【TRP】フィジル魔法学園にようこそ!11thシーズン

1 : ◆jntvk4zYjI [sage] : 2013/03/29(金) 18:35:00.48 0
統一基準歴355年。
魔法文明は隆盛を極め、あらゆる場所、場面に魔法が活用されていた。
そんな栄華の果てにいつしか異変が起きる。
確認されたのは20年前にもなるだろうか?

ある属性の魔法に異常なまでの適性を示す。
ある魔法を生まれつき能力として有している。
未知なる力に開眼する。

今までは天才と言われて来た種類の子供たちが、続々と生まれ始めたのだ。
このことに世界は大いに恐れ、憂慮した。

なぜならば、本来数十年単位の修行と研究の果てに身につけていく力を僅か数年の学習で身につけてしまうのだ。
あるいは持って生まれてくるのだ。
修行と研究は何も力を得るためだけの時間ではない。
力を振るう為の経験や知識をも身につけるための時間でもあるのだ。
仮に、今は凡人同然であったとしても、何かのきっかけで潜在能力が一気に発現することもある。

大きな力を当たり前のように使える事への危惧は、やがて現実のものとなる。
世界各地で引き起こされる悲劇に、統一魔法評議会は一つの決定をなした。

魔法学園の開設!

魔海域を回遊するとも、海と空の狭間にあるとも言われるフィジル諸島に魔法学園を開校し、子供たちに学ばせるのだ。
己が力を振るう術を。


―――― 【TRPG】フィジル魔法学園にようこそ!11thシーズン ――――
2 : ◆jntvk4zYjI [sage] : 2013/03/29(金) 18:35:57.43 0
■舞台はファンタジー世界。謎多きフィジル諸島にある全寮制の魔法学園です。
フィジル付近は気流や海流が乱れがちなので、島には基本的に、転移装置を使ってくる場合が多いです。
※11thシーズンは学園のあるフィジル本島ではなく、フィジル諸島内のどこかの島に出向いています。(後述)
 
■学園が舞台だからといって参加資格は学生キャラのみではありません。
  参加キャラは生徒でも、学園関係者でも、全く無関係な侵入者でも可。敵役大歓迎。
  また、舞台が必ずしも学園の敷地内で起きるとは限りません。
  いきなり見知らぬ土地に放り出されても泣かないで下さい。 貴方の傍にはいつも名無しさんと仲間がいます。

■当学園には種族制限はありません。お好きな種族と得意分野でどうぞ。

■オリジナルキャラクターでも版権キャラクターでも参加できます。
  完走したスレのキャラを使ってもOKですが、過去の因縁は水に流しておきましょう。
  また版権キャラの人は、原作を知らなくても支障が無いような説明をお願いします。

■途中参加、一発ネタ、短期ネタ大大大歓迎。
 ネタ投下の場合、テンプレは必ずしも埋める必要はありません。
 ただしテンプレが無い場合、受け手が設定をでっち上げたり改変したりする可能性があります。ご了承を。

■名無しでのネタ投下も、もちろん大歓迎!
  スレに新風を吹き込み、思いもよらぬ展開のきっかけを作るのは貴方のレスかも!

■(重要)
 このスレでは、決定リール、後手キャンセル採用しています。
 決定リールとは、他コテに対する自分の行動の結果までを、自分の裁量で決定し書けるというものです。
 後手キャンセルとは、決定リールで行動を制限されたキャラが、自分のターンの時に
 「前の人に指定された自分の未来」を変えることが出来るというシステムです。

例:AがBに殴りかかった。
 その行動の結果(Bに命中・ガード・回避など)をAが書く事が可能です。
 これを実行すると、話のテンポが早くなるし、大胆な展開が可能となります。
 その反面、相手の行動を制限してしまう事にもなるので、後からレスを書く人は、「前の人に指定された行動結果」
 つまり決定リールをキャンセル(後手キャンセル)する事が出来ます。

 先の例に当てはめると、
 AがBに殴りかかった→Bはまともに喰らって受けては吹き飛んだ。
 と決定リールで書いてしまっても、受け手(B)が自分の行動の時に、
 「Bはまともに喰らったように見えたが紙一重で避けていた」
 と書けば、先に書いたレスの決定書き(BはAの拳をまともに受けては吹き飛んだ。)をキャンセル出来るのです。
 ただし、操作する人の存在するキャラを、相手の許可無く決定リールで喋らせるのは歓迎されません。要注意です。

※参加に関して不安があったり、何かわからないことがあったら(説明が下手でごめんね)、どうか避難所にお越しください。
  相談、質問、雑談何でもOKです。気軽に遊びに来てね。
3 : ◆jntvk4zYjI [sage] : 2013/03/29(金) 18:38:57.11 0
前回までのあらすじ
魔法学園があるとされるフィジル諸島は、謎に包まれた場所だ。
島の周囲は魔海で危険すぎて船もまともに近寄れない。
空を飛ぼうにも奇怪な暴風や魔法無力帯があったりするので危険だ。
正確な位置は誰にもわからない。
本島への移動は、転移魔法陣を用いて行われているからだ。

学園や商業区が置かれている本島の周囲には、大小さまざまの島が点在している。
それらがどんな場所なのかは、学園生徒も詳しくは知らされていない。
教師の研究島や、問題児への処罰棟、生徒への課題用の島などがある、というのがもっぱらの噂だ。

ある日のこと、一部の学園関係者の自室には、一通の封書が届いていた。
表現や注意事項には多少の差があったが、内容は以下のとおりだった。

・明日、別紙の地図に書かれた転移用ゲートの場所まで赴き、集まった者たちと一緒に転移すること。
・行き先の小島では当日、翌日と「清掃活動」に励むこと
・島内の設備は自由に使ってもいいが、食料などは自前で調達すること
・野外活動(サバイバル)の準備は怠らないこと
・「清掃活動」以外の時間は自由にすごしてもよい
・課題をこなせなかったものには、ペナルティが課せられる

林間学校だと沸き立つ者、危険を感じて準備を怠らない者。偶然に導かれ島にたどり着いたもの。
それぞれの思惑を胸に、彼らは転移ゲートを通過し、課題が待つ小島に降り立つ。
島の名前は「ラクーン島」
丘の上にそびえる古びた洋館を訪ねた彼らの前に、今、何かに操られた学園生徒が立ちはだかる!

友を操り襲わせている彼らの目的は?この島の秘密は?
そして、出された課題の真意とは。
4 : ◆jntvk4zYjI [sage] : 2013/03/29(金) 18:46:59.33 0
【TRP】フィジル魔法学園にようこそ!10thシーズン(前スレ)
http://kohada.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1350392760
【TRPG】フィジル魔法学園にようこそ!9thシーズン
http://kohada.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1333383614
【TRPG】フィジル魔法学園にようこそ!8thシーズン
http://kohada.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1316207939
TRPG】フィジル魔法学園にようこそ!7thシーズン
http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1302609427
【TRPG】フィジル魔法学園にようこそ!6thシーズン
http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1294657842
【TRPG】フィジル魔法学園にようこそ!5thシーズン
http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1291300916
【TRPG】フィジル魔法学園にようこそ!4thシーズン
http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1284645469
【TRPG】フィジル魔法学園にようこそ!3rdシーズン
http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1278699028
【TRPG】フィジル魔法学園にようこそ!2ndシーズン
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1273242531
【TRPG】フィジル魔法学園にようこそ!
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1270216495

■避難所
【TRPG】フィジル魔法学園にようこそ!第二避難所
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/internet/17427/1364028620/

(こちらが本避難所ですが、現在激重のため、臨時として第二避難所がメインになっています)
【TRPG】フィジル魔法学園にようこそ!避難所
http://yy44.kakiko.com/test/read.cgi/figtree/1329748719/
【TRPG】フィジル魔法学園にようこそ!避難所 (前スレ。板消滅でデータ消失/wikiにログあり)
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/computer/42940/1295181582
【TRPG】フィジル魔法学園にようこそ!避難所
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/computer/20066/1270211641

規制の巻き添えで書き込めないときは、上記の避難所に、それが無理なら下記の代理投稿スレで依頼してください。
代理投稿スレ
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/internet/17427/1363875047/
ttp://yy44.kakiko.com/test/read.cgi/figtree/1277996017
5 : ◆jntvk4zYjI [sage] : 2013/03/29(金) 18:48:38.54 0
■テンプレ

名前・
性別・
年齢・
髪型・
瞳色・
容姿・
備考・
得意技・
好きなもの・
苦手なもの・
うわさ1・
うわさ2・

【備考】
全部埋める必要はありません。
テンプレはあくまでキャラのイメージを掴みやすくしたりするものです。
また、使える技や魔法も、物語をより楽しむためのエッセンスです。
余り悩まず、気楽に行きましょう。

(外部参考サイト)
TRPに関する用語の確認はこちらでどうぞ
過去ログやテンプレも見やすく纏めて下さっています
(ボランティア編集人様に感謝!)
なな板TRPG広辞苑
http://www43.atwiki.jp/narikiriitatrpg/pages/37.html
6 : ◆jntvk4zYjI [sage] : 2013/03/29(金) 18:49:11.58 0
テンプレは以上です。
では、引き続きスレをお楽しみください。
7 : 名無しになりきれ : 2013/03/31(日) 10:12:14.54 O
誰もお楽しみいただけてないようやんね(>_<)
8 : ジェイムズ ◇nIuIv3TzeE[sage] : 2013/04/08(月) 07:19:57.40 0
……………ガシャン!ガシャン!ガシャン!ガシャン!ガシャン!ガシャン!

少しだけ時間を遡り、ここはフィジルの学園内。
天気は晴れ、窓から日の光が差している廊下に、金属がぶつかり合い、こすれ合っているかの様な独特な音が鳴り響いていた。

「……通達に依ると、我は行かねば成らぬ所が在る様だな……」

その音の主は、漆黒の鎧を身に纏ったフィジルの生徒。
彼は片手に一通の手紙を、もう片手には長い槍を持ち、音を立てつつ足早に廊下、階段、正面玄関、と足を運んでいた。
彼の言葉や一挙手一投足全てからは、かなりの威厳が感じられる。
正面玄関を出、彼が向かったのは敷地内の馬舎。
数々の茶色い馬達が並ぶ中、ただ一頭他の馬とは明らかに違う、漆黒の色をした馬がいた。
それに彼は近付き、流れるような動作で馬の背中に跨う。

「さて、行くと為(す)るか、ツェッペリン。清掃活動とやらにな。」
『はっ。必ずや御主人様のお役に立って見せます。(馬語)』

どうやら馬の名前はツェッペリンと言うらしい。
漆黒の馬ことツェッペリンを巧みに操り、校門を出て森や街を自在に駆け、目的地を目指すその姿はさながら騎士のようだ。
漆黒の鎧を着た彼の名は「ジェイムズ=ジャスティン」
同学年の者からは、「漆黒の騎士」と呼ばれている。
9 : ジェイムズ ◇nIuIv3TzeE[sage] : 2013/04/08(月) 07:20:56.99 0
さて、漆黒の騎士ことジェイムズはかくして、指定場所である灯台……ではなくもう一つの指定場所、風者小屋に着いていた。
どうやら指定場所は複数あるらしい。それはさておき、
ジェイムズは風者小屋内部に設置されていた転移ゲートを難なく見つけ、ツェッペリンをその場に待機させた。

「此れを使うのは入学以来、か……あの頃の事は忘れもせぬ。」

しみじみと、何かを懐かしむ様に独り言を呟いた後、ジェイムズは転移ゲートに乗る。
次の瞬間、ジェイムズはラクーン島の森の中にいた。
ジェイムズは周りを見渡し、森の向こう側にそびえ立つ洋館を見つける。

「ふむ……彼処が通達に有った洋館、か。では早速行って見るとしよう。」
彼は、召喚の魔法を唱える。すると、運良くジェイムズの目の前にツェッペリンが現れた。

「良し。無事、召喚魔法は成功した様だな。では、行くと為るか。」
『御主人様の魔法が成功するのは久方振りですね(馬語)』

森の木々を巧みにかわしつつツェッペリンを走らせ、洋館を目指して進んだ。
10 : ジェイムズ ◇nIuIv3TzeE[sage] : 2013/04/08(月) 07:21:32.40 0
40 :ジェイムズ ◆nIuIv3TzeE:2013/04/07(日) 00:32:57 ID:???0
そして現時刻、ジェイムズは洋館の前に到着していた。

「此処だな……大方屋敷の清掃活動でも為るのだろう。」

その時。

>「貴様らーっ!この俺に尋問するつもりだなーっ!?エロ絵草紙みたいに!!エロ絵草紙みたいに!!」

ジェイムズは向こうから人の声を聞いた。何やら口論をしている様だ。

「……尋問……?」

どっかの作品で聞いた事あるようなフレーズだったが華麗にスルーし、周りを見渡す。
すると、向こうで何人かの男女、おそらくフィジルの生徒が集まっているのを発見した。
特殊な鎧で子どもレーダーに捕捉されていないため、向こうはこちらに気づいていない。

「……む?彼れは我が校の生徒か?如何やら我よりは下の学年の様だな……少し様子を見よう。」

ジェイムズは、遠目でリリィ達の様子を観察する事にした。
11 : 名無しになりきれ[sage] : 2013/04/08(月) 20:07:14.91 0
「……チッ、目ぼしい物は無いか。当てが外れたな」
埃だらけの薄暗い物置でごそごそと物を漁るテオボルトだが、成果は芳しくない。
強いて言うならば、ランタンらしきマジックアイテムぐらいか。しかしテオボルトには杖があるので意味はない。
隅に置いてあるアイテムボックスも開いてみたは良いが、荷物を取り出せることに気付かずにスルーである。

一度手を止めて一息をつく。テオボルトが物音を立てていた物置部屋が静けさに包まれた、その時だ。
>物置の中ではどこからともなく、ヒタヒタ…ヒタヒタヒタ……という足音が聞こえてくる。
>それはどうやら小型の生物の足音のようだが、暗いこともあり、なかなかその姿は見えない。
「む、もしやネズミか何かか? これだけ手付かずの有様なら居て当然だろうだね」
独りごちながら足音のする方に杖の明かりを向けるが、中々その正体を見つけられない。

そうこうしていると、後ろからガチャンと機械が落ちる音がする。
「ん? ……幻影機」
>見ると、床に幻影機が落ちていた。たまたま棚に置かれていたものが落ちたようである。
思いついたように手に取ってガチャガチャと弄ってみるが、正常に動作しない。
諦めようかと思ったが、ふと考えつく。
「もしかしたら、この幻影機に何か映ってるやも……地下への入り口や、館のあるじとやらの姿が」
しかし、テオボルトのメカの知識はよろしくない。せいぜいが45度チョップ程度。
であるなら、誰かに頼むべきだろう。幻影機の中身を映せるような誰かに。

意気揚々と物置部屋から廊下に飛び出したテオボルトは、丁度フリード達に出くわした。
「応、フリード。丁度いい、あの機械のお嬢さんは……」
そしてエンカの耳を引っ張っているアムリーテ(中身リリィ)を見つけた。
少々の違和感を覚えるも、エンカの時と同様に無視をして声をかける。
「いたいた。ミス・クラスタ、これの修理を頼む。私にはどうすりゃいいかわからんのでな」
そう言うと、物置で見つけた幻影機を無造作に放り投げる。
「私の探した部屋にあったのは、それの他にはガラクタとネズミくらいだった。
 地下への入り口は他のところにあるやもしれんな……おや、ミス・クラスタ。どうしたんだ?」
幻影機を受け取ったはずのアムリーテ(リリィ)の様子が流石に変だと気付いたらしい。
テオボルトは眉間に皺を寄せ、訝しむようにその顔を覗き込んだ。
12 : テオボルト ◆e2mxb8LNqk [sage] : 2013/04/08(月) 20:07:51.12 0
>>11はテオボルトです、失礼しました
13 : エンカ ◆jWBUJ7IJ6Y [sage] : 2013/04/08(月) 20:34:07.46 0
前スレ>230>231>232>234
マリアベルの問いに対し、パピスヘテプはまずエンカの体を返してもらうと答えた。
パピスヘテプはエンカの体に荒縄を巻きつけたが、おそらく変態的な縛り方はしていないと思われる。
少し前にその片鱗を見た気がするが、きっと気のせいだ。
荒縄の先端には藁人形が結びつけてある。
> 「肉体は魂を守る砦であり、同時に魂を囲う檻でもあるの。
> 憑きもの祓いの基本は肉体を衰弱させて檻の隙間を広げ、外に引きずり出すのね。
> 今こうやって精気を吸収しているみたいに。
> 肉体と魂の同調率が違う異物は荒縄を伝ってこちらに移動する、という寸法よ」
> パピスヘテプはマリアベルという憑物を藁人形に移し替えようとしているのだ。
「なるほど~、完璧な作戦っすね~。不可能ってことに目をつぶればよ~」
マルアベルは余裕の態度を見せた。どうやら何か対抗策をもっているのだろう。
「パピスヘテプ!エンカがお前の事を知らなかったようによ~、お前もエンカを知らないことを知るだろうぜーっ!」
そして憑物祓いの呪文が唱えられた。
「うぉおおおおおっ!?」
エンカはそう悲鳴をあげると、ガクリとうなだれた。
もしもパピスヘテプの魔法が成功しているのなら、これでエンカの体は本来の持ち主へ返り、マリアベルは藁人形へと移るだろう。

> 「ねえマリアベルさん?私達を罠にかける事に失敗したのだから、地下のアンチラストさんに叱られに行かなきゃいけないのでしょ?
> でも安心して、テオ君は一足先に言っちゃってるけど、私たちも一緒に行って謝ってあげるから。
> だから案内してちょうだい?」
> 「そうですね。パピチャンは言いことを言いました。お友達になりましょう。つまり、お友達作戦です。
> 私のセンセイも皆仲良しお友達という価値観を私に教えてくださいましたのです」
> 「そうですよ失敗したんだからまだ死んだほうがマシなお仕置きとかされるんでから
> 今は僕らの味方をして案内してくれたほうがお得ですよ
> まあ味方をしてくれても裏切り者だと思われてさらにひどい目に合うでしょうけど
> 今すぐひどい目に合うよりはましでしょう」
各々が藁人形へと話しかけるが、藁人形は何の反応も示さなかった。
死んだふり?だが、試しに攻撃しても反応はないだろう。
いや、そもそも藁人形の持ち主であるパピスヘテプなら間もなく気づくはずである。
藁人形の中身が、“空っぽ”であることを……
ではパピスヘテプの魔法は失敗したのか?
「……お前ら、なんで藁人形に話しかけてんだ?」
目を覚ましたエンカが口を開いた。
彼の目には藁人形に語りかけるパピスヘテプ、リリィ、フリードの姿が映っている。
「その藁人形…確か【入口】を見張らせていたジローだよな?それとも、リリィに付けたイチローの方か?
 リリィが無事に戻って来てるってことは、ロゼッタもいるんだろう?
 ……どこにいるんだ?ちゃんと謝らねぇと…でも……力が入らねぇ……どうなってるんだぁ~??」
エンカは立ち上がろうとしたが、体に力が入らないせいで、できなかった。
まもなく皆理解するだろう。エンカの体をエンカに返すことはできた。
しかし、マリアベルは消息がわからなくなってしまったと。
「なんだこの縄はーっ!?まさかお前ら、この俺に乱暴するつもりなのかーっ!?
 エロ絵草紙みたいに!!エロ絵草紙みたいに!!」
エンカは自分が荒縄で縛られている事に気づいてそう叫んだ。
同じセリフを言うところから察するに、どうやらマリアベルに操られていた間の記憶は無いようだ。

エンカの体が突然浮き上がった。
> 「ちょっとマリアベルとかいう人!よくも私のそっくりさんを勝手に作ったわね!
>  でもあいにくね、私はもっと発育がいいんだから!皆だって、すぐに偽者って分かっちゃうんだから!
>  さあ、何もかもあなたの仕業ってことは分かってるわ!おとなしく親玉のところに連れて行きなさい!
>  ・・・・・・で、親玉はどこだっけ?・・・・・・地下?じゃあ地下にレッツゴー!」
「うわあああっ!?じょ、冗談じゃねーっすよーっ!?」
エンカはわけがわからないまま、なし崩し的にアムリーテ(リリィ)に引っ張られ地下へと連れて行かれた。
14 : パピスヘテプ ◆/TZT/04/K6 [sage] : 2013/04/09(火) 23:01:14.46 0
如何に強力な攻撃であっても対処さえ取れるのであれば効果は半減。
逆に言えば何の対処もとらせなければ弱い攻撃であっても大きな効果をあげられる。
つまるところ、トリッキーな術というものは術そのものの威力ではなく、対処させない事こそが真髄と言える。
対処させない事に重きを置く術は威力そのものは大きくなく、また種さえわかってしまえば十分に対処されてしまうのだから。

パピスヘテプのテーベ流影術はまさにそのものである。
直接的な打撃力は殆どなく、対処させず相手は衰弱させていく。
そしてそれはマリアベルにも言えたようだった。
>「パピスヘテプ!エンカがお前の事を知らなかったようによ~、お前もエンカを知らないことを知るだろうぜーっ!」
憑物祓い発動直前に残したマリアベルの意味深なる言葉。
マリアベルが入るはずだった藁人形を摘まみ上げながら首を傾げていた。

藁人形にさえ入れてしまえば交渉するなり、そのまま冥府へ送るなりどうにでもできたのだが。
「うーん、逃げられちゃったのかな?ゆっくりお話ししたかったのに」
術に抵抗した、途中で逃げた、術そのものが失敗だったのかもなどなど、様々な可能性に頭を巡らせる。
様々な可能性を考えながらそっとエンカの影にパピスヘテプは影を重ねた。

意識を取り戻したとはいえ、精力を吸われて立ち上がれないエンカは今までの記憶がないようだった。
これが本心なのか芝居なのかはわからない。
が、様々な可能性の中にはマリアベルが憑依体でない、という事も含まれているのだから。
念の為に監視用にエンカの影に藁人形を入れて呪いをかけておこうとした時。

アムリーテが再び動き出したのだ。
しかもその言動からするとその中身はリリィである、と。
とするならば、ヨガのポーズをとっているリリィの中身は?
アムリーテに入っていた疑似人格は?
「あ、あれ?もしかして術の暴走?えぇ?そんな感じはしなかったのに」
この状態の原因の一番高い可能性は自分なのだから。

状況整理に頭の回転が追いついていない状況で、アムリーテ(inリリィ)は衰弱して立てないエンカを引っ張って地下へと向かいだす。
「ちょ、まって!影縫い!」
慌てて取り出した五寸釘を投げつけた。
が、もちろんパピスヘテプは投擲の能力などありはしない。が、外しはしない。

百発百中とは命中精度の事ではなく、外さない状況を作り出す能力の事なのだから。

パピスヘテプが投げつけた先は自分の足元の影。
影は亜空間になっており、アムリーテ(inリリィ)の影まで伸びた先に繋がっているのだ。
すなわちパピスヘテプの足元に投げつけられた影はアムリーテ(inリリィ)の足元の影に繋がっている訳だ。
これならば外しようがないというもの。
五寸釘はアムリーテ(inリリィ)の影に打ちこまれ、その呪いの効果を発揮する。

影を縫い付けられた者は実体も縫い付けられたように動けなくなる。
影術では最もメジャーな術であろう。
アムリーテ(inリリィ)は一瞬動きが止まったのだが、恐るべきは10万馬力!
僅かな足止めをしたのが背一杯で釘は弾き飛ばされて飛んでいく。
弾き飛ばされた五寸釘が遠目で様子を観察しているジェイムズに向かっていったのだが、パピスヘテプは気づいていない。

「う、うそぉ~ん!力づくで呪いを弾き飛ばしたぁ?こうなったら……!」
五寸釘を左右に三本ずつ、合計六本で動きを封じようとしたのだが、それを止めた。
中身がリリィあるとわかっている以上、後回しにしても対処のしようがあるが、そうでない者がいるのだから。

アムリーテにリリィが入り、エンカの意識が戻る。
そうするとリリィの中身がマリアベルという可能性が高い。
とはいえ、ヨガのエビゾリポーズで涙する姿からマリアベルは連想しにくいの。

念の為、密かにリリィ(inアムリーテ)の影に影を重ねて藁人形を沈めて術をかけておき
「なにやっているの?早く地下に行きましょう」
そう声をかけて地下へと進んでいった。
気付かないふりをしてリリィ(inアムリーテ)の動向を探ろうというのだ。
15 : パピスヘテプ ◆/TZT/04/K6 [sage] : 2013/04/09(火) 23:02:39.45 0
地下に入ると、フリードが先行して一面に氷を張っていく。
これで罠の類を無効化しているのだ。
「フリード君えげつない事ばかり考えているかと思ったけど、器用な事もできるのね」
力づく罠も敵も味方も全てを破壊して一直線に進んでいくと噂の某氷雪の女王
その弟とは思えぬほどスマートかつ完璧な侵攻思わず感嘆の声を漏らすパピスヘテプ。
先ほどの氷のレンズによる集光もそうだが、イメージが大きく修正されていく。
それほどまでに某氷結の女王のイメージは大きかったのだった。

しばらく進みテオボルトと合流。
地下を色々と探った結果、入口は見つからず。
収穫と言えば幻灯機があったとの事だった。
しかも壊れている。

そうなれば自然と流れ的にアムリーテ(inリリィ)にお鉢が回るのだが、中身はあくまでリリィである。
特に機械に強いという事も聞いたことないし、丁度頃合いだろうとパピスヘテプは影に沈めた荷物の中から手鏡を取り出した。
「あー、えーと、リリィ?まずこの光と香を嗅いで落ち着いてね?」
ゴーレムにどれだけの効果があるかはわからないが、中身がリリィであるならば精神に効果が現れるかもしれない。
鎮静結界を展開しながら手鏡を手渡した。
影縫いの呪いを弾き飛ばす力でパニックを起こされては大変だからだ。

「今あなたの魂はそのゴーレムの中に入っているの。
で、さっき見た『おかしなポーズをとっていた発育の悪いそっくりさん』あれがリリィの肉体よ」
残酷な事実をはっきりとストレートにアムリーテ(inリリィ)に告げるのであった。
「びっくりしただろうけど大丈夫よ、戻す術は心得ているから」
これは気休めになるのだろうか?

救いのない、救いようのない霊との対話ばかりしていたせいか、生きている人間に配慮したり慰めるのはどうにもぎこちなくなってしまうのであった。
16 : 名無しになりきれ[sage] : 2013/04/10(水) 02:50:41.44 0
一行が地下を探索していると、どこからか足音が聞こえてくる。
エンカはその足音が、意識を失う前に聞いたものと同じだと気づく。
違うのは足音が徐々に大きくなってきた事……足音の主が
一向に近づいているに違いない。同時にうっすらと、細い煙が漂ってくる。
その煙は『タバコ』のもので、それもある人物が吸っていたのと同一だと
ごく一部の人物は分かるだろう。では誰なのか?
謎を解き明かすべく足音の主を待ってもいいし、自分から向かっていくのもいい。
17 : アムリーテ ◆apJGY8Xmsg [sage] : 2013/04/10(水) 19:25:57.51 0
偽リリィ(inアムリーテ)は自分の身体を動かしながら、
滑らかに動く部分とそうでもない部分の差異に驚きながら
これが生きているということなのだと感じていた。

>「なにやっているの?早く地下に行きましょう」

「はいです」
パピに誘われて地下へむかう。視線の先の偽アムリーテ(inリリィ)はというと
偽リリィ(inアムリーテ)を偽者と勘違いしたままエンカを引っ張ってゆく。

先行しているテオボルトのことを少しだけ心配していた偽リリィ(inアムリーテ)だったけど、
それは取り越し苦労だった。
彼は偶然にも幻灯機を見つけており、フリードと何やら会話している。

>「だれか機械に強い人は・・・・・・リリィさん・・・もといアムリーテさんとかどうですか」
とフリード。

「えっと…、本体自体を修復することは無理でしょうけど、おそらくメモリーカードから情報を抜き出すことは可です」

>「いたいた。ミス・クラスタ、これの修理を頼む。私にはどうすりゃいいかわからんのでな」

テオボルトの問いに、おそらくあわあわしているであろう偽アムリーテ(inリリィ)

「私の身体で子どもに乱暴はやめてください」
エンカを引っ張っている偽アムリーテ(inリリィ)を一喝し、偽リリィは幻灯機を受け取るとそれを胸の前で構えた。
しかし何も起こらない。起こるわけがない。
なぜなら今のアムリーテの意識はリリィの身体に入っているから。
本来なら胸の宝石、エンジェルハートから極細のレーザーを放出して幻灯機をスキャン。
内部の信号起伏を読み取って電脳内部で映像に変換する。そのつもりだった。

(あむぅ…、ボケていたです。にしてもチョッとだけ会話をするつもりでリリィの身体を借りたつもりが
チャッカリと私の身体と入れ替わってしまっているなんて。理由はわかりませんがあの子はとても恐ろしい子です)

でもドキドキしている自分もいた。
地下での恐怖感は、生きていることをアムリーテに伝えてくれていた。
(この身体から出て行きたくないかもです…)
そんなふうに思う自分に罪悪感を感じる。
アムリーテの機能はアムリーテが一番良く知っているから、元に戻らなければならないのに。
18 : アムリーテ ◆apJGY8Xmsg [sage] : 2013/04/10(水) 19:28:36.79 0
それ故に、偽リリィ(アムリーテ)は何か硬そうなものを探し始める。
何でもいいから頭をぶつけて気絶して、幽体離脱をしなければ。
あとは偽アムリーテ(リリィ)が機能停止状態なら文句なしなのだが
そこは気合でリリ魂を体から押し出そう。

そう誓って、偽リリィ(アムリーテ)は壁にガンガンと頭を打ち付ける。
でも痛いだけで中々気絶出来ないでいた。
ぷるぷると震えながら床に蹲ると、
先ほど壁に体当たりをしたリリィの決死の行動を思い起こし唖然。
友達を救うために気絶するほど壁に激突するなど正気の沙汰ではない。
こんなのは痛すぎるしオデコがいくらあっても足らない。

こうなったら何とかリリィに幻灯機の情報を抜き出してもらう他ない。
偽リリィ(アムリーテ)は偽アムリーテ(リリィ)に情報の抜き取り方を説明するとその手を握る。
それはアムリーテの体で読み取った情報を、リリィのテレパシーで音と映像で皆に伝えるため。
でも結構無造作に置かれていた壊れた幻灯機に極秘情報みたいのが収まっていると考えるのもおかしなこと。
しかしダムもヒビで決壊するというし、試してみる価値はあるのだ。

そうこうして、テレパシーが渦となって幻灯機の情報を一行の脳内へと映し出す。
胸の宝石、エンジェルハートから放出されるレーザーは極細微に、絶妙なさじ加減で放射されているようだ。
幻灯機は古かったために所々読み取れない映像もあり、おまけに途中で重ね録りされた部分があった。
その重ね録りされた部分には何も無かったはずの現フロアの地下室の一室が映し出されている。
石像の口の中に隠されたスイッチを押す何者かの手。きっと撮影者の手だろう。
その次に煌煌と煌く天井。良く見ると輝くそれは円陣のようだ。そして降りてくる吊り天井。
この館の主は、よほど吊り天井が好きなのだろう。
天井が迫り、撮影者が光に飲み込まれてゆくところで映像は不本意に終わってしまう。

なぜなら足音が近づいてくる。
その音は何かしら一度聞いたら忘れられないような特徴のある足音のようでもあった。
しかし地下にはさらに地下に続く入り口など見つからなかったはず。
それなら足音の主は一体どこから来たのだろう?まさか幻覚ではあるまい。
ということは探せば絶対にあるのだ。地下への入り口は!
その不気味な足音に、偽リリィ(inアムリーテ)の集中が乱れてしまったから、
偽アムリーテ(inリリィ)が読み取った映像は完全には皆に伝えられずに終了してしまったのであった。
だが、偽アムリーテ(inリリィ)の記憶にはその全容が保存されているかも知れないしそうでもないかも知れない。
それか映像自体が意味の無い物なのかもしれない。
19 : アムリーテ ◆apJGY8Xmsg [sage] : 2013/04/10(水) 19:36:14.85 0
「……誰か来ます。ということはこの地下フロアにも入り口か出口はあるはずです。
ボウフラのように沸いて出てきたのでなければの話ですが。
しかし何者なのでしょう?人間嫌いのアンチラストの使いでしょうか?
こっちから赴くと決めいたのにむこうから来てくださるなんて好都合です」
そう言いながらドキドキしている偽リリィ(アムリーテ)。
とりあえずはここから移動する理由もなく、近づいてくるのならば向かう理由も無い。
ただもくもくと漂ってくるタバコの煙だけは不快だった。

「あの…タバコを消しなさいです。タバコの煙は子どもに悪影響を及ぼすです」
無意識にキーっと体が動く。リリィの体は感情が昂ぶるとキーっとなるらしい。
でも足音も近づいてくるし、細い煙もどんどんと漂いはじめている。
だから偽リリィ(アムリーテ)はパニック。
グレンを嫌々抱っこして持ち上げると、偽アムリーテ(リリィ)の眼前に突き出した。
そうするときっと偽アムリーテは特大のクシャミをするはず。それでタバコの煙も吹き飛ぶはず。

【幻灯機の情報の読み取り方法をリリィに伝達】
【テレパシー能力を用いて皆と情報の共有を試みるも途中で終了】
【漂ってくる煙を吹き飛ばすべくアムリーテ(inリリィ)にグレンを近づける(クシャミ砲)】
20 : ジェイムズ ◇nIuIv3TzeE[sage] : 2013/04/10(水) 19:59:17.85 0
前スレ>230>231>234、本スレ>13、14、15
一方、物陰からリリィ達の動向を探っていたジェイムズ。

>「おおさすがはパピちゃんさんそこにしびれる特に憧れない!」
>『shauw&atilde;:2-&sn/2dhj;@hej&ucirc;&aelig;^$jhm(ジェイムズには動物語が理解できない)』

「あの乙女と黒猫は何処かで………武芸の合同授業の時か……?」

どうやらジェイムズは、フリードと授業で面識があるようだ。何気にフリードを「乙女」だと思っているのは仕方無いだろう。

しばらくすると、尋問されていた人(エンカinマリアベル)が呪文をかけられ、うなだれる。
どうしたのかと心配していたが、即効で尋問されていた者の意識は回復した。一先ずは一安心である。
しかし、妙な事に気づく。他の者が、藁人形に話し掛けているのだ。

>「ねえマリアベルさん?私達を罠にかける事に失敗したのだから、地下のアンチラストさんに叱られに行かなきゃいけないのでしょ?
>でも安心して、テオ君は一足先に言っちゃってるけど、私たちも一緒に行って謝ってあげるから。
>だから案内してちょうだい?」
>「そうですね。パピチャンは言いことを言いました。お友達になりましょう。つまり、お友達作戦です。
>私のセンセイも皆仲良しお友達という価値観を私に教えてくださいましたのです」

「……何だ彼奴ら……気でも狂って居るのか?」

まだパピスヘテプの魔法に気づいていない彼は、藁人形に話しているのが狂っていると思うのも仕方が無いだろう。
そうこうしていると、その中の一人(アムリーテinリリィ)が尋問されていた者の胸ぐらを掴み、

>「さあ、何もかもあなたの仕業ってことは分かってるわ!おとなしく親玉の所へ連れて行きなさい!
>……で、親玉はどこだっけ……。地下?それじゃあ地下にレッツゴー!」

男をズルズルとひっぱりつつ、地下へと向かっていく女の姿は、機から見るととてもシュールだ。
…………………地下?

「もしや………奴等、此の課題の本意を忘れた訳では……」
>「なにやっているの?早く行きましょう」

………………忘れてやがる。
そう、あくまで課題は「清掃」のみ。だが彼等は、恐らく清掃とは関係ないであろう地下へと足を進めているのだ。
フリーの時間もあるにはあるが、そんな所を冒険していては、日が暮れて彼等にペナルティが課せられてしまうだろう。

「……青少年の強い好奇心も判ら無いでも無いが……寄りに寄って課題を忘れるとは、ペナルティを忘れたと言うのか?」
「仕方が無い。此処は上級生として、下級生に注意を施して遣らねば。可愛い下級生にペナルティが課せられるのも気分の良い物では無いしな。」

そう言って、彼は音を立てつつ地下へと足を運ぶ。
これから起こる騒動に、自分が巻き込まれるとも知らずに………

…………ガシャン、ガシャン、ガシャン、ガシャン、ガシャン…………
21 : ジェイムズ ◇nIuIv3TzeE[sage] : 2013/04/10(水) 20:00:33.94 0
かくして、地下に着いたジェイムズ。しかし、妙な事に廊下がすべて凍り付いている。

「……此れは……?すべてトラップのスイッチが凍り付いているとはな。全く、魔法使い様様、と言う事か……」

氷のお陰でトラップを踏まずに済んだジェイムズ。向こうで話し声がするのを聞く、どうやら先程の下級生の様だ。
ジェイムズはそれを見つけると、注意を施すべく下級生達の背後に、ガシャーン!と音を立てて立つ。
そして、彼等に向かって優しく、かつオブラートに包んで注意を促した。

「…………おい、貴様等。……見た所下級生か。こんな所で何をして居る?館の清掃では無く魔物でも掃除為るつもりか?」

……言い方はアレだが、これでも彼にとっては「優しい」、「オブラートに包んだ」注意だ。
ちなみにジェイムズは、2mを優に越す大巨漢に漆黒の鎧装備という、
バケモノと見られてもおかしくない姿なので、リリィ達がコレをどう取るかはわからない。
フリードが彼を覚えていれば、どうにかなるかもしれないが。
22 : リリィ ◇jntvk4zYjI[sage] : 2013/04/12(金) 22:13:08.32 0
>前234 >11 
自分の身に起きた異変と、その巻き添えをもろに食らって愕然としている本物のアムリーテ。
それらにまだ気づいていない偽アムリーテ(inリリィ)は、皆と一緒に地下へと移動する。
>「うわあああっ!?じょ、冗談じゃねーっすよーっ!?」
「何を今更。マリアベルのくせに生意気よ!さっ、行くわよー!」
>「ちょ、まって!影縫い!」
「・・・・・・ん?」
一瞬足が何かに引っかかったような気がしたのだが、足元は特に変化がない気のせいだろうか?
術を破ったなどという自覚がない偽アムリーテ(inリリィ)は、マリアベル・・・否、エンカを引っ張って地下へと急いだ。

グレンの言うとおりダンジョンという規模ではないが、それなりに仕掛けがあるらしい地下。
>「で、ダンジョンに入ったわけですからマッピングを忘れないようにしてくださいね」
>『ダンジョンってほどじゃなくね?』(猫語)
>「でもここに落とし穴とかありますし」
「うわ、危なかったぁ!」

フリードが床に氷を張り、トラップを無効化してくれた。
>「フリード君えげつない事ばかり考えているかと思ったけど、器用な事もできるのね」
「何言ってるのハピちゃん。毒舌なのはグレンだし、フリード君はいつでも紳士だよ!」
ただしゴブリンを除く。

さて。フリードの魔法で、落とし穴や仕掛けには一切引っかからない・・・・・はずだったのだが。
「うわっ?!氷がめり込んだ?!」
>おっと壁から槍を発射するスイッチだ
「わーん!ごめん!!」
誰も槍が当たっていない事に一安心。
その後、はっと我に返り慌てて反論を始める。
「べ、別に私が太ってるってわけじゃないんだからね!た、たまたま足元の氷が薄かっただけなんだから!」
フリードの作る氷が、たかが人間一人支えられないわけがないのだが・・・・・その異常事態に、またしても偽アムリーテ(inリリィ)は気づかなかった。

>「総帥の屋敷の地下ダンジョンに比べて結構罠が多いみたいですよね
> もしかして総帥が集めている遺物とかいう物がここにもあったりして・・・・おや行き止まり!?」
『あっちに物置があるよ』(猫語)

>11
物置らしき部屋から出てきたのは、別行動だったテオボルトだった。
>「いたいた。ミス・クラスタ、これの修理を頼む。私にはどうすりゃいいかわからんのでな」
偽アムリーテ(inリリィ)は、わたわたしながら何とか幻灯機を受け取ろうとする。
頭、手、腕、手、膝と何度もお手玉とバウンドをさせながらも、幸い床に落ちるギリギリでキャッチ出来た。
>「だれか機械に強い人は・・・・・・リリィさん・・・もといアムリーテさんとかどうですか」

「え?えええ?!」
話を振られ、リリィは困惑した。
「修理って・・・・・・私だってこんなのわからないよー。
 ・・・・・あれ?もしかしてこの幻灯機、小人さん入ってないカラクリタイプ?へー!すごい!
 うーん・・・・・・だとしたら、こういうカラクリはエンカのほうが得意なんじゃないかなぁ?自力でジドウシャ作っちゃうくらいだし。
  エンカ、どう?直せそう?・・・・・・って!しまった、今はマリアベルだった! 」
おおう、と頭を抱える偽アムリーテ(リリィ)
>「私の探した部屋にあったのは、それの他にはガラクタとネズミくらいだった。
> 地下への入り口は他のところにあるやもしれんな……おや、ミス・クラスタ。どうしたんだ?」
「やだなぁ、何言ってるのテオ君、私はリリィだよぅ。
 いくらうす暗いからって、他の女子と間違えないでよねー。うーん、でも、困ったなぁ」
23 : リリィ ◇jntvk4zYjI[sage] : 2013/04/12(金) 22:14:43.52 0
機械など良くわからないが、頼りにされた(・・・?)以上、最善を尽くさなくては!
一瞬の沈黙の後、ぱっと顔を輝かせたリリィはぽん!と手を叩いた。
「そうだ!聞いたことがあるよ!からくりは、叩けば治る事があるって!」
ぐるぐると右腕を振り回した。
「待っててね!今試してみるから!・・・・・・せーの!」
偽アムリーテ(リリィ)は受け取った幻灯機を床に置くと、その拳を振り下ろした。
だが力みすぎてしまったのか、手元が狂い幻灯機のすぐ脇の床を叩いてしまう。
ボゴオッ!という異音とともに、氷にめり込んだ拳から亀裂が走った。
「やだー、失敗失敗。・・・・・・・・・あれ?」
さすがにリリィも、そろそろ異常事態に気づいたようだ。

>13-19 
>「あー、えーと、リリィ?まずこの光と香を嗅いで落ち着いてね?」
パピスヘテプ に勧められるまま、光と香を受け入れる。

そしてその直後、手鏡を手渡された彼女は、残酷な現実に直面する!
>「今あなたの魂はそのゴーレムの中に入っているの。
>で、さっき見た『おかしなポーズをとっていた発育の悪いそっくりさん』あれがリリィの肉体よ」

ワナワナと震え、金魚のように口をパクパクさせているリリィだったが、幸い暴れだすようなことはなかった。
パピスヘテプの鎮静結界と香や光は、スパシーボ効果なのか、多少は効果あったようだ。

>「びっくりしただろうけど大丈夫よ、戻す術は心得ているから」
「ハピちゃあああん!!うわああん、良かった!戻せるのね!
 じゃあ、今すぐ私を元に戻してよー!!」
・・・・・・・これでも効果はあったに違いない。
わんわん泣き声をあげた偽アムリーテ(リリィ)は、パピスヘテプにしがみ付いた。

さて、では本物のリリィの身体に入り込んでしまった被害者はどうしているのかというと・・・・・・。
>「私の身体で子どもに乱暴はやめてください」
「あっ、ごめん!ついしがみ付いちゃって」
叱られたリリィは、反射的にパピスヘテプから離れた。

そして偽アムリーテ(inリリィ)を一喝した偽リリィ(inアムリーテ)は、幻灯機を胸の前で構えていた。
>しかし何も起こらない。起こるわけがない。
「・・・・・・・・?」
相手は困惑顔だが、こちらも意味が分からず首をかしげることになる。

そして偽リリィ(アムリーテ)は、突然壁にガンガンと頭を打ち付けはじめた。
「わーっやめて!そんなにぶつけたら馬鹿になっちゃう!!
 っていうか、私がリリィなら、私の身体に入ってる貴方は誰?」

偽リリィは自分がアムリーテだと名乗り、リリィにからくり幻灯機の情報を抜き出すように指示した。
「こ、こうですか?」
教わったとおりに情報の抜き取り方を試してみると、映像が現れた。

>そうこうして、テレパシーが渦となって幻灯機の情報を一行の脳内へと映し出す。
「わーっ?!胸から変な光が出てる!!」
一応情報は抜き出されたが、それがどんなものかはリリィにも良く分からなかった。
「えーと、つまり、これを撮った人も例の仕掛けで押しつぶされちゃったって事?
 じゃあこの幻灯械が壊れたのもそのせいなのかな?でもこれ、ぺしゃんこになってないよね?」
24 : リリィ ◇jntvk4zYjI[sage] : 2013/04/12(金) 22:16:18.55 0
偽アムリーテ(inリリィ)は幻灯機を持ったまま、矯めつ眇めつしている。
「・・・・・・・あれ?なんかまだ映像が残ってるかも・・・・・・?もうちょっとだけ読み取りを試してみるね」
偽アムリーテ(inリリィ)は再び幻灯機に意識を集中し始めた。
運がよければ、今までとは違う映像が見られるかもしれない。

近づいてくる足音に、偽リリィ(アムリーテ)ははっと身構えた。
リリィが読み取ろうとしていた別の映像も、残念ながらここまでで途切れてしまうだろう。

>その音は何かしら一度聞いたら忘れられないような特徴のある足音のようでもあった。
(・・・・・・まさか、ね)
それには確かに聞き覚えがあったが、偽アムリーテ(inリリィ)は即座に否定した。
なぜなら、その足音の持ち主がこの場に現れるはずがないからだ。
本物か、それとも、これも屋敷の主が作り出した幻か?

>「……誰か来ます。ということはこの地下フロアにも入り口か出口はあるはずです。
>ボウフラのように沸いて出てきたのでなければの話ですが。
「アムちゃん言葉は丁寧なのに、意外と毒舌よね・・・・・・・」

>「しかし何者なのでしょう?人間嫌いのアンチラストの使いでしょうか?
>こっちから赴くと決めいたのにむこうから来てくださるなんて好都合です」
「え?何する気?ちょっと、その身体私のだから!普通の人間だから!弱いから!
 ていうか、さっきぶつけたオデコ、こぶが出来てるじゃないのよやだぁ!」

>「あの…タバコを消しなさいです。タバコの煙は子どもに悪影響を及ぼすです」
大事なのはそこかよ!と、おそらく誰もが思っただろう。
偽リリィ(アムリーテ)は恐ろしくすばやく動いたかと思うと、問答無用でグレンを捕獲。
そして偽アムリーテ(inリリィ)の眼前に突き出した。

「・・・・・・・??」
意図が分からず困惑していた偽アムリーテ(inリリィ)だったが、その顔がふわあ、と大きく間延びする。
「ふえ、ふぇ、ふぇっくしゅん!」
マナーとして咄嗟に顔を背けてしまったものの、ここは地下である。
クシャミ砲は地下通路を巡り、タバコの煙くらいは簡単に吹き消すだろう。

>21
>「…………おい、貴様等。……見た所下級生か。こんな所で何をして居る?
 館の清掃では無く魔物でも掃除為るつもりか?」
「わー!出た!これが地下にいる悪の親玉なのね!
 よくもさっきは天井を落として私達をつぶそうとしたわね!お返しよ!えいっ!!」
堂々たる鎧姿のジェームズだったが、この場合声をかけるタイミングがあまりに悪すぎた。
偽アムリーテ(リリィ)は、先ほど壊した床の破片を手に取り黒い鎧めがけて投げつけた。
だが狙いは無常にも逸れ、彼が従えている馬のほうに飛んでいく。
「・・・・・・・あれ?今、鎧の人、下級生って言った?」
はっと気づき慌てるが、もう手遅れである。

投げたものはただの石つぶてだが、アムリーテの怪力で放たれたものだ。
ツェッペリンに当たってしまえば、それなりの被害が出るかもしれない。
25 : フリードリッヒ ◆cOOmSNbyw6 [sage] : 2013/04/14(日) 17:03:14.92 0
>8-24
>グレンを嫌々抱っこして持ち上げると、偽アムリーテ(リリィ)の眼前に突き出した。
『やめろぉ何をする』(猫語)
嫌がって暴れるグレン
「ちょっとリリィ・・・・もといアムリーテさん・・・ややこしいなぁ
 グレンが嫌がってるじゃないですか」
>「ふえ、ふぇ、ふぇっくしゅん!」

>「…………おい、貴様等。……見た所下級生か。こんな所で何をして居る?館の清掃では無く魔物でも掃除為るつもりか?」
『ヒャッハー汚物は消毒だぁ』(猫語)
ジェイムズにはニャァニャァ泣いているようにしか聞こえないだろうが
その通りだという意味の言葉を喋るグレン
「ええ一番地下に居る僕らをぶっ殺そうとした悪い親玉を死なない程度にぶちのめして
 生き地獄を味あわせてやるところです
 それに学園の言う清掃が言葉どおりの意味とはどうしても思えません
 たぶんあなたの言う通り人類および人類の友の敵を掃除しろというのが今回の課題の本当の意味でしょう」
思想が世紀末な魔法使いと使い魔

>「わー!出た!これが地下にいる悪の親玉なのね!
 よくもさっきは天井を落として私達をつぶそうとしたわね!お返しよ!えいっ!!」
>「・・・・・・・あれ?今、鎧の人、下級生って言った?」
「そうですよこの人は僕たちの先輩で・・・・・・・」
と彼が何者であるかを説明しだすフリードリッヒ
そしていままであったことをジェームズに説明するフリードリッヒ
いわゆるかくかくしかじかである
「僕としてはこんな物騒な屋敷は見なかったことにしてテントでも立ててキャンプしたほうがいいと思うんですが
 大切な友人の体を乗っ取らせ僕らをつり天井で殺そうとしたこの館の主人に落とし前をつけなくては気が収まらない方がいるので」

「まあとにかくこの部屋を出て石像を探さなければ話にならないみたいですね」
『わざわざ仕掛けなんて探さないで地下に居るってわかってるなら穴掘りの呪文で床に穴開けてショートカットすればよくね?』(猫語)
「僕には穴掘りの呪文なんて使えませんので」

さあ探索の再開だ
26 : エンカ ◆jWBUJ7IJ6Y [sage] : 2013/04/14(日) 19:15:28.20 0
>16
謎のカラクリ少女に引っ張られて行くエンカにとって、謎は深まるばかりであった。
地下のトラップ、様子のおかしいリリィ、そしてしきりに自分の事をマリアベルと呼ぶ仲間達……
ここでエンカは謎の足音を再び耳にした。
そう言えば自分はこの足音を追って館の“上の階”へ移動したのであった。
エンカは館の上の階でその後に見たモノを思い出そうとしたが思い出せない。
だが、その何かには近づかない方が良い事だけは印象として残っていた。
エンカは、荒縄で縛られているということもあるが、自分から足音の主を追いかけたいとは思わない。
しかし、だからと言って何故みんなは館の地下へ行こうというのか?
「なにがなんだかわかんねぇけどよ~!?この館はなんかヤバい臭いがプンプンするぜ!?早く外に出た方がいいんじゃねぇか~!?」

>24
> 「・・・・・・・あれ?なんかまだ映像が残ってるかも・・・・・・?もうちょっとだけ読み取りを試してみるね」
幻影機が新たな映像の投影を始めた。
そこに映ったのは白衣を着た若い女性だった。
彼女の手にはクリップで挟まれた分厚い資料、そして緑色の液体が入った注射器が握られていた。
『…こんにちは、私は(ピー!ガガガッ)す。これより研究成果の発表を行います。私の(ザザーッ)』
映像にはところどころ頻繁に激しいノイズが入り、その度に場面が大きく飛んだ。
次のシーンでは、白衣の女性の前に一匹のネズミが入れられたケージが置かれていた。
『…私の娘の話はこれくらいにして、早速研究しているハイブリット生物の成果をご覧にいれましょう。
 前述の通り、これはキメラ理論と形態こそ似ていますが、まったく異質のものです。
 ではここで優秀な助手を紹介しましょう。ダンシャリ・ネズミのイレブン君です』
白衣の女性がケージのネズミを取り出した。よく見ると、ネズミの左手が欠損しているようだ。
『イレブン君は不幸にも左手を事故で失いました。これからそんな彼に希望を与えましょう。これがその希望です』
白衣の女性が持つ注射器がアップになった。
『これはボンノウ・トカゲのエッセンスを特殊な魔法で抽出したものです。
 トカゲの尻尾切りは有名ですが、ご存知の通り切れた尻尾はまたいくらでも再生します。
 このエッセンスをイレブン君に注入するとどうなるでしょう?』
ネズミのイレブン君に注射器が打たれた。するとイレブン君の左手がみるみる再生を始め、
ついに彼の左手がかつてそうだった通りに戻った。白衣の女性は言葉は不用とばかりに胸をはる。
『以上で私の発表を終わります。
 この研究が、私の娘のためだけでなく、広く世界で難病に苦しむ子供達の助けとならんことを…(ガーーーー)』
映像はそこで完全に途絶えた。

>21
> 「…………おい、貴様等。……見た所下級生か。こんな所で何をして居る?館の清掃では無く魔物でも掃除為るつもりか?」
「あ、あんたは……!」
エンカにはわからないことだらけだったが、暗い地下室に溶け込むような、
いや、地下の闇よりさらに黒く浮き上がるようなそのシルエットに見覚えがあった。
「ジェイムズ・ジャスティン先輩!『漆黒の騎士』ジェイムズ・ジャスティン先輩じゃないっすか!?」
エンカは憧れの先輩の一人であるジェイムズに会えて感激している様子だった。
なぜなら、エンカもまた魔術の素質のない生徒の一人である。
だからこそ、エンカはジェイムズにシンパシーを感じずにはいられないのだ。
「こいつらさっきからおかしな事ばっかり言ってるっすよ~!
 先輩の御威光でよ~、何とかしてくださいっすよ~!」
エンカはそう言ってジェイムズに助けを求めた。

ところで、ジェイムズが立っているすぐ横の壁に、何かの魔法装置が取り付けられていた。
パピスヘテプなら心当たりがあるだろう。室内に照明をもたらす魔法装置である。
薄暗いこの物置も、明るくなれば何か新しい発見があるかもしれない。
27 : パピスヘテプ ◆/TZT/04/K6 [sage] : 2013/04/15(月) 22:46:57.93 0
>「ハピちゃあああん!!うわああん、良かった!戻せるのね!
> じゃあ、今すぐ私を元に戻してよー!!」
「え、ええ……おびゅふぅ~~~~!!」
過酷な事実を告げられたアムリーテ(inリリィ)は不安と安堵からか大泣きしながらしがみ付いてきた。
もちろんこれがただのリリィであればパピスヘテプもその頭の一つでも撫でながら安心させてやったであろう。
だが今のリリィは身体が10万馬力を誇るアムリーテである。
自分の身体でないのであるからして、扱い自体も不慣れであり微妙な力加減など不可能だというもの。
ただの抱きつきも全身の骨を砕かんばかりの強力プレス機も同然。

パピスヘテプの纏うケロべロスの毛皮のコートが大きく膨らみその力に抗しようとするが、変な悲鳴が出てしまうほど力差は大きいようだった。
幸いな事にリリィ(inアムリーテ)の一喝によって離されたのであるが、立っているのが精一杯……
いや、影によって支えられていなければ立っていられないほどのダメージを負ってしまったのであった。

そのダメージを回復させるために骨付き肉二本と映像が流れ終わるまでの時間を要することになる。

幻灯機に映し出されたのは石像の口の隠しスイッチ、吊天井、だけに思えたのだがそのあとに更なる映像が流れ出た。
研究者の記録映像。
それはキメラ理論による欠損四肢再生術と思われる映像。

様々な映像が流れた後、ふと気づく。
地下室にタバコの臭いが流れ込んできていることに。
そして近づいてくる足音。

>「あの…タバコを消しなさいです。タバコの煙は子どもに悪影響を及ぼすです」
「はいはい、わかったわ。でもちょっと待って頂戴ね、リリィ?いえ、中身はアムリーテね。
どうして入れ替わったかはわからないけど、自分の身体があるのに他人様の身体に入るのはいけない事よ。
特に扱いもできない身体と入れ替わるのはお互いの害になるだけ。
だから強制的にでも戻ってもらうわよ。」

グレンを抱きかかえて突き付けるその手に荒縄を撒きつけ、片方を突き付けられたアムリーテ(リリィ)に巻きつける。
お互いの元の身体が荒縄で繋がるほど近くにいればこれで魂を元に戻すことができるだろう、と。

しかし術が行使されるより先にくしゃみ砲が炸裂してしまった!
ただくしゃみしただけならばまだ問題はなかったかもしれない。
が、反射的に顔をそむけてくしゃみをしたアムリーテ(inリリィ)のエチケットが災いした。

先ほどのダメージから回復して間もなかったこと。
更には術の行使の為に集中していたため、くしゃみ砲の余波をまともに喰らって吹き飛ばされてしまったのだ。
もちろんリリィとアムリーテを繋いでいた荒縄もほどけてしまっている。

「ゴーレムの機体としては凄まじい性能みたいだけど、疑似人格としてはお粗末極まりないわね!
こんな地下の密閉空間でこんなことするだなんて!」
基本的に大らかなパピスヘテプだが、この暴挙には声を上げた。
たぶん同じことを霊魂がしたとしても声を上げることはなくただただ許したであろう。
が、アムリーテは生きており、自分の肉体を持っているのだ。
そしてアムリーテはゴーレムであり、その意識、魂は疑似的に作られたものにすぎない。
この差が、空回り続けるアムリーテへのパピスヘテプの印象の悪化に起因するのかもしれない。
28 : パピスヘテプ ◆/TZT/04/K6 [sage] : 2013/04/15(月) 22:48:40.80 0
抗議の声をあげながら起き上がったパピスヘテプの目に映ったのは突如として現れた黒甲冑。
黒甲冑の隣の馬に恐ろしい勢いで瓦礫を投げつけるアムリーテ(inリリィ)
その姿を見てパピスヘテプの血の気が引いた。
パピスヘテプはこの黒甲冑が何者か知っている。

学園に魔法の素養の少ない者、ない者はそれなりにいる。
だが、『魔法』学園にあってここまでコテコテの騎士をしている人間はそうそういはしない。
しかも本人そのものよりも物理攻撃無効、魔法半減という恐るべき鎧が有名なのだ。
もしかしたら鎧そのものが本体なのではないかと囁かれる程に。

好奇心旺盛で物見高いパピスヘテプがそんな面白い存在を見逃すだろうか?
いいや見逃しはしない。
とはいえ学園の違う先輩である。
接点もないため話したこともなく、ただ遠目で観察する程度ではあったが。

顔見知りであるフリードのエンカが事情を説明しているのを見て、パピスヘテプも歩き出す。
「あんたたち二人は慣れない身体で下手に動くと危ないから、ちょっとじっとしてて。
先輩に事情説明したら戻すから!」
リリィとアムリーテに言い置くと、ジェイムズの元へ。

「黒要塞せんぱ……いえ、黒騎士先輩。死霊科のパピスヘテプです。初めまして。
フリード君とエンカ君の説明に補足をさせてくださいな。
後エンカ君にも説明するから、これ食べながら聞いて頂戴」
エンカにヤモリの黒焼きと赤まむしドリンクを差し出しながらフリードの説明に付け加える。

エンカがマリアベルと名乗るものに憑依されていた事。
藁人形に移し替えようとしたが逃げられたこと。
憑依解除の為にエンカの精気を吸って衰弱させたことも。

「まあ、そういうわけで、フリード君も言うように館の主人であるアンチラストという人とお話もしたいところですし。
そもそも課題の清掃作業が文字通りの清掃作業とは思えなくなっていることもありますの。
あ、それから黒騎士先輩って鎧の力でテレパシー受信できないのですよね。
この藁人形で中継しますから持っていてください」
影から新たな藁人形を取り出し、ジェイムズに手渡した。
藁人形はジェイムズの身体をよじ登り、肩まで着くとそのヘルメットに手をかけそっと耳打ちをする。

『説明した通りエンカ君はつい先ほどまで憑依されていました。
解除を試みたのですけど失敗。
マリアベルがエンカ君から離れたのであれば問題ないのですけど、更に奥底に潜んでいる可能性も……
だから衰弱したエンカ君を回復させなかったのですけど、黒騎士先輩が来てくれたので回復させました。
念の為にエンカ君に注意を払っておいてくれませんか?』

ちなみに黒要塞先輩とはジェイムズの鎧の性能と見た目からパピスヘテプが密かに読んでいる名前であったりする。

「あ、そういえば、黒騎士先輩ってタバコ吸いました?」
色々な事が一気に起こって忘れそうになっていたが、ジェイムズが現れる直前確かにタバコの臭いが流れてきていたのだ。
だが足音はペタペタと鎧を着こむジェイムズにはあり得ぬ音。
くしゃみ砲で驚いて退散したのであればそれに越したことはないのだが。

気がかりではあるが、とりあえずはリリィとアムリーテを元に戻してややこしい状態を元に戻さねばと二人の方へと振り返るのであった。
29 : アムリーテ ◆apJGY8Xmsg [sage] : 2013/04/16(火) 22:28:18.42 0
幻影機に映されていたのは鼠の左手の再生治療。

>『以上で私の発表を終わります。
 この研究が、私の娘のためだけでなく、広く世界で難病に苦しむ子供達の助けとならんことを…(ガーーーー)』

(子どもたちのために誰かがどこかで研究をしていたみたいです。
おそらくはこの洋館の地下と考えるのが妥当でしょう。
ですが彼女の行為は私たちを殺そうとしたアンチラストとは真逆の行為みたいです。
彼女の身に、何事も起こっていなければよいのですが……)

謎の女の再生術の映像に、アムリーテは行方不明となったセンセイのことを思い出す。
錬金術師であり冒険家でもあったククレーニュという名の男のことを。

綺麗な女ならいつまでも綺麗なままでいたいと思考することだろうし、
石だってずっと石のままでいたいと思っているはず、とアムリーテは思う。
そう思っていなければ石は石であり続けない。この世に石など存在しないはずなのだ。
それと同じで機械人形に造られた自分も、機能を正常に果たしていたいと心のどこかで思っている。

とある古代遺跡で、長い眠りから覚めたアムリーテ・クラスタ。
ククレーニュに再び命の火を灯され、彼女は嬉しく思った。
と同時に疑問が浮かび上がりこう問うたのだ。

「なぜ貴方は、私を目覚めさせてくれたのですか?」
静かに問いかけるアムリーテに、男はこう答えた。

「俺が死に掛けていた時、助けてくれた人がいた。
その行為が俺には何よりも嬉しかった。きっと、今の君以上にね」
自分が助けられて嬉しかったから、自分も誰かを助ける。
男の答えは、単純と言われれば単純なことだった。

この幻影機の映像によって、アムリーテの予測は少しずつではあるが現実のものへと移行し始めている。
本来機械にあるべきはずでないもの「第六感」のようなものでアムリーテは導かれている。
信頼するククレーニュ先生の元へと。ただ、そう信じていたかっただけでもあったのだが…。
30 : アムリーテ ◆apJGY8Xmsg [sage] : 2013/04/16(火) 22:37:24.12 0
アムリーテ(リリィ)が氷の床に亀裂を入れ、
クシャミ砲を飛ばし パピステヘプに振り向かれた瞬間。
それはリリ魂を串刺しにした。

それとは得体の知れない者たちの眼差しだ。
パピステヘプの視線とは明らかに違う内面から来る禍々しい視線。
ざわざわ…とアムリーテの肉体の奥、エンジェルハートの最奥から迫る波動。
ほの暗い無意識の深海から迫る影の群れ。

『アナタは、ダレ?アノ子はどこへいったの?』
リリィに問いかけるのはアムリーテのものと酷似した意識。
でもそれは氷のように冷たい無機質な印象を与える。

『アノ子がいないのなら、この体をのっとちゃいましょうよ。
姉である私たちすべてのクラスタを破壊した最強のクラスタの体を…。
おぞましき人間の男に誑かされた愚かな妹の体をね…』

「…ふっ、ひひひ」
不気味に笑い始めるアムリーテ。もちろんリリ魂を巻き込んだまま。
でもその前に説明すると、「クラスタ」は塊。群れ。集団という意味。
アムリーテ・クラスタとは、太古の昔にデウス・エクス・マキーナ(機械仕掛けの神)
の一人として、混沌とした世界を終結させるために造られた兵器の集団なのだ。
だが、ククレーニュにより命の大切さを学習したアムリーテは
他のアムリーテたちを破壊した後、彼に四肢の兵装を外す手術をしてもらったのだ。
その時に姉たちのゴースト(怨念)が、胸のエンジェルハートに侵入したことも気付かずに。

>「あんたたち二人は慣れない身体で下手に動くと危ないから、ちょっとじっとしてて。
 先輩に事情説明したら戻すから!」

じっとしてて、絶対動くなよ。は鬼ブリの証。
なのでアムリーテの両眼が怪しく点滅を開始する。
31 : アムリーテ ◆apJGY8Xmsg [sage] : 2013/04/16(火) 22:50:43.84 0
>「こいつらさっきからおかしな事ばっかり言ってるっすよ~!
 先輩の御威光でよ~、何とかしてくださいっすよ~!」

「アナタを殺して分解してみたらちょっとは何かがわかるかもです。
少なくともマリアベルってものが何なのかとか。でも、何にも出てこなかったらごめんなさいです」

ぶつぶつとアムリーテは呟きながら胸の宝石、エンジェルハートから圧縮砲を放つ。
それは昇ってきた階段を破壊して地上への最短の逃走経路を寸断する。

「はい。で、どうするですか子どもたち。エンカさんでしたっけ?
今ので蒸発しちゃったかもですね。ふひひ…。
残骸から何か出てきましたか?皆で仲良くさがしてみましょうです」

アムリーテは鼻で笑いながら、パピスヘテプをねめつける。
そしてフリードへ向かって両手で握り拳固。

「あなたの墓穴、掘ってあげますです!」
両手を振り下ろしフリードごと床を叩きつける。後手キャンとかなんとかしなければ
フリードは地殻を越えてマントルまで減り込んでしまうかもしれない。
そして、今だアムリーテの意識にへばりついているリリィにむかい――

「あむーっ!さっきからこのノイズはなんですか!?小便くさい小娘が!じゃまをするなです!」
暴言を吐いたあと大暴れを始めるアムリーテ。
それをリリィの中のアムリーテは震えながら見ている。
オデコのコブもじんじんして痛む。
それに無敵の体で子どもを守るとか言っていた自分を恥ずかしく思う。

「あむむぅ。こ、こわい、こわいですぅ。
私ってあんなに怖かったですか…。マジキチロールですぅ……」
よたよたと壁伝いに進むと隠れようとして扉をあける。すると映像に出ていた石像があった。
だからって光る吊り天井を作動させる理由もアムリーテには見当たらない。
だが天井で光る魔法陣に見覚えのある者もここにはいるはずだ。それは一体何だったのか。
思い当たることがあれば進路は開かれることだろう。

【鬼ぶり>無茶ぶり】
32 : テオボルト ◆e2mxb8LNqk [sage] : 2013/04/16(火) 23:18:33.66 0
>「やだなぁ、何言ってるのテオ君、私はリリィだよぅ。
> いくらうす暗いからって、他の女子と間違えないでよねー。うーん、でも、困ったなぁ」
「何だって……? どう見ても、ミス・クラスタ、君にしか見えないが……」
ぼそぼそとしたテオボルトの呟きは聞き届けられず、自称リリィのアムリータは幻灯機を床に置く。
そして拳を振り下ろした。幸い狙いの甘さで幻灯機には当たらなかったが、床に亀裂を入れるこの威力。
この奇行には、あっけにとられるしかなかった。

ポカーンとしていると、自称リリィにパピスヘテプから説明が入る。
曰く、アムリーテとリリィの魂が入れ替わっている、とのこと。元に戻せるらしいが、ややこしい事この上ない。
重なるハプニングに、大きくため息を吐いた。
「清掃活動に来たら島が突っ込んできて、館じゃハプニングが続々と……!
 ええい、さっさと事を終わらせねば延々とトラブルが続発するんじゃないか!? 片っ端からどんどん片付けるぞ!」
と、苛立ちをあらわにするテオボルト。しかし現状彼に出来ることはない。

>そうこうして、テレパシーが渦となって幻灯機の情報を一行の脳内へと映し出す。
>幻灯機に映し出されたのは石像の口の隠しスイッチ、吊天井、だけに思えたのだがそのあとに更なる映像が流れ出た。
>研究者の記録映像。
>それはキメラ理論による欠損四肢再生術と思われる映像。

映像を終えたのち、金属がぶつかる音をさせて、ある人物が登場する。
> 「…………おい、貴様等。……見た所下級生か。こんな所で何をして居る?館の清掃では無く魔物でも掃除為るつもりか?」
>「あ、あんたは……!」
>「わー!出た!これが地下にいる悪の親玉なのね!
> よくもさっきは天井を落として私達をつぶそうとしたわね!お返しよ!えいっ!!」
「チッ、今度はなんだ?」
また面倒事かと思い、そちらを向けば……生徒たちの前には、黒く大きな金属の塊が!
>「ジェイムズ・ジャスティン先輩!『漆黒の騎士』ジェイムズ・ジャスティン先輩じゃないっすか!?」
>「黒要塞せんぱ……いえ、黒騎士先輩。死霊科のパピスヘテプです。初めまして。
>フリード君とエンカ君の説明に補足をさせてくださいな」
フリードやエンカ、パピスヘテプの様子からしてそれなりに有名な生徒らしい。

