もう14時か、
2ちゃんねる ■掲示板に戻る■ 全部 1- 最新50 [PR]女性必見!ネットで高収入バイト[PR]  

学園ものTRPスレッド

1 :名無しになりきれ:2011/08/08(月) 22:12:51.56 0
やれよ

2 :名無しになりきれ:2011/08/09(火) 01:15:38.72 0
うん…わかった。

3 :名無しになりきれ:2011/08/09(火) 01:17:42.75 O
(´・ω・`)

4 :名無しになりきれ:2011/08/09(火) 01:21:13.14 0
実は、君のことが・・・・

5 :名無しになりきれ:2011/08/09(火) 01:41:19.61 0
結局どんなスレにすればいいんだか、わからん

6 :名無しになりきれ:2011/08/10(水) 01:29:56.99 0
これなんのスレ?

7 :名無しになりきれ:2011/08/10(水) 02:31:42.22 O
男塾みたいな感じでいいんじゃないか

8 :名無しになりきれ:2011/08/10(水) 21:43:16.35 O
そうだな

9 :名無しになりきれ:2011/08/10(水) 23:15:17.99 0
知ってるのか雷電

10 :名無しになりきれ:2011/08/11(木) 11:58:17.08 O
猛烈に嫌な予感がするのう

11 :名無しになりきれ:2011/08/11(木) 15:21:05.40 0
やれよ

12 :名無しになりきれ:2011/08/11(木) 15:23:40.70 0
名前:
異名・肩書:
年齢:
身長:
体重:
スリーサイズ:
ブラのカップ:
種族:
職業:
属性:
性別:
性格:
誕生日:月日
血液型:
年代:
利き手:
魔法:
特技:
得意な技:
長所:
短所:
戦法:
装備品右手:
装備品左手:
装備品鎧:
装備品兜:
装備品アクセサリー:
所持品:
瞳の色:
血液型:
髪の毛の色、長さ:
容姿の特徴・風貌:
その他特徴:
趣味:
恋人の有無:
好きな異性のタイプ:
自分の恋愛観:
好きなもの:
嫌いなもの:
好きな食べ物:
最近気になること:
一番苦手なもの:
人生のモットー:
一番の決めゼリフ:
将来の夢(目標):
生息スレの住人として一言:
生息スレの仲間達へ一言:
生息スレの名無し達へ一言:
中の人より一言:
簡単なキャラ解説:

13 :名無しになりきれ:2011/08/11(木) 16:35:28.43 O
長すぎだろwww

14 :名無しになりきれ:2011/08/11(木) 16:53:30.27 0
三浦来い

15 :名無しになりきれ:2011/08/11(木) 17:08:45.05 0
ところどころ学園ものには関係ない項目があるなこのテンプレ

16 :名無しになりきれ:2011/08/11(木) 17:30:14.63 0
削ってこのくらいか?
それでも多いなw

名前:
性別:
誕生日: 月 日
血液型:
学年:
身長:
体重:
スリーサイズ:
ブラのカップ:
趣味:
好きな異性のタイプ:
好きな食べ物:
最近気になること:
一番苦手なもの:
人生のモットー:
将来の夢(目標):
簡単なキャラ解説:

17 :名無しになりきれ:2011/08/11(木) 18:49:31.07 O
>>16
削るとこ間違ってね?

18 :稲川:2011/08/11(木) 19:04:57.40 O
一行レスでリレー怪談しようぜ
稲川淳二は共通NPCな

19 :名無しになりきれ:2011/08/11(木) 23:48:18.32 0
ブラのカップをなんで残すのか小一時間(

20 :名無しになりきれ:2011/08/12(金) 01:42:26.21 O
私怨上げ底

21 :名無しになりきれ:2011/08/14(日) 15:47:32.79 0
GMがFOするのが伝統ですw

22 :名無しになりきれ:2011/08/14(日) 23:30:17.49 0
結局よくわからないまま終わりか。

23 :名無しになりきれ:2011/08/15(月) 02:06:08.20 O
>>21
FOもなにも初めから立て逃げじゃないか

24 :名無しになりきれ:2011/08/16(火) 00:56:25.63 0
>>23
昔学園もの世界観というスレがあってな・・・

25 :名無しになりきれ:2011/08/16(火) 01:26:26.83 0
素直な>>2萌え。

26 :名無しになりきれ:2011/08/16(火) 23:12:17.78 0
学園テンプレ

名前:(名前の一部に必ず「学園」を含める事)
性別:(共学/男子/女子)
年制:(何年制でも可)
年齢: 歳〜 歳(早生まれとかは適当に)
クラス数:
総生徒数:
校訓:(教育方針みたいなもの。あまり多過ぎないように)
特徴:(スポーツ、勉学、芸能等何でも)


27 :名無しになりきれ:2011/08/17(水) 13:09:16.17 0
それ見た限り、各々キャラに校訓がテンプレにあるってことは
ひとつの学園としてじゃないんだな。


28 :名無しになりきれ:2011/08/17(水) 18:32:54.21 0
1つの「学園」が1キャラなんじゃにい

29 :名無しになりきれ:2011/08/17(水) 18:44:05.21 0
校外では憧れのお姉様を、校内では箒に乗って熾烈な生存競争を演じる帆女子学園
旧仮名旧漢字で授業を行うと噂される暑卯学園
曲がり角でぶつかって頭がもげるのが日常のゾンビ学園
個性的な学園が並び立つ文教地区の平和はしかし長くは続かなかった
突如として学園たちに牙をむく近隣住民
しかしそれは某交通機関の仕組んだ罠だった…っ

30 :名無しになりきれ:2011/08/18(木) 23:46:14.74 0
どういうスレなんだか

31 :部長:2011/08/19(金) 01:54:13.30 0
文化部の部室棟の一角。『NNDM部』と書かれた貼り紙のついた扉。
中に入るとそこは机と椅子が申し訳程度にあるだけの、がらんとした空間。
そこで仁王立ちするのがこの俺!
この部、N2DM(エヌエヌディーエム)部を立ち上げたこの俺!
惜しみない敬意と賞賛の気持ちを込めて、『部長』と読んでくれ!

「暇だ!」
そうやって叫んだのも俺。だって暇なんだもん。しょうがないだろ。
そもそもN2DM部とは、NaNDeMo部のこと。
依頼されたことを何でもやろう!その名目で設立された。
なにか依頼したいことがある者は部室に直接来るか、
扉横に設置された『依頼BOX』に投書して貰うことになっている。
部の申請は下りなかったからこの部室は勝手に使ってるんだけどな!
だ、だが部員は俺だけってわけじゃないぞ!ほ、ほんとだぞ!

これは、俺を中心としたN2DM部の成功を書いた物語である!
…そのはずだ。

「暇だ!」
もう何回叫んだだろう。依頼が来なけりゃ、我がN2DM部も何もやることがない。
依頼BOXも五分に一回はチェックしてるさ。何も入ってないけどな!
おかしい。しっかり学校掲示板にデカデカとポスター貼ったぞ!何故依頼が来ない!
やはりあれか!俺の絵が下手くそなのが悪いのか!くそ!みんな死ね!
部室の中でうろうろしていると、誰かが部室の近くに来た気配。
そして、『カタン』という音。これは紛れもなく、手紙を入れた音じゃないのか!
「もしや!もしやもしやもしやもしや!」
俺はBDASHで扉を開く。そこにはもう人影はなかった。すぐに依頼BOXを確認する。
その中には!あった!あったんだ!一枚目の投書が!記念すべき!第一回目の依頼!
「よし!あ、開けるぞ!」
興奮しながらその手紙を開いた。その内容は――>>32

32 :名無しになりきれ:2011/08/19(金) 10:35:26.14 0
          _____
         / ヽ____//
         /   /   /
        /   /   /
        /   /   /
       /   /   /
       /   /   /
      /   /   /
       ̄ ̄ ̄ ̄ ̄











       | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|
       |                    |
       |                    |
       /    ̄ ̄ ̄ ̄      /_____
       /              /ヽ__//
     /     氏  ね      /  /   /
     /              /  /   /
    /   ____     /  /   /
   /             /  /   /
 /             /    /   /
  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄/   /   /

33 :名無しになりきれ:2011/08/20(土) 01:07:23.13 0
ここはこういうスレなの?

34 :部長:2011/08/20(土) 02:25:49.61 0
>>32
「ちくしょーーーー!!」
俺は力の限りに叫んだ。俺の期待を!期待を!返せよ!返せよぉ!
そりゃそうだよな!わかってるよ!俺キモいよな!みんな俺のこと避けてるもん!
でもさ!死ねはないんじゃないかな死ねは!いや氏ねか!どうでもいいよ!
「ちくしょう!ちくしょお!ちくしょー!」
俺はその手紙をビリビリに破く。そしてゴミ箱に投げつけた。
当然、バラバラになった紙くずを投げてゴミ箱に上手く入る訳もなく。
ちょっと恥ずかしそうな顔をしながら拾い集める俺。自分で言うのもなんだが何やってんだ。

>>33
直後、扉をノックする音が聞こえた。依頼者か、と喜び勇んでそちらを向く。
扉の向こうから顔を出したのは、教師だった。
「な、何をしているのかって?え、あ、いや、そのですね、部としての認可は
 下りなかったんですけども、一応こちらで部活動を行わせていただいてまして、
 はい、困ってる方への助けになろうという理念でございまして、はい、はい。
 とりあえず部屋一室借りている状態でございまして、はい、掃除もしておりますこから、
 その……」
はっきり言って不法占拠だ。ここでの法とは校則のこと。他はない。
「だ、だから!こ、ここ、こういうトコなんです!ご了承お願いします!」
あまり納得しきっていない風な教師を無理やり締め出す。鍵もかけとこう。

振り返る。この部室内には俺以外の部員が――お、俺だけじゃないって言っただろ!
どうしてこんな部に入ってくれたか…は、まぁ部員の方から説明があることだろう。
「思い返すと、やはりプロモーションが悪かったのかもしれないな。
 皆の意見を聞かず、販促活動を俺1人でするのはまずかったようだ。
 …そこでだ!」
俺は机を大袈裟に叩く。
「どうすれば依頼が来るのか、皆の意見が欲しい。これは俺からの依頼でもある」
そう言って、俺は周りを見渡した。
「この俺がこんなに下手に出てんだからさ!なんか意見出してみろよ!」

▼N2DM部・第1依頼▼
依頼者:部長
依頼内容:どうすれば依頼が来るのか

依頼解決への情報提供、受付中!

35 :名無しになりきれ:2011/08/20(土) 15:24:35.07 0
依頼:北海道栗山町に存在する最恐の心霊スポットの調査と真相の究明

参考
http://www.youtube.com/watch?v=XYDARLNrvc0

36 :護毛塚獣四郎:2011/08/21(日) 18:55:56.10 O
>>34
きめぇんだよ便所飯
俺ちゃん様にひざまづけよ

37 :小羽 鰐 ◆DeLd.MSvGY :2011/08/21(日) 20:01:55.55 0
>>34

――――

スッ、と。まるで忽然と現れたかの様に、机の横に設置された席の一つから腕が挙がった。
そして、その挙手の整然とした所作とは逆に、酷くゆったりとした動作でその人影の上体は起こされる。
その挙動により、肩口で切り揃えられシャギーの入った銀髪は、重力に従い軽く垂れ、
窓から差し込む陽光を反射し、銀色の粒子が放たれたかの様な錯覚を見る者に覚えさせる事だろう。
やや長めの前髪の下に見える瞳は氷の結晶の如く怜悧で、整った顔全体の造詣と合わせて
所謂「不良生徒」の様な雰囲気を纏わせている。
しかしながらその雰囲気は粗野なチンピラの様な物ではなく、例えるならば野生に生きる狼を髣髴とさせる物であった。
十全の美。その整った容姿においてただ一つ違和感を上げるとするならば
――――それは、その人物が起き上がった直後に装着した、机の上に置かれているメガネだろう。
度の強いそれは俗に言う“瓶底眼鏡”であり、そのアクセント一つによって、挙手をした人物

――――N2DM部【書記】「小羽 鰐(こは わに)」。

その少女が持つ狼めいた美しさは、綺麗さっぱり霧散させられていた。

まるで机と一体化でもするかの如くに突っ伏していた小羽は、
腕を枕にしていた事で若干赤くなっている頬を気にする事も無く「部長」の方へと
瓶底眼鏡の下にある視線を向けると、眠たげな声を出す

「……部長。依頼が欲しいなら、暇そうな人に現金をばら撒いて
 依頼してくれる様に頼むといいと思うっす。
 そうすれば部長も幸せ、お金貰った人も幸せのウィンウィンの関係になれると思うっす」

狼の如く怜悧な容貌と、瓶底眼鏡。下っぱ口調とややえぐい発想。
そんなチグハグな少女が何故この部活にいるかといえば、まあ以前この騒がしい「部長」と
一悶着起こしたからなのだが、それを語るのは後の機会とすべきだろう。

>>35

「あ、そういえば」

そうして挙手をした腕を下ろし一度伸びをした小羽は、数秒の後何かを思い出したかの様に
ふらふらと部室の隅へと歩いていくと、そこに置いてあった梱包された紙袋を持ち部長の前に差し出す

「……三日くらい前に、オカルト研究会の人達から部長宛に荷物が届いてたの忘れてたっす。
 この学校で北海道の心霊スポット並みの心霊スポットを見つけたいとか言ってた気がするっす
 ちなみに、中身は参考資料のホラー動画らしいっすけど、私は見てないっす」



38 :護毛塚獣四郎:2011/08/21(日) 21:05:56.65 O
>>37
すげーふけだな。埃か?髪洗えよ。

39 :部長:2011/08/22(月) 01:53:59.78 0
>>35>>37
俺の『依頼』。ぶっちゃけちょっと強引だったかなと思ったが、上がる腕があった。
「おぉ!クロ子よ!やはりこういう時に頼りになるのはお前しかいないな!」
この『クロ子』というのは俺がこいつに勝手につけたあだなである。
由来…は別に説明する必要ないよな。尚、言っておくが初対面の時から呼んでいる。
本人はあまり好きではないようだが、俺は何も気にすることなくその名で呼ぶ。

>「……部長。依頼が欲しいなら、暇そうな人に現金をばら撒いて
> 依頼してくれる様に頼むといいと思うっす。
> そうすれば部長も幸せ、お金貰った人も幸せのウィンウィンの関係になれると思うっす」

「なるほど、流石クロ子だな!」
そう言って俺は財布の中身を確認する。昨日仕送りが届いたばかりだから余裕あるぞ。
俺は寮暮らしとはいえ仕送り貰わないとやっていけないしな。バイト辞めたし。
財布の中には2万ほど。いくら握らせればいいんだ?相場がわからん。
「では、これでこの依頼は終了だ!」

▼N2DM部・第1依頼▼
完遂!

って、
「んな訳あるかぁ!どうして俺がなけなしの財産を捻出しなくてはならない!
 ウィンウィンとは言うが色んな意味で俺負けてんだろどう考えても!」

▼N2DM部・第1依頼▼
完遂→保留

>「あ、そういえば」
>「……三日くらい前に、オカルト研究会の人達から部長宛に荷物が届いてたの忘れてたっす。
> この学校で北海道の心霊スポット並みの心霊スポットを見つけたいとか言ってた気がするっす
> ちなみに、中身は参考資料のホラー動画らしいっすけど、私は見てないっす」

「それを早く言えーーーーっっ!」
クロ子からその紙袋を強引に奪い取り、適当に破って中身を取り出す。
そこに入っていたのはDVDと、それから手紙。まず最初に手紙に目を通す。
そこに書いてあったのはさっきクロ子が言ったことほぼその通り。
何故それに参考資料が必要なのかはわからんがとりあえず見ないわけにもいかんだろう。
「ちょっと待ってろ!」
部室から出、視聴覚室からプレイヤーとモニターをパク…じゃなくて借りて戻ってくる。
そして、昼間っからホラー動画鑑賞会が始まった。何やってんだ俺ら。

「…このおっさんって胡散臭いよなぁ」
しみじみと呟く。昔からよくTVで見るが何言ってるが聞き取りづらいし。
「ともかく!依頼としてはいいだろう!心霊スポットの発見、か!
 受理しよう!探そう!このとんでもなく広い校内だ、きっと見つかるさ!」
依頼を受けることに決まった。結局今のホラー動画は何のために見たんだろうか?

▼N2DM部・第2依頼▼
依頼者:オカ研
依頼内容:校内心霊スポットの発見

依頼解決への情報提供、受付開始!

40 :部長:2011/08/22(月) 01:54:23.79 0
さっき、広い校内、と言っただろう?実際、この校内すごく広いのだ。
そもそもが規模が桁違い。この学校、小中高一貫教育なのだ。生徒めっちゃ多い。
しかも「個性を伸ばす」とか言ってるせいでとんでもなく色んな施設があるのだ。
高等部二年だから…10年ちょいか。その間ここに通い続けてきた俺でさえ、
行ったことないところとか余裕である。ていうか広すぎんだよこの学校。
その分、めちゃくちゃ頭いい奴とか、めちゃくちゃ運動が出来る奴とか…要は、
『何か取り柄がある』奴が多くて、その取り柄が飛び抜けてることが多いな。
何の取り柄もない奴なんか俺くらいだろ。泣いてないぞ!泣いてないんだからな!

「とりあえず、今日はN2DM部は解散!各々情報収集に当てるのだ!
 夜までに、何か情報集めておけ!あるだろ!七不思議とかさぁ!
 そんでもって深夜!この部室に集合だ!丑三つ時だから、深夜二時だな!
 寮の門限?家の門限?そんなの知るか!朝の学校?眠気はガッツで補え!
 やはり心霊スポット巡りは深夜に決まってんだろ!全員参加だ!
 分かったな!よし!解散!異論は認めん!」
わりと一方的にまくし立てて解散を告げる。さぁ頑張れ!聞き込みは探偵の第一歩だ!
俺?あぁ、俺はここで二時まで時間潰してるつもり。懐からPSPを取り出す。

そして、夜。
「全員集まったな?よし、出発するぞ!誰か、それっぽい場所の情報、
 手に入れてきた奴はいないか?とりあえず、そこに向かうぞ!」
意気揚々と先頭切って扉を開ける俺。流石に真っ暗だな。そりゃそうか。
懐中電灯を取り出して点灯。顔の下にやって怖がらせるのとか絶対やったことあるだろ?
「そこで幽霊出なくていいんだよ。そもそも出ないだろ、そんなのいるはずない。
 だけどとりあえずそこに行ってみようぜ。そんでもってそれっぽく小細工して。
 後は、俺たちで勝手に話を作って、それを噂としてもっともらしく流せば。
 ――心霊スポットの、出来上がりだろう?」
心霊スポットなんて、全部噂さ、都市伝説さ。
こっちで、作っちまえ。

41 :名無しになりきれ:2011/08/22(月) 02:10:53.35 0
丑三つ時の校内をしばらく歩いていくと、突然墓地に出ました。
墓石もあるけど芝生や低木もある小洒落た庭園風設計の適度に古びた墓地です。
中の方から歌声が聞こえてきますよ。

42 :梅村遊李 ◆89ggxEkiHQ :2011/08/22(月) 19:12:45.02 O
>>41「そこの不審者たちー。何してるんだー。」
深夜の学園内にある墓地付近にたむろしているN2DM部一行の背後からまったくやる気の無い声が響く。
声の主は電灯を持ってトコトコと歩いて来ると、光をN2DM部一行に向けた。
「なんでェ。なんでも屋の方々じゃありませんか。こんな時間にいったい何をやってるんでィ?」
不思議そうに質問を投げかけるのは、高等部1年生にして風紀委員のNo.2を務める梅村遊李(うめむら ゆうり)である。
幼い顔つきで中学生にも見間違われる事もあるが、中身はドス黒、ドS野郎である。
彼が何故高等部1年生でありながら風紀委員のNo.2の座にまで上り詰める事が出来たのか…。
そう、それは全て彼のコネである。
彼の強力なコネと綿密な計画によって強引に風紀委員No.2の座を手に入れたのだ。
「まさかアレですか?心霊スポットデートですか?
 勘弁して下さいよ旦那ァ…リア充丸出しでウザったいこと山の如しなんですけど。」
ゴソゴソと懐に手を突っ込むと携帯と手錠を取り出し、ニヤニヤしながら部長の前でブラブラさせる。
「さ〜て旦那。ここで選択肢を与えましょう。
 大人しく俺に捕まって取り調べ室で優しく取り調べを受けるか…それとも、うちの怖〜いボスをここに召還して鉄拳制裁を受けるか…」
取り調べ室というのは風紀委員が所有する、その名の通り取り調べをする部屋なのだが…完全に遊李のプライベートルームになりつつある。
遊李の言う「ボス」というのは風紀委員長の事であり、遊李ですら頭の上がらない恐ろしい人物である。
「ボスに鉄拳制裁を受けるくらいなら俺に取り調べを受けた方が数万倍楽だと……ん?」
ここまで話してようやく気付く。
先程から歌声が聞こえてくるのだ。
それも墓地の中からである。
「旦那ァ、あの歌声も旦那のお仲間でしょ?さっさとこっちに連れて来てくだせェ。」

43 :名無しになりきれ:2011/08/22(月) 21:25:44.02 0
オイデ・・・オイデ・・・

44 :小羽 鰐 ◆DeLd.MSvGY :2011/08/22(月) 23:31:14.79 0
生来快活なのか、或いは変な物でも食べてテンションのゲージが振り切れたのか。
大声で騒ぐ部長が見てないかの様に意図的に無視すると、小羽 鰐はゆるゆると立ち上がり
部室の隅に放置されていたダンボールを漁る。

「えーと……羊羹、羊羹っと」

そして、先ほどまで座っていた席に座りなおすとダンボール箱から取り出した
「羊羹」の銀紙を器用に剥ぎ、汗を流しながらモニターを準備する部長を
瓶底眼鏡の奥の瞳で眺めつつそれを食べ始める。
ちなみに小羽が食べ始めたこの羊羹、当然小羽自身が持ち込んだ物である。

……

「なんか、恐怖ものの資料にしては怖くないっすね」

感想:微妙
なにやら生ぬるい時間を過ごしてしまった様に感じた部活の面々は、
各々好き勝手に部室から出て行く。久しぶりのまとも(?)な依頼のせいか
部長は高揚している様だが、ビデオで温くなった部員達の様子をみれば
恐らくは部長の指示とおりに夜の校舎に来る者は極めて少数となるだろう。

「……まあ、いくらなんでも二時は遅すぎっすね。
 ぼっちの部長を見るのも面白そうだから私は行くっすけど」

ビデオを見終えた小羽は小さくそう呟くと、部長がゲームを始めたのを尻目に、
羊羹1袋を完食すると指先をペロリと舐め、他の部員と同様に部室を出て行く。
向かう先は「第十二宿直室」。無闇に大規模なこの学園が、
まだ科学によるセキュリティの恩恵を受けていなかった時代に、
警備員代わりの教員が宿泊する為に建設された部屋の一つである。
そして今は完全に使われておらず、専ら小羽の私室の如く扱われている部屋でもある。
部屋に入るなり鍵を閉めると、何故か設置されているエアコンを地球温暖化とはなんぞや
という具合にガンガンかけ、清潔なせんべい布団に寝転がった。


45 :小羽 鰐 ◆DeLd.MSvGY :2011/08/22(月) 23:32:23.81 0
夜。校舎の電気の多くは消され、普段は喧騒に満たされている空間には
静謐とした無機質な空気が流れていた。

>「全員集まったな?よし、出発するぞ!誰か、それっぽい場所の情報、
>手に入れてきた奴はいないか?とりあえず、そこに向かうぞ!」

「部長。何で大勢人が居るみたいに喋ってるっすか? 今いるの自分と部長だけっすけど」

無駄に元気な部長に、どこから持ってきたのだろうか、
手にハンディカメラを持った小羽は、悲しい現実を突きつけてみる。
そう、結局時間に間に合う様に来たのは自分と部長だけだった。
他の部員は後から遅れてくるのかもしれないが――――少なくとも今は見えない。

「まあいいっす。とりあえず私の聞いた怖い話は、「トイレの花子氏」くらいっすね。
 人気の無いトイレ、毎日昼になるとそのトイレの個室から何かを租借する様な音と
 香ばしい食べ物の匂いが香ってくるらしいっすよ」

なにやら酷く悲しい気がする怪談を語る小羽。
ちなみに彼女の服装は緑色のジャージである。色気の欠片も無い。
そして当然というべきか、その怪談は採用されなかった。
一度大きくあくびをした小羽は、そのまま続けられる部長の演説を眠そうな瞳で聞く姿勢に入った。
……といってもビン底眼鏡なのでその目は見えないのだが、

>「そこで幽霊出なくていいんだよ。そもそも出ないだろ、そんなのいるはずない。
>だけどとりあえずそこに行ってみようぜ。そんでもってそれっぽく小細工して。
>後は、俺たちで勝手に話を作って、それを噂としてもっともらしく流せば。
>――心霊スポットの、出来上がりだろう?」

「はあ。なんか、悪役みたいっすね」

最終的に「部長」の提案はないなら自分で都市伝説を作るという物だった。
小羽はハンディカメラを部長に向けて構え、校舎の廊下を歩きながら撮影しつつ、
興味が薄い様子でそう応えた。その時

>「そこの不審者たちー。何してるんだー。」

聞こえてきた声と、照らされた懐中電灯の光。
それを認識した小羽は眉を潜める。見ればそこには一人の少年が立っていた。

>「まさかアレですか?心霊スポットデートですか?
>勘弁して下さいよ旦那ァ…リア充丸出しでウザったいこと山の如しなんですけど。」

その少年はなにやらぺらぺらと詐欺師のように親しげに小羽達に語りかけてくる。
学校行事にあまり興味の無い小羽は、初めは「この人誰っすか?部長の数少ない友達っすか?」などと
適当に流していたが、やがてかけられたデート疑惑に対し、少年に侮蔑の色が混ざった言葉を送る。

「可哀想な事を言うなっす。本気でこの部長に彼女が出来ると思うっすか?」

若干侮蔑の対象が部長に向かっている気がするのだが、気のせいだろう。

46 :小羽 鰐 ◆DeLd.MSvGY :2011/08/22(月) 23:33:04.22 0
その間にも少年は携帯と手錠を取り出し、半分脅迫めいた台詞を吐く。
最も、実際問題としては夜の校舎に入り浸っている部活の面々が悪いのだが、
それはそれという奴だろう。小羽は目の前の少年を土に埋めるまでの過程を妄想し始めたりしたが

>>41>>43

「……あれ?なにか聞こえるっすね。というか、ここ何処っすか?」

見渡せば、周囲はいつの間にか墓場になっていた。
といっても学校の中に墓場なのある筈がないのだから、この場所は墓に似た何処かかのだろう。
学校@n墓。ホラースポットのキメラ状態である。
そして、そんな君の気味の悪い墓場の、おそらくは中央部から歌声が響いていた。
オイデ・・・オイデ・・・という、不気味な歌。

「これ、ひょっとして探してた心霊現象って奴じゃないっすか。
 さっそく任務達成っすね。わーい。早速捕まえに行くっす」

しかしながら、抑揚のない声で言う小羽の表情には怯えの色は無かった。
淡々とそう言うと、部長の背中を墓に向けて押す。

「あ、そうだ。不良とかだったら補導頼みたいから貴方も付いてきてほしいっす」

ついでに、先ほどの少年の背中も押す。声に向けて


47 :部長:2011/08/23(火) 05:15:04.51 0
>>41-46
>「部長。何で大勢人が居るみたいに喋ってるっすか? 今いるの自分と部長だけっすけど」

「はっは。何をおっしゃるクロ子さん。ここには明らかにみんな居るじゃないか。
 そんな、俺の頼みを反故にするような部員ばかりの筈がないだろう!」
いやほら、もしかしたら俺の目に見えていない部員とかがいるかもしれないだろ!
これがほんとの幽霊部員ってな!…お、今俺うまいこと考えたな。後で言おう。
ていうかさ、だって目に見えてるモノを全て信じるのならここにいるのは2人だけ。
何が悲しくてクロ子と2人で夜の学校探検などと洒落込まねばならないのだ。
そういうのはもっとこう…例えば!高等部三年の城ヶ崎先輩(面識ナシ)とか!

