1 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2010/04/20(火) 02:38:06 0
前スレ
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1263181246/

TRPG系まとめサイト千夜万夜
http://verger.sakura.ne.jp/

避難所
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/computer/20066/1270719695/

まとめwiki
http://www31.atwiki.jp/jojoif/pages/1.html


新規さん歓迎!よろず相談は避難所の方まで

2 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2010/04/20(火) 02:39:07 0
新手のスタンド使い用テンプレ

【本体】
名前:
性別:
年齢:
身長/体重:
容姿の特徴:
人物概要:


【スタンド】
名前:
タイプ/特徴:
能力詳細:


破壊力- スピード-   射程距離-
持続力- 精密動作性- 成長性-


A-超スゴイ B-スゴイ C-人間と同じ D-ニガテ E-超ニガテ
射程距離の目安
A:100m以上 B:数10m(50m) C:10数m(20m) D:数m(5m) E:2m以下

3 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2010/04/20(火) 02:40:32 0
【あらすじ】
スタンド使いが不思議と引き寄せられ10年周期で行方不明事件が多発する北条市。
偶然や必然という名の運命の意図に引き寄せられたスタンド使いたちは奇妙な洋館へと誘われる。
そこに待ち構えていた怪人を倒した瞬間、事態は一変した。
洋館はその本当の姿を現した。
10年周期で行方不明になっていたスタンド使いたちはみな洋館の壁や床、柱に生きながらにして塗りこまれその一部となっていたのだ。

スタンド使いを取り込み自らの洋館型スタンドの一部にしてしまう九頭龍一の仕業であった。
九頭龍一自身は戦闘力はないが、取り込んだスタンド使いの能力を全て自在に使えるので正に無敵。
しかしその場で戦おうとせずにゲームを持ちかける。
館に塗りこまれたスタンド使いを刺客として差し向け、破れれば館の一部になってしまう。
刺客の魔の手を掻い潜り、九頭龍一を倒せば解放される。
館に塗りこんだスタンド使いはエネルギーそのもの。
即ち刺客として放出すればするほど九頭龍一は弱体化するのだ。
戦闘フィールドは北条市全域。
刺客として放たれたスタンド使いはあらゆるスタンド使いを倒し、洋館の一部に、九頭龍一の養分にするため襲い掛かるのだ。


【北条市はスタンド使いを惹きつける力が働いています。
それは北条市に潜む九頭龍一のスタンド留流家の力。
…要するに、理由は特に考えずに気楽にスタンドバトルを楽しむスレです。】

4 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2010/04/20(火) 02:48:33 0
テンプレの例↓

5 名前:佐藤ひとみ ◆tGLUbl280s [sage] 投稿日:2010/04/20(火) 02:50:58 0
【本体】
名前:佐藤ひとみ(さとうひとみ)
性別:女  年齢:25 身長/体重:164/48

容姿の特徴:
貞子みたいな長い黒髪の鬼太郎ヘアー。切れ長のキツめの目つき
コンサバ系の大人っぽい値段の高い服が好み

人物概要:
職業は図書館司書。自分本位で腹黒い性格の上スイーツ脳
運命を感じた相手を監視して裏切り(思い込み)があれば報復を繰り返している
年収1200万以下の男には運命を感じない

【スタンド】
名前:フルムーン
タイプ/特徴:遠距離 半自動操縦
髪に隠れてるほうの右目を飛ばして直盗撮。外見は機械のようなケースに入った眼球
飛ばした目からはクリオネみたいに触手が伸びたり食いついたりする

能力詳細:
ターゲットに定めた相手の位置特定、追尾
自動操縦時はダメージを受けないが録画モードになる(リアルタイム映像配信不能)GPS位置特定は可能
自動操縦時はプログラムに従った簡単な動きしかできない
潜伏(透明化)モード時は録画、通信不能。防御もできない。継続時間は2、3分
透明化時本体が触れると本体も透明化の影響を受ける

破壊力-C スピード-C 射程距離-A
持続力-A 精密動作性-B 成長性-D

6 名前:吉野きらら ◆HQs.P3ZAvn.F [sage] 投稿日:2010/04/20(火) 03:02:45 0
【本体】
名前:
性別:
年齢:
身長/体重:
容姿の特徴:
人物概要:

【スタンド】
名前:
タイプ/特徴:
能力詳細:

破壊力- スピード-   射程距離-
持続力- 精密動作性- 成長性-

A-超スゴイ B-スゴイ C-人間と同じ D-ニガテ E-超ニガテ
射程距離の目安
A:100m以上 B:数10m(50m) C:10数m(20m) D:数m(5m) E:2m以下


テンプレの雛形です

7 名前:吉野きらら ◆HQs.P3ZAvn.F [sage] 投稿日:2010/04/20(火) 03:03:38 0
【本体】
名前: 吉野きらら
性別: 女
年齢: 16
身長/体重: 160/45
容姿の特徴: 可憐なお嬢様
人物概要:今年『私立皇華(おうか)学園』に入学した女子高生
     お嬢様なので本体の戦闘能力は皆無
     ただし能力による殺人は何度か経験あり
     8歳の頃に『人より幸福でありたい』『幸せの中にいる時こそ最大の不幸が訪れる』と言う彼女の願望からスタンドが発現した
     とは言え初めは朧気なものだったが、中学一年の頃に先輩を殺す際に能力が完全に働いた


【スタンド】
名前: メメント・モリ
タイプ/特徴:人型、中距離、全身ピンク色。部位によって濃度は異なる。関節や額など、随所に花が生えている
       百合の花を模したトランペットスカート(っぽいもの)を履いている
能力詳細: 『幸せの花』
      どんな場所にでも多様な花を咲かせる能力。ただしある程度知覚出来る事が条件。服の内側くらいなら可能。分厚い壁の向こうや、見えない背中は不可
      武器や盾にもなっているように、花は必ずしも通常の花に則する事はない
      花が咲く過程は、種や蕾→徐々に開花→花、の順序
      人体に生やす場合、距離や数にもよるが人間本体の速さでも十分払い除けられる
      ただし花は『幸福』の感情によって急成長する。最上級の『幸福』を感じていた場合、払い除ける隙はない

破壊力-C(花が咲く際に物を曲げたり突き破る力はA)スピード-B(花を咲かせるスピードは距離によって異なる。近距離ならA、それ以上はC-程度)射程距離-C
持続力-B 精密動作性-C(花の造形に限りA) 成長性- B

A-超スゴイ B-スゴイ C-人間と同じ D-ニガテ E-超ニガテ
射程距離の目安
A:100m以上 B:数10m(50m) C:10数m(20m) D:数m(5m) E:2m以下

8 名前:柚木美都留 ◆BhCiwB2SCaJ5 [sage] 投稿日:2010/04/21(水) 00:58:58 0
>401(徳井さん)
飲みかけの牛乳を片手にニコニコと徳井を見上げる柚木。
鼻がツンと痛い。一時的に嗅覚を失っている。
フルムーンの触角に首を絞められた時に鼻にまで牛乳が逆流したからだ。

>「(これは…千載一遇のチャンスって奴か?隙だらけだぜ……!)」

「(あれ…?なにこの間…。ん、ふつうは自分の家に知らない子供がいたら
びっくりするはずだよね?なにあのしたり顔。まさか…)」

その間は時間にして0.5秒。
徳井のスタンド『セイヴ・フェリス』がそのパワーで柱をむしり取ると槍のように投げつけてきた。

「やっぱりスタンド使いだ!いったい何人いるんだよ!!」

ズボォ!!柚木の腹に柱の尖端が突き刺さる。

否。体を貫通はしていない。
なんと腹からは発動しかけたオズモールが首を出し柱を飲み込んでいたのだ。
僅か0.5秒の間が柚木の命を救う。

>「最近のガキにしてはいい挨拶だ!だけどな、土足厳禁っておとうちゃんから習わなかったか!?
後、人の家の冷蔵庫を漁るな!」

「フン!!ボクは育ち盛りなんだよっ!!」
オズモールは鋭い牙でスタンドごと徳井を食いちぎろうとしたが
彼は天井にするりとすべり込み消えてしまった。

「ちっ!」
強力なスタンドパワーを持ちながらいったん身を引くという戦法に柚木は不気味なものを感じていた。
何か仕掛けてくるはず。ならば先手を打とう、柚木はそう思った。

「隠れたって無駄さぁーっ!!吐き出せオズモール!!」

少年が叫ぶとオズモールの口から今まで吸い込んだ照明のガラスや天井の破片が散弾銃の弾のように
吐き出され別荘を蜂の巣に変えてゆく。
ドドドドドド!!凄まじい破壊音だ。天井からは砂煙が降ってくる。

タタン!
突然、背中で音がした。驚いた柚木が後ろを振り返り見てみると、壁にはナイフと包丁が突き刺さっている。
頬からは赤い血が流れていた。徳井が投げたナイフが柚木の頬をかすめたのだ。

「ううぅ〜!!」
別荘の壁をスタンドで破壊すると柚木は外に出た。これ以上、敵に隠れ場所を与えるつもりはなかった。

9 名前:柚木美都留 ◆BhCiwB2SCaJ5 [sage] 投稿日:2010/04/21(水) 12:04:44 0
【本体】
名前: 柚木 美都留(ゆずき みつる)
性別: 男
年齢: 11歳
身長/体重: 148/39
容姿の特徴:艶やかな黒髪で色白の美少年。
人物概要:スタンド使い狩りをゲームとして楽しむ冷酷なハンター。
無邪気で所々に幼児性を残す。スタンド名「オズモール」は昔飼っていた愛犬の名前。


【スタンド】
名前: オズモール
タイプ/特徴:3つの頭をもつ獣。近距離パワー型
能力詳細:吸い込む力と吐き出す力を持っている。
吸い込まれた場合、本人が吐き出さない限り吸い込まれたものは永遠に闇の中を落ちていく。
餓死して骨になっても落ちてゆく。
(飲み込まれても即死するわけではない。噛み砕かれた場合は別)


破壊力-B スピード-B   射程距離- E
持続力-C 精密動作性-E 成長性-E


A-超スゴイ B-スゴイ C-人間と同じ D-ニガテ E-超ニガテ
射程距離の目安
A:100m以上 B:数10m(50m) C:10数m(20m) D:数m(5m) E:2m以下

10 名前:生天目(NPC) ◆BhCiwB2SCaJ5 [sage] 投稿日:2010/04/22(木) 12:46:17 0
>「別荘?別荘ってまさか海岸沿いの?!馬鹿ッ!あんたなんてところに来てるのよ!!」

「そんなこと言われたって私だって足がついてるんだし…どこにいてもいいぢゃん!」
ちょんと口をとんがらせる有葵。ほんの少しでもつよく言われると口を尖らせるのは有葵の悪い癖だ。

>「あんた今歩き?あんたがいる道の一番近い信号を左に曲がって。
まっすぐ歩けば公園の遊歩道に入れるわ。私はその公園にいる。事情を説明してあげるからこっちに来て!」

「え、くるまで来てるんだけど、まあ言われた通りに行ってみるね。ちょっと待っててねー」
携帯電話を切ると、ひとみの待つ公園へと向かう有葵。リムジンを駐車場に止め守堂を残し徒歩で公園に入る。

遊歩道を歩いてゆくと遠くにひとみらしき姿が見えた。そしてひとみに向かって来る無数の黒い群体。

「ちょ!!なにあれ!?すずめ?虫?」

「ありゃスタンドだぜ!やばいかもな」
生天目有葵のスタンド、ステレオポニーが出現する。子馬の仮面をつけたような人型のスタンドだ。

「どうしよう…?たすけられる?」

「…やってみないとわかんねーな」

「ぢゃあやってみて!えっ〜と…命令します。『ひとみんの安全』って報告を私にもってきてください!」

「りょうかいしました!」
言葉よりも速くステレオポニーがグラスホッパーの群れに突貫する。
群れの中では音速で反響を繰り返しダメージを与えているようだ。

「ひとみ〜ん!また会えたね〜」
再会する二人。そのすぐ近くではボカスカとステレオポニーとグラスホッパーが交戦中だ。

「い!!いててててて!!…だっ!誰か私のあたまを叩いた〜!!」
突然頭を押さえてうずくまる涙目の有葵。

「俺が攻撃を受けたらお前も怪我をするんだよ!俺たちは一心同体だからな!」
ステレオポニーが昔の漫画のケンカのようにグラスホッパーの群れから手や足や頭をだしながら叫んでいる。

「それを早く言ってよ〜!私のあたまが奈良の大仏みたいにコブだらけになったらどーすんのよーっ!!」

群れの内部で音速で大暴れをするスタンドにたまらず四散するグラスホッパーたち。
同時にステレオポニーが有葵のすぐとなりに着地する。

「だいじょうぶ?いける?」
頭をさすりながら聞く。
「…いや…たおせない…このままじゃな…。
やつは動きは単純だがパワーが段違いなのだ。本体を叩くしかないぞ」
四散したグラスホッパーたちは空中で体制を整え再び佐藤ひとみと生天目たちに襲い掛かってくる。

「ちょっとお!どうしたらいいのよーっ!?ひとみんはなにかいいアイデアとかとかないのっ!?」

11 名前:生天目 有葵 ◆BhCiwB2SCaJ5 [sage] 投稿日:2010/04/22(木) 13:12:28 0
【本体】
名前:生天目 有葵(なばため ゆあ)
性別:女
年齢:17歳
身長/体重:157a42`
容姿の特徴:ショートカットでナチュラルヘアの栗毛。
人物概要:あほなお嬢様。

【スタンド】
名前:ステレオポニー
タイプ/特徴:近距離〜遠距離タイプ。
子馬の仮面をつけている女性のような姿で性格は、がさつな俺女。
能力詳細:「音」のような性質をもつスタンド。
音速時は単純に反射運動しかできない。(手や足を使いほんの少しの微調整は可能)

破壊力-D スピード-A   射程距離-A
持続力-C 精密動作性-E 成長性-A

A-超スゴイ B-スゴイ C-人間と同じ D-ニガテ E-超ニガテ
射程距離の目安
A:100m以上 B:数10m(50m) C:10数m(20m) D:数m(5m) E:2m以下

12 名前:佐藤ひとみ ◆tGLUbl280s [sage] 投稿日:2010/04/22(木) 19:10:02 0
脳科学的に女の脳は男の脳よりマルチタスク向きだという。スイーツ脳の数少ない長所の一つが作業の同時進行が得意なこと。
ドラマを見ながら爪を磨き更に恋愛相談の電話に相槌を打つ…
といった大抵の女が苦もなくできる行動の分散が男にはなかなか難しいらしい。
女脳は一つの作業に集中せずに他に注意を向ける余力を残しているから…というのが脳科学的説明である。
反対に言うと注意力散漫で興味の対象が移りやすい。

電話を切った後、再度シートで情報収集していたひとみ。
視界の端にチラリと映った黒い絨毯に気付けたのも注意の散りやすいスイーツ脳が幸いしたのだろうか。
蠢く黒い絨毯は滑るようにこちらに近づいてくる。それが跳ね回る虫の集まりであることに気付くのに更に数秒を要した。

「スタンドの虫?!」

シートに出た反応で確信を得た時にはもう虫の群体は足元まで迫っていた。
ひとみの体目掛けて飛び掛かる黒い虫。
カウンターで叩き落とそうと頭上のフルムーンの触手を伸ばし構えた時
遊歩道の方から目にも止まらぬスピードで虫の群れに突っ込んできたものがある。
子馬の仮面を付けた小柄な人型スタンド、有葵のステレオポニーだ。
ステレオポニーが虫に体当たり攻撃を食らわせている間にひとみはこの場から離れるために駆け出した。
途中遊歩道にいる有葵と落ち合う。


>「ひとみ〜ん!また会えたね〜」
この状況に於いて尚も能天気な声を上げる有葵にひとみは大いに苛立った。
やがて戻ってきたステレオポニーから状況を聞く有葵。

> 「ちょっとお!どうしたらいいのよーっ!?ひとみんはなにかいいアイデアとかないのっ!?」


ステレオポニーの攻撃で一時的に飛散した虫たちは再び集合し黒い塊になりつつある。
虫の大群は逃げてきたステレオポニーを追って跳ね回る黒塊と化してこちらに向かってくる!

13 名前:佐藤ひとみ ◆tGLUbl280s [sage] 投稿日:2010/04/22(木) 19:15:23 0
解決策を尋ねる生天目有葵に対する佐藤ひとみの返事。

「あるわけないでしょ?!あっても今は逃げるしかないわ。相手は虫の大群よ。
何匹か殺したってどうにもならない!攻撃してもキリがないわ!
あんた中国のイナゴの大群とかハムナプトラのスカラベ見たことないの?
虫の行動原理なんて食うかセックスするかの二択なんだから捕まったら骨しか残らないくらい食い尽くされるわよ!きっと!!
あんたもさっさと逃げなさい!ほら!!」

有葵を促すと、ひとみはタイトスカートが捲れ上がるのも構わずに湖を囲む遊歩道の柵を乗り越えて水に入った。
スタンドの虫はバッタのような姿をしている。バッタは泳げないと相場が決まっている。
ひとみは入水自殺する人のようにザブザブと浅瀬から水深の深い所まで入り腰まで水に浸かった。
水遊びには早すぎる季節だが致し方無い。
虫はこの深さまでは来られないと踏んだ緊急避難場所である。


腰まで水に浸かりながら敵スタンドの情報を集める佐藤ひとみ。

シート上の虫スタンドの反応はマーカーの形を成さずいびつな色の広がりとなって表示されている。
公園の外で様子を伺うように潜む本体の位置も確認できた。
探知の範囲を広げると別荘から脱出した荻原の周りにも同じ色の反応出ている。
敵スタンドはその身を二手に分けて攻撃しているようだ。
同じ敵を相手にするのならば合流した方が効率的。


ひとみは荻原に連絡する手段を考えた。
電話しても虫に襲われている荻原に携帯を操作する余裕はないだろう。こちらの位置と状況を知らせるにはどうすべきか…。
ひとみはよねに送ったのと同様に荻原の前にも分離したシートを出現させた。
シートには今フルムーンの目に写る映像。公園の湖と湖の周囲にいる虫の群体が映し出されている。映像が終わるとシートは消える。
この場所を知らせれば虫の攻撃に応戦しながら移動している荻原と合流できるかもしれない。

14 名前:荻原秋冬◇6J1m09mANS [sage] 投稿日:2010/04/22(木) 19:53:41 0
荻原はさっそく家に入りあの少年にトラップの缶ビールを投げるつもりだった。
だが、突然荻原の足元に黒い群隊がいたのだ。

「やばい!こいつらもスタンドなのか!」
黒い群隊は荻原をめがけて一斉に飛び掛ろうとした。

「くそっ!オラオラオラオラオラオラオラオラ!」
プラントアワーで潰そうとしたが、向こうのほうがスピードが速いからぜんぜん追いつかない。
荻原の体にどんどん傷ができてそこから血が流れてきた。

「はぁはぁ…やばい…ここはいったん逃げるしかない!」
ふたたびプラントアワーの腕の蔓を電柱まで伸ばして荻原を引っ張った。
そしてもう片腕の蔓を伸ばし隣の電柱まで伸ばす。
ターザンのように次々に電柱を変えて荻原はいったん逃げ出した。

「っく…トラップ作りが無駄になったがまだ大丈夫だ。使う機会はまだあるはずだ」

15 名前:荻原秋冬◇6J1m09mANS [sage] 投稿日:2010/04/22(木) 20:58:14 0
【本体】
名前:荻原秋冬
性別:男
年齢:50
身長/体重:174/55
容姿の特徴:白髪交じりのスポーツ狩りヘアー、仕事のときは緑の作業服だが。
基本は赤のTシャツにジーパン、ポケットのたくさんついた茶色のコートを着てる。

人物概要:北条町の清掃局員。正義感が強いがちょっと小心者。見た目は細めだが
けっこう大喰らいな男。
妻と娘がいたのだが行方不明で今は一人暮らし。

【スタンド】
名前:プラントアワー
タイプ/特徴:近距離〜中距離型/人型、全身緑色で両腕両足に植物のつるが巻きついている。

能力詳細:殴ったところから、さまざまな植物を生み出すことができる。
たとえ鉄の塊でも植物をはやすことはできるが、集中力しだいですぐに枯れてしまう。
さらに、ほかの植物を枯らしたり、元気にしたりすることもできる。

破壊力-B スピード-B 射程距離-C
持続力-C 精密動作性-A 成長性-D

A-超スゴイ B-スゴイ C-人間と同じ D-ニガテ E-超ニガテ
射程距離の目安
A:100m以上 B:数10m(50m) C:10数m(20m) D:数m(5m) E:2m以下

16 名前:『蝉』 ◆HQs.P3ZAvn.F [sage] 投稿日:2010/04/22(木) 21:18:15 0
>>10>>12

『グラスホッパー』は漆黒の弾幕と化けて、佐藤へ猛然と迫る。
寸前で気付かれたようだが、既に『グラスホッパー』は彼女を攻撃圏内に収めていた。
佐藤のスタンド『フルムーン』が触手を構え迎撃の姿勢を取った事で、『蝉』は秘かにほくそ笑む。

「馬鹿だな……。虫だからと侮ったか? お前の非力なスタンドで止められる物か……」
ゲームが始まってから『待ち』続けた事で、彼女のスタンドの概要を『蝉』は概ね承知している。
触手は傷つけられても何ら問題無いようだが、果たして『眼球』そのものはどうだろうか。
思えば佐藤は未だ、スタンド本体を攻撃された事がろくに無い。
己の右目をそのまま流用しているのだから、慎重になるのも当然か。
しかし、とうとう彼女は判断を誤った。
群体でありながら、奈落の口腔を開き牙を剥く一匹の魔獣の気配を宿す『グラスホッパー』を、迎撃しようなどと。
重機関銃の連射を欺く『グラスホッパー』の群体は、『フルムーン』の触手を食い千切り、
更に勢いを損なう事なく眼球部分にも歯牙を届かせるだろう。

そして『グラスホッパー』と『フルムーン』の、最初で最後となる邂逅が――果たされは、しなかった。

「……新手のスタンド使いか」
猪突する群体の真横から飛び込んだ新手――『ステレオポニー』は、音速を以って見る見る内に群体を散らしていく。
精密動作を著しく苦手とする群体時の『グラスホッパー』は、殆ど有効打を放つ事も出来ず四散を余儀なくされる。
『グラスホッパー』は尖鋭なる銃弾の如き勢いを持つからこそ。
例え迎撃されようとも相手に手傷を負わせる事が可能なのだが、
同時に横槍に対しては対応し切れない性質を兼ね備えてしまっていた。
一度勢いを失ってしまえば、どうしようもない精密動作性により群体時の剛力は役目を果たさない。
『グラスホッパー』は弾丸の魂を宿し制御を捨てる事で、逆に直線を描く事が出来ているのだから。
ともあれダメージこそ無いにせよ、絶好の機会を逸した事に『蝉』は図らず顔を歪める。

「……いや、あれは好機ではなかった。まだ『待つ』べき時だったのだ。
 好機は、あと『一手』先にあったのに。俺の機の逸りが、それをふいにしたんだ」

少し考えてみれば、分かる事だ。
戦闘の最中に電話を掛ける事の、目的は一体何か。まさか出前や今日の天気予報の筈はない。
佐藤ひとみは加勢を呼びつけたのだ。
そして偶然か必然か、すぐさま生天目有葵はやって来た。
加勢が訪れたとあれば、状況の説明や情報の伝達により意識は双方に一意集中される。
更には安堵感も訪れるだろう。
攻撃を仕掛けるならば、正にその時だったのだ。

「これで不意打ちと言う、俺の最大のアドバンテージは失われた。完全にアウトだ……」
ぼそぼそと呟きながら、しかし『蝉』は猶『グラスホッパー』を制動する。
どうやら佐藤達は湖へと逃げ込んだようだ。
『グラスホッパー』を湖の畔にまで移動させて、『蝉』は眉を顰めた。
彼のスタンドはその性質上、何かを蹴り、跳躍する事で攻撃を仕掛ける。
つまりこの状況で佐藤らを攻撃したいならば、どうしても『グラスホッパー』を水中へ飛び込ませる必要があるのだ。
無論、畔から一足飛びに『グラスホッパー』を佐藤達の地点にまで跳ばす事は容易だ。

問題は距離、直線的な軌道の特攻しか出来ない『グラスホッパー』は基本、
相手方の対応を遙か彼方へ置き去りにしての、息吐く暇も与えぬ超高速の連続攻撃が上策となる。
だが一度水中に沈んでしまえば、『グラスホッパー』は単純な直線を描く事も困難となるに違いない。
水の抵抗に対して、正確な動作制御が出来ないのだ。
そうなってしまえば、佐藤達の取るべき作戦は容易の一言。
すぐさまスタンドを飛ばし、既に位置を把握しているであろう『蝉』を叩けばいい。
水底へ沈んだ連中は勿論、萩原を追わせている方の群体を戻しても、恐らくは間に合わない。

17 名前:『蝉』 ◆HQs.P3ZAvn.F [sage] 投稿日:2010/04/22(木) 21:19:35 0
ならば一撃必中の精神を頼りに佐藤達を倒せるかと言えば、これも無理な話だ。
畔から佐藤達のいる地点までは、距離が開きすぎている。
如何に正確な狙撃を試みた所で、挙動を見極めてから避けるのは簡単な事だ。

「……だが、まだワンアウト。これから巻き返せるさ。丁度良く……『待ち』の時間だ」
ここで、『蝉』は『待ち』を選択する。
一見すれば追い詰めている絵面でもあり、仕掛ければ、ともすれば仕留められるかも分からない状況で。

「……この季節だ。水はまだ冷たいだろう? 来るか来ないか分からない『グラスホッパー』に怯えながら、いつまで『待てる』かな?」



畔で『グラスホッパー』を待機させ、時折意味ありげに動かしながら、『蝉』はただ『待ち』続ける。
彼女達は、『蝉』の企みを見抜けるのだろうか。
或いは己の体が徐々に水底へ近づいている事に気付かず、不動を貫くのだろうか。



>>14
「さて……あちらの方は、もう少しやり易そうだ」
防御も儘ならず逃げ惑う萩原を、『グラスホッパー』は追い続ける。
どうやら彼に関しては、大した事ないと判断したようだ。
防御行動も儘ならず逃げていくのだから、当然であり妥当な評価と判断だろう。

だが実のところ、『蝉』は彼を完全に追い詰める腹積りは抱えていなかった。
寧ろ逆、追跡は熾烈を装いながらもその実、付かず離れずの距離を。
不慮の事態が起こっても対処し得るであろう距離感を維持している。
何故なら萩原は既に『出血』しているのだ。

「焦って妙な反撃を貰っては下らない……。奴が勝手に疲れるのを、走り込み気分で待たせてもらうさ」

一瞥すれば激的に攻めているように見せながらも、『蝉』は『待ち』を順守しているのだ。
しかし追われている当事者の萩原には、この不自然な甘さは果たして違和感として伝わるだろうか。
それとも無自覚のまま、無闇な消耗へと身を投げてしまうのか。

18 名前:『蝉』 ◆HQs.P3ZAvn.F [sage] 投稿日:2010/04/22(木) 21:20:54 0
【本体】
名前: 自称『蝉』:本名、岩内 響(いわうち ひびき)
性別: 男
年齢: 18
身長/体重:179/76
容姿の特徴: スポーツ刈りの元高校球児。でも何か暗い。流石にユニフォーム姿ではない、パワ○ロじゃああるまいし。暗い色で統一
人物概要: 小学生の頃から野球をしてきたが、まるで芽が出ず
      しかし高校最後の夏、地方予選で彼はピッチャーを務め、そして投打に渡る活躍で甲子園への切符を得る
      その時に鬱屈し募らせてきた劣等感の昇華に伴ってスタンドを発現した
      だが甲子園へ出場する前に、彼は留流家に取り込まれる事になる
      10年前の地方予選を見てた人間なら見覚えがあるかもしれない。その後もそれなりにニュースになったし
      他にも、親族や当時のチームメンバーも今でも彼の捜索を続けていたり
蝉の由来は自分の夏がただ一度きりで、それすら満足に過ごせなかったから
     

【スタンド】
名前: グラスホッパー
タイプ/特徴: 近距離人型/遠距離群体型
能力詳細: 人型の状態と、分裂して群体型の状態を使い分ける事が出来る。
      人型時は仮面○イダーの親戚っぽい。分裂するとそれぞれの個体が黒く染まる
      群体時は精密動作性にすこぶる欠ける
      殴る蹴る噛むの他には、よちより歩くか四つん這いで飛び跳ねるくらいしか出来ない
      100円玉を運ぶのも難航するだろう
      ただし飛び掛かり攻撃は、並み以上のパワーを以ってしても迎撃は困難。基本直線的な動きしか出来ないが
      上述の通り群体時の方が高火力。人型の時は能力の無い、そこそこ力と速さがあって、まあまあ正確な器用貧乏パワー型程度でしかないから



破壊力-B(分裂時-A) スピード-B(群体時-A)   射程距離-E(群体時B)
持続力-B(群体時A) 精密動作性-B(分裂時E) 成長性- D

A-超スゴイ B-スゴイ C-人間と同じ D-ニガテ E-超ニガテ
射程距離の目安
A:100m以上 B:数10m(50m) C:10数m(20m) D:数m(5m) E:2m以下

19 名前:生天目 有葵 ◆BhCiwB2SCaJ5 [sage] 投稿日:2010/04/23(金) 00:50:00 0
>あんたもさっさと逃げなさい!ほら!!」

「逃げなさいって言ったって、どこに逃げるのよぉ!?」
湖岸で右往左往していた有葵だったがひとみを追う様にじゃぶじゃぶと湖に入っていく。
ステレオポニーも有葵に同伴して湖面を歩いている。足跡の代わりに水面に波紋が広がる。

「あれ!もしかして…。水の中までは虫が入ってこないの!?やったあ!やったね、ひとみん!!」
のうてんきに喜ぶ少女。

「いや…。もしかしたら囲まれてしまったのではないのか?
それにまさかとは思うが相手はスタンドだ。水中からの攻撃もありうる」
有葵とは逆に怪訝そうな口調のステレオポニー。

「それにだ有葵!おまえには自分の意志がないのか!?」

「え…!?」

「さっきだって『ちょっと〜どうしたらいいの〜ひとみ〜ん』って
アホみたいに聞いているばかりでなにもしない!ちっとは自分で考えて自分で行動しやがれ!!」

「そんな…いきなり怒られても…。それにひとみんと一緒なら心強いでしょ?」

「二人で心中でもする気か?そんなの俺はごめんだぜ。さあ命令しろ!俺はおまえのスタンドなんだ」

「…ぁ…あの…。…ひとみんを…守りながら戦う…」

スタンドに怒られて今にも泣きそうな顔の有葵。

「…あまちゃんだね。そんなことが出来るわけないだろう?でもまあいい。
…攻撃は最大の防御っていうだろ?討って出るよ!有葵!!」

そう言い放つと生天目たちのまわりをグルグルとまわり始めるステレオポニー。
足の裏から湖水に超音波を照射し始めるとキャビテーション現象によって無数の気泡が発生する。
と同時に共振径付近のサイズの気泡が音速に近い速度で急激に収縮し断熱圧縮の効果によって
瞬間的に高温状態となった。つまりは湖は温泉のような状態となり水蒸気が佐藤ひとみと生天目有葵を包み隠している。
おまけに強く圧縮された気泡からは電離した気体からのプラズマ発光が生じていた。

「え〜〜!!なにこれ〜!?」

「簡単に言ったらタダの目くらましさ。時間稼ぎにはなるだろう。
そして佐藤ひとみさん?ずっと拝見していたんだがアンタはスタンドのレーダーの様なものを持っているね?
悪いけど俺たちのバックアップをよろしくたのんだよ!」

湖に佐藤ひとみを残して有葵とステレオポニーは水蒸気で煙る湖をあとにした。
もちろんグラスホッパーの本体である『蝉』を叩くために。

20 名前:佐藤ひとみ ◆tGLUbl280s [sage] 投稿日:2010/04/23(金) 05:44:27 0
TVやホラー映画に登場する虫の大群は凶悪な捕食能力を発揮してあらゆるものを食い尽くす。
映画の見すぎで遭遇した虫型スタンドの能力を完全に見誤っていた佐藤ひとみ。
昆虫の攻撃を逃れた水の中でフルムーンを高く飛ばし上空から荻原が虫スタンドと応戦する姿をズームで目視する。
その姿を見てこの虫スタンドの本当の能力に気付いた。


このスタンドの本当の恐ろしさはジャンプの勢い。
硬質の体と直線的なスピードを伴った突撃は黒い弾丸となって対象を貫く。
パワータイプのスタンドで相応の防御力を持つ荻原でさえ昆虫のジャンプ攻撃を受け血を流している。
群体となった虫のスタンド。その小ささゆえ一体一体の攻撃力をナメていたが
あの時もし虫を触手で叩き落としていたならば触手を破壊されそのまま直線上にいたフルムーンに直撃していた可能性が高い。

自動操縦時はダメージを受けない、触手は使い捨て可能と防御上の利点も多いフルムーンだが
その分スタンド本体眼球部分の防御力は無いに等しい。虫スタンドの直撃を受けていたら片目を失うことになっていたかもしれない。
結果としてステレオポニーと有葵に助けられたことなる。


水に浸かりながら湖のほとりで蠢く虫の様子を伺うひとみ。
虫スタンドは水の中までは入って来ないようだが本当に水に入れないのか疑わしい。
攻撃の様子を見ても本物の昆虫のバッタとは随分性質が違う。
そもそも水生昆虫と陸生昆虫の差は体に水を弾く構造があるか、もしくは水が体内まで入らない殻を持つか否かの違い。
岸辺にいる虫スタンドは形こそバッタに似ているものの体表は鉄のように黒光りし堅い殻を持っている。
鉄のような水の浸入しない殻を持っていれば水中で行動できる可能性も高い。


水に入って来ないの浮力によるジャンプ力の低下を懸念してのことか?それとも何か戦法や策があってのことか?
こちらが冷たさに耐えられず、いずれ水から出ることを予測して様子を見ているのか…。
この虫のスタンド使いは『待ち』の戦法を選択しているのだろうか。

21 名前:佐藤ひとみ ◆tGLUbl280s [sage] 投稿日:2010/04/23(金) 05:48:28 0
ひとみが考えを巡らせている間、追いかけて水に入ってきた有葵とステレオポニーが口論している。
口論というよりスタンドが本体をきつい口調で諭しているといった方が適当か。

有葵を叱り飛ばしたステレオポニーは突如水面を滑るように走り出した。
ステレオポニーの発する超音波が反響することで水面に無数のミクロサイズの気泡が発生し気泡の収縮に伴う断熱効果により
超音波の当たった部分の水面は瞬間的に数百度の高温状態となる。たちまち水蒸気が立ち上がり辺りは鼻先も見えぬほどの濃霧に包まれた。

濃霧を目くらましの煙幕がわりに水中から脱出するステレオポニーと有葵。
逃げる際のステレオポニーの台詞。

>そして佐藤ひとみさん?ずっと拝見していたんだがアンタはスタンドのレーダーの様なものを持っているね?
>悪いけど俺たちのバックアップをよろしくたのんだよ!」


レーダーが必要…ということはステレオポニーはこの状況の打開策として手っ取り早い本体への攻撃を考えているようだ。
となれば本体の位置を探知できる自分の力が必要である。ひとみも共に湖から脱出し同行することにした。
有葵たちを追いかけながら声をかけるひとみ。


「あんたよりスタンドの方がよほどしっかりしてるわね。
いいわ、何か考えがあるのなら協力するわよ!口の悪いスタンドさん!」


湖から出る間際、行きがけの駄賃として自動操縦のフルムーンを岸辺で群れている虫の集団に突っ込ませた。
フルムーンは予め触手を網状に絡めネバネバの粘液を分泌させていた。
粘液を帯びた網の目状触手をさながら投網のように虫に投げかけ触手を切り捨てるプログラムを与えておいたのだ。
触手を切り離すとそのままひとみの元へ戻るフルムーン。
いずれ網を食い破り追いかけてくるだろうが、これでしばらくは時間が稼げるだろう。

22 名前:荻原秋冬◇6J1m09mANS [sage] 投稿日:2010/04/23(金) 06:44:05 0
電信柱をひとつひとつ変えて逃げるごとに荻原の目の前がかすんできている。
あの黒い群体はいまだに追いかけてくる。
ただでさえ年をとっているうえに出血もしているのだから、もう荻原の体力は
限界にちかい。

「はぁ…はぁ…ぐふっ…ちくしょう…このままじゃ逃げ切れない。
どうすりゃいいんだ…」
だんだん体が痺れてきていうことをきかなくなってきている。
さっきから黒い群体は攻撃しないでただ追いかけてくるだけ。
こちらの体力の限界に気がついているみたいだ。

(このままぶっ倒れたら無残に殺されるんだろうな…)
ふと、荻原はポケットに入っているトラップの缶ビールを思い出した。
本当はあの少年に使う予定だったがしかたがない。
このままでは荻原は無残な敗北を迎えるだけだ。

「やるしか…ない…か」
電信柱からいったん降りて缶ビールのトラップを黒い群体に投げつけた。
缶ビールは黒い群体の手前で大量の穴が開き、そこからは巨大な食虫植物
モウセンゴケが大量に現れたのだ。
食虫植物であるモウセンゴケがいっきに黒い群体をとらえたのだ。
プラントアワーの能力でできたモウセンゴケの粘液は通常の何倍も強い粘液を出すことができる。
さすがに驚異的なスピードをだす黒い群体もこの粘液からは逃げ出すのは難しいだろう。
時間がたてば消化液がでてきて溶かし始めるのだから。

23 名前:生天目 有葵 ◆BhCiwB2SCaJ5 [sage] 投稿日:2010/04/23(金) 13:03:33 0
ステレオポニーはふと考えてみた。虫には世界がどう見えているのだろう。
あの虫たちの複眼を通して敵のスタンド使いは世界をどのようにみているのであろうか。
わからなかった。神も人の目を通して意識の奥深くから世界を覗き見しているのだろうか。

「ねー!やっぱ虫を倒したいなら殺虫剤かゴキブリほいほいか
虫を食べる生き物とかがいたら便利だよね?あとなんかある?」
有葵はステレオポニーに聞いてみた。

「冬になるまで待とうか?冬眠するかも知れないぞ。虫だからな」

「あ!…それも…いいかも!」

「お、おい!冗談だっ!本気にしたのか?有葵!
俺は本体を攻撃するしかないと考えている。他にいい案があれば良いのだが…」

そう言うとステレオポニーは浮かびあがり足の裏から再び超音波を発生させる。
発生させた方向はグラスホッパーが佐藤ひとみに襲い掛かって来た順路をさかのぼる。
反響してきた超音波を体で受信してステレオポニーは
スタンド本体が潜伏しているであろう公園内の向こう側を頭の中で映像化していた。
映像は鮮明ではない。例えるなら胎児の健康状態を調べるエコー程度。
ただ敵が潜伏しているであろうスペースをなんとなく見つけ出す程度のものだった。
そして、そのスペースに自分自身を音速化して放り込み敵を索敵しながら前進してゆくステレオポニーと有葵。
何故なら自分の本体である生天目有葵を無闇に敵陣にきり込ませるのは無謀すぎるからだ。
きっと敵も自分の身を守るほどの戦力は残しているはず。
息を潜ませ潜伏している敵から本体を狙撃されるのはどうしても避けたかった。

「おかしい…敵が見つからない…」

思案していたステレオポニーは後ろから近づいてくる佐藤ひとみに気づいた。

「水蒸気の中に潜んでいれば安全だったものを…」
仮面の下の口をほんの少しゆるませステレオポニーはつぶやいた。

>「あんたよりスタンドの方がよほどしっかりしてるわね。
いいわ、何か考えがあるのなら協力するわよ!口の悪いスタンドさん!」

「考えは一つしかない。本体を戦闘不能にすることだ。
アンタも索敵してくれないか?…気のせいなのか…なにかおかしいのだ…。
アンタのスタンドも俺も近距離パワー型ではないから一歩間違えたら一気に形勢をひっくり返されるぞ…」

湖から見上げるほどに立ち昇った蒸気が空に溶けてゆく。

24 名前:よね ◆0jgpnDC/HQ [sage] 投稿日:2010/04/23(金) 16:44:33 P
4度目の突風が吹いた時、すでに盾は崩壊していた。
体中を剣の様な風が吹き抜ける。
いたるところに切り傷が出来る。

「ひゃひゃ…さあ、罪を償ってもらうぞォー!!」

突風が吹き始める。
よねはその瞬間に地面に手を置き、

「Sum41ッ!この地面は自分と反発するッ!」

風が吹き抜けるよりもほんの早く、"イダテン"の射程範囲から抜ける。
秋名のスタンド、"イダテン"の力が及ぶのは限界がある。
本来その範囲は実に広く、半径200mほどなら体を切り裂くほどの風を起こせる。
が、今の秋名は塵でその分パワーが半減している。
スタンドの能力範囲は元と比較すると低下が著しいし、
パワーも格段に落ちている。
故に、ある程度の距離を開ければそれはただの風になるのだ。

「ぜーぜー…ぐっ…」

普段はこれほどまで疲れることはない。Sum41の強力すぎる能力の代償だ。
今回に限っては体中を突風が襲い、ダメージを受けている。
もはや限界であった。
デパートの時と同じ、よねは自分の非力さを憎んだ。

「もう逃げるのはおわりかァ?ひゃひゃ…」

再び突風の兆しが現れる。
よねは地面にひれ伏すように手を付き、

「Sum41ッ…この地面は自分と反発するッ!」

ビシュッ

真横に吹き飛ぶよね。着地すら出来ない。
地面を転がると、またもや突風が吹く。
間違いない。秋名は苦しめているのだ。
本来ならばいつでもこの状態のよねを殺せる。
だが、それをしないという事は極限までいたぶってやろうという魂胆なのだろう。
突風に呼応するように反発によって跳ぶよね。
その飛距離は1mもなかった。だが、幸運が訪れた。
"別荘"に備わっていた池の方向に飛んだのだ。
必死だったので気付かなかったが、よねは利用できないか必死に考えた。

「ひゃひゃ、もう諦めたのかあ?じゃが殺しはせんぞお…
 この苦しみお前にも味わわせてやるんじゃあ…」

死なない程度の突風を吹かせる秋名。
これがアダとなるかもしれぬというのに愚かな男だ、とよねは思った。

25 名前:徳井一樹 ◆MnJrk02a/Yx. [sage] 投稿日:2010/04/23(金) 22:44:17 0

蜂の巣と化した別荘の床から海から息継ぎに顔を出したダイバーのように顔を出す徳井。
呼吸を整えると切開した床からずるずると這い上がる。

「ヤッベェー、なんだあのスタンドはよォーーーッ吸い込むだけじゃなくて吐き出すこともできんかよ!きいてねーッ!」

不意打ちは失敗、どうやら柚木は別荘の外へと出たようだ。
柚木とは別方向の窓に目をやると、中年の男性がスタンドを出したかと思うと何処かへ逃げていく。
恐らく荻原という人だろう。後ろには黒い、バッタのような大群が荻原を追いかけるように押し寄せていく。

「……まだ敵がいたのかよ。あれ?っつーことは俺あのスタンド使い一人で相手にしなきゃなんねーのか?」

荻原の援護が元々の目的だが、目の前を敵を放っておく訳にはいかない。
しかし迂闊に近づけば吸い込まれかねない。

「敵が外にでたっつーことは…俺の事はまだ見つけてねーよな?別荘の外に逃げたのが何よりの証拠だぜ…」

不意打ちがまともに成功するとすれば、次がラストチャンス。
遮蔽物や切開して隠れる場所の少ない外では見つかりかねない。
普通の接近戦となると相手のスタンドの方が有利だろう。
投擲するものももうない。……となると。

「……突撃しかねーかな。ま、俺の性格には一番それが似合ってる。一撃ドタマに入れれば勝てるんだからよ…」

セイヴ・フェリスが空間をつくらず人間の体を切開すれば何が起こるか、想像に難くはないだろう。
しかしこれが失敗すれば徳井はオズモールに吸い込まれ永遠に眠りこけるかもしれない。
他に良い方法があるかもしれないが頭の悪い徳井では見つけることはできない。

「後ろから一撃で決めるッ!吸い込まれようが、何か吐き出されようがな!絶対にうろたえねえ!」

再び床を切開し、今度は外へと地下を突き進んでいく。
柚木の背後まで近づくと一気に上へ上昇する。

ガボォオオオンッ!

突然柚木の背後から黒スーツサングラスの男が飛び上がって来た。
まともに徳井の顔を見たのは初めてだろう。徳井も同じである。
思い切り息を吸い込み、セイヴ・フェリスが拳を振るう。

「アリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリ!!」

成功を祈りながら漆黒の拳が高速で放たれる。

26 名前:『蝉』 ◆HQs.P3ZAvn.F [sage] 投稿日:2010/04/24(土) 05:07:06 0
>>19-21

「……やられた」
頓に湖から立ち昇り出した蒸気に、佐藤達の姿は白く塗り潰されていく。
加勢にやってきた生天目のスタンド、『ステレオポニー』の能力によってだ。
スピードと射程だけが取り柄のスタンドかと踏んでいた『蝉』だが、思わぬ伏兵がいたものだと眉を顰める。
しかしこの蒸気による煙幕は、彼にとっても味方と成り得るものだ。
外から中が一切見えない程の濃霧は、同時に中にいる彼女達の視界も甚だ阻害しているに違いない。
ならば今の内に固めていた群体を、浅瀬の周囲に分散して配置してやればいいのだ。
そうして後は、姿を確認し次第、再び群体を集合させて突撃を加える算段だ。
勿論『フルムーン』の探知能力によって伏兵自体はすぐに露呈してしまうだろう。
だがシートに意識を集中しながら、更に言えばシート上の動きを見た後で、
果たして『グラスホッパー』が成す必殺の弾幕を避ける事が出来るだろうか。

――不可能だ、と『蝉』は断じた。

早速、彼は群体へ散り散りになるよう命令を下す。
しかし直後、俄に警戒を薄めた『グラスホッパー』に、湯煙の幕を裂いて『フルムーン』が迫った。
『フルムーン』はすぐさま格子状に編み上げた触手を放つと、脱兎の魂を宿して再び霧中へと去っていく。
奇しくも意識を逸らした一瞬に、『フルムーン』の触手は滑り込む。
更に『グラスホッパー』の不器用さでは、浅瀬の辺りに群体を散らして配置するのも一苦労なのだ。
その為慎重な制動を心掛けていた『蝉』は、対応の采配を振るうのが決定的に遅れてしまう。
辛くも何匹かの個体は飛び退かせたものの、殆どは粘性を帯びた触手に囚われてしまった。

「クソッ……また、『待ち』切れなかっただと……」
もしも彼が『グラスホッパー』の群体を不動の体勢に留めていたのならば。
突如接近した『フルムーン』に対しても、適切な対応が出来ただろう。
触手の回避は勿論、それどころか攻撃の契機を合わせて突撃する事も可能だった。
真正面から激突すれば、『グラスホッパー』の破壊力は『フルムーン』を確実に、凄惨なまでに破壊した筈なのだ。

27 名前:『蝉』 ◆HQs.P3ZAvn.F [sage] 投稿日:2010/04/24(土) 05:08:14 0
>>25

また同時期、萩原を追っていた方の群体は端無く、徳井に不意を突かれた柚木を発見する。
徳井のスタンドもこれまでのゲームの事によって、佐藤と同じく能力は割れている。
『セイヴ・フェリス』の能力は『切開』だ。
だが『切開』された物の断面が後に再び再開を果たせるかどうかは、ひとえに徳井の意思次第である。
となれば、徳井が並々ならぬ温情の精神を心に宿しているならばともかく。
幾ら柚木が子供のナリをしているとは言え、彼の命は間違いなく奪われる事だろう。
完全な形で決まった背後からの奇襲を対処出来る程の速度を、柚木の『オズモール』は持ち合わせていないのだから。

「まったく……世話の焼ける、行けッ! 『グラスホッパー』ッ!」
萩原を追う群体を更に分割し、『蝉』は柚木と徳井へと放つ。
柚木を吹っ飛ばすか、徳井を仕留めるか、いずれかが為されればいいと。
咄嗟の事である為に、正確な狙いは望めなかったのだ。

>>22

>「やるしか…ない…か」
そして直後、『蝉』はまたしても失態を演じる事となる。
萩原が投じた覚悟と逆転の一手に、彼はまたも意識の間隙を侵す事を許してしまった。
ビール瓶から解き放たれた大量のモウセンゴケに、『グラスホッパー』達は余さず捕獲される。

『フルムーン』の網と『プラントアワー』の食中植物によって、
最早まともに動く事の出来る『グラスホッパー』は十三匹しかいない。

立て続けの失態に、ふと『蝉』の脳裏に、過去の屈辱が教訓を引っ提げて蘇る。
甲子園出場を掛けた試合で、最後から一つ前の打席の事だった。
目前をちらつく全国大会へのチケットに目を眩ませた彼は、
投手の放った甘い球――と見せかけて鋭く切れる変化球にまんまと凡打を叩いてしまったのだ。
過去と現在、二重の恥辱に『蝉』は我知らずの内に奥歯を噛み締め、拳を強く握る。

「……まだだ」
けれども、彼が最後の打席で驚異的な粘りを発揮出来たのは、その失敗があったからこそだ。
兼ねてより抱いていた自らの進むべき指針を、『待つ』事を想起出来たのだ。
今もまた、同じ事が起きている。
失敗を重ねたからこそ、自分はもう『待つ』べき時を、動くべきタイミングを見誤る事はない。
そう『蝉』は決意を堅固にさせた。

「だが……『待つ』事と『何もしない』事は違う……。今は、動くべき時だ……」

佐藤と生天目はスタンドを無力化した今こそ本体を叩く好機だと、『蝉』を狙ってくるだろう。
また萩原の植物に捕らえられた『グラスホッパー』は、微かにだが溶けるような違和感に包まれている。

「網に囚われた方は……まだどうにかなる。問題は植物の方だ」
小さく呟くと、彼は萩原と捕獲された『グラスホッパー』の元へと走り出した。

28 名前:大谷杉松 ◆vReXCpsNBKcm [sage] 投稿日:2010/04/24(土) 07:28:54 0
秋名の攻撃によって遠くへ飛ばされてしまった、大谷
だが、幸運なことに秋名の位置が確認できる大広間へ飛ばされていたのだ。
よね達が役者なら、大谷は裏方の位置である、ここでなんとか逆転したい…
しかし相手は塵だ、ナイフもハンマーも通用しない戦闘経験が豊富な大谷でも塵とは戦ったことなんてあるわけが無い、

「ん…塵… やって見るしかないな、」

すぐに別荘へ向かい掃除機を持って戻ってくる大谷、しかしここは外だ電気なんて無い

『…ワタシノデバンノヨウネ イツデモイイワヨスギマツ!』

「今だ!    スマートガントレットォォ!!」

        パチィン!

指の音と共に掃除機が音を上げて秋名を吸い込む、
しかしこれでは一時的な悪あがきぐらいにしかならないだろう…
その一時的な時間を生かすか…殺すか…そこで勝負は決まるのだろう。

29 名前:大谷杉松 ◆vReXCpsNBKcm [sage] 投稿日:2010/04/24(土) 07:31:34 0
【本体】
名前: 大谷 杉松
性別: 男
年齢: 34
身長/体重: 171/73
容姿の特徴: 灰色のトレンチコートを着ていて、短髪 ぼろぼろの靴を履いている
       トレンチコートの下は白いワイシャツにボロボロの灰色ジーンズ。
人物概要:かなりの紅茶愛好家、いろいろなところに旅をしては紅茶を飲んでいる
     旅人のためか、けっこう事件に巻き込まれることも多い。

【スタンド】
名前: スマートガントレット
タイプ/特徴: 人型 遠距離〜近距離 女性の体型 長い髪がはえてる 
       腕が無く腕の代わりのガントレットが浮遊している
       意思を持っていて賢いが力は無いに等しい

能力詳細:直前にやった事をもう一度やった事にすること
     他人のやった事に発動させた場合、再度発動させるためには五分ほどの"休憩時間"が必要
     発動させる際スタンド本体に合図を出す必要がある
     直前以外もやったことに出来るが、その場合体力消費が激しくなる

破壊力-E スピード-C   射程距離-A
持続力-A 精密動作性-A 成長性-B

30 名前:柚木美都留 ◆BhCiwB2SCaJ5 [sage] 投稿日:2010/04/24(土) 13:34:36 0
蜂の巣にしたての別荘を柚木美都留はじっくりと観察していた。
じんわりと額は汗ばみ、やわらかい黒髪がわずかにはりついている。
静かに時間は流れていた…。徳井は出てこない。
多分、彼は奇襲をしてくるつもりであろう。
別荘に意識を集中しつつも少年は風景全体を見まわしていた。
負傷して逃走している荻原。秋名との戦いで消耗しきっている、よね。
掃除機で秋名を吸い込む大谷杉松。

彼らを見ながら屍の宴の始まりを予感した少年はにやりと笑う。まるで悪女のような笑顔だった。

その瞬間。背後から風が吹き上がり徳井一樹が現れる。
まるで奈落から飛び上がって出てくる歌舞伎役者ようだった。

>「アリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリ!!」

振り向いた柚木に漆黒の拳が突き落とされる。
オズモールは黒い巨体を反転させるが攻撃も防御も間に合わない。

「うぐっ!!」
突然、少年の目に映る風景が揺らぎ体中に激痛が走った。
体中に衝撃を受けた少年の体は孤を描きながら空中に弾き飛ばされる。
周囲には虫が飛んでいる。
視界の外には徳井がいるようだが何をしているかまでは確認できなかった。

「うぎゃ」
地面に突っ伏す柚木。

どうやら衝撃は『セイヴ・フェリス』の攻撃によるものではなかった。
柚木は虫たちに弾き飛ばされ『セイヴ・フェリス』の刃圏から逃れていたのだ。

「奇襲から…救ってくれたの?それとも…無差別にスタンド使いを一掃する新手…?」
ふらふらしながら柚木は徳井と虫たちからほんの少し遠ざかる。
体中が痛む。少年のやわらかい体がグラスホッパーの攻撃で
致命傷を受けなかったのはオズモールがクッションになっていたからのようだった。

柚木は虫たちが敵か味方か今はわからなかったが徳井に攻撃を開始すればしめたものだと思っていた。
少年は徳井とグラスホッパーが見える位置の木陰にそっとしゃがみこんで隠れた。

31 名前:生天目(NPC) ◆BhCiwB2SCaJ5 [sage] 投稿日:2010/04/24(土) 16:04:03 0
「え?敵が見つからない!?見つからないってことは単純に考えればそこにいないってことなんじゃないの?
だって、いつでも冷蔵庫の中に氷があるなんて思うのは勝手な思い込みでしょ?
もう敵を探すのは、ひとみんに任せなさいよ。こんな能力もありますよ〜って自慢したかったのかも知れないけど
正直言って紛らわしいのよね〜。なんて言ったらいいのかなあ?あなたは石橋を叩いて粉々にしてるのよ」

さっき怒られた腹いせに、ここぞとばかり言葉の反撃にでる生天目有葵。

「…ぅ…おまえ…」

ステレオポニーの素顔は仮面の下に隠されているのだが恥かしさで真っ赤になってゆくのが見てとれた。
もともとスタンドとスタンド使いは一心同体。ステレオポニーが猪突猛進、音速の精神を持っているのなら
生天目有葵は同じ音でもポップミュージックのような軽快で穏やかな精神を持っているようだ。

32 名前:佐藤ひとみ ◆tGLUbl280s [sage] 投稿日:2010/04/24(土) 16:57:21 0
>>23
水蒸気の濃霧に紛れて有葵とステレオポニーを追う佐藤ひとみ。

>「水蒸気の中に潜んでいれば安全だったものを…」
ステレオポニーは追いかけてきたひとみに皮肉を投げる。その皮肉にストレートな怒鳴り声で答えるひとみ。

「馬鹿ね!あんな所安全な訳ないでしょう?!虫が水に入ってこなかったのは虚仮よ。
現にあんた達が行ってから水に入る動きを感知したわ。私が虫の動きを止めて逃げて来なかったら今頃殺されてたわよ!
仮に安全だとしても敵と睨み合ったままいつまでも冷たい水の中なんて真っ平!
それに私は風のスタンド使いに知覚されている。今は別の男と交戦中だけど風なら数秒でここに来れる。
湖の中でボーっと立ってる訳にはいかないのよ!」


やはりステレオポニーは本体を叩くつもりだと言う。

>アンタも索敵してくれないか?…気のせいなのか…なにかおかしいのだ…。

この言葉からしてステレオポニーもある程度敵の位置を探知できる能力を持っている。
昨日の有葵の拙い説明からは本当の能力についての推察はできなかったが
湖で濃霧を発生させた力…水に超音波を当てると超高温の泡が発生すると聞いたことがある。超音波洗浄機と同じ仕組みである。
昨日見た動作と湖での力を合わせて推測すると
ステレオポニーは動きに跳ね返るエコーのような性質を持ち、更にあらゆる『音』の性質を体現できるスタンド。
超音波を自由に発生させることも出来る。
そしてコウモリが超音波の反射を脳内で擬似映像化するようにエコーの反射で相手の位置を特定しようとしているようだ。


>「え?敵が見つからない!?見つからないってことは単純に考えればそこにいないってことなんじゃないの?
得意げな顔でステレオポニーの揚げ足を取る有葵。
ステレオポニーは居たたまれない表情をしている。自律意思を持つスタンドとはこれほど感情豊かなものなのだろうか。


「そうでもないみたいよ。
敵は『虫』の性質を体現したスタンド…あんたが『音』のスタンドであるようにね。
虫の中には超音波を出す物もいるって聞いた事があるわ。
敵はあんたの超音波を感知して同じ波長の超音波を出している。つまりあんたの探知は撹乱されてるのよ。」

ひとみはシートでステレオポニーの出す超音波の波長を視覚化していた。
視覚化した超音波の色域はステレオポニーを中心としたものとは別に敵のマーカー付近にも広がっている。


「エコーで探知する必要は無いわ。敵の位置は解る。
ただ不用意に近づくのは危険よ。私とあんたのスタンドは直接攻撃には向かない。
さっき湖にいた虫スタンドの足止めはそう長く持つとは思えない。
おそらく私達の狙いを察して直ぐに本体の元に帰るはずよ。
荻原さんと合流しましょう。彼も同じスタンドに攻撃されている、彼のスタンドはパワータイプよ。」

33 名前:徳井一樹 ◆MnJrk02a/Yx. [sage] 投稿日:2010/04/24(土) 17:15:50 0

敵の防御は間に合わない!勝った!第3部完ッ!
そんな確信が徳井の頭に響いた後、突然『黒い物体』にセイヴ・フェリスの拳は阻まれる。

「えっ?」

思わず頓狂な声をあげると、『黒い物体』の一部が徳井に襲い掛かる。
防御しようとも攻撃の最中。一手遅れる。間に合わない。

「チクショーー!なんだこいつァーーーッ」

ガードが間に合わず数メートル後方へ吹っ飛ぶ徳井。
肩からは血が流れ、咄嗟に触れて確認する。

「クソッ!鎖骨が折れてるじゃねーか…左腕は使えねーな…」

よくわからない黒い物体に弾き飛ばされ柚木から離れてしまった。
急いで柚木の位置を確認しようとすると、柚木がいない。
どうやら柚木も同じように何処かへ弾き飛ばされたらしい。

「何処に行ったんだ?つーかこの虫…バッタか?また新手のスタンド使いか?」

黒い物体に見えたのは幾つもの『バッタ』のスタンドだったのだ。
ふらふらと歩き、壁にもたれながらも『蝉』のスタンド、グラスホッパーを見据える。
小さいバッタがたくさんいるスタンド…群集体型のスタンドだろう。
しかしあのパワーとスピードとなると相当厄介だ。荻原さんが苦戦していたのも頷ける。
加えて何処かに隠れた柚木のオズモール。

「やべーさっきまで調子コイてた自分めっちゃ恥ずかしいじゃねーか!超ピンチだぜ…」

いつものように軽口を叩いているように聞こえるが、これはこれで徳井なりに焦っているのだ。
逃げようかなとも思ったがそれは出来ない。皆に迷惑をかける。何よりあの九頭から逃げる事にもなる。

「あのスピードとパワーのバッタに迂闊に近づくのはデンジャラスだぜ……
一匹や二匹殺したところで本体は痛くも痒くもねえだろうし……何よりセイヴ・フェリスの精密動作性じゃ殴るのも難しいぜ
つーか毎回フラフラな状況に陥ってるなクソ!」

セイヴ・フェリスを出現させ、グラスホッパーに攻撃をされてもいいように構えつつ、オズモールにも気を配る。

34 名前:荻原秋冬◇6J1m09mANS [sage] 投稿日:2010/04/25(日) 16:50:10 0
荻原は肩で息をしながら黒い群体を捕まえたモウセンゴケを見ていた。
超スピードで攻撃してきた黒い群体もさすがに逃げ出すことが無理みたいだ。
時間がたてばどんどん溶けていくのだから。

「なんとか…や、やったみたいだ…」
そういうと荻原はその場でガクッと膝をついた。
目の前がぼやけて体には傷から血が出ている。

「このままじゃ…体がもたない…とりあえず救急車…」
携帯を取り出して電話をかけようとしたが、運悪く電池がきれてしまった。

「ああ!くそっ、ついてないな!」
これからどうすればいいか…そんなことを考えていると、荻原の目の前に誰かが走ってきた。

35 名前:よね ◆0jgpnDC/HQ [sage] 投稿日:2010/04/25(日) 19:10:17 P
大谷の救助に安堵するよね。

「大谷さん…助かりました…」

じっと秋名の攻撃に耐えていた間に一つの案が浮かんでいたのだ。
大谷が来なければ、その案も水の泡だったに違いない。

よねはデパート以来、スタミナの回復が早くなっている。
それもちょっとやそっとではない。息が切れるほど疲れても10秒も経たぬうちに回復してしまうのだ。
よねにはその理由が分からなかった。何故かそうなってしまっているのだ。

「大谷さん、協力してほしいのです。
 スマートガントレットの力で、奴の…秋名の体を密集させてほしいのです
 どういう事か。説明します。
 秋名の体は塵です。秋名は自身の体を形成するために常に周囲の風をコントロールしていて、
 その上、打撃に対応するため完全に形成していない。いわば塵の密度が低い状態なのです。

 秋名は体を形成する最も初めに強風を吹かせます。
 そうして素早く体を形成する塵を集めているのですが…
 そこを狙ってスマートガントレットの能力で"もう一度強い風が吹いたこと"にすれば…
 奴の体の密度は高くなります。そこからは僕に任せてください」

よねにとっては理解できる話でも大谷に上手く説明できてるかわからない。
だが、よねは自分の考えばかりを話している。
それほど動転しているのだ。下手を打てば死ぬ。その状況によねはいた。

36 名前:佐藤ひとみ ◆tGLUbl280s [sage] 投稿日:2010/04/25(日) 19:47:56 0
荻原と合流するためシートで居場所を確認しながら走るひとみと有葵。
丁度公園の遊歩道から一般道に出る位置で荻原と鉢合わせした。
荻原は弾丸のような虫スタンドの攻撃を受け銃創に似た傷口をいくつも作って血を流している。
ひとみ達の目の前で力尽きる荻原。

「荻原さん!もうっ!これからって時に…。か弱い女二人を残してこんな所でへたり込まれたら困るのよ!!」

思い遣りの欠片もない言葉を投げかけるひとみ。
荻原の傷はスタンドのつけた傷。
銃創と違って中に弾がないことが救いか、ならば物理的に傷を塞いでしまえば出血は止まる。
フルムーンの触手は太さや固さを自由に変化させられる。そして能力を持たぬ者には見えぬスタンドでありながら
粘液を分泌したりタンパク質を溶かす水酸化ナトリウムに浸食されたりと有機物的な特徴も備えている。
これはスタンドの内部に生物の部品…つまりひとみ自身の眼を含んでいることが関係しているのかもしれない。


ひとみはフルムーンを使って先を針のように固くした糸状の触手を荻原の傷口に突き刺し
触手の先を針、細い触手を糸に見立てて素早く縫合した。
無数にある触手を使ってものの数秒で全ての傷口を同時に縫い上げると縫合に使った触手を切り離す。
触手の素材がタンパク質ならば直ぐに体に吸収され同化するはずだ。

「初めてやったけど案外上手くいくものね…。
手芸なんて全っ然興味無いけどスタンドを使えば簡単じゃない。
ほら荻原さん、早く立って!
敵があなたの仕掛けたトラップから虫のスタンドを救い出す前に距離を取って体勢を整えましょう。」


シートを見ると今の敵は溶解させられつつある自らのスタンドの救出で余裕が無いようだ。
フルムーンを飛ばし上空から敵の姿を目視するひとみ。ズームで顔を確認する。
植物の出す消化液から虫スタンドを掴み上げている敵スタンド使い…ひとみはその横顔に見覚えがあった。

37 名前:生天目(NPC) ◆BhCiwB2SCaJ5 [sage] 投稿日:2010/04/25(日) 23:56:56 0
佐藤ひとみの後ろを元気についてゆく生天目有葵。元気がありすぎて、走りながら一回転でもしてしまいそうな勢いだ。

「あ、見て!人がいる!!あの人が荻原さん?」
遠くでへたり込んでいる荻原が見えた。銃創に似た傷口をいくつも作って血を流している。

「だいじょうぶですか!?あ!!この人さっき別荘の窓から飛んでた人だよ。あれ?私、戻って来たの?」
リムジンの中から見た光景を思い出した有葵が言う。

>「荻原さん!もうっ!これからって時に…。か弱い女二人を残してこんな所でへたり込まれたら困るのよ!!」

「そうそう!女、子供は大人しくすっこんでいるから、おじさんには虫のスタンドを倒してもらわないとね〜」
死人にムチを打つような事を言う二人。

佐藤ひとみはスタンドの力で器用に荻原の傷をふさいでゆく。傷口を見て目を覆う有葵。細胞レベルで縫合しているのだろうか?明らかに最先端医療を凌ぐ技術だった。

傷口が縫合し終わるのを見届けるとステレオポニーは突然、荻原の傷口を踏みつける。

「ちょっ!!なんてことしてんのっ!?」

「黙ってな有葵。このおぢさまをもっと元気にしてやるんだよ」
足の裏から超音波が照射される。

「もっと元気って…あなたって…ひとみんに対抗意識燃やしてない?」
心配そうに見ている有葵にステレオポニーが語り始める。

「生き物の細胞はそれぞれ固有の微振動を持っている。その振動が極端に出るのが細胞分裂の時で振動後に母細胞は二個に分裂して娘細胞を生み出すんだよ。つまりはだ。超音波によって共振共鳴作用を発生させることで新陳代謝を促進し活性化することができるのだ!」
言いきって誇らしげなステレオポニー。

「はあ?意味わかんない。おじさんが二個に増えるってこと?」
有葵は首をかしげている。

「増えるわけないだろう。有葵、アンタにもわかるように言ったら…そうだな…超音波美顔器みたいなものか?
あれはお肌がつやつやになるだろう?とっても小さい手を細胞ひとつひとつの奥に突っ込んでマッサージをしているのさ。
あとはだな。いい音楽を流すと野菜がすくすく育つ…そんなとこかな」
言い終わると超音波照射も終了した。

「え…じゃあこのおじさん…美顔になったの?」
荻原の顔を見つめてみたがちょっとわからない有葵だった。

「でも美顔になるんだったらさ〜あなたの足、ちょっと借してよ!」
ステレオポニーの両足をつかんで自分の頬にぐいぐいおしつける有葵。

「きゃはははーくすぐったいやめろ〜」
空中でじたばたしているステレオポニー。

「美顔能力なんてもってるんだったらもっと早く言ってくれたらよかったのに。
このまえ言ってた山彦ってなんだったのょ〜?」

「アッ…アンタに説明しても…ほとんど理解…できないからね…んっ!」
くすぐったくて身をよじりながら叫んでいたステレオポニーだったが
あの時の本当の理由は初対面のスタンド使いである佐藤ひとみに丁寧に本来の能力を明かす理由がなかったからだ。

「あ!荻原さん?はじめまして!生天目有葵です。よろしくお願いしまあす!」
立ち上がる荻原に気づいた少女はステレオポニーをぶん投げて明るく挨拶をした。
スタンドはあっちこっちにぶつかってすぐに隣に戻って来る。
「ステレオポニーだぜ!よろしくなー!」

挨拶も終わり有葵はふと佐藤ひとみに目を向けた。彼女は何かを回想している様だった。

38 名前:荻原秋冬◇6J1m09mANS [sage] 投稿日:2010/04/26(月) 22:26:36 0
向こうから走ってきたのは、佐藤さんともう一人は見知らぬ女の子だった。
荻原も歩こうとしたがすでに体に限界がきたみたいだ。
仰向けになって倒れてしまった。

>「荻原さん!もうっ!これからって時に…。か弱い女二人を残してこんな所でへたり込まれたら困るのよ!!」

>「そうそう!女、子供は大人しくすっこんでいるから、おじさんには虫のスタンドを倒してもらわないとね〜」

会っていきなり酷なことを言う二人。

(うう〜…せめて大丈夫?の一言くらい言ってもいいのに…)
そんなふうに落ち込んでいると、一瞬チクッとした痛みが走った。
見てみると佐藤さんの目玉のスタンドが傷口を縫ってくれているみたいだ。
あっという間に傷口のほとんどが塞がった。
起き上がろうとした瞬間。馬の顔をしたスタンドが荻原の傷を踏みつけた。

「ぐはっ、い…いきなりなにを…」
するとそのスタンドの足から超音波が照射された。
どうやらこのスタンドがいうには超音波で傷口を癒すみたいだ。
数分たつと傷はほとんど治ってしまった。

>「あ!荻原さん?はじめまして!生天目有葵です。よろしくお願いしまあす!」

>「ステレオポニーだぜ!よろしくなー!」

「ああ、よろしく。もう私の名前知ってるみたいだが改めて
自己紹介させてもらうよ。
私の名前は荻原秋冬。そしてこれが私のスタンド…プラントアワーだ」
荻原の隣にプラントアワーを出現させて自己紹介を終わらせた。
ふと、さっきのモウセンゴケのあるほうへ目をやると一人の男性がいた。

「どうやらあれが本体らしいな…あの黒い虫の群体を一匹ずつ取ってる」
傷が治ったとはいえすぐに攻撃することはできない。
今は体制を立て直すべきときなのだから…

39 名前:『蝉』 ◆HQs.P3ZAvn.F [sage] 投稿日:2010/04/27(火) 00:30:17 0
>>33-34

走る事数分、『蝉』はモウセンゴケに溶解されつつある『グラスホッパー』の元へ辿り着いた。
既に彼の体ではあちこちで、スタンドのダメージが反映されつつある。
モウセンゴケに捕らわれた『グラスホッパー』は全体の半数にも満たない程度だが。
しかしそれら全てが同時に溶かされていくとなれば、相応のダメージは受けるに決まっている。
服の、更には皮膚の内側がぐずぐずと崩壊していく違和感に顔を顰めながらも、『蝉』は地面に転がるモウセンゴケへ手を伸ばした。
溶解液の煽りは本体にまで及ぶが、仕方が無い。
『グラスホッパー』だけでは脱出は到底不可能で、放っておけば結果的に今こうするよりも酷い結果が待ち受けているのだから。
ひとまずモウセンゴケと『グラスホッパー』の塊を拾い上げ、スタンドの回収と並行して『蝉』は早歩きで進み続ける。
付近には徳井がいたが、『蝉』は彼のスタンドの射程外におり、また今彼を相手にしている暇もない。
それなりの手傷を負わせた萩原に、戦闘向けとは言えないスタンドを持つ二人。
彼らが一堂に会そうとしているのならば、この好機を逃す手はない。
都合よく、徳井は少数の『グラスホッパー』を警戒しているようであり、更に彼の傍には柚木も潜んでいる。
柚木が『蝉』に協力を示すようならば、一応は攻撃の成功した徳井を先に仕留めるのも手ではあっただろう。
が、柚木は辺りの茂みに身を隠した切り音沙汰がない。
協調性もなければ精神的にも子供のままでいる柚木の事だ。自分が同じ狩る者である事も把握していないのかも知れない。
そう断定した『蝉』は、『グラスホッパー』と潜む柚木と言う二重の牽制を盾に、徳井から徐々に距離を取る。

「そうだな……。最後に一つ、置き土産をしておくか」
ぽつりと呟くと、『蝉』は『グラスホッパー』達を激しく躍動させる。
黒の群体は驚異の速度を以って徳井へと迫る――かと見せ掛けて、しかし即座に『蝉』の元へ引き返した。
単純なフェイントだが徳井が引っかかれば、未だ尚『待ち』の姿勢を見せている柚木にとっての転機となるだろう。
試みの成否を見届ける事なく、『蝉』は歩みを再開した。



>>36-37
点々と続く萩原の血痕を辿り続け、暫しの時を経て、『蝉』は漸く萩原の姿を視界に認めた。
傍らには佐藤と生天目も、何やらスタンドを出して漫才然のやり取りを行っている。
だが目を凝らして仔細を見つめてみれば、萩原の出血は既に収まっていた。
一見酷い有様のままでいる彼は、しかしそれは先程まで流れていた血の汚れ故だ。