ちなみに、テオボルトは彼と一切の面識はない。それ故、このタイミングで出てきた彼を存分に怪しむ。
こんなのが魔法学校に……と、自分の格好の怪しさを棚に置いてじろじろとジェイムズに訝しみの視線を浴びせる。
一応今はフードを脱いでいるため、テオボルトの顔は見えている。
しかし、一度フードを被ってしまえば、殆ど肌の露出がないという点で共通してしまうことだろう。
33 : テオボルト ◆e2mxb8LNqk [sage] : 2013/04/16(火) 23:19:34.29 0
「あ、そういえば、黒騎士先輩ってタバコ吸いました?」
パピスヘテプが質問すると、テオボルトがクンと鼻を利かせ、横で否定の声を挟む。
「違う。この先輩サンからはタバコの臭いがしない……先程の足音の正体ではない事は確かだな。
 代わりに、ちょっと嫌な臭いが染みついているが。君、ガーリックか何かが好きだろう?」
顔をしかめ、じろりに睨みを利かせる。ニンニクの臭いは少々嫌いなのだ。

「そら、さっさと石像の間を探しに行くとしよう……ん? また様子が、」
せかせかと行動に移ろうとしたが、再び様子のおかしいアムリーテボディに気付いた。
怪しく点滅する両目に、嫌な予感を覚える。

>「アナタを殺して分解してみたらちょっとは何かがわかるかもです。
>少なくともマリアベルってものが何なのかとか。でも、何にも出てこなかったらごめんなさいです」
>ぶつぶつとアムリーテは呟きながら胸の宝石、エンジェルハートから圧縮砲を放つ。
「んなっ!? 階段を……退路を断っただと!」
階段に直撃した光線は、見事に対象を瓦礫へと変えて道をふさいでいた。

最早リリィではない、そのアムリーテはフリードへと攻撃をしかけ、更に
>「あむーっ!さっきからこのノイズはなんですか!?小便くさい小娘が!じゃまをするなです!」
と、中にいるだろうリリィの精神に悪態をつく。
独り大暴れをしているアムリーテボディだが、見かねたテオボルトは片手を向ける。
瞬時に溜まる魔力が、バチリと火花を散らす。
「このまま暴れられると鬱陶しい! いい加減大人しくしていろ……『サンダー・ランス』ッ!!」
狭い空間内に、バリバリと引き裂くような音と共に稲妻が迸る。
当然ながら、その電圧は機械をショートさせるには十二分すぎる。

空中の埃を焼いた焦げ臭い臭いが漂う中、ハッとあることに気がつく。
「……中身(リリィ)の事を忘れていた」
完全に後の祭りである。
34 : 青葉華菜 ◇UeaUYwi1Nw[sage] : 2013/04/16(火) 23:31:16.02 0
>「よーっ!お前らやっと来たのかよ!あんまり人を待たせんなよなーっ!」
「すみません、途中ではぐれてしまいまして」
青葉がそう答えた
>「さぁさぁ!こうやってご馳走が用意されてるんだからよーっ!みんなでたらふく食べようぜーっ!」
「どうしたんだい、エンカ君? 何かあったのかい?」
勘のいい言葉は何かに気づいたようだ
>「どうしたんだよーっ!?みんな食べねぇのかぁ?…それとも、何かおかしなところでもあるのかよ?」
「いえ、私は遠慮しておきますわ。お弁当なら持って来ましたもの」
「僕もさっき採ってきたから」
と、蟲野はどろっとしたものを舐めている。樹液である
「僕もいいよ。特に食べる必要もないからねぇ。それに僕にとっては噂と恐怖が何よりのご馳走なんだ」
自らの魔法により都市伝説と化した言葉には食事が必要ない。しかし、噂をされなくなること、忘れられることは即ち死に直結するのだ

>「えーと、蟲野君、だっけ。それからこちらの女の子は、どこかで見たことがあるような?」
「そう、蟲野蝶矢だよ。蟲系魔法なら任せてね」
「ああ、初めまして。私は青葉華菜と申しますわ」
本来『初めまして』ではないのだが、この姿と名前で接するのははじめてである。ゆえに『初めまして』なのだ、というのが青葉の考え方だ
>「そちらは初対面よね。はじめまして、死霊科のパピスヘテプよ。よろしくね。
あとお掃除しているあのゴーレムは二人の内どちらかのなの?」
「死霊科だって? すばらしい! 君とはいい話ができそうだ。僕は言霊科の霊園言葉だよ。霊とか妖怪とかが大好きなんだ…ふふふ」

>「私の影は私の体積と同じだけ亜空間になっていてこうやって荷物入れたりしていられるんだけど、一応空間魔法の一種なのよね」
>「本当だ僕の懐の魔法陣も使えます」
「!! と、いうことは私の空間移動魔法も……
……どうやら私のは使えないみたいですわ。どうやらあながち嘘というわけでもないみたいですわね」

>「あなた、青葉君だったの?どーしてまたそんなに念入りに?
いや、そういう趣味の人はいるのは知ってるけど青葉君ってそうだったんだ」
「おやおや、気づかれてしまいましたの。うふふ、先程新しい魔法薬の開発に成功したものですから…私自身を実験台にしたのですわ
別に女性化願望があるわけではありませんからご安心くださいまし」

>「君たち!食べるのをやめなさい!!
>君たちは食料などは自前で調達しなければならないと伝えられたはずです!」
なんやかんやで料理から蠍が沸いてきた。いや、半身が人間である。女郎蜘蛛やらケンタウロスやらの類であろう
>「その小さいアンドロスコーピオンは虫扱いでいいんでしょうか?
 だったら蟲野さんの領域でしょう・・・・ならば僕は!!」
「おーけー蟲のことならお任せだよ! エンマダイオウグモ、マオウグモ! あの蠍たちを捕らえるんだ!」
35 : ジェイムズ ◇nIuIv3TzeE[sage] : 2013/04/17(水) 21:35:19.36 0
>>24
>「わー!出た!これが地下にいる悪の親玉なのね!
よくもさっきは天井を落としてくれたわね!お返しよ!えいっ!!」

ジェイムズは、話し掛けた途端にいきなり石を投げられるも、咄嗟に機転を効かせて飛んで来た石を槍で簡単に弾いた。

>「あれ‥…‥?今、鎧の人、下級生って言った?」
弾いた直後、それが機械(リリィ)の投げた物だとわかった。
その機械(リリィ)は、石を投げてからジェイムズに投げてしまったと気付いたらしく、あたふたとしている。

「……乙女よ、幾ら気が動転して居るとは言え、初対面の人物に石を投げ付けるのは些か目に余るぞ……」
『全くです。私に当たっていたらどうなっていたことやら……(馬語)』

>>25
>『adhesi-3:jw(\2æęx:/skq(理解不能)』
>「ええ一番地下に居る僕らをぶっ殺そうとした悪い親玉を死なない程度にぶちのめ>して
> 生き地獄を味あわせてやるところです
> それに学園の言う清掃が言葉どおりの意味とはどうしても思えません
> たぶんあなたの言う通り人類および人類の友の敵を掃除しろというのが今回の課題の本当の意味でしょう」


「……乙女は確か、武芸の授業で会ったな……然し、物騒な物の言い方だな。其れでも乙女か?」
『……途轍も無く汚い言葉を吐く使い魔ですね……(馬語)』

二人揃って汚い言葉を吐く姿に、ツェッペリンとジェイムズは装甲の下で苦い表情をした。
ちなみにツェッペリンには動物の言葉と人間の言葉、両方がわかっている。

>>26
その後、フリードに今までの事を説明されたジェイムズ。
「……フム……話は分かった。友の為に危険も省みぬ其の姿勢、気に入ったぞ。」
「良かろう。我も汝等に同行為るとしようか……」
「(何年振りかな……人の為に武器を振るうのは……)」
『御主人様が行くとおっしゃるのでしたら、何処までも付いて行きます。(馬語)』

未だにジェイムズはフリードを女だと思っているらしい。
すると突然、その場にいたうちの一人が声を上げた。

>「あ、あんたは……!」

「……ん?」
>「ジェイムズ・ジャスティン先輩!『漆黒の騎士』ジェイムズ・ジャスティン先輩じゃないっすか!?」

「……如何にも。ジャスティンは姓では無く、名前だがな。我が姓はゼ……」
>「こいつらさっきからおかしな事ばっかり言ってるっすよ~!
>「先輩の御威光でよ~何とかしてくださいっすよ~!」

色々とまくし立てるエンカに、ジェイムズは少し押され気味になる。

「う、うむ……(何だ此奴は……)」
『御主人様、いつの間にか有名人になってますね……(馬語)』

ジェイムズとしては、目立つのはあまり好みでは無いのだが。
36 : ジェイムズ ◇nIuIv3TzeE[sage] : 2013/04/17(水) 21:36:26.37 0
>>28>>33>>31
そのうち、一人の少女が声を上げた。
>「黒要塞せんぱ……いえ、黒騎士先輩。死霊科のパピスヘテプです。初めまして。
>フリード君とエンカ君の説明に補足をさせてくださいな。
>後エンカ君にも説明するから、これ食べながら聞いて頂戴」
>エンカにヤモリの黒焼きと赤まむしドリンクを差し出しながらフリードの説明に付>け加える。
>
>エンカがマリアベルと名乗るものに憑依されていた事。
>藁人形に移し替えようとしたが逃げられたこと。
>憑依解除の為にエンカの精気を吸って衰弱させたことも。

「フム……中々に深き事情が有る様だな……」

>「まあ、そういうわけで、フリード君も言うように館の主人であるアンチラストと>いう人とお話もしたいところですし。
>そもそも課題の清掃作業が文字通りの清掃作業とは思えなくなっていることもあり>ますの。
>あ、それから黒騎士先輩って鎧の力でテレパシー受信できないのですよね。
>この藁人形で中継しますから持っていてください。」

「……ム。何だ此れは……」

すると突然、藁人形が動き出しジェイムズの身体をよじ登り始める。
ジェイムズは鎧の中で嫌そうな顔をした。藁人形が虫っぽい動きをしていたからだ。
ジェイムズは虫がとても嫌いだ。見つけたら速攻で殲滅させるほどに。これは藁人形だったため踏まずには済んだが。
そのうち藁人形がジェイムズの耳元まで近づき、話し出した。

>『説明した通りエンカ君はつい先ほどまで憑依されていました。
>解除を試みたのですけど失敗。
>マリアベルがエンカ君から離れたのであれば問題ないのですけど、更に奥底に潜んでいる可能性も……
>だから衰弱したエンカ君を回復させなかったのですけど、黒騎士先輩が来てくれた>ので回復させました。
>念の為にエンカ君に注意を払っておいてくれませんか?』

「まあ、そういうなら仕方が無いが……」

そして、パピスヘテプが口を開く。

>「あ、そういえば、黒騎士先輩ってタバコ吸いました?」
「……私はこう見えても未成年だぞ……そして、我の事はジェイムズと呼んで貰って結構だ。」

すると、その場にいた男が声を挟む。
>「違う。この先輩サンからはタバコの臭いがしない……先程の足音の正体ではない>事は確かだな。
> 代わりに、ちょっと嫌な臭いが染みついているが。君、ガーリックか何かが好きだろう?」

少年は、ジェイムズに向かって苦い表情をしながら鋭い目で睨んでいる。

「我が好みがガーリックパンと言う事に良く気が付いたな。しかし……」
「(日中だと言うのにこの厚着、ガーリックが嫌い、そしてこの目つきの悪さに口調……………もしや………)」
「(…………いや、それは無い。我ながら考え過ぎ、か。)……何でも無い。気に為るな。」
『年上には敬語ぐらい使いましょうよ………(馬語)』

日中だというのに厚着なのは人に言えた事では無い。

そのうち、先程自分に石を投げた少女が喋り始めた。
>「アナタを殺して分解してみたらちょっとは何かがわかるかもです。
>少なくともマリアベルってものが何なのかとか。でも、何にも出てこなかったらごめんなさいです」

「……殺す?貴様何を……」

>ぶつぶつとアムリーテは呟きながら胸の宝石、エンジェルハートから圧縮砲を放つ。
>それは昇ってきた階段を破壊して地上への最短の逃走経路を寸断する。
37 : ジェイムズ ◇nIuIv3TzeE[sage] : 2013/04/17(水) 21:36:57.47 0
「なッ!!貴様、血迷ったか!」

>「あむーっ!さっきからこのノイズはなんですか!?小便くさい小娘が!じゃまをするなです!」
「貴様、少し黙れ……」

暴言を吐いたあと大暴れを始めた少女を止めようと、身を乗り出したその時。
「このまま暴れられると鬱陶しい!いい加減大人しくしていろ……『サンダー・ランス!』ッ!!」

先程の少年の手から閃光が迸り、雷撃が放たれる。
そして、その電撃は対象の暴走を止めるまでに至った。

「よし。少し冷静に成るが良い。」
その隙を突き、ジェイムズは暴走が止まった機械(リリィ)の腕を掴み、動きを完全に封じる。

「今のが魔術か。良くやったぞ、少年!……だが、サンダーランス(雷の槍)というには少し威力が低いし形も違うのでは無いか?サンダーパイル(雷の杭)に改名を勧めるぞ。」
『あの方の雷の槍が弱く見えるのは御主人様の槍術が強すぎるからでは……(馬語)』

ともあれ、機械(リリィ)の暴走は止まっただろう。
38 : リリィ ◇jntvk4zYjI[sage] : 2013/04/17(水) 21:38:36.66 0
>『アナタは、ダレ?アノ子はどこへいったの?』
「え?何か言った?」
偽アムリーテ(inリリィ)に誰かが問いかけた。だがそれは無機質な上に聞き覚えのない声だ。
>『アノ子がいないのなら、この体をのっとちゃいましょうよ。
>姉である私たちすべてのクラスタを破壊した最強のクラスタの体を…。
>おぞましき人間の男に誑かされた愚かな妹の体をね…』
「・・・・・・・・?なんか変な声が聞こえる。愚かな妹って、クラスタを破壊した最強のクラスタって何のこと?」
アムリーテのフルネームを記憶していないリリィは困惑している。
そんな彼女の気持ちとは無関係に、アムリーテの身体は不気味な笑い声を漏らし始めた。

>「あんたたち二人は慣れない身体で下手に動くと危ないから、ちょっとじっとしてて。
> 先輩に事情説明したら戻すから!」
(待って、パピちゃん行かないで!!)
リリィは内心で叫んだ。
しかし、彼女の内面で暴れまくるナニカのせいなのか、はたまた身体が違っているからか、無情にも切なる思いは届かなかった。

言いつけどおりじっとしているアムリーテの身体だが、その瞳は内面の葛藤を写すように、めまぐるしく点滅している。
内面ではリリィと、アムリーテの中にあるナニカとの激しいせめぎあいがあったのだが、外観からはうかがえるはずもない。
それでも、異常事態であることだけは伝わったようだ。
(まあ、ゴーレムのアムリーテとリリィが入れ替わったことが、既に大変な異常事態なのだが)

>「アナタを殺して分解してみたらちょっとは何かがわかるかもです。
>少なくともマリアベルってものが何なのかとか。でも、何にも出てこなかったらごめんなさいです」
>ぶつぶつとアムリーテは呟きながら胸の宝石、エンジェルハートから圧縮砲を放つ。
>「んなっ!? 階段を……退路を断っただと!」
階段に直撃した光線は、見事に対象を瓦礫へと変えて道をふさいでいた。

最早リリィではない、そのアムリーテはフリードへと攻撃をしかけた。
だが今アムリーテの中にはリリィも混じっている。攻撃は食い止められなくても、意地でも仲間に直撃などさせるはずがない。
>「あむーっ!さっきからこのノイズはなんですか!?小便くさい小娘が!じゃまをするなです!」
「私はリリィよ!あなた達こそ・・・・・・黙れ・・・・・・・!」
アムリーテ(inリリィ)は、自分の身体が忘れていった自分のかばんを掴み上げ、前方の部分を握りつぶした。
ガラス瓶が割れる音がして、かばんから滴る水は、アムリーテの身体に降りかかる。
アムリーテは口を開けてそれを体内に取り込んだ。
ちなみに彼女が握りつぶした部分に入っていた液体は、聖水と毒消し草と薬草のボトルである。
どうやらリリィは、カラクリ『アムリーテ』は、呪われた品だと思ったようだ。
39 : リリィ ◇jntvk4zYjI[sage] : 2013/04/17(水) 21:39:17.72 0
リリィはナニカの行動をぎりぎりのところで妨害しつつも、破壊行動そのものはあえて遮らなかった。
それは力不足だったという理由もあるが、アムリーテを機能停止させるチャンスを待っていたからだ。

怨霊と化したアムリーテの姉達は知っていただろうか?
先ほどの仕掛け部屋で、アムリーテは動力切れで機能停止したことを。
あの時はフリードの機転で、短時間だが太陽光で充電ができた。
だがここは地下だ。
落ちる天井を支えるだけでエネルギーが切れたアムリーテが、大立ち回りをした挙句圧縮砲を撃って無事ですむわけがない。

>テオボルトはアムリーテの身体めがけて片手を向けた。
>「このまま暴れられると鬱陶しい! いい加減大人しくしていろ……『サンダー・ランス』ッ!!」
>狭い空間内に、バリバリと引き裂くような音と共に稲妻が迸る。
>当然ながら、その電圧は機械をショートさせるには十二分すぎる。

電圧が直撃した衝撃で、アムリーテ(inリリィ)が持っていたカバンが宙を舞う。
それは先ほどジェームズが立っていた壁にぶつかった。何かが作動し、周囲が明るくなった。

>「よし。少し冷静に成るが良い。」
その隙を突き、ジェイムズは暴走が止まった機械(リリィ)の腕を掴み、動きを完全に封じる。
だが、まだ安全ではない。
「お願い・・・・・抜いて・・・・・・・」
ジェームズはともかく、先ほどアムリーテの充電を見ていた者達なら、何のことか分かるだろう。
まあ仮にアムリーテの電池を抜くのが無理でも、凍らせるなどして体内に戻さないという選択肢もあるのだが。

さて、先ほど電池が切れた時、アムリーテはゴーストモードとして身体から抜け出ていた。
アムリーテがいない今回は、一体どうなってしまうのだろうか?
リリィがゴーストモードとして身体からはじき出され、ナニカが体内に残ったまま機能停止するのか?
リリィもナニカも、ゴーストモードとしてゴーレム外にはじき出されてしまうのか?
あるいは、リリィもナニカも閉じ込められたままこの場に残るのか?
それとも、受けた雷撃を力に変え、怯えるアムリーテ(inリリィ)をターミネーターよろしく活動限界まで追い詰めるのか?

魂に詳しいパピスヘテプとはいえ、生霊と怨霊、ゴーレムの擬似魂相手では頭が痛いだろう。
しかもアムリーテの魂は、リリィの身体ごと勝手に先に進んでしまった。
今までの経緯から考えるに、リリィの肉体に入り込んだアムリーテも、敵としか思えない状況になってきている。
無事皆がリリィ(inアムリーテ)に追いつけたとしても、彼女にとっては非常に不利な状況となるだろう。
変にこじれず、うまく誤解が解ければいいのだが。
40 : ◇jWBUJ7IJ6Y[sage] : 2013/04/17(水) 21:40:27.07 0
エンカはパピスヘテプからヤモリの黒焼きと赤マムシドリンクを受け取った。
今のエンカにとっては唯一心を許せるのはパピスヘテプだけだったが、ヤモリの黒焼きには眉をひそめざるをえなかった。
「パピちゃ~ん、これって食えるのー?うそ~?」
しかしヤモリを口にしない限りエンカの体は回復しないらしい。
エンカはヤモリの尻尾の先に恐る恐る鼻を近づけ、少しかじってみた。
「あぁ~、なんとも芳しいような、う~ん、ちょっとクセになりそうな……」
エンカはぶつぶつ言いながら少しずつヤモリを口にし始めた。一口かじるごとに、その量が増えていく。そして……
「ンまーーーいっ!!味に目覚めた!!」
どうやら彼も一族の宿命である悪食に目覚めてしまったようだ。

「パピちゃん、ヤモリをもう一匹くれ!」
そうエンカが言ったのはパピスヘテプの説明が終わってからである。既に一匹目のヤモリは完食していた。
「おっと、もちろんパピちゃんの説明は聞いてたぜ~?丁寧な説明ありがとよ。
 おかげでやっと状況が食えた…じゃなくて、飲み込めたってもんよ。
 だが、一つだけわからねぇもんがある。それは…」
エンカはそう言ってアムリーテを指さした。
「一体お前は何なんだぁ!見たところ学園の生徒じゃあねぇだろ!その見た目から察するに、ロゼッタを襲ったのもお前だなーっ!?
 いくら女の子だからってよ~、悪い事を企んでたらこのエンカ・ウォンが承知しねぇぜ!」
エンカにとってアムリーテは初対面同然の上に今まで引きずりまわされたわけだから、信用しろと言う方が無理だろう。

その時、アムリーテの目が点滅した。
>「アナタを殺して分解してみたらちょっとは何かがわかるかもです。
>少なくともマリアベルってものが何なのかとか。でも、何にも出てこなかったらごめんなさいです」
「な、なんだ~!?やろうってのか~!?言っとくけど俺にはお前が想像もできねぇような魔法が……!」
エンカはそう言いかけたが次の瞬間にはアムリーテの圧縮砲が放たれていた。
エンカの目前に迫る恐ろしい光線!エンカの運命やいかに!?
①ハンサムなエンカは突如反撃のアイデアを閃く!
②小粋なエンカは華麗に攻撃を回避する!
③一人じゃどうにもできない。現実は女難である。
「じょ、冗談じゃ…!!」
答えは③、③、③……

何かが爆発するような音が一瞬聞こえ、エンカの姿が圧縮砲の光に包まれて見えなくなった。
>「はい。で、どうするですか子どもたち。エンカさんでしたっけ?
>今ので蒸発しちゃったかもですね。ふひひ…。
>残骸から何か出てきましたか?皆で仲良くさがしてみましょうです」
今は誰が見るのだろうか?子供レーダーのエンカの反応も消えている。
燃える学ランの上着だけがその場に残った……

子供レーダーは新たにもう一つの反応を補足していた。
>>「……はぁ、あんまり来たくなかったけれど」
ロゼッタである。彼女は今やっと洋館の扉をくぐったのだ。
洋館に入ってから広いエントランスを一通り見てまわった。が、誰も見えない。
>>「!?」
一瞬の爆発音がロゼッタの耳に入った。
それは(ロゼッタは知るよしもないが)地下室へと続く扉の方からだった。
>>「熱っ……」
ドアノブに手をかけようとしたがすぐに手を引っ込めるロゼッタ。
扉の向こう側にある階段はアムリーテの圧縮砲でグチャグチャだ。
その瞬間、ロゼッタは“何か”を敏感に感じとり震えた。彼女はポツリと呟いた。
>>「………たった一人なのね?」
ロゼッタの目から涙がこぼれた。
41 : フリードリッヒ ◆cOOmSNbyw6 [sage] : 2013/04/18(木) 10:01:54.48 0
>26-40
>「あなたの墓穴、掘ってあげますです!」
床を突き抜けて下の方へ落ちていくフリードリッヒ

「やべぇフィー坊が死んだ!戦争や!ジルベリアとの戦争や!!」
あまりの出来事に思わず人間の言葉を喋ってしまうグレン
まあみんな気がついているだろうけどグレンの本当の種族名はケットシーであり
ケットシーの種族としての特徴は二本足で歩き人語を喋ることである
今まで猫語を喋っていたのは種族としてのプライドであり
実際は人間語を喋れるのだ

>「じょ、冗談じゃ…!!」
>エンカの姿が圧縮砲の光に包まれて見えなくなった
「げぇエンカさんも死んだ!?」
動揺しまくるグレン

『あれ・・・・ラインが切れてない良かったフィー坊生きてる』(猫語)
落ち着いたグレンは再びケットシー語を喋りだす

床の穴から勢い良く吹っ飛んで戻ってくるフリードリッヒ
「あ、危なかった偶然床に穴が開いて偶然下が逆落とし穴のあるフロアじゃなかったら
 今頃死んでたかもしれません」
なんという都合のいい偶然
「って天井が近づいてきてウボァー!!」
だがそのまま天井に激突してダメージを食らうフリードリッヒ
そもそも逆落とし穴とは強力なバネを用いり被害者を天井にぶつけてダメージを食らわせるものなのだ
当然天井の耐久力は罠が発動するたびに減る
下のフロアの天井=上のフロアの床である
故に急に床に穴が開いたのだ・・・・・・いやんなわけがないだろう
もしかしたら姉であるフリージアの都合のいい偶然を引き起こす程度の能力(無意識)が
フリードリッヒを守ってくれたのかもしれない
(例:洗脳されそうになった時たまたま足を引っ掛けて転び頭を打って洗脳が解ける等)
まあそれがなくてもリリィの意志のおかげで直撃は避けられただろうが

「いけないこのまま落下したら無限ドリブルされてしまいます!!」
と無限ドリブルされてはかなわないので下に開いた穴を氷の魔法で閉じるフリードリッヒ
「ウボァー!!」
なんとか追突ダメージと落下ダメージで済んだようだ
「ああ・・・・悲劇のブレストアーマーが使い物にならなくなってしまいました」
とボコボコになったアーマーを脱ぎ捨てるフリードリッヒ
耐久力が無くなったのは天井兼床だけではなくフリードのアーマーもであったようだ
呪いが解けてよかったのか強力な防具がお釈迦になってしまって悲しいのか

>「お願い・・・・・抜いて・・・・・・・」
「あれを引きぬくんですね!わかりました!!」
と多少よろつきながら何とか電池を引きぬくフリードリッヒ

「ところでエンカさんはどちらに?」
エンカが消えた瞬間をフリードは見ていないその頃は床の下にいたからだ」
42 : パピスヘテプ ◆/TZT/04/K6 [sage] : 2013/04/18(木) 22:18:14.13 0
ガーリックの臭いに敏感に反応するテオボルトに苦笑しつつ、エンカに二本目のヤモリの黒焼きを差し出した。
そこに弛緩した空気というものが生まれていたのかもしれない。
振り返るまでアムリーテ(inリリィ)の異変に気づけないでいたのだから。

振り返ればそこには目を赤く光らせたアムリーテ(inリリィ)
「リリィ?いえ、違うわね。あなたは誰?」
尋常ならざる雰囲気に息をのみながら感覚を研ぎ澄ます。

>「アナタを殺して分解してみたらちょっとは何かがわかるかもです。
>少なくともマリアベルってものが何なのかとか。でも、何にも出てこなかったらごめんなさいです」
支離滅裂、意図不明な言葉にパピスヘテプは戦慄する。
それは会話の成り立たない、怨霊と成り果ててしまった霊に通じるものがある感覚であったからだ。

パピスヘテプは知らぬことではあるが、その直感は当たっていた。
兵器として造られた疑似人格にあってアムリーテシリーズの怨霊はあまりにも通俗的に狂っているからだ。
必要のない感情や主体性を持ってしまっている時点で兵器としてはもはや使い物にならないのだから。

そして放たれる圧縮砲。
階段が崩壊し、そしてエンカは燃える学ランを残し消え去ってしまった。
だがそれをパピスヘテプは見ていない。
なぜならば、その余波によって吹き飛ばされ、崩れ落ちてきた瓦礫に埋もれてしまったからである。

リリィとアムリーテシリーズの怨霊が鬩ぎ合う中、フリードに拳が叩きつけられる。
その恐るべき威力は床を突き破るほどに!
瓦礫から漆黒の巨大なケロべロスが這い出てきたところで、アムリーテの暴走は鎮圧されていた。
コートとして纏っていた影獣が本来の姿を現しパピスヘテプを生き埋めの危機から守ったのである。

テオボルトの雷がアムリーテの機体を貫きショートさせる。
その隙にジェイムズが腕を掴み動きを封じたのであった。
なぜか地中に埋もれたはずのフリードが天井から降りてきたのは謎だったが、それを気にする余裕はない。
下の買いが逆落としの罠が仕掛けられていたとは神ならぬパピスヘテプは知りはしないのだから。

とりあえずはアムリーテの暴走は抑えられたのだが、パピスヘテプはそれを見ても安心はできなかった。
ジェイムズの怪力無双には定評がある。
が、影縫いを無自覚に破るほどの10万馬力を誇るアムリーテの機体。
油断はできない。
とはいえ、先ほど壁に小さく穴をあけるだけでエネルギー切れを起こしたアムリーテである。
フリードの氷のレンズによる集光による充電がなされたとはいえ、それほど多くはないはずだ。
これほどの大暴れができた事すら驚きであるほどに。

アムリーテの機体を完全停止させるために近寄った時、自分と同じ思いの人間がもう一人いた事に気が付いた。
それはアムリーテの中にいるリリィである。
>「お願い・・・・・抜いて・・・・・・・」
連続ドリブル地獄を危機一髪で脱したフリードがそれに応え電池を引き抜いた。

これで機体の方は大丈夫であろうが、パピスヘテプはさらに踏み込み対処を決意していた。
「ごめんなさいねリリィ、気づいてあげられなくて。
先にあなたをその物騒な体から移すわ。ちょっと窮屈かもしれないけど我慢して。
肉体の方もすぐに取り戻すから」
自分の感知能力の未熟さを呪いながら押さえつけられているアムリーテ(inリリィ)の頭に荒縄を巻きつける。
反対側には藁人形が。
こうしてリリィはアムリーテの機体から抜け、藁人形へと移ったのだった。
43 : パピスヘテプ ◆/TZT/04/K6 [sage] : 2013/04/18(木) 22:20:41.74 0
「ハァ……雷を使えるテオボルト君とアムリーテを抑えられるジェイムズ先輩がいて助かったわ。
二人ともありがとう。
それにしても、この中にいるのはマリアベル?別の怨霊?
どちらにしても会話が成立しなさそうだし、残念だわ」
基本的に霊とは対話を通じてその残念を解消して昇天させたいと願うパピスヘテプ。
だがもちろん世の中そんなに都合よくは回ってはくれない。
そもそもが昇天を拒み無理やり現世にしがみついているのであるから、むしろ話が通じる方が珍しいのだ。

それでもはやり、こういう時にはパピスヘテプの胸は痛む。
「ジェイムズ先輩、そのまま押さえつけておいてくださいね。テオ君は少し離れていて」
少し沈んだ声でジェイムズにお願いすると、パピスヘテプの両袖とフードの犬の顔から咆哮が放たれる。
三つの咆哮は絡み合い、一つの巨大な方向となってアムリーテの機体を貫いた。

ケロべロスの咆哮。
生者にとってはただの咆哮にすぎないが、死者の魂、霊体に直接打撃を与え、肉体から弾き飛ばす力を持つ。

咆哮により消滅もしくはアムリーテの身体から飛ばされるアムリーテシリーズの怨霊たち。
「鬼籍に降りている以上、この咆哮に、そしてこの光に抗えはしないわ。
さあ、あなたたちのいるべき世界はもうここではないの。
ここからお逝きなさい」
高々と掲げられるカンテラ。
しゃれこうべを模したカンテラにともる紫の炎は冥炎であり、彼岸への入り口でもある。
ケロべロスの咆哮に追い立てられたアムリーテシリーズの怨霊はその吸引力に引かれ次々に炎に吸い込まれていった。

「ああ、またやっちゃった。ごめんね……
さ、次はリリィの肉体と、そこに入っている最後の怨霊の始末ね」
強引に昇天させたことへの脱力感と自分の力なさへの失望と共に、まだ事態が終わってない事を自分に言い聞かせる。
フードを一旦脱いで戦闘モードを解き、一息入れた。

そしてリリィの入った藁人形を持ち上げ振り返ると……
>「ところでエンカさんはどちらに?」
「あ、あ……!?エンカ君??」
フリードの質問の答えは振り向いた先にあった。
燃え盛る学ラン。それは紛れもなくエンカのものである。
それが何を意味するかは否が応でも最悪のイメージが叩きつけられる。

パクパクとした口に震える手で香木を当て大きく深呼吸。
「す~~~~~~はぁ~~~~~~~。す~~~~~ぅ~~~~はぁ~~~~~~~。
大丈夫、大丈夫よ。そう、燃えた学ランがあるだけ、そうなんだから」
鎮静効果のある香木を口に当て深呼吸し、ぶつぶつと呟いた後ようやく落ち着きを取り戻したように影から取り出した。

それはヤモリの黒焼き。
エンカがその味に目覚めた事を思い出しながら、パピスヘテプはそれに齧りつく。
ただでさえ燃費が悪いのに、先ほどから術を行使したりダメージを受けたりしすぎたのだ。
空腹は思考を鈍化させる。
それを補うために、パピスヘテプはこまめに戦闘状態を解除し、食べるのだ。

「エンカ君は大丈夫。燃えているのは学ランだけだし、体だけ蒸発なんてありえないもの。
とりあえずは先にリリィの身体を取り戻しましょ。
どこにいるかはわかっているから」
そう、リリィの影には藁人形が仕込んであるのだ。
どこにいるか位置くらいは判るというもの。
リリィの身体に憑りついている怨霊を他の怨霊と同じく冥界に送る為に、パピスヘテプは歩き出した。

突如として現れ同行したゴーレム。
マリアベルやアンチラストとは別ではあるが、その手先、もしくは脅威に他ならない。
既にパピスヘテプの中では滅すべき敵としてアムリーテは認識されていた。
44 : アムリーテ ◆apJGY8Xmsg [sage] : 2013/04/19(金) 23:25:56.21 0
――映像に映っていた光る吊り天井の部屋で
リリィのなかのアムリーテはぷるぷると震えていた。
きっと自分の体を操っていたのは姉たちのゴースト。
大昔に敗北した腹いせに、アムリーテが好きな子どもたちを
痛めつけようとしたのかもしれないし、もとから狂っていたのかもしれない。
なぜなら彼女たちは人を殺すために造られた兵器。
殺人に存在意義を感じて大いに殺戮を楽しんでいたのかもしれないのだ。

扉の隙間から聞こえるのは雷撃の音。
その後、静かになったかと思うと犬の遠吠えが微かに響いてくる。
たぶん、アムリーテの体は機能を停止させられた。
それはとても悲しいことだったが当然のことなのだ。

「私の願いが、こんな悲劇に繋がってしまうなんて…」
その時、リリィ(アムリーテ)の両目から涙が零れ落ちる。
多分エンカとフリードリッヒは死んでしまっている。
他の子どもたちにも多大な迷惑をかけてしまっている。
それに姉たちの怒り。
大好きなセンセイのためにやってきた結果がこれなのだと思うと
自分自身を虚しく感じる。

「……うぅ~~~」
リリィの体を使い、アムリーテは涙を流していた。
すると聞こえてくるのはパピスヘテプたちの足音。
姉たちのゴーストはきっと彼女に処理されたのだろう。
今までの彼女の言動でそれは察することができた。

涙を拭って、アムリーテは立ち上がる。
子どもたちに合せる顔はないが、大好きなセンセイを人目みるまではこのままでいたい。
きっとリリィたちはエンカとフリードリッヒを酷い目に合せたアムリーテを許さないだろう。

「ごめんなさいリリィ…。体は絶対に返します」
胸に手を当ててリリィの心臓に願うアムリーテ。でもこの部屋は行き止まり。
なのでアムリーテは強く願った。助けてくださいセンセイと…。
その刹那、記憶の底から蘇るのはセンセイが差し伸べる手。
アムリーテの髪についたゴミを取ってくれた優しい手。
その手は幻影機に収められていた手と同じものだった。
そう、石像の口のなかに手を入れた者とおなじもの。

「……もしかして」
石像の口の中のスイッチを押して、光始めた天井の魔法円を見つめる。
そしてアムリーテは部屋の中に落ちていた石の欠片を天井に投げてみる。
すると石の欠片は落ちてこなかった。

「やっぱりです!この先にセンセイはいます。私はアノ人に会いたい。会えるまでは絶対に諦めません!」
その後、光り輝く吊り天井に押しつぶされるかのようにリリィ(アムリーテ)はその場から消えた。
45 : アムリーテ ◆apJGY8Xmsg [sage] : 2013/04/19(金) 23:38:23.88 0
リリィ(アムリーテ)がたどり着いた場所は不思議な場所だった。
薄闇のなかで光る魔方陣から出るとそこは洞窟のような迷路のような、
巨大な蟻の巣のような感じもする場所。
キノコや光苔、輝く水晶のようなものが木のように生えていたりもした。
まるで人工物と自然物のカオス。

不思議な気持ちになりながらリリィ(アムリーテ)は
ぺたぺたと坑道のような道を下へ下へと降りてゆく。
それはまさに冥府行。世界各地に伝わる神話のような感じだった。
エウリディケとオルフェウス。イザナミとイザナギ。行き先は亡者の国。
それならばこの先にアンチラストはいるのだろうか?
でもその前に早くセンセイを見つけてリリィの体を返したい。

「はあ…疲れたです」
巨大キノコに腰をかけて休憩をする。
ひとりぽっちは何となく寂しいが特別になれた感じもして何か清清しい。
そんな時、聞こえてきたのは動物の咆哮のような不気味な音。

【謎の地下迷路へ逃げるリリィ(inアムリーテ)】
46 : アムリーテ ◆apJGY8Xmsg [sage] : 2013/04/20(土) 00:20:27.64 0
>>44
×大昔に敗北
○敗北

大昔じゃありませんでした。
どうでもいいことなんですけどいちおう訂正させてください。
47 : ◆jWBUJ7IJ6Y [sage] : 2013/04/23(火) 00:00:36.78 0
魔法装置が作動し、室内が明るくなった。
すると、先ほどの騒ぎのせいでアイテムボックスがひっくり返っているのが見える。
その側に、テオボルトのカバンやリリィの荷物、それにエンカの荷物がぶちまけられていた。
どれもこれもエンカが預かっていた荷物だ。
エンカはそれらを館の一階にある客間にてアイテムボックスに入れていた。
魔法に疎い彼は、そのアイテムボックスが館の各所に置かれている同様のアイテムボックスと
中が繋がっているマジックアイテムだとは知らなかったのだ。

また、ぶちまけられた荷物に混じってタイプライターで打たれた文書が出てきた。
どうやらそれらの文書もアイテムボックスに入れられていたようだ。
それには次のような事が書かれていた。
『2月12日 記:マリアベル・ホワイト
 外は生憎の雨。私の心も晴れない。
 なぜなら私は今日、とても重い決断を下さなければならないからだ。
 アンチラストを廃棄物として処分する。
 研究にはいつも犠牲がつきものだ。私は自分にそう言い聞かせる。
 例え自分の娘の細胞であろうとも……』
『2月15日 記:マリアベル・ホワイト
 あえて日を一日ずらした。理由は言わずもがな。
 正午から館へ来た三人の魔法使いに二人の人造人間の説明をした。
 アンチラストとユニソルブル。今回彼らに処分を依頼したのはアンチラストだ。
 魔法使いの一人が言った。ユニソルブルも処分するべきではないか?と。
 私をイライラさせたその魔法使い―たしかギルハートという名だ―に念を押した。
 アンチラストは危険な存在だ。
 明日も私をイライラさせたいのなら、地下へ降りる前に十分慎重でありますように!』
『2月16日 記:マリアベル・ホワイト
 頭痛がする。とりたてて書くことは無い』
『2月18日 記:マリアベル・ホワイト
 雨はかれこれ一週間も降り続き、収まる気配がない。
 ギルハート達は気の毒なことをしたが、しかし彼らは私がこれから行う業に十分役にたった。
 一つは、アンチラストの能力が“真実への到達を拒む事”であると解き明かした事。
 もう一つは、アンチラストを拘束することに成功したことである。
 アンチラストの能力が“真実への到達を拒む事”であることから、
 殺そうという結果を求める限り彼女は絶対にその真実へと到達しない。
 だが必ず果たさなければならない。
 そうしなければ、同じ娘のガン細胞から造られたユニソルブルもまた、
 完成という真実へと到達しないのだから』
『2月18日 夜
 私はついにアンチラストを死に至らしめる方法を悟った。
 殺そうという結果を求めてはならない。しかし、過程の中に死が含まれる行為が果たしてあっただろうか?と。
 それは拷問である。拷問の目的は殺すことではないが、時にその過程で人を死に至らしめる。
 しかし私は自分の娘と決めたこの生命へそのような陵辱ができるのだろうか?
 今まさに覚悟を決めなければならない。
 おお、神よ………!』

最後の文書には日付も名前も書かれていなかった。
『どうしてこうなってしまったのだろうカ
 私はニンゲンではなくなってしまった
 ただ、娘を生き返らせようとしただけなのに
 リョウジョクがタリナイのデスカ
 タスケテ タスケテ タスケテ タスケテ タスケテ タスケテ タスケテ タスケテ タスケテ タスケテ
 タスケテ タスケテ タスケテ タスケテ タスケテ タスケテ タスケテ タスケテ タスケテ タスケテ
 タスケテ タスケテ タスケテ タスケテ タスケテ タスケテ タスケテ タスケテ タスケテ タスケテ
 タスケテ タスケテ タスケテ タスケテ タスケテ タスケテ タスケテ タスケテ タスケテ タスケテ
 タスケテ タスケテ タスケテ タスケテ タスケテ タスケテ タスケテ タスケテ タスケテ タスケテ
 ddddddddd  オカアサン ダイスキ』
48 : ◆jWBUJ7IJ6Y [sage] : 2013/04/23(火) 00:02:23.76 0
謎の地下迷路へと入り込んでしまったリリィ(アムリーテ)の懐から小さな人間サソリが飛び出した。
それはエンカを操るマリアベルと対決した際、リリィの服の中に飛び込んだ一匹だった。
人間サソリはまっすぐとある方向へ向けて歩き出す。
地面にはときどき『オカアサン ダイスキ』という落書きが書かれていた。
人間サソリを追いかければ追いかけるほど、それと同じ落書きをそこかしこで見かけるだろう。
『オカアサン ダイスキ』
『オカアサン ダイスキ』
『オカアサン ddddddddd』

「ブッダム・サラナム・ガッチャーミ
 ダンマム・サラナム・ガッチャーミ
 サンガム・サラナム・ガッチャーミ」
もう少し先へ進むと、そんな謎の声が聞こえてくる。
それは少女の声のようだった。
「ブッダム・サラナム・ガッチャーミ
 ダンマム・サラナム・ガッチャーミ
 サンガム・サラナム・ガッチャーミ」
さらに先へ進むと、小さな人影が見えてきた。
どうやらその、粗末な布切れをかぶった人物が謎の呪文を唱えているようだ。
その人物はリリィ(アムリーテ)に背中を向け、座ったままずっと呪文を唱え続ける。
「ブッダム・サラナム・ガッチャーミ
 ダンマム・サラナム・ガッチャーミ
 サンガム・サラナム・ガッチャーミ」
その人物の前に、三つの骸骨が置かれていた。
もしかしたら、その謎の人物は死者を供養をしようとしているのかもしれない。
「ブッダム・サラナム・ガッチャーミ
 ダンマム・サラナム・ガッチャーミ
 サンガム・サラナム・ガッチャーミ」

呪文が終わった。謎の人物はしばらくうつむいた後、顔をあげた。
背中を向けているので、容姿はよくわからない。
しかし間もなくリリィ(アムリーテ)は悟るだろう。
目の前にいるこの人物こそがアンチラスト・ホワイトであることを……
49 : アムリーテ ◆apJGY8Xmsg [sage] : 2013/04/24(水) 19:59:31.97 0
どこからか聞こえてくる謎の咆哮のような音に、リリィの体が自然と震える。
すると服の中から飛び出してきたのは一匹の人間蠍。
それはどこかに向かってぞろぞろと歩き出す。

(きっと、主であるアンチラストの元へと向かっているです)
アムリーテはそう思考して蠍について行った。

幻影機には鼠の左腕の再生治療が収められていた。
アムリーテはそれがセンセイと何気に関係があるような気がしていた。
だからこの洋館の謎を解けば、アンチラストの元へと向かえば、
センセイに出会えるかも知れない、と思う。

>地面にはときどき『オカアサン ダイスキ』という落書きが書かれていた。

「オカアサン?」ふと幻影機に映っていた白衣の女が脳裏に浮かぶ。

>『以上で私の発表を終わります。
 この研究が、私の娘のためだけでなく、広く世界で難病に苦しむ子供達の助けとならんことを…(ガーーーー)』

「オカアサン、ダイスキ」とは、たぶんその女の娘が書いた落書き。

しばらく進むと謎の人影。三つの骸骨。

>「ブッダム・サラナム・ガッチャーミ
 ダンマム・サラナム・ガッチャーミ
 サンガム・サラナム・ガッチャーミ」

「あなた、誰ですか?ここで何をしているですか?」
人間蠍を追いかけているうちにここに来てしまった。
ということは謎の人物の正体はアンチラストの可能性が高い。
しかしその小さな容姿に、アムリーテは思わず問うてしまう。

「オカアサン、ダイスキ…と、道に書いたのはアナタですか?」
誰かを好きと思う気持ちはアムリーテも同じ。
そんなアンチラストに同情をするアムリーテ。

「あの落書きを読んだオカアサンは、きっと嬉しいとおもうです。
心は心をスキになります。それはとても不思議なことです」
そう言ってリリィ(inアムリーテ)はアンチラスト・ホワイトを見つめた。
50 : リリィ ◇jntvk4zYjI[sage] : 2013/04/24(水) 20:35:06.96 0
>「ごめんなさいねリリィ、気づいてあげられなくて。
>先にあなたをその物騒な体から移すわ。ちょっと窮屈かもしれないけど我慢して。
>肉体の方もすぐに取り戻すから」
・・・・・・・いつものリリィなら、たとえ藁人形に魂が移し変えられたとしても、きっとへこたれなかった。
なぜなら彼女の日常は、常にトラブルと隣りあわせだったからだ。

だから本当なら、その場にいる全員に土下座せんばかりの勢いで謝罪とお礼をしたり、
「ありがと、パピちゃん愛してる!」と、藁人形なのにハートマークを飛ばしまくったり、
ジェームズ先輩にテレパシーが通じず困惑したり、
フリードの機転に感謝し、怪我が大したことがなさそうで一安心したり、
グレン、本当は人間語しゃべれたんだぁ、としみじみ驚いたり、
テオボルトに
「助かったけど、感電の衝撃で、私の魂がうっかり死んだらどーするつもりだったのよばかー!」と、噛み付いたり、
パピスヘテプの浄化を目の当たりにして、敬虔な気持ちになったりしただろう。

もしも。
もしもその場に、エンカが存在していたならば。

>「ああ、またやっちゃった。ごめんね……
>さ、次はリリィの肉体と、そこに入っている最後の怨霊の始末ね」
>「ところでエンカさんはどちらに?」
>「あ、あ……!?エンカ君??」
>燃え盛る学ラン。それは紛れもなくエンカのものである。

藁人形リリィが力なくうなだれた。
『私が悪いの。止められなかった。私が殺しちゃった。私がエンカを・・・・・・・』
>「エンカ君は大丈夫。燃えているのは学ランだけだし、体だけ蒸発なんてありえないもの。
>とりあえずは先にリリィの身体を取り戻しましょ。
>どこにいるかはわかっているから」
パピスヘテプがとりなすようにリリィに声をかけた。

『でも、でも!私さっきまでカラクリの中にいたから知ってるの。
 私が攻撃した瞬間、エンカの反応が消滅したのよ!』
藁人形リリィは大声で泣きたかったが、体がないためそれは不可能だった。
そして本当はわかっていた。今一番重要なのは、ここで問答することでは無い、ということを。
自分の体はもちろん取り返したい。
そしてエンカの事も知りたい。
この島で起こったさまざまなトラブルや、人間サソリをはじめとするアンチラストなる人物の事も気にかかる。
だが一気に片付けようとするのではなく、目の前の事を一つ一つ確実にこなしていく事が肝要だ。
51 : リリィ ◇jntvk4zYjI[sage] : 2013/04/24(水) 20:36:23.55 0
『・・・・・・・・わかった。取り乱してごめん。
 そうだね、服だけが燃え残るなんてありえないよね。
 そもそもエンカが死んでたら、この場に彼の魂がないとおかしいもの!』

藁人形リリィはそうやって最悪の事態を打ち消しつつも、万が一エンカが死んでいたら、という取り返しのつかない事態のことも考えてはいた。
どれほど悔やんでも、死んで詫びてもとても償い切れない罪だ。
(そうだ。そのときはハピちゃんにお願いして、エンカには私の身体を使ってもらおう。
 女の子になっちゃうけれど、死ぬよりはいいよね。お詫びなんて、そのくらいしか出来ないもの・・・・・・・)

藁人形リリィは、パピスヘテプの肩先で手足をぴこぴこさせながら、この場にいる全員にテレパシーで呼びかけた。
『皆、エンカのことも心配だけれど、まずは私の体を取り返したいの。
 もしかしたらまた危ない目にあうかもしれないけれど、協力してくれると嬉しいです?』

藁人形リリィは ジェイムズにもおずおずとテレパシーを送った。
『 ジェイムズ 先輩、課題とは無関係なトラブルですが、一緒に来てくださると大変心強いのですが・・・・・・・』
だが反応は薄い。
藁人形リリィは先輩のまとう鎧が、自分の『声』を遮断しているということを知らなかったのだ。
『や、やっぱり石をぶつけたことを、まだ怒っていらっしゃいますか・・・・・・・』

話が大体まとまったところで、藁人形リリィがおずおずと口を開いた。
『あ、それと。えっとね、この先に進む前に、念のためハンカチで口元を覆うか、マスクしてくださいませんか?
 実はその、さっきゴーレムの中に入ってたとき、モウソウダケの一種がこの先に生えてるかもって感じたんです』
モウソウダケとは、鎮静剤に使われる薬用キノコだ。
貴重なキノコだが、そうと知らずに近づき大量に胞子を吸い込むと、思考が鈍くなったり、幻覚をみたりするのだ。
『あ、いや、ゴレームと人間の五感って根本的にイロイロ違うんで、絶対にあるのか?って言われると自信ないんですが・・・・・・。
 まあ、念のためって事で。
もしマスクが無い方は、かばんの中にあるので使ってくださいね』

先に進むと、目の前に扉があった。
『あーこれ見覚えある。さっきの幻灯機の映像と同じだよね。あ、やっぱり。
 確か、石像に手を突っ込むと、光る天井に押しつぶされてあぶないよーって感じだったよね?』
・・・・・・藁人形でなくても、リリィは、謎解きには向いていないようだ。
『んーと。では、私が石像の穴に入って作動させてみる?藁人形なら、ちょっとくらい潰れても大丈夫だろうし』
リリィは短い手足で準備体操をしている。穴に飛び込む気満々のようだ。
52 : ジェイムズ ◇nIuIv3TzeE[sage] : 2013/04/24(水) 23:38:27.65 0
さて、フリードが電池を引き抜き、パピスヘテプがリリィ魂を藁人形に移した後、ジェイムズは状況を整理した。

リリィの魂は、藁人形に。
アムリーテの中身は、リリィに。
機械の中身は未だわからない。

そんなカオスな状況の中、ジェイムズは平静さを取り戻していた。
そして、今までエンカがいたところを振り向く。

「あれは………」

そこに落ちていた学ランが、静かに燃えるさまが何を意味しているかは明らかだ。
だが、今は自分がなすべき事を考えなければ。そして、まだ彼が死んだとは言い切れない。
が、もし死んでいたなら、ここの者たちはどんな心境か。

>『私が悪いの。止められなかった。私が殺しちゃった。私がエンカを……』
「……………」

藁人形(リリィ)が発した言葉が、ジェイムズの心に重くのしかかる。
なぜなら彼もまた、過去に眼前で仲間を失っているのだからーーーーーーーー

「………………ジークフリート……………」

そして彼は静かに、かつて護れなかった仲間の名を呟くのだった。
53 : ジェイムズ ◇nIuIv3TzeE[sage] : 2013/04/24(水) 23:39:14.87 0
すると突然、肩に乗せた藁人形が喋り出す。

『……リリィさんが、ついて来てください、とテレパシーで言っています。』
「む………そうか。ならば行かねば成るまい。此処まで付いて来て断る理由など有る物か。」

>『あ、それと。えっとね、この先に進む前に、念のためハンカチで口元を覆うか、マスクしてくださいませんか?
> 実はその、さっきゴーレムの中に入ってたとき、モウソウダケの一種がこの先に生えてるかもって感じたんです』
「モウソウダケ……?幻覚作用が有ると言うキノコか。我は鎧が有るから心配は要らん。」

そう話しつつ扉の前に着く。そこには、石像があった。

>『んーと。では、私が石像の穴に入って作動させてみる?藁人形なら、ちょっとくらい潰れても大丈夫だろうし』
「いや、潰れても大丈夫と言うなら我の方が適任だろう。鎧が有るしな。……最も乙女は、止めても飛び込みそうだが」

そう言いつつ、ジェイムズはノリノリなリリィに思わず嘆息するのだった。
54 : テオボルト ◆e2mxb8LNqk [sage] : 2013/04/25(木) 00:46:33.25 0
>「よし。少し冷静に成るが良い。」
動きの止まったアムリーテボディをジェイムズが捕まえる。
ほう、と感心したようにテオボルトが息をつく。
彼は魔法を撃った後のフォローを考えていなかったが、ジェイムズが上手い事やってくれたのだ。
テオボルトの中でジェイムズの評価が多少上方修正された。

>「今のが魔術か。良くやったぞ、少年!……だが、サンダーランス(雷の槍)というには少し威力が低いし形も違うのでは無いか?サンダーパイル(雷の杭)に改名を勧めるぞ。」
などという無駄口さえ叩かなければ。
ジェイムズの言を鼻で笑い、先程まで明かりをつけていた杖をしまう。
「ハッ、所詮『槍』なんてこの程度だろう? 黒い鎧の少年。……ま、君が幾つかは知らんがな」

その後、リリィのだろう言葉に従いアムリーテボディの電池をフリードが引き抜いた。
そしてパピスヘテプがリリィの魂を移し、ボディにしがみつく怨霊の対処を行う。
彼女の服の犬の顔から咆哮が放たれ、狭い空間内の空気をビリビリ振るわせていく
生者には問題ない筈である――が、咆哮の余波の影響か、テオボルトは妙な寒気を覚えながら処理を見ていた。

果たして作業は終えられ、フリードが一言疑問を投げかけた。
>「ところでエンカさんはどちらに?」
「……えっ?」
>「あ、あ……!?エンカ君??」
>「あれは………」
テオボルト、パピスヘテプ、ジェイムズが三者三様の反応を見せる。
かつてエンカのいた場所にあったのは、燃え盛る学ランだけ。
エンカの姿はなかった。

「死んでしまったのかな……? ……ああ、そうか、流石に学ランだけ残るのも不自然か」
割と冷静、というよりはドライな反応を示すテオボルト。どうやら死生観は大分渇いたものらしい。
うろたえそうなパピスヘテプ、うなだれる藁人形リリィ、落ち込むジェイムズをスルーして周りを見渡す。
何か手がかりらしき物はないかと思ったのだが、それらしきものはない。

しかし、発見はあった。明るくなった室内で見つけたのはひっくり返ったアイテムボックス。そして自身のカバンだった。
つかつかとカバンに歩み寄り、埃を払って中身を見る。中にあったのは当然の如く、彼の持ち物である。
「ふむ……エンカがこんな所に荷物を入れるとも思えない。とすると、中がつながっているマジックアイテムかな?」
ちらと辺りを見ると、どこかで見たようなもの(リリィやエンカの荷物)も散らばっている。
見た事のない文書も落ちていた。

好奇心から拾って読んでみると、マリアベルの日記らしい。
ざっと読んでいくうちに色々なことがわかっていく。
アンチラストはマリアベルの娘のガン細胞からの創造物であること、その創造物はもう一体存在すること。
マリアベルは元は人間であったこと、アンチラストの能力の事、マリアベルの狂気――――。
55 : テオボルト ◆e2mxb8LNqk [sage] : 2013/04/25(木) 00:47:16.33 0
>『皆、エンカのことも心配だけれど、まずは私の体を取り返したいの。
> もしかしたらまた危ない目にあうかもしれないけれど、協力してくれると嬉しいです?』
そこにテレパシーが届く。リリィからだ。一度目線を上げて、また文書に落としながら片手を上げる。
「ん……了解だ。ミス・クラスタの事も気になるしな」

リリィからモウソウダケの説明を聞きながら、テオボルトは考える。
アンチラストとはいったいどのような人物なのか?
マリアベルからは「危険」と評されていたし、その能力の全貌はつかめない。
油断できない相手ではあるだろうが。

「……今はミス・クラスタについてが先か」
アンチラストと相見えるよりも、アムリーテを捕まえる方が早い筈だ。
目の前の事を片付けてからでも遅くはない。
「フリード、マリアベルの日記だ。目を通しておくといい」
書類を渡すと、首に巻いていたスカーフで口元をしっかり覆う。
そして、カバンから水筒を出し、残りの荷物をまたアイテムボックスに入れた。


>先に進むと、目の前に扉があった。
>『あーこれ見覚えある。さっきの幻灯機の映像と同じだよね。あ、やっぱり。
> 確か、石像に手を突っ込むと、光る天井に押しつぶされてあぶないよーって感じだったよね?』
>『んーと。では、私が石像の穴に入って作動させてみる?藁人形なら、ちょっとくらい潰れても大丈夫だろうし』
>「いや、潰れても大丈夫と言うなら我の方が適任だろう。鎧が有るしな。……最も乙女は、止めても飛び込みそうだが」
「二人して無茶というか、無謀というか、考えなしというか」
ノリノリなリリィと、それに嘆息するジェイムズに呆れたような皮肉を漏らす。

カツカツと自然な動きで石像の前に立ったテオボルト。
「まぁ、それもまた一興というものかな。そら、起動、っとな」
躊躇いなく石像に手を突っ込み、スイッチを押した。
天井に光で円陣が描かれ、そのまま降りてくる。
「そもそも、天井が落ちてきたはずなのに幻灯機は無事だったんだ。それが回答のヒントだと私は思うね」
落ちてきた天井の円陣が体に触れた瞬間、テオボルトの体は転移した。


「……ふぅ。いやはや、無差別転移だったか。とにかく無事でよかった、アレが対象を選別する物じゃなくて」
辿り着いたのは、人工物と自然物がごちゃ混ぜになった不思議な道。
苔生した空間は下へと降りていくらしい。我先にとテオボルトは歩みを始める。
「この先には何かありそうだな? さて、何があるやら……アンチラストでなければいいが」
多分そうだろうな、と思いつつ、水筒を開けて中身を飲み歩く。
56 : パピスヘテプ ◆/TZT/04/K6 [sage] : 2013/04/27(土) 00:26:55.38 0
>『んーと。では、私が石像の穴に入って作動させてみる?藁人形なら、ちょっとくらい潰れても大丈夫だろうし』
吊天井の部屋で藁の身体だからと穴に飛び込む気満々のリリィをパピスヘテプはため息をつきながらつまみ上げた。
「あのねリリィ?あなたは今藁人形、ストローゴーレムの身体だけど、物理的なダメージには弱い代物なのよ?
身体というのは魂を縛る檻であると同時に魂を守る砦でもあるの。
身体を失えば魂はよりどころをなくし、迷う事になるわよ」
仮宿の身体の様な藁の体の機能を知らぬのは当たり前だが、それにしてもその無謀さにため息を隠せない。

とはいえ、身体を失った魂は迷うと言ったのはエンカの件での配慮だった。
死者の魂は大抵の場合迷うことなく昇天し、次なる生へと旅立つのだ。
迷えるのは迷えるだけの強い残念を持って死した死者だけである。
心残りや悔いなどというレベルで迷えるのならばこの世は死者の魂でイモ洗い状態だ。
意志も感情も全てを凌駕する妄執だけがそれを可能にする。
だからこそ、話の通じる霊は珍しく、「それのみ」の為に存在する怨霊となるのだ。

だがそれを言うわけにはいかない。
先ほどリリィは「死んだのなら魂が~」と一つの拠り所にしていたのだ。
それを崩すわけにはいかない。

そんな考えを表情から読まれてはいないだろうか?
隠し事は人を不安にさせ、それを塗り潰す様に言葉を綴ってしまうものだ。

「あ~、そういえばちょっと考えていたんだけど、エンカ君って東方出身だよね?
東方のニンジュツには金蝉脱殻の術ってあるんだってのを思い出したのね。
攻撃を受ける時に服からすり抜けて躱す術で、攻撃した方は服があるから気づかないって術。
状況的にみてその術を使ったのね」
躱していたのならどうしていなくなっちゃったの?
なんて問われれば言葉に窮するような仮説だが、誤魔化しの為に絞り出した言葉など往々にしてその程度のものだ。

>「いや、潰れても大丈夫と言うなら我の方が適任だろう。鎧が有るしな。……最も乙女は、止めても飛び込みそうだが」
そんな事を話しているとジェイムズが自分が吊天井にかかってみるのに適任だと言い出している。
その言葉を聞いてパピスヘテプは苦笑を漏らした。
ジェイムズは強い。
おそらくこのメンバーの中で戦闘力でいえば一番強いだろう。
だが、だからこそ、頼れぬこともある。

一匹の猫。
ネズミにとっては恐るべき捕食者であり、最大限に危機感を抱く相手である。
しかし人間にとっては愛玩動物であり、危機感を抱く事すら難しい。

極端な例ではあるが、ジェイムズを頼れぬ理由がこれである、
強いが故に危機感に対するギャップが激しく、同じレベルで行動すればとてもついていけない。
逆にこちらのレベルに合わせてもらうとすれば強力な戦力が低下してしまう事になる。

「あ、そうそう、ジェイムズ先輩の肩に乗った藁人形、リリィのテレパシーを自動で受信して囁くようにしておきました」
これでパピスヘテプが中継しなくともコミュニケーションに支障が出ることはないだろう。

次に視線を巡らせたのはテオボルト。
目先が効き先ほどもマリアベルの日記を見つけ重要な情報を得た。
頭の回転が速く戦力的にも申し分ないのだが……
皮肉屋で行動が早すぎる。
そう、今も確認もせずに吊天井のゲートに飛び込んでしまうほどに。
確たる推理から導き出された行動なのだろうが、守るタイプには思えない。

ここに至りてパピスヘテプの視線が行き着く先はフリードであった。
フリードもシルベリアの逸般人である。
ジェイムズと同じ理由が適用されそうなものなのだが、他の二人があまりにも濃すぎて感覚的に近しく感じてしまうから困る。
もちろんそれだけでなく、紳士的でフェミニスト。
更には氷の術を使えるので万が一藁人形が破損したとしても凍らせることで応急処置ができるのも大きかった。
戦力的にも思考的にも一番バランスが取れている。
57 : パピスヘテプ ◆/TZT/04/K6 [sage] : 2013/04/27(土) 00:31:36.90 0
「それじゃあフリード君、リリィが無茶しないように預かってもらえる?」
リリィの入った藁人形を渡して、自分は後から行く旨を伝える。
燃費が悪く体力的にも貧弱なパピしヘテプ。
島についてからここまでに術と体力をあまりにも消耗しすぎたのだ。
アムリーテシリーズの怨霊を無理やり冥界送りにした事に対する精神的な消耗もある。

「このまま強行軍しても肝心な時に倒れても困るし、この先休める場所があるかもわからないし。
私ここで食事してから行くから先に行ってて。
大丈夫、リリィの影にも、ジェイムズ先輩の肩にも、リリィ自身も私の藁人形なんだから迷う事はないわ」
そして術をかけ、リリィにもリリィの身体の影に入った藁人形がどこにあるか感じられるようにした。
これでお互いが迷うことなくリリィ(inアムリーテ)を確実に追跡できるであろう。

「上級生二人が同行する課題、食堂で見たサソリ小人、幻灯機で語られたキメラウィルス、そしてマリアベルの日記。
並べてみると悪い予感以外しない状況だし、急いで。
中身が何であれ、慣れない、しかもリリィの身体なら大した抵抗もできないでしょうから取り押さえちゃっておいて
お腹いっぱいになって追いついたらすぐに元に戻すから、ね」
必要性を並べ立てて先に行かせると、パピスヘテプはその場に座り込んだ。
体力的にもはや限界だったのだ。

座り込むパピスヘテプの影から壺がいくつも浮かび上がり、ゆっくりとそれに手をかける。
壺の中身はワイン、肉、パン、その他滋養効果の高い食べ物だ。
それらをパピスヘテプは貪るように食べる、飲む。
獰猛なほどの食事の勢いのなか、その表情には顔には、歓喜の色が見えていた。
「リリィ、エンカ君、ゴーレム、マリアベル、アンチラスト、ユニソルブル!ああ……凄いわ!」
この危機的な状況を、冒険活劇の登場人物になれた事に、喜びを感じているのだから。


【男子三人見比べてフリード君に藁人形(inリリィ)を託す】
【ジェイムズの肩の藁人形に自動通訳機能付与】
【リリィに他の藁人形察知能力付与】
【お腹がすいたので休憩してむしゃむしゃお食事】
【大変な状況なのにワクワクしすぎて御免】
58 : ◆jWBUJ7IJ6Y [sage] : 2013/04/27(土) 07:16:53.34 0
>49
> 「あなた、誰ですか?ここで何をしているですか?」
小さな人影はリリィ(アムリーテ)に背中を向けたまま答えた。
「ワタシの名前はアンチラスト。このモノ達のクヨウをしていたところダ。
 カレラとワタシはイノチをバカリの打ち合いをした間柄だが、死ねばミナ、ホトケゆえ……」
“このモノ達”とはどうやらアンチラストの前に置いてある三体の骸骨を意味しているようだ。
ちなみに、『命をばかりの打ち合い』とは真剣勝負を意味する古い言い回しである。
> 「オカアサン、ダイスキ…と、道に書いたのはアナタですか?」
アンチラストは答えるかわりに、立ち上がり、くるりと振り向いた。
座った状態から立ち上がっても、とても小さいことに変わりはなかった。
粗末なボロ布をまとっているように見えていたが、それは劣化した子供用のパーカーだった。
そのパーカーはアンチラストが着るには丈が長いらしく、腕も足も隠れてしまって見えない。
フードをまとっているため顔は見えないが、一瞬だけ光の加減で見えた肌の色は人間と同じだった。
> 「あの落書きを読んだオカアサンは、きっと嬉しいとおもうです。
> 心は心をスキになります。それはとても不思議なことです」
「それはフシギなことでも、ナンでもないのだ。
 ダレにもココロがあり、ココロはシュウチャクを生む。
 シュウチャクはそのうち失うことへのオソレとなり、
 オソレはイカリへと変わる。
 イカリはモウシュウを生み、やがて訪れるのはハカイ。
 そして無……」
アンチラストはまるで鞠が弾むように、ポーンポーンと飛び跳ねると、ふっと姿が消えた。
そして次の瞬間、リリィ(アムリーテ)の背中にアンチラストが張り付いていた!
アンチラストは大きな声で叫んだ。

「ネー!アソンデー!アソンデー!おネエちゃん、名前はナンてーの!?
 ツオイー!?ツオイー!?(強いー!?強いー!?)」
リリィ(アムリーテ)がとっさにアンチラストを剥がそうとしても、簡単には剥がれないだろう。
よく見えないが、アンチラストの手に、カブトムシの足の先にあるような細かいトゲがあるらしく、
それがリリィの服に引っかかっているようだ。
と言っても、痛くはないだろう。
「おヌシ!?チチが無いではないか!?オンナのくせに!オンナのくせに!」
アンチラストはぴょんとリリィ(アムリーテ)の背中から飛び降りると、自分にはあるぞとばかりに胸をはった。
たしかにアンチラストの胸には膨らみがあったが、本当はパーカーの布が余っているだけである。
「よーし、おネエちゃんのおチチを探しにイコー!」
アンチラストは地面に落ちていた木の棒を拾うと、それをふりまわしながらテテテテとどこかへ走りだした。
59 : フリードリッヒ ◆cOOmSNbyw6 [sage] : 2013/04/27(土) 08:59:32.97 0
>42-58
>「あ、あ……!?エンカ君??」
>「あれは………」
>『私が悪いの。止められなかった。私が殺しちゃった。私がエンカを……』
「また・・・・また僕の前から大切な人がいなくなってしまいました」
だがその大切な人・・・・ゴブリンにチェンジリングされたフリードの従妹は
ゴブリンの女王として君臨し暴虐の限りを尽くしている
まあ困っているのはゴブリンだけなので人間には全くどうでもいい話であるが

>「エンカ君は大丈夫。燃えているのは学ランだけだし、体だけ蒸発なんてありえないもの。
>とりあえずは先にリリィの身体を取り戻しましょ。
>どこにいるかはわかっているから」

「ええエンカさんは生きています!特に証拠はないですけど絶対です!!」
『でも次に再会したとき洗脳とかされて敵になってたり
 異世界に飛ばされて一人だけ年取ってたりしたら嫌だよね』(猫語)
と意味不明の言動をするグレン
「大丈夫です!きっと僕らがピンチに陥った時に颯爽と助けに来てくれますよ」
それはピンチになること前提なのか?

