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【TRPG】異能者達の奇妙な冒険【ジョジョ】3

1 :名無しになりきれ:2010/05/26(水) 22:46:29 0
前スレ
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1271698686/

TRPG系まとめサイト千夜万夜 (過去ログ有)
http://ime.nu/verger.sakura.ne.jp/

避難所
http://ime.nu/jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/computer/20066/1270719695/

まとめwiki
http://ime.nu/www31.atwiki.jp/jojoif/pages/1.html


新規さん歓迎!よろず相談は避難所の方まで

2 :名無しになりきれ:2010/05/26(水) 22:48:41 0
新手のスタンド使い用テンプレ

【本体】
名前:
性別:
年齢:
身長/体重:
容姿の特徴:
人物概要:


【スタンド】
名前:
タイプ/特徴:
能力詳細:


破壊力- スピード-   射程距離-
持続力- 精密動作性- 成長性-


A-超スゴイ B-スゴイ C-人間と同じ D-ニガテ E-超ニガテ
射程距離の目安
A:100m以上 B:数10m(50m) C:10数m(20m) D:数m(5m) E:2m以下

3 :名無しになりきれ:2010/05/26(水) 22:51:40 0
【あらすじ】
スタンド使いが不思議と引き寄せられ10年周期で行方不明事件が多発する北条市。
偶然や必然という名の運命の意図に引き寄せられたスタンド使いたちは奇妙な洋館へと誘われる。
そこに待ち構えていた怪人を倒した瞬間、事態は一変した。
洋館はその本当の姿を現した。
10年周期で行方不明になっていたスタンド使いたちはみな洋館の壁や床、柱に生きながらにして塗りこまれその一部となっていたのだ。

スタンド使いを取り込み自らの洋館型スタンドの一部にしてしまう九頭龍一の仕業であった。
九頭龍一自身は戦闘力はないが、取り込んだスタンド使いの能力を全て自在に使えるので正に無敵。
しかしその場で戦おうとせずにゲームを持ちかける。
館に塗りこまれたスタンド使いを刺客として差し向け、破れれば館の一部になってしまう。
刺客の魔の手を掻い潜り、九頭龍一を倒せば解放される。
館に塗りこんだスタンド使いはエネルギーそのもの。
即ち刺客として放出すればするほど九頭龍一は弱体化するのだ。
戦闘フィールドは北条市全域。
刺客として放たれたスタンド使いはあらゆるスタンド使いを倒し、洋館の一部に、九頭龍一の養分にするため襲い掛かるのだ。


【北条市はスタンド使いを惹きつける力が働いています。
それは北条市に潜む九頭龍一のスタンド留流家の力。
…要するに、理由は特に考えずに気楽にスタンドバトルを楽しむスレです。】

4 :柚木 美都留 ◆BhCiwB2SCaJ5 :2010/05/27(木) 03:13:41 0
オズモールの嵐のような連打も護国天使ア・バウ・ア・クーの四本の腕によってすべて受け止められてゆく。

>「自由に生きるという事は素晴らしい!しかしお前はその代償の重さを知らなさすぎるっっ!!」

「…くっ!!」
柚木は山の頂に独り立つ者の執念とも言える気迫を拳でびりびりと感じていた。

元々正攻法では攻略できそうもない相手。

しかし柚木は激情の中にも冷静さをもっており実は一つの賭けに出ていたのである。
護国天使がセイヴ・フェリスをとり込もうとした時のようにオズモールの拳をあえてとり込ませ、
その体内に重力弾を飲み込ませるつもりでいたのだ。

九頭は柚木の作戦を知ってか知らずか拳を受け止めるだけで、取り込もうとはしない。
柚木は護国天使に重力弾を埋め込むことに成功したら重力弾の重力を反転させて
そのまま九頭を空に落とすつもりでいた。
地球の重力から見捨てられ宇宙に落ちてゆく様は護国天使にはピッタリの最期ではなかろうか。
柚木はそう思っていたのだ。

「…!?」
ワンワンラッシュを繰り出す最中、柚木は護国天使の腕や肘から突き出る幾本もの棒に気がつく。

「…やばいっ!!」
通常叩いているものから棒が出てくることはまずありえない。
特殊攻撃の発動前とふんだ柚木は自分にかかる重力を壁の方向に変えると本棚に向かって落ち回避行動にでた。

ドスンとオズモールとともに本棚に着地すると少年は本棚の下に柔らかいものを挟んでいる気がした。
重力制御のよって柚木の足元となっている本棚の下というか本棚の裏には徳井一樹が潜んでいるようだった。

「…もお!どおしたらいいんだょ!!?」

5 :佐藤ひとみ ◆tGLUbl280s :2010/05/27(木) 20:36:22 0
「銀の皿に載せてヨカナーンの首を!」

預言者ヨカナーンに恋をしたサロメは何故ヨカナーンの首を求めたのだろう。
恋の狂気?殺して自分だけのものにしたかったから…?違う…そんな安っぽい理由だけじゃない…。

気がつくとひとみは白いベールを纏って立っていた。
目の前に銀色の大皿が差し出される。
皿に乗っていたのは……九頭龍一の首―――。
生々しい傷跡から血を滴らせている九頭の生首が突如目を見開いた。

そこで場面が転換する。
次にひとみが立っていたのは高い城壁の上だった。
黒い煉瓦で出来た要塞のような高い城壁は所々が螺旋階段のように奇妙に捩れている。
それもその筈、この城壁はひとみの精神を象徴したものだったのだから。


「やられたわ…。考えてみれば当然。
前にあの男の頭に細工をした所を見られてるんだから九頭が策を立てていない訳が無いわ。
それにしても精神世界とはね…。」

ひとみはまんまと九頭の策に嵌った自分の浅慮を後悔しながら呟く。


ドオーンという追突音と共にひとみの立っている城壁に横揺れが走る。
城壁の下を見ると五つの頭を持つ蛇が城壁に巨大な頭を打ち付けている。
細かい破片を撒き散らし次第にひび割れていく城壁。
城壁の崩壊は自身の精神崩壊を意味する。
その光景を見下ろしているとひとみの心に戦慄と強烈な孤独感が襲い掛かってきた。

目の前に霧の中にいるようなぼんやりした人影が現れた。
次第に輪郭を成す人影…それは鈴木省吾が作った幻影のひとみそのものだった。
剥き出しの右目の穴から触手を覗かせ不敵な笑みを浮かべるそれはひとみに向かって言葉を投げかける。

「あんたはこんな攻撃を受けているのに独りで対処しなきゃならないのね…。
いいえ、あんたが独りなのは今だけじゃないわね。あんたはいつも独りよ。
誰もあんたを好きじゃないし誰もあんたを理解しない。
あんた自身が他人に対してそうであるようにね…!」

半笑いで言葉を綴る幻影のひとみ。

「煩いわね!幻覚の癖に!」
ひとみが思わず掴みかかろうとすると幻は煙のような消えた。

6 :佐藤ひとみ ◆tGLUbl280s :2010/05/27(木) 20:40:56 0
幻影が消えると同時に再び城壁は激しい揺れに見舞われる。揺れと共に恐怖が襲う。
ひとみは常のやり方「思い込み」で恐怖や孤独感を封じ込めようとするが上手くいかない。
言わば精神への物理攻撃である大蛇の攻撃を思考や感情だけで封じることは無理があるのだろう。
ならばと、ひとみは荒療治に出た。
精神世界にフルムーンを出現させ、よねの父にしたのと同じことを自らの頭の中にもやったのだ。

「ドーパミンって適量出せば超効果的な抗不安剤になるのよねぇ…!
ちょっとハイにな気分になってきたわ。
精神世界は精神世界でスタンドが出せるのね。現実のフルムーンとは別に出現してるわ。」

ひとみはスタンドシート越しに現実の光景…フルムーンの触手に縛り上げられたままのよねの父と
瞬きもせずに棒立ちになっている自分自身を見て呟いた。


脳内麻薬の効果で気分を高揚させたまま話を続けるひとみ。

「九頭龍一…全然解ってないのね…。
私の精神に揺さぶりをかけるなら本人の姿で現れてちょっと優しくしてくれる方が余程効果的だったのに…。
こんな醜い化け蛇に体当たりされても心の殻は却って硬くなるだけよ!」

ひとみは揺れる城壁の上で背筋を伸ばし空を仰いだ。
すると黒い煉瓦造りの城壁は冷たい光沢を放ちやがて鉄の要塞と化した。
流石の大蛇も鋼鉄を打ち崩すのは手こずるようで城壁は大蛇の体当りによる揺れを止めた。


スタンドシートを通して現実の光景を眺めると、よねが父親と対峙している姿が見える。
ひとみは一時だけ現実世界に精神を戻し米綾和を拘束中の触手を数本だけ解き
その触手を微細化し気づかれぬように、よねの耳から体内に侵入させた。
九頭の仕掛けたトラップはフルムーンの触手を通じて精神に侵入している。今のフルムーンは精神世界に掛かる橋。
フルムーンに触れた人間は精神世界にリンクする可能性が高い。
ひとみはよねを精神世界に引っ張り込んだ。


ひとみは城壁の上に出現したよねに向かって言葉をかける。

「『どうなったっていい 』なんて随分冷たいじゃないの。
よね君、悪いけど親子の対面はお預けよ。ここから出るのに手を貸して貰うわ!
あんたの父親を殺しても私はここから出られない。これは九頭の力なんだから。
あいつは拘束されまま動けない。暫く放って置けばいいわ!

さて後はここを脱出する方法を見つけないとね。
オロチといえば"草薙の剣"かしら?出現の順序は逆だった気もするけど。
よね君、あんたのSUM41でこれを剣に変えてみて。」

ひとみは甲殻化させたフルムーンの触手を手にしながらよねに協力を求めた。

拘束されたままのよねの父親の側に精神世界の光景を映し出すスタンドシートを出現させたままにしている。
このシートは精神世界と現実をつなぐ通路になり得るかもしれない。

7 :徳井一樹 ◆MnJrk02a/Yx. :2010/05/27(木) 20:50:35 0

重力球は九頭にダメージがあったようだが致命傷にはなり得ていない。
進化したオズモールで九頭にラッシュを試みる柚木を見つめる。

>「その程度か…!だ か ら 留流家からお前ははじき出されたのだ!
>私は一人、頂点の存在!
>頂点はいつも孤高なものなのだ!」

「あの少年に限っては飲み込む気はゼロのようだな……口だけかもしれねーけど」

だが九頭の腕、どうにも様子がおかしい。
軽いといいつつも響く鈍い音とともに腕は徐々に変形していく。
しかしそれはどうもダメージ故の結果というわけではなさそうだ。
変形した腕はまた少しずつ形を整え、元に戻っていく。
推測というより憶測に近いがこのままあの衝撃を全て跳ね返す気なのだろう。
下手をすれば柚木は再起不能になってしまう。それに今のところまともに渡り合えているのは柚木だけなのだ。
猫の手も借りたい状況だというのに柚木まで失えば大幅な戦力ダウンだ。

「丁度いいぜ…こっちも留流家に飲み込まれないようにしてくれる人がいるのを思い出した。
ついでにあの状態を固定させておくのもな」

誰かと言うと大谷の『スマートガントレット』だ。
同じ事をもう一度やったことにするということは好きな時に過去の出来事を切り取って貼り付けるようなもの。
徳井が飲み込まれようものなら、スマートガントレットで前の状態になったことにしてセイヴ・フェリスでブン殴れる。
徳井は早速近くの大谷のいる場所へ移動しこのことを伝える。

「大谷さん…俺があの少年の援護に行く。…もし留流家にまた取り込まれそうになったら
『スマートガントレット』で九頭を『1の状態』になったことにして助けてくれ。そうすりゃ俺は奴を殴れる」

今冷静になって考えると大谷さんの能力って普通に強力だよな、と内心呟く徳井。
よねと佐藤にも出来れば援護をお願いしたかったがここにはいないようだ。
おそらくカズを探しに行ったのだろう。カズを倒せば護国天使から元の九頭に戻る可能性だってある。
柚木の援護に出ようとした瞬間、その柚木本人が自分の意思でこちらにブッ飛んできた。

>「…もお!どおしたらいいんだょ!!?」

「どおしたらいいんだょ!?じゃ、ねーーよ!……お前よく生きてたな。化けて出たのかと思ったぜ。
………で、いきなりながらお前とは利害が一致してそうだし話すぜ。してなくてもだけど。九頭の弱点になりそうな箇所を」

柚木の援護は叶わなかったが狙い所は一つだけある。それはグリーン・Dの左腕…光の輪の部分。
当初九頭は100以上のスタンドとの融合に失敗し、不定形な状態となっていた。
それをカズのグリーン・Dで矯正し今もその左腕を使用している。

「俺の経験とお前の戦闘を見て思ったが奴のスタンドにはほとんど弱点はない……奴自身に限れば。
例外は奴のスタンドの調整を果たしているグリーン・Dの左腕…つまり光の輪が弱点のはずだぜ。
あそこを切開するなりラッシュで叩き壊すなりすれば奴は元の姿に戻るはずだ。
そうじゃなくても弱体化くらいの効果は考えてもいいだろうな。
それに佐藤さんがカズ…本体のところへ行った…本体が倒せるならそれに越したことはねーが期待はできない。
九頭がみすみす調整役の本体を逃がすだけで終わるわけがねぇ。何か罠も仕掛けてるはずだ」

大谷の方向に顔を向け、飲み込まれそうになったら頼んだぜと言わんばかりの表情で見つめる。

「…とにかくお前も奴との戦闘に舌巻いてるなら手を貸せよな。親父狩りならぬ天使狩りと洒落こもうか」

本棚の裏から飛び出し、真正面から九頭に突っ込んでいく。
例のソナーによって九頭への奇襲はあまり役には立たない。男らしく正面突破で挑む徳井。

「こいッ!九頭ッ!アリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリ!!」

再びセイヴ・フェリスを出現させ、ラッシュを光の輪に向けて繰り出す。

8 :御前等裕介 ◆Gm4fd8gwE. :2010/05/28(金) 00:28:29 0
>「私の名前は吉野きらら。貴方は? ……そう、御前等祐介って言うのね。それじゃあ改めて御前等さん。
  過去の事は水に流して、協力し合いましょう。こんな状況ですもの。あ、でも……仲良くするのは少し考えさせて下さいな?」

半身を覆っていた草花の能力を解除され、奪われていた体力と栄養が十全の状態へと復調する。
御前等は何度か深呼吸を繰り返し、体中のあらゆる関節の調子を確かめるようにしながら、吉野と名乗った少女へ応える。

「いいだろう吉野さん。君とは長いようで短いようで割と長い付き合いになりそうだ。じっくりと俺の魅力を紐解くと良い。
 さて、交渉が成立したところで奴を倒す算段をしようか――って、透けとるッ!俺のスタンド透けとるッ!!」

>「お前たちのパワーが枯れる果てるのは…長く持っても5分か。それまで束になって俺に挑むのもいいかもしれぬな」

「何ィ!?花の次はおっさんに栄養を吸い取られてるだと!?なんて業の深い光景だ!夢に出るぞ!」

驚愕する御前等の傍で、吉野はスタンドで出現させた『鋸のような花』を『狩る者』へ向けて射出する。

>「動かないと言うのなら、無理に動かすつもりはありません。では、御機嫌よう」

(しまったッ、驚きのあまり解説役をやってるうちに先をこされた!ここは俺が颯爽と片付けるべき場面だというのにッ!)

果たして、鋸花は『狩る者』の首を跳ね飛ばす。
筋骨隆々の大男はその顔面に悟った笑みを貼りつけながら、首から上を落下させて絶命した。はずだった。

>「―ほーお、見事。太刀筋の良さは流石だな」

「ひいいいいいいおっさん首生やしとるゥ!?ちょっ、これマジやべえって!今後の俺の人格形成に多大なる影響を与えそうだ!」

>「吉野!お前は俺を『世界の最下層に居座っている』といったな!…とんでもない思い違いだ。
  俺は常に“上”も“下”も全て目指す!敗者の苦渋も勝者の甘美も全て味わってやろう!」

『狩る者』は両腕をマジックハンドに変え、吉野のスタンドの腕を掴み、握りつ潰す。
何らかのスタンド能力が発動しているのか、それは洗練された淀みのない挙動で、ほとんど力が入っていなかった。

「気に入らないな……気に入らないなその『愚行』ッ!極めてッ!非常にッ!とんでもなくナンセンスッ!!
 上と下を『両方』目指すだと?『世界』のッ!酸いも甘いも噛み分けるつもりか『狩る者』よッ!!世迷いごとも大概にしろッ!」

もう半透明に近い『アンバーワールド』に無理やり活を入れ、両足で大地を踏みしめる。屹立する。

「ならばここで苦渋をくれてやる!甘美は他の人に貰え!俺はやらんぞ、生憎昨日が特売日でな、品切れだ。
 貴様の両腕が『マジックハンド』になっているのは都合が良い。ディ・モールト都合が良いッ!俺の能力が活きるからな!」

スタンドの拳を裂帛の踏み込みで振り抜き、『狩る者』の両腕から伸びるマジックハンドの基部へと拳を叩き込む。
動作命令をインプットした歯車を、そこに撃ち込んだ。

「『アンバーワールド』――貴様の腕を支配した!『壊しかける能力』……そう言ったな。『対象』は貴様の心臓だッ!!」


【ボブのマジックハンドを操作し、筋肉で覆われた心臓へと能力が作用するよう差し向ける。】

9 :御前等裕介 ◇Gm4fd8gwE:2010/05/28(金) 01:27:23 0
さーて連日寝過ごしたけどジョジョです

世界は宇宙が一巡した後のパラレルワールドの一つ。一巡が分からん?原作嫁
舞台は日本のとある所にある市、北条市。
北条市には何故かスタンド使いが多く集まるが、それには理由があった。
九頭龍一と言う第二次世界大戦の頃から生きてきた、スタンド使いがいるからだ。
彼のスタンド能力は『留流家』。スタンド使いを集め、負かす事で取り込み自らの寿命とするスタンドだ。
北条市に住む、或いは引き寄せられた参加者達は、『留流家』に自分達を取り込まんとする九頭と『ゲーム』をする事に

話の内容はともかく、参加するだけならこんだけ知っていれば可能って言う


目立つコテはまず九頭龍一。まあガチムチです
最近さっさと切り上げたそうな雰囲気を感じます
自慢の管理能力は健在

佐藤ひとみ。準異能持ちと言われていますが、ぶっちゃけ彼女も
「平均的な性能の高い部類」に入ると思います
彼女が優れているのは避難所での人柄や対外政策、
文章力(難しい言葉を使わないから読みやすいだけとか言ってる人もいましたけど、それも「文章力がある」の一つかと)
ジョジョっぽいキャラ作りを正確に射抜く事が出来ている
の三点ですかね。人柄や対外政策に関しては他のスレに参加しても使える技能でしょう
そう言う意味では、異能と成り得るかもしれません
ジョジョっぽさも、他のスレでも同じ事をコンスタントにやらかせるなら異能足り得るかと

10 :佐藤ひとみ ◇tGLUbl280s :2010/05/28(金) 01:29:00 0
>>591
寝過ごして悪かったよお!

次に徳井一樹ですね
彼も佐藤とは違う方向性の「ジョジョらしさ」を表現するのが得意だと思います
徳井の特異で得意な特技は……何でもありません
また彼もジョジョの参加者の中では、避難所での愛想が「かなり」良い部類に入ります
避難所の盛況と言うとブーンばかりが思い浮かびますが、ジョジョもかなりのモンです

次によね君
彼も平均的な能力値ですね。ジョジョの参加者の中では中堅くらいの実力だと思います

生天目君
彼女は荒削り……と言うよりは不慣れで、道のよく分からない迷子ちゃんみたいな印象を受けますが
能力自体は結構高いです。よね君にしても、どこがどう突出していると言う事はありませんが
ちゃんと振りを対処出来て、キャラに一本筋が通っているってのは、それだけで能力があると言えるかなと
それすら出来ていない人がいるのが現状ですしね。別に嫌味や叩きの示唆ではなく、あくまで考察の一環である事を述べておきますね
あと彼女は必要とあれば敵役も動かせると言う、地味に高いバイタリティもウリかな?


11 :柚木 美都留 ◇BhCiwB2SCaJ5 :2010/05/28(金) 01:30:41 0
お次は大谷さん
彼も「ちゃんと振りを対処出来て、キャラに一本筋が通っている」って人ですね
んで、その一品筋が魅力的なんですよね。ジョジョっぽい因縁とかが絡んでいて
つまり物語上の役割と言うよりは、キャラとして魅力的に動けるタイプですね

次は吉野君
彼女は生天目さんや大谷さんと同じような性質を持っているかな
悪役を色々動かせて、更にそれらがジョジョの悪役のような人生哲学を持っていて魅力的って言うね
彼女も避難所での愛想はよし。書き忘れたけど、よね君は口数少ないがよし。生天目君は佐藤に並ぶレベルでよし。大谷さんも口数少ないけどよし
かな

あとは……どちらかと言うと「悪目立ち」なんだけど、一応書いとこう
書かないってのもそれはそれでアレだし。個人攻撃の目的では無い事を重ね重ね述べておこうかな

萩原君
彼も素材は良い線行ってると思うんだよね。家族を奪われた、でもただの一般人って言うね
でも相手の文章をちゃんと読んでないのか、読めてないのか
色々曲解アクションが多いってのが目立ったかな

ボブ君
悪役でラスボスの右腕ってな設定なんだけど、どうにも身に余る袈裟を着てるのが否めないかな
設定自体は悪くないんだけど、そこで止まってしまっていてキャラの深い意図や目的まで考えていないように見える
あとは避難所でも九頭に講釈されていたけど、TRPG的なレスが上手くないね
「結局何がしたかったの?何をしたの?」ってレスが多く目立つね


と、ジョジョに関してはこの辺かな

12 :徳井一樹 ◇MnJrk02a/Yx.:2010/05/28(金) 01:45:40 0
>>594
俺はあくまでお話や参加者を考察しているだけだから、力になれるかと言ったら微妙だがね
更に賛否両論が間違いなく予想されるから、人のいない今の内に……

とりあえず、自分に何が出来るのかを知るといいよ
得意な事は何か、不得意な事は何か
皆が皆得意な事を持っているとは限らない。何も持っていないなら
それを認めて、その上で何が出来るのか考える
不慣れで下手(言葉は悪いけど)だと自覚があるなら、相応のキャラを作ればいい

深い意図を持たせたり同僚との兼ね合いが大変な悪役は控える
大きな組織の意図の下にいるようなキャラも案外大変だから出来るか考える
ってな感じにの

そう考えると、SFのCは結構初心者向きのキャラかもしれん。中の人が初心者かはともかく
「自分の世界から完全に孤立した、誰の意図も受けない存在である。更に護られなければ死んでしまう」てトコだけを見るとの話ね
実際プレイングも受身っぽいけど、ちゃんと話をじわじわ動かしたり相手のリアクションを誘う振りはあったり
彼のロールは初心者のお手本的な性質を持っていると思う
そう言うプレイを危なげなく出来るってのは、どうなんだろうね。まあ個人の熟練度を語るのは主旨じゃないし割愛

受身のプレイは忌避されがちだけど、ある程度話を進めたりリアクションを取る余地さえ作れれば問題ないさね
とりあえず「結局何がしたいの? 何をしたの? gdgd喋ったくせに話進んでないし、行動も起こしてないよね?」
ってレスさえしなければおkと思えばいい……気がする。つまり話を動かす(または動かす為のネタを振る)か
話は進まないけど誰かに絡みに行って、相手がちゃんとリアクションを返せるようなレスをすれば、ってこったね

テンションの赴くままに書いて見直す事すらしてないから
激しく不安だけど、まあこんな感じかねい
これに異論や分からんトコがあっても、また話題として振ってくれれば俺ちゃん頑張るからさ!

13 :徳井一樹 ◇MnJrk02a/Yx.:2010/05/28(金) 01:47:55 0
うむむ、予想通り「結局どういうことなの?」な分かりにくいレスになっとる
悪いレスのお手本だね。こう言うレスになってしまった時は最後に

【要するに、話を動かせ。出来ないならとりあえず絡め。ちゃんと相手がリアクション取れるようにな
 いきなり「今日はいい天気ですね」とか言われても困るだろ。相手が答えて応えられるアクションを心がけるべし】

とか纏めを用意するのもいいかもね

14 :徳井一樹 ◇MnJrk02a/Yx.:2010/05/28(金) 01:50:08 0
あっはっは、人いねーと思ったら基地外が潜んでおったか
こりゃー大戦犯だね。非常に申し訳ない結果となってしまったよ

15 :佐藤 ◆tGLUbl280s :2010/05/28(金) 02:14:13 0
>>9-14
うわっ!びっくりした!これ評論ですか?すごい
なんかすごく身につまされることが書いてあるというか勉強になります
というか参加してない人でこのスレ読んでくれてる方いるんですね何か恥ずかしいっすね

16 :草村慎吾朗 ◆BhCiwB2SCaJ5 :2010/05/28(金) 17:08:01 0
>荻原さん
徳井たちが図書室内で死闘を繰り広げている最中、荻原と生天目は壁を挟んですぐ隣の廊下にいた。
生天目が右往左往していると室内からよねが飛び出して来て階段を駆けのぼり2階に向かう。
荻原はと言うとやはりスタンドシートのメッセージもあるために佐藤のことを気にかけているようだ。

どうしようか荻原たちが迷っていると彼らの後ろには知らない長身の男が立っていた。
肩までかかった金色の髪に灰色の瞳。大きく開いたYシャツの胸元からは逞しい筋肉が見え隠れしている。

男は両肩に一人づつ少女と少年を担いでいた。両肩の二人は工業団地の裏の小さな公園にいたバカップル。
カップルは男の両肩の上で足をバタつかせて暴れているが、もの凄い力で押さえつけているために逃げられない。

「九頭さ〜ん。スタンド使い捕まえてきましたよ〜」

室内の九頭に大声で報告する男。今さらなのだが彼も狩るものなのだろう。

「ねー君たちもスタンド使いだよね?」
ステレオポニーと生天目の会話を聞いていた男は唐突に荻原と生天目に問いた。

「今日は大量だね。おいらみたいなスタンド使いのなり損ないみたいのはこうやって雑務でがんばるしかねーからね〜」

九頭はすでに護国天使と化しているというのにまだ狩りを行っているこの男はどこの団体にでも一人はいる残念な男。
ボブ・バンソンやよねの父親とは真逆の存在だった。九頭にも忘れ去れさられてしまっているような可哀想な男なのだ。

「いっぱい狩ってえ〜もっと九頭さんに誉められてーんだけど。おいら〜」

長身の男はそう語るやいなや荻原に片足蹴りを放つ。
無論カップルを担いだままであったが男は二人の重さをものともしていないようだった。
スタンド能力ではなく生身の身体能力の高さから繰り出す蹴りが荻原の顔面を襲う。

男の頭の後ろにはスタンドなのであろうか小さいフランス人形のようなものがひょっこり顔をのぞかせていた。

(図書室前の廊下で荻原さんの顔面に片足キックをする草村)

17 :草村慎吾朗 ◆BhCiwB2SCaJ5 :2010/05/28(金) 18:43:24 0
【本体】
名前:草村慎吾朗
性別: 男
年齢: 20
身長/体重:197/82
容姿の特徴: 金髪に灰色の瞳。父はアメリカ人で母が日本人。
人物概要: おまぬけだが身体能力は高い。


【スタンド】
名前: メアリー
タイプ/特徴:情報操作系。30センチほどの人型のスタンド
能力詳細:相手が口に出した10文字以内の情報を捕獲して忘れさせることができる。
ただし捕獲してストックできるキーワードは一人につき一つだけ。


破壊力-E スピード-E   射程距離-C
持続力-A 精密動作性-E 成長性-E

(例えばスタンド名を聞き出された人は言霊をメアリーに捕獲されて
自分のスタンドのことを忘れてしまいます。かなりややこしい能力です。
忘れてしまった事柄はメアリーがキーワードを解き放つか戦闘不能になるまで継続します)

18 :吉野きらら ◆HQs.P3ZAvn.F :2010/05/28(金) 19:05:51 0
両腕を破壊され、しかしきららは困窮の色を微塵たりとも零さない。
零さない――そう、表に晒しこそしなかったものの、彼女は酷く追い詰めされていた。
体力の消費が、余りにも著しいのだ。
反比例して不幸を乗り越えんとする精神力は燃え上がるが肝心の、その力をバンソンに余さず叩き込む術が無い。
花弁の刃は身体を液状化する事で凌がれ、全身を花と散らすには絶対的に時間が足りない。

> 「吉野!お前は俺を『世界の最下層に居座っている』といったな!…とんでもない思い違いだ。
> 俺は常に“上”も“下”も全て目指す!敗者の苦渋も勝者の甘美も全て味わってやろう!」

花のような微笑みは噛み潰され、代わりにきららの口元には苦味が滲む。
彼女はおもむろに裂けた両腕を上げ、十指全てを鉤爪と模し、バンソンの首を見据えた。
完全に密着して、反撃される事も厭わず、最速を以って彼を花にしてやろうと、決めたのだ。
彼女の体力が完全に損なわれ衰弱死するか、バンソンの存在全てが損なわれるか、我慢比べだと。

無論、非常に分の悪い戦術ではある。
バンソンの反撃を防ぐ術も余裕もなく、また彼に勝利したとしても。
その時には彼女の生命力もまた限界を迎えているかもしれないのだから。
それでも、他に術がないのだ。
自分を『死』と言う最大の不幸の深淵にまで追い込み、そこに転がっている勝利を掴み、再び這い上がる。
そこまでしなくては、命を失う覚悟をしなければ、この窮地は乗り越えられない。
堅牢な決意が、彼女の瞳に漆黒の意志を宿す。

> 「気に入らないな……気に入らないなその『愚行』ッ!極めてッ!非常にッ!とんでもなくナンセンスッ!!
>  上と下を『両方』目指すだと?『世界』のッ!酸いも甘いも噛み分けるつもりか『狩る者』よッ!!世迷いごとも大概にしろッ!」

> 「ならばここで苦渋をくれてやる!甘美は他の人に貰え!俺はやらんぞ、生憎昨日が特売日でな、品切れだ。
>  貴様の両腕が『マジックハンド』になっているのは都合が良い。ディ・モールト都合が良いッ!俺の能力が活きるからな!」

けれども御前等の叫びに、彼女の腕はぴたりと止まる。
彼はバンソンに苦渋を与えた。そして甘美は他の誰かに貰え、とも言った。
この場にいるのは、たったの三人。御前等とバンソンと、きらら本人。
ならばこのままでは、バンソンに甘美を与えるのは、きららとなってしまう。

その結論に彼女の意識が至ると、彼女は忽ち表情を支配する窮迫の陰りを、激憤と炎上させた。
自分の幸福が他人に削り取られるなど、蜜を吸われるばかりの花の如き扱いを受けるなど、彼女には耐え難い屈辱だった。
自分は誰よりも幸せになり、常に幸福の階段を上り続けるのだと、
目先の勝利に拘泥する余り見失われていた幸福への願望が、彼女の胸に『返り咲いた』。

「……私とした事が、忘れていましたわ……。私は決して一時だって……
 幸福の階段を下ったり、幸福から遠ざかったりしませんの……。いつだって……上へ……幸せへ歩み続けるのです……」

胸を押さえるバンソンに歩み寄り、彼の両腕に花を咲かせて強引に捻じ曲げる。
全身の骨が朽ちた木材に挿げ変わったかのように軋み、身体は血管に鉛が走っているのでは思える程に重い。
それでもきららの気概は、瞳に宿す漆黒の意志は潰えない。

「確か……貴方は『悪魔の手のひら』の中心……でしたわね」

うわ言のように掠れ、抑揚に乏しい音色で、彼女は呟いた。

「『悪魔の手のひら』、『スタンドの目覚め』、『世界の中心』、『幸福への階段』、『スタンドの多重発現』、『心臓の裂け目』……。
 貴方と……御前等さんに感謝しなくてはなりませんわ……。
 貴方達が階段となって……私は更に……上へ……行く事が出来ます……」

彼女の視線が、バンソンの胸に開いた穴を射抜く。
そしてその軌跡を、『メメント・モリ』の右腕が辿った。
バンソンの心臓の奥深くにまで、彼女の手が達する。



『悪魔の手のひら』の中心に、吉野きららが至った。

19 :吉野きらら ◆HQs.P3ZAvn.F :2010/05/28(金) 19:08:25 0
瞬間、彼女の姿が足元から兆した巨大な、しかし萎びた蕾によって覆い隠された。
蕾は一瞬震え、それから徐々に瑞々しさを取り戻し、更には開花さえしていく。
咲き開いた花は、無数の花弁と化けて渦を描き散っていく。
その中心に、きららは佇んでいた。
疲労も窮乏も感じさせない、腕の裂傷すら綺麗に消え失せた、生き生きとした立ち姿で。

「……ご覧になるのは初めてですか? 自分や九頭……でしたか?
 それ以外の者が『スタンドの多重発現』を行うのは。
 これは……何と名付けましょうか。……何処までも続く『幸福への階段』と言う意味で、
 『ステアウェイ・トゥ・ヘブン』と言うのは、どうでしょう」

おとぼけた口調で余裕に満ちた様子を演じながら、きららは満開の花を思わせる微笑みをバンソンへ向ける。
そのまま答えを待たず、彼女はバンソンの周囲を花で満たす。
刃の花びらを持った純白の花々が、彼の体を取り囲う。
彼の体から流れた血は、地面ではなく白い花弁のみを紅に染める。
花弁の鋭利化と共に、花の吸水力も異様に高められているのだ。

「身動きを取れば、それだけ刃は貴方を深く刻みます。
 逃れようと液体になろうものなら、あっと言う間に花の糧ですわ
 せいぜいそこで、事切れるまで徐々に足元から競り上がる不幸に絶望していて下さいな」

微笑みに嗜虐の色を加えて、きららはバンソンを見下した。

「……貴方は上も下も目指すと言いましたが、それは間違いですわね。
 貴方は上の者に破れ、最下の中で勝利を得て、それで全てを知ったつもりになっているだけですわ
 ……それでは、御機嫌よう」

最早視線も言葉も向ける価値はないと、きららはスカートの裾を翻す。

「では参りましょうか、御前等さん。貴方もここで勝利したからと言って、
 それで満足と言う訳ではないのでしょう?
 貴方には助けられましたからね。今度は私が貴方を、貴方の幸せに押し上げる番です」

無論御前等が幸せに辿り着いた時、今度こそ彼女は彼を殺すつもりではあるのだが。



【スタンド】
名前: ステアウェイ・トゥ・ヘブン
タイプ/特徴:同時発現と言ってるけど実質『メメント・モリ』の新能力
能力詳細: 直訳は天国への階段だけど、天国と書いて幸福と読むって事で
     一言で表すと『返り咲く』能力。常に幸せに向かい続けると言う決意と、悪魔の手のひらが相まって発現
     十全の状態に返り咲いたけど未完成の効果だった上に、もう意図的には発動出来ない。
     
破壊力-なし スピード-なし   射程距離- なし
持続力-A 精密動作性-なし 成長性- D(あと一歩で完成)




【軽く覚醒と言う事で
 ボブさんはきらら的には「もうトドメさしたも同然」って感じです。
 きららは九頭の所へ向かいますが、「まだ生きてんだよ舐めやがってこの野郎」と九頭の元へ駆け付けるとかアリだと思います
 あと御前等さん、出来れば九頭の所にまで場面を先導しちゃって下さいなのです】

20 :九頭龍一 ◆SM24/QbfAY :2010/05/28(金) 22:11:00 0
>4>7
「ほう?」
ワンワンラッシュを止め、弾かれるように引いた柚木に九頭は僅かながら感心していた。
今発動している能力は攻撃を受ければ受けるほどその力を増すというもの。
それを察したのか、と。
だがそれでも最早十分なほどの力は蓄えられた。

激しい戦闘の中における僅かなる幕間。
その中で徳井は九頭の弱点の当たりをつけ、事後策を大谷に託している。
対して九頭は図書館での異変に気付いていた。
図書館内にかんじる人の気配が少なすぎるのだ。
佐藤が綾和と接触したのは感じている。
しかしそれだけではない、と。
佐藤に対する罠は仕込んでおいたがそれ以上の対応が取れていない。
1%でもその可能性があるならば潰しておくのが常道。
そしてその1%はここでの戦いの決着をつけるより重要と判断していた。

>「こいッ!九頭ッ!アリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリ!!」
光輪に向かってラッシュを仕掛ける徳井に対し、九頭は全身を大きく広げるようなポーズをとって迎え撃つ。
全く無防備のように見えるがそうではない。
先ほどオズモールの拳を受けた際に生えた棒が全身から生えているのだ。
そう、今や全方向に方針を向けた砲台となっているのだ。

「ふはははは!天に唾吐くものがどうなるか思い知るが良い!」
徳井のラッシュが届く前にそれは一斉に放たれた。
既に発動していたラッシュの為に徳井に向かって放たれた棒は全て弾かれたが、棒は無数に全方向に放たれたのだ。
誰を狙ったという事ではない。
放つ事こそが目的なのだから。
本棚に、壁に、天井に、床に突き刺さる棒。
それは突き刺さった部分を侵食し養分として形を成す。
体長1mに満たない3頭身の小さなな天使。
ミギー!ミギー!と産声のような鳴き声とともに図書館に溢れかえる。

「美都留。お前のラッシュは中々の威力だったぞ。そのエネルギーを利用して生まれたクピドだ。
己の拳のエネルギーで死ぬが良い。」
厳かに宣言した九頭は3対6枚の翼を広げ天井の穴へと舞い上がる。
綾和を確保する為に!

あとに残されたのは図書館中に浮遊するクピドたち。
数は50を越えるだろうか?
見た目はかわいいがそのやる事はかわいくない。
口を大きく開き、更に開き裂けてもまだ開く。
最早顔全体が口となり、そこからは弓と鏃が覗いている。
図書館中を飛び回るクピドたちは徳井、柚木、大谷に一斉に矢を放ち捲くる!

【擬似生命体クピド。オズモールのワンワンラッシュエネルギーを利用して誕生。
一体一体は弱いですが数が多く、飛行+飛び道具を持っています】

21 :九頭龍一 ◆SM24/QbfAY :2010/05/28(金) 22:11:11 0
前スレ>248
よねと対峙した綾和は動けない身でありながら何処となくホッとした表情を浮かべていた。
>「精神崩壊…?構わない、あなたを楽にさせてやれるなら…
> 米綾和…夢を見ているだけの男ッ…永遠に夢の中にいろッ!!」
「ふふふ、やはりお前は何もわかったいないな。
私が夢を見ている?どうしてそういいきれるのかな?
実は夢を見ているのは私ではなくお前だとは思わないのかな?
楽にさせてもらえるのならばありがたいのだが、その後の事は考えているのか?
私が楽になった分、誰が代わりをする?」
言っている事は判るまい、と言わんばかりに自嘲気味な笑みを浮かべ首を振る。
しかしその目は九頭に操られているものの目ではなく、確かに父親の目であった。

>「さあ、どうするのです…?自分にとって、佐藤さんは…その女はどうなったっていい…」
「どうする、も、な。どうも出来ないさ。
ただいまの台詞は褒めてやろう。
大切なものには限りなく優しく。だが、それだけでは足りないのだ。
そうでないものには限りなく残酷になれなければ生き残れない。
お前の今の台詞には残酷な面も含まれている。
子供のお前に私の背負う業は背負わせなくなかったがな、それが出来るのならば私を撃てば良い。
その代わり、私に代わってお前が九頭様を支えるのならば、な!」
覚悟を決めたように目を閉じる綾和。
今ならば簡単に綾和を再起不能に出来るだろう。

>5>6
一方精神世界では。
鋼鉄の要塞と化した城壁に体当たりを止めた九頭ヒドラは大きく身体をくねらしていた。
「壁は精神力の具現。強き意思を持つことでそのまま強化される。
だが、どんなに意思を強く持とうが私はそれを打ち壊し、その上で蹂躙しつくす!!」
5つの鎌首は大きく口を開き、灼熱の炎を浴びせかける。
鉄で出来た城砦は炎に包まれ赤く変る。
このまま炎を浴びせられ続ければやがて溶けてしまうだろう。

城壁や鉄の要塞、蛇や炎。
視覚的には様々だが、結局は佐藤と九頭の精神力のぶつかり合い。
佐藤の言うように優しく接すれば容易く門を開けさせられたかもしれない。
だがそれが出来ないのもまた九頭の業なのであろう。

22 :荻原秋冬◇6J1m09mANS :2010/05/28(金) 22:16:56 0
>>16
今荻原たちは図書室前近くの廊下にいる。
図書室の中からは死闘を繰り広げているせいかものすごい騒音が聞こえる。
荻原は佐藤ひとみからもらったスタンドシートをみていた。
二人ともこの状況の中でどうするかを考えていた。

すると背後から人の気配を感じる。
振り返ってみればかなり巨体の男が両肩に男と女を担いでいた。

>「ねー君たちもスタンド使いだよね?」
大男がいきなり荻原と生天目に話しかける。

>「今日は大量だね。おいらみたいなスタンド使いのなり損ないみたいのはこうやって雑務でがんばるしかねーからね〜」
>「いっぱい狩ってえ〜もっと九頭さんに誉められてーんだけど。おいら〜」
そう言った瞬間!突然その大男は荻原に片足蹴りを放ったのだ!
防御するのが遅れてその大男の強烈な蹴りを顔面で食らってしまい
そのまま仰向けにぶっ倒れた。

「がはっ!…ち、ちくしょー!」
起き上がり『プラントアワー』を出現させてその男に殴りかかる…
しかし大男は攻撃を受ける前に素早くかわしたのだ!

「なにぃ!プラントアワーの攻撃をかわしやがった!」
続けて攻撃しても次々とかわされてしまった。
本当はバラの鞭で攻撃したいのだが、大男の担いでいる男女の二人にあたってしまう恐れがある。
その二人が敵ならともかく、二人は逃げ出そうとしてもがいているのだから
少なくとも敵ではないだろう。

「くっそ〜、なら…これでどうだ!いけ!プラントアワー!」
『プラントアワー』が廊下を勢いよく殴りつけると、そこから植物の蔓が大量に伸びた。
こうなったら大男を一気に絡め取ろうという作戦に出たのだ。

だが、荻原はかなりの嫌な予感を感じ取った…
あの大男の余裕の笑みを見て…

23 :徳井一樹 ◆MnJrk02a/Yx. :2010/05/28(金) 23:26:10 0

>「ふはははは!天に唾吐くものがどうなるか思い知るが良い!」

九頭の台詞ととも全方向に放たれた棒はセイヴ・フェリスのラッシュの前に簡単に弾かれていく。
この時点で、徳井は九頭の行動の意図が掴めない。
いや…そもそも100のスタンドの能力を使用でき更に能力をも合成できる九頭の行動を予想するなど不可能に近い。
必殺のスタンド能力を次々と使ってくる九頭には後手に回らずを得ない。

九頭の放った棒は図書館の至るところに突き刺さる。
棒が突き刺さった部分はまるで腐るように朽ちていくではないか。
放った棒は刺さった部分の養分を吸収し、形を成していくのだ!
徳井はこれが人間に対して…柚木や自分に対して刺さったらと考えると『ゾッ』とした。
生まれたのは小さな天使。数は50を越えている。
勝手に九頭ジュニアと頭の中で命名するが想像すると少し気味が悪くなったのでやめた。

>「美都留。お前のラッシュは中々の威力だったぞ。そのエネルギーを利用して生まれたクピドだ。
>己の拳のエネルギーで死ぬが良い。」

徳井達が周りのクピド達に気をとられている内に九頭は柚木が開けた天井の穴から飛び去っていく。
恐らく目的はカズの保護。そうでなければ九頭が目の前の敵からわざわざ背を向ける理由がない。

「ヤロォ〜〜〜ナメてんのかッ!こんなチビ共すかさずセイヴ・フェリスの拳を叩き込んで終了……」

最初の愛らしい姿は既になく、そこにいるのは顔全体が口となった化物がいた。
徳井の台詞が言い終わらない内にクピド達はケタケタと笑いながら一斉に矢を放つ!

「オーーーーッノォーーーー!!クソッ、飛行プラス飛び道具ってのが厄介だな!」

矢をセイヴ・フェリスの高速のラッシュでなんなく弾いていくがキリがない。
隙を見てクピドを3、5体叩き潰すが焼け石に水。ほとんど効果はなかった。

「時間稼ぎかよ!……目的は九頭の制御盤の役目を果たすカズのグリーン・Dを確保するためか?
今のとこ思いつく理由はそれしかねーかな…」

再び放たれる矢から、直接的なドンパチに向いていない大谷も守りながらセイヴ・フェリスのラッシュで防いでいく。
カズのところにいるのは戦闘向きではない佐藤とよね。よねのSum41なら九頭との戦闘も可能だろうが
いかんせんよねは親であるカズが敵にいることでまだ迷っている。徳井はその気持ちが痛いほどわかる。

よね達に思いを馳せながらラッシュの連打で矢を弾きつつ、素早く図書館から脱出し廊下をダッシュで駆け抜ける。
口と化した体の背にくっついた翼をパタパタとさせながら追いかけてくるクピドから逃げながら徳井は叫んだ。

「めんどくせーぜ!このままこいつらから逃げながらカズのところへ行く!
それに狭い廊下なら方向が限定されて逆に反撃も防御もしやすいからよォーーーーッ!」

一方向から放たれる矢は周囲に気を配りながら弾くよりも楽だった。
それどころか弾いた矢が偶然一体のクピドに刺さるということもあった。

24 :よね ◆0jgpnDC/HQ :2010/05/28(金) 23:50:36 P
/楽にさせてもらえるのならばありがたいのだが、その後の事は考えているのか?

「そんな事は後で考えればいいッ!
 あなたはやりすぎた…もう遅いんですよッ!!」

足もとに散らばる小石を手に持ちSum41を実体化させる。

「この小石を今すぐ、貴方の方向に飛ばすことができます…神経伝達のスピードよりも速く」

人間が、例えば大脳で「人差し指を曲げる」という思考をしたとする。
その思考が手まで伝わって、人差し指が動き出すまでが神経伝達のスピードである。
個人差はあるもののそのスピードは一般的に0.4秒とされている。
そのスピードより速く撃ち出す。
実際には不可能だが、限りなくその速度に近いスピードで撃てる。よねにはそれが出来た。

「佐藤さんを…解放してください…さもなくば、頭に風穴が空きます…ッ」

小石が乗っている手はプルプルと震えていた。
それでも確実に綾和の頭に狙いを定めている。

(ただの生理反応だ…理性で克服できるハズ…どうしてこんなに恐れているんだ…ッ)

/子供のお前に私の背負う業は背負わせなくなかったがな、それが出来るのならば私を撃てば良い。

その言葉を聞いた時。
よねの額から顎にかけて、一筋の水が流れた。

「カズッ!!解放してくださいッ!…お願いします…あなたをこんなに呆気なく失いたくないんですよ…」

25 :佐藤ひとみ ◆tGLUbl280s :2010/05/29(土) 01:09:59 0
>21
よねを不意打ち同然に精神世界に引きずり込んだ佐藤ひとみ。
だがよねは協力を強要するひとみの目の前でテレビの映像が途切れるようにプツンと存在を消した。
よねを現実世界に引き戻したのは父、米綾和。
ひとみが受けている精神攻撃は九頭のバックアップを受けて米綾和の脳から発生したものである。
米綾和にも僅かながら精神世界に干渉する力が残っていたらしい。

「よね君?何処行ったのッ?ずるいわ!私一人でどうしろっていうのよ!!」
消えたよねに向かって的外れな恨み言を言うひとみ。

九頭の声が精神世界の中を木霊する。
>「壁は精神力の具現。強き意思を持つことでそのまま強化される。
>だが、どんなに意思を強く持とうが私はそれを打ち壊し、その上で蹂躙しつくす!!」
黒い掌から生えた五つ頭の化け蛇。五つの首の根元である掌の中心に九頭の顔を模した黒い塊が現れひとみに語りかけていた。

鋼鉄の要塞の頂から下を見ると化け蛇は徒労の体当たりを止め
鎌首を擡げ5つの頭それぞれの赤い口から鋼鉄をも溶かす勢いの猛烈な炎を吐き始めた。
次第に溶鉱炉の鉄のように赤々と変色し溶解していく鉄の要塞。
大蛇の攻撃は精神への物理攻撃。ひとみの精神は地獄の業火に炙られる罪人のように成すすべも無く弄られる。
脳内麻薬の効果で押さえ込んだ恐怖感は戒めを解かれた蛇のように再びひとみの心の中で鎌首を擡げ出した。
恐怖と孤独の再来が消えたはずの自身の幻影を呼び戻す。

「あんたは自分自身で孤独を選んでいるようでいて実はそうでもないのよね。
あんたの性格は人に嫌われる要素の塊だものね。
あんた自身も本当はそれに気づいてて最初から心理的に人を遠ざけてるんじゃないの?
あんたは一生誰にも好かれず誰にも愛されずに醜く年老いて行くのねぇ〜。きっと。
九頭龍一に執着しても絶対にあんたの手には入らないわよ。
あんたもそれに気づいてる癖に…本当に虚しいわねぇ〜しつこい女は嫌われるわよ!」

ひとみに向かって悪態を吐き続ける幻影のひとみ。

「煩い!煩い!煩いッ!!あんたの言う通り全部気づいてるわよ!!だけどそれが何だっていうの!!
気づいたってどうにもならないことは『無い』と思うしかないでしょう!!
あんたの存在なんて絶対に認めない!あんたなんて『無』に返してやる!!」


ひとみは恐怖感を抑え込み感情を怒りに変えて勢いに任せて叫び散らした。
髪を振り乱して右目の穴から大量の触手を伸ばし幻影に撒きつける。
怒りの感情に任せた触手は恐ろしい勢いで増長し、巻きつく触手は幻影の体全体を繭のように包んだ。
そのまま繭を締め付け中の幻影を砕く。幻影は繭の中でガラスのように砕け散り、ガラスの破片はひとみの触手を傷つける。
右目の触手は視神経と繋がっている。ひとみの右目から赤い血が幾筋か流れた。


「九頭龍一…フェアなあなたらしくもないわね。この状況ずるいわよ!
あなたは化け物で私は城壁。
精神力で打ち勝て…なんて言っておきながら、このシチュエーションじゃ私は防戦一方じゃないの。
でも甘く見ないでよ…私だって攻撃の手段は持ってるのよ。
前に考えておいてって言ってた質問があったわよね!
あなたの分身のキモい化け蛇なんかじゃなく、あなた自身から保留してた質問の答えを貰うわよ!絶対に!!」

26 :柚木 美都留 ◆BhCiwB2SCaJ5 :2010/05/29(土) 02:04:24 0
>7>20>23
本棚に着地した柚木は重力を通常に戻し、その後ろに隠れようとするが徳井と鉢合わせになりびっくりする。

>「どおしたらいいんだょ!?じゃ、ねーーよ!……お前よく生きてたな。化けて出たのかと思ったぜ。
>………で、いきなりながらお前とは利害が一致してそうだし話すぜ。してなくてもだけど。九頭の弱点になりそうな箇所を」

「……。…話せば?」
柚木は徳井の顔を見ないで弱点の催促をした。少年の心は微妙だった。
心のどこかがこそばゆい感じがする。柚木の心はまだ、転ぶ前から包帯を巻いている状態。
利害関係とはいえ同じ目的をもった仲間と共闘するのは初めての経験であり照れてしまっていたのだ。

さすがに徳井は繭の状態から九頭を観察しており、実戦でも取り込まれそうになるなどして
護国天使の光の輪が何かしらの起点であるとともに弱点であることを肌で理解していたようである。

話終えると徳井はふと視線を変えた。柚木もつられて視線の先を見やると大谷がいた。
柚木のデコにナイフを当てた男だが今は味方なのが頼もしい。

>「…とにかくお前も奴との戦闘に舌巻いてるなら手を貸せよな。親父狩りならぬ天使狩りと洒落こもうか」

「…うん」
柚木は照れている様子を隠すため短く返事をすると徳井の目をちらりと見ようとしたが、すでに徳井は本棚から飛び出していた。

>「こいッ!九頭ッ!アリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリ!!」

「あ〜っ!!まって!!言うの忘れた!!」
徳井の背中に投げかけた言葉は間に合わなかった。

>「ふはははは!天に唾吐くものがどうなるか思い知るが良い!」
九頭の高笑いと共に無数の棒が全方向に放たれる。

「…っ!!」
片目をつむりながら柚木は徳井に悪いことをしてしまったと思っていたが
セイヴ・フェリスのラッシュは難なく飛来する棒を弾き返している。

「ワンワンワンッ!!」
発動が予測されていたために柚木もワンワンラッシュで軽く棒を弾き、ついでに大谷に向かって飛んでいく棒も一振りで横に弾く。
しかし九頭の攻撃にしてはやけに軽い攻撃だと柚木の頭には一抹細微の不安がよぎりその予想は的中した。
なんと天井や壁に突き刺さった棒がクピドに変化したのだ。
無数のクピドから一斉に矢が放たれると九頭はその混乱に乗じて綾和の所へ向かう。
徳井はと言うと佐藤やよねを守るためにクピドを迎撃しながら九頭の追撃を開始する。

>「めんどくせーぜ!このままこいつらから逃げながらカズのところへ行く!
>それに狭い廊下なら方向が限定されて逆に反撃も防御もしやすいからよォーーーーッ!」
廊下からは2階に向かい走っている徳井の声がする。

「…はぁ〜…こんな子供だましみたいなの…」
柚木はオズモールの両手からピンポン玉ほどではあるが重さが1トンくらいはある無数の重力弾を床一面に転がすと
重力弾の重力を反転させて天井にむかって一気に落とし図書館に残ったクピドを一瞬で一掃する。
さらに徳井を追いかけながら廊下を飛んでいるクピドも重力弾を操り同じように粉砕してゆく。
死にきれなく体に重力弾をめり込ませているクピドは何度も重力反転をくらい玉が貫通するまで壁や天井に叩きつけられた。

柚木は九頭を追うなら重力反転で飛んでいけばよかったのだが飛び出していった徳井が心配だったのでついてゆく。

27 :大谷杉松 ◆vReXCpsNBKcm :2010/05/29(土) 11:30:54 0
>>20>>23
徳井と柚木の攻撃を弾き余裕のある九頭、
むしろそのエネルギーを使い、『クピド』なる小さな手先を作り出してしまった、
そのときの柱からは柚木に
放たれる矢からは徳井に守ってもらいながらもナイフで応戦するが…数が多すぎる、

>「めんどくせーぜ!このままこいつらから逃げながらカズのところへ行く!
 それに狭い廊下なら方向が限定されて逆に反撃も防御もしやすいからよォーーーーッ!」

>「…はぁ〜…こんな子供だましみたいなの…」

戦略的撤退をする徳井と重力の弾でクピド達を一掃する柚木、
後ろからの追っ手はいなくなったが今皆と離れては危ない、
大谷も二人についていく…

「念のためにもう一度…取って置きの駄目押しって奴だ!!」
『タショウナラジカンモカセゲルワ…イマノウチニ ユウリナバショニイキマショウ』
                『パチィィィン!!』

先ほどの徳井と柚木のラッシュを「もう一度やった事」にする、正確には「九頭がラッシュの衝撃だけをもう一度受けた事」にした、
衝撃だけなら弾くことは出来ない、多少ながら時間稼ぎにはなるだろう、

28 :佐藤ひとみ ◆tGLUbl280s :2010/05/29(土) 14:48:00 0
(>>25の続き)

ひとみは二度フルムーンで九頭の位置を捕捉中に九頭の記憶を覗いた。
何人か同時期に白昼夢を見た協力者もいるようだが、彼らの話を聞く限りひとみの見た九頭の記憶は
他のメンバーの誰よりも鮮明で具体性のあるヴィジョンとして現れ感情すら共有している。
九頭は『スタンドは精神の具現化。逆に精神に入り込むことも可能』と語っていた。
それならばフルムーンが九頭の精神に入り込むことだって出来るはず。

おそらくフルムーンが位置捕捉に使うスタンドの波長は九頭の精神に干渉する。
鮮明すぎる記憶のヴィジョンはフルムーンを通じ九頭の精神に直接アクセスして得た情報ではないだろうか。
五つ頭のオロチはフルムーンの触手を通じてひとみの精神に侵入している。
オロチの姿をしていても元々は九頭の一部。となれば触手を通じて九頭の分身から本体の精神に影響を及ぼす事だって可能な筈だ。


ひとみは恐怖感を湧き上がる怒りに変え強く強く思い込んだ。

「『惜しみなく愛は奪う』なんて題の小説があったけど奪われるだけなんて我慢できないわ!!
私は絶対に手に入れてやる!!存在が手に入らないのなら願いの一つだけでも!
私は九頭のことが知りたいッッ!
あの男が何を考え何を感じ何を成そうとしているか!!何故こんなにも私を惹き付けるのか!
そしてあの男を殺してやる!
殺して『特別な存在』になってやるわ!!」

ひとみの背後に紅い眼を持つ巨大な白い大蛇が現れた。これはひとみの九頭に対する執着の権化。
蛇の表皮は炎をも弾くプラチナで出来ていた。プラチナの体は中天の月のように青白い光を放っている。
シュウシュウと口から血の混じった蒸気を吐き牙をむき出しにして黒いオロチを威嚇する白蛇。
白蛇は五つ頭のオロチに向かって襲い掛かった。

29 :草村 慎吾朗 ◆BhCiwB2SCaJ5 :2010/05/29(土) 16:55:25 0
>22
荻原たちは図書室前の廊下の手前側のドア付近で戦っていた。
「きゃあ!!」
草村の蹴りが荻原の顔面にヒットしたのを見て生天目は悲鳴をあげる。
「ひゃあ!!」
同時にステレオポニーは奥のドアからクピドたちと共に飛び出してきた徳井を見て悲鳴をあげる。
すでに廃校なので廊下は走ってもいいのだろうが、きもちわるい天使を引きつれて走ってゆくというのは
よい子は絶対にマネをしてはいけない。徳井のあとを追う様に柚木と大谷がついてゆく。
ステレオポニーが室内を恐る恐る覗くとモヌケノカラ。どうやら九頭は移動したらしい。

>「がはっ!…ち、ちくしょー!」

「だいじょうぶ!?荻原さん!!」
荻原にかけよって心配している生天目。草村は片足立ちでニヤニヤしている。
荻原は草村の肩に背負わされている二人を意識しているため、
プラントアワーの攻撃を制限してしまっているようだ。

>「くっそ〜、なら…これでどうだ!いけ!プラントアワー!」

プラントアワーが廊下を勢いよく殴りつけると、そこから植物の蔓が大量に伸びた。
草村を一気に絡め取ろうという作戦に出たのだった。
ざわざわと足元を這ってくる蔓を見ながら草村はにやついた顔で語りかける。

「おっさん今こう言ったよな?『くっそ〜、なら…これでどうだ!いけ!プラントアワー!』…
へー…おっさんのスタンド。プラントアワーつーんだ。
じゃあそのプラントアワーのこと綺麗さっぱり忘れてもらいましょうかねー…」

草村の頭の後ろから小さいスタンドが顔を出し小さく万歳をすると荻原のまわりに漫画の「ふきだし」の様なものが現れる。
ふきだしには『くっそ〜、なら…これでどうだ!いけ!プラントアワー!』と記載されており草村のスタンド、
メアリーがそれに向かって飛んでいくと『プラントアワー』という文字を一個一個小さい手でもぎとり口に入れていく。
すべての文字を食べ終わったメアリーは小さくゲップをすると草村の頭の後ろに戻る。

「どうした?おっさん?なんかするんじゃなかったのかー?」
蔓は成長をやめてプラントアワーも消えてゆく。

「え!?荻原さんのスタンドが消えちゃった!!」生天目は驚いて叫んだ。

「たははははは!ガキのスタンドも忘れさせてやんよ!!」
草村は生天目の『スタンド』という言葉もメアリーの能力で忘れさせた。
生天目の頭からは大きくひっくるめてスタンドという概念がなくなる。

「うひひ…面白いゲームになってきたぜ。おまえら場所変えねーか?
ここ狭えしせっかくの廃校だからよー体育館にでもいこうや!」

スタンドを奪われてしまった二人は問答無用で体育館についてゆく。
体育館には斜めに陽射しがさしており床には薄っすらと埃がかかっていた。
靴の裏に埃がつき床にはぺたぺたと足跡が残る。
体育館の隣はプールになっていてプールは金網でしっかり封鎖されているのだが
雨水がたっぷりと溜まり藻やなにやらで緑色に変色している。

草村は肩の上のカップルをおろし、みぞおちを叩いて気絶させると
その場でぴょんぴょんとジャンプをした。

「たははは!第二ラウンドと行こうかねーおっさん!」
巨体をぐるりと回すと回し蹴りを荻原の腹部に繰り出す草村。

「荻原さん!!あ…あれ…う…んっ…と」
生天目は自分たちが何かしら特殊な力を持っていたような気がして
それに頼ろうとしたのだがそれが何だか思い出せないでいる。

30 :御前等裕介 ◇Gm4fd8gwE :2010/05/31(月) 06:40:45 0
『アンバーワールド』によって操作されたマジックハンドが正しく『狩る者』の心臓を"破壊しかけた"刹那。
臓腑へのダメージに苦痛を得る『狩る者』へ、吉野きららが右腕を突っ込む。すると何がどう作用したものやら、彼女は蕾に覆われた。
次に発生するのは開花。それは孵化であり、羽化だった。吉野が、この世の全ての至福を諸手に抱えたような表情で立っていた。

(へ、ヘヴン状態……!!)

>「これは……何と名付けましょうか。……何処までも続く『幸福への階段』と言う意味で、
   『ステアウェイ・トゥ・ヘブン』と言うのは、どうでしょう」

満開咲きのドヤ顔で、吉野は『狩る者』に相対する。
彼が何か言う前に、筋肉に覆われた巨体は刹那で百花繚乱の土壌へとその姿を変えた。
咲き誇る。この世で最も美しく、最もえげつない生態を持つ花が、最早『狩られる者』と化した『狩る者』に咲き誇る。

>「……それでは、御機嫌よう」

漫画ならば確実に見開き大ゴマの透明吹き出しであろう決めシーンを花瓶と化した『狩る者』と共有した吉野は、踵を返す。
あまりにあんまりなこの状況に思考を停止している御前等へ、声をかけた。

>「では参りましょうか、御前等さん。貴方もここで勝利したからと言って、それで満足と言う訳ではないのでしょう?
  貴方には助けられましたからね。今度は私が貴方を、貴方の幸せに押し上げる番です」

「……ああ、行こう。その前に一つ、聞いて欲しいことがある。いいかな?」

吉野が返事を返す前に、被せるようにして、言う。

「『狩る者』は結局、『刈る者』にはなれなかったというわけだな。――草花だけに!!」

駄洒落である。

*   *   *

さて、そんなこんなで見事『狩る者』を退けた吉野きららと、その金魚の糞こと御前等裕介は、九頭の居場所を求めて歩く。
『狩る者』を尋問するまでもなく、九頭の居場所は分かっていた。北条市全体を覆っていたスタンドの気配が消え、
代わりに濃縮された強烈なスタンドパワーを街のどこにいても感じるようになっていた。音を立てれば発生源が大まかに分かるように。

「『廃校舎』か……随分とまた、ロマンティカルな場所に居を構えているじゃあないか九頭とやらは」

北条市の自然公園を北に行くと、気配を濃密に感じる廃墟が聳えている。
それは御前等の通う北条市立北高校が、新しい校舎を建造した為に放棄された、旧校舎の成れの果て。
栄華衰退の終着駅とも言えるこの廃校舎は、ある意味では『世界の中心』に未来とも感じられた。

「『力』を色濃く感じるのは図書館のあたりか……どうやら現在進行形でドンパチやってるようだな。さっきから篭った破壊音が聞こえるぞ。
 それはそうと吉野さん。君は九頭と『参加者』、どちらに加勢するつもりなんだ?俺は九頭に取り入ろうと思っているんだが」

まるで新入生が部活選びを話題に出すように、御前等は平然と問う。
そのあっけらかんとした思考の裏には、『敵対するならば戦闘もやむ無し』という打算が回転していることは、言うまでもなかった。


【最終決戦の場に到着。吉野きららへ敵対意思の有無を遠回しに質問】

31 :徳井一樹 ◆MnJrk02a/Yx. :2010/05/31(月) 15:10:14 0

>「…はぁ〜…こんな子供だましみたいなの…」

>「念のためにもう一度…取って置きの駄目押しって奴だ!!」

柚木の重力球がクピドを一掃し、大谷が九頭に攻撃を仕掛け時間稼ぎをしてくれた。
大谷はもちろんのことながら柚木のスタンドは援護も戦闘も出来て万能だとつくづく思う。

「俺みてーなガチ戦闘タイプのスタンドだとそーいうこと出来なくてスゲー羨ましいね。
ところで場を和ませるために一つ、俺が今おもいついたとっておきのオリジナル・クイズをかましてやるぜ。
いいか?一度しか言わねーぞ?後…使いたくなってもマネすんなよ」

大谷のまたか、という顔を無視して続ける徳井。柚木には何言ってるのこの人?という顔をされたがそれも知らんぷりする。

「三人のヒトがいました。三人が歩いていると『磔刑にされた長髪の男性の死体』を見つけました。
三人はそれぞれ『オーマイゴッド』『マンマミーア』『ドミネ・クオ・ヴァティス?』とリアクションしたそうな。
さて、この中で一体お母さんでしょう?正解は皆が生き残ったら教えてやるよ」

一見ふざけているようが(実際ふざけている)徳井は徳井なりにここから生き残ろう、と言いたかったのだ。
クイズを出題したかったのもあるが。

「大谷さんのお陰で九頭よりも少し早く着けたか?……この角を曲がれば確か佐藤さん達のいる部屋だ。
先に九頭がいなけりゃいいがな………つーか少年は重力で九頭を追いかけた方が早かったんじゃあ……」

大谷はとっくに気付いていたにもかかわらず今更そんなことに気付く徳井。
スマートガントレットにクスクスと苦笑いされたが徳井は気付いていない。

「ベネ(良し)!入るぜ!せェーーのっ!九頭さんいらっしゃーーい!」

勢い良くドアを蹴破り、よね達のいる部屋へ派手に足を踏み入れた──。

32 :柚木美都留 ◆BhCiwB2SCaJ5 :2010/05/31(月) 19:51:48 0
柚木は今さらながら伏兵の攻撃も危惧していたために
自分も含め単独行動をすることもさせることも許すことはできなかった。
今、徳井や大谷を失うのは得策ではない。だから行動を共にしている。

すると徳井は唐突にクイズを出してきた。
柚木は頓知クイズなのかなんなのかわからなかったし
英語以外はよくわからなかったので答えを楽しみにすることに決めた。

「…」

2階の廊下を進んでいると室内から人の気配がする。

>「大谷さんのお陰で九頭よりも少し早く着けたか?……この角を曲がれば確か佐藤さん達のいる部屋だ。
>先に九頭がいなけりゃいいがな………つーか少年は重力で九頭を追いかけた方が早かったんじゃあ……」

「…。少年?名前は柚木だよ…」
柚木は今の徳井の台詞で九頭の有無や他のことよりも、なんとなく少年と言われたことがひっかかり呟いた。

徳井はドアを蹴破り部屋へ足を踏み入れた。

「……」
柚木は固唾をのんで室内を見やった。

33 :九頭龍一 ◆SM24/QbfAY :2010/06/02(水) 00:09:13 0
>31>32
徳井たちが部屋に入るとそこには三人の人影。
しかし反応して顔を向けるものはいなかった。
佐藤は棒立ちとなりピクリトも動かない。
よねと綾和はにらみ合ったまま意識を余所に向ける余裕はない。

だが徳井たちが現れたことにより均衡は破られた。
「仕方があるまい…」
ふと息を漏らすように呟くと、佐藤を拘束しているのは自分でないと言葉を紡いだ。
グリーンDの能力は成長させる事。元々精神精神に影響を与えるものではない。
「この女を精神世界に閉じ込めているのは九頭様の分身だ。
精神世界で九頭様の分身に打ち勝たねば元には戻らんよ。
助けに行きたければいくが良い。彼女に触れ精神を同調させればいけるだろう。
これで親子で睨み合う理由はなくなったな。」
全てを吐き出し気が楽になったかのように力を抜き大きく息を吐いた。

グリーン・Dは元々戦闘タイプのスタンドではない。
その上今は左腕を守護天使ア・バウ・ア・クーの制御装置として機能させている為、スタンドを出す事も出来ない。
完全に無力なのだ。
「さて、どうするね?私を倒すか?それもいいだろうが、そうしている間に九頭様はここに来るだろう。
そうなれば彼女を救う事はできないぞ?」
その言葉通りだった。
大谷の能力によって僅かに九頭の到着は遅れているが、いつここに現れても不思議ではないのだ。
九頭が到着すれば無防備に立ち尽くす佐藤はすぐさま倒されてしまうだろう。
しかし逆に佐藤を助けに行けばその間に九頭は到着し、綾和を倒す事は困難になるだろう。

>25>28
「フェアじゃない?それは違うな。君がそう願っているから城壁となっただけさ。
これは君が招いたシュチュエーションなのだよ!」
火を吐き続けながら答える九頭ヒドラ。
赤く爛れた鉄の城塞に体当たりをしようと鎌首をもたげた時、それは現れた。
怒りに燃える佐藤の背後に巨大な白い大蛇が!

「ふははは!そうだ。ここは精神世界。強き想いがそのまま具現化する!」
威嚇する白蛇を前に高笑いとともに九頭の声が響く。
それを引き金にするように白蛇は九頭ヒドラへと襲い掛かる。
身をくねらせ素早い動きで接近すると掌部分に噛み付く白蛇。
押されながらも九頭ヒドラの五本の首は白蛇に絡みつきそれぞれ牙を立てる。
絡み合い喰い合う白と黒の大蛇が大気を震わせながらのた打ち回る。
お互いの牙がお互いのみに突き刺さった瞬間、佐藤の脳裏にヴィジョンが流れ込む。

それは深く暗いタールのような海。これは九頭の精神の奥底。
そして垣間見るだろう。重く圧し掛かるそれの奥底に光る複数の赤い眼を!
次の瞬間、それは掻き消され、九頭の顔に変る。
今まで見てきた九頭のどの顔でもない。
焦燥と憤怒に満ちた表情で佐藤を睨みつける。
『貴様!見 て い る な ! ? 』
そして掻き消されるようにヴィジョンは消えた。

だが、消された!と言う感情は浮かばなかっただろう。むしろ助かった、と言う感情が残ったかもしれない。
垣間見た複数の赤い眼は人が見てはいけないモノ。
あのまま見続ければ確実に精神が破壊されていた、と本能で感じ取れたであろうから。

ヴィジョンから解放された佐藤の眼下では二匹の大蛇は美しき白と黒のコントラストを持つ一匹の龍となっていた。
最早残されたのは完全たる精神力の綱引き。
九頭の分身と佐藤の精神力が勝った方がこの龍を支配し、精神世界での勝者となるだろう。

34 :よね ◆0jgpnDC/HQ :2010/06/02(水) 01:14:45 P
/これで親子で睨み合う理由はなくなったな。」

「勘違いしないでいただきたい。自分の父親は貴方の様なゲロ以下の人間ではありません」

それは一見、綾和への宣戦布告かとも思えたが、
むしろ逆によねの手の震えは大きくなるばかりだった。

「Sum For One!!猶予を与えよッ!」

突然叫び出したとほぼ同時にSum41が現れる。
そして世界が凍てついたかのように止まる。たった一つ。よねの思考だけを除いて。

(考えろ…考えるんだ…自分の父親か…赤の他人かを…どっちが大切なのか…)

そしてよねはしばらく考えて、ある答えにたどり着いた。

"猶予は与えられたッ!"