>「まあいいっす。とりあえず私の聞いた怖い話は、「トイレの花子氏」くらいっすね。
> 人気の無いトイレ、毎日昼になるとそのトイレの個室から何かを租借する様な音と
> 香ばしい食べ物の匂いが香ってくるらしいっすよ」

「そ、それは…」
クロ子が発見してきた心霊情報に思わず俺は絶句する。つーかただのぼっちだからそれ!
お、俺じゃねぇぞ!確かに俺は誰も昼飯一緒に食ってくれないけどさ!
トイレじゃないから!わざわざ部室棟まで来てここで飯食ってんだよ!
…何言わせんだよ!
「…とりあえず適当に校内でも見て回るか。何かそれっぽいの見つかればいいが」
そんなトイレでの心霊情報流したらそこで飯食ってる奴が可哀想だろう。
クロ子の情報は当てにならなかったし、小さな画面でずっと三択で恋愛してた俺も、
当然ながら有益な情報を持っているはずはない。足を使うしかないだろう。
悪役っぽいなどとクロ子は言う。なるほどダークヒーローということか。
流石わかっているじゃあないか。依頼解決のために影で暗躍する。かっこいいな、俺。
どの程度歩いたろうか。校庭をしばらく行ったところで、背後から声をかけられる。

>「そこの不審者たちー。何してるんだー。」
>「なんでェ。なんでも屋の方々じゃありませんか。こんな時間にいったい何をやってるんでィ?」

「ええい!なんでも屋などと呼ぶな!正式名称、N2DM部と呼ぶがいい!」
俺は、この名前に誇りを持っているのだ。なんでも屋の、更に先を行くのだ。
この名前を発表した時の部員(特にクロ子)の『何言ってんだこいつ』って空気は
もはや一生忘れられそうにないが、それでも俺はこの名前を大事にしていくのだ。

>「まさかアレですか?心霊スポットデートですか?
> 勘弁して下さいよ旦那ァ…リア充丸出しでウザったいこと山の如しなんですけど。」

何を言うかと思ったら…思わず呆れてしまう。俺がクロ子とカップルにでも見えるらしい。
「はっはっは!バカを言え!容姿端麗頭脳明晰さわやか笑顔で幸せ運ぶこの俺が!
 こんな勉三さんみたいな眼鏡かけたのと釣り合いがとれるはずがないだろう!
 俺の隣に並んで絵になるのは…そうだな!高等部三年の城ヶ崎先輩(面識ナシ)
 ぐらいのもんだろう!お前もそう思うだろう?なぁクロ子よ」

>「可哀想な事を言うなっす。本気でこの部長に彼女が出来ると思うっすか?」

「貴っ様ーーーっっ!!」
思わず激昂。前々から思っていたがこいつ俺のこと嫌いなのか?
わりと高い頻度で俺の心を折りにきてる気がするんだけど。
俺がどんなに折れてもめげない鋼のハートだから良かったものの!
「お、おま、お前だって彼氏…」
いたことないくせに、と言いかけて口をつぐむ。それは俺の思い込みであって。
そもそも実はこいつ眼鏡外すと結構、いやかなり美人なのだ。俺は知っている。
そりゃ高等部三年の城ヶ崎先輩(面識ナシ)には劣るが、ハッキリ言ってレベル高い。
つまり彼氏が居ても決しておかしくないのだ。今のところそんな素振りはないが。
ともかく「彼氏居るっすけど」とかふつーにそんなこと言われたらどうする。
俺の惨めっぷりが一層際立つだけじゃないか。だから俺はそれ以上口を開かないのだ。

48 :部長:2011/08/23(火) 05:15:27.47 0
>「さ〜て旦那。ここで選択肢を与えましょう。
> 大人しく俺に捕まって取り調べ室で優しく取り調べを受けるか…それとも、うちの怖〜いボスをここに召還して鉄拳制裁を受けるか…」

「あぁ、どっちも断る」
俺は事も無げに言う。さっきとは打って変わって淡々とした声のトーンで。
「確かにこんな時間に校内をうろつく俺たちは生徒指導の対象かもしれないな。
 それは否定しないよ。でもな、今は深夜二時。"こんな時間に取り調べ"することが、
 ――風紀委員の、することなのかい?なぁ、梅村遊李くんよ」
そういえば、俺には一つだけ取り柄があった。取り柄、と言っていいのかわからんが。
『人の顔と名前は絶対に忘れない』こと。たったそれだけなんだけどな。
「ま、普通の風紀委員ならとりあえずこの場は名前とクラスを押さえといて、
 また次の日にでも呼び出しをかける、ってのが一般的なんじゃねーの?
 別に今から取り調べ受けてもいいけどさ、俺はそのことを告発させてもらう。
 厳格で有名な生徒会長のことだ、君もきつーいお叱りを受けたりしてさ。
 後はほら、君の身辺とかも詳しく調査されるんじゃね?取り調べの様子とかもな。
 なぁ、バイソン。君の黒い噂はいろいろ聞いてるぜ?」
あ、ほら、梅村だから。わかるよな?別にストリートファイターとは関係ないぞ。
そういや海外だとバイソンがバルログでバルログがベガでベガがバイソンなんだっけ?

>「……あれ?なにか聞こえるっすね。というか、ここ何処っすか?」

突然クロ子がそんなことを言い出す。こいつ気づかずについて来てたのか。
「墓地だな。飼育部の奴ら、無駄に小洒落たの作りやがって」
クロ子は学校なんぞに墓地があるのを訝しんでいるようだが、なんのことはない。
この墓石の下にて眠りにつくのは人間じゃあないってことだ。
ったく、畜生共が死んだからって人間様のように弔ってやることはねぇだろ。
燃えるゴミでいいじゃねぇか…って口に出したら飼育部にフルボッコにされたことがある。
ともかく、確かに何か歌声が聞こえる。オイデ・・・オイデ・・・とな。気持ち悪い。

>「旦那ァ、あの歌声も旦那のお仲間でしょ?さっさとこっちに連れて来てくだせェ。」

「んな訳ねぇよ!俺たち2人で出発したんだ!現状仲間はもう居ない!」
ということは、だ。こんな夜中に。墓地からだぞ、墓地から。歌声が、聞 こ え る。

>「これ、ひょっとして探してた心霊現象って奴じゃないっすか。
> さっそく任務達成っすね。わーい。早速捕まえに行くっす」

「そ、そそそそそそそそそそそそそそそそそそそそそそそそそそそそうだな!」
マジかよ!マジかよマジかよ!本当に心霊現象とか聞いてないぞ!
おばけなんかないさおばけなんてうそさって唱歌でも歌ってんじゃん!
頼むから待ってくれ!ここただの学園モノだから!そういうの求めてないから!
尻込みしまくる俺なんか全く気にしないようにクロ子は俺の背中を押す。やめろボケ!
押されてしまっては体が動く。そちらの方に足を踏み出してしまう。
墓石の近くに来た。否が応でもその歌声の発信源にも近づいてしまう。
そこで見たのは――>>49

49 :名無しになりきれ:2011/08/23(火) 08:58:28.08 0
打ち捨てられた携帯音楽プレイヤーから音が漏れていただけだった。

50 :名無しになりきれ:2011/08/23(火) 11:06:01.62 0
歌は携帯音楽プレーヤーから漏れていただけだったのだが――

携帯音楽プレーヤーの周囲がぼうっと光っている。
画面が発する光がプレーヤーを包む濃密な霧のようなもので散乱されているのだ。

更に注意して見ると、方々の墓石の下とおぼしき辺りから
何かほのかに薄青白く光る霧のようなものが沸き出し
ゆっくりと漂い携帯音楽プレーヤーを包む霧に合流しているのだった。

51 :梅村遊李 ◆89ggxEkiHQ :2011/08/23(火) 17:03:06.22 O
>>43-48>「んな訳ねぇよ!俺たち2人で出発したんだ!現状仲間はもう居ない!」
梅村の質問に部長は強く否定するが、その間にも歌声は聞こえてくる。
「嘘はいけねぇぜ旦那ァ。ちゃんと聞こえてんだ。おいでおいでってさっきから気味の悪ィ歌声で呼んでんじゃねぇかィ。」
>「これ、ひょっとして探してた心霊現象って奴じゃないっすか。
> さっそく任務達成っすね。わーい。早速捕まえに行くっす」
と、ここで小羽がサラッと凄い事を言った。
「……心霊現象?ば…ばばば馬鹿な事言っちゃいけねぇよ…。
 し、心霊現象なんて全部科学で解明出来るって上田教授が…」
基本的に怖いもの知らずの梅村にもやはり怖いものはある。
1つは風紀委員長。
もう1つは幽霊や心霊現象といった類のものである。
>「そ、そそそそそそそそそそそそそそそそそそそそそそそそそそそそうだな!」
どうやら部長も幽霊が苦手なようで相当ドモっている。
「だ…旦那ビビり過ぎでさァ。俺は幽霊なんて全く怖くないからね。怖くないけどそろそろ寝る時間だから家に…ん?」
意思とは反対に梅村の足が墓地の中へと向かっている。
>「あ、そうだ。不良とかだったら補導頼みたいから貴方も付いてきてほしいっす」
どうやら小羽が梅村の背中を押しているようだ。
「テメーこの瓶底眼鏡ェ!ふざけんなー!不良だったらいくらでも補導だろうが調教だろうがやってやらィ!
 でもお前…万が一ゆゆ幽霊だったら…」

52 :梅村遊李 ◆89ggxEkiHQ :2011/08/23(火) 17:05:28.34 O
>>49>>50梅村の抵抗虚しく、ついに歌声のするすぐ近くまで来てしまった。
梅村の目にはうっすらと涙まで浮かんでいる。
しかし、そこにあったのは携帯音楽プレーヤーだった。
「………。」
梅村は無言でプレーヤーを眺めると、平然とした表情で部長と小羽に視線を向ける。
「やっぱりなぁ…そんな気がしてたよ。最初から知ってたからね。
 全然ビビってないからね。旦那はホントにビビりなんだから。」
そう言いながら携帯音楽プレーヤーを踏みつけようとした時、梅村は異変に気付いてしまう。
>携帯音楽プレーヤーの周囲がぼうっと光っている。
画面が発する光がプレーヤーを包む濃密な霧のようなもので散乱されているのだ。
更に注意して見ると、方々の墓石の下とおぼしき辺りから
何かほのかに薄青白く光る霧のようなものが沸き出し
ゆっくりと漂い携帯音楽プレーヤーを包む霧に合流しているのだった。
「………び…びび瓶底眼鏡ェ!テメーがこ、こんな所に連れて来たんだ!
 あ、あの墓石の下から沸いてる謎の霧を調べてきやがれィ!」

53 :小羽 鰐 ◆DeLd.MSvGY :2011/08/23(火) 21:46:45.87 0
>>48>>51

>「そ、そそそそそそそそそそそそそそそそそそそそそそそそそそそそうだな!」
>「テメーこの瓶底眼鏡ェ!ふざけんなー!不良だったらいくらでも補導だろうが調教だろうがやってやらィ!
 でもお前…万が一ゆゆ幽霊だったら…」

「何か押してる私の両手が超振動してるっすけど、二人とも大丈夫っすか?」

小羽が触れた二人の男の背中。両掌から伝わってくるその感覚は、
まるで生まれたての小鹿か、或いはチワワかといった具合の超振動だった。
そんな二人に淡々と声をかける小羽だったが……その表情は
心配とは程遠い微笑だった。それも行為に対する故意が見え隠れしている状況を楽しんでいる感じの。
……そうして少年二人の抵抗をものともせず、いよいよ音の根源へと辿り着いた訳だが

>>49>>50

「……」

場に気まずい雰囲気が流れた。三人の眼前に放置されているのは、
ペット用の墓地の中に打ち捨てられた携帯音楽プレイヤー
そこから流れるやたらと雰囲気のある音盛れ
……どうみても幽霊じゃないです。本当にry
それを目視した小羽は、二人の背中を押していた手を離すと、
口に手を当て大きくあくびをした。

「えーと……それじゃお疲れ様っす。また明日部室で会いましょうっす」

そうしてそのまま、何事も無かったかの様に背を向ける。
梅村という風紀委員の今更なしたり顔も、あえてスルーしようとする。が、

>「………び…びび瓶底眼鏡ェ!テメーがこ、こんな所に連れて来たんだ!
>あ、あの墓石の下から沸いてる謎の霧を調べてきやがれィ!」

「何を騒いでるっすか……って……えー」

54 :小羽 鰐 ◆DeLd.MSvGY :2011/08/23(火) 21:47:27.15 0
突如として放たれた梅村の混乱した声。先ほど落ち着きを取り戻した筈にも関わらず
一体何があったのかと小羽が眉を潜め再び前を向くと……そこには実に奇妙な光景が広がっていた。
室内に発生した謎の霧。その霧に不気味に反射した音楽プレイヤーの光。そして

墓石から立ち上る青白く光る霧の様な何か

それは、まさしくオカルトチックな光景だった。
人魂、エクトプラズム。そんな単語が脳裏に浮かんでは消える。
此処に来て、初めて小羽の表情にも警戒の色が浮かび、思わず持ってきた
ビデオカメラをその光景へと向ける。

「いやいやいや、流石の私も墓石を暴くのは出来ないっす。
 ここは男性陣が先に……って言っても、私が動く以外なさそうっすね、これ」

嫌そうな様子で風紀委員の提案を拒否をしようとした小羽だが、
その視線が捕らえたのはすっかりオカルトにやられてしまった様に見える二人の少年。
小羽は一度ため息を吐くと、仕方ないといった様子で発光する墓石の一つへと近づいていき
しゃがみこんでその光に触れようとした。全く恐怖を感じていない様な、
実にワイルドな判断であるが……その直前で、小羽は何かに気が付いたかの様に即座に立ち上がる。

「……部長、風紀委員さん。今すぐしゃがんでみてくださいっす」

そして、二人に背中を見せたまま二人に語りかける。
それはとても真剣な様子で、その行為には何か意味があるのだと思わせる様な言葉だった。

「この霧、鼻が曲がるくらい臭くて暑いっす。あと、なんかやけに酸素が薄いみたいっすから、
 しゃがんだまま空気を大量に吸うと、多分気持ち悪くなると思うっす」

ならば何故しゃがませた

そんなつっこみが聞こえてきそうな雰囲気だったが、小羽はそしらぬ顔でそう言うと、
腕を組み、首をかしげて考え込む様な様子を見せる。

「これ、一体どうなってるっすかね……」

しかしながら、考えても小羽の知識では回答は出ない様だ。

55 :名無しになりきれ:2011/08/24(水) 00:40:32.15 0
テンプレ全然意味なかったんだな。

56 :部長:2011/08/24(水) 05:29:55.70 0
>>49-54
打ち捨てられた携帯音楽プレイヤーから音が漏れていただけだった。
復唱しよう。打ち捨てられた携帯音楽プレイヤーから音が漏れていただけだった。
「俺の恐怖を返せやーー!!」
さっきまで超ビビってた自分が馬鹿らしくなってくる。冷静に考えりゃ当たり前だ。
ねぼけたひとがみまちがえたのさって唱歌でも言ってただろ!そーいうことだ!
忘れたのか捨てたのか知らんがこんなとこにこんなの置いとくなよ!
余計な神経すり減らしちまったじゃないか!ったく、ちゃんとしとけっての!

>「やっぱりなぁ…そんな気がしてたよ。最初から知ってたからね。
> 全然ビビってないからね。旦那はホントにビビりなんだから。」
「嘘をつけい!」
バイソンお前明らかにビビってたじゃねぇか!ややもすれば俺以上に!
確かに俺はビビりかもしれんな!でもな!お前もビビりだ!それは間違いない!
それにしても、本当に人騒がせな音楽プレイヤーである。ジャストポジ過ぎるんだよ。
クロ子なんか呆れて帰ろうとまでしてやがる。おいちょっと待て俺を置いて行くな。
背を向けたクロ子を追いかけようとしたところで、バイソンの様子がおかしい。
「ん?…なんだこりゃ。光ってる…?…霧、みたいなのが漏れ出してんのか?」
その場にある墓石から、光る霧のようなものが溢れ出している。その光景は幻想にも似て。
確かに何が起こっているのか理解不能状態ではあるものの、
とりあえずさっきの歌声が幽霊とかじゃなかった以上何も恐れることはない。
バイソンはなんかまたビビっているようだ。やーいビビりー。

>「………び…びび瓶底眼鏡ェ!テメーがこ、こんな所に連れて来たんだ!
> あ、あの墓石の下から沸いてる謎の霧を調べてきやがれィ!」

「あ、おいコラ何を勝手にクロ子に命令などしているのだ!
 クロ子の所属はN2DM部!つまり命令するのは俺だけに与えられた権利なのだ!
 なぁクロ子!…ナチュラルに俺を無視するんじゃない!」
クロ子はバイソンの言葉に従ってその青白い霧に手を伸ばす。
俺も行こうとしたが足が動かない。なぜかと思えば足がガクガク震えている。
やっぱり俺もまだビビってたようだ。おかしいなー。

57 :部長:2011/08/24(水) 05:30:07.81 0
>「……部長、風紀委員さん。今すぐしゃがんでみてくださいっす」

こんな状態の中真剣な口調でそんなこと言われたら従うしかないだろう。
震える足に脳から脊髄を通って電気信号が
送られ、強引に膝が曲げられる。

>「この霧、鼻が曲がるくらい臭くて暑いっす。あと、なんかやけに酸素が薄いみたいっすから、
> しゃがんだまま空気を大量に吸うと、多分気持ち悪くなると思うっす」

「ウェッホ!ゴホッ!き、貴っ様ーーっっ!!」
慌てて立ち上がるもちょっと吸っちまったじゃねぇか!なんだよその必要のない罠!
ちょっとでもクロ子を信じた俺が馬鹿だったってのか!そうかもしれんけどさ!
こいつ酷いぞ!改めて思うけどこいつ相当酷い!俺の心のライフはとっくに0よ!

>「これ、一体どうなってるっすかね……」

「知るかよ!知ってもお前には教えねぇよ!」
やさぐれる俺。だって本気で悔しかったんだぞ。泣いてもおかしくないぞ。
幸か不幸かさっきの無駄な膝の曲げ伸ばし運動で足がわりと動くようになった。
俺も軽く足を踏み出し、その霧に手を触れてみる。うん、全然わからん。
「青白い霧…強い臭気、軽い有毒性。硫酸ミスト?んな訳ねぇよな、工場かっつーの」
これの正体を暴きたいなら、つまりこの墓石を動かせばいいのかもしれないが、
ちょっと罰当たりだろう。いくら畜生だからって墓を暴くのは流石の俺でも引く。

ていうかよーく考えると何故俺らがここまでしなくてはならないのか。
「…俺に1つ、提案があるんだが」
そのことに気づいてしまうと、もう俺の中の弱気な部分が顔を出しまくる。
「もう帰ろうぜ!なぁ!帰ろう!こんなの俺らにはどうしようと出来ないって!
 もう完全にオカ研への土産話は出来たしさ!録画もあるから調査としては十分!
 この話が広まればこの時間のここに来るやつも増えるから、きっと解決するだろ!」
かなり後ろ向きな提案なのは分かってるけれど。しょうがねぇだろ!
ビビり2人に女1人でどうしろってんだよ!こんな超常現象!

58 :名無しになりきれ:2011/08/24(水) 06:54:08.57 0
そのとき、誰ともなく気づいた事があった。

―─自分の携帯電話がBluetooth通信(無線通信)を始めている―─

もちろん、この場にいる者は全員、自分のケータイに触れてはいない。
そんな状況ではなかったから。
にも関わらず、手元の携帯はどこからかデータパケットを受信し続けている。

「“juuden_site.mp3”を受信しています……」

ケータイを開くと、ディスプレイにはそんな文字列の表示が見えた。
それと共にデータ受信時のシュールなGIFアニメーションが画面上部でループしており、なんだかマヌケな光景だった。
そして、件のmp3ファイルの受信完了を確認したとき、墓の前で鳴り続けていた携帯音楽プレイヤーは沈黙した。

59 :梅村遊李 ◆89ggxEkiHQ :2011/08/24(水) 15:09:40.25 O
>>53-54>>56-57
>「あ、おいコラ何を勝手にクロ子に命令などしているのだ!
 クロ子の所属はN2DM部!つまり命令するのは俺だけに与えられた権利なのだ!
 なぁクロ子!…ナチュラルに俺を無視するんじゃない!」
小羽に勝手に命令を出した梅村にそう叫ぶ部長だが、本人の足は相当震えているようでその場から動こうとしない。
「まあまあ旦那ァ、落ち着いて下せェ。今はそんな事言ってられる状況じゃありやせんぜ?
 ってか旦那足震え過ぎですよ?ガクガクじゃないですか情けねェ。」
当然、そういう梅村の足も負けじとガクガクしていた。
小羽は梅村の命令を一度拒否するが、怯える二人を見てやれやれといった表情を浮かべながら墓石へ近付く。

恐れる様子を全く見せず、しゃがみこみながら平然と光に触れようとする小羽。
が、光に触れる直前に小羽は立ち上がった。
>「……部長、風紀委員さん。今すぐしゃがんでみてくださいっす」
言われるがままにしゃがみ込む梅村。
「な…なんだっていうんでィ?…くさっ!」
言われた通りしゃがみ込んだ梅村は空気を鼻から吸った途端に強烈な悪臭に襲われる。
>「この霧、鼻が曲がるくらい臭くて暑いっす。あと、なんかやけに酸素が薄いみたいっすから、
 しゃがんだまま空気を大量に吸うと、多分気持ち悪くなると思うっす」
「……旦那ァ。この瓶底眼鏡調教しても良いですかィ?
 めっちゃ腹立たしいんですけど。憎しみが溢れ出してくるんですけど。」
表情には出さないが確実にイライラしているようだ。

60 :梅村遊李 ◆89ggxEkiHQ :2011/08/24(水) 15:12:10.01 O
>「これ、一体どうなってるっすかね……」
>「知るかよ!知ってもお前には教えねぇよ!」
>「青白い霧…強い臭気、軽い有毒性。硫酸ミスト?んな訳ねぇよな、工場かっつーの」
少年探偵団でもない限り青白い霧の正体を暴く事は難しいようで、皆暫しの沈黙に入る。
その沈黙を破ったのはやはり部長だった。
>「…俺に1つ、提案があるんだが」
>「もう帰ろうぜ!なぁ!帰ろう!こんなの俺らにはどうしようと出来ないって!
 もう完全にオカ研への土産話は出来たしさ!録画もあるから調査としては十分!
 この話が広まればこの時間のここに来るやつも増えるから、きっと解決するだろ!」
「賛成でさァ。こんな所に居たって時間の無駄だ。…あ!!」
>>58部長に同意をした梅村は急に何かを思い出したかのように携帯を取り出した。
「やっべェ。ボスに巡回の定時報告すんの忘れてたぜ。どうしてくれるんでィ。旦那達のせいですよ。」
バツの悪そうな顔をしながら携帯を開くと…
>手元の携帯はどこからかデータパケットを受信し続けている。
>「“juuden_site.mp3”を受信しています……」
携帯をまったくいじっていないのにも関わらずディスプレイはたしかにそう表示している。
「なんでィ…これ?」
>それと共にデータ受信時のシュールなGIFアニメーションが画面上部でループしており、なんだかマヌケな光景だった。
>そして、件のmp3ファイルの受信完了を確認したとき、墓の前で鳴り続けていた携帯音楽プレイヤーは沈黙した。

61 :梅村遊李 ◆89ggxEkiHQ :2011/08/24(水) 15:14:05.64 O
「………止まった。一体全体何だっていうんでィ。」
事態は把握出来ていないものの、梅村の中から幽霊に関する恐怖心は完全に消え去り、ボスへの恐怖心が新たに生まれていた。
「はぁ…絶対にドヤされる…。…これは責任取って旦那達にも協力してもらわなきゃなりませんねェ。」
梅村はジト目で部長と小羽を睨みながらボスに連絡を取り始めた。
「もしも〜し。梅村です、すいやせん連絡が遅れちまいました。
 ええ、こちらは特に不審な人物は見当たりませんでしたぜ。
 え?あ、はい。了解しやした。お休みなさ〜い。」
どうやら今日はボスの機嫌が良かったらしくドヤされずに済んだらしい。
「助かったぜィ…。今回は特別に旦那達の事は見逃しやしょう。その代わりと言っちゃなんですが、ちょっとばかし俺達に手を貸して欲しいんでさァ。」
そう言うと2人に背を向け歩き出す。
「今日はもう遅いんで詳しい事は明日旦那達の部室で話します。あ、瓶底眼鏡、テメー後でたっぷり調教してやるからな。覚えてろィ。」
捨てセリフを吐き、梅村は学園を後にした。



次の日、N2DM部には梅村の姿があった。
手にはコンビニ袋がぶら下げられている。
「メロンクリームソーダ1つ。」
部室の椅子に座りながらメロンクリームソーダを注文する。
が、メロンクリームソーダなんて部室に都合よく備えられているわけが無い。
「なんでェ…風紀委員No.2様が来るって言ってたんならメロンクリームソーダぐらい用意しといてくれよー。」
そう言ってコンビニ袋からコップとメロンソーダ、ハーゲン○ッツを取り出し、自作メロンクリームソーダを作る。
「やっぱり買ってきて正解だったぜィ。おい瓶底眼鏡、羊羹俺にも寄越せィ。」
もう完全に自分の家状態である。

「さて、それじゃあそろそろ本題に入りますぜ。あ、その前に」
メロンクリームソーダを飲み干すと、珍しく真剣な眼差しを見せる。
「この話は風紀委員の連中以外に口外することは厳禁でさァ。友人は勿論、教師陣にも…それだけは守って頂きたい。
 勿論、この件を綺麗に片付ける事が出来たら旦那達にも多少の報酬ぐらいは出しますぜ。
 深夜徘徊をチャラにするぐらいじゃちょっと申し訳ねぇ要件なんでね…。
 で、この話乗りますかィ?乗りませんかィ?」

62 :小羽 鰐 ◆DeLd.MSvGY :2011/08/24(水) 23:53:43.21 0
>>56>>57
>>59->>61

>「知るかよ!知ってもお前には教えねぇよ!」
>「……旦那ァ。この瓶底眼鏡調教しても良いですかィ?
 めっちゃ腹立たしいんですけど。憎しみが溢れ出してくるんですけど。」

「いけずっすね。よよよ」

小羽は湧き上がる怒りを隠さない二人の態度を見て、
ジャージの袖部分で顔を半分程覆い、時代劇的に「よよよ」とポーズを取る。
瓶底眼鏡&けだるげな無表情と組み合わせる事によって、その挙動はもはや挑発の域に達していた。
ちなみに「よよよ」は思い切り口で言っている。

――――そしてそんな混沌極まりない状況の中で口を開いたのは「部長」であった。

>「…俺に1つ、提案があるんだが」
>「もう帰ろうぜ!なぁ!帰ろう!こんなの俺らにはどうしようと出来ないって!
>もう完全にオカ研への土産話は出来たしさ!録画もあるから調査としては十分!
>この話が広まればこの時間のここに来るやつも増えるから、きっと解決するだろ!」

