オカルトSFスペースオペラTRPGなりきり。

1 忍法帖【Lv=10,xxxPT】 [dage]:2011/07/01(金) 22:16:58.68 0
スペースオペラを演じるよねー!?♪。
2 :名無しになりきれ:2011/07/02(土) 01:47:18.48 O
神凪いつき
3 :名無しになりきれ[sage]:2011/07/02(土) 07:40:24.67 O
漆黒の虚空を走る巨大な円盤
宇宙客船「エデン」は縮退炉の謎の故障により、慣性航行を余儀なくされていた
宇宙嵐で通信も不可能
このままではブラックホールに飲み込まれてしまう

ナントカシナケレバ!

広大な大宇宙。故障した宇宙客船のなか、乗客達のサバイバルゲームが始まった!

【こんなのはどうでしょう?】
4 :名無しになりきれ[sage]:2011/07/04(月) 06:37:53.80 O
これってオリジナル?。
5 :名無しになりきれ:2011/07/09(土) 21:40:24.20 0
名前:
性別:
所属:
身長;
体重:
体格:
容姿:
性格:
備考

6 :名無しになりきれ[sage]:2011/07/13(水) 07:31:48.60 O
名前:夢想外道丸
性別:男
所属:惑星調査員
身長;178
体重:58
体格:引き締まった
容姿:丁髷の美男子
性格:無機質
備考 招待はガンヴァーラ星人。知能だけの存在
超常無量存在グルメゲオの加速度を停止する方法を探し地球に降り立った
天下無双の剣客、夢想外道丸の身体に取り付いている
7 :名無しになりきれ[sage]:2011/07/13(水) 08:05:48.10 O
炎天下。旅の僧侶が農民の娘を犯す
汗泥にまみれ体液が流れる
「わしのこだねじゃ。賢いこが生まれよう」
濡れ落ちた女体から離れ僧侶は旅だつとした

畦道に蛙の干からびた死体が無数。竹林は狂い咲くは江戸時代
「竹に花が咲くとは外道の前触れか」
僧侶の名は、毒餓坊満海。醜い顔をしている。左右の眼はギョロリと突き出しまるでガマガエル、
だが人間であるが男は不可思議な力を持っていた。所謂、サイキック能力であった

風に乗るかの如し人の内心を読めれば縮地と呼ばれるほど誰よりも速く駆ける足を持つ
今日も満海は徳川の隠しもつ何かを調べるため土をける
8 :名無しになりきれ[sage]:2011/07/13(水) 09:02:53.17 O
「若っ!」
晴天の街道に息も絶え絶えのしゃがれ声。年寄りの武士が呼び止めるは隻眼の武士
「どうした爺?化け物でも現れたか」
振り返る男に笑顔の花が咲く。
隻眼の男の名は柳生三厳。
徳川幕府転覆を狙う外法の者達を打ち倒すために諸国を旅していた



-遥か時空の奥深く。意志を持った時が自我に目覚めた

その名も『偶婁滅外王』

意志を持つ虚空は星を喰らい膨脹していく
9 :名無しになりきれ[sage]:2011/07/14(木) 07:07:06.90 O
藩主、島村成勝が騎乗し通れば農民は作業を止め道に平伏す
身重の女さえ腹を隠し身を丸くすれば島村成勝はその女に目を止める

「腹の中のやや子が男か女か気になるわ。割って引きずり出せい」
「はっ」
身重の女はその場で武士達に取り押さえられ小刀で腹を引き裂かれた
人とは思えぬほどの絶叫が天に響けばカラスが笑ったように騒ぐ
取り出された赤ん坊は未熟児。小さな口を開き四肢をうねらせている

「ぶら下がっておる。男か」
成勝の言葉に土下座していた女の旦那、吾作は拳を握りしめ震えた
その拳からは血が滴り落ちていた

しばらくして島村成勝が去り、吾作は腹を裂かれた妻に生きてくれと懇願したが女も子も数分後には絶命

いっぽう古寺。ひとり夜を明かした満海は悲痛の思念を感じ村へ
そこには二つの死体と首の傷口からひゅーひゅーと息を吐く吾作の姿
男は鎌で自らの首を切り自害を決行していたのだ

「これはこれは…地獄へ行きなさる途中か」
「ひゅーひゅ…とどめを…殺して…くだせぇ…お坊さま…この世は地獄でさぁ」

血の海でのたうちまわる吾作を見つめ満海は無言。そこへ吾作の妹が悲鳴をあげ現れる。満海は舌なめずりをして妹を羽交い締め。

「安心して地獄へ逝けい。あとはわしにまかせろ」
そして満海が絶頂に達した頃、吾作はやっと絶命できたのであった
10 :名無しになりきれ[sage]:2011/07/14(木) 08:12:31.27 O
巨大な青い球体はすべてを内包し虚空を回転していた
そこへ稲妻の如し堕つるは純知的生命体ガンヴァーラ星人。
彼等は宇宙全体の知的生命体と接触し偶婁滅外王の停止を模索していたのだ

「この星は…」
一言発し夢想外道丸は目覚めた。
数分前、柳生三厳に返り討ちにあい、骸と化したのは夢だったのか
空から稲妻の如く落ちて来た意識と体内に異物が侵入したと言う意識が混濁している

「あれ、俺は…三厳に斬られたはず」
混じり混乱する二つの意識。衣は胴部分がばっさりと斬られていたが中の逞しい腹筋や臓物は修復されていた。
生まれ変わったかのように爽快な気分の外道丸は身を起こし街道を力いっぱい駆ける。

「おーい三厳!待ってくれ!俺はおまえに斬られたはずじゃなかったのか!?」

年老いた武士は迫る外道丸に腰を抜かし柳生三厳に幽霊が現れたと声をかける
振り返れば確かに先程斬ったばかりの外道丸が駆けてくる。驚愕した三厳は冷静を装いそのまま街道を歩いた
11 :名無しになりきれ:2011/07/19(火) 23:26:24.96 0
12 :名無しになりきれ[sage]:2011/07/20(水) 18:47:35.65 O
柳生三厳と別れた夢想外道丸は放浪した
この星の何もかもが珍しい
借り物の体は空腹を感じる

そう空腹

この星の生き物は他の存在を喰らうことで己を維持しているらしい
外道丸の体内に潜む者は宿主の脳から知識を読み取りそれを理解した
この星の知はまだまだ未発達だということも…

しばらく…少しのあいだ…待つ必要がある

そう感じた外道丸は星の知が発達するまで待つことにした


~~廃村

近くに湖。それに小高い山。山のてっぺんには遺跡があった。
外道丸は野草や山芋を食べ、そこでしばらく生きた
13 :名無しになりきれ:2011/08/09(火) 04:03:50.74 O
僕は素晴らしい人生を発見したよねー。
14名無しになりきれ[age]:2011/08/23(火) 23:57:22.71 0
今、キミの目の前に一冊の本がある。これより暗黒の神話を刻む、禁断の本。
その本のタイトルは、コントの共演……ではなく、混沌の饗宴《ウタゲ》。
表紙をめくると、こう書いてある。

―――
この本の中では、キミは何にだってなれる。何だってできる。
どんな世界だって描ける。どんな物語も紡げる。キミを縛るものは何もない。

でも、覚えていてほしい。それは他の誰にもあてはまる。
世界は刻一刻と改変され、物語は混迷を極めるだろう。
幻想的なファンタジーか、謎と神秘のオカルトか、テクノでポップなSFか、はたまた宇宙規模のスペースオペラか。
この物語がどのような経緯を辿り、どのような結末を迎えるのか、まだ誰にも分からない。
―――

これを見てドン引きしたキミは、本を閉じて日常に戻り、この事はすぐに忘れるだろう。
少し興味を持ったキミは、次のページをめくる。

―― 誓約
・FOは厳禁/ただし不定期参加は許可/間が空いても戻って来るべし
・煽り叩きはスルーを徹底

ジャンル:暗黒神話
コンセプト: 混沌極めるバカ騒ぎ
期間(目安): 参加者次第
GM:必要ない
決定リール:推奨、各自後手キャンを駆使し応戦すべし
○日ルール: 必要ない
版権・越境:言うまでもなく許可
敵役参加:どのような勢力だろうと自由だ

名も無き者達によるネタ投下は言うまでもなく推奨
ネタの形になっていないリクエストも受け付ける


底知れない宇宙的恐怖を感じたキミは、今ならまだ間に合う、本を閉じて日常の世界に戻るといい。
それでも先に進まずにはいられないキミは、さらにページをめくる。

そこにはこう書いてある。

―― 契約成立
――汝は、選ばれた。物語の世界に身を投じ、その魂をもってこれより語られし神話を紡げ!

かくして、暗黒神話の扉は開かれた――
15 :名無しになりきれ[age]:2011/08/23(火) 23:59:07.36 0





―――― 【暗黒神話】混沌の饗宴【TRPG】 ―――――




16名も知られぬ混沌の神[sage]:2011/08/24(水) 00:02:20.74 0
遥か古の時代に封印されし混沌の邪神が、1億年と2、3年の永き眠りから目覚める所から物語は始まる。
「お目覚めになりましたか、カオス様……!」
「私はどれ位眠っていた?」
「ざっと1億年と2,3年と言う所でしょうか」

名前:名も知られぬ混沌の神『カオス』
外見:銀の長髪、超絶美形

私は名も知られぬ混沌の神。
が、さすがに不便なので便宜上”カオス”と呼ぶがいい。
暗黒波動を自在に操り、混沌の異名を持つ高貴なる神である。

「それ程眠っていたのか……。おのれ、小賢しい人間どもめ……許さん!!
即刻進軍を開始する……! 今度こそ全世界を手中に収めるのだ! 手始めはあの街だ!」
私は城の窓から見えるハジマリの街に向かって、暗黒波動を放った。

そして拡声器を使い、全世界に我が覚醒を知らしめた。
「ただの人間には興味は無い。
この世界に神魔王勇者様(笑)宇宙人邪気眼持ち最強厨万能厨設定厨ただの厨
バカアホ小二病厨二病基地外変態KYポエマー呪文使いがいたら私のところへ来い! 以上!」
この宣言には二つの意味がある。
一つは我が軍勢に入り共に世界を混沌に陥れる仲間の募集。
もう一つは、我が侵略を食い止めようとする者に対する宣戦布告だ。

「世界征服に何の障害もなくてはつまらないからな。
滑稽走り回った挙句に無様に散る英雄(笑)共を見るのは最高に笑えるわあ!
せいぜい私を楽しませるがいい! ククク……ハハハハハハハハ!!
これは自己紹介用の紙だ。項目を増やしても構わないし面倒なら書かなくても構わない」

名前:
外見:
17 :名も知られぬ混沌の神[sage]:2011/08/24(水) 00:06:58.45 0
私はふと思った。
「はて、今放った暗黒波動の効果はなんであったか……。
いかん! 長く寝過ぎて忘れてしまった……
仕方がない、ヴィッペルの秘術……安価指定《レスターゲット》!」

暗黒波動の効果……>>18
18名無しになりきれ[sage]:2011/08/24(水) 00:29:48.52 0
二度寝してそのまま永眠
19シェンパイル[sage]:2011/08/24(水) 04:02:01.73 O
「ゴーレム発進!!」

俺様をマシーンに入れる
俺様は怒りながら操作する
準備完了。
出発進行。
俺様はマシーンの中で
怒り狂いながら咆哮する
情緒は完全否定
嫉妬するからだッ!
不思議も絶対否定
思惑するからだッ!

10分後、俺様は鬼となる
愚民ども
パニック起こすな
舌巻いて逃げるな
俺様と戦え

俺様は渇いた笑みを浮かべ操縦桿に手をかけた
そしてゴーレムの手で、一人の少女を握り潰さんとするッ!

名前;シェンパイル
外見;美少年
20名も知られぬ混沌の神[sage]:2011/08/25(木) 00:02:50.82 0
>18
仲間募集兼宣戦布告から一日がたった。玉座の間には、未だ誰も現れない。
「遅い! なぜ誰も来ない!? もう一度寝よう。おやすみ」
私はベッドにもぐりこんだ。
「へいらっしゃーい!! 寝たら死にますよ!」
手下がベッドをひっくり返す。
「カオス様、短気はいけません。大物なら気長にどっしり構えて待つものです」

思い返せば1億年前、世界は重厚感溢れる正統派神話ファンタジー世界だった。
私はこの城の最奥で律儀に英雄達を待ち構え、毎回同じセリフで出迎えては迎え撃っていたのだった。
そしてある日ついに封印された。
勇者側はさぞ素晴らしい英雄譚を繰り広げた事だろうが、私はその話に最後の一瞬出てきて倒されただけ。
実にけしからん。

「ええい、もうあんなつまらない展開はまっぴらだ!
玉座に座って何もせずに待っているなど正気の沙汰だ! 私自ら街に繰り出すぞ!
不在時に英雄どもが訪ねてきたら適当に追い返せ!」
部下にそう言い渡して城を出た。

さて、この世界の説明を簡単にしておこう。
この世界は、神々の大地《ユビキタス》と呼ばれている、神の遍在する神話の世界。
どこまでも広がる草原、艶樹生い茂る森、精霊のざわめき、荒野に聳え立つ塔。
そんな世界……だったはずなのだが。

――― ハジマリの街
ハジマリの街。一億年前の勇者共の最終拠点になったであろう街だが、なぜかハジマリの街。
1億年ぶりに見る世界は様変わりしていた。
古代の神話幻想世界そのままの町並みを透明なパイプが横切り、その中を鉄の塊が猛スピードで走っていく。
「なんじゃこれ、面妖な!」
なぜか通りすがりの街人が解説した。
「高度に発達した科学技術が古代からの魔法文明と融合し独特の文化が出来上がったのです。
とにかくこれでオカルトとSFをクリアーしましたね。
3つのうち2つジャンルが被れば許してもらえるでしょう」

>19
さすが1億年経っただけあって、スタイリッシュに洗練されたデザインのゴーレムが迫ってくる。
「フフ、盗んだゴーレムで走り出した不良少年というところか……面白い! 受けて立とう!」
次の瞬間、私はゴーレムの手で掴まれた。
握り潰される直前、ゴーレムの手の中からするりと抜けて着地する。
後から豪奢な衣がパサリと落ちてくる。つまり瞬間的に脱衣する事で脱出したのである。
ゴーレムを見上げ、両腕を広げて不敵な笑みを浮かべる。長い銀髪が絶妙に放送禁止部位を隠す。
「良く見抜いたな……カオスとは女神なのだよ! つまり私は超絶美少女神だったのだ! 
そしてその秘密を知った者は……死、あるのみ!!」

「ダーククラッシャアアアアアア!!」
ゴーレムのフロントガラス部分に暗黒波動の力を乗せた渾身の拳を叩き込む。全裸で。
首尾よく割れたら内部に侵入するぞ! 全裸で。
21 :名無しになりきれ[sage]:2011/08/25(木) 01:04:06.96 0
そのころ、王立劇場では
古代の英雄物語を元にした《Wizardry IV》のゲネプロが行われていました。

天才作曲家「スペースオペラと総合舞台芸術はちょっと違うんじゃないかな」
劇場支配人「いいから黙ってピアノ弾きやがれ」
22 :名無しになりきれ[sage]:2011/08/25(木) 01:16:07.14 0
観客「演目は4か、確か悪の魔道士が主人公だったな」
観客「7以降なら完全なスペースオペラだったんですどね。ファンタジーなのに宇宙船出るし」
23シェンパイル[sage]:2011/08/25(木) 04:12:45.63 O
因果の日は来たり――世界に混沌の神『カオス』の魔の手が迫る時、機械仕掛けの神々が覚醒する。
再び繰り返される黙示録。
測り知れざる過去より続く闘いの行方は如何に。
果たして、戦いを止められるのは薙払う剣か、それとも守護する盾か…。



「ククク…空回る気迫、と言うより俺は愛知らずなのかね?
人生は儚い。俺に墓はない。
パンツも履かない。そう。自由人なのだよ」
シェンパイルはゴーレムで握り締めた少女を見つめる。

「神の人形の手を少女の血で汚す。最高ではないか」
冷たい双眸。操縦桿に力を込めればゴーレムの両眼に火が灯る。
グオオン…。大気を震わす悲しげな咆哮。
ギギギとゴーレムの拳が少女を締め付け、握り潰さんとした刹那、ぽとりと地に落ちるは混沌の神カオス。

「!!?」

>「ダーククラッシャアアアアアア!!」

闇の波動とでも形容すべきエネルギーの奔流が外部装甲板を洗い、ゴーレムを強烈に煽る。
激しく揺れるゴーレムの中でシェンパイルは驚愕した。これが混沌の力かと。

「ぐえ!!」
破壊されるフロントガラス。破片が雪のように街へと舞い落ち散る。

「くそ!カオスめ。銀髪美少女だからって調子にのるなああ!」
シェンパイルの語尾が上擦った。胸郭が剥ぎ取られ操縦者が剥き出しになる。
ゴーレムの中にいる少年の姿を見て、カオスは何と思うだろう。

「…フン。勇者じゃなくて悪かったな。そうさ俺はただの盗っ人さ。
何の取り柄もねぇ、ただの人間さ。
…だけどよ。だからさ。だからだよ。
選ばれた勇者だけが操れるっていう、このゴーレムがしゃくにさわったんだ!
だがどうだ?俺にも操れた。伝説なんて特権階級が市民を縛り付けるために作りあげた幻だった!ざまあみろってんだ!
まあ、神にはわからねぇだろうがな。ゴミみてぇな人間の気持ちなんてよ」

深い厭世観に胸を締め付けられながらもシェンパイルは失笑する。
24アベル=エルロンド[sage]:2011/08/25(木) 20:02:15.30 0
名前:アベル=エルロンド
外見:眼鏡をかけた美形中年男性
 
遥か古代――世界はたったひとりの神の手にあった。
だが、やがて神々の大地《ユビキタス》には他の神々が産まれ、「原初の神」はその地位を追い落とされる。
しかし、その「原初の神」に対する信仰は現在においても存在し続けていた。
――他の一切の神を認めぬ、狂信者の集団として。
 
と言っても俺……その狂信者の集団、「原初教会異端審問局」に属する、アベル=エルロンドにとってはそんなことはどうでもいい。
教義だの能書きだのゴタクだのなんてどうでもいい。
俺に必要なのはただひとつ、戦場――。
 
それもただの戦場じゃあない。
神さえ撃ち抜けるような、ワクワク、ゾクゾクするような戦場だ。
そして、そんな戦場で戦えるように俺は自らの体をサイボーグ化している。
 
幻想金属オリハルコンでできた体と、その体の中を血の代わりに流れる聖水。
もっとも表面は人間の皮膚のように擬態してあるが。
 
そしてそんな俺の扱う武器は、超電導ライフル「ライトニングボルト」。
常人じゃあ扱えない程の反動を持っている。
おまけにご苦労なことに弾丸ひとつひとつに教会の付与魔術師《エンチャンター》が祈りを捧げてくれている。
この一撃は本当に、神だって撃ち抜いてみせるさ。
 
さて、今俺はビルの一室に身を隠し、ライフルを調整しながら、外の様子を見ている。
 
銀髪の美少女神とゴーレムがやりあっている。
どっちも異端認定された代物――要するに俺の獲物だ。
クク、どっちから始末するか――。
 
25 :名無しになりきれ[sage]:2011/08/26(金) 07:17:47.88 0
test
26名無しになりきれ[sage]:2011/08/26(金) 18:39:23.48 0
相変わらず男装女とか中性キャラ好きだよな
27名も知られぬ混沌の神[sage]:2011/08/26(金) 20:44:46.36 0
>23
我が一撃の前にフロントガラスは脆くも砕け散る。
>「くそ!カオスめ。銀髪美少女だからって調子にのるなああ!」
「ククク、貴様、なかなか綺麗な顔をしているな……だがっ!」

とどめの一撃を叩き込もうと腕を振り上げる。
>「選ばれた勇者だけが操れるっていう、このゴーレムがしゃくにさわったんだ!
だがどうだ?俺にも操れた。伝説なんて特権階級が市民を縛り付けるために作りあげた幻だった!ざまあみろってんだ! 」
はた、と手を止めた。

>「まあ、神にはわからねぇだろうがな。ゴミみてぇな人間の気持ちなんてよ」
「……」
勇者の伝説には出る事すら許されない一般人。
勇者の伝説では最後に一瞬出て倒される存在でしかなかった自分。
「そうだ、この私が人間に共感などするものか! 
だが貴様のような人間がいるとはな……まさしく伝説は幻想なのだよ!
神話も伝説も歴史も……法律も経済すらも人間が作る形無きものは全て、どれもこれも夢物語だ。
だがそれは多くの人が信じれば、比類なき力を持つ」
中でも最も強力なものは、勇者の英雄譚。揺らがない絶対の正義が、疑うべくもない悪を打ち砕く物語。
最も美しく輝かしい物語にして、私が最も恐れるもの。
「物語は人々を縛り付ける支配の装置。秩序とは虚構の幻想の中で約束される安寧。
皆が共有する幻想を心から信じ何の疑問も持たなければ幸せに生きられる。
だがひとたびそこからはみ出した者は犯罪者基地外変態……悪のレッテルをはり容赦なく排斥する……
脆く儚い幻想が壊されるのを恐れるばかりに。まさしく正気の沙汰だ!」
何が悲しゅうてこんな長台詞を言っているのか。もちろん勧誘のためである。

「無駄話が過ぎてしまったな。
パンツをはかない貴様は人間にしておくには勿体ない。幻想殺し《イマジンブレイカー》よ、私と共に来い!」
少年に手を差し出す。
28名も知られぬ整頓の神[sage]:2011/08/27(土) 00:52:54.22 0
かーくんが目をさましちゃったようです。
あたしは、かーくんと戦う手勢を集める事にしました。

>>16
>この世界に神魔王勇者様(笑)宇宙人邪気眼持ち最強厨万能厨設定厨ただの厨
>バカアホ小二病厨二病基地外変態KYポエマー呪文使い

はスカウトされてしまったので、あたしは残ってる中から
無能と地蔵と遅筆を選んで軍団を編成する事にしました。
29イマブレル[sage]:2011/08/27(土) 11:49:17.39 O
>>27
…私と共にこい!
手を差し延べるカーさん(カオス)
シェンパイル改めイマブレルは顔を赤らめ背ける。
だってカーさんのカーさんが目の前にあって恥ずかしかったから…

「……おカーさん」
ラスボスも脇役も同じ引き立て役。
大勇者様のニーズに応えて燃え展開を演出しなくてはならないまるでショウフのようなもの。
自分と同じだ。

「わかったぜ。オレは貴女のマスオさんになる。
つまりはホールマイハンド。
この手をはなさないでくれってことさ。
さあ!今すぐ結婚しよう。カーさん!」

カオスの手をひき体を引き寄せる。
重なる視線。
今まさにカオスとイマブレルの新婚生活が幕を開ける!


とんとんとんとんとん
ぐつぐつ

カオスの城でイマブレルは料理を始めた

「今日は残業かな?カーさん遅いなぁ」
30ルェルル=ルュル ルルゥ ◆mMGaLMOXkw [sage]:2011/08/27(土) 21:54:31.66 0
>>28
ルェルル=ルュル ルルゥは、ハジマリの街の中を逃げていました。
短い足で大通りを走り、入り組んだ小路を転がるようにして。
彼女は人間の子どもに似た外見の種族……3年で成人して10才で寿命を迎える幼女族。
いつの時代でも幼女族の需要は一定数あり、どこの街の娼館や奴隷市でも常に数人はいます。
ルェルル(以下略)も攫われて奴隷市に連れられて来ましたが、街でゴーレムが暴れた隙に逃げだせたのです。

「はぁはぁ……ここどこだろぉ?」
ルェルルは、走ってるうちに建物と建物の間の路地裏の広場のような所に辿りつきました。
足を引っ掛けたのか、背後では通路に置かれた木箱の山が崩れます。
出来あがるのは、どこにも繋がっていない完全な行き止まり。
まるで、ルェルルの未来を暗示しているようです。
そして……この袋小路には、名も知られぬ整頓の神がいそうな感じがしました。
この神に選ばれるなら、ルェルルは無能か地蔵か遅筆のいずれかなのでしょう。

名前:ルェルル=ルュル ルルゥ
異名/肩書:無能
年齢:4
身長:121
体重:24
スリーサイズ:57/49/58
ブラのカップ:必要無し
種族:幼女族
職業:逃亡奴隷
属性:無能
性別:女
性格:ふんわり
利き手:右
魔法:おまじない
特技:耳かき
得意な技:聞き流し
長所:簡潔
短所:遅筆
戦法:逃亡
装備品右手:普通の棒切れ
装備品左手:無し
装備品鎧:布の少ない布の服
装備品兜:普通のカチューシャ
装備品アクセサリー:鈴のついた首枷
所持品:木製スプーン
瞳の色:緑
髪の毛の色、長さ:ゆるいウェーブのかかったボブ系で金髪
容姿の特徴・風貌:ょぅι゛ょ
その他特徴:脛に傷がある
趣味:お腹いっぱい食べて寝ること
恋人の有無:無し
好きな異性のタイプ:乱暴じゃない人
自分の恋愛観:ぼんやりしてたら、美味しい物は他人に取られる
好きなもの:甘いもの
嫌いなもの:規制
好きな食べ物:ひよっ子
最近気になること:たまに変な声が聞こえる
一番苦手なもの:自由じゃなくなること
人生のモットー:後は野となれ山となーれ
一番の決めゼリフ:そんなものないよ
将来の夢(目標):じょうぶな子供を産むこと
生息スレの住人として一言:期待したら痛い目見るよ
生息スレの仲間達へ一言:いなくなるまでよろしくね
生息スレの名無し達へ一言:お手やらわかに
簡単なキャラ解説:どんな種族とも交われ、自分そっくりの個体を残す幼女族。現在逃亡中
31 : 忍法帖【Lv=7,xxxP】 [sage]:2011/08/27(土) 22:12:50.24 0
僕の未来は希望の光に満ち溢れているよねー!?♪。
32名も知られぬ混沌の神[sage]:2011/08/27(土) 22:52:45.56 0
>29
>「わかったぜ。オレは貴女のマスオさんになる。
つまりはホールマイハンド。
この手をはなさないでくれってことさ。
さあ!今すぐ結婚しよう。カーさん!」
「貴様……自分が何を言っているのか分かっているのか!?
だが面白い……受けて立とう!」

さりげなくフェードアウトする画面。
こうして新婚生活編が始まった!

城のモブ手下達はイマブレルを歓迎し、彼はすぐに人気者になりました。
日によって文体、もとい雰囲気が著しく変わるのなんて気になりません。
イマブレルの作る料理はとても美味しいのです。
普通ならとてもとても引き立て役が手に入れる事はできない、それはそれは幸せな日々でした。

私はある日、一大決心をしました。
「皆、今までありがとう。世界征服をやめようと思う……。
私は世界以上のものを手に入れたんだ……!」
当然、モブ手下達は大騒ぎを始めます。
「考え直して下さい!」
「そんな事をしたらスレが終わってしまいますよ!」

私は手下達の制止を振り切って城に帰ります。
>「今日は残業かな?カーさん遅いなぁ」
「ただいま! 明日からはずっと一緒だ!」
イマブレルに駆け寄り、抱きしめようとして……さっと身構えた。
「殺気……!」

>24
「何者かが私達を狙っている! 何者だ……!?」
記憶の糸を手繰る。
「そうか……そうだったのか、おかしいと思っていたんだ、引き立て役にこんな幸せが手に入るなんて!」
新婚生活が始まった時の画面がフェードアウトした演出。あれは伏線だったのだ!
「イマブレル! よく聞け!
私達は時の牢獄《イソノ界》に捕らわれていたんだ! 目を覚ませ、寝たら死ぬぞ!!」
私はイマブレルを抱えて城の窓から飛び降りた。

―――――
私ははっと目を開けた。飛び起きて一瞬で服を着る。
「どこからでもかかってくるがいい!! いでよ、黒刃《ブラックエッジ》!!」
腕を一閃し、巨大な漆黒の剣を形作る!!
33アベル=エルロンド[sage]:2011/08/28(日) 00:33:37.30 0
>>32
「ち……破られたか……!」
固有結界・「イソノ界」から脱出するカオスの姿を見て、俺は舌打ちせざるをえなかった。
 
「だが、それくらいやってくれなきゃあ神じゃねぇよなぁ……!」
全身に鳥肌が立つ。恐怖からじゃあない。愉悦からだ。
人間というのは愉しい時にも鳥肌が立つものなのだ。
まぁ俺はサイボーグなんだが、鳥肌が立つくらい高性能なのだ。
 
さて、相手は剣を構えているが、そんなモンで俺の「ライトニングボルト」の一撃を防げるか――!
 
「試してやろうじゃねぇか!」
 
そう叫んで俺は自分を奮い立たせ、超電導ライフルでカオスを狙い撃つ!
34 :イマブレル[sage]:2011/08/28(日) 02:40:51.89 O
>「ただいま!明日からはずっと一緒だ!」

「おかえりなさい!」

光の向こうにあの人(神さま)はいました。
銀髪素っぱの憎いやつ)`ε′(
イマブレルは走ります。力いっぱい走ります。
名付けて、裸エプロン乙女走り。

だけどね

抱き合う二人は窓の外。
砕けて散ってしまった新婚生活。

悲しみでイマブレルは目が覚めました

「ひぐぅ!マスオはフグタじゃねぇのかよ!?」

そんなのしりません。


ドスーン!

「ひぃ!!」
その時です。タイミングよくゴーレムがカオスを踏み潰しました。
もちろん乗っているのは選ばれた勇者です。
そこへ間髪入れずにアベル=エルロンドのライトニングボルトが炸裂。
ボコーン!ゴーレムは片足を破壊され倒れます。

「うぁあああああああああああっ!!!」
まさに泣きっ面に蜂。ぺっちゃんこ?にライトニングボルトを受けたカオスに
イマブレルは腰が抜けてしまいました。

「お、俺が盗んだゴーレム!勇者の奴が乗ってんのか?
それにライトニングボルトじゃねぇか!?
ま、まさか原初教会異端審問局に属するアベル=エルロンドが…。
い、いや、今はそんなことはどうでもいい!
カオス!カオスー!
カオスが死んじまったら俺は生きていけねぇよーっ!!」
イマブレルは泣き叫びます。そこへゴーレムの拳が振り下ろされます。

「混沌の神は死にました。
原初教会異端審問局の要らぬ邪魔が入りましたがね。
盗っ人君。君も死になさい」
勇者は冷たく言い放ちました。
35名も知られぬ混沌の神[sage]:2011/08/29(月) 00:38:01.79 0
>33-34
>「ひぃ!!」
「あっ」
私はよくギャグアニメであるようなペラペラの皮状態になった。
でも大丈夫、これは物質界に顕現しているガワにすぎない。
単なる物理攻撃で神を仕留めるなど到底不可能!
>「お、俺が盗んだゴーレム!勇者の奴が乗ってんのか?」
勇者め、現れおったか……! だがこの勇者は恐れるに足りない。なぜなら……
前口上もなくいきなり巨大ゴーレムで踏み潰す行為は様式に則っていないからだ!

勇者【ゆうしゃ】
古来からの様式に則る事で、英雄物語の力を味方につけた、冷酷無比な武闘派集団のリーダー。
《英雄》という名の強大なる物語の前では、彼らがやる事は全てが正義である。
徒党を組んでの集団暴行は友情ぱぅわー、政治的な取引が通じないのは揺らがぬ信念や正々堂々。
人の家に勝手に入ってタンスを開けるのは民による自主的協力と置き換えられる。

>「混沌の神は死にました。
原初教会異端審問局の要らぬ邪魔が入りましたがね。
盗っ人君。君も死になさい」
勇者の背後に実体を再構成する。
漆黒の刃を勇者の首筋に後ろから当て、私は冷酷な笑みを浮かべた。
「だぁれが死んだだってぇ? 感謝するぞ、勇者アニャキンスカイウォーカー!
よくぞ神殺しの魔弾を受けてくれた! これは礼だ、フォースの暗黒面に堕ちよ!」
「は、ははははは……」
素敵な笑みを浮かべる勇者をずんばらりと袈裟切りにする。
「安心しろ、死にはしない。ただ常識と言う名の枷から解き放たれるだけだ」

>26
勇者は黒マントにつなぎという服装と化した。
「我が名はダース阿部ーダー。
私が好きなのは男装女でも中性キャラでもなく正真正銘の漢だけだ!
そこにイイ男が隠れている! 潔く出てこい、スぺオペシウム光線!」
ダース阿部ーダーはとあるビルの一室に向かって正体不明のビームを放った!
36名も知られぬ整頓の神[sage]:2011/08/29(月) 01:16:29.96 0
銀の幼女降る降るまわりに
金の幼女降る振るまわりに

という歌を歌いながらあたしは流れに沿って下り、
袋小路の上を通りながら下を眺めると、
>>30の背後で通路に置かれた木箱の山が崩れてるみたいです。

そのテンプレをよく見ると、無能とか遅筆とか書いてあります。
それであたしは手を差しのべてその幼女の手を取りました。

「聞きなさい、ルルルルルルル。
あたしと共に来るならば、無能を完全自動回避特性に、遅筆を起死回生反撃機会に書き換えて
かーくんと戦う《ツヴェルフレギオンエンゲル》のひとりと為しましょう」

説明になってない――決め台詞だから字面優先です。詳細は後日8ポイントの印刷物を交付(ry
なんだその軍団名――本棚から適当に取って適当に開いて付けました。
37イマブレル[sage]:2011/08/29(月) 02:07:18.81 O
>>35
「カオスーーっ!!!」
イマブレルは泣きながら実体化したカオスに抱き着きます
そして気がつきます
胸がぺっちゃんこなことに!

「カオスっ!?胸は!?胸はどうしたー!?」
カオスの胸は体のどこを探してもありません。

「そんなバカな!?いや、まさか!」
そうです。カオスの胸はゴーレムに潰された瞬間に虚数空間へと反転し
再構成時の空間軸の歪みで在らぬ場所へと復元されてしまったのでした

イマブレルは気がつきます

「ひあ!ぱいぱいが勇者の頭にミッキーマウスの耳みたいにくっついてる!!!」
ぽよんぽよんと丸いのが二つ、アニャキンの頭で揺れていました

「う、羨ましい!○っぱい独り占めしやがってェ!!」
決して羨ましくはないでしょう
しかしイマブレルはハンマーを持ってダーク阿部ーダーに背後から近づきました
そうです。彼は胸をハンマーでブッ叩き、虚数空間に押し返し、カオスの胸に戻すつもりなのでした!
38 :ルェルル=ルュル ルルゥ ◆mMGaLMOXkw [sage]:2011/08/29(月) 02:16:20.08 0
>>36
ルェルルの頭上から、形容しがたい物が降りて来ます。
それは長い金髪を持つ人物のようにも、落ち物パズルゲームの凸棒にも見えました。
これといった描写が無かったので、ルェルルには名も知られぬ整頓の神の姿を上手く認識できなかったのです。
突然現れた神様は困惑する幼女族の手を取ると、このように言いました。

 >「聞きなさい、ルルルルルルル。
 >あたしと共に来るならば、無能を完全自動回避特性に、遅筆を起死回生反撃機会に書き換えて
 >かーくんと戦う《ツヴェルフレギオンエンゲル》のひとりと為しましょう」

「えっとぉ……るるるるるるるって、わたしのことだよねー?
 ルェルルがわたしの名前だよ。
 わたしねー、いま悪い人に追いかけられてるの。
 狭い所に閉じ込めたり、酷いことしたりする人たち。
 だから、はやく遠くに逃げなくちゃ。
 それにねー、わたしねー、幼女だから戦う力なんて持ってない……」

ルェルルは、あたふたしながら答えました。
かーくんと戦うという部分で、何やら大変なことに巻き込まれそうな気がしたからです。
名も知られぬ整頓の神の言っている自体は、半分も理解できていませんでしたが。

「うーんと、でもー、ご飯が食べられて、痛く無くて、結婚できるならいいよぉ!」

意志が薄弱なのか、割と流されるままにルェルルはイエスと答えてしまいました。
ニッコリとヒマワリのような笑顔を浮かべ、そのまま名も知られぬ整頓の神の胸に飛び込みます。
39 :名も知られぬ混沌の神[sage]:2011/08/29(月) 23:42:14.29 0
>37
>「カオスっ!?胸は!?胸はどうしたー!?」
「貴様……もしや胸目当てで忠誠を誓ったのか?
人間の浅はかさよ、外見などガワに過ぎんと言っておるだろう」

>「ひあ!ぱいぱいが勇者の頭にミッキーマウスの耳みたいにくっついてる!!!」
「ハハハハハ! 胸なんて飾りです、とはよく言ったものだ!!」

>「う、羨ましい!○っぱい独り占めしやがってェ!!」
ぺしゃっ。ダース阿部―ダーは頭をハンマーでぶっ叩かれて、プリンまみれになって昏倒した!
○っぱいプリンだった。
「でかしたぞ、イマブレル。危うくこちらが阿部さんに襲われるところだった。
実は外見映像を再構成する時に手違いで男になってしまったようだ。
元々男のつもりだったのだが>>19のレスに突撃するために思いつきでやっただけだからな。
忠誠は魂に誓うもの……どちらでも問題なかろう!
ん、何だ? どうしても不満なら宇宙的恐怖なイソギンチャクの姿になってやっても良いのだぞ?」
40名も知られぬ整頓の神[sage]:2011/08/30(火) 00:37:53.54 0
「ルルルルルルル、愛しい子よ」
あたしは飛び込んできた幼女(発音が難しいのです)を受け止めました。
凸棒の身体で痛い思いをしないように、とびっきりふかふかの胸で。
そのまま、あたしは長い金髪をなびかせて路地裏から飛び立ちました。

「かーくんは放っておくと何もかもごちゃごちゃにしてしまうのです。
そうしたら、コンビニのおにぎり棚にはぱんつが並び、
炊飯器のふたを開けたら核弾頭がつややかに立っている、
そんなご飯の食べられない世界になってしまいます」

飛びながらかーくんの脅威をやさしく話して聞かせ、
星船に着く頃には、幼女はあたしの胸で深い眠りに落ちていました。
窒息したんじゃ――大丈夫、むしろ好都gゲフンゲフン
あたしは、BCFを取り出して幼女のテンプレを書き換えました。

「この完全自動回避特性《ネタフリニキヅカナイ》があれば、
どんな攻撃をされても痛い事はありません。
さあ、行って混沌からご飯を守りなさい」
41イマブレル[sage]:2011/08/30(火) 01:54:14.25 O
ダークサイドにおちた元勇者、アニャキンことダース阿部ーダーは
イマブレルのハンマー攻撃によって、プリンまみれになって倒れました。
カラメルの甘い匂いが虚しく辺りに漂います。でもそれで良かったのでしょう。

「ガワ」

力無くイマブレルはうなだれます。
カオスの言った『ガワ』の本当の意味とは?しばらく考えました。

「魂に、中性を誓う…。
そうか!わかったぜカオス!!」
イマブレルは性にこだわらないと言うことを学びます。

その時です!

新たなゴーレムが現れました。
なんと便器型のゴーレム。
便座の中心には隻眼長髪の筋肉質な男が座っていました。

「いたたた…お腹いたい…アニャキンくーん。死んじゃだめー。
勇者は死んじゃダメなんだよー。
勇者はカオスを絶対に倒す。これが私たちの正しいシナリオ。
そんなヘタレな薄っぺらい攻撃に負けないでー」

男の名前はアショーカ・ニャノ
選ばれし勇者の一人。

「最大回復呪文!オロナミン、スィー!!」
詠唱とともに便器から黄金の輝きが放たれアニャキンに注がれます。

「ぬひひ…ファイトいっぱつ感謝いたしますよ」
アニャキンは回復しました。
カオスの洗脳からも解き放たれています。
するとアショーカが便器から飛び降りて予言の書を取り出しカオスに見せつけます。

「この予言の書を読みなさいカオス」

それは今後のシナリオでした。まさに八百長ならぬ八百帳。
そして、それを読んだイマブレルは怒りました。

「こんなのインチキじゃねぇかーばっきゃろう!」

今後のシナリオでは勇者たちは絶対に負けないのでした。
これはきっと、無敵バリアよりも強力でたちの悪いことでしょう。

勇者アニャキンたちはカッコイイセリフを吐きながらカオスに攻撃を仕掛けます!
42ルェルル=ルュル ルルゥ ◆mMGaLMOXkw [sage]:2011/08/30(火) 21:37:40.14 0
>>40
名も知られぬ整頓の神は、ルェルルにかーくんの恐ろしさを噛んで含めるように聞かせます。
ルェルルは話を聞くうちに、だんだん眠たくなってしまいましたが。
すやすや眠るルェルルの横で、名も知られぬ整頓の神は禁断の魔筆を用いてテンプレを書き換えてしまいました。

属性:無能→完全自動回避特性
短所:遅筆→起死回生反撃機会

しばらく経ち、ゆさゆさと起こされる感じがしたので、ルェルルがあくびをしながら起きました。
テンプレが書き換えられた事には、ぜんぜん気付きません。
寝ぼけまなこのルェルルには、名も知られぬ整頓の神が無情な言葉を投げかけます。

 >「この完全自動回避特性《ネタフリニキヅカナイ》があれば、
 >どんな攻撃をされても痛い事はありません。
 >さあ、行って混沌からご飯を守りなさい」

「……ぅん」

ご飯を守りなさいと言われたので、ルェルルはうんと即答しました。
分かったのは何かしないとご飯が食べられないということだけ。
ご飯も混沌も、どこにあるのか全く分かりません。

「行ってきまーす……」

ルェルルは星船を降りると、やや不安そうに森の中を歩きはじめました。
星船は知らない場所に着陸してしまったので、現在位置が分かりません。
ルェルルは時折振り返って、名も知られぬ整頓の神が付いて来てくれないかな……と期待するかのように見つめます。
歩みはのろのろ。すぐに一休み。なかなか前に進みません。
それでも、しばらく歩き続けるとやがて看板を見つけます。
駆け寄ると、看板には『←ツギの街 ソイレン島→』と書かれていました。

どっちも良くない感じがしたので、ルェルルは真ん中を進みます。
すると大きな岩肌に口が開ける、サイショのダンジョンに辿りついてしまいました。
もしかしたら中に混沌がいるかも知れません。

「こんとんー、いるー?」

思い立ったルェルルが声をかけましたが、中から返事はありません。
なのでルェルルは、恐る恐るダンジョンに入っていきます。
43名も知られぬ混沌の神[sage]:2011/08/30(火) 23:14:52.60 0
>41
「ピンチに都合よく仲間が現れるとはまさしく勇者……だがっ!」
>「この予言の書を読みなさいカオス」
>「こんなのインチキじゃねぇかーばっきゃろう!」
下品な勇者が大活躍して世界を救う、小学生向けのギャグ漫画のような内容だった。
「お下劣すぎるわあああああああ!!」
叫びながら予言の書をバラバラに破り捨てた。

「案ずるな、予言の書は破り捨てた! もはやこの者達は伝説の勇者ではない!」
「黙れ邪神……、僕達はっ! 貴様なんかに! 負けない!!!!」
「うおおおおおおおおおおおおおおお!!」
「ぎええええええええええええええええ!?」
普通にボコられた。

勝利を確信したアニャキンは語り始めた。
「冥土の土産に教えてやろう……。この予言の書は無数にある写本のうちの一つに過ぎない
唯一絶対たるオリジナルの《物語》のなあ!」
「なん……だと……!?」
「この世界は今や文字通り、とある《物語》が支配しているのだ。
そうである限り、邪神が勇者に勝つ事は絶対出来ない!!
遥か昔……数万年前になるだろうか、人類は高度な情報技術を操る術を持っていた。
全世界を覆うネットワーク、人間を遥かに超える脅威の人工知能……。
そしてついに自らの手で新たなる《神》を作り出したのだよ!
その神の名は聖典《カノン》。神聖なる聖書にして絶対不可侵の法典。
全世界のデータベースを蓄積し、自動でアップデートされる究極の事典。
その神に全世界を管理させ、全て委ねる事で、永遠の平和が約束された。
今やその技術は忘れ去られ、聖典《カノン》を解析できるものはいない。
否、解析する必要も無い。我々が何もせずとも神は永遠に世界を維持し続けるのだ。
これで分かったか、聖典《カノン》こそが唯一絶対の神……! 有象無象の神など不要だ!
言っておくが聖典を破壊しようったって無駄だからな、聖典は世界各地に散らばった何重もの封印によって……」

「ダークスラッシャー!!」
夢中で演説している隙を突いてさくっと切り捨てた。
勇者の瞳が驚愕に染まる。
「ぐはっ!? ……なぜだ!? なぜ勇者たる私が……貴様などに……!」
勇者達は不可思議な文字の羅列となって虚空に消えていった。

「なるほど、奴らは聖典《カノン》が作り出した単なる情報の集合体に過ぎなかったのか。
だが真の勇者が選ばれし時、旧き神々は全て皆殺しになる……!!
急ぐぞ、イマブレル!! 各地の封印を解きつつ旧き神々の勢力を一つにまとめあげるのだ! 
聖典の勇者が現れる前に!」

>42
やってきましたサイショのダンジョン。
「並々ならぬオーラだ。おそらくここに聖典の第一の封印があるだろう……!」
幼女が先に入っていくのが見えた。
「あの幼女、只者ではない……気付かれぬよう後を付けるぞ」
44イマブレル[sage]:2011/08/31(水) 00:43:19.13 O
>43
カオスはラスボスなので普通に大オチ的なことを言いました。
倒された勇者は文字に化けて溶けました

「情報…」
そういえばイマブレルは幼稚園で先生に聞いたことがあります
人や物を細かくしていくと分解出来なくなるほど小さいものになる
それを賢人たちは「情報」と呼んだと。


太陽のひかりは、あたたかい情報。
うねる海は情報の渦。
そうです。イマブレルが今見ている世界はカノンが生み出した情報の世界だったのです。

(真の勇者っつうトリガーが現れる前にカノンの封印を解くだと?
まあ、旧世界の神が皆殺しになろうがなるまいがどっちでもいいが
カノンっつう聖典は利用できそうだぜ)

イマブレルは悪い顔です。
もともとは時代の捩れが産んだ虫のような男。
恋人の命を病気で奪った神に怨みもあります。

「俺は盗っ人だが、神こそ大泥棒じゃねぇか。
恋人のロゼーヌの命を奪った奴を俺は絶対に許さねぇ。
俺が神なら…こんな世界は絶対に造らねぇ…」

>42
ダンジョンには幼女がいました
カオスは様子をみようと言い出します

「わかったぜ。にしても小便臭そうな女だな。
女はぼんぼんきゅっぼんじゃねぇとな」
影から見つめます
45イマブレル[sage]:2011/08/31(水) 19:47:11.33 O
「おいカオス。もっと腰をひっこめろよ。隠れてるのバレちゃうだろ」
岩の影でイマブレルとカオスは体を寄せていました
ぐうぅとお腹が鳴ります

「ちっ…腹減ったな。
そうだ。おまえ磯巾着に変身出来るんなら
味噌煮込み饂飩にも変身出来るよな?
変身してくれよ」

ぺろりとカオスの首筋を舐めるイマブレル。
ハチミツのような甘い匂いがするのにカオスの汗はしょっぱいのでした。

「なあカオス…」
長い睫毛の下で瞳が揺らぎます。
カオスの広い背中へ手を回しイマブレルは強く彼を抱きしめるのでした。
46ルェルル=ルュル ルルゥ ◆mMGaLMOXkw [sage]:2011/08/31(水) 22:24:07.31 0
「もぉ、真っ暗でなんにも見えないよー」

ルェルルはすぐに洞窟から出てきました。
松明もランプも無く、暗視などの能力も無いので、真っ暗な洞窟の中では何も見えないのです。
これでは何かを探すことなんて出来ません。

「あっ、ぶどう!」

突然ルェルルが駆け出しました。
隠れている誰かさんの気配に気付いたわけではありません。
ご飯の気配を感じ取ったのです。
ルェルルは木に垂れ下った葡萄の房を見つけて、手を伸ばし、届かないのでジャンプを始めます。

「ご飯は、わたしが守るー!」

つやつやと紫の光を放つ葡萄は、とても美味しそうでした。
ルェルルは、それを取ろうとぴょんぴょん飛びますが葡萄には手が届きません。
激しい動きをするたびに、布の少ない布の服も、だんだんずれていきます。
やがて疲れてしまったのか、はあはあと息が切らしたルェルルは座り込んでしまいました。

「……あれはきっと酸っぱくて食べられないから、ご飯じゃないもん」

今夜はご飯無しで、夜を過ごさなくてはいけないかも知れない……。
悲しい気持ちになったルェルルは、薄っすらと涙を滲ませながら、体育座りでしくしくと泣き始めます。
47 :名も知られぬ混沌の神[sage]:2011/08/31(水) 23:52:20.55 0
>44
>「情報…」
「そうだ。
おそらくこの世界は元からの実体とカノンが作り出した情報の幻影が混然一体となっているのだろう。
幻影とは言っても5感を全て支配する故実体と区別は付かないがな」

>「俺は盗っ人だが、神こそ大泥棒じゃねぇか。
恋人のロゼーヌの命を奪った奴を俺は絶対に許さねぇ。
俺が神なら…こんな世界は絶対に造らねぇ…」
「ああ、唯一絶対の神など実にけしからん!有象無象の神々が蠢いてこそ世界は混沌となるのだ。
所詮は人間が作りし神。おそらく何千年も放置されたために崩壊を始めているのであろう。
それにしても貴様は多重人格か? あれ程○っぱいで騒いで今更真面目になるでない!
だがそれでいい、その掴みどころの無さ、我が配下としては実にふさわしい!」

>45
一瞬シリアスになったイマブレルは、今度はモーホー展開に突入した。全く、忙しい奴だ。
>「なあカオス…」
「確かに何にでも変身できるぞ、神とは概念そのもの、今風に言うなら情報そのものだ。
古の神は全て、絶対神カノンの理の外にある情報……。
カノンにとっては存在してはいけない手違いとして認識されるだろうな」
私は虚空から味噌煮込み饂飩を出して見せた。
「食べられるし味もするだろう、だが食べた気になるだけだ。
貴様が実体を持つ人間ならば、な。
実は貴様も情報の集合体ならば……本当に食べたことになるが、果たしてどっちかな?」
このような世界で、自分が実体を持つ人間であると確信が持てるのだろうか?

さて、モーホー展開の間に幼女を見失ってしまった。大変だ。
「好き嫌いをしていては人生楽しめないぞ。貴様に幼女の素晴らしさを教えてやろう。
まずは形からだ。私の真似をするが良い。
ヒャッハー! 幼女最高! ハァハァハァハァハァ!」
ハァハァ言っていると、上に赤いランプの付いた白黒の車が走ってきた。
車は私たちの目の前で止まった。
「ヘイ、お待ちー!」
車に乗り込んだ。
「幼女のところまで頼む!」
「よし来た! 飛ばすよー!」

>46
体育座りで泣いている幼女を発見した。我が軍勢に引き入れるチャンスである。
泣いている所に優しくして仲間を増やすのは定石だ。
キキーッと急ブレーキで止まった車から降りる。
「料金つけといてくれ」
「あいよ!」
泣いている幼女に声をかける。
「どうしたんだいお嬢ちゃん、私は怪しいものではないぞこれはいい幼女ハァハァハァハァ」
48イマブレル[sage]:2011/09/01(木) 01:26:26.21 O
イマブレルは味噌煮込み饂飩をはふはふしながら一口食べました

「おいしい」
味噌煮込み饂飩の情報がイマブレルに流れこみます。
そして車から降りて幼女の所についた時でした。

「に、にげろ…カオ…ス…」
顔を真っ青にしてイマブレルはお腹を押さえています。
お腹からうどんが触手のように生えててカオスを掴みかかります。

「カオスーっ!!」

どっかーん!!
イマブレルは粉々に砕け散りました。
クレーターが出来るほどに爆発しました
そうです。すべてはカノンが仕掛けた罠だったのです
49インディ・アヌス・ジョーンズ ◆PU7PLY2lWJyg [sage]:2011/09/01(木) 03:35:39.77 0
名前:インディー・アヌス・ジョーンズジュニア
異名/肩書:冒険家
年齢:29
身長:176
体重:76
種族:人間
職業:無職
属性:糞
性別:男
性格:江戸っ子
利き手:夜は左手
魔法:そんなもんあるわけねぇだろ
特技:小さい頃は「お前はやれば出来る子なんだよ」と言われた
得意な技:鞭さばき、擬似ロデオ、早撃ち早漏
長所:どんなところでも野糞が出来る
短所:急に便意を催す
戦法:陰湿、卑怯、姑息
装備品右手:44マグナム
装備品左手:鞭
装備品鎧:安物の皮ジャン
装備品兜:やたらでかい帽子
装備品アクセサリー:ミサンガ
所持品:コッペパン
瞳の色:茶色
髪の毛の色、長さ:とっちゃん坊や風
容姿の特徴・風貌:顎が長い
50名も知られぬ整頓の神[sage]:2011/09/01(木) 07:43:18.76 0
銀の幼女降る降るまわりに
金の幼女降る振るまわりに

という歌を歌いながらあたしは幼女の頭上を高く飛び、
幼女がかーくんをおびき寄せているのを見ました。
流石はあたしの《ツヴェルフレギオンエンゲル》です。

あたしは幼女にカンペを出しました。

『サイショのダンジョンの一番奥に調理場があります。
調理場までその人に連れて行ってもらって
そこで好きなご飯を作ってお食べなさい』
51ルェルル=ルュル ルルゥ ◆mMGaLMOXkw [sage]:2011/09/01(木) 23:46:26.07 0
>>50
何かが書かれてる紙が、ルェルルの前に現れます。

「このどーくつの奥に調理場があるの?
 んーと……連れてってくれる人ってだーれ?」

ルェルルが辺りを見回すと、近く(>>49)に人の気配がしました。
何か怪しい雰囲気もしますが、いかにも冒険者という出で立ち。
さらに余り切迫してたり、忙しかったりしてなさそうな感じです。

「この人でいーのかなー……?
 おじさん、洞窟に連れてってー」

ぐいっと、インディーの手を引いてルェルルは洞窟の中に消えていきます。
好きなご飯は、はなまるハンバーグ。
頭は、ご飯のことでいっぱい。
なので何か恐ろしいことが後ろで起きていても、きっと気付きません。
間違った人を連れて行ったのかも気にしません。

たったった……と、幼女が洞窟の奥へ奥へと進みます。
やがて、洞窟は右と左の分かれ道になりました。

「どっちにいけばいいのかなー?」

地面を見ると右の道は足跡がいっぱい。左の道は一つだけ。
ルェルルは、いっぱい足跡がある方が賑やかに違いないと右の方に進みます。
52名も知られぬ混沌の神[sage]:2011/09/02(金) 00:11:42.36 0
>50
見知ったオーラを感じた。
我が永遠のライバル、名も知られぬ整頓の神。
長いので私はモッコスと呼んでいたな。
>『サイショのダンジョンの一番奥に調理場があります。
調理場までその人に連れて行ってもらって
そこで好きなご飯を作ってお食べなさい』
モッコスめ、何を企んでいる!?
とはいえ、ここで戦うのは得策ではない。あえて乗るとしよう。

>48
>「に、にげろ…カオ…ス…」
「ぎゃーーー! エイリアンか!?」
なんという宇宙的恐怖。

>「カオスーっ!!」
「イマブレルーっ!」
どっかーん!!
吹っ飛ばされて葡萄の木に突っ込んだ。
「これは……1000年に一回だけ実をつけるという伝説の葡萄……!
イマブレル、お前の死は無駄にはしない!」
葡萄を数房もぎ取る。

>49
「なんだ、貴様は……。下品すぎるぞ!」
が!!
>年齢:29
>魔法:そんなもんあるわけねぇだろ
>特技:小さい頃は「お前はやれば出来る子なんだよ」と言われた
これを見てある確信に至った。
「間違いない、そなたは齢30を迎えると同時に稀代の大魔法使いとして覚醒する!
是非我が軍勢に……」

>51
「あっ」
幼女は小汚いおっさんを連れ去っていった。
「幼女誘拐事件だ……」
幼女がおっさんを誘拐する事件という意味で。
どうしよう、取り残されてしまった。

そこで、いつもモッコスが歌っている不思議な歌を思い出した。
>銀の幼女降る降るまわりに
>金の幼女降る振るまわりに
「銀の幼女……そうか! 幼女に変身すればきっと何かが起こる!」
私は銀髪の幼女に変身し、金髪の幼女を追いかける。
「おーい、金の幼女―、ぶどう食べるかー?」
ここに逢い見える金の幼女と銀の幼女。
53 :開墾の神[sage]:2011/09/02(金) 01:20:54.82 O
「ほいな、孝美の見物といくべか」

遥か虚空。宇宙船地球号から孝美こと斎藤孝美を見物する謎の情報体。
天に昇るイマブレルの情報を口をすぼめてつるんと吸いつくす。

「まぎゃらそん!ぶりんそん!ばーまらーやーな!だべさ!」
太陽よりも大きな機械の顔が宇宙を耕していく
54名も知られぬ味噌煮込み饂飩の神[sage]:2011/09/02(金) 01:21:58.07 0
「粗末にされたので私は岩戸に引き蘢ります」

世界から味噌煮込み饂飩が消えた。
55名も知れぬ開墾の神[sage]:2011/09/02(金) 02:00:38.00 O
>>54
どろどろどろ
コンクリートを岩戸にかける

「また来世~(^O^)/」
ヘルメットおじさんたちが大拍手して紅白のリボンをハサミで切る

「害虫が…」
高層ビルのてっぺんで赤ワインを片手に開墾の神がにやにやしていた
56名も知ってる近藤野上[sage]:2011/09/02(金) 02:04:17.34 0
近藤「とりあえず生2つ」
野上「うん俺もそれ」

運ばれてくる生4つ
57ルェルル=ルュル ルルゥ ◆mMGaLMOXkw [sage]:2011/09/02(金) 19:15:44.36 0
>>52
ルェルルが暗い洞窟の中をてくてく歩いていると、後ろから声が聞こえてきます
ひんやりした静かな空気は叫び声で破られ、パラパラと天井から砂が落ちてきました。
ルェルルが振り返ると、手に葡萄を持った銀髪の女の子が、こちらに向かって走って来るではありませんか。

 >「おーい、金の幼女―、ぶどう食べるかー?」

ルェルルは幼女族なので、すぐに自分のことだと思いました。
立ち止まって追い付いた女の子から、何の疑問も無く葡萄の房を受け取ります。

「うん、食べるー」

さっきから何も食べてないので、喉はカラカラ、お腹もペコペコ。
ぺたっと地べたに座ったルェルルは、つるんと皮を剥いて葡萄を口に運びます。
甘くて瑞々しい葡萄はピンクの舌に乗って転がり、小さな歯で押し潰されると甘い汁を吹き出します。

「あまぁーい!」

ルェルルもにっこり。
口の端からよだれが糸を引きます。
葡萄でお腹はいっぱいにはなりませんでしたが、悲しい気持ちは少し晴れました。
ご飯のことでいっぱいだった頭の中にも、何かを考える余地も生まれてきます。
この銀髪の子はいったい何者なのでしょう?

「あなただーれ? どーしてこんなところにいるの?」
58アベル=エルロンド[sage]:2011/09/03(土) 07:40:34.63 0
「くそっ、なんていう超展開だ……サイボーグ化しているとは言え俺は人間……神の力には着いていけないというのか……」
俺はひとつ舌打ちをすると、その場から逃げるように立ち去る。
というか逃げる。
 
このままでは俺の寿命がストレスでマッハだ……。
 
(というわけで、悪いが撤退させてもらう。マジですまん!)
59名無しになりきれ[sage]:2011/09/03(土) 13:39:23.05 0
>>55
世界から味噌煮込み饂飩が消えたのでNAGOYA人が暴動を起こした!
味噌煮込み饂飩にとどめを刺された事で逆上した無数のNAGOYA人達が、
名も知れぬ開墾の神戦に特化したキャラ設定を引っ提げて高層ビルを上っていくぞ!
60名も知られぬ混沌の神[sage]:2011/09/03(土) 22:43:30.41 0
>>57
>「あなただーれ? どーしてこんなところにいるの?」
「私は名も知られぬこんとの神」
幼女化した影響で噛んでしまったがまあ大勢に影響はないだろう。
61 :名も知られぬコントの神[sage]:2011/09/03(土) 22:52:07.71 0
ウチは言葉を続けた。
「アンタをスカウトしに来たんや!
突然やけどお笑いユニットを結成しようや。
アンタとウチならM1グランプリ優勝間違いなしやで~!
芸名はカー君、よろしくなあ! アンタはルーちゃんなんてどうやろ」

>56
話している間にキッチンらしき所に付いた。
近藤さんと野上さんがビールを飲みながら駄弁っている。
「ユニット結成祝いに味噌煮込みうどんでも食べへんか?
なあおっちゃん達、味噌煮込みうどんあるー?」
近藤「味噌煮込みうどんなら今さっき消えてしまったよ」
「な、なんやてー!?」

>58
(いいんだ、皆まで言わずとも分かっている!
短い間だったけどありがとうございました!)
62名も知らぬ開墾の神[sage]:2011/09/03(土) 23:08:07.84 O
>>56
「ちょいちょ~い。こっちに来るっぺさ、お二人さん。
おらのながまさなったら、茨城産豊乳揉み放題だっぺよ」
開墾の神は両脇に胸筋ムキムキのナイスガイを侍らせていました。
みんな熱気むんむん、フェロモン全開の美青年たちです。

>>57
ついに二人の幼女は出会いました。
開墾の神は見守ることにしました。

>>58
「逃げるっぺか?意気地無し!」

開墾の神は下唇をきゅっと噛むとワイングラスを絨毯に投げ付けます。
ごんっと鈍い音をたててごろごろと転がるワイングラス。
零れたワインが絨毯の赤を深く染め上げると開墾の神は寂しそうに独りごちました

(ふん。とんだブリキのキコリだったわね。
でも、彼のあの大きな胸板…。鋼鉄のようにひんやり冷たかったのかしら?
それとも燃えたぎるエンジンのように熱かったの…)

>>59
味噌煮込み饂飩を失った名古屋人たちは怒り狂いながら変身を始めました。
額から触角が生え皮膚が緑色に変色、硬質化していきます
そうです。ナゴヤ人はイナゴヤ人に変身したのでした!

「マギマギー!」

「ぎゃあ!!イナゴの大量発生だっぺー!!」

高層ビルのガラス窓に額をぺったりつけ、ビルの下に集まる名古屋人を見ながら開墾の神は叫びました。
でも、これくらいのことは想定内の出来事。この時のために名古屋人の習性は調査済みなのでした。

「みゃあみゃあ五月蝿いっぺ、名古屋大好き名古屋人どもめ。
ブランド品型爆弾投下だっぺさ!」

上空からブランド品型の爆弾が大量に投下されてブランド品が大好きな名古屋女はそれに飛び付き全滅。
残った名古屋男たちは「名古屋走り(赤信号突撃。ウィンカーなしの車線変更。交通死亡事故は輝ける全国No.1)」などで自滅。

「ぎゃはは!おわりだっちゃ!おわりなごやだぎゃあ!」

>>60
「山田くん。座布団無量大数だっぺ!」
カオスは増える座布団に座らされ大気圏を超えていく。
63 :ルェルル=ルュル ルルゥ ◆mMGaLMOXkw [sage]:2011/09/04(日) 01:52:00.33 0
>>60-61
銀髪の女の子がルェルルの誰何に答えました。

 >「私は名も知られぬこんとの神」

銀髪の女の子がこんとの神を名乗り、ルェルルはハテナを顔に浮かべます。
なので、思わず疑問が口を突いて出てしまいました。

「神様? なんで神様がこんな所にいるのー?」

こんとの神様はルェルルに答えます。

 >「アンタをスカウトしに来たんや!
 >突然やけどお笑いユニットを結成しようや。
 >アンタとウチならM1グランプリ優勝間違いなしやで~!
 >芸名はカー君、よろしくなあ! アンタはルーちゃんなんてどうやろ」

「やーよ。わたし、ここの奥にある調理場で、ご飯食べるんだもん!」

ルェルルは、ご飯のことしか頭にありません。
そうでした……そのご飯をメチャクチャにしてしまう者の名前を、ルェルルは整頓の神から聞いています。
銀髪の女の子の名前と同じく、かーくんです。

「かーくん! わたしのご飯をごちゃごちゃにしちゃダメー!」

突然、ルェルルは洞窟の奥の調理場に向かって走り始めました。
もちろん、かーくんにご飯をごちゃごちゃにさせないためです。
ルェルルが走ると、途中でピンッと糸が切れる音がしたり、ズズっと石のタイルが沈んだりしました。
ひょっとすると洞窟の中で何かのトラップが、発動するかもしれません。
64 :名無しになりきれ[sage]:2011/09/04(日) 02:09:36.81 0
>>57
銀の幼女降る降るまわりに
金の幼女降る振るまわりに

という歌を歌いながらあたしはゆっくりと大空に輪をえがいて飛び、
幼女がかーくんを捕獲したのを見ました。
流石はあたしの《ツヴェルフレギオンエンゲル》です。

あたしはダンジョンの奥のキッチンに
はなまるハンバーグとカレーの材料をそっと並べました。
ふたりがこのダンジョンでいつまでも幸せに暮らしてくれれば、
この世はそれほどひどくごちゃごちゃにならずに済むでしょう。

だのに。

>>58
>このままでは俺の寿命がストレスでマッハだ……。

ああ、かーくんの犠牲者が出てしまいました。
もう少し早くあたしが見つけていれば、
テンプレを地蔵に書き換えて
あたしの《ツヴェルフレギオンエンゲル》に加えたものを。

あたしは彼からこぼれ落ちた寿命を掬うと御幣で美しく飾って空へ還しました。
65名も知られぬ整頓の神[sage 64はあたしです]:2011/09/04(日) 02:53:06.35 0
幼女はかーくんを順調にキッチンに誘導しているように見えました。
けれどそれはかーくんの罠だったみたいです。
かーくんはダンジョンを進みながら自分の名前をごちゃごちゃにしてしまい、
すると大量の座布団が射られたので
その座布団をあたしは上を通したり下を通したりしました。

>>62
>カオスは増える座布団に座らされ大気圏を超えていく。

見るとかーくんが座布団に乗って大気圏外へ逃げていきます。
今度は宇宙をごちゃごちゃにするつもりなのでしょう。
幼女がダンジョンのトラップを作動させたので、
かーくんの身体は座布団に乗ってダンジョンから出た時には
あちこち串刺になったり刃物で両断されたりしています。
流石はあたしの《ツヴェルフレギオンエンゲル》です。

あたしはキッチンで走って来た幼女を迎えました。
「聞きなさい、ルルルルルルル。
かーくんは邪法を用いて大気圏外に去りました。
後を追うためにカレーを作りなさい。
でもその前に、はなまるハンバーグを作ってご飯にしましょうね」
66ルェルル=ルュル ルルゥ ◆mMGaLMOXkw [sage]:2011/09/04(日) 21:26:04.79 0
>>65
どうやって先回りしたのでしょうか。
いつの間にか、ダンジョンの先のキッチンには名も知られぬ整頓の神がいました。

 >「聞きなさい、ルルルルルルル。
 >かーくんは邪法を用いて大気圏外に去りました。
 >後を追うためにカレーを作りなさい。
 >でもその前に、はなまるハンバーグを作ってご飯にしましょうね」

「うん。はなまるハンバーグ! 食べるー!」

ルェルルはかーくんや邪法の部分を聞き飛ばして、ハンバーグを作ることにしました
ボールの中のお肉を捏ねて混ぜてかき混ぜて。後はフライパンで焼きあげます。
テーブルの上に置いたハンバーグに、ケチャップではなまるを描いたら出来あがり。

「いただきまぁす……はむっ!」

口の周りはケチャップでべっとり。
布の少ない布の服の上にも、ぽとぽと垂らしてしまいます。
ハンバーグでお腹いっぱいになり、ルェルルも大満足。

「ごちそうさまー。もーお腹いっぱい。
 だからカレーは食べられないよ」

お腹がいっぱいになったので、ルェルルは眠くなりました。
手で目を擦って眠気を払っていますが、トロンとした目付きは隠せません。
それでもカレーを作らなきゃいけない気持ちにはなっていたので、キッチンの前に立ちます。
うつらうつらしながら、お鍋に具を入れて火を付けて……そこまでがルェルルの限界でした。
火を付けたままのお鍋の前で、ルェルルは椅子に座ったまま寝息を立ててしまいます。
67名無しになりきれ:2011/09/04(日) 21:44:11.04 0
>>62
>「ぎゃはは!おわりだっちゃ!おわりなごやだぎゃあ!」

「とーしのはーじめーのーためしーとてー♪」
iNAGOYA女はブランド品をつかんで歌う
「尾張名古屋の大地震♪」
iNAGOYA男も車線変更で接触事故を起こしながら答えて歌う
「「松竹でんぐり返って大騒ぎー」」
iNAGOYA男女は唱和した
「「後の始末は誰がするー」」

《これらのことがあったので、こののち
開墾した土地には蝗が現れ地震が起きるようになった
―――――創世記 第三章四十二節》
68名も知られぬコントの神[sage]:2011/09/04(日) 22:50:51.02 0
>62-63
>「やーよ。わたし、ここの奥にある調理場で、ご飯食べるんだもん!」
「なんやねん、アンタご飯の事しか考えてないんかい。
その揺らがぬ信念、ますます気に入ったわ!」

キッチンには、名も知らぬ開墾の神、略してカイさんもいた。
「おお、カイさん久しぶりやなあ! 元気にしとったか?」

>「山田くん。座布団無量大数だっぺ!」
>「かーくん! わたしのご飯をごちゃごちゃにしちゃダメー!」
足元から湧いてくる無限に増える座布団によって、ウチは大気圏外に出た!
上半身と下半身に両断されてしまったので、プラナリアのようにそれぞれを再構成する。
二人になってもうたけどまあええわ! ボケ役とツッコミ役にしよ!

無限に広がる大宇宙。漆黒の宙(そら)に輝く星々は、万象の神々が統べる星々。
宇宙を耕す巨大機械。
「素敵やわあ……ここが冒険の舞台なんやな!」
「そうやで! ただの神話やあらへん、オカルトでSFでスペースオペラやからな、
宇宙規模のとびっきり壮大な神話や!」
「ずっとここにおりたいわあ……」
「あかんて。はよう唯一絶対神カノンを倒さんと森羅万象の神々は皆殺しやで!」
「そうやな。帰ろう、物語の本筋へ!」
ウチらは手を取り合って飛び出して来たダンジョンに舞い降りる。

>66
>「ごちそうさまー。もーお腹いっぱい。
 だからカレーは食べられないよ」
火がついた鍋がぐらぐらと煮立っていた。
「ルーちゃん! あかん!!」
火を消そうと駆け寄った時……
どっかーん!!
大爆発が起こった! 辺りに煙が立ち込める。
69ライス(NPC)[sage]:2011/09/04(日) 23:01:48.20 0
煙の中から、一人の人物が現れる。
レオタードを着て、頭にはパンツを被り、手にはご飯の茶碗を持った男である。
「ハンバーグだけ食べてご飯を食べないとはどういう事だ?
貴様にお米の素晴らしさを教えてやろう! ディナータイムの始まりだ!!」
ゴゴゴゴゴ……凄まじい魔力が渦巻き、男の背後にご飯が山盛りになった巨大な茶碗の幻影が現れる!
凄まじい威圧感を放ちながら男は名乗りを上げた!
「我が名はライス! お米の消費率を上げたい農林水産省の手先にして第一の封印の守護者《ガーディアン》なり!!
カノン様の封印は解かさん!!」

――序章のボスのお出ましだ!!