よねの脳内にそう響き渡ると世界が再び動き出した。

「答えを…導きだしました…その答えはッ…"どっちも"だッッ!!!」

その瞬間、よねは手のひらの小石をSum41で殴り始めた。

「ペネペネペネペネペネペネペネ ペネトレイトッ(ぶち抜きな)!」

そして手のひらの小石はまるでレールガンの様に一直線に打ち出される。
が、貫いたのは綾和ではない。貫いたのは綾和の足元…即ち床だ。

「そんなところに立ってていいんですか…?ここは廃校ですよ…?
 耐久年数はとっくに過ぎているッ!つまりッ!その床はすぐに崩れ落ちるッッ!」

どちらにせよ九頭が来るのなら動かない分損だ。
ここで綾和を隔離し、急いで佐藤を助けに行けばまだ間に合うかもしれない。
よねも半ばカンではあったものの、綾和だけを下の階へ落とせるという妙な自信があった。
その通り、崩れ出したのは綾和の足元だけ。
それと同時に佐藤の方向に走り出すよね。
この時は周りが見えていなかったのだろう…

35 :佐藤ひとみ ◆tGLUbl280s :2010/06/02(水) 02:26:21 0
>33
フルムーンの抜けた右目から血を滴らせながら鉄の城壁の上に立つひとみ。
ひとみは右目の痛みを乗せて湧き上がる怒りを増幅させていた。この精神世界では怒りは弱気を撥ねつけ正気を保つ武器となる。
精神世界に風は無くとも怒りによる向かい風のイメージがひとみの長い黒髪を波打たせている。

「私が招いたシチュエーション?女は城壁…男は蛇…随分ベタな暗喩ね…だけど女だって蛇に成り得るのよ!」
ひとみの背後に現れた白い大蛇は九頭ヒドラに襲い掛かった。
白蛇は九頭ヒドラの本体が潜むと予想される掌の中心に牙を立てる。
蛇同士が絡み合い、互いの牙が突き刺さった瞬間…ひとみの頭に流れ込んできたヴィジョン…。

―――黒よりも黒く闇よりも深く粘りすら感じさせる闇の海…
海の底に立つひとみを取り囲む幾つもの赤い眼が見開かれる。

「これは九頭の精神の底辺…?でもこれは九頭の眼じゃない……?」

赤い眼は射抜くような光を放ち、見つめられたひとみは体が固まり目線を逸らすことも出来ない。
赤い光は理性を超えた人間の原始の感情…闇への畏れを呼び覚ますのだろうか。今までとは異質の恐怖が体と精神を痺れさせる。
刹那、赤い眼は黒く塗りつぶされ視界には憤怒の形相の九頭…。

>『貴様!見 て い る な ! ? 』

九頭の怒りを込めた声が反響する。赤い眼のヴィジョンは映像の乱れと砂嵐の後に立ち消えた。
赤い眼の支配から開放されたひとみの口元には愉悦の笑みが浮かんでいる。
右目から滴る血、口元にゆがんだ微笑、髪を蛇のように波打たせるその姿はギリシア神話の怪物女メデューサを思わせた。
赤い眼の恐怖は本能で理解できた。だが叫ぶ九頭の顔に浮かんでいた表情がひとみの恐怖を打ち消していた。

「九頭龍一…今の表情…初めて見る顔だったわ!
あなたも焦ったり怖がったりすることがあるのねえ〜っ!!もっといろいろ見せて貰いたいわ!」


ひとみの叫びと共に九頭ヒドラと一体化していた白蛇の体は細い紐状に裂け始めた。
細かく分裂し無数の白い触手と化した白蛇。
白い触手は絡み付いていたヒドラの目から鼻から口から…ありとあらゆる体表の穴から侵入していく。
ひとみはフルムーンの触手を通じて自らが九頭の中入って行く様をイメージしていた。
ひとみのイメージの中で怒りと執念を乗せた触手は九頭の脳を隙間無く何重にも巻上げ締め付ける。


「何故あの時『留流家の一部となって僕と永遠を生きないか? 』なんて言ったの?!
『君のような人には自らの意思で留流家に入ってもらいたい』なんて言葉もただの気まぐれ?!
あなたは何を考えているの?!
人一倍孤独を怖れながら敢えて孤独になる方向を選ぶのは何故?
何が目的なの?心のどこかで死を願いながらそれでも生きることに執着せずにいられないほど目的って何?!
知りたいッ知りたいッッ知りたいッッッ!!!
それと!私のことどう思ってるのよッッッ!!
教えて!!答えて!!!答えなさいよッッ!!!」

ひとみのイメージは九頭の分身であるヒドラを通じて九頭本人の脳にも伝わっているだろう。
幾重にも巻きつく触手は脳を締め付けるような傷みとなり、ひとみの心の声は高周波の反響音となって九頭の精神に響いている。

36 :佐藤ひとみ ◆tGLUbl280s :2010/06/02(水) 02:40:40 0
改変テンプレです
【本体】
名前:佐藤ひとみ(さとうひとみ)
性別:女  年齢:25 身長/体重:164/48

容姿の特徴:
貞子みたいな長い黒髪の鬼太郎ヘアー。切れ長のキツめの目つき
コンサバ系の大人っぽい値段の高い服が好み

人物概要:
職業は図書館司書。自分本位で腹黒い性格の上スイーツ脳
運命を感じた相手を監視して裏切り(思い込み)があれば報復を繰り返している
年収1200万以下の男には運命を感じない


【スタンド】
名前:フルムーン
タイプ/特徴:遠距離 半自動操縦
髪に隠れてるほうの右目を飛ばして直盗撮。外見は機械のようなケースに入った眼球
飛ばした目からはクリオネみたいに触手が伸びたり食いついたりする

能力詳細:
ターゲットに定めた相手の位置特定、追尾 。本体の望んだ対象の可視化
自動操縦時はダメージを受けないが録画モードになる(リアルタイム映像配信不能)
自動操縦時はプログラムに従った簡単な動きしかできない
潜伏(透明化)モード時は録画、通信不能。防御もできない。継続時間は2、3分
透明化時本体が触れると本体も透明化の影響を受ける

DD-MOON(ディープダイブムーン)
フルムーンの新たな能力。九頭龍一との精神感応を触媒に発動した
スタンドが体に触れた相手の精神に約10秒干渉する
効果としては記憶の断片を読む程度だが相手の精神状態とひとみの気合によっては乗っ取りも可能
10秒経過するかスタンドが体から離れれば精神への干渉は解除される

破壊力-C スピード-C 射程距離-A
持続力-A 精密動作性-B 成長性-D

37 :柚木美都留 ◆BhCiwB2SCaJ5 :2010/06/02(水) 14:08:36 0
んぢゃじぶんも…

【本体】
名前: 柚木 美都留(ゆずき みつる)
性別: 男
年齢: 11歳
身長/体重: 148/39
容姿の特徴:艶やかな黒髪で色白の美少年。
人物概要:元は九頭配下の狩る者だったが異空間で再会した両親に真実を知らされて
打倒九頭龍一に執念を燃やす少年。


【スタンド】
名前: (真)オズモール
タイプ/特徴:近距離パワー型。旧オズモールの体を内部から粉々にして現れた獣人型のスタンド。
能力詳細:スタンドの手の平から大小様々な重力の玉を出し重力制御によってコントロールすることが可能。
柚木本体にたいしても重力制御によって天井や壁などを地面に変換することができる。
基本的に自分以外のものは重力操作は出来ない。重力玉を相手に埋め込むことによって操作は可能。

破壊力-A スピード-A   射程距離- E(重力弾はA)
持続力-C 精密動作性-B 成長性-C

38 :大谷杉松 ◆vReXCpsNBKcm :2010/06/02(水) 15:59:56 0
>「ベネ(良し)!入るぜ!せェーーのっ!九頭さんいらっしゃーーい!」

ドアを蹴破る徳井、その後ろから大谷と柚木は部屋の中へと入る…
目の前にあるのは棒立ちの佐藤に睨みあうよねと綾和、
そしていままで静かであった綾和が話し始めたのだ

>「この女を精神世界に閉じ込めているのは九頭様の分身だ。
 精神世界で九頭様の分身に打ち勝たねば元には戻らんよ。
 助けに行きたければいくが良い。彼女に触れ精神を同調させればいけるだろう。
 これで親子で睨み合う理由はなくなったな。」
>「さて、どうするね?私を倒すか?それもいいだろうが、そうしている間に九頭様はここに来るだろう。
 そうなれば彼女を救う事はできないぞ?」

>「答えを…導きだしました…その答えはッ…"どっちも"だッッ!!!」
>「ペネペネペネペネペネペネペネ ペネトレイトッ(ぶち抜きな)!」
>「そんなところに立ってていいんですか…?ここは廃校ですよ…?
 耐久年数はとっくに過ぎているッ!つまりッ!その床はすぐに崩れ落ちるッッ!」

言い終わるかどうかのタイミングでのよねの攻撃、その攻撃は綾和の足元の床を貫通し大きな穴が開く、
その穴に落ちたかどうかまでは分からなかったが大谷のやることは決まっていた、

「誰一人失わせはしない…皆のために…死んだあいつのために!!」
『デキルダケハヤクオワラセルワ ソレマデネバッテイテヨネ!』

佐藤の元へ向かう大谷、佐藤に触り精神世界に入れば奇妙な世界が大谷を待っていた…

39 :荻原秋冬◇6J1m09mANS :2010/06/02(水) 20:43:13 0
>>29
>「おっさん今こう言ったよな?『くっそ〜、なら…これでどうだ!いけ!プラントアワー!』…
>へー…おっさんのスタンド。プラントアワーつーんだ。
>じゃあそのプラントアワーのこと綺麗さっぱり忘れてもらいましょうかねー…」
荻原の周りには先ほど荻原の言った台詞がふきだしとなって現れた。
すると大男の後ろにいた小さいフランス人形のようなスタンドがその台詞の
『プラントアワー』の部分だけ食べてしまった。
頭の中がスゥー…となっていく。
大男を狙っていた植物の蔓も攻撃をやめ、次第に枯れていってしまった。

>「どうした?おっさん?なんかするんじゃなかったのかー?」

(そうだ…俺はあの大男を倒さないといけないんだ。
そのために何かしようとしたはずなんだけど………
何をしようとしたんだっけ?)
思い出したくても思い出せない大事な何かを忘れてしまった…
それが大男に抱いた新たな恐怖感……

>「うひひ…面白いゲームになってきたぜ。おまえら場所変えねーか?
>ここ狭えしせっかくの廃校だからよー体育館にでもいこうや!」
ここで逃げてもしょうがないので荻原たちは大男についていった。
体育館……本来なら、元気よく運動をするものもいれば、めんどくさそうにしているやつも、
怪我や病気を理由に隅っこで見学するものもいる。
そういう場所のはずだった…
しかし、今のこの体育館にそれは感じられなかった…
床は埃だらけで、ペンキ塗装してある柱はところどころ剥げていて、窓ガラスにもボロボロに
なっている。
大男が肩の上に乗せていた二人を気絶させて近くに放った。

>「たははは!第二ラウンドと行こうかねーおっさん!」

「わっ!ちょ、まっ…」
待ったという前に大男が荻原の横腹を回し蹴りで殴った。
あまりにも強烈な蹴りをモロくらったのため壁まで吹っ飛び、荻原の肋骨にひびが入ってしまった。

「ぐっ!げほっげほっ…うぅぅ……」
大男は待ってくれる様子もない。
まるで小さい虫をいたぶるように荻原をどんどん殴りつけた。
抵抗したくても力の差が大きすぎる。

この時、荻原の脳内で昔の思い出がフィールドバックされた。

(…そういや……前にも…こんなことがあったな…)

40 :荻原秋冬◇6J1m09mANS :2010/06/02(水) 20:44:50 0
それは荻原が高校1年のときだった。
当時、通っていた高校でいつも不良の奴隷にされていたのだ。
使いっパシリは当然…週一に上納金などといわれて金を取られたり…
機嫌が悪ければ問答無用で殴られる。
毎日が地獄のような日々だった。
ある日、上納金を払う日だったのだが財布の中身がもう千円札しかなかった。
これだけで許されるはずがない…しかし行かなければどんな目に合わされるか…
覚悟の上で荻原は体育館裏で千円を差し出した。

「…はぁ!てめえなめてんのか!ゴルァ!」

「すっ、すみません…もうそれしかなくて…」

「ふざけんじゃねえぞ!金がなければ盗んででも取って来いや!」
そのまま不良は荻原を殴り始めたのだ。

荻原の思考が一気に現在に戻ってきた。
もう体全体がプルプルと震えて立っているのも辛いくらいだ。
体中が痛み口の中も血まみれになって気持ちが悪い。

(そうだ!あの時とほとんど一緒だ!…
でも…でも…その後どうなったんだっけ?
思い出せない…)
目の前が霞がかって大男を見た。
ずっとニヤニヤとこっちを見ている…完全に勝ったと思っているらしい。

(もうどうなったっていい…けど…せめて一発くらいは反撃しないと…)
大男が荻原に止めを刺そうと攻撃をした。
目を固く瞑り荻原もがむしゃらに大男を殴ろうとした…その時だった!
荻原の右腕からさらに緑色の右腕が伸びて大男を殴りつけたのだ。
油断していたせいか…大男はボディーに食らってすこしだけ吹っ飛んだ。

再び現れたのだ…
荻原のスタンド『プラントアワー』が…

41 :徳井一樹 ◆MnJrk02a/Yx. :2010/06/02(水) 22:39:50 0

>「この女を精神世界に閉じ込めているのは九頭様の分身だ。
>精神世界で九頭様の分身に打ち勝たねば元には戻らんよ。
>助けに行きたければいくが良い。彼女に触れ精神を同調させればいけるだろう。
>これで親子で睨み合う理由はなくなったな。」

動かない佐藤に拘束されたカズと睨み合っているよねとよく状況がわからなかったが、
なんとなく把握できてきた。どうやら佐藤が九頭のスタンド攻撃を受けているらしい。

>「ペネペネペネペネペネペネペネ ペネトレイトッ(ぶち抜きな)!」

よねが突然手に持っていた小石をスタンドで殴り始めた。
小石は銃弾のように正確にカズの足元の床を狙い撃ち、カズは崩れ落ちていく床に落っこちていく。

「隔離する気か?なら手伝ってやるよ、アリアリアリアリアリアリアリ!」

カズが落ちていった穴周辺の部分を切開し、アンテロス戦のように切開した部分を次々に結合していく。
床に開いた穴はドーム状の『フタ』が出来上がりカズの落ちた穴の出口は塞がれる。
これで九頭はカズを確保することはなくなった。

「───アリーヴェデルチ(さよならだ)」

徳井が塞がされた穴に対して呟くと同時によねは佐藤の元へ走っていく。
大谷は既に佐藤に触れてカズの言う『精神世界』へと入っていったようだ。

>「誰一人失わせはしない…皆のために…死んだあいつのために!!」
>『デキルダケハヤクオワラセルワ ソレマデネバッテイテヨネ!』

「おいおい…ちょいと落ち着けよ…!こっちには現在進行形で九頭が来てるんだぜ?
……しゃあねーや。柚木坊ちゃんよォーー九頭は俺達で迎え撃つ必要がありそうだぜ」

佐藤のことが心配ではない訳ではないが佐藤を助けに行ってたら体は死んでました、では洒落にならない。
それに大谷さんもよねも信頼に足る人物。必ず佐藤の助けになるだろう。

「それにしてもここで迎え撃つ…ってのも危ないな。動けない佐藤さん達を狙われても困るし……
俺達が屋上で迎え撃った方がいいか?それに待つのは趣味じゃねぇ。こっちから仕掛けるか。
柚木坊ちゃんは気ィ遣わず自由にしてくれて構わねーよ。俺はこーいうの苦手なタチでね」

上から訪れるであろう九頭に攻勢を仕掛けるため、徳井は天井を切開し屋上へ向かう。

42 :九頭龍一 ◆SM24/QbfAY :2010/06/02(水) 23:16:08 0
図書館から出た九頭は校舎三階を歩いていた。
取り込んだ綾和の居場所は大まかにはわかるものの、正確な位置がわかるわけではない。
探知用の光のソナーも建物内では有効とはいえないからだ。

加えて大谷の追撃に依るところが大きかった。
ダメージ自体はさほど大きくないものの、その攻撃法が理解でききらず不要な警戒をしなければならなかったからだ。
痺れる手を握ったり開いたりして感覚を確かめながら探索していたのだが、次に来たのは精神への攻撃だった。
「まさかこのような反撃を受けるとはな…!!」
頭に響く佐藤の叫びにクラクラしながら頭を振る。
精神の融合は九頭にとっても計算外!
故に対処が遅れ、一瞬垣間見せる事になってしまった。
それは決して人が見てはならぬ奈落の底。
精神力を高めてガードするが、それでも尚佐藤の叫びが頭に響くのだ。

その叫びを振り払うように感覚を研ぎ澄まし、そしてついに見つける事になる。
「ぬうう!憤!!発!!」
グラウンド側の壁に拳を振るうと老朽化していたコンクリートの壁は吹き飛び、外の風が吹き込んでくる。
開いた大穴から階下を見下ろすのであった。


>34>35>38
佐藤の身体に触れたよねと大谷の精神は佐藤の精神世界に引きずり込まれていった。
そこで二人が見たものは恐るべき光景だった。
巨大な九頭ヒドラに取り付く無数の白い触手。
のた打ち回り、火を噴き触手を潰し、焼き尽くそうとするが数が多すぎる。
大地と大気を震わせ九頭ヒドラの咆哮が響く。

「知りたいか!知りたいのならば私と一体となれ!
さもなくば私を倒してみるが良い!」
無数の触手を振り払うことを諦めた九頭ヒドラが佐藤を直接狙い襲い掛かる。
その姿はまるで巨大な手が小さな虫を叩きつぶさんとしているかのようだった!

その刹那に感じられるのは強烈な守りたいという想い。
精神世界にいる者は否が応でもそれを感じるだろう。
これは触手を伝って漏れ出る九頭の精神の欠片だった。

43 :九頭龍一 ◆SM24/QbfAY :2010/06/02(水) 23:16:32 0
>34
「…な!?」
綾和は驚愕の表情を浮かべてよねを見た。
人質をとっていないことを示せばよねは迷う。
そこに付け入り味方に引き込むつもりだったのだ。
しかし綾和は知らない。
Sum For Oneの能力で迷い、そして答えを出す猶予をよねが持てることに!

結果としてよねはなんの躊躇もなく行動を起こした事になる。
綾和が付け入る隙を見せずに!

無数に放たれる礫は周囲の床を打ち抜き、綾和だけを階下におとす事に成功する。
「う、うおおおおおおお!?」
ドプラー効果を効かせた叫びを残し綾和は落ちていった。

>19>20
床ごと階下に落ちた綾和は最早なす術もなし。
混乱の最中にあって床を打ち抜き自分を落としたよねの決断力に感嘆していた。
が、あくまでそれは思考の事。
身体はわずかな自由落下とともに強い衝撃に打ち付けられる。

階下に落ちた床は机を押し潰し、落下の衝撃に砕けながら飛び散った。
その上に乗っていた綾和は弾き飛ばされ窓ガラスを突き破ってグラウンドに放り出される事になった。
「ぐ…うううう…、こ、ここで倒れるわけには・・・」
血塗れの綾和が呻く。
意識を失わなかったのは護国天使を制御していると言う自負心と、人間魚雷よろしく飛び出した綾和を身体で受け止めた…
否、突然不って湧いた綾和に激突しクッションの役割を果たした御前等のお陰だったかもしれない。

直後、三階の壁が吹き飛び【それ】、が現れた。
言われずとも二人はわかるだろう。
三階の壁に開いた大穴から睥睨する【それ】が護国天使ア・バウ・ア・クー!九頭龍一だという事を!

44 :草村慎吾朗 ◆BhCiwB2SCaJ5 :2010/06/03(木) 02:19:46 0
>39-40
>「ぐっ!げほっげほっ…うぅぅ……」

「きゃあああ!!」
荻原が攻撃を受け生天目が悲鳴をあげる。なにかしら何度も見たような光景であるような気もする。
少女は携帯を探して警察に連絡をしようとしたが携帯は林かどこかに落としてしまったためにない。

「どうしよう…あ!待ってて荻原さん!」
生天目は体育倉庫などに何か武器になるようなものがあると閃き倉庫の扉を開け中に入っていった。

草村はと言うと荻原にパン!パン!パン!パン!と2往復ビンタを食らわしたりオデコだけにグーでパンチを連打したり、
高い高いをするとそのまま一番高い所で手を離して床にシリモチをつかせたりと中年をオモチャにしている。

「とどめだぜ!おっさん!」遊び終わった草村が叫ぶ。

ボコッ!宙に舞う体。舞ったのは草村のほうだった。なんと再び発動した荻原のプラントアワーにぶん殴られたのだ。

「ちっ!もう思い出しやがった!しっかし丈夫なおっさんだぜ。なんで気絶しねーんだ?勝負を急がせてもらうぜ!」
草村はアリスを使い自分の「雑念」を忘れさせる。雑念を捨てた草村はまさに仙人のような動きを見せた。

「ぬうはっ!!」
ドゴーン!両掌で突き飛ばされた荻原は体育館の扉を突き破って金網を突き破り藻でいっぱいのプールに落ちる。
ごぼごぼとプールに沈む荻原を追いかけて30メートルをびょんびょんと2歩でいく草村は
呼吸をしようと浮き上がった荻原に向けくるくる回転しながら、とどめのビンタをしようとした。

アホの草村は九頭のために荻原を捕獲することはとうに忘れているというか、すでに頭にはなかった。

「おいらのビンタをくらえー!!」
まともに食らったら頭が吹き飛ぶほどのビンタが荻原を襲う!

45 :佐藤ひとみ ◆tGLUbl280s :2010/06/03(木) 02:45:04 0
九頭への執着の化身である白蛇は無数の白い触手となり九頭ヒドラに絡みつく。
ひとみの脳裏に九頭の声が響く。

>「知りたいか!知りたいのならば私と一体となれ!
>さもなくば私を倒してみるが良い!」

「『私と一体となれ』ですって?!
何よその偉そうな言い方!もうちょっとロマンティックな言い方できないの?
女のNOはNOじゃないって言うでしょう?女は断られた後の男の反応を見て決めるのよ。
一回撥ね付けられたからってすぐ諦めるなんて全然本気度が足りないわ!
ッていうか他の事はともかく最後の質問にすら答えられないって言うの?!それって酷いッ!侮辱だわ!!」

直接精神に呼びかける九頭の声に精神感応を使わず怒鳴り声で答えるひとみ。

ヒドラは咆哮を上げると空に舞い上がりひとみの上空に迫る。黒い掌がひとみの周囲に星型の影を落とした。
ひとみの顔に掌の影が差すと同時にひとみの精神に伝わってくる強烈な想い。
それは『何か』を『守る』という決死の覚悟…。

「守りたい?守りたいって何を…?!あなたがそんなにまでして守りたいものって何よッ?!」

その想いを最後に九頭の精神からの通信は完全に途絶えた。
ヒドラには未だ白い触手が絡み付いているがその触手からも九頭の存在を感じることは出来ない。
ヒドラの首の根元である掌の中心にあった九頭を模した黒い顔も消えている。
九頭は完全にヒドラの操縦を自らの精神から切り離したらしい。
九頭の気配の消えた精神世界はひとみの心に空虚さと僅かな寂しさすら感じさせた。
ひとみは頭上に迫るかつて九頭の片鱗を感じさせた黒い掌型の蛇を見上げながら呟いた。

「こんな化け蛇…九頭から切り離されたら完全な木偶ね…
こんなもので私の精神を壊せるとでも思ってるの?!」

ヒドラに絡み付いていた白い触手はヒドラから分離し一瞬のうちに白い蛇に姿を変えた。
白蛇は頭と尻尾の間が裂けたハープのような形状に変化した。ハープの枠の内側には硬く変化させた触手がピンと張られている。
その形状のまま猛烈なスピードでヒドラに体当たりする白蛇。
ヒドラはハープの糸の本数分縦に裂け、黒い体液を撒き散らしながら細切れの体を地上に落下させていく。
足元に落ちてきたヒドラの切れ端をパンプスのヒールで踏みつけ、蹴飛ばしながらひとみは小声で繰りかえす。

「何を守りたいって言うの…?そんなにも知られたくないことなの…?
許せない…許せない…許せない…許せない…ッッ!!」

ひとみは九頭龍一がそれ程にも切に『守りたい』と感じているものに対して紛れも無く嫉妬を抱いていた。
その『守りたいもの』を知りそれを壊したいとさえ願った。

46 :佐藤ひとみ ◆tGLUbl280s :2010/06/03(木) 02:51:04 0
>34>38
足元のヒドラの切れ端をひとしきり踏み躙り、多少気が済むとひとみは自分に注がれる二人の視線に気づいた。

「よね君…戻ってきてくれたのね。それに大谷さんも。
折角来てくれて悪いんだけどケリはついたわ。」

ひとみはスタンドシートを出現させて現実の光景を映し出した。
九頭ヒドラはフルムーンの触手を通じてひとみの精神に干渉していた。
ヒドラさえ倒せばフルムーンのシートを通じて現実に戻れるのでは…と予想していたからだ。

シートには徳井と柚木少年が話している様子が映し出されている。
だが突然映像に黒い染みが広がりやがてシートは黒く塗りつぶされた。
シートに触れるとバチンと電流を流すような刺激を感じシートから手が弾かれる。

「何よこれ!?何で私達ここから出られないのッ?!」

九頭は自らの精神の分身であるヒドラを倒せばこの精神世界から脱出できると約束していた。
九頭が嘘をつかない男だということはひとみには解っている。
精神に直接アクセスした時も嘘をついている気配は感知できなかった。ならば何故ヒドラを倒しても精神世界から出られない?

ひとみの叫びと時を同じくして精神世界の風景は様相を変え始めた。
三人の立っていた城壁はぐにゃりと歪み消滅した。
細切れになったヒドラは崩れながら灰色の煙を上げている。一つに集ってゆく煙はぼんやりと人型を取っていく。

次の瞬間ひとみ達は妙にだだっ広く引き伸ばされた家の中に立っていた。
生活感すら感じさせる普通の民家じみた造りだが間取りが数倍に引き伸ばされ所々がいびつに歪んでいる。
よねは気づくだろう。ここがよねが育った家の中を模した造りになっていることに…。

ひとみ達の立っているのは引き伸ばされたキッチンらしき部屋。
やたら奥行きのある遠近感の狂った空間にぽつんとテーブルが一つ。
テーブルには下品な表情の中年の女が座り煙草を吹かしている。
女が椅子から立ち上がり一、二歩歩くと何故か女はひとみたちの眼前まで迫っていた。

「フン、あの役立たずの息子か…」
女はよねに向かい吐き捨てるように言葉を放った。
女はよねを睨みつけながら煙草を吸い歪めた口元から灰色の煙を床に向かって吐き出した。
床を伝った煙はひとみ、よね、大谷、三人の足元に絡みつく。
足元の煙はそれぞれが灰色の手のひらに形を変えひとみたちの両足を掴んだ。

「何この煙?重いし取れないっ!!」
女は再度煙草を口に持っていくと深く吸い煙を吐いた。
女が煙を吐くと女の体も灰色の煙になり近くにあった扉の隙間からするりと抜け出していった。

よねは女の顔に見覚えがある筈だ。よねがその手で命を奪った相手なのだから。

47 :佐藤ひとみ ◆tGLUbl280s :2010/06/03(木) 02:55:58 0
現在精神世界で攻撃を受けているスタンドのテンプレです

【スタンド】
名前:リメンバー・ミー
タイプ/特徴:特殊
能力詳細:
もともとは留流家に取り込まれていたスタンドの一つだったが
九頭の支配を離れることで完全自動操縦の精神攻撃用スタンドに変化した。
相手の精神に入り込み記憶の牢獄に閉じ込める。
本体は既に形を無くしスタンドと一体化している。煙のような形状のスタンド。
煙を浴びせた相手に取り付く。取り付いた煙は徐々に広がり重くなっていく。
最大まで広がり重くなった煙のパワーは人間を握りつぶすほど。
攻撃対象の恐れや不安などの負の感情によって重さを増すスピードが増幅される。

破壊力-B スピード-B  射程距離-C
持続力-精神世界内において∞ 精密動作性-C 成長性-D

A:100m以上 B:数10m(50m) C:10数m(20m) D:数m(5m) E:2m以下


(差し当たっての攻撃対象はよねさんのようです。全員巻き込まれてますが)

48 :よね ◆0jgpnDC/HQ :2010/06/03(木) 16:40:52 P
佐藤に触れた時、すでにそこは自分の知っている世界ではなかった。
よねにとっては巨大な何か…即ちヒドラと佐藤の触手が絡み合う様に存在した。
それらはとても威圧感があり、九頭と佐藤の精神力の強さを表している。
だが、しばらくしてその威圧感はなくなった。
それと同時に佐藤の触手が一つの蛇となり九頭のヒドラをその体に形成された琴で切り刻んだ。

/折角来てくれて悪いんだけどケリはついたわ。」

「それは良かったです…問題は解決されました…ここから脱出しましょう」

脱出方法は九頭を倒せば勝手に出れるか、佐藤が用意しているものと思いこんでいた。
勿論、佐藤が用意していたのだが…

/「何よこれ!?何で私達ここから出られないのッ?!」

佐藤が悲鳴を上げる。いや、悲鳴ではない。
多少の苛立ちを含んだ、それは何か怒りの声にも聞こえた。

すると、ふいによねの足もとがふらついた。
そしてその場に倒れこんだ…と思った時、すでによねはそこに立っていた。
気付いた時にはすでに周囲の情景は変化していた。
何の違和感もない、どこかの家の、どこかの一室。だが、それのどこかが狂っていた。
一体どうして違和感がないのか、それはしばらくしてわかった。

「ここは…あの家…?そして…あの…女…ッ!?」

そこには悪魔…いや、亡霊が佇んでいた。
確実に自らの手で葬ったハズの女が。

/「フン、あの役立たずの息子か…」

その女がすぐ近くに寄ってくる。嗅ぎ慣れたタバコの臭いが漂ってくる。
その臭いを吸った時、まるでフラッシュバックの様に全てを思い出した。
そして、半ば条件反射的に後ずさりをしようとした。
が、出来ない。足もとにその女のタバコの煙が絡みついている。動けない!

「あなたは…どうして…?こんな所に…?何故生きている…ッ!?」

よねがそう問うと、その女はそれに答えず煙になって消えていった。
よねはまるで酷い悪夢を見ているような錯覚に陥った。
意識がハッキリしている分、悪夢よりもひどい。

「これもスタンド能力か…いや…もしかすると…これが自分の精神世界なのか…?」

よねは自問自答を繰り返す。
その答えを肯定してはその肯定を否定し、その否定を否定し肯定し…

49 :柚木 美都留 ◆BhCiwB2SCaJ5 :2010/06/03(木) 17:19:56 0
>「それにしてもここで迎え撃つ…ってのも危ないな。動けない佐藤さん達を狙われても困るし……
>俺達が屋上で迎え撃った方がいいか?それに待つのは趣味じゃねぇ。こっちから仕掛けるか。
>柚木坊ちゃんは気ィ遣わず自由にしてくれて構わねーよ。俺はこーいうの苦手なタチでね」

「待て徳井!!」
柚木の声は徳井には届かない。

「!?」
下の階からは窓ガラスが割れる音がする。落下した綾和が勢いあまってグラウンドに飛び出したのだ。
そして上の階からは破壊音。柚木は現状を少しでも把握するためカーテンの隙間からそっと外の様子を伺うことにした。
ここには佐藤たちの抜け殻があるために迂闊に誰かに見つかるわけにはいかない。
なんなら移動することも思案したがクピドのような全体攻撃が展開された場合に抜け殻を守る者がいないということを考慮し
柚木はしばらくここから外の様子を伺うことにした。

50 :ボブ・バンソン ◆JvtTTnep1k :2010/06/03(木) 20:42:17 0
>「『アンバーワールド』――貴様の腕を支配した!『壊しかける能力』……そう言ったな。『対象』は貴様の心臓だッ!!」

「ぐっ、手が!これが貴様の能力か!」
機械を意のままに支配するアンバーワールドはザ・クッラシュに変化したバンソンの両腕を操作し、なんと
自分の手で空洞部から直に心臓を掴まされたため、体が凍りつくように硬直してしまった。大概の生物は心臓を抑えられれば
昏睡状態に陥ちいるはず。
PLAYINGWITHFIREの能力のおかげで精度が低下してしまったが、身体の半分を液状化させて難を逃れる。
だが、完全に嵌められた。
ここでスタンドの説明に戻るがスタンドとは本体のスタンドパワー=生命力によって機能する。
つまり健康な人物ならスタンドは本来の力を発揮できるのだが
危篤状態の人間が操作すればそれは3D映像と大差ない。
半分以上のスタンドパワーを消費し、さらに3つのスタンド能力をまして多重発動とはそれ相応の“ツケ”がまわるのだ。
ボブ・バンソンはもうスタンドを維持しきれないほど衰弱した。
己の能力を充分に発揮もできず、自らの手で命を立つなど彼の人生観に対してどれだけの汚辱をあたえるのか。
噛みしめる唇が裂け、血が顎をつたった。

>「……ご覧になるのは初めてですか? 自分や九頭……でしたか?
 それ以外の者が『スタンドの多重発現』を行うのは。
 これは……何と名付けましょうか。……何処までも続く『幸福への階段』と言う意味で、
 『ステアウェイ・トゥ・ヘブン』と言うのは、どうでしょう」

「これは…またこれもひとつの可能性ということか…」
鮮血に染まった赤い花が体中に咲き誇り、結果全身の骨を砕かれもはや息絶え絶えの彼は見惚れていたさえいた。
少女の可能性…新しい力『ステアウェイ・トゥ・ヘブン』!!
相応しい姿で闘いたいと言う悔いもあったが、不思議と素直に彼女の成長を祝福していた。


「よろしい…夢半ばだったが…俺も潔く死を選ぶことにしよう…そう」
花で破けたジーンズから先刻摘取したばかりの肋骨が落ちた。

「この俺ボブ・バンソンは今を持って死ぬ!だが、その魂とキオクは滅びず!わが信念を達成するその日まで」

ピキピキピキ…
肋骨がヒビ割れ、徐々に膨張して巨大化する。

『―そうだボブ…お前は死んでいけないんだ』
        /´〉,、     | ̄|rヘ
  l、 ̄ ̄了〈_ノ<_/(^ーヵ L__」L/   ∧      /~7 /)
   二コ ,|     r三'_」    r--、 (/   /二~|/_/∠/
  /__」           _,,,ニコ〈  〈〉 / ̄ 」    /^ヽ、 /〉
  '´               (__,,,-ー''    ~~ ̄  ャー-、フ /´く//>
                                `ー-、__,|     ''
はち切れんんばかりに膨らみ上がった骨はとうとう一部が崩れ始めた。
内部から細い腕…これは白骨!なんと人間の骨が這い出してくる
骨の腕が穴を押し広げると続けて足の人骨が飛び出て、そのまま地面に転がり落ちた。
しばらくしてそれが起き上がるとと蹲っていた顔を披露した。
そこに有るべきではないモノ…魚の頭蓋骨が水晶玉の瞳をせわしく回しながら口を開けている、微笑んでいるのか。

『悪いがボブ・バンソン劇場はしばしの間お休み。
 これからはこの『NEWDIVIDE』の時間だ』

『NEWDIVIDE』と名乗った骸骨の漁人はまさに死を迎えようとする産みの親に軽く手を添えた後、躊躇なく頭部を殴打した。
衝撃によって揺すぶられる肉体の穴から無数のディスクが抜け落ち、
最後に頭部からディスクが2枚、そのままバンソンは意識を失ったのか頭を垂れる。
ディスクを拾い集めるとそれらを全て口に含み入れ、飲み込んだ。Discは骨の隙間からこぼれ落ちることなく
喉元に出現した黒い空間に吸い込まれるように消えた。



51 :『NEWDIVIDE』 ◆JvtTTnep1k :2010/06/03(木) 20:43:25 0
『吉野君おめでとう、祝福する。君は選ばれた悪魔の殻から美しく羽化したのだ。
 ―そして関係も断たれた。これでこの土地は我々のものだ…もはや悪魔は華にすら牙を向くだろう…
 
 …元はと言えば本来の目的はあくまで悪魔の手のひらで、君の命じゃなかった。
 あくまで君と我々との関係を“殺すこと”だったんだが…予想外の抵抗にあってしまったよ…
 !…ボブもそろそろ限界か』
胸で十字を切り素早く敬礼する。
『さらばボブ・バンソン!また会うその日まで』

意識の箍が外れたことでザ・クラッシュは無情にも本体の心臓を握り砕き、その生命を絶った。
PLAYNGWITHFIREで脆化した道路は倒れこむ巨体に耐えきれず崩壊し、
亡骸は大量の血を噴き上げながら奈落の底えと沈んでいった。
謎の男ボブ・バンソンの人生はこのまま呆気無く閉じてしまったのだろうか?


本体:ボブ・バンソン
スタンド名:ザ・クラッシュ
死亡

主人の最期を看取り、ふた言ほどなにか感慨深げに呟くと向き直る。眼球に不気味な光が宿らせて。

『この一帯はもうすぐスタンドの影響で崩落する…
この道を真っ直ぐ進むといい…天使はそこにいるはずさ…』パチィィィン!!
軽く指を弾くとその姿は煙と化してどこかへ消え去っていった。


朴然と立ち尽くす御前等と吉野。男と魚の骸骨は結局謎のままだったが
まだ自分達は果たさなくてはいけないことがある。決戦の地へと足を急がせた。


52 :名無しになりきれ:2010/06/03(木) 20:43:35 0
もぐもぐ

53 :佐藤ひとみ ◆tGLUbl280s :2010/06/03(木) 20:44:42 0
>48
>「これもスタンド能力か…いや…もしかすると…これが自分の精神世界なのか…?」

「当たりだわ。どっちでもあって…どっちでもないのかもしれない…
ここは精神世界でありながらスタンドの空間でもあるみたいよ。」

ひとみは再びシートを出現させてスタンドの反応を確認しながらよねの問いに応える。
シート上には精神世界を視覚化した地図が表示されておりその一角にスタンドの反応が記されていた。

「この迷宮みたいな家はスタンドが能力で作り上げた空間。九頭はこのスタンドを完全に切り離したらしいわ。
九頭の精神の一端がこのスタンドを制御していた時は九頭の精神が外との窓になっていて
シートに現実世界を映すことができたけど今はそれすら出来ない…。
私達は完全に精神世界に閉じ込められたみたいね。
おそらく九頭の支配を脱したこのスタンドの元の持ち主が暴走して私達に攻撃を仕掛けてる。」
ひとみは九頭の言葉とシートのスタンド反応から得た情報を繋ぎ合わせて相手の能力を推理しながら話す。

「この家全体がスタンドの空間ではあるけれど、スタンドの本体と言えるモノはさっきの女よ。
あの女の位置にマーカーの反応が一番濃く出ている。
よね君はあの女の姿に思い当たるフシがあるみたいね。
このスタンドはターゲットの記憶に入り込んでその記憶から得た擬態を作り上げるのかも知れないわ。

…って話してる間にもこの煙重くなってない?さっきまでより全然重いっ!それに煙の手も大きくなってる!
これじゃまともに歩けないわ…っていうかこれどんどん重くなってくるんじゃないでしょうね?
早いところ本体を倒さないとヤバイ気がするわ。
今あの女がいるのはこの部屋よ!動けるうちに速攻でカタをつけましょう!」


部屋をスキャンすると女は部屋の奥に立っている。
煙の攻撃に備えて切り捨て可能なフルムーンの触手を盾にしながら部屋の扉を開けて中に入る。
三人が部屋に入った途端入り口の扉は音を立てて閉じ、扉と壁は溶接されたように溶け合っている。
女は下衆な笑いを浮かべながら短くなった煙草を咥えている。煙を吐き出すと自らも煙と化し部屋の通風孔から出て行った。


思わず振り返った扉から部屋の方に視線を戻すと部屋の中には信じられない光景が…
―――横たわる髪の長い女の死体と小型のチェーンソーを手に死体の腕を切り落とそうとする男の姿。

その衝撃的な光景にひとみの足元に絡みつく煙の掌は一回り大きくなり鉛の錘を足したようにズンと重さを増す。
そう、このスタンドは精神に受けた打撃を糧に煙の重さを増していく。
そしてこの光景に最も衝撃を受けた者に絡みつく煙は衝撃に比例するスピードで成長し重くなっているだろう。

気がつくと部屋の四方の壁には鉄格子が嵌っている。
さながら記憶の牢獄と化したこの部屋の中で足に錘を付けられ動きを封じられた三人。
チェーンソーを持った男が三人の方に向き直った。その顔には黒い霞がかかり人相を窺い知ることはできない。
男はチェーンソーを振りかざして大谷に襲い掛かった。
いくら精神体とはいえその身体を甚く傷つければ無事にもとの体に戻ることは出来ない。

【今回は大谷さんのトラウマ攻撃です。誰かがチェーンソー男を倒せばこの部屋から出られます】

54 :『NEWDIVIDE』 ◆JvtTTnep1k :2010/06/03(木) 20:48:04 0
NEWDIVIDEが姿を現したのは桃華学園から少し離れた市民会館。
閉館時間にしてはまだ早いのだが職員の姿は見当たらない…それは

『う〜ん、及第点かな。でも、流石だ黎土君…いい仕事をしている』

たしかにそこに職員はいた―焼け焦げ、性別や年齢も判別出来ないほどの肉片と成り果てて。
それでもってカーペットや壁に一切火災の痕跡が見受けられないところが職人技を感じる。
年齢的には御前等や吉野と離れていない黎土であったが、少年の頃そのスタンド能力と素質を見込まれ
ボブの手足として働き社会の裏で暗躍し続ける毎日は、自然と彼に技術と知恵を養わせた。
「国立医大の研修生よりかはあいつの方が正確に人体を切れる」とバンソンは語る。

『南南西に3人、北東に1人、西北西に5人と2匹、東に4人と17羽…いやはや扱いづらいな。
 これだけの焼死体が必要となると…緊急時に使えないのは痛手だな」

PLAYINGWITHFIREは広範囲に及ぶ無差別な弱体化能力という強大なスタンドではあるが、能力に見合って厳格な規約が
掲げられている。それはこの能力が発現した時とある程度同じ環境を整えることで、
発動時、本体から300メートル以内に
南南西に3人、北東に1人、西北西に5人と2匹、東に4人と17羽の焼死体が必要となる。
それ以外の方法では微塵も反応がない。
スタンド自体の発現原因が極めて限定的だったことと、能力の影響の凄まじさを考えれば当然ともいえよう。

死体置き場を後にし、会館の奥まで進む。
『約束の場所は…ここかな?』

バルコニーにはパーティー用の長テーブルが置かれそこに男女等含めて22人が席に着いている。
中央に一つだけしか設置されていない燭台のせいもあって薄暗闇の中から
垣間見える白目を剥き、泡を蓄え微動だにしない人間たちの姿がことの猟奇さ駆り立てている。

『ちょうど22人…かな?医者や女子高生ならまだしも、ノウサギやゾウガメか…
バリエーションは豊かな方がいいとは話したけどな』ゲボェ
口に含んでいたディスクを全て吐き出し両手に持つ。

『―“愚者” “魔術師” “女教皇” “女帝” “皇帝” “教皇”“ 恋人”
  “戦車” “正義”  “隠者” “運命の輪” “力” “吊された男”
  “死神” “節制” “悪魔” “塔” “星” “月” “太陽” “審判”“世界”…
  …ついでに記憶Discも合わせて…よし44枚!ハッ』

腕が無数に枝分かれして、それぞれの手に2枚一組ディスクが持ち、
指で弾くようにディスクを飛ばした。
それぞれ正確に額に突き刺さると、飲み込まれるように沈んで、挿入された。
ディスクが挿入されるたことによってそれまで死体同然だった顔に突然血色が蘇り虚ろな表情ながらも目は烱々としている。

「ふわぁあああ…シャバか…やわらかくて暖かい空気だ」
「ふぅ、いい体じゃないの。若くて精力もありそうだし肉の付き具合も悪くない…旨そうだ。
 この体喰っちまいてぇな…!ハァハァ―おっとこれ俺だったけか」
「臭っさ!“ニオイ”がキツイ…ぐ、苦し゛い゛…あ゛、あ゛た゛し゛の゛鼻゛が…ッ」
「……(翻訳:ァァあァんまりだァァアァ!俺だけ…何で…ウサギなのッ…グスン)」ピョンピョン
          
         ざわざわ…            ざわざわ…
  ざわざわ…           ざわざわ…

『気に入っていただけたかな?…中にはご要望に添えなかった方もいるようだけど…支度はできた。
 本当に久しぶりだな諸君!その間、多くのことが変わったし、変わらないもの多くある。絶対的価値は不変さ。
 これまでの時間はちょっとした遅れに過ぎない。かねてよりの必然が遂に結実するのだよ」
「今北産業」
『悪魔半分確保、残りもこの街、悲願達成』
おおお、とどよめきと拍手喝采が巻き起こった。こんなに嬉しい気分なのは3年ぶりくらいだなと満足げに頷く。



55 :『NEWDIVIDE』 ◆JvtTTnep1k :2010/06/03(木) 20:49:00 0
そのとき初老のサラリーマンの姿をした男が素っ頓狂な声で一言。
「あ〜れ〜ボブさんは〜?」
『NEWDIVIDE』は徐に2枚のディスクを懐から取り出し聴衆に見せつける。
その途端に拍車が止み、歓喜が冷めあがって驚嘆の叫びがあちこちから上がる。

「おい、冗談だろ!?」
「ジ、ジーザス……殺ったのは、チャック・ノリスみたいなゴリラ野郎だったろ?」
「日本だから、ジャンボやババかも…とにかく信じられないわ」

『クスクス…とにかくボブはしばらく無理そうだ。ジェフリー、新しい体を頼む』
「仰せのままに…材料が揃い次第、最高の肉体を献上しましょう」
ジェフリーと呼ばれた白衣を来た中年の男は腰を下げ、手渡されたディスクを丁重に受け取る。

明朗な声で高らかに宣言した。
『同志よ時は訪れた!世界の半分は今や我々のものだ…九頭もボブもいずれ究極へと到達するだろう。
 諸君らは今、歴史の瞬間に立ち会っている。
 我らが願望を達成したいのであれば殺戮せよ。血肉の犠牲のみが悪魔の糧となる!
 今宵をもってこの地、北条市は眠らぬ屠殺場へ変貌するだろう』



56 :『NEWDIVIDE』 ◆JvtTTnep1k :2010/06/03(木) 20:51:03 0
シンシン刑務所元所長は語る

「あれは…夏の暑い日でしたね…鮮明に覚えています。
 所長としてもまだ若かった私はシンシン恒例の催しにプロレス…それもビックの2人を招待したんですよ
              H H H と T・バイソン ! 
                   しかも
      サ ン ダ ー ド ー ム ・ ケ ー ジ マ ッ チ !
 
 最高でした。今をきらめく2大スターがシンシンで……胸が熱くなりますよねえ。
 ――そして、その夜が世にも奇妙な…シンシン刑務所創設以来の悲劇…でしょうか」


「超長期刑囚―『ワースト』…、私たちはそう呼んでいました。
 もちろん…他の囚人とは別ブロックに隔離しましたよ。
……厚さ5Mのアルミ合金製特設独房です……それでも何度か壊されたことがあるのですが…

 ・・・・・   ・・・・・ ・・
 10376! 18495! 22!
 …お分かりいただけますかな?…え?「何の数字か?」…いやァ……その顔はお気付きでしょう
 彼らに下された懲役年数の合計、過去に手に掛かた被害者の合計、そして囚人の合計です
 延べ10376年!18495人!22人!……最低でも三桁の人間を“バラした”者がザラにいましたよ
 『ダーラムの人肉屋』、『狼女』、『解体教師』…当時全米を震撼させ、
 ニューヨーク・タイムズを連日賑わせた超大物をそこに収容しました…
 世界で最も危険な空間がそこに存在したのですッ!
 …食事を受給しにきた看守は指を食いちぎられ、健康診断に訪れた看護婦は目玉を抉られました」


「そして…あの夜です…思い起こせば肺が焼け落ち、肝が破裂しそうですよ…

 その晩定例の監視塔チェックを行った私は誰よりも早彼らがあぶくを吹いて失神している姿をモニター越しに
 確認しました……お恥ずかしい話ですか監視員は居眠りをしていたのです―そういえばこれも不思議な話だ。
 その時刻は交代から間もなかったはず…

 こうして私は看守百人を連れ、普段は絶対に開放できないのですが…ディナーにされたくないので…所長権限を行使し
 退職覚悟で現場に赴きました」

「しかし遅かった…発見されたときには既に昏睡状態で
 50日後に安らかに息を引き取りました…原因はわかりません…

―ーーただいえるのは催眠術や超能力なんて生易しいものではなく
 この世にはもっと別の…恐ろしい何かがいるというこでしょうか…な」

「―はい?“牢を開けたときもし囚人が生きていたら”?…う〜ん、どうでしょう…」

「ま、この世の終わりでしょうな☆」ニカッ


シンシン刑務所史上最悪の囚人『ワースト』が北条市に放たれた!
彼らの目的は『悪魔の手のひら』の完成!そのために人の血肉が必要不可欠…
大アルカナの逆位置を司るスタンドを駆使して、彼らは無差別に市民を襲う!
目的達成を目指すものも入れば己の欲望のまま殺戮を尽くす者もいる
あまりにも無慈悲!神の無慈悲!
悪魔とのサバイバルゲームの火蓋が切って落とされる!

君は生き残れるか? 

57 :『NEWDIVIDE』 ◆JvtTTnep1k :2010/06/03(木) 20:52:59 0
Disc(ディスク)
ホワイトスネイクの能力により生み出された物体。
CDの様なディスクで、生物の頭部に挿入することができる。
柔らかく弾力性があり、物理攻撃で破壊することは不可能だが、
死に行く者に挿入することでその死に伴い崩壊して消滅する。
通常、一人の人間からは、「スタンド」と「記憶」の2つのディスクが取り出されるが、
特定の身体能力(視力など)を小型のディスクとして取り出すことも可能。
スタンドや記憶が封印されたディスクは誰のものでも挿入可能であるが、
スタンドのディスクについてはそのスタンドの能力に適合する人物しか扱えない。
「スタンド」と「記憶」の2つのディスクが両方とも抜かれてしまうとその人物は死んでしまう。
「記憶」ディスクのみがない場合は、肉体のとりあえずの生存は可能であるが、
生きる目的を失うことによって肉体が衰弱を始め、やがて死に至ってしまう。

【スタンド】
名前:NewDivide
タイプ/特徴: 一体化型/全身にDisc挿入口、胸部に丸い空洞、肌真っ黒、全身にヒビ
能力詳細:殴った相手の記憶(魂)とスタンドをDisc化する。
     Discは体に形成された挿入口に挿入可能(挿入口は現在23箇所)。
     挿入後は挿入口が閉じきられるが、
     『NewDivide』でDiscを使用すると高熱が発生するため胸部の空洞から熱を逃がす。

     Discにはスタンドと記憶で次の効果に分かれる

スタンドDisc:記録されているスタンド能力を使用可能になる。
       基本は同等の性能だが、NewDivideに挿入した場合、成長は起こらない。
       よって成長性は総じてE(完成)。
       (ただし増殖・分裂のように能力自体が成長に関連する場合はその限りでない)
       一人につき一枚挿入可能。NewDivideは開口している挿入口の数まで。
  記憶Disc:記録されている記憶(魂)を再現する。
       記憶はある程度まで変換できる(僅かな期間で日本で会話が可能になる等)が
       物理的に不可能なことはできない。
ディスクの複数使用はそれだけ本体のパワーを大幅に消費してしまうため精密性は低下する。

未完成の能力かつ本体が真価を発揮しきれていないため計り知れない可能性がある…のか…?
破壊力-?スピード-B 射程距離- なし
持続力-?精密動作性-A〜E成長性-?

【スタンド】
名前:NEWDIVIDE
タイプ/特徴:存在型/魚の骸骨を頭部に持つ人体の骨、眼球が水晶玉
能力詳細:ボブ・バンソンの肋骨から誕生。 能力はNewDivideとほぼ同等だが、Disc挿入なしに
     Discを収容する空間を口に形成したり瞬間移動に似た能力を使用しているなど
     隠された能力がある可能性も。また本体は“存在しない”ため厳密に言えばスタンドではない。
     
破壊力-?スピード-?射程距離- ∞
持続力-∞精密動作性-?成長性-?

58 :徳井一樹 ◆MnJrk02a/Yx. :2010/06/03(木) 21:52:37 0

「こういうの、あるよなあ。なんつーの?キレのあるフォークみてーな言葉で言うと…『マヌケ』だな、うん」

屋上で呟く徳井。そこには九頭はおらず一人寂しくぽつんと徳井が立っているだけだった。
とにかく九頭が何処かいってしまったので佐藤達のところへ戻ろうとするとガシャン、と窓が割れる音がする。
運良くここは屋上。誰かが外に飛び出したのならば確認することは容易だった。

そこにはカズと痩身長躯の男になんだかいいとこ出のお嬢様のような女性が三人。
次の瞬間、三階の壁が吹き飛び現れる九頭龍一!

「落下の衝撃が強すぎた訳ね……結果としちゃ最悪だぜ」

問題は
未だその神々しさを失わず君臨する九頭龍一の前にいる二人は果たして敵なのか?ということである。
もし「狩る側」の人間なら迂闊に飛び込む訳にはいかない。
集団リンチに会ってそのまま片付けておけよ、そこのゴミを!となるのがオチである。
蜘蛛の巣がはったどうしようもない脳みそによる約一分間の思考の結果、
とにかくここは一旦佐藤達のところへ戻って様子見が妥当だと判断する徳井。

切開して開けた穴に飛び込み、直通で佐藤達のいる部屋へと戻る。

「スクーズィ!(悪かった)なんか三振空振りしたみてーな気持ちだな、ハハハ………」

愛想笑いで誤魔化そうとしたが柚木に養豚場の豚でも見るかのような冷たい目で凝視された。
留流家に取り込まれた年数を加算すれば柚木が年上なのだが、
ガラにもなく「ここは一応年上の兄貴としてなんとか格好良く手本を示したいな」という胸中の想い故である。

「悪かったって…謝っただろ?ちなみに今のイタリア語な。ごめんなさいって意味だ。
イタリアじゃあ挨拶とかできねー奴は今の俺みてーに養豚場の豚を見る目で見られるから気をつけとけ。
俺は昔、少年院にぶちこまれるよーなクソガキだったから挨拶せずに靴に唾吐き捨てたらドつかれた」

お茶を濁す徳井。徳井は徳井で結構照れ屋だったり恥ずかしがり屋だったりするのだ。
こういう虚しい空振りのような事態は徳井にとって死にたくなるほど恥ずかしい。

「……とにかくグラウンドの奴等は何者だ?カズも九頭に確保されちまったしな。それまで様子見か」

柚木と同じく御前等や吉野の出方を伺う徳井。
佐藤達のことなど忘れたように、状況次第なら後先考えずにここから飛び出して戦う気だった。

59 :よね ◆0jgpnDC/HQ :2010/06/03(木) 23:14:43 P
/…って話してる間にもこの煙重くなってない?さっきまでより全然重いっ!それに煙の手も大きくなってる!

「そうですね…あまりゆっくりしてはいられないようです…
 ですが、その前に一つ確かめておかねばならないことがあります。
 Sum41ッ!この床は自分と反発しあうッ!!」

言い終わると同時によねの体が床と反発しあい、よねが吹っ飛ばされる…ハズだった。
だが、何も起きない。吹っ飛ぶどころか微動だにしない。

「やはり…この世界は自分の精神世界…つまりこの世界は自分自身なんです。
 Sum41の能力は自分には使えません…この世界ではSum41の力はゼロに等しいと思っていてください」

それは事実上の戦闘不参加宣言。
勿論、精神世界の外から持ち込んだものに関してはSum41の能力は使える。

/煙の攻撃に備えて切り捨て可能なフルムーンの触手を盾にしながら部屋の扉を開けて中に入る。
/三人が部屋に入った途端入り口の扉は音を立てて閉じ、扉と壁は溶接されたように溶け合っている。

「閉じ込め…られたッ!?」

よねの後ろには開かない扉。よねの前にはあの女。
だが、あの女は特に何かをするわけでもなくまた消えていった。
そしてよねが瞬きをして次に目を開いた時。そこにはチェーンソー男とロングヘアーの女性の死体。
そのチェーンソー男はこちらに気付いたかのように振り向く。
その顔には黒い…なにか、邪悪な物があった。

「なるほど…仮面の男…ジョンソンにでもなったつもりでしょうか…?」

60 :柚木 美都留 ◆BhCiwB2SCaJ5 :2010/06/04(金) 01:47:20 0
>「スクーズィ!(悪かった)なんか三振空振りしたみてーな気持ちだな、ハハハ………」

「!!」
天井を切開して戻って来た徳井に柚木は心臓が飛び出るくらいビックリした。
戦闘以外で天井から現れる時はノックぐらいするとか
一声をかけて、ゆっくりと出て来てもらいたいものだと思う柚木だった。

>「悪かったって…謝っただろ?ちなみに今のイタリア語な。ごめんなさいって意味だ。
>イタリアじゃあ挨拶とかできねー奴は今の俺みてーに養豚場の豚を見る目で見られるから気をつけとけ。
>俺は昔、少年院にぶちこまれるよーなクソガキだったから挨拶せずに靴に唾吐き捨てたらドつかれた」

「あやまるひつようはないぞ徳井…でもお前って変なこどもだったんだな…」
片眉をあげて上から目線で徳井を見る柚木。

「……でも、なんとなくわかるよ…」
柚木は最後に言葉をつけたすと九頭たちに対しての御前等や吉野の出方を伺う。

徳井も何かしらを背負い強い思いを抱いて生きてきたのだろう。
言葉ではなく今までの行動から、その強い意志を柚木は感じていた。

61 :荻原秋冬◇6J1m09mANS :2010/06/04(金) 17:20:38 0
>>44

「な!?なんだこれは?」
『プラントアワー』のことは忘れてしまってもスタンドを失ったわけではない。
初めてスタンドで戦うという感覚になってしまうが…

「なんだかよくわからないが…これは使えるぞ!」
とにかく動かしてみようと念じてみたが、『プラントアワー』の両腕についている蔓が
みるみる枯れてしまった。

「ああ!そんな……」
うまく動かせなかったせいで蔓が枯れたのかと思ったが…実はそうではなかった。
枯れた蔓から新しい植物が生まれた。

>「ちっ!もう思い出しやがった!しっかし丈夫なおっさんだぜ。なんで気絶しねーんだ?勝負を急がせてもらうぜ!」
吹っ飛ばされた大男が体制を整えなおしたのか、いつの間にか荻原の目の前に立っていた。
突然繰り出された大男の攻撃予想以上に強力で、荻原は吹っ飛ばされ体育館を超えて
プールの中に落ちた。
ドロドロのにごった水に藻が大量に入ってそのうえ虫の死体らしきものもプールに浮いていた。
早くここから抜け出さないと…
だが…そうは問屋がおろさない。
プールの水面から顔を出したときすでに大男が荻原に止めを刺そうとした。

>「おいらのビンタをくらえー!!」
何度も味わった大男の強烈なビンタが荻原を襲った 。
食らうわけには行かないがプールの中ではまともに動くことはできない。
荻原はわざと足を滑らせ後方へ倒れた、と同時にプールに浮いていた藻を大男の目に投げつけたのだ。
そして荻原はプールの水面下まで倒れたがそれを利用していったん距離をおいた。
何とか立ち上がり頭についている藻を払いのけた。

「もうチャンスは今しかない…こいつがどんな能力があるかわからないが、
やるしかない!」
もはや本能で荻原はプラントアワーを動かした。
プラントアワーは両腕に生えていた植物の蔓を大男の首をめがけて急速に伸ばした。
見事に大男の首まわりに巻きついて首を絞めることができた。

プラントアワーに生えた新しい植物…
それはアセチルコリンとヒスタミンを含んだ棘…
強烈な痛みとかゆみを与える…
イラクサの葉だった…

62 :大谷杉松 ◆vReXCpsNBKcm :2010/06/04(金) 17:54:24 0
>>53>>59

>「この迷宮みたいな家はスタンドが能力で作り上げた空間。九頭はこのスタンドを完全に切り離したらしいわ。
 九頭の精神の一端がこのスタンドを制御していた時は九頭の精神が外との窓になっていて
 シートに現実世界を映すことができたけど今はそれすら出来ない…。
 私達は完全に精神世界に閉じ込められたみたいね。
 おそらく九頭の支配を脱したこのスタンドの元の持ち主が暴走して私達に攻撃を仕掛けてる。」
>「この家全体がスタンドの空間ではあるけれど、スタンドの本体と言えるモノはさっきの女よ。
 あの女の位置にマーカーの反応が一番濃く出ている。
 よね君はあの女の姿に思い当たるフシがあるみたいね。
 このスタンドはターゲットの記憶に入り込んでその記憶から得た擬態を作り上げるのかも知れないわ。

 …って話してる間にもこの煙重くなってない?さっきまでより全然重いっ!それに煙の手も大きくなってる!
 これじゃまともに歩けないわ…っていうかこれどんどん重くなってくるんじゃないでしょうね?
 早いところ本体を倒さないとヤバイ気がするわ。
 今あの女がいるのはこの部屋よ!動けるうちに速攻でカタをつけましょう!」

いそいそと先ほどの女を追いかける三人、目の前のドアを開け中に入る

『ギィィィィバタン!』

鈍い音と共にドアがまるで溶接されたようになっていた、そして部屋の方向に振り返ると…

                   『!?』

一目見た時過去の映像がフラッシュバックされる

…腕の無い最愛の彼女
お気に入りの洋服が真っ赤に染まった最愛の彼女
床に血だまりを作り倒れこんでいた最愛の彼女
痛さからか死ぬ恐怖からかもしくは大谷との別れが悲しかったのか目から涙を流していた最愛の彼女

今目の前に広がる光景は切られる前の映像か、彼女は腕を無くしては無く目の前には小型のチェーンソーを持った男が一人
見た衝撃と比例するように足かせとなった煙は重さを増す…
彼女と仇の後ろには薄ぼんやりと影のようなものが見えるが、今の大谷は目にもしなかった
目に映るは仇相手の形をした敵ただ一人、鬼のような形相で睨む大谷にもう声は聞こえないだろう、

「コノ…コノド畜生ガァァァ!!! ド畜生ド畜生ド畜生ガァァァ!!」

相手がチェーンソーを振り下ろしたその時、奴の顔にハンマーがめり込む!
相手は遠くまで弾き飛ばされたが再び立ち上がる…どうやら奴もスタンド使いだったようだ、
足かせを引きずりながら相手の元に向かう大谷、そこに元の大谷の面影は無かった。

63 :大谷杉松 ◆vReXCpsNBKcm :2010/06/04(金) 18:19:09 0
【本体】
名前: 桜田 恵介 (さくらだ けいすけ)
性別: 男
年齢: 死去時48歳
身長/体重:182/73
容姿の特徴: 真っ黒な服にズボン、腕には小型のチェーンソー
人物概要:
大谷の彼女を殺した殺人鬼、女性しか狙わず死体の腕をコレクションする歪んだ性格を持つ
10年前留流家に取り込まれていたが勝手に行動し
襲った女性がスタンド使いで返り討ちに遭い死亡


【スタンド】
名前: スリラー
タイプ/特徴: 装備系 人形 黒い靄のような見た目
能力詳細:
周りに黒い靄を発生させることが出来る、桜田には靄の中でも鮮明に周りの様子が見える
顔にかけて誰だか悟られないようにすることも可能、スリラーに触ることもスリラーが触ることも不可能、


破壊力-E スピード-C   射程距離-A
持続力-A 精密動作性-D 成長性-E

64 :生天目 有葵 ◆BhCiwB2SCaJ5 :2010/06/04(金) 20:29:10 0
>61
荻原は後ろに倒れた。目標物を失った草村の平手打ちはぐるりと空中で孤を描き
一回転した顔面にはタイミング良く荻原から投げつけられた藻がべっちゃりと巻きつく。

「ひゃうっ!!」
藻で目隠しされた男は体勢を崩してプールにズボンと潜り込んでしまったが

「ぷわはははーーーっ!!」
とハイテンションな掛け声と水飛沫をあげながらプールから顔を出し藻だらけのプールをジャバジャバと進んでくる。
草村は口をモゴモゴさせていた。藻と一緒に虫をムシャムシャと食べているのだった。

>「もうチャンスは今しかない…こいつがどんな能力があるかわからないが、 やるしかない!」

「やって…みろ…むしゃ…むしゃ…むしうまー!!」

プラントアワーの両腕に生えていた植物の蔓は草村の首をめがけて急速に伸びると
見事に首まわりに巻きついて首を絞めることに成功する。

「ぐぶぶぶぶ!!痛〜痒〜!!」
蔓を引き千切ろうと手を伸ばすがその手にも痛みと痒みが襲い掛かる。
それに頭の後ろに隠れている草村の小さいスタンド、メアリーも
首に巻かれた蔓と蔓の間に偶然体を挟まれてしまい、もがき苦しんでいた。

「…は…ぐ…」
草村は泡を吹いて気絶した。

本体:草村慎吾朗。スタンド名:メアリー。戦闘不能

*****************************************************

−−体育倉庫−−

「だいじょうぶですか!?荻原さん!!」
生天目はマットの上に運んだ荻原の塗れた体をそこら辺にあった布で拭きながら心配しており
傍らのステレオポニーはヒーリングソニックで荻原の傷を癒している。

蝉に大土井。草村はともかく荻原も厳しい戦いを強いられてきたのだ。
体育倉庫の窓からはグラウンドで何かをしている依然健在の九頭龍一が見えている。

「このおぢさまも…もう限界ではないのか?」
ステレオポニーは独り言のつもりだったがはっきりと言ってしまった。

「でも…荻原さんはなんでこんなになるまで戦っているの?」
生天目はマットの上でぐったりしている荻原に尋ねた。

65 :佐藤ひとみ ◆tGLUbl280s :2010/06/05(土) 03:39:06 0
>59 >62
よねの伯母の姿を擬態したスタンドは煙と化し通風孔から部屋を出て行った。
牢獄となった部屋に転がっていたのは人形のように転がされた女の死体と死体の腕を切り落とさんとする男。
男はチェーンソーを振り上げて大谷に襲い掛かる。

「大谷さん!危ないっ!」
ひとみは思わず声を上げたが足を拘束している掌の形をした煙は膝の高さまで成長し足が持ち上がらない程重くなっている。

女の死体を見た大谷の顔には常は見せたことも無い凄まじい表情が浮かんでいる。
>「コノ…コノド畜生ガァァァ!!! ド畜生ド畜生ド畜生ガァァァ!!」

チェーンソーが大谷の頭に振り下ろされるより一瞬早く大谷の組み立て式ハンマーが男の顔にめり込む。
大谷は最早太もも辺りまで成長した煙の錘を引きずりながら壁近くまで吹っ飛ばされた男に近づいてゆく。

吹っ飛ばされた男が僅かに顔を上げる。
男の顔にぼかしの様にかかる黒い霧は一瞬で男を包み込む程に成長し、その霧は人の形を成し男の体から分離し立ち上がった。
人型の黒い霧が腕を突き出す。掌から黒い闇が濛々と広がり一帯を黒く染め視界を奪う。

―――ガシャーーーン!!

大谷の姿が黒い霧の中に沈むと天井から音を立てて何かが降ってきた。
――鉄格子!
立ち竦むひとみの目の前にギロチンのように落ちてきた鉄格子によって部屋は二つに区切られる。
二つの檻と化した部屋。

片方の檻にはよねとひとみ。
もう片側の檻は暗闇に包まれているが中には大谷とチェーンソーの男がいる筈だ。

鉄格子はスタンドの侵入を阻む力があるのかフルムーンが側に寄るとバチンと弾かれる刺激があった。
強行突破が可能かもしれないが、出血は止まったとはいえ幻影から受けた視神経のダメージは未だ鈍痛として残っている。
無理をしてフルムーンにこれ以上のダメージを被るのは上策ではないと判断し突入を思い留まった。

「あの黒い霧…煙の女とは別のスタンド…?」
ひとみはシートに出た色の違うマーカーの反応を見ながら呟く。
黒い霧の向こう側はスタンドによる特殊なマスキングの為かフルムーンのスキャンを使っても透視することが出来ない。

66 :佐藤ひとみ ◆tGLUbl280s :2010/06/05(土) 03:44:41 0
ひとみは視線を大谷のいる檻に向けたまま、よねに向かって声をかける。

「よね君…元々ここは私の精神世界だったはずだけど
あんた達が入ってきたことで私達の精神世界がリンクしてるみたいね…。
Sum41の能力が効かないのは、あの女がよね君の記憶を擬態してるせいかしら…?
もしSum41の能力を使う必要があったらこれを使って。」

ひとみはフルムーンの触手を腕に絡めながら話す。

「ここが三人の精神世界のリンク空間だとしてもフルムーンは私の精神だけから発動してるわ。
Sum41は他人のスタンドの設定を書き換えることはできるでしょう?
それに触手は切り離してしまえば只のタンパク質の塊。固体でも液体にでも、よね君が望む形に加工することが可能よ。」


話が途切れた拍子に、ふと気づく足元の違和感…違和感というより元の自然な状態に戻ったと言うべきか。
ひとみとよねの足に絡み付いていた煙の足枷が消えている。
ひとみ達からは目視できないが同時に暗黒の霧の中に居る大谷の足も自由になっていた。

「どういうことよ…これ?」
シート上の反応を確認するが、よねの伯母を擬態したスタンドのマーカーは消えておらず位置的には三人のいる部屋の隣に控えている。
訳もわからぬままシートを見つめながら暫し檻の中を歩き回るひとみ。


数分の時間の後再び足に絡みつく鉛の感覚。
いつの間にか煙の足枷は消える直前の形のまま再生していた。再び煙の錘に動きを封じられる三人。
足に落としていた視線を元に戻すと目の前には新しい煙草を咥えたあの下品な表情の女――。
女は嫌な笑いを浮かべながら口から煙を吐き出す。


周囲に立ち込める灰色の煙が晴れると檻の中の風景は一変していた。
小さなベッドに玩具箱…子供部屋を思わせる内装の部屋。
部屋の奥には艶を無くした髪をぼさぼさに乱した白いワンピースの女が玩具の包丁を手に立っている。
その女性はよねの最も良く知る女性の一人だった。

「もう限界…あんたなんて生まれてこなければよかったのに…生まれてこなければ…生まれてこなければ…」
虚ろな目で呪文のように言葉を繰り返し近づいて来る女。

警戒を促すそうとチラリとよねに視線を移したひとみの横にいたのは小学校に上がる手前位、5〜6歳の少年だった。

「あんた…まさか…よね君じゃないわよね…?!よね君なの…?」
つい先程まで横に居た青年の面影を残す少年に小声で尋ねるひとみ。

女は呪いの言葉を啜り泣きに変え更に近付いて来る。
「ごめんね…ごめんねコウタ…コウタが悪いんじゃないのよ…でもね…」

手に握る包丁はいつの間にか玩具から本物の肉切り包丁に摩り替り鈍い光を放っている。
女は嗚咽を漏らしながら年端も行かぬ少年に姿を変えたよねの首を目掛けて包丁を振り下ろした。

煙草を咥えた女は口を歪めて笑いながら足枷により動けない、よねとひとみを見つめている。

【大谷さんは別の檻に閉じ込められ、よね君は記憶の檻の中で子供時代に戻されました】

67 :吉野きらら ◆HQs.P3ZAvn.F :2010/06/05(土) 09:20:21 0
> 「『力』を色濃く感じるのは図書館のあたりか……どうやら現在進行形でドンパチやってるようだな。さっきから篭った破壊音が聞こえるぞ。
>  それはそうと吉野さん。君は九頭と『参加者』、どちらに加勢するつもりなんだ?俺は九頭に取り入ろうと思っているんだが」

虚飾の音色も陰謀の響きも無しに、何処までも率直に、御前等祐介は敵対の意思をあらわにした。
余りにも単刀直入過ぎて、きららは一瞬呆然とする。
だがすぐに、彼女は瞳に漆黒の意志を灯した。
最早微笑みの内側に隠す必要は無いだろうと、烈々として。

「……実は私、誰よりも幸せにならないと気が済まないタチですの。もしも九頭がゲームに勝ったのなら、それは彼にとって幸せな事でしょう。だから殺します。
 けれども九頭が破れ参加者達がゲームに勝ったとしたら、今度は彼らが幸せを享受する事になりますね。だからその時は彼らを殺しますわ。
 一方が敗れれば、一方は私が殺す。だったら両方私が殺しても、特に問題はないのではありませんか?」

道は分かたれた。
いや、初めから彼女は誰とも同じ道を歩んでなどはいなかった。
これまでも、そしてこれから先も。
彼女の当たり前の、けれども異常な願望は、何人たりとも彼女の傍らに立つ事を許さない。

最早言葉は不要とされ、徐々に澱んでいく空気の内から排されていた。
二人はただ睥睨し合い、そして全くの同時にスタンドを発現させ――

> 「う、うおおおおおおお!?」

――突如上から降ってきた男に、御前等は見事に下敷きとされた。
呆然とするきららは、しかし校舎の上階から響く轟音を聞き、俄に音の出所を見上げる。
そして、視線が交錯した。濛々と揺らぐ塵芥の幕から、その勇ましく凛然たる雄姿を覗かせた護国天使ア・バウ・ア・クーと。
彼の姿を見るのはこれが初めてとなるきららだが、圧倒的な存在感から彼女は一切の根拠を必要とせず、彼を九頭龍一と悟った。

綾和などには目もくれず、きららは九頭を凝視する。
彼女には綾和が護国天使の制御を担っているなどとは露知らず、
また知ったとしても、それを完遂する事が彼の幸せであるならば彼を仕留めようとはしないだろう。
彼女は『幸せの絶頂にいる人間を不幸に陥れる事』で自らの幸せを相対的に実感する。
故に彼女はあくまでも、綾和に『護国天使の十全たる制御を完遂させる』に違いない。
事の場合によっては、敵である綾和を護ってでさえも。

「……貴方のお友達の……どなたでしたっけ? 確かボブとか名乗る殿方でしたわ。あの方のお陰で、私は決して揺るがない『幸福への階段』を見つけました。
 ですが、それはまだ私の物ではないのです。あの方だけでは、足りませんでした。……だから貴方も、私の階段となって頂きますね」

ボブと同じく『悪魔の手のひら』の中心である九頭に至れば、今度こそ自分は『幸福への階段』へ到達する事が出来る。
胸の内に秘めた確信に後押しされて、きららは九頭へと花を芽吹かせた。
とは言え距離もある上に、『留流家』を纏った彼に通用するかは甚だ怪しくはある。
事実彼女は、花の処理に気を取られ他の参加者達に隙を見せるなどすれば僥倖、程度の腹積りで攻撃を仕掛けていた。

【九頭さんこんちゃーす。ボブ君ブッ殺しちゃいました。次はアンタですよ。って感じで
 攻撃も『しないよりはマシ。効果が出ればラッキー』程度。
 往々にして舐め切ってるって事で】

68 :よね ◆0jgpnDC/HQ :2010/06/05(土) 13:08:38 P
大谷と隔離されてしまったよねと佐藤。
それはまるでローマのコロッセオの様に、大谷とチェーンソー男の戦いを傍観しているようだった。

/それに触手は切り離してしまえば只のタンパク質の塊。固体でも液体にでも、よね君が望む形に加工することが可能よ。」

「ありがとうございます。これである程度は戦えるはずです」

あくまでよねのスタンド以外のスタンドは外部から持ち込んだもの。
それらには何不自由なくSum41の能力を行使できる。

ふとよねは気付く。足もとの煙がなくなっている事に。
だが、その足もとの煙は部屋中に充満していた。

ふいによねは貧血の様な症状に襲われる。
視界がぼやけ、正常な思考もできない。
そしてその場に倒れこんだ。

再び目が覚めた時、煙は晴れていた。
煙が晴れた部屋の情景は一変していた。そこはかつてよねが暮らしていた家の一室。
あの忌まわしき日を再現しているようだった。
そして足元には煙の枷。だが様子が違った。
視線が違うのだ。明らかに低い。

「こ…これは…意識が…何も…思い出せないッ…!?」

/「あんた…まさか…よね君じゃないわよね…?!よね君なの…?」

「だ…誰…?どうして名前を知って…?」

そこには見知らぬ一人の女性。
子供に戻されると同時に意識、記憶までもが子供時代に戻される。
…もちろん、スタンド等使えない。いや、使い方がわからない。

/「ごめんね…ごめんねコウタ…コウタが悪いんじゃないのよ…でもね…」

「お…お母さん…?な…何をそこで…」

その"お母さん"の手には巨大な肉切り包丁。
ギラギラと禍々しい光を放ちながら獲物を捉えんとしている。
そして"お母さん"はその包丁をよねに向けて振り下ろす。
よねが本能的に、反射的に手を前に出した時だった。
事前に佐藤から渡されていた触手が目に入る。
ハッと我に帰るよね。

「思いだしたッ!Sum41!この触手はチタンで出来ている!!」

その瞬間、腕に絡みついていた触手はチタンへと姿を変える。

ガチィィンッ!