それにしても。
あの二人の女が有するスタンドは、余りにも柔軟性に富んだスタンドだと、『蝉』は内心で舌を巻く。
女と言うのは往々にして移り身が激しく多面性を持つ生き物だが、そこに起因するのだろうか。
女と言えば、ふと『蝉』は己がまだこのような身に墜ちる前の、高校での野球部の事を思い出した。

甲子園が近付くに連れてころころと態度を変えていった周りの女子と違い。
彼がまだうだつが上がらない一年生だった頃から、変わらぬ瀟洒な態度で彼に接していたマネージャーがいた。
今から思い返してみれば、自分は彼女に淡いながらも恋心を抱いていたかもしれないと、『蝉』は思索する。
しかし同時に、彼女は自分の女房役、つまりキャッチャーだった――名前は思い返すに辛い為意図して避けているが――男とよく一緒にいた事もまた回想した。
何やらいつも女が男へ相談事をしているようだったが、何にせよ浅からぬ仲にあった事は間違いないだろう。
今でも仲良くやっているだろうかなどと、しみじみとした想いにまで彼の意識が至った所で。
やっと彼の理性が、過去へ向けて全力疾走する心に制止を掛けた。

「……この大事な局面で、馬鹿か俺は」

『蝉』はどうにも、ここ一番の局面で感傷に浸る悪癖を持っていた。
それは彼が生来より背負い続けている劣等感が故か。
地区大会の決勝でも、彼は感極まり試合が決着に至る前に一度、ベンチで落涙してしまった過去がある。
あの時は先のマネージャーの励ましにより意気を取り戻したが。
今は、狩る者である『蝉』には、誰も支えとなってくれる者はいないのだ。

だからこそ、一人で全てを為す必要があるからこそ、彼のスタンド『グラスホッパー』は斯様な性質を示す。
圧倒的な突破力は極大の攻撃を、彼の準じる哲学は不揺の防御を。

40 名前:『蝉』 ◆HQs.P3ZAvn.F [sage] 投稿日:2010/04/27(火) 00:31:45 0
「さて……どうやら相手方も『待ち』らしいな……。好都合だ」
モウセンゴケに捕らわれた『グラスホッパー』は、粗方剥がし終えた。
まだ少量残ってはいるが、これ以上は本体、主に手へのダメージを抑える為、地に放り放置とする。

「黄金の右腕……って訳でもないがな。こればかりは、染み付いた性分だな」
時折意識を釣り上げる回顧に加え、捨て切れぬ過去に、『蝉』は僅かに表情を顰めた。

「……ともあれ、到着だ。『待った』甲斐があった」
微かに逸れる彼の視線を追ってみれば、彼の元へ飛来する網が見えるだろう。
より詳しくは、自らを捕らえる触手の網ごと跳躍を繰り返す『グラスホッパー』が。
モウセンゴケと違い網は平面である為に、『グラスホッパー』はこのような芸当が出来た。
彼が萩原に囚われた方の群体を優先したのは、ダメージの有無の他にも、この事があったと言う訳だ。

これで『蝉』の元に、『グラスホッパー』全ての個体が集まった。
ならば『グラスホッパー』は、群体型から人型への切り替えが可能となる。
そして一度人型へと戻ってしまえば、『グラスホッパー』に張り付く植物や網など容易く、引き剥がしてしまう事が出来るのだ。

とは言え、彼とて万全ではない。
モウセンゴケによる融解は彼の身体の内外を蝕んでいる。
萩原の出血による消耗は、アドバンテージとは言い難い。

「……だが、俺は負けられない。こんなゲームだとしても、これは俺の『夏』なんだ!
 十年越しのッ! 一八年間耐え続けてやっと迎えた夏すら満足に過ごせなかった俺の! やっと迎えた二度目の『夏』だ!」

声を張り上げ、『蝉』は哮る。
彼が自らを『蝉』と呼ぶ所以の片鱗を。

「お前らにしても、九頭龍に勝つ事など土台不可能なんだ! ならそのお前達が……俺の『夏』を邪魔する権利など無いッ!」
彼の咆哮は、留流家の洗脳により表層化はしないまでも。
裏を返せば九頭龍の敗北、そして自身の解放への無意識での願望の証左だった。

「来いッ! 参加者共! 俺はお前らを打ちのめして、今度こそ『夏』を過ごし切るんだッ!」

『蝉」は叫び、だが『待ち』の姿勢を崩す事は無かった。
人型に戻した『グラスホッパー』を一体如何なる算段かそのままに留めて。
彼は気概の炎を静かに燃やし、絶やす事なく『待ち』続ける。

41 名前:佐藤ひとみ ◆tGLUbl280s [sage] 投稿日:2010/04/27(火) 03:37:48 0
じゃれ合うステレオポニーと有葵の横で敵スタンド使いを目視する佐藤ひとみ。

「あの男…知ってる…見たことあるわ…!」

小さく呟くひとみ。あれは確かひとみが高校一年の時だっただろうか。
地区予選で劇的な活躍を見せた高校球児がいた。
特に強豪でないノーマークの野球部を甲子園出場に導いた注目選手として何度かスポーツニュースにも取り上げられ
その精悍さと整ったルックスにファンにつく女子も多かった。
ひとみは当時から全く野球に興味がなかったが、ひとみの地元でもファンの女子が多かった為話の付き合いから
自然と彼の存在は耳に入っていた。

その注目選手の甲子園開幕直前の失踪…当時大変な話題になった。
晴れの舞台を目前に控えての失踪…どんな後ろ暗いことがあったのか
もし何らかの事件に巻き込まれたのなら相当ツイてない奴だと当時のひとみは考えたものだった。

自分本位で他人に興味の持てない性格ゆえ人の顔を覚えることが苦手なひとみだが、彼の顔は妙に印象に残っている。
その顔にスポーツマンとしては異質の暗い影…表情に水面に入る光のような屈折具合が見て取れたからである。
彼の精神はどこか屈折している…無意識下に自分と共通のものを感じ取ったせいか記憶は鮮明であった。


佐藤ひとみは当時15歳の自分…古風な伝統校の制服である白地に黒襟のセーラー服、膝より少し短いスカート姿の自分自身に思いを馳せた。
あの頃はまだ能力を持っていなかった自分…。
ひとみはキッチリ10年分歳を重ねたが、虫スタンドを操る彼の顔は当時と同じ青春の面影をそのまま留めている。
そしてその身と同様に心の中も10年の歳月をあの夏の日のまま時を凍らせているのだろうか。

彼が『狩る者』としてゲーム参加者の前に現れた以上10年前の失踪事件の真相は自明なものである。

「幻の高校球児があんなところに捕まっていたとはね…。」


ひとみは独りごちると荻原と有葵に声をかけた。

「逃げるわよ!あいつはもうすぐスタンドを粗方集め終えるわ。今は距離を取って策を練る時!」

虫のスタンド使いは荻原の血を辿ったかひとみ達から姿の見える位置にまで迫っている。
ひとみは公園の方へ踵を返し木々の鬱蒼と茂る森林に向かって走り出した。
木々の乱立の中にあれば虫スタンドの直線的なジャンプ攻撃の阻害要因となりうる。そして荻原の能力で植物を武器にすることも。

「やはり無理には追ってこないようね…。」
ひとみは走りながら呟いた。
敵に後ろを見せて逃げ出したのには今は敵が深追いしてこないという算段があったからだ。
シートでこれまで敵の動きを観察した結果として相手の戦略には確かに『待ち』の傾向を感じる。
ひとみ達が湖の中に逃げ込んだ時も荻原に最初の攻撃を加えた時も多少無理をすれば止めを刺せたはずである。
それをしなかったのは敵の意識に『リスクを避けた今以上の好機』を『待つ』戦略があったからではないか。
今は走り出したひとみ達の意図を読み取る為『待ち』の姿勢を取る可能性が高い。
野球のことはよく分からないがバッターボックスで焦りは禁物、好球を待てる者だけが勝利を掴めると聞いたことがある。
彼の精神には今も拭い難く野球の方程式が染み付いているのだろうか。

42 名前:柚木美都留 ◆BhCiwB2SCaJ5 [sage] 投稿日:2010/04/27(火) 13:26:37 0
あの日から柚木はひとりぼっちだった。愛犬オズモールがいなくなってしまった日から…。

両親はすでに幼い頃に亡くなっており少年は親戚中をたらいまわしにされていた。
家族と言えば赤ん坊の頃から柚木を見守るようにつきそってくれていた愛犬のオズモールただ一匹。
当時、親戚の家で少年と犬は厄介者とみなされていたために満足に食事を与えられていなかった。
生まれついての異能者である柚木のスタンド能力が物質を飲み込むことに特化した理由はそこにあるのかも知れない。

そしてあの日、悲劇は訪れた。

家長である男は少年にわざと不可能な仕事を言いつける。
「一日で屋敷のまわりの草をすべてむしりとれ」と言うのだった。
親戚は田舎の農家であったためにやたら土地が広く子供ひとりの手では到底無理な仕事だ。
家長は前々から孤児でありながら凛とした態度の柚木に不快感をいだいており
何かしら粗相を見つけては頭ごなしに怒鳴りつけて折檻してやりたいと思っていたのだ。

草むしりは夜になっても終わらなかった。柚木の手は真っ赤になり血が滲んでいた。
農家であるから鎌や手袋があってもおかしくはなかったのだが家長がすべて隠していたのだ。
暗闇の中、草を黙々とむしってゆくと家長が奇声とも言えるような怒鳴り声をあげて少年の前に仁王立ちしている。

「いつまでやってんだよ、ぐず!!鎌を使えばいいじゃないか?そんなことも知らないのかい!?」
どこかに隠していた鎌を目の前でひけらかして家長は怒鳴っている。
闇の中で柚木は黙っていた。感情を表さない少年に家長はさらに苛立ち鎌を振りかざすマネをした。
柚木が驚いて泣き出すかと思ったからである。が、その刹那、家長に跳びかかる一匹の犬。オズモールだった。
家長は驚いて家に逃げ込む。腕からは出血していた。

次の日にオズモールは狂犬として処分された。悲しい朝だった。
悲しみのなか少年は何年もためた少しのお小遣いをもって旅に出る。
後戻りにできない片道切符。母の生まれた北条市に…。

…記憶。思い出は影となって少年の傍らにいつも立っている。
戦場に集結してゆくスタンド使いたちを見ながら彼はゲームのおわりを感じていた。

一度は徳井一樹に迫ったグラスホッパーたちだったが踵を返して撤退を始める。
あのうごきは後ろめたい敗走ではないようだ。戦うという強い意志から生まれる動きのようだった。

それにグラスホッパーの動きに意表を突かれた徳井の意識は今、虚の中にある。
出血して身体からぶら下っているだけの左手も使えないようだ。やるなら今しかない。
柚木は木陰から跳び出して徳井に突撃を開始する。同時にスタンド、オズモールも出現し柚木と並走していた。

「噛み砕けっ!!オズモールっ!!吸い込むのは身体をバラバラにしてからだ!!」

意志で形成されている筋肉が躍動し黒い獣は徳井に向かって突進する。
並みの人間ならかすっただけでも吹き飛ばされるであろうパワーとスピード。
さらにそれに三つの口から鋭い牙がむき出しとなり徳井の肉を食いちぎろうと迫る。

43 名前:生天目(NPC) ◆BhCiwB2SCaJ5 [sage] 投稿日:2010/04/27(火) 16:28:21 0
生天目有葵は兎のように身震いをしていた。なぜ体が震えだすのか自分でも分からなかった。

>「どうやらあれが本体らしいな…あの黒い虫の群体を一匹ずつ取ってる」

荻原が目をやった先には自分と同い年くらいの少年が立っていた。身震いを起こさせる者の正体である。

「あ…あの人…こっち見てますよね…?」
思わず荻原の後ろに隠れて小声で話す有葵。足が震えている。少女は蛇に睨まれた蛙のようになっていた。

>「逃げるわよ!あいつはもうすぐスタンドを粗方集め終えるわ。今は距離を取って策を練る時!」

佐藤ひとみに声をかけられた有葵は我に帰ると彼女と一緒に森林に向かって走り出したのだが
途中でステレオポニーの姿が見当たらないことに気づいた。自分の体をぺたぺたと財布を落とした時のように
触って探してみたが体に戻っているということでもなかった。

「スタンド落としちゃった!」
と有葵が叫ぶ。

「あほめ。俺はここだよ。」
ステレオポニーは有葵の鼓膜だけを震わすモスキート音のようなもので少女にだけ語りかけてくる。

「ここってどこよ!?」
まるで大きな独り言だった。

「俺はさっきの場所に残っているんだぞ。やつに奇襲をかけてやるのさ」

「はあ?勝手なことしないでよ!あなたは私のスタンドでしょーっ!?」

「有葵。アンタ、守りながら戦うって言ってたぢゃないか?
任しときなって…あいつに一蹴りあびせてやるよ。湖の水を蒸発させた技を応用して本体に火傷させてやるんだ。
ちょっとは策を練るための時間稼ぎになるだろうから」

言い終わるやいなやステレオポニーはグラスホッパーの本体である「蝉」に音速で突っ込んでいく。
時速300キロ以上のスピードだったが真正面から向かっているために蝉には気づかれているかも知れない。
しかしステレオポニーは蝉に激突する瞬間地面の小石に反射して空中に跳ね上がり電線にバウンドして頭上から蹴りを放った。
直上からの時速300キロの蹴りだ。非力なステレオポニーではあるのだが人間の血液中の酸素をキャビテーション現象によって
気泡に変え、さらにソノルミネッセンス現象を引き起こし大火傷をおわせることができるのだ。

「くらいな!ソノルミネッセンス!!」

44 名前:徳井一樹 ◆MnJrk02a/Yx. [sage] 投稿日:2010/04/27(火) 20:40:28 0

「(くっそー、このバッタだかなんだかよくわかんねー虫ヤローさっきから止まってるだけで動かねーじゃねーかッ!
俺ってこういうの嫌いなんだよなああ〜〜〜〜〜…怪我してでも動いてるほうがまだマシだぜ)」

しかし徳井に好き嫌いは許されない。
九頭を倒し、仇を討つどころかここでゲームに負けかねない状況。

苦手な沈黙と闘いながら先に動いたのはグラスホッパーだった。
『蝉』のグラスホッパーが徳井に向かって高速で迫ってくる。
一言で説明するならばまさに『黒い弾丸』だ。

セイヴ・フェリスでガードの態勢を維持しつつ、グラスホッパーの攻撃を迎え撃とうとする。


が、グラスホッパー達は踵を返して突如撤退を始めた。
これが現在──どういう意味を指すかなんとなくカンで理解できる。

「虚を突かれた……!まずいッ!」

時既に遅し。気付いた時には既に柚木の『オズモール』の射程内。
虚を突かれた徳井にとってそのスピードはあのグラスホッパーにも負けないスピードを感じさせた。
三つの口から鋭い牙が剥き出しとなり草食動物同然の徳井の肉を食いちぎろうとする。

>「噛み砕けっ!!オズモールっ!!吸い込むのは身体をバラバラにしてからだ!!」

その言葉を聞いた瞬間徳井は抵抗するのをやめた。
いや、語弊がある。逃げたり動く必要はもうない。

突如徳井の胴がバリバリと真っ二つに裂け、オズモールの三つの顔はその隙間を行く。
普通このような状況ならば徳井は死ぬだろう。しかし徳井は死んでいない。
息もしているし呼吸も正常。心臓だって動いてるし、言おうと思えばすぐにギャグだって言える。

「悪いね。『切開』できるのは壁や床だけじゃないんだ。『自分』もこうして切開できる。
お前は……俺をバラバラにせず一口で吸い込んどくべきだった。
……ただまあ、自分に使うとかなりのスタンドパワーを消耗するから、これからお前を切開してやることも出来ない」

徳井はセイヴ・フェリスを再び出現させ、
腹に穴が開いた状況の徳井に動揺している柚木に言い放つ。

「ガキにこんなことするのは…ゲスかもだけどよ。
これから!テメーを再起不能にするだけなら右腕でブン殴るだけでも十分だぜッ!」

セイヴ・フェリスの漆黒の拳が、右腕から再び柚木のオズモールに放たれる。

45 名前:九頭龍一 ◆SM24/QbfAY [sage] 投稿日:2010/04/27(火) 22:41:38 0
オズモールの三つの顎は徳井を真っ二つに噛み砕き、バラバラにして飲み込む。
避け得ようのないタイミング、防ぎようのないパワー。
しかし絶対致死の攻撃を徳井の能力が上回った。
己の身体を切開するという回避法で三つの顎から逃れた今、虚を突かれたのは柚木のほうだった。

立場は変わり、避け得ようのないタイミングと防ぎようのないパワーでセイヴ・フェリスの漆黒の拳が放たれた。
しかしその拳は柚木には届かない。
バシャっと言う水音を立て、突如として現われた泥の壁が大きなミルククラウンと幾重もの波紋を作り衝撃を分散して言ったのだ。
「いやはや、暫く眠っているとスタンド使いも強力なのが出てくるものだね。」
泥の壁、正確に言えば2メートル四方の泥の塊りから感心したような声。
その声に聞き覚えはないはずだが、徳井は本能の部分で理解しただろう。
それが九頭龍一の声だ、と!

気がつけば周囲の景色は一遍していた。
別荘が、公園が、街が・・・全ての地面、壁、建築物が生々しく変質し、人が埋め込まれたモノになっているのだから。
そう…今ここに姿を現した九頭龍一のスタンド、留流家なのだ!

ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ !

辺り一帯に満ち溢れるプレッシャーと一変した風景に全てのものが悟るだろう。
今ここに九頭龍位置が再び現われた、という事を!
そしてこれも留流家の力だろうか?
理解できるだろう、留流家の、ゲームの正体を。

留流家は北条市全体を呑み込むほどの巨大スタンド。
ゲームとは、密度を薄め北条市全体を包み込んだ留流家の中で行われていたこと。
即ち、狩るモノもまた泥布と同じ待ち構えるモノとなんら変わりのない役割だったのだ。

「この泥はあそこの埋まっている男のものでね。君にはうってつけだろう?
切開してもすぐに流れ込む粘性の泥だ。このまま諦めて埋まってくれたまえ。」
言葉通り、突き刺さったセイヴ・フェリスの拳は強い粘性の泥に捕らわれて抜く事が出来ない。
それどころか泥はゆっくりと徳井に迫り、飲み込もうとしていた。

泥の塊りの上部分が盛り上がり、中から出てきたのは50代であろう、壮年の男だった。
それは九頭龍一に間違いない。
以前の九頭龍一と比べれば【しぼんだ】とか【しなびた】という印象を受けるのは間違いない。
筋骨粒々だった体はしぼみ、弛んでいる。
独特な雰囲気はあるものの押し潰されそうなプレッシャーは既にない。
表情もやつれ疲れたように張りがない、が…その瞳の奥に宿る狂気は衰える様子はなく、むしろより深く暗く灯っている。

「美都留、楽しかったかい?
ボブは気まぐれだし、ここからは私も楽しませてもらおうとするよ。」
柔らかな笑みを柚木に向けた後、九頭龍一は虚空を階段のように一歩一歩踏み歩いていく。

上空10メートルの宙に浮く褌一丁の壮年の男。
遮るものが何もなく、あらゆる場所から九頭龍一の姿が見えるだろう。
とても健康美を誇れる体ではなくなっているが、だからこそ逆に不気味だった。
バキボキボキ
大きく伸びをすると各所から響く音。
コキコキと首を回しながら九頭龍一は晴れやかな表情で呟いた。
「ああ…こうやって自分で戦うのは70年ぶりだな!」
疲れた表情ながらも笑みを浮かべ、狂気を宿した瞳で眼下を見回した。


46 名前:柚木美都留 ◆BhCiwB2SCaJ5 [sage] 投稿日:2010/04/28(水) 21:24:31 0
北条市は柚木美都留の母が生まれた土地であり、そして眠っている土地でもあった。
時は再びさかのぼり30年前。烈雨が降りしきる暗い空の下、柚木は更地を見つめながら呆然としていた。
そこは柚木の母親の生家があった場所だった。どうしようもないほど冷たい雨にうたれ続ける少年。
愛犬が死んでしまった今、親戚の家に戻るつもりもなかった。

雨量は更に増し夜の帳が下りる。辺りには間近の人間の顔も区別できないほどの暗闇が訪れていた。
ふと気づくと柚木の隣に立っている男がいる。柚木は男に殺されてもさして問題もないと思っていたのだが
防衛本能からか傍らには、まだ名もなく輪郭も曖昧な犬の影のようなモノが現れていた。
柚木の頬にそっとふれる大きな男の手。驚いた少年のスタンドは男の腕に噛み付いたのだが男はびどうだにしなかった。
そして何かを語った。土砂降りの中の二人だけの会話。少年の目からは涙が溢れていた。

あの日。そう、あの日。降りしきる雨の中で柚木美都留は狩るものとして生きることを決意したのだった。

いま柚木の目の前で泥はゆっくりと徳井を飲み込もうとしている。

>「美都留、楽しかったかい?
ボブは気まぐれだし、ここからは私も楽しませてもらおうとするよ。」

「はい。楽しいゲームでした。一緒に楽しみましょう」
少年の顔はパッと輝いて喜悦の表情が露になっていた。
今まで見せていた仮面のような笑顔とはまるで違っていた。瞳はご主人様に抱かれた子猫のようにうっとりとしている。

柚木はオズモールを出現させつつも徳井の様子を見ることにしていた。
何故ならセイヴ・フェリスの拳は強い粘性の泥に捕らわれて抜く事が出来ず、
おまけに泥がゆっくりと本体にも迫り飲み込もうとしている。
徳井が攻めてきた場合にだけ吸い込むつもりだ。無理をする必要もない。
泥に首まで埋まったら泣き叫ぶ徳井の首をパクリと食いちぎれば良いのだから。

「はああ〜ボクなんだか元気になってきたよ。内弁慶ってわけぢゃないけどね」
徳井を見つめる少年の瞳は冷酷なハンターに戻っていた。

47 名前:ボブ・バンソン ◆JvtTTnep1k [sage] 投稿日:2010/04/28(水) 21:59:00 0
「――あと3ヶ月もしたら帰れそうだ」
公衆電話は外国人レスラーの使用を想定していないためやや息苦しかった。
携帯は容易に解約するべきではなかったとは悔やんでいない、認めない。

休日の公園、静けさの中桜が舞い散る光景はなんとも風流だったが、
戯れる子どもたちや犬と散歩する老人すらいなくがらんとしている。
住宅街の奥隅、真横が傾斜で日陰という最悪の立地条件、遊具が滑り台と砂場のみというのもそれに拍車を掛けた。
名前の「しずまり公園」は因果か。
このボックスも長い間、整備されていなかったのか独特なアートやコメントが至る所に書き綴られている。
「それでは、な。ああ、愛してる」
通信が切れてことを伝える甲高い電子音が淋しく鳴った。

目を瞑れば聞こえてくる、色褪せない情景…故郷マイアミの風の匂い、波の音…
そして湧き上がる燃え盛り噴き上がる火山のような闘争本能!どこからか聞こえる至上の命令、
――殺せ。ルルイエを陥れる異形のものどもを滅するのだ。

「九頭が動いたか…では」

彼の足は自然と動く。海岸から見れば反対方向だ
親友の動向も気掛かりだが、やらねばならないことがある。



48 名前:佐藤ひとみ ◆tGLUbl280s [sage] 投稿日:2010/04/29(木) 05:04:58 0
思い出はいつも心の中にだけ存在する。
例えば取り壊された建物、無くなった風景、死んでしまった人間への記憶といった
物的証拠の無い確かめようのない記憶はもはや幻と同じではないか。
ならば『気持ちの記憶』も形が残らないという意味では同じ幻――。

ひとみは虫スタンド使いから距離を取るために走りながら10年前の彼と自分を追憶する。
10年前に念願の甲子園への切符を手に闘志を燃やしていたであろう彼の『想い』は今や幻と化した。
幻と成った想いの代価を彼は何処に求めるのだろう。
10年前、15歳のひとみを知る者はこの街にはいない。10年前のひとみが抱いていた様々な想いも今や幻。
ひとみのように他人に自分の本性を知られたくない人間にとって過去は邪魔なだけだからである。


―― ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ! ―――

森林の中に辿り着くと辺りの景色が一変した。
それと同時に水の中に入ったような独特の圧迫感――始まりの場所で感じたあの感覚――!
周囲の木々は大勢の人間の手足が絡まり生気の無い顔が覗く肉柱と化している。
人体が絡まり縺れ合うその構図はルネサンスの至宝、ミケランジェロの『最後の裁判』と酷似しているが
最後の審判の民ぐさは神の怒りに恐々としているのに対し留流家に取り込まれた人間は九頭に絶対の信を置き
その表情には狂信と共にある種の安らぎすら感じる。

乱立する人柱に阻まれてこの位置から九頭を視認できないが
デパートの中に現れたときと同じ状況…ひとみはすぐに九頭龍一の来訪を感じた。
そして本能的に理解する留流家の正体…ひとみは九頭が留流家を北条市のどこにでも移動させられる考えていたがそうではない。
留流家は北条市全体を呑み込む巨大なスタンド…!
ゲーム参加者は九頭のスタンドの腹の中で足掻いているに等しい。
シートに反応が出ないことがあるのは反応に出ない程度に限りなく密度を薄めることが可能だからであろうか。
おそらく館として存在するのは密度を一点だけに高めた時。シートに反応が出る場合も同様に気まぐれに密度を上げた時なのか?
考えを巡らせるひとみ。

柚木美都留と公園で一瞬反応の出た謎のスタンド使い、そして虫のスタンド使いである元高校球児に加え九頭龍一まで顕れた。
どうやら九頭は本腰を入れてゲーム参加者を狩りに来たらしい…状況はまさに泥沼と化している。
この場に九頭がいない以上、彼は他のゲーム参加者の前に現れているはず。
ひとみはフルムーンの視点による上空からの俯瞰で九頭の出現場所を確認した。


別荘地帯にある竜巻に巻き込まれ崩壊したような建物
その近くで徳井が泥に手を巻き込まれて身動きが取れなくなっている。
徳井の側にはスタンド使いの少年柚木美都留と…上空に九頭龍一……!
九頭のいる上空よりさらに上からの視点で見る彼の姿は以前と同じ半裸でありながらだいぶ様相が違う。
明らかに年を取っている……が、その肉体に反して瞳の中の狂気は威力を増し怪しい光を宿している。
ひとみはデパートで九頭の能力により拘束されたときに背後に感じたものとは別種のオーラを感じた。
あの時感じた余裕綽々のものとは違う、わずかな焦燥と狂気を帯びた悦びのオーラを…。

ひとみは徳井の前にシートを出現させて文字を表示させた。

『最悪右手を切開して逃げろ。右手は回収後に縫合できる。左腕の負傷はすぐに治せる。』
シートは徳井が読み取った後すぐに消えるようにセットしていた。

49 名前:徳井一樹 ◆MnJrk02a/Yx. [sage] 投稿日:2010/04/29(木) 11:09:17 0

徳井の完璧なカウンター。
それは柚木のオズモールに命中し、柚木を再起不能に導く一撃だったはず。

それが今、眼前にあるのは泥の壁だった。
セイヴ・フェリスの拳を絡め取られ抜く事は不可能な状況であり、切開しようともすぐに粘性の泥が流れ込んでくる。
蜘蛛の巣に足をとられた蝶のようにひらひらと無駄な抵抗を続ける徳井。その虚しい行動の前に不意に上から声がする。

>いやはや、暫く眠っているとスタンド使いも強力なのが出てくるものだね。

謎の男の声と同時に周りの景色は一変していた。
生々しく何人もの人間が埋め込まれ、建築物だけでなく公園、地面、壁……
徳井はおぞましい気持ちになった。そして本能で理解する!この光景が、この姿が九頭のスタンド『留流家』なのだと!

「九頭……おでましかい」

泥に手を捕らわれながらもサングラス越しに見える目は、静かな──…ゆっくりと。
それでいて誰よりも熱い怒りの中に、漆黒の殺意を孕んだ目。
自分でも意外だった。これほどまでに静かに怒れることが出来たなんて。
精神の成長……九頭への怒りによる成長……

徳井は自分に、スタンドに力が漲って来るのを感じた。
今ならどんな小さな虫だろうとどんなに速く動く物体だろうと、ピンポイントで殴れる気がする。

>この泥はあそこの埋まっている男のものでね。君にはうってつけだろう?
>切開してもすぐに流れ込む粘性の泥だ。このまま諦めて埋まってくれたまえ。

泥が、ゆっくりと徳井に迫ってくる。そして泥の塊が盛り上がり現れたのは50代ほどの壮年の男。
この男のために自分がどのような青春を過ごしてきたのか、教えてやりたい。
こいつたった一人の生命のために何人もの人が、両親が犠牲になったと思うと背筋が寒くなるのは何故だろう。

現在徳井は意外にも『九頭をいかにしてぶっ殺すか』ではなく『どうやったら安全に泥から抜け出せるか』を考えていた。
泥が自分にゆっくりと迫ってくるにも関わらず、徳井はそのことだけに策を張り巡らせていた。
突然、佐藤のスタンドシートが目の前に現れる。文面はこうだ。

『最悪右手を切開して逃げろ。右手は回収後に縫合できる。左腕の負傷はすぐに治せる。』

徳井が頭の中で読み上げると、シートはゆっくりと崩れるように消えていく。

>「はああ〜ボクなんだか元気になってきたよ。内弁慶ってわけぢゃないけどね」

九頭と他愛のない会話を続けていた柚木が再び獲物を狩る肉食動物のような目で見つめてくる。
俺が埋まったらこいつ、食いちぎる気だ。と確信した。

この泥の能力をもつ男は、現在徳井の射程距離外の壁に埋まっている。
しかしセイヴ・フェリスでは攻撃の手段はない。
なら佐藤の言う通り、右手を切開して逃げるのが今はベストだろう。
徳井は動かない左腕を無理矢理動かし、捕らわれている右手をトカゲの尻尾さながらに切開する。
左腕に激痛が走る。しかし殴る行為と違って少し動かす程度ならばあまり問題ない。

「知ってるか?戦い方ってのには、昔から伝わる『最後の手段』ってのがあるんだ……
それは……逃げるんだよォォオオオーーーッ!」

脱兎の如く地面を切開して逃げる徳井。
あくまで戦略上の撤退であり、戦闘そのものを放棄したわけではない。
このまま息の続く限り地面を進んで、泥の能力者のいる壁まで近づくつもりだ。

「右手だけは返しといて貰うぜ」

独り言を呟くと、徳井はそのまま地面の中を突き進んでいった。

50 名前:よね ◆0jgpnDC/HQ [sage] 投稿日:2010/04/29(木) 12:28:14 P
大谷とともに、着々と秋名を倒す準備をするよね。
後は秋名が自力で抜け出す所を狙う…作戦は最終段階であった。
が、突然轟音と共に巨大な屋敷が現れる。
逃げ出すことはできない。屋敷の中に入ってしまった。
というよりも、自分の周りに屋敷が出現した。

「これが…九頭龍一のスタンド…?」

と、呆気に取られていると床に埋まっていくように秋名を閉じ込めた掃除機が消えていく。
九頭の僕であるスタンド使いにとっては有利過ぎる環境。

「大谷さんッ!ここは一旦逃げ…?」

大谷が居ない。そんなハズはない、さっきまですぐ側にいたのだ。
顔や腕がところどころに見られる壁が周りを埋め尽くしている。
恐らく、取り込まれたスタンド使いだろう。
こんな状況で孤立してしまっては非常に危険だ。
そう思った矢先、あの悪魔の風が吹き始めた。

「Sum41!この床は…あっ!?」

違う。これは床ではない。スタンドだ。それも、今までのを遥かに凌駕している。
こんな物の設定を書き換えるのは容易ではない。
負けた。もはやどうすることもできない。
よねの脳裏にそんな事がよぎった時であった。

"待て、そいつは殺すんじゃあない。有用な能力だ、とてもね。殺さず、九頭様の能力にしろ"

誰かわからない。どこから話してるのかもわからない。
恐らく秋名に言っているのだろうか。だが、殺すなとはどういう事か。

「ひゃひゃひゃ…それもそうじゃが、こいつに塵に変えられた恨みは…」

下手に出て、反発する秋名。

"九頭様のお力をもってすれば、その程度…修復するのは容易い"

謎の声は軽くあしらうと、その姿を現した。
よねがその姿を見た時、「どうりで聞いたことのある声だ」と納得した。

51 名前:柚木美都留 ◆BhCiwB2SCaJ5 [sage] 投稿日:2010/04/29(木) 20:56:52 0
九頭龍一は留流家、つまりは密度を薄めた北条市全体に埋め込まれているであろうスタンド使いたちを、
いつでも自由にひっぱり出し操り人形のように扱うことができるのであろうか。
辺りを見回せばいたる所に人間が埋め込まれていた。
能力の低い者や戦闘には向かない者などは今だ養分として眠り続けているのだろう。

「ふふふ…ボクとしては留流家が潜伏している時よりも、こうやって現世に浮上している時のほうが
気分がいいね。じょうじょうだね。体に直にエネルギーが流れ込んでくるような気がするからね」
と悠然と語る柚木は次の瞬間、目を見張ることになる。

なんと徳井が自ら右腕を切断して泥のスタンドから脱出したのだった。柚木は慌てて身構える。
が、しかし徳井は地面の中に潜り込み逃げようとしていた。いや、逃げるマネをしているのだろうか。

>「知ってるか?戦い方ってのには、昔から伝わる『最後の手段』ってのがあるんだ……
それは……逃げるんだよォォオオオーーーッ!」

「……!!ほんとに逃げたぁ!?」
唖然とした表情の柚木ではあったが、すぐに徳井の行動理由を悟った。瞬時に九頭の言葉を思い出す。

>「この泥はあそこの埋まっている男のものでね。君にはうってつけだろう?
切開してもすぐに流れ込む粘性の泥だ。このまま諦めて埋まってくれたまえ。」

「逃げたんじゃない!あいつは泥のスタンドの本体を狙っているんだ!! やらせるものかあっ!」
オズモールは柚木の襟首を咥えると凄まじい疾さで泥のスタンドの本体に向かって走り出した。

咥えられて宙ぶらりんの柚木は徳井の今までの行動を見る限り天才的な策士だと実感していた。
ゲームでは一番やっかいなタイプだ。直感で計算をなんなくこえてしまうからだ。

だが今は自分が圧倒的に有利とふんでいた。
たとえ徳井が踵を返し柚木に攻撃を仕掛けて来たとしても泥は再び柚木を守るだろう。
そして徳井がそのまま泥の本体に攻め込んだとしても泥は自分自身の本体を守るはずだ。
後者の場合は完全な挟み撃ちとなる。たとえ泥の本体がやられたとしてもその隙をついて徳井をやればいい。

今までの攻撃でセイヴ・フェリスの射程は読めている。
出所は多分泥スタンドの本体のすぐ近くのはず。うまく先回りが出来れば泥の壁を盾にし
本体を狙って地面から飛び上がって来る徳井を、そのままオズモールの口の中に吸い込むこともできるはずだ。

差し詰め今は泥のスタンドの本体に向かって、
地中を隠れながら突き進む徳井とオズモールに咥えられながら疾走する柚木との競争になっているようだ。

「あはははは!ボクは勝利に向かって走っている。
あいつの向かっている先は崖っぷちだ!笑いが止まらないね!!あははははは!」
勝利を確信した少年は高笑いしていた。

52 名前:大谷杉松 ◆vReXCpsNBKcm [sage] 投稿日:2010/04/29(木) 23:04:10 0
留流家に飲み込まれた大谷達…最悪なことに今大谷は天井にいる名も知らない能力者の能力にとらわれていた、
泥で出来たトリモチのようなものである。 下にいる九頭の話からしてここの能力者であることに違いは無い。
動けない、その上徐々に…徐々にと泥の中に取り込まれていく…
徳井が泥使いの能力者を倒すまで待てるような時間も無い…むしろ柚木の妨害で倒せるか…、
おまけによねもピンチである、このままではみんなが危ない!!

「やるしかねぇ! とにかく一人でも多く救うんだ… スマートガントレットォォッ!!」
『ヤルキナノネ,スギマツ… イイワヨヤッテヤリマショウ!』

                『パチィィィン!!』

ここで大谷は賭けに出た、まず手持ちのナイフを半分以上柚木に投げつける、
当たるかどうかもわからないので、とにかく大量に数が必要だ
幸い徳井は地面(?)の中だ、当たる可能性は絶対に無い、
そこで「もう一度ナイフを投げたことにする」、スタンドのように半透明のナイフが柚木に向かう!!

「っぐ… もう一度…もう一度だ、スマートガントレットォォッ!!」
『スギマツ…』
「早くしろ、スマートガントレットォォォォォッ!!!」

                 『パチィィィン!!』

次に自分が泥から出る為に、自分に「もう一度重力がかかった事にする」
対象が自分でも連続で使うのは体力を使う、それでも彼は仲間を助けたかった、
泥も耐えかね大谷は地面に叩きつけられる、そのダメージは大きい、

「もう一度…もう一度だ・・・スマートガントレット…」
『―――ッ!!』

                『ハチィィィィィィィン!!』

嫌々に指を鳴らすスマートガントレット
2倍重力を解除しよねの元へむかい、風で集まり油断している秋名を「もう一度風が吹いたことにする」
大谷は体力を一気に使い疲れ果てている…今狙われては防御も出来ないだろう、

「よね…いまだ!」

よねに合図を送り、あとはよねに任せる!!

53 名前:大谷杉松 ◆vReXCpsNBKcm [sage] 投稿日:2010/04/30(金) 00:02:42 0
――――何故彼はここまで仲間を守ろうと想い、ここまでするのか…
その訳は彼の過去にある、

11年前、彼が23の時である、その頃の彼は旅など無謀な真似はしなかっただろう、
職に就き、アパートを借り、一般的な人間だった、
彼には最愛の彼女がいた、綺麗で長い髪の毛が特徴で大谷と幸せに同居していた、

そして、一年経ち、大谷の人生を大きく変える出来事が起こる、
出かけたっきりの彼女が帰ってこないのだ、
大谷は様々なところを探し、やっと彼女を見つけた、
しかしその姿に絶句した、
血だらけで両手を切断され…酷く醜い姿だったのだ…

大谷は絶望した、死のうと何回も思った、彼女のいない人生など彼には考えられなかった。
ある日そんな大谷に透明な何かが見えるようになる、"スタンド"である。
しかしそのスタンドの姿を見て大谷は驚愕した、

そのスタンドからは生前の彼女の特徴であった長く綺麗な髪が生えていたのだ
そして皮肉な事に手が無かった
そんなスマートガントレットは大谷に質問をする。

『あなた…苦しんでいるようね…私の能力を使えば一度だけ忘れることもできるわよ…どうしたい?』
「……俺はあいつの事は忘れたくない、忘れない、忘れられない…
 しかし…もう一度だけあいつにあわせて欲しい」
『了解したわ…それじゃいくわよ!』
               『パチィィィィィン!!』

彼の目の前には死んだはずの彼女が…出てこなかった。

「おい…どういうことだ! もう一度でいいんだ! 一度だけでいいんだ!」
『…であったら、また別れるのが怖くなるでしょう、守れるように…他人を守れるよう強くなったら叶えてあげるわ』
「うっ…」
『喋るのに力を使うのももったいないわね…  ソレジャァイキマショウ,ミナヲマモルタメニ!』

それから十年、今ここにいるのだ、仲間を守り…彼女のような出来事はもう二度と起こさせない!
もう一度を再現する能力で…あの事件がもう一度起きないように!

54 名前:よね ◆0jgpnDC/HQ [sage] 投稿日:2010/04/30(金) 00:27:32 P
謎の声の正体に呆気にとられていると

/「よね…いまだ!」

「大谷さんッ!?…ッ!」

見ると秋名は完全に、確実に自分の体を形成している。
自分のすべきことを思い出し、行動するよね。
カバンに入ったミネラルウォーターを手に持ち、

「Sum41ッ!この水は酸素と化合して粘液になる!!」

そう叫ぶと、ミネラルウォーターをペットボトルに入ったまま秋名へ投げつける。
そしてSum41で飛翔中のペットボトルを思い切り殴った。非力なSum41といえどもペットボトルを割るくらいの事は出来た。
ペットボトルは空中で割れて、中の水は粘液と化す。
その粘液を秋名が浴びたことを確認すると、グッと踏み込み粘液で"一つのものになった"秋名を触れる。

「ひひゃ!?体がッ…固まって…!!」

塵であった秋名の体は粘液の付着により粘り気を持つようになった。
大谷のスマートガントレットの力で密集していた塵の体に粘液が浸透していく。
それはつまり、よねの…Sum41の能力を行使することができるようになったという事だ。

「チェックメイトだ…秋名ァァッ!
 Sum41ッッ!!この粘液は塵も溶かすほど高温になる!!」

効果の適用直後に手を離すよね。少しどころではないほど熱かったが我慢する。
高温の粘液に包まれた秋名は人間の声かすらも疑うくらいの悲鳴を上げている。

「ヒギャアアアアアアッ!!かっ、体がァァァッ!!溶けるゥゥッ!?
 グァァァッアガッアガガッ!よねェェッ!…キサマさええええッ!」

やがて秋名の体は崩れ、そこには高温の粘液だけが残った。
秋名の断末魔の"よね"は、一体"どの"よねを指しているのか…定かではなかった。

55 名前:荻原秋冬◇6J1m09mANS [sage] 投稿日:2010/04/30(金) 04:57:44 0
荻原たちは黒い虫の郡体をあやつる男からいったん距離をおくため、
森のほうへ走っていった。
森ならば回りは植物だらけ、荻原の独壇場である。

「森か…ここならなんとか…」

その時…荻原は身震いした。
この不思議な感覚…そう、荻原があの洋館にいたときと同じ感覚が襲ってきたのだ。
すると周囲の木々が突然変化し始めた。

「えっ!?これは、まさか!」
見渡せば周りは人間同士が絡まりあってできた森だった。
これはやはり九頭龍一の留流家の能力と見て間違いはなさそうだ。

「まったく勘弁してくれよ。今日は厄日だ…」
とにかくこの森の中からは抜けたほうがいい。
プラントアワーの能力は植物を生み出すだけでなく、すでに生えている植物を操ることもできるが
木々が人間ならそれはできない。

「はやくここから出ないとなんかやばいな…」

走りながら荻原は木々だった人間の塊を注意深く見た。
もしかしたらどこかに妻と娘がいるかもしれない。
見つけたら、たとえ攻撃されてもそこから引っ張り出しても助けたいのだ。

「……やっぱあるわけないよな…」


56 名前:柚木美都留 ◆BhCiwB2SCaJ5 [sage] 投稿日:2010/04/30(金) 13:12:43 0
頭上から柚木に迫り来る無数のナイフ。
仮に泥のミルククラウンが防壁として現れたとしても上からのすべての攻撃を防ぎきれるかは疑問だった。しかし…

「あははは!三つの頭は飾りぢゃないんだよねぇ。そういうの、ボクが気にしてないと思ってた?」
戦いの序盤で佐藤ひとみに受けた奇襲から柚木は常に思わぬ伏兵の攻撃にたいして敏感になっていた。
故にオズモールの六つの目は常に辺りを警戒していたのである。通常の攻撃ならなんなくかわせるのだ。

ガシィーンッ!
オズモールの爪がナイフを振り払う。いや振り払ったつもりだった。

「!?」
だが柚木の目の前には再びナイフの雨が降りかかってくる。
払ったナイフの真後ろに同じ軌道で更に半透明のナイフが重なり隠れ飛んできたのだった。

「!!」
予想していなかった攻撃にオズモールは巨体をひるがえしナイフの雨から柚木を守るのがせいいっぱいだ。

「ぎゃ!」
一本のナイフが柚木の額に当たり血がふきだす。
柚木の頭の骨は真ん丸で当たり所も良かった?ためにナイフはツルンと皮膚を裂いただけではあったが凄まじい出血だ。

「……くっ…ぅ…。…ナイフを投げてきた人って…おぢさんだよね〜?」
手でおでこを押さえている柚木。その両眼は燃えていた。怒り炎の向こうには大谷杉松がいる。

「…おぢさんから…先に殺してあげることにしたよ…」
少年の口は柔らかくうごく。口調とは裏腹に瞳は怒りに満ちていた。

大谷に向かいかけた柚木だったが突如、秋名の断末魔の叫び声を聞くことになった。

>「ヒギャアアアアアアッ!!かっ、体がァァァッ!!溶けるゥゥッ!?
 グァァァッアガッアガガッ!よねェェッ!…キサマさええええッ!」

「ぎゃあ〜!!やられてるぅ!?これ以上留流家のスタンド使いたちを失うわけにはいかないよっ!だってあの人が弱ってしまうから!」

やはり泥使いは守らなければならないと柚木は考えを改めた。当初は留流家のスタンド使いたちが多く敗れたとしても、
結果的にここに集まっているスタンド使いたちを全滅させて新たに捧げることが出来ればそれで良いと思っていたのだが
秋名を失った今、泥使いをも失えば戦局は大きく向こう側に傾いてしまうことだろう。
柚木は大谷が投げたナイフを拾い集めてオズモールに吸わせた。自分も両手に2本持っている。
柚木とオズモールは地面を警戒しながら泥使いの本体に向かって歩を進める。
徳井が飛び出してきたところを狙ってナイフの雨を吹きつけるつもりだった。

「…はやく…出て来てね…ナイフで、ざっくざっくってしてあげるからね…」

57 名前:よね ◆0jgpnDC/HQ [sage] 投稿日:2010/04/30(金) 22:34:40 P
高温の粘液を始末するよね。
秋名の最期はどれほど苦しかったものか…
あのようなえげつないことをいともたやすく行える自分に嫌悪感を抱く。

しばらくしてから、思い出すように謎の声の主をキッと睨みつけると

「久しぶり…か。覚えてるかどうかわからないけどね…」

そこには10年前に失踪したよねの父親、綾和の姿があった。

「カズ、ずっと探してた…やっぱりこんな事になってたのか・・・」

カズとはすなわち綾和の事である。
失踪前まで家族に"カズ"のあだ名で呼ばれていた名残である。
よねが"カズ"の名を口にするのは実に10年ぶりの事であった。

「元気そうじゃないか。コウタ。良かった良かった…」

よねは安堵した。どうやら"カズ"は完全に九頭の僕になったわけではないようだ。
そんな考えがよねの脳裏をよぎった時、

「実に良かったよ。弱ったお前をぶっ殺したところで何も楽しくないからなァ」

ピクッとよねの眉が動いた。自分が最も危惧していたことが起こっていた。
"カズ"との戦闘は避けねばならない。親子というハンデがよねにあるからだ。
恐らく"カズ"はそんな事など考えていない。完全に九頭のコントロール下だ。

「カズ…救う手立てはないのか…?」

10年間助け出したいと思っていた父親である。諦めることなど到底出来るハズがない。
もっとも、諦めざるおえない状況によねは陥っているのだが。

「さあ、コウタ…私と共にあの世へ行こう!」

"カズ"は狂気の笑顔を浮かべていた。それは不気味で、恐ろしく感じれた。
立ちすくんでいると、カズのスタンドが現れる。

「これが私のスタンド、グリーン・Dだ…死ねえッ!!」

謎のスタンド。果たして、どのような能力なのか、それすらもわからなかった…

58 名前:九頭龍一 ◆SM24/QbfAY [sage] 投稿日:2010/05/01(土) 00:31:50 0
>49
徳井の手を飲み込んだ泥の塊りのスタンドはズリズリと這うように進む。
本体は留流家の壁に埋まったまま。
出現させた九頭は中を歩き戦場の空気を満喫しており、既にその手から離れている。
こういった場合、泥の塊りのスタンドは自動操縦となり、一つの命令実行の為だけに動く。
それは【徳井を飲み込みそのまま固まってしまう】こと。
地中を進む徳井を追い這いずるように進んでいくのだった。


>48
そのころ空中でひとしきり戦場の空気を満喫した九頭は首をコキコキと鳴らした後、虚空を蹴る。
何もない空中をまるで階段を下りるかのように進む。
その先には佐藤の姿が。
壮年の身体からは想像もつかない速さで進み、佐藤の後ろへと回る。
直後、佐藤の首筋に冷たい白刃があてがわれる。
それは陽光を弾き白銀に煌く日本刀。
柄には菊の紋が入っており、第二次世界大戦の頃軍部より、即ち天皇家より下賜された業物である。
即ちそれはスタンドではなく実物の刀。

「やあ。健闘しているね。」
旧知の友に挨拶するかのような親しみの篭もった声。
だが首筋から感じる冷たさには殺気が恐ろしいほど凝縮されていた。
「もう気付いていると思うけど、留流家は北条市全体を飲み込んでいる。
そして全ての戦いを見せてもらって随分と楽しませてもらったよ。
これほど健闘するとは思っていなかったから、すっかり老け込んでしまってねえ。」
褌一丁で空中に浮いたまましゃがみ話す姿はかなりシュールだが、まるで気にしていない。
そして狩るモノが次々に倒され己が老け込んでしまったことに対しても怒りも憎悪もない。
声に込められた感情はまるで自嘲の様で、表情にも笑みが浮かんでいる。

「今までの戦いを見ていた感想だが、キーパーソンは君だ。
戦闘力はないがみんなを上手くまとめて一つの部隊として機能させている。
でなければゲームはこんなにも長引かなかったろう。
それを見込んで相談なのだけど、ここらで降参して留流家の一部となって僕と永遠を生きないか?」
思いがけない提案をする九頭だが、冗談を言っている訳ではない。

「見ての通り北条市全体が留流家の中。
この中の私は万能だ。
だからこそこうやって宙も歩けるし、どこで何が起こっているかも全て知る事ができる。
つまりは君たちは私の胃袋の中で足掻いているに過ぎないのだから。
このまま殺す野は簡単だけど、君のような人には自らの意思で留流家に入ってもらいたいのさ。」
首筋に宛がわれた白刃に力が込められる。
断れば即座に日本刀は一閃し、佐藤の首を切りそのまま飲み込んでしまうだろう。
佐藤に与えられた時間はあまりにも短い。
刃越しに返答を求められた時、

>54
>ヒギャアアアアアアッ!!
秋名の断末魔の叫びが響き渡る。
その瞬間、当てられた刃が緩み、九頭の身に異変が起こる。
短く刈られた毛の水分が抜けたように艶を失い、白髪がコメカミに現われ筋をつけたのだった。

59 名前:吉野きらら ◆HQs.P3ZAvn.F [sage] 投稿日:2010/05/01(土) 02:17:22 0
帰路を辿る吉野きららの足取りは、風に舞うタンポポの綿毛よりも更に軽やかだ。
彼女の歩調が殺人の錘によって鈍る事はない。
彼女にとっての殺人とは『幸せ』になる為の手段に過ぎないのだから。
歩みは弾みこそすれ、重くなりはしない。
鍵盤の上を踊るような気分で鼻歌さえ交えながら、きららは寮の前にまで舞い戻った。

「……あら? どなたかしら」
けれども門の前で無造作に佇立する男が目に留まり、彼女は一旦足を止める。

「嫌だわ……。もしかしたら、またさっきみたいな……えっと確か、『スタンド使い』かも……」
途端に表情を曇らせて、右手を頬に当ててきららは不安の音を零す。
長谷川を殺した事は『幸せ』への一歩だとしても、長谷川との出会い自体は、彼女にとって『不幸』でしか無かった。
掌の裂傷は出血は収まったものの、少し動かすだけでも鋭い痛みが走る。
お嬢様気質のきららにしてみれば、耐え難い激痛だ。
彼女とて痛みを受けた経験が全くない訳ではない。寧ろ同年代の中では図抜けているくらいだろう。
だがそうであったにしてもやはり、スタンドを持っているとは言え一般人の域を出ない彼女にとって。
痛みとはそうそう、慣れる事の出来る物ではないのだ。

「困りましたわ……。あの人の話では、『スタンド使い』は惹かれ合うそうですし……」
表情を困惑の色に染めたまま、きららは寮のすぐ傍で立ち往生をしている。
つい先程までの浮揚感は、見る影もなく散ってしまっていた。

【寮の前に到着。門前の男が誰かは触れず。もしかしたら寮生の彼氏ってだけだったり】

60 名前:吉野きらら ◆HQs.P3ZAvn.F [sage] 投稿日:2010/05/01(土) 02:18:42 0
萩原、佐藤、生天目の三人は吠える『蝉』に背を向け、遁走を始めた。

「……なるほど、森か」
乱立する樹木を盾にして、また萩原の能力を用いれば武器とする事も出来る。
自分達に有利な戦場を選んだのだろうが――『蝉』とてその恩恵を一切受けられぬ訳ではない。
入り乱れる枝葉や木草は、『グラスホッパー』の群体の姿を、何より挙動を隠してくれるに違いない。
『フルムーン』で位置は把握出来ても、シートを確認しながらでは回避は当然遅れてしまう。
そうなれば彼女達の味方であった筈の樹木は、むしろ回避を阻害する敵にさえ成り得るのだ。
しこうして一撃離脱の戦術を繰り返してやれば、『蝉』は佐藤達に一方的な消耗を強いる事が出来る寸法だ。
そもそも弾丸の魂を宿す『グラスホッパー』と、彼らにゲリラ戦を可能とさせる森林。
この世にこれ程相性がいいものがあるだろうか。

彼は勝利への道程を見出し、第一歩を踏み出す。
だが、

> 「有葵。アンタ、守りながら戦うって言ってたぢゃないか?
> 任しときなって…あいつに一蹴りあびせてやるよ。湖の水を蒸発させた技を応用して本体に火傷させてやるんだ。
> ちょっとは策を練るための時間稼ぎになるだろうから」

丁度彼の出端を挫く形で、『ステレオポニー』が蹴撃を繰り出した。
キャビテーションとソノルミネッセンスによる一撃は、喰らえば血液が膨張し、破裂に至る。
無論『蝉』はそんな事は知らぬのだが、それにしても彼は落ち着き払った態度で『ステレオポニー』を迎え撃つ。
或いは反応すら出来ていないのではないかと言う程に。
事実彼は、直前で上空へと跳ね上がった『ステレオポニー』を、目で追う事をしなかった。

> 「くらいな!ソノルミネッセンス!!」
無防備な『蝉』の頭部に、『ステレオポニー』の蹴りが迫る。
必殺の威力を秘めた一撃を遮る物は、何処にも見受けられない。
『ステレオポニー』の脚は魂を断つ死神の鎌もかくやと振り下ろされ――

「……待っていたさ。お前がそうして、速さを頼りに接近してくるのをな」

――しかし不可視の障害物でもあるかのように、『蝉』を直前にして軌道が逸れた。
『ステレオポニー』が眼下に視線を走らせれば、見えるだろうか。耳を澄ませば、聴こえるだろうか。
一足早く群体と化した『グラスホッパー』達が一斉に、超音波を奏でている様が。

「お前の能力は何度も見せてもらった。……音波は温度差のある水域を直進出来ず、
 また音波同士ってのは干渉し合うんだってな。昔何かの漫画で読んだよ」

不可視の障害物は、あったのだ。
通常のスタンドには何ら意味のない、音の性質を持つ『ステレオポニー』だからこそ阻まれてしまう壁が。

61 名前:『蝉』 ◆HQs.P3ZAvn.F [sage] 投稿日:2010/05/01(土) 02:20:47 0
「……確かあの佐藤とやらは傷の治療が出来たな。素早いお前をここで仕留めるのは困難だから……
 ひとまずは、こうさせてもらうぞ。せいぜい足を引っ張る事だ」

体勢を崩した『ステレオポニー』を前に、『グラスホッパー』は再び人の姿を取り戻す。
そうして硬く握られた拳が唸り、『ステレオポニー』の脇腹へと放たれた。
下手な裂傷を与えるよりも、本体の方で肋骨でも折れれば儲け物だと判断しての攻撃だ。

だが打撃を繰り出した後に、『蝉』は何気なく『グラスホッパー』の拳を見つめる。
やけに手応えが軽かったのは、単に『ステレオポニー』の性質が故か。
それとも『ステレオポニー』は音速の挙動を以って、あの状況から回避に走れたのか。
違和感の正体は、『蝉』の意識が届き得ぬ所にある。

「……これは」
そして不自然な手応えに対する彼の追求は、突如変貌を始めた周囲の様相によって終止符を打たれた。
怪物の臓腑の内であるかのような風景に、見渡す限り鏤められた人体。
九頭龍一が、留流家が、今この場に現れたのだ。

意識の底から沸き上がる高揚を、『蝉』は禁じ得なかった。
無意識の下に刻み込まれた、九頭龍への愛情にも似た忠誠心によって。

> 「……やっぱあるわけないよな…」
同時に『蝉』は、戦闘の最中でありながら人探しの素振りを見せる萩原を見つけた。
彼の心に、今度は突如として激情が沸々と湧き上がる。
やはり彼の無意識の領域に潜む、留流家からの解脱願望が、激昂しているのだ。

「……随分と余裕だな……! 貴様にそのような事をする必要はない!
 お前は俺に、九頭龍に勝てないのだから! 破れぬ監獄の中に誰がいようと関係はないだろう!
 人探しなら留流家に囚われてから、存分にするがいいさッ!」

気もそぞろ、心ここに在らずの様子を示す萩原に、『蝉』は全ての『グラスホッパー』を撃ち放った。

62 名前:佐藤ひとみ ◆tGLUbl280s [sage] 投稿日:2010/05/01(土) 02:54:46 0
佐藤ひとみは持って生まれた自分本位な性格の為か全く他人の気持ちを感じ取ることができなかった。
頭の上で相手が何を感じているかを読み取ることが出来ても気持ちとして共感することは皆無。
自分以上に相手のことを心配したり相手の境遇に同情して涙を流す人間の気持ちが全く理解できない。
偽善かウケ狙いでやっているのだとしか思えなかったが最近はそうでもない人間もいるということが朧げながら解ってきた。

これまでのひとみにとって唯一無二の興味の対象は自分自身であり他人は生活に不便が無い程度に付き合う為だけの存在。
ひとみが他人に対して持つ唯一の激しい感情は自分を不快にさせた時感じる強烈な『怒り』だけ。
その他の場合自分に利益をもたらす者は「概ね好き」
それ以外は「どうでもいい」か「ちょっとウザい」程度の感情しか持てなかった。

ひとみがこれまで誰かに一度も恋愛感情を抱いたことが無いのもこの性格が影響しているのかもしれない。
この誰にも恋愛感情を持てないという事実はフルムーン発動中の右目を見られること同様
ひとみにとって他人に知られるのが耐え難いことであった。
周囲が恋愛の話題に終始盛り上がるのを奇異な気持ちで聞いていた15歳のひとみ。
その頃は自分が幼いから理解できないのだと思っていた。
10年前と同じ面影を持つスタンド使いに触発されて昔を回顧する佐藤ひとみ。
だがすぐに我に返った。



今はゲームの真っ最中。殺らなければ殺られる、取らなければ取られる状況なのだ。
上空からの俯瞰で徳井と大谷が泥のスタンドに攻撃されているのが見える。
このままでは風のスタンド使いに辛勝したよねにも泥の力が及ぶかもしれない。彼らを失えばゲームクリアは望めない。
戦闘力の無い自分のスタンドは一人で戦えないし残された面子が少女と中高年では心許無い。
多少危険を冒してでも彼らの援護に回る方が生き残れる可能性が高い。
ひとみが向かうより直接フルムーンを飛ばした方が早い。ひとみはここに残りフルムーンを別荘地帯に向かわせた。


相手は泥のスタンド…流動性があり粘着質なところが厄介だ。徳井の力で切開してもすぐに切開面に流れ込んでしまう。
泥を固められるものといえば……
ひとみの頭に逃げる時に通り過ぎてきた別荘地帯の建設現場のことが頭を過ぎった。
セメント…!セメント内の石灰(CaO)は水と反応して土を凝固させる。建設資材として使う場合は乾燥期間が必要だが
今は粘性の泥が流れ落ちないくらいに表面を固めてしまえば事足りる。
ひとみはフルムーンを泥のスタンドに向かわせる前に建設現場のセメント剤の袋を持たせた。


泥のスタンド近くに浮遊するフルムーン。
その触手は湖で虫のスタンド群を捕らえた時同様に細かい網の目に編み上げている。
その細かいネットにセメント剤をたっぷり帯びさせて上空からセメントの網を投下する。
2m四方の泥を完全に覆うように投下された石灰のネットは泥の表面を数センチ固め表皮の流動性を無くす。
再びフルムーンの触手を再生させると同じようにネットに編み上げセメント剤を乗せると
一部ネットの掛からないようにしていた面にフルムーンを近づけた。
今回の網はピアノ線ほどの固さで60センチ四方の正方形の穴の開いた長い筒のような形状にしている。
その筒状ネットを探知していた泥の中の徳井のすぐ近くまで突っ込ませる。
泥の内部に表面の固まった筒状の空間が出来たことで呼吸とその位置からの脱出が可能になる。


フルムーンはそのまま泥に出来た正方形のトンネルに進入し徳井の背後に迫る。
左腕を負傷している徳井。徳井の体内をスキャンすると鎖骨に骨折箇所がある。説明している暇はない。
いきなり背後から先端を剃刀ほどの鋭さにした触手で鎖骨下の皮膚を切り裂き
そこから触手を侵入させマイクロファイバーのように細かくした触手で折れた鎖骨同士を結びつけ結び目を粘着させる。
骨折箇所をパテで固めたような状態だ。触手を引き抜きくと素早く切り裂いた箇所を縫合した。
続けて徳井の側に再度出現させたシートで泥のスタンド使いの本体位置を探知しようとしたその時……

63 名前:佐藤ひとみ ◆tGLUbl280s [sage] 投稿日:2010/05/01(土) 03:13:36 0
首筋に感じた冷たい感触…。
ゆっくりと斜め後ろに視線を降ろすと首に当てられたものの正体が見て取れる。
およそ想像はついていたが刀の切っ先である。
ぬめるように怪しく光る白金の刃…その光は狂気を宿した誰かの目のようだ。
切っ先を向けている刃の主が背後から声をかける。

>「やあ。健闘しているね。」

今回は体を拘束されてはいないがひとみは後ろを振り返ることが出来ない。
首の刃は少しでも体を動かせば頚動脈を切り裂く位置に当てられているからだ。
だが振り返らなくとも声の主は解る。
身動き取れない状況で背後に迫られるのも二度目だ。

ひとみは呼吸と動悸が早くなる体が自分のものでないような気がした。
あの時もそうだった。
アンテロスを倒した後デパートに現れた九頭に体を拘束され背後に近づかれた時…。
自分以外に関心を持てないひとみにとって異性が近づいて動悸が早くなるという体験はあの時が初めてだったのかも知れない。
それは単なる恐怖…または命を懸けたゲームに心のどこかで感じているスリルに体が反応しているだけかも知れない。
だが初めての体験はこの二度目の酷似した状況にフラッシュバックとなって同じ感情を湧き上がらせる。

九頭は妙に親しみを込めた声で背後から語りかけるがほとんどの言葉は意識を素通りし聞き取れたのは以下の言葉だけ。

>留流家の一部となって僕と永遠を生きないか?
>君のような人には自らの意思で留流家に入ってもらいたいのさ。


なんだか妙な気持ちだった。
こともあろうにこのクサいプロポーズのような言葉に抵抗しがたい魅力を感じ始めていた。


そもそも佐藤ひとみは九頭龍一のしていることが絶対悪だとは考えていない。
能力を手にした以上それを使うのは当たり前。
スタンド能力で不老不死を得られるのならばそれを使わない選択肢など無い。
ひとみ自身も能力を手にしてからそれを利用してきた。
スタンド発動中の顔を他人に見られることを考えるとおぞましかったがそれでも折角手にした能力を使わないという選択は有り得なかった。
生け贄提供の選択をしなかったのも良心によるものではない。ゲームクリア後の面倒を懸念してのことだ。
生け贄を差し出せば生け贄の家族や関係者から報復を受ける可能性がある。そんな面倒を生涯背負うのは真っ平だ。
九頭に直接の因縁を持つ徳井や荻原と違ってひとみが九頭と闘う気になったのはただ自らの身の安全の為。
ひとえに館に組み込まれる運命から逃れる為であった。


九頭龍一は刀を突きつけながらひとみに意思決定を迫る。
フルムーンは泥のスタンドの中に置いて来ている。防御も攻撃も出来ない今のひとみにとって
要求を呑むかさもなくば死ぬかの選択しかない。
その身と同様に心の中も凍りついたように動けない佐藤ひとみ。


>ヒギャアアアアアアッ!!

空中を切り裂くような秋名の断末魔の声にハッと我に返る。
首元に突きつけられた刃の切っ先がぶれた一瞬をついて肩に下げていたバッグで刀を跳ね除け後ろを振り返ると
空中にしゃがんでいる九頭の股間めがけて肘を思いっきり打ちつけた。
そのまま踵を返しよね達のいる別荘地帯に向かって駆け出すひとみ。

どんな特典があろうと館に取り込まれるのは御免だ。
不老長寿を手に入れても自らの意思で館から出られない人生に何の意味がある?
そう考えながらも尚迷いを振り切れない感情の燻り感じながら走る。

64 名前:生天目有葵 ◆BhCiwB2SCaJ5 [sage] 投稿日:2010/05/01(土) 13:06:07 0
グラスホッパーの拳が唸り『ステレオポニー』の脇腹へと放たれる。

「…っ!!」
胸の下からポポンッと音がして生天目の肋骨が何本か弾けるように折れた。
痛みで大きく息を吸えない。声も出せない。
少女は折れた骨をかばいながらその場にゆっくりとしゃがみこむ。

「…ひ…とみん……荻…原さ…ん…」
その小さな声は、話し合いながら前をゆく二人には届いていない。

気がつけば辺りの風景が変化し始めていた。雑木林のあちらこちらから人間が浮き出てくる。
夢かうつつか…。佐藤ひとみと出会った雨の日に知覚できなかった感覚。
その感覚が今、目の前で具現化しているのだった。

>「……やっぱあるわけないよな…」

荻原の声はすでに遠くにあった。妻子を探すことに夢中になっているらしい。
佐藤ひとみも仲間の支援に手いっぱいのようだった。
二人の姿は木々に隠されて生天目からは、もう確認できない。

「…だから…ステポ二め…よけいなことするから…」
自身のスタンドに悪態をつきながらも生天目はスタンドのことを心配していた。

「…ぬかったね…」
ふと声のする方向を見ると林の中から憔悴しきったステレオポニーが自力で這い出して来る。

「あんな防ぎ方が出来るなんて…。索敵を音波妨害された時点で気づくべきだったね…」
ステレオポニーの白銀の腹部からは胸に這い上がるように亀裂が走っていた。

「でもいいさ。ちょっとした見せ場にはなったんぢゃないかい?あとは他のみんなに任せて
俺たちはここで休んでいようぢゃないか…」

「…うん…私たち…足手まといになるといけないからね……」



(一方。柚木美都留。

敵の動向をうかがう少年の記憶の底から再度30年前の記憶が甦る。

留流家のある男が柚木に語った言葉。

「多くのスタンド使いを吸収し留流家が惑星を包み込むほど
巨大化すれば地上には異能者たちの新しい世界が訪れるだろう。
すべては広がりながら一つになり異能なる神たちの世界が誕生するのだ」

その言葉の真偽はわからなかった。
夢見る少年が鈴木章吾のアイドルマスターにからかわれ騙された可能性もある。

だが柚木美都留は九頭龍一の瞳の奥に真実の狂気をみていた。
九頭の無意識の奥に存在する狂気。矛盾。果たして彼は彼なのだろうか?
九頭の瞳の奥を見つめれば、そこには自分が映っている。

柚木には計り知れなかった)

65 名前:徳井一樹 ◆MnJrk02a/Yx. [sage] 投稿日:2010/05/01(土) 18:15:48 0

「…流石に怪我しながら地面を移動は無理あったかな」

右手のない右腕で左肩あたりをさすりながら、切開を続ける徳井。
気がかりは柚木の足音が聞こえないことだ。
動かずにボーっとしているのか、それともスタンドを使って移動しているかのどちらかだろう。
…恐らく後者だろうが。

「……俺の切開移動方法は音で居場所を探知してっからなあ…知ってか知らずか?
あのガキ……競争なんて自体に陥ってたらディ・モールト厄介だぜッ!」

そんな事を呟くと不意に上から声がかすかに聞こえる。

>「あはははは!ボクは勝利に向かって走っている。
>あいつの向かっている先は崖っぷちだ!笑いが止まらないね!!あははははは!」

「…オーマイ“ガッ”!って奴だな。嫌な予感超的中だぜ……」

徳井は知らない。徳井が呑気に地中水泳を満喫している間、大谷が徳井を援護してくれていたことに。
そもそも徳井は大谷が救援に来た事自体気付いていない。
大谷が到着する前に、運悪く徳井は既に別荘の中に居たのだから。

そしてゴールには大谷のナイフ攻撃から身を守った柚木が待ち構えている。
皮肉なことに、自分が最初に使ったのと同じ手で柚木は殺る気なのだ。
このままでは徳井は確実に殺されてしまうだろう…しかし、これからの出来事が徳井を間接的に救うこととなる。

「なにッ!?あの泥は…チクショウ…泥だから地中も関係ナッシングってか!」

徳井の背後から這いずるように追ってくるのは先程の泥の壁。
既に九頭の手から離れ、徳井を飲み込みそのまま固まるまで追い続ける泥の壁が襲い掛かってくる。
また最悪なことに…徳井は現在左手でしか切開できない。
つまり、スピードは両手で切開できる時に比べ圧倒的に遅い。このままでは追いつかれる。
更に泥に一瞬目を向けたことによって隙ができる。泥はそんな事をおかまいなしにずんずん向かってくる。

「くそッ!足を捕られた!こうなったら、足を切開して…」

苦肉の策も最早通用しない。
既に泥の壁はゆっくりと確実に徳井の足を、手を、体を飲み込もうとしているのだ。
呼吸も限界に達し、まともな判断も出来ない状態。

「息も…やべえ……限界だ…やられてたまるか…クソォッ!」

徳井が深海よりも暗い地中の中でもがいていると、救援は現れる。
地面の中のはずなのに呼吸ができる。上からは空が見え、佐藤のフルムーンが降りてくる。
泥もその流動性をなくしており、今なら切開しても流れ込んでくることはないだろう。

「思わぬ救援……あれか?司令塔の打算の結果ってやつ……イテッ!」

左の鎖骨、徳井が怪我をした箇所を瞬時に佐藤が治してしまったのだ。
今ほんの数十秒の間に病院いらずのテクニックを見せたことに徳井はおおよそ理解できていない。
佐藤が自分を援護し、傷を治してくれたことは理解できるし、感謝する他ない。

「切開だけに石灰か……とにかく、助かったぜ。
このままじゃ俺は目と鼻の先に居る九頭に辿り着けなかったし、自分の運命にも決着をつけれなかった」

徳井は足と、ついでに右手を流動性を失った泥の塊──…
いや、最早ただの土か泥の中間地点のような中途半端な塊から『切開』で取り出すと、
さながら土管から這い出てきたマリオの如く飛び出してくる。
その位置はちょうど柚木のいる場所から100mほど離れた地点だった。

66 名前:徳井一樹 ◆MnJrk02a/Yx. [sage] 投稿日:2010/05/01(土) 18:42:39 0

「さて、と…また会ったな少年。俺がもっと近くに現れると思ってたか?
残念なことに…今回は色々と援護と妨害がくる日らしいぜ。おかげで右手も取り返せた」

治った左腕で自分の右手を、柚木に見せる。
その断面をピタリとくっつけると何事もなかったかのように元に戻る。

「ま、自分で切開したんだから結合し直すのにはワケねーぜ。
じゃねーと俺が切開しちまったモンは全部バラバラのまんまだからな」

ゆっくりと、徳井は柚木の方向へ近づいていく。
両手にはナイフを二本持っている。おそらく、オズモールは吸い込んでいるだろう…大量のナイフを。
別荘内のときの戦闘のときと同じように吐き出して攻撃するつもりだろう。

「今度は両手が使える…それに!今の『セイヴ・フェリス』は強いぜ!九頭への怒りと憎しみでグツグツ燃えてっからなァッ!」

徳井は地面には潜らず、そのまま柚木の背後のいる泥の能力者本体向かって走り出す。
幾度となく使用してきたあの移動方法。そろそろ奇襲にも慣れてきたはずだ。もう通用しないと見ていいだろう。

それに……なんとなく正面から決着を着けたくなったのだ。
もしかしたら白昼夢のときのように、留流家を媒介に柚木の記憶を断片的に視たのかもしれない。

67 名前:ボブ・バンソン ◆JvtTTnep1k [sage] 投稿日:2010/05/01(土) 20:24:03 0
>「……あら? どなたかしら」
>けれども門の前で無造作に佇立する男が目に留まり、彼女は一旦足を止める。

門の前に立ち尽くしていたのは緑色のブレザーを着たちょっと女顔の背の低い少年。どうやら他の学校の生徒のようだ。
寮に住む彼女にでも会いに来たのか?…いや、ここは県屈指のお嬢様学校で男子禁制の花園。それを飛び越えるような
危険なマネをしなくてもどこか公園やホテルででも待ち合わせすればいい。それがなぜ彼がこの場にいるのかきららには不審に思えた。

>「困りましたわ……。あの人の話では、『スタンド使い』は惹かれ合うそうですし……」
>表情を困惑の色に染めたまま、きららは寮のすぐ傍で立ち往生をしている。

きららの声に気づいたのか少年が振り向く。実に自然な笑顔で。
――そして徐に胸ポケットからコードレスのスタンガンを取り出し、きららに向かって襲いかかってきたのだ!