「……まあ、『部長がそれでいいと思うなら』それもいいと思うっすよ。
 多分っすけど、この現象は私達だけで解決するのは難しいと思うっすから」

意外にも、部長のヘタレた判断に対し小羽は否定の言葉を述べたりはしなかった。
それどころか、部長本人が最善と思うなら従うという、肯定的な意見さえ見せる。

>「賛成でさァ。こんな所に居たって時間の無駄だ。…あ!!」

梅村も同じく肯定する意見を見せる。つまり、
現状において、部長のを否定する者は存在しなくなったという訳だ。
確かに、今の状況は科学の専門家でもいない限り説明は難しいだろう。
いくら話し合った所で文字通り時間の無駄になる可能性は高い。
そんな事もあってか、状況が解散へと流れ始めた頃

>「なんでィ…これ?」
呟く梅村の声。だが、小羽もそれを気にする事は無かった。

「なんすかこれ……!」

自身の携帯電話を見て固まる。信じられない事に、小羽の携帯電話がいつの間にか
大容量のデータパケットを受信し始めていたのだ。
確認した瞬間、小羽は即座に携帯電話の電源を切る。額に浮かぶのは汗。

「……私、パケット定額サービスに入ってないんっすけど。
 これ、通信料とか幾らくらいかかるっすかね」

深いため息をつく小羽。どうやら、オカルトに対する恐怖心は相変わらず皆無の様だ。
むしろ携帯料金が今の通信で増えないかに警戒している。
そんな風に下唇に指を当て、代金の試算をしようとしていた小羽であったが

63 :小羽 鰐 ◆DeLd.MSvGY :2011/08/24(水) 23:54:24.65 0
>「助かったぜィ…。今回は特別に旦那達の事は見逃しやしょう。その代わりと言っちゃなんですが、ちょっとばかし俺達に手を貸して欲しいんでさァ。」
>「今日はもう遅いんで詳しい事は明日旦那達の部室で話します。あ、瓶底眼鏡、テメー後でたっぷり調教してやるからな。覚えてろィ。」

「いやいや。私、今それどころじゃないっすし、部長以外の頼み言を聞く義理もないんすけど。
 それと、そんなに調教したいなら調教申請料10万くらいくれないっすかね?」

梅村の声に反応し、そちらのほうへと振り向く。
彼の放った言葉は何かに対する協力を求めるものであったが、小羽のその言葉に対する反応は淡白であった。
そして、捨て台詞を吐き歩き去っていく梅村背中を見送った後、小羽は部長の方へと向きなおす。
くるりと回った瞬間、ウルフカット気味な小羽の後ろ髪が軽く跳ね、非常灯の光でキラリと光った。

「……何か微妙な空気になったっすし、私は今日は帰るっす。
 ところで部長、夜中の呼び出しにも関わらずけなげにも着いて来てくれた部員に
 アイスとかを奢ると、その日一日いい事があるらしいっすよ」



――――翌日

N2DM部の部室には、先日の宣言とおりに梅村の姿があった。
梅村は泰然自若とした態度で椅子にどかりと座ると、お前はどこの王様だといった具合に
メロンクリームソーダと羊羹を要請していた。

>「やっぱり買ってきて正解だったぜィ。おい瓶底眼鏡、羊羹俺にも寄越せィ。」

「はあ……どぞ。お茶と羊羹っす」

そんな梅村に対し、小羽は文句一つ言う事無く紙皿に盛った、
一口サイズに切られた水羊羹とお茶を置いて差し出す。
その所作は、だらけてはいるものの、極めて丁寧で小慣れている様子が見え隠れしていた。
そうして梅村の机の上にそれらを置くと小羽は、自身の定位置である椅子に座り、
その腕を枕にして部長と梅原の対話を聞く第三者の立場へと移動する。
余談だが、この部室に来客が来た時は、大抵は小羽がお茶請け等の些事の準備をしている。
これも余談だが、今回小羽が梅原に出した水羊羹は賞味期限が三日程切れていたりもする。
しっかり保存されていたので、食中毒にはかろうじでならないレベルだ。

>「さて、それじゃあそろそろ本題に入りますぜ。あ、その前に」
>「この話は風紀委員の連中以外に口外することは厳禁でさァ。友人は勿論、教師陣にも…それだけは守って頂きたい。
>勿論、この件を綺麗に片付ける事が出来たら旦那達にも多少の報酬ぐらいは出しますぜ。
>深夜徘徊をチャラにするぐらいじゃちょっと申し訳ねぇ要件なんでね…。
>で、この話乗りますかィ?乗りませんかィ?」

梅原の口から出されたのは、何やら怪しい依頼の前置きであった。
小羽は腕枕の状態でその言葉を脳内で反芻すると、
「ふあぁ……用件言わずに契約結ぶのは詐欺のテンプレだと思うっすよ」
あくびをしながらそう言い、瓶底メガネの下にある視線を部長に向ける。
どうやら最終的な判断は部長に委ねるつもりらしい。

64 :九條十兵衛 ◆mJkMShtvmg :2011/08/25(木) 03:12:56.52 0
「わけがわからないよ」が父の口癖だった。わかってあげなよ、と僕はいつも思ってた。
人の心は真実と最も遠いところにある。父がどうして失敗したかを考えるにつけ、結論はいつもそこに帰結する。
無能な人ではなかった。むしろ営業マンとしては、優秀すぎるぐらいだった。
父は常に正しさを優先した。正論を徹底した。そしてそのやり方は、顧客には受け入れられなかった。
それだけの話だ。僕は違う。
この学園で、最高の営業マンになってみせる。

「部長ー、外回り終わってきましたぁ。すいません、今週まだ一つも契約とれてないです」

僕がN2DM部の部室に帰ると、どうやら応接中のようだった。こりゃ失敬。
お茶出ししてる小羽ちゃんにすすっと近寄り、耳打ちする。

「ちゃんわに(愛称)、僕にもお茶。冷たいやつね。あの人何?今どういう流れなの?」

昨日は部に帰らずに直帰したから、このお客がどういう手合いなのか僕は寡聞にして知らない。
風紀委員の腕章つけてるから、生徒会関係の人かな?
しかし僕が外回りに出てる間に来客とは……つくづくついてない。

「あ、申し遅れました。僕はN2DM部の営業担当、九條十兵衛(きゅうじょう じゅうべえ)って言います。
 これ、名刺、渡しときますんで、今後ここに御用がありましたらぜっっっったいに僕を通してくださいねっ」

この広大な学園には、連日いくつものトラブルが発生している。人手が足りないってことも多々ある。
そういう需要を嗅ぎつけて、N2DM部をご贔屓にしてもらうべく営業をかけるのが、この部での僕の役目だ。
なんだけど……如何せんネックになるのがこの学園の広さで、とてもじゃないけど一人でカバーできるものじゃない。
ノルマがあるってわけじゃないけど、大見得きって入部した以上、僕の紹介で仕事を持ってきたいものなのだ。

「へえ、心霊現象ですか。いいですねえ、僕の知り合いに"ほぼゾンビ"みたいな奴がいますけど、
 幽霊の遺したデータなんていかにもジュブナイルの香りがしますよ。ヤフオクで売ったら結構食いつくんじゃないですか?」

来客用の羊羹を勝手に切ってパクつきながら、僕は風紀の人のとなりに腰掛ける。
馴れ馴れしいって?いいんだよ!このくらい近いほうが、なんか、心理的な距離とか、アレじゃん!


【よろしくお願いします】

65 :名無しになりきれ:2011/08/25(木) 03:16:10.60 0
>>55
テンプレの人と長文の人とは別だからね

66 :部長:2011/08/25(木) 13:34:04.93 0
>>58-64
>「賛成でさァ。こんな所に居たって時間の無駄だ。…あ!!」
>「……まあ、『部長がそれでいいと思うなら』それもいいと思うっすよ。
> 多分っすけど、この現象は私達だけで解決するのは難しいと思うっすから」

帰ろう、という結末に収束へと向かっていく。2人とも帰ることを了承してくれてる。
なーんかクロ子の言葉にトゲがあるような気もするがたぶん俺の気のせいなのだ。
俺の提案は間違っていないはず。今の戦力とかいろいろ考えた最善の結果だ。

>「なんでィ…これ?」
>「なんすかこれ……!」

「な、なんなんだこれ!」
2人に合わせるように俺も驚きの声をあげる。俺のスマホ、壊れたのかと思った。
だが、他の2人の画面も同じようになってっぽい。何かの受信が始まっている。
「juuden_site…充電して?」
さっきの青白い霧だけだったらまだ超常現象とかじゃなく、自然現象的な何かだと
そう考えることも出来たが、これでそれも消えた。明らかに超常現象だこれ。
そして、受信が完了した時、ずっと流れていた気味の悪い音楽が止まる。
「ディスプレイ消えてんな。ん、ボタン押しても反応なし。電池切れ、か?
 このタイミング…はっ、これを充電しろってこと言ってるのかもな」
思わず拾い上げ、そして呟く。なんかもうビビりとか色々通り越したわ。

>「はぁ…絶対にドヤされる…。…これは責任取って旦那達にも協力してもらわなきゃなりませんねェ。」

「知るか!」
バイソンが報告を忘れていたことなどそれは間違いなくバイソンの不始末であって、
俺たちが文句を言われる筋合いなどない。しかも何だよ協力って。
しかしそうは思っても俺たちは泣く子もあやすN2DM部だ。依頼は何でもこなす。
もしこの協力要請がバイソンからの「依頼」であるとするなら、
それを無下に断ることなど俺たちには最初から無理な話ではあるのだけどな。

>「もしも〜し。梅村です、すいやせん連絡が遅れちまいました。
> ええ、こちらは特に不審な人物は見当たりませんでしたぜ。
> え?あ、はい。了解しやした。お休みなさ〜い。」
>「助かったぜィ…。今回は特別に旦那達の事は見逃しやしょう。その代わりと言っちゃなんですが、ちょっとばかし俺達に手を貸して欲しいんでさァ。」

「…ま、俺たちが深夜の校内を徘徊していたのは紛れもない事実だしな。
 それを見逃してくれるなら色々めんどくさいことなくなるから大変有難い。
 それはさて置いても、手を貸すぐらいはいつでもやってやるよ。
 ――それが、N2DM部だからな」
お、俺今かっこよくなかった?もう少しポーズとか考えて喋ればよかった。
髪をかき上げながら、とかどうだ。んでもって流し目で。イケメンだな。
問題は俺の短く刈り揃えられた髪の毛をかき上げることねーよってことぐらいか!

>「今日はもう遅いんで詳しい事は明日旦那達の部室で話します。あ、瓶底眼鏡、テメー後でたっぷり調教してやるからな。覚えてろィ。」

俺は去って行くバイソンの言葉尻を捉え、
その背中に向かって声を張りあげる。
「ちょ、調教だと!何を破廉恥な!あれか!縄で縛り上げてんでもって――」

>「……何か微妙な空気になったっすし、私は今日は帰るっす。

「あ、やっぱりスルーですかクロ子さん」

> ところで部長、夜中の呼び出しにも関わらずけなげにも着いて来てくれた部員に
> アイスとかを奢ると、その日一日いい事があるらしいっすよ」

「…まぁ考えといてやるよ。今日はご苦労だった。ありがとう、すまない」

67 :部長:2011/08/25(木) 13:35:34.34 0
一応ちゃんと礼はねぎらうんだぞ。このあたりはやっぱり当然のことだと思うのだ。
まぁ声でねぎらうだけでアイスを奢ってやるかどうかは別問題だけどな!

クロ子もその場を去る。そして俺1人になる。もう残ってる理由はないな。
手に握り締められた携帯音楽プレイヤー。なんだか捨てるにも捨てられない。
「…帰るか」
わりと時間経ったか?かなり眠い。めんどくさいから今日は学校サボろう。
そういえば時間遅いけど大丈夫かなクロ子。さすがに女一人歩きするには危険か?
寮生活ならまだいいけど家通いだったらどうすんだろうか。
…とか思ったけどクロ子なら大丈夫だろう。たぶん。いろんな意味で。
とりあえず明日は、オカ研に報告して…バイソンの依頼、か。

翌日。
俺は予定通り学校サボって昼まで眠り。昼過ぎに部室に入ってひたすらゲーム。
終業の鐘が鳴ったところでオカ研に向かい、『校内墓地の怪』を伝えておいた。
丑三つ時になると、校内にある墓地からオイデ・・・オイデ・・・って歌声が聞こえてくる、等。
まさに昨日(厳密には今日だが)遭った出来事だ。何も嘘は言っていない。
経験則から来る俺の大袈裟な語り口に満足したのか、話を聞く奴らは誰も笑顔で。
オカ研部長は心霊スポットと認定してくれた。これで、依頼完遂だ。

▼N2DM部・第2依頼▼
完遂!

68 :部長:2011/08/25(木) 13:36:13.58 0
オカ研からの依頼報酬はたくさんのホラーDVDだった。いらねええええええええ。
帰りに購買に寄ってガリガリ殿を2本購入、溶けないうちにさっさと部室に戻り。
部室の隅にある「俺専用」と貼り紙のしてあるミニ冷蔵庫の冷凍室に放り込む。
この冷蔵庫俺の私物だし、そのためにわざわざ「俺専用」って書いてあるのに
わりと部員みんなふつーに使ってやんの。部長の威厳どこ行ったんだよ!
しばらくしてクロ子が来る。そして、今日の依頼者。バイソンもやって来たのだ。

>「なんでェ…風紀委員No.2様が来るって言ってたんならメロンクリームソーダぐらい用意しといてくれよー。」

「何故いちいちお前の好みを把握してなくてはならないのだ!」
そもそもなんだよメロンクリームソーダて!ここは喫茶店かよ!

>「やっぱり買ってきて正解だったぜィ。おい瓶底眼鏡、羊羹俺にも寄越せィ。」

そんなこと言いながらバイソンが取り出したモノの中で1つ気になるものが!
そ、それは!ミニカップでも300円ぐらいする高級アイスじゃねえか!
しかもそれを大胆にクリームソーダに使うだと!?なんだお前リッチマンか!
ていうかやめろよ!予定狂うだろ!俺が何のためにガリガリ殿を買ってきたと!
昨日クロ子が「アイス」って言ってたから!タイミングを見計らって
そっとガリガリ殿を渡して部長としての威厳を取り戻そうとか思ってたのに!
ハーゲン食ってる前でガリガリ殿渡せるかよ!それ一個で四本買えるぞガリガリ殿!

>「さて、それじゃあそろそろ本題に入りますぜ。あ、その前に」
>「この話は風紀委員の連中以外に口外することは厳禁でさァ。友人は勿論、教師陣にも…それだけは守って頂きたい。

「別にそれは構わんよ。こんな仕事だ、守秘義務を遵守するのは当然のことだしな。
 ただ、今はクロ子しか居ないけど、他のN2DM部員にも伝えることは許可しろよ?
 あとは、一応法や校則に触れたり、公序良俗に違反するようなことは
 お断りさせて貰ってる…ま、当たり前のことだけどな」
そして、そうでもない以上俺たちは依頼を断ることなどないのだ。
『何でもこなす』と言い張る以上、何でもやるのだ。この仕事は、信頼で成り立つ。
クロ子は相変わらず否定気味だが、俺が断ることなどないことも知ってるだろう。

> 勿論、この件を綺麗に片付ける事が出来たら旦那達にも多少の報酬ぐらいは出しますぜ。
> 深夜徘徊をチャラにするぐらいじゃちょっと申し訳ねぇ要件なんでね…。
> で、この話乗りますかィ?乗りませんかィ?」

「乗らねぇことなんかないんだからさっさと案件を話せ!」
思わず急かしてしまう。そしてバイソンから話を聞こうという態勢になったその時、
扉が開き、部室に入って来た人間がいる。タイミングがいいのか悪いのか。

69 :部長:2011/08/25(木) 13:36:23.38 0
>「部長ー、外回り終わってきましたぁ。すいません、今週まだ一つも契約とれてないです」

「うむ!戻って来たかQJ!とはいえ何の成果をあげられていないとな!
 いつもなら罵っているところだが今回は依頼が来てるのでやめといてやろう!
 俺冷蔵庫の冷凍室にガリガリ殿がある!世にも珍しい俺からのねぎらいだ!
 これからも誠心誠意馬車馬のように働くのだ!このN2DM部の為にな!」
自分で食べる用だったんだが別にいいや。また買ってくればいい。
「あ、クロ子の分もあるから。食いたかったら勝手に食え」
ハーゲン男のせいで恩とか売れなくなったから良いタイミングとか考えず伝える。

そしてQJはバイソンに自己紹介している。いや別にわざわざQJ通さなくても…。
「クロ子も一応依頼人に自己紹介しとけよ。ずっと瓶底眼鏡呼ばわりもアレだろ」
俺は大丈夫だよな、俺のこと知ってたし。

>「へえ、心霊現象ですか。いいですねえ、僕の知り合いに"ほぼゾンビ"みたいな奴がいますけど、
> 幽霊の遺したデータなんていかにもジュブナイルの香りがしますよ。ヤフオクで売ったら結構食いつくんじゃないですか?」

「ああ、あの携帯音楽プレイヤーならそこで充電中だ。聞きたかったら聞いていいぞ」
このプレイヤー、充電したら録音機能に何か登録されていることに気づいてな、
何気なく再生してみたら…いや、この話はとりあえず一旦置いておこう。
今回はバイソンの依頼の方が先だ。び、ビビビビビビビビビビビビビビってねぇぞ!

そして、もう一度バイソンに向き直る。
「少し話がそれちまったな、本題に戻そう。
 とりあえず、俺たちは断らない。お前もそのこと知ってるから言ってんだろ?
 ――言えよ、お前の依頼をな」

▼N2DM部・第3依頼▼
依頼者:梅村遊李
依頼内容:???

70 :ぶちょー:2011/08/25(木) 13:49:15.95 0
業務連絡!ぎょーむれんらく!
このレスは本編自体には関係ねー!

クロ子もバイソンもQJも参加ありがとな!感謝の言葉を述べてやる、受け取れ!
見切り発車で再利用したスレなのにいっぱい来てくれて嬉しい!
名無しのネタ振り人にも感謝!これからもよろしく!

ほんでもって本題!
これでコテ参加者四人!もしかしたらもっと増えるかも知れないなと思って!
もしかしたらだぞ!もしかしたら!
だけど、スレの性質上全員ひとつの場所にいることが多い!
となると、人数が増えれば増えるほど絡む相手も増えまくってちょっと辛いことにな
る!
なので!申し訳ないけどコテ付き参加者は五人まで!とさせて貰う!
名無しのネタ振りに関しては人数に制限ないのでどんどんカムカム!
とはいえネタ振りの取捨選択は参加者の自由!拾いきれなんだらすまん!
以上、乗っ取った身の上でこんな勝手に色々決めていいのか迷うとこだけど、
何か意見あれば気軽に言うがいい!よろしく!

↓では、本編再開!↓

71 :ぶちょー:2011/08/25(木) 13:52:06.96 0
変なとこに改行入っちゃった!
る!
スレ汚し申し訳ない!
る!
あ、別に参加者のみんなは業務連絡に反応とかしなくていいからな!
る!

↓今度こそ本編再開↓

72 :梅村遊李 ◆89ggxEkiHQ :2011/08/25(木) 18:30:00.24 O
>>63>>66-69>「ふあぁ……用件言わずに契約結ぶのは詐欺のテンプレだと思うっすよ」
「失敬な野郎でィ。しっかりとヤバい話だって前置きしてるだろィ?
 風紀委員No.2が詐欺師だなんてシャレになんねぇよ。」
実際には詐欺師紛いの事をされたという苦情が生徒から多々挙げられているが、梅村が全てもみ消しているのであった。

>「乗らねぇことなんかないんだからさっさと案件を話せ!」
あまり乗り気ではないように思える小羽に対し、部長の返事は早く案件を話せというものだった。
梅村は目の前の水羊羹をペロリと平らげると、「それじゃあ…」と解説に入ろうとする。

>>64そこにタイミング悪く来訪者がやって来た。
>「部長ー、外回り終わってきましたぁ。すいません、今週まだ一つも契約とれてないです」
突然の来訪者に一瞬気を取られるが、「こほん…それでは改めまして…」と、すぐに気を取り直し解説を始めようとする。
>「あ、申し遅れました。僕はN2DM部の営業担当、九條十兵衛(きゅうじょう じゅうべえ)って言います。
 これ、名刺、渡しときますんで、今後ここに御用がありましたらぜっっっったいに僕を通してくださいねっ」
が、またも九條は梅村の解説を遮るように自己紹介を始め、名刺まで渡してくる。
「……ご丁寧にどうも。風紀委員No.2の梅村遊李でさァ。
 分かったから3時間位黙っていてもらえると助かりますぜィ。」
表情はにこやかだが、言葉にトゲがある。
>「クロ子も一応依頼人に自己紹介しとけよ。ずっと瓶底眼鏡呼ばわりもアレだろ」

73 :梅村遊李 ◆89ggxEkiHQ :2011/08/25(木) 18:31:30.89 O
「旦那ァ、瓶底眼鏡の自己紹介なんざいつでも良いんで用件を…」
>「へえ、心霊現象ですか。いいですねえ、僕の知り合いに"ほぼゾンビ"みたいな奴がいますけど、
> 幽霊の遺したデータなんていかにもジュブナイルの香りがしますよ。ヤフオクで売ったら結構食いつくんじゃないですか?」
>「ああ、あの携帯音楽プレイヤーならそこで充電中だ。聞きたかったら聞いていいぞ」
梅村はブチッという音と共に懐から手錠を取り出す。
無論、表情は笑顔のままである。
「テメーはアレかィ?人の話を遮るのが趣味なんかィ?
 良い趣味してんじゃねぇか…。だったら俺の趣味にも付き合ってくれよ…。」
笑顔のまま九條の手首を握ろうとする梅村を止めたのはやはり部長の発言だった。
>「少し話がそれちまったな、本題に戻そう。
 とりあえず、俺たちは断らない。お前もそのこと知ってるから言ってんだろ?
 ――言えよ、お前の依頼をな」
梅村は「チッ…」という舌打ちをした後、懐に手錠をしまった。
もう数秒でも遅かったなら手錠は確実に九條の手首にかかり、調教タイムが始まっていただろう。
「それじゃあ本当に本題に入りますよ。」
おもむろにコンビニ袋にガサゴソと手を突っ込むと透明で小さな袋を取り出し、部長の目の前に差し出した。
中には白い粉が入っている。
「コンビニで買ってきたわけじゃありやせんぜ。
 今巷で流行ってる壁差魂(ヘキサゴン)、通称「H」って呼ばれる薬でさァ。」
1つ深い溜め息をつき、ズズっとお茶を飲むと真剣な顔付きになっていた。
「合法でもなんでもねぇ、完全にアウトの代物でしてね。
 コイツを火であぶって煙を吸うとハイになれるらしいですぜ。」
「最近うちの相談室にコイツにハマって止めようにも止められないって輩が何人か来まして…。
 軽い気持ちで始めたものの、ハマっちまって親にも教師にも相談出来ずにうちに来たらしいんでさァ。
 まったく自業自得としか言いようのない話なんですが、その薬を渡してる奴が厄介な奴でしてね…」
梅村は懐から1枚の写真を取り出し、また部長の前に差し出す。

74 :名無しになりきれ:2011/08/25(木) 18:36:02.72 0
参加者のテンプレは作らないの?

75 :梅村遊李 ◆89ggxEkiHQ :2011/08/25(木) 18:38:04.27 O
きっとこの場に居る全員が見覚えのある顔だろう。
「皆さんご存知じゃないですかィ?嶋田珍助(しまだ ちんすけ)先生。
 教師の中でも相当な権力を持つ野郎でさァ。被害に遭った生徒も、教師に相談したところで力になってくれないと分かってたんでしょうね。
 うちの密偵にコイツの過去を調べさせたら相当ヤンチャやらかしてたみたいでね。
 裏にヤバい連中と繋がってるって噂はあったが、どうやらマジらしい。
 普通の教師が下手に手ェ出した日には自分の身が危険になりかねねェ。
 教師だって人間ですから、結局は自分の身が一番可愛いんですよ。」
「教師が動けねぇってんじゃ俺達が動くしかねぇってんで、教師に内緒で夜中に見回りをしてたら昨日旦那達に遭ったんでさァ。
 どうやら夜中に薬をさばいてるって事だったんですが、俺達の動きに感づいたのか全く姿を現しやがらねェ。そこで…」と言うと梅村は小羽を指差した。
「そこの瓶底眼鏡に囮役をやってもらって、薬を出した瞬間に写真を撮り、とっ捕まえようという魂胆でさァ。
 大丈夫、野郎は無類の女好きらしい。瓶底眼鏡でも何とかならァ。
 旦那達には万が一の時の為の戦闘要員になってもらう。」
そこまで話すとスッと席を立ち、勝手に冷蔵庫を開けガリガリ殿を食べ始める。
「風紀委員の連中は顔が割れてるんで囮は出来ねぇし、どうしたもんかと悩んでたんですが…お陰でなんとかなりそうでさァ。」

76 :小羽 鰐 ◆DeLd.MSvGY :2011/08/25(木) 23:03:23.79 0
>>64>>69>>73

>「失敬な野郎でィ。しっかりとヤバい話だって前置きしてるだろィ?
>風紀委員No.2が詐欺師だなんてシャレになんねぇよ。」

自身の腕を枕にして机に突っ伏していた小羽は梅原のそんな台詞に
何か言おうと口を開いたが、しかしすぐに面倒だとでも言うように口を閉じた。
この部長の性格を考えれば、それが全うな依頼であるなら受諾するに決まっているからだ。
そこに小羽がどう口を挟もうと多くの場合方針は動かない。
逆に言えば、その依頼が嫌ならば自分は参加しなければいいだけなのである。
ならば口を挟むのは単なる徒労である。そう判断したのだろう。
頬を机に当て、冷涼な感覚を楽しみ始めたのだが……そこに、部室の扉が開く音が割り込んだ。

>「部長ー、外回り終わってきましたぁ。すいません、今週まだ一つも契約とれてないです」
>「ちゃんわに(愛称)、僕にもお茶。冷たいやつね。あの人何?今どういう流れなの?」

瓶底メガネの奥の瞳だけをそちらに向ければ、そこにはN2DM部の部員である
九條十兵衛が立っていた。何日か前に依頼を探すといって出て行ったきり
部室に出入りしていなかったが、姿を現したという事は、例の如く誰の依頼も受けられなかったのだろう。
小羽は耳打ちをしようとしてきた九條に対し、上体を動かし距離をとってから、
ゆるゆるとと立ち上がり冷蔵庫へと向かう。

「簡単に言うと昨日、なんやかんやのミステリーイベントがあって、
 その結果この学校の自称風紀委員No2(笑)さんが依頼を持ってきたっす」

九條に対してかなりアバウトな説明をしつつ、小羽は冷蔵庫に入れられていた冷えたお茶を
盆に乗せた紙コップ二つに注いでから、冷蔵庫の中に入っていたガリガリ殿を同じく盆に乗せる。
当然、この間自身の後方で起きかけた九條と梅原のトラブルはスルーした。
ついでに九條が摘んだ賞味期限三日切れの水羊羹が若干抹茶羊羹の様に見えた気がした事もスルーした。
ちなみに部長の
>「あ、クロ子の分もあるから。食いたかったら勝手に食え」
という言葉だけは聞き逃さなかったらしい。部長と九條の机に冷茶を置いてから
再び低位置につくと、早速アイスを取り出しそのブルーの物体をチロチロと舐め始めた。

「部長、アイスありがとうっす。ハーゲンありがとうっす」

そんな頬を引きつらさせる様な内容のお礼を言うと、
そのままアイスを舐めつつ梅原へと向き直る

「……さて、自己紹介っすね。私は小羽 鰐(こは わに)。この部の書記的存在っす。以上っす」

超端的な自己紹介だったが、九條のソレに怒気を見せている梅原が聞いていたかは判らない。
……ちなみに、仮に全うな状況で「小羽 鰐」という名前を聞いていたならば、
学園の中でもアンダーグラウンドな部分に強い梅原の事だ。
「どこかで聞いたことがある」程度の感覚は覚えたかもしれない。

77 :小羽 鰐 ◆DeLd.MSvGY :2011/08/25(木) 23:04:34.01 0
そんな感じで何やら騒がしい遠足前の小学校の教室状態が続いていたのだが、


梅村の出した白い粉によってその空気が固まった。


部員達の眼前にある白い粉。それは、余りに日常とは逸脱していたからだ。
正真正銘の犯罪行為。徹頭徹尾の社会の闇。
梅原の口から語られる、この学園における一人の教員が行っている犯罪行為。
更には依頼の内容。悪行を、生徒である自分達の手で何とかするという、
余りに――――余りに無謀な依頼。


「――――ふざけるなっす」


それは、骨髄から凍りつくかの様に感じさせる声だった。
深い森の中で聞く、狼の唸り声の様な短い台詞。そしてその声を発したのは、小羽。
一体どれ程の力で行ったのか、その手元ではアイスを食べ終わった後の棒が、
「木製の机」に対し深々と突き刺さっている。

「そんな依頼は、警察にでも頼む事っすね。風紀委員。
 言っておくっすけど、あんたがここに持ってきた依頼は、風紀委員如きが
おあそびで手を出せる範囲を超えてるっす。自分の力を過信してると……地獄を見るっすよ」

それは普段のだらけた彼女からはあまりにかけ離れた、圧力すら感じさせる本気の言葉。
ずれた瓶底メガネの奥に潜むその怜悧な瞳からは、背筋が凍る様な気配すら覚える事だろう。

「あと、その薬は持ってるだけでも犯罪っすから」

小羽はそう言ってメガネの位置を直し席に着くと、
そのまま部長へとその瓶底メガネの下から視線を送る。
どうするのかと、決断を問う様に

78 :名無しになりきれ:2011/08/26(金) 07:15:10.32 O
てす

79 :九條十兵衛 ◆mJkMShtvmg :2011/08/26(金) 19:13:29.38 0
>「簡単に言うと昨日、なんやかんやのミステリーイベントがあって、
 その結果この学校の自称風紀委員No2(笑)さんが依頼を持ってきたっす」

「ほうほう、なるほど……って何で逃げるのちゃんわに!僕なんかした!?」

磁石の同極のように、僕からクイっと身を翻す小羽ちゃん。
羽毛布団の中身みたいな娘だなあ。色も白いし。
僕は水ようかんをほうばりながら……これ水ようかん?そこはかとなく酸っぱいんだけど。

>「俺冷蔵庫の冷凍室にガリガリ殿がある!世にも珍しい俺からのねぎらいだ!」

「ヒュゥー、さっすが部長!その慈悲深さは三千世界に響き渡るぜ!」

部長の冷蔵庫と言えば、『知らない間に勝手に中身が補充されてる魔法の冷蔵庫』としてN2DM部では有名だ。
放課後、部長が涙目になりながら中身を弄ってたのを何度か見たことあるけど、因果関係については知りません。ええ。
と、No2(笑)さんがなにやらプルプル震えている。
寒いならクリームソーダなんか飲まなければいいのに。

>「テメーはアレかィ?人の話を遮るのが趣味なんかィ?
 良い趣味してんじゃねぇか…。だったら俺の趣味にも付き合ってくれよ…。」

「あ、そうですか?へへっ、何を褒められたのか皆目見当もつかないけど褒められるのは気分がいいなあ」

ところでその手錠なんですか?なーんて、聞く前に部長が話を進め、僕がその用途を知る機会は失われた。
しかし凄いなこの人。手錠出すタイミングがまるで読めなかった。辛うじて閃いた銀光に身構えるのが間に合ったぐらい。
なるほど、梅村遊李。学園でも指折りの武闘派に数えられる風紀委員で二番手を担ってるわけだ。
指折りっていうのは比喩表現じゃないよっ!