チタンの触手と肉切り包丁がぶつかり合う。

「違うねッ!もう断ち切れたッ!これが導き出した答えだッ!!」

そして腕のチタンの触手で肉切り包丁を弾く。
しばらく床を転がった包丁は、運動を止めると煙に変わった。

69 :九頭龍一 ◆SM24/QbfAY :2010/06/06(日) 00:20:31 0
>67
眼下に見下ろす先には綾和と一組の男女。
見上げる女の言葉を最後まで聞き届けると、九頭は一歩足を踏み出した。
踏みしめるもののない空中にあって、まるでそれはゆっくりと舞い降りるように。
三対六枚の翼を広げ護国天使ア・バウ・ア・クーの影が三人を包み込む。

三階から舞い降りるまでの間、メメント・モリの攻撃は確かに九頭に放たれた。
そして正常に機能した事を吉野は感覚的に理解しただろう。
ア・バウ・ア・クーの各所に生まれた蕾。
しかしそれは花開く事無く分解していく。
この現象が意味する事は…九頭には『幸福』の感情が全くない、事を顕していた。

その姿はまるで桜吹雪を纏い舞い降りる天使の様に。
「美しい花をありがとう。」
舞い降りた九頭は右腕のうちの一本を掲げると、その掌に浮かび上がる幾何学模様。
次の瞬間、吉野はまるで磁石に引き寄せられるクリップの如くア・バウ・ア・クーの手に収まっていた。

首を掴まれ持ち上げられた状態である。
強くは掴まれているが、そのまま握り潰すとか首を絞められるというわけではない。
だがそれ以上に恐ろしいことが吉野の身に起こっていたのだ。
「花は散る様も美しいが、咲き誇る姿を留めておきたいとも思うもの。
お前の美しさが衰えないようにこのまま凍りつかせてやるとしようか。」
掌からは白い光が淡くもれ出て、急速に周囲の熱を奪って行っている。

事実襟首辺りは既に凍り付いている、が、それに対して身体は冷たくはあるが凍傷や凍ると言う状態ではない。
あえてそれをしない訳は、次に紡がれる言葉に答えがあった。
「ボブを殺したのか。
それで、どの程度殺したのだ?髪の毛一本残さず完全に殺しきったのか?
ボブは私が次世代に残せると認めた男だ。
だがそれゆえに危険性も秘めている。
氷像になる前に答えろ。」

70 :佐藤ひとみ ◆tGLUbl280s :2010/06/06(日) 02:04:45 0
>68
>「思いだしたッ!Sum41!この触手はチタンで出来ている!!」
腕に絡めた触手をチタンの篭手に変え振り下ろされた包丁を弾くよね。
床に落ちカランと音を立てた肉切り包丁は灰色の煙を上げて消えていく。

>「違うねッ!もう断ち切れたッ!これが導き出した答えだッ!!」
決意を込めたその声は既に青年のものに戻っていた。

成長した姿の息子と若いままの母。精神世界での親子の対峙は歪な様相を呈していた。
よねに"お母さん"と呼ばれた女は動きを止め、一瞬だけ真顔に戻ると悲しげな表情で問いかける。

「断ち切れたって何?コウタはお母さんを捨てるの?自分だけ答えを出してお母さんを捨てるの?
お母さんがあの時どんなに心細く辛い気持ちだったのか考えようとは思わないの?」


女はその言葉を最後に表情を一変させた。
口をゆがめ目を吊り上げ憎憎しげな表情でよねを見つめ口から呪いの言葉を紡ぐ。

「ちくしょうぉぅぅ…なんて悪い子なの!コウタは…何で生まれてきたのよクズッッ!!
やはり生まれてきちゃいけない子だったのね…あんたのせいでお母さんはこんなに苦しんでるのに…!!
お母さんのために死んであげようなんて考えもしないのッ!!クズ!役立たず!邪魔者!!」

恨み言を並べ立てているうちに女の体は徐々に灰色を帯びた不自然な色に変化していく。
唇はひび割れ目は白く濁りゾンビさながらの顔つきで歯をむき出す女の両手の五本の指は鋭く長い刃物と化していた。
刃物の指をカチャカチャと磨り合せながら濁った目から涙を流す女。
声だけは未だ澄んだままなのが逆に不気味だった。


女はよねの眼前にまで歩を進め、煙の足枷に動きを封じられた彼の首に刃物の手を添える。

「お願いコウタ…お母さんの為に死んで…ね…!!」

女は人差し指だけを動かして動けないよねの頬にゆっくりと一筋の傷を付けた。

71 :荻原秋冬◇6J1m09mANS :2010/06/06(日) 06:22:19 0
>>64
イラクサの毒にとうとう耐え切れなかったのか。
大男は泡を吹いて気絶してしまった。

この時、荻原の頭の中にぼやけていた一つの言葉を思い出した。

「……『プラントアワー』……思い出した…俺の…スタンド…」
『プラントアワー』の単語を思い出したと同時に、頭の中でノイズがかっていた思い出を
思い出したのだ。

不良にボコボコに殴られていたときの荻原も、がむしゃらに殴り返そうとしたとき。
プラントアワーが出現したのだ。
ただ一つ違うところといえば、出現したプラントアワーの拳一発で不良が気絶してしまったことだ。
それ以来学校の不良たちは荻原に眼をつけることはなかった。


プールの端に上がることはできたがさすがに立つのが難しい。
長時間による激しい疲労と精神的苦痛の連続で荻原の心と体は限界に近かった。
そこへ生天目がやってきて肩を貸してもらい体育倉庫で一休みすることになった。

>「だいじょうぶですか!?荻原さん!!」

「ああ…たぶん……」
生天目のスタンド『ステレオポニー』があの超音波らしきもので再び荻原の傷を傷を治していた。

>「このおぢさまも…もう限界ではないのか?」

>「でも…荻原さんはなんでこんなになるまで戦っているの?」
マットの上で横になっていた荻原は体を起こそうとした。
横になったままでは話にくいのだが…
まだ治りきっていないため体中に激痛が走る。
仕方ないので不本意ながら横になったまま荻原は話した。

「そういえば有葵ちゃんにはまだ話していなかったっけ?
私には…愛する妻とたった一人の大切な娘がいたんだ。
ちょうど有葵ちゃんと同じくらいの年だったな……
あの時は…」
家族の話をするたびに荻原の目に熱いものがこみ上げてくる。
が、こんなところで泣くわけにはいかない。
目を瞑り自分の手で目隠しをして荻原は話を続けた。

「いまからちょうど10年前のことだった。
私の妻と娘が突然行方不明になってしまったんだ。
いろんなところを探したり、親戚中に電話も掛けまくって、警察にも捜索してもらった。
だけど…見つからなかった。
この10年間私はずっと神に祈り続けた…

『もし妻と娘を見つけることができるなら私は命を差し出してもいい!』

それだけ私は妻と娘のことを心から愛していた。
そしてこの間…やっと神が願いをかなえてくれたんだ…
妻と娘は九頭龍一に囚われていた…
本当に命をかけて妻と娘を助け出さなきゃならない…

これが…私が戦う理由だ」
人前で泣くのはみっともないが…
荻原の目隠しをした自分の手の間から…ほんの一筋だけ涙が流れた…

72 :大谷杉松 ◆vReXCpsNBKcm :2010/06/06(日) 10:04:55 0
>>65
桜田を壁まで弾き飛ばしゆっくりと近づいて行く大谷、桜田はスタンド『スリラー』を出現させ周りを黒く染め上げる
部屋の半分が黒く染まったそのときである、

『ガシャ―――――ン!』

大きな音を立て上から鉄柵が落ちてきてよね、佐藤と隔離されてしまった、
暗闇の中から不気味にハンマーが空を切る音とチェーンソーの音だけが聞こえる…

『ムヤミニフリマワシテモアタラナイワヨ! イッカイオチツイテ…』

スマートガントレットが止めに入る、しかし今の大谷には意味は無かった、
彼女だって大谷のスタンドだ、大谷の気持ちが痛いほど伝わる
しかし…このまま怒りに任せて攻撃していればいつ相手の攻撃が飛んで来るかわからない。
一回落ち着くべきなのだ、今の大谷にはそれが出来てない、
チェーンソーの音と共にゆっくりと足音が近づいてくる
このままでは大谷が死んでしまう…その時だった

「す…すぎ…まつ…」

その声で我に返った大谷、その声は大谷の彼女の物であった、

『コッチノホウコウヨハヤク!』

大谷の腕を引っ張りながら桜田から離れ声のする方向へ向かう
スマートガントレットにとって初めて聞く声ではあったがその声が誰のかはわかっていた
チェーンソーの音が近づいて来るがここでスマートガントレットの能力を発動させもう一度壁の方向へ飛ばし時間を稼ぐ、
声のする方向へ近づけば黒い靄の中からうっすらと彼女の姿が見える…
彼女の影には子供のようなスタンドが一人、彼女も異能者だったのだ
10年前、今の同じようにゲームが開始されていた
彼女はそのゲームに巻き込まれたのだと大谷は気付く…
彼女のスタンドは今にも消えそうでそれは彼女の命が長くないことを表していた。

彼女のスタンドがスマートガントレットに甘えるように擦り寄ってくる…まるで本当の子供のように、
そして、スマートガントレットの手の中で消えていった…

―――後ろからまた足音が聞こえる、チェーンソーの音もだ、
スマートガントレットが指を鳴らす、桜田はまた弾き飛ばされると思い身構えるが桜田が思ってもいないようなことが起きる、
桜田の体が変形していたのだ、ものすごい痛みと共に


「――お前が歩めなかった未来の分も俺達が歩いてやる…」
『――ワタシタチニマカセテアンシンシテネムリナサイ…』

「行くぞスマートガントレット!!」
『イツデモイイワスギマツ!!』

二人は感じているだろう、自分からあふれるパワーに
今使った能力は大谷の彼女の物、『近い未来に起きる事を今起こす能力』である
それが意味することは、大谷は今彼女と共に戦っているのだ!!

73 :大谷杉松 ◆vReXCpsNBKcm :2010/06/06(日) 10:19:39 0
【本体】
名前: 大谷 杉松
性別: 男
年齢: 34
身長/体重: 171/73
容姿の特徴: 灰色のトレンチコートを着ていて、短髪 ぼろぼろの靴を履いている
       トレンチコートの下は白いワイシャツにボロボロの灰色ジーンズ。
人物概要:かなりの紅茶愛好家、いろいろなところに旅をしては紅茶を飲んでいる
     旅人のためか、けっこう事件に巻き込まれることも多い。

【スタンド】
名前: スマートガントレット=Mum
タイプ/特徴: 人型 遠距離〜近距離 女性の体型 長い髪がはえてる 
       腕が無く腕の代わりのガントレットが浮遊している
       意思を持っていて賢いが力は無いに等しい

能力詳細:直前にやった事をもう一度やった事にすること
     他人のやった事に発動させた場合、再度発動させるためには五分ほどの"休憩時間"が必要
     発動させる際スタンド本体に合図を出す必要があるうえに指を鳴らす動作が必要
     直前以外もやったことに出来るが、その場合体力消費が激しくなる

追加された能力:
『近い未来に起きる事を今起こす能力』
一時間までの先の事を今起こすことが可能、一度発動した後は30分もの"休憩時間"が必要
しかし、一時間分の疲労とダメージを相手は食らうことになる
発動させる際スタンド本体に合図を出す必要があるうえに指を鳴らす動作が必要
前の能力も使える

破壊力-E スピード-C   射程距離-A
持続力-A 精密動作性-A 成長性-B

74 :生天目 有葵 ◆BhCiwB2SCaJ5 :2010/06/06(日) 16:33:25 0
>71
荻原の頬に一筋の涙がつたる。
生天目は大土井との戦いの最後に荻原が言っていたことを思い出した。

(…わたし…忘れてた…)

指先で荻原の腕にちょこりと触れる。誰でもひとりはさみしいのだ。
やっと生天目の頭の中では「九頭龍一=わるいやつ」の公式ができあがった。

「…人の思いって…不思議…
トゲトゲな思いでも心に傷をつけながら大事に抱えこんでしまうから…」

体育倉庫の窓からは吉野と九頭が戦っているところが見えるのだが
生天目は床のアリンコの行列を見ていた。

75 :よね ◆0jgpnDC/HQ :2010/06/07(月) 00:00:55 P
/「お願いコウタ…お母さんの為に死んで…ね…!!」

チクリと頬に痛みが走る。
異形の母の姿に多少の絶望を感じるよね。
だが、すぐにそれは希望へと変わった。

「バカめ…血が空間に放出された今ッ!この血は自分自身ではないッ!!」

頬の血を、自らの血を自らの手ですくい上げるよね。

「なあ…ちょっと聞きますが…"焼肉屋さん"には行ったことがありますか?
 そこで煙を起こした事は…?」

ニヤリと笑うと、更に血を手に溜める。

「Sum41ッ!この血は粘土質になる!!
 そしてッッ!この粘土をッ!扇風機のハネのようにッ!
 Sum41ッッ!この血は回り続ける!!」

そして血で出来たハネは換気扇の様に回り出す。
勿論、パワーも大きさも本物とは比べ物にならないほど小さい。
だが、眼の前の…刃物くらいの大きさの煙ならば吸い込むことは可能だろう。

そして"お母さん"の指先の刃物は血の換気扇に吸いこまれていく。

76 :佐藤ひとみ ◆tGLUbl280s :2010/06/07(月) 02:57:28 0
>75
>「Sum41ッ!この血は粘土質になる!!
>そしてッッ!この粘土をッ!扇風機のハネのようにッ!
>Sum41ッッ!この血は回り続ける!!」

仰け反るよねの顔の前で回転する血の換気扇。
よねが"お母さん"と呼んだ女の刃物の指は崩れながら煙と化し換気扇に吸い込まれていく。

「にぎゃぁあああああぁあああ!!!」

手を捻り切られたかのように苦痛の声を上げるよねの"母"。
手首から先を失った女は露出した傷口から噴出す血の代わりに煙を上げている。

「くそぉああ!!このガキィ!親不孝者ぉおおお!!」
女は顔を歪め歯をむき出しながら咆哮にも似た声を搾り出す。
噴出する灰色の煙は手首から生える巨大な鋏に変わっていた。

「コウタ…生まれてきちゃいけなかったアンタの首なんてこの鋏でチョン切ってやるわぁ!!死ね!このクズ息子!!」

よねの伯母の姿を擬態したモノは部屋の隅で煙草を吹かしながら一連の場面をにやにや笑いながら傍観している。
よねの"伯母"は深く煙草を吸い込むと灰色の煙をよねの作った換気扇に浴びせかけた。
換気扇は煙と同化し煙の拡散と共に消えていく。

"母"はあくまで息子に執着し襲い掛かる。
一度煙に姿を変えると瞬時に間合いを詰め換気扇を失ったよねの首元に分かれた鋏の根元を突きつける。

「お母さんの大事な大事なコウタ…今度は無駄な血なんか流さない…一撃で首を飛ばしてやるわぁああ!!」

三度訪れた危機的状況によねもひとみも身動き一つ取れない。
よねの首にかかる二股に分かれた鋏が閉じられようとする瞬間、まさに煙の様に…幻の様によねの"母"は消えていた。
軽くなった足元…足に絡み付いていた煙の足枷も消えている。

「ちくしょうっっ!!余裕カマしすぎたか…こんな時に…!」
苛立ちの篭った声を上げるよねの"伯母"。
換気扇を消すために深く煙を吸い過ぎたせいか女の咥えていた煙草はフィルター直前まで燃え尽き火が消えている。
女は独特の渦巻き模様の描かれた銀色のシガレットケースから細く長い煙草を取り出し同じ模様のライターに火をつける。

その機に乗じて、絡みつく煙の重さに足を取られ躓いたまま床に腰をついていたひとみが大声を上げた。

「よね君!上を見て!」

よねの真上に浮かぶフルムーンは触手で盾を作っていた。触手を切り離し投下するフルムーン。

「よね君!その触手を液体にして!アンテロスの時みたいにあの女の顔と液体を同化させて!!」

77 :佐藤ひとみ ◆tGLUbl280s :2010/06/07(月) 03:06:43 0
>72
スタンドの起こした黒い霧の闇に紛れてチェーンソーを振り回す殺人鬼。

――パチィン
スマートガントレットの指の響きの直後、男の体に異変が起こる。

歯が一本残らず折れ、鼻が陥没し顔は真ん中のへこんだ凹型に変わり、手足の骨は砕け両手両足があらぬ方向に曲がっている。
まるで数十分かけて大型のハンマーで殴り続けた様な悲惨な有様で床に転がる殺人鬼。
殺人鬼は…いや元殺人鬼だった男のドス黒い魂は煙となって空中に拡散してゆく。
黒い煙に紛れてコトン、コトンと二つ音を立てて床に落ちるものがある。
それは二枚のディスク―――?
だが大谷の目には拡散する黒い煙に隠されてよく見えない。
煙が消えた後にディスクの落ちた辺りの床を見てもそこには何も無かった。

暫くすると大谷とひとみ達の居場所を分けていた鉄格子も崩れるように消滅していった。

78 :御前等裕介 ◆Gm4fd8gwE. :2010/06/08(火) 00:16:34 0
>「……実は私、誰よりも幸せにならないと気が済まないタチですの。もしも九頭がゲームに勝ったのなら、
  それは彼にとって幸せな事でしょう。だから殺します。けれども九頭が破れ参加者達がゲームに勝ったとしたら、
  今度は彼らが幸せを享受する事になりますね。だからその時は彼らを殺しますわ。
  一方が敗れれば、一方は私が殺す。だったら両方私が殺しても、特に問題はないのではありませんか?」

(極論と正論を使い分けただと……!?なんて説得力だ、この俺が!『論破』されようとしているッ――!!)

その言葉を呼び水にして、二人の間に横たわる溝。純然たる、『異常』。
彼女の眼には狂気はなく、ただ己の理路整然とした哲学に則ってのみ原動力を確保している。
所詮一介の、"ただの"スタンド使いに過ぎない御前等にとって、理解に難い代物。高嶺の花。崇高すぎる精神に、指先すら辿れない。

故に。

「なるほど。つまりアレかな吉野さん!『吉野きらら』さん!! それは――遠回しなプロポーズだな!?」

平行する議論の着地点は、『異常』の及ばぬ『馬鹿』によって確定する。

「『幸せになりたい』だなんて迂遠で胡乱な表現!こーの照れ屋さんめッ!!え?違う?またまた、そんなベタなイベントがあってたまるか。
 ああ、でも君の幸せは『二番目』だな。だって、君を幸せにできる俺が一番の幸せ者だから――!!テンション上がってきたのでこういうことも言っちゃう!」

最上級に痛々しい独り合点を決め込んで、勝手にべらべらまくし立てる御前等に、吉野の視線は氷点下を大きく下回って世界新。
何も言わず、彼女は自らの傍らにスタンドを出現させる。それは明確な臨戦の意思。御前等に対する敵対行為。

「おっと、そんな分野でも自分が一番にならなきゃ気が済まないのか吉野さん。いいだろう、そんなワガママも受け入れてこそ俺!
 君は俺を殺すか?自己の『幸福』の、相対的な価値を上げる為だけに。よろしい、ならば君の愛――ころしてでもうばいとる。『アンバーワーr――

――>「う、うおおおおおおお!?」

「おおおおおおおおおお何ィィィィ――!?」

メメタァッ!!

スタンドを出現させ、吉野の敵対に応じようと構えたその時。突如、上空から降ってきたおっさんに御前等は激突される。
落ちモノ系ヒロインは体重軽めと相場が決まっているが、この場においてその法則は適用されなかったらしく、
重力によって槌となったおっさんは御前等を容赦なく叩き潰した。下敷きになって、干からびたカエルのように無様に地面と合体する。

(なんだ俺のこの異常なまでのおっさん遭遇率は!おっさんホイホイのタグでもついてるのか……!?)

「おい、大丈夫かおっさん。ちなみに俺は大丈夫じゃないのでそこを早めにどいてくれると嬉しい」

どうにか意識は保っていたらしいおっさんを上からどけると、肩を貸しながら立ち上がり、おっさんの発射点を見る。
旧校舎の三階を突き破って、何かが――荒唐無稽なまでに神々しいなにかが、そこに臨在していた。

「聖画――――」

その迸る空気感だけで、"それ"がこの場における『世界の中心』であることが理解できる。認識できる。許容できる。
初めて御目に掛かるが、それでもやはり彼が誰なのかという情報が御前等の脳に直接刻まれる。


九頭龍一。
――護国天使ア・バウ・ア・クー。


79 :御前等裕介 ◆Gm4fd8gwE. :2010/06/08(火) 00:20:05 0
「なんという存在感――!素晴らしい、想像以上だ!これこそ俺の求めた『世界の中心』――!!」

降ってきたおっさんに肩を貸しながら、吉野が対峙する脇をすり抜け、九頭の足許へと接近する。
あまりの神々しさに胸が熱くなるのを覚えながら、乾いた口で舌を動かし、どうにか言葉を紡ぐ。

「お初に御目に掛かる。俺は御前等裕介。あんたは九頭龍一だな?」

挑発した吉野が、それに応じた九頭に肉薄され、首根っこを掴まれて徐々に凍結させられつつあっても。

「この街で!アンタの話を聞いてから、ずっと会いたいと思ってたんだ! なあ、俺を雇ってくれ。きっとお眼鏡に適う働きぶりを見せられる」

九頭の口から、先刻吉野が屠った『狩る者』についての質問と詰問が浴びせられる。
御前等のことなど眼中に入っていないかのように、ただ吉野だけを見据えている。それは自身の戦闘能力への絶対の信頼と、
事実その通りの鉄壁の防御性能があるからこそなし得ることだろう。

それが、御前等には気に入らなかった。

「なあ。おい。なあ。……こっちを、」

足元に散らばる鉄筋コンクリートの残骸。それらの中から無数の『ナットにハマったネジ』が、一斉に歯車を咲かせる。
ネジというものは『回す力』を『ネジ穴の内外への推進力』に変換する機構である。回すと穴の奥へ進んだり戻ったりするそれを。

「――こっちを見ろォォッッ!!」

ドバラァァッ!!

一気に発動した。高速で回転し、一瞬でナットから抜けたネジ達は、推進の勢いそのままに銃弾となって飛散する。
正確に向きを調整してバラ撒かれたネジの散弾は、狙い過たず九頭龍一を下から突き上げるように穿ち抜いた。

「『アンバーワールド』――俺は無視されるのが一番嫌いなんだッ!『いない人扱い』はご免被るッ!怖気が走る!!」

もしも(吉野にとって)運良く護国天使ア・バウ・ア・クーの剛腕をネジ弾が打ち抜いていたらば、その緩んだ拘束を解いて抜け出せるかもしれない。
無論、そうであったとしてもなかったとしても、ア・バウ・ア・クーが獲物の脱出をそう簡単に許すような手落ちをするとは思えないが。

「ともあれッ!!」

御前等は問う。

「俺にも構ってくれ!そして教えてくれ!俺はアンタの為に――何をすればいい!」


【ア・バウ・ア・クーに構ってちゃんアタック。『他の参加者との戦闘』なり、『じゃあ死んで』なり、なんなりとお申し付け下さい】


80 :よね ◆0jgpnDC/HQ :2010/06/08(火) 16:34:32 P
/「ちくしょうっっ!!余裕カマしすぎたか…こんな時に…!」

「残念でしたね。殺れると思いましたか?勝ったと思いましたか?これが"答え"だッ!!」

そして佐藤の指示通り、触手を受け取り設定を書き換える。

「Sum41ッ!この触手は衝撃を加えると粘液になるッ!!」

外見上はなんら変化のない触手。
だが、確実に、完全に設定は書き換えられていた。

そして触手をあの女の方へと投げる。
水風船が割れたような音とともに粘液があの女の顔に付着する。

「勿論、同化させる事までは忘れてませんよッ!」

よねとあの女の間には粘液の線が出来ている。
あらかじめ触手を投げる前に少しだけ衝撃を与えていたのだ。
空中で液状化した触手の一部は地面へ、そして女の顔から足元までに付着している。まるで運命の糸の様に。
よねはその粘液の先端に人差し指をつけると、

「Sum41ッ!!この粘液は空気と化合し固形化するッ!!!」

一瞬にして固まる粘液。そしてよねの指先の粘液はあの女の顔まで一直線につながっている。
女の顔に…同化とまではいかないがそれとほぼ同じ効果をもたらした。

「悪夢…これで永遠に…ですね…」

81 :佐藤ひとみ ◆tGLUbl280s :2010/06/08(火) 23:36:55 0
>80
よねの伯母を擬態していたモノが吹かしていた煙草が燃え尽きると同時に
よねに襲い掛かっていた"母"の姿は消え足元の煙の錘も消滅していた。
女が新しい煙草に火をつける寸前によねが叫ぶ。

>「Sum41ッ!!この粘液は空気と化合し固形化するッ!!!」

よねの指先から伸びる粘液を導火線代わりに硬化していく液体。
女の体を覆っていた粘液は半透明の固形物に変化し女の動きを封じる。
女は自分を閉じ込める固形物を壊そうと中で身をよじるが相手はスタンド能力により硬化された物質。
よねが能力を解除しない限り簡単に壊れるような代物ではない。

女は煙に姿を変え、さながらプラスチックケースの中で巡回する煙の如く固形物の内側で喚いている。

「ぢぐしょうぅっ!!やりやがったなこのガキッッ!クズの息子の癖に!
両親共々人に利用される位しか価値の無いクズの分際でぇ!!よくもよくもぉお!!」
よねの伯母を擬態した煙は記憶まで擬態しているのか、硬化した粘液の中からよねに向かって罵詈雑言を浴びせ続ける。

煙の足枷から脱したひとみは立ち上がり粘液の中で喚く女に近づいた。
女の落とした煙草とシガレットケースを拾い上げるひとみ。

ミミッ…メッシャァアアーー!!

ひとみに摘み上げられた煙草は小さな鳴き声を上げるとフィルターの上部に出来た口を開けてひとみの指に食いつこうとした。
「ひっ!!何よこれ!」
噛み付かれる寸前にフルムーンの触手の鞭で煙草を手から払い除ける。床に落ちた煙草は芋虫のように這い回り逃げようとする。
パンプスのヒールで煙草を踏みつけるひとみ。


「ふーん、この煙草もスタンドだったらしいわね…。シガレットケースの中の煙草は普通の煙草だわ。
煙草一本分に寄生するスタンド?一本燃え尽きたら別の煙草に移動するのかしら…
この状況から考えると煙を重くしたり、実体化した幻覚を作り出していたのはこの煙草のスタンドだったのね。
じゃあ、あそこで喚いてる煙のおばさんは何…?精神世界に入り込んだ本体の化身…ってとこかしら?
この女は煙草スタンドを失うと無力みたいね。自分を煙にするのか精一杯らしいわ…。

…さっき暫くの間足にしがみ付いてた煙が消えた理由もこれね。
そういえばこの部屋に現れたあの女は新しい煙草を咥えてた。
短くなった煙草が燃え尽きて新しい煙草に変わるまでの時間を隣の部屋でやり過ごしてた訳ね…。」

ひとみは煙草スタンドを踏みつけたまま女の能力を推理する。

「このスタンドが煙草から煙草に乗り移るスタンドなら本体を攻撃する方が効率的ね。
煙に止めを刺せる方法ねえ〜〜?
そういえば最近エコ関係の冊子で読んだんだけど、煙って気体のように見えて実際は固体の微粒子が拡散した状態らしいわよ。
産廃工場とかに電気集塵機ってあるじゃない?
高圧電流を流して荷電させた塵を集めて煙を浄化するっていう仕組みだっけ?
この粘液の固まったヤツに高圧電流を流してやったら中の煙はどうなるかしら?
どう思う、よね君?取り合えずやってみたら?」

82 :徳井一樹 ◆MnJrk02a/Yx. :2010/06/08(火) 23:53:44 0

吉野と御前等の行動を窓から静かに俯瞰する徳井と柚木。
吉野の声はまったく聞き取れないが御前等の声は嫌でも聞こえて来る。

「ガリの兄ちゃん声でけーんだよ……耳が痛くなっちまうね」

瞬間、徳井の言動とともにアクションが起こった。
吉野は九頭に首を掴まれ徐々に凍らせていき、御前等はスタンド能力で九頭を攻撃した。
吉野の抵抗虚しく九頭は厳かに佇み吉野に何かを問うている。

「これで決定だぜ。『利害』は一致してるな!それじゃーいってきまー……」

徳井の台詞が言い終らない内に御前等の声。というよりは最早叫びに近かった。

>「俺にも構ってくれ!そして教えてくれ!俺はアンタの為に――何をすればいい!」

「構ってちゃんかよ……そしてこの発言からして『敵』と認識して構わなそうだな」

自分が世界の中心だとでも言わんばかりに叫ぶ御前等を見て徳井は少し呆れた。
自分だけがここにいるとは限らないというのに、そんなに馬鹿でかい声を出すか?と。
しかし徳井も人のことを言えるような大層な立場ではない。

そして徳井は既にミスを侵している。
吉野を味方だと認識しているが、吉野自身は誰とも組むつもりなどハナからないのだ。
そんな吉野の思惑など露知らず徳井は柚木に告げる。

「偉そうな女の子味方、ガリのあんちゃんが敵…オーケー?ただし異論は聞かねーぜ。
そして佐藤さん達のことは頼んだ。後、ピンチだったら援護してねン!」

徳井は勝手に自分の用件だけそう告げると壁を切開してとっとと行ってしまった。
今頃柚木は勝手な奴だ、と愛想を尽かしていることだろう。

息苦しい壁の中で徳井はある物を集めながら切開によって校舎から九頭の背後にそっと姿を現す。
恐らく留流家の状態ならこんな奇襲は通じないだろう。
しかし護国天使ア・バウ・ア・クーは常時探知をすることはできないのだ。
もちろん狙うのはグリーン・Dの左腕、即ち光の輪。そしてセイヴ・フェリスの手に一杯抱えているのは廃材。
スマートガントレットがいない状況で迂闊に殴りかかれば取り込まれかねないからである。

「ブォナセーラ(こんにちは)だなあ!九頭龍一ィッ!ところで九頭……俺、イタリアで青春したからさぁ!
コロッセオ行った事あんだけど、コロッセオって…殺っせよぉぉおおって……聞こえねーか?」

徳井は御前等にも負けない声の大きさと、
ハイテンションが加味された叫びとともに一斉に廃材が九頭の光の輪へと飛んでいく。

83 :よね ◆0jgpnDC/HQ :2010/06/09(水) 00:18:19 P
/両親共々人に利用される位しか価値の無いクズの分際でぇ!!よくもよくもぉお!!」

よねは笑う事もなく怒る事もなく、ただただ蠢く煙を眺めていた。

そしてしばらく後…佐藤の提案を黙って聞く。

「電撃…ですか…面白そうですね。幸い精神世界の中でも静電気の概念は無くなってないようですし」

服をこすっては髪の毛にくっつけている。
髪の毛は服に吸いつけられるようになっている。

「ですが…そう簡単にトドメは刺しませんよ…電気イス…ってありますよね?
 死刑執行用のものですが…あれを参考にさせてもらいますよ…」

完全に自制心を失っている。それは相手があの女だからというのもあるし、
何よりも許せないのが自らの母親を利用した事だった。

「これから"痛みは感じるが死なない程度"の電流をアレに向かって流し続けます。
 アレがスタンドなら痛みは本体へフィードバックされるはず…」

そうして固形化された床の粘液の先端に指を触れると

「Sum41…この固まった粘液は電気をよく通す…そして電流を流し続ける…」

フッと指先を粘液から離すとすぐさまそれは訪れた。

固形化した粘液はまるで金属のように電気をよく通した。
それは女にまとわりつく固形粘液の所まで達し、女に苦痛を与えるだろう。

そんな事を考えながらよねは自分を最低な人間だと思った。
しかし、止めようとも思わなかった。

84 :吉野きらら ◆HQs.P3ZAvn.F :2010/06/09(水) 01:42:45 0
> 「花は散る様も美しいが、咲き誇る姿を留めておきたいとも思うもの。
> お前の美しさが衰えないようにこのまま凍りつかせてやるとしようか。」

「……親切なお心遣い、感謝の至りですわ。ですが……貴方にそうして頂くまでもなく、私は貴方からその術を頂戴するつもりですので、お構いなく」

抗う間もなく上空へと引き寄せられたきららの表情に驚愕の色が浮かんだのは、ほんの一瞬だった。
驚嘆を押し退け代わりに面を支配するのは、期待の気配を潜ませた平静。
九頭へと引き寄せられた時に、彼女は確かに感じたのだ。
この男、このスタンドから自分へと向かって吹いている、幸せの旋風を。

> 「ボブを殺したのか。
> それで、どの程度殺したのだ?髪の毛一本残さず完全に殺しきったのか?
> ボブは私が次世代に残せると認めた男だ。
> だがそれゆえに危険性も秘めている。
> 氷像になる前に答えろ。」

「ご冗談を。逆にお尋ねしましょう。貴方は自分が踏み越えた階段にどのような足跡が残ったのかを確かめる為に、わざわざ振り返ったりするのですか?」

完全に身動きを封じられながらも、彼女は逆に顎と口角を上げ、九頭を俯瞰するようにしながら皮肉を交えた問いを返す。
今まさに感じている幸せの旋風がある以上、自分は決して負けない。不幸に陥ったりはしない。
根拠など塵芥ほどもない確信を、彼女は凍結した胸の内で沸々と滾らせていた。

そして直後、きららの確信を裏付けるように、御前等と徳井によって九頭に無数のネジと廃材の弾丸が迫る。
好機を得た彼女はここぞとばかりに『メメント・モリ』を発現させ、花を咲かせた。
九頭の目前に、光を掻き集めた花を芽吹かせ、散らす。
不意を突いた目眩まし。縦しんばその効果が発揮されなかったとしても、物理的に彼の視界を塗り潰す事は出来る。
同時に、彼女は自らの首を掴む九頭の指の関節に、花を兆した。
『幸せの花』ではなく単なる物質に対して咲かせるようにして植え付けた為、開花させる事は到底不可能である。
だがそれでも、拘束を僅かに緩ませるくらいには、十分だ。

身動きを取れぬまま、きららは廃校舎三階の高さから自由落下を始めた。
しかし彼女は危なげなく、眼下を一面花畑として軟着陸と潜伏を同時に果たす。
接触を断つと同時に彼女の体は徐々に解凍されていき、彼女は身を低くしたまま一旦離脱を図った。

「……折角咲かせたのですから、このまま捨て置くと言うのも勿体無いですわね。置き土産を差し上げますわ」

一面の花畑の花々に、彼女は遍く刃の魂を込める。
そして一息に、全ての花を散らして刃の花弁を舞い上がらせた。
不規則に無差別に舞い踊る花びらは全てが鋭利な刃であり、また彼らの視界を遮る効果も兼ねるだろう。



【九頭から悪魔の手のひらの気配を感じてワクワクテカテカ
 ボブとか振り返ってないからシラネと相変わらず舐め腐った言動+無差別攻撃を】

85 :佐藤ひとみ ◆tGLUbl280s :2010/06/09(水) 04:09:32 0
>「これから"痛みは感じるが死なない程度"の電流をアレに向かって流し続けます。
>アレがスタンドなら痛みは本体へフィードバックされるはず…」

勝利の喜びも母を汚された怒りも見せず只ひたすら無表情に残酷な裁きを宣告する、よね。
抑揚の無い…だが確固たる決意を込めた口調はひとみですらゾッとする響きを孕んでいた。

「ぎゃあぁあああ!!人でなし!!人殺しぃ!また殺す気かぁああ!!残酷な人殺しぃぃぃ!!」
煙の女は固まった粘液の中で相変わらず金切り声で喚き散らしている。

>「Sum41…この固まった粘液は電気をよく通す…そして電流を流し続ける…」
よねが床の粘液から静かに指を離すと直にその瞬間は訪れた。

「うぎゃあぁああああああぁぁああ!!びどごろ゛じぃ〜!自分が何者か忘れるなぁ!お前はひとごろしだあぁぁあ!」

硬化した粘液は電流を通されて青白く光る。
中の煙は最早断末魔とは言えない長い苦痛の悲鳴を上げ続けている。
青い光の中でのたうつ煙の影が幻灯のように映し出されている。
やがて光の中の影は消え粘液の塊…あの女の抜け殻だけが静かに青白い光を放っていた。

――同刻、精神世界にいるひとみ達には知る由も無いが廃校舎の裏に煙を上げて痙攣する男が転がっていた。


ひとみ達と大谷に居場所を分けていた鉄格子がボロボロと剥がれ落ち崩れ出す。
次第に黒い霧が晴れてゆく檻の中から大谷とスマートガントレットが近づいて来る姿が見える。
崩れ出したのは鉄格子だけでは無かった。
よねの見知った家を模したこの空間全体の壁が歪み、?がれ、色を薄め崩壊を始めている。

「早くここから出ないとまずいわね。あのスタンドが倒されたことであいつの作った空間が壊れ始めてるわ。
巻き込まれない内にさっさと現実に戻るわよ。」

ひとみは手元にスタンドシートを出現させて現実世界を映し出そうと試みた。
シートには柚木少年と棒立ちになっている自分達の姿が見える。
スタンドが精神世界に作り上げた擬似空間が崩壊を始めたことで精神と現実の間に綻びが出来たのだ。
ひとみがシートに触れると指がシートを突き抜ける感覚があった。

「今ならこのシートが精神世界と現実を繋ぐ出口になってる!シートに触れれば現実世界に帰れるわ。
スタンドシートを管理できるのが私しかいない以上、仕方が無いけど私が出るのは最後になりそうね。
大谷さん、よね君先に現実に帰ってて。」

大谷とよねにシートに触れるよう促すひとみ。
よねがシートに触れる間際、ひとみはちらりとよねに視線を向けて言葉を投げた。

「よね君…スタンドが擬態していた女…あの女がよね君にとってどんな存在かは聞かないけど…
自分に害を齎す存在を排除するのは当たり前のこと。それは正当防衛って言うのよ。
それがどんな手段であっても別に恥じ入る理由なんてないわ。」


【よねさん、大谷さん精神世界から出ますよ〜】

86 :佐藤ひとみ ◆tGLUbl280s :2010/06/09(水) 04:12:59 0
辻褄あわせのためにちょっと改変テンプレ

【本体】
名前:山根広修(やまねこうしゅう)
性別:男
年齢:36
身長/体重:160/51
容姿の特徴:貧相な体格の小男。顔色が悪く前歯の出たネズミ顔。
人物概要:貧相な外見と小心な性格の反面、心の奥には嗜虐願望が渦巻いている男。
精神の波長の合う人間の心に入り込みその人物の最も恐れ忌み嫌う人間を擬態して
精神が崩壊するまで蹂躙することを何よりの楽しみにしていた。
留流家に取り込まれたスタンド使いの一人だったが
九頭がひとみの精神世界でスタンドを切り離した際、本体も留流家から捨てられた状態になった。


【スタンド】
名前:リメンバー・ミー
タイプ/特徴:特殊 ・自動操縦型
能力詳細:
もともとは留流家に取り込まれていたスタンドの一つだったが
九頭の支配を離れることで完全自動操縦の精神攻撃用スタンドに変化した。
相手の精神に入り込み記憶の牢獄に閉じ込める。
相手が忌み嫌う人間に擬態する人型の煙と幻覚や特殊効果の煙を作り出す煙草が対になったスタンド。
煙草の煙は浴びせた相手に取り付く。取り付いた煙は徐々に広がり重くなっていく。
最大まで広がり重くなった煙のパワーは人間を握りつぶすほど。
攻撃対象の恐れや不安などの負の感情によって重さを増すスピードが増幅される。

破壊力-B スピード-B  射程距離-C
持続力-精神世界内において∞ 精密動作性-C 成長性-D

A:100m以上 B:数10m(50m) C:10数m(20m) D:数m(5m) E:2m以下

87 :柚木 美都留 ◆BhCiwB2SCaJ5 :2010/06/09(水) 15:52:35 0
>「偉そうな女の子味方、ガリのあんちゃんが敵…オーケー?ただし異論は聞かねーぜ。
>そして佐藤さん達のことは頼んだ。後、ピンチだったら援護してねン!」

「ねン!って軽く言うな!」

軽い言葉を言い残して徳井は九頭達の所へ向かって行く。

九頭龍一にネジと廃材の攻撃が繰り広げられるなか、吉野うららは華麗に戦闘から離脱していた。
一部始終をこっそりと見ていた柚木は、このままでは徳井が「とんで火にいる夏の虫」の虫に見事に
変態してしまうのではないかと心を痛め援護することに決めた。

実は柚木は佐藤ひとみのスタンドシートを部屋に入った時点で確認していて
どこか違う場所で彼女たちが戦っていることを理解していたし、
その夢物語の方もどうやら華僑を越え終焉を迎えているようだ。
今なら自分が前に出ても察しの良い佐藤たちなら後から追いかけて来て支援してくれることだろう。

状況が状況なだけに見切り発車になってしまうことも考えられたが事は一刻を争う。
柚木は重力変換をして廃校の壁をテケテケと走って徳井の援護に向かった。

(こんがらがるといけないから、ここで流れを見てまた動いたら動きます)

88 :九頭龍一 ◆SM24/QbfAY :2010/06/09(水) 22:40:53 0
>79>82>84
>貴方は自分が踏み越えた階段にどのような足跡が残ったのかを確かめる為に、わざわざ振り返ったりするのですか?」
問いに答える吉野は不遜そのもので、九頭の眉を吊り上げさせるに足るものだった。
正確に言えば、態度ではなく、その言葉に。
吉野自身は理解していないだろうが、九頭にはその意味がわかったのだ。
「貴様!殺しきっていないな?たかが心臓を貫いた、首をもぎ取った程度で殺した気でいるとはなんと愚かな!!」
押し殺すような声は吉野に向けられてはおらず、むしろ自問自答に近かった。

>「――こっちを見ろォォッッ!!」
御前等の叫びと共に突き上げるように飛来するナットの群れが九頭の身体を打ち抜いた。
左の二本の腕を上げてガードした為に顔に被害はない。
いや、正確に言えば顔ではなく頭上の光輪をガードしたのだ。
事実銃弾となって九頭の身体を打ち抜いた無数のナットは貫くには程遠く、多少めり込んだ程度でしかないのだから。
それと同時に背後から徳井が現れる。
>コロッセオ行った事あんだけど、コロッセオって…殺っせよぉぉおおって……聞こえねーか?」
御前等の声に負けぬ叫びと共に投げつけられる廃材の群れ。
更には吉野が九頭の目の前に咲かせる光る花と指に兆す花。

ナットは打ち据えるのみで大したダメージにならない為、最低限のガードで良い。
この際吉野を縊るのは後回しでも良い。
最優先対応事項は光輪に投げつけられた廃材。
重要事実を整理した思考的な隙に三人同時攻撃で九頭の反応が遅れたのだ。

三対六枚の羽根が背後から迫る廃材を片っ端から叩き落していくが、全てを防ぎきるにはタイミングが悪かった。
一つの廃材が光輪に当たり、一瞬その姿がグリーン・Dに戻る。
それと共にア・バウ・ア・クーの輪郭も歪んだ。
「ちい、なんということを!!だが、無駄だ!」
が、言葉通り、それも一瞬の事。
グリーン・Dの腕はすぐに光輪に戻り、ア・バウ・ア・クーの姿も整う。
なんら変りもない。
唯一つ、光輪に皹が入った事を除いて。
九頭はそれに気付いていない。
なぜならば、身体とは違い頭上に浮く光輪は自身の肉体ではないのだから、その異変を自覚できないでいたのだ。

>「……折角咲かせたのですから、このまま捨て置くと言うのも勿体無いですわね。置き土産を差し上げますわ」
舞い上がった刃の花びらが九頭の頬に赤い筋をつける。
流れる血を指で拭い、口に含むと御前等を見据えて口を開いた。
「ボブが中途半端に殺された以上、最早ゆっくりはしていられん。何をすれば良い、と聞いたな!ならば生き残れ!
今の弱いままのお前ならわが肉体の一部になる以外価値がないからな!」
御前等の、アンバーワールドの力を一瞬で見切り、言い放つのだ。
今のままでは生かす価値がない、と。
戦い、その中で進化し、生き残るだけの力を得よ、と!

「進化とは!生存競争に破れたものが生き残る最後のチャンス!
全てのものにそのチャンスをくれてやろう!!」
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ
ア・バウ・ア・クーの身体から湯気のように溢れるどす黒いオーラ。
それに触れた刃の花びらが枯れて砕け散っていく。
足元に広がる花畑も伝染するように枯れ砕ける領域を広げていく。
圧倒的なオーラによってメメントメ・モリの特殊能力の発言そのものを押し潰して行っているのだ。

そして…     ドン!!!!    …

それは正に質量を持つ光。
衝撃波のように広がり、宙を舞う花びらを叩き落し、グラウンドにいる御前等、徳井、そして離脱を図ろうとする吉野を飲み込んでいく。


89 :柚木 美都留 ◆BhCiwB2SCaJ5 :2010/06/10(木) 00:09:23 0
護国天使の質量を持つ光は衝撃波のように広がり3人を飲み込もうとしている。

「やばい!間に合え!」
柚木はオズモールから重力玉を出現させると護国天使に投げつけた。
それはグレープフルーツくらいの大きさで護国天使の足元へ転がると
驚異的に重くなり時空を極限まで湾曲させ強い重力の領域を生み出す。

少年は重力玉で九頭の足元に小さいブラックホールを創り出したのだった。

「くぅ〜光を飲み込め!」
九頭から少し離れた距離で体勢を整え意識を集中する柚木。
勿論、護国天使もブラックホールの影響は受けているようだったが
彼は背中に三対六枚の羽根をもっている。その魂は重力の渦に堕ちることはないだろう。

スタンドパワーの消耗が激しい技に少年の体力は激しく奪われてゆく。

「…くっ!」
その場にガクリとへたれこんでしまう柚木。
あれはただの光ではない九頭の意思を込めた光なのだ。

護国天使の質量を持つ光はそのまま3人へと放出される。

(柚木美都留=九頭さんから離れた位置でふらふら状態)

90 :よね ◆0jgpnDC/HQ :2010/06/11(金) 00:01:13 P
電流を流し続けている粘液の檻の中から悲鳴が聞こえなくなると、周囲の景色がグニャリと歪んだ。
佐藤がスタンドシートを用意してくれている。
トンネルの様にスタンドシートをくぐる時、よねは佐藤に向かって優しく、感謝しつつ微笑んだ。

そしてスタンドシートを抜けた。
フッと棒立ちしている肉体へと戻ってくる。きっと幽体離脱というものはこんな感じなのだろうとよねは朦朧とする意識の中思った。

完全に意識が戻った時、ふと窓の外に目をやった。
そこはかつてこの学校に通っていた少年少女が活躍したであろうグラウンド。
その中央に、まるで形容できないほど神々しい九頭龍一の姿があった。

「九頭龍一…天使…か。どうせ休む暇もありませんしね…」

そうして目の前の壁に手を触れる。
小さく何かを呟くとその壁は一瞬にして崩れ落ちた。
そしてポッカリ穴のあいた廃校の壁から飛び降りるよね。

恐らく、よねの力は殆ど意味をなさないだろう。この戦いにおいては。
だが、よねは自分がやれるだけのことを、やるべきことをやっておきたかった。
悔いはない。そう佐藤や徳井の前で言ったからだ。

91 :徳井一樹 ◆MnJrk02a/Yx. :2010/06/12(土) 11:26:34 0

廃材とナットの雨をいともたやすく防ぐア・バウ・ア・クー、使役するは九頭龍一。
しかし偶然ながら完璧なタイミングで奇襲をしかけた徳井、
御前等の飛ばしたナットが相まってその攻撃は1手ならぬ半手上を行った。

廃材が光輪に命中すると光の輪はまばたきほどの一瞬グリーン・Dの左腕へと戻る。
そして輪郭が歪み、不定形な姿へと戻るかに思われた。

「みたか俺の超ウルトラファインプレーッ!」

歓喜の声をあげる徳井。ほとんど勘だったが自分の読みは当たっていた。
そして御前等達も理解するだろう。あの光の輪こそが、左腕こそが唯一にして最大の弱点だと。

>「ちい、なんということを!!だが、無駄だ!」

喜びも束の間、不定形な姿へと戻りかけた護国天使は元の神々しいほどの姿へと戻ってしまった。
しかし徳井は気付く。光の輪の小さな『皹』に。
確実に倒せる。セイヴ・フェリスの射程内で九頭の光輪を切開できれば。

>「……折角咲かせたのですから、このまま捨て置くと言うのも勿体無いですわね。置き土産を差し上げますわ」

花弁の刃は野暮ったい校庭のグラウンドを舞い踊り九頭の頬に傷をつける。
そんなものが空中を舞っている。セイヴ・フェリスなら叩き落せるかもしれないが、
そんなものを無差別に放ってきた吉野の行動に徳井はやっと気付く。
彼女は敵。いや、敵でなくとも味方ではない。しかし徳井は理解できない。彼女は何故戦うのかを。
聞いたとしても徳井のちっぽけな脳ミソでは理解できないだろう、彼女の幸福論を。

>「進化とは!生存競争に破れたものが生き残る最後のチャンス!
全てのものにそのチャンスをくれてやろう!!」

思考を巡らせながらとにかく後退を試みようとしたその瞬間に九頭の声。
声だけでわかる。何かが起こる。──九頭の背後にいたお陰で花びらはほとんど届かないが──
吉野の無差別攻撃などとは比べ物にはならない、大きな 何 か が!

ア・バウ・ア・クーが放つ強烈な光は吉野の花びらを散らせ衝撃波のように広がっていく。
そんなものに体が触れてしまったらとんでもないことになる。

壁か、床を切開し脱出を試みようとする徳井だが九頭の足元に紫色の球形の物体が転がってる。
それはグレープフルーツほどの柚木の『重力弾』だった。
ブラックホールのそれのような強力な重力の領域は光を飲み込まんとする。
ただそれを行うには出力不足でせいぜい衝撃波の威力を和らげる程度にしか働かなかった。
質量を持った、思わず見入ってしまいそうな光はそのままぐんぐん領域を広げていく。

「1日に2度も3度も使いたくねーが、この状況を打破する最高の方法でいかせてもらうぜ!
それは……逃げるんだよォオーーーーーーッ!!」

猛スピードで振り返り脱兎の如く壁を切開、脱出を図った。
逃げる一瞬光が足を捉え、血が噴出すが徳井は痛みを堪えそのまま壁の中へと潜り込む。
この程度の怪我で済んだのは重力弾が衝撃を吸収し領域を広げるスピードが緩まったおかげでもある。

通常こうやって逃げるときは何か後ろめたかったり、情けなかったりするものだが徳井は毛ほどにも感じていない。
何故ならお得意のいい訳は『戦略上逃げただけで戦闘そのものは放棄してねー』だからである。
十八番の壁移動を続けそのまま多大なスタンドエネルギーを消耗し、
へたりこんでいるであろう柚木の元へ向かっていく。

92 :九頭龍一 ◆SM24/QbfAY :2010/06/12(土) 22:57:37 0
周囲を飲み込む光は九頭の意思を込めた光。
それ故、質量を持っていても全てのものを押し潰すわけではない。
例えばグラウンドに蹲っている綾和を押し潰す事はない。
ただそれ以外のものは有象無象かまわず押し潰し、他の生き残るを許さぬ光。

しかしその光に対抗する闇が生まれる。

光を放った九頭の体勢ががくりと傾く。
突然足元から強力な力によって引き寄せられたのだ。
それ自体は問題ではない。
ア・バウ・ア・クーのパワーを持ってすればその引力圏外に脱する事は容易い。
だが、ア・バウ・ア・クー以外の者にとっては…

「ちぃっ、小賢しい!」
光の放出を途中でやめ綾和の襟首を掴むと高々と空中に投げ放った。
ア・バウ・ア・クーのパワーは大の大人一人を軽々と校舎屋上まで運ぶ。
更にはその精密さは、校舎屋上に位置したところで丁度発射エネルギーと重力の釣り合いが取れるように調整されていた。
結果として綾和は殆ど衝撃もなくその身を屋上へと移したのだった。

綾和を逃がしたあと、光は消え、グラウンドには傷跡が残っていた。
一面砕けひび割れたグラウンドには土煙がたちこめ視界が利かない。
だがしかし、それは本来与えるはずであった威力には程遠かった。
柚木の重力球による光と闇の相殺が九頭の広範囲殲滅技の威力をここまで低下させたのだ。
「ふん、これでは直撃を受けても死んではいまいか。だがまあ良い。
それよりも…!!」
光の波動の威力に不満を漏らしながらも、それより優先する事柄が見つかったのだ。
キッと視線を送るその先は的確に柚木の方角を向いている。
三対六枚の翼を広げ土煙を更にかき乱しながらも九頭は飛翔する。

その速度に消耗した柚木は反応できなかっただろう。
出来たとしても逃げる時間はほぼ皆無。
「正直驚いたよ、美都留。
お前如き小物はほうっておいても差支えがないと思っていたのだがな!」
荘厳なまでの声と共に柚木の前に降り立つ九頭。

校舎壁から飛び降りたよねも、壁の中を切り進む徳井もまだ到着する前に二人は対峙した!





93 :生天目&柚木 ◆BhCiwB2SCaJ5 :2010/06/13(日) 01:34:46 0
>92
柚木は徳井たちを助けることも出来ずふらふらになっている自分を不甲斐無く思った。
そして今、目の前にはかつて羨望の眼差しで見た九頭龍一がいる。柚木は死を覚悟した。

>「正直驚いたよ、美都留。
>お前如き小物はほうっておいても差支えがないと思っていたのだがな!」

「…舌を噛み千切ってやる…おまえの舌を…。二度と小物なんて言わせなくしてやるから…。
だってボクは、昔からおまえがボクのことを軽んじていたことはわかっていたんだよ。
ボブ・バンソンが一番だとしたらボクはランク外…。でもその愛する彼ははどうしたんだい?ボクより先に死んじゃったの?」
それは柚木が初めて披瀝した九頭への嫉妬。

一方生天目は体育倉庫の窓から二人のやりとりを覗いていた。
九頭龍一が柚木美都留を殺そうとしているのは火を見るより明らかだ。
「あのこやばいよ!なにかされるかも!荻原さん、私助けにいくね!」
生天目は窓からグラウンドに飛び出した。
「ちょっと有葵!なんで助けるの!?私たちが殺されるよ!」
ステレオポニーの遅疑逡巡の思いは今だ晴れていない。
「だってかわいそうじゃない!」
「…まあ…それは…そうだけど…」
生天目は心のどこかの母性のようなものをくすぐられていた。それはステレオポニーも同じだった。
「しょうがないね!やるよ有葵!」ステレオポニーは九頭に向かって飛び出してゆく。
「うん!」生天目もそれをあとから追いかけた。

ステレオポニーは柚木に気をとられていた九頭の間合いに容易に侵入するとア・バウ・ア・クーの頭を両手で鷲づかみにしようとした。
が、しかしア・バウ・ア・クーの頭の輪が邪魔になり仕方なくハンドルを持つように頭の輪を両手でもつことになる。
普段は冷静な彼女なのだが今はライオンの頭を撫でさせられるような気分で気が気でないのだ。
じつはどの部分を触っているのかもしっかりと把握していない。

「時間を稼ぐから逃げな!」ステレオポニーは輪を掴んだ両手を振動させながら柚木に叫ぶ。
音波は普通広がるものなのだが超音波は周波数によっては直進性が高まる。
ステレオポニーは護国天使の頭に少しでもヒビを入れてやるつもりなのだ。
現代医療には超音波による体外衝撃波結石破砕治療というものがある。この場合、九頭の頭部付近が結石となるのだろう。
生天目は隙を見て上手く立てない柚木を抱きかかえると九頭にひとこと言った。

「弱いものいじめしちゃダメでしょ!学校で習わなかったの!?」

94 :佐藤ひとみ ◆tGLUbl280s :2010/06/13(日) 04:23:33 0
「 ――なんて痩せてゐるのだらう!ほっそりした象牙の人形みたい。まるで銀の像のやう。
きっと純潔なのだよ、月のやうに。その銀の光の矢さながら。
あの男の肉は、きっと冷たいに違ひない、象牙のやうに……あたしはあの男をもっと近くで見たい。」
――― あたしはあの男をもっと近くで見なければならない! 」

「退れ、ソドムの娘!おれに手を觸れてはならぬ。この~の宮居をけがすな。」

「あたしはお前の口に口づけするよ、ヨカナーン!」


サロメはヨカナーンを月に喩えたが、ひとみが持つ九頭の印象は夕陽だった。
西の空に傾く赤々と輝く夕陽。滅びの美しさを湛えた斜陽。夕陽は地平に沈む瞬間に最も美しく輝く。
だが今の九頭は時を遡り中天に舞い戻った狂った夕陽だった。

****************************************

精神体を精神世界から戻したひとみは屋上に移動していた。
ひとみの手には鞘に納められた日本刀が握られている。
それは九頭がひとみに突きつけた菊の印の入ったあの刀。
九頭を騙まし討ちにして縛り上げた現場に落ちいてたものをフルムーンに拾わせていたのだ。
日本刀を手に九頭と徳井達の闘いを見下ろすひとみ。
ひとみは九頭を殺さなければならないと感じていたがそれでも九頭が傷ついていく様を見るのは複雑な気持ちだった。

それにあの女は何なのだろう?
ひとみは九頭に直接触れられたことが無いのにあの女は襟首を捕まれ九頭の眼前まで引き寄せられている。
しかもあの不遜な態度…。
自分でさえあれほどの興味を九頭から示されたことは無いというのに…。
ひとみは嫉妬も相まって嫌悪感以上の悪意を制服の少女に対して感じていた。

制服の少女が一面に咲かせた花の刃…少女と一緒にいる男の放ったナット、徳井の投げた材木、九頭の重力光…柚木の重力弾。
現場では一斉の攻撃が交錯する。


九頭の重力光波を受けた徳井の足から血が噴き出す。
「やれやれだわ…。また救急箱扱いね。」
徳井はひとみの協力者の手駒の中では貴重な戦闘タイプの戦力。
悪態を呟きながらも直ぐに柚木の方に駆け寄ろうとする徳井の元にフルムーンを向かわせた。
傷は単純な裂傷ではなく重力による破裂痕。皮膚だけでなく破損した血管の縫合もあり多少治療にに時間が掛かる。

95 :佐藤ひとみ ◆tGLUbl280s :2010/06/13(日) 04:26:52 0
徳井の治療に気をとられているひとみの眼前に突然男が舞い降りた。
その男は――米綾和!
現在の九頭にとって特別な存在のあの男…。

ひとみは日本刀を鞘から抜き両手に持ち替えると背後から米綾和の首に刀を突きつけた。
「動かないで!動くと死ぬわよ!」

帰還したフルムーンは動きを封じられた米綾和の裂傷を縫合していく。
鞘を拾い上げ刀を納めながら米綾和に話しかけるひとみ。

「私はもうあんたに危害を加えるつもりはないわ。もうあまり時間が無いかも知れない…。
九頭は死に急いでいる……若しくは私達を"殺し急いでいる"とも言えるけど。
私は自分か九頭が死ぬ前にどうしても知りたいことがあるの。
もう一度あんたの頭の中に入り込んで調べてもいいんだけどそれは出来ない。もう一つ罠が無いとも限らないし。
敢えてあんたに直接聞くわ。九頭がスタンド使いを集める目的は何?」

ひとみと対峙する米綾和。
しばしの沈黙の後、口を開きかけた彼が突然左腕を押さえて苦しみ出した。
綾和の左腕といえばア・バウ・ア・クーの光輪…!


ひとみはスタンドシートを出現させて九頭に位置を捕捉した。
現在九頭と同位置にいるのは柚木美都留と…生天目有葵…!
ステレオポニーが九頭に攻撃を仕掛けているようだ。

ひとみはフルムーンを有葵の側に瞬時に出現させ首に触手を絡み付けた。
精神感応で有葵に呼びかける。

「何やってんの?!さっさと逃げなさい!!
巻き込まれる覚悟も無いのにその男に手を出すんじゃないわよッ!!
あんたもあんたのスタンドもその男に触れるんじゃないッッ!!どうでもいいから早く逃げて!」

有葵に精神感応で忠告を与えながら現場に向かって走るひとみ。
米綾和を屋上に残し、九頭を殺すという意思と嫉妬と想いがぐちゃぐちゃになった感情を抱えながら。

【徳井さん、よねパパ治療済みです。ゆあちゃんに精神感応で呼びかけ現場に向かい中】

96 :大谷杉松 ◆vReXCpsNBKcm :2010/06/13(日) 09:58:07 0
精神世界からの脱出に成功した大谷達、大谷のそばには佐藤しかいないがよね達は先に行ったのだろう
新しい能力については精神世界にいた時に説明をしている、つまりよねと佐藤は知っているのだ
徳井が開けたであろう穴から外を見るとそこには校庭で戦う仲間と見知らぬ人、そしてア・バオ・ア・クーと九頭が見える…
見知らぬ人も九頭に攻撃しているので仲間だろうか、

『トウスルノ? ワタシタチガイッテモアシデマトイニナルンジャ…』
「いや…行く、行って仲間を助けるんだ」

佐藤もどうやら戦場に向かうようだ、それについて行くように大谷も戦場に向かう

戦場へ向かう際に大谷は思う、
精神世界で見た男、自分は見覚えが無かった
よねはよねの母であろう女が出てきた
つまり自分は一度あの男を見たことがあるのでは無いかと思い始める
…今はそんなことを考えている暇は無い
急いで戦場へ向かった

97 :御前等裕介 ◆Gm4fd8gwE. :2010/06/13(日) 12:00:24 0
>「コロッセオ行った事あんだけど、コロッセオって…殺っせよぉぉおおって……聞こえねーか?」
>「何をすれば良い、と聞いたな!ならば生き残れ!今の弱いままのお前ならわが肉体の一部になる以外価値がないからな!」

………………。

「ぶはっ――!!」

倒壊した校舎の墓場、御前等はその瓦礫の中で目を覚まし、ようやく埋葬からの脱出を得た。
開けた視界の向こうは荒れ尽くしたグラウンドと、その中央にそびえ立つア・バウ・ア・クー。

(何が起こった……否、『何かが起こった』!)

ア・バウ・ア・クーが放った光は『押しつぶす』攻撃の光。
それに巻き込まれた御前等もまた、本日二度目のど根性ガエル化を経験するはずだったのだが。

>『やばい!間に合え!』

どこからともなく放たれた少年の声と形容し難い色合いの弾が、ア・バウ・ア・クーの撃滅攻撃に干渉した。
そうしてできた『ちょっとした隙』に、御前等はスタンドで咄嗟に自分を投げ、どうにか危機を脱したのだった。

「九頭め……この攻撃の意図、理解したぞ。つまりアレだろう、――俺を育てる気だな!?」

獅子は子を千尋の谷に突き落とすと言う。その逸話の本質は、逆境を与えることで子を強靭にする愛の証。
九頭は己の傍に置くに足るかの資質を確かめると共に、それを磨くための試練をも同時に与えたのだ。お徳用パックみたいなものである。

「いいだろう、『生き残れ』というその命令!しかとこの手に受け止めたッ!!『完遂』してやるッ――主に俺の未来の為に!!」

一息に言い切ると、御前等は正確に四回深呼吸をし、肺の中身を総入れ替えして十全な酸素を四肢に行き渡らせると、
九頭の立つグラウンドの中央へと駆け出した。自宅警備員見習いの御前等にとってそれは遠く、険しい道程。
どれだけ地面を蹴っても、一向に進むこと能わず。もっと早く。もっと速く。もっともっともっと疾くッッッ――!!

「『アンバーワールド』――歯車を出せ!!」

スタンドパワーの結晶である歯車は、機械に取り付けることで任意の動作を再現する能力を持っている。
御前等はそれを、――『発動せずに』。靴の側面に貼り付けた。それはまるで、外輪船の推進輪。

「『パドルモード』!!」

靴の側面に取り付けられた歯車が、『外輪(パドル)』となって地面を漕ぎ進む。傍から見ればタイヤの付いた靴のように。
超高速で回転する歯車によって推進力を得た御前等は、正しく超高速でグラウンドの中央へと疾走する。

向かうのは『九頭』ではない。『九頭と対峙する少年』でもない。『九頭と対峙する少年へ駆け寄る男』へと肉迫する。
なにやら宙へ浮かぶ眼球のようなものに触手で繋がれているが、御前等にとっては文字通り眼中にない。

(どさくさに紛れて九頭に攻撃していたあいつ……『九頭の敵』であること"だけ"は間違いないッ――!!)

だから倒す。九頭に認めさせる為に。突き抜けた構ってちゃんは、構ってもらうために世界を動かせる。

「超☆絶☆必☆殺!!――やつあたりキィィィーーーーック!!!!」

疾走の勢いそのままに、治療中の男のこめかみへ向かって最強に空気の読めない飛び蹴りが飛来する。


【徳井さんへKYキック。御前等は九頭戦への加勢を妨害する為に動いています】

98 :荻原秋冬◇6J1m09mANS :2010/06/13(日) 15:37:42 0
>>93
この体育倉庫にきてから大体5分くらいたっただろう。
荻原と生天目が窓からグラウンドを見ている。
グラウンドには九頭龍一…
そして、荻原を苦しめたあの少年がいた。
形勢はどうみても九頭龍一のほうが有利みたいだ。

>「あのこやばいよ!なにかされるかも!荻原さん、私助けにいくね!」

「えっ!?ちょっと待ちなさい!」
窓を開けて生天目は飛び出す。
荻原もあわてて追いかけようとするが、体の痛みがまだ完全に回復したわけではないので、
追いつくことができない。

その時、生天目のスタンドステレオポニーが九頭龍一の輪に掴み掛かったのだ。
九頭龍一の気をそらせているうちに、生天目があの少年を抱きかかえた。
荻原も急いで生天目のところへ行った。

「はぁはぁ、ゆ…有葵ちゃん!ここは危険だ。
その子を連れて早く逃げるんだ!
私が時間を稼ぐ!」
プラントアワーを出現させて、荻原は体制を整えた。

体中に感じていた痛みは今は感じない…
体のそこから感じるのは、恐怖という名の寒気が荻原の体を包む…
そして、九頭龍一から発するその神々しいオーラ…
たぶん…荻原が勝つことは、ほぼ9割無理であろう。

99 :徳井一樹 ◆MnJrk02a/Yx. :2010/06/13(日) 15:55:14 0

「クソッ!足をやられちまっていつも通りのスピードで動けねー!」

壁から上半身が勢い良く飛び出す。
九頭の飛ばした光の重力波のような攻撃のおかげで機動力を失ってしまった。
この調子では後2、3度息継ぎを挟まなければ柚木の元へ辿り着けないだろう。
柚木の前には今九頭龍一、ア・バウ・ア・クーが荘厳に降り立っている。
徳井が泥臭い壁の中へ再び潜り込もうとしたところ、フルムーンが到着する。

「佐藤さんか!……精神世界から無事戻っきたよーだな」

オズモール戦時に負傷した時と違い、治療に多少時間がかかるようだ。
骨折などと違って複雑な負傷をしたせいか治療はまだ終わらない。

>「超☆絶☆必☆殺!!――やつあたりキィィィーーーーック!!!!」

痩身長躯の男が加速で勢いをつけながら徳井のこめかみ目掛け飛び蹴りをかましてきた。
完全に油断していたためモロに飛び蹴りを食らい、後方にずっこける徳井。
スタンド使い達との連戦が祟って治療中のみ集中力の糸が切れていたのもある。
埃っぽい砂が舞い、汗で濡れたワイシャツは砂を吸い盛大に汚れる。

「テメーコラァッ!こっちはもうヘトヘトなんだよ!大人しくしてろバーーカッ!」

徳井が喚き散らしながらも依然治療は進行していた。
フルムーンは治療を終えると即座に主の下へと帰っていく。

>「弱いものいじめしちゃダメでしょ!学校で習わなかったの!?」

後方から届く生天目の声。徳井は知らない人物の声。
恐らく佐藤さんは知ってるが自分は知らない味方なんだろうと都合よく勝手に解釈した。
そして佐藤さんがいるということはよねと大谷もこちら側の世界に帰ってきたのだろう。
目の前の敵は適当にあしらって九頭に専念すべきだ。こちらの目的は九頭を倒すことなのだから。
九頭以外に無駄な体力を割く余裕もない。しかしそうは問屋が卸さない。

「疲労困憊のときに野郎が相手なんざくそ面白くもねーーー
素直に逃げさせてもらうぜ、アリーヴェデルチ!」

煙たいグラウンドの地面を切開し地面に潜ろうとする徳井。
相手の能力は不明。妨害が目的なら何か仕掛けてくるだろうと、
潜る一瞬ではあるがセイヴ・フェリスを出現させ警戒していた。

100 :生天目 有葵 ◆BhCiwB2SCaJ5 :2010/06/13(日) 17:02:40 0
>95
>「何やってんの?!さっさと逃げなさい!!
>巻き込まれる覚悟も無いのにその男に手を出すんじゃないわよッ!!
>あんたもあんたのスタンドもその男に触れるんじゃないッッ!!どうでもいいから早く逃げて!」

「逃げなさいって…今出たきたとこだし。逃げたくてもこの子の足がおぼつかないし…うきゃ」
生天目と柚木は年齢のわりにはお互いに小さい。二人はころりとグラウンドでこけている。

「どこにいるのヒトミン?たすけて!」
グラウンドに這い蹲っている生天目は辺りを見回したが佐藤の姿はどこにも見当たらない。
九頭を見ながら生天目はさっきの佐藤の言葉をほんわりと思い出していた。

「…その男に手を出すんじゃない。手を触れるんじゃない。……。
もしかして、ヒトミンってこの人のこと好きなの?でも悪い人だよ」
生天目は女の勘で佐藤の想いを感じとっていた。
九頭が異性とはいえ佐藤という友達を奪われるような気持ちが芽生えた生天目は嘘をついた。

「ふーん。この人かっこいいかも。私も好きになってきたかも。
あとたいしたことぢゃないんだけど…九頭龍一さんもずっと私のことを見つめています」
佐藤の心を逆撫でしてみたい。姉だけが彼氏を作って、ほったらかしにされた妹の気分。
精神感応の会話だから嘘なのはばれるのかも知れない。でも逆撫でしたい気持ちは本当。
九頭龍一に佐藤ひとみと私とどっちが好みと問いかけてみたい気持ちも生まれた生天目だったのだが
そこまでしたら修復できないような問題が生まれそうなのでやめることにした。

>98
>「はぁはぁ、ゆ…有葵ちゃん!ここは危険だ。その子を連れて早く逃げるんだ! 私が時間を稼ぐ!」

「荻原さん!!傷はまだ治ってないのに!」
生天目は荻原の体を心配しつつも内心はびっくりしていた。
真面目で純粋そうな荻原に自分の嫉妬心を。佐藤ひとみにイジワルを言ったそれを見られていたのだろうか。
ちょっと頬が真っ赤になった。真剣に助けに来てくれる人に見られたくも聞かれたくもないこと。
というか柚木も抱きかかえているわけなのだが子供にはわからないことだろうと柚木の存在は頭から消している。

「良いところに来てくれたよ!荻原さん!」
なにはともあれ戦っているステレオポニーは荻原の加勢に喜びの声をあげる。

101 :吉野きらら ◆HQs.P3ZAvn.F :2010/06/13(日) 19:48:18 0

護国天使ア・バウ・ア・クーの放つ破壊の光は、遍く全てを照らし滅びへと誘う。
脅威以外に形容のしようがない光景に、それでもきららは彼と滅びの光を見上げ、伴ない口角を吊り上げていた。
目の前に広がる神聖な大観に、彼女はやはり九頭こそが自分を次なる高みへと押し上げてくれると、確信していたのだ。
彼女は『メメント・モリ』に傘を模した花を咲かせる。
九頭の放出した殲滅の輝きからすれば貧弱極まりない、防御の意味など成そう筈もない傘を。
だがにも関わらず、きららは悠然とその傘を九頭に向けて翳す。
彼女の姿は光の濁流へと呑み込まれ、舞い上がる土埃に塗り潰された。

そして、それでも吉野きららは生きていた。
そこには柚木の超重力に依る威力の相殺があったからに違いない。

「……ほら! ほらほらほらぁ! 生きてます! 私は生きてますわ!
 やはり幸運の旋風は私に吹いている! 今この瞬間、私と幸運は確かに『両思い』に違いありませんわ!」

――が、きららはそれを、自分が生きていると言うこの結果を『絶対的な幸運』の証左として受け止めた。
満面に喜悦の色を浮かべ、彼女は両腕を一杯に広げ嬉々として声を張り上げる。

「九頭龍一! やっぱり貴方が、私の踏み超えるべき最後の一段ですわ!
 この際、貴方の幸せが何処にあるかなんて関係ありません!
 ただ貴方に触れて! 私は幸せになる! これ以上に大切な事など、ありませんもの!」

聞き様によっては盛大な誤解を招き兼ねない宣言を、彼女は肺腑の産み得る限りの大音声で叫び上げる。
しかして薄れつつあった土埃の幕の向こうで飛び去る九頭を、勇みながらも軽やかな足取りで追い始めた。


【熱烈! 愛のプロポーズッ!
 ……っぽい何かを宣言しつつ九頭さんをおっかけます】

102 :九頭龍一 ◆SM24/QbfAY :2010/06/13(日) 22:27:32 0
>93
>ボブ・バンソンが一番だとしたらボクはランク外…。でもその愛する彼ははどうしたんだい?ボクより先に死んじゃったの?」
「ボブが死んだ?ああ、死に切ったのなら良かったのだがな。そんな生易しいレヴェルではないのだよ。
だがお前がそれをどういう事か知る必要はない。駒が盤外の事情を知っても虚しいだけだぞ?」
柚木の悲痛なまでの叫びを前にしても九頭の視線は何処までも冷たく熱を帯びる事はない。
ゆっくりと大きな掌が柚木に向けられ、そこから『死』の臭いがあふれ出す。

一瞬の隙を突きステレオポニーが九頭の頭に飛びついた!
突然の、しかも唯一の弱点である光輪にしがみ付かれ柚木に向けられた掌がそこから逸れる。
そして浴びせられる超音波に九頭が身を捩る。
>「弱いものいじめしちゃダメでしょ!学校で習わなかったの!?」
「ぐ、ぐおおおお!なんだ貴様はああ!!」
身を捩ってもしがみ付いたステレオポニーは離れない。
超音波を浴びせ続けられ、光輪に無数の皹が入る。


>95
屋上にて佐藤に刃を突きつけられる綾和。
死ぬ訳にはいかない。
例え腕をもがれようが足を切られようが気絶する事も許されない。
それが自分に与えられた使命。
だが、想像に反して佐藤のとった行動は治療だった。
そして問いかけられる言葉。

佐藤の行動は一貫して九頭を知りたい、という事に基づいている。
何処までも貫くその意思に、綾和の顔から険が取れていった。
「……お前にはわかるまい。九頭様がどれだけ孤独な戦いを続けているか。
そしてそれにより世界が救われているか。
…九頭様は……選別を行うワルキューレなのだよ。」
ようやく口を開き答えだしたのだが、それ以上は続かなかった。
突如として左腕を押さえ苦痛に呻きだしたからだ。
最早話すことも出来ず、意識を保つだけで精一杯になってしまったからだ。


>98>100
ステレオポニーの稼いだ時間に生天目と荻原が柚木を引き摺っていくが、その時荻原の脳裏に届くだろう。
『あなた…たす…け…て…』
それは声ではない。
ただの錯覚かもしれない。
しかしそれは確かに荻原の妻の声だった…!