68 名前:柚木美都留 ◆BhCiwB2SCaJ5 [sage] 投稿日:2010/05/02(日) 14:25:11 0
柚木は徳井が泥のスタンドの本体に強襲してくるものばかりだと思っていた。切開した右腕を回収するために
いち早く本体を倒し泥のスタンド能力を無効化することに専念するはずだろうとたかをくくっていたのだ。

「…あれ…なかなか地面から出てこないね…見誤ったかな?」

100メートル程離れた地点からマリオのように飛び出す徳井をオズモールの目は捉える。
徳井を遠くに確認した柚木は内心以外とは思っていたが、にやりと笑い別荘の裏に一旦消えた。
また悪知恵を働かせているのだろうか。別荘の屋根の奥に見える電柱が一本、沈んでゆくのが見える。

「…これと『これ』があればいいよね」
独りごちオズモールに再び何かを仕込んだ柚木は泥使いが埋まっている壁に戻って来た。
徳井との距離はすでに10メートルくらいだろうか。少年は壁に血だらけの顔をくっつけて振り返りざまこう叫んだ。

「だるまさんがころんだっ」
だが、ゆっくりと徳井は何かを話しながら柚木の方向へ近づいてくる。
ゆっくりと近づいてくるということは泥スタンドは何かしらの影響で機能を停止してしまっているのだろうか。
壁に埋まっている本体はうんともすんとも言わないが生きてはいるようだった。

>「今度は両手が使える…それに!今の『セイヴ・フェリス』は強いぜ!九頭への怒りと憎しみでグツグツ燃えてっからなァッ!」
徳井は地面には潜らず、そのまま柚木の背後のいる泥の能力者本体向かって走り出した。

「…両手が使えるってことはいいことですね。あなたは九頭さんに強い思いを抱いているようですけど、
それはボクも同じなんですよ。ただ…正反対の想いなのかも知れませんが…」
少年はほんの少しだけ悲しそうに答えた。

「あとボクのオズモールは飲み込んだものを自由に分別して吐き出すこともできます。
ある程度ならスイカの種を飛ばすみたいにコントロールすることもできるんですよ。こんなふうにです」

オズモールの口から上空に何かが吐き飛ばされた。それは人間だった。
数分前(?)に別荘の玄関で慌てふためいていた女性だ。

「きゃああああ!!」
女性はビルの4階程度までに到達すると柚木と徳井の間に落下をし始める。

「あー!あんな高さから落ちたら死んじゃうかも!誰か両手で受け止めてあげて〜やさしくね〜」
ヘンな輝きを見せる柚木の瞳。今までの行動から徳井は女性を必ず受け止めるはずだろうと確信していたのだ。

「どうするの〜?見捨てるの〜?」
にやにやしながら柚木は徳井の後ろにまわりこむ。今、徳井は泥スタンドの本体が埋まっている壁と柚木との間に挟まれている。
柚木は徳井が女性を受け止めようと隙を見せた瞬間に更に吐き出し攻撃をするつもりだった。

69 名前:徳井一樹 ◆MnJrk02a/Yx. [sage] 投稿日:2010/05/02(日) 16:01:44 0

>「…両手が使えるってことはいいことですね。あなたは九頭さんに強い思いを抱いているようですけど、
>それはボクも同じなんですよ。ただ…正反対の想いなのかも知れませんが…」

走る続ける徳井を見つめながら、目の前のいる血だらけの少年はそっと呟いた。
その表情は少し悲しげに見える。しかし徳井にはいっぺんの情もない。

「例え奴が君にとって救いだろうとあいつは吐き気を催すような『悪』だ。それは変わりない。
奴に対しては慈悲も情も必要ない」

>「あとボクのオズモールは飲み込んだものを自由に分別して吐き出すこともできます。
>ある程度ならスイカの種を飛ばすみたいにコントロールすることもできるんですよ。こんなふうにです」

直後、女性の高い悲鳴が辺りに鳴り響く。
かなりの高さだ。あの高さならヘタをすれば死にかねない。死ななくても重症だろう。
どちらにしても助けることしか徳井には思い浮かばない。
ただし、助けた瞬間に柚木の熱烈な攻撃が待ち受けているが。

>「あー!あんな高さから落ちたら死んじゃうかも!誰か両手で受け止めてあげて〜やさしくね〜」
>「どうするの〜?見捨てるの〜?」

さっきの態度と一変し、にやにやと笑う柚木。
やっぱりこいつ、クソガキだ。徳井は内心子供におちょくられる大人の気分を味わう。
そして徳井が落下してくる女性に気をとられている内に後ろに回り込まれた。

「そうか……ああ、そうだな。助けるよ。関係のない女性を巻き込むワケにはいかねーもんな」

徳井はセイヴ・フェリスを出現させ、女性を受け止めるのではなく…行ったのは地面の切開。
瞬間、徳井の背後から4mはある噴水が突如巻き起こる。
水の勢いが落下速度を殺し、空中ダイブしてくる女性を救ったのだ。もちろん無傷とはいえず、ビショ濡れで多少のすり傷はあるが。

「ベネ(良し)。……工業用の水道管を切開して破裂させた。これ、スゲー勢いでな。
周囲の住宅が床下浸水したり、軽く噴水が巻き起こったりする。弁償代はテメーの家(留流家)にツケとくぜ」

70 名前:柚木美都留 ◆BhCiwB2SCaJ5 [sage] 投稿日:2010/05/02(日) 17:30:13 0
水道管を切開し噴水でクッションをつくることなど柚木には思いもつかなかった。
少し計算は狂ってしまったが瞬時に次の攻撃に移る。

>「ベネ(良し)。……工業用の水道管を切開して破裂させた。これ、スゲー勢いでな。
>周囲の住宅が床下浸水したり、軽く噴水が巻き起こったりする。弁償代はテメーの家(留流家)にツケとくぜ」

「なに言ってるんだよ!自分で壊したものは自分が払いなよ!!ボクは別荘と電信柱しか壊してないからっ!!」

オズモールが高速で電柱を吐きだす。折れた電柱の先が徳井の体に向かってゆく。
直撃すれば致命傷にはならないまでも徳井は電柱と壁に挟まれて身動きがとれなくなるだろう。
柚木は徳井の状況をはっきりと確認してはいなかったのだが電柱を吐き終わった時点で
機械的に徳井がいるであろう場所へとオズモールの体内のすべてのナイフを吐き出させた。

「具を壁に挟んだら〜ナイフで切って〜サンドイッチの出っ来上がり〜!」

果たして徳井一樹のサンドイッチは見事に出来上がっているのだろうか。

71 名前:荻原秋冬◇6J1m09mANS [sage] 投稿日:2010/05/02(日) 23:04:00 0
妻子を探すため木々だった人の柱をよく見ていたとき。
突然、荻原の耳にはまるで銃声のような羽音が聞こえた。
ついに追いつかれてしまったのだ。
荻原はプラントアワーを出現させたが、なぜかプラントアワーも虫の群体に背を向けている。

(やっぱり来たか…しかし今動くわけには行かない…もうすこし粘らなければ…)
まったく動くそぶりをみせずただ荻原はじっと待っていた。

5m…4m…3m…2m…1m…

そして残り約50cmというところで荻原は振り返り
同時にプラントアワーも荻原の前に立った。

この虫の群体が精密な動作が強かったら荻原は完全にやられていた。
だが、ただ単純に一直線に襲ってきてくれたことで荻原の勝ちがほんの少し見えたのだ。

プラントアワーの両腕両足の蔓から一本ずつ巨大なハエトリ草が生えていた。
荻原がぎりぎりまで後ろを向いていたわけは、プラントアワーにハエトリ草を作るところを見せないためだった。
虫の群体は荻原本体に当たらずにハエトリ草の口の中へ次々と当たった。
ハエトリ草の口の中は弾力性が高いため、弾丸のような速さの虫の群体も防弾チョッキのように止めてしまった。
そのため荻原へのダメージは腕と足にかなりの振動がくるだけですんだのだ。

「よっしゃ今だ!葉を閉じろ!」
虫の群体がすべて葉の中に入ると一瞬で葉を閉じてしまった。
モウセンゴケの時は無理をすれば助けることができるが、ハエトリ草だとそうはいかない。

ハエトリ草で虫の群体をつかまえてからおよそ2分くらいたった。
周りを見渡してみるがほかにくる様子はないみたいだ。

「ほかがこないということは、これで打ち止めみたいだな。
本体の男が来る前にはやく溶かしてしまわないと」

72 名前:徳井一樹 ◆MnJrk02a/Yx. [sage] 投稿日:2010/05/03(月) 15:49:57 0

>「なに言ってるんだよ!自分で壊したものは自分が払いなよ!!ボクは別荘と電信柱しか壊してないからっ!!」

水浸しの地面の中、オズモールは高速で電柱を吐き出す。
そのスピードは同じ近距離パワー型ならば見切ることは可能。
更に言えば殴ることさえ出来れば切開できるのだ。

グラスホッパーのような高速で小さい物体ならばともかく、電柱のようなデカイ的などセイヴ・フェリスの敵ではない。

「両手を塞いだところでの不意打ち攻撃を今更正攻法として使っても意味ねーーん…」

さっき切開した工業用の水道管を結合するのをド忘れてしていた。結果、大量の水が溢れ出し徳井はそこで足を滑らせた。
電柱は徳井のギリギリ真上を通過し、背後の壁に激突する。

「フイーーあぶねえあぶねえ。もう少しで死ぬトコだった。こりゃーツイてるね、ノッてるね」

徳井が調子に乗っているところを次はナイフの応酬。
迫り来る大量のナイフ。今までのセイヴ・フェリスなら防ぐことさえ難しいだろう。
その劣悪な精密動作性では触れることさえ怪しい。

「上等だぜ……相手してやるッ!アリアリアリアリアリアリアリアリ!!」

敵である柚木は目と鼻の先。これならば突っ切った方が楽と踏んだのだろう。
ラッシュでガードしながらそのまま柚木の方向へ突っ走る。
2本、3本とラッシュをすり抜け徳井の胸や足に突き刺さるが、運よく全て急所を外している。
そしてセイヴ・フェリスがこの戦闘で少し成長したのもある。今までよりも精密動作性が向上していたのだった。

>「具を壁に挟んだら〜ナイフで切って〜サンドイッチの出っ来上がり〜!」

柚木の陽気な声が聞こえる。電柱と水飛沫、ナイフでよくこちらが見えないのかも知れない。
チクショオ!かってに殺すなよと一人心の中で悪態をつく。
そして、いくつかのナイフを食らいながらも徳井は柚木の目の前に立つ。

「さあ……ご対面だ。泥は死に体、この近距離だ……!サンドイッチとか言ってたな?
俺はアツアツのピッツァの方が食いたいがね!お前をタコ殴りにしてっやからよーーー覚悟しやがれ!」

所々にはナイフが突き刺さり、頭から血が流れながらも真正面で自分よりも遥かに小さい少年に物騒なことを言い放つ。
サングラスにはナイフの攻撃でヒビが入っている。それでも付けているのは愛着か。

「お前を切開してやってもいいが…狩る者とはいえ、少年をバラバラにするのは俺の人生の後味の良くねえものを残すぜ!
切開はしねえ…代わりに病院のベッドの上でゆっくり反省する時間をやるよ」

セイヴ・フェリスが徳井の背後に出現する。
柚木が吸い込むか?吐き出すか?それとも噛み砕くかはわからない。
自分が怪我をしているとはいえ、この近距離ならば敵のスタンドよりも早く殴れる自信はある。

「セイヴ・フェリスッ!」

右腕の拳が、オズモールの顔面めがけて振り下ろされた。

73 名前:柚木美都留 ◆BhCiwB2SCaJ5 [sage] 投稿日:2010/05/03(月) 19:28:48 0
柚木の視覚は水飛沫で遮れていたのだが徳井がナイフ攻撃を受けて何かを叫んでいることは分かった。
水道管から噴き出す水の音にまじって聞こえる徳井の咆哮。

>「上等だぜ……相手してやるッ!アリアリアリアリアリアリアリアリ!!」

金属が弾き返される音と共に水飛沫の向こう側の徳井の声はどんどん近づいて来る。
まさかとは思っていたのだが、そのまさかは現実となって少年の前に現れた。
目の前には体に何本ものナイフが突き刺さった男が立っている。

>「さあ……ご対面だ。泥は死に体、この近距離だ……!サンドイッチとか言ってたな?
>俺はアツアツのピッツァの方が食いたいがね!お前をタコ殴りにしてっやからよーーー覚悟しやがれ!」

静かにぬれた顔で徳井を見上げる柚木。

>「お前を切開してやってもいいが…狩る者とはいえ、少年をバラバラにするのは俺の人生の後味の良くねえものを残すぜ!
>切開はしねえ…代わりに病院のベッドの上でゆっくり反省する時間をやるよ」
>「セイヴ・フェリスッ!」

セイヴ・フェリスの右腕の拳がオズモールの顔面めがけて振り下ろされる。
柚木は瞬時に徳井の足元に飛び掛った。徳井の両足に激痛が走る。
柚木が持っていたナイフが徳井の両足の甲を一本づつ貫通したのだ。

だがセイヴ・フェリスは、そのまま拳の軌道を維持しオズモールに放つと
腕を食いちぎろうとした左の頭の鼻っ面に拳を衝突させる。亀裂がスタンドの上顎から肩に抜け左前足まで走った。
これが今のセイヴ・フェリスのパワーなのだろうか。
これでオズモールの「吐き出し」攻撃と瞬発力は封じられてしまった。

「うゃあ!!」

悲鳴をあげ震えながら柚木は徳井の足元にうずくまっている。
肩から左手にかけて骨折しているようだったが両手のナイフは離していなかった。

「…うぅ…負けられないんだょ…このゲームは…」

オズモールは柚木の後ろで横たわっている。

「…オズモール…スタンドパワー全開だ…ボクはどうなってもいいから…こいつを飲み込んでしまえ…」

オズモールは口を開くと渾身の力で、周りの空気と一緒にボコボコと地面を飲み込み始めた。
パワーを全開にしたオズモールの吸い込み能力は最早、掃除機と言うよりもブラックホールだ。

地面がどんどん飲みこまれて削れていきオズモール自体も地面に沈んでゆく。
徳井の足元の地面も飲み込まれ始め徳井は崩れてゆく崖っぷちに立っている人間のようになっていた。
柚木は依然徳井の足に突き刺さっているナイフから手を離さない。ぶら下がるようにナイフに手をかけている。
徳井が少しでも体勢を崩せばオズモールの胃袋の中に飲み込まれてしまうことだろう。しかし…

「わあぁっ!!」

柚木の手は徳井の血ですべってしまった。コロコロと転がりながらオズモールに飲み込まれてゆく。
闇の胃袋の中を落ちてゆく柚木。オズモールは近距離パワー型。
落ちてゆく少年との距離が離れれば離れるほど、その姿は霞のようにまどろみの中へ消えてゆく。

柚木美都留。再起不能。消息不明。

74 名前:佐藤ひとみ ◆tGLUbl280s [sage] 投稿日:2010/05/03(月) 22:02:03 0
佐藤ひとみにスタンド能力が発現したのは奇しくも虫のスタンド使いである元高校球児、岩内響と同じ18歳。

この頃は既に恋愛に憧れも関心も湧かない自分と周囲の女子との価値観の落差に決定的な違和感を感じていた。
スイーツ女子達にとって恋愛は至上の命題であり恋愛できない女は不幸な負け犬…という固定的な価値観が出来上がっている。
世間一般も概ねその価値観に毒されている。

強いて恋をしたい…という願望は湧かないがプライドだけは無駄に高いひとみにとって
他人に「不幸な負け犬」と思われ見下されること程悔しいものはない。
自分より程度の低い女に出来て自分に出来ない事があるはずはない。
恋愛感情など単に心の中の問題なのだから本人が「恋愛している」と思い込めはそれで事足りる。
以来自分の想定する条件に合う異性に接触する機会があると、思い込みによる「恋愛欺瞞」を発動させてきたのである。


高校卒業も迫る冬のある日、佐藤ひとみは右目に結膜炎のような症状と鈍痛を覚え学校を休んだことがあった。
ひとみは他校の生徒と付き合っていた。彼はプロや大学からスカウト視察が来るほどのサッカー選手で爽やか系のイケメン。
高校生の付き合う相手としては文句の付けようがない。
だがサッカーにも彼自身にも取立てて興味の無いひとみにとって付き合いはひたすら退屈であった。
ただ周囲の羨望の目線だけはひとみを満足させていた。

その彼の浮気を疑い始めたのと同時期に右目が痛み始めた。
学校を休んだ日の夜、ひとみは奇妙な夢を見た。
右目に妙な形の『矢』が突き刺さり頭の中に『ディスク』のようなものが入ってきたのだ。
叫び声をあげる夢の中のひとみ。すると場面が転換しひとみは上空から件のサッカー部の彼を見ていた。
彼は知らない女とホテルに入っていく…ひとみの心に怒りの黒い焔が燃え上がる。


嫉妬ではない…もともと恋愛感情など無かったのだから。
ひとみはそれを『侮辱』と受け取った。
ただ自分を侮辱したことに対する激しい怒りの感情だけがひとみの心を支配した。
次の場面で彼は一部の顔の肉を削がれ血を垂れ流している。側で泣き喚いている女…。
それを上空から見ているひとみ…。


その場面を最後に目が覚めた。
右目の痛みはすっかり引いている。
起き上がり鏡を見るひとみ。

その時の衝撃と戦慄はスタンドの扱いに慣れた今でも鮮明に体に刻みついている。
鏡の中の自分の顔には右目が無かった……!
右目のあるべき所にぽっかり穴が開き眼窩周辺は赤い筋肉が露になっていたのだ。

そのよくある下らない痴話事件依頼、佐藤ひとみは思い込みによる恋愛欺瞞と監視能力を使った品定めを続けてきたのである。

75 名前:佐藤ひとみ ◆tGLUbl280s [sage] 投稿日:2010/05/03(月) 22:10:13 0
【時間軸:柚木美都留が再起不能になる5〜10分ほど前】
>>63の続き

頭が混乱して思考が半分も回らない。
いつも自分に有利になるように腹黒く思考を回転させているひとみには余り無いことである。
佐藤ひとみは走りながら回想する。
思えばあの時から九頭に心を取り込まれつつあったのかもしれない。

踏み切りで見た白昼夢…幻の最後に九頭龍一の感情がひとみの頭に流れ込んできたあの時…
一瞬だけ九頭の中の感情を…その自信や傲慢、陶酔、そして孤独をひとみは自分自身の物のように感じた。
他人と気持ちを共感出来ないひとみには免疫が無かったのかもしれない。
それほどダイレクトに、そして鮮やかに受信した感情。
まともな人間なら『邪悪』と取るであろうその感情にひとみは心のどこかで微かな共感と魅力すら感じていたのだ。

だがひとみは頭を擡げ始めたその感情を認めない。
自分の感情を受け入れその感情の為に我を忘れて行動出来る程の素直さを持ち合わせていたら此れほど歪んだ性格にはならない。
普通に恋愛できない…ということを認めず思い込みによって補おうとしたように今はその逆を思い込もうとしている。


ひとみは当初の予定とは逆に徳井達のいる別荘地とは反対の方向に走っている。
辛うじて回る頭の半分で戦況を分析すると現在協力者達は各自強力なスタンド使いを相手に交戦中。
仮に別荘地帯に行っても今すぐ自分に手を貸せる者はいないだろう。
それにきっと九頭は自らを攻撃したひとみを絶対に逃さない。

九頭本人の言によると留流家が北条市全体を呑み込めるのは確かなようだ。
ただシートの反応を見ると今ひとみ達を取り囲んでいる留流家は別荘地帯を中心に半径1キロの範囲内に留まっている。
館として顕れる時が密度を高めた場合であれば留流家を展開させ範囲を広げるほど密度は薄くなる。
密度と留流家のパワーは比例関係にあるのではないか?

ひとみが現在の留流家の範囲の外に逃げれば、追って来る九頭は留流家をその分だけ展開させてくる。
九頭のスタンドである留流家のパワーが薄くなれば構成要素である個々のスタンド使いのパワーも影響を受ける可能性が高い。
つまりひとみが留流家の展開範囲を広げれば広げるほど間接的に現在戦闘中のメンバーを支援することになる。
最もそのパワーの差は微々たるものであろうが…。


ある程度留流家を展開させるような方向に逃げると、ひとみは立ち止まり後ろを振り返ってこう言った。


「わかったわ!あなたの要求を呑んで『留流家』の一員になる。
正直に言うと私はあなたに魅力を感じている…
でも最後に…館に組み込まれる前に…私が私としての意識を保っている間に一つだけ聞かせて!
あなたがなぜこんな下らない『ゲーム』を持ちかけるのかを…!
留流家の能力を使えばこんなゲームをしなくても簡単にスタンド使いを捕らえて永遠を生きることはできるじゃない?!
なぜあなた自身を傷つける危険を押してまでこんな下らないゲームをするの?!
私だってあなたの要求を呑むんだからあなたも一つくらい私の望みに応えてもいいはずよ!答えて!!」


この質問は言わば賭け…
九頭が問答無用でひとみを殺すか留流家に取り込むことだって大いに有り得る。
だが何故かそうはしないような気がした。
「気がする」…なんて不確定な要素で自らの命を危険に晒すなど普段のひとみなら有り得ないことだ。これも混乱が故だろうか。
質問の意図は時間稼ぎ…徳井や荻原が相手を倒すまでの間を取ることが第一であった。
ひとみ自身が本当にそれを知りたかったという理由もやぶさかでは無い。

柚木少年や元高校球児を倒せばそれだけ九頭は弱体化する。
その後ひとみが取り込まれても戦闘力の無いスタンド一体分。九頭のパワーの弱体化が劇的に回復することは無いだろう。
協力者全員、あの面子で弱体化した九頭に挑めば勝利の目も見える。
誰かが九頭を倒せば取り込まれた直後のひとみが無傷で開放される可能性もある。
身を挺した援護のようでいてあくまで打算の結果…日本刀で首を刎ねられるより館に取り込まれた方がいくらかマシという計算だ。
だが心の奥底……無意識の領域では留流家に取り込まれても良いと思う気持ちも皆無では無かった。

76 名前:徳井一樹 ◆MnJrk02a/Yx. [sage] 投稿日:2010/05/04(火) 10:52:43 0

徳井のセイヴ・フェリスの拳が振り下ろされた瞬間、両足に激痛が走る。
足元を見ればナイフが靴を貫き、足の甲に突き刺さっている。
体がよろめく。無理矢理突っ込んできたせいで体にガタが来ている。
そこを狙いすましたようにオズモールがセイヴ・フェリスの腕を食いちぎろうと迫ってくる。
言うまでもなく徳井は無茶をしすぎたのだ。

「こんなところで死んでたまるかァァァァアアアッ!!」

無心の叫び。徳井の意志を離れ、無意識に叫んだ。
ズレかけた軌道を根性と精神力で持ち直し、そして──…

ビシッ!

オズモールの三つの頭の内、左の頭の鼻っ面に拳が衝突する。
亀裂がどんどんオズモールの上顎から肩に抜け左前足に走っていく。
少年は悲痛な悲鳴をあげながら徳井の足元にうずくまる。

「……このバカげたゲームも終わりだ。救急車呼んでやるからそこで反省するんだな」

説教染みたことを呟くと徳井は携帯電話に手をかける。
すると柚木が子供ながら、必死に痛みに耐えながら途切れ途切れに喋る。

>「…うぅ…負けられないんだょ…このゲームは…」
>「…オズモール…スタンドパワー全開だ…ボクはどうなってもいいから…こいつを飲み込んでしまえ…」

最初は耳を疑った。柚木の意識を奪うことはできなかったが、もう戦闘は不可能な状態だ。
それでもオズモールの口は開く。空気も地面も関係ない。口の中に垣間見える暗黒の空間はまるでドス黒いクレバスだ。
地面さえも飲み込み、削れていく。当のオズモール自身が地面へと沈んでいっている。

何故柚木が今まで全力で吸い込むことをしなかったのか、理解できた。
下手をすれば本体さえお構いなしに吸い込んでいくのだ───…このスタンドは。
徳井も他人の心配をしているほど悠長な状態ではない。
地面を切開して片足をめり込ませてはいるものの、すぐに吸い込まれそうな勢いだ。

「クソーーッ!テメェ往生際が悪いぞ!もう終わったんだッ!能力を解除しろ!下手をすれば二人とも死ぬんだッ!」

それでも柚木は聞き入れない。徳井の足に突き刺さっているナイフに必死でしがみつきながら。
徳井が少しでも体勢を崩せばあのブラックホールのような悪魔のスタンドに飲み込まれてしまうだろう。
そしてそれにしがみついている柚木さえも。

>「わあぁっ!!」

柚木が手を滑らせたのか、転がりながらオズモールに吸い込まれる。
少年の小さな体を吸い込むと霧のように…あるいは幻のように穏やかに消えていく。
台風が過ぎ去った後のように周りはぐちゃぐちゃだ。別荘のタンスやら棚やらまで飛び出している。
様々な妨害や援護がありながらも…最後はあっけなく終わってしまった。

「終わったのか……やっと」

柚木が自分のスタンドによって飲み込まれたのは柚木の責任だ。
しかし、徳井が何の情もなく殺す気でかかっていれば寧ろ全て丸く収まっていたのかもしれない。
敵は九頭に洗脳され、支配されているのだ。往生際の良いはずがないのだ。
既に使い物にならないサングラスをグシャッと丸めると、そのまま後ろに放り投げる徳井。

「まだだ…まだ九頭と泥の本体が残ってる。こんなところで余計なことを考えている暇なんかねーぜ」

よねの救援にいこうともバッタのようなスタンド使いのところへ行こうとも思ったが、その考えは否定した。
自分の敵は倒した。後は自分の本来の相手のところへいくべきだ。今までの運命の決着を着けるために。
徳井はよろよろと立ち上がり、泥使いの本体がいる壁へと向かっていく。

77 名前:泥使い ◆BhCiwB2SCaJ5 [sage] 投稿日:2010/05/04(火) 16:13:06 0
泥は徳井一樹を逃してしまった。
だが反省もしていなければ原因を探ろうともしない。
単純に「マタ捕マエレバヨイ」そう思っているだけだった。

泥使いの男には「現在」しかなかい。頭の中には「今」しかない。
過去に対しての未練もなければ未来に対しての展望もない。
ただ、目の前の人間を泥で飲み込む。それだけだった。

今、男は自分の体に違和感を感じている。固まってゆく。それに背中が熱い。
この不快感は排除しなければならない。
泥は、まだやわらかい内部を蠢かせ揺らしながらゆっくりと石灰で固まっている部分を
吐き出し脱ぎ捨てると再び地中を這いだした。

地中を這う泥の内部では、ごろごろと大小様々な頭蓋骨が転がっている。
過去に飲み込んだ人間たちが白骨化していたのだ。頭蓋骨の主はスタンド使いではなく一般の人間たち。
男は10年周期のスタンド使い狩りに紛れて関係のない人たちをも何十人と泥で殺害していたのだ。

泥のスタンドを通し果てていく人間の死を己の体内で感じることが男の唯一の生きがいだったのだ。
徳井一樹の右腕を飲み込んだときの、あの血液が煮えたぎっている感じ、生きたいという意志から
もがき引きぬこうとした生命の躍動を泥男は感覚だけで覚えていた。

徳井の足から地面に染み込んでゆくあたたかい血液を泥は味わうように内部にとりこんでいた。
泥のスタンドは柚木美都留と徳井一樹の交戦中に徳井のすぐ近くまで迫っていたのだった。

泥の浮上とともに徳井の周辺の地面は軟弱化し、今だ噴き出している水道水と泥が混ざり合ったため
泥の内部からはボコンボコンと丸い頭蓋骨が浮きだしてくる。
徳井は泥スタンドの本体を目と鼻の先にして再び泥に捕らわれてしまうのか?
本体ではなく泥が喋りだす。

「・・・恐怖デ・・・魂ヲ濁ラセロ・・絶望ノ泥沼二沈メ・・・」

ちょうど頭蓋骨の口の中から発生している泥の泡がたどたどしく言い放つと
徳井の足元の2m四方の泥のマットから赤ん坊くらいの大きさの人型が
四体現れて端々から中心にいる徳井に向かってよちよちと貼ってくる。まるで地獄絵図のようだ。

「・・・パ・・パパ・・・パァパ〜・・・パャ〜ピャア〜!」

泥の赤ん坊たちは泥の口を大きく開けて叫びだすと犬のように徳井に飛びかかってきた。
あんなものに抱き憑かれたら徳井は泥人形になってしまう。
そして徳井を泥の赤ちゃんたちとともに泥沼の世界へ引きずり込まれて溺れ死んでしまうことだろう。
徳井ビッグパパは泥赤ちゃんたちの愛に包まれて安らかに眠りにつくのだ。

徳井の切開による脱出方法を知ってか知らずか泥マットの端々から一人づつ合計四人の泥赤ちゃんたちによる跳びかかり戦法に出た泥使い。
果たして徳井は泥赤ちゃんたちの攻撃を自力で回避できるのであろうか。それとも再び仲間たちの加勢があるのだろうか。

78 名前:よね ◆0jgpnDC/HQ [sage] 投稿日:2010/05/04(火) 20:10:37 P
よねにカズのスタンド、グリーン・Dの攻撃が当たる寸前。
カズはその拳を急に止めた。

「マズいな。これ以上の負担は九頭様にとってよろしくない」

カズがスタンドを自分の元へと戻す。

「良い事を教えておこうか。私のグリーン・Dの能力は、誰かの糧になること…では、また会おう」

一方的に言いたい事だけ言うと、地面に…留流家へと沈んでいった。
よねには何故彼が自分の能力を敵である自分に漏らしたのか。
それが疑問に思えて仕方なかった。

「糧になる事…か」

カズの能力を簡単に整理し終えた。   "ハーヴェスト"
そして、カズの能力が分ったこと以外にも 収 穫 があった。
それは九頭は自らのスタンドに取り込んだスタンド使いをエネルギーとして利用しているという事。
推測の域ではあるが、信憑性は高い。
もしもそうだとすれば、九頭はどんどん弱体化するはずである。
それこそが九頭龍一の唯一の弱点。そこを狙うしかない。

「とりあえず、誰かに合流しなくちゃな。さて、どう動くか…」

留流家はよねが思っているよりも複雑であった。
下手に動きまわれば逆に墓穴を掘ることになるだろう。
そこら中に埋まっているスタンド使いに襲われる可能性も捨てきれない。

スタンド能力はおしなべて強力なものが多い。
よねの能力がいかに強力だったとしても、すべて対処できるわけでもない。

(だからじっとしておくか…?それは愚かだ…
考えろ…考えるんだ。皆と合流できる方法を…)

大谷が近くにいるのだが、彼はすでに疲労困憊であった。
よねはカバンの中の物をどうにかして利用できないか…考えに考えた。
手当たり次第にカバンを探っていると磁石があった。
佐藤に渡した磁石の対の物だ。これは佐藤の磁石としか反応しない。

「これだッ!!Sum41ッ!この磁石の磁力は高くなるッ!」

グオッと磁石がよねの手から離れる。
すると恐らく佐藤がいるであろう方向へと磁石は飛んでいくはずである。
佐藤が同じ磁石を今も持ち続けているなら…だが。

79 名前:『蝉』 ◆HQs.P3ZAvn.F [sage] 投稿日:2010/05/04(火) 22:06:57 0
> 「よっしゃ今だ!葉を閉じろ!」
> 虫の群体がすべて葉の中に入ると一瞬で葉を閉じてしまった。
> モウセンゴケの時は無理をすれば助けることができるが、ハエトリ草だとそうはいかない。

「……はは、最後の最後で、『待ち』そびれたか。まさかこの俺が『待たれる』とは思わなかったな」

呆然と言葉を零しながらも、彼はふらりと歩き出した。
既に身体には微かな違和感が、丁度先程モウセンゴケに捕まった時と同じ感覚が疼き始めている。
だが、このゲームは彼にとっての『夏』なのだ。
最後の最後で、徐々に溶かされながら、遅々とした死への歩みを強制されるなど、彼は真っ平御免だった。
最期は一息に。燃え尽きるようにして、死んでしまいたい。

せめて最期くらいは『蝉』のようではなく。
鳴き声も掠れ手足を震わせた挙句、力なく木から転げ落ちるような無様ではなくて。
かつて岩内響が迎えられなかった、最後の最後まで相手に喰らい付いた末の死を。
高校球児に相応しい死を迎えたいと。

華やかな死への願望だけが、彼を衝き動かしていた。
徐々に徐々に、萩原の傍へと。

「蹴破れ……グラスホッパー……」
『プラントアワー』のハエトリ草は先のモウセンゴケの欠点をカバーしているが、
その分、モウセンゴケの際にはあった利点も損失している。
挟まれていると言う事は、蹴る場所があると言う事だ。
頑丈を極めるハエトリ草の内側を、しかし『グラスホッパー』は死力を尽くして蹴破りに掛かる。
全てを擲っての抵抗は、徐々にハエトリ草の表面に亀裂を走らせ――遂には『グラスホッパー』は、脱出を果たした。
ハエトリ草の内側から弾けるように四散した『グラスホッパー』が、周囲に点々と転がる。

「……さあ、決着だ。この状況から……アンタが俺を仕留めるのが先か……『グラスホッパー』が八方からアンタを貫くのが先か……」
萩原の射程、2メートルの内側に到達した『蝉』が、うわ言のように零す。
勝ち目など、ある筈がない。
全身の内外至る所が爛れ、意識は既に朦朧としている。
『グラスホッパー』も既に、十全の跳躍は出来ないだろう。
今となっては負ける為だけに『蝉』は立っていると言っても、過言ではない。

「これは俺の夏なんだ……最期の夏……。どうせお前らに九頭龍は倒せないんだ……。なら、どうして俺の夏を邪魔する権利がある……」

混濁した意識の中で呟くと、彼は決して萩原に届き得ない『グラスホッパー』を放った。

80 名前:吉野きらら ◆HQs.P3ZAvn.F [sage] 投稿日:2010/05/04(火) 22:08:14 0
> きららの声に気づいたのか少年が振り向く。実に自然な笑顔で。

しかし少年の笑顔に対してきららが抱いた感情は、安堵ではなく警戒だった。
何せ彼は本来この場所、『皇華学園の学生寮』前にいる事自体が異常な存在なのだから。
例えば異常な性癖を持つ殺人鬼が平凡なサラリーマンの姿をしていれば、
人外の化け物が人の皮を被って日常に紛れていれば、それ程恐ろしいモノはないだろう。
故に少年が彼女に向けて一歩踏み出した時、ゆったりとした動作で胸ポケットへと手を運んだ時、
少年の一挙手一投足に、吉野きららは気を張り詰め用心していた。

> ――そして徐に胸ポケットからコードレスのスタンガンを取り出し、きららに向かって襲いかかってきたのだ!

「……っ!」
咄嗟の出来事に、きららは息を呑む。
幾ら警戒していたとは言え、彼女は所詮ただの女子校生だ。
突然人に襲われたからと言って、適切な対処など出来る筈がない。
紫電を迸らせるスタンガンが彼女へと肉薄し、

「……一体、何のおつもりですか?」

だが既の所で、『メメント・モリ』が少年の腕を掴み止め、きららは事無きを得た。
彼女のスタンド『メメント・モリ』にはある程度の自律行動が可能である。
『リサイズサイズ』戦にて、きらら本人では到底見切れぬ鎌の軌跡を凌いでいたように。
きらら本人が昏倒でもしていない限り、自衛に関して『メメント・モリ』は反射的な行動が出来るのだ。

「先に言っておきますけど、私は寮暮らしなのでお金はありませんし、貞操がどうとか言い出す男性も好きではありません。
 それに……命をよこせと言われましても、承諾しかねますから、そのつもりでお願いしますね」

微笑みこそ絶やさぬまでも険しい口調で機先を制し、彼女は少年の腕に花を一輪芽吹かせる。
彼がスタンド使いで無いにしても、自分の腕が徐々におかしな方へ曲がっていく様は理解出来るだろう。

「それで、もう一度お尋ねしますね。一体、何のおつもりですか?」

81 名前:ボブ・バンソン ◆JvtTTnep1k [sage] 投稿日:2010/05/05(水) 12:58:02 0
>「……一体、何のおつもりですか?」

少年は途端に機械のように無表情になった。自分の腕が見えざる何かに押さえつけられても
抵抗する様子もなくスタンガンを落とさぬようにじっと体を強ばらせて身構えている。

>「先に言っておきますけど、私は寮暮らしなのでお金はありませんし、貞操がどうとか言い出す男性も好きではありません。
>それに……命をよこせと言われましても、承諾しかねますから、そのつもりでお願いしますね」

まだ答えない。とうとうスタンガンのスイッチを指で弄り遊び始めた。

>微笑みこそ絶やさぬまでも険しい口調で機先を制し、彼女は少年の腕に花を一輪芽吹かせる。
>彼がスタンド使いで無いにしても、自分の腕が徐々におかしな方へ曲がっていく様は理解出来るだろう。

>「それで、もう一度お尋ねしますね。一体、何のおつもりですか?」

「お前を殺す」
見知らぬ声だ、地獄から響くようなぞっとする声。ちょうど鮫がイワシの大群にへと緩やかに近づくときのような静かな息遣いで。
まだ見ぬ敵に緊張し固まりきったきらら、背後から水の鉄拳が迫る。

82 名前:ジャック ◆dcyVUjj8hhmZ [sage] 投稿日:2010/05/05(水) 13:40:37 0
【本体】
名前:ジャック・べネルソン
性別:男
年齢:24歳
身長/体重:230/380
容姿の特徴:長大な身長と筋肉達磨と形容するに相応しいほどの凄まじい体躯
人物概要:いつものんびりダラダラとしている巨漢。
       だが、その癖好戦的で喧嘩っ早い一面を持つ。
       実は肉体が過度に発達する遺伝病を患っており、人間離れした体躯もそれが原因である。
       ヒグマを殴り殺すほどの怪力と身体能力のため、自分や周囲を傷付けぬよう力を緩めてだらだらと行動している。
       また、その事で幼い頃からバケモノ呼ばわりされてきたため、怪物扱いされると激怒する。
       上記のことから本体の戦闘力は高く、パワーとタフネスに関しては常人と比して桁外れである。


【スタンド】
名前:マシーン・ザ・ジャイアント
タイプ/特徴:遠隔/パワー型(準操作型)
能力詳細:巨大ロボット型スタンドの手や足(それも普通自動車数台分以上の大きさ)を呼び出す。
       半径30m以内を射程圏内とし、圧倒的な「大きさ」と「破壊力」で全てを叩き潰す。
       また、巨体を用いて本体を庇う強固な「盾」ともなる。
       しかし、呼び出せる部分はスタンドの左手、右手、左足、右足のどれか一つずつである。
       呼び出せる時間も最長でも5秒であり、次に呼び出すためには前回呼び出した時間分経たなければ不可能。
       スピードや反射速度はさほどでもないが、射程圏内ではどこにでも瞬時に呼び出せるため迎撃力は高い。
       ただし、例外的に目に見える範囲にしか呼び出すことは出来ない。
       能力ではないが、スタンドの詳細を知らない相手に「全体を呼び出してやろうか?」というハッタリは有効。
       

破壊力-A スピード-C 射程距離-B
持続力-E 精密動作性-C 成長性-C

83 名前:よね ◆0jgpnDC/HQ [sage] 投稿日:2010/05/05(水) 16:35:53 P
/綾和の詳細忘れていたので。

【本体】
名前:よね 綾和
性別:男
年齢:36(留流家に取り込まれていなければ46)
身長/体重:184/61
容姿の特徴:普通の男性。袖の長いジャケットを着用。
人物概要:大学で心理学の講師を担当していた。
よねと同じく先天的に目が悪い。よねと違いコンタクトを使用している。
かなりの甘党で常に甘いものを携帯。スイカが好物。
SFマニアでもある。


【スタンド】
名前:グリーン・D(グリーン・ディ)
タイプ/特徴:遠隔/特殊型
能力詳細:本体の体力と引き換えに他のスタンド使いの能力を一時的に強化できる。
強化はただ純粋にパワーを上げたり、能力の効果を増幅させたりと様々。
本体の生命力を削ることで、削った分の時間分だけ他のスタンドを成長させることもできる。
例として、本体の寿命を1年削ることで他のスタンドはその1年間の成長を一瞬で終える。
ただし、対象となるスタンドがこれ以上成長しない場合は無意味。
同じように成長のスピードが極端に遅ければそれに比例して生命力を削らなければならない。
この時、成長するのはスタンドのみでその本体には何の影響も起きない。

破壊力-C スピード-B   射程距離-A
持続力-B 精密動作性-A 成長性-C


84 名前:荻原秋冬◇6J1m09mANS [sage] 投稿日:2010/05/05(水) 22:11:35 0
なんとかして再び虫の群体を捕まえたが。
防御が硬い為か溶かすのにかなりの時間がかかってしまう。

「くそっ!もう三分たったのにまだ溶けないのかよ」
その時、ハエトリ草から強い振動がきた。
虫の群体がハエトリ草から無理やり脱出しようとしているのだ。

「な!なにっ!?」
ハエトリ草に亀裂が入ってしまい、そこから虫の群体が飛び出してきた。

「なんてことだ…まさかプラントアワーのハエトリ草から無理やり脱出するとは…」
しかし、虫の群体は四方に散らばったものの、ほとんど弱っているみたいだ。
中の消化液を浴びて弱ったおかげか、最初に荻原を襲ったときとはスピードがぜんぜん違う。

だが…油断はできない。
スピードは落ちてもハエトリ草から脱出するパワーはあるのだから。
一歩間違えば荻原がやられてしまう。

「もう一度ハエトリ草…って、わけにはいかないか。
二度も同じ技は通用しないからな…」
すると荻原はプラントアワーから生えているハエトリ草を枯らして、
かわりに両腕からはとても長いバラが生えていた。
まるで血の色のような…鎌みたいな棘を持ったバラを生やしたのだ。

「こうなりゃやけくそだ。向こうはスピードが落ちたからすぐに決着をつけなきゃ。
このバラの鞭で一気に切り刻むしかない…」
そして周りにちらっばった虫の群体が再び襲い掛かってきた。
やはり最初に比べればスピードは落ちている。

「オラッ!オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラッ!!」
バラの鞭は次々と虫の群体を切り刻んでいった。
数は多いがほとんど防御が脆くなっている。
モウセンゴケやハエトリ草で徐々に消化したのがよかったのだろうか。

一匹…また一匹と、すごい速さで虫は切り刻まれていった。

「はぁ…はぁ…はぁ…な、なんとか…倒した…みたいだ…」
ほとんどの虫を切り刻んだがまだ安心できなかった。
本体の男にちゃんとダメージがきていなければ意味がない。

「…あまり…戻りたくないが…確認しなくちゃな」
荻原は来た道を戻り、最初に見たあの男の居る場所まで戻っていった。

85 名前:徳井一樹 ◆MnJrk02a/Yx. [sage] 投稿日:2010/05/05(水) 22:23:44 0

「しかしなあいつまでも…泥の塊とか泥の壁じゃあイマイチ呼びにくいぜッ!
ここはノリと勢いで…壁っぽい形だったしフラット・アース・ソサエティというのはどうかなッ!」

一人怪我をしながらノリノリで叫ぶ徳井。この男、アホである。
地中化に己の天敵が迫ってきているとは知らずに。
地面から、這い出てくるようなおぞましい、ホラー映画のような声がうっすらと聞こえてくる。

>「・・・恐怖デ・・・魂ヲ濁ラセロ・・絶望ノ泥沼二沈メ・・・」

猛スピードで足元を見る。地面はどろどろの泥と化しており、ところどころから頭蓋骨が露になっている。
頭蓋骨の口からブクブクと泥の泡がふいている。まるでゾンビか何かが徳井を奈落の底へ引きずりこもうとしているようだ。
極めつけには赤ん坊のような人型の泥の塊がこっちに這ってくるではないか。

「ぜ…全然フラットじゃあねえ」

>「・・・パ・・パパ・・・パァパ〜・・・パャ〜ピャア〜!」

甘えん坊の赤ん坊たちが、理解不能な叫び声をあげると徳井に飛び掛る。
その姿はまるで犬。犬続きである。今年の徳井は厄年か。

「キモチワリイんだよ!ギャングにはなったがパパになった覚えはねーーーッ!」

不幸にも足元も泥。問題なく足も既に捕らわれている。
地面から脱出する方法も叶わなくなってしまった。
それよりも先ず赤ん坊の跳びかかりを回避しなくてはどうにもならない。

「ようは…先に本体を倒せばいいんだろ?なら問題はねーよ」

徳井は自分の体に突き刺さっているナイフを引き抜くと本体めがけてセイヴ・フェリスでブン投げる。
柚木の時に使用した際にはほとんどがハズれたが、現在のセイヴ・フェリスは成長している。
壁に固定され動かない本体に命中させることぐらいはできる。

「ホラホラ…泥本体、スタンドでガードしなくちゃ死んじまうぜ?呑気してていいのか?」

86 名前:九頭龍一 ◆SM24/QbfAY [sage] 投稿日:2010/05/05(水) 23:09:34 0
>75
ほんの一瞬の隙を突かれ手痛い鉄肘を喰らった九頭は宙に浮いたまま蹲り、悶絶。
走り去る佐藤をただ見送る事しか出来なかった。
人間離れした九頭もやはり男、金的は弱かったのだ。

>「わかったわ!あなたの要求を呑んで『留流家』の一員になる。
佐藤が叫んだ瞬間、目の前に九頭が現われた。
相変わらず空中で、くの字にした身体で腰をトントンと叩いている。
その距離3m。
急所への鉄肘がかなり聞いたのか、それなりの距離は取っていた。

「ん〜。仲間に降伏を知られたくないという司令塔の最後の意地かな?」
大きく息をついた後、姿勢を正して睥睨しながら佐藤がここまで走ってからの了承の理由を口に出してみる。
腰をトントン叩いていた姿まで見られているので今更威厳もあったものではないが…
それより重大な事を佐藤は知っただろう。
走ってきたにも拘らず、悶絶していた九頭はそのままの状態で目の前に現われた。
即ち、留流家の効果範囲内であれば九頭はどこにでも自由に出現できるのだ。
距離や経過時間を無視して。
それだけでも九頭はこの戦いにおいて恐るべき力といえるだろう。
その強力すぎる力故の傲慢か、佐藤の思惑を読み違え、そして今、質問に応えようとしている。

「なるほど、確かに聞きたいよね。理由はいくつかある。」
佐藤から色よい返事をもらい気分良くして言葉が綴られる。
「これほど長く生きているとね、退屈になるんだよ。僕も、館に取り込まれたもの達も。
血湧き肉踊る娯楽を提供するのも家長としての勤めというものなのさ。
それに、たまには全力を出さないと鈍るだろう?
いつもの省エネモードの館や潜伏モードではなく、北条市全体を飲み込む力を発揮しなきゃ。
そしていつか世界を飲み込む程に大きくなる!」
満足気に応えるが、理由はそれだけではない。
いや、少なくとも九頭自身は正直に答えたつもりなのだ。
しかしその心の奥底にはもう一つ、真の理由がある。

ゲームを開催するという事は哀れな犠牲者を胃袋の中で弄ぶようなものだ。
だがそれは九頭にとってもリスクを負わせる。
戦いに晒される、と言うような単純な話ではない。
戦いにおいては殆ど無敵を誇る能力を持っているのだから。
ゲームを開催する事自体が…!
そしてそれこそが九頭がゲームを開催する自覚しない真の理由!

「誤解しているようだが、留流家は一つの家なんだ。
そして取り込まれた者達は皆僕の家族となる。」
手を翳すと佐藤の左右に新たなる壁がせり上がり、徐々にその幅を狭めていく。
このまま飲み込まれれば佐藤は留流家に取り込まれてしまうだろう。

閉じ行く壁を見詰める九頭の目が大きく見開かれ、宙を仰ぎ見る。
「美都留、響…逝ったか。祝福を。そして新たなる家族にも祝福を…!」
新たなるしわを刻むその目は限りなく優しかった。

87 名前:吉泉ムヅオ ◆BhCiwB2SCaJ5 [sage] 投稿日:2010/05/06(木) 14:35:32 0
徳井のスタンド『セイヴ・フェリス』の投げつけたナイフが
泥スタンド『フラット・アース・ソサエティ』の本体である
『吉泉ムヅオ』に目掛け正確に放たれる。

フラット・アース・ソサエティは泥でくわえ込んでいる徳井の足から伝わる生命の波動を
敏感に感じ投げナイフ攻撃を予測していた。
地中を進む徳井が地上の動きを振動で探知できるように吉泉ムヅオも
泥に接触しているモノの動きは自分の体の一部のように感じとれるのである。

突然、徳井の足元の泥から何かが飛び出すと投擲されたナイフに向かって急速に接近し
本体の前でナイフを弾き返した。と同時に泥赤ちゃんたちと徳井のまわりの泥沼が単なる土と化す。
泥赤ちゃんたちは徳井の体にぶつかると粉々になって地面に落ちた。

驚いた徳井が本体を凝視すると吉泉ムヅオの前には西瓜ほどの大きさの心臓のようなものが水流を吐き出しながらホバリングしている。
それはナイフを叩き落としたものの正体でありフラット・アース・ソサエティのまさに心臓であった。
本体をナイフから守るために重い泥の鎧を脱ぎ捨て泥の中から跳び出して来たのだ。

どすんと地面に落ちる心臓。
もの凄い量の水を地面に吐き出しながら吉泉が埋まっている壁の前に泥沼を作り始める。
スタンドの急所である心臓を見られたかぎり徳井を必ず抹殺しなければならない。
再び粘性の高い泥の肉を作成し纏うために心臓は必死で地中に潜ろうとしていた。

「・・・うぜぇ・・・おまい・・うぜえぜえぇ・・・」

本体である吉泉ムヅオが徳井を睨みつけながら、やっと言葉を発すると壁からけだるそうに抜け出てくる。
彼は用意周到に水中メガネと酸素ボンベを装備すると泥沼の中に飛び込み叫んだ。

「・・・っ!?・・ちくしょう!!」

緊急手段として泥沼の中に退避するつもりであったのだろうが
悲しいことに泥沼は、まだ吉泉の膝あたりまでしか出来ていなかった。
静かに見つめ合う吉泉ムヅオと徳井一樹。

「し、しかたねぇぜ〜おまいの頭蓋骨は生きたまま、削り出してやるぜ〜」

泥沼から心臓は跳び上がると吉泉のまん前でジェット水流を操りながら浮かんでいる。

「しょわっ!」
かけ声とともに心臓から無数に生えているノズルの一つがくるりと回転した。
すぱーんと徳井の足元の地面に切り込みが入る。土の切断面は深そうだ。
高圧で噴出している水圧の鞭。水流カッターとも言えるものだろうか。

「しょわっ!しょわっ!しょわしょわしょわしょわしょわ!!」

無数のノズルが徳井に向かって回転する。噴き出している水もスタンドの一部であるから
セイヴ・フェリスでガードしたとしてもタダではすまないだろうし
水流カッターの乱刃で守られてはいるもののフラット・アース・ソサエティの心臓はむき出しになっている。
まさに諸刃の剣だ。勝負は一瞬で決まる予感がする。

88 名前:吉泉ムヅオ ◆BhCiwB2SCaJ5 [sage] 投稿日:2010/05/06(木) 15:58:53 0
【本体】
名前:吉泉ムヅオ
性別:男
年齢: 29
身長/体重:168/98
容姿の特徴: 水着姿で惜し気もなく怠惰な裸体を晒している。
人物概要: 20年前に留流家の一員となった変質者。
大学時代は考古学を専攻しており、とある発掘現場で生き埋めとなる。
その折に掘り出して回収していた矢が偶然体に突き刺さりスタンド能力が開花。
(その後、矢は紛失してしまう)
生き埋め事件のトラウマによって人が変わったかのように見事な変質者に
生まれ変わってしまった。人骨集めが趣味。

【スタンド】
名前:フラット・アース・ソサエティ
タイプ/特徴:遠距離型(準操作型)
能力詳細: 一見すると粘性の強い泥のスタンドだが、その正体は西瓜ほどの巨大心臓。
地上では血液を彷彿とさせるスタンドエネルギーを放出させながら空中を移動するのだが
エネルギー消費があまりにも多大なため地中に潜り込みスタンドエネルギーを対流させつつ
循環を繰り返しエネルギー消費量を押さえている。その際泥と混じったフラット・アース・ソサエティの
スタンドエネルギーは粘性の強い肉体となり心臓を守る泥の壁ともなる。

破壊力-B(心臓時A) スピード-C(心臓時A) 射程距離-A
持続力-A(心臓時E) 精密動作性-E 成長性-E


A-超スゴイ B-スゴイ C-人間と同じ D-ニガテ E-超ニガテ
射程距離の目安
A:100m以上 B:数10m(50m) C:10数m(20m) D:数m(5m) E:2m以下

89 名前:佐藤ひとみ ◆tGLUbl280s [sage] 投稿日:2010/05/07(金) 00:11:09 0
>「ん〜。仲間に降伏を知られたくないという司令塔の最後の意地かな?」
徳井や荻原の戦場から九頭を引き離すために反対方向に逃げたひとみの前に瞬間移動のように現れた九頭。

急所攻撃の痛みを宥めている滑稽なその姿からも憎らしい程に余裕を感じる。
この圧倒的な余裕があらゆる他人をどこかで小馬鹿にしているひとみにその余地を与えないのだ。
今まで出遭ったどの人間とも決定的に違う……そこがひとみを惹きつける。

九頭の説明によるとひとみの予想は外れだった。
留流家は密度を薄めて展開しているのではなく寧ろ館としての形の方が密度を薄めた省エネ状態。
九頭が本気を出して力の密度を高める程、留流家の範囲は広がっていく。
留流家に展開によるパワーの低下など無かったのだ。この戦略は失敗、だが時間稼ぎは継続中だ。


続けてゲームの理由を話す九頭。
だが、ひとみが聞きたかったのはそんな『ただの暇潰し』みたいな答えじゃない。
あの時見た白昼夢のようにもっと心の奥深くの理由…。

九頭龍一が手にしている菊の印を戴いた日本刀をひとみは白昼夢の中で見ている。
日本刀を腰に佩いた幻の中の九頭は覇気に満ちていた。
現在の…いや、初めて出会った時の九頭と姿こそ同じものの、あの頃のような覇気や熱さは既に感じられない。
九頭の感情を受信した時にうっすらと感じていたことだが……この男の精神は既に斜陽の気配を見せている。
そして九頭自身も心の何処かで其れを感じているのではないか。
覇気に変わって増強する狂気はその顕れ。
留流家で世界を呑みこむなんて狂気じみた考えも、逆に涸れていく精神への焦りから生まれたものかも知れない。

『だがそれもいい』

美しい落日の夕陽と共に沈む運命も有りかもしれない。
両側に迫り出してくる肉の壁の内側でそんなことを考えるひとみ。
今は地上に降り立ち壁の前に立つ九頭。取り込まれる自分を見つめる九頭の視線にひとみは射竦められた様に動けない。

刹那、九頭は強風を受けた大木の枝のように一瞬大きくみじろいだ。
九頭の顔に刻まれる新な皺と白髪。宙を仰ぎながら呟く九頭。



> 「美都留、響…逝ったか。祝福を。そして新たなる家族にも祝福を…!」
ひとみはその言葉にハッとする。

「『家族』?…家族って何よ……?
ひょっとして私の扱いってそこら辺に埋まってるその他大勢と同じなワケ…?
さっきはプロポーズみたいなこと言っておきながら何よぉ〜?!」

90 名前:佐藤ひとみ ◆tGLUbl280s [sage] 投稿日:2010/05/07(金) 00:15:54 0
九頭の優しい目線は柚木美都留や元高校球児にも同じように注がれていた。
他と同じレベルの扱いなど無駄にプライドの高いひとみには我慢できない。
あくまでオンリーワンでなければその身を擲つ価値がないのだ。
もやもやと頭を擡げる怒りにも似た感情がひとみの正気を取り戻す。

突如九頭の後ろに透明化し潜伏していたフルムーンが姿を現す。
ピアノ線の固さにした束ねた触手で日本刀をその手から叩き落とすと一瞬の内に九頭の手足を雁字搦めにした。
さらに念入りに粘液で結び目を癒着させると触手を切り離す。
いくら九頭とはいえピアノ線の固さのロープで後ろ手に縛り上げられては拘束を解くまでにしばし時間がかかるだろう。

迫り来る肉の壁から飛び出したひとみは
フルムーンのケースの裂け目からズルリと生えてきた新しい触手を腕に絡めスタンドと共に透明化した。
留流家が密度を薄めて人知れず潜伏できるようにフルムーンだって姿と気配を消して潜伏することができるのだ。
パワーの無いスタンドに備わった相応の防御法である。


逃げる前に声だけで九頭に問いかけるひとみ。

「悪いけどみんな平等の家族愛なんて真っ平!特別扱いされなきゃ意味ないの!!
それと!あなたひょっとして留流家から出られないんじゃないの?
留流家を世界中に拡げるなんて馬鹿げた考えが湧くのもそのせいね?
答えは後でいいわ!せいぜいそこでゆっくり考えてね!!」


勘に頼った暴言めいた言葉を残して佐藤ひとみは脱兎のように去っていく。

逃げながらシートで協力者全員の位置を確認すると、よねが近くまで来ている。
透明化できるのは2、3分だが3分あれば充分よねと合流できる。
更に九頭が手足の拘束を解くまでにかかる時間の余裕があればそのまま荻原か徳井達と合流するつもりだ。
ひとみが時間稼ぎをしている間に2人のスタンド使いの反応が消えた。その分九頭は弱体化しているはず。
あとは全員で九頭を含めた混戦に持ち込む予定だ。


(大谷さんwikiの編集ありがとうございました!大谷さんにあんな過去があったとはぁ〜(涙
避難所に連絡事項があったりしますので良かったらたまに避難所の方も覗いてみてください)

91 名前:『蝉』 ◆HQs.P3ZAvn.F [sage] 投稿日:2010/05/07(金) 00:34:47 0
『グラスホッパー』は、次々に切り刻まれていく。
しかし必死の対処に執着した萩原には気が付けなかっただろうか。
彼の薔薇の鞭が捉える前から既に、『グラスホッパー』達は半透明に薄れ、崩壊を始めていたのだと。

『グラスホッパー』は、『蝉』が狩る者として、二度目の夏を十全に過ごしたいと言う願いが形となったスタンドである。
彼が『岩内響』であった頃に発現したスタンドは、ただ朧気に虫の性質を併せ持つだけだった。
それから『留流家』の内で十年もの年月を過ごし、その中で形を得たスタンドだからこそ、『グラスホッパー』は強力だった。

だが『蝉』が敗北を確信した今、『夏』の終りを悟ってしまった今。
最早『グラスホッパー』は、萩原に破壊されるまでもなく、自ずと『死』を、自壊を迎えたのだ。

『蝉』は茫然自失の態を晒し、立ち尽くしている。
スタンドを失った事で『留流家』からは解放されたが、同時に彼は生き甲斐を失った。
今更『岩内響』として生きる事も出来ず、『夏』は終わってしまったのに、彼は生きている。

彼の様子を伺うべく駆け付けた萩原にも僅かに一瞥をくれただけで、『蝉』は何処かへと歩み去ってしまった。
まるで蝉の抜け殻が、風に揺られ吹き飛ばされていくように。


本体名:『蝉』
スタンド名:『グラスホッパー』

【戦闘不能】
【再起――??】

92 名前:吉野きらら ◆HQs.P3ZAvn.F [sage] 投稿日:2010/05/07(金) 00:40:06 0
> 「お前を殺す」
> 見知らぬ声だ、地獄から響くようなぞっとする声。ちょうど鮫がイワシの大群にへと緩やかに近づくときのような静かな息遣いで。
> まだ見ぬ敵に緊張し固まりきったきらら、背後から水の鉄拳が迫る。

少年の不自然なき笑顔からはとても連想出来ない声に、きららの身体は一瞬硬直する。
焦燥に衝き動かされ背後を振り返るが、十全の防御はとても間に合わない。
彼女に出来たのは直撃を避けるべく『メメント・モリ』を立ちはだからせ、身体を丸める事くらいだった。

「きゃっ……!」
派手に吹っ飛ばされながらも、きららは『メメント・モリ』の片腕に抱き支えられ、地面への衝突は避けられた。
同時に『メメント・モリ』は空いたもう片腕を少年へと突き付ける。
腕だけではなく全身に、蕾や種を植え込むべくだ。
とは言え距離がある上に、殴られた腕や脇腹の痛みがきららの制御を阻害している。
完全に咲かせ切る事は到底叶わない、牽制程度にしかならないだろう。

状況を構成する要素は酷く、彼女にとって不利な物だった。
相手の能力もろくに分からず、打撃によって乱れた呼吸はすぐには治らないだろう。
だが彼女に味方をする要素が二つだけ、この場に存在した。
それは――


「……誰か、助けて下さい! この人が急に、襲いかかってきて!」

ここが『皇華学園の学生寮の門前』であり、彼女が『皇華学園の生徒』である事だ。
門の内側には警備員の詰所があり、更にはきららの容姿は、往来の人々の無闇な正義感を煽る。
数人の男が少年へ迫ったのを認めると、すぐさま彼女は逃走を図った。
一般人の男達はもしかすると酷い目に遭うかも知れない。
だが自分の幸福のみが行動原理である彼女は、そんな事は気にも留めなかった。

93 名前:レナ・オリン ◆BhCiwB2SCaJ5 [sage] 投稿日:2010/05/08(土) 14:40:23 0
>>52(大谷杉松さん)
スタンド能力の乱用から疲弊し朦朧とした意識の中、亡き恋人のことを思う大谷杉松。

夢かうつつか辺りには甘い匂いが漂っている。甘美な女の香りだ。

疲れている大谷は無意識で鼻から息を吸い込む。
意識をどろどろに溶かしてしまいそうな甘い香りだった。

「我々の本性は怠惰に傾いている。だが我々は活動へと
心を励ます限り、その活動に真の喜びを感ずる…。…ゲーテの言葉よ」
どこからか聞こえる艶やかな女の声。

「私の名前はレナ・オリン。大谷杉松…あなたは喜びを感じているのかしら?」

香りの濃度は増してきていた。周辺がうっすら桃色に見えるほどの瘴気が漂い始めている。

杉松はやけに頭が重いと感じていた。
気がつけば大谷杉松の顔は脂肪で2倍くらいに膨れ上がっている。これは明らかにスタンド攻撃だ。
驚いた杉松は武器を取り出そうとしたのだが手にも脂肪がつき始めていた。
本来脂肪などつかないはずの指の爪の中も盛り上がり始め小指の爪が自分の肉で弾け跳んだ。

「くす。これが私のスタンド『メープルハニー』の能力よ。どうにかしないと、
あなた…お肉が破裂するまでふくらんじゃうわよ」

杉松の首筋には妊娠線のようなものが浮き出てくる。内部から皮膚が引き裂かれ初めているのだった。

94 名前:レナ・オリン ◆BhCiwB2SCaJ5 [sage] 投稿日:2010/05/08(土) 16:28:42 0
【本体】
名前:レナ・オリン
性別: 女
年齢: 30
身長/体重:172/44
容姿の特徴: 胸まで垂らした美しいブロンドの髪に三日月のように美しい眉。
まさにモデルのような長身の美女。
アントニオ・マラスのノースリーブカットソー(濃い紺)に
大きなフラワープリントのほどこされているスカートをはいている。
真っ赤な唇と赤いミュールがポイント。
香水はクリスチャン・ディオールのピュア・プワゾン。

人物概要: 見た目だけの人と思われたくないためゲーテなどを
読みあさっているのであるがほとんど意味はわかっていない。
つい最近、永遠の若さを保ちたいがために留流家の一員となった。



【スタンド】
名前: メープルハニー
タイプ/特徴: 近距離パワー型。
鎧の魔人の体の部分に美しい乙女が十字架にかけられた様な姿ではりつき一体化している
といった具合にスタンドの形状はかなりの悪趣味。
能力詳細:鎧の隙間から、触れると脂肪がついてしまう甘い瘴気を発生させる。


破壊力-A スピード-A   射程距離- D(発生する瘴気はC)
持続力-C 精密動作性-C 成長性- E


A-超スゴイ B-スゴイ C-人間と同じ D-ニガテ E-超ニガテ
射程距離の目安
A:100m以上 B:数10m(50m) C:10数m(20m) D:数m(5m) E:2m以下

95 名前:大谷杉松 ◆vReXCpsNBKcm [sage] 投稿日:2010/05/08(土) 17:38:07 0
意識の無い大谷、甘い香りに気付き目を覚ますと目の前に一人の女性がいる…

>「我々の本性は怠惰に傾いている。だが我々は活動へと
 心を励ます限り、その活動に真の喜びを感ずる…。…ゲーテの言葉よ」
>「私の名前はレナ・オリン。大谷杉松…あなたは喜びを感じているのかしら?」

喜びだかなんだか知らないがここにいるという事は能力者なのだろう…
周りには桃色の霧が出ている、甘い香りの正体だろう。

『スギマツハナレテ! コウゲキハハジマッテイルワヨ!』

>「くす。これが私のスタンド『メープルハニー』の能力よ。どうにかしないと、
 あなた…お肉が破裂するまでふくらんじゃうわよ」

甘い香りのせいか判断が遅れる大谷、
桃色の霧から離れるも少し遅かったようで自分の小指の爪が弾け飛ぶ…
なんと自分の体が丸々と太ってしまっているではないか!
彼女の能力だろうが彼女のスタンドは見るからにパワー型、自分のスタンドでは分が悪いか…

「動きにくいな…太るってのはこんなに大変なのか…」

これでは武器も満足に使えない、移動による体力消費も激しいだろう、

「任せていいか、スマートガントレット。 今の俺では肉団子になって終わりだ。」
『マカセルッテイワレテモ…ドウスルノヨ!』
「お前だけが頼りなんだ、たのむぞ」
『…ショウガナイワネ イイワヨ ヤッテアゲル タショウノダメージハガマンシテヨネ!』

スマートガントレットに武器を預け突撃させる、大谷は相手の霧が届く範囲外に待機し
能力の影響を受けないスマートガントレットが攻撃に向かう!

96 名前:ボブ・バンソン ◆JvtTTnep1k [sage] 投稿日:2010/05/08(土) 21:43:42 0
>「……誰か、助けて下さい! この人が急に、襲いかかってきて!」

>ここが『皇華学園の学生寮の門前』であり、彼女が『皇華学園の生徒』である事だ。
>門の内側には警備員の詰所があり、更にはきららの容姿は、往来の人々の無闇な正義感を煽る。
>数人の男が少年へ迫ったのを認めると、すぐさま彼女は逃走を図った。
>一般人の男達はもしかすると酷い目に遭うかも知れない。
>だが自分の幸福のみが行動原理である彼女は、そんな事は気にも留めなかった。

「やれやれ――シャイニング!」
少年が叫ぶと周囲が太陽のように輝きだした。
「うわ、なんなんだ!?」
警備員の男たちは視界が突然閃光に包まれてしまい浮き足立った…目が痛い。光はなお強くなっていく。
「く、くそう…ハッ」
一人の警備員が自分の周りだけ光りに照らされず黒ずんでいるのに目がいった。そしてそれは彼が見ている中で徐々に大きなり
輪郭が現れ、目、鼻、口までハッキリしてくると…首元に掴みかかった!
「オ゛マ゛…エ゛…オ゛ゴ…ロ゛ス゛」
「ひぃぃ!」
「さぞ恐ろしいことでしょう、それが僕のスタンド『シャイニング』です。あなたは身も心も死に絶えるでしょう」
警備員たちに襲いかかる異形の“何か”はゆっくりと覆いかぶさるように広がっていた、あまりの恐怖に一人は発狂し残りは心神喪失に陥り抵抗する様子もない。
「では、光のなかでゆっくりとお休みください――」
闇が消え、光もそれにつづいて薄まっていき、消えた。後には石像のように固まった男たちと整然としている少年が突き立っているだけだった。


「――あざやかだったぞ、いつにもまして素晴らしい働きだった黎土」
「酷いですよ!また僕の記憶を操作しましたね?」
黎土と呼ばれた少年は口を尖らせて足元の水溜りに抗議する。誰か人がいればまず彼に大丈夫ですか?と真摯に接してくれるのではないだろうか。
「この場所に潜入するために周辺の水道をしらべてみたが…外部からは隔離されていて入れそうにもなかった。
ならばと正面からいこうとすればあの詰め所だ。俺では目立つ…適材適所というヤツか、お前がベストだ」
「だからって僕ですか!ここ見た限り女子高ですよ…それもお嬢様学校って感じですね。一度は来てみたいと思って…ゴホン、失敬。
とにかくこれ限りにしてください。次回もあったらあなたとはいえタダじゃ済ましません!……周りが騒がしくなって来ましたしね。では!」
一頻りしゃべりきって気分が晴れたのか黎土は清々しい顔で足早に去っていった。
途中、門の前で走っていったきららにぶつかりそうになって転び、手を差し伸べられて「ありがとうございます」と答えた矢先また転ぶと
顔を真赤にさせてどこかえ消えていった。

水溜りは問の周りの風景を映し出していた、へたり込む少年とそれに手をさしのべる少女…
「吉野きらら…お前はルルイエにとっても俺にとっても害悪!消させてもらうぞ」






97 名前:よね ◆0jgpnDC/HQ [sage] 投稿日:2010/05/08(土) 23:37:53 P
ガチィンッ!!