>――言えよ、お前の依頼をな」

もしかして部長、そこまで読んで話を切り出したのかな。
>「それじゃあ本当に本題に入りますよ。」と言い置いて、梅村君はコンビニ袋から白い粉を取り出した。
これって、もしかしなくても……。

>「今巷で流行ってる壁差魂(ヘキサゴン)、通称「H」って呼ばれる薬でさァ。」

80 :九條十兵衛 ◆mJkMShtvmg :2011/08/26(金) 19:14:19.02 0
薬――!ガチの犯罪じゃないか!
僕の知り合いにも"ほぼヤク中"みたいな奴がいるけれど、
ハッピーターン以上バファリン以下のドラッグしかキメない奴だった。
モノホンのお薬は初めて見る。うわー、「ペロっ、これは麻薬!」っていうやつやりてえ。
梅村くんは更に一葉の写真を提示する。

「あ、職員室でみたことありますよこのウラガンキン」

嶋田先生には黒い噂が絶えない。
天網恢々疎にして漏らさずとは言うけれど、ちょっとうわさ話にアンテナを伸ばせば御仁についての情報はお腹いっぱいに集まる。
なんでも、放送部に黒いパイプを持っていて、お昼の放送で学園のアイドルをゴリ押すのに枕営業的なアレを要求してるとか。
なんてうらやまけしからないんだ!許せん!
思わず進路調査票に学校教師と書きそうになっちゃったじゃないか。あっぶねー。

>「そこの瓶底眼鏡に囮役をやってもらって、薬を出した瞬間に写真を撮り、とっ捕まえようという魂胆でさァ。
 大丈夫、野郎は無類の女好きらしい。瓶底眼鏡でも何とかならァ。旦那達には万が一の時の為の戦闘要員になってもらう。」

「せんとうよういんん?」

バトルできるのかよ、僕らに。
いや、部長はよくわからん経歴持ってるしひょっとするとあんな牧歌的な顔して残虐ファイト上等なのかもしれないけどさ。
まだ風紀委員の隠密強襲か美化委員の狙撃班に同伴してもらったほうがよほど建設的な気がする。

>「――――ふざけるなっす」

ダァン!ビクゥ!!うひぃ!!!
突然の机を叩く音とそれにビビる僕の悲鳴の華麗なる三連コンボ。
見れば、さっきまで黙々とアイスを舐めていた小羽ちゃんが、分厚いレンズの向こうから強烈な眼力を放っている。
その眼下には机に突き刺さったアイスの棒。木vs木じゃん!刺さるのかよ!?

「て、適任がいるじゃん、戦闘要員……」

ホントに人類ですかこの娘。

81 :名無しになりきれ:2011/08/26(金) 21:40:26.17 0
「そげきだってー」
校庭で地の文を受信した一本の細身の竹ぼうきが仲間に声をかけました。
「おまい節抜けてるじゃん。ちょっとこの消しゴム撃ってみようよ」
竹ぼうきは落ちていた消しゴムを仲間の竹ぼうきの両端から詰め、
「そーりゃっ」
片方を自分の柄で思い切り押します。

ひゅぽーん!

消しゴムは思いのほか勢いよく飛び、ガラス窓を突き破ると
十兵衛の目の前に落ちました。

82 :名無しになりきれ:2011/08/26(金) 22:15:58.22 0
>>74
見かけ程参加者多くないからいらないんだよきっと

83 :名無しになりきれ:2011/08/26(金) 23:50:45.57 0
ところでこのスレって参加者のテンプレなしで長文でだらだら
進めていく感じになるわけ?

84 :部長:2011/08/27(土) 04:28:11.44 0
>>72-80
バイソンの依頼は――俺の予想を遥かに越えてヤバかった、というのが正直な感想だ。
つーかおかしいだろ。どう考えてもただの何でも屋、便利屋に頼む範疇じゃない。
目の前に置かれた白い粉を見る。非日常の世界に引きずりこまれているような気分だ。
それも二日続けて、だな。昨日はホラー世界。今日はサスペンス世界、ってか?
思わず唾を飲み込んでしまう。これがバイソンの大いなるフカシならどんなに幸せか。
しかしそんな笑い話で終わりそうにないことはこの空気が証明している。

>「そこの瓶底眼鏡に囮役をやってもらって、薬を出した瞬間に写真を撮り、とっ捕まえようという魂胆でさァ。
> 大丈夫、野郎は無類の女好きらしい。瓶底眼鏡でも何とかならァ。
> 旦那達には万が一の時の為の戦闘要員になってもらう。」

「…っておいちょっと待て流石にそれは――」

>「――――ふざけるなっす」

そう言葉を発したのはクロ子。まぁ喋るのは構わないけど遮らないで欲しかったな。
その手には食い終わったガリガリ殿の棒。それが机に刺さり――って、
「あー何してくれてんだクロ子ー!別にこの机は備品って訳じゃないんだからな!
 ただでさえ勝手に部室として使ってる以上睨まれたらいろいろ大変なのに!
 んもー完全に刺さってんじゃねぇか!抜けねぇし抜いても穴が残っちゃうし!」
クロ子のこういうところは久々に見たが相変わらずとんでもねぇな。

>「て、適任がいるじゃん、戦闘要員……」

「うん。その気持ちはよくわかるぞQJ。だがクロ子は別に戦闘要員として
 このN2DM部にいる訳じゃないのだ。つーか戦闘要員なんかいねぇよ!
 おいバイソン!戦闘なんか無理に決まってんだろ!QJ見てみろよ!
 戦闘とかできるように見えんのか!?小等部にすら負けそうじゃねぇか!
 俺だってなぁ!スポーツテストE評価しかとったことねぇんだぞ!」
威張るようなことじゃないさ!それは知ってる!でも事実なんだよ!

85 :部長:2011/08/27(土) 04:28:20.33 0
椅子に座り直し、茶を飲み干して。もう一度バイソンの方に向き直る。
「バイソンよ、俺たちは別に武装組織とかそういうのじゃないんだ。
 はっきり言って、頼む相手間違ってると思う。信頼して、頼ってくれたのは有難いが。
 それにな、『何でもこなす』はN2DM部の基本理念ではあるけれど、
 それは俺のモットーであって、部員全員に強制しているわけじゃないんだ。
 ほ、ほんとだぞ!なんだよお前ら!そんな目で俺を見るんじゃない!
 だ、だから!クロ子を囮に使うとか、QJが戦闘要員とか…首を縦には振れない。
 やっぱり、警察に言うのが1番だと思うぞ。この辺りはクロ子と同じ意見かな。
 薬の出処について証言出来る生徒はそんなに少なくはないんだろ?
 複数の証言があるなら、例え圧力があったって警察も無視は出来ないと思うが。
 ってことで。大きく言っときながら悪いが、今回はお断りさせて貰う。
 ――ここまでが、『N2DM部部長としての』意見だ。
 そして――」

>>81
そこまで言ったところで、突然の窓ガラスが割れる音に体が反応する。
こんなんビックリするに決まってんだろ!ガラスを突き破って入ってきたのは、消しゴム。
その消しゴムはQJの目の前に転がった。こんなこと出来るのなんか奴らしかいない。
「QJ!お前何か美化委員について失礼なこと考えたりしなかったろうな!?
 あそこには心綱(マントラ)持ちもいるとかいう噂だぞ!本当かは知らねぇけど!
 つーか窓ガラス割れちまった!どうしよう!さっきクロ子に机を傷モノに
 したことで怒ったけど、今回そんなの比にならないぐらいじゃん!やべぇ!」
あたふたする俺。って、いかんいかん。とりあえず本題を終わらせてからにしよう。

「さっきのが部長としての意見で、これからが『俺個人の』意見となる。
 ――見過ごせないんだよなぁ。なんつーか…悪が行われてるっていうのに、
 警察に任せて、解決するのを手をこまねいて待ってるだけってのは、さ。
 ほら、俺ん家の家訓、『正義を貫け、悪は許すな』だから」
そう言って俺は立ち上がると、鞄を持つ。すこし背伸びをして、肩に掛ける。
あ、言っとくけど家訓うんぬんの下りは嘘だから。俺の親父ふつーのサラリーマン。
「ってことで、ちょっくら行ってくるわ。解散でいいから、戸締りよろしく。
 あ、ただその窓ガラスどうにか出来ねぇ?これ俺からの依頼ってことで。
 あとバイソン!その粉ちゃんとしまっとけよ!窓ガラス割れたことに気付いた
 先生とかがこの部室に入ってきた時にその白い粉見つかったら大変だぞ!」
それだけ伝えて、俺は部室を後にした。

86 :部長:2011/08/27(土) 04:29:52.40 0
近くのホームセンターで室内用の簡単に取り付け出来る鍵を買う。
とりあえずそれだけ。すぐに学園に戻り、向かう場所は校内放送室。
中に入ると週番の放送部が2人。突然入ってこられて驚いてんな、そりゃそうか。
「高等部1年F組の◯△くんと、E組の□×くんだね?ちょっと緊急の放送があってさ。
 嶋田先生の指示なんだけど、少し使わせてもらってもいいかな?」
名前を知ってるのは俺の取り柄だ。名前と顔だけならほぼ全校生徒知ってるぞ俺。
最初に言えば、「俺たちのこと知ってるんだ」と多少は安心感が出るだろ。
疑問系だけど有無は言わせん。放送部が嶋田の息がかかってることは知ってるし、
その名前を出せばこいつらも首肯せざるを得まい。
『緊急の案件だから』と放送室から追い出すことも成功した。
内から鍵をかける。さらにそれだけじゃなく、さっき買った取り付け式の鍵をつけて。
さぁ、やるか。

【緊急】と書かれたツマミを最大まで引き上げる。これで校内全域に声が届く。
終業の鐘は鳴ったとはいえ、部活動も盛んなこの学校だ。まだ生徒の半分以上は居る。
「あーあー、マイクテス、マイクテス。聞こえますか?聞こえてるよな?
 まぁいいや、聞こえてること前提に話す。おいっす。みんな元気か?
 これからちょっと語らせてもらおう!そんなに時間もないし、手短に済ますから!
 どうか、聞き逃さず、はっきりと聞いて欲しい!大事なことなんだ!」

「今、この学校で密かにとある薬物が流行っていることを知っているだろうか?
 心当たりのある奴、いるだろう。そうでない奴も、少し思い返してみてほしい。
 友人が最近、何か変だと思わなかったか?そんな相談、よくされなかったか?
 金の無心などされなかったか?その顔は、何かを求めているように鬼気迫り――」
背後のドアから音が聞こえる。やばい事を放送しようとしていること、気づいたか。

「その薬物の名は壁差魂!巷ではHと呼ばれているらしい。
そしてそのHを売りさばく商人を、俺は今ここに告発、弾劾したいと思う!
 その人物の名は――教員、嶋田珍助!」
言いながら変な名前だなーと思う。こいつ絶対子供の頃いじめられてたろ。
まぁ俺の周りにも爬虫類とかじゅうべぇとかいるけどな。
俺の名前だってなんか戦国武将っぽくてあんまり好きじゃないし。
背後のドアの鍵を開ける音。そりゃ合鍵ぐらいあるか。だが開かねぇよ。
その為に、安物とはいえ取り付け式の鍵なんか買ってきたんだからな。

「そう、あいつだよ。誰だってあいつの悪い噂聞いたことあるだろ?
 ま、火のあるところにこそ煙は立つんだよな。そういうことだよ。
 だが、いくら他の教員に告発しても相手にして貰えないらしい。
 だから俺は、みんなに。生徒のみんなに、訴えることにした。
 1人1人の力では弱いかもしれない。だが、みんなで立ち上がれば、動かせる!
 同じ学園に通う奴らを救うためだ!あいつを、みんなで、叩き潰せ!
 薬やっちまった奴は仕方ない!大丈夫だ、強い意思があればきっと何とかなる!
 今は、お前をそんな風にした原因に怒りをぶつけろ!
 諸君、諸君、諸君!立ち上がる時は来た――」
ぷつっ。
そこで強制的に放送は止められた。

振り向くと、そこには嶋田子飼いの糞ヤンキー共と、顔真っ赤の嶋田。
簡単に取り付けできるだけあって、何人かで力を込めれば破壊もそう難しくない、か。
終わってみれば、俺あんまり演説うまくねぇ。アジテーターとしては、失格かな?
「数人なら口止め出来るかもしれないけど、全校生徒とか、無理だろ?
 ま、俺の狂言ってことにも出来なくはないが…警察の方にも、もう回ってるし。
 はっはっは、お前もう、終わりだな!」
その瞬間、腹部に衝撃を感じる。これが腹パンか。いやぁいいパンチだな。
俺みたいなもやしにゃこうかはばつぐんだ!一発で俺の意識は飛んだ。
さーてフルボッコタイムはっじまっるよー!ふぅ、いい人生だった。…のか?

87 :ぶちょー:2011/08/27(土) 04:52:11.07 0
テンプレについて!
俺はぶっちゃけ「テンプレなくてもいっか」とか思ってたんだけど、
まぁ他のみんなが書きたいなら書くのは全然構わないと思うよ!
>>12とかから適当に書きたいのだけ抽出する感じになるかな?
それはお好みで!自分で勝手に項目作ったっていいし!

88 :梅村遊李:2011/08/27(土) 22:09:42.48 0
>>77-86梅村の話を聞き終えたN2DM部メンバーは全員呆気に取られたような表情だった。
無理も無い…学園モノなのに初っぱなから薬物なんてラスボスクラスの物を見せられたら誰だってそうなってしまう。
>「…っておいちょっと待て流石にそれは――」
>「――――ふざけるなっす」
部室内に漂う緊張感の中、小羽の発言が更に緊張感をヒートアップさせる。
>「そんな依頼は、警察にでも頼む事っすね。風紀委員。
 言っておくっすけど、あんたがここに持ってきた依頼は、風紀委員如きが
おあそびで手を出せる範囲を超えてるっす。自分の力を過信してると……地獄を見るっすよ」
>「あと、その薬は持ってるだけでも犯罪っすから」
小羽がアイスの棒を机に突き刺し、瓶底眼鏡の奥から見せる鋭い眼孔を見た梅村は頭の中で何かが引っ掛かるのを感じる。
先程九條と一悶着起こしていた時、確かに「小羽鰐」と名乗っていた。
…どこかで聞き覚えのある名前…だが今はそんな事を思い出す事は梅村にとってどうでも良かった。
「……ふざけてんのはテメーの方でィ。」
梅村は小羽の目の前に立つ。
口は何とか笑顔を取り繕おうとしているが、目が笑っていない。


89 :名無しになりきれ:2011/08/27(土) 22:11:43.20 0
>「て、適任がいるじゃん、戦闘要員……」
>「うん。その気持ちはよくわかるぞQJ。だがクロ子は別に戦闘要員として
 このN2DM部にいる訳じゃないのだ。つーか戦闘要員なんかいねぇよ!
 おいバイソン!戦闘なんか無理に決まってんだろ!QJ見てみろよ!
 戦闘とかできるように見えんのか!?小等部にすら負けそうじゃねぇか!
 俺だってなぁ!スポーツテストE評価しかとったことねぇんだぞ!」
九條と部長の言葉も今の梅村の耳には届かないようだ。
「風紀委員如きだと…?俺ァ俺の事をとやかく言う野郎は調教程度で済ましてやるが…
 今の発言は風紀委員に対する侮辱だぜィ?って事はつまりボスに対する侮辱だ…」
そう言うとガリガリ殿の棒が突き刺さった机を思い切り殴り、破壊してしまう。
「お遊びでこんな話に頭を突っ込むと思ってんのか?
 俺ァ学園の風紀なんざ知ったこっちゃねぇし、薬に手を出した馬鹿共だって自業自得としか思えねぇ。けどなァ……」
ヒートアップし始めていた頭が痛みによって少し落ち着いていくのを感じる。
見れば、机を破壊した方の手が大変な事になっている。
「…ウチのボスが何としても解決しなくちゃならねぇ、薬なんて学園にバラまかせちゃいけねぇって言ってんだ。
 何か確実に奴を警察に突き出せる証拠が必要なんでェ。不用意に動けば下手すりゃ俺達が潰されちまう。
 …それだけは…なんとしても御免被りたいんでねェ…。」
そこまで話すと梅村は部長の前に座る。
表情はいくらか元に戻りつつある。

部長の答えはやはりNOだった。
小羽と同じく警察に言うのが一番じゃないかという答えだ。
「…分かりやした。まあ、ウチのボスも風紀委員以外を巻き込むのはあまり気が進まないようでしたし…」
部長のお断りさせて貰う発言を聞いた梅村は諦めたように席を立ち、扉の前へと足を進める。
>――ここまでが、『N2DM部部長としての』意見だ。
 そして――」
部長が更に何かを言おうとしたところで消しゴムが部室の窓を突き破り、九條の前に転がり落ちる。
何で消しゴムが?
と言った表情を浮かべる梅村に部長が思いがけない言葉をかける。

>「さっきのが部長としての意見で、これからが『俺個人の』意見となる。
 ――見過ごせないんだよなぁ。なんつーか…悪が行われてるっていうのに、
 警察に任せて、解決するのを手をこまねいて待ってるだけってのは、さ。
 ほら、俺ん家の家訓、『正義を貫け、悪は許すな』だから」
>「ってことで、ちょっくら行ってくるわ。解散でいいから、戸締りよろしく。
 あ、ただその窓ガラスどうにか出来ねぇ?これ俺からの依頼ってことで。
 あとバイソン!その粉ちゃんとしまっとけよ!窓ガラス割れたことに気付いた
 先生とかがこの部室に入ってきた時にその白い粉見つかったら大変だぞ!」
N2DM部として動く事は出来ないが部長個人としてなら力になる、どうやらそういう事らしい。
「ちぇっ…そういうカッコつけ方はズルいですぜェ旦那ァ。」
梅村は薬を懐にしまいながら嬉しそうにボヤいた。
「そうと決まれば早速作戦会議を…アレ?旦那?ちょっと、旦那まさかちょっくら行って来るって…」
急いで自分以外の風紀委員達にこの事を知らせねばと、部長に続きN2DM部を出る。
「あ、そういやその机の修理代、後できっちり請求させて貰いますぜ。
 窓の方は旦那に免じて修理代は請求しないでおいてやらァ。
 そいじゃあお二人さん、手ェ切らねぇようにお気をつけて。」
が、数秒後開けっ放しの扉から顔だけ見せながら取り残された九條と小羽に机の修理代を請求し、全力で風紀委員達の元へと走って行った。
最終的に破壊したのはお前だろ、というツッコミは受け付けないらしい。

90 :梅村遊李:2011/08/27(土) 22:13:45.07 0
「ってぇ事になったから、あの何でも屋の旦那の事だ…作戦なんざ考えちゃいねぇ筈。
 無鉄砲で有名だからな…ウチにも欲しいぐらいだぜィ。」
梅村は今学園に居る風紀委員を全員集め、N2DM部に依頼した事を説明する。
説明が終わると、教室に備え付けられたスピーカーから部長の声が響く。
その内容は嶋田の悪事を一切隠さず暴露するものだった。
「あ〜あ…。せっかく俺達が慎重に動いてたってのに…全部無駄になっちまったじゃねぇか。」
そう呟いた梅村の口元はニヤリと笑っていた。
「行くぞテメーら。あんだけ暴露されりゃ、嶋田が放送室に乗り込むのは間違いねェ。
 相手は薬さばいてるゲス野郎だ、やり過ぎって事はねぇから好きに暴れな。
 ボスには俺が後からたんまり怒られてやるからよ。」
梅村の拳には既にバンテージが巻かれていた。
拳の部分が異様にモッコリしている。
そう、バンテージの下に鉄板を仕込んでいるのだ。
「そいじゃあ、調教しに行きますかィ。」


「風紀委員参上ー。旦那ァ、大丈夫…じゃないみたいですねィ。」
放送室に入ると既に部長は嶋田と嶋田の手下によって暴行を受けていた。
風紀委員の一人がその様子を写真に収める。
それを確認すると嬉しそうに笑みを浮かべ、鉄板を仕込んだ拳でヤンキー共を血祭りにあげていく。
しかも使っているのは左手のみ。
右手は机を壊した時に痛めてしまっている為、使えないのだった。
地味に恥ずかしい。
「旦那ァ、意識はありますかィ?まったく、旦那が無茶するから俺達もこんな強引な手段にでたんですぜ?
 ホントはもっと穏便に済ませたかったんですが…」
という割には完全に顔が笑っている。
活き活きとした笑顔を見せながら返り血を浴びる梅村はまるで水遊びをする子供のようだった。
「感謝しますぜ旦那……あ、やべ…ヤンキー共調教すんのに夢中で嶋田のこと忘れてた。」
放送室を見渡すと戦闘中のヤンキーと風紀委員の姿しか見当たらない。
どうやら嶋田は屋上に逃げたようだ。

>「ちっ…こうなったらもう日本にはおられへんな。
 まあええ、金はいくらでもある。暫くパツキン姉ちゃんと遊ぶのも悪くはないやろ。」
どうやら屋上にヘリを呼び出し海外に逃亡するようだ。


91 :楯原まぎあ ◆MyZeP7HDKc :2011/08/27(土) 23:30:43.27 0
名前 :楯原まぎあ
年齢 :17歳
性別 :女
性格 :ポジティブ
簡単なキャラ解説:笑顔を絶やさず弱音を吐くことのない明るい性格。


【参加希望です。テンプレ、こんな感じで良いでしょうか?
 必要なら更に追記します】

92 :小羽 鰐 ◆DeLd.MSvGY :2011/08/28(日) 00:31:52.89 0

>「…ウチのボスが何としても解決しなくちゃならねぇ、薬なんて学園にバラまかせちゃいけねぇって言ってんだ。
>何か確実に奴を警察に突き出せる証拠が必要なんでェ。不用意に動けば下手すりゃ俺達が潰されちまう。
>…それだけは…なんとしても御免被りたいんでねェ…。」

叩き壊される机。そして風紀委員及び彼らのボスへの侮辱だと、
梅原に怒りの矛先を向けられた小羽は――

「……そっすか。くだらないっすね」

ただ一言、そう言い切った。
机が破壊される前に手に取った湯飲みに注がれていたお茶を一飲みしつつ。
小羽のその言葉に虚飾は一切無く、唯一侮蔑と無関心の合わさったような色が付随している。
そうして、九条の前に落ちた美化委員の狙撃も、部長の『N2DM部部長としての』言葉も
もはや興味がないとでも言うかの様に装って延々とお茶を飲んでいた小羽だったが……

>「ってことで、ちょっくら行ってくるわ。解散でいいから、戸締りよろしく。
>あ、ただその窓ガラスどうにか出来ねぇ?これ俺からの依頼ってことで。
>あとバイソン!その粉ちゃんとしまっとけよ!窓ガラス割れたことに気付いた
>先生とかがこの部室に入ってきた時にその白い粉見つかったら大変だぞ!」

「はぁ……全くあの人は」

立ち上がり忽然と風の如く走り去っていった部長、そしてその後を追っていった梅原を見送ると、
小羽は誰にも聞こえないように小さく呟き、自身も席を立つ。

「……九條さん。後で梅村っていう人が学校の机と窓ガラスを壊したって手紙を
 風紀委員の委員長さん当てに出して貰っていいっすか?
 活動費を削る訳にはいかないんで、先手を打つっす……あと、時間があれば部長を援護しに行って欲しいっす。
 あの人、ぼっちの癖に無茶する癖があるっすからね。それから私は……ちょっと用事があるから帰るっす」

校内放送から流れるよく知っている、とある部活の「部長」の声。
次いで流れ出る大きな喧騒の気配。それをBGMとしながら、小羽は一人校舎の外へと歩き出す。
誰の眼にもとまらぬように、一人きりで。


そして、

93 :小羽 鰐 ◆DeLd.MSvGY :2011/08/28(日) 00:32:40.96 0
―――――



これは、この事件の後日に不良達の間で少しだけ流れた噂である。
最近、学園の周囲で勃興した暴力団『壁狭組(ヘキサファミリー)』
その本部の近隣で、かつて『人食い鰐(クロコダイル)』と呼ばれ、
一円の不良達を須らく畏怖させたという、そんな人物をみかけたという噂。
たったそれだけの内容の、よくありがちなただの噂である

94 :九條十兵衛 ◆mJkMShtvmg :2011/08/28(日) 05:09:09.47 0
>「……ふざけてんのはテメーの方でィ。」

小羽ちゃんの言葉のどっかが琴線に触れたらしく、梅村くんの眉間にピシっと血管が浮かぶ。
次の瞬間、ドッグォン!とものすごい音がして、突き立ったアイスの棒が突き立つ机ごと叩き割られた!