ステレオポニーは目的通り時間を稼ぐことが出来た。
だが、それは反撃を受けるに十分な時間九頭と接していたという事でもある。
光輪にしがみ付くステレオポニーを四つの腕が掴みかかる。
引き剥がそうと言うのではない。
むしろ逆、逃げられないように固定する為に。
そしてその先には凄惨な攻撃が待っていた。
怒髪天を突くとはこういう事を言うのだろうか。
護国天使ア・バウ・ア・クーである九頭の髪の毛が総毛立ち、無数の串の様になってステレオポニーの全身を貫いたのだ。

「馬鹿め!この私の頭に取り付くとは何たる不遜!」
全身串刺しになってぐったりするステレオポニーを光輪から引き剥がすと目の前に立ちはだかる荻原に投げつけた。

グラウンドではお前らが徳井に飛び蹴りをかまし、徳井がグラウンドを切開し逃げようとしている。
大谷も仲間を救うために死地に飛び込む覚悟を見せる。
よねはこの戦いに己が出来ることがないと自覚しながらもそれでも向かってきている。
そして吉野は九頭を己が登るべき最後の段階と定め後を追っている。

状況は混迷しつつも最終局面を迎えようとしていた。

103 :佐藤ひとみ ◆tGLUbl280s :2010/06/14(月) 03:08:35 0
>100
屋上から九頭のいる体育倉庫付近、グラウンドの端に向かう佐藤ひとみ。
途中階段の割れた窓から聞こえる女の声が耳に突き刺さる。

>「九頭龍一! やっぱり貴方が、私の踏み超えるべき最後の一段ですわ!
>この際、貴方の幸せが何処にあるかなんて関係ありません!
>ただ貴方に触れて! 私は幸せになる! これ以上に大切な事など、ありませんもの!」

既にグラウンド上空に居るフルムーンの視点経由で声の主を確認する。
九頭に傲岸な態度を見せていたあの制服の少女が芝居掛かった仕草で声高らかに決意を述べている。
どうやら彼女も九頭を殺す覚悟のようだ。ひとみの心に焦りと怒りの靄が充満した。
屋上の米綾和の様子…九頭は弱点を攻略されて危険な状況にいる。
ひとみには九頭を殺さねばならないという意思は在るものの
自分の手垢の付いた協力者でも無い何処の馬の骨とも知れぬ女に九頭の命を握られることなど耐えられない。

それにひとみには米綾和にダメージを与えることなく九頭を仕留める方法に心当たりがあった。
ポッと出の部外者に割り込まれてはその策略も無駄になる。
ヒールの音を響かせ階段を駆け下りながら、この女の動向を伺うことを決めていた。


>100 >102
護国天使ア・バウ・ア・クーの硬化した髪に貫かれるステレオポニー。
スタンドの傷に呼応し有葵の身体からも血が噴き出す。

「馬鹿ッ!あの男に手なんか出すからよ!!それにしょうも無い嘘も!」
有葵の目の前に突如姿を現すひとみ。
ひとみは呼吸を乱し肩で息をしながらも有葵に向かって怒鳴り散らした。

―――ひとみはグラウンドに出る間際、呼び戻したスタンドと共に透明化し身を隠していた。
偶然にも弱点を捉えたステレオポニーの攻撃は九頭の逆鱗に触れその怒りに身体を突き刺される。
予想を超える無情な九頭の反撃にひとみは有葵と柚木に駆け寄り迷彩を解いた。

迷彩をかけたままでは治療は不可能、そして一人では有葵を動かすことも出来ない。
敵かもしれない謎の少女と男に存在を悟られる不利を押してこの場で治療に取り掛かった。

地面に膝を付き負傷した有葵の身体を支えるひとみ。
体内をスキャンしながら破損した内臓や血管、皮膚の裂傷を極細の粘液を帯びた触手の糸で縫合していく。
串刺しにされた傷は十数箇所に及ぶ。
無数の触手による同時進行の治療と言えど全ての傷を塞ぐには暫し時間が必要だった。

その間にもあの制服の女は九頭に向かって歩を進めていく。ひとみは焦っていた。

【吉野さんに敵意ムンムン。有葵ちゃん一応治療済み】

104 :生天目 有葵 ◆BhCiwB2SCaJ5 :2010/06/14(月) 15:51:51 0
>103
護国天使である九頭の髪の毛が総毛立ち無数の串の様になってステレオポニーの全身を貫く。
>「馬鹿め!この私の頭に取り付くとは何たる不遜!」
九頭は全身串刺しになってぐったりするステレオポニーを光輪から引き剥がすと目の前の荻原に投げつけた。

瀕死のステレオポニーは荻原に抱きかかえられてぐったりしている。割れた仮面の隙間からは虚ろな瞳が見えた。

生天目有葵はというと全身の穴から血を噴き出させ内側から服の色を深く染めながら柚木と共にグラウンドに倒れている。

>「馬鹿ッ!あの男に手なんか出すからよ!!それにしょうも無い嘘も!」
目の前には佐藤ひとみがいた。生天目は大きく息を吸ってはく。
なにが起こったのか起きているのかわからなっかったけれど突き刺さる感触があったのだから攻撃されたことは理解できた。

「穴…空いてる?からだに…チーズみたいに…。傷が残ったらどうしょぅ…」
生天目はフルムーンで傷を治している佐藤に尋ねながら自分の小さい嫉妬心を恥かしく思う。

「ありが…とう…ひとみん…」
フルムーンによる傷の縫合が終わると生天目の体は宙に浮いて柚木の体と一緒にグラウンドの端っこに移動してゆく。
柚木が力をふりしぼって重力玉で二人の体を浮かせて運んでいるのだった。
涼しそうな木の下まで流れて行った二人は幹に背をもたれてグラウンドのみんなを見ている。

>98
時間は少し戻って、本体の治療が終わりかける前にステレオポニーは荻原からほんの少し離れた位置に移動していた。
荻原の足をひっぱることはどうしても避けたい。それに敵か味方かわからない制服の美少女がこちらに向かって来ている。
寝ている場合ではなかったし今は逃げることも出来ない。逃げるなら攻撃でワンクッション置かなければ背中を斬られてしまうことだろう。

「荻原さん…手をかすよ。ここはグラウンドだから文字通りプラントアワーの力を充分発揮できるはずだし…。
オレのソニックで植物の細胞分裂を促進させたら何かをおこすことができるかも…」

それは小さな希望だった。遠くの生天目は血と共に心意気まで抜けきった顔をしている。
荻原さんの援護が終わったらここでお役御免。あとはみなさんに託すだけ。ステレオポニーはそう考えていた。

(佐藤さん治療ありがとうございます。生天目本体と柚木は離脱。
スタンドパワーが減っているステポニは荻原さんに最後の援護ってとこ…その後はたぶんトンズラ☆)

105 :荻原秋冬◇6J1m09mANS :2010/06/15(火) 23:38:44 0
>>102
ステレオポニーが九頭龍一の頭の輪に掴み掛かっているとき、荻原の耳にある声が聞こえた。

『あなた…たす…け…て…』

「えっ…春夏!いるのか!」
けれど、もう妻の声は聞こえない。
空耳かと思うが荻原はしっかり聞こえたのだ。

そしてその時九頭龍一は、なんと髪の毛を硬化させてステレオポニーの体を貫いたのだ!
スタンドが傷つくと本体も傷つくため、生天目も体中から血を噴いた。

「ゆ!有葵ちゃ…」
言い切る前に九頭龍一が串刺しになったステレオポニーを荻原に向かって投げつけたが、
何とか受け止めることはできた。
ふたたび生天目のほうを見ると、いつの間にか佐藤ひとみが生天目の前にいて治療をしていた。
まえに荻原が大怪我をしたときと同じ方法で。

>>104
荻原が抱えているステレオポニーが突然立ち上がり歩き出した。

「お…おい、どこへいくんだ」
佐藤ひとみのおかげで生天目の傷が回復すると同時にステレオポニーも回復しているが。
完全に回復したわけではないから、あまり動かないほうがいいのだが。
ある程度荻原と距離をとったステレオポニーが言った。

>「荻原さん…手をかすよ。ここはグラウンドだから文字通りプラントアワーの力を充分発揮できるはずだし…。
>オレのソニックで植物の細胞分裂を促進させたら何かをおこすことができるかも…」
たしかにここのグランドは、もう何年も手入れをしていないから小さいながらも草があちこちに生えている。
あまりいい土ではないため、プラントアワーで地面から植物をはやすのはちと難しいが、
そんなことを言っている暇はない。
ステレオポニーを見ながら荻原は…

「…わかった……ありがとう」
そう言って、すこしだけ微笑んだ。

荻原は九頭龍一に向かって大声で言った。

「九頭龍一!お前は10年前に、私の妻と娘を奪ったのだ…
私が妻と娘を取り戻すまで、たとえ命を失っても…
お前を倒す!」
九頭龍一から発する神々しいオーラにつぶされていた荻原だが、
今は自分の命を捨ててでも倒すという、捨て身の覚悟が荻原の中の恐怖心を吹き飛ばした。
プラントアワーの蔓を新しく、鎌のように鋭い棘を生やしたバラにして
体勢をかまえたのだ。

106 :佐藤ひとみ ◇tGLUbl280s(代理):2010/06/16(水) 06:44:05 0
串刺しにされた生天目有葵の傷を治療するひとみ。
>「穴…空いてる?からだに…チーズみたいに…。傷が残ったらどうしょぅ…」

「贅沢言うんじゃないの!穴が空いたままよりマシでしょう!
傷が残るようなら後で縫い直してあげるからちょっと黙ってて!」
ひとみは有葵の少女らしい心配事に思い遣りを以って答える優しさも余裕も持ち合わせていない。
ささやかな少女の懸念に怒鳴り声で答えてしまう。

体内をスキャンして内臓の破損状態を確認するが幸い肺と心臓へのダメージは無い。
ステレオポニーが上手く身を捩ったお陰か髪の串は急所を避けて刺さっていたようだ。

>「ありが…とう…ひとみん…」
一通りの治療が済むと蚊の鳴くような声で感謝を告げる有葵。

人体との親和性の高い粘着性のタンパク質素材の糸で縫合している為通常の外科治療に比べれば治りは格段に早い筈だが
急所を外しているとは言え内臓と皮膚の傷は十数箇所に及ぶ。暫く有葵の身体を動かすことは出来ない。
有葵の身の処置を思案していると有葵と柚木少年の体が宙に浮かび移動していく。
経緯か不明だが、かつて敵だった柚木美都留が今はこちら側の利に与していることは行動で解る。
ひとみは有葵を柚木に任せ九頭の居場所に向かって走り出した。


九頭龍一の身はグラウンド外れの体育倉庫付近に浮かんでいる。
九頭よりさらに上空に飛ばしたフルムーンによる俯瞰で視認できる光景……。
棘の鞭を構え九頭と対峙する荻原。近くに控えるステレオポニー。
そして九頭に近付いて来る制服の少女…。

ひとみは現場に向かいながらフルムーンの触手を長く伸ばして荻原の腕に巻きつけ
スタンドを通じた精神感応で荻原の精神に念を送る。

「荻原さん!今の九頭の弱点は頭の上の光輪…!
それが護国天使としての九頭の姿を保つ鍵になっているわ。でも出来たらそれは狙わないで!
それを破壊するとよね君の父親の身が危ない!
私に考えがあるからもう少し時間を稼いで!詳しいことはまた後で…!」

精神感応の通話は一回につき10秒程度しか持たない。
ひとみは一方的に通信を切るとフルムーンの触手を束ね一本の鞭形状に纏めた。
その触手の鞭を弾むような足取りで九頭に追い縋る少女の足元を目掛けて振り抜いた。
鞭に足元を掃われた少女を後ろから睨みつける佐藤ひとみ。

【荻原さんに脳内もしもし。吉野さんを触手ムチで足払いしてガン睨み】


107 :吉野きらら ◆HQs.P3ZAvn.F :2010/06/16(水) 21:19:20 0
吉野きららはふと立ち止まり、佐藤ひとみへと振り向いた。
何とは無しに、彼女が自分にとっての障害になり得ると感じたのだ。
無論彼女に限らず徳井や萩原、大谷達も事の次第によっては敵にはなるだろう。
だがそれは『九頭の打倒』と『次なる次元の幸せ』を目指す成り行き上では所詮『横からの接触』に過ぎず、
自分と『正面から相対』するのは佐藤ひとみであると、直感的に悟ったのだ。

しかし――きららは佐藤ひとみから『幸せ』の気配を、殆ど感じられなかった。
端から幸福を度外視している九頭とは違い微細な『幸せ』は持っており、それを望んでもいるのに、持ち合わせていない。
きららからすれば、それは紛れもなく『嘲笑』の対象だった。

佐藤を尻目に捉え、きららは侮蔑と嘲りの曲線を目口で描き、鼻で笑う。
そしてすぐに九頭へと視線を戻した。
『相対』する障害とは言え、九頭の巨大さを鑑みれば佐藤など路傍の石に過ぎないと、彼女は断じたのだ。

だが、佐藤ひとみは『フルムーン』の触手によって、背後からきららの足を払う。
俄かに体躯の平衡を損ねた彼女は、
『メメント・モリ』に支えられる事で辛うじて転倒を免れた。
けれども、きららは瞬く間に柳眉を吊り上げ唇を真一文字に結び、殺気立った激怒の形相を見せる。
自分が路傍の石と見なした存在が己の足を掬ったなど、彼女にとって許せる事ではないのだ。

「……ふざけた事を! 大いなる一段の前に転がる貴女如きちっぽけな石ころがッ! 
 崇高なる目的の私の歩む道に踏み込んで来るんじゃあありませんッ!」

激昂に任せ声を荒げ、きららは『メメント・モリ』を発現した。
近くの触手は花束の剣で細切れとし、本体に繋がる触手には手当たり次第蕾や種を植え付ける。
更に花弁の刃を視界を塗り潰さん程に放つ。

仕込みを受けた触手で愚直に防御しようものなら、
きららは機を見計らい植え付けた花を成長させそれを捻じ曲げる算段であった。
そして無防備を強制して、成す術なく佐藤を寸断するつもりだ。

花弁の織り成す幕の向こうに佐藤の姿が消えた事を認めると、きららは早々とスカートの裾を翻す。
しかくして彼女は九頭への歩みを再開して、加えて『メメント・モリ』の花を彼の頭上に咲かせた。
光輪よりも、更に上方。廃校の校舎の壁面に花をずらりと並べる。
丁度、切り取り線のように。
花が根ざす事で走る亀裂は忽ち連結していき、校舎の一角を崩落へ導いた。

誰も彼も関係なく無差別に、瓦礫の雨が重力の鎖に従い降り注ぐ。


【普通に防御したら、直撃の寸前で花が成長して触手の防御を捻じ曲げちゃうぜ!
 花びらは小細工無しじゃ硬化した触手なら余裕で弾け、柔らかい触手でも盾に出来る程度で
 九頭さんを中心に無差別落石です】

108 :御前等裕介 ◆Gm4fd8gwE. :2010/06/16(水) 22:06:57 0
飛び蹴りはキレイに決まった。
こめかみへと蹴りを炸裂された男は盛大に転がり、体中を土塗れにしながらそれでも立ち上がる。

>「テメーコラァッ!こっちはもうヘトヘトなんだよ!大人しくしてろバーーカッ!」

「そうか、それは大変だな『狩られる者』のお兄さん!ちなみに俺は元気だ、自己顕示欲を持て余す」

眼球は男を治療していたらしく、それを十全に終えて空へと帰っていく。
男は足を怪我していた。歴戦の気風を漂わせながらも自宅警備員ドラフト一位如きの不意打ちを喰らったのは、それが原因であった。
それも治療が完了し、五体満足となった今、最早男が御前等に遅れをとる要素などない。ないが――

>「疲労困憊のときに野郎が相手なんざくそ面白くもねーーー素直に逃げさせてもらうぜ、アリーヴェデルチ!」

男が選んだのは逃げの一手。或いはそう見せかけての奇襲、搦め手。
傍らに出現したスタンドで地面に触れると、そこがバターにナイフを入れたかのように切り開かれる。

(触れたものを『こじ開ける』能力……これがこの男のスタンドかッ――!!)

そうして開かれた地面へ男は身を投じ、するりと沈んでいく。こちらを警戒しているが、潜りきられてしまえば御前等に追撃手段はない。
させるかとばかりに『アンバーワールド』を出現させ、その諸手いっぱいに歯車を生成する。

「『アンバーワールド』ッ!ありったけのスタンドパワーで歯車をッ!!」

またもや"発動しない"歯車を、高速回転させながら超高速で腕から射出する!
回転しながら宙を疾走する歯車達はその速度を以て弾丸となり、その鋭利さを以て丸鋸となり、その数でもって雨礫となる!!

「――オペレーション『シューティングスター』!!」

それは、威力の瀑布。

「いいぞベイベー!逃げる奴は九頭の敵だ!逃げない奴はよく訓練された九頭の敵だ!ホンット戦場は地獄だぜフゥハハハーハァー!!
 アンタはどっちだ?好むと好まざるとに関わらずッ!俺はアンタを徹底的にブチのめすッ!!だって暴力じゃ何も解決しないんだもン!!」

空を仰ぎ、

「俺は『解決』を要求しないィィーッ!!事態はもっともっともっと混迷困窮を極めたほうがいいッ!!俺の『有用性』を売り込むチャンスだ!」

口角を吊り上げた。

「さあ!さあさあ!!さあさあさあさあさあ!!!――――みんなで仲良く間違おうッ!!」

地面ごと蜂の巣にする勢いで、『アンバーワールド』はありったけの歯車を全弾、潜る男へ撃ち込んだ。
小気味良い振動を地面に響かせて、数十枚あったスタンドパワーの歯車は、たったの三秒で底をついた。


【セイヴ・フェリスごと徳井さんにダイレクトアタック。スタンドの成長によって歯車をそのまま飛ばすエメラルドスプラッシュ的なものを覚えた】

109 :よね ◆0jgpnDC/HQ :2010/06/16(水) 22:32:42 P
#戦場は地獄だぜ!

校庭でしばらく突っ立っているとふいに何かを感じた。
視線。それも強力で…凝視されているような気分。
その視線の元は屋上だった。屋上から校庭を眺めている。誰かが。

『米コウタ…なんだ…このもやもやした気持ちは…
 アイツは私の息子…ただそれだけ…それだけだと言うのに…』

屋上から見るのはカズ。
流石にその視線に気づいたよねと丁度目が合う。
お互いにハッとすると、すぐさま睨み合いが始まる。

「カズ…自分は…九頭龍一と戦います。構いませんね?」

よねにも感じ取れた。綾和に起きている異変が。
綾和はただ、抜け殻のようによねの姿を眺めている。

そしてよねは九頭の居る方向へと歩き出した。
おそらくもう既に皆が戦っているだろう。最終決戦になる。そう分っていた。

突然、よねは今度は自らに起こる異変を感じた。
風、ではない。なにか…まるで自分がその場で高速移動しているかのような感覚。
気になって再び屋上を見るも、すでにそこには綾和の姿は無かった。

「九頭龍一…皆さん…今行きます…」

そう呟くと、まるで急ぎもせずにゆっくりと、ただゆっくりと再び歩き始めた。

110 :九頭龍一 ◆SM24/QbfAY :2010/06/16(水) 23:56:01 0
>105>107
退治する荻原と九頭。
充満する闘気は二人の間の空気を凍りつかせ、他者の介在を許さない。
その中にあって荻原の目の決意の炎は寸分の揺らぎもない。
>「九頭龍一!お前は10年前に、私の妻と娘を奪ったのだ…
>私が妻と娘を取り戻すまで、たとえ命を失っても…
>お前を倒す!」
「良い目だ。
そんな目をして挑んでくる者の屍の頂に私は立っている!」
荻原の決意に九頭は歓喜の笑みを浮かべ、一歩間合いを詰める。
両者の間の緊張の微粒子は更に濃度を高め、空間を歪ませる。
そして時も圧縮されたようにゆっくりと進む。
まるで交通事故の瞬間、全てがスローモーションになる現象のように。

空気を引き裂き、九頭の拳が繰り出された瞬間、それは起こった。
廃校舎の壁面を彩る百花繚乱の花。
メメント・モリの能力発言により花開き根ざすそれが廃校舎の亀裂を開き校舎の一角を崩したのだ。
無数の破片を撒き散らしながら切り取られた巨大な壁面の影が荻原と九頭を飲み込んでいく。
響き渡る轟音。
巻き起こる土煙。
飛び散る破片。
落下した校舎の一角は凄まじい衝撃と共に二人を飲み込み辺りを揺るがした。

しかし荻原は気付くだろう。
自分が生きている事に。
それどころか、自分の周りには壁や瓦礫どころか破片すらなくポッカリと空間が開いているのだ。



時は瓦礫が落下する瞬間に巻き戻る……

「ぬっ!!させるかああ!!」
荻原に集中していた為、回避が遅れる九頭。
が、例え気付いていたとしても回避はしなかっただろう。
なぜならば、瓦礫によって圧死というのはあってはならないことなのだから。
留流家を展開させていない今、九頭自身が手を下さねばスタンド使いの死はただの死となり、取り込むことが出来ない。
九頭がスタンド使いを倒すのはあくまで取り込むための手段であり、殺す事が目的ではないのだから。

だから、九頭は荻原を守る。
荻原に向けられていた拳は無理矢理角度を変え、落ちてくる壁に向けられる。
ただ打ち抜くだけでは足りないのだ。
四本の腕を使いラッシュで壁を砕き、三対六枚の羽根で破片を撃ち飛ばしていく。
こうして九頭は荻原を守ったのだった。


111 :九頭龍一 ◆SM24/QbfAY :2010/06/16(水) 23:56:07 0
>109
屋上から綾和はよねの姿を見詰めていた。
階下からかけられる声は届いていたが、綾和は返事をしなかった。
最早ここに至ってはかける言葉が見つからないのだ。
ただ、九頭の協力者としてではなく親として、子の成長を促すことのみ。
「ふふふ、これが親としての最後の手向けだ…。」
グリーン・Dを発現させた綾和は満足気にゆっくりと倒れる。
その目には先ほど吹き飛んだ自分の左腕が映っていた…。



そして時は現在に。
もうもうと立ち込める土煙の中、あたりは瓦礫に埋め尽くされていた。
ポッカリ開いたスペースにたつ荻原の他に立つ者は見当たらない。
土煙が晴れてきた時、カラリと破片が転がる音が響く。
直後、吹き飛ぶ瓦礫。
覆いかぶさっていた瓦礫を吹き上げ、勢い良く羽根を広げて土砂を散らすとそこには護国天使ア・バウ・ア・クーがあっていた。
深刻なダメージはなさそうだが、先ほどまであたりに充満していた漲る闘気はない。
大きく息を吐き、目を見開くと、その瞳には重大な何か、が宿っている。
「愚かな事をしてくれたな……」
遠くに呟くように漏れ出た言葉の意味は。
そして瞳に宿る重大な何か、とは。
その答えはすぐに明らかになった。

頭上に関する光輪が音もなく崩れ落ちたのだ。
護国天使の足元に転がるひび割れたグリーン・Dの左腕はゆっくりと消えていく。
それと共に護国天使ア・バウ・ア・クーの輪郭が形を崩していった。
「確かに光輪は護国天使の制御を担っていたが、それは調整の役割。
なくては身体を維持できない、とは思うなよ?
いや、緻密な調整が出来ない分、最早手加減は出来んぞ!」
崩れた輪郭が再度整っていく。
だが、新たに整った輪郭は先ほどの神々しいまでの姿とは似ても似つかなかった。
むしろ禍々しく、人の狂気を具現化させたような姿。

体表は鱗あるいはゴム上の瘤に覆われ、蛸を思わせるような頭部。
蛇とも触毛ともつかない髭上のものを備えた顔、鍵爪を供えた手。
蝙蝠のそれに良く似た翼を持つ人の輪郭をした化け物。

醜悪な姿になった九頭は正にパワーの塊りだった。

吉野の頬に一筋の赤い線が走り、すぐ隣には深々と刻まれた四本の爪痕。
その爪痕はグラウンドを横断し、徳井と御前等の間に割って入っていた。
これは九頭が無造作に振るった右手が生み出したもの。
凄まじいパワーがグラウンドを切り裂いたのだ。
「ふん。光輪がないと細やかな調整が利かんな。が、問題はないだろう。」
九頭は己の力を確かめるように呟き、一歩踏み出し瓦礫を砕く。

光輪がなくなったことによりスタンドの特殊能力を使う事は出来なくなったが、最早それは問題ではなくなっていた。
桁違いのパワーを持つ魔獣は全てを蹂躙し、打ち砕く事ができるのだから。

112 :生天目有葵 ◆BhCiwB2SCaJ5 :2010/06/17(木) 01:27:38 0
>105(荻原さん)
荻原はステレオポニーにひとこと。
>「…わかった……ありがとう」
覚悟を決めた男の顔には一点の曇りもない。
「…荻原さん。死んじゃだめだよ」
ステレオポニーもひとこと言うとそっとその場から離れた。
今の荻原には自分の加勢は必要ないと感じたからだ。
荻原は小細工なしに己の命を九頭にぶつけるつもりなのだろう。
それに二人の闘気の乱刃はステレオポニーを圧倒していたのだ。


ステレオポニーは本体である生天目のところに戻ると本体をヒーリングソニックで癒した。
ついでに柚木も癒したが二人ともスタンドパワーをすり減らしていたためにぐったりしている。
もう木陰でことの行く末を見ているほかないようだ。

113 :佐藤 ◇tGLUbl280s :2010/06/17(木) 22:17:49 0
グラウンドに出る直前。佐藤ひとみは階段を駆け下りながら制服の少女に憎悪を募らせていた。
概ね女というものは自分より美しいかも知れないと思う女が嫌いだがそれを差し置いても
この少女の言動、態度、立ち居振る舞い…ひとみの怒りの琴線に触れるに充分すぎるものを持ち合わせている。
九頭に…あの九頭に対して畏れることも無く舐めた態度を取る不遜さも傲慢さも全く以って気に入らない。
九頭はこの少女にひとみに示した以上の興味を見せていた。
それも我慢できないが、一番気に触ったのは割れたガラス越しに聞こえたこの発言。

>「九頭龍一! やっぱり貴方が、私の踏み超えるべき最後の一段ですわ!
>この際、貴方の幸せが何処にあるかなんて関係ありません!
>ただ貴方に触れて! 私は幸せになる! これ以上に大切な事など、ありませんもの!」

これでは九頭が少女の幸福の下敷きに成り得るような言い様ではないか。
九頭は断じてそんな安っぽい存在ではない。
九頭は飽く迄も奪う者。他人からも自分からも何かを奪うことで目的を達する非情な男。だがそれが美しい。
どんな状況であろうと他人に…ましてや勘違い小娘などに踏み躙られ幸福を齎す存在である訳が無い。



ひとみはグラウンドを横断し少女の後姿を捉えると嫌悪の情を込めて触手の鞭で足を払った。
体勢を崩し己のスタンドに身体を支えられる少女。

>「……ふざけた事を! 大いなる一段の前に転がる貴女如きちっぽけな石ころがッ! 
>崇高なる目的の私の歩む道に踏み込んで来るんじゃあありませんッ!」
彼女は憎悪と侮蔑の篭った視線をこちらに向けるて叫ぶ。

崇高なる目的…?それが『幸せになる!』ことなんて笑わせる、とひとみは思う。
幸せなど感じる者の感覚の位相次第で如何様にも変わる。
誰が何処から見ても不幸としか思えないドン底の状態でも求道者やマゾヒストにとってはそれが至福であったりする。
ひとみは『幸せ』などと言う訳の解らない物求めたことは一度も無い。
『幸福』なんて正体の無い物につけた只の『名前』。そんなものを得るために振り回されるなんて愚の骨頂だ。


怒りに燃える少女は刃物と化した花弁を持つ花束で触手の鞭を切り刻み、同じく刃物の花弁の花吹雪を一面に散らす。
桃色…水色…黄色…色とりどりの刃物の断片が陽光を反射して煌きひとみの視界を奪う。
屋上で見た戦況からして少女のスタンドは射程内に於いて無限に花を咲かせることが可能だ。
その花は荻原の能力で生み出す自然の植物では無く、少女の意思や目的を顕現化した概念の花…?

花の正体はさておき、無限に生み出される刃物の花に対して一時的な防御は無意味。
ひとみは触手を腕に絡めフルムーンを高く飛ばし上空に逃れた。
そのまま撓らせた触手に掴まり校舎の2階ベランダに降り立つ。
避け損ねた刃物の花弁がつけた傷が数本、ストッキングを破り膝下に赤い血を滲ませていた。

114 :佐藤 ◇tGLUbl280s :2010/06/17(木) 22:19:27 0
「クソッ!!なんて事してくれんのよ!!私の美しい足にッッ!!!あのクソ女ぁああッ!」

怒りに任せ叫んだ直後、メメント・モリの咲かせた花が校舎の一角を崩壊に導く。
ひとみの立つベランダも崩壊した側面に向かって傾き崩れだし体勢を保っていられない。
崩壊する校舎に巻き込まれるのを防ぐため、ひとみは再度フルムーンの触手に掴まり九頭の居場所近くの地面に降り立った。
フルムーンの目には崩壊の土煙を透かして九頭の周囲に瓦礫の降らない空間が映っていたからだ。
細かい破片を触手の盾で弾きながらその空間の隅に降り立つひとみ。

 
そこでひとみが目にしたのはおぞましい九頭の姿だった。
美しい天使の皮を脱ぎ捨てたそれは人の形をした蠢く触手の塊とでも言うモノ…
ゴムのような体表を持ち頭足類の頭部を持つ、ある神話の邪神そのものの姿だった。

「九頭龍(クトゥルー)……!」

その異形の頭上には輝く光輪が無かった…。
ひとみは放心したように呟いた。

「信じられない…まさかあの男が自ら能力を解除するなんて……?!」

ひとみはフルムーンの触手を通じて米綾和の体内に数度入り込んだ。
その時に受けた精神の印象からして、留流家に取り込まれた他の狩る者と違って彼は精神の束縛…
つまり洗脳を受けている気配が感じられなかった。
それが本当だとすると彼が護国天使の制御を自ら解ける余地はあったのだ。
だがひとみには現在の状況が信じられない。
米綾和の九頭への忠誠と陶酔は本物だった。彼の精神に一時的にでも触れたひとみには良く解っていた。
だからこそ弱らせた彼の精神を一時的に支配し強制的に護国天使の制御を取り払う方法を考えていたのだ。

だがその必要は無くなった。
米綾和は自ら能力を解き、護国天使は姿とパワーの制御を失った。

邪神姿の九頭はグラウンドの吉野達に向かって右手を振るい衝撃波を放つ。
能力も技も無く只々パワーの塊の如き攻撃。

こんな化け物の眼前に居れば命は風前の灯。
ひとみは攻撃に意識を向ける九頭の目を盗んで瓦礫の影に隠れて様子を伺っていた。

【吉野さんとのキャットファイトは一時中断、九頭さんの視線とは反対側の瓦礫の影に隠れてます】

115 :徳井一樹 ◆MnJrk02a/Yx. :2010/06/17(木) 23:50:20 0
>「――オペレーション『シューティングスター』!!」
>「いいぞベイベー!逃げる奴は九頭の敵だ!逃げない奴はよく訓練された九頭の敵だ!ホンット戦場は地獄だぜフゥハハハーハァー!!
>アンタはどっちだ?好むと好まざるとに関わらずッ!俺はアンタを徹底的にブチのめすッ!!だって暴力じゃ何も解決しないんだもン!!」

「冬のナマズみてーに大人しくしてりゃいいのに……めんどくせーな!都合よく道開けてくれよ!」

>「さあ!さあさあ!!さあさあさあさあさあ!!!――――みんなで仲良く間違おうッ!!」

「こっちはいつでもどこでもミス連発だぜッ!セイヴ・フェリス!」

弾丸の如く打ち出された歯車を真っ向から全て叩き落していくセイヴ・フェリス。
しかし全ては撃ち落としきれずに歯車は二発、三発とまた徳井の体を打ち抜いていく。
サイドに逃げたかったが今は切開の中から上半身だけ身を晒している状態。
避けることも叶わずただ弾くことしか徳井には出来なかった。
3秒で敵は歯車を発射しきったようで、それ以上飛んでくる気配はなかった。

「歯車を生み出す能力…いや、それじゃナットの説明が付かないか……
とにかくまだ奥がありそうだな……賢いあんちゃんよぉ……!」

真剣な顔つきで御前等を見据える徳井。
御前等の妨害がある中徹頭徹尾、徳井の考えは変わらなかった。
あくまで九頭を倒すことのみが徳井の目的。御前等と戦う余裕など微塵もないのだ。

再び切開の中に潜る事を再開し始めたその瞬間、徳井の背後にドス黒いクレバスのような……
圧倒的なパワーを放ちながらそれは現れる。
とても今までの神々しい姿とは正反対の…異形の「ヒトガタ」。
徳井と御前等がその姿に目を奪われた刹那、赤い四本の爪痕が
二人を分け隔てるかのように深々と傷を残した。

>「ふん。光輪がないと細やかな調整が利かんな。が、問題はないだろう。」

「お前の『有用性』なんてよォ〜〜〜ハナッから俺はどうでもいい。
敢えて言うなら……協力して九頭を倒すならアリかもな」

甘ったるい言葉を吐き捨て切開内に完全に身を潜めると、徳井は
九頭の背後へではなく御前等の背後へ回り込もうとしていた。
御前等の微細な動きの振動をキャッチし確実に背後へ回り込む。
状況が変わった。九頭を倒す前にこの邪魔者を早く片付ける必要がある。

「無駄だろうけどよぉ〜〜邪魔しねーんなら……このままおまえさんは放っておいてもいい。
この状況でもまだ邪魔するなら……『覚悟』をするんだな。バラバラになって地に這い蹲る『覚悟』をな」

御前等から5メートルほど離れた背後で徳井は静かに、淡々と伝える。
これが最後通告。こんな話が通用するはずないだろう。
しかし、徳井はたらればの駄目押しで言った。

116 :荻原秋冬◇6J1m09mANS :2010/06/17(木) 23:57:03 0
>>106
>「荻原さん!今の九頭の弱点は頭の上の光輪…!
>それが護国天使としての九頭の姿を保つ鍵になっているわ。でも出来たらそれは狙わないで!
>それを破壊するとよね君の父親の身が危ない!
>私に考えがあるからもう少し時間を稼いで!詳しいことはまた後で…!」
突然荻原の頭の中で聞こえた佐藤ひとみの声。
振り返ろうとしたが、今は余所見をしている場合ではない。

(どういうことだ…やはりあの頭の光輪が弱点なのはわかったけど
よね君の父親が危ないって……
それに時間稼ぎするのって、案外大変なんだよな…)

>>110
ついに九頭龍一との直接対決をすることになった荻原。
10年前に妻子を奪われ、その復讐をはたすとき。
周りの空気はピリピリと痛みを感じる。

だがその時、荻原の目の前には大量のコンクリートの破片が見えた。
旧校舎の一角が崩れ落ちて九頭と荻原を巻き込んだのだ。

「う、うわああああああああああああ!」
予想していなかった事態に荻原は頭を抱えて身構えることしかできなかった。

しかし、荻原は妙な違和感を感じた。
瓦礫などが荻原の周りに落ちていて、荻原自身はなんともなかったのだ。
どういうことかと考えている暇はない。
周りを見ると土煙が立ち込める中、瓦礫ばかりで肝心の九頭龍一が見当たらない。

「くそ…どこへいったんだ…九頭龍一…」
土煙がゆっくり薄まると、突然強烈な風が吹き瓦礫が吹っ飛んだ。
風の吹いたほうを見てみると、そこには九頭龍一がいた…
とても恐ろしい眼差していた。
光輪が崩れ落ちて、九頭龍一の体が変化していった。
その姿は、悪魔以上に恐ろしい姿であろう…
まさに本物の悪とは、こういう姿なのだということを示しているみたいだ。

「これがあんたの最終形体ってやつか。
こりゃ時間稼ぎなんていってられないな。
一気にけりをつけなきゃこっちがやられる」
一昔前の荻原だったら今頃はとっくに逃げ出していた。
基本的に小心者の荻原はできるだけ争いを避けてきた。
だが今は違う。
さまざまなスタンド使いとの対決で、荻原の心は格段に成長した。
それでも今の荻原では、九頭龍一と戦ってもほぼ死ぬかも知れない。

(私は…命を捨てる覚悟でここにいるんだ。
負ける可能性が高くても逃げたりはしない)
再び両腕にバラを鞭のように生やしたプラントアワーを出現させ、
九頭龍一に攻撃を仕掛けた。
さすがにバラの鞭だけでは不安だから、荻原はバラの鞭にイラクサを絡ませた。
あたれば強烈な痛みとかゆみを与えることができる。

117 :九頭龍一 ◆SM24/QbfAY :2010/06/19(土) 00:13:28 0
それは人知を超えたパワー!
何が起こったのか理解できた者はいるだろうか?

お互いに戦う者。
隠れる者。
倒れる者。
向かって来る者。
対峙する者。

この場にいる凡その者全てに対してそれは向けられていた。
強烈なまでの殺意、敵意。
その中心にいる邪心と化した九頭が高々と腕を上げる。
周囲を凍りつかせるプレッシャーが一瞬消えた。
即ち辺りを覆うパワーが掲げられた拳一点に集中したのだから。

「グゴオヴァガギャ!!」
くぐもった耳障りな咆哮と共に振り下ろされる拳。

直後、グラウンドは消えた。

邪神九頭の振り下ろした拳はグラウンドをケシ飛ばし、巨大なクレーターを作り出す。
直径100m!深さ10m!
一点に集中した超パワーと光の波動でぐずぐずになっていたグラウンドのお陰で各人にダメージは殆どない筈だ。
だが、それが幸運かどうかといえば、必ずしも幸運とはいえないだろう。
突如としてすり鉢状に変形したグラウンドに各人が投げ出されたのだから!

既に命を捨てて攻撃にうちっていた荻原は、投げ出されながらも薔薇とイラクサの鞭を九頭に向かって打ち出す。
威力、付加能力共に良く練り上げられたものだったが、邪神九頭の前にあっては余りにも脆弱すぎた。
繰り出される拳とオーラの前に鞭は消し飛び、そのまま荻原の胴体を捕らえる。
桁違いのパワーはあらゆる戦術戦略をねじ伏せ凶悪なる威力を発揮したのだ。

人がピンポン玉のように吹き飛び、クレーターの壁にめり込んだ。
盛大な土煙を上げ、クレーターの一角が崩れる。
「ググガハッハッハ!命を捨てる覚悟!その程度では届かぬ領域に私はいる!死して我が糧となれ!」
荻原を屠った邪神九頭の笑がこだまする。
クレーターは蟻地獄。
九頭の餌場と化していた!


だが九頭は自身の異変に気付いていない。
時々その輪郭にノイズが走っている事に。
そして……荻原がまだ死んでいない事に!

インパクトの瞬間、荻原は確かに聞いた。
愛する妻の声を!娘の声を!
そして確かに見た!
凄まじいパワーが込められた拳が自分の胴体を捉える瞬間、その瞬間のみ、ほどけた事を。
『お父さん…助けて!帰りたい』
『あなた…私たちはここにいるわ!』
ギリギリのところで九頭に取り込まれていた荻原の妻子が九頭の束縛を離れ荻原を助けたのだ。
最もそれも一瞬の事。
更に言えばクレーターの壁面が柔らかい土だったことも命を救った一因だっただろう。

118 :吉野きらら ◆HQs.P3ZAvn.F :2010/06/19(土) 20:04:20 0
覚醒――否、変貌を遂げた九頭龍一の無造作な一閃が、きららのほんの僅か右の地面を深々と抉る。
ただ腕を振るうだけで、『メメント・モリ』の限界射程ほどの距離から。
スタンドの威力と射程は反比例すると言う法則を、いとも容易く九頭は超越していた。
更なる高みまで後一歩であると多幸感に満ちていた彼女も、この事態を前にいよいよ危機を覚える。
一旦距離を取ろうと逃げの手を打とうとするも、遅い。
次の瞬間には九頭の拳はグラウンドを捉え、這い出る事の叶わぬクレーターを穿っていた。
いや、這い出るだけならば、吉野きららの『メメント・モリ』ならば不可能ではない。
斜面に花を咲かせてそれを足場にするなど、如何様にでも手はある。

それを許さないのは、大穴に沈殿する空気。
神聖さに覆われ、或いは緩和されていた九頭龍一と『留流家』の邪悪な気配が。
逃走を図ろうものなら瞬時に己の首を捻じ切るだろうと、絶対の核心をきららに与えていた。

やるしかないと、彼女は悟る。
幸いにして、彼女の最大の目的は『九頭の打倒、抹殺』ではない。
あくまでも『悪魔の手のひら』としての彼に触れて次なる能力――踏み外す事のない『幸福への階段』へ至る事だ。
故に、彼女は斜面を蹴る。
重力加速度に身を委ね、これ以上なく分り易くクレーターの、世界の中心に立つ九頭へと迫る。

「咲き誇れ! 『メメント・モリ』ッ!」

坂を駆け下りながら、彼女は有らん限りの精神力によって花を咲かせる。
目的は攻撃ではなく、撹乱。
背の高い山吹色の花を一面に咲き誇らせて、更に極彩色の花弁で大気を満たす。

花畑に溶け込んで、きららは九頭の懐を目指す。
『メメント・モリ』の両腕には、戦斧の如き刃の魂を宿した花が開いている。
断ち切れぬまでも裂傷を与える事で少しでも彼の深みに触れ、一刻も早く『高み』へと上り詰めるつもりなのだ。


【視界一面花畑+斧っぽい花で攻撃。目的は『悪魔の手のひら』としての九頭に触れる事】

119 :佐藤ひとみ ◆tGLUbl280s :2010/06/19(土) 23:20:51 0
九頭の視線とは反対側の瓦礫の影に隠れる佐藤ひとみ。

>「グゴオヴァガギャ!!」
何百人もの呻き声を紡ぎ合わせた様な軸のブレた咆哮。不快な咆哮と共に九頭は腕を振り下ろす。

ひとみの視界は輝く光に塗りつぶされていく。
時が凍る数十秒…いや数秒?
次第に視界から薄くなっていく白い光。視界が晴れると目の前の光景は一変していた。
草の疎らに生える荒れたグラウンドだった場所は流砂が口を開ける巨大な蟻地獄と化していた。


ひとみは濁った色のゴムの如き皮膚に覆われた九頭の後姿を見つめて呟く。

「あれが九頭……?あのキモいタコ頭が九頭龍一の成れの果てだっていうのッ…?!
最終形態…?違う…あれは進化じゃない寧ろ『退化』だわ。」


ひとみの言う『退化』は嫌悪感を齎す容貌への正直な感想であったが、それのみに向けたものでも無かった。
あれが『最終形態』だとしたら繭から出た形成段階の九頭はなぜ米綾和の左腕を要求したのか?
まさか神々しい姿を安定させる為だけでは有るまい。

米綾和に制御の一部を担わせることで九頭は能力を完全な状態で使うことが出来た。
他人に制御を任せねばならなかったのはそれが九頭の手に余るから…?
"スタンドは精神力の具現化"――
あれだけの数のスタンドを一つに纏め上げ圧縮した状態を保つ事は尋常でない精神力を有する九頭にも負担が大きすぎたのだろう。
光輪を失った九頭は一段階前に戻ったと考える方が自然だ。

米綾和の力を失った九頭はパワーの制御が効かないだけではない。
おそらく九頭の精神はあの体を維持するだけで手一杯。
護国天使の九頭にはいとも簡単に精神の融合を弾かれてしまったが、今なら希薄になった精神の防御を突き破れるかも知れない。
精神を撹乱された九頭は邪神の形態を保てず留流家の九頭に戻るのだろうか。ひとみが惹かれたあの頃の九頭龍一に…。


ひとみはシートで大谷の居場所を捉えフルムーンの触手を長く伸ばし大谷の手首に絡める。
触手が触れた瞬間大谷の脳裏に声が響く。

「大谷さん…!これから私は九頭の精神に入り込んで撹乱する。
私の精神への干渉は約10秒しか持たない!永続的に干渉を続けるには大谷さんの助けが必要よ。
精神干渉の準備が済んだら合図するわ。
合図が済んだら10秒経過ごとに5、6回『精神干渉の開始の瞬間』を繰り返して!
精神の撹乱が一分も続けばきっと私達の協力者の誰かが九頭に止めを刺せる!」

ひとみが大谷への通信を切る間際、グラウンドの流砂から迫り来る花弁の嵐…!
フルムーンの目には見えていた。花の幕に覆われてあの女が近づいて来る。

ひとみは矛盾した思考ながら思わず九頭の無事を祈らずにいられなかった。
九頭をあの女の『幸せ』の糧にすることだけは耐えられない。
ひとみ自身はどう九頭に関わっても『幸せ』の感覚を得ることなど不可能だという自覚があったからだ。
だからこそ九頭の最後に関わるファム・ファタル(運命の女)は自分でありたかった。

【大谷さんに九頭の精神のっとりの協力を打診。吉野さんに気持ちの上での因縁作りをしときますw】

120 :よね ◆0jgpnDC/HQ :2010/06/20(日) 01:15:04 P
九頭の作りだした蟻地獄より少し離れた場所に居たよねは九頭の一撃で吹き飛んできた校庭の砂をもろにかぶるハズだった。
とっさの出来事。おそらくこの事件に巻き込まれる前のよねだとこの一撃で大きなダメージを受けていただろう。
だが今は違う。ただ冷静に状況を把握するとすぐさま地面を盾へと変化させた。

盾の外側から聞こえる大量の土砂がぶつかる音。
それが止んだのを確認すると盾を解除した。

そして蟻地獄の中央には九頭龍一。
その姿はまるで唯一絶対の神。よねは過去にも"神"と形容したがそれとは明らかに違う。
恐怖からなる神。過去の面影を残さぬ九頭はまるで邪神!

「九頭龍一…すでに護国天使でも無くなったというのか…?」

そして自らクレーター…否、蟻地獄へと踏み込むよね。

/「ググガハッハッハ!命を捨てる覚悟!その程度では届かぬ領域に私はいる!死して我が糧となれ!」

「違うねッ!命を捨てる覚悟なんかじゃあないッ!これからの未来を生きる覚悟だッ!!」

砂に流されながらも、九頭を視線の中央にとらえ続けるよね。
そして蟻地獄の中央へ向かっていたよねはニヤリと笑った。

121 :柚木&生天目 ◆BhCiwB2SCaJ5 :2010/06/20(日) 01:55:44 0
生きていく。九頭龍一は化け物になってまで生きていく。

そして生き続けてきた。人を喰らい糧としてまでも。

「化け物め…いや…ケモノか…」
柚木美都留は無表情で拳を握り締めると重い体をやっと起こした。

突如グラウンドに土埃が巻き上がり九頭の拳の威力でクレーターが出来上がる。

「きゃああ!!」生天目が悲鳴をあげると
「…お見事…」としか言えないステレオポニーが苦笑い。

瓦礫の裏に隠れている佐藤は大谷に何かしらの作戦を伝えているようだった。
吉野も負けずに荻原にとどめをさそうとしている九頭に攻撃をしかけている。

柚木は生天目に言った。

「たぶん…ボクは見ていたからわかるんだけど。
九頭龍一はパワーが拳に集まった瞬間、無防備になる。
なぜかって言ったら攻撃に転じる刹那、奴のプレッシャーは消えていたから…
スタンドエネルギーが拳に集まった状態の奴の体は防御力もゼロに近いはずだよ」

「は?」それを聞いて生天目は首を傾げている。

「はい?」柚木は何がわからないのかなといった表情で見つめ返すと
ステレオポニーが生天目の代わりに答えた。

「つまりはこういうことなのか?あの大地に大穴を空けてしまうような
特大攻撃が繰り出される瞬間に合わせてこちらも攻撃をしかける。
そうすれば九頭の体にダメージを与えることが出来る。つまりはそう言うことなのだろう?でも…神技だな…」

「神業には神技で対抗するしかないよ」柚木はにっこりと微笑む。

「だからってどーすんのよ!そこがわかんないのよ!」生天目は見た目年下には強気だった。

「好機を待つ。ボクのスタンドパワーはほとんどないから一振りで決めるしかない。
それかこのことを徳井一樹にも伝えて欲しい。あの人なら気づいているかも知れないけどね。
彼のスタンドのパワーはボクのオズモールに匹敵するほど強力だし、この手の仕事はボクより得意そうだから…」

「徳井さんね。どこにいるの?」生天目とステレオポニーが同時にハモッて柚木に尋ねる。

「あれ。二人いるほうの…ぼろっちいほう…」

「あ!あの小汚くてボロッちいほうの人ね」
そう生天目が言うと「まかせとけー」とステレオポニーは徳井と御前等に向かって飛んでゆく。

「こ、小汚いとまではボクは言ってないよ…」

【ちょっと動かしてみました。遊びです。流れとかほんとのことはよくわからないし
戯言みたいなことなので適当にあしらってもらってもいいですよ】

122 :大谷杉松 ◆vReXCpsNBKcm :2010/06/20(日) 05:19:42 0
今目の前にいる九頭には前の神々しさは無い
あるのは地獄のような禍々しさ
悪魔のような外見
今まで聴いたこともないような声だった

大谷はチャンスを待つ、スマートガントレットの今の能力は『過去や未来の出来事を今発動させる』能力
つまり、過去や未来に決定打が無いと今の九頭には焼け石に水程度の攻撃にしかならない、大谷の武器など今は役に立たないのだ
それに下手に時間を進め成長なんかさせてしまったら笑い話にもならない、
確実にダメージを与えそのダメージを増幅させ続ける、これが大谷流の戦い方だろう
と、その時手に何か絡まった様だ、これは…フルムーンの触手だ。

>「大谷さん…!これから私は九頭の精神に入り込んで撹乱する。
 私の精神への干渉は約10秒しか持たない!永続的に干渉を続けるには大谷さんの助けが必要よ。
 精神干渉の準備が済んだら合図するわ。
 合図が済んだら10秒経過ごとに5、6回『精神干渉の開始の瞬間』を繰り返して!
 精神の撹乱が一分も続けばきっと私達の協力者の誰かが九頭に止めを刺せる!」

「了解した 一度の『チャンス』で十分だ…、そのチャンスを何回も再現してやる」
『ケッテイダサエデレバコッチノモノヨ タイリョクハツカウダロウケト 『チャンス』ヲツクリダスノヨ』

プツン 通信の切れる音、その後大谷はつぶやいた

「準備は良いかスマートガントレット、俺は出来ている」
『モチロン イツデモイイワヨ』

後は佐藤からの合図を待つだけ…『チャンス』は一度きりであろう、

123 :荻原秋冬◇6J1m09mANS :2010/06/20(日) 22:42:19 0
>>117
がむしゃらにバラとイラクサの鞭を振るっても、九頭龍一に当たるはずがない。
例えるなら、竹やりで数百個の原子爆弾と戦うようなものだ。

>「グゴオヴァガギャ!!」
留流家にいたあの化け物以上に不気味な声を発する九頭龍一。

次の瞬間…気がついたときには、荻原は吹っ飛ばされていた。
九頭龍一の放った拳がグラウンドに巨大なクレーターを作り上げたのだ。
荻原は九頭龍一の攻撃をかなりの近距離でくらい、地面に叩きつけられた。

だが、荻原は攻撃を食らう直前に、一瞬だけある懐かしい声が聞こえた。

>『お父さん…助けて!帰りたい』

>『あなた…私たちはここにいるわ!』
それは荻原の愛する妻と娘の声だった。


地面に叩きつけられた荻原…
目はかすみ、頭はボンヤリしてきて、とてつもない痛みがゆっくりとやってきたが…
奇跡的にも荻原は生きている。

(うぅぅ……は…春夏……美菜……お前たちが…
お…お父さんを……助けて…くれたのか)
痛む体をゆっくりと起こして、荻原は九頭龍一を見た。
あの時、声と同時にうっすらだったが、妻子の姿が見えたのだ。
やはり二人が、九頭龍一に囚われながらも、荻原を助けてくれた。

(……もう…俺には…怖いものなどない…
不思議だが……自分には…完全に死の恐怖が…
なくなったみたいだ…
今なら…戦える…)
拳に力を入れながら荻原は、プラントアワーを出現させた。

しかし、なぜかプラントアワーは、自分の両腕両足に絡み付いている蔓を枯らして、
木の枝を生やし、それを自らの全身を絡ませたのだ!
荻原も戸惑いながら何とか操ろうとした。
プラントアワーの全身が木の枝に絡まり、小さくなりながら形を変化させていった。

覚醒したのだ…プラントアワーの新しい能力が…
その完成した形は…木でできたライフルだった。

「ぷ…プラントアワーが…ライフルになった?…」
戸惑いながらも、プラントアワーのライフルを手に取る荻原。
そして目の前では、空中に浮かぶ一発だけの弾丸…
それも、植物の種で出来た弾丸なのだ!
弾丸は自動的にライフルの中に入っていった。

「これが……俺の最後の望みだ。
プラントアワーの新しい能力がどんなのかはわからないが…
もう…やるしかないんだ!」
銃口を九頭龍一に向けようとしたが、だんだん目の前がさらにかすんでしまい、
頭はクラクラして、さらに足元が震えだして荻原は今にも倒れそうだ。
なかなか狙いが定まらない…
たった一発だけの勝負…
はずしてしまえば、九頭龍一の総攻撃が来るに違いない。
そうなってしまえば………もう次はないだろう。

124 :御前等裕介 ◆Gm4fd8gwE. :2010/06/21(月) 00:27:34 0
>「こっちはいつでもどこでもミス連発だぜッ!セイヴ・フェリス!」

降ってくる歯車の流星群を男は『セイヴ・フェリス』なるスタンドで防ぐ。
その拳は弾幕もかくやといったラッシュで壁を作り、僅かな取りこぼしだけに抑えて他の全てを弾ききった。

(っほう……!この俺の新技を初見でここまで凌ぐか。ダメージこそ通っているものの、有効打にはなり得んな)

「よし却下――!」

歯切れよく御前等は刃を納め、バックステップで彼我を開ける。
深追いは悪手も悪手、相手の能力が確定していない以上、『こじ開ける』スタンドの射程内にいるのは危うい。
現状で分かったことは三つ。男のスタンド名と、それが近距離パワー型であること。そして、本体の戦闘経験――

(――奇襲に対する切り返しが異常に速い。場数を踏んでるな、それもスタンドでの戦いを多く経験しているようだ)

自宅生まれ自宅育ちな生粋の自宅警備員である御前等にとって、戦闘とは拳をぶつけ合う類のものではない。
如何に罠を張り、相手を出し抜き、先手をとり、攻撃を成立させるか――十重二十重にも張り巡らされる思索の果てにようやく一挙動。
御前等や小宮のような直接的攻防力に乏しい、いわゆる『ハマれば強い能力』は、相手を術中に『ハメる』までが戦闘の本領なのだ。

(全体的に漂う風格は日常的に命を張って生きてる者のそれ。どこのバトル漫画の住人だ?この男……)

例えばこの国において、路上で突然刃物を向けられれば人は誰しも驚愕し、硬直するだろう。
非日常に対する耐性が低い。間違っても拳を構えて応戦したり、脱兎のごとく逃げ出そうなんて思考は即座に芽生えない。
悪いことではない。『平和ボケ』とは高度に適応した進化だと御前等は考える。太平久しいこの世の中で、常にビクついていては至極生きにくい。

『危機管理』という重りを結びつけ、人生の大海を泳ぐ道理はない。世界は、呆けた者に意外と優しいのだから。

>「歯車を生み出す能力…いや、それじゃナットの説明が付かないか……とにかくまだ奥がありそうだな……賢いあんちゃんよぉ……!」

「ああ、まだまだ俺の魅力は伝わりきってないぞ?もっともっと俺のファンになってもバチは当たるまい」

男は御前等を見据える。剣呑な眼光は見下すような視線と空中で衝突して果てた。
初対面の人間とも精神的優位に立ちたいという下卑た理想を掲げる御前等は、目を合わせるだけで相手が自分のことを考えているか直感でわかる。

男は、否。

「貴様ァァァーー!!俺のことをただのやっかいさんとしか見てないな!?九頭のとこに行きたくてウズウズしてるのが眼に見えるぞ!!」

吼えた御前等に呼応するように――"ように"見えただけだが、グラウンドの中心から発せられたスタンドパワーの威力が彼等を分断する。
九頭――ア・バウ・ア・クーが投じた異形の威力が、グラウンドを放射状に裂くような爪痕を刻む。

「おお!?凄い、凄いぞ九頭!無差別カタストロフなとこがラスボスっぽくて実にグッドだ!」

>「無駄だろうけどよぉ〜〜邪魔しねーんなら……このままおまえさんは放っておいてもいい。
 この状況でもまだ邪魔するなら……『覚悟』をするんだな。バラバラになって地に這い蹲る『覚悟』をな」

「――お?」

気付けば目の前から男が消え、背後から声を投げられる。
まったくの不覚。注意力の散漫さに定評のある御前等は、まんまと出し抜かれて後ろに回られ、首元に不可視の刃を突きつけられたのだった!


125 :御前等裕介 ◆Gm4fd8gwE. :2010/06/21(月) 00:30:18 0
彼我の距離は5メートル。男のスタンドの射程距離はわからないが、少なくとも御前等が振り返るより先に拳をぶち込むだろう。
背筋を敵意に舐められて、御前等は冷や汗の流出を止めることができなかった。完全に、勝負はついている。
今を持って彼の容姿が人のそれを保っているのは、ひとえに男の慈悲故に他ならない。

(不覚だな、調子に乗りすぎた。ガチガチの戦闘タイプと同じ土俵で闘うには無理があったか……)

奇襲が失敗した時点で大人しく逃げておくべきだったのだ。
あの時点では男は足を怪我したままだったから、遁走するのは容易かったろう。追われなかったろうし。
反省点は山ほどあれど、おしなべて言って今の御前等はダメダメだった。手段を選ばず戦って、負ければ世話はない。

世界の中心には、程遠い。

「……『ラスボス』っているだろう。主にゲームの話だが。俺はラスボスを倒すのが何より好きでね、むしろそれこそが醍醐味だったんだ。
 ラストバトルにもなると、もう遠慮がなくなるだろう?温存していたMPや、勿体無いから使わなかった貴重なアイテムなんかも、
 残しといたって意味がないから大放出で、最高にハイって奴だ。それ故にラスボス戦は得てして他のボスより速く終わったりするんだが……」

一人、語る。

「『隠しボス』って何だよッ!ラストバトルのカタルシスを終えて!いろいろスッキリエンディングを迎えようってときに!
 ラスボスの二倍近いHPとか萎えるんだよォォ〜〜ッ!!なんで攻略本にも載ってないんだ!『真相はキミの目で』?馬鹿にしてんのかッ!!」

振り向けば首が飛ぶ一触即発の状況で、御前等は絶叫した。
あまりにもあんまりな話題の転換に、対峙する男はどんな顔をしているだろうか。それすらも、御前等には分からない。
だが、構わず二の句を継いだ。

「――――そういう存在に俺はなりたい!!」

ドッゴオォン!!!

突如、突如である。グラウンドが振動し、胎動し、鳴動して、蠕動した。
揺れる地面はその揺れ幅を徐々に大きくしていき、やがて地震によってアスファルトが被る損壊のように――陥没した。
ア・バウ・ア・クーを中心とした、校舎をまるまる飲み込めるほどのスリバチ状のクレーター。アリジゴクの様相を呈すそれは、九頭の威力。

「ははははははははははははは!!!世界は確実に今!俺を中心に廻っているぞッ!!――なんたる偶然、なんたる幸運!!!」

落ちていく地面とともに頭から真っ逆さまの御前等は、狂気染みた哄笑とともに墜落する。
視界の端に敵対する男の姿を認めたので、滝のように流れ落ちる地面を泳いで近づいていく。

「手を貸せ、このままこのグズグズな地面に飲み込まれては二人ともお陀仏だ。もしもアンタが生き残る手段を持ってるならッ!
 ついでにこの犠牲になりそうな尊い命を助けてみないか?もちろん相応の礼はしよう!例えば――アンタの生存に協力するとかな!!」

男の太腿に抱きつきながら、言葉を足から耳へ這い登らせる。

「俺の名前は御前等裕介。スタンドは『アンバーワールド』――好きな言葉は今だけ『一蓮托生』だ」

背後の空中から飛んでくる馬の面を被った生物には気付かず、努めてフレンドリーに御前等は縋り付いた。

心底、ゴミ屑のような下卑たメンタリティである。


【クレーター発生につき飲み込まれそうになってる。徳井さんに縋り付いて助けを乞う厚顔無恥なファインプレー。ステレオポニー来襲】


126 :生天目有葵 ◆BhCiwB2SCaJ5 :2010/06/21(月) 03:01:32 0
スリバチ状のクレーターを徳井と御前等は滑り落ちてゆく。
飛行しながらステレオポニーが二人に近づいてゆくと

>「手を貸せ、このままこのグズグズな地面に飲み込まれては二人ともお陀仏だ。もしもアンタが生き残る手段を持ってるならッ!
>ついでにこの犠牲になりそうな尊い命を助けてみないか?もちろん相応の礼はしよう!例えば――アンタの生存に協力するとかな!!」
>「俺の名前は御前等裕介。スタンドは『アンバーワールド』――好きな言葉は今だけ『一蓮托生』だ」

御前等は徳井の太腿に抱きつきながら妖しげに語っていた。

「あの、お取り込み中悪いのだがそのまま手を休めずに聞いていただいても結構なのだが
オレは生天目有葵のスタンドのステレオポニー。荻原さんと佐藤さんとは知り合いだ。
つまり九頭龍一とは敵になるのわけなのだが、柚木と言う少年の言伝を徳井さんに伝えに来たのだ。
BLも大いに結構なのだがここはオレの話をなんとか聞いてもらえないだろうか?」

直径100メートルの蟻地獄の中心では九頭が待っている。ステレオポニーは手短に話した。

「九頭龍一は特大の攻撃を繰り出す瞬間に、エネルギーを溜めている部分以外は防御力がゼロになるそうだ。
その一瞬を狙えばこちらにも勝機はあると少年は言っていたぞ」

言い終えるとステレオポニーはその場から飛び立とうとしたのだが向こう側で荻原が九頭に向けなにやら身構えていた。
その手には植物で出来たライフルが握られていた。今は闘気のバリアもない。援護だけなら出来るはず。
ステレオポニーは音速で荻原に接近するとヒーリングソニックを荻原にむけ発生させた。
荻原の体力はみるみるうちに回復してライフルも大きく成長してゆく。音の招待は振動。
細胞も分裂するときに微振動をおこす。ヒーリングソニックとは、その微振動を共鳴させて促進させる技なのだ。
木で出来ているライフルは太くなり銃口はどんどん枝分かれしてガトリングガン(回転式多砲身機関砲)へと変貌する。

「荻原さん撃てー!!」ステレオポニーは叫んだ。

【徳井さんと御前等さんの行動を制約してしまいそうなので乱入レス。柚木の言伝だけ伝える】
【荻原さんに援護→ライフルがガトリングガンに成長(合体技)】

127 :佐藤ひとみ ◆tGLUbl280s :2010/06/21(月) 04:28:29 0
鱗の如き瘤を持つゴムの皮膚、頭足類の頭、蝙蝠の羽、歪に曲がった鉤爪…。
これ程の容貌に変化した九頭を目にしても尚、ひとみは九頭に『邪悪』を感じることは出来なかった。
以前の精悍な九頭の面影など微塵も無くした醜い邪神の姿…だが、かつてひとみが感じた斜陽の印象は消えない。
――九頭は死を求めている。西日が地平に落ちて安らぎを求めるかのように……。

ひとみはクレーターの下に在る化け物のような九頭の姿を見つめながら思いを廻らせる。

『スタンド使いを取り込んで永遠を生きる』
ひとみには九頭の宿業とも言えるその生業が『悪』に基づいているとはどうしても思えなかった。
ひとみの受信した九頭の感情と米綾和の言葉…。
九頭龍一は何かを守ろうとしている。何を『守る』…?
常人には窺い知れぬこの世の何処かで得体の知れない異変が現在進行形で起こりつつある。いや、もう起こっている?
日常を生きる人間達は既に何処かで九頭に救われながら生きているのか。
九頭は来るべき闘いに備え戦士の選別を行うワルキューレ…?留流家はヴァルハラ…?

之ほどのパワーで地面に穴を空けながらその中に捉えられた人間がほぼ無傷である説明はどう付ける?
この期に及んでも決して九頭は荻原達に無碍な死を与えようとはしていない。
寧ろ最低限のダメージで自らに取り込むこと只一つの目的にしている。

生きることに飽き死を望みながら『守る』目的に殉じ使命を全うしようとする。
そんな九頭龍一を殺すことに意味はあるのか――?


逡巡するひとみの脳裏に図書館の床に散らばっていた本の中にあったギュスターブ・モロー画集の表紙が思い浮かんだ。
――血を滴らせ虚空に浮かぶヨカナーンの首を指差すサロメ
              自分が殺した男を恍惚の瞳で見つめる女――

サロメは何故ヨカナーンを殺したか?
ひとみにはその気持ちが解る気がした。
一つはサロメの想いを侮辱を以って拒絶するヨカナーンを手に入れるには殺すしかなかったから。
…でもそれだけじゃない…。
もう一つの答え…それはヨカナーンが死を望んでいたからだ。
預言者なんて詐欺師みたいな職業の人間が伝説になって永劫に名を刻むには劇的な死に遭うしか無い。
王の娘であるサロメを必要以上の暴言で侮辱し続けたのは死を求める隠れたサイン。サロメはそれに応じたのだ。
普通に考えればかなり無理のある解釈だが、少なくともひとみはそう感じていた。

想いをかけた者が『破滅を望む』から『破滅を与える』。
ひとみが九頭にとっての『特別な存在』に成り得るとしたら最早その方法しか無かった。


ひとみは流砂のぎりぎり届かぬ位置に立ち、透明化した触手を伸ばしクレーターの中心に立つ九頭の周囲に触手を張り巡らせる。
チャンスがあれば一瞬で触手が九頭に絡みつくだろう。九頭龍一の精神の中に『深く潜る』為に。

【九頭さんの周囲に見えない触手が張り巡らされています】

128 :九頭龍一 ◆SM24/QbfAY :2010/06/22(火) 22:34:09 0
>118
九頭の咆哮するクレーターの中心に突如として現れる花畑。
背の高い山吹の花は極彩色で風景を覆う。
一瞬にして視界を遮られた九頭が再度咆哮する。
「小賢しい真似を!!」
声と共に波紋のように広がるどす黒いオーラ。
その広がりと共に極彩色はセピア色に変貌し花弁は散り、、逞しくそそり立つ茎は枯れて朽ちる。

朽ちた花畑の間隙にメメント・モリの姿が顕になった。
そしてそれは放たれた。
グラウンドに巨大なクレーターを作り上げた一撃が!

パリンッ!と乾いた音と共に掲げられた斧が如き花は砕け散りる。
更にはその余波によって腕がズタズタに折れ曲がる。
朽ちたとはいえその極彩を誇った花と、有り余るパワーの為、至高の一撃が与えられたのはそこまでで、残る衝撃は虚空へと消えていく。
だがそれで十分。メメント・モリの、吉野きららの両腕は完全に破壊されたのだから。
しかし…斧たる花は粉砕され、両腕を破壊しても、そこに宿した魂までは打ち砕く事はできなかった。

骨が粉砕しグニャグニャになった腕はまるで蔓のようにしなり、粉砕された斧の破片は薔薇の棘のようになって付き従う。
かくして吉野の攻撃は成ったのだ。
柚木の予想したとおり、一撃を放った後の九頭の防御力は限りなくゼロに近く、回避すらも出来ずにいたのだから。
醜悪な胸板に叩きつけられる蔓、そしてそこに食い込む棘。
まるで邪神に剣を突立てる英雄譚の挿絵のように二人は硬直する。


限りなく圧縮された時間感覚の中、吉野は確かに九頭の深みに触れた。
触れてしまった。
突き刺さる棘から溢れ出す闇は何処までも深く、そして重い。
まるでタールのようなそれは吹き出て吉野の腕に絡みつく。
触れて、感じ、そして理解するだろう。
九頭の深みにあった物は…臨んだように吉野を『高み』に上り詰めさせるものなのではない!!
むしろ全くの逆のもの!
スタンド使いは惹き合うものだが、留流家のそれは次元が違う。
その源のものだったのだ。
何処までも暗く重いそれは触れるものを全て奈落のそこに引きずり込む。
吉野のパワーも、幸せも、精神すらも奈落に塗りつぶされていく!