手から離れた磁石が留流家の壁に直立する。
それはつまり、その方向に佐藤の持つ磁石があるという事。

「あっちか…佐藤さん…待っててくださいよ…」

全速力で留流家の廊下の角を駆け抜ける。
それは置いてきてしまった大谷への贖罪という意味でもあった。
               トゥルース
確実に、着実に、自分は"真実"へと向かっている。
留流家の柱を一本追い越すごとに、まるで幾重にもなった壁を突き破って走るかのように感じられた。
10年前、どういう気持ちで父親は取り込まれ、今はどうなっているのか。
走り続けて、風を感じているとその答えに近づいてきているような気がしてならなかった。
それほどカズの出現はよねに大きな影響を与えた。
そう感じながら廊下を走り続けていると、

"Run For Answer,To Far Answer"

突然、頭の中に響き出す声。
それは誰かからのメッセージ。中学校の様な英語だが、よねには上手く聞き取れなかった。
よねの知識によるものではない。何故か、ぼやけて聞こえてしまうのだ。

「誰…?新手のスタンド使い…?」

そんな事はない。何故かわかってしまう。この声の主は敵でもない、味方でもない。
だが、どういうわけかその声には何か神秘性の様な物があった。
まるで、目の前に巨大な雲海が急に広がるように。
まるで、生命の誕生に立ち合わせたかのように。
よねは自分自身がとてつもなく眩しい、穢れのない光に洗われた気がした。

走り続けていると、ふいに何かの気配を感じた。
透明な何かがそこに居る。

「この感じは…佐藤さんですね?」

98 名前:九頭龍一 ◆SM24/QbfAY [sage] 投稿日:2010/05/09(日) 00:13:32 0
>90
「やれやれ、女心は難しいな。」
不用意な一言が佐藤の意識を覚醒させ、寸前のところで留流家の壁から身を躱す。
それどころか潜伏していたフルムーンによって手足を縛り上げられてしまった。
にも拘らず九頭の言葉とは裏腹にその声には怒りも憎しみもこもっていない。
強いて言うならば愉悦の感情が込められている。

>それと!あなたひょっとして留流家から出られないんじゃないの?
>留流家を世界中に拡げるなんて馬鹿げた考えが湧くのもそのせいね?
>答えは後でいいわ!せいぜいそこでゆっくり考えてね!!」
姿を消しながら暴言めいた言葉を残して走り去っていく佐藤を九頭は薄ら寒い笑みを浮かべながら見送った。

>97
>「この感じは…佐藤さんですね?」
「ほう、君にもわかるのかね。正解だ。」
よねの言葉に応えた声は頭上から。
発したのは褌一丁で手足を縛られた男。
何かのプレイの最中かと間違えてしまいそうだがさに非ず。
老齢に足を踏み入れようとしているかのような壮年の九頭龍一だった。

「久しぶりの対面だと言うのにこんな姿でスマンね。少し待ってくれたまえよ。」
よねを見下ろす九頭の頭上には直径1m程の王冠が浮いていた。
王冠は白い光柱を照射すると、見る間に九頭の身体に、そしてその下の地面に霜が発生する。
ふん!と言う声とともに九頭を拘束していたロープは砕け、自由を取り戻す。
「これはフリージングクラウンといってね、この王冠を被るものに極寒の光柱を注ぐだけのスタンドさ。
借り物だから私自身にも少し影響を及ぼしてしまうのが難点だな。
流石にこの格好では少々冷たかったよ。」
笑いながらこのスタンドもまた留流家に取り込まれたスタンド使いのスタンドだと説明を加える。
極寒の光柱によってロープを凍らせ粉砕し、自由を取り戻したのだ。

しかしここで気付くだろうか?
今までの狩るモノたちのスタンドに比べ随分と戦闘能力が落ちているスタンドだ、という事を。
実は戦闘に特化したスタンドと言うのはそれほど多くはない。
狩るモノに選ばれず館の一部であり続けるスタンドはあまり戦闘に向かないスタンドの方が多いのだ。
ロープを切ったり破壊するスタンドを使わず、フィールドバックがあるにも拘らず自分ごと凍らせ粉砕する方法を取ったのは、そうせざる得なかったからなのだ。

「さて、かくれんぼは無駄だよ。
言ったろう?留流家は北条市全体を覆っている。
その中にいる君たちは私の胃袋の中を駆けずり回っているに過ぎない。
姿を消そうが何処に隠れようが触覚として把握できるのだからね。」
九頭の視線は確実に透明になり見えぬはずの佐藤に向けられていた。

99 名前:徳井一樹 ◆MnJrk02a/Yx. [sage] 投稿日:2010/05/09(日) 10:17:22 0

泥の赤ちゃんは足元の泥とともにただの泥と化し、目の前には西瓜ほどの大きさの心臓のような物が浮かんでいる。
そして留流家の一部となっていた泥の本体が壁からするりと抜け出てきたのだ。
水着姿で。

何処から取り出したのか水中メガネと酸素ボンベを装備し泥沼に飛び込む。
しかし泥沼はまだ膝あたりまでしか形成されておらずなんとも滑稽な構図となってしまった。

「……なかなか面白いギャグだな。戦闘中じゃなけりゃ爆笑してやってるがね」

>「しょわっ!」

目の前の変質者の掛け声と共にノズルのような部分から噴出する水がカッターのように走る。
威嚇攻撃なのか、それともうっかりはずしたのかは理解し難いが鞭の様な水流カッターは徳井の足元の地面を切り裂いた。
さっきの狙いすましたようなギャグとのギャップのお陰でイマイチ緊張感に欠けるが恐ろしい切れ味だ。
流石の徳井も生ツバゴクリものである。

「ようはスタンドが脱衣したワケね…それがテメーのスタンドの真の姿ってことか」

圧倒的な切れ味と成長したセイヴ・フェリスにも勝るとも劣らないスピード…
欠点をあげるならば弱点の心臓が剥き出しなのとその攻撃は成長前のセイヴ・フェリス並みに大雑把で適当ということぐらいか。
しかしあの切れ味では大雑把な攻撃が逆に怖い。ヤク中のギャングがナイフを振り回すのと同じで凄く危なっかしいのだ。
回避に徹していればなんとか避けられないこともないが。

「(俺のセイヴ・フェリスの射程距離は2メートル…目測で射程内まで後12メートル弱か。
どうにかして近づくか…ってのが問題だな)」

>「しょわっ!しょわっ!しょわしょわしょわしょわしょわ!!」

徳井がのらりくらりと敵のスタンドについて考えている内に水流カッターは鞭のようにしなり、徳井に襲い掛かる。

「うおおおおおおお!?」

上体を捻らせ、間一髪攻撃の回避に成功した徳井。
そのまま徳井は吉泉と心臓のようなフラット・アース・ソサエティの方向へと突っ込んでいく。

「上等だぜ…!ウルトラ○ンモドキみてーなかけ声あげやがって!ぶっ倒してやるッ!」

徳井は突っ込みながら吉泉に語りかける。フラット・アース・ソサエティの無茶苦茶な攻撃を回避する中で、
避け損ねた水流カッターで肩を切られ、血が噴出す。それでも攻撃をギリギリで回避しながら徐々に近づいていく。

「『ここ』だぜ……セイヴ・フェリス!」

水流カッターの攻撃が徳井の腕をかすめる。その直後、セイヴ・フェリスは徳井に刺さっていたナイフを投擲した。
それは敵の本体にでもスタンドにでもない。

「高圧電線だ。てめーの水流カッターと同じで避けるしかねーぜ?
ま、避けたら避けたで瞬間に俺のセイヴ・フェリスをブチこませてもらうけどよォ〜〜〜〜〜っ」

ナイフは高圧電線の一本を切り裂き、フラット・アース・ソサエティに向かって落下してくる。

100 名前:吉泉ムヅオ ◆BhCiwB2SCaJ5 [sage] 投稿日:2010/05/09(日) 12:41:22 0
>「高圧電線だ。てめーの水流カッターと同じで避けるしかねーぜ?
>ま、避けたら避けたで瞬間に俺のセイヴ・フェリスをブチこませてもらうけどよォ〜〜〜〜〜っ」

ナイフで切断された一本の高圧電線がフラット・アース・ソサエティに向かって落下してくる。

「ぐふふ・・・避けるしかねえ?それなら遠慮なく避けさせてもらうぜぇ・・・
おまいに向かってなあああっ!!」

心臓から生えている無数のノズルがいっせいに下を向くと、すべてのスタンドエネルギーが
地面に向かって放出される。と同時に吉泉は心臓にしがみつく。

「と・つ・げ・き〜〜!!」

掛け声とともにロケットのように徳井へ向かって発射される吉泉&フラット・アース・ソサエティ。

「しょわあああああ!!」

フラット・アース・ソサエティは一瞬でセイヴ・フェリスの刃圏に突入すると
徳井の目の前で上空に向かって急激に方向転換をする。すると時間差で心臓から
流星の尾のように噴出しているスタンドエネルギーが徳井を真っ二つにするべく
もの凄い勢いで下から巻き上がってきた。

「真っ二つだぜえええっ!!しょっわあーいっ!」

すでに上空高くまですり抜けているフラット・アース・ソサエティと吉泉は歓喜の叫びをあげている。

101 名前:よね ◆0jgpnDC/HQ [sage] 投稿日:2010/05/09(日) 13:07:40 P
/「ほう、君にもわかるのかね。正解だ。」

「九頭…龍一…?」

明らかに違った。はじめて見た時よりも年を取っている。
だがその力は九頭龍一のものである。
ここでよねの推測が正しかったことが証明された。

(九頭龍一は取り込んだスタンド使いによって若さを保っている!
そして10年おきに若さを保つためのスタンド使いを取り込む!!)

だが、いくら九頭を弱体化させたところで留流家のコントロール能力は失われないだろう。
そもそも九頭自ら戦う必要など無いのだ。
実際に今も"フリージングクラウン"と呼ばれるスタンドを使った。
これも取り込んだスタンド使いの能力だろう。
だが、よねには不思議に思えて仕方なかった。
何故、九頭が自らにも影響を及ぼすスタンドを使ったのか。
何故、九頭が取り込んだスタンド使いを一斉に解放しないのか。
その答えは今のよねには見当もつかなかった。

/九頭の視線は確実に透明になり見えぬはずの佐藤に向けられていた。

九頭が余裕の表情を浮かべた視線の先は佐藤の気配を感じたところであった。
よねがその透明の佐藤を認知するまで時間はかかったが、
九頭が佐藤を認知するのに1秒もなかっただろう。
その光景を目にしたよねは自分の顔から血の気が引くのを感じた。

「九頭龍一…恐ろしい…」

102 名前:徳井一樹 ◆MnJrk02a/Yx. [sage] 投稿日:2010/05/09(日) 15:31:50 0

>「と・つ・げ・き〜〜!!」

フラット・アース・ソサエティから流れ出る水を水流カッターとして使うのではなく
ロケットのように噴射し、こっちに向かって突っ込んでくる。
徳井の目の前で急激に方向転換し、上空へ逃れる。

「あーーー何か嫌な予感すんだけど」

その予想は当たっていた。
ロケットのように噴射した水流は急激に方向転換したために時間差で下から巻き上がってくる。

「嫌な予感、超的中……避けるにはこれしかねえよなあ…でもこれだけは絶対に痛いぜ…ハンパじゃあねえ」

セイヴ・フェリスが徳井の腹を全力でぶん殴り、衝撃が徳井の体を駆け巡っていく。
その殴った衝撃で後方へ吹っ飛び、巻き上がってくる水流の回避に成功した。

「ゲホッゲホッ!!イデーーイデッ!あーーーチクショーーテメーこのオトシマエどーつけてやろーーかッ!」

空高く上空へ飛び上がっている吉泉を見つめて苦しそうに言う徳井。

「ところでお前のスタンド、巻き上がっていく水を上手く操作することって出来んのか?」

徳井は上空へいる吉泉へ素朴な疑問を口にする。
特に意味はなくただ単に気になっただけである。

「いや……別に深い意味はねーよ。
さっき切断した高圧電線の柱を、吹っ飛ばされたときに根元から切開してやったから、触れたらマズいんじゃあねーの?ってだけだ」

電柱が倒れ、唯一の支えである電線がブチブチと千切れる。
電線が全て切れ、支えを失った電柱は高圧電線と共に巻き上がっていく水に向かって倒れこんでいく!

103 名前:レナ・オリン ◆BhCiwB2SCaJ5 [sage] 投稿日:2010/05/09(日) 16:01:22 0
>「お前だけが頼りなんだ、たのむぞ」
>『…ショウガナイワネ イイワヨ ヤッテアゲル タショウノダメージハガマンシテヨネ!』

「ふーん…。貧相なスタンドね。あなたスマートガントレットでしょ?九頭さまに聞いてるわよ
でも本体を瘴気の影響が及ばないとこまで逃がしたのは大正解。
まっ、遠距離操作型じゃなければ出来ない芸当なんでしょうけれど…」

確かに瘴気から脱出した大谷の異常な肥満は見る見るうちに解消されていた。
脂肪でタコのように肥大した頭部も元に戻っている。

「人間は行きたいほうへ行くがよい。人間はしたいことをするがよい。
しかし人間は、自然が描いている道へ必ずまた戻ってくるに違いない…。
わかるかしら?ゲーテの言葉よ」

そうレナ・オリンは語ると己のスタンド「メープルハニー」の巨大な拳で
スマートガントレットの攻撃を軽く弾き返す。

「突撃してくるのって何か考えがあってのことなのかしら?射程内の戦いだったらパワーもスピードも、
みーんな私のほうが上なのにね…」

余裕のレナは首をかしげながらにっこりと微笑んでいる。

「本来なら私ね。あれよ。チ…チチカラ?ち…ぢから…えっと…なんて言ったかしら。
…ち…りょく…。そう知力よ!私は知力を使った戦いが得意なのっ!!
そうよ。ゲーテを読んでいるからぁゲーテをぉ!」

そう言っておきながらレナはメープルハニーで思いっきりスマートガントレットをぶん殴った。
スタンドは本体である大谷にむかって吹き飛ばされてゆく。

「ほら、戻っていったわ。ゲーテの言うとおりね」

スタンドから瘴気を出しながら再び大谷に近づいてゆくレナ。

「したいことをするがよいってゲーテも言っているし、私もするわ。
あなたを太らせて大爆発させたいわ。だって私…肉割れ杉松を見てみたいんだもの」

現在レナと杉松の距離は約20メートル。
その距離はどんどん縮り杉松の体が再び膨張してゆく。

104 名前:吉泉ムズオ ◆BhCiwB2SCaJ5 [sage] 投稿日:2010/05/09(日) 17:06:40 0
徳井はセイヴ・フェリスで己の腹を全力でぶん殴り、巻き上がってくる水流の回避に成功する。

>「ゲホッゲホッ!!イデーーイデッ!あーーーチクショーーテメーこのオトシマエどーつけてやろーーかッ!」

「しょげええ!!あのやろうっ!!なんてかわしかたしやがる!!クレイジーなやろうだぜええ!
あんなキ○ガイみたいな発想してるやろうとまともに戦えるかよおお!」

吉泉はそのまま飛び逃げして体勢を整えるつもりでいた。
ひとつ間をおき、再度泥の鎧を身に纏い持久戦に持ち込むつもりだった。

>「ところでお前のスタンド、巻き上がっていく水を上手く操作することって出来んのか?」
>「いや……別に深い意味はねーよ。 さっき切断した高圧電線の柱を、吹っ飛ばされたときに根元から切開してやったから、
>触れたらマズいんじゃあねーの?ってだけだ」

「はあ??なに言ってやが・・・」

セイヴ・フェリスによって根元から切開された電柱が倒れ
切れた高圧電線と共に巻き上がっている水に向かって倒れこむ。

「ぎゃあああああああ!!!!」

吉泉ムヅオの体に高圧の電流が走った。
切れた高圧電線から水を伝わり電流が流れて来ているのであった。
一瞬の出来事にスタンドの解除も間に合わない。

どちゃりと地面に落ちるフラット・アース・ソサエティと一緒に吉泉のまわりの水が消える。
吉泉は失神してしまったようだ。

本体名:『吉泉ムズオ』
スタンド名:『フラット・アース・ソサエティ』

【戦闘不能】

105 名前:佐藤ひとみ ◆tGLUbl280s [sage] 投稿日:2010/05/09(日) 20:23:00 0
>「この感じは…佐藤さんですね?」
>「ほう、君にもわかるのかね。正解だ。」
よねと九頭、二人の声に応えて姿を現す佐藤ひとみ。

「やれやれだわ…。あなたはともかくよね君にまで覚られるようじゃ透明化なんて全くの役立たずね。
気配まで消したつもりだったんだけど…。
よね君、来てもらって嬉しいけど私達の状況は完全に積んでるわ。私とあんたの能力だけじゃ九頭に太刀打ちできない。」

ひとみ達の頭上には縛り上げられたまま浮遊する九頭。
頭上に大きな王冠のヴィジョンが顕れると手足を拘束していた触手のロープは氷点下に置かれたバラの花弁のように砕け散った。
極寒の光を浴びたせいかロープに当たっていた手足は赤い霜焼け状になっている。
九頭は冷ややかな笑みを浮かべてひとみ達を見つめている。
既に老境に踏み込まんとするその容貌は天罰を与えに降りてきた神さながらの威圧感である。
ひとみは上空の九頭に向かって大声で話しかける。


「しつこく追いかけてもらって嬉しいわ!丁度いいからさっきの話の続きをしましょう。
圧倒的な力を持つ者の余裕ってヤツで聞いてくれないかしら?
あなたってゲームに関しては完璧にフェアよねぇ。
最初に嘘の無いルールを話してくれたし、スタンド能力以外での勝負の決着はあくまで認めない。
私達が毒ガス攻撃を受けた時手を貸そうとしてくれたわよね?あなたの仕事が遅いから結局は私がやったんだけど。

…ゲームのルールに関しては妙にフェアなくせに力関係は全然そうじゃない。
あなたの留流家は北条市全体を呑み込んでいてゲームの舞台を俯瞰してまさに神の様に振舞える。
誰がどこで何をしてるかなんてゲーム盤を上から見るみたいに完璧に把握できてるのね。
その上100年以上の間に蓄えたスタンドの能力を自由に扱える。
同じゲーム内においてこんなアンフェアな力関係無いわよね…まるで胴元がイカサマをしてる賭け事に乗せられたみたい。
まあそれもいいわ…話を変えましょう。


あなたは道楽でこんなゲームを開いてるって言ってたけど本当にそうかしら?
あなたのスタンド『留流家』の能力はスタンド能力者を捕らえてあなたにエネルギーと能力を提供すること。
力の大きいスタンドほど大きなエネルギーになる。
私達を狩るために強力なスタンド使いを放出したから、そんなに老け込んじゃったのねえ?

それにしても留流家には100年近く掛かって集めた無尽蔵のスタンド使いが眠ってるはずのなのに
『狩る者』に選ばれた奴らは割りに最近取り込まれた人間ばかり目に付くわ。私の知る限りだけど…。
ひょっとしてあまり古くから取り込まれてる能力者は留流家にエネルギーを吸い取られて使い物にならなくなるんじゃないの?
だから留流家は常に新鮮な能力者を欲している。
10年周期でスタンド使い取り込みキャンペーンをしなきゃならないのはそのせいなんじゃない?」

106 名前:佐藤ひとみ ◆tGLUbl280s [sage] 投稿日:2010/05/09(日) 20:27:29 0
【佐藤ひとみの一方的な会話の続き】

「それと確かこのゲームの発動条件は『待ち構える者が倒されること』だったわよね?
『待ち構える者』は誘き寄せられた哀れな能力者全員に対応できる戦闘力を持つ強力なスタンド使いでなきゃならない。
館にエネルギーを供給する直接の役割である『待ち構える者』が倒されたら留流家にとっては死活問題だわ。

ゲームには『待ち構える者』を選別する意図もあるんじゃないの?
館の内外問わず能力者をぶつけ合ってより最適な人材を見積もろうっていう魂胆でね。
あなたは自分が暇つぶしでゲームを開催してるように考えてるんだろうけど留流家にとっては必要不可欠なのよ。
その上あなたが留流家から出られないとしたら、あなたは完全に留流家に使われてるわね。
絶対的に有利な条件で参加できるってだけで本当はあなたもゲームの駒の一つなんじゃないの?!」


こんな予測だらけの無礼な長話をするのも九頭がどんな話を聞こうと怒ることのない度量を持つ見越してのことだ。
九頭を見上げながら更に話を続けるひとみ。


「あなたって本当にフェアで紳士的……。一介のゲーム参加者の下らない長話をここまで聞いてくれるんだから…。
私がこんな長話をするのも他のメンバーを呼び寄せるための時間稼ぎって事にも気づいてるんでしょ?
それを解った上で聞いてくれてるんだから、ついでに私の話の間違ってる所だけでも訂正してくれない?」


早口で捲くし立てながらも、ひとみは脳内探知で全員の状況を確認していた。
荻原、徳井は戦闘を終えたようだが大谷は新手のスタンド使いと交戦中か?
有葵は負傷でもしているのか動けない。来るなと言ったのにワザワザ顔を出した彼女に関しては自業自得。暫く放って置くしかない。
ひとみは九頭と会話しながら協力者全員の前に分離したシートを出現させ数十秒ほどこの会話の映像を映し出した。
音声は無理だが場所と状況だけは伝わるはずだ。

107 名前:九頭龍一 ◆SM24/QbfAY [sage] 投稿日:2010/05/09(日) 23:57:14 0
>>101>>105>>106
「なあに、怖がる事はない。君ももうすぐ私の家族だ。血の繋がった父親とも仲良くできるはずさ。」
血の気の引いたよねに声をかけたあと、姿を現した佐藤の話を黙って聞き入る。

佐藤は言葉を一方的に並べる間、九頭は攻撃をするわけでもなくうんうんと頷きながら話を聞き続ける。
それはまるで孫の話を聞く老人のように。
全ての言葉が終わるのを待って、ゆっくりと高度を下げてついに地面に降り立った。
「ふふふふ、流石に頭が切れるね。だからこそ、だ!
振られた身ではあるがその頭の回転のよさと分析能力に敬意を表して時間稼ぎに付き合おうじゃないか。」
芝居がかった仕草で頭上にフリージングクラウンを浮かべたまま言葉を続ける。

「まず、力関係だが、そもそもそれにフェアと言うものが存在するのかな?
スタンドのパワー、スピード、能力、スタンド使いの能力、経験。
それらは全て個人の手札であり、同じ手札ではゲームにならないだろう?
だが、スタンドに最強や万能はない。
それは私の留流家も同様さ。いや、むしろ弱いと言えるだろうね。
ただ君立ち寄りより上手くゲームをしている・・・違うな。君達の分析能力が足りないだけさ。」

そういいう九頭の脇には積み木を組み合わせたような人間大の人形が顕れた。
積み木ならかわいらしく見えるが、構成される身体はガラス質であり、陽光に煌き美しくもあった。
九頭が留流家から引き出した二体目のスタンド【プリズムマン】と紹介される。
それを見、その波動で判るだろう。
フリージングクラウン同様パワーは殆ど感じられない、と。

「続けて、分析能力の素晴らしさは驚嘆に値するが、本質には触れられないようだね。
大昔に取り込んだスタンド使いは枯渇したわけじゃないさ。
ただ留流家が大きく成長するのでね、取り込みキャンペーンをしているわけだ。
まあ、エネルギー供給と私の老け込みの関係はそんなところさ。
だからこんなフリージングクラウンやプリズムマンのような弱いスタンドしかもう出せなくてね。
これからも留流家は大きくなり続ける。
やがてこの日の本の国を、世界を覆いつくすほどに…!
その為の選別、と言うのは正解だが完全な正解ではないな。
私を倒せば判るだろう、私の行っている意味が。そして後悔する事になるだろうね。
ま、これから留流家に取り込まれたときでも知る事ができるのだけどね。そして私に勝たずに取り込まれたことに安堵を覚えるはずさ。」

嘘はついていない、だが本質的なことも明かしていない。
勿論それを明かす事は留流家の弱点を含む正体を明かす事であり、ゲームをする以上明かすわけもないのだが。
ふーと息を吐く九頭の目から徐々に光が失われていく。
代わりに宿っていくのは狂気の色。
「さあ、時間稼ぎもこのくらいで良いかな?ヒントを与えすぎた気もするが、まあ良い。
ここからは  皆  殺  し  の  時間だ!」

ゴ    ゴ   ゴ  ゴ ゴゴゴゴ・・・・!
辺り一面は圧迫感に満ち、周囲が赤く染まる。
九頭がその本領を発揮する事を北条市の何処にいても感じられるだろう。

「安心し給え。君達が死んでもそれはゲームでのこと。留流家の一部として生き続けられるのだから!
私に直接殺される特典として良いものを見せてあげよう!
私にしか出来ないスタンドの操り方だ…!」
フリージングクラウンとプリズムマンが重なっていく。
お互いに融合し、やがて新たなる強力なスタンドとなって生まれ変わる!
「白光の王、とでも名づけようか?」
新たに生まれたスタンド、白光の王はガラス質の身体を持つ王の姿をしていた。
頭部の冠で発生した光はガラス質の身体を屈折しながら進み、佐藤とよねに向けられた掌から放たれる。
融合する事により強化され、照射されれば人の身体も即氷の塊りに変える恐るべき冷凍光線が…!

108 名前:大土井太一郎 ◆tGLUbl280s [sage] 投稿日:2010/05/10(月) 03:41:35 0
>>84(荻原さん)

虫の性質を持つスタンド使い、岩内響を退けた荻原を背後から見つめる怪しい男。
留流家の柱と化した木々の影でブツブツ呟いている。

「あの男も『溶かす力』を持っているのか…気に入らん…全く気に入らん…」

男は見事に整えた口ひげを生やし、十九世紀のイギリス紳士が着ているような古めかしい背広を身に着けている。
第一次世界大戦シベリア出兵時白兵戦において無敵の将校と謳われた、大土井太一郎その人である。

「似たような能力を持つ人間を見るのは全く不愉快極まる。わが能力によって葬り去らねばならんな。
さて…植物使いの男よ。柱の森から抜け出せるかな…?
抜け出せはしまい……ククククク…
せいぜい目印の無いこの森の中で堂々巡りしたあげく我がスタンド…『ザッツオールバック』の養分になってもらおうか…」

やがて荻原は気づくだろう。
どれだけ歩いても走っても、せいぜい30平方メートルといったところのこの自然公園の森から絶対に出られないことに…。

109 名前:大土井太一郎 ◆tGLUbl280s [sage] 投稿日:2010/05/10(月) 03:43:36 0
【本体】
名前:大土井 太一郎 (おおどい たいちろう)
性別:男
年齢: 52
身長/体重:166/63
容姿の特徴: 名探偵ポワロのような整った口ひげ。髪はサイドに白髪の筋の入ったオールバック。古めかしい背広姿。

人物概要:第一次世界大戦シベリア出兵時、陸軍遣団の参謀長だった男。
能力を使った撹乱戦法により白兵戦無敵の参謀と謳われた。最終階級は陸軍大将。退役後に功績により男爵位を賜る。
後に貴族院議員となるが頑固な性格ゆえ某大人物と政治対立を起こし闇の取引により留流家に取り込まれる。
あまりに長く留流家に取り込まれていたため記憶が曖昧になっているがプライドの高さだけは当時のままである。

【スタンド】
名前:ザッツオールバック
タイプ/特徴:中距離、範囲型
能力詳細:半径20メートルの円内に能力領域を作り出す。本体は能力領域の5メートル以内にいる。
この領域に入り込んだ者は本体が望む任意のタイミングで180度回転する。
本人も気づかないうちに方向が逆になっているのでこの半径20メートルほどの空間内を堂々巡りしてしまう。
やがてこの半径20メートルの空間の地面は消化液を分泌し始め中にいる人間をゆっくり小一時間ほどかけて溶かしてゆく。
スタンド能力の消化液であるためスタンドも溶かす。


破壊力-D スピード-C 射程距離-D
持続力-B 精密動作性-C 成長性-C


A-超スゴイ B-スゴイ C-人間と同じ D-ニガテ E-超ニガテ
射程距離の目安
A:100m以上 B:数10m(50m) C:10数m(20m) D:数m(5m) E:2m以下

110 名前:白州想介 ◆BhCiwB2SCaJ5 [sage] 投稿日:2010/05/10(月) 16:05:18 0
>>92(吉野きららさん)
>「……誰か、助けて下さい! この人が急に、襲いかかってきて!」

逃走を図る吉野きらら。なんとか追っ手を振り払うことができたようだ。

息も絶え絶えの吉野だったがふと前方に目を向けると横断歩道の向こう側から
オモチャの電動バギーに乗った4歳くらいの男児がじっと吉野を観察していた。
口からはよだれをだらだらと垂らしている。お世辞にも可愛らしいとは言えない男児だった。

不気味に思いながらも歩を進めようとした吉野の足元には
『一辺が1メートル程度の風呂敷のようなモノ』が敷かれていた。
カラフルなモザイク模様をしており、よく見ると模様がうぞうぞと動いているようにも見える。

果たして吉野きららは、うっかり風呂敷のようなモノを踏んでしまうのだろうか。

【本体】
名前:白州 想介(しらす そうすけ)
性別:男
年齢: 4
身長/体重:101/16
容姿の特徴: 威張った感じの幼児。

人物概要:大戦中に産声をあげる。苗字帯刀を許された家柄の子らしい。
戦時中は白州のお坊っちゃまがお人形遊びをすると誰か死ぬと噂され恐れられた。
どういう経路で留流家の一員になったかは不明であり白州想介本人も人間らしい感性を失っているようだ。


【スタンド】
名前:トイワールド
タイプ/特徴:?
能力詳細:通常は魔術師ような姿をしているのだが
本領を発揮するのは風呂敷状態になって人間を取り込んだ時であり
取り込んだ人間や物は小さくなってトイワールドのオモチャの世界に閉じ込められてしまう。
オモチャ世界で24時間以内(現実世界で24分以内)に脱出しないと完全なオモチャの奴隷になってしまうことだろう。

脱出方法は簡単で風呂敷から出るだけで良いのだがオモチャの世界と現実の世界の
国境にはオモチャの兵隊たちが待ち構えている。
風呂敷(オモチャの世界では、厚さ役20センチの地面)を破って脱出も可能。

通常戦闘では魔術師がマントの下から鉄砲などのオモチャを取り出して戦う。
すべて元本物なのでそれなりに殺傷能力は高い。

破壊力-? スピード-? 射程距離-?
持続力-A 精密動作性-E 成長性-E

A-超スゴイ B-スゴイ C-人間と同じ D-ニガテ E-超ニガテ
射程距離の目安
A:100m以上 B:数10m(50m) C:10数m(20m) D:数m(5m) E:2m以下

111 名前:よね ◆0jgpnDC/HQ [sage] 投稿日:2010/05/10(月) 19:05:38 P
/融合する事により強化され、照射されれば人の身体も即氷の塊りに変える恐るべき冷凍光線が…!

「間に合わなッ…!」

避けるのは不可能であった。高速で迫りくるそれはよねの目には捉えられなかった。
だが、冷凍光線はよねには直撃しなかった。
常に持ち歩いているカバンを盾に防いだのだ。だが、カバンは完全に凍ってしまった。
凍ってしまったというよりかは、"氷になってしまった"。

「バカな…スタンドとスタンドの合成…ッ!?
 あり得るわけがない…精神と精神との融合ッ!」

よねのスタンドの師である、とあるインド人の話によれば、
スタンドとはその能力者の精神の具現らしい。
だからスタンドは精神力の影響を大きく受けるのだ。

(九頭はたった今、その"精神"の合成をいとも容易くやってのけた。
それはつまり…そのスタンドの能力者の精神は…いや、ただの憶測にすぎない…だが…)

おちおちこんな事を考えてる場合ではないと気付いたよねは、すぐさま行動を開始した。
まずは九頭も言っていた分析である。どんなスタンドにも、僅かながら隙はある。その隙を突くしか手はない。
だが、スタンド同士の融合によってそれぞれの弱点が補完されてしまった今、隙を見つけるのは至難である。

(どこか…どこかにあるはずだ…"隙"がッ…
 目を向けるべきは他人の姿じゃなくて自分自身の姿…
 信じるべきは自分の力…ッ!)

112 名前:佐藤ひとみ ◆tGLUbl280s [sage] 投稿日:2010/05/10(月) 21:03:46 0
>>107 >>111
九頭はひとみの話を穏やかに頷きながら聞いている。
「やはり魅力的だ」とひとみは思う。目じりの皺や白髪さえ新たな魅力となってその身に刻まれている。
奇妙なことだが九頭と話をする時ひとみは恐怖による動悸と共に僅かな心の安らぎを感じる。
何というか常人とは異質の包容力を感じるのだ。
留流家に飲み込まれることを拒否したのは間違いだったのかもしれないという気持ちが未だ心の何処かに湧き上がる。

地上に降り立ち、乱暴な推論を含むひとみの話に順を追って答える九頭。
当然ながら自らの心中や留流家の本質には触れずに巧みに答えを返す。
どうやら上手くはぐらかされてしまったようだ。ひとみは会話を誘導するスキルすら九頭に太刀打ちできない。
この会話で解ったことは九頭が『留流家を大きくする』ことに偏執狂的な執着を見せていることだけ。
留流家は肥大し続けるため能力者を欲している。
九頭に何か目的があって留流家の成長を欲していると取れる言葉だが本当にそれだけなのだろうか?
留流家自体が『成長』を宿命としたスタンドで肥大化を止められないのでは?と、ひとみは予想していたのだがそれもまた完全否定出来ない。

>私を倒せば判るだろう、私の行っている意味が。そして後悔する事になるだろうね。

この言葉がハッタリなのかどうかも今は確かめようが無い。


九頭は会話を一区切りさせると長いため息をついた。
吐き出される吐息と共にその目から正気の色が消えていく。

>「さあ、時間稼ぎもこのくらいで良いかな?ヒントを与えすぎた気もするが、まあ良い。
ここからは  皆  殺  し  の  時間だ!」

威厳と同時に親しみさえ滲ませていた目元は狂った光を浮かべる殺人者のそれと化した。
九頭は先に呼び出していた王冠型のスタンドとガラス質の体を持つ人形のようなスタンドを融合させる。


「何よこれぇ〜??まるでフュージョン?!こんなことが出来るなんて説明してくれなかったじゃないのぉ〜!!」
九頭が自分の手札をすべて晒すはずが無いの裏切られたような気持ちになるひとみ。


『白光の王』と名付けられたそのスタンドの王冠が輝くと白い光線がガラス質の掌から放出される。
光線の直線上にいたのは、よね。
よねが光線避けに使ったカバンは一瞬のうちに白く凍り付いてしまった。白い煙を上げて凍りついたカバン。
この光線はあらゆるものを凍らせる液体窒素のような性質を持っている。
こんな光を体に一部にでも浴びてしまったら命に関わる。九頭は本気で自分達を殺すつもりだ!
追従か、さもなくば死か?温情溢れる申し入れを無碍にしたひとみに死の鉄槌を振り下ろさんとしている。


ひとみはフルムーンの触手を平たく延ばして結合させ厚さ5mm程の二人がギリギリ隠れられる大きさの盾を作った。
厚さは要らない。敵スタンドが放出するのは衝撃波ではなく光線なのだから。

「よね君、今から触手で作った盾を切り離すからアンテロスの時みたいにこの盾を鏡にして!
光線なら鏡で反射できる。出来るだけ急いで!!次の光線が来る前に間に合わないと私たち氷付けよ!!」

触手を切り離したら一旦フルムーンを手元に戻すつもりだ。
自分から離れた位置のフルムーンを冷凍光線に狙われては敵わない。


(すいません>>109の射程距離はB(25m)です)

113 名前:荻原秋冬◇6J1m09mANS [sage] 投稿日:2010/05/10(月) 22:06:15 0
現在荻原は汗を大量に流しながら森をさまよっている。

「あれぇ…おかしいな…もうそろそろ着いてもいい頃なのに」
ずっと真っ直ぐに来たのだから迷うことはないはず。
荻原だってそこまで方向音痴ではない。
だが、歩き始めて10分以上たつが森からでられない。
森からでられないという不安が荻原の喉を急激に渇かせた。

「……なんだか喉が渇いてきたな…」
プラントアワーを出現させて地面を殴らせる。
そこからは大きな実をつけたイチゴの蔓がでてきた。
4つほど取っていっぺんに口にほうばった。

「……ふぅ、すこし喉が潤った」
再び荻原は真っ直ぐ歩き始めた。

だが、再び歩き始めてから約2分ほどで荻原は足を止めた。

目の前に自分が生み出したイチゴの蔓があったのだから…

「あれ!?どうなってるんだ…この蔓はさっき向こうで…」
ここまでくればさすがに荻原も気づくだろう。
本来なら10分くらいで森から抜け出せるはずの森から抜け出せないおかしさに。

「俺が来た道は真っ直ぐのはずだから迷うわけがない…
まさか…敵のスタンドの攻撃なのか!?」
とにかく急いで森を出ようと荻原は走ったがまた同じ地点に戻っている。
何回走っても同じ地点に戻ってきてしまう。

「ちくしょう…本当に無限ループってのは怖いもんだな…」

114 名前:徳井一樹 ◆MnJrk02a/Yx. [sage] 投稿日:2010/05/10(月) 23:51:05 0

土にまみれた裸体を晒しながら横たわる吉泉を尻目に、
徳井は水流カッターで受けた傷をスーツで傷口を縛っていた。

「これでもう出血の心配はねーぜ…ったく、本体が軽くマヌケだったから倒せたものの…
相当のキレモノだったらもっと苦戦してたかもな…いや死んでたかも」

強力なスタンド使いとの連戦。
出血も酷く、徳井の疲労はピークに達しつつあった。
ここまで怪我をしているのは徳井だけではないのだろうか。

「それでも九頭の奴を倒せるチャンスは今をおいて他にはねーよな。とりあえず別荘から探すか…」

フラフラの体をその強靭な精神で無理矢理持ち上げると、徳井はそのまま別荘へと向かっていった。

115 名前:大土井太一郎 ◆tGLUbl280s [sage] 投稿日:2010/05/11(火) 01:20:46 0
>>113
大土井太一郎は荻原を閉じ込めた能力領域の周囲を移動し、木々に隠れながら荻原の様子を伺っている。
荻原との距離は3〜5メートルも離れていないはずだが荻原に存在を悟られることは無い。
なぜなら大土井は自らの移動のタイミングにあわせて荻原の向きを変えている。
大土井が木の陰から出て移動するときは必ず荻原の死角になるからだ。

>「あれ!?どうなってるんだ…この蔓はさっき向こうで…」

プラントアワーで生み出したイチゴの蔓が目印となり荻原は堂々巡りに気づいたようだ。

「フン、気づかれたか…。だがもう遅い。我がスタンドは準備を完了したッ!!」

ザッツオールバックが能力領域に定めた半径20mの地面はゆっくりと粘液を分泌しはじめる。
スタンドをも溶かす特殊な消化液だ。
人間の胃液ほどの消化力のため威力はそれほど強くない。
だがこの能力領域から出られない哀れな捕らわれ人にはそれが逆に恐怖となるだろう。
意識を残したままゆっくりと…足の裏から頭まで小一時間ほどかけて溶かされていくのだから…。

「ククク…さてどう出る?植物使いよ…」

116 名前:大谷杉松 ◆vReXCpsNBKcm [sage] 投稿日:2010/05/11(火) 02:01:11 0
>>103
>「ふーん…。貧相なスタンドね。あなたスマートガントレットでしょ?九頭さまに聞いてるわよ
 でも本体を瘴気の影響が及ばないとこまで逃がしたのは大正解。
 まっ、遠距離操作型じゃなければ出来ない芸当なんでしょうけれど…」

たしかに遠距離操作形ならではだが、攻撃力は無い。
しかし、彼にとっては『攻撃をする』事が大切なのだ、
幸いメープルハニーの能力は霧に触れている間だけのようで大谷の状態は元に戻っていく、

>「人間は行きたいほうへ行くがよい。人間はしたいことをするがよい。
 しかし人間は、自然が描いている道へ必ずまた戻ってくるに違いない…。
 わかるかしら?ゲーテの言葉よ」
>「突撃してくるのって何か考えがあってのことなのかしら?射程内の戦いだったらパワーもスピードも、
 みーんな私のほうが上なのにね…」

そういいながらレナは攻撃をはじきスマートガントレットを殴り飛ばす!
大谷にもダメージは来るが致命傷にはならない、痛い物は痛いが
レナは近づき桃色の霧がまた大谷を包む…

>「したいことをするがよいってゲーテも言っているし、私もするわ。
 あなたを太らせて大爆発させたいわ。だって私…肉割れ杉松を見てみたいんだもの」

大谷は離れる、そしてレナに言った、

「九頭から能力の説明まで聞いてないようだな、
スマートガントレットは『一度起きたことをもう一度おこす事が出来る』能力…
一度のチャンスで十分なんだ…ゲームをしようじゃないか、
俺を捕まえて肉団子にするのが先か、お前の拳が壊れて、お前が肉団子になるのが先か…鬼ごっこの始まりだ!」
『ジュンビハイイカシラ! コタエハキイテナイケドネ!』

             『パチィィィン!!』

指の音と共に一目散に逃げる大谷、
レナは拳の違和感を覚え状況に気付くだろう、メープルハニーについた傷がスマートガントレットの能力で少し深くなっている事に
大谷はメープルハニーの鎧を壊し、レナ自身にメープルハニーの霧を当てるつもりである、
霧に当たればレナ自身が丸々と太ってしまう、しかしそれを拒みスタンドをしまえば大谷の攻撃が飛んでくるだろう!

117 名前:吉野きらら ◆HQs.P3ZAvn.F [sage] 投稿日:2010/05/11(火) 02:25:27 0
寮から少し離れた所から、きららは門前の様子を伺う。
あくまでも抜け目なく、角を曲がればすぐに姿を眩ませ逃走出来る位置からだ。
しかし突如、少年の身体から不穏の気配が横溢する。

危機を察知した野猫の如き所作で、きららは角の先に身を隠した。
そして彼女は暫し、思索を植物の根のように巡らせていく。
彼女がこのまま逃げ去るのは、勿論容易い事だ。

だがそれをするに当たって、彼女には懸念事項があるのだ。
長谷川から聞かされた、『スタンド使いは惹かれ合う』法則。
長谷川が脅しで交えた嘘の可能性もあるにはあるが、例えそうであれ、またそうでなくとも。
今日一日だけで、もっと厳密に物を見れば、たったの数時間の内に二度も襲撃を受けているのは純然たる事実なのだ。
今後幾度となく『狩る者』の襲来があるかも知れないと考えると、彼女は手放しに逃げる事は出来なかった。

『狩る者』達が徒党を組む可能性も考慮すれば、戦力は削れる時に削っておくべきである。
無論危険を伴う行為だが、虫除けを施さなかったばかりに綺麗な花を枯らしてしまうのは、愚かな事だ。

「これは……試練ですね。幸福に至る為には避けられない試練だと、受け取りますわ」

意を決して、彼女は再び曲がり角から体を覗かせて門前の様子を伺う。
少年に向かっていった男達は皆倒れ、また不動の体勢のまま昏倒しているようだった。
先程、何か強い光が放たれたのか地面が明るみ、また電柱や人の影が随分と伸びていたのを、きららは視界に捉え記憶している。
そうして能力の詳細こそ分からないまでも、少年の能力は『光』が関係し、
また喰らえばどうなってしまうのかも彼女は理解した。

同時に、何やら少年の様子がおかしい事にも、彼女の意識は至る。
悪魔憑きを彷彿とさせる凶相から一転、彼は戸惑う小鹿のような仕草で――誰もいない空間に向かって抗議を続けていた。
怪訝と嫌悪を五分の割合で宿した面持ちできららは彼を見張っていたが、不意に少年はスッキリとした表情を浮かべ、門前から走り去る。
丁度、きららが逃げた方向へ。

予期せぬ接近に彼女は身構えるが、少年は彼女を目前にしてよろめき、転んだ。
攻撃を受けるのではないかと一瞬びくついた彼女は、しかしそうではないと分かると途端に笑みを取り戻す。
だが眼光には仄かに冷たい刃を潜ませて、少年を見下す。
しこうして彼に手を差し伸べる、たった一つの単純な思考に基づいて。

――この距離なら間違いなく、少年を仕留める事が事が出来ると。

何も全身を花にして散らす必要はない。
行動を阻害する程度に全身に花を咲かせてやったら、花びらの刃で喉を掻っ切ってやれば事足りる。
少年が異変に気付き『光』のスタンドを発動したとしても、既にきららは対策を講じていた。
何ら問題はない、単調な作業だ。

しかし少年の全身に極小の蕾を生やす最中。
きららの五体と精神を、圧倒的なプレッシャーが強かに殴り付けた。
すぐさま彼女は『メメント・モリ』を発現させ、周囲を警戒する。
少年は何やら顔を赤らめながら立ち去っていったが、最早少年の存在は彼女にとって些事と成り果てていた。

一瞬でも気を逸らせば死に直結する。

そう確信させられる程の気配に、きららは包まれていた。
けれども数秒の時を経て、彼女はふと周囲の威圧感に疑問を覚える。
戦闘や荒事に対しては滅法疎い彼女ですら半ば強制的に悟らされる圧力は、しかし彼女だけに向けられた物では無かった。

一振りの刃ではなく、降り注ぐ槍の雨。
一滴の毒薬ではなく、大気に満ちる瘴気。
一発の弾丸ではなく、遍く死を齎す落し子。

「はっ……ぁ……っ!」

根拠も論拠も伴わず、見た事すらない人物に対して、にも関らずきららは確信する。

118 名前:吉野きらら ◆HQs.P3ZAvn.F [sage] 投稿日:2010/05/11(火) 02:26:15 0
今、この北条市で九頭龍一が奮っていると。
北条市の何処かではなく、北条市で、『留流家』の中で。

落ち着け、と彼女は自らに言い聞かせる。
自身の五体を苛ませるのは、あくまで気配。
敵意ではなく、故に自らに『不幸』が及ぶ事はないのだと。

「……さっきの男の人、まだ追い付けるでしょうか。思い立ったが吉日と言いますし、今からでも……」

乱れた呼吸を漸く整え、きららは少年の去っていった方へ視線を向ける。
だが彼女の首は途中でブリキ細工の油が切れたかのように、止まった。
九頭のそれとはまた違う、自分一人を刺す敵意を背後に覚えて。

振り返ってみれば、そこには不自然な水溜りがあった。
雨が振った訳でもなく、水撒きが為された訳でもなく、ただぽつねんと存在する水溜りが。

「……見当違いだったとしても、損はありませんからね。物は試し……ですわ」

すっと手を伸ばし、水溜りに『花』の蕾と種を兆させる。
つい先程自分を殴り飛ばした水の拳がスタンド本体であれ、スタンドに操作された物であれ。
前者なら直接の攻撃となり、後者ならば武器を奪う事が出来るのだから。

「水なんて、花の糧としてしまえば何も怖くなんてありません。それでは、御機嫌よう」

花が水溜りと地面にしっかり根付いた事を確認すると、きららは今度こそ角を曲がり逃走を図った。



「――とは言ったものの、このままずっと逃げ回る訳にもいきませんわね。困りましたわ……」

息が軽く乱れるまで無心に逃げ回った彼女は、電信柱を身体の支えとして呟く。
この切羽詰った状況でありながらも、地肌や髪は電柱に触れぬように、
潔癖のきらいを漂わせる気遣いをしている辺り、あくまでも彼女はお嬢様であった。

「……この『ゲーム』を終わらせないと寮に帰る事だって儘なりませんし、学校だってちゃんと通えるかどうか……」

きららのぼやきは、俄に覚えた異質な視線によって断ち切られる。
横断歩道の向こう側から放たれる眼光の主は、年端も行かない出で立ちの少年だった。
しかし無邪気と言うよりは無機質なガラス玉のような瞳と、
口を半開きにして涎を垂れ流している彼の様子は、きららの警戒心を煽るには十分過ぎる程だ。

「……念には念を、と言いますからね。ひとまずこの場は離れましょうか」

一休みを兼ねての信号待ちだったが、彼女は迷いなく踵を返す。
そうして一歩目を踏み出すべく足を上げ――ふと足元からの異音が彼女の鼓膜を擽った。

「……デヨ……イデヨ……」

頓に顔を強ばらせた彼女が足元を見ると、そこには極彩色のモザイク柄をした『薄っぺらい正方形』が敷かれていた。
微かに蠢く正方形はその下からか、それとも正方形そのものからか、ともかく掠れた高い声を何処からともなく零している。

「オイデヨ……オイデヨ……オモチャノクニニオイデヨ!」

きららの表情が、悪寒と警戒に支配される。
そして、

「……オモチャノクニニ……」

短兵急に正方形の一辺が盛り上がり、玩具が一体上半身を覗かせた。
凄まじい剣幕でがなる玩具は赤い帽子と服で憲兵の姿を示し、手には小銃を携えている。

119 名前:吉野きらら ◆HQs.P3ZAvn.F [sage] 投稿日:2010/05/11(火) 02:27:38 0
「コイッツッテンダロォオオオオオオオオ!!」

連続した破裂音が響く。
きららの額目掛け放たれた弾丸は、しかし『メメント・モリ』の花の盾によって勢いを失う。
防御を果たした『メメント・モリ』はそのまま、前腕に咲かせた花を刃として、玩具の憲兵へ振り下ろした。

「グゲェッ!」

甲高い断末魔と共に憲兵は両断される。
しかしその腕はまだ、小銃を手放してはいなかった。
当然と言えば当然か。胴部を破壊した所で、玩具が死に至る訳でもない。

「オイデヨォオオオオオオオオオ!!」

依然小銃を乱射する憲兵にたじろぐきららの背後で、歩行者青信号の電子音が響く。
すぐさま、彼女はスカートの裾を翻して駆け出した。
『メメント・モリ』を隣に据え防御を任せたまま、対岸の少年を睨め付けながら。

「散らして! 『メメント・モリ』!」

憲兵の弾丸を防ぎ切った『メメント・モリ』は命を受け、盾として使っていた花を前方の少年目掛け投げ放つ。
花は空中で四散し、花びらの一枚一枚に刃の魂を宿して少年へと迫った。
結果を認める事もなく、きららは玩具のバギーの隣をすり抜ける。

門前での水のスタンド使いも、まだ彼女を追ってきているかもしれないのだ。
ここで足を止めて戦うつもりは、彼女には更々無かった。

120 名前:レナ・オリン ◆BhCiwB2SCaJ5 [sage] 投稿日:2010/05/11(火) 12:11:56 0
大谷との戦闘の最中に余裕で辺りを見回すレナ・オリンは
遠くに吉泉ムヅオの敗北と徳井一樹の勝利を確認するとため息まじりでひとりごちた。

「三千年の歴史から学ぶことを知らぬ者は知ることもなく闇に中にいよ。その日その日を生きるとも。
そうね…ゲーテって色々なことを知っているわね。今の吉泉君にぴったりじゃない?」

仲間の敗北を気にすることもなくレナはどんどんと大谷に近づいてゆく。

大谷は離れながらレナに語る。

>「九頭から能力の説明まで聞いてないようだな、
>スマートガントレットは『一度起きたことをもう一度おこす事が出来る』能力…
>一度のチャンスで十分なんだ…ゲームをしようじゃないか、
>俺を捕まえて肉団子にするのが先か、お前の拳が壊れて、お前が肉団子になるのが先か…鬼ごっこの始まりだ!」
>『ジュンビハイイカシラ! コタエハキイテナイケドネ!』

「え!?」
拳の装甲が砕け逆流する瘴気。

「うくっ…」
切なそうな声をあげるとレナはあっさりスタンド能力を解除した。
彼女は醜い姿には死んでもなりたくなかった。

少し離れた場所で大谷は攻撃体勢に移る。

「まって!杉松さん攻撃しないで!!私の話を聞いて…ね?」

そう言うとレナは太陽の陽射しに溶け込んでしまうかのようなあたたかい笑顔を見せながらゆっくりと大谷に近づく。
勿論スタンド能力は解除している。

「あなたは…。杉松さんは…ついさっきまでこの辺りに一人で倒れていましたよね?
お友達はどこへ行かれたのかしら…。杉松さんのことを見捨ててどこかへ行ってしまわれたの?」
レナは心配そうに大谷の顔をのぞき込む。

「荻原。佐藤。徳井。米。みーんなここに集まっているはずなの。だから私は九頭さまに呼ばれたんだから。
ねえ大谷さん、みんな薄情ものだと思わない?空っぽになるまで働いたあなたを見捨てていっているのよ」
いつのまにかレナは大谷のそばにくっついている。

そして耳元で柔らかく口をうごかす。

「ねえ、私たちの仲間にならない?九頭さまは寛大なお方よ。仲間を…家族を見捨てたりなんかしないわ…」
ミドルノートを迎えた体からは男心を惑わす甘い御香の匂いが放たれていた。

「もしかして私が騙そうとしてると思ってる?そんなことあるわけないじゃない。だって私はあなたみたいに賢くないんだもの…。
ね!いい話でしょ?あっ…もしかして…九頭さまの配下みたいになるのがイヤなのかしら?
そうね。男の人って一家の主みたいになりたいのでしょう?でもそんなことなんか気にする必要なんてないの。
いつも私はあなたと一緒よ。あなたが望むのならこの体をいつでも好なときに使ってくれてもいいわ…」

意志の力で成功しない時には好機の到来を待つほかない。
語り終えたレナの赤い唇は妖しく濡れていた。

121 名前:白州想太 ◆BhCiwB2SCaJ5 [sage] 投稿日:2010/05/11(火) 16:39:03 0
秒速5センチメートル。それは花びらの舞い落ちるスピード。

メメント・モリの能力で刃と化した花びらが幼児の柔肌を引き裂かんばかりに迫りくる。
対岸に配置されている風呂敷状のスタンドは、ばさりと人型に変化すると幼児を守るべくそのマントの奥から巨大な白い手を放出させた。
巨大な白い手はぐんぐん伸びると白州想太を包み込みスタンド自身にむかって一瞬で引っ張り込む。

ドスドスと電動バギーに花びらが突き刺さった。
あと一秒遅かったら白州の体はバギーとともにズタズタに引き裂かれていたことだろう。
トイワールドのマントから飛び出した巨大マジックハンドが幼児の命を救ったのである。

「めめんともり・・・きゃっきゃっきゃっ!」

自分の命を奪おうとした花びらではあったのだが舞い落ちてくる様があまりにも美しかったのだろうか。
幼児はパチパチと手を叩いて喜んでいる。

白州想太は美しい吉野きららを自分の玩具にしたいと思っていた。
それには先程失敗してしまったのだが風呂敷状態のトイワールドに触れさせてオモチャの世界に引きずり込むしかない。
風呂敷に触れた人間はもの凄く小さくなってしまい全長10キロメートルほどのオモチャの国に閉じ込められてしまう。
オモチャの国の真ん中には時計台があり、人やモノは閉じ込められてから、
その時計台が24時間を刻んだ時点で完全なオモチャになってしまうのだった。

オモチャの国では元人間たちが新しい仲間を求めて手薬煉をひいてまっていることだろう。

「・・と〜まちゅ・・よ・・」

幼児が呟くとトイワールドのマントからオモチャの機関車がしょぽしゅぽと飛び出て来た。
機関車には想太が乗り一両目の屋根の部分の椅子には人型のトイワールドが乗る。
二両目には巨大なゴリラの人形。最後尾の車両は箱になっており中には丸いボールのようなものがゴロゴロと転がっていた。
小さくて青い玉や赤くて大きな玉など色々な玉が8個ほど入っていた。

「しゅっぱ〜ちゅ!」

逃げてゆく吉野に後ろから機関車が迫る。時速40キロほどだった。
オモチャの機関車はみるみるうちに追いつき吉野と並走する。
横から飛びかかる巨大なゴリラの人形。吉野と同じくらいの大きさだった。
トイワールドは風呂敷状態になると再び吉野の足元に滑り込み待ち構える。
ボールのようなものは以前、箱の中で転がっていた。

「きゃっきゃっきゃっ!」

白州想太は笑っていた。

ゴリラに飛びつかれて体勢を崩した吉野はトイワールドの中に転げ落ちてしまうのだろうか。

122 名前:『蝉』 ◆HQs.P3ZAvn.F [sage] 投稿日:2010/05/11(火) 19:48:21 0
生き甲斐を失った『蝉』は、当て所なく北条市を彷徨う。
蝉の抜け殻のように、或いは岩内響の亡霊として。

最早自分には何も残っていない。
このまま野垂れ死んでしまおう。
出来る事なら、この夕焼けに焼かれて塵も灰も残らず消えてしまたい。
彼は朧気な意識の中で、何とは無しにそう考えていた。

奇しくも『プラントアワー』の度重なる溶解によって、『蝉』の顔は四半分程が爛れている。
死んだとしても、残された死体は誰と断定される事も無く、共同墓地に葬られるだろう。
十八年間蝉のように失望の中で生き、ルルイエの一員として壁に埋もれていた彼は、最後は名も無き死人達の一部とされるのだ。
皮肉な物だと、蝉は目を閉ざし、唇を僅かに引き攣らせる。

そして――突然彼の後頭部を、何かが強打した。

「がっ!?」

頓狂な声を上げて、彼はつんのめった挙句に転倒する。
拍子に地面に打ち付けた顎と、強打された後頭部をそれぞれ左右の手で押さえ、彼は呻きつつ立ち上がった。

「……一体何だって言うんだ」
憂鬱な気分に沈み込んでいた『蝉』は、諦観を多分に含んだ呟きを零す。
そうして静かに果てる事さえ叶わないのかと、溜息が後に続く。

「おーい、アンタ大丈夫かー! 大丈夫ならさ、それ取ってくれよー!」
「……それ?」

不意に聞こえてきた声に、『蝉』は周囲を見回した。
けれども「それ」に該当するような物は、何処にもない。

「ちげーって! 下! 足元だよ!」

言われるがままに視線を推移させる。
薄汚れた靴の隣に、白球が寄り添っていた。
弩に弾かれたように、『蝉』は声の聞こえた方へと振り向く。

「そう、こっちこっち! 思い切り投げてくれよな!」

彼の視界に高いフェンスと、その向こうに広いグラウンドが映った。
同時に彼の唇が微かに開かれ、僅かに震えを帯びた吐息が漏れる。

「ったくなー、ホームランだったらカッコ付くのにさあ。ファール打ち上げただけって」
「いい加減バカみたいにフルスィングすんのやめろよな。お前はピッチャーなんだし、投げる事に全力注げよ」
「うるせーな! 俺は投打に渡って活躍したいの! あの岩内響みたいにさあ!」

そして土色にくすんだユニフォームに、十年前の彼が着ていたそれと
同じ物に身を包んだ青年達が、笑いながらじゃれあっていた。
細く、落ち窪んだ目が見開かれ、白球を拾い上げた手に力が篭る。
生き甲斐を失った彼の心臓が、鼓動の音を高めた。

123 名前:『蝉』 ◆HQs.P3ZAvn.F [sage] 投稿日:2010/05/11(火) 19:49:41 0
歯を剥いて、『蝉』が笑みを零す。
一度上に軽く白球を放り、握りを確固とする。
そして大きく振り被って白球を放り――フェンスを越えた白球は、
グラウンドの彼らの頭上をも超え、遥か後方へと落ちた。

「……あ。す、すまん! 久し振りだったからつい調子に……!」

放物線を描いた白球がグラウンドに小さな土埃を立てる様を見て、『蝉』は慌てふためく。
見れば球児達は、全員が一様にわなわなと震えていた。
一体どのように弁解したものかと『蝉』は困惑し、

「……すっげー! 今のどうやったんだ!? ちょっと、こっちきて教えてくれよ!」
「つーかもうウチの部入ってもらえばよくね? 代わりにコイツをほっぽり出すって事で」
「うぉいコラちょっと待てえ!」

けれども彼がその解を得る前に、グラウンドの面々が沸き上がった。
ぽかんと、『蝉』は呆然とする。
しかしすぐに笑みを浮かべると、

「あぁいいとも。チームには入ってやれないが、教えるだけなら喜んでだ」

そう答えて、グラウンドへの入り口へと駆けて行った。
 
 
 
「……そう言えば、古池選手どうなるんだろうなー」
「ん? 何だお前ら、古池の奴を知ってるのか? もう十年も前のOBの筈だろ?」
「いや、知ってるも何も、なあ。古池選手って言ったら、ウチの学校から出た初めてのプロだし」
「……なにぃ!?」

思わず、『蝉』は頓狂な声を上げる。
古池と言うのは、彼の高校時代の女房役だ。
まさかプロになっていたのかと、彼は我知らず笑みを零す。

「……でも、今年とうとう二軍スタートなんだろ? 古池選手」
「仕方ねーよ。岩内響がいなくなってから、もう十年だろ。プロになったのも、相棒が自分を見付けられるようにって言ってたくらいだぜ」

忽ち、『蝉』の表情を驚愕の色を湛える氷が覆った。
彼の意識は呆然に囚われ、最早球児達のぼやきは耳孔をすり抜ける。
かつての相棒が自分の為に――無論全てが全て自分の為ではないにせよ――プロになり、
そして今、自分の為に諦観と絶望を喫している。

「……なあ、アイツ……古池選手って、何処の球団に行ったんだっけ」
ぽつりと、『蝉』が尋ねた。

「……? ジャガーズだろ? 何かアンタおかしいぜ?
 古池選手は知ってんのに、プロ入りやチームは知らなかったり……」

「ちょっと事情があってな。……それよりお前ら、朗報だ」
唐突な言葉に首を傾げ、眉を顰める球児達に、『蝉』は笑いながら告げる。

「ちょっとアイツと、三度目の『夏』を過ごしてくる」

124 名前:徳井一樹 ◆MnJrk02a/Yx. [sage] 投稿日:2010/05/11(火) 20:46:33 0

「フンフフーンフーンフンフーン…やべえ、なんか目眩する…これって絶対に出血多量が原因だよな」

鼻歌を交えながら一人怪我をした体を引きずりながら別荘の中を歩く徳井。
何処か気楽な徳井からは怪我をしていることなどまるで感じさせないがただの空元気である。
それともそう感じさせない性格なのかもしれない。
段差に足をかけようとした時、誰かが戦っているような、喧騒な音が聞こえてくる。

徳井はその音を聞き取ると一目散にその音源めがけて走り出す。
そこには九頭がいる。直感ではある…が、その読みは当たっていた。

その部屋からは声が聞こえる。
聞き覚えのある声だ。

>「よね君、今から触手で作った盾を切り離すからアンテロスの時みたいにこの盾を鏡にして!
>光線なら鏡で反射できる。出来るだけ急いで!!次の光線が来る前に間に合わないと私たち氷付けよ!!」

どうやらよねもいるらしい。
たかだか一時間か…そのくらいしか経っていないと言うのに、一年くらい久しぶりに会った懐かしさだ。
徳井は意を決し部屋を足を踏み込む。

「パーティならよーーー俺も混ぜてくれよ。ところで九頭、お前に取り込まれた俺の親父とお袋は元気してっか?
それにしても随分いいツラになったな。初対面は壮年のおっさんだったのに、今はただのジジイだ」

自慢のグラサン(安物だが)は柚木との戦闘時に割れて捨て、スーツは吉泉の戦闘時に水流カッターでボロボロにされた挙句
止血に使ったためこれもまた捨てた。これではパーティの受付で門前払いされそうな勢いである。

「お前の…泥の…ええと…勝手にフラット・アース・ソサエティって名付けさせてもらったが──……
あのヤローは今、夢の中で電気マッサージを堪能してるぜ」

九頭が留流家の中にいる物の全ての位置を把握できることを知ってかしらずか、
流れをぶったぎって徳井は奇襲のことなど考えず堂々と登場した。
佐藤とよねの表情は怖くて見ていないが恐らく養豚場の豚でも見るような冷たい目で見られているであろう。

「んで佐藤さんとよね君よ〜〜〜〜っ!俺がスタンド二連戦して死にそうになってるにも関わらず、
俺の敵を横取りたァーーまたいい性格してんじゃあねーか!」

125 名前:よね ◆0jgpnDC/HQ [sage] 投稿日:2010/05/11(火) 23:17:26 P
/「よね君、今から触手で作った盾を切り離すからアンテロスの時みたいにこの盾を鏡にして!

「わ…わかりました!!Sum41ッ!この触手は反射するッ!!」

が、Sum41はすぐに現れなかった。
2秒程の間が空いてから佐藤の作った触手の盾は反射し始めた。

(Sum41…?反応が鈍いぞ…ッ!!)

明らかに何かおかしいものを感じた。
Sum41を操るよねにとってはたった2秒とはいえ、2秒ものタイムラグが生じるのは死活問題である。

(精神力が弱ってきているというのか…?それとも九頭のスタンドの力…?)

よねは眉間にシワをよせた。

/「んで佐藤さんとよね君よ〜〜〜〜っ!俺がスタンド二連戦して死にそうになってるにも関わらず、

「徳井さんッ!危ないですよッ!!」

徳井の言ってる事は気にしなかった。
ただ、疲弊しきっているであろう徳井の身を案じた。

よねはデパートでの事を思い出す。
自分の能力の低さ故に、自分のみならず徳井にまで迷惑をかけてしまった。
下手を打てば後遺症が残る様なものである。不幸中の幸いなどと間抜けな事を言っている場合ではなかったのだ。

(もうあんな事にはなりたくないんだ…頼む…Sum41ッ…動いてくれ!!)

そう祈ってみるもタイムラグは一向に縮まらない。
むしろ、それはどんどん大きくなってきている。

(もはや、Sum41は使い物にならないのか…クソッ!!)

126 名前:大谷杉松 ◆vReXCpsNBKcm [sage] 投稿日:2010/05/11(火) 23:30:28 0
>>120
レナはあっさりとスタンドをしまい、無防備になる
予想の内ではではあったがここまであっさりとしまわれると成功した感情もすぐには出てこなかった。
しかし、スタンドがいなくなった今がチャンス大谷は攻撃の構えをする…

>「まって!杉松さん攻撃しないで!!私の話を聞いて…ね?」

彼女は無防備のままこちらに近寄ってくるそして何かを問いかけてきた、

>「あなたは…。杉松さんは…ついさっきまでこの辺りに一人で倒れていましたよね?
 お友達はどこへ行かれたのかしら…。杉松さんのことを見捨ててどこかへ行ってしまわれたの?」
>「荻原。佐藤。徳井。米。みーんなここに集まっているはずなの。だから私は九頭さまに呼ばれたんだから。
 ねえ大谷さん、みんな薄情ものだと思わない?空っぽになるまで働いたあなたを見捨てていっているのよ」

彼女は大谷に近づき、まるで誘っているかのようにふるまう、誘っているのだが。
そして彼女は大谷の耳元でやさしく話しかける

>「ねえ、私たちの仲間にならない?九頭さまは寛大なお方よ。仲間を…家族を見捨てたりなんかしないわ…」

>「もしかして私が騙そうとしてると思ってる?そんなことあるわけないじゃない。だって私はあなたみたいに賢くないんだもの…。
 ね!いい話でしょ?あっ…もしかして…九頭さまの配下みたいになるのがイヤなのかしら?
 そうね。男の人って一家の主みたいになりたいのでしょう?でもそんなことなんか気にする必要なんてないの。
 いつも私はあなたと一緒よ。あなたが望むのならこの体をいつでも好なときに使ってくれてもいいわ…」

その問いにたいして大谷は鼻で笑い、答えた

「それは俺に対してのプロポーズか?
 なら答えは"NO"だ、あいつらの事はまだ知らない、出会ったばかりだからな。
 だが…あいつらを守りたいと思う、お前らは守りたいとは微塵も思わない、お前らには大切なものが足りないんだ
 それに、彼女だったらもう二人もいるんだ 三人目は一生いらないんだよ!!」
『フフフ…ホカニイウコトハアルカシラ?』
「…一つ言っておこう、仲間に不意打ちはするな ハンバーグみたいな顔になりたくなかったらな」

                  
―――トレンチコートの中から出てきたのは、小さなスタンガン 護身用の奴である

「死にはしない、少し痛いだけだ、」
                 『バチィィィィ!!』

大谷はレナにスタンガンをくっつけスイッチを押した!

127 名前:九頭龍一 ◆SM24/QbfAY [sage] 投稿日:2010/05/12(水) 00:16:19 0
>>112
「中々便利なものだ。さて、どうしたものか。」
白光の王の冷凍光線をフルムーンの触手を変化させた盾で防がれたのを見て顎に手を当てながら考える。
本来ならばすぐさま次の手を打たねばならぬ戦いの最中にあってこの仕草は余裕、そして油断の他ならない。

防いだと言っても小さな盾に隠れているに過ぎない。
このまま照射を続けていれば二人はそこから動くことすら出来ないのだ。
勿論このまま釘付けにして更なる攻撃を加えることも出来たが、九頭は二人だけを見ているわけではないのだから。

そう、走り駆け寄る徳井の存在に対してのても考えている。
不意打ちでもしてきてくれるのならば対処はしやすかった。
不意打ちで攻撃を仕掛けるという事は相手が無防備なところに飛び込むという前提がある。
その前提を崩してやれば容易にカウンターで叩き潰すことが出来ただろう。
だが徳井はそうはしなかった。
戦いの教科書があるのならば徳井の行動は愚かとしか言いようがないが、その愚かさが命を救ったのだ。

>「パーティならよーーー俺も混ぜてくれよ。ところで九頭、お前に取り込まれた俺の親父とお袋は元気してっか?
>それにしても随分いいツラになったな。初対面は壮年のおっさんだったのに、今はただのジジイだ」
「ああ、勿論元気にしているさ。
其れより君は随分とボロボロじゃないか。」
照射を続けながら応えると吉泉の敗北を知らされる。
が、勿論其れも知っていた。
その戦いの一部始終を把握していたし、それ以上にその身に刻まれる老化が知らしめていたのだから。

一連の短いやり取りの最中、よねのSum41の能力が発動。
粘液の盾は鏡と化して冷凍光線を反射する。
其れと同時に白光王は照射を止め、貧弱なプリズムマンへと戻り、九頭を庇うように前に出た。

反射された冷凍光線はプリズムマンの胸板に吸い込まれ、体内を複雑に反射しながらその顔から吐き出す。
再度反射した冷凍光線は徳井へと向かっていった。
「君のご両親の要望もあるのでね。現れた早々で悪いが氷付けになってくれたまえ。
なあに、そうすればすぐにご両親と再会できるさ。」

白光の王は合体を解き二つのスタンドに戻った。
片割れのフリージングクラウンが何処にいったかと言うと…
佐藤とよねの直上にいた!
盾は正面を向いており、直上からは全くの無防備!
ふたりの頭上から白い冷凍光線が降り注ぐ!

128 名前:佐藤ひとみ ◆tGLUbl280s [sage] 投稿日:2010/05/12(水) 02:33:14 0
>>124 >>125 >>127
>「わ…わかりました!!Sum41ッ!この触手は反射するッ!!」
ひとみの要求に応えてよねは触手の盾の表面を鏡と同じ反射率に変化させる。
2秒ほどの間隔を置いてゆっくりと反射し始める盾。

>「パーティならよーーー俺も混ぜてくれよ。
聞き覚えのある軽薄な声に向かって視線を向けると近くにあった別荘の壁を切開した徳井が切開面から顔を出している。
間の悪いことに徳井は切開面から出ると話しながらずんずんこちらに近づいて来る。
柚木少年と泥のスタンド使い…連戦を重ねてきた徳井はよく生きてここまで来たと思える程天晴れに負傷しまくっている。
出血を抑える意図もあるのだろうが体の何箇所かにナイフを差したままという無造作ぶりである。

>「徳井さんッ!危ないですよッ!!」
よねの警告も耳に入らないのか更に近づいてくる徳井。

>「んで佐藤さんとよね君よ〜〜〜〜っ!俺がスタンド二連戦して死にそうになってるにも関わらず、
>俺の敵を横取りたァーーまたいい性格してんじゃあねーか!」
鏡と化した盾に反射した光は『白光の王』から分離したプリズムマンの体を屈折し徳井に向かって迫る。


寸手のところでフルムーンが触手を徳井の腕に絡め大木の陰に引っ張り込む。
九頭の注意が徳井に向いた隙に大木の陰にフルムーンを移動させていたのだ。
極寒の光は直線上の攻撃対象を失いそのまま徳井の出てきた別荘の壁にぶち当たった。


ひとみはフルムーンの視線経由で徳井の負傷箇所をチェックし、すぐさま治療に取り掛かる。
「死にそうになったのはあんたの責任でしょ?
普通ここまで全力で負傷するかしら?いくら連戦とはいえ自分の体はもう少し計画的に扱いなさいよ!」
大木の後ろにいる徳井にも聞こえるように大きめの声で皮肉を呟きながら触手で無造作にナイフを引き抜き
何箇所もの傷口を同時に縫合し癒着させる。


徳井の治療に気を取られている隙に頭上に青く輝く巨大な王冠が顕れひとみ達に影を落としていた。
――フリージングクラウン!――
気づいたときにはもう遅い。二人の頭上に白い極寒の光が降り注ぐ。

「やだっ!!冷たい!」
ひとみは思わず声を上げるとバッグを持つ腕と同じ手に下げていたスプリングコートを頭上に掲げた。
この光は『白光の王』の放つ光線より威力は弱い。
ほぼ裸の九頭が浴びても殆どダメージは無かったのだ。十数秒光の下に晒されても軽い凍傷程度で済むはずだ。

「よね君!盾はそのまま九頭に向けていて!このまま走るわよ!」
ひとみはよねと共に徳井の出てきた別荘の壁の裂け目に向かって走る。
「よね君、徳井君と二人で九頭をここに足止めしてて!!私の能力は遊軍向き、悪いけど逃げさせてもらうわ。
代わりに今九頭が使ってるスタンドの本体を叩く!」


言い残すとひとみはよねに鏡の盾を押し付けて一人で切開面に入り別荘の中を経由して逃亡を図った。
シートのマーカーに色域として表示した『白光の王』の射程距離は約5m。
このスタンドを使役しているのが九頭である以上現在の仮の本体は九頭。
本体の九頭から5m以上離れ尚且つ九頭の視界から隠れたら飛び道具である冷凍光線の狙撃対象からも外れる。


九頭は留流家に埋もれた能力者のスタンドを取り出して自分の能力として使うことが出来る。
『フリージングクラウン』と『プリズムマン』の本体は広範囲に展開された留流家の何処かに埋もれている。
合体の元になった二体のスタンドの本体を叩けば白光の王は消滅する。

協力者の位置を確認すると新手のスタンド使いとの戦闘を終えた大谷が近くまで来ている。
ひとみは大谷と合流し、二体のスタンドの本体の位置を捕捉して叩くつもりでいる。

(大谷さん合流OKですか?)