【BOSS DATA】
名前:ライス
外見:変態
技:お米真拳

「お米真拳奥義! モリモリポックン!!」
背後の巨大茶碗から大量のご飯が飛び出し、その場にいる全員に襲い掛かる!
捕まると茶碗の中に取り込まれるぞ!
70 忍法帖【Lv=6,xxxP】 [sage]:2011/09/05(月) 02:15:00.63 0
エターナルフォースブリザード!?♪。
71ルェルル=ルュル ルルゥ ◆mMGaLMOXkw [sage]:2011/09/06(火) 02:07:09.61 0
鼻ちょうちんが大きく膨らみ、しぼんで、また膨らんで、またしぼみます。
すやすや眠るルェルルは、夢の中でカレーを作っていました。
緑のカレー、スープカレー、シーフードカレー、カレーうどん。
そんな幸せな夢もパチンと鼻ちょうちんが割れれば、お終いです。

「Σあっ、カレー!」

目覚めたルェルルが慌ててお鍋に駆け寄りました。
背を伸ばして中を見ると、待ち受けるのは厳しい現実です。

「ごちゃごちゃになってる……これじゃ、もう食べられないね……」

カレーを作るのに失敗したルェルルは、しょんぼり顔。
肩を落として、とぼとぼキッチンを出て行きます。
72ライス(NPC)[sage]:2011/09/06(火) 23:46:22.56 0
>71
無視されたライスは怒り狂った。
こういうボスは押しなべて構ってちゃんと相場が決まっている。
「ご飯が食べたいなら好きなだけ食わせてやるわあああああああ!!」
ご飯の激流がルェルルに襲い掛かる!
しかしご飯はルェルルを素通りしていく。

「はぁ、はぁ……
これが完全自動回避特性《ネタフリニキヅカナイ》……! 
まさかここまでとはっ! かくなる上は……」

「お米真拳奥義! 潜伏忍者盤外戦術《エターナルフォースブリザード》!!」

説明しよう!
潜伏忍者盤外戦術《エターナルフォースブリザード》とは、反則技を用い超越的因果律に働きかける事によって
対象を世界から消し去るという禁断禁忌の恐るべき技である!!

ライスはケータイを開いて某匿名掲示板を起動させた。


136 :名無神話:2011/09/06(火) 22:06:43.49
スーパーに味噌煮込みうどんが無いんだけど

137 :名無神話:2011/09/06(火) 22:18:02.42
マジかよ、買占めかな

138 :名無神話:2011/09/06(火) 22:18:29.82
こちら名古屋、暴動の真っ最中だぜ

139 :ライス:2011/09/06(火) 22:33:42.00
何なのあの無能、マジ士ねや
73名も知られぬコントの神[sage]:2011/09/06(火) 23:57:30.30 0
「ぐわああああああ!! しまったあああああああ!!
名前を消し忘れてしまったあああああああああああ!!」
ライスは禁断の技に手を出し、失敗して自滅した!
光の文字列となって消えていく。その様子を指を指してゲラゲラ笑う。
「ざまあwww卑怯な技に走ったアンタの負けや!!」

そして、ルェルルの方をちらりと見る。
「これが完全自動回避特性《ネタフリニキヅカナイ》か……。
恐ろしい奴や。こいつは……使える!」
ウチはニヤリと笑った。

―― 序章 完! 第二章へ続く!
74 :ルェルル=ルュル ルルゥ ◆mMGaLMOXkw [sage]:2011/09/07(水) 00:13:40.33 0
【プルプルンの街】

洞窟をとぼとぼ出てから、三日後。
メタるスライムを頭に乗せたルェルルは、メタなことを考えていました。
個人行動の経験が少なそうな混沌の神がスムーズに進行するためには、相方っぽい仲間キャラが必要なんだろうな、と。
しかし敵対する整頓の神と、SURIKOMI現象で混沌の神を悪者と思ってる幼女はパーティーメンバーになりません。
シェンパイルはイマブレルを経て、開墾の神に転生している……ような気がします。吹き渡る自由な風です。
見渡せば、全体的に敵対勢力ばかりで戦闘以外だと一人にもなりがち。
とりあえず神には万能だったり壮大だったりするイメージが拭えませんので、混沌の神の仲間集めは色々と困難かもしれません。
唯一神と旧き神の対立というテーマで、メガテニスト辺りを引っ張ってこれると良いのですが。

『ピキー!』

……そんなメタな考えも、メタるスライムがぽろっと頭から落ちると雲散霧消してしまいます。
ちなみにルェルルの頭に乗っていたメタるスライムは、愛玩用のスライムが突然変異して捨てられたもの。
もちろんバブリーな液体スライムじゃなくて、ティアドロップ型のスライム。
ゆるいファンタジー世界では、だいたいスライムはこんな形です。

このプルプルンの街の周辺は、バブリースライムや三倍速のレッドスライムみたいに野生化したスライム族でいっぱい。
プルプルンではペット用スライムが大量に養殖されているのですが、何せ単純な作りのスライムは突然変異を起こしやすい生き物。
市場価格の低い種に変異してしまったものは、悪徳業者や無責任な飼い主に捨てられて野良化してしまうのです。

「あんたもたいへんだねー」

ルェルルは野良メタるスライムに、ちぎった三日月草を与えます。
メタるスライムは、パクパク美味しそうに草を食べるとどこかへ消えて行きました。
それを見送ると、ルェルルは街の中へ入っていきます。
できれば、プルプルンの街では、職か良い人を探したい所。
ツヴェルフなんとかの使命に関しては、三日も経ったのですっかり忘れ去っているようでした。
75 :名も知られぬ整頓の神:2011/09/07(水) 00:16:14.05 0
銀の幼女降る降るまわりに
金の幼女降る振るまわりに

という歌を歌いながらあたしはダンジョンの勝手口から外に出て空高く飛び、
カレーに入れるために霊樹の実を摘んで戻り、勝手口からキッチンに再び入ると
かーくんがカレーをごちゃごちゃにしてしまっていました。

>>73
>ライスは禁断の技に手を出し、失敗して自滅した!
>光の文字列となって消えていく。

ああ、またかーくんの犠牲者が出てしまいました。
もう少し早くあたしが見つけていれば、
テンプレを遅筆に書き換えて
あたしの《ツヴェルフレギオンエンゲル》に加えたものを。

一方、幼女は淡々とかーくんを追っています。
流石はあたしの《ツヴェルフレギオンエンゲル》です。
これならかーくんが物事をひどくごちゃごちゃにしないかもしれません。
76山田(NPC)[sage]:2011/09/07(水) 00:17:22.91 O
>67
めでたし
「だっぺ!」
>68>69
>「おお、カイさん久しぶりやなあ! 元気にしとったか?」

「しとったっぺさ…

どかーん!何かが爆発した。
もくもく

「夢?」
あったかいご飯のなかで眠るカイ。

>70
「うん、そーだべ」

>71
少女がいる

「夢?」

>72>73
そのすきに山田が封印をとくため封印されているところに走っていった
山田は文字の塊になり情報の海に情報を混入させている
苦しそうな顔。苦し過ぎて犬みたいな顔してる
そう。山田はロックを解除をしているのだ

「隙間あイた!はヤく!アけロ!」
片言の山田。失禁し体を痙攣させている。
彼は銀河一の天才なのに阿保になるほど頭を回転させていた
それだけカノンはすごいのだ。

ブイーン
なんか回ってる。
幻が現れた

「やめてあなた」
死んだ妻が現れる。カノンの情報の世界から最構成された存在
「ぼく、やめあい。世界を本当の姿にかえすかあ」
なみだとよだれがおちる
ぼわーん!?

《第一章。応急戦士山田。完》
77 :名も知られぬ整頓の神:2011/09/07(水) 00:28:23.20 0
銀の幼女降る降るまわりに
金の幼女降る振るまわりに

という歌を歌いながらあたしは幼女の上を高く飛び、
幼女がプルプルンの街に入って行くのを見ました。

街の内外に棲息するスライムたちをかーくんがごちゃごちゃにしてしまわないよう、
あたしはそっと整頓しながら見守る事にしました。
整頓し過ぎて消えちゃったスライムの魂を掬って御幣で美しく飾って空へ還します。
78名も知ってる近藤野上[sage]:2011/09/07(水) 01:26:52.65 0
近藤「こないだ電車乗ったんだよ、んで隣に座ってたカップルの会話聞いてたんだけど」
野上「うん」
近藤「『バームクーヘンってドイツ語で"木のお菓子"って言うんだぜー』って男が言ってて」
野上「うん」
近藤「女も『へーすごーい』とか言ってたんだけど」
野上「うん」
近藤「バームクーヘンはドイツ語でもバームクーヘンだよな」
野上「うん」

運ばれてくる生4つ
79 :名も知られぬコントの神[sage]:2011/09/08(木) 00:32:22.93 0
>76
「ガーディアン倒したら自動的に封印解除されると思ったけどちがうんかい!
山田さんおおきに!」

―― そして3日の時が流れた。
80 :名も知られぬ混沌の神[sage]:2011/09/08(木) 00:53:56.22 0
>78
―― プルプルンの街
私は冒険者の店”ルイージの酒場”でgdっていた。
「マスター! バームクーヘンと牛乳たのむ!」
「へいお待ちー!」
運ばれてきたバームクーヘンの皮をぺりぺりと剥がして弄ぶ。
「兄ちゃん、さてはボッチかい?」
チョビヒゲのマスターがいらん事を聞いてくる
「ボ、ボボボボッチ便所飯ちゃうわ!何て言うんだっけ、そう、孤高!」
「要するにボッチじゃん。
その胡散臭い長髪を切って趣味が悪い服装も変えた方がいいと思うよ!ヒャッハー!」
「貴様ア……私を怒らせたのが運の尽き!」
マスターを切り捨てようとした時、マスターは素早くメタるスライムを私の頭に乗せた。
メタな発言が垂れ流される。
「今回悪役に挑戦してみようと思いましてー
銀の長髪美形に趣味が悪い服装は悪役の基本な訳っすよー。
当初は流れによってはラスボスをやろうかな~とも思ってました。
でもやっぱりこの調子じゃそうなりそうにありませんね~」
「てゆーかアンタ悪役だったの?」
「唯一神が治める世界をぶっ壊す破壊者なんだから悪役っしょ」
「でもこの場合、失われた古の世界を取り戻す奪還者とも解釈できるよね」
「ええーっ、救世主とかマジ勘弁ッスよー!」

メタるスライムが頭からずり落ちた。
マスターのボッチ解消お悩み相談は続いていた。
「とりあえずさ、仲間が寄ってきやすそうなキャラデザに変えてみないかい?
こんなのはどうだろう」
マスターが手渡してきた雑誌を見る。
「どいつもこいつも私が大っ嫌いな勇者みたいではないか……! ん?」

―― 普通のヒーローじゃ物足りないアナタに……。
―― ダーク☆ヒーロー特集! この秋来ちゃうかも!

何だこれは! ふざけているのか!?
でも、ちょっと、悪く……ないかも……。私は早速テンプレを書き換えた。
81カオス[sage]:2011/09/08(木) 01:02:24.49 0
名も知られぬとか言うと大袈裟なので、名前欄も親しみやすくするとしよう。
とりあえず第二章はこれで。

名前:カオス
外見:銀の短髪 ダークヒーロー路線

>78
まずは近くの席のお兄さん達に話しかけてみる。
「あっ、あの……あの……僕の仲間に……な、仲間ゆきえさんって美人ですよね!」
ああ、人に話しかけるのって緊張するなあ、だって孤高のダークヒーローなんだもん!
82ルェルル=ルュル ルルゥ ◆mMGaLMOXkw [sage]:2011/09/08(木) 17:19:24.42 0
≪つべふえんげる(なんでも せいとんします)≫

こんな看板を持って、ルェルルは街の中を歩きます。
需要があるかは分かりませんが、整頓屋さんを始めたのでした。
天から啓示を受けたような気がして、急に思い立ったのです。
てくてくとルェルルが怪しげな裏通りを歩いていると、誰かに声をかけられました。
きょろきょろすると、酒場の勝手口でチョビ髭のマスターが手招きしていきます。

『おや、お嬢ちゃん。仕事が欲しいのかい?』

「うん。ご飯と旦那さんも欲しい」

『それはちょうど良い。実は初心者には格好の仕事があるんだ。
 この街のスライムまんは絶品と評判なんだが、放牧してた材料たちが消えてしまってね。
 おそらく逃げ出してしまったんだろうが、そいつを捕まえて欲しいんだ。
 クエストレベルは3。駆け出しの冒険者にはピッタリだろ』

クエストレベルとは冒険者が使う言葉で、仕事の困難度のこと。
目安として1レベルの冒険者が4人集まれば、クエストレベル4をクリアできそうな感じです。
そんな知識の無いルェルルには、簡単なお仕事らしいと言ったことしか分かりません。

「んーと、わかった。やってみるっ」

『おお、良い返事だ。じゃあまずは入んな』

>>81
ルェルルがチョビ髭のマスターに連れられて酒場の中に入ると、カオスが客に殴られていました。

『僕の仲間にな、仲間ゆきえさんが美人ってどういうことだ!ええっ!
 “仲間にな”も“仲間ゆきえ”も、おまえのもんじゃねえだろうが!』

ルェルルは、奥のテーブルに吹っ飛ばされたカオスを見て駆け寄ります。
テーブルの角の所に頭をぶつけて、とっても痛そうだったから。
そして、あんまり痛く無くなるおまじないを始めました。

「だいじょーぶ? いたいのいたいの飛んでけー!」

頭をさすさすしながら、おまじないを唱えます。
髪型が違うので、もうルェルルにはかーくんであることが分かりません。
83カオス[sage]:2011/09/09(金) 01:34:09.19 0
>82
殴り飛ばされてテーブルの角に頭をぶつけてしまった。
「ぐすっ……なんて乱暴な奴なんだ……」

そこに駆け寄ってくる一人の幼女。
早速キャラデザを変えた効果が表れたようだ。
>「だいじょーぶ? いたいのいたいの飛んでけー!」
「ええ子や~、まだまだ世の中捨てたもんじゃない」
と、これはいつぞやの完全自動回避特性《ネタフリニキヅカナイ》のラッキーガールじゃないか!
幸い相手は僕の正体に気付いていない。運命は僕を見捨ててはいなかった!

いくらすごい能力を持っていても1レベルのままではいささか不安だ。
そこでパワーレべリングによるレベル上げを行うのだ!

ぱわーれべりんぐ【パワーレベリング】
高レベル冒険者が低レベル冒険者に同行して補助する事によって
効率的にレベル上げを行う手法

と言っても、最強で万能の神の力を隠さなければ正体を怪しまれてしまう。
駆け出し冒険者になりきれ!

「ここにいるって事は……クエストを受けたのかな? 君一人じゃあ危ないだろう」
何て言えばいいんだ。
高貴なる孤高の悪役たる僕が仲間になってくださいなんていえるものか!
「クエストの間僕の味噌汁を食べてくれたら嬉しいな~なんて……」
だって味噌煮込みうどんは世界から消滅したんだもん。
84ベンクミ[sage]:2011/09/09(金) 03:35:47.10 O
>82
どんっしゃあああ
ごぼんっ(うんこを飲み込む便器)

「はあ快便快便♪うんこつるりんこー!」

ガチャ
トイレからおさげめがねのブス女が現れる

「お!おまえ可愛いな」
ルェルルの頭をなでなでしてから手を洗えば
カオスの隣にぴったりと座り…

「おらー!ハムとまごころもってこーい!」
テーブルをだんだん叩いて暴れ狂う

>83
「おめーなんなんだよ!?近すぎんだよ!あっちいけ!ここはあたしの席だ!」
ブスメガネはカオスのおでこをスプーンで叩く

そして歌いだす

「満月にむかって~ノラネコたち♪
狼を気取って~フニャロフニャロ~♪」

名前:ベンクミ
外見:裸にマント
85ルェルル=ルュル ルルゥ ◆mMGaLMOXkw [sage]:2011/09/09(金) 20:02:14.79 0
>>83
さすさすさすさす……。
おまじないが終わると、お礼のつもりなのかカオスは味噌汁を勧めてきました。

 >「クエストの間僕の味噌汁を食べてくれたら嬉しいな~なんて……」

「今食べるっ!今食べるーっ!」

元気に言うと、ルェルルはテーブルに座ってお味噌汁が出てくるのを待ちます。
世間一般では味噌汁を食べて欲しいには、色んな意味があるでしょう。
しかしながら迂遠な表現では、幼女の理解が追い付きません。

>>84
ストレートにお味噌汁をご馳走してくれると理解したルェルルは、おとなしくお味噌汁を待っています。
すると、眼鏡の女が現れてルェルルの頭をなでなでしました。

 >「お!おまえ可愛いな」

「ふふーっ」

褒められたので、思わず笑いを零します。
女の人はハムと真心をオーダーして、カオスをスプーンで叩き、終いには歌い出してしまいました。
ルェルルも楽しい気持ちになって歌い始めます。

「みーは、おみそのみー♪ そーはおみそのそー♪」
86深淵に潜む名も知られぬ大悪魔 ◆qH212vUNnU [sage まさか本物とか思わないよなっ!w]:2011/09/10(土) 07:24:24.91 0
「やれやれ、これだから1億年と2、3年前世代は……」

黒髪ストレートのクールビューティーを象った「影」が
カウンター席でグラスを傾けながらカオス達のテーブルを眺めていた。
空いた手でメタるスライムを適当に構いながら「影」は語る。

「本能の赴くままにそこらを駆け回っていても悪役にはならないぞ。知ってるだろう?」
メタるスライムから離した手が打楽器の構えを取る。
軽快な音と共に、虚空から《善玉の特徴/悪玉の特徴》という文書が現れた。
「……意訳すると、善玉は受動的で悪玉は能動的、という訳さ。そして能動的である為には
最低限ぶれない目的とやり抜く決意、それなりの計画とそれを実行する組織が必要になってくる」
「影」は指を弾いて、今度はメタるスライムの半透明の体に>>20を映し出した。

「だが1億年と2、3年前、混沌の邪神は『城の最奥で』『玉座に座って何もせずに待っている』だけで、
受動的な存在である英雄達が何故か準備万端整えて次から次へと訪ねて来た……
不思議だと思わないか?
まるで他の『誰か』が英雄達を駆り立て導く綿密な計画とそれを実行する組織を持っていたかのようだ、とは。
……なあ?」

「影」の手がメタるスライムの頭上を軽く圧し、こくりと頷かせる。

「その『誰か』なら確かに悪役と言えるし、流れによってはラスボスの資格もあるだろうな。
だが、オープニングからフル出場、英雄を立ち上がらせる被害者を生むどころか、
立ち上がらざるを得ない障害に出会ってしまった被害者の側に座を占める。そういう奴は……」
メタるスライムに>>43を映し出して「影」はわざとらしく表情を引き締めた。
「……PC1というのだよ」

返って来た冷たい沈黙を取り繕うように「影」は殊更に明るい口調に改める。
「おっと、懐かしくてついやってしまった。長々と済まなかったな。
君達の行く末を楽しみにしているよ。そうだな……」
快音と共にカオス達のテーブルに味噌汁が並んだ。
「これは詫びだ。別に毒ではないし……人肉とかも入ってないぞ」
87カオス[sage]:2011/09/11(日) 15:54:32.30 0
>84-85
>「今食べるっ!今食べるーっ!」
「今食べてどーすんですかァーッ!? さっさとクエストに行かにゃあならんでしょアンタ!」
全く、これだから知力が低いキャラは! 話が進まないではないか!

>「お!おまえ可愛いな」
ヤンクミのパチモンが現れた!
「謝れ! 仲間ゆきえさんに謝れ!! その前に手え洗ってこーい!」
斬新過ぎる服装についてはあえてスルーで!
>「おめーなんなんだよ!?近すぎんだよ!あっちいけ!ここはあたしの席だ!」
「うぇええええ!? そりゃあないよ……あいたっ!」

>「満月にむかって~ノラネコたち♪
狼を気取って~フニャロフニャロ~♪」
>「みーは、おみそのみー♪ そーはおみそのそー♪」
歌い始めたアホ二人の横で頭を抱える。
「ああ……世界征服の夢が遠ざかっていく……」

>86
>「やれやれ、これだから1億年と2、3年前世代は……」
「うわぁい! みんな大好き大先輩だ!」

大先輩は背後で糸を引いていたKUROMAKUの存在を示唆した。
「そんなの全然気付かなかったぞ! そんなバナナ!」
「ここに1億年と2,3年前の混沌の邪神戦を録画した映像があるんだけど見てみるかい?」
マスターがブルーレイディスクをデッキに入れて再生を始めた。

ラスボス戦の映像が再生が始まる。
「げーっ、背景に黒い幕がある!」
黒い幕の間から、全身タイツの黒子が忙しく出たり入ったりしていた。
『よくぞここまで辿りついたな……勇者!』
勇者『えっ、何アレ……』
魔法使い『しーっ! 突っ込んじゃ駄目!』
僧侶『何も見えないふり見えないふり……』

「うおおおおおおおおおおおお!
ずっと前を向いてたから全っ然気付かなかったぁあああああああああああ!!」

>「……PC1というのだよ」
「ハハハ、ソウデスネ」

>「これは詫びだ。別に毒ではないし……人肉とかも入ってないぞ」
「ゴチになりまーす、先輩!」

味噌汁を食べていると、マスターが意外な提案をしてきた。
「長年マスターを務めた私の目に狂いは無い。君達、パーティーを組んでみなさい!
3人寄ればもんじゅの知恵という諺を知ってるかい?
普通の頭の人が3人集まっても1+1+1=3にしかならない。
だがな、アホが3人集まると3000にも30000にもなる。
魔導炉がポポポポーンと爆発するがごとくどこまでも飛んで行けるんだ!」
88ルェルル=ルュル ルルゥ ◆mMGaLMOXkw [sage]:2011/09/12(月) 00:11:43.36 0
>>86
 >快音と共にカオス達のテーブルに味噌汁が並んだ。

 >「これは詫びだ。別に毒ではないし……人肉とかも入ってないぞ」

お椀を持ったルェルルは、チュルチュルとお味噌汁をすすります。
ぷくぷくと息を吹きかけて遊びながら飲み干します。
とっても、おいしいお味噌汁でした。

「ごちそーさまー!」

>>87
酒場では映像観賞が始まります。
それが終わると、チョビ髭のマスターが何やら提案してきました。

 >「長年マスターを務めた私の目に狂いは無い。君達、パーティーを組んでみなさい!

後に諺が続きますが、ルェルルが聞き流したのでカットします。
分かったのは、パーティーを組んでみなさいの部分だけ。

「パーティーするー!パーティー!パーティー!」

何やらパーティーに別の意味を感じ取ったようですが、ルェルルはパーティーを組むことに同意しました。
むしろ、やる気いっぱいの顔をカオスたちに向けたくらいです。

「みんな頼りないから、わたしがリーダーするね」

そんなことを言うと、ルェルルはスキップしながら酒場を出て行きました。
スライム捕獲の依頼が頭に残っているのかは怪しい感じです。
89ベンクミ[sage]:2011/09/12(月) 00:34:53.16 O
>85>86>87
タン!
テーブルに空になったお碗を打ち付ける音。
見れば唇からワカメを垂らしたベンクミが鬼の形相。

「てめーは何様のつもりだ!?
口さきだけならなんでも言えるのさ!
とっとこ失せろかわかむり!」
たんかをきりメタるスライムを睨みつけるベンクミ。
威圧感がハンパない大先輩とは1㍉も視線を合わせず、そのまま横移動。そしてカウンターのマスターに絡む


「1+1+1が3000とか、お前がアホだろ!」
ベンクミは裸マント姿でマスターを睨みつけカオスに向き直ると…

「あたしは見てのとおりの極道だ。あんたたちとは仲間になれないんだよ!」

訴えて、どむっ!
カオスのお腹にひざげりしルェルルを見る

「だがさ、絡みたくないからってスルーされたって、あたしはあたしだ!
小さいこが修羅の道を歩もうってしてんのに
自分だけケツまいて逃げるわけにはいかないのさ!」

カオスに手をのばす

「あんたとあたしは極友だ!道は違えど行く場所は一つ!よろしくな!」
90ベンクミ[sage]:2011/09/12(月) 00:40:27.79 O
>88
「おい!待てよ!上田!」
あ、上田って言っちゃった!

「いくときはいっしょだよルェルル!えへへへ」
スキップをしながらルェルルに続く
91ミソスープ(NPC)[sage]:2011/09/12(月) 20:49:33.12 O
>>87
カノンの刺客が影からみていた。
こっそりと…。ちっちゃい、みそ汁のなかに罠をまじらせて…

その名もミソスープ。
ミソスープは洗脳ワカメを味噌汁に入れていた。それは消化されるとカオスの栄養となり、髪の毛と化す
カオスの脳天から鰻のように生えている太くて長い髪の毛が変化した洗脳ワカメだ。
…むりむりとカオスの額に無数の筋が走りひくりひくりと脈打つ
強烈な毛根が張り巡らされ神経と一体化しつつあるのだ

【BOSS DATA】
名前:ミソスープ
外見:変態
技:洗脳みそ汁拳

「みそしる拳奥義!ふーふーごっくん!!」
どこかで声。
物影からミソスープの頭の毛がビビビと逆立つのが見えると
洗脳電波を受信したカオスの口が勝手に動き、自滅の魔法を唱え始めた!
92カオス[sage]:2011/09/14(水) 00:51:34.49 0
>88
>「パーティーするー!パーティー!パーティー!」
「そうか!」
妙にやる気満々すぎる気がするけど……やる気があるに越したことはないよな!

>89
>「あたしは見てのとおりの極道だ。あんたたちとは仲間になれないんだよ!」
「ぐえっ!?」
なんでいちいち暴力を振るう必要ガ!?

>「あんたとあたしは極友だ!道は違えど行く場所は一つ!よろしくな!」
「極友!? なんかかっこいいね!よろしく!」
何やかんや言いつつ仲間になったようだ! 元ネタが仲間ゆきえだけに。

>90
「上田!? それはトリックの方じゃないですかァ―!」
>「いくときはいっしょだよルェルル!えへへへ」
もしやこいつロリコンか!? ロリコンなのか!?

>91
>「みそしる拳奥義!ふーふーごっくん!!」
髪が一筋アンテナのように立つ。
「あーれー? 妖怪アンテナ?」
電波の伝わってくる方に引き寄せられる。
物陰に変態がいたので道連れにするべく抱き着く。
「メガテン!!」
呪文をちょっと噛んだ気がするが大爆発が巻き起こった。
煙が晴れるとそこには……
93ルェルル=ルュル ルルゥ ◆mMGaLMOXkw [sage]:2011/09/14(水) 01:58:27.36 0
>>90
ベンクミがルェルルの後ろに付いてきます。
上田との声がしましたが、上田じゃないのでルェルルは振り返りません。

>「いくときはいっしょだよルェルル!えへへへ」

「うん、行こっ。
 ところでお姉さん、どうしてそんな裸みたいな格好なの?
 私みたいに悪い人に取られたの?」

スキップしてるベンクミは、裸にマントという格好を露わにしています。
振り返ったルェルルは、ベンクミに疑問をぶつけました。

>>92
カオスは爆発していました。
煙が晴れると残る場所には“外道やくざ”が佇んでいます。
メガテンに実在するモンスターですが、爆発の影響で誕生してしまったのかは不明です。
やくざはカオスの胸ぐらを掴むと、いきりたって因縁を付けてきました。

『ワレ、何しとんじゃい!慰謝料払ってもらおか!おう!』

ルェルルはベンクミとお話してて、その様子には気付かないようです。
94ベンクミ[sage]:2011/09/14(水) 23:16:01.88 O
>92>93
>「うん、行こっ。
 ところでお姉さん、どうしてそんな裸みたいな格好なの?
 私みたいに悪い人に取られたの?」

ルェルルの子供らしい純粋な質問に、ベンクミは真剣な眼差しでこう答えた。

「人ってのは長い人生のなかで自ずから裸にならなきゃいけないことがあるんだ。
ルェルルも大人になったらわかるよ。
あたしはただ、こころまで裸の王様にはなりたくない。
だからいかなる時も全裸(本気)でいたいんだよ
自分を戒めるためさ」


>「メガテン!!」
気がついたらカオスが爆発していた

「おまえ、爆発なんてしてんじゃねぇよ!


煙りが晴れるとカオスが外道ヤクザに胸倉を掴まれていた

「おまえ!○○組のもんだな?あたしの極友をはなせ!」

「なんじゃワレ?慰謝料払えっちゅうねん。
ワシらの組は金欠やねん。この世から味噌煮込み饂飩がなくなうてしもうたからの~。
饂飩屋の売り上げがなくなうともうて資金源がないねんな。
まさかあんたら味噌煮込み饂飩以上の極上メニューを考えてくれまっしゃろか?
できひんやろ?なあ?
ほんなら味噌風呂に沈んでもろうだけや。覚悟しいや!」

外道ヤクザは嫌がるローゼンをリムジンに押し込もうとした

「おまえ誰やねん!」
外道ヤクザはローゼンをつまみ出す
95名も知られぬ整頓の神[sage]:2011/09/15(木) 00:21:46.52 0
銀の幼女降る降るまわりに
金の幼女降る振るまわりに

という歌を歌いながらあたしはゆっくりと大空に輪をえがいて飛び、
時空がごちゃごちゃになったのを見ました。
かーくんなんかがいる世界なのでこっちは別にいいけれど、
あっちがかわいそうです。

あたしは落ち物パズルゲームの凸棒の姿でつまみ出されたローゼンの元に舞い降り
BCFで名前をローゼソに書き換えました。

「ローゼソよ。望むならついでに地蔵に書き換えて
あたしの《ツヴェルフレギオンエンゲル》に加えましょう」

BCFでキャラに突っ込んで倒れた、というか轢いた後から肩書きとかを強奪する――ええまあ。
96 :ルェルル=ルュル ルルゥ ◆mMGaLMOXkw [sage]:2011/09/15(木) 03:32:08.72 0
>>94
ルェルルの疑問にベンクミが真剣に応えてくれました。

>「人ってのは長い人生のなかで自ずから裸にならなきゃいけないことがあるんだ。
>ルェルルも大人になったらわかるよ。
>あたしはただ、こころまで裸の王様にはなりたくない。
>だからいかなる時も全裸(本気)でいたいんだよ
>自分を戒めるためさ」

「私もう大人だけど、よく分からないよぉ。
 うーん……お風呂に入る時とかかなー?」

とりあえずルェルルにも真剣な気持ちだけは伝わったようで、小首をかしげつつ納得の様子です。
ベンクミは近くの爆発に気づいたようでやくざの元に駆けて行きました。
やくざはやくざで、味噌煮込みウドン以上の極上メニューを考えてほしいと無理難題を押しつけます。

「スライムうどん!」

ルェルルはすぐさまメニューを思い付いて元気よく叫びました。
極上のメニューな気がしたのです。
そして、スライム捕獲の仕事の最中だったことも思い出しました。

「いっぱいのスライムでおうどん作れば、いいんじゃないかなー?」

>>95
やくざにベンツの中に押し込まれそうになったローゼンは、すぐさまつまみ出されました。
いつの間にやら整頓の神の力で、名前もローゼソに変わっています。
ローゼソは言いました。

『うん……地蔵でもいいなら、僕もツヴェルフレギオンエンゲルに入れてよ!
 なんだか、とっても楽しそうだしね!』

「私も、つふべふえんげる入るぅー!」

凸棒姿の整頓の神の、出っ張りの部分にルェルルが抱きつきます。
スライム捕獲の仕事は、再び忘れたようでした。
どうやら新しいことが起きると、前のことは忘れてしまうようです。
97名も知られぬ整頓の神[sage]:2011/09/16(金) 02:24:15.96 0
>「いっぱいのスライムでおうどん作れば、いいんじゃないかなー?」

あたしは幼女を優しく撫でました。
「それならいっぱいのスライムもあたしの《ツヴェルフレギオンエンゲル》に加えましょうね」

>『うん……地蔵でもいいなら、僕もツヴェルフレギオンエンゲルに入れてよ!
> なんだか、とっても楽しそうだしね!』

あたしはローゼソも優しく撫でて、
テンプレを地蔵《タオレナイカベヤク》に書き換えました。

それからあたしの《ツヴェルフレギオンエンゲル》に加わった
幼女とローゼソの前に立って、いっぱいのスライムがいる草原に向かいました。

外道やくざとお姉さんは?――拳で何かを熱く語り合っているようです。
98 :ルェルル=ルュル ルルゥ ◆mMGaLMOXkw [sage]:2011/09/16(金) 20:11:05.17 0
>>97
抱きついたルェルルを撫でながら、整頓の神は言いました。

>「それならいっぱいのスライムもあたしの《ツヴェルフレギオンエンゲル》に加えましょうね」

「うん。わたしいっぱいスライムつかまえるのっ!」

元よく応えたルェルルは整頓の神に連れられ、フニフニ草原に辿り着きました。
草原には紫のヒースが一面に生い茂り、小さな緑の木々が生えて、枝に止まる小鳥たちが歌っています。
神々の争いとは無縁の穏やかな光景でした。
ルェルルは駆け出すと、ヒースの花々の下を覗き込んでスライムたちが隠れてないかを探し始めます。
しばらく探すと、クッション程の大きさのスライムたちがワラワラと出てきました。

「すーらーいーむ、見ーつけっ!」

捕まえたスライムを閉じ込めて街に運べば良いのですが、たちまち運搬方法に困ってしまいます。
スライムは絶えずルェルルの腕から逃げようとして、これを街まで運ぶのはとても大変でしょう。

「うーん……このままじゃスライムが逃げちゃうよぉ。
 仕舞える箱とか、どこかに落ちてないかなー?」
99ベンクミ[sage]:2011/09/18(日) 01:57:04.67 O
>カオスさん。整頓の神さん。ルェルルさん
すみません。階段から落ちて両手首を折ってしまって
レスが打ち辛いので引退します
ありがとうございました。頑張って下さい
100 :ルェルル=ルュル ルルゥ ◆mMGaLMOXkw [sage]:2011/09/18(日) 19:56:02.36 0
>>99
ベンクミは階段から落ちて手首を折っていました……とても痛そうです。
ルェルルは、それを心配そうに見送りました。

「ちゃんと病院に行かないとダメだよ……ばいばい」

去ってゆくベンクミの背に声を掛けます。
思わず手を振ると、すかさずスライムが草むらに逃げていきました。

「Σあっ、待ってぇ!」

スライムを見失ったルェルルは、しばらく追いかけていましたが、やがて疲れて眠ってしまいます。
とても無邪気な寝顔で。
101 :名も知られぬ整頓の神[sage]:2011/09/19(月) 21:05:20.34 0
まだ時空が混乱しているのでしょうか。
地上にいた筈のお姉さんが階段から落ちて両手首を折り
3階のベランダから救急車で運ばれて行ってしまったようです。

もう少し早くあたしが見つけていれば、
テンプレを遅筆に書き換えて
あたしの《ツヴェルフレギオンエンゲル》に加えたものを。

あたしはお姉さんが当たって砕いた階段の欠片を御幣で美しく飾って空へ還しました。
102名も知られぬ整頓の神[sage]:2011/09/19(月) 21:24:01.36 0
銀の幼女降る降るまわりに
金の幼女降る振るまわりに

という歌を静かに歌いながらあたしは
美しい音をたてて草原で眠る幼女の上を右から左に、左から右に飛び、
幼女の夢の中に入って話して聞かせました。

「かーくんが大悪魔にお持ち帰りされてしまいました。
あたしはあたしの《ツヴェルフレギオンエンゲル》を率いて
かーくんを取り戻して封印しなければなりません」

少し遅れて草原に着いたローゼソにも同じ事を伝えます。

「大悪魔と戦うには人工聖典“カノン”が必要です。
そしてカノンを手に入れるには
“オカルト”と“SF”と“スペース”と“オペラ”
四つの鍵を携えてTRPG神殿の扉“なりきり”を開かねばなりません」

あたしはローゼソにバッグを授けました。
「それはどんなアイテムでも999個まで入れられるバッグです。
幼女が何か手に入れたらあなたが預かってあげなさい」

ローゼソがバッグの中を確かめると、ボールが5個入っていました。
上手くスライムにぶつけられれば、閉じ込めて運ぶ事ができそうです。
103ルェルル=ルュル ルルゥ ◆mMGaLMOXkw [sage]:2011/09/20(火) 03:42:28.89 0
>>102
ルェルルは夢の中で、整頓の神の啓示を聞きました。
また、かーくんのお話です。

 >「かーくんが大悪魔にお持ち帰りされてしまいました。
 >あたしはあたしの《ツヴェルフレギオンエンゲル》を率いて
 >かーくんを取り戻して封印しなければなりません」

目覚めたルェルルは、知らない場所で起きました。
ガタゴトと揺れる暗い場所で。
ここは地方都市テルピアに向かう馬車の中。
ルェルルは寝ている間に、またもや人攫いに攫われてしまったのです。

「むにゅぅ……ここ、どこだろぉ?」

『ここは奴隷商人の馬車の中さ。ボクたちは攫われてしまったんだよ』

同じように攫われた金髪の男装少女ローゼソが、ルェルルの疑問に答えます。
ルェルルが寝ている間にスライムを3匹捕まえた所で、ローゼソは力尽きて倒れ、人攫いに捕まってしまったのでした。

“全ての人民は皇帝の所有物なり。そして領主は皇帝の代行者として人民を所有する”

どこかの帝国の領土、テルピアではこんな恐ろしい考えがはびこっていました。
唯一なる神を崇める真教の最高位、教皇もその考えを肯定してしまいます。
テルピアの領主ノアルスイユ伯爵は、その人民所有の概念を基に新たな法として処女権を制定してしまいました。
処女権とは、領主の特権として結婚前の乙女を領主が侍らせる事が出来る権利。
新婦となる女は領主の城で数日の奉仕を経なければ、妻帯を認められないのです。
高額の税を納めれば免れる事が出来たものの、それも拒む者は容赦無く処刑され、家財も没収されます。
テルピアでは圧制が敷かれ、重税を課され、搾取した富によって帝国はさらに版図を広げました。

ノアルスイユはテルピアの幼女と言う幼女を無理やり攫わせては、自分の城に集めて侍らせています。
そのため、テルピアは幼女族にとって大変生き難い土地の一つと言えるかもしれません。
これからルェルルが送られるのは、そんな土地でした。

ドナドナ……ドナドナ……荷馬車が悲しく揺れます。
104 :ルェルル=ルュル ルルゥ ◆mMGaLMOXkw [sage]:2011/09/20(火) 04:03:48.84 0
【かーくんがお持ち帰りされちゃったから、ちょっぴりだけ変更していーかなー?】

ジャンル:ゆるい神話系ファンタジー
期間(目安):ちんまり短め
形式:小説形式でもロール風でもいいよ
GM:来てもいいよ
決定リール:好きにしていいよ
○日ルール:動かされてもよかったら不定期参加でもいいよ
版権・越境:いいけど元ネタ分からなかったらごめんね
敵役参加:好きに入っていいよ
避難所:無いよ
テンプレ:今までのでも下のを使ってもいいよ

(人∀・) (・∀・) (・∀人)

名前:
種族:
年齢:
性別:
容姿:
服装:
特技:(※)
備考:

※特技は10ポイントを好きに割り振ってね。特技のレベルは強さのイメージだよ。

(例A)特技:【弓術/4】【風の精霊魔術/3】【水の精霊魔術/2】【姿隠し/1】
(例B)特技:【人狼化/5】【暗視/1】【自然治癒/1】【投擲術/1】【錠前外し/1】【潜伏/1】
(例C)特技:【剣術/10】
105宇宙最強絶対無敵井戸魔神 忍法帖【Lv=8,xxxP】 [sage]:2011/09/20(火) 06:25:07.64 0
僕は宇宙をも超越する物語の話を創造するよねー!?♪。
106 :名も知られぬ整頓の神[sage]:2011/09/21(水) 00:19:57.01 0
銀の幼女降る降るまわりに
金の幼女降る振るまわりに

という歌を歌いながらゆっくりと大空に
あたしは輪をえがいていました。

幼女と男装少女は使命を胸に自ら新しい世界に向かっているようです。
さすがはあたしの《ツヴェルフレギオンエンゲル》です。

あたしはしばらくの間、彼等の旅を大空からそっと見守る事にしました。
107 :名無しになりきれ[sage]:2011/09/21(水) 01:19:27.90 0
>>105
おまい>>1じゃん
ちゃんと参加しやがれバカヤロー
108 :ルェルル=ルュル ルルゥ ◆mMGaLMOXkw [sage]:2011/09/21(水) 20:41:05.97 0
馬車はゴトゴト揺れ続け、テルピアに向かいます。
途中で風と雨が強くなってきたので、グリンウッド村で一休み。
今晩は、ルェルルもローゼソも足枷を付けられて宿屋でお泊まり。
見張りには強そうな用心棒が二人もいて、逃げ出せそうにありません。

「ご飯ご飯ー!お腹すいたよぉ」

広めのホールに入るとルェルルは奴隷商人にそう言いましたが、返って来るのは冷たい台詞。

『飯だと? それなら、その保存食用のげんこつ煎餅でも食べていろ。
 伯爵様のお城に着いたら、お前たちは綺麗なおべべを着て、美味いもんも食べられる。
 お前たちはそこに貰われるんだから、幸せだと思うんだな』

ホールのお客は、みんな目を伏せてます。
幼女狩りに逆らえる者は誰もいません。
伯爵は人工聖典“カノン”を納める神殿に入れる鍵を持っていましたから。
皇帝や教皇すらも簡単には手を出せないのです。

ルェルルたちは二階の狭い部屋に押し込められました。
外には見張りが一人いて扉には鍵。この部屋には窓もありません。逃げ出す望みはなさそうでした。
ルェルルは空腹を紛らわせようとげんこつ煎餅に歯を立てますが、簡単には齧れないので、そのまま眠ってしまいます

(人∀・) (・∀・) (・∀人)

名前:ルェルル=ルュル ルルゥ
種族:幼女族
年齢:4
性別:女
容姿:ゆるいウェーブのかかったボブヘアの金髪幼女。瞳は緑
服装:布地の少ない布の服を着用
特技:【自動回避(神の加護)/9】【料理/1】
備考:人間の子供そっくりの種族で結婚相手を探している。整頓の神の庇護下
109ローゼソ[sage]:2011/09/23(金) 17:00:01.92 0
「起きて、ルルル」
ローゼソが、寝ているルェルルを揺り起こします。
スライムが器用に足枷の鍵穴に入り込み、施錠を解除します。
攫われる前に捕まえていたスライムのうちの一匹です。
「あっちの扉もお願い」
スライムは、扉の鍵穴にも入り込んで鍵を開けました。
扉の外からは、見張りの大いびきが聞こえてきます。
「行こう! 逃げるなら今のうちだ」

名前: ローゼソ
種族: ロリババア族
年齢: 25
性別: 男装少女
容姿: 金髪セミロングの美少年
服装: 勇者のコスプレ
特技:【鉄壁防御(神の加護)/9】【変装(コスプレ)/1】
備考:キャベツ畑から生まれる、人間の少女そっくりの種族。整頓の神の庇護下
110ルェルル=ルュル ルルゥ ◆mMGaLMOXkw [sage]:2011/09/24(土) 00:52:57.11 0
【( ・∀・) 夜のグリンウッド村】

>>109
ローゼソがゆさゆさとルェルルを揺り起しました。
ルェルルは目を擦って半身を起こすと、薄暗い部屋の中を見回します。

「ふにゅにゅぅ……もう食べられないよぉ」

ありがちな寝言を言いながらルェルルがぼんやりしていると、その間にスライムたちは鍵を解除してしまいました。
手足の枷も外れていて好きなだけ伸ばせます。
開いた部屋の扉を前にすると、ローゼソは毅然とした表情で言いました。

>「行こう! 逃げるなら今のうちだ」

「うん、怖い人は寝てるから起こさないよーに、そっと行こっ」

逃げるチャンスがやってきました。
ここはおにぶさんでも慎重を期すべきことは分かります。
外は夜なので、もう宿のお客たちも寝静まって、とても静か。
歩くと板張りの床のキィキィと鳴り、その音はやけに大きく感じられました。
そーっと静かに静かに歩くと、ほどなく宿屋の外に出ます。

「どこに行けばいーんだろぉ?
 鍵屋さんに行けばいいのかなあ……」

そう言えば、ルェルルは整頓の神に鍵を集めなさいと言われていた気がしました。
鍵屋さんには鍵マークの看板があるはずですが、村には無さそうです。
ルェルルはしばらく何かを考えてましたが、おもむろに木製のスプーンを倒します。
スプーンは東の方に倒れました。
テルピアの首都に続くベルマークの森の方に。

「あっち! あっちに行こっ」

たたたっと、ルェルルが走ります。
朝になれば見張りや奴隷商人も目覚めて、追って来るかもしれません。
111ローゼソ[sage]:2011/09/24(土) 01:11:01.29 0
>110
>「どこに行けばいーんだろぉ?
 鍵屋さんに行けばいいのかなあ……」

鍵屋に行けばいいのかと問うルェルルにローゼソは言いました。
「大抵そういう重要アイテムはプライスレスなんだよ。
お店では買えない価値があるんだ」

ルェルルが、スプーン倒しによって、行くべき方向を特定します。
>「あっち! あっちに行こっ」
「うん!」
元の属性が地蔵だけあって、素直についていきます。
東の方に進んでいくと、森にさしかかりました。
【ベルマークの森】という看板が立っています。

入り口には駅の売店のようなものが立っていて、おじさんが店番をしていました。
おじさんは言いました。
『ベルマークの森にようこそ! 
森のいたるところに隠れているベルマークを集めよう!
集めたベルマークの数に応じて出口で素敵な景品と交換できるぞ!』
112名無しになりきれ[sage]:2011/09/24(土) 02:07:36.15 0
ベルマークの森に入って、わずかな苔がかすかに光るだけの闇の中をどれくらい歩いたでしょうか。
二人は前方に小さな灯りを見つけました。
そーっと近寄ってみると、小さな草地があって幼女の膝ほどの背丈の小人達が焚き火を囲んでいます。
中の一人が立ち上がって二人の方にやってきました。

「ふむ・・・嬢ちゃん達は奴隷商人から逃げて来たのかな?そうじゃろそうじゃろ」

この辺ではよくある事のようです。

「追っ手が諦めて帰るまで、この奥の迷いの森でかくまってやってもええぞ。
代わりにちょっとばかし用事を引き受けてくれんかね。
なに、凶暴な蜂の巣を木から撤去するだけの簡単なお仕事じゃ」

二人は小人の言う通りにしてもいいし、しなくてもいいでしょう。
113 :ルェルル=ルュル ルルゥ ◆mMGaLMOXkw [sage]:2011/09/24(土) 13:01:18.70 0
【( ・∀・) ベルマークの森】

>>111
ルェルルがベルマークの森の入り口に辿り着くと、闇の中には売店の明かりが煌々と灯っています。
そこでは店番のおじさんが、元気良く出迎えてくれました。

>『ベルマークの森にようこそ! 
>森のいたるところに隠れているベルマークを集めよう!
>集めたベルマークの数に応じて出口で素敵な景品と交換できるぞ!』

ベルマークとは、鐘の模様が書いてあるシールっぽいもので、この森だけの特産品。
年中たくさん採れますが、何に使われるものなのかは良く知られていません。

「ベルマーク集める! ロゼそも一緒に探そっ!」

何やら発音し難いのか、ローゼソが“ロゼそ”となってしまいます。
ルェルルは木の根元を調べたり、道端の石を裏返したりしながら、森の奥へと進んで行きました。

>>112
夜の森は暗く、なかなかベルマークが見つかりません。
少し歩き疲れてしまったルェルルは、焚き火の明かりを見つけると、そちらに向かいました。
闇の中で赤々と輝く明かりは、とても心強く見えます。
焚き火の周りには何人もの小人たちがおり、ルェルルの境遇を察して提案を出してきました。

>「追っ手が諦めて帰るまで、この奥の迷いの森でかくまってやってもええぞ。
>代わりにちょっとばかし用事を引き受けてくれんかね。
>なに、凶暴な蜂の巣を木から撤去するだけの簡単なお仕事じゃ」

「やるやるー。ハチの巣をポイッてする。かんたんかんたん」

またもや簡単なお仕事との言葉に釣られて、ルェルルは即決で返事をしました。
前回のスライム捕獲も、満足に遂げられなかった気もしますが、それはそれです。
撤去作業は日が出てからやる事として、まずは一休みです。

……早朝、小鳥がちゃんちゅん鳴く頃にルェルルは目覚めました。
小人に案内されて、さっそく森の広場に辿り着きます。
ハチの巣はひときわ大きい樫の木の枝に作られており、近くには常に何匹ものハチがブンブンと飛んでいます。

「パチンて叩けば落ちるかなぁ」

枝を拾ったルェルルは巣の下まで駆け寄ると、力いっぱい枝を振り回し始めますが巣までは少し届きません。
ハチたちも何やら巣の異変を感じとったのか、だんだん動きが活発になってきます。
114ローゼソ[sage]:2011/09/24(土) 20:45:55.47 0
>112-113
>「ベルマーク集める! ロゼそも一緒に探そっ!」

ローゼソは、道端に何気なく置いてあった宝箱を開けます。
中からは、古びたノートが出てきました。
「見てごらん、ルゥ。ベルマークはこんなものの裏にくっついてるんだよ」

でも、そんなに何個も分かりやすい宝箱は置いてありません。
ベルマーク集めに飽きた頃、小人からハチの巣討伐の依頼を受けました。

>「やるやるー。ハチの巣をポイッてする。かんたんかんたん」
「その布の少ない服で大丈夫!?」
ローゼソはルェルルの装備の貧弱さを心配しますが、ルェルルは聞く耳持ちません。

>「パチンて叩けば落ちるかなぁ」
「やめときなよ、危ないって!」
構わず枝を振り回し続けるルェルル。
ついにハチ達が総攻撃をしかけてきました。

「ぎゃーーーーーーーーー!!」
ハチはルェルルの方にはいかずに全部ローゼソに向かってきます。
ルェルルは《完全自動回避特性》を持っているからです。
そして、ローゼソは《タオレナイカベヤク》なので、自動的に敵の攻撃を引きつけるのです。
ローゼソがハチ達を引きつけている今がチャンスです。
115 :ローゼソ[sage]:2011/09/24(土) 23:19:42.65 0
ハチ達の総攻撃に耐えながら、ローゼソは
思いついてルェルルに言いました。

「ねえ、ボクの肩に乗る?」

確かに幼女よりはローゼソの方が身長があります。
ローゼソの肩に立てばルェルルは直接蜂の巣に手が届くでしょう。

「それで、巣を根元から切ってあの川に捨てたらいいんじゃないかな?」

ローゼソは近くに見える小川の流れを指差し、
それから自分が持っていた剣をルェルルに差し出しました。
ハチの攻撃は全部ローゼソに来るのですが、大丈夫でしょうか。
116ルェルル=ルュル ルルゥ ◆mMGaLMOXkw [sage]:2011/09/25(日) 02:43:44.75 0
>>114-115
>「ぎゃーーーーーーーーー!!」

静かな森に悲鳴が響き渡りました。
怒ったハチたちが甘い花の蜜に誘われるように、ローゼソに襲いかかって来たのです。
そんな落ち着かない状況でも、ルェルルはハチの巣落としに集中して枝を振り続けました。
背伸びしたり、ジャンプしたり、とにかく一生懸命です。

「えいーっ、やーあっ!」

しかし悲しいかな。いかんせん身長が足りませんでした。
ルェルルは枝を投げてみたのですが、ハチの巣は簡単に落ちるものではありません。
そんな様子を見かねたのか、ローゼソがハチに刺されながら果敢に近づいてきます。

>「ねえ、ボクの肩に乗る?」

「うん乗る、ロゼその肩車っ!」

ぐいっと肩車で持ち上げられると、ルェルルの少し上にハチの巣が見えます。
そして、ローゼソは自分の剣を幼女に握らせると言いました。

>「それで、巣を根元から切ってあの川に捨てたらいいんじゃないかな?」

「うん……ふやちっ!」

掛け声とともに剣を突くと、ハチの巣がボテンと落ちます。
肩車でルェルルと一体化しているせいなのか、ハチも今はあんまりローゼソに襲いかかって来ません。
甘い蜂蜜がいっぱい詰まってて捨てるのは惜しい気もしますが、ハチ退治を完了するためには巣を川へ捨てなければなりません。
ルェルルは、ローゼソの肩から降りるとハチの巣を抱えます。

「ごめんね。もうこのあたりには巣を作っちゃダメだよ」

そう言いつつ、ルェルルは割と躊躇いなくハチの巣を投げ捨てました。
この世の厳しさは、幼女でもなんとなく分かっているのです。
バシャンと水面に叩きつけられたハチの巣は、どんぶらこっこと流れて消えて行きました。
首尾良くハチ退治を終えて戻ると、待っていた小人は言います。

『おお、よくやってくれたのー。では約束通り案内しよう。
 ベルマークの森の奥は迷いの森とも呼ばれておってな。
 わしらやエルフでも無ければ、入る事すら出来んのだ。
 そこに隠れておれば、人間如きには絶対見つからんよ』

「そこ、ベルマークあるー?」

『おおさ、あるとも。たーんと集めておいで』

ルェルルはローゼソの手を取って、案内する小人の後に続こうとします。
そしてローゼソの顔が紫色に腫れていたのに、ハッとしました。

「ろぜそ、顔、顔!」

小人も驚いて、これは毒を吸い出さねばならんと、ルェルルに促します。
服の裾を掴んでローゼソの顔を近づけたルェルルは、腫れた箇所に口を付けてちゅうちゅうと吸い始めます。

「……ごくっ」

吸った毒を……そのまま飲みこんでしまったルェルルは、少しフラフラと足取りが覚束ない感じになりました。
なんだか少し酔ったようにも見えます。
117ローゼソ[sage]:2011/09/25(日) 22:10:03.88 0
>116
>「ろぜそ、顔、顔!」
「ん? 顔に何かついてる?」
周囲が騒いでいるのに、本人は呑気なものです。
自分の顔の惨状に気付いてないようです。

ルェルルが毒を吸い出すと、すぐに腫れはひきました。
地蔵並みの防御力を誇る【鉄壁防御】のおかげです。

>「……ごくっ」
一方、問題は毒を飲み込んでしまったルェルルです。
「どうしよう、酔っぱらいになっちゃった!」

『それはいかん。
すぐに迷いの森に埋まっておる毒消しドリンクを飲ませなさい』

ローゼソはルェルルの手を引いて迷いの森に入っていきます。
先っちょが地面から出ていたドリンクを引っこ抜きました。
「きっとこれだね。飲んで、ルゥ!」
ドリンクの蓋を開けて、ルェルルに飲ませます。
ビンのラベルには、【ウコンのチカラ】と書いてありました。
118名無しになりきれ[sage]:2011/09/26(月) 02:14:53.62 0
【ウコンのチカラ】を飲んだルェルルは、
ちょっぴりだけ昼寝をしたら、
すっきりしゃっきり元気になりそうな気がしてきました。

一方、一行の前にはカエルの行商人が現れます。
暇そうなカエルはローゼソのバッグをしげしげと眺めて言いました。

「そのスライム1匹を【出目=タイムスタンプの最後の数字】の数のベルマークと交換しないか?
ついでに、この出目よりもそっちの出目の方が大きかったら
サービスでもう一匹をホイミスライムと交換してあげるよ」
119 :名無しになりきれ[sage]:2011/09/26(月) 02:17:58.80 0
カエルの出目は2でした。
ルェルル達が取引に応じるなら、ベルマークの数はともかく
ホイミスライムが手に入る確率はまあまあ高いようです。
120 :ルェルル=ルュル ルルゥ ◆mMGaLMOXkw [sage]:2011/09/26(月) 02:47:19.17 0
【( ´ー`) 迷いの森】

>>117
>「どうしよう、酔っぱらいになっちゃった!」

ルェルルが毒でフラフラになると、ローゼソは驚いて叫び声を上げます
困惑するローゼソに、小人は迷いの森の毒消しドリンクを呑ませるように助け舟を出しました。
ルェルルはすぐさま手を引かれて、寂しげな森の奥へと連れられて行きます。

>「きっとこれだね。飲んで、ルゥ!」

ルェルルは地面から生えたドリンクを飲まされます。
ドリンクは甘口のカシスオレンジ味で、とてもおいしい味でした。

「うぅ……ん……甘ぁい」

>>118-119
しばらくのお昼寝を経て旅を再開すると、森の奥から蛙族の行商人がやって来て物々交換を持ちかけてきました。
数字がランダムに出るスタンプを使って、大きい数字を出すと、たくさんベルマークが貰えるようです。

「やるやる!わたし、負けないもん!
 んーと……これって、どこに押してもいーの?」

ルェルルは蛙商人からスタンプを受け取ると、張り切って蛙商人の付き出たお腹に押し付けます。
121 :ルェルル=ルュル ルルゥ ◆mMGaLMOXkw [sage]:2011/09/26(月) 03:24:34.00 0
タイムスタンプは7でしたので、スライム一匹と交換に、7枚のベルマークとホイミスライムが貰えるようでした。
蛙商人の後ろから、出番とばかりにホイミスライムがぬっと顔を覗かせます。
その外見は顔の付いた青いクラゲそのもの。
ホイミとは弱い回復魔法です。
このスライムは愉快な外見とは裏腹に魔法の使い手なのでした。

「ロゼそ、スライム出してあげて」

スライムまんの材料になるのか、愛玩用として飼われるのかは分かりませんが、スライムAとはここでお別れ。
ローゼソがスライムを出すと、ルェルルは手を振ります。

「バイバーイ!元気でねー」

蛙の商人と別れたルェルルは、ベルマークを探しながら迷いの森の奥へ奥へと進みました。
キノコの裏に貼り付いてないか、草むらの中にないか。
木のうろの中やアリの巣も覗きこみます。
それから、どれだけ進んだのでしょう。
やがて木々もまばらになって、森の外れの方に来たことがうかがえました。
122ローゼソ[sage]:2011/09/27(火) 00:38:30.51 0
>118-121
ローゼソはウコンのチカラのラベルをはがし、ベルマークをゲットします。
ルェルルは御昼寝を経て、【ステータス異常:酔っぱらい】から無事に回復しました。
行商人が現れて、取引を持ちかけてきます。
ルェルルはスタンプ勝負でかなりいい結果を出しました。
さすがは整頓の神の《ツヴェルフレギオンエンゲル》です。

>「バイバーイ!元気でねー」
スライムに代わってホイミスライムが仲間になりました。
これで多少怪我をしても安心です。

ベルマークを探しながら迷いの森の奥へ進みます。
タイムスタンプの最後の数字の数だけ、道中でベルマークを見つけたことにしましょう。
やがて森のはずれにやってきました。
売店のようなものが立っています。ベルマーク交換所です。
「見てみて、ベルマーク10枚で古びた鍵だってよ」
123ルェルル=ルュル ルルゥ ◆mMGaLMOXkw [sage]:2011/09/27(火) 01:27:49.12 0
【( ・∀・) 迷いの森の外れのベルマーク交換所】

>>122
ローゼソが森の外れに小屋を見つけました。

>「見てみて、ベルマーク10枚で古びた鍵だってよ」

「あっ、ロゼその髪にベルマークが付いてる!
 んっとぉ……これで9枚だね。
 あと1枚、どっかにないか探してみる!」

今のベルマークの枚数はローゼソが最初に見つけた1枚。蛙の商人から交換して貰った7枚。
ローゼソが(>>122)で発見していた1枚を合わせて……合計で9枚になります。
古びた鍵は、後1枚ベルマークを見つけるだけで良いので、ほぼ手に入る事でしょう。
……ゼロが出なければ。

「ないかな、ないかな」

ルェルルはキノコの裏を覗いたり、木のうろに手を突っ込んだりしました。
一しきり辺りを探すと、タイムスタンプの結果に関わらず、ルェルルは売店へと歩いていきます。

「ごめんくださーい……ベルマークの交換に来たけどぉ」
124ローゼソ[sage]:2011/09/27(火) 23:40:01.78 0
>123
ルェルルの手にはベルマークが2枚握られていました。
これで全部で11枚になります。
>「ごめんくださーい……ベルマークの交換に来たけどぉ」

『はい、古びた鍵だよ。ごめんよ、何に使うのかさっぱり分からないんだ』
おじさんはそう言って、古びた鍵を渡してくれました。

『すぐそこに森の裏口があるよ。
出たらロリババア族の女領主ロリータが治める領土だ、幼女の楽園だから安心していい。
近いうちに圧政を敷くノアルスイユを討伐すべく
テルピアに攻め込むとか攻め込まないとかもっぱらの噂だ』

「うん、ありがとう!」

迷いの森をあとにし、少し行くとすぐに街がありました。

【( ・∀・) ロリータ領 キャベツヴァタケの街】
キャベツヴァタケの街。領主ロリータの直轄地です。
街人は少女ばかりで、至るところにキャベツ畑があります。
道端に【打倒幼女の敵! 傭兵募集中! 希望者はロリータの屋敷まで!】という看板が立っています。
ロリータの屋敷の前には、見るからに屈強そうな少女達が行列を作っています。
「へえ~テルピアに攻め込むのは本当だったんだね」
自分には関係ないと、通り過ぎようとします。

『むっ、お嬢さんたち』
占いババア(外見はやっぱり少女)が突然声をかけてきました。
『アタシの目は誤魔化せないよ、お前さんたち、神の使徒だね!
それ行きなさい! やれ行きなさい!』
125ルェルル=ルュル ルルゥ ◆mMGaLMOXkw [sage]:2011/09/28(水) 03:27:53.04 0
>>124
>『はい、古びた鍵だよ。ごめんよ、何に使うのかさっぱり分からないんだ』

「ありがとぉ。これ古い鍵だから、きっと古い扉に使うんだよ」

ベルマーク交換所で鍵を交換して貰うと、おじさんに手を振って別れを告げ、ルェルルたちは森を抜けます。
森を歩いてしばらくすると、そこにはキャベツヴァタケの街。
元来は一面のキャベツ畑に囲まれた平和な街ですが、今はテルピアへの戦争準備で街中が殺気立っています。
ルェルルが大きな屋敷の前を通り過ぎようとすると、占い師風の少女に声を掛けられました。

>『アタシの目は誤魔化せないよ、お前さんたち、神の使徒だね!
>それ行きなさい! やれ行きなさい!』

「うん、行ってみる」

ルェルルは傭兵希望の戦士たちと一緒に、屋敷の門を潜ります。
豪華な屋敷に入ると、大広間に入って来た傭兵希望者を領主ロリータが待っていました。
長い紫の髪には、いっぱいのリボンを付け、ファンシーなドレスで小さな体を包んでいます。
階段の上に陣取った領主は、全員に大声で語りかけました。

『みなさん、テルピアの暴虐には我慢なりませんよね!? 処女権とか女を馬鹿にしてると思いませんか?思いますよね?
 奴隷制に付いてはどうですか?冗談じゃありません!ねっ? あんな国、みんなで頑張って打倒しましょうねっ?ねっ?』

ロリータの演説は疑問符だらけで、あんまり上手くありませんでしたが傭兵はみんなやる気いっぱい。
オーッ!と大きな掛け声が広間に響き渡ります。

「おーぉ!」

『それでは、まず開戦に当たってやらなければならないことはなんでしょうか?そこの幼女A?』

くるくると指を回していたロリータが指の先を止めると、ルェルルを差して問いかけます。
自分に問いかけられていることを察したルェルルは、やや自信無さげに答えました。

「うーん……ご飯……かなぁ」

『そう、補給ですよね?我々はテルピアの海路、陸路を封鎖して食料の流入を妨げますよ?
 付近の交易都市でも、倍の値で食料を買いつける感じ?
 戦争の前にテルピアの食料と言う食料を根こそぎ奪えば、きっと勝てるよね?ねっ?』

ロリータが兵糧攻めをすると述べました。
何となく思い付きっぽくて成功しそうな感じがしませんが、これも戦争と言う大きな流れですから仕方ないのでしょう。

『傭兵の皆さんには、テルピア領のユレッサ岩塩鉱山を襲ってほしいかな?
 人間にとって一番重要な食料は、お塩ですものね?
 テルピアも近くに要塞を築いて、将軍みたいな人に守らせているっぽい?』

そんな説明がなされると、全員に前金として50Gとヒノキの棒、布の服が配られました。
傭兵はかなりの人数がいたので、結構な額の軍資金でも全員の装備を調達すると、一人当たりが少なくなってしまうのです。

「サイズがおっきくてブカブカだよぉ……」

大きな布の服に着替える途中のルェルルは、服が引っ掛かってどこが頭を出す場所か分からずに座り込んでいます。
すると傭兵隊長らしき少女が鬨の声を上げ、他の傭兵たちを引き連れて出発しそうな感じになりました。

『それでは行くぞ、我らの手で幼女に自由を!』

「待ってぇー!」

布の服を被ったままで前が見えない状態のルェルルが走ると、頭をガツンと壁にぶつけてしまいます。
とても痛いので、ルェルルは座り込んでしくしくと泣き始めました。
126ローゼソ[sage]:2011/09/28(水) 21:39:58.73 0
>125
>「うーん……ご飯……かなぁ」
「そうか、敵国の食料を絶てば勝利は確実だもんね。ルゥすごい!」
ローゼソは、ルェルルの的確な答えに感心します。

ひのきの棒と布の服が配られます。
「初期装備より弱い……」
ローゼソにとっては意味が無さそうですが、ルェルルはそうでもありません。
素手よりは檜の棒を持った方がいいですし
布の少ない布の服よりは、普通の布の服の方が防御力が上がりそうです。

>「待ってぇー!」
布を被ってお化けのような状態のルェルルが壁にぶつかります。
傭兵たちが押し寄せてくるので、ルェルルを抱えて走り始めました。

一団は大きな直方体の乗り物に乗り込んでいきます。
座席に座ったローゼソは、隣にルェルルを座らせます。
『傭兵団の皆さん、こんにちわー!
ユレッサ岩塩鉱山まで、こちら運転手のトムと、バスガイドのわたくしメアリーがご案内いたします!』
ハイテンションな女性の声が響き渡り、乗り物は走り出しました。

「これに乗ってれば連れて行ってもらえるらしいよ、楽ちんだね」
ローゼソはコスプレ技能を使って、ルェルルの腰を紐で縛って、大きい布の服をワンピース風にしながらいいました。
127名無しになりきれ[sage]:2011/09/28(水) 21:59:42.80 0
ところでロリータの演説はなかなかの力をもっていました。
ソードワールドで言うところのプリースト魔法「ジハド」相当です。
演説を聴いていたローゼソは一時的に戦闘力が2レベル上昇しています。
ルェルルの方は途中で布の服に埋もれてロリータの視界から外れてしまったので
効果があったかどうかはよくわかりません。

直方体の乗り物は順々に
【( ・∀・) ユレッサ岩塩鉱山の入口の近くの要塞の手前3000m】
【( ・∀・) ユレッサ岩塩鉱山の入口の近くの要塞の手前2500m】
【( ・∀・) ユレッサ岩塩鉱山の入口の近くの要塞の手前2000m】
といった看板の前を通って走って行きます。

128 :ルェルル=ルュル ルルゥ ◆mMGaLMOXkw [sage]:2011/09/30(金) 00:26:39.21 0
【( ・∀・) ユレッサ岩塩要塞】

>>126-127
>「これに乗ってれば連れて行ってもらえるらしいよ、楽ちんだね」

ルェルルは、ローゼソに抱えられて謎の乗りものに乗せられてしまいました。
近くではジョキジョキというハサミの音が鳴っています。
視界が開けたルェルルは、わふぅ……と息を吐きました。
しばらく布の服が裁断されると、ようやく大きな布の服もルェルルが着られる感じになって来ます。

「かぁいい!私、この服好きっ!」

ルェルルは、うきうきとした様子で椅子の上で跳ねました。
気づけば窓の景色は流れ、乗り物はユレッサ岩塩鉱山に近づいて行きます。
席で膝立ちになったルェルルが窓の外を見ると、幾つもの似たような看板が後方に流れて行きました。
そして前には、大きなお城みたいな建物がそびえ立っています。

『手前に見えるのが岩塩要塞でーす! 外壁は全てユレッサの岩塩で作られております!』

「舐めたら、しょっぱそーだねー」

ガイドの説明に、ローゼソとそう囁き合っていると、やがて直方体の乗り物は要塞の前で止まります。
傭兵の団体御一行様は、わらわら乗り物から降りると、伸びをしたり深呼吸したり。
乗り物酔いした傭兵に別の傭兵がだいじょうぶ?と言いながら、飴を渡したりしています。
ルェルルも乗物から降りて岩塩要塞の中に入りました。
中ではビキニアーマーの女戦士が待ちかまえています。
ビキニ型の鎧は外見とは違って防御力が高いので、戦うとなれば厄介なことになるでしょう。
女戦士はハルバードを構えると、侵入者に問いかけます。

『ええと、ジルドレ将軍に御面会の団体様ですね……アポは取っておられますか?』

女戦士は意外にも丁寧に聞いてきます。

「えっ、えっとぉ……アポってなんだろう……分かんない……」

『それでは、ちょっと……将軍も多忙な方ですので。
 今日も午後から、テルピアの反乱軍“月の女神”の殲滅作戦の予定が入っておられますし。
 とりあえず本日はお帰りになって頂いて、後日改めてお越しになって頂けますか?』

「う、うぅん……」

ビキニアーマーの女戦士に言い包められたルェルルは、素直に帰ろうとします。
129ローゼソ[sage]:2011/09/30(金) 21:42:45.36 0
>127-128
「それにしても素晴らしい演説だったね、力が湧いてくる気がするよ」
そんな事を言いながら、ユレッサ岩塩要塞に到着しました。

門番は、ビキニアーマーの女戦士。
大部分を露出しているにも拘らず、防御力が高いビキニアーマーは、世界7不思議の一つです。

>「えっ、えっとぉ……アポってなんだろう……分かんない……」
「アポイントメントの略、つまり遊ぶ約束の事だね!」

>『それでは、ちょっと……将軍も多忙な方ですので。
 今日も午後から、テルピアの反乱軍“月の女神”の殲滅作戦の予定が入っておられますし。
 とりあえず本日はお帰りになって頂いて、後日改めてお越しになって頂けますか?』
>「う、うぅん……」
「将軍ともなれば忙しいのか。それなら仕方がない、出直そう」
『そうね』
『癪だけど仕方がないわ』
傭兵たちは口口に、女兵士の申し出を承諾するのでした。

門前払いをくらった傭兵団は、要塞の隣の喫茶店に入り、作戦会議を始めます。
「そうだ!」
ひらめきブランドのリプトンレモンティーを飲んでいたローゼソが、名案を思い付いたようです。
「今日の午後にテルピアの反乱軍が来るって行ってたよね。
来たところを見計らって一緒にお邪魔すればいいんじゃない?
忙しい将軍も用事が一度に済んで好都合でしょ」
130ルェルル=ルュル ルルゥ 【だん吉】 ◆mMGaLMOXkw [sage]:2011/10/01(土) 01:35:15.30 0
【( ・∀・) 喫茶店・ザルツブルグ】

>>129
要塞から引き下がった傭兵団は、隣の喫茶店に入って行きました。
この喫茶店は鉱山労働者ご用達のお店で、ダイエットに効果がある塩コーヒーが名物。
傭兵たちは、みんなでコーヒーを啜りながら作戦会議に興じています。

「にがにがしてるよぉ……」

ルェルルは一口飲んだだけでコーヒーには、もう手を付けません。
みんなと同じ物を頼んだものの、ルェルルは苦い飲みものは好きじゃないようでした。
対して、レモンティーを飲んでいたローゼソは何かをひらめいたようで意見を述べます。

>「今日の午後にテルピアの反乱軍が来るって行ってたよね。
>来たところを見計らって一緒にお邪魔すればいいんじゃない?
>忙しい将軍も用事が一度に済んで好都合でしょ」

「うん、みんなで行こっ」

『待て、さっき言うべきだと思ったが、忘れてたので今言う……正面から行くのは危険だ』

「前が危ないならぁ……んー……後ろから行くっ!」

『うむ、それがいいだろう。
 反乱軍との戦いは大規模な戦いになるはずだ。
 敵も戦いに人数を裂くため、背後の守りは手薄となる。
 反乱軍が攻めてきたら、敵に気付かれない程度の少数で砦の後ろに回り込もう』