>『あ、それと。えっとね、この先に進む前に、念のためハンカチで口元を覆うか、マスクしてくださいませんか?
> 実はその、さっきゴーレムの中に入ってたとき、モウソウダケの一種がこの先に生えてるかもって感じたんです』
「大丈夫です!妄想は姉さんので慣れてますから!!」
それは全然大丈夫じゃないだろう
『いや素直に口をふさごうよ』(猫語)
グレンに言われしぶしぶと口をハンカチで覆うフリードリッヒ


そのころ姉であるフリージアさんは保険医のフィジル幼女化計画を阻止するために一人頑張っていた


>「フリード、マリアベルの日記だ。目を通しておくといい」
「わかりました・・・・・これは!?」
その日記の内容を見て驚愕するフリードリッヒ
「死んだ人間の複製を作ったってそれは単なる別人にしかならないというのに・・・・・」
と別の平行世界では生まれることも出来なかった少年はそう呟く
『死んだ人間は死んだ人間で魂として別に存在するんだよね
 でも複製した体に死んだ人間の魂を定着させれば・・・・・』(猫語)
と外道な発想をするグレン
「たとえ出来てもやっちゃいけないことです!
 それは複製人間の魂を追い出し肉体を奪う行為です
 人を生き返らす為にほかの誰かを殺すなんて・・・・・偽善者的に許せません!!」
なぜ偽善者的にはなのか…それは自分が生きるためにほかの何かの命を奪っているからだ
『わかってるよ死んだ本人も生き返りたがってるかどうかもわからないしね』(猫語)
世の中には自分が生き返るために自分の子孫や複製体の体を乗っ取る外道もいるが
まあそれは今は関係ないことだ

>「それじゃあフリード君、リリィが無茶しないように預かってもらえる?」
「わかりましたこの僕が命に代えない程度に守ります」
とフリードリッヒ
どうやらフリード自身が無茶しやがってと言われない程度に守るつもりのようだ

「さあ行きますよこのつり天井にしか見えないワープゲートの先に居るアムリーテさんを追いかけに!!」
60 : アムリーテ ◆apJGY8Xmsg [sage] : 2013/04/30(火) 12:05:12.73 0
>「ワタシの名前はアンチラスト。このモノ達のクヨウをしていたところダ。
 カレラとワタシはイノチをバカリの打ち合いをした間柄だが、死ねばミナ、ホトケゆえ……」

「死ねばミナ、ホトケ?それはロボットもですか?
いえ、そもそもロボットは生きていると言えるのでしょうか…」

と、問いかけると同時に、アムリーテはこの少女をアンチラストと認識する。
目の前にある骸骨は多分人間のもの。
アンチラストは真剣勝負をして、命を奪ったものの魂を供養しているらしい。
しかし、マリアベルに命じて、子どもたちを襲った理由は不明。
それにはいったい何の目的があったというのか?

>アンチラストは答えるかわりに、立ち上がり、くるりと振り向いた。

>「それはフシギなことでも、ナンでもないのだ。
 ダレにもココロがあり、ココロはシュウチャクを生む。
 シュウチャクはそのうち失うことへのオソレとなり、
 オソレはイカリへと変わる。
 イカリはモウシュウを生み、やがて訪れるのはハカイ。
 そして無……」

アンチラストの言葉にアムリーテは沈思。
センセイに対してのアムリーテの思い。それは執着。
と同時に失うことへの恐怖がアムリーテを狂わせているのかも知れない。
勿論、アムリーテがそれを自覚しているということはないのだが…。

>アンチラストはまるで鞠が弾むように、ポーンポーンと飛び跳ねると、ふっと姿が消えた。
>そして次の瞬間、リリィ(アムリーテ)の背中にアンチラストが張り付いていた!
>アンチラストは大きな声で叫んだ。

>「ネー!アソンデー!アソンデー!おネエちゃん、名前はナンてーの!?
 ツオイー!?ツオイー!?(強いー!?強いー!?)」

「私の名前は…アムリーテ。残念ですが、強くはありません」
背中にアンチラストの重さを感じつつ、アムリーテはそう呟いた。
彼女の言動は、決してリリィの体について言っているのではなく、自分の魂についての発言であり
アムリーテは他の子どもたちのように情け深く、痛みを知っているからこそ他人を助けるわけではなかった。
結局はセンセイの言いつけを守っている自分を嬉しく思っていただけ。
自分も他人も助けられたら嬉しく思うという単純な気持ちを抱いていただけ。

でもリリィの肉体を得たアムリーテは痛みを知った。
それは単に破損した部分の情報ではなく生きるための痛みでありとてつもない激痛だった。
しかし、そんな痛みを味わってもまだリリィという少女は友達のために献身的に尽くしてゆく。
アムリーテは、リリィにもう一度会えたならその理由を聞いてみたいと思っていた。
61 : アムリーテ ◆apJGY8Xmsg [sage] : 2013/04/30(火) 12:07:24.21 0
そんな折、アンチラストはとあるリリィの体の特徴に気がついてしまう。
それは服が後ろに引っ張られていたため、胸の薄さがあらわになってしまっていたのだった。

>「おヌシ!?チチが無いではないか!?オンナのくせに!オンナのくせに!」

「……!!」
頬を朱で染めあげるアムリーテ。

>アンチラストはぴょんとリリィ(アムリーテ)の背中から飛び降りると、自分にはあるぞとばかりに胸をはった。
>たしかにアンチラストの胸には膨らみがあったが、本当はパーカーの布が余っているだけである。
>「よーし、おネエちゃんのおチチを探しにイコー!」
>アンチラストは地面に落ちていた木の棒を拾うと、それをふりまわしながらテテテテとどこかへ走りだした。

それをアムリーテは怪訝に思う。
今のアンチラストの言動は、さきほどのアンチラストとはまるで別人。
それにお乳を探しにゆくことなど現実的に可能なことなのだろうか。まるで不可思議な言動。
しかし借りたものには利子をつけて返すべきとも思う。
きっと増量していればリリィに対する償いのようなものにもなると考える。

「では、参るです。リリィの胸を求めて…参るです」

が、しばらく地下を進むと謎の影に遭遇する。
その男は半獣人だった。それも豚の。
彼はモウソウダケを貪りながら二人を見つめていたが
アンチラストに気がつくと唸り吠えた。

「ふごおおおおおおおおおお!!」
巨体の肉を揺らしながらのしのしと近づいてくる豚男。
そう、彼はアムリーテの捜していたククレーニュ先生だった。
だが今の彼の見た目はゴブリンかオーク。
アムリーテはがくがくと震えながら絹を裂くような悲鳴をあげる。

「きゃああああああああああ!!アンチラスト、あなたは私をだましたですか?
そうです。あなたはマリアベルに命令して子供たちを襲いました。こ、これも…罠だったのですね!?」

こうしてリリィの胸を求めたアムリーテは、豚の半獣人の姿のククレーニュと再会することとなった。

そして豚男は、腰の抜けたリリィ(アムリーテ)を左腕の脇に抱えると通路に仁王立ち。
その状態のアムリーテはハミ出た肉に顔を挟まれて失神寸前。

「やっと会えたな…アンチラスト……」
豚男の鋭い眼光がアンチラストを射抜く。
62 : リリィ ◆jntvk4zYjI [sage] : 2013/04/30(火) 17:20:10.28 0
>52-61
「いや、潰れても大丈夫と言うなら我の方が適任だろう。鎧が有るしな。……最も乙女は、止めても飛び込みそうだが」
『天井が落ちてきても潰れないってすごくないですか?!
・・・・・・あっ、そういえばさっき、モウソウダケの効果も鎧があるから平気って言ってましたよね?』
鎧ってすごい!と思う反面、ずっと鎧着たままで重くないのかな?などと、つまらない考えがちらりと脳裏をよぎった。
もちろん口に出したりはしないが。

>そんなリリィを、ため息をつきながらパピスヘテプが摘み上げた。
>「あのねリリィ?あなたは今藁人形、ストローゴーレムの身体だけど、物理的なダメージには弱い代物なのよ?
>身体というのは魂を縛る檻であると同時に魂を守る砦でもあるの。
>身体を失えば魂はよりどころをなくし、迷う事になるわよ」
彼女の気持ちを代弁するように、恐怖で縮み上がった藁人形は、
『はい・・・・・すみませんでした』と、しょんぼりうな垂れた。
ゴーレムの知識があまり無いリリィには、どの程度変形したらアウトなのかよく分からない。
ならば、藁人形というかりそめの姿のうちは、おとなしくしているべきだろう。

>「二人して無茶というか、無謀というか、考えなしというか」
呆れたような様子のテオボルトは、自然体で石像の前に立ち、流れるような動きで
>「まぁ、それもまた一興というものかな。そら、起動、っとな」
と、スイッチを押してしまった。
『わーーーーーーっ!!誰が無茶よ無謀よ考えなしよ!危ないよ何してるのよテオ君逃げてー!』
そう叫んでいる間にも光る天井は無常にも降りて・・・・・・・。
『テオ君も消えた!やだあ!テオ君までエンカみたいに消えちゃったあああ!!』
そして、パニックを起こして、奇妙な動きをする藁人形が残された。
まあちょっと頭が冷えれば、これは消滅ではなく転移ゲートやワープゲートの一種だったと分かりそうなものだが。

>「あ~、(略)東方のニンジュツには金蝉脱殻の術ってあるんだってのを思い出したのね。 (略)
>状況的にみてその術を使ったのね」
「じゃあ、フリード君の言うとおり、ピンチになったら颯爽と助けに来てくれるかもしれないね。
 エンカってそういうおいしい登場好きそうだし」
テオボルトが転移して消えたショックから立ち直ったリリィは、パピスヘテプの気遣いを感じつつも、そうだったらいいなと思っていた。
とはいえ、実のところリリィは、ニンジャに、さほどいい印象を持っていない。
なぜなら過日、ニンジャとなのるミヤモトという者に襲撃され、友人達が傷ついたからだ。
・・・・・・リリィは、エンカが暗褐色の服を着て、面頬で顔を覆い、ニンジャブレートを構えながら
「ハイクを読め。 我が妖刀ヘイボンでカイシャクしてやる」 などとミヤモトよろしく見得を切っている想像してみた。
(・・・・・・・・どちらかっていうと、ニンジャよりネズミコゾー?っていう怪盗のほうが向いてそう)
怪盗も金蝉脱殻の術を使うかどうかは知らないが、頬被りというスタイルは、なぜかエンカに似合いそうな気がした。
(本当にどこかに隠れてるなら、早く出てきてくれたらいいのに)
リリィは、なるべく他愛も無いことを考えることで、最悪の事態を考えないよう努力していた。
たとえ逃避と言われようとも、今ここで動けなくなるよりはずっとマシだと思うからだ。
63 : リリィ ◆jntvk4zYjI [sage] : 2013/04/30(火) 17:21:07.13 0
>「それじゃあフリード君、リリィが無茶しないように預かってもらえる?」
>「わかりましたこの僕が命に代えない程度に守ります」
それはフリードにとっては、最上級の意味だとリリィは知っている。
『うん。フリード君、どうかよろしくお願いします』
パピスヘテプは、一休みして後から合流するらしい。
『パピちゃん、そんなに疲れるのに、一人きりになって大丈夫なの?
 ゴーレムのアムリーテだけじゃなくて、アンチラスト?ってのも、人面サソリもいるんでしょ?危なくない?』
リリィは心配したが、かといって今の自分では、手助けどころか足手まといにしかならないことも知っている。
だから、それ以上強くは言えなかった。

『フリード君、私のカバンを、フリード君の荷物と一緒にしてもらっても大丈夫?
 簡単だけど、解毒剤とか傷薬とか入ってるから、できれば持っていきたいの。
 ただ、さっきの騒動で中の薬ビンが割れたから、ちょっと水漏れしてるんだけど・・・・・・・。
 それと、さっきテオ君があけていた箱に、私の荷物も入ってたみたいなの。
 浮き輪とかは要らないから、箒だけでも持ってきてくれないかなー?』
厚かましいことこの上ないが、紳士なフリードのことだ、多少のわがままは笑って許してくれる・・・・・と思いたい。

「さあ行きますよこのつり天井にしか見えないワープゲートの先に居るアムリーテさんを追いかけに!!」
『テオ君、ちゃんとゲート出口で待っててくれてるかなぁ?』

そしてリリィ達も、光るゲートでテオボルトの後を追った。

『一人で行くなんて!テオ君ったら!もーっ、単独行動したら危ないのに!!』
フリードの肩の上でプンプン怒ってみても、いまさらどうしようもない話である。


テオボルトとアムリーテの後を追う道中、リリィはあれに言うでもなく話し出した。
『テオ君いないし、ここ暗いし薄気味悪いから、何か話そうよ。
 あ、そうだ。さっきテオ君が見つけた書類の話と、幻灯機の情報を整理してみよう。変だったら訂正してね。

 幻灯機に映っていた博士には娘さんがいて、娘さんの病気を治すために博士は研究していた。
 その研究っていうのは、体の不具合を補うためのもので、人間以外の生き物の力を利用するものだった。
 多分その博士の名前は、マリアベル・ホワイト。
 でもマリアベルの娘さんは、その研究を利用した治療を行なっても、亡くなってしまった。
 マリアベル博士は、残された娘さんの体の一部を使って、娘さん自身を生き返らせようとした。
 その結果生まれたのは、アンチラストとユニソルブルっていう人造人間・・・・・・うわっ、なにこの床!!』
地面には『オカアサン ダイスキ』という落書きが書かれていた。
目を凝らすと、それはまるで道しるべのように、奥へ奥へと続いている。

『つ、続けるよ・・・・・。
 アンチラストは何か問題があって、ギルハートを始めとする魔法使い3人に依頼して処分しようとしたけれど、できなかった。
 目下の敵であるアンチラストの能力は、真実への到達を拒む事ってこと。
 殺したければ、殺そうと思ってもだめで、別の目的で行動を起こさなきゃならない、と。
 ・・・・・っていうか、拷問が目的で、結果として死なせるって、さらっと恐ろしいこと書いてあったわよね・・・。
 最後のほう、日記書いてる人の人格が、博士から娘さんに変わってる気がしたんだけど・・・・・・。
 あれは、娘さんから作った人造人間を拷問して神経を病んだせいなのかな?それとも・・・・・・。 あ!』

リリィは食堂で会ったエンカの変貌ぶりを思い出していた。
『そう言えばさ、さっき食堂で会った時のエンカも、人間サソリをポリポリしたりして、別人みたいに人が変わってたよね?
 あの時のエンカは、自分のことをマリアベルって名乗って無かった?
 エンカの名乗った名前と、博士の日記のおかしな記述って、何か関係ってあるのかな?』
むーん、とリリィは考え込むが、藁人形の考えるポーズというのは、今ひとつ緊張感が無かった。
だが彼女の脳裏を、一瞬、ぞっとする閃きが過ぎった。
それは、マリアベルと、エンカと、死んだ三人の魔法使い全てが、アンチラストの
『無い無い!無い!!考えすぎ!こーゆー難しい話は、もっと頭のいい人に考えてもらうのが一番だよー!!』
リリィは頭といわず手といわずをぶんぶん振りまわし、勢いあまってフリードから転落しそうになった。
64 : リリィ ◆jntvk4zYjI [sage] : 2013/04/30(火) 17:24:00.58 0
 『ってことはつまり、私達もアンチラストを探したければ、ほかに目的を見つけなきゃ難しいってことかぁ。
 まあ、今はまず、アンチラストよりも私の身体を捜すのが先決なんだけど・・・・・・うわ。』
巨大キノコを見つけたリリィは、嫌そうな声を上げた。
『やっぱりモウソウダケだ。こんなに大きい・・・・・・・。
 まずいよ、私・・・・じゃなくて私の身体は、これの耐性持ってないの。
 アムリーテが何の準備もなくずっと吸い込み続けていたら、今頃倒れてるか、さもなくば、幻覚見ておかしくなってるかも!』
リリィは急いで急いでー!とばかりに、フリードの耳をぴこぴこ引っ張った。

どこからか、軽い足音がする。まだ遠いが、子供のもののようだ。
もしもテオボルトが、リリィ達より先に進んでたならば、きっと今頃、足音の主と接触しているかもしれない。
65 : ジェイムズ ◆nIuIv3TzeE [sage] : 2013/05/01(水) 14:30:21.18 0
>「ハッ、所詮『槍』なんてこの程度だろう? 黒い鎧の少年。……ま、君が幾つかは知らんがな」
「……………」

ジェイムズは、自分よりもみるからに年下の者に「少年」と呼ばれて憤りを感じる。
だが少し思い当たる節があり、考え事をしていた。

「(……此奴が「アレ」ならば我より年上の可能性も無くは無い、か……)」
「(先程迄の言動からして奴が「アレ」の確率は高いと言えるが……)」
「(まぁ、其れは結果に依るな。今度槍を新調為るか……)」

と、色々と考え事をしていた。すると、

>「あ、そうそう、ジェイムズ先輩の肩に乗った藁人形、リリィのテレパシーを自動で受信して囁くようにしておきました」
「む、色々と世話を焼かせたな。然し便利な魔術よ……」
『ご主人様は魔術が不慣れですからね……(馬語)』

素直に感心しているジェイムズであった。

「ん?ツェッペリン、そう言えば未だ居たのか。今日は下がれ。」
『……言葉が分からないとは言え気付かないのは酷いかと……(馬語)』

まだ引っ込めて居なかったツェッペリンに今頃気付いて、送還魔法を唱える。

「sending-callback」
だが。
「………失敗か。」

その後、三回ほど唱えてやっと成功したが、その頃にはバテバテになっていた。

「………………ハァ、やはり、我には、魔術は、似合わん……」

思ったより消耗が激しかったらしく、息が荒くなっていた。
そんな事をしているうちに、

>「さあ行きますよこのつり天井にしか見えないワープゲートの先に居るアムリーテさんを追いかけに!!」
>『テオ君、ちゃんとゲート出口で待っててくれてるかなぁ?』

皆先にワープゲートで行ってしまった。
「む……」

残されたのは自分と、がっついて飯を食べているパピスヘテプのみ。
とりあえず体力を回復しておきたいし、昼食も食べていなかったのでとりあえず飯を分けてもらう事にした。

「パピスヘテプとやら。済まぬが、我に其の食物の一部を分けて貰えぬだろうか?」

夢中で飯を食べ続けているパピスヘテプが、果たして飯を分けてくれるだろうか。
66 : テオボルト ◆e2mxb8LNqk [sage] : 2013/05/01(水) 19:45:33.65 0
「……む、紅茶も切れたか。まだ喉が渇いてるというのに」
中身のない水筒をしまい、テオボルトは妙な光景の中を歩く。
幾度かの分かれ道もあったが、おそらくはこれだろうと思われる道を来ていた。

>47-48
「しかし、オカアサンか……はて、さて」
おもむろに呟き、地面の落書きに触れる。
その落書きは、『オカアサン ダイスキ』という文字。
時々見るその文字に覚える印象は、拙いというよりも、おぞましい。
何処となく狂気を思わせる落書きに顔をしかめながら、テオボルトは再び歩き出す。

「この文字は、人間から外れたマリアベルが書いたのかな? それともアンチラストか?」
思い出すのは先程の書類。
マリアベルの日記の最後に記された一文が『オカアサン ダイスキ』であった。
ともすればマリアベルの文字とも推察できなくもないが。
「マリアベルの妻、アンチラストの――でなくて、元となった娘の母の記述はなかったしな。
 もしかしたらそちらの可能性も……一応疑念は考えておくべきか」
アンチラストの(遺伝子的な)『母』のことは一切わかっていないのだから、可能性としては消しきれない。
そもそもの話、『オカアサン』が『母』の事であるとは限らない。
色々考える余地はあるが、もし疑念が晴れるとしたら、それは本人らに遭った後だろう。


と、考えを浮かばせていると、テオボルトが異変に気付く。
「……おや。頭が……くらくらするような……まさか!」
ちらとそこらじゅうに生えているキノコ、モウソウダケを見やる。
「キノコにやられたか? ……今見えてるのも幻覚かもしれないとか、ぞっとしないッ」
今、彼の呼吸はスカーフ越しなだけである。スカーフの下から胞子が入ってくるのも有り得る。
いつ幻覚を見始めるか、どころか今の視界が幻覚かもしれないのだ。
精神的な恐怖で悪寒を感じつつも、奥へと進む足を速める。

>58>64
>どこからか、軽い足音がする。まだ遠いが、子供のもののようだ。
リリィ達の位置であれば遠いが、テオボルトからすればもう近い。
普段ならもっと早くに気付くはずだが、思考が鈍くなり始めたテオボルトは今更になって気が付いた。
早足で足音に近づくと、古ぼけたパーカー姿の子供を見つける。
どう見てもマリアベルとは思えない。彼の実態は知らないが、なんとなくそうではないと思った。
「アンチラストか……? こんなキノコだらけのところで、よくそんな姿でいられるな。
 ……ああ、くそっ、めまいがする。喉も渇いた! さっさとミス・クラスタを回収したいんだが、何処だ?」
頭を振りながら、普段よりも支離滅裂な言葉を発する。おまけに、アンチラスト以外が視界に入っていない。
思考どころか、かなり視界も狭くなっているようだ。
67 : パピスヘテプ ◆/TZT/04/K6 [sage] : 2013/05/02(木) 23:15:41.08 0
次々とゲートに消えていく背中を見ながら食事を始めるパピスヘテプ。
その横でジェイムズがツェッペリンの送還魔法にてこずっていた。
無双の槍使いにして物理攻撃無効、魔法半減の鎧を身に着けても天は二物を与えずを体現しているなと、その姿を横目で見る。
ようやく送還を成功させたジェイムズだが、息が荒く体力の消耗が激しそうだ。
無尽蔵の体力を持っているようなイメージをしていたが、魔法に関する体力消費は別物らしい。
消耗の呪いなどが弱点となるのかもしれない。

もともとジェイムズには興味があったパピスヘテプである。
横目で見ながら情報収集と分析に余念がないのだが、流石にまじまじと見られるほどには度胸はない。
上級生が魔法に失敗しつづける姿を見ていたというのもバツが悪い。

ジェイムズが送還魔法を成功させてこちらに向かってくるとさっと視線をそらせて一心不乱に食べる姿勢に戻す。
>「パピスヘテプとやら。済まぬが、我に其の食物の一部を分けて貰えぬだろうか?」
近づいてきたジェイムズからの言葉にパピスヘテプの思考は一瞬白くなった。
死と影を司る魔術師と武に生きる騎士。
あまりにも違いすぎて共通の話題もなく、実質初対面で緊張もしていたのだが、急に近親感がわくというか。
意外な人間味のある一言に思考の不意を突かれたのだった。

「あ、あぁ!それはもう、お口に合うかどうかわかりませんけど。
こっちの壺は普通のホットドッグ、骨付き肉、これはワイン。あとこっちからは精力増強用のヤモリの黒焼き、赤まむしドリンク。
更には砂ウナギのロイヤルゼリー漬け、などなど、順に味の方は好みが分かれるものになっていますけど、回復力もそれに比例しますわ。
いくらでも好きなものを食べてくださいな」
大歓迎と言わんばかりにパピスヘテプの影からいくつもの壺が溢れ出てきた。
一般的な食べ物から、口に入れるのを憚られるような姿と味のものまで。

にこやかに進めながらも、パピスヘテプの視線は一身にジェイムズに、いや、その兜に注がれている。
常時フルプレートアーマーに身を包んでいるのでその素顔を見たことがない。
すなわち、食事の瞬間はまだ見ぬ素顔を垣間見るチャンスなのだから。

回復食を一緒に食べながら話しかける。
「興味本位の質問で失礼かもしれないですけど、ジェイムズ先輩って何歳なんですか?
武術の技術はフィジルの生徒だし、天才だからで済むでしょうけど、なんというか……
技術だけではなりえない熟練度とか喋り方や騎士としての立ち振る舞い見ていると、歴戦の戦士?
修羅場をいくつも潜り抜けただけでなく、もう何年も戦場に身を置いているような40歳くらいの大人に見えちゃうので」
興味本位とはいえ17歳のジェイムズにかなり失礼な問いかけである。
だがそれだけでは飽き足らず、ジェイムズに対する興味は更に膨れ上がる。

食べながら喋り、喋りながら食べる。
にも拘らず口から食べ物がこぼれるどころか口の中は見せないのは女の嗜みである。
質実剛健を絵にかいたようなジェイムズは、女のランチタイムばりのお喋りに対応できるのであろうか?
一通り食べ終わるまでに、鎧はどういう経緯で手に入れたのか、鎧は重くないのか、テレパシーを遮断するのであれば気配は感じられるのか?
視覚情報に大半を頼るのであれば視界を確保できるのか?槍はどんなギミックがあるのか、それ以外の武器はあるのか?
まくしたてられるような勢いはないのだが、途切れることのない質問が続くのであった。

「さあ、お腹いっぱい、元気一杯になった事だし、私たちもいきましょうか。
この先は迷路みたいな通路が続くようだけど、影をトレースできるから安心してください。
あ、でも先輩の槍は振り回すのに不便かもですよー」
フードを目部下に被り、襟を撒きつけ口と鼻を覆異ながらゲートの前に立つ。
先行されてはいるが、今のリリィ同様にリリィ(inアムリーテ)の位置も軌跡も把握できるので迷う事はないだろう。
テレポートアウト先の状況も把握しており、ジェイムズに伝えてゲートをくぐるのであった。
68 : フリードリッヒ ◆cOOmSNbyw6 [sage] : 2013/05/03(金) 10:00:05.69 P
>60-67
>『まあ、今はまず、アンチラストよりも私の身体を捜すのが先決なんだけど・・・・・・うわ。』
「とりあえず優先事項はリリィさんの本来の肉体を返してもらうことですね・・・・うわ?」

>『やっぱりモウソウダケだ。こんなに大きい・・・・・・・。
 まずいよ、私・・・・じゃなくて私の身体は、これの耐性持ってないの。
 アムリーテが何の準備もなくずっと吸い込み続けていたら、今頃倒れてるか、さもなくば、幻覚見ておかしくなってるかも!』
「なぜあなたがここに居るんですか!
 僕の前から消えてくださいこの信号機野郎!!」
『駄目だフィー坊までモウソウダケの毒胞子にやられてる』(猫語)
妄想は慣れてるとか言いつつすっかりモウソウダケにやられているフリード
彼の目の前にはここに居るはずのない赤青のオッドアイで金髪をした
従兄弟であるジルベリア皇国の王子が見えているらしい

『はいはいサニティ、サニティ』(猫語)
グレンは落ち着き払って正気化の呪文を唱える
腐っても神官の息子であるのだろう
「大丈夫です僕は正気に戻った」
すごく不安なセリフだがどうやら正気に戻ったらしい
「そうですよねこんな所にあいつがいるわけが無いですよね
 ここにいる奴もモウソウダケの幻にすぎません」
だがまだ幻は見えているようである
69 : フリードリッヒ ◆cOOmSNbyw6 [sage] : 2013/05/03(金) 10:01:09.04 P
「どうやらこの先に子供がいるみたいですが・・・・・・こんなところに子供?」
『フィー坊だって子供じゃない』(猫語)
「という事は僕らとは別のルートから来たフィジルの生徒でしょうか?」


>「アンチラストか……? こんなキノコだらけのところで、よくそんな姿でいられるな。
 ……ああ、くそっ、めまいがする。喉も渇いた! さっさとミス・クラスタを回収したいんだが、何処だ?」
「あれがアンチラスト・・・・・なんというか保険医のエサみたいな感じですね」
ガチレズロリコンの保険医は見た目さえかわいければ種族も実年齢も問わない変態であり
自分だけの思い通りになる美少女を人工的に作り出そうと企んでいる外道である

「・・・・うん?まさか保険医の技術ってこれの・・・・いやまさかあんなギャグ属性の人が」
ロゼッタを幼女に変化させたりした保険医の謎技術のルーツがまさかこれじゃないかと嫌な予感でいっぱいになるフリードリッヒ
そういえばフリードは保険医を保険医としか知らない
いやむしろ誰か保険医の名前を知っている者はいるのだろうか?
『人格度外視で能力で人を選んだ弊害だね』(猫語)

「ところでさっきからあの小さい子を見つめている人(?)は何でしょうか?
 保険医と同じロリコンさんでしょうか?」
『あのバッチはフィジルの教員バッチ!?ロリコンとかおかまとか畜生この学園の教師は変態しかいないのか』(猫語)
豚のような男が身に着けている布きれらしきものに教員バッチを見止めるグレン
「氷結科の水鏡先生はまともですってば!・・・・それにしてもオークの教員ですかフィジルは広いですね」
はたしてこの謎の人物は本当に教員なのか?もしかしたら殺して奪った布入れを纏っているだけではないのか?
そして小脇に抱えられているリリィの体について突っ込み入れないのか?

「アムリーテさんあなたを抱きかかえているその方はいったい?」
とりあえず何故か小脇に抱えられているリリィの体=アムリーテに問いかけるフリードリッヒ
『そんな悠長なこと言ってるとリリィお姉ちゃんの体が窒息死しちゃうよ!!」
「どこの誰かは知りませんが今すぐその方を離してください!そうじゃなければリリィさんの体が死んでしまいます!!」
70 : ◆jWBUJ7IJ6Y [sage] : 2013/05/06(月) 19:34:01.45 0
>61>66
アンチラストとリリィ(アムリーテ)が一緒に地下を進んでいると、
とつぜんゴブリンらしきものがリリィ(アムリーテ)に襲いかかった。
> 「きゃああああああああああ!!アンチラスト、あなたは私をだましたですか?
> そうです。あなたはマリアベルに命令して子供たちを襲いました。こ、これも…罠だったのですね!?」
ゴブリンらしき豚男に抱えられたリリィ(アムリーテ)がそう叫ぶ。
「マリアベルにワタシが命令をした…だと……?」
アンチラストの口調が、最初に会った時と同じ口調になった。
しかしすぐに子供っぽい口調に戻った。
> 「やっと会えたな…アンチラスト……」
「あんたダレー!?」
豚男にそう尋ねた。

その時テオボルトが胞子の霧を抜け姿を現せた。
アンチラストは「あんたもダレー!?」とテオボルトを注視した。
> 「アンチラストか……? こんなキノコだらけのところで、よくそんな姿でいられるな。
>  ……ああ、くそっ、めまいがする。喉も渇いた! さっさとミス・クラスタを回収したいんだが、何処だ?」
「クラスタってダレー!?知らなーイ!」
アンチラストは闇に自分がアンチラストであると応えるかのように、
興味深そうにテオボルトに近づく。
「クラスタは知らないけれどアムリーテ姉ちゃんならいるよ!」
アンチラストは手に持った棒で豚男に囚われたリリィ(アムリーテ)を指し示した。
見るとフリードが豚男と何やら問答をしている。
「あー、またヒトが増えてるー!ウワー!」
ちなみにアムリーテはクラスタとは名乗っていないが、何故か真実へと到達してしまったようだ。

「………」
それは突然のことだった。
テオボルトの側にいたアンチラストが急に体からバリバリと、
粘着物が引き剥がされるような音を発し始めた。
アンチラストの着ていたパーカーは袖も裾も布が余っていてアンチラストの腕と足を隠していたが、
そこから木でも生えるかのように長い腕と長い足が生えてきたのだ。
不気味な程ひょろりと長い腕と足であった。
アンチラストの背丈が、生えてきた足に押される格好となり、人間の大人よりもずっと高くなった。
その手足は人間とよく似た格好をしていたが、まるで昆虫か甲殻生物のように黒い殻に覆われている。
魔法のスパイスがなければ、例え保険医だろうと美味しく召し上がれないだろうその怪物は、
その長い腕を振り回してテオボルトに平手打ちをお見舞いし、怒りをあらわにした口調で叫んだ。
「ノドが渇いたのなら、オマエの血をマツゴの水にしてやろウ!!」

なぜ突然アンチラストの逆鱗に触れることになったのか?
それにはある理由があった。
ある種類の蜂は死亡した際に仲間の蜂を凶暴化させるホルモンを周りに発散するという。
そういうホルモンがテオボルトの体についていたのだ。
ではそのホルモンを発散したのは?…小さな人間サソリであった。
そう、釣天井の部屋でマリアベルは、全て承知の上で人間サソリをけしかけたのだ。
マリアベルの狙い通り、テオボルトの体についた死の匂いはアンチラストを凶暴化させた。
ある意味知的な会話をしてみせたアムリーテ以外の者からは、ただの凶暴な化物にしか見えないだろう。
そして、マリアベルが人間サソリを殺させたのには他にも理由があった。
「いざ、ナムサン!!」
アンチラストが持っていた棒は、いつのまにか金色の剣になっていた。
まるで地面ごと打つかのようにアンチラストはテオボルトに剣を振り下ろしたが、しかしテオボルトに当たることは無いだろう。
ここにきてテオボルトの視界は鮮明となり、思考も理路整然としてくる。
テオボルトの足元を人間サソリが足早に横切っていくのが見えるだろう。
このサソリ達はなぜキノコの胞子に毒されないのか?
それは彼女達の体に抗体となるエキスが含まれているからである。
それが今になって効果を発揮してきたのだ。
71 : アムリーテ[sage] : 2013/05/07(火) 10:33:33.47 0
オークに抱き抱えられたリリイ。
このオークの正体は野良犬ならぬ野良オーク。
つまりアムリーテが聞いた先生の声はすべてキノコによる幻聴。
そんな野良オークにフリードが問いかける。
が、リリイの体を安否するフリードの必死さに
愚かな野良オークは釣られて興奮。
リリイを抱いた腕に自然と力がこもる。
すると完全に気絶して意識を失ったリリイの体からアムリーテが剥離。
その後、怒るフリードの様相に臆したオークは
空になったリリイの体をフリードにおもいっきり投げつける。
しかし、その太い腕は最大の力を発揮することはない。
なぜならアムリーテのゴーストが再びオークにトリツキその動きを遅くしたからだった。
これならフリードもリリイを優しく受け止めることができるはず。

「生きていてよかったです。フリードリッヒ。リリイをお願いします」
そういうオークの体は本の少し小さくなっているようだった。
アムリーテは覚悟していた。もう誰にも許されることはないと。
自分はエンカを消して、課題を邪魔するただの生徒たちの敵と認識されていることだろう。

「パピちゃん。私を消してください。
私は兵器でもない人でもない、ただの狂った存在でした。
私が消えてしまえばあの体も二度と稼働することはないでしょう。
みなさん。すいませんでした。さよならです」

野良オークのアムリーテは、目を閉じて最期の時を待った。
先生に会えなかったことは名残惜しかったが
アムリーテのこれ以上の行動は子供たちを危険にさらしてしまうし
ただ混乱を与えてしまうだけと直感したのだ。
せめて最期に結果はどうあれ、先生の言い付けだけは守って
消えたい。それがゴーレムの最期の願いだった。
72 : ジェイムズ ◇nIuIv3TzeE[sage 代理投稿] : 2013/05/08(水) 17:39:17.96 0
なんの気無しに食べ物を求めたジェイムズだったが。


>「あ、あぁ!それはもう、お口に合うかどうかわかりませんけど。
こっちの壺は普通のホットドッグ、骨付き肉、これはワイン。あとこっちからは精力増強用のヤモリの黒焼き………(以下略)」


「此れはまた………凄いな。取り敢えずは此れと此れを貰おうか。」


と言って、骨付き肉とホットドッグ、赤まむしドリンクを取ってパピスヘテプの近くに腰を下ろす。
パピスヘテプは自分がどうやって物を食べるのかに興味しんしんだったようだが、ジェイムズはそれに気づかずに、ホットドッグを持ったーーーー


すると。なんと、兜を外さずにそのままホットドッグを兜の下のほうに持って行ったではないか!
唖然としているパピスヘテプを他所に、どうやって食べているのかわからないが、兜越しにホットドッグを食べるジェイムズ。
ホットドッグを食べ終わってから、やっとパピスヘテプの唖然とした表情に気づいたようで、


「嗚呼、我が如何やって物を食べて居るのか知りたいのか?」


フフフ、と兜の下で笑い、


「『転移の粉』の技術を使えば造作も無い事よ。」


「転移の粉」とは、テレポートなどに使用する消耗品であるが、どうやらそれを応用して食べ物を口の中に直接運んでいるらしい。手間のかかる事をする物だ。


「ハッハッハッ、何。兜を外したら真面(まとも)に人と口が聞けなく成るのでな。喋れないよりはずっと良い。」


>「興味本位の質問で失礼かもしれないですけど、ジェイムズ先輩って何歳なんですか?(以下略)」
「……40歳とは心外だな。我は未だ17歳だぞ。」


その後も、かなりの量の質問が続く。
鎧はどういう経緯で手に入れたのか?
「……話せば長くなる。此れはかつての親友が身に付けていた物だ。今はもう、死んでしまった……いや、殺された。我の目の前でな。」
73 : ジェイムズ ◇nIuIv3TzeE[sage 代理投稿] : 2013/05/08(水) 17:40:01.73 0
鎧は重くないのか?
「確かに重いが、我は此れを付けてもう何年にも成るのでな。大分慣れた。」


テレパシーを遮断するのであれば気配は感じられるのか?
「物質的な気配なら感じられるが、魔力的な気配は遮断してしまうから無理だ。」


視覚情報に大半を頼るのであれば視界を確保できるのか?
「視覚は確かに普通よりは狭いが、今はもう慣れてしまった。寧ろ此れがデフォルトと化して仕舞って居る。外すと広くなって逆に面食らう。」


槍はどんなギミックがあるのか?
「槍自体に特殊な仕掛けは特に無いが、槍に魔法を掛ければその魔法が付与される、と言う技を前試した事が有る。」


それ以外の武器はあるのか?
「一応剣も使えるが、我は剣は其処迄得意では無い。」


と、それぞれの質問に次々と答えていくジェイムズ。
冷静沈着だが、無口と言う訳では無いようだ。
さて、そうこうして昼食も終わり、パピスヘテプに説明を聞く。
「今日は何かとワープゲートの使用が多い気が為るが……気の所為か?」
「……まあ良い、頼むぞ、パピスヘテプ!」
そう言って、ワープゲートを潜りパピスヘテプについて行ったのだった。
74 : リリィ ◆jntvk4zYjI [sage] : 2013/05/08(水) 17:46:12.58 0
>66 >>68-73
>グレンは落ち着き払って正気化の呪文を唱える
>「大丈夫です僕は正気に戻った」
『ええっ!!何それ解毒魔法?グレンかっこいい!』
ちなみに、グレンの親は猫神殿(※リリィ視点)の神官である。

>「そうですよねこんな所にあいつがいるわけが無いですよね
> ここにいる奴もモウソウダケの幻にすぎません」
『・・・・・・そ、それって正気に戻っても、幻覚見ててるって事に変わりは無いんじゃあ・・・・・・。
 ね、ねえ、毒消しの薬飲まない?私の鞄に、まだ残ってると思うんだけど・・・・・・』
だがフリードは紳士である。
リリィが許可しても、女性の鞄を開けるのには抵抗があるかもしれない。

>「アンチラストか……? こんなキノコだらけのところで、よくそんな姿でいられるな。
> ……ああ、くそっ、めまいがする。喉も渇いた! さっさとミス・クラスタを回収したいんだが、何処だ?」
『あ、テオ君の声だよ!』
>「きゃああああああああああ!!アンチラスト、あなたは私をだましたですか?
>そうです。あなたはマリアベルに命令して子供たちを襲いました。こ、これも…罠だったのですね!?」
『ちょ、私の悲鳴が聞こえてきた!!なんかピンチかも?急いで急いで!』

程なく、リリィ達はテオボルトに合流を果たした。
>「 ……ああ、くそっ、めまいがする。喉も渇いた! さっさとミス・クラスタを回収したいんだが、何処だ?」
『私の体なら目と鼻の先にいるよ!オークに捕まって窒息寸前だよ!も、もしかして見えてないの?!』
テオボルトは非常に具合が悪そうだ。
『フリード君、私の鞄下ろしてくれる?テオ君、私の鞄の中に、解毒剤が入ってるよ!』
もっとも、聖水やオレンジ水など、余計なものがいろいろ入っているのだが。
>「クラスタってダレー!?知らなーイ!」
『えっ?あの子、何でこんなところに?』
外見は普通の小さな女の子にしか見えない。

>「あれがアンチラスト・・・・・なんというか保険医のエサみたいな感じですね」
『』
あんまりなつぶやきに、リリィも言葉が出ない。と同時に、保険医に愛されているフリードの苦労が偲ばれ涙が出そうになった。
>「・・・・うん?まさか保険医の技術ってこれの・・・・いやまさかあんなギャグ属性の人が」
>ロゼッタを幼女に変化させたりした保険医の謎技術のルーツがまさかこれじゃないかと嫌な予感でいっぱいになるフリードリッヒ
>『人格度外視で能力で人を選んだ弊害だね』(猫語)
『そうだった。そう言えば前に先生、切断した腕も即再生出来るって言ってたよね。・・・・・・副作用で皮膚が緑色になるらしいけど』
>「あー、またヒトが増えてるー!ウワー!」
アンチラストらしき幼女は棒切れを振り振り、屈託の無い様子で、とててと近寄ってきた。
75 : リリィ ◆jntvk4zYjI [sage] : 2013/05/08(水) 17:47:10.77 0
>「ところでさっきからあの小さい子を見つめている人(?)は何でしょうか?
> 保険医と同じロリコンさんでしょうか?」
『あっ!オークだ!やだ何で私の体、オークに捕まってるの?!』
>『あのバッチはフィジルの教員バッチ!?ロリコンとかおかまとか畜生この学園の教師は変態しかいないのか』(猫語)
『いやピザ好きのイケメン先生や、ロマンスグレーの熱血先生だっているじゃない!
 それにあれ、単に、その辺に落ちてたぼろ布が引っかかってるって感じじゃない?
 っていうか、ちょ、私の体、肉に埋もれて息出来てないっぽいんだけど!』

>「どこの誰かは知りませんが今すぐその方を離してください!そうじゃなければリリィさんの体が死んでしまいます!!」
『お願いだから早く助けてよ、オークのお嫁さんなんか死んでもごめんだよ!!』
わたわた、とフリードの肩であわてるリリィ。

周りの状況に臆したのか、それともフリードの方がおいしそうに見えたのか。
オークは大きく振りかぶると、リリィをフリードに投げつけてきた。
だが、その動作が途中から、何かに妨害されたように緩慢になるのを、人形のリリィは見逃さなかった。
思い切り叩きつけられるはずだったリリィの体は、受け止められる程度のゆるさで放り投げられた。

>「生きていてよかったです。フリードリッヒ。リリイをお願いします」
『オークがしゃべった?!っていうか、もしかしてアムリーテなの?!』

リリィは藁の両手を振り回している。人間なら、頭から湯気が出ていそうな勢いだ。
『いいわ、その場を絶対動かないでねアムリーテ!
 フリード君、アムリーテごとオーク倒しちゃって。
 どうせ憑依してるだけなんだから、フリード君の攻撃方法じゃダメージ受けようがないでしょ。平気よ』
藁人形のリリィは容赦ない。
戦闘力が無いかわりに、いつに無くきつい言葉を浴びせかけていた。

『あなたにはいいたいことが山ほどあるわ!よくも私の体を奪ってくれたわね?
 貴方の体に入っていた悪霊のせいで、エンカもフリード君もひどい目にあったのよ!
 子供好きが聞いて呆れるわ!
 本当はあなた、人間の体を手に入れたくて、センセイを探してるなんて嘘ついて接近してきたんじゃないの?!』
オークが傷ついた顔をするなんてありえない。
第一、表情などわかるわけが無い。
錯覚だ。
『私の体を手に入れたとたん・・・・・一人でさっさと逃げたくせに。・・・・・逃げた、くせに・・・・・』
それでも、リリィの言葉は次第に尻すぼみになった。

>「パピちゃん。私を消してください。
>私は兵器でもない人でもない、ただの狂った存在でした。
>私が消えてしまえばあの体も二度と稼働することはないでしょう。
>みなさん。すいませんでした。さよならです」

『・・・・・・パピちゃん。
 私が自分の体に戻ったら、魂の無い空っぽの藁人形ゴーレムが1体出来る計算になるよね?』
リリィは、あえて何がしたいのかを明言しなかった。
 
『大丈夫よ。本体は電池まで抜いてる。その上ここは地下だもの。
 再起動なんて、出来ないに決まってる。
 除霊って魔力消費半端ないんでしょ?せっかく回復したのに、こんな所で無駄遣いすることは無いわよ』


>テオボルトの側にいたアンチラストが急に体からバリバリと、
>粘着物が引き剥がされるような音を発し始めた。
『こ、今度は何?!』
アンチラストの背丈が、生えてきた昆虫のように黒い殻に覆われた手足によって、人間の大人よりもずっと高くなった。
>「ノドが渇いたのなら、オマエの血をマツゴの水にしてやろウ!!」
『大変!テオ君が!!体に戻らなきゃ・・・・・って!戻ったら戻ったで、私、幻覚見て変な行動取っちゃうかも!!』
どうしようどうしよう、と言いながら、リリィは自分の体の前で右往左往した。
76 : パピスヘテプ ◆/TZT/04/K6 [sage] : 2013/05/08(水) 23:39:41.59 0
腹が減っては戦ができぬ。
危険な館の中とはいえ、これから更に危険なところに飛び込もうというのだ。
体力回復は欠かせぬ儀式ともいえるべき行為……。
と大げさな言い方とは裏腹に、ジェイムズとのランチタイムをパピスヘテプは楽しんでいた。

兜を取らずにそのまま転移させて食するジェイムズ。
確かにそれも驚くべき事だったが、その理由がさらに驚愕させることだったのは秘密だ。
騎士然として華やかな舞踏会にでもいられそうな勝手なイメージを持っていただけに尚更に。

その後も矢継ぎ早に繰り出される質問に対してジェイムズは面倒くさからずに丁寧に答えていった。
鎧の本来の持ち主、亡くなった友人に冥福の祈りを捧げながら感謝する。
それぞれの理由に大きく頷き、得心できたものの、だからこそ疑問にも思うのだった。
兜を取るとまともに話せなくなるという事が。


昼食も終わり体力が回復した二人が転移した先は、仲間たちの通った場所である。
影に仕込んだ藁人形とリリィの入っている藁人形を通じてあらかたの様子は把握していたが、それでも実際に見てみると驚きは隠せない。
異様な風景とも感じてしまうほどの回廊。
巨大なモウソウダケ。
「これほどとは……ちょっとごめんなさい。私の防護では心もとないから術をかけていきます」
ケロべロスの毛皮のフードを被り、襟の部分も顔に巻きつけて防護していたが、そこに群生するモウソウダケはパピスヘテプの想定を超えていた。
これではタオルで口を覆った程度の先に行った面々はモウソウダケの胞子に犯されているかもしれない。
そんな事を考えながら藁人形を影から取り出した。
余裕をもって持ってきた藁人形もこれで最後である。

藁人形を打つことによって対象者に影響を与える呪いがあるように、その逆の術もある。
呪文を唱え自分へのモウソウダケの影響を藁人形に移す術をかけると歩き出した。

>「……まあ良い、頼むぞ、パピスヘテプ!」
「はいはい。リリィの身体とリリィの位置は把握できているし、通った道もトレースできるから安心してくださいな」
ジェイムズに応えると直立不動のまま滑るように進んでいった。
足元に広がる影を移動させることで重心移動を必要としない高速移動を可能としているのだ。

進むにつれて壁に見られる文字の数々。
リリィの身体を取り戻し、次にエンカの捜索といきたいところだが、そうは事は運ばない。
そんな予感をひしひしと感じさせる文字群だった。

「あ、いまリリィ(肉体)とリリィ(藁人形)が接触したわね。中継します。」
リリィとアムリーテの接触を感知するパピスヘテプ。
音声だけだが、リリィが聞いた、そして話した言葉はジェイムズの肩の藁人形を介して聞こえるだろう。

>「パピちゃん。私を消してください。
>私は兵器でもない人でもない、ただの狂った存在でした。
>私が消えてしまえばあの体も二度と稼働することはないでしょう。
>みなさん。すいませんでした。さよならです」
>『・・・・・・パピちゃん。
> 私が自分の体に戻ったら、魂の無い空っぽの藁人形ゴーレムが1体出来る計算になるよね?』

『リリィ、そちらの大凡の状況は把握してる』
リリィの言葉に短く、だが明確な返答はせずに応えた。

進みながらパピスヘテプは考える。
話し合い、解決点を探り、残念を解消することで昇天させる。
それがパピスヘテプの基本スタンスだ。
だがそれはあくまで理想であり、現実は話が通じる事の方が少ない。
そんな中、どこまで話し合いを続けるのか、どこで決断するのか。
いつも悩ませ、どういった決着であっても自己嫌悪に落ち込む種でもある。

そしていま、アムリーテとの話はもう終わっているのだ。
先ほどアムリーテシリーズを昇天させると結論を出した時に。
77 : パピスヘテプ ◆/TZT/04/K6 [sage] : 2013/05/08(水) 23:42:20.38 0
『リリィ。除霊は確かに消耗が大きいけど、死して迷っている魂を昇天させるのは私の第一義よ。
だからこそ、冥炎のカンテラは私の元にあり、死霊術、影術の全ての起点になっているの。
使命でも義務感でもない。
あなたが怪我人を助けることを第一義としているのと同じようにね』
リリィの及び腰な説得を一蹴するが、それでも結論は出さない。

これは生者を助けるリリィと死者を昇天させるパピスヘテプの立場の違いでもあるのだろう。
リリィはあくまで助けたい。
それは生かす事であり、どのような形でも、再出発させようとさせる。
対してパピスヘテプは死者の願いを尊重し、安らかな死を受け入れさせることが救済であるとしている。

すなわち、消してくださいと願われたのであれば、そのまま昇天させる。
それがパピスヘテプ取る選択肢なのだ。
どちらが正しい、どちらがより良いという問題ではない。

にも拘らず迷っているのは、身体を乗っ取られた張本人であるリリィが助けたいと願っている事。
何より、アムリーテシリーズを強引に昇天させてしまった自己嫌悪を少しでも軽くしたい。
道理ではなく、パピスヘテプ自身の利己的な考えなのだ。
それがわかっているからこそ、リリィの言葉の意図を汲んでいても明確な回答ができぬ理由であった。

だが何事も十分な思考時間は与えられず、決断はいつだって準備不足で迫られる。
>「ノドが渇いたのなら、オマエの血をマツゴの水にしてやろウ!!」
>『大変!テオ君が!!体に戻らなきゃ・・・・・って!戻ったら戻ったで、私、幻覚見て変な行動取っちゃうかも!!』
ジェイムズの肩の藁人形から流れ響くバリバリと粘着物が引きはがされるような音。
続いてアンチラストの怒声とリリィの悲鳴。

尋常でない様子はジェイムズも察しているだろう。
「ジェイムズ先輩、そこの十字路を右に曲がれば合流です!」
急ぎジェイムズに行き先を告げる。
合流さえすれば咄嗟であっても状況判断してジェイムズは何とかするだろう。
そんな確信を持っての声だった。

それと同じくしてテレパシーを飛ばす。
『もうすぐそばまで来てるから。すぐに魂を映すから自分の身体を確保しておいて。
肉体はモウソウダケに犯されているでしょうけど、空になった藁人形に状態異常を移す術を打つから安心して。
でもその場合、もう私にも藁人形のストックはないわ』
卑怯で残酷だと思いながらも自分では下せぬ決断を突き付けた。

危険な状況で幻覚に犯されている場合ではない。
見も知らぬ身体を乗っ取った危険なゴーレムの為に一つしか残っていない藁人形を使える状況ではない。
ましてやアムリーテが消えることを望んでいるのだ。

どういった結論を出すかは火を見るよりも明らかである。
が、それでもパピスヘテプはリリィの決断に従おうと決めていた。

迷える時間は僅か。
ジェイムズに少し遅れ、パピスヘテプも合流を果たすのだ。
78 : テオボルト ◆e2mxb8LNqk [sage] : 2013/05/09(木) 00:20:32.85 0
>69-77
>「クラスタは知らないけれどアムリーテ姉ちゃんならいるよ!」
「ほう? ……ああ、あれか? あの豚男の……いや、豚男なんてこんなところに……幻覚か……?」
虚ろな目をしたテオボルトが視線を向けると、オークに抱えられたアムリーテinリリィがいた。
しかし、鈍化した思考がこれも幻覚かと考え始める。
何時の間にやらフリード達もいるが、右から左へと声は通り抜ける。
認識能力がかなり怪しい。

ぼんやりし続けていると、急にテオボルトの頬に痛みが走った。
思わず尻餅を付き、揺れる瞳でその原因を視認する。
昆虫のような甲殻を纏った長い手足。それはアンチラストの体から伸びていた。
どうやらその長い腕の先の手で、平手打ちをされたらしい。
>「ノドが渇いたのなら、オマエの血をマツゴの水にしてやろウ!!」
「ぐ……」
僅かに呻き、よろよろと立ちあがるテオボルト。視界の不明瞭さで、動きが鈍い。
>「いざ、ナムサン!!」
>アンチラストが持っていた棒は、いつのまにか金色の剣になっていた。
振りかぶられた剣を見て、なんとか回避しなければと思いテオボルトが身構える。
そして振り下ろされると同時に、後ろに飛び退いた。いつものような動きで。

「……ん!? 思考がクリアだと?」
何時の間にか、テオボルトの視界も思考も明瞭、調子は十分であった。
この場面で人間サソリの抗体エキスが効いてきたのだが、流石に彼に知る由もない。
突然の変化に首を傾げながらも、改めてアンチラストと相対するテオボルト。

「ふむ、昆虫人間か。それだけなら……魔法使いの敵じゃあないな。だろう?」
さて、テオボルトは素早く状況を再確認。
といっても、幻覚の脅威が取り除かれた今、注意すべきことは周りにフリード達がいる事ぐらいだ。
指を弾き、溜められた雷の魔力が火花を散らす。
「それじゃあ一つ! ご覧あれ、『サンダー・スパイク!』」
今度はテオボルトが片手を振りかぶり、雷をアンチラストの足元に叩き付ける!

パァン!!と大きな破裂音と、一瞬の閃光が走る。
直接的な攻撃力はないが、目くらましと怯ませるには十分だろう。
「そら、大人しくするんだな、っとぉ!」
怯んだだろうその瞬間に、テオボルトはアンチラストに飛びかかり、地面に引き倒して手足を押さえつけた。
構図的に危険であるかもしれないが、一応無力化をしたことだろう。

「よし、よし。無理に傷つける必要もないしな。……そろそろ事も片付きそうだ」
アンチラストを組み伏せたまま、視線を近づいてくる足音へと向けた。
遅れてきたジェイムズとパピスヘテプがやってきている。
79 : フリードリッヒ ◇cOOmSNbyw6[sage] : 2013/05/09(木) 20:06:32.30 0
アンチラストは昆虫のような光沢をもつ手足をはやした姿に変身した
『変身するとはまさかラスボス!?』(グレン)
「あっちが変身ならこっちは合体です!行きますよグレン、ソウルユニオンです!!」
『マジで久々だよね・・・・・行くよソウルユニオン!!』(猫語)

ソウル・ユニオン……それは使い魔と合体してパワーアップするという
とてもわかりやすい能力である
ただし欠点として
①合体後の姿が必ずしも格好良いものではない
②長時間やるとお腹が空く
③合体する相手と自分の性別が違えば男でも女でも無いおか以下略になる
④合体相手によって人間の言葉が喋れなくなる
⑤格好良くなれても聖●士みたいで著作権が心配等があり
決してノーリスクではない、またこの解説は過去の使い回しである

「これが絆の力だ! ソウル・ユニオン!フリード・SU・グレン!!」
グレンと合体し猫耳が生えて手が猫手になり猫尻尾が生えたフリード
ケモノの力を加えることにより大幅にパワーアップすることが出来るのだ
そして以前と違ってちゃんと人間の言葉がしゃべれさらにフリージングサーベルまで使える
今までの経験知によるレベルアップは無駄では無かったようだ
「最初に言っておきます!僕は微妙に弱い!!」
いいえ周りがおかしいだけです
『さらに覚醒して倍率ドーンだ』(猫語)
「いえそれをするにはまだ経験値が足りませんので」
どうやら併用はまだ難しいようである

>「生きていてよかったです。フリードリッヒ。リリイをお願いします」
>『オークがしゃべった?!っていうか、もしかしてアムリーテなの?!』
放り投げられたリリィの体を柔らか肉球ハンドで受け止めるフリード・SU・グレン
>『大変!テオ君が!!体に戻らなきゃ・・・・・って!戻ったら戻ったで、私、幻覚見て変な行動取っちゃうかも!!』
『大丈夫僕が正気に戻すよ』(猫語)
猫語が分かるならいいがわからない人からは猫のコスプレしたフリードがニャアニャア言っているようにしか見えないだろう


>「いざ、ナムサン!!」
「テオボルトさん!?」
『無茶しやがって』(猫語)
変なフラグ建てるなグレン

>「よし、よし。無理に傷つける必要もないしな。……そろそろ事も片付きそうだ」
だがあっという間に組み伏せるテオボルト
「やったか?」
大体こういう場合はやってないに決まっているのだが・・・・・
『油断大敵火がボウボウだよ』(猫語)
そうあまりにもあっさり過ぎる何かあるに違いない
80 : 名無しになりきれ[sage] : 2013/05/10(金) 21:24:42.14 0
日常の隣に身を潜める非日常、その只中にあって
概念的な存在である『正気』を保っている者は一人もいなかった。

冷静である事と正気である事は違う、されど気づく者もいるだろう。
細く、しかし途切れないタバコの煙が漂っている事。
その煙が先程アムリーテが消したのと同一である事。
煙を発するタバコの持ち主が、10歳前後の少女である事が……
81 : ◆jWBUJ7IJ6Y [sage] : 2013/05/11(土) 19:59:36.35 0
>78
> 「そら、大人しくするんだな、っとぉ!」
テオボルトは雷の魔法でアンチラストを牽制し、ひるんだ彼女を組み伏せた。
> 「よし、よし。無理に傷つける必要もないしな。……そろそろ事も片付きそうだ」
テオボルトが遅れて来たジェイムズ達を確認し、視線を元に戻したならギョッとするモノを目にするだろう。
至近距離で組み伏せるテオボルトからは、フードに隠れたアンチラストの顔を見ることができるからだ。
しかし、それは厳密にはアンチラストの素顔ではなかった。
人間の、女性の顔が、鋭利な刃物で削ぎ落とされたようなそれが、
アンチラストの顔にお面のように張り付いていたのだ。
テオボルトはその顔に見覚えがあるはずである。
それは物置で見つけた幻影機に登場した若い女性研究者、
娘を蘇らせるために狂気の研究を続けた母、
マリアベル・ホワイトその人の顔であった。

アンチラストの体が、それを抑えつけるテオボルトの体ごとググッと上に押し上げられた。
再びバリバリと粘着物を引き剥がすような音がして、アンチラストの背中から4本の腕が生えたのだ。
背中から現れた4本の腕は、ひょろりと長いのは同じだが、
黒い攻殻には覆われておらず、より人間のそれに酷似していた。
背中の腕が二人の体を持ち上げ、ひっくり返した。
今度はテオボルトが下になり、アンチラストが上になる格好である。
「オマエの名前を言え!!」
アンチラストは黄金の剣を逆手に握り、テオボルトに突き下ろす構えをとった。
「我が名はアンチラスト!このイカリ、収まるところをシらずとも、必ずやオマエをクヨウせん(供養をする)!!」
テオボルトが何かを仕掛ければ背中の腕で妨害するだろう。
このまま近接戦闘を続けるのは危険である。
82 : リリィ ◆jntvk4zYjI [sage] : 2013/05/16(木) 01:00:58.43 0
>76-81
「・・・・・・・・パピちゃんは、自分に負い目がある時でも、相手に本当の気持ちやわがままを言える?」
リリィは躊躇いがちに、そんな言葉をテレパシーで送った。

「初対面のとき、アムリーテは言ってたの。
 センセイにもう一度お会いするまで破壊されるわけにはいかないって。
 それが本当かどうか私にはわからないけれど、・・・・・その言葉だけは多分、嘘じゃないと思う」

>『もうすぐそばまで来てるから。すぐに魂を映すから自分の身体を確保しておいて。
>肉体はモウソウダケに犯されているでしょうけど、空になった藁人形に状態異常を移す術を打つから安心して。
>でもその場合、もう私にも藁人形のストックはないわ』
パピスヘテプの言葉にうんうんと頷いていたわら人形の頭が、ぴたりと止まった。
それはつまり、「リリィは、自分の体を奪ったアムリーテのために、どこまで周りを危険にさらせるか?」という問いかけでもあった。

目の前には戦っているアンチラストとテオボルト。
フリード&グレンと、後から合流するであろうジェイムズと頼もしい仲間はいるが、不測の事態がおきないとも限らない。
アムリーテがこの後どう行動するかも読めない。
自分は戦力としては数に入らないが、幻覚を見て暴れて、皆の足を引っ張る可能性は非常に高かった。

 『大丈夫僕が正気に戻すよ』(猫語)
リリィの迷いを吹き消すように、フリード・SU・グレンは、そう請け負った。
『そうか・・・・・うん!その手があった!』
わら人形がパアァっと元気になった。
フリードはまったく気負うことも無く、リリィの我侭を受け入れ、事後のフォローを申し出てくれたのだ。
そんな男前なフリードの姿は、猫耳猫尻尾で、両手には肉球という、夢のような獣系美少女・・・
否、美少年である。
女のリリィから見ても惚れ惚れしそうな可愛さだ。
その戦闘力を知っている者としては頼もしいことこの上ないが、あまりにも可憐である。
ジェイムズ先輩の誤解が、更に深まらなければいいのだが。

(はっ!そんなこと考えてる場合じゃない!)
見とれていたことに気づいたリリィは、我に返るなり、わらの頭をぽかぽか叩いた。
『ありがとう、グレンにフリード君。うん、二人のこと、信じてる。
 ・・・・・・・はっ!で、でも、正気に戻すときは、普通の女の子が死なないやり方でお願い』

リリィが発した懇願は、冗談のようだが本気である。
なぜなら、フリードの大丈夫レベルとリリィのそれとは、雲泥の差があるからだ。
その証拠に、ソウル・ユニオンした直後、フリード達はこう叫んでいたではないか。
「最初に言っておきます!僕は微妙に弱い!!」 ・・・・・・・と。

>「よし、よし。無理に傷つける必要もないしな。……そろそろ事も片付きそうだ」
アンチラストは意外にも弱く、あっという間にテオボルトが組み伏せてしまった。
>「やったか?」
『フリード君もグレンも、せっかくソウルユニオンしたのに出番なしだったね』
>『油断大敵火がボウボウだよ』(猫語)
『さすがに無いでしょ?』

すっかり安心したリリィは、余裕を持ってパピスヘテプにテレパシーを送る。
今のリリィは自分達のことで頭がいっぱいで、微かな匂いにまではとても気づけなかった。
『パピちゃん、最後のわら人形を使い切っても大丈夫だよ。
 私は今、本体と一緒にいます。
 回復したばかりなのに悪いけれど、到着次第、私が元の体に元に戻るための魔法をかけてください。
 我侭言ってごめんね。でも私は、一人じゃないから。だから、大丈夫。
 どうかよろしくお願いし・・・・・・きゃああ!大変!アンチラストの腕が増えたぁあ!!
 やだ、テオ君が!フリード君早く助太刀してあげて!』
83 : リリィ ◆jntvk4zYjI [sage 遅れてごめんなさい] : 2013/05/16(木) 01:02:28.40 0
>「オマエの名前を言え!!」
リリィの目と鼻の先で、アンチラストは黄金の剣を逆手に握り、テオボルトに突き下ろす構えをとった。
リリィが叫ぶようなテレパシーを送り終えたと同時に、遅れてきたパピスヘテプとジェイムズがこの場に現れた。

>「我が名はアンチラスト!このイカリ、収まるところをシらずとも、必ずやオマエをクヨウせん(供養をする)!!」
『わー!待って待って!名前言うよ!言うから!私の名前はリリィです!』
わら人形はぴこぴこ両手を振って飛び跳ねているが、今は戦闘中である。テレパシーが届いているかは疑問だ。

リリィが叫ぶようなテレパシーを送り終えたと同時に、遅れてきたパピスヘテプとジェイムズが現れた。
『パピちゃん早く!ジェイムズ先輩、お願い、テオ君を助けて!』
84 : フリードリッヒ ◇cOOmSNbyw6[sage 代理投稿] : 2013/05/18(土) 09:20:45.05 0
>81-83
バリバリという音を立て4本の腕を増やすアンチラスト
「腕が6本!?ずるいですよ!僕の友達には腕が一本しかない子がいるっていうのに!!」
『あの子はその代り翼が生えてるからいいじゃない』(猫語)

>『きゃああ!大変!アンチラストの腕が増えたぁあ!!
 やだ、テオ君が!フリード君早く助太刀してあげて!』
「わかりました腕が6本なら3人いるも同然ならばこちらも3人がかりまでなら卑怯じゃないはずです」
『友達の命がかかってるのに卑怯もラッキョウもないと思うよ』(猫語)
訳の分からない理屈で助太刀を容認するフリード

「あなたが明らかに人間じゃないとか腕が6本あるとか
 そんなことはどうでもいいですが僕の友達をやらせはしません!」
『明らかに人間じゃない種族の友達も多いもんね』(猫語)
「飛ばせ氷拳!フリージングナックル!!」
フリードは目の前に氷の拳を生み出しそのまま発射する
これって合体した意味とかあるのだろうかと激しく疑問に思う攻撃だが
こまけえ事はいいんだよの精神で乗り越えるべきだろう

「連射!連射!連射!連射!!」
フリージングナックルを連射するフリードリッヒ
『尖った氷柱とかのほうが良くない?』(猫語)
「そんなことしたら返り血で服が汚れるじゃないですか!
 それに相手を殺してしまうかもしれませんし」
『でも殺そうとすれば殺せないってあれには書いてあったよ?
 殺さないつもりで攻撃したら殺しちゃうんじゃない?』(猫語)
「じゃあこれじゃ逆に殺してしまうかもしれないんですね
 僕は殺す覚悟という言葉が人殺しの言訳みたいで嫌いなんですが
 殺す覚悟を持った攻撃をしないと相手が死んでしまうかもしれないとは・・・・厄介極まりないです」
『逆に言えばどんだけ全力で攻撃しても相手は死なないからやりたい放題出来るってことじゃね?』(猫語)
勝手な解釈で物事を進めようとする一人と一匹

「なら!フリージングサーベルいちご味!!」
腰の刃のない剣を抜きピンク色の氷の刃を生み出すフリードリッヒ
「発射!!」
そのままアンチラストを狙い氷の刃を発射する
『いや斬れよ魔法剣士』(猫語)
「だって腕6本ですよ!明らかに接近戦得意ですよ!捕まってなんとかバスターとかされたら大変じゃないですか!!』
別名恥ずかし固めである
「何とか距離を取って猫の俊敏さで攻撃を避けつつ射撃戦です!・・・・・これ本来接近戦のほうが向いた合体なんですけどねえ」
85 : ジェイムズ ◇nIuIv3TzeE[sage] : 2013/05/18(土) 23:27:03.93 0
「………此れは何とも……」




ジェイムズとパピスヘテプが進んだ先には、溢れんばかりの茸、茸、茸………

どうやらこれらがモウソウダケのようだ。

「……予想外の量だな。まさか此処までとは……」


と、直立不動のまま動いているパピスヘテプに着いて行きつつ呟いたのだった。

ガシャンガシャンと音を立てながら進んでいると、ふと壁の文字群に気が付く。


「む……何だこの文字群は……『オカアサンダイスキ』………か……」


その文字を見て、ジェイムズはかつて失った家族の事を思い出し、何とも言えない気分になった。

だが、今はそんな事を考えている暇は無い。

そうこうしていると突如、アンチラストの怒声とリリィの悲鳴が静かな地下通路に鳴り響いた。


「!今のは何処からだ?」

>「ジェイムズ先輩、そこの十字路を右に曲がれば合流です!」

「分かった、直ぐに向かう!」

ガシャガシャと音を立てて走っていき、十字路に到達。

「此処を右だな……」

>「それじゃあ一つ! ご覧あれ、『サンダー・スパイク!』」

「むッ!?」

パァン!という破裂音と閃光が炸裂し、ジェイムズは一瞬怯んでしまう。
86 : ジェイムズ ◇nIuIv3TzeE[sage] : 2013/05/18(土) 23:27:35.87 0
「くっ……無茶な事を……」

大勢を立て直して走り、開けた所に出る。

そこには、

>『kxüz-71küqæu/:)h(理解不能)』

「………何をしている……」

猫のコスプレをしたフリードがニャーニャー言っていた……

な、何を言ってるのか(ry

「(……まさかあの乙女、そう言う趣味なのか……?)」

ジェイムズはフリードに対して変な印象を受けてしまったようだ。

まだ女と勘違いしているのは別として。というか普通分からない。

そして、ふとテオボルトの方を見る。そこにはとんでもない光景があった。


>「オマエの名前を言え!!」

>「我が名はアンチラスト!このイカリ、収まるところをシらずとも、必ずやオマエをクヨウせん(供養をする)!!」

体から幾本かの腕が生えた子供が、テオボルトを押さえ付けて黄金の剣を突き落とそうとしているではないか!

「不味い!」

>『パピちゃん早く!ジェイムズ先輩、お願い、テオ君を助けて!』

「……言われずとも……」

咄嗟に槍を構え、精神を集中させる。

「(………間に合うかは分からんが……)」

精神を集中させ、力を溜める。狙いはアンチラストの持つ黄金の剣。


「………「ゼルベルク家直伝  閃矛槍葬」ーーーーーー『月光』」


ジェイムズの槍技が放たれた。槍先が光を放ち、唸りを上げて、吸い込まれるかの様にアンチラストが構えている黄金剣に向かって行く。

いくら腕が複数本あって力が強いとしても、これが当たれば黄金剣はアンチラストの手から弾かれるだろう。
87 : パピスヘテプ ◆/TZT/04/K6 [sage] : 2013/05/19(日) 00:07:45.68 0
自分の問いかけにリリィが答えるまでの間、パピスヘテプは考えていた。
なぜ兵器たるアムリーテに魂や人格が必要だったのか?と。

兵器に人格があるメリットが見当たらないのだ。
人格により生まれる個の判断は指揮系統を外れた個人的な交渉の余地を生んでしまう。
また感情はアムリーテシリーズの怨霊のような暴走を招きかねない。
このようなデメリットがあるのも関わらず、わざわざ技術的にも難しい人造霊魂や疑似人格を仕込んだのはなぜか?
考えの先に一つの仮定が生まれる。
本来の兵器アムリーテには人格など必要もなく、ありもしなかった。
疑似人格はアムリーテを暴走、自滅させるために仕込まれたウィルスに値するものではないかと。

そうであれば、機体の性能に比べ余りにも稚拙で浅薄な疑似人格も合点がいく。
自身の肉体であるはずの機体の制御やエネルギー管理すらもできていないほどの。
また、リリィの肉体に憑りついた事も意味不明だが、どうやら今はオークに憑りついているようだ。
そこから憑りつく事への抵抗の低さ。
疑似人格の自己と他者の境界認識が極めて低いのか、兵器アムリーテへと憑りつく手法の名残なのか。
リリィはアムリーテの「先生にもう一度会うまでは」という言葉を信じているようだが、パピスヘテプにはそれすら何らかの意図された符牒にも思えてしまう。
そこまで言っておきながら突如として消してくださいと言い出す不安定さを露わにしているのだから。

全ては仮定の上の想像で成り立つものではあるが、あらゆる状況がアムリーテの危険性を現している。
それは判断を行う上では重要な基準となるはずだ。
答えは考えるまでもなく、一つでしかあり得ない。

影を滑らしながら移動するパピスヘテプの手にはいつの間にか二本の荒縄が握られていた。
>『パピちゃん、最後のわら人形を使い切っても大丈夫だよ。
『そう言うと思ってた』
クスリと笑いながら短く応える。

どれだけ危険性を客観的な証拠と共に並べようとも。
それをリリィ自身が身をもって味わっていようとも。
長い付き合いというわけではないが、リリィがどう応えるかなど、わかっていたのだ。
最後のキーはリリィの身の安全ではなく、周囲へ迷惑かけるかどうか、だけであるという事も。

ジェイムズに続きモウソウダケの胞子の霧から飛び出すと、そこに広がっていたのはカオスな光景であった。
テオボルトに襲い掛からんとする異形の化け物。
手に握られた黄金の剣を突き立てようとしている!
それを阻止せんと槍撃を放つジェイムズの黒い甲冑の肩越しに見えるのは……

フリード・SU・グレン!