129 名前:レナ・オリン ◆BhCiwB2SCaJ5 [sage] 投稿日:2010/05/12(水) 12:15:18 0
>>126>>128
時は佐藤ひとみと大谷杉松が合流するほんの少し前にさかのぼる。
これから起こることを考えてみれば、あの時レナは大谷のスタンガンで大人しく気絶していれば良かったと後悔することになるだろう。


レナの体にスタンガンが押し付けられてスイッチが押される。

『バチィィィィ!!』

体には確かに電流が流れたはずだった。しかしレナは体をビクンと痙攣させただけで倒れてはいない。
いつの間にか辺りの空気は桃色がかっている。レナは自分の香水の匂いで大谷を惑わしながらスタンドの瘴気を放っていたのだった。
もちろんお互いの体は少しづつ丸みを帯び始めている。

「スタンガンじゃなくてナイフを使えば良かったのに…。私の体に傷をつけるのが怖かったのね。
なぜ私が気絶しなかったのかわかるかしら?スタンガンって電気じゃない?だとしたら神経を麻痺させるものよね?多分ね…。
よく見てみて、スタンガンが触れているところを。おいしそうなお肉がたっぷりついているでしょ?
私、醜い体にはなりたくないんだけど、この世に敗北ほど醜いものもないと思っているの…」

どうやらスタンガンの電流は厚い脂肪によって遮られていたようである。
次の瞬間レナの背中で隠れるように腕だけをだしていたメープルハニーは惜しげもなく巨体を出現させた。
二人の体はいっきに膨れあがる。

「ダイナマイトバディな私もいかが?大谷杉松ぅ。でもね風船みたいに爆発するのはあなただけよ!!」

メープルハニーのヒビ割れている拳が大谷の腹にドスンと突き刺さり腹からは大量の血が噴き出した。
拳は内臓にまでは達していなかったのだが肥大化した大谷の腹の脂肪の中にとどまっている。
みるみるうちに元のモデル体型を取り戻すレナ。

「拳のヒビ割れをあなたの脂肪の中でふさいじゃったの。どう?体内で異物を包み込んでいる気持ちは?」

余裕で語るレナの左目から突然ぽろぽろと涙がこぼれ落ちる。変なタイミングではあったが今さら感情が独りでに噴き出してきてしまったのだろうか。

>「それは俺に対してのプロポーズか?
>なら答えは"NO"だ、あいつらの事はまだ知らない、出会ったばかりだからな。
>だが…あいつらを守りたいと思う、お前らは守りたいとは微塵も思わない、お前らには大切なものが足りないんだ
>それに、彼女だったらもう二人もいるんだ 三人目は一生いらないんだよ!!」
>『フフフ…ホカニイウコトハアルカシラ?』
>「…一つ言っておこう、仲間に不意打ちはするな ハンバーグみたいな顔になりたくなかったらな」

一言一句を思い出しながらレナの腸は沸々と煮えたぎってくる。

「……。そんなガラクタ人形みたいなスタンドのどこがいいのよ?変態じゃないの?
大谷杉松…あなたは電子レンジで加熱した生タマゴみたいに破裂したらいいと思うわ…」

レナの顔は恐ろしいほど残酷になっていた。

130 名前:生天目 有葵 ◆BhCiwB2SCaJ5 [sage] 投稿日:2010/05/12(水) 15:38:43 0
ステレオポニーは有葵の胸に首をつっこんで肋骨の治り具合を調べていた。

「よし!綺麗にくっついているよ。自分で言うのもなんなんだけど
ヒーリングソニックってのも凄い効果があるもんだね」

「うん!ぢゃあ痛みもひいてきたことだし早くこの悪魔の森みたいなとこから脱出しよ!」

生天目は歩き出す。他のスタンド使いたちの足で纏いにならないようにそっと帰宅するつもりだった。

「ううううう…」

しかし2〜3歩歩いたところでぴたりと止まる。

「なんだか足が痺れているんだけど…。長い時間、正座してたみたいに…」

生天目は大土井太一郎のザッツオールバックの攻撃を受けているわけではなかったのだが普通に足が痺れていた。
それはスタンド能力の過度の多用による精神的疲労の症状だった。
精神的疲労だからこそスタンドでは回復することはできない。
もう一度ソノルミネッセンスのような大技を放てば有葵の足はどうなるか保証できなかった。
いや、その前に疲労したスタンドの足が再び超高速の微振動を発生させることができるかどうかも疑問であった。

よたよたと転がるようにして歩く生天目。森の景色も気持ちよいものではなかった。
時々地面に埋め込まれている人間を誤って踏んでは悲鳴をあげ、疲れた体を木にあずけては
木の又からぶら下がっている腕を見て悲鳴をあげる。驚き過ぎてなにがなんだか分からなくなってくる。

「きゃああ!!生首ぃ〜っ!!」

「…おい有葵。あれはただの丸い石だよ」

「ま、まぎらわしいのよぉ〜!!地面から人の頭みたくとびだしてて…」

>>113>>115(傍観してます)
しばらく進んで生天目は遠くに荻原らしき人物を発見する。
荻原はしばらく進むとくるりと向きを変えて、またしばらく進むとくるりと向きを変え同じ所を行ったり来たりしていた。

「……!!」
有葵は怖くなった。完全に若年性アルツハイマーだと思っていたのだ。
しかしよく目を凝らして見てみれば荻原のすぐ後ろを木々に隠れながら悠然と歩いている人影がある。

「え?」
有葵には二人が仲良く舞台上で演劇をしているようにも見えた。
まわりの木々や地面には人が埋め込まれているため、かなり斬新な演劇だ。
荻原が振り向く前にヒゲの男性は、したり顔でサッと荻原の死角に隠れる。

「きゃはははは!!」

その様子を見ていた有葵はお腹をかかえて大爆笑する。
まさか荻原がスタンド攻撃を受けているとは思ってもいなかった。

131 名前:痛いバカップル ◆tGLUbl280s [sage] 投稿日:2010/05/12(水) 21:12:27 0
北条市の工業団地の裏手にある小さな公園。
寂れた団地の中の人気の無い公園で口論を繰り広げる男女。

「なんでだよ!きっと上手くいくって!!」

「ダメ…ダメなの…。あたしだって悠君の事が好き…だけど…だけど…
悠君あたしと付き合うときっと不幸になる…誰にもこの寂しさは埋められない…」

「大丈夫だよ!君が寂しさを感じる度にオレが抱きしめるから…君が寂しく無くなるまで何千回も…いや何万回だって!!」

女はゴテゴテしたレース飾りのついた黒いワンピースに頭にはヘッドドレスを着けている。
所謂ゴスロリという服装。ミニスカートから惜しげもなく太い脚を覗かせている。オマケに左手首には包帯。

男の方は普通のカジュアルな服装だがいかにも中にラノベや同人誌が入っていますと知らせて歩くような
ピンク髪の猫耳少女のプリントされたビニールバッグを手に下げている。
お世辞にも美男美女とは言い難い二人が芝居がかった痴話を繰り広げる様は滑稽で周囲に何ともいえない痛い空気感を発している。

実はこのバカップルはスタンド使い。両人のスタンドともまだ発現前の黎明期。
自分達ですら気付いていない朧気な能力である。
留流家の能力者ホイホイに引っ掛かったのか偶然デートの途中この北条市に立ち寄っていた。


【本体】
名前:磯山南(いそやまみなみ)
性別:女
年齢:19
身長/体重:157/53
容姿の特徴:ゴスロリ服、リスカ跡を大げさな包帯で隠している。
人物概要:痛い性格のヤンデレ女。不幸に酔うのが大好き。

【スタンド】
名前:まだなし
タイプ/特徴:自動操縦、自涜型。まだ形がハッキリしておらず人型の霧のような姿。
能力詳細: 本体の望む不幸を実現する。
本体の理想とするドラマチックな不幸を阻む要因となる細かい不幸は防いでくれることもある。

破壊力-C スピード-B  射程距離-C
持続力-B 精密動作性-C 成長性-B


【本体】
名前:小金井悠(こがねいゆう)
性別:男
年齢:21
身長/体重:172/60
容姿の特徴:精一杯のオシャレ髪だが似合ってない。ユ○クロで揃えたようなカジュアル服。
人物概要:アニメやラノベ好きのオタク気質だがそれなりにモテようと努力している。
海で溺れた経験があり水に恐怖感を抱く。以来風呂もシャワーのみで決して湯船に浸からない。

【スタンド】
名前:まだなし
タイプ/特徴:着衣型
能力詳細:本体の周りに形成された薄い膜。
水を弾く。水中では本体の周囲に1mほどの空気のドームを作ることができる。
本体が水に近づかないため使用する機会がない。

破壊力-C スピード-B  射程距離-E
持続力-C 精密動作性-C 成長性-B

132 名前:梶原静 ◆HQs.P3ZAvn.F [sage] 投稿日:2010/05/12(水) 21:22:35 0
 



「……何なのあの大きさ。パース狂ってんじゃん。やだやだ面倒臭い。絶対目ぇ合わせたくないなあ……」

公園のベンチにぽつりと鎮座しているジャック・ベネルソンを電柱の影から覗き込み、
梶原静(かじわら しずか)は誰にとも無く呟いた。
華奢な輪郭には配置も造形も特徴に乏しい部品が並び、頭髪は真っ黒なそれが無造作に垂れ下げられている。
覗き見に集中する余り宙を漂う彼の右手には、真っ黒なレンズのサングラスが摘まれていた。

ふと、彼は視界の端に人影を認める。
反射的に目で追ってしまうと、傍目不審者の彼を注視する中年の女性と視線が交錯した。
してしまった。

途端に彼は尾を踏まれた猫のように素早く、右手のサングラスを目元へ運ぶ。
更にすぐさま女性から目を逸らし、背を向けた。
あからさまな挙動不審の態を見せる彼の呼吸は浅く乱れ、心臓は早鐘へと成り果てている。

「……あぁー、やだやだ。元から人付き合いは得意じゃなかったけどさあ……。
 ルルイエの中で嫌って程向かいの壁から視線を受けたせいで、今じゃ見事に対人恐怖症だよ……」

ぶつぶつと呟きながら、梶原は歩き出す。
ベンチで呆けているジャックの元へ――彼に背中を見せる形で、後ろ向きに。
ジャックの浮かべる表情は驚愕か呆然か、それさえ梶原には分からない。

「やあどうも、ちょっと僕人目アレルギーでね。こんな格好で失礼させてもらうよ。
 んで、失礼ついでにお願いするんだけど……」

ジャックの目前にまで歩み寄った梶原は、やはり背を向けたままで語り掛ける。
顔色が窺えない為、口調は完全に我が道を邁進していた。
そして彼は、ジャックには決して見えない笑みを浮かべる。
サングラスの内に下卑た三日月を描く双眸を潜ませ、口元には薄ら笑いを湛えて。

「……くたばって……もらえないかなァッ!?」

――以前背中を向けたまま、ジャックへと渾身の後ろ蹴りを突き出した。


133 名前:九頭龍一 ◆SM24/QbfAY [sage] 投稿日:2010/05/12(水) 23:52:11 0
>>128
「な・・・!」
九頭が思わずあげた驚愕の声は佐藤が徳井を救った事になった。
傷ついた徳井が不意の光線を避けられるとは思ったいなかったのだ。
いや、正確に言えば徳井が光線を避けたことより、光線が徳井に当たらなかったことに対して、だ。

冷凍光線はそのまま直進し、別荘の壁にぶち当たる。
だが今やそこはただの別荘の壁ではない。
留流家の一部なのだ。
北条市全体に広がった留流家の人口密度は低くなり、以前のように取り込まれたスタンド使いがひしめき合っているほどではない。
それでも気付けばそこら中に人が埋まっているのだ。
そう、光線が直撃したその壁にも…!

冷凍光線は遺憾なく発揮し、壁に埋まったスタンド使いは避けることも出来ず凍りつき砕け散る。
それはそのまま九頭の命を削る事になる。
筋骨隆々の30代だった九頭の姿は既になく、今や白髪交じりの60台近い老紳士となっている。
よぼよぼといった感じではないが、生気と覇気に溢れていた頃には比べるべくもない。

>「よね君、徳井君と二人で九頭をここに足止めしてて!!私の能力は遊軍向き、悪いけど逃げさせてもらうわ。
>代わりに今九頭が使ってるスタンドの本体を叩く!」
「なるほど、賢い選択だ。そんな君の手助けをしてやろう。」
ゴゴゴゴ…と鳴動する音がすると、地面には淡く光る二人の男女が浮かび上がる。
その姿を見て徳井は理解するだろう。
先ほど九頭が「君の両親の要望でもある」といった言葉の意味を!

再び白光の王となったスタンドを従えた九頭が徳井の理解を肯定する。
「この二つのスタンドの本体だよ。埋まっている以上、その二人は攻撃を防ぐことも躱す事もできない。
君の力でも十分倒せるはずだ。
そうすれば白光の王は消滅する。
そう、君は出来るだろう。だが、君の仲間はどうする、かな?」
残酷な笑みを浮かべ徳井に視線を向ける。

そう…フリージングクラウンとプリズムマンの本体は徳井の両親なのだ!

徳井は九頭を倒す為に両親を見殺しにするだろうか?
それとも両親の為に佐藤と戦うのだろうか?

徳井の次なる行動を九頭だけでなく、周囲に埋まるスタンド使いたちも見詰めている。

134 名前:大土井太一郎 ◆tGLUbl280s [sage] 投稿日:2010/05/12(水) 23:55:56 0
>>113 >>130
こうして能力領域内の獲物を弄んでいると戦場での興奮が蘇る。
大土井は黒い軍服姿の過去の自分に思いを馳せていた。
参謀長である大土井自ら前線に進軍すると『馬上の鬼神』と渾名されるその姿に敵軍の兵は震え上がり
混乱、逃走の果てに同士討ちに陥ると噂された。

何のことは無い。敵の前線の一部に能力領域を作り上げ一斉攻撃のタイミングで能力を発動させる。
攻撃が反対方向に暴発すると敵は必ず混乱に陥る。混乱に乗じて自軍を突入させるのが定番の戦略だった。
だがこの戦略は突入時に相応の犠牲を要する。
大土井のことを『前線の兵士の勇敢さのみを頼りにした策無き参謀』と揶揄する声もあったがそれが何だというのか。
戦の手足たる雑兵が命を捨てる覚悟の無い闘いに勝利など無い。

>「きゃはははは!!」

大土井の回想を打ち破る甲高い笑い声が森に響く。
声の方を振り返ると茶色い髪の少女がこちらを見て腹を抱えて笑っている。
ただの少女であれば放って置いても良いが少女の横には馬の仮面を付けた女の像が浮かんでいる。
「彼奴もスタンド使いか!」

大土井は現在荻原を捕らえていた能力領域を解除すると、新たに荻原と少女を収めた能力領域を作り出した。
これにより一旦準備を終えていた地面の消化機能はリセットされる。
消化機能をリセットしてまで新たな能力領域を定めたのは彼のスタンドが外部からの攻撃に対してほぼ無力だからである。

能力領域で敵を弄ぶことだけに特化した能力。領域外で本体に攻撃を向けられたらなす術がない。
無論本体は元軍人、闘いには心得がある。相手が生身の人間であれば対応は可能であるが。

荻原と生天目に姿を見られるも大土井は余裕綽々。悠々と能力領域外に出ると芝居がかった仕草で二人に声をかける。

「姿を見られたのは我が失策…だが問題ない…異能者二人よ!ここから出られるかな?」

大井戸は髭をヒクつかせて皮肉な笑いを浮かべながら肉の柱と化した木の後ろに隠れた。

135 名前:生天目 ◆BhCiwB2SCaJ5 [sage] 投稿日:2010/05/13(木) 13:05:13 0
>荻原さん>大井戸さん

>「姿を見られたのは我が失策…だが問題ない…異能者二人よ!ここから出られるかな?」
大井戸は能力領域外から荻原と生天目に声をかけると皮肉な笑いを浮かべながら木の後ろに隠れた。

「有葵!荻原さんはスタンド攻撃を受けていたんだよ!笑ってる場合じゃなかったんだ!
そしてたった今、オレたちもその術中に嵌められてしまったんだ!」
戦闘態勢に入ったステレオポニーはそう言うと反響しながら大井戸の隠れている木の後ろにまわってみた。

「!?」
不思議なことに木の後ろにまわったはずのステレオポニーはあっという間に有葵たちの所に戻って来ていた。
ステレオポニーは音の性質を持つスタンド。高速で動いている時にはほとんど直線的な動きしか出来ない。
それが大井戸がいるべきであろう木の後ろに直進を開始した時点でどこにも反響することもなく
ぬるりと反転して元居た場所へと戻って来てしまっている。いや、させられてしまったと言うほうが正しいのだろうか。
「ここから出られるかな?」ステレオポニーは大井戸の言葉を思い出し理解した。

敵は射程内のターゲットの進行方向を任意で自由に転換させることが出来るのだ。
まさに直進運動を基本とするスタンドがその欠点から導きだした最良の答えだった。
これで遠くから生天目が見た荻原と大井戸の不自然で滑稽な動きの理由も納得できる。

「荻原さん。敵はオレたちの進む方向を変えてしまうことが出来るみたいだよ。どうしたらいいと思う?
攻撃しようと思っていても上手いことしないかぎり敵には一生辿り着けない…。
オレのレーダーで探知したとしても攻撃する前に見失ってしまったらもともこもないし…」

困惑するステレオポニーに生天目が答える。

「…う〜ん。進んで行っても方向をクルっとまわされて見失っちゃうってことよね?
つまりはクルっとまわされても敵を見失わないように出来ればいいってことなのよ。
だったら私と荻原さんが背中同士をくっつけてヒモかなんかで縛って体を固定するの。
それだったらクルっとまわってもどちらか一人が敵を確認することが出来ると思うわ」

「……。そんな作戦が上手くいくと思っているのか?よくわからないが…なんだか腑に落ちないぞ…」

「とりあえずやってみよっ」

問答無用な感じで荻原と背中を合わせると荻原のスタンド「プラントアワー」の能力を借り
体を蔦でグルグル巻きにしてお互いを固定する二人。
二人の身長差から生天目は地面から足を離してぶらぶらさせている。

「…ちょ!有葵!!なんかダメだよ!この作戦はなんかダメな感じがするよ!!」

胸をはりながら生天目はランドセルみたいに荻原の背中にはりついている。

「いいからいいから。あなたはレーダーで敵の位地を教えて。出来れば二人だけに聞こえる声でね」

「ああ。索敵しながら二人だけの鼓膜を震わせて情報を伝えればよいのだろう?」
ステレオポニーはこの粗い作戦が成功するとはどうしても思えなかったのだが
有葵を尊重して実行することに決めた。

「あっ荻原さん!なんか武器とかないですか?私の武器!クルッとまわったときにパチンって出来るようなの」

生天目本人もこの作戦がどうなるかはわからなかった。傍から見れば矛盾だらけの作戦かも知れない。
しかしこれが失敗してももう一つ生天目には作戦があった。さらに稚拙で非現実的な作戦ではあったのだが。

136 名前:ボブ・バンソン ◆JvtTTnep1k [] 投稿日:2010/05/13(木) 21:01:22 0
>「きゃっきゃっきゃっ!」

「小僧…前にも言っただろう…歯を見せて笑うな!」

激しい怒声、聞き覚えのある声に震え上がる想太。
九頭の腹心きっての豪傑男ボブ・バンソンが目前に仁王立ちしているではないか!
どのようにしてメメント・モリの呪縛から抜け出し、この異空間に辿り着いたのかは定かではない…

瞳に燃えたぎる闘士を滲ませ、倍は背の差のある少年を見下ろした。
「ルルイエからまた抜け出したのか…わかっているな?」
         __      __   _      __
    /::ヽ.   「::::l /}  /:::/ /´::::/     /´::::> ,.-.、_        __,,..、
    〈:::::::ハ  |:::::j '´   |:::::/ /:::::::/./!   /:::::/ /:::::/      /::::::::j__
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     V:::::l /::::}.   l:::::!ヽ一' l/   /::::::< └-' 〈_:/  /::::://:::::::/,.ヘ.  /:::::/
     V:::レ::::::::r'  .l:::::l       /:::;へ::::\      /:::::<  ー-'<:://::::::://:ヽ
       .';:::::::::/   ;:::::└‐:::ァ    ∨  丶;::::>.    ,'::::;ヘ::丶、  ´ /::::::::/':::::::/
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       ヽ::::〉    |::/  ̄                        /::::;::::::::\ ヽ'
          .V     U                             〈:::/ \/


137 名前:荻原秋冬◇6J1m09mANS [sage] 投稿日:2010/05/13(木) 22:00:29 0
>>135
四方八方どこへ行っても戻ってきてしまう。
この姿を他人が見たらどういう風な感じに見えるのだろうか。

>「きゃはははは!!」

突然とても甲高い女性の笑い声が聞こえた。
声のしたほうを見てみるとそこには、佐藤ひとみと一緒に荻原の怪我を治してくれた。
女の子、生天目有葵だった。

「あ!ちょうどよかった。おーい有葵ちゃーん!」
なんとか合流できたが問題は早く敵の本体を叩かなくてはならない。
すると生天目有葵のスタンド『ステレオポニー』が…

>「荻原さん。敵はオレたちの進む方向を変えてしまうことが出来るみたいだよ。どうしたらいいと思う?
>攻撃しようと思っていても上手いことしないかぎり敵には一生辿り着けない…。
>オレのレーダーで探知したとしても攻撃する前に見失ってしまったらもともこもないし…」

「なるほど。どうりで同じところぐるぐる回ってたわけか。しかしこれからどうしよう」

>「…う〜ん。進んで行っても方向をクルっとまわされて見失っちゃうってことよね?
>つまりはクルっとまわされても敵を見失わないように出来ればいいってことなのよ。
>だったら私と荻原さんが背中同士をくっつけてヒモかなんかで縛って体を固定するの。
>それだったらクルっとまわってもどちらか一人が敵を確認することが出来ると思うわ」

とてもいい作戦とは思えない…『ステレオポニー』も腑に落ちないらしい。

しかしほかにいい作戦があるかというと…特にないのでやるしないのだ。

「仕方ない…その作戦でやってみるか…」
さっそくプラントアワーで蔓を生み出してお互いを固定した。
さすがに身長差があるのではたから見ればとてもおかしな姿だが…

>「あっ荻原さん!なんか武器とかないですか?私の武器!クルッとまわったときにパチンって出来るようなの」

「武器はもっていない。だが、気休め程度でよければ作れるぞ。少し時間がかかると思うが」
荻原は目を瞑り歯を食いしばりながら集中し力をこめた。
プラントアワーが生天目の前に立ち蔓をつかみ、新たな植物を生み出している
生み出された植物はすこしだけ巨大なハエトリ草が2つ咲いたのだった。

「一応ないよりましだろ。私の能力じゃ今はこれで精一杯だ」

『早く獲物を食いたい』と言わんばかりに、ハエトリ草は大きな口を開けたのだ。

138 名前:大土井太一郎 ◆tGLUbl280s [sage] 投稿日:2010/05/13(木) 23:56:28 0
能力領域の周囲の木の陰に身を潜めながら荻原達の様子を伺っている大土井太一郎。

荻原の植物をロープ代わりに背中合わせに体を縛り付ける様子を見て呆れたように呟く。
「まさに女の浅知恵だな…自分達の首を絞めるとも知らずに…」

ザッツオールバックの反転能力は能力領域内の単体、もしくは全員のどちらかに及ぶ。
今領域内にいるのは生天目と荻原だけなのだから全員を反転させたら背中合わせの二人が向かい合わせになるだけだ。
寧ろ体をロープで拘束していることで無理な姿勢になりダメージを被ることになるかも知れぬ。

女といえばこの留流家の中にも多くの女の能力者が取り込まれているようだ。
留流家も随分大きくなったものだ…。
おぼろげな昔の記憶をたどる大土井。

自分がここに取り込まれた頃の留流家は大きめの人形屋敷程度の大きさだった気がするが…。
当時既に埋め込まれていた人間達は皆、政治、実業、軍で一廉の働きを修めたツワモノ揃いだった。
なぜ自分が取り込まれたのかは覚えていないが留流家の要員になれた事を実に誇りに感じたものだ。

九頭龍一という神が来るべき時のために選り抜きの戦士を集めたヴァルハラこそこの留流家……そう信じた。
だが最近取り込まれる者ときたら骨抜きの軟弱男のみならず女、子供にも及ぶ始末。
九頭への敬愛と忠誠が減じるものではないが、この御方の考えは何処にあらんやと理解しかねる部分がある。

さて回想も一区切り。

あの少女が小鳥ほどの知恵を絞った戦略だ。
折角だから乗ってやろうか。
大土井は身を隠していた木の影から身を翻し別の木に向かって悠々と歩き始めた。
さも何も気付かずに、先に生天目に見られた戦略の通り反転により死角を作って移動しているかのように…。

139 名前:徳井一樹 ◆MnJrk02a/Yx. [sage] 投稿日:2010/05/14(金) 00:11:48 0

>「なるほど、賢い選択だ。そんな君の手助けをしてやろう。」

九頭が呟くと共に地響きが鳴り響く。
地面には淡く光っている二人の男女が姿を現した。それは見覚えのある顔。
徳井は驚愕の表情を浮かべる。九頭に取り込まれた──あの。瞬間、思い出す!九頭のあの台詞を!

『君の両親の要望でもある』

>「この二つのスタンドの本体だよ。埋まっている以上、その二人は攻撃を防ぐことも躱す事もできない。
>君の力でも十分倒せるはずだ。
>そうすれば白光の王は消滅する。
>そう、君は出来るだろう。だが、君の仲間はどうする、かな?」

僅かに想像していた、『最悪のパターン』
それが現実という巨大な壁となって徳井の前に立ち阻む。
呆然と立ち尽くす徳井。震えながら、地面に埋まった両親の元へ歩いていく。

「変わり果てたとはいえ俺の両親なんだ……
今は壁とか床の一部かもしれないけど俺の掛け替えのないたった一人の親なんだ……
だから…だからああああぁぁああアァァーーーッ!!」

徳井は目の前の両親へスタンドを出現させ、そして……

「───……救う方法がなくて…ごめん。だから、だからせめて静かに……安らかに…眠ってくれ」

静かに徳井が呟くと同時に九頭の方向へ振り返る。
背後には無残に切開されバラバラとなった両親達。
目からは静かに涙を流し、何も言わず少しずつ九頭へ向かって歩いていく。

いろんなことを考えた。今までの思い出、助ける方法。

でもバカな自分にはこれしか方法がなかったのだ。

誰かに殺されるよりも、見殺しにするよりも。

関係のない者を巻き込んで両親を救うよりも。

自分が引導を渡すことが最良だと、そう考えた。

それでも何も選ばず逃げるよりはマシだ。

例えそれが間違っているとしても自分の選んだ道……後悔はない。
それでもどうしようもない悲しみと自分への怒りは後悔となって残っていく。

「何が正しくて何が間違ってるか…わかんなくなっちまった…………
こういうとき…マンガとかの主人公ならよォーー格好良く…決断きめれるんだろうけど…ハハ…やっぱ無理だったわ。
でも…俺は逃げねー…この罪も受け止めてやる。全部背負って生きてみせる!
復讐は終わりだ!俺は、親父達の志を受け継ぎ、俺の罪を清算するために生き抜いてゲームに勝ってやる!」

涙を拭き取り、徳井は九頭へ向かって走り出す。
今徳井の胸中にある感情をぶつけられるただ一人の人物へと向かって。

140 名前:よね ◆0jgpnDC/HQ [sage] 投稿日:2010/05/14(金) 16:20:42 P
/「この二つのスタンドの本体だよ。埋まっている以上、その二人は攻撃を防ぐことも躱す事もできない。

「ゲスめ…そして佐藤さんが居なくなった所を狙われた…圧倒的不利ッ!」

3対2。味方のうち1人は戦えないだろう。
これではもはや出す手も足もない。このまま壁になろうか、そう思った時だった。

/「───……救う方法がなくて…ごめん。だから、だからせめて静かに……安らかに…眠ってくれ」

「ッ!?徳井さんッッ!!」

遅かった。徳井の決心も、その行動の結果も全てが終わった後だった。
だが、よねの想定する展開とは違った。
ほんの数秒だけ涙を流すと、何もかも―自分自身の罪も、両親の思いも―を背負って九頭に走り出した。

よねはただただ呆然と徳井のその姿を見る。
自分の考えは間違っていたのか。
自分の父親を助け出そう、等という愚かな考えは浅はかだったのか。
そんなこと、不可能だったのか。
全てが目の前で証明された今、よねには守るもの、貫く信念が無くなってしまった。

「違う…違う違う違う…ッ!!間違ってる…そんなの間違ってるッッ!!」

徳井の行動…いや、徳井自身を拒絶し始めるよね。
自分には到底できない事だから。自分がするべきと信じてやまなかったことが否定されたから。
たった今、よねは全てを投げ出した。絶対にしてはいけない、最も父親を救うのに最短なルートを選ぶことにした。

「徳井ィッ…アンタは違うッ!間違ってんだよォーッ!!」

足もとに散らばった氷の破片を拾い徳井の後ろ姿を目掛け走り出す。
鋭く輝く氷の破片。それはまるで研ぎ澄まされたナイフの様だった。

徳井まであと1m程になった時であった。
急に体が止まった。体だけではない、周りの空気も、音も、世界ですら止まってしまった。

(なんだ…いったいどうなってる…?これも九頭の能力か…?)

ただ、この静寂の中で動いているのはよねの思考だけ。
よねには何も感じられなかったし、生命活動でさえも停止していた。
あれこれ考えていると、よねの頭の中に何かが聞こえた。

 Run For Answer,To Far Answer
" 答えへと走れ 、 遠い答えへと "

廊下を走っている時に聞こえた言葉、声だった。
ただ、今回は全てが聞き取れた。ハッキリと。まるで自分がそう言っているかのように。
        S u m 4 1
(答えへ…?Sum For one…?これは…自分のスタンド能力…?)

よねは全てを悟った。あの時の神秘的な感じも、Sum41の動きが鈍かったのも、すべてこのためだと。
デカルトの言葉にCogito , Ergo Sumという言葉がある。
我思う、故に我ありという意味のラテン語である。
これらからよねは自分のスタンドを、自分の精神の象徴をこう呼んだ。

「Sum41ッッ!!一つの為に自分は在るッ!!」

よねが叫ぶとまるで氷が弾けるかのように世界が動き出した。
そしてよねは今の自分の能力を把握した。それは自分自身へ"猶予"の時間を与えることだった。


141 名前:よね ◆0jgpnDC/HQ [sage] 投稿日:2010/05/14(金) 16:24:19 P
「徳井さん…すみませんでした」

徳井は何を言ってるのかわからずキョトンとしている。
当然だ。
急に「間違っている」等と言われながら近づかれ、
急に止まっては謝りだしたのだから。

「九頭龍一…猶予は与えられた…もう迷ったりしない。迷ってもまだ考えられる!!」

そうして徳井の後ろを追うように九頭へと走り出した…

【本体】
名前:米 コウタ
性別:男
年齢:22
身長/体重:179/53

容姿の特徴:白いTシャツにジーンズ。ブルーの帽子をかぶっている。

人物概要:通称「よね」。ごく普通の大学生だったが矢の力で発現。

【スタンド】
名前:Sum For One
タイプ/特徴:標準型。シルクハットを被った少年の様なスタンド。
能力詳細:任意のタイミングで、自分だけが思考できる空間を作り出す。
この空間は誰にも認知できないし、時間も経過しない。
もちろん、Sum41の能力も使える。


破壊力-C スピード-B   射程距離-E
持続力-A 精密動作性-B 成長性-B

142 名前:生天目 有葵 ◆BhCiwB2SCaJ5 [sage] 投稿日:2010/05/14(金) 16:32:14 0
生天目はふと空を見上げていた。悲しげな空だった。
紺碧の虚空に白雲が溶け込むように流れて消えてゆく。

視線を元に戻すと少女は人の埋まっている木々や地面を見て我に帰る。

>「一応ないよりましだろ。私の能力じゃ今はこれで精一杯だ」

「…なにこれ…?ハエトリ草?」
試しにハエトリ草の口を木に近づけてみた。すると木にガブリと食いつくハエトリ草。

「あ!食べちゃったよ。木なんか食べちゃだめ!はなせぇ!」
生天目がぐいっとハエトリ草をひっぱると繋がっている荻原とともに転びそうになる。
同時に木を獲物ではないと判断したハエトリ草は自然に口を開いた。

「きゃははははは!」
足をぶらぶらさせながら大笑いする生天目。ステレオポニーはもしかしたら有葵が背中に背負われている意味は
まったくないのではないだろうかと思っていたのだがそれは黙っていた。

「じゃあはじめよっか索敵を…」
そうステレオポニーが言った矢先、意外なことに一同は大土井の姿を肉眼で確認する。

「お、荻原さん!移動は任せたからあいつに近づいて!」
突然の好機を逃すものかと生天目が叫ぶ。
接近戦に持ち込めばプラントアワーのスピードとパワーなら一瞬で勝負をつけることが出来ることだろう。
たとえ荻原が攻撃を反転させられてもひるがえった有葵はハエトリ草で敵を捕獲しプラントアワーの射程内に
引きずり込もうと考えていた。


「ふ…。姿を見せるとは、もしかして…アホだと思って油断したね!?」
今まで大人しく生天目の作戦を静観していたステレオポニーであったが仮面の下の口元をゆるませると
大土井の真上の木の枝に向かって跳躍し反射して大土井の頭の天辺に体当たりをしようとした。

今だに大土井のスタンド能力には未知数の部分があったのだがザッツオールバックの反転能力が、
もしも地球の磁力と水平に行われているとしたならば真上から重力と平行に直進してくるものは
どんなに反転させようがクルクルまわるだけでそのまま直進できるはず。

「たあああ!」
ステレオポニーは仮にもスタンド。頭に体当たりされれば生身の大土井なら気絶するはず。

143 名前:荻原秋冬◇6J1m09mANS [sage] 投稿日:2010/05/14(金) 23:23:04 0
「さて、俺も準備しておかないと」
荻原もプラントアワーの腕の蔓を鎌のような棘を持つバラの蔓にした。

姿を現さぬ敵を前にとてつもない緊張感を……と思ったら。

>「あ!食べちゃったよ。木なんか食べちゃだめ!はなせぇ!」
……緊張感が一気に薄れてしまった。
どうやらハエトリ草を木に近づけたらしい。

「うわっ!危ない!危ない!」
いきなり動くものだから荻原も転びそうになる。
生天目はハエトリ草が木から離れたのを見て無邪気に笑っている。

この時荻原はやれやれと思いながらふと、娘の美菜のことを考えていた。

(そういえば……あの時の美菜も有葵ちゃんと同じくらいの年だったな…)
あの時とは当然…荻原の妻、春夏と娘の美菜が留流家に囚われたときの事である。

荻原にとって最も心に大きくついてしまった傷…

愛する妻と娘が行方不明になったその晩、荻原はまるで小さい子供のように泣いた…

家でただ一人…誰も慰めてくれる人はいない…

>「じゃあはじめよっか索敵を…」
ステレオポニーがの言葉でハッ、と我に返った荻原。
するとその目の前に人らしきものを見つけた。
あれが本体に違いない…

>「お、荻原さん!移動は任せたからあいつに近づいて!」

「わかった!まかせて!」
正直、とても動きづらいが敵はそんなに遠くにいるわけではないから、
なんとか近づくことはできる。
敵の本体の真上にステレオポニーが襲い掛かった。

「なるほど…横の反転はできても縦はできるかどうかわからないな」
プラントアワーの両腕にあるバラの鞭を構えながら、荻原たちは一気にその男に近づいた。

144 名前:九頭龍一 ◆SM24/QbfAY [sage] 投稿日:2010/05/14(金) 23:47:32 0
>139>141
両親との再会を果たした徳井をあらゆる方向からの目が見ていた。
勿論九頭も。
この状況において戸惑い、迷い、どのような選択をするか。
本来出来ぬはずの選択を突きつけられた時、人の心は限りなく弱くなる。
そうなってしまえば最早徳井は体の傷以上に戦えない身体になるだろう。
よしんば選択できたとしても、それは徳井は両親を守る為に佐藤とよねと戦う事になる。
どちらがどのように勝とうが仲間同士戦ったという事実は心を傷つける。
それは即ちスタンドパワーの弱体化に繋がるのだ。

どう転んでも九頭の有利は揺るがない、筈だった。

だが、徳井の選択は…
>だから…だからああああぁぁああアァァーーーッ!!」
そこから先は止める間もなく…いや、本当なら止める事はできた。
だが止められなかったのだ。

「き…貴様…っ!!自分の親になんて事を!!!!」
その場にいた誰よりも動揺していたのは、この悲劇的状況を作り出した九頭自身だった。
まさか自分の親を手にかけるなどと言う事は想定すらしていなかったのだ。
そう、九頭には家族を己の手にかけるという事は考えられない…!

動揺する九頭とは裏腹に、徳井は涙を拭き新たなる決意を固めていた。
徳井の行動に迷い動揺していたはずのよねすらもなぜか気力を取り戻し、ともに走り寄ってくる。

揃って駆け寄るなどと愚の骨頂。
殺してくれと行っているようなものなのだが、九頭は何も出来なかった。
隣にいる白光の王を操作する事も、瞬間的な移動をすることもなく、ただそこに立っているだけ。
それ程までに動揺が激しかったのだ。
今、九頭は無防備に二人が迫るままになっていた。


この戦いの場にもう一人、誰にも認知されないまま隠れていた男がいた。
男の名は鈴木章吾。
スタンド・アイドルメイカーの力で自分がいない幻を全員に見せていたのだ。
そして徳井の両親の幻影を作り出していたのもこの男の力だった。
つまり徳井が殺した両親は幻。故に白光の王も消えなかったのだ。

九頭は留流家に取り込んだスタンド使いを家族として何よりも大切にしている。
それは留流家のエネルギー源というだけでなく、悠久の時を生きる九頭が共に同じ時間を生きてくれる貴重な家族なのだから。
それを人質として扱う事は出来ない。
ましてや盾や的に使うなど。
だからこそ、鈴木に命じ、徳井や佐藤、よねと言った敵の前に晒させたのだった。

目論見が失敗した今、鈴木はなす術がない。
戦闘力がないうえ、鈴木もまた動揺して動けなかったのだから。

145 名前:佐藤ひとみ ◆tGLUbl280s [sage] 投稿日:2010/05/15(土) 01:02:13 0
>139 >140 >144

「馬鹿……まさか本当にやるとは思わなかったわ…」

切開された別荘の中。
徳井達の視界に入らぬ壁の向こう側。佐藤ひとみは触手で作ったもうひとつの盾を手に立ち尽くす。


――建物の中に逃げ込み走り出そうとした時、残酷な決断を迫る九頭の声が耳に刺さった。
九頭は徳井にとってこれ以上ない大切なものを天秤に載せ選択を迫っている。
これはひとみにとって二重の驚きだった。九頭がこんなベタな悪役じみた脅しをしてくるとは思えなかったからだ。

ひとみはその様子を見ずにいられない。
立ち止まり壁をスキャンして成り行きを見つめていた。…それが鈴木章吾の生み出した幻影とは気づかぬまま…。
ひとみは徳井が両親に手をかけることなど出来ないと踏んでいた。
白光の王は相手にするには危険過ぎるスタンドだが本体を叩けない以上光線を避けながら九頭本人を攻撃するしかない。
手にしていたのは徳井の為の盾…。だがもうこれを渡す必要は無い。

徳井は目の前に掲げられた天秤を決断によって破壊した。
その決断はこの時点に於いては愚かなものだ。決断を先伸ばしに闘う手段だってある筈だ。

ひとみは盾を床に置くと別荘の外に向かって歩き出した。

徳井は決断した。だが自分は迷いを捨てられない。
いや迷っていることにすら気付かない振りをしている。
迷いとは九頭に対する想いと留流家との同化への拒絶…二つの思いの両天秤。
九頭に魅力を感じている事は確かだが、かといって留流家に取り込まれ自我を無くすのは真っ平だ。
これまでは自分可愛さが先に立ちゲームを進める方向に手を貸してきたが
ひとみにとってイレギュラーな要素である九頭への感情がひとみの行動をどう左右してしまうのか本人にも解らない。


どれほど愚かであれ徳井は自分の運命に決断を下し先に進もうとしている。
おそらく徳井と同様に肉親を取り込まれたという、よねも…。
未だ迷いの中にある自分はこの場所に居るべきではない。


そう考え歩みを進めたその刹那、聞こえてきたのは九頭の声・・・!

>「き…貴様…っ!!自分の親になんて事を!!!!」

驚きと動揺に満ちた半ば悲鳴のようなその声にひとみの心は激しく揺さぶられる。
やはりこの男はそんな安っぽい悪役じみたことをする男では無かった。
おそらく死を迎えたであろう少年スタンド使い二人を見送る九頭の表情はこの上なく優しく悲しげだった。
ひとみは我を忘れて元来た道を走り徳井の切開した壁の裂け目から飛び出した。

146 名前:大土井太一郎 ◆tGLUbl280s [sage] 投稿日:2010/05/15(土) 01:54:25 0
>142 >143

「ククク…攻撃して来い!ザッツオールバックが方向を転換できるのは人だけに非ず。
領域内のあらゆる物体やエネルギーにも及ぶ」

大土井は生天目か荻原の攻撃を待っている。
カウンターで反転させるつもりなのだ。180度反転した攻撃は本人に返る!

ザッツオールバックの反転能力は物体の進行方向とは逆向きに発動する。
つまり停止した物体には作用しない。カウンターにはもってこいの能力なのだ。

だが攻撃してきたのは武器を手にした生天目と荻原ではなかった。
ステレオポニーは体当たり的に大土井に向かい落下してくるではないか。

「何?なんたる奇襲!」

大土井にとって予想外だったのは少女のスタンドが自らが能力領域を飛び越えて攻撃してきたことだ。
少女のスタンドのスピードを甘く見ていた失策!能力領域を超えられては任意のタイミングで反転できない。

大土井の背後に体中に矢印が描かれた半人半馬の像が現れた。
これがザッツオールバックのヴィジョン。
ザッツオールバックは大土井の上に覆いかぶさるように立ち拳を空に向けて構えている。

一度目にした少女のスタンドの動きは直線運動を基本にしていた。このまま待てば拳に向かって落下してくる。

スタンド『ザッツオールバック』は半径20mの能力領域を作り出すが、本体をガードするように寄り添うスタンドヴィジョンも存在する。
このスタンドの拳に触れたものは強制的に反転させられる。

ステレオポニーがこのまま落下を続ければザッツオールバックの拳にぶち当たり落下と同じスピードで上空に飛ばされることになる。
もっとも相手は浮遊できるスタンド…ほぼダメージは無いだろうが怯んだ拍子に姿を隠すことくらいはできる。

147 名前:佐藤ひとみ ◆tGLUbl280s [sage] 投稿日:2010/05/15(土) 02:41:40 0
>>145の続き
フルムーンと共に透明化した状態で壁の裂け目から身を滑り込ませる佐藤ひとみ。

九頭には位置を把握されてしまうが攻撃に意識を向けている徳井とよねに存在を悟られることはない筈だ。

ひとみはさっきまでこの場に居るはずの無かった男『鈴木章吾』の姿を認める。
この男の能力を鑑みれば先の状況と『白光の王』が未だ九頭にの側に寄り添っている理由が解る。
ひとみは透明化したまま鈴木章吾の後ろに回りこみ耳元で囁いた。

「九頭龍一の幻影を作りなさい。早く!」

148 名前:鈴木章吾 ◆HQs.P3ZAvn.F [sage] 投稿日:2010/05/15(土) 09:53:37 0
「オイオイ冗談じゃないぜ九頭さんよぉ……! 自信満々だったくせに、目論見は大外れじゃねえか!」
アイドルメイカーの幻影に姿を隠しながら、鈴木は九頭へ『悪態』を零す。
狩る者である筈の、『留流家』の一員である筈の、絶対の親愛を刻み込まれている筈の彼が。

「ったくよお、そもそも『自分の親に』って。それら人から奪ってきたのは他ならねーアンタだろって話だよ」
立板に水を流すかの如く滔々と、九頭へ矛先を向けた罵詈雑言を紡ぎ続ける。
一体何故、斯様な事が可能となったのか。

解は、彼のスタンド能力にある。
彼のスタンド『アイドルメイカー』は元来、人の心理の奥底に干渉する能力であった。
つまり本質的には、九頭の洗脳にも近しい物を持っていたのだ。

更に契機となったのは、いつぞやのデパートでの一件である。
徳井によって柱に拘束された鈴木は、痛く絶望を喫した。
自分には策謀に関して天賦の才がある。
だと言うのにスタンドが非力であるばかりに敗北し、更には逃走すら出来ぬ状況にまで窮してしまった、と。

無論彼の才能に関しては地平の彼方、海洋の底まで展望しようとも、存在を認められる物ではない。
だが彼の中では、彼の心中に限れば、その才能は『現実』だったのだ。
だからこそ鈴木は強く強く絶望し――そしてその絶望が、彼の能力を『新たな境地へと押し上げた』。
かくしてスタンドの成長と九頭の弱体化が相まって、彼は『留流家』の精神的な呪縛からの解脱を果たしたのだった。

「今となっては、いつだって自由の身になるのは簡単だが。アイツらに因縁を残したままってのは、危ねえからなあ。
 手助けしてやるよ九頭さんよお。さあ、連中に『現実』を見せてやれッ! 『リアリティチェイサー』ッ!」


149 名前:鈴木章吾 ◆HQs.P3ZAvn.F [sage] 投稿日:2010/05/15(土) 09:55:03 0
>>139>>144


「……一樹……一樹ィ……」

徳井の背後で、地の底から轟くような声が響く。
怨恨に塗れたその声に、しかし徳井は聞き覚えのある響きを感じるだろう。
たった今さっき、自らの手で殺めたばかりの、両親の声色を。

「何故私達を殺した……私達は『留流家』の中で幸せに暮らしていたのだぞ……!
 だからこそお前も『留流家』の一員になるよう取り計らったのに……! それをお前は……!」

振り返れば見えるだろう。
裁断され、寸断され、斬断され、切断され、それでも猶蠢きながら人の形を組み、徳井一樹に迫る彼の両親の無残な姿が。
徳井の両親は突けばすぐにでも崩れ落ちそうな様を晒しながらも、一樹の首に両腕を伸ばす。
幻影でしか無い筈の彼の両親に首を締められ、しかし一樹の首にはくっきりと手形が浮かぶ。

『リアリティチェイサー』の幻はただの幻では無いのだ。
対象の心の中に潜む思い込みや願望、ありもしない、或いは確かめようのない不安。
それら『自分だけの現実』を、『リアリティチェイサー』は具現化出来る。

『両親に恨まれているかもしれない』と言う不安が一樹の心を占める程に、その幻は強くなる。
また幻の言葉を聞く事で、更に不安が助長される事もあり得るだろう。

しかし敢えて、鈴木は幻を解除する。
その上、自分の姿をほんの一瞬だが、白昼夢のように一樹に晒した。

「さあて、これでお宅さんは両親の死体が幻だったかもと疑念を抱くよな?
 ……だけど、果たして何処までが幻で、何処までが現実か、分かるかなあ?
 もしかしたら全て幻だったかもしれない。けれどやっぱり、自分は両親を殺したのかもしれない。
 希望と絶望を捏ねくり回して不安を膨らませるがいいね。その果てに、僕が『現実』を見せてやるよ」


>>147

徳井を陥れる事に傾注していた鈴木は、背後からの囁きを受けるまで佐藤の接近に気が付けなかった。
けれども旧態依然の余裕を醸したまま、彼は言葉を紡ぐ。

「……おっと、ちょっと調子に乗りすぎたかな? ……分かった分かった。軽口は僕の癖なんだ。
 そんな恐ろしい剣幕で脅さないで欲しいね。……それにしても、君は随分と面白い『現実』を持ってるんだねえ」

口元に悪辣な笑みを零し、鈴木は背後の彼女に聞こえぬよう、呟く。

いいとも。君の言う通り、九頭の幻を魅せてやる。ただしそれは、『君だけの現実』を投影した九頭龍一だけどね」


佐藤の深層心理を、彼女自身すら自覚していない心奥を映した九頭龍一が、彼女の前に現れる――!

150 名前:鈴木章吾 ◆HQs.P3ZAvn.F [sage] 投稿日:2010/05/15(土) 10:07:00 0
【スタンド】
名前: リアリティチェイサー
タイプ/特徴: 人型・相手の心理状態によって姿は変化。平時は水銀で出来た人形の風体

能力詳細: 対象の心の中にある思い込みや疑心暗鬼、願望等『自分だけの現実』を顕現出来る
      徳井一樹の場合は「両親は自分を恨んでいるのでは」等の不安を顕現した
      幻影のパワーは『現実』の大きさに比例する
      顕現された幻影は『聖痕』≪スティグマ≫のように相手を傷つける事が出来る
      鈴木はこの能力によって『頭のいい自分』を顕現していたり
      


破壊力-C スピード-C   射程距離- D
持続力-B 精密動作性-A 成長性-B
(アイドルメイカーの成長性はEだったけど、まあ強い感情が成長を引き起こしたと言う事で)

A-超スゴイ B-スゴイ C-人間と同じ D-ニガテ E-超ニガテ
射程距離の目安
A:100m以上 B:数10m(50m) C:10数m(20m) D:数m(5m) E:2m以下

151 名前:大谷杉松 ◆vReXCpsNBKcm [sage] 投稿日:2010/05/15(土) 10:55:53 0
>>129
スタンガンのスイッチを押し、たしかに電気は流れたはずだった
しかしレナには効果が無く、気付けばかすかに桃色の霧が出ていた…
二人の体は徐々に丸みを帯びていく、

>「スタンガンじゃなくてナイフを使えば良かったのに…。私の体に傷をつけるのが怖かったのね。
 なぜ私が気絶しなかったのかわかるかしら?スタンガンって電気じゃない?だとしたら神経を麻痺させるものよね?多分ね…。
 よく見てみて、スタンガンが触れているところを。おいしそうなお肉がたっぷりついているでしょ?
 私、醜い体にはなりたくないんだけど、この世に敗北ほど醜いものもないと思っているの…」

脂肪によって遮断された電流、レナはメープルハニーの全体を一気に出現させた。
出現すると同時に太るスピートはさらに速くなる!

>「ダイナマイトバディな私もいかが?大谷杉松ぅ。でもね風船みたいに爆発するのはあなただけよ!!」
                『ドスン!!』

油断していた大谷には一瞬の出来事だった、メープルハニーの攻撃は大谷の腹に突き刺さり、
腕から出ていた桃色の霧は自分の拳で栓をされ、大谷のみ膨れ上がっていく…
脂肪のおかげで内臓にダメージは無いが致命傷であることはたしかだ、

>「拳のヒビ割れをあなたの脂肪の中でふさいじゃったの。どう?体内で異物を包み込んでいる気持ちは?」

大谷の体の中で出続ける霧、下手に動いてはこちらのほうが危ない、
策を考えている大谷の目の前には何故か泣いているレナがいた、
何故泣いているのかは大谷には何となくわかる、自分に自信のある人ほど失敗したときの衝撃を大きくく受け止めてしまうらしい。

>「……。そんなガラクタ人形みたいなスタンドのどこがいいのよ?変態じゃないの?
 大谷杉松…あなたは電子レンジで加熱した生タマゴみたいに破裂したらいいと思うわ…」

残酷な顔のレナ、そこに大谷は一つ忠告をする、

「…本当に美しい奴は自分の長所を自慢しねぇよ、
 能ある鷹は爪を隠すってな、それに今のあんたの顔…お世辞にも美しいとはいえねぇ顔だぜ」
                  『パチィィィン!』

メープルハニーを「もう一度消えた事」にして大谷は元に戻り動けるようにはなる、
しかし、腹の傷のせいで動けないのだ、

「それと…女ってのは怖いぜ」
『ソウヨ、レナ、アナタガヨクワカッテイルハズヨネ』

上に移動させていたスマートガントレットがレナに向かっていく、
その手にはハンマーの上の部分が握られていた、
重力とハンマーの重さで速さはどんどん上がっていく!

『イッカイウンメイノヒトヲミツケナサイ、ハナシハソレカラヨ』

             『ドゴォォォン!!!』

152 名前:レナ・オリン ◆BhCiwB2SCaJ5 [sage] 投稿日:2010/05/15(土) 13:37:37 0
>151
「『人に欺かれるのでは決してない、自分で己を欺くのである』
これは最期にあなたに教えてあげられるゲーテの言葉よ」

文字通り上から目線の表情で、勝利を確信したレナは歪んだ笑顔を魅せる。

>「…本当に美しい奴は自分の長所を自慢しねぇよ、
 能ある鷹は爪を隠すってな、それに今のあんたの顔…お世辞にも美しいとはいえねぇ顔だぜ」

己の肉に埋もれた口で大谷は語った。すでに目も鼻もパンパンに膨れ上がった肉に埋もれている。

「うんっ…それで?それがどうしたの〜?」

大谷の忠告にも性格破綻者のレナは人を殺す喜びで身を震わせていた。

『パチィィィン!』

「……!?」

レナは一瞬何が起きたのか理解できなかった。メープルハニーは消えてしまっている。
なんとスマートガントレットの能力でメープルハニーはもう一度消えてしまった事にされてしまっていたのだ。

>「それと…女ってのは怖いぜ」
>『ソウヨ、レナ、アナタガヨクワカッテイルハズヨネ』
>『イッカイウンメイノヒトヲミツケナサイ、ハナシハソレカラヨ』

上に移動させていたスマートガントレットがレナに向かってくる。
その手にはハンマーの上の部分が握られていた。
重力とハンマーの重さで速さはどんどん上がってゆく。

「…あ…あは♪それ、やめようよ?私…ハンマーだけはダメだと思うんだけど…」

>『ドゴォォォン!!!』

「ふぎゃ!」

ハンマーで叩かれたレナは地面に突っ伏して潰れた声を上げた。
その姿はまさしく車に轢かれたヒキガエル。
レナはあの時にスタンガンで眠ったように美しく気絶しておけばよかったのだと後悔した。

本体名:『レナ・オリン』
スタンド名:『メープルハニー』

【戦闘不能】その後、惨めな敗北のトラウマでスタンド能力が著しく低下

(大谷さん。綺麗な文体と台詞の使いまわしが上手でほんとに
楽しませていただきました。ありがとうございましたwww)

153 名前:徳井一樹 ◆MnJrk02a/Yx. [sage] 投稿日:2010/05/15(土) 13:53:11 0

>「徳井ィッ…アンタは違うッ!間違ってんだよォーッ!!」
>「徳井さん…すみませんでした」

「あ…ありのままおこったことを話すぜ!『よね君がプッツンしちまった』
な…なにを言ってるかわからねーと思うが俺も何をしてたのかさっぱりわからなかった…」

一人振り返って怖そうにブツブツ呟く徳井。
いきなりキレられてその後いきなり謝られたのだから、意味不明である。
そして九頭が徳井に向かって叫ぶ。

>「き…貴様…っ!!自分の親になんて事を!!!!」

九頭が叫んだ直後、徳井は背後からの呻き声に気付いた。
懐かしい声。それは今殺めたばかりの両親達!

>「何故私達を殺した……私達は『留流家』の中で幸せに暮らしていたのだぞ……!
>だからこそお前も『留流家』の一員になるよう取り計らったのに……!それをお前は……!」

背後からの声とともに、無残な惨死体となった両親達が徳井に迫ってくる。
今も自分の首をその崩れ落ちそうな手で絞め殺されようとしている。
人間とは思えない力で絞め付けられ、声をあげることもできない。

しかしその変わり果てた両親の姿は幻のようにまどろみの中に消えてしまった。
そしてその瞬間九頭のときのように、白昼夢のように自分が柱に拘束した鈴木章吾の姿が映った。

「死体は幻だったのか?一体何処までが現実で何処までが幻だったんだ?」

もしかしたら今までのことは全て幻だったのだろうか。
だとしたらバカらしいな、と思う。でもまた両親達を救えるという『希望』もある。
しかしそれが幻だったとしても自分が両親達を殺したのは確かに良い行いではない。
それが自分にできた唯一のことだとしても。

「…例え今までが幻だったとしても、俺はゲームに勝ってみせるぜ」

徳井も不安や迷いがないわけではなかった。強がっているものの、不安が拭えないことも確かである。
よねとともに揃ってセイヴ・フェリスの射程距離内まで走る。

九頭は動揺したのか、無防備に白光の王を操作することもなく目の前にただ立ち尽くしている。
ここで徳井は疑問に思う。何故白光の王が目の前にいるのか?

白光の王は元々はフリージングクラウンとプリズムマンが融合したスタンド。
九頭の言うとおり徳井の両親が本体ならば消滅しているはずだ。

つまり、九頭か、九頭の仲間が幻を見せていたのだ。
しかし一つ腑に落ちない。さきほどの死体は幻ではない。
首を絞められた痕も首に残っているのがその証拠だ。
幻を見せたであろう鈴木章吾のスタンドにそんな能力があったのだろうか?

とにかくまだ完全に幻だと決めつけるには早計すぎる。
よねに話そうとしたが先程の奇妙な行動を思い返し、余計混乱させてはいけないと思ったので
このことは頭の片隅に留めて置くことにした。

「とにかくこのまま九頭!テメーをブッ飛ばさせてもらうぜ!アリアリアリアリアリ!」

射程距離2メートルに到達。若干の不安や迷いを孕みながらも
徳井は無防備な九頭めがけてセイヴ・フェリスのラッシュを放った!

154 名前:鈴木章吾 ◆HQs.P3ZAvn.F [sage] 投稿日:2010/05/15(土) 14:58:11 0

「一樹……」

徳井一樹が九頭へと拳の連打を放った刹那、彼の目前に健全だった頃の両親が現れる。
だが今更殺意に後押しされた拳を止める事など、出来る筈がない。
彼の両親はセイブ・ファリスの拳を一身に受け止め――凄惨なまでに寸断された。

「何故私達を殺した……! 私達はいつだってお前の事を思っていたのに……。お前はそうでは無かったのだな……」

嘆きと怨恨の声を響かせ、またも徳井の両親は見るも無惨な姿を組み上げ、徳井に迫る。
更に佐藤に幻を見せ付け難なく逃れた鈴木が、徳井一樹自身の幻を被り、彼の背後に姿を現した。
薄ら寒い笑みを浮かべながら、鈴木は一樹に囁きかける。

「オイオイ、考えてもみろ。お前は『白光の王』がいる事を『両親が健在』である事の支柱としてるけどよ。
 そもそもあの二つのスタンドが本当に両親の物なのか、とは考えなかったのか?
 何だかんだ言ってお前は、自分が両親を殺していない事を望んでいるんだ。酷い奴だよなあ。この期に及んで保身の精神を抱いてやがる」

彼が実際のそのような心持ちでいるかは、分からない。
だが一度こうして吹き込まれてしまえば「実はそうなのかもしれない」と疑心暗鬼を煽る事は出来る。
そしてその不安は、『リアリティチェイサー』によって顕現され、徳井一樹をへと襲い掛かるのだ。

言葉を終えると共に鈴木は再び姿を隠し、代わりに再び、彼の両親の悲惨な姿を投影する。

「こんな目に遭わせておいて……なあ?」

細切れの破片を、身体を縦に分割した姿に組み替えると、徳井の両親は各々一本ずつの腕を用い、彼へと拳を繰り出す。
徳井一樹の不安に比例して、拳の威力は増すだろう。それは逆もまた然り、ではあるが。
そして彼が極限の絶望を覚えた時、彼の『現実』は彼自身を殺すだろう。

155 名前:生天目 有葵 ◆BhCiwB2SCaJ5 [sage] 投稿日:2010/05/15(土) 15:10:13 0
>143>146
>「わかった!まかせて!」

「うん!」
生天目は短く答えるといつ反転させられても良いように真正面に身構える。
この場合の真正面は荻原の真後ろにあたる。
しかしザッツオールバックの反転能力が射程内のすべての個々に及ぶのなら
荻原と生天目は向かい合わせとなり体を縛っている蔓が己の体を締め付けることになるのだろう。

「たあああ!」
意表をつき大土井の直上からステレオポニーが体当たりを敢行する。
すると大土井の背後に体中に矢印が描かれた半人半馬の像が現れた。
これが能力領域を発生させているスタンドの実体のようだ。

「む!こいつは!?」
ステレオポニーは大土居をガードしているザッツオールバックの拳に衝突して反転してしまった。
吹き飛ばされながらステレオポニーは考えてみた。

反転能力が自動で行われているのだったら、あの男はあれだけの緊張感をもって身構える必要もないはず。
目を瞑っていても戦場で四方八方から飛んでくる弾にも絶対当たらないだろうし
酸の海の中に沈められたとしても酸を逆流させて自分の体を守ることが出来るはずである。

もしも完全な自動の反転能力ならばナイフを持って襲い掛かるだけで、
この世のどんな人間をも殺めてしまうことが出来るはずなのだ。
しかしあの男からはそんな余裕は感じられない。認知したものを反転させているだけのようだった。

「やはり有葵の発想は間違っていたみたいだね。単純にレーダーで発見したやつを三人で取り囲んで
四方八方からボコボコと叩いてやったらそれで良かったんだ。でもそれも芸がなさすぎるから、もうちょっと遊んでやるかな…」

空に飛ばされたステレオポニーは小さい手で木の天辺の小枝につかまると
しなりを利用して自然公園へと飛んでいった。

生天目はステレオポニーが何をしようとしているのかはよくわからなかったが
荻原の次の動きに身を任せるほかなかった。

156 名前:徳井一樹 ◆MnJrk02a/Yx. [sage] 投稿日:2010/05/15(土) 16:05:00 0

「な…!」

九頭の目掛けて放ったつもりだったラッシュは徳井が子供の頃の両親が現れ、それを受け止めしまった。
殴った物体を切開によって全て切り裂き、破壊してしまう狂気の腕は両親達を寸断してしまったのだ。

>「何故私達を殺した……! 私達はいつだってお前の事を思っていたのに……。お前はそうでは無かったのだな……」

「う、うるせえ!死人が喋るワケねーだろ!黙ってろニセモンが!」

バラバラとなった両親達を前に、後ろに半歩後ずさりしながら叫ぶ徳井。
その姿は動揺しているようにも見える。
誰もいないところを指差しながら叫ぶ徳井を前によねからはさぞかし滑稽な姿に見えていることだろう。

>「オイオイ、考えてもみろ。お前は『白光の王』がいる事を『両親が健在』である事の支柱としてるけどよ。
>そもそもあの二つのスタンドが本当に両親の物なのか、とは考えなかったのか?
>何だかんだ言ってお前は、自分が両親を殺していない事を望んでいるんだ。酷い奴だよなあ。この期に及んで保身の精神を抱いてやがる」
>「こんな目に遭わせておいて……なあ?」

細切れとなった両親の破片がみるみるうちに体を縦に分割した姿に組み替わっていく。
そしてその拳を実の子供である徳井に向かって繰り出してきたのだ。

「クソォーーッ!この姿、まさに俺の不安や迷いそのもの!こいつは俺の不安や迷いの塊ってことなのか!」

目の前にいる変わり果てた両親の拳を回避し、2メートル後ろに後退する徳井。
即ち九頭からも遠ざかったということである。

「多分…俺が吹っ切れる…のが最良だと思うんだが…チクショオ!そんな簡単に吹っ切れるか!
俺はまだ柚木のガキのこともちょっと引きずってるんだぜーーッ!」


『一樹…お前は覚悟をしているのか?復讐とは今までの運命に決着をつけるためにある…が、
復讐はまた新たな復讐を生む…という危険も孕んでいる。その復讐を受け止める覚悟…できてるのか?』


思い出した。
徳井がギャングとなって間もない頃…自分を弟のように面倒をみてくれた兄貴分の言葉を。

「『覚悟』だ。必要なのは……強い覚悟。
両親を殺したというのは…変わらない事実なのだ。それが幻だったとしても……それは変わることのない『事実』
事実は結果として残る……俺は覚悟する必要があるんだ。復讐の時とは違う…『認める覚悟』を……」

徳井は拳を振るってくる両親、いや幻影の攻撃を敢えて受け止める。
痛い。凄く痛い。けどこんなものは自分がしたことに比べれば大したことなどない。

「セイヴ・フェリスは…自分の道を『切』り『開』くから切開!そして道を切り開くには覚悟が必要なんだッ!
不安も迷いも覚悟の前ではちっぽけなものでしかないッ!!」

全てを吹っ切った。殺したことを認め、それを背負う覚悟…些かの不安や迷いがあったからつけ込まれた隙。
例え幻だったとしても迷いも不安も今奪った両親と言う生命を冒涜することだ。そんなことはあってはならない。

自分に不安などあってはならないのだ、と!徳井は頭ではなく心で理解できたのだ。

「ディ・モールト・グラッツェ……鈴木章吾…お前のおかげで少しだけ成長できた気がするよ
だからよォ〜〜〜コソコソしてねーで……来いよ…決着…つけてやるぜ」

157 名前:佐藤ひとみ ◆tGLUbl280s [sage] 投稿日:2010/05/15(土) 16:28:38 0
「幻を見せるのは私にじゃない…!徳井君達によ…!さっさとやりなさいッ!首をへし折られてもいいのッ?!」
佐藤ひとみは鈴木省吾の首に巻き付けたフルムーンの触手に力を込めながら凄みを効かせた低い声で言い放つ。


――鈴木省吾の術中に嵌まったひとみの前に九頭龍一は確かに顕れた。
幻の九頭は日本陸軍の軍服に帯刀姿、初めて出会った時と同じ若い姿でひとみのことを『特別な存在だ』と囁いた。
そこでひとみは奇妙な違和感を感じる。

九頭の特別存在になることを望んでいながら留流家の構成要素全員にフェアな愛情を注ぐ九頭に
理想を感じる気持ちもまた現実に存在したからだ。
ひとみの感情は常に自身によってねじ曲げられ矛盾に充ちている。

そもそも『思い込み』を『自分の現実』にすることには慣れている。
まともに恋愛できない体質だということが解っていながらそれを認めず欺瞞によって補ってきたひとみである。
本物の現実を悟りながら自分だけの現実を存続させるなど日常の思考回路に組み込まれている。
その慣れ故、鈴木省吾に『自分の現実』を見せられてもどこか冷静に現実を見る目が残されていたのだろうか。

ひとみは違和感に気づいて直ぐに視点をフルムーンに切り替えた。
発動中のフルムーンはひとみの知覚から離れた発信用の視覚センサーである。ひとみの脳に写る幻影までは感知しない筈だ。
案の定フルムーンの目に九頭は写らない。


幻影を見破ったひとみは本来の目的に向かって動く。即ち九頭をこの危機的状況から救うこと。
徳井とよねに幻影の九頭を攻撃させてその間に九頭を逃がすことであった。
鈴木を使って幻影を見せる策略が意外な方向に流れた九頭は今無為無策に見える。
その隙を突いた徳井とよねに集中攻撃を受ければ無事では済まないだろう。
九頭が簡単に倒されるとは考えていないが、もしやと思う気持ちがある以上動かざるを得ない。

ひとみは次第に自分の目的を自覚し始めている。
自分が望むのは留流家と同化し九頭と永久の時を生きることでもなく、単純に九頭を殺して自身の安穏を確立することでもない。

佐藤ひとみの望みは九頭を『知る』こと。

九頭が何を感じ何を目的に何をなそうとしているか……
留流家の能力とは…本質とは…弱点とは…何か…

『知りたい!知りたい!知りたいッッ!!』

自身を巻き込み運命を変えたものの正体を知らずして、ただゲームに勝ち生き残った所で何の意味があろう?
この時点で無為に九頭を犬死させてしまったらひとみの望みは永遠に手に入らない!

――好奇心ゆえに女は身を滅ぼす――時には自身のみならず世界まで巻き込んで――

神から贈られた箱を開け世界を災厄に巻き込んだ愚かな女のようにひとみの好奇心は破滅を齎すのだろうか。

158 名前:荻原秋冬◇6J1m09mANS [sage] 投稿日:2010/05/15(土) 19:53:05 0
>>155
『ステレオポニー』が襲い掛かろうとしたとき、
ついに本体の男のスタンドヴィジョンが現れた。

「あれがやつのスタンドか…
やつがステレオポニーに気をとられてる今しかチャンスはない!」
敵のスタンドの拳が『ステレオポニー』に触れたとき、反転して吹き飛ばされた。
だが、それと同時に荻原たちを反転させるのはどうやら無理らしい。

この数秒という時間の中でしか攻撃のチャンスはない。
プラントアワーのバラの鞭で荻原は本体の男を攻撃した。

「いくぞ!オラオラオラオラオラオラオラオラッ!」

バラの鞭が敵の本体を切り刻んでいく。
首から上にはあたらなかったが胴体と右腕と両足に傷を負わせることができた。
もうすこし荻原が落ち着いていればバラの鞭で首を狩ることはできたのだが…
ハードな戦いを連続でやったおかげで、疲れがどんどん溜まってるため集中力も切れかけているのだ。
敵が反撃する前に決着をつけなければ…

159 名前:御前等裕介 ◆Gm4fd8gwE. [sage] 投稿日:2010/05/16(日) 00:15:05 0
『世界の中心は俺じゃあない』

その事実に御前等裕介が気づいたのは、実に十余年ほど前のことである。
北条市立西高校三年D組出席番号3番の御前等裕介が、北条市立中央小学校一年三組出席番号2番の御前等裕介だった春。
保育園を卒園し、小学校に入学し、多様な人間と多様な価値観が集う教室で、自らの立ち位置を認識した頃の話。

いわゆるクラスの中心人物と評される人種がそこには確かに存在し、彼らを中心に教室という小規模な世界は廻っていた。
注目され、羨望され、尊敬され、敬愛され、嫉妬され、思慕され、憧憬され、信望され、信頼され、心酔され、評価される者たち。

世界の中心でスポットライトを浴び続ける人間が、そこにいた。

――それは、御前等裕介ではなかった。

人が生き、活きるうえで至上の命題は、如何に『世界の中心』ににじり寄るかだ。世界は『端』に優しくないのだから。
それが、御前等裕介の二十年足らずの人生で培った哲学であった。


「あのォすいません、『手相』の勉強してるんですけど……見せてもらっていいですかねェ?」

目的もなく駅前をフラフラしていたところ、宗教勧誘に捕まった。
御前等裕介がその日遭遇した状況の発端を描写するならば、たったこれだけの言葉で全てを説明できる。
ケミカルウォッシュのジーンズにチェック柄のシャツ、頭には派手なバンダナとトランプなら役がつくれる装束を纏う御前等は、
この手の勧誘や詐欺の声掛けの対象にされることが少なくはなかった。かといって、無視を決め込んでもスケジュールの穴は埋まらない。

「構わないよ。立ち話もなんだからそこの喫茶店へ入ろうか」

よく通る声で、そう促した。
本来踏むべき段階を二段も三段もすっ飛ばされた勧誘員は少々鼻白んだが、飲食代はこちらが持ちますと言って先行した。
御前等は常に他者より目立とうと尽力している。初対面の人間を例外なく面食らわせる声の大きさもまた、その努力の一環だった。

「私は小宮と言います。手相から『運命』を視、よりよい『未来』へと導けるようお勉強させていただいてましてね。
 いや、いや、こうやって道行く人に手相を見せてもらって感性を磨く修行をしてるんですわ」

小宮と名乗った女は、痩身に長駆でフォーマルな洋装がよく似合っている。
Yシャツに黒のスラックス、濡れたような艶を放つ黒髪は短く揃えられ、整った目鼻に人懐こい笑みを崩さない。
中途半端な敬語喋りが気にかかるが、それを補って有り余るほどの美人だった。

「ほほう。よくわからないが気に入った。こうしてコーヒーを奢って貰っているわけだしな、存分に見ると良い」

ずいと左手を突き出すと、小宮は懐からルーペを取り出して、その五指を観察し始めた。
皺を広げ、裏返し、指先でなぞったり、懐から出した手相本の記述と見比べたりしながら、数分をそうして過ごす。
御前等は運ばれてきたコーヒーにミルクと角砂糖をたっぷりと入れて啜り、小宮が結論を出すのを待った。

「御前等さん、アナタ運命を信じてますかね?」

「おっと、そこまでだ小宮君。俺が君に協力できるのは『手相を見せる』、ただそこまで。それ以上は許可しないぞ」

「安心してくださいな。別に宗教の勧誘とかってワケじゃあない。御不要とあらば聞き流してくれても構わないですよ。
 私はね、運命とは重ねられた『必然』の『成形物』だと認識してるんです。偶然なんてものは存在しない。全ては作為。
 私らは常に『誰か』の思惑によってのみその存在を許されています。火のないところに煙が立たないように、ね」

「――それは君の宗教論か?」

問に、小宮は答えない。

「私はねェ、『手』を見ればその人が『何』なのかだいたいわかるんですわ。御前等さん、そのうえでアナタに問います。
 ――『スタンド使いは惹かれ合う』。この言葉に聞き覚えは?」

ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド

160 名前:御前等裕介 ◆Gm4fd8gwE. [sage] 投稿日:2010/05/16(日) 00:16:10 0
視線が御前等を捉えて離さない。その指先が触れるのは、少し前から左手の甲に出現した鱗のような痣。
そして、それを撫でる小宮の左手にも、同じような痣が。

「……今すぐその『手』を離せ。それ以外の『動作』を確認した瞬間、君と俺は『敵』だ。容赦はしない」

視線に視線を被せるように、強く意志を載せた声で御前等は威嚇する。
同時に周囲へと目を走らせれば、いつのまにか周囲の喧騒が止み、その発生源たる人影がない。
大通りに面した昼間の喫茶店に、御前等と小宮以外の姿がない。否、ないのではない。『消えていた』。
先刻までせわしなくフロアを右往左往していた従業員も、キッチンの方からすらその存在を確認できない。

純然に、十全に。彼らの居る喫茶店は、正しく彼ら以外の人間をその場から追放しているのだった。

小宮は無言で、その手を引いた。

「ええ、離しますとも。そしてそれ以上のことは何もしません。『何もする必要はなく』、既に私とアナタは敵じゃあない」

「何を……」

「――既に、『敵対行為』は完了してるんですよォ」

ドゴォ!