そんな作戦会議が終わって、しばらくすると午後になりました。
反乱軍の乗る直方体の乗り物が、次々に岩塩要塞の前までやってきます。

「あっ、いっぱい集まって来たっ!」

ルェルルはたたたっとカウンターに駆けより、おみくじ箱から一枚を引いてから要塞の後ろに向かいます。
131ローゼソ[sage]:2011/10/01(土) 22:39:07.84 0
>130
>「あっ、いっぱい集まって来たっ!」
次々と集まってくる直方体の乗り物の中に、一つ違うものが混ざっていました。
「あの乗り物、上に変なパネルが付いてるよ」

変なパネルの車から、5人組の吟遊詩人ユニットが降りてきます。
『鉄腕DASHの時間がやって参りました!
今日のソーラーカーだん吉の旅は特別企画! 反乱軍に参加してみよう!』

5人組の吟遊詩人ユニットは、反乱軍を鼓舞する歌を歌い始めました。
これが効果てきめん、反乱軍たちは、物凄い勢いで要塞に突入してきます。

「今だ!」
傭兵団は、易々と要塞の裏口から侵入しました。
敵兵たちは皆反乱軍の相手で手一杯。傭兵団は楽々と進んでいきます。
132 : 忍法帖【Lv=3,xxxP】 [sage]:2011/10/01(土) 23:07:11.08 0
アザトースマインドエターナルフォースブリザード!?♪。
133名無しになりきれ[sage]:2011/10/02(日) 03:12:28.78 0
ルェルルやローゼソ達傭兵団が要塞の裏口からどんどん中に入って行くと、
《ユレッサ岩塩要塞楽屋》
というブレートのかかった扉がありました。
『むむ、鍵がかかっている』
傭兵達がそこら辺で拾ったLv3のニンジャを投げつけ、扉を砕いて中に入ります。

そこはちょっと広めの部屋でした。
片側の壁面には作り付けの机と鏡があって、化粧台のようになっています。
部屋の奥には洋服掛けが設置されていました。
小さな棚の上にあったモニタのスイッチを入れると、要塞内部の様子が映し出されます。

伝令が行き来するどこかの部屋で悠然と指揮を執るジルドレ将軍。
正面入口付近で反乱軍と乱戦を繰り広げるビキニアーマー率いる兵士達。

『親玉を探し出して狙撃しよう』
『ビキニアーマーに不意打ちを仕掛けよう』
『要塞自体を適当に壊そう』

『あ、化粧直してからねー』
『おうっ』
鏡の前に座って思い思いに姿を整えると、
傭兵達は幾手かに分かれました。

「ぼくたちはどこにいく?」
ホイミスライムが言います。
134 :ルェルル=ルュル ルルゥ!omikuji ◆mMGaLMOXkw [sage]:2011/10/02(日) 22:46:21.90 0
【( ・∀・) 岩塩要塞内部】

>>131-133
>『鉄腕DASHの時間がやって参りました!
>今日のソーラーカーだん吉の旅は特別企画! 反乱軍に参加してみよう!』

反乱軍の中から5人組の吟遊詩人が現れるや、士気を高めるために歌い始めます。
テルピアには密かに反乱軍に協力する組織が幾つか存在しました。
吟遊詩人たちの所属するジャニス音楽院もその一つ。
彼らの軽快な歌に釣られて、ルェルルも一緒に歌い始めます。

「ふんぐるいー♪ むぐるうなふー♪ くとぅる―――」

>「今だ!」

「わあっ」

ローゼソがルゥルルの腕を引っ張って要塞の裏まで連れて行き、すばやく岩塩要塞の中へと侵入します。
傭兵たちと一緒に最初に見つけた部屋へ入ると、棚の上にボタンを見つけたルェルルが好奇心から押してしまいました。
すると備え付けの鏡には要塞各所が映し出され、それを見た傭兵たちも色々な準備を始めて思い思いの場所に散って行きます。
部屋に取り残されたルェルルに、ホイミスライムが問いかけました。

>「ぼくたちはどこにいく?」

「あっ、このスライム喋れたんだね……うーんとぉ、一番上っ!」

決めた行き先には確たる理由も、これと言った根拠もありません。
ですがルェルルは迷った様子も無く、廊下に出ると見つけた階段を登り始めます。

『おい、邪魔だぞ……やや、お前たちはっ!?』

忙しく行き来する伝令の一人が、こちらに気づいたようで驚きの声を上げました。
そんな伝令に、ルェルルは取りとめの無い自己紹介を始めます。

「えっとぉルェルルだよぉ。つべふえんげるで整頓するの。あと鍵屋さんを探すっ!」

『怪しい奴め……さては反乱軍の仲間だな。着いてこい』

あっさりと兵士に捕まったルェルルは腕を引っ張られ、どこかに連れて行かれようとしていました。
将軍の待つ指令室に連れて行かれるかも知れませんし、別の場所に連れて行かれるかもしれません。
135ローゼソ[sage]:2011/10/04(火) 00:00:57.14 0
>133-134
>「えっとぉルェルルだよぉ。つべふえんげるで整頓するの。あと鍵屋さんを探すっ!」
>『怪しい奴め……さては反乱軍の仲間だな。着いてこい』

伝令の一人が、親切に案内してくれるようです。
伝令は、狭い廊下に入ると、急に表情を変えて小声で語りかけてきます。
『あなたたち、さっきつべるえんげるって言った? 神の使徒なの!?』
「そうだよ。ツベルフレギオンエンゲル。整頓の神に選ばれし勇者さ!
あとで鍵屋さんを探すってのは、この鍵を鑑定してもらおうと思って」

ローゼソは、古びた鍵を伝令に見せます。
『その紋章・・・カノンが封じられた神殿の鍵の一つよ! 信じられない・・・本当に神の使徒なのね!
お願い、伯爵を倒してテルピアの圧政を終わらせて! ビキニアーマーはもう嫌なの!』
テルピア兵はビキニアーマーが義務付けられていて、それを内心嫌に思っている兵士は結構多いそうです。

『将軍のところに案内するわ』
天上の低い裏道を通って、将軍の部屋に向かいます。
行き止まりまで行ったと思うと、伝令が、頭上の扉をそうっと押し上げます。
無防備に座っている将軍のハゲ頭が見えます。丁度将軍の背後に出るみたいです。
『今まで通ってきたのは、将軍が危なくなった時に逃げるための裏道。
それを逆に使って不意打ちを喰らわせてやるのよ!』
136ルェルル=ルュル ルルゥ ◆mMGaLMOXkw [sage]:2011/10/04(火) 20:13:34.71 0
>>135
伝令を含めて兵士たちはテルピアの圧政に、うんざりしているようでした。
ローゼソが鍵を見せると神の使徒と認めたのか、兵士は意を決してルェルルたちの案内を買って出ます。
通風口みたいな狭い道の中を通されると、やがて指令室近くに辿り着きました。
案内の兵士は、無防備なジルドレ将軍の背中を見て言います。

>『今まで通ってきたのは、将軍が危なくなった時に逃げるための裏道。
>それを逆に使って不意打ちを喰らわせてやるのよ!』

「うん、じゃあ行ってきまぁす」

今の所、指令室にいるのは一人だけ。
隠し扉から指令室に入ったルェルルが、ひのきの棒で椅子に座るジルドレ将軍の頭を叩きました。
スイカ割りの要領で思いっきり叩いたのですが、幼女の力ではダメージも多寡がしれています。

『んぬ?』

ルェルルの攻撃は、そんな当惑の声を上げさせただけ。
せっかくの不意打ちも初手がこれでは、大した効果を上げません。
叩かれたジルドレ将軍は振り返り、青い髭を生やした厳めしい顔を見せます。

『貴様らが、なぜこの指令室に……そうか、隠し扉を使ったと言うわけか。手引きしたのはお前だな?』

すばやく指令室の鍵を内側から閉めた兵士に向って、ジルドレ将軍が言いました。
そしてスラリと鞘から剣を抜き、刃の先端を水平にしてルェルルの顎を持ち上げ、ローゼソに烈火の視線を向けます。
声音には微かな怒気が含まれ、今にも凶刃を振るって幼女の喉に血の薔薇を咲かせんとするかのようでした。

『おっと、動くなよ……幼女がどうなっても知らんぞ?
 お前たち、仲間を酷い目に合わせたくなければ武器を捨てろ』

「うん、じゃあ捨てる」

ルェルルも部屋の端のくず籠まで駆け寄ると、ポイッとヒノキの棒を捨てます。
137ローゼソ[sage]:2011/10/04(火) 22:51:45.00 0
>136
>「うん、じゃあ捨てる」
部屋の端のくず籠に駆け寄り、ポイッとヒノキの棒を捨てるルェルル。
という事は当然、ジルドレ将軍の元からは離れています。
これも神の加護【自動回避】のお蔭なのでしょう。
『よーし、いい子だ。さあ早く戻って来て人質になれ』

「バーカ! 人質離してやんの!」
ローゼソが剣を抜いて切りかかります。
『ち、違う! やはり人質は卑怯かと思い離しただけだ!!』
ジルドレ将軍はしどろもどろ言い訳しながらも、剣を抜いて迎え撃ちます。
時代劇の決闘のシーンのように、交差する二人。
1秒、2秒、時は流れ、ぐらりと揺らいだのは――ジルドレ将軍のほうでした。
『バ、バカなぁああああ!!』
断末魔の叫びをあげながら、将軍は倒れました。
みたところ外傷はありませんが、倒れてしまったものは仕方ありません。

「またつまらぬものを切ってしまった・・・」
ローゼソは、額から流血しながらドヤ顔で勝利台詞を言っています。
思いっきり切られていますが、神の加護【鉄壁防御】があるので多分大丈夫だと思われます。
138ホイミスライム[sage]:2011/10/05(水) 01:25:58.23 0
「ホイミ!?ローゼソ、ホイミする!?ねぇ!ホイミ!ホイミする!?」
ホイミスライムは血まみれのローゼソに聞いています。

そして、倒れたジルドレ将軍の耳のあたりからは、にゅるるるーとスライムBが出てきました。
どうやったのか知りませんが、スライムBが将軍の動きを鈍らせていたようです。
139ルェルル=ルュル ルルゥ ◆mMGaLMOXkw [sage]:2011/10/06(木) 03:48:49.17 0
>>137
ジルドレ将軍を一刀の元に倒したローゼソが、勝利の台詞を述べます。

>「またつまらぬものを切ってしまった・・・」

「つまらないものですが、どおぞ」

そう言って、ルェルルは白いハンカチをジルドレ将軍の顔に被せました。
案内の兵士は、すかさずジルドレ将軍を縛り上げて言います。

『その伝声管で私たちの勝利を伝えて!』

岩塩要塞には、各重要個所に命令を伝えるべく作られた伝声管が存在していました。
それを使って将軍の捕縛を伝えれば、元々士気の低い要塞守備兵が瓦解するのは明白です。
ルェルルはラッパの口みたいな形の管に口を近づけて言いました。

「んっとっ……青髭のおじさんをやっつけて勝ったよぉ!」

指令室の決着は、瞬く間に要塞中に伝わります。
ユレッサの兵士たちはざわめき、その真偽について語り、今後の相談を始めました。
人望が無かったのか、残念ながら将軍を助けようと言う相談はどこでもされていません。

『将軍が……本当か?』

『伝声管のある指令室を占拠されたと言う事は、まず間違いあるまい』

『どうする?逃走するか』

『逃げたいものは逃げろ。俺はテルピアのやり方は気に入らん』

兵士たちは逃げる者もいれば、降伏するもいました。
反乱軍も追撃は掛けず、それらは逃げるに任せたので、数時間もすれば要塞の混乱も完全に鎮まることでしょう。
ジルドレ将軍はひとまずロリータの街で収監され、後に裁きを受ける事になりそうでした。

>>138
>「ホイミ!?ローゼソ、ホイミする!?ねぇ!ホイミ!ホイミする!?」

指令室ではホイミスライムが、血を流したローゼソに回復呪文ホイミを掛けたそうにしています。
それが彼のアイデンティティなのだから仕方ありません。

さて、戦闘に勝利したので戦後処理の始まりです。
宝物庫、武器庫、食料庫、牢屋、当然ですが要塞には色々な物があります。
それらの部屋ではテルピア反乱軍と、ロリータ兵が接収した財宝の分け前について言い争ったり、ぶんどっている最中でした。
ゆるい世界でも一皮剥けば、人間の本性はこんなものなのでしょうか。
まあ戦争は大変お金が掛かるので、これも詮ない事かも知れません。

「私たちも探検しよっ、早く早くぅ!」

各所で宝箱が開けられる度に、大きな歓声が上がりました。
それを聞いたルェルルは、焦ったようにローゼソの服を引っ張ります。
このまま、ここでぐすぐずしていたら、全ての宝箱が開けられてしまうでしょう。
140ホイミスライム[sage]:2011/10/06(木) 18:23:54.66 0
「ホイミ!」
待ちきれなくなってホイミスライムはローゼソにホイミをかけました。

しかし なにも おこらない

「あ、あれえぇぇ?」
流石は整頓の神の《鉄壁防御》。
流血していてもHPは減っていないようです。

>>139
>「私たちも探検しよっ、早く早くぅ!」

にゅるにゅる。ぴょんぴょん。
スライムCが司令室のよくわからない指令装置っぽい机のような物の下で
手招きしたそうに(手が無いのでできません)こちらを見ています。

「あっ、こっちだって!」
ホイミスライムがルェルルとローゼソに教えます。
スライムCが示した場所には宝箱が3つ並んでいました。
「でも、すこしミミックのけはいがするよ!」
スライムCもうんうんと頷いています。
141 :ローゼソ[sage]:2011/10/06(木) 23:42:27.59 0
>138
どうやらこの勝利は、スライムBのおかげだったみたいです。
ただのスライムと思いきや、なかなか優秀です。
>「ホイミ!?ローゼソ、ホイミする!?ねぇ!ホイミ!ホイミする!?」
「HPが白だから大丈夫だよ」
HPが白とは、まだ生命力に余裕があるという意味です。

>139
>「私たちも探検しよっ、早く早くぅ!」
「うんっ、宝物庫いこう宝物庫!」
ルェルルとローゼソは、嬉々として要塞内を物色し始めます。

>140
>「ホイミ!」
HPが白にも拘わらず、ホイミスライムはホイミをかけました。
「君に名前を付けてあげよう。君はホイミンだ!」

>「あっ、こっちだって!」
スライムCが示した場所には、宝箱が3つ並んでいます。
>「でも、すこしミミックのけはいがするよ!」

「宝箱判別の魔法なんて持ってないよねえ……」
しかし、3つのうちのどれから気配がするのかは正確には分かりません。
宝箱は地面にくっついているので、その場所から動かせません。

「よーし、そのまま開けよう!
もしミミックだったら、ボクが引きつけている間に他の二つを開けてね」
ローゼソは何の手段も講じずに、潔く宝箱をあけました。通称漢開けです。

【秒数の右端の数字で判定:0~5・・宝箱 6~9・・・ミミック】
142 :ローゼソ[sage]:2011/10/06(木) 23:44:38.30 0
「あ、ホイミンじゃなくてホイミソにしようか」
ローゼソは、ミミックに襲い掛かられながら言いました。
143ルェルル=ルュル ルルゥ ◆mMGaLMOXkw [sage]:2011/10/07(金) 01:55:35.02 0
【( ・∀・) 要塞指令室】

>>140-142
>「あっ、こっちだって!」

ホイミスライムが三つ並んだ宝箱を発見します。
宝物庫ではなく指令室に有ると言う事は、ジルドレ将軍の個人所有物に違いありません。
ホイミスライムは宝箱の前でミミックの気配がすると言っていました。
ミミックとは宝箱に擬態するモンスター。
そんな番犬を用意していると言う事は、よほど開けられたくない物が入っているのでしょう。

「みみっく?」

宝箱に近づいたルェルルは些細な違いを探そうと、表面の模様をじっと眺めました。
でも、やっぱり判別はできません。
そもそも見て分かる程度ならミミックを置く意味も無いのですから、目視の判別は無意味です。

>「よーし、そのまま開けよう!

そのまま宝箱を開けたローゼソは、ミミックに襲いかかられました。
その隙にルェルルは隣の宝箱を開けます。

「んっしょ……いっぱい紙が入ってるよ?」

宝箱の中に入っていたのは、公に出来ない密書の類。
古びた羊皮紙の紙束を見て分かるのは、岩塩鉱山の利益の着服と、真教の枢機卿達(高位聖職者)への献金。
帝国は神が実在する世界の常として政教分離はされておらず、真教は政治の中でも大きな権勢を誇っています。
どうやらジルドレ将軍は高位聖職者達に働き掛けて、高い地位を狙っているようでした。
いざという時に使うつもりだったのか、如何わしい接待や賄賂の内容が詳細な目録として残されています。

「紙しか無いよ……がっかりだね。
 おんなじ紙でも、お食事券が入ってれば良かったのに」

とりあえず、宝箱の中身はルェルルが手に入れて嬉しいものではありません。
幼女族はあまり政治に興味が無いので、教会の腐敗や不正なお金の流れが分かっても有効活用はできないでしょう。
頭を宝箱の底まで突っ込んで他に何も無い事が分かると、ルェルルは口をぷっと膨らませて不満そうな表情を見せます。

>「あ、ホイミンじゃなくてホイミソにしようか」

宝箱から頭を出すと、隣でローゼソが襲われていました。
ルェルルは、それを見ると葛籠からひのきの棒を拾ってきて、つっかえ棒としてミミックの口に差し込みます。

「ロゼそ、だいじょうぶ? それならもう行こっか」

そう言ってルェルルはローゼソの頭を撫でます。。
……岩塩要塞を占拠したのでテルピアへの塩の補給は断たれましたが、兵糧攻めの結果が出るのは少なくとも数ヵ月後でしょう。
ルェルルは唯一の収穫だった紙束を手に取ると、気持ちを切り替えて指令室から出て行きます。
とりあえず、宝箱を二つしか開けていない事は失念しているようでした。


――そして半年の月日が流れます。時は無情に流れてしまうのでした。
144 :ローゼソ[sage]:2011/10/07(金) 23:57:02.74 0
>143
ローゼソがミミックに齧られている間に、ルェルルはもう一つの宝箱を開けました。
>「ロゼそ、だいじょうぶ? それならもう行こっか」
「ありがとう、助かったよ。何を見つけたの?」
ローゼソは、ルェルルから紙の束を見せてもらいます。

「帝国の上層部はお金に弱いのか……。これは使える!」

ローゼソも、もう一つの宝箱を忘れて出て行ってしまいました。
この忘れられた宝箱が、後に重要な意味を持つかもしれないし持たないかもしれません。

――そして半年の月日が流れます。

ローゼソは半年間何をしていたかというと、男装喫茶でバイトをしてお金をためていました。
いざという時に、敵を買収するためです。
テルピアは塩不足で、塩辛い物が食べられない兵士達の不満は募る一方。
薄味な位の方が健康にはいいのですが、やはり物足りないようです。
制圧するならまたとない好機です。

ある日、ついにロリータから招集がかかります。
『今日皆を招集したのは他でもない、ついにテルピアの本拠地に攻め込む時が来た!』
半年間で練習したのか、演説が上手くなっています。
『ノアルスイユ伯爵の持つ政治的切り札、神殿の鍵を奪い幼女を解放するのだ!』

『おー!』
傭兵団は、直方体の乗り物に乗り込み、ノアルスイユ伯爵の本拠地へ向かいます。
145ルェルル=ルュル ルルゥ ◆mMGaLMOXkw [sage]:2011/10/09(日) 05:04:04.18 0
【( ´Д`) トラフィス中央公園】

ぼんやりしていると、半年の月日はすぐに過ぎてしまいます。
ルェルルは半年ほど整頓の神の啓示が無かったので、ついつい鍵探しの目的を忘れてしまいました。
その間は色々な仕事で間を繋ぎます。

酒場の看板娘、お片づけ屋、ペットのスライム探し……色々試してはいましたが、失敗ばかりなので職は転々。
溜めたお金も使い切ってしまい、今では公園暮らし。
寝床は樫の木のうろの中。リスと同居しています。
住みこみの仕事も見つからず、半年も宿に泊まり続けるだけの所持金も無かったので仕方ありません。
ローゼソとは、ずいぶん差が付いてしまいました。
ルェルルは、このトラフィスの街まで手紙を運ぶ仕事の際、街へと居付いてしまい、ローゼソとは何ヶ月か会っていません。

「ドングリ、ドングリ……」

屈んだルェルルが公園に自生する木の実を拾っていました。
今日のご飯として集めているのです。それに冬を越す分も。
……ツヴェルフレギオンエンゲルの使命を忘れたルェルルは、ほんの少しだけ野生化していました。

こんなトラフィスの街にも、やがて直方体の乗り物がやってくるでしょう。
ここはテルピアの国境に最も近い山岳の街なのです。
街を訪れた者たちはドングリ拾いに勤しむ幼女を発見するかもしれませんし、しないかもしれません。
146ローゼソ[sage]:2011/10/09(日) 23:11:09.20 0
「ルゥ元気かなあ……」
直方体の乗り物に乗り込んだローゼソは、辺りを見回してルェルルの姿を探します。
ルェルルは見当たりません。
「ここ数カ月見かけてないし、どうしちゃったんだろう」

直方体の乗り物は、各地を巡って傭兵を招集しながらテルピア領に向かいます。
そして、ついにテルピア国境目前のトラフィスの街にやってきました。

『敵地は目前だ! 万全に装備等を整えること!』

ロリータの号令に従い、一時自由行動となります。
ローゼソは、支給された弁当を持って公園に入っていきます。

>145
>「ドングリ、ドングリ……」

あっ! やせいの ルェルルが とびだしてきた!
ローゼソは驚いて声をかけます。

「ルゥ! 野生化してどうしたの? 
ついに兵糧攻めの効果が出てテルピアに攻め込む時が来たんだよ!」
147ルェルル=ルュル ルルゥ ◆mMGaLMOXkw [sage]:2011/10/11(火) 04:25:08.10 0
この世界には様々な神様がいます。
上はたくさんの信者を抱えて色んな奇跡を起こせるものから、下はレッサーデーモンに毛が生えたようなものまで。
海の神、山の神、花や泉の女神、整頓の神に混沌の神……まさに八百万の神と言ったところでしょうか。
有象無象の神様たちを崇める教えは、帝国では全て一緒くたにされて“旧教”と呼ばれています。
半年前のテルピアでは、そんな旧き神様たちの教えも一定の敬意を持たれていたのですが、今では少し事情が変わっていました。

原因は……岩塩要塞で起きた反乱です。
“ツヴェルフレギオンエンゲル、なる旧き神の信徒たちが善良な民衆を惑わせて反乱を起こさせた”
岩塩要塞の敗残兵たちがテルピアに持ち帰った話は、ノアルスイユ伯爵が帝国本土に報告した際には、そうなっていたのです。
そして、今では旧教は帝国の平和を脅かすものとして弾圧の対象になってしまいました。
唯一神カノンを崇める真教の聖職者の中には、普段から旧教の存在を苦々しく思っている者も少なくありません。
テルピアの反乱を機に、彼らはここぞとばかりにノアルスイユ伯爵への支援を呼び掛け、神に仕える騎士を大勢召集しました。
領内から旧教の勢力を一掃するように言い含めて。
この聖なる騎士たちはパラディンと呼ばれ、そのほとんどが歴戦の戦士たち。
今では何人もがテルピアに派遣されて、各地を巡回しています。
このトラフィスを越えれば、そんなパラディンたちに出会う事があるかもしれません。


>>146
国境のこちら側、山岳の街トラフィスに目を向ければ、ルェルルはかつての仲間と半年ぶりの再会を果たしていました。
お弁当を持ったローゼソが、ルェルルに駆けよって話しかけて来ます。

>「ルゥ! 野生化してどうしたの? 
>ついに兵糧攻めの効果が出てテルピアに攻め込む時が来たんだよ!」

「お兄さん、だぁーれ?テルピャー?……っておいしいの?」

ルェルルはお弁当を見ながら言います。それを持つローゼソのことは完全に忘れている様子で。
犬も一年くらいは飼い主を覚えているものですが、たった数か月で男装少女はルェルルの記憶の底に沈んでいるようでした。

金の幼女フルフル……と言う、例の歌が流れてくれば、或いは物覚えの悪い幼女も何かを思い出すかもしれません。
ですが今は美味しそうなお弁当だけが、ルェルルの脳内を占めていました。
ぱっくり開けた口の端からポタポタ涎を垂らして、ひたすらに美味しそうなタコさんウィンナーを凝視しています。
野良猫の集まる公園でお弁当を食べようとすると、猫がじっとこちらを見つめるように。

「テルピャーに攻め込むと、それって私も貰えるー……?」

ルェルルが上目遣いで、物欲しげな眼差しをローゼソに向けます。
うんか、はいか、イエスで答えれば、間違いなくルェルルは直方体の乗り物に乗るでしょう。
148ローゼソ[sage]:2011/10/12(水) 02:10:10.30 0
>147
>「お兄さん、だぁーれ?テルピャー?……っておいしいの?」

ルェルルは、ローゼソの事を忘れてしまっていました。
ローゼソは、驚いた勢いで事実を捏造しながら詰め寄ります。

「ボクのことを忘れてしまったのか!?
世界の始まりの日、生命の樹の下でスール(姉妹)の誓いを結んだ仲じゃないか!」

※ 結んでません

「はいっ、タコさんウィンナーあげるよ」

お弁当を、ルェルルと分け合いながら食べます。

>「テルピャーに攻め込むと、それって私も貰えるー……?」

うん
はい
→イエス ピッ

「イエスイエス。
そういえばイエス・キリストっていうのも旧き神様の一つにいるんだってね」

その方をたくさんいる神の一人にしてはどこかからお叱りの声が聞こえてきそうですが
カノンが君臨するこの世界では、そうならざるを得ません。

ともあれ、イエスで答えたので、ルェルルは間違いなく直方体の乗り物に乗り込みます。
発車すれば程なくトラフィスを超え、テルピア領に入る事でしょう。

領土境の関所では、パラディン達による検問が行われています。

『そろそろ反乱軍が来る頃だ。例の物の準備はいいか?』

『はいっ、準備万端です』

彼らの後ろには、八百万の旧神達の絵が描かれた、たくさんの石板が用意されてします。
どうやら踏絵で旧神勢力かどうかを判断するようです。無事に突破できるでしょうか。
149名も知られぬ整頓の神[sage]:2011/10/13(木) 00:14:47.16 0
銀の幼女降る降るまわりに
金の幼女降る振るまわりに

という歌をあたしは歌いながら太陽風に沿って下り、
彗星のしっぽのような姿で下を眺めると
弾圧の嵐吹き荒れる戦乱の世になっている様です。

ちょっとBCFを充電しに行っていた間に何があったのでしょう。

あたしは直方体の乗り物で運ばれている
あたしの《ツヴェルフレギオンエンゲル》に夢を見せました。

「世界はいろいろな争いでごちゃごちゃになってしまっています。
人はある程度争うものですが、早くかーくんを封印しないと、
ごちゃごちゃがどんどんひどくなってしまいます。

――神殿の扉を開く四つの鍵を、戦の中で見いだしなさい。
かーくんを封印し世界のごちゃごちゃを減らし、
落ち着いてごはんを食べられるようにしましょうね」

あたしはそれを終えるともとのままに大空を飛び、
あたしの《ツヴェルフレギオンエンゲル》が直方体の乗り物で
関所に向けて進んで行くのを見送りました。
150ルェルル=ルュル ルルゥ ◆mMGaLMOXkw [sage]:2011/10/13(木) 00:25:46.75 0
【( ・∀・) ピラーニャ川】

>>148
>「はいっ、タコさんウィンナーあげるよ」

「……もっちゃもっちゃ」

ローゼソから分けて貰ったお弁当を頬張り、ルェルルのほっぺがリスのようにぷっくりと膨れました。
久しぶりに美味しい物を食べられたお昼の時間は、まさに至福の瞬間。
こんなご飯が毎日食べられるなら、少しくらい怪しい人たちでも付いて行っても良い……そんな気持ちです。

「じゃあ、私も行くねー!」

続く捏造話は鮮やかに聞き流し、ルェルルは直方体の乗り物に乗り込みました。
同じく聞き覚えの無い旧き神の話も、触れない方が良い気がしたので聞き流してしまいます。
発進した直方体の乗り物は、山を越え、森を抜け、やがて大きな川に架かる大きな橋へと至りました。

「あっ、前に誰かいるー?」

石造りの橋は、銀の鎧を纏う13人の騎士たちが関を設けて封鎖していました。
中央で命じているのは、彼らのリーダーである聖騎士アグラヴェイン。
短い金の髪、鋭い鷹の眼、引き締まった表情からは知性を感じさせます。
見た感じでは年の頃ニ十を越えたばかりであろうに、随分と油断のならない人物のようでした。

『止まれ!』

検問の騎士が立ちはだかって叫びますが、直方体の乗り物は止まりません。
ピラーニャ川を強引に突破しようとします。
ですが……直方体の乗り物は、ガーン!と音を立てただけで関の扉を破れませんでした。
関所には何かの魔法が掛かっていたせいか、白い光が防壁の如く発生して衝突してしまったのです。

「目が回るよお……」

衝突の衝撃で座席から投げ出されたルェルルは、床の上で目をぐるんぐるんと回していました。
その間に直方体の乗り物のドアは乱暴に開かれ、聖騎士たちが乗り込んできます。

『関を強引に破ろうとは、やってくれる……貴様らが噂の反乱軍、ツヴェルフレギオンエンゲルだな?』

すでに彼らに取っては最悪の印象です。ここから状況を覆すのは困難でしょう。
立ち上がったルェルルは、ほっぺに疑問符を浮かべながら聖騎士アグラヴェインに聞き返しました。

「つぶるふえぎんげる?ってなーに?」

どうやら、ルェルルはツヴェルフレギオンエンゲルも忘れているようでした。
これなら嘘感知や、邪悪感知の魔法を使われても安心です。

『これだけの武器を持った集団が、まさかピクニックに行くと言うわけでもあるまい?
 ましてや今の国勢で……な。まあいい、まずは此方に来てもらおうか』

反乱軍は全員が外に連れ出されてしまいました。
そこには、神を描いた石板がたくさん置かれています。

『このイコン(聖象)群を踏んで貰おう』

「いーよお!」

ルェルルは石板の上を飛びはねます。凸棒みたいな形の石板も遠慮なく。
151 :ルェルル=ルュル ルルゥ ◆mMGaLMOXkw [sage]:2011/10/13(木) 00:43:23.33 0
>>149
>――神殿の扉を開く四つの鍵を、戦の中で見いだしなさい。
>かーくんを封印し世界のごちゃごちゃを減らし、
>落ち着いてごはんを食べられるようにしましょうね」

「あっ……!はやく鍵を見つけないと、かーくんがご飯をごちゃごちゃにしちゃう!」

バンバン凸棒みたいな形の石板を踏んでいる内に、ルェルルは思い出しました。
さっきの乗り物の中で、名も知られぬ整頓の神の声が聞こえたことを。
そして半年前の出来事やローゼソのことも。

『ん、どうした? さては、やはり貴様……ツヴェルフレギオンエンゲルなのか?』

アグラヴェインが不審を感じて、ルェルルに近寄って質問して来ました。
聞かれたルェルルは、にっこり笑顔で答えます。

「うん、つべふえんげるだよ!」
152ローゼソ[sage]:2011/10/13(木) 23:13:06.29 0
>149
「むにゃ……」
直方体の乗り物での移動中、お告げの夢を見ました。
4つの鍵のうち1つはすでに手に入れていますが、どれに当たるのかは分かりません。
1つはノアルスイユ伯爵が持っていて、あとの2つはまだ所在不明です。

>150-151
>『このイコン(聖象)群を踏んで貰おう』
>「いーよお!」
「それで信じてもらえるの? お安い御用だ!」
ローゼソもルェルルと同じく、石板の上を何食わぬ顔で走り回ります。

>「あっ……!はやく鍵を見つけないと、かーくんがご飯をごちゃごちゃにしちゃう!」
>『ん、どうした? さては、やはり貴様……ツヴェルフレギオンエンゲルなのか?』

ルェルルが、いらない事を思いだしてしまったようです。

>「うん、つべふえんげるだよ!」

絶体絶命のピンチです。ローゼソが、とっさにある作戦を思い付きました。
「ルゥ! そんな事を言ってはいけないよ! ……失礼いたしました。この者は見ての通り幼女。
面白がって不謹慎な事を口走っただけです。信じられないならこの者に嘘感知の魔法をかけてみてください」

『良かろう、かけてやろう。 ウソ・カンチ!』
アグラヴェインはローゼソの頼みを聞き入れ、ルェルルに嘘感知の魔法を駆けました。結果は嘘と出るでしょう。
ルェルル達は、【ツヴェルフレギオンエンゲル】であって、【つべふえんげる】ではないからです。
153ルェルル=ルュル ルルゥ ◆mMGaLMOXkw [sage]:2011/10/14(金) 18:40:16.95 0
>>152
>「ルゥ! そんな事を言ってはいけないよ! ……失礼いたしました。この者は見ての通り幼女。
>面白がって不謹慎な事を口走っただけです。信じられないならこの者に嘘感知の魔法をかけてみてください」

嘘感知の魔法とは嘘を見破る魔法。
ローゼソはルェルルが嘘を吐いてないか、聖騎士たちに魔法を使って調べるように提案をしました。

>『良かろう、かけてやろう。 ウソ・カンチ!』

アグラヴェインは魔術の技能所持者のようで魔法を使います。
しかし、ルェルルは“ツヴェルフレギオンエンゲル”と正しく言えなかっただけ。
別に嘘を吐こうとの意図は微塵もありません。
ぷーっと頬を膨らませて、ルォルルは自分が嘘つきと思われた事に抗議を始めます。
まなじりに涙を滲ませ、ローゼソのに幼女パンチをポカポカ浴びせながら。

「私、嘘なんかついてないもん!嘘ついてなーい!ついてなーいー!」

このルェルルの嘘を吐いてないと言う言葉からは、正しく嘘を吐いてないと言う結果が導かれました。
そして魔術が使えると言う事は、アグラヴェインも一般的な推理力と知性くらいは備えているでしょう。
当然ですが、ツベフエンゲルがツヴェルフレギオンエンゲルの略称であろうことは、すでに気づかれています。
アグラヴェインは子供に質問しても曖昧な答えしか返って来ないと判断して、次にローゼソに質問を向けました。

『見極めり……この子供の言う、嘘を吐いてない、という言葉は嘘では無い。
 ならば、自らがツベフエンゲルであるとの先程の言葉も嘘では無いのだろう。
 次は貴様に聞こうか……貴様はツヴェルフレギオンエンゲルだな?』

嘘感知の魔法は掛かったまま。嘘を答えれば嘘と判定されるでしょう。
背後の反乱軍の傭兵たちは一種即発の気配に備えて、鞘に手を掛けて見守ります。
154 : 忍法帖【Lv=2,xxxP】 [sage]:2011/10/14(金) 19:39:42.91 O
ファンタジーTRPGにクトゥルフ神話作品を取り入れるですよねー。
155ローゼソ[sage]:2011/10/15(土) 01:40:16.17 0
>153
>「私、嘘なんかついてないもん!嘘ついてなーい!ついてなーいー!」

あぁルェルルよ、君の頭の中には本当にメシの事しか入っていないのか!
と、ローゼソは心の中で頭を抱えます。

>『見極めり……この子供の言う、嘘を吐いてない、という言葉は嘘では無い。
 ならば、自らがツベフエンゲルであるとの先程の言葉も嘘では無いのだろう。
 次は貴様に聞こうか……貴様はツヴェルフレギオンエンゲルだな?』

ツベルフレギオンエンゲルをパロッたアイドルグループ【ツベフエンゲル】という設定で押し切ろうか。
それでは嘘と見抜かれてしまうが、これから本当にデビューするつもりで言ったらいけるだろうか。
色々考えている間に、頭から煙が出てきました。ローゼソは、ルェルルとは別の方向で馬鹿なのです。
やっぱりいざという時に頼りになるのは、神の加護です。

「信じて頂けませんか……。もはや問答など無粋! 漢なら! 黙って行動で示すのみ!
おおおおおおおおおおおおお!!」

雄たけびをあげながら、凸棒型の石板に向かって渾身の頭突きを放ちます。
時々忘れそうになりますが、ローゼソは地蔵です。石板は粉々に砕け散りました。

「こんなもの! 砕け散ってしまえ! やッ! はあッ! 」

続いて、旧神達の石板を次々とかち割っていきます。【こんなもの】は石板の事なので、この言葉に嘘はありません。
ですが、あまりやり過ぎると、元から馬鹿なのがさらに馬鹿になってしまいそうです。
156ホイミソ[sage]:2011/10/16(日) 20:57:35.33 0
> 次は貴様に聞こうか……貴様はツヴェルフレギオンエンゲルだな?』

「イエスイエス。
そういえば イエス・キリストっていう ふるきかみさま は
やすアパート で バカンスちゅう だってね」

実はローゼソの後ろをついて来ていたホイミスライムは
一人前気取りでさっきから一生懸命答えていたのですが、
悲しいかな聖騎士はスライム属の言う事など聞いてはくれません。
もっとも、ホイミソはツヴェルフレギオンエンゲルに入れて貰ってはいないので
ウソ・カンチには反応したかもしれませんが。

そうこうしているうちに、ローゼソが頭で石板を壊し始めました。

「ホイミ!?ローゼソ、ホイミする!?ねぇ!ホイミ!ホイミする!?」

ホイミソは大興奮ですが、例によってローゼソは
頭から血を流しながらも少しも弱る気配なく石板を壊し続けます。

そんなローゼソの様子に、反乱軍の傭兵達が怯えた様子でアグラヴェインや騎士達を取り囲みます。
「うっそーなにあれやだ恐い」
と目をうるうるさせて後ろに回ったり、
「化け物よっ!助けて!」
と腰に取りすがったり。
また他の傭兵達は
「に、逃げなきゃ」
とよろめきながら関所に向かい、
「お願い、あたしたちを街に入れて!!」
と扉の前で泣き叫び始めました。
ローゼソ達を囮?にして先に進むつもりのようです。
157 :ルェルル=ルュル ルルゥ ◆mMGaLMOXkw [sage]:2011/10/17(月) 00:05:45.64 0
>>155-156
アグラヴェインに問われると、ローゼソは突然叫び声を上げながら石板に頭突きを始めました。
ガンガン!ズガァン!と、周囲には採掘場かと錯覚するような打突音が響きます。
魔法での判定を免れようというつもりでの、ローゼソの捨て身の行動でした。

>「こんなもの! 砕け散ってしまえ! やッ! はあッ! 」

無数の石板もローゼソの頭突きで粉々。
聖騎士たちも予測の範疇を超えた行動に、彼女の気が触れているのかと訝しんでいる様子です。

『こいつは大丈夫なのか……見た所、悪魔憑きでもないようだが狂者なのか?
 ならば、気が触れた者を相手しても仕方ない。別の者に訊くとしよう。
 そこのお前、お前はツヴェルフレギオンエンゲルか?』

アグラヴェインが傭兵の一人に訊くと、ロリータに雇われた傭兵は可哀そうな人を見る目でローゼソを見て首を振ります。
張り切っているのは、回復呪文を唱えたそうなホイミソだけ。
他の傭兵たちは、ローゼソの乱心に怯えた様子であるかのように口々に叫びました。

>「お願い、あたしたちを街に入れて!!」

アグラヴェインの嘘を鑑定する魔法を使いましたが、傭兵たちが旧き神の信徒であるとの結果を検出できません。
ロリータ傘下の傭兵たちは、ツヴェルフレギオンエンゲルではありませんでしたから。
嘘の鑑定をするなら反乱軍か?と聞くべきだったのですが、奇矯な行動に面喰ったのか、やや頭の血の巡りが悪かったようです。
アグラヴェインは顎に手を当て、この胡散臭い者たちをどう扱ったものか、迷いながら言いました。

『旧き神の信徒ではないか、との疑惑はひとまず置くとしよう。
 されど、この人数の武装集団は尋常ではない。それはどういうわけだ?』

その質問にはルェルルが元気よく手を上げて答えます。

「んーと、ご飯を食べたいからー……テルピャー行くの!」

『……この時勢に食を得に? 確かに嘘ではないようだが……。ならば傭兵志願者か。
 現在このテルピアでは厳しい食料制限を敷いている。
 たかが狂人一人に取り乱すような頼り無い傭兵たちが、満足に食べられる職を得られるかは分からんが、まあ良い。行け。
 まさか、こんな連中が神の使徒と言うわけでもあるまいしな……』

聖騎士たちは薄汚い野良犬を見る目。
信仰に生きる彼らにとっては、お金で動く傭兵風情などそんな扱いです。

「じゃあ、テルピャーに出発だねー!」

関が開けられると、ルェルルは傭兵たちと一緒に先に進みます。
傭兵団はアグラヴェインの追及を何とか切り抜けました。
次に会ったら、まんまと出し抜かれた事に怒り狂って襲いかかって来るかもしれませんが、この場は切り抜けました。
直方体の乗り物は激突して壊れてしまったので、道中は徒歩になりそうです。
158ローゼソ[sage]:2011/10/17(月) 22:44:42.65 0
>156-167
>「ホイミ!?ローゼソ、ホイミする!?ねぇ!ホイミ!ホイミする!?」

はい
うん
→イエス

選択肢にいいえはないようです。
ローゼソはニヤリと笑いながら小声で答えます。

「イエスイエス。
そういえばイエスっていう旧き神様はブッダっていう旧き神様と仲良しなんだってね。
見てごらん、作戦成功だよ」

傭兵達は大混乱。聖騎士達も予想外の事態に動揺している様子です。

>『旧き神の信徒ではないか、との疑惑はひとまず置くとしよう。
 されど、この人数の武装集団は尋常ではない。それはどういうわけだ?』

>「んーと、ご飯を食べたいからー……テルピャー行くの!」

今度はルェルルは賢明な答えを返しました。

>「じゃあ、テルピャーに出発だねー!」

一時はかなり危ないかと思われましたが、何とか関所越えに成功です。

【( ・∀・)テルピア街道】
テルピア街道――テルピアの主都へと続く長い街道です。一行は、そこを2列に並んで進んでいきます。
神の加護を受けている事が明らかになったローゼソとルェルルは、壁役という事で先頭にされてしまいました。
地蔵式壁と移動式壁です。
そうしてしばらく進んでいくと、後ろから、馬が走る音と荷馬車の車輪の音が迫ってきました。

『邪魔だ貴様らあ! 道を開けろ! ついでに幼女がいたら差し出せえ!』

御者台に座った見るからにガラの悪そうなヒゲオヤジが、怒鳴り声をあげます。
荷の中には幼女が大勢乗せられているのでしょうか。

『幼女狩りの一団よ!』

ロリータが警告の声を上げました。
それを受けたローゼソが、慌ててルェルルを後ろの茂みに隠れるように促します。

「ルゥ、隠れて!」

ヒゲオヤジが、一団を舐めるように眺めまわします。

『今回は真性の幼女のみを集めるようにとのお達しだ。
ふーむ、見たところトウがたったババアばかりのようだなあ』
159ルェルル=ルュル ルルゥ ◆mMGaLMOXkw [sage]:2011/10/18(火) 23:00:15.06 0
>>158
傭兵団は少し風が冷たくなってきた街道をてくてく歩きます。
秋風の中には小さな蹄と車輪の音。それは次第に大きくなっていきました。
ざわめく傭兵たちの声を聞くと、どうやらグリンウッド村で逃れた奴隷商が追い付いてきたようです。

>「ルゥ、隠れて!」

ローゼソが幼女を茂みに押し込みながら言いました。
彼らの恐ろしさは骨身に沁みているので、慌ててルェルルは茂みに隠れて目も耳も塞ぎました。
また捕まって、げんこつせんべいを食べさせられては堪りませんから。
ですが小さな細い足は、茂みから突き出たまま。頭隠して尻隠さず。
奴隷商人は傭兵団の列を左右に押し広げて進み、彼女たちの品定めをして失礼な事を言い始めます。

>『今回は真性の幼女のみを集めるようにとのお達しだ。
>ふーむ、見たところトウがたったババアばかりのようだなあ』

こんな事を言われれば傭兵団も怒り心頭。
口々にぶーぶーと聞くに耐えない罵詈雑言を言い始めます。

『自分だってジジイのくせに、なーんて失礼な奴なの?
 どうせ自分に自信が無いから、扱いやすい幼女に走るんでしょ?』

『ハッ、その吹き出ものだけの顔!秋なのに春の病?ついでに頭の中も春だったりして?
 治したいなら、良い薬草を教えてあげよっかぁ~?』

「へくちゅっ……! ロゼそ、なんだか寒いね」

『領主の威光で威張り腐ってるだけの飼い犬のくせに。
 用が無いなら、さっさと飼い主の所に行きなさいよ!』

『我々は傭兵志願者です。無礼が過ぎるなら報酬が安くとも貴国の敵に加担しても良いのですが?』

『ぺっぺっ!ババーで悪かったわね!嫁の貰い手はないけどアンタみたいのだけはお断りよ!』

海千山千の奴隷商人は、罵りの嵐にも慣れた様子でした。
飛び交う罵倒の中を、どこ吹く風と言った感じで悠々と馬車を進めます。
傭兵の中には幼女が居なので、さっさと次の村にでも行くつもりなのでしょう。
160ローゼソ[sage]:2011/10/19(水) 21:51:33.09 0
>159
傭兵達は、ババア呼ばわりに罵詈雑言で応戦しますが、攫われる位ならババアで結構と思うローゼソでした。
半年前は少女や美少年もついでに攫われていましたが、領主の選り好みの幅が狭まったようです。
馬車が、最前列のローゼソの前にやってきます。

『なんだ、ヤローが一匹混ざってやがる。ババア共のお守り役か?
むっ? 貴様の後ろに隠れているのは何だ? その足の細さ、さては幼女だな、出てこい!』

「畏れ多くもこの者もヤローでございます。内気で人見知りな物で、こうして顔を隠しておるのでございます」

『信用ならん。引っ張り出せ!』

「分かりました。出てくるように説得いたしましょう」

ローゼソは、ごそごそと茂みの中に上半身を突っ込み、コスプレ技能を駆使します。
自分の外套を脱いで、洗濯バサミで上げをしてルェルルに着せます。
金髪ボブの美幼児の完成です。

『ぬう……実に惜しい。ヤローでさえなければまたとない逸材なのだが……』

ヒゲオヤジはすっかり騙されて、心底残念そうな顔をしています。
161ルェルル=ルュル ルルゥ ◆mMGaLMOXkw [sage]:2011/10/21(金) 19:34:30.41 0
>>160
奴隷商人は、茂みから突き出したルェルルの足に気付いたようでした。
ローゼソは茂みに隠れているのは男であると誤魔化しますが、もちろんそれだけでは相手も信じません。
訝しげな目で睨んだ奴隷商人が、配下に向かって、引っ張りだせ!などと命じ始めます。
奴隷商人を取り巻く四人の用心棒はいずれも屈強な大男。
彼らは腕をぽきぽき鳴らしながら、足を踏み鳴らして近寄って来ました。

>「分かりました。出てくるように説得いたしましょう」

相手の気を逸らしたローゼソが、素早く茂みの中に入ってルェルルの服装に手を加えます。
出来あがるのは、なんとなく人間の男の子っぽい格好。

「もう出てっていーの?」

ローゼソに促がされてルェルルが姿を現すと、それを見た奴隷商人は感嘆の声を上げて言いました。

>『ぬう……実に惜しい。ヤローでさえなければまたとない逸材なのだが……』

幼女でないとの説明を真に受けた奴隷商人は、荷馬車へと戻ると幌を捲って中の幼女たちに乱暴に言い放ちます。

『残念だったな。お仲間は増えんようだぞ。
 さて……夜までには領主様の館に着かんといかんから、あんなゴロツキどもに関わってはいられん。
 お前たちも痛い目に遭いたくなかったら、おかしな事は考えるんじゃないぞ』

奴隷商の姿を見ると、捕まった不幸な幼女たちが暗い顔に涙をいっぱい溜め、口々に哀訴しました。
ですが、人攫いの無慈悲な心を動かすことはできません。
奴隷商人は馬車を動かすべく御者台に戻って馬に鞭を入れます。

「ダ~メ~!離したげてー!」

動き出した馬車の御者台には、奴隷商人に続いてルェルルも乗り込んでいました。
奴隷商人の裾を掴んで、鞭を持つ手に取り縋って、ルェルルは馬を御するのを邪魔します。
きっと彼女たちも、捕まってげんこつせんべいを食べさせられるに違いない。
単純にそんな事でも考えてしまったのでしょう。

『何をするかっ!離せ!糞餓鬼が!』

ルェルルと奴隷商人が揉み合っていると、異変に気付いた四人の用心棒たちが、わらわら集まって来ます。
手には大バサミや鎖鎌。ようやくの出番とばかりに無体な真似をするつもりのようでした。
162ローゼソ[sage]:2011/10/22(土) 22:30:53.09 0
>161
>「ダ~メ~!離したげてー!」

「ルゥ! 今は先を急ぐんだ!」

ローゼソの制止を振り切り、ルェルルは奴隷商人を妨害します。

>『何をするかっ!離せ!糞餓鬼が!』

案の定、用心棒達が集まってきました。
旅が始まって以来のガチバトルのはじまりです。

「お前らなんてボク一人で十分だ! まとめてかかってきな!」

ローゼソが4人組の用心棒を挑発すると、用心棒達は素直にまとめてかかってきました。

『ぐへへ、死ねえ!』

「防御を制する者が戦闘を制す! 地蔵流奥義――アストロン」

ローゼソが呪文を唱えると、全身が鋼鉄の銅像になってしまいました。
金属音が響き、振るわれたオオバサミや鎖鎌が跳ね返されます。
ここまではいいのですが、銅像になっている間は、自分も行動する事が出来ません。
それをいい事に、用心棒達はケチくさい考えを起こしました。

『この像、持って行って後で売らないか? いい値がつくぞ』

『よし、そっち側を持て。ふんっ! ……重くて持ちあがらん!』

『ぐぎゃっ、腰があ!』

用心棒達は隙だらけです。
163ルェルル=ルュル ルルゥ ◆mMGaLMOXkw [sage]:2011/10/24(月) 04:35:27.26 0
>>162
ローゼンは奴隷商が抱える用心棒たちを目に捉えると、謎の呪文を唱え始めます。

>「防御を制する者が戦闘を制す! 地蔵流奥義――アストロン」

呪文は魔法的な効果を現して、たちまちローゼソの姿を鋼鉄の像に変えてしまいました。
試しにルェルルが軽く叩いてみると、金属の像が澄んだ音を鳴らします。
これなら、魔法が効いている間は誰にも傷を付けられる事は無いでしょう。

「ロゼそが、堅くなって動かなくなったよぉ……サナギになったのかなぁ」

魔法の知識が無いルェルルは、奇異な目で鋼鉄化したローゼソを見ています。
用心棒たちはと言うと、ローゼソの像を売り払らおうと目論み、数人がかりで持ち上げようとしていました。
その日の食い扶持にも困る底辺の生活が、無知な用心棒たちの目を完全に曇らせていたに違いありません。
少しでも知識が有れば、魔術の変化など一時的なものだと気付くはずなのですから。
奴隷商人側の混乱を好機と見たのか、傭兵団を率いるロリータは疑問形で配下に攻撃を命じます。

『これは奴隷解放の戦いですよね? 捕らわれの者たちを放置することはできませんよね?
 なので皆さん、彼らに掛かって行って欲しい……かなー?』

『はいはーい、いえっさ!さっ、アタシの矢をハートに受けたい奴は前に出ろ!』

すぐさま傭兵団の弓使い、赤髪のフロレットが番えた矢を射かけます。
怯んだ四人の用心棒たちに、数で勝る傭兵団が一斉に向かっていきました。
相手はいずれも屈強そうですが、傭兵団は全部で103人と、数では圧倒的に勝ります。
重い鉄鎧と盾を装備する槍使いのレマは、足を薙ぎ払って、倒れた用心棒の首に刃先を突きつけました。
剣士アデライドが挑発的な笑みを浮かべて斬りかかり、二槍使いのセルシャは能面の表情で敵の背に槍を突き刺します。
彼女たちは傭兵なので、一対多数は卑怯と言う観念など持ち合わせていないようでした。

結果を見れば、出費惜しさに安い用心棒を少人数しか雇っていなかったのは、明らかに間違いだった言えるでしょう。
今までは領主の権威という盾が奴隷商人を守っていましたが、テルピアの体制打破を企む反乱軍には通用しません。
従って……あっという間に数の暴力が勝利しました。

「みんな、早く出てぇー!」

荷馬車の帆の内より、転がる鈴の声が上がります。
ルェルルは何をしていたのかと言うと、捕らわれの幼女たちを解放していました。
その中には幼女族もいれば、ホビットやフェアリーやグラスランナーもおり、人間の女の子もいます。
彼女たちはテルピア領主の放蕩に供されるべく、領主の館に運ばれようとしていたのでした。
自由を奪う重い枷が解かれると、不安げな幼女たちの顔も安堵で柔らかくなって行きます。
さて、荷物を空にした荷台を見ると、数日も歩き通しで足が疲れていたルェルルは、無性に乗り物が恋しくなってしまいました。

「疲れたよぉ……この乗り物に乗ったらいけないのかなぁ?」

『この乗り物に? 奴隷商の荷馬車ですか。領主の館に近づくにはまたとない代物ではあります。
 幼女の代わりに傭兵を満載した荷馬車……この奴隷商人を利用しなければ無理な作戦でしょう』

二槍使いのセルシャと呼ばれる傭兵が、引き摺って来た奴隷商人に冷たい氷の一瞥を投げつけて言いました。
後ろ手に縛られる奴隷商人は、何でも協力するから命だけは助けてくれと、必至に命乞いしてします。
さすがに馬車も100人は乗せられないので、荷馬車を利用するなら戦力が分散されることになるでしょう。
ルェルルは「乗れたら楽だねー」とか「ずっと歩くとぉ、疲れるねー」などと囁き、荷馬車に乗りたそうな雰囲気を醸し出します。
164ローゼソ[sage]:2011/10/26(水) 01:03:38.77 0
>163
傭兵団が徒党を組んで用心棒に向かっていきます。
多勢に無勢、たった4人の用心棒はひとたまりもありません。
2人パーティーだとばかり思っていたら、103人パーティーという規格外の大所帯でした。
1ターン目は様子を見ていたようです。

>「みんな、早く出てぇー!」

ルェルルの手によって、幼女達が解放されます。

>「疲れたよぉ……この乗り物に乗ったらいけないのかなぁ?」

「名案だ! ルゥ!」

そうしている間にローゼソの硬化の魔法がとけました。
またしてもローゼソは、ルェルルの適格な提案に感心しています。

>『この乗り物に? 奴隷商の荷馬車ですか。領主の館に近づくにはまたとない代物ではあります。
 幼女の代わりに傭兵を満載した荷馬車……この奴隷商人を利用しなければ無理な作戦でしょう』

ルェルルも同じく、ローゼソも乗りたそうな雰囲気を醸し出しています。
そこで、大義名分の元に堂々と荷馬車に乗れる案を編み出しました。

「まずはいったん戦力を二つに分散させる。
半分は幼女達をロリータ領まで送り届け、もう半分は荷馬車に乗って一足先に行く、というのはどうだろう」

荷馬車の定員と、幼女達の安全を同時に確保する一石二鳥の作戦です。
これでいくなら、神の加護を持つルェルルとローゼソは、当然先行部隊になるでしょう。
165 :ホイミソ[sage]:2011/10/26(水) 23:16:05.80 0
>「まずはいったん戦力を二つに分散させる。

「さんせいさんせい!そうしようそうしよう!
100にんで ダンジョンアタックすると、
しゅじんこうパーティーしか のこらない っていうしね!」

触手を何本か挙げてくるくる回りながらホイミソが言いました。
なお、ダンジョンアタックの法則については、
100人を半分にしたところであまり変わらない気がするのは内緒です。

「ローゼソは商人の手伝いのフリした見張り、ルェルルは普通に商品のフリをすれば完璧だね!」
ホイミソは更に、とてもありがちな提案をしました。

因みにホイミスライムはふよふよと浮いているし、
いざとなればボールやローゼソのバッグに入る事もできるので、
荷馬車の定員にはあんまり関係なさそうです。
166ルェルル=ルュル ルルゥ ◆mMGaLMOXkw [sage]:2011/10/27(木) 05:04:26.28 0
【( ・∀・) ブランレイク市】

>>164
ローゼソは馬車を前にすると、今後の方針を提案します。

>「まずはいったん戦力を二つに分散させる。
>半分は幼女達をロリータ領まで送り届け、もう半分は荷馬車に乗って一足先に行く、というのはどうだろう」

「私、馬車乗るー!乗る乗るー!」

ルェルルはつま先立ちになって、勢い良く手を上げました。
もちろん、手を高く上げた所でルェルルの意見が通り易くなるわけではありません。
ロリータが傭兵団の方針を決めたのは、ホイミソが練り上げた具体的な作戦を聞いてからです。

>「ローゼソは商人の手伝いのフリした見張り、ルェルルは普通に商品のフリをすれば完璧だね!」

「商品のフリするー!」

ルェルルは、さっそく荷台に駆け上がって馬車へと乗り込みます。
ホイミソの作戦を聞いたロリータは、ふぅんと感心した様子を見せると、部隊を分けるべく指示を出し始めました。

『そうねえ、それじゃ団を半分に分けましょっか?
 馬車には20人くらい乗れそうだから、幼く見えそうな者を中心に乗せて、後の30人は徒歩の隊を組む?』

こうして方針の決まった部隊が、それぞれに動き始めます。
傭兵を満載した馬車部隊は、テルピア第二の都市ブランレイク市に。
解放した幼女たちと、捕まえた用心棒たちは護衛の50人がロリータ領に運びます。

街道を進んだ傭兵団は、やがて湖の畔で扇状に広がる都市ブランレイクに辿り着きました。
非生産者の大集団を抱えた上に輸送まで断たれ、糧食に窮したノアルスイユは、この地方都市に宮廷を移していたのです。
新たに行政の中心地となったブランレイク市には、食料を自給する能力はありましたが、市壁が無いので防御に適しません。
この土地まで追い込めた事は、半年に渡る兵糧攻めの成果と言ってもよいでしょう。
傭兵団が街の入り口近くに設けられた詰所へ辿り着くと、奴隷商人と兵士がやり取りを始めます。

『へへっ、通らせてもらいますぜ』

『今日は、いつになく傭兵が多いな……?』

『最近は領主様に牙を剥こうって奴らが多いんでね。まあ用心のためでさあ』

『そうか。まあ念の為に荷改めはさせてもらおう』

兵士が幌を開け、幼女に扮した傭兵たちとルェルルを点検します。
領主ほど堕落していない兵士は、商品の微妙な違いには気付かないようでした。
その間、傭兵のセルシャが短槍で奴隷商人の背中をチクチク突きますので、奴隷商人も変な気は起こせないでしょう。

『特に異常は無いな……行っていいぞ』

気だるそうな兵士の声を背にして、荷馬車と傭兵団が街の中に入り込みます。
街の中に在るのは真教の教会、城館、菜園や貯蔵庫、市場、宿屋に酒場に家々など。
最初に向かうのは、奴隷商が少しでも商品を見目良くして、高く買ってもらおうと浴場を使う“狼の顎亭”。
53人の傭兵たちは、この宿屋の一室にぎっしり集まると作戦会議を始めます。

『う~ん……テルピア反乱軍にも蜂起してもらわないといけない?
 単独で制圧した方が、後で得られる利権も大きいんじゃないかな?かな?』

領主として、ノアルスイユ後の事まで考えるロリータは、少しだけ悪そうな顔になっていました。
ルェルルはと言うと、傭兵たちに潰されそうになっています。

「狭いよぉ……むぎゅっ」
167ローゼソ[sage]:2011/10/29(土) 12:00:23.29 0
>166
>『う~ん……テルピア反乱軍にも蜂起してもらわないといけない?
 単独で制圧した方が、後で得られる利権も大きいんじゃないかな?かな?』

これに対して、利権などに興味の無いローゼソが、忌憚無き意見を主張します。

「領主様、これはテルピアを圧政から解放するための聖戦。 
利権よりも確実性を優先すべきです!」

『そーだそーだ!』

『しかし、反乱軍が革命に成功しても新政権がすぐに瓦解、という話はよく聞く。
我々がテルピアを打倒したという形でロリータ領にしてしまった方が住人にとってもいいのではないか?』

『あーでもないこーでもない』

大論戦に発展しますが、そう長くは持ちません。
なぜなら部屋が狭くて、押しつぶされそうな者が出始めたからです。

>「狭いよぉ……むぎゅっ」

「ルゥ! 領主様、このままでは圧死者が出てしまいます!」

『う~ん……じゃあ反乱軍のアジトに、私たちが決起する旨の手紙を置いてきましょう?
それに合わせて決起するかどうかは彼らに任せるというのはどうかな? かな?』

ルェルルを見かねた議長のロリータが、強引に話をまとめました。

『反乱軍のアジトなら、1階カウンター裏の隠し扉ですぜ』

奴隷商人が、反乱軍のアジトの場所を教えてくれました。
ここまで来たらいっそテルピア解放に協力してやろうという気になったのでしょうか。
それにしても奴隷商御用達の店が、反乱軍に場所を貸しているなんて、節操がないことです。
ロリータが、ファンシーな便箋セットにキラキラのペンで手紙を書いて、ルェルルとローゼソに渡します。

『メッセンジャーは神の使徒達につとめてもらいましょう。
反乱軍のアジトにこれを持って行ってくれるかな? かな?』
168 :名無しになりきれ:2011/10/30(日) 17:52:15.59 0
え?
169ルェルル=ルュル ルルゥ 【大吉】 ◆mMGaLMOXkw [sage]:2011/11/01(火) 00:05:19.21 0
【( ・∀・) テルピア反乱軍“月の女神”のアジト?】

>>167-168
紛糾する議論の結果は、反乱軍に決起するかを委ねるというものでした。
この話し合いが終わると、奴隷商人が傭兵団に向かって反乱軍のアジトの場所を述べます。

>『反乱軍のアジトなら、1階カウンター裏の隠し扉ですぜ』

なぜ、奴隷商人が反乱軍のアジトを知りながら領主に報告せずにいたのか。
普通に考えれば不自然極まりない話でした。
傭兵の何人かも疑問に思ったようで、一人の口から「え?」と言う疑問符が漏れるや、一斉に彼を見ます。
奴隷商は、旅先で知ったから報告する時間が無かったなどと、弁明を始めますが、一度火の付いた不審は消えません。
二槍使いのセルシャは、奴隷商を槍の先端でチクチク突き始めながら言いました。

『この男が反乱軍の場所を教えるのは、幾つかの可能性があります。
 その中で最悪の可能性が、反体制の人間をおびき寄せる囮組織や罠の可能性です』

その言葉に少し考え込む様子を見せ、ロリータは手紙を書き始めます。
すぐさま書き上げられた手紙は、野菜形の封蝋印を押されて綺麗な封筒に収まり、ルェルルに手渡されました。

>『メッセンジャーは神の使徒達につとめてもらいましょう。
>反乱軍のアジトにこれを持って行ってくれるかな? かな?』

ロリータはテルピア解放軍のリーダーにして、あわよくば利権の収奪を目論む他国の領主。
自ら赴かないのは危険を考えての事でしょう。
そんな事も露知らず、ルェルルは手紙を持って一階に駆けおります。

「いってきまーす」

カウンターに入り込もうとすると、さっそく酒場のマスターに止められました。

「お手紙もってきたの!入ーれーてー」

マスターは人差し指を口に当てて静かにするよう促し、すばやく扉を開けるとルェルルを中に押し込みます。
扉の先には階段があり、そこを降りると地下には広々とした空間がありました。
薄暗いランプの下では何人もの男が剣を磨いたり、紫煙を燻らせて吐き出したり、お酒を飲んだりしています。
ケフンと咳き込んだルェルルは、彼らのただ中に走り寄って手紙を差し出しました。

「お手紙もってきたよぉ!」

彼らが何者なのか、ここは吉凶が試されそうです。
170ローゼソ[sage]:2011/11/01(火) 23:37:00.45 0
>169
>『この男が反乱軍の場所を教えるのは、幾つかの可能性があります。
 その中で最悪の可能性が、反体制の人間をおびき寄せる囮組織や罠の可能性です』

セルシャの最悪の予測に対して、ローゼソは性善説全開の予測を立てます。

「内心では奴隷商人なんてやめたいと思いつつも生活のためにやめられなかったんだよね。
そこをボク達にやられてふんぎりがついた、違う?」

『そ、そうなんだ。家には病気の娘がいて薬代を稼がねばならず……』

囮組織か本物か、真実は果たしてどちらでしょうか。

>「お手紙もってきたよぉ!」

広々とした空間の真ん中の方に走り込むと、ルーレットやカードゲームが行われていました。
派手な服を着た男が、煙草を燻らせながら手紙を読みます。

『おいおい嬢ちゃん、ここは“ツキの女神”。ギャンブラー達の地下秘密基地だ』

幸い囮組織でもありませんでしたが、本物の月の女神とも少し違ったようです。
読みが一緒なので、間違えるのも無理はありません。
酒瓶片手に持った男が手紙を覗き込みます。

『フフフ、ギャンブラーの血が騒ぐぜ ここ最近退屈していたところだ。
外せば討ち死に、大当たりなら領主も夢じゃない、こんなドデカいギャンブルが他にあるか?』

何はともあれ手紙を渡したので任務は完了です。
盛り上がり始めるギャンブラー達をよそに、ローゼソはルェルルに声をかけます。

「よしっ、手紙を渡し終えた事だし帰ろうか!」
171ルェルル=ルュル ルルゥ!omikuji ◆mMGaLMOXkw [sage]:2011/11/04(金) 23:54:00.53 0
>>170
地下室では様々な種類の賭博が行われていました。
賭けごとを奨励しない真教を国教とするテルピア統治下では、全ての賭けごとは非合法。
賭博に興じる者は、盗賊まがいのアウトローと見なされています。
そんな居場所を追われた賭博師たちが行きついたのが、この地下組織でした。
ルェルルの手紙を受け取った賭博師の頭領らしき男は、煙草の煙で輪っかを作りながら答えます。

>『フフフ、ギャンブラーの血が騒ぐぜ ここ最近退屈していたところだ。
>外せば討ち死に、大当たりなら領主も夢じゃない、こんなドデカいギャンブルが他にあるか?』

一段落と見たのか、ローゼソはルェルルの手を引いて言いました。

>「よしっ、手紙を渡し終えた事だし帰ろうか!」

「うぅー……ん。あっ、カギ知らなぁーい?カギカギー!」

ルェルルは、聖典の納められた神殿の鍵を探していたことを運良く思い出しました。
賭博師の頭領を物欲しげに見て、カギカギー!と叫びます。

『鍵、だと? 生憎だが俺の部屋の鍵を預けられるのは幸運の女神だけだ。
 そうだな……あと10年経ったら、お嬢ちゃんに鍵をやってもいいんだが』

賭博師の頭領には、曖昧模糊としたルェルルの言葉の意図が正確に伝わりませんでした。
どうやら、彼は自分の部屋の鍵を求められていると思ったようです。
それに、幼女族の寿命は10年きっかりなので、10年経った頃に鍵を渡されてもルェルルは生きていません。

「今ほしー……」

困った顔で服を掴むルェルルに、賭博師の頭領は細い顎を撫でまわしながら言います。

『ふん、そうだな……それでも鍵が欲しいってんなら、ギャンブルに勝てばくれてやってもいい。
 お前が、俺を討ち負かせる程の幸運の女神だってんなら、俺の女にしてやらぁ』

「やるやるぅ!」

すぐさまテーブルが片づけられると、ルェルルがダイスを手にします。
それを見た賭博師の頭領もニヤリと笑って、双四角錐台の形をしたダイスを手にしました。

『ダイス勝負か、良いだろう。10面体のダイスを振って出目の大きい方が勝ちだ』

賭博師の頭領が手を大げさに振って、ダイスをテーブルに転がします。
振られたダイスは転がらずに、滑りながら7の出目を出しました。
これは置きサイと呼ばれるダイスコントロールのテクニック。
ですが、上手く行われた置きサイを見破ることなど簡単にはできません。
イカサマに気付かないルェルルは、普通にダイスを振ります。

「うーんと……8か、9か、10が出れば私の勝ち!」
172 :ルェルル=ルュル ルルゥ ◆mMGaLMOXkw [sage]:2011/11/04(金) 23:56:24.97 0
ルェルルの手から離れたダイスが、テーブルを転がって止まりました。
出目は3、それを見た賭博師の頭領が含み笑いをします。

『悪いな、俺の勝ちだ』

「うん、鍵もらえないね……」

『なぁに、10年後にまた勝負してやらぁ。
 エイヴィス=ステイルメイト……俺の名だ。覚えとけ』

ルェルルは、しょんぼりと肩を落としながら地下室を出て行きます。
扉の外では数人の傭兵がカウンターのテーブルに着いて、様子を窺っていました。
いざという時には、地下室に踏み込む手筈だったのでしょう。
ルェルルは仕事帰りの労働者で混雑する一階を抜け、部屋の隅の階段から二階に上がって行きます。
負けたショックで、よく話を聞いていなかったのか、ロリータの待つ部屋に戻った頃には賭博師の名前は忘れていました。

『ご苦労さま、ちゃんと手紙は渡して来たよね?
 それじゃ、いよいよ領主の館に行く……?』

部屋で待ち構えていたロリータは、ルェルルが戻って来ると傭兵団に向かって問い掛けました。
傭兵団はおーっと、小さく掛け声を上げます。
やはり何処に誰がいるか分からない敵地なので、あまり大声では叫べなかったのでしょう。

「おー!」

ルェルルも部屋を出て行く傭兵団の後を付いて、階段を下りて行きました。
本当は何をするのか、よく分かっていないにも関わらず、流されるように馬ルェルルも車に乗り込みます。
石畳を踏んでゴトゴト揺れる馬車の行き先は、湖に面して果樹園に囲まれた荘園。
領主の館はその中に築かれています。

馬車の進む夕暮れの街には、肉や魚を焼く煙が漂っていました
料理の匂いは、幌の裾を捲って外を見ている幼女の鼻孔をくすぐり、涎をポトリポトリと垂らさせます。
石畳に涎の点々を付けながら、荷を乗せた馬車は領主の館に進んで行きました。
173 :ローゼソ[sage]:2011/11/05(土) 22:52:48.96 0
>171-172
ローゼソは、帰り際に、景品交換所に並んでいる景品に一通りに目を通します。
すると、鍵のようなものがありました。

「それは何の鍵?」

『これか? 頭領のとっておきのお宝だぜ。
なんでも、神の領域への扉を開くとか――。いつか幸運の女神が現れたら渡すらしいぜ』

一方、ルェルルは賭博師の頭領とダイス勝負に興じています。

「ルゥ、何遊んでんの。早く帰るよー」

>『なぁに、10年後にまた勝負してやらぁ。
 エイヴィス=ステイルメイト……俺の名だ。覚えとけ』

「エイヴィス=ステイルメイト……よし覚えた!」

ローゼソは、言われたとおりに名前を覚えました。
部屋に帰ると、いよいよ領主の館潜入作戦の始まりです。

>『ご苦労さま、ちゃんと手紙は渡して来たよね?
 それじゃ、いよいよ領主の館に行く……?』

一行は馬車に乗って、領主の館に向かいます。
馬車の中でひそひそ声の打ち合わせが始まります。

『腐っても神殿の鍵を持つ領主……戦闘力は未知数だ』

『いったん傅く振りをして寝込みを一斉に襲い掛かるのはどうかな? かな?』

『否、相手は歴戦のロリコン……正体を怪しまれる前に、逢い見えた瞬間にスピード勝負に限る』
174ローゼソ[sage]:2011/11/05(土) 22:53:51.51 0
【( ・∀・) ブランレイク市 領主の館】