美少女と言っても本人以外誰も文句を言わぬその姿!
猫耳猫手に猫のしっぽ。
そんな半人半猫の姿にパピスヘテプの目が釘付けになってしまうのだった。
88 : パピスヘテプ ◆/TZT/04/K6 [sage] : 2013/05/19(日) 00:08:30.75 0
「う、うぃえあ~!?バストテ女神!???」
意味不明な驚きの言葉のあとに出た名前、バステト女神とは!

パピスヘテプの出身地である南方域であがめられる猫の女神である。
本来人類抹殺の為に最高神が作り出した最強最凶の女神セクメトだったのだが、人類抹殺計画中止に伴い凶暴性を取り除いた結果、バストテ女神となったという。
明るく日の下で音楽と豊穣を司り、貧乳から豊乳まであらゆるバスト守護する。
冥府の管理者であり、お尻好きなオシリス神とは色んな意味で対照的な女神なのだ。

舞うようにピンク色の氷の刃を生み出し乱れ放つその姿に目を奪われていたが、
「……はっ!ちがう、あれはフリード君!でもそれはそれでまた美味……」
判っていても女神と見間違えたその姿だが、フリードである事を再確認し、パピスヘテプの鼻から地下噴出した。
猫や美少年に色々とコンプレクスもあるのだが、それとは別に鼻血が噴出する何かを思い浮かべてしまったようだ。

我に返ったパピスヘテプは割って入るには命がいくつあっても足りなさそうなそれから急いで離れ、本来の目的へと急ぐ。

金縛りにあって動けないオーク(inアムリーテ)とリリィの肉体、そして藁人形(inリリィ)に荒縄を投げつける。
一本はリリィの肉体と藁人形(inリリィ)を結び、もう一本はアムリーテにより金縛り状態のオーク(inアムリーテ)と藁人形(inリリィ)を結ぶ。
「これ以上面倒事が起きないうちにややこしい事解消よ!」
高らかに唱える呪文と共に、リリィとアムリーテの魂は強力な吸引力を感じるだろう。
リリィの魂は藁人形からリリィの肉体に。
アムリーテの魂はオークから藁人形に。
それぞれが移ると共に荒縄は解かれる。
更に続けて印を結ぶと、藁人形の胸を貫く五寸釘の頭の部分に呪いの文字が刻み込まれた。

「消してほしいというのはあなたの都合。消さないのはこちらの都合。
それだけの事よ。
あなたが何者で何が目的だったかは問う暇もないから聞かないけど、こちらからは教えておいてあげる。
肉体は魂の砦であると同時に枷でもあるのよ。
今のあなたの肉体はこの藁人形。
釘の部分に呪いをかけてあなたの魂を縫い付けたわ。
この藁人形が破損したり、無理やり抜けようとしたら魂が傷つき消滅するから気を付ける事ね。
センセイとやらを探しているのであれば急いで探しに行きなさい。機体と違いその藁人形は結構脆いのよ」

藁人形の使い方には霊体を閉じ込め、そのまま冥炎で焼いてしまうための檻としての役割も持つ。
故にこのように、魂を縫い付け無力な藁人形に閉じ込めることもできるのだ。

リリィはもはや気にもしていないだろうし、状況が許せば和解すら望むだろう。
その決定には従うが、危険なアムリーテを野放しにするほどパピスヘテプは寛容ではなかった。
無力な藁人形の身体では何もできないだろうし、消えたいのであれば自殺も容易だろう、という事も言には含まれている。

「さて、こっちはこれでいいけど、リリィ、自分の身体に戻った感想は……
その前に、モウソウダケの胞子の幻覚からどうやって回復するつもりなのかしら」
アムリーテは警告を済ました後、大きく息を吐き片膝をつくパピスヘテプ。
魂の二重移動の術の消耗は確かにあったが、それ以上に鼻から流れ出した血が馬鹿にならない体力を流出させていたのだ。

「あ~~、リリィを戻したらエンカ君を探しに行けると思ってたのに、どういう状況なのかしらね」
異形の化け物と化したアンチラストの戦いを見ながら影から特性の肉の塊を取り出すパピスヘテプ。
消耗した今、思考は、そして注意は回っていない。
憑依状態が解かれたオークが正気を取り戻しパピスヘテプに影を落としている事すら気づかぬほどに。
89 : ◆jWBUJ7IJ6Y [sage] : 2013/05/19(日) 19:25:57.14 0
>86>84
怒りに我を忘れているアンチラストは、自分の周りに、
自分を狙う者たちが集まってきたことに気づいていなかった。
それはアンチラストがテオボルトに剣を突き刺そうとした瞬間だった。
> 「………「ゼルベルク家直伝  閃矛槍葬」ーーーーーー『月光』」
「アー!?」
> ジェイムズの槍技が放たれた。槍先が光を放ち、唸りを上げて、吸い込まれるかの様にアンチラストが構えている黄金剣に向かって行く。
アンチラストの剣が彼女の手から弾かれて飛んでいった。
その時ようやく、アンチラストはジェイムズとリリィ達、そしてフリードの存在に気づく。
> 「飛ばせ氷拳!フリージングナックル!!」
> フリードは目の前に氷の拳を生み出しそのまま発射する
> 「連射!連射!連射!連射!!」
> フリージングナックルを連射するフリードリッヒ
アンチラストは何発かの氷の拳は叩き落としたが、
無数に飛んでくるそれらに対処しきれずテオボルトの体の上から降りた。
「ア、ウ、アー!?」
アンチラストは回避もまじえながら氷の拳に応戦したが、とうとう何発かの氷の拳がまとめてヒットし、
吹き飛んだアンチラストは地面から隆起していた水晶の壁に叩きつけられた。
とたんに地面に堆積していたモウソウダケの胞子がもうもうと宙に舞い上がり、アンチラストの姿が見えなくなる。
思わず「やったか!?」と言いたくなるような状況になった。

> 「なら!フリージングサーベルいちご味!!」
> 腰の刃のない剣を抜きピンク色の氷の刃を生み出すフリードリッヒ
> 「発射!!」
氷の刃はアンチラストがいるだろうモウソウダケの胞子の煙に吸い込まれて行った。
フリードの狙いは申し分無かった。しかし……
「ガッチャーミ!!」
煙の中から金属同士がぶつかったかのような甲高い音が響いた。

モウソウダケの胞子の煙が晴れると、全ての腕に金色の武器を持ったアンチラストがそこに立っていた。
彼女の足元には、叩き落とされたのであろうフリージングサーベルの刃が地面に突き刺さっている。
彼女の背中からはえる四本の腕のうち、右手側の二本の腕には金色の弓と矢が握られていた。
反対側にあたる左手側の二本の腕にはやはり金色の杖と剣が握られている。
そして両肩からはえた二本の腕に握られているのは、先端が十文字となっている長い槍だ。
さながら阿修羅のごときこのような姿を一度目にしたならば、フリードは自分の判断が正しかったと改めてうなずくことだろう。
「パンニャー!!」
もはや人の言葉さえ口にしなくなったアンチラストは、背中の腕に握る弓に三本まとめて弓をつがえ、放った。
最初は間違いなく三本しか放たれなかった矢ではあるが、宙を進むうちに分裂してその数を増やし、
最後には百八本もの弾幕となってその場にいるメンバー全員に襲いかかった。
90 : テオボルト ◇e2mxb8LNqk[sage 代理投稿] : 2013/05/21(火) 00:08:25.68 0
>81-89
事が順調に進みつつあることに安心して、視線を落とすテオボルト。
次に視線を戻した瞬間、驚きで目を剥いた。
>人間の、女性の顔が、鋭利な刃物で削ぎ落とされたようなそれが、
>アンチラストの顔にお面のように張り付いていたのだ。
その顔は、幻影機の映像で出てきた女性研究者の顔である。
そして、雷に打たれたようにある事実に気が付いた。
「そうか……! 口調が男だからと、見かけがエンカだからと、男だと思い込んでいたが……!!
 『母』とは、『オカアサン』とは、マリアベルのことだったのか……!?」

力が緩んでいたか、はたまたテオボルトの力を上回ったか。
>アンチラストの体が、それを抑えつけるテオボルトの体ごとググッと上に押し上げられた。
>再びバリバリと粘着物を引き剥がすような音がして、アンチラストの背中から4本の腕が生えたのだ。
「う、おおおおッ!? アンチラスト、お前は一体……!」
>今度はテオボルトが下になり、アンチラストが上になる格好である。
>「オマエの名前を言え!!」
>アンチラストは黄金の剣を逆手に握り、テオボルトに突き下ろす構えをとった。
>「我が名はアンチラスト!このイカリ、収まるところをシらずとも、必ずやオマエをクヨウせん(供養をする)!!」

万事休す、と思われたその瞬間。
> 「………「ゼルベルク家直伝  閃矛槍葬」ーーーーーー『月光』」
>「アー!?」
鎧の中からのくぐもった声と共に、アンチラストの頭上から金属音を出して剣が弾かれる。
アンチラストの情けない声も付いてきた。
続いてフリードの氷の拳連打でアンチラストがテオボルトの上からどく。
「よくやってくれた! 感謝する……が、間違っても私には当てるんじゃないぞ! 聞いてるかフリード!?」
が、未だに頭上を飛ぶ氷にはどうしようもなく、時折飛んでくる氷の欠片に顔を顰めながら地面に退避しているのだった。

>「ア、ウ、アー!?」
> 「なら!フリージングサーベルいちご味!!」
> 「発射!!」
>「ガッチャーミ!!」
氷の拳連弾を食らい、更には氷の刃をも食らうアンチラスト。
漸く攻撃の嵐が止んだところで、仰向けのテオボルトが後転からのバク転!
華麗に無駄な行動をとりながら、皆のところへと下がる。
「ああ、くそ、危ない所だった! しかしアンチラストめ、何がどうして襲ってきたのやら」
まだウロチョロしてる人間サソリを足で追い払いながら、ブツクサ文句を垂れる。
91 : テオボルト ◇e2mxb8LNqk[sage 代理投稿] : 2013/05/21(火) 00:08:56.07 0
ふと、別の対処に追われていた筈のパピスヘテプを見やる。
片膝を付き、肉を持って休憩しており、リリィの方も多少なりとも動きを見せている。
一応終わったかのような様子ではある、が。
「……おーい、そこのオークは何だ? 何処かから迷い込んででも来たか……なぁ、おい?」
正気に戻ったらしいオークを見ながら、顔を引きつらせる。
モウソウダケのせいか、目も血走っている鼻息荒いケダモノが、腕のリリィを取りこぼす。

>「ブルルル……ブオォォォォォ―――ッ!!!!」
>「パンニャー!!」
オークとアンチラストが同時に吠えた。
巨体の迫力をドラミング(手で胸を叩く行為。ゴリラなどが行うアレ)で見せつけるオーク。
素早く振り向けば、阿修羅の如き姿のアンチラスト。
まさしく前門の虎、後門の狼というべき状況であろう。

「おいおい、ピンチはまだ続くか……!? フリード、それとジェイムズとかいうの! アンチラストを頼む!」
弓をつがえるパピスヘテプを見て、素早く指示を出す。
テオボルトの使う魔法の多くが雷。実体を持たない現象であり、防御手段としてはあまり役に立たない。
故にこの状況ではアンチラストとは相性が悪く、対処の仕様がないのだ。
しかし、
「オークなら、私が何とかできる!」
肉体だけが取り柄であり武器である相手、すなわちオークに対してはとても相性が良い。

「出し惜しみは無しだ、離れてろ! 以前の馬と同じ目に遭わせてやろう……!!」
フリード達を背中に置きながら、今にも近くの二人に手を出さんとするオークに手を翳す。
掌でバチッと放電。照準を定め、溜められた魔力に指向性を与える。
「洞窟で落雷を食らうんだな、『サンダー・ボルト』!!」
テオボルトの手から、館の地下で見せたサンダー・ランスよりも太い稲妻が迸る!
直撃すればほぼ確実にオークも仕留められるだろう。
ただ、巻き込まれてしまえばその人物もただでは済まないだろう。
92 : 名無しになりきれ[sage] : 2013/05/21(火) 19:51:37.55 0
スーッと煙を吸い込み、そしてむせる。
喫煙に慣れてない新参者が最初に通る道だが……
「けほっけほっ……うぇー、なにこれぇ。
 こんな物が嗜好品だなんて、認めたくないなぁ」

嫌そうに、火のついたタバコを少女は投げ捨てた。
……床に落ちた瞬間、大量の煙が空間全体を覆う。
その煙は異常だった。聴覚以外の五感、そして魔力による感知も
使えなくなってしまったのだから。

折り悪く、放たれた雷撃の余波が少女を襲う。
しかし、煙で情報が遮断されていた為それに気づいた者はいない。
93 : リリィ ◆jntvk4zYjI [sage] : 2013/05/24(金) 18:54:29.47 0
遅れて合流したパピスヘテプとジェイムズ。
ジェイムズの方は即テオボルトとフリードへと助力に向かっている。

予告どおりリリィの体を戻そうとしていたパピスヘテプだったが、フリード&グレンに見とれて女神と呟いていた。
>「……はっ!ちがう、あれはフリード君!でもそれはそれでまた美味……」
しかもフリードである事を再確認した上で、鼻血を噴出している。
『わああっ?!とりあえず鼻押さえて、鼻!』
(そういえば、暴走ジドウシャの中で、お尻がどうとか言ってたような・・・・・・?)
日常的に霊と接しているせいか、彼女は大人びて達観しているイメージだったのだが・・・・・・。

幸いパピスヘテプは、本来の目的をすぐに思い出してくれた。
>金縛りにあって動けないオーク(inアムリーテ)とリリィの肉体、そして藁人形(inリリィ)に荒縄を投げつける。
>「これ以上面倒事が起きないうちにややこしい事解消よ!」
本来の肉体と仮のわら人形の体を結び付けられ、呪文が始まったとたん、リリィは強烈な吸引力を感じ始めた。
まるで眠りに落ちる直前のような、強引ではないのに抗いがたい力。
(・・・・・・これでやっと、私の体に戻れるのね)

最初に気づいたのは、音の変化だった。
アムリーテの体にいたときや、藁人形のときに感じていた違和感が消える。
次に襲ってきたのは、魔法の箒で急旋回と急上昇を繰り返した後のような浮遊感と不快感だった。
目を閉じて何とか吐き気をやり過ごしていると、パピスヘテプがアムリーテに説明しているのが聞こえた。

>「さて、こっちはこれでいいけど、リリィ、自分の身体に戻った感想は……
>その前に、モウソウダケの胞子の幻覚からどうやって回復するつもりなのかしら」
「うえっぷ、酷い気分だけど大丈夫・・・・・う・・・・・こ、こりぇはひどいかも」
リリィはハンカチで口を押さえながら、どうにかそれだけ口にした。
「私のカバン、その辺にあるはずなんだけど・・・・・・よく見えない。でもいいの。後でグレンに治してもらうから。
 たとえ私が元気でも、あの戦いに割り込めるほどの力はないから」

リリィは、アムリーテがいるであろう場所に顔を向けた。
だが目は閉じたままである。
「センセイを探しにいくのもいいけど、その体で、あの光る天井の仕掛けに手が届くの?
 しばらく、物陰に隠れていたら?藁の体は脆いよ?」

>「あ~~、リリィを戻したらエンカ君を探しに行けると思ってたのに、どういう状況なのかしらね」
「アンチラストを倒したらわかるかも」
視界を閉ざしたリリィの鼻腔を、肉のいい匂いが擽った。
どうやら消耗した魔力を補うため、再び食事を始めるらしい。
「あれ?ねえ、そういえばアムリーテが入っていたオークは?」

リリィが目を開けると、肉をほお張るパピスヘテプの背後に、巨大な影が見えた・・・気がした。
>「……おーい、そこのオークは何だ? 何処かから迷い込んででも来たか……なぁ、おい?」
リリィは目を開けた。
だが幻覚を見ているリリィには、オークではなく、背が高く、派手な化粧をした大柄の男として捕らえていた。
それでも、リリィの反応は尋常ではなかった。

「きゃあああああああ!いやああ!!」
リリィは傍らで食事をしているパピスヘテプの体を、大柄の男から距離をとらせようと突き飛ばす。
逃げ遅れて腕を取られたリリィは、
「ブレ先生、離して!」
と叫ぶなり、全身で拒否し腕を振り払う。

>「オークなら、私が何とかできる!」
>「出し惜しみは無しだ、離れてろ! 以前の馬と同じ目に遭わせてやろう……!!」
リリィも何とか距離をとろうとしているようだが、足がうまく動かないようだ。
テオボルトの魔法の威力は、過去に目撃している。
まともに食らえば、こちらもただではすまない。
少しでも距離をとろうと、リリィは洞窟の床を転がり、わずかながら距離を稼いだ。
>「洞窟で落雷を食らうんだな、『サンダー・ボルト』!!」
94 : リリィ ◆jntvk4zYjI [sage] : 2013/05/24(金) 18:55:23.23 0
オークに絶大な効果をもたらしたテオボルトの魔法。
だが、隠れていた少女に余波が当たったのだ。至近距離にいたリリィに多少なりとも影響がないはずがない。
「・・・・・・・・・・」
リリィは感電し、白目を剥いて倒れてしまった。

>「パンニャー!!」
>アンチラストは、背中の腕に握る弓に三本まとめて弓をつがえ、放った。
>最初は間違いなく三本しか放たれなかった矢ではあるが、宙を進むうちに分裂してその数を増やし、
>最後には百八本もの弾幕となってその場にいるメンバー全員に襲いかかった。
倒れているリリィには、当然攻撃を防ぐ方法はなかった。
95 : ジェイムズ ◆nIuIv3TzeE [sage] : 2013/05/24(金) 20:08:12.07 0
>「アー!?」

間抜けな声を上げ、手から黄金剣を手放すアンチラスト。
そのままフリードの猛攻を喰らい、壁まで吹っ飛んで言った。

「フン、他愛の無い……」
「…………!」

茸の巻き起こす粉煙の中、まだ立ち上がる影。
やがて煙は晴れ、金色の六本の腕が生えた怪物が姿を現した。

「タフな奴だ……」
>「ガッチャーミ!」

突然、アンチラストが弓を構え、三本の矢を放った。
>最初は間違いなく三本しか放たれなかった矢ではあるが、宙を進むうちに分裂してその数を増やし、
>最終的には百八本もの弾幕となってその場にいるメンバー全員に襲いかかった。
矢は攻撃を行ったばかりで大きな隙が出来ているフリードやテオボルトはともかく、
戦闘員ではないリリィやパピスヘテプに対しても例外なく襲って行った。

「如何!!」

咄嗟に走り、アンチラストとメンバーの間に立ちはだかるジェイムズ。
依然として矢は向かって来ているが、彼は少しもその場から動かない。
そして、キキキキィン!という軽い金属音を立てて、矢が鎧に着弾して地に落ち、メンバーは守られた。
そしてジェイムズはというと………

「………貧弱、貧弱…………此の程度か?」

百八本もの矢が命中したにも関わらず、なんとも無いと言った風にその場に仁王立ちをしていた。
彼の身体は強大な威圧感を放っていたが、何処か優しげなオーラに包まれていた。
その後彼はすぐに反撃の態勢に移る。投擲槍を取り出して、狙いを定めた。

「「ゼルベルク家直伝 閃矛槍葬」ーーーーーーー『疾風』」

投擲槍を放つ。
槍は高速でアンチラストに向かい、アンチラストを追尾しているかのごとく正確に空を切って進んで行く。

「食らうが良い。一時的とは言え我が仲間に対し、傷を付け様とした罪は重い……」
96 : アムリーテ ◇apJGY8Xmsg[sage 代理投稿] : 2013/05/26(日) 01:16:04.62 0
リリィとアムリーテの入れ替えに成功したパピスヘテプは
先生でも探しに行けばいいと言う。
いっぽうで、妄想ダケにやられたリリィは
アムリーテのほうを見つめ(適当にいるっぽいところ)

>「センセイを探しにいくのもいいけど、その体で、 あの光る天井の仕掛けに手が届くの? しばらく、物陰に隠れていたら?藁の体は脆い よ?」
というからアムリーテは

「ごめんなさいリリィ」
そう言って物陰に隠れた。そして隠れながら
パピスヘテプを突き飛ばして感電するリリィや
百八本の矢を一身に受け止めるジェームズをみる。

彼らの目的は課題を果たすこと。
でもそれ以上に感じるのは子供たち同士の絆。
なぜかそれを羨ましくも思うアムリーテ。

(せんせいとわたしのあいだには、あのようなものが欲しかったのです。
あのようなものがあると、わたしは信じていたかったのです)

でも、今は何もない。
子供は可愛いもの、愛でるもの、と先生に教えられたアムリーテだったが
子供たちとの関係はマイナス。というかわけのわからない不気味なものとして
彼らはとらえていることだろう。
しかしそれがいったいなんなのだろう。
大好きなせんせいの言っていたことと、自分が思ったこと。
それは違っていた。見てくれがかわいらしくても
美しくてもその価値観が機械のアムリーテに
何をもたらすというのか。そう、これは先ほどパピスヘテプが
言っていたことと似ている。消えたいのはそちらの都合、
消さないのはこちらの都合。せんせいの思っていることと、
アムリーテの思っていることは違うのだ。

「わたしは、わたしは…アムリーテ」
つぶやいたあと、気絶しているリリィの頬を叩く。
この娘は自分の体を奪ったアムリーテに対して
物陰に隠れたほうがいいと気遣ってくれた。

ここでアムリーテは、初めてリリィや他の子供たちの姿を見たような気がした。
このままリリィが気絶してしまっていてはアンチラストの次の攻撃で
どうなるのかわからない。リリィは助けたい。
恩返しとか、そんないいものでもなくてチャラにしたいきもち。
そして、できたらあの悲しい怪物のアンチラストを…。

「おきるですリリィ、誰かにお姫様抱っことかしてもらおうなんて
甘えた考えは許しません。う、うう~、え~い」
自らの藁を引き抜き、リリィの鼻の穴をこちょこちょするアムリーテ。
自業自得とは言え、アムリーテにはもう、こんなことしかできなかった。
97 : フリードリッヒ ◆cOOmSNbyw6 [sage] : 2013/05/26(日) 08:59:22.23 0
>「う、うぃえあ~!?バストテ女神!???」
『うちの神様がどうしたって?』(猫語)
グレンの信仰対象も彼女である・・・・だって猫だもの

天井があるにもかかわらず上のほうから紙切れが降ってきた
そこに書いてある『改宗するなら猫缶寄越せ』というありがたいお言葉を確認したフリード
「グレンの所の神様地上に介入し過ぎじゃないですか?」
『そのうちほかの神様にぼこぼこにされるよね多分』(猫語)
神様は信者を甘やかしすぎるとなんでも神任せにして努力しなくなるという理由で
めったに力を貸さないそのはずなのにグレンの所の神様ときたら・・・・・

>「……はっ!ちがう、あれはフリード君!でもそれはそれでまた美味……」
「突然血を吹きだした!?」
『おのれアンチラスト!念力のたぐいか!?』(猫語)
一人と一匹はアンチラストの見えない攻撃かと勘違いした

>「如何!!」
そういってメンバーの盾になるジェイムズ
『メイン盾着たこれで勝てる』(猫語)
「なるほどこれが騎士のスキル仁王立ちですか・・・」
いいえ彼は魔法使いです

>「「ゼルベルク家直伝 閃矛槍葬」ーーーーーーー『疾風』」

「サポートなら任せろぉフリージングスネア!!」
フリードリッヒは床を殴りつける
するとどうだろうアンチラスト付近の床から氷で出来た腕が飛び出しその足を攫もうとする
「これがほんとの足を引っ張るってやつです」
『避けられたら間抜けだよね』(猫語)
「それはそれで隙が出来るだろうし問題ありません」
98 : ◆jWBUJ7IJ6Y [sage] : 2013/05/26(日) 19:24:36.84 0
>95>97
> 「………貧弱、貧弱…………此の程度か?」
飛翔する矢は全て、文字通りジェイムズが盾となったことでその意味を無くした。
ところで細い矢も百八本ともなると凄まじい量となるが、
幸いにも地面に落ちた矢はまるで最初から無かったかのように消えてしまう。

アンチラストはジェイムズのかけるプレッシャーを意に介さずズンズンと歩みを進め彼に近づいていった。
> 「「ゼルベルク家直伝 閃矛槍葬」ーーーーーーー『疾風』」
ジェイムズは投擲槍を放ったが金属同士がぶつかる甲高い音と共に、
アンチラストは手に持っていた十文字槍で叩き落とした。
おそらくさっきフリードが氷の刃を放った時も同様にして叩き落としたのであろう、
一度通じなかった攻撃法が今になって通じる道理はなかった。
しかし、先ほどとは違って今回はサポート要員がいた。
他ならぬフリードである。
> 「これがほんとの足を引っ張るってやつです」
フリージングスネアだ。
床から伸びた氷の腕がアンチラストの足を掴んだ。
アンチラストの動きが止まる。
「ンウェー!!」
アンチラストは足を止められながらも怒りくるって六本の腕にある武器を振り回したが、届くはずもなかった。

やがて、ハッと我にかえったアンチラストは武器を持った手を降ろし、あたりを見回した。
まずは先ほどまで戦っていたテオボルト、ジェイムズ、フリードの姿を見た。
こうやって見てアンチラストは、初めて自分が戦っていたのは一人ではなく三人の魔法使いであったことに気づいた。
次にアンチラストは、肉にかじりついているパピスヘテプを見た。別に、どうということはなかった。
最後に倒れているリリィとオークを見た。
リリィの周りで何かしている藁人形が見えたが、アンチラストには理解不能な存在だった。
「……あの二人は死んでいるのか?ならば、クヨウしなければなるまい」

アンチラストはジェイムズに言った。
「ナカマを傷つけようとした……さっきそう行ったな?
 ナカマとはあの男(テオボルト)のコトか?
 そのイカリならワタシにもわかるぞ。
 なぜなら、あの男もまたワタシのナカマを傷つけているからだ。
 だが、このイカリは今にいたり克服できそうだ。

 …オマエ達の中にも、ワタシに対するイカリが見えるゾ?
 オマエはどうする?イカリを克服できるか?
 もしそうでないのなら、もう少しつきあってヤらないコトもない」
アンチラストは、さもそれが慈悲であるかのごとき態度でそう言い切る。
両足が固定され、明らかに不利な状況であるのにも関わらずである。
「それとも、誰かにワタシを討つように頼まれたのか?」
99 : パピスヘテプ ◆/TZT/04/K6 [sage] : 2013/05/26(日) 22:44:02.38 0
一仕事を終えて疲労回復&血液補充の為に肉を頬張ろうとするパピスヘテプ。
一口目を齧りついた途端に突き飛ばされた。
突き飛ばしたのはリリィ。
一瞬幻覚の為か?と考えが過ったが、すぐ後ろに迫っていたオークの姿にその考えが吹き飛んでしまった。
オークに腕を掴まれ悲鳴を上げたリリィは続いて
>「ブレ先生、離して!」
と声を上げた。

どうやらリリィにはブレに見えているようだが、状況は切迫している。
急いで口の中の肉を飲み込み術をかけようとした時に後ろからテオボルトの声が響く!
>「洞窟で落雷を食らうんだな、『サンダー・ボルト』!!」
「いやいや、出し惜しみしてよ!てーかテオ君、後ろー!」
それなりに開けた場所ではあっても洞窟内である。
強大な魔法を撃たれては余波でどうなるか分かった物ではない。
それどころか呪文を唱えるテオボルトの後ろには無数の矢が迫っているのだから。

結論としてはオークは雷に打たれて黒こげに。
無数の矢はジャイムズが一身に受けて事なきを得た。
のだが、雷の余波でリリィは感電して白目をむいている。
パピスヘテプは突き飛ばされたおかげで感電こそしなかったものの衝撃でさらに飛ばされテオボルト付近まで転がる事になったのだった。

「テオ君助けてくれてありがと。でもちょっとやりすぎよ。
それで、あれはなんなの?
リリィは幻覚症状の上に感電で白目向いちゃっているし。
エンカ君も気になるから不要な戦いならさっさと切り上げていきたいんだけど」
ジェイムズとフリードと戦う異形のアンチラストを見ながら尋ねる。

フリード、テオボルト、そしてジェイムズが戦闘において引けを取るとは思っていない。
だが先ほどの矢を見る限り相手は遠距離かつ広範囲への攻撃手段を持っているのだ。
気絶者と行方不明者がいる状況である。
避けられる闘いならば避けたいというのがパピスヘテプの本音であった。
もちろん始まってしまった戦いを収めるのは容易ではないので逃走という手段しかないのであるが。

>「それとも、誰かにワタシを討つように頼まれたのか?」
「え?それって……」
リリィの介抱に向かおうとした時に聞こえてきたアンチラストの言葉に振り返った瞬間。
当たりは何処からか湧いた煙に覆われた。

藁人形に身代わりの呪いをかけているおかげで咳き込むことはなかったが、視界はほぼゼロ。
目の前にいるはずのテオボルトすらうっすらとしか見えないほどに。
「まずいわ、気配も魔力感知も使えない。
止まっていたらまずいわ、テオ君!」
いきなり立ち込めた煙は魔法の煙幕である事は明白。
パピスヘテプはこれをアンチラストの攻撃だと思い、あわてて回避行動を取る。
この煙幕の中、先ほどの矢の攻撃をされては防ぎようがない。

だがパピスヘテプにとって煙幕はそれ以上に危険な意味を持つ。
パピスヘテプの死霊術も影術も冥炎の光が起点になっている。
即ち、光が遮られる煙の中ではほとんどの術が使えないし、射程を失うのだ。

影を滑らせてリリィの下へと急ぐが煙幕の中では方向も定まらず、立ったまま黒焦げていたオークにぶつかってしまった。
「う、ぐぇ~、お、おもい~」
煙の中にパピスヘテプの苦しげな声が漏れ聞こえるかもしれない。
ぶつかった拍子に倒れてきた黒焦げオークの下敷きになったようだった。
100 : テオボルト ◆e2mxb8LNqk [sage] : 2013/05/29(水) 22:00:01.59 0
放たれた雷は、見事にオークの丸焼きを作るに至った。立ったままの焼死体は壮観だろう。
「……やったな」
テオボルトはそれを見届け、アンチラストの方を見る。感電したリリィ達の事は見えてない。

ジェイムズ達の方は無事に事を為しているらしい。
防いだはずの矢は見当たらないが、フリードの足止めが効いているのを見ることができた。
それから我に返って、ジェイムズに語りかけるアンチラスト。

それを見ていると、いつの間にか転がってきていたパピスヘテプが声を掛ける。
>「テオ君助けてくれてありがと。でもちょっとやりすぎよ。
>それで、あれはなんなの?
>リリィは幻覚症状の上に感電で白目向いちゃっているし。
>エンカ君も気になるから不要な戦いならさっさと切り上げていきたいんだけど」
「さあ、わからないね。見る限り知性はあるらしいが……って、リリィが感電してるだって?」
あちゃーとでも言いたげな口ぶりで、少々気まずそうに視線だけを向ける。
確かに白目をむいていた。命に別状はなさそうだが、しばらく軽い痺れは残るかもしれない。

さて、話を聞いていると異変が起きた。突然どこからか煙が湧いて出てきたのだ。
煙に包まれると、感覚を失うような心地がするテオボルト。
>「まずいわ、気配も魔力感知も使えない。
>止まっていたらまずいわ、テオ君!」
「の、ようだな! ええい面倒、というよりは面妖な……」
後ろに下がっていくパピスヘテプの声に返事をして、今度は大声を上げてアンチラストに語りかける。
「アンチラスト! お前の仲間とやらには心当たりはないが、我々が此処に来た理由はお前じゃあない!
 学園からこの島の『清掃』を承って送られてきたのだ!」
マントを翻し、アンチラストの前に歩み寄る。
「……お前は、いや、お前らは何者なんだ? 異形の姿、他者に憑りつく影。
 アンチラストとマリアベルという存在は一体……?」
煙を挟み、アンチラストに問いを投げかけた。
101 : フリードリッヒ ◆cOOmSNbyw6 [sage] : 2013/05/29(水) 22:07:54.31 0
>98-99
>「……あの二人は死んでいるのか?ならば、クヨウしなければなるまい」
「供養ってあなた供養する対象の信じる神や宗教を知らないで供養も何もないでしょうが!!」
意味不明の切れ方をするフリードリッヒ
『そもそも自分を殺した奴に供養なんかされても嬉しくもなんともないよね』(猫語)
「そういえばオークの信じる神様って何でしょうか?」
『オークじゃないから知らない』(猫語)
多分邪神きっと邪神

>「それとも、誰かにワタシを討つように頼まれたのか?」
「僕たちはここに清掃活動をしに来たに過ぎません
 よく考えたらもし何かを殺すという意味での掃除という言葉だったら
 非戦闘系の魔法使いを総統が寄越すわけがないですし
 ですのでぶっちゃけあなたと戦う必要はありません
 ただしそれはマリアベルが罠で僕らを殺そうとしたのがあなたの命令では無ければの話です
 もし本当にあなたの命令でマリアベルが動き僕らを殺そうとしたのならば
 あなたを死なない程度にぶちのめすか謝罪と賠償を要求せざるおえません」
『殺せない相手だもんねせめて封印能力者がここに居れば簡単に事が済んだのに』(猫語)
「いえいえグレン何でもかんでも相手をやっつけたり封じ込めたりして解決ではいけませんよ 
 知恵者ならウィザードなら話し合いという非暴力的な手段を行使できるなら行使すべきです」
と割と何でも攻撃呪文で解決する姉を持つ少年はこう言った
「もしテオボルトさんを殺すのを止めるというのならこちらも攻撃するのを止めましょう」
だが相手は明らかにあれな人である
自分の母親ともいえる人間の顔の皮を仮面のように被っている異常者である
そんな相手と話し合いで解決出来るのだろうか?

「あ、安心してください。基本的に僕ら魔法使いもあなたと同じ化け物ですのできっと仲良くなれますよ」
『フィー坊といると人類って何だっけ?と思うよ』(猫語)
「ヴァンパイヤみたいなアンデットを含むありとあらゆる異種族と混血できたり
 ドラゴンを倒せる個体もいるある意味チート生物です
 僕は割と普通の個体ですが」
いやその認識はおかしい

>「う、ぐぇ~、お、おもい~」
「ああパピちゃんさんが潰れた!?そんなに重いのでしょうか?」
『いやふつうは無理だから』(猫語)
とりあえず助けに入るために移動するフリードリッヒ
はたしてこの隙に抜けられてしまうのか?
それとも奥の手を出してくるのか?
102 : リリィ ◆jntvk4zYjI [sage] : 2013/05/30(木) 06:43:29.02 0
テオボルトの放った魔法の余波を受け、白目を剥いて倒れたリリィ。
とはいえ、もしもテオボルトがオークに攻撃しなければ、リリィの被害は感電どころでは済まなかっただろう。
本来ならば感謝するところだが、あいにくリリィはゲンソウダケの影響を強く受け、肉体に戻ってからはずっと幻覚を見ている状態だ。
意識を取り戻しても、自分の身に何が起こったのかよく理解できないだろう。
それは、アンチラストの無差別攻撃から、身を挺して庇ってくれたジェイムズに対しても同様である。

>「おきるですリリィ、誰かにお姫様抱っことかしてもらおうなんて
>甘えた考えは許しません。う、うう~、え~い」
>自らの藁を引き抜き、リリィの鼻の穴をこちょこちょするアムリーテ。
倒れていたリリィを起こそうと一生懸命な藁人形というのは、なかなかシュールだ。
そのかいあってか、白目の彼女は身じろぎをし、そしてくしゃりと顔をゆがめ・・・・・・・。
「ふぇ・・・・っくしゅ!!」
盛大なくしゃみは、藁人形のアムリーテを直撃したのだった。

「うう・・・・・川を渡るのにお金がいるらんて・・・・・・はっ?!ゆ、夢?」
リリィは目をぱちくりさせた。そして立ち上がろうとしたが、うまく動けないことに気づく。
「はれ?アムリーテ?危ないから隠れてなさいれって言ったろに。
 なんか煙臭いけど、火事なの?!」
リリィは立ち上がろうとしたが、ふらつきまた地面に転がった。
「・・・・・あれ?なんれ・・・・?うまく動けらいよ・・・・・・」
残念ながら、まだ軽い痺れが残っている。まともに動けるようになるには、もう少し時間がかかるだろう。
(もっとも、動けるようになっても幻覚は消えていない。戦力としてはほとんど役に立たないだろう)

>「アンチラスト! お前の仲間とやらには心当たりはないが、我々が此処に来た理由はお前じゃあない!
> 学園からこの島の『清掃』を承って送られてきたのだ!」
視界をさえぎられているので、声だけが聞こえる。

>「(略) よく考えたらもし何かを殺すという意味での掃除という言葉だったら
> 非戦闘系の魔法使いを総統が寄越すわけがないですし
> ですのでぶっちゃけあなたと戦う必要はありません
>「ただしそれはマリアベルが罠で僕らを殺そうとしたのがあなたの命令では無ければの話です (略)」
天使のような容貌で、フリードはさらりとオッカナイことを言う。
>「もしテオボルトさんを殺すのを止めるというのならこちらも攻撃するのを止めましょう」
そして意外なくらいに冷静だ。

>「皆なんでそんな冷静なろ?ジェイムズ先輩!火事です助けてくらはい」

まあ火事でないとわかれば、このまま話がまとまりますように、とリリィは念じていた。
いや、でもそのまえに、この話が纏まろうが纏まらなかろうが、どうしても聞かなければいけないことがあった。
「あ、あの・・・・・・マリアベル・ホワイトってご存知ですか?あなたの働き蜂らしいのですが。
 彼は私達の友人、エンカの姿をしていて、食堂でサソリ入りのご馳走を振舞いました。
 彼はエンカの記憶までそっくりコピーしてるみたいでしたが、憑依しているのとは違う感じでした。
 そして、アンチラスト・・・・・貴方が人間を嫌ってるから、私達を始末するよう言われたって・・・・・えっと・・・あれれ?
 そ、そうだ。彼とは苗字が同じなのは偶然の一致ですか?なんかご家族では無かった気が・・・・・」
話せば話すほど要領を得なくなっている。こんなことで、きちんと相手に答えてもらえるか疑問だ。

何かが倒れるような重い音が響く。
>「う、ぐぇ~、お、おもい~」
「パピちゃんどこ?大丈夫?!」
>「ああパピちゃんさんが潰れた!?そんなに重いのでしょうか?」
>『いやふつうは無理だから』(猫語)
「・・・・・・フリード君にグレン、後でいいから回復よろしく・・・・・・」
103 : ◆jWBUJ7IJ6Y [sage] : 2013/05/31(金) 19:42:26.71 0
>100>101>102
> 「供養ってあなた供養する対象の信じる神や宗教を知らないで供養も何もないでしょうが!!」
と言ったフリードに、まるで先生が生徒へ諭すかのようにアンチラストは言う。
「キミの言うことは一理あるだろう。しかし、クヨウに本当に必要なのはマゴコロというモノだ。
 誠心誠意にツトめれば、神は違えどもクヨウはできる。おぼえておくがいい」

テオボルトとフリードがかわるがわるにアンチラストへ伝えた。
自分達は清掃活動に来たのだと。
アンチラストは「それはカンシンなことだな」と言ってうなずいたが、その様子は見えなかった。
突然あたり一面が煙に包まれたからだ。

その後アンチラストは一同から質問攻めをされるハメになったのだが、
アンチラストは彼らの話を遮った。
「キミ達は、もっと言葉に気をつけた方がよい。
 キミ達は突然ワタシの住んでいる場所にオしかけてキているのだゾ?
 まずは、このうっとおしいケムリを除かせてもらおう」
そう言うと、まるでカーテンを広げるかのように煙が地下空間の彼方へと追いやられて行った。
煙が晴れて姿を現したアンチラストは先ほどまでの阿修羅のような姿ではなく、
初めてリリィ(アムリーテ)と会った時のように子供の姿をしていた。
背中の腕も無くなり、携えていた金色の武器もどこかへ消えた。
彼女は何か大きな物を押し広げるように両手を左右に伸ばし、
小さな足を大きく広げてフリードが地面に作った氷拳の上に立っていた。
いわゆる、大の字のポーズである。(アンチラスト「わはー!」)

「フーーーッ!(裏声)」
アンチラストは鞠が弾けるように氷拳から飛び上がり、一同からよく見える場所へと落ちた。
低い姿勢からゆっくりと頭を上げ、そして右手で天を指差した。
「そう!ワタシがアンチラスト!マリアベルはワタシのオカアサンなのだ!」
アンチラストは無邪気な子供のようにそう自己紹介したが、またもや大人びた口調へ戻る。
「キミ達の言う事はどうも要領をエないが……
 マリアベルがキミ達に何かをしたと言うのなら、それは何かの間違いだろう。
 なぜなら、マリアベルはすでに死んでいるからダ。お墓もある。」
アンチラストはリリィへ近づいた。
「アムリーテ。キミの話については少しココロアタリがあるから、もっと詳しい話を聞かせてほしい。
 ……どうしたんだアムリーテ?」
アンチラストは最初に会った時と何かが違うことに気づく。
「キミはアムリーテじゃないのか?」
104 : ジェイムズ ◇nIuIv3TzeE[sage 代理投稿] : 2013/06/01(土) 15:31:05.33 0
>>98
>「ナカマを傷つけようとした……さっきそう行ったな?
> ナカマとはあの男(テオボルト)のコトか?
> そのイカリならワタシにもわかるぞ。
> なぜなら、あの男もまたワタシのナカマを傷つけているからだ。
> だが、このイカリは今にいたり克服できそうだ。
>
> …オマエ達の中にも、ワタシに対するイカリが見えるゾ?
> オマエはどうする?イカリを克服できるか?
> もしそうでないのなら、もう少しつきあってヤらないコトもない」

「………フッ。何を云うかと思えば、怒りを克服しただと?馬鹿めが。」
「貴様が傷付けられた事に対する怒りを忘れた時点で、貴様は人間の心は無いな……まあ、その様子を見れば人間では無い様だが。」
「だが、怒りは有ろうと其れで感情的に成る等持っての他だ。其処の男(テオボルト)は兎も角、他の者達は気に入ったから着いて来た迄。」


鎧の向こうで光る眼で彼を見つめ、淡々とした口調で諭す様に言う。


>「キミ達は、もっと言葉に気をつけた方がよい。
> キミ達は突然ワタシの住んでいる場所にオしかけてキているのだゾ?

「其の事に付いては謝罪しよう。元は彼女等の好奇心とは言え、我も押し掛けて来たのは事実だからな。」


そう言って、少し頭を下げる。
自分も、住処に突然どこの馬の骨とも知れぬ者達が来たら嫌な気分にもなるだろう。

「……済まぬが、我からも一つ聞かせて貰って良いか?……貴様は、何故此の様な地下に居る?何か明確な理由でも有るのか?」

アンチラストに向けて、そう問いた。
105 : アムリーテ ◇apJGY8Xmsg[sage 代理投稿] : 2013/06/03(月) 00:25:07.23 0
アムリーテは迷っている。兵器なのに迷っている。
己を見失っている。自暴自棄に陥っている。
それは姉たちに体を乗っ取られた時に逃げてしまったことへの罪悪感。
エンカの殺人容疑をかけられてしまったであろうことへの恐怖。
先生を見つけたいという自分勝手な行動にたいしてのうしろめたさ。
すべての負の感情が複合されたアムリーテのゴーストは消滅を望んでしまった。

しかし、なぜ兵器のアムリーテに感情が芽生えてしまったのか。

アムリーテシリーズの最大の売りは、戦闘に敗北しないことだった。
それは生物の進化と似ている。しかし兵器の敵は人間の叡知。
日々進化する戦略、その進化に勝利するために
アムリーテシリーズは戦闘時に対する創造力を得ようとせんがため
人心を模倣したものを元々もっていたのだろう。

だが、その創造力が要らぬ幻想を産み出してしまった。
自分を修理してくれた先生にたいする思い、
子供は素晴らしいものと思っていた幻想。
それはフィジルの生徒たちとの出会いで見事にうち壊された。

美少年の皮を丸被りの鬼畜ショタ。はなから子供でもあらざる電撃男。
不良の娘。デカ女。謎の全身鎧。虫好きのムシノ他。

(せんせいのおっしゃっておられたことは、すべてウソでした)

と、思えば開き直れる居直れる。

>「君はアムリーテじゃないのか?」

「その子はリリィです。アムリーテは私です。
先ほどまで、私がその子の体にとりついていたのです。
それとマリアベルは、暴走した私の体が少年ごと消してしまいました。
もしも、それでアナタの母、マリアベルが消えてしまっていたとしたら、
私はどのような責任でも負いましょう」
そう言って、アムリーテはアンチラストを見上げた。
その後力なく呟いてもみた。

「それはエンカさんに対しても同義です。
しかし、あなたたちは私を藁人形にすることを選びました。
その答えがきっと、間違いではなかったと、
私はあなたたちに思わせてみせたくもあるのです」

しかし、アンチラストは人間嫌いでもなさそうだ。
それならなぜマリアベルはそんな嘘をついたのか?
あの食堂でたしかに何かの罠にかけようとしていた。
それともアンチラストが嘘をついているのというのか?
はたして、真実への道へとたどりつくことはできるのだろうか?

「できることがあるのでしたら、アンチラスト、
わたしはあなたに協力します。所謂オトモダチ作戦です」
106 : パピスヘテプ ◆/TZT/04/K6 [sage] : 2013/06/03(月) 23:20:35.48 0
煙の中で聞こえてくるリリィとアムリーテの声。
>「うう・・・・・川を渡るのにお金がいるらんて・・・・・・はっ?!ゆ、夢?」
「ちょ、それ幻覚じゃない!そっち逝っちゃだめよー。
そこのゴーレム、あんたも呼びかけて!」
リリィがかなり危険な事を口走っているので全力で呼びかけていた。
成仏させることについてはそれなりに覚えがあっても、成仏しかかった人間を戻すことに関してはあまり自信がない。
そっちに行かれてしまっては大変に困る事になるのだ。

個人的には突如湧いて出て暴走した挙句に身体を乗っ取る怪しげなアムリーテを頼りにするのは気が進まないのだが、そうも言っていられない。
藁人形に封じ込めて全くの無力な存在となっているにも拘らず、だ。
これがほんとに溺れる者は藁をもつかむ状態であった。

そんなことしながら視界の利かない煙幕の中滑るように移動していたせいであろう。
黒焦げオークにぶつかり下敷きになってしまったパピスヘテプ。
ケロべロスの毛皮のコートの力で圧殺こそ免れてはいるが、身動きが取れそうもない。
>「ああパピちゃんさんが潰れた!?そんなに重いのでしょうか?」
>『いやふつうは無理だから』(猫語)
「逸般人の基準で語られたら困るから!」
全力でグレンに同意しながら救助を待つしかなかった。

煙の中から聞こえるはリリィの声。
助けるつもりが幻覚と感電で動けない相手に心配されるとは。
何とも間抜けな自分に小さく息をつくしかなかった。

そんな中、アンチラストとの戦いは収束へと向かっていた。
心霊科に籍を置く者として、墓守の一族のものとして、かなりそそられる話が出ていたのであるが、今のパピスヘテプに一枚かませてもらう余裕はなかった。
重みに耐えていると、辺りを覆い尽くしていた煙がどこかへと消えてしまった。
視界が晴れた時、先ほどまでアンチラストがいた場所には一人の子供が立っていた。
それが先ほどまでの異形と同じ者だと感じるのに暫しの時間を要することになる。

アンチラストから語られるマリアベルの関係。
そしてリリィにアムリーテと呼びかけ事情説明を求める姿に、パピスヘテプが少し考え込んだ。
アムリーテが事情説明する間に頭の中で状況を整理する。

ここにいたりようやく黒焦げの肉塊をどけてもらい、フリードに礼を言いつつアンチラストに向きかえる。
「不幸な出会いだったけど、こうやって会話ができる事に感謝ね。
私はパピスヘテプ。よろしくね、アンチラスト。
おおむねの事情はこのリリィとこっちのアムリーテが話した通りよ」
まずは自己紹介をし、改めてフリードとリリィ、アムリーテの話を統合し、事情と経過、状況をまとめて説明した。

「つまり、エンカ君を乗っ取ったか入れ替わったマリアベルと名乗った何者かがアンチラストと私たちを戦わせようとしたって事かな。
この場に来たのはリリィの身体を乗っ取ったアムリーテを追ってきたわけだし。
それはこうして解決はしたわ」
自責の念に苛まされながらアンチラストに協力を申し出る藁人形のアムリーテを見下ろしながら、更に続ける。

「私達の現在の目的は消えたエンカ君の捜索であり、あなたと戦う事ではないの。
これから戻って館を探してみるつもりだけど、ココロアタリがあるのであればぜひ教えて欲しいわ」
アンチラストがどういったものかもわからぬ中ではあるが……それでも
マリアベルのひいてはエンカへの情報が得られるのであれば、ぜひともここで手に入れておきたかった。
107 : フリードリッヒ ◆cOOmSNbyw6 [sage] : 2013/06/04(火) 19:06:57.21 0
>「逸般人の基準で語られたら困るから!」
>「・・・・・・フリード君にグレン、後でいいから回復よろしく・・・・・・」
「チェイサァ!!」
『おおっとオーク君吹っ飛ばされたぁ!!』
「確かに重かったですけど熊ほどでは無かったですね」
比べる対象がおかしすぎる

>「なぜなら、マリアベルはすでに死んでいるからダ。お墓もある。」
「ですけどこの世界死んでも生きてる人って結構居ますからね油断出来ません」
『そんな例外中の例外を例に出されても』
「具体的には人間を退職して首なし騎士に再就職した僕のご先祖とか・・・・」
『早く成仏させてあげなよ!!』
最近は小さな虫を指差すのが趣味らしいです

>「其の事に付いては謝罪しよう。元は彼女等の好奇心とは言え、我も押し掛けて来たのは事実だからな。」
「僕も勝手にお邪魔したことは詫びましょう
 すいませんでした。お詫びの印にジルベリアのノクターン領にある僕の屋敷へご招待を・・・・」
『遠すぎるし寒すぎるよ!』
「大丈夫ですフィジルには転移魔法陣がありますから」
『ああだから生徒でも教師でもない執事さんがたまに出現してたのか』
「ブリッツの事は忘れてください」
『何があった!?』

「問題は何故偽(仮)マリアベルは僕らを貴方にけしかけたか?
 そしてエンカさんは何処に消えたのか?
 世の中には転移魔法というものがありますから突然人が居なくなってもおかしくはないのでしょうけど
 問題は何処に飛ばされたかです」
『しばらく前に行方不明になったロック先生と同じ所だったりして』
フリードリッヒはないないそれはないのジェスチャーでグレンを否定した
108 : ◆jWBUJ7IJ6Y [sage] : 2013/06/05(水) 09:53:22.65 0
>104>105>106>107
> 「その子はリリィです。アムリーテは私です。
> 先ほどまで、私がその子の体にとりついていたのです。
> それとマリアベルは、暴走した私の体が少年ごと消してしまいました。
> もしも、それでアナタの母、マリアベルが消えてしまっていたとしたら、
> 私はどのような責任でも負いましょう」
「これはしたり!アムリーテがちっちゃくてかわいい!」
自分を見上げて話す藁人形に、フードに隠れて見えないアンチラストの顔が釘づけになる。
「はじめて会ったトキから、オトモダチだよっ!」
アンチラストは無邪気に言った。

> 「不幸な出会いだったけど、こうやって会話ができる事に感謝ね。
> 私はパピスヘテプ。よろしくね、アンチラスト。
> おおむねの事情はこのリリィとこっちのアムリーテが話した通りよ」
とパピスヘテプがアンチラストに話しかける。
「ガッチャーミ……何度も言うがオカアサンは既に死んでいるのダ。
 ワタシのクヨウがいたらなかったとでも言いたいのか?」
アムリーテとフリードが、マリアベルの所業がごとくいきさつを話すのでアンチラストは機嫌を損ねていた。
しかし、パピスヘテプがより詳細な事情説明をしてくれたので、アンチラストは事情を把握することができた。
すなわち、マリアベルではない誰かが彼女の名をかたって事を起こした可能性も見えてきたのだ。
> 「私達の現在の目的は消えたエンカ君の捜索であり、あなたと戦う事ではないの。
> これから戻って館を探してみるつもりだけど、ココロアタリがあるのであればぜひ教えて欲しいわ」
> 「……済まぬが、我からも一つ聞かせて貰って良いか?……貴様は、何故此の様な地下に居る?何か明確な理由でも有るのか?」
パピスヘテプがアンチラストに心当たりを聞いた時、ジェイムズもアンチラストに問うた。
アンチラストは「それはちょうどよい」と言った。
「ワタシが何故ここにイるのか。ココロアタリを話すためには、まずはそこから話さなければいけないのダ。
 昔々、この館はワタシとオカアサン、それとイモウトの三人で住んでいた」
アンチラストは童話のような語り口調で過去にあった事を話し始めた。

「オカアサンは生命を自由に生み出す能力をもっていた。
 だからこの館にはいつも生命が満ち満ちてイタ。
 ワタシもイモウトも、彼らをトモダチとしていたから、とても楽しい毎日だった。
 
 ところがアル日、この館に人間の魔法使いが三人やってきて、楽しかった日々は終わってしまった。
 オカアサンはワタシを守るために、この亜空間へワタシを隠した。
 しかし、三人の魔法使いはすぐにこの場所へやってきた。
 ワタシは武器をモって命をばかりの打ち合いをして三人の魔法使いを殺した。

 しかしその後、オカアサンは頭がおかしくなってしまった。
 ワタシを責めた後、自分から死んでしまった。
 イモウトもどこかへ消えてしまった。
 
 ワタシはオカアサンをクヨウしてから、ずっと考えていタ。
 幸せな日々は、思っているほど長続きはシナイ。
 ニンゲンは、どんなに愛したヒトがいても、いつかは別れなければナラナイ。
 このココロの苦しみは、どうしたらイイのだろうか?と。
 ワタシはオカアサンの喪があけるまでココにとどまるつもりだが、それまでにこの答えを見つけようと思っている」
ここまで話した時、パピスヘテプ達はアンチラストが言う心当たりが何なのか検討がつくだろう。
「もしもイモウトが今もどこかで生きているのなら、人間嫌いになっていてもおかしくはない」
109 : ◆jWBUJ7IJ6Y [sage] : 2013/06/05(水) 09:55:39.71 0
「エンカという少年を探すツモリならば、一つ助言をシヨウ。
 何か探しモノがあるならば、そのモノについて最もよく知るモノに探させヨ。
 キミ達なら、それが誰なのかわかるハズだ」
とアンチラストは、フリードをはじめエンカの行方を気にする者達へそう言った。
「しかし、館へ戻ろうにもキミ達はその方法を知るまい。
 ワタシがその方法を教えよう。
 が、その前に一つワタシの助けとなってホシイ」
アムリーテが協力を申し出た以上、少なくとも彼女は拒否できないだろう。
「ワタシはここにコモってずっと考えていたが、一人ではどうしてもわからないことがあったのダ。
 キミ達のココロで思うがままに応えてみてホシイ」

アンチラストはアムリーテをはじめ、その場にいるメンバー全員にこう尋ねた。
「かつて人間のリーダーたる者がいた。彼は賢かった。
 彼は人間のイカリとオソレとシュウチャクが彼らを破滅させることを知っていタ。
 そこで彼は他の人間達へそれらを捨てる方法を教えた。
 しかし彼の死後、その教えは理解されず、人間の世には未だイカリとオソレとシュウチャクが溢れている。
 人間はこれ以上、どんなに教え導いても進化することはなく、破滅するウンメイにあるのだろうか?
 是か?否か?」

次にアンチラストはこう尋ねた。
「人間がイカリとオソレとシュウチャクを捨て去らぬ限り、限りなく他の生命が脅かされるコトになる。
 人間はこの世界から追放され、新しいニンゲンの世界へと移らなければならないのではないだろうか?
 是か?否か?」

最後にアンチラストはこう尋ねた。
「ワタシは人間なのだろうか?
 是か?否か?」
110 : フリードリッヒ ◆cOOmSNbyw6 [sage] : 2013/06/05(水) 19:09:13.99 0
>109
>「キミ達なら、それが誰なのかわかるハズだ」
「ええと・・・肉親か親友もしくは恋人ですか?」
『ロゼ・・・・いや何でもないよ』(猫語)

>人間は破滅するか?
「多分そういう進化をしたとしても別の問題が浮上するはずです
どこかの偉い人が言ってました生命の本質は闘争であると
 そういう攻撃的な感情を捨て去った結果
 無気力な世界になりゆったりとした眠るような滅びを迎える可能性があるのだと」
『どんな感情にしろ感情というものは大切だよね』(猫語)
「まあぶっちゃけ感情があるから人は人なんだと僕は思うんです
 たとえそれが怒りや憎しみや嫉妬等のマイナスの感情であったとしても」
『それって捨てようが捨てまいが結局破滅するってことだよね・・・・・駄目じゃん』(猫語)

>人間は追放されるべきか?
「ぶっちゃけ人間が滅ぼしてきた異種族の数なんて
 この世界が自ら天変地異などで滅ぼしてきた種族の数に比べれば雀の涙みたいなもんです
 そもそも環境を守ろうという活動だって自分たちが生きられる環境を守るって事ですし」
『そうだね人間を過大評価し過ぎだよね
 ぶっちゃけ人間なんて僕らと同じ自然の生み出した動物の一種に過ぎないし』(猫語)
「大体エルフとかドワーフとかもっと古い種族がまだ滅びてないんですから
 人間の番はもっともっと先だと思うんですよ
 特にドワーフ族は燃える黒い水とか地下資源を発掘しまくって地底の空洞化を促進してますし
 まあそんなドワーフ達はゴブリンどもが滅びるのが先だと主張しているようですが」
『そして人間の次の主役は我々猫族が・・・・』(猫語)
「それはないです」
「にゃーん」

>ワタシは人間なのだろうか?
「ぶっちゃけ正直友達が人間だろうが機械だろうが妖魔の類だろうがどうだっていいんですけどね」
『ぶっちゃけた!?』(猫語)
「まあこれじゃあ答えになってませんので・・・・・
 この世界にはハーフエルフという種族がいます
 彼らはある一定の年齢になるとエルフとして生きるか人間として生きるか選ぶんだそうです
 まあ何が言いたいかというと自分が何者かを決めることが出来るのは自分自身だけだってことです
 ちなみに僕なら自分が3000年ぐらい生きることになっても人間だって言い続けますけどね」
『魔法使いだからね何年生きても不思議じゃないもんね』(猫語)
「法律的な事でしたら戸籍の種族欄に人間と書いてあればどんな異種族の血を引いていようが人間です」
『色々と台無しだ!?』(猫語)
111 : アムリーテ ◇apJGY8Xmsg[sage 代理投稿] : 2013/06/07(金) 02:04:17.68 0
アンチラストは藁人形になったアムリーテを
可愛いと言った。
リリィの姿でなくても可愛いと。
それに最初からお友達だったとも言った。

だからアムリーテは、アンチラストに対して
好意を抱く。
だが、その感情が機械にとって不要と言われてしまえば
アムリーテは一瞬にしてその行動原理を失ってしまう。
ある意味アムリーテは、感情があるから行動するのではなく
行動するために感情があるような感じなのだ。
存在を認識するための感情。

だから戦うべき相手を失っている状態のアムリーテシリーズの
創造力は暴走していると言っても過言ではない。

そんななか、アンチラストはいろいろなことを語る。
そのなかでアムリーテが気になったことは
母親を失った心の苦しみをどう処理したらよいのかということだった。

「もともとわたしは兵器なので、母を失った者の気持ちはわかりません。
しかし、この島の外には、あなたと同じ境遇の方がおられるはずです。
よろしければ、その方に聞いてみてはいかがでしょうか。
すいません。わたしにはあなたの心を完全に理解することは不可能みたいです。
ですが愛しい人と離れ離れになった者の気持ちは、少なからず、
理解できてはいます。あなたと同じく、答えは見つけ出せていませんが」

>「エンカという少年を探すツモリならば、一つ助言 を(略)

「えっと、それはなぜですか?エンカをさがすのに、
エンカをもっともよく知るものに探させる意味は何ですか?」

>人間は破滅するのか?
>追放されるべきか?
「人間にとって怒りや執着は心の影と思います。
それは同じひとつの心。きってはきれないもの。認めざるおえないもの。
やはり、昔の賢人は、昔の賢人なのです。
この変わりゆく世界を知ることはない変わらざるもの。
それゆえ、わたしたちは今の感情で考えることが大切と思います。
情報は未来永劫変わることはありません。
ですが、わたしたちは今を生きている。
こうでなければ破滅する。そんなものは最初からないとわたしは思います。
悪いのは心ではなく、悪い結果を招く行動です。
わたしはこの島で、それを学びました」

>ワタシは人間?
「あなたが自分を、人間と思って欲しければ、
わたしはあなたを人間と思うです」
112 : リリィ ◆jntvk4zYjI [sage] : 2013/06/07(金) 19:04:47.36 0
グレンに状態異常を回復してもらっていないので、リリィはまだ地面に突っ伏している。
幻覚がひどくて目を開けていられないのだ。
とりあえずアンチラストの掛け声とともに、煙の残り香はあっという間に去った。
火事の心配だけはしなくてすみそうだ。

近くに着地したらしきアンチラストから、リリィは質問を受けている。
「私はリリィです。勝手に入っちゃってごめんなさい」
幸いにもアンチラストの質問は、アムリーテやパピスヘテプが余さず説明してくれた。
他の事は、頼りになる先輩や仲間が対応してくれるだろう。
だからリリィは心の中で、今までのことをあれこれ考えていた。
ただし調子が悪かったせいか、いまいち力の扱い方がうまくいっていないようだ。
なにせアンチラスト以外には、彼女の考えていることがテレパシーを通じてだだ漏れなのだから。

『古い幻灯機の会話と日記が正しかったら、アンチラストとユニソルブルは、マリアベル・ホワイトが生み出した人造人間ってことだよね?
 そして人造人間のベースになったのは、マリアベルの娘の細胞?』
リリィはアンチラストの方を見た。
そしてヒイッと息を呑んだ。
『マリアベルの生皮がアンチラストの顔に貼り付けてあった気がしたけど、幻覚よね、うん、幻覚幻覚ゲンカク。
 それに骸骨が3体転がってるけど、あれも幻覚よね幻覚幻覚・・・・・あれ?』
リリィはちょっとした違和感に気づき、首を傾げた。
『真剣勝負で戦って死んだ魔法使いを供養したんだから、当然お母さんであるマリアベルを供養してるよね?
 本当にここが亜空間なら、母親の自殺を知る方法ってのは、目の前で死なれたって形しかないよね?
 だったらなんで、骸骨が3体分しかないの?お母さんの骨は?
 クヨウするといいながら、他の3体は骨が見える場所にあるのに、なんでお母さんだけお墓なの?ここで無くなったんじゃないの?
 ・・・・・・・生きてるのに死んだと思ってる?それとも、まさか逆?あー頭こんがらがってきた!』

リリィは日記の内容を改めて思い返し・・・・・・ふとあることに気づいた。
『そう言えば何で途中から、日記の書式が変わってるんだろう?
 最後のなんて名前が無い上に、書いてる内容はマリアベルのものにしか見えないのに、オカアサンとか書いてるし、
 あの内容って、洞窟の中に書かれてた落書きと同じだよね?・・・・・・んー?』
エンカに憑依?していたのに、忽然と消えたマリアベル。
欠片も残さず消えてしまったエンカ。
ピースは集まっていて、何かのきっかけで真実が見えそうで見えない。
なんとももどかしい限りだが、この思考をテレパシーとして延々聞かされるほかのメンバーはもっと迷惑千万だろう。
113 : リリィ ◆jntvk4zYjI [sage] : 2013/06/07(金) 19:05:25.07 0
>「エンカという少年を探すツモリならば、一つ助言をシヨウ。
> 何か探しモノがあるならば、そのモノについて最もよく知るモノに探させヨ。
「エンカに一番近い人は、ロゼッタちゃん。でも今は、屋敷の外にいるよ。
 ところで、テオボルト君がこの家で殺生したとしたら、料理に混入してた人間サソリくらいだよね?
 で、エンカに憑依?していた奴は「マリアベル」ではなくて、アンチラストさんの妹の「ユニソルブル」?
 ということは、ユニソルブルって妹さんも、人間サソリはの同胞ってことになるのかな?
 サソリ以外ここには誰もいないの?幻灯機に映ってた、ダンシャリ・ネズミのイレブン君は?」

>「ニンゲンは、どんなに愛したヒトがいても、いつかは別れなければナラナイ。
> このココロの苦しみは、どうしたらイイのだろうか?と。」
「お母さんが亡くなって、妹さんにも責められて、辛かったよね。
 私は物心ついたときから居なかったから、こんなの慰めになるかどうかわからないけれど・・・・・・・。
 あのね。死んだ人が本当にいなくなってしまうのは、その人のことを思い出す人が、誰もいなくなったときなんだって。
 だから苦しいのは、まだ愛した人が一緒にいるからって事なんだと思うよ」

>人間はこれ以上、どんなに教え導いても進化することはなく、破滅するウンメイにあるのだろうか?
> 是か?否か?」

アンチラストからの問いかけに、リリィは億劫そうに答えた。
「その話に出てきたリーダー?って人がいくら優れていたとしても、ちょっと性急すぎるよ。
 キョーイクっていうのは、そんなに簡単なものじゃないと思うよ。
 人類全体の考えそのものを変革させるには、あまりにも人生は短いし、世界は広いもの」

「そもそも人間を破滅させるっていう『感情』は、喜びとか愛情とか・・・・そういう素敵なものと同じ。
 あなたの言っていたように、どちらも『ココロ』が源なんだよ。
 ココロが明るいほうを向いているか、暗いほうを向いているかで生み出される感情が変わってくるの。
 大事なものを奪われたり傷つけられても、平然としていろだなんて、とても難しいことだもの。
 だってココロがあるから。
 貴方自身だってさっきはイカリに身を任せたじゃない?だったら、わかるでしょう?
 もちろん克服する努力は必要だけど、人に強制できるような事でもないよ」

「そもそも新しい人間の世界っていうのが、どんなものかさっぱりわからないよ。
 でも、悪い感情を克服できないからよそに行けって言うのもずいぶん極端じゃない?人間だってこの世界の一部なのに」

>「ワタシは人間なのだろうか?
「魔法学園の生徒自体、普通の人間とは一線を画してるからね。
 ・・・・・・・で、あなたは、どう呼ばれたいの?人?それとも、別の何か?」

「そして、本当にあなたが聞きたかったことって、なあに?」
114 : ジェイムズ ◇nIuIv3TzeE[sage 代理投稿1] : 2013/06/11(火) 18:52:30.16 0
よろです

>ニンゲンは、どんなに愛したヒトがいても、いつかは別れなければナラナイ。
>このココロの苦しみは、どうしたらイイのだろうか?と。
「……………」

ジェイムズはその言葉を聞き、今は亡き親友と元の家族の事を思い出す。
彼もまた、大事な者を失っているのだ。

「………人間には、いつかは別れがくる。」
「それは槍を刺せば人が死ぬのと同じぐらい確実な事だ。」
「だから、貴様も我も、別れる時が短かっただけの事……」
「其れが運命ならば、我は其れに従うのみだ。」

ジェイムズは大切な者を失えど、それを「運命」として受け止め、立ち直っている。
だからこそ、心の何処かでアンチラストに立ち直って欲しい、と思っているのだろう。
同じく大切な者を目の前で失った者同士、同じ立場に立って会話が出来るのだ。
115 : ジェイムズ ◇nIuIv3TzeE[sage 代理投稿2] : 2013/06/11(火) 18:53:07.02 0
>「ワタシはここにコモってずっと考えていたが、一人ではどうしてもわからないことがあったのダ。」
「………ほう。」

>人間は破滅するウンメイにあるのだろうか?

「………運命は、人間の行動によって決まる物……」
「その時そうであったとしても、いつの日か人間が分かり合える日が来るとしたら、救われる運命にあるだろう。」
「逆に、何時迄も欲望に囚われていては、破滅の道を歩むだろう……」
「人間は、運命の下に生きているのだ。起こった事は、「運命」として受け入れねば成らん……」

>人間は追放されるべきか?

「……他の生命が奪われど、他の生命は紡がれる……」
「だが皮肉にも、無くなった時に大切さに気付くのが人間と言う物だ。」
「他の生命を奪い続け、無くなった時にはもう遅い。」
「そのまま気付かなければ、残酷な未来が訪れるだろうな………」

>ワタシは人間なのだろうか?