何が起こったのか把握できなかった。『何かをされた』という認識は、『何かをされるまで』発生しない。
御前等の左手が勝手に動き、関節の可動をまったく無視して、握った拳を自身の顔面へと叩き込んでいた。

「っが……!!」

左腕を操られた。御前等の意志を無視した左拳は彼の左頬を打ち抜き、頬肉に奥歯が突き刺さって出血する。
口中に湧き出る血液と唾液を吐き捨てて、ようやく制御を取り戻した左手を引きずりながら御前等は小宮から距離をとった。

「はあん。私から距離をとったのは正解ですねェ。戦い慣れしてるようには視えないですけど……これもまた『運命』ですかね」

「……ど、うやら君は俺を『敵』と認識していないようだな。その発言は、自分に遠距離からの攻撃手段が乏しいと暴露しているッ」

「さもありなん。あーあ、ミスリード誘ってんのにそんなに愚直に指摘されたら隠す気なくなるじゃないですかァ」

「『スタンド遣い』、か。どうやら俺にも人生の主役を演じる『機会』が巡ってきたらしい。いいだろう、ならば――戦闘だ」

御前等は両腕を交差させ、腰に捻りを加え、足を大股に開いた特徴的なポージング。
顔の傍までもってきた手を一気に振り下ろし、勢いに乗せて声を放った。

「『アンバーワールド』ッ!!」

ボヒュ、と空気が撹拌される音を伴って、極彩色に彩られた人影が御前等の傍らに出現する。
背が高く、筋肉質に引き締まった身体の随所に歯車の意匠があしらわれ、彫りの深い顔立ちは硬質な印象を与える偉丈夫。

「それがアナタの『スタンド』ですかァァ〜。いいスねこの緊張感。そんじゃ、――出て来い『マイセルフユアセルフ』ッ!」

同様に、小宮の隣にも人影が発生する。こちらは短髪の小宮を反映するように鋭角的なフォルムをしていた。
彼我の距離は目算で5メートルほど。『アンバーワールド』の射程距離外である。近づく必要があった。

(だが、あの『スタンド』には殴る蹴る以外に特殊な能力がある。迂闊に近づくのは下策だな)

先程体験した、左腕の不随。状況事実と小宮の発言から考察するに、大雑把に言って
『念動力によって触れた"物"を自在に動かす能力』あるいは『触れた"者"に無意識の行動を強要する能力』
のいずれかであろう。不審がられずに店内の人間を全て追い出したその手腕を見るに、後者の可能性に一票を投じたい。


161 名前:御前等裕介 ◆Gm4fd8gwE. [sage] 投稿日:2010/05/16(日) 00:16:52 0
「アンタのスタンドも近距離パワー型ですか。埒が空かないスね。どうします?コーヒーブレイクの続きでも?」

「そうだな、色々と聞きたいことがあるんだが、そこらへん質問は許可されているか?」

「御随意に」

内心で唇を舐めた。このまま舌戦に移行できれば、声の大きい御前等に分がある。
どうにかして情報を引き出し、目の前の敵を攻略する。そしてなにより、彼自身にも興味があった。

「甘えようその言葉に。まず問おう、君のスタンドの能力は?」

「気になるあの娘にほんの少しだけ大胆になれる程度の能力」

「素晴らしい能力だ。俺の左手が熱烈なボディランゲージを繰り出してきたのは君のせいか」

「御前等さん左利きでしょ。ってことはまるきり恋人ってわけですねその左手は!」

「あっはっは、蒸発しろ。じゃあ次の質問だ。何故、俺を狙う?」

襲撃された者として当然の問いに、小宮はしかし相好を疑問に歪ませる。

「……アナタ、もしかして『ゲーム』の参加者じゃないんですか」

「そうだと言ったら見逃してもらえるのか?」

「いやいや。今ここで参加条件を満たして、強制的に参加してもらいますわ。今更お互い後には引けんでしょ」

「ほほう。さては君、友達いないな?無理やり遊びに誘うなんて、休日の過ごし方がわからないタイプだな」

「『ゲーム』というのはッスね、この北条市を舞台としたスタンド使い同士の争奪戦なんですよ。命をやりとりする、ね」

「ガン無視で話し始めただと!?あーあー聞こえないーッ!!」

耳を塞いで声を挙げながら、頭の裏で分析する。『参加条件』には『ゲームの説明』が規定されていると見ていいだろう。
従って小宮の言う『命がけのゲーム』から関わりを断つには、彼女が勝手に垂れ流す説明が完了する前に遁走を成功させねばならない。
喫茶店の入り口までの直線状には小宮がいて、押し通るならば接触は避け得ないだろう。

(ならば――)

傍にあるテーブルから胡椒のビンを掴み、『アンバーワールド』の人外の膂力で投擲する。
同時にスタンドの特殊能力を発動。胡椒ビンが小宮に届く直前で、ビンのフタがひとりでに外れて空中へ内容物を散布する。

「この街は今、巨大なスタンドによって包まれてます。スタンドの名前は『留流家』、スタンドを喰らうスタンドです」

「小宮さん!君には発言を許可しないッ――しばらくそこで悶えてろ!」

胡椒の催涙煙幕によって視界の削減と発言の中断を同時にやってのける。
刺激物の微粒子をしこたま吸い込んだ小宮は盛大に噎せ返り、反射で溢れてくる涙で御前等の姿を見失う。
対する御前等は、胡椒が飛散した瞬間から踵を返し、ひとまずの退却を得るため厨房へと駆け込んだ。

(裏口から出られるか?)

厨房にはやはり人っ子ひとり存在せず、コンロの火も消された調理場は静まり返っている。
林立する調理台の間を縫うように駆け、従業員用の通用口を発見し、ドアノブへと飛びついた。
渡りに船とばかりにノブを撚る。ストッパーが解除された手応えを感じたが、しかし一向に扉は外へと通じなかった。


162 名前:御前等裕介 ◆Gm4fd8gwE. [sage] 投稿日:2010/05/16(日) 00:17:34 0
「開かない――!?」

ガチャガチャと何度もノブを弄るが、返ってくるのは十全に作動する音のみ。
鍵ではない。よしんば外側から施錠がされていたとしても、『アンバーワールド』の能力を使えば開錠は容易い。
ドアが外開きであることと、ノブそのものは正常に稼働することから察するに、外側を何かで塞がれていると察するのが道理。

「開かないですよォ?そりゃあそうでしょ、この店は私の支配下にありますんで。逃げ場なんか作るわけないじゃないスか」

ホールから胡椒をどうにかした小宮が入房してくる。その隣にはやはり『スタンド』が控えていて、戦闘態勢の万全を示していた。

「んじゃ、説明の続きなんですけど……」

「許可しないと言ったはずだッ!丁重に断るとも!嫌だと言ってる人を無理やり引き込むのは――その、あれだ、駄目なんだぞ!」

「ボキャブラリー豊かなのか貧しいのかよくわからん人ですねェ。よく言うじゃないスか、嫌よ嫌よも好きのうち」

「か、慣用句を使いこなしやがっただと――!」

「うんまあ、言いたかっただけッス。サーセン。ところでさっきの『胡椒』のビン、あれどうやったんですか。もしかして能力?」

「左様、気になるあの娘の心のガードをちょっとだけ緩める能力だ」

「そりゃ素敵ですね――!」

言葉尻を勢いに変えて、小宮が踏み込んでくる。ともすれば愚直にもとれるその肉迫は、しかし威圧でもって退かせるには充分。
御前等はうお、とかひい、とか情けない声を漏らしながらバックステップで距離をとり、いつのまにか壁際にまで追い詰められている。
戦う覚悟を決めた御前等が身構え、『アンバーワールド』の拳が敵を捉える射程距離まで小宮が接近したところで、彼女は接近をやめた。

「ふんふん、大体2メートル範囲に入ろうってとこで目の色が変わりましたねェ。そこがアナタの射程スか」

「――!!」

壁際に追い詰め、退却の余地を無くすことでこちらの戦闘力を図りにきた。
おそらくは射程が2メートル程であることと同時に、『射程内なら殴り倒せるパワー』であることも分析されているだろう。
だから近づくのをやめた。小宮というこの女の頭のキレは目覚ましく、確実に御前等の能力を読み解かれている。

「私の『マイセルフユアセルフ』じゃアナタの『アンバーワールド』に競り負けると分析します。従って搦め手の許可は?」

「……潔く正々堂々殴り合おうじゃないか!?」

「私ゃ常々から思うんですがね、漫画とかでよく『卑怯だぞ!正々堂々勝負しろ!』とか言うじゃないですか」

「今日びそこまでテンプレなセリフもないと思うが」

「ニュアンスが一緒ってことスよ。とにかく、そうやって言う自称正々堂々キャラを見る度に思うことがあるんですよ。
 結局そいつらは『正々堂々という自分の土俵』で戦うことを他者に強制してることになるわけじゃないですか」

「なるほど。やってること自体は自分が勝ち易いようにルールをゴリ押すのと一緒だものな」

「まあ、それとこれとは何の関係もないんですけど」

「うん。正直雑談の域を出ないな。何やってるんだ小宮さん、こんな鉄火場で」

「ともあれ、こんな小理屈つけて私は自分の搦め手を正当化したいわけなんなんです。何が言いたいかって、
 この店は私の支配下にあるってさっき言ったじゃないですか?御前等さん、アナタを捕獲し捕縛し捕捉するために
 いろいろと既に手を打ってあるんです。例えばアナタの背後の壁とかも、――実はさっき触ってあるんスわ」

小宮が言葉を切った瞬間、背後に気配が発生した。


163 名前:御前等裕介 ◆Gm4fd8gwE. [sage] 投稿日:2010/05/16(日) 00:18:36 0
「――ッな!!」

突如として壁からにゅるりと現れたのはやせ細り眼だけが爛々と輝く中年男性。御前等を後ろから羽交い絞めにし、
身体の一部が壁に繋がっているのかそのまま一緒に壁へと磔にされる。そこへ、一部始終の下手人たる小宮がゆらりと踏み出した。

「『マイセルフユアセルフ』――この街が『留流家』に覆われてて私的には大助かりですねェ。
 こんなふうに壁からこんにちわな奇襲も可能ですからね。流石に能力自体は九頭に吸われてて出せないみたいですけど」

「おい、なんだこのおっさんは!知らない男に抱きつかれるほど業に満ちた人生を送ってきたつもりはないぞ!」

「いや、私も知らないです、そんな人。御前等さんを捉えろって命令を出したのは私ですけどね」

「何い!?知らないおっさんを壁に塗り込める能力まで持ってるのか?」

「違いますよ。このおっさんは『留流家』の犠牲者ッス。あー、わかんないですか。感覚の眼で辺りを見回してみて下さい」

言われて、精神エネルギーに対する知覚を開いてみる。飛び込んできた光景は、肉の連鎖。
あちらこちらの壁や床や机や天井に、埋め込まれるような形で疎らに見える人間の肢体。

「うおおおお!?なんだこの病気の時の夢みたいな光景は!俺の人生がR指定になるだろ!嬉しくない方の!!」

「これが先述した『ゲーム』に負けた人間の末路です。御前等さんも近々こうなる予定なんで、今のうちに挨拶とかどうですか」

「ははは、冗談じゃない。俺の隣人になり得るのは女子大生か女子高生か女子中学生か女子小学生と決めている」

「そういうのは『留流家』の本体さんに申し出て下さい」

「言えば取り計らってもらえるのか!?マジで!?」

「うわ、予想外の食い付きにドン引きッス……」

「なあ、今更こんなこと言うのもアレなんだが、――卑怯だぞ!正々堂々勝負しろ!」

「はい却下ー」

「ですよねー!!」

壁の中の人の締め付けが加速する。何もしなくともこのまま壁へ引き摺り込めるんじゃないかというくらいの膂力で。
その圧迫をまともに受ける胸部は、肋骨が折れなければ心臓ごと破裂しそうな勢いで苦痛を運ぶ。

「そのおっさんには『目の前の奴を死んでも離すな』と命令してあります。振りほどくならその隙にスタンドをぶち込みます。
 『詰み』ですよ、御前等さん。命を諦めて下さい。そしたら痛みなく壁に塗りこんで差し上げるです」

「くっ……は、本当か?負けを認めれば、この苦しみから解放してくれるのか……?」

頚動脈を圧迫されて涙目になりながら、御前等は声を搾り出して懇願する。対する小宮は慈悲に満ちた表情で、

「だが断る」

「なにィィィ!!?おまっ、この女ッ、状況的に俺が言うべきセリフだろうが!その為にわざわざ前振りまでしてたのに!」

「この小宮が最も好きな事のひとつは『だが断ろう』などと思ってるやつに先んじて断ってやる事だ……」

「なん……だと……!!」

164 名前:御前等裕介 ◆Gm4fd8gwE. [sage] 投稿日:2010/05/16(日) 00:19:21 0
キメ台詞を奪われたことで精神の力までもが抜け、壁男になされるがままとなる御前等。
しかしその相貌には、意志の炎の最期の種火が煌々と灯っていた。負けるかとばかりに、言う。

「『だが断る』……そんな言葉は使う必要がねーんだ、なぜならオレやオレたちの仲間はその言葉を頭の中に思い浮かべた時には!
 実際に相手に断っちまってもうすでに終わってるからだッ!だから使った事がねェーーーッ!『だが断った』なら使ってもいいッ!」

叫びを裂帛に乗せて、『アンバーワールド』を発現させる。勢いだけで振り向き、壁男へとスタンドパワーを叩き込む。

「どっせいぁッ!!」

如何に強力な締め付けであろうとも、所詮は人間の膂力。全力全開の近距離パワー型に殴られて吹っ飛ばない人間などいない。
壁男も例に漏れず顎を打ち抜かれ、慣性を殺し切れずに御前等の縛めを解いて壁の中へと強制送還された。
全力でのパンチ。生まれた致命的にして決定的で絶望的な体躯の間隙に、小宮と彼女のスタンドが走る。



「――ボディがガラ空きですよォ!!」

小宮のスタンド『マイセルフユアセルフ』は破壊力こそ乏しいものの、触れてさえしまえば生物の命を断つのは容易い。
自分の首を締めるように命令したり、胸にナイフを突き立てても、窓から飛び降りるように『強要』してもいい。
それでも真正面から競り合えば触れる隙すらないと判断したからこそ、留流家の犠牲者を使って足止めしたのだ。

(一回触れるごとに強要できるのは『一行動』――!人ひとり殺るには充分釣りがきますね!)

まだ壁男を殴り抜いて体勢が戻りきってないスタンドに、御前等を護る術はない。
本体にも特別な武器を所持している様子はない。ならば、行ける。ギリギリまで近づいた2メートルは、ここで活きる。
そして、『マイセルフユアセルフ』の拳が御前等の胴へと着弾するその瞬間。

――上空から、高速回転する刃が降ってきた。



御前等は自身の懐に決定打を与える隙ができたと認識した瞬間、先んじて仕込んでおいた能力を発動させた。
直後、頭上の遥か上――天井に備え付けられ今もフル稼働中の換気扇を留めるネジが勝手に外れた。
当然換気扇は重力に逆らわず、その鋼鉄の板を高速で回転させながら、真下。迫る小宮の頭上へと墜落する。

「――!わ、おおおおおおおおおおあああああああああ!!!!」

それに気づいた小宮の反応は早かった。スタンドを使って自身を庇い、突き飛ばさせることでようやく致死圏から脱出。
みっともなく床を転がりながらも、どうにか体勢を立て直して御前等から数メートル離れたところに足をついた。
止めどなく流れる冷や汗に生命の危機を再認識したのだろう。一気に唇から血の気が引いていた。

「『アンバーワールド』……換気扇のネジに『左回り』を出力した」

御前等が足元に落ちている換気扇の留め具をつまみ上げると、そこに張り付いていた歯車状の結晶が散った。
彼の能力『アンバーワールド』は、触れた機械・機構を自在に稼働させることができる。
歯車状のスタンドパワーに『どのように動かすか』をインプットして機械に貼り付けることで、
任意のタイミングにインプットした動きを機械に再現させることができるのだ。電子機器からネジの一つまで、その応用範囲は広い。

「……気に入らないな」

息を吸うのに精一杯な小宮をさしおいて、御前等は独り言のように呟く。
無駄に大きくよく通るその声は、果たして小宮に届くだろうか。自身の鼓動で聴覚を埋め尽くされている、彼女に。

「どうにも君は俺を差し置いて勝手に話を進める傾向にあるな。ルルイエって何だ?クトウってなんだ?
 『俺』を無視して自己完結するんじゃあないッ!今!この場では俺が『世界の中心』だ――!!」


165 名前:御前等裕介 ◆Gm4fd8gwE. [sage] 投稿日:2010/05/16(日) 00:20:02 0
「アンタが勝手に耳塞いだだけじゃないですか……!私ゃ最初から説明してましたよッ!」

「話が長い。3行で纏めろ」

「……こn「やっぱいいわ。面倒だ」

ドゴォ!!

『アンバーワールド』の拳が小宮を不意打ちで捉える。左頬を殴られた小宮はきりもみ回転して厨房の床を滑る。

「既に世界は俺を中心に廻っているッ!!君は俺より外側で、スポットライトの当たらない日陰で湿っていくがいい!」

更に数メートル吹っ飛ばされた小宮はどうにか立ち上がると、震える唇でようやく言葉を紡ぐ。

「く、は、ははは、いーい感じに狂ってやがりますねェ!たまんねェっすわ、この緊迫感!とか緊迫感!とか!
 どうすか御前等さん!アンタも楽しんでますかこのゲームを!命のやりとりを!人と傷つけあう背徳を!」

「ゲームは三択恋愛しかやらない主義だ。アドベンチャーもアクションもRPGも専門外だな!」

傍にあったオーブン用の鉄棒を『アンバーワールド』で掴み、構える。鉄板とかを掴むあの棒だ。

「げ、なんつうモン出してきやがりますか……!」

「迂闊に触れたくないんでな。これで中距離から打ちのめしてくれるわ!!」

薙ぎ払う。
スタンドの膂力で振り回した鉄棒は調理台の上の物をあらかた吹っ飛ばし、一個の暴力となって小宮へ迫る。
彼女が後飛びに回避するのを追い、今度はレイピアのように回転を加えた突きを繰り出した。

「ちょ、死ぬって!?死にますってコレは!」

「ああ!?命のやりとりちゃうんか!」

「まだゲームの本参加じゃないでしょ御前等さん!このままだとただ殺すだけで何のメリットもないですよ!?」

「ほほう。いいだろう――説明しろゲームについて」

「あくまで殺す気まんまんですかァ!?いつからそんな修羅の道を!」

「そりゃあ君、さっきと今じゃ全然違うだろう状況が。俺の優位にどうして遠慮が発生しようか(反語)」

「清々しいほどにクズですね!?」

「はっは、失敬な女だ」

唐竹、袈裟懸け、薙ぎ払い、かち上げ、逆袈裟、刺突。
何度追撃をかけても、小宮は紙一重で全ての攻撃を回避している。
推測するに、『マイセルフユアセルフ』を自身に発動して反射による回避行動を強要しているのだろうが、
故にこちらが攻撃を続ける限りあちらも攻めに転ずることができず、戦況は千日手の様相を呈し始めていた。

「――ああ、面倒臭いなもう」

御前等の眉間に苛立ちが刻まれる。
元来堪え性のある男ではないが、何よりもこれだけ逆境乗り越えフラグが揃っているのに、
現状を打破せきる決定打めいたものの存在だけが知覚できないことにフラストレーションは溜まりゆく一方。


166 名前:御前等裕介 ◆Gm4fd8gwE. [sage] 投稿日:2010/05/16(日) 00:20:43 0
「伝説の武器の最後の一つが見つからなくて魔王城に攻め込めない的な気分だ」

「RPGもやってんじゃないですか」

「喰らえ光の玉!」

調理台に備え付けられた手元用のライトに能力を発動し、光量調節のタガを外した強烈な光を小宮に向ける。
彼女の顔面へと指向性のある光が直撃し、その双眸が強要された反射によって強く閉じられる。

「うおっまぶしっ」

「――かかったなアホがッ!!やはり攻撃は成否に関わらず全て回避するよう強要していたか!アダになったな!」

奪った視界。その絶対的な硬直時間を、御前等は駆け抜ける。
『アンバーワールド』の右手に握りこんだ鉄棒を、小宮に向けて投擲した。
飛来する鉄棒を、小宮は回避できない。何が起こったか視覚による情報を得られないまま。

――彼女の脇腹のすぐ傍を通過して後ろの床に散らばる秤の残骸に激突した。

「あ、外れた」

「バカなんじゃないですかアナタ!?」

視界を取り戻した小宮が懐からバタフライナイフを取り出すまで一瞬。開いて刃を露出させるまで更に一瞬。
それを『マイセルフユアセルフ』の精密動作でこちらに投擲してくるまでに、瞬きすらできなかった。

「うおお!?」

ギリギリのところで弾き落とす。すかさず床を滑ったナイフを拾い上げ、小宮に向けて構えた。

「はははバカめ、敵に塩どころか武器まで送ってくれたな!このまま自らの刃で絶命するがい――い?」

踏み込んで一撃くれようとしたところで、不可視の縛鎖に捕われたように身体の動きが停止した。
全身が不随になった感覚。呼吸器と内蔵だけが辛うじて機能するこの感覚を、御前等はつい先刻に知っていた。
眼前で立ち上がる小宮に不敵な笑みが宿る。整った顔立ちに、微笑みは反則的なまでの魅力を添付していた。

「『マイセルフユアセルフ』――既にアナタの身体は私の支配下にあります」

「く、ば、馬鹿な!いつ触った!いつの間に俺に触れた――!?」

「もう忘れたんですか?ご自分で触りにきたじゃあないですか。嫁入り前の顔面に遠慮なく」

言われて気付く。そういえばさっき小宮の左頬に拳を叩き込んだ覚えがあった。
あれほど触れることに対して警戒していたにもかかわらず。純然たる、その場のノリであった。

「――卑怯だぞ?正々堂々勝負しろ☆」

「だが断る、終わりですよ御前等さん。――『そのナイフで自分を刺せ』」

「だが断――れねェェェェェッッ!!!!」

糸で吊られた操り人形のように、まったくの意志の介在を許さず、御前等の右手は駆動する。
指先一本ですら動かせないまま、握られたナイフは御前等の腹部へと突き立てられた。
強要された行動を終えて、不可視の操糸から解放されても、御前等はみじろぎひとつせず、その場に倒れ込んだ。


167 名前:御前等裕介 ◆Gm4fd8gwE. [sage] 投稿日:2010/05/16(日) 00:21:40 0
「……ふう。さあ御前等さん、その傷は致命傷ですが即死じゃあないはずです。刺したのは腹ですから。
 お逝きになる前にしっかり説明聞いて下さいね。でないとホントにあの世逝きですから」

そうしてピクリとも動かない御前等に対して、小宮は訥々と語った。
ゲームの意味を。ルールを。『留流家』に取り込まれる条件を。九頭と呼ばれる本体が何を求めているかを。

「――とまあ、こんな感じですかね。ですからアナタはこの街でスタンド使いに殺されても、本質的な死には至りません。
 ただ、余生と若さを九頭に献上して、彼とその恭順者とともに永遠を生きるわけですから。
 そこらへんの壁や床に埋まってる連中のようにね。わかりました?今の説明。御前等さーん?もう逝かれました?」

そこで小宮は気付く。倒れ伏す御前等の下から、血の一滴も流れ出てきていないことに。
悪寒が走り、バックステップで距離をとる。同時に周辺から機械の一切を排除し、奇襲を不可能にした。

「……なるほど。それで君は『留流家』との関わりを断つ為に他の参加者を狙っていた、と。
 痩せた考えだな、臆病者(イエロードッグ)が。他者を御する能力を持ちながら、何故自身の縛鎖に抗わない……!」

「そんな……!一体どうやって生き延びたというんです!?」

「刺される直前、『バタフライナイフの開閉機構』を操作した。指を挟んですこぶる痛かったが、正味はそこじゃない」

呟く彼の手の中には、折り畳まれて刃を閉まったナイフの姿があった。
『アンバーワールド』は触れさえすればあらゆる機械と機構を操れる。小物の蝶番でさえ、その例外にはない。

「――さあ、反撃の時間だ。最早小細工は必要ない。正面から殴り合えば、競り勝つのは俺だからな」

「……言ってくれますね。簡単に近づかせるとでも?」

御前等は純然たる疑問を表情に出す。

「『近づく』?何を言ってるんだ小宮さん。『世界の中心』はこの俺だ。世界は俺以外を中心に回ることを許可しない。
 近づく必要なんかないんだ。『俺』という惑星を前に、君の如きちっぽけな衛星は引き寄せられるのみ」

疑問符を浮かべる小宮を前に、御前等は眉を並行にしながら嘆息した。

「わかりやすいようにフランクな表現をしようか。――『近づくのは君だ』」


ドグシャァッ!!



言葉の意味を小宮が理解する前に、後頭部を何かが襲った。
それは鉄棒。先程御前等が投げたそれが、勢いをつけて立ち上がり、慣性そのままに小宮の頭を殴りつけたのだ。

168 名前:御前等裕介 ◆Gm4fd8gwE. [sage] 投稿日:2010/05/16(日) 00:23:10 0
「っが、あ……!!」

衝撃と激痛に揺らぐ脳では、ますます理解不能だった。何故機械でもなく機構ももたないただの鉄棒が――
鉄棒の下に、調理用の秤があった。御前等が調理台からたたき落としたもので、既にガラクタと化している。
そんなただの塊が、鉄棒の下にあった。棒の下に物があるという状況に、一つの合点が導かれる。

「そう。最も原始的にして基本的な『機械』――梃子だ。俺が自作した」

テコ。棒と支点物を組み合わせることで、小さな力を大きく変える、最も単純な原理機械。
御前等が投げた棒は、正しく針の穴を通すような精密さで、秤の上へと放り置かれた。投擲を外したように見せかけて。
そして今、既に仕込んであった『歯車』を発動し、梃子の原理によって跳ね上がった鉄棒を後ろから叩き込む。

「ほとんどッ……こじつけじゃ……あ」

「さて、小宮さんよ。俺に命を諦めろとかなんとか宣っていたな――」

視界を星が回遊する中で、御前等の姿が眼前を埋める。『アンバーワールド』の射程まで、肉迫していた。
後頭部を強打したことで最早スタンドすら出せないほどに意識が飛びかけている小宮を捉え、息を吸い、放った。

「だがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだだがだがだがだがだがだが」

ドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴ

殴る。殴る殴る。殴る殴る殴る。『アンバーワールド』のラッシュを叩き込む。ひたすらに殴りまくる。

「――だが断るッ!!(お断りだ)」

ドグシャァッッ!!!

襤褸切れのように蹂躙された小宮が厨房を端から端まで吹っ飛んで、肉の壁に激突し、崩れ落ちるのを確認。
御前等は鋭く踵を返すと、背中、腰、膝の全てに捻りを加えたキメのポーズでスタンドをしまった。

「君に届け、この想い。――着払いで」


本体:小宮
スタンド名:『マイセルフユアセルフ』

戦闘不能――


169 名前:御前等裕介 ◇Gm4fd8gwE. [sage] 投稿日:2010/05/16(日) 00:31:36 0
【本体】
名前:御前等裕介(おまえら ゆうすけ)
性別:男
年齢:18
身長/体重:痩身長躯
容姿の特徴:幸薄そうな非リア。目鼻立ちは悪くないが変則的な七三カットとバンダナのせいで一気にオタ臭い
      ケミカルウォッシュのジーパンにチェック柄のシャツを着用。

人物概要: 『人生の至上命題は自分を中心に世界が回ること』という哲学に基づいて生きている。
      常にその場における『中心』を探ろうとし、どうにかしてそこへ近づこうとする傾向にある。
      歩んできた日陰者人生の中で発露したのは中心に立ち目立つものへの羨望と渇望。
      いつか世界が自分を中心に回る日を求めて、そこへ至る方法を模索している。
      能力が開花したのは高校に入学してからで、御し易い機械に囲まれていればそこでは自分が中心だった。
      外見に似合わず社交的で、意図的に上から目線。声がやたら大きい。

【スタンド】
名前:アンバーワールド
タイプ/特徴:近距離パワー型/人形で随所に歯車の意匠
能力詳細:触れた機械・機構を操作する能力。
機械の定義は『エネルギーを与えるすることで一定の効果を出力する人工物』の総称。
電子機器から果てはドアの蝶番まで、稼働し可動する人工物であるならなんでも操れる。
歯車型に固めたスタンドパワーの塊に、機械をどのように動かすかインプットし、
動かしたい機械に貼りつけ任意のタイミングでインプットした動きを出力させる。
歯車さえ貼りつければ離れていても発動できる。ただしインプットの性質上、リアルタイムな操作は不可能。
歯車の数に制限はないが、多ければ多いほど精密動作ができなくなる。

破壊力-B スピード-C   射程距離-E(歯車だけならB)
持続力-C 精密動作性-A 成長性-B



【新規参加希望です。よろしくお願いします】

170 名前:大土井太一郎 ◆tGLUbl280s [sage] 投稿日:2010/05/16(日) 00:37:20 0
>>155 >>158

待ち構えるザッツオールバックの拳に触れて向きを反転し上空に向かって飛ばされていくステレオポニー。

身を隠す隙が出来たと大土井が安堵した瞬間
棘が鋭い刃物と化した植物の鞭が唸りをあげて近づいてくるのが見えた。

「なっなにぃ〜!!!」
ザッツオールバックの拳を向けようと構えるが一瞬遅い。

棘は大土井の右腕と両足を切り裂き、胴体にも僅かに傷を付けた。
かろうじて最後の一撃をザッツオールバック拳で反転させるのが精一杯だった。
バラの鞭は方向を変え荻原に迫る。

「クソッ利き腕をやられたか!」
大土井は懐に拳銃を忍ばせていたのだが右手を痛めては狙いを定められない。
おまけに少女のスタンドを能力領域から逃してしまった。
これは決定的な失策である。

ここまでの失策が続けば一旦能力領域を解除して退却するのが上策であるはずだがプライドの高い大土井はそれを認めない。
留流家のなかで100年近い時を眠り続けていた大土井の記憶には戦場で『馬上の鬼神』と称えられた誇りだけが
セピア色のそれの中で鮮色を放っている。

予め身を隠すために用意していた塹壕のような地面の裂け目に身を隠し能力領域内の二人を仕留めることを急いた。
幸い能力領域はそろそろ消化液を分泌し始めている。
普通なら能力領域に捕らわれた者の阿鼻叫喚を聞きながらゆっくり溶かし行くのが常だが今回は別。
スタンドパワーを消費してしまうが出来るだけ消化液の濃度を上げて
逃げたスタンドの本体の少女を溶かしてしまわねば面倒なことになる。

荻原達の足元に粘つく消化液が纏わりつき靴の裏から溶けてゆく。


(御前等さんよろしくおねがいします!すごい迫力で読みふけっちゃいましたよ
今は大土井ですが本キャラは佐藤です。よろしくおねがいします)

171 名前:鈴木章吾 ◆HQs.P3ZAvn.F [sage] 投稿日:2010/05/16(日) 04:12:34 0
「何だ? 奴の精神の輝きは……! これは……『黄金』……!?」

徳井一樹の精神状態を、鈴木は心象風景として垣間見る。
自らの植え込み煽った不安や絶望を、『覚悟』が――『黄金の精神』が振り払った場景を。

> 「ディ・モールト・グラッツェ……鈴木章吾…お前のおかげで少しだけ成長できた気がするよ
> だからよォ〜〜〜コソコソしてねーで……来いよ…決着…つけてやるぜ」

「……それが出来たら苦労しないんだよなあ」

> 「幻を見せるのは私にじゃない…!徳井君達によ…!さっさとやりなさいッ!首をへし折られてもいいのッ?!」

フルムーンの触手を首に絡められ、脅し付けられた鈴木がぽつりとぼやく。
まさかああも容易く『現実』を跳ね除けられるとは、彼は微塵も思ってはいなかった。
佐藤の心象風景は『黄金』からは程遠く、渦巻き立ち込める暗雲のようで、鈴木は微かに身震いさえする。

「……分かったよ。ここで九頭に死なれたら、僕だって困る。言われなくたって助けるさ。だけどアンタ……」
そう言って、鈴木は暫し沈黙。

「仲間を裏切って、塵芥ほども罪悪感を感じないの?」

頓に佐藤の幻影を被り、邪悪な笑みを浮かべて背後を振り返った。
佐藤ひとみと言う人間と罪悪感の語は、水と油程に似あわぬ物ではある。
だがそれでも、「本当に罪悪感を抱いていないのか?」と言う疑念を植え込む事は出来る。
それを『リアリティチェイサー』で膨らませてやれば、初めは有りもしなかった罪悪感を抱かせる事は不可能ではない。
とは言え佐藤ひとみのメンタリティを鑑みると、存外容易く打破されてしまうかも知れないが。

故に鈴木はもう一つ、『現実』を顕現する。
自分自身の、『己が屈強である』とのイメージを。
朧気なそれを深く深く思い込む事で、更に『リアリティチェイサー』の能力で助長して、強力な自己暗示の域にまで押し上げる。
かくして強壮な膂力を得た彼は、フルムーンの触手を強引に引き千切った。
佐藤の正面には彼女自身の姿をした『現実』を残し、襲い掛かるように仕向け、鈴木は遁走を果たす。

「やるだけやってお役御免、でブッ殺されるのは御免なんでね……。さて、オイ九頭さんよ。
 ボケッとしてないで逃げるぜ。……カミカゼだとか、敵に背を見せるのは恥だとか、言い出さないでくれよ?」

姿は隠したまま、鈴木は九頭の元へ駆け寄った。
彼を幻覚の迷彩に取り込み、同時に『アイドルメイカー』によって徳井とよね両人に、『未だ呆然としている九頭』の幻覚を見せる。
複数人に見せるには、『現実』ではなく『幻影』でなくては不可能なのだ。

ともあれ鈴木は九頭の手を取り引いて逃走を図り――しかしふと、佐藤の願望を思い出す。
『九頭を知りたい』との願望は、言われてみれば興味を唆る物だ。

であるが為に、鈴木は覗き見た。
『リアリティチェイサー』に依って、九頭龍一の『現実』を。
彼自身すら認識していない、心奥を。

「……何だあ? こりゃあ」

思わず、疑念の響きが鈴木の口から零れ落ちる。
正体不明の、名状し難き、しかし強大である事だけは分かる『何か』が、彼の心中で蠢いていたのだ。
図らずも、鈴木は笑みを浮かべる。

「……一体何なんだか、気になるじゃないか。九頭さん、アンタちょっと、確かめてみてくれよ」

『リアリティチェイサー』が、九頭の中の『名状し難き何か』を現実として呼び起こす。
怪物の潜む奈落の穴を、一人の男が覗き込む。

172 名前:生天目 有葵 ◆BhCiwB2SCaJ5 [sage] 投稿日:2010/05/16(日) 15:06:55 0
>>158>>170
>「いくぞ!オラオラオラオラオラオラオラオラッ!」
バラの鞭が敵の本体を切り刻んでいく。

「やっつけた!?」
荻原に背中合わせで縛り付けられている生天目には大土井の姿が見えなかった。
荻原の攻撃は大土井にある程度の手傷を負わせたようだったが反転能力がバラの鞭に発動したために
二人は鞭による反撃を受けることとなる。

「痛たああ!」
後ろ向きの生天目は今の状況を完全に把握してはいなかったのだが
攻撃が反転させられたことだけは理解できた。

「よくもやったなあ!」
後ろ向きのままハエトリ草を大土井に向かって振る生天目。
適当にハエトリ草を振ってしまっためにハエトリ草の大きな口は一度地面に落ちてしまったのだが
パタンパタンと地面を左右に転げ跳びながらガブリと大土井の足に噛み付いた。
どうやらハエトリ草の不規則な動きが逆に大土井を撹乱してしまったらしい。

「釣れた!?荻原さん釣れたよ!一緒にひっぱって!」
背中に背負われている生天目は足をぷんぷんさせて荻原に加勢を求めている。

「ん?あれ?」
少女は足の爪先にかすった地面に、ぬるりとしたものを感じてギョッとする。
ウンチにでも触れてしまったのかと思った。

そっと恐る恐る爪先をみると靴の先が溶け始めている。

「…!?なにこれ??どうしよう!?荻原さん!!」

ハエトリ草で大土井は捕獲しつつある。
しかし、もたついている間に荻原と生天目はどろどろに溶けてしまうことだろう。

「荻原さん!ここは木の上に避難しよ!?足がなくなっちゃう!!」

生天目はとりあえず高い木に避難することを考えていた。
もしも木も溶かしてしまうことが出来てしまうのだったら荻原の能力で木から木へと
飛び移るだけだったし、反対に飛び移る木がなくなってしまえば逆に視界もひらけるはず。

休日はいつもぷよぶよで遊んでいる生天目のぷよぷよ脳は適当にそう考えていた。
ねらって連鎖できる知能はなかったがなんとなくそうする。「勘」これはアホが生き残るための思考の極致でもあった。

生天目の考えは消極的かも知れない。少女は荻原の返事を待った。

173 名前:徳井一樹 ◆MnJrk02a/Yx. [sage] 投稿日:2010/05/16(日) 15:24:13 0

「……やっぱあんな挑発に乗るわけねーよな。…次の攻撃はどうしてくることやら」

リアリティチェイサーが現実化させた徳井の両親達が春風のように静かに消えていくのを見て、
徳井は今まで呑気に喋っていた自分の愚鈍さに失望した。
足元の落ちていた氷の欠片を未だ呆然と立ち尽くしている九頭めがけて投げ付けると、
氷の欠片は九頭をすり抜け壁にぶち当たった。

「やっぱり幻か…よね君、今まで俺の奇行を見て驚いただろーが、
実は今まで俺は鈴木章吾のスタンド攻撃を受けてたんだ。……言うならば俺の不安や迷いが現実化したもの、か?
とにかく鈴木章吾のおかげで九頭に逃げられちまった」

簡単に現在の状況をあまり把握できていないよねに簡単に説明すると、徳井はまた喋りだす。

「なんとか九頭を追跡したいんだけどよね君、なんとかなんねーの?便利なSum41でさぁ〜〜〜〜ッ」

174 名前:吉野きらら ◆HQs.P3ZAvn.F [sage] 投稿日:2010/05/16(日) 17:13:20 0
> 逃げてゆく吉野に後ろから機関車が迫る。時速40キロほどだった。
> オモチャの機関車はみるみるうちに追いつき吉野と並走する。
> 横から飛びかかる巨大なゴリラの人形。吉野と同じくらいの大きさだった。

ゴリラ人形に両肩を掴まれ押し倒されて、きららは俄に体勢を崩した。
両足が地から離れ、真横に配置された『トイワールド』の入り口へと、倒れていく。

「くっ……!」

困窮の声が覚えず口から漏れ、彼女は表情に切迫の色を滲ませた。
彼女に『トイワールド』の真髄は知り得ないが、それでも不味いと言う事は十二分に理解出来る。
すぐさま、きららは『メメント・モリ』を用い花を咲かせる。
咲かせる場所は二箇所、一つは『トイワールド』の真下の地面。
勢いよく伸び上がった花々の柱は風呂敷の風体を示す『トイワールド』を翻し、跳ね飛ばした。
更に花の柱を背に支えとして、きららは転倒を免れる。

更にもう一箇所、彼女は同時に白州を乗せた機関車の進路にも、花を咲かせていた。
無論ただの花ではなく、宝石の如く煌めく硬度を高めた花を。
機関車は地面に強く根付いた花に躓くようにして、白州ごと宙に舞い上がった。

「お退き下さいな。荒っぽい殿方は好きではありませんの。もっとも、貴方に性別があるのかは分かりませんけど」

人形の四肢に花を咲かせ、強引に折り曲げた。
巨躯に反して容易く、ゴリラの人形はきららの前に屈する。
スタンドはあくまで魔術師と風呂敷の風体を見せる物であり、
玩具達は群体の一部でしか無いのだろう。

とは言え、ひとまず人形は退けたが、窮地を逸したとは言い難い。
白州がどうなったのかは見届けていないし、
水のスタンド使いも今の足踏みの隙に距離を詰めてきているかもしれない。

> 「小僧…前にも言っただろう…歯を見せて笑うな!」

しかし時ならずして視界の端で弾けた怒声に、きららは警戒と疑念を表情に混在させて、声の方へ振り向く。
見てみれば、何やら巨漢が先程の『トイワールド』の少年を怒鳴りつけていた。
きららからしてみれば目的を無視して怒気を振り撒くなど理解のし難い事だが、ひとまず好機には違いない。

175 名前:吉野きらら ◆HQs.P3ZAvn.F [sage] 投稿日:2010/05/16(日) 17:14:53 0
「あら……? 何でしょうか、これは」

更に俄に平静を得て落ち着く事の出来たきららは、街並みの至る所に人が埋まっている事に気が付いた。
明らかに異様なその光景を、しかし彼女は好機と認識した。

考えるに、彼らは長谷川から聞いた所の『留流家』に囚われた『スタンド使い』なのだろう。
ならば身動きの取れない彼らをここで仕留めたならば、『ゲーム』は自分に対して有利に傾くに違いないと。
丁度良く、彼女のスタンドは多くの対象に対し同時に攻撃が出来る。
即効性は無いが『花』を咲かせる事で、例えるなら時限式の爆弾を無差別に仕込むように。

「善は急げ、思い立ったが吉日、ですわ。早速ですけど泡を食べて、ついでにそのまま吹いて頂きますね」

視界に認められる限りの『『留流家』』の一員達に、きららは花を兆させる。
射程から離れる程花の成長速度は遅くなるが、それでも放置すればいつかは咲いてしまう。
完全に花が咲いてしまえば――咲いた箇所にもよるが――死に至る。
『メメント・モリ』の花は完全に開花するまでならば、払い除ける事で歪曲等を無効化出来る。
だが一度花が咲き切ってしまえば、花によって生じた歪みや消耗を取り消す事は不可能となるのだ。

つまり白州やその傍らの大男は、九頭を護る為には片っ端から花を散らして回らなくてはならない。
きららが無差別に咲かせ続ける花を、延々と。
左腕には盾と刃を兼ねた花を、更に花束の剣を右手に携えた『メメント・モリ』を従え、きららは微笑に不敵さを滲ませる。

「仲間割れ、非常に結構ですわ。待てば海路の日和ありとは良く言ったものです。
 ……お仲間さんを護りながら、どこまでやれますでしょうか?」

刃の魂魄を宿した無数の花弁と共に、きららは二人の狩る者に問いを放った。


【街並みにちりばめられた『『留流家』』の住人を無差別攻撃
 無防備な住人達を護る事を強いながら、攻勢に転じさせて頂きました】

176 名前:白州想太 ◆BhCiwB2SCaJ5 [sage] 投稿日:2010/05/16(日) 20:13:37 0
>>136(ボブさん>>174-175(吉野さん

勢いよく伸び上がった花々の柱は風呂敷の風体を示すトイワールドを跳ね飛ばし機関車ごと白州を宙に舞い上げた。

>「お退き下さいな。荒っぽい殿方は好きではありませんの。もっとも、貴方に性別があるのかは分かりませんけど」

「キャッキャー!!」
機関車は脱線し3両目に保管されていた大小様々な8個のボールも路上に転がり出していた。
振り落とされた白州も猿の子のように奇声をあげて悔しがっている。すると…

>「小僧…前にも言っただろう…歯を見せて笑うな!」
>「ルルイエからまた抜け出したのか…わかっているな?」

聞き覚えのある声だった。気がつけば白州は大きな影のなかにいる。
恐る恐る見上げると怒りで両眼を燃やした男が仁王立ちしていた。

『ボブ・バンソン』

ガクブルと震えながら失禁する幼児。

「あ〜やあっ!!」
白州はボブの股間にパンチをするとトイワールドからオモチャの小型飛行機を出して乗り込んだ。
トイワールドも路上に転がっているボールの回収が終わると飛行機の助手席に乗り込む。

ぶるぶるぶる

プロペラが回りはじめて道路を滑走路代わりにオモチャの小型飛行機は宙に舞った。

「きゃきゃきゃ!」
笑いながらボブ・バンソンの上空を旋回すると白州は再び吉野の追撃に移る。

「……?」
異変を感じる白州。空から下界を見やれば地上の一部に妖しげな花が咲き始めている。

「めめんともり!きゃきゃきゃ!」
花の近くに吉野がいると察した白州は低空飛行をして驚愕することとなった。
なんと花は留流家に取り込まれている者たちから咲いていたのだ。
生贄コースを選択している吉野が留流家の者にプラスになるようなことをするはずもない。

攻撃と受け取った白州はスタンドの花畑の中心付近に吉野きららを確認すると例の8個の玉を投下した。
玉は赤い巨大な玉を中心にぐるぐると回り始める。それはスタンドで出来ている知的玩具、オモチャの天体模型(太陽系モデル)だった。
模型の太陽は吉野の頭上10メトール付近で浮遊すると激しい光を発し辺りの本物の草花はあっという間に枯らしてゆく。

留流家の者を攻撃している吉野を白州は流暢に捕獲している余裕はなかった。
オモチャのスタンド太陽でメメント・モリの花による攻撃や防御を無力化して
あっさり勝負をつけてしまおうと考えていたのであった。

「ちねー!!」
スタンドの太陽模型の光の下にいる吉野にオモチャの小型飛行機を突っ込ませる白州。
白州は光の中に突入するとパラシュートで脱出した。光の下の吉野はまぶしくて確認できなかった。

「ちゃよなら・・・」

空中でパラシュートに揺さぶられている白州は手を振っておわかれの挨拶をした。
涙がはらはらと地上におちた。

177 名前:九頭龍一 ◆SM24/QbfAY [sage] 投稿日:2010/05/16(日) 23:50:10 0
それは何の前触れもなく…
北条市全域を覆っていた留流家がグニャリと歪み、のたうち、鳴動する。
様々な要因はあった。
徳井の見せた覚悟。
実際に両親を殺したわけではないが、九頭打倒の為に振りぬいた拳は九頭の精神に大きな打撃を与えたのだ。
さらに、留流家を構成するスタンド使いか狩るモノとして放出され倒されていった事。
無防備に埋まっていた捕らわれし者が吉野によって無差別に攻撃された事。

留流家は強力にして強大なスタンドではあるが、ゲームにおいては最弱とも言える。
いわば一寸法師を飲み込んだ鬼も同然なのだ。
無防備に晒すエネルギー源を叩けば簡単に打ち破る事が出来る。
如何に留流家内を自由に移動できる九頭といえども所詮は身は一つ。
あまりに広大な留流家を全て守りきれるものではない。

様々な要因が重なった上で、最後に引き金を引いたのは鈴木の新たなる能力、リアリティチェイサーだった。

留流家は潮が引くようにその範囲を縮め圧縮されていく。
それと入れ替わるように狩るモノ、狩られるモノ、北条市にいる全てのスタンド使いにヴィジョンが流れ込む。

それは九頭の無意識の領域でのヴィジョン…!
生への渇望、死への願望。
与えられた力を行使し、スタンド使いを捕らえて行く戦いの日々。
文字通り世界が弱肉強食だった時代、人を、国を救う為に。
しかし時の流れは心を蝕んでいく。
160年の時を老いを得る事無く生き続ける事。
自分以外全ての人間が自分と違う時間軸を歩むと言う喩えようのない悲しみ。
やがてそれは人との繋がりへの渇望となり、留流家と九頭の手段は合致したまま目的は別のものとなっていく。
精神と命の融合。
生きるのに飽きながらも死ねない。
己の内包したものが故に。
だからこそ九頭はゲームを作り、リスクを負い戦う。

まるでテレビのチャンネルを1秒ごとに変えるような断片的なヴィジョンが流れ飛ぶ。
更にその奥、何か名状しがたき蠢くものが垣間見えた瞬間、ヴィジョンは途切れた。

「い・・・いひ!いひひひひひ!あひゃひゃひゃひゃ!!」
九頭の横にはへたり込んだ鈴木が笑い声を上げていた。
口はだらしなく開き涎が垂れ、失禁したままだが表情はない。
鈴木は九頭の近くにいすぎたのだ。
リアリティチェイサーにより引き出した現実の近くに。
九頭自身も自覚していなかったが故に隠せてきたその意図が留流家に伝わり、結果溢れた【ソレ】に鈴木の精神は耐えられなかった。

「長生きをしすぎてボケていた様だな。お陰でスッキリしたよ。
礼を言う。褒美に市の祝福を与えよう。」
鈴木を哀れみに満ちた目で見る九頭の手が振り下ろされた。

血溜まりに佇む九頭の姿は老人のソレではなく、精悍な若者のものになっていた。
いつの間にか周囲には100を越えるスタンドが出現しており、それが次々に九頭と重なっていく。

北条市の何処にいても九頭が何処にいるかわかるはずだ。
あまりにも強力なエネルギーが隠されることなく放出されているのだから。

その場に駆けつけた者は光の繭を見つけるだろう。
そして俺が九頭であり、今ここに真の意味で九頭は現れる、と。

178 名前:佐藤ひとみ ◆tGLUbl280s [sage] 投稿日:2010/05/17(月) 03:00:33 0
>>171 >>177
「鈴木章吾ぉ〜〜よくもやってくれたわね…!!!」
佐藤ひとみは鈴木章吾が身を隠していた塀の後ろで右目を押さえ地面に膝を付いていた。


――能力探知により知った鈴木のスタンド能力の型が以前とは少し違う事。そして物陰に潜む鈴木の九頭に対する雑言。
ひとみは直感的に鈴木がもはや九頭の忠実な配下ではないことを理解した。
鈴木の首を絞め九頭を救うことを強要していたのもそのためだ。

鈴木の予想通り罪悪感という言葉は佐藤ひとみを苛まない。
ひとみは徳井達に対して『仲間』という表現を使ったことが無い。心の中でさえも。
彼らはあくまで目的を共有する『協力者』であり、彼らとはまだ完全には目的を違えていない。
ただ別の目的が一つ加わっただけだ。


だが言葉の後、振り返った鈴木の顔には抗えない衝撃を受けた。
その顔は右目を顕にした自らの顔――
フルムーン発動中の筋肉組織剥き出しのおぞましい顔でニタリと笑っている。

ひとみと同じ顔をしたそれは、棒立ちになったひとみに襲い掛かってきた。
穴の開いた右目から大量の触手を伸ばし向かい合わせのひとみの首に撒きつける幻影のひとみ。
皮膚の剥けた右目から触手を伸ばし髪を振り乱すそれはひとみが最も見たくなかった醜い自分自身――
幻影はひとみの首を絞めながら急速に老いていく。顔に皺を増やし髪の白いものを交えていくそれは孤独に老いて行く自分の姿――

触手で首を絞められながら、ひとみは常のやり口で思い込もうとする。
見たくないもの、認めたくないもの、知ったところでどうにも成らないことは『存在しない』もの。
それが目に見えないもの、例えば恐れや不安であれば心の中で存在しないという扱いをすれば無いも同じだ。
幻影への怖れを捻じ伏せたひとみは発動中のフルムーンの触手を刃物状に固めて幻影の顔から伸びる触手を切り裂いた。

その瞬間フルムーンの抜けたひとみの右目に激痛が走る。
右目から伸びる触手は視神経と繋がっているため破損すると本体にダメージを与える。
ひとみはフルムーンを解除し右目の視力を確認したが痛みだけで視力は特に影響を受けていない。
幻影の受けた痛みは本人にもフィードバックするように仕掛けてあったのだろうか。
それとも無意識レベルに僅かに残る幻影への怖れが痛みだけを残したのであろうか。


鈴木は忠実な部下でこそ無くなったものの九頭に叛旗を翻したわけではないらしい。
結局は九頭を救いこの場から逃げるのに手を貸した。
この危機を脱した九頭はすぐに体制を整え次の手を繰り出してくるだろう。
九頭のことを『知りたい』気持ちは抑えられないが留流家に取り込まれるのは嫌だ。
同化と理解は違う。あくまで自分の意識を保ったままで理解しなければ意味が無い。

右目の痛みが引くとひとみは徳井達とは別の方向に歩き始めた。

179 名前:佐藤ひとみ ◆tGLUbl280s [sage] 投稿日:2010/05/17(月) 03:05:29 0
佐藤ひとみは別荘地帯に向けて足を向けていた。
ひとみが今朝ここに来た目的の場所――九頭と出会った場所である海岸の別荘地。あの崖近くの更地に行こうと思い立ったのだ。
あの場所で九頭の記憶を辿ろうと考えていた。
フルムーンで九頭や留流家の位置を探知する時、九頭の意識に隙があれば記憶をリンクすることが出来る。
踏み切りで見た白昼夢はきっとその断片。


角を曲がり別荘地帯に向かう開けた一本道に出ると数十メートル先に血溜まりを作って倒れている人間がいる。

「大谷さん――!?」

ひとみは大谷に駆け寄った。大谷は腹部に大きな裂傷を作って血を流している。
フルムーンで腹部をスキャンをしたが幸い傷は内臓にまでは達していない。
触手で縫合し癒着させる。腹部にクモの巣のような大きな傷跡が出来たが命に別状は無いだろう。

大谷の治療を終えると、ふと九頭のことが気にかかってきた。
九頭は何処まで逃げただろう。徳井とよねは九頭を追跡しているだろうか。
大谷の横で九頭と鈴木、徳井とよねの位置を探知するひとみ。

その途端頭の中に誰かの感情が流れ込んできた。
これは白昼夢で見たのと同じ…九頭龍一の感情……!
あの時感じた焦燥、倦怠、そして孤独が更に色濃く具体性を増してひとみの頭にヴィジョンとして浮かぶ。

悠久の時を生きるものの孤独――生きることに飽きながらそれでも生に執着せずにいられない焦燥――。
ひとみは自分を惹きつけていたものの正体を一つだけ理解した。
九頭龍一は矛盾を抱えた人間、そして孤独な人間を惹きつける。


…そこでヴィジョンは途切れた。
なぜ途切れたのか解らない。ひとみ自身が無意識に危機を察知して自ら探知を切ったのかも知れない。
ヴィジョンの途切れと時を同じくしてひとみ達を取り囲んでいた留流家にも変化が現れた。
肉の塊のような生々しい壁は色を薄め半透明になりながら崩れる様に消えていく。

九頭の身に何かが起こった……!
ひとみは再度九頭の位置を捕捉しようと試みた。シート上には九頭を現すマーカー、側で消え行くマーカーは鈴木章吾のもの…
視線の先にある九頭を表すマーカーは突如燃え上がるような輝きを発した。


「大谷さん…九頭龍一のところに行きましょう。留流家は消えたけど消えてない…今、九頭の中にあるわ。」

180 名前:大谷杉松 ◆vReXCpsNBKcm [sage] 投稿日:2010/05/17(月) 04:03:53 0
目が覚める…気絶をしていたようだ、目の前には佐藤がいた、
腹の傷は応急処置としては十分すぎるレベルの処置がされている。

「すまない…こんなところで寝てる場合じゃないのにな…」

雰囲気でわかる、今皆戦っているのだ、自分が倒れ気絶していた間にも
大谷は自分の力量を呪った、皆が頑張っているときでさえ何一つ貢献できなかった自分をだ、
結局、仲間を守るどころか仲間に迷惑をかけていたと思う…そんな自分のままではいけない。
仲間一人守れない男が彼女を守れるか? 否、それは難しい話である。

「もっと強くならないと…もっと、もっとだ」

つぶやく様に話す大谷、そして今の状況に気付く、
留流家の壁が半透明になり崩れていく…きっと九頭に何かあったのだろう、

>「大谷さん…九頭龍一のところに行きましょう。留流家は消えたけど消えてない…今、九頭の中にあるわ。」

「…あぁ、わかった 今までの分まで頑張らないとな…」
『キヲツケテネフタリトモ、コンカイハホントウニキケンヨ…』

二人と一つのスタンドは九頭の待つところへ向かう…

181 名前:ボブ・バンソン ◆JvtTTnep1k [sage] 投稿日:2010/05/17(月) 20:12:25 0
>「仲間割れ、非常に結構ですわ。待てば海路の日和ありとは良く言ったものです。
 ……お仲間さんを護りながら、どこまでやれますでしょうか?」

>刃の魂魄を宿した無数の花弁と共に、きららは二人の狩る者に問いを放った。

「賢しいな…だがまだ青臭い…勝負に関しては…乳離れしたての赤ん坊と大差ない
お前は九頭と俺の関係を少し見誤って…ッ!」

>白州はボブの股間にパンチをするとトイワールドからオモチャの小型飛行機を出して乗り込んだ。

軽い衝撃が金的に到達し、般若の形相がより険しくなる。この程度の痛感など耐えられる、
が平静の箍を突き破るのには充分のようだった。

「…悪足掻きにしてはキツイぞ、小童がっ!」

怒りに任せて宙に拳を振りかざすと、呼応して噴射した膨大な量の水が飛行機の翼をへし折ってしまった。
あわやプロペラ機と運命を共にするかと思った幼児の頭部を楽々と掴みとり顔に近づける、もはや人間の表情ではない。

「小僧!もはや貴様に殺す価値など無いッ!!だが、立ちはだかる猛者に全身全霊を捧げるのが我が誇り、信条、熱意ッ!!
 拝め、俺の…畏怖しろ、讃えろボブ・バンソンの真の姿…」


             liiiii,        _、
          llllll!  l!llli!゙゙゙´      _,illllllliiiiiiiiii、         ゙!llllliii
       .,lllll゙_           _,,iiii!!!゙゙´ .,iillll!!゙           ゙゙゙´
      .lllll!!!llllllii             ,,iilll!!゙゛           _,,,iiill'          llllllll‐          'llllllll              llllllll!
      .illll!゙  ´            ,,iiilll!!゙゛       ,,,_,,,iiiiiill!!!゙゙゛           ゙゙゙´              ゙゙゙´              ゙゙゙´
     illllll′           ,,,iiii!!!!゙~         illlllll!!!!゙゙´
     ゙゙゙゙                        ゙´




渇いた風が吹いた。


182 名前:荻原秋冬◇6J1m09mANS [sage] 投稿日:2010/05/17(月) 21:59:13 0
>>170 >>172
なんとか敵の本体を攻撃することはできたが…
敵のスタンドの拳がバラの鞭にあたったことで、攻撃が反転されてしまった。
つまり、荻原の攻撃が荻原自身にあたってしまうということだ。

「うわっ!」

>「痛たああ!」
バラの鞭の勢いが強かったせいで生天目までとばっちりを受けてしまった。

>「よくもやったなあ!」
生天目は後ろ向きのままハエトリ草を敵に向かって思いっきり振ったのだ。
何とか運よくハエトリ草は敵の足に食らいつくことができた。

>「釣れた!?荻原さん釣れたよ!一緒にひっぱって!」

「あ、わっわかった!いくぞ!」
引っ張ろうとした瞬間荻原は妙な違和感を感じる。
どうやら生天目も違和感を感じたみたいだ。
二人の靴の先がドロドロに溶かされ始めていた。
敵のもうひとつの能力だったのだ。

この時、荻原の目の前が真っ赤になった。
今、荻原の履いている靴はただの靴ではなかった。
それは妻である春夏が、昔荻原の誕生日にプレゼントしてくれた靴なのだ。
本気で心から愛していた妻からもらった靴を溶かされたことで…
荻原の心の中のなにかがプッツン…と切れた。

>「荻原さん!ここは木の上に避難しよ!?足がなくなっちゃう!!」
だが、荻原は自分と生天目を縛っていた蔓を緩めた。

「…有葵ちゃん……君だけ先に木に登って避難しなさい……私はその間に…」
荻原の話すその声はとても低く……恐ろしいくらいに冷たい目をして…
力強く言った。

「奴を……ぶっ殺す!!」
近くにあった大きめの木を荻原はプラントアワーで殴りつけた。
いつもなら何か植物がでてくると思うが、なぜか何にも植物は生まれなかった。
しかし、プラントアワーは殴ったまま木から手を離そうとしない。

「俺が溶けるのが早いか…奴が死ぬのが早いか…これで決まる!」
地上ではわからないと思うが、プラントアワーが殴った大木の複数の根っこが
急速に伸びているのだ!
大木の根っこはどんどん敵の本体に近づいていく、そして…

「いけ……奴の心臓と…脳みそを……突き刺せ!!!」
荻原の命令どうりに大木の根っこは敵の本体を貫いた!

「私のプラントアワーの能力は植物を生み出すだけじゃない。
生きている植物にエネルギーを与えて操ることもできる!」
そういいながら荻原は敵に近づいていった。
敵の本体もスタンドを出して荻原を攻撃しようとしたが
怒りの限界点を超えた荻原は、反転能力を食らう前にプラントアワーの両腕の蔓をつかって敵スタンドの両腕を縛り上げた。
さすがに縛られてしまえば動くこともできない。

「これでアンタの反転能力をくらうことはない……あとは…一気に殺す…」
いつもの荻原らしくない冷たいその言葉……それだけで周りをゾッとさせることもできる。
プラントアワーの蔓を再びバラの鞭に変えた。
荻原は一言も喋らずバラの鞭で敵の全身を切り刻んだ……

183 名前:よね ◆0jgpnDC/HQ [sage] 投稿日:2010/05/17(月) 22:13:58 P
/北条市全域を覆っていた留流家がグニャリと歪み、のたうち、鳴動する。

留流家が動き出す。バランスを崩しそうになったが、姿勢を低く保つことでなんとか堪えた。

「一体…なにが…?これも能力…?」

すると突然、よねの頭の中に映像が映し出される。
それはまるで全く異なった映像を映し出すフィルムの様に、
あるいはとてつもない速さで流れるスライドショーの様であった。

「これは…九頭龍一…?なんなんだ、これはッ…」

考えようとする力すらも失せていた。
ただ、茫然と映し出される映像を眺めているような気分だった。
そして、ある時に突然その映像は途切れた。
よねは映像が途切れたのに気付かなかった。数秒後、我にかえる。

/血溜まりに佇む九頭の姿は老人のソレではなく、精悍な若者のものになっていた。

「バカな…あれだけスタンド使いを倒しておきながら…まだこれほどのエネルギーが…?」

本当に心の底から恐怖が溢れ出した時だった。よねは気付いたのだ。
九頭を取り囲むようにスタンドが、そしてそのスタンドが九頭に次々と重なっていることに。

「これが、九頭龍一の本当の能力…ッ?超越しているッ!なにもかもをッ!まるで全知全能の…神ッ」

途端によねの息が荒くなり、体中の汗腺が開き出す。
その掌は汗にまみれ、その両足は巨人を目の前にした小動物のように震えていた。

『偉く震えてるじゃないか。そうだ、その恐怖だ。その恐れを伴った表情こそが至高の糧…』

そこには九頭に支配されつつも、自らのスタンドを何とか守っているカズが居た。
その顔には未だかつて見たこともないほど笑顔に満ち溢れていた。

184 名前:徳井一樹 ◆MnJrk02a/Yx. [sage] 投稿日:2010/05/17(月) 23:14:34 0

留流家の一部、スタンド使いの埋まった壁や柱が消えていく。
代わりに現れるのは九頭のヴィジョン。おぞましい狂気のような一瞬の映像。

「またこいつか…!もうこーいうのは飽き飽きだぜ!」

恐怖を支配することこそ覚悟、即ち勇気。
今すぐトイレでブルっちまうよな恐怖ではあるが覚悟が『立ち向かう意志』を削がずにいた。
そもそも九頭が何処にいるのか、それは元よりよねに聞く必要などなかった。
あれほど大きな──スタンドパワーを垂れ流していてはその位置は一目瞭然だ。

「ニュー九頭目覚めの瞬間ってトコか…だがよォーー逆に言えばその一瞬が命取りだぜ…!」

光の繭のような姿の九頭を前に、そう静かに呟く徳井。
いくら幼虫がサナギから美しい成虫となろうともその前に命を刈り取れば問題などないのだ。
そしてその行動を実行に移そうとしたとき、声がきこえた。

『偉く震えてるじゃないか。そうだ、その恐怖だ。その恐れを伴った表情こそが至高の糧…』

震えるよねを前に至上の幸福が訪れたといわんばかりの表情の男がそこに佇んでいた。
よねの身の上をまったくしらない徳井の推測ではあるが、よねの知り合いらしい。恐らく彼も『狩る者』なのだろう。

「よね君ブルッてるとこ悪いが早いとここいつを再起不能にさせてもらうぜ…
目の前には攻撃のチャンスといわんばかりに大ボスが寝てるんだからな。
……その精神状態で戦えるか?問題ねーならよォーーー手出しはしねーけど」

光の繭を目の前にカズの方向へ振り返る。
セイヴ・フェリスを発現させ臨戦態勢をとる徳井。
よねの行動しだいでは目の前の敵はよねに任せ、徳井はちゃっちゃと九頭を倒すつもりだった。

185 名前:大土井太一郎 ◆tGLUbl280s [sage] 投稿日:2010/05/17(月) 23:25:11 0
能力領域の周囲に用意した塹壕に身を潜め落ち葉で体をカムフラージュしながら荻原達の様子を伺う大土井。
自らの失策を挽回しようと無理な攻勢に出る。
ガードや反転を差し置き全スタンドパワーを消化液の分泌に費やしたのだ。
能力領域内の地面に落ちていた枯葉は蒸発するように解け木々も根元から溶解して
高速達磨落としのようにどんどん背を低めていく。

>「荻原さん!ここは木の上に避難しよ!?足がなくなっちゃう!!」
少女は叫んでいるが、今領域内の樹木に余計な力をかけるとたちまちバランスを崩し
樹木の幹共々消化液の溢れ出す地面に叩きつけられることになるだろう。

塹壕内でニヤリと笑う大土井。
だが荻原は予想外の捨て身の攻撃に出た。
能力領域からの脱出を諦め、溶かされてゆく大木を殴りつけたのだ。

ゲームの開始時から『狩られる者』となっていた荻原の能力は割れている。
荻原は木を急成長させその木の枝を使って能力領域から脱出するつもりか?

「そうはさせんぞ!」
大土井は木の枝の成長方向を反転させようとする。上手くいけば急反転した木の枝で荻原を傷つけることもできる。
だが大土井はまた読みを誤った。
荻原が成長させようとしたのは枝ではなく樹木の根。
荻原達は大土井が地面下に潜んでいることを見抜いていたのだ。

地面の下でのたうつ様に急速に成長していた樹木の根は遂に大土井の潜む塹壕まで伸び、大土井の両腕を絡め取った。
手にしていたステッキに仕込んでいた刀で根を切ろうと試みるが
大土井を拘束する大木の根は万力のような力で締め上げもはや刀を振り回す余力を与えない。

「ぬううぅぅっっっ!!」
少女のスタンドが隠れた者の位置を探知できることを大土井は知らなかった。
少女とスタンドの会話は隠れながら耳にしていたはずだが明治の男である大土井は
『レーダー』や『超音波』という単語が位置捕捉に関わることを理解していなかったのだ。

100年以上前に積み上げたまま凍りついていた大土井の自信は脆くも崩れ落ちる。
破れかぶれになった大土井は全能力を集中して強力な消化液を分泌する。

「この名参謀…馬上の鬼神 大土井太一郎がこんなところで倒されてなるか!
あんな軟弱者と年端もゆかん女に…!この大土井は来るべき時のための選ばれた戦士!
貴様らなどの雑兵は留流家の養分になるしか価値が無いのだ!!死ね!死ね!死ねぇぇえええええ!!!」

もはや策も余裕も無い。只、ただ溶かす!それのみに意識を集中させる大土井。
その大土井に向かいこんどは空から緑色のしなやかなものが振り被さる。

―――バラの鞭―――!!
刃物のような巨大な棘を持つ鞭は無残に大土井の体を顔を手足を切り刻む!

前身を切り刻まれながら大土井は叫んでいた。

「九頭龍一様……万歳!!!!!」
薄れ行く大土井の脳裏に忘れていた筈の記憶が蘇ってきた。
議員となった大土井と敵対していた某大臣候補…気鋭の政治家などと呼ばれいい気になっていた男。
大土井はその男の振る舞いが実に気に入らなかった。

「協商路線など軟弱者の考え…譲歩による友好路線で真の安全が買えるか?!
敵は叩き潰すのみ!敵の殲滅こそが国家の…陛下の安寧に繋がろうというもの」

ある日大土井の前に佐官クラスの軍服を着た精悍な若者が現れた。
腰に穿いた日本刀を抜き近づいてくる若者…。
それ以来時が止まりずっと眠り続けてきたような気がする…。
崩壊し消えていく留流家と共に大土井の姿も崩れるように消えて行った。

186 名前:御前等裕介 ◆Gm4fd8gwE. [sage] 投稿日:2010/05/18(火) 00:00:27 0
小学校に上がる前、野球観戦が好きだった。
当時5歳の御前等裕介は、初めて親に連れられて行ったプロ野球の試合観戦で大いに興奮し、感動した。
帰宅してなお選手の一挙一投や会場での声援、並んで飲んだジュースの味について語る御前等を見た親は彼に尋ねた。

『野球が好きか』

もちろん幼い御前等は肯定し、親はその答えに得心が言ったように頷き、それならと御前等にバットとグローブを贈った。
それは、応援用のプラスチックバットと、ホームランボールをキャッチする為の小さなグローブだった。

両親は、彼を野球選手としてではなく、野球ファンとして育てた。

  *  *  *  *  *

「九頭はスタンド使いを吸収することで命を延長しています。
 つまりこの北条市に捕らわれたスタンド使いは彼の獲物であり得物でもあるわけですね」

「なるほど、『狩る者』……か。まるで将棋の駒取りだな。倒した者がそのまま手駒になるとは」

「よほど性質悪いですよ。数が多い上に全員が能力者ですからね。私も以前遭遇しましたけど逃げるので精一杯でした」

スタンドパワーを使い果たしてぐったりと座り込む小宮から知ってるだけの情報を聞き出し、メモをとっていく。
あれだけフルボッコにしたのに、この女は既に傍目からは平常と変わらないぐらいには傷も打撲も回復していた。
どちらかと言えば"修復"に近い、と小宮は言う。『マイセルフユアセルフ』で細胞ひとつひとつに活性化を強要しているのだと。

「『狩る者』に会ったのか?」

「『リサイズサイズ』の長谷川、と名乗っていました。切断に優れた鎌のスタンド使いです。純戦闘系相手じゃ歯牙にもかかりませんでしたよ」

考察するに、『狩る者』とはその性質上戦闘に特化したスタンド使いが担うとみて間違いないだろう。
となれば、直接的な攻撃能力を持たない御前等や小宮にとって最優先で戦闘を回避したい相手。

「しかし『狩る者』ぐらいしか九頭の居場所を知る者はいない。あるいは同じように九頭を追う他の参加者を見つけて合流するかだな」

「御前等さん、九頭を倒すつもりです?」

「馬鹿言え、そこまで身の程を知らないわけじゃあないさ。むしろ俺は九頭とやらに対して好ましいとさえ感じるぐらいだ」

「おっさんかもしれないですよ?」

「永遠の命を持つ女子中学生ぐらいの見た目の美少女という可能性も捨てきれないぞ!」

「ああ、はい、そっすね。それで一体どうするんです?」

「九頭に取り入る。場合によっちゃ小宮さん、君を手土産にしてでもな」

「『留流家』に取り込まれずに奴の配下になるってことですか。そりゃまたなんだって」

「この街の『世界の中心』はまずもって間違いなく九頭だ。巻き込まれてしまった以上、日の当たらない場所で朽ちるつもりはない。
 ならば俺は九頭の中心にして忠臣、『世界の中心の中心』を目指そう。丁度いい具合に忠という字は中と心からなることだし」

必要な情報をメモし終えた御前等は、音を立ててて手帳を閉じ、風圧に前髪を揺らした。

「近くで見ておきたいんだ。小理屈抜きに『世界の中心』に立つ者の姿を」


187 名前:御前等裕介 ◆Gm4fd8gwE. [sage] 投稿日:2010/05/18(火) 00:01:24 0
連絡先を交換した小宮と別れ、御前等は街に出る。
スタンド知覚を開きながら歩くことで、あわ良くば他の参加者に遭遇できないかという狙いである。
幸いなことに街という範囲は狭い。小宮が駅前で網を張っていたように、虱潰しに探せば何らかのイベントは発生するはずだ。

――『スタンド使いは惹かれ合う』のだから。

「とはいえ、流石に歩き疲れたな……」

自宅警備員に内定している御前等にとって、街をくまなく歩き潰すというのは決して楽な道程ではない。
30分おきに休憩を繰り返していた。歩き始めて実に4回目の小休止を、公園のベンチで缶ジュースを片手に過ごしていた。

座れる場所を探すのにも苦労する。
なまじ『留流家』の犠牲者が見えてしまうと、ベンチなんかも既に占領されていたりして、すこぶる気まずい。
と、そんなこんなで探索を再開して、しばらく歩いていると、奇妙な変化を兆した肉壁を発見した。

「これは……花、か?」

地面に埋まった犠牲者の顔面から植物が芽吹いていた。まだ開花には至ってないが、鮮やかな茎と葉が見目に麗しい。
花瓶は最悪だが。と苦笑しながら、それがどうやらスタンドパワーによるものだということに気付く。

(新手のスタンド使い――!! それも、戦闘系の能力じゃあない!)

心臓の鼓動が一気に跳ね上がる。期待に声が漏れそうになるのを押し殺して、唇を舐める。
自然とつま先立ちになる自分に内心で苦笑しながら、花の軌跡を追っていく。

いた。
御前等より一つか二つ違う程度の少女。
そしてその向こうで、小児と大男が競り合っているのが見える。

(なんだあのカオスな状況は!仲間割れか?それとも最初から三つ巴?)

ともあれ、この状況は都合がいい。少女の傍に現出しているスタンドは花の意匠が目立つ花色のそれ。
先程から犠牲者に生花しまくっているのはあの少女と見ていいだろう。

(つまり!花のスタンド=非戦闘系、非戦闘系=非『狩る者』、よって花のスタンド使い=NOT狩る者!証明終了ッ!!)

従って、あの少女は向こうの二人(恐らく狩る者)に追われる立場にあるのだろう。ここは颯爽と後ろから奇襲して少女を昏倒させ、
それを手土産に向こうの『狩る者』(未定)に近づけば、九頭のもとへ近づく足がかりになる公算が大きい。

考えが纏まった途端、御前等は足音を殺すのを止め、弾かれるように走り出した。
この距離ならッ!気付かれても対応をとる前に殴れるッ!!相手は非力な女子供、必勝は必定ッ!!!