全ては圧縮された時間感覚の中、精神的な事象であり、周囲からは二人が交錯し硬直しているようにしか見えない。
だが凄まじい精神的衝撃は肉体にも変化を表し、吉野の両腕を黒く変色させつつあった。

そして硬直したまま、九頭の蛸の足とも触毛ともいえぬ髭部分が蠢きだす。
胸板に一撃入れ、硬直した吉野の肉体を取り込もうと、その手足を絡みとらんとして。

129 :徳井一樹 ◆MnJrk02a/Yx. :2010/06/22(火) 22:44:03 0
後ろをとって勝利は確実だと確信する徳井。
それを悟ったのか、狂ったように叫ぶ御前等。その様子は少し気味が悪い。
更に言っている内容がよく理解できないので尚更気味が悪かった。

その瞬間、突如として地面に、否、グラウンドに異変が起こる。
衝撃が走りそのインパクトは振動から足に、体に脳に伝わる!
平坦なグラウンドにはすり鉢状の見事なクレーター。
九頭の攻撃に巻き込まれ、徳井も御前等と同じく流砂を、クレーターの斜面を軽快に滑った。

「やってくれるな……伊達に暴走してるワケじゃねーってか……けどこれぐらいなら問題ナシッ!」

そう叫んだ直後だった。滝のようなアリジゴクを泳いでやってきた男が邪魔してきたのは。
徳井最大の誤算は、御前等が自分の視界の外にいたということだろう。

>「ははははははははははははは!!!世界は確実に今!俺を中心に廻っているぞッ!!――なんたる偶然、なんたる幸運!!!」
>「手を貸せ、このままこのグズグズな地面に飲み込まれては二人ともお陀仏だ。もしもアンタが生き残る手段を持ってるならッ!
>ついでにこの犠牲になりそうな尊い命を助けてみないか?もちろん相応の礼はしよう!例えば――アンタの生存に協力するとかな!!」

「くそったれ………後で絶対一発ブン殴るッ!相応の礼、って言ったな。
それはつまり…『九頭とは戦わないが俺が生き残る手助けをしてくれる』…という認識で間違いないか?
ただしこれ以下の条件を呑むつもりはねー。これ以上の条件ならいつでも待ってるけどな。
おっと!自己紹介がまだだった。俺は徳井一樹。スタンドはセイヴ・フェリス。嫌いな奴は今だけアンタだ」

しがみつく御前等が気色悪くなったので、左足で自分にしがみつく御前等を何度か蹴りつけた。
御前等を蹴るという非生産的な行為を何度か繰り返しながら甘い、というよりやっぱり自分はバカだと再認識した。
戦場で撃ち漏らした敵が死にかかっていたので助けるなど、愚の骨頂。物笑いの種がいいところである。
そういう甘ちゃんはいのいちに餌食、食い物にされると徳井自身わかっている。わかっているのだ。
しかしながらわかっている故に無策で走る訳にもいかない。それ相応の『保険』をかける必要がある。
そう、思っていた矢先だった。馬面のスタンドが接近していたことに気付いたのは。

>「あの、お取り込み中悪いのだがそのまま手を休めずに聞いていただいても結構なのだが
>オレは生天目有葵のスタンドのステレオポニー。荻原さんと佐藤さんとは知り合いだ。
>つまり九頭龍一とは敵になるのわけなのだが、柚木と言う少年の言伝を徳井さんに伝えに来たのだ。
>BLも大いに結構なのだがここはオレの話をなんとか聞いてもらえないだろうか?」
>「九頭龍一は特大の攻撃を繰り出す瞬間に、エネルギーを溜めている部分以外は防御力がゼロになるそうだ。
>その一瞬を狙えばこちらにも勝機はあると少年は言っていたぞ」

「あのさあ…情報はありがたいんだけど……俺に死ね!っつってんのか?
一歩タイミングを間違えれば俺は死ぬっつーの。柚木め…俺をなんだと思ってるんだ?
っつーーーかオイッ!飛べるんならこの状況助けろよ………っ!!待て!
まってちょうしこいてすいませんでしただから行かないでああーーー!クソッ、いつかシメる!」

徳井は罵詈雑言が炸裂した後、特異な現象を目撃した。

「……俺の左腕知らない?気のせいかなあ…あんなところにあるよーな気がするんですけど?お?」

徳井の目線の先には、折れた水道管があった。そこまで太くなく、かといって細いわけでもない。
適度な太さの水道管。グラウンドの下にあったものなのだろう。無理もない。
少なくとも数十メートル程の深さがあるこのクレーターなら、下に敷いてある水道管を消し飛ばしていたとしても。
折れた水道管はギィギィと錆びれたような低い音を鳴らしながら微量の水を垂れ流している。

問題は、その折れた水道管に乗っかっていた黒い物体だった。
正確には『 誰 か の 左 腕 』。
そして先程徳井の蹴りを食らった御前等にもわかるだろう。理解するだろう。
あるはずの徳井の左腕が欠損していることに。

「オーーーッノォーーーッ!!なんだこれ!?新手のスタンド使いの攻撃じゃねーーーッ!
マジックだよ!マジックだ御前等君よォーーーーッ!コレで俺もサーカスで大人気…そんなワケあるかバカッ!
どうしたんだ!?どうしたんだよオイッ!御前等のタコ!どうして俺の左腕の面倒見なかった!?お母さんプッツンするよ!」

130 :徳井一樹 ◆MnJrk02a/Yx. :2010/06/22(火) 22:46:01 0

「なァーーーんちゃってね。どうビビッた?ビビッただろ?こんなハプニングあったら。
実は俺もさっき気付いた。どうやら俺の能力、こういう使い方もあるらしい。今まで気付かなかったよ」

左腕はぴょんぴょんと軽快に斜面をはねながら徳井の下へと帰ってきた。
その姿は飼い主を慕う忠犬のようであり滑稽でもある。
御前等は徳井が見る限りでは呆れ半分、驚き半分のように見えた。

「ちなみに能力説明はしてやらねーからな、大人は『質問』しない。
いつ敵になるかもわからない(というか敵)隠しボス志望に教えたらどうなることか知れたもんじゃねー」

原因は、徳井自身とその能力の燃費の悪さにあった。
セイヴ・フェリスは本体に能力を使用する時にのみ莫大なエネルギーを消費する。
その燃費の悪さから徳井は自分自身に使用することはほとんどない。
正に切羽詰った時のみ。故にその使用回数も数えるほどしかない。
とどのつまり気付きたくても徳井自身が気付くチャンスを潰していたのだ。
こうやって切開して切り離した自分の体を動かせる事に気付いたのは吉泉ムヅオの泥壁に右腕を捕らわれた時。
といってもこの時点では本能の部分で、だが。自覚したのはまさに九頭がこのグラウンドをクレーターに変えた瞬間。
その圧倒的なまでに危機的な状況が徳井が持っている原始の才能をプッシュしたのだ。
御前等の言うとおり、「生き残るため」に。それは生物全てが等しく持っている本能の回路!

そんな馬鹿馬鹿しい内容の結果として今、徳井は刻々と減っていく
なけなしのスタンドエネルギーを消耗しながらギャグをかましたのである。
ひとしきり言いたいことを言い終えると、徳井はあることを思い出した。
ノータリン徳井は自分のやりたいことだけやるとやっと自分の真にやるべき事を思い出したのである。

「ああ、そういえば御前等。おまえさんがお陀仏にならないようにしなきゃならなかったんだ。
ワリーワリー忘れてた。まあ、後30秒以内になんとかなるからドーンと安心しとけ!今だけマイフレンドッ」

呑気な顔でマイペースに言い放ったが、既に徳井の下半身は流砂に飲み込まれていた。
くだらないギャグに貴重な数分間を費やしたのがいけなかったのである。
徳井のくだらない語りから20秒弱経過した、その時だった。
御前等の真横に長さ7メートル弱の水道管の一部が、
45度の角度を保ちながら生えるようして流砂を貫き姿を現した。

「セイヴ・フェリス・『ノーバディ・バット・ミー』!(今命名)切り離した左腕が水道管の一部を運んだ。
どうやらこの下には水道管が通ってるらしい。ギャグしてる時に気付いたんだ。
一部を拝借したからそいつにしがみついてろ……約束はちゃんと守ってもらうからな!」

労なく左腕が徳井の体へとくっつく。これもまたスタンド能力の一部。
切開によって開かれた物体や切り離された物体は全て徳井の自由意志で元の状態に結合されるのだ。
そして、御前等は気付いただろうか。徳井の左手の小指だけがないことに。
その小指は御前等の背後に在ることに。これが徳井の『保険』。
もしも御前等が裏切ればこの小指がスタンド能力を行使し、御前等を攻撃するつもりなのだ。
しかし所詮は小指。その存在に気付かれれば回避することもなんら難しくはないだろう。
ショボイ保険である。

「……状況は整った。こっからが本番だぜ。見とけ俺の超ファインプレーをッ!
後、御前等。 ゴ ネ る なよ?今回は大人しく客席で観戦しろ。『隠しボス志望』なんだろ?なあ?
ただし俺の邪魔しないならオプーナを買う権利と美味しいとこはプレゼントしようッ!」

131 :よね ◆0jgpnDC/HQ :2010/06/23(水) 00:13:20 P
蟻地獄の中央へと近づいたよねは、突如流砂の一部分に触れた。

「Sum41ッ!!この砂は他の砂を侵食するッ!」

初めはたった一粒の砂でもいい。
流砂の中央は最も効率よく砂が砂を侵食出来る。だからわざわざ飲み込まれたのだ。
幸い、九頭にも気付かれていない。
このままSum41の能力が適応されれば、この流砂は侵食されつくし、いつかは一つの大きな泥の様な物になるだろう。
そのハズだった…

いつものように設定を書き換えようとしたよねであったが、いつまでたっても効果が適応されない。
おかしい。そう思ったよねはもう一度同じことを試みる。
だが、結果は同じ。設定を書き換えることができないどころか、"Sum41自体が出現しない"のだ。

「サ…Sum41!?どうしたんだ!?」

何度も何度もSum41の名を呼び続ける。
すると、Sum41は突如その姿を現した。
だが、その顔はSum41自らが深く深く被っているシルクハットによって隠されていた。
かろうじて口元が見えるくらいだっただろうか。

「Sum41ッ!!一体何があったんだ…?」

自分のスタンドが自分でコントロールできない。
そのジレンマによねはひどく苛立ちを感じていた。

その間にも流砂は身をのみこみ続ける。
全く予想外の展開。本来はこんなハズではなかった。
首の下まで砂に飲み込まれ、本能的に死を感じた時だった。
ただただ、飲み込まれていくよねを眺めていただけのSum41がフッと口角を上げた。
あり得ない。自我を持っているかのような振る舞い。
そして、深く被られたシルクハットの奥の目と砂に沈みながら上を見上げるよねの目が合った時だった。
そのイレギュラーなスタンドはゆっくりと口を開いた。

"sum forty one! phase two!"

ハッキリと喋った。そしてそれに呼応するかのようによねの口も自然と開いた。

「サム・フォーティーワンッ!フェイズ2ッ!!」

叫び終わると同時に周囲の流砂がまるで一瞬にして凍らされたかの様にその動きを止めた。
よねはそのまま固まった砂から身をなんとか脱出させると、自分の能力の片鱗を味わった。
スタンド、それは自分の精神の具現。
自分の精神状況が把握できない人間などほとんどいない。
よねはすぐさま自分の能力の全てを、"まるで初めから知っていた"かのように把握した。

「皆さんッ!流砂の動きは止まりました!今です!」

132 :吉野きらら ◆HQs.P3ZAvn.F :2010/06/23(水) 20:04:55 0
九頭龍一の深淵から、漆黒の『何か』が吉野きららを絡め取る。
その何かを、彼女は『不幸』と見定めた。
九頭と『留流家』は『悪魔の手のひら』などでは無かった。
寧ろ彼女が忌み嫌う不幸を秘めた、パンドラの箱。
流れ込む仄暗く重々しい不幸に囚われ、

「……フリードリヒ・フォン・シラー曰く」

しかしきららは意気を奮わせる。

「『人が真に向上するのは不幸の中にいる時である』――!
 いいですとも! 貴方の抱く不幸の片鱗、確かに、謹んで貰い受けましょう!」

宣言と共に、きららは渾身の力を振り絞り右腕を九頭から引き抜いた。
代わりに左腕は、最早肩口の深さまで飲み込まれてしまう。
だが構わず、彼女はズタズタに引き裂かれた右腕を振り上げる。

「これはその礼代わり! 左腕は差し上げます! 私の上るべき階段の人柱として、私は自らの腕を捧げましょう!」

淀みない軌跡で振り下ろされた右腕が、九頭に取り込まれんとしていた左腕を、断ち切った。
そして、彼女は確信する。
九頭から貰い受けた不幸を踏み台として、切り捨てた左腕をよじ登る為の蔦として。


自分は、『幸福への階段』に辿り着いたのだと。


その証左であるかのように残った彼女の右腕と、最初に刻まれた頬の傷が消滅していく。
治癒ではなく、消滅。
更に正確に述べるのであれば、傷口が時を遡り、十全の状態へと『返り咲いている』のだ。
決して踏み外す事のない、ただひたすら至上の幸福へ上り続けるのみの階段が、完成していた。

「そしてもう一つ、貴方に贈る物があります。『メメント・モリ』……彼に手向けの花をッ!
 死屍累々の山を築き上げてきたのが貴方だけと思わない事ですね! 私とて幸せを目指し、数多の者達を手掛けてきました!
 山が他山を飲み込みより峨々たる高嶺と化けるように! 私は貴方の上に立ち、そして孤高の花として君臨するのです!」

九頭に吸収された自らの左腕、それは間違いなく吉野きらら自身であり――そして彼女は今『幸せ』の上に立っている。
ならばその左腕とて、『幸せの花』の対象には、なり得るのだ。
九頭龍一の体内で、極上の幸せを糧とした無上の花が咲き誇る。

そうして周囲からの攻撃に巻き込まれまいと九頭の傍から一歩飛び退き――そして、触れた。
佐藤ひとみが張り巡らせた、触手の結界に。
恐らくは佐藤へ流れ込むであろうきららの驕りと幸福感に、彼女は何を思うのだろうか。

133 :佐藤ひとみ ◆tGLUbl280s :2010/06/23(水) 22:30:26 0
精神干渉の機を図り九頭の周囲に透明化した触手を張り巡らせる佐藤ひとみ。
九頭のどす黒い瘴気のオーラと少女の幸福に至らんとする意思が交錯する。
九頭の瘴気は花を枯らし少女の腕を蝕む。
腕を萎えさせながら九頭に攻撃の一閃を入れる少女。動きを止める二人。
張り巡らされたフルムーンの触手は九頭の身体から漏れ出す『闇』を感知していた。

九頭はおぞましい触手を蠢かせ少女を取り込もうとしている。
この少女は九頭を殺すことが幸福に至る道と断じている。
身の程知らずの傲慢は九頭に吸収されて滅されてしまえばいい。ひとみは静観を決め込んでいた。

少女は何かの格言を謳い上げながら苦悶の表情で左腕を断ち切りズタズタの右腕を九頭の体から引き抜く。

>「これはその礼代わり! 左腕は差し上げます! 私の上るべき階段の人柱として、私は自らの腕を捧げましょう!」

彼女の身体は淡い光に包まれる。ひとみの目には彼女を包み込む巨大な花が見えていた。
輝かしい表情と生まれ変わったように傷一つ無い身体。
少女は口角を上げて微笑みながら自らの『幸福』を高らかに宣言する。

同時に九頭の身体に埋もれ、僅かに切り口だけ飛び出していた彼女の左腕から零れるように花が咲き誇る。
九頭の体内に取り込まれた部分にも同じように花が咲いているのだろう。

少女は花の置き土産を残し九頭の前から飛び退いた。
去り際の彼女がひとみの張り巡らせた触手の網に触れる。
彼女の精神の高揚と幸福感が精神感応の準備段階にあった触手を通じて伝わってくる。

ひとみの心に一瞬の内に嫉妬と怒りの感情がせり上がる。
自身は如何にしても九頭を介して幸福の感覚を得る方法など持たないのに
少女はこともあろうか九頭を踏み台にして幸福を得たと感じている。
幸福なんて正体の無い幻のような代物だが、九頭を触媒にしてそれを得たと『感じている』ことにすら我慢が出来ない。


ひとみは思わず触手の迷彩を解除し彼女の胴体に巻きつけ九頭から遠ざけるように後方に投げ捨てた。

「この泥棒猫ッ!九頭龍一に触れるじゃないッ!!」

ヒステリックに叫ぶと少女に巻き付けた触手を切り離し、別の触手で彼女が九頭の中に残した左腕を引き抜こうとした。

134 :佐藤ひとみ ◆tGLUbl280s :2010/06/23(水) 22:32:24 0
刹那、少女の左腕を通じて間接的に九頭の身体に触れたひとみの頭に『闇』のヴィジョンが流れ込んで来た。
それは黒くドロドロとした流動体……。
海のように広く深く辺りを包むモノ…だが遠ざかり俯瞰してみれば全体像は球形…?
球はまさに蠢くエネルギーの塊。いやエネルギーの源泉?
エネルギーの波動にはどこか既知の感覚がある。
これはスタンド…?スタンドエネルギーの源―――?

ひとみはこのタールのような闇に見覚えがあった。
精神世界で九頭ヒドラに牙を突き立てた時に見た闇の海と赤い眼…。
そのヴィジョンを見せた後の九頭の憤怒の表情――。

余裕の権化の如き九頭らしからぬ焦りと僅かな畏れを浮かべたその顔にひとみは強く惹かれた。
九頭を知りたい…自分の知らない九頭龍一を見たい!
あの闇の海に飛び込めば九頭はどんな表情を見せるだろう…?

人には時として破滅を孕む欲望への希求が生存や安全を求める本能を上回る場合がある。
ひとみは完全に欲望に憑り付かれていた。

少女の入れた一撃と咲かせた花によって九頭の精神に乱れが見える。
今なら門は開かれている。九頭龍一の精神に深く潜るチャンスは今―――!

ひとみは一本だけ大谷の近くに伸ばしていた触手で彼に触れ通信を開始した。

「大谷さん!今から九頭の精神に干渉する!シートのタイムカウンターが0:00を指したら精神干渉を繰り返して!!」

通信を切ると同時に触手の束を邪神姿の九頭の体に、首に、手足に、絡み付ける。

ディープ・ダイブ―――!
ひとみは能力を通じて黒い闇の渦巻く九頭の精神にダイブした。

【精神干渉を開始します
目的は九頭さんの精神集中をジャミングしてスタンドの集合体状態を保てないようにすることです】

135 :九頭龍一 ◆SM24/QbfAY :2010/06/23(水) 23:28:41 0
「逃すか…!」
己の左腕を犠牲に九頭から離れようとする吉野に蛸の足上の触手が襲い掛かる。
十全となろうが『幸せ』の頂点に上り詰めようが、全てを飲み込む奈落へと引きずり込むために。
だがここで九頭の動きが止まる。

取り込まれた吉野の左腕は幸せの花の苗床として無上の花を咲き誇らせたのだ。
今の邪神九頭の身体は無数のスタンド使いたちの集合体。
天輪のない九頭はそれを維持するだけで精一杯なのだ。
その内部に咲き誇る花は異物でしかない。
小さな穴から堤が崩れるように、九頭もその身体を形成していられなくなっていたのだ。

輪郭にノイズが走り、このままでは崩壊してしまう。
ゆえに、吉野への追撃、いや、それどころか咆哮すらあげる事も出来ず、異物への対処に追われていたのだ。

吉野がフルムーンの触手により投げ捨てられた時、邪神九頭の胸には煌びやかな巨大な一輪の花が咲き誇っていた。
が、全ての行動を停止し、対処に当たった成果が現れる。
胸に咲き誇った花は徐々に色褪せ、萎び、九頭の体内へと飲み込まれていく。
身体の輪郭のノイズが小さくなり、再び九頭は動き出す。
筈だった。

だが九頭はそこに立ち尽くしたまま動かない。
身体に絡みついた触手の為ではない。
桁違いのパワーと黒いオーラにより仕付け糸より簡単に引きちぎる事が出来るにも拘らず、だ。
それは飲み込まれていく花と共に、九頭の精神に深く潜行した佐藤の為だった。

###############################################

それはタールの海。
しかも大渦を巻く激流。
何処までも黒く、重く、そして激しい潮流に弄ばれ佐藤の精神は黒い球体に吸い込まれていく。
球体に近づくにつれ重さは増していき、佐藤の『個』精神はすり潰され拡散していった。
どれだけ時間が経っただろうか?

ガクンという衝撃と共に佐藤の精神は収束し、自我を取り戻す。
眼下には黒い球体。
一切の色彩を許さぬ闇の具現にも拘らず、その奥に赤い光が、そして強烈な視線が佐藤を貫く。
「余りアレを見るな。
160余年あまり生きたが、留流家に取り込まれぬままここに来た者は初めてだな。」
声をかけられ始めて気付くだろう。
護国天使でもない、邪神でもない、九頭龍一本人の存在に。
そして闇でありながらもその重さを感じなくなっている事に。

「さて、時間間隔が圧縮された精神世界といえども外に中に忙しい身でね。
手早く用件を済まそうではないか。」
ゆったりと話す九頭には猛々しさも、憎悪も焦燥もなく、ただゆったりと佐藤の精神に語り掛ける。

136 :荻原秋冬◇6J1m09mANS :2010/06/24(木) 07:30:18 0
>>126

(まずい…だんだん目がかすんで……もう…立ってられない…)
そう思ったとき荻原は、どこか自分の体が暖かく感じられた。
いったい何なんだと自分の体や辺りを見回してみると、そこにはステレオポニーが
荻原を治療していたのだ。
同時にプラントアワーのライフルから微振動も感じた。
ライフルは木でできているため、細胞分裂がされ変化していったのだ。

「こ…これって、ガトリングガンか…」
これなら破壊力はライフルより上だし、うまくいけば九頭龍一を倒すこともできる。
が、ひとつだけ問題があった。

「うぉぉ…なんだこれ…予想以上に重量があるぞ…こ、腰にくる…」
見た目よりかなりの重さがあるガトリングガンをうまく支えれない荻原。
いくら破壊力があっても狙いが定まらなければあまり意味はない。
このままではこの数秒のチャンスを逃してしまう。
たった数秒という時間をつかんできたからこそ荻原は生きてこれたのだ。

>「荻原さん撃てー!!」

「ステレオポニー無理だ!支えてくれ!このままじゃ、撃つ前に私の腰が折れてしまう!」

137 :生天目 ◆BhCiwB2SCaJ5 :2010/06/24(木) 14:33:40 0
>136
徳井一樹は新能力と言うか今まで気づいていなかった能力
「セイヴ・フェリス・『ノーバディ・バット・ミー』で
御前等祐介を水道管を利用し救出。

一方。ガトリングガンの重さに耐え切れない荻原秋冬の腰。

>「ステレオポニー無理だ!支えてくれ!このままじゃ、撃つ前に私の腰が折れてしまう!」

「えーー!!なんでよ!!」ステレオポニーは荻原の言葉に腰砕け(比喩表現)

足元の蟻地獄は、よねの新能力サム・フォーティーワンッ!フェイズ2で無力化。

左腕を犠牲にした吉野うららのスタンド攻撃も九頭の力によって緩和してゆく。
九頭の体から、さざなみとなりノイズが消えゆく直後。佐藤ひとみ&大谷による精神干渉が始まった。

客観的に外から見ても邪神の姿と化した九頭に佐藤がフルムーンの触角で
何かしらの行動を起こしているように見える。今は攻撃出来ない。

ステレオポニーは荻原と一緒にガトリングガンをしがみつくように支えると

「今は撃てないね。でもよくわかんないんだけど、あの少女…。
佐藤さんの邪魔するやつも敵だと思う…」

ステレオポニーは荻原にささやきながらガトリングガンを吉野うららの足元にむけ乱射した。

「佐藤さんの邪魔をする者はこの荻原秋冬がお相手いたす!!」

ステレオポニーは音を操るスタンド。荻原の声帯模写で叫んでみた。
自分の声で言って、後々私怨を残したくないからだ。

吉野の足元に埋め込まれた弾丸、つまり種は発芽して吉野の足に絡みついている。
何に成長するかはまだわからないがほんの少しの足止めにはなるはず。

【ステポニ&荻原。吉野さんの足元を謎の植物で地面に縛り付ける】

138 :佐藤ひとみ ◆tGLUbl280s :2010/06/24(木) 19:48:55 0
九頭の精神世界にダイブする佐藤ひとみ。
九頭の精神のイメージは漆黒の海。漆黒の激流と高波が襲いかかってくる。
タールの如き黒い波に呑まれながらひとみは思った。
九頭と感覚を共有した白昼夢で同じような黒い嵐の海を見た。九頭も遥か昔にこの光景を見ている…?

濁流の遥か下……海の底に黒い球体の存在を感じる。
黒い球体に近づくにつれて感じる強力な重力と圧迫感。
球体の強烈な引力によりひとみの精神は球体に向かってまっ逆さまに落ちていく。
周囲の闇がまるで意志を持つかのようにひとみに絡み付き圧迫する。
次第に増していく圧力に抗い必死に自我を保とうとするが、ついには黒い闇に押し潰され自分が何者かも解らなくなっていった。

―――高いところから地面に落ちた時に似たガクンとくる衝撃にひとみは我に返った。
気が付くとひとみは闇の中に立っていた。
闇でありながら視界の開けた不思議な感覚。
辺りは星の無い宇宙空間の如き闇……足元には透明なガラス板のような地面があり、ひとみはその上に立っている。
透明の地面の下にはヴィジョンで見た物と同じ赤い眼を内包した暗黒の球体が見えていた。
赤い眼は視線にも引力を持つのだろうか。ひとみは赤い眼から視線を外せない。

>「余りアレを見るな。
>160余年あまり生きたが、留流家に取り込まれぬままここに来た者は初めてだな。」

聞き違える筈もない声。
いつの間にかひとみの前に初めて出会った時と同じ姿の九頭龍一が立っている。
憎しみも怒りも焦燥も無い穏やかな表情。
ひとみはすっかり毒気を抜かれ、ここに来た目的も忘れて暫し九頭の顔に見入った。

>「さて、時間間隔が圧縮された精神世界といえども外に中に忙しい身でね。
> 手早く用件を済まそうではないか。」
固まるひとみに語りかける九頭。


「あ…あれ…何なの……?」

長く闇の中を漂っていたせいか上手く声が出ない。
ようやく絞り出した声は小さく震えていた。足下の赤い眼を指差して尋ねる。

一度声を出したことで弾みがついたのか言葉を続けるひとみ。

「手早くって何よ…?迷惑な客をさっさと追い払うみたいな言い方しないで!
私はあなたを殺す為にここに来たのよ。知ってるんでしょう?

どうしてそんな……」

………穏やかな顔をしているの?

という言葉は続かなかった。本当に聞きたい事が口から出ない。
これまでひとみが何かに執着する時は必ず強い怒りに支えられていた。
毒気を抜かれ拠り所の怒りを失ったひとみは戸惑いの中にあった。

139 :九頭龍一 ◆SM24/QbfAY :2010/06/25(金) 00:15:10 0
>138
戸惑う佐藤を前に九頭は何処までも穏やかだった。
大正時代あたりの軍服だろうか?
詰襟を立てた黒い軍服にサーベルの正装をした若き九頭はソファーに身をし沈めるような格好で闇に座る。
「私はここで一人戦い続けているのだよ。
160年、人の精神で過ごすには長すぎる時間だ。
他者がここに辿り着いたという事は行幸であり、私にとっては無上の喜びなのだよ。
例えそれが私に殺意を持ち、そして私が倒さねばならぬ者だとしても、な。」
そう、あまりに孤独な時を過ごし続けてきた九頭にとって、完全なる他者という存在は稀有なもの。
留流家に取り込んだスタンド使いは己の一部なので他者にはなり得ないのだから。

だが九頭にとって他者とは無上の喜びではあっても不幸でしかない。
ここまで到達できるものならば尚の事。
倒すべき対象になるのだから。

「ふふふ、おかしいかね?いや、実は薄々気づいていたのではないかな?
君の先ほど言ったとおり、私は留流家から出ることが出来ない。
スタンド使いではなく、スタンド使われだな。
永遠の牢獄につながれた看守というわけだ。」
自嘲気味に語る九頭の言葉と共に佐藤の脳裏にヴィジョンが流れ込む。

それは戦いの歴史。
恐るべき力を持った異形の化け物達。
「君はスタンド使いが溢れたからといって騒乱は起きない、といったな。
だがそれは違う。
古来よりスタンド使いはモノノケ、アヤカシと呼ばれてきたが、それらを越える存在がいたのだよ。
国を揺り動かし戦乱を興す力と野心を持った者達が。
スサノオノミコト、八岐之大蛇、両面宿儺、卑弥呼、蘇我入鹿、芦屋道満、平清盛、織田信長、フランシシコザビエル、天草四郎時貞…
そして私の時代にも、な。
あまりに強力なそれらを『魔』と呼び、殺しきることも出来ずに留流家の源である奈落に沈め閉じ込めているのだ。」

九頭の口から語られる留流家の、そして暗黒の球体の正体。
『魔』を閉じ込め続けておく為に強力なエネルギーを欲し、スタンド使いを次々に取り込んでいく。
封じられた『魔』は封じられて尚成長を続け日増しに強力になっていく。
また、新たなる『魔』になりうるスタンド使いを早目に倒し、取り込むことで抑制しているのだ。

「この事実を知り綾和は絶対の忠誠を誓い私の力になってくれた。
さて、君はどうするね?
このまま私の一部となり、共に永遠の時を過ごし日ノ本を守るか、ここから出て私と戦い、『魔』の封印を解く戦いを続けるか。」
立ち上がった九頭は佐藤の肩をグイッと抱き、決断を迫る。


140 :御前等裕介 ◆Gm4fd8gwE. :2010/06/25(金) 00:44:46 0
>「くそったれ………後で絶対一発ブン殴るッ!相応の礼、って言ったな。
  それはつまり…『九頭とは戦わないが俺が生き残る手助けをしてくれる』…という認識で間違いないか? 
  ただしこれ以下の条件を呑むつもりはねー。これ以上の条件ならいつでも待ってるけどな。
  おっと!自己紹介がまだだった。俺は徳井一樹。スタンドはセイヴ・フェリス。嫌いな奴は今だけアンタだ」

「いいだろう。俺はアンタを手助けする……俺を助けるアンタを助けよう。交渉は成立したッ!よろしく頼むぞ徳井サン!
 ちなみに"今だけ"俺が嫌いということは――イベントが進むに連れて態度が氷解していく正統派ツンデr痛い痛い蹴らないでお願い」

徳井と名乗った男はいい加減太腿にへばりつく御前等が鬱陶しくなったのか容赦ない蹴りの雨を頭に降らせてくる。
そこへ、馬の面を被った珍妙な生物が空中を遊泳しながらこちらへとやってきて勝手にしゃべり始めた。

>「九頭龍一は特大の攻撃を繰り出す瞬間に、エネルギーを溜めている部分以外は防御力がゼロになるそうだ。
  その一瞬を狙えばこちらにも勝機はあると少年は言っていたぞ」

一方的にそう告げると、ステレオポニーと名乗ったスタンドは手助けもせずにさっさと去っていく。
どうやら知り合いであるらしい徳井に対してまでしれっとした対応に、ひとしきりの罵詈雑言を御前等は聞いた。

「おいあいつもしかして途轍もない馬鹿なんじゃないか!?見るからに敵=九頭の味方である俺にまで御丁寧に教えてくれちゃったぞ。
 俺がこのまま九頭にその事実をリークしたらどうするつもりなんだッ!?クソックソッイライラするぜェ〜〜ッ!」

もちろん御前等がそれを九頭に伝える術も由も道理もない。だって遠いし。お取り込み中みたいだし。
なにより、こうも簡単に看破されるような弱点を突かれて倒れるようならば、そもそも九頭は『世界の中心』でなかったということだ。

>「オーーーッノォーーーッ!!なんだこれ!?新手のスタンド使いの攻撃じゃねーーーッ!
  マジックだよ!マジックだ御前等君よォーーーーッ!コレで俺もサーカスで大人気…そんなワケあるかバカッ!
  どうしたんだ!?どうしたんだよオイッ!御前等のタコ!どうして俺の左腕の面倒見なかった!?お母さんプッツンするよ!」

「何ィィーーッ!!?いつの間にアンタ隻腕になったんだ!おいおいこのままだとシチュエーション的に海賊王に俺はなる展開だぞ!
 徳井サンあんた麦わら帽子とか俺に託してみる予定はないか!?ッつーかそんなに大事な腕なら自分で首輪繋いどけッ!!」

とかなんとか問答してるうちに、片腕が単体でぴょんぴょん跳ねながらこっちへ向かって来るという熱病のような光景が。
御前等が開いた口を塞げないのを尻目に、徳井は自分の腕と戯れていた。やることなすことエキセントリックな男である。

「すげー……お父さんこの腕飼ってもいいかな!?ちゃんと餌やるし世話もするからさあ!クラスの奴らに自慢するんだ!」

どうやら徳井の能力の一部らしく、自分の体のパーツを切り離して独立して動かす能力のようだった。
愛犬もかくやといった感じで左腕を可愛がるのはいいが、徳井の体はもう腰まで、御前等に至っては肩近くまで沈んでいる。

>「ああ、そういえば御前等。おまえさんがお陀仏にならないようにしなきゃならなかったんだ。
 ワリーワリー忘れてた。まあ、後30秒以内になんとかなるからドーンと安心しとけ!今だけマイフレンドッ」

そしてきっかり二十秒が経って、隣からボコッと何かが飛び出る音がした。御前等の耳先を掠めて、水道管が砂の中から突き出てきた。

>「セイヴ・フェリス・『ノーバディ・バット・ミー』!(今命名)切り離した左腕が水道管の一部を運んだ。
  どうやらこの下には水道管が通ってるらしい。ギャグしてる時に気付いたんだ。
  一部を拝借したからそいつにしがみついてろ……約束はちゃんと守ってもらうからな!」

>「……状況は整った。こっからが本番だぜ。見とけ俺の超ファインプレーをッ!
  後、御前等。 ゴ ネ る なよ?今回は大人しく客席で観戦しろ。『隠しボス志望』なんだろ?なあ?
  ただし俺の邪魔しないならオプーナを買う権利と美味しいとこはプレゼントしようッ!」

「さもありなん……『さもありなん』だ徳井サンッ!俺は約束だけは守る男だ。だから今回は全力全開でアンタを助けよう!
 ついさっき俺がバカスカ撃ちまくった『歯車弾』……あれはどこ行ったんだろうなァァ〜〜ッ!今までそんなこと考えてもいなかったがッ!」


141 :御前等裕介 ◆Gm4fd8gwE. :2010/06/25(金) 00:48:24 0
斜めに突き出た水道管によじ登り、指揮棒を降るように両腕を広げ、振り上げる。

「――『アンバーワールド』!!」

勢い良く両腕を振り下ろした。白鳥が羽ばたくように、ムチのようにしなる腕は紙を打つような快音を響かせる。
それと同時に、御前等と徳井がいる場所から半径50メートル範囲の全ての地面から――無数の水道管が浮上した。
グラウンドを埋め尽くさんばかりのそれは、全て十全に繋がっていて、ちゃんと水が通っている。『機能しているのだ』。

「この地面の下には学校用の水道パイプラインが無数に通っているッ!学校みたいな水道施設のたくさん必要な場所はとくにそうなんだが、
 あらゆる場所に定量の水を送るため、網の目のようなパイプネットワークが築かれているんだ!それを『操作』したッ!!
 徳井さんよォォ〜〜、アンタに防がれまくった歯車は決して無駄にはならなかったぞ!地中奥深くへ貫通し、パイプラインに到達したッ!」

御前等の『アンバーワールド』の本質は、あらゆる機械を操作する歯車型スタンドパワー。
流星群として徳井に放った歯車も、『能力を発動していない』だけであり、その機能は保ったままなのだ。
それら御前等印の歯車達は、地中を回転しながら掘り進み、生きたまま地下深くのパイプラインへと届き、そして発動した。

「本来廃校のここには水も通っていないが……俺の能力は『大人の事情を凌駕する』ッ!既に十全に機能するよう水を引いておいたッ!
 そして徳井サン、俺はアンタが非常に気に入った!だからこれをくれてやる。――届け俺の想いッ!!」

徳井へ向かって何かを投げる。ナイスキャッチされたそれは、一枚の歯車。拳大のそれは、やはり『アンバーワールド』。
琥珀色に透き通っていて、重みを感じ無いにも関わらず存在感のある意匠だった。

「このクレーターは今水道管ジャングルに成り果てている。その歯車を取り付ければ、パイプラインの構造を変えられる。水も自由に出せるぞ。
 出力も方向も調整可能だ。使い方は簡単……!念じながらそれを貼りつければ、それだけで掌握……自在に操作できる……!
 どうやら俺も本当にスッカラカンのようだ。これ以上はビタ一文もスタンドが出てこない」

歯車一枚だけになった『アンバーワールド』は、まさしく今の御前等の縮図にして集積物。

「だからアンタに使って欲しい!オンリーワンの俺を余す所無くな!!俺はアンタが気に入った――ぶっちゃけ九頭よりも!
 その歯車はきっとアンタの助けになるはずだ。RPGとかでよくあるアイテム程度の認識で良い」

一方的にまくし立てて、しゃべり疲れたのか御前等は水道管にへばりこんだ。
自室に篭もりてZipをとりつつ、よろづのことにつかひける古代からの純粋培養自宅警備員の限界。

>「皆さんッ!流砂の動きは止まりました!今です!」

「お、流砂が停まったようだな。誰かは知らんがなんらかの能力を使ったようだ。さあ行け!俺に構わずに!」

そう言った舌の根も乾かぬうちに、こう付け足した。

「――でもやっぱ少しは構ってくれ!」


【クレーター内半域を水道管ジャングル化。徳井に『アンバーワールド』の歯車を一枚渡す。電池切れで一時行動不能】


142 :吉野きらら ◆HQs.P3ZAvn.F :2010/06/25(金) 00:59:40 0
>>137

身を縛るフルムーンの触手からの逆流か、それとも九頭に取り込まれた左腕に僅かな精神的感覚が残されていたからか。
ともかく吉野きららは、佐藤が九頭の内側へと潜り込んだ事を悟った。
そして彼女が、心底その事を渇望していた事も。
その様は彼女自身がどう思っているかはどうあれ、きららから見れば間違いなく『幸福』に準じる物だった。

故に、きららは佐藤の妨害を決意する。
『メメント・モリ』の隻腕に戦斧の花を咲かせ、九頭と佐藤を繋ぐ触手を断ちに掛かる。

>「佐藤さんの邪魔をする者はこの荻原秋冬がお相手いたす!!」

だが不意に、きららの足元で土埃が踊る。
次の瞬間、萩原とステレオポニーの放った種子の弾丸が彼女の足を絡め取った。
しかし、きららは焦燥の色を見せるでもなく、ただ悠然と微笑を湛えながら一人と一体へと振り向く。

「滑稽ですわね。お生憎さま、私はもう貴方々如きの手で足が掬えるような所にはいませんの。
 それとも豆の木でも伸ばして、私の佇む天上へと向かってきますか?」

童話に準え皮肉を紡ぐと、きららは『幸福への階段』を発動する。
忽ち、彼女は『植物に囚われる前の状態』へと返り咲く。
今や彼女は、死の淵に瀕したとしても何ら危なげ無く復活を果たす事が出来るだろう。

唯一返り咲かせる事が出来ないと言えば、失った左腕のみだ。
『幸福への階段』の支柱として捧げたそれを取り戻そうものならば、彼女の階段は途端に崩落してしまう。
悠々とした態度を取り繕いながらも、彼女はその事にのみ、内心で苛みを覚えていた。

けれども当座為すべきは、佐藤の妨害である。
戦斧の花を投げ放ち、刃の花弁を宙に舞わせて、彼女はフルムーンの触手を次々に断ち切っていく。
佐藤が待ち望んだ九頭との邂逅は、こうも容易く阻まれてしまうのか。


否――彼女には仲間が、彼女を仲間と認める者達がいる。
大谷杉松ならば、触手が絶たれても尚、己の精神力を犠牲に彼女と九頭の繋がりを保てる。
荻原秋冬とステレオポニーならば、放たれる戦斧の花を撃ち――或いは叩き落す事が出来る。
米コウタの新能力であれば、宙に踊る花弁を一息に地へ誘う事が出来る。
徳井一樹のスタンドならば、仕留める事は出来ぬまでも隻腕のきららを制するだけならば容易い。

己の哲学を決して他人とは共有し得ないきららには無い仲間が、佐藤にはいる。
彼女が皆をどう思っているかは別にしても、だ。
彼らが力を合わせたのならば、吉野きらら一人の意思とて、きっと跳ね除ける事が出来るに違いない。

143 :生天目有葵 ◆BhCiwB2SCaJ5 :2010/06/25(金) 16:56:41 0
>142
>「滑稽ですわね。お生憎さま、私はもう貴方々如きの手で足が掬えるような所にはいませんの。
>それとも豆の木でも伸ばして、私の佇む天上へと向かってきますか?」

「ふん。滑稽か…。私たちでは役不足だと言うのか少女よ?私の名前は荻原秋冬!荻原秋冬だ!!」

荻原の口は動いていない。ステレオポニーの声帯模写で腹話術状態。
そして吉野の足元を見れば『植物に囚われる前の状態』へと戻ってゆくのが窺がえた。

「むむ!発芽したプラントアワーの茎が…!?なんだこの能力はー!!こやつの能力は危険すぎるぞい!」
ステレオポニーは50代のキャラに成りきれていなかった。

「ふ・む・む・む・む・む・む…ジャックと豆の木の話は何を言いたいのかよくわからないのじゃ。
しあわせのお花を咲かせるためには…どれくらいの涙が必要なのかのー…ふふふ…」

隻腕で凛と一人立つ吉野うららにある種の荘厳さを感じつつも、
ステレオポニーはゆっくりとしていてそれでいて意味不明の言葉で時間稼ぎをしている。

九頭龍一の佐藤ひとみの邂逅は夢の出来事のように一瞬で終わるのだろうか。
制御を失い崩れゆく九頭の体に佐藤の精神干渉が追い討ちをかけ弱体化させた所への総攻撃。
そこでこの戦いは終わるのだろうか。それとも始まるのか。

「少女よ。最近の若者には珍しくも上昇志向をお持ちのようだが…。
その左腕…佐藤さんに治してもらえ。そしてこの場から去るのだ。
ワシには女の幸せなど、こんなところにあるとは思えんがのう…」
もう自分のことをワシと言っているしステレオポニーの言い回しはめちゃくちゃだった。

「おまえさんの能力は元へ戻す能力なのかよくわからん。なんかもうよくわからんが、
ただワシはみんなと協力をして九頭を打ち倒し妻と娘を助けだすためにここにいるだけじゃ。ただそれだけじゃ」

声マネだけの偽荻原であるステレオポニーは長々と語りその身をガトリングガンの支柱にしつつ、その場から動かない。
それは佐藤ひとみを信じているから。乗りかかった船はもう沖に出てしまっている。
あとはフカモグから帰って来る佐藤の朗報を待つのみだった。

【待ってるだけです…こわいなー】

144 :大谷杉松 ◆vReXCpsNBKcm :2010/06/25(金) 17:12:25 0
佐藤が九頭に精神世界に旅立ち、大谷の仕事は二つ
『能力を使い、佐藤を精神世界に留まらせる』『無防備の佐藤を守りきる』
この二つだ、スタンドシートに刻まれた時の表示が0になる度スマートガントレットが指を鳴らし『もう一度精神世界へ入った』ことにする。

5分の休憩時間が守れていない為体力を消費しながらの発動である、いつまで持つかも解らない、
しかし、ただ一つの『チャンス』にかけるしかないのだ

そこへ吉野が近づいてくる、大谷は攻撃させまいと身構えるが…
茨原とステレオポニーの援護が吉野の足を止めた

>「滑稽ですわね。お生憎さま、私はもう貴方々如きの手で足が掬えるような所にはいませんの。
 それとも豆の木でも伸ばして、私の佇む天上へと向かってきますか?」

そう言うと同時に吉野のまわりのツタは消えてしまった、これでは馬鹿正直に攻撃しても意味はないだろう
しかし吉野はこちらを攻撃しようとはせず、攻撃の目標を変えた その目標は…フルムーンの触手!
吉野はフルムーンの触手をつぎつぎと切ってゆく、このままではチャンスが無くなってしまう。

大谷はまず、切られた触手をスマートガントレットの能力でもういちど『触手を張った』事にした、
大谷に出来ることはこれだけである 下手に佐藤から離れては佐藤が危ない。

「ジャックはなんで長い長い豆の木が登りきれたと思うか? 答えは一つ、あきらめず自分の手足で上ったからに決まっているだろ、
 こんなところでで踏ん反り返っていて楽しいか? 天空のお嬢さん!」
『ヒトリジャシバイハデキナイノヨ コドクナシュジンコウサン』

大谷は念のためにいつでも能力を使う準備をしていた、いつ何が起きてもいいように

145 :柚木美都留 ◆BhCiwB2SCaJ5 :2010/06/25(金) 18:13:18 0
柚木美都留は、よねの能力で固まった大地を一歩一歩踏みしめ九頭龍一に向かって歩いていた。
性格上もとい元留流家の者の性質か、正直に真正面から敵に向かうと言う戦略は彼の頭にはなかった。
何故なら古来より留流家の者に敗北は許されなかったからだ。
たとえ敵を圧倒する力を持っていたとしても十回中十回勝てる勝負に持ち込まなければならないのが鉄則。
己の敗北は国の敗北に直結する。

「…ボクは甘かったんだ…」
九頭を裏切ったのは間接的にでも親を殺したという九頭への恨み。
弱気になって戦闘から離脱したのは徳井や荻原やヨネが肉親を守るために戦っていることを受けての引け目。

「どれもこれも間違いだ。ボクは見届けなければならない。あの人を…」

一撃。たった一撃であろうが思いを乗せた拳なら届くはずだ。かつては親しみ憧れた男、九頭龍一に…。

【柚木美都留。九頭さんの近くに移動中】

146 :佐藤ひとみ ◆tGLUbl280s :2010/06/26(土) 03:21:24 0
>139
軍服姿の九頭と差し向かいになって固まる佐藤ひとみ。
暗く深い精神世界の海底…目の前に現れた九頭はひとみの理想とする九頭の姿そのものだった。
若く精悍な顔に鍛え上げた体。どこか飄々としながら孤独と倦怠を纏わらせた空気。斜陽の印象。
しかもひとみの問いかけを拒むことなく受け入れようとする気配すら見える。

漆黒の闇をソファー代わりに身を沈め、ひとみを見つめる九頭龍一。
穏やかな表情の九頭に毒気を抜かれ、あれほど執着していた問いを投げかけることも出来ずひとみは只立ち尽くす。
九頭のことが知りたい―――。怒りと欲望に突き動かされるまま九頭を追いかけてきたというのに
本当に欲しいものが手に入りそうな状況を前に立ち尽くす性が自分にあったことに、ひとみは我ながら驚いていた。
殆どの感情を欺瞞で補ってきたひとみにはこれまで本当の意味で欲しいものなど無かったのだ。

九頭はこちらの願望を透かして見るかのように、ひとみの知りたかったことに順を追って語りだす。
留流家の本質、九頭の目的、九頭の守るもの、そしてあの黒い球体の正体…。
よどみなく紡ぎ出される言葉と共にひとみの頭の中にヴィジョンが流れ込んでくる。
それは『魔』と呼ばれるモノの正体…歴史の中に顕れた異能…。
留流家という牢獄に封じられた邪悪な不死の魂。

九頭龍一こそ『神ながら言挙げせぬ国』日ノ本の守護者。
人知れず孤独に『魔』を封じる闘いを続けている男―――。

九頭は身を沈めていた闇の椅子から立ち上がりひとみに向かって静かに近づいてくる。
なすすべも無く九頭の顔を見上げるひとみの肩をグイと引き寄せ決断を迫る九頭。


>「この事実を知り綾和は絶対の忠誠を誓い私の力になってくれた。
>さて、君はどうするね?
>このまま私の一部となり、共に永遠の時を過ごし日ノ本を守るか、ここから出て私と戦い、『魔』の封印を解く戦いを続けるか。」


九頭に肩を抱かれながら、ひとみの心は徐々に冷めていく。
ひとみの捻じれた心は望んだものを前にして感情に身を任せることを許さない。
九頭のこの行動をあざとい――と思い始める。
九頭が歓迎しているのは『ここに辿りついた他者』であり『佐藤ひとみ個人』ではない。
それなのに思わせぶりな行動を取る九頭は卑怯だ…と。
ひとみは肩を抱かれたまま九頭に問いかける。


「こういうことを『手早く』済ませようとするなんてズルイわ。あと二つだけ聞かせて。
護国天使は別として、留流家は『場所』に縛られている。成長するとしてもあの場所が中心。
あの場所…『北条市』には何があるの?

それと…私があなたの要求を受け入れてあなたの一部になったら、あなたはまた孤独に戻るわよ…
それでもいいの?」

147 :名無しになりきれ:2010/06/26(土) 04:16:16 0
ブロック遊びしましたか?

148 :九頭龍一 ◆SM24/QbfAY :2010/06/26(土) 23:02:55 0
グラウンドに出来たクレータの中心。
そこで邪神九頭は立ち尽くしていた。
周囲で水道管が無数に浮かび上がろうとも、吉野が触手を切断し、それを防ごうとする大谷たちと戦おうとも。
そして、柚木が一歩ずつ確実に近づこうとも。
時折その輪郭にノイズが走る程度で沈黙を守っていた。

それは精神世界に入り込んだ佐藤の為だった。
強力なパワーを持つ身体は外部からの攻撃を殆ど無視しても良いほど頑強なのだから。
それよりも、内部から身体を崩壊させられる事を防ぐに全力を注いでいるのだった。

###################################

変って精神世界。
奈落たる球体を前に佐藤の肩を抱く九頭は、その感触から佐藤の信条の変化を読み取っていた。
その変化に冷酷な笑みを浮かべ、質問に対する答えとは別の言葉を紡ぎだす。
「少しは落ち着いたようだが、身体の変化には気付いているのかな?」
思い出したように告げる言葉の意味はすぐにわかるだろう。
収束した佐藤の精神体が端から徐々にではあるが拡散を始めているのだ。

ここは九頭の、そして留流家の中心。
奈落を望む場所。
本来常人の精神では辿り着けぬし、辿り着いたとしてもこの場所に耐えられないのだ。
九頭の加護によって保たれてはいるが、脆弱な人の精神では長く留まれないことを意味していた。
それが手早く済まさなければならぬ理由なのだ。

最早佐藤に残された時間は少ない。
にも拘らず九頭の口調は変らぬまま。
「私は長い間生き続けてきた。
多くの人間が私を憎み、愛し、戦い、共に歩いたが、全て私より先に死んでしまった。
だが、彼ら彼女らの子が、孫が、そしてこの日ノ本の国が続いている限り、私は守り続ける。
その為にはいかなる犠牲も厭わんのだよ。
我が糧となるもの達も、私自身も…!」
もう一度佐藤の肩を強く抱き、拡散する佐藤のせい進退を収束させると、その身体を離す。

そしてそれから語られる言葉は佐藤の琴線に、あるいは逆鱗に触れるだろう者だった。
「今は北条市というのか。
この地に何があるかは、見れば判る。
例えば花使いのあの女。」
闇に浮かび上がる外の風景。
斧が如き花で触手を断ち切る吉野の姿。
「彼女は見事に階段を登り、私が認め得る存在となった。
私は彼女の誕生を心から祝福し、次に残す事にしたのだよ。
そして君を含めた彼らも確実に近づいてきている。
尤も、私の糧にならなければ、だがね。」
笑みを浮かべ佐藤を睥睨する九頭。

吉野は九頭にとって特別な存在となり、佐藤たちはその他大勢の糧に過ぎない。
と、言いはなったのだ。
その言葉が事実である事を示すように、佐藤の精神体は再拡散を始める。
これは佐藤への九頭の加護が打ち切られたことを意味していた。

「ふふふ、ここで拡散し果てるか、外に戻り私に倒されるか選ばしてやろうではないか。」
闇の中、残酷なまでに穏やかな九頭の笑みが佐藤を見詰めていた。

149 :佐藤ひとみ ◆tGLUbl280s :2010/06/27(日) 01:36:52 0
九頭の身体を離れたひとみの精神体は拡散を始め少しずつ色を薄めていく。
ひとみの心を逆撫でするような九頭の告白を前にして、ひとみは意外なほどに冷静だった。
無表情で九頭龍一を見据え語りだす佐藤ひとみ。

「あの女があなたの 『認め得る存在』…?つまり特別な存在になった訳ね。
でもそんなのどうだっていいわ。
あの場所…北条市の『何か』に触れて成長することで特別な存在に成り得るんなら、そんな『特別』は下らない。
何人も居る『特別な存在分の1』になってもしょうがないもの…。

私が何故あなたを殺そうとしているのか解る?
………あなたが望んだからよ……。

あなたは私の精神に何度も伝えたわよね。
『寂しい』…『疲れた』…………『死にたい』って!!

国を守るなんてそんなのどうだっていいじゃない!誰かの犠牲の上で守られている安穏なんて幻だわ!
守らなければ乱れるなら乱れさせておけばいい!滅びるなら滅びればいいのよ!!

あなたにとって国を守ること以上に大切なことは無いのね。
ならあなたと一緒に生きても絶対にそれ以上の『特別な存在』になることは出来ない!
あなたはどんなに疲れてもこの国を守ることを止められない。
だったら私が止めさせてあげるわ!!
死ななきゃ止められないなら殺してあげる!
あなたを殺せば私はあなたにとって唯一の『特別な存在』になれる!」

ひとみの手にはいつの間にか九頭が軍服の腰に佩いていたサーベルが握られている。
精神世界にも顕れたフルムーンの触手が音も無く九頭の腰のサーベルを引き抜いていたのだ。
ひとみはサーベルを両手に持ち体当たりするように九頭の胸に深々と突き立てた。


九頭の返り血を体中に浴びたひとみは口の端を上げて笑っている。

「ここにいるのは九頭龍一の精神体…だけど精神が傷つけばあなたは100体のスタンドを保ってはいられない。
止めは誰かが勝手に刺してくれると思うわ。
あなたの体に止めを刺すのが誰であろうと、あなたの精神を殺したのは私……!
あなたに破滅を齎した運命の女は私よ!!!
私はあなたを得て、そして失う!

……お別れね!九頭龍一……!!!」

精神の拡散が進み、ひとみの輪郭はぶれ始めぼんやり光っている。
口元に歪んだ笑みを湛え白く光るひとみはまるで幽霊のようだった。
次の瞬間ひとみの体は引力を失い宇宙空間に放り出されたように宙に高く上っていく。
精神の干渉を始めた時とは逆に九頭の精神の底から外に向かって引き上げられていく。
ひとみは途中異物に気づく。
九頭の中にありながら九頭のものでないそれは、吉野きららの左腕。ひとみはそれを乱暴に引っ掴んだ。
例えあの女の欠片一片でも九頭と一体化しているのは耐え難い屈辱だった。

吉野きららの腕を掴んだまま精神の外に引き上げられていくひとみ。

【九頭さんの精神体をダイレクトアタック、吉野さんの左腕を持って精神の外にエスケープ中】

150 :徳井一樹 ◆MnJrk02a/Yx. :2010/06/27(日) 15:32:59 0
>「――『アンバーワールド』!!」

御前等の掛け声と同時に、徳井達の周囲から無数の水道管が浮上する。
未だに御前等の能力は理解不能な徳井だったがその規模の大きさに驚きの色は隠せない。

>「本来廃校のここには水も通っていないが……俺の能力は『大人の事情を凌駕する』ッ!既に十全に機能するよう水を引いておいたッ!
>そして徳井サン、俺はアンタが非常に気に入った!だからこれをくれてやる。――届け俺の想いッ!!」

何かを投げ付けられ、徳井はそれを反射的に受け取った。手のひらにあったのは歯車。
徳井は歯車なんてまともに見たこともなかったがその存在感は感じられた。

>「このクレーターは今水道管ジャングルに成り果てている。その歯車を取り付ければ、パイプラインの構造を変えられる。水も自由に出せるぞ。
>出力も方向も調整可能だ。使い方は簡単……!念じながらそれを貼りつければ、それだけで掌握……自在に操作できる……!
>どうやら俺も本当にスッカラカンのようだ。これ以上はビタ一文もスタンドが出てこない」
>「だからアンタに使って欲しい!オンリーワンの俺を余す所無くな!!俺はアンタが気に入った――ぶっちゃけ九頭よりも!
>その歯車はきっとアンタの助けになるはずだ。RPGとかでよくあるアイテム程度の認識で良い」


「人工物を操る能力…ってとこか?いや、能力の解説は必要ないぜ。
つーか、そんなモン託しちゃっていいのかよ?いっとくが俺は病気以外ならなんでも貰ってやるからな
しかしまあここまでセッティングして貰ったんだ…なら俺も公平に行かないとな」

御前等の死角から何かが動いた。
切り離されていた徳井の小指が、徳井の体に、左手に再び繋がった。

「おまえさんはちゃんと約束を守ったのに…スマン、保険として裏切ったら背後から一気に畳み掛けるつもりだった。
まあ……これでこの戦闘……おまえさんを信頼できるのは確かだ」

浮上した水道管ジャングルによじ登ると、御前等が最後に叫んだ。

>「お、流砂が停まったようだな。誰かは知らんがなんらかの能力を使ったようだ。さあ行け!俺に構わずに!」
>「――でもやっぱ少しは構ってくれ!」

「いや、どっちなんだよ!」

思わず御前等の方向に翻って叫んだ。
御前等の気が変わるのがあまりの早すぎたのに呆れたのか、驚いたのか、
とにかくその拍子に水道管ジャングルからズッコけそうになった。

兎にも角にもこのパイプラインが張り巡らされたジャングルの頂上からは全てが眺望出来た。
場は煮詰まりつつある中、状況をほとんど把握できていない徳井の選んだ選択は「待機」
中年のおっさんとステレオポニーが吉野に攻撃していたが今は猫の手も借りたい状況。
第三勢力で信用ならないとは言え戦力が減るのはあまり良くないと判断したのである。
状況をまともに把握していないから迂闊に攻撃できないというのもあったが。

「今は攻撃のタイミングじゃない…今はただ顔を伏して待つ…!
このパイプジャングルを活かした攻撃を最大限に発揮できる瞬間をっ…!」

151 :九頭龍一 ◆SM24/QbfAY :2010/06/27(日) 22:07:49 0
「くがっはぁああ!…くっくっく…そうだ、それでいい!」
精神世界の園からはなれて戦等を見送った後、九頭は胸を貫くサーベルを引き抜いた。
その表情には歓喜の笑みが浮かび、その瞳には狂気の炎が燃え盛る。
ここは精神の世界。
胸をサーベルで貫かれたからといって死ぬ事はない。
胸をサーベルで貫かれ死んだ、と思う事によって始めて詩は成立するのだから。
九頭は死を渇望しながらもそれを遥かに凌駕する生存への義務感を持っているのだから。

胸と口元からダクダクと血を流したまま九頭を自嘲気味に呟いた。
「…お前達の好きにはならんよ。どうあろうとも、な…!」

######################################

現実世界、邪神九頭龍一の目に光が戻る。
佐藤との邂逅も現実世界で言えばほんの一瞬の事。
だが状況は一変していた。

周囲に林立する水道管のジャングル。
戦う吉野と大谷、荻原、そしてステレオポニー。
そして、己の成すべき事に気付き、新たなる決意と共に九頭に近づく柚木。

「だが…それで私に勝てるかといえば、そうは限らんぞ…!!」
輪郭にノイズが走ったままの邪神九頭が吠えるのは佐藤へ向けられたもの。
精神体に大きな傷を負わせたといえど、それでも圧倒的なパワーを誇る事には変りないのだ、という宣言。
その宣言は即座に実行された!

邪神九頭の身体からあふれるが如く黒い光の閃光が周囲を駆け抜ける。
渾身のパワーを込めた衝撃波!
身体を束縛していた触手を吹き飛ばし、クレーター内を駆けていた者達を衝撃波が塗りつぶす。
林立する水道管は管であった事が幸いし、歪み曲がりはしたが衝撃波をまともに浴びる事はなく消し飛びはしなかった。

だがそんな中、柚木は自身の異変に気付くだろう。
クレーター内の全員が吹き飛ばされたにも拘らず自分にはなんの衝撃もなかったことに。
自分が最も九頭に近かったにも拘らず、だ。
その疑問の答えはすぐに出ることになる。
衝撃波で吹き飛ばすのではなく、九頭自身がその手で確実に仕留める為に残されたのだ、と。

黒い閃光が駆け抜けた後、邪神九頭は柚木の正面に立っていた。
「獅子の前に立てるのは獅子のみ。それとて生き残れる可能性は低いというのに…
子犬が牙を立てればどうなるか、その身をもって知れぃ!!」
圧倒的な存在感とプレッシャーと共に投げかけられる言葉。
そして振り下ろされる巨大な拳。
軌道上に立っていた水道管をマッチ棒のようにへし折りながら柚木の顔面に拳が…!
が、当たる直前、その拳は霧散し、九頭龍位置本人の拳が剥き出しになり、炸裂した。

精神世界で受けた傷が原因だったのだ。

最後のインパクトの瞬間に保つ事が出来なくなり、スタンドパワーのない、九頭龍位置としての拳撃のみが柚木を襲ったのだった。


152 :荻原秋冬◇6J1m09mANS :2010/06/27(日) 22:09:42 0
ステレオポニーが来てくれたおかげで、なんとか荻原の腕と腰は折れずにすんだ。
つくづく自分は年だな…と思いながら荻原も一緒にガトリングガンを構えた。
しかし、佐藤ひとみのスタンドの触覚が九頭龍一の周りになんらかの干渉しているみたいだ。
どうやら普通の攻撃とはわけが違うみたいだから、今は邪魔できない。

>「今は撃てないね。でもよくわかんないんだけど、あの少女…。
>佐藤さんの邪魔するやつも敵だと思う…」

「ああ、あそこにいる女の子か…
たしかに…そうみたいだな…」
今ここで佐藤ひとみの邪魔をされるわけにはいかない。
ガトリングガンはその少女の足元に向かって発射された。

>「佐藤さんの邪魔をする者はこの荻原秋冬がお相手いたす!!」

「おっおい!ステレオポニー!何言って…」
勝手に荻原の声に真似て叫ぶステレオポニーを止めようとしたが。
もはや半暴走状態になっている。

>「滑稽ですわね。お生憎さま、私はもう貴方々如きの手で足が掬えるような所にはいませんの。
>それとも豆の木でも伸ばして、私の佇む天上へと向かってきますか?」

ガトリングガンの玉から生み出された植物の蔓は少女に絡みついたが、
まるでビデオを逆再生したかのように、蔓は少女に絡みつく前に戻ってしまった。

>「むむ!発芽したプラントアワーの茎が…!?なんだこの能力はー!!こやつの能力は危険すぎるぞい!」

「"ぞい"なんていいまわし、私はしないぞ…」
荻原はツッコミをいれたがステレオポニーはとまる様子がない

「……はぁ…もういい…好きにしてくれ…」
ため息ひとつつきながら荻原はあきれ返ってしまった。

(それより…あの少女の動きを止めるにはどうしたらいいものか。
新たな弾丸に食虫植物でも生やさせるか…)
そう考えた荻原だったが、実はできないのである。

プラントアワーの新たな能力は、銃となって植物の弾丸を遠くに飛ばして生やすことはできるが、
そのかわり、植物は簡単なものしか生まれないのだ。
最高で植物の蔓くらいしか生えないため、正直あの少女の前ではあまり役にはたたない。
少女はそのまま荻原たちを攻撃せず、佐藤ひとみのスタンドが張り巡らせた触手を次々と攻撃したのだ。

「このままじゃやばいぞ!ステレオポニー、あの子の攻撃を止めなくちゃ!」
ガトリングガンとなっているプラントアワーを通常モードに解除した。
あの少女の攻撃は刃物のような花弁で触手を切っている。

けれど素材が花ならプラントアワーの能力で枯らすことができる、
荻原自身が傷つかなければいいが、プラントアワーのどの部分でも植物が触れると枯らすこともできるのだ。
プラントアワーの両腕の蔓を伸ばして、鞭のように振りながら花弁を次々に枯らしていった…

153 :よね ◆0jgpnDC/HQ :2010/06/28(月) 00:36:58 P
流砂の流れを止めたよねはただただ周りの状況をうかがうばかりだった。

というのも、ある一つの疑問を抱いていたからだ。
何故、自分にフェイズ2の能力が覚醒したのか。

考えられる理由は一つしかない。米綾和のスタンド、グリーン・Dの力。
だが、答えであるそれを答えとして認めたくはなかった。
自分のスタンドの成長=米綾和の生命力の低下に繋がるからだ。

「だとしても…何故だ?どうして…?九頭の呪縛がある限り…カズは能力を自由には…」

その通りだ。いくら解放されたとはいえ、一度は九頭に忠誠を誓った身。
そう簡単に…息子のためだとしても能力を"敵のためになるように"行使できるわけがない…

「まさかッ…これは有益な進化…ではないッ!?カズッ!」

ハッと校舎を振り向くとそこには今にも倒れそうな米綾和が笑いながらこちらを見ている。
"覚醒"の本当の意味がわかった時にはすでによねの体は自由が利かなくなっていた。

『コウタ…甘いな…甘過ぎる…この私が…この私がッ!九頭様をこの期に及んで裏切るとでも思ったのかァァッ!!
 もう死ぬかと思ったよッ!!だがッ!死への恐怖の克服がッ!私を進化ッ、いや神化させたァッ!Green Day Form Finale(GDFF)!』

凶悪なほどまでに禍々しいオーラを放つ米綾和は何年もの間に、完全に九頭のトリコとなってしまったのだ。
綾和のGDFFはかつての面影など残してはいない。淀んだ目、鋭利に尖った牙、絶えず垂れ続ける涎、浮き上がった紫色の血管。
その姿は異形。怪物。まさにかろうじて人の形をしている"ケモノ"!!

その"ケモノ"…GDFFが大きな雄叫びをあげるとよねは凄まじい寒気と共に意識が朦朧とし始めた。

「あ…ああ…ああああああああああぁぁぁぁあぁぁああぁあああああああッッッッッ!!」

がくりとその場にうなだれるよね。そして同時に流砂が再び動き始める。能力が解除されたのだ。よねの手で。

『ふははは…ひひひひ…アハ、アハハ、アハハハハハハッ!!イヒヒヒヒヒ!ギャハハハハハハハッ!!
 ざ…ざまあみやがれえええ!!プヒッ、覚醒したとでも思ったかァァッ!?クケケッ…ぜーんぶトラップだよ、バクダンだよォッ!』

顔をおぞましく歪めて笑い転げる綾和。以前のように知的な様子など微塵も見受けられない。
そして綾和の…いや、"GDFFの"操り人形となってしまったよね。

「Sum41…この流砂は…炎上する…」

抜け殻のようなよねによって炎上する蟻地獄。
そこはまるで灼熱地獄!万物を焼き尽くす地獄の業火の中!

よねはそこから素早く脱出すると、すぐに九頭の位置を把握した。

「九頭様…九頭様…九頭様…」

ただひたすらに、盲目的に九頭へと走り出すよね。
恐らくは九頭を助けるために行くのだろう。
                            フォーム・フィナーレ
これが米綾和が最後に残した力。グリーン・D最 終 形 態 だった。

154 :柚木美都留 ◆BhCiwB2SCaJ5 :2010/06/28(月) 17:09:24 0
九頭の素手で殴られて地べたに這い蹲る柚木美都留。
柚木は木陰で生天目と言う少女に聞いたことを思い出していた。荻原秋冬のこと。
彼は家族を救うために戦っているらしい。それに比べて自分は怨みを晴らすための戦い。

後ろめたい気持ち。

柚木は九頭の真実の思いを知らない。知れば再び九頭の元へもどるかも知れなかった。
柚木は九頭にはなれないし九頭の背負った十字架を背負うことも出来ないだろう。
でも同じ道をゆくことはできたはずなのだ。

だが今は二人の思いは永遠に交錯することはない。もう心は届かない。

「…ボクは裏切り者です…でもあなたを倒さなければ生きていけないんです」

柚木は泣きながら拳を握り締めていた。対峙する二人。

すると沈黙を破るが如くこだまする米綾和の雄たけび。

>「Sum41…この流砂は…炎上する…」

GDFFの操り人形となってしまったよねによってクレーターの書き換えが行われていく。

「うっ!!」
柚木は叫ぶとひん曲がったジャングルジムに飛び移った。ジャングルジム自体如何わしいものだったが
吹き飛ばされるまで徳井一樹が頂上でぴんぴんしているということは危険なものではないらしい。

眼下に広がるのは万物を焼き尽くす灼熱地獄。

「状況を最大限に利用するのも真っ当な戦いかただよね…九頭さん…」
柚木はスタンドから最後の100トン重力球を生み出すと九頭龍一に放り投げ灼熱地獄に丸ごと叩き落した。

燃える九頭龍一。

九頭は灼熱地獄と重力球とのサンドイッチになっている。

一方スタンドパワーを失った柚木はジャングルジムの天辺でぐったりと倒れていた。

155 :九頭龍一 ◆SM24/QbfAY :2010/06/30(水) 22:57:52 0
這い蹲る柚木と己の拳を交互に身ながら九頭は顔を歪めていた。
本来ならばこの一撃で柚木の上半身は消滅するはずだった。
だがインパクトの瞬間に拳を形成する体が崩壊し、むき出しの己の拳で殴ってしまった。
精神が深手を負っている為に上手く身体を維持できなくなっているのだ。

舌打ちをしながら今度こそは止めを、と一歩踏み出した瞬間、それは巻き起こる。
>「Sum41…この流砂は…炎上する…」
その叫びと共にクレーターは炎が渦巻く灼熱の地獄へと変化する。
ジャンプしてクレーターから脱しようとしたが、足の輪郭を保つ為に僅かにタイミングが遅れる。
それが致命の遅れとなるのはすぐに思い知らされる事になった。

先に水道管のジャングルジムの上に登り難を逃れていた柚木が100トンの重力球を落としてきたのだから。
既にジャンプしていた為避けることも出来ず、まともに喰らう事になる。
「ぬ、うお大、たかがこの程度!私を舐めるなよ!!」
ジャンプ宙で話す術もなくその重みに落とされはしたが、超絶パワーを誇る邪神九頭。
100トンの重力球といえどもそれに押し潰される事なく両手両足を踏ん張り持ち上げていたのだ!
このままパワーを使い果たしジャングルジムの天辺でぐったりとなっている柚木に投げ返す事も出来ただろう。
だが、それは万全の状態であった場合だ。

邪神九頭のパワーがいくら勝っていても、それを支える大地が燃え盛る砂となっていてはパワーを発揮する事はできない。
重力球を持ち上げたままその足はズブズブと沈んでいき、ついには九頭は埋まってしまった。
砂自体が燃えている為、地中に潜っても炎から逃れられるわけではない。
そして頭上は100トンの重力球で蓋をされている。
このまま焼き芋のように邪神九頭はこんがりと焼けてしまうのか…!?

否!断じて否!

クレーターの中心に埋まった重力球の横が盛り上がり、そこから邪神九頭は出てきたのだ。
地中に埋まった九頭は燃え盛る砂を堀分けてきたのだ。
「ふふふ、この私が!炎ごときで焼かれると思ったか!」
肌は高質化し、赤くやかんではいるが九頭は生きて出てきたのだ。
そして唯一も得ていない重力球の上に乗り高々と笑う。

更にそこへ九頭に援軍が辿り着く。
GDFFの操り人形となったよねが来たのだ。
それを見て九頭は全て悟った。
「でかしたぞ、綾和!天輪は失ったがこれでまた護国天使になれる!
さあ綾和の息子よ!その能力で私を書き換え、護国天使とするのだ!」
赤く焼けた邪神九頭が命令する。
ここに護国天使九頭の復活はなるのだろうか?