「って、一触即発はいいけどさあ!よくないけど!いちいち怒りを表現するのに机を犠牲にするのやめない!?」

どこの戦闘民族だよ。こいつら揃って強化系の念能力者か何かですか。
ちなみに僕の知り合いに"ほぼ特質系"みたいな奴がいるけれど、実際特質系って自分がなったら一番イヤな系統だよなあ。
と、そのとき!部室の窓を突き破って何かが僕の眼前に放り込まれた。投石じゃない。これは、消しゴム!

>「QJ!お前何か美化委員について失礼なこと考えたりしなかったろうな!?」

思うだけでも粛清対象かよ!ディストピア丸出しじゃないですか!
この学園の治安維持組織と言えば生徒会執行部と風紀委員が有名だけど、もう一つ公的武装機関が存在する。
それが美化委員。その本質は『学校を護る』ではなく、『不穏分子の徹底排除』。つまりは学園の"掃除屋"なのである。

閑話休題、部長はこの件についての関与に否定的だった。そりゃそうだ、一生徒のどうにかできる領分じゃないよね、常識的に。
禁固刑3年は固い重犯罪を相手にしたらビビるよ。、誰だってそうなる。僕だってそうなる。

>「さっきのが部長としての意見で、これからが『俺個人の』意見となる。――見過ごせないんだよなぁ。

「え?ちょっ、部長、まさか……」

>「ってことで、ちょっくら行ってくるわ。解散でいいから、戸締りよろしく。

いい置くと、有無も言わせず部長はどっかに言ってしまった。
部室に取り残された僕達。盆の上に出してあったガリガリ殿が、真夏の気温に牙城を崩壊させていた。

>「あ、そういやその机の修理代、後できっちり請求させて貰いますぜ。

「えええ!壊したのきみじゃん!いや、ちゃんわにも刺したけど、全体的にとどめ刺したの梅村くんじゃん!」

当たり屋も真っ青ですぞ。風紀委員ってのは世を忍ぶ仮の姿で本業はチンピラとかじゃないのこの人。
と、小羽ちゃんが静かに立ち上がった。うわ、また一触即発ですか!?

>「……九條さん。後で梅村っていう人が学校の机と窓ガラスを壊したって手紙を
 風紀委員の委員長さん当てに出して貰っていいっすか?

「こっちはこっちで窓ガラスの件もなすりつけようとしてるしィー!」

きみたちホントは仲良いんじゃないの!?
……ってなわけで。N2DM部の部室から一人また一人と社会不適合者どもが退出し、常識人の僕だけが取り残された。
やれやれ。こうなったら僕も、空気を読むしかないじゃないか。

――――――――――

95 :九條十兵衛 ◆mJkMShtvmg :2011/08/28(日) 05:12:13.02 0
>「諸君、諸君、諸君!立ち上がる時は来た――」

「やっぱりこう来たか。相変わらず体張ってるなあ部長」

でも、そういう実直なところがあの人の魅力なんだろう。だからN2DMの連中は、基本的に部長が大好きなのだ。
小羽ちゃんだって、もちろん僕だって。少なからずあの人に救われて、光を見て、靴先を並べたいと思ったんだ。
さて、独りよがりなモノローグはそろそろ終了して状況の描写説明に移ろう。

僕は今、放送室の丁度上の階の教室――無人のそこにこっそり潜入して、窓べりに足をかけていた。
コンクリートの壁にはハーケンが打ち込んであり、そこから伸びる極細のワイヤーは制服のベルトのバックルに巻き込まれている。
技術研に特注で作ってもらった、懸垂下降のワイヤーセットだ。

申し遅れたけど、僕には契約を取る才能がない。
そしてそれは父も同じだった。ではその父がどうやって最強の営業マンとなり得たか。簡単な話だ。
契約取るだけが営業マンじゃない。大事なのは契約取れそうな時にいつでもそこに『居る』ということ。神出鬼没を裏付ける潜入技術。
スパイのエリート揃いと名高き生徒会諜報部からのスカウトを蹴ってまでN2DM部に入ったんだ。
父仕込みのそのスキル、今活かさなくていつ使う!

『プッ――――』

スピーカーから響いていた部長の演説がシャットアウトされる。踏み込まれたか。予想通りのタイミングだ。
きっと今頃放送室前は、嶋田センセのシンパ共と風紀委員でごった返していることだろう。
ならば僕がとるべきは、別ルートからの放送室侵入に違いない。

バックルに仕込まれたリールを調整しながら、窓の外に身を躍らせた。
重力とワイヤーの張力が拮抗するのを肌で感じながら、壁を蹴る。ワイヤーが伸び、僕の高度が下がっていく。
三回ほどの跳躍で、放送室の窓に足がかかった。もう一度、思いっきり窓を蹴る。
振り子のように空中で位置エネルギーを確保した僕の身体は、返す動きでビル解体の球ハンマーと化し、放送室の窓を突き破った!

「営業心得その一!飛び込み営業で他のヤツらに差をつけろ!!」

窓を突き破る瞬間に何人かのヤンキーを巻き添えにしながら、僕は放送室に舞い降りる。
ちょうど部長がフルボッコにされている最中だった。でも助けない。いや無情とかじゃなくてね!バトルキャラじゃないんだよ僕は!
殴られた部長がこっちを見たので、サムズアップで応援しといた。それに、必要なのは僕による助太刀なんかじゃない。
切られたマイクに再び火を入れる。部長がみんなに種火をつけた。だから僕はそこに風を吹き込んで、キャンプファイアにするだけだ。

『ただ今の放送に若干の不手際がありまして、しばらく途絶してしまいました。申し訳ありません。
 さておき皆さんお聞きください、この怒声、この騒音!これが実態です。ノーカット生中継でお届けしております!』

ヤンキーの一人が放送機器を直接破壊しようと手を伸ばす。そんな不埒な輩に向かって僕は手をシュッと振る。
刹那、彼の手に一枚の紙片が生える。僕の名刺だ。九條十兵衛をよろしくお願いします。

『全校のみんな。もう知ってると思うけれど、この学校は今分岐点に立たされてる。端的に言って、明るい明日と暗い前途だ。
 訳あって僕らは名乗れないけれど、やろうとしてることは理解して貰えてると思う。自信持って言えるよ、こいつは正義の戦いだ』

ヤンキーの一人に脇腹を蹴られる。背中を椅子のようなもので殴られる。
勝手にやってろ、死んでもマイクは離すもんか。

『べつに手を貸して欲しいわけじゃない。僕らが勝手にやってることで、誰かがやらなきゃいけなかったことだ。
 だけど、願わくば。僕らが貫く正義の、味方になって欲しい。正義を貫く僕らに、ほんの少しでいいから、背中を押して欲しい。
 対価は、そうだね。"素敵な未来"なんてどうだろう? ……だから、全校のみんな』

殴られながら、僕は息を深く吸う。ここが正念場だ。
間違ったことはしてないけれど、それがみんなに届くかは別の話で。
父譲りの殺し文句は使いたくなかったけれど、この状況を覆す一言を僕は寡聞にして知らない。
だから、言った。


『――――僕と契約して、正義の味方になってよ!!』

96 :九條十兵衛 ◆mJkMShtvmg :2011/08/28(日) 05:13:36.36 0
叫んだ途端、髪の毛を捕まれてマイクから引き剥がされた。
みぞおちに肘が落とされ絶息。それ以上なにも言うことができなくなる。

でも、もう何も言う必要はなかった。
部長の種火は、既に嶋田先生の牙城を燃やし尽くすに足る熱量を得ていた。
双方向設定にしたスピーカーから、各教室の音声が届けられる。ぽつりぽつりと挙がるのは、『応』という声の束。
それはやがて加速度的に広がっていき、スピーカーは全校からの応ずる声で満たされた。

『うおおおお!誰だか知らねえが嶋田の野郎をやっちまえ!』
『俺の友達もあいつの流行らせた薬のせいで学校にこれなくなっちまったんだ!許せねえ!』
『ゆるゆり面白いです』
『俺には応援することしかできねえけど、この学校が好きなのは一緒なんだ!』
『第二放送室か?待ってろ、今俺たちも加勢しに行くからな!!』

怒声、罵声、叫声。
およそ熱量に満ち足りた声が、僕らの耳朶を貫いた。
結局のところ、みんなもとから同じ気持ちだったってだけの話だ。
それを行動に移す行動力が足りないだけで、この世は義憤に満ちている。
そいつを先導できるのは、部長みたいな行動力の塊だけだ。
人はそれをカリスマと言う。

「へへへ……生きてますか部長。こんなに大勢に応援されたらもう、頑張るしかないですよ……!」

襤褸切れのようにぼろぼろにされて、僕は放送室の壁に放り出された。
骨折れてんじゃないかなあ、足とか動かないよこれ。
部長は――フルボッコはフルボッコだけど、まだ足腰はしっかりしてるようだ。
僕より殴られたろうに、頑丈だなあこの人。

>「感謝しますぜ旦那……あ、やべ…ヤンキー共調教すんのに夢中で嶋田のこと忘れてた。」

梅村くんがヤンキーをフルボッコにしながら――って、何握ってるのこの人。ガチ凶器じゃん!

『放送室!聴こえるか!?屋上にヘリが留まってる!嶋田の野郎が階段登ってくのを見たぞ!高飛びする気だ、急げ!』

校内の誰かから情報が入る。
今や全校が嶋田先生の敵で、『名も無き』僕らの味方だ。
いかにも日本人らしい衆人環視のシステムが、状況を佳境に向かわせつつあった。

「部長、行ってください。僕はこの通りもう動けないですし、嶋田にとって一番の敵は部長です。
 部長と顔合わせたら、きっと殴りに来る。奴としても、腹の虫が収まらないでしょうから。今会いに行けば、まだ間に合うかも。
  ――嶋田の足を止めつつ、あいつを追い詰めるなら、そこを狙うしかありません」

97 :九條十兵衛 ◆mJkMShtvmg :2011/08/28(日) 05:25:27.76 0
名前:九條十兵衛 (きゅうじょう じゅうべえ)
所属:N2DM部営業担当
性格:即物的で即応的。可変的にちゃらんぽらん
特技:もちろん営業!と、父仕込みの諜報技術
目標:最高の営業マンになること
備考:
"とある戦闘職"のリクルーターを父に持つ。
契約者の気持ちを無視した父のやり方に反発を覚え出奔、学園の寮生となる。
契約を取る才能はないがどこにでも現れる神出鬼没さとそれを裏付ける卓越した潜入技術を持つ。
その才を買われ生徒会諜報部にスカウトされるが『仕事が営業じゃない』という理由でそれを蹴ってN2DM部へ。
スカウトを拒否した代償として諜報技術を公的に発揮することを禁じられている。
当面の目標は閑古鳥の鳴いてるN2DM部を皆に知られる超有名な部活にすること。
交友関係には"ほぼ〇〇"と中途半端な奴らが多い。

98 :ぶちょー:2011/08/28(日) 09:28:57.11 0
>>91
うむ参加ありがとだ!ふつーに前から居たかのように書いちゃってくれていいから!

んでもって俺今日書けるのは夜だから!すまんな!

99 :楯原まぎあ ◆MyZeP7HDKc :2011/08/28(日) 14:47:21.74 0
【あまりに短すぎるなぁと思ったので追記、
 というか全体的に訂正しておきます】


名前:楯原まぎあ
誕生日:四月一日
年齢:17歳
性別:女
所属:N2DM部ムードメーカー(?)担当
髪の毛の色、長さ:薄桃色・セミロングより少し長め
容姿の特徴・風貌:小柄・左側頭部と両手首に赤のリボン(頭のリボンは大きめ)
性格:底抜けに、時に疎まれるほどにポジティブ
好きなもの:ストロベリーパフェ・笑顔
嫌いなもの:ケンカなど争いごと
特技:声帯模写
趣味:友人達との雑談
自分の恋愛観:恋愛よりも友情重視・男女間の友情は成立する
人生のモットー:笑う門には福来る
簡単なキャラ解説:
『人からの色々な依頼を解決していく』という方針に魅力を感じ、『N2DM部』に入部。
輪の中心にいることは少ないが、いつの間にかその場に加わっているようなタイプ。
笑顔を絶やさず弱音を吐くことのない明るい性格なので、
友人から悩みや相談ごとを持ち掛けられることも多い。
逆に自分から何かを相談したり、打ち明けることは一切しない。


>>98
【分かりました! ありがとうございます〜
 出来るだけ早めに、なんとか上手いこと加わりたいと思います】

100 :部長:2011/08/29(月) 02:36:27.86 0
ほぼ無抵抗で殴られ、蹴られ。ある程度予想はしてたけど、実際辛いよなぁ。
抵抗してないんじゃなくて抵抗出来ないってのが正しい。だって抵抗したくても、
その行動に移そうとする瞬間には攻撃を食らってるんだからどうしようもない。
だから俺は今亀みたいになってる。ひたすら床にうずくまってさ、フルボッコ。
かっこ悪いとかいうなよ!普通に立ってるよりよっぽど大丈夫なのだ!
多対一ってこんなにきついんだな。一対一でも俺じゃ勝てそうにないのに!
そんな瞬間、ガラスの割れる音がした。あとヤンキーの何人かの悲鳴と。

>「営業心得その一!飛び込み営業で他のヤツらに差をつけろ!!」

聞き覚えのある声。何を言ってるのかも分かる。あぁ、こいつなら窓から入りかねない。
しかし何しにきたQJよ。俺は解散だと言ったはずだ、助けに来いなどと言ってない。
ましてやお前このヤンキーの軍団どうにか出来るのか?お前そんなに強かったっけ?
とはいえ、QJが入ってきた時。そして、俺に向かって親指を立てやがった時。
こんな場合なのにも関わらずだ、頬がほころんでしまったことは紛れもない事実だ。

>『全校のみんな。もう知ってると思うけれど、この学校は今分岐点に立たされてる。端的に言って、明るい明日と暗い前途だ。
> 訳あって僕らは名乗れないけれど、やろうとしてることは理解して貰えてると思う。自信持って言えるよ、こいつは正義の戦いだ』

何をするのかと思えば俺と同じ事。放送による全校生徒への扇動、ver.1,01。
なんというか、惨めな気持ちになるよね。だってこいつの方が数倍演説うまいもん。
最初からQJ連れて放送室行って『お前やれ』つった方が良かったんじゃねーの。
殴られながらもマイクを離さないその背中を見ていることが出来ない。ヘタレで何が悪い。
あーもー、だから解散だっつったのに。貧乏くじは俺の役目だろーが。

>『――――僕と契約して、正義の味方になってよ!!』

そのどっかで聞いたような台詞を最後に、放送は止まる。マイクの前から人が消える。
よく知る声で呻かれると気分が滅入るのでやめてほしい。お願いだ、頼む。
スピーカーから返事が聞こえる。それは賛同。俺の時はなかったのに、流石だなQJは。
あぁ、ただそんな返事している暇があるならどうか早く助けに来てくれよ!
俺じゃない!大事なN2DM部営業担当がピンチなのだ!代わりなんか他に居ないんだ!

101 :部長:2011/08/29(月) 02:36:44.22 0
>「風紀委員参上ー。旦那ァ、大丈夫…じゃないみたいですねィ。」

――助けは、現れた。俺は亀の状態から顔を上げ、体を上げる。
「遅い!こういう学園のクズ共を粛清するのがお前ら風紀委員の役目だろうが!
 せっかくゴキブリホイホイのようにクズ共をひとまとめにしてやったというのに!
 所詮バイソンなんぞがNo.2になれる程度の委員会ということだな、よく分かった!」
ぶっちゃけ体はボロボロだけどな。でもいくらでも痩せ我慢は出来るもんだ。
だから、見せるのはいつも通りの俺。ビックリマーク多用の、尊大で高圧的で居丈高な。
「――ありがとよ、来てくれて。あとは、頼んだ」
さっきまで俺たちをフルボッコにしてたヤンキー共が今度は風紀委員にフルボッコされる。
まぁ喧嘩自慢の糞ヤンキーぐらいじゃ戦闘訓練もあるという風紀委員にゃ勝てねぇわな。
バイソンの手が不自然にこんもりしているのは見ない振りをする。なんだあの危険人物。

>「へへへ……生きてますか部長。こんなに大勢に応援されたらもう、頑張るしかないですよ……!」

ふと、QJから声をかけられる。見るも無惨…つっても俺と大して変わんねぇか。
「あぁ、生きてるし、頑張りたいさ。ありがとうなこのクソ馬鹿野郎!
 俺はな、お前のそういう姿を見たくて『解散』つったわけじゃねぇんだよ!」
俺を誰だと思っている。お前の上司だぞ。天下のN2DM部の部長様だぞ。
お前ら部員が危険な目に遭わないようにするのも管理職の役割なんだ。分かれ!

…だけどな。心の奥底では、助けを予想してた俺がいる。期待してた俺がいる。
そんな自分が、たまらなく厭になる。――殺してやりたいほどに。

>「旦那ァ、意識はありますかィ?まったく、旦那が無茶するから俺達もこんな強引な手段にでたんですぜ?
> ホントはもっと穏便に済ませたかったんですが…」

「無茶なんかじゃねーよ。おそらく1番手っ取り早い方法だった筈だ。
 どうせ犯罪相手だ、穏便である必要も、ねーし…何よりお前、
 心底、楽しそうじゃねぇか?」
正直軽く引くレベル。

>「感謝しますぜ旦那……あ、やべ…ヤンキー共調教すんのに夢中で嶋田のこと忘れてた。」

「っておい!こんな大事にしといて嶋田捕り逃すとかしてみろ!大失態だぞ!?
 つーか何の為に俺らがこんな大変な思いをしたと思ってんだ!
 お前ら風紀委員のストレス発散のためとかじゃねぇんだぞ!」

>『放送室!聴こえるか!?屋上にヘリが留まってる!嶋田の野郎が階段登ってくのを見たぞ!高飛びする気だ、急げ!』
>「部長、行ってください。僕はこの通りもう動けないですし、嶋田にとって一番の敵は部長です。
> 部長と顔合わせたら、きっと殴りに来る。奴としても、腹の虫が収まらないでしょうから。今会いに行けば、まだ間に合うかも。
>  ――嶋田の足を止めつつ、あいつを追い詰めるなら、そこを狙うしかありません」

「――HAI?」
しばし思考が止まる。QJが言っていることがよくわからないなー。はっはー。
え、ちょっと待て待て待てよ。え?俺?ここであえての俺なのか?俺なの?
だが残念ながらQJの言うことは的を射ている。風紀委員とかが追いかけたって、
嶋田の野郎は逃げるだけだ。そりゃそうだ、逃げてんだもんな。
だが、俺1人ならどうする?自分をこんな目に遭わせた張本人が、のこのこと。
しかもさっきのゴタゴタで、俺が超弱いことは知ってるはず。
俺をボコボコにしてから逃げる、そういう思考に行きつく可能性もあるのだ。

「ちっ!俺が死んだらお前らのせいだからな!」
そう捨て台詞を吐いて、俺は放送室から飛び出した。
ボロボロの体に鞭打って、走れ!走れ!屋上へ!

102 :部長:2011/08/29(月) 02:37:46.59 0
フルボッコされた体にはきつかったがなんとか階段を登り切り、屋上の扉を開くと。
そこには学校の屋上には不釣り合いなヘリと、そちらへ走って行く嶋田の姿があった。
誰かが現れたことに気づいた嶋田は走る足を速めようとするが、それが俺1人だと知ると。
その顔に怒りと笑いが混ざり合ったような表情を浮かべ、こちらへ向かって来た。
 「ふざけたことしてくれたなぁワレ…!」
凄まれる。こいつ見た目はヤクザだ。俺はビビる。だって俺はヘタレだもん!
 「んで?何しに来たんや?」
「お前をぶん殴りに」
 「ハッハッハ!威勢がええやないかい!やってみろや!」
そして俺が右フックを出そうとした瞬間。その手に交差するように左ストレートが。
模範的なクロスカウンターを食らって、俺はぶっ飛ばされる。

 「なぁガキ。お前俺を追い詰めたと思ってんのやろ?そうなんやろ?
  でもな、こんな短時間で都合よくヘリが来ると思とんか?んな訳ないやろ。
  最初から俺はそろそろ逃げる気やったんや。俺を怪しんどる奴増えとったし。
  ずいぶんムチャさせてもろうたしな、そろそろ潮時やちゅうことや」
「…」
え?マジで?
 「ホンマはもっとお前をボコボコにしたいもんやけどな、そんなヒマもないしな。
  そこで俺が逃げるのを眺めとけや!」
最後に倒れる俺を思いっきり蹴飛ばし、唾を吐き掛けて来た。きたねぇな。
悠々と去る嶋田。俺は立ち上がれない。何も出来ない。見ていることしか。
なんなんだろう、結局、俺がやったことは、すべて無駄足だったんだろうか――?
自分の無力さに思わず涙が零れ落ちそうになった時、話は急展開する。
それは、意外な人物――ヘリの運転手の、発言だった。

 「嶋田。『壁狭組(ヘキサファミリー)』が、壊滅したらしいぞ」
 「…はぁ?」
 「連絡があった。ついさっきカチコミがあって、組員全員再起不能だそうだ」
 「ん、んなアホな!」
 「組の後ろ盾がないお前を運ぶ義理は俺にはない。火の粉、掛かりたくないしな」
 「ちょ、ちょっと待たんかい!」
 「じゃあな」
ヘリに乗り込もうとしていた嶋田を強引に振り落とし、ヘリは瞬く間に東の空へ消えた。
そこに残ったのは呆然とする嶋田。あと呆然とする俺。

103 :部長:2011/08/29(月) 02:37:57.13 0
こんないいタイミングで都合よく組同士の戦いがある訳がない。こちら側の仕業だ。
そして、そんなことをしでかすことが出来そうな人間を俺は知っている。すごい身近に。
「クロ子の奴め…!」
浮かぶ気持ちは感謝より怒り。怒りはクロ子に向けてじゃない、俺自身にだ!
あいつは書記なんだ!もうそんな力使わなくていいように、俺はあいつを書記にしたんだ!
戦闘要員なんかじゃない!もちろん「人喰い鰐」なんかじゃない!
あいつはN2DM部書記のクロ子なんだよ!そうであってほしいと思ってるんだ、俺が!
なのに、結果的にあいつはその力を振るってしまった。恐らくは、こんな俺の為に。
あいつはなんとも思わないかもしれない。でも、俺が厭なんだよ!どうしようもなく!

QJが傷つくことも。クロ子が力を振るってしまうことも。
どちらも俺は見たくない。聞きたくない。あって欲しくない。
だが、実際今の状況を見てみろ。そうならなければ、こうなっていない。
結局、俺が考えナシだっただけとも言える。一時の義憤に駈られて、このザマだ。
「俺、部長失格なのかもな」
そんなことさえ、思えてくるのだ。

そういえば、すっかり忘れていた、呆然とする嶋田珍助。俺は立ち上がり、声をかける。
「先生、もうすぐみんな来ますよ?屋上に来たのは失敗かもでしたね、逃げられない」
そして、恭しく近づく。
「ちょっと、取引しませんか?僕、先生のお金に興味があるんです。
 いくらか頂けるなら、なんとかして先生の逃走を手助けしようかなとも思いますよ」
その瞬間、嶋田の表情が変わる。溺れる者は藁をも掴む、か。滑稽だな。
「では交渉成立ですね。握手しましょう握手」
そう言って、俺は手を出した。嶋田も手を出してくる。そして。

「んな訳ねぇだろうがパーンチ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

俺の渾身の右ストレートが、嶋田の顔面に直撃した。

▼N2DM部・第3依頼▼
完遂!

104 :部長:2011/08/29(月) 02:39:05.38 0
――――――

生徒会室の更に奥、会長室。
そこに立つのは俺。そして目の前にある、まるでどこぞの社長かのような机と椅子に。
 「全く、なるくんは相変わらずだなぁ」
この学園のトップ。生徒会長がいる。

腰まである長い金髪に、街で見れば思わず振り返ってしまいそうなその類稀なる容貌。
でもまぁ俺は高等部三年の城ヶ崎先輩(面識ナシ)の方がかわいいと思うし、
何より、俺はこいつが嫌いだ。
「厳格な生徒会長だろ。そんな喋り方でいいのかよ」
 「だいじょーぶだよ、みんなの前ではちゃんとしてるし」
「ほんとにな。毎回サブイボが立つぜ」
 「失礼な。『可愛い幼馴染は生徒会長!そんな彼女の本当の姿を知るのは自分だけ!』
  とか、グッときたりしないの?」
「お前と幼馴染だとかいう事実をこの世から消し去りたい」
 「ひどーい。…そんなことよりなるくん、ちょっと、やり過ぎちゃったね」

 「あたしたち生徒会が嶋田先生のこと、掴んでないわけないでしょ?
  捕まえる予定もあったのに…ま、別にそれはいいんだけど、問題は、やり方。
  君たちの放送で、ちょっとみんな熱くなり過ぎちゃってね。いざこざがあったの。
  特に可哀想なのが、何も知らず普通に嶋田先生のこと好きだった子たちかな。
  やっぱり授業とか面白かったし、みんなが嫌ってた訳じゃないんだよ。
  そんな子たちが、ちょっと反嶋田先生の過激派な子たちに、ね…」

俺は言葉を失う。そんなことがあったとは。
「な、なら」
 「全ての責任は俺に、だよね。なるくんならそう言うと思ってたから、
  そういう処分になってるよ。他の人にはみーんな何にもなし。厳重注意、ぐらいかな。
  んでもってなるくんも一応良かれと思ってやったことだし、
  嶋田先生を捕まえた功績もあるしで割りと軽くなってるよ。
  ――停学二週間、ってとこかな」
「二週間ってーと…」
  「もうすぐ夏休み始まるよね?休み中も継続されるから、
  なるくんが次に学校に来れるのは、なんと!二学期始業式になりまーす!」
「長ぇよ!ほぼ二ヶ月じゃねぇか!」
 「当然部活もダメだよー。ていうか許可してないよね?何活動してんの?」
「げぇっ!」
 「そんななるくんに!これは私からの今回のご褒美!
  ありがたく思ってね!」

そして渡されたのは一枚の紙。それは――。

105 :部長:2011/08/29(月) 02:39:45.22 0
9/1。
久々の登校。何も面白くない始業式を終わらせると、俺は準備をしてから部室へ。
壊れていたはずの窓ガラスや机が元通りになっていることを確認。よかったよかった。
「おう、お前ら!久しぶりだな!」
もう俺以外はN2DM部が全員集まっていた。さらにバイソンも居る。
あの日助けて貰ったというのにそれ以降学校に行けずでまともに礼も言えなかったので、
そのお礼も兼ねようと俺が呼んだのだ。ぶっちゃけ暇そうだしな。
いつアドレス交換したんだとかそういうツッコミはしてはいけない。

「お前らメール読んだよな?
 今日ちょっと重大発表があるから、それの記念鍋パーティーだ!」
まだ暑い、長月の始め。だが鍋である。いいだろ別に!
みんなで囲んでワイワイできるのが他に思いつかなかったんだよ!