「………貴様が、亡き母や失踪した妹への想いを忘れぬ限り、貴様は人間だ。」
「貴様がどんな道に走ろうと、思い出だけは捨てるな。絶対に、だ。」
116 : パピスヘテプ ◆/TZT/04/K6 [sage] : 2013/06/11(火) 23:00:46.21 0
アンチラストが答える言葉が続く中、パピスヘテプは今までの状況を整理しながら考えていた。
「あ、ちょっとごめんなさいね。藁人形にほつれが……」
ジェームズの肩に乗った藁人形を摘まみ、一時的に中継をオフにした。
幻覚の為であろう。
リリィの考えていることがテレパシーとなって流れ出しているのだから。
無差別というわけでもなく、いつもの思念周波であるからアンチラストには届いてはいまい。
が、ここで藁人形が中継として音声変換してはまずそうだからだ。

その後も流れるリリィの思念はも合わせ、状況をまとめていく。
そこから浮かび上がるのは少々衝撃的すぎる推測だった。

アンチラストの母であるマリアベルは娘を救うために生命の神秘に迫る研究をしていた。
それは神の領域であり、パピスヘテプにとってはアムリーテの人造霊魂同様眉を顰めざる得ない存在。
そこで生み出されたアンチラストとそのユニソルブル。

三人の魔術師がやってきて、マリアベルがアンチラストを守るためにこの亜空間に隠した、と言っているが……
話を総合すると、マリアベルがアンチラストを殺すために三人の魔術師を招聘。
この亜空間は処刑場として隔離しアンチラストを閉じ込めたと考えた方が筋が通る。
だが計画は失敗し、マリアベルは自殺。
とすると、その遺志を継いだ妹ユニソルブルがマリアベルを騙り自分たちをアンチラストにけしかけた、という仮定が成り立つ。
おそらくはアンチラストのココロアタリというのはその事なのだろう。
もっとも、パピスヘテプの推測とは全く別の角度からのココロアタリなのだが……

そこまで考え、リリィのテレパシーでマリアベルの骨がない、という事に気づく。
とすれば、なぜマリアベルは処分しようとし、ユニソルブルが処分を免れたのか。
壁に描かれた狂気じみた文字と日記の最後の文字。
普通に考えればユニソルブルなのであろうが、ユニソルブルと思い込んだ狂ったマリアベルという可能性も。
あらゆる可能性が氾濫し、嗜好を白く染めていきそうになったところでパピスヘテプは考えるのをやめた。

判らない事は判らないし、ここで判らなければいけない事でもない。
無理に考え混乱するよりも、優先順位を整えできる事から、わかる事からやっていく。

判りやすい事、それはアンチラストが大人の魔法使い三人を殺せる存在であること、である。
学園の課題の【掃除】として生徒たちをそのような相手に向かわせるとは考えにくい。
とすれば、今こうして話ができる状態の内にここから離れた方がいい。
戦うべき相手でもないし、関わりあうべき事でもないはずだ。
興味がうずかないと言えば嘘になるが、リスクが高いうえに何よりそれより優先すべきことがあるのだから。


>「エンカという少年を探すツモリならば、一つ助言をシヨウ。
そんな事を考えているとアンチラストはエンカを探す助言をくれる。
そこで第一に思い浮かぶのはロゼッタの顔。
リリィによれば館の外にいるという。
「わかったわ。ありがとう。
ロゼッタ先輩とも合流できるしエンカ君の手がかりもあるかもしれないし、一気に目途がつきそうね」
礼を言って戻ろうとしたところ、戻り方とと共に問いかけをしてきた。
情報提供の対価と言えばそれは構わないだろうが、その問いかけは実に哲学的なモノだった。

「その話は聞いたことがあるわね。
確か遥か昔、東方に生まれた聖人の教えで「シキソクゼクウ」といったかしらね。
個人的な感想としては異論を持つわ。
怒り、恐れ、執着は破滅の道であるのはその通りだと思う。
でもそれらを別の角度から見れば、発奮、周到、愛着でもあり、向上心となって発展に導くものであるから。
彼の教えでは人は輪であり繰り返される業からの脱却をするために悟りを開き無の境地へと達する。
でも、無の境地こそ滅びなのではないかなって思うの。
私は人を輪でなく螺旋と考えているの。
同じことを繰り返すようで少しずつでも変化を得ている。
その変化こそが人を進化へと導き、未来へとつながっていくのだと思う
だからその問いには非ね」
117 : パピスヘテプ ◆/TZT/04/K6 [sage] : 2013/06/11(火) 23:04:40.58 0
本来ならば適当に話を合わせ、さっさとこの場を出ていくのがいい。
早く出ていく必要だってあるはずなのだ。
だが将来の気性でもあり、教えは違えど意見を酌み交わすことに楽しみを感じてしまっているのも事実。
だからこそ、パピスヘテプは他のメンバーが答えていても己の感じるままに次なる質問に答える。
「人だけに非ず、全ての生命においていえる事ね。
弱肉強食と生存競争、そして互助と協調の調和。
それによって世界は豊かな生態系を保っているのだと思うわ。
あらゆる事象や現象を内包するのが世界というものだと思う。
だから、移らなければいけないという問いには否よ。
かといって移ってはいけないとも言わないけど」
そう答えた後、自分の言葉の欺瞞さに小さく息をついた。

この問いはアンチラスト自身の存在の是非を問うているのではないだろうか?
マリアベルによって作られた生命体。
さらに処分せざる得ない理由もある存在だ。
それはこの世界に存在を許されるものなのか。

パピスヘテプは生と死の摂理を人の手で曲げるべきではないと思っている。
死して魂は現世から冥界へと行くのは自然の摂理。
それを遂行するためにはあらゆるものを尽くすし、そうしてきた。

だが今直面しているのは真逆の生の話だ。
人の手によって生み出されてしまった魂、人格。
摂理に反して生まれた命がが摂理に従い生きる事に対し、どう接すればいいのか。

改めて問われ、パピスヘテプはアンチラストではなく藁人形となったアムリーテを見た。
アンチラストとアムリーテは同じなのだ。
異形の身体と機体の差はあれど、ともに人によって生み出された命。

アムリーテを人とは認められず、ゴーレムとして接してきた自分がアンチラストに全てを含んだものが世界だという。
相反する二つの認識ではあるが、どちらも本心である。
「この矛盾した気持ちも世界の一部ね」
自虐的に小さくつぶやくと、最後の問いに答える。

「人間をどのように定義するかにもよるけど、あなたを判断するほど私はあなたを知らない。
そして知っているほどの時間もない。
だらかその質問には答えられないわ。
でも代わりに、『嘆きの答えは生きて探せ』。うちの家訓よ」
アンチラストがこの家訓をどのように受け取るかはわからない。

実のところ、「死んだ奴は成仏させてやるけど生きている奴は自力で何とかしろ」というかなり乱暴な意味だったりする。
死して妄執に取りつかれ現世にとどまってしまった霊は自力ではどうにもならないからだ。
逆に言えば、生きていれば選択も行動もできる。その特権を大切にしなさい。
こんな教えなので、パピスヘテプは生きている人間を助けるのが苦手だったりする。

「私達はまだ未熟な学生で、各々の今の時点の答えであるけど、それが真理であるとは限らないけどね。
さ、それよりも、リリィの回復お願い。
このままでは立ち上がる事も出来ないわ」
答え終わった後、リリィの背中をさすりながら声をかけた。
118 : ◆jWBUJ7IJ6Y [sage] : 2013/06/14(金) 20:34:24.34 0
アンチラストは問うた。
そして、各々がそれに答えたのを聞き遂げた。
アンチラストは静かに話し始めた。
「ワタシは、ワタシが思っている以上に、世間知らずだったようダ。
 もちろん、全ての意見ニ賛成するワケでもないが、しかし正しい答えを求めていたワケでもない。
 キミ達とワタシは、必ずしもココロのよりどころにしている基準が違うようダガ、
 キミ達の思うがままの意見を聞けて嬉しくおもウ」
アンチラストはしみじみとつぶやいた。
「いつかワタシも、セカイを知る旅に出ることになるだろウ
 そして人間を知る時がくるのダ」

>110
アンチラストはフリードに言った。
「キミの話は、特にワタシを世間知らずだと痛感させタ。
 人間と、それに近い異種族の物語は、
 きっとワタシの知恵を一つ上の段階へ引き上げてくれるだろウ」

>111
アンチラストはアムリーテに言った。
「昔は昔、今は今、言い得て妙ナリ。
 変わることが世の常ならば、ワタシもキミもきっとそうなのだろウ。
 例え今がどうあれ、一緒に良い存在になれるとイイナー!(子供口調)」

>115
アンチラストはジェイムズに言った。
「キミはワタシが最初に思っていた以上にココロに強さをもっているようダ。
 しかし、強いモノほど壊れやすいモノはない。
 キミは少し弱くなりなさい」

>117
アンチラストはパピスヘテプに言った。
「キミはどうやらワタシ以上に人間の生きるコト、死ぬるコトに考えを巡らせているようダ。
 キミの話は、キミが期待した以上にワタシに勇気をくれている。
 しかし、キミのココロに苦しみのカゲが見える。
 いつか、そのココロの苦しみとなるオソレが取り除かれますようニ」
最後に子供の口調になって付け足した。
「いつやるノ?今デショ!」

ところで、とアンチラストは言った。
「ワタシはキミ達の人間関係は知らない。ロゼッタがどういうモノか知らない。
 しかし、ワタシがそれにエンカを探させる理由は、ワタシがここで答えるよりも、
 それに会って尋ねてみれば、自ずから理解できるだろウ」

>113
最後にアンチラストはリリィに言った。
「もしもワタシが人間ならば、もしも人間が滅びる運命にあるならば、人間が新たな世界へ旅立つなら、
 その末席に加えられるべき存在か?ワタシのココロは揺れている」
パピスヘテプが「リリィの回復をお願い」と言ったが、
もしかしたらアンチラストに対して言ったわけではなかったのかもしれない。
しかし、アンチラストはリリィにゆっくりと近づいた。その手には金色の短剣が握られている。
「これを見るがイイ。この黄金は人間のシュウチャクを表し、柄はオソレ、そして刃はイカリを表しているのダ」
アンチラストは金色の短剣で自分の手の先を傷つけた。
そこから人間と同じように赤い血が滴る。アンチラストはリリィの口へそれを流した。
「ワタシの最後の問いは、言葉ではなく、この血でもってキミに問わん」
リリィの視界がみるみるクリアになっていく。
どうやら人間サソリと同様に、その血にはモウソウダケに対抗するエッセンスが含まれているようだ。
「肉体をモって慟哭せよ。人間とは何ぞや?」
119 : ◆jWBUJ7IJ6Y [sage] : 2013/06/14(金) 20:36:39.24 0
「さて、ここから出る方法についてだが・・・」
アンチラストはある彼方へ指をさした。
アンチラストがその彼方へ煙を押しのけたせいで、その先に何があるかは見えなくなっている。
「三人の魔法使いが乗ってきた大きな乗り物がアルのダ。
 ワタシはソレが何かも知らないし、動かし方もワカラナイ。
 きっと、キミ達ならソレを動かせるだろウ。それに乗ればここから出られるハズだ」
ところで、もしもメンバー全員がそれに乗り込まなければ、他に方法がないのでここから出られなくなるだろう。
それでも、アンチラストはここから出ることを拒否した。
「ワタシはまだオカアサンの喪に服している。それに、彼をクヨウしなければならない」
彼、とは黒焦げになったオークのことだ。
「運命、そう運命だ。ワタシにそれが本当に必要なとき、扉は必ず開かれル。それを待たん」
最後にアンチラストはメンバーに忠告した。
「乗り物がある辺りにはサメがいるから気をつけるとイイ。・・・殺すなかれ」

どう見ても水気のないカオスな空間にサメがいるというのも奇妙な話だが、
実物を見れば納得するだろう。
そう、まるで地面の中を、水の中であるかのごとく透過して泳ぐサメのような生物を目にすることになるからだ。
それもきっと、マリアベルが生み出した実験生物に違いないのだろう。
120 : フリードリッヒ ◆cOOmSNbyw6 [sage] : 2013/06/17(月) 10:59:19.96 0
>「三人の魔法使いが乗ってきた大きな乗り物がアルのダ。
 ワタシはソレが何かも知らないし、動かし方もワカラナイ。
 きっと、キミ達ならソレを動かせるだろウ。それに乗ればここから出られるハズだ」
「魔法使いの乗り物ですか・・・・絨毯かそれとも空飛ぶベットか?」
『見て乗り物だと把握できるのそれ?』
普通は乗り物だとはとても思わないだろう
非魔法使いならなおさらだ

>「乗り物がある辺りにはサメがいるから気をつけるとイイ。・・・殺すなかれ」
「つまり殺さない程度に痛めつければいいんですね
 任せてくださいそういうの得意ですから」
多分ぜんぜん違う
『だからスリープクラウドとか覚えておけばよかったんだよ
 頭が悪そうなやつならいちころだよ?』
「あれは遺失呪文です!僕より実力の高いはずの総統の部下が使えなかったんですから間違いありません!!」
総統の部下であるオワゾーのことである

そして見た事も聞いたこともないなんだか珍妙な乗り物を発見するフリードリッヒ
「これは!?」
『ヘリコプターってやつだね
 図書館の本で見たことあるよ』
それはかつて総統が乗ってきた例のアレであり
ガリレオがスケッチに残したようなファンタジーにあっても違和感があまりないデザインのものであった
「で、誰か操縦できるんですか?
 多分魔力で動くでしょうし普段魔法の箒を使っているリリィさんが適任だと思うんですが?」
フリードリッヒはそう提案する
だがそれが本当に乗り物である確証はない
もしかしたら妙なデザインの送風機である可能性も否定出来ないのだ
端っこにあるタンスが空飛ぶタンスであり魔法使いの乗り物である可能性も否定出来ない
121 : リリィ ◆jntvk4zYjI [sage] : 2013/06/21(金) 22:23:32.21 0
「ありがとパピちゃん、ちょっとだけ楽になってきたかも・・・・・・」
パピスヘテプに背中をさすってもらいながら、リリィは弱弱しく礼を言った。

アンチラストへの言葉は、皆それぞれ重いものがあった。
今まで彼らが生きて、目の当たりにしてきた世界の縮図がそこにあった。
(私が、もっと頭がよかったらなぁ・・・・・・)
今は里帰りしている友人のササミや、人狼のグラディス、小鴉のクリスなら、もっと具体的で、気のきいた事が言えただろうに。
凡人のリリィは残念でならなかった。

>「これを見るがイイ。この黄金は人間のシュウチャクを表し、柄はオソレ、そして刃はイカリを表しているのダ」
「・・・・・・?」
その黄金の輝きだけは、なぜかクリアに見ることができた。
リリィは思った。とてもきれいだと。

>「ワタシの最後の問いは、言葉ではなく、この血でもってキミに問わん」
ぼんやりと見とれていたリリィの顎がくいと持ち上げられたかと思うと、口の中に生暖かい液体が入り込む。
「うげ?むぐんんん??」
口いっぱいに広がった血の味に目を白黒させているうちに、視界がみるみるクリアになっていく。
>「肉体をモって慟哭せよ。人間とは何ぞや?」
視点のあった先には、血のついた短剣と、傷ついた指先のアンチラスト。
そしてその素顔を覆う仮面と、人にあらざる手足。
「――――っ?!」
驚愕のあまり、思わず身を仰け反らせたリリィだったが、直後、背後にあった何かに激突した。
「げふっ?!」
そのまま地面につっ伏して痛みをこらえる姿は、果たしてアンチラストの目にはどう映ったのだろうか?
―――― まあ一番とばっちりを食らったのは、リリィの渾身の頭突きを胸に食らったパピスヘテプなのだが。

(えーとえーと、落ち着け私とりあえず落ち着け!
 アンチラストちゃんの手足があんななのはわら人形のとき見てたんだから今頃驚くことは無いそうまったく驚くことなんかない!
 顔があんな感じなのは幻覚じゃなかったでもまあそれはいいそうそうれはいい
 あれは彼女なりの追悼の意思なのかもしれないそうねきっとそうなのねそうそうだから落ち着け私落ち着け!)

リリィは痛む頭をさすりつつ、現在自分が置かれた状況の整理をし始めた。
(視界がクリアになったのは、さっき口に入った血のせいね。だからアンチラストちゃんの短剣と傷は、私のせいなんだ。
 そもそも、私を殺すつもりなら、さっきの時点でとっくに完遂できてるはず。だから敵意が無いという彼女の言葉には偽りは無い。
 だから私は、彼女の厚意と疑問には真摯に答えなきゃならない)
リリィは大きく一度深呼吸し、気持ちを落ち着けた。

「パピちゃんごめん、大丈夫だった?悪気は無かったの。本当にごめん。
 それとアンチラストちゃん、私の幻覚状態を治してくれてありがとう。
 えっと・・・・・・人間とは何か?だったよね。・・・・・・うん。
 人って言うのは、考えたり、望んだり、誰かを愛したりする存在。
 だけど考えるからこそ、とても臆病で、自分以外の存在すら怖がる、脆弱ら・・・・・・っ?」
急にうまく喋れなくなり、リリィは困惑した。あーあーと声を出してみるが、今度は普通に喋れた。
(疲れてるのかな・・・・でもこんなところでへばってたら皆に迷惑がかかっちゃう)

コホン、と咳払いして、リリィは再び話し始める。
「でもね、アンチラストちゃんもわかってると思うけれど、私と貴方の体は、ちょっと違ってる・・・・・・と思う。
 ご、ごめん!気を悪くしないでね。
 魔法学園の生徒はあんまり気にしないけど、普通の人は、自分と違う存在にはとても敏感だから・・・・・・」
リリィがわざわざこんな事を言い出すのには理由があった。
魔法学園に集められた生徒の中には、能力や外見のせいで、つらい体験をしてきた者達も少なからず存在するからだ。
アンチラストが外界に出たとき、いきなり差別という洗礼を受けさせたくはない。となると、今言わざるを得なかった。

「だからね、私思うの。
 フリード君が言っていたように、外に出た後、もっと世界と人を知った上で、アンチラストちゃんが感じればいい。
 人とは何かってことを。
 そして、自分自身で選べばいい。
 滅びる運命かもしれない人間として新たな世界へ旅立つべきか、人でない何かとして生きるかを」
122 : リリィ ◆jntvk4zYjI [sage] : 2013/06/21(金) 22:29:42.78 0
アンチラストの話では、三人の魔法使いが乗ってきた乗り物があるらしい。
(ということは、あの光る装置は、ここへの一方通行だったってことか・・・・・)
>「魔法使いの乗り物ですか・・・・絨毯かそれとも空飛ぶベットか?」
>『見て乗り物だと把握できるのそれ?』
「とりあえず全部乗ってみればいいんじゃない?」
リリィもフリード達に調子を合わせた。

当のアンチラストは、この場から動く気は無いらしい。
「乗り物無くなったら、亜空間から出られなくなるよ。それで本当にいいの?」
だが、アンチラストの意思は固いようだ。

>「運命、そう運命だ。ワタシにそれが本当に必要なとき、扉は必ず開かれル。それを待たん」
リリィは困った顔をしていたが、やがてあきらめたようにため息をついた。
リリィはぬれたカバンから傷薬と、おやつの包みを取り出し、アンチラストに渡した。
「これ、お菓子。花が無くてごめん。お母さんのお墓にお供えしてあげて。
 お供えした後は、腐る前に貴方が食べてね。ビンは薬だから、さっきの傷に使ってね」

「・・・・・ごめん。
 さっきはああ言ったけど、私は馬鹿だから、「人がどういうものか」なんて難しいこと、本当はよくわかってないと思う。
 でもね、これだけは私にも言えるよ。
 あなたが人を・・・・・・私を理解しようとしてくれるなら、私もそうする。
 そしたら私達はきっと、『友達』になれるって。―――― 出る方法、教えてくれてありがとう」

>「乗り物がある辺りにはサメがいるから気をつけるとイイ。・・・殺すなかれ」
「地面にサメがいるの?!ってことは、足とかあるのかな・・・・・・」
>「つまり殺さない程度に痛めつければいいんですね
> 任せてくださいそういうの得意ですから」
「フリード君、違う!それ絶対違うから!!」

皆と連れ立って歩いていたリリィはふと立ち止まり、アンチラストに問いかけた。
「もし妹さんに逢えたら、何か伝言ある?」と。

「・・・・・・なんか、結局なんでロゼッタちゃんを探す必要があるのかよくわからなかったね。
 ここから出たら分かるのかな?
 えっと・・・・・確かやることは、サメに気をつけて乗り物に乗って現実世界に帰ったら、エンカじゃなくロゼッタちゃんを探す。
 そしてロゼッタちゃんにエンカを探させると見つけることが出来る、ってことだよね?
 ・・・・・・でも、何でそんな回りくどいことしなくちゃ駄目なんだろう?エンカどこー?って、大声で探せば見つかりそうなものなのに」

リリィが不思議ねー?と、首を傾げつつ洞窟の中を進んでいると、急に開けた場所に出た。
広さと高さは、学園の食堂くらいはありそうだ。その奥まった場所に、奇妙な乗り物を発見するフリードリッヒ。
グレンの話によると、ヘリコプターという名前らしい。
ヘリコプターは木製で、ねじのようなカタチをしていた。
ねじの頭にあたる部分には、回転する羽根があり、木の骨組みに白い革張りがあるように見える。

>「で、誰か操縦できるんですか?
> 多分魔力で動くでしょうし普段魔法の箒を使っているリリィさんが適任だと思うんですが?」
「ええー!あれ、箒と同じ仕組みで飛ぶの?!で・・・・・出来るかなぁ?
 多分私だけの魔力じゃ無理だと思うから、フォローよろしくね。
 ところで、サメがいるって話だったけど、いないね?今お昼寝中なのかな?
 じゃあ遠慮なくー!」

リリィは青白い狐火が入ったカンテラを宙に飛ばすと、ヘリコプターへ向かって走り始めた。
彼女が開けた場所を移動し始めたとたん、薄い三角形の岩が左右から猛烈な勢いで接近し始めたのだ。
三角形の尾ひれは、よく見るとサメのそれに似ているかもしれない。
もしも本体が水面でなく地面の下にいるとしたら、サイズは相当大きなものになるだろう。
123 : パピスヘテプ ◆/TZT/04/K6 [sage] : 2013/06/24(月) 22:12:40.04 0
(心にある苦しみの影やその元であるオソレ。
そういったものも含めて一つの心となるのよ……)
アンチラストからかけられた言葉に心の中で答えたパピスヘテプ。
質問の受け応えは終了しており、それ以上議論を重ねる余裕はなかったからだ。
《…………》
そんなパピスヘテプに憑りつく少女の霊がパピスヘテプだけに囁いたのだが、あえてそれを黙殺。
だが、黙殺するという行動をとる事により注意が外に向いてしまったのは確かだった。

思わぬ場所からの衝撃に目の前が真っ白になる。
眼から火花が飛び散るとはこのことだろうか。
蹲っていたリリィが突如として身を仰け反らせたおかげで、口と鼻のあたりにその後頭部がめり込んだのだった。
>「パピちゃんごめん、大丈夫だった?悪気は無かったの。本当にごめん。
慌てて謝るリリィに手を広げて制し、口を押えるパピスヘテプ。
唇を切ったのと鼻血で血が滴り言葉が出せなかったが意図は通じるだろう。

リリィがアンチラストと話す間に影からタオルを取り出し、口にあてがうのであった。
そして自分の肩に憑りつき笑う少女を恨みがましそうに睨めつけた。
とはいえ、他の者たちにすれば何もいない空中を睨んでいるようで滑稽であったかもしれない。

アンチラストと戦う理由もないが、わかりあう理由も好奇心以上のものはないのだ。
残念だが今は好奇心より優先されるべきものがあるのだから。
だから脱出方法を教えるアンチラストがそれによりここから出られなくなる、という事もパピスヘテプにとっては然したる問題でもなかった。
それより問題はサメに気を付けて、そして殺すなかれという言葉である。
>「つまり殺さない程度に痛めつければいいんですね
>「フリード君、違う!それ絶対違うから!!」
「それより問題は、サメがいてこちらが殺しかねないような状態、つまり襲われて反撃しちゃうような事になるっていうわけよね」
ようやく血が止まりぐらつく歯を気にしながらフリードとリリィの会話に加わった。

そんな不安要素を抱えながら進んだその先にはヘリコプターなるものが鎮座していた。
始めてみるそれに興味津々で見回すパピスヘテプ。
「あれ、なんだろ?形とか全然違うのになんとなくエンカ君のジドウシャを思い出しちゃう」
首を傾げながら見ていると、後ろで操縦の話が進められていた。

>「で、誰か操縦できるんですか?
> 多分魔力で動くでしょうし普段魔法の箒を使っているリリィさんが適任だと思うんですが?」
>「ええー!あれ、箒と同じ仕組みで飛ぶの?!で・・・・・出来るかなぁ?
「え?飛ぶ……って?」
ギギギと錆びついた扉の様にゆっくりと振り向いたその顔は既に青ざめていた。

パピスヘテプ、実は高所恐怖症で、空を飛ぶことはかなり苦手なのだ。
とはいえ脱出手段がこれしかないのであればここで駄々をこねるわけにもいかない。
「地下なのに飛ぶんだ~……
つまりこの周りに地中透過結界でも展開していくって事よね。
アンチラストの言ったサメも同じだとすると、投下範囲を越えたら生き埋め状態なわけで、戦闘するにもかなり制限がぁああああ~~~」

飛ぶことから気を紛らわせようと口走っていた呟きが悲鳴に変わる。
なぜならば、薄い三角の岩が動き始めたのだから。
先ほどのアンチラストの言葉を鑑みれば容易にそれがサメの一部だと想像がつく。
「ええ~!地中を投下して迫るサメってどんなふうに撃退すればいいの!?しかも殺さずに!」
サメにとっては水のようなものであってもパピスヘテプ達にとっては紛れもない地面である。
光は通さないし、臭いもどこまで効果があるかはわからない。
光がとおらないという事は影も通りはしない。

「と、とにかく、みんな走って~」
鎮静香を焚けば完全防備のジェイムズはともかく他のメンバーにも影響が出てしまう。
とりあえず香木を剥き身でばら撒きながらヘリコプターに向かって走るのだ。
後ろは地中サメ、前は空飛ぶヘリコプター。
パピスヘテプにとっては背に腹は代えられぬ大逃走であった。
124 : ジェイムズ ◆nIuIv3TzeE [sage] : 2013/06/25(火) 17:02:12.88 0
>「キミはワタシが最初に思っていた以上にココロに強さをもっているようダ。
> しかし、強いモノほど壊れやすいモノはない。
> キミは少し弱くなりなさい」

「………弱く成る……か……」
「確かに、強い物程壊れ易い。確かに。其れも頷ける……」
「まるで、『ダイアモンド』の様だな………」

アンチラストの助言に対して一人、そんなことを呟いた。

>「三人の魔法使いが乗ってきた大きな乗り物がアルのダ。

「……ほう?」

> ワタシはソレが何かも知らないし、動かし方もワカラナイ。
> きっと、キミ達ならソレを動かせるだろウ。それに乗ればここから出られるハズだ」

「……我は機械と魔法には疎いからな……他の者が動かせたら良いのだが。」

「魔法使いの乗り物ですか・・・・絨毯かそれとも空飛ぶベットか?」
『ka&iuml;w&uuml;sjbsjwjręjqhq(理解不能!理解不能!理解不能!)』
>「とりあえず全部乗ってみればいいんじゃない?」
「……問題は「何か」よりも「動かせるか」だと思うのだがな……」

そんなやり取りをしている二人(と一匹)の横で、暗闇に隠された兜の下で苦笑いを浮かべた。

>「運命、そう運命だ。ワタシにそれが本当に必要なとき、扉は必ず開かれル。それを待たん」
「……運命は彼方からは来ない……自らで運命と向き合い、歩み寄る事が大切なのだ……」

>「乗り物がある辺りにはサメがいるから気をつけるとイイ。・・・殺すなかれ」

「……サメ?地中にサメが居るのか…」

どこか心の奥で違和感を感じながらも、進んで行く。
そこには、なんだか良くわからない機械(ヘリコプターと言うらしい)があった。

「…………何だ此れは?」

彼はヘリコプターどころか、馬以外の乗り物を見た事がない(馬車は別)。
そのため、これが何をする物なのか、飛ぶのか走るのか歩くのかさえ分からないのだ。

「しかし………ム!」

ふと気づけば、リリィの左右から三角形の岩……獰猛な動物らしき気配が猛烈に接近して居た!

「危険だ、乙女よ!」
何を思ったか、ガッシャァーーーーーンッ!!!!と自らの鎧で大きな音を立てる。
上手く行けば、サメ達の気を引けるかも知れない。

「生身の貴様等がサメに噛み付かれては堪らんだろう。」
「我の鎧なら耐えられるから、貴様等は速く走って乗り物に乗れ。我が此奴等の気を引いて居る内にッ!」

決して自らで攻撃を加えることはせず、彼等をヘリコプターに乗るように促す。
サメと人間、双方に危害が行かない有効な手段とみたが、果たして……?
125 : ◆jWBUJ7IJ6Y [sage] : 2013/06/28(金) 19:18:31.20 0
>122
時は少し遡る。
> 皆と連れ立って歩いていたリリィはふと立ち止まり、アンチラストに問いかけた。
> 「もし妹さんに逢えたら、何か伝言ある?」
アンチラストは少し考え、そしてリリィに言った。
「オカアサンもオマエを愛していたし、ワタシもオマエを愛してイル。
 そう伝えてくれたらいい……」
そう言った後、アンチラストは子供っぽい口調で言った。
「デモネー、そういうのってワタシから言った方がイイとも思うの。
 イモウトにそれを伝えるかどうかはオマカセするネー」

そして現在。
ヘリコプターへ向かって走り始めたリリィに向かって背びれのような岩が左右から挟み込むように接近してくる。
それがアンチラストが話していたサメに違いないだろう。
たまたまリリィとサメとの直線上にいた人間サソリが、サメの背びれに当たって真っ二つとなった。
どこからともなく、大小無数のサメ達が、背びれだけを地表に露出させてその場に集まってくる。

>123
> 「と、とにかく、みんな走って~」
パピスヘテプが香木をばらまいた。その音に反応して小さなサメ達が地表に現れ、香木に噛み付く。
そう、光も匂いも通さない地中にあっては、音こそが唯一の獲物の情報なのだ。
だから小さいサメは小さな香木が落ちた音に反応した。
しかし、大きなサメ達はリリィやパピスヘテプの走る足音の方に惹かれるようだ。

>124
> 「危険だ、乙女よ!」
ジェイムズは正しい方法でサメ達の注意を引いた。
自らの鎧で大きな音を立てたのだ。
大小のサメ達が一斉に、ジェイムズに向かって移動を始める。
最初にジェイムズに到達したのは小さなサメだった。
小さなサメは自分より大きいジェイムズの太ももめがけて噛み付いた。
> 「生身の貴様等がサメに噛み付かれては堪らんだろう。」
> 「我の鎧なら耐えられるから、貴様等は速く走って乗り物に乗れ。我が此奴等の気を引いて居る内にッ!」
確かにジェイムズの生身の太ももにはサメの牙はこの時点では届いていなかった。
しかし、それも完璧な防御では無かったとジェイムズはすぐに知ることになるだろう。
サメが、ゆっくりと徐々にジェイムズの鎧に浸透をし始めたからだ。
同じように地面に浸透することでサメ達は地中を自由に泳げるのだろう。
鎧の方が地面よりずっと強い抵抗があるらしいが、このままでは浸透したサメの牙がジェイムズの太ももを貫いてしまう。
すぐにサメを鎧から引き剥がさなければならない。しかし、サメは無数に集まってくる。
大きなサメがジェイムズにぶつかればどうなってしまうだろうか?
126 : フリードリッヒ ◆cOOmSNbyw6 [sage] : 2013/06/29(土) 08:48:49.01 0
人間サソリを簡単に真っ二つにしてしまうサメ
「相手は殺してるのにこっちは殺しちゃ駄目というのも不公平だと思いませんかグレン?」
『仕方がないじゃない約束なんだから・・・でも』(猫語)
と何か美味しそうなものを見る目でサメを見つめるグレン
と言ってもその目はフリードのものだ
そういまだに合体しぱなっしなのである

フリードリッヒは殺さないように手加減しつつ尻尾で思いっきりサメの横面をひっぱたく
これなら手で殴ったり足で蹴ったりするよりは殺してしまう確率は減るだろう
いわゆる手加減している範囲内の全力攻撃である
「真っ正面からぶつかったら真っ二つになってしまいます
 だからなるべく横に移動して横から攻撃を加えましょう
 なぁに3分の2殺し程度なら殺すなという言葉に反していません」
『ねえあれ食ってもいいかな』(猫語)
グレンは猫である
猫は魚が好きである
そしてサメは魚である
「ダメに決まってるでしょうが東方の活造りじゃ歩いまいし
 生きたまま相手を食べるなんて器用な真似ができるわけ無いでしょう」
決して殺すなかれという言葉は相手が死ななければ何やってもいいという意味ではない

「猫の跳躍力と僕のパワーさえあればヘリコプタァにたどり着くなんて簡単です」
足音を立てずに何とかヘリコプタァに辿り着くフリード
何故フリードリッヒがサメに反応されなかったのか?
何故足音がしなかったのか?
それはどっかの神様がすごい丈夫な紐を作るため 猫の足音と女のひげと山の根、熊 の腱、魚の息、鳥の唾を原材料に使った為
この世から猫の足音が消えてしまったのだ
もっとも女のひげに関してはドワーフ族はまだ生えているという噂が存在するが
「って僕だけたどり着いても意味ないじゃないですか!
 リリィさんが居ないと操縦すらままならないというのに!!」
『よし今こそスリープクラウドだよ!大丈夫呪文は覚えてる!
 発動するかどうかは別だけどね』(猫語)
「僕の方は魔法使いしか居ない学園じゃすぐに対抗されちゃうから無駄だと思ってまともに覚えてないんですけど?」
そもそもフリードリッヒはコモンマジックは苦手なのだ
『大丈夫眠りの雲じゃなくて眠りの雪にすれば発動するよ・・・・多分』(猫語)
フリードリッヒは雪と氷の魔法使い
雪や氷にアレンジすれば成功率は大幅アップである
「ではフラッペフラッペ眠りの雪よ我が障害たる陸鮫を深き眠りへと誘え!!」
フリードリッヒを中心に半径5M(メット・・・ジルベリアの単位1メット≒1m)に雪が降る
その雪を浴びた存在は抵抗しきれなければ眠ってしまうだろう
はたしてやはりスリープクラウド系列の呪文は遺失呪文なのだろうか?
127 : リリィ ◆jntvk4zYjI [sage] : 2013/07/02(火) 06:39:20.21 0
>123-126
ヘリコプターを飛ばす話になったとたん、ジェイムズが苦笑した気配を感じた。
対照的に、明らかに挙動不審になったパピスヘテプ。
「ちょ、パピちゃん大丈夫?やっぱりさっきぶつけたところが痛むんじゃあ・・・・・?」
だがリリィの問いには、はっきりした答えは帰ってこなかった。
きっとリリィが負担に感じないようにと、あえて気を使ってくれたのだろう。

>ふと気づけば、リリィの左右から三角形の岩……獰猛な動物らしき気配が猛烈に接近して居た!
>たまたまリリィとサメとの直線上にいた人間サソリが、サメの背びれに当たって真っ二つとなった。
ひいい、とリリィはすくみ上がった。
それはそうだろう、岩なのにまるで刃で両断したような切れ味なのだから。
それが1枚や2枚ではない、リリィの足元につられて、大小無数のサメが集まってきているのだ。
「えっ?ええっ?!まさかこれ全部サメ?こ、こんなの聞いてないよー!!」

>「ええ~!地中を投下して迫るサメってどんなふうに撃退すればいいの!?しかも殺さずに!」
> 「と、とにかく、みんな走って~」
>パピスヘテプが香木を撒いて、サメの注意を引こうとしている。
小さなサメ達がそれにつられ、地表に現れた。
香木を噛み砕く鈍い音の群れが、自分の骨を砕くそれに思え、リリィはぞっとした。
そして大きなサメは香木につられることなく、まっすぐこちらに向かってくる。
(どうする?箒を使う?でも・・・・・・・・)
箒は一人用だ。この場の全員を乗せて飛ぶことは不可能だ。
しかしこのままでは、ヘリコプターとやらに乗り込む前に、サメに追いつかれる!

>「危険だ、乙女よ!」
パニック状態のリリィの耳に、背後から、何かをたたきつけるような大きな音が聞こえてきた。
リリィ達に肉薄していた三角形の岩が、急に方向を変えた。
「なんで・・・・・・・あ、ジェイムズ先輩!」
>「生身の貴様等がサメに噛み付かれては堪らんだろう。」
>「我の鎧なら耐えられるから、貴様等は速く走って乗り物に乗れ。我が此奴等の気を引いて居る内にッ!」
「え?で、でも・・・・・っ!!そんなことしたらジェイムズ先輩が・・・・・・・!」
サメがジェイムズの足に噛み付いた。ガキッという甲高い金属音が響く。
彼の鎧は今のところ完全にサメの歯を防いでいるようだ。
かといって安心はできない。サメの顎は強靭だ。
リリィにはサメがどういった原理で浮き沈みしているのかはわからないが、
ジェイムズがいくら固くても、相手は地面の下を泳ぐのだ。
ただの動物のはずがなかった。
さらにいえば、数の暴力で齧られたり、最悪地中に引き込まれる可能性もあるのだ。
そんな危険はとっくに承知の上で、それでも無防備なリリィ達を逃がそうとしてくれているのだ。
(ありがと!先輩)
「行こうパピちゃん、今のうちにヘリコプターまで!!」

>「猫の跳躍力と僕のパワーさえあればヘリコプタァにたどり着くなんて簡単です」
「うわあぁぁあん!待ってよぅ!」
サメの横っ面を優雅に尻尾で叩きながら、軽々ヘリコプタァに辿り着くフリード。
>「って僕だけたどり着いても意味ないじゃないですか!
> リリィさんが居ないと操縦すらままならないというのに!!」
>『よし今こそスリープクラウドだよ!大丈夫呪文は覚えてる!
> 発動するかどうかは別だけどね』(猫語)
この姿なら魔法を使えるらしいグレンが、フリードとの合わせ技(合体しているから一体技?)で
眠りの魔法を発動させるようだ。
>『大丈夫眠りの雲じゃなくて眠りの雪にすれば発動するよ・・・・多分』(猫語)
>「ではフラッペフラッペ眠りの雪よ我が障害たる陸鮫を深き眠りへと誘え!!」
>フリードリッヒを中心に半径5M(メット・・・ジルベリアの単位1メット≒1m)に雪が降る
「・・・・・・・・・・・」
128 : リリィ ◆jntvk4zYjI [sage] : 2013/07/02(火) 06:40:00.45 0
>「おいリリィ!お前耳はついていないのか?何でこの流れで雪をまともに浴びるんだ!!」
>「起きなさい不良の子、ヘリコプターを飛ばすのでしょう?」

テオボルトとアムリーテの声が遠くから聞こえてくる。だが・・・・・・・
「・・・・・・ごめん、眠い・・・・・・・」
ヘリコプターまでたどり着いたはいいが、うっかり雪を浴びたリリィは、そのまま眠り込んでしまった。
万事休す、である。

だが、救いは残っていた。
ヘリコプターを検分していたテオボルトが、どうしてかはわからないが、と前置きした上で「多分自分は動かし方を知っている」と言い出したのだ。
>「この手のタイプの乗り物は、大量の魔力を消費する。長いこと放置されてたようだから、蓄積魔力も皆無のようだし、なおさらだな。
  お前らは私の肩に手を置いて、魔力供給を頼む。ミス・クラスタ、悪いが計算を手伝ってくれ。
  あと先に言っておくが、仮にヘリコプターを跳ばして無事現実世界に戻れたとしても、私は消耗して長時間動けなくなる。
  ・・・・・・エンカ探しは任せたぞ」

操縦席らしき場所に座ったテオボルトが、藁人形のアムリーテの協力を得て、よどみない動きで出発の準備をしている。
「先輩サン!こっちの準備はできたぞ!」
サメに群がられているジェイムズが戻ってこれ次第、すぐにもヘリコプターを跳ばすだろう。
129 : パピスヘテプ ◆/TZT/04/K6 [sage] : 2013/07/02(火) 23:23:57.04 0
ヘリコプター付近まで来たところで襲ってきた地中サメ。
三角の背びれのような岩がいくつも地中を泳いでおってくるのだ。
もちろん本体はさらにその下なのだが、背びれに当たった人間サソリが真っ二つになるのを見て顔色が青へと変わる。

生存をかけて捕食にくる相手に不殺を貫けるほどパピスヘテプは人間ができていない。
が、相手は地中という絶対防衛圏を進むのだ。
自分の術では有効打が与えられそうにない。
せめてもと、鎮静効果のある香木を投げつけてみても小さなサメが地表に現れ噛みついていく。
「う、わぁあ~……話し合いは、通じそうにないわねえ」
それを見送りながら打つ手なしと判断し、駆けだすのだが脅威はすぐ後ろに迫っていた。

「ひぃ~~。これって結構ヤバい?ああ、でもフリード君の尻尾攻撃見れたからもう死んでもいいかも」
半ばパニックになりつつも、いや、半ばパニックだからこそだろうか?
尻尾でサメの横っ面を貼る半猫フリードの姿にあらぬことを口走っていた。

そんな時、助けの声が響き渡る。
>「危険だ、乙女よ!」
ジェイムズが大きな音を立て地中サメの注意を引いたのだ。
その音に反応し地中サメたちは一斉にジェイムズの元へと殺到する。

「お、音なのね。サメたちが感知していたのは!」
ジェイムズの行動とサメの反応で地中サメの感知能力を知ったパピスヘテプ。
情報を仕入れられれば対応も見えてくるというものだ。

>「我の鎧なら耐えられるから、貴様等は速く走って乗り物に乗れ。我が此奴等の気を引いて居る内にッ!」
>「行こうパピちゃん、今のうちにヘリコプターまで!!」
「え、いや、でもあのセリフってモロに死亡フラグよ!?」
身を挺して地中サメの餌食となり時間を稼ぐジェイムズに、その気持ちを察して先を急ぐリリィ。
確かにリリィの判断は正しい。
物理攻撃を無効化するジェイムズの鎧は有名であり、絶大な信頼がおける。
が、問題はそのあとである。
無事にフリードのいるヘリコプターに二人辿り着いたとして、ジェイムズはどうするつもりなのだろうか?
あの鎧で隠密行動など不可能だし、結局は地中サメを引き連れてしまう事になる。
それでもジェイムズは地中サメを殺さない。
アンチラストとの約束と彼の騎士道精神が言霊の様にその槍を縛ってしまっているであろうから。
130 : パピスヘテプ ◆/TZT/04/K6 [sage] : 2013/07/02(火) 23:24:43.81 0
そんな事を考え思わず足をゆるめたパピスヘテプの頬に冷たいものが舞い降りてきた。
「え、雪?こんな地下で?……フリード君、ね。でもこれって……」
これがフリードの術である事に気づくのに数秒。
それがどのような術であるかに気づくのに更に数秒を要していた。

その数秒間でリリィは倒れ込むようにヘリコプターに到着し、実際にそのまま倒れてしまった。
「うーん、眠りの雲や眠りの砂は聞いたことあるけど、眠りの雪って。
相性もあるのだろうけど……結構強烈、かも……」
雪山で睡魔に襲われる、そんなイメージが眠りの雪に強力な効果を与えたのであろうか?
パピスヘテプの懐にしまってあった状態異常身代わりの術を施した藁人形が崩壊した。
幻覚の胞子に続き、強力な眠りの雪まで引き受けついにその許容量を超えたのだった。

身代わりの術がなくなった今、眠りの雪の効果はそのままパピスヘテプに降りかかる。
だが、このまま寝てしまうわけにはいかない。
押し寄せる睡魔とのせめぎあいの末。
「ね、眠るのは死んでからどれだけでも眠れるわ!
私は眠りを守る者!それが眠るわけにはいかないのよ!!!」
気合一閃、睡魔を吹き飛ばすと、ケロべロスのコートを抜き捨てた。

コートはたちまち膨れ上がり立体を得て3メートルほどの影獣ケロべロスとなって離れた場所に大きな音を立てて降り立った。
そして三つの首から発せられる大きな咆哮。
音で獲物を感知する地中サメの注意を引くためだ。

そうした中、パピスヘテプは印を結び、自分の影を右側はヘリコプターに、左側をジェイムズの元へと伸ばしていた。
影の道を作ったのだ。
「ジェイムズ先輩。影に乗ってください。引き寄せますから。
ヘリコプターの周りはフリード君の眠りの雪が降ってますから噛みついてるサメごとでも構いません」
ジェイムズの肩に乗った藁人形がその耳元で囁いた。

ジェイムズが影に乗ればすぐさま滑るように音もなく引き寄せ、二人は眠りの雪の舞う中心のヘリコプターへと辿り着くだろう。
到達するまでに地中サメが雪にまみれて地表で横たわっているのが見える。
ジェイムズに噛みついたままのサメがいたとしてもここで脱落必至であろう。
「うーん、凍った金魚は解凍すると元通りになるっていうし、大丈夫よね」
などとつい口に出てしまうのであった。

その間、影獣ケロべロスは地中サメの群れと大きな音を立てながら暴れつづけるのだった。
地中サメの群れの前では術が解け、術で編まれた影は霧散しただのコートに戻るのも時間の問題であろうがそれでも十分な時間稼ぎにはなるはずだ。
131 : ジェイムズ ◇nIuIv3TzeE[sage] : 2013/07/03(水) 19:48:44.68 0
>大小のサメ達が一斉に、ジェイムズに向かって移動を始める。
>最初にジェイムズに到達したのは小さなサメだった。
>小さなサメは自分より大きいジェイムズの太ももめがけて噛み付いた。
「MUUU…………!」

噛み付かれた所をよく見る。
すると、サメの歯が鎧に食い込み始めているではないか!

「これは……鎧に溶け込んでいるのかッ!!!」

その小さなサメを、足を大きく振ることで振り払う。
だが、眼前にはまだまだ、大小様々なサメが集まって来ている。
だがこのような絶体絶命の状況であろうと、ジェイムズは落ち着きを失わなかった。
ゆっくりと呼吸を正し、ジェイムズが取った行動は……

「GUOOOOOOOOOO!!!!」

何を思ったか槍を地面に付き立てる。
そして、そのまま思いっきり上体を起こし……
飛んだ。
さながら棒高跳びのごとく、その巨体からは考えられないような跳躍をした。
そして大小のサメの大群から背後に逃れる事で、一時的には回避した。

>「先輩サン!こっちの準備はできたぞ!」
「分かっているッ!だが其方への距離も考えてくれッ!」

そこは既に、ヘリコプターまで走ってサメに追いつかれないように行くには遠過ぎる距離だったのだ。
132 : ジェイムズ ◇nIuIv3TzeE[sage] : 2013/07/03(水) 19:49:23.03 0
その時。
>「ね、眠るのは死んでからどれだけでも眠れるわ!
私は眠りを守る者!それが眠るわけにもいかないのよ!」

>コートはたちまち膨れ上がり立体を得て3メートルほどの影獣ケルベロスとなって離れた場所に大きな音を立てて降り立った。
>そして三つの首から発せられる大きな咆哮。
>音で獲物を感知する地中ザメの注意を引くためだ。

「ム……あの音で敵を引き寄せようと言う魂胆か……良くやったッ!」

すると、ジェイムズの側に影が伸びる。

「此れは……」
>「ジェイムズ先輩。影に乗ってください。引き寄せますから。」
「……全く魔法とは、近しくも恐るべき物だったか……」
133 : ジェイムズ ◇nIuIv3TzeE[sage] : 2013/07/04(木) 00:09:09.67 0
そう呟いて影に乗り、スケートボードの如くヘリコプターへと引き寄せられて行くのだった。
134 : ◆jWBUJ7IJ6Y [sage] : 2013/07/07(日) 20:04:34.31 0
テオボルトが操作するヘリコプターは、ジェイムズが無事にたどり着くと同時に浮遊を開始した。
徐々に高度を上げるヘリコプター。
眼下ではパピスヘテプが脱ぎ捨てたコートに遅いかかる無数のサメ達と、
ヘリコプターの音に惹かれて集まったものの、
フリードの眠り雪に当たって陸に上がったマグロのごとく横たわるサメ達が見えた。
サメが太古の時代からほとんどその姿を変えることなく、
現在まで生き抜いていける秘密はその洗練されたシンプルさにあった。
だが、魔法使い達を相手にするには、そのシンプルさは単純さと同義でしかなかったのだ。

この時、リリィの体にとある変化が現れていた。
眠っているリリィ本人はわからないだろうが、その指の先、爪と皮膚の境界が無くなり、
黒く硬く変質し始めたのだ。
果たしてこれが意味するのは何なのだろうか?

一行を乗せたヘリコプターが天井に近づけば近づくほど、
まるで天井の方が逃げるように上に新しい空間が広がり、どこまでも高く登っていけるようだった。
しかし、間もなく終わりが見えてきた。
頭上に薄い膜のようなものが見えてきて、その先には太陽と青い空が見える。
ヘリコプターが薄い膜のようなものを通過したとき、それが実は水面であったことを一行は知るだろう。
彼らを乗せたヘリコプターは、洋館のすぐそばにあった湖の表面から飛び出したのだ。

さて、亜空間から帰還した一行の目的はエンカの捜索、ひいてはロゼッタを見つけることである。
ところでリリィはロゼッタが館の外にいると先ほど言った。
なるほどこのヘリコプターを使って島を上から一通り巡ればロゼッタを容易に発見できそうである。
しかし、リリィの知る由もないので仕方がないが、実はロゼッタは洋館の中へ既に入っていた(>40

島を上から巡るか、館へまっすぐ帰るか、判断が問われる場面である。
135 : パピスヘテプ ◆/TZT/04/K6 [sage] : 2013/07/10(水) 21:42:25.74 0
ジェイムズと共にヘリコプターに乗り込み、「さあ!」とテオボルトに出発を促した。
だがその「さあ!」はパピスヘテプにとっては地獄の責め苦のスタートを自ら切らせたようなものなのだ!

パピスヘテプは高い所や空中が苦手である。
大凡魔法使いとしてはふさわしくないのだが、空中には影ができない。
故に影術の大半が封じられることとなり、戦力は激減。
また、飛行能力がないので移動すらままならない。
などなど、様々な理由はつけられるが、単純にパピスヘテプは高い所が怖いのだ。

出発と共に感じる強烈な浮遊感に身が縮み上がる。
更には眼下の床が急速に離れていくその光景は、そのまま気が遠くなるに比例するようだった。

ここで打算を働かせれば、怯えたように悲鳴を上げてフリードの尻尾お尻にしがみついて思う存分その感触を堪能したであろう。
だがそんな余裕はありもしない。
怯えるあまり何かにしがみつきたい、とあればやはり同性のリリィが一番の候補なのだが、眠りの雪の効果で熟睡中。
とても抱きつけるような状態ではない、
と、なれば……
先輩であり、外骨格を思わせるような硬い鎧に身を包んだ姿。
しかも今パピスヘテプはケロべロスのコートを捨てているためむき出しお肌で、鎧に抱き着きでもしたら痛い目に合うことは必定。
流石に抱き着く相手としては憚られる条件満載なのだが、すぐ隣にいた。
それだけであらゆる不利な条件をはねのけ選ばれてしまったのだ。

「ぎ、ぎょええええ~~~~とんでるぅうううう!!」
可憐な悲鳴とは縁遠い叫び声と共にジェイムズに抱き着いたのだ。
地中を上昇するだけでこれなのだ。
地上に出て本格的に飛翔を始めればどうなるかは想像に難くないだろう。

湖から飛出し、上昇を続けるヘリコブターでパピスヘテプは錯乱状態に三歩ほど近づいていた。
「無理無理無理無理!降ろしてえええ~~~ひぃいいいい、飛んでるの怖い~~~」
悲鳴というか絶叫というか、もはや自分でも何を言っているかわかっていなさそうだ。
周囲に居合わせたものはさぞ迷惑であろうが、一番迷惑をこうむっているのはジェイムズに間違いない。

抱き着いていた、などというレベルはとうの昔に過ぎ去り、今やパピスヘテプはジェイムズの巨躯な体を這い上りヘルメットにしがみついている。
人間必死になった時の力は意外に強いものだと感じているであろう。
ジェイムズの頭部、すなわちヘルメットにしがみつき駄々をこねるようにゆする力は強い。
ともすれば暴れるあまり、ヘルメットが引き抜かれてしまう程に!

【高所恐怖症で半分パニック。危うしジェイムズのヘルメット。
周りのみんなはうるさくて迷惑ごめんなさいの巻】
136 : リリィ ◆jntvk4zYjI [sage] : 2013/07/11(木) 00:29:44.21 0
ジェイムズの陽動、フリードの雪による防御、そしてパピスヘテプのフォロー。
ヘリコプターを飛ばすことを可能にしたテオボルトの知識と、アムリーテの補佐。
全てが噛み合い、無事ヘリは離陸する。
皆の骨折りも知らず、くーくー、と寝息を立てるリリィだけが平和そうだった。
だがそれは、あくまで嵐の前の静けさでしかなかったのだが。

>「ぎ、ぎょええええ~~~~とんでるぅうううう!!」
リリィの寝息が一瞬止まったものの、現段階では、眠りの雪の効果を打ち消すだけの威力は無かった。
だがそれも、湖から地上に出るまでのことだった。
>「無理無理無理無理!降ろしてえええ~~~ひぃいいいい、飛んでるの怖い~~~」
「・・・・・・・ムニャ・・・・・え?何?何があったの?!まさかおやつ?」

まだ寝ぼけているリリィの視界に目に飛び込んだのは、おやつ・・・・・ではなく、絶叫している乙女の姿だった。
彼女は、ジェイムズの頭や体に長い手足を巻きつけている。
浅黒い肌はとても健康的なのだが・・・・・・正直、ちょっと目のやり場に困る光景だ。
彼女が恐怖のあまりぷるぷる震えていなかったら、そういうのは二人っきりの時にやるべき!と忠告するところだ。

あまりのことに現実逃避しかかっていたが、リリィはその「乙女」の声と顔には覚えがあった。
「えっと・・・・・・・もしかしなくても、パピちゃん?えっ?!ねえ、いつものワンココートはどうしたの?」
コートは亜空間で使ったのだが(そもそもワンコのコートではない)爆睡していたリリィが知るよしもない。

「ちょ、ちょっと落ち着こう?そんなにゆすったら、さすがのジェイムズ先輩だって苦しいよ。
 大丈夫だよ!テオ君が操縦してるんだもん、きっと着陸も安心だよ。
 万が一暴れてヘリコプターから落ちても、私や皆が受け止めてあげるから!」
これでフォローになっているかは、甚だ疑問である。

「ねえ、フリード君からも何とか言ってあげてよぉ。・・・・・・あっ!」
リリィは声を潜めると、フリードの耳元で大真面目にささやいた。
「――――もしかしてこういう時、止めないほうが親切だったりする?」

>「分かった!分かったからちょっと落ち着け!今屋敷の前庭に着陸させるから!
 砂浜の転移魔方陣はまだ使えそうに無いから、学園にはまだ帰れない。
 だったらロゼッタも、最低一度は荷物をとりに屋敷に戻ってくるはずだからな」

ヘリコプターは高度を落とし始めた。
パピスヘテプも地面に降りれば落ち着くだろう。
「ふう、これで一安心だね」
誰に言うでもなく口にしたリリィは、額の汗をぬぐおうとして、ぎくりとした。
「キャ――――!!キャ――――!!キャ――――!!!
 あ、ごめ・・・・・ごめ・・・ごめんなんでもないよ、うん、ぜんぜんなんでもないから!!
 は、早く地面に降りたいよね!すごいよく分かるよ!」
137 : リリィ ◆jntvk4zYjI [sage] : 2013/07/11(木) 00:30:55.08 0
リリィは蒼白な顔ながらも、必死でその場を取り繕うとした。
確かに我を忘れ半狂乱になりかけたのだが、幸か不幸か、目の前には自分以上に取り乱すパピスヘテプがいる。
おかげで何とか踏みとどまれた。

リリィはごしごしと目をこすった後、再度おずおずと自分の手を確認する。
何度見直しても、指先の第一関節までが、黒く硬く変質していた。

・・・・・・・・どうやら見間違いでも、夢でも無いらしい。
(何これ?私の手が・・・・まるで昆虫の足みたいに。何で?何がどうなってるの?)
戸惑い恐れるリリィの耳に、幻聴と呼ぶにはあまりにも鮮明な声が聞こえてきた。

>「肉体をモって慟哭せよ。人間とは何ぞや?」

「そう・・・・・・・そういうことなのね、アンチラストちゃん」


ヘリコプターは乗員の騒ぎっぷりとは裏腹に、ごく静かに着陸を果たした。
「テオボルト君お疲れ。パピちゃんにジェイムズ先輩、大丈夫でした?」

リリィはポケットに両手を突っ込むと、極力普段どおりの調子で口を開いた。
「これで亜空間からは無事生還できたわけだけど、皆、体は平気?
 何か違和感とか、気になることがあったら聞かせてね?」
リリィは、自分の指先が変質した理由を、まだ確定できていないようだ。

「とりあえず私は、ロゼッタちゃんが屋敷の中にいないとしても、ひとまず中に戻るよ。
 そもそも、エンカと最後に会ったのは館の中だし・・・・・・・。
 あても無くロゼッタちゃんを探して島の中を探し回るよりは、エンカに会える確率高いと思うし。
 皆はこれからどうするの?」」
とりあえずテオボルトは、ヘリコプターの中で一休みする気のようだ。
そしてリリィは、アンチラストの意図を、完全な形では理解していないようだ。

「じゃあ、もう一度館の中に・・・・・・行って来ます!」
リリィはヘリコプターを降りると、硬い表情で館の中へと入ろうとする。
何も変わったことが無ければ、彼女は館の地下室を目指そうとするだろう。
138 : フリードリッヒ ◆cOOmSNbyw6 [sage] : 2013/07/11(木) 10:16:25.00 0
>「――――もしかしてこういう時、止めないほうが親切だったりする?」
「さあ?僕はこういうのは疎いのでわかりかねます」
とフリードリッヒ
過去のトラウマ云々で恋愛関係にはなるべく関わりたくないようだ
『でもあの二人ってそういう関係になるような接点って皆無だよね』(猫語)

屋敷の前庭に着陸するヘリコプター
>「じゃあ、もう一度館の中に・・・・・・行って来ます!」
「え?せっかく出たのにまた入らなくちゃけないんですか!?」
だが同行しないという選択肢はフリードには存在しなかった
「ええい!こうなったらヤケです!アンチラストちゃん遊びましょう!!」
そう言ってリリィに追従するフリードリッヒ
はたして中は前に入っていった時と同じような状態なのだろうか?
『さっき暴れたばかりなのに綺麗になってたら怖くね?』(猫語)
「そういえば後片付けもしなくてはいけませんし
 アムリーテさんのボディも回収しなくてはいけませんよね
 遺物という名目で総帥にでも引き渡したら成績におまけしてもらえるんじゃないでしょうか?」
『あの人なんか世界征服企んでそうだし
 それよりからくり職人のゼベットさんにあげたら?』(猫語)
「そして完全にメイド仕様に改造されるんですねわかりません」
ゼベット爺さんは一体何者なのだろうか?
「また暴走されても困りますし
 最低でも戦闘力がない状態にしてしまわないと
 それともゼベット爺さんに新しい体作ってもらって今までのは封印してもらいましょうか?」
そんなこんなを話しながら再び屋敷の中へ入っていくフリードリッヒ
はたして中の様子は?
139 : ジェイムズ ◇nIuIv3TzeE[sage] : 2013/07/13(土) 07:31:14.13 0
>>134
「ほう……どんどん天井が引き、ヘリコプターが上昇しているのか……」

あまりの高度に大騒ぎしているパピスヘテプとは裏腹に、驚くべき仕組みに感心している様子のジェイムズ。
すると……

>「ぎ、ぎょええええ~~~~とんでるぅうううう!!」

突然、パピスヘテプがジェイムズの鎧にしがみついてきたのだ!
「!!…………乙女よ、少し落ちt」
>「無理無理無理無理!降ろしてえええ~~~ひぃいいいい、飛んでるの怖い~~~」
「……………!!!」

御構い無しに悲鳴を上げるパピスヘテプだったが、その時ジェイムズの兜の中では、皆が予想するよりも遥かにとんでもないことが起こっていた。
ただでさえ大きな悲鳴が、兜の中に入り込んで何度も何度も反響しているのだ!!
それも不意を突かれた上に、パピスヘテプの抱き着きによる重量+振動付きで。
流石の精神力を持ったジェイムズも、これには気を失い掛けた。

「ヌゥウ………」

そのうち、パピスヘテプは兜に抱きついて来てしまった。
攻撃するわけにもいかず、必死にパピスヘテプの手をガードして牽制しているが、
もうジェイムズの兜の耐久力はほぼ限界に近くなっている。
その時。

>「分かった!分かったからちょっと落ち着け!今屋敷の前庭に着陸させるから!
 砂浜の転移魔方陣はまだ使えそうに無いから、学園にはまだ帰れない。
 だったらロゼッタも、最低一度は荷物をとりに屋敷に戻ってくるはずだからな」

「(これで助かったッ!!早くこの乙女を落ち着かせ無ければ……)」

危機一髪、と思いきや。

>「キャ――――!!キャ――――!!キャ――――!!!
>  あ、ごめ・・・・・ごめ・・・ごめんなんでもないよ、うん、ぜんぜんなんでもないから!!
> は、早く地面に降りたいよね!すごいよく分かるよ!」

「ヌゥッ!?」

パピスヘテプの悲鳴に慣れ始めていた頃、不意に響いた新しい黄色い悲鳴。
流石のジェイムズもこれには対応できず、ついガードしていた手を放してしまった!
そして、ついに兜の限界が訪れる。

「GUUU………!!」
一瞬だけ、本当に一瞬だけ、見えるか見えないか、そんな瞬間だった。
彼の素顔が、一瞬だけ晒されたのだ。
透き通るように蒼い髪は短く切り揃えられ、
全てを見透かすような真紅の瞳は鋭い輝きを放ち、絶対的な覚悟を思わせる。
古代の彫刻のような美しさと凛々しさを兼ね備えた、整った顔立ち……
が、見えたのはほんの百分の一秒ぐらいの瞬間だった。見えたとしても、ハッキリとは見えていないだろう。
何故なら、彼は兜の限界が来たとわかるや、とんでもないほどの力でパピスヘテプから兜を取り返し、目にも留まらぬ速さで再装着したからだ。
余程素顔を見られたくないのか……そんな感じであった。

「………………………まあ、落ち着け。」

その後、地上につくまでに気不味い雰囲気になったのは言うまでもない。
ちなみに、鎧装備のジェイムズをここまで追い詰めたのは彼女が初めてであったというのは、また別の話である。
140 : ロゼッタ ◆jWBUJ7IJ6Y [sage] : 2013/07/13(土) 08:52:47.18 0
時は少し遡る。
リリィ達がアンチラストと邂逅していた頃、ロゼッタは洋館のエントランスの、
地下へ続く扉の前で、膝を抱えるようにして座り込んでいた。
ずっとうつむいていた彼女が顔をあげたのは、
ちょうどお尻のあたりにムズムズとした感触を感じたからだ。
見ると、変形した扉の隙間から、体の下半分がちぎれた、大きなムカデが這い出してきているではないか。
「…??」
大きなムカデはキーキーと弱々しく鳴きながら這っていく。
そしてそのまま脇にある通風孔の中へと入っていった。
ロゼッタは意味もなく、扉の隙間から通風孔にかけて、
ムカデの体からにじみ出た黄色い体液のラインを指でなぞった。

館の外で、風を斬る音がした。
リリィ達を乗せたヘリコプターが館の前庭に着陸したのだ。
間もなく、よく知った顔がロゼッタの目に映った。リリィとフリードだ。
どうやら入ってきた二人もロゼッタに気がついたようである。
「……開かないの」
ロゼッタは二人にそう言った。
事実、地下へ続く扉はその向こう側で起こった大惨事により通行できなくなっていた。
例えばフリードのパワーならぶち壊して中に入ることも出来るかもしれないが、
その場合、扉の前に座っているロゼッタが邪魔である。
だがロゼッタは二人の都合などお構いなしに、脈絡のない話を始めた。
「あたいが生んだ悪魔な……あれは絶世の美女だ。
 抜群の姿、形をしていて、気まぐれで聞き分けがなくて、
 どこまでも傲慢で、自分の美しさを他と比較しようとする気持ちすらない。
 評価されることさえ拒むかのように、触れた瞬間に切れてしまいそうな鋭利な暴力は、
 けれどいつだってたった一人のパートナーを求めてきた。
 選ばれたパートナーはたった一人………」
141 : ロゼッタ ◆jWBUJ7IJ6Y [sage] : 2013/07/13(土) 08:54:13.92 0
同時刻、洋館の前庭にて。
それはちょうどヘリコプターから残っていたメンバーが降りた、その時であった。
空から何か大きな物が降ってきて、ヘリコプターを押しつぶした。
落ちてきたそれは、エンカが作ったタンポポ色の自動車だった。
自動車の中には、緑色に光るシャボン玉が無数に漂っている。

上空から、白い翼が生えた人間らしき影がゆっくりと降下してきた。
遠目に見れば、それは天使のようにも見えるかもしれない。
しかし、徐々にはっきりとその姿が見えてくれば、彼女がそれとはまったく真逆の存在であるとわかるだろう。
マリアベルの実験生物の一体だろうか?否。
彼女は、今いるメンバーの中ではリリィとフリードだけがその正体を知る、悪魔だった。

名前・ キラー・チューン
性別・ ♀
髪型・ メスライオン頭(としか言いようがない)
瞳色・ 赤色
容姿・ 背中に白い翼がついた筋肉質なメスライオンの獣人。意匠はギリシアのスフィンクスに似ている。
   美しくも暴力的な外観は、そのまま彼女の性格を表している。
備考・ とある魔女が“魔道書アナベル・ガトーの鍵”をつかって召喚した“悪魔”。
   ただし、前述の魔道書は使い手の深層心理に秘められたエネルギーを具現化する方法が記されたものであり、
   “悪魔”とはそのエネルギーを擬人化するための方便である。
   よって、キラー・チューンも種族的には悪魔ではなく、実体をもった精神エネルギーと解釈するのが妥当だろう。
   呼び出した魔女にとっては娘でもあり、自分自身の分身とも言える存在である。
   本来は他の人間が前述の魔道書を使ったならば、異なる容姿と能力を持つ“悪魔”となるのだが、
   とある事件により呼び出した魔女が死にかけたため、彼女を生かすために別の人物が代わりに契約者となった。
得意技・空気を爆弾に変える能力

キラー・チューンは、見ようによっては穏やかな顔をして降りてきたが、次の瞬間には憤怒の表情へ変わる。
『ぜぁぁあああああああああああああああああぁああああああああああああああああっっっ!!!』
キラー・チューンの叫びに呼応し、自動車の中に漂っていた無数のシャボン玉が、
自動車と、それが押しつぶしたヘリコプターを巻き込んで大爆発を起こした。
洋館の中にいるロゼッタ、リリィ、フリードの耳にもその音が聞こえないはずがない。
「あぁ…いいぞ」
ロゼッタは両手で自分の顔を包み、頬を赤らめながら言った。
「いい音だぁ~。そうだ…そうやって動かせばいい。
 もっとその名を愛してやってくれ…」

キラー・チューンは燃えるヘリコプターを一瞥もせずに前庭に舞い降りた。
その様子を、洋館の最上階の窓から赤毛の少女が眺めていた。
>「これで亜空間への扉は全て消え去った。アンチラストは………死んだも同じよ」
赤毛の少女はそうつぶやくと、館の奥へと姿を消した。
その口に歪んだ笑みを浮かべながら…
142 : リリィ ◆jntvk4zYjI [SAGE] : 2013/07/14(日) 11:44:03.92 0
>「え?せっかく出たのにまた入らなくちゃけないんですか!?」
「だってだって!エンカが消えたのは屋敷の中でしょう?
 あの瞬間に瞬間移動の能力に目覚めたって言うなら、別の場所に居てもおかしくは無いけど・・・・・・。
 それに私、どうしてもアンチラストちゃんの資料を調べないと・・・・・・っ!」
リリィはそこまで言いかけて、慌てて口をつぐんだ。
「と、とにかく、念のためにテレパシーで、エンカに呼びかけてみるよ。館まで来てくれって。
 皆もそれでいいでしょう?」

>「ええい!こうなったらヤケです!アンチラストちゃん遊びましょう!!」
「アンチラストちゃんと妹さん、おじゃましまーす!」
一緒に屋敷へと急ぐフリードとリリィ。
>『さっき暴れたばかりなのに綺麗になってたら怖くね?』(猫語)
「あの広間に入るのはちょっと恐いかも。
 とりあえずは、私、エンカを探しがてら、地下室でアンチラストちゃんの資料を調べたいのよね」

>「そういえば後片付けもしなくてはいけませんし
> アムリーテさんのボディも回収しなくてはいけませんよね
フリードとグレンは、アムリーテを総帥かゼベットに引き渡す話をしている。

「アムリーテちゃんの本体がある場所まで戻るのは、ちょっと難しいかもしれないね。
 だから、今の状態が既に封印されてるも同然かも」
エンカを消したビームで、部屋の入り口が壊されてしまったからだ。
「本体は凄く頑丈だし、後で学園の先生達に回収してもらっても大丈夫じゃないかな?
 それから・・・・・・学園がどんな判断を下すかは分からないけど、私もゼベットさんに預けるのがいいと思う。
 アムリーテちゃんの擬似人格のことは門外漢で、全然良く分からないけれど・・・・・・。
 最初に会った時、私からロゼッタちゃんを守ろうとしたのは、演技なんかじゃ無かった気がするんだ」