156 :佐藤ひとみ ◆tGLUbl280s :2010/07/01(木) 03:20:17 0
>154 >155
佐藤ひとみは海底から水面に浮上するが如く九頭の精神の内から外へと引き揚げられていく。
不思議なことに端々から粒子が漏れ崩れだしていたひとみの精神体は再び九頭の庇護を得たかのように収束し形を保っていた。

九頭の精神から出る間際ひとみは誰かの強い感情を受信した。
九頭の中にありながら九頭のものでない、しかし九頭の想いに引き摺られシンクロした感情。
それは九頭から感じたのと同じ『守りたい』という強い想い。想いと共に浮かんでくるヴィジョン…。
それはひとみの知っている青年の面影を持つ少年と精神世界で見た少年の母の姿だった。
感情の主はよねの父、米綾和――。


精神体を自らの身体に戻した途端、ひとみは身体に強い衝撃を感じた。
九頭がクレーターに叩きつけた黒い衝撃波はクレーターの外にいるひとみにも及び、後ろに吹き飛ばされ地面に尻もちをつく。
次に訪れたのは炎の衝撃。クレーター内に紅蓮の炎が燃え上がる。
邪神姿の九頭は地獄の主さながらに燃えるクレーターの上に浮かんでいる。
続けて柚木美都留の巨大な重力球が九頭を押しつぶさんと圧し掛かる。
邪神姿の九頭はそのおぞましい触手まみれの両手で重力球を受け止め身体に筋を浮き上がらせ踏ん張っている。

精神体に傷を受けながら尚も誇る圧倒的なパワーとそれを支える精神力にひとみは驚く。
そして致命傷といえる精神の傷を押してまで守ろうとする想いの強さに改めて嫉妬の炎を燃やした。
九頭はひとみの齎した『死』を安らかに受け入れるつもりが無い。例えそれをどれ程切望していようとも…。


クレーターの縁にいる、よねの様子が明らかにおかしい。
虚ろな目で何やら呟きながら九頭に近づいていく、よね。
ひとみは校舎の上に視線を向けた。少女の咲かせた花で一部倒壊した校舎の屋上。
フェンスから身を乗り出すようにしてこちらの様子を伺う人影…いや最早人から解離した姿の化け物がいる。
ひとみは直感的にそれが米綾和であることを理解した。


彼自ら進んで九頭に従った為か、あるいは護国天使の制御に必要だったためか米綾和は九頭の洗脳を受けてはいなかった。
前にフルムーンの触手で彼の精神に触れた時の印象からも、ひとみはそれを感じていた。
だが、ひとみは九頭の精神の中に米綾和の想いを見た。

米綾和はあまりにも九頭の近くに居過ぎたのだ。
そして大切なものを『守りたい』という九頭に共通する意識も強すぎた。
今や彼の精神は九頭に引き摺られ、完全にシンクロしている。身体と能力の変異はその影響…。
よねの身に起こっている異変もそれに関係している可能性が高い。
どちらにしろ理性を失った米綾和の存在は九頭に『死』を与えたいひとみの邪魔になる。

ひとみは乱立する水道管の上で力尽きた柚木美都留を指差しながら大谷に声をかけた。


「大谷さん…あの子のことお願いね。私はよね君をなんとかするわ…!」

157 :佐藤ひとみ ◆tGLUbl280s :2010/07/01(木) 03:25:04 0
屋上で紫色の血管を浮き出させながら涎を垂らし高笑いを続ける米綾和。
彼の背後に音も無く忍び寄ったフルムーンはケースの隙間から伸びる無数の触手を撓らせ彼の首に絡み付けた。

「外見通り頭の中身も退化したらしいわね…!馬鹿みたいに笑い転げて…精神がガラ空きよ!!」

ひとみは米綾和の精神に入り込み、彼がよねの精神をコントロールしていることを把握した。
そして精神干渉の続く10秒の時間をかけて彼の精神を支配する。
精神を乗っ取られ身体を操られた彼は屋上のフェンスを乗り越えて校舎の淵から下に向かって身を躍らせた。
暫しの滞空時間の後、もんどり打って地面に叩きつけられる米綾和。
だが化け物と化した彼は3階建ての校舎の屋上から地面に落ちたくらいでは死ねない。

「うおぉぉおおお…これしきのことで私は死なんぞぉ…九頭様…九頭様ぁ…いひひひひひ…」

呻き声と咆哮を上げて起き上がろうとする彼を、フルムーンがピアノ線を編み上げた堅さの触手を巻きつけ拘束する。
触手の先端を刃物状に変化させ楔のように地面に打ち込み、触手を切り離す。

ひとみは米綾和が動きを封じられたことを確認すると、再生した触手を地面を這わせるように伸ばし
九頭に気づかれぬよう、よねの足首に巻きつけ彼の精神に呼びかけた。


「よね君…!聞こえてる?こんな時に何やってんのよッ!!しっかりしなさいッッ!
だからあんたはガキだって言うのよ!
あんたをコントロールしている精神の糸はあんたがその気になれば直ぐに断ち切れるくらい弱くなっている!
いつまでも父親に依存してるんじゃないッ!
早く正気に戻りなさい!
あんたの父親がああなったのは、元はと言えばあんたを守る為だったのよ。
あんたはもう自分の身は自分で守れるでしょう?!
さっさと目を覚まして自分の運命に決着をつけるのよッ!!」


【大谷さん柚木君救出を丸投げ、よね君に脳内もしもし、佐藤の現在の立ち位置グラウンド上です】

>>147(ダイヤブロックみたく組み立て式で形と能力が変化するスタンドとか面白いかもしれないですね〜)

158 :大谷杉松 ◆vReXCpsNBKcm :2010/07/01(木) 07:54:14 0
>「Sum41…この流砂は…炎上する…」

「な…どうしたよね、何があったんだ!?」

よねの様子がおかしい、流砂を動かしさらには中に柚木もいるのに流砂を炎上させた
九頭にもあまりダメージは無く、フラフラと火の中へ進むよね
そこへ精神世界から返ってきた佐藤 佐藤はよねのおかしくなった理由が解っているようで大谷に話しかけてくる

>「大谷さん…あの子のことお願いね。私はよね君をなんとかするわ…!」

「あれは…柚木!? 了解した、よねは任せたぞ」

佐藤の指差す先には、徳井がつくったパイプジャングルジムに倒れこむ柚木、
このままでは九頭が手を下さなくとも焼き柚木になってしまうかもしれない
柚木は元九頭の仲間、しかし今はこちらの仲間なのである
裏切る可能性だって0では無い しかしそれだから仲間を見捨てる理由にはならない

「さぁ助けに行くぞスマートガントレット、もう何も気にするものは無い!」
『ミンナスクッテアゲマショウ ダレヒトリシナセハシナイワ』

スマートガントレットの能力は「再現」する能力、「時間を戻す」能力ではない
そのため「飛び移った事」を再現したら、体力の減っている柚木には大きなダメージになってしまう
大谷は直接柚木を助けに行く、道中に九頭の邪魔があったとしてもだ

159 :生天目&柚木 ◆BhCiwB2SCaJ5 :2010/07/01(木) 12:46:33 0
>152(荻原さん)
>「このままじゃやばいぞ!ステレオポニー、あの子の攻撃を止めなくちゃ!」
その荻原の言葉を聞いたあとステレオポニーは吹き飛ばされた。

九頭から黒い光の衝撃波が噴き出しその場にいた一同は吹き飛ばされたのだ(>151)

「あれ?荻原さんは!?」
ステレオポニーは生天目が潜む木陰辺りまで飛ばされていた。
「おかへりなさい」
生天目は例の髪の毛先から心意気まで抜け切ったような顔でジュースを飲んでいた。
学校の近くには古い駄菓子屋があるみたいだった。生天目の足元にはお菓子のカスが沢山落ちている。

「くってたのか…」
ステレオポニーは驚愕した。

生天目は口をもごもごさせながらゆっくりお菓子を食べている。


あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ(←壁)


>「ふふふ、この私が!炎ごときで焼かれると思ったか!」
九頭龍一は重力球の上で高々と笑っている。
>「でかしたぞ、綾和!天輪は失ったがこれでまた護国天使になれる!
>さあ綾和の息子よ!その能力で私を書き換え、護国天使とするのだ!」

「…(能力で書き換える?そんなことをしたら九頭は半永久的に護国天使になってしまうかも知れない)」
多分、風になった秋名のように未来永劫天使と化してしまうことだろう。
損傷して不安定になった天使のリングを自ら解除したのもこれを見通してのことだったのだろうか。

「ソフトクリームにでも…書き換えてあげればよいのに…」
とジャングルジムのあまりの暑さに柚木は弱弱しくひとりごちる。

>「大谷さん…あの子のことお願いね。私はよね君をなんとかするわ…!」
>「さぁ助けに行くぞスマートガントレット、もう何も気にするものは無い!」
>『ミンナスクッテアゲマショウ ダレヒトリシナセハシナイワ』

遠くから佐藤と大谷とスマートガントレットの会話が聞こえる。柚木を救出するつもりらしい。

「…大谷…くるな…あぶない…」
柚木は大谷の身を案じつつ、水道管の上に引っかかっているように寝転がっていたので管内を通る水音を感じた。
「これだ…」
柚木はオズモールでパイプをグネらせる。柚木のスタンドはエネルギー切れとは言え人以上の力は残っているのだ。
オズモールはパイプを飴細工のように、くにゃっと曲げると燃え盛る大地に水を噴出させ九頭たちと大谷の間に水蒸気の壁を作る。
これで少しのかく乱と時間稼ぎにはなるだろう。

【ステレオポニー荻原さんと離れ離れ。柚木。九頭さんと大谷さんの間に水蒸気の煙幕を作る】

160 :徳井一樹 ◆MnJrk02a/Yx. :2010/07/01(木) 23:27:49 0
九頭の放った衝撃波は一帯にいた者全てを吹き飛ばしただろう。
水道管ジャングルは中身がスカスカなのが幸いしてか歪んだり曲がったりする程度で大した損害はなかった。
更に言えばよねが流砂を炎上させ衝撃波と炎のミンチサンド。
皆、この衝撃波と炎に対する何かしらの防御策を講じていることだろう。
無論徳井も講じていた。九頭への接近と、防御を兼ねた『防御策』を。

「セイヴ・フェリス…『ノーバディ・バット・ミー』
体をスライス状にバラして水道管内に侵入した…ガボガボ……
そして…御前等周辺の炎を水道管内の水で消化させガボガボてもらってる……」

水道管がもし透明なら見ることが出来ただろう。何十もの肉片が水流に身を任せ移動していることに。
流れに身を任せてたら好きなところにいけないだろう、というツッコミがあるかもしれない。
しかし水の流れは御前等に託された歯車で随時変えることができ、好きな場所に移動することができるのだ。
スタンドエネルギーが尽き炎の鉄板焼きに苦しんでいるだろう御前等周辺に水道管内の水を放水して消化中。

順調に移動し、九頭のいる位置へと後十数メートルという距離だった。
水道管内から笑い声とともに反響する声が聞こえたのは。

>「ふふふ、この私が!炎ごときで焼かれると思ったか!」
>「でかしたぞ、綾和!天輪は失ったがこれでまた護国天使になれる!
>さあ綾和の息子よ!その能力で私を書き換え、護国天使とするのだ!」

どうやらカズの能力によってよねは操られている、とのことらしい。
流砂を炎上させたときは、

『帽子インテリがよぉおおそっから消化活動に入って消防士になるための練習すんのか?オメーはよぉおおお』

だとか

『どーーやってイジめてやろうかな!どおれがいい?ねえよねちゃーーーん』

などと半分本気で考えていた徳井だったのである。
今まで文句言ってごめんね。と心のなかで軽く謝ると
徳井は水道管内から歯車を貼り付け、その構造を変容させた。

「御前等の“アンバーワールド”の能力…パイプジャングルの構造を組み替えさせてガボゴボ」

九頭とよねの間に割って入るかのように、水道管が上空から突き刺すように飛び出し
瞬く間に九頭とよねの間に壁をつくったのだった。

「天使ヅラには戻させねーぜ……オメーはそのバケモンが一番似合ってる」

九頭とよねのいる位置から少し離れた水道管の上で肉片だった徳井が再構築されていく。
肉片の状態とはいえずっと水の中にいたためぐっしょりと濡れているが、本人はまったく気にしていない。
水道管の壁も数秒ともたないだろうが書き換えを数秒間遮るには十分。
あとはよねと九頭を自分が引き離すだけだった。その時だろうか、佐藤の声が聞こえたのは。

>「よね君…!聞こえてる?こんな時に何やってんのよッ!!しっかりしなさいッッ!
>だからあんたはガキだって言うのよ!
>あんたをコントロールしている精神の糸はあんたがその気になれば直ぐに断ち切れるくらい弱くなっている!
>いつまでも父親に依存してるんじゃないッ!
>早く正気に戻りなさい!
>あんたの父親がああなったのは、元はと言えばあんたを守る為だったのよ。
>あんたはもう自分の身は自分で守れるでしょう?!
>さっさと目を覚まして自分の運命に決着をつけるのよッ!!」

「おやおやおやおや…その様子、佐藤さんにやらちゃったようだな。残るかな、俺の説教の分がよ」

161 :よね ◆0jgpnDC/HQ :2010/07/01(木) 23:34:19 P
/ひとみは米綾和が動きを封じられたことを確認すると、再生した触手を地面を這わせるように伸ばし

『ひゃはははっ!佐藤とか言ったっけなあ…?精神攻撃か…フヘヘ…それで九頭様の中まで覗いたのかァ…クヒッ』

動けないまま、体中から血を流しつつもゲラゲラと笑い続ける綾和。
その眼は狂気の光で満たされ、真っ直ぐに九頭の方へと向けられていた。
                                 "トリガー"
『履き違えるなあ…佐藤サンよぉ…フヒヒ…私はただ引き金を引いただけだよ…?
 私にはもはやスタンドの力などない…わかるか…?言っている意味が…
 "引き金を引かれた銃から弾き出された弾丸"は止められない…クケケ…』

弾丸…即ちGDFFの事だ。
そう、GDFFは既に綾和のコントロールを離れ、ただただ九頭龍一という唯一の存在の為にのみ
その自らの能力を自分自身で使うスタンドになっていたのだった。

『スタンドには精神攻撃はできませんねえ…ウヒ…ウヒヒ…私を殺しますか?それでもあの怪物は止められませんよ…
 私の使命は…九頭様から直々に与えられた命令はお前たち九頭様に楯突くスタンド使いを一人でも減らすことなのですよ…ケケケ…
 さあッ!米コウタを!我が呪われし息子を殺せェッ!キサマらの手でッ!ギャハハハハハハハハッ!!』

綾和は狂気に孕んだ目でよねを見た。
そこには完全にGDFFのコントロール化にあるよねの姿。

/さっさと目を覚まして自分の運命に決着をつけるのよッ!!」

(あ…だ…れだっけ…声…さ…とう…?しゅがあ…?)

佐藤の呼びかけは確かによねに届いている。
だが届いてはいるもののGDFFの力によって正確な思考は許されない。
ましてや意識がわずかに残っているだけでも奇跡なのだ。

まるでよね自身が佐藤を拒絶するように佐藤の触手をぶち切った。

/水道管の壁も数秒ともたないだろうが書き換えを数秒間遮るには十分。

「邪魔だァッ…九頭様への道を…遮るなァァッ…!」

それはGDFFの声。水道管をGDFF自身の力でぶち壊す。
幾重にも重なったパイプジャングルを全て抜けると目の前に九頭龍一の姿があった。

そうして九頭の真っ赤な、そして熱い肉体に手を触れるよね。
本来ならば高熱で触るのは躊躇する様な物だが、GDFFはよねに感覚すらも与えない。

「Sum41…九頭龍一は…護国天使となる…」

その様子を見ていた綾和はニヤリと笑うもその笑みはすぐに消えさった。
九頭龍一に全く変化が無いのだ。
それは至極当然の事であった。

Sum41の能力は本来様々なプロセスを踏んで効果を発揮するもの。
流砂を炎上させた時はよねの既知の知識を使ったが、
今回に限ってはよねでさえも書き換える術を知らなかった。

「あ…ああ?…九頭…様…?」

だが、よねはいまだGDFFに操られたままだ。
どの道、よねの能力は九頭にとって大きなアドバンテージとなるだろう。

162 :荻原秋冬◇6J1m09mANS :2010/07/03(土) 01:34:18 0
>>151

(うぅぅ…いったい…なにが…)
九頭龍一の放った衝撃波でいつの間にかクレーターの外に吹っ飛ばされている荻原。


>「Sum41…この流砂は…炎上する…」
さらにクレーターの中は灼熱の業火に包まれた。
こんな業火の中では植物を生み出すプラントアワーの能力が使えない。
ならどうすればいいか。
近くの大木の根っこを成長させて、九頭龍一を攻撃するか?
それではだめだ。
周りにそれらしき大木は見当たらないし、小さい木ではいくら根っこを伸ばしても
届かない…

(そういえば…さっきの衝撃波でステレオポニーも吹っ飛ばされたはずだ。
どこへいったんだ?)
辺りをキョロキョロ見回すと……見つけた。
ステレオポニーは木陰のところへ飛ばされていて、そこには生天目もいた。
二人とも無事かどうか確認するために急いで近づいたが…

「おーい、二人とも大…丈…夫…か……?」
声がどんどんトーンダウンしていく…
それもそうだ…
荻原が見たのは、菓子やジュースを飲んですっかり落ち着いている生天目だった。
いままで保たれていた熱が一気に冷えていく感じだ。
ある意味、この状況の中でお菓子を食べていられる生天目もすごいと思うが…

「あ…あの…有葵……ちゃん?」
もはや何といっていいのかわからなくなった荻原だった。

163 :生天目有葵 ◆BhCiwB2SCaJ5 :2010/07/03(土) 16:00:05 0
九頭龍一。護国天使。自由を失った者。
狩る者と狩られる者。仲間と仲間以外の者たち。
仲間をつくるということは仲間以外は排斥するということ。

「来るもの拒まず去るもの逃がさず…。そういう者に私はなりたい…」
それは狩る者としての信条。
終焉の果てに一筋の希望の光を求め草村慎吾朗はプールサイドに立っていた。
荻原秋冬に締め付けられた首はまだひりひりとして痛んだが吹き荒ぶ風は心地よい。

>162
「悪魔が一匹いるってことは他にも沢山いると思う?一匹いたら百匹いるってよく言うから」
九頭を遠くに見ながら生天目はステレオポニーに聞いてみた。

「それはゴキブリとかネズミ…」ステレオポニーは呆れている。

>「あ…あの…有葵……ちゃん?」
荻原はのんきにお菓子を食べている生天目にすっかり呆れて、かける言葉もないようだった。

灼熱地獄で戦っている九頭たちを見ながら生天目は荻原に問う。

「あのね…荻原さん。荻原さんに聞きたいことがあるんだけど荻原さんは九頭龍一のことを殺したいくらい憎いものなの?
それとも家族さえ返してもらえればそれでいい?お互いに戦う理由があるのだとしたらその理由をなくす事はできなくっても、
和らげることはできないものなの?」
生天目の口調は真剣そのものだったが口のまわりをチョコだらだった。

「ちょっと有葵が何を言いたいのかはわかりにくかったけど、
もう一度行こうよ荻原さん。九頭龍一のとこへ。そして決着をつけようぢゃないか」
ステレオポニーは荻原と共に水道の上を走っていく。
そこは柚木が出した水蒸気で死角になっているため容易に九頭に近づくことができた。

「みんながいるから怖くない!」
ステレオポニーは荻原に言う。ある意味、自分に言い聞かせてもいるのだろう。

164 :九頭龍一 ◆SM24/QbfAY :2010/07/03(土) 23:47:01 0
九頭は勝利を確信していた。
度重なる攻撃と崩落の為に天輪が崩壊し、自力では護国天使の形態を保てなくなっていた。
己が精神力のみで100を越えるスタンド使いの精神を束ねたが、安定するはずもなくその姿は天使とは遠い邪神の姿。
パワーは増したが特殊能力は使えず全体的なバランスも悪い。
精神に致命傷を負ったとなれば尚更である。
だが、それでも敗北は許されないのだ。
絶対的な使命感がその精神を支えていた。
そこへやってきたよねは綾和の最後の置き土産であるGDFFにより忠実な駒と化している。
そう、『書き換える』という光輪に代わる護国天使形成の力を持って。

護国天使にさえなれば精神の傷も、クレーターに渦巻く炎も、取り込むべき敵も全てを一蹴できるのだ。
その確信は慢心に繋がるとも知らずに。

頭上の水道管に引っかかる柚木。
そしてそれを救いに駆ける大谷。
炎に巻かれたといえどもそれを見逃す苦闘ではない。
本来ならばその拳の生み出す衝撃と爪が繰り出す真空の刃で無防備な二人を倒す事も出来ただろう。
例え水蒸気の壁で視界が遮られたとしても、攻撃を放てばその威力ゆえに当たらずとも落とす事はできた。
下は灼熱の火炎地獄である。
落としさえすれば二人は倒せた。
にも拘らず、護国天使にさえなれば、という思いが水蒸気の壁という僅かな障害を理由に攻撃を取り止めるに至ったのだ。

よねと己を遮るように繰り出された水道管の壁にとっても同様だった。
GDFFの、綾和の執念によりよね自身が壁を打ち破り現れたのだから。
「小虫どもが無駄な足掻きを!さあよね!」
あらゆる妨害を打ち破った今、高らかなる勝利宣言とも同義の言葉と共によねを促した。

>「Sum41…九頭龍一は…護国天使となる…」
「わっはっはっはっはっは!私は生き続ける!
あらゆるものを踏み躙り、その屍の頂点に立ち!守り続ける!!」
よねが打ち破った水道管から大量の水が噴出し周囲の紅蓮を鎮め大量の蒸気となって二人を包み込んだ。
その中で九頭は重力球を蹴り飛び上がる。

クレーター内は大量の蒸気で靄の海原となり、点在する島のように水道管ジャングルジムの頂点だけがその姿を見せていた。
靄の水面を打ち破るように飛び出る九頭龍一。
出てきた前にはステレオポニーと荻原。そして少しはなれたところに柚木と大谷。
お互いに全く不意の遭遇。
だがそんな事はどうでも良かった。
目に映るもの全てを打ち倒せばよいのだから!

「ふははは!まずはお前達か!死して我が糧となれ!!!」
飛び出したと同時に繰り出される異形の拳。
その拳に乗るのは明確な死を与える威力。
だが…ここに至りて九頭は初めて気がついた。
自分が護国天使ではなく、いまだ邪神九頭竜一という事に!
よねの書き換える能力が不発に終わったという事に!

如何に水蒸気に覆われ己の姿が確認できなかったとはいえ、それに気付かなかったのは肉体ではなく精神の傷によるところが大きいだろう。
水蒸気、水道管の壁、重力球、様々な攻撃。
全ては九頭を止めるには値わず、九頭は無駄な足掻きと断じた。
だがその一つ一つは決して無駄ではなかったのだ。
もし一つでも欠ければ書き換えの失敗に気付き、未だGDFFの支配下にあるよねを有効に使い別の手段を講じていただろうから。
しかしそれをせず、一人飛び出した九頭は何処までもただ一人、孤独な男なるが故に。
この慢心とそこから致命のミスへと至る為の一つも欠けてはならぬ階段だったのだから。

だからと言って放たれた拳は止まらない。
巨大な異形の拳撃が荻原とステレオポニーに迫る!
『あなた、お願い…!』
『お父さん!助けて!』
小さな、しかし確かな二つの声と共に!

165 :佐藤ひとみ ◆tGLUbl280s :2010/07/04(日) 02:48:15 0
>161
米綾和の支配を離れ自律意思を持つ自動操縦のスタンドと化したGDFF(グリーン・ディ・フォーム・フィナーレ)に取り付かれた、よね。
校舎の屋上から落ちワイヤー状の触手に身体を拘束された米綾和は血まみれの醜い身体を痙攣させ笑い続けている。

>『スタンドには精神攻撃はできませんねえ…ウヒ…ウヒヒ…私を殺しますか?それでもあの怪物は止められませんよ…
>私の使命は…九頭様から直々に与えられた命令はお前たち九頭様に楯突くスタンド使いを一人でも減らすことなのですよ…ケケケ…
>さあッ!米コウタを!我が呪われし息子を殺せェッ!キサマらの手でッ!ギャハハハハハハハハッ!!』

「ごちゃごちゃ煩いのよッ!!この化け物ッ!!」
佐藤ひとみは縛られたまま紫色の筋を浮き立たせて笑う米綾和の頭をパンプスのヒールで蹴り上げた。

ひとみの見たヴィジョンによると、米綾和が九頭龍一に共感し取り入った理由はよねとその母…家族を守りたかったから。
おそらくスタンドについて多少の知識を持っていた米綾和は息子にも能力の可能性を感じていた。
九頭の封じている『魔』は世を混沌に導き国を…世界を滅ぼす程の禍々しいパワーを持つ。
いずれ能力に目覚める息子を『魔』の齎す恐ろしい運命に巻き込みたくないという想い…。
『家族を守る』…という想いがひいては『国を守る』想いに繋がり九頭と結託するに至る。
『守る想い』こそが九頭龍一と米綾和の結びつきの原点。

「ベラベラと自分からスタンドの本質を話してくれるんだから世話ないわね!!
あんたも本当に愚かな男ねえ…『目的』が『手段』に呑み込まれて本当に守りたかったものを傷つけるなんてね!!」


言葉の置き土産を残し、ひとみは嗤う米綾和を放置してよねの方に向かって走った。
九頭の作ったクレーターは炎と水道管から噴き出す水蒸気で帳のような靄に覆われている。
しかしひとみの能力に煙幕は無意味。
ひとみはフルムーンの透視を使ってよねの間近に立つGDFFの後ろに迫る。
水蒸気の帳に紛れてGDFFの手足と首にフルムーンの触手を巻きつけ締め上げる。
ひとみの怒りと執念を乗せた触手は凄まじい勢いで成長しGDFFの全身を覆わんばかりだった。
GDFFは触手に手足と胴体を固定され首を絞められ苦悶の表情を浮かべるも抵抗できない。


「確かにスタンドに精神攻撃は効かないわ…でもスタンドはスタンドを攻撃できる!
米綾和…あんたの一人歩きしてるスタンドと私のフルムーンのパワーは互角……なら私にもGDFFを倒すことはできる!
よね君…!あんたに私の邪魔はさせない!今殺さなきゃ九頭は私の手に入らない!!」

フルムーンを攻撃に使っている間は精神感応は使えない。
ひとみはよねの前に歩を進め彼に向かって怒鳴り声に近い声で呼びかけた。

「よね君!!いつまでも父親に甘えてないでさっさと目を覚ましたらどうなのッ!!
だから年下って嫌なのよッ!手間ばかり掛かって付き合っても全然こっちにメリットが無いんだから…!
……早く正気に戻らないとあんたの父親のスタンドを殺すわよ!!
あんたそれで納得できるのッ?!
『別れ』には『納得』が必要よ!納得の無い別れは後々面倒ばかり残すわ!
あんたが正気を失ってるうちに私が父親を殺して…あんた後でそれを聞いて本当に納得できるのッ?!」

精神を操られているよねに言葉の呼びかけが通じる可能性は低い。
よねの万能の力を九頭の為に使わせてはならない。
九頭に死を与えたい…九頭を殺さなければ九頭の特別な存在にはなれない…そのことにかけてだけは、ひとみは必死だった。


【フルムーンでGDFFの首締め攻撃、よね君に怒鳴りつけてお説教、佐藤はよね君の目の前にいます】

166 :徳井一樹 ◆MnJrk02a/Yx. :2010/07/04(日) 11:28:03 0

GDFFの首に触手が絡み付いて締め上げられているのでどうしようか考えていたところ、その考えは吹き飛んだ。
クレーター内が蒸気の海に包まれ霞まみれで何も見えない…
が、徳井は佐藤を除く人間よりも多少、マシだった。
徳井の右眼球部のみはパイプジャングルの頂点にありそこから全てを眺望出来たから。
といってもやはり下は少し見づらい。あとは地中を移動するときのように反響する音で状況を知る他なかった。

そのとき一瞬見えた。霞を打ち払い飛び出した邪心九頭が。
荻原とストレオポニーの下へ疾走し、その拳を放とうとしている。

>「ふははは!まずはお前達か!死して我が糧となれ!!!」

繰り出される異形の拳。
だがタイミングが良かった。徳井視点ではあるが攻撃を一発、放つ余裕が荻原にはあるはず。
そしてやはり、周知の事実だがあの九頭の皮膚には半端な攻撃では傷一つつかない。
あの鎧の皮膚を看破しなければ、どうにもならないかもしれない。

「俺のスタンドなら…『パンチ一発』…風穴を…荻原さんの攻撃のサポートが出来るかもしれねえ…
セイヴ・フェリス…スタンドエネルギーはほぼスッカラカンだけどよぉ……!」

能力で万物の物体をこじあける徳井のスタンドなら、お膳立てに相応しい能力。
徳井が開けた風穴に荻原が渾身の攻撃を振りかざせば倒せるかもしれない。
ただ、あっちへ到着する時間がほとんど残されていない。それが唯一にして最大の難関。

「チクショウっ…出来るか…どうかっ…!?いや…出来るか…どうかじゃねえっ…やるっ…!
やらなくてどうするっ……!加速しろ……加速しろ……!加速しろっ……!!
繋げろっ!!切り開けっ……!!皆のためだけってことじゃなく………何よりも俺のために…!」

右腕が切り離され水道管を切開しさっきと同じ手法で荻原の下へ向かう。
先程と違うのは右眼球部が行き先をナビゲートしていることだろう。
残った徳井は左腕で歯車を貼り付け出力した。中の流れる水の速度を極限にまで上昇させるように、と。
間に合うか?間に合わないか?わからない。徳井にはわからない。
ただここで何かせずに終わってしまうほうがよほど情けない。恥知らずだ。

水道管シルクロードを抜け向かった先には九頭が攻撃する途中。
スタンドエネルギーはもう限界、気力で持っている状態だったがそれでも一矢報いようと拳を繰り出す。
今までの運命の決着…そして次へ繋ぐために。

「九頭ォオオオーーーーッ!!」

無心の叫び!徳井の右腕が水道管を飛び出し九頭の胸元を掠めた。
命中させることは叶わなかった。命中させる寸前でスタンドエネルギーは尽き…右腕は徳井の下へ帰ったからだ。
掠めた…といっても、当たったのだ。当たった…攻撃は間違いなく当たった。
10センチにも満たない小さな隙間…ヒビ…その程度だが…徳井は道をこじ開けた。
それだけでなく、周囲のパイプを切開し火を消化…大量の水が荻原の周囲に溢れている。
後者は偶然だったが荻原の植物も成長させ易いかもしれない。

スタンド能力で!道を切り開いたッ!

「切り開いた…!こじ開けた……扉を…!差し込んだぜ……一条の光……!
俺たちへ救いの手を差し伸べてくれる一本のタイトロープだッ!
受け取ってくれ……!このか弱いヒモを…!繋いでくれ…!勝利へ…明日へっ……!」

167 :よね ◆0jgpnDC/HQ :2010/07/04(日) 21:45:23 P
/佐藤ひとみは縛られたまま紫色の筋を浮き立たせて笑う米綾和の頭をパンプスのヒールで蹴り上げた。

『きひひひひ…痛いねぇ…だがよぉ〜見えたぜェ…?』

下品な笑いを繰り返す綾和。どうやら完全に綾和の自我は無くなっているようだ。

/『別れ』には『納得』が必要よ!納得の無い別れは後々面倒ばかり残すわ!

(…な…とく?なっとく…?…納得…!?)

まるで深い…マリアナ海溝よりも深いほどの眠りから覚めたようによねは自分の中で叫ぶ。
GDFFの力が佐藤のスタンドによって弱められたのだ。

「納得…そう…納得ッ!こんな理不尽なことがあるかッ!?いいや!納得できないねッ!」

よねはその眼に光を宿すと、キッとGDFFの方を睨みつけた。

「スタンドであるお前にこんな事を言っても分らないとは思う…だが言わせてもらおうッ!
 過去に縋りつくこともないッ!未来へ希望を持つこともないッ!
 ただ現在という一瞬を大事にすると決めるッ!それが"納得する"ということだッ!!」

GDFFはその牙を突きたてて何度も何度も雄叫びを上げる。
その雄叫びを聞くごとによねの頭が刺激されるが、もはやそれにも屈しなかった。

「佐藤さんッ!そいつはもはやカズとは関係ないものですッ!
 そのままお願いします!アンテロスの二の舞にならないためにもッ!!」

168 :佐藤ひとみ ◆tGLUbl280s :2010/07/05(月) 22:05:40 0
>167
GDFF(グリーン・ディ・フォーム・フィナーレ)の全身をフルムーンの触手で締め上げ、よねを挑発するひとみ。
よねに反応が無ければ彼の首も触手で締めて意識を失わせてしまおう……
そう考えてフルムーンの抜けた右目の穴からも触手を覗かせて、よねの表情を伺う。
フルムーンの触手がひときわ強くGDFFの首を締め上げた瞬間、虚ろだった目に光が戻り言葉を発する、よね。

>「納得…そう…納得ッ!こんな理不尽なことがあるかッ!?いいや!納得できないねッ!」

フルムーンの攻撃は無駄ではなかったのだ。GDFFの精神コントロール力は攻撃を受けたことで弱体化している。
よねは弱まった精神支配の糸を断ち切ろうとしている。
GDFFは自分を生み出した男同様の筋と血管だらけの醜い身体を捩って咆哮を上げ、よねの精神を支配下に戻そうと足掻く。
化け物が咆哮を上げる度によねの目の光が失われそうになるが、青年とスタンドの精神力の攻防はやがてよねの方に軍配が上がる。

>「佐藤さんッ!そいつはもはやカズとは関係ないものですッ!
>そのままお願いします!アンテロスの二の舞にならないためにもッ!!」

よねはキッパリとした口調でひとみに訴えかける。
血の力による理解か…それとも支配された精神を伝って知ったものなのか…?
よねはGDFFが父の支配を離れた完全自動操縦のスタンドと化したことを理解している。

「『カズとは関係の無いもの』…?
あいつがトリガーがどうとか『"弾き出された弾丸"は止められない』なんて言ってた意味はそれね…。
米綾和の弾き出したスタンド…GDFFは『本体を持たない』"スタンドの為のスタンド"…!
なら遠慮はいらないわ……!!
主のいない暴走スタンドは処分しなきゃならないわね……!!」

ひとみはGDFFの首に巻きつけているワイヤー状の触手を一つに纏め、首に触れる側を薄く鋭い刃物に変化させた。
鋼のように堅くロープのように撓るしなやかな刃に変化した触手は締め上げる力に沿ってGDFFの首にギリギリと食い込み
フルムーンが一際強く力を加えた途端、何かが空に飛んだ。
スタンドの首から噴き出す血の様なドス黒い物質……締め上げる対象を失いクルンと空を巻く触手…。
次の瞬間、地面に紫色の血管を浮き立たせたスタンドの頭部が転がっていた。
手足を拘束していた触手を切ると、首を失ったスタンドの身体もドサリと地面に倒れる。


「徳井君!そこで見てるなら手を貸して!さっさとコイツに止めを刺してくれない?
本体の居ないスタンドでも再起不能になるくらいにバラバラに刻んでやって!」

湯気の海に島のように突き出た水道管の上にいる徳井にGDFFの始末を丸投げして
ひとみはよねに語りかける。

「よね君…残念だけど、あんたの父親もうダメかもしれないわ…。
私は九頭の中であんたの父親の精神を見たわ。あんたの父親…米綾和の精神は九頭と完全にシンクロしている。
おそらく私の精神ダイブを使っても二人の精神を引き剥がすのは無理よ。
このままだと首尾よく九頭を倒せても…米綾和の精神は九頭の精神に吸収されたまま消滅するかも知れない。
私はこれ以上この件であんたを手助け出来ないし、する気も無い。
あんた自身で『納得』できる結末を探すことね。」

【GDFF首チョンパ。徳井さんに止めを丸投げ】

169 :柚木美都留 ◆BhCiwB2SCaJ5 :2010/07/06(火) 18:05:57 0
巨大な異形の拳撃が荻原とステレオポニーに迫る。

その時、一陣の風がふいた。拳撃による風圧か寒暖差による上昇気流か…。
風で押し分けられた水蒸気の合間に九頭と荻原たちの姿を、しっかりととらえる柚木。

「うっわああああ!!」
柚木は本当に最後の重力弾をつくるとオズモールを使い九頭に投げつけた。
ボールほどの大きさの重力弾を一つ。

怨みを晴らすためではなくて…人を救うために…。

柚木の投げつけた重力弾は偶然か。徳井一樹の傷つけた10センチほどの傷に衝突する。
みなの束ねた思いが偶然を…いや奇跡を生み出したのだろうか。
否、これは奇跡ではなく必然。祟高な思いが今ここで一つになり道をこじ開けようとしているのだ。

共通した思いが同じ頂へと導いている。

重力弾の衝撃で亀裂をおび更に広がる九頭の傷口。そして力尽きる柚木。
衝突した重力弾は消えてしまったがそのあとには大きな傷口を残していた。

【柚木。徳井さんが九頭さんにつけた傷を重力弾を衝突させて大きくする】

170 :荻原秋冬◇6J1m09mANS :2010/07/06(火) 22:18:05 0
>>163

>「あのね…荻原さん。荻原さんに聞きたいことがあるんだけど荻原さんは九頭龍一のことを殺したいくらい憎いものなの?
>それとも家族さえ返してもらえればそれでいい?お互いに戦う理由があるのだとしたらその理由をなくす事はできなくっても、
>和らげることはできないものなの?」

荻原は生天目のいうことに答えることができなかった。
たしかに、九頭龍一のことを殺したいくらい憎いのかというと、正直そうでもない。
最初は妻子さえ戻ってくればあとはジッと身を潜めようと考えていた。

卑怯者の考え……そういってしまえばそれだけのことだが…
この戦いの中で荻原は考えを徐々に変えていった。
不思議な運命に導かれ、集まった異能者たち…
そのなかで自分と同じ境遇のなかにいるものと接触したとき、
荻原は思った。
九頭龍一をこのまま野放しにしてはいけない。
自分と同じ悲しみや違う境遇を持つものを、永遠に繰り返して増やすわけにはいかない。

(……はぁ…まさかこんな子供にそういわれるとは思っても見なかったな。
たしかに、いうことは正論だ……
口の周りについているチョコレートさえなければ完璧だったが…)

>「ちょっと有葵が何を言いたいのかはわかりにくかったけど、
>もう一度行こうよ荻原さん。九頭龍一のとこへ。そして決着をつけようぢゃないか」

「ああ…行こう……こんどこそ…命を捨てる覚悟でやつと戦う…決着をつける!」

九頭龍一に近づくために水道管を利用して走る。
しかし回りは水蒸気で充満しているため、九頭を見つけるのが少々困難だった。
もっと高いところへいくため水道管ジャングルの頂上近くまで行った。

>>164
「ふははは!まずはお前達か!死して我が糧となれ!!!」
邪神となった九頭龍一が目の前に、異形の形となっている拳が荻原たちを襲ったのだ。

「まずい!避けている暇がない!」
いきなり絶体絶命か……そう思ったその瞬間、奇跡が起こった。
水道管の一部が破裂して、そこからは人間の右手が飛び出し九頭龍一に当たり、10cm以下の
小さな穴を開けたのだ。
そしてうれしいことに水道管が破裂したことで水が九頭にかかったのだ。
これなら九頭に直接攻撃するため、プラントアワーで殴れば植物が育ちやすくなる。

>>169
さらに別の方角からボール並みの大きさの重力弾も九頭に当たりさらに傷が大きくなっていった。
今だ!今この瞬間こそ最大のチャンスだ!
妻子を助けるため…
そして、世界を救うためにこの瞬間を逃してはならない。
荻原は一気に九頭に近づきプラントアワーで攻撃を仕掛けた。

「いくぞ九頭龍一!!オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラッ!!」
プラントアワーのラッシュ攻撃で九頭の傷口の外側および内側を中心に攻撃した…

171 :九頭龍一 ◆SM24/QbfAY :2010/07/06(火) 23:21:36 0
繰り出された拳がステレオポニーと荻原に到達するまでのほんの一瞬。
凝縮した時間感覚の中、激しい攻防が行われた。

水道管から飛び出るという埒外の方法で手首を飛ばし攻撃をする徳井。
スタンドエネルギーは既に尽きていたにも拘らず、ここに到達できたのはその執念と御前等から託された力。
消えかけていた拳はそれでも消える寸前に邪神九頭の胸を掠めていたのだ。
数多の攻撃を受け、灼熱の炎に炙られて尚その身を守ってきた外角がほんの僅か…
しかし確かに切開をしたのだ。
だがそれでもまだ足りない。

それを補ったのは柚木。
子虫と呼ばれ、殆ど眼中にされなかった柚木の放った重力球。
憎しみでなく、怒りでもなく、人を救う為。
その思いが奇蹟という必然を生み出した。
重力球は僅かに切開された邪神九頭の胸にめり込むとその力を斥力に変換させたのだ。
そう僅かにこじ開けられた扉を押し広げ、勝利への道を開いたのだ。

邪神九頭の胸は広がり、その内部に九頭龍一本体の肉体が顕になっていた。
そしてその衝撃ゆえに拳の軌道はズレ、荻原のコメカミに傷を残すのみで通り過ぎていってしまった。
>「いくぞ九頭龍一!!オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラッ!!」
「うおおおおおおおおおおおおお!!!!!」
荻原の、プラントアワーのラッシュが直接九頭龍一の肉体に、そして邪神九頭の内部に叩き込まれた!

数十発を浴び邪神九頭隆一は力なく水道管のジャングルジムから落下していく。

その巨体は水の溜まるクレーターの中心に落ち、大きな水柱をあげる。
「ふふふふ…そうか…『今』だったのか。
ようやく『到達』したのか…この世代で…!」
致命傷を負い落ちたというのに九頭の口からもれ出る言葉には喜びすら混じっている。
しかしそこに近づく事は誰にもできない。

グラウンドは程よく耕され豊に水を与えられた極上の畑となっていたのだ。
そして打ち込まれたプラントアワーの能力。
邪神九頭の圧倒的なパワー。
それがもたらす結果は…

邪神九頭龍一を苗床にした植物は驚くべきスピードで育ち根を張り幹を伸ばしていく。
グラウンドにいる者たちを飲み込む事無く、むしろ優しく包み込み押し上げていく。
1分に満たない時間でグラウンドは全て飲み込まれ、信じられないほどの巨木となっていた。

葉は生い茂り、満開の桜が風に吹かれ辺りを舞う。
そして、ところどころになる巨大な瓢箪のような実。
実は落ちると自然に割れ、その中からは今まで取り込まれていたスタンド使いたちが出てきたのだ。
その中には荻原の妻子が、そして徳井の両親も含まれていた。
説明を求められれば「九頭と離れ戻る事を望んだものは実になって落ちてくる」と言うだろう。

邪神九頭は様々な作用の結果、倒され巨木へと成ったのだ。
巨大並木の周囲を歩けば見つけられるだろう。
幹から浮かび上がるような九頭龍一の姿が。
その顔は満足気であり、ゆっくりと目が開くのを…

172 :よね ◆0jgpnDC/HQ :2010/07/07(水) 15:53:39 P
校庭に、
  巨大な、
    まるで天使の様な、
          美しい"木"が生えた。

本当に一瞬。風が吹き抜けるのとほぼ同じ速度。
その速さで木は成長していた。少なくともよねはそう記憶している。

「これが…日本を、この日出ずる国を最期まで護った漢の安息…」

それは神々しく、その木漏れ日は闘い疲れた人間たちを癒していた。
よねはしばらくその偉大で壮大な情景を眺めているとふいに我に帰った。

走り出した。米綾和を目掛けて。心配ではない。なにか気がかりだったのだ。心配ではない。

だが要らぬ心配であった。綾和は自らの足で立ち上がり九頭を、その巨大な木をよねと同じように眺めていた。

『九頭龍一…私は貴方の精神、過去を覗いた。その代償が私の能力の喪失だと言うならばそれはあまりにも軽すぎる罰だ…
 貴方はこの国をずっと護っていたのか。ただこの国のためだけに。人民のヒエラルキーの頂点などではない、自分の信念の為に』

綾和は悲しそうに巨木へそう語りかけた。

「カズ…貴方は間違っていなかった。間違いではない悪…この世界自身が抱える矛盾を九頭は…」

よねは自身がかけていたメガネを綾和へと手渡した。
綾和は穏やかな表情でそれを受け取り、よねに感謝の言葉を述べた。

『ああ、よく見える…こんなに深い皺を刻んでいたのか…貴方は。疲れただろう?私も疲れた…
 まるでこの十年間、永遠に世界を歩き続けたように疲れた…少しその根元で私を眠らせてくれるかい、九頭龍一…?』

綾和はふらついた足取りで巨木へと向かうと幹に縋り付くように眠った。深く眠った。
その寝顔は完全に安息を約束された顔であり、先刻まで闘っていたとは思えないほど穏やかな顔だった。

よねがウロウロと巨木の周りを歩いていると、幹に埋まるようにいる九頭を見つけた。
それはある意味当然の結果だし、よねにとって容易に推測できる事実だった。

「九頭龍一…一つだけ聞かしてください。貴方は一体『何』に『到達』したのですか?どうして貴方は…」

173 :柚木美都留 ◆BhCiwB2SCaJ5 :2010/07/08(木) 14:42:31 0
「九頭龍一…。貴方は狂いながらも人々を愛していたのですね…」
巨木と化した九頭の大枝に抱かれながら柚木美都留は涙を流している。

錯覚か。柚木は桜の木の下に死んでしまった両親が微笑んでいる姿を見た。
だがそれはよく見れば、ひょこひょこと近づいてくる生天目有葵。

「きれい…。でもなんだかよくわかんないけど…。
とってもきれいなのに…とってもかなしい気持ちになる…」
生天目はぽろぽろと涙をこぼしている。

「やったね!荻原さん!たすかったんだよ!有葵!」
ステレオポニーは巨木のまわりをくるくると飛んだりはねたりして踊っていた。

柚木は、うとうとと眠りかけたが、まだ眠れないのだと自分に言い聞かせると枝から飛び下りて大地に立った。

「終わったのですね九頭さん。…いえ…貴方と留流家の人たちが終わらせてくれたのですね」
再び九頭の前に立つ柚木美都留。その目は涙で兎のように真っ赤だったが九頭の前では弱い姿は見せまいと涙は拭っている。

「守りたいという気持ち…救いたいという気持ち…
ここにいるみんなが最初からもっていた気持ちをボクもやっと共有することが出来ました。
怒りや憎しみだけでは到達できない真実の想いを共有することができたんです。
そう…。国を救おうとしていた貴方とボクたちの到達すべき理想は最初から一つだったのですね。
…だからボクは貴方にはなれないけれど、あなたの想いを受け取ってこの国を守ってみせます」

巨木のまわりに気高い風が吹く。

桜の花びらたちは高い空へと美しくどこまでもどこまでも舞い上がっていく。

174 :佐藤ひとみ ◆tGLUbl280s :2010/07/08(木) 20:57:33 0
>171
ひとみがよねに語る言葉が途切れると同時に九頭龍一に打ち込まれる荻原のラッシュ。
GDFFの洗脳を脱したよねが能力を解除し炎を消していたクレーターは水道管から噴き出す水が溜まり小さな池と化していた。
プラントアワーの拳を受けた邪神姿の九頭は力無くクレーターの池に落ち大きな水柱をを上げる。
その水音を聞いた途端、ひとみの脳裏に浮かび上がるヴィジョン……水平線に落ちる瞬間燦然と輝く夕陽――!

ひとみは我を忘れてクレーターに向かって走った。
クレーターの中心から膨れ上がるように成長する植物がたちまちグラウンド全体を覆い尽くす。
足元を覆う鮮やかな若葉の芽吹きに何度も足を取られ躓きながら九頭の落ちた場所をを目指して走る。
九頭の身体から伸びる植物の若芽を通じて九頭の感覚が伝わってくる。
九頭の命が落ちる――!

ひとみの欲望は九頭を殺して九頭の『特別な存在』になることだった。
九頭が死ぬ瞬間、ひとみは九頭の存在を一瞬だけその手に得る……筈だった。
あれ程待ち望んだ瞬間だというのにひとみの心には高揚も達成感の欠片も無く湧き上がるのは、ただ成すすべも無く失っていく感覚…。
九頭の存在はひとみの手の中を瞬く間も留まることなく擦り抜けて消えていく。


かつてクレーターであった場所の中心に聳え立つのは樹齢何千年に及ぶ程の巨大さでありながら若木のように瑞々しい巨木。
狂おしく花吹雪をまき散らす巨木の下に立つよねと木の根元に寄りかかる米綾和。
枝に抱かれるように座る柚木美都留。花吹雪の下を歩く生天目有葵。
巨木の幹に浮かび上がる九頭龍一はゆっくりと目を開ける。
ひとみは安らぎすら湛えるその男の顔を間近で見ることが出来ない。
あの穏やかな目に見つめられると、きっとまた何も聞けずに立ち尽くしてしまう。

ひとみは九頭の正面には立たず少し離れた位置で足を止め巨木の枝にフルムーンの触手を絡めた。
触手の僅かな重みに枝を撓らせた巨木は満開の花を散らし、薄桃色の花弁がひとみの髪に降りかかる。
ひとみは九頭の精神に語りかける。

「九頭龍一……私の声が聞こえる……?
あなたの望みは叶ったのかしら……?これがあなたの望んだ結末なの?

あなたが"本気で"私を得て孤独を癒すことを望んだのなら私はそれでも良かったのよ……。
国を守るなんて私にはどうでもいいことだけど、あなたが守る物を共に守って永遠を生きても良かった。
その為に永劫の孤独と倦怠を生きることになってもそんなことは問題外。
たとえ地獄の中にいても欲しいものが手の中に在る方がずっといいもの……!

だけどあなたはそれを望まなかった…!
…だから私はあなたを殺してあなたの『特別な存在』になることを選んだ…!
あなたは望んでいたものを…『死』を得ることが出来たのに私は何を得たって言うの…?私は失っただけじゃない!!

なぜ私の精神に何度も『死にたい』なんて伝えたの?私があなたを殺す選択をすることを予想していたから…?

九頭龍一……ずるい男……!

あなたにとって私の存在がその他大勢のスタンド使いと同じ事なんて本当は解ってる。
でも…もう最後…最後くらい嘘をついてくれたっていいのよ…?
最後に聞かせて…!
あなたは私のことをどう思ってたの…?私はあなたの『特別な存在』になれたのかしら…?」

ひとみは護国天使に変化した九頭に問いかけたまま保留していた言葉を追いすがるように投げかけた。

175 :荻原秋冬◇6J1m09mANS :2010/07/09(金) 00:30:51 0
>>171
プラントアワーのラッシュで生み出された植物…
それは荻原も予想をはるかに超えていた…
水道管のジャングルから地面に叩きつけられた九頭龍一から生えたものは、
桜の大木だった。
その美しさは、あの九頭から生み出されたものとはとても思えない。
荻原は不思議と足が勝手に、桜の近くにまで引き寄せられた。
桜をよく見てみるとなぜか瓢箪のような巨大な実がなっていた。
実が次々に落ちながら割れていく。
その様子を荻原が見ていると、ある一点方向に目が釘付けになった…


忘れもしない……その二人の女性…
十年前の最後に見たあの姿のまま、目を瞑りながら倒れていた…

間違いなく荻原の妻子だ。

これもなにかの罠か?なんて考えている暇はない…
たとえ罠だとしても荻原は我慢できなかった。

「春夏!…美菜!……」
二人に近づき荻原は軽くゆすった…

「…うっ…うう〜ん……あれ?……あな…た?…」

「……ん…あ!……お……お父…さ…ん?」
二人が目を覚まして目の前をしっかり見た。
そのまま二人は、ゆっくりと荻原の肩にそっと抱きつく。
荻原の体に伝わる暖かさ……こんどこそ本当の暖かさを再び手に入れた。
すでに目に涙が溜まっていたが、荻原はギュっと目を瞑り二人を強く抱きしめた。
それでも涙は止まらない。
妻の春夏と娘の美菜も一緒に涙を流した。
三人の間に言葉なんてなにもいらない…
けど、荻原はたった一言だけ二人に伝えた…

「……おかえり…」

176 :九頭龍一 ◆SM24/QbfAY :2010/07/11(日) 00:08:17 0
一陣の風が満開の桜を散らし、幻想的な桜吹雪を舞わせている。
その中、九頭は幹から浮かび上がるようにその姿を露にしていた。

桜の花びらの舞う中、九頭は目の前に立つよねと対面していた。
そこには先ほどまでの激しい戦いにあった圧力も、憎悪も、殺意もない。
ただ穏やかな空間が広がる。
>「九頭龍一…一つだけ聞かしてください。貴方は一体『何』に『到達』したのですか?どうして貴方は…」
問に九頭はいとおしそうな笑みを浮かべ口を開く。
それはまるで孫を見る老人のような穏やかさで。
「いや、違うな。私が到達したのではない。
君達が、到達したのだよ。」
その言葉を皮切りに語られる留流家の正体、日本の闇の歴史。
そして、九頭の真なる目的。

「私は【魔なる者ども】を内包し、封じ込め続けてきた。
160年の長き年月は人の身には、人の精神には長すぎた時間だ。
それでも留流家を継ぎなる者に引き継がず、生き続けてきた理由は私と同じ孤独な戦いを他の誰かに強いる事をしたくなかったからだ。
その結果、数多くの惨劇と悲劇を繰り返したとしても。
長き年月を生き、様々な者達とと時を過ごした。
野心を持った者、強き者、弱き者、敵対した者。
数多くの者が私と時を過ごし、そして皆私より先に死んでいった。
彼ら彼女らの子や孫は…この日ノ本の国の者は全て私の家族も同然。
全ての者を守りたかった。あらゆる犠牲を払って払わせてでも。
その結果、私の精神は蝕まれいったが、それでも死ぬ訳には行かなかった。
到達するまでは…。」
そこで言葉を区切り、大きく息を吐きながら視線を宙に向ける。

その先には家族の再会を喜ぶ者、疲れ果て眠り者、涙し決意を固める者。
ここで戦った全ての者に視線は向かい、やがてよねに戻る。
「私が到達したのではない。
君達が、君たちの世代が私に守られずとも生きられる境地に辿り着いたという事なのだ。」
戦いを通じ、よねたちは半ば強制的にスタンドを進化させ高みに上ってきた。
吉野や柚木、荻原、よねはその顕著な例といえるだろう。

死への渇望を抱きながら死ぬ事が許されぬ使命を背負った九頭が望んだ事。
それは自分が死に魔なる者たちが解き放たれたとしても対抗で来うる世代の到来。
これがゲームを開催する理由だった。
待ち構えるモノを、護国天使を、邪神九頭と戦い勝利できる世代を。
「良くぞ倒してくれた。これでようやく肩の荷が下りたよ。
植物使いの力で私は巨木となり、死しても留流家はその力を保つだろう。
洋館の時と同じく、一般人からは認識されぬままここに立ち続ける。
これから先、魔なる者たちがいつ出てくるかは判らぬが…
私が死ねるのは、それでも日ノ本の国は大丈夫だ、と思えるからだ。
君たちの強き力、そして受け継がれていく次代の力を信じて…ようやく眠りにつける」

桜の花びらは舞い散り群青の葉からの木漏れ日に包まれ九頭は幹に吸い込まれていく。
「…ありがとう…我が子らよ…」
風に乗り全ての者たちに届く小さな声と共に九頭龍一はここに消えた。


####################################


177 :九頭龍一 ◆SM24/QbfAY :2010/07/11(日) 00:10:32 0
九頭の精神に語りかける佐藤の視界が突如として暗転し、目の前に九頭龍一が現れた。
触手から逆に取り込まれた事を知るだろう。

先ほど到達した九頭龍一と留流家の精神の奥底とは違う場所。
何もない空間。
何も感じない空間。
ただ二人だけが一糸纏わぬ姿で向き合っていた。
これはあらゆる外装を取り払ったむき出しの精神同士である事をあらわしていた。

一通り問いを口にする佐藤をじっと見詰めその言葉を聞き入ると、そっと手を伸ばし肩を抱き引き寄せる。
「君の以前言ったとおり、ゲームは選別のために行っていた。
待ち構える者を選別するのではなく、私を倒せる、即ち私のいない世界で生抜く事のできる次代を担える者たちを選別するために。」
九頭がいなくなる、即ち魔なる者が解放された後、戦える力を持つ者を選別するために、だ。
その為にはスタンド同士の闘いとそれによる進化が不可欠であり、それ故ボブがガスを使った時はそれを咎めたのだった。

「ただ私を倒しうる力の者を生み出す事が目的だったゲームだが、私にも想定外のことが起きたよ。
まさかあそこまで到達しうる者がいようとは…!」
ぎゅっと佐藤を抱き寄せる九頭。
抱き寄せられる佐藤の手にはいつの間にか懐刀が握らされており、その刃は深々と胸に突き刺さっている。

「160年!その永きに渡り孤独だった…!暗く、冷たく、恐ろしいあの場所に。
日ノ本の子を、孫を守る為、あらゆる犠牲を強い、それでも生きながらえてきた私は、それだけで救われた。」
傲慢、狂気、自己犠牲、使命、倦怠、死への渇望、生への執着。
あらゆるものが九頭から消えた、初めての九頭龍一自身の言葉。
抱きしめられ見えずとも九頭が涙している事を佐藤は知るだろう。

「生を与える母が特別なものならば死を与えるものもその対極の特別な存在となる。
君は私を救い、そして死を与えた特別な存在だ。
日ノ本の子、孫、ではなく佐藤ひとみ、君個人に云おう。
ありがとう…そして…生抜いてくれ…。」
穏やかな笑みと共に九頭龍一の姿が光の粒子となって拡散し、消えていく。
佐藤の手に懐刀だけを残して。

#########################################

こうして九頭龍一は死に、廃校舎グラウンドには一本の巨木が残された。
荻原の能力と留流家の力、そして地脈のエネルギーが引き起こした一つの奇蹟。
この巨木は洋館と同じく一般人に感知されることなくたち続ける。
いつかそのうちに内包される魔の者たちが溢れ出るその時まで。

だが九頭龍一が確かに感じたように、例え魔の者が溢れ出ても現代の、そして次代を担うスタンド使いはそれに対抗し、勝利するだろう。
それがいつになるかは判らない。
それはまたその時を担う者達によって語られるもの。

今はただ九頭は永き生を全うし死の救済を受け、留流家は世界を見守るように群青の葉を揺らすのであった。

                                【九頭龍一エンディング&エピローグ】

178 :ある街の風景 ◆IuB4aTDNuY :2010/07/11(日) 20:30:30 O
―北条市 芽吹ヶ丘

"暗黒の幻想 2章”
今日はこのページまで読んだ。なかなか面白い話だな。

「やけに心地良い風が吹きやがる。」
本に付箋を張り、地面へ置く。
1人の男がロングハットを叩きながら、丘の上で空を見上げた。
1枚。また1枚と。
群青の葉が男の下に舞い落ちる。
近くに木はない。何処から落ちてきたのか分からない葉は、ふわりと
舞うと光を放ち消え去った。

「……この街じゃ、幸せも悲しみも全部風が運んでくる。
この様子じゃ、また何かが散って何かが生まれたってことだろうな。」

【灰島くん!!またこんなところでサボってるんですか!?
早く依頼を受けて調査を始めてくださいよ!!】

丘の下で、助手のユカリが叫んでいる。
俺は消え去った葉の感触を何度も確かめながら、そちらへ振り返る。
立ち上がった男の背後に、全身が黒いダイヤモンドで形作られたような
人影が立つ。

「1つの風が去る。そしてまた風が吹く。
さぁ、どうなるんだかね。この街も、人も。」


179 :吉野きらら ◇HQs.P3ZAvn.F:2010/07/11(日) 21:31:00 0
最終決戦の最中、吉野きららはほんの一瞬、逡巡した。
原因は佐藤ひとみが九頭の内より持ち帰ってきた、己の左腕。
きららは『幸福への階段』に至りはしたが、それは九頭から流れ込んだ『闇』に加え左腕を贄としたからである。

だがその場にいる皆は、きらら以外の全員は、健常たる両腕を持っていた。
彼女一人のみが、隻腕である。それは果たして、幸福と言えるのだろうか。
彼女が哀れな者と見定めた佐藤ひとみですら持っている者を、持っていない。
それを是とすべきか否とすべきか。ほんの一瞬だが、彼女は迷いを抱いたのだ。

それが、致命的だった。
寸毫ばかりの時の狭間での応酬で、戦いは決してしまった。
九頭は敗れ、大樹と化した。この事が何を意味するのか。

最早吉野きららが『闇』を手にする事が出来なくなった――と言う事である。
もしも後僅かにでも素早く動き出せていたならば。
彼女は再び九頭に接近し、『闇』を得る事が出来たかもしれない。
左腕を『返り咲かせた』上で『幸福への階段』を維持する術が、得られたかもしれないと言うのに。

全てが手遅れだった。

ならばと彼女は大樹から生える『留流家』から救済された者達を『幸せの花』として、
それを階段の礎に挿げ替えようと図るが、それすら叶わない。
『留流家』から解放された者達は今漸く『望んだ日々への始まり』に立ったのだ。『幸せの花』が通用する道理はない。

どうにも立ち行かなくなって、彼女は結局、左腕を取り戻す事を選んだ。
自身の内に残った僅かな『闇』を用いて腕を『返り咲かせ』――そして『幸福への階段』が瓦解する。
その時の怨嗟極まった視線を、佐藤ひとみは感じただろうか。

そうして最後に残った一欠片ばかりの『闇』。きららはそれを、『種』として嚥下した。
いずれまた、己が『幸福への階段』へ返り咲く為に。

降り注ぐ桜吹雪に疎ましげに目を細めて、彼女はその場から立ち去った。

【お疲れ様でしたー。
 曲りなりにも九頭の残したモノ……っても『闇』ですけどね。因縁にでも使えればなと
 喜びに水を差しちゃいましたがお許し下せえ】

180 :よね ◆0jgpnDC/HQ :2010/07/11(日) 22:27:23 P
九頭との戦いが終わった翌日、よねは綾和と共に帰路についていた。
母親、義妹の待つ家へと。義妹に限っては綾和とは初対面である。

「カズ…本当に良かったのですか?この空白の十年を…どうするつもりなんです?」

よねの問い掛けに綾和は黙ったままだった。
そのうち、よねもその答えを知るのを諦めた。

そして、久しき米家の前。
よねにとってはほんのこの前見たばかりなのにずいぶんと懐かしい、
綾和にとっては十年もの歳月が流れていると言うのに昨日までその家に居たかのように思えた。

――ガチャリ…

玄関に入るや否や義妹がその姿を現した。
米家の一員として慣れてきた義妹であったが、兄の傍に居る見知らぬ男を見て困惑を隠せぬ。

「ああ、この人は…」

とっさに言葉を無くすよね。それも当然である。
見ず知らずの男を父親だと言うのに何の抵抗も無いわけがない。
何とか話を続けようとよねが話しだそうとするよりも早く綾和が口を開いた。

『私は…米綾和。十年間留守にして済まなかった。よねから話は聞いた。愛しい娘よ』

義妹は唖然とし、家の奥からは慌ただしい足音。
そうして飛び出した母親も目を丸くしている。

『ただいま』

その一言で米一家は再び家族として生まれ変わったのだった。

九頭龍一との出会い、闘い、そしてその終末。
よねはその褒美がこの安息ならば今までの困難や苦労は決して無駄ではなかったと思った。

                       【Side:YoNe...I've come to terms.】

181 :御前等裕介 ◆Gm4fd8gwE. :2010/07/11(日) 22:32:45 0
「なんてこった」

水道管の上に伏せながら、御前等は眼球をぐるりと回した。
循環する水のおかげでひんやりと冷たいパイプの表面に頬をつけ、衰弱しきったスタンドパワーに喝を入れる。

気絶してる間に九頭が死んだ。御前等の位置からその一部始終を見ることは叶わなかったが、
徳井に託した歯車は言わば御前等の一部である。どんな状況に置かれているかを掌握するのは容易かった。
奇しくも御前等への警戒を解かなかった徳井の"保険"と似たやりかたであることに、少しだけ苦笑する。

徳井と別れてから――御前等は精神力を使い切ったことでその場を動けなくなり、留まっていた。
そのまままんじりともせずいたところ、周囲は突如炎上し、その衝撃と低酸素症に止めを刺されて意識を失った。
徳井が歯車で水を流し、周囲の消火をしておいてくれたのだが、慣れない鉄火場に居続けた疲れか御前等はそのまま目を覚まさなかった。

気付けば、グラウンドの中央に巨木が出現し、あれほど強烈な存在感を放っていた『世界の中心人物』が消滅しているではないか。
そのとき御前等の胸中に去来していたものは、一瞬でも慕った者を悼む気持ちでもなく、倒された九頭への失望でもなく。

――祭りに乗り遅れたようなアウェイ感であった。
蚊帳の外である。

(なんということだ……俺がどっち陣営につくとしても、あんな重要なイベントを逃してしまうとは!)

今更大手を振って登場するわけにもいかず、なんだかとても恥ずかしくなって、御前等は穴があったら隠れたい気分であった。
ちょうど傍にお誂え向けのパイプがあったので、その中に引き篭もり、耳を塞いで目を閉じた。

(そういえばこの水道管、どうしようか)

既に投棄された設備とはいえ、人の目に付く場所にパイプジャングルを放置するわけにもいくまい。
再び地中へと潜らせる必要があるが、今の御前等に――色々と意気消沈した精神力でそれをやってのけるのは、些か困難であった。

(とりあえずやれるとこまでやってみて、あとは徳井サンに刻んでもらって金物ゴミの日に捨てるか)

「よし採用。――『アンバーワールド』」

最小の動きでスタンド能力を喚起する。徳井の持つ歯車が砕け散ったことに気付くだろうか。少しでもスタンドパワーを回収する措置だ。
そうしてなんとかひりだしたスタンドが、水道管の機構に作用しその形を変えていく。

御前等は気づいていなかった。不全な状態で能力を発動したものだから、効果範囲に偏りがあったことを。
故にそれが――パイプの断裂と、水の流出を生んだことを。さながら間欠泉もかくやといった勢いで迸る水は、

「あ」

管内の圧力を上昇させ、やがて詰まっていた御前等の体を高まった空気圧でふっ飛ばした。

「何ィィィィ〜〜〜〜〜ッ!!?」

大砲のように、御前等北条市街へ飛んでいく。その姿は、90年代のアニメで悪役がヒーローに吹っ飛ばされて退場していく演出に酷似していた。
御前等という栓が除去された水道管は水をものすごい勢いで吐き出し、グラウンドに滝のような雨を降らせる。


逝った者を悼む、空の涙だった。

晴天にあって降りしきる雨は、その水粒で虹を描いた。


【第一部完お疲れ様でした】

182 :徳井一樹 ◆MnJrk02a/Yx. :2010/07/12(月) 13:31:00 0

よろよろと立ち上がり、桜の大木を見上げる。
美しい。
桜がどうして美しいか。それは桜の木の下に死体が埋まっているから。
桜が美しいのは人の血や肉を養分として吸い取っているから…というが、
この桜の木はどうなのだろう。九頭や魔を糧として育ったからこれほどにも美しいのだろうか。

「桜で思い出したけどさあ…なぞなぞの答え、言ってなかったっけ?
…え?言ってない?答えはマンマミーアだよ。マンマミーア→まんまみいあ→ままみいあ→ママ、ミー(私)や…
だから母親はマンマミーアって言った人なんだよ。どーよ?傑作だろ?
控えめに言ってもシャーロック・ホームズに出てくる謎のよーによォ〜〜〜ッ」

徳井がそう言い終えた後、瓢箪のような実から出てきた人が
寝起きのように、眠気眼をこすりながら起き上がった。
その人物…二人を徳井は知っていた。紛れもなく両親だった。
徳井は彼らの元へ行こうとはせず、気づかれない間に一目散に木の背後へと逃げ出した。
走り際に言い訳を吐き捨てて。

「会い辛いんだよなあ……俺はもうカタギじゃあねーし…
どっかで修行してレベルアップしてからまた再戦するわ。
だからオメーラッ!…チクらないでね?ねっねっねっ!」

最早自分はカタギではない。裏の人間。
彼らはこれから人生の続きを踏み出していくだろう。
それを汚い人間である自分が踏みにじることなど、あってはならないのだ。
裏の人間は裏らしく影から…見えないところで支えればいいのだから。

#####################################

桜の花びらがゆらりと吹く風に揺れて踊る中、九頭は紡ぐ。
生涯の物語を。悲痛な覚悟の中での孤独の戦い…それはまるで悲しいマラソン。

>「…ありがとう…我が子らよ…」

そして運命の鎖を解き放たれ男の物語は完結し───
受け継がれていく…次なる世代達へと。

「ズリィーーんだよッ!オメーはよ……!おれぁ不器用なんだ…!
悪党なら悪党らしく…!最後まで悪党でいやがれっ……!じゃねえと…!
戦いは戦い……悲しみは悲しみで別…俺が……アンタに敬意を払っちまうだろ……!」

悪態を吐きながらも消えていく九頭龍一という男の生涯の最期に立ち会った者として、
徳井は無意識の内にとっていたのは「敬礼」の姿だった
涙は流さなかったが無言の男の詩があった──奇妙な郷愁があった──

敬礼を終えると、徳井は立ち上がる。
ここは新たな出発点。やり直そう…新たな人生を踏みしめながら。

帰ろう…魂の故郷(ふるさと)へ

「こういう時の台詞は……俺たちに戦いはッ!これまでd」

突如滝のように水が徳井に降り注ぎ、びしょびしょになり
極めつけに水たまりに足を滑らせてズッこけたのである。

九頭や散った者が鼻で笑うかのように、大木の葉が優しく揺れた。

183 : ◆BhCiwB2SCaJ5 :2010/07/12(月) 15:57:13 0
>「桜で思い出したけどさあ…なぞなぞの答え(中略)
>控えめに言ってもシャーロック・ホームズに出てくる謎のよーによォ〜〜〜ッ」

「ママ、ミーや!?英語と関西弁が混じっていたんだね?すごく難しい!!」柚木は驚いてみせた。

************************************

>「…ありがとう…我が子らよ…」
九頭龍一の最期の言葉を胸に秘め柚木美都留はクルリと踵を返す。
彼が無意識に求めてきたものそれは父性愛。
九頭龍一との決別は少年を一歩大人への道へと歩ませる。

柚木は校門付近に帰路につく米父子の姿を見た。母親、義妹の待つ家へと帰るのだろう。
遠くの空には、飛んでキラリと星に変わる御前等の姿。
大谷はというとわからない。つかみ所のない神出鬼没の男。でも彼は限りなく優しい男だった。
またどこかの知らない街で事件に遭遇しては、出会った仲間を守るために戦い続けるのだろう。
徳井もびしょびしょになりながら去ってゆく。

一方。生天目有葵は妻子と抱き合う荻原の姿に涙涙。涙のむこうには佐藤ひとみと去りゆく吉野の姿。

「…ひとみん…」
カナリア並の頭の持ち主である生天目にもパッと見、佐藤が何か大きなものを失って、
そして得ることができたのだろうと推測できたのだが、それは女としては羨ましくもあり羨ましくなかったりする。
なによりそっとしておいてあげるのが最良の答えだと考えた生天目はゆっくりとその場をあとにした。


自然公園。

柚木美都留と一緒にリムジンに乗る生天目有葵。
木陰で色々と話を聞いてみたら柚木はミナシゴだったので生天目は引き取ることに決めていた。

彼女にとってはたった数日の出来事だったのだけど、この体験はまばゆく輝く黄金となって心に残り続けることだろう。

そして二人を乗せたリムジンは北条市をあとにした。

【おつかれさまでした】

184 :大谷杉松 ◆vReXCpsNBKcm :2010/07/12(月) 20:20:50 0
グラウンドに生えた大きな桜の木、その桜の木は今まで見てきたどの桜の木よりも綺麗で、力強くて、どこか懐かしい感じがする木であった
その木から実として出てくる人たちを見る限り全員は出てこなかったのであろう…
九頭が心から家族を思うなら、その家族も
徳井は約束通りなぞなぞの答えを教えてくれた、この答えが聞けるのも命あっての物である。

>「桜で思い出したけどさあ…なぞなぞの答え、言ってなかったっけ?
 …え?言ってない?答えはマンマミーアだよ。マンマミーア→まんまみいあ→ままみいあ→ママ、ミー(私)や…
 だから母親はマンマミーアって言った人なんだよ。どーよ?傑作だろ?
 控えめに言ってもシャーロック・ホームズに出てくる謎のよーによォ〜〜〜ッ」

>「ママ、ミーや!?英語と関西弁が混じっていたんだね?すごく難しい!!」

「ははは、それはわからなかったな でも聞けてよかったよ、もし聞けなかったら気になって死んでも死にきれなかったかもな」

『…ジツハワタシモキニナッテタノヨネ ホントウニキケテヨカッタワ』

――そんな何気ない話をしていると桜の木から声が聞こえる、脳に直接響くような声 きっと九頭のだろう先ほどの面影など微塵も感じないような優しい声だ。

>「…ありがとう…我が子らよ…」

この先もずっと、ずっとずっと家族と共に生きる桜の木、その桜の木の最後の言葉は愛する家族に対してであった、

…おかしい、涙が止まらない、敵を倒しハッピーエンドのはずなのに、どうしてだろうか
その涙を拭い、木に手をつけ一言つぶやく

「―――あんたとは仲間として出会いたかったな…」

『ソウネ…イッシンニカゾクノコトヲオモウヒト ナカマダッタラヨカッタノニネ…』

グラウンドに降りしきる雨、その雨は涙と共に顔を濡らすのだった



―――昼下がりのドルドプラチナ、平和な日常が続いている、奥の席に座る灰色のトレンチコートの男
紅茶を飲みながらブツブツと何か言っている、

「さてと…次はどこへ行こうか、」

185 :佐藤ひとみ ◆tGLUbl280s :2010/07/12(月) 21:07:33 0
>177
誰かが得れば誰かが失う。何かを得れば何かを失う。
この世の全ては有限。
この闘いに関わった者逹はそれぞれ何を得て何を失ったのだろう…?
佐藤ひとみに関して言えばこの闘いは失う為の闘いだった。
九頭龍一への想いを自覚し彼の望みを叶える事で『特別な存在』になろうと決めたその時から。

―――ひとみの手の中の懐刀が九頭の胸に突き刺さる。
胸を貫かれながら、ひとみを抱き締める九頭の口から漏れる言葉はあまりにもひとみの望み通りのものだった。
望んだ言葉は彼女の胸に懐刀のように突き刺さり感情を昂らせる。

「嘘吐きッ!!