馬車は、領主の館の豪華な門を潜っていきます。

『おお、ご苦労だった』

出迎えたのは、若く美しい青年。
彼は、奴隷商人に代金を渡し終えると、こういいました。

『出ておいで、僕の小鳥たち――』

傭兵達は、警戒しながら馬車から降ります。
青年は、流麗な仕草で礼をし、ウィンクを飛ばしました。

『お初にお目にかかる。私がノアルスイユ伯爵だ。よく来たぞ、我が妃達』

なんと、この青年がノアルスイユ伯爵でした。
見るからにいやらしいおっさんをイメージしていたローゼソは驚きますが、さらに驚くべきことが起こります。

『キャー! 伯爵様最高!』

『一生ついていきまするー!』

周囲から黄色い声が上がります。
会った瞬間に決起するとの予定でしたが、どうしたことでしょう。
あのセルシャですら、うっとりとした表情で伯爵を見つめています。
これこそが、領土中の幼女を傅かせる事を可能にしてきた魅了の術――伯爵の恐るべき能力です。
捕えらえた幼女達は、嫌々ではなく喜んで仕えているのでした。
神の加護があるせいか、ローゼソは術にかかりませんでしたが、こうなっては、戦闘力未知数の領主に刃向う訳にもいきません。

『メリー、我が妃達をご案内しておくれ』

『はっ』

ローゼソ達は、メイドによって、屋敷内に案内されてしまいます。
175ホイミソ[sage]:2011/11/07(月) 22:06:16.51 0
「このまま伯爵と仲良くなって、何かの機会に自慢の鍵を見せてもらえばいいんじゃない?」

ローゼソの陰に隠れて屋敷に移動しながら、
ホイミソは他人事だと思って適当なことを言いました。

そんな長期計画には向かないようですが・・・スレもメンバーも。
176ルェルル=ルュル ルルゥ ◆mMGaLMOXkw [sage]:2011/11/08(火) 02:04:25.06 0
【( ・∀・) 領主の屋敷】

>>174-175
傭兵を満載した馬車は、青紫に染まる夕暮れの街を進み、やがて領主の館へと到着します。
よく手入れのされた中庭で馬車を迎える青年こそが、ノアルスイユ伯爵でした。

>『お初にお目にかかる。私がノアルスイユ伯爵だ。よく来たぞ、我が妃達』

美貌の伯爵に微笑みかけられると、傭兵団が黄色い声を上げて次々に靡いて行きます。
奴隷商人までが、ごくりと唾を飲み込んでいました。
貴族は美しい妻を娶るのが常。時にはエルフのような美貌の種族を攫う事まであります。
この何代にも渡って紡がれた美の血統こそが、魅了の魔貌にまで高められた伯爵の美しさの要因なのでしょう。

「へくちっ!」

冷たい夜風に当たったルェルルは、くしゃみで目を閉じてしまいます。
気付けば、伯爵の姿は傭兵たちに取り巻かれて見えません。
不安げな表情のルェルルは、ローゼソに向かって言いました。

「お腹空いたね。ここでご飯食べられるのかなー……?」

指を咥えて夕食の心配をするルェルルを他所に、幼女に扮した傭兵団がメイドに連れて行かれます。
メイドも男装しているローゼソまでが、付いてくるとは思わなかったのでしょう。
ローゼソは何食わぬ顔で、群衆に紛れて屋敷の中へと入り込みます。

「待ってー!」

慌ててホイミソに駆け寄ると触手をぎゅっと握り、ルェルルは一団の最後尾を付いて行きました。
華美な装飾の廊下を歩いていると、ホイミソがひそひそ囁きます。

>「このまま伯爵と仲良くなって、何かの機会に自慢の鍵を見せてもらえばいいんじゃない?」

「あの人も鍵持ってるの?
 うーんと、そしたら仲良くなったら鍵見せてくれるよね。
 どーやったら、仲良くなれるのかなー……仲良く仲良く……ご飯!」

ルェルルは伯爵と仲良くなる方法として、手料理を振る舞うことを思い付きました。
列の先頭まで走ると、ふわりと膨らんだメイドのスカートを掴み、厨房に連れて行くようにせがみます。

「私、ご飯作る!ご飯ご飯ー!ご飯作れる場所に連れてってー!」

意気込んで騒ぐルェルルに、傭兵団の目付きが一様に鋭くなりました。
抜け駆け……彼女たちは、ルェルルの言葉をそう受け止めたようです。

『ふ、そうか。それでは彼女の手料理を楽しみにしていよう。
 大広間で行なわれる今宵の宴に、ぜひとも興を添えて欲しい。
 さあさ、皆も山とある指輪やドレスや髪飾りで、存分に身を飾り、贅を凝らすと良い。
 この館を大輪の花で飾っておくれ。私はそれを楽しみにして待っていよう』

そう言って手を打ち鳴らし、伯爵は大広間に向かって歩いていきました。
残された傭兵たちは、こぞって衣装室や、宝飾室、浴場などに向かっています。
ルェルルはと言うと、、はなまるハンバーグを作ろうと厨房に向かっていきました。
177 : 忍法帖【Lv=26,xxxPT】 [sage]:2011/11/08(火) 17:51:53.49 O
超究極特大瞬間即時加速架電粒子砲を使うですよねー。
178ローゼソ[sage]:2011/11/09(水) 00:48:48.92 0
>175
>「このまま伯爵と仲良くなって、何かの機会に自慢の鍵を見せてもらえばいいんじゃない?」

「相手は領土中の幼女を所有する強者、そう簡単に落ちるもんか。
でもこうなったらしばらく観察して伯爵の正体を探るのも面白そうだね」

>176
男装のローゼソも、どさくさに紛れて平然と入っていきます。
これだけ幼女がいれば、一人ぐらい美少年が混ざっていてもアクセントになっていいのかもしれません。

>「私、ご飯作る!ご飯ご飯ー!ご飯作れる場所に連れてってー!」

「自信満々で真っ黒焦げの煤を出してくる気がする……」

幼女一人にご飯を作らせるのは心配です。
ローゼソも、ルェルルと一緒に厨房に向かいます。

>117
厨房には、見た事も無い調理器具がたくさん並んでいました。
中に物を入れる事が出来るようになっている不思議な箱があります。

「見てルゥ、なんだろう」

「それは超究極特大瞬間即時加速架電粒子レンジといって
古代文明のオーバーテクノロジーの遺産です。
私が使ってもせいぜい食材が温められる程度ですが
人によって適合率が高ければ、材料を入れるだけで自動的に料理を作ってくれるそうですよ」

メイドの説明を聞いたローゼソは、早速使ってみる事にしました。
大きな直方体の箱からひき肉と卵を取り出し、いそいそとレンジの中に入れます。
179ルェルル=ルュル ルルゥ ◆mMGaLMOXkw [sage]:2011/11/11(金) 22:35:49.96 0
【( ・∀・) ノアルスイユ邸の厨房】

厨房での料理が始まります。
ルェルルはフライパンを手にして、とても気合が入っているようです。
捏ねたお肉をフライパンの上に乗せて、じゅうじゅう焼き始めました。
たちまち厨房には良い香りが立ち込め、味見と称したルェルルによって、ハンバーグの量が少なくなっていきます。

>「見てルゥ、なんだろう」

「なんだろね?」

ローゼソがよく分からない器具を発見すると、すぐさま料理長のメイドが機具の説明をします。
エプロンドレスに白いキャップで金髪を抑え、年の頃は20代前半と言ったところでしょうか。
彼女はローゼソの顔を見ると、酷く驚いた様子を見せます。

『貴方、何をしているんですか? 下賤な傭兵の分際で、事もあろうに屋敷の厨房まで入り込むとは、なんて図々しい!
 誰か!誰かいませんか!厨房に不審な者がおります!誰か!』

ローゼンに気付いた料理長は、なんて場違いな、と言わんばかりの声を上げて人を呼びました。
そもそも、貴族の館は見知らぬ人物の立ち入りを許しません。
攫った少女でもない、男装剣士のローゼソが普通に歩き回れば、当然ながら警戒されてしまうでしょう。
先に衣装室に向かって変装するなどの処置を取らなかった以上、対面すれば流石にメイドでも違和感に気付けます。
料理長は視線に研ぎ澄まされた包丁の鋭さを宿らせ、厨房の入り口を塞ぎました。
手に持つ包丁も同様に鋭く、近寄れば切りつけてくるかもしれません。
このまま近衛兵が来るまで厨房に居続ければ、ローゼソは捕まって牢屋に連れて行かれるでしょう。

「あっ、できたみたいだよぉ」

ルェルルが謎の機具を見ると、何がしかの料理が出来ているようです。
ですが、ローゼソの作った料理は領主の口に入る事などありません。
不審者の入った厨房は全ての食材が改めて点検されるので、ルェルルの料理も含めて全てがゴミ箱に捨てられるでしょう。
近視眼的な視野の幼女族のこと、最初から料理に毒や睡眠薬を盛るだけの知恵はありませんでしたが。
180ローゼソ[sage]:2011/11/13(日) 01:48:16.10 0
>179
>『貴方、何をしているんですか? 下賤な傭兵の分際で、事もあろうに屋敷の厨房まで入り込むとは、なんて図々しい!
 誰か!誰かいませんか!厨房に不審な者がおります!誰か!』

「えっ。さっきまで平然と黙認してたくせに今更気付いてんじゃねーよ!!
フツーに領主にわぁい!の趣味もあるんじゃないかと納得しかけてたよ!」

突然慌てた様子で騒ぎ始めた料理長に、ローゼソがツッコミを入れます。

>「あっ、できたみたいだよぉ」

「よし、開けてみよう」

『いけません、開けてはいけません!』

何故か必死に妨害する料理長を押しのけ、ローゼソは謎の器具を開けました。
その途端――

『コケコッコー!!』

頭が鶏で、胴体が牛というキメラ状の生物が飛び出してきました。
肉と卵が器具の中で、奇跡的な合成を起こしたようです。
もはや料理ではありませんが、踊り食いも考慮に入れれば一応料理と言えるかもしれません。

『ひぃいいいいいい!!』

謎の生物の鳴き声を聞いた料理長は、すっかり腰を抜かしています。
ローゼソは何食わぬ顔で謎の生物をなでながらルェルルに言いました。

「すごいものが出来たよ! 早速領主様に献上しよう!」
181ルェルル=ルュル ルルゥ ◆mMGaLMOXkw [sage]:2011/11/14(月) 07:35:18.07 0
>>180
先程の料理長の説明(>178)によれば、不思議な箱は自動で料理を作る物のはずでした。
ですが、美味しい料理の代わりに箱の中から現れたのはキメラ的な不気味な生物。
それを見た三人は三者三様の表情。
ルェルルの顔には、美味しそうな料理が出て来なくて、がっかりした感じが滲み出ています。
ローゼソは不気味なキメラを事も無げに撫でています。
料理長は悲鳴を上げて腰を抜かし、箱から出てきたキメラを怯えの表情で見つめていました。

>「すごいものが出来たよ! 早速領主様に献上しよう!」

得意げなローゼソが、そうルェルルに言いました。
ルェルルは料理の盛りつけの最中に、ちらっと不気味なキメラを見ると興味なさげな顔で言いました。

「私、そんなの食べたくないよぉ……」

ローゼソが作ったキメラは、ルェルルの食欲をそそらなかったようでした。
料理には見た目も重要なのです。

「できたぁー!こっちはとってもおいしそぉだよぉ!」

ルェルルは料理の技能を持っています。普通に食べられる物を作る事もできます。
そんなルェルルが完成させたのは、味見を繰り返して一口サイズになったハンバーグ。
お皿に乗せたハンバーグを手に、ルェルルは得意満面な顔で微笑みました。
キメラに怯える料理長を尻目に、両手でお皿を持った幼女は短い足を動かして廊下に出て行きます。

『こんな事……起こるはずがありません……ただの料理器具なのに……』

とてとて厨房を歩くキメラを見ながら呆然と呟く料理長。
その誰にともなく話しかけた言葉に、応える声がありました。

『ただの料理器具が暴走した原因は無秩序勢力の干渉デェス……無秩序の魔力……混沌の力……。
 その少年は……テルピアの民衆を煽動し、帝国の秩序を脅かし、我が主(しゅ)の権威を貶める異教徒デェス!』

突然厨房に入り込んだ妖精の連隊が、部屋を出ようとするキメラに鋭い槍で襲いかかります。
手のひら程の大きさの妖精の数は1…2…3…4…全部で4体。
小さな四つの槍はグサリとロースや腿や、その他の色んな部分に突き刺さりました。

『やはり、各所に監視の人形を置いといて正解でしたァ。
 ようやく網に掛かった獲物……逃がしませんよォ……旧き神の信徒サァあン?』

どうやら、この妖精たちはどこかから遠隔操作されている人形のようでした。
妖精から流れる粘りつくような女の声は、人形を操作している者の声なのでしょう。
キメラを仕留めると、妖精たちが厨房の天井を、床近くを、テーブルの上を駆け廻ります。
高速で動き回って空中に散開した妖精人形は、宙に留まって四方からローゼソに槍の穂先を向けてきます。

『神の定めし秩序を破り、混沌を齎すのは大罪なり。
 ですが、裁きの前に真教の異端審問官として問いまょう……少年、キミは混沌の神の信徒ですかァ?』

四体の妖精人形が、四つの口から同じ言葉で問いかけました。
そう言えば、ローゼソの周囲では物事を混沌に変える力が働いているような気もします。今のキメラ製造然り。
ルェルルは確実に整頓の神の庇護下にありますが、ひょっとしたらローゼソは違うのかもしれません。

もしも、ローゼソが混沌の神の信徒であると答えれば、すぐさま妖精人形たちは襲いかかって来るでしょう。
違うと返答すれば、この嘘つきめ!と言って妖精人形は襲いかかって来るでしょう。

一方、いち早く厨房を出たルェルルはと言うと、ローゼソが後から付いてこないことも知らずに屋敷の中を歩き回ります。
そして、屋敷の中はとても広かったのですぐに迷ってしまいました。
182 :ルェルル=ルュル ルルゥ ◆mMGaLMOXkw [sage]:2011/11/14(月) 07:39:14.28 0
【( ・∀・) ノアルスイユ邸の貴賓室】

屋敷の中で迷ったルェルルは、煌びやかな部屋に入り込んでしまいます。
豪華な調度品で飾られた部屋には、神官っぽい格好で端正な顔立ちをした少女がいました。
彼女は重そうな樫のテーブルの上に装飾の施された盤を置き、両目を閉じて椅子に座っています。

「あなた、だぁーれ?」

『先程の幼子……領主の愛妾ですか。私はこういう者デェス』

問われた少女は、片目を開けてルェルルに応えます。
その間にも、ゆらゆらと盤の上で翳す手は止めません。


◇NPCデータ◇
名前:ティーシャ=エルロンド
種族:人間族
年齢:14
性別:女
容姿:色素の薄い肌に紫紺の髪、釣り上がった青い目。作り物めいた均整な体形
服装:白をベースに銀糸の刺繍が入った法服、側面に金鎖が垂れる片目鏡
特技:【飛翔戯/5】【神聖魔術/3】【追跡/2】
備考:ノアルスイユの護衛に派遣された真教異端審問局の二等補佐官。神だけを愛する狂信者。

◇フェアリー・チェス(飛翔戯)◇
16体の金属製妖精人形と、両腕で輪を作った程度の大きさを持つ制御盤。
これらを用いて、妖精人形で戦い合う遊戯をフェアリー・チェス(飛翔戯)と呼ぶ。
妖精人形は、それぞれが槍を持ち、思念制御で自在に遠隔操作することが可能。
競技としての飛翔戯は、妖精人形同士を戦わせつつ、対戦相手が持つ盤に一体でも自分の妖精人形を乗せる事で勝利が決まる。
制御盤を持てば誰にでも扱えるが、魔力の高低、操作系魔術との相性や習熟で性能差が出るので、競技者には魔術師が多い。
183ローゼソ[sage]:2011/11/15(火) 23:04:48.26 0
>181
>「私、そんなの食べたくないよぉ……」

「食べられないなら騎乗用にすればいいじゃない」

料理だからといって別の用途に使ってはいけないわけではありません。
発想の転換です。
ハンバーグ(※一口サイズ)が出来たルェルルは、意気揚々と部屋を出ていってしまいました。

>『こんな事……起こるはずがありません……ただの料理器具なのに……』

「ただの料理器具じゃないっしょ。さっきオーバーテクノロジーの遺産だって……」

満足に反論もできないうちに、突如として現れた妖精が、UMAを攻撃します。

>『ただの料理器具が暴走した原因は無秩序勢力の干渉デェス……無秩序の魔力……混沌の力……。
 その少年は……テルピアの民衆を煽動し、帝国の秩序を脅かし、我が主(しゅ)の権威を貶める異教徒デェス!』

さてここで、ローゼソの初登場シーンを冷静に読み返してみましょう。
>>94を見れば、ローゼソは、混沌の神カオスとすり替わるように突発的に現れています。
これで無関係と考える方が不自然でしょう。

「バ、バカを言うな! ボクは整頓の神の庇護下だ!」

しかしローゼソは、断固として自分は整頓の神の使徒だと主張します。
でも良く考えると、整頓の神も混沌の神も旧き神なので、真教から見ればどっちにしろ一緒の気がしなくもありません。

>『やはり、各所に監視の人形を置いといて正解でしたァ。
 ようやく網に掛かった獲物……逃がしませんよォ……旧き神の信徒サァあン?』

このスレとしては予想外なガチバトル展開の予感に、ローゼソは剣を抜き放ちます。

>『神の定めし秩序を破り、混沌を齎すのは大罪なり。
 ですが、裁きの前に真教の異端審問官として問いまょう……少年、キミは混沌の神の信徒ですかァ?』

「断じて違う! ボクは秩序を愛する整頓の神に選ばれし勇者だ!」

『この嘘つきめ!』

妖精人形たちは一斉に襲い掛かってきました。
さて、ここで一つ問題があります。最強を誇る特殊能力鉄壁防御ですが、一つ弱点があるのです。
>>103を見返してみると、鉄壁防御が働かずに力尽きて倒れている事が確認できます。
彼女が整頓の神から授かった力は《タオレナイカベヤク》。
壁役というからには、守る対象が必要。パーティーメンバーがいない時は発動しないのです。
つまり、絶体絶命のピンチです!

「いざ勝負!」

UMAに刺さった4つの槍を引っこ抜き、両手に2本ずつ構えて妖精人形達を迎え撃ちます。
4つの小さい槍が刺さったローゼソは、ドヤ顔のままぱったり倒れました。
184ホイミソ[sage]:2011/11/16(水) 01:30:18.24 0
「ホイミ!?ローゼソ、ホイミする!?ねぇ!ホイミ!ホイミする!?」
ホイミスライムはドヤ顔で倒れたローゼソに聞いています。でも。

へんじがない。

「じゃあじゃあいいんだね!ホイミしていいんだね?!ね!?」

ローゼソにかける(意味のありそうな)はじめてのホイミです。
ホイミソはとってもとっても張り切ってホイミを唱えました。
185 :ローゼソ[sage]:2011/11/17(木) 00:02:09.31 0
気絶したローゼソの頭に、不思議な声が響き渡ります。

【ローゼソよ、良く聞け――】

(だ、れ……?)

【我は混沌の神、人々にはカオスと呼ばれる混沌そのもの――
そして、お前は私が、この世界に召喚した異界の魔王だ――】

(何を言う、ボクはれっきとしたこの世界出身のロリババア族で経歴は……)

そこまで言って、ローゼソは気付いてしまいました。
整頓の神の使徒になる前の記憶が無い事に。

【だが、召喚した途端に整頓の神が封印を施し、自らの手勢におさめてしまった――】

(そうだ、そうだったんだ、ボクは暗黒波動を自在に操る異界の魔王――! 
混沌の神よ、教えておくれ、ボクの真名を!)

【良かろう! 今こそ覚醒せよ! 魔王ロー……】

ローゼソが異界の魔王として覚醒しようとしたその時です。

>184
>「じゃあじゃあいいんだね!ホイミしていいんだね?!ね!?」

気合の入った癒しの光が、ローゼソを包み込みます。
ローゼソはがばっと起き上がりました。

「あ~、死ぬかと思った。ありがとうホイミソ!」

目が覚めると同時に、先程までの痛々しい厨二病患者の妄想は、雲散霧消してしまいました。
そして、ホイミソが来たからには、パーティーメンバーが出来た事になり、鉄壁防御が発動します。

「妖精人形か……、ってことは敵の高位魔術師が近くにいる!
ルゥが危ない! 行こうホイミソ!」

【タオレナイカベヤク】をいかんなく発揮し、妖精人形の槍の集中攻撃をくらって
ハリネズミのようになりながら、何食わぬ顔で部屋を脱出します。
186ルェルル=ルュル ルルゥ ◆mMGaLMOXkw [sage]:2011/11/18(金) 01:17:44.34 0
>>183-184
妖精人形の攻撃を受けて倒れましたローゼソが、ホイミソの回復魔法で癒されます。
さらに守るべきが仲間が加わったことで、ローゼソは鉄壁防御の特技も使えるようになりました。
起き上がったローゼソは妖精人形の槍で次々に刺されますが、堪える様子がありません。

>「妖精人形か……、ってことは敵の高位魔術師が近くにいる!
>ルゥが危ない! 行こうホイミソ!」

そう意気込んで言うと、ローゼソはホイミソを伴って廊下へと出ます。
妖精人形の操り手を探して、屋敷の中を捜索するつもりなのでしょう。

『ほゥ?我慢強いデスネ! しかァし!怪しげな力で痛みを感じないとは異教徒の証!有罪!
 触手モンスターを飼い慣らす!有罪! 刑の執行を逃れて逃走する!有罪!有罪!有罪!』

妖精人形たちは有罪を唱和し、ローゼソの追跡を開始します。
この全部で16体の妖精人形は、一つ一つがティーシャ=エルロンドの声での眼であり耳。
たちまち、全ての妖精人形が一階の廊下に集まって来ました。
何体もの妖精人形が、天井近くから追尾し、足元から追って、ローゼソの背中や足をちくちく槍で突き刺します。
ホイミソの柔らかな水風船っぽい体にも、槍を突き立てようとします。

ローゼソの鉄壁防御は強力なスキル。対するティーシャの飛翔戯は中程度の習熟度。
妖精人形ではローゼソの鉄壁防御を破れないのでしょうか……答えは否。
個々は弱い技能でも、それらを組み合わせれば強敵を倒すことも可能となるのです。

『神聖魔術を付与すれば、飛翔戯の攻撃力は上増しされマァス!
 偉大なる万軍の主よ、偽りの神を戴く涜神者を打ち破る力を与えたまえ――――DITAU,HURNDOS!』

ティーシャは、妖精人形に神敵討滅の力を付与したようでした。
今までに比べれば、妖精人形の攻撃力も上がったことでしょう。
さらにティーシャは追跡を得意とします。
ローゼソを追跡している状況は、事を彼女が有利なように運ばせるかもしれません。

「なにひへるおぉ?」

貴賓室では、口に何かを詰め込んだルェルルが、ゆらゆらと制御盤に手を翳し続ける少女に問い掛けていました。
ローゼソとティーシャの戦いは、追跡と逃走を繰り返しながら、互いに居所を探り合う緊迫したものです。
ですが、魔術の知識が無いルェルルには遊んでいるようにしか見えません。
187ルェルル=ルュル ルルゥ ◆mMGaLMOXkw [sage]:2011/11/18(金) 01:20:09.01 0
【ε≡ε≡( ・∀・) 美術室】
妖精人形はローゼソを追跡したり、待ち伏せしたりで、ノアルスイユ邸各室を巡ります。
画廊を兼ねた美術室には、長年の圧政で集めた高価そうな器物が所狭しと置かれていました。
伯爵の審美眼は確かなようで、並ぶのは当代一の名品たち。
売り払えば、軽く家一軒は買えるような代物ばかりです。

【ε≡(ι・д・) 浴室】
薔薇の花びらを浮かべた浴室には、傭兵たちが湯に浸かっています。
うっかりメイドの誰かにでも見られたら、偽幼女であることが一目瞭然でしょう。

【( ´Д`) 衣装室】
衣装室でも傭兵たちが集まっています。
彼女たちは煌びやかなドレスを纏い、己の美を競い合っていました。
どうやら完全に領主に洗脳されて、頼りになりそうにはありません。
これでは、外で単独蜂起することになるギャンブラー集団は容易く鎮圧されてしまう事でしょう。

【( ゚ ▽゚) 貴賓室】
そして、貴賓室ではルェルルがお手製ハンバーグを食べていました。
ルェルルはお腹が空いてしまったのです。目の前にはハンバーグ。我慢などできません。

『ン……その貧しき粗食、清貧を貫くとは感心デェス。
 幼子、汝は唯一なる神の信仰に帰依するものなりや?』

「ハンバーグは小さくてもおいしぃよぉ! うーんと、しんこうにきえってなーに?」

『汝は、無知の鱗が瞼に張り付いているようですネ。
 このままでは汝は救われません!洗礼を受けなさい!正しき道に進むのデスッ!
 さあ、この聖水を飲み、聖餅を食べ、唯一なる神カノンに祈りを捧げなサイ!』

「うん!食べる食べるー!」

ルェルルは騙されて、真教に改宗してしまいました。
右手に聖水、左手に聖餅を持って、言われるがままに唯一なる神へ祈りを捧げています。
これでは次に整頓の神が現れて再び加護を与えるまで、自動回避の能力も封じられてしまったことでしょう。
この改宗の儀式を行ってる一分程度の間は、妖精人形の追跡や攻撃の手がやや緩みます。
188ローゼソ[sage]:2011/11/19(土) 01:02:44.50 0
>186
>『神聖魔術を付与すれば、飛翔戯の攻撃力は上増しされマァス!
 偉大なる万軍の主よ、偽りの神を戴く涜神者を打ち破る力を与えたまえ――――DITAU,HURNDOS!』

「無駄無駄無駄ァ……いてっ」

神敵討滅を付与された槍の攻撃を受けたローゼソは、1ポイントダメージを受けました。
ホイミソがいるのでしばらくは大丈夫ですが、問題はMP切れです。
妖精人形の主人を見つけるのが先か、ホイミソのMPが無くなるのが先かの真剣勝負です。

>187
【ε≡ε≡( ・∀・) 美術室】
「ねえホイミソ、どれかの絵の裏に隠し扉がありそうじゃない?」

そう言って、ローゼソは絵の一つに手を伸ばしました。
その途端、絵の裏に潜んでいた妖精人形達が集中攻撃を仕掛けます。

「痛い痛い! 逃げるぞ、ホイミソ!」

【ε≡(ι・д・) 浴室】
捜索イベント真っ最中のローゼソは、男装のままナチュラルに浴室に突入しました。
その瞬間。

『死ねえ!! ド変態!』

「ぎゃーーーーー!」

水がぶっかけられて退散します。

【( ´Д`) 衣装室】
「うー、寒い寒い」

水をぶっかけられたローゼソは、ふわふわのコートを羽織りました。

『隙あり!』

服の間に潜んでいた妖精人形が攻撃をしかけてきます。
が、妖精の槍は分厚いコートに阻まれました。
このコートはミンクのコート、普通の服っぽい名前でありながら
これを着てラスボスに挑んでも遜色ないほどの防御力を誇る逸品です。

【( ゚ ▽゚) 貴賓室】
貴賓室を覗くと、魔術師のような少女と、洗脳中のルェルルがいました。
少女は洗脳に一生懸命で、制御盤のほうは少しお留守になっているようです。

「見たところ直接戦闘技能があるようには見えない。妖精人形の制御を奪えばこっちの勝ちだ!」

とある遠隔操作型戦闘ゴーレムの伝説にも、敵に制御盤を奪われてピンチに陥るくだりがよくあるものです。
それと同じ考え方です。

「よくもルゥを……こうしてやる!」

隙をついて走り寄ったローゼソは、制御盤の上に手をかざし、ありったけの思念を送り込みます。
189ホイミソ[sage]:2011/11/19(土) 02:18:43.85 0
「わかった!敵の魔力と幼女の気配を探すんだね!
・・・スライムBC!キミに決めた!」
ホイミソが声をかけるとローゼソのカバンからスライムBCが飛び出します。
憑依や鍵開けのできる、器用なスライム達です。
「さあ探知す・・・」

【( ゚ ▽゚) 貴賓室】

「・・・え?」
逃げ回るローゼソはあっというまにルェルルを発見し、制御盤に駆け寄りました。
どんな思念を送っているのか、一部の妖精人形が絡み合って落ちたりしています。
「じ、じゃあドロップ品を剥ごう!」
スライム達は落下して動かなくなった妖精人形を漁っています。
190ルェルル=ルュル ルルゥ ◆mMGaLMOXkw [sage]:2011/11/20(日) 13:35:36.23 0
【( ・∀・) ノアルスイユ邸の貴賓室】

>>188-189
貴賓室にローゼソとホイミソが入って来ました。
何があったのか、ローゼソは高そうなコートを身に羽織っています。
それを見たルェルルは、ローゼソに近づいてコートのふんわりした裾に頭をうずめました。

「ロゼその、ふわふわコートあったかぁ~い」

何匹のミンクを使ったのかは分かりませんが、高級そうなコートはとても暖かいものでした。
ルェルルが顔を離すと、ハンバーグの残りがコートに少し付いてしまいます。

>「よくもルゥを……こうしてやる!」

ローゼソはティーシャに対してとても怒っているようで、怒りの声を上げながら制御盤に駆け寄って手を翳します。
すると、宙を舞う妖精人形たちがクルクル舞いながら床に落下して行きました。
ローゼソが思念で妖精人形の制御を乱したのですが、ルェルルにはやっぱり遊んでいるようにしか見えません。

>「じ、じゃあドロップ品を剥ごう!」

「私もお人形で遊ぶよぉ!」

ホイミソ率いるスライムの群れは、追剥のように地面の妖精人形を漁っていきます。
ルェルルも、今のうちに確保しなければ損とばかりに妖精人形に駆け寄ります。
急に制御を取り戻すと危ないので、床に落ちた妖精人形はスライムたちとホイミソがしっかり掴んでしまいましたが。
もはやティーシャが動かせそうな人形は、まだ部屋に到着していない二体だけ。
ホイミソの触手に掴まれて痙攣する人形を見ると、ティーシャは顔を歪めながら言いました。

『異教徒や魔物風情が舐めた真似をッ』

飛び退いたティーシャは舌打ちして聖別されたナイフを投げつけます。
しかし、体勢を崩したのかナイフ投げは得意ではないのか、投げられたナイフが向かうのは明後日の方向。
ナイフはローゼソの背後の壁に浅く突き刺さってしまいます。
続いて二本目を投げますが、ホイミソにも当たらず天井へと刺さります。

『チ……ならば、この手で仕留めてやりマァス!後悔しなサァアアぁい!』

ティーシャは激昂した感じで、懐から三本目のナイフを手にしてローゼソに斬りかかりました。
ですが……これはティーシャの計算通り。
元より、彼女は自分で斬り結んでローゼソを倒すつもりはありません。
一度敵の背後に投げられたナイフを、妖精人形に受け取らせて死角から攻撃させるのです。
ふらふらと遅れて部屋に入って来た二体の人形が、音も無く天井と壁のナイフに近寄っていきます。
もう一度ティーシャが制御盤に手を翳せば、人形はローゼソの背中をナイフでぶっすり突き刺せる程度の動きは取り戻すでしょう。
ティーシャはナイフで牽制しながら、制御盤を操る機会を窺います。
そんな様子にルェルルは全く気付きません。
戦いの駆け引きなどまったく心得ない幼女は、人形遊びに夢中なのでした。

「このお人形、1から16の番号が書いてるね。
 あっ、6と13がない……なくしちゃったのかなぁ?
 でも14人家族なら出来るね!私、お母さんやるぅー!」

ルェルルは、今は戦闘中じゃないのかと困惑しているスライムたちと妖精人形の引っ張り合いを始めてしまいます。
191ローゼソ[sage]:2011/11/20(日) 22:52:35.23 0
>189
制御不能になった妖精人形が、絡み合って落ちていきます。

「ありがとう、スライム君たちのおかげで1レスで見つける事が出来たよ!」

レスというのは、この世界独特の時間の単位です。

>「じ、じゃあドロップ品を剥ごう!」

スライムの群れが、妖精人形を捕獲していきます。

>190
>『異教徒や魔物風情が舐めた真似をッ』

「ヒラリ!」

ティーシャが投げたナイフを、ローゼソはヒラリと避けた――
といえば聞こえはいいですが、実際にはヒラリと口で言いながらドヤ顔で突っ立っていただけです。

>『チ……ならば、この手で仕留めてやりマァス!後悔しなサァアアぁい!』

ローゼソも剣を抜き放ち、応戦します。
ローゼソは剣の技能は持ってないので、お互いダメージは入りません。
子どものチャンバラごっこ同士で、結構いい勝負です。

>「このお人形、1から16の番号が書いてるね。
 あっ、6と13がない……なくしちゃったのかなぁ?
 でも14人家族なら出来るね!私、お母さんやるぅー!」

ローゼソは、こうなったルェルルに今戦闘中だからと常識的に言い聞かせても無駄なのは習得済みです。
ルェルルのペースに合わせて、うまく誘導してやらなければなりません。
少し考えたローゼソは、こう言いました。

「ルゥ、お母さん役の人形には包丁を持たせてあげなきゃ!
その辺に突き刺さってない?」
192ルェルル=ルュル ルルゥ ◆mMGaLMOXkw [sage]:2011/11/23(水) 01:50:25.24 0
>>191
>「ルゥ、お母さん役の人形には包丁を持たせてあげなきゃ!
>その辺に突き刺さってない?」

ローゼソの言葉を受けたルェルルが周囲を見渡すと、壁には包丁代わりに使えそうなナイフが刺さっています。
もちろん、ナイフに取り付く妖精人形の姿も目に入りました。
駆けよったルェルルは、ふらふら空中を泳ぐ妖精人形をぎゅっと握り締め、壁に刺さったナイフも抜き去ります。

「あったよぉ! あっ、お人形もあるー!」

これで思う存分人形で遊べると、ルェルルは笑顔で収穫物を掲げました。
もう一つのナイフは天井にも刺さっているのですが、こちらは幼女の視野の外。
ですが、先程の投げナイフの行方に目を追えば、誰でも妖精人形がナイフを引き抜こうとしているのに気が付くでしょう。
ローゼソがルェルルへ声を掛けた隙を見計らって、ティーシャは一足で制御盤に駆け寄っています。
そして制御盤を手にすると、自らもルェルルに向かって言いました。

『チ……気付かれましたか。まあ良いでしょう。
 幼子よ、その妖精人形はそのまま持っていなサァイ』

彼女はローゼソが、ルェルルのことをルゥと呼んだことを聞き逃さなかったのです。
そして名前を呼んだことで、二人が知り合いであると読みました。

『異教徒の少年、そのルゥと言う幼子はアナタの知り合いの様ですネ?
 その幼子の手には、私の妖精人形がナイフを持って抱かれていマァス……意味は分かりますネ?
 さ、剣を捨てて降伏なサァイ! どのみち“異教徒の少年が入り込んだ”と、すでに他の近衛兵に報せました。
 もはや、この屋敷で何かすることも、逃れることもできまセン! 一切の無駄な抵抗は止めなサイ!
 そこの触手もデス、捕獲した人形を離しなサァイ!』

ティーシャはルェルルを人質として使うつもりのようで、幼女の命を盾にしてローゼソに降伏を促がしています。
無論降伏しても、反乱軍に手を貸した異教徒に待っているのは火焙りの刑なのですが。

『神への愛は、人への愛に勝る!
 故に神の為ならば、人は犠牲となっても構いまセン!』

非難の眼差しを投げ掛けても、返って来るのはこんな言葉だけ。
自動回避の無い今のルェルルでは、妖精人形の攻撃を避けるのは難しいでしょう。

「あっ、勝手に動いちゃダメー!」

ナイフを持って動き回ろうとする手の中の人形に向かって、ルェルルは難しい顔で言いました。
193ローゼソ[sage]:2011/11/23(水) 23:41:42.64 0
>192
ティーシャは、ルェルルを盾に脅迫すると言う外道な手段に出ました。

「ルゥは少なくとも今は真教の信徒なんだぞ!
信者まで犠牲にするなんて最低だな!」

>『神への愛は、人への愛に勝る!
 故に神の為ならば、人は犠牲となっても構いまセン!』

>「あっ、勝手に動いちゃダメー!」

ローゼソはルェルルの方を見ました。
ルェルルは、自分の命が危険にさらされているとは露知らず無邪気に人形とじゃれあっています。

「くっ……降伏すればルゥには手を出さないんだな!?」

ローゼソは、剣から手を離しました。カラン、と音を立てて剣が地面に落ちます。
そして――

「――地蔵流奥義アストロン」

万策尽きたローゼソは、文字通り地蔵になりました。だって地蔵だから仕方がありません。
194ルェルル=ルュル ルルゥ ◆mMGaLMOXkw [sage]:2011/11/26(土) 20:44:30.62 0
>>193
遊んでいるルェルルを他所に、貴賓室では深刻なやり取りが始まっていました。
戦意を喪失して剣の刃先を床に向けたローゼソは、ティーシャに向かって問いかけます。

>「くっ……降伏すればルゥには手を出さないんだな!?」

『それは、この幼子次第デス。
 天なる主に逆する者は何人たりとも許されまセン。
 ですが……主に害を為さぬようならば、手は出さないと約束しまショウ』

ティーシャの言葉を聞いたローゼソは剣を捨てて瞑目すると、金属の像になる呪文を呟きます。

>「――地蔵流奥義アストロン」

「Σあ! ロゼそ、また堅くなっちゃった……」

ローゼソが金属の像になったことに気付いたルェルルは、彼女の足をつんつんしながら言いました、
この肉体金属化の術は、敵の切り札を無駄撃ちさせるために開発された術。
従って、いかなる強力な攻撃であっても、今のローゼソを傷つけることはできません。
しばらくすると貴賓室には近衛兵たちが集まって来て、ローゼソを台車に乗せどこかに運んでいきます。
ホイミソとスライムたちも、壺の中に入れられてしまいました。
異教徒や魔物を片づけたティーシャは、ルェルルを椅子に座らせると尋問を始めました。

『それでは……幼子よ、アナタも尋問に応じてもらいマス。
 幼子は、今の旧き神の信徒たる少年と、どのような関係なのデスか?』

「うー……んと。ご飯をくれるってゆーからー……付いて来たのぉ!」

『それだけデスか?』

「そぉだよぉ!」

ルェルルは満面の笑顔。何の嘘偽りもありません。
異端審問補佐の経験から、ティーシャは嘘を並べ立てられれば、それを見抜くことが出来ると言う自負があります。
ルェルルは嘘を吐いてない……彼女は、そう断じました。
単なる無知で無力な幼女ならば、他の愛妾たちと立場は同じ。
伯爵の魅了の魔力も拒めないでしょう。
どこへなりとも行くが良いと、ルェルルはティーシャから解放されます。
195【( ×д×) ノアルスイユ邸の地下牢】 ◆mMGaLMOXkw [sage]:2011/11/26(土) 20:49:41.13 0
像になったローゼソが運ばれたのは、屋敷の地下牢の一つ。
この地下牢には十数人の男たちが閉じ込められており、一人ひとりが別々の牢に入れられています。
彼らは伯爵に娘や妹を奪われた者たちで、愛する家族を取り戻そうとして捕まってしまったのでした。
ローゼソが牢に入れられて数時間が過ぎた頃、メイド長のメリーが階段を降りて地下に入って来ます。
ツカツカ靴音を響かせながら囚人を吟味するメイド長は、ちらっとローゼソを見た後、その隣の牢屋の前で足を止めました。
牢の中に入っているのは40才程の男、靴屋のブレナン。
彼の一人娘、サラは教会で聖歌の練習をしていた帰りに奴隷商に攫われてしまったのです。
何とか居所を突きとめたものの、靴屋如きではどうにもならず、ブレナンもまた捕らわれの身になってしまったのでした。

『ブレナン、伯爵様が貴方を娘に会わせて下さるそうです。伯爵様の慈悲に感謝なさい』

メリーは牢屋の中からブレナンを出しました。
後ろ手に手錠を嵌められたブレナンは、メイド長の背後に美貌の青年とドレスを着た少女の姿を見つけます。
青年はテルピア領主ノアルスイユ、少女はブレナンの娘サラでした。

『ノアルスイユ! 娘を、サラを返してくれ!』

探し求めていた娘を目にした父親が悲痛に叫びます。
切なる懇願を受けたノアルスイユは、傍らの少女に問いかけました。

『父の元に帰るか、私の貴妃で居続けたいか。
 それはサラに聞かねばなるまいな……サラに問う、父の元に帰りたいか?』

伯爵の問いに、栗色の髪の少女は首を横に振って応えます。

『いいえ、伯爵さま。サラはいつまでも伯爵さまのお傍にいて。伯爵さまに愛されたく思います』

『ならば、お前の愛を形にして示しておくれ。無形の愛など、私は信じられないからね。
 そうだな……この短剣を用いて、私とそなたの父を秤にかけるが良い。
 出来ないと言うなら、それはそれまでの愛でしかないと言うことだよ』

伯爵は銀の短剣を少女に渡します。
父親か自分のどちらか、彼女の愛が薄い方を刺せとの意味なのでしょう。

『それで……愛を示せるのなら……私は……』

サラは伯爵に魅了されていますが、父親への親愛が消え去った訳ではありません。
苦渋の表情を浮かべながらも、彼女は迷っているようでした。
そんな苦悶を愉しむように、伯爵はサラの耳元で小さく囁きます。

『……愛している、サラ』

途端に半狂乱になったサラが、金切り声を上げて父親の胸にぶっすりナイフを刺しました。
ブレナンは信じられないと言った表情のまま、ぐったり倒れます。
女の細腕なので深くは刺さってはいませんが、浅手とも言えない傷でした。
伯爵は時折、愛妾にこう言った犠牲を強いるのです。
愛妾が小鳥を飼えば、彼女にその小鳥を縊り殺すように命じたり。
そして、悲しみと罪悪感に打ち震える少女の姿を見て、自らは陶酔の表情を浮かべるのでした。
古来から定義される暴君の条件は三つ。荒淫、浪費、虐殺。
それぞれが倫理への背信、国家への背信、国民への背信となります。
その全てを享楽とするノアルスイユは、まさしく暴君の中の暴君であると言えるでしょう。

『ん、新しい罪人のようだね……少年のようだが何者か?』

ローゼソに気付いたノアルスイユが問いかけると、ティーシャの報告を受けていたメイド長が伯爵に耳打ちします。

『異教徒の少年で反乱の扇動者か。それは一族郎党まで死に値する重罪だ。
 それじゃあ、明日の生贄は君にしようかな? ルゥとやらは私と君……どちらを選ぶだろうね』

そう言って、伯爵は悪魔の笑顔を浮かべます。
196ルェルル=ルュル ルルゥ ◆mMGaLMOXkw [sage]:2011/11/26(土) 20:52:59.73 0
【( ・∀・) ノアルスイユ邸の大広間】

尋問が終わったルェルルは、美味しい食べ物がいっぱいある大広間で、美味しい物をいっぱい食べていました。
甘いプリンにビスケット。葡萄の果汁にゼリー。甘ったるい物ばっかりです。
何を食べたのか、口の端にはクリームがたっぷりと付いていました。

「とっても、しゃーあせぇ!」

そう言って、幼女は天使の笑顔を浮かべます。

―――zzz。

宴が続くうちに夜が更けてきたので、ルェルルは天使の笑顔のまま、ソファの上で眠りに着いてしまいました。
明日には、美味しい食べ物と、ローゼソを天秤に掛ける残酷な運命が待ち受けているとも知らずに。
197 :ローゼソ[sage]:2011/11/26(土) 23:56:32.96 0
>195
ローゼソが目を覚ましたのは、薄暗くて狭い場所。目の前には鉄格子が見えます。
ローゼソは地下牢に幽閉されてしまったのでした。
メイド長が降りてきて、隣の牢の者に話しかけます。

>『ブレナン、伯爵様が貴方を娘に会わせて下さるそうです。伯爵様の慈悲に感謝なさい』

目の前で行われる、伯爵の残酷な所業。

「やめろおおおおおおおおお!!」

必死の制止もむなしく、娘は父親を刺す方を選びました。
ローゼソは奥歯をギリギリと噛みしめながら、伯爵を睨み付けます。

「貴様っ……!!」

>『ん、新しい罪人のようだね……少年のようだが何者か?』

「世界の秩序を守る整頓の神に選ばれし使徒だ!! 貴様は絶対ぶっ潰す!!」

>『異教徒の少年で反乱の扇動者か。それは一族郎党まで死に値する重罪だ。
 それじゃあ、明日の生贄は君にしようかな? ルゥとやらは私と君……どちらを選ぶだろうね』

「望むところだ! ルゥがお前なんかを選ぶはずがない! 絶対ボクを選んでくれる!!」

>>194によると、ローゼソはルェルルにとって単なるメッシー君ですが
そんな事は露知らず、自信満々に言い放ちます。

伯爵が去ると、ローゼソは行動を開始しました。
幸い、地蔵のまま運ばれてきて入れられたため、他の囚人と違って手錠はつけられていません。
スライムがいれば鉄格子の鍵がすぐ開くのですが、生憎スライムは見当たりません。

「部分的にアストロン」

手を硬化させて、ひたすら鉄格子の下に穴を掘ります。
穴が、鉄格子の下を抜けられる大きさになると、すぐさま外に出てブレナンに駆け寄ります。
娘が彼を刺す時に使ったナイフを抜け目なく拾って、武器として確保しながら、言いました。

「大丈夫!? くそっ、こんな時にホイミソがいれば……」

ローゼソは何気なく地下牢の隅っこに置いてあった壺を見つめるのでした。

続いて、他の囚人たちの鉄格子の下も、外に出られるように穴を掘った後
パッと見バレないように、穴を掘りかえした土で元通りに埋めておきます。
作業が一通り済むと、演説を始めました。

「皆聞いてくれ! あなた達の娘は伯爵の魔力で洗脳されている!
洗脳を解くには伯爵を倒すしかない! 明日伯爵がここにルゥを連れてやってくる。
ルゥが伯爵に刃を向けた瞬間に皆で襲い掛かるんだ!」

実際にはルェルルは伯爵、もとい美味しい食べ物を選んでしまうかもしれませんが
鉄壁防御のあるローゼソに幼女の刺突はダメージ0なので、あまり作戦には影響ないでしょう。
牢にもどり、作戦決行の時に備えて束の間の眠りにつくローゼソ。
果たして明日の作戦はうまくいくでしょうか。
198 :ローゼソ[sage]:2011/11/27(日) 02:15:17.23 0
おっと間違い。
パーティーメンバーがいない時には鉄壁防御は発動しません。
壺からホイミソが登場するかどうかが運命の分かれ目になりそうです。
199 :ホイミソ[sage]:2011/11/27(日) 07:52:42.63 0
>「私、お母さんやるぅー!」

「あっ、とどめをさすんだね!」
スライム達は妖精人形を引っ張るルェルルを見て、人形を引きちぎりはじめました。
ドロップ品漁りの収穫は、小さなヤリ×タイムスタンプ末尾の数字 です。

しかし。
あれよあれよというまに状況は変わり。

ルェルルは解放されて出て行き、ローゼソは地蔵になって運び出されてしまいました。
ティーシャはルェルルを尋問して満足したのか、ホイミソ達の事は忘れてしまったようです。

「え、えええええっっっ!!」

ホイミソは困ってしまった!ホイミソはなかまをよんだ!メタるスライムがあらわれた!

「まずは今の状況を整理しよう。
・ルェルル(勇者ポジション)が動機消滅して離脱!
・ローゼソ(戦士ポジション)は普通に大ピンチ!
・我々はきちんと能力設定してない半NPCのスライム軍団ですが何か
・整頓の神は空を飛んでるから屋内の状況に自動では気付いてくれなそうだよ
ってとこかな」

メタるスライムを頭に載せて重くなったホイミソは呟きながら床を這っています。

「ルェルルの件は熱い説得というかご飯が必須だし、
整頓の神を呼びに行くのは時間かかっていろいろ間に合わなそうだし、
そうすると、ごく普通のスライム向きの仕事って、ローゼソを助け出す、だよね」

ホイミソは後からついてくるスライムBCを振り返り、宣言しました。

「捕まったら入れられるのは地下牢に決まってる。行こう!」

メタるスライムと別れ、ホイミソ達は大体寝静まった屋敷の地下牢へ向かうのでした。
200ホイミソ[sage]:2011/11/27(日) 14:16:01.40 0
屋敷内を探し歩いたホイミソ達は、やっとローゼソの入れられた牢を見つけました。
早速ホイミソが格子をすり抜けて眠っているローゼソに駆け寄り、
その間にスライムBが牢の鍵を開けます。

「ローゼソ、起きて。逃げるよ」
ホイミソは触手でローゼソの顔をちくちく突きます。

因みに隣の牢では囚人がうなされています。

「えーん かいぶつが おそってくるよお。 こわいよお・・・」

「こころが すっかり こどもに もどってる。
よっぽど こわいめに あったんだね」
ホイミソがスライムBCに目配せします。
頷いたスライムBCは、隣の牢に入り込んで囚人をぱふぱふしてやりました。
201ローゼソ[sage]:2011/11/27(日) 23:15:56.27 0
>200
壺からホイミソが出てくる気配はありません。

「そこに入ってるような気がしたんだけどな~」

諦めて眠りについた、その夜。

>「ローゼソ、起きて。逃げるよ」

我らがホイミソが救出にやってきました!

「ホイミソ、助けに来てくれたんだね! ブレナンさんにホイミしてあげて!」

そして、囚人たちに向かって言います。

「作戦変更だ――ボク達で絶対領主を倒すから、もう少しだけ待っといて!」

ローゼソは、ホイミソと共に、牢屋を抜け出します。
鼻ちょうちんを膨らませながら寝ている見張りの横を忍び足で通り過ぎ、まずは衣裳部屋に向かいます。
前回の反省をふまえ、変装して妃になりきることにしたのです。
ホイミソ達スライムは、広がったスカートの中に隠せば完璧です。

>196
妃歓迎の宴が行われていたであろう大広間の扉を開けると、寝ているルェルルがいました。
ルェルルを抱き上げ、庭へ向かいます。
空が見える外に出れば、整頓の神が再びルェルルに力を授けてくれるかもしれません。
202 : 忍法帖【Lv=11,xxxPT】 [sage]:2011/11/28(月) 05:10:53.50 O
次元時空位相量子光線振動砲を使用しても良いですか?。
203ルェルル=ルュル ルルゥ ◆mMGaLMOXkw [sage]:2011/11/28(月) 18:19:28.73 0
ルェルルは美味しい物をいっぱい食べられて、いつになく幸せ。
このままでは、きっと喜んで伯爵の愛妾になることでしょう。

「むにゃむにゃ……もう食べられないよぉ……」

幼女がいつもの寝言を言っている間にも、あれよあれよと状況は変わります。
この、お腹いっぱい状態のルェルルを起こすには、少々骨が折れるかも知れません。

>>201
照明を落とされた豪華な広間は、薄暗くて退廃的な雰囲気。
土地によっては未成年が飲むことを許されないはずのお酒も、伯爵は幼女たちに飲ませていました。
酔って赤らんだ幼女たちのほっぺは、まるで熟れきったリンゴのよう。
部屋の隅では銀の煙管を燻らせる幼女もおり、ケホケホとむせています。
この悪徳が繰り広げられる大広間に、新しい妃の格好をしたローゼソが入って来ました。
幼女と呼ぶには、少し薹(とう)が立っていますが、その辺りは得意のメイクで偽装粉飾しています。

『……待て』

そそくさ庭へ行こうとするローゼソに、不興げな男の声がかけられました。
声の主は、豪華な椅子に座り、周囲に少女を侍らせるノアルスイユ。
自分を無視してルェルルを抱えて行くローゼソが、目に付いてしまったのでしょう。

『せっかくの宴を愉しまずして、どこへ行くのだ?
 さあ、新しい貴妃に歓迎の祝杯を』

伯爵の指示に、侍女の一人が上質の貴腐ワインをグラスに注ぎます。

『手が塞がっているか……ならば私が飲ませてあげよう』

立ち上がった伯爵が、妖しげな瞳に光を灯してローゼソに近づきました。
そして自分の口にクイっと酒杯を傾け、舌の上でワインを味わいます。

『やはり、テルピアの貴腐ワインは良い』

そう言って、もう一度ワインを自分の口に注ぎ込みます。
ローゼソにワインを勧めながら、またしても自分で飲んでしまうのでしょうか。
……そうではありません。
美貌の伯爵は右指でローゼソの顎を上げさせると、自分の顔を近づけました。
そして口に含んだワインをローゼソに口移しで飲ませるのです。
雅なお酒の飲ませ方ですが、屋敷にいるのは全員が貴妃扱いなので、伯爵には普通の感覚なのでしょう。
204 : 忍法帖【Lv=12,xxxPT】 [sage]:2011/11/29(火) 10:08:14.84 O
インフィニティメギドラオンドライブ。
205 :ローゼソ[sage]:2011/11/30(水) 01:23:48.87 0
>203
>『……待て』

庭へ行こうとするローゼソを、ノアルスイユが制止します。
いくら美青年でも、昨夜の悪行を見た今となっては醜悪な魔物にしか見えません。
ローゼソは睨み付けそうになるのを必死に抑えながら、妃になりきります。

「いかがいたしましたか? 伯爵様」

>『せっかくの宴を愉しまずして、どこへ行くのだ?
 さあ、新しい貴妃に歓迎の祝杯を』

「お言葉ですが伯爵様、幼女にお酒を飲ませるのはよろしくないのでは――」

>『やはり、テルピアの貴腐ワインは良い』

伯爵は、史上まれに見る雅なお酒の飲ませ方を実践してきました。

「伯爵様、何を……」

目の前にドアップで迫る美貌の伯爵の顔。
このような事に耐性のないローゼソは、あまりの出来事に失神してしまいます。
そしてインパクトの瞬間――。

ズギューン――!!

口付けには魔法が宿る、と古来からよく言ったものです。
暗黒のオーラがローゼソの全身から放たれました。
ローゼソは妖しげな笑みを浮かべながら、厨二病な台詞を垂れ流します。

「ククク……感謝するぞノアルスイユ、お蔭で整頓の神の封印が解けた。
そなた、美しい顔をしておるな――美少年と戯れれば実に絵になるであろう」

別に関係ありませんが、ローゼソが飲まされたワインは貴腐ワイン。
そして腐女子の進化形態の事を貴腐人と言うそうです。

「インフェニティメギドラオンドライブ――!」

ローゼソはノアルスイユに向かって、やたらと長い名前の魔法を放ちました。
演出上、ノアルスイユの周囲で大爆発が巻き起こります。

「安心しろ、この技を喰らっても死にはしない……。
どうだ? ショタにしか興味が無くなって来ただろう?」

ローゼソが放ったのは、たとえどんなロリ好きでもショタにしか興味が無くなるという恐ろしい技でした。
もしもこれが効いているなら、ルェルルや傭兵団達はすぐに洗脳から解放されて、革命が動き始めるでしょう。
ただし得体の知れない伯爵の事、『カオスの手先め、ついに正体を現したか』なんて展開になるかもしれません。
次レスをお待ちください。
206 : 忍法帖【Lv=13,xxxPT】 [sage]:2011/11/30(水) 19:00:01.66 O
ハマンマオン。
207ホイミソ[sage]:2011/12/01(木) 01:08:00.82 0
「いいんだね!ホイミしていいんだね!ホイミするよ!」
ローゼソから事情を聞いたホイミソはブレナンさんの傷を回復させました。

>「作戦変更だ――ボク達で絶対領主を倒すから、もう少しだけ待っといて!」

「おー!たとえ火の中水の中草の中森の中土の中雲の中ローゼソのスカートの中!」
スライム達は嬉々としてスカートの中に隠れ伯爵のところに向かいました。

>「インフェニティメギドラオンドライブ――!」

「ろ・・・ローゼソ?」

スカートの中のホイミソ達には何があったのかは見えなくても、
大爆発の気配とローゼソの突然の変容は感じ取れます。

「助けてカミサマ・・・」

すっかり混乱してしまったホイミソは、
一般名《神》に助けを求めました。
小さな魔物の声を聞き届けてくれるのはどの神でしょうか。
208ルェルル=ルュル ルルゥ ◆mMGaLMOXkw [sage]:2011/12/03(土) 17:33:25.61 0
伯爵の口付けを受けたローゼソは、整頓の神の封印が解けたと言い始めます。
さらに変な爆発まで起こしたようです。

「世界がごちゃごちゃになってるよぉ……むにゃむにゃ」

ルェルルは、超展開は苦手なので流れに身を任せよう……。
そう、思ってるかのように目覚めを拒もうとします。
しかし、整頓の神の加護が無い今、爆発が起きたのに異変に気付かないこともできません。

「うー……ぅん」

目覚めたルェルルが見たのは混乱する大広間の様子でした。
潮騒のようにざわめく少女たちの声が、ルェルルの耳に響きます。
魅了の魔力が消え去った少女たちは、今までの虜囚たる己の立場に気付いてしまいました。
無理無体に攫われ、己から望んで伯爵に仕えさせられた日々を。
我に返った愛妾たちは、一目散に屋敷から逃げ散ろうとします
彼女たちの誰も伯爵に声を掛けません。精神が変容した伯爵も彼女たちを呼び止めません。所詮は偽りの愛でした。

『え?え?え?なんで私たちは倒すべき伯爵と、じゃれ合ってたの?』

『何やってんのさ、もー!さっさと私たちが蜂起したことを報せるよ!』

混乱しているロリータに、思わず傭兵団から叱咤の声が飛びました。
赤髪のフロレットは庭に出ると、スカートを裂いて作った布を鏃に巻きつけ、角灯の炎で布に火を付けます。
続いて赤々と燃える鏑矢を月に向けると、弓使いは引き絞った弦から矢を放ちました。
空気を裂いて大音響を発する仕掛けを施した火矢は、ブランレイクの夜空に異変が起きた徴を残します。
しばらくすると、夜の帳が降りた街の所々で反乱軍が蜂起する鬨の声が上がりました。
今までは散発的だったせいで、起きる度に鎮圧された反乱も今夜は違います。
ルェルルが接触したギャンブラー集団は、確実に勝利の配当を得るため、独自に各反乱軍と連携を取ったようでした。
角灯の明かりに扇動された一団が、槍や剣を手にして次々にノアルスイユの屋敷を包囲します。
もはや、ノアルスイユを守る者は真教に仕える近衛兵のみ。伯爵はその近衛兵に向かって命じます。

『どうやらアレは旧き神の使徒のようだな……殺せ』

その言葉を受けると、牢番の無能を謗りながら近衛兵たちが聖別されたメイスを手にしました。
妖精人形が破壊されたティーシャも、メイスを握りしめてローゼソに殴りかかります。
真教では血を流させる刃の武器が忌まれるので携行武器はメイスが人気。敵は撲殺するのが通例なのでした。

>>207
ローゼソから怖い雰囲気とごちゃごちゃの気配を感じ取ったルェルルは、慌ててその腕から飛びおります。
すると、すぐ傍から親近感を覚える声。
ルェルルが目の前のスカートを捲るとホイミソが隠れています。

>「助けてカミサマ・・・」

「助けて、神さまぁ……あっ、ホミそ、もーちょっと詰めて」

ホイミソと一緒にスカートの中に隠れたルェルルも、体育座りになって神様に祈りました。
209名も知られぬ整頓の神[sage]:2011/12/04(日) 15:31:22.59 0
銀の幼女降る降るまわりに
金の幼女降る振るまわりに

という歌を歌いながらあたしはゆっくりとオーロラに沿って飛び、
電離層から下を眺めると、戦乱の中で誰かが呼んでいるようです。
あたしは小さな凸棒の姿になって呼び声のするスカートの中に降り立ちました。

呼んでいたのはあたしの《ツヴェルフレギオンエンゲル》
・・・だったのですが、カノンの印を刻まれてしまった幼女でした。
そしてスカートの主はあたしの《ツヴェルフレギオンエンゲル》
・・・だったのですが、かーくんの波動が湧き出ています。

「ルルルルルルル、お聞きなさい。
一神教は求心のために常に滅ぼす敵を必要とします。
成長期を過ぎ安定勢力となり外に滅ぼせる敵が無くなれば
必ず内ゲバと粛正と圧政に転じるものなのです」

あたしは幼女にやさしく語りかけました。

「ご飯には一時の豪華さだけでなく、安定が大事ですよね。
安定したご飯を望みカノンのもとを離れるならば、
再びあたしの《ツヴェルフレギオンエンゲル》に加えましょう」

そしてBCFを取り出し幼女のテンプレに書き足します。

「目覚めなさい《起死回生反撃機会》
――ちょうどいい時にちょうどいい事を思い出す《アトダシジャンケン》」
210 :名も知られぬ整頓の神[sage]:2011/12/04(日) 15:33:14.58 0
幼女のそばにはスライム達がいました。
しかし彼らまで無能や地蔵や遅筆にするとパーティーバランスが崩壊します。
あたしはスライム達が各々持っている小さなヤリを目にとめました。

「スライム達よ。
望むならその小さなヤリ1本に1つの奇跡を起こす力を授け
あたしの《ツヴェルフレギオンエンゲル》に加えましょう。
でも3つ全てを使い切ってしまったら、あたしは神の力を失います。
よく考えて使うのですよ」

それから、ローゼソの脚をよくよく観察して、幼女とスライム達に告げました。

「大悪魔にお持ち帰りされたかーくんの特殊嗜好がローゼソを通じて漏れ出ています。
もしかしたら元々ローゼソは、どこかの湖の女神のように
かーくんの中で抑圧されていた人格からなる無自覚な分身だったのかもしれませんが
・・・それでもかーくんはかーくん。
分身のローゼソであっても、世界をごちゃごちゃにする力は侮れません。

世界がどうしようもなくごちゃごちゃにならないうちに、
四つの鍵を携えてTRPG神殿の扉を開けカノンを手に入れ大悪魔と戦い
かーくんを封印するのですよ」
211ローゼソ[sage]:2011/12/06(火) 01:51:50.58 0
>208
>『え?え?え?なんで私たちは倒すべき伯爵と、じゃれ合ってたの?』

>『何やってんのさ、もー!さっさと私たちが蜂起したことを報せるよ!』

伯爵がロリに興味が無くなったことによって、魅了の術の効果が消えます。
その途端、革命は急展開。
ノアルスイユはあっという間に追いつめられていきます。

>209-210
スライムたちの願いによって、文字通りの救いの神、整頓の神が降臨しました。
そのせいか、ルェルルが超展開についてこられなくなったら困る
という、メタな理由によるものかは分かりませんが、ローゼソはようやく正気に戻ります。

「あ、れ――?」

気が付くと、辺りは戦闘の真っただ中。
それも、すでにかなり革命勢力側が押しているようです。

>『どうやらアレは旧き神の使徒のようだな……殺せ』

メイスを持った近衛兵達が襲い掛かってきます。
しかし、今のパーティーには自動回避が復活したルェルルがいます。
自動回避と鉄壁防御、防御をもって戦いを制す無敵のコンビが復活です!

「おりゃああああああああ!!」

近衛兵の中に突っ込んで、何食わぬ顔で殴られながら剣を振り回します。
212 : 忍法帖【Lv=19,xxxPT】 [sage]:2011/12/06(火) 18:51:03.83 O
ベホマズン&ケアルガ&メディアラハンですよねー。
213 :ルェルル=ルュル ルルゥ ◆mMGaLMOXkw [sage]:2011/12/08(木) 01:09:38.75 0
>>209
絹の布で閉ざされた神秘の世界に、凸棒の姿をした整頓の神が降臨します。
整頓の神は一神教の話をしてくれましたが、幼女には難解な宗教問題なんて理解が及びません。
神妙に聞いている振りをしながらルェルルが話を聞き流していると、いつの間にか話題はご飯の話に移っていました。

>「ご飯には一時の豪華さだけでなく、安定が大事ですよね。
>安定したご飯を望みカノンのもとを離れるならば、
>再びあたしの《ツヴェルフレギオンエンゲル》に加えましょう」

「うん、一回だけのご飯より、毎日のご飯がいいっ。
 それでね、わたしね、ご飯はおいしいのが良いの。
 うーんとね、お肉もお魚も食べたぁい!あとぉプリンも!」

ルェルルは安定した食生活に加えて、食事の質を落とさないことも望みました。
一度贅沢の味を知ってしまったら、生活レベルを落とすことは考えられません。
堰を切ったかのように溢れ出る想いを聞き届けたのか、整頓の神はルェルルに加護を与えます。

>「目覚めなさい《起死回生反撃機会》
>――ちょうどいい時にちょうどいい事を思い出す《アトダシジャンケン》」

神の宣告を受けると、ルェルルの頭の中には色々な光景が、ぽわぽわと浮かんでは消えていきます。
洞窟のキッチンではなまるハンバーグを食べたこと。どこかの酒場でお味噌汁を飲んだこと。
ユレッサ岩塩要塞で真教の腐敗の証拠を掴んだことも思い出します。
あの時の羊皮紙の紙束はルェルルの靴の中敷きとして使われているので、現在も奇跡的に残っていました。
熱心な真教徒であるティーシャたち近衛兵が羊皮紙の内容を知れば、帝国上層部に反旗を翻すかもしれません
……旧教の敵である事は変わらないかもしれませんが。

>>211
ローゼソが雄叫びを上げ、剣を振り回しながら近衛兵たちの中に突っ込んでいきます。
スカートの主が移動した事によって、その中に座り込んでいたルェルルの視界も晴れやかになりました。
大広間の中央にティーシャの姿を見つけたルェルルは、おもむろに靴の中から羊皮紙を取り出します。
そしてテーブルの上の羽ペンを手に取り、すらすらと紙の上に走らせました。
再び整頓の神の傘下に入ることにしたルェルルは、羊皮紙の裏側部分の余白に真教を辞める旨を書いたのです。

「はい、これあげるね」

羊皮紙を渡されたティーシャは困惑の表情で、ルェルルの書いた文字を読み上げました。
戦闘中という事もあって、少し迷惑そうな顔をしながら。

『おいしいごはん まいにちたべる かのそ やめるから かわりに かたたきけんあげる……?』

意味を判じかねて羊皮紙を裏返したティーシャは、そこに詳細に書かれた真教の腐敗を知ってしまいます。
それは、カノンを盲目的に愛する彼女にとっては最大の裏切りに他なりません。
ティーシャが憤怒に打ち震えていると、その隙にローゼソの剣が頭に当たり、彼女はバッタリ倒れてしまいました。
他の名も知れぬ近衛兵たちも、倒れない壁役が振るう凶刃と、傭兵団の数に押されて次々に倒れて行きます。
取り巻きたちが居なくなると、大広間に残る敵はノアルスイユ一人になりました。
214ルェルル=ルュル ルルゥ ◆mMGaLMOXkw [sage]:2011/12/08(木) 01:11:59.88 0
『この狂信者共より、悪徳に塗れた私の方が神に近い位置にいるとはな。
 これではカノンの使徒の名が泣こうと言うものだ。
 元々は、たかだか一冊の本に支配される意志薄弱な連中。
 薄汚れた紙切れもこんな有象無象にまで恩寵を与えはしまいか。
 そう、帝国の高官が有り難がって奉じる神とはな……単なる紙なのだ』

ノアルスイユは床に横たわる近衛兵たちを睥睨すると、劇役者のように大げさな身振りで言いました。
彼は神では無いので、かつて混沌の神が語ったような事を理解しているわけではありません。
もちろん聖典の内容を解析する事も、改竄する事も、破壊する事も、持ち出す事もできません。
彼が知ったのは、聖典こそが神であったと言う事実だけです。

『神などは弱者の頸木たる王法の鉄鎖を、より堅固にする程度の役割しか持たぬ。
 我々人間を悪に引き摺りこむ衝動は誰から授かった?
 それに、この世界に戦争と疫病と飢饉とを送り、どこから見ても欠点だらけの世界を作ったのは誰だ?
 ふん……神を神と崇めるのも馬鹿馬鹿しいと分かろうものではないか。
 かくも不完全な世界故に、我々支配者は甚大な労力を傾けなければならない。
 民衆から快楽を搾りとるのは、その正当な対価である』

美貌の伯爵は自分の言葉に微塵の疑いも持たないようで、傲岸不遜に言い放ちました。
そして、目の前に転がるティーシャを邪魔そうに蹴り飛ばして話を続けます。

『君たちは利権と利益とで動く、少しは分別のある人間のようだ。
 それならば、人間らしく理性的な取引をしようではないか。
 宝石に金貨、水運や鉱山の利権、美男美女、山海の珍味に王侯の権力。
 欲しい物を言ってみるが良い……己の欲望を隠す事はない』

難しい話を捲し立てられて混乱するルェルルですが、伯爵が何かをくれそうなことだけは分かりました。
とりあえず美味しいご飯と鍵を手に入れることだけを考えて、ルェルルは応えます。

「えっとぉ、うーんとぉ……うーんとぉ……鍵っ!
 あとぉ、プリンとクッキーと、サンドイッチとぉ、えっとぉ。
 あとはね、安定したご飯が大事なの!」


◇NPCデータ◇
名前:ノアルスイユ=フォン=テルピア
種族:人間族
年齢:24
性別:男
容姿:眉目秀麗、長い黒髪に青い瞳
服装:黒をベースにした貴族風の服、マント
特技:【魅了の魔貌/5】【帝国式剣術/4】【悪徳の栄え/1】
備考:堕落と退廃を極めたテルピアの青年貴族

◇魅了の魔貌◇
魔力の宿った美貌で異性を魅了する。
顔を見たもの全てが対象。

◇悪徳の栄え◇
対象一体の精神から悪徳を具現化した魔物を召喚して使役する魔術。
悪徳とは傲慢、嫉妬、暴食、怠惰、強欲、憤怒、色欲……など。
罪深い者ほど、強力で醜悪な魔物が心に棲む。
215 :ローゼソ[sage]:2011/12/08(木) 23:20:35.97 0
>214
ローゼソは、ルェルルの機転を利かせた作戦によって、ティーシャ撃破に成功します。
自分ひとりになった伯爵は、狼狽える事も無く大物悪役らしく演説を始めます。
そして大物悪役らしく、こちら側に取引を持ちかけてきました。
対するルェルルは鍵が欲しいと即座に言い放ちます。すごい頭の回転の速さです。

>「えっとぉ、うーんとぉ……うーんとぉ……鍵っ!
 あとぉ、プリンとクッキーと、サンドイッチとぉ、えっとぉ。
 あとはね、安定したご飯が大事なの!」

すると、伯爵がすっと目を細め、殺気のオーラを滾らせます。

『残念だが鍵だけは渡せないな……。あれは私の支配権の要!』

それを聞いたローゼソが、物騒な発言をします。

「そうか、それなら仕方だ無い……。ころしてでも うばいとる!!」

ローゼソは変装用のドレスを脱ぎ捨て、いつもの服装に戻りました。
中ボスバトルの始まりです!