リリィはごくりと生唾を飲み込むと、フリードの横顔を伺った。
「それとね、実はちょっと話があるの。えっと――――これを見てちょうだい。これ、どう思う?」
リリィはフリードに、変形した自分の手を見せた。
「多分アンチラストちゃんのと同じ。だから自分の状態を知りたくて、資料も探したいの。
 このこと・・・・・・・皆には黙っててくれる?心配掛けたくない」
エンカを探している今、余計な心配かけるのは本位ではない。
が、自分の身に何かが起こる可能性を考えても、一番気心の知れたフリードには明かしておく必要があった。
彼は逸般人と呼ばれるジルベリア出身のせいか、トラウマ以外の事なら大抵のことでは驚かない。
だから今のリリィの状態を知っても、それほど動揺しないでいてくれる、そうリリィは考えたようだ。
143 : リリィ ◆jntvk4zYjI [sage] : 2013/07/14(日) 11:45:04.99 0
リリィは自虐的に微笑む。
「ずるいよね、私。フリード君に甘えてる。
 それにね、アンチラストちゃんには偉そうなこと言ってたのに・・・・・・。
 いざ自分が変化するとなると、恐いんだ。凄く、恐い」

リリィは自分の告白を終えると、慌てて話題を変えた。
「そういえば、さっきジェイムズ先輩の鎧、一瞬だけ剥がされてたよね?フリード君見えた?
 私チラッとしか見えなかったけど、良かった。『ジェイムズ先輩は鎧が本体だ』って噂がデタラメで。
 学園に帰ったら、皆に教えてあげなくちゃね。
 でも、今まで誰も出来なかったことを簡単にやってのけちゃう、パピちゃんって凄いね!」

洋館のエントランスに入ると、地下へ続く扉の前で、ロゼッタが膝を抱えるようにして座り込んでいた。
「ロゼッタちゃん!無事だったのね良かった!ねえ、エンカは?エンカ知らない?」
>「……開かないの」
「そんな・・・・…」
リリィは真っ青になった。どうやらアムリーテのビームは、思った以上に破壊力があったようだ。
「フリード君ならドアくらい壊せるだろうけど、中が瓦礫で埋ってたら大変な作業になるかもしれないね。
 ・・・・・・・あれ?ねえロゼッタちゃん、その黄色いマークは何?」
黄色いマークは、通風孔へと続いていた。
「うーん、頑張ればここ通れるかな?ねえ、皆はどう思う?」

>だがロゼッタは二人の都合などお構いなしに、脈絡のない話を始めた。
>「あたいが生んだ悪魔な……あれは絶世の美女だ。 (略)
> 選ばれたパートナーはたった一人………」
「いや、そのパートナーが消えたから、私達探してて・・・・・ちょっとロゼッタちゃん、聞いてる?」

その時、空気を振るわせる爆音が響いた。
「な、何今の?!」
どうやら館の外で何かが起きたようだ。
>「あぁ…いいぞ」
>ロゼッタは両手で自分の顔を包み、頬を赤らめながら言った。
>「いい音だぁ~。そうだ…そうやって動かせばいい。
> もっとその名を愛してやってくれ…」

地下のことは気になるが、外の爆発音も気になる。
優先順位から行けば、同行している仲間の安否が最優先に決まっている。
「振り回してごめんフリード君、ちょっと外の様子を見に行こう!」

リリィは洋館の入り口を開け放った。
するとそこには、大惨事としか言いようの無い光景が広がっていた。
爆発炎上するヘリコプターと、ぶつけられた何か・・・・・・形から察するに、エンカのジドウシャだろうか?
そして炎を背景に立つのは、白い翼に赤い瞳の悪魔。
「アップル・シーナ?!・・・・・・じゃなかった!キラー・チューン!
何てことするのよ、そのジドウシャ、エンカが頑張って作った力作だったのに!
 ・・・・・・・って、あなたがここに居るって事は、ご主人様であるエンカも無事だってこと?――――はっ!」
キラー・チューンと視線が合った途端、リリィはそそくさとフリードの背後に隠れた。
144 : パピスヘテプ ◇/TZT/04/K6 :[sage 代理投稿] : 2013/07/15(月) 14:39:22.93 0
迷宮にも似た薄暗い墓所で幼少時代を過ごしてパピスヘテプにとって、開けた空と地に足のつかぬ高い場所は恐怖でしかない。
静寂と安寧、鎮静を司る者としてはあるまじき醜態であるが、こればかりはどうしようもなかった。
リリィのフォローも戸惑いがちなジェイムズの制止もフリードの呆れ声も耳に入らず、落ち着いたのはヘリコプターが着地してしばらくの事だった。

落ち着いたとはいえ散々暴れて喚き倒した為に、両手両膝をついて肩で息をするパピスヘテプ。
>「テオボルト君お疲れ。パピちゃんにジェイムズ先輩、大丈夫でした?」
その言葉にも無言で片手をあげるのが精一杯。
だが、リリィがフリードと共に館に向かうとなればそうも言っていられない。
「ちょ、ちょっと!ああ、さっき私とエンカ君は二手に分かれた時に襲われたのよ。
絶対一人になっちゃだめだからね!」
未だ腰が抜けて二人のあとを追えないのだが、同じ轍を踏むわけにはいかないと声を上げた。

それからしばらくしてようやく回復したパピスヘテプは顔を真っ赤にしてジェイムズに頭を下げるのであった。
「た、た、た、、大変失礼しましたー!」
パニック状態でジェイムズの兜を取ってしまったことはもちろん、その素顔を晒した自覚も認識もないのだが迷惑をかけたのは流石にわかる。
ただただ小さくなって何度も頭を下げるほかなかはない。
そんな時に響く『キュ~~~~~クルクルクル』という腹の音。

さて、パニック状態というのはその時は無我夢中で気づかないのではあるが、その実消耗の激しい行動である。
もともと燃費の悪い事も相まってお腹が催促のラッパを鳴らしたのだ。

「あ…あはっ、あははは。いや~もう……
そ、それじゃあ私たちは館の周囲を探しましょうか」
余りのタイミングの悪さとバツの悪さにもう笑ってごまかすしかない。
何とか話を変えようとロゼッタ探索へと切り替えたのだ。

空腹状態ではあるが、ここで食事をとる事は出来ない。
食べにくい状況ではあるが、それでも状態回復と思えば必要性はそれに勝る。
が、それでも食事ができないわけは……洞窟で喰らったリリィの後頭部にあった。
鼻血は既に止まっているが、前歯がグラグラとしているのだ。
一方、パピスヘテプの持ち込んだ食料は栄養満点であり保存がきくようにしてあるものばかり。
即ち、柔らかいものがないのだ。

食事を諦め小さくため息をつきながらも、ただ一つ残った幸運を噛みしめて空腹を紛らわそうとしていた。
その幸運とは、ジェイムズと一緒にロゼッタ捜索ができるという事だ。
先輩であり、よくない噂ならどれだけでも入ってきているし、実際会ってみてからの見え隠れというか、あまり隠れていない奇行は噂を裏付けている。
一対一ではあまり関わりあいたくはない、というのが正直な気持ちだった。
しかし同じ先輩のジェイムズがいるならば相応に対処してくれるであろうという希望があるからだ。
二人が面識があるかどうかは知らないが、それでも十分な幸運なのだから。
145 : パピスヘテプ ◇/TZT/04/K6[sage] : 2013/07/15(月) 14:40:19.59 0
そうして歩き出した瞬間、背後から鳴り響く激突音。
振り返ればエンカの自動車が降ってきてヘリコプターを潰していた。
「え?ええぇ!?どうして?それに、何?」
驚き確認の為に走り出そうとした足がぴたりと止まる。
自動車を追うようにゆっくりと降下する人影を見つけたからだ。

翼を持ち、雌ライオンの頭の獣人は穏やかな表情とは裏腹に獰猛さを醸し出す。
カンテラを掲げ注意深く観察していると、穏やかな表情が憤怒に変わった。
>『ぜぁぁあああああああああああああああああぁああああああああああああああああっっっ!!!』
凄まじい咆哮と共に自動車の中のシャボン玉が自動車とヘリコプターと共に大爆発を起こした。
「な、な、何?なんなの??」
荒れ狂う爆炎と衝撃波はケロべロスのコートを捨てて防御力の下がったパピスヘテプには少々荒々しいものだった。

なんとか耐えきった後、大きく息を吐き冥炎のカンテラに香木をくべる。
パピスヘテプを中心に降りてきた獣人のいる場所も含め、辺りは紫の光と穏やかの香りに包まれ、鎮静効果の結界が展開された。
本来は死霊用の術であり、生きているものにどれだけ効果があるかは未知数ではあるが、それでもやる事は変えられない。

「こんにちは、私はパピスヘテプ。あなたは……」
その返事は館から飛び出てきたリリィによって告げられる、
>「アップル・シーナ?!・・・・・・じゃなかった!キラー・チューン!
>何てことするのよ、そのジドウシャ、エンカが頑張って作った力作だったのに!
> ・・・・・・・って、あなたがここに居るって事は、ご主人様であるエンカも無事だってこと?――――はっ!」
「あら、知り合いだったの。
しかもエンカ君の関係者だなんていいタイミングだわ。
キラー・チューンでいいのね?
わたしたちエンカ君とロゼッタ先輩を探しているのだけど、知らない?」
和やかに、無防備に尋ねながらもその内心は穏やかではなかった。

キラーチューンのご主人様がエンカだという事は自動的にキラーチューンはエンカの使い魔だという事になる。
行方不明のエンカがどういう状態なのかわからぬ以上、エンカのジドウシャをヘリコプターに落しての登場はそれなりの想像に行き着くのだから。
あまり考えたくなかったが、憑りついたマリアベルを祓う術は失敗したのだろう。
エンカが未だ操られているのであれば、使い魔のキラーチューンの支配権もエンカを介したマリアベルにあると考えられる。
マリアベルが何を目的にしているかは不明だが、敵対している以上、キラーチューンも敵だと言えるのだ。
慌ててフリードの背後に隠れたリリィの反応もそれを裏付けている。

もっとも、リリィとキラーチューンの事情を知らないので、すっかりリリィも自分と同じ推論に到達している、という間違った判断ではあるが。

以上の推論はジェイムズの肩に乗る藁人形によって耳打ちされていた。
「鎮静結界張っていますけど、話し合いが通じないようであれば助けてくださいね」
そう付け加えて。

そんな水面下でのやり取りをしながらパピスヘテプはキラーチューンに向き合いたおやかな笑みを浮かべ返事を待っている。
146 : フリードリッヒ ◆cOOmSNbyw6 [sage] : 2013/07/21(日) 09:45:12.33 P
>140>143>145

>「それとね、実はちょっと話があるの。えっと――――これを見てちょうだい。これ、どう思う?」
「そういえばこの前はペンギンに変身してましたよね?」
『今回は虫系っぽいね』(猫語)
何だそんなことかとばかりに答えるフリードリッヒ
>「多分アンチラストちゃんのと同じ。だから自分の状態を知りたくて、資料も探したいの。
 このこと・・・・・・・皆には黙っててくれる?心配掛けたくない」
「安心してください僕は何も言いませんよ
 というより人間の言葉を喋ることが出来るだけこの前のペンギンよりはましじゃないかと思うんですよ」
一人と一匹はだいぶお気楽である
だが待ってほしいこの変化は前の種族変化と違って一生続く危険性があるのではなかろうか?

>「ずるいよね、私。フリード君に甘えてる。
 それにね、アンチラストちゃんには偉そうなこと言ってたのに・・・・・・。
 いざ自分が変化するとなると、恐いんだ。凄く、恐い」
「僕はまだ変身の経験は無いんですけどグレンはどう思います?」
『一気に変わるんじゃなくて徐々に変わっていくパターンは僕も未経験だよ
 でも人間になるのは二度とごめんだね』(猫語)
そうグレンは以前人間に変身してしまったことがあるのだ

「僕たち魔法使いにとっては肉体はただの入れものです
 種族や性別ですら不安定でいつ変わってしまってもおかしくはありません
 それにさっきまで機械人形やら藁人形の体だったんですから
 逆にだいぶ状況は改善されたと考えるべきです」
『逆に考えるんだまた無機物じゃなくて良かったと考えるんだ』(猫語)

>「……開かないの」
「姉さんの髪形をイメージしたフリージングドリルでぶち壊せば
 ・・・・・お姉さんどいてそいつ壊せない!!」
『魔法(物理)ですね・・・ごめんなさい解りかねます』(猫語)


屋敷の扉から出た先で見た光景
それは炎を背景に立つスフィンクスに似た悪魔であった
アップル・シーナ?!・・・・・・じゃなかった!キラー・チューン!」
「げぇ!キラーチェーン!!」
まるでゆで作品のキャラのような驚愕の表情を見せるフリードリッヒ
『しいなりん・・・じゃなったキラーカー・・・でも無かったキラーチェーン!?』(猫語)
彼女は歌手でもレスラーでもなくあくまで悪魔である
「良かったやっぱりエンカさんは生きてるようです」
『で、今回は敵なの?味方なの?キラーチェーン』(猫語)
>「あら、知り合いだったの。
 しかもエンカ君の関係者だなんていいタイミングだわ。
 キラー・チューンでいいのね?
 わたしたちエンカ君とロゼッタ先輩を探しているのだけど、知らない?」
和やかに話しかけるパピスヘテプ
だが相手はFSC(ファイナルサディスティッククリーチャー)である
どうなってもおかしくはないのだ
「いざとなったら全魔力を使ってもここは食い止める先に行けを行使せざるおえません」
『それ死亡フラグだよフィー坊!!』(猫語)
147 : ジェイムズ ◇nIuIv3TzeE[sage 代理] : 2013/07/26(金) 20:05:41.76 0
「……ム……地上か……」
腹の空いているらしいパピスヘテプと共に地上に降り立ったジェイムズ。

「(我々はロゼッタとか言う者を見付け出し、彼女からエンカとやらの情報を聞き出す………か。)」
「(ロゼッタ……確か、同学年の者だったか……)」
「(彼女については何かと良く噂を耳に為る……果たしてどの様な人物なのだろうか……?)」

と、思考を巡らせていたその時だった。
背後から不意に響く爆発音。
ジェイムズはそれに対して瞬時に反応し、冷静に槍を構えて警戒態勢を取る。

>「アップル・シーナ?!……じゃなかった!キラー・チューン!
>何てことするのよ、そのジドウシャ、エンカが頑張って作った力作だったのに!
>…‥‥って、あなたがここに居るって事は、ご主人様であるエンカも無事だってこと?________はっ!」

「……………」
「(恐らく………無事でない可能性が高いな………)」
「(あの化物がもしエンカとやらの下僕であると為るならば……)」
「(主人であるエンカの作った物を壊しはせんだろう………)」
「(野良と化したか……あるいは主人を失った事で暴走したのか……)」
「(兎に角、話を聞かぬ事には分からんな)」

>「鎮静結界張っていますけど、話し合いが通じないようであれば助けてくださいね」
「…………あぁ………」

と、キラー・チューンとかいう化物の返答を、パピスヘテプ共々臨戦態勢を崩さずに待つ事にしたのだった。
148 : ロゼッタ ◇jWBUJ7IJ6Y[sage 代理投稿] : 2013/07/27(土) 11:51:50.11 0
>143>145
> 「アップル・シーナ?!・・・・・・じゃなかった!キラー・チューン!
> 何てことするのよ、そのジドウシャ、エンカが頑張って作った力作だったのに!
>  ・・・・・・・って、あなたがここに居るって事は、ご主人様であるエンカも無事だってこと?――――はっ!」
『リリィ……!』
リリィと目があったキラー・チューンは顔全体に青筋をたてた。
リリィはそそくさとフリードの背後に隠れたが、フリードもまたキラー・チューンとは浅からぬ因縁があった。
キラー・チューンの脳裏をよぎるのは殺意いっぱいの思い出である。
> 「あら、知り合いだったの。
> しかもエンカ君の関係者だなんていいタイミングだわ。
> キラー・チューンでいいのね?
> わたしたちエンカ君とロゼッタ先輩を探しているのだけど、知らない?」
『アタシは、お前を知らないぞ…!』
キラー・チューンはパピスヘテプにそう答えた。
意味がわかりにくいが、どうやら見ず知らずのお前にそれを言うつもりは無いと言いたいようだ。
パピスヘテプは「いいタイミング」だと言ったが、言葉とは裏腹に状況が良くないとすぐに悟るだろう。
これは悪いタイミングだ、と。

キラー・チューンはパピスヘテプのカンテラを突然ひったくった。
もしもそれでパピスヘテプがバランスを崩したとしてもおかまいなしである。
キラー・チューンはカンテラを放り投げながら言った。
『エンカから、ひょ、兵法というモノを教わった。ひょ、兵法とは気持ちがいいものだ。フフ、フ』
一瞬だけノロケた笑みは、またすぐに引っ込んだ。
キラー・チューンはパピスヘテプを指差して言った。
『お前は、ぐ、“軍師”というものだな?』
キラー・チューンはジェイムズに視線を移した。
『お前は……“城”だ』
キラー・チューンが腕を動かした瞬間、ボッ!!という音とパァン!!と爆ぜる音が同時に鳴った。
見ると、ジェイムズの肩の上にいた藁人形が粉々になっている。
キラー・チューンが見えない速度で小石を藁人形へ投げつけた結果そうなったのだ。
『ぐ、軍師は城の中から、愛想笑いをしていれば、い、戦にならないと思っている。ムカつく奴だ…!』
キラー・チューンはパピスヘテプの足元の地面をえぐるように蹴り上げた。
小石や泥をまともにかけられたパピスヘテプの顔からは笑みが消えるだろうとキラー・チューンは思った。

次にキラー・チューンは、文字通り飛んでフリードに迫った。
『へ、“兵卒”の、く、崩れるところを知るべし』
キラー・チューンの背中の羽から、緑色に光るシャボン玉が一つ飛び出し、風向きをまるで無視してフリードの面前に迫った。
エンカの自動車を爆破するのに使った、あのシャボン玉である。
フリードの顔の前でパァン!!と破裂したそれは、しかしほとんど対した威力はなかった。
本命の攻撃は、続けざまにキラー・チューン本人が繰り出した巨大なビンタであった。
いわゆる猫だましである。

先ほどの攻撃でフリードがどうなろうと、キラー・チューンにはある一つの目的があった。
隠れるものが無くなったリリィの前にキラー・チューンが迫り、こう言った。
『お前は、ひょ、“兵糧”だ。リリィ……!』
キラー・チューンはリリィを抱きかかえ、すぐさま飛び去ろうとした。
彼女を連れ去るつもりだ。
149 : フリードリッヒ ◆cOOmSNbyw6 [sage] : 2013/07/30(火) 10:19:52.29 P
>『へ、“兵卒”の、く、崩れるところを知るべし』
「そんな弾幕(?)・・・!?」
だがそれはフェイント
本当の攻撃は超強力な物理攻撃
いわゆるビンタであった
「うぼぁ~」
まともに食らい4つの耳すべてから血を噴き出し空中を三回転半してから地面へ落下するフリードリッヒ
いくらなんでも大げさすぎるダメージである
「だ、大丈夫です見た目よりはダメージは少ないですから・・・・」
その割にはソウルユニオンは解除されフリードリッヒとグレンの一人と一匹に戻ってしまっている
色々ぶっちゃけるとソウルユニオンの時間制限が切れたのだ
そしてフリードリッヒはソウルユニオンに時間制限があるなんて
そんなこと私知らなかった状態であったのだ
「そんなことよりリリィさんが浚われてしまいますよ!!」
『そうはいってももう当分ユニオンは使えないよ!! 』(猫語)
普段のフリードリッヒの機動力では獣の動きに対抗できないだろう
「獣には獣!馬の機動力なら何とかなるに違いありません!!
 ジェイムズさん!!」
だが待ってほしい馬は飛べないのではないだろうか?
「ええい攻めて僕が姉さんみたいに空を飛ぶ術が使えれば!!」
フリードリッヒの姉は半径1mほどの巨大な雪の結晶に乗って空を飛ぶことができるが
フリードリッヒにはそれができない
そもそも飛行能力持ちがほとんどいない
フリードが思いつく限りでは浚われそうになっているリリィ本人だけである
はたしてどうなってしまうのか?
150 : リリィ ◇jntvk4zYjI[sage] : 2013/07/31(水) 22:46:33.94 P
時間は少し遡る。
リリィの変質した指先を見ても、フリードはいちいち動じたりはしなかった。
>「そういえばこの前はペンギンに変身してましたよね?」
>『今回は虫系っぽいね』(猫語)
このように、リリィは本人が望む望まざるにかかわらず、トラブルに巻き込まれる傾向があるからだ。

>「安心してください僕は何も言いませんよ
> というより人間の言葉を喋ることが出来るだけこの前のペンギンよりはましじゃないかと思うんですよ」
「そ、それもそうだね!ペンギンよりはましだよね!
 ただね・・・・・・なんかさ、知らないうちに一気に変身ってのは「姿変えの魔法」かなって思えたんだけど・・・・・・。
 こう、ゆっくり変質していくっていうのは、なんというか・・・・・。
 アンチラストちゃんには申し訳ないけれど、精神的にきついのよね」

>「僕たち魔法使いにとっては肉体はただの入れものです(略)
 逆にだいぶ状況は改善されたと考えるべきです」
『逆に考えるんだまた無機物じゃなくて良かったと考えるんだ』(猫語)
「そ、そうだよね!前はペンギンだったし、さっきは藁人形だったんだもん!
 一応人間だししゃべれるんだから、はるかに前進してるよね!
 例えるなら、ギズモちゃんとフリード君がソウルユニオンした後、元の姿に戻れない程度の不自由さだよね!
 ・・・・・・うん、フリード君ありがとう!なんか元気でたかも。私、がんばるね!」
当事者以外には分かりにくい比喩であるが、とにかくフリードの慰めは、リリィを励ましたようだ。
151 : リリィ ◇jntvk4zYjI[sage] : 2013/07/31(水) 22:47:35.66 P
そして現在。
>「あら、知り合いだったの。
>しかもエンカ君の関係者だなんていいタイミングだわ。
>キラー・チューンでいいのね?
>わたしたちエンカ君とロゼッタ先輩を探しているのだけど、知らない?」
「わー!わー!ロゼッタちゃんなら中にいたよ!それより危ない早く逃げて!
 確かにキラー・チューンはエンカの使い魔だけど、元はロゼッタちゃんの悪魔なんだよ!
 言葉は理解してるけど、話は通じないの!それこそ腕尽くでないと!」

ロゼッタの噂くらいは、(あまりそういった方面に興味がなさそうな)ジェイムズも聞き及んでいるだろう。
彼女は、学園でも評判の変わり者である。
自称宇宙人である事や、左手愛好家という特殊な性癖に起因する行動のせいで、多くの生徒(特に男子)から敬遠されているのだ。
目の前のスフィンクス風の悪魔が、元ロゼッタの使い魔だと聞けば、それなりに警戒するだろう。

だが、リリィの忠告は少し遅かったようだ。
キラー・チューンはパピスヘテプのカンテラを突然ひったくろうとしたのだ。

>『エンカから、ひょ、兵法というモノを教わった。ひょ、兵法とは気持ちがいいものだ。フフ、フ』
「あれ?何でデレデレ?」
リリィは、エンカとキラー・チューンが、仲睦まじく兵法の本を読んでいる姿を想像しようとした。
(・・・・・・・・・・・・だめだわ、ぼこぼこにされてる姿しか思い浮かばない)

そのわずかな間に、キラー・チューンは皆に攻撃しつつ、素敵なあだ名をつけ始めた。
だが一連の行動はあまりに早すぎで、リリィにはどうすることも出来ない。
>『お前は……“城”だ』
>キラー・チューンが腕を動かした瞬間、ボッ!!という音とパァン!!と爆ぜる音が同時に鳴った。
もし藁人形が粉々になったのなら、今後リリィのテレパシーは、ジェイムズには届かなくなるだろう。
>『ぐ、軍師は城の中から、愛想笑いをしていれば、い、戦にならないと思っている。ムカつく奴だ…!』
「キャ!ちょっと、パピちゃんに何するのよ!!」

>次にキラー・チューンは、文字通り飛んでフリードに迫った。
「ひっ?!」
先ほどまでの威勢はどこへやら、リリィはおびえた声を上げた。

>『へ、“兵卒”の、く、崩れるところを知るべし』
>「そんな弾幕(?)・・・!?」
「だめよフリード君、いくら外見がネコ科でメスでも戦わなくちゃ!」
そうは言っても猫好きでフェミニストなフリードだ。相性は最悪である。
>「うぼぁ~」
強力ビンタをまともに食らい、4つの耳すべてから血を噴き出し空中を三回転半してから地面へ落下するフリードリッヒ。
「きゃああああ!フリード君が!フリード君とグレンの体が!!」
こんなのをリリィが食らったら即死であるが、フリードは生きていた。
>「だ、大丈夫です見た目よりはダメージは少ないですから・・・・」
>その割にはソウルユニオンは解除されフリードリッヒとグレンの一人と一匹に戻ってしまっている。
硬直するリリィの上に、キラー・チューンの影が落ちた。

>『お前は、ひょ、“兵糧”だ。リリィ……!』
「ヒッ?!」
リリィはエントランスに逃げ込もうとしたが、相手が許すはずも無い。
「離して!離してってば!私なんか食べても全然おいしくなんか無いったら!
 ロゼッタちゃーん!エンカー!出てきてよ!キラー・チューンを止めてー!先輩助けてええ!
 やぁだぁぁあやめてえぇぇ !!」
今にも食い殺されそうな悲鳴を上げながら、リリィはキラー・チューンに攫われて行った。

空を飛ぶキラー・チューンとリリィの後を、古びた箒が追いかけていく。
どうやらリリィが、箒よせの呪文を唱えたようだ。
キラー・チューンに気づかれ撃ち落とされるまでは、どこまでも彼女たちを追跡することになるだろう。
152 : パピスヘテプ[sage] : 2013/08/02(金) 23:14:55.14 0
>『アタシは、お前を知らないぞ…!』
「……?」
鎮静結界の中、微笑むパピスヘテプに言い放たれたキラー・チューン言葉に少し首を傾げた。
使い魔なら主人の関係者、特にこの状況での関係者は伝えられていそうなものなのに。
微妙な違和感はリリィの言葉で強烈な嫌な予感に変貌を遂げた。
>「わー!わー!ロゼッタちゃんなら中にいたよ!それより危ない早く逃げて!
> 確かにキラー・チューンはエンカの使い魔だけど、元はロゼッタちゃんの悪魔なんだよ!
> 言葉は理解してるけど、話は通じないの!それこそ腕尽くでないと!」
ロゼッタ、元はロゼッタの悪魔、話が通じない
嫌なキーワードが三つも並ぶとなると、パピスヘテプの額に幾本物縦線が現れた。

その一瞬の硬直を見逃さなかったようだ。
カンテラをひったくったキラー・チューンは笑みを浮かべながらそれを放り投げる。
空腹で反応が鈍く、簡単にひったくられその拍子にバランスを崩してしまう。
カンテラはパピスヘテプの術の起点であり、ケロべロスのコートを失った上に体勢を崩して無防備。
ついでジェイムズを城と称し、肩に乗せた藁人形を破壊。
それは術者にフィールドバックされる僅かな痛みにて感じる。

術の起点であるカンテラ、連絡の要である藁人形。
カンテラを掲げて近づいたのだから何かあるのかと思ったのかもしれない。
獣の聴力で耳打ちするのを聞き取られたのかもしれない。
だが、兵法である旨を宣言し、パピスヘテプを軍師、ジェイムズを城と称する、となれば偶然でない可能性は高い。
この集団の役割や各人の特質を知って行動していると考えていいだろう。

>『ぐ、軍師は城の中から、愛想笑いをしていれば、い、戦にならないと思っている。ムカつく奴だ…!』
「言い得て妙なることね。でも、軍師はともかく、こちらの城は鉄壁よ?」
崩れた体制のままパピスヘテプの笑みは変わらない。
守ってと願い、ジェイムズはそれを了承した。
ならばジェイムズは鉄壁の守備をもって自分を守ってくれるという確信がある。
そしてもう一つ、兵法を唱えるキラー・チューンのこれからする事がパピスヘテプには手に取るようにわかるのだから。

体勢を崩したままキラー・チューンの蹴り上げた泥や小石が迫ってくるのを全く意に介さず、術を発動させた。

だがそんなパピスヘテプの笑顔は次の瞬間消え失せていた。
>『へ、“兵卒”の、く、崩れるところを知るべし』
>「うぼぁ~」
大きな炸裂音のあとに鳴り響く打撃音。
巨大なビンタでフリードが三回転半して地面に落ちたからだ。
「い、いやー!フリード君の玉のお肌に傷が!!!」
中身は逸般人ではあるが、パッと見は美少女も裸足で逃げ出し美少年である。
そんな美肌に強烈なビンタが叩き込まれるのは悲鳴を上げるのに値する。

そんな悲鳴を背後にキラー・チューンはリリィに迫る。
>『お前は、ひょ、“兵糧”だ。リリィ……!』
抱きかかえるとすぐさま飛び去った。
残ったのはリリィがいた場所に置き去りにされた影だけであった。

空を飛ばれては追跡も難航、だが、パピスヘテプは慌てていなかった。
キラー・チューンがこうすることは判っていたのだから。

1対多の場合、一人相手に戦っていればすぐに囲まれ無防備なところに攻撃されてしまう。
兵法を唱える者であれば弱い者から確実に倒していく。
それもこの場ではなく、一旦攫い邪魔の入らぬところで倒し、残りの者が追ってきたり捜索で陣形を崩せば順次一人ずつ、というのがセオリー。
この四人の中で戦闘力が劣るのはリリィと自分。
キラー・チューンが城と称したジェイムズと、その城の中にいるとパピスヘテプを称した。
即ちパピスヘテプを倒すことは攻城戦をすることになる。
一人にじっくりかかずっていられない状況で、それをするような者は兵法は唱えられないであろう。
消去法で一番最初に狙われるのはリリィである。
と結論付けたのだった。
もちろんリリィとキラー・チューンとの間に浅からぬ因縁があるのではあるが、そこは知らぬことで考慮には入っていなかった。
153 : パピスヘテプ[sage] : 2013/08/02(金) 23:15:27.70 0
>「離して!離してってば!私なんか食べても全然おいしくなんか無いったら!
> ロゼッタちゃーん!エンカー!出てきてよ!キラー・チューンを止めてー!先輩助けてええ!
> やぁだぁぁあやめてえぇぇ !!」
これでもかと言わんばかりの悲鳴をあげながらさらわれていくリリィ。
だが鉄壁を誇るジェイムズと言えども身は一つ。
パピスヘテプとリリィの両方を守る事はできはしないだろう。
だからこそ、パピスヘテプは防御の一切をジェイムズに委ねて術を発動したのだ。

古びた箒が追いかけていくのを見て、パピスヘテプは安堵の息をついた。
>「獣には獣!馬の機動力なら何とかなるに違いありません!!
> ジェイムズさん!!」
「フリード君落ち着いて。手は打ってあるから。
それより傷は大丈夫なの?跡が残らないといいけど」
天は二物を与えず。
ジェイムズは圧倒的な戦闘力との引き換えにしたように魔法が絶望的に苦手なのだ。
その事は館の地下でランチをしながら十分に見せつけてもらっている。

ここで【救出】という絶対的な理由の為に緊急で尚且つ失敗できない状況で魔法を行使して失敗でもしたらジェイムズは憤死してしまうかもしれない。
そうならない為にもフリードをいったん落ち着かせる必要があった。
が、焦り慌てる美少年の横顔も乙なものだサディスティックな感覚に酔いしれる自分に気づいたのは秘密だ。

「ゲフンゲフン、大丈夫よ、意識はともかくリリィはここにいるから」
投げられたカンテラを拾い、リリィのいた場所に残された影に手をかざすと、そこに眠っているかのようなリリィが現れた。
ね?というようにフリードとジェイムズを見た後、リリィに囁きかける。

ここで説明が必要であろう。
パピスヘテプの影術は基本的に冥炎のカンテラの光の元でしか発動できない。
平面での影の操作は得意だが、立体を持つと途端にその効果は弱まる。
だが例外がある。
藁人形を対象の影に仕込むことによって対象と全く同じ姿能力のシャドーゴーレム【ドッペル】を作り出すことができるのだ。
館でエンカに憑りついたマリアベルがリリィの中に移動したかもしれないと疑ったパピスヘテプは、リリィの影の中に藁人形を仕込んでおいたのだ。
その藁人形を利用して【ドッペル】を作り出し、影武者として本物のリリィと影とを入れ替えておいた。
意識を【ドッペル】にリンクさせているが為にキラーチューンは自分が攫ったのがシャドーゴーレムだとも気づけないだろうし、箒も呼ばれた意識であるドッペルを追っていったわけである。

「リリィ、聞こえる?状況を説明するから気絶するふりでもして聞いて。
キラー・チューンに攫われるだろうと思って、あなたのドッペルを作り出して入れ替えたの。
意識をドッペルにリンクさせているから自分がそこにいるような感覚だろうけど、本物の肉体は館前にみんなといるわ。
今から肉体の意識を戻すけど、ドッペルへのリンクも切らないからちょっと感覚がややこしいかもしれないけど慌ててキラー・チューンに偽物だって気取られないようにね」
一通り説明した後、リリィの意識を覚醒させた。
今のリリィは館にいる。
だがドッペルとも感覚を共有しているので、ドッペルがどうなっているか見て聞いて感じることもできるし、話すこともできるのだ。

「リリィ、フリード君の治療をお願い。その間にこれからどうするか決めましょ」
現状、目的であるロゼッタは館内で発見。
キラー・チューンはリリィのドッペルを攫って移動中。
リリィのドッペルを通じてその動向は確認できる。
最終目的はエンカの発見。

「ロゼッタ先輩が館の中にいたのであればここにいてもらって、キラー・チューンをどうにかしたいと思うの。
ドッペルを遠隔操作して闘ってもいいけど、ドッペルは対象と全く同じ能力だから、リリィの戦闘力じゃ……ね。
それに特殊な術をかけたからしばらくは大丈夫だけど、本体から離れた影は存在できないのが影の本質。
放置しておいて見破られなくてもドッペルが自壊しちゃうと把握できなくなるから。
危険要素を放置してまた先手を取られるより、今ならこちらが先手を取れるし、うまくいけばエンカ君のヒントも得られるかもしれないじゃない?」
術の特性と欠点を説明し、キラー・チューンを追って倒す事を提案した。

いろいろ理由はつけているが結局のところ最大の理由は話の通じないロゼッタを相手にして四苦八苦するより、今なら状況把握とドッペルリリィを掴ませたアドバンテージを生かしたいというのが本音であったりする。
154 : ロゼッタ ◇jWBUJ7IJ6Y[sage] : 2013/08/04(日) 21:54:24.14 0
リリィを抱えて飛び去ったキラー・チューンは、館の最上階にある窓を苦もなく突破して室内に侵入した。
リリィの箒が、その軌跡をトレースする。キラー・チューンは箒に何もしなかった。
だから、もしもキラー・チューンを追うのであれば、空を飛べれば直接追いかけれるが、
そうでなければエントランスにある階段から上を目指すことになるだろう。

リリィはその部屋に入るのは初めてだったが、しかしどこかで見たことがある部屋だと思ったことだろう。
もしもリリィ以外のメンバーがそこへ入っても、フィジル魔法学園の生徒であるかぎり、既視感は回避できないはずだ。
それは学園にもある美術室にそっくりな部屋だった。
石膏で造られた人体のパーツの模型が何種類も置かれ、その周りにはデッサンのためのキャンバスが並べられている。
キラー・チューンは“謙遜する乙女のバスト”の模型を着地の衝撃で破壊しつつ、そっとリリィをそこに降ろした。
『………』
キラー・チューンは、怒るとなく、笑うとなく、ただじっとリリィを見つめた。
この時、リリィの体は実はこの場にはなかった。
パピスヘテプが作りだしたシャドーゴーレムがキラー・チューンの目の前にあるのである。
『神妙にしていれば助けがくるとでも思っているのか……!?』
キラー・チューンの額に何本もの青筋が走った。
どうやらキラー・チューンは目の前のリリィが偽物であることに気づいていないようだ。

耳をすませば美術室の隅の暗闇で、何か音が聞こえてくる。
ぐ~ッ…ぐ~ッ…と、動物の唸り声とも、腹の虫の声とも聞こえる音だった。
音の正体が、のそのそとリリィ達の前に現れた。
それはネズミだった。だが、明らかにただのネズミではなかった。
まず、大きさが桁違いだった。大きな牛ほどもある巨体が、太った体を右に左にプルプルさせながら迫ってくる。
顔つきも、どこか巨大な爬虫類を連想させる醜悪なもので、本来エサを溜め込んでおく頬袋のところまで口が裂けていた。
何よりもそのネズミの左手はネズミのそれではなく、明らかにトカゲそのものであった。
間もなくリリィは気づくだろう。それはマリアベルに実験台にされたネズミ、イレブン君の成れの果てだと言うことに。

キラー・チューンは、どんとリリィをイレブンの前に突き飛ばした。
イレブンは目の前に転がってきたリリィを見るや、よだれを垂らしならが、口をパックリと開いた。
笑うようにつり上がった口角は、その隙間から頬袋の中に入っているものをリリィに見せつける。
それは人体の部品だった。それも美術室に置いてある石膏の模型ではなく、明らかに本物の、生々しい肉塊の数々だった。
155 : ジェイムズ ◇nIuIv3TzeE[sage] : 2013/08/06(火) 03:45:12.67 0
>『お前は、ぐ、“軍師”というものだな?』
>『お前は……“城”だ』
「ム…………」
【肩で音が響く。見れば、肩にいた人形が爆ぜていたではないか】

「…………貴様は………『チェス』を知っているか?」
「我が『城(キャッスル)」ならば、独特な動きの貴様は『僧正(ビショップ)』だ」
「そして貴様は『軍師』と言ったが……この軍師は、奇特な戦法を得意とする『騎士(ナイト)』と言えよう」
「どういう事か?二人とも、十分なる戦力、だと言う事だ……舐めて貰っては困る。」

そう言って、仮面の中で不敵に笑った。

>「わー!わー!ロゼッタちゃんなら中にいたよ!それより危ない早く逃げて!
> 確かにキラー・チューンはエンカの使い魔だけど、元はロゼッタちゃんの悪魔なんだよ!
> 言葉は理解してるけど、話は通じないの!それこそ腕尽くでないと!」

「ロゼッタ……?」

ロゼッタの噂は、ジェイムズも小耳に挟んでいる。
同学年に自称宇宙人の変人がいるとか、左手好きだとか言う噂だ。
だが、ジェイムズはそれに対してそこまで奇妙とは感じず、むしろ好奇心を抱いた。

「(フム……?自らを宇宙人と称し、噂に成ってもそれを辞めぬとは……精神の強い乙女なのだろうか?)」
156 : ジェイムズ ◇nIuIv3TzeE[sage] : 2013/08/06(火) 03:49:44.63 0
そして、その下僕が自らの前にいる。
と言う事は、前の怪物も恐らくタフなのだろうか……と、別の意味で警戒を強めた。

>『お前は、ひょ、“兵糧”だ。リリィ……!』

「ヌッ!!」

見れば、リリィが連れて行かれてしまっているではないか。
「弱き者を先に攻撃するとは…」

>「ゲフンゲフン、大丈夫よ、意識はともかく>リリィはここにいるから」

「?……どう言う事だ?」
>投げられたカンテラを拾い、リリィのいた場所に残された影に手をかざすと、そこに眠っているかのようなリリィが現れた。
どうやら、影と実体を入れ替えて居たらしい。
「……全く。貴様はやはり『騎士(ナイト)』だな……」

と再三、魔法に対する驚きを隠せないジェイムズなのだった。
157 : フリードリッヒ ◆cOOmSNbyw6 [sage] : 2013/08/08(木) 09:31:44.34 P
>「それより傷は大丈夫なの?跡が残らないといいけど」
「ジルベリアンホワイトベアーにアッパーカット喰らったときに比べれば大したことありませんよ」
普通だったら首の骨が折れていても不思議ではないビンタを喰らっているはずのフリードリッヒ
ジルベリアの人間は色々とおかしい
ちなみにジルベリアの一般人はなんの魔法効果も追加してない文化包丁でファイヤーボールを切り払ったり
そこらの中古品のブロードソードでドラゴン叩き切ったりする
・・・・・・人類って何だっけか?

「それに美少年は顔から傷が治るこれは世界の常識です」
フリードリッヒの言葉とともに顔の傷が消えていく
実はこのセリフ自体が一種の呪文であり
”顔から傷が治る”で効果を指定し”世界の常識です”という言葉でそれを発動させたのだ
どう考えてもむちゃくちゃな理論だが魔法なのだから仕方がない

>「リリィ、フリード君の治療をお願い。その間にこれからどうするか決めましょ」
だがフリードリッヒの回復呪文では顔など美容にかかわる表面的な部分しか治せないので
やはり治療は必要なのだ
ルックスしか回復できない回復呪文っていったい・・・・・・

キラー・チューンをどうにかしたいと思うのというパピスヘテプ
「とりあえず死なない程度にフルボッコにするべきです
 殺してしまっては情報も聞き出せないし下手をすれば契約者の命が危なくなってしまう危険性があります」
『それって契約者も死なない程度にダメージ受けるんじゃ・・・・・』(猫語)
「グレンが悪戯をしたら飼い主の僕が責任を取る
 使い魔の契約とはそういう物です」
それは普通のペットと飼い主の関係である

「では参りましょうか・・・・・」
と多少ふらふらしながらも歩み始めるフリードリッヒ
本当に大丈夫か?
158 : ロゼッタ ◇jWBUJ7IJ6Y[sage] : 2013/08/09(金) 22:50:46.55 0
実はこの瞬間、パピスヘテプにとって予想しえなかった2つの事象が発生していた。
1つは言うまでもなく、イレブンの存在である。
キラー・チューンが連れ去ったリリィを“兵糧”としてイレブンに差し出すとは予想しろと言って無理があるが、
しかしどうあれシャドーゴーレムは【ドッペル】であり、リリィの身の安全は保証されているので問題はなかった。
2つ目の事象は、イレブンがリリィに襲いかかった瞬間に現れた。
突然の右ストレートパンチがイレブンの顔面にめり込み、彼を吹き飛ばしたのだ。

「!?」
壁に叩きつけられたイレブンは何が起きたのか最初理解できていないようだった。
リリィも何が何やらわからなかったかもしれない。
ここでもしもキラー・チューンを見たら、彼女が加勢したわけではないとわかるだろう。
キラー・チューンは離れた位置で一人と一匹を静観している。
「ホォオオーッ!!」
イレブンが雄叫びを上げながら、その巨体から想像もできない俊敏さで再びリリィに襲いかかると、
今度は左フックがイレブンの右頬を打ちのめした。
ここでおそらくリリィは気づいただろう。先ほどからイレブンを圧倒しているハードパンチャーの主が自分であるということに。

アンチラストの血液によって攻殻化しつつあったリリィの体は、いつの間にか前腕部までその領域を広げていた。
まるで身を守る籠手のように発達したそれは、もしかしたらイレブンの出現によってその役目を果たそうとしたのかもしれない。
リリィがパピスヘテプに事情を話せば、パピスヘテプはこう結論づけるしかなくなるだろう。
パピスヘテプのシャドーゴーレムに、本体以上の戦闘力を持たせる効果はない。
今まさにイレブンを圧倒しているこの戦闘力は、紛れもなくリリィが今持ち合わせている力なのだ、と。
「ツヨイ…ツヨイ…」
片言で喋りながら起き上がったイレブンは、今度は左手にナイフのような爪を無数に生やしてリリィに襲いかかった。
リリィはその気になればイレブンを生かすも殺すも自在だろう。
ただし、逃げるという選択肢だけはキラー・チューンがそれを許さないし、
もしも駆けつけた他のメンバーがこの戦いに加勢しようとすればそれさえも許さないつもりだ。
キラー・チューンの相手をする羽目になるだろう。
159 : リリィ ◆jntvk4zYjI [sage] : 2013/08/10(土) 18:57:28.81 0
>152-158
キラー・チューンは力強く羽ばたいていく。
抱えられる痛みと、吹き付ける風にむせながらも、リリィはなおも叫んでいる。
「やだー!!食べられちゃうのは嫌だー!!
 キラー・チューン!ご飯なら食堂にいっぱいあったよ!『ひょーろー』は館の人に頼めばいいじゃない!」

わあわあと叫んでいると、不意にパピスヘテプの声が聞こえてきた。
>「リリィ、聞こえる?状況を説明するから気絶するふりでもして聞いて。 」
「え?パピちゃん?」
パピスヘテプが言うには、今の自分の体は偽者で、本当の体は、館前の皆と一緒にいるという。
(今は「私そっくりに化けた藁人形」の体にも、意識をリンクさせてるよってことなのかな?)
そんなことを考えていると、キラー・チューンの横顔に、アクリル絵を重ねたように視界が変化していく。

リリィの視界変化が終わると、そこには、自分を心配そうに見下ろす仲間達の顔があった。
「あ・・・私・・・・・」
何か話しかけて、声が二重に聞こえていることに気づく。
おそらく影武者のリリィも同じようにしゃべっているのだろう。
リリィは、館前の皆にはテレパシーで話しかけることにした。
何も言わなくても、仲間達ならジェイムズに通訳してくれる。だから問題ない。
>「ロゼッタ先輩が館の中にいたのであればここにいてもらって、キラー・チューンをどうにかしたいと思うの。
(略)危険要素を放置してまた先手を取られるより、今ならこちらが先手を取れるし、うまくいけばエンカ君のヒントも得られるかもしれないじゃない?」
>「とりあえず死なない程度にフルボッコにするべきです
> 殺してしまっては情報も聞き出せないし下手をすれば契約者の命が危なくなってしまう危険性があります」
>『それって契約者も死なない程度にダメージ受けるんじゃ・・・・・』(猫語)
>「グレンが悪戯をしたら飼い主の僕が責任を取る
> 使い魔の契約とはそういう物です」
『で、でも今の状況なら、エンカまだ生きてるってことだし!悪いことばっかりじゃないよね!

 わかった。じゃあ影武者の身体が食べられる前に、できるだけ情報を集めてみる。
 皆、何かキラー・チューンに質問したいことはある?』
今受けつけた質問は、責任を持って必ずキラー・チューンにぶつけるだろう。

>「では参りましょうか・・・・・」
『ちょっと待って、今回復魔法かけるから』
リリィは立ち上がり、フリードに回復魔法をかけた。
青葉ほど強力なものではないが、少しは足しになるはずだ。

『それにしても、皆私の腕の変化に触れないよね?まだうまく隠しきれてるのかな?』
リリィはフリードとグレンにだけ、テレパシーで話しかけた。

さて、影武者リリィを抱えたキラー・チューンは、館の最上階にある窓を突破して室内に侵入した。
大きな音に、リリィの視界が切り替わる。
『館の最上階に来たよ。何だろう、学園の美術室そっくりな部屋・・・・・・』
リリィはレポーターよろしく、館前の皆に報告する。

>『神妙にしていれば助けがくるとでも思っているのか……!?』
キラー・チューンの額に何本もの青筋が走った。怖い、怖すぎる。
「いいえ、助けが来なくてもいいから私を助けてくださいお願いします」
いくら今の身体が仮のものであっても、怖いものは怖いのだ。

『何か部屋の奥で唸ってる・・・・・・・動物?え?なにあれ!!』
「うわあああ!牛サイズのねずみだ!爬虫類もどき?何?何あれ?!
 左手がトカゲみたいな・・・・・・人を食べてる!!
 キラー・チューン、あなたの仕業なの?いったいあのお化けねずみ、誰を食べてるの!?」
リリィは絶叫した。声はキラー・チューンだけでなく、館前の仲間も聞いただろう。
160 : リリィ ◆jntvk4zYjI [sage ロゼッタさん忙しい中お返事ありがとう!] : 2013/08/10(土) 18:58:14.29 0
>キラー・チューンは、どんとリリィをイレブンの前に突き飛ばした。
「きゃんっ!!」
あっけなく転がったリリィは、イレブンの至近距離で停止した。
お化けねずみこと『マリアベルに実験台にされたネズミ、イレブン君』は、食欲旺盛だった。
よだれを垂らしながら、リリィを食べるべく口をパックリと開く。
リリィは愕然とした。
その中にあったのは、人体の部品だった。
>それも美術室に置いてある石膏の模型ではなく、明らかに本物の、生々しい肉塊の数々だった。

リリィは反射的に後ずさりしたが、この距離では攻撃をかわすどころか、身を守るすべも無い。
「キラー・チューン!あなた、人間をお化けねずみに食べさせたの?!
 まさか・・・・・・・まさか、エンカを食べさせたんじゃないでしょうね?!」
リリィは必死で叫んだが、おそらく返事は聞くことができないだろう。
偽の器でも、傷みは感じるのだろうか?
リリィはスローモーションのように近づいてくるイレブンの口を凝視しながら、ぎゅっと唇をかみ締めた。

だがそこで思わぬことがおきた。
>突然の右ストレートパンチがイレブンの顔面にめり込み、彼を吹き飛ばしたのだ。
「「!?」」
驚いたのは壁にたたきつけられたイレブンだけではない。リリィもだった。
そして、館前でリリィの本体と一緒にいる仲間達もだろう。
なぜなら、リリィの本体も、影武者と同じ動きで右ストレートパンチを繰り出したからだ。
彼女の拳の先に運悪く居合わせたのは、ジェイムズだ。
その物騒さもさることながら、こうなってはもう、前腕部の肉体変化を隠しきれるものではないだろう。

『何がおきたの?何が・・・・・・お化けねずみを吹き飛ばしたの』
リリィはあわてて背後を見たが、キラー・チューンは微動だにしていない。
>「ホォオオーッ!!」
>イレブンが雄叫びを上げながら、その巨体から想像もできない俊敏さで再びリリィに襲いかかると、
>今度は左フックがイレブンの右頬を打ちのめした。
『パピちゃん!なんか知らないけれど、この影武者めちゃくちゃ強いよ!
 巨大ねずみ相手に、肉弾戦で圧倒してる!もしかして、肉体強化の魔法でもかけた?』

リリィはふと、最初にイレブンを見たときよりも、相手を恐れていない自分に気づいた。
それは自分の拳が相手を圧倒しているせいかもしれない。
>「ツヨイ…ツヨイ…」
>片言で喋りながら起き上がったイレブンは、今度は左手にナイフのような爪を無数に生やしてリリィに襲いかかった。
リリィは避けなかった。そしてとっさに傍らの石膏像をつかんだ。
(軽い!)
そして、ナイフを無数に生やしたイレブンの左手にたたき付け、手と爪をつぶそうとする。
石膏像が無くなれば再び肉弾戦になるだろうが、リリィは何度でも攻撃にはカウンターを返すだろう。
それこそ、イレブンがおとなしくなるまで何度でもだ。
彼女は無意識に、イレブンを軽く見ていたのだ。

少し心理的に余裕ができたリリィは、キラー・チューンに疑問をぶつけはじめる。
うまく答えを聞けたものは、そのまま言葉で反芻し、仲間へ教える
。だろう。
最後にリリィは、自分の疑問をぶつけた
「お化けねずみは誰を食べたの?!まだひょーろーはどこかに残ってるの?!
 キラー・チューン、こいつはどこから現れたの?まさかこいつが館の主ってわけじゃないわよね?」
リリィははっとした。
「エンカに食事を供させた館の主は、アンチラストじゃないわよね?
 キラー・チューン、あなた今誰の命令で動いてるの?
 こんなこと、エンカが命じるわけないもの。あなた、エンカ以外の人間に顎で使われてるの?!」
リリィは気づいていないが、明らかに死亡フラグである。
161 : フリードリッヒ ◆cOOmSNbyw6 [sage] : 2013/08/15(木) 17:52:19.22 0
>「うわあああ!牛サイズのねずみだ!爬虫類もどき?何?何あれ?!
 左手がトカゲみたいな・・・・・・人を食べてる!!
「トカゲみたいな左手?まるで保険医の損失部位再生技術みたいですね」
『ねえ人食いについて突っ込まないの?』(猫語)
「ジルベリアにも人食いの怪物ぐらいいましたよ
 まあ人もそいつを食料として喰らっていましたが・・・・・
 ジルベリアンホワイトベアーの事なんですけどね」
『やっぱ食べられちゃったのは総統の私兵かな?』(猫語)
「彼らの扱いがひどいのは今に始まったことじゃありませんからね
 でももしかしたら失敗作の複製骸(コピーホムンクルス)かもしれません」
『良かった食べられたかわいそうな戦闘員はいなかったんだ』(猫語)
162 : ◆jntvk4zYjI [sage] : 2013/08/19(月) 23:25:19.84 0
新しい避難所です。どうかよろしくお願いします。
ttp://774san.sakura.ne.jp/test/read.cgi/hinanjo/1376922195/
163 : ロゼッタ ◇jWBUJ7IJ6Y[sage] : 2013/08/20(火) 14:29:40.78 0
>160
「ヒィイイイイイイ!?」
美術室内に響く悲鳴はリリィのものではない。
それはイレブンの悲鳴だ。彼がリリィに突き立てようとした左手は、
リリィがとっさに掴んで叩きつけた石膏像のせいでぐちゃぐちゃになった。

しかし、イレブンの左手はすぐさま再生を始めた。
これはマリアベルが写っていた映像の通りである。
「ふぅ~、ふうぅうう~~………!」
イレブンは深く呼吸すると、またしてもリリィに飛びかかった。
「ギャアアアアア!?」
結果は同じだった。

左手を何度も再生させ、その度にリリィに襲いかかるイレブン。
立ち位置を変えつつ、石膏像を使ってその手を何度も叩き潰すリリィ。
石膏像が無くなるか、リリィの体力が尽きるか、しかし先に折れたのはイレブンの心だった。
「ヒ、ヒィイッ、ヒイ、ヒィイ……」
奇妙な、怯えるような声を出しながらイレブンが後ずさりを始めた。
さながら差し出すかのように、口の袋に溜め込んだ人体のパーツを床にポタポタと落とす。
それらがイレブンの口の袋からすっかり無くなった時には、イレブンは部屋の隅まで下がっていた。
気のせいか、体の大きさまで小さくなったように見える。

> 少し心理的に余裕ができたリリィは、キラー・チューンに疑問をぶつけはじめる。
> 「お化けねずみは誰を食べたの?!まだひょーろーはどこかに残ってるの?!
>  キラー・チューン、こいつはどこから現れたの?まさかこいつが館の主ってわけじゃないわよね?」
『それを、どうして、お前に答える?』
とキラー・チューンは言った。
わかりにくいが、つまりお前に答える義理は無いと言いたいらしかった。

だが、キラー・チューンは感情を隠せるようなタイプではなかった。
次のリリィの言葉がキラー・チューンの心をえぐる。
> 「エンカに食事を供させた館の主は、アンチラストじゃないわよね?
>  キラー・チューン、あなた今誰の命令で動いてるの?
>  こんなこと、エンカが命じるわけないもの。あなた、エンカ以外の人間に顎で使われてるの?!」
『アタシが、顎で、使われているだと!?』
キラー・チューンの顔全体に青筋が広がった。
彼女は少し離れたところでリリィとイレブンの戦いを見ていたが、
我慢ならないとばかりにずんずんと彼女の前に近づいた。
キラー・チューンの生暖かい鼻息がリリィの顔にかかる。
『エンカからは…!お前らを死なせないように、と言われている…!』
キラー・チューンはその言葉に反することをたいそう我慢している様子で言った。

「ヒィイイイイイッッッ!!」
様子を見ていたイレブンが悲鳴をあげた。
彼からすればさながら龍虎並び立っているような光景であり、無理もない。
二人から身を隠そうと部屋の隅であがいているが、その巨体ではどうもしようがなかった。
『クズが……』
イレブンを見てそうつぶやいたキラー・チューンが、リリィの体をイレブンの方へ向けた。
『止めをさすがいい』
リリィが反論するよりも早く、キラー・チューンは天井を突き破り、美術室から飛び去ってしまった。

リリィやフリード達からすれば、キラー・チューンの行動は意味不明なものに違いない。
しかし、その意図を察する者が一人だけいた。事態は彼女が意図した通りに進んでいた。
彼女は、美術室の隣の部屋から、そっとリリィの様子をうかがっていた。
(アンチラスト化は思っていたよりも進んでいるようね…)
赤毛の少女は、さっと髪をかきあげる。
(さて、あの子はどうするのかしら?イレブンを殺すの?それとも逃がす?自分を殺そうとした相手なのに?)
164 : リリィ ◆jntvk4zYjI [sage] : 2013/08/23(金) 15:17:38.82 0
>161 >163
リリィの本体は今、ジェイムズ、フリード、パピスヘテプ同様、館の前庭にいる。
そして彼女の意識とリンクしている『身代わりリリィ(藁人形の擬態)』は、キラー・チューンに攫われた。
兵糧として連れて行かれた先は、館の最上階だ。
前庭の彼らが見上げれば、キラー・チューンが飛び込んだ窓部分も見えるかもしれない。

>前庭
前置きが長くなったが・・・・・・。
今本体リリィは、フリード達の目の前で、不思議な踊りを披露していた。
今リリィの意識は、身代わり藁人形リリィとリンクさせているため、本体もそれと同じ動きをトレースしているのだ。
見えない敵と戦う姿は、まさにパントマイムそのものだ。
もっとも必死の形相は、決して演技などではないのだが。
肘から二の腕にかけてじわじわ進行している昆虫化も、決して予断を許すものではない。

>「トカゲみたいな左手?まるで保険医の損失部位再生技術みたいですね」
フリードの言葉に、リリィははっとした。
『そっか!左手!この怪物、マリアベルの記録の中にあった「イレブン君」なんだ!
 でね、今、巨大ねずみのイレブン君と戦ってるの。だから早く助けに来てー!
 あ、あとね、戦闘中だからとても本体の移動まで手が回らないの。だから、一緒に運んでくれると嬉しい』

そうテレパシーで語っていながらも、本体リリィの動きは止まらない。
・・・・・・確かに、歩かせるのは至難の業だろう。
フリードでは荷が重いかもしれない。
なぜなら、フリードは小柄な上に、リリィは暴れるからだ。
そしてパピスヘテプは、難しい魔法を連続して使った反動で、お腹が空きすぎて動けないでいる。
食べ物はたくさんあるのだが、口を怪我している彼女は食べられないのだ。
ジェイムズならまさにうってつけだが・・・・・・先ほどパピスヘテプを運んだ時、痛い目(?)にあったばかりだ。
運ぶ気になってくれるだろうか?
165 : リリィ ◆jntvk4zYjI [sage] : 2013/08/23(金) 15:20:37.80 0
>館最上部
「キラー・チューンはエンカ以外の人間に使われているのではないか?」という問いかけは、劇的な効果があった。
それを聞いたとたん、キラー・チューンの顔全体に青筋が広がったからだ。
(ひー!怖いっ!)
ずんずん近づいてきた キラー・チューンの生暖かい鼻息が、顔にかかる。
だが、リリィはその場に何とか踏みとどまった。(いまだかつて無いほどの快挙だ!)
>『エンカからは…!お前らを死なせないように、と言われている…!』
「えっ?!エンカに会ってるの?」
リリィは驚いたが、それ以上のことは、とても聞き出せそうな雰囲気ではなかった。

部屋の隅で怯えていた(!)イレブンが悲鳴を上げ、存在を主張する。
>『クズが……』
イレブンを見てそうつぶやいたキラー・チューンが、リリィの体をイレブンの方へ向けた。
>『止めをさすがいい』
「えっ?!ちょっ!!何で私が?!」
>リリィが反論するよりも早く、キラー・チューンは天井を突き破り、美術室から飛び去ってしまった。

その場には悲鳴を上げ続けるイレブンと、リリィだけが残される。
彼らのその足元には、イレブンが吐き出した人間のパーツが転がっていた。
(うーん・・・・・・・)
リリィはその場に落ちている『兵糧』を観察してみる。
正直かなりグロいのだが、リリィはヒーラー志望だ。逃げ出すわけにはいかない。
(左手が混じっているところを見ると、この肉体の持ち主は、間違いなくエンカではなさそうね。
 キラー・チューンが、エンカの左腕をみすみす手放すはずが無いもの。
 やっぱりフリード君逹が言ってたように、失敗作の複製骸(コピーホムンクルス)なのかな?)
166 : リリィ ◆jntvk4zYjI [sage] : 2013/08/23(金) 15:21:44.36 0
リリィは立ち上がり、イレブンに向き直った。
「あなたイレブン君・・・・・・だったわよね?少し言葉はしゃべれるみたいだけど、意味わかる?
 あなたが食べたのは、生きた人間?それとも、マリアベルが食事用に培養したホムンクルスか何か?
 今後も人間を食べるつもりなら、あなたを生かしておくわけにはいかないのだけど、そのへんはどうなの?」
リリィは腰に手を当てて、ふん、と背筋を伸ばした。・・・・・・ちょっと偉そうだ。
「ねえ、エンカはどこにいるの?エ・ン・カ。分かる? わからないかな?
 あなたの飼い主はどこ?それも分からない?」
リリィは困ってしまった。言葉が通じているのかどうか、非常にわかりづらい。

「んーと・・・・・・じゃあね、誰か人間の言葉が通じる者はいないの?
 あ、そうだ!アンチラストってわかる?じゃあ、ユニソルブルは?」
リリィは、マリアベルの日誌(>47)にあった名前を挙げてみた。
「もしもこの館にいるのなら、案内してください」
そういって、アンチラスト化した拳(?)をぐっと握り締める。

「いい加減観念して。
 今、私の友達もこちらに向かってるんだからね。
 言っておくけれど、メンバーの中では、私が一番弱っちいんだから!」
167 : フリードリッヒ ◆cOOmSNbyw6 [sage] : 2013/08/26(月) 12:19:19.34 0
>今、巨大ねずみのイレブン君と戦ってるの。だから早く助けに来てー!