「昨日メールで伝えたように、鍋、コンロ、それから野菜は俺が用意してある。
 ちゃんと持ってきただろうな!食材を!さぁ見せるがいい!そして入れるがいい!
 今こそ聖鍋戦(ジハード)の時である!」

106 :部長:2011/08/29(月) 03:05:58.50 0
役職:部長
学年:高等部2年
特技:人の名前と顔を忘れないこと

107 :楯原まぎあ ◆MyZeP7HDKc :2011/08/29(月) 15:53:31.96 0
九月一日、本日も晴天也。

「今日は〜良い天気〜♪
 夏休みも終わって、みんなに会える〜♪」

青空に鼻歌を響かせながら、スキップして歩く少女。
薄桃色の髪を飾るリボンが、まるで空気を持て遊ぶように風になびく。
八百屋さん、電信柱、山口さんちのツトムくんち、郵便ポストを悠々と通り過ぎ――

「…っと、いけないいけない」

巻き戻し映像のように後ろ歩きで戻り、郵便ポストの前で止まる。
そして鼻歌再開。

「嶋田先生にお手紙、た〜くさん書いた〜♪
 ポストさん、キチンと届けてお願い〜♪」

学生鞄から漫画雑誌ほどもある厚みにまとめられた手紙を、ポスト口にねじ込む。
獄中で暇な時にでも読んで欲しいと書き連ねていたら、こんな量になってしまった。
その手紙は全て、先の一件で逮捕された嶋田珍助(元)教員に宛てた物だった。
「みんな先生の帰りを待ってますよ」内容を要約すると、こんな感じ。

「とってもとっても、良い天気〜♪」

雨が降っても、「良い天気♪」と歌うだろう。
たとえ石が降ろうと槍が降ろうと、耳障りの良い理由をこじつけて笑うかもしれない。
時に愛され想われて、時に疎まれ蔑まれる、そんな歪なポジティブ精神を抱えた少女。
それが『楯原まぎあ(たてはら・―)』だった。
そして『N2DM部』のムードメーカー担当である。役に立つかは不明、未定。


始業式楽しかったね、先生のお話たくさん聞けたし。
クラスメイトの友人にそう言うと、「そのプラス思考たまにイラつくーw」と言われた。
もう、酷いんだから!
まぎあは友人達との雑談もそこそこに、教室を後にした。
向かうは一つ、『N2DM部』の部室だ。(正式な部室かはさておき)

108 :楯原まぎあ ◆MyZeP7HDKc :2011/08/29(月) 15:58:38.65 0
「グッモーニン、フゥジコちゃ〜ん♪」

扉を開けて開口一番、得意の声帯模写で笑いを取ろうと必死。
ちなみに『ルパン三世』のルパン三世の真似である。
「クオリティ高いけどなんかウザイ」と友人からのお墨付き。

「…というわけで、おはようございます!
 今日も良い天気で楽しい一日になりそうですね!」

ポジティブシンキングを撒き散らしながら、ひとまず既に来ている人達に満面の笑顔で挨拶を交わす。
そうして席につくと、今か今かと待ち望むように笑顔を零す。
あの人がこないと『N2DM部』は始まらないのだから。


>「おう、お前ら!久しぶりだな!」

いつもと変わらず溌剌として清々しい声、我らが部長の到着だった。
いつもと変わらず――それは実はとても難しいことなのに。
そういった理由と他諸々も含め、まぎあは部長を尊敬していた。

「おはようございます、部長!」

うやうやしく、それでいて楽しそうな動作で右手を額に持っていき斜めに構えて、部長に敬礼をする。

>「お前らメール読んだよな?
 今日ちょっと重大発表があるから、それの記念鍋パーティーだ!」

重大発表、何か良い発表なのだとまぎあは確信していた。
――心の片隅にある余計な不安には気づかない。又は気づかないフリをして。

109 :楯原まぎあ ◆MyZeP7HDKc :2011/08/29(月) 16:00:12.72 0
>「昨日メールで伝えたように、鍋、コンロ、それから野菜は俺が用意してある。
 ちゃんと持ってきただろうな!食材を!さぁ見せるがいい!そして入れるがいい!
 今こそ聖鍋戦(ジハード)の時である!」

囃し立てるように、部長に拍手喝采を送る。
メールを読んだ時には心が躍った、何故なら友達と鍋を囲むなんて初めての経験だったからだ。
まぎあは勢い立ち、いの一番に手を上げる。

「はい、部長! それでは私から行かせていただきます!」

もったいぶるように学生鞄から取り出した物、それは――まさしく肉。
更に言うならば、高級品の肉。が、三つ。

「えっと、これなんですけど……とりあえずドバッと入れちゃいますね!」

全ての表面に貼られたラベルには、『厳選黒毛和牛ホルモン500g』と記されている。
それを包装ごと裂くと、前言した通り片っ端からドバーッと鍋に放り込んでいく。

「皆さんと鍋を囲めると思うと私すごく楽しみで…。
 ほんの少〜しだけ奮発させていただきました♪」

まぎあの財布は、すっかり軽くなっていた。


【それではここから参加させていただきます、
 改めまして皆さんよろしくおねがいします!
 部室に来るまでの部分は個人的導入話なので、かる〜く読み飛ばして下さい〜
 …実は一度全部消えてしまって書き直したので、おかしな部分があったらすみません】

110 :楯原まぎあ ◆MyZeP7HDKc :2011/08/29(月) 17:06:56.38 0
【※追記です
 鰐さんに割り込むような形になってしまいましたが、
 次ターンからは最後尾でレスさせていただきたいと思います。
 ややこしい真似をしてしまってすみません!】

111 :ぶちょー:2011/08/29(月) 20:14:14.35 0
>>110
割り込むとかじゃないから!
俺→バイソン→クロ子→QJ→俺、の順番が
俺→マギャー→バイソン→クロ子→QJ→俺、って順番になっただけだ!
何も考えず、これからも俺の次に投下すればよろしい!

112 :梅村遊李 ◆89ggxEkiHQ :2011/08/29(月) 20:47:05.15 O
>>96-101>「っておい!こんな大事にしといて嶋田捕り逃すとかしてみろ!大失態だぞ!?
 つーか何の為に俺らがこんな大変な思いをしたと思ってんだ!
 お前ら風紀委員のストレス発散のためとかじゃねぇんだぞ!」
嶋田を追いかけるのを忘れるという失態に部長からもっともなご意見が浴びせられる。
梅村以外の風紀委員も皆、戦闘に没頭しているようだった。
かくいう梅村も返り血で分かりにくいが、不良共の攻撃により至る所から出血が目立つようになってきた。
やはり左手1本ではキツいようだ。
>『放送室!聴こえるか!?屋上にヘリが留まってる!嶋田の野郎が階段登ってくのを見たぞ!高飛びする気だ、急げ!』
どこぞの誰かも知らぬ声。
だが、間違い無くこちらの味方の声だった。
>「部長、行ってください。僕はこの通りもう動けないですし、嶋田にとって一番の敵は部長です。
> 部長と顔合わせたら、きっと殴りに来る。奴としても、腹の虫が収まらないでしょうから。今会いに行けば、まだ間に合うかも。
>  ――嶋田の足を止めつつ、あいつを追い詰めるなら、そこを狙うしかありません」
「そこの営業部の言う通りでさァ。ここまで派手にやらかしたんだ、最後までキチッと責任取って下せェ。
 それに1回で良いから『ここは俺に任せて先に行け!』みたいなのやってみたかったんですよ。」
>「ちっ!俺が死んだらお前らのせいだからな!」
九條と梅村に催促された部長は屋上へと駆けて行った。
それを見送ると大きな声で叫ぶ。
「テメーらァ!何でも屋の旦那があんだけ体張ってんだ!この喧嘩、死んでも負けは許さねェ!
 死んだら俺の調教が待ってるぜィ!!」
それを聞いた風紀委員達は一気に士気を高め、残った不良共をなぎ倒していく。
どう足掻いても不良共にはもう勝ち目が無いのは誰の目にも明らかだった。

113 :梅村遊李 ◆89ggxEkiHQ :2011/08/29(月) 20:49:35.01 O
梅村は九條の近くに居る不良を一瞬で血祭りにあげると、九條の隣に倒れ込んでしまった。
「はぁっ……はぁ…ったく、テメーもテメーの部長も馬鹿な野郎でィ。
 戦えねぇクセに……こんな無茶してボロ雑巾みてぇにされて……。
 だが……嫌いじゃねぇぜ…テメーらみてぇな……気合いの入った馬鹿は……よ…。」
そう言って梅村は気を失ってしまった。

梅村が目を覚ますとそこには見慣れた天井が広がっていた。
頭には包帯が巻いてあり、身体中のあちこちが痛む。
>「お前、昔はよくここで今みたいにボロボロで寝てたな。」
保健室のベッドで横になっている梅村に話し掛けるのは梅村が「ボス」と慕う風紀委員長だった。
「うげっ……ボス、いつの間に学園にいらしてたんですかィ?
 嶋田の件が完全に落ち着くまでは学園に来ないようにとあれほど…」
梅村は風紀委員長に身を隠すようにお願いしていた。
万が一風紀委員長に嶋田の手下が手を出したら自分で自分を止められない状態になってしまうからだ。
>「馬鹿者。生徒会長から嶋田絡みでお前達が暴れていると連絡があったのだ。
 案の定学園に来て見ればデカい騒ぎになってるし…今まで我々が慎重に動いたのが水の泡ではないか。」
「そいつは何でも屋の旦那のせいですぜィ。俺ァあくまでも穏便に済ませようと」
>「その割には随分楽しそうに戦っていたと山崎が話していたぞ。」
「ザキの野郎…後で調教でィ。……しかし、何でも屋の旦那が無茶してくれたお陰で薬の被害者がこれ以上増えなかったのは確かです。
 こりゃデカい貸しを作っちまいました。そういや結局、嶋田の野郎はどうなったんですかィ?」
事態の終末を見届ける事が出来なかった梅村は風紀委員長から全てを聞いた。
部長が全ての責任を負い停学を受ける事も、壁狭組が何者かの手によって壊滅した事も。
>「部長殿には後で私からも『ウチの馬鹿がご迷惑をかけました』と頭を下げにいかんとな。」
「馬鹿じゃねぇNo.2でィ。ところで、壁狭組を潰したのはどこの組なんですかィ?」
梅村の質問に風紀委員長は微笑を浮かべながら返す。
>「組じゃない、個人だ。しかも女。私に負けず劣らず美人らしいぞ。」
その発言に驚きを隠せない梅村。

114 :梅村遊李 ◆89ggxEkiHQ :2011/08/29(月) 20:50:44.66 O
「お、女が一人で壁狭組を潰したっていうんですかィ!?
 俺ですら両手使えても相当キツいぜ……ロケットランチャーでもぶち込んだに違いねェ。」
>「…鰐だよ、人喰い鰐の仕業としか考えられん。お前も元ヤンなら聞いた事あるだろ?」
『人喰い鰐』というワードを聞いて梅村の頭の中で全てが繋がったようだ。
「思い出したぜ…そうか、あの瓶底眼鏡が人喰い鰐だったとはねェ。」
>「まさか喧嘩しに行こうなんて考えてないよな?」
「こんな体で喧嘩しに行くわけないじゃないですか、それに今は争う理由が無ェ。
 理由も無ェのに喧嘩ふっかけるのはただのチンピラでさァ。」
>「お前もちょっとは成長したじゃないか。
 そんなお前に良いものを見せてやろう。」
風紀委員長はバッグから紙切れを取り出した。
>「机と窓の請求書だ。風紀委員から一切金は出さんぞ。自腹を切るんだな。」
「……あの腐れ鰐…俺のせいにしやがって…。」
請求書を受け取った梅村は小羽に復讐を誓うのだった…。

115 :梅村遊李 ◆89ggxEkiHQ :2011/08/29(月) 20:52:17.89 O
夏休みも無事に終わり、再び学園での生活が始まる。
始業式を終え、部長に呼ばれていた時間通りにN2DM部に向かう。
手にはまたもコンビニ袋がぶら下げられていた。
>「おう、お前ら!久しぶりだな!」
>「お前らメール読んだよな?
 今日ちょっと重大発表があるから、それの記念鍋パーティーだ!」
部室に入ると久しぶりの部長の顔が。
以前と変わらず元気そうな様子で梅村は内心ホッとしていた。
「久しぶりです旦那。しっかしまだ暑いのに鍋って…」
>「昨日メールで伝えたように、鍋、コンロ、それから野菜は俺が用意してある。
 ちゃんと持ってきただろうな!食材を!さぁ見せるがいい!そして入れるがいい!
 今こそ聖鍋戦(ジハード)の時である!」
言われるがままにコンビニ袋からハーゲン○ッツを3つ取り出し鍋の中へとぶち込む。
「ハーゲン○ッツは何にでも合う筈でェ。これできっとコクのある鍋になるに違いねぇ。
 あ、そうだ旦那。」
梅村は一旦鍋から離れ、チョイチョイと部長を呼ぶ。
「その…何て言っていいのか分かんねぇけど………嶋田の件、本当にありがとうございやした。」
そう言って照れ臭そうに部長に対し深々と頭を下げる。
人に対して素直に頭を下げて感謝をする事など滅多に無い、梅村の珍しい光景であった。

116 :梅村遊李 ◆89ggxEkiHQ :2011/08/29(月) 20:55:19.26 O
>>115は無し!こっちが訂正版です。申し訳無い】
夏休みも無事に終わり、再び学園での生活が始まる。
始業式を終え、部長に呼ばれていた時間通りにN2DM部に向かう。
手にはまたもコンビニ袋がぶら下げられていた。
>「おう、お前ら!久しぶりだな!」
>「お前らメール読んだよな?
 今日ちょっと重大発表があるから、それの記念鍋パーティーだ!」
部室に入ると久しぶりの部長の顔が。
以前と変わらず元気そうな様子で梅村は内心ホッとしていた。
「久しぶりです旦那。しっかしまだ暑いのに鍋って…」
>「昨日メールで伝えたように、鍋、コンロ、それから野菜は俺が用意してある。
 ちゃんと持ってきただろうな!食材を!さぁ見せるがいい!そして入れるがいい!
 今こそ聖鍋戦(ジハード)の時である!」
>>109>「はい、部長! それでは私から行かせていただきます!」
部長の呼び掛けに答えるように真っ先に手を挙げたのはまぎあであった。
>「えっと、これなんですけど……とりあえずドバッと入れちゃいますね!」
まぎあは『厳選黒毛和牛ホルモン500g』と記されている肉を3パック取り出し、豪快に鍋にぶち込んだ。
「やるじゃねぇか。これは俺も負けてらんねぇぜ。」
まぎあに妙な対抗心を燃やした梅村はコンビニ袋からハーゲン○ッツを3つ取り出し鍋にぶち込む。
「ハーゲン○ッツは何にでも合う筈でェ。これできっとコクのある鍋になるに違いねぇ。
 あ、そうだ旦那。」
梅村は一旦鍋から離れ、チョイチョイと部長を呼ぶ。
「その…何て言っていいのか分かんねぇけど………嶋田の件、本当にありがとうございやした。」
そう言って照れ臭そうに部長に対し深々と頭を下げる。
人に対して素直に頭を下げて感謝をする事など滅多に無い、梅村の珍しい光景であった。

117 :梅村遊李 ◆89ggxEkiHQ :2011/08/29(月) 20:57:34.64 O
名前:梅村遊李
異名・肩書:「混沌の風紀委員」
年齢:15歳
身長:167cm
体重:57kg
種族:人間
職業:副風紀委員
属性:ドS
性別:男
性格:ドS、腹黒、たまにちょっぴり優しい
誕生日:3月6日
血液型:B型
利き手:右
長所:恩を忘れない
短所:やり過ぎる
所持品:手錠、首輪、バンテージ、鉄板等
瞳の色:ブラウン
髪の毛の色、長さ:うっすら茶髪、ロン毛
容姿の特徴・風貌:長い髪を一つ結びにしている、カッコ良いと言うより可愛らしい顔つき
その他特徴:右腕に「風紀委員」の腕章
趣味:調教(相手を一方的に痛めつけること)
好きなもの:ボス、メロンクリームソーダ、調教
嫌いなもの:ボスの怒り、偽善者
好きな食べ物:メロンクリームソーダ
一番の決めゼリフ:「メロンクリームソーダ1つ」
簡単なキャラ解説:高等部1年にして副風紀委員を勤める少年。
外見からは想像が出来ない程ドSで、素行の悪い相手には調教と称して制裁を与える。
黒い噂が絶えない問題児でもあり、風紀委員長も頭をなやませているようだ。
風紀委員に入った理由が「風紀委員長と一緒に居たいから」「理由をつけて暴れられるから」といった超自分勝手な理由である。
基本的に怖いもの知らずだが、幽霊と風紀委員長には頭が上がらない。

118 :小羽 鰐 ◆DeLd.MSvGY :2011/08/29(月) 23:35:05.66 0
>>93
「て、てめぇ!こんな事してただで済むと思って――」

ただ、拳を横凪ぎに振るう。それだけの挙動で、憤怒の色を浮かべ唾を巻き散らし、
口汚く恫喝の言葉を叫んでいた坊主頭の男は、まるで電池の切れた玩具の如く力無く崩れ落ちた。
小羽……いや『人食い鰐』は、眼鏡の下に隠していた孤高の狼が如き瞳をもはや隠す事無く、
薄汚れたビルの一室、ただ一人で歩を進める。

その背後には、黒い背広を羽織った角刈りの大男や、手にナイフらしき獲物を持った金髪の男。
鉄のパイプを手に持った男や、果ては日本刀を持ち全身に刺青を入れた男。そんな男達が

全員――たった一人として残す事無く、その意識を刈り取られ、血に付していた。

「くっ……て、てめぇ!何処の組の鉄砲玉で、何が狙いだ!!
 金か!それとも、ウチのシマかっ!!」

一人残っているのは、その部屋の最奥の机に座る、指定暴力団「壁狭組」のボスである男。
闇社会に生きる者だけあって、その男は眼前の光景を見ても際立って怯えの色は見せないが、
その手には多量の汗が滲んでいる。
無法の世界、悪鬼羅刹の巣窟を生き抜いてきた男の前に今立っているのは、
人の作り上げたその無法ですら暴力という牙で食い潰す、まさしく一匹の獣であった。

返り血によって赤く染めた両腕は、まさしく獲物を食い殺した鰐の口蓋の如く。

所々に血化粧を施した、銀色の獣。

「別に私は、貴方達が薬を巻いてるのはどうでも良かった。
 だってそれは、薬を使う馬鹿の自己責任だから。だから、放って置くつもりだった」

一歩、足を進める。
鰐と化したその少女の言葉には「いつも」の小物めいた語尾。
まるで必死に自分を小さく弱く見せようとしているかの様な、それが付いていない。

「…揮毫だけど、貴方達は、私の居場所にまで影を見せた」

更に一歩。まるで獲物を追い詰めるかの様なその動きに、
気おされた男は唾を飲みつつも口を開く。

「く、薬……ま、まさか嶋田に売らせてたアレの事か!
 お、おい。なら待て!聞け!さっき連絡があった!
 嶋田はあの学校の誰かがやらかしたせいでもう用なしだ!安心しろ!俺達は手を引く――」

手を後ろに回しつつ、男はじりじりと後ろに下がりながら、
安心させるかの様に引きつった笑顔でそう言うが

「訳がない。貴方達が、自分の「餌場」を奪った相手を許す筈が無いのは知ってる。
 その腐りきった執念で、その相手を探し出して、見つけ出して、報復する事も、知ってる。
 だから――――そうなる前に、私がここで 喰 い 殺 す 」

「お、おいおい……何言ってんだ。俺はそんな事――――するに決まってんだろうが!!!!!
 死ねええええ!!!!クソガキがああああああ!!!!」

119 :小羽 鰐 ◆DeLd.MSvGY :2011/08/29(月) 23:36:54.37 0
更に鰐が一歩踏み出した瞬間、男は後ろ手にしていた腕を前に突き出す。
そこに握られていたのは――――黒光りする鉄塊。拳銃であった。
真っ直ぐに鰐に向けられたその銃口は派手な発砲音を鳴らし――――

「ぎゃあああああああああっ!!!!」

天井へ、放たれた。男の腕は、鰐が放った拳によって放った半ばからあらぬ方向へ曲がり、
銃弾は鰐の頬を浅く掠めるだけに留まった。
鰐は男の絶叫を気にする事も無く、頬に血痕を付けた無表情で淡々と男の顎を捻り上げ、
その瞳を無理矢理自身の瞳へと合わさせる。

「これで、貴方達は負けた訳だけど……復讐とか妙な事は考えない方がいい。
 たった一人。それも女に組員全員が負けたなんて知れたら、
 貴方達は二度とこの世界で生きて行けなくなる。そして、その後もう一度、
 私を相手に……今度は本当に食い殺される事になる。さあ、どうすればいいかは判る筈」

鰐の永久凍土を思わせるその無感情な瞳に、男は小さく悲鳴を上げ……そして意識を失った。
鰐はそれを見届けると、懐からポラロイドカメラを取り出して数枚の写真を撮り、
やがてゆっくりと出口の扉へ向けて歩き出した。

「これで……部長や、皆はもう狙われない。良かったっす」

そう呟いて。

眼鏡を装着し直した小羽は、先ほどまで着ていたジャージの上着で自身の腕に付いた
血痕を拭い……何度も何度も何度も、拭った後、その部屋から立ち去っていった。
恐らく、この後駆けつける警察達も一人のたった少女がこの現場を作り上げたと思う事は無いだろうし、
この気絶している暴力団員達も、自身の保身とその面子を守る為、決して真相を話す事は無いだろう。


――――かくて華々しい学園の英雄達の動乱の裏で、一つの暗く汚れた物語がひっそりと幕を下ろした。

120 :小羽 鰐 ◆DeLd.MSvGY :2011/08/29(月) 23:37:36.24 0
>>105>>109>>116

9/1

時は移ろい九月。色々なイベントがあった夏休みもとうとう終わり、
灼熱が如き太陽による苛烈な責め苦もようやく少しずつ柔らかな物となった、学園始業式のこの日。

――――N2DM部の部室には、何故か鍋が鎮座していた!

>「昨日メールで伝えたように、鍋、コンロ、それから野菜は俺が用意してある。
>ちゃんと持ってきただろうな!食材を!さぁ見せるがいい!そして入れるがいい!
>今こそ聖鍋戦(ジハード)の時である!」

「……とりあえず、補給兵が私しかいないのはどうかと思うっすけど。
 あ。私はカップラーメンの麺だけ持ってきたっす」

そう、例によって例の如く、部長が考案し催された謎のイベントである。
当然ながらそのメールは小羽の携帯にも届いており、何時に無く人口密度の増した室内で、
彼女は各自に小皿を配布したり箸を渡したりと、雑務に追われていた。
ちなみに、某風紀委員No2には何故か小皿を配っていないのだが……それは置いておこう。
とにかく、小羽は雑務に追われているのである。
何となく忙しそうに見えないのが不思議だが。

>「…というわけで、おはようございます!
>今日も良い天気で楽しい一日になりそうですね!」

そんな事をしている間にも、どんどん人員は増えていく。
見れば、N2D部でも数少ない女性部員である楯原もやってきており、
彼女は最高級の肉を惜しげもなく鍋に投入していた。
いきなりの大物の登場に周囲のテンションが跳ね上がっていたが

>「ハーゲン○ッツは何にでも合う筈でェ。これできっとコクのある鍋になるに違いねぇ」

挙がる嘆きの声。まあ、こういう企画である為。当然やらかしてくれる輩は現れる。
そもそも持ち寄り鍋というものは、それぞれの性格が大きく反映されるものだ。
当然、自分の好みの物を食い合わせも考えずにぶち込む輩は……そういう性格なのだ。
結果として鍋に、もの凄い早さで融解する白い孤島が、三つも製作されてしまった。
……最も、鍋パーティーというのに麺を持って来て、その方向性をへし折らんとする小羽も
他人に偉そうな事は言えないのだが。

そうして、ひとしきり雑務を終えると小羽はその瓶底眼鏡の曇りを拭いてから、
一人、部室の端に置かれた椅子へと腰掛ける。

「それにしても、発表って何っすかね……」

余談だが、この日の小羽の服装は学生服にエプロンという調理実習じみたものであった。

121 :小羽 鰐 ◆DeLd.MSvGY :2011/08/29(月) 23:55:31.78 0
名前:小羽 鰐
異名・肩書:「N2DM部書記」「人食い鰐」
年齢:高校二年生
身長:160cm
体重:−kg
種族:人間
職業:学生
性別:女
性格:ややダウナー
誕生日:10月1日
血液型:AB型
利き手:両利き
瞳の色:暗い赤
髪の毛の色、長さ:肩までの長さの銀髪。後ろ髪はシャギーがかかっておりウルフカット気味
容姿の特徴・風貌: 瓶 底 眼 鏡  ちなにみ眼鏡を外すとかなり美人
その他特徴:色々服装を変える。だが大抵は萌えない服装である
趣味:羊羹収集 部長いじり
好きなもの:N2DM部 羊羹
嫌いなもの:DQN
好きな食べ物:羊羹

簡単なキャラ解説:高等部2年の女生徒。瓶底眼鏡が特徴のN2DM部書記
よく同部活の部長の心をへし折っている姿が目撃されている、特に特徴の無い普通の少女


かつて「人食い鰐(クロコダイル)」と呼ばれていた
戦闘能力はとても高い New!