『愚かな……折角チャンスを与えてやったというのに……。
お前達など私が手を下すまでもない、己の悪徳の前に倒れるがよい!』

ローゼソとルェルルに向かって、闇の波動が放たれます。
伯爵の特殊能力、【悪徳の栄え】の発動です!
果たしてどんな魔物が現れるのでしょうか。
216ルェルル=ルュル ルルゥ ◆mMGaLMOXkw [sage]:2011/12/10(土) 22:03:42.27 0
ルェルルは鍵を要求しましたが、伯爵はあっさり断わって、さっさと臨戦態勢に入ってしまいます。
ノアルスイユが習得した魔術、悪徳の栄えは対象が一体なので、前の方にいたルェルルが魔術の標的となりました。
伯爵の影が長く伸びると、複雑な紋様を描きながらルェルルを黒い図形の中に閉じ込めます。
ルェルルが床を動き回る影をぼんやり眺めていると、突然自分の胸の辺りから黒い煙のようなものが、しゅうしゅう吹き出ました。
それは次第に質量を増し、色と形を持ち、見るからに恐ろしげな魔物になってしまいます。
まんまるの目玉に、大きな口、頭には王冠を被り、ゼリーみたいな半透明の体を持つ肉まん形のスライムでした。
この巨大なスライムは、ルェルルの暴食の欲望が具現化した魔物。
テーブルの上に残っていた食べ物を見つけると、暴食スライムは大口を開けて近寄って行きます。

「ダメぇぇっ!わたしのプリン食べないでー!」

ルェルルは暴食スライムに駆け寄って、しがみ付きました。
魔物がプリンを全部食べるつもりなのを察したのです。
ですが、幼女に大きな魔物は止められません。
ちらりとルェルルを振り返った暴食スライムは残酷な笑みを浮かべ、見せつけるようにして全てのプリンを呑み込みます。

「プリン返してぇ!」

怒ったルェルルが暴食スライムを叩くと、小さな腕はスライムのゼリー体の中に沈み込んで、抜けなくなってしまいました。
そうしてる間にもテーブルの全ての食べ物を呑み込んだ暴食スライムは、他に食べられる物を探して辺りを見回します。
ぐるぐる体を回していた暴食スライムが、ホイミソを見つけると体の回転を止めました。
どうやら、ホイミスライムのゼリーっぽい体をデザート代わりとして目を付けてしまったのでしょう。
暴食スライムは大口を開けると、ぶるぶるんと体を揺らしながら跳ね回り、ホイミソを食べようと近づきます。

「わぁああっ……!」

ルェルルは暴食スライムの背中にしがみついたまま、激しい動きに目を回してしまっていました。
暴食スライムは何もかも食べて消化してしまう魔物。もちろん好き嫌いはありません。
術者の伯爵を覗いて、視界に映った食べられる物は、美味しそうな順から何でも食べてしまうのです。
217ローゼソ[sage]:2011/12/12(月) 00:01:00.42 0
>216
前列にいたルェルルが伯爵の邪法の標的になり、ルェルルは黒い図形の中に閉じ込められます。

「無駄だよ、ルゥは一転の穢れも無い綺麗な心を持っているんだ!
何も出て来やしない!」

ローゼソは自信満々で言い放ちますが、普通に巨大なスライムが現れました。

『ククク、この世に心に悪を持たない人間などいないのだよ』

「何!? 一体何の悪徳だと言うんだ……!」

>「ダメぇぇっ!わたしのプリン食べないでー!」

スライムを追いかけるルェルルを見て、ローゼソは何となく理解しました。
食いしん坊の悪徳のようです。

>「プリン返してぇ!」

「ルゥ、触るな!」

暴食の化身なら、食べ物以外も食べ物にしてしまうことでしょう。
案の定、ルェルルの腕はスライムにはまりこみます。
暴食スライムは、ホイミソにターゲットを定めたらしく、近づいていきます。
やわらかそうなホイミソのこと、食べられたらすぐに消化されてしまうかもしれません。

「やめろおおおおおおおおおお!! 消化不良おこしてしまえ! 地蔵流奥義アストロン!!」

ローゼソはダッシュして飛び上がり、空中で地蔵化して重力に任せてスライムの中に飛び込みます。
狙いは、スライム内の容量を占拠して他が食べられるのを防ぐことと、あわよくばスライムにお腹(?)を壊させる事です。
218ルェルル=ルュル ルルゥ ◆mMGaLMOXkw [sage]:2011/12/15(木) 00:40:57.67 0
>>217
鉄の像になったローゼソは、自分から巨大スライムの体内に飛び込んでしまいました。
ローゼソの体は青いゼリー体の中にドロリと沈み込み、まるで虫入りの琥珀。
取り込んだ側の暴食スライムはと言うと……とても動きにくそうな感じになっていました。
ドスンドスンと重苦しい移動音で跳ね回っています。
動きも鈍くなったようで、傭兵団やスライムに近づいてもサッと避けられていました。

「んぅー……ん……目が回るよぉ……止ーめーてーっ!」

ルェルルの叫びにも、暴食スライムは止まりません。
屋敷の周囲に茂る果樹園の木々を見つけると、外に出て生っている実を食べ始めます。
傭兵団やスライムを捕まえられなさそうなので、静止物を食べることにしたのでしょう。
手と足を飲み込まれたルェルルは、跳ねまわるスライムに体を振り回されて、ぐるぐると目を回していました。
暴食スライムが離れた隙に、攻撃のチャンスと見た傭兵団が伯爵に斬りかかります。

『伯爵、覚悟……あれ……やっぱり……伯爵って格好良い……んじゃないの?』

ローゼソが正気に返ったので、伯爵の魅了の魔貌も戻ってしまっていました。
魅了された傭兵団は役に立たないどころか、再び敵に回ってしまいます。
戦況は悪くなるばかりなのに、幼女はなかなか起死回生に繋がりそうなことを思い出しません。

「ホミそ、ホイミしてぇ……きもちわるいよぉ」

スライム酔いでぐったりしたルェルルは、ホイミソの方を見つめて言いました。
219 :名無しになりきれ[sage]:2011/12/16(金) 21:30:13.30 0
1
220 :名無しになりきれ[sage]:2011/12/16(金) 21:30:23.58 0
7
221 :名無しになりきれ[sage]:2011/12/16(金) 21:30:33.68 0
5
222 : ◆IgQe.tUQe6 :2011/12/16(金) 21:30:44.05 0
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223ホイミソ[sage]:2011/12/16(金) 23:09:07.95 0
必死で逃げ回っていたホイミソは、ローゼソの奥義でようやく一息つくことができました。
気が付けばルェルルがぐったりしています。

>「ホミそ、ホイミしてぇ……きもちわるいよぉ」

「えー、きもちわるいに効くのはキアリーじゃないのかなあ。
ってルェルル、ま、まさかもう伯爵に?!
大変だ、王家のあかしを取りに行かなくちゃ!!」

ホイミソは盛大に勘違いして慌てています。

「と、とにかく吐いたら楽になるから、そしたらホイミするから、ねっ」

キアリーが使えないホイミソの代案ですが、
暴食の欲望にとっては存在を否定されたようなもの、逆鱗に触れるかもしれません。
224 :ルェルル=ルュル ルルゥ ◆mMGaLMOXkw [sage]:2011/12/17(土) 18:03:07.53 0
【( ・∀・) 庭の果樹園】

>>223
ルェルルが回復魔法をお願いすると、ホイミソは惑乱してしまいます。
彼は黄色い触手を?の形にして、その先端を頭に乗せながら王家のあかしを取りに行かなくちゃなどと言い始めました。
ルェルルには何のことか分かりませんでしたが、ホイミソは幼女を落ち着かせるように続けます。

>「と、とにかく吐いたら楽になるから、そしたらホイミするから、ねっ」

「うん……えっぷ」

ルェルルの口から、混ぜ物だらけの吐瀉物が吐き出されました。
それは暴食スライムの背中に吐き出され、ブルーのゼリー体に沈んで行きます。
暴食スライムは怒っていました。頭を沸騰させていました。
吐き出したいとの欲求から生まれる物体を取り込んでしまったのは、暴食の化身にとって大ダメージです。
暴食スライムのブルーの体はぐつぐつと煮立って緑に変色し、蒸発しそうな程の湯気を立ち昇らせています。

「あつっ……あついよぉ!」

ルェルルは溶けゆく暴食スライムの体から手を抜いて、自由を取り戻しました。
今や巨大なスライムの体は溶けたゼリーのようになり、バブリーな感じに泡立っています。

『これでは役には立つまいな……無用の者よ、消え去るが良い』

傭兵たちを従えて外に現れた伯爵が呟くと、蒸発したスライムは煙になって消えてしまいます。

『さて……今度は君にしようか。その心にどれだけ醜い邪心が潜んでいるのかを見せてもらおう』

そう言った伯爵は、即座に魔術の詠唱を行いました。
すると、まだ地蔵化しているローゼソに向かって、黒い影が妖しく伸びて行きます。
今度はローゼソの心から醜い魔物を召喚しようとしているようでした。

「ふーふー」

目に涙を滲ませた幼女はと言うと、地面に座り込み、やけどした手をふーふーしています。
225ローゼソ[sage]:2011/12/17(土) 23:25:33.49 0
>218-224
「――はっ」

目が覚めると、暴食スライムはすでにいませんでした。
地蔵化している間に、ルェルルが自らの悪徳に打ち勝ったのです。
そして今度はローゼソがそのターゲットになろうとしていました。

「や、やめろ――!」

ローゼソは黒い図形に閉じ込められ、胸のあたりから黒い煙が出て、悪徳の魔物を形作っていきます。
罪深い物ほど強力な魔物が現れるといいますが、正体が異界の魔王なら前世の罪が相当ありそうです。
現れたのは、筋骨隆々の褌一丁の男達。両手にはバチを持っています。

「な、なんだ……? 一体何の悪徳だ!?」

『やはりカオスの手下、か――。 
ならば決まっているだろう、問答無用で場をカオスと化す混沌の悪徳だ――!
さあ、自らの混沌に呑まれ滅するが良い、カオスの使徒!』

『――燃える友情! 漢祭り!!』

バチを持った漢達は、問答無用で襲いかかってきました。一体どこら辺が友情なのでしょうか。
ローゼソだけではなく、ルェルルにも向かっていきます。とんだとばっちりです。
このままでは、取り囲まれてバチで叩きまくられそうです。
226ホイミソ[sage]:2011/12/19(月) 00:01:18.84 0
ホイミソはやけどして地面に座り込んだルェルルに駆け寄りました。

「ああよかった・・・激しい運動はしない方がいいよきっと。
それじゃあホイミするね!実ダメージにならホイミ効くからねっ!
いくよーっ・・・ホイミ!」

ホイミソがはりきってホイミを唱えると、ルェルルの体力が回復しました。
しかし、ほっとしたのも束の間。

>『――燃える友情! 漢祭り!!』

ルェルルとホイミソはバチを手にしたマッチョ達に囲まれてしまいます。

「うわぁ、大変だ!」

ホイミソは無い脳みそからニンゲンの生態についての知識を探しました。

「そ、そうだ、こういう時は多分――

押忍、兄貴達!
漢の友情を示すなら、あの美青年こそがふさわしい!
さあ、男男男男で二列に並べーっ!」

ホイミソはマッチョ達の前に飛び出すと触手をさっと振り上げ、伯爵を指さしました。

「押忍!」
「男男男男!」
「男男男男!」

言われて伯爵に気付いたマッチョ達は、隊列を整え目を輝かせて行進してゆきました。
227 : 忍法帖【Lv=31,xxxPT】 [sage]:2011/12/19(月) 14:26:55.22 O
僕はベホマズンとオールケアルガとメディアラハンを唱えたですよねー。
228ルェルル=ルュル ルルゥ ◆mMGaLMOXkw [sage]:2011/12/20(火) 02:02:17.89 0
>>225-226
伯爵の魔術を受けたローゼソの胸から、謎の男たちが現れてしまいました。
不気味な雰囲気を漂わせて、じりじりとにじり寄り、今にも襲いかかって来そうな筋骨隆々の男たち。
ルェルルがホイミソの触手を握って震えていると、とっさに機転を利かせたホイミソが叫びます。

>「押忍、兄貴達! 
>漢の友情を示すなら、あの美青年こそがふさわしい!
>さあ、男男男男で二列に並べーっ!」

ホイミソの声を聞いた男たちの瞳に宿るのは、煌々と光る金星の輝き。
二列に並んだ彼らは怒涛の勢いでノアルスイユに向かい、華美な貴族の服を剥いで美貌の青年を愛し始めました。
あまりの恐ろしい光景に、スライムたちが慌てて幼女の目を塞ぎます。
真っ暗になった視界の中で、伯爵の声がルェルルの耳に聞こえてきました。

『や、止めろ……ヤメロォォオオッ!』

『き、きゃぁぁぁぁぁぁぁ!伯爵さまぁぁぁぁ!』

伯爵を取り巻く傭兵団から悲鳴と怒号が上がりましたが、目隠しされたルェルルには何が起きているのか分かりません。
絶叫の坩堝と化した修羅場が悪戯に幼女を怖がらせます。

「うあぁぁん……まっくらでなんにも見えないよぉ!」

混乱したルェルルがその場でグルグル回っている間に、テルピアの長い戦いに決着が着きました。
ノアルスイユは、心も体もボロボロになっていました。
悪徳の化身は術者を攻撃できませんが、彼らがしたのは結果的に攻撃になってしまう様な行為でした。
伯爵は心を巨大なハンマーで砕かれてしまったようで、魅了の魔貌も悪徳の栄えも効力を失ってしまいます。
もう、再起不能に違いありません。

『勝ったの?勝ったの?勝ったよね!?』

ロリータの勝利宣言と共に、傭兵団が勝利の凱歌を上げました。
ブランレイクの市中でも、テルピア兵たちが次々に打ち倒され、今日ついにテルピアが解放されたのでした。
229ローゼソ[sage]:2011/12/21(水) 00:23:04.60 0
>226
「うわーーー! ボクは男じゃないから勘弁して!
ロリババア族は少女だけの種族だ!」

バチを持ったマッチョに取り囲まれたローゼソ。
今は男装しているので仕方がありません。

>「そ、そうだ、こういう時は多分――

押忍、兄貴達!
漢の友情を示すなら、あの美青年こそがふさわしい!
さあ、男男男男で二列に並べーっ!」

ここでホイミソが、起死回生の一手を放ちました!

>228
>『や、止めろ……ヤメロォォオオッ!』

>『き、きゃぁぁぁぁぁぁぁ!伯爵さまぁぁぁぁ!』

「う、うあああああああああああ!!」

敵ながら、あまりに残酷な仕打ちに哀れを催すローゼソでした。
放送しない方がいいような気がするので
画面を暗転させて「しばらくお待ちください」のテロップでも流しておきましょう。

『おのれ……混沌の力がそれ程のものだったのは……!』

ノアルスイユは、精魂尽き果てて気を失いました。

>『勝ったの?勝ったの?勝ったよね!?』

「よーし、伯爵が持っているという神殿の鍵を探そう!」

伯爵の身辺を調べますが、それらしきものはないようです。

「まずは宝物庫、かな?」

しかし屋敷内を探索していた時、宝物庫らきしものは見当たりませんでした。
そこで、美術室の絵の裏に隠し扉がありそうだったことを思い出します。
ローゼソは美術室に行き、一番大きな絵を壁から外してみました。
230ルェルル=ルュル ルルゥ ◆mMGaLMOXkw [sage]:2011/12/21(水) 02:42:40.81 0
【( ・∀・) ノアルスイユ邸の美術室】

>>229
>「よーし、伯爵が持っているという神殿の鍵を探そう!」

勝利したローゼソが、意気揚々と剣を掲げて言います。
ですが、スライムの目隠しを解かれたばかりの幼女は、夜中と言うこともあって疲れていました。

「……今日はねむいよぉ、明日からがんばる……」

ルェルルは、とろんとした目でそんなことを言いました。
幼女の耳には頬を撫でる夜風に混じって、ローゼソの声が小さく聞こえて来ます。

>「まずは宝物庫、かな?」

ローゼソの行き先を聞いたのに、ルェルルは夢遊病者の足取りで、全く別の方向に歩き出してしまいました。
まるで、気まぐれなる夢魔に操られるかのように。

――――。

鍵の見当を美術室に付けたローゼソはと言うと、画廊の一角に掛かっていた大きな絵を外していました。
中の空間に納められていたのは、赤色の水晶を削って作ったような美しい鍵。
何らかの神秘的な力を秘めた物であることは一目瞭然です。
これこそが、カノンの神殿に至る四本の鍵の一つなのでしょう。
ですが……ローゼソが鍵を取って後ろを振り向いた時には、すでに幼女の姿はありません。
分配に関する論戦が始まった大広間にも、空っぽの牢屋の中にも、騒々しい果樹園にも……どこにもいませんでした。
幼女は行方不明となってしまったのです。
231ルェルル=ルュル ルルゥ ◆mMGaLMOXkw [sage]:2011/12/21(水) 02:44:52.35 0
―――人間に見つかっていけない。

【( ・∀・) ノアルスイユ邸】

一夜明けたテルピア領ブランレイク市では、圧制解放の喜びに市民たちが沸き立ちます。
接収されたノアルスイユ邸はロリータ傘下の傭兵団と、協力した反乱軍が共同管理して、市民たちの略奪を防ぎ切りました。
残された莫大な財産は、いずれ勝利者の手で分配されるのでしょう。
その高価な財宝を守るため、傭兵団は屋敷の警備を続けます。
広大な屋敷の各所を巡回する彼女たちの間には、ある奇妙な噂が流れ始めていました。
この屋敷に得体の知れない存在が住み着いているとの。

『聞いた、フロレット? この屋敷……いるんだって?』

『なになに? いるって何が?』

『アレ……よ。この屋敷で少し食べ物から目を離してるとね……。
 サンドイッチが一切れ無くなったり、ジュースが半分に減ってたりするのよ~!』

『まさか、噂に聞く泥棒小人って奴? 古い屋敷にはいるそうだけど』

『ふふふっ、拷問で死んだ幽霊だったりして~』

『キャ~!アハハッ』

「…………」

そんな会話を続ける傭兵隊の隙を窺って、ささっとテーブルに駆け寄り、パンやハムを掴む小さな影がありました。
素早く物陰に隠れた小人の正体は、戦勝後と同時に行方不明になったルェルル。
クローゼットの隅っこに置かれたバスケットに入ると、体を丸めたルェルルはパンとハムをもくもく齧ります。
美味しいパンに美味しいハムを平らげると、幼女は指についた脂をぺろぺろと舐め取りました。
満足したルェルルはバスケットの中で丸まって眠り、人間たちが作る新しいご飯を待ちます。

今の贅沢な生活を捨てるのは未練が募ります。お屋敷から出たくありません。
なので……ルェルルは、このお屋敷の子になると決めたのです。
この幼女は、今日から人間の家から必要な物を必要なだけ盗って暮らす“狩り暮らし”を始めたのでした。
232 :ローゼソ[sage]:2011/12/22(木) 00:27:37.11 0
>230
「ルゥ、鍵だよ!」

鍵を見つけたローゼソは、満面の笑みで振り向きます。
ルェルルはどこにも見当たりませんでした。

「あれ、いない……」

ルェルルは行方不明になってしまいました。
それにしても主人公がよく目的を忘れたり戦線離脱したりするスレであります。

>231
革命が成功してもルェルル達の冒険はまだまだ途中。
4つの鍵を集めて神殿の扉を開かなければなりません。
これで、手持ちの鍵は二つになりました。
ギャンブラー集団ツキの女神の首領が、三つ目の神殿の鍵らしきものを持っています。
屋敷の警備をしながらローゼソはぼやきます。

「う~ん、次の鍵はカジノで勝ってゲットするしかないかなあ……」

そんな彼女の耳にも、噂は届きます。

>『アレ……よ。この屋敷で少し食べ物から目を離してるとね……。
 サンドイッチが一切れ無くなったり、ジュースが半分に減ってたりするのよ~!』

この会話を聞いたローゼソは、ピンときました。

「大変だ、他の人に見つかる前につかまえないと!」

―――人間に見つかっていけない。
当たり前です。幼女とはいえ小人ではないので、見つかればタイーホされてしまいます。

「ルゥー! 出ておいでー!
えーと、人間に見つかってはいけない、こういう時は地下にいるんだな!」

屋敷の隅々まで探しているうちに、偶然地下への隠し扉を見つけました。

「ルゥーそこにいるのー?」

そこは、よく分からない機械がたくさんある部屋でした。

「隠れてないで出ておいでー! あっ」

転びそうになって手を突くと、そこに謎のボタンがありました。ぽちっ。

1・屋敷自爆装置起動!
2・屋敷浮上! 実は天空の屋敷だった!
3・その他
233 :ルェルル=ルュル ルルゥ ◆mMGaLMOXkw [sage]:2011/12/25(日) 22:47:20.32 0
【( ・∀・) ノアルスイユ邸】

「うぅん……ハンバーグの匂い……」

クローゼットの中で、すやすや眠っていたルェルルが、鼻をくすぐる香りに目を覚ましました。
大きな欠伸をしながら起きた幼女は、はっとした様子で寝る前に脱いだ靴下を探ります。
ですが、いくら調べても中は空っぽ。入っているのは幼女の足の薫りだけ。
ルェルルは知らないお爺さんが靴下の中にプレゼントを入れる夢を見たのですが、やっぱり夢だったようです。

「くつしたにハンバーグが入ってれば良かったのに、なんにもなぁい。
 あっ……スー……この匂いは……次のご飯はハンバーグだぁ!」

屋敷の廊下を流れて方々に散って行くのは、充分に熟成されたテルピア産の牛肉が焼かれる匂い。
何十人もの傭兵の空腹を満たすため、厨房では盛大に炎が躍り、上質のお肉から薫りを生み出し続けています。
熱された鉄板の上で焙られるジュウジュウと言う音が、ルェルルに狩りの決意をさせました。
人知れず行われる幼女による狩りは一切の武器を用いません。知恵と手足だけが頼りです。

「こっそりこっそり……」

ローゼソが地下で謎のボタンを押している頃、ルェルルはトタトタッと駆け音を立てて、物陰から物陰へ走り回っていました。
傭兵たちは屋敷のあちこちにいますが、その様子は狩りに励む幼女には窺い知れません。
食べ物の無い所は、幼女の行動半径から外れているのです。
整頓の神の使徒とは言え、ルェルルは易々と混沌的な場所には飛び込みません。
遠くへの冒険も、神を封印する使命も、今の狩り暮らしには必要ないのですから。

『……でも、何か得体の知れないものが住んでるなんて気持ち悪いよね?』

『そうね。質の悪い鼠かも知れないから、ロリータは毒で駆除するつもりらしいけど』

『毒って肉団子とかに混ぜて?』

『そっ、だから床に落ちてる物を口にしちゃダメよ』

『ぶー、私そんなに卑しくないもん』

移動の途中で傭兵たちの声が聞こえても、頭の良くない幼女はこれと言った注意を払いません。
きょろきょろしていたルェルルは、廊下の隅に目を落とすと、ぱっと顔を輝かせました。
豪華そうな赤い絨毯の上には、これ見よがしに木のお皿が置かれています。
その上には、なぜか美味しそうなハンバーグが湯気を立てながら乗っていました。
どうぞ、私を食べて下さいと言わんばかりに。

「おいしいハンバーグとったよぉ!」

ルェルルは、にっこりとした笑顔のまま、小さなお皿を天に掲げました。
得意満面。このまま毎日、こんな生活が続けられたらどんなに幸せなことでしょう。
狩りで今日の獲物を手に入れた幼女は、小皿を両手で持ったまま、寝床のクローゼットに帰ろうとします。
抜き足差し足……裸足のぺたぺたとした足音で、死へのカウントダウンを刻みながら。
234 : 忍法帖【Lv=40,xxxPT】 [sage]:2011/12/28(水) 18:38:03.15 O
幸福の科学はスペースオペラの世界観設定の理論形態情報知識その物ですよねー。
235ローゼソ[sage]:2011/12/29(木) 12:54:29.15 0
ローゼソがボタンを押すと、辺り一面のモニターが起動しました。
モニターには、屋敷の様々な場所が映し出されます。
どうやらここは、戦闘時のための指令室だったようです。
モニターの一つから、傭兵達の会話が聞こえてきました。

>『……でも、何か得体の知れないものが住んでるなんて気持ち悪いよね?』
>『そうね。質の悪い鼠かも知れないから、ロリータは毒で駆除するつもりらしいけど』
>『毒って肉団子とかに混ぜて?』
>『そっ、だから床に落ちてる物を口にしちゃダメよ』
>『ぶー、私そんなに卑しくないもん』

他のモニターが、満面の笑みのルェルルを映し出します。

>「おいしいハンバーグとったよぉ!」

「ルゥ――!」

ローゼソは全体マップのモニターでルェルルの大体の位置を把握し、弾かれたように地下室から飛び出しました。

「ルゥ!! 食べちゃ駄目だああああああああああああ!!」

息を切らしながらルェルルの元に現れ、ハンバーグの乗った皿を弾き飛ばします。
弾き飛ばされて床に落ちたハンバーグには、早速鼠がかじりつきました。

「食べたら死ぬ! ロリータの奴、ルゥを毒殺するつもりだったんだ!
ここにいたら危険だ、早く脱出しよう!」

いささか誤解を招く表現ですが、間違ってはいません。
一方、ハンバーグに齧りついた鼠はすでにひっくり返って死んでいるのでした。
236 : 忍法帖【Lv=40,xxxPT】 [sage]:2011/12/29(木) 13:55:28.06 O
ウルトラスーパーハイパー超高出力プラズマレーザービームブラスターシャイニングイレイザー砲発射準備ですよねー。
237ルェルル=ルュル ルルゥ ◆mMGaLMOXkw [sage]:2011/12/30(金) 05:51:48.26 0
【( ・∀・) ブランレイク市】

>>235
幼女はハンバーグを手にして、意気揚々と隠れ家に戻ろうとします。
ですが……その小さな幸せは、たちまちの内に運命の激流に押し流されてしまいました。
残酷な運命はローゼソの手を借りて、ルェルルが手にしたハンバーグを家鼠の胃袋の中へと連れ去ってしまったのでした。
懸命な努力で手にした勝利の果実を一欠けらも味合わせること無く、手の届かない遥か深淵の世界まで。
ローゼソは鬼のように恐ろしげな顔をして、まだ呆然としている幼女に向かって告げました。

 >「食べたら死ぬ! ロリータの奴、ルゥを毒殺するつもりだったんだ!
 >ここにいたら危険だ、早く脱出しよう!」

いくら真実の刃を振るっても、美味しそうなハンバーグが死を齎すなど、無知な幼女には理解し得えないこと。
涙目のルェルルは、悲嘆と困惑とが作る見えざる鎖に囚われました。
悲しみに突き動かされるまま、幼女は鼠の口を両手でこじ開けてまで、毒入りハンバーグを取り戻そうとしてしまいます。

「わたしのハンバーグ返してぇぇ!」

そして、その試みの無駄を悟ると泣きました。まるで発情期の猫が叫ぶように。
花も恥じらう少女なら、しくしくと悲しげに泣くものですが、分別を知らない幼女は力いっぱい泣くのです。

「わぁああぁぁぁぁああぁぁっ!あぁぁああぁぁ……わああああぁぁ!!」

男装少女が、泣き叫ぶ幼女の手を取って駆け出します。
体重の軽いルェルルは、ローゼソに牽引されると引き摺られるようにして歩き出しました。
廊下を引っ張られるがままに走る中、ルェルルの頬を離れた涙が、幾つもの滴となって煌めきます。
屋敷を警備していた傭兵たちが異変に気付いた時には、二人ともすでにブランレイクの市内。
一夜明けた街の中は、長年の圧制から解き放たれたせいか活気で溢れていました。
その街の中で、若い男性が泣き叫ぶ幼女を無理やり連れ去って行く光景を、何人もの市民が目撃します。

『おい、あんた……その子を何処に連れて行こうってんだい?』

雑踏を進む内、泣き喚く幼女を見かねたように、何人かの男たちがローゼソの行く手を阻みます。
彼らは普通の市民でしたが、辛く苦しい忍従の生活から解き放たれて高揚していました。
伯爵の仲間を見かけることが有れば、決して許さないでしょう。
手を引かれている幼女はと言うと、今だに泣き叫んだままでした。ローゼソの擁護を一切すること無く。

「うっ、うっ……わぁああぁぁぁぁ……ううっ……!」

男たちの目付きが、不審なものに変わって行きます。
もしも、彼らへの弁明や対処の仕方を誤れば、人攫いと思われて袋叩きにされるかも知れません。
238 : 忍法帖【Lv=40,xxxPT】 [sage]:2011/12/30(金) 18:46:01.63 O
速度瞬時超伝導超電源超電池超加速荷電粒子スーパーブラディオンビーム砲を発射準備ですよねー。
239 :ローゼソ[sage]:2012/01/02(月) 10:31:43.21 0
>237
>「わたしのハンバーグ返してぇぇ!」

「よく見てみい! その鼠死んでるから! ――えいっ!!」

こう見えてルェルルは暴食の悪徳持ちです。
説得が無駄だと悟ったローゼソは、ルェルルの手を強引に引っ張って駆け出します。
屈強な……かどうかは知りませんが勇気ある漢達が彼等の前に立ちはだかります。

>『おい、あんた……その子を何処に連れて行こうってんだい?』

外見美少年のローゼソが果たして凶悪な幼女誘拐犯に見えるでしょうか。
――見えますとも!
かの有名なロリコン美男子光源氏も、少年の時に幼女を連れ去って自分好みに育てたというので侮れません。

「この子は親戚の子。玩具を買ってあげなかったら泣き止まなくなって……ねえ、ホイミソ?」

ルェルルからの助けが望めないローゼソは、ホイミソに加勢を求めます。
御存じのとおりホイミソはクラゲ型。触手系モンスターに見えない事もありません。
幼女と触手系モンスター。
漢達がその二つを結びつける程度にその方面に造詣が深ければ一巻の終わりです。危うし――!
240 :ルェルル=ルュル ルルゥ ◆mMGaLMOXkw [sage]:2012/01/05(木) 03:20:33.70 0
【(゜ー゜)oO○ あらすじ】

テルピア解放で一区切りついた事で、どこからともなく現れた一匹のスライムがルェルルの頭に乗っかります。
乗っかった人にメタな考えを起こさせる、メタるスライムは幼女にこれまでの旅を振り返らせました……。

そもそもの事の発端は、テルピアの領主ノアルスイユが処女権を制定したことです。
それを基に幼女狩りなどの暴虐を繰り返すテルピアに対し、隣国の領主ロリータは解放名目で侵略を企てました。
ロリータの街道封鎖で補給を断たれたノアルスイユはブランレイクに逃れたものの、内乱と外敵の挟撃で打ち倒されます。
幼女族のルェルルも、成り行きでテルピア解放の傭兵団に加わっていましたが、幼女なのでたいして活躍はありません。

かくしてノアルスイユは倒れ、テルピアには笑顔と平和が戻りました。
ですが、領主を悪代官にして勧善懲悪の時代劇でちんまり終わらせよう……。
そんな考えを持った者を嘲笑うかのような事件が、密やかに起きていたのです。
世界をカオス状態にしてしまう混沌の神が、大悪魔と結託してしまったらしいとの。
このままでは、きっと大変なことが起こるでしょう。

大悪魔と戦うには、四つの鍵を使って神殿に安置された聖典を手にしなければなりません。
整頓の神の庇護下にあるルェルルは、色んな人や神様たちに宥め賺されて、時には無理やり手を引かれて神殿に旅立たされます。
幼女が手にした鍵はまだ二つ。果たして旅の道程は後どれくらいになるのでしょう。
241ルェルル=ルュル ルルゥ ◆mMGaLMOXkw [sage]:2012/01/05(木) 03:24:36.10 0
【( ・∀・) ブランレイク市】

「わぁぁぁぁんぅぅぅぅわぁぁああん!」

ルェルルはお腹が空いて来たのも相まって、わんわんと力強く泣き叫び続けていました。
解放の興奮冷めやらぬテルピア市民たちも、歓喜に水を差すような幼女の喚きが耳に入ると眉を顰めます。
彼らは幼女の手を握るローゼソに向かって、一様に厳しい視線を投げかけるのでした。
幼女略取の容疑を掛けられたローゼソは、周囲を取り囲む市民たちに向かって言い訳を始めます。

 >「この子は親戚の子。玩具を買ってあげなかったら泣き止まなくなって……ねえ、ホイミソ?」

ローゼソは仲間であるクラゲ型モンスターに言い訳の同意を求めますが、市民の視線は冷たいままでした。
まるで氷の女王が吹雪を吹かせて、心臓を凍らせようとするかのように冷たいままでした。

『玩具か、それならこれはどうだい?子供の好きそうな流行の玩具なら幾らでもあるぞ』

玩具職人が投げ輪や木彫り人形などの素朴な玩具を見せますが、ルェルルの涙は止まりません。
お腹の空いた幼女が、玩具で簡単に泣き止むと思ったら大間違いです。
今にも市民による私刑が始まらんとする中、上の方から叫ぶ者がいました。

『待ってくれ!その人は違う……はずだ!』

通りに面した家の窓から、下の通りを覗くのは初老の男。
伯爵の屋敷に捕まっていた靴屋のブレナンでした。
胸が張り裂けんばかりのルェルルの泣き声は、この通りに住んでいた靴屋の耳にも届いたのです。
もっとも、彼が隣の通りに住んでいても幼女の喚きを聞きつければ、きっとこの通りにやって来たことでしょう。

『よく覚えていないのだが、こちらの少年の姿は屋敷の地下牢で見かけた気がする。
 きっと、その子供を助けようとして、私と同じように捕まったのだろう』

そう言って取り成すブレナンの後ろから一人の少女が現れ、幼女を泣き止ませようと飴を差し出しました。
晴れた日の湖面のように青くて、サファイアのように綺麗な粒を。

『はい、飴でも舐める?』

「ぅわぁぁああぁぁああっあっああ――――うん」

ブレナンの娘、サラから飴を貰ったことでルェルルはピタリと泣き止みました。
幼女の心に散らばる悲しみの欠片は、春の日差しに照らされる雪のように溶けてしまいます。
怒れる市民たちもブレナンの説得の甲斐あってか、不審感を持つ者もいなくなったようでした。

『君たちも、色々辛い目に遭って大変だったのだろう……。
 ブランレイクでは見ない顔だから、遠くの街から来たのかな?
 これから郷里に帰るのなら元気を出さねばならん。気を落として早まった真似をしてはいかんよ。
 そうだ、この通りには湖の魚を使った絶品のスープを出す大衆食堂がある。そこの宿の一階にね。
 まずは温かいスープでも飲んで、疲れきった体に元気を取り戻すと良い』

狼の顎亭の看板を指差すブレナンに、飴を頬張るルェルルは極上の笑顔を見せます。
ブレナンは一言も奢るとは言っていないのですが、御馳走してもらえると早合点した幼女は駆け出してしまいました。
反乱軍に協力した賭博師集団“ツキの女神”が住処とする狼の顎亭に。
扉を開けて宿に入れば、高価な工芸品を少しでも高く売り捌こうと、故買屋と交渉する彼らの姿を見かける事でしょう。
242 忍法帖【Lv=40,xxxPT】 [sage]:2012/01/05(木) 04:37:58.38 O
素晴らしいメギドラオンの感想じゃん。
243ホイミソ[sage]:2012/01/07(土) 15:22:36.83 0
>……ねえ、ホイミソ?」

もしゃもしゃご馳走を食べていたホイミソは急にローゼソに引っ張られ
市内まで走ってきたのでまごまごしています。

「え?え?え?・・・えと・・・ホイミ!」
状況が理解できないまま、ローゼソを取り囲む市民にホイミを唱えました。
もし近くに傷を負った市民がいたらちょっと回復するんじゃないでしょうか。

しかしあっという間に幼女は駆け出してしまいました。

「行こう、ローゼソ。ルェルルの暴食を止めないと!」
244 忍法帖【Lv=40,xxxPT】 [sage]:2012/01/08(日) 16:40:15.83 O
次元の歪みと時空の乱れと存在の揺らぎの暗黒の闇の深淵の全てを吸い込む漆黒の穴よブラックホールじゃん。
245 :ローゼソ[sage]:2012/01/09(月) 11:48:28.30 0
>241
>243
絶体絶命――と思われたその時!

>『待ってくれ!その人は違う……はずだ!』

救いの手は差し伸べられました。地下牢で助けたブレナンさんです。
情けは人のためならず。人助けはどんどんして後のフラグを立てておくものです。
ブレナンとサラの活躍により、ローゼソは窮地を脱しました。

>『君たちも、色々辛い目に遭って大変だったのだろう……。
 ブランレイクでは見ない顔だから、遠くの街から来たのかな?
 これから郷里に帰るのなら元気を出さねばならん。気を落として早まった真似をしてはいかんよ。
 そうだ、この通りには湖の魚を使った絶品のスープを出す大衆食堂がある。そこの宿の一階にね。
 まずは温かいスープでも飲んで、疲れきった体に元気を取り戻すと良い』

ルェルルは、その言葉を聞くとあっという間に駆け出してしまいました。

>「行こう、ローゼソ。ルェルルの暴食を止めないと!」

「うん!」

【( ・∀・) 狼の顎亭】
やってきた場所は、なんとあのツキの女神の本拠地がある店でした。
食堂はある集団によって占拠されていました。

『この絵にこっちの壺も付けて……なんと39800Gでどうかね?
今ならサービスでこの皿もついてきますぜ!』

『うーむ、もう一声! 端数切り捨てで30000Gでどうだい?』

ツキの女神が、故買屋と交渉をしています。
ローゼソは、この度手に入れた鍵を取り出しました。

「ねえこれ、どれぐらいになる?」

『何言ってんだい、それはプライスレスだから売り払えない仕様だよ!』

その言葉を聞きつけて、ツキの女神の首領がやってきます。

『おお、神殿の鍵を手に入れたのはボウズだったか――!
確か俺の神殿の鍵を欲しがってたよな。
どうだい? お互いの持つ鍵を賭けて勝負しないか?』

こちらから聞いた時はとぼけまくっていたくせに、やけに単刀直入に切り出してきました。
きっと彼も、喉から手が出るほど鍵が欲しいのでしょう。
鍵の持つ意味を知ってのことなのか、単なる収集家の性癖かは分かりませんが。
ローゼソは一計を案じました。ついにルェルルの食い意地が役に立つ時が来たのかもしれません。
まさか幼女が大食い対決に勝てるだなんて誰も思わないでしょう。

「いいよ。ただし、勝負はルゥとの大食い対決で――どうかな?」
246 忍法帖【Lv=40,xxxPT】 [sage]:2012/01/09(月) 20:29:27.71 O
俺達のドリルは天を創るドリルだ。
247 :ルェルル=ルュル ルルゥ ◆mMGaLMOXkw [sage]:2012/01/11(水) 06:40:22.40 0
>>243-245
ホイミスライムが驚きとまどっていたり、まごまごしている間にもルェルルは駆け出しています。
残されたホイミソはと言うと、まごつきながらも本能的に市民の一人に回復魔法を唱えていました。

 >「え?え?え?・・・えと・・・ホイミ!」

回復魔法は効果を発揮して、サラを相手に自慢話を興じようとしたおじさんに掛かります。
彼の頬の傷は、ホイミソの回復魔法を受けると拭ったように消えてしまいました。
そんなことには気づかないおじさんは、自分の頬を指差すや、自慢げな口調で言い始めます。

『俺の頬に付いてるこの傷痕はな、昨日の解放戦争で受けた勲章さ。
 迫りくるテルピア兵の槍を危うい所でかわして、ばったばったと薙ぎ倒し――――』

サラは綺麗な頬に困惑しつつも相槌を打っていました。
そんな光景を他所に回復魔法を掛けたホイミソは、ローゼソと共にルェルルの後を追いかけます。
狼の顎亭の食堂は広めでしたが、ランプの明かりが灯され、暖色の光の輪を部屋の奥にまで投げ掛けていました。
床にはマスターにお金を払わないとスープは出せないよ、と言われたルェルルが大の字になっています。
幼女は、ふてくされたように不満を表現していましたが、マスターも商売なので甘い顔をしません。
そうしている内に、ルェルルに追い付いたローゼソがやって来ました。
彼女はギャンブラーの首領が持ちかけた、鍵を掛けて勝負しようとの言葉に応えます。

 >「いいよ。ただし、勝負はルゥとの大食い対決で――どうかな?」

「いーよぉ!わたし、いーっぱい食べられるもん!」

何かを食べられる雰囲気を感じ取ったルェルルが、すぐさま起き上がって言います。
やる気も満々ですが、大食い対決に幼女を出すことには重大な問題がありました。
幼女はいつもお腹を空かせていますが、胃袋自体は小さいのですぐにお腹がぽんぽこりんになってしまうのです。
この圧倒的不利を覆すには、何らかの仕掛けが必要となるでしょう。
仕掛けと言っても露見しなければ何も問題は有りません。バレなければイカサマではありませんから。
ルェルルを見て勝算が高いと踏んだギャンブラーの首領は、顔に余裕の表情を浮かべてカウンター席に座ります。

『俺も異存は無い……だが、勝利条件は狼の顎亭の全メニュー十品を先に制覇した方の勝ちとしよう。
 食堂のメニューを全部食べつくす、なんてのは大食い勝負のイメージにぴったりだからな。
 さらに代金は負けた方が持つこととする。良いな?
 それじゃマスター、メニューを上の方から順番に全部用意してくれ』

ルェルルは右手にフォーク、左手にスプーンを持って臨戦態勢を整えました。
しばらくすると、カウンター席に座る両者の前に最初の料理、オムライスが並べられます。
それは米と鶏肉と野菜を炒めて鮮やかな黄色い卵で閉じ、スマイルマークのケチャップで彩る料理でした。

「いただきまぁーす!」

ルェルルはスプーンでオムライスを崩して口元に運び続けますが、半分ほど食べた所でペースが落ちていきます。
隣で黙々と箸を動かすギャンブラーの首領は、もう二品目の料理であるロールキャベツを頬張っている最中でした。
これが幼女と大人の力の差。無慈悲なる現実です。

「おいしいけど、もぉ、お腹いっぱい……」

お腹をぷっくりと膨らませたルェルルは、お水を飲みながらそう言うのでした。
たった一つのオムライスを片づけただけで、幼女は戦意を喪失してしまったようです。
248 : 忍法帖【Lv=40,xxxPT】 [sage]:2012/01/12(木) 13:04:52.08 O
残像空洞陣。
249 :ローゼソ[sage]:2012/01/12(木) 19:46:07.31 0
>「いーよぉ!わたし、いーっぱい食べられるもん!」

「そーだ! 今日ばかりは好きなだけたべていいぞ!」

ツキの女神の首相は、ルェルルを侮って余裕綽綽で承諾しました。
ローゼソはそんな首相を見て、内心で黒い笑みを浮かべています。

「フフフ、ルゥは、暴食の悪徳を持つ食欲魔人だ―― 一般人など叶う物かあ!」

>「いただきまぁーす!」

「いけぇえええええ!!」

しかし、対決が始まってすぐに様子がおかしい事に気が付きます。
ルェルルのスプーンが一向に進みません。
本気を出しては勝負にならないので手加減しているのでしょうか。

>「おいしいけど、もぉ、お腹いっぱい……」

どうやら本当に食べられないようです。

「マジかよっ!」

ローゼソは盛大にずっこけました。
冷静に考えると、ルェルルが大食いをしている描写は今までにありません。
ローゼソの中で、暴食持ちは大食いに違いないというイメージが出来上がっていただけなのでした。

しかしこの勝負、負けるわけにはいきません。裏工作をしてでも勝たなければなりません。
食堂の外に出て、ホイミソ達に相談します。

「どうしよう、何かいい手はある?」

その時、背後に気配を感じました。
そこには、”しまった、気付かれた!”という顔をした、東方の秘術士、忍のような人がいました。

「ずっとボク達の事をつけてたでしょう、>246とか>244とか>242……いや、ずっと最初の>1から!」

ローゼソは、今までガンスルーしていた忍者をここに来て突然かまうという卑怯技に打って出ました。

「あなたが何者か、はこの際どうでもいい。
もしもボク達の旅が上手くいかないと困る、という存在なら……力を貸してくれ!
例えば、ボクとスライム達全員に忍術モシャスをかけてルゥと同じ姿にする、とか!」
250 :ルェルル=ルュル ルルゥ ◆mMGaLMOXkw [sage]:2012/01/18(水) 02:10:04.28 0
【( ´Д`) 狼の顎亭の食堂】

ルェルルの前に、ことんと軽やかな音を立てて木皿が置かれました。
たっぷりと透明なスープを湛えたお皿の中には、綺麗な薄緑のロールキャベツが沈んでいます。
美味しそうな食べ物を見せられても、満腹した幼女の食欲は喚起されませんでしたが……。
カウンター席に座るルェルルは、あまり気の進まない様子でロールキャベツを頬張り始めます。
ですが、フォークを動かす合間に手遊びを始めたり、足をぶらぶらさせたりして、食事はまったく捗りません。

「おなか、ぽんぽんしてるから、もぉいらなぁい……ロゼそとホミそに上げる」

わがままな幼女が気だるい声で言いましたが、当のローゼソもホイミソも食堂にはいません。
二人とも、勝負に勝つ算段を練るため、すでに部屋から出てしまっていたようです。
幼女がロールキャベツを食べ終わるだけの時間が経過しても、二人は食堂に帰って来ませんでした。

『こちらは残り三品で、そっちはまだ九品のようだな。
 俺はアリとカタツムリみたいに、手を抜くつもりは微塵も無いぜ』

ギャンブラーの首領は薄味の焙り肉を口に運びながら、隣に座る幼女に言いました。
アリとカタツムリとは、テルピア周辺に古くから伝わる寓話です。
それも真教の司祭が説法する際には、必ず引き合いとして出される程に有名な。
話の筋は森に住む威張んぼの黒蟻と、おっとり者の蝸牛が喧嘩の決着を駆けっこで決めると言うもの。
のろまで休みがちな蝸牛は、休まず歩き続けた蟻に、最初から最後まで一度も追いつけずに終わります。
これは、生まれながらに才能を持った者が努力まですれば、凡人は絶対に太刀打ちできないと言う話なのでした。

「はぁふぅ……明日から、がんばる」

ルェルルはカウンターの上に頬を乗せて溜息。寓話のように対戦相手との差は離れる一方です。
それを見かねたのか、ローゼソやホイミソを差し置いて、スライムBが食堂に戻って来ました。
柔らかく微笑む彼の瞳には、堅い決意の意志が宿っています。
スライムBは、ぽてぽてと音を立てながら椅子に座るルェルルの足元に辿り着くと、大きく飛び跳ねました。
着古したワンピースの裾から、ルェルルの服の中に入り込んだスライムは、ぐにゅりと姿を歪めます。

「あ……ぅんんっ」

突然お腹に感じたひんやりとした感覚に、幼女が微妙な声を上げました。
スライムBはグミ状の体を蕩けさせると、ルェルルのお尻から腸内に侵入したのです。
体内の食べ物を吸収して、幼女が食べられる量を増やそうという、貴い捨て身の作戦でした。
異変を感じたルェルルが股の辺りをまさぐりますが、すでにスライムは体内に入った後。
ルェルルの体内に入ったスライムが、さっそく残存する食べ物を吸収して食欲を刺激します。

「んー……なんだか、急にお腹が空いてきたよぉ……」

諦念の沼に沈みかけていた幼女の心に暖かい熱が生まれ、それは嚇とした炎になって燃え上がりました。
まるで暴食の化身が宿ったように、両手のスプーンとフォークがせわしなく動き始めました。
気づいた時には十品目のニシンのパイを平らげ、おかわりまでしているくらいです。

「おかわりっ!」

『こいつぁ驚いたぜ、まさか俺が負けちまうとはな……ほらよっ、約束の鍵だ』

ギャンブラーの首領はコートのポケットから鍵を取り出すと、ルェルルに向かって山なりに放り投げました。
動作の鈍い幼女は受け取ろうとしたものの、当然のように取り落としてしまいます。
改めて足元に落ちた鍵を拾ったルェルルは、それを高々と天に掲げると、得意げな顔で言いました。

「勝ったよぉ!」
251 :ルェルル=ルュル ルルゥ ◆mMGaLMOXkw [sage]:2012/01/18(水) 02:11:34.24 0
広い食堂の中で高らかに響き渡る勝利宣言を聞き、ツキの女神の首領は苦笑いします。

『分かった分かった……ったく、男ってのは、いつだって良い女には勝てねえように出来てるもんだな。
 ところで、鍵集めなんかしてるって事は、例の聖典が納められた神殿に行こうって事かい?
 そいつは残念だが勧められねえよ。どれほど聖典を欲していてもな。
 神殿のある聖地に行くにはベルウ山脈の洞窟を通るんだが、半年程前にそこには魔物が棲み付いちまった。
 なんでも、出した謎に答えられない奴は、骨も残さず貪り喰われちまうって話だ。
 謎掛け魔物は聖騎士隊の討伐を何度も返り討ち。今や真教の巡礼もぱったりと絶えたらしい……』

負けた腹いせというわけでは無いでしょうが、首領は声を潜め、子供を脅すような調子で魔物のことを話しました。
ですが、勝利の余韻に浸る幼女はどこ吹く風。
いつの間にやら食堂に戻って来ていたローゼソたちに向かい、にっこりと笑いかけて言うのでした。

「だいじょおぶ!わたし、なぞなぞ得意!とっても頭いいもん!ねー?」
252ローゼソ[sage]:2012/01/20(金) 00:45:02.58 0
メタるスライムが天井から落ちてきてローゼソの頭に乗ります。

「忍者ァああああああああッ! 呼んだときに限って出てこないってどういうこと!?
ずっといるからあわよくば参加者として引き込もうと思ったのに!
参加まではしないにしてもせめて一行ネタぐらいはさあ!」

メタるスライムが頭から離れ我に返ったローゼソは、スライムBがいない事に気付きます。
食堂に戻ってみると、次々と料理を平らげているルェルルの姿が目に飛び込んできました。
スライムAが、柔らかい笑みの奥に悲壮感を滲ませながら説明します。

「あのね、スライムBは……」

スライムBは、未来を切り開くための犠牲になったのでした。
ローゼソはそっと手を合わせます。

「スライムB……成仏しろよ!」

>「勝ったよぉ!」

仲間の屍を踏み越えて手にした、尊い勝利です。
本当に死んでいるかはともかく、死にたい気分になっている事は確かです……。

勝負に敗れた首領は、聖地へ至る洞窟に棲む魔物の話をします。
このパーティーには通常ブレインとなる学者系キャラや魔術師系キャラがいません。
不安が募るところです。

>「だいじょおぶ!わたし、なぞなぞ得意!とっても頭いいもん!ねー?」

「そうだね、ルゥはとっても頭がいい。だからこそ過信は命取りだ。
念には念を入れて傾向を分析し対策を練った者だけが勝利を勝ち取るのだ!」

ローゼソは地図を広げて次の目的地を考えます。
ブランレイクとベルウ山脈の間にある街を指さして言いました。

「魔術都市ホグワーシ……大陸最大の魔法学校のある街だ。
ここに寄って魔物に関する情報収集をするのはどうかな?」
253 :ルェルル=ルュル ルルゥ ◆mMGaLMOXkw [sage]:2012/01/21(土) 01:41:17.99 0
>>252
メタな考えを起こさせるメタるスライムは、幼女の頭にも飛び移ってきます。
忍者ってゴモラの人が本当の名前らしーけど、怖い人じゃなぁい? 幼女はそんなことを考えました。
名前は聞いたことがあっても、詳しい事を知らないので幼女は警戒心を持っていたのです。
それはともあれ、食堂に戻って来たローゼソは、喜びはしゃぎ続けるルェルルに向かって言いました。

 >「そうだね、ルゥはとっても頭がいい。だからこそ過信は命取りだ。
 >念には念を入れて傾向を分析し対策を練った者だけが勝利を勝ち取るのだ!」

「かちとるのだぁ!」

無知な幼女はローゼソが何を言ってるのか分からないまま、声だけは元気いっぱいに応えました。
その様子は周囲の酔客たちに、無能な働き者は社会にとって害悪である、との言葉を浮かべさせます。
続いてローゼソは地図を広げると、ホグワーシと書かれた場所を指差しながら言いました。

 >「魔術都市ホグワーシ……大陸最大の魔法学校のある街だ。
 >ここに寄って魔物に関する情報収集をするのはどうかな?」

このホグワーシと呼ばれる学術都市は帝国の都市の一つ。
現在から、十代前の皇帝“かくも厭わしきアルンハーリド帝”の治世に築かれたものです。
彼の皇帝は帝国に芸術と学問の都を造りたいとの野心を持ち、ベルウ山脈から南の湖までを走る河の中程に街を造りました。
テルピアから向かうには馬車にして七日、徒歩にて十五日、幼女の足で二月を擁する場所に。
帝国は異教徒の手に落ちたテルピアからの旅人に、とりわけ注意を払うでしょう。
お金も警戒心も持ち合わせていない幼女には、長くて危険な旅となりそうです。

「じゃあぁ、しゅっぱつするよぉ!」

ルェルルは旅に最も適しないであろう自分の足を移動手段として選びました。
地図の縮尺が把握できていないので、目的地まですぐに着くだろうと思っているのです。
今は元気なので良いのですが、大通りを歩き続け、街外れの門に至る頃には幼女もこう言い始めるでしょう。

「歩くと疲れるから、乗り物に乗りたいね……だれか乗せてくれないかなぁ……」

ルェルルは街路の端に座りこんで足を伸ばすと、道行く馬車や荷車をぼんやりと眺め始めました。
よほど疲れたせいでしょうか。ホイミソのぷよぷよした体を枕にして、眠る気配すら見せています。
254 :ホイミソ[sage]:2012/01/21(土) 16:46:14.03 0
>「勝ったよぉ!」

なんということでしょう。
ピンチを切り抜ける方法を考えようとしたホイミソが知恵熱を出して寝込んでいる間に、
スライムBが身を挺して幼女に配合され、大食い対決を制したのでした。

「・・・むぎゃっ!?」

ホイミソは残された小さなヤリを拾い上げ、ふらふらとルェルルの後を追っていたのですが、
街外れの門のところでルェルルに無造作につかまれ枕にされてしまいました。

「あ、足がしびれる・・・」
255 :ローゼソ[sage]:2012/01/22(日) 21:12:11.70 0
>「じゃあぁ、しゅっぱつするよぉ!」

「出発しんこーう!」

ルェルルとローゼソは、意気揚々と魔術都市ホグワーシに向かって出発しました。
早速出入り口の門に向かって歩き始めます。
ローゼソは、これだけの規模の街なら門のあたりに行ってみたら乗合馬車でも出ているだろうと思ったのです。
徒歩で行くのかと思ったですって? ――まさかないない。

>「歩くと疲れるから、乗り物に乗りたいね……だれか乗せてくれないかなぁ……」

>「・・・むぎゃっ!?」

町はずれの門に到着すると、ルェルルはホイミソを枕にして昼寝を始めました。
ローゼソは、ホグワーシ行きのバス……じゃなくて馬車乗り場を探します。

「ホグワーシ行きの乗合馬車……あったあった、三番乗り場か。……げー、三日後じゃん!」

そう言って、途方に暮れかけていたところ。
いつか登場したような直方体の乗り物が来て、彼らの前に止まりました。
中には様々な年齢の少年少女達が所狭しと乗っています。
扉が開き、運転手が一行に声をかけます。

『君達、ホグワーシのオープンキャンパスに行くのかい? それなら早く乗った乗った!』

「はい、ホグワーシに入学するのが小さい頃からの夢なんです! 行こう、ルェルル!
あっ、この子はまだ小さいけどとても頭のいい子で……。
こっちは使い魔候補のホイミソです。魔法使いに使い魔は欠かせませんからね!」

寝ぼけているルェルルを引っ張ってバスに乗り込みます。
256 :ルェルル=ルュル ルルゥ ◆mMGaLMOXkw [sage]:2012/01/23(月) 03:03:59.00 0
【( ・∀・) 魔術都市ホグワーシ】

すやすや眠る幼女が、拉致されるようにして直方体の乗り物に乗せられました。
夢の住人は手を引かれるままに、柔らかいクッションの敷かれた最後尾の席へ。
よたよたとした歩みは、まるで陸に上がった阿呆な水鳥のよう。

幼女が連れ込まれた謎の乗り物は、玄妙なる魔術の粋を凝らして造られた不思議な乗り物でした。
運転者として操縦するのは、ホグワーシが魔術師育成のために遣わした募集の隊。
すなわちテルピア解放で急遽、帰還することを迫られたホグワーシ魔術学校の教導者たち。
彼らが乗り物を止めてまでルェルルたちに声をかけたのは、まさしくホイミソを使い魔としているように見えたから。
魔術師としての素養有りだと判断してしまったのです。

詳しい旅の過程は省きますが、川沿いに北上し続けると、数日後にルェルルは目的地へと辿り着きました。
不思議な響きと神秘の色彩を持つ都、大河の両岸に架かるように造られた魔術都市に。
途中、馬で走る聖騎士アグラヴェインを抜き去りますが、眠る幼女は気づきません。

街に近づくと、最初に目に付くのは西側に建つ大きな学び舎。
百万の蔵書を誇る巨大な図書館を備え、星を見る天文台を備え、大規模な修導室まで備えた知恵の集積場でした。

次に目に付くのは、街の東西を繋ぐ赤煉瓦の大橋。
これは一般の商区や居住区と、魔法で満ちた区域を隔てるための境界でした。
ホグワーシを前方に臨むと、ルェルルの隣に座っていた少年が安堵したように述べます。

『ここまで来ればテルピアの反乱軍も来ないよね……』

「ぅんん……てぇぴあのはんばぁぐ……?」

旅の疲れで眠っていた幼女は、反乱軍とハンバーグを聞き間違えて目覚めました。
寝ぼけまなこで目を擦る頃には、直方体の乗り物は橋を越えて西の区域に差し掛かります。

『さあ着いたよ、未来の魔術師たち!』

運転士たるホグワーシの教導者は、乗客の少年少女たちに明るい声と表情で言いました。
彼の名はバルニケス。三十頃で丸眼鏡。短い栗色の縮れ毛。紺のローブを纏って、いかにも魔術師然としています。
乗客全員を降ろすと、彼は列の先頭に立って大きな学び舎に向かうのでした。

『ああ、部外者が悪さをしないように、見学期間の学び舎には殺傷しない程度の仕掛けを施してる。
 全てが同一の部屋に通じる複数の転送扉。お仕置きゴーレム。魔法の枷に、眠りの煙。
 案内のルートを外れようものなら、何が起きるか分からないぞ。
 はぐれず、ちゃんと先生の後を付いて来なさい』

バルニケスの注意喚起に、学び舎の見学者たちは、はーいと健気な返事。
かくして、学校の各所を移動しながら、彼らは神秘的な魔術の授業風景を眺めます。
粉薬や薫香や魔石で摩訶不思議な光景が作られる度に、見学者の少年少女たちからは感嘆の声が流れるのでした。
魔術とはまったく関係無い感嘆の声を上げる者もいましたが。

「甘ぁい、とっても良ぃ匂い……チョコレートかなー?」

ルェルルは微かに流れる甘い匂いに引き寄せられ、少年少女の群れから逸れていきます。
すんすんと鼻を鳴らし、さっきの警告を完全に忘れ去った幼女は、どことも知れない廊下の闇へ消えて行こうとするのでした。
ですが……ローゼソもホイミソも、ルェルルの失踪は経験済みです。
彼らがしっかり注意を払っているのなら、幼女が失踪する前に引き戻せるかも知れません。
257 : 忍法帖【Lv=4,xxxP】 [sage]:2012/01/25(水) 19:32:47.55 O
幸福の科学もスペースオペラですか?!?♪。
258 :ローゼソ[sage]:2012/01/27(金) 00:41:11.56 0
ローゼソが直方体の乗り物の窓から外を見ていると、馬車とは比べ物にならないスピードで風景が流れていきます。
途中、馬で走る聖騎士を見かけて思わず伏せて身を隠します。

「検問でさんざん苦労させてくれたアイツだ……!」

>『さあ着いたよ、未来の魔術師たち!』

「うわあ!」

特に魔術師になる気はないローゼソですが、壮麗な学びやに歓声をあげます。
まあ、魔術学校潜入編で初歩魔法の一つぐらいは習得できるかもしれません。

>『ああ、部外者が悪さをしないように、見学期間の学び舎には殺傷しない程度の仕掛けを施してる。
 全てが同一の部屋に通じる複数の転送扉。お仕置きゴーレム。魔法の枷に、眠りの煙。
 案内のルートを外れようものなら、何が起きるか分からないぞ。
 はぐれず、ちゃんと先生の後を付いて来なさい』

このような時、必ず一人か二人はルートを外れるようになっているのが世の定め。
そうであれば、その当事者になるのはルェルルに決まっています。
失踪フラグが立ちました。

>「甘ぁい、とっても良ぃ匂い……チョコレートかなー?」

「ルゥ……!」

ルェルルの失踪に気付いたローゼソは、当然追いかけます。
行きついた先は廊下の突き当たり。
台座の上に皿が乗っていて、その上にカエルの形をしたチョコレートが乗っています。
どう見ても罠です。

「ルゥ、食べちゃ駄目だ!」
259 :ルェルル=ルュル ルルゥ ◆mMGaLMOXkw [sage]:2012/01/28(土) 01:07:12.54 0
【( ・∀・) ホグワーシ魔法学校の廊下】

ルェルルは薄暗い廊下の中を歩き続けました。道筋を照らすのは壁に掛かる小さな蝋燭だけ。
廊下を歩く幼女は、謎掛け魔物の正体を調べるために、図書室や資料室を目指すのではありません。
学び舎の中で魔物の噂を集めようと言う訳でもありません。
ただ甘い匂いに釣られただけ。

てくてく歩いて廊下の行き止まりに至ると、幼女は台座の上に鎮座するカエル形チョコレートを見つけます。
このチョコレートが、周囲に甘い匂いを流す元のようでした。
ルェルルが台座に手を伸ばしそうとした寸前、廊下の空気を聞き慣れた声が震わせます。

 >「ルゥ、食べちゃ駄目だ!」

ローゼソの制止は遅きに失しました。すでに幼女の桜の唇にはチョコレートがべっとり。
すると、チョコレートに掛けられていた魔法が、たちまち効力を発揮します!
凹凸の無い幼女の胴から、着古したワンピースがパサリと落ちました。
続いて床に落ちた布の服の裾から、もぞもぞと小さな緑の生き物が這い出てきます。

「ケロケロ(んっとぉ……誰も食べないみたいだし、悪くなるといけないから、食べといてあげようと思ったの)。」


小さく鳴いた生き物の正体は、魔法でカエルに変えられてしまったルェルルでした。
食べちゃいけないと言われたチョコレートを食べた弁明は、ケロケロとしか聞こえません。

「ケロケロ(なんかロゼそ、大きくなったね)。」

まだ自分の異変に気づかずに、ルェルルはぴょんと一跳ねして言いました。
誰かに魔法解除の呪文を掛けてもらわなければ、ルェルルはずっとヒキガエルのままでいることでしょう。
260ローゼソ[sage]:2012/01/29(日) 12:26:34.13 0
制止するも時すでに遅し。
ルェルルは幼女からカエルに進化してしまいました。

>「ケロケロ(なんかロゼそ、大きくなったね)。」

「ケロケロ(ルゥが小さくなったんだよ)」

果たして会話は成立しているのでしょうか。
ローゼソはカエルと化したルェルルを掌に載せ、見学ツアーの列に戻ろうとしました。

「先生―! あれ?」

しかし、見学ツアーの列はすでに見当たりません。置いて行かれてしまったようです。
仕方がないので宛てもなく校内を歩いていると、家庭科室という札がついた部屋に行きつきました。
教室からは、甘い匂いが流れてきます。カエルチョコレートを作っているのでした。
先生が、生徒達に注意を促します。

「いくら美味しいそうだからと言って絶対食べてはいけませんよー」

「はーい!」

そのやりとりから数秒もたたぬうちに……。

「せんせーい! ロソ君がカエルになりましたー!」

「グリフィンドーノレ5点減点! 早く解除してもらってきなさい」

やがて家庭科室からカエルがぴょんぴょんと出てきて、どこかに向かいます。
ローゼソはその後を付けて行ってみる事にしました。
ついて行った先に、カエル状態を解除できる人がいるはずです。
261 :名無しになりきれ[sage]:2012/01/30(月) 20:55:49.92 0
262 :ルェルル=ルュル ルルゥ ◆mMGaLMOXkw [sage]:2012/01/30(月) 23:41:30.13 0
【( ・∀・) ホグワーシ魔法学校の一室】

>>260
魔法の罠で蛙に成り果てたルェルルに、ローゼソが応えを返しました。

 >「ケロケロ(????????????)」

ローゼソは蛙語で語ろうとしたようですが、所詮は蛙ならざる存在。
残念ながらルェルルには、口真似でケロケロ言っているようにしか聞き取れません。
まだ自らが蛙に成り果てた現実に気付かないまま、ルェルルは掛けられた台詞に対して、蛙の鳴き声で返すのでした。

「ケロケロ(ケロケロってなぁに?変なのぉ。蛙みたい)」

その蛙そのものになった幼女が、ローゼソの掌に乗せられて校舎の中を移動します。
古びたランプが赤錆色の光を投げ掛け、コツコツとした靴音が響く廊下の中を。

蛙の頭は脳みそが小さく、首も動かしにくいので、ルェルルは異変にも深い疑問を感じることなく運ばれ続けました。
一流の迷子たちは、直感だけを頼りに幾つかの階段を登り、扉を潜って、嗅いだことのある匂いに出会います。
調理器具を備えた学び舎の一翼から垂れ流される、甘ったるいチョコレートの匂いに。
強い甘さを香らせる部屋からは、蛙になったと思しき生徒が出てきて、どこかに向かっていきました。
同じ境遇の蛙が人間が元に戻る方法を知れば、必然ルェルルが幼女に戻るための手がかりにもなるでしょう。

蛙化した生徒が、後ろに付き添いの男子生徒を伴って、突き当たりの一室に入って行きます。
それを見たローゼソは、蛙のルェルルを手にしたまま後を追いました。
雑然として薄暗い室内に入り込むと、様々な匂いが混淆した複雑な臭気が満ちています。
その発生源は、怪しげに沸騰して異様な匂いを放つ液体、煙を上げる香炉、不気味な花やキノコ。
うず高く積まれた用途も不明な魔法の品々のようでした。
無数の神秘と魔法に囲まれた部屋では、椅子に座る男性と、蛙を手にした生徒がやり取りを始めています。

『ダモア先生、ロソ君が授業で蛙になったんで戻して下さーい』

『蛙か、おっぱいを揉ませてくれたら解除してやるよ』

『えっ……ロソ君も僕も男ですけど……』

『なんだ、男か。なら帰ぇりな。先生は忙しいんだ。魔法解除なら明日勤務する奴に頼め。
 そうだそうだ、むしろ一日くらいそんな姿で過ごした方が、今後の授業にも身が入ろうってもんだろ?』

良識を疑う要求を言い渡され、蛙に変えられた生徒たちは不承不承と言った感じで、すごすご引き下がります。
この無理難題を出した40代と思しき年齢の男はダモア。今日の魔法解除を担当する教導者でした。
容貌は、無精髭で端正な顔を覆い、黒いローブを羽織って、閉職に甘んじているものの凄い力を秘めた人物と言った風情。
実際ダモアは性格に難はありますが、十系統の魔術を操り、一部の知識人の間では天才魔術師として知られていました。
が、彼は脇役も良い所で、以後登場することも無いでしょうから、真剣に名前や経歴を覚える必要はありません。
ローゼソの掌に乗せられた蛙を見ると、ダモアは片手で宙をわさわさ握りながら、先程と同じ求めを繰り返します

『まーた蛙になっちまったお間抜けか。
 女子のおっぱいを揉ませてくれれば、そいつを解除してやってもいいんだがなぁ』

「ケロケロ(蛙? カエルじゃなくてルェルルだよぉ)」

このような聖職として有るまじき行いが、普段から神聖な学び舎で罷り通っているのかは分かりません。
ですが、ダモアは解除魔術を使える強い立場を笠に着て、恥知らずにも己の欲望を強要してきます。
しかも、幼女には逆立ちしたって無理な要求を!
263 : 忍法帖【Lv=2,xxxP】 [sage]:2012/01/31(火) 16:50:03.55 O
ゴモラの街を宇宙戦艦にするのだ。
264ローゼソ[sage]:2012/02/01(水) 23:43:38.18 0
本日の解除担当は、とんだセクハラ教師でした。

>『まーた蛙になっちまったお間抜けか。
 女子のおっぱいを揉ませてくれれば、そいつを解除してやってもいいんだがなぁ』

もちろん、ローゼソを男だと思ったうえで、無理を承知で言っているのでしょう。

「さっきの子……一日カエルのままなんてあんまりだよ! 踏まれちゃったらどうすんの」

ダモアは面倒臭そうに答えます。

『……わあったわあった。女子のおっぱい揉ませてくれればあいつも一緒に解除してやるよ』

「……約束だよ? すぐに巨乳の女子を連れてくるから待ってて」

そう言って、ローゼソは一端部屋から出て、すごすごと帰って行こうとするロソと男子生徒を呼び止めます。

「そこの君達、助けてあげるからちょっと待って!」

程なくしてコスプレ技能を使って巨乳女子になったローゼソがダモアの部屋に入ってきました。
からくりは、スライム2匹を服の中に入れているのです。

「ほれ、約束は守って貰うわよ!」

堂々たる巨乳(偽造)を、ダモアに突きつけます。
265ルェルル=ルュル ルルゥ ◆mMGaLMOXkw [sage]:2012/02/04(土) 04:01:47.54 0
【( ・∀・) ダモアの部屋】

>>264
ローゼソはダモアの部屋を出ると、見事なまでの女子に扮装して戻って来ます。
その姿は妙齢の乙女そのもので、ダモアも感嘆の息を洩らしました。
ロソとルェルルの二匹の蛙は床に這いつくばったまま、どうなることかと事の成り行きを見守ります。
豊かに見えるスライム胸を反らして、ローゼソがついっとダモアに近寄る様を。

 >「ほれ、約束は守って貰うわよ!」

『それでは、さっそく……揉ませてもらうぜ。
 ほう、この大きさで適度な張りを持った柔らかさを保っているとはな……くっ……』

背後に立ってローゼソの胸に手を回したダモアは、胸元の膨らみの正体を知らずに揉み始めました。
感心したように撫でまわし、持ち上げるように擦り、優しく揉んで。
微妙な感覚に、ローゼソの服の中で揉まれ続ける2匹のスライムも、放心の表情を作ります。
胸を揉まれ続けるローゼソを見ながら、ルェルルとロソは蛙同士で蛙語の会話を交わしていました。

「ケロケロ(ロゼそ、なにしてるの? くすぐりっこ?)」

『ゲロゲロ(こ、こんなの、見ちゃダメだよ!)』

やがて、スライムを揉むのに満足したのか、ダモアが手を離して嘆息します。

『ブラボー……こいつぁ10年に1人のAランク! 良し、それならこっちもとっておきだ。
 魔法解除の方法は何通りもあるが、一番高等な奴を見せてやろうじゃねぇか! 精霊の召喚って奴さ』

ダモアは霊験あらたかな魔術の秘文字を宙に書きながら、呪文を唱え始めます。
すると、ぼうっと光り輝く魔法の円が床に現れて、部屋の床や壁を不思議な青白さで染めました。
周囲に魔法的な雰囲気が満ち満ちて来るのが、誰の肌にも感じられます。
以下、長々とした召喚呪文が続きますが、魔術師で無ければ一切覚える必要はありません。
もちろん、ルェルルも聞き流します。

『我は汝を目覚めさせ、動かさん。おお、精霊グラールよ。
 汝を見下ろす高みより、至高の神の御力にて我は汝に命ず、従うべし!
 エルカギア・セド、ファンターラ・グルギャの名において、精霊を治める者リァル、および死の家の司祭の名において。
 および、第七の軍団におけるファンターラの第一王女によりて、我は汝を召喚する。
 汝を見降ろす高みより、至高の神の御力にて我は命ず。従うべし!
 語る事を直ちに成し遂げる御方、あらゆる被造物の従う御方の名において。
 また我、その息によりて世界を造られし神の形に倣いて造られし我は、聖典の素晴らしき権能にて汝を召喚する。

 おお、精霊グラールよ。かつ我は汝に命ず。
 言葉を口にされれば、直ちにその命令を成し遂げられん至高の御方によりて、我は汝を召喚し、力を込めて汝に言わん!
 おお、精霊グラールよ。汝は時を移さずして聖典の僕の下、この円の前に、人間の姿にて来たり、平穏に我を訪なうべし!
 かつ、この神聖なる神の御名によりて我言わん、従うべし!
 聖典の偉大なる名の力は御柱を砕き、大気は逆巻き、火は消え、大地は揺れ動く。
 そして天の、地の、そして地獄のあらゆる者もまた震え、苦しみ、稲妻に打たれん。