「ヒャッハー!突然ですがごめんくださいッ!!」

吐き気を催す邪悪な奇声を挙げながら、御前等は少女の背後から『アンバーワールド』の剛腕を繰り出した。


【他の参加者を手土産に九頭の元へ降ることを決定。街を歩いていて発見した吉野きららを後ろから襲撃】

188 名前:生天目 有葵 ◆BIIDysM4JUy7 [sage] 投稿日:2010/05/18(火) 00:34:11 0
>>182>>185
>「…有葵ちゃん……君だけ先に木に登って避難しなさい……私はその間に…」

「は…はい…」
荻原に鬼気迫るものを感じた生天目は一言答えると木によじ登った。

>「これでアンタの反転能力をくらうことはない……あとは…一気に殺す…」

荻原のその言葉に生天目は息をのむ。

木の下では男たちの凄まじい戦いがはじまった。

「…ぁ…う…」
体を硬直させて戦いを見つめていた生天目の目を何かが覆う。
それはステレオポニーの手だった。

>「この名参謀…馬上の鬼神 大土井太一郎がこんなところで倒されてなるか!
>あんな軟弱者と年端もゆかん女に…!この大土井は来るべき時のための選ばれた戦士!
>貴様らなどの雑兵は留流家の養分になるしか価値が無いのだ!!死ね!死ね!死ねぇぇえええええ!!!」
>「九頭龍一様……万歳!!!!!」
>「協商路線など軟弱者の考え…譲歩による友好路線で真の安全が買えるか?!
敵は叩き潰すのみ!敵の殲滅こそが国家の…陛下の安寧に繋がろうというもの」

前身を切り刻まれながら大土井は叫んでいた。

「…有葵…オレたちはとんでもないことに巻き込まれてしまったみたいだね…」

憎悪の炎を燃やしながら崩れるように消えてゆく大土井の姿を見つめながらステレオポニーは呟くとブーメランを空にむかって放り投げた。
それは自然公園で遊んでいた者から黙って借りてきたものだった。

「だいじょうぶ!?荻原さん!!」
木の上から猫のように飛び下りると荻原のもとへかけつける生天目。

突如、脳裏に流れ込むヴィジョン。その後巨大なエネルギーの放出を少女は確認した。

「…うっうああああ!?」
叫びあがるステレオポニー。

「な、なにこれ!?荻原さん!?」

189 名前:佐藤ひとみ ◆tGLUbl280s [sage] 投稿日:2010/05/18(火) 02:27:37 0
「やっぱりもう来てたのね。
正確な場所を探知できる訳でもないのに凄いわ。
勘のいいあんた達だもの、これだけのパワー…感じ取ってもおかしくないわね。」


佐藤ひとみは光に包まれた繭を前に立つ男達に後ろから声をかける。
大谷は既に歩を進め、先にいた二人の男と並んでいる。
ひとみは彼らから10mほど離れた位置に留まり徳井、よね、大谷の三人に話しかけている。
もう一人知らない男がいるがそれは眼中に無い。彼がひとみが今抱いている目的の害にならないことは解っている。
何故なら彼は『狩る者』だったのだから。


「徳井君、ニキビダニって知ってる?人の顔や頭に住んで皮脂やフケを食べるっていうあれ。
あれって虫じゃない?あんなものが皮膚の中に住んでても人って何も感じないのよねぇ。
あれがもうちょっと大きかったら頭や顔を掻き毟ることになるって何かで読んだわ。
人の皮膚や組織って小さすぎるものが動いてても認識できないみたいね。

何が言いたいかって言うと…
私の上にいるフルムーンから顕微鏡で見ないと分からないくらい細かくした触手が伸びてるわ。
徳井君、既にあんたの耳や鼻から触手は侵入してる。
あんたの頭の中は触手のクモの巣が張ってるわ。
今は柔らかくて細い細〜ぉい線だから何も感じないけど…
この触手が急に硬い針金かピアノ線みたいになって頭の中でピーンと張ったらどうなるか解るわよね?

私のフルムーンはあんたのセイヴ・フェリスに比べると断然スピードもパワーも劣るわ。
でも私はもう仕込みを済ませて後はスイッチを押すだけみたいな状態。
一撃で私を殺さなきゃ防げないわ。射程外からそんなことができるかしら?」
徳井君、あれには手を出させない!」

ひとみは上空で心臓のように鼓動する繭を指差してキッパリした口調で言った。


「勘違いしないでね。別にあんた達を裏切ったわけじゃないわ。
九頭龍一は殺す…!だけど今じゃない。
私はあれの中から出てくるモノを見てみたい……!
私達は自分の運命を変えた者の正体を知るべきだと思うの。
正体を知らずに訳のわからない内にゲームをクリアしてもきっと後悔するわ……。」


三人の男の動きを牽制するように睨み付けながら言葉を加えるひとみ。
口から出るのは常に無く正直な言葉だった。
佐藤ひとみは繭から出て来る九頭龍一を見たかった。もう一度話をしたかった。
そして『殺す』…という決意も決して嘘ではなかった。

190 名前:よね ◆0jgpnDC/HQ [sage] 投稿日:2010/05/18(火) 17:23:59 P
/……その精神状態で戦えるか?問題ねーならよォーーー手出しはしねーけど」

「あ…ああ…ですが…」

己の中で必死に、必死に考えた。
徳井の覚悟を見た自分はこのまま逃げていいのか。
その目の前で、甘ったれた答えなど述べれるわけもない。

もじもじしている間に佐藤が来た。
恐らく何か有益な情報でも得たのだろう。
そう思っていたが…

/徳井君、あれには手を出させない!」

一瞬、よねには現状が理解できなかった。
カズは依然、クスクスと笑っている。

「…何を…言ってるんです?あんなのが…あんなのが出てきてしまっては…」

今すぐ、その誤った考えをどうにかしておきたかった。
だが、徳井の事も大事である。よねに手出しは出来なかったのだ。

「佐藤さん…冗談でしょう?後悔なんてするハズないですよ…
 ここには父の…グリーン・Dも居ます。九頭にその能力を使えば…どうすることもできなくなってしまう…
 それをッ!あなたはッ!わかってそう仰っているのですかッ!?」

今までの九頭でさえも脅威であったのだ。
せっかく、希望の光を捉えたというのにそれをいとも簡単に失ってしまう。
そしてさらなる絶望の底へ蹴落とされる。
恐らく、光り輝く繭から出てきた九頭を誰一人として倒すことはできないだろう。
もしそうなってしまえば残された道は二つ。『永遠の服従』か『死』である。

「目を覚ましてくださいッ!!とても…とても佐藤さんの考えとは思えないッ!」

いつしかよねは九頭には恐怖を、佐藤には憎悪の感情でさえも抱き始めていた。

『フフフ…まあ、せいぜい仲間割れでもしてるが良いさ。どっちにしろ、九頭様の力の前では…ね』

191 名前:ボブ・バンソン ◆JvtTTnep1k [sage] 投稿日:2010/05/18(火) 23:16:58 0
――全身が脈動し、皮膚には亀裂が走る。

九頭に請願されたがために日本に留まっていたが…まさかここまで発展するとは思っていなかった…
今回の“ヤマ”は下手をすれば共倒れも考える、危険な依頼のようらしい。
北条市を包む強大なオーラを間近に感じる――奴は本気だ、ならば俺もそれに応えよう

   \,       |                     |'、.!             /               /
     `'-、    l゙                     | . l|        /            l
       .`''、,  /                  |  `''-..、    !               /
            `-.!                     ∧     `ヽ   .!            /           ,,
             ,ゝ____           ,/ .l      ヽ │          ../             /
       _,,..-'´  .\   ⌒゙''''ー ,,,、     ,/   .l      ヽ l        ,..-'"           ___/
    ,..-'"´        \       `゙''ーr‐''/    . l       ヽ.!     ., '',゙_ -―― ̄ ̄ ̄
.._..-'"                \,           l/     ゙l       ./L  _,,,.. /'"
゛                 `ヘ-__     /      ,,|、     ./ . `'¬ー- .|_
                     __,,|__>-!ヘ.l     /  ヽ    !.l        \                 ,..-'"
     ̄ ̄r‐―――――ーッ'"         ,ス、    l    .l   l__L、        \         ._..-'"

「グオオオオォォォォォーーー!!!」
ジャケットが跡形もなく消し飛び、割れた黒い皮膚から細長い穴が幾つも開き、
胸部の肉は断ち切れて蠢く臓器を惜しげもなく露にしている。
想介を瓦礫の山に放り投げ、自由になった方の腕を裂け目に突っ込み肋骨の一部をへし折り、抜き取る。
これほどの行為をしながらも苦悶の表情一つ見せないのはさすがの自尊心といえよう。
やがて裂け目は肉が引きつる鈍い音と共に形を変えてハンドボール程の空洞になってしまった。

「これが俺のスタンド『New Divide』だ」

192 名前:白州想介 ◆BhCiwB2SCaJ5 [sage] 投稿日:2010/05/19(水) 00:55:47 0
>>191
じつは白州想介はボブ・バンソンに放り投げれらて気絶していたのだった。
飛行機から見た風景も吉野うららを追い詰めた出来事もすべては幼児の夢の中の出来事だったらしい。

193 名前:九頭龍一 ◆SM24/QbfAY [sage] 投稿日:2010/05/19(水) 23:30:22 0
>180>183>184>189>190
光の繭を前にした四人が微妙な均衡状態を繰り広げる中、ついにそれは起こった。
収束していた繭がほどけ、辺り一帯眩いばかりの光が塗りつぶす。
音も色もなくなった後、ようやく色彩が戻ってくる。
そこに現われたのは…
まるでアメーバーのような不定形の光の塊りだった。

それを目の当たりにした4人は全く動けずにいる。
佐藤によるけん制のためではない。
溢れ出るそのパワーに当てられ一種の金縛り状態になっているのだ。

絶え間なく収縮と膨張を繰り返し、泡立つその姿は根源的な嫌悪感を抱かせる。
その収縮にあわせるように下品でくぐもった音を鳴らし、聞くものの狂気を誘う。
どうしようもなく不気味でおぞましい姿にも拘らず、どこかに懐かしさを感じるだろう。
それはその姿が生命の起源たる原初のスープに他ならないからである。

「流石に100を越えるスタンドの融合には時間がかかるな。
綾和、10年だ。」
「喜んで!」
不定形の光の塊りから九頭の声がながれ、綾和は歓喜に満ちた表情でグリーン・Dを顕在化させる。
結論から言えば100体を越えるスタンドの融合は失敗に終わった。
いや、失敗と言うより未完成なのだ。
融合を完成させるには時間が要る。
だが、綾和という存在を取り込んだ今、その時間は必要としない。
グリーン・Dの能力を持ってすれば一瞬なのだから。

四人が呆然とみるしかない中で、綾和は己の命を削り不定形の光の塊りの時間を10年跳躍させる。
そう、10年後の姿。
見る間に塊りは凝縮され人の姿へと整っていくが、それでも輪郭はブレ、定まらない。
「九頭様、更に10年…」
そう言いかけた所で九頭の声がそれを遮る。
その言葉はあまりにも残酷、だが、綾和にとっては至福の言葉だった。

「いや、後は調整さえできれば良い。お前の左腕をもらおう。」
「・・・うはははは!九頭様の一部になれなかったのは慙愧に耐えませんが、その言葉はそれを補って有り余る光栄!」
なんの躊躇もなくグリーン・Dは左腕をもぎ取りヒトガタに渡す。

受け取られたグリーン・Dの左腕は形を変え、光の輪となってヒトガタの頭上に浮かんだ。
光の輪を冠した時、ヒトガタは真の意味で完成を向かえた。
ブレていた輪郭は定まり、美しき筋肉を形成。
2対の腕が顕になり、背からは3対の白き翼が広がる。
その姿は正に天使!
そして、その顔は30前であろう精悍な九頭のそれであった。
「改めて自己紹介しよう。
帝国陸軍特務機関【明王】が筆頭、護国天使ア・バウ・ア・クー!九頭龍一!
この姿になるのは実に100年ぶりだ。
もっとも、前回使用したスタンドはここまでの数はなかったな。
全盛期の精神と最新最大のスタンドを持つ私は今、歴代最強の存在となった!」
約2mの巨躯で言い放つ九頭の表情には覇気と漲っていたが何処となく精気はかけているように見える。
だが、そんな事は吹き飛ぶほどのパワー!
これこそが本来の姿!

194 名前:九頭龍一 ◆SM24/QbfAY [sage] 投稿日:2010/05/19(水) 23:30:49 0
今まで留流家を展開しゲームを繰り広げていたのは九頭の死への願望の表れ。
留流家を展開するという事は見ずらの体内に敵を入れ、内臓を晒しているようなものだから。
鈴木によって覚醒した今、本来の戦闘態勢を取るに至った。
ア・バウ・ア・クーは100を越えるスタンドの融合体であると同時に2000人以上のスタンド使いを飲み込む留流家でもあるのだ。

「綾和、下がっていろ。
さて、またしてすまなかったな。すぐに殺してわが一部としてやろう!
調伏せよ!!」
その言葉に従い綾和は左腕を引き摺りながらその場から逃げ出した。

手にはいつの間にか鐘が握られていた。
それを振るうと甲高い音が辺りを駆け抜ける。
この鐘の音はスタンドを構成する霊体を破壊する調伏の音!
無防備だったり弱体化したスタンドはこの音で分解してしまうだろう。

195 名前:大土井太一郎 ◆tGLUbl280s [sage] 投稿日:2010/05/20(木) 00:19:42 0
(時間軸:九頭龍一がまだ繭の中)
>182 >188

「植物使いの男よ……貴様はなぜ戦う?」

闘いを終えた荻原と生天目の前に消滅した筈の大土井太一郎が現れた。
大土井は青ざめた血塗れの顔でまるで幽霊のように宙に浮かんでいる。いや幽霊そのものかもしれないが。
その顔からは闘いの中で見せた狂生じみた殺気は消え失せ、うつろな目で表情には空虚を滲ませている。

「皮肉なものだ…全て機運が…時機が悪かったのか…?
国のため…陛下のためと思い強硬に主張し続けたことが結果国に疎まれ…
今回はあの御方のため貴様を仕留めることに執着しすぎたのか……
それともあの御方に要らぬ者と判断されたのか…
次なる段階を共に迎えることが叶わなかった……

戦いには理由が…信念が必要だ……たとえその信念が報われるものでないとしてもな。
戦いは我が身を削って敵を殲滅するもの!貴様の最後の戦いぶりは立派だったぞ。

植物使いの男よ。今一度問う!貴様は何故戦う?
戦いはいつも望みを叶えるとは限らんぞ…貴様はそれでも戦うのか?」


荻原に問いを投げながら大土井の体は霞のように白っぽくなり…その色を、存在を薄めていく…。

196 名前:大谷杉松 ◆vReXCpsNBKcm [sage] 投稿日:2010/05/20(木) 01:15:14 0
>>193>>194
目の前の光の繭…大谷はそれに心を奪われていた…
死への恐怖や何が出てくるか分からない不安よりも、目の前の物に対する好奇心が勝っていたのだ。
今までの旅、こんなに奇妙なことは初めてである、今まで見てきた物には無い魅力がそれにはあった。
佐藤、徳井、よねがもめている様だが、詳しい話までは聞いていない。

『ア…アレヲミテヨ! ミナサイッテバ!』

スマートガントレットに怒られ我に返る大谷、そして目の前の繭がほどけ光の中から出てきたのは…
不定形でアメーバのような光の塊であった。
しかしその塊を目の前に大谷は動けないでいる、大谷だけではない佐藤、徳井、よね。 みんな動けなくなっている、
まさに「蛇ににらまれた蛙」の状態であった、目の前のものがヤバイのだけは完璧に分かる。
目の前の塊はおぞましく動き、見ているだけで気が狂いそうになる、しかしどこか懐かしい…実に奇妙な感覚である。

>「流石に100を越えるスタンドの融合には時間がかかるな。
 綾和、10年だ。」
>「喜んで!」

目の前の塊に力を注ぐ綾和、
そしてその塊は十年の時を過ぎ、何とか人形に見えるようになる、
逃げるとか、攻撃するの次元ではない、目の前の状況の把握で精一杯である、

>「いや、後は調整さえできれば良い。お前の左腕をもらおう。」
>「・・・うはははは!九頭様の一部になれなかったのは慙愧に耐えませんが、その言葉はそれを補って有り余る光栄!」

さらに身を捧げる綾和、その捧げた左腕は天使のような輪になり、
今までの不定形の姿は無く、まさに天使のような見た目となる、
しかし放つ気は天使などではない、悪魔…いやそれ以上の殺気や覇気である。

>「改めて自己紹介しよう。
 帝国陸軍特務機関【明王】が筆頭、護国天使ア・バウ・ア・クー!九頭龍一!
 この姿になるのは実に100年ぶりだ。
 もっとも、前回使用したスタンドはここまでの数はなかったな。
 全盛期の精神と最新最大のスタンドを持つ私は今、歴代最強の存在となった!」

>「綾和、下がっていろ。
 さて、またしてすまなかったな。すぐに殺してわが一部としてやろう!
 調伏せよ!!」

いつの間にか手に持っていた鐘その音の能力はすぐ分かった、

『ガッ…アァァァァァ!!!』

「スマートガントレット、どうした!?」

『ス…スコシ…モドラサセテモラウワ…』

今までの連戦で疲れが出ている大谷とスマートガントレット、
鐘の音の能力は『スタンドを分解する』能力だろう…
今の九頭は100のスタンドの集合体、何が出てくるか分からない状態であった、
その上先ほどの能力、もう自分の仲間やスタンドが苦しむ姿は見たくない、
これから先どうするか…

197 名前:吉野きらら ◆HQs.P3ZAvn.F [sage] 投稿日:2010/05/20(木) 01:29:34 0
『トイワールド』の擬似天体によって、メメント・モリの咲かせた花は一掃されてしまった。
頭上で燦々と輝く玩具の太陽をどうにかしない限り、新たに花を咲かせても同じ事だろう。
一応熱や光に強い花を咲かせられない事もないが、無差別かつ限界射程距離にまで行えば、激しく消耗してしまう。
これまでにも随分と走り、また不慣れな臨戦に身を晒して来ている。
息は整いつつあるが、精神的な疲労や緊張、またそれから兆す体力の磨耗はすぐには収まらない。
水泡としかなり得ない事が分かっている労力は、彼女としては好ましくない。
眩い光熱による些細な消耗をも避けるべく、彼女は傘の形を模した花を咲かせた。
それを自分の手で持ち、きららは視線を上空へと飛ばす。

> 「ちねー!!」

白州は巨漢からの逃走に用いた飛行機を、今度はきらら目掛けて突進させる。
拳や斬撃であれば花を咲かせて軌道を歪める事も出来るが、飛来する個物ではそうはいかない。
側面に花を咲かせて空気抵抗で進路を逸らす事も不可能ではないが、間に合わないと彼女は判断した。

ならばすべきは、迎撃か回避。
どちらがより最適か、彼女は思考と並行して体勢を整え、

>「ヒャッハー!突然ですがごめんくださいッ!」

しかし短兵急に、新たな襲撃者が訪れた。
『メメント・モリ』に前方を任せながらきららは驚愕に弾かれ振り返る。
拳は既に目前、不意を突かれて迎撃も回避も不可能だ。

「ヒルティ、曰く『幸福、それは私達の行く手に立ち塞がる獅子である。
 大抵の人はそれを見て引き返してしまう』……獅子の口腔の中にこそ、幸せはあるのです」

彼女は刹那の内に思索を巡らせ――そして自ら『アンバーワールド』の拳へと飛び込んだ。
当然、ものの見事に彼女は吹っ飛ばされる。
防御にもならないような防御をした左腕を走る激痛に顔を歪めながらも、しかし彼女は不敵な笑みを見せつけた。

「……貴方がご丁寧に呼び声を掛けて下さったのは、『不幸中の幸い』でした。
 『塞翁が馬』、ですわ。私が貰う筈だった『アレ』、貴方に差し上げます」

きららを殴り飛ばした御前等には見えるだろう。
本来ならば彼女が受ける筈だった飛行機の墜落攻撃が、自分の眼前へと迫っている光景が。

目論見の成功を見届け、きららは笑みの孕む不敵さを一層色濃くする。
だが、それもほんの束の間の事だった。
己が殴り飛ばされた先を、彼女は『メメント・モリ』の視点で見る。
振り返り、そこにはパラシュートで緩やかに落下する白州がいた。
少年の微かな喜色を湛えた瞳と視線を交え、きららの鼓動が一拍大きく跳ね上がる。

白州の隣に浮遊する『トイワールド』が、白州を抱えながらパラシュートを引っ掴む。
そうして勢いを付けて、きららへと振るった。
パラシュートは加速を得ながら外套の魂魄を宿し、彼女を呑まんと猛る。
今度こそ、きららには思考の間隙すら与えられなかった。
彼女の身体が、『オモチャの国』の入り口に触れる。

「――オモチャノクニニ……ヨウコソォオオオオオオオオ!!」

198 名前:吉野きらら ◆HQs.P3ZAvn.F [sage] 投稿日:2010/05/20(木) 01:31:55 0
途端に、『トイワールド』の風呂敷から無数の玩具の手が兆した。
玩具の手はきららの腕や肩を掴み、抗い難い力で『オモチャの国』へと引きずり込む。
五体の殆どを取り込まれ、きららは風呂敷の表面から僅かに顔を覗かせるばかりと成り果てた。
けれども、彼女は絶体絶命の態を晒しながらも、微笑んだ。

狂喜の表情を――『幸せ』を満面で表現する白州に向けて。

「『災い転じて福となす』……ですね。
 そして『生命のある間は幸福があります』とトルストイは言っていますが……
 貴方の幸福は、ここでおしまいです」

『幸せの花』が咲き誇る。
気に入りの玩具を漸く手に入れた白州の幸福を糧に、一瞬にして。
しかして白州惣太は無数の花弁となって、四散してしまった。

「……あら?」

白州の残滓の行方を見届けていたきららは、ふとした様子で視線を左右に揺らす。
周囲にいた筈の『待ち構える者』達の姿が、徐々に徐々にと薄れていた。
代わりに直後、北条市全域を包んでいた存在感が一所へと凝縮されていく気配が怒涛の如く五体を包む。

平伏す他ない――いや、平伏そうが、何をしようが関係ない。
何をしようが無慈悲に、圧倒的に、最早殺戮や虐殺ではなく、屠殺される。
根拠など無しに、彼女は確信した。

覚えずの内に、きららは手足を震わせていた。
自らの望む幸福への道程を阻む、強大無比な壁に。

「……ジェームズ・マシュー・バリー曰く」

それでも、彼女は言葉を紡ぐ。
幸福を辿る為の言葉を。
震えを奮いに変えて。

「『幸福の秘訣は、自分がやりたいことをするのではなく、自分がやるべきことを好きになることだ』。
 私が幸せになるのに、誰かの死が必要ならば……私は好んでそれを行いましょう」

だから、と言葉が繋がれる。
何事をも厭わない『漆黒の意志』を瞳に灯し、彼女は両腕を広げた。
右手の平はボブ・バンソン、左手の平は御前等、それぞれの姿を掌握している。

「こんな所で……幸福への道を阻む壁から落とされた欠片如きに!
 躓く訳にはいかないのです! 『メメント・モリ』ッ! 彼らに花の種を!」



【と言う訳で白州少年さようなら
 御前等さんを狩る者だと勘違い中
 中距離からそれぞれに花の種を発生させる。距離があるので服の内側が認識し辛く、御前等さんには手や顔など見える範囲のみに
 ボブさんは半裸だし上半身前面に無差別に。花の成長速度は遅いですが、払っても払っても生え続けます】

199 名前:よね ◆0jgpnDC/HQ [sage] 投稿日:2010/05/20(木) 07:15:11 P
/綾和、10年だ。」
/「いや、後は調整さえできれば良い。お前の左腕をもらおう。」

「九頭ッッ!キサマァァッ!!」

自らの父親の生命力が、人の皮をかぶった化け物に、削り取られていく。
よねは今すぐにでも九頭龍一をこの手で殺してやりたいと思った。
しかし、それはできない。今の自分の力では太刀打ちできないどころの話ではない。
相手を巨人とすれば、よねはアリのフン以下だった。

「佐藤さん…貴方に責任を追及するつもりはありません…
 だからッ!今はッ!ヤツを倒すことだけッ…ただそれだけッ…」

カズはまだ生きている。だが、健全な状態とは言いにくい。
使いものにならない右腕、少なくなった寿命。
救い出せても今までと同じ生活は望めないだろう。

よねには何も無かった。何か道具が、である。
道具があればSum41で何とかできるがカバンごと凍らされてしまった。
よって九頭への攻撃は困難だったのだ。

/調伏せよ!!」

あたり一面に非常に高い音が鳴り響く。
モスキート音とも少し違う、どこか不思議な音。

「なんだ…これ…?何をしているんだ…?」

九頭が手に持ったベルを振っていた。
おそらく音の元はあれ。だが、よねにはその音が何なのかわからない。

「徳井さん、佐藤さん、大谷さん…自分にはサポートしか出来ません。
 けれど、奴を倒したいと思う気持ちは皆さんと同じです…」

そう言い終えると、今まで震えていたよねの体がピタリと止まった。

200 名前:白州想介 ◆BhCiwB2SCaJ5 [sage] 投稿日:2010/05/20(木) 12:48:29 0
想太は無数の花弁となり散った。醜い子供は最期に美しく散ることができた。

一方、瓦礫の山の中。想介は兄の死を思いながら肩を震わせて泣いていた。

白州は双子だったのだ。

実は想太のスタンド『ツインズ』の能力によって二人は戦闘の途中まで融合していた。
生まれつき体の弱い弟のために兄はツインズの能力で、すべての攻撃の身代わりとなっていたのだ。

そう、兄の想太の『ツインズ』の能力は弟の体と兄の肉体を一体化させて兄の体で身代わりになること。

しかしボブ・バンソンに瓦礫の山に放り投げられる刹那、想太は敗北の予感がしていたために
ツインズの能力を解除しあえて想介の方をボブに投げさせた。それは弟を効率よく戦闘から退避させるためだった。

その後は自分がオモチャの飛行機を操縦してやはり最期に弟の身代わりになって絶命することとなる。

想介の喜びは想太の喜び。想太の喜びは想介の喜び。

弟のために吉野うららをトイワールドで捕える瞬間、想太はその心を喜びでふるわせてしまっていたのだ。
瓦礫の中でみた想介の夢は半分が想太の現実だった。

「・・・ちょうた・・・けほ・・・けほ・・・」

咳をして血を吐く想介。想介は想太の力なしではまともに歩けもしない。
悲しいことに想太が思っているよりも想介の病気の症状は進行して悪化していたのだ。
助けようと融合を解いてしまったのが仇となってしまったのである。

今や花弁となった想太のいる方向へ最期の力で手を伸ばす想介。

「・・・ちょ・・・」

想介は絶命した。

二つに別れた体ではあったがその想いは一つとなり天へと昇ってゆく。


本体:白州想太。白州想介。
スタンド名:『ツインズ』『トイワールド』

両名死亡

201 名前:佐藤ひとみ ◆tGLUbl280s [sage] 投稿日:2010/05/20(木) 19:08:00 0
――虎子を得んとする者に危険あり。また女よりその幻影を奪わんとする者に危険あり――

『九頭を知りたい』という欲望に突き動かされ、光の繭攻撃を目論む徳井達を牽制する佐藤ひとみ。
だがその必要も無かった。繭から現れたモノはまさに『異形』。
輪郭定まらず何者ともつかぬ光の塊の放つあまりのパワーとこの世のものならぬ光景に
その場にいた全員が身じろぎ一つせずその異形を見つめている。

よねの父、米綾和の犠牲により10年の時を一瞬で超え、輪郭を形成していく光の人体。
そこに顕れたのは背中に六枚の白い翼を備え日輪を頭上に冠した天使――。
筋骨隆々の体は神将を、頭上の日輪は菩薩を、背中の羽は天使を思わせる。奇妙な取り合わせだが神々しい調和を見せている。
佐藤ひとみの目には光り輝くその者が、澱んだ雲の衣を薙ぎ払い現れた輝く太陽のようにも見えた。
だがそれは白昼の黄色い太陽ではなく中天に耀く狂った紅い夕陽――。


>さて、またしてすまなかったな。すぐに殺してわが一部としてやろう! 調伏せよ!!」

九頭の言葉に従いひとみ達の前から逃げ出そうとする男は手にした鐘を鳴らす。
辺りに巨大な音叉を鳴らすような不快な響きが充満する。スタンド使いなら誰し直感的に気付く。
この音は空気を揺らして鳴っていない…精神を揺らしている…と!


フルムーンの触手は徳井の耳には侵入していない。
目に見えぬほど細かくした触手を複雑な体内に侵入させ、目的の場所に忍ばせるには相手が殆ど動いていない状態で数分はかかる。
激しく動き、身構えていた徳井の耳に一瞬の内に触手を侵入させることは不可能。
つまり徳井への牽制はハッタリ。
ひとみの狙いは牽制中全員の動きを止め、三竦み状態でよねの前にいる謎の男の体内に糸を張り巡らせることであった。

だが触手を体内に入れるために細くし過ぎたことが仇となった。
精神を揺さぶる鐘の音はスタンドに干渉し、能力の小さなスタンドや弱ったスタンドを内側から突き崩してゆく。
細過ぎる触手の糸は鐘の音の振動を受け男の体内で千切れ消えていく。


>『ス…スコシ…モドラサセテモラウワ…』

スマートガントレットが鐘のなる前の状況を繰り返す。体内の触手も一瞬元の状態を取り戻した。
その千載一遇の機会にひとみは男の動きを止めにかかった。

殺す気で侵入させた触手だがよねの父親となればそうはいかない。協力者の恨みを買うのは下策だ。
男の耳に侵入させていた触手で男の内耳の三半規管を押さえ内部のリンパ液が動かないように縛り上げた。
脊椎動物の殆どは三半規管のリンパ液の流れで体の傾きを認識している。リンパの流れを止めると上下の感覚すら失う。
今、よねの父親は自分の体がどの方向に動くかも認識できない。

「よね君、その男の鐘を取り上げて!」
ひとみはよねに父の手から武器を取り上げることを要求した。

202 名前:佐藤ひとみ ◆tGLUbl280s [sage] 投稿日:2010/05/20(木) 19:13:32 0
九頭はそんなひとみ達の足掻きを静かに見下ろしている。

>「愚かな事をしたな。殺す時を決めるというのはいつでも相手を殺せるだけの
力がある者だけができる事だ。
そう、私のようにな!」

「愚かなのは解ってるわ。
それにしても随分な言い様じゃない?もう少し優しい言葉をかけてくれていいんじゃないの?
その姿も素敵よ!九頭龍一!」
上空の九頭を睨むように見つめながら言葉を続けるひとみ。


「『護国天使ア・バウ・ア・クー』…その名の通り昔は何度か国を救ったこともあったみたいね。
逆に戦争を起こす原因を作ったこともあるみたいだけど…。
こんなうすぼんやりした世の中あなたにとっては退屈で仕方ないわよね!

それにしてもあなたって凄い人達と知り合いだったのね。日本史のテキストに載ってる有名人が大勢出てきたんで驚いたわ。
…こんな面白い物が見れたのもあなたが記憶をダダ漏れにしてくれたお蔭よ。

今回があなたにとって二度目のゲームね?
前回は意外にアッサリ終わっちゃったみたいだけど今回のゲームは随分楽しんでるみたいじゃない?
一参加者として嬉しいわ。


これはこの場で訊くようなことじゃないんだけど
あなたに一つどうしても聞いておきたいことがあるの!それはね…つまり……

『私のことどう思う……?』


答えは次会った時までに考えておいてね!!!」



今回の長話も時間稼ぎの陽動。
この数分の間に物陰に潜んだフルムーンに触手を繋ぎ合わせた三メートル四方のシートを作らせていた。
ひとみの言葉が途切れるのと同時に触手のシートは九頭以外のその場にいた全員に被せられた。

潜伏モード発動!
フルムーンは触手のシートごと光学迷彩による透明化を発動させた。
留流家の中に獲物を取り込んでいた時と違い、留流家の能力を自分だけに干渉させている今の九頭は
ひとみ達の位置を自在に把握することは出来ないと読んだのだ。
光学明細で撹乱した隙に身を隠し少しでも自分たちに有利なフィールドに移動しようという魂胆である。


フルムーンごと透明化したシートの中で移動しながらひとみは男達に短く作戦を話す。

「自然公園の向こうは北条市外になるわ!多分無駄だけどそこに向かう!
公園のすぐ裏手に建て替えで遺棄された高校の校舎がある。そこに入るわ。
上空から丸見えの屋外より身を隠しながら対処できる場所の方がマシかもしれないわ!
このシートの透明化はせいぜい三分しか持たない!
よね君、後で触手を切り離すからその間にあんたの力で長持ちする光学迷彩のシートに書き換えておいて!」

【米綾和の鐘を奪う。フルムーンの潜伏能力を使ったシートを被りその場の全員が約3分間透明化。
佐藤ひとみは自然公園の裏手にある北条市外の廃校に向かう予定。】

203 名前:荻原秋冬◇6J1m09mANS [sage] 投稿日:2010/05/20(木) 21:13:15 0
>>185>>188
ついに反転能力を使う敵を倒した荻原。
バラの鞭で敵を切り刻んで消滅させた…

「はぁ…はぁ…はぁ…やっと…死んだか…」
荻原は自分の溶かされた靴を見た。
足の裏までは解けていないが、靴の裏側と先端はほとんどボロボロになり
いまにも穴が開きそうな状態だ。
心の中で荻原は妻の春夏に謝った。
いままで大切にしてきた靴がこんな形でボロボロになるなんて…
そう考えるうちに、荻原の頭の中は少しずつ冷えていった…すると…

>「植物使いの男よ……貴様はなぜ戦う?」
消滅したはずの敵がうっすらと現れた。
どうやら幽霊みたいになって現れたらしい。

>「皮肉なものだ…全て機運が…時機が悪かったのか…?
>国のため…陛下のためと思い強硬に主張し続けたことが結果国に疎まれ…
>今回はあの御方のため貴様を仕留めることに執着しすぎたのか……
>それともあの御方に要らぬ者と判断されたのか…
>次なる段階を共に迎えることが叶わなかった……

>戦いには理由が…信念が必要だ……たとえその信念が報われるものでないとしてもな。
>戦いは我が身を削って敵を殲滅するもの!貴様の最後の戦いぶりは立派だったぞ。

>植物使いの男よ。今一度問う!貴様は何故戦う?
>戦いはいつも望みを叶えるとは限らんぞ…貴様はそれでも戦うのか?」

「……私は…大切な妻と娘を取り戻すまでは…
たとえ血を吐き、身がボロボロに崩れても…
戦い続ける…いや…続けなきゃいけないんだ!」
荻原は拳を力強く握って言った。
すると相手はだんだん色が薄くなり静かに消えていった。
消える様子を見ながら荻原はお辞儀をしながら合掌した。
たとえ靴をボロボロにされても、荻原の良心が自然とそうさせたのだ。

>「だいじょうぶ!?荻原さん!!」
木の上にいた生天目が降りてきて荻原の近くに寄った。

「ああ、なんとか…」
その瞬間とんでもないくらいの巨大なエネルギーの放出を荻原は体全体で感じた。
どうやら生天目もそのエネルギーを感じ取ったらしい。

>「な、なにこれ!?荻原さん!?」

「こ……この他を圧倒するエネルギーは……もしかして……
九頭龍一か!」
そうわかると荻原は生天目と走った。
年の差がありすぎるせいか、荻原も全力で走っているがあまり生天目には追いつかない。

「ついに…来るべきものが来たって感じだな。
あの時とはまるで別の力を感じる…」
そして荻原は知ることになるだろう…
本当の地獄のような戦いというのを……

204 名前:徳井一樹 ◆MnJrk02a/Yx. [sage] 投稿日:2010/05/20(木) 22:19:12 0

佐藤に脅され、動こうにも動けない徳井。
よねの説得虚しくついに究極生命体は産声を上げた。

繭がほどけ、輝かしい光を放っていく。
アメーバのような不定形の──成虫に至っていないサナギの中身のような状態へと。
カズのグリーン・Dの能力でそれは完全な姿へと成っていく。

三対の白い翼に光の輪…よねは『神』と形容していたが、それとは似て非なるもの──…
美しくはあるがそれでいて邪悪で狂気の詰まった天使の姿。

>「愚かな事をしたな。殺す時を決めるというのはいつでも相手を殺せるだけの力がある者だけができる事だ。
>そう、私のようにな!」

いつの間にか九頭が手に持っていた鐘が鳴り響いた瞬間、徳井のセイヴ・フェリスを通じて分解されていくような激痛を感じる。
運悪く自分と同じくスタンドを出していた大谷もスマートガントレットを引っ込めたようだった。
しかしこれは同時に徳井の皮膚に突き刺さっていたフルムーンの極小の触手をも分解したことも意味する。
ただし、徳井へのこの攻撃は佐藤のハッタリなのだが。

>「徳井さん、佐藤さん、大谷さん…自分にはサポートしか出来ません。
>けれど、奴を倒したいと思う気持ちは皆さんと同じです…」

「前衛で大怪我すんのは俺の専売特許だぜ。…俺もだ。俺も奴は絶対に倒すさ。
奴から逃げるっつーことは俺の人生から逃げることを意味するぜ!
この徳井一樹、戦略上逃げたことはあるが戦闘そのものを放棄したことは過去の一度もねえ!」

>『私のことどう思う……?』

徳井の長ったらしい台詞の後、不意に耳からそんな言葉が入ってきた。
自分にあんなことをしたのはただ今の九頭を見たいだけの『好奇心』から来ただけのものだと
勝手に思っていたが佐藤にとってはもっと複雑なものなのかもしれない。

>「自然公園の向こうは北条市外になるわ!多分無駄だけどそこに向かう!
>公園のすぐ裏手に建て替えで遺棄された高校の校舎がある。そこに入るわ。
>上空から丸見えの屋外より身を隠しながら対処できる場所の方がマシかもしれないわ!
>このシートの透明化はせいぜい三分しか持たない!
>よね君、後で触手を切り離すからその間にあんたの力で長持ちする光学迷彩のシートに書き換えておいて!」

「任された!あの褌から天使モドキにタイプチェンジする変態を『ぶっ殺した』するためになッ!」

205 名前:ボブ・バンソン ◆JvtTTnep1k [sage] 投稿日:2010/05/20(木) 23:06:16 0
スタンドの正体…能力によって痛々しく改造を施さされたそれは己の肉体であった。
短冊状の穴が手、腕、肩、腰、背中、腹、首、頬、額に乱雑に生じさせ、唯一真円を保つ
胸部の穴から血色のよい臓器が活動を続けている。
まだ馴染んでいないのか屈伸や腱を伸ばすバンソン。練習前にアップを怠らないアスリートのようだ。

>「こんな所で……幸福への道を阻む壁から落とされた欠片如きに!
 躓く訳にはいかないのです! 『メメント・モリ』ッ! 彼らに花の種を!」

「―フンッ!!!」ブワァッ

気合とともに膨張する筋肉がメメントモリの種を払いのけてしまう。一つは首筋に根付いて穴を塞ぎ、
瞬く間に開花してしまった。
が、それ以上の変化は起きず、バンソンの体には異常がないようだ。

「貧弱なスタンドだな。見栄えばかりでスカスカの麩菓子同然よ…」

本来なら鋼鉄さえ突き破ってしまうであろう幸福の花がこうもいとも簡単に完封されたてしまったのに対して吉野も
言葉を失いただ呆然と眺めていた。

>二つに別れた体ではあったがその想いは一つとなり天へと昇ってゆく。

バンソンは兄弟を投げ飛ばした方向に歩み寄り、もはや屍と化してしまった同胞に十字を切った。
豪血漢にも弔う心があった。しかしそれは嘆きでも哀れみでも無く、それがルルイエに生きる者としての
習わしだったのだとしても。

「事切れたか…この力を拝ませてやろうと思ったが…本命はやはり貴様かな、吉野きらら!!
 ここにてお前は俺の真の可能性を目撃するだろう…!!」ジャラァ~ン

何かを引き出しかと思えば、それは“CD”!正確にはCD状の物体!
 Zupopo…
そして花ごと無理矢理に首へ挿入してしまったのだ!肉が擦り切れる鈍い音とともカラダの奥深くへと沈んで行く…
【IN!STAND!『PLAYING WITH FIRE』】



     ディスク   イン
ヤバイ「DISC」がIN!!











206 名前:九頭龍一 ◆SM24/QbfAY [sage] 投稿日:2010/05/20(木) 23:51:10 0
>196>199>201>202>204
辺り一帯に鳴り響く調伏の鐘の音。
全てのスタンドは霊体によって構成され、この音は直接その霊体を震わせ分解させていく。
苦しむ大谷や徳井は当然だが、突如として背後の綾和も苦しみ崩れ落ちたのは全くの計算外だった。
調伏の鐘の音は全てのスタンドに効果を及ぼす。
それは綾和のグリーン・Dも例外ではない。
今の綾和は留流家を構成する一スタンド使いと言う以上に重要な存在なのだ。
故に真っ先に綾和を逃がした。

音の範囲外にも拘らず倒れたのは攻撃を受けたとしか考えられない。
しかし、音を越えて攻撃できるスタンドがいようか?
事実佐藤が密かに延ばしていた触手は分解されてしまっていた。
このありえない状況に九頭は鐘を鳴らすのをやめ、綾和の蹲る場所まで飛翔した。

綾和を見下ろす九頭の手には既に鐘はなく、代わりに右目の前にモノクルが現れていた。
それはあらゆるものを見通す片眼鏡。
100のスタンド能力の一つ。
それを使い、今、綾和の異常の原因を見ていたのだ。
「小賢しい真似を…!」
フルムーンの触手は分解されたが、綾和が音の範囲外にいたためにその体内に侵入していた部分が残滓として残っていたのだ。
原因を突き止めたあと、行動は早かった。
速やかに残滓を除去し回復させると、綾和に去るように指示する。

綾和のグリーン・Dは遠隔特殊型。
ここにいる必要はなく、また何処にいてもその効果が消える事はない。
逃げる綾和の行き先は奇しくも自然公園裏の廃校。
人が来る事無く、また隠れ場所が豊富であるが故に。


綾和を逃がしたあと、九頭が振り向けば佐藤が話しかけていた。
「ここに至って問答する事などない!
頭の良い君にこれ以上時間を与えるのは得策ではなく、このまま攻撃するのが良いのだが……
攻撃を加えるのには少し距離がありすぎるな。」
本来ならここで佐藤の話しに乗るつもりはなかった。
だがそうしなかったのは、それをするには距離がありすぎる。
いや、それすらも本来の理由ではない。
その気になれば一気に間合いを詰め攻撃を叩き込む事も出来る。
にも拘らずそれをしなかったのは、佐藤への牽制の為だった。
「国を救った事もあった?仕方がないとはいえわかっていないな。
私は今現在も国を救い続けているのだよ!」

佐藤のフルムーンは遠隔タイプ。
先ほどのように綾和に攻撃を仕掛けられては困る。
故にこちらも牽制し、綾和がどこかに逃げ切るまで時間を稼ぐ必要があったのだ。

>答えは次会った時までに考えておいてね!!!」
「留流家を展開させていないからといって、手がないとでも思うのか?」
九頭の身体から発せられる閃光が波のように辺りを駆け抜けていく。
それは光であったが九頭にとっては音の性質をもたらしていた。
いわばこの光はソナーなのだ。
継続的に相手の位置を把握する事はできないが、今、何処にいるかさえ知ればそれで十分。

「そこだあああ!!」
三対六枚の羽根を広げ、一気に間合いを詰めると二対四本の拳を振り下ろす!

207 名前:生天目 有葵 ◆BhCiwB2SCaJ5 [sage] 投稿日:2010/05/21(金) 01:02:33 0
>195>203
>「植物使いの男よ……貴様はなぜ戦う?」
大土井の幽霊らしきものは荻原に問う。

>「……私は…大切な妻と娘を取り戻すまでは…
>たとえ血を吐き、身がボロボロに崩れても…
>戦い続ける…いや…続けなきゃいけないんだ!」
と荻原が答えると大土井はゆっくりと姿を消していった。荻原と一緒に合掌する生天目。

「……」
正直、生天目には荻原にかける言葉がない。生天目は人を愛したことがなかった。
しいて言うなら携帯小説の架空の恋話に憧れるくらいだったので荻原の思いは到底理解できない。

>「こ……この他を圧倒するエネルギーは……もしかして……九頭龍一か!」
どこかで巨大なエネルギーが放出されている。二人は九頭龍一のもとへとむかった。

すでに覚醒している九頭のまわりでは戦闘が開始されているのであろうか。
九頭はまるで不可視の相手と戦闘をしているように見えた。

生天目たちは木陰に隠れてことのなりゆきをうかがっている。

「有葵。オレたちに戦う理由はない。この戦いでこちらから攻めるということは絶対にない。
だから、もしかすると荻原さんとはここでお別れすることになるかもね」
ステレオポニーはきっぱりと言い放った。

「…ぅ…うん…」
生天目は小さくうなずいた。九頭のエネルギーの大きさは生天目も承認していた。

自我をもつスタンド、ステレオポニーにとっては九頭龍一も他のスタンド使いたちも
戦闘本能を呼び覚まされゲームを楽しんでいる同じ人間だということに大差ない。

生天目には伝えていなかったのだが九頭のまわりで交戦中のスタンド使いたちを
ステレオポニーは音波探知していたのだ。

「この星の生き物は…狂っているよ…」
九頭に無謀にも戦いを挑んでいる者たちを見てステレオポニーはつぶやいた。

208 名前:佐藤 ◆tGLUbl280s [] 投稿日:2010/05/21(金) 20:06:39 0
※佐藤の勘違い(スイマセン)でおかしなことになっている部分の修正点をまとめておきます

.佐藤のレスでよねさんの父親から鐘を取り上げたことになっていますがこれは佐藤の勘違いですのでナシです
.調伏の鐘を鳴らしていたのは九頭龍一。現在も鐘は九頭の手元にあります

申し訳ありませんが各自脳内修正願います(重ね重ねスイマセン)

209 名前:佐藤ひとみ ◆tGLUbl280s [sage] 投稿日:2010/05/21(金) 20:09:50 0
>206
>「そこだあああ!!」

九頭龍一の振り下ろす四つの拳の先に在ったのはフルムーンが出現させた透明のシート!
シートに拳が当たり砕ける瞬間、光の立体映像が浮かび上がる!

留流家を展開し箱庭を覗くように参加者の位置を把握していた時と違い
現在の九頭はひとみ達の位置を捕捉するのに何らかの能力を使う可能性が高い。
佐藤ひとみは透明化して潜伏しながら探知用のシートを出現させ
不自然な動きで迫る電波や音波を可視化するように備えていた。

九頭がソナー光を飛ばすと、ある特定の光の波長が探知用シートに波紋として表示される。
そしてそのソナー光の周波数やパルスをコピーしその波長を誤認させるような擬態信号を作り出した。

ひとみは分離したシートを何枚か飛ばし、そのシートに九頭の飛ばした光の波長が対象を誤認する
光対応のデコイを仕込んでいた。
九頭の攻撃したシートからは擬態信号が発信されていたのだ。

複数枚同じ擬態シートを飛ばして移動させている。
調伏の鐘の音を受ければシートは崩れてしまうが
四方八方に散らし移動させているシートを全て潰していくのは暫しの時間を要するだろう。
最も擬態の中から本物を発見できるかどうかは確率の問題。運が悪ければ直ぐ発見されてしまうかもしれないが。

(現在まだ透明化中。九頭の光のソナーを複数の擬態で撹乱しながら逃げる)

210 名前:吉野きらら ◆HQs.P3ZAvn.F [sage] 投稿日:2010/05/21(金) 21:48:06 0
花が咲く事を意にも介さず、バンソンは吠える。
けれども彼の姿に、きららは失笑を零しさえした。
そうして嘲りの気色を乗せた微笑みを彼に送る。

「……麩菓子、大いに結構ですわ。お菓子と言えば、私は子供の頃はお祭りが……特に綿菓子が大好きでしてね。
 あんなふわふわしていて、一口一口は口の中で儚く消えてしまうのに。
 全部食べてしまうと他の出店の物が食べられなくて、半分はお母さんに食べてもらっていたんですよ」

何が言いたいのか分かりますか、と彼女は問う。

「私の『メメント・モリ』には大きな力はありませんが……
 それでも積み重ねれば十分な効果を発揮するんです。『塵も積もれば』ですね」

事実、バンソンの意識が至っていないだけで、『メメント・モリ』の花は役割を果たしていた。
花の咲いた彼の首筋は傷口こそ無いものの、微かに抉れている。
例えば酒の一杯に満ちた樽があったとして、その淵を削っていけば酒の容量は徐々に減る。
容器が小さくなっていくだけなのだから、樽一杯に酒が満ちていると言う状況は保ったまま。
そして削られた樽が、再び元の姿を取り戻す事もない。

『メメント・モリ』の花は、正しくこの事と同じなのだ。
花が咲いた所で痛みや違和感は無いが確かな消耗が積み重なっていく。
開花に至って削られた肉体は、特別な回復能力でも無い限り元には戻らない。
花が咲き続ければいずれ身体は無くなり、そうでなくても首のみに開花が集中した場合、
気道や血管を損ねるか――或いはもっと単純に、傷口一つ無いままに首が落ちる。

「……と言うかですね。余りにもはしたないので控えていたのですが、やはりこの際です。
 『知らぬは一生の恥』と言いますし、教えて差し上げますわ」

微笑に含ませた嘲りの色を濃くして、きららはボブを視線で射抜く。

「貴方、さっきから吠えてばかりで何もしていませんよね?
 学生らしき殿方に命令を無理強いして、目的をそっちのけで子供を怒鳴りつけて、
 挙句さっきから真の可能性だの何だの、御託ばかりを立て並べているだけじゃありませんか
 大層な変身までして、ご自分が自身をどう捉えているのかは存じませんが……
 正直頭のよろしくない……いえ、この期に及んでオブラートは無用ですね。馬鹿みたいですよ?
 まさしく『弱い犬ほどよく吠える』『負け犬の遠吠え』のザマを晒しているだけです」

言葉を紡ぎながらも、彼女はバンソンに花を咲かせ続ける。
図に乗って無視してくれると言うなら、ありがたい事だ。
次々に開花していく花は、彼の身体中を疎らに削っていく。

211 名前:ボブ・バンソン ◆JvtTTnep1k [sage] 投稿日:2010/05/21(金) 23:59:38 0
>「貴方、さっきから吠えてばかりで何もしていませんよね?
 学生らしき殿方に命令を無理強いして、目的をそっちのけで子供を怒鳴りつけて、
 挙句さっきから真の可能性だの何だの、御託ばかりを立て並べているだけじゃありませんか
 大層な変身までして、ご自分が自身をどう捉えているのかは存じませんが……
 正直頭のよろしくない……いえ、この期に及んでオブラートは無用ですね。馬鹿みたいですよ?
 まさしく『弱い犬ほどよく吠える』『負け犬の遠吠え』のザマを晒しているだけです」

「なるほどな…“何もできない無能な犬”か…」

ふと目を地に伏せる。

「少しオカルト話に付き合うつもりはないか?」

何を言い出すのかと遮らせず間髪入れずに語り始めた。

「世界にはパワースポットと呼ばれる土地が幾つもある。チチェン・イッツァの「カスティーヨ」、
カタ・ジュタのウルル、…その中でも最も奇異を放つものがある。
『悪魔の手のひら』――誰が呼称したかは掴めない、わかっているのはアメリカ大陸のどこかに存在すると言う事のみ。
インディアンの伝承によるば、数万年前に墜落した隕石の影響で発生した地域のことを指すようだ。
一日に何里と移動し、その土地内では常に地形が変動し時に酸素の希薄な高山、時には深い渓谷、
果てには断崖絶壁の崖…遭遇すればもはや命の保証ない。

しかし『悪魔の手のひら』に遭難しながらも生還するものも存在した。それらは生還者同士しか視認出来ないと言う
守護霊だと記述されている。
あくまで仮説だが、俺はこの土地には人間の眠っている未知の才能、すなわち『スタンド』を発言させる場所だと
推測している。

さてここで…疑問が起こる。なぜ話したのか…」

首筋の花を指でつつく、すると花はボロリと崩れてしまった…根元はもう消えている。

「小便小僧も最後には役に立った…
『悪魔の手のひら』の中心は…『ルルイエ』と『New Divide』だッ!!
死ね、小娘!『PLAYING WITH FIRE』ッ」

【吉野さん、ぶっちゃけバンソンに花は効いてます。強がってるだけです。
どんどん攻撃してください】

212 名前:柚木 美都留 ◆BhCiwB2SCaJ5 [sage] 投稿日:2010/05/22(土) 16:19:05 0
柚木美都留は自分のスタンド「オズモール」に飲み込まれて永遠に暗闇の中を落ち続けていた。
しばらく落ち続けていると遠くから人の気配が近づいてきて何かを語りかけてくる。

「…大きくなったな…美都留…」
どこかで聞いたような懐かしい声だった。意識を取り戻した柚木は声の主に問う。

「誰ですか?」

沈黙の後、声の主たちは答えた。

「あなたの…お父さんとお母さんです…」今度はやさしげな女性の声が答えた。

「…そうですか…ぢゃあ、ボクは死ぬんですね…」
目をつむりながら少年は微笑する。

「あの世とか…ほんとにあったんですね…。それなら早くボクも連れていってくださいよ…」

息子の願い事に二つの魂は困惑していた。

「すまないが、それはできない。私たちはお前のスタンドの中に閉じ込められているからだ」

「えっ!?それはどういうことですか!?」

「40年前…私たちは世界中を旅する旅人だったの。でもあなたが産まれたのをきっかけに
私の生まれ故郷である北条市に二人で根をおろすつもりでいたの。
まあ、それは叶わない夢で終わっちゃったんだけどね…。

…お父さんはスタンド使いだったのよ。
だから、あなたが1歳のときに留流家の狩るものたちに狙われて殺されちゃったのよ。
ついでに私も巻き込まれて殺されっちゃったんだけどね」

「ああ。やつらはスタンド使いではない母さんまで殺した。そして私も本来なら
留流家に取り込まれるはずだったのだが二人の魂は、まだ不安定だったお前のスタンドに吸い込まれることとなった」

「たぶん赤ちゃんだったあなたが私たちを留流家に渡したくないって思ったからね」

父親の厳しい口調とは反対に母親の声はどこかしらあっけらかんとしている。
生前は天然系の女性だったのかも知れない。

213 名前:柚木 美都留 ◆BhCiwB2SCaJ5 [sage] 投稿日:2010/05/22(土) 16:21:12 0
「ぢゃあオズモールは40年間もお父さんとお母さんの魂を飲み込んだままにしていたってわけなんですか!?」

「そうだ。ずっとずっとオズモールの中で私たちは、おまえとともにいたのだ。
魂だから落ちてゆくこともなかったのだが飲み込んでいると自覚されているわけでもなかったから
吐き出されることもなかったのだよ」

柚木は痛む左肩をおさえながら父と母に答える。

「それなら今すぐお父さんとお母さんの魂を吐き出します。でも吐き出すほうの口は亀裂が入っていて
ボロボロだと思うから吐き出した瞬間オズモールは内部から木っ端微塵になるかも知れません…」

柚木は意識を集中させると両親の魂と自分自身をおもいっきり吐き出す。
現世では徳井一樹との激しい戦闘跡にオズモールが輪郭をなし始め現れると
一瞬にして木っ端微塵となり破片が辺りに四散する。

「…?」
柚木は自分の肉体が内部からバラバラに弾け跳ぶと思っていたのだが、いつまで経っても体はなんともなかった。

「あなたはほんとうに優しい子です。じぶんの命をかえりみず私たちのたましいをときはなつために能力をつかうなんて…」

「みごとだ。みつる…」
陽光の下に少年の父と母は立っていた。それは大きくなった柚木がはじめて見た両親の姿だった。

「お父さん…お母さん…」
体を震わし両親に近づこうとする柚木。

「待て美都留、泣いている暇はない。後ろをみろ」

振返ると後ろのオズモールの破片の山がガラガラと崩れはじめ中から獣人型のスタンドが姿を現した。
それは禍々しい漆黒色ではなく白色を基調としたオズモールの真の姿だった。

214 名前:柚木 美都留 ◆BhCiwB2SCaJ5 [sage] 投稿日:2010/05/22(土) 16:44:58 0
「治せ!ディオニューソス!!」
父親の魂が叫ぶとスタンドが現れ柚木の怪我をあっという間に治してゆく。
しかし回復に反比例し父とそのスタンドの姿はうすぼんやりとなり消えてゆく。
どうやら残された最期の力を振り絞っているらしい。

「お父さん!!」

「……」
にっこりと笑いながら消えてゆく柚木の父と一緒に母の魂も天に昇ってゆく。

「お母さん!!」

「…つよく…生きるのよ…美都留…」

そう言い残し二つの魂は消えた。

空を見上げて立ち尽くす柚木。両頬には涙がつたっている。

すると少年は頬に微風を感じた。

それは両親が最期のあいさつで、お別れにそっとなでていってくれたかのようだった。


突如オズモールが沈黙を破るように遠吠えをあげ振り上げた拳を地面に叩きつける。
地殻が揺れ地鳴りがおきる。凄まじいスタンドエネルギーだ。

「オズモール?そうか…。そうだね…九頭龍一をたおせって言ってるんだね?
行こう!オズモール!!九頭龍一のもとへ!」

九頭龍一の圧倒的なエネルギー波を感じ取った柚木は九頭のいる方向へと走っていった。
もう闇に生きる少年の姿はない。柚木の頭上には無限の空が広がっているのだ。

215 名前:九頭龍一 ◆SM24/QbfAY [sage] 投稿日:2010/05/22(土) 23:24:43 0
>207>209
繰り出された四つの拳は確実にその先にあった『モノ』を粉砕した。
しかしその手ごたえは人間のものではない。
佐藤のばら撒いたシートの一つ。
「ちいいい!小賢しい真似を!」
立体映像を振り払うように腕を振り回すと、もう一度光の波動を放つ。
しかしそこから感じられるのは幾つもの反応。
どれが本物かはわからない、が、それでも新たなる反応を察知する事が出来た。

木陰に隠れる大谷、生天目、そしてステレオポニー。
続々と集まってくるスタンド使い達は構わないが、佐藤達の位置を把握できないのは面白くない。
このまま逃がすつもりはないが、一々囮に構っていては木陰の大谷や生天目に不意を疲れかねない。
とはいえ、先に大谷や生天目に攻撃を仕掛けていれば佐藤達に逃げられてしまう。
だから、九頭は…
「ええい、纏めて炙り出してくれるわ!天弓!!」
高々と掲げられる二対四本の手から無数のシャボン玉が空に向かって放たれた。

シャボン玉は空に広がると、降り注ぐ太陽の光を吸収する。
言ってみればこれは空に無数のレンズを放ったようなもの。
太陽光を収束させ、光の矢とするのだ。

能力発動から数秒後、無数のレーザー光線が辺り一帯に降り注ぐ!

【天弓:空にシャボン玉状のレンズを散布し、太陽光を利用して光の矢を降り注がせる。
狙っているわけではないので命中率は悪いです。
また、直撃しても死ぬほどの威力はありません】


216 名前:佐藤ひとみ ◆tGLUbl280s [sage] 投稿日:2010/05/23(日) 00:40:34 0
【透明化したシートに隠れて移動中】

佐藤ひとみは内心少し動揺していた。
護国天使となった九頭龍一はひとみとの会話を言下に拒絶した。
申し訳程度に付き合った話も、稀有な能力を持つよねの父を逃がすための戦略上の時間稼ぎに過ぎない。
九頭はひとみを完全に敵、もしくは獲物と認識している。最早九頭と会話することは不可能なのだろうか。
留流家にの中にいた九頭は自分の力を削がれた状況でも余裕綽々でひとみの質問に答えていた。
あれ程圧倒的な力を持ちながら九頭は以前より余裕を失くしているようにも思える。
護国天使にタイプチェンジした余韻で頭がハイになって勝負を急いでいるだけかも知れないが。

少ない会話の中で九頭が発した一言。

>「国を救った事もあった?仕方がないとはいえわかっていないな。
>私は今現在も国を救い続けているのだよ!」

ひとみが知りたいのは正にそこだった。
以前会話した時も九頭は似たようなことを言っていた。
>私を倒せば判るだろう、私の行っている意味が。そして後悔する事になるだろうね。

九頭は何を目的に何を成そうとしているのか?現在も国を救い続けている…この言葉の意味は…?
それは妄想なのか…あるいは真実なのか…ひとみはそれが知りたくて堪らなかった



―――自然公園の北側の敷地を越えると北条市を出て某市に入る。
北条市と某市の境界を表す看板を目にするとひとみは立ち止まった。

「徳井君、黙ってて悪かったわね。何か忘れてない?
ゲームのルールの一つ…。『ゲームの参加者が北条市を出ると全身鱗に覆われ留流家に取り込まれる』」

先頭にいた徳井が公園の敷地から出たのを確認した所で後出しの様に言い出すひとみ。

「予想はしてたけど…どうやらゲームのルールは一部改正されたみたいね。そして九頭は弱点を克服した…!
残りは目的地に着いてから話すわ。目的地はここから見えるあの廃校舎。
九頭は私達の位置を捕捉するのに光を使ったわ。壁の多い校舎ならそれを封じて隠れながら対処できる。
最も他の能力を使うかもしれないけど…。」

ひとみは九頭龍一を探知したシートを見ながら話を続ける。

「九頭の変身前まで数キロに渡って広がっていた留流家全体の色域が、今は小さな点になって九頭のマーカーに被さるように表示されているわ。
いまの九頭は留流家を"身に纏った"状態……」

ひとみの話は上空からの攻撃によって断たれた。
空から放たれた光の矢が身に纏っていた光学迷彩用のシートに穴を開け、ひとみのバッグを掠って地面に落ちる。
焦げ跡のついた皮製のエディターズバッグを見てひとみは悲鳴に似た声を上げる。

「やだ!!!これいくらしたと思ってんのよッッ!!」

続けて光の矢は容赦なく降り注ぎ潜伏に使っていた光学迷彩のシートに幾つもの穴を開ける。
こうなれば迷彩は意味をなさない。迷彩のシートは捨てるしかない。

上空から降り注ぐ光の矢を手元に出現させた探知用シートで分析すると只のレーザー光。
レーザーなら鏡で反射できる。
ひとみは鏡と同じ反射率にした探知用シートを数枚分離させ、さながらソーラーシステムのパネルのように自分達の上に並べた。

(佐藤たちは迷彩を失いました。レーザーは防御できます)

217 名前:生天目 有葵 ◆BhCiwB2SCaJ5 [sage] 投稿日:2010/05/23(日) 02:34:46 0
ステレオポニーは積極的に戦闘に参加することはないと明言したのだが
荻原秋冬も九頭龍一と交戦中の四人に合流することは難しいようだった。
それも当然だ。荻原は佐藤ひとみのスタンドシートを身につけていない。

ステレオポニーはこれからどう動くかは荻原の自由意志に任せつつも今は荻原と行動を共にすることに決めた。
何故なら九頭のスタンド能力をこの目で確認したかったからだ。
あの強大なスタンドが敵となり襲い掛かってきた時のためにも傾向と対策は必要不可欠なのだ。

まさか荻原が妻子を見捨て九頭龍一から逃げ出すということもないだろう。
それに生天目に危険が迫ったら近距離パワー型のスタンドをもつ荻原を盾にするつもりでいた。
九頭龍一のスタンド能力は未知数。観測するためには協力者が必要だったのだ。

調伏の鐘の音も、音のスタンドであるステレオポニーには影響ない。
スタンドから発する逆位相の音を重ねて無効化しノイズキャンセラを起こしているためだ。
例えれば魚に水をかけているようなものである。

二人とスタンドは隠れながら九頭を追いかけていると向こう側に廃校が見え始めた。

>「ええい、纏めて炙り出してくれるわ!天弓!!」

九頭が叫ぶと空に広がるシャボン玉。

「きれい…」
生天目は頬に手をあてうっとりしながらシャボン玉を見ている。

「隠れな!有葵!!」
ステレオポニーは生天目を怒鳴りつけると空のシャボン玉にむかって飛んで行きパンチやキックをして
近くにあるシャボン玉をパチンパチンといくつか割ることに成功した。

「わ!なにしてるの!?ちっちゃいころって人のつくったシャボン玉を
面白がって割る子っていたけどあなたもそういうタイプなの!?」

「ち、ちがう!これは敵の攻撃だ!」

辺りに光の矢が降り注ぐ。

向こう側にいる佐藤たちは光学迷彩ようのシートを破壊されてしまったようだ。

「ひゃ〜♪ひかりのあめ?きれいね〜」

無傷の生天目はのんきにひとりごちる。
命中度も低いうえに近くのシャボン玉はステレオポニーがすべて破壊してしまったために、
こちらのダメージはまったくなかったようだ。

(隠れながら佐藤さんたちを追いかける九頭さんを追いかける生天目と荻原さん)

218 名前:御前等裕介 ◆Gm4fd8gwE. [sage] 投稿日:2010/05/23(日) 03:11:31 0
>「ヒルティ、曰く『幸福、それは私達の行く手に立ち塞がる獅子である。
  大抵の人はそれを見て引き返してしまう』……獅子の口腔の中にこそ、幸せはあるのです」

純然かつ完全な不意打ち。意識の外から間隙を突いた、虚撃の理想を最も体現した『アンバーワールド』の拳が少女に迫るその瞬間。
稚気すら弾けて消えるほどの逼迫した状況において、『彼女は確かにそう言った』。着弾する。

ドッグォン!

体重を乗せた近距離パワー型の一撃に、少女は左腕を盾としてかち当てる。無論のことながら紙にも等しいその防御は容易く貫かれ、
衝撃と慣性をほぼまともに受けた彼女の身体は後方へと吹っ飛ばされる。その刹那、少女は口端を歪めて更に言葉を紡いだ。

>「……貴方がご丁寧に呼び声を掛けて下さったのは、『不幸中の幸い』でした。
  『塞翁が馬』、ですわ。私が貰う筈だった『アレ』、貴方に差し上げます」

少女が御前等の視界を遊泳する。その向こうから、プロペラ音を轟かせながらミニニュアサイズの飛行機がこちらへ向かって突っ込んできた。

「何ィィィィィィィーーーッッ!!? 『アンバーワールド』ッ!プロペラの駆動を止めろ!!」

鼻先を裂かんと突進してくる飛行機に『アンバーワールド』で触れ、停止命令をプログラムした歯車を貼りつけてプロペラを停める。
動力を失った飛行機は急激に高度を下げ、そのまま地面へと垂直気味に落下していく。悪寒を得た御前等は芝生へと転がりでて地に伏せた。
瞬間、背後で爆音。爆熱と破片が凶器と化し、頭の上を貫いて大気を駆けるのを感じながら、しばらく待って御前等は立ち上がった。

(あっぶねェェェェェェェッ!!なんて女だ。否、なんたる豪胆さ!『こんなモン』相手にあの娘は今まで立ち回っていたのかッ!?)

この飛行機ひとつだけが敵なんてことはないだろう。少なくとも同等の攻撃を数回は凌いでいるはずだ。
非戦闘向けなど勘違いも甚だしい。その身に宿す魂の位置付けは、所持する異能よりもむしろ気概によってこそ決定されるのだ。

「――って、どこ行ったあの女ッ!?どこへ消えた!」

気付けば少女の姿を見失っている。そう遠くへは行ってないはずだが、と踵を返しかけた刹那、御前等は腕にこびりつく緑の萌芽に気がついた。
先程伏せた際に芝生の欠片でもついたのだろうと軽く腕を払う。僅かに芽生えていた緑はそれだけで地面へ落ちて行く。
ひとしきりそれを眺め、次いで腕に目を戻した御前等は、氷柱を直腸に挿入されたような悪寒を覚えた。

「『また付いている』……?否!?断じてこれは否ッ!『腕の表面から草が生えている』ッ!!それも高速で!」

口から零れた言葉と同義の現象が腕の中で咲き誇った。荒唐無稽な現状に頭を抱え掛け、こめかみに手をやって、愕然とした。

ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド――

『頭にも生えていた』。
まるで認識できないうちに、御前等の右腕から頭部にかけてが植物で覆われ始めていた。

「何だこれは!何だこれは!何なんだこれはッ!!『人体に草を生やす能力』ッ――!肉壁に生花していたアレか!」

既に答えは知っていた。問題なのは、それが現状御前等の求めている解答ではないということ。
すなわち、『この花はどうすれば引っペがせるのか』についての知識が、御前等の脳裏には微塵も存在していないことである。

『アンバーワールド』で払いのければ、一時的に除去することは可能。だがそれは根本的な解決になっておらず、一秒と置かずまた生える。
どんどん成長して行く自身へ生けられた花に、浮かぶ懸念がもう一つ。『この花の栄養はどこから来ているのか』。
理屈をつけるのは単純である。だが、それを認めてしまうのはヒトとしての尊厳を著しく害するのが定められた答えだった。つまりは、

(『肥料』は俺!牛の糞や腐った落ち葉なんかと!同じ扱いを俺はこの花から受けていることになるッ!!)


栄養失調とか肉体の枯渇とかそんなことより何よりも、――屈辱的な事実がそこにあった。

219 名前:御前等裕介 ◆Gm4fd8gwE. [sage] 投稿日:2010/05/23(日) 03:49:36 0
小宮を連れてくれば良かった、と思う。
彼女は対生物の専門家だ。『マイセルフユアセルフ』の強要対象はヒトに限らずあらゆる生物に対しても可能で、
植物もその例外にはない。故に、彼女がこの植物に対して『枯死』を命ずれば万事解決するのである。

(今から行くか……?こんな体たらくでは携帯もロクに使えない――)

小宮がどこにいるかは大体分かっている。彼女の携帯電話に『位置を常に発信する』ようインプットした歯車をつけてある。
携帯電話のディスプレイに受像された情報を見るに、幸いにしてそう遠くに居るわけではないようだ。10分もかからない。

(問題は、それまで俺の身体が持つか、だ。ここから離れればスタンドパワーも弱まるのか……?)

スタンド能力の大原則として、『距離』と『力』は反比例するという条項がある。
『アンバーワールド』もその例に漏れず、主にそれは歯車の精度に関わってくるのだが、この植物達はどうだろうか。
能力の発動条件が『触れること』ならば離れれば弱まるに違いないが、彼女は触れずとも御前等の身体に芽吹かせてみせた。

「――ええい面倒だ、ままよ!」

思考を停止した脳が導き出す指令に従って、御前等は正しく踵を返し、元きた道を駆け出した。
すると果たして、払いのけてから再萌芽までの潜伏時間も、草が蔦を伸ばすスピードも確かに緩くなっていく。

(やったッ……!これであとはどうにか小宮さんのとこまで行って!そして――そして?)

小宮の治療を受けて、どうする?あの少女には叶わないと見てこれ以上の戦闘を諦めるか?
少なくとも、このまま小宮のもとへ辿り着けばそうせざるを得ないだろう。いつまでも彼女たちがその場に留まっている道理はないのだから。
無論、保身を選ぶならばこのまま足を進めるべきだ。九頭に至る道は一つではないし、相手が悪かったと自分に言い訳ができる。

それで、良いはずだ。
良いはずなのに。

「――俺が、俺自身がそれを是としてしまったら、それはもう魂が死んだと同義じゃないか!?」

『狩る者』二人と可憐に華麗に立ち回る少女を見たとき、感じたはずだ。
美しい、とか強いな、とか、そんな率直すぎる感想よりも直の心としてッ!俺は思ったはずじゃあないかッ!!

――『羨ましい』と!