122 :九條十兵衛 ◆mJkMShtvmg :2011/08/30(火) 14:43:27.05 0
>「ちっ!俺が死んだらお前らのせいだからな!」

部長はほんの少しだけ逡巡を見せてから、靴先を出入口へ向けた。
僕は喋りすぎた。喉はカラカラだし、口の中は血の味がする。だから黙って、部長を掌で見送った。

>「はぁっ……はぁ…ったく、テメーもテメーの部長も馬鹿な野郎でィ。
 戦えねぇクセに……こんな無茶してボロ雑巾みてぇにされて……。
 だが……嫌いじゃねぇぜ…テメーらみてぇな……気合いの入った馬鹿は……よ…。」

「うん。――僕もきっと、こんな自分が嫌いじゃない」

自分を好きになるっていうのは、言うほど容易いことじゃないんだ。
自分を過大評価できちゃう中二病って歳でもなしに、劣等感がモロに出てくる思春期の僕らは、自分をなかなか肯定できない。
僕よりすごい奴はいっぱいいる。
クラスでいつも中心にいるリア充と、日陰者の自分との差を、否応なしに実感させられる。

それでも。胸を張ってこれが自分だ!って言えるようなことがあるとすれば、きっとそれは"誇り"になる。
この先の人生で、誰かに自慢できるような、僕スゲー超カッコイーな瞬間。
今がそうだとするならば。
こうやってボコらてた甲斐があったってもんだよね。

――――――――

この事件についての僕の物語はこれでおしまい。
中途半端でも、不恰好でも、僕は僕のキャラを全うした。
だからここから先は、本編に復帰するまでの閑話。言うなれば今回の件の後日談である。

なんだかんだで肋骨とか足の骨とかに洒落にならないダメージを負っていた僕は、
あの後風紀委員の医療班によって保健棟に運び込まれた。
最新鋭の酸素カプセルや高周波治療器が揃い、簡単な手術や輸血までできる学園の総合病院である。
何が凄いって、輸血パックが常備されてることだ。
血液は保存が効かないので、畢竟ある程度の需要がなければ血液常備なんてことは普通ありえない。
血液の需要。どんだけ流血沙汰に不自由しないんだよこの学園。っていうのが突っ込みどころ。

怪我が治ったあとも散々だった。教員連と生徒会の内政部にこってり絞られたのだ。
そりゃあれだけのことをしでかしたんだから納得は行く。少なからず被害も出てたらしいしね。
不思議と実罰はなかった。処分としては厳重注意なんだけど、ちょっと『厳重』の方にウエイトかかりすぎな注意でした。
生徒会執行部の、実働班を差し置いて最強と名高い尋問班が僕をぐるりと取り囲み、事情聴取とお説教の二重奏。
髪の毛白くなるかと思ったよ。

この件で僕に最も課せられた反省。
考えなしに大衆を扇動し、向こう見ずの被害を出したこと。
父に言わせたら「わけがわからないよ。どうしてきみたちは力の使い方にこだわるんだい?」とか言われそうだけど、
僕はプロだ。フェッショナルだ。当然矜持はあるし、美学もある。なんてったって、ペンは剣より強いのだから。
それと、火付け役とは言ったものの種火は完全に部長任せだったってのもマイナスだ。
僕一人じゃどうにも成し得なかったことだ。この先ずっとあの人の行動力におんぶにだっこじゃ、きっと駄目になっちゃうよなあ。
あと、今回みたいにボッコボコにされて病院送りってのは流石に御免被りたい。
営業としても、諜報員としても、戦闘能力なんてこれっぽっちも使いやしないけど、自分の身ぐらいは自分で守らないと。
そう思った僕は、技術研の門を叩くことにした。

新興技術研究会。通称技術研。
『常識に囚われない新しい技術を』とかいうスローガンのもと、爆発物作ったり爆発物売ったり爆発物持ち込んだりしてる部活だ。
真面目な研究開発もちらほらやってるらしく、風紀委員の手錠とか執行部の無力化武装なんかも彼らの開発だ。
ここの開発担当者が僕の昔からの知り合いで、オーダーメイドでスパイキット(趣味全開な名前だなこれ)を仕立ててもらったりしてる。

「――というわけでさ、護身用のアイテムとかないかな」
「益体もないことを言う奴だね君は。もう少し具体的な要望で絞り込んでくれなければ、アプローチのしようがないのだがね」

僕の対面には白衣をスラリと着こなす学生が一人。
先述の開発担当者、ニックネームはマッチー。マッドサイエンティストの略だ。

123 :九條十兵衛 ◆mJkMShtvmg :2011/08/30(火) 14:44:18.89 0
「そうだね。持ち運びが容易で、扱いやすく、ストッピングパワーの高いものがいいな」
「ふむ。ではこの改造ガスガンなどどうだろう。圧力の高い特殊なガスを使い、専用のゴム弾を発射する。
 プロボクサーのパンチ並の打撃力をもち、かつ装弾数も17発と多い。この大きさなら脇に吊っていても外からは見えまい」

マッチーが引っ張り出してきたのはグロックと呼ばれる、シンプルな外観が特徴の拳銃だ。
いやいや、こんなの持ち歩いてるの万一見られたら言い訳のしようがないよこれ。

「風紀委員の『持ち物検査』に引っかかったら一発で取り調べ室行き確定じゃないか!」
「ふむ。威圧的な外観は×、と。ならばこのペン型スタンガンなど如何かね。スイッチ一つで大人を10秒無力化できる」
「それは護身以外の目的に使っちゃいそうだから駄目!」
「どんだけ自制心がないのかね君は……」

いやだって、スタンガンはマズいっすよスタンガンは。
護身具はあくまで護身具の域を超えちゃならないというのが僕の持論。あまり汎用性が高すぎると無用なトラブルを呼びそうだ。

「だいたい、いかがわしい目的ならもっと効率良いアイテムもあるではないかね。クロロホルムとか。盗聴器とか」
「? 僕が言ってるのは、スタンガンの痛気持ちよさがクセになっちゃったらアブないよねって話だけど」
「心配の方向性が色々とおかしいな君は」
「僕の知り合いに"ほぼメンヘラ"みたいな奴がいるんだけど、最近ムチとロウソクを使った斬新な自傷方法を開発らしいんだ」
「それは進化論として興味深いテーマだな」

結局、僕のお眼鏡に適うアイテムは見つからなかった。
帰り際にマッチーが携帯サイズのスプレー缶を投げてきたので受け取る。

「技術研で新開発した瞬間接着剤だ。速乾性でありながら接合は極めて硬く、かつ専用の剥離剤を塗れば跡も残さず蒸発する。
 開発者の私とて何に使えるかは知らんが、活用して報告書を上げ給え。ワイヤーリールの修理代はそれで請け負おう」

マッチーと知り合ってからというものの、僕には定期的にこういう依頼が下りてくる。
流石に機密の関係でN2DM部に持っていくわけにはいかないから僕だけで消化しているけれど、これって体の良い実験台だよなあ。
スパイキットの開発にもフィードバックされるから、文句は言えないんだけどね。

「了解。それじゃ僕はそろそろ部室に向かわないと」
「ほう。そういえば今日だったな。君のところの、えーと……名前は忘れたが」
「うん。――部長の復帰日」


――――――――


>「おう、お前ら!久しぶりだな!」
「部長ぉー!ホントに久しぶりですよ!二ヶ月もどっか行っちゃって!」

定刻通り部室に現れた部長に駆け寄り熱烈なハグで出迎える……というのが当初の予定。
実際立ち上がった拍子に膝小僧を机にぶつけて悶絶し、その衝撃で楯原ちゃんとやってたニンテンドー64が落ちてきて頭を直撃。
僕が床に転げてのたうち回ってる間に出迎えイベントは終了していた。こいつらホントに薄情だなあ!

>「お前らメール読んだよな? 今日ちょっと重大発表があるから、それの記念鍋パーティーだ!」

鍋パーティ。もちろん周知の事実だ。
メール見た当初はこのクソ暑い中鍋とか頭おかしいんじゃねえの!?とか思ったものだけど、っていうか返信したんだけど。
ひたすら寮でゴロゴロしながら夏休みを消費していくにつれ、募ってくるのは人の温もりへの欲求だ。
端的に言って、暇人で、寂しかったので、僕は無駄にはりきって鍋の具材を用意していた。

>「昨日メールで伝えたように、鍋、コンロ、それから野菜は俺が用意してある。
 ちゃんと持ってきただろうな!食材を!さぁ見せるがいい!そして入れるがいい!今こそ聖鍋戦(ジハード)の時である!」

ふふふ。奴らの感謝と感激の視線が眼に浮かぶようだぜ。
なんてったって夏休みにちょっとしたバイトをして、その金を全部つぎ込んで用意してきたのだ。
奮発したよー、肉とか500グラムで千円ぐらいしたもん。学園内のスーパーマーケットの中では一番グレード高いやつだ。

124 :九條十兵衛 ◆mJkMShtvmg :2011/08/30(火) 14:47:14.73 0
>「えっと、これなんですけど……とりあえずドバッと入れちゃいますね!」

N2DMの賑やかし担当、楯原ちゃんが取り出したるは……え、肉?
『厳選黒毛和牛ホルモン500g』――ワンパック3000円クラスのお肉が3パック。

「ぎええええええええええええっ!」

見えない壁(心象風景)に吹っ飛ばされ、僕は部室の壁まで吹っ飛んだ。
なんてことだ……戦闘力が違いすぎる……ッ!!

>「皆さんと鍋を囲めると思うと私すごく楽しみで…。
 ほんの少〜しだけ奮発させていただきました♪」
「や、やめて!それ以上輝かないで!僕が死んでしまう!!」

なんやねんこの子。めっちゃええ子やんなあ?
ワンパック1000円の肉をドヤ顔で取り出して悦に入ろうとしていた僕の計画は一瞬にして風前の塵と化した。
その圧倒的オーラにあてられて僕の肉達が急速に萎びていくのが分かる。特質系の念能力者だったのか……。

>「ハーゲン○ッツは何にでも合う筈でェ。これできっとコクのある鍋になるに違いねぇ。

何故かN2DMの鍋会にお呼ばれしていた梅村くんがそこに爆弾を投下しやがった。
某高級アイスクリームが肉の上に乗り、鍋の熱で溶けていく。あっという間に美味しそうな鍋はゲテモノにクラスチェンジ。

「こんなの絶対おかしいよ!」
梅村くんは楯原ちゃんに向かって渾身のドヤ顔してるし。張りあう方向おかしいって、絶対。

>「あ。私はカップラーメンの麺だけ持ってきたっす」
「他の中身どうしたんだよ!」

小羽ちゃんは小羽ちゃんで無駄に手の込んだボケを繰りだすしィー!
考えても見よう、休日にこの銀髪冷眼娘が黙々とカップ麺の箱を剥いて麺だけ仕分けしてる姿を!
涙すら出てくるわ!

いやしかし、こいつは予想以上にハードな状況だ。肉は駄目でもまだ手駒はある。
だけど無体に放り込むのが下策も下策、有効なブツを最高のタイミングで投下しなければこの濃いキャラ共を相手に生き残れない。
そう、最早これはサバイバルにして濃厚な心理戦である。真面目に食材を出すか、ネタに走るか。のるかそるかの分水嶺……!!
ネタに走るにしたって、安直に食べられないものを出すのは素人のやることだ。
たとえ闇鍋染みたこの鍋会でも、鍋自体が台無しになったら最悪の興冷め。プロならちゃんと食材でボケる。
やむを得まい、こいつだけは使いたくなかったが……奥の手始動!

「じゃ、じゃあ僕は生研(なまもの研究会)の知り合いから貰ったこれを」

と言いつつ袋から取り出したるは鉢。小型の植木鉢に、肉厚の葉を持つ苗が植えてある。
土ではなく保水性の高分子ポリマーに埋められた根っこを、葉っぱごと一息に引き抜く!
刹那、根っこ――『人間の赤ちゃんの形をした根』が、ものすごい勢いで泣き出した。

「マンドラゴラ〜!の、レプリカです。ナス科の植物なんで油によく合いますよ」

ぎゃあぎゃあ鳴いてるこの赤ちゃん型植物は、ファンタジーの定番アイテム・マンドラゴラをモデルに生研が独自開発したものだ。
一説では生研の部員に植物とガチ恋した奴がいて、そいつとナスとの子供だって話も聞いたけど、流石にそれは、ねえ?
見た目は不気味だけれど、炒めて醤油をかけるとこれがまた絶品で、学食の麻婆茄子にも使われてるって話だ。

「抜いたばっかの頃は鳴き声がうるさいんですけど、鍋に入れてしまえばこれこの通り」

ポリマーをよく洗い流してから、葉っぱごと鍋に放り込む。
すると威勢よく泣いていた赤ん坊はみるみるうちにおとなしくなり、水を吸って身体を大きくなり、14才ぐらいの女の子の姿になった。
しなをつくったポーズで色目を投げてくる。うへへ。変態揃いの生研の連中もたまにはいい仕事するなあ。
あんまり煮込み過ぎると今度は老婆になってしまうので、若いうちに賞味するのが正しい食べ方だ。

「それで、発表って一体何なんです? 部長の留年が確定したとかですか?」

125 :部長:2011/08/31(水) 02:51:13.40 0
>>109>>116
>「はい、部長! それでは私から行かせていただきます!」

「うむ、マギャーよ!その心意気やよし!さぁ最初の一投めを投入するがよい!」
捻くれてばかりのこのN2DM部に珍しくまっすぐなマギャーのことだ、
きっとそれなりにちゃんとした具材を入れてくれることだろう。それは間違いない。
正直超カオスな鍋になってしまうことも覚悟の上ではあるのだが、もしも、もしもだ。
マギャーがちゃんとしたのを投下するならば、流れでみんなちゃんとしてくれるかもと。
そんなぶっちゃけ叶えられないであろう期待を胸にする俺の前でマギャーが入れたのは。

>「えっと、これなんですけど……とりあえずドバッと入れちゃいますね!」
>「皆さんと鍋を囲めると思うと私すごく楽しみで…。
> ほんの少〜しだけ奮発させていただきました♪」

そう言いながら宣言通りドバッと入れたのは、見るからに高級そうな肉である。
「お、お前…」
ぶっちゃけホルモンより赤身の方が良かったなぁとか思ってしまう俺がいるが、
それを差し置いてもなんだこれ!あれだよ!紙で包まれてる肉だよ!デパ地下とかで!
「おい!いやありがたいんだ!ありがたいんだけどやめとけ!頼むからやめとけ!
 もう買っちゃったのはしょうがないからさ!これからはやめとけ!
 いつか、いつか絶対騙されるから!もっと金は有効的に使ってくれよ!」
マギャーが大金持ちという話は聞いていない。おそらくは実費の筈だ。
こんなちっぽけな鍋パーティーにそんな高級な肉とか悪い気がしてくるじゃん!

ともかく、俺たちの目の前に出来上がったのは超高級なモツ鍋である。
体の芯まであったまりそうだね!まだ夏といってもおかしくない温度だけどな!
とりあえず一発目からとんでもないのが投下されてきた。正直予想外だったが、
しかし思わずテンションが上がってしまうのも事実だ。そんな高い肉食ったことねぇよ。
すごい美味しい鍋が出来る筈だ、そんな俺の仄かな期待はすぐに叩きのめされる。

>「やるじゃねぇか。これは俺も負けてらんねぇぜ。」
>「ハーゲン○ッツは何にでも合う筈でェ。これできっとコクのある鍋になるに違いねぇ。

――こういうヤツによってな。
「はぁー!?お前バカじゃねーの!?バカじゃねーの!?バカじゃねーの!?
 それとも何!?軽い味覚障害とかそんな感じ!?甘さしか感じられないとか!?
 確かにな!ハーゲンは美味いよ!高いだけはある!俺だって食いたいもんだ!
 でもよ!これ鍋!リピートアフターミーNABE!アンダスタン?アンダスタン!?
 何でも合うとかいうならお前ハーゲンおかずに米でも食ってみろやあああああ!!!」
こんだけ怒鳴ってももう投下されてしまったハーゲンは固体に戻ることはない。
室内に漂うバニラの香り。鍋から漂うバニラの香り。あっという間に罰ゲーム。

> あ、そうだ旦那。」
>「その…何て言っていいのか分かんねぇけど………嶋田の件、本当にありがとうございやした。」

「うっさい黙れ。俺に感謝の気持ちがあるならばすぐに鍋を元に戻せ」
食い物の恨みは恐ろしいことをバイソンにもしっかり学んで頂かなくてはならない。
さっきまで高級モツ鍋だったもの。今は…何鍋と言えばいいんだろうか?
しかし待て、考えろ。何か対抗策がある筈だ。考えろ、脳髄を血流で満たせ――!
「これだ!」
そう言って俺が冷蔵庫から取り出したのはポン酢。賞味期限はまだ大丈夫。
そういえば二ヶ月経ってるからだいぶ賞味期限切れてるやつとかもあるよな。
あとで冷蔵庫の整理しなくてはなるまい。前より色々減ってる気がするのは気のせいか?
ともかくポン酢だ。これに浸せば、まだバニラの風味も中和されるのではないか?
そう思い、俺は小皿にポン酢をなみなみと注ぐ。機転を利かせねば部長など務まらん!

126 :部長:2011/08/31(水) 02:51:45.49 0
>>120>>124
> あ。私はカップラーメンの麺だけ持ってきたっす」
「おう、じゃあ締めにでも使うか。って言えたんだよなぁ〜普通の鍋ならなぁ〜」
ぶっちゃけカップ麺の麺だけとかも既にツッコミ処であり、実際QJはツッコんだ。
だが俺はもう別にありなのかもと思ってしまうのだ。いや、鍋の〆に麺とか普通じゃね?
ま、その鍋が普通の鍋であること前提になるよな。しかし目の前にあるバニラ鍋。
この中に麺突っ込むのかい?ハハッ、すごいラーメンが出来そうだなジョニーよ。
はぁ。ジョニーって誰だよ。

カップ麺の麺でも、鍋にはありなのだ。さすがクロ子だ、どっかのNo2(笑)とは違う。
とはいえそれはこれがみんなで食べる鍋だからであり、例えばこれが俺だけが食う、
そんな鍋だったりしたらきっとこいつは嬉々としてとんでもないものいれてくる。
それはともかく、俺の指示とかなくても当たり前のように配膳とか行ってくれる。
こういうところは凄い助かっていたりする。こっぱずかしいから絶対言わねぇけどな!

次はQJが投下するらしい。しかしこれまで俺と一緒にツッコミを入れてきたQJだ。
きっとちゃんと常識的な具材を入れてくれる筈。そうだと信じている。
まっ、こんな鍋に常識的な具材入れたってもはやどうしようもないんだけどなぁ!

>「じゃ、じゃあ僕は生研(なまもの研究会)の知り合いから貰ったこれを」

こういうのもあれだが、この一言でもうヤバい匂いがプンプンしてるよな。
しかし取り出したのは鉢植え。いやまだだ、まだ判断は早い。これがアリかナシか。
どう考えてもナシな気がするがまだわからないんだ。俺はQJを信じよう。
そしてその鉢植えから勢いよく植物を抜いたQJ。その瞬間、部室に響き渡る鳴き声。
思わず耳を塞いでしまった俺だったが、その後に告げたQJの言葉は何故か耳に通った。

>「マンドラゴラ〜!の、レプリカです。ナス科の植物なんで油によく合いますよ」

あぁ、もう駄目だ。この部屋バカしかいねぇ。

>「抜いたばっかの頃は鳴き声がうるさいんですけど、鍋に入れてしまえばこれこの通り」

QJがそんなこと言いながら鍋の中にそれを投げ込むと、部室に響いていた声は止まり。
やがて赤ん坊の姿だったそれは、中等部ぐらいの少女の姿に変貌した。あらかわいい。
本当にかわいいですね!食べちゃうのがもったいないぐらい!でも食べちゃいたい!
なんてね!ハハッ!笑えよジョニー。だからジョニーって誰だよ。
「食えるかぁぁぁぁぁおぁーーーーーーーーーーっっ!!!!!」
思わず鍋をひっくり返そうとしたがなんとか堪える。危なかった、高級ホルモンが。
死んだお婆ちゃんが「食い物を粗末にしちゃあかんよ」と常々言っていたからな。
これが食い物と言っていいのかちょっと俺には判断出来そうにないんだけどさ!

「はぁ…はぁ…」
息切れた。
そもそもなんで俺がツッコミ役になってんだよ!当初の予定にはねーぞそんなの!
予定ではハチャメチャな部長に振り回される部員達、って感じになる筈だったのに!

127 :部長:2011/08/31(水) 02:52:58.61 0
>「それにしても、発表って何っすかね……」

「うむクロ子よ!よく聞いてくれた!実はな!」

>「それで、発表って一体何なんです? 部長の留年が確定したとかですか?」

「んな訳ねぇだろうが!なんで留年確定記念鍋パーティーとかやるんだよ!
 俺そんなに高等部2年に誇り持ってたりしねぇよ!」
停学になっちまって少し予定が狂ったが、一応進級出来る程度の出席日数は足りる筈。
つーか二学期始まった時点で留年とかおかしいだろ!どんだけ早いんだよ!
むしろ確定ってのもおかしいだろ!なんで俺の留年がまるで既定路線のように語ってんだ!

「重大発表とは――これだ!」
そういって俺が取り出したのは一枚の紙。そこには俺が知恵を絞り出して書いた愛の言葉が…
「これじゃねー!こっちだった!」
ちなみにさっきのは高等部三年の城ヶ崎先輩(面識ナシ)に宛てて書いた手紙である。
おっと勘違いするなよ!おいおい偶然を装った出逢いをし、やがて2人の間に
愛が芽生えた時に渡す予定である紙なのだ!俺は準備を怠らない男なのだ!
ともかく、取り出したのは紙だ。あの日、クリス――生徒会長、澤村から受け取った紙。
その内容とは。

「我がN2DM部が、正式に部活動として認可されたのだ!!!!!!!!!!!!」

俺も目を疑ったよ。だがマジなのだ。マジったらマジなのだ。な?重大発表だろ?
「あのクソ女をなんとか口説き落とし、会長直々に認可を取り付けた。
 これも、俺の類い稀なる交渉術があってこそなのだ!褒め称えよ!俺を!」
実際は『犬がお座り出来たからジャーキーあげた』レベルのノリではあったが、
ここにいる人物でそんなことを知ってる奴はいない。なら脚色しても問題ないのだ。
「部室も、このままここを使っていいそうだ。追い出されることは、もうない!」

そして、俺はコップを持ち上げる。
「正式に認可されたからといって、俺たちがやることは変わらない。
 頼まれたことは、やり遂げる。その一点には何の曇りもない。
 それでも、記念すべき出来事であることは確かだ!新たな門出を、祝おう!
 ――乾杯!」
言っとくけどジュースだからな。酒とか飲む訳ねぇだろ!風紀委員いるんだぞここ!
「そして、その記念の鍋パーティーなのだ。…ほら、早く食えよ」
いき感じに煮立っているぞ。…マンドラゴラは万歩、いや億歩譲って許そう。
ハーゲンさえ…ハーゲンさえなければなぁ…。

「ま、とりあえず鍋パーティーしながら。正式認可後の記念すべき一回目の依頼を、 ゆっくりと、待つことにしようか。何か依頼の当てがあるなら聞くぞ?」
そして俺はジュースをちびちびと飲みながら、みんなに聞こえる声で呟くのだ。
「やっぱり学園側とパイプが欲しいよなぁ…風紀委員兼N2DM部員とかいないものか…
 別に委員会と部活両方やるのは認められてるしな…委員会優先してくれりゃいいし…
 No.2あたりとかさ…俺に恩があるのなさぁ…考えてくれてもなぁ…?
 ん?おっと!これは俺の独り言だから!気にすんな!あー暑い暑い」
俺は『たまたま持っていた』白紙の入部届で、団扇がわりにひらひらと風を作る。

▼依頼受付中!▼

128 :ぶちょー:2011/08/31(水) 02:59:25.23 0
依頼について!
名無しネタでもコテからの提案でもおk!
依頼の深い内容も着地点も決めなくていい!話の流れでみんなで作っていけばいい!
もちろん決めてもいいよ!
コテの誰かが依頼を考えていて、んでもって自分の順番がちょっと遠いとかなら、
「私の順番で依頼ネタありますー」とか一言書いてくれればいいぜよ!

基本的に依頼は短いターンでテンポよく終わらせたい!
急展開!場面転換!どんどん来いである!

129 :部長:2011/08/31(水) 03:07:00.09 0
>>127訂正!
>「それにしても、発表って何っすかね……」

「うむクロ子よ!よく聞いてくれた!実はな!」

>「それで、発表って一体何なんです? 部長の留年が確定したとかですか?」

「んな訳ねぇだろうが!なんで留年確定記念鍋パーティーとかやるんだよ!
 俺そんなに高等部2年に誇り持ってたりしねぇよ!」
停学になっちまって少し予定が狂ったが、一応進級出来る程度の出席日数は足りる筈。
つーか二学期始まった時点で留年とかおかしいだろ!どんだけ早いんだよ!
むしろ確定ってのもおかしいだろ!なんで俺の留年がまるで既定路線のように語ってんだ!

「重大発表とは――これだ!」
そういって俺が取り出したのは一枚の紙。そこには俺が知恵を絞り出して書いた愛の言葉が…
「これじゃねー!こっちだった!」
ちなみにさっきのは高等部三年の城ヶ崎先輩(面識ナシ)に宛てて書いた手紙である。
おっと勘違いするなよ!おいおい偶然を装った出逢いをし、やがて2人の間に
愛が芽生えた時に渡す予定である紙なのだ!俺は準備を怠らない男なのだ!
ともかく、取り出したのは紙だ。あの日、クリス――生徒会長、澤村から受け取った紙。
その内容とは。

「我がN2DM部が、正式に部活動として認可されたのだ!!!!!!!!!!!!」

俺も目を疑ったよ。だがマジなのだ。マジったらマジなのだ。な?重大発表だろ?
「あのクソ女をなんとか口説き落とし、会長直々に認可を取り付けた。
 これも、俺の類い稀なる交渉術があってこそなのだ!褒め称えよ!俺を!」
実際は『犬がお座り出来たからジャーキーあげた』レベルのノリではあったが、
ここにいる人物でそんなことを知ってる奴はいない。なら脚色しても問題ないのだ。
「部室も、このままここを使っていいそうだ。追い出されることは、もうない!」

そして、俺はコップを持ち上げる。
「正式に認可されたからといって、俺たちがやることは変わらない。
 頼まれたことは、やり遂げる。その一点には何の曇りもない。
 それでも、記念すべき出来事であることは確かだ!新たな門出を、祝おう!
 ――乾杯!」
言っとくけどジュースだからな。酒とか飲む訳ねぇだろ!風紀委員いるんだぞここ!
「そして、その記念の鍋パーティーなのだ。…ほら、早く食えよ」
いき感じに煮立っているぞ。…マンドラゴラは万歩、いや億歩譲って許そう。
ハーゲンさえ…ハーゲンさえなければなぁ…。

「ま、とりあえず鍋パーティーしながら。正式認可後の記念すべき一回目の依頼を、
 ゆっくりと、待つことにしようか。何か依頼の当てがあるなら聞くぞ?」
そして俺はジュースをちびちびと飲みながら、みんなに聞こえる声で呟くのだ。
「やっぱり学園側とパイプが欲しいよなぁ…風紀委員兼N2DM部員とかいないものか…
 別に委員会と部活両方やるのは認められてるしな…委員会優先してくれりゃいいし…
 No.2あたりとかさ…俺に恩があるのなさぁ…考えてくれてもなぁ…?
 ん?おっと!これは俺の独り言だから!気にすんな!あー暑い暑い」
俺は『たまたま持っていた』白紙の入部届で、団扇がわりにひらひらと風を作る。

▼依頼受付中!▼

130 :楯原まぎあ ◆MyZeP7HDKc :2011/08/31(水) 14:40:59.79 O
>「おい!いやありがたいんだ!ありがたいんだけどやめとけ!頼むからやめとけ!
 もう買っちゃったのはしょうがないからさ!これからはやめとけ!
 いつか、いつか絶対騙されるから!もっと金は有効的に使ってくれよ!」

部長のリキの入った訴えにまぎあは微笑みがちに小首を傾げる、頭上に疑問符が浮かぶ。
"友好"的なことに使ったつもりだったのだが、とでも言いたげに。
日本語とはかくも難しい、ともあれ普通の庶民的鍋が高級感漂うモツ鍋に進化を遂げた。

>「ぎええええええええええええっ!」

突如、十兵衛が奇声を上げながら部室の壁まで吹っ飛んでいった。
何かに打ちひしがれるように、というか壁に体を打ちつけたのではないか。
先程まで一緒に遊んでいた『ワンダープロジェクトJ2』で、主人公の機械少女がゴキブリのレプリカを食べた衝撃や、
必死に稼いだ大金で買った水晶玉を食べられてしまった悲愴感が今更ぶり返してきたのだろうか、と
そんなことが頭に浮かび、まぎあはとにかく元気付けるように十兵衛に向かって笑って見せた。

>「や、やめて!それ以上輝かないで!僕が死んでしまう!!」

よく分からないけど、とりあえず落ち込んでるみたい、
『ピカチュウげんきでちゅう』でも遊べば、良い気分転換になるかもしれないなぁ、
後でどこかにしまったマイクを探しておいてあげよう、そうこっそり肝に銘じておく。

>「やるじゃねぇか。これは俺も負けてらんねぇぜ。」

まぎあの『黒毛和(ry』に張り合いを見せた遊李が誇らしげに取り出したるは、ハーゲン○ッツが3つ。
――ハーゲン○ッツ、それは選ばれしセレブだけが口に出来るお高いアイスクリーム。
当然セレブなどとは無縁のまぎあも口にしたことはない。
遊李はそれを盛大に鍋にぶち込んでいく、どうやら鍋を堪能した後のデザートというわけではなかったようだ。

131 :楯原まぎあ ◆MyZeP7HDKc :2011/08/31(水) 14:42:09.20 O
>「ハーゲン○ッツは何にでも合う筈でェ。これできっとコクのある鍋になるに違いねぇ。

高級モツ鍋は見事高級アイス鍋へと大きく退化――というか変化した。
ハーゲン○ッツ製ヘドロ鍋から甘ったるい異臭がぷんぷん漂い、室内に立ち込めていく。
その中でまぎあは眼を輝かせながら鍋を深く覗き込み、わぁ、と声を上げた。

「すご〜い! さっきまでモツ鍋だった物が、一瞬でスイーツ鍋になってしまいました!
 私、アイスを鍋に使うなんて考えもしなかったです。
 まさかの発想! これは遊李さんに一本取られちゃいましたね♪」