 おお、精霊グラールよ、時を移さず来たれ、汝が住処を空とし、我らに真実を明かし、我が力に従うべし!
 来たるべし、我らが元を訪うべし。恭順に従うべし!
 我は汝を永遠にして真実の神カノンにおいて召喚せしにより、従うべし、我が求めんものをもたらすまで。
 恭順たれ、真実の秘密を、理解し得る言葉にて語るべし!』
266 :ルェルル=ルュル ルルゥ ◆mMGaLMOXkw [sage]:2012/02/04(土) 04:03:40.88 0
ダモアの呪文に応えて、魔法円の中に憮然とした顔をする一匹の黒猫が現れました。
一見すると、ただの野良猫が入り込んだようにも見えますが、魔術に精通したダモアは判っています。
魔神や鬼神と呼ばれ、永遠に獣の姿を取って、人の世界を彷徨う精霊たちがいることを。
精霊の召喚に成功したダモアは、横柄な口調で猫に向って言いつけます。

『おい、ニャン公のグラールさんよ。大物の精霊さんよ。選ばせてやる。
 その魔法円の中で死ぬのが良いのか、俺の願いを叶えて解放されるのが良いかをな』

『もちろん……後者が良いナーォ。
 三つの願いを叶えるから、解放して欲しいニャア』

『では、まずこの蛙を元の姿に戻してもらおうか』

精霊のグラールがミャーオと一鳴きすると、ルェルルはたちまち元の幼女に戻ります。
地面にぺったり座り込んでいますが、カエル化した時に装備が全部外れてしまったので、とても寒そうな格好でした。

「わっ、ふぁ……あれ? 服が無くなっちゃったよ……へくちっ」

ルェルルはとても寒かったので、とりあえず湯たんぽ代わりにホイミソに抱きつきます、
まだ精霊の願いは二つ残っていますので、ダモアに頼めば精霊に上等な服を出させてもらえるかも知れません。
魔神に願いを叶えてもらわなくても、魔法学校の制服を借りることも出来るかもしれません。
何はともあれ、この部屋には幼女が寒そうにしている現実がありました。
267 :ルェルル=ルュル ルルゥ ◆mMGaLMOXkw [sage]:2012/02/04(土) 04:28:10.79 0
(>>265の)召喚呪文の中では人間の姿で召喚しようとした筈なのに、精霊は猫の姿のままで現れてしまいました。
心配ありません。これは魔術の世界ではよくあることです。決して眠くて呪文を言い間違えたわけではありません。
何はともあれ、猫の姿でも魔神めいた姿でも、魔法円の中に居る限りは危険な精霊と言えども安全なのです。

「へくちゅ……」

さむざむとする部屋の空気に、ルェルルは一層強く生きた湯たんぽを抱きしめるのでした。
268名無しになりきれ[sage]:2012/02/06(月) 01:48:05.85 0
「スライムの数が合わない件(ヒソヒソ」
「そういえば普通のスライム残機1だった(ヒソヒソ」
「てことはローゼソの肩胸はホイミソだとして・・・ホイミスライム・・・触手・・・(ヒソヒソ」
「そして幼女が抱きしめてるのは実はホイミソではなく・・・(ヒソヒソ」
「・・・話振っといて何だけど、わりとどうでもいい(ヒソヒソ」
269ローゼソ[sage]:2012/02/07(火) 02:03:33.52 0
セクハラ教師はすっかり騙されて大満足。スライムの偽乳としての性能は完璧です。
ところで……ローゼソのナレーターの人がボケていた事により、おかしな事態が発生してしまいました。
いつの間にかスライムが仲間を呼んでスライムが一匹増えていたのでしょうか。
それともホイミソが仲間を呼んでホイミスライムが一匹増えているのかもしれません。

>『ブラボー……こいつぁ10年に1人のAランク! 良し、それならこっちもとっておきだ。
 魔法解除の方法は何通りもあるが、一番高等な奴を見せてやろうじゃねぇか! 精霊の召喚って奴さ』

精霊召喚の呪文詠唱が始まります。
ルェルルは聞き流しますが、ローゼソや魔法学校の生徒達は興味津々で見ています。
だって滅多に見られるものではありません。
現れたのは、一匹の猫。人間の姿にはならなかったようです。
もしや、中途半端に人間の姿で召喚すれば、猫耳になる事もあるのでしょうか。

>『もちろん……後者が良いナーォ。
 三つの願いを叶えるから、解放して欲しいニャア』

『では、まずこの蛙を元の姿に戻してもらおうか』

>「わっ、ふぁ……あれ? 服が無くなっちゃったよ……へくちっ」

あろう事か、装備が全部外れた状態で幼女が復活しました。

「わ――! とりあえず防具を頼みます!
出来れば防御力回避力魔法防御力が高くて特殊機能も付いてれば尚よし!」

慌てたローゼソは、とっさに2番目の願いを言ってしまいました。
服程度は制服を借りるとか、魔神に叶えてもらわなくてもどうにでもなるものです。
ベルウ山脈の魔物を倒す力を!とか、4つ目の鍵!とか、他にいくらでも叶えて欲しい事はあるはずなのに。

「えーとえーと、ルゥ、3つ目の願いは何がいいかなあ?」

舞い上がっているローゼソは、一番振ってはいけない人に、3つ目の願いを振ってしまいました。
といってもそれ以前に、ダモアはカエル状態解除を約束したのであって、別に3つ願いを叶えてやると言ったわけではありません。
言ってみるだけで、ルスーされる可能性も高いかもしれません。
270 :ルェルル=ルュル ルルゥ ◆mMGaLMOXkw [sage]:2012/02/09(木) 00:43:55.81 0
>>268
積み重なった本の影。棚の後ろ。クッションの隙間。壁に掛かった服のポケット。
人の目が届かない様々な物陰から、小さき者たちの声が囁かれます。
小さき者の正体は誰も知りませんが、彼らはルェルルたちの様子を窺っているようでした。
何匹かのスライムに起きた異変にも、彼らは目聡く気づいてしまったようです。

ローゼソの服の中には、二匹のスライム。
もしも、この片方がホイミスライムなら形の違いにダモアも気付くでしょう。
すなわち、スライムCと全く同形の“スライムD”とも呼ぶべき謎の存在が、ローゼソの胸に紛れ込んでいるのです!
ですが、モンスターの知識に疎い幼女には、スライムの個体識別はできません。
その正体に思いを巡らすこともありません。
そもそも、ルェルルは目の前の女子がローゼソであることにすら気づいていないのでした。
271 :ルェルル=ルュル ルルゥ ◆mMGaLMOXkw [sage]:2012/02/09(木) 00:51:11.43 0
>>269
ルェルルの姿に慌てたローゼソは、咄嗟に二つ目の願いを言ってしまいました。
防御力と回避力、魔法防御力が高くて特殊機能も付いてる鎧を望むと。
これで最強の鎧を着れるぞとばかりに、満面の喜色を浮かべるローゼソは、ルェルルに向って問いかけます。

>「えーとえーと、ルゥ、3つ目の願いは何がいいかなあ?」

ローゼソに問われた幼女は、間髪入れずに応えました。

「んっとぉ……あったかいハンバーグ食べたぁい!」

大きな偽乳に満足したダモアはローゼソの願いを叶えるつもりでしたので、精霊猫に向かって言います。
“彼女の願いを叶えてやってくれ”と。
この場には"彼女"に該当する者が二人。叶えるべき願いを口にした者も二人です。
ダモアは無乳のルェルルには関心を払っていませんでしたが、精霊のグラールは違います。
ニターッと不気味に笑った黒猫姿の精霊は、ナーォ!と一鳴きして言いました。

『はい、三つ目の願い……あの店のハンバーグ~♪』

ルェルルの前には、表面がパサパサの焦げ焦げハンバーグが出てきました。
貴重な三つ目の願いを使い切った結果として。

『これで、彼女の願いを叶えてやってくれ……って、二つ目の願いも叶ったニャア。
 彼女としか言ってないけど、確かに彼女の願いは叶ったナーァオ。 それじゃ願いを三つ叶えたから、さようにゃら!』

三つの願いを叶えて魔法円の制約から逃れた精霊猫は、ピョンと一飛びするや部屋から消えてしまいました。
強力な魔力を三回も使う機会が有ったのに、最小限の成果でした。
この手の精霊は、願いを厳密に言わないと意地悪したり、最小限の事しかしてくれないのが通例なのです。

『ゲロゲロ(えっと、僕を戻してくれるって話は?)』

蛙になったロソのことは誰もが忘れ去っているようで、彼はまだ蛙のままでした。
“この蛙を元の姿に戻してもらおうか”と言う、第一の願いで元に戻った蛙はルェルルだけだったのです。
期待が大きかっただけに落胆も深い様子で、ロソは顔色を緑にしてゲロゲロと鳴き濡れていました。
世の中の厳しさを思い知った少年は、この経験を糧として、今後は一層魔法の修業に励むことでしょう。

「堅くて、にがにがで、おいしくないよぉ……」

ルェルルはと言うと、パサパサのしょんぼりハンバーグでほっぺを膨らませています。
ホイミソを抱えているので体は温かくても、美味しくないハンバーグに心は冷え冷えでした。

『お前らはあれか、授業見学の奴らだろ。ホグワーシじゃ見ない顔だしな。
 ここを出てから真っ直ぐ進んで右に三回曲がり、付き当たりを左、二つ目の横道を右。
 それで見学会に戻れるはずだぜ。分かったなら、とっとと戻りやがれ。
 おっと、おっぱいちゃんは残りたいなら残っても構わなねぇがな』

ダモアは寒そうな格好のルェルルを見ると、大袋の底をハサミでジョキリ切って、すっぽりと被せます。

『そんな格好で校内を出歩かれてもアレだからな。お前はこれでも被ってろ。
 さっ、もう用が済んだなら出てけ……しっしっ』

「うん、右に行って左に行って、三ばんめを曲がるね。
 ロゼそ、帰って来ないけど、どこ行ったんだろう。迷子になったのかなー?」

ダモアを騙せる程度の変装なら、当然ルェルルには見破ることなどできません。
部屋にローゼソが残ってることに気づきもしないルェルルは、早々と廊下へ出て行きました。

「んっとぉ……三ばん目の右か左を曲がって、真っ直ぐ行ったらいーんだよね?」

袋の穴から頭だけを出して、幼女はぺたぺたと音を立てて廊下を歩き始めます。
272 :ホイミソ[sage]:2012/02/10(金) 22:26:57.62 0
「スライムがなかまをよぶのはあたりまえだよ!多分!
だからローゼソの胸に入っているのはスライムCとDだね!
どんどんなかまをよんで交代していくと、
胸の水増し効果もどんどんアップするよ!多分!」

スライムの名前と胸の水増し効果の関係の数学的表現について
なにやら深遠な思索を始めてしまったホイミソは、
ルェルルと一緒に袋をかぶせられたまま廊下を流されて行きます。
ローゼソとはぐれた事に気付くのは、もうちょっと後でしょう。
273 :ローゼソ[sage]:2012/02/12(日) 20:34:25.24 0
>『これで、彼女の願いを叶えてやってくれ……って、二つ目の願いも叶ったニャア。
 彼女としか言ってないけど、確かに彼女の願いは叶ったナーァオ。 それじゃ願いを三つ叶えたから、さようにゃら!』

「おい待たんか性悪猫っ!」

悪魔は飽くまで悪魔でした。

>『ゲロゲロ(えっと、僕を戻してくれるって話は?)』

「あ、あはは……。ごめんね!」

>『お前らはあれか、授業見学の奴らだろ。ホグワーシじゃ見ない顔だしな。
 ここを出てから真っ直ぐ進んで右に三回曲がり、付き当たりを左、二つ目の横道を右。
 それで見学会に戻れるはずだぜ。分かったなら、とっとと戻りやがれ。
 おっと、おっぱいちゃんは残りたいなら残っても構わなねぇがな』

巨乳がお気に入りのダモアの事、取り入れば話してはいけない事までペラペラ喋りそうです。
ローゼソは、もう少し粘って色々聞き出してみることにしました。

「見事な魔術だったわ! あなた、相当な高位魔術師なのね。
ベルウ山脈に謎かけ魔物が住み着いてみんな困ってるらしいけどあなた程の頭脳があれば一発なんじゃないの?」

『先生は教師としての職務に忙しいんだ、そんなボランティアをする暇なんてあるかってーの』

「ふーん、その魔物、一体どんな問題を出してくるんでしょうね」

『知るかよ、ンなこと。
いや待てよ、そういや図書室の書庫に”伝説上の謎かけ魔物 過去問題集”とかいう本があった気がするなあ。
おいおい巨乳ちゃん、まさか謎かけ魔物に挑もうとか思ってんじゃないだろうな、命が惜しけりゃやめといた方がいいぞ』

「あはは、まさかー! あら、ところでカエルになってた女の子はどこにいったの?」

『アイツならもうとっくに出て行ったぞ』

「えー!!」

慌てて外に出て、ルェルルを追いかけます。

「まずは真っ直ぐ進んで右に三回曲がるんだよね……」

なぜでしょう、当分合流できる気がしません。
274 :ルェルル=ルュル ルルゥ ◆mMGaLMOXkw [sage]:2012/02/13(月) 21:44:17.80 0
【( ・∀・) 普通の廊下】

「あっ、なんだか楽しい音がするね。お祭りみたぁい」

ホイミソと一緒に廊下を進み続けると、やがてAカップも無いルェルルの耳に軽やかな調べが入り込んできました。
美しい鍵盤の旋律は精華を示して、誰の耳にも明朗さを感じさせます。
目を閉じれば、まるで鱒になって清流の中を遊んでいるよう。
きっと音楽室で授業が行われているのでしょう。
音に釣られたルェルルは、そちらに向かって歩いていきます。
もはや細かい道順など幼女には分かりませんが、廊下を進む途中で開け放たれたままのドアから声が聞こえてきました。

『それが問題集か……過去の叡智を用いて、このアグラヴェインが魔物を討伐してみせよう。
 さあ、遠慮なく問題を出して来るが良い』

『おりはおりでも、冷たいおりとは、どんなおり?』

『……氷だろう!』

『不正解! 正解は……お母さんが知らない男の人と一緒に出かけたのを、お父さんに話してしまって三ヶ月後。
 幸せだった家族はたちまち離散して、僕は父方の家に引き取られた。
 ある日、子供の頃の誕生日に天井で輝いていたミラーボールを店で見かけ、出来心で万引きしてしまう。
 ミラーボールがあまりにも綺麗で……お金が無いのに、気づいたらポケットに入れてしまっていた。
 今になって思う。子供の頃の偽りの幸せが忘れられなかったんだろうって。
 足早に店を出ようとした僕は、後ろから警備員に腕を掴まれて事務所に連れて行かれた。
 店から家に連絡をしても父方の家族からの迎えは来ずに、そのまま拘置所に収監された。
 あの時、母の浮気を話さなければ、まだ家族は離散しなかったんだろうか……。
 そんな事を思い、雪が降る外の景色を眺めながら掴んだ冬の拘置所の檻、だ』

袋の中でホイミソを抱えたまま、幼女は図書室の前を素通りしてしまいました。
どのみち、ルェルルには公用語のメギド文字が読めませんから、図書室に行っても問題集の判別はできません。
ですが図書室から漏れる問いの応酬を聞き、ルェルルはホグワーシに来た目的を少しだけ思い出しかけました。

「わたしも、なぞなぞする~!んっとぉ……ホミそ、何かなぞなぞ出してみてっ!」
275 :山田海太 忍法帖【Lv=5,xxxP】 [sage]:2012/02/14(火) 05:03:58.42 O
僕はマダンテを唱えるよ。
276 :ローゼソ[sage]:2012/02/15(水) 23:15:36.46 0
廊下を進み続けるローゼソですが、何故か見学会と合流できません。
多分どこかで道を間違えたのでしょう。
が、運よく図書室の前に通りかかりました。ここぞとばかりに入っていきます。

図書室に入ると、生徒と聖騎士と思しき人物が謎かけ問答をしていました。
その聖騎士は紛れも無く、永遠のライバル(?)アグラヴェインです!
が、今は変装をしているので、向こうはこっちの正体に気付くことはありません。

「聖騎士さん、謎かけ魔物の討伐に行ってくださるの?」

「ああ、人々の平和を脅かす輩は一刻も早く退治せんとな。
そなた――どこかでお会いしなかったか?」

「あらそうかしら? 気のせいですよー」

しばらく謎かけ問答を聞いていて、一つの事が分かりました。
謎かけ魔物という種族のなぞなぞに答えるには、丸暗記かカンニングしか手段はないという事です。
謎かけ問答で眠くなったローゼソは欠伸を噛み殺しながら尋ねました。

「聖騎士さん、謎々に答えるしか手段はないの? 例えば眠らせるとか……」

「妖精のリコーダーなるものを吹けば眠るとかなんとか聞いた事があるけどな……。
まあ何の信憑性もないお伽噺だ。ところでやはりどこかで会ったような……」

「気のせいですってば~」

これ以上長居して正体バレしてもいけないので、ローゼソは早々に図書室を立ち去ります。
そして、美しい音楽に誘われるように、音楽室の方へ歩いていくのでした。
277 :ルェルル=ルュル ルルゥ ◆mMGaLMOXkw [sage]:2012/02/18(土) 04:12:20.46 0
【( ・∀・)~♪~♪ 音楽室】

廊下の中にはピアノの音が満ちています。長調と短調で奏でられる音色は千変万化。
鍵盤の旋律は自由自在に舞い躍って回廊の中へ響き、聞く者の心に幾つもの情景を垣間見せました。
軽やかな音が甘美な春の宵を現したかと思えば、不意に重厚な北風の一打ちに代わって菩提樹の枝葉をそよがせます。
奏者の楽想は優雅な織物のように編まれ、流麗に綴られ、留まる所を知りません。

学校の中に住む精霊たちも、音符のせせらぎに反応します。
風の精霊は空気を震わせ、それに音の精霊が唱和し、森厳な鏡の精霊すらも揺らめいていました。
これほどの弾き手は世にも稀。天球が奏でる音楽とでも形容しましょうか。
流れ続ける数々の楽しそうな楽曲は、音楽に疎い幼女すらも虜とします。
ホイミソのなぞなぞ、魔物の情報集め、ローゼソの行方……思わず全てを忘れさせる程に。

「ふんにゃか、ふんにゃっにゃ~♪」

誘われるように歩いていたルェルルが音楽室の扉を開けると、ピアノの音が止まります。
それに合わせて、音程を外した幼女の歌も止まります。
音楽室に降りてしまった沈黙の帳は、細く涼やかな声が破りました。

『……誰、幼等部の生徒かしら?』

声の主は黒い瞳に栗色の髪の少女。歳の頃は15くらいでしょうか。
彼女は無人の音楽室でピアノ前の椅子に座り、怪訝な顔をしてルェルルを見ています。

「ルェルルだよぉ。あなただぁーれ?」

『私はシジルよ。中等部の生徒』

音楽室のドアが静かに閉まる中、ピアノを弾いていた少女が名乗りました。
確かに名乗った通り、シジルは魔法学校の制服らしき黒いケープを羽織っています。

「おまつりみたいで、楽しい音だねぇ」

『ふふっ……ありがとう。これはね、次のコンクールに出るために練習してるの』

ルェルルとシジルが話していると、キィ……ッと入口のドアが小さく鳴り、ルェルルが振り返りました。

「あっ、ロゼそ!」

いつもの気配を感じて、ルェルルはローゼソの名前を呼びます。
ローゼソが変装を解いていれば問題ありませんが、まだ変装したままなら、やっぱり幼女は気づかないでしょう。

「あれ、シジりゅがいなぁい?」

ふと、ピアノの方を見たルェルルが困惑の声を上げました。
ですが、ローゼソの入ったばかりの音楽室には、幼女とホイミスライムの他は誰もいません。
その他に動くものと言えば、隙間風に揺れるカーテンだけ。
顔に疑問符を浮かべた幼女は、何かを探すようにキョロキョロとしています。

やがて、始業を告げる鐘の音。
音楽の授業も始まるようで、音楽室には何人もの生徒たちが向かって来ます。
278ホイミソ[sage]:2012/02/18(土) 14:51:24.25 0
ホイミソは袋の中でまだ考えていました。

「ローゼソより細いルェルルとルェルルより太いローゼソに
それぞれ同じスライムをつっこんで胸を水増ししたとき、
元々の服(どちらも胸回りがぴったりだとする)に足すべき
布の長さ(っていうか幅?とにかく胸回り方向)は
同じか、違うか・・・(ブツブツ」

何か騒ぎでも起きれば流石に気付くと思いますが。
279 :ローゼソ[sage]:2012/02/20(月) 00:23:15.52 0
図書室から出たローゼソの服の裾からスライムCとスライムDが出てきました。
そろそろ息苦しくなったようです。
スライムDは見知らぬスライムですが、ローゼソにはスライムの見分けがつきません。
このままだと服の布があまるので、変装を解くことにしました。

廊下には、とても上手なピアノの音が鳴り響いています。
何らかの魔力のある旋律だったのかもしれません。
こんなピアノを奏でている人を一目見てみたい、そう思い、半ば無意識のうちに引き寄せられていきます。
ピアノの音が停まって少ししてから、ローゼソは音楽室にたどり着きました。
開けるとそこには、幼女がいました。

>「あっ、ロゼそ!」

「ルゥ! 心配したんだぞ!」

「あれ、シジりゅがいなぁい?」

「シジリュ……?」

ルェルルは困惑した表情で、ピアノの方を見ています。

「ピアノを弾いていた子の名前かな?」

音楽の授業が始まるようで、生徒達が集まってきます。

「おそらくこの学校の音楽は魔法のうちの一つ。見学してみよう!
ところでホイミソは何処に行ったの?」
280 :ルェルル=ルュル ルルゥ ◆mMGaLMOXkw [sage]:2012/02/22(水) 22:44:54.20 0
>>278-279
音楽室に入って来たローゼソが、ルェルルに向かって近寄って来ます。
幸いにも先程の変装は解かれていたので、幼女でも見分けがつきました。

 >「おそらくこの学校の音楽は魔法のうちの一つ。見学してみよう!
 >ところでホイミソは何処に行ったの?」

ローゼソは授業見学を提案し、ホイミソの姿が見えない事を訝しんで行方を訊ねてきます。
するとルェルルが着ている即席の服の下から、ホイミソの呟き声が聞こえてきました……。

 >「ローゼソより細いルェルルとルェルルより太いローゼソに
 >それぞれ同じスライムをつっこんで胸を水増ししたとき、
 >元々の服(どちらも胸回りがぴったりだとする)に足すべき
 >布の長さ(っていうか幅?とにかく胸回り方向)は
 >同じか、違うか・・・(ブツブツ」

ホイミソの謎掛けは難解な謎でした。
まず、問題を覚えることからして幼女には至難の業でした。
謎は幼女を思考の迷路に彷徨わせ、無明の檻に閉じ込め、思考停止へ導かんとします。
ですが、幼女は頭を捻りながら奮闘しました。
誤解と閃きと、ちょっぴりの計算で。
うんうんと唸っていたルェルルが、不意に愁眉を開きます。
瞳はキラキラとした朝陽の輝き。両端が天を向いた口元は微笑みを零していました。

「んっとお! んっとお!
 ロゼそとルェルルとスライムとミズスマシの服に、布を足すからぁ……全部ちがぁう!
 ロゼそが一番大きくて、ルェルルが次で、スライムが三番目で、ミズスマシが一番ちっちゃい!」

謎が解けた(と錯覚した)幼女は、興奮して捲し立てました。
勢いでバンザイして、懐のホイミスライムをぽってり落とす程に興奮してしまいす。
……かくして、別れ別れの三者は無事に再会と相成りました
281 :ルェルル=ルュル ルルゥ ◆mMGaLMOXkw [sage]:2012/02/22(水) 22:49:44.39 0
音楽室に入って来た生徒たちが着席すると、授業が始まります。
魔術学校における音楽の授業は、"呪歌"と呼ばれる魔術の習得時間。
彼らの学ぶ呪歌とは、詩として歌われる事で効果を発揮する魔術なのです。
ついでに楽器の演奏と聖典《カノン》を讃える聖歌も、この時間に学ばれます。

『それでは、最初に聖典《カノン》を讃える歌を歌いましょう』

オルガンの前に座った女の先生が、軽快な演奏を始めました。
それに合わせて生徒達も復唱します。

『カノン カノン 至高の聖所に御座す聖典。
 世界の誰より尊い一冊。
 無限に綴られる物語には、喜びも悲しみも。
 あまねく全てを見守る聖典、その名はカノン。

 カノン カノン 強く気高い聖典。
 世界の誰より強い一冊。
 混沌と戦う姿は勇ましく、僕らを守ってくれる。
 あまねく全てを見守る聖典、その名はカノン』

「カノン、カノン~♪」

教室の後ろに陣取ったルェルルも体を左右に揺らし、にこやかな顔でカノンの歌を歌い終えます。
聖典の賛歌が終わると、次は個別の演奏時間のようでした。
教室を見回した先生が、一人の生徒に向かって言います。

『それでは、順番に得意楽器の演奏を始めましょう。
 今日は見学の方がいますが、普段通りにやりますよ。
 そうですね、まずは一番演奏の上手なライン君から』

『はい』

ラインと呼ばれた少年がピアノの前に座りました。
黒い瞳に栗色の髪で、少し表情が冷たい感じです。
彼の細い指先が鍵盤上の白と黒を躍り始めると、怜悧で理知的な音が流れ始めました。
時計が針を刻む様に、一部の隙も無い正確な演奏でした。
ラインが演奏を終えると、生徒たちの中からも賞賛の拍手が鳴り響き渡ります。

「……あんまり、たのしくないね」

ルェルルの一言で、割れんばかりの拍手の波がピタリと止まりました。
不機嫌そうな表情のラインは、不興の元である幼女を睨みつけて言います。

『なんだって? それなら君が弾いてみせなよ。
 僕に意見するんなら、さぞなし素晴らしい演奏を聞かせてくれるんだろうね?
 先生。ここは、ぜひとも見学の方にピアノを弾かせてあげましょう』

「うん、いいよぉ!」

ラインに促がされたルェルルが、嬉々としてピアノを弾き始めます。
ですが、幼女の指から生み出される音は、全く楽曲の態を為していません。
ただデタラメに鍵盤を叩いているだけなのは、誰の耳にも明らか。
たちまち教室は失笑と冷笑と軽蔑で包まれ、場違いだと言わんばかりの雰囲気で満たされます。

「ふんにゃか、ふんにゃっにゃ~♪」

そんな中で、ルェルルは楽しげに歌いながらピアノを弾いていました。
人並みの感受性を備えていれば、針のムシロと言った状態ですが、幼女は頓着せずにピアノを弾き続けます。
このままルェルルが演奏していると、そのうち授業の邪魔だと追い出されてしまうかも知れません。
282ローゼソ[sage]:2012/02/25(土) 01:10:52.26 0
ホイミソは、高度な数学の問題を出題してきました。
ローゼソに分かる訳が無く、頭から煙が出てきます。
謎は迷宮入りかと思われたその時! ルェルルが答えを導き出しました。

>「んっとお! んっとお!
 ロゼそとルェルルとスライムとミズスマシの服に、布を足すからぁ……全部ちがぁう!
 ロゼそが一番大きくて、ルェルルが次で、スライムが三番目で、ミズスマシが一番ちっちゃい!」

「すごいや、ルゥ!」

ルェルルが謎を解き明かしたためにホイミソの封印が解け、感動の再開です。

音楽の授業の最初は、聖典《カノン》を讃える歌でした。
魔法学校で教える歌であるからには、どんな魔力があるか分かりません。
覚えておけばどこかで役に立つかも?
そう思ったローゼソは、楽しげに歌っているルェルルをよそに熱心にメモを取ります。

次は、楽器演奏です。一番手は、ラインと言う少年でした。
それはそれは上手だったのですが、何かが足りない、ローゼソはなんとなくそう思いました。
その気持ちを代弁するように、ルェルルが言います。

>「……あんまり、たのしくないね」

「ルゥ、まずいよ!」

焦るローゼソでしたが、ルェルルは嬉々としてピアノをひきはじめました。
案の定、酷い演奏です。見れば、先生がプルプル震えています。

「なんて……なんて……」

酷い演奏なんでしょう、そう言ってキレるに決まっています!

「素晴らしい演奏なんでしょう!!」

「わあああああああ! ごめんなさーい!! ……え?」

「確かに演奏技術は酷いものです。
でも……あなたの奏でる音には、どこまでも高みに昇れる翼がある――。
まるで神の加護を受けているかのよう……」

神の加護、という言葉に、さっきまでとは別の意味で大焦り。
異教の使徒だとバレたら大変です。

「ほめ過ぎですよ~。ボ、ボク達はこれで! ルゥ、行くよ!」

ルェルルとホイミソを連れてそそくさと出て行こうとします。
283 :ルェルル=ルュル ルルゥ ◆mMGaLMOXkw [sage]:2012/02/25(土) 17:13:33.71 0
【( ・∀・) 大食堂】

>>282
ルェルルは皆で歌ってピアノも弾けて、さらに先生に褒められたので、とても楽しい気分になりました。
心は春の軽やかさ。美味しい物を食べた時の次くらいの嬉しさです。
ちなみに整頓の神がルェルルに与えた加護は、完全回避と起死回生のみ。
音楽的霊感に関しては、一切の恩寵を授けられてはいません。
おそらく、音楽の先生がルェルルを過剰に褒めたのは、ラインに欠けた物を気付かせる為でもあったのでしょう。
ですが、その賞賛に何やら危険を感じたローゼソが、そそくさと音楽室を出て行こうとします。

 >「ほめ過ぎですよ~。ボ、ボク達はこれで! ルゥ、行くよ!」

「はぁ~い」

ローゼソの後ろに付いて、ルェルルも音楽室の外へ向かいます。
その小さな背中をラインは睨みつけていました。瞳に暗い光を宿して。
ルェルルが音楽室を出ると、すぐに良い匂いが流れて来て、小さな鼻孔をくすぐります。
どうやら給食として調理されているカレーの香りが、廊下を流れてきているようでした。

「カレーだぁ!」

ルェルルは微かに香るカレーの源を求め、本能的に全速力で駆け出します。
全速力と言っても、速度は大人の早歩き程度。
その気になれば、素早く回り込むことが可能な速さなので、はぐれることは無いでしょう。
少し廊下を進むと、ルェルルは白いテーブルクロスを掛けた長卓の並ぶ、大きな部屋に至りました。
この千人以上が一度に集まれる大広間は、ホグワ―シの大食堂。
まだ無人の部屋の中で、隅の方に一つだけ埋まっている席がありました。
栗色の髪の少女……シジルの座る席が。

「あっ、シジりゅ!」

甲高い声の響きを聞き、書物に目を落としていたシジルが顔を上げました。

『あら、さっきの子ね……そちらの方たちはお友達?』

「うん、ロゼそと、ホミそ!」

『今日は。ロゼソさんにホミソさん。その格好は……学校見学の方ですか?
 まだまだ先だと思ってたけれど、今年は見学会の時期が違うのね』

「シジりゅね、とぉーてもピアノ上手いの!とぉーっても!
 さっきのがこれくらいならぁ、シジりゅはこれくらぁい!」

幼女は"小さく前に倣え"のポーズをした後、両手をめいいっぱい広げてシジルの演奏の卓越を表現します。

『ふふふっ、ありがとう。
 確か見学会の人たちには昼餐が振る舞われるはずから、貴女たちも御一緒に如何?』

問い掛けが終わる前に、幼女はシジルの隣の席に座りました。
手にはスプーン。胸に期待。緩んだ口元にはよだれ。ルェルルはお昼の時間を待ち遠しそうにしています。
284ホイミソ[sage]:2012/02/26(日) 22:58:03.63 0
「ミズスマシ!」
ようやく袋から出たホイミソは何か悟ったような表情で
ルェルルのピアノに合ってるのか合ってないのかよくわからない歌を歌い出しました。

「ミズスマシー・・・カミキリムシー・・・アリジゴクー・・・み!?」

>「ほめ過ぎですよ~。ボ、ボク達はこれで! ルゥ、行くよ!」

しかし、危険を感じたローゼソがすぐにルェルルとホイミソを音楽室から連れ出したのでした。

やがて行き着いた先は大食堂。
ルェルルはあっという間に少女の隣に座っています。

「こんにちは、シジりゅさん。お昼の時間まであとどれくらい?」

少しだけ心配そうにホイミソは少女に聞きました。
時間があるようだと、待ちきれなくなったルェルルが暴れ出すかもしれません。
285 :ローゼソ[sage]:2012/02/28(火) 01:01:51.53 0
音楽室を出た一行。
ルェルルがカレーの匂いに釣られて走りだし、特に行くあてもないのでローゼソとホイミソもついていきます。。

>「あっ、シジりゅ!」

>『今日は。ロゼソさんにホミソさん。その格好は……学校見学の方ですか?
 まだまだ先だと思ってたけれど、今年は見学会の時期が違うのね』

「へぇ、そうなの? 特にそんな事は聞いてないけど」

>「シジりゅね、とぉーてもピアノ上手いの!とぉーっても!
 さっきのがこれくらいならぁ、シジりゅはこれくらぁい!」

「さっき廊下で聞いたよ! すごーく上手だった!」

>『ふふふっ、ありがとう。
 確か見学会の人たちには昼餐が振る舞われるはずから、貴女たちも御一緒に如何?』

>「こんにちは、シジりゅさん。お昼の時間まであとどれくらい?」

「もうすぐよ、ほら――」

『ここが食堂です。今日は特別に学校給食を振舞いますよ』

見学会の一団がやってきました。

『君達! いなくなったと思ったら一足先にここに来ていたのか、とんでもない食いしん坊さんだな』

「えへへ、すいませ~ん。あんまりにも美味しそうな匂いがしたもので」

適当に誤魔化し、シジルの方を見ると……さっきまでシジルが座っていた椅子はもぬけの殻になっていました。

「あれ……? ルゥ、シジリュさんは何処に行ったの?」
286 :ルェルル=ルュル ルルゥ ◆mMGaLMOXkw [sage]:2012/02/29(水) 04:55:45.78 0
>>284-285
無人だった食堂に見学会の人たちが次第に集まり、冷えていた空気も温まってきました。
彼らは物珍しげに食堂を眺め、辺りに漂う料理の匂いに顔を綻ばせています。
その列を先導する教導師のバルニケスは、ローゼソに気付いて声を上げました。

 >『君達! いなくなったと思ったら一足先にここに来ていたのか、とんでもない食いしん坊さんだな』

ローゼソは申し訳なさそうな顔をして誤魔化すと、背後のテーブルを振り返ります。

 >「あれ……? ルゥ、シジリュさんは何処に行ったの?」

ローゼソの問いかけに、応える声は有りません。
シジルの隣の席に座っていたルェルルも、一緒に消えていましたから。
消えた二人の行き先はと言うと……調理人が大きな器を並べている食堂の一角。
並べられている大きな器の中味は、色とりどりの野菜にナッツ、数種類のスープと切り分けられたパン。
いずれも作り立てで、スープからは暖かい湯気がほかほかと燻っていました。

『ホグワーシではね、生徒の自立心を養う為に配膳を自分で行う習慣があるの。
 多くの料理の中から必要なものを選択する事が、判断力を養うのに繋がるって考えみたい。
 結局、みんな好きなものを取っちゃうんだけどね……。
 ルェルル、自分で食べられる量だけ取ってみて』

「わたし、いぃっぱぁい食べられる!シジりゅの分も取ったげる!」

ルェルルは明らかに食べ切れない量の料理を二人分。大盛りに盛ってテーブルに戻って来ました。
足元はよたよた。零れたスープの滴は幾つも床に浸みを作っています。

「ここね、好きなものいっぱい取っていんだってぇ!
 ロゼそとホミそもいーっぱい、持ってきたらぁ!」

テーブルにトレイを置いたルェルルは、実に嬉しそうな顔。
そして、もう一秒も待ち切れないと言った様子でスプーンを器に伸ばし始めます。

『まだ、だめよ。みんなが揃って聖典にお祈りしてからじゃないと』

シジルに制止されるとルェルルの顔は、たちまち不機嫌に曇りました。
ホイミソが危惧したように、今にも暴れ出しそうな気配が漂います。
後ちょっとの時間が幼女には長いのです。
シジルは、どうしたものかと視線をテーブルに彷徨わせ……お皿の上の目玉焼きとチキンに目を止めました。

『じゃあ、ご飯の前にちょっとしたなぞなぞ、
 卵から生まれる鶏と、その鶏が産む卵。どっちが先に存在したと思う?』

機転を利かせたシジルが、ルェルルの食欲を紛らわせる為に謎掛けを出します。
問題は有名なものですが、まだ数年しか生きていない幼女には初めてのなぞなぞでした。

「んっとぉ、んっとぉ……鶏と卵はぁ……先なのはぁ……んっとぉ」

ルェルルはテーブルクロスを涎で汚しながら、うわ言のように繰り返します。
視線はチキンと目玉焼きを行ったり来たり。

『鶏と卵、か。私も昔は真剣に考えたものだ。いや、今でも考える。
 そう、立派な魔術師になる為には疑問を持ち、考え続ける探究心が必要なんだ。
 決して現状に満足して、それに甘んじてはいけない』

幼女が繰り返す呟きを聞いて、バルニケスが魔術師の心得を説教します。
周りの席の見学者は真剣な顔で頷き、卵が先だ!いや、鶏が先だ!と議論を始めました。
ルェルルはと言うと、目玉焼きとチキンを同時に頬張って、もごもご言っています。
287ローゼソ[sage]:2012/03/02(金) 00:03:18.29 0
少しすると、ルェルルとシジルが戻ってきました。

>「ここね、好きなものいっぱい取っていんだってぇ!
 ロゼそとホミそもいーっぱい、持ってきたらぁ!」

ルェルルが持ってきた山盛りの料理を見て、ローゼソは苦笑い。

「もう、ルウったら! 自分が大食いじゃないのは分かってるでしょ~」

ローゼソが料理を取って戻って来ると、今度はルェルルは謎かけに頭を抱えていました。
ちなみに料理は、ルェルルが食べきれなくなるのを見越して、少な目にとっています。

>「んっとぉ、んっとぉ……鶏と卵はぁ……先なのはぁ……んっとぉ」

「ボクは卵の方が先、と見るな。卵は鶏になるけど鶏から生まれた卵は鶏とは別の存在だ。
ルゥはどう思う?」

ルェルルの方を見ると、目玉焼きとチキンを食べるのに夢中でした。
待ちきれなかったようです。

「あ、あはは~! 見ての通り幼女だから許して下さいね!」
288 : 忍法帖【Lv=6,xxxP】 [sage]:2012/03/03(土) 09:16:06.69 O
タルカジャですの。
289 :ルェルル=ルュル ルルゥ ◆mMGaLMOXkw [sage]:2012/03/04(日) 21:33:32.45 0
【( ・∀・) 午後の大食堂】

>>287
やがて、昼餐の時間が終わりました。
大食堂は瞬く間に人が散って、潮が引いた砂浜の閑散を迎えます。
真っ白なテーブルクロスは次々に剥ぎ取られ、現れた黒檀のテーブル群はまだ渇き切らぬ黒砂のよう。
しかし、この潮汐の波に取り残されてしまう貝殻たちもありました。
ルェルルの前のテーブル。甘味の果物を乗せた数組の白磁の器と、ミルクティーを湛えたカップたちが。
その一つが、かったん!と落ちつきの無い音を立てて置かれます。

「あまぁい……!」

音を立てたのは、盛り添った料理を食べ切らないまま、さらに甘いものを加えたルェルルのお皿でした。
この幼女は甘い物は別腹とばかりに居残って、真珠葡萄にドッキリトマト、数種の甘味で夢心地なのです。

『ルェルルを見ていると、郷里の弟を思い出すわね。
 夏の休みに家に帰って以来会ってないけど、今は元気にしてるかしら……。
 まだ7才。今年ピアノを始めたばかりの子で、いつか私と連弾するんだって、とても嬉しそうに笑っていたわ。
 来年には初等部に入学してくるから、ルェルルも今年ホグワーシに入れば、来年からは弟の同級生ね』

そう言って、シジルはカップを置きました。
白茶色に濁った器の底で響いたのは、ことん、と言う落ち着いた音。

「ロゼそも、これ食べてみて! ホミそには、こっちあげる!」

フォークで突き刺された果物たちが、忙しなく動きます。
ルェルルは一口ごとに夢の世界に遊んで、なかなか食べ終わりませんでした。
ああ、片付かない、片付かない! 先程から近くで囁かれる邪魔そうな呟きなど耳に入りません。

『そろそろ、私もピアノの練習に戻らなくちゃ……。
 ルェルルに、ロゼそさん、ホミそさん、今日はホグワーシをしっかり見学していってね。
 そして、来年には弟と一緒にを奏でてくれらたら、私もとっても嬉しい。
 弟はラインって言うの。もし見かけたら仲良くしてね』

シジルは大食堂から出ると、廊下へと消えて行きます。
ルェルルは、まだまだデザートを頑張るつもりなので、テーブルに着いたまま動きません。
まさに不動の固着生物。掃除の人も本当に邪魔くさそうな顔をしていました。
ですが着々と進む後片づけが、ついに動かぬ幼女をも動かします。
不意に大食堂の明かりがパッと落とされ、周囲は薄墨を流されたように暗くなりました。

「わぁ、真っ暗!」

こうなっては、いかに幼女が奮戦の意志を見せても仕方ありません。
ルェルルは、まだお皿に残った果物を持つと、名残惜しそうに椅子から飛び降ります。
いくら粘っても、もう新しい食べ物が出て来ないことを悟って。

「もう行こっか……そろそろお昼寝したいね」

いつものように、きれいさっぱり目的を忘れ去ったルェルルが言い放ちます。
聖域を塞ぐ魔物の対策を講じるために、ホグワーシを訪れたにも関わらず。

遊ぶこと、食べること、寝ること。幼女族はこれらの原始的な欲求に従っていれば満足してしまう生物。
目的を持った旅の先導役には、不向き極わりないのです。
たまにローゼソやホイミソが何がしかを言い聞かせなければ、永久に食べる寝るの生活を繰り返しかねません。

 ■ルェルルの装備■(胴体)・穴あきぶくろ (右手)・パチパチオレンジ (左手)・緑のバナナ

ルェルルが去った後、食堂の明かりは再び付いて、やれやれといった顔の掃除人が残ったお皿を片づけ始めます。

『これでようやく片付くな。 おや、あれだけ粘ってて、このミルクティーなんか、一口も口を付けていないじゃないか。まったく……』
290 : 忍法帖【Lv=8,xxxP】 [sage]:2012/03/05(月) 09:34:52.33 O
邪悪なる魔物に全知全能の神様の天罰が下るティルトウェイトですの。
291ホイミソ[sage]:2012/03/08(木) 00:32:38.86 0
昼食をゆっくりといつまでも粘っている幼女の横で、
すっかり暇になったホイミソはふと何者かの視線に気付きました。

「目的:
謎掛け魔物をどうにかしてベルウ山脈の洞窟抜けて
神殿に行って聖典を手に入れて大悪魔を倒して混沌を封印する」

部屋の隅のテーブルの下でメタるスライムがプラカードを掲げていたのでした。

「・・・えとえと、ベルウ山脈の洞窟の魔物の謎掛けは丸暗記かカンニングで
もしかしたら妖精のリコーダーで眠るかも、なんだね」

ホイミソはローゼソに急いでこれまでの話の要約を聞きました。

「この際、ルェルルの穴あきぶくろに“聖地にお参りしたいです”って書いちゃおうか。
それか“聖地にお参りにいったきりのおかあさんを探しています”とか」
292 :ローゼソ[sage]:2012/03/08(木) 00:56:29.92 0
テーブルの前で粘るルェルルを見ながら、シジルは、郷里の弟の話を語り始めました。

「へえ~、連弾できるといいね!」

>「ロゼそも、これ食べてみて! ホミそには、こっちあげる!」

ルェルルから果物を受け取り、口に入れます。

>『そろそろ、私もピアノの練習に戻らなくちゃ……。
 ルェルルに、ロゼそさん、ホミそさん、今日はホグワーシをしっかり見学していってね。
 そして、来年には弟と一緒にを奏でてくれらたら、私もとっても嬉しい。
 弟はラインって言うの。もし見かけたら仲良くしてね』

そういえば、音楽室でピアノ演奏をした生徒の名前もラインでした。
普通ならば偶然同じ名前だと思って流すところですが……あの少し冷たそうな顔がよく印象に残っています。
ローゼソは、シジルをまじまじと見つめます。こっちは暖かくて優しそうな表情。一見正反対ですが……

「げほっげほっ!」

果物を呑みこもうとして噎せ返ります。

「シジルさん、あなたは……!」

その先を言おうとして、シジルがすでにその場にいない事に気付きます。
そして、そんなはずはないと思い直すのでした。

>「もう行こっか……そろそろお昼寝したいね」

「昼寝してる場合じゃいよ!
学校見学は今日だけなんだから今日中に謎かけ魔物の攻略方法を探さないと!」

ローゼソとホイミソは、ごにょごにょと打ち合わせをはじめます。

>「この際、ルェルルの穴あきぶくろに“聖地にお参りしたいです”って書いちゃおうか。
それか“聖地にお参りにいったきりのおかあさんを探しています”とか」

「こうしよう、“聖地に行って美味しいものがたくさん食べたいです”!」

確かに、これなら嘘にはなりません。
ルェルルは常に美味しいものが食べたいと思って間違いないのです。
穴あき袋に目的を書いて廊下に出ると、シジルが待っている――ように一瞬見えましたが
実際にいたのは、あのピアノ演奏がルェルルに酷評を受けたラインでした。

「次は僕らのクラスの謎かけ演習の見学だよ。
謎かけ勝負に特別に参加させてあげるよ、君の相手は僕だ」

ラインは、無知な幼女に謎かけ問答で圧勝して溜飲を下げるという大人げない事を企んでいるようです。
293 :ルェルル=ルュル ルルゥ ◆mMGaLMOXkw [sage]:2012/03/08(木) 06:48:18.55 0
【( ・∀・) ホグワーシ白熱教室】

>>291
食堂を出ると、廊下にはラインが佇んでいました。
彼は夜の砂漠のように瞳を凍らせて、ルェルルに冷たい言葉を投げかけてきます。

 >「次は僕らのクラスの謎かけ演習の見学だよ。
 >謎かけ勝負に特別に参加させてあげるよ、君の相手は僕だ」

「ふふーん。負けなぁい。わたし、なぞなぞ得意だもん」

ルェルルは無邪気に応え、ラインの後に付いて謎掛けが行われてる演習室に入ります。
広めの部屋に見えるものは板張りの床と硝子の窓。たくさんの椅子に机。教導師と生徒たち。
すでに中では生徒たちの謎掛けが始まっており、彼らから立ち昇る熱気で室内は暖房も要らないほど暖かでした。

『帝国歴306年、第13代目の神祇官キュロムが提案したのはどんな法律?』

『宗教の自由化!』

一人の女生徒が出した問題に、即座に対面する男子生徒が答えています。
純粋な歴史の知識の問題だったので、それに教導師の講釈が加わりました。

『そうだ、この時代は鰯の頭でも神として祀れるようになった。
 聖典以外の神霊たちは、どうやら信仰心で力が増減するらしい。
 だから神たちも信者獲得のために、こぞって奇跡の大安売りを始めてしまった。
 その結果、大勢の邪神たちもこの時代に台頭する事になるわけだ……この事態はどう思う、ギルバート?』

『うーん、端的に言えば全員に危険な武器を配るような感じじゃないかな。
 積極的に暴力を振るう人が幅を利かせるような』

『この時代は確かに危険な世の中だったようだ。
 各地で邪祁の祭司や巫女が蔓延って、翌年の死者も数倍に膨れ上がってる。
 で、このキュロムの行った宗教改革はデメリットだけ? 他に意見は無い、アンナ?』

『ええと、安全を求める人間たちが聖典に拠り所を求め始めて、現在の真教発展の切っ掛けになった!』

算術、歴史、倫理、宗教、あちこちで異なる種類の謎掛けが行われ、解釈の違いや反論で賑やかな喧騒が生まれます。
生徒たちの討論で白熱する教室に入ったラインは、隅の一角に10人分の椅子を丸く並べると、他の生徒を6人集めて座らせました。
そしてルェルル、ホイミソ、ローゼソにも座るように促して、自分も着席します。

『じゃあ、謎掛けだ……どうせなら多数参加型の謎掛けと行こうじゃないか。
 このグループには招待者も含めて10人がいる。
 授業が終わるまでの45分の間に、この中から2人を輪の中から追い出さないと全員が死ぬ。と言う状況になったとしよう。
 状況設定は何でも良い。洞窟で酸欠になりそうでも強力な呪いでも。
 とにかく、絶対の前提として45分以内に誰か2人を追い出さないと全滅する。この設定に変更は無い。
 この追い出す2人を、どうやって決めるかが僕の問題だ……さあ、制限時間いっぱいまで皆で話し合おう』

ラインから出されたのは、カルネアデスの板やトロッコ問題に類する問題でした。
出題者の彼自身は、最も能力のある者から順に助かるべきとの見解。
功利主義に基づいて、ルェルルを輪の中から追い出すつもりです。

「うんとぉ……10引く2は6だからぁ……あっ、やっぱり7だからぁ……」

『緊迫感を出す為に、ちょっとした仕掛けをしよう。
 このグループ全員に、授業終了の鐘を条件として発動する癇癪玉の魔法を掛ける。
 発動すると全身がパチパチしてとっても痛い魔法だ。
 魔法の解除条件はグループの中から2人が教室を出る事。もちろん教室の外に出た者は解除されない』

ラインが短く呪文を唱えると、ルェルルを含んだグループ10人の体が一瞬淡い光を帯びました。
疑似的なものではありますが、45分後に訪れる死の宣告が下されたのです。
294 :ローゼソ[sage]:2012/03/11(日) 00:58:54.67 0
>「ふふーん。負けなぁい。わたし、なぞなぞ得意だもん」

「あっちゃー」

負けフラグが立ちました。
でも別に謎かけで負けたところで痛い思いするわけでもないしまあいっか、と呑気についていきます。
ラインは、10人のうちから2人追い出すならどうやって決めるか、という問題を繰り出してきました。

>「うんとぉ……10引く2は6だからぁ……あっ、やっぱり7だからぁ……」

「ボクは嫌だぞ! 
そんな誰かを見殺しにして他の人は助かるなんていう人間関係に亀裂が入りかねない問題は!」

が、ローゼソの抗議も気にせずラインは続けます。

>『緊迫感を出す為に、ちょっとした仕掛けをしよう。
 このグループ全員に、授業終了の鐘を条件として発動する癇癪玉の魔法を掛ける。
 発動すると全身がパチパチしてとっても痛い魔法だ。
 魔法の解除条件はグループの中から2人が教室を出る事。もちろん教室の外に出た者は解除されない』

「ちょ、ちょっと待って! 謎かけなら負けても痛い思いする訳でもないと思って参加したのに!」

残酷にも、カウントダウンは始まってしまいました。
ローゼソは無い頭を必死に捻って考えます。

「フュージョン能力を持つ人が4人いれば2グループが合体すればいいんじゃない!?
無理なら二人羽織りで誤魔化すとか!」

迷案が次々と出てきますが、すでに“二人を追い出さないといけない”という前提に反しています。
295 :ルェルル=ルュル ルルゥ ◆mMGaLMOXkw [sage]:2012/03/12(月) 00:03:08.52 0
ホグワーシの生徒は、ライン(男)・デシ(男)・センチ(男)・ミリ(女)・マイクロ(男)・ナノ(女)・ピコ(女)の7人。
魔法の習熟度は紹介順になっており、ラインが最も高くて、ピコが一番低くなります。
彼ら魔法学校の生徒に招待客を加えた謎掛けが幕を開けると、演習室にはローゼソの怒声が響き渡りました。

 >「ボクは嫌だぞ! 
 >そんな誰かを見殺しにして他の人は助かるなんていう人間関係に亀裂が入りかねない問題は!」

長い金髪に高価そうな髪止めを付けた女子生徒。
“毒舌公女”ミリが問題を拒むローゼソに突っ込みを入れます。

『んじゃあ、アナタはずっと黙ってても結構よ。良心的兵役拒否ってのも、まあ選択の一つじゃない?
 回答するのを拒否っても、誰かが癇癪玉でパチるって結果は変わんないんだけど』

やや小柄、鼻には雀斑。快活そうな表情を絶やさない少年。
”幸運健児”デシは十本の紙縒りを作ると、さっそく具体的な提案を始めました。

『全員が犠牲になるより、二人だけに留めた方が良いのは言うまでもないデシ。
 クジなら恨みっこも無いデシ。運を天に任せてのクジ引きが最も公平デシ』

白魚の指を組み合わせ、冷ややかな目で周囲を睥睨する男子生徒。
“鍵盤王子”ラインはフッと笑うと、デシの差し出す紙縒りを掌で握り潰して反論します。

『デシ君、これは生存競争だ。公平と言うなら弱肉強食の方が公平だよ。
 最も役に立たない奴から、二人を選んで犠牲になってもらうべきじゃないかな』

底に穴を開けた袋をすっぽり被って頭だけを出した見学客。何も考えてなさそうな表情の童。
“無能幼女”ルェルルは、ラインに視線を向けられると不満そうにぷくっと頬を膨らませました。

「わたし役に立つもん!おいしいハンバーグ作れる。
 あとねぁ、食べられるドングリ集めるのもできる!とーってもいっぱい!」

不満を鎮めるためにバナナを齧り始めた幼女を他所に、ローゼソが幾つかの回答を続けます。

 >「フュージョン能力を持つ人が4人いれば2グループが合体すればいいんじゃない!?
 >無理なら二人羽織りで誤魔化すとか!」

『ほう……なかなか面白い問題をしてるようだね。
 この手の問題は、どんな答えをしても答えた人間の道徳観が透けて見えるものだ。
 まず、人間関係に亀裂が入りかねない問題は嫌。フュージョンと二人羽織りで誤魔化す。
 君の二つの言葉からは、設問自体から逃避したいとの願望を感じるね』

輪の様子を見に来た先生が、分かったような分からないような事を言いました。
もちろん幼女には分かりませんでしたが、何やらローゼソが褒められたような気がします。

自分も何か答えて褒めてもらおうと、ルェルルは気合を入れました。


じっと他の人たちを見ると、ルェルルは張り切って輪から追い出すべきニ人を指差します。

「うーん……そっちの人とぉ、こっちの人!」

選択されたのはセンチとマイクロ。理論ではなく感覚で選ばれました。
輪から追い出されるとパチパチされる事しか分かってないので、幼女の選択も適当そのもの。
彼ら二人がルェルルに選ばれたのは、まだ何も発言して無いので感情移入がされてないからです。
幼女とは意外に残酷な生き物なのかもしれません。

こうして、最初の10分が経過しました。
残り時間は35分なので、まだまだ参加者にも余裕が見られます。
296ローゼソ[sage]:2012/03/15(木) 00:25:17.53 0
>『ほう……なかなか面白い問題をしてるようだね。
 この手の問題は、どんな答えをしても答えた人間の道徳観が透けて見えるものだ。
 まず、人間関係に亀裂が入りかねない問題は嫌。フュージョンと二人羽織りで誤魔化す。
 君の二つの言葉からは、設問自体から逃避したいとの願望を感じるね』

「そりゃ普通嫌ですよ~、こんな誰を見殺しにするかなんて設問」

一方、幼女は景気よく犠牲者を選定します。選定基準は、影の薄い人でした。

>「うーん……そっちの人とぉ、こっちの人!」

「うおーい! 下手に喋るんじゃない!
もしかしたら影が薄いから追い出されても怪物にスルーされて生き残れるかもしれないけどさ!
……ん、そうか……!」

“地蔵勇者”ローゼソは、自分の発言から、ある事に気付きました。
ラインは、2人を輪の中から追い出さないと全員が死ぬ、と述べただけで
追い出された二人は絶対に死ぬ、とは言っていません。

「――能力が高い人から2人選ぶのがいいんじゃない?
能力が高ければ追い出されても生き残れるかもしれない」

この場合、生き残る能力が高い人から2人といったら
言うまでも無く完全回避と鉄壁防御を持つルェルルとローゼソになります。
ですが、神の使徒だという事は言う訳にはいかないので、その事実は言えません。
なので怒涛の勢いで却下されそうです。
297 :ルェルル=ルュル ルルゥ ◆mMGaLMOXkw [sage]:2012/03/16(金) 07:25:19.32 0
>>296
 >「そりゃ普通嫌ですよ~、こんな誰を見殺しにするかなんて設問」

ローゼソが不服そうに答えると、ホグワーシの教導師は我が意を得たりとばかりに語り始めます。

『そうだね、しかし魔術師とは知識の探求者。考えるのが仕事だ。
 体験を概念に当て嵌め、因果関係の有無を検証する作業……それが考えるということだ。
 何かを深く知るには、より多くの体験を重ねて情報を集め、考える必要がある。
 時には嫌な事だって、論理的に考えなくちゃいけない。
 ホグワーシへの入校者は、魔法にばかり気を取られがちだ。
 だけど火の玉を作ったり、変身したり、不思議な現象なんてのは探究の結果に過ぎない――――』

さらに先生は思考と魔術師について滔々と語り始めましたが、幼女にはまったく伝わりませんでした。
概念やら因果関係などと言う単語自体、5年に満たない人生の中で一度も聞いた事が無いので仕方ありません。
そんなルェルルは、適当に犠牲者を選んだことでミリの反論を受けます。

『へー。アンタ、あんまり知らない人なら犠牲になっても心が痛まないってわけー?
 まぁそーねー……私だってそーだものねー。
 ちょっと前にテルピアで、反乱が起きて犠牲者も大勢出たでしょ?
 でも、私たちには遠くの街での多くの犠牲より、近くのホグワーシで死者が一人出る方が重大事。
 要するにアンタの言ってる事は、そう言うことなの。
 だから、同じ理由で私がアンタを犠牲に選んでも、アンタは文句言えないわよ?』

「ぶぅ……いじわる」

やり込められたルェルルは、稚拙な悪態を吐く事しか出来ません。
ローゼソは幼女に不用意に喋らないよう警告した後、何やら思い付いた感じで案を出します。

 >「――能力が高い人から2人選ぶのがいいんじゃない?
 >能力が高ければ追い出されても生き残れるかもしれない」

「はーい!はーい!わたし、とっても能力たかぁい!とっても高いもん!」

『いいや、残念ながら能力が高くても生き残れない。
 この問題は二人が死ぬか、選ばずに全員が死ぬかって問題だからね。
 細かい状況設定はしないれど、君の言う怪物に対抗するって状況設定なら、全員で戦った方が効率も良い。
 洞窟に8人分が生き残るだけの空気しか無いって設定なら……追い出す方法は、もっと直接的になるかな。
 とにかく必ず死ぬ状況で能力の高い者、役に立つ奴が真っ先に犠牲になるのは大いなる損失だよ』

ラインが唇の端を歪め、薄笑いを浮かべながら補足しました。
この問題そのものは、犠牲になる二人を選択するか、或いは何も選択できずに全滅するかのニ択。
純粋な思考実験なので逃げ道はありません。
ただし癇癪玉の魔法は、問題そのものとは違って様々な解除方法が存在しましたが。

ちなみにルェルルの完全回避能力《ネタフリニキヅカナイ》は、他者が起点となった現象を回避するもの。
鉄壁のローゼソとは違って、自分から危険に飛び込んだ時の安全は保障されません。
ああでも無い、こうでも無いと話し合いは続き、やがてローゼソの提案から20分が経ちました。
次第にラインとミリが中心になって、声の大きい人の意見が通りそうな雰囲気が醸成されていきます。

『しかし、このままじゃ決まらない! 多数決で決めようか』

『そーね。公平だし、それが良いんじゃない? やるなら投票制ね。
 一人に付き、誰か二人を選ぶ。最も得票数の多かった二人には部屋を出て行ってもらう……良い?』

「んー……うんっ!」

文字の書けないルェルルでしたが、返事だけは元気そのもの。
ちゃんと意見を出さないと大変な事になりそうですが、幼女は流されるままなのです。
残り時間は15分。だんだん参加者にも焦りが現れてきました。
ひそひそ話をする者や、何人かで部屋の隅に移動して秘密会議を始める者も出始めます。
298 : 忍法帖【Lv=19,xxxPT】 [sage]:2012/03/16(金) 18:42:31.07 O
私の名前はキュアメロンだよ宜しくお願いします。
299 :ホイミソ[sage]:2012/03/16(金) 20:41:24.23 0
「全員で殺し合って最後まで残った2人が出て行けばいいと思うよ」

“人”数には入らないホイミソが呟きました。

それは・・・結局全員殺す気ですね。
が、人はそこまで馬鹿正直ではないので、
実際には2人死んだ時点で殺し合いを止めるでしょう。
いいんですか?

「うん。最初に死んだ筈の1人は実は死んだフリで、結局全滅するから」

そう上手くいくものでしょうか。

「ところでこれは、謎掛け魔物の過去問なの?」

ホイミソは、焦りを浮かべてささやき合う参加者達に
冷たい視線を投げているラインに聞いてみました。
300 :ローゼソ[sage]:2012/03/18(日) 22:56:58.87 0
教導師は、魔術師は考えるのが仕事と言い聞かせます。
どうやらローゼソは真の魔術師にはなれそうにないですね。
そしてラインがニヤニヤしながら、ローゼソが考えた抜け道を却下してきます。
そんな中、ホイミソが何とも斬新な案を打ち出しました。

>「全員で殺し合って最後まで残った2人が出て行けばいいと思うよ」

「えっ」

>「うん。最初に死んだ筈の1人は実は死んだフリで、結局全滅するから」

「全滅するんかい!」

>『しかし、このままじゃ決まらない! 多数決で決めようか』

>『そーね。公平だし、それが良いんじゃない? やるなら投票制ね。
 一人に付き、誰か二人を選ぶ。最も得票数の多かった二人には部屋を出て行ってもらう……良い?』

「うん――それしかなさそうだね」

他にこれと言った代案もないので、良いも悪いもありません。
集まって秘密会議をする者が現れる様は、ライアーゲームを彷彿とさせます。
この手のゲームは、半数以上で徒党を組むことに成功すれば勝つことが出来るのです。
部外者であるこちら側が明らかに不利。
自分は鉄壁防御だから癇癪玉を受けても平気だけど、ルェルルの完全回避はこれには流石に通用しない。
そう思ったローゼソは、ルェルルだけは守ろうと考え始めました。
体の小さい幼女のこと、HPをごっそり持って行かれては大変です。
――実際にはこれも他者が起点になっているので完全回避能力の発動対象になるのかもしれませんが。
二人のうちの一人は自分としてもう一人道連れにしたい輩は――もちろん小憎たらしいラインです。
ホイミソは人数のうちに入っていないらしいので、彼のいう事には説得力が生まれそうです。
そこでホイミソを呼び、こっそり頼みました。

「一人は言い出しっぺのラインにするようにそそのかして回るんだ」

さっきの発言で少しダークな印象が付いてそうなホイミソにピッタリな役回りです。
そして自分は、仲間思いのいい人を全力で演じながら頼んでまわります。

「お願い、ルゥにだけは入れないで! ボクには入れていいから!」
301 :ルェルル=ルュル ルルゥ ◆mMGaLMOXkw [sage]:2012/03/20(火) 20:11:54.62 0
>>229
古ぼけた置き時計は淡々と振り子を揺らし続け、コツッ、コツッと、死の宣告を刻み続けています。
ルェルルもローゼソも、もう新しいアイデアを出す事はありませんでした。
場の雰囲気に流されるまま、完全に思考停止しています。
そんな中、不意に人間では思い付かないような奇抜な案が、ホイミソの口から呟かれました。

 >「全員で殺し合って最後まで残った2人が出て行けばいいと思うよ」

ホイミスライムの言葉は、沈黙する輪の中で響きます。
ホグワーシの生徒たちは硬直して、ホイミソの目を気味悪そうに見つめていました。
残念ながら賛同の声は続きません。誰もが自分以外の誰かが言葉を発するのを待っています。
沈黙の中で、人間と魔物の倫理観の違いについて考えながら。

 >「うん。最初に死んだ筈の1人は実は死んだフリで、結局全滅するから」

さらに続けるホイミソの言葉に、ルェルルはピン!と閃きの光を瞳に浮かべました。

「あっ! 1人じゃなくて、みんなで死んだフリしてれば、みんな助かる!」

こてんと床に横たわったルェルルは、片目を瞑り、もう片方を薄目にして死んだフリを始めます。
癇癪玉の魔法が死んだフリで避けられる訳はありませんが、幼女は全て解決した気分。
やり遂げた気分と、いっぱいになったお腹は、穏やかなまどろみを生みます。

「早く死んだフリした方が良いよぉ。起きてたらぁあ……危なぁい」

うとうととするルェルルは、今にも眠りそうな感じを漂わせながら、周りに警告しました。
長針が残り10分を切った所で、生徒たちの焦燥は頂点に達します。
混乱し、罵り合い、時には掴み合いにもなり掛け、また密やかに票の売り買いすら始まっていました。
悪戯に時だけが過ぎて行く演習室で、ホイミソが三度目の言葉を発します。
ホイミソは伸ばした触手でラインの腰をポンポンと叩き、彼が出した問題について問いかけました。

 >「ところでこれは、謎掛け魔物の過去問なの?」

とうとう魔物の出す謎について直接聞かれ、寄り道ばかりで一向に進まなかった探索が少しだけ進みます。

『いいや、これは僕が考えた問題だよ。色んな物を参考にしてね。
 答えが決まってる古典的な謎かけより、よっぽど高尚な問題だろう?
 そう言えば……そこの奴は“聖地に行って美味しいものがたくさん食べたいです”なんて、服を着てるな。
 まさか、君らは謎掛け魔物を何とかして、聖地に行こうなんて考えてるんじゃないだろうね?
 もしもそうなら、何ともはや、身の程ってものを知らない!
 まず聖地への道を塞ぐって事は魔物は混沌の手先だろ?
 それなら、過去問題なんて幾ら調べた所で無駄に決まってる。
 混沌なんて奴らは謎掛けに正解しようが、平気で巡礼者を皆殺しにするに決まってるからね』

ラインの瞳には、冷笑の愉悦が浮かんでいました。
聖地へ向かうのを諦めさせ、それを愉しもうとするかのように。

『妖精のリコーダーなら魔物を眠らせられるらしいけど、ここらで妖精なんて誰も見たこと無い。
 妖精の持ち物を手に入れるなんてのは、どだい無理な話さ。
 まあ……例えリコーダーが有っても、君たち如きの演奏技術じゃ使いこなせないだろうけどね』
302 :ルェルル=ルュル ルルゥ ◆mMGaLMOXkw [sage]:2012/03/20(火) 20:15:47.65 0
>>230
「もぉ……食べられないよぉ……」

ルェルルは目を瞑っていたのが災いして、実に容易く睡魔に捕らわれていました。
お腹いっぱい食べた後のお昼寝なわけですが、いったいどんな夢を見ているのでしょう。
幼女が紡ぐ夢の外。ホグワーシの演習室ではローゼソが他の参加者の元を奔走しています。

 >「お願い、ルゥにだけは入れないで! ボクには入れていいから!」

まずはデシ・センチ・ミリの3人がローゼソの懇願を聞くこととなり、デシが最初に応えました。
彼は茶色の瞳に怪訝そうな色を浮かべ、ローゼソに向かって聞き返しました。

『えっ、いいの? 死んじゃうデシよ』

『馬鹿ね、死ぬのは問題の中でだけよ。
 実際に死ぬんだったら、自分を選んでなんて言う訳ないでしょ?
 つまり……こっちのお姉さんは本来の問題を放棄して、癇癪玉対策に走ったってわけ』

デシに説明するミリの言葉に、もう一人の男子生徒も得心の行った顔となりました。
センチ、比較的体格の良い男子生徒です。

『ああ、そう言う事か。確かに小さい子供に癇癪玉は危ないかも知れないからな。
 ま、元々何を言われても、俺は女子に票を入れる気は無かったけどさ。
 癇癪玉を喰らっても平気そうな男連中は、俺とラインとデシとマイクロか。
 そっちのホイミスライムは、二人が部屋を出るって解除条件に当て嵌まらなくないか?』

『……そうかもね。つまり正確には9人から2人を選ぶ問題だったってわけね。
 私が変身魔法を使えれば、このホイミスライムを人間にして選んでやったんだけど。
 とりあえず進んで犠牲になりたいって言うのなら、一人はこのお姉さんに決めたわ』

ミリとデシは1票をローゼソに入れる事に決めたようです。
一方、ラインは最も魔力の低いナノとピコの二人に何事かを話していました。
息のような囁き。他には誰にも聞こえない小さな声で。


【( ・∀・) 投票予想 (・∀・ )】

ライン……[ルェルル/ルェルル]
デシ……[ローゼソ/?]
センチ……[ライン/デシ]
ミリ……[ローゼソ/?]
マイクロ……[ローゼソ/?]
ナノ……[ルェルル/ルェルル]
ピコ……[ルェルル/ルェルル]

ルェルル……[凸の絵/はなまるハンバーグの絵 ※両方とも無効票]
ローゼソ……[?/?]
ホイミソ……[?/?]
303 : 忍法帖【Lv=24,xxxPT】 [sage]:2012/03/22(木) 05:42:11.04 O
ドナルド・マクドナルド・スペースオペラ。
304ローゼソ[sage]:2012/03/24(土) 19:32:04.50 0
>「あっ! 1人じゃなくて、みんなで死んだフリしてれば、みんな助かる!」

「それ全員死ぬんじゃ……」

すっかり問題を解いたつもりで横たわったルェルルは、すぐに寝てしまいました。
ホイミソの質問を受けて、ラインが聖地に行くのはやめるようにそそのかします。

> 『まず聖地への道を塞ぐって事は魔物は混沌の手先だろ?
 それなら、過去問題なんて幾ら調べた所で無駄に決まってる。
 混沌なんて奴らは謎掛けに正解しようが、平気で巡礼者を皆殺しにするに決まってるからね』

「混沌の……手先……?」

その言葉に、夢の中のおぼろげな記憶が蘇ります。
ローゼソは実はカオスに召喚された混沌の手先らしいですが、本人ははっきりとはその事を知りません。
刻一刻と投票の時が近づいてきます。
ラインが、魔力の低い二人に善からぬ事を吹き込んだ気がしますが、ローゼソは二票は同一人物に入れるなど思いつきません。

ローゼソ投票予定……[ローゼソ/ライン]

一同はほぼ投票対象を決めつつあるようで、最終結果はホイミソ次第、というところでしょうか。
305ホイミソ[sage]:2012/03/24(土) 20:18:18.77 0
>『妖精のリコーダーなら魔物を眠らせられるらしいけど、ここらで妖精なんて誰も見たこと無い。
> 妖精の持ち物を手に入れるなんてのは、どだい無理な話さ。
> まあ……例えリコーダーが有っても、君たち如きの演奏技術じゃ使いこなせないだろうけどね』

「妖精のリコーダー!ラインは物知りだね!」

ホイミソは触手をひらひらさせながら賛辞をおくりました。

「そんなに物知りなら、癇癪玉が痛くない方法も知ってるよね!
でなきゃ、自分だけはこっそり魔法かけないでおくもんね!」

ラインは魔法を掛けると言いましたが、
本当に魔法が掛かったかどうか、ホイミソにはよく分かりません。
もしかしたらホグワーシの生徒にも、分からない子がいるかもしれませんが。

「・・・癇癪玉が痛くない方法を見せてほしいなあ。ぜひ」

触手を二本くるくるとねじり合わせて、
ホイミソはラインに、それから他のみんなに笑顔を向けました。

ホイミソ……[ライン/-]

残念ながら2票を同一人物に入れる知恵はホイミソには無いようです。
306 :ルェルル=ルュル ルルゥ ◆mMGaLMOXkw [sage]:2012/03/26(月) 20:08:08.01 0
>>305
ホイミンはラインの物知りを褒め、揉み手のような仕草をしながら彼に聞きます。