「今!この状況に置いて世界の中心は彼女にある!俺はその事実に対して羨望を抱いた!そして何よりも、――その座を欲した!!」

鋭く。踵を返す。弾けるように。利き足を大地へ打ち降ろす。
先行する意志をに追走するように、身体は自然に疾走り出した。

「俺がなりたいのはッ!後にも先にもただ一つ――――この物語の主人公だ!!」

跳躍と同時に、能力の根源へと近づいたために身体を覆う緑の速度が跳ね上がる。もはや払いのけることも忘れ、御前等は一矢となる。
前方で、いつのまにか再出現した少女が小児の方の『狩る者』を葬っているのを認めた。その向こうでは、筋骨隆々の大男。
その巨躯には御前等と同じように端々から花が咲き乱れるが、しかしそれを気にする風もなく払いのけて対峙に支障はない。

一足跳びで、怪傑と相対する少女の隣へと降り立ち、靴先を揃えた。体力を吸われて息切れが激しく、なかなか言葉を紡げない。
少女からは、突如視界の端から現れた全身草まみれ花まみれの変質者が、鼻息を荒くしながら吃っているように見えるだろう。

「ハァハァ……お、俺は……ハァハァ……俺は御前等……裕介……ハァハァ……なぁ……ハァハァ……おい……」

なんとか息を整えて、言う。

「この花とれ。さすれば力は与えられん。……うそです偉そうなこと言ってすんません降参なんで花とってもらえますか!
 ……そしてら一緒にあいつを倒そう。そっちの方がより主人公っぽいからな。ついでに――俺と仲良くしてみる気はないか?」

人外のそれへと変貌しようとしている大男を指さして、努めてフレンドリーに言ってのけた。

【吉野きららに対して降参と謝罪の意を表明。戦闘への協力を条件に命を蝕む花の除去を嘆願。時間軸はボブ覚醒最中】

220 名前:徳井一樹 ◆MnJrk02a/Yx. [sage] 投稿日:2010/05/23(日) 12:30:38 0

>「徳井君、黙ってて悪かったわね。何か忘れてない?
>ゲームのルールの一つ…。『ゲームの参加者が北条市を出ると全身鱗に覆われ留流家に取り込まれる』」

「あ!……無事だったから良いものの取り込まれたらどうする気だったんだ。俺を殺す気かよ?」

佐藤の後出しじゃんけんのような物言いに少し腹が立ったが、
ルールの一部をド忘れしていた自分に問題があるため文句が言えない。
突然の佐藤の悲鳴に似た声によって上空からの攻撃に気が付く徳井。
佐藤の迷彩シートは光の矢に破壊され、徳井の足元に矢が掠める。どうやら無差別攻撃らしく命中率が著しく低い。
佐藤がスタンドシートを鏡と同じ反射率で自分達の頭上に並べたため、再度攻撃が来たとしても防げるだろう。
しかしこのまま反撃なしで廃校まで逃げるのは徳井としては我慢ならなかった。

「やってくれるじゃねーか……けど反撃しねーわけねーだろーがよ!ド低俗野郎が!電柱と熱烈なキスでもしてろ!」

セイヴ・フェリスが切開して叩き折った電柱を投げ飛ばし、
そのまま電柱が綺麗なフォームを描きながら九頭目掛けて飛来する!
ここは目測でも九頭と約50メートルは離れている。調伏の鐘による激痛は感じなかった。
徳井はその事を気にすることなくいつも通りスタンドを引っ込めた。

「お返しはちゃんとしないとな。……確かこの壁を切開すれば速攻で廃校の中だったはずだぜ」

セイヴ・フェリスが壁を二度切開するとそこは荒れた図書室だった。
本は無造作に色々な場所に飛び散っている。
取り壊されることもなく、整備されることもなく放置されている廃校に来たのは初めてだったが下手な心霊スポットよりも不気味だ。
ふと何の意図もなく窓に図書室の窓に目をやると、誰かが入っていくような人影がチラッと見えたような気がした。

「おい、今何か人影が見えなかったか?もしかしてカズかも…勘だけどな」

徳井の勘は偶然ながら当たっていた。
九頭がカズを逃がした場所は同じく自然公園裏の廃校。
このまま行けばカズと佐藤達はバッタリと鉢合わせすることになるだろう。

「あ、今俺渾身の早口言葉思いついた。皆使いたくてもマネすんなよ。
『徳井の特異で得意な特技は徳説いて得することだ』ヘイ三回言えるもんなら言ってみろ!」

何の脈絡もなくベラベラと喋る徳井。
大概の早口言葉はよく意味がわからないものが多いがこれは最上級に意味不明。
この男、やはりアホなのである。

221 名前:荻原秋冬◇6J1m09mANS [sage] 投稿日:2010/05/23(日) 13:17:12 0
森を抜け出しついに九頭龍一のいる廃校まで来ることができた。
ただ、年の差がありすぎるせいか先にたどりついたのは生天目で荻原はまだだった。
荻原も息切れをしながら生天目の近くまで来た。

>「ええい、纏めて炙り出してくれるわ!天弓!!」
すると九頭龍一から大量のシャボン玉がそらに昇る。

「なんだありゃ…シャボン玉か…いったいなにをするつもりなんだ…」
生天目はシャボン玉に見とれているみたいだが、荻原はそのシャボン玉が不気味に思えた。
あの九頭龍一が意味のないことをするはずがない。
すると、『ステレオポニー』が飛び立ってシャボン玉を割り始めたのだ。

>「わ!なにしてるの!?ちっちゃいころって人のつくったシャボン玉を
>面白がって割る子っていたけどあなたもそういうタイプなの!?」


>「ち、ちがう!これは敵の攻撃だ!」
別方向にあるほかのシャボン玉は太陽の光を吸収して
まるでレーザー光線のようにシャボン玉は光を発射させたのだ。

「うわぁ…あんなもんくらったら一発で死んじまうな。
それにしてもあのシャボン玉から放たれるレーザー光線は
どうやら無差別に攻撃しているみたいだ。
なんとかあのシャボン玉を突破することができれば
やつに近づくことができるのだが…
さて、どうしたものか……」
もし荻原一人なら無理をしてでも九頭龍一の所へ突撃するのだが
生天目がいるから一人にさせるわけにも行かない。
大切な愛娘の美菜がいなくなってしまった荻原にとっては
生天目が娘と重なって見えてしまうのだ…

222 名前:生天目 有葵 ◆BhCiwB2SCaJ5 [sage] 投稿日:2010/05/23(日) 16:57:08 0
ステレオポニーは森での荻原の言葉を思い出していた。

>「こ……この他を圧倒するエネルギーは……もしかして……九頭龍一か!」

九頭龍一…。強大なエネルギーを放出している、あの天使のようなスタンドの主の名前なのだろう。
なるほど、調伏の鐘に光の矢。まさしく天使の姿に相応しい能力。
しかし、その能力に一定の法則はないようだ。スタンドが本来一人一体であると仮定するなら、
音なら音、水なら水を応用し発展させた能力が通例のはず。

神々しくもあるが、オーケストラ楽団のように荒々しく内在するスタンドエネルギーの波動を感じてステレオポニーは一つの仮説をたてた。
九頭龍一は複数のスタンドを吸収して一つのスタンドとして収束することができる能力をもっているのではなかろうかと。
その辺りは少なからず九頭と因縁をもつ荻原や佐藤たちなら容易に予想することが出来るのであろう。

「たとえ大量の武器を持っていても一人では使い切れないはず…。この光の矢の粗い攻撃がそれを物語っている!」

ステレオポニーはシャボン玉よりも上空にいたため光の矢の攻撃は受けることはなかったのだが
運の悪いことにシャボン玉が風で移動を開始したため下にいる荻原と生天目にむかってレーザー光線の雨が徐々に近づいてゆく。

「うあ!やばい!隠れな有葵!」

ステレオポニーは近くに残っている、いくつかのシャボンのレンズの角度を割れないように、そっと手で変えると
風でふわふわと移動してくる他のシャボン玉を打ち落とすようにセットして地上の生天目たちの元へと戻った。
ステレオポニーが細工したシャボン玉の光線は飛んでくるいくつかのシャボン玉を打ち落としているようだったが
もとがアバウトなために命中率は限りなく低い。

「あれもちょっとした時間稼ぎぐらいにしかならないから、どうにかしないとね荻原さん。
あなたの能力でスタンドパワーを宿した鳳仙花を発生させてもらえない?
生えたらヒーリングソニックで巨大化させるから。結果は見てのお楽しみだよ」

荻原のプラントアワーの能力で地面から鳳仙花が芽を出すとステレオポニーがヒーリングソニックで成長させて巨大化させる。
鳳仙花はみるみるうちに大きくなって20mほどになると実をみのらせ果皮の内外の細胞の膨圧の差によって弾性の力を蓄積し弾けて種を飛ばす。

種に当たりパチンパチンと割れてゆくシャボン玉の群れ。

「たしか鳳仙花の花言葉って『私にさわらないで』でしたよね?」
生天目が種で割れてゆくシャボン玉を見ながら荻原に尋ねた。

巨大鳳仙花の種も当たると大怪我をしてしまいそうではあったが、そこは木の陰に隠れてやり過ごし
事無きを得た荻原と生天目たちは九頭龍一の追跡を再開することにした。

まだ廃校付近の佐藤たちの頭の上にはシャボン玉が残っているのだろうか。
それに九頭に対しての徳井のなんらかのアクションがあったらしい。
離れたところから観察しているためこちらからあちらのようすは詳しくはわからない。

どっちにしろ九頭はどこにいてもわかるようなエネルギーを放出しながら移動している。

「どうだろう荻原さん。迂回して建物の裏から回り込むって作戦は?」

ステレオポニーは戦うつもりではなかったが無差別攻撃を受けたために、
なんらかの方法で九頭がこちらの存在に気づいていることを希有し荻原に尋ねてみた。

223 名前:よね ◆0jgpnDC/HQ [sage] 投稿日:2010/05/23(日) 17:47:53 P
まるで虫眼鏡で太陽光を集めたかのように降り注ぐその光は
いとも容易く、そして様々な物を貫き、削った。
光学迷彩に書き換えたシートは消滅してしまった。
佐藤が反射板を頭上に並べだす。

と、その間に徳井が壁を切開する。
どうやら目的地である廃校に通じているようだ。
徳井の後を追うように飛びこむ。

/「おい、今何か人影が見えなかったか?もしかしてカズかも…勘だけどな」

「カズ…ここに逃げたのかもしれませんね。もし見つけたら…容赦なくお願いします…
 これから起こる事柄に…自分は後悔しません…」

もちろん、自身がカズとバッタリ会って、そのまま殺せるかと問われてYesと言える確証はなかった。
だが、それでもやらなければならない。それは留流家によって作られた、宿命であった。

/『徳井の特異で得意な特技は徳説いて得することだ』ヘイ三回言えるもんなら言ってみろ!」

「徳井の特異で得意な特技は徳説いて得することだ、徳井の特異で得意な特技は徳説いて得することだ、徳井の特異で得意な特技は徳説いて得することだ」

平然とくだらない事を言ってのけるよね。
もっとも、真の目的は自分の気を紛らわすためだった。
おそらく、徳井もよねを察して気を使ってくれたのだろう。

224 名前:佐藤ひとみ ◆tGLUbl280s [sage] 投稿日:2010/05/23(日) 21:20:15 0
徳井の切開した壁から廃校舎の中に入る佐藤ひとみ。
他校との合併による立て替えで10年程前から使われなくなった鉄筋コンクリート造の校舎はあまり傷んでおらず外観は廃校というには程遠い。
雑草の生えた校庭と人気の無さを除けば普通の高校と変わりなく感じるが中は相応に荒れ果てているようだ。
切開した壁の先は本の散乱する図書館。
>「おい、今何か人影が見えなかったか?もしかしてカズかも…勘だけどな」
>「カズ…ここに逃げたのかもしれませんね。もし見つけたら…容赦なくお願いします… これから起こる事柄に…自分は後悔しません…」
>「あ、今俺渾身の早口言葉思いついた。皆使いたくてもマネすんなよ。
>『徳井の特異で得意な特技は徳説いて得することだ』ヘイ三回言えるもんなら言ってみろ!」
続けて徳井作の早口言葉を事も無げに3回くりかえす、よね。

「あんたの特異で得意な特技は妙な語呂合わせを思いつくことでしょ?時と場所を考えてやりなさいよ。
よね君、あんたも意外とノリがいいのね。」
少々呆れ顔で徳井とよねに釘を刺すひとみだが内心「なかなか上手いこと考え付く」と少し感心している。

「それにしてもあんた達の勘の良さも一つの得意な特技ね。当たりだわ。
よね君、あんたの父親もここにいる。これって偶然なのか、必然なのか…それとも罠なのかしら…?
今は2階にいるみたいだけど…身を潜めてる感じね。」
ひとみは建物内の能力者を探知したスタンドシートを見ながら話している。
よねの父は九頭の前から逃亡前にフルムーンのターゲットとして登録済み。個別認知が出来る相手だ。

続けて建物外の協力者達の位置を捕捉して話を続けるひとみ。
「荻原さん達が近くまで来てるわ。今から彼らを援護する。」
ひとみの前のスタンドシートからレイヤが分離するように数枚のシートが現れ鏡のように周囲を写し出す。
分離したシートは一瞬の内にひとみの手元から消え荻原達の頭上に移動した。
手元に残した位置捕捉中のシートに合わせて彼らの頭上でレーザーを跳ね返すように操作している。
もう一枚シートを数十秒荻原の前に出現させメッセージを表示した。『自然公園北側から見える廃校舎の1Fに来い』と。


「彼らを援護している間、私は身動きが取れないわ。少し話をしましょう。
さっき話した九頭の『弱点』のことよ。
一つ目の弱点は留流家の中に私達を呑み込んでいたこと。
留流家に取り込まれているスタンド使いへのダメージはそのまま九頭にフィードバックするんだから
中にいた私達がそこら辺に埋まっているスタンド使いを無差別に攻撃すれば九頭は弱体化したわ。
だけどこの弱点は問題外。
肉親を取り込まれているあんた達が館の中のスタンド使いを無差別に攻撃することなんか出来ない。
九頭はそれを解ってて私達を留流家の中に入れてたのね。

それと二つ目の弱点…。
私は九頭龍一と何度か話をしたわ。その印象で話してるんだけど九頭は率直でフェアな男よ。
彼は私達に嘘を話したことは一度も無い。
その率直な九頭が『留流家の外に出られるのか?』という問いには決して答えようとしなかったわ。
九頭は私達に前に現れる時必ず『留流家の中に居る』状態で出てきた。
九頭が普通のスタンドのように留流家を自由に出現させられるのならいつも留流家の中に居る必然性は無い。
そんなとこから私は九頭は留流家の外に出られないと踏んでカマをかけてみたのよ。
つまり九頭は留流家から出られなかった…。
留流家は北条市全体に根を張るほど巨大化してるけど九頭は留流家から…いえ、この北条市から出られなかった。
ゲームのルールの一つ"参加者は北条市から出られない"…これは裏を返せば九頭が北条市から出られないから必要だったのね。
でも今の九頭は留流家を凝縮して体に纏っている。留流家と一体化している以上何処へだって行けるわ。
さて、弱点の無くなった九頭とどう戦うか?ガムシャラに正攻法で行くか新たに弱点を見つけるしか無いわね。

ところでよね君、あんたに聞いておかないといけないことがあるわね。
あんたの父親のスタンド能力のことよ。
九頭の前でやったことから推察すると…能力は強化か?成長か?
そして…その能力は彼の死によって解除されるものなのかどうか?
よね君、解る範囲でいいから話してくれない?」

(荻原さん生天目さんメッセージとレーザー防御用の鏡シート受け取っていただけましたでしょうか)
(よねさん、パパカズのスタンド能力の解説おねがいします)

225 名前:よね ◆0jgpnDC/HQ [sage] 投稿日:2010/05/23(日) 22:47:52 P
佐藤が九頭と留流家の弱点を教えた。
要約するとそれは、取り込んだ人間が解放、もしくは行動不能にされることによって生じる老化と衰弱。それに伴う能力の低下。
ただし、今は九頭が留流家を身に纏っているような状況であるからこの弱点を突く事は通用しない。

もう一つの弱点も同じだった。
九頭は留流家から出ることができない。
しかし、留流家を身にまとっている今、その弱点は無い様な物だ。

/よね君、解る範囲でいいから話してくれない?」

「解る範囲…ですか。自分も幾分、幼いころから会っていないので…
 今までのカズのスタンド、グリーン・Dの動きと
 カズの言っていた事から推測すると恐らく、強化、成長はどちらも可能。
 ただし、強化は一時的なもの。成長に関しては永続だと思います。
 カズが死ぬことで…能力は解除されるかまではわかりません…すいません」

今までの事柄から分かり得る事を全て話す。
一部にはよねの勝手な考えや空想も入っているが、それでもそれは高い確率でそうだった。

よねとよねの父親…カズの能力には同じ点があった。
それは他の物には干渉出来て、自分にはできないこと。
そしてその効果は長く続き、何らかの代償があること。
遺伝か。はたしてカズが生まれつきスタンド使いだったのか、
どういう経歴で発現したのかは定かではない。
それでもこれは偶然なのか。そんな訳がない。
これらもよねの考えに入っていた。
そしてそれからカズの能力を逆算したのだ。
勘である。それでもそんな気がした。親子の絆というものか。

「彼は…カズは肉弾戦を得意とはしません。
 サポート専用。自分と同じタイプと思います」

これは大きなアドバンテージだった。
よね達にはパワーのある徳井のスタンド、セイヴ・フェリスがいる。
セイヴ・フェリスでカズを数発殴るだけで、たったそれだけでグリーン・Dは沈黙する。

226 名前:九頭龍一 ◆SM24/QbfAY [sage] 投稿日:2010/05/23(日) 23:43:28 0
あたり一面に降り注ぐ光の矢は佐藤の光学迷彩シートを破壊するに至る。
すぐさま鏡上のシートでレーザーを反射するが、それで十分だった。
天弓はあくまで佐藤や他に隠れているスタンド使いを炙り出すもの。
これで倒そうなどとは考えてはいない。

同じくステレオポニーがシャボン玉を破壊し、巨大な鳳仙花を出現させた時点でこちらも役割を果たしていると言える。
だが荻原や生天目の姿を確認するには至らなかった。
なぜならば
>「やってくれるじゃねーか……けど反撃しねーわけねーだろーがよ!ド低俗野郎が!電柱と熱烈なキスでもしてろ!」
徳井が大声を上げながら電柱を投げつけてきたからだ。
炙り出されるスタンド使いたちを見逃すまいと周囲に注意を払っていたので一瞬反応が遅れる。
慌てて迫り来る電柱に集中した為、荻原達を見逃してしまったのだ。

結論としては電柱は護国天使ア・バウ・ア・クーの一本の腕で受け止められた。
ダメージは与えられなかったが、荻原達の存在を隠し通し、徳井の能力で廃校舎へと入れたと言う効果は大きかったと言えよう。
「ふん、小賢しい真似を!
だが、だからこそ、だ!この位はしてもらわないとな!!」
小さく歯軋りをしたが、九頭は満足していた。
ただ逃げ回るだけの小物など戦っていても楽しくないのだから。
こうして反撃に打って出るくらいイキが良くなくては、と。


ドッゴオオオオオオン!!!!

轟く破壊音と巻き起こる土煙。
衝撃で吹き飛ぶ本棚。

何が起こったかはすぐにわかるだろう。
壁には大穴があき、床には電柱が刺さり大穴の外まで続いている。
先ほど徳井が投げた電柱が投げ返されてきたのだ。
そしてそれは現れる。
大穴から差し込む光を後光のように背負い、瓦礫を踏み潰しながら護国天使ア・バウ・ア・クー、九頭龍一!!
「いつまでこそこそと逃げ回るつもりだ…?
己の力で危機を打ち砕け!活路を切り開け!
その気概がない者に生き残る道はない!!」
図書館が広いとはいえ流石に飛ぶ事はできない。
九頭は床を蹴り一気に間合いを詰めて強力な拳を振るう!

227 名前:徳井一樹 ◆MnJrk02a/Yx. [sage] 投稿日:2010/05/24(月) 15:36:26 0

>「徳井の特異で得意な特技は徳説いて得することだ、徳井の特異で得意な特技は徳説いて得することだ、徳井の特異で得意な特技は徳説いて得することだ」

「俺の渾身の早口言葉サラッと噛まずに言いやがった…」

何気にショックを受ける徳井。結構自信作だったのに…と心の中で呟いた。

>「あんたの特異で得意な特技は妙な語呂合わせを思いつくことでしょ?時と場所を考えてやりなさいよ。
>よね君、あんたも意外とノリがいいのね。」

「時と場所を考えてこそ言ってンだよ……緊張した雰囲気って落ち着かないだろ?」

くだらない会話は中断し、佐藤は九頭の弱点について話した。
よねもカズのグリーン・Dについて説明する。

「クソー話聞いても俺の脳みそじゃ九頭の留流家の対抗策は思い浮かばねー……」

今まで土壇場の機転と閃きで対抗してきたが、こういう緻密に作戦を練るのは得意ではないのだ。
言うならば徳井一樹はいきあたりばったりの天才なのである。

佐藤達が頭を悩ませているとき、突如それは来た。
廃校舎中に響く破壊音と土煙に飛来してきた物体によって吹き飛ぶ本棚達。
見れば一目瞭然。徳井が先程投げた電柱を九頭が投げ返してきたのだ。

音をあげながら瓦礫を踏み潰すは天使の姿を模した九頭龍一!

>「いつまでこそこそと逃げ回るつもりだ…?己の力で危機を打ち砕け!活路を切り開け!
その気概がない者に生き残る道はない!!」

「テメーの都合だけうだうだ喋くってんじゃあねーーッ!頭の毛全部ケツに植毛すんぞバカッ!」

屋内に逃げ込んだのは正解だった。広い図書館とは言えやはり屋内。
悠々と飛行するほどの広さはなく、その自慢の翼は最早ただの飾りだ。
一瞬で間合いを詰め、拳を繰り出す九頭。
留流家を纏っただけにそのスピードは凄まじいものだ。

「させるかよッ!セイヴ・フェリス!」

だがこちらも『近距離パワー型』。九頭のア・バウ・ア・クーを見切れないことなどない。
随一のパワーとスピード、成長によって弱点だった精密動作性の低さもカバーされた。
そして殴ったものを問答無用で『切開』する拳。
近距離でまともな殴り合いならばセイヴ・フェリスが負けることはほとんどないだろう。
九頭も余裕綽々でラッシュの速さ比べか…などと遊ぶ余裕もない。
普通に手首を掴んでガードするか、後方に退避するだろうと徳井は踏んでいた。

228 名前:ボブ・バンソン ◆JvtTTnep1k [sage] 投稿日:2010/05/24(月) 20:59:19 0
【前回の続きということで】

猛々しい声とともに彼の体から波のように炎が吹き出す。
灼熱は巨大なうねりとなって広がり、逃げようと考えさせる猶予すら与えられぬまま
吉野と御前等は火に包まれてしまう。
―しかし、不思議なことに“熱くはない”。
どちらかといえば寒気がするような…

「―吉野きらら、お前の力は生命に関係する…総じて凶悪な能力を持つ部類だ。
まさかこの俺のスタンドパワーを半分以上も浪費させるとはな…俺の体にここまで深刻な傷を負わせた奴は、そう多くないぞ」

抉り取られた首元を摩する。

「ここからは我慢比べといこうではないか。
『PLAYING WITH FIRE』の炎は力を奪う!そしてこの炎は生物・無生物…スタンドまで
別け隔てなく作用する。…花は愚か草一つ生えない不毛な土地に変えてしまうのだ。
これだけ失っても俺とお前…そこの青瓢箪とのスタンドパワーは雲泥の差がある―スタンド像を保つのも辛くないか?」

吉野のメメント・モリ、御前等のアンバーワールドは半透明にまで薄らいできた。

「お前たちのパワーが枯れる果てるのは…長く持っても5分か。それまで束になって俺に挑むのもいいかもしれぬな」

バンソンはなんとその場で坐禅を組んだ。その面立ちは火生三昧の中座り込む不動明王に重なって観える。
不動明王とはかつて釈迦が成道の修業の末、悟りを開くために
『我、悟りを開くまではこの場を立たず』と決心して菩提樹の下に座した時、
穏やかで慈しみ溢れる釈迦も、心の中は護法の決意を秘めた鬼の覚悟であったというその際の釈迦の内証を表現した姿でもある。

彼の場合も目的は明かされずとも、その燃えたぎる瞳からは断固たる決意が受け取られる。

「力尽きるまで、俺の眼前であがくといいだろう。俺はここから動かん…全力で来いッ!!!」


229 名前:柚木美都留 ◆BhCiwB2SCaJ5 [sage] 投稿日:2010/05/24(月) 21:25:43 0
確かに感じる九頭龍一のエナジー。
遠くには巨大鳳仙花が見える。その下には木陰に隠れた荻原たちの頭が遠近法により
ピーナッツくらいの大きさで見てとれた。
その三つのピーナッツは頭の上に光るシートのようなものを宿すとサッとどこかに消えた。
彼らも九頭を追っているのかもしれない。

さらに遠くの廃校からは大型車同士が正面衝突したような破壊音が鳴り響く。

「九頭龍一か!!」
柚木は九頭と何者かが戦闘を開始したものだと察して破壊音の発生場所に向かって直進する。

>「テメーの都合だけうだうだ喋くってんじゃあねーーッ!頭の毛全部ケツに植毛すんぞバカッ!」

遠くの壁の奥から聞き覚えのある声が聞こえた。

「……。…あいつ…まだ生きてたのか?」

それは徳井一樹の台詞なのかも知れないのだが九頭にはボブ・バンソンという強力な腹心がいる。
彼のスタンドパワーは常軌を逸するものがあり九頭からも特別な扱いを受けていた。
柚木も他の狩る者のことはよくしらなかったが彼には一目置いていたのだ。

「ここにいないということは撃破されたか他で戦闘中なんだろうか?」

柚木が首をかしげていると空中から無数の光の矢が降ってくる。

「九頭の飽和攻撃か!?蹴散らせオズモールーッ!!グラビティーボムッ!!」

九頭の呪縛から解き放たれ本来の姿を取り戻したオズモールは白い獣人型のスタンド。
右手から紫色の球体を発生させるとシャボン群に投げつける。
紫色の球体はオズモールの新しい能力だった。
それは光の矢を飲み込みながら雨雲を切り開くようにシャボン玉群を破壊すると少年に九頭への道を与える。

「ワン!」
掛け声とともにオズモールで壁を木っ端微塵に破壊した柚木は図書室の内部に交戦中の九頭を発見して叫ぶ。

「九頭龍一ーーーッ!!地獄に堕ちろーーッ!!!!」

重力波を込めた重い拳が一突き、九頭龍一に向かって放たれた。

230 名前:佐藤ひとみ ◆tGLUbl280s [sage] 投稿日:2010/05/24(月) 22:13:01 0
>226>227>229

>ドッゴオオオオオオン!!!!

外に面した図書室の壁が音を立てて崩れる。壁を突き破ったのは電柱。
ミサイルよろしく飛び込んで来た電柱の衝撃で壁には人ひとり悠々と入れる位の穴が開いている。
振り向いたひとみの目に焼きついたのはひび割れた壁の丸い穴を背に逆光に浮かび上がる九頭龍一の神々しい姿……。

その姿を視界に焼き付けたまま、ひとみの目前に倒れてきた本棚が迫る。
壁を破り図書室内を斜めに横断するように床に突き刺さった電柱が幾つかの本棚を打ち倒し
連鎖的に倒壊する本棚の一つがひとみの上に倒れ掛かってきたのだ。

荻原達の援護に気を取られていたため完全に虚を突かれた形になり対応が遅れる。
…フルムーンのパワーでは本を隙間無く詰め込んだ木製の本棚の重量を支えることは出来ない。
成すすべも無く頭を腕で庇いしゃがみ込む。

本をばら撒きながら倒壊してくる本棚はひとみの目の前で突如動きを止めた。
本棚はひとみの背にしていた壁にもたれかかるようにして止まっている。
本棚と床にできた隙間で安堵のため息をつくひとみ。
だが止まった本棚がガタガタ震えだすと崩れ落ちる本の群れがひとみの頭上目掛けて落ちてくる。
徳井と九頭の大立ち回りの振動で本棚の均衡が崩れたのだ。
ひとみの頭に分厚い背表紙の本が直撃する寸前、フルムーンの触手で盾を作り頭上をガード。
触手で作った棚に落ちる本がバタバタと音を立てて積み重なってゆく。

「痛たたたた…殺す気かって?それはこっちの台詞よ…全く…」

本棚に煽られて倒れこむ拍子に後ろの壁でしたたか腰を打ったらしい。
痛む腰をさすりながら本棚と壁の隙間から這い出るひとみ。
床に手を付いたまま交戦中の九頭と徳井の様子を伺おうと物陰から顔を出した直後、体に地響きのような振動を感じた。

ズズー……ン…

音を立てて崩れ落ちる壁。
丸い穴の開いていた壁はほぼ倒壊し骨組みの鉄筋をむき出しにして土埃を上げている。
崩れた壁から差し込む陽光が土埃を白く浮かび上がらせ視界を遮っている。

>「九頭龍一ーーーッ!!地獄に堕ちろーーッ!!!!」
外から少年の声がする。

ひとみはこの混乱に乗じフルムーンの触手を腕に絡め光学迷彩を発動した。
九頭の目が届かぬ内にこの戦場を後にする。向かう先はよねの父親が潜伏中の二階の教室――。
姿を消したまま途中擦れ違うよねに言葉をかけ図書室を後にする。
「よね君、後は任せたわ。徳井君の援護お願いね。」

231 名前:九頭龍一 ◆SM24/QbfAY [sage] 投稿日:2010/05/24(月) 22:21:09 0
>227
唸りを上げて繰り出される九頭の拳に合わせるように徳井のセイヴ・フェリスの拳が振るわれる。
セイヴ・フェリスが如何に近接パワー型といえど、所詮は一体のスタンドパワーに過ぎない。
あらゆるタイプの100を超えるスタンドパワーの集合体であるア・バウ・ア・クーがパワー負けする事はない。
が、それはあくまで単純なパワー勝負の話し。
ハンマーが破壊力に優れていようとも刀でハンマーを真っ二つにされてしまってはその破壊力も意味がない。
拳同士が触れる刹那に九頭はそれを察したのだ。

「立ち向かってきたことは褒めてやろう!だが、私がどういう存在か忘れているようだな!」
頭上に輝く光の輪の輝きが薄れ、輪から輪のように曲げられたグリーン・Dの左腕になる。
それとともにア・バウ・ア・クーの輪郭がぶれ始めた。
そして両者の拳はぶつかり合った。
触れた拳から腕までぱっくりと切開されるア・バウ・ア・クーの腕。
しかしそれは九頭の罠だったのだ。
「私は100を越えるスタンドの集合体。100を1にすることも出来れば、このように戻す事も出来るのだよ。」
ぱっくりと割れた九頭の腕の間を突き進むセイヴ・フェリスの拳。
それを切断面から伸びてきた無数の手が掴む。
更には、残った三本の腕がセイヴ・フェリスを抱え込むように掴み引っ張るのだ。

「ぐふふふ!本来なら倒してからどうかするところだが良いだろう。このまま留流家に飲み込んでくれる!」
セイヴ・フェリスの肩、腕、胴にまわされた太い腕と拳を掴む切断面からの無数の腕。
それが切断面に引きずり込むように力を込めていく。

九頭の狂気の笑みを切り裂くような声が鳴り響く。
>「九頭龍一ーーーッ!!地獄に堕ちろーーッ!!!!」
「美都留!?」
突然の柚紀とオズモールの出現に驚く九頭は、その重力波を込めた拳を脇腹にまともに喰らってしまった。
その威力は凄まじく、引きずり込もうとしていたセイヴ・フェリスが戒めから外れ吹き飛んだ。
ア・バウ・ア・クーも軽く浮き、3メートルほど位置をずらしてしまったのだ。

確かにオズモールの一撃は重く、不意打ちでまともに喰らったという事はある。
だが、100以上のスタンドパワーの集合体であるア・バウ・ア・クーがここまで吹き飛ぶ事は本来ないはずだった。
これは100以上のパワーを一つの塊としていた時とは違い、セイヴ・フェリスを罠にかけるためにパワーの方向性をバラバラにしていた為だ。

「美都留、戻ってきてくれたのは嬉しいがどういう事かな?
まあ、難しい年頃だからね、反抗期という事もあるだろう。
ならばもう一度躾けなおし、素直な美都留になってもらおうか…!!!」
ギロリと睨む九頭の目には強烈な力が宿っていた。
頭上のグリーン・Dの腕が再び輝く光輪となり、ア・バウ・ア・クーの輪郭もはっきりと定まる。
再度パワーを収束させ護国天使となった九頭は猛烈な勢いで四本の腕を振り回す。

そこから生まれるのは真空刃。
スタンド能力でもなんでもない、単純な超パワーで振り回す四本の拳が真空を生み出し図書館中を切り刻まんと吹き荒れるのだ。

232 名前:よね ◆0jgpnDC/HQ [sage] 投稿日:2010/05/24(月) 23:00:48 P
/「よね君、後は任せたわ。徳井君の援護お願いね。」

その声を聞くと、よねは小さく頷いた。

そして九頭の方を振り返る。
その時すでに徳井は九頭によって引っ張られ、取り込まれそうになっていた。
すぐさまそれを助ける準備にとりかかるよね。だが、その必要はすぐになくなった。

九頭に美都留と呼ばれる幼き戦士。そしてそれに付き従うように居る巨大な犬。
そしてその拳で九頭を殴り飛ばす。端から見れば凄まじい光景だ。

「なんだッ!?あの子はッ!スタンド使いかァーッ!!」
    The Watchdog Of Hell
まるで" 地 獄 の 番 犬 "のように、そのスタンドの眼はギラギラとしていた。

/ならばもう一度躾けなおし、素直な美都留になってもらおうか…!!!」

そうしてその異形ともいえる4本の腕を振り回し始める九頭。
それはレシプロ機のプロペラの様に一枚の円の様にも見えた。

そしてよねは"秋名"と同じ何かを感じた。
その直後、よねのすぐそばを風…のようなものが通りぬける。
後方にあった本棚は真っ二つになっている。

「空気のカッターッ!?Sum41!この床は自分と反発しあうッ!!」

直後、よねが自らに飛んでくる真空刃をうまく避けるかのように吹き飛ぶ。
上手く着地し、九頭を視界に収める。
だが、よねは真空刃の本当の恐ろしさを思い知る。
それはまるで竜巻のように、この部屋の中を吹き荒れていた。
ともすれば身をかすったが、なんとか避け続ける。

「ら…埒があかない…ッ!!徳井さんッ!」

徳井を援護するために来たというのに、徳井に頼りだすよね。
いずれ真空刃はもっと巨大なものになるだろう。
そうなればその時点でよね達の命運は尽きるハズだった。

233 名前:柚木 美都留 ◆BhCiwB2SCaJ5 [sage] 投稿日:2010/05/25(火) 17:25:26 0
ア・バウ・ア・クーとオズモールのインパクトの瞬間、柚木美都留は複数の情報を得た。
まず一つは正攻法ではア・バウ・ア・クーの体を粉砕出来ないということ。
もう一つはセイヴ・フェリスを取り込もうとしていた九頭のスタンド、戦闘に特化した留流家のもう一つの姿。
あの姿になることが昔、柚木が聞いた九頭の計画の到達地点なのだろうということだ。

たしかに留流家に取り込まれた者たちは九頭龍一とともに一つとなり、
その姿形からも見てとれる通りにまさしく神に近い存在になっている。
それはとりこんだ数多くのスタンド使いたちの能力を応用した可能性の一つなのかも知れない。

しかし実際には、よねの父親の存在がなければ今の九頭は存在しないはず。
九頭はとりこんだスタンドの能力によってまるで原始の生き物のようにどんな姿にも進化することができるのだろうか。

まさに、神が九頭龍一に与えた神の力。

>「美都留、戻ってきてくれたのは嬉しいがどういう事かな?
>まあ、難しい年頃だからね、反抗期という事もあるだろう。
>ならばもう一度躾けなおし、素直な美都留になってもらおうか…!!!」

威圧感を取り戻したその目を、柚木は愛憎の入り混じった目で見つめ返すと静かに語った。

「九頭龍一…。あなたは知らないかも知れないけどボクの両親はあなたの留流家に殺されたようなものなんです。
だから真実を知ってしまったボクにはそれを許すことはできない。もう昔の弱いボクはいないんです。
あなたが留流家に取り込まれた多くの人たちをそのスタンドに内在させているとしても
ボクの心のなかにも父と母がいます。もうボクはひとりぢゃないんですよ。
…再び留流家と一つになるつもりはありません」

柚木は感情を押し殺しながら語りつつア・バウ・ア・クーの観察にも余念がなかった。
頭上のグリーン・Dの腕が再び輝く光輪となり、その輪郭をはっきりと定めてゆくと
同時にセイヴ・フェリスを飲み込もうとぱくりと開いた切断面も閉じてゆく。

なにかしら九頭攻略の鍵を見つけかけた少年の思考を護国天使から生み出された真空刃が打ち消した。
真空刃は室内中を切り刻まんと吹き荒れる。

>「空気のカッターッ!?Sum41!この床は自分と反発しあうッ!!」
よねが自らに飛んでくる真空刃をうまく避けるかのように吹き飛んでいる。

「あの人は…風使いと戦っていた人?」

柚木は一瞬よねを見やったが真空刃を避けるのが精一杯だった。
オズモールの能力で自分だけの重力を反転させて天井に着地すると拳で天井にどんどん穴を開けて
廃校の1階から屋上にむかって落ちていき、屋上を突き破ると重力を通常に戻してその床にスタンと着地する。
廃校の1階から屋上には貫通するようにぽっかり穴があき1階からは空が見えている。

「…ふう…」
少年が外の空気を吸いながら精神を集中すると、かざしたオズモールの両腕から直径2メートルほどの紫色の球体が一つ誕生した。
柚木は1階まで続く穴から九頭を確認して100トンの重力弾を投下する。

「砕け散ろ!!九頭龍一!!」

234 名前:荻原秋冬◇6J1m09mANS [sage] 投稿日:2010/05/25(火) 19:42:09 0
あいかわらずシャボン玉はまだたくさん空中に浮かんでいる
『ステレオポニー』がいくつか割ってくれたようだが、数が多いため全部割ることは
無理みたいだ。

>「あれもちょっとした時間稼ぎぐらいにしかならないから、どうにかしないとね荻原さん。
あなたの能力でスタンドパワーを宿した鳳仙花を発生させてもらえない?
生えたらヒーリングソニックで巨大化させるから。結果は見てのお楽しみだよ」

「鳳仙花?別にいいけど…」
『プラントアワー』を出現させて地面を殴らせた。
そこから見事な鳳仙花の花が咲いた。
『ステレオポニー』がさらに急成長させとても巨大な鳳仙花が誕生した。
そして鳳仙花の実も成長したが、そのまま大きくなりすぎて破裂してしまった。
破裂した実の中にあった種がシャボン玉を次々に割っていった。
なるほど…これなら大量にシャボン玉を割ることはできる。

>「たしか鳳仙花の花言葉って『私にさわらないで』でしたよね?」

「そうだね。私はあまり好きではないが……」
そんな会話をしているうちにだいぶシャボン玉が消えてきた。
これならすぐに走れば進むことはだいぶ可能なはずだ。

>「どうだろう荻原さん。迂回して建物の裏から回り込むって作戦は?」

「う〜ん…べつに悪くはないけど、それこそ罠でも張ってあるんじゃないかな?
もうすこし様子を見たほうが…」
すると荻原たちの目の前に約A4サイズくらいのシートのようなものが現れた。

「ん?なんだこれ?『自然公園北側から見える廃校舎の1Fに来い』……
これって…たぶん佐藤さんからのメッセージだ。
廃校舎の1Fか……そうとなったら行ってみるしかないか」
荻原は生天目をつれて廃校舎へ向かった。

235 名前:吉野きらら ◆HQs.P3ZAvn.F [sage] 投稿日:2010/05/25(火) 21:52:19 0
>「ハァハァ……お、俺は……ハァハァ……俺は御前等……裕介……ハァハァ……なぁ……ハァハァ……おい……」
>「この花とれ。さすれば力は与えられん。……うそです偉そうなこと言ってすんません降参なんで花とってもらえますか!
> ……そしてら一緒にあいつを倒そう。そっちの方がより主人公っぽいからな。ついでに――俺と仲良くしてみる気はないか?」

逃げていった筈の男は一体どんな心境の変化があったのか、きららの傍へと帰ってきた。
彼女の花が最速で咲く事の出来る、射程内にまで。
既に御前等の身体の至る所に芽吹いている花は、どうあっても開花までに全てを払う事は出来ない。
だがにも関わらず、きららは花を咲かせなかった。それどころか、徐々に徐々にと散らしてさえいる。

「……貴方は狩る者ではないのですか? でしたら、私が貴方に攻撃する理由なんてありませんわ。寧ろ手を取り合うべきです」

何故なら彼女は、『幸福の中にいる人間を蹴落とすように殺す』事を至上としている。
自らの幸福を証明する為に。裏付けがあるから、自分は逆説的に幸せなのだと、無意識の領域で思い込む為に。

軽やかな所作で手を差し伸べ、彼女は御前等の右手を取る。
その手の甲に最後の一輪を残し、微笑みと共に散らす。
死の淵にあった人間が許され、危機を逸する――間違いなく御前等は幸福を感じるだろうと、彼女は踏んでいた。
彼の手の甲に生えた花が完全に散った瞬間にこそ、『幸せの花』が咲くと。
きららの微笑に、ほんの細微な――邪悪とも嗜虐とも言い難い――形容の出来ない、
言うなれば漆黒の心象を抱かせる危険そのものの気配が滲んだ。

けれども、御前等は花弁とはならなかった。
口元の優美な曲線はそのままに、しかしきららの双眸が驚愕によって僅かに見開かれる。
一体何故なのか。考えて、解はすぐに得られた。
きららの前で情けなく息を切らすこの男は、その風体に不釣合いな『願い』を持っているのだ。
目先の命ではなく、もっと大切な何かを。
考えてもみれば、目先の命を惜しむならばそもそも彼女の傍へ帰ってこなければ良かったのだから。

ここに至り、きららは一つ決意をする。
眼前の男、御前等。彼を必ずや幸せの『絶頂』へと押し上げ、その上で殺してみせると。

「私の名前は吉野きらら。貴方は? ……そう、御前等祐介って言うのね。それじゃあ改めて御前等さん。
 過去の事は水に流して、協力し合いましょう。こんな状況ですもの。あ、でも……仲良くするのは少し考えさせて下さいな?」

先程見せた漆黒の気配など微塵も感じられない、例えるなら淡緑の葉に煌く朝露のような清々しさできららは微笑みかける。

> 「お前たちのパワーが枯れる果てるのは…長く持っても5分か。それまで束になって俺に挑むのもいいかもしれぬな」
> 「力尽きるまで、俺の眼前であがくといいだろう。俺はここから動かん…全力で来いッ!!!」

振り返る。
ボブへと晒す表情は、御前等に見せていた物とは打って変わって冷淡さを醸していた。
冷酷ではなく、ただ冷淡。
冷静に、淡々と、バンソンを始末する事だけをきららは考えている。

236 名前:吉野きらら ◆HQs.P3ZAvn.F [sage] 投稿日:2010/05/25(火) 21:53:52 0
「……正直な事を申し上げますと、貴方からは『幸福』の種を感じられませんの。
 さっきから強力な気配を横溢しているどなた様かからは……自分の見据える『幸福』に至ろうと言う強い意志を感じます。
 ですが、貴方からは何も感じません。オカルト話の中心にいる? それがどうしたと言うのですか?」

顎を軽く上げ、バンソンを見下すようにして彼女は侮蔑と謗りの言葉を紡ぐ。

「世界は円ではありません。ですが、球でもありません。世界は……階段です。何処までも高く続く階段。
 その最下の中心に居座っていた所で、自慢出来る事ではありませんわ。
 世界の中心の、更に上……それを目指さない以上、貴方が何処の中心にいようが、私の踏み台に過ぎません」

彼女のスタンド『メメント・モリ』は、噛み砕いて称するなら『きららの幸福願望から生まれた』スタンドだ。
更に大別すれば『幸せの花』の根源にある『他人を不幸に至らしめての相対的な幸福実現』と、
単純に『自分自身が更に幸せになる事への願望』がある。
当然後者は、彼女が不幸の深淵に沈めば沈むほど、強くなっていく。

故に彼女にとって体力の摩耗は、スタンドの弱体化には直結しないのだ。
むしろ漆黒の意志は静かに、だが激的に燃え上がってすらいる。
『メメント・モリ』の両腕に盾を模した花が咲いた。花弁は刃と化して、花は丸鋸の魂を宿す。

「動かないと言うのなら、無理に動かすつもりはありません。では、御機嫌よう」

『メメント・モリ』の両腕を交差させ、きららはバンソンの首を切り飛ばしに掛かる。
硬化などの防御策を取っていたとしても、鋸刃のような花弁は乱暴に彼の首を切り落とすだろう。


【御前等に『幸せの花』を咲かせようとするも失敗。ほんの一瞬だけ漆黒の意志を彼に対して覗かせた。
 要するに『少年漫画にありがちな追い詰められると強化体質』って事で。
 ボロクソ言わせて頂きました。ついでに動かないならありがたくノコギリでギコギコやらせて頂きます。
 幸せを目指し続けないような奴は花にするまでもない。首飛ばしてさっさと強大な存在(九頭)のトコへ行こう。って事で】

237 名前:徳井一樹 ◆MnJrk02a/Yx. [sage] 投稿日:2010/05/25(火) 22:11:01 0

>「立ち向かってきたことは褒めてやろう!だが、私がどういう存在か忘れているようだな!」

直後、九頭の姿がぐにゃり輪郭がぶれ不定形となっていく。
そして徳井の予想は大きく外れ九頭の拳とセイヴ・フェリスの拳はぶつかり合い、切開によって腕が切り裂かれていく。
九頭の口が僅かに歪む。罠だったのだ。遅れて気付く徳井。しかし既に後の祭りだった。
切断面から無数の手が拳を掴む!
更に残った三本の腕でセイヴ・フェリスをガッシリと掴み引っ張り込んできたのだ。

>「ぐふふふ!本来なら倒してからどうかするところだが良いだろう。このまま留流家に飲み込んでくれる!」

狂気に満ちた笑い声をあげながらゆっくりとセイヴ・フェリスを、徳井を飲み込んでいく。
冷たい感触…地獄の門番が手引きしているようにゆっくりと…確実に。
刹那、九頭は徳井の視界の外にいる何者かの拳を脇腹に食らい、セイヴ・フェリスを掴んでいた手が緩む。

「うおおおおッ!!あぶねーーーッ!けど今日の俺…かなりツイてるぜ。大怪我はするが命だけは絶対に助かってる。
マジにツイてるね、ノってるネ」

九頭の拳が届かない射程外にバックステップで後退すると、九頭に一撃を浴びせた者が何者かはっきりとわかった。
自分に大きな痛手を負わせ、最期は自らの能力で自爆したはずの少年。
何があったかは知らないが再起不能から復活し、九頭の洗脳から脱したのだろう。

>「九頭龍一…。あなたは知らないかも知れないけどボクの両親はあなたの留流家に殺されたようなものなんです。
>だから真実を知ってしまったボクにはそれを許すことはできない。もう昔の弱いボクはいないんです。
>あなたが留流家に取り込まれた多くの人たちをそのスタンドに内在させているとしても
>ボクの心のなかにも父と母がいます。もうボクはひとりぢゃないんですよ。
>…再び留流家と一つになるつもりはありません」

柚木の発言と九頭の明らかな敵意を抱いているを見る限り、柚木とこちらの目的は同じ。
とはいえ元・敵。自分を少しも恨んでいない訳でもないだろう。
敵の敵は味方だとは限らないのだから。

「少年…俺のこと、元敵だからってプッツンして攻撃しないでね。
ハッピーウレピーよろピくネーな友好関係でいこーぜ。あ、無視すんなよコラッ!」

柚木はまるで重力が反転したかのように天井に『落ちていく』。
スタンドの成長による能力の変化だろうか。明らかに吸い込む能力とは別物だった。
よねも何かを避けるように吹っ飛んでいく。何をしてるんだろーと悠長に思っていると、
空気が歪んだように見えた直後に徳井の前髪がスッパリと切断されてしまった。
皆が何を避けていたか理解する徳井。真空刃だ。
九頭のその有り余ったスタンドパワーで四本の拳を振るい真空刃を生み出していたのだ。

>「ら…埒があかない…ッ!!徳井さんッ!」

よねが叫ぶ。真空刃によってズタズタとなった本棚の裏に身を隠しながら徳井は叫び返した。

「静かにしてくれーーッ!!こっちも今必死で策を考えてるんだッ!」

触れた万物を切開する徳井にも対抗できないものがある。それは液体や真空刃のような触れないモノ。
そういう意味では切開しても流れ込む泥であり水流カッターでもある、
吉泉ムヅオのフラット・アース・ソサエティは最高に相性が悪かった。勝てたのが奇跡なくらいである。

「真空刃自体は空気の歪みで位置は捕捉できるし最低限の負傷覚悟で突っ込めば懐にも潜り込める……
問題は正攻法じゃ九頭にはダメージなんぞ与えられねーってことだ。
せめてあいつがあの状態のままならなあ…殴るときに100の状態ではなく1の状態なら切開も有効なはずだぜ…きっと」

自信はない。そもそも九頭が1の状態のまま殴らせてくれるはずもない。
そんなことを真空の刃が荒れ狂う中考えていると、柚木が開けた穴から紫色の球体が落下してくる!

「そういえばあいつの能力はなんなんだ?見た限り重力関係の能力みてーだけどよお……」

238 名前:九頭龍一 ◆SM24/QbfAY [sage] 投稿日:2010/05/25(火) 23:39:00 0
>232>233>237
図書館を席巻する九頭の高笑いと真空刃!
荒れ狂う真空の刃は数を増し、本棚を両断し、壁や床に鋭い爪痕を残す。
よねと徳井は避けるのが精一杯でいずれは切り刻まれる運命なのだ。
が、一人その暴風圏から脱したものがいる。
重力を反転させ天井を打ち抜き上空へと落ちていった柚木。

屋上でオズモールが2メートル大の紫色の球体を作り出していた。
>「砕け散ろ!!九頭龍一!!」
直上から投下される100トンの重力球。
それを見ながら九頭は避けなかった。
「ぬおおおおおおおおお!!!」
避けるわけでもなく、防ぐわけでもなく、100トンの重力球を4本の腕を広げて受け止めたのだ。
その重さに足が床にめり込み、衝撃で校舎のガラスが砕け散る。
しかしそれでも九頭は、ア・バウ・ア・クーは潰れなかった。
「これしきの重み!私が背負うものに比べればああ!!!」
潰れなかっただけで余裕があるわけではない。
コメカミの血管がぶち切れて血が噴出し、歯茎からも血が滲んでいる。
重力球の重さとア・バウ・ア・クーのパワーの鬩ぎあいの果てに、ついには四本の腕が重力球を抱き潰した!

四散する紫色の塊りが壁多天井に穴を開ける。
重力球が消えたあと、よねと徳井はア・バウ・ア・クーの明日バネ状になっているのを見るだろう。
直後、九頭の姿が消えた。

100トンと言う最重の錘が消えた瞬間、それまでバネに溜め込まれたエネルギーが爆発したのだ。
最早瞬間移動と言っても遜色のないスピードだった。


重力球が消えた直後、屋上の柚木が影に覆われる。
頭上には翼を広げたア・バウ・ア・クーが二本の腕を組み合わせて振り上げていた。
優しく、しかし何処までも冷たく残酷に語り掛けるのだ。 
「勿論知っていたよ。私は全ての闘いをまどろみの中でみていたのだから!
その上で君を取り込んでいたのだ。君の中の両親ともどもね!」
そう、九頭は全てを知っていたのだ。
柚木の両親がいかにして殺され、柚木がどのように生きてきたか。
そして今、再度柚木を取り込む為にその両腕を振り下ろす!


九頭が図書館から消えてからほんの数秒に満たない時間だっただろう。
屋上から叩き落され土煙を上げる柚木とオズモールと柚木。
それを追う様にア・バウ・ア・クーは再び図書館に降臨した。
「美都留、もう弱くないと言うのであればこの程度では死んでいないだろう?
重力制御でダメージは軽減できたはずだ。
早く起き上がらないと止めを刺してしまうぞ!」
土煙に言い放ちながら目は柚木には向いていなかった。
徳井とよねを睨みつけたあと、ここで気付いた。

「んんんんん?人数が足りないのはどういうことだ?」
コメカミから流れる血を拭いながら辺りを見回す。


239 名前:佐藤ひとみ ◆tGLUbl280s [sage] 投稿日:2010/05/25(火) 23:48:58 0
>231
戦場を後にする直前にひとみの見た光景。
徳井のセイヴ・フェリスと護国天使九頭。打ち合う両者の拳。
九頭が頭上の光輪を腕の形に変化させると切開された拳の裂け目から無数の手が現れうねうねとセイヴ・フェリスの拳に絡み付く。
これは九頭と一体化していた百体のスタンドの手…?
ひとみは九頭が護国天使と化す段階を思い出していた。
百の人型を重ねたようにぶれた輪郭の光塊だった九頭はよねの父の左腕を光輪に変え頭に冠することで天使の姿を完成させていた。
九頭は『調整』の為によねの父の左腕が必要だと言った…。


―――姿を消したまま戦いを横目に二階へと続く階段を駆け登る佐藤ひとみ。
目的の男は化学室らしき部屋の奥にいる。扉は廊下に面して二つ。
部屋を透視して男の死角になる方の扉を狙う。
鍵のかかった扉の隙間に平たくした触手を侵入させ音も無くロックを外し部屋に入り男に近づく。
男は戦場と化したこの場所から移動すべきか迷っているのか落ち着かない様子だ。
ふと男の目が虚空を泳ぐと見えぬ筈のひとみの姿を捉えるように視線を定めた。

「あなたにも解るの?流石に勘がいいわ。血は争えないものね…。でも今更気付いても遅い!」

潜伏モードを解き姿を現すひとみ。同時に透明化したまま男の後ろまで伸ばし忍ばせていた触手を一瞬の内に巻き付け手足を拘束する。

「初めまして!よね君にはいつもお世話になってます…なんて挨拶はいらないわね!
腹心の部下のことを『右腕』って言うけど、あんたは 『左腕』で九頭を支えてるのね。
護国天使九頭にとっては欠けがえの無い存在ってとこかしら?」

手足を固定され床に転がされた米綾和を上から見下ろすひとみの目は黒い悪意の焔を宿らせている。
この男を前にするとひとみの心に妙な感情が湧き上がってくる。
それは下腹あたりからふつふつと込み上げてくる怒りとも憎しみともつかぬ感情。
この感情が九頭に『特別の存在』として扱われている人間への嫉妬であることを、ひとみはまだ認識していない。


「あんたの存在が九頭が護国天使の姿を保つ為のキーなのは解ってるわ。
すぐに殺してやってもいいんだけど、よね君の父親って言うんじゃ殺すわけにもいかないわねぇ!
それよりも私はあんたに訊きたいことがあるの。九頭龍一について…!あんな魅力的な男居ないわ…
私は九頭のことが知りたい!!
知ってることを全部喋ってもらうわよ!

…これは質問じゃない…既に拷問に変わってるわ!」

話しながらひとみは拘束し動きを封じた男の眼球の隙間から微細化したフルムーンの触手を侵入させていた。
そのまま視神経を伝い脳下垂体まで触手を伸ばす。

「脳ミソの付け根にあるこの部分が脳幹…その先が各種ホルモンを分泌する脳下垂体前葉。
確かここを刺激するとドーパミンだかエンドルフィンだかの脳内麻薬がドバッと分泌されるんじゃなかったかしらねぇ〜?
ドーパミンは覚醒剤、エンドルフィンはモルヒネに似た性質を持ってるらしいわね。
戦中ナチスはモルヒネや覚醒剤を自白剤として使ったらしいわよ。これ豆知識ね!
あんたにトリップしながら私の質問に答えてもらうわ!」

ひとみはスタンドシート映し出した男の脳と脳内に侵入させた触手を可視化した映像を見ながら薄笑いを浮かべて残酷な言葉を綴る。

240 名前:生天目 有葵 ◆BhCiwB2SCaJ5 [sage] 投稿日:2010/05/26(水) 03:29:51 0
>234(荻原さん)
>「ん?なんだこれ?『自然公園北側から見える廃校舎の1Fに来い』……
>これって…たぶん佐藤さんからのメッセージだ。
>廃校舎の1Fか……そうとなったら行ってみるしかないか」

二人は廃校舎の1Fへとむかった。九頭とは限りなく接近している。
しかし近道をしようとした二人は裏門から廃校の敷地内に侵入してしまったために
かえって遠回りをしてしまっていた。
外から図書室に行くためには建物をぐるりと一周しなければならないようだ。

ドッゴオオオオオオン!!!!

廃校舎の内部からは破壊音がしている。

「自然公園の北側から見える1階って言っても広いしどこなんだろ?その九頭って人のすぐ近くなのかな?」
生天目には西も東もわからない。たまらず携帯をかけようとしたがステレオポニーに制された。
それは相手がどんな状況かわからなかったからだ。もしかしたら佐藤は息を殺して隠れているかもしれなかった。

二人はとりあえず裏口を見つけると校舎内に侵入して廊下をとことこと右へ左へ歩いていく。

すると図書室からは騒がしい物音がしていた。

「…ふつうだったら学校でいちばん五月蝿くしちゃダメなとこですよね…」
生天目が荻原に問いた瞬間、壁を突き破り何かしらのエネルギーの塊のようなものが大量に飛び出してくる。
それは九頭に潰され四散したオズモールの重力弾の破片だった。

ぽっかり空いた無数の穴の一つから少女は天使の顔を見る。

「荻原さん!!あれが九頭!?」
生天目は珍しいものでも拝んだような好奇の眼差しで九頭を見ていた。

「ち、近づきすぎたよっ!有葵!逃げるよ!!これじゃ観察するもなにも戦闘に巻き込まれてしまう!!」
小声でささやくステレオポニー。

「え!?ひとみんは?ひとみんはどこなの!?ここで戦っているの?」

「わからない!わからないけどとにかくここから離れるんだよ!!」
ステレオポニーは怒ったように手をぷんぷんとふりまわしている。

「あ!荻原さんはどうするの!?もしかしてたたかうの?」
生天目は心配そうな顔をして荻原の口元を見つめていた。

241 名前:大谷杉松 ◆vReXCpsNBKcm [sage] 投稿日:2010/05/26(水) 13:32:01 0
九頭の行動、柚木の協力、訳の分からないことが多いが
今の彼に出来ること…『もう一度再現できる何か』を見つけること、
強力な効果を再現できればそれは強力な攻撃となる、
もう一つは佐藤の為の時間稼ぎである、
おそらく鍵を握っているであろうよねの父親、そこからヒントが出てくるまで余計なことをして
時すでに遅しでは遅いのだ、

九頭の行動をよく見る、そして活路を見つけ出すまで待つのが大谷の仕事だ…

242 名前:佐藤ひとみ ◆tGLUbl280s [sage] 投稿日:2010/05/26(水) 14:37:00 0
よねの父、米綾和の目から侵入させた触手で脳下垂体を刺激して脳内麻薬を分泌させる。
麻薬による酩酊状態で彼の目が虚ろになった機を捉えて質問に取り掛かる。
以前読んだスパイ小説に『自白剤を使う場合簡単な質問から間を置かず等間隔で重要な質問に入るのが効果的』
という文面があったことを思い出し素人尋問を始めるひとみ。


「あんたが留流家に取り込まれたのはいつ?」
「なぜ九頭龍一に従うの?」
軽い質問から入るつもりが九頭を知りたいという情熱に呑み込まれ、ひとみの質問は自らの妄想を絡めたものへと変化していく。


「九頭が能力を手に入れたのはいつ?
政府と結託して能力を使い出したのは私の見た九頭の記憶からすると明治中期位ね。
陰陽師が国家公務員だった飛鳥時代から怪(あやかし)の力を扱う部署は歴史の裏舞台で連綿と続いていたのねえ。
九頭が裏舞台で活躍した時代はまさに弱肉強食の時代…国が国を食い、人が人を食う。
そんな時代に九頭は国を守るためにその力を使っていた。
歴史の中で活躍した異能者は文字通り『異能』を持っていた人間も少なくなかった。
九頭は敵の異能を刈り取り、取り込んだ異能を敵だけでなく国を乱すもの全てに向けて使っていた。
今こうしてこの国が主権国家の態を保っていられるのも護国天使様の力があったればこそ。
これでのあってるのかしら?

…でも時代はもう九頭を必要とはしていない…
こんなぼんやりした世の中じゃ国を守るため…もしくは逆に国を壊すために能力を使おうなんて奴は出てこないわ。
町に異能者が溢れたからって特に何も起こらない。異能者も日常に飲み込まれて暮らしてる。
それなのに九頭はまだ何かを守っている気でいる…何かを成す気でいる。

教えて!九頭はいま何と戦っているの?戦っているつもりでいるの?


あんたが護国天使となった九頭と一体化せずにのうのうと意識を保っていられるのはなぜ?
あんたの存在が巨大になりすぎた留流家を身に纏う九頭の体を安定させているから…?
あんたの左腕はまだ半分位あんたのコントロール下にあるんじゃないの!?
なんでッ!何であんただけが特別扱いなのよッ!?

答えなさいッ!ほら!言いなさいよッッ!!」

虚ろな目をした米綾和の襟首を掴み揺さぶっている、ひとみの左目は常軌を逸した色を浮かべている。



階下の図書室付近から轟音が響く。
建物を崩壊させかねない地響きにひとみの心は焦る。
スタンドシートを出現させマーカーの位置で戦況を分析するひとみ。
外にいた少年が柚木美都留であることは解っている。どういう巡り会わせか復活を果たした柚木少年は九頭に叛旗を翻している。
徳井、よねと共闘を繰り広げる柚木少年だが戦況はやや九頭が有利か?
ひとみがあの場にいないことを察した九頭は自らにとって必要なこの男…よねの父を救いに来るかも知れない。
ひとみは九頭の動きによってはこの男の身柄をフルムーンの触手で拘束したまま何処かに隠す気でいる。
フルムーンを手元から離すことによりひとみ自身は防御も攻撃も出来ないが
この男の身柄はそれを補って余りある人質に成り得るという予測を立てている。

243 名前:柚木 美都留 ◆BhCiwB2SCaJ5 [sage] 投稿日:2010/05/26(水) 15:45:53 0
>「勿論知っていたよ。私は全ての闘いをまどろみの中でみていたのだから!
>その上で君を取り込んでいたのだ。君の中の両親ともどもね!」

「え!?」
柚木美都留は、大きな目をさらに見開く。
次の瞬間、九頭の両腕が振り下ろされると柚木は1階の地面に叩きつけられ土煙をあげる。
勿論地面との衝突時に重力制御をすることよってダメージは軽減していた。

「…知っていた…?」
柚木はまだ心のどこかに九頭龍一に対しての敬愛の念が残っていたのだが、
先ほどの台詞でその思いは吹き飛んだ。

>「美都留、もう弱くないと言うのであればこの程度では死んでいないだろう?
>重力制御でダメージは軽減できたはずだ。
>早く起き上がらないと止めを刺してしまうぞ!」

土煙がおさまると少年は立ちあがり哀しそうに語りはじめる。

「九頭…あなたは本当に哀しい人です。
留流家には大勢の人たちが取り込まれているというのにあなたはいつも独りです。
たしかにあなたのことを盲目的に崇拝している人はいるのでしょうけど、共に歩いている人は誰一人としていない。
かつてのボクは烈雨のなかを耐え忍び独りで歩いているようなあなたの背中を見て共に歩いて行きたいと思っていた。
しかし、もうそんな気持ちにはなれない。なぜならあなたは目的のためには手段を選ばない人だからだ!」

留流家によって止められた柚木の時間は、留流家から離れた今再び動き出していた。
もう思考は止まることもなければ後戻りすることもない。少年は戦いの最中、生きていることを実感している。

「己の業と共に…時の闇に沈め!九頭龍一!!」

柚木の美しい顔からは負の感情が噴き出しオズモールからは憎悪をこめた拳の連打が始まった。

「自由に生きるってことは…」

「ワンワンワンワンワンワンワンワンワンッ!!」

「ワンダフゥーッ!!」

護国天使ア・バウ・ア・クーに炸裂する拳の嵐。

244 名前:ボブ・バンソン ◆JvtTTnep1k [sage] 投稿日:2010/05/26(水) 22:33:18 0
>「……正直な事を申し上げますと、貴方からは『幸福』の種を感じられませんの。
 さっきから強力な気配を横溢しているどなた様かからは……自分の見据える『幸福』に至ろうと言う強い意志を感じます。
 ですが、貴方からは何も感じません。オカルト話の中心にいる? それがどうしたと言うのですか?」

「御託はいい、俺の首が欲しいのだろう?わかるぞ…お前は『幸福』とやらに貪欲だな。
――そいうとこだけは…似ているな、九頭に」

彼の脳裏にまじまじと思い上がる、九頭龍一に出会った日!!!自分に全てを教えた男!!!
そして愛すべき…

>「動かないと言うのなら、無理に動かすつもりはありません。では、御機嫌よう」

>『メメント・モリ』の両腕を交差させ、きららはバンソンの首を切り飛ばしに掛かる。
>硬化などの防御策を取っていたとしても、鋸刃のような花弁は乱暴に彼の首を切り落とすだろう。

鋭い刃先はあっという間に首を切り飛ばしてしまった。顔には悟りきった至福の表情を浮かべ静かに地面へと転がり落ちたのだった…

本体:ボブ・バンソン
スタンド名:NewDivide?

死亡…



勝ったッ! 第3部完!

「―ほーお、見事。太刀筋の良さは流石だな」
どこから…そう、まさに切り落とされた首から…鬼の声が聞こえてくるッ!

「『スフィア』ッ」
首は液状に溶け首無し死体にはじけ飛んで行った。雫ひとつひとつが形作り、やがてそこには寸分も狂いも無くボブ・バンソンの頭部が
出来上がっていた。
 ...
「これも『ニューディバイド』だったな…本名は『スヒィア』だ。
もう少し暇だったらこいつの愛らしい姿を見せてやれたのだが…」

『スフィア』!アンテロスを死に追いやり、デパートを死の世界に変貌させたあのスタンドである。
しかし、このスタンドこそ『ニューディバイド』と呼ばれていたスタンドのはず。例の奇怪なスーツも装着してはいない。
自分の強大さを誇示すかのように坐禅を組みせせら笑う。
「お目にかかるのは初めてかな?スタンドの多重発動だ…こんなこともできるッ」

振り上げられた両手はマジックハンドに変形しメメント・モリの両腕を“掴み”、刃ごと砕いてしまった!
忘れないで頂きたい、スタンドに触る事が出来るのはスタンドがルールある。それが今、破られたッ!
垂れ下がる手にはもう鮮やかな花は咲いていない。



245 名前:ボブ・バンソン ◆JvtTTnep1k [sage] 投稿日:2010/05/26(水) 22:35:34 0
「こいつの名は『ザ・クラッシュ』…のはずだ。手で掴んだものを破砕寸前の状態に変える…壊しきれないのと
 こいつ自体にパワーがないのが欠点だな」
余裕綽々と能力を次々に暴露する。恐れることはない、相手は事の足らない小娘と行き倒れの男。
この次には大仕事も控えている……どうやら勝負を急がねばならないらしい。
『PLAYING WITH FIRE』の炎が灯ってから3分は経過した、体力の低下を見で感じられるほどになってきている。
短期決戦に持ち込むしか他に方法はないのだ。

「吉野!お前は俺を『世界の最下層に居座っている』といったな!…とんでもない思い違いだ。
俺は常に“上”も“下”も全て目指す!敗者の苦渋も勝者の甘美も全て味わってやろう!」


246 名前:九頭龍一 ◆SM24/QbfAY [sage] 投稿日:2010/05/26(水) 23:18:28 0
>243
>「…知っていた…?」
柚木の九頭に対する思いを根底から覆す衝撃にもれ出る言葉。
それを九頭は恐ろしく冷めた目で見下ろしていた。

動き出した柚木の時間とともに吐き出される言葉にもその冷たさは変わる事はない。
いや、冷たさを越えて哀れみの色すら浮かんでいる。
「その程度か…!だ か ら 留流家からお前ははじき出されたのだ!
私は一人、頂点の存在!
頂点はいつも孤高なものなのだ!」
高らかに言い放った九頭の頭上に輝く光の輪が蛍光灯のように点滅し、一瞬グリーン・Dの左腕に戻る。
それとともに護国天使ア・バウ・ア・クーの輪郭も歪むがすぐに元に戻った。
「ふん、やはりそう来たか。」
頭上を見上げ呟くが、取るに足らないこととでも言うように再び柚木を、そしてオズモールへと視線を戻す。

>「自由に生きるってことは…」
>「ワンワンワンワンワンワンワンワンワンッ!!」
>「ワンダフゥーッ!!」
パシーーーーーン!!
繰り出されるオズモールの拳をア・バウ・ア・クーの掌が受け止める。
一撃だけでは終わらない。
嵐のような連打を四本の腕が巧みにその軌道に併せ受け止めていくのだ。
「ふん!少しはマシな顔になったが、軽い!!軽いぞ!!」
憎悪と重力を込めたオズモールの拳が軽いわけはない。
それは受け止める度に響く音と徐々に変形していく腕や肘が物語っている。
「自由に生きるという事は素晴らしい!しかしお前はその代償の重さを知らなさすぎるっっ!!」
挑発するように叫ぶ九頭。
変形した腕は徐々に形を整えていく。
腕や肘から突き出る幾本もの棒は柚木の拳から吸収した衝撃を蓄えているのだ!

247 名前:九頭龍一 ◆SM24/QbfAY [sage] 投稿日:2010/05/26(水) 23:22:03 0
>242
佐藤に雁字搦めにされた綾和はなす術もなくその触手を受けていた。
脳内麻薬を分泌させられ苦悶の表情が徐々に虚ろになっていく。
>「あんたが留流家に取り込まれたのはいつ?」
>「なぜ九頭龍一に従うの?」
「あ・・あががが・・・・従わなければ・・・な・・・らんのだ・・・でなければ・・・滅び・・・る・・・」
朦朧としたまま佐藤の問に答え始める綾和。
更にヒートアップする佐藤の問に口を開こうとした瞬間、スタンドシートに掌が映し出された。
それは男の右手。
しかしそれと同時に別のものにも見える。
奥に続く腕は蛇のようであり、五つに別れた指先は蛇のようにそれぞれ目と口がついていた。
そう、まるでヤマタノオロチのように。
掌に当たる部分に九頭の顔が浮かび上がった瞬間スタンドシートは真っ黒に塗りつぶされた。
スタンドシート越しに綾和の目が正気に戻るのが見えたのが最後に佐藤の視界も黒く塗りつぶされる。

###########################################

次に視界が開けたとき、佐藤は高い城壁の上に立っていた。
眼下には先ほどのヤマタノオロチ。
「やはりこうきたかね。予想していたよ。」
掌の部分に浮かび上がる九頭の顔が高らかに笑う。

公園で綾和に仕込んだ触手を除去する際に頭に罠を仕込んでおいたのだ。
佐藤が綾和の脳内に触手を入れた時、カウンターとして九頭の一部を!
そして今、フルムーンの触手を遡り佐藤の精神世界に侵入したのだ、と説明を加える。

「折角だから質問に応えてやろう。
確かに綾和は私が護国天使でいる為に必要不可欠な存在だ。
君の推理通り、光輪だけはグリーン・D一体で構成されており、調整を行い続けている。
だから綾和を内部に取り込むことは出来ないし、本体を叩かれても困る。
だが、それを他の連中に伝えるのは不可能!」
勝ち誇るように鎌首をもたげる四本の指。
「スタンドは精神の具現化。ならば逆に精神に入り込むことも可能!
即ちここは君の精神世界!そして今、こうやって対峙している以上、君は肉体を動かす事は出来ない!
もちろん、私を放置して肉体にもどっても良いが、主のいない精神世界は脆いものだぞ?
随分と高く頑丈な城壁だが今からこれを壊し、君の精神を破壊しつくす!
精神力で抵抗しているが良い。
精神力で私に打ち勝ち、弱点を仲間に伝え私を倒す事が出来たのなら、その時は君の問いの答えは得られるだろう。
私がなぜまどろみ続けているのか、なぜゲームを開催するか、なぜ2000を越える取り込んだスタンドのうち100体ほどしか使わないのか。
そして…何と戦っているか、全てがわかる!」

高らかに叫ぶと五本の蛇は城壁へと体当たりをする。
それは佐藤の精神そのものへの打撃!
城壁は大きく揺れ、砕かれ、ひびが入る。
このままではそう時間がかかる事無く城壁は砕け散ってしまうだろう。

###############################################

一方、外の世界では。
精神世界に乗り込まれ硬直し動けない佐藤を前に綾和はもがいていた。
九頭の護国天使ア・バウ・ア・クーを維持する為に気絶するわけにはいかない。
早く逃げ出したいところだが、フルムーンの触手が動きを封じている。
そこに近づく二つの人影。
逃げる事も抵抗する事も出来ぬ綾和はきっと睨みつけて言い放つ。
「迂闊に近寄るなよ!今この女の精神世界に私のスタンドが入り込んでいる!
私に攻撃を加えればこの女は精神崩壊を起こすぞ!」
と。

248 名前:よね ◆0jgpnDC/HQ [sage] 本日のレス 投稿日:2010/05/27(木) 00:04:40 P
九頭を柚木に任せて佐藤を追ってきたよね。
自らの父親と、その目の前にボーッと立っている佐藤。
歩み寄ろうとした瞬間だった。

/私に攻撃を加えればこの女は精神崩壊を起こすぞ!」

「精神崩壊…?構わない、あなたを楽にさせてやれるなら…
 米綾和…夢を見ているだけの男ッ…永遠に夢の中にいろッ!!」

Sum41を実体化させる。もちろん、攻撃するつもりなどない。ハッタリである。
ここでカズがどう出るのか、それを見極めるべき時である。
もちろん、なんの考えもなしにこんな暴挙に出たわけではない。
カズも愚かではない。
わざわざ自分から人質を捨てるようなことはしない。
利用するなら最後まで利用すると踏んでの事だ。

「さあ、どうするのです…?自分にとって、佐藤さんは…その女はどうなったっていい…」

ここで更に念を押す。
人間の精神というものは意外にも脆く繊細なものである。
人質の意味を無くしてやろうというのだ。
失敗すれば佐藤の精神の保証など無い。
全てを確実に、慎重に行うよねでさえもこんな行動をとる。
なりふり構ってられない。それだけ追い詰められていた。

【TRPG】異能者達の奇妙な冒険【ジョジョ】2

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