サン。 ミヤモト・ムニです」
ニンジャはカエルの上から名乗りを上げて、丁寧にお辞儀する。
それはササミを敵とみなして始末する意志の表明だった。
「本物のユリ=サンには一時期ニンジュツを教えていましたが、痩せてきたので寮に帰しておきました。
 後は私に倒されるだけですね。 ムッハッハ!」
誤解を招きそうな発言だが、ダイエットに成功したので修行は成功したという意味だ。
気がかりを無くしてやるから安心して逝け。という意図の発言だが、笑い方が変なのは反転魔法の影響だろう。

高笑いをするユリの足下でカエルが口を開けたかと思うと、中から“蜂蜜”がササミに向かって吹き付けられる。
ササミが蜂に襲われる騒ぎを耳に聞いていたミヤモトは、怒り狂った蜂の群をササミに吹き付けるつもりだった。
しかし実際には、ササミの代わりにカエルの中に入っていたのは蜂蜜だったのだ!
ササミと(逃げなければ)リリィに、放水ならぬ放蜜が襲いかかる!

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