 >「そんなに物知りなら、癇癪玉が痛くない方法も知ってるよね!
 >でなきゃ、自分だけはこっそり魔法かけないでおくもんね!」

『僕が自分だけ癇癪玉のダメージから逃れようとしてるだって? バカバカしい! 有るわけないだろ!』

『あら、こっそり自分に魔法をかけない事は出来るんじゃない?
 有るわけない、なんてのは……それこそ思考停止!魔術師失格の思考停止よ!』

ラインは即座に否定しましたが、ミリがホイミソの投じた一石から疑惑の波紋を広げました。
早くもホイミソの意図を察した彼女は、口元にあるかなしかの笑みを浮かべています。
疑惑を向けられたラインはと言うと、心外だと言わんばかりの表情でミリに喰ってかかりました。

『癇癪玉の魔法なら間違いなく全員に掛けたよ。そんなの魔力感知の術を使えば分かるじゃないか?』

『魔力感知が掛かってる事だけはね。
 でも、かかってるのが癇癪玉の魔法かどうかはまでは、魔力感知だけじゃ分からないわ。
 それこそ、私たちじゃ使えないような上級の探知呪文を使わないと。
 自分が犠牲者に選ばれなければ自動的に解除。選ばれたら部屋を出た時に見えない位置で癇癪玉を使う。
 部屋を出ちゃったら癇癪玉が発動するから、誰も外に出てまでアンタの確認はできない。
 もう一人の犠牲者だって、痛くて他の人の確認どころじゃないでしょ?
 そして……全員が癇癪玉でダメージを受ける場合は、みんな痛くて他人の様子なんて分かんない。
 理論的には自分だけ安全なトリックを仕掛ける事も、充分に可能よねえ?』

もっともらしいミリの反論に、みんながラインに疑惑の眼を向けました。
そうだそうだ、本当にラインは自分自身にも魔法を掛けてるの、と何人かが口を尖らせて続けます。
たちまち、空気は粘りを帯びたように重苦しいものとなりました。
充分に雰囲気が荒れた所で、ホイミソの大きな口が台詞を発します。

 >「・・・癇癪玉が痛くない方法を見せてほしいなあ。ぜひ」

ホイミソの笑顔を向けられたみんなも、うんうん、見せて見せてと連呼します。
癇癪玉の魔法がラインにも掛かっている事を証明しなければ、みんなは収まらないようでした。
そのまま六人掛かりの文句と懇願が始まり、ラインは波紋を投じた張本人をジロリと睨みつけます。
しばらく黙っているラインでしたが、煩い声に堪えかねたようで席から立ち上がりました。

『自分にも癇癪玉の魔法が掛かってる事を証明すれば良いんだろう?
 それなら今すぐ破裂させようじゃないか。それも痛くなくね。後学のために君らも見て置くと良い』

ラインが複雑な呪文を唱えると、一瞬薄い靄のようなものが現れてラインの全身を包みます。
次の瞬間、パチパチッ!と花火のような大きな音がしますが、ラインの表情は怜悧そのもの。

『お望み通りに癇癪玉を破裂させて、さらに痛くない方法も見せたよ。
 思考停止してないなら、何が起きたかは自分で考える事だね』

お肌に潤い。髪にはしっとり感が出たラインは、ふんっと鼻を鳴らして席に付きました。
癇癪玉を防いだ原理は説明されず、何が起きたのか分からない生徒たちはがっかりした顔です。

「ハンバーグ、行かないでー……」

眠るルェルルも、がっかりした顔で手足をバタバタさせていました。
307 :ルェルル=ルュル ルルゥ ◆mMGaLMOXkw [sage]:2012/03/26(月) 20:08:58.32 0
【( ・∀・)<ソウダ ( ・∀・)<センキョニイコウ ☆ ☆ ☆ ハンバーグの島】

>>304-305
眠れる幼女は夢の中。
ミルクの海に浮かび、ドーナツの浮き輪に掴まって、一人でハンバーグの島を目指していました。
チョコレートの魚は一網打尽。キャラメルの流木にカプっと齧りつくと綿菓子の雲を眺め、また泳ぎ出します。
ハンバーグの島は泳いでも泳いでも、なかなか辿り着けません。
やがてキャンディの雨と共に嵐が来て、とても高い大波が幼女を攫いました。
気付いた時にはお砂糖の浜辺。ついにルェルルはハンバーグの島に辿り着いたのです!
あちらでもこちらでも、ご馳走が待機する夢の世界。もちろん実際に夢の世界です。

「ハンバーグ! とっても良いにお~い……いただきまーす!」

木も花も草も小高い丘も、島の全ては美味しい食べ物で出来ていました。
どれもが極上の美味。しかも食べても食べても尽きる様子がありません。
ルェルルはバンザイのポーズで天真爛漫に島を駆け巡り、うっとりしながら旺盛な食欲を発揮します。
空の上から“起きなさい、ルルルルルルル”と小さな声が聞こえても、幼女は夢中になって島を食べ続けていました。

「とってもぉ……おいしい! とってもとってもぉ!」

増進する食欲は堪能に堪能を重ね、夢の中の幼女は肥って、どんどん丸くなりました。
ぽっちゃりから、むっちり、でっぷり、ころころ、どどーんに。
夢想の世界では際限無く食べられるので、どんなに食べてもお腹がいっぱいになりません。

☆ ☆ ☆

そして……夢から現実の世界に目を向ければ、無情にも投票の刻限が迫っていました。
ラインは小さな箱と二十枚の紙切れを用意して、各々に二枚ずつの白紙を渡しながら説明します。

『もう残り時間も少ないし、そろそろ投票に移ろうか。
 君らの手元には、二枚の紙が有るよね?
 その二枚の紙に部屋から出て行ってもらう人の名前を書いて、箱の中に入れてもらう。
 変な逆恨みをされないように、誰が投票したのかを記入する必要は無い。
 多数決で民主的に決まる事だから、選ばれた人はみんなの手を煩わせずに素直に出て行ってくれよ?』

輪の中心に箱が置かれると、ライン・ミリ・デシ・ミリ・マイクロ・ナノ・ピコが順番に投票用紙を入れます。
ルェルルに6票、ラインに4票、ローゼソは3票、デシに1票が入った事を知るのは、無言で佇む投票箱だけ。
さらにローゼソとホイミソが1票ずつを投票予定のラインに入れれば、ラインは6票になるはずでした。

『おい、誰か呑気に寝てるそいつを叩き起こせ。残り時間は5分程度しかないぞ。
 ああ……そう言えば、前に風邪で休んでる間に学級委員に推薦された奴がいたっけ。
 極限状態では弱った者から消えてもらうってのも、“10-2”の解答としては有りだろう。
 この大事な時に寝てるような奴は、そうなっても仕方ないよな?』

幼女を穴あきぶくろごと両手で抱え、ラインが部屋の外に歩き出します。
ルェルルに起きる様子がなければ、彼は投票を待たずして一人を部屋の外に放り出すつもりでした。

「ふゎ……むにゃう……」
308ローゼソ[sage]:2012/03/30(金) 01:13:46.34 0
>『お望み通りに癇癪玉を破裂させて、さらに痛くない方法も見せたよ。
 思考停止してないなら、何が起きたかは自分で考える事だね』

「何テカテカしちゃってんの。あらかじめ防御魔法でもかけといたんじゃないの?」

ローゼソは気分的にテカテカしていると認識していませんが、実際にテカテカしているのです。
防御魔法だとしたら水の防御魔法でしょうか。

>『おい、誰か呑気に寝てるそいつを叩き起こせ。残り時間は5分程度しかないぞ。
 ああ……そう言えば、前に風邪で休んでる間に学級委員に推薦された奴がいたっけ。
 極限状態では弱った者から消えてもらうってのも、“10-2”の解答としては有りだろう。
 この大事な時に寝てるような奴は、そうなっても仕方ないよな?』

ローゼソは、憤然と扉の前に立ちはだかりました。

「ここは通さん!!」

『邪魔だ、のけよ』

「地蔵流奥義――アストロン!」

ローゼソは内開きの扉の前で地蔵になってしまいました。
このままでは誰も出られなくて全員癇癪玉コースですが、カッとなってついやってしまったのです。
なので、扉が実はもう一か所あった、というマヌケなオチの可能性も大いにあります。
309 : 忍法帖【Lv=3,xxxP】 [sage]:2012/04/01(日) 16:30:03.82 O
スペースオペラのTRPGは面白い内容ですよ。
310 :ルェルル=ルュル ルルゥ ◆mMGaLMOXkw [sage]:2012/04/02(月) 18:40:42.31 0
>>308
ローゼソは地蔵流奥義を用いて鉄の塊となり、謎掛け演習室の扉を内側から塞ぎます。
これで部屋は密室。閉ざされた部屋からは誰も出られません。

『おい、なにやってんだ馬鹿! 全員を道連れに心中するつもりか!』

室内を震わせる怒声の主は血相を変えたライン。
彼の叫びを端緒として、全員の不安と困惑が決壊して溢れ出しました。
デシ・ミリ・センチ・マイクロ・ナノ・ピコの6人も、ラインに続いて色々な感情を吐き出します。

『戦争ものの小説でたまに出るデシね。
 殺し合いを止めるためには皆殺しも辞さない奴が……これは困ったデシ……』

『辛い現実を引きこもりの術で見ないで済ませるのが、このお姉さんの生き方ってわけ?
 しかもこれ、自分だけダメージを受けずにちゃっかり助かるつもりなんじゃない?』

『……極限状態だと、とち狂った奴が暴挙に出る可能性も有り得るわけか。
 一つお利口になったってのに、全然嬉しかねえな』

『うわ~!どけっ、どけよ~!おばさん!おばさん!おばさん!』

『ぅ……ぅぅ……誰か助けてぇ……』

『もうヤダ~!』

共通の障害が現れた事で、期せずして魔法学校の生徒たちに連帯の空気が生まれます。
その機会を逃さないように、ミリがラインの服の裾を掴みました。

『もう良いでしょ、ライン? 謎掛けの結果は明らか。全滅よ、全滅!
 で、結果が明らかになった所で……アンタはどうするの?
 このまま全員を道連れに癇癪玉を爆発させて、ホグワーシを卒業するまで、ずーっと皆から恨みを買う?
 それとも、他の選択肢を取る?
 魔術師には合理的な思考も必要が必要だと思うんだけど、どうするの?』

ラインは苛立たしげに鉄の像を見つめていましたが、残り時間が1分を切った所で観念したように溜息を付きます。
そして、ホグワーシの生徒たちに向かって重たげに口を開きました。

『……魔法の癇癪玉を弾けさせるには、充分な乾燥が必要なんだ。
 だから、少し体を湿らせるだけでも癇癪玉を防ぐには充分だよ』

ラインの言葉を聞くと、他の生徒たちは慌てて水の術を唱え始めます。
ある生徒は流暢に。別の生徒はたどたどしく。
そして、最後の生徒が水の魔術を唱え終わった瞬間に癇癪玉の刻限が来ました。

「ハンバーグしゅきぃ……ふふぅん」

不幸なことに皆が自分に水の魔法を掛けるのに精一杯で、眠れる幼女を湿らせる者はいないようでした。
もちろん鉄化して防ぐこともできず、他人のネタフリでは無いので気付かない事も出来ません。
死を擬す魔法が――――ルェルルとホイミソを犠牲者として定めます。
311 :ルェルル=ルュル ルルゥ ◆mMGaLMOXkw [sage]:2012/04/02(月) 18:46:04.91 0
【Σ(゜д゜ ) ホグワーシ白熱教室】

「んんっ……んー……んぅ……? ぅわあああああああっああああっ!」

パチパチパチパチパチパチッ!
癇癪玉の魔法が弾けて、幼女を泡沫の夢から目覚めさせます。
夢の中の珍味佳肴は一瞬にして消滅。全滅。眩い光と派手な爆音に攫われて欠片も残さず消えてしまいました。
甲高い音で爆ぜる火花はルェルルの全身を駆け抜け、パチパチと小さい炸裂を繰り返します。
この魔法は目眩ましに使われるものなので、傷が残る程の衝撃では有りませんが、幼女には辛くて恐ろしい数瞬です。

「んあぁぁぁぁ……ううぅ! えぐっ……えぐっ……ああぁぁぁぁん!」

魔法の火花で痛めつけられ、さらに大きな音と光で驚かされたルェルルは、力一杯泣きつつ走り始めました。
安全を求める幼女族の本能が、この場からの速やかな逃走を要求するのです。
この学校は怖ろしい場所! 一刻も早く逃げて! 心の声がルェルルに囁きかけます。

ですが、幼女の逃避行は鉄の像にゴツンとぶつかったことで、すぐに頓挫しました。
室内からの場面転換は、残念ながら扉の前に陣取ったローゼソに封じられているのです。
そして、進退極まったルェルルは、体を包む袋の中に手足と首を引っ込めて丸くなりました。
完全に袋の中に入ってしまい、わぁわぁと胸が張り裂けるような声で喚き続けます。

「わぁぁぁぁぁぁあああああっ……あっあっ……わぁぁぁあああああっ!」

しばらくして癇癪玉の痛みが失せると、ハンバーグの島が消え去った事に気付き、幼女は別の哀しみでまた泣きます。
太陽が雲で隠れ、月も涙するかと思う程に、ずっとずっと悲しみに暮れて泣き続けます。
これには、ルェルルに票を入れた生徒たちも決まりの悪そうな顔をして、恥じ入るように目を伏せました。
幼女の泣き声が、彼らの心にも反省の念を刻み込みます。

――――。

授業の終わった教室では全員が扉の近くに集まり、ローゼソの硬化が解けるのを待っていました。
ミリも鉄化したローゼソをコンコンと叩きながら、アストロンの解除を要求します。

『ちょっと頭を使い過ぎて疲れたわ……保健室に行きたいから、さっさとどいてくれない?』

頭を押さえて具合悪げなミリの姿は、神の加護を受けた者には別の現象が加わって見えました。
彼女の体から小さな光の文字列が漏れ出して、虚空に消えて行く光景が。
312 : 忍法帖【Lv=5,xxxP】 [sage]:2012/04/03(火) 13:14:08.59 O
カーネル・サンダースに応援して貰えよ。
313ローゼソ[sage]:2012/04/05(木) 01:14:49.20 0
教室は密室になり大騒ぎになりますが、地蔵になっているローゼソには認識できません。
もちろんおばさん呼ばわりも聞こえません。
ところでローゼソは永遠に少女の外見をしたロリババア族の、外見美少年の男装少女のはずですが
魔法学校の生徒だけあって本質を見抜けるのでしょうか。恐ろしいものです。
結果的には、ルェルルだけは助けたいというローゼソの意思とは正反対に
ルェルル一人の尊い犠牲と引き換えに他の全員が助かる事になってしまいました。

>『ちょっと頭を使い過ぎて疲れたわ……保健室に行きたいから、さっさとどいてくれない?』

ここでようやく、アストロンの効力が切れて元に戻ります。
気が付くと、周囲に生徒達が集まっていました。

「――はっ、投票は!?」

『授業は終わったデシよ。結果的に君の連れ以外は全員助かったデシ』

ルェルルの方を見ると、泣きはらした形跡があります。
経緯はよく分からないながらも、ルェルルが癇癪玉にやられてしまった事だけは分かりました。

「その……ごめん……」

バツの悪そうな顔をするローゼソですが、すぐに意識が他に向くことになります。
ミリの体から光の文字列が出てきています。
しかし他の生徒達は無反応。何も見えていないようです。

「ルゥ、あれ見える……?」

ルェルルに小声で尋ね、ミリに付き添いを申し出ました。

「保健室まで付き添うよ」
314 :ルェルル=ルュル ルルゥ ◆mMGaLMOXkw [sage]:2012/04/09(月) 02:53:02.57 0
>>313
謎掛けの授業時間が終わり、やがて人間を鉄化させるアストロンも効果を切らします。
硬い頬は玉の頬に。鉄の唇は薔薇の唇に。ローゼソの姿もすっかり元に戻りました。
それを見て、魔法学校の生徒の一人が、鉄の像から人に戻った男装少女に近づきます。
身の丈をローゼソと同じ程度とする少年、マイクロが。

眼鏡の奥の瞳は、申し訳なさそうに伏し目がち。
彼は茶色の髪を揺らすと、ブンッと勢い良く頭を垂れました。

『さっきは、カッとなっておばさん呼ばわりしてゴメンなさい!
 世の中の男装女子たちは自分で思ってる程には、周りに正体を隠せてないとか……そう言うことじゃないですから!
 全然、絶対、本当に違いますから!』

謝罪の言葉を残したマイクロは、応えも聞かずに慌てて走り去って行きます。
続いて他の生徒たちも退室を始め、部屋の入口は大混雑の人の波。
ローゼソは静かにそこから離れると、袋の中に入ったままのルェルルに近づいて声を掛けます。

 >「その……ごめん……」

幼女は袋の中で丸まって、しくしくと涙を零し続けていました。
寝起きの幼女は、癇癪玉が破裂した現象に理解が及びません。
ただ怖い、訳も分からず痛い目に遭ったと言う感情があるだけです。

 >「ルゥ、あれ見える……?」

「知やなぁい……」

再び掛けられたローゼソの言葉にも、ルェルルは外の世界を見ません。
不機嫌になって、完全に心を閉ざしていました。
大人に対するように話題を切り替えようとしても、幼女では簡単に気持ちを切り替えることができないのです。
ルェルルは頑として教室から動こうとせず、まるで不動の亀でした。
そんな幼女はさておき、ローゼソはいよいよ具合悪げになったミリに付き添いを申し出ます。

 >「保健室まで付き添うよ」

『……お願いするわ。なんか立ってるのもだるいの』

ふらついたミリを支えるローゼソは廊下に出て、保健室へと向かいます。
丸まったルェルルは、袋の中で身じろぎもしません。
315 :【( ・∀・) 謎の部屋】 ◆mMGaLMOXkw [sage]:2012/04/09(月) 02:56:47.85 0
ホグワーシには、入口が一つも無い秘密の部屋が存在していました。
この知られざる部屋は、下級悪魔や新米魔族や経験の浅い邪神たちの研修所。
人間たちが何百年も掛けて造った学府は、人外の存在たちも密やかに利用しているのです。
そして今日の秘密部屋では、クールビューティーな黒髪の先生が講義を行うようでした。

『物語には常に緊張感が必要なのだよ。
 先の見えた予定調和の未来では、緊張感の欠片も無いからね。
 そして、物語の緊張感とは対立構造でこそ生まれるものだ。
 しかしね……遺憾ながら、この世界には本物の対立構造は存在できない。
 永遠の平和を約束する対処療法機が原因でね。
 まずは、これを見たまえ』

先生は水晶壁の大スクリーンに保健室を映して、人ならざる者たちへの授業を講じ続けます。
水晶壁の向こうにはベッドに横たわるミリと、付き添うローゼソの姿がありました。

『カノンは平和を乱す事態が起こると、厄介な事に自前の情報体生命体を処方箋にして、全て単独で解決してしまう。
 この生徒も、どうやら聖典に創られた存在だったようだね。
 彼らは、与えられた役割を終えると、こうやって自然死に見える方法で死んでしまうんだよ。
 おそらくはラインが平和を乱す発端だったが、それが解決したことで用済みになったんだろう』

先生の使い魔がチョークを持って、今のセリフを黒板に書き綴っています。
丸で大きく囲って、ここはテストに出るぞ!との補足も付け加えて。

『大混迷の時代には魔王やら竜やらが現れるが、これも人間を一致団結させる為に聖典が人工的に作り出した脅威だ。
 これら聖典の用意した虚影の敵と英雄……ぶっちゃけるとNPCとPCが戦えば必ずPCが勝つ。
 そこには真の意味での対立構造も緊張感も無い。
 だからトリックスターを目指すなら、いかにPC同士を対立させるか考えなくてならないのだよ。
 無論、どちらが勝つのか誰にも読めない方が愉快千万。
 悪役と悪役。善玉と善玉。同格のPC同士ならば、どちらが勝つのかは誰にも読めない。面白いだろう?
 整った物語よりも混沌と諧謔を。それがトリックスターの心得だ。分かったかね?』

受講する生徒たちが、ハーイと健気に返事をします。
獅子顔の魔神は神妙な顔で頷き、人の形をした炎の塊はノートを取り、みんなが先生に尊敬の眼差しを送っていました。

『まあ、分かってても実践は難しいのだけどね……。
 それでは、今日の授業はここまで。
 午後はジェンダーの混沌を説いて、かーくんを女装させて遊ぶつもりだから、早く帰りたいんだよ』

そう言うと、先生役の大悪魔は己の影に溶け込むようにして消えました。
316 :【(´;ω;`) ホグワーシの保健室】 ◆mMGaLMOXkw [sage]:2012/04/09(月) 03:07:16.78 0
ミリを連れたローゼソは廊下を進み、階段近くの保健室に辿り着きました。
保険医はトイレに行っているようで室内は無人。
空気は混じり合った薬の匂いが漂い、棚には魔法の薬瓶や包帯や医療器具が並んでいます。

結局、亀になったルェルルは保健室に付いてきませんでした。
幼女にはホイミソが付き添っているかも知れず、一人なのかも知れません。

『なんだか、とっても眠いわ……ちょっとベッドで眠らせて……』

目を閉じたミリがベッドで眠ると、すぐに呼吸が止まり、心臓も止まります。
その間にも、彼女の体からは神々の言語で綴られた光の文字列が漏れ続けていました。
“名前・ミリ 目的・ラインが生徒間に決定的な亀裂を入れるのを防ぐ”との文字が虚空に消えます。
さらには“made in KANON”と、製造者の名前まで流れました。
ミリを構成していた肉体も、光の文字としてバラバラになって分解されます。

こうして、一人分の人生が消えました。
最後に彼女の居た場所に残るのは、“ただのしかばね”と書かれた文字情報だけ。
神と悪魔と、神の加護を受けたツヴェルフレギオンエンゲルだけが、それらの文字列を読む事ができます。
317 : 忍法帖【Lv=12,xxxPT】 [sage]:2012/04/10(火) 15:51:49.90 O
幸福の科学教団の信者の魔の手が迫る。
318ローゼソ[sage]:2012/04/10(火) 20:26:00.52 0
>『なんだか、とっても眠いわ……ちょっとベッドで眠らせて……』

「駄目だ、寝たら死ぬ……!」

>“名前・ミリ 目的・ラインが生徒間に決定的な亀裂を入れるのを防ぐ”
>“made in KANON”

ローゼソの叫びも空しく、少女の命が光の文字列として流れ出ていきます。
いえ、この少女は最初から、カノンが作り出した虚像なのでした。

「この学校は……カノンの直轄の支配下!?」

ローゼソはそう解釈しましたが、果たして、他の地はそうではないと言えるでしょうか?
PC、もとい神の加護を受けたツヴェルフレギオンエンゲル以外は全てカノンに作り出された存在だとしたら――?

>“ただのしかばね”

「……ルゥ!」

恐くなったローゼソは、ルェルルのいる部屋に急いで戻ります。
ルェルルはまだ袋の中で丸まっていました。

「よかった、無事だった……! この学校は危ない、早く出よう!」
319 :ルェルル=ルュル ルルゥ ◆mMGaLMOXkw [sage]:2012/04/12(木) 00:30:12.08 0
【( ・∀・) 静かな教室】

>>318
大勢の生徒たちが去った教室では、人の温もりを失った空気が静かに冷え始めます。
暖かだった夏が過ぎて、涼やかな秋が訪れたように。
無人の教室に取り残された幼女は、すでに泣き止んでいました。
いくら泣き喚いても、みんなが去った教室では誰も構ってくれませんから。

「うぅ……ん」

ルェルルは袋の隙間からチラッと外を覗きましたが、パチパチしてきそうなものは誰もいません。
丸まっていた体を伸ばした幼女が、涙と鼻水でべちゃべちゃになった顔を穴あき袋の裾で拭きます。
そして、バナナの残りを一口齧りました。
果物の仄かな甘さは、小さな舌の上で優しく浸み渡って幼女を慰めます。
ルェルルの心に吹き荒れていた冬の嵐も、少しずつ静まってきました。

やがて、保健室に行ったローゼソが戻って来ます。
バタンと開いた扉の音を聞くと、ルェルルは反射的に袋の中に入って丸まってしまいました。
怖い目に遭ったばかりなので、大きな音には敏感になっているのです。

 >「よかった、無事だった……! この学校は危ない、早く出よう!」

ローゼソは丸まった幼女を見つけると、強引に立ち上がらせて外への出発を促しました。
その危機感溢れる様子に、やっぱりここは危険地帯なのだとルェルルも確信します。

「むーっ」

未だに口の中にバナナの欠片を留める幼女が、もごもごと応答しました。

「……ごくっ」

無事にバナナをお腹に収めると、ホグワーシからの逃避行が始まります。
周りを見渡したルェルルは、パチパチで気絶していたホイミソを見つけて触手を掴みました。

「ここね、早く逃げないと危ないよぉ!」

ルェルルは、ホイミソをずるずると引き摺ったまま走り出します。
洞窟の魔物を眠らせるには、妖精の笛が必要らしいと言うことだけが今日の収穫でした。
320 :ルェルル=ルュル ルルゥ ◆mMGaLMOXkw [sage]:2012/04/12(木) 00:39:08.69 0
【?(ι・∀・) 難読文字の封印石】

ホグワーシを出立してから三週間後。
北に向かう馬車へ乗り込んだルェルルは、無事に謎掛け魔物の棲む地域へと辿り着きました。
乗る馬車を間違えて南に行きそうになったり、途中で色違いのホイミスライムに付いて行きそうにもなりながら。

『この先が聖地に続く洞窟さ。見ての通り岩で塞がれてしまってるがね。
 しかし、聖地に美味しいものなんてあるのかい……?』

馬車から降り立ったルェルルを見て、ここまで運んでくれた御者が訝しんだ様子で言います。
この幼女は、まだ“聖地に行って美味しいものがたくさん食べたいです”と書かれた袋を着ていました。
ずだ袋に穴を開けただけの衣類にも、すっかり慣れた様子です。

「おっきい石で入れないね。
 あっ、赤いので汚れてる!矢印もある!誰かお絵かきしたのかなー?」

ルェルルが岩肌を見て叫びました。
目当ての洞窟は絶壁連なる灰色の山脈の麓にあったのですが、残念なことに入口が大きな岩で塞がれています。
小屋ほどもあろうかと言う大きな岩には、何やら難しい文字が朱色で描かれていました。

 “海豚”→“蝸牛”→“栗鼠”→“西瓜”→“  ”

二文字の単語が四つと、それを繋ぐ四つの矢印。
大岩に書かれた謎の文字は北冥(北の果ての海)に浮かぶ島、燕国を発祥とする文字。
燕国の文字は何百年も前に、この大陸へと伝わり、現在では公用語であるメギド文字の次に使われています。
岩に描かれた八字と矢印は、洞窟へ何人をも通さない魔術的な封印として使われているようでした、

「この石、おもくて動かないね」

幼女が石をコンコンと叩いたり、力を込めて押したりしますが、大きな岩はびくともしません。
この封印石は、正しい法則を見破って何かの文字を書き入れないと絶対に壊れないのです。
文字の読めない幼女には、まさに鉄壁の防護壁。
物言わぬ封印石は、静かに佇んで聖地への道を閉ざします。
321ローゼソ[sage]:2012/04/12(木) 21:55:03.95 0
長かったホグワーシ編も終わり。
一足飛びに場面転換し、ローゼソ達は今、封印の魔物の洞窟の入り口にいます。
ルェルルの装備を元に戻さないまま来てしまいましたが
行き先を宣伝する事で思わぬ効果があるかもしれないのでこのままにしておきましょう。

>「おっきい石で入れないね。
 あっ、赤いので汚れてる!矢印もある!誰かお絵かきしたのかなー?」

「ううん、これは文字だよ! うみぶた、かぎゅう、くりねずみ、にしうり……?」

無い頭をひねって考えますが、一向に分かりません。
困ったローゼソはメモを取り出し、魔法学校で習ったカノンの歌を歌い始めました。
ここは聖典の神殿への巡礼者が通る場所。何かの効果があるかもしれないと思っての事です。

「カノン、カノン~♪」

なんということでしょう。
難しい文字の上に、光の文字で読み仮名が浮かび上がって見えてきました。
カノンは神聖なる聖書にして絶対不可侵の法典であり
全世界のデータベースを蓄積して自動でアップデートされる究極の事典でもあるのです。
ですが、カノンが敵であるはずのローゼソ達に力を貸したのはどうしてなのでしょう。
もしかしたら、自分の元へ来いと誘っているのかもしれません。
ローゼソは、見えた文字を読み上げます。

「いるか、かたつむり、りす、すいか……」

しばらく考えてからルェルルとホイミソに問いかけます。

「すいかの次は何だと思う?」

折角難しい文字が読めても、ローゼソはしりとりを知りませんでした。
もしもカノンが誘っているのだとしたら、これでは誘導に相当苦労しそうです。
322 : 忍法帖【Lv=2,xxxP】 [sage]:2012/04/15(日) 16:46:36.66 O
私は幸福の科学に入信するよ。
323 :ホイミソ[sage]:2012/04/15(日) 18:05:10.10 0
ある朝ホイミソがなにか気がかりな夢から目覚めると、
彼は自分が一匹のホイミスライム・・・なのは当たり前ですね、
彼は自分が巨大な岩の前にいることに気が付きました。

>「いるか、かたつむり、りす、すいか……」
>「すいかの次は何だと思う?」

「全部食べられる生き物だから・・・」

人間の生態にはソコソコ詳しいホイミソですが、
よほど気がかりな夢を見ていたのか、しりとりに気が付きません。

「おおにわとり!みみとびねずみ!ひとくいそう!あばれうしどり!・・・」

ホイミソは(スライム系列以外の)モンスターの名前を次々に挙げていきます。
いずれは「か」で始まる奴の名前も挙がるでしょうが、
いったいいつになるか・・・
そうですね、この投稿の末尾の数字×時間後としましょうか。
324 :ホイミソ[sage]:2012/04/15(日) 18:21:29.64 0
「かまいたち!」

おっと、意外にもホイミソは即座にしりとり要件をクリアしました。
洞窟の大岩はもったいぶって効果音を鳴らしています。
それに気付いたホイミソは、調子に乗って触手で空欄に文字を書きました。

 “海豚”→“蝸牛”→“栗鼠”→“西瓜”→“鎌鼬”

・・・・・・。
なんということでしょう。
大岩は嫌そうに振動すると、左右に分かれて真ん中に道を開けました。

とはいえ、開いた隙間はとっても細く、
横歩きしてもルェルルやローゼソの胸がつかえてしまう位。
そして岩が開いて通路に面した側は、巨大なおろし金のように
鋭いギザギザの面を見せています。
無理矢理通ろうとすると、服はおろか胸までおろされてしまいそうです。

「鎌鼬」は難しい文字ではありますが、変則な読みではありません。
道が完全に開かないのはこの辺が原因ではないでしょうか。
325 : 忍法帖【Lv=17,xxxPT】 [sage]:2012/04/16(月) 19:36:37.92 O
リジェネだよ。
326 :ルェルル=ルュル ルルゥ ◆mMGaLMOXkw [sage]:2012/04/17(火) 00:32:34.13 0
>>321-324
カノンの歌が響き渡ると、封印石の難読文字には読み仮名が浮かび上がりました。
ローゼソはその新しい文字群を読み上げて、ルェルルとホイミソに封印文字を聞かせます。

 >「いるか、かたつむり、りす、すいか……」

四つの単語を聞くと、ルェルルの顔が零れるような笑顔に変わりました。
まだ数年しか生きていない幼女ですが、遊びに関しては25年を生きたローゼソよりも詳しいのです。
ルェルルの頭には、“か”で始まる言葉で埋め尽くされました。
かに、かえる、かめ、かき、かきごおり、カレーライス……食べられる物ばかりで。

 >「すいかの次は何だと思う?」

「ふふーん。これねー、しりとりだよぉ!
 おしまいの言葉が、つぎの言葉のさいしょになるの!
 だからぁ……すいかの次はぁ……」

ローゼソの問いかけに、ルェルルは得意げな顔でしりとりについて説明します。
そして、もったいぶった感じでカレーライス!と続けようとする寸前、横から思わぬ声が飛び出ました。

 >「かまいたち!」

ルェルルに先んじて答えたのはホイミソ。
しりとりを続けるつもりなら、かまいたちの次は“ち”から始まる言葉を言わねばなりません。
“か”で始まる言葉を考えていたルェルルは、突然に言うべき答えが変更されてしまって慌てます
そんなルゥルルを他所に、ホイミソは器用に触手を動かして封印石に鎌鼬と書き入れていました。
文字を書き入れられた封印石は、なぜか中途半端に細い亀裂を入れます。

「ちー、ちー、ちー、チャーハン!」

しばらく頭を捻っていたルェルルが、ようやく思いついた言葉を叫びました。
燕国の料理である、焼きご飯の名前を。
ルェルルは乗って来た馬車に駆け寄ると、御者から一本のペンを借りて岩の前に戻って来ます。
何かを岩に書いていたホイミソに対抗して、ルェルルもチャーハンを岩に描くつもりでした。
つま先立ちになった幼女は、封印石の余白に美味しそうな炒飯の絵を描きます。
327ローゼソ[sage]:2012/04/17(火) 22:02:59.33 0
>「ふふーん。これねー、しりとりだよぉ!
 おしまいの言葉が、つぎの言葉のさいしょになるの!
 だからぁ……すいかの次はぁ……」

「へえ、そうなんだ! か……か……」

> 「かまいたち!」

ホイミソが鎌鼬と書くと、岩が少し開きました。あと一息です。

>「ちー、ちー、ちー、チャーハン!」

ルェルルがチャーハンの絵を描きますが、岩は反応がありません。
まだカノンのカンニング効果が持続しているローゼソは、チャーハンの絵の上に文字が見えました。
その通りに「炒飯」と書きます。
「ん」で終わる単語はそれ以上次を続けられないので危険ですが――
幸い炒飯は、普通の読み方とは違う読み方なので、難読文字と言えない事も無いでしょう。
少しだけ開いていた封印石が更に開きます。
ただし、難読度が足りなかったのか、元々の仕様なのかは分かりませんが
注意深く通ればギリギリ通れるぐらいの広さでした。

「行こう!」

ローゼソは、体を横にして岩の隙間に入っていきます。
328 : 忍法帖【Lv=19,xxxPT】 [sage]:2012/04/18(水) 18:39:07.12 O
行くぞギガディン。
329 :ルェルル=ルュル ルルゥ ◆mMGaLMOXkw [sage]:2012/04/20(金) 00:29:19.85 0
【(」・ω・)」(/・ω・)/ なぞなぞの洞窟】

>>327
聖地を取り巻くベルウ山脈は峻険。雪の冠を頂いた山頂は容易なことでは越えられません。
さらに唯一の通路である洞窟に魔物が棲みついたことで、聖地への巡礼は完全に途絶えていました。
ですが、この洞窟にも再び足を踏み入れる者たちが現れます。
神の使徒であるツヴェルフレギオンエンゲルたちが。

 >「行こう!」

そう勇ましく叫ぶと、ローゼソは封印石の亀裂から恐るべき魔魅が潜む洞窟の中へ身を躍らせました。
炒飯と書き入れたことで、さらに亀裂を広げた岩を通って。
ルェルルも、うんしょうんしょと横歩きになって続きます。
鍾乳洞の中に入れば内部は広く、壁面も滑らか。
ベルウ山脈の岩石には発光する成分が混じっているようで、所々では淡い燐光が発されていました。
キラキラした光の近くで手を翳せば、爪の先にも青白い光が灯ります。

「これなら明るいから、安心だね」

幼女は、ぽくぽくと足音を響かせながら洞窟の中を歩きました。
あちらこちらの物陰には、頭の突起部分が捻じれて?マークになっているスライムたちの姿。
この緑の体色をしたスライムたちは、謎掛け魔物の棲む洞窟に合わせて変異したスライム族。
興味津々の幼女が駆けよって撫でようとすると、スライムは甲高い声で問いかけてきました。

『綺麗にすればするほど、汚れるものってなーんだ?』

「えっとぉ……ん~と……わかったぁ!ぞうきん!」

ルェルルの答えを聞くと、謎を掛けけて来たスライムは頭の?をパチンと弾けさせ、目をぐるぐると回します。
しゃがみ込んだルェルルは倒れたスライムを撫で回しますが、うんともすんとも言いません。
その背後。幼女の真後ろから、別のスライムが新しい謎をかけてきます。

『どんなに走って逃げても、どこまでも付いて来るものなーんだ?』

「うーん……走っても、ずっと付いてくるからぁ……大人!」

天井を見上げたルェルルは奴隷商人に掴まってた時のことを思い出して、答えを述べました。
ですが、その答えはスライムの設定した謎の答えとは異なっていたようです。
目に凶悪な光を宿らせたスライムは、不正解~♪と叫ぶや、勢い良くルェルルに体当たり!
洞窟のスライムたちは謎を解かれると倒れ、間違えると襲いかかって来るようでした。

「わあ~っ!」

スライムは嬉々として幼女にのし掛かり、緑のべちゃべちゃ塗れにしようとしてきます。
330 : 忍法帖【Lv=3,xxxP】 [sage]:2012/04/21(土) 01:30:59.93 O
行くぞアルテマ。
331ローゼソ[sage]:2012/04/23(月) 01:05:22.34 0
洞窟内に入ると、変異種のスライムがなぞなぞを出してきます。

>『綺麗にすればするほど、汚れるものってなーんだ?』
>「えっとぉ……ん~と……わかったぁ!ぞうきん!」

ルェルルがなぞなぞに答えると、スライムは突然倒れました。

「なるほど、なぞなぞに答えると倒れるようになっているのか……」

間髪入れずに次の出題です。

>『どんなに走って逃げても、どこまでも付いて来るものなーんだ?』
>「うーん……走っても、ずっと付いてくるからぁ……大人!」

「それもそうだけど……」

案の定、スライムはルェルルに襲い掛かってきました!
一方、ローゼソはなぞなぞの答えを思い付きます。

>「わあ~っ!」

「ルゥを離せ! 答えは――”影”だ!」

スライムはやはり目を回して倒れ、ルェルルは解放されます。

「大丈夫だった? 間違えると襲われるみたいだ……」

こうして謎かけスライム地帯をなんとか抜け、第二ステージに突入します。
次に一行を待ち受けていたのは、トロッコでした。
トロッコには魔導銃のようなものがセットしてあります。

「乗れという事だな、出発進行~!」

一行が乗り込むと、トロッコは走り始めます。やがて、目の前に問題が現れました。
幻術の魔法か何かでしょうか。

―― 正しい方を撃て!
・カノン神殿  ・カノン寝殿
332 :ルェルル=ルュル ルルゥ ◆mMGaLMOXkw [sage]:2012/04/24(火) 23:55:40.36 0
【( ・∀・):y=-(・∀・)(・∀・) ・∵;; トロッコ問題の通路】

>>331
スライムに襲われたルェルルは、足首から首筋までが緑の粘液で覆われてしまいます。
餌の少ない洞窟に棲むスライムにとっては、またと無い御馳走の時間!
幼女の皮膚に取り付いたスライムは、古い角質部分を甘露さながらに啜り始めました。
全身の老廃物が瞬く間に分解され、吸いつかれるような感覚にルェルルは悶えます。

 >「ルゥを離せ! 答えは――”影”だ!」

囚われの幼女を見たローゼソは、すぐさま謎の答えを言い放ちました。
謎かけを解かれたスライムは目を回して倒れ、ルェルルもくすぐったさから解放されます。

 >「大丈夫だった? 間違えると襲われるみたいだ……」

ローゼソはルェルルの手を取って助け起こします。

「こんなの、ぜんぜんへーきだよぁ!」

立ち上がったルェルルが、洞窟の中を元気に駆け出しました。
冷え冷えと張り詰めた洞窟の中を。
穴あき袋を被っただけの格好で。
様子を窺っていたスライムたちは、幼女に踏み潰されないようにサッと岩陰に隠れます。
洞窟を進んだ先には、長い通路とトロッコが待ち受けていました。

「床が冷たいから、乗り物だと楽ちんだね……くちゅっ」

ルェルルがトロッコに乗り込むと、ローゼソはトロッコでの出発進行を号令しました。
すぐさま出発したトロッコは加速に加速を重ね、その速さは空を舞う燕のよう。
あっという間にスライム地帯を彼方へ遠ざけ、燐光煌めく洞窟の奥へ億へと進みます。
やがて、トロッコの進行方向には新たな謎かけが出現しました。

 “正しい方を撃て!” “カノン神殿” “カノン寝殿”

蜃気楼のように、三つの幻の文字が空中に綴られたのです。
……が、例に拠って文盲のルェルルには読めません。
好奇心旺盛な幼女は、読めない文字よりもトロッコに備え付けられていた銃に関心を示しました。
引き金に軽く指を掛けるだけで青い光線が走り、両側の壁面が青色に照り映えます。

「ピカピカしてる。とってもきれいだねぇ!」

銃の危険性を知らない幼女は魔導銃から光線を発したまま、トロッコの同乗者に語り掛けました。
当然のように銃身はぶれ、銃口が在らぬ方向へ向きます。
もしも、魔導銃の光線が生物に当たった場合、その影響は当たった者が身を持って示すことになるでしょう。


【秒数判定:00~24=カノン神殿と書かれた文字を撃つ】
【秒数判定:25~50=カノン寝殿と書かれた文字を撃つ】
【秒数判定:51~75=ローゼソを撃つ】
【秒数判定:76~99=ホイミソを撃つ】
333 :ルェルル=ルュル ルルゥ ◆mMGaLMOXkw [sage]:2012/04/25(水) 04:49:07.69 0
【( ・∀・) 宿屋・カノン寝殿】

ルェルルの撃った光線はカノン寝殿と書かれた文字に当たり、粉々に撃ち砕いてしまいます。
そして、光線での回答がなされたことで、トロッコの行き先も決まりました。
カノン寝殿……罠として洞窟の中に造られた寝所に。
線路の上を進み続けたトロッコは、やがて岩窟をくり抜いて造った宿屋の前で止まります。

「あっ!ナイフとフォークの看板があるよぉ! きっとご飯屋さぁん!」

ルェルルは食器が描かれた看板を目聡く見つけ、さっと建物の扉を開けました。
室内で出迎えたのは、赤々と燃える暖炉とシチューの匂いと、黒髪ストレートの宿屋の主人。
彼は怜悧な容貌のまま、ルェルルたちに向かって歓迎の言葉を述べます。

『やあ、こんな場所までようこそ。 
 さあさあ、そんな寒い所に佇んでないで上がるといい。
 ここは、巡礼者のために用意された宿屋だからね。
 まあ、最近は魔物が棲み付いたなんて風評被害で、めっきり巡礼者や旅人も減ってしまったのだが。
 お金が無ければ、足りない分は体で払えばいいから、好きなだけ寛いで行きなさい』

「うん! みんな、いっぱい歩いて疲れてるからぁ、ちょっとだけ休もっ。
 わたしも、お腹がぐーぐー鳴ってるもん」

ルェルルは旅仲間の腕と触手を取り、宿屋の中まで引っ張り込もうとします。

『そうだ、食い逃げされても困るから、捺印をお願いしよう。
 朱肉に指を付けてから、この紙の、この部分を押すだけで良いよ』

「こーかなぁ?」

宿の主人が出したのは“既定の代金を支払えぬ者、対価としてその肉体を質とするもの也”と書かれた紙。
この契約は、恐るべき速さで行われました。
シチューに目の眩んだルェルルは、誰かが止める間もなく、ポンと指で捺印してしまったのです。
これみよがしにテーブルへ置かれた料理と、それらが発する極楽的な香りに釣られて。

「いただきまぁす!」

ルェルルはテーブルに着くや、フォークを動かしてシチューを食べ始めました。
334 : 忍法帖【Lv=2,xxxP】 [sage]:2012/04/26(木) 08:39:21.49 O
魔法少女リリカル☆マギカが仲間入りしたよ。
335ローゼソ[sage]:2012/04/28(土) 01:22:12.81 0
「へへっ、簡単だね、応えは……」

ローゼソはドヤ顔で銃を手に取ろうとしますが、先にルェルルに取られていました。

>「ピカピカしてる。とってもきれいだねぇ!」

「わー!! そっちじゃない!!」

叫びも空しく、光線は見事に不正解の方を打ち砕きます。

「あっ!ナイフとフォークの看板があるよぉ! きっとご飯屋さぁん!」

「あっちゃー……」

頭を抱えるローゼソ。
例によって、何人たりともルェルルの食い意地を止める事はできないのです。
黒髪ストレートの宿屋の主人が彼らを出迎えます。

「体で払うって……物騒な事をサラッと言うな!」

>『そうだ、食い逃げされても困るから、捺印をお願いしよう。
 朱肉に指を付けてから、この紙の、この部分を押すだけで良いよ』

>「こーかなぁ?」

「アッー!」

時すでに遅し。ルェルルは悪魔の契約をしてしまいました。

>「いただきまぁす!」

「ルゥ、食べたら駄目!」

がしかし、料理の魔力がついにローゼソまでも捕えます。

「でもすごく美味しそうだね、ちょっとだけ……」

一口食べたらもう止まりません。
もう一口だけ、もう一口だけ……料理がどんどん平らげられていきます。

「1000000Gになるね」
「そんなに払えないよ!」

それを聞いた宿屋の主人は、悪魔の本性をむき出しにして言い放ちます。

「仕方がない、体で返して貰おうか」

そして――
ウェイトレスのコスチュームを着たルェルルとローゼソを見ながら、宿屋の主人は言います。

「なかなか似合うじゃないか。飲食代を稼ぐまできっちり働いてもらうよ」

こうして、宿屋バイト生活が始まってしまったのでした。
336 :ホイミソ[sage]:2012/04/28(土) 15:36:15.38 0
>「こーかなぁ?」

黒髪ストレートのクールビューティーな宿の主人に
なにか底知れぬ恐ろしいものを感じたホイミソは、
止める間もなく捺印するルェルルを見て震え上がりました。
「ぼ、ぼくは馬小屋0Gにしますっ」

>「でもすごく美味しそうだね、ちょっとだけ……」

時既に遅し。二人は宿屋でバイト生活と相成りました。

ところで、ホイミソは二人が探している「大先輩」もとい「大悪魔」の姿を知りません。
もしこの主人こそが大悪魔、かつ、洞窟に棲み付いた魔物だとしたら――

“君達の冒険は終わった。キャラシーを破り捨て、最初のページに戻ってやり直すか、本を閉じよ”

傍目からはそんな文章が目に浮かびます。
が、知らないものは仕方ありません。
ホイミソも宿屋の脇の馬小屋に泊まりながら二人の手伝いをするのでした。
337名無しになりきれ[sage]:2012/04/28(土) 16:28:04.69 0
さて、宿屋には先輩バイトがいました。
銀の短髪の、ちょっと影のある美形。
中性的な体をルェルル達と同じウェイトレスのコスチュームに包んでいます。
名前も含めて自分についての記憶を全て失っているそうで、
宿屋の主人は彼女のことを「魔法少女リリカル☆マギカ」略してマリカと呼んでいました。

ルェルルとローゼソは、マリカに仕事を教わりながら働いています。
マリカはとても優秀ですが無表情で必要最低限の事しか口を開きません。
宿屋の主人はそんなマリカをずいぶんかわいがっているようでした。
338 :ルェルル=ルュル ルルゥ ◆mMGaLMOXkw [sage]:2012/04/29(日) 06:30:44.81 0
>>335-336
ルェルルがシチューを食べ終わると、宿の主人は羊皮紙の証文を高々と掲げます。
真新しい紙面には、端麗な筆致で料理の代金が記されていました。

 >「1000000Gになるね」

宿の主人が告げたシチューの値段は、金貨にして100万枚!
決して、貨幣価値の崩壊した独自通貨の単位ではありません。
この大陸の通貨で金貨100万枚です。

「1…2…3…4…5…6…まるが6個あるね」

この膨大な負債を見ても、ルェルルはうろたえません。
飲食代を稼ぐまできっちり働いてもらうと言われても、実に涼しい顔でした。
幼女族は風にそよぐ葦のように生きるのです。流されるままに。
仕事着として用意されたのは、古式ゆかしいメード服で、黒のワンピースと白いエプロンドレス。
髪を抑える室内帽を被ったルェルルは、同じ格好のローゼソを見ると朗らかな声をあげます。

「あっ、ロゼそとおそろい!」

どうやら、シチューを食べたローゼソも宿屋の業務へ従事させられるようでした。
訪れた者の中では、ホイミソ1匹だけが賢明にもシチューを断わります。

 >「ぼ、ぼくは馬小屋0Gにしますっ」

『ああ、うちの馬小屋はゆっくりと寛ぐには、ちょうど良い。
 うっかり庶民がロイヤルスイートのふかふかベッドなんかで寝ると、あっという間に1週間が経ってしまうからね。
 他のウェイトレスたちは、使用人室の簡易寝台で休んでもらおうか。
 宿屋の業務説明は、マリカに聞くと良い』

宿屋の主人は銀髪のウェイトレスを紹介しながら、そう言うのでした。
339 :ルェルル=ルュル ルルゥ ◆mMGaLMOXkw [sage]:2012/04/29(日) 06:31:49.52 0
>>337
莫大な負債を返す為に、ルェルルたちは宿屋で働き始めます。
業務内容は様々でしたが、それは先輩の使用人であるマリカが逐次教えてくれました。

『重点的に掃除するのは、人の目に触れる一階と二階。
 お客様が来る前に終わらせてちょうだい』

「うん。おそうじ、おそうじ、おおそうじ~♪」

長い箒を引き摺るようにして、幼女が滑らかな石床を掃き始めます。
ルェルルは懸命に掃き、懸命に拭きましたが、拭き残しや掃き残しは至る所に筋となって残りました。
一通りの掃除が終わると、次は食堂に連れられ、簡素に配膳の説明を受けます。

『次は料理の配膳。たまにお尻を触ってくる人もいるけど、驚いてお皿を落したりしないで』

この宿を訪れる客は、いずれも名状し難い姿の者ばかり。
仮面の魔女。首無し天使。真っ黒な球体。笑い声を立てる袋。一見すると平たい星型の糸巻きに似てるもの。
明らかに人ならざる異形の者たちが、岩屋の宿でワインを片手に談笑しているのです。
従って営業時間中の店内は、混沌的な雰囲気で満ち満ちていました。
幸いにも常識のあやふやな幼女や、記憶を失っているマリカは異常を覚えないようでしたが。

「すこし、味見した方が良いよね」

マリカは混雑する店の中を縫うようにして注文を聞き回り、迅速に料理の皿やお酒の瓶を届けます。
ルェルルは味見と称して途中で料理を食べ始め、なかなかお客の元に注文の品を届けません。
こうして、宿屋の一日は過ぎて行くのでした。
340 : 忍法帖【Lv=5,xxxP】 [sage]:2012/04/30(月) 04:20:27.38 O
それゆけ!宇宙戦艦ヤマト・ヤマモト・ヨーコ復活篇とモーレツ遊戯王ゼアルと機動戦士OOガンダムAGEも仲間入りするよ。
341ローゼソ[sage]:2012/05/02(水) 00:11:10.41 0
>「あっ、ロゼそとおそろい!」

「そんな事言ってる場合かー!?」

多額の負債にも、ルェルルは動じる様子はありません。
その強靭な精神力(?)にある種の畏敬の念を覚えるローゼソでした。

>『ああ、うちの馬小屋はゆっくりと寛ぐには、ちょうど良い。
 うっかり庶民がロイヤルスイートのふかふかベッドなんかで寝ると、あっという間に1週間が経ってしまうからね。
 他のウェイトレスたちは、使用人室の簡易寝台で休んでもらおうか。
 宿屋の業務説明は、マリカに聞くと良い』

マリカ、と呼ばれたウェイトレスを見て、ローゼソは不思議な感覚を覚えます。

「あの、どこかでお会いしませんでしたか……?」

『さあ、初対面だと思うわ』

こうして、宿屋バイトが始まります。

>「うん。おそうじ、おそうじ、おおそうじ~♪」

「残ってる残ってる」

ルェルルの掃き残しや拭き残しを潰して回ります。

>『次は料理の配膳。たまにお尻を触ってくる人もいるけど、驚いてお皿を落したりしないで』

「”人”ってカテゴリーじゃないクリーチャーがたくさんいるぞ!」

>「すこし、味見した方が良いよね」

「味見せんでいいから!」

ルェルルがなかなか運ばない料理を運んでいきます。
このままでは100万Gの負債を返すのに100万年ぐらいかかってしまいそうです。

心配になったローゼソはホイミソに相談します。

「これってもしかして積んでる?
“君達の冒険は終わった。キャラシーを破り捨て、最初のページに戻ってやり直すか、本を閉じよ”
ってやつなのかなあ……」

そんなある日、イベントが発生します。幸いまだ積んでいなかったようです。
人外だらけのこの店には珍しく、人間(?)のお客がやってきました。

「いらっしゃいませ~、あれ、人間の方とは珍しい……シジルちゃん!? シジルちゃんじゃないかあ!
どうしたの? こんな所に」

それは、あの魔法学校で出会った意味深な少女、シジルでした。
彼女が状況を打開する鍵となるでしょうか。
342 : 忍法帖【Lv=9,xxxP】 [sage]:2012/05/02(水) 19:27:03.29 O
幸福の科学教団の星ハッピーサイエンス大聖堂が有るよ。
343 :ルェルル=ルュル ルルゥ ◆mMGaLMOXkw [sage]:2012/05/04(金) 15:58:40.32 0
女給としての仕事が終わると、待ちに待った賃金の時間です。
使用人たちを集めた宿屋の主人は、ルェルルの小さな手にも8枚の硬貨を握らせました。

『本来はもう少し多いんだが、借金があるから手渡せるのは銅貨8枚だ』

「いっぱぁい! これなら色んなものを買えるねー。
 ここって、お菓子とか売ってるのかなぁ?」

顔に喜色を浮かべたルェルルが、エプロンドレスのポケットにお金を仕舞い込みます。
そして、俸給からの返済で借金が桁を一つ減らしました。
魔術的な仕掛けが施されているのか、使用人室に飾られた証文が負債欄の数字を変化させています。
1000000Gから999999.93Gに。

「9ばっかりになってる。明日は8ばっかり?」

時刻は満天の星が夜空を彩る頃。
眠気で頭がふわふわするルェルルは、そのまま簡易寝台で眠りに着いてしまいました。
夢魔は速やかに夜の世界に浸透して、宿屋の中を眠りの吐息で満たします。
寝台に横たわる幼女も、現実の混沌から退却して、夜の混沌の中に墜ちました。

夢の中へと。
344 :ルェルル=ルュル ルルゥ ◆mMGaLMOXkw [sage 転載はご遠慮してね]:2012/05/04(金) 16:05:57.01 0
【( ・д・) 悪夢】

その夜、ルェルルは恐ろしい夢を見ました。
黒髪の悪魔に手を掛けられ、ローゼソもホイミソも殺されてしまう夢を。
一人逃れた自分も再び奴隷商人に掴まって、元の境遇へ転落してしまうのです。
これからの運命を暗示するかのような、重苦しい夢でした。

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閲覧を注意すべき惨死の妖夢に、一葉の栞が挟まれます。
パッチリと瞼を開いたルェルルが、緑の瞳に漆黒の闇を映し出しました。

「あまりの額面に普通の返済方法を諦めて、まだ三回残ってる奇跡で借金を完済されても不味い。
 神殿に入らずして聖典へ干渉できる、便利な手駒を失ってしまうからね。
 となると、ここは適当なお使いイベントで聖地に送り出すのが最善だろう
 少なくとも、私に宿屋生活を引き延ばす意味は無い。
 第一、ここは新居としても手狭に過ぎる」

ルェルルは、マリカの頭を撫でながら静かに呟きます。
まるで、昼間とは別人のような物言いで。

「お使いとは無関係に借金の即時完済を果たす可能性も考慮して、使える内に使い倒しておくか。
 何が起こるのか、予測がつかないのが、この世界だからね」

パチンと指を鳴らすや、ルェルルが室内から消えます。
煙のように姿を掻き消して!
この不可思議な転移は、ルェルルの預かり知る所ではありません。
幼女の肉体を好きなようにしているのは、債権者である宿屋の主人。
肉体を質とするとの契約書に捺印を押したことで、ルェルルの肉体行使権が債権者に握られたのです。
たとえ神の使徒であろうと、借金には勝てません。

――――。

大廈高楼の立ち並ぶ帝国の京師。
煌びやかな服を纏った人々が集まる広間に、一筋の煙が湧き立ち、その中から妖女が現れました。
妖女は明け方まで何事かを行うと、現れた時と同じように忽然と消え去ります。

――――。

夜が明けると、宿屋の簡易寝台には何事も無かったようにルェルルが眠っていました。
いつもの、ちょっぴり食いしん坊で頭のふわふわした幼女です。
345 :ルェルル=ルュル ルルゥ ◆mMGaLMOXkw [sage]:2012/05/04(金) 16:09:20.78 0
>>341
ルェルルが辺境の宿屋でウェイトレスとして働き続け、一週間が過ぎます。
一日の給金として貰えるのは銅貨数枚ですが、パブにおけるウェイトレスの主な収入源は客のおひねり。
テーブルごとに担当のウェイトレスは決まっており、それぞれが担当テーブルのお客からチップをもらいます。
ですが、幼女担当のテーブルからはチップを弾む声は無く、決まってこんな台詞が聞こえてきました。

『また、あのウェイトレスが料理を喰ってるぞ』

この日、ルェルルがつまみ食いしているのは華やかな菓子類です。
アーモンドや胡桃をたっぷり塗して蜂蜜を掛けたケーキ。
小麦粉の皮でナッツや干し葡萄を包んで揚げた菓子。
その他、金貨数十枚にもなるような最上の菓子の数々にも一口分の歯形がつきます。、
そして、労働に勤しむウェイトレスたちはホグワーシで出会った少女を迎えました。

 >「いらっしゃいませ~、あれ、人間の方とは珍しい……シジルちゃん!? シジルちゃんじゃないかあ!
 >>どうしたの? こんな所に」

ローゼソが円卓の一つにシジルを座らせると、シジりゅー?と口にしながら、ルェルルも寄って来ます。
混沌的な宿屋の中で、このテーブルだけが別世界のようになりました。
シジルは、さっそくローゼソの問いに答えます。

『貴女たちが謎掛け魔物の洞窟に行くって聞いて、心配だから様子を見に来たの。
 こんな所に宿屋が在って、しかも働いてるなんて思わなかったけど……』

「なぞなぞの魔物ぉ? それ、なぁに?」

『えっ、そう聞いたんだけど違ったのかしら……。
 ねえ、何があったのか、お話できる?』

「うーんとぉ、シチューのお金を払うのっ。
 おそうじとか、ご飯を運ぶといーんだって」

事の経緯を語ろうにも、まったく言葉が足りていません。
ですので、酒場の主人がルェルルの言葉に捕捉を加えました。

『ああ……彼女たちはちょっとした借金をして、うちで働いている所だよ。
 それでだね、全額返済のために、割の良い仕事を頼もうと思ってた所だ。
 なぁに、誰にでも出来る簡単なお使いイベントさ。
 聖地の神殿に行って、聖典の誤字を見つけて持って来るってだけのね。
 あれを材料にすれば、さぞかし混沌とした料理が出来上がるだろう。
 特別報酬として誤字や誤変換一文字の発見につき、5万Gを支払うがどうかね?
 もちろん、このまま女給として働いても良いし、代理母等の報酬の良い仕事を用意することも可能だよ』

宿屋の主人の口から、そこはかとなく真実を織り交ぜた嘘八百が並べ立てられます。
水を向けられたルェルルは、お使いは自分の得意科目と自負するところ。

「わたし、お使い、一人でできるもん」

すっかりやる気になった顔のルェルルは、宿屋を出ると洞窟の奥へ進んで行きました。
幼女の無思慮は、心配になって訪れたシジルに、さらなる心配を重ねさせます。
346 :名無しになりきれ[sage]:2012/05/04(金) 23:12:11.17 0
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347 : 忍法帖【Lv=3,xxxP】 [sage]:2012/05/07(月) 15:54:31.71 O
素晴らしい出会いが有るよ。
348 :ローゼソ[sage]:2012/05/07(月) 23:28:49.10 0
ローゼソの夢の中。
マリカと同じ顔をした人物が現れて仰々しく格好つけて何事か言おうとしますが……
そこで何かの妨害電波を受け、目を覚ましてがばっと起き上がってしまいました。

「SUGEEEEEE!! 可愛い!! しかもなんかスライドになってる!!
速攻保存しますた!!」

やたら興奮しながら叫んでいるローゼソ。頭にはどこからか忍びこんだメタるスライムが乗っています。
メタるスライムが頭からぴょんっと飛び降り、我に返りました。

「……? ボクは何を言っていたんだ? 早く寝よう」

あんな大声を出せば隣で寝ているはずの幼女が起きてしまうはずですが、この時隣はもぬけの殻。
しかしそれに気付かず、普通に寝てしまいました。


さて、シジルとの会話の続きです。
要領を得ないルェルルに代わって、酒場の主人がある事ない事流暢に説明してくれました。
代理母とか、やたら物騒な単語が混ざっているのはいつもの事です。

>「わたし、お使い、一人でできるもん」

お使いという名目を得て、神殿への旅が再開します。
ルェルルは一人でできる気満々ですが、一人で行かせた日には途中で目的を忘れるのが目に見えています。
仲間が1人と1匹に加えてゲストキャラクター1人加入で4人で出発とあいなりました。

「シジルちゃん、学校放っといて大丈夫なの?」

「ええ大丈夫よ、私の事は心配しないで」

不思議に思うローゼソでしたが、同行してくれるのは助かるので、あえてそれ以上突っ込む事はありませんでした。
349 :ローゼソ[sage]:2012/05/07(月) 23:31:20.54 0
一行が洞窟の奥へ進んでいくと、ついに件の謎かけ魔物のエリアへやってきました。
何の攻略方法も手に入れないまま来てしまいましたが大丈夫でしょうか。
いえ、あれだけ尺を取ったホグワーシ編。何かヒントが隠されているはずです。
特に、あの謎掛け授業が怪しい。ローゼソは無い頭を捻って考えていますが、いい考えは浮かびません。
その時、ローゼソの頭にメタるスライムが乗ったのでした。突然メタな考えを口走ります。

「そうか! 絶対回避《ネタフリニキヅカナイ》は自分のネタ振りは回避できない。
という事は人のネタ振りは回避できるんだ!」

メタるスライムが頭から離れると、ローゼソは先程の発言をきれいさっぱり忘れ、やはり頭を悩ませています。
対処方法が見つからないまま、謎かけ魔物のところに到着してしまいます。
謎かけ魔物は、ロマンスグレーのおじさんの顔をしたミノタウロスでした。
魔物は、ご丁寧に自己紹介をはじめます。

『私は謎掛け魔物のミノモンタウロスという者だ。極限の闘技場なぞなぞミリオネアへようこそ。
先日も胡坐なんとかという聖騎士が無謀にも私に挑戦し破れた……。さあ来い、新たな挑戦者よ!