フリードリッヒは魔法で梯子を作っている
「フリージングラダァァァァ!!」
たかが梯子一個作るのに大げさすぎである
「これで一気にショートカットでキラーチェーンの元までたどり着けるはずです」
どんだけ長い梯子なんだよと突っ込みたいが細かいことは気にしないでいいだろう
「冷気で壁に張り付くんで登った所を引き剥がされる心配もありません」
『それってフィー坊もくっつくんじゃ?』(猫語)
「蜘蛛の糸と同じでくっつく面とくっつかない面に分かれていますから平気ですよ」
それは本体が守られていないという事でもあるのだが・・・・・はたして落とされずに登り切れるのか?
「ともかく相手の目の前に行かなければ話にもなりませんからね」
『そうだね色々と進めづらいしね』(猫語)
「さてイレブンとやらは実際どんな姿をしてるんでしょうか?」
リリィからの伝聞だけでは想像しかできないイレブン
はたして実際に会った時フリードはどんな反応をするのだろうか?
『大きいネズミか・・・・・・食べる所多そうだね♪』(猫語)
やめとけ腹を壊すぞ

>「いい加減観念して。
 今、私の友達もこちらに向かってるんだからね。
 言っておくけれど、メンバーの中では、私が一番弱っちいんだから!」


「さあ来ましたよこの中で一番立場が弱い男フリードリッヒ・ノクターンが!!」
『いや一番立場が弱いのは僕じゃない?使い魔だし』(猫語)
とう!!とばかり窓から飛び込むフリードリッヒとグレン
イレブンを見てグレンはあんまりおいしそうじゃない鼠だなと少し思った
「さあ死んだほうがマシなぐらいの生き地獄を味あわせて差し上げますよ」
『それじゃあ悪者だよフィー坊』(猫語)

はたしてどうなってしまうのか?
168 : ◆jWBUJ7IJ6Y [sage] : 2013/08/30(金) 07:44:56.47 0
>166>167
> リリィは立ち上がり、イレブンに向き直った。
>「イタイのコワイ、コワイ…」
イレブンは器用に頭を抱えた。
> 「あなたイレブン君・・・・・・だったわよね?少し言葉はしゃべれるみたいだけど、意味わかる?
>  あなたが食べたのは、生きた人間?それとも、マリアベルが食事用に培養したホムンクルスか何か?
>  今後も人間を食べるつもりなら、あなたを生かしておくわけにはいかないのだけど、そのへんはどうなの?」
>「ギタイ…ギタイ…」
イレブンはその単語を繰り返した。が、これだけでは意味不明である。
> 「ねえ、エンカはどこにいるの?エ・ン・カ。分かる? わからないかな?
>  あなたの飼い主はどこ?それも分からない?」
>「エンカ、エンカ、ムカデ、ムカデ…」
イレブンはエンカとムカデという単語をつぶやいた。しかし、やっぱり意味不明である。
リリィも困ってしまうことだろう。
本人はまだ気づいたいないかもしれないが、彼女はじょじょに生物のフェロモンを察知できるようになっていた。
でも、それで察知できるのはとにかくイレブンがリリィを恐れていることだけである。
> 「んーと・・・・・・じゃあね、誰か人間の言葉が通じる者はいないの?
>  あ、そうだ!アンチラストってわかる?じゃあ、ユニソルブルは?」
>「アンチラスト…スキ、スキ、トモダチ…」
イレブンはアンチラストについてそうつぶやいた。
>「ユニソルブル…イタイ、イタイ」
ユニソルブルはどうやらイタイらしい。
(適当な事を言ってるんじゃないわよ、私が痛い子みたいじゃない…!)
影から様子を覗いている赤毛の少女は内心そう思った。

> 「もしもこの館にいるのなら、案内してください」
リリィは言葉使いこそ丁寧だが、漢らしくイレブンを脅した。
イレブンはまた頭を抱える。
> 「いい加減観念して。
>  今、私の友達もこちらに向かってるんだからね。
>  言っておくけれど、メンバーの中では、私が一番弱っちいんだから!」
間もなく、現在のパーティの中で最も高火力なメンバーであるフリードが窓から中に入ってきた。
氷の魔法使いなのに“火力”が高いというのも不思議な表現だが仕方がない。
> 「さあ来ましたよこの中で一番立場が弱い男フリードリッヒ・ノクターンが!!」
どうやらパーティにおける火力が権力の決定的な差ではないらしい。
(さてと、そろそろ私の出番のようね)
赤毛の少女は影でアップを始めたようだ。
169 : ◆jWBUJ7IJ6Y [sage] : 2013/08/30(金) 07:46:08.97 0
> 「さあ死んだほうがマシなぐらいの生き地獄を味あわせて差し上げますよ」
> 『それじゃあ悪者だよフィー坊』(猫語)
その時、リリィのフェロモンセンサーが一つの生物を察知した。
それは、もしもフェロモンで察知できなければ見逃していたかもしれないほどに、小さなムカデだった。
ムカデはさっとリリィ達の足元をすり抜け、イレブンに近づいた。
そして、イレブンの口の中に自ら飛び込んだ。
>「オ、オ、オ、オ…!?」
イレブンはガクガクと体を一時的に痙攣させた。そして間もなく、殺意のこもった視線をリリィとフリードへ向ける。
>「コロス…コロス…」
イレブンは、初めて出会ったときと同じように、その巨体から想像できない俊敏さでリリィに飛びかかった。

リリィがカウンターをお見舞いするよりも早く、何かが空中でイレブンを撃ち落とした。
>「ヒェオオオオ!?」
床でのたうちまわるイレブンの額に、キラキラと光るダイヤモンドの剣が刺さっている。
絶命するのも時間の問題だろう。
「あなた達、怪我はない?」
リリィ達の後方からそんな声が聞こえてきた。声の主は赤毛の少女だった。
黒いメイド服に身を包み、年齢はリリィやフリードより少し大人びて見えた。
もしかしたら、やけに大きなバストがそんな印象を与えているのかもしれない。
その顔が、瞳が大きく、良く言えば童顔で、悪く言えば極端にアニメ顔だった。
「私の名前はアンジェリーナ、あなた達と同じ学園の生徒よ。
 ここはコイツのような危険な生物が一杯いるわ。気をつけなくちゃ」
彼女はそう自己紹介しつつ、指にはめた指輪を見せた。
それは学園の生徒なら誰しも持っている、生徒の証であった。
彼女のそれは何故か妙に古そうだったが、もしもそれを指摘したら、
「あら、お恥ずかしい。実は私、卒業できなくて留年しているのよ。
 だから、あなた達が私の顔を知らなくても無理ないわね」
と言ってごまかすだろう。
170 : リリィ ◆nA2uUOb9SzX7 [sage] : 2013/09/02(月) 18:11:52.58 0
>167-169
イレブンの話は、まったく要領を得ないものだった。聞き出したものの、リリィにはわけがわからない。
彼の話によると、先ほど口にしていた食べ物は『ギタイ』だという。
(・・・・・・ギタイってなんだろう?何かが擬態してるの?でも死んだ後まで擬態が解けないってどうなのよそれ。
 それとも義手、義足みたいな感じで義体?)
そういえばイレブンは、マリアベルの実験成果によって、左手は何度でも生えてくるらしい。
「過去の映像で見たときは、今みたいな爬虫類っぽい腕じゃなかったわよね。あれがギタイした腕ってことなのかしら?」
リリィは、タコのように、自分の左腕をもぐもぐ食べているイレブンを想像し、ちょっと気分が悪くなる。
そもそもその考えは根本から間違っている気がするのだが、残念ながら、この場に突っ込んでくれる人間は誰もいなかったのだった。

次にエンカについてだが、イレブンは「ムカデだと言った。
ちょんまげ=ムカデかと思ったのだが、話の流れから察するに、どうも違う気がする。
(嘘はついていないっぽいんだけどなぁ・・・・・・)

そしてアンチラストは『スキなトモダチ』で、ユニソルブルは、『イタイ』らしい。
(え・・・・・・アンチラストの妹はイタイ人なの?)
痛い人と聞いて、なんとなくロリコン保険医を連想してしまう。・・・・・・まずい、あんな感じなら、とても手に負えない。

最後に、ユニソルブルの居場所に案内するよう穏便に(?!)お願いしたのだが、イレブンはまたも頭を抱えてしまった。
先ほどの『イタイのコワイ、コワイ…』と言ったときと同じポーズである。
(・・・・・・?)
リリィはかすかに引っかかるものを感じた。
だが、ちょうどそのとき、窓から助けに来てくれた頼もしい味方に注意が向き、すぐに忘れてしまった。
171 : リリィ ◆nA2uUOb9SzX7 [sage] : 2013/09/02(月) 18:13:29.67 0
> 「さあ来ましたよこの中で一番立場が弱い男フリードリッヒ・ノクターンが!!」
「やった!これで勝つる!わーん、フリード君怖かったよぅー!!」
感動のあまり、一番立場が弱い云々は右から左に抜けてしまったのは秘密だ!
> 「さあ死んだほうがマシなぐらいの生き地獄を味あわせて差し上げますよ」
> 『それじゃあ悪者だよフィー坊』(猫語)
「フリード君聞いて!実は・・・・・」
リリィは今までイレブンから見聞きしたことを、手短に話した。
「それでね、今はイレブンに、館の中を案内するように頼んでたところなの・・・・・・ん?」
リリィは、室内を急速に動く気配を感じた。
本当はアンチラスト化によってフェロモンを察知しているのだが、リリィは理屈がわかっていないのだ。

「わっ?!やだフリード君、ムカデ!ムカデッ!」
リリィは足元を移動したモノに驚きヒィッと飛び上がった。
だがその動きはとてもリリィが見つけられるようなものではなかったのに、なぜかそれを『ムカデ』だと確信していた。
フリードやグレンも気づいただろうか?
リリィの混乱振りをよそに、当の『ムカデ』は、イレブンの口内へ吸い込まれるように消えていったのを。


>「オ、オ、オ、オ…!?」
>イレブンはガクガクと体を一時的に痙攣させた。そして間もなく、殺意のこもった視線をリリィとフリードへ向ける。
>「コロス…コロス…」
「へっ?ちょ・・・・・待っ・・・・・・・!!」
>イレブンは、初めて出会ったときと同じように、その巨体から想像できない俊敏さでリリィに飛びかかった。
(こうなったら、もう一度おとなしくさせるしか、ない!!)
リリィは迎撃するべく、甲虫化している拳をぐっとにぎりしめた。

>リリィがカウンターをお見舞いするよりも早く、何かが空中でイレブンを撃ち落とした。
>「ヒェオオオオ!?」
>床でのたうちまわるイレブンの額に、キラキラと光る剣が刺さっている。
「えっ?あれ?フリード君の氷・・・・・・・じゃないよね?!ダイヤモンド?!」

>「あなた達、怪我はない?」
リリィ達の後方からそんな声が聞こえてきた。声の主は赤毛の少女だった。
黒いメイド服に身を包み、年齢はリリィやフリードより少し大人びて見えた。
スタイルもよく目もパッチリしていて可愛いのだが、人見知りのないはずのリリィが僅かに尻込みした。
それは彼女の雰囲気が、なんとなく蟷螂を連想させたせいかもしれない。
172 : リリィ ◆nA2uUOb9SzX7 [sage] : 2013/09/02(月) 18:16:25.80 0
少女はアンジェリーナと名乗り、フィジルの生徒だと名乗った。
指にはめた指輪はとても古いものだったが、間違いなく学園の生徒が持つ証だった。
リリィはアンジェリーナから視線をはずし、今にも絶命しそうなイレブンを見つめた。
手がわきわきと動いている。どうやら額の剣を抜きたくて仕方ないようだ。
(ダ、ダイヤの剣だから抜きたいんであって、別にイレブンを助けたいってわけじゃないんだから)
そう内心で言い訳しつつ、リリィはイレブンの額から剣を抜き取った。
今にも死にそうな相手の様子に、リリィは居心地悪くそわそわしていた。
だが、アンジェリーナの視線を感じ、あわてて居住まいを正す。

(・・・・・・・はっ!いけないいけない!私ったら助けてもらったのに、お礼も言ってないよ!)
リリィはぶんぶんと首を振り気を取り直すと、改めて自己紹介をした。
「危ないところをありがとうございました。私はリリィです。今日は学校からの課題で、この島にお掃除に来ました。
 アンジェリーナ先輩は、いつからこの島にいらしていたんですか?今ですか?
 えっと、だってさっきこの島を子供レーダーで探索した時には、反応しなかったようなので。
 さっき水没した学園へ帰るゲートが、もう復旧したのかと思って」

>「あら、お恥ずかしい。実は私、卒業できなくて留年しているのよ。
> だから、あなた達が私の顔を知らなくても無理ないわね」
「あっ・・・・・・・」
リリィは何かを察したらしく、急に黙り込んだ。
『そうだった、魔法使いは外見じゃ実年齢わかんないんだったっけ・・・・・・・』
フリードにこっそりテレパシーを送る。
「あ、この剣ありがとうございました」
そういいつつ、リリィはアンジェリーナに剣を返そうとする。

「ところで先ほどの話だと、危険な生物に一杯出会われたんですか?
 あの、私達、エンカって生徒を探しているんです。ね?フリード君」
リリィはフリードに同意を求めた。
「ここへは一緒に来たんですけれど、はぐれちゃって。
 さっきは食堂にいたみたいなんですが、アンジェリーナ先輩、どこかで見かけませんでしたか?
 彼を知らないのなら、この館の主人でも構わないんです。
  どんな些細なことでも構いませんので、教えてください・・・・・・!」
もしもアンジェリーナが案内すると言えば、リリィはどこへでもホイホイついていくだろう。
173 : フリードリッヒ ◆cOOmSNbyw6 [sage] : 2013/09/04(水) 19:12:38.88 0
>「わっ?!やだフリード君、ムカデ!ムカデッ!」
「え?ムカデ?いえあれはヤスデでは?」
『虫の種類判別なんてどうでもいいじゃない』(猫語)
虫が口に入り込み狂暴化するイレブン
だがフリードはそれを肉眼で捉えられない
『虫が鼠の口の中に!?ちぃ!よけい食べられなくなった!!』(猫語)
「え?あの時のサソリ人間みたいにですか?」
猫の視力は動いているものにかけては人間以上である
「でもどっちにせよこちらを殺そうとしましたからぶちのめすのはいっしょなんですけどね」
まさに外道である

>「えっ?あれ?フリード君の氷・・・・・・・じゃないよね?!ダイヤモンド?!」
『デエヤモンドに目がくらみ』(猫語)
「あなた学園の図書館で何読んだんですか?」
あまりにもタイミングが良すぎる赤毛の少女の介入
もしかしてずっと見てたのだろうか?
「まさかと思いますが・・・・いえなんでもありません」
フリードリッヒは一番かっこいいタイミングで登場しようと様子を見ていたと解釈したようだ
『フィー坊のお姉さんがやりそうだよねそういうの』(猫語)
グレンは頭の端っこでもしかして自作自演じゃね?とも思ったが
そんなことをやるメリットが思いつかなかった為その考えを追いやった
>「私の名前はアンジェリーナ、あなた達と同じ学園の生徒よ。
  ここはコイツのような危険な生物が一杯いるわ。気をつけなくちゃ」
「大丈夫ですよ学園の森に生息するクビチョンパウサギよりはマシそうですし」
『早く絶滅させちゃいなよあんなの』(猫語)
「命を粗末にしたくありません丁重にお断りさせていただきます
 まあショートコントはこれぐらいにして自己紹介を・・・・・・
 僕の名前はフリードリッヒ・カイ・ポリアフ・ザンギュラビッチ・シャーベットビッチ・デューク・ノクターン
 長いから普段はフリードリッヒ・ノクターンと名乗っています」
『吾輩は猫である。名前はグレン・ダイザー・・・・フィー坊の使い魔だよ』(猫語)
>「あら、お恥ずかしい。実は私、卒業できなくて留年しているのよ。
> だから、あなた達が私の顔を知らなくても無理ないわね」
「まさか何年か前の同じ課題で脱出できずにずっとサバイバル生活・・・・・なわけないですよね
 だったらそんなに(服が)綺麗なわけがありませんし」

>「ところで先ほどの話だと、危険な生物に一杯出会われたんですか?
 あの、私達、エンカって生徒を探しているんです。ね?フリード君」
「ええ、エンカさんは僕たちの大切な友達ですよ
 その彼を探してこう右往左往しているわけです」
>「どんな些細なことでも構いませんので、教えてください・・・・・・!」
「そうですよトイレの中蓋が上がっていたとか男性がいた痕跡でも構いませんので」
『いや普通閉めるでしょ』(猫語)
「いえ結構閉め忘れますよ?」

「さてこの鼠もはや風前の蝋燭みたいな命ですがほんのちょびっとだけ生きてますね
 死ぬと苦しみが終わってしまいますので治療をして差し上げたほうがいいのでは?」
『そうだね死んだら拷問・・・・もとい尋問が出来なくなっちゃうしね』(猫語)
まさに外道である
174 : ◆jWBUJ7IJ6Y [sage] : 2013/09/06(金) 18:50:50.32 0
>172>173
> 「あ、この剣ありがとうございました」
> そういいつつ、リリィはアンジェリーナに剣を返そうとする。
「いらないわ」
アンジェリーナは簡単にそう言ってリリィの手を払った。
「あなた、ダイヤモンドの材料をご存知?
 それは炭素の塊に過ぎないわ。人間の体には、そうあなたの体にも、10kg近い炭素があるのよ?
 まぁ、それを結晶化できる者がどれほどいるかは知らないけれど」
アンジェリーナはリリィの目の前で、同じようなダイヤモンドの剣を生成してみせた。
「空気の中にも炭素はあるの」

> 「ところで先ほどの話だと、危険な生物に一杯出会われたんですか?
>  あの、私達、エンカって生徒を探しているんです。ね?フリード君」
> リリィはフリードに同意を求めた。
> 「ええ、エンカさんは僕たちの大切な友達ですよ
>  その彼を探してこう右往左往しているわけです」
フリードもリリィに同意した。
「へぇ、そうなの。知らないわね」
嘘である。アンジェリーナはエンカを知っている。
> 「ここへは一緒に来たんですけれど、はぐれちゃって。
>  さっきは食堂にいたみたいなんですが、アンジェリーナ先輩、どこかで見かけませんでしたか?
>  彼を知らないのなら、この館の主人でも構わないんです。
>   どんな些細なことでも構いませんので、教えてください・・・・・・!」
「わからないのだけれど、友達を探すことと館の主人に会うことが何か関わりがあるのかしら?」
とアンジェリーナは答えた。
> 「そうですよトイレの中蓋が上がっていたとか男性がいた痕跡でも構いませんので」
> 『いや普通閉めるでしょ』(猫語)
> 「いえ結構閉め忘れますよ?」
「……そう言われても、私が男子トイレに入ると思って?」

アンジェリーナはリリィの甲殻化した腕を指差した。
リリィが剣を返そうとした際、それをアンジェリーナも見ている。
「あなたのその腕、普通じゃないわね。
 私はさっき、全身がそうなっている男に襲われたの。
 まるで自分を見失っているようだったわ」
アンジェリーナはまたしても嘘をついた。そんな奴は実際にはいない。
しかし、こう言えばリリィが不安を感じるだろうと思った。
「あなたもそうならなければ良いのだけれど……」

> 「さてこの鼠もはや風前の蝋燭みたいな命ですがほんのちょびっとだけ生きてますね
>  死ぬと苦しみが終わってしまいますので治療をして差し上げたほうがいいのでは?」
> 『そうだね死んだら拷問・・・・もとい尋問が出来なくなっちゃうしね』(猫語)
「あら?その子を痛ぶりたいのかしら?構わないけれど、血が出るなら外でやってくださらない?」
アンジェリーナはフリードにそう言った。
先ほどイレブンにムカデをけしかけたのは、実はアンジェリーナである。
それが寄生している限り、有力な情報など得られないことは承知しているのであった。

「ねぇ、私からも質問なのだけれど、あなた達はエンカ・ウォンが見つかったらこの館を去るつもり?
 それとも他に何か用があるのかしら?」
175 : フリードリッヒ ◆cOOmSNbyw6 [sage] : 2013/09/07(土) 11:08:12.98 0
>「……そう言われても、私が男子トイレに入ると思って?」
それはそうであるが
女のような見た目でも男であるやつとか
別におかまでもないのに意味もなく女装してるやつとか
明らかに女の名前でも男だったりする知り合いがいるフリード
少なくともこれでアンジェリーナが女であることを確認することが出来たようだ

>「あなたのその腕、普通じゃないわね。
 私はさっき、全身がそうなっている男に襲われたの。
 まるで自分を見失っているようだったわ」
「まあリリィさんが人間じゃない何かに変身することなんてよくあることですから
 ほかの人ならともかくこういう事態に慣れてるでしょうし大丈夫ですよ」
『ペンギンに機械人形に藁人形だっけ?
 それがよくあることだっていうのがすでに異常事態だよ』(猫語)
「グレンだって一度は人間に変身しちゃったでしょ
 魔法業界ではよくあることですって」
実はフリードも一度女の子にされてしまったことがあったが
いつもとほとんど変わらなかった為誰にも気づかれなかったという悲しい過去がある

>「ねぇ、私からも質問なのだけれど、あなた達はエンカ・ウォンが見つかったらこの館を去るつもり?
 それとも他に何か用があるのかしら?」
「え?フルネームを知ってる?」
フリードリッヒは不思議に思った
自分たちはエンカとしか言ってないのに彼女はフルネームを返してきたからだ
『そんな細かいことはいいじゃない』(猫語)
「まあ確かにうちの学園にはエンカという名前はエンカさんしかいなかったはずから別段問題ないはずですけど
 もしかして知り合いだったりします?
 それにあなたも同じ学園の生徒なら僕らの目的なんてとっくの昔に知っているのでは?」
『ちょっとあやしいなぁ』(猫語)
176 : リリィ ◆nA2uUOb9SzX7 [sage] : 2013/09/09(月) 20:20:02.30 0
>173-175
>「いらないわ」
アンジェリーナは簡単にそう言ってリリィの手を払った。
>「あなた、ダイヤモンドの材料をご存知?
> それは炭素の塊に過ぎないわ。人間の体には、そうあなたの体にも、10kg近い炭素があるのよ?
> まぁ、それを結晶化できる者がどれほどいるかは知らないけれど」
アンジェリーナはリリィの目の前で、同じようなダイヤモンドの剣を生成してみせた。

リリィは目玉が落っこちそうな顔をしている。
>「空気の中にも炭素はあるの」
「・・・・・・・つまりアンジェリーナさんは、全身ダイヤモンドなボディになれるってことですね?!」
すごーい!とリリィは素直に感動している。

>「わからないのだけれど、友達を探すことと館の主人に会うことが何か関わりがあるのかしら?」
「えっと・・・・・私達が館に到着した時、エンカは館の主からとご馳走を振舞ってくれたんです。
 もっとも、料理の中には人間サソリがたっぷり入っていたんですけれど・・・・・・」

リリィは、館に到着してからエンカが消えた時までの状況を簡潔に話した。
「エンカはあきらめた方がいいって思われるかもしれないけれど、きっとまだ生きてるはずなんです。
 だって彼の使い魔はまだ生きていましたし、エンカも生きてるような話をしてくれていたし。
 第一、服だけ残して消滅するなんてありえないでしょう?
 もしかしたら、最初にエンカと遭遇した館の主人が、何か事情を知ってるのではないかと思って・・・・・・・」
リリィの説明は支離滅裂だったが、エンカを探している熱意くらいは伝わっただろう。

>アンジェリーナはリリィの甲殻化した腕を指差した。
>「あなたのその腕、普通じゃないわね。
> 私はさっき、全身がそうなっている男に襲われたの。
> まるで自分を見失っているようだったわ」
リリィは真っ青になった。
「それ本当ですかっ?!どどど、どうしよう・・・・・・。
 あ、あのっ!全身がこうなってるのに、何でその人が男性だってわかったんですか?
 アンチラストちゃんだって顔は普通だったのに・・・・・・もしかして・・・・・・・」
リリィはごくりと生唾を飲み込み、アンジェリーナにすがりついた。
「ツノですかっ?やっぱりツノが生えていたんですか?カブトムシみたいに!カブトムシみたいに!!」
177 : リリィ ◆nA2uUOb9SzX7 [sage] : 2013/09/09(月) 20:21:00.87 0
フリードやグレンは、リリィは今まで何度も変身しているから、今回も大丈夫だと慰めてくれている。
リリィは微笑んだ。
彼らの心遣いはとてもうれしかったが、今回の変身は、今までのように魔法以外に原因だと考えていた。
おそらく二人も、本当は理解している。その上で明るく慰めてくれているのだろう。
「ありがと、フリード君。取り乱してごめん。私、がんばるね」

> 「さてこの鼠もはや風前の蝋燭みたいな命ですがほんのちょびっとだけ生きてますね
>  死ぬと苦しみが終わってしまいますので治療をして差し上げたほうがいいのでは?」
リリィの顔がパアァと輝いた。
「わかった。回復魔法だからゆっくりしか効果が出ないんだけど、治療してみる」
> 『そうだね死んだら拷問・・・・もとい尋問が出来なくなっちゃうしね』(猫語)
アンジェリーナはあまり良い顔をしなかったが、リリィは乗り気だ。
「あ、でも、回復した後襲われたり、館の中のロゼッタちゃんやハピちゃんが襲われたら困るよ。
 ねえフリード君、氷の檻とかで閉じ込めておくことは出来ないかな?
 学園に帰って報告を済ませた後、処遇を決めても遅くないと思うの。
 ・・・・・・・本人の話だと、アンチラストちゃんの友達らしいし」
リリィは回復呪文を唱え始めた。

>「ねぇ、私からも質問なのだけれど、あなた達はエンカ・ウォンが見つかったらこの館を去るつもり?
> それとも他に何か用があるのかしら?」
「私は、可能なら、この屋敷で行われていた研究資料が欲しいです」
>「え?フルネームを知ってる?」
「。そして、この手足の甲殻化を治して―― へっ?」
フリードのつぶやきに、リリィは目を丸くした。
そういえばおかしい。なぜアンジェリーナは、エンカのフルネームを知っていたのだろう?
>『そんな細かいことはいいじゃない』(猫語)
>「まあ確かにうちの学園にはエンカという名前はエンカさんしかいなかったはずから別段問題ないはずですけど
> もしかして知り合いだったりします?
> それにあなたも同じ学園の生徒なら僕らの目的なんてとっくの昔に知っているのでは?」
>『ちょっとあやしいなぁ』(猫語)

「そんな、いきなり失礼だよ二人とも。アンジェリーナさんは生徒用の指輪だって持ってたんだし」
リリィはあわてて割って入ると、アンジェリーナに向き直った。
「えっと、 私達は、この島で【清掃活動】をするためにきました。
 アンジェリーナさんは、この島にはどんな目的でいらしたんですか?
 もしも学園から何らかの話を聞いているのなら――清掃活動の内容とか――教えてください。
 それと・・・・・・・エンカとは本当に、この島では会っていらっしゃらないんですか?」
178 : ◆jWBUJ7IJ6Y [sage] : 2013/09/14(土) 19:56:47.85 0
>175>177
フリードがアンジェリーナの矛盾に気がついた。
そう、アンジェリーナはうっかりエンカのフルネームを言ってしまったのだ。
> 「まあ確かにうちの学園にはエンカという名前はエンカさんしかいなかったはずから別段問題ないはずですけど
>  もしかして知り合いだったりします?
>  それにあなたも同じ学園の生徒なら僕らの目的なんてとっくの昔に知っているのでは?」
> 『ちょっとあやしいなぁ』(猫語)
(あんたみたいな勘の良いガキは嫌いよ)
アンジェリーナは無言のまま、内心でそう毒づいた。

> 「そんな、いきなり失礼だよ二人とも。アンジェリーナさんは生徒用の指輪だって持ってたんだし」
> リリィはあわてて割って入ると、アンジェリーナに向き直った。
> 「えっと、 私達は、この島で【清掃活動】をするためにきました。
>  アンジェリーナさんは、この島にはどんな目的でいらしたんですか?
>  もしも学園から何らかの話を聞いているのなら――清掃活動の内容とか――教えてください。
>  それと・・・・・・・エンカとは本当に、この島では会っていらっしゃらないんですか?」
「……言ってるでしょう?エンカとは会ってないわ」
アンジェリーナはまたも嘘をついた。
エンカには島で会っているし、彼のことはよく知っていた。
しかし、それを今語るわけにはいかない。
「私だって、“清掃活動”をしているのよ」

アンジェリーナはリリィの肩ごしに指差した。
その先では、傷が回復したイレブンがゆっくりと起き上がっているところだ。
「氷の檻の準備はよろしくて?」
アンジェリーナがフリードにそう尋ねると同時にイレブンの攻撃が始まった。
彼はトカゲのような左手を振り回すと、グーンと勢いよくフリードに向けて伸ばした。
ズームパンチと言ってもいいかもしれないが、その目的は鋭い爪でフリードを引き裂くことにある。

>「グゲゲゲーッ!?」
今度はイレブンの体のいたるところからトカゲのような左手が無数に生えてきた。
さきほどのリリィとの戦いでは見せなかった戦法だが、
どうやら体への負担がそうとう大きいらしく、イレブン本人もとても苦しそうだ。
悶える本体とは裏腹に、無数に生えたトカゲの腕があたりかまわずその鋭利な爪を突き立てる。
「……殺して。そいつを殺して、フリード」
アンジェリーナは冷たい視線でイレブンを見据えながらフリードにそう言うと、
イレブンの攻撃を避けながらリリィの手を引っ張り、美術室の奥にある扉の向こうへ走り始めた。

扉の向こうは長い廊下だった。
アンジェリーナは何も言わずにリリィの手を握って走っている。
廊下の奥へいくにつれて照明がだんだん暗くなる。
とうとうアンジェリーナの姿が見えないくらい暗くなったが、それでもアンジェリーナは走るのをやめない。

アンジェリーナに手を握られている感触がなくなったのは突然のことだった。
リリィは真っ暗闇の中に一人で取り残されたのだ。
だが間もなくその部屋の中が明るくなってきた。
いや、厳密に言えばリリィの眼が変化しているのだ。
暗闇の中にある僅かな光が増幅され、リリィの脳裏に映ったその光景は異常なものだった。
部屋の両脇に、魔法薬学の研究に使うような試験官らしきものがズラリと並んでいる。
まるで人が入れそうな程の大きさだったが、驚くことに実際にその中に人間の体が入っているのだ。
試験官の中に溜まった液体の中を、ゆらゆらとたゆたっている彼らにはまるで魂が入っていないようだった。
入っている人間達は、若い男性もいれば、女もいた。子供もいるし、生まれたての赤ん坊にしか見えない者もいる。
そして、リリィと同じくらいの年齢の、金髪の少女もいた。

部屋の中央に、どこからともなくアンジェリーナが落ちてきた。
アンジェリーナの両目は、暗闇の中でキラキラと光っているようだった。
アンジェリーナは部屋の中を左右に歩き始めた。
そして、リリィが自分を視線で追っていることを確信したアンジェリーナはこう言った。
「知りたかったのでしょう?この屋敷の中でどんな研究が行われていたのか?」
179 : フリードリッヒ ◆cOOmSNbyw6 [sage] : 2013/09/16(月) 08:12:43.43 0
>178
>「氷の檻の準備はよろしくて?」
「いやあほんとうに元気になってよかったですねえ」
と軽口を叩きながら必死に攻撃を避けるフリードリッヒ
フリードリッヒが冗談をいうのは戦いが怖いからだ
冗談でも言ってなければ精神が持たないからだ

一説によるともう既にあっちの世界に逝っていて第四の壁を突破してるとか居ないとか
つまりメタネタ自重である

>「グゲゲゲーッ!?」
体中から爬虫類の腕を生やし攻撃してくるイレブン
「これは背中が痒くなってもすぐ掻けるから便利そうですね!」
『その発想はなかった!!』(猫語)

>「……殺して。そいつを殺して、フリード」
「だが断ります!彼が言ったことが真実なら
 彼を殺してしまったらもっと強大な敵と戦うはめになりそうですし
 そもそも僕は殺す覚悟って言葉が大っ嫌いでしてね」
グレンはやっぱりあいつ敵なんじゃね?とアンジェリーナを見て思った
強大な敵・・・・イレブンのアンチラスト…スキ、スキ、トモダチという言葉を省みるに下手に殺すと
またアンチラストと戦う羽目になりかねないからだ
「僕としては彼女とはぜひ友達になりたいんですがね」

『相手を殺せない甘さがない俺かっけ~みたいなのってなんか違うよね』(猫語)
「相手を殺せない優しい僕って格好良いですよねぇ
 ・・・・まあ同レベルなのは自覚してるんですが」

「死なない程度に全身を凍らせてあとで解凍して差し上げますよ」
フリードリッヒは全身に冷気を纏う
『寒いから早く殺っちゃってよ』(猫語)
「だから殺さないって言ってるでしょうが!氷の檻フリージング・ケージ!!」
『閉じ込めたはいいけど根本的な解決になってないよ』(猫語)
「きっと変なものを食べたから変になったんです
 なんとか虫を吐き出させれば元に戻るかも」
『変になる前からこっちを襲ってきてた件について』(猫語)
「細かいことはいいんですよ細かいことは」
僕にいい考えがあるとばかりに氷の檻に新しく生み出した氷の鎖を取り付け
「これでよし!あとは氷の檻ごとイレブンをぶん回すだけです
 気持ち悪くなって色々と吐くに違いありません」
『そもそも持ち上がるのかよ!どんなパワーだよ!毛皮がゲロで汚れちゃうよ!!』(猫語)
180 : リリィ ◆nA2uUOb9SzX7 [sage] : 2013/09/21(土) 05:27:07.41 0
>「氷の檻の準備はよろしくて?」
>「いやあほんとうに元気になってよかったですねえ」
「うわああん、私が回復させたばかりに!フリード君ごめんなさいぃぃい!」

>「グゲゲゲーッ!?」
>今度はイレブンの体のいたるところからトカゲのような左手が無数に生えてきた。
>悶える本体とは裏腹に、無数に生えたトカゲの腕があたりかまわずその鋭利な爪を突き立てる。
「ひええええ!!」
頭を抱えて右往左往するリリィの腕を、アンジェリーナが掴んだ。
彼女の腕は、既に人間の形をしていない。
思わず腕を引きかけたが、アンジェリーナはまるで意に介さない。
リリィ自身から見ても、かなり異様な姿なのだが・・・・・・・。
(変化の術に失敗した、へっぽこ魔法使いとでも思っているのかな?)
だとしても、何の説明も求められないのは、ちょっと違和感を感じる。もちろん悲鳴を上げられるより百倍ましではあるのだが。


>「……殺して。そいつを殺して、フリード」
>アンジェリーナは冷たい視線でイレブンを見据えながらフリードにそう言うと、
>イレブンの攻撃を避けながらリリィの手を引っ張り、美術室の奥にある扉の向こうへ走り始めた。
「えっ、ちょっと待って。まだフリード君が戦ってるのに・・・・・・」
アンジェリーナは意に介さない。
>扉の向こうは長い廊下だった。
>アンジェリーナは何も言わずにリリィの手を握って走っている。
フリード達が戦っている音が、どんどん遠ざかっていった。
「待ってください、手を離して!」
>廊下の奥へいくにつれて照明がだんだん暗くなる。
それに比例するように、リリィの体も重くなっていく。
(今の彼女の体は仮の器のため、本体から離れすぎるとあちこちに影響が出てくるのだ。)
>とうとうアンジェリーナの姿が見えないくらい暗くなったが、それでもアンジェリーナは走るのをやめない。

唐突にアンジェリーナの手の感触が無くなり、リリィは開放された。
思わずその場にへたり込んむ。リリィは真っ暗闇の中に一人で取り残された。
「ここ、どこ?あれ?ねえ、アンジェリーナ先輩?どこですか?」
リリィの声はしわがれていた。
五感もあいまいな上に、手足もうまく動かせない。
今の彼女ではイレブン並の相手に襲われてしまったら、ひとたまりもないだろう。

かすむ目を異形の手でこすってみる。
目が慣れてきたのか、真っ暗だと思っていた室内が、次第に明るくなってきた。
(彼女は気づいていなかったが、実際には光の感じ方が変わったのだろう
すでに アンチラスト化は腕だけでなく、胸の辺りまで進行していた。)

>部屋の両脇に、魔法薬学の研究に使うような試験官らしきものがズラリと並んでいる。
>まるで人が入れそうな程の大きさだったが、驚くことに実際にその中に人間の体が入っているのだ。

「え・・・・・・何・・・・・・これ・・・・・・・」
リリィは絶句した。
試験官の中に溜まった液体の中を、ゆらゆらとたゆたっている者達には、魂が入っていないようだった。
「どういうこと?人間・・・・・じゃないわよね?いくらなんでも。じゃ、じゃあ、ホムンクルスの培養部屋?」
それにしては、とんでもなくリアルなホムンクルスだ。しかも、子供から成人までとバリエーションに飛んでいる。
こちらの金髪少女など、どこから見ても人間にしか見えない。だが、どこか人形じみて見える。
作り物めいた印象があるのは、なぜなのだろうか?
(人間の身体じゃないとしたら、なんなんだろう?偽の身体?ギタイ?)
「イレブンの食べてた食料って・・・・・・」
リリィは誰に言うでもなく、そうつぶやいていた。
181 : リリィ ◆nA2uUOb9SzX7 [sage] : 2013/09/21(土) 05:28:33.10 0
>部屋の中央に、どこからともなくアンジェリーナが落ちてきた。
リリィは、あんじぇr-いn両目は、暗闇の中でキラキラと光っているようだった。
アンジェリーナは部屋の中を左右に歩き始めた。
そして、リリィが自分を視線で追っていることを確信したアンジェリーナはこう言った。
「知りたかったのでしょう?この屋敷の中でどんな研究が行われていたのか?」

「ハイブリット生物。キメラ理論と一見とても似ているけど、まったく異質のもの。
 イレブンはもともと、左前足を失ったダンシャリ・ネズミだった。
 マリアベル・ホワイトは、ボンノウ・トカゲのエッセンスを特殊な魔法で抽出したものを処方してた。
 地下に保管されてた幻灯機で見た。切れた尻尾が再生するみたいに、左前足が生えてきてたのもね」
リリィは少し言葉を切り、胸を押さえた。長くしゃべると息切れがした。
(早く本体を動かして、この身体の近くまで移動させないと・・・・・・・)

「その映像を撮った後、マリアベル・ホワイトの娘は死んだ。
 その後彼女は、命を生み出す能力を得た。死んだ娘の病原の一部を使って、アンチラストとユニソルブルという人造人間を誕生させた。
 だけどアンチラストの能力は危険で、マリアベルが依頼した、ギルハートを含めた魔法使い3人・・・・・が、彼女を殺しに来た。
 マリアベルはアンチラストを亜空間へ隔離したけど、三人の魔法使いはすぐ追いつき、返り討ちにあった。
 その後マリアベルは乱心して、拷問することでマリアベルを殺そうとしたけれど、何かが起こって自殺。
 ユニソニブルは行方不明」

リリィは、足りない頭ながらも精一杯考え、今まで見聞きした情報をまとめた。
「命を生み出す能力っていうのは、この部屋のことなのかな?
 だとしたら、どうしてこの島には、こんなに人影がないんだろうね?ちっちゃいサソリ人間はいるのに。
 試験管の中身が人なら、器から出たら、メイドさんや執事さんにでもなっていそうなのにね。
 もしかして、イレブンが食べてるのかな?だとしたら、その割りに意外と館内はきれいだよね。血痕もないし」

リリィは注意深くアンジェリーナを見つめた。
「どんな感情の機微も見逃さない!」という決意を秘めていそうだ。
「アンジェリーナ先輩、何かほかに知っていることがあったら教えてください。お願いします。 
 ・・・・・・・たとえば、死んだ魔法使いのうち一人は、とある魔法学園の生徒だった、みたいな感じで」

リリィはもう少し考えて、こう付け足した。
「アンチラストは生き別れた妹のことを、今でもとても愛しているらしいです。
 妹は大変な人間嫌いらしいけれど、今はどうなんでしょうね?」
・・・・・・・・一応彼女は、真剣に質問しているつもりのようだ。
182 : ◆jWBUJ7IJ6Y [sage] : 2013/09/22(日) 17:36:09.58 0
>181
アンジェリーナの質問に対し、リリィは今まで館の中で見聞きした内容をアンジェリーナに話した。
>「命を生み出す能力っていうのは、この部屋のことなのかな?
> だとしたら、どうしてこの島には、こんなに人影がないんだろうね?ちっちゃいサソリ人間はいるのに。
> 試験管の中身が人なら、器から出たら、メイドさんや執事さんにでもなっていそうなのにね。
> もしかして、イレブンが食べてるのかな?だとしたら、その割りに意外と館内はきれいだよね。血痕もないし」
「この部屋にある全ての体はね、リリィ。魂が無いの。
 空っぽの器なのよ。そう、今の体を捨てて、入っていけそうなくらい。
 というより、そのために作られたものなのよ。“コレ”は……」
アンジェリーナはリリィに言った。
「ねぇ、リリィ。あなたがそれを望むというのなら、今の体を捨て去ることができるのよ?
 フリードが言っていた通り、変身には慣れっこなのでしょう?
 だったら、私が手伝ってあげるわ。新しい肉体への浸透(ダイブ)に……」
嫌でしょ?そんな体じゃ?と最後にアンジェリーナは付け加えた。

>リリィは注意深くアンジェリーナを見つめた。
>「アンジェリーナ先輩、何かほかに知っていることがあったら教えてください。お願いします。 
> ・・・・・・・たとえば、死んだ魔法使いのうち一人は、とある魔法学園の生徒だった、みたいな感じで」
アンジェリーナは肩をすくめた。
「ねぇ、リリィ。とても残念なことだと思うけれど、
 きっと私達がこうして話をしていられる時間はそんなに長くはないと思うの。
 その時間の中で、私が知っていることを全て伝えるには時間が足りないと思うわ。
 それよりも、今やるべきことに集中しない?
 …そして、これだけは信じてほしいの。
 私はあなたの肉体の変化による苦悩を知っているし、その苦しみから開放してあげたいということに……」
アンジェリーナに意識を集中していればわかっただろうが、彼女はリリィをどこか見下していた。
私の言う通りにするのがあなたの幸せなのよ、
他に幸福に至る道は無いのよ、と言わんばかりの態度である。
>リリィはもう少し考えて、こう付け足した。
>「アンチラストは生き別れた妹のことを、今でもとても愛しているらしいです。
> 妹は大変な人間嫌いらしいけれど、今はどうなんでしょうね?」
その言葉を聞いた途端、アンジェリーナの周りの空気がビリビリと震えた。
まるで尻尾を踏まれた猫のように、彼女の赤毛がピンと逆立つ。
「そんなことを!! ワ タ シ が 知 る か あ あ あ あッッ!!!」
アンジェリーナから怒りのフォロモンが空気中にたっぷりと放出され、部屋の中に充満した。
フェロモンセンサーを持つリリィにはたまったものではないかもしれない。
「ハァ…ハァ…ごぉおめんなさいねぇえ、リリィ…!取り乱しちゃってぇえ…!」
アンジェリーナは自分の赤毛をグシャグシャと掻き回しながら無理やりつくった笑顔をリリィに向けた。
「ねぇええ、リリィ?あーんまり、まわりくどいのは、ナシにしない?
 あなたはどうしたいのぉおお??願いを叶えてあげるわよぉおおお……!?」
リリィは後悔するだろうか?それとも気づいたのだろうか?
今まさに、リリィはアンチラストとアンジェリーナの真実へと到達する覚悟を問われているのだ。

>179
ちょうどその頃、一般人が見たらとても信じられない光景が美術室で展開されていた。
氷の檻に閉じ込められた牛ほどの大きさもあるグロいネズミが、
その氷の檻に繋がれた氷の鎖を持った小柄な美少年に、
ハンマー投げよろしくビュンビュンと振り回されているのだ。
彼の名はフリードリッヒ・ノクターン。いわゆる一人の逸般人である。

振り回されている間も、イレブンの背中から生えた無数の腕がフリードを襲おうとしたが、
彼の纏う冷気により次々と氷結・粉砕された。
イレブンはその度に悲鳴をあげたが、ふと悲鳴が止まった。
見ると、イレブンの口から吐瀉物と、胴回りが一寸ほどもありそうなムカデの尻尾が露出した。
どうやらそのムカデはイレブンの体内に侵入する時こそ小さかったが、
イレブンの養分を吸い取ることで急激に成長したようだ。
フリードが意図した通り、吐瀉物と共にムカデが露出したが、
今のままではムカデを体外に排出するまでには至らないようだ。
かといって振り回すのをやめればムカデはイレブンの体内へと再び隠れるだろう。
何か良い策はあるのだろか?
183 : フリードリッヒ ◆cOOmSNbyw6 [sage] : 2013/09/24(火) 08:03:21.42 0
>182
なかなか吐き出さないのを見てフリードリッヒは
「両腕を使うことで二倍!いつもの二倍の回転を加え更に倍!更に自分自身が回転して更に倍!
 そしていつもの二倍のジャンプを・・・・・・」
『ジャンプは必要ないんじゃない?ていうか天井に頭をぶつけるよ』(猫語)
「ここは素直に頭以外を凍らせて素手でムカデを引っこ抜くべきでしょうか?
 正直汚いからやりたくはないんですが・・・・・・」
『氷でやっとこでも作ったらどうかな?』(猫語)
「でも回転を止めれば引っ込んでしまいますよ?」
『逆回転させて一瞬止まる瞬間に僕が殺ってみるよ』(猫語)
「だから殺しちゃ駄目なんですってば」
『大丈夫殺るのは虫だけだから』(猫語)
「誰かを助けるために他の誰かを殺す
 結局すべてを救うなんて出来ないんですよね
 まあ僕は偽善者ですから躊躇いもしませんし
 むしろ偽善者であることを誇りにすら思っています」
誰が本当の敵か見極めるのはほんとうに難しいものである
このムカデだってもしかしたら操られているだけの可能性も否定できない
『体に入り込んでその支配権を握ろうとするなんてとんでもない邪悪に決まっているじゃない
 パステト女神の神官の息子である僕が保証するよ
 邪悪滅ぶべしだよ!!』(猫語)
「ここは僕に任せて他の皆さんはリリィさんを追いかけてください!
 あのアンジェリーナっていう人なんか胡散臭いカンジがするんですよね!!」
『それ死亡フラグじゃね?』(猫語)
「僕が死んだら姉さんにこの杖を・・・・て縁起でもない!!」

はたして無事にムカデを倒せるのか?
そしてムカデを倒したからといってネズミはおとなしくなるのか?

『今だやっとこを喰らえ!!』(猫語)
本当にどうなってしまうのか?
184 : リリィ ◆nA2uUOb9SzX7 [sage] : 2013/09/26(木) 17:10:15.10 0
>「そんなことを!! ワ タ シ が 知 る か あ あ あ あッッ!!!」&nbsp;
(ひいいい?!)
>&nbsp;アンジェリーナから怒りのフォロモンが空気中にたっぷりと放出され、部屋の中に充満した。&nbsp;
リリィは自身の変化に気づいていなかったが、アンジェリーナが激怒しているのだけははっきり理解した。
感情の機微を読み取るどころか、どうやら地雷を踏んでしまったらしい。
(や、やっぱりアンジェリーナ先輩、アンチラストちゃんの妹さん・・・・・・?)
だとしたら、&nbsp;アンチラスト化しているリリィを見て、やたら高圧的なのも理解できる。

だが、疑問は残る。
先ほどから、アンジェリーナが執拗に、リリィの体と、肉体と交換させようとしていることだ。
(そもそもこの技術は、マリアベルが実の娘に使いたかったものじゃないの?)
なぜ実行しなかったのだろうか?実験が完成する前に、娘が死亡したということだろうか?
ならば・・・・・・。

>「ハァ…ハァ…ごぉおめんなさいねぇえ、リリィ…!取り乱しちゃってぇえ…!」&nbsp;
>アンジェリーナは自分の赤毛をグシャグシャと掻き回しながら無理やりつくった笑顔をリリィに向けた。&nbsp;
>「ねぇええ、リリィ?あーんまり、まわりくどいのは、ナシにしない?&nbsp;
> あなたはどうしたいのぉおお??願いを叶えてあげるわよぉおおお……!?」&nbsp;

リリィは恐ろしさにすくみあがりながらも、何とか口を開いた。
「私の望みは、私の体を元に戻す方法を知ることです。
 そして、学園に全員そろって帰還することです。
 私は、マリアベルの研究がどんなものかを知りたかった。
 でもそれは、この体を元に戻したいと思ったからであって、別の何かと取り替えるってことじゃない。
 彼らがたとえ魂を持たない器であったとしても、他人の肉体に乗り換える気は無いです。
 どんなに奇異であっても、不満があっても、これが私の体なんです」

(――――&nbsp;なーんて偉そうなこと言ってるけど、今の私の体は、わら人形なんだよね・・・・・・・)
言えば言うほど、泥沼にはまっていくような気がした。
だが、それでも続けなければならない。

リリィは、アンジェリーナが学園から来た先輩だとは思っていなかった。
だが、彼女が何者かはまだわかっていない。その目的もだ。
幸いなことに、この体は、リリィのものではない。
パピスヘテプが機転を利かせて与えてくれたものだ。
本体から離れすぎたため、今は体が思うように動かない。でもまだ会話くらいは出来る。
(フリード君達のためにも、少しでもアンジェリーナから情報を引き出さなきゃ。
 最悪、ここで私がどうにかされても、まだ終わりじゃないもの)
仮の器である藁人形で出来た肉体が破壊されても、本体に戻るだけのことだ。
(・・・・・・でも、私の体が藁人形だったと知ったら、きっとアンジェリーナはものすごく怒るだろうな・・・・・・)
もっとも、本体も今の彼女と同じ状態変化を起こしている。
全て偽りというわけでもないのだが。

アンジェリーナと会話するのは、地雷原に踏み込むようなものだ。
どこで爆死するかはわからないが、できるだけ会話を続けたいものである。
「そもそもこれがマリアベルの技術なら、何で実の娘やアンチラストの体を交換しなかったんでしょう?
 アンチラストが危険だというのなら、この器のどれかに彼女の魂を移し変えたら済む話だったのでは?
 わざわざ魔法使い3人がかりで殺そうとしたり、異世界へ逃がしたりする理由がわかんないです」

リリィはごくりと生唾を飲み込むと、核心に踏み込んだ。
「アンジェリーナ先輩の望みは何ですか?
 私達をアンチラストちゃんのところに送り込んで、何がしたかったんですか?
 本物の魔法使いが討ち損じたのに、まさか私達に完遂できるとか思ってないですよね?」
185 : ◆jWBUJ7IJ6Y [sage] : 2013/09/29(日) 19:53:29.05 0
>183
> 『今だやっとこを喰らえ!!』(猫語)
>「ヴェロロロロロ……!!」
グレンの持つやっとこがムカデを捉えた。
激しく嘔吐するかのごとく、イレブンの口から長大なムカデの体が引きずり出されていく。
しかし、やっとこで体の一部を潰されても、ムカデは死ななかった。
おそらく完全に切断してしまってもしばらくは絶命しないだろう。
ムカデの持つ生命力とはそういうものだ。

引きずり出されたムカデは、今度は体をグネグネと曲げグレンに襲いかかった。
狙いはグレンの口内である。イレブンと同じように体を乗っ取るつもりだ。

ムカデが引きずりだされた後、イレブンはぐったりした様子だった。
もう攻撃する意思は持たない。
彼はアンジェリーナとリリィが走って行った方を指差す。
>「オイカケテ…オイカケテ…」

>184
>  「(前略)彼らがたとえ魂を持たない器であったとしても、他人の肉体に乗り換える気は無いです。
>  どんなに奇異であっても、不満があっても、これが私の体なんです」
その言葉を聞くと、アンジェリーナは明らかに苛立った様子を見せた。
それにはアンジェリーナ固有の問題があるのだが、リリィが知る由はない。

その後もリリィはアンジェリーナに核心的な問いを続けた。
もう既にリリィにはわかっていたのだ。
今回の事件の黒幕が、目の前のアンジェリーナ、またの名をユニソルブルであることを。
「……ねぇ、リリィ。いろいろ言っちゃってくれてるけどさぁ。
 私は絵本の悪役じゃあないのよぉ?
 あなたに向かってベラベラと目的を話してあげるとでも思っているのぉ??」
アンジェリーナは鼻で笑った。
「でも、馬鹿だと思われたくないから言ってあげるわ。
 私はねぇ、案外本当にあなた達ならアンチラストを殺してくれると思っていたわぁ。
 先に行った3人のあのクズ共よりは賢明そうだったから。
 これでも正当に評価しているつもりよぉ?
 ……でも駄目ねぇ、仲間割れなんかして」
どうやらアンジェリーナはアムリーテが暴走したことも承知しているようだ。
「…それともう一つ。かつてアンチラストを殺すように仕向けたのもこの私なの。
 あなたが、まさかアンチラストの因子を持って外に出てきたのは予想外だったわ」
チャキン!という子気味良い音と共に、アンジェリーナの右前腕にダイヤモンドの刃が突出した。
「アンチラストといい…あんたといい……私の思い通りにならないならいっそ殺すわよぉおおおおお!?」
アンジェリーナはリリィに襲いかかった。
先ほどのイレブンを上回るスピードで彼女の顔面に刃が迫る。
しかし、それでもなお……
今のリリィの反応速度はそれを捕らえられるほど鮮明になっていることをアンジェリーナは知らない。
186 : リリィ ◇nA2uUOb9SzX7[sage] : 2013/10/06(日) 09:07:17.44 0
>183 >185
イレブンとの決着がついた頃。
「フリード君にグレン!大丈夫だった?!」
窓のから、勢いよく飛び込んできた人影があった。

箒にまたがった者は、魔法学園の制服を着ていた。
服装と顔だけなら、間違いなくリリィだろう。
だが、ところどころ破れた制服からみえる手足は、昆虫そのものだ。
今の彼女の姿を客観的に表現するなら、
「人間の顔をした昆虫が、魔法学園の制服を着て、箒にしがみついて(空を飛んで)いる」状態である。

美術室に鏡が無かったのは不幸中の幸いだろう。
こうも変わり果てた姿を目の当たりにしては、「別の体なんていらない」とはっきり啖呵を切れなかったかもしれない。

「二人とも聞いて、この奥には、マリアベルの研究室らしき部屋があるの!
 そこには魂の入ってない身体がたくさんあったわ。そんで、アンジェリーナ先輩はアンチラストちゃんの妹だったの!」
リリィはそのほかにも、今まで見聞きしたことを手短に話した。
「今、わら人形の私が、アンジェリーナ先輩・・・・・・ユニソルブルに「エンカを返して」って説得しようとしてる。 
 でもユニソルブルは、私を殺る気まんまんで、話し合いでの解決は無理かもしれない・・・・・・。
 フリード君達はどうする?イレブンは、追いかけてって言ってるけど・・・・・・。
 ユニソルブルと同行した私は偽の身体だから、最悪殺されても何とかなるんだけど・・・・・・エンカの居場所がね・・・・・・」
ユニソルブルから聞き出さなかった場合、自力でエンカを探し回る羽目になるだろう。

「わら人形の私に合流してくれるつもりなら、悪いけれど先に行って。
 私、わら人形の身体を交渉に使う予定なの。
 その成否がわかるまでは、本体で実験室にはいけないの」
187 : フリードリッヒ ◆cOOmSNbyw6 [sage] : 2013/10/06(日) 09:45:57.88 0
>引きずり出されたムカデは、今度は体をグネグネと曲げグレンに襲いかかった。
『嫌だこんなの大きくてはいらないよ(口に)』(猫語)
そうムカデは太りすぎていたのである
胴回りが一寸ほどもありそうなムカデが小さな子猫の口に入るわけがなく
このままだとグレンは窒息死してしまうだろう
「いけないこのままじゃグレンが!!」
汚いなんて言ってられない状況である
すぐさまフリードは素手でムカデの体をひっつかみグレンから引きずり出す
「しばらく凍っていてください!!」
引きずり出したムカデをなるべく遠くに投げるとその体を凍らせるフリード

>「オイカケテ…オイカケテ…」
「任せなさい!言われなくても友達のピンチは見過ごせません!!」
>「フリード君にグレン!大丈夫だった?!」
「・・・・・・・おお!そうでした!!あれは偽物リリィさんでこっちが本物のリリィさんでした!!」
『リリィお姉ちゃん随分と個性的になったね』(猫語)
「そんな細かいことはどうでもいいんですよ!」

リリィはフリードに自分をおいて先にいけという
それはそうである
今リリィが先に進めば今その場にいるのが偽物だとまるわかりになるからだ
「分かりました今からアンジェリーナさんを追いかけてどうにかエンカさんを取り戻しに行きます
 本当はこういう時に炎道さんとか炎使いが居てくれたら炭素使い相手には有効なんですが
 この際贅沢は言っていられません」

そうしてフリードリッヒは先に進む
そこで見たものは腕に生やした刃でもってリリィを襲うアンジェリーナであった
>「アンチラストといい…あんたといい……私の思い通りにならないならいっそ殺すわよぉおおおおお!?」
『自分の思い通りにならないからって暴力に走るとか子供か!』(猫語)
生まれて数ヶ月の子猫に言われたくない話である
「リリィさん!ダイヤモンドは固いけど砕けやすいんです!!そこが攻略のポイントです!!」
氷のハンマーを作りながらこう言うフリードリッヒ
『砕けやすいのは氷も同じじゃん?』(猫語)
「別にぶつけるだけが氷の能力じゃありませんよ
 相手の体温を奪う足を凍らせて動きを止める
 まあ他にも氷の道を創りだして空中を移動とか
 心臓へ行く血液を凍らせて即死・・・・・は僕には出来ませんが」
残酷すぎてなのか能力が足りなくてなのかは謎である
「フリージングドールマリオネーション!!」
遠距離から雪の結晶で作った細かい鎖をアンジェリーナに括りつけようとするフリード
食らったが最後よくわからない意味不明の踊りを踊らされてしまうだろう
まるで操り人形のように

・・・・まあ当たらないんだけどね
『ですよね~』(猫語)
「気を反らせればそれで十分ですから無問題です!」
188 : リリィ ◆nA2uUOb9SzX7 [sage] : 2013/10/07(月) 17:54:20.82 0
>185-186
>「分かりました今からアンジェリーナさんを追いかけてどうにかエンカさんを取り戻しに行きます (略)
「うん!気をつけてね、フリード君にグレン!」
本体リリィは、フリードを見送った。
この場に残ったのは、本体リリィと、凍りついたムカデと、イレブンである。
リリィは周りを見渡し、美術バックを見つけた。
そして氷漬けになったムカデを、美術バックに詰め込んでしまう。
「ふー、これで良しっと」
フリードの氷は簡単には溶けないが、これで万が一氷から抜け出しても時間が稼げるだろう。
そしてリリィは、イレブンをちらりと見た。
「あなたが食べてたのって、研究室にあったたくさんの人型?他の食べ物じゃだめなの?
 っていうか、ネズミなのに何でそんなに大きくなったの?」
返答は特に期待していない。
「・・・・・・・ユニソルブルは、何がしたいんだろうね?」

>184
体を乗り換えないと宣言した後のアンジェリーナの表情に、リリィは内心で舌打ちした。
どうやらアンジェリーナは、リリィのためでなく自分のために体の交換を申し出たようだ。
出方を間違えたと後悔しても思っても、もう遅い。

アンチラストはリリィの愚鈍さを鼻で笑いつつも、答えを返してきた。
「(略) 私はねぇ、案外本当にあなた達ならアンチラストを殺してくれると思っていたわぁ。
 先に行った3人のあのクズ共よりは賢明そうだったから。
 これでも正当に評価しているつもりよぉ?
 ……でも駄目ねぇ、仲間割れなんかして」
「どうしてその事を知ってるの?」
問い返しながらも、リリィはうすうすわかっていた。

イレブンは、エンカのことをムカデといっていた。
また、イレブンはムカデを口にしたとたん、態度を豹変させていた。
そしてフリードが体内からムカデを追い出したとたん、イレブンは元に戻った。
(これは藁人形ではなく、本体のほうのリリィが見聞きした情報だ)
いずれにしても、共通しているのはムカデだ。

アンチラストは、館の生物と仲良く暮らしていたと語っていた。
ということは、ユニソルブルが館の生物・・・・・・特にムカデと仲良し・・・・・、
あるいは、ムカデを使って、ユニソルブルが相手を操作し、情報を得ていたとしてもおかしくない。
189 : リリィ ◆nA2uUOb9SzX7 [sage] : 2013/10/07(月) 17:57:45.26 0
>「…それともう一つ。かつてアンチラストを殺すように仕向けたのもこの私なの。
> あなたが、まさかアンチラストの因子を持って外に出てきたのは予想外だったわ」
>チャキン!という子気味良い音と共に、アンジェリーナの右前腕にダイヤモンドの刃が突出した。
「げっ?!」
リリィは身構えた。本体が美術室に突入したので、体の自由が利くようになったのだ。
>「アンチラストといい…あんたといい……私の思い通りにならないならいっそ殺すわよぉおおおおお!?」
「勝手なこと言ってんじゃないわよおおおお!!!」
リリィは髪を逆立てながら、バックステップで回避した。
本来の彼女ならありえない動きに困惑しつつも、感情の高ぶりは抑えきれない。
リリィは目をぎらつかせながら、じりじりと隙をうかがっている。
「どうしよう。私、あなたの事ぶちのめしたくなってきた・・・・・」
>『自分の思い通りにならないからって暴力に走るとか子供か!』(猫語)

「?!」
背後の扉から飛び込んできたフリード達の声に、リリィははっとわれに返った。
>「リリィさん!ダイヤモンドは固いけど砕けやすいんです!!そこが攻略のポイントです!」
「は、はい!」
(なんだったんだろう、今の衝動・・・・・・?)
リリィは困惑しつつも、フリードが作り出した氷のハンマーを受け取る。

>『砕けやすいのは氷も同じじゃん?』(猫語)
>「別にぶつけるだけが氷の能力じゃありませんよ (略)」

>「フリージングドールマリオネーション!!」
>遠距離から雪の結晶で作った細かい鎖をユニソルブルに括りつけようとするフリード 。
>「気を反らせればそれで十分ですから無問題です!」
>「ちぇすとおおお!」
リリィは重い氷のハンマーを軽々と操ると、ユニソルブルの刃の腹めがけて振り下ろした。
この攻撃が決まっても、決まらなくても、お互い一度距離をとることになるだろう。

「・・・・・・・・・・・・とりあえず、お互い冷静になって話をしませんか?
 あなたがアンチラストにコンプレックス持ってるってのはわかりました。
 だって、そんなに気に入らないなら、自分でアンチラストちゃんを倒せばいいじゃないですか。

 ああ、ちょっと待って!!落ち着いて!!
 私達は、別にあなたを殺したいとか思ってるわけじゃないんです。
 エンカを見つけて、この島を掃除したらおとなしく帰りますから。
 そして、あなたがどうしても「この体」を欲しいというのなら、あの人型のどれかと交換したっていい。
 あの金髪の女の子なんか、ちょっと私に似てる気がするし!」

リリィは冷や汗を流しながらも、さらに続ける。
「交換してあげる代わりに、エンカをここに連れてきてください。
 ムカデを使って、貴方がエンカを操ってたんでしょう?
 ああ、死んだなんて言い訳は聞きませんよ?だって、キラー・チューンが生きてるんだから」
稚拙な交渉であり、圧倒的に有利なのはユニソルブルである。
『フリード君、なんかいいアイディアない?』
190 : ◆jWBUJ7IJ6Y [sage] : 2013/10/13(日) 19:22:04.24 0
>187>188>189
> 「・・・・・・・ユニソルブルは、何がしたいんだろうね?」
美術室でリリィがイレブンにそう聞いたとたん、イレブンがごそりと動いた。
だからと言って、リリィは臨戦態勢をとる必要はなかった。
イレブンから今出ているのは、そういうフェロモンではないからである。
>「アンチラスト、ユニソルブル、ホントウハ、フタリでヒトリにナッテ、カンセイスル。
> アンチラストはキュウキョクのカラダをモチ、
> ユニソルブルはキュウキョクのセイシンをメザシタ。
> ダケレド、マリアベルがホントウにアイシテイルのはムスメのアンジェリーナのカゲダトワカッタトキ、
> ユニソルブルのセイシンはユガンデしまった」
最初に会った時からは想像もできない返答にリリィは驚いたかもしれない。
あのムカデが寄生したことにより、ムカデが持つ情報もまたイレブンに残ったのであろう。
>「ゼッタイにイッチャダメダ」
イレブンは最後にそう言うと、全ての生命活動が停止した。
フリードのせいではない。ましてやリリィのパンチも関係ない。
イレブンに寄生したムカデが、彼の肉体をここまで酷使し、追い詰めた結果なのだ。

ところ変わって、こちらはシャドウゴーレムのリリィとアンジェリーナの戦いである。
> 「勝手なこと言ってんじゃないわよおおおお!!!」
> リリィは髪を逆立てながら、バックステップで回避した。
「ちっ!?」
アンジェリーナはリリィが自分の攻撃をかわせるとは思ってもみなかった。
偶然か?いや、認めなければならない。
リリィがアンチラスト化に順応しつつあることに。
> 「どうしよう。私、あなたの事ぶちのめしたくなってきた・・・・・」
「……やってみなさいよ。この私に、そんなことができるものなら…!」
さらにアンジェリーナにとって悪いことに、フリード達が姿を現した。
「イレブンめ!1分ももたなかったの!?本当にクズだわ!!」
> 『自分の思い通りにならないからって暴力に走るとか子供か!』(猫語)
「お、お前に言われたくないわーっ!!」
アンジェリーナは思わずつっこんでしまった。
> 「リリィさん!ダイヤモンドは固いけど砕けやすいんです!!そこが攻略のポイントです!!」
> 「は、はい!」
フリードは氷のハンマーを作り、リリィに渡した。
続けてフリードは雪の結晶で作った細かい鎖でアンジェリーナを絡めとろうとする。
> 「フリージングドールマリオネーション!!」
「無駄よ!」
アンジェリーナは左手でダイヤモンドの短剣を放ち、鎖の軌道をそらした。
鎖はそのままの勢いで部屋に並んだ試験官の中に突っ込む。
どうやらその中に入っている義体に鎖が絡みついたようだ。
> 「気を反らせればそれで十分ですから無問題です!」
> >「ちぇすとおおお!」
> リリィは重い氷のハンマーを軽々と操ると、ユニソルブルの刃の腹めがけて振り下ろした。
「そんなもので私の刃が砕けると、 思 っ て い る の か ー っ !!」
アンジェリーナの右前腕の刃が、突然光を放ち始めた。
リリィの氷のハンマーと、アンジェリーナのダイヤの刃。
この二つが接触した瞬間、リリィもアンジェリーナもそれぞれ後方に吹き飛ばされた。
リリィはきっとハンマーの柄を介して妙な手応えを感じたことだろう。
まるで砂を口の中で噛んだような感覚である。
この秘密を解かなければリリィ達は不利益を被るだろう。
アンジェリーナのダイヤの刃は砕けていないのだから!
191 : ◆jWBUJ7IJ6Y [sage] : 2013/10/13(日) 19:22:58.07 0
リリィはその後アンジェリーナに交換条件を出した。
アンジェリーナが当初提案したように、本来の体を義体と交換するかわりに、エンカを連れてくるという取引だ。
「……あなたの言う通り、エンカは死んでいないわ。
 そして、エンカは今も私が操っている。これがどういう意味かわからない?
 キラー・チューンも操ることができるし、エンカの命も私の自由にできるのよ?
 もっとも、安心して。エンカを“今後”自殺させるようなことはしないわ」
アンジェリーナはリリィの顔を見つめ、にっこりと笑った。
「“今”自殺させる」
アンジェリーナの体から、不安を煽るフェロモンが放出された。
それが何を意味するかリリィならわかる。嫌でもわかってしまうのだ。
「この館の全ての部屋はそれぞれ通風孔で繋がっているわ。
 …今さら塞いでも無駄よ。少しでも“コレ”が到達したならば、エンカは自らその命を断つわ」
アンジェリーナはフフフと笑ったあと、その大きな瞳を醜いほどに釣り上げてリリィ達に叫ぶ。
「この私と取引だとーっ!?このションベン臭いビチクソどもがーっ!!
 百年はぇーーんだよーッッ!!エンカが死ぬのはお前らのせいだかんなーーッッ!!
 さっさとその体をよこせっつーーんだよボケがーーッッ!!」
知性を微塵も感じさせないその態度は、もはや最初に会った時とは別人のようであった。
もしもこの時、アンジェリーナに少しでも知性が残っていたら理解できたであろう事が一つだけあった。

彼女は怒らせてはならない相手を怒らせてしまった。
192 : フリードリッヒ ◆cOOmSNbyw6 [sage] : 2013/10/16(水) 17:56:11.49 0
>『フリード君、なんかいいアイディアない?』
「いわば今人質を取られている状態です
 それを何とかしないと・・・・・・残念ながら僕は戦闘型魔法使い
 探索能力には乏しいのが悲しいところです
 ですがきっとどこかで僕らを監視している総統の部下の人が何とかしてくれるはずです!!」
『確かに子供達だけで行動させるのはおかしいけどそんな居るかわからない人を期待してどうするのさ?』(猫語)
ぶっちゃけいっぱいいっぱいであった


>「“今”自殺させる」
「なん・・・だと」
「この私と取引だとーっ(以下略」

「あなたはいくつかの失敗をしました!人質を取っているから有利だというのにそれを自ら捨て去った事
 そして僕たち(キラーチェーンとかも含む)を怒らせた事です!オランピア!!!」
『たまたま引っかかった少女型の義体に勝手に名前を付けた!?』(猫語)
だがその義体は別に武装とかしていないのでぶっちゃけのりと勢いだけである
ていうかフリード本体が戦ったほうが強いはずである
193 : リリィ ◆nA2uUOb9SzX7 [sage] : 2013/10/19(土) 20:35:05.41 0
屋上美術室。
本物リリィのつぶやきに答えたのは、意外な事にイレブンだった。
おまけに、トカゲに取り付かれる前よりはるかに饒舌だった。
彼の話では、どうもユニソルブルが完全になるには、アンチラストとひとつになる必要があるらしい。
アンチラストと同じ変化をたどったリリィの体をほしがった理由はこれだろう。
また、ユニソルブルは、マリアベルが自分ではなく、アンジェリーナの影を追い求めているのを知り、精神がゆがんだらしい。

リリィは以前地下で読んだ、2月18日に書かれたマリアベルの手記を思い出していた。
> アンチラストの能力が“真実への到達を拒む事”であることから、
> 殺そうという結果を求める限り彼女は絶対にその真実へと到達しない。
> だが必ず果たさなければならない。
> そうしなければ、同じ娘のガン細胞から造られたユニソルブルもまた、
> 完成という真実へと到達しないのだから』

「ちょっと待って、さっきユニソルブルは、アンチラストを殺すよう仕向けたのは自分だって言ってたのよ。
 アンチラストを殺して一体化することで、真のアンジェリーナになろうとしてたの?
 そこに都合よく私達が現れたから、アンチラストを討伐させようとした?
 でもあの亜空間では、仮に暗殺に成功しても、遺体が手に入らないわよね?」
ユニソルブルの考えていることが、さっぱりわからない。
否、彼女自身、いろいろな考えに揺れ動き、翻弄されているのかもしれない。
現に彼女の半身であるアンチラストも、まるで多重人格者のように人格がころころ変わっていたではないか。
>「ゼッタイにイッチャダメダ」
「あっ!イレブン?イレブン!!しっかりするのよ!もっと聞きたいことが・・・・・・!!」
リリィは必死で呼びかけたが、イレブンは二度と目を覚まさなかった。

一方、研究室の替え玉わら人形リリィ&フリードとグレン。
リリィは重い氷のハンマーで、ユニソルブルの腕から生えたダイヤの刃を砕こうとしていた。
>「そんなもので私の刃が砕けると、 思 っ て い る の か ー っ !!」
>この二つが接触した瞬間、リリィもアンジェリーナもそれぞれ後方に吹き飛ばされた。
「ぎゃふっ?!」
リリィは壁まで吹っ飛ばされ、そのままずるずる床に座り込んだ。
「・・・・・うう、何よ今の変な感じは。なんか、口の中で砂をかんだみたいな?!」
リリィは上目遣いでユニソルブルを睨んだ。
彼女も後方に吹っ飛ばされていたが、ダイヤの手刀には傷ひとつついていなかった。
「どういうことなのよ・・・・・・」
リリィにはそのからくりが、さっぱりわからなかった。
194 : リリィ ◆nA2uUOb9SzX7 [sage] : 2013/10/19(土) 20:41:13.96 0
リリィはフリードに意見を聞いた。
>「いわば今人質を取られている状態です
> それを何とかしないと・・・・・・残念ながら僕は戦闘型魔法使い
> 探索能力には乏しいのが悲しいところです
> ですがきっとどこかで僕らを監視している総統の部下の人が何とかしてくれるはずです!!」 [
「そっか!じゃあ部下の人に助けを求めたら・・・・・」
>『確かに子供達だけで行動させるのはおかしいけどそんな居るかわからない人を期待してどうするのさ?』(猫語)
「ですよねー!」
そんな簡単に姿を見せてくれるのなら、アンチラストの元へ転移したときに現れたはずである。

>「“今”自殺させる」
>「なん・・・だと」
>「この私と取引だとーっ(以下略」

「・・・・・・・そうか、そういうつもりなら仕方ない」
リリィは静かに床から立ち上がった。
リリィは慣れないファイティングポーズを取った。目がぎらぎらと輝いている。

>「あなたはいくつかの失敗をしました!人質を取っているから有利だというのにそれを自ら捨て去った事
> そして僕たち(キラーチェーンとかも含む)を怒らせた事です!オランピア!!!」
>『たまたま引っかかった少女型の義体に勝手に名前を付けた!?』(猫語)
『フリード君、さっきなんで攻撃が効かなかったのか私にはわからなかった。
 なのにまた二人で真正面から行っても、同じ結果になりかねない。
 だから、私が攻撃する瞬間をよく見てて。何か反撃の糸口が見えてくるかもしれない!』
リリィはオランピアが攻撃するよりも早く、素手でユニソルブルに襲い掛かった。
>「あなたを倒す。エンカが死ぬ前に!!」
たとえ片腕を切り落とされても、ユニソルブルの顔面に一発叩き込む覚悟だ。

さて、再び美術室の本物リリィ。
目の前でイレブンが動かなくなった。そして今、ユニソルブルに操られているエンカの窮地も知った。
彼女が真っ先に試みたのは、この島に来た学園の仲間に呼びかけることだ。
『ロゼッタちゃん、皆、聞いて!今すぐエンカを見つけ出して!彼、自殺するつもりなの!』
リリィはテレパシーを送りつつ、箒にまたがり窓から飛び出した。
ユニソルブルの手ごまであるムカデに見つかるかもしれないが、ぐずぐずしている暇はない。

リリィは地上に下り立つと、館の玄関の扉を開け放った。
「ロゼッタちゃん!いる?ねえ、エンカがどこにいるか知らない?
 エンカがだめならキラー・チューンの居場所でもいいの!急がないとエンカが死んじゃう!!」
195 : ◆jWBUJ7IJ6Y [sage] : 2013/10/20(日) 21:49:20.30 0
>192>194
>「あなたを倒す。エンカが死ぬ前に!!」
> たとえ片腕を切り落とされても、ユニソルブルの顔面に一発叩き込む覚悟だ。
もはやこれ以上、お互いに言葉は不要だった。
リリィもアンジェリーナも、目がぎらぎらと輝いていた。
> リリィはオランピアが攻撃するよりも早く、素手でユニソルブルに襲い掛かった。