あなたを死なせたのは私だけじゃない!
あの場所に辿り着けたのも帰れたのも半分はあなたの力!
あなたを安らかに眠らせるのも私じゃなくて力を得て"高みに上った"人間だわ!

私は『特別な存在』なんかじゃない!
好きでもない女の望みを叶えて優しい言葉を返すなんて最低よ!!
だから…だから……」

激昂して喚くひとみの目からは涙が溢れ出していた。
理不尽な謗りを九頭は静かに受け止めている。
ひとみを抱く九頭の体は光の粒子に変化し少しずつ散っていく。
消えていくその男の顔はどこまでも優しく穏やかだった。


九頭の精神体が完全に拡散すると、ひとみの精神は自らの身体に戻っていた。
右手には精神世界で九頭がひとみに握らせた懐刀がそのまま収まっている。
ひとみは妖しく光る刃を見詰めて呟く。

「『生き抜いてくれ』なんて余計なお世話よ…私が後を追って死ねないことを解ってる癖に……
九頭龍一…あなたには思い出が多すぎる…!」

死にゆく九頭の背後には死して尚も付き従う数多くのスタンド使い達の姿があった。
その中にはかつて彼が愛したであろう者も…。
追いかけても九頭は決して自分だけのものにはならない。

ひとみは懐刀を左手に持つ鞘に収めバッグに放り込むと巨木に背を向けて歩き出した。
風に揺られた巨木の葉のざわめきが囁き声のようにひとみの耳をかすめて通り過ぎた。


しばらく歩いた後、ひとみは自分の霰もない格好に気付く。
倒壊した校舎の粉塵やグラウンドの砂に汚されて服は埃まみれ。ストッキングは破れて足は傷だらけ。
おまけに水道管から噴き出した水に降られて髪も濡れている。
こんな格好ではあらぬ誤解を受けそうでタクシーにも乗れない。
できるだけ人目につかない道を選んで歩いて帰るしかない。

こそこそと歩き続けて時刻はもう夕暮れ。
西の空に沈みかけた夕陽が赤々と空を照らす。
東の空には沈む夕陽を見つめるように白い月が昇りかけていた。

【佐藤ひとみ エピローグ終了 お疲れさまでした!】

186 :『NEWDIVIDE』 ◆JvtTTnep1k :2010/07/13(火) 12:41:21 0
『逞しきアルカナの従者、惰弱なる人の子らを襲いかかりて

            夜に静寂が許すことなく、眠る者無し』

               ●
               ●
               ●
                、、、、、
     REDRUM、REDRUM、レドラム…八月十五日。
               
               ●
               ●
               ●
 、、、 、、、 、、、、、、、、、、、 、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、
(そして《赤死病》がすべてのもののうえに、ほしいままなる勢威をふるうばかりであった!)
               
               ●
               ●
               ●

        ―そして時は三ヶ月前まで遡る―
              

187 :灰島 ◆lcCn/SJQ7. :2010/07/17(土) 14:53:40 0
―謎の行方不明事件終結後…ドルドプラチナにて

俺の名前は灰島秀一、私立探偵だ。
とりあえず、迷い犬猫の探索や不倫の調査なんでもありな感じで
食い扶持を貰っている。
この街に来たのは、1年前だが何だか懐かしい想いを感じる。
あいにく、俺には記憶がない。今までの、何をしてきたか
俺が誰なのか。灰島って名前は、俺の近くにあった手帳から
借りたもんだ。俺の本当の名前かどうかは、わからない。
この街、北条市での謎の行方不明事件が急に終息し
今じゃ誰もが平和を謳歌してる。この前までは子どもを連れて
街に出るのもみんな恐れていたのが嘘のようだ。

俺も、久しぶりにお気に入りのカフェでコーヒーを
飲んでいる。勿論、ミルクと砂糖は抜きだ。

「マスター、最近は事件がなくて平和だな……お陰で俺は
犬猫の捜索ばっかだ。…はぁ、今回は緑区のチワワ、寿司太郎くんか。」

「灰島ちゃん、なぁーに言ってんだよ!平和なのはいい事じゃないの。」

マスターとたべっていると、勢いよく店の扉が開かれる。
俺の助手、高寺ユカリだ。

「なぁ〜にサボってんですか!!また時間を適当に潰して
”あ〜疲れた。調査してきたけどいなかったわ”でしょ!!」

ゴリラのような勢いで俺の胸倉を掴み、往復ビンタを放った。

「……おげっ!!」

歯がぐらぐらする。おまけに頭もだ。
なんだか、嫌な一日の予感がするな。杞憂だといいが…

【灰島、ドルドプラチナにて一服中】



188 :灰島 ◆lcCn/SJQ7. :2010/07/17(土) 14:59:26 0
【本体】
名前:灰島秀一
性別:男
年齢:20代
身長/体重:178cm/70kg
容姿の特徴:長身、やせ気味。黒
服装:黒のロングハット、黒のベスト、黒のジーンズ

人物概要: 記憶を失くした男。北条市の海岸で発見されたところを
高寺兄妹(高寺幸之助(1部に登場した警官、スタンド使い)、ユカリ)
に助けられた。
灰島探偵事務所を設立し、日々食い扶持を探している。

189 :神条時人 ◆BhCiwB2SCaJ5 :2010/07/17(土) 15:42:55 0
古来より鬼門というものは存在した。通例なら丑寅の方角を指し示すのであろうが、
その場所に行くと怪我をしたり不運な出来事に巻き込まれたりするなどと人の数ほど鬼門は存在するらしい。


ある日。佐藤ひとみが勤める図書館に訪れた少年、神条時人(かみじょうときひと)は彼女に尋ねた。

「…あの…夢に出てくる場所ってほんとにありますか?そーいうのがわかる本…ありますか?」

少年の不思議な発言。

「ぼく…同じ夢をみるんです。そしていつも同じ場所が出て来るんです…」

神条は夢に出てくる場所を佐藤ひとみに語り始めた。佐藤の記憶では初対面であろうはずの少年。
だが彼は奇妙なことに夢に出てくる風景を互いに共有している風景のように語った。

たしかに話の内容から察するにその少年の夢に出てくる風景は佐藤にも身に覚えがある。

そこは佐藤の高校時代の通学路付近。
少し寄り道したら行けるであろうあのどこにでもあるような特徴の無い交差点。
しかし本当に少年が語っている場所と佐藤の思い浮かべている場所が一致するとは限らない。

「…その交差点が本当にあるんなら…ぼく行ってみたい…」

少年の夢のなかの風景。それは単に懐古すべき遠い記憶の産物か、はたまた悪夢への入り口なのか。

神条時人は佐藤ひとみの瞳を静かに見つめている。

【灰島さん来てたー。ごめんなさい】
【佐藤さん。つなぎのつもりだから、ぽしゃらせようか迷ったんだけど暇だから投下しちゃいました】

190 :よね ◆0jgpnDC/HQ :2010/07/18(日) 00:53:50 P
九頭との闘いが終わって3ヶ月後。
"それ"は突然訪れた。

綾和が何者かに襲われ、重傷を負ったのだ。
それも通常の傷ではない。まるでクマに襲われたかのような傷だった。

「九頭龍一…?まさか、な」

よねは一瞬嫌な予感がしたがすぐにそれは消えさった。

九頭龍一はもう居ない。だが、その存在はよねに大きな軌跡を刻んでいった。
忘れる事が出来ないのだ。九頭龍一との闘いが。
時折、体が疼くように熱い。まるで闘いを渇望しているかのように。

そうした思いが些細な事でも闘いの"きっかけ"に思えた。

「バカバカしい…生命を賭け金にしたギャンブルがしたいと言うのか…?」

矛盾。体は確かに闘いを望んでいる。
あの熱い、血肉が湧き踊る闘いを望んでいるのだ。

『コウタ…私は大丈夫だ。…だが、一体何にやられたのか見当がつかない。
 スタンドの可能性もある。十分に注意してくれ』

だがよねはその綾和の忠告すらも聞かない。

(なんなんだ…この満たされない感じは…闘いたい、のか…?)

半ば病み付きになっていたのだ。
次から次へと現れる強敵。初めての生命の駆け引き。
よねはそのスリルと快感を忘れられずにいた…

191 :佐藤ひとみ ◆tGLUbl280s :2010/07/18(日) 03:24:27 0
行く川のながれは絶えずしてしかも本の水にあらず。澱みに浮ぶうたかたはかつ消えかつ結びて久しくとゞまることなし――
…こんな冒頭の古典文学。"同じように見える営みも元の通りではない"…なんて意味だったか?
春に咲いた桜が散り、若葉が芽吹き、風が濃緑の葉を揺らす夏が来る…
そんな当たり前の営みも決して同じ春…同じ夏が巡っているのではない。
時の流れは降り止まぬ雪のようにあらゆるものに静かに積もっていく。降り積もった雪は過去を戻れぬものとして少しずつ塗り込める。
万物は降り積もる過去を…進んでいく時間を止める方法を知らない。
ただ時として…心という名の『想い」だけは時間の流れに取り残され澱のように沈んでいることがある。


―――佐藤ひとみは北条市立図書館のカウンターで昨日の奇妙な出来事を思い出していた。

ひとみが通勤に使う勤務先に最寄のバス停。勤務後いつものように歩いてバス停に向かう途中に気づいた細い路地。
覗き込むと路地の奥に幾つかの木の鳥居が立ち並ぶ一角がある。鳥居の奥に神社があるのだろうか。
何となく気になってバスを待つまでの暇つぶしも兼ねて路地に入って行った。
色彩の無い木肌剥き出しの鳥居の群れをトンネルのように潜って路地を進む。
木の鳥居の終点には青銅製の大きな鳥居を構えた神社があった。

「こんなところに割りに大きな神社があるなんて気づかなかったわ…。」

ひとみは何気なく神社の由来を書いた鳥居横の立て看板に目をやって息を呑んだ。
書き出しは――『九頭龍神社縁起』――の文字。

過去というにはまだあまりに生々しい記憶の淵にある、あの男の名……。
ひとみは引き寄せられるように青銅の鳥居を潜った。
立派な青銅の屋根を持つ社。ひとみは社の正面の軒下に飾られた浮き彫りに目を奪われた。
…それは九つの頭を持つ龍というより蛇か触手が絡み合い、もつれ合って出来た丸い塊に見える。

「気になりますか?それがうちの神社の御神体ですよ。」

出し抜けに声をかけられて、ひとみはギクリとして後ろを振り返った。
そこに立っていたのは白い着物に水色の袴姿の宮司と思しき男性。
40才前後のその宮司は糸の様に細い目を更に細めて振り替えるひとみに愛想笑いを返す。

「いえ…ずいぶん変わった形の御神体だな…と思ったもので…」
ひとみも宮司に曖昧な笑いと返事を返した。

「昔からこの地方で祀られている龍神様ですよ。
力のある神だったようですが十年ごとに何人もの生贄を要求してくるのでね…
とある行者が龍神を切り殺しこの地に封じたという伝説が残っています。
悪い神を畏れ奉ることで神恵を得る。所謂『荒魂(あらみたま)』信仰ですね。
本来、悪たる『荒魂』と『和魂(にぎみたま)』は一つの神の両面。
『荒魂』の九頭龍にも恵み深き『和魂』の側面があるはずなんですよ。」

宮司は細めた目をそのままに滔々と言葉を紡ぐ。
愛想笑いを浮かべたまま長話を聞くひとみに宮司は不意に六角形の木の箱を差し出した。
「おみくじ代わりにどうぞ。」

曖昧な返事を返し宮司の勧め通りに箱に手を入れるひとみ。
ひとみが箱から細く折りたたんだ紙を取り出すと宮司は意味ありげな笑みを浮かべ、ひとつお辞儀をして去っていった。

192 :佐藤ひとみ ◆tGLUbl280s :2010/07/18(日) 03:30:59 0
ひとみは利用者の途切れた隙にカウンター内で昨日宮司に貰った紙を開く。
紙には細かい筆文字が綴られている。



"爰九頭八面大龍出現、自山高自嶺長、一面有三目似春日並出、
九頭有三目如暁星照耀、口吐大炎同迦楼羅焔、其身満虚空"

丑寅

午 二 六  四 三
酉 一 二 六 四 三



「何よこれ?全然おみくじっぽくない。
上の文面は『九頭龍』の出現譚みたいだけど下の数字…全然意味わかんないわ。」

>「…あの…夢に出てくる場所ってほんとにありますか?そーいうのがわかる本…ありますか?」

カウンター内で紙を見ながらブツブツ呟くひとみに急に投げられた問い。
ひとみは飛び上がって声の主に視線を落とす。
問いかけていたのは小学生くらいの少年だった。

「夢に出てくる場所…?夢占いの本かしら?」
職場ではヒステリックな本性を隠し、出来るだけ感じ良く振舞っているひとみは少年に笑顔を向けて問いに応える。
少年はひとみの答えを半ば無視して夢の話を続けている。

>「ぼく…同じ夢をみるんです。そしていつも同じ場所が出て来るんです…」
少年が詳細に語る"夢の場所"は聞けば聞くほど、ひとみの記憶にある場所に似ていた。
ひとみの高校時代の通学路からやや離れた位置にある人気の無い交差点――。
道路沿いに夾竹桃の長い垣根のあるイチョウ並木の交差点。この季節には夾竹桃が一面に赤い花をつけていた。
夏の貫けるような青い空に濃緑の葉に鮮やかな赤い花をつけた夾竹桃。
ひとみの脳裏に交差点に立つセーラー服姿の自分自身のヴィジョンが浮かんだ。

「初めて来る場所なのに見たことがある気がすることを"デジャ・ヴ"って言うんだけど…
君の場合その逆ね。行ったことが無いのに知っているような気がする場所ねぇ…。
多分君が忘れてるけど行ったことがある場所じゃないかと思うんだけど?
よ〜く思い出してみたら?」

>「…その交差点が本当にあるんなら…ぼく行ってみたい…」
少年は訴えかけるような瞳でこちらをじっと見つめている。

「ええっと…似たような場所なら知ってるけど…多分ただ似てるだけの場所よ。
その場所ここから車で5時間くらいかかるもの。
君が行ったことのある場所だとは思えないわ。」

適当にあしらうのも気が引けてひとみは正直に記憶の場所について答えた。

193 :徳井一樹 ◆MnJrk02a/Yx. :2010/07/18(日) 13:10:07 0

あれから約3ヶ月──…
実際にはもっと長く月日が流れたように感じたが───とにかく徳井一樹は、未だ北条市に居た。
正確に言えば、徳井はパスポートを再発行してもらいイタリアに一時帰国(というのもおかしいが)した。
が、徳井のプライドが許さず無くしたパスポートを探しに北条市へと舞い戻った──というのは口実であり
本当はニュースにもなっていないような、行方不明事件が起こったと聞き両親が心配になってイタリアからすっ飛んできたのだ。
それでもやはり『無くしっぱなしは趣味じゃねー』と言った風なところはあるかも知れないが。

「嫌だねぇ〜〜ッこんな昼から公園でボーッとしてるなんてよォ〜〜ニートかっつーの!俺は」
ここは北条自然公園。裏には廃校舎があり、最後の戦いの舞台にもなった場所。
時刻はお昼を迎えているのにも関わらず
憂鬱そうな顔でハトにパンクズの餌をやっている黒いスーツ姿の男が一人。
サングラスをかけ、フラワーホールにペンだこのマークをあしらったラペルピンが挿されている。
夏場のお陰で見ている者も着ている本人もクソ暑くなる格好だが着ている男は涼しげな表情だった。
追記すれば行く先々で訝しげな表情で睨まれたりもするが、本人は慣れている。

男の名は『徳井 一樹』…スタンド使いである。

徳井はおもむろにベンチから立ち上がり、残った鳩のエサを周りに放り投げると歩き出した。
目的地は『カフェ・ドルド・プラチナ』
ここからは少し離れた場所にあったが散歩がてらには丁度いい、と徳井は思った。

「俺が聞きつけた行方不明事件…当時は九頭が倒された一週間か、そこらくらい……
俺も最近知ったが……偶然か?必然か…留流家から解き放たれたスタンド使いがやったのかもしれねー
それ以後は起こってないようだが……ヤッパシ俺の杞憂かなあ〜〜〜?」

“スタンド使いは惹かれあう”…磁石のように。或いは運命の赤い糸のように。
徳井は『ろくでもない奴とばかり会う運命なんて信じたくもねー』と真っ向から否定しているが
この迷信じみた言葉通りならば佐藤やよね、荻原が先に会っていてもおかしくない。
いや……もしかしたら一般人に溶け込んでいて既に会っているのかもしれない。
ただ、気がついていないというだけで。
そう考えた徳井だったが即座に飛躍した憶測を頭の中からかき消した。
やはり思い過ごしの杞憂かもしれない。そう思った時、目の前にはドルド・プラチナが建っていた。
どうやら一人くだらない憶測に掻き立てられている内に目的地に到着していたらしい。

ドアを開け、店長に“やあ”と親しげに挨拶をすると徳井は窓際の席に座ってカプチーノを注文した。
そういえばここは大谷さんの思い出の場所だと言う。
ふらりと紅茶の匂いにつられて悠々とティータイムを堪能してるかもしれない、と席から辺りを見回す。
最初に一瞥をくれたのは帽子を被った男に鋭い往復ビンタをプレゼントしている女性だった。
ビンタを貰った男性はあまりに痛かったのか、少しの間ボーッとした表情だった。
店長は苦々しく笑っていたが徳井はその光景を見て平和そうでなによりだ、と思う。
もしかしたら彼らにとっては『サングラスをかけたアブナイ人がこちらを睨みつけている』ように見えたかもしれない。
徳井はいそいそと注文していたカプチーノを一気飲みした。

「きゃっ!」
突然のことである。女性のウェイターが何かに足をひっかけたらしい。
その拍子にトレイに乗せられたガラスのコップやマグカップやら皿が空中に投げ出された。
徳井はサングラス越しに投げ出された食器類を見つめる。

“ズキュウウウウンッ”!!

飲み終えたコーヒーを持っている徳井の右手から別の腕のようなものが飛び出す。
飛び出した腕が空中の食器類を掴み、トレイの上に即座に戻したのだ。
女性ウェイターは不思議そうに食器類を見つめていたが、徳井はとぼけた口調で言い放つ。

「いやァ〜〜凄い偶然っスねェ〜〜コケたのに食器が落下しないなんて、幸運の女神がついてるの か も」
女性ウェイターは終始不思議そうな顔だったが、徳井は『良いことをした』と満足気だった。


【徳井、現在地ドルド・プラチナ。スタンドを一瞬だけ発動】

194 :神条時人 ◆BhCiwB2SCaJ5 :2010/07/18(日) 15:06:54 0
>192
神条時人は佐藤ひとみの話を頷きながら一言一句を噛み締めるように黙って聞いていた。
佐藤と接している時間。それは少年にとってかけがえの無い時間に変化している。そう感じとれた。

今、彼のまわりに流れている時間、それは砂時計の砂がまるで銀の砂に変化して
光輝きながら落ちていってしまっている…そんな感じ。

尊い時間。こぼれ落ちゆく銀の砂は、神さまにだって元に戻せないのだろう。

>「ええっと…似たような場所なら知ってるけど…多分ただ似てるだけの場所よ。
>その場所ここから車で5時間くらいかかるもの。君が行ったことのある場所だとは思えないわ。」

「…でも行ってみたい…行かないと…心のもやもやがなくならないから…」
内気な彼にとっては普通ならありえない言動なのだが佐藤の図書館でのやわらかい物腰は
少年の脆弱な心から生えているか細い足に一歩前に踏み出してみるという勇気を与えていた。

「ね?いっしょに行こっ。お姉ちゃん。こんどの日曜日の午前11時、ドルドプラチナで待ち合わせだよ!」

チュ。神条は少し背伸びをして佐藤の頬にキスをすると逃げるように図書館から去った。


>187
――日曜日。ドルドプラチナ。

>「……おげっ!!」
聞き覚えのある声。その主は私立探偵の灰島秀一。神条はふりむいて挨拶をした。

「おはようございます。灰島さん…ですよね?
ぼく…このまえ事務所にお伺いした神条時人です」

神条は数日前に自分の夢に出てくる場所が本当に実在するものなのか灰島に捜索依頼をだしていたのだった。
そのときは夢の場所を絵に描いて説明したのだがうまく伝えることが出来なかった。なぜなら神条には絵心がなかったのである。
それで結局はその依頼自体を神条は取り消して自分の力で夢の場所ついて調べるため図書館に行き先日佐藤に出会ったのだ。

「ぼく、これから女の人とあの夢の場所に行くんです。
この前図書館で偶然に夢の場所を知っている人に出会ったんですよ」

佐藤との待ち合わせ時間まではあと5分。
入り口の人の出入りはきちんと観察していた神条だったが佐藤は依然姿を見せない。
もしかしたら自分より先に入ってどこかにちゃっかり座っているのかも知れない。
神条はきょろきょろと店内を見回してみた。

>193
>「きゃっ!」と女性の悲鳴。
佐藤ひとみと思った神条はその声の出所に目をやると次の瞬間その目に映ったものはこの世の法則から外れた不思議な光景。
転びかけた女性のウェイターのトレイから空中に投げ出されたガラスのコップやマグカップやらが即座にトレイの上に戻ったのだった。

神条にもこの摩訶不思議な出来事の原因は理解できていた。

>「いやァ〜〜凄い偶然っスねェ〜〜コケたのに食器が落下しないなんて、幸運の女神がついてるの か も」

このとぼけたサングラスの男の仕業。高速で飛び出した影のような腕が一連の出来事の根源。
神条も今までに色々な怪奇現象を体験してきたのだが知らんぷりをしてきた。
何故ならそれは人の裏側を覗き見するようなことだと思ってきたから。
例えたら上手く化けている狐に「あなたは狐ですね」とか
整形している人に「整形美人ですね」とかは口が裂けても言えない。そんな感じ。

神条はサングラスの男を見ない様にして佐藤ひとみを待ち続ける。

195 :佐藤ひとみ ◆tGLUbl280s :2010/07/19(月) 04:11:55 0
>194
「こんにちは。午前中なのに暑いわねぇ。アイスエスプレッソ下さい。」
佐藤ひとみは日傘を折り畳んでカフェに入りカウンターで飲み物を注文した直後にぎょっとした。
奥の席から向けられた視線に気づいたからだ。
店の名はドルト・プラチナ。
テーブルに座っている少年が視界に入った途端忘れていた"約束"を思い出した。ここは少年の指定した待ち合わせの場所…。
――数日前の図書館
一方的な"約束"を残しひとみの頬にキスをして走り去っていった少年。
「何?あの子?新手のナンパのつもりかしら…?大人しそうな顔して…チャラ男の素質大アリね。」

ひとみは少年の後姿を見送り呆気に取られて呟く。
図書館の休館日は月曜日なのだが偶然にも次の日曜は休日…しかしひとみは一日を少年との約束に費やす気など毛頭無い。
こちらの返事も聞かずに一方的に投げられた約束。
「約束を破った」と泣きつかれた所で知ったことじゃない。子供のお守りに貴重な休日を潰すなんてご免だ。
約束の履行には相手の言質が必要だと少年に思い知らす良い機会だろう位に考えて、それっきり"約束"のことなど忘れていた。
つまりここにひとみが現れたのは偶然。買い物に出かける途中暑さに耐えかねて立ち寄っただけなのだから。
スタンド使いはスタンド使いと引かれ合う…
偶然か、必然か?枝分かれしてほつれかけた運命の糸は偶然の名の元に一つに収束していく。



奥のテーブルに座る少年としっかり目が合ってしまった。
ここまで来て知らん振りをする訳にもいかず、ひとみは観念して少年の向かいに腰を下ろした。
口を開きかけた少年より先にひとみは言葉を繰り出す。

「神条時人君だったわね…?」
図書館の貸し出しカードから記憶していた名前。

「悪いけど…私、君と一緒には行けないわ。
私は君のご両親と面識が無いし、1、2度図書館で会っただけの私が君を連れ回すなんてこと出来ない。
誘拐や連れ去りが多発する物騒な世の中だもの。
君のご両親だってきっと良く知らない私と君が遠い町まで行くことを許してくれないわ。
"夢に良く似た場所"に行きたいなら地図と住所を書いて渡すから改めて親御さんと一緒に行ってみてね。」

手を横に滑らせる仕草をするとひとみの膝の上に半透明のスタンドシートが現れる。
佐藤ひとみのスタンド『フルムーン』は対象の位置を捕捉、視覚化する能力を持つスタンド。
地球上のあらゆる位置情報をGPS信号を受信することで詳細に知ることが出来る。
シートを見ながら書いた目的地の地図と住所のメモを少年に渡し二の句も次がせずテーブルから立ち上がるひとみ。
追い縋るように見つめる少年の視線を振り切りドアに向かって歩く。


店に入る時には気づかなかったが窓際の席に徳井一樹の姿を認めた。
イタリアに帰ったと聞いていたが再び北条市に来ていたらしい。
この微妙な事態、彼に割り込まれると余計面倒なことになりそうだ。
ひとみは敢えて徳井と視線を合わせず『話しかけないで』オーラを出しながらドアのベル音と共に店から出て行った。

196 :佐藤ひとみ ◆tGLUbl280s :2010/07/19(月) 04:13:02 0

ドルト・プラチナを出て直ぐ、最初の交差点に差し掛かってひとみは異変に気づいた。
交差点の様相がいつもと違う……道路の幅も周囲の建物も景色も一切が違っているのだ。


……長い夾竹桃の垣根、角にある郵便局。歩道の煉瓦が特徴的な柄を描くイチョウ並木の交差点……


これは少年の話していた夢の交差点の風景…。

「何よこれ?!どういうことなのッ?」

上空にフルムーンを飛ばして周囲を俯瞰するが交差点の周囲は霧がかかった様に白く濁り視認することができない。
ひとみは手元にスタンドシートを出現させて周辺の地図を表示した。
シートに示された地図は常と変わらぬ北条市、ドルト・プラチナ付近の交差点……。

仕方なく交差点を渡り道路を歩く。
しかし奇妙なことに交差点のどの道を歩いても結局ドルト・プラチナの前に戻ってしまう。
シートに表示された地図とひとみの現在地を表すマーカーを睨みながら歩いてみたが
ひとみが店の前に戻るとマーカーもいつの間にかドルト・プラチナ前に戻っている。

ひとみは再びドルト・プラチナのドアを開け店の中に入り少年に近付いた。

「君、私に何かしたんじゃないの…?!私には君が"能力"を持っていることが分かるのよ…。正直に言いなさい!」

フルムーンは半径100m以内のスタンド能力者の位置を探知できる。
この店の中に居るスタンド使いはひとみを除いて3人。
徳井と少年の近くのテーブルに座る帽子の男……そしてこの少年……!

再び店に入ってきたひとみをきょとんと見つめる少年からは明確な悪意を感じられない。
ひとみはキレる前にまず静かな口調で少年を問い詰めた。

197 :よね ◆0jgpnDC/HQ :2010/07/19(月) 12:20:57 P
スタンド使い同士は引かれあう。
かつてスタンドの事を多く教えてもらったとあるインド人がもっとも大事だと言っていた言葉。

九頭龍一との戦いが終結し、そしてよね自身に何かおかしな変化が起きはじめた。
それ以来、よねは半ば無意識的に突然"彼"のことを思い出すのだ。

――2年前

よねは語学研修という名目で、とあるルートから情報を仕入れた不思議な力を持つインド人に会いに行っていた。
そのインド人には自分と同じような能力があったからだ。

そうしてよねは某国のとある村へと飛んだのだった。

「あなたが…ハマさんですか…?」

ぎこちない現地語で一人のインド人に話しかける。
彼の名前はハマ・マムド・ウルブド。

【貴方が来る事はわかっていました。いや、貴方の様な人間がここに来る事は】

おだやかな口調で喋りだすハマは早速…と言ってからよねを広い洞穴の中へと案内した。
そこには何十人もの包帯に巻かれた人々が横たわっていた。
呻き声を上げ、異臭を振りまく人々だったが、ハマは何も躊躇することなくその人々に近寄った。

【ヨネさん、これが私の一つ目の能力です。貴方にも、このような超常現象を起こす力があるはず。それが"スタンド"です】

一人の包帯の人に手を添えると、先ほどまで呻き、苦しんでいたその人間がピタリと止まった。
そして次の瞬間にはすでに立ち上がり、己の身体に巻かれた包帯を破いていたのだ。

【これが私のスタンド…オーガスターの能力の一つ。私の能力は"与える"こと、そして"奪う"ことです】

そうしてハマは次の男に手を当てる。だが、どういうわけかその男は呻き声も上げていないし、包帯も巻かれていない。
その手に錆び付いた手錠がついていて、その手がガタガタと震えているだけだった。

その男は死んだ。

よねは内心、来なければよかったと思った。恐ろしいのだ。
自分の能力が人の人生を大きく左右させうるモノだと知ったから。

「あ…あの…彼を何故、殺したのですかッ!?」

【この人は自分の集落を滅ぼした人間です。殺した人間の数は32人、犯した女の数は19人、盗んだ物の数はだいたい二百ぐらいです。
 彼は裁きを受けなければならなかった人間。…さて、貴方にはこれから3ヶ月間自分の能力についてじっくりと知っていただきます】

それから3ヶ月は一瞬だった。恐怖を感じたのはこの時だけだった。

…………

ハッと目が覚める。まどろんでいた。

「…誰かに会わないと。こんな生活…いつまでも続けられるものでは…」

そうして、とりあえずよねは以前友人に教えてもらったきりのカフェ、『ドルド・プラチナ』へ向かったのだった。

198 :神条時人 ◆BhCiwB2SCaJ5 :2010/07/19(月) 16:32:42 0
>195>196
すでに太陽はドルト・プラチナの天辺にまで移動している。外はとっても暑い。
確か太陽は10年周期でその活動を活発にするのだとTVショーで言っていた。
九頭龍一との戦いに始まったこの一年はスタンド使いたちにとっても忘れられない一年となるのかも知れない。

ここ北条市。ドルド・プラチナの一席で地図を渡され呆けている少年がいる。
(>195の態度を受けて)
「…おねーちゃん。怒ってるの?ぼくが…あの時ほっぺにキスしたから?」
佐藤ひとみは怒っていると言うわけでもなくこの態度が本来の佐藤ひとみ。
図書館で司書を務めているときの佐藤を佐藤と思ってしまってはダメなのだ。
佐藤ひとみはドアのベル音と共に店から出て行く。
「待って!」
神条時人は慌てながらもクリームソーダをいそいで食べ始める。
佐藤も大切だが少年にとっては、なけなしのお小遣いをはたいて買ったクリームソーダも大切なのだ。
ごくごくと緑色の液体を飲み干して口を拭って外に出ようとすると鬼みたいな顔をした佐藤が戻ってきていて

>「君、私に何かしたんじゃないの…?!私には君が"能力"を持っていることが分かるのよ…。正直に言いなさい!」
びっくりした神条は豆鉄砲でも食らったような顔。意味がよくわからなかったので外に出てみると…。
……長い夾竹桃の垣根、角にある郵便局。歩道の煉瓦が特徴的な柄を描くイチョウ並木の交差点……

夢か現か…。ドルド・プラチナの外に現れたのは神条が夢でみた風景。
夢から現実へと突然噴出した風景に神条は触発され封じ込められた記憶を甦らせる。

10年前。交差点で繰り広げられた超常的な戦い。狩る者たちと殺人鬼との戦い。

「やつを逃すなムヅオ!」鋭い眼光の男は、たしかそんなことを叫んでいた。
「はい九頭様!!」ムヅオと呼ばれた男は、男の命令に泥をだして殺人鬼の足をからめとる。

殺人鬼の服は血だらけだった。だがそのすべては返り血。たった数分の間に男は何人もの北条市民を無差別に殺害していたのだ。
そして手に握られていた血まみれのナイフの刃はついさっきまで神条の腸をかき回していた。

まだ警察も救急車も来ていない。生まれたての惨劇が無言で市内に転がっている状態。

「ムヅオ!おまえは一体どっちの味方なんだよー!!仲間じゃなかったのかよー!!」
殺人鬼は叫び手に持ったナイフをムヅオの眉間に投擲し泥がゆるんだ隙に逃亡する。ムヅオは顔面を血で真っ赤に染め気絶している。
本来なら九頭龍一がスタンド使いでもない、ただの殺人鬼を相手にする暇も時間もなかったのだが、
今、逃走した殺人鬼に吉泉ムヅオの殺人欲が沸きたてられムヅオの本来の使命であるスタンド使いを狩ることが阻害されてしまったいた。
そのために九頭はとるにたらないたかが殺人鬼の一人でも全力で潰そうと考えていたのだ。

一方たまたま祖父の家に遊びに来ていた幼児の頃の神条は殺人鬼に数分前に腹部を刺されて瀕死の状態。
もちろんここで死ぬことはなかったのだが彼の死にかけた魂は時間や空間からの束縛から解放されている。

野暮用で寄り道をしかけた高校時代の佐藤ひとみと魂だけの状態となった神条時人はこの交差点で初めて出会うことになる。
友達か誰かから借りたものを返すために交差点で待ち合わせをしていた佐藤。ここを数分後に殺人鬼が通ることなど知るよしもなかった。
「おねーちゃん。こっちに来て」
幽体離脱をして魂だけになっていた幼児の神条の呼びかけに少し離れた路地に佐藤が入り込むと佐藤が消えた交差点で繰り広げられる九頭たちと殺人鬼との戦い。
そう、彼女はあの時に神条に呼びかけられなかったら死んでいた。

ここは初めて二人が出会った場所。少年の思い出の場所。

時間は現在に戻る。
「きゃああああ!!」思い出とともに交差点を引き裂く女の悲鳴。
周囲の建物はまばゆい銀色の光を発しアスファルトからは陽炎がゆらゆらと沸き立つ。
佐藤の目の前にはナイフを持った血まみれの男が立っていた。
夢か現か。否。ここは二つが交じり合った世界。二人の前に現れたのは夢でもあり現実でもある。
あの交差点で死ぬ運命だった佐藤をこの宇宙の法則が時間と空間を繰り上げてまで殺しに来たのだ。
「おあああ〜」 奇声を発しながら殺人鬼はナイフで佐藤に襲いかかる。
「あぶない!!おねーちゃん!!」神条には絶望的な予感がしていた。信じられないほどの空間のゆがみを感じる。
あの時、運命を変えてしまった二人はもうすでに運命の神の逆鱗に触れてしまっているのかも知れない。

199 :佐藤ひとみ ◆tGLUbl280s :2010/07/20(火) 03:51:57 0
>198
どの道を通ってもカフェ・ドルト・プラチナに戻るループ回廊と化した交差点。
ひとみはカフェに戻り少年を問い詰める。
静かな口調の裏の隠せぬ苛立ちを察知して少年は目を見開いて驚いている。
要領を得ない少年の対応に痺れを切らし、ひとみは少年の腕を掴んで件の交差点に向かった。

「ここ…君が夢に見るって言ってた交差点ね…?何でここにその交差点があるのよッ?」
少年に詰め寄るひとみ。

人気も車もない不自然に静かな交差点。空の青、並木の緑、夾竹桃の赤い花が鮮やかな対比を見せている。
思い出の風景はひとみに10年前この交差点付近で遭遇した不思議な出来事を想起させた。

あれは高校1年の夏――。
佐藤ひとみの地元は北条市から車で数時間かかる他府県。
少年と記憶を共有する交差点は通学路から少し離れた位置にあり普段から人や車の通りの少ない場所であった。
その日ひとみは同じクラスの男子にCDを貸す約束をしていて彼はこの交差点を待ち合わせ場所に指定した。
こんな人気の無い交差点を指定するあたり彼に下心があったのかもしれない。
校内で渡せば済むのにと思わないでもなかったが優等生の彼は普段からテスト前にノートを貸してくれる貴重な人材。
何となく断りがたく放課後、ひとみは待ち合わせ場所の交差点に向かった。

交差点が見渡せる位置まで到着したが彼の姿は見えない。ひとみはゆっくりと交差点に向かう。
すると通りかかった細い路地の中からひとみを呼び止める声がする。
空耳かとも思えたが気になって路地を覘くと11〜12歳の少年が盛んに手を振っている。何かを必至に訴えるように。
ひとみは彼に招かれるように路地に入って行った。
少年は『付いて来い』とでも言いたげに振り返り走っていく。ひとみは少年を追い路地の奥に入り込んだ。
路地を曲がり更に細い道に入った途端、前を走っていた筈の少年がいない…。
狐につままれた気分のまま元の道に戻ろうとするが路地は思った以上に入り組んでいて出口が分からない。
何処を歩いても同じような路地。まるで同じ道を逡巡している気分だ。


暫し迷子状態の後ようやく路地から脱出して交差点に向かう。
交差点に到着するといつもと全く様子が違う。
普段は静かな交差点にロープが張られ制服を着た警察官や野次馬が集い物々しい雰囲気。
歩道にはチョークで人型が描かれ赤い血溜まりがチョークの外まで広がっていた。
ひとみより先に待ち合わせ場所に来ていた同じクラスの男子は通り魔に襲われてその場で即死したという。
後で聞くと交差点の付近で何人もの人間が通り魔に襲われ命を落としたらしい。

200 :佐藤ひとみ ◆tGLUbl280s :2010/07/20(火) 03:54:39 0
静かな町に起こった連続通り魔事件――
彼と同刻、交差点に辿り着いていたら…考えると背筋が寒くなる。
その頃未だ能力を以っていなかったひとみは凶悪な殺人鬼に対抗する術を持たない。凶刃の元に切り捨てられていただろう。
路地に誘い込んだ少年は結果として命の恩人なのだが、ひとみは何故か少年の顔を思い出すことが出来なかった。


半ば無意識に交差点に纏わる凶事を回想するひとみ。

>「おあああ〜」
野太い奇声が耳に入った刹那、目の前にナイフを持った血まみれの男が躍り出た。
夢とも現ともつかぬ存在の突然の攻撃。

>「あぶない!!おねーちゃん!!」

少年の悲痛な叫び声に我に返ったひとみはフルムーンを出現させ触手の鞭で男の手からナイフを叩き落す。
即座に鞭を触手に戻すと手を押さえて蹲る男の首と手足に巻きつけ動きを奪う。
そのまま首を絞め落としてしまおうと触手に力を込める。

その時ひとみは足元に異変に気づく。道路から足首にかけてドロドロしたものが這い上がってくる。

「こ…これはあの時の泥のスタンド……?!」

この泥の能力は九頭龍一が差し向けた留流家の刺客……徳井が確かに別荘地帯で倒した筈のあのスタンド…?
再起不能のスタンドが何故…?

思考の巡る一瞬のうちにひとみの両足は泥に絡め取られ動きを封じられた。
泥は徐々にひとみの足を這い上がってくる。

【まぼろしムヅオ君に襲われて佐藤大ピンチ。誰か気が向いたら助けてください】

201 :神条時人 ◆BhCiwB2SCaJ5 :2010/07/20(火) 16:15:43 0
行く川のながれは絶えずして…。

たとえ川が石で塞き止められてしまっても川の水はその水の力を蓄えて石を押し流し元の流れに戻すことだろう。
行く川のながれは絶えないし結局石には消える運命が待っている。

運命の流れを変えることは誰にも出来ないのだ。

あの時。交差点で死ぬ運命だった佐藤ひとみに10年越しに押し寄せる運命の荒波を象徴すべく出現した死の交差点。
一日は24時間。しかし地球は自転の遠心力の関係で赤道付近は僅かに膨らんでいるらしい。
そこで生じるのが時の歪み。歪みを修正したい地球は時折、人に怪異を与える。

「あなたさっきあそこを歩いていたでしょう?」と出会った友人に電話をして聞いてみれば
物凄く遠くにいてその時間にはそこにいるはずがなかったりと怪異は時や空間を越えたりするのだ。

フルムーンの触手で縛られている殺人鬼。ここで神条は佐藤も同じスタンド使いなのだと理解した。
佐藤ひとみの足にまとわりつく泥のスタンド。ひっぱって助けようとしたが子供の力でどうにかなるものではなかった。

「ぉぁぁぁ〜ぉぁぁぁ〜」それに何故か遠くから聞こえてくる殺人鬼の声。

道の向こうを見て神条はゾッとすることになる。
交差点の四つの道すべてから無数の殺人鬼が列をなして歩いて来ているのだ。連なった姿は合わせ鏡を想起させる。
少年は佐藤が死ぬまで永遠に繰り返されるであろう運命の歯車の一部を見ているのだ。
野太い殺人鬼の声が響きわたる交差点で神条は独り沈黙を守る男が立っていることに気づく。
佐藤ひとみなら知っているであろうその男の名前は九頭龍一。

「生を与える母が特別なものならば死を与えるものもその対極の特別な存在となる。
君は私を救い、そして死を与えた特別な存在だ。日ノ本の子、孫、ではなく佐藤ひとみ、君個人に云おう。
ありがとう…そして……死んでくれ…。」
九頭の日本刀の切っ先が佐藤の喉元に突きつけられる。

行く川のながれは絶えずしてしかも本の水にあらず。澱みに浮ぶうたかたはかつ消えかつ結びて久しくとゞまることなし――

返り血を浴び衣服を真っ赤に染めた殺人鬼たちはふらふらと二人に近づいてくる。

「おねーちゃん!この現象は…同じ様に流れているけど…もとの流れじゃないんだよ!!
古い流れも新しい流れも渦を巻いて巻き込んでいるから!ここは現在と過去を貫いて平行に存在する鬼門なんだ!!」
佐藤にむかって叫ぶ神条。

神条の叫びに、フルムーンに縛られている殺人鬼が話始めた。
「おああぁ…。女はここでオレに殺される運命なのだ。ふひひ…運命に逆らうな…運命を受け入れろ…」

その言葉に神条は…
「運命に逆らってはいけないなんてどんなルールなんだよ!それに受け入れろ?どれだけボクたちは受け入れたらいいの!?
生まれたものが勝手に運命で殺されるとかありえないっ!!神様が運命とかで人を操って弄んでいるんだとしたら
人じゃなくてそこら辺の石でも使って遊んでいて欲しいよ!!」と返す。

「ふへへへ。おまえ考えすぎ。チェスの駒がいちいち敵の駒をとる時に何か考えていると思うか?
殺人欲。それがオレという駒の原動力。その欲に従順に動くオレは単なる駒だ」
二人のまわりには殺人鬼たちが集まりつつある。殺人鬼たちの立ち位置はすでにドルト・プラチナの入り口よりも近い。

「…しかたないみたい。スタンド…使うしかないみたい…。ザ・フューチャーへッズ…」
スタンドを出す神条。出現と同時に世界の時間が少し戻る。

「おあああ〜」と殺人鬼。
「あぶない!おねーちゃん!!殺人鬼!!それに足元の泥!!」
時間が神条の記憶だけをそのまま残して少しだけ戻っていた。
【時間軸の逆戻り(>200の五行め)】

202 :灰島 ◆Lmi2QRHkqmi8 :2010/07/20(火) 18:49:07 O
>>193
>“ズキュウウウウンッ”!!
>「いやァ〜〜凄い偶然っスねェ〜〜コケたのに食器が落下しないなんて、幸運の女神がついてるの か も」
先程から視線を感じていた。いや、視線だけではない。
この”感じ”は何処かで…?
「…おーい、灰島くん。なにボケーッとしてんの!?」
ユカリが目の前で手を振るのに気付き、ようやく視線をサングラスの男から
逸らした。
「いや、なんでもない。気のせいってやつだろう。」
>>194
>「おはようございます。灰島さん…ですよね?
>ぼく…このまえ事務所にお伺いした神条時人です」
神条時人−−−先日、奇妙な依頼を持ってきた少年だ。
あの時は、丁度”あいつ”がいなくて何も出来なかったが
何か手がかりでもあったのだろうか。
>「ぼく、これから女の人とあの夢の場所に行くんです。
>この前図書館で偶然に夢の場所を知っている人に出会ったんですよ」
「……なるほどな。そいつは良かった。
俺でも、手助け出来る事があるならいつでも事務所に寄ってくれ。」



203 :よね ◆0jgpnDC/HQ :2010/07/20(火) 22:08:33 P
朝から街…いや、街の一角の雰囲気がおかしい。
霧がかかっており、しかも一般人の気配が一切しない。
そう、"一般人"の気配は。

友人が道案内に使った道を忠実にたどっていく。
見覚えのある交差点が見えてくる。ドルド・プラチナはすぐそこだ。

だが、よねはあることに気付いた。
人がわらわらとひしめき合ってるではないか。それも全ての人間が血に飢え、狂気に侵されている。

「これは…ン…あれは、佐藤さん!?Sum41!この道は自分と反発しあう!!」

ビシュッと音をたてて人の群れの上を飛び越えるよね。
そうしてよねは自分の目の前の光景を見て愕然とした。

「九頭龍一…?い…生きて…」

ほんのわずかだがよねは歓喜した。
その瞬間、目の前の光景は一変していた。
泥に足元を絡め取られ身動きが取れない佐藤。

「以前なにかの本で読んだことがある…過去と現在が入り混じった世界。
 数々の矛盾が存在する世界。そこに迷い込んでしまったのか…?」

一人困惑するよね。何がなんだかわからない。

204 :徳井一樹 ◆MnJrk02a/Yx. :2010/07/20(火) 22:41:44 0

カプチーノを飲み終え、冷房の効いたドルド・プラチナで昼寝感覚で厚かましくくつろく徳井。
頼んでいたカプチーノの“おかわり”がテーブルに届くと、カプチーノの入ったティーカップを手に取る。
ふと、店のドアに目を運ぶと佐藤がいるではないか。
“よォ〜〜誰かと思えば佐藤さんじゃあねーか!”
そんな言葉が発せられようとした寸前、愚鈍な徳井はやっと気づいた。

┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨ ………

漫画ならば確実にこんな擬態語がついたであろう。
それほど佐藤の『話しかけるなオーラ』は凄まじかった。
若干の怒りはあったものの話の内容といえば『今…いっこ新作ギャグ思いついた』
だったためそれはそれで呆れた顔をされそうだったので話しかけなくて正解ではある。
窓際で去り行く佐藤を一瞥するとカプチーノを飲みはじめた。
飲み終えたカプチーノを受け皿に戻し、料金を支払うと徳井は店を出ようと席を立つ。

行き先は特に決めてないがあやふやに情報の集まりそうな市役所に行こうと決めた。
いざ店から一歩踏み出せばそこは地獄絵図とも言うべき姿だった。
目の前には明らかにプッツンきてるような男が溢れ帰り、少年と佐藤がドルド・プラチナの目の前に居た。
何が起こったのか佐藤に問い詰めようとして動いた瞬間場面が巻き戻ったように目の前の光景がかわる。

>「以前なにかの本で読んだことがある…過去と現在が入り混じった世界。
>数々の矛盾が存在する世界。そこに迷い込んでしまったのか…?」
>「あぶない!おねーちゃん!!殺人鬼!!それに足元の泥!!」

佐藤が泥に足を捕らわれ、よねが近くにいた。
思わぬところで三ヶ月ぶりの再会。運命の歯車が回り始めたとでも言うのか?
明らかに佐藤は窮地に陥っていたが徳井のスタンドではどうしようもない。
思い返したくもなかったが間違いなくあれは吉泉ムヅオのスタンド……
『フラット・アース・ソサエティ』の泥相手では相性が悪すぎるのだ。

「よくわからんが……佐藤さんッ!そのスタンドは俺じゃあどうしようもできねーー
知っての通り俺のスタンドは液体や気体相手には弱いんだ……固体なら別だがよッ!」

突然の出来事に困惑した徳井だったが、とにかく目の前の佐藤を助けねばならない。
しかし自分ではどうにも出来ない歯痒さを感じる。

205 :灰島 ◆SG8ZciwIMA :2010/07/20(火) 23:38:06 O
>>196
>「君、私に何かしたんじゃないの…?!私には君が"能力"を持っていることが分かる>のよ…。正直に言いなさい!」


「…どうしたんですか?何があっ…とうぉわ!!」

ユカリを押しのけ、灰島が2人の様子を見つめる。
「どーなってんだか。おい、聞こえるか?」
−灰島事務所−
彼は本を読みながら紅茶を愉しんでいた。
彼の名前はミカエル。
彼は灰島の相棒であり、そしてこの事務所の実質的な管理人でもある。
「はいぃ?あぁ、僕に用ですか。
なるほど……実に興味深いですねぇ。」
遠くにいながら2人は意思の疎通が可能である。
その理由は1つ。
2人が持つ特殊な力だ。
「君のいるカフェに何かよからぬ気配を感じますね……気をつけた方がいい。」
ミカエルの警告を聞き、殺人鬼の気配を感じながら
外へ出る。
目の前には無数の殺気、邪悪な気配が満ちていた。

「この街の風は心地いいもんだ……ま、その風や、街を汚す奴は
許せないな。」
灰島の背後に、漆黒のダイヤモンドを纏ったスタンドが出現した
【灰島、スタンドを発現】


206 :佐藤ひとみ ◆tGLUbl280s :2010/07/22(木) 01:16:22 0
>201 >203 >204
過去と現在、彼方と此方。時間と空間が入り交じった死の交差点。
現在とひとみが遭遇する筈だった過去、そして少年が見た僅か先の未来まで内包して渦を巻き
交差点の形をした牢獄の囚われ人達に襲いかかる。
運命の糸は規則的な螺旋を描き解れを許さない。
あの日死ぬ筈だったひとみの存在を消し去るため、無限の凶事となって襲いかかる運命のスパイラル。

> 「あぶない!おねーちゃん!!殺人鬼!!それに足元の泥!!」
教えられたところで凶事の連鎖は解けない。ひとみは少年の見た未来通り泥に足を絡め取られる。

よね、徳井、カフェにいた帽子の男。運命の交差点引き寄せられた面々。

> 「よくわからんが……佐藤さんッ!そのスタンドは俺じゃあどうしようもできねーー
知っての通り俺のスタンドは液体や気体相手には弱いんだ……固体なら別だがよッ!」
徳井は泥に呑み込まれそうなひとみを遠巻きに見ながら叫んでいる。

「もうっ!カタギじゃない癖に女の一人も助けられないのッ?だらしないわね!」

叫びながら殺人鬼を緊縛する触手を刃物に変え一気に首を切り落とす。
殺人鬼の体から離れた触手は半分をひとみの胴体に巻き付け、残りは細かく枝分かれし近くに路駐された車の窓に侵入していく。
ハンドルに絡まる触手。一部だけ微細なまま鍵穴に入り込みエンジンを始動させる。
発進する車の推進力を上乗せしたパワーで泥から引き抜かれたひとみの身体は宙に舞う。
触手に掴まり泥の届かない位置に降り立つひとみ。
ハンドルを操っていた触手を切り離された車は歩道に乗り上げ、偶然にも徳井のいる場所に向かって突っ込んでいく。


ひとみが着地した道の側には成り行きを見つめる、よねの姿があった。
「よね君!いい所に来てくれたわね!フェイズ2を発動して!あんたの能力なら泥の動きを止められる!」

フラット・アース・ソサエティは泥を『纏った』スタンド。
物体の慣性を凍りつかせるフェイズ2の能力で流動する泥を中にいる本体も含めて封じることが出来る筈だ。

よねにフラット・アース・ソサエティ攻略を丸投げした直後
…黒い煙を上げて現れた人影…ナタを持った仮面の男……消滅したはずのアンテロス…!!
デパートで襲い掛かってきた亡霊状態のアンテロスと違い実体化しているようだ。
ナタを振り上げ襲い掛かってくる擬似アンテロス。


>「ぉぁぁぁ〜ぉぁぁぁ〜」
重なり合い響きあう不気味な咆哮。それは交差点の中央を目指し十字に突き進む殺人者の列……
葬列の如く一定のスピードで同じ抑揚の呻きを漏らし近づいてくる狂人の群れ。
さながらベルトコンベアに乗せられた加工品よろしく一人倒されれば一人…
その一人が倒されればまた一人が…ひとみに襲い掛かろうと控えている。

207 :佐藤ひとみ ◆tGLUbl280s :2010/07/22(木) 01:22:09 0
>205
アンテロスと殺人鬼に狙われたひとみは、
自分達の様子を少し離れた位置で静観している帽子の男に向かって走り男の後ろに回りこんだ。

「あなたスタンド使いなんでしょう?!
か弱い女が助けを求めてるのよ!義侠心とか湧くでしょう?!ナイトになれるチャンスよ!
ナタ男かナイフ男…片方でいいから何とかしなさいよッ!」

殺人鬼と擬似アンテロスは獲物の障害物を破壊すべく、ひとみの前に立つ男、灰島に襲い掛かった。


カフェにいた男にアンテロスと殺人鬼を押し付けて交差点を脱出しようとするひとみの目の前に突如あの男が顕れる。
ひとみにとって唯一無二の存在であるあの男…。
一瞬だけ優しい表情をした後、日本刀の切っ先をひとみの咽元に突きつける九頭龍一。

>ありがとう…そして……死んでくれ…。」

一瞬の不動を挟み、ひとみは懐刀を九頭の胸に付き立てた。
九頭がひとみとの別れに握らせた懐刀…常にバッグに入れ持ち歩いていたそれを触手を使って取り出していたのだ。

「九頭龍一は『ちょっとそこのバター取ってくれ』みたいな言い方で『死んでくれ』なんて言わないのよ!絶対に!!
何の幻だか知らないけど完成度が低すぎるのよッ!!」

悪態をつくひとみ。九頭の姿をしたモノは苦悶の表情を浮かべ煙のように消えていく。


【徳井さんはボーッとしてると暴走車にひかれます
よねさんフェイズ2で泥対策よろしく
灰島さん、殺人鬼はたくさんいますがただの人です
いま襲ってきているアンテロスはニセ者ですので30秒経っても消えません。かわりに普通にダメージを受けます】

208 :よね ◆0jgpnDC/HQ :2010/07/22(木) 03:05:25 P
/「よね君!いい所に来てくれたわね!フェイズ2を発動して!あんたの能力なら泥の動きを止められる!」

幻か否か。そう自問自答を繰り返していたのにあっさりと答えが出てしまった。
目の前には佐藤、そして徳井、さらには…とにかく現実だとすぐに分った。

「え…あ、ああ!はい!Sum41!Phase2ッ!!」

よねを中心として円が広がっていく。
Sum41フェイズ2の能力、それは円の範囲内の一切の物理運動を止めること。
これで泥の動きは止められる。動きが止まった泥はもはやただの固形物質。

「Sum41ッ!この泥はチタン合金になる!!」

泥が一瞬ひび割れたかと思うと、瞬時にチタンへと変化する。そして、変化が終わったときだった。

ヒュオオオ…

フェイズ2の範囲内には風すらも届かないはずであった。
だが、その風はよねにも感じることが出来た。

「この風は…まさか…」

よねはもしかすると"奴"と因果の鎖で結ばれているのかもしれない。
だが、"奴"の甲高い笑い声は聞こえない。"奴"すなわち"秋名"である。

「結局これも幻ですか!種がわかればチープなトリックですね!!」

だがよねはわずかながら恐怖を感じることになる。
フェイズ2を解除すると途端に身にしみる突風。

「幻…じゃない…?Sum41!Phase2!!」

そうしてよねはある程度の広さを確保すると秋名の狙いは自分自身だけであると痛感した。

「徳井さん…帰っちゃったんじゃなかったんですか!?そ…そんなことは後で聞くとして…
 この風は任せてください!そしてここにフェイズ2の円を残しておきます!もしも物理運動を止める必要があるならここへ!!」

【泥はチタンに。幻影秋名(スタンドのみ)出現。フェイズ2の能力を解除せず】

209 :神条 ◆BhCiwB2SCaJ5 :2010/07/22(木) 15:45:34 0
自動車を使って泥から足を引っこ抜く佐藤ひとみ。引き抜かれた足は泥でべとべとになっている。
神条がそれを見ながら大きなカブを想像していると自動車はさっきドルトプラチナにいたサングラスの男に突っ込んでいった。

これは佐藤が不運を撒き散らしているようにも見えなくもない。

「……」

神条は生まれて初めてのスタンドバトルに言葉を失っていた。
自分の能力は少し先の未来を予知すること…。正確には予見。それくらい。

>「Sum41ッ!この泥はチタン合金になる!!」
どこからか現れた男の人の言葉で泥がチタンに変化する。

┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨ ………

神条は背後に何かの気配を感じた。振り返る神条。

暴れ牛が突進してくる。佐藤は過去に牛に殺されそうになったこともあるのだろうか。
人は生きていれば気づかないうちに死神の鎌が背中をかすっていることもあるのだろう。

「おねーちゃんあぶない!」
神条は佐藤を突き飛ばして牛の突進から守った。だが守ったつもりの佐藤は何故か開いていたマンホールの穴にお尻をはめ込んでしまっていた。
まさにトイレの穴にはまってしまった子供のように。
暴れ牛はというとチタンの地面に足を滑らせて佐藤ではなく電信柱に突進してそれをなぎ倒して死んでいる。

そして案の定、身動きの取れない佐藤ひとみにむかって倒れてくる電信柱。
神条は佐藤の手をひっぱてみたがやっぱり子供の力ではどうしようもなかった。

「たすけてー!!灰島さーん!!だれか〜」
ここで神条が知っている人は灰島ただ一人。まわりにいるひとたちも忙しそうだった。

210 :徳井一樹 ◆MnJrk02a/Yx. :2010/07/22(木) 19:49:00 0

せっ‐かい【切開】
[名](スル)
@切り開くこと。特に、治療のために医者が患部をメス、はさみなどで切り開くこと。「患部を―する」
A徳井一樹のスタンド能力。人に対して使用するのは残酷なもの。「セイヴ・フェリスで敵を─する」

###################################

鈍い音を上げ、排気ガスを撒き散らしながら暴れる車に徳井は胃が重くなった。
どうやら佐藤が動かした後そのまま放置したようだ。息ピッタリでこちらに突っ込んでくる。
スタンドで真正面から止めることも出来ることには出来たが徳井にそんな発想はなかった。
あるのは徳井一樹の十八番──『逃げる』

「オーッノォーーッ!なんてことしやがるあのアマ!
車の来る間にさっさと逃げよう……なーちゃんってェッ!ってバカもう目の前じゃねーかッ!」
地面をスタンドが殴りつけると、1メートルほどの隙間のような穴が生まれる。
その中に防空壕のごとく徳井がひっこむと繋ぎ目はみるみる結合されていき元の地面へと戻る。
暴走車は何事もなくその場を通過していき、信号に激突して停止した。

これが徳井のスタンド、『セイヴ・フェリス』その能力は“触れたものを切開する”こと──
もちろん事後のケアも万全で切開面は結合して元に戻せる。
また切開の先として物体の切断も行えたり、連続使用で地面や壁の中も移動できる。

「なんだっつーんだよ……完全に巻き込まれキャラじゃねーか……
俺がなんか悪いことしたっつーのかよ?チクショーーッ」
切開の結合を解除して地面の中から徳井が再び姿を現す。
それにしてもよねと佐藤と出くわすとは奇妙な縁である、とつくづく思う。
彼らは北条市内に住んでいるのだから当然といえば当然だが。
これでは『スタンド使いは惹かれあう』というのもまんざら嘘ではないのかもしれない。

突然、強い風が吹く。少し体がピリピリしたが大した問題はない。
一拍子間をおいてよねの声がこちらに届く。

>「徳井さん…帰っちゃったんじゃなかったんですか!?そ…そんなことは後で聞くとして…
>この風は任せてください!そしてここにフェイズ2の円を残しておきます!もしも物理運動を止める必要があるならここへ!!」

「おお、よね君久しぶりだなぁ!…あ?俺がここになんでいるかって?
別にいいだろーがよ〜厄介者か俺はッ!つーかもしかしてこの風、秋名のですかァーッ!?
冗談じゃあねーぜ!スタンド墓場かここは!」
よねに愚痴をかました直後、何かが背後から飛来するのを感じ取れた。
徳井はなんとか横に避けることができたが、飛来したモノが一人の殺人鬼に命中するとそれはたちまち凍ってしまう。
飛んできたモノがなんだったのか?徳井は全てが終わった後に気づく。それはモノというよりは光線。
九頭が過去使用した、二つのスタンドが合体した合成スタンド。
ガラス質のスタンドは徳井の背後で静かに佇む。手を翳した状態で。

「“白光の王”………!しかもただの幻ってわけじゃあねえ…!あれは確実に現実だぜ…
だが九頭が死んでそのツラは二度と拝めないハズッ!」
白光の王の王冠が煌くと光がガラスの体を乱反射、増幅し手から高密度の冷凍光線が三発照射された。
それは徳井を大きく逸れてよね、神条の元へと向かっていく。

>「たすけてー!!灰島さーん!!だれか〜」

今まで視界の外にいたせいか気がつかなかったが少年がいる。
酷く間延びした声で助けてを求めているようだがこちらからでは距離が遠い。それに徳井が言いたいことは一つだった。

「ハハーッ!佐藤さん今までのツケが今日になってかえってきたんじゃあねーのーーっ?
天網恢恢祖にして漏らさずと言うしさァ〜〜神様はちゃんと見てんだぜーそういうのさあ!尤も、俺は無神論者だがね」


【ニセ白光の王出現。冷凍光線がよねさんと神条さんにとんでいきます】

211 :灰島 ◆lcCn/SJQ7. :2010/07/22(木) 21:36:39 0
>>208
殺人鬼に追われる佐藤が灰島へ向け叫んだ。

>「あなたスタンド使いなんでしょう?!
>か弱い女が助けを求めてるのよ!義侠心とか湧くでしょう?!ナイトになれるチャンスよ!
>ナタ男かナイフ男…片方でいいから何とかしなさいよッ!」

灰島は帽子を脱ぎ、一礼をしてみせる。
嫌に気取った態度を取りながらも灰島はゆっくりと
殺人鬼たちの渦の中へ歩みだした。

「まぁ、そう焦らないでくれ。俺は探偵、この街を愛している。
それに、この街に住む人もだ。助けないのかって?
ハハ、そいつは愚問ってやつだぜお嬢さん。」

襲ってきた殺人鬼の右腕を掴み、勢いに任せて投げ飛ばす。
綺麗に弧を描き倒れた殺人鬼の腹を踏み付けながら擬似アンテロスを睨む。
漆黒のダイヤモンドを纏ったスタンド――”レディ・ジョーカー”が
浮き上がりアンテロスを吹き飛ばす。
拳を見切れないほどの速度。彼のスタンドは接近戦に特化したスタンドであることは
明白であった。

「確かにいいスタンドだ。だが、相手が悪かったな。
”ジョーカー”は罪を裁く。断罪のスタンドだ。」

>>209
>「たすけてー!!灰島さーん!!だれか〜」

>そして案の定、身動きの取れない佐藤ひとみにむかって倒れてくる電信柱。
>神条は佐藤の手をひっぱてみたがやっぱり子供の力ではどうしようもなかった。

「おい、大丈夫か!?ってやばいだろそれ!!」

スタンドを神条へ向ける。間に合うかどうかは分からないが
ジョーカーの力ならば電柱を破壊できるはずだ。

【スタンドを発動、擬似アンテロスを殴り倒す→神条救出へ】



212 :灰島 ◆lcCn/SJQ7. :2010/07/22(木) 21:44:18 0

【スタンド】
名前: レディ・ジョーカー
タイプ/特徴: 近距離パワー型
能力詳細:凄まじいスピードの格闘攻撃と状況に応じた変身能力


破壊力-B スピード-A 射程距離-E(1・5m)
持続力-C 精密動作性-B 成長性-B



213 :吉野きらら ◇HQs.P3ZAvn.F:2010/07/22(木) 22:53:43 0
「愛してるよ」

「私も」

北条市のとある何処か。街の暗がり。
一組の男女が、愛を語り合う。

「――貴方達は今、幸せですか?」

そこに一人の少女が、問いと微笑みを携えて歩み寄る。
唐突な来訪者に女は怪訝そうな表情で男を見た。
けれども彼は寛容に、心配性だなと笑って、少女の問いかけに答えを返す。

「あぁ、幸せだとも。なあ?」

男はにこやかに言って、傍らの恋人にも笑い掛ける。
その様に女は少し困った様子で眉を顰めて、しかし最後には、はにかみながら笑顔を浮かべた。

「そうですか。幸せ、ですか」

二人の様に少女もまた、微笑みを色濃く変貌させる。
その奥に邪悪の気配が潜んでいる事に、恋人達は気付かない。

「……だったら貴方達は、もうおしまいです」

少女の言葉の意味を問い返す暇すら無く。
恋人達は花弁となり果て、離れ離れに宙へと散った。


九頭龍一の『ゲーム』から解放されて、三ヶ月。
吉野きららは――依然変わらず、人殺しに身を浸していた。
否、寧ろ一層奮って、『幸せ』の気配を振り撒く人々を殺して回っている。
理由は明白。彼らを踏み台として、彼女は再び『幸せの階段』へと返り咲きたいのだ。
だがどれだけの人を殺め屍を積み上げても、あの時には遠く及ばない事を、彼女は自覚していた。
せざるを得なかった。それ程までに九頭の『闇』と、左腕の生贄は大きかった。

「……あら、もうこんな時間。急がないと、遅刻してしまいますわ」

やや駆け足で、吉野きららは表通りへと出る。
人を殺めその足で、彼女は何食わぬ顔で日常へと戻っていく。
寧ろ殺人さえ、彼女にとっては幸せになる為の、日常の一部でしかないと言うべきか。

「……? 何だか、交差点の方が騒がしいですね」

耳は傾けながらも、彼女は交差点へ目を向ける事なくその場から離れていった。

214 :グリード・アヴァリティア ◇HQs.P3ZAvn.F:2010/07/22(木) 22:54:30 0
 


気が付けば、グリード・アヴァリティアは冴えない中年の姿でいた。

「……あぁ? 何だこりゃ」

青い縦縞の非常にダサい服装に、だらしなく太った腹に、吹出物だらけの丸顔。
それらが全て自分の物であると理解した時、彼は軽い目眩さえ覚えた。

「コイツぁ酷ぇ……。何だってこの俺がこんなツラに……」

傍にあった透明なケースに映る顔に手を添え、グリードは絶望を孕んだ声を零す。
よく見てみれば顔に触れた手さえ、爪の間には黒ずんだ汚れが詰まっている。
自分自身の体では無いと知りながらも、思わず彼は顔から手を離す事を禁じ得なかった。

「……おいオッサン、何やってんだ。さっさとレジしろよ」

レジの前に佇む男から投げ掛けられた罵声に、暫くの間グリードはそれが自分に向けられた物だと気付けなかった。
彼の精神はDISCとして二十代前半で保存されており、更には日本語も分からないのだから。
たっぷり十秒ほどの間隙を経て、漸く彼は男が自分に声を掛けているのかと悟った。

「あー……その『オッサン』ってよ。もしかして俺の事か?」

「はぁ? 何言ってんだ? いいからさっさと……」

「駄目だこりゃ。何言ってるかサッパリ分かんね。……しゃーねえ。ちょっくらやるか」

刹那、グリードの傍らに『スタンド』が出現する。
ボロ布を全身に纏い古ぼけた三角帽を被ったそのスタンドは、布の切れ目から覗く凶暴な瞳で男を捉えた。

「奪い取れ。『ハングドハント』」

『ハングドハント』と呼ばれたスタンドは、怪訝な表情を浮かべる男に拳の連打を叩き込む。
不可視の威力に男は為す術無く吹っ飛ばされて、日用品を陳列した棚に激突した。
雪崩落ちる商品に追い打ちを受けながら男は――中年男性の姿である――グリードを睨み上げ、

「あ……うあ……う……」

意味を持たない呻き声を零した。
だがその所以は、男の狼狽では無い。
無論理解の及ばぬ現象に狼狽えてはいたが、それでも彼は確かに「一体何をしやがった」と問うつもりだったのだ。
にも関わらず、彼は無意味な呻きしか発する事は出来なかった。
何故なら彼は『日本語』が分からなくなっていたのだから。

「……よっしゃ、これで良し。んで、オマエさっき何て言ってたんだ?」

対してグリードは、流暢な日本語を紡ぐようになっていた。
これが彼のスタンド『ハングドハント』の能力。
『日本語が分かる』と言う『情報』を男から『切り取り』――自分へと『貼り付けた』。
厳密には、グリードは『日本語』と言う言葉自体を知らぬ為『母国語』を奪ったのだが。
男の母国語が即ち『日本語』であるので、結果的に何ら矛盾も問題も無い。

ともあれグリードは男を見下し言葉を待つ。
が、幾ら待てども、男が放つ事が出来るのは意味を孕まない声のみ。


215 :グリード・アヴァリティア ◇HQs.P3ZAvn.F:2010/07/22(木) 22:55:12 0
「……あぁ、そういや俺が奪っちまったらコイツが喋れる訳ねーわな。ま、いっか。別に興味ねーし。
 それよりオマエ、よく見たら目元の辺りが前の俺にソックリじゃねえか」

左手の平に右拳を縦に打ち付けた後で、グリードはふと気が付いた様子で男をまじまじと眺める。
そうして目を細め口角を吊り上げ邪悪な笑みを浮かべて、彼は『ハングドハント』の右手を男の顔へと近付けていく。

「寄越せよ、そのツラ」

『ハングドハント』の手の平が、男の顔を覆った。
グリードの表情が一層の嗜虐的に、喜色に、邪悪に染まる。

「……う、あああ! あぁああああああああああ!」

寸毫ばかりの静寂の後に、男は突然喚き出した。
その声はやはり意味を有してはいなかったが、もしも彼が言葉を取り戻したならば、こう叫ぶだろう。
「見えない。何も見えない」と。

「あー? うっせえな。何言ってっか分かんねえんだっつーの」

のた打ち回る男を鬱陶しそうに尻目に捉えながら、
グリードは奪い取った『目元』を現在の自分、中年の顔に当て嵌める。

「……うげ、ちぐはぐ過ぎて似合わねえ。メンドクセーが、まずはこの体からどうにかするか。服も超ダセーし」

しかしてグリードは街へと繰り出す。
そして、

「お、オマエは顔の形が俺っぽいな。寄越せ」

「いいガタイしてんじゃねえか。貰っといてやるよ」

「へえ、その服カッコいいな。何処で買った? ……何だ遠いのか。んじゃ寄越せ。ついでと言っちゃなんだが、その鼻と口もだ」

自分に似た『体のパーツ』を、手当たり次第に奪って回った。
彼がコンビニを出てから数時間。
最早、コンビニ店員であった中年男性の面影は微塵も残っていなかった。

頑健な体に細めの輪郭、目は切れ長で鼻は高く、短い黒髪は重力に逆らって天を衝いている。
表情や醸す雰囲気は総じて邪悪の一言。黒を基調としたパンクファッションが、それを更に助長させていた。

「さぁて……久々のシャバだ。精々楽しむとしますか」

舌舐めずりをして、グリードは笑みに悪意の色を乗せる。
悪意の焦点は、この北条市の人間全て――では留まらない。

「それに……まずはこの国を俺のモノにするってのも、悪くねェなあ。」

日の出国、日本。
際限無き強欲に溺れる彼はこの国を、九頭龍一の愛し護った国を矛先と定めた。

216 :◇HQs.P3ZAvn.F:2010/07/22(木) 22:56:14 0
ドルド・プラチナのテーブルの一脚を、二人の学生が囲んでいた。
補習か部活の帰りだろうか。とは言えそのような事は、些事でしかないだろう。
真に肝要たるは、彼らの交わす会話の内容である筈なのだ。

「そう言えば最近、行方不明になる人が増えてるんだってな。この北条市で」

「あぁ……例の都市伝説か。馬鹿らしい、そんな事ある訳がない」

「いやいや、俺ちょっと気になって調べたんだけどさ。実はこの辺りってさ、大昔は神様がいたんだとさ。
 それも生贄を求める、飛び切り恐ろしい邪神がさあ。
 きっとこの都市伝説も、その神様……確か九頭龍だっけ、がやってるに違いないんだって!」

「アホか。神様なんかいるかっつーの。……いるのはいつだって、人間だ。
 居なくなるのも、隠すのも、奪うのも、殺すのも、全部人間がそうするんだ。
 何処にでもいる人間が、何処にでもいる人間に。
 ……だからこそ、怖い。そして怖いからこそ、人はそれを存在しないモノの仕業として、自分から遠ざけようとするんだ」

「……最後のそれが分かってるなら、言うなよ。
 馬鹿げた話に仕立て上げなきゃ、こんなのやってられないぜ」

「……すまん」

九頭龍の名は恐怖から逃れんとする者に、或いは単なる愚者達によって、汚されていく。
そしてこの北条市に住む者ならば誰であろうと、その頭上に理不尽な悪意が降り注ぐ可能性は否めないのだ。

吉野きららや、グリード・アヴァリティアだけではない。
グリード以外のアルカナ各位。九頭龍一から解き放たれたスタンド使い。
誰かが、誰かの大切な人が傷付けられる。損なわれる。
それはこの北条市において、とても身近な事となろうとしていた。




【第二部と言いますか、新展開への布石をば
 九頭龍一の名が汚されていったり、そうでなくとも、北条市に住む者であれば誰もが『悪意』に貫かれ得ると言う事で
 学生二人の会話は似た内容が、街の至る所で噂として耳に挟めると言う事にしておいて下しあ】

217 :よね ◆0jgpnDC/HQ :2010/07/23(金) 00:29:17 P
/別にいいだろーがよ〜厄介者か俺はッ!つーかもしかしてこの風、秋名のですかァーッ!?