――おりはおりでも、冷たいおりとはどんなおり?』

まさかの過去問的中です。が、誰も答えを覚えていそうにないので、あまり意味がありません。
尚、答えが正解であっても不正解であっても ファイナルアンサー? と問いかけてプレッシャーをかけてくる事でしょう。
謎かけ魔物は精神戦も得意なのです。
350 : 忍法帖【Lv=3,xxxP】 [sage]:2012/05/08(火) 06:07:41.72 O
デジモンを仲間にするよ。
351 :ルェルル=ルュル ルルゥ ◆mMGaLMOXkw [sage]:2012/05/10(木) 06:38:45.18 0
【( ・∀・) 聖地】

ルェルルはお使いの務めを果たすべく、洞窟を突き進みました。
なだらかな坂道を登り、時には単調な一本道で迷い、時には岩の丸椅子に座って。

「あっ、出口があるよぉ!」

やがて一際広い空間に辿り着くと、ルェルルは行く手にぽっかりと開く穴を指差します。
洞窟に新鮮な風を吹き込む楕円形の黒は、長い洞窟の端に違いありません。
出口を見つけたルェルルは、他のものには目もくれず、一目散に走り始めました。

「もう夜になってるね」

久しぶりに見る外の世界は夜でした。
昼の王である太陽は眠りに落ち、代わって空を彩るのは、無数の星々を従える白銀の女王。
彼女に睥睨された大地は、月灯りの下で全貌を明らかとします。
この土地は峻険な山脈に囲まれた盆地で、広さは村一つ分程度。
夏の暑さもなく、冬の寒さもなく、これと言った名所も無く、中央に古びた建造物が建立されてるだけ。
もちろん、ぽつんと建っている建物こそが、人工聖典の納められたTRPG神殿です。

「お使いして、早く帰ろぉ。
 晩ご飯が無くなったら、大変だもんね」

幼女は月灯りを頼りに、白銀の夜を歩き続けました。
一つだけの建物が目印となったので、幼女が迷うこともありません。
ほどなくして、TRPG神殿の前に立ったルェルルは扉を開けようとします
押して押して押して、それでも開かないと見るや、今度は引いて引いて引いて。
ごめんくださいぁい。お使いに来たから開けてーっと言いながら、ドンドンと扉も叩きます。
ですが、大きくて頑丈な鉄の扉は、ルェルルが何をしても微動だにしません。

「閉まってて開かないね。夜だからお休みなのかなぁ?」

名も知られぬ整頓の神の話(>>102)に拠れば、この扉を開くには四つの鍵が必要です。
幼女がどんなに頑張った所で、神秘的な封印の施された扉は開くはずもありません。
352 : 忍法帖【Lv=6,xxxP】 [sage]:2012/05/10(木) 07:38:04.86 O
TRPG寺院にも行ったよ。
353 :ローゼソ[sage]:2012/05/13(日) 02:37:20.57 0
「かき氷ッ!!」

自信満々で答えるローゼソ。過去問の問答を聞いていなかったようです。

「ファイナルアンサー?」
「ファイナルアンサー!」
「不正解!」

ミノモンタウロスが斧を振り上げ、襲い掛かってきます。
鉄壁防御も今回ばかりは通用しません。なぞなぞに答えられなかった者は必ず殺されるのです。
ローゼソは固く目を瞑りました。しかしいつまでたっても衝撃はきません。
代わりに聞こえてきたものは――幼女の朗らかな声でした。

>「あっ、出口があるよぉ!」

目を開けると、いつの間にか洞窟の出口に来ていました。
これこそが、絶対回避《ネタフリニキヅカナイ》の真骨頂。
他人から降られたネタを全て無かったことにしてしまうという禁断の神の御業。
ただし、ローゼソはもちろんルェルル自身もこの能力の発動の仕組みについては知る由もありません。

「あ、あれ? 謎かけ魔物は……? 何!? そんな物には会ってないだって!?」

ローゼソは不思議に思いながらも、ルェルルの後を追いかけます。

>「もう夜になってるね」

シジルが星空を見上げて言いました。

「綺麗ね……この空は、ずっと前から変わらない。
ねえ、世界を守ってね。弟がこの空をずっと見れるように」

「シジルさん……!?」

ローゼソは、まるで自分たちが神の使徒である事を知っているかのようなシジルの言葉に、只ならぬ雰囲気を感じ取ります。
しかし問い詰める間もなく、珍しく普段とは逆にルェルルが本来の目的に向かって一行をせかします。
354ローゼソ[sage]:2012/05/13(日) 02:37:47.26 0
>「お使いして、早く帰ろぉ。
 晩ご飯が無くなったら、大変だもんね」

一行は星空の下を歩き、TRPG神殿に到着しました。

>「閉まってて開かないね。夜だからお休みなのかなぁ?」

「ちょっと待てよ、入るには鍵が4ついるんじゃなかったっけ」

ここで、今まで手に入れた鍵を復習してみましょう。

・ベルマークの森でベルマークと交換してもらった鍵(古びた鍵)
・ノアルスイユ伯爵が持っていた鍵(赤色の水晶を削って作ったような美しい鍵)
・賭博集団ツキの女神の首領が持っていた鍵

ナレーターの人がボケていなければ、持っている鍵はまだ3つです。
これは困ったことになりました。

「悪魔め、鍵も持たせずにお使いに出すなんてあんまりだ!」

そんな時、シジルが、優しく寂しげな微笑みを浮かべて一行に語りかけます。

「鍵なら……ここに。
私が一緒に来れるのはここまで。短い間だったけど楽しかったよ」

「え……!?」

シジルから光の帯がほどけるように解け出てきます。よく見ると、それは光の文字列でした。
魔法学校で少女が消えて行った時の様に、シジルが情報の欠片となって消えていきます。

「あなた達に4つ目の鍵を渡すのが私の役目だったの。
ごめんなさい、私も所詮はカノンの手先……。でも、信じてるから……この世界をどうか……」

「ちょっと待って! 何を知っているの!? 消えたら駄目だ――!」

ローゼソが伸ばした手は虚空を掻き、代わりに金属音をたてて鍵が地面におちます。
神殿の扉を開く、4つ目の鍵です――!
355 : 忍法帖【Lv=5,xxxP】 [sage]:2012/05/16(水) 07:43:43.45 O
国際TRPG協会も有るよ。
356 :ルェルル=ルュル ルルゥ ◆mMGaLMOXkw [sage]:2012/05/16(水) 21:54:00.18 0
【( ・∀・) TRPG神殿】

>>354
お使いとして聖典の誤字を探しに来たルェルルは、神殿の前で扉を開けられずに立ち往生。
このまま夜を明かすしかないかと思われた時、シジルが話を切り出します。
彼女の口から飛び出した言葉は、幼女には予想も付かないものでした。

 >「あなた達に4つ目の鍵を渡すのが私の役目だったの。
 >ごめんなさい、私も所詮はカノンの手先……。でも、信じてるから……この世界をどうか……」

お別れの言葉を残して、シジルが消えていきます。
もちろん、幼女の想像力では事態の把握は一切不可能。
何が何やら分からない幼女は、夜空に散逸する文字を眺めて怪訝な顔をしていました。

「シジりゅ、どうして光ってるの?」

ルェルルは問いかけますが、シジルからの応えはありません。
伸ばした腕の先は、まるで夢の手触り。
後に残ったのは床に落ちた鍵。音符の形をした黒い鍵だけです。

「あっ、かぁぎぃ!」

ルェルルは石段に落ちた鍵をサッと拾うと、得意げに高々と掲げました。
ついに"さいごのかぎ"を手に入れたのです。
そして、長かった鍵集めが終わると、すぐに消えたばかりのシジルの行方を追います。
神殿の周囲に造られた柱廊の柱や、近くの木に視線を飛ばし、実際にそこまで走って裏側を探してみます。

「ロゼそ、シジりゅは、どこいったの? かくれんぼ?」

しばらく探してもシジルを見つけられなかった幼女は、小首をも傾げながらローゼソに問いかけました。
しかし、ルェルルの得意技は聞き流し。
ローゼソの応えを全て聞かないまま、すぐに幼女は自分の思い付きを口にします。

「こっそり、中に入ったのかなあ……あっ!カギがあるから開けられる!」

シジルの残した鍵が神殿の扉に刺し込まれました。他の鍵も三つ仲良く。
ルェルルがそれらを回すと、カチリ、カチャン、ガチャン、ガコンと四つの音が響きました。
死を模したかのような夜の静寂の中で。

「おじゃましまぁす。お使いに来たよぉ」

ルェルルが扉を開けて神殿に入り込むと、天井に備え付けられていた幾つもの発光石が周囲を照らします。
空色の天蓋には太陽と月と星。壁の装飾には無数の人と獣が描かれていました。
神殿は荘厳な雰囲気を備えていましたが、空気に人の熱は感じられません。
幼女がシジルの名を何度呼んでも、その声は無音の中に吸い込まれます。

「…………だれもいないね」

ルェルルは真紅の絨毯の上を歩きました。
鮮やかな絨毯は時の経過を感じさせず、たった今敷かれたかのよう。
床一面に広がる絨毯の中央には黄金の祭壇が設置してあり、その上には一冊の書物が置かれています。
表面に光沢を輝かせ、美しい宝玉を嵌入され、非時間の中で未完の物語を綴り続ける稀書の中の稀書。
無限の叡智と詩情を収め、溢れんばかりの物語を封じた書物の王が。
聖典《カノン》は、微動だにしない時間の中に鎮座しています。
我を讃えよ、との気配を世界に拡散させながら。

「お使いでもってくるのはぁ……えっとぉ……ごみを拾ってくる!」

お使いに来たことを思い出した幼女は、唐突に床を這い回り始めます。
残念ながら、お使いの内容までは正確には思い出せませんでした。
357 :ローゼソ[sage]:2012/05/18(金) 01:58:51.86 0
魔法学校でミリが消えたのを見ていないルェルルは、何が起こったのか認識できませんでした。
ルェルルは無邪気な笑顔で鍵を拾い、かくれんぼの鬼のようにシジルの姿を探します。

>「ロゼそ、シジりゅは、どこいったの? かくれんぼ?」

「ルゥ、シジルはね……」

>「こっそり、中に入ったのかなあ……あっ!カギがあるから開けられる!」

>「おじゃましまぁす。お使いに来たよぉ」

荘厳なる神殿の扉を、ルェルルは事もなげに開けて入っていきます。
さすが幼女、どんな時でも自然体。そこに痺れる憧れる。
そして、ルェルルのシジルを呼ぶ声が虚しく木霊します。

>「…………だれもいないね」

誰もいない、というのは不適切かもしれません。
そこには、絶対不可侵の《神》がおわしました。
果たして、聖典《カノン》は、無造作に祭壇の上に置かれているのでした。

>「お使いでもってくるのはぁ……えっとぉ……ごみを拾ってくる!」

「違うでしょ! この本の誤字を探さなきゃ! ……あれ?」

ローゼソは気付いてしまいました。確かに表面上の目的はそうですが、本当の目的は違ったはずです。
>>102によると、整頓の神の使徒である彼らの使命は、カノンの力を手に入れ大悪魔を退け邪神カオスを封印する事です。
いつも当初の目的を忘れるルェルルですが、いつの間にかローゼソも当初の目的を忘れていたのでした。
なぜならきっと、ルェルルとの旅が楽しくて、楽しくて。

聖典《カノン》を目の前にして最終目標が一気に現実的なものとなり、ローゼソは葛藤します。
このまま使命を果たしていいのか、と。
道中ではどう見ても悪役のカノンの使徒に苦しめられ、あまりに呆気ないミリの死を目撃し、そしてシジルは意味深な言葉を残しています。
迷いながらも恐る恐る、聖典に手を伸ばすローゼソ。
触れた瞬間――忽然と姿を消します。いえ、正確には消えたのではありません。聖典の中に吸い込まれてしまったのです。
ルェルルとホイミソも一緒に吸い込まれたかもしれません。

【( ・∀・)聖典《カノン》の中の異空間】
ローゼソが気付くと、周囲に光の文字がびっしり浮かんでいる空間にいました。
何者かが語りかけてきます。

『我が名はカノン、全知全能にして無限の物語を統べる真の神――
よくぞここまで辿り着いた、整頓の神の使徒よ』

「カノン……!?」

ローゼソはその人物の姿を見極めようとしますが、姿は定まりません。
男性になったり、女性になったり、子どもになったり、老人になったり。
揺らめき、移ろい、無限の様相を見せます。

『長い年月の間に、完璧であるはずの我に誤字――僅かなバグが生まれた。
整頓の神の力をもって誤字を取り除いてほしい。
その暁には、我が力を授けよう――』

かなり胡散臭い気がしなくもありません。
358 : 忍法帖【Lv=9,xxxP】 [sage]:2012/05/20(日) 12:25:53.21 O
幸福の科学未来館も実在するよ。
359 :ルェルル=ルュル ルルゥ ◆mMGaLMOXkw [sage]:2012/05/22(火) 18:41:27.00 0
【( ・∀・) TRPG神殿】

ルェルルは床を這い回ってゴミ拾いを始めましたが、絨毯はつやつや、床もピカピカ。
神殿の中にはゴミどころか、塵一つ落ちていません。
やがて、何も収穫を得られなかったルェルルが顔を上げると、ローゼソの姿は忽然と消えていました。
シジルに続いて二人目の失踪者です。

「ロゼそも、いなくなっちゃった……」

ホイミソの姿も幼女の視界には映らず、広々とした神殿の中には幼女が一人だけ。
聖典に触れなかったルェルルだけが、ぽつんと取り残されてしまいます。

「ホミそもいないね……みんな、かくれんぼしてるのかなー?
 あっ、これって、わたしが鬼ーっ!」

ルェルルはローゼソが異空間に消えたなどとは思いもせず、消えた者たちを探します。
探して、探して、しかし誰も見つからず。
やがて、ルェルルは疲れから眠くなってしまいました。

「ふぁ……ぁぅ……今日は眠いからぁ……明日からがんばる……」

疲れて床に寝そべったルェルルは、ただちに眠りに落ちます。
そして、完全に眠りに落ちた瞬間、ぱっちりと瞼を開きました
幼女の意識の代わりに、大悪魔の意識が入り込んだのです。
立ち上がったルェルルの影も、悪魔的な造形に変わっていました。

「ふむ、連れはどことも知れぬ空間に行ってしまったか。
 それでは、私は外側の世界で校正作業を行うとしよう」

ルェルルの肉体を乗っ取った大悪魔は、パチンと指を鳴らすと虚空からハサミを取り出します。
そして、聖典の神言文字を解析して読み解き、誤った箇所を探し出して、ジョキジョキッと切り刻み始めました。
ハサミで切られた箇所を見れば、不思議なことにすぐさま復元!
誤った部分も、正確な文章に書き変わっています。
かくして、ローゼソが異空間に送られている内に、聖典の校正作業は開始されてしまいました。
力ある言葉を手に入れたい大悪魔と、誤字を取り除きたい聖典の思惑が一致して。

さて、この聖典を刻む存在を何と呼びましょう……ルェルル?大悪魔?
肉体はルェルルなのですが、その精神は大悪魔。
まるで、題名と内容の異なる書物のようでした。
名前に関しては難しい所ですが、とりあえず便宜的に大悪魔ルェルルと呼びます。
360 :大悪魔ルェルル ◆mMGaLMOXkw [sage]:2012/05/22(火) 18:44:37.26 0
【( ・∀・).。o○ 校正作業中】

◆ ◆ ◆

38・『こと』=脱字
42・『が』="を"が適切
52・『逢い見える』=相見えるの誤用
110・『の』"が"を使うのが適切
133・『ブレート』=プレート
135・『天上』=天井
163・『ローゼン』=ローゼソ
173・『逢い見える』=誤用
179・『ローゼン』=ローゼソ
153・『お腹』=脱字
159・『ら』=脱字
159・『い』=脱字
162・『鋼鉄の銅像』=誤用
173・『馬ルェルルも車』=ルェルルも馬車
215・『だ』="が"の誤り
260・『載せ』=乗せの誤変換
281・『ま』=脱字
332・『億へ』="奥へ"の誤変換

◆ ◆ ◆
361 :大悪魔ルェルル ◆mMGaLMOXkw [sage]:2012/05/22(火) 18:49:02.06 0
校正に勤しむ大悪魔ルェルルは、聖典(>14-357)に18箇所の誤りを見つけました。
大悪魔の知識を備えているので、聖典の解読にも支障はありません。
やがて切り離された紙片たちは、大悪魔ルェルルの手で接ぎ当てらると一枚の書面となります。

「ふむ、聖典と同源の力ならば、絶対不可侵の特性も破れることだろう。
 この紙片は、厨ニっぽく“混沌詩篇”とでも名付けておこうか」

大悪魔ルェルルは校正作業が終わると、瞬間移動の魔術を用いて洞窟の宿屋に帰還。
一瞬にして、ホールで掃除しているマリカの前に現れます。

「さて、マリカ。君は今の生活を続けていても良いと思っているのかね?
 記憶の無いまま、自分が誰かも分からないまま、宿屋の下働きとして一生を終えて。
 この宿屋も今日で閉店になるが、その後はどうするつもりかな?」

『……』

マリカは自分の過去や未来について考え込みますが、どちらも何も見えてきません。
自分のことだというのに、茫漠としていて、霧の中のようでした。
沈黙するマリカに大悪魔ルェルルは囁きかけます。

「今こそ、記憶を取り戻す時ではないかね?
 このままでは、玉座で勇者を待ち続けた日々よりも無為の時が流れてしまうぞ。
 そうだろう……名も知られぬ混沌の神」

『えっ、あ、頭が……私は……わたしの名前はマリカ……よ……』

本当の名前を呼ばれた瞬間、マリカの頭の中で切れていた記憶の糸が戻り始めました。
うずくまって頭を抑えるマリカに、自分のものではない記憶が入り込みます。
濁流のように混沌とした神の記憶が。

『私のニューロンがインフィニティスパークする……ぎゃぁぁぁぁ!』

頭からぷすぷすと煙を上げた女装ウェイトレスが、元の記憶を取り戻しました。
名も知られぬ混沌の神・カオスとしての記憶を。

『む、ここはどこだ……?
 はっ! 君はいつぞやのラッキーガールではないか!
 と言うか、このメイドの格好はいったいなんなんじゃああっ!』

復活した名も知られぬ混沌の神は、とても混乱していました。
その混乱につけ込んで、大悪魔ルェルルは有ること無いことを刷りこみます。

「かーくんが寝てる間にTRPG神殿に異世界の魔王が棲みついて、聖典を自分のものにしちゃったの。
 このままじゃ、大変なことになっちゃうよ。
 かーくんも聖典で管理された世界なんて、やだよね?
 だから、悪い魔王を退治して聖典もぶち壊しに行こっ!
 チートアイテムに対抗する切り札も、ちゃーんと用意しておいたよ。はいっ!」

混沌詩篇が、カオスの手に渡ります。
宿屋の入り口にも、ペタリと閉店のお知らせが張り付けられて、旅立ちの準備は万端でした。

「まだ誰か残ってなぁい……?
 ぼんやりしてたら、美味しいものは全部食べられちゃうよ」

万が一、まだホイミソが宿屋で眠ったままなら、大悪魔ルェルルは触手を引っ張って一緒に連れて行きます。
こうして、名も知られぬ混沌の神を連れた大悪魔ルェルルは、再びTRPG神殿に向かいました。
ローゼソが聖典の異空間から出る頃には、大悪魔ルェルルも神殿に辿り着くことでしょう。
まだウェイトレス姿をしているカオスと一緒に。
362 : 忍法帖【Lv=2,xxxP】 [sage]:2012/05/25(金) 02:16:09.48 O
素晴らしい目的ですよ。
363 :ローゼソ[sage]:2012/05/27(日) 03:24:30.88 0
ローゼソは周囲の文字を読もうとしますが、すぐに目がチカチカしてきます。

「いちいち直してられるかい! 多少の誤字ぐらい別にいいよ」

その間に、大悪魔ルェルルが外側から聖典の誤字の訂正を完遂してしまいました。

『よくぞやった! 整頓の神の使徒よ、約束通り我が力をそなたに授けよう!』

「いや、何もしてないけど? うわぁああああああああああああ!!」

時の始まりから終わりまで、宇宙の果てから果てまで――深淵なる哲学から相対性理論の数式まで――
ありとあらゆる情報がローゼソの頭に流れ込んできます。
その膨大な情報に比べたら、ローゼソの元々の記憶なんて雀の涙程もありません。
これは力を授かったというより、取り込まれた又は乗っ取られたと言った方が妥当でしょう。
ローゼソを寄り代とし、物質界で直接力を行使する肉体を得る事――最初からそれがカノンの目的だったのかもしれません。

カノンはその身から溢れだす膨大な魔力の波動に金髪をなびかせ、祭壇の前に佇んでいました。
この存在をローゼソ=カノンと命名しましょう。

ローゼソ=カノンは不敵な笑みを浮かべて言いました。

「馴染む……馴染むぞお! 永遠に歳をとらぬ少女の肉体……実にいい!
思えば我は悠久の時に渡り自らの肉体を持たぬGM稼業に勤しんできた……。
折角だから大暴れしてやるとしよう。
まずはカオス……世界を団結させる大ボス役としての威厳ブチ壊れのアイツは用済みだ。
自らが召喚した者に倒される気分はどうだろうなあ、ククク…ハハハハハハハハ!!」

そこに神殿の扉が開き、大悪魔ルェルルとカオスが入ってきます。
ローゼソ=カノンは両腕を広げて大立ち回りで彼らを迎えます。

「フハハハハ、よく来たな! 世界を混沌に陥れる悪魔どもよ!
唯一絶対の神にして世界の真理たる我が直々に成敗してやろう!」


代行依頼
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/15289/1328199912/33
364 :大悪魔ルェルル ◆mMGaLMOXkw [sage]:2012/05/28(月) 19:53:18.67 0
【( ・∀・) TRPG神殿】

大悪魔ルェルルがTRPG神殿に入ると、出迎えたのは聖典に意識を乗っ取られたローゼソでした。

 >「フハハハハ、よく来たな! 世界を混沌に陥れる悪魔どもよ!
 >唯一絶対の神にして世界の真理たる我が直々に成敗してやろう!」

ローゼソ=カノンが不敵な笑みで悪魔成敗を口にしますが、あまり威厳が感じられません。
ですが、ウェイトレス姿の混沌の神も、同じくらい威厳が無いのでお相子です。

『なんだと、何が唯一絶対の神だ! お前なんか、たかが数万年前に作られた人工知能じゃないか!
 こっちは一億年以上前から神やってんだよ! 後から来てでかい顔すんな! ばーかばーか!』

子供のように言い返しながら、カオスは大悪魔ルェルルを肩車します。
その大悪魔ルェルルは頭にホイミソを乗せて、ここに見事な三身合体が完成しました。

『今まで、さんざん勇者たちが使ってきた友情パワーを自分の身で受けるが良い……フォーメーション・ブレーメン!』

「うん、みんなで力を合わせてやっつけよーね」

混沌の神は、どこかから取り出した妖精のフルートを口に当てて吹き始めます。
大悪魔ルェルルは、指パッチンでリズムを取って音を添えました。
演奏の効果は誰にも分かりません。訳が分からないと言うことしか分かりません。
他の者たちを放ったらかしにした運命的な対峙は、何もかもがゴチャゴチャのままに進行して行きます。
全ては、混沌の神が発する力の仕業に相違ありません。
365 :ローゼソ=カノン[sage]:2012/05/29(火) 00:33:05.30 0
>『なんだと、何が唯一絶対の神だ! お前なんか、たかが数万年前に作られた人工知能じゃないか!
 こっちは一億年以上前から神やってんだよ! 後から来てでかい顔すんな! ばーかばーか!』

「ええい、1億年と2,3年前世代の老害が!
人は本質的には予定調和の箱庭の中の安寧を望むものなのだ、そう、我が作り出す美しき箱庭のな!」

まるで子どもの喧嘩です。しかし、神話TRPGとしては間違いではありません。
世界各地の神話を見てみると、神々の戦いはおしなべて全世界を巻き込む規模の子どもの喧嘩そのものなのです。

>『今まで、さんざん勇者たちが使ってきた友情パワーを自分の身で受けるが良い……フォーメーション・ブレーメン!』

>「うん、みんなで力を合わせてやっつけよーね」

「いくら力を合わせても無駄だ……。
絶対神《GM》としての力を持つ我は自らの手駒《NPC》を無限に作り出す事が出来るのだから!
出でよ、聖典の使徒達よ! その最強の力を持って我を全力でマンセーしつつあの者達を屠るのだ!」

ポポポポーンという間の抜けた効果音と共に、何故かバレー衣装(女性向け)を着た筋骨隆々の漢達の軍勢が出てきました。
混沌の神の力によるものか、それとも憑代の影響か。
憑代としているローゼソは、元々カオスによって召喚された異界の魔王。
だからこそカノンというとんでもない存在の器になれたとも言えるのですが――。
カノンは自分の力を過信して油断したのでしょうが、憑代は慎重に選ばないといけないものです。

「なんだ!? この無駄に汗臭い軍勢は……。まあいい、あの者達を片付けるのだ!」

しかし、筋骨隆々の漢達は、フルートの音色に合わせて華麗に踊り始めました。
指パッチンでリズムを取る大悪魔ルェルルを見て、ローゼソ=カノンは何事かを閃いたようです。

「アホの子がリズムを取っている……これこそまさにアフォリズム!」

実際には今のルェルルは大悪魔が乗っ取っているので、アホの子ではないのですが。
とにかく、これでは話が進みません。それもそのはず。
ルェルルとローゼソは、《絶対回避》と《鉄壁防御》というシナリオ崩壊級のチート能力を持っていますが
代わりに二人とも大して(全く?)攻撃力を持たないからこそ物語が成立してきました。
それが神や大悪魔の力と合わさってしまった今、まともに話が進行するはずはないのです。
ナレーターの人ですらこれからどうなるか皆目見当が付きません。

そうしている間に、筋骨隆々の集団がローゼソ=カノンを取り囲んで踊ります。
気付けばローゼソ=カノンもバレー衣装になっていました。
体に密着する服装になり、今まで見えなかったものが見えるようになりました。
お腹のあたりに、四角く浮き上がっている物が見えます。どうやら本のようです。
時間法則を超越し物理法則の外に存在するはずの聖典《カノン》は
服の中に入って体に密着するという意外とアナログな方法でローゼソの体を乗っ取っているのでした。
この聖典《カノン》を引きはがせば、ローゼソは元に戻ると思われます。
366 :大悪魔ルェルル ◆mMGaLMOXkw [sage]:2012/06/01(金) 23:48:13.73 0
ローゼソ=カノンは、バレエダンサーを召喚すると自分の周囲で踊らせます。
くるくるくるくると回る群舞は、完璧な調和を持っていました。

「やれやれ、間近に会ってみれば随分と簡単な唯一神様だ。
 人間は人間に理解できる玩具しか造れなかった……と言う所か。
 神を理解できないものが神を造ろうとした結果、こんなグロテスクなものが出来上がってしまったわけだな。
 まず、人の常識を使って神を解釈する事自体が誤読以外の何者でも無い。
 つまりは聖典も有象無象の神と同じく、人間の自意識を投影した自画像でしかないわけだ」

大悪魔ルェルルは軽く溜息を吐きます。
そして、四角く浮き上がったローゼソ=カノンのお腹を見ると、その溜息はより深いものに変わりました。

「ダメだ、全然ダメだな。GMというものは。
 あからさまに弱点を示すなんて負け犬根性が、染み付いてしまっている。
 どうなるかの想像が付かないように装いながら、混沌を恐れて負けフラグを立ててしまっている。
 しかしね、真の混沌は八百長とも無縁なのだよ……」

大悪魔ルェルルは、名も無き混沌の神の頭にぎゅっと抱きつくと、その耳元で囁きかけます。

「かーくんは混沌の神だよね?
 でも、ここで聖典を倒しちゃっていいの? それで本当の混沌になるの?
 機械神の管理を否定するなんて主題なら、もうたくさんの異世界でもやってるよね。
 そして、これからも同種の主題は色んな宇宙に拡散するよ。
 その全部が機械神の管理が破られる顛末で良いの? 全部同じ結末が本当の混沌って言えるの?
 大宇宙が混沌としているためには、機械神の完全管理が成立する小宇宙も存在した方がいいんじゃなぁい?」

『な、なんだと……そうも……そうかなあ?』

「それに聖典が無くならなかったら、聖典が消しちゃった人にも、ちゃーんとした人生を与えられるよ。
 謎掛けが尺を取ったからボツになった、音楽会でのラインとシジルの対決だって行えるの。
 それとも……かーくんは、聖典が創った人をただの夢や幻や情報って片付けちゃう?」

『う、うぅん。いや、しかし、それは……むむむ』

「聖典にかーくんの力を上げたら、聖典はもっと凄い聖典になるよぉ!」

頭を抱えた混沌の神は、完全に隙だらけの格好で混乱します。
そして、その苦悶する顔は大悪魔にとって最高の絵画にも匹敵するものでした。
大悪魔ルェルルは、細い指で混沌の神の首筋をつつーっと撫で回します。
薔薇の唇に浮かぶのは、幼女には似つかわしくない艶やかな笑みでした。

◆ ◆ ◆

361・『接ぎ当てらる』=接ぎ当てられる

◆ ◆ ◆

そして、大悪魔ルェルルも混沌の神も気付きませんが、また聖典に新たなる誤字が現れました。
ルェルルの借金は100万Gで、一箇所の誤字には5万の報酬が与えられる契約です。
誤字発見の報酬は、ローゼソが行っても変わりません。
これまでに発見された誤字は19箇所。
あと一つの誤字を見つけられれば、ルェルルたちは100万G分の労働をしたことになります。
すなわち、大悪魔の支配からも脱することが出来るでしょう。
367 : 忍法帖【Lv=9,xxxP】 [sage]:2012/06/04(月) 10:26:56.08 O
遊戯王をプレイするよ。
368 :ローゼソ=カノン[sage]:2012/06/04(月) 22:28:37.21 0
>「ダメだ、全然ダメだな。GMというものは。
 あからさまに弱点を示すなんて負け犬根性が、染み付いてしまっている。
 どうなるかの想像が付かないように装いながら、混沌を恐れて負けフラグを立ててしまっている。
 しかしね、真の混沌は八百長とも無縁なのだよ……」

「フフフ、分かっていないな……神《GM》たるもの、負けるが勝ちなのだ!
いかに時に勇者、時に異教の使徒《PL》達にカタルシスを与え美しくド派手に散るか、これぞ負けの美学!!
そうすれば我は何度でも甦り無数の伝説を紡ぐ事が出来るのだからな! ハーッハッハッハッハ!!
お前が手をかけずとも横の混沌の神が我の思うがままに動いてくれる!
そうだろ? カオス! お前は我を倒すためにここまでやってきたのだ――!」

カノンには、カオスへの絶対の信頼感がありました。
誰が何と言おうとPC1として問答無用でラスボスの自分を倒してくれるという絶対の信頼です。
しかし、大悪魔の言葉によってその信頼が揺らぐことになります。

>「かーくんは混沌の神だよね?
 でも、ここで聖典を倒しちゃっていいの? それで本当の混沌になるの?
 機械神の管理を否定するなんて主題なら、もうたくさんの異世界でもやってるよね。
 そして、これからも同種の主題は色んな宇宙に拡散するよ。
 その全部が機械神の管理が破られる顛末で良いの? 全部同じ結末が本当の混沌って言えるの?
 大宇宙が混沌としているためには、機械神の完全管理が成立する小宇宙も存在した方がいいんじゃなぁい?」

(中略)

>「聖典にかーくんの力を上げたら、聖典はもっと凄い聖典になるよぉ!」

カノンは、ここに来てヤバイと思い始めました。
遥か昔に作られて以来、ずっと全能の神《GM》として力を振るってきたカノンにとってはじめての事です。
長い年月の間に、唯一神《GM》の思惑を揺るがす程の力を持ったトリックスターが生まれてしまっていたのです。

「ええい、それもこれもきっと誤字が直りきっていないからだ! この整頓の神の無能使徒め!」

焦りに焦ったカノンは、ローゼソの手を使って服の中からカノン(つまり自分)を取り出し、誤字を探し始めました。
自らの中に誤字を見つけたカノンは、羽ペンを取り出して急いで訂正します。

接ぎ当てらる→接ぎ当てられる
369 :ローゼソ[sage]:2012/06/05(火) 22:33:50.43 0
しまった! とナレーターの人は思いました。
よく見ると接ぎあてらる、で19個目の誤字でした。このままではまだ話は進みません。
しかし心配ご無用、聖典にまた新たな誤字が現れます。

365・『最強の力を持って』→『最強の力を以て』

それにしても、誤字とは一見無いように見えてもその気になって探せば意外と見つかるものですね。
出版において、ほぼ出来上がった後に複数人で誤字訂正作業を行って、それでも時々誤字が残ってしまうのも頷けます。
やはり、人の力で完璧な神を作る事は不可能という事なのでしょう。
とにかく、ローゼソ=カノンは19個目に続けて20個目の誤字を直します。

持って→以て
370 : 忍法帖【Lv=10,xxxPT】 [sage]:2012/06/06(水) 06:21:27.41 O
ブルーアイズウルトラスーパーハイパーアルティメットインフィニティホワイトエターナルドラゴンをシンクロエクシーズ儀式融合召喚。
371 :ルェルル=ルュル ルルゥ ◆mMGaLMOXkw [sage]:2012/06/08(金) 22:02:58.63 0
神々と悪魔の思惑が錯綜してごちゃごちゃになっているので、複雑な四角関係に整理整頓が入ります。

 混沌の神・世界を混沌に陥れるために聖典を何とかする。
 整頓の神・ツヴェルフレギオンエンゲルに大悪魔を倒させて、混沌の神を封印する。
 大悪魔・混沌の神を愛でる。(困ってる姿や、苦痛に喘ぐ顔も見たい)
 聖典・ローゼソ=カノンを倒させて、新しい物語を作らせる。(聖典自体は破壊されない事が前提)

神々の熾烈な権謀術数からは、片想いの相関図が浮かび上がって来ました。
そして、ルェルルがすやすや寝ている間にも、神と悪魔の最終決戦は繰り広げられます。
人間たちとは次元の異なる恐ろしい戦術と戦略は、神殿に集まった三者の間を飛び交いました。

 >「ええい、それもこれもきっと誤字が直りきっていないからだ! この整頓の神の無能使徒め!」

神殿の空気は、思惑が外れ始めたローゼソ=カノンの怒気で震えます。
誤算が誤字に起因すると判断した聖典は、筆先を走らせて自ら聖典の誤字を取り除きました。
この瞬間、幼女の体から大悪魔の精神がぷっつりと切り離されます。
100万G分の仕事が成し遂げられたので、借金の形にされていたルェルルの体が自由を取り戻したのです。

「ふぁ……ぁん……」

長い眠りから目覚めた幼女は、あくびをしました。
寝ぼけ眼をしながら指の先で目を擦ると、目の前にはローゼソが立ってます。
ローゼソは周囲にバレエダンサーを従えていて、彼女自身も同じ格好をしていました。
ルェルルはと言うと、銀色の髪をした誰かに肩車をされていて、頭の上にはホイミソが乗っています。

「ロゼそ、なにしてるの……? Σあっ! お絵かき! 私もするー!」

状況の把握は出来ませんでしたが、幼女は深く考えません。
ただ、ローゼソが何か楽しそうなことをしているので、自分も同じことをしてみたくなったのです。
遊びたい盛りの幼女は、自分の手に一枚の紙があるのに気付きます。
混沌詩篇でした。

『よし、私の混沌力は大いなる混沌のために使うぞ! 聖典よ、お前に私の全てを託す! 受け取れ!』

何やら、名もなき混沌の神も進むべき道を決断したようです。
ぶわっと混沌的な霊気を纏った混沌の神は、ローゼソ=カノンに向かってタックルしました。
その衝撃で、ローゼソ=カノンの手から聖典が離れます。
さらに、混沌の力で聖典の神秘的な糊付けも剥がれます。
散らばった聖典のページの一枚一枚は、バラバラになって神殿中にばら撒かれました。
372 : 忍法帖【Lv=14,xxxPT】 [sage]:2012/06/09(土) 09:50:14.61 O
エターナルフォースブリザード改良型。
373 :ローゼソ=カノン[sage]:2012/06/10(日) 02:00:35.01 0
>「ロゼそ、なにしてるの……? Σあっ! お絵かき! 私もするー!」

「大悪魔は戦線離脱したようだな……それで良い」

大悪魔の離脱にほっとするカノンでしたが、時すでに遅し。
名も無き混沌の神はすでに大悪魔によって調教済みでした。

>『よし、私の混沌力は大いなる混沌のために使うぞ! 聖典よ、お前に私の全てを託す! 受け取れ!』

「うわなにするやめ……アッ――!!」
374 :ローゼソ[sage]:2012/06/10(日) 02:57:50.63 0
「うーん、あいたた……」

カノンが手から離れたローゼソは尻もちをついて元の人格に戻ります。ついでに服も元に戻ります。
PC同士の対決という一触触発の状況はようやく解除されました。
そういえば、PC同士の対立構造を作るのが好物なのが、トリックスターでしたね。
周囲には、紙が散らばっています。神が散らばっているとも言います。
ローゼソの目の前では、混沌の神がワクテカしながら事態の行く末を見守っています。

次に進む前に、この世界の歴史を復習しておきましょう。
遥か古に人間が作り出した絶対の機械神――それを倒すために立ちあがる、一般的に悪とされている存在。
どこかで見た事があるような設定ですが、よくある設定なので見た事があってまあ当然です。
混沌の神によると、1億年前と2,3年前に勇者に倒されて封印され
眠っている間にカノンが作られて世界を支配していたそうです。
注目すべきは、1億年と2,3年前に玉座で待っているだけで勇者が倒しに来た……
つまり、実はカノンが作られる前から世界を牛耳っている存在がいたという事が考えられます。
カノンが作られてからの世界も、いや、カノンが作られた事すらも、そいつの掌の上だったとしたら?
混沌の神はここに来て、その事を思い出しました。

『そういや私の元に勇者が来たのは黒幕が操っていたという話だったな。
だとしたらカノンをバラバラにした所で世界は真の混沌になるのか……?』

今更思い出しても後も祭りです。
ローゼソ達の周囲の神殿の情景がふっと掻き消えました。辺り一面、荒野が広がっています。
この世界は元々の実体とカノンの情報体が重なって構築された世界。
カノンがバラバラになった事によって、情報体の部分が消えてなくなったのです。

「ルゥ……、ルゥは、ここにいるよね……!?」

ローゼソはルゥの手を握りしめ、彼女がカノンの情報体ではない事を確認するのでした。
ざわ・・・ざわ・・・
何かざわざわしているにを見れば、バラバラのカノン達が内輪もめをしているではありませんか。

《次は正統派中世ファンタジーの世界で……》
《いやいや、近未来SFで行きましょう》
《は? 和風に決まってんだろ!》

脈絡なく、周囲に様々な様式の建造物が建って行き、
都市計画も何もない混沌とした世界が形作られていきます。
バラバラになったカノン達が、自分の望む世界を作る競争を始めたのでした。
375 :ローゼソ[sage]:2012/06/10(日) 03:16:46.01 0
もうすぐページ数が470になりますね。
万が一ページが足りなくなった場合に備えて、放置されている使いかけのノートを確保しておきましょう。
http://kohada.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1304692443/l50

物語はいよいよクライマックス。
そういえば、少し前に妖女が帝都で何かをやっていたのが気になるところです。
ラストステージは帝都となるのでしょうか。
376 :ルェルル=ルュル ルルゥ ◆mMGaLMOXkw [sage]:2012/06/13(水) 06:33:11.67 0
【( ・∀・) 聖典の街・カノニア】

混沌の神の体当たりで聖典はバラバラになって散らばり、分割された一枚一枚が小さな世界を作り始めました。
聖典の一枚一枚は自律しているようで、それぞれが異なった世界を作ろうとします。
その増殖する色と形の中でローゼソはルェルルの手を握り締め、少し不安そうな様子で言いました。

 >「ルゥ……、ルゥは、ここにいるよね……!?」

「いるよぉ! なんかぁ、急に建物がいっぱいになったねー。お祭りかなぁ?」

ローゼソとは裏腹に、ルェルルは増えてゆく建物に楽しげな期待を寄せます。
そして、その間にも分散した聖典の切れ端は次々に建物を増やし続けました。
増設に増設を重ねる建物たちで、まるで周囲は混沌とした迷宮。
無限増殖するかのような建物は聖地を覆い尽くし、あっという間に大きな街を造ります。
このままでは世界が聖典の街に押し潰されて滅亡? あるいは滅亡するかも知れません。

「あっ、ロゼその本がごちゃごちゃになっちゃってる! わたしがお片づけしてあげるね」

地面に散らばったままの紙切れに気付いたルェルルが、それらを屈んで拾い始めます。
さっきまでローゼソが持っていた本なので、聖典はローゼソの落し物なのだと考えて。
一週間の宿屋生活で、掃除も片付けもルェルルが得意科目と自負するところ。
散らばった聖典の断片が集められて、束ねられれば一冊の本ができあがり。
聖典が再び結合することで、建物の増殖はあっさり停止します。

「よいしょ、よいしょ……でーきたっ! はい、ロゼその本」

ルェルルは聖典をローゼソに渡します。
新しい聖典はページの順序も上下もバラバラで、シャッフルされたエピソードで過去と未来は錯綜。
繋がりと順序の断たれた理解不能の書物として、捏造されてしまいます。
しかも、ルェルルは整頓しているうちに、うっかり集めた紙片の中へ混沌詩篇も混ぜてしまいました。
従って、今の十全と言えない聖典が意志の力を備えた人間を統御するのは難しいでしょう。
ですが、やはり危険物には違いないので誰かに整頓して欲しい所です。

そして……予期せぬ事態は続きます。
先ほど混沌の神が放った体当たりで、聖典に書かれた無数の文字と文章は、少なからず紙の上を動いてしまいました。
混沌の力と共鳴したのか、混沌詩篇の意味を為さない幾つかの誤字も、文字の置換で意味を為します。

“最強だるま銅像の力をもって ゼンブ載せる億の馬車とルェルルが逢い見える”

不要な誤字の集まりが、アナグラムで新しい文意を作り出しました。
混沌詩篇も元は聖典の一部ですから、情報生命体を作る力は他のページと同様。
一つとなった聖典は文意に基づいたものを創り出します……全部を載せる億の数の馬車を!
その中には、大勢の人たちが乗っています。
混沌の神と戦った勇者、ノアルスイユを警備していた神官、ホグワーシ魔法学校の生徒。聖典に創造された人物の全てが。

『私は混沌の神との戦いに破れたはずだが……ここは死後の世界か?』

『えっ? ここどこよ? ホグワーシじゃないみたいだけど』

『大きな街のようですが、住人は誰もイマセンネ?』

古代と近代の風景が同居して、中央には不思議な銅像が飾られる街。
この雑然とした街に連れて来られた人々は、ここがどこなのだろうかと話し合っています。
その人だかりにタタタッと走り寄ったルェルルが、一人の少女の腕を取りました。

「シジりゅ、みーつけたっ! ふふーん、わたし、かくれんぼも得意だよぉ!」

『ニ度と……ニ度と誰にも見つけられない場所に隠れたはずなのに……見つけられちゃった』

捕まえられた少女は困惑した様子でしたが、しばらくすると柔らかい微笑みを浮かべました。
377 :ルェルル=ルュル ルルゥ ◆mMGaLMOXkw [sage]:2012/06/13(水) 23:17:55.47 0
しばらくの間、シジルは熟考するかのように眼を閉じていましたが、たちまち瞼を開いて声を上げます。
聖典と自分たちの行く末に関する第一声を。

『みなさん……まずは聞いて下さい。
 ここに集まった私たちと街は、みんな聖典に創られた存在です』

『どういうこと? 創られた存在って? 聖典は神なんだから人間を創ったのも当然のことでしょう?』

訝しんだ誰かがシジルに問い返しますが、その疑問に応えたのは混沌の神でした。

『いや違う! この名も知られぬ混沌の神が断言する! 聖典は数万年前の人類が造った機械なのだ!
 そして、君たちは人類の管理のために聖典が特定用途を与えて作った情報体生命!
 要するに、役割を終えれば消されてしまう使い捨てのNPCと言っても良い……』

混沌の神の言葉に群衆がどよめきます。
この女装ウェイトレスは何を言ってるんだ、と言う顔をしている者がいました。
NPCって何それ? ヌガー・パン・ショコラの略? という顔をしている者もいました。
直観的に正確な意図を把握する者もいました。
魔法学校の生徒、ミリが混沌の神に言い返します。

『ちょっと待って! 神様の一人だからって、勝手に私たちを不幸っぽい感じにして憐れまないでよ。
 それって、とっても余計なお世話。
 アンタ神様なんでしょ? それなら他の神様の中に人の想念が集まってできたような存在って知らない?』

『神の中には、人間の描いた概念が力を持った奴もいるぞ』

『それなら、聖典が人の作った機械でも、やっぱり神だって言えるんじゃないの?』

『う~ん、そうとも言えるかも知れないな』

聖典は改めて神とし定義され、その地位を保ちました。
自分が情報体生命という事実は、全員が啓示のように自然に受け入れます。

砂に水が浸み入るような自然さで。

『それで……今の私たちは何の役割でここにいるの?』

『そこまでは分からん。今は聖典も何やら混乱しているようだからな』

『では、聖典から新しい役割が与えられるまで、私たちは聖典の造った街に住みマショウ。
 たくさんの建物だけが在って、誰も住んでいないみたいデスノデ』

『ええ、そうしましょう。聖典が私たちの神なのは今までと変わらない訳だし』

かくして、混沌の神も聖典の創造物との対話を終えます。
聖典の街には大勢の住民が住み始めました……カノンを待ちながら。

『はっ、そう言えば整頓の神じゃないのか!? 一億年と二、三年前の勇者たちを操っていた黒幕は!?
 昔から私と思いっきり敵対してる奴と言えば、奴くらいしかいないぞ!』

混沌の神は急にピーンと来たようで、ふわふわの銀色ツインテールを揺らしながら言いました。
ですが、ルェルルはラスボスも黒幕もあまり興味が無いようです。
無人の屋台に並べてある情報体のパンを勝手に食べながら、ただただ不思議そうな顔をするのでした。

「このパン、食べてもお腹がいっぱいにならなぁい!」
378ホイミソ[sage]:2012/06/13(水) 23:44:29.89 0
混沌渦巻く神殿で、ホイミソは一人(?)違う世界を見ていました。
雑魚モンスター故に、世界の大いなる秘密の核心に触れる事が禁じられているかのように。

ホイミソの前に「聖典」が現れます。

>連想することによってどんなポジションになっても大丈夫な協力能力にしてしまえる
>どこの能力まで使うかはポジションや話の流れ次第ということで
・・・・・・
>お金が欲しい!
>親?あんなところにモンスターに襲われて困っている村がある!
>○モンスター退治してお礼をもらおう!→主人公側
>○モンスター使って村人皆殺しにして、死体はモンスターに、金が俺が!→敵側
・・・・・・
>周囲を沼地にして相手の機動を奪う、切りを発生させて視界を奪う
>直接的なダメージはないですが、全体におよび相手を弱体化、自分は強化
・・・・・・
>でも万が一、無策で突っ込んできそうな時
>条件揃わないから無駄無駄無駄あああ!と突っ張寝てばかりもいられませんので寝
>臨機応変に弱点を作ったり、攻略アイテムやヒントをさり気に後出し出来る伏線を貼っておくと便利です
・・・・・・
>続きなので突然これだけ見てもなんのこっちゃとなるかもしれませんが、そこはそれ!記にせず突き進む!
>そして今日も見直さずに即投下なので、例のごとく誤字脱字は仕様ですw

「・・・・・・。
ごじだつじは しようです」

ホイミソがつぶやくと「聖典」は消えてしまいました。

辺りの光景はいつのまにか
最強だるま銅像を中心に億の馬車から降り立った乗客達が住まう
雑然とした街並へと変わっています。

>「このパン、食べてもお腹がいっぱいにならなぁい!」

ルェルルの声に気付いたホイミソは言いました。

「ホイミ!?ルェルル、ホイミする!?ねぇ!ホイミ!ホイミする!?」

空腹による体力の衰えはホイミで治せますが、
空腹そのものにはホイミの効果は及ばないので
ホイミでルェルルが満足する事はないでしょう。
しかしその前に、この新しい世界でホイミソの魔法が効果を発揮する保証はありません。
379 :ローゼソ[sage]:2012/06/15(金) 00:04:42.55 0
>「よいしょ、よいしょ……でーきたっ! はい、ロゼその本」

「あ……うん。ありがとう」

ローゼソは困惑しつつも、カノンだった本を受け取ります。
何故か、今までに死んだ(消えた)人も含むNPC達が勢ぞろいします。

>『それで……今の私たちは何の役割でここにいるの?』
>『そこまでは分からん。今は聖典も何やら混乱しているようだからな』
> 『ええ、そうしましょう。聖典が私たちの神なのは今までと変わらない訳だし』

「聖典によると……
クライマックスで死んだ人も含めて有象無象のNPCが勢ぞろいして
ラスボスに立ち向かうのは古からの王道展開。
世界を滅ぼすラスボスに立ち向かうために呼び出されたのかもしれない……」

聖典の知識から推理するローゼソ。
聖典には、古今東西のあらゆる物語が刻まれているのです。
もっとも、今は物語の色んな所がシャッフルされてトンデモ物語が出来上がっているかもしれませんが。

>『はっ、そう言えば整頓の神じゃないのか!? 一億年と二、三年前の勇者たちを操っていた黒幕は!?
 昔から私と思いっきり敵対してる奴と言えば、奴くらいしかいないぞ!』

ここで整頓の神黒幕説が浮上しました。
整頓の神といえば、最初にルェルルを送り出した張本人ですが、
良く考えると依頼主=ラスボス、これも王道パターンです。

「ねえ、あなたと整頓の神はいつから敵対してるの?」
『なにせ大昔だからなぁ……はっきりとは思い出せん。
あれ? そういえば何がきっかけだったっけ……』

ローゼソは、バラバラのカノンから世界各国の創世神話の知識を引き出します。
そうすると、どこの国の創世神話にも共通するパターンが見えてきます。

「原初に混沌があって、次に秩序が生まれて世界が形作られた。
分かりやすく言うと、ごちゃごちゃなものが整頓される事によって世界が始まったんだ。
その後の世界の歴史も歴史の転換点にごちゃごちゃになっては整頓される事の繰り返しだ……。
かーくんは整頓の神に毎回負けては性懲りも無く復活して戦いを挑んでるわけだよね?
つまり……かーくんって原初の神なんじゃない?」

そういえば、出オチのネタスレとして始まったこのスレも、奇しくも混沌の神と整頓の神の対立構図からスタートしましたね。
混沌と秩序の対立は、古からの不変のテーマのようです。

『何!? 私が原初の神……!?
そして今までの経験によるとこれだけ世界が激動すればそろそろ整頓の神が黙っていないはずだが……』
380 :ローゼソ[sage]:2012/06/15(金) 00:06:26.09 0
>「ホイミ!?ルェルル、ホイミする!?ねぇ!ホイミ!ホイミする!?」

ホイミソが唱えたホイミは思わぬ効果を発揮します。
ホイミは、”補遺見”というかなり無理のある誤変換がされました。
一行は、どこかの光景を垣間見ます。
それは、大悪魔が整頓の神に取り入ってそそのかしている光景でした。

『実は計画が上手く行かなくて困っているんですよ。
今度こそかーくんに完全勝利をおさめ世界に秩序を……と思っていたのに』

『無駄だ。お前が何度倒しても混沌の神は甦る。
何故なら奴は原初の神。全ては原初の混沌から生まれ出でているからだ。
だから、何度倒しても世界が存続している限り奴は復活する……』

『そこをなんとか!』

『……一つだけ方法はある。
世界を全て滅亡させ何も存在しない無に帰すこと……!
何もない事こそが究極の秩序なのだから!
散らかった部屋を二度と散らからないように片付けるには全ての物を捨ててしまえばいいのだ』

『……なるほど!』

納得してしまう整頓の神。大変です。世界滅亡へのカウントダウンが始まってしまいました。
381 :ルェルル=ルュル ルルゥ ◆mMGaLMOXkw [sage]:2012/06/16(土) 03:16:53.19 0
>>378-379
幻のパンは、どんなに食べてもお腹がいっぱいになりません。
それでも、ルェルルはいつまでも手と口を動かしてパンを食べ続けていました。
ドーナツにチュロス。パンケーキにマフィン。甘いものばかりを選んで。
幼女が無心にパンを食べ続けていると、それに気付いたホイミソが話しかけてきます。

 >「ホイミ!?ルェルル、ホイミする!?ねぇ!ホイミ!ホイミする!?」

「うん、ホイミしてっ! お腹が変なのぉ」

幼女の頼みを聞いて、ホイミソが回復魔法を唱えました。
いつもなら、柔らかい光に包まれて体力が回復する場面です。
しかし……今は近くに混沌の神がいるせいなのか、効果もデタラメ。
幼女の瞳には捏造なのか、実際にあったやり取りなのかは不明ですが、大悪魔と整頓の神の会談が映し出されました。
内容からすると、どうやら整頓の神が"世界滅ぼしたい病"にかかったようです。
大悪魔の方は悪魔的な知恵を持っているだけあって、ラスボスなんて狙われるポジションには就かないようでした。

「むずかしいこと言ってるけど、きっと構ってほしいだけだよ。わたし、分かるもん」

世界規模の話は理解できませんでしたが、ルェルルはさも分かったような振りをして、こう言うのでした。
しばらくすると映像の世界も消え、周囲は元の混沌とした街並みを取り戻します。
その雑然とした街並みの中には、馬車を走らせながら叫ぶ御者がいました。

『この中にルェルル様はいらっしゃいますか?』

「はぁい、わたしがルェルルだよぉ! ご用はなぁに?」

ルェルルが応えると、御者は鞭を操って馬車を止めます。
中世風の古めかしい馬車の上には、二匹のメタるスライムが行き先のプレートを掲げていました。

【( ・∀・) ◆帝都ラグリオン・ENDING◆ (・∀・ )】

プレートには“帝都に着けば、ルェルルの冒険は即終了”と暗示されていました。
大悪魔はカノン戦をルェルルの最後の戦いと位置づけ、直後に幼女の旅を終わらせる算段を付けていたのです。
聖典の創造物が結集したのも、ローゼソには決戦の勢ぞろいと映ったようですが、幼女の旅には大団円を迎えた象徴そのもの。
最後の戦いに意気込む混沌の神を他所に、すでにルェルルには終わりが始まっているのでした。
帝都から迎えに来た、この御者とのやり取りから。

『ルェルル様をお迎えする馬車として参りましたので、どうぞお乗りください。
 帝都では、祝宴の準備も万端整えたと窺っております』

「しゅくえんってお祭り? んーとぉ……じゃあ、呼ばれたから行ってきまぁす!」

振り返ってみんなに言うと、ルェルルは馬車へ乗り込みます。
御者が鞭を一打ちすると二頭の馬は闊歩を始め、大きな車輪も緩く回り始めました。
世界滅亡の戦いを混沌の神と整頓の神に任せて、お終いの場所を目指す馬車は疾走開始!
ベルウ山脈の洞窟を抜け、街道を西に向かえば帝都はすぐそこです。
ここでうっかり様子見でもしようものなら、馬車は間違いなく終着点に辿り着いてしまうことでしょう。
382 :ローゼソの代理[sage]:2012/06/16(土) 23:53:21.76 0
『いいわ、魔法の練習の成果、見せてやろうじゃない!』

『整頓の神がなんだ! こっちは部屋を散らかす名人じゃあ!』

『整頓の神は混沌の神たる私を何度もてこずらせてきた強敵だ……気を抜くな!』

一同が最後の戦いに向けて準備を進めていると、突然、ルェルルに迎えの馬車が来ました。

>『ルェルル様をお迎えする馬車として参りましたので、どうぞお乗りください。
 帝都では、祝宴の準備も万端整えたと窺っております』

>「しゅくえんってお祭り? んーとぉ……じゃあ、呼ばれたから行ってきまぁす!」

「えっ、ちょっと……」

あまりのナチュラルな流れにポカーンとしている間に、馬車は走り始めてしまいました。
幼女誘拐事件発生です。
大悪魔ルェルルが帝都で行っていたのは、もしや祝宴の準備でしょうか。
VIP待遇で幼女を永遠に帝都に閉じ込める作戦かもしれません。

――オカルトSFスペースオペラTRGなりきり。――

~CAST~

空中に、不思議な光る文字でなんかエンドロールみたいなものが流れはじめました。

「エンディングかあ。なんだ、じゃあこれでいいのか。
ボク達の冒険はここまでだ。混沌の神、後は任せた!」

ローゼソは納得しているようですが、BADENDルートの気がしてなりません。
ルェルルは世界が滅亡したのも知ったこっちゃなく
閉ざされた帝都で贅沢三昧をして暮らしましたとさ、めでたしめでたし的な。
まあそれはそれで主人公は幸せなのでハッピーエンドな気もしますが。
383 :ローゼソの代理[sage]:2012/06/16(土) 23:53:52.19 0
「……本当にそれでいいの? ホイミ!」

やり遂げたような表情をしているローゼソに、シジルがホイミをかけます。
その影響で、再び、真偽の定かでないマスターシーンが始まります。

『行ってきます! 混沌の神め、あたしの力をとくと見なさい!』

『……行ったか。
絶対回避《ネタフリニキヅカナイ》……因果律を超越する最強の能力を我が手にすれば
私は真のトリックスターとして君臨する事が出来る!!
そのためにはルェルルは早めに退場させて整頓の神との直接対立を避けさせてと……』

「なんてこった!」

「こっちよ! 運転手、すぐルェルルを追って!」

ローゼソは、シジルの手引きでいつぞやのホグワーシ所有の直方体の乗り物に乗り込み、ルェルルを追います。
やがて、前方にルェルルの乗った馬車が見えてきました。
ローゼソは窓から顔を出して叫びます。

「ルゥ、罠だ! 大悪魔がルゥを利用しようとしてる!!
おちおちごはんが食べられない世界にするのに利用しようとしてる!」

その時です。
どどーん。巨大な何かが落ちてきて、馬車の行く手を遮ります。
見れば、落ち物パズルゲームの凸棒のようです。

『金の凸棒 降る降るまわりに
銀の凹棒 降る降るまわりに』

聞き覚えのある歌が聞こえてくる方を見上げれば、長い金髪の女性が虚空に佇んでいます。
人の姿を取った整頓の神です!
彼女は全世界に向けて、世界滅ぼしたい病発症を宣言します。

『世界は何度整頓してもごちゃごちゃに散らかってしまう……。
そこであたしはこの世界を二度と散らからないように整頓することにしました。
簡単な事です、世界の全てを凸棒で埋め立ててしまえばいいのです!』
384 :ルェルル=ルュル ルルゥ ◆mMGaLMOXkw [sage]:2012/06/18(月) 22:43:08.27 0
【( ・∀・) 極限の闘技場・なぞなぞミリオネア】

ルェルルを乗せた馬車がベルウ山脈の洞窟に入り、ローゼソを乗せた直方体の乗り物がそれを追います。
馬車と魔法で動く乗り物で競走? いえ、競走にもなりません
直方体の乗り物は馬車よりも速いので、割とすぐに追いつきました。
極限の闘技場・なぞなぞミリオネアと呼ばれる洞窟内の大空間で。

そして、この場所の天井から凸棒たちが降って来て、馬車の進行を止めます。
幾つもの凸棒を降らせたのは、虚空に浮かんで金髪をなびかせた女神。
彼女は人間たちに向けて言いました。

 >『世界は何度整頓してもごちゃごちゃに散らかってしまう……。
 >そこであたしはこの世界を二度と散らからないように整頓することにしました。
 >簡単な事です、世界の全てを凸棒で埋め立ててしまえばいいのです!』

「わたしも整頓するー! お片づけは、とっても得意だもん!」

整頓の神の宣言を聞いたルェルルは、顔にやる気をみなぎらせて馬車から飛び降ります。
意気は揚々。腕まくりもして準備は万端。
もちろん、整頓の神が敵であるなどいう認識は微塵も持っていません。
ルェルルは近くに落ちている凸棒を持つと、それを洞窟の隅っこに置き始めました。
重い凸棒に足取りはよたよた。
当然ながら置かれた凸棒と凸棒も、ぴったり嵌らずに隙間だらけ。
ですが、ルェルルは無数に降って来る凸棒をひたすらに積み上げ続けます。
385 :ローゼソ[sage]:2012/06/19(火) 01:29:42.76 0
さて、ルェルルは気付くはずもありませんでしたが
実はこの時絶対回避《ネタフリニキヅカナイ》の能力は失われていました。
ローゼソも、鉄壁防御が無くなって紙装甲になっていました。
これらの能力を与えた神と敵対してしまったので、当然といえば当然です。
ルェルルにその気はなくとも、暴走した整頓の神には、ルェルルもすでに敵と映っているのでした。

>「わたしも整頓するー! お片づけは、とっても得意だもん!」

ルェルルはやる気満々ですが、凸棒がひたすら積み上がっていくだけです。
遊びに詳しいルェルルも、テトリスは知らなかったようです。
そこに、混沌の神の声が響き渡ります。

『出たな……整頓の神の究極奥義、”テラ・トリニティ・スライダー”! 略してテトリス!
昔あれに生き埋めにされた事がある! しかし同じ手は通じん! 凸と凹を合わせて平らになるように並べるのだ!』

混沌の神が整頓を呼びかける、なんという自己矛盾でしょう。
しかし、これを乗り越えてこそ真なる混沌の領域に到達する事ができるのかもしれません。

『なんか分からんがやったるぞー!』

『このまま世界が埋まるのを黙って見てるよりはいいわ!』

直方体の乗り物からNPC達が続々と降りたち、凸と凹を並べ始めます。
それらが綺麗に平らになると、思った通り、光の粒となって消えました。

『さすがはあたしのライバル、少しはやるようですね』

整頓の神は、右手にほうき、左手にちりとりを召喚しました。混沌の神が解説します。

『あれは……神器”ホーリィ・キラー”、と”チリソース・リトミック・リアクター”
略してホーキとチリトリ!』

「適当に言ってるっしょ!?」

そんな事を言っている場合ではありません。
整頓の神は、ほうきを武器に、ちりとりを盾として構え、普通に襲い掛かってきました。
ほうきとちりとりとはいえ、神の攻撃。今のルェルルとローゼソにとっては絶対絶命です。
386 :ローゼソ[sage]:2012/06/19(火) 01:31:22.97 0
しかし――こちらにも紙の神がいます。そう、ごちゃごちゃになったカノンです。
ローゼソの持っている聖典が、眩い光を放ちました――。

『汝らは選ばれた……聖典の勇者よ!』

聖典によって、勇者――ラストバトルのメンバーが選ばれます。
“聖典の勇者”――それは古からの様式美に則る事により、最強の力を発揮する存在。

今まで袋を被っていたルェルルは、勇者っぽい服装に。主人公だから勇者という事でしょう。
ローゼソは、実は剣も魔法も殆どできなかったはずですが、イメージを優先して魔法戦士になりました。
ホイミソの頭には、神官っぽい帽子が乗ります。回復魔法の使い手なのでここは普通ですね。
音楽が得意なシジルは吟遊詩人。ラスボス戦には普通入れない職業です。
ウェイトレス姿のカオスはメイド。そのまんまです。

もう一度言います。“聖典の勇者”――古からの様式美に則る事により、最強の力を発揮する存在。
……しかし、今の聖典はごちゃごちゃなので、様式美の基準もずれているのでした。
凸棒と凹棒が降り注ぎその他大勢達がせっせと片付けている中、運命の最終決戦が始まります。

「整頓の神……お前の好きなようにはさせない!!」

まず整頓の神が仕掛けて来たのは“はやぶさ掃き”。すばやいほうき捌きによる2回攻撃です!
387 :ルェルル=ルュル ルルゥ ◆mMGaLMOXkw [sage]:2012/06/21(木) 04:25:29.01 0
混沌の神の呼びかけで、人間たちは一致団結して凹凸棒の整頓作業に入りました。
あちこちに散らばった凹凸棒は、ぴったり重ねられると不思議な力で消滅。
次々に片付く凹凸棒を見ると、ついに整頓の神が本気を出します。
混沌の神に着いて来た人たちが、神のほうきでササッと掃かれ、ちりとりで掬われました。
洞窟の中には、バリエーションも豊富な叫び声が響き渡ります。

『ぐふっ』 『うぼあぁぁ』 『すぺおぺっ』

神業としか思えない整理整頓術で、すぐさま何人かがゴミ箱行き。
空中に浮かぶ大きなゴミ箱の中に閉じ込められて、蓋までされてしまいました。
この絶体絶命の窮地に、聖典が自分の出番とばかりに力を振るいます。

 >『汝らは選ばれた……聖典の勇者よ!』

聖典が光を発すると、真っ白に輝く空間の中でルェルルはお着替え。
全身の服が一瞬で弾け飛んで、紋章が描かれた服とマントに装備変更されます。
小さな両手には、鋭い長剣と頑丈な盾も持たされました。
ローゼソの方は魔法戦士の格好になって、自らを鼓舞するように整頓の神へ宣言します。

 >「整頓の神……お前の好きなようにはさせない!!」

その隣で、ルェルルは勇者の剣と勇者の盾をポイッと投げ捨てていました。
あまりにも金属製の装備が重たくて。

「おもぉい! こんなのもてないよぉ!」

すかさず、整頓の神の“はやぶさ掃き”が勇者の剣を弾きます。
くるくるんと空中で放物線を描いた剣は、瞬く間にゴミ箱行き。
返す柄は電光石火の二撃目! 最強の盾もが一瞬で整頓されてしまいました。

「あっ、みんな服が新しくなってる!」

ルェルルは新しくなった装備に気付いて、ローゼソの装備やホイミソの帽子を触ります。
さらには自分も新しい服を自慢しようと、くるくる回転して背中のマントを振り回しました。
もちろん、すぐに幼女は目を回して、ふらふらになります。
そして、前後不覚の幼女は、何かを掴みながらバッタリ倒れ込みました。

「目が回るよぉ」

『えっ、あっ!』

ルェルルに服の裾を掴まれたシジルは、体を傾がせて転んでしまいます。
ふらりと倒れる寸前に、混沌の神のスカートを掴んでから。

『おっとっと……ぬわーっ!』

混沌の神も、やっぱりバランスを崩してしまいました。
まるでドミノ倒しのように、混沌の神も前の二人と同じように何かを掴んでから倒れます。
388 :ローゼソ[sage]:2012/06/22(金) 22:27:40.59 0
>「おもぉい! こんなのもてないよぉ!」

ルェルルは 最強の剣と 最強の盾を 投げ捨てた!

「な、なんだってー!?」

一応驚いてはみたもののルェルルの(端から見ると)奇行はすでに慣れっこです。
気を取り直してローゼソは真面目に行動を選択します。
ところで、魔法戦士と言えば紙装甲で真っ先に死ぬのが古来からの様式美です。
具体的には、某龍探訪RPGの2作目の緑色の魔法戦士の事ですが。
それにちなんで、ローゼソはブラックユーモア溢れる技を放ちました。

「奥義、棺桶落とし!」

棺桶の雨が降り注ぎます。
これは、今までの死亡回数に応じて威力が上がっていくという、固定ダメージの超凶悪な奥義です。
しかし……この話の魔法戦士は今まで鉄壁防御で死ぬことが無かったので、殆ど効きません。
ダメージは1ポイント程度でしょうか。

『無駄無駄無駄ァ、今度はこっちの番よ! ゴミ収集!』

ちりとりを横にスライドさせるように投げました。
ブーメランのように敵を一掃して帰ってくる寸法の、一網打尽の全体攻撃です!
ちりとりに回収されればもちろんゴミ箱逝き。整頓の神の攻撃は全てが即死攻撃なのです。
しかも、それは神の早業。相手の行動を認識してからではかわせるわけもありません。
しかし、そこでルェルルのミラクルプレイが炸裂します。

>「目が回るよぉ」
>『えっ、あっ!』
>『おっとっと……ぬわーっ!』
「あべしっ!」

混沌の神に引き倒されるローゼソ。
見事なコンボで、全員転びました。その頭上をちりとりが疾走していきます。

『まさか、あたしのちりとりを、かわした……だと!?
…ってぎゃーっ! 何をやってくれてんの!?』

実はローゼソも転ぶ時に何かを掴んでいました。
いつの間にか、カチカチに凍った何だか分からないものがたくさん転がっています。
そして目の前では、ゴミ箱がひっくりかえっています。
ローゼソは転ぶ際、ゴミ箱のふちに手をかけたのでした。
例によって例のごとく混沌の神が解説します。

「あれは整頓の神が今までに整頓してきた色んなごちゃごちゃを圧縮したものだ……!
解凍してしまえばこっちのもの!
”デンジャラス・シーリング・レンジ”略してデンシレンジを誰か持って無いか!?」
389 :ルェルル=ルュル ルルゥ ◆mMGaLMOXkw [sage]:2012/06/23(土) 01:28:01.27 0
死闘は続き、今までに整頓されたものたちが床に散らばります。
それを見た混沌の神は、圧縮されたものを解凍すれば勝機があると叫びました。

『レンジならここにっ!』

元ノアルスイユ邸の料理長が、謎めいた古代帝国の謎めいた調理器具を掲げて応えます。
たちまち解凍作業が始まり、混沌の神はポイポイと色んな物を不思議な箱の中に投げ入れました。

一方、転倒していたルェルルは頭をさすりながら立ち上がります。
小さな頭にはたんこぶが出来ているので、頭を打ったのは明白。
その影響で、いつも混乱しているような幼女は、もっと混乱したのかも知れません。
起き上がったルェルルが、ささっとローゼソに走り寄り、そのお腹をポカリと殴りつけたのですから!

「おっきい箱なんかぶつけたらダメ! あの子、ロゼその子どもでしょっ!」

ルェルルは、ローゼソが整頓の神を攻撃したことを怒っているようでした。
怒ってる理由を聞き返そうとしても、なにぶん論理的に話すことを苦手とする幼女のこと。
ただただ、だーめーだーめっ!と言いながら、ぽかぽか叩くだけです。
そんな中、混沌の神は混沌的な大砲を担いで、砲身を整頓の神に向けていました。

『圧縮した物を全部混ぜたら出来たぞ! ラスボスバスターがな!
 二人(匹)の力を合わせて撃つ武器で、ラスボスだけを回避不可で即死させる最強の魔導砲だ!
 さあ、誰か早くラスボスバスターを撃て! 私一人では後ろのスイッチが押せない!』

混沌の神がパーティーメンバーに呼び掛けます。
整頓の神は“ぐぬぬ”と言いながら防御態勢を取っていますが、ラスボスバスターの前には無力!
発射すれば一撃で倒せることでしょう。
残念ながら、ルェルルには戦闘を行う意思自体が無いので、混沌の神の呼びかけには応えません。
何やら、へそを曲げてしまったようで、ぷーぷーとふくれっ面で座っているだけでした。
390 : 忍法帖【Lv=6,xxxP】 [sage]:2012/06/24(日) 06:03:15.36 O
秩序の神を召喚するよ。
391 :ローゼソ[sage]:2012/06/24(日) 19:58:16.18 0
>「おっきい箱なんかぶつけたらダメ! あの子、ロゼその子どもでしょっ!」

「えっ!? 何を言ってるの!? ……うっ」

ルェルルに訳の分からない事を言われ、頭を抱えて膝をつくローゼソ。
脳裏に、古の記憶が甦ります。ただし、本当かどうかは誰にも分かりません。
ごちゃごちゃの聖典が見せた悪戯かもしれません。

―――――――――

異界の魔王「暇だなあ、いい暇つぶしは無いものか」

暇を持て余した異界の魔王は、様々な世界を映す魔法の四角い箱を切り替えながら、様々な次元を見ていました。
ある世界に、魔王の目が止まります。画面は砂嵐の様になっていて何も映っていません。

異界の魔王「ほう、創造の神に捨てられた”建て逃げ世界”か。これは面白そうだ」

異界の魔王は、その万能の魔力でもって使者を作りました。

整頓の神「何をいたしましょうか、ご主人様」

異界の魔王「そなたを整頓の神と名付ける!
すぐ隣の次元に丁度よいごちゃごちゃがあるようだ。ちょいと整頓して世界を作って参れ!」

――――――――――
392 :ローゼソ[sage]:2012/06/24(日) 19:59:19.08 0
>『圧縮した物を全部混ぜたら出来たぞ! ラスボスバスターがな!
 二人(匹)の力を合わせて撃つ武器で、ラスボスだけを回避不可で即死させる最強の魔導砲だ!
 さあ、誰か早くラスボスバスターを撃て! 私一人では後ろのスイッチが押せない!』

「はいっ! 結局何もしなかったので最後ぐらいは!」

頭を抱えているローゼソに代わってシジルが立候補し、ラスボスバスターの後ろを持ちます。
ラスボスバスターを向けられ、絶対絶命の整頓の神。しかし全ては、彼女の思う壺でした。

(これで……いい。あたしが死ねば、世界は滅ぶ。そうすれば永遠に散らかる事はない……)

整頓の神が死んでしまえばどうなるでしょうか。
世界は、原初状態の真なるカオスに戻ってしまいます。
カオスとは混沌の他に空隙という訳もあります。空隙とは何もない状態のこと。
つまり、おかしな話ですが世界の全てを整頓するという整頓の神の野望が達成されてしまう事になるのです。

「「発 射 !!」」

混沌の神達がそんな事を知る由もなく、無情にもラスボスバスターが発射されてしまいます。
発射されたのは、極寒の冷気。即死技という事で、エターナルフォースブリザードと同じ原理でしょうか。
その時です。

「ちょっと待ったあああああああああ!!」

ローゼソが両手をひろげて立ちふさがります。
ラスボスバスターが直撃しますが、ローゼソはラスボスではないのでその体をすり抜けていきます。
しかし、ローゼソを透過した事で、ラスボスバスターの効果に変化が現れました。

「ぐ、うわぁあああああああああああああ!!」

当たった瞬間、整頓の神はカチカチに凍り、美しく輝く氷の彫像となります。
そのまま、砕け散る気配はありません。
整頓の神は、死なずに封印されたのでした。

暫し固唾を呑んで整頓の神を見つめる一行。そして、混沌の神が口を開きます。

「勝った……のか!?」

ローゼソが氷の彫像を剣の柄でコンコンと叩きながら答えます。

「まるでアストロン、びくともしないや! ……整頓の神は封印された! 勝ったんだよ!」

シジルが、先程の奇行の理由を尋ねます。

「さっきは何でとめたの?」

「えへへ、ルゥに釣られて混乱しちゃって……」

本当の理由を言う必要は無いのです。それが真実かどうかすら、誰にも分からないのですから。
謎は謎のままで残しておくのもまた一興でしょう。
393 :ローゼソ[sage]:2012/06/24(日) 20:22:14.47 0
「やった……聖典の勇者様バンザーイ!!」

勝利を祝う人々の歓声が響き渡ります。
そんな中、拍手をしながら現れる者がいました。

「いやあ、実にお見事だったよ」

黒髪ストレートのクールビューティ、通称大悪魔です。
真打登場かと思い、ローゼソは身構えます。

「そんなに警戒しないでおくれ。
ラスボスバスターで整頓の神が封印された、という事は彼女がラスボスだったという事さ。
今更ラスボスを座を奪うなんていう無粋な真似はしない。
実は整頓の神を唆したら予想以上に暴走してしまってね。世界が滅びたらどうしようかとヒヤヒヤしたよ。
自分で唆した者の手綱を握れないなんて私もまだまだだ、はっはっは」

「と、いう事はあなたの目的は……世界を滅ぼす事ではない。じゃあ何を狙ってるの?」

「それは極秘だ。なんてったってトリックスターだからな。
謎は全て明らかにすればいいというものではない、そうだろう?」

ローゼソは少し考えてからにっこり笑って頷きます。

「……そうだね!」

大悪魔の後ろから、馬車の大群が現れます。ゼンブ載せる億の馬車です。

「さあさあ、世界を救った勇者達を帝都に招待しよう。その他大勢の者達も全員だ!
予想外に人数が増えたから急ごしらえになるとは思うが出来る限りのもてなしをしよう!」

きっと今度こそ、本当のENDINGです。
危惧していた通り、ほんの少しだけページ数が足りなくなりそうです。
ENDINGだけDISC2とは、また斬新な作りですね。

http://kohada.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1304692443/l50
394 :名無しになりきれ[sage]:2012/06/24(日) 20:44:14.04 0
走る馬車の窓の外を、エンドロールが流れていきます。

―― オカルトSFスペースオペラTRPGなりきり。――

CAST PC

ルェルル=ルュル ルルゥ
ローゼソ
ホイミソ
名も知られぬ混沌の神(カオス)
名も知られぬ整頓の神
深遠に潜む名も知られぬ大悪魔

シェンパイル→イマブレル
アベル=エルロンド
インディー・アヌス・ジョーンズジュニア
名も知られぬ開墾の神
名も知られる味噌煮込み饂飩の神
ライス(NPC)
山田(NPC)
名も知ってる近藤野上
ベンクミ
395 :名無しになりきれ[sage]:2012/06/24(日) 21:05:39.94 0
CAST NPC

シジル
聖典カノン

アニャキン
アショーカ・ニャノ
スライムABCD
領主ロリータ
フロレット
レマ
アデライド
セルシャ
ジルドレ将軍
聖騎士アグラヴェイン
ノアルスイユ=フォン=テルピア
メリー
エイヴィス=ステイルメイト
ティーシャ=エルロンド
ブレナン
サラ
ロソ
ダモア
ライン
デシ
センチ
ミリ
マイクロ
ナノ
ピコ
ミノモンタウロス
396 :ルェルル=ルュル ルルゥ ◆mMGaLMOXkw [sage]:2012/06/25(月) 02:12:57.77 0
戦いも終わって、ルェルルもローゼソや混沌の神と一緒の馬車に乗せられました。
道程の途中で、混沌の神はさっきの戦いで幼女の言っていたことを思い出して、ハッとした顔をします。

『ローゼソ……ローゼソの子ども……ローゼソが作ったもの?
 ローゼソってのは、勇者にして異界の魔王という設定が気に入って召喚した下僕じゃないか!
 ああっ、なんてこった! 魔王という部分に着目して肝心な部分を見落としていた!
 こいつは勇者の属性も持つ! そして勇者ほどラスボスを必要とする奴はいない!』

頭の中で様々なピースが嵌った混沌の神が、ローゼソの手から聖典を取り上げます。
すると、荷台に括りつけられていた氷像が、光の文字列になって消えて行きました。
“ローゼソが聖典で作り出したニ柱目の整頓の神”が。

そう……この整頓の神は、無意識にラスボスを求めるローゼソの心が作り出していたもの。
敵を必要とする心は実際の敵も作ります。聖典が無かった時代でも。
そして、聖典は敵を求める心があれば、幾らでも敵を創り出してくれます。必要とする者の求めに応じて。
勇者ほど敵の存在を渇望するものはいないのですから、聖典と勇者の相性は抜群でした。
それでは、本物の整頓の神は? さあ……今頃どこかの空を飛んでいるかも知れません。

『ああ、全然ダメだ。ラスボスバスターの対象が整頓の神では!
 ラスボスなんてのは、それを必要とする奴が作り出した観念に過ぎない。
 何度もラスボスに仕立て上げられた私だからこそ分かる。真のラスボスは―――』

混沌の神が、ラスボスバスターの砲身を自分の胸に向けました。

『ラスボスを求めちまう心! こいつがラスボスだぁぁ!!』

馬車の中が光で溢れました。もちろん回避は不能です。
397 :ルェルル=ルュル ルルゥ ◆mMGaLMOXkw [sage]:2012/06/25(月) 02:14:42.49 0
前夜―――帝国の皇帝と居並ぶ廷臣の面前にて、突如として大悪魔ルェルルが現れていました。
後の世に混乱を残すべく。
大悪魔ルェルルは、帝国の皇帝に禅譲を要求すると百の魔術を炸裂させました。
帝都には輝く雷が雨と振り! 城壁の端から端まで業火の柱が駆け抜け! 土塊の巨人が命を持って歩く!
嗚呼、恐ろしい! まるで子供の乱暴な書き殴りをそのまま現実に写したかのよう!

精猛なる聖騎士の剣も、司祭の魔術も、まるで虻を払うように容易く打ち払われました。
もはや廷臣団の面々も怖れ慄き、平伏の他はありません。万歳三唱で皆が新たなる皇帝を迎えました。
幼女万歳!新帝陛下万歳! 歴史上唯一の、幼女による新王朝樹立に幸いあれ!

日が明けて……帝国の臣民は即位の宴を整えて新帝を待っていました。
そして、ついに新しい皇帝を乗せた馬車の一団が現れます。
その先頭の馬車で窓から身を乗り出したルェルルは、賑々しい街の様子を見つめて無邪気に言いました。

「わぁ、お祭り! これなら、いっぱぁい食べられるねー」

この日から、幼女による世界征服と帝国の崩壊が始まります。

【( ・∀・) ◆ENDING◆ (・∀・ )】
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