勝負は一瞬の出来事だった。
しかし、アドレナリンを全開にして打ち合いをしたリリィとアンジェリーナにはとても長い時間に感じられたことだろう。
リリィは、自分の腕にアンジェリーナの刃が食い込んだ瞬間、その秘密を目撃することになる。
光る刃は、よく見ると無数の、とても細かく小さいダイヤモンドの集合体だったのだ。
それらが高速回転し、周りの僅かな光を集めて反射させることで光って見えていたのである。
決して砕けることはなかったのは、最初から砕けているからだったのだ。
「勝った!!このまま貴様の命まで刃を突き立てる!!」
アンジェリーナはリリィの片腕を切断した後、さらに刃を突き出そうとした。
が、覚悟を決めていたリリィの、残った拳がアンジェリーナのこめかみを打った。
「ぐぇっ!?」
鋭い痛みがゆっくりとアンジェリーナの頭蓋骨に浸透し、その形をえぐった。
アンジェリーナは激しくきりもみ回転をしながら、後方の壁に叩きつけられた。
そしてオランピアとフリードが名づけた義体が、そのままアンジェリーナを押さえ込む。
「わ…私のスピードを上回った……なんということだ……
 この私が、あんなカスに、リリィに頭を破壊されて………吐き気がする。
 立ち上がれないだとーッッ……!?」
そしてアンジェリーナは、片腕を斬り飛ばされたリリィとフリードの様子を見て、その事実に気づいた。
「リリィ…貴様らーッ!!その体は、偽物だったのだなーッ!?」
196 : ◆jWBUJ7IJ6Y [sage] : 2013/10/20(日) 21:51:01.40 0
場所は変わって、本物のリリィがいたのは館のエントランスだ。
> 「ロゼッタちゃん!いる?ねえ、エンカがどこにいるか知らない?
>  エンカがだめならキラー・チューンの居場所でもいいの!急がないとエンカが死んじゃう!!」
ロゼッタは相変わらず地下へ続く扉の前に座っていた。
>「……キラー・チューンならさっきまでここに居たよ。うん、居たのかな?
> 言いたいことだけ言ってすぐ行っちゃったから、居たと言っていいか知らないけれど」
ロゼッタは回りくどい言い方をしたので、リリィはいらいらするかもしれない。
なんとなくロゼッタもそれを察したらしく、リリィに言った。
>「ごめん、事情はよく知らないけれど、エンカは死なないと思うの。
> それを説明するのは、長くなりそうだけれど、まずアタイの話を聞いてくれない?
> まず、アタイが今朝からエンカと一緒にいたことなんだけどさ……
> あんたも、ちょっと不自然だと思ってたんでしょ?」
そこからかよ!…しかし、どうやら必要な説明らしい。
ロゼッタはエンカが死ぬことだけに関してはありえないと確信しているようなので、
リリィも一緒に安心してくれるかもしれない。
が、もしもそうならなかったとしてもロゼッタは語り続ける。
>「ゲートを使う時に、左手を切断したままだと本当に千切れるってのは、嘘なんだ。
> 本当は……きっとわかってるだろうけれど……ドコデモ・ドアーが使えなくなったからなの。
> そして、なんとなくだけれど、その理由もわかっている」
ロゼッタは、幼少時に好きだった男の子が手首を切断した光景を目の当たりにしたことで、
魔法に目覚めた日のことをかいつまんで話した。
その後、猟奇的なまでに男子の左手を求めるようになったのはリリィも承知の事実である。
>「エンカがね、一週間に一日だけ、左手を貸してくれるようになったの。
> とっても嬉しかった。クソつまらない日常の6日を耐えた後の、とびきりのホリデーがアタイの希望になった。
> そのうち、エンカは2、3日続けて左手を貸してくれるようになったわ。
> 便利な義手ができたからって。だからアタイは、喜びも3倍になると思ったの。
> …でも、それから何かがダメになって行くことに気づいたわ、アタイは。
> エンカもアタイの不満に気づいたみたいで、最近はほとんど毎日貸してくれるようになったのだけれど、
> 皮肉にもそれでわかってしまったの。とびきりのホリデーは、それが何日も続くとクソつまらない日常に等しくなると…」
どうやら、それがロゼッタのスランプの原因のようだ。
>「…だから、アタイは今後どうしたらいいのか、わからなくなっているんだ」
そう言ってロゼッタはリリィを上目遣いで見た。
きっとリリィに答えを求めているのだが、仮にも先輩としてのプライドゆえか、口には出せないのだ。
リリィの返答を聞いたら、ロゼッタはキラー・チューンの伝言の内容を伝えるだろう。
197 : フリードリッヒ ◆cOOmSNbyw6 [sage] : 2013/10/22(火) 18:02:29.56 P
>そしてオランピアとフリードが名づけた義体が、そのままアンジェリーナを押さえ込む。
「今ですオランピアフォール!!」
いわゆるプロレスにおけるフォールである
『普通に抑え込めた!?』(猫語)
「関節技を加えるかそのまま抑え込むか迷ったんですけどね
 リリィさんが加えたダメージが思った以上に大きかったみたいなのでこれで十分でしょう
 さてこの義体は後でアムリーテさんに差し上げましょう
 まあ偽物とはいえ生身の肉体ですきっと喜んでくれますよ」
『おもいっきり横領宣言した!?』(猫語)
「ユニソルブルは死なない程度に凍らせてアンチラストさんに引き渡しましょう」
その際は誤解でアンチラストに襲われないようにしなければとフリードは思った


>「リリィ…貴様らーッ!!その体は、偽物だったのだなーッ!?」
「さあてどうでしょう?アムリーテさんみたいに生まれながらの作り物の体の人もいますし」
『いやそこはややこしくなるから素直に肯定してあげてよ』(猫語)
198 : リリィ ◆nA2uUOb9SzX7 [sage] : 2013/10/26(土) 04:58:27.61 0
>永遠に等しい一瞬の後、ユニソルブルとリリィは激しく激突した。
リリィは、自分の右肩ごと腕がきり飛ばされていく軌道を、やけにゆっくり感じていた。
そして右腕を代償に、ようやくユニソルブルの「光る刃」の秘密を知る。
それらは、とても細かく小さいダイヤモンドの集合体だったのだ。
(これじゃハンマーで壊せるわけないよね・・・・・・)

>「勝った!!このまま貴様の命まで刃を突き立てる!!」
>アンジェリーナはリリィの片腕を切断した後、さらに刃を突き出そうとした。
「歯ぁ食いしばれえええ!!」
>「ぐぇっ!?」
リリィの残った左拳が、ユニソルブルのこめかみに食い込んだ。
「え・・・・・?!」
リリィの拳が、彼女の頭部を抉っている。
ユニソルブルは激しくきりもみ回転をしながら、後方の壁に叩きつけられた。
あまりの破壊力にリリィ本人が動揺しているうちに、フリードがオリンピアを使って、ユニソルブルを拘束した。
>『普通に抑え込めた!?』(猫語)
>「関節技を加えるかそのまま抑え込むか迷ったんですけどね
> さてこの義体は後でアムリーテさんに差し上げましょう
> まあ偽物とはいえ生身の肉体ですきっと喜んでくれますよ」
とてもいいアイディアだが、義体の死亡フラグが立ってしまった気がする。
>「ユニソルブルは死なない程度に凍らせてアンチラストさんに引き渡しましょう」
ヘリが破壊されたので、その時には地下室の仕掛けからいかないと無理だろう。
しかし、アムリーテの暴走で仕掛けのある部屋の通路は破壊され、閉ざされている。
その対策をとらないと、再びアンチラストに会うのは難しいだろう。
最悪、ユニソルブルは学園に連れ帰り、学園長に判断を仰ぐという手もあるかもしれない。 

「だめよフリード君、気を緩めちゃだめ!ユニソルブルの使う光る刃の正体は、小さなダイヤモンドの集合体なの!」
痛みのあまり、その場に膝をついていたリリィが、血だまりの中で搾り出すように叫ぶ。
オリンピアでユニソルブルの肉体を拘束できても、光る刃で義体や操り糸を傷つけられてしまってはおしまいなのだ。
もっとも、ユニソルブルの攻撃を直接食らってわかったことがある。
それは、彼女が自分の身近にある炭素を、ある程度自分の意思で動かすことが可能ということだ。
ただ、リリィの体内に含まれる炭素を直接操作したり、光る刃を飲み込ませて内から肉体を破壊しないところを見ると、
炭素操作には、それなりの制約があるのかもしれない。

「ユニソルブル、そのままじっとしてて、お願いだから。・・・・・・・もう、痛覚まできっちり再現しなくていいのに」
リリィは真っ青な顔のまま、切断された右腕を拾おうとした。
だがそれは摘み上げたとたん、血だまりは消え、腕は藁くずに戻ってしまった。

>「リリィ…貴様らーッ!!その体は、偽物だったのだなーッ!?」
>「さあてどうでしょう?アムリーテさんみたいに生まれながらの作り物の体の人もいますし」
>『いやそこはややこしくなるから素直に肯定してあげてよ』(猫語)
「・・・・・・・ここにいる私の魂は本物だよ。そして私は、アンチラストちゃんじゃない。
 ユニソルブル、あなたががアンジェリーナでは無いように」
リリィは床にがっくりと膝をついた。足先が透明になっていく。
「・・・・・・・・私やアンチラストちゃんを取り込んでも、あなたはアンジェリーナにならない。
決してアンジェローナにはなれない。
 だって、あなたはあなたであって、アンジェリーナの魂とはまったく別の存在なんだから」

あと少しで、大きなダメージを受けたこの体は、元の藁人形に戻ってしまうだろう。
リリィはテレパシーで、屋上美術室で知ったイレブンの話を手短に語った。
仮に藁人形になってしまっても、ロゼッタとのやり取りは、本体のリリィが包み隠さずフリード達に伝えるだろう。
199 : リリィ ◆nA2uUOb9SzX7 [sage] : 2013/10/26(土) 04:59:47.72 0
変わって一階エントランス、ロゼッタにエンカの居所を聞こうとした本物のリリイ。
>「……キラー・チューンならさっきまでここに居たよ。うん、居たのかな?
> 言いたいことだけ言ってすぐ行っちゃったから、居たと言っていいか知らないけれど」
「それは居たってことだよ!私は、どこに向かったかを知りたいの!!
 ねえ、もしもエンカが死んだら、大好きな手だって消えちゃうんだよ!それじゃロゼッタちゃんも困るでしょー!!」
エンカの左手のことに触れたせいか、珍しくロゼッタは空気を読んだ。
>「ごめん、事情はよく知らないけれど、エンカは死なないと思うの。
> それを説明するのは、長くなりそうだけれど、まずアタイの話を聞いてくれない?
>ロゼッタはエンカが死ぬことだけに関してはありえないと確信しているようなので、リリィも気を緩めた。
「ほんとに?本当にエンカは大丈夫なのね?」
ロゼッタはエンカと深く繋がっている(部分もある)ので、これだけ落ち着いているのなら、大丈夫なのだろう。
リリィは落ち着きを取り戻し、そして、彼女の話に耳を傾けようとした。

>「まず、アタイが今朝からエンカと一緒にいたことなんだけどさ……
> あんたも、ちょっと不自然だと思ってたんでしょ?」
ずこーっ、とリリィが脱力した。そこからかよ!と心の中で突っ込む。
だだ、ロゼッタの話は、普段の電波発言からは想像もできないほどまともな内容だった。
多少回り道でも、最後まで聞いたほうがよさそうだ。

>ロゼッタは、ドコデモ・ドアーが使えなくなったこと、男の子が手首を切断した光景を目の当たりにしたことで、
>魔法に目覚めた日のことをかいつまんで話した。
>その後、猟奇的なまでに男子の左手を求めるようになったのはリリィも承知の事実である。

リリィは、話の腰を折るようなことはしなかった。
ロゼッタがリリィに電波以外の発言をするときは、本当に困ったときだけだと何となくわかっているからだ。
(実際には、リリィを都合よく使うための嘘、というケースもあったのだが・・・・・・全く疑っていないようだ)

ロゼッタは、ドコデモ・ドアーが使えなくなった原因を話してくれた。
しかし、リリィにとってはめまいのしそうな内容だった。
エンカは義手を手に入れて、かわりに、自分の左手をロゼッタに貸していたというのだ!
(道理で変な手袋つけてると思ったのよ!あれって義手だったのね!
 まあそんなことはどうでもいいけど・・・・・・・・何をやってるのよエンカ、馬鹿じゃないの!!)
>「エンカがね、一週間に一日だけ、左手を貸してくれるようになったの。 (略)
> 皮肉にもそれでわかってしまったの。とびきりのホリデーは、それが何日も続くとクソつまらない日常に等しくなると…」

リリィはこめかみを押さえた。
彼女には、いくら便利な義手があったとはいえ、自分の体の一部分を、ホイホイ貸し出してしまうエンカの気持ちがわからなかった。
まあ、キラー・チューンの件で、彼とロゼッタの間でどんな密約が交わされたのか知らないのだ。
ここは、部外者が首を突っ込むようなことではないだろう。
「ロゼッタちゃんは、エンカのしてくれたことを、もっとよくかみ締めるべきだと思うよ。
 普通どんなに便利な義手があったとしても、他人に自分の肉体の一部を貸し出すって、勇気の要ることだよ。
 あなたの一部だったキラー・チューンを愛して、消滅させないように引き継ぐってこともね」

この時リリィは、ロゼッタの顔を見て青くなった。
あっ!しまった、ロゼッタ先輩だったごめんなさい!とリリィは一人慌てふためく。
「え、えっとですね・・・・・・。クソつまらない日常になったのは、ロゼッタ先輩の心持が変わったってことじゃないでしょうか?」

リリィは悩みに悩んだ末、慎重に選んだ言葉を発する。
「赤ちゃんがおしゃぶりを必要としなくなる日が来るように、ロゼッタ先輩も、もう、誰かの左手を必要としなくなったのでは。
 だって、先輩の嗜好を理解して、その上で自分の体の一部を貸してしまうような『友達』が出来たんですから。
 ・・・・・・・・エンカが見つかったら、一度ちゃんと話してみてください。ちょっとお調子者だけど、いいヤツですよ」
200 : フリードリッヒ ◆cOOmSNbyw6 [sage] : 2013/11/03(日) 08:19:45.41 0
リリィの体が藁の塊になるのを見届けると冷気でユニソブルの首から下をを凍らせてしまうフリードリッヒ
「一応手加減はしてありますので頑張れば出れるかもしれません・・・・・・
 けど消耗した体力と魔力は回復に時間がかかるんじゃないでしょうかね?」

そして懐から紙とペンを取り出し
『この者姉妹殺害未遂犯』
というカードを製作するフリードリッヒ
「この赤ペンはインクが切れない魔法のペンなんですよ
 でも長いこと使ってると何故か貧血になるんですよねぇ」
『まさかと思うけどそのインクって使用者の血なんじゃ?』(猫語)
ほかにもカードを何枚か作るフリードリッヒ
『この者身分詐称犯』『この者女生徒殺害未遂犯』
「・・・・う~ん罪状が多すぎて貼り付けるカードが決まりませんねえ
 よし思いつく限り書いて貼り付けてしまいましょう」
後でアンチラストがこれを見つけたとき状況が分かりやすいようにと
手紙代わりのカードをしたためていたのである
『そもそもあの子共通語読めるの?』(猫語)
「それは大丈夫でしょう・・・・多分」
この世界の識字率がどうなっているかは知らないが彼女なら文字ぐらいは習っているだろう
「さて彼女を連れ帰ったら保険医に引き渡しましょうか?
 保険医はこういう存在に詳しそうですし・・・・
 そういえば保険医の自分だけの理想の少女を創造する計画ってこれに関係あるんじゃ?」
『むしろ放置しておくべきじゃない?連れ帰ったら騒動の種になりかねないし」(猫語)
「リリィさんが合流してきたらその辺を聞いてみましょう」
201 : ◆jWBUJ7IJ6Y [sage] : 2013/11/03(日) 08:29:47.76 0
>197>198
【義体の部屋】
> 「さあてどうでしょう?アムリーテさんみたいに生まれながらの作り物の体の人もいますし」
「皮肉かそれはーッッ!!」
アンジェリーナがフリードに激昂する。
人造人間であるユニソルブルもまた体は作り物だ。
> 「・・・・・・・ここにいる私の魂は本物だよ。そして私は、アンチラストちゃんじゃない。
>  ユニソルブル、あなたががアンジェリーナでは無いように」
> リリィは床にがっくりと膝をついた。足先が透明になっていく。
> 「・・・・・・・・私やアンチラストちゃんを取り込んでも、あなたはアンジェリーナにならない。
> 決してアンジェローナにはなれない。
>  だって、あなたはあなたであって、アンジェリーナの魂とはまったく別の存在なんだから」
「そんなことは……!わかっている…!わかっているのよ!
 それを一番に理解しなくちゃあいけなかった人が、誤ってしまった。
 過ちは正さなければならない!マリアベルは……必ず死なす!」
リリィ達はアンジェリーナの言葉に耳を疑うだろう。
なぜなら、地下の世界であったアンチラストに、マリアベルが発狂して死んだと聞いているのだから。
だが、同時に不可解な点もあったのだ。
なぜマリアベルだけ墓はあるのに死体(骨)が無かったのか?
「ええ、そうよ。マリアベルはアンチラストと溶け合ってしまった。
 ……あなた達にはわからないでしょう。
 常に他人の影であることを強要され、投影されたイメージのみ愛された私の気持ちなんて」
アンジェリーナはそこで言葉が詰まった。
結局はアンチラストに対する嫉妬とマリアベルに対する思慕に振り回されている自分を認めたくない気持ちが、
その事実に目を背けようとしているからだ。
「……私が完全体を目指すのは、手段であり、目的ではない。
 あなたがどれだけ頑張っても…無駄なのよ。
 フハハハ…!もう、エンカが舌でも噛み切って死んだところかしらねぇ~~~??
 あなたの本体で死体を探しに行けばァ?アハハハハハ!!」
アンジェリーナは高笑いをした。これで精神的にリリィを追い詰めれば第2ラウンドで有利になる。
だが、通風孔から何かがモゾモゾと這い出てきたのを見てアンジェリーナの顔が凍った。
「…………え?」
それは、胴体がちぎれた大きなムカデだった。ギリギリという弱弱しい鳴き声をあげてアンジェリーナに近づいてくる。
アンジェリーナはそれが何かを知っていた。紛れもなく、エンカに寄生させたはずの自分の下僕であったのだから。

>199
【一階エントランス】
「“友達”か……」
ロゼッタはリリィの言葉を噛み締めるようにそうつぶやいた。
「さっきキラー・チューンが言ったんだ。
 『エンカは思い出にするな』って。
 どういう意味なのかわからなかったんだ。思い出の力が魔法の源になると思ってたから。
 でも、思い出って過去の事なんだね。アタイ、今に集中してみたいと思っている。
 トニーじゃなくて、エンカに集中してみたいと思っている。
 今じゃなきゃあダメなんた。エンカには会わなければならない…!」
ロゼッタの眼がキラッと光った。
「……リリィ?あんたの後ろにある、そのドアは何?
 桜の花色の…いや、桜の花はもっと濃い色をしているから……
 りんごの花色みたいね。
 ……リリィ?聞いているの?あんたに聞いているの。そのドアは何かって聞いているのよ?」
そう、リリィの背後に、まるで最初からあったかのようにその扉はあった。
扉というのは普通部屋を仕切る壁につけられるものだが、
なぜかその扉は、扉だけが地面に対して垂直に立っていた。
ロゼッタが言った通り、りんごの花のような色をしていた。
202 : エンカ ◆jWBUJ7IJ6Y [sage] : 2013/11/03(日) 08:30:44.57 0
【地下の世界】
エンカの前に、まるで最初からあったかのようにその扉はあった。
扉というのは普通部屋を仕切る壁につけられるものだが、
なぜかその扉は、扉だけが地面に対して垂直に立っていた。
見たところ、りんごの花のような色をしていた。
「なぁ、アンチラストちゃんよ~?
 もしかしてこいつのことを言ってんのかぁ?
 お前にとって必要な時に開かれる、運命の扉ってやつはよ~?」
エンカの背中に、小さな子供らしき者が張り付いていた。
彼女は身を乗り出して、エンカの肩ごしにその扉を見つめた。
203 : リリィ ◆nA2uUOb9SzX7 [sage] : 2013/11/06(水) 15:17:33.03 0
【義体の部屋】
カードを書いているフリードの元に、リリィからボリューム全開のテレパシーが届いた。
『フリード君聞こえる?エンカ居たよ!今1階のエントランスに居る!』
喜びのあまり、うっかりユニソルブルにまで届いてしまっても、そこはご愛嬌である。

【一階エントランス~地下通路】
「・・・・・・・・・・・・・・エ、エンカー!」
リリィは涙ぐみながら、リンゴ色のドアをくぐりエンカへと駆け寄った。そして・・・・・・。
「さあ吐きなさい!今すぐムカデ吐き出しなさい!
 でないと、あなたユニソルブルのフェロモン吸って死んじゃうのよ!」
支離滅裂なことを言いながら、ものすごい勢いでエンカを揺さぶり始めた。

ムカデの件の誤解が解けた頃、ようやくリリィはもう一人の存在に気づいた。
「あ、あれっ?アンチラストちゃんじゃない!どうしてエンカと一緒に居るの?!
 あの亜空間の部屋から抜け出せたの!?
 そ、そうだ!聞きたいことがたくさんあるんだよ!」
リリィは、ユニソルブルの話を、姉であるアンチラストにそのまま伝えてしまった。
本来なら自分の体の変化について聞くべきかもしれないが、今はユニソルブルの件が最優先だ。
「アンチラストちゃん、あなたマリアベルさんが死んだって話してたけど、ユニソルブルは取り込んだって思ってるの。
 それってどっちが本当なの?」

「ユニソルブルはあなたを殺して一体化することで、アンジェリーナになろうとしてるの。
 本人も間違ってるのはわかってるんだけど、マリアベルさんへの愛憎でどうしようもないみたいなの。
 マリアベルはもう完全に死んでしまっているのよね?何か、何か、今の貴方達のために出来ること、無いかな?」
204 : リリィ ◆nA2uUOb9SzX7 [sage] : 2013/11/06(水) 15:21:54.88 0
【義体の部屋】
カードを書いているフリードの元に、リリィからボリューム全開のテレパシーが届いた。
『フリード君聞こえる?エンカ居たよ!今1階のエントランスに居る!』
喜びのあまり、うっかりユニソルブルにまで届いてしまっても、そこはご愛嬌である。

【一階エントランス~地下通路】
「・・・・・・・・・・・・・・エ、エンカー!」
リリィは涙ぐみながら、リンゴ色のドアをくぐりエンカへと駆け寄った。そして・・・・・・。
「さあ吐きなさい!今すぐムカデ吐き出しなさい!
 でないと、あなたユニソルブルのフェロモン吸って死んじゃうのよ!」
支離滅裂なことを言いながら、ものすごい勢いでエンカを揺さぶり始めた。

ムカデの件の誤解が解けた頃、ようやくリリィはもう一人の存在に気づいた。
「あ、あれっ?アンチラストちゃんじゃない!どうしてエンカと一緒に居るの?!
 あの亜空間の部屋から抜け出せたの!?
 そ、そうだ!聞きたいことがたくさんあるんだよ!
 アンチラストちゃん、あなたマリアベルさんが死んだって話してたけど、ユニソルブルは取り込んだって思ってるの。
 それってどっちが本当なの?」
リリィは、ユニソルブルの話を、姉であるアンチラストにそのまま伝えてしまった。
「ユニソルブルはあなたを殺して一体化することで、アンジェリーナになろうとしてるの。
 本人も間違ってるのはわかってるんだけど、マリアベルさんへの愛憎でどうしようもないみたいなの。
 マリアベルはもう完全に死んでしまっているのよね?何か、何か彼女のために出来ること、無いのかな?」
205 : フリードリッヒ ◆cOOmSNbyw6 [sage] : 2013/11/10(日) 17:40:33.53 0
>『フリード君聞こえる?エンカ居たよ!今1階のエントランスに居る!』
「分かりました今合流します!!」
とフリードリッヒどうでもいいがユニソブルはほっといていいのか?
「グレン行きますよ?」
『ムカデに止め刺していかないの?』(猫語)
「・・・・・・・それもそうですね」
とユニソブルと同じように頭だけ残して凍らせてしまうフリードリッヒ
「これで良しっと」
いっそ殺してやったほうが慈悲深いと思うのだが・・・・まあそれはそれである
『まだ不安だし僕はここで見張ってるよ』(猫語)
とグレン
子猫に何が出来るっていうのか?


ダカダカダカダカダカ
という妙な足音を立て移動をするフリードリッヒ
「まあ大丈夫でしょう
 使い魔と主人は視線を共有出来ますしね
 いざとなったら召喚カードもありますし」
全然大丈夫じゃない気がするような・・・・


アンチラストの姿を見るとフリードリッヒはかくかくしかじかと今までの事を説明する
「というわけで僕らもユニソブルさんに殺されそうになったので正当防衛で死なない程度に懲らしめさせていただきました」
過剰防衛ではないのかとかその義体はなんだとか突っ込みどころはいくつかあるが
それはそれこれはこれである


『ええといざとなったらこの召喚カードでフィー坊を呼べば何とかなるか』(猫語)
とユニソブルを見張るグレン
残りのメンバーが何人か同行すればよかったのだが
残念ながらグレンのみで他はリリィと一緒である
206 : エンカ ◇jWBUJ7IJ6Y[sage] : 2013/11/15(金) 06:18:02.58 0
>「私は…私には…ワカラナイ……」
アンチラストはリリィの質問にそう答えた。
「リリィ、実は俺からアンチラストに事情は既に話したぜ。
 どうやらユニソルブルにのっとられてたせいで知識が頭に残ってたからな。
 だがよ~、どうも言葉としては理解できても、心で理解することができねぇみたいなんだよな~。
 あるいは…その事実に目を背けた方が居心地がいいのかもしれねぇけど」
エンカはそういいながら顔をしかめる。
「酢豚に入ったパイナップルみてぇに、気にいらねぇぜ。正直よーっ…!」

エンカは手短に、キラー・チューンに助けられたこと。
ムカデもキラー・チューンがチューして引きずりだしたこと。
エンカがアンチラストに会いに行ったことを悟られないようにキラー・チューンに下僕を演じさせていたことを話した。
「ええーーっ!!マジかよ!俺の自動車、キラー・チューンが壊しちまったのか!?」
さすがにエンカもそれは予想外だった。
ちなみにエンカはヘリを使って地下の世界から脱出するつもりだったが、
リリィ達が借用したことは知らなかったのでずっと地下の世界をさまよっていたのだ。
「このドアはそもそもなんだ?誰かの魔法か?」
ロゼッタは聞こえていたが、聞こえないふりをする。

「ユニソルブルが完全体にこだわっているのは、心の中に安全装置が組み込まれていて、
 まちがってもマリアベルを直接攻撃できねぇようになっているからだ。
 完全体になればそれが無くなるらしいぜ。
 どっちにしろ、この盛大な反抗期はよ~、終りにさせようぜ。
 連れて帰るんだ。アンチラストも、ユニソルブルも、そして……マリアベルも」
エンカは笑った。
「心配してんなよなー、リリィ!学園に戻ってアンチラストを調べたらよぉ、
 きっとすぐに元の姿に戻れるぜーっ!」
>「モドる?戻ルのか…?」
アンチラストがリリィの顔を見た。その体は駄目なの?とでも言いたそうだ。


一方こちらは義体の部屋。
ユニソルブルは顔を除いてフリードに凍らされていて身動きが取れないでいた。
ムカデの方も同様に凍らされているので、自分の方へ引き寄せることもできない。
>「どういうことだ……!?いるのか!?アンチラスト!?
> わけがわからない!一体いつからエンカは私をだましてた……!?
> キ、キラー・チューン!!」
ユニソルブルが叫ぶと、すぐに天井を突き破ってメスライオンの獣人が現れた。
『何の用だ?…ん?ああそうか』
キラー・チューンは足元に踏み潰したムカデを見て意地の悪そうな笑みを浮かべた。
ユニソルブルは悟った。
>「最初からそのつもりで……貴様ーーッ!!」
『そうだ。既にエンカはお前の男じゃあなくなった。
 そしてアタシからそのプライドを奪おうとした罪は重い。
 貴様だけは楽には死なせないぞ……!』
>「人間に使役される下等な存在がほざくなーーッッ!!
>私は究極の生物になる存在なんだ!!貴様ごときに殺されてたまるかーーッッ!!」


場所は再び一階のエントランスに戻る。
エンカとロゼッタは何かを感じとったらしく震えた。
「あ!まずいぜ…!キラー・チューン!!
 止めないと、あいつは、ユニソルブルを殺すぞ!!」
殺す…そう聞いてアンチラストも震えた。
207 : 名無しになりきれ[sage] : 2013/11/17(日) 18:43:05.47 0
>>204
ピグライフのスレからきますた(^O^)/
208 : リリィ ◆nA2uUOb9SzX7 [sage] : 2013/11/18(月) 18:44:01.70 0
>205-206
>「私は…私には…ワカラナイ……」
「そっか・・・・・・・」
外界にいたユニソルブルと違い、3人の魔法使いと決闘した後は亜空間にいたのだ。
アンチラストにあれこれ尋ねるのは酷だろう。

その後合流したフリードは、アンチラストと再会の挨拶も早々に、今までの事を説明する
>「というわけで僕らもユニソブルさんに殺されそうになったので正当防衛で死なない程度に懲らしめさせていただきました」
>「それ、本当に死なない程度なの?」
ジルベリア人のいう懲らしめなのだ、心配なことこの上ない。
まあユニソルブルの体葉普通ではない。何とかなっているだろう・・・・・・多分。
「グレンも一人で見張りしてるっていうのも心配なんだけど・・・・・・。あの子、今猫缶を持ってるの?」

エンカによると、ユニソルブルのムカデにのっとられていた時覗き見た知識については、すべてアンチラストに話したようだ。
「ちゅ・・・・・・チュー?!チューしたの?!キラー・チューンと?!
 しかもムカデ引きずり出したって・・・・・・・ええー?!」
エンカがシリアスな顔で説明しているというのに、リリィはその状況を想像して、ぶるぶる震えた。
どう見ても頭からバリバリ喰われてる図です本当にありがとうございました。

>「ええーーっ!!マジかよ!俺の自動車、キラー・チューンが壊しちまったのか!?」
「そりゃもう、思いっきりド派手に壊してたわよ。修理は無理だと思うな。ねぇ、フリード君?」
エンカは(ユニソルブルの知識を持っていたので)ヘリを使って地下の世界から脱出するつもりだったらしい。
「あー、ごめん。アンチラストちゃんから聞いてると思ったけど、それは私達が使っちゃった。しかも破壊されちゃった・・・・・・」
誰に、とは言うまでもないだろう。

>「このドアはそもそもなんだ?誰かの魔法か?」
リンゴ色・・・・・・ならぬリンゴの花の色をした扉を見て、エンカがそうたずねる。
「ああ、この扉はロゼッタちゃんが作ったんだよー。あれ?そうだよね?ロゼッタちゃーん?おーい?」
ロゼッタは、リリィのことも完全にスルーした。

>「ユニソルブルが完全体にこだわっているのは、心の中に安全装置が組み込まれていて、
> まちがってもマリアベルを直接攻撃できねぇようになっているからだ。
> 完全体になればそれが無くなるらしいぜ。
えっ!とリリィは驚き、思わずフリードと顔を見合わせた。
「確かマリアベルは、アンチラストちゃんと同化してるって話だったよね?
 ということはつまり、どうあがいてもユニソルブルは、(マリアベルと同化した)アンチラストちゃんを倒せないってことじゃないの?」

その後、リリィは傍らのフリードにそっと耳打ちし、自分の疑問をぶつける。
「でもフリード君、なんでアンチラストちゃんは、マリアベルと同化できたんだろう?
 生命力が落ちた相手と同化するのは、危害を加えるのではなく延命だからありってこと?
 私人工生命関連はさっぱりなんだけど、フリード君はどう思う?」

>「どっちにしろ、この盛大な反抗期はよ~、終りにさせようぜ。
> 連れて帰るんだ。アンチラストも、ユニソルブルも、そして……マリアベルも」
「でも私、元に戻りたいの。研究の資料も探さないと・・・・・・・」

>「心配してんなよなー、リリィ!学園に戻ってアンチラストを調べたらよぉ、
 きっとすぐに元の姿に戻れるぜーっ!」
「そ、そうかな?元に戻れるかなっ!?
・・・・・・っていうか、よく考えたら、今の私の姿を見て、全く驚かないってのもすごいよね・・・・・・・・」
いくら魔法学園の生徒とはいえ、昆虫と人間のキメラ姿はなかなかレアではないかと思う。
(リリィが知らないだけで、エンカには、この程度の変化では驚かないだけの理由があるのだが)
209 : リリィ ◆nA2uUOb9SzX7 [sage] : 2013/11/18(月) 18:45:22.36 0
>「モドる?戻ルのか…?」
アンチラストがリリィの顔を見た。その体は駄目なの?とでも言いたそうだ。
リリィは申し訳なさそうに肩をすくめた。
「本来の姿じゃないからね。できるなら戻りたい。この体では力が強すぎて、今に何か大失敗しそう。
 ・・・・・・ごめん。本当は、それだけじゃないんだ。
 体の変化に、精神まで引きずられてる気がして。自分がだんだん自分でなくなっていくみたいで、怖いの」
アンチラストの前ではとても言えなかったが、リリィは、自分の感情の揺れ幅が、以前より大きくなっていることに気づいていた。
外見の変化ももちろんだったが、逆上して、うまく制御できない力で暴れ回るようなことは避けたい。
「アンチラストちゃんはどう?人間と同じ体になりたいと思う?」

ちょっと気まずくなったのか、リリィは、フリードに話題を振った。
「余計なお世話かもしれないけど、義体の子に、何か着せてあげたらどうかな・・・・・・・・・。
 目の毒というか、目のやり場に困っちゃうというか何というか・・・・・・」

>エンカとロゼッタは何かを感じとったらしく震えた。
>「あ!まずいぜ…!キラー・チューン!!
> 止めないと、あいつは、ユニソルブルを殺すぞ!!」
「ちょ・・・・・・・アンチラストもユニソルブルも連れて帰るって言ってたのに何でよ!
 キラー・チューンのマスターはエンカでしょ?何とかやめさせなさいよ!」
とは言ったものの、キラー・チューンを今のエンカが止められないとは、リリィにも判っていた。

「フリード君ならすぐ移動できるでしょ?先に行って!私もすぐ後を追うから!」
グレンがユニソルブルの傍にいるのだ。この中で一番早く現場に駆けつけられるのはフリードだ。
「ロゼッタちゃん、今キラー・チューンのいる場所への扉を作って!え?嫌」
もしロゼッタの助力を得られなければ、自力で移動するしかないる。
その場合リリィは、一旦館の外に出て、美術室風の部屋の窓から入り、義体の部屋へ移動するだろう。

「とにかくキラー・チューンを止めなきゃ。
 アンチラストちゃん、あなたはどうする?いろんな意味で危険だけど、妹に会いに行く?」

>207(ようこそ!)
210 : フリードリッヒ ◆cOOmSNbyw6 [sage] : 2013/11/19(火) 17:51:48.77 0
>「人間に使役される下等な存在がほざくなーーッッ!!
>私は究極の生物になる存在なんだ!!貴様ごときに殺されてたまるかーーッッ!!」
「究極の生物とかなんだか知らないけどその氷漬けでどうするのさ?
 あとキラーチェーンのお姉ちゃん殺しちゃだめだよ
 こういう輩は殺すなんて慈悲を与えちゃいけない
 殺さない程度にじわじわと痛めつけてやるべきなんだ
 死んじゃったら痛みから解放されちゃうもんね」
と珍しく人間の言葉で言うグレン
フリードリッヒがこの場に居ないからなのだろうか?




>「そりゃもう、思いっきりド派手に壊してたわよ。修理は無理だと思うな。ねぇ、フリード君?」
「そうですねまた一から作り直したほうがマシなぐらいですよ
 設計図は残ってるんですよね・・・・まさかフィーリングだけで作ったとか言わないですよね」
基本的に天才ばかりの学園である
故にそういうことも十分あり得るのだ

>「でもフリード君、なんでアンチラストちゃんは、マリアベルと同化できたんだろう?
 生命力が落ちた相手と同化するのは、危害を加えるのではなく延命だからありってこと?
 私人工生命関連はさっぱりなんだけど、フリード君はどう思う?」
「さあどうなんでしょうね?僕とグレンのソウルユニオンはお互いに絆があるからできる芸当なんですが
 それは自由自在に分離合体できるからそれとはまた違うでしょうし」
どう違うかというとポ○ラとフゥージョ○ぐらい違うだろう

>「余計なお世話かもしれないけど、義体の子に、何か着せてあげたらどうかな・・・・・・・・・。
 目の毒というか、目のやり場に困っちゃうというか何というか・・・・・・」
「自我がない肉塊なんて人形と同じだと思うんですが・・・・まあそうですね・・・」
逆に言えば心さえあれば人形でも人扱いである
そう今まで何人か会ってきた機械の体を持つ者たちのように
「ちゃちゃちゃちゃん♪魔法使いのマント!!」
懐からマントを取り出すフリード
裸にマントだけ身に着けたアランピアは・・・・・・
明らかに痴女ですどうもありがとうございました

>「あ!まずいぜ…!キラー・チューン!!
 止めないと、あいつは、ユニソルブルを殺すぞ!!」
>「フリード君ならすぐ移動できるでしょ?先に行って!私もすぐ後を追うから!」
「止めないとって言われても素のスペックで僕はキラーチェーンに負けてるんですけど
 まあみんなで力を合わせれば何とかなるかもしれませんけどね」
人間は集団で狩りをする生き物である
故に一人一人は小さいけれど5人ぐらいいれば無敵・・・・・かもしれない

フリードはグレンに念を送る
召喚カードを使い自分を呼べと・・・・・
『行くよ!カムアンドサモン!カムカムニャンニャンフリードキタコレ!!」
と珍妙な呪文により召喚カードを発動するグレン
そういえば転移は出来ないと注意書きがしてあった気がしたが・・・・大丈夫なのだろうか?

「色々と事情聴衆をした法によってりしかるべき裁きを下さなければならないので犯人を勝手に殺されると困るんですよ
 おとなしく引き渡してくだされば生爪の一枚ぐらいは剥がさせて差し上げますから
 まあ法と言っても目には歯を歯には牙をな法律ですけどね♪」
あくまでもジルベリアンジョークである・・・・ジョークだよね
211 : エンカ ◆jWBUJ7IJ6Y [sage] : 2013/11/24(日) 20:26:45.25 0
>209>210
> 「ちょ・・・・・・・アンチラストもユニソルブルも連れて帰るって言ってたのに何でよ!
>  キラー・チューンのマスターはエンカでしょ?何とかやめさせなさいよ!」
「………ハッ!」
エンカはリリィにそう言われて、気まずそうにロゼッタを見た。
>「まさかアタイが、あんたがキラー・チューンと契約したことを知らないと思ってたのか、このマヌケ」
とロゼッタは言った。
どうやらエンカはキラー・チューンと契約したことをロゼッタに内緒にしていたことを思い出したようだ。
もっともこの状況では内緒もクソもあったものではないが。
>「それよりも、スルーしているんじゃあないよ。リリィが聞いているだろう?止められるかって」
「俺ぇ!?無理無理無理!」
エンカはすぐに否定した。

> 「ロゼッタちゃん、今キラー・チューンのいる場所への扉を作って!え?嫌」
>「………は?」
ロゼッタはリリィが自分に何を言ったのか理解できなかった。
「おいロゼッタ、お前こそさっきからスルーしているんじゃあねーぜっ!
 さっきの扉も、お前が創ったんだろーがよ~!」
>「アタイぃ!?うそ~!?」
エンカはロゼッタに、それがきっと新しいドコデモ・ドアーの能力だと説明するのに時間が必要だった。
だからエンカはリリィに先に行くように促した。
「リリィ、今アンチラストちゃんをよ~ユニソルブルに会わせるのはまずいかもなぁ。
 あいつはきっと、ユニソルブルを見たら何をしでかすかわかんねぇぜ?」
アンチラストは何か言いたそうだったが、エンカが睨んだので何も言わなかった。

一方こちらは義体の部屋サイドである。
『お前…人の言葉を喋れたんだな』
キラー・チューンは意外そうにグレンにそう言った。
ちなみにキラー・チューンは猫語を理解でき、
実はキラー・チューンと契約後はエンカも猫語を理解できるという地味な変化があったりする。
『だが、無駄だ。お前はアタシにとって弱者だ。
 強者は弱者に従わぬ。弱者の死に場所は強者が決める』
キラー・チューンはユニソルブルに向き直った。
『お前は弱者だ。ユニソルブル』
そう言われてユニソルブルは顔を怒りで歪めたが、その実笑みを浮かべないように気をつけていた。
(さぁ、もう半歩こちらに踏み込んで来いキラー・チューン…!
 私はお前達の秘密を知っているぞ。お前が死ねばエンカも死ぬことを…!
 さぁ、もう半歩こちらに踏み込んで来いキラー・チューン…!
 私にとっても捨て身の一撃になるが………殺してやる…!
 この私を騙したエンカ…お前だけは生かしておかない……!!)
しかしキラー・チューンは、またしても後ろを振り返った。
フリードが現れたからである。ユニソルブルは内心舌打ちをした。
> 「色々と事情聴衆をした法によってりしかるべき裁きを下さなければならないので犯人を勝手に殺されると困るんですよ
>  おとなしく引き渡してくだされば生爪の一枚ぐらいは剥がさせて差し上げますから
>  まあ法と言っても目には歯を歯には牙をな法律ですけどね♪」
『アタシが法律(ルール)だ…!』
キラー・チューンはその一言で論破(?)した。
(無駄だ…キラー・チューンは言葉で説明して聞く耳をもつようなキャラじゃない。
 力ずくで止めるか?だが、私の方が速い…!)
ユニソルブルは、外からは見えないように口の中にダイヤモンドの短剣を生成した。
キラー・チューンがもう少し近づけば完全に射程距離に入る。
だが、キラー・チューンはユニソルブルに向き直らず、ずんずんと離れて行った。
(な、何ーーーーッッ!?)
キラー・チューンはフリード達(間もなくリリィも到着するだろう)に叫んだ。
『どうした!まだ言いたいことがあるなら、はっきり言ってみろ!
 今ユニソルブルを殺してはいけない理由があるなら、はっきり言ってみろ!』
212 : エンカ ◆jWBUJ7IJ6Y [sage] : 2013/11/24(日) 20:27:52.48 0
「う、嘘だろ~!?あのキラー・チューンがよ~、他人に意見を求めてやがるぜ~!?」
義体の部屋に、今までいなかった人物の声が響いた。
ユニソルブルは首をひねってその声がする場所を見た。
(な、何だアレは!?エンカの顔が、顔だけが宙に浮いているぞ?
 宙に浮かんだ小さなドアから、エンカ・ウォンの顔だけが覗き込んでいる…!?)
リリィが到着したなら、エンカが地下世界から脱出するのに使ったドアの、ミニチュア版が宙に浮いているのだと理解できるだろう。
「それにしても、ロゼッタよ~。もっと大きいドアは作れなかったのか~?
 これじゃあ顔を出すのが精一杯だぜ」
エンカが顔を出しているドアの奥からロゼッタの声が聞こえてくる。
>「まだ慣れてないんだから、文句を言ってんじゃないよ。
> それより、さっきの小さい蟲の女の子、どっか行っちゃったよ。
> 通風孔の中に器用に潜り込んでさぁ」
それを聞いたエンカが動揺した。
「冗談じゃあねーぜっ!ひょっとしてこの部屋に向かってんじゃあねーだろうな~!?
 アンチラストを見張っとけって言っただろ、ロゼッタ!何やってんだよ~!」
>「そんな事一言も言ってないあんたが悪い」
エンカとロゼッタはドアの向こう側で口論を始めた。色んな意味で役にはたたないだろう。
213 : フリードリッヒ ◆cOOmSNbyw6 [sage] : 2013/11/29(金) 14:10:59.98 0
>『どうした!まだ言いたいことがあるなら、はっきり言ってみろ!
 今ユニソルブルを殺してはいけない理由があるなら、はっきり言ってみろ!』
「あえて言いましょう!この人に迷惑を掛けられたのはあなただけじゃありません
 故に迷惑をこうむった全員に一発ずつ殴る権利が発生するはずです!
 特に身内でありながら命を狙われたアンチラストさんは絶対に報復すべきです!!
 ・・・・・まあもしかしたら許すとか言い始めるかもしれませんが」
簡単に言うとお前だけが殴るのは不公平だからみんなに殴らせろと言っているのである
『で、最終的には保険医送りだねあの時のロゼッタさんみたいに』(猫語)
ある意味死ぬより恐ろしいことかもしれない
「ついでにあなたの主人であるエンカさんが殺さずに連れて帰るって言っているので
 従ってみてはどうでしょうか?連れて帰ってからどうなるかは僕は関与しませんのでお好きにどうぞ」
連れて帰った後闇の葬った所で問題ないと彼は言っているのだ
「生まれた環境が悪かったからこうなってしまった・・・・と言いたい所ですが
 同じような人造生命体のアンチラストさんがああいう感なのできっと違うのでしょう」
『ゲロ以下のにおいがプンプンするよ!きっと根っからの悪なんだよ』(猫語)


「そういえばなんでユニソブルはさっきから一言もしゃべらないんでしょうか?」
『さあ?あきらめたんじゃないの』(猫語)
どうも口の中をもごもごさせているようだが・・・・・はたして?
「とりあえず後ろに回り込んで脅かしてみましょうか?」
『やめたげてよ』(猫語)

>「う、嘘だろ~!?あのキラー・チューンがよ~、他人に意見を求めてやがるぜ~!?」 
「そんなに意外ですかね?力こそパワーな感じなら力あるものの意見は普通に聞くのが道理だと思いますけど」
『でもフィー坊基本スペックで負けてるじゃん』(猫語)
「僕にはまだ奥の手の覚醒が残されてますからね
 今はまだ小覚醒ですがいずれは中覚醒、攻向性に至りいずれは大覚醒に目覚めるはずです・・・・・多分」
214 : リリィ ◆nA2uUOb9SzX7 [sage] : 2013/12/01(日) 02:18:41.47 0
>「止めないとって言われても素のスペックで僕はキラーチェーンに負けてるんですけど
> まあみんなで力を合わせれば何とかなるかもしれませんけどね」
「フリード君ったら・・・・・・うん、がんばろうね!」
どうやらリリィは、フリードが謙遜していると本気で思っているようだ。

その後、フリードはふっと姿を消した。
グレンの元へ行ったに違いない。
転移できないかもしれない、という懸念は、どうやら杞憂に終わったようだ。

>「リリィ、今アンチラストちゃんをよ~ユニソルブルに会わせるのはまずいかもなぁ。
> あいつはきっと、ユニソルブルを見たら何をしでかすかわかんねぇぜ?」
「え?え?どういう事?」
時間が無いというのに、リリ思ィは思わず声を上げてしまった。
エンカの口ぶりは「ユニソルブルがアンチラストを殺したがってる」というのとは、少し違う気がしたからだ。
>アンチラストは何か言いたそうだったが、エンカが睨んだので何も言わなかった。
「よくわからないけど、まあいいわ。エンカ、じゃあ私、先に行くね!」
リリィは箒を片手に、外に飛び出していった。
魔法の箒で空を飛び、最上階の窓から義体の部屋に移動する気なのだ。

>『どうした!まだ言いたいことがあるなら、はっきり言ってみろ!
 今ユニソルブルを殺してはいけない理由があるなら、はっきり言ってみろ!』
「あえて言いましょう!この人に迷惑を掛けられたのはあなただけじゃありません
 故に迷惑をこうむった全員に一発ずつ殴る権利が発生するはずです!
 特に身内でありながら命を狙われたアンチラストさんは絶対に報復すべきです!!
 ・・・・・まあもしかしたら許すとか言い始めるかもしれませんが」
義体の部屋へ向かう道すがら、遠くからキラー・チューンとフリードの声が漏れ聞こえてきた。
その後フリードは、、エンカが連れ帰るのを望んでいる事、
連れ帰った後のことについては関与しないと語った。

「そうだよ、キラー・チューン。
 フリード君が言ったように、ここで彼女を殺さないことが、エンカの望みなの。聞き入れてあげて!」
リリィは大声をあげながら、義体の部屋に飛び込んできた。
いつもなら息切れして喋れないところだが、アンチラスト化した彼女は汗ひとつかいていない。
「あっ!あなたの主人って言葉が気に入らない?だったら言い換えるから!えーとえーと・・・・・・・・よ、嫁?」
リリィはあれ?と首をかしげた。何か大きく間違えた気がする。
(はっ?!それどころじゃなかった!)

「キラー・チューン。私達は・・・・・・・じゃなかった、エンカは、この島に掃除をしに来ただけだ。
 死刑執行人じゃない。
 仮にユニソルブルが作られた存在だとしても・・・・・・・私は、人として遇したい。
 人として、学園に戻り、先生方に今後の身の振り方を決めてもらうことにしたい」
学園に編入する生徒は、能力が強い。
そのため、最初に能力を発現させた時、トラブルや事故に発展することが良くある。
結果魔法がらみのトラブルに、学園と魔法省が協力して動くケースも多いのだ。

「ユニソルブルは、多分アンジェリーナに・・・・・・ううん、『作り物』じゃなくて、『生き物』になりたいんだよ。
 その願いを否定することは、人でありたいっていうアンチラストちゃんの願いも否定するという事だと思う。
 キラー・チューン、あなたもその気持ちは、少しわかるんじゃない?」 
リリィが最後にこんなことを言ったのは、キラー・チューンも、過去に一度消滅させられそうになった事があるからだ。
だが、この一言は余計だったかもしれない。
215 : リリィ ◆nA2uUOb9SzX7 [sage] : 2013/12/01(日) 02:19:28.88 0
>「そういえばなんでユニソブルはさっきから一言もしゃべらないんでしょうか?」
>『さあ?あきらめたんじゃないの』(猫語)
「口もごもごしてるね。もしかして舌も凍ってるのかな?」

>「う、嘘だろ~!?あのキラー・チューンがよ~、他人に意見を求めてやがるぜ~!?」
「うわあああ!!フリード君、そらからえんかのなまくびが!!」
リリィは腰を抜かさんばかりに驚いている。
「ああ、驚いた。エンカ、ロゼッタちゃんと話をつけたんじゃないの?
 何よその超小型ドコデモ・ドアは!頭だけ飛び出すなんて怖いじゃないの!」
一方のフリード達は、この程度のことで驚いたりしない。
力こそ正義!のキラー・チューンをある意味誰より深く理解できるものなのかもしれない。
>「僕にはまだ奥の手の覚醒が残されてますからね
> 今はまだ小覚醒ですがいずれは中覚醒、攻向性に至りいずれは大覚醒に目覚めるはずです・・・・・多分」
「なにそれすごい。要するに、さらに可愛く変身しちゃうってことなの?」
リリィは王獲留となったフリードを想像し、ぽっと顔を赤らた。

エンカの話から察するに、ロゼッタはまだ新しい能力を使いこなせていないらしい。
(そんな不安定な能力で作ったドアに、躊躇無く頭を突っ込んじゃうエンカもすごいと思う
 ・・・・・・いろんな意味で・・・・・・)
痴話げんかのような二人の話を聞くともなしに聞いていたリリィだったが、
そうも言っていられない言葉が飛び出してきた。
アンチラストが姿を消したというのだ。

>「冗談じゃあねーぜっ!ひょっとしてこの部屋に向かってんじゃあねーだろうな~!?
> アンチラストを見張っとけって言っただろ、ロゼッタ!何やってんだよ~!」
>「そんな事一言も言ってないあんたが悪い」
>エンカとロゼッタはドアの向こう側で口論を始めた。

「待って待って!エンカ聞いて!
 私ね、多分、すごく集中したら、アンチラストちゃんの居場所わかると思うの!
 理由はわからないけど・・・・・・・なんとなくわかる気がする!
 だからエンカ、まず、先に話を聞かせて」
リリィは細かい理屈はわかっていないものの、なぜか彼女の位置がわかるような気がしていた。
それは、彼女がフェロモンを感知することが出来るようになっているからだ。
もっとも、リリィはひとつ思い違いをしていた。
怒りの感情を、アンチラストは自分の意思で抑えることが出来る、という現実だ。

「ねえエンカ、アンチラストちゃんがこの部屋にきたらまずい理由は何?
 ユニソルブルは今身動きできないのだから、二人を合わせても、別に問題は無いんじゃない?
 それとも、二人の間には、私たちが知らないような秘密があるの?」

リリィはそう言いながら、ユニソルブルの射程距離へ、今まさに足を踏み入れようとしていた。
攻撃するなら今しかないだろう。
216 : エンカ ◆jWBUJ7IJ6Y [sage] : 2013/12/08(日) 19:04:50.52 0
>213>214>215
リリィは無造作にして無防備に、ユニソルブルの射程距離へと足を踏み入れた。
攻撃するチャンスはまさに今であった。
ユニソルブルの口から、サソリがその毒針を獲物に突き立てるがごとき勢いで、
ダイヤモンドの短剣が放たれた。

しかし、それがリリィに命中することはなかった。
その短剣はリリィの足元…エンカへ寄生させていたムカデの頭部に命中したからだ。
フリード達が見つけてユニソルブルと同様に凍らせていた個体である。
>>「…………ふん!」
ユニソルブルはリリィと目があうと、そう言って視線をそらせた。
リリィにはわからなかったかもしれない。
ダイヤモンドの短剣がそこに放たれた意味と、それまでに起こったユニソルブルの内面の変化を。
(してやられたな……こいつらに……完全に……)
キラー・チューンがリリィに言った。
『リリィ、お前の話はとてもムカつく』
そう言った後、すぐにキラー・チューンは笑い始めた。
『だが、ムカつく話をさせたなら、お前が一番だ』
ところで時間は遡るが、キラー・チューンはリリィにエンカのことについて
『恋人になるために出会ったわけではない!!』
と怒ったばかりである。
リリィが萎縮していようと、そうであるまいと、キラー・チューンは意に介したりしない。
『アタシとしては、フリードの案の方が好みではあるがな』

ドコデモ・ドアを介して一連の流れを見ていたエンカには、
ダイヤモンドの短剣の意味も、キラー・チューンが笑う意味もわからなかった。
だからリリィの質問にそのまま答えた。
「リリィ、断っておくけどよぉ~、俺は何も悪気があったわけじゃあねーっすよ~。
 だけどよ~、どうしてもアンチラストを動かすには、本当のことを話すしかなかったんだ」
エンカはそう前置きをした。
「アンチラストの中に融合したマリアベルがよぉ、その、なんつーか………
 責任を感じて、“始末”しようとするんじゃあねぇかと……」
始末……処分ではなくそう言ったエンカに恣意的なものを感じつつユニソルブルは思った。
きっとありそうなことである。
自分がけしかけたとはいえ、マリアベルは実際にアンチラストを処分しようとしているのだ。
事実を知った今、失敗作と判断して今度はユニソルブルを処分しようとしても不思議ではない。
いや、それ以前にアンチラストがユニソルブルを恨んだとしても無理もないだろう。

もしもリリィがアンチラストを感知しようとしたならば、その瞬間にある事実に気づく。
それは、生物のフェロモンとか、そんな生易しいものではなく、もっとも危険な香りである。
あらゆる生物を破壊する、暴力的なエネルギー。
それでいてリリィもよく知っている破壊的な事象であった。
>「火事だー!!」
ドコデモ・ドアーの向こう側でロゼッタの叫びが聞こえてきた。
エンカも見ると、ロゼッタが座り込んでいた箇所の、通風孔の穴から炎があがっていた。
地下で放たれた光線による余波か、それともヘリコプターの残骸が火種となったのか、
しかしこれが最悪の事態であることを、ユニソルブルの知識をもつエンカは理解した。
「じょ、冗談じゃあねぇぜ!!この通風孔は、館のあらゆる場所と繋がっているんだ!
 これじゃあよぉ、館全体に火がまわってしまうぜ!!」
炎によって生じる煙のせいで、アンチラストを探知するのは不可能になってしまった。
それどころか、危ないのはアンチラストの身である。
おそらく彼女は、通風孔を通って屋敷の中を移動しているからだ。
「…リリィ、甘いことは考えてんなよなーっ!!
 今は俺達よりも、お前達の方が館の中心部にいるってことを忘れんな!!
 逃げるんだよーっ!!」
217 : フリードリッヒ ◆cOOmSNbyw6 [sage] : 2013/12/11(水) 18:36:11.54 0
>「火事だー!!」

フリードリッヒは氷の大玉を魔法で作り出し中に入る
「皆さんも早く中へ!これなら少しは火に耐えられます!!」
『酸素とかどうするのさ!?』(猫語)
そもそもユニソブルは下半身氷漬けである
動きようがないではないか

「ちぇいさー!!」
と無理やり色々と中に入れるフリードリッヒ
主にオランピアとかアムリーテボディとか氷漬けのユニソブルとかである
『だからどんなパワーだよ!!』(猫語)
というか大玉の大きさはどれぐらいなのだろうか?
「さあドアをぶち破って脱出しますよ!!」
フリードリッヒは思った
まさかこんなことになってしまうとは・・・・と
そして清掃活動とはいったい何だったのか・・・・と
「中から転がして外に脱出しますよ!
 なあに命あっての物種です!屋敷なんて後から立て直せばいいんです」
どんだけお金がかかるのだろうか?一庶民には想像が出来ない

『学園に帰ったらアムリーテボディはゼベット爺さんに・・・・素体はアムリーテさんに
 ユニソブルは保険医に引き渡すんだっけ?』(猫語)
はたして無事に脱出できるのだろうか?そして学園は彼女たちを受け入れるのか?
アンチラストの運命はどうなってしまうのか?
色々な疑問はあるがとにかく今は脱出である
218 : リリィ ◆nA2uUOb9SzX7 [sage] : 2013/12/18(水) 18:46:58.05 0
>216-217
エンカのほうを見ながら話していると、いきなり足元に何かが飛んできた。
「うひゃああ?!何なになに?!」
足元に突き刺さったのは、ダイヤモンドの短剣だった。
フリードが見つけてユニソルブルと同様に凍らせていたムカデの頭部を、正確に射抜いている。
他人を操ることが可能なユニソルブルの使い魔を、彼女が自ら殺す理由はひとつしかない。
>>「…………ふん!」
ぱああ・・・と顔を輝かせたリリィと目があった途端、ユニソルブルは鼻を鳴らし視線をそらせた。

キラー・チューンがリリィに言った。
>『リリィ、お前の話はとてもムカつく』
がぁん!と明らかにショックを受けたリリィの顔を眺めた後、キラー・チューンは笑って続けた。
>『だが、ムカつく話をさせたなら、お前が一番だ』
「え・・・・・・・?」
今のはどういう意味かな?と問いかけたい気持ちはあるものの、たった今しがた
『エンカのことをキラーチューンの『主人』と呼ぶのがまずいなら、嫁と呼ぶべき?』と発言して怒らせたばかりである。
ここは、おとなしくしておくのが無難だろう。
そんなわけで、リリィも「ふへへ」と引きつった顔で愛想笑いを浮かべていた。

一連の行動を見ていたエンカは、頭サイズしかないドコデモ・ドアーの向こう側で彼女の質問に答え始めた。
いわく、アンチラストを動かすには、真実を語るしかなかったこと。
それを知ったアンチラストと融合しているマリアベルが、ユニソルブルを始末しようとしている可能性があること。
「地下でアンチラストちゃんは、妹のことを大好きだって話してたんだよね・・・・・・・。
 真実を知ったら、確かにショックが大きいかも・・・・・・。
 出来ればお互い、話し合いの場が持てたらいいんだけど・・・・・・・今どこにいるのかな・・・・・・」
リリィはアンチラストの居場所を探るべく、目を閉じ感覚を研ぎ澄まそうとした。
だが、次の瞬間、そんなことをしている場合ではないと知る。

>「火事だー!!」
「ふえええ!火事?!」
エンカ達の様子から察するに、1階の通風孔の穴から炎があがっているらしい。
>「じょ、冗談じゃあねぇぜ!!この通風孔は、館のあらゆる場所と繋がっているんだ!
> これじゃあよぉ、館全体に火がまわってしまうぜ!!」

>フリードリッヒは氷の大玉を魔法で作り出し中に入る
>「皆さんも早く中へ!これなら少しは火に耐えられます!!」
>『酸素とかどうするのさ!?』(猫語)
>「ちぇいさー!!」
「火が出てるのに、アンチラストちゃんはまだエンカ達のところへ戻ってきてないの?
 通気孔の中で煙にまかれてるなんてことは・・・・・・」
>「…リリィ、甘いことは考えてんなよなーっ!!
> 今は俺達よりも、お前達の方が館の中心部にいるってことを忘れんな!!
> 逃げるんだよーっ!!」
「わかってる!わかってるわよ!でもどこかで煙に巻かれてるかもしれないって心配しちゃいけないの?
 ・・・・・・・はっ!そういえば、アムリーテちゃんの本体だって地下にあるのに!このままじゃ焼けちゃう!!
 かといって、地下への入り口は瓦礫で埋まってるし・・・・・・ああ、どうしたらいいの・・・・・・」
がっくりと地面に膝をついているリリィの傍らで、フリードはせっせと荷物を玉の中に放り込んでいる。
内容は、主にオランピアとか アムリーテボディとか氷漬けのユニソブルとかである 。

>主にオランピアとかアムリーテボディとか氷漬けのユニソブルとかである

「・・・・・・ふえっ、それはもしかしてアムリーテちゃんの本体?何でこんなところに?!
 はっ!もしかして、ユニソルブルちゃんが回収してくれてたってこと?!うわあ!チョーぐっじょぶ!!
 あとはアンチラストちゃんだけよね・・・・・・・。
 ・・・・・・・あれ?フリード君、グレンなら今のドコデモ・ドアーサイズでも余裕で通り抜けられるわよね?
 そしたら、グレンを扉の向こうへ移動させて、さっきの召還魔法使ってもらったら、私たち全員エントランスへ瞬間移動できるんじゃない?」
リリィは思いつきで、無理難題を吹っかけた。
そもそもそんな方法があるのなら、フリードは皆のために氷の玉なんて作る必要がないのだ。
219 : リリィ ◆nA2uUOb9SzX7 [sage] : 2013/12/18(水) 18:48:18.96 0
>「さあドアをぶち破って脱出しますよ!!」
「うん!私は箒に乗って後ろからついていくよ!それなら、アンチラストちゃんの声が聞こえるかもしれないし」
>「中から転がして外に脱出しますよ!
> なあに命あっての物種です!屋敷なんて後から立て直せばいいんです」
さすがフリード、お金持ちは言うことが違う。
「そうだね、そこは人命優先ってことで許してもらおう!
 でも清掃活動に来たはずなのに、なんかあっちこっち壊しまくってるかも・・・・・・・」
請求書が回ってきたらどうしようという考えがちらっと脳裏をよぎったが、今は深く考えないほうがいいだろう。
どのみち苦学生なリリィには、払えるはずがないのだ。

「ユニソルブルちゃん、ちょっと痛いかもしれないけどおとなしくしててね。
 グレン、ユニソルブルちゃんやアムリーテちゃんボディにつぶされないよう気をつけるのよ!」
リリィは最後に部屋を見渡し、義体達へ向かって頭を下げた。
「あなたたちを連れ出せなくて、ごめんね」

>『学園に帰ったらアムリーテボディはゼベット爺さんに・・・・素体はアムリーテさんに
> ユニソブルは保険医に引き渡すんだっけ?』(猫語)
「あとアンチラストちゃんも。私も保健室へ直行コースね。」

フリード作の氷の玉は、勢いよく転がり落ちていく。
何階か降りていくと、次第に煙がたちこみ始めた。
「ゲホッゲホッ、もう少し低く飛ばなきゃ・・・・・・」
玉は階段の壁にぶつかったり、跳ね返ったりと大変なことになっているが、無事地上へ到着することが出来るのだろうか?
そしてアンチラストの運命は?!
220 : エンカ ◆jWBUJ7IJ6Y [sage] : 2013/12/21(土) 20:40:19.81 0
>217>218>219
> フリードリッヒは氷の大玉を魔法で作り出し中に入る
> 「皆さんも早く中へ!これなら少しは火に耐えられます!!」
「いいぞフリード!お前の氷はよぉ~普通の炎なら結構耐えられるもんなーっ!」
>>「き、貴様私がどれだけの生きる芸術品かわかってくぁwせdrftgyふじこlp」
ユニソルブルはぎゃあぎゃあ喚きながらもフリードに無理やり大玉に押し込まれた。
> 「ユニソルブルちゃん、ちょっと痛いかもしれないけどおとなしくしててね。
>  グレン、ユニソルブルちゃんやアムリーテちゃんボディにつぶされないよう気をつけるのよ!」
リリィにそう言われたユニソルブルは、ムッとした顔で静かになった。
>>「まぁ、いいわ。勝ったのはあなた達だし…」
ところで大玉を中から転がし始めたら、
身動きのとれないユニソルブルはまた揉みくちゃになって騒ぎ始めるだろう。

>「エンカ、あたい達も行こう」
おう、とエンカはドコデモ・ドアーから顔を抜き、正面入口から外に出ようとしかけた。
が、その時館全体に爆発音が響く。
「じょ、冗談じゃ……」
>「理科の実験でさぁ、アルコールランプ使ったりするじゃん?引火したんじゃない?そういうのに」
どうやら爆発が起こったのはエンカ達がいるちょうど上の階らしかった。
燃え盛るガレキが入口付近に落下し、エンカとロゼッタの能力では通行できない。
>「どうする?」
「決まってんだろーっ!逃げるんだよーっ!
 館の外に逃げれなくなった以上、館の中に向かってなーっ!!」
エンカはロゼッタの手を引いて奥に向かって移動を始めた。
先ほどの爆発はフリード組へは影響なかっただろうか?
もしかしたらエンカとリリィ達は鉢合わせになるかもしれない。

その頃、キラー・チューンは腕組みをしたまま義体の部屋に残っていた。
彼女が火事に動じないのは、自分の耐久力に自信があるからというだけではなかった。
『どこからか歌が聞こえてくる……?歌っているのは誰だ??』
221 : フリードリッヒ ◆cOOmSNbyw6 [sage] : 2013/12/24(火) 09:21:02.40 0
一階入口付近は瓦礫で埋まっているようである
「じゃあ反対側で・・・・ってこの屋敷確か崖の上に立ってるはずだから反対側は海だったはず
 いや?水落は生存フラグだから飛び込むべきでしょうか?」
『多分それ沈むよ主にアムリーテさんのボディの重量のせいで』(猫語)
それ以前に反対側には扉なんてないので窓を突き破らなければいけないだろう
「こうなったら逆に考えるしかありません!外に出るのではなく中のほうに行くしか!!」
『でもあそこはあそこでシャンデリアとか落ちてくるものがいっぱいあるよ?』(猫語)
さあどうするべきだろうか?

「そうだリリィさんはどう思います?
 ・・・ああこういう時に姉さんみたいに大量破壊呪文が使えれば良かったのに」
『フリージングディストラクションだっけ?あれ準備に5分も掛るじゃん』(猫語)
フリードリッヒの姉であるフリージアの必殺魔法フリージングディストラクション
破壊力は抜群だが消費MPと準備時間がやたらかかるのが弱点である
また威力が高すぎるため屋敷そのものが崩壊する危険性もあるためこの場に居なくて大正解であっただろう
「姉さんはラスボスをを拠点ごと吹っ飛ばすタイプですから」
『いや無理でしょ常識的に考えて』(猫語)

「こうなったらやけっぱちです!こんな瓦礫フリージングサーベルでぶったぎっちゃります」
『ぶったぎったって瓦礫のサイズが小さくなるだけであんまり変わらないと思うなぁ』(猫語)
どうせぶった切るなら反対側に行って壁をぶった切り氷球を分厚くして海に飛び込んだほうがましである

そういう結論を出し反対側に進んでいくフリードリッヒ
当然そちらにはエンカ達がいるわけで
「おや?」
『え?』(猫語)
「すごい偶然ですね!ちょうどいいこの場は力を合わせて脱出しましょう!!」
『あの世へ?』(猫語)
「縁起でもないこと言わないでください!!」

『ねえ…ところで歌が聞こえてこない?』(猫語)
「まさかボス戦の前のテーマソング!?」
『いやどこの天外だよ』(猫語)
天外とは東方の事を面白おかしく書いた書物であり
東方の国が海外で変な風に勘違いされる温床でもある
222 : リリィ ◇nA2uUOb9SzX7[sage] : 2013/12/27(金) 18:06:58.56 0
フリードの氷の玉が転がり始めると、中からは悲鳴や文句がひっきりなしに聞こえてきた。
中でもみくちゃにされたユニソルブルが、騒いでいるに違いない。
「フリード君、アムリーテちゃんボディだけでも仕舞うことはできないの?」
フリードは、大きな荷物でも収納できる「不思議な懐(?)」を持っている。
生き物なら論外だが、魂の抜けたアムリーテボディなら何とかなりそうなものなのだが・・・・・・。

>その時館全体に爆発音が響く。
「きゃあああ!」
バランスを崩したリリィは、あやうく階段に足をぶつけそうになる。
何とか体制を立て直すと、氷の玉の後を再び追いかけた。

>「じゃあ反対側で・・・・ってこの屋敷確か崖の上に立ってるはずだから反対側は海だったはず
> いや?水落は生存フラグだから飛び込むべきでしょうか?」
「もう水は引いてるかな?」
>「そうだリリィさんはどう思います?
 ・・・ああこういう時に姉さんみたいに大量破壊呪文が使えれば良かったのに」
「私はそれでも構わないけれど、アムリーテちゃんボディをフリード君の懐にしまわないと難しいね。
 あと、島が激突するほどの衝撃があったんだから、海はうねってるかも。でもね・・・・・・」

>「こうなったらやけっぱちです!こんな瓦礫フリージングサーベルでぶったぎっちゃります」
『ぶったぎったって瓦礫のサイズが小さくなるだけであんまり変わらないと思うなぁ』(猫語)
「・・・・・・心配しなくても、フリード君は今でも屋敷の中にいる人間の中では、一番のアタッカーだよ・・・・・・」

フリードがフリージングサーベルで壁を壊すにつれ、煙と焦げ臭い匂いが強くなっていった。
>当然そちらにはエンカ達がいるわけで
>「おや?」
「エンカ!それにロゼッタちゃん!何でここに?エントランスにいたんだから、すぐ外に出られたはずじゃなかったの?!」
>「すごい偶然ですね!ちょうどいいこの場は力を合わせて脱出しましょう!!」
>『あの世へ?』(猫語)
>「縁起でもないこと言わないでください!!」
「外に逃げるんだよ!外にだよ!」
エンカの話では、どうやら入り口の扉が瓦礫で埋まってしまったらしい。

「そうだ!ねえエンカ、それにユニソルブルちゃん。抜け穴とか逃げ道とか無いの?亜空間で使った空飛ぶへりこぷたー?みたいな。
 私達ずっと地下ばっかりだったから、屋敷の中の見取り図とか良くわからないのよ」

『ねえ…ところで歌が聞こえてこない?』(猫語)
「誰が歌っているんだろう?キラー・チューン、じゃないよね?となると、アンチラストちゃん?
 よし、テレパシーで呼んでみる!」
リリィは歌声の主に向けて、今いる場所を知らせるべく、回りの調度品などを説明する。
そして、もし火に巻かれて逃げ道が無いのなら、何らかの合図を送って欲しいと知らせた。