「そっ、そういうワケではありませんが…
 ッ!?ちょ、あぶなッ…」

徳井の方をチラリと見たのが幸いした。白光の玉からの冷凍光線が運良く視界内に入ったのだ。
咄嗟にSum41の能力でそれを回避する。

「と…徳井さん!そっちはお任せしていいでしょうかッ!?自分は秋名を…!」

その時、よねは一瞬何か罪悪感のような物を感じ取った。
よねは秋名の偽者を"秋名"と言ってしまった。いくら敵だったとはいえそれでも故人だ。
やはり、幻影をその名で呼ぶのは失礼だろう。

「…秋名の幻め…死者の名を騙るとは許せません…Sum41!このアスファルトは盾となるッ!!」

グオオッ…
持ち上がるアスファルト。

(風が吹いてきているが…これは明らかに秋名の力ほどのものではない…風の方向は一定…つまり!!)

「風が来る方向に本体は居る!!Sum41!!このアスファルトの盾はそのまま吹っ飛ぶ!!」

ドッゴォォン!!
風を防いでいたアスファルトの盾がそのまま真直ぐに吹っ飛ぶ。
すると、殺人鬼達の群れの先頭に居た一人の小さな男にそれはクリーンヒットした。

そしてその小さな男はまるで"塵"のように消えていったのだった。

「アレが本体…いや、アレすらも幻なのだろう…死者を愚弄するなんて…」

秋名の幻影をあっけなく倒してしまったよねには怒りの感情がこみ上げてきていた。

――一方、その頃、
    日本の某空港では…

【ここがニッポンですか…なんと空気が汚い所だ……
 さて…と、2年ぶりか。彼と会うのは。覚えていてくれるだろうか】

ここに一人、日本の土を初めて踏んだ"スタンド使い"が居た…

彼の名はハマ・マムド・ウルブド!
スタンド、"オーガスター"を自在に操るインド人!
彼は果たしてよね達の味方か、敵か…
それは未だ定かではない。

218 :神条 ◆BhCiwB2SCaJ5 :2010/07/23(金) 19:15:03 0
神条には光線が見えた。正確には飛んでくる前の光が頭の中で見えていた。神条のスタンド能力は少し前の未来の予知。
今だ未発達の神条の精神力はスタンド能力の発動スイッチのオンとオフが上手く出来ていない。
だが今はそれがこうをそした。オンになりっぱなしのスタンド能力が偶然に未来を見通していたのだ。

白光の王を未来予見でなんとか避ける神条。くるとわかっていればなんでも避けれるものなのだ。


そして少年が避けた冷凍光線は交差点の隅に潜んでいた一匹の黒猫にぶち当たる。
黒猫が「ふぎゃ!」と鳴き、身をよじらせると、その体から飛び出して来たのは一枚のディスク。
飛び出したディスクはコロコロと道を転がっていく。

「あ!!交差点がもとにもどってる!!」まわりを見回して神条は叫ぶ。

ディスクが黒猫の体から飛び出して道を転がっている間、交差点の風景は本来のドルドプラチナの前の風景に戻っていたのだ。
佐藤もマンホールに体をはめ込んでおらず、ただ地べたに腰を下ろしているだけの姿。殺人鬼も敵のスタンド使いもいない。
目に映るのはごく普通のいつものドルドプラチナ通りの風景。

すると「アガーー!」と、いきなり狂ったようなカラスが飛んできてディスクを咥え、
咥えた口の部分からディスクを体に埋め込んでいき一体化し始める。
と同時にまわりの風景も神条の夢の風景に戻ってゆく。

ゆらゆらと陽炎のように再び現れ始める悪夢の風景。
再開される電信柱の倒壊と羽をバタつかせながらヨタヨタと地面から羽ばたこうとしているカラス。

【ディスクが黒猫からカラスへ移動】【電信柱が佐藤さんに倒れる所から再開】
【カラスからディスクを取り出せば悪夢の交差点が消えます】

219 :佐藤ひとみ ◆tGLUbl280s :2010/07/24(土) 01:39:38 0
>209 >210
ひとみが殺人鬼とアンテロスを押し付けた男は黒く輝くスタンドを出現させ鮮やかな体術で両者を仕留める。
圧倒的なスピードに乗せた攻撃。
妙に気障な男の仕草と口調に対し多少引き気味で呆気にとられていたひとみは我に返り交差点からの脱出を再開する。
駆け出したひとみは地響きを伴う重厚な足音に振り返る。
ひとみの目に映る黒い闘牛…。ひとみは子供の頃観光地で綱の切れた闘牛に襲われそうになった事を思い出した。
牛からひとみを救うため突き飛ばす神条少年。
ひとみは突き飛ばされた先の歩道で何かぐにゃりとしたものを踏んづけて豪快に足を滑らせた。

「バ…バナナの皮……?何なの?このベタなシチュエーションっ……!」
顔や足を傷つけたくない…!転倒のダメージを最小限に抑えるため無意識に身を捻ったひとみに訪れた更なる凶事…。
ひとみの転倒着地点には絶妙なサイズのマンホールが口を開けて待っていたのだ。
尻もちをつく体勢で着地したひとみの身体は完全にマンホールの穴に嵌ってしまった。

「何よッ?!この絶妙なサイジングの穴は…?普通マンホールの穴ってもう少し大きいものでしょう?
ていうか何でフタが開いてるのよッ…?」
襲い掛かる不運に怨嗟の声を漏らし両手に力を込めて身体を引き抜こうと足掻くが完璧に嵌りこんだ臀部は中々抜けない。
連続の凶事の中でも正に最悪…っ!この無様な体勢…衆人環視の下の辱め…精神的なダメージも大きい。


>「ハハーッ!佐藤さん今までのツケが今日になってかえってきたんじゃあねーのーーっ?
天網恢恢祖にして漏らさずと言うしさァ〜〜神様はちゃんと見てんだぜーそういうのさあ!尤も、俺は無神論者だがね」

さも嬉しそうな徳井の嘲りの言葉が追い討ちをかける。
「窮地の女を笑いものにしてッ…!あんた恥ずかしくないのッ?!私が何をしたって言うのよッ…!!
覚えてなさいよ!!徳井一樹ッッ!!」

怒りに任せ徳井に呪いの言葉を返している最中、牛が追突した電柱は徐々に傾き動けぬひとみに向かって倒れ掛かってきた。
>「たすけてー!!灰島さーん!!だれか〜」
助けを呼び、ひとみの腕を必死で引っ張る神条時人。
帽子の男は再び黒いスタンドを走らせ拳で電柱を粉々に破壊した。


背後に電柱の破片を飛び散らせ自分を覗き込む少年の顔……ひとみの脳裏に稲妻の如き衝撃が走る。
鮮やかに蘇る記憶の断片。
ひとみを見下ろす少年と記憶の中の少年の顔が重なった。
路地で手を振っていた少年は…神条時人と同じ顔だったのだ。

220 :佐藤ひとみ ◆tGLUbl280s :2010/07/24(土) 01:40:29 0
ひとみはフルムーンの触手を神条の手首に絡める。

「君の記憶の断片…見せてもらったわ。10年前の私があの交差点で九頭とニアミスしてたなんてね……
そして君が私を路地に呼び込んでくれなかったら私は死んでいた。
ここは過去と現在が入り混じった狂った空間……!
過去が現在に干渉し現在が過去に干渉し、中に居るものに何度も運命の分岐をけしかける…!

"現在と過去が平行に存在する"のなら、私にも過去を変えることが出来る……!!
あの時路地にいたのは君…北条時人……!
それを認識すれば過去は…運命は変わるわ…!

私はあの時、知らない少年に路地に誘い込まれたんじゃない…!
この子…北条時人に会うために『自分から路地に入り込んだ』…!
自分から進んで交差点に行く時間を遅らせたんだから私が死ぬ筈だった運命なんか無い…!
運命は変わったのよ!!」

マンホールに嵌った間抜けな体勢のまま、ひとみが声を張り上げ宣言した直後思い出の交差点はゆっくりと崩壊し始めた。
十の字に連なっていた殺人鬼の群れは中心に近いものから一体一体蒸発するように消滅していく。
並木のイチョウは緑のまま枯れていき、夾竹桃は空に赤い花を撒き散らす。

「人の運命が最初から決まってたって、そんなこと知ったことじゃないわ…
知ることが出来ない以上定められた運命なんて無いも同じ!
私があの時死ぬ筈だった…?馬鹿馬鹿しい……私がこうして生きている以上…生き残るのが私の運命よ!!
運命の帳尻を合わせるために黙って殺されるなんて冗談じゃない!今の私はあの時には無い『能力』を持っている!」

ひとみは『能力』を使い交差点スタンドの本体の位置を探知する。
運命に解れを見せた交差点は崩れかけ、ひとみの『能力』を狂わす力を失っている。
ひとみは交差点の外に飛び立つカラスを『本体』と断じた。

ヨタヨタ飛ぶカラスの前に先回りしたフルムーンが立ちふさがる。
怒りに任せた触手の鞭で滅多打ちにされたカラスは断末魔の声を上げて落ち地面に墜落した。
カラスの死骸の側には2枚のディスクが転がってる。

**********************************************
同刻。
交差点から少し離れた場所、とある建物の窓辺に建つ黒いローブの女。
うねるように曲線を描く長い黒髪が暗い表情を浮かべた美しい顔を縁取っている。
大きな水晶をあしらった指輪を覗き込む女の肩に大きなカラスが舞い降りる。
女は小さく呟く。

『そう…三本足のカラスは死んだのね。
運命の輪はひび割れて壊れてしまった……だが回り始めた運命は誰にも止められない。
運命の駒達よ…踊り謳い…躍動せよ…!運命の糸が切れるその日まで…悪魔がたなごころを広げこの地に根付くまで……』

女は"運命の車輪"のカードを窓から投げ捨てた。

221 :徳井一樹 ◆MnJrk02a/Yx. :2010/07/24(土) 14:07:08 0

>「と…徳井さん!そっちはお任せしていいでしょうかッ!?自分は秋名を…!」

よねが徳井に向かって叫んだ後、アスファルトが持ち上がるのが見えた。
徳井はそのまま振り返ると亡霊のように不気味に佇む白光の王と対峙する。
白光の王が手を翳した瞬間、徳井もそれに呼応するように足を動かし、動く。
冷凍光線は徳井に向かって真っ直ぐ飛来したがそれはたちまちピタリと掻き消えてしまった。

正確には、その運動を停止したのだ。

「よね君のお言葉に甘えて使わせてもらったぜ…このバリアを。そして、勝敗は既に決している……!
セイヴ・フェリス……『ノーバディ・バット・ミー』!右腕は既にお前の背後に移動しているんだぜ」

徳井がそう言い放った瞬間、白光の王は真っ二つに割れる。
まだ尚攻撃をしようと動くが右腕はそれをさせないように動き白光の王をパズルのように分解していく。
細切れになった“白光の王”は、徳井の前に容易く伏し決着はついてしまった。

「所詮はファンタジーやメルヘンだぜ。オリジナルに比べりゃちとカルシウム不足だったな」

歪んだネクタイをサングラス越しに正して徳井は周囲を見渡す。
よねもさっきの秋名の幻影……否、風のスタンドの幻影を倒したようだった。

>「アガーー!」

よねと佐藤が以前カラスのスタンドに襲われたことがあったらしく
そのスタンドの幻影かと予想して身構えた徳井だったが、その予想は大きく外れていた。
それはディスクのような物体が頭部に二枚刺さったカラス。
直後にフルムーンがカラスの前に現れ、触手で滅多打ちにされている。

動物の虐待なのではないか?と徳井は悠長なことを考えていたが、
ものの数秒でカラスは断末魔の叫びを上げながら地面に墜ちる。
途端にこの悪魔のような光景は消えうせ、呆気なく一応の結末を迎えてしまった。

徳井は突然のことにしばらく呆然とつったっていた。

「……え?もしかしてこれで終わり?あのカラスがスタンド使いだったわけ?
きっちり事情は話してもらうかんなーー何があろーともなァーーッ!
ところでそこの少年と帽子の兄ちゃんは誰だ?
……いや、帽子の兄ちゃんはどっかで見た気がするぜーーはて、どこだっけ?」

徳井はいつものように軽く、間の抜けた調子でべらべらと言葉を紡いだ。

222 :神条 ◆BhCiwB2SCaJ5 :2010/07/24(土) 17:29:02 0
殺人鬼とアンテロスを黒く輝くスタンドを出現させ鮮やかな体術で仕留める灰島。
よねの能力で塵のように消える秋名の幻影。
徳井のセイヴ・フェリスの能力、ノーバディ・バット・ミーで分解されてゆく白光の王。
佐藤のフルムーンの触手で滅多打ちにされて死ぬカラス。

消える悪夢の交差点。

スタンド使いたちの強い精神力で悪しき運命は破綻したようだ。

そして佐藤ひとみが神条を認識することで奈落に折れ曲がっていた運命の時間軸は
佐藤が生き続けるという運命にむけて連結しなおされる。これで運命の呪いは消えたはず。

三本足のカラスの遺骸のすぐそばには、強い日差しを反射させて白く光る2枚のディスク。
古来より太陽の黒点は黒い鳥としても表現されている。
これはこれからもっと不吉なことが起こるという啓示なのだろうか。

>「……え?もしかしてこれで終わり?あのカラスがスタンド使いだったわけ?
>きっちり事情は話してもらうかんなーー何があろーともなァーーッ!
>ところでそこの少年と帽子の兄ちゃんは誰だ?
>……いや、帽子の兄ちゃんはどっかで見た気がするぜーーはて、どこだっけ?」

「ボクの名前は神条時人…佐藤さんの恋人候補です。あなたも恋人候補ですか?サングラスのお兄さん」
神条はいきなり変てこなことを口走った。

「ボク自身、今ここで起こったことは理解できていません。天災なのか人災なのか…。結果と原因さえもあやふやです。
ただ、これはボクたちと同じ力を持った誰かが何かをしたと考えるべきなのでしょうか?」

神条は集まっている人たちに聞いてみた。

神条が話し終えると、ブワアアアアン!!と悲鳴のような自動車のエンジン音。
落ちていたディスクの太陽光の反射で目を眩ました老人が乗っていた車ごと徳井たちに突っ込んで来ていたのだ。
今日の徳井は車に気をつけないといけない日のようだ。

そして遠くから微かに聞こえる誰かの笑い声。命を狩りそこなった死神の最後の悪あがきか?

パリン!車のタイヤで轢かれ粉々になるディスク。
すると老人の車は徳井のすぐ後ろで進路を戻して何事も無かったかのように道を遠ざかってゆく。

ディスクの破壊によって蛇の巣のように絡んでいた不運がやっと終わりをとげたのだろう。

223 :灰島 ◆lcCn/SJQ7. :2010/07/24(土) 18:22:12 0
>>220
佐藤ひとみの能力、フルムーンによって悪夢のスタンドは破壊された。
彼女の異質さを感じながら灰島は粉々に砕けた電柱を蹴り倒し苦笑いした。

「やれやれ……こいつは器物損壊ってヤツになるのか?
いや、正当防衛による止む終えない破壊ってとこだな。
また事務所の経費で落とせればいいが……」

帽子についた埃を膝で払いながら砕けたディスクの断片を拾う。
その瞬間、灰島の脳裏に何かのイメージの奔流が浮かんだ。


┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨ ………



―人間の幸福において『克服』しなければならないのは『運命』だ…

―未来を一巡して『新しい宇宙』が始まったッ!


「……なんだ!?この、感覚……何処かで。」

呆然とする灰島の隣で声が聞こえる。
振り返るとそれは先程ドルドプラチナで出会った黒服の青年だった。

>ところでそこの少年と帽子の兄ちゃんは誰だ?
>……いや、帽子の兄ちゃんはどっかで見た気がするぜーーはて、どこだっけ?」

「俺かい?俺は、灰島秀一。私立探偵だ……この街で最近妙な事件が起こってるんで
調べてる。それに、妙な依頼があったのも気になる。
この手紙には、死刑囚が街を襲うって奇妙な話が書かれている。
差出人は不明。シンシン刑務所……この場所がキーワードらしい。
何か手がかりがあったら、ここまで連絡してくれ。」

【自己紹介、ついでに名刺を佐藤たちへ配る】

224 :生天目有葵 ◆BhCiwB2SCaJ5 :2010/07/25(日) 16:07:01 0
夕陽を浴びた紅い雲はまるで膿んだ腫れ物のようだった。
廃校の隣に聳え立つ大木は大きな影を生み出している。

常人には不可視の大木を生天目有葵は見上げていた。

そうここは思い出の場所。

力強く張り巡らされた根っこのところには小さな花が添えられている。

「来てたのかな?みつる…。あの子、塾も行っていそがしいのにね」

「あんたはヒマすぎなの」
生天目のスタンド。馬の仮面姿のステレオポニーがちゃちゃを入れる。

沈みかけの夕陽を見て帰ろうとした生天目は廃校の屋上から見ている何者かの視線に気づいた。

「あのひと誰?」

屋上の何ものかは飛び下りてグラウンドにふわりと着地する。
着物をきていて昔風の美青年。特筆すべきはその美しい銀色の長髪。
それに頭部から生えている狐のような大きな耳。

「あ〜スタンド使い…ね?」生天目とステレオポニーは同時に言う。

狐耳の美青年は表情を変えない。怒っているようにも見える。

「あの人と神使の契約をかわして数百年。まさかこんなことになるとは…。
はあ…。まいったな…これは君たちがやったんだね?」

「…み、みんなでやったのよー」言いながら生天目はじりじりと後退り。

「にげんじゃねー!!」
後ろで声がした。振り返るとネズミや蛇や猿の仮面をつけた小さなものたちが通せんぼしている。
その姿はなんとなくステレオポニーに似ていた。

「猿…手荒なマネは止しなさい」

「はい。土地神さま」猿の仮面は土下座した。

「逃げるよ!有葵!!」ステレオポニーは叫ぶと猿を踏み台にして飛ぶ。
生天目も体力バカの力を思う存分発揮し脱兎の如く逃げると路上のリムジンに滑り込む。

風のようにさるリムジン。

「…これだから人間は…」

狐耳の美青年は怪訝な表情をあらわにしていた。

225 :◇HQs.P3ZAvn.F:2010/07/25(日) 23:11:09 0
「あ……あの……」

一人の女性が、徳井一樹に声を掛ける。
見てみれば彼女は、先程徳井が助けたウェイターだった。
交差点のスタンドが解除された事で、漸く彼を認識出来るようになったのだろう。

「……さっきは、ありがとうございました」

彼の語り口や雰囲気から何となく察したのか。
それともスタンド使いの素質を有してでもいるのか。
ともかく彼女は、徳井一樹にぺこりと頭を下げる。

「それで……ですね。えっと、もし良ければ……なんですけど」

何度も言い淀み、ちらちらと視線を逸らしながら、彼女は言葉を紡ぐ。

「明日……いえ、いつでもいいので……またここに来てくれませんか? その……お礼が、したいんです」

それだけ告げると、彼女は脱兎の如く君の前から立ち去ってしまった。
君は気が向いたら彼女を訪れてもいいし、自分は日陰者であると避けてもいい。

【ちょっとしたイベント予約をば。乗るかどうかはご自由なサブイベでありんす】

226 :◇HQs.P3ZAvn.F:2010/07/25(日) 23:12:09 0
マイソン・デフューの人格とスタンドのDISCは、一人の男子高校生に入り込んでいた。
今となってはその高校生の名前や過去などには何の意味も無いが、彼は穏当な気質の持ち主だった。
純朴と言う単語が同級生の女子よりも尚似合う、大人しげな容姿の青年だった。
そしてマイソン・デフューもまた彼と似た性格で、だからこそ彼とDISCが適合したのだ。

「……よし! 折角外に出れたんだ! 今度こそ、世の為人の為……!」

両の手で拳を握り、気概を表情に宿し、人と世に尽くそうと彼は意気込む。
だが彼はそれでも――間違いなく、最悪の犯罪者と謳われた内の、一人だった。

「うん、今度こそ……失敗しないようにしないと!」

何処かに困った人はいないかと辺りをきょろきょろ見回しながら、マイソンは街を練り歩く。
そうして数分もしない内に、彼は重たそうな荷物を背負った老婆を見つけた。
よたよたと覚束ない足取りで交差点を渡ろうとする老婆に、マイソンは颯爽と駆け寄る。

「おばあさん、お持ちしますよ」

爽やかで人懐っこい笑顔で、マイソンは老婆に語りかける。

「おぉ、ありがとうよ。最近の若者には珍しい、殊勝な青年じゃ」

「はは、実は最近の若者じゃなかったりするんですけどね。……っと、何でもありませんよ。それじゃ、行きましょうか」

嬉しそうに笑う老婆と並んで、マイソンは交差点を渡り切る。
そして老婆に荷物を返し、礼などいらないと右手の平を見せて、身を翻す。
事を終えて、彼は満足気に頷いた。

「うんうん、上手くいった。この調子で……」

――直後に、マンソンの背後で轟音が響いた。
驚きの余り彼は飛び上がり、慌てて後ろを振り返る。
見てみれば、そこには壁に突っ込んで酷くひしゃげた大型トラックがあった。
居眠りでもしていたのか運転手は、運転席で首をあらぬ方向に捻れさせて沈黙している。

トラックと半壊させられた商店の隙間からは夥しい量の血と、風呂敷袋の端が覗いていた。

227 :◇HQs.P3ZAvn.F:2010/07/25(日) 23:14:52 0
「あ……あぁ〜……またやっちゃったよ〜……」

忽ち、表情を悲壮と絶望に染めてマンソンはうな垂れる。

もしも、もしも彼が。
老婆の荷物を運ぶ事を手伝っていなかったら。
老婆の歩みを僅かに早めていなければ。

これが、マイソン・デフューのスタンド『オンリー・ローリン・フォーリン』の能力。
彼と関わったモノは、必ず不幸が訪れる。
ただそれだけ。

ただそれだけの能力で、彼は数え切れない程の人を、村を、街を、滅ぼしてきた。

「うぅ……やっぱり僕なんか……駄目駄目だぁ……」

途端に陰鬱な雰囲気を醸し出し、肩を落としうな垂れたままマイソンは何処へともなく歩き去る。
彼は甚く浮き沈みの激しい気質を持ち合わせていた。
人を不幸にしては落ち込み、しかし不幸にした相手の事を思うのではなくあくまで自分の駄目さ加減のみを嘆き。
そのくせ些細な切欠で、或いは切欠もなしに吹っ切れて持ち直し――そしてまた人に不幸を届けるのだ。
マイソン・デフューは悪意なき、だからこそ最悪の害悪だった。

その彼がとある二人に、肩をぶつけた。

「……あぁ、すいません」

その二人に不幸が訪れる事を知りながら、マイソンは虚ろな声を残すのみだった。
どうせ、どうしようもない。自分などが人の為になるなど、土台むりな話なのだ。

蛆の湧くような諦念も包まれた彼は、何もしない。
残した不幸を置き去りに、無責任に。
にも関わらず、あたかも自分こそが不幸であるかのように、立ち去っていく。

彼に触れてしまった二人――徳井夫妻。
彼らに避け難い災厄が、訪れる。

交差点、またはその傍にいた徳井達は、一連の出来事を目撃出来ただろうか。
老婆に触れ合う瞬間と、徳井夫妻にぶつかった瞬間。
マイソンの傍らに浮かんだ朧気な人影が、見えただろうか。


【こちらも、いつ不幸イベントが起こるかは徳井さんにお任せします】

228 :◇HQs.P3ZAvn.F:2010/07/25(日) 23:18:38 0
【スタンド】
名前:オンリー・ローリン・フォーリン
タイプ/特徴:近距離、人型
能力詳細:関わった人間に様々な形で不幸、災厄を齎す
     どんな些細な関わりでも不幸は訪れる
     不幸はバタフライエフェクトのように予期出来ない形で起こり得る


破壊力-? スピード-?   射程距離-A
持続力-A 精密動作性-A 成長性-E


A-超スゴイ B-スゴイ C-人間と同じ D-ニガテ E-超ニガテ
射程距離の目安
A:100m以上 B:数10m(50m) C:10数m(20m) D:数m(5m) E:2m以下  


【本体】
名前:マイソン・デフュー
性別:男
年齢:17
身長/体重:168/48
容姿の特徴:現在は高校一年の青年にDISCが宿っている。年齢よりもやや幼げで可愛げのある顔立ち。
人物概要:フランスのとある村に生まれた彼は、とても実直で穏当な青年だった。
     誰かの役に立とうと、常に他人の為にあろうとしてきた。
     そして、その過程で関わる人と物全てを不幸にしてきた。
     彼のスタンド能力は、彼の願望などから発現した物ではない。
     ただ、運が悪かっただけなのだ。
     もっとも真に運が悪かったのは彼なのか、それとも彼と関わった人々なのかは分からない。
     しかし彼の最悪である点は、成長しようとしない事である。
     人を不幸にしては落ち込み、自暴自棄の中で更に人を不幸にして、
     そのくせただ吹っ切れるだけで教訓を得ようとはしない
     そうして彼は無自覚に数多のモノに災厄を齎し、逮捕された。

被害者推定:数え切れず、また無差別


229 :名無しになりきれ:2010/07/26(月) 12:59:25 0
がんばって殺ろうぜ
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・・・・・・・・・
to be CONTINUE

230 :徳井一樹 ◆MnJrk02a/Yx. :2010/07/26(月) 13:59:19 0
>「ボクの名前は神条時人…佐藤さんの恋人候補です。あなたも恋人候補ですか?サングラスのお兄さん」

>「俺かい?俺は、灰島秀一。私立探偵だ……この街で最近妙な事件が起こってるんで
>調べてる。それに、妙な依頼があったのも気になる。
>何か手がかりがあったら、ここまで連絡してくれ。」

灰島から名刺を受け取ると、徳井も返すように自己紹介をする。

「二人ともくそご丁寧に自己紹介どーも…俺は徳井一樹。イタリアから来た。
そう言えば、灰島さんはドルド・プラチナでビンタを食らってた人だっけ。
……で、『恋人候補』だったか?冗談はよせよ……生命保険に加入せにゃならなくなる」

佐藤がいつ徳井を攻撃してもおかしくない発言さらっと述べた後、
“待ってました”と言わんばかりに徳井に向かって車が突っ込んできた。
死神の悪あがきか、はたまた佐藤の呪いの言葉が天に通じたのか。
それでも徳井の悪運が勝った故か車は紙一重で当たらず背後の誰もいない歩道へ突っ込む。
乗車していた老人は急いで進路を戻し、再び道路を走っていく。

「今日は呪われた一日だな……俺ばっかり車に狙われるとはよー……
俺が何か悪いことをしたっつーのか?ヤだねえ、神様も耄碌してんなーー」

>「あ……あの……」

「あの?なにいってんだよね君。俺に阿野さんなんて知人はいねー」
壮大なボケをよねに向かってかましたが徳井は後ろにいる女性の放った言葉だと漸く気づいた。
ドルド・プラチナでドジかまして盛大に空中へと食器をぶちまけた女性らしい。

>「……さっきは、ありがとうございました」
>「それで……ですね。えっと、もし良ければ……なんですけど」
>「明日……いえ、いつでもいいので……またここに来てくれませんか? その……お礼が、したいんです」

「はあ、そうですか………あのーなんつーか…俺は前にいただけでなぁーんに……ちょっ、待って」
まだ尚スッとぼけようとした徳井だったがとぼける前に女性は走り去ってしまった。
こうなってはその“お礼”を受け取らないのも失礼な気がして渋々行くことに決める。
それに、そのお礼とやらがドルド・プラチナの無料券や割引券だったりすれば儲けものだ。

「あんぐらいのことでお礼だなんて大層なヒトだな〜〜〜ッそう思うだろ?皆?
フツーなら無視するんだがなんかくれるなら話は別だな……俺を呼ぶってことはなんかくれるってことだろ?
ただのお礼なら今言えば済む話だからな…違うか?病気以外ならなんでも貰うぜッ!俺は!」

親指で自分を指し高らかに宣言する。瞬間、徳井の宣言に呼応するように周囲の交差点に轟音が響いた。
大型トラックが壁に突っ込んだようで不幸にも壁の真横にあった商店は半壊している。
どうやらトラックは誰かを轢いてしまったらしい。ひしゃげたトラックの隙間から血が溢れている。

凄惨な事故の裏で少年が肩を竦め、歩いているのが見えた。
彼が老婆と接触していたことなど徳井は全く知らなかったが、この事故には目もくれずとぼとぼと歩いている。
少年は二人の夫婦に肩がぶつかるが、何事もなく道を重そうな足取りで進んでいった。
傍らに一瞬だったが『人影』のようなものが浮かぶ。幻覚か、錯覚か。
普段なら徳井はそのまま適当に脳内補完で済ませたことだろう。
──相違点は少年のぶつかった相手が徳井の両親だったことだった。

徳井は嫌な胸騒ぎを覚え、表情から焦燥のようなものが感じ取れた。
そして考えるより早くその場に居合わせた灰島に言葉を紡ぐ。

「灰島さん…後払いでいいなら仕事を頼んでいいか……何も聞かずあそこの夫婦を尾行してくれ。
そして……何かがあったら助けてほしい。……あ、料金割引きしてくれよ」

徳井は両親を指差し、一方的に述べると信号を無視し疾走する。
確かめに行くのだ、彼がスタンド使いなのかを。

231 :徳井一樹 ◆MnJrk02a/Yx. :2010/07/26(月) 14:01:15 0

徳井一樹は思う。今まで親孝行など出来なかった……
今……掴んだ彼らの幸せを誰にも邪魔させたくない。もちろん、日陰者の自分にも。
或いは親のいない孤独な過去の日々を、今こうして守ることで埋めたいだけなのかもしれない。
『両親を守ること』……それが現在の徳井一樹の戦う目的であることは明白であった。

自分こそが不幸だと言わんばかりに重い足取りで歩く少年の肩を掴み徳井は高い、朗らかな声で言った。
高い、陽気な声だったがいきなりサングラスをかけた異様な男に少年はぎょっとしたかもしれない。

「初めましてだな、俺の名は徳井一樹!初対面でぶしつけながらねェ〜〜〜〜〜ッ
スタンド使いだろッ!テメーー!さっきの事故にはお前が関係してんのか!?」


【マイソン君に突撃取材。徳井はまだスタンド使いだと確信していませんのでトボけても問題ありません
灰島さんに勝手に頼んでるけど無視してくださっても構いません】

232 :よね ◆0jgpnDC/HQ :2010/07/26(月) 14:36:37 P
灰島から名刺を受け取るよね。

(探偵…?探偵ならそんな手紙、いたずらと思って放置するだろう…よほど用心しているのか、それとも…?)

よねは頭の中でそんなことを考えながらも、徳井の後に軽い自己紹介をした。
勿論、自身のスタンドの概要も全て話したわけではない。まだまだ信用できない人間だ。
私立探偵灰島も、少年神条も。

/「あの?なにいってんだよね君。俺に阿野さんなんて知人はいねー」

「えっ?いや、徳井さんこそ一体何を…」

一瞬、激しく困惑するがすぐに状況を汲み取った。

「まあ、確かに貰えるものならば貰っておいた方がおトクですからね。良かったじゃないですか」

徳井の高尚な宣言の後、交差点に爆音が響いた。
トラックだ。それが商店街の一角へ突っ込み、その間に誰かが挟まれたらしい。
数ヶ月前までのよねならば嫌悪感を示すはずの血がだらだらと隙間から漏れ出ている。

まだなんとか間に合うかもしれなかったが、それでもよねはそこに近寄ろうとは思わなかった。
何か邪悪な雰囲気があたりを包んでいたからだ。

――その頃、北条市郊外。

【スゥ〜ハァ〜ッ!うんッ!これはまさしく潮の香り!大陸ではこんな体験滅多にしなかったなあ!】

そこには一人、ジメジメとした海辺で大はしゃぎするインド人の姿があった…

233 :佐藤ひとみ ◆tGLUbl280s :2010/07/27(火) 01:47:39 0
同じ営みは繰り返されても同じ夏は巡ってこない……。
この夏、世界は南半球の海底火山の活発化による異常気象に見舞われていた。
日本 北条市――
この取立て特徴の無い地方都市では大部分の人がいつもの夏と変わりの無い日常を過ごしていた。
ただ、奇妙な事件が頻発することを除いては……。

1つは殺人、傷害、行方不明事件の急増。
10年周期でスタンド使いを狩っていた九頭龍一の死を以ってしてもそれは収まるどころか増加の傾向を見せていた。
中には人知を超えたオカルティックな力を信じざるを得ない事件も……

地震の少ない北条市には稀な震度4の地震があった翌日、二体の死体が発見された。
一見外傷の無い死体。
後に死体の分析から体内の血と内臓が全て抜かれていたことが判明する。
死体の周囲には巨大な猛獣の爪あとのようなものが渦を巻くように刻まれていたという。
猟奇殺人か?宇宙人の仕業か?はたまた神の祟りか…?
憶測は憶測を呼び不安を煽る。

もう1つ些細な珍事を上げると
海岸にリュウグウノツカイや大王イカ等、奇怪な姿の深海魚が頻繁に打ち上げられるようになったこと。
これは海底火山の噴火と世界規模の異常気象と関係しているのだろう。

これら奇妙な事件の裏に暗躍するスタンド使いの群れがいることに気づいている者は少ない。
ここにも何も知らず運命の綾織に組み込まれようとするスタンド使い達の姿が……。

**************************************************


殺人鬼が列を成し亡霊スタンドが跋扈していた十字路は悪夢から覚めたように元の見慣れた交差点の風景に返った。
佐藤ひとみはズタボロに引き裂かれたカラスの死骸の横に転がるディスクに目を落とした。
一見普通のDVDのように見えるが何かが違う…ひとみはこのディスクに見覚えがあるような気がした。
あれは初めて能力に気づいた日の夢の中…?
回想は耳に引っかかった聞き捨てならない会話で幕を閉じた。

>「ボクの名前は神条時人…佐藤さんの恋人候補です。あなたも恋人候補ですか?サングラスのお兄さん」
>……で、『恋人候補』だったか?冗談はよせよ……生命保険に加入せにゃならなくなる」

「はぁ?何勝手なこと言ってんの?頼りない年下なんてこっちから願い下げよ!
特に条例に引っかかるような子供は論外。あと10年後に再立候補する気があるならチャンスがあるかもね。
そっちのグラサンには永遠にチャンスなんて無いけど!!ついでに夜道に注意するように警告しとくわ!」

無様な姿を見られた私憤を乗せ、不機嫌さを顕に徳井を睨みつけ棘まみれの言葉を投げるひとみ。

そんな下らない会話の最中、ハンドルを切り間違えたのかディスクに向かい突進してくる自動車。
徳井の身体すれすれに歩道に乗り上げるとカラスの死骸もろともディスクを破壊した。
慌てる徳井を横目に「いい気味だ」と多少溜飲を下げる。

>223
砕けたディスクの一片を拾う帽子の男。
>「俺かい?俺は、灰島秀一。私立探偵だ……

男は自己紹介がてら名刺を差し出した。ひとみも咄嗟にバッグの中からケースを取り出し自分の名刺を渡す。

「へぇ〜私立探偵?その目立つ格好で尾行とかするわけ?死刑囚が街を襲う…随分オカルトめいた調査もするのねぇ〜?」

ずけずけと言いたい事を言うひとみ。相手がスタンド使いとなると遠慮する気も失せる。お互い秘密を持つ身なのだから。
下世話な興味を顕にした質問を終えた後、ひとみは真顔になって灰島に問いかける。

「ところであなた…スタンド使いの仕事仲間…?いるでしょう?あなたに干渉してくる別の能力が見えたわ。
別に敢えて紹介しろとは言わないけど。」

234 :佐藤ひとみ ◆tGLUbl280s :2010/07/27(火) 01:49:39 0
>225
私立探偵、灰島の答えを待つ間、徳井とよねの会話が耳に入ってくる。

>俺を呼ぶってことはなんかくれるってことだろ?
>ただのお礼なら今言えば済む話だからな…違うか?病気以外ならなんでも貰うぜッ!俺は!」
>「まあ、確かに貰えるものならば貰っておいた方がおトクですからね。良かったじゃないですか」
ドルト・プラチナの女性ウェイターに話しかけられて有頂天の徳井。あまりの的外れぶりについ口を挟んでしまう。

「馬鹿じゃないのあんた達?それとも敢えてボケてるの?
どうせ安っすい女心ってヤツでしょうけど…まあその気があるなら貰っとくことね。」

心底飽きれた表情で男達の鈍感を詰り、保留していた問いの解を得ようと灰島に視線を戻す。
灰島が手に持つディスクがキラリと光を反射した。ひとみは見間違いかと目を細めた。
欠片だった筈のディスクがいつの間にか円形を取り戻しているように見えたからだ。


――刹那、空から何かが舞い降りた……!!
正確には羽ばたきの音と風圧を感じる。まるで見えない大きな鳥が間近を飛んでいるかのように…!

目に見えぬ鳥のようなモノ…は灰島のディスクを奪うと猛烈なスピードで飛び去っていった。
フルムーンも追いつけないようなスピードで。
トンビに油揚げ攫われる…という諺はあるが透明の鳥にディスクを攫われるとは…?

唖然とするひとみの背後で響き渡る轟音。
交差点脇の商店にトラックが突っ込み犠牲者が出たらしい。
交差点に巣食っていた不運の連鎖はまだ解けていないのだろうか。

【いろいろごちゃごちゃしていますが新たな動きは、
灰島さんに佐藤の名詞を渡し、相棒(ミカエルさん?)の存在を打診
灰島さんの持っていたディスクは透明鳥に持っていかれた…以上2点だけです】

>>229(あ、はい頑張りまっすゴゴゴゴゴ……良かったら避難所でスタンド案投下してください)

235 :灰島 ◆lcCn/SJQ7. :2010/07/27(火) 02:39:02 0
>>230
>「二人ともくそご丁寧に自己紹介どーも…俺は徳井一樹。イタリアから来た。
>そう言えば、灰島さんはドルド・プラチナでビンタを食らってた人だっけ。

「イタリアか……パエリアってイタリア料理だっけ?あ、あれはスペインか?
いや、そんな事よりあのビンタ見てたのかよ……」

恥ずかしげに頭を掻き、宙を見上げる。
今更であるが、ぶたれた頬がヒリヒリと痛むのを感じる灰島であった。
と、その後ろで凄まじい轟音と悲鳴が聞こえた。
灰島は咄嗟に振り返り、その現場を見つめる。

「……スタンドと電柱の次はトラックか。今日は本当に危険な目に遭うばかりだな。」

>「灰島さん…後払いでいいなら仕事を頼んでいいか……何も聞かずあそこの夫婦を尾行してくれ。
>そして……何かがあったら助けてほしい。……あ、料金割引きしてくれよ」

徳井はそう言うと歩道を歩く2人の男女を指差した。
差し当たって何か違和感は感じないが…?
灰島は徳井の言葉に何かを察すると2つ返事でそれに答えた。

「あんたが、あの夫婦に何かしろって依頼なら断るが……
何かあれば助けろっていうならいいぜ。任せろ、依頼人の頼みは必ず
守る。」

帽子を目深に被り直すと、灰島は夫婦を尾行する為歩き出そうとした―

236 :灰島 ◆lcCn/SJQ7. :2010/07/27(火) 02:51:07 0
>>233
>「ところであなた…スタンド使いの仕事仲間…?いるでしょう?あなたに干渉してく>る別の能力が見えたわ。
>別に敢えて紹介しろとは言わないけど。」

「……お、察しがいいんだな。あんた。丁度、その相棒に
このディスクを調べて貰おうと…んぉ!?」

灰島の手にあったディスクの欠片が復元している。
それだけではない。巨大な何かが灰島の手から
気配すら殺し一瞬でそれを奪って見せたのだ。

「……な、何なんだ……今の。」

そして、トラックが激突する……>>235の後半へ


歩き出した灰島は1つ思い返し、佐藤の下へ歩み寄る。
先程の問いの答えを返す為に、だ。

「あんたが感じたもう1つの”力”の正体はミカエル。
少々変わった奴だけど、信頼は出来るぜ。
シンシン刑務所の件も、手紙だけじゃなくミカエルの力があったからこそ
調べる気になれたようなもんさ。
……っと。急がないと見失っちまうな。悪りぃ。」


急ぎ足で尾行を再開する灰島。
彼の先に待つものとは……!?

【依頼を引き受け、佐藤に相棒の件を伝える】

237 : ◆BhCiwB2SCaJ5 :2010/07/27(火) 17:00:35 0
>230
>……で、『恋人候補』だったか?冗談はよせよ……生命保険に加入せにゃならなくなる」

「あ。生命保険って言うならこんな小噺があります!」おもむろに神条は語り始める。

ある生命保険会社の主任が新米のセールスマンを呼びつけて叱った。
「おい、おまえ、何で97歳の爺さんをウチの生命保険に加入させたんだ?」
「ちゃんと統計的事実に基づいて契約しました」
「どういう統計だ?」
「はい。私は調べてみたんですが、97歳で死ぬ人は非常に少ないんです」

「わかりますよね?そもそも97歳まで生きている人が少ないってお話なんですよ」

神条の得意げな顔をよそに徳井は一人の高校生にツカツカと近づいてゆく。

>233
>「はぁ?何勝手なこと言ってんの?頼りない年下なんてこっちから願い下げよ!
>特に条例に引っかかるような子供は論外。あと10年後に再立候補する気があるならチャンスがあるかもね。
>そっちのグラサンには永遠にチャンスなんて無いけど!!ついでに夜道に注意するように警告しとくわ!」

「…え!?(なんで怒ってんの?こ、これってもしかして…ボク、きらわれてるっ!?)」

神条は、しゅ〜んとしている。地層のマントルに達するくらい落ち込みながら
とぼとぼとレクイエム化した戦車のスタンドみたいにお家に帰ってゆく。

**************************************************

神条と入れ違いで交差点に入る女子高生。

青い空の下、紺のプリーツ・スカートが風になびいている。
バター色の太陽の光をあびたブラウスは雲の色と同じ白。

「…つめって綺麗ね…剥がれやすくて壊れやすくて…」

自分の爪を見ながら一人ごちる女子高生。森田和香。

【邪魔するといけないので森田はただ交差点にいるだけです】

238 :森田 ◆BhCiwB2SCaJ5 :2010/07/28(水) 16:25:19 0
交差点。まぶしいくらい、目に痛いくらいの初夏?の世界が広がってて情報の渦が押し寄せてやっぱり目が痛い。

「わたし…生きてるんだよね…?」
森田和香の中の人格、リタ・ヘイワースはいつも釈然としていない。
いつごろからか…。ずっと前からか…。もしかしたら、この体になるまえからかも知れない。

決まったようにお腹が空いたり生理になったりめんどくさくもある。めんどくさいに閉じ込められている感じ。

医者になって切り刻んで色んな命を見てみてきても命ってなんだろうって
ますますわからなくなってきて発狂しそうにもなった。どこを見てみても結局は確かなものなんてなんにもない。

もともと自分一個でもやっとなのに人の命まで面倒をみるというのはストレスがものすごかったのかもしれない。

交通事故の野次馬たちを後ろから見ながら森田は彼らの群れに恐怖を覚える。

何を見ているのか。何をみたいのか。見たからどうなるのか。

心が押しつぶされそうになってしまった森田は目の前の生臭そうな男の体を背中からばっくりと開いてやった。

血の雨がふり血の海があれわれる。

【邪魔するといけないので森田はただ人を殺しただけです】

239 :森田 ◆BhCiwB2SCaJ5 :2010/07/30(金) 17:23:34 0
ここ数ヶ月の北条市は異常だった。
警察が忙しいのは当然で、毎日のように救急車がサイレンを鳴らして走りまくっている。
葬儀屋とか祈祷師とか探偵とかも忙しくなっていて富裕層はどんどん引越ししていく。

森田和香も友達らしい人に「怖いね」とか言われたりしたがなんとも思っていなかった。
日常には死が溢れているけどまさか自分が明日死ぬとかは誰も思っていない。

それに森田はどちらかと言えば死や恐怖を与える側。災いそのもの。

神様とかが、もしも本当にいるのだとしたら森田はとっくの昔に罰をかぶっているはず。
森田が…いや、リタが考えるに、神様が本当にいるのだと仮定しても
人間のことなど親身になって考えている神様などこの世にはいないのかも知れない。

男の背中から噴き出す血を無表情で眺め、ついに見飽きた森田はドルド・プラチナに入るとチーズケーキと紅茶を頼んだ。

【森田:ドルド・プラチナで一休み】

240 :◇tGLUbl280s:2010/07/30(金) 19:32:14 0
桃華学園から少し離れた市民会館(通称で実際は民間運営の多目的施設)
数ヶ月前、火災も起きていないのに職員の殆どが焼死体となって発見された前代未聞の事件後…
事件の解決を見ないまま新会館の完成により遺棄され放置されていた建物に最近買い手がついたという。
それ以来、会館で時折開催される怪しげな集会じみた催しに出入りする人々が目撃されており
買い手はマルチまがいの商法の会社とも新手の新興宗教団体とも噂されていた。

会館の二階…元は会議室と思われる広い部屋の中に黒いローブを身に纏った女が立っていた。
ゆうに数十人は席につけるであろう馬鹿に長い食卓が中央にぽつんと置かれただけの部屋。
食卓の上の蝋燭が薄暗い部屋を仄かに照らす。
女の立っている部屋の奥の壁際には【10個の丸い実をつけた逆さまの樹】をモチーフにしたレリーフが飾られている。

開いた窓から大きな羽音を立てて何者かが入ってきた。
女は腕に羽音を立てるモノを止まらせるとそのモノが咥えていた2枚のディスクを受け取る。
…瞬間女の腕の上に青白く光る鳥のシルエットが浮かび空気に溶けるように消えた。

【逆さまの樹】の背後から声が響く。

『"ディスク"は無事回収できたようだな…"ディスク"が我々以外の者の手に渡ると面倒なことになるからな…
新たに適合する肉体を探すことは困難だが、最悪ディスクのまま利用することも出来る。』

レリーフの後ろから僅かに身体を覗かせる影のような男。抑揚の無い不気味な声はその男から出ているようだ。
広い部屋の中燭台ひとつきりの薄暗さのお陰で男の顔や表情…体つきすら確認することは出来ない。
ローブの女は無言で男にディスクを手渡した。

241 :佐藤ひとみ◇tGLUbl280s:2010/07/30(金) 19:33:27 0
透明の鳥が飛び去っていった方向を見つめて立ち尽くす佐藤ひとみ。

"死の運命"をけしかけていたスタンドは鳥……そして死骸に現れた"ディスク…。
いくらカラスが縁起の悪い鳥とはいえ"死の運命を繰り返す"なんて概念的な能力が動物に…鳥に発現するだろうか?
スタンドは精神力の具現化…。
本能に準じて生きる動物にスタンドが発現するとしたら『捕食』『保身』を基にしたものである方が自然だ。
そして鳥は何故ひとみを攻撃対象として襲ってきたのか…?
鳥には不自然なスタンド能力とディスクを奪っていった透明の鳥……
ひとみは視線を空に向けながら『鳥』というキーワードで結ばれた符合の意味を考えていた。

思索は絹を裂く叫び声に断ち切られた。
トラックに突っ込まれた交差点脇の商店。凄惨な事故現場に集い始めた野次馬の一角から悲鳴が上がった。
ひとみは悲鳴のした方向に振り返る。
一人の男が背中に一直線の切り口を見せ凄まじい血柱を噴き出して倒れている。
身体が半分裂ける程の深く鋭利な傷痕、この一瞬において常人の力ではまず無理な凶行。
何らかの"能力"を使った可能性を予測し、ひとみは交差点周囲100m以内のスタンド能力者の位置を探知した。


交差点付近にいるスタンド使いの反応は徳井ら正体の割れている者以外に、あと2つ。
徳井が話しかけている男子高校生と野次馬に混じって立っている女子高生。

徳井が何故『スタンド使いか否か』を少年に問いかけているのか理由は不明だが
指し当たって少年は徳井に任せて、ひとみは少女の動きを観察していた。

少女は何故野次馬の男を殺したのか…?
被害者の男に恨みがあったのか、或いは少女は快楽殺人鬼で無差別の凶行か。
どちらであろうと自分に危害を与える存在でなければ放っておいても差し支えない。
ひとみは素知らぬ顔で少女の動向を伺っていた。

【森田の位置をさりげなく捕捉中】

242 :◇HQs.P3ZAvn.F:2010/07/30(金) 19:34:47 0
>「初めましてだな、俺の名は徳井一樹!初対面でぶしつけながらねェ〜〜〜〜〜ッ
>スタンド使いだろッ!テメーー!さっきの事故にはお前が関係してんのか!?」

肩を引っ掴まれ、強引に向き直らされて、それでも尚マイソン・デフューは変わらない。
焦点の定まらない虚ろな目付きで徳井を見て、次にぼんやりと、自分の肩を掴む彼の手へと視線を滑らせる。

「……あぁ。スタンドって、コイツの事ですか?」

言葉と同時、マイソンの傍らに人影が兆した。
どす黒い色の靄が収縮し、骸骨の様相を為した影が。
下品な笑みを浮かべたその骸骨はマイソンの制御下には無いのか、歯を打ち鳴らし挑発的な態度で徳井に顔を近付ける。
だが仮に徳井がこの骸骨『オンリー・ローリン・フォーリン』を殴ろうとしても、それは叶わない。
拳はただ突き抜け、虚空を捉えるばかりだろう。

「酷いですよねぇ。こんなのがいるせいで、僕は幾ら頑張ったって絶対に報われないんです」

マイソンは自棄と自嘲の混在した、対して『O.R.F』は主を小馬鹿にするような下卑た笑みを、それぞれ浮かべる。
そうして暫しの無言の後、思い出したようにマイソンは口を開いた。

「そう言えばアナタ……こんなに長く僕と関わっちゃって、良いんですか? さっきの事故、見てきたんですよね?」

『O.R.F』の笑みが、一層下品さと愉悦を色濃く滲ませた。
徳井は既に結構な時間、マイソンの肩を掴んでいた。
『O.R.F』の能力によって『災厄』が訪れるには十分過ぎる程、マイソンと関わってしまった。
余りにも、直接的に。

一陣の風が吹き、徳井の頭上で電線が切れた。
紫電を迸らせながら、幾本もの電線が彼へと降り注ぐ。
だがそれらを凌いでも、『災厄』は終わらない。
電線に泡を食った車が徳井へと迫り、それを躱しても車がへし折った電柱が頭上から迫る。
更には車から漏れ出たガソリンが、電線の火花によって着火されるだろう。

「……あぁ、もう手遅れですね。ごめんなさい。そして、さようなら」

マイソンは徳井が、訪れる災厄全てを凌げるとは到底思っていない。
故に助けようとも見届けようともせず、彼は身を翻して再び覚束ない足取りで歩き始めた。

【不幸の連鎖が迫ります。スタンド使えば凌ぐのはそんな難しくないっすよね! 多分!
 マイソン君はふらふら歩いてるんで追いつくのは簡単です。追いかけるかは自由ですけども】

243 :◇HQs.P3ZAvn.F:2010/08/01(日) 09:34:56 0
灰島が徳井夫妻の尾行を始めてから、暫く。
不意に、不穏な風が吹いた。
弱々しい微風だったが、そうであっても出来る事はある。
何かを運んだり、或いは揺らしたり。

徳井夫妻の頭上。
マンションのベランダで、洗濯物をしている女性がいた。
ベランダの縁には、植木鉢が並べられている。
風が、洗濯物を僅かに揺らした。
洗濯物は植木鉢を撫でる。植木鉢が僅かに傾き、

「あら、危ないわね」

けれども危なげなく、女性が鉢を掴み止めた。
だが、風はまだ止まない。
それどころか一際強く吹いた風が再び、洗濯物を揺動させた。

「きゃっ!?」

風に靡いたタオルが、女性の顔を覆う。
突然の事に、彼女は僅かに仰け反ってしまった。

そして――ベランダに並んだ植木鉢が全て、落とされた。
徳井夫妻の頭上に、幾つもの鉢が降り注ぐ。

【植木鉢フォーリン。灰島さん出番っすー】

244 :森田 ◆BhCiwB2SCaJ5 :2010/08/01(日) 17:26:40 0
ガラス窓が、暑い外の世界とドルド・プラチナの涼しい店内を分け隔てていて
チーズケーキを一口頬張った森田の形をしたリタの口の中はきゅうんとなる。

「朽ちる血肉。どうせ朽ちてしまうものを人は切ったりくっつけたりして保とうとする。
神の世界にゆけば永遠に朽ちることのない体を手に入れられるというのに…」

聖書に書いてあった朽ちることのない体のことを思いながらリタは外を見ていた。

昔は目の前で死に掛けている患者がいれば、その死の原因である病巣を切除して助けてあげたいと思ったりもした。
でも虚しく死んでゆく患者たちにリタは絶望してゆく。悪い部分を切除すればよいと考えるのなら、どこまでが悪い部分なのか。
どこからでも病巣が沸く人の体。悪いというならば人の体は元から欠陥品ではないのか。
リタは日本の女子高に通って勉強した「焼け石に水」という言葉は医学にぴったりの言葉だと思った。

交差点のアスファルトから10本の長い爪が伸び出てくる。それはリタのスタンド、シザーハンズの爪。
それはサメの尾びれのように地面から爪だけをだして疾走し始めると
通行人の足音に反応して足を切断しては転んだ人間にとどめをさしてゆく。

無数に地面に転がるバラバラの死体。
シザーハンズは遠距離操作も出来るのでリタは店内で紅茶を飲んでいるままだった。

「欠陥品なら神様に返品するのが道理ってものよねー…」

リタは壁の向こうの見えない死体を感じながらひとりごちた。

245 :御前等裕介 ◆Gm4fd8gwE. :2010/08/02(月) 10:12:40 0
あれから三ヶ月が経った。
水道管から吹っ飛ばされて、市街地道路のアスファルトに着弾した御前等は、リアルに入院していた。
着地の瞬間にスタンドでいくらか減衰し命こそ繋がってはいたが、肋骨と腰を中心にヒビが入りまくっていた。
幸いなことに目撃者は多数で、突如空から降ってきた御前等は季節外れの飛び降り自殺として処理され、
警察と学校と親と親戚からステレオ説教の責め苦に遭いながらもリハビリを重ねて本日晴れて退院の運びとなったのである。

『着地地点の近くに高い建物なんてなかった』という事実からは、皆が積極的に目を逸らした。
この街には、不思議が不気味に溢れている。御前等も『そういったもの』の被害者で当事者なのだと、思考を停止した。

さて、そんな御前等が退院して始めに向かったのは、いつもの駅前である。

「――そんなわけで、只今俺は落下系ヒロインとして自分を売り出そうと画策中なんだからねっ」

「どうして腰といっしょに頭の検査もしてもらわなかったんですか!ぜってー打ってますって間違いなく!」

駅前のカフェテリアで、御前等は退院祝いの一席を設けていた。
参加者はただ一人。向かいの席に座る小宮である。彼女には体調を十全に戻す最後の仕上げも依頼していた。

小宮は流留家の『ゲーム』の参加者であり被害者であったが、九頭が死んだことでその呪縛から開放されていた。
自分の命を護るため、御前等を犠牲にしようと敵対した仲ではある。それ故の負い目か、彼女は御前等に頭を上げなかった。
痣の消えた左手を見せて、「今までのことは水に流して仲良くしましょう」と小宮は言った。
御前等は「馬鹿が。死んでしまえ」と答えた。河原で三日殴り合って、二人は大親友になった。

「この度は『何故俺が落下系ヒロインになれなかったか考えようの会』に出席してくれて重畳の限りだ」

「貴方が男で、吹っ飛ばされ方が悪役で、着地地点に受け止めてくれる人がいなかったから。はい論破!」

「落下で思い出したが、三ヶ月も入院していたものだからこの度留年が確定したぞ。まさかの高校四年目突入でござるの巻」

「ああ、そういえば御前等さん高校生っていう設定でしたね」

「落第系ヒロインってか。あっはっは――四年目は女子として通学してやる!俺は男子をやめるぞッ!」

「ご両親は泣いてらっしゃるんじゃないですか?お子様がこんな救いようのない傑物になって」

「俺の親は俺が生まれたとき、『ゆうすけ』か『イケメン太郎』かで迷ったらしい」

「遺伝子って凄い!」

小宮のスタンド『マイセルフユアセルフ』は生物の挙動から、細胞ひとつひとつの活性不活性まで司る。
本来激しい運動にドクターストップのかかる御前等だが、彼女の能力によって一足跳びに完治まで辿り着いた。

「――終わりました。それにしても、最早九頭も死にスタンドバトルする機会もそうそうないでしょうに。
 わざわざ私を呼びつけてまで突貫治療を済ませる必要なんてあるんですかねえ」

「男は時に超ヤバいときでも戦わなきゃならない事情があるんだよ」

「ほほう。それでその事情とは?」

小宮の問いに、御前等はニヤリと笑って、

「――大人の事情さ」

キメ顔でそう言った。


246 :御前等裕介 ◆Gm4fd8gwE. :2010/08/02(月) 10:16:37 0
「ヘイ彼女、俺と一緒にお茶withくんずほぐれつinモーテルしないかーい?」

道行く吉野きららの前方に、不審者が一人。
塀に背をもたれかけ、頭のバンダナを指で弾き(彼の持つ48のカッコいい仕草の一つ)、珍妙な文句で吉野を呼び止める。
――御前等祐介が小宮の次に会いに行ったのは、三ヶ月前の闘いで共に廃校までデートした彼女であった。

「久しぶりだな吉野さん。あのときこっそり赤外線通信したメルアドに俺の近況を一日100通ぐらい送ったけど
 全然お見舞いに来てくれなかったな。ああ、ああ、気に病むことはない。親しか来なかったから。……ただ一つ、聞きたい」

神妙な顔になり、吉野の眼球を見据える。射抜くような眼光は、滅多に見られない理知の光。

「君へのメールに逐一返信してくれるこの親切な――メーラーダエモンさんって誰だ?」

着信拒否であった。

「ふん、まあいい。そろそろ本題に入ろう吉野さん。『あの時』の決着がまだ済んでないよなァァーっ!
 あの時!九頭の前で!俺たちは袂を分かった!!――俺は九頭に下り、君は九頭に刃を向けた!」

御前等の体の輪郭が揺らぎ、もう一人の人影がそこに発現する。『アンバーワールド』。
スタンドを出した御前等の挙動は、どこからどう見ても間違いなく見まごうことなく十中八九完全無欠に『戦闘態勢』。

「聞け吉野さん!俺は今サイッコーに『幸せ』だ!何故なら俺は生きている!『九頭の遺志と生きている』ッ!!
 君は俺の知る中で、唯一『九頭に届いた女』……君を超えなければ!『世界の中心』に辿り着くことは『不可能』ッ!」

御前等の認識は酷く浅い。吉野より早く、深く、九頭の深淵に辿り着いた女は他にいて、吉野が遅れをとったことを知らない。
『知らない』ということは、時に酷く視野を狭窄させる。ありもしない答えを手探りで、五里霧中の道を行く。

、、 、 、 、  、、 、 、 、、 、、 、、 、、 、 、 、 、 、
だがそれは、御前等にとってさしたる問題ではない。

『今そこにある未来』こそが標的。ゴールへ至るため穿たねばならぬ障害。
御前等は、最初に乗り越えるべき壁として吉野きららを選んだ。『敢えて圧倒的力量差のある吉野きららを選んだ。』

「戦おう。俺たちにはそれが必要だ。君は他者の幸せを摘む為に。俺はそこから『道』を見出す為に!」

スタンドは既に、吉野の足元にあるマンホールの『気圧弁』を『掌握』している。
あとは合図だけだった。御前等が指先を軽快に鳴らすと、空気砲の原理で快音と共にマンホールが吹っ飛んだ。

――『吉野きららを載せたまま』。

「『アンバーワールド』ッ――!今度は君が落下系ヒロインになる番だぞ吉野さん!!」

マンホールごと吹っ飛んだ吉野へ向かって、追撃の歯車連射が迸った。


【吉野さんに喧嘩売りに行く。乗ってるマンホールごと吹き飛ばして上空へ。歯車弾連射】


247 :灰島 ◆lcCn/SJQ7. :2010/08/02(月) 15:25:36 0
>>243
尾行を続けて小一時間。夫婦らしき男女は、途中で買い物に寄ったり
カフェでお茶を飲んだり。至って普通の行動しかしていない。
あの徳井と名乗った男が何を考えて、尾行を依頼したのか。
灰島には、未だ理解できずにいた。

(あの男、何を考えてこの2人を?いや、今は余計なことは考えない方がいいな…
今月は依頼が少ない分、真面目に仕事をしないとマズイしな)

ふと、灰島の頬を生暖かい風が叩く。嫌に、気味の悪い風だ。
顔をしかめ、前を向いたその時――!!

>だが、風はまだ止まない。
それどころか一際強く吹いた風が再び、洗濯物を揺動させた。

>「きゃっ!?」

その出来事が、灰島にはスローモーションのように見えた。
無数の植木鉢が風に操られるように、前方の夫婦のもとへ降り注いでいく様を。

(……どーなってんだ?クソ…間に合うか…!!)

スタンドを発現させ、夫婦の下へ向かわせる。
数メートル先、何とか間に合うか!!
しかし――

「くそ!!……距離が…!!」

至近距離まで近づけたものの、あと1歩。
灰島のスタンド、レディ・ジョーカーは植木鉢から夫婦を守る事が出来なかった。


「逃げろ!!」

そう叫ぼうとしたとき、再び”風”が吹いた。
今度は冷たい、そして爽やかな風が。

「この、”風”は……」

夫婦の前方に立つ、銀縁眼鏡の少年。
彼は、レディ・ジョーカーの半身を”旋風の緑”に変え
不運を退けたのだった。

「危なかったですね……風は気まぐれ。
何処に吹くかは分かりません……お気をつけて。」

少年は夫婦に会釈すると、灰島に微笑みかけた。

「遅かったじゃねぇか…ミカエル。」

【ミカエルが合流、ひとまず危機を脱する】


248 :よね ◆0jgpnDC/HQ :2010/08/02(月) 19:38:09 P
#P2が…使えない…だと…?

交差点での出来事の後、よねは真っ先に綾和が居る病院へと向かった。
すでに面会時間は過ぎていたが過程や方法などは問題ではないのだ。
Sum41の力で強引に、かつ繊細にバレないように窓から病室へと侵入する。
病室へと入ったとき、綾和が全て知っていたかのようにこちらを見ていた。

『コウタ…あまりそういう事はしないほうがいい。能力の過剰な使用は身をも滅ぼすよ』

【イェス!その通り…能力に溺れた人間は己の能力はおろか自分自身すらも制御できなくなる…忘れたかな?よね君】

よねは少々ギョッとした感じで聞き覚えのある声の主に目をやる。

「ハマ…さん?一体どうしてここに…」

『コウタ…私が居ないうちに外国へ行っていたのか…私もたった今この人の能力を見せてもらったところだ
 凄い能力だ…私の傷もかなりのスピードで治癒していっている』

その通りだった。よねがあまりの自然さに気付かないほど綾和の傷が塞がっていたのだ。包帯もしていない。

【知らせておかねばならない事があったんだ。私の"仕事"も一段落ついたから、君のふるさとにお邪魔してみたってワケさ!
 で、大事な事だ。よく聞いてくれ。

 今、このホウジョウシティに凶悪で…あまり言いたくありませんがよね君の能力を持ってしても到底かなわぬスタンド使いがうろついています。
 通称"ワースト"…私はしばらくニホンに滞在します。もし出会っても決して渡り合わないでください】

"ワースト"…それは英語でバッドの最上級、即ち"最悪"という意味だ。

「…わかりました。ワーストですね。とにかくヤバイのが居たら絶対に関わらないようにはします…
 カズのこと、ありがとうございました。それでは…」

再び進入してきた窓から外に出る。
出る際によねは少しニヤリと笑った。

(ワースト…九頭との闘い以上の物が、味わえるというのか…)

よねは期待と煮えたぎる様な闘志を心に宿しながら、夜の闇に飲み込まれつつある街を通り抜けていった。

――よねが出てしばらくした後の病室にて…

【…やはり彼は…】

『そうだろう。私はとんでもない事をしてしまった…私がコウタの能力を強化してしまったが為に…』

綾和は大きすぎるため息をつくと、ハマの手を握った。

『貴方はこの手で人を救い、人を許してきたのか。本来、この能力はそうあるべきなのだ…』

【悔やむ必要はありません。彼は大丈夫です。彼はライオンの様に獰猛で、オオカミの様に鋭く、それでいて鷹の様に賢い。
 今はただそのバランスが取れていないだけ。いつしか彼は彼自身の力で答えを導き出します】

ハマは優しく綾和に笑いかけると、その手を握り返した。
綾和は、この人とは何か馴染めてしまうなと思いながら病室に唯一ある時計に目をやったのだった。


249 :徳井一樹 ◆MnJrk02a/Yx. :2010/08/02(月) 20:32:13 0

>「……あぁ。スタンドって、コイツの事ですか?」

マイソンの傍らに人型の骸骨のようなモノが現れる。
骸骨は僅かに歩み寄り歯をカタカタと打ち鳴らしながら徳井を挑発してくる。

とにかく彼がスタンド使いであるのには疑いようがない。
恍けられて鼻の頭に血管が浮き出ているか調べる必要がなく安心したが、逆にとぼけないあたりが変だ。
いきなり怪しい男に声をかけられた能力を発動するだろうか?
まずそんなことはしないだろう。寧ろ隠すのが当たり前。
少年の言動も合わせて考えるならば彼はスタンドについてまるっきり初心者な様子で、
しかも自らの能力を操りきれていない。故意に能力を使用したという訳ではないのかも知れない。

>「酷いですよねぇ。こんなのがいるせいで、僕は幾ら頑張ったって絶対に報われないんです」
>「そう言えばアナタ……こんなに長く僕と関わっちゃって、良いんですか? さっきの事故、見てきたんですよね?」

「考えて物を言え!オメーと関わらなきゃ……俺の中の疑問が解消できねーだろーが!」

骸骨にさんざ挑発され腹を立てていた上に両親の窮地に焦りを感じていたのも相まって
半ば勢いで『セイヴ・フェリス』を発現させ骸骨のスタンドに殴りかかろうとした時、徳井は見た。
マイソンのスタンドの顔が歪み、邪悪に微笑むその姿を!

>「……あぁ、もう手遅れですね。ごめんなさい。そして、さようなら」

マイソンの声を合図に強い風が吹き、電線が鈍い切断音を上げ徳井に降り注いでいく。

「なッ……!?これがオメーのスタンド能力……!?」

地面の一部分をセイヴ・フェリスで四角形に切開し、力任せに切開した箇所の地面を持ち上げ傘代わりに降り注ぐ電線を防ぐ。
安堵の表情を見せ安心する徳井だったが不幸はそれだけには留まらない。
この一連の状況に泡を食った車が一直線に突っ込んできたのだ。

「チックショーーまた車かいッ!今年の徳井は厄年か!」

軽口が叩かれたのを合図に、体が輪切りのスライス状に分解されていく。
迫る車を前に分解された徳井の体は道路上に散りばめられ、車はそのまま電柱に激突して事なきを得た。
中の運転手も死んではいないだろう。

「『ノーバディ・バット・ミー』!体を分解し轢殺事故を防いだ。
それにしても…マジにやれやれって感じだぜ。このまま追うか?どうっすかな……」

スライス状に分解された体が元の姿へと再構築されていく。
肉片から元の陽気なギャングの姿に戻ると、僅かな異変に徳井は気付いた。
パキ、パキという何かが割れるような音。正体は車の激突によって折れんとする電柱の叫び声。
徳井の『折れるなよ』という願い虚しく、電柱はへし折れて徳井に向かって落下していく。

分解した体をセイヴ・フェリスで元に戻した直後で防御が間に合わず電柱の下敷きとなってしまう。
幸いな事に背中に強烈な痛みは感じたものの死ぬことはなかった。ただし動けなくなってしまったのだが。
これならなんとか脱出できる、と夢想したがその夢想も一瞬にして砕け散った。
辺りに漂うガソリンの匂い。激突した車から漏れているのだ。このままでは電線に引火する。

電柱の落下は『殺すため』ではなく『逃がさないため』のものなのだったのだ。

「やめとけよ……徳井一樹の丸焼きだなんて、きっと不味い───」

電線が放つ紫電にガソリンが引火し、周囲の道路一帯が炎に包まれた。

250 :徳井一樹 ◆MnJrk02a/Yx. :2010/08/02(月) 20:35:51 0
※    ※    ※

覚束ない足取りで一歩、一歩と道を歩く少年。
世に言う『最悪』と呼ばれるような物を持ち合わせた彼に巻き込まれ、何人が生命を落としたのだろう。
少なくとも今歩く少年、マイソン・デフューの目の前に立ち阻む青年には計り知れないことだった。

「ブォナセーラ(こんにちは)……また会ったな。ところで名前を聞いてなかったよな。なんつーんだ…?
ところでお前さんのせいで高かった背広が燃えちまった……焼死体の丸焼きよかマシだがよお〜〜
ま、お陰でお前さんを今ここで逃がす訳にはいかねーってよおーーくわかったよ……」

歩くマイソンの目の前に元は背広であった黒いボロ布を投げ捨て、位置のズレたサングラスを掛け直す。
ところどころに火傷を負ったものの徳井一樹は健在であった。
顔の火傷をさも痛ましそうに撫でながら、再び言葉を紡ぐ。

「お前さんのスタンドにはマジにまいったよ……
物を動かす…っつーよりは計算され過ぎてたな……
俺の勘だが関わった人間を『災厄』の中に陥れる能力……っつーところか?
電線がガソリンの着火する瞬間、咄嗟に地面を切開して中に隠れてなきゃ死んでたぜ」

『セイヴ・フェリス』を背後に出現させ、少しずつマイソンに歩み寄っていく。
電柱の下敷きになっても死ななかったのは幸運だったが、それでもかなり体を痛めている。
この状態で全力疾走で逃げられると追いつけるかどうか怪しい。
例え危険だとしてもここは無茶を承知で近づく必要がある。

徳井自身関わりたくもない相手だった。が、ここで逃がす訳にはいかない。
このまま逃がせばいつまた両親が彼と出会うかわからない。スタンド使いは磁石のように惹かれ遇う。
加えて関わった人間はスタンド使いでもない限り例外なく死ぬのだ。
そんな危険人物を徳井は“どうぞどうぞ”とご丁寧に見過ごせる聡明な男ではない。
再び災厄が自分の身に降りかかろうとも、この少年を今ここで『始末』しておく必要がある。
──ただし、その前に徳井は確かめなければならない事がある。とても重要なことだ。

「今からオメーにはバラバラで地面に転がって貰うわけだが……
『シンシン刑務所』と『ワースト』って言葉に聞き覚えがあるか?ないならすぐに攻撃するんで2秒で答えろ」

質問を被せたのは灰島が言っていた謎のワード。
徳井が嗅ぎ付けた行方不明者事件に関係している可能性もある。
そもそもその事件について調べるため徳井は北条市へと赴いたのだ。
まともな返事は聞けないだろうがこの異常な少年に質問をぶつける価値はある。


【多少の怪我は負っているものの生存。『逃がさず始末する』と考えていますが
怪我してる癖にマイソン君に余裕ぶっこいて質問してますので逃げるのは容易いです】

251 : ◆BhCiwB2SCaJ5 :2010/08/02(月) 23:24:34 0
>247
徳井夫婦に会釈をして灰島に微笑みかけるミカエル。

>「遅かったじゃねぇか…ミカエル。」

灰島の言葉に建物の影から答えるものがいた。

「くくくっ…ミカエルか。直訳すれば、神に似たるものは誰か…。
タルムードでは、誰が神のようになれようか…。という反語で解されているがな…」

突然、灰島の首に何かが絡みつく。

「小僧。俺たちのことを、こそこそと嗅ぎまわるのは止めろ。
…正義のヒーロー気取りもな…くっくっく…」

灰島の首は不可視でいて触れない紐にぎりぎりと締め上げられていた。
地面の影を見てみれば角度的に電線の影が灰島の影の首部分と交差しているように見え、
ややもすると締め上げているように見える。

直接、灰島の首に電線が巻きついているわけでない。
地面の電線の影が灰島の影に巻きついているのだ。

これは壁の裏に隠れている男のスタンド「シャドウクイーン」の能力。
半径10メートルのすべての影を操り影による影への攻撃。
原理は不明なのだが影が攻撃されると影の持ち主にダメージがあるらしい。

「この街から去れ。お前らに戦う意味はないはずだ…」
男の喋り口は刀身のように冷淡だった。

【横から失礼します。たんなるのワーストのこけ脅しです】

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