照れたように笑いながらぺろっと舌を出し、自分の額をぺしっと叩く。
しかもモ"ツ"とスイー"ツ"、ツ繋がりですよ! これは偶然じゃないですね、と付け足しながら。

>「……とりあえず、補給兵が私しかいないのはどうかと思うっすけど。
 あ。私はカップラーメンの麺だけ持ってきたっす」
>「他の中身どうしたんだよ!」

「あっ、分かりました! ご飯にかけて食べてしまったんですよ、きっと!」

『麺だけ持参』という鰐の奇妙なチョイスに、鋭くツッコミを入れる十兵衛。
そこにわざわざ手を上げて的外れのKY発言をするまぎあ。

「モツ鍋+ハーゲン○ッツ+カップラー麺……上手くすればモッツァレラにならないかなぁ〜♪」

文字を合わせると何となく似ているし、もしかすると……??
だが、次に登場した得体の知れない物体によりその過剰な期待は潰えることになる。

>「じゃ、じゃあ僕は生研(なまもの研究会)の知り合いから貰ったこれを」
>「マンドラゴラ〜!の、レプリカです。ナス科の植物なんで油によく合いますよ」

十兵衛の取り出した物は、鳴き声を聞いた者に死をもたらすと噂される呪いの植物だった。
だが、あくまでもレプリカであるらしいので、当然その産声を聞いても誰も死に至ることはない。赤子を模して作られたその姿は贔屓目に見ても不気味そのものだが、まぎあにはシュールでキュートな生き物に思えた。
十兵衛がマンドラゴラを頭から爪先まで清潔に洗い流していく。
まぎあはそんな十兵衛の姿に父の面影を見て、うっとりと息を吐く。

132 :楯原まぎあ ◆MyZeP7HDKc :2011/08/31(水) 14:43:21.39 O
「ふふ、十兵衛さん。なんだかお父さんみたい…。
 良かったね、赤ちゃん。きれいきれいしてもらえたね〜♪」

未だ鳴き止まないマンドラゴラの頭を、掌で包み込むように撫でた。

>「抜いたばっかの頃は鳴き声がうるさいんですけど、鍋に入れてしまえばこれこの通り」

"お父さん"が赤ちゃんを煮えたぎった鍋の中に軽い調子で放り込む。
すると、先程まで赤ん坊の姿だったマンドラゴラが急激急速に進化を始めた。
私は今生命の神秘に立ち会っているのかもしれない、これは『人体の不思議展』に展示出来るレベルだ、
生研とはどれほど聡明な科学者の方々が集まっているのだろう、とまぎあに生研への尊敬の念が芽生えていく。

>「それにしても、発表って何っすかね……」
>「うむクロ子よ!よく聞いてくれた!実はな!」

まぎあは一連の流れでうっかり忘れてしまっていたが、そういえば重大発表があるのだった。
そこに十兵衛の冗談か本気か分からない野次が飛ぶ。
だが、どうやら留年が確定したというわけではないようだ。

>「重大発表とは――これだ!」
>「これじゃねー!こっちだった!」

高らかに宣言して取り出した手紙をまた懐に戻す、一瞬見えた『城ヶ崎』という苗字にまぎあは見覚えがあった。
ともあれ改めて取り出された物、それは――

>「我がN2DM部が、正式に部活動として認可されたのだ!!!!!!!!!!!!」

『N2DM部』を正式な部として認可する旨が記載された書類だった。
!マーク十二個分に匹敵する、間違いなく大(×百)発表だ。

「わぁ! 部長の交渉術は※蔵良子も真っ青ですね!
 よっ、交渉人! THE・ネゴシエーター!」

まぎあはどこから取り出したのか、銀色に煌めく紙吹雪を部長の頭上に大量に降らせて褒め称える。

>「部室も、このままここを使っていいそうだ。追い出されることは、もうない!」
>「正式に認可されたからといって、俺たちがやることは変わらない。
 頼まれたことは、やり遂げる。その一点には何の曇りもない。
 それでも、記念すべき出来事であることは確かだ!新たな門出を、祝おう!
 ――乾杯!」

部長の音頭に合わせ、一斉にグラスをかち合わせる。
カチン、という硬質な音が胸の奥にまで深く響くのを感じた。

133 :楯原まぎあ ◆MyZeP7HDKc :2011/08/31(水) 14:45:35.69 O
>「そして、その記念の鍋パーティーなのだ。…ほら、早く食えよ」

大発表の余韻に浸りながら、煮えたぎる高級アイス鍋に戸惑いなく箸を伸ばす。
目標はハーゲン○ッツ、箸では掬えそうにないのでおたまを使用。

「あぁ……あのセレブ御用達ハーゲン○ッツが私の目の前に。感激ですぅ」

>「ま、とりあえず鍋パーティーしながら。正式認可後の記念すべき一回目の依頼を、
 ゆっくりと、待つことにしようか。何か依頼の当てがあるなら聞くぞ?」

部長の恋を応援するって依頼はどうかなぁ、まぎあは考えながらハーゲン○ッツを口に運ぶ。
ホルモンの濃厚な脂がプラスされたハーゲン○ッツは、吐き気を催す何とも言えない風味を醸し出していた。
でも死にそうなほど不味いわけではないし平気平気、そう笑って二口、三口と続けて口に運ぶ。

>「やっぱり学園側とパイプが欲しいよなぁ…風紀委員兼N2DM部員とかいないものか…
 別に委員会と部活両方やるのは認められてるしな…委員会優先してくれりゃいいし…
 No.2あたりとかさ…俺に恩があるのなさぁ…考えてくれてもなぁ…?
 ん?おっと!これは俺の独り言だから!気にすんな!あー暑い暑い」

そのわざとらしすぎる独り言は、あからさまに風紀委員である遊李に向けられている。
というかNo.2と言及している時点で、遊李に狙いを合わせているのは明らかだった。
なるほど、これが部長の交渉術! まぎあは両手を合わせて聞き入っている。

「遊李さん、ホルモンをどうぞ! コリッコリのプリップリですよ!」

そこで、自分もその素晴らしい交渉術にあやかろう、とまぎあも動きを見せた。
美味しい物を食べれば笑顔になる、楽しい気分になる、それは誰しも同じはず、
どんどん良い気分になっていただければ入部の決意もきっとスムーズに、と考えたのだ。
極めて素早い動作で、遊李の皿にハーゲン○ッツ味のホルモンを運んでいく。


>>111了解です♪ぶちょお〜〜〜!(ラサール石井の声で
 というか順番も履き違えていて、ダブルごめんなさい! ほげえええええ】

134 :名無しになりきれ:2011/08/31(水) 16:59:15.54 O
(乱痴気騒ぎの最中、ドアの隙間から白い手紙が差し込まれる)

※女子剣道部主将からの依頼文※
此度は部長殿、並びにえぬえぬでぃいえむ部員諸氏の助力を求めてここに文をしたためた次第だ。
最近、我が女子剣道部の部室周辺で不審な人影を見たとの報告が相次いでいる。
覗きか、窃盗か、あるいは変質者か……どちらにせよ看過できる事態ではない。
目だった被害が出ていない以上官権は大きく動けぬだろうし、事無かれ主義なのかは知らぬが教師陣も腰が重い。
しかし何か起こってからでは遅すぎる。後輩たちも怯えている。
本来なら主将である私が解決せねばならぬのだが、恥ずかしながら私は待ち伏せや張り込みの才覚を持ち合わせていない。
どうか私に代わって狼藉者を捕らえていただけないだろうか。

135 :梅村遊李 ◆89ggxEkiHQ :2011/08/31(水) 18:48:31.59 O
>>125梅村の感謝の言葉は簡単に一蹴された。
>「うっさい黙れ。俺に感謝の気持ちがあるならばすぐに鍋を元に戻せ」
>「これだ!」
冷蔵庫からポン酢を取り出し小皿にポン酢を注ぐ部長を横目で見ながら自らの小皿を探す。
「ひでーなぁ旦那ァ。せっかく俺が感謝して頭下げたってのによー。
 旦那はシチューやドリアを知らないんですかィ?
 どっかの牛乳嫌いなチビ錬金術師だってシチューは食えるってのに…」
そう言いながら小皿が自分に配られていない事に気付く。
「瓶底眼鏡め…いつかその眼鏡かち割ってやるぜィ」
心の中で毒づきながら自分で小皿を取り出し、鍋の元へと戻る。
>>124するとちょうど九條が鍋に何かを入れるところだった。
>「じゃ、じゃあ僕は生研(なまもの研究会)の知り合いから貰ったこれを」
取り出した鉢の中の植物を勢い良く引き抜くと部室内に赤ん坊の声が響きわたる。
>「マンドラゴラ〜!の、レプリカです。ナス科の植物なんで油によく合いますよ」
>「抜いたばっかの頃は鳴き声がうるさいんですけど、鍋に入れてしまえばこれこの通り」
そう言って鍋に赤ん坊型の植物を放り込むと、みるみるうちに自分より少し年下位の女の子に成長した。
「へぇ〜。生研の連中もたまには面白いモン作るじゃねぇか。
コイツは調教練習用に丁度良いや、後で貰ってこよう。」
すっかりマンドラゴラのレプリカを気に入ったようだが、何やら良からぬ実験に使う気のようだ。
深く詮索はしない方が身のためだろう。
>「食えるかぁぁぁぁぁおぁーーーーーーーーーーっっ!!!!!」
激しいツッコミを入れる部長に対して梅村のリアクションは平静としていた。
「いやいや、これはこれでアリっちゃアリじゃないですかィ?
 食い物的な意味での食うってのと性的な意味での食うってのを上手くかけてるわけだ…。
 こりゃ生研の連中に一本取られちまいやしたねェ。」

136 :梅村遊李 ◆89ggxEkiHQ :2011/08/31(水) 18:52:08.40 O
そう言っている間に小羽、九條、部長の漫才が始まるが梅村はそれを聞き流しながらメロンクリームを作っていた。
>「重大発表とは――これだ!」
部長が取り出した紙、それは高等部3年のマドンナ的存在の城ヶ崎に向けて書かれたラブレターだった。
「部員全員集めてそんなもんを発表するなんて、旦那はなかなかのドMですねィ。」
>「これじゃねー!こっちだった!」
慌ててラブレターをしまうとまた新しい紙を取り出す。
そして声高々に宣言する。
>「我がN2DM部が、正式に部活動として認可されたのだ!!!!!!!!!!!!」
それは予想を遥かに超えた宣言だった。
「まさか…あのお堅い生徒会長を丸め込んだってのか……大したお人でィ。」

>「正式に認可されたからといって、俺たちがやることは変わらない。
 頼まれたことは、やり遂げる。その一点には何の曇りもない。
 それでも、記念すべき出来事であることは確かだ!新たな門出を、祝おう!
 ――乾杯!」
「かんぱーい。」
梅村は既にメロンクリームソーダ2杯目に突入している。
「こういう時の乾杯は酒じゃないんですかィ?」と思いながらも口には出さず黙々と何故今回自分が呼ばれたのかを改めて考える。
しかしいくら考えたところで全く理由が思い浮かばなかった。
>「やっぱり学園側とパイプが欲しいよなぁ…風紀委員兼N2DM部員とかいないものか…
 別に委員会と部活両方やるのは認められてるしな…委員会優先してくれりゃいいし…
 No.2あたりとかさ…俺に恩があるのなさぁ…考えてくれてもなぁ…?
 ん?おっと!これは俺の独り言だから!気にすんな!あー暑い暑い」
わざとらしく呟き、わざとらしく白紙の入部届で扇ぐ。
梅村は目を閉じニヤリと微笑み、白紙の入部届を部長の手からスッと抜き取る。

137 :梅村遊李 ◆89ggxEkiHQ :2011/08/31(水) 18:55:38.79 O
「なるほどねェ…まあ、悪い話じゃねぇわな…ん?」
テーブルの上にあった自分の取り皿が無い。
>「遊李さん、ホルモンをどうぞ! コリッコリのプリップリですよ!」
気をきかせたまぎあがバニラホルモン鍋をよそってくれたようだ。
「おう、悪いねぇお嬢さん。どっかの瓶底眼鏡とはワケが違うぜェ。」
気分良さげにバニラホルモン鍋を口に運ぶ。
その時、梅村に戦慄走る。
「これは……こってりとしたホルモンにこってりとしたバーゲンが見事にマッチして鮮やかなハーモニーを奏でている…。
 こりゃ新感覚スイーツとか言っとけば馬鹿なメス共から金が取れるレベルですぜ…」
などとワケの分からない供述をしながら入部届の記入欄をスラスラ埋めていく。
「これで良いんですかィ?本来なら面倒だと断りたいところですが…
 アンタ達と居るのもなかなか面白そうですし…
 何より俺ァ恩だけは忘れねぇ男だ。」
書き終えた入部届を部長に渡すと空になった取り皿にバニラホルモン鍋をよそう。

>>134するとドアの隙間から早速依頼が放り込まれる。
「旦那ァ、早速依頼ですぜェ。なになに……女子剣道部からの依頼か…。
 あそこは可愛い娘が多いって事で有名だ…恩を売っといて損は無さそうですぜ。」

138 :小羽 鰐 ◆DeLd.MSvGY :2011/08/31(水) 21:50:18.95 0
>>124 >>126 >>131 >>136
>「マンドラゴラ〜!の、レプリカです。ナス科の植物なんで油によく合いますよ」

もはや食材かどうかすら怪しい物体を投下する九條。

>「これだ!」

と何かを思いついた様な事をいいつつ、ポン酢を投下するという荒業にでた部長。

>「あっ、分かりました! ご飯にかけて食べてしまったんですよ、きっと!」

思考回路がショート寸前な発想の発言をする楯原。

N2DMの質に居る部員他は、全員が全員妙なテンションになっており、
鍋か何か判別出来なくなりつつあるソレは、嗅いだことの無い臭いを発し始めており、
それを端的に言い表すならば――――カオスだった。

>「食えるかぁぁぁぁぁおぁーーーーーーーーーーっっ!!!!!」


もはや何かを諦めたかの様に叫ぶ部長達を見て一度小さくため息を付くと、
小羽は、部室の冷蔵庫へと向かう。そして、そこから醤油や味醂、出汁の素など様々な調味料を取り出し、
テンションがクライマックス故に、誰も小羽の行動に気付かない内に異臭を放つ鍋の中に投下し始めた。

……するとどうした事だろう。今までゲテモノであった鍋が、
そこはかとなく食べられそうな気配を見せてきたではないか。
鍋のスープは、感覚的には肉じゃがに近いものになってはいるが、
調味料が投下される毎に、何とか食べられそうな臭いを放ち始める。

「まあ、私じゃこれくらいが限界っすか」

邪道では在るものの、すき焼きにアイスを乗せて食べるという手法は存在する。
小羽は、ありあわせの材料をつかってそれを再現し、食べられるレベルにまで鍋のレベルを引き戻したのであった。
最も、あまりに地味すぎてその行為に気付いている者はいないだろう。
梅原などは、いかにも自分のお陰で美味い鍋が出来たと言わんばかりに美味そうに鍋を食している。

>「重大発表とは――これだ!」

そうした一頻りの乱痴気騒ぎの最中、部長がとうとうこの日の本題を切り出した。
その手に持っているのは……一枚の手紙。

「……うわ。相変わらずセンスがないっすね、部長。
 というか、そんなに好きなら早く告白して玉砕するといいと思うっす。私も応援するっすよ」

小羽は先ほど調味料と一緒に冷蔵庫から取り出していた羊羹を齧ると、抑揚に欠けた声色で淡々と突っ込む。
そんな小羽や部員達の様子を気にする事は無く手紙をしまった部長は、今度こそ本当に本題を切り出した。

139 :小羽 鰐 ◆DeLd.MSvGY :2011/08/31(水) 21:50:59.96 0
>「我がN2DM部が、正式に部活動として認可されたのだ!!!!!!!!!!!!」
>「あのクソ女をなんとか口説き落とし、会長直々に認可を取り付けた。
>これも、俺の類い稀なる交渉術があってこそなのだ!褒め称えよ!俺を!」

「それは……おめでとうございますっす」

部長の言葉を聞いた小羽は、彼女にしては珍しく一瞬呆けた後、少しだけ微笑んで素直に賞賛の言葉を述べる。
それほどまでに、部長の言葉は衝撃的なものだったのだ。
なにせ、今まで部活昇格を餌にさんざ踊らされていた部長の姿を見てきており、
それ故に、小羽は生徒会長は部活に昇格をさせる気はないと根拠なしに確信していたのだ。
そんな所へのこの発表。驚かない方が無理だという物だろう。

>「――乾杯!」

だが、そんな驚愕も束の間。やがて、部活昇格を祝したパーティーが始まった。
小羽は、責任を取れと言わんばかりに、九條の前に鍋の中身を丼に大盛りで盛って渡した後、
羊羹を手に持ち、窓枠に腰掛ける。部長が梅原を部に勧誘しているのも容認しつつ、
何となく、その瓶底眼鏡に隠された瞳で部室の天井を見上げた。
初めて見た時にはただの物置にしか見えなかったこの部室を、今は、これだけ沢山の人々が笑顔で満たしている。
それが小羽に、言葉では言い表せない不思議な感情の動きを与えた……ちなみに、小羽は鍋を一切口にしていない。

>>134
と。そんな中、部室の入り口から古式ゆかしく差し込まれた書簡が一つ。

「女子剣道部……運動部で、メンバーの代理とかの依頼は時々あったっすけど、
 こういう依頼は珍しいっすね。ひょっとして、変態(どく)を以って変質者(どく)を制すって事っすかね」

口元を手で覆うようにして、男性メンバーの誰とも視線を合わせずにそう呟く小羽であった。

140 :九條十兵衛 ◆mJkMShtvmg :2011/09/01(木) 07:57:42.98 0
>「食えるかぁぁぁぁぁおぁーーーーーーーーーーっっ!!!!!」

さっきからなにやら一人で一人問答していた部長が突如キレた。
机の上に鍋が乗ってなければちゃぶ台返しが決まっていただろう、烈火の如き……いや、烈火ってほどでもないな。
酸素で満たした試験管の中に突っ込んだ線香の先っぽみてーな怒り。(理系な表現) いや、僕は文系だけど。

>「いやいや、これはこれでアリっちゃアリじゃないですかィ?
 食い物的な意味での食うってのと性的な意味での食うってのを上手くかけてるわけだ…。
 こりゃ生研の連中に一本取られちまいやしたねェ。」

こ、こいつ……!上手いこと言ってオチつけようとしてやがる……!いつの間にそんな高等スキルを!?
仲間の予想外の成長に打ちひしがれた僕はロクヨンを起動しピカチュウげんきでちゅうのマイクをとった。
当時斬新だった音声認識機能で、ピカチュウに声で指示を出すというこのゲーム。電気ネズミって言うと怒るんだよな。
おら!電気ネズミ!怒ってみろや!へへへ、言葉攻めしてやるぜ!
『自分、ゲーム間違えとらへんか』
画面の向こうで顔がおっさんの魚が応えた。あっ!これピカチュウやない!シーマンや!
そしてこれロクヨンじゃなくてドリキャスや!

>「重大発表とは――これだ!」

部長が一枚の紙を取り出し周知する。うわ、なんだこのポエム……は、歯の浮くような言葉が目白押しや……。
僕は甘引きしながらよそわれた鍋を一口……って、ナチュラルに食べちゃったけど大丈夫か!?いつの間にかよそわれてんだもん!
吐き出すなら今のうち――って。あれ?ハーゲンのクソ甘さがすべてを台無しにしたかとおもいきや、意外にフツーに食べれる味だ。
一体如何なる化学反応の末の味なのやら、小羽ちゃんがスープを嚥下してしきりに頷いてるので幻覚じゃなさそうだ。
げに素晴らしきは化学調味料?人類が産み出した文化の極みね、それ。

>「我がN2DM部が、正式に部活動として認可されたのだ!!!!!!!!!!!!」

どうやらさっきのファッキン気色悪いラヴレターは誤爆だったようだ。部長の知られざる趣味が発覚して納得の瞬間視聴率。
さておい、N2DM部が正式な部活に認可されたらしい。――って、

「えっ、えっ!?部長連とか文化会とかどうすんですかこの部活」

どこの学校にも言えることだけど、正式な部活となれば、具体的な活動実績が必要になる。
スポーツなら大会への参加や練習試合がそうだし、文化系なら研究発表という形で部費出してくれる学園に貢献するわけだ。
それが、こんな零細部の、しかもボヤーっとした目的しか持たないN2DM部は一体何を発表するのか――文化系だよね?一応。
とまあ、そういう理由からもともとN2DM部は公的に認められない勝手な集まりと認識されてたわけだけど……。
一体どんな魔法を使ったんだ部長。しかも相手はあの生徒会長。鋼鉄という形容が最も適切な女として有名な、アレを相手に。

141 :九條十兵衛 ◆mJkMShtvmg :2011/09/01(木) 07:58:30.50 0
>「正式に認可されたからといって、俺たちがやることは変わらない。
 頼まれたことは、やり遂げる。その一点には何の曇りもない。
 それでも、記念すべき出来事であることは確かだ!新たな門出を、祝おう! ――乾杯!」

ぜってー何か裏があると思うんですがその話……というツッコミはさておき、素直にめでたいことは確かだ。
僕の目標はN2DM部をこの学園ですべての人間が知る超大手に成り上げること。はじめの一歩がようやく踏み出せたって感じだ。
そしてめでたい案件がもう一つ。

>「これで良いんですかィ?本来なら面倒だと断りたいところですが…
 アンタ達と居るのもなかなか面白そうですし… 何より俺ァ恩だけは忘れねぇ男だ。」

なんだかんだなあなあでずぶずぶな関係を重ねてきた梅村くんが、我らが部に正式に入部することとなった。
もちろん風紀委員と二足のわらじ。忘れられがちだけどこの人NO,2なんだよね。これで風紀委員と強固なコネクションができたわけだ。
楯原ちゃんがどこからともなく持ってきた紙吹雪で盛大に祝福する。用意がいいなこの子。

ともあれ祝賀ムードに満ちる部室に一枚の紙片が差し込まれた。
こ、これは……このいかにも篭手の臭さをエイトフォーで誤魔化した感じのこの匂いは!

>「旦那ァ、早速依頼ですぜェ。なになに……女子剣道部からの依頼か…。
 あそこは可愛い娘が多いって事で有名だ…恩を売っといて損は無さそうですぜ。」

「ななんあななななななななんだって!?だ、事件ですね!大事件ですよね!今すぐ出動したい!鍋放置して!」

>「女子剣道部……運動部で、メンバーの代理とかの依頼は時々あったっすけど、
 こういう依頼は珍しいっすね。ひょっとして、変態(どく)を以って変質者(どく)を制すって事っすかね」

「へ、へへへへへ変態ちゃうわ!いいかい、僕はなあ!変質者に怯える女の子がいるところにならいつでも・どこでも現れるよ!?
 これは正義感の発露さ!でも女の子が竹の棒でお互いを叩き合ってると思うとドキドキするね!変質者が出るのも頷ける!」

あとスパッツを履いた女の子のいるところにもいつでもどこでも現れちゃうかな。うへへ。

「部長!部長ぉぉぉ!困ってる女子を放っておけないと思います!ので!
 僕はこれより夜を待って現地入りして内情調査をしてまいります!二週間ぐらいで帰ってくるつもりなのであしからず!」

部室のロッカーから取り出したるは諜報員時代に使ってた夜間潜入用のブラック・ジャケット。
暗視ゴーグル、射出ワイヤー、ピッキング・ツール、強力な暗号化機能を備えた衛生通信機、モーションセンサー……
瞬く間に完全武装を終えた僕はよそられていた分の鍋をさらさらとかっ込むと、

「それでは!」

シュビっと敬礼して部室のドア目掛けて駈け出した!

142 :部長:2011/09/01(木) 11:46:37.17 i
>>132>>135>>138>>140
>「これで良いんですかィ?本来なら面倒だと断りたいところですが…
> アンタ達と居るのもなかなか面白そうですし…
> 何より俺ァ恩だけは忘れねぇ男だ。」

「うむ確かに!ではこの入部届を受理しよう!これからお前は我らの仲間である!
 さっきも言ったが、基本的には風紀委員の任務を優先してくれていいからな!
 ただ!風紀委員としてはNo.2でもN2DM部としてはまだ新人なのである!
 その事だけ、忘れないようにな!
 ――ようこそ、N2DM(エヌエヌディーエム)部へ!」
どうにもクロ子と折り合いが悪そうだったので先に釘を刺しておくことにする。
少なくとも俺の目の前でガチ喧嘩とかされると困るので、立ち位置を明確にさせておく。
つーか年齢的にもクロ子より下な訳だし、そりゃイラつくこともあるかもしれないが
先輩に言われたことなのだしとなんとか耐えて欲しいものだ。がんばれ。

ともかく、これで風紀委員との太いパイプが誕生した。No.2、権力はあるはずで。
向こうでは持て余してしまうような依頼をこちらに回して貰えれば、おそらくは
依頼に不自由することはないはずだ。慢性的だった依頼不足もこれで解消される。
それ以前にバイソンが入ってくれたことが素直に嬉しいことでもあるのだ。
少し問題のある性格はしているかもしれないが基本的には気のいいまともな奴だしな。

今行われているのは鍋パーティー、当然俺はこんな罰ゲーム鍋食ってられねぇから、
ひたすはちびちびとオレンジジュースを飲んでいる訳だが。あれ?なんかおかしい。
なんつーか、みんな普通に食っているのだ。このゲテ鍋を。舌どうなってんだこいつら。
試しにと、俺も鍋の匂いをかいでみる。あれ?なんかわりと普通に食えそうな匂い。
少しスープを口に含んでみる。あれっ?高級ホルモンを咀嚼してみる。あれあれっ?
「…食える」
食える!これふつーに食えるぞ!しかも素材は凄い良いもの使ってるから、
わりと美味いとすら感じられる!なんだこれ!なんだこれ!箸が進むぞ!
俺は視線を動かす。窓枠に腰をおろして天井を眺めているクロ子の姿がある。
つーか、十中八九こいつの仕業だろう。いつの間にやったんだか、気づかなんだ。
以前クロ子に「俺に弁当を作れ!」と言ったら即答で断られたことがあったが、
これはワンチャンもう一度頼んでみてもいいかもしれない。購買こりごりなんだよ!
そんなに料理上手いならいいじゃんな!別にタダでなんていうつもりないしさ!

>>134
そんなこんなで鍋の中身が大方減ってきた時。ドアの隙間から差し込まれる手紙。
中を確かめてみるとそれは依頼だった。実は依頼BOXってのあるんだけどね!
そりゃね!誰も使ってないけどさ!それどころかゴミ箱みたいに使われてるけどさ!
でもさ!そんなのもあるよって気づいて欲しかったな!俺寝ないで作ったんだし!

>「旦那ァ、早速依頼ですぜェ。なになに……女子剣道部からの依頼か…。
> あそこは可愛い娘が多いって事で有名だ…恩を売っといて損は無さそうですぜ。」
「んもーそういうこと言うな!依頼に大小はないし依頼者にも序列はない!
 恩を売るなんて考えはしない!ただ承った依頼をこなすことのみが我らの仕事だ!
 そりゃ可愛い子相手だとテンション上がるけど!建前的には、さ!」
依頼内容は、不審な人影。1人だけならただの神経質なだけってことなんだろうけど。
そういう報告が相次ぐようなら、それはきっと本当のことなんだろうな。
まだ何もされていないとはいえ、いつ何か実害があるともわからない。
こういう時こそ、我らの出番、か。

▼N2DM部・第4依頼▼
依頼者:女子剣道部主将
依頼内容:不審な人影の確保

143 :部長:2011/09/01(木) 11:48:03.52 0
>「女子剣道部……運動部で、メンバーの代理とかの依頼は時々あったっすけど、
> こういう依頼は珍しいっすね。ひょっとして、変態(どく)を以って変質者(どく)を制すって事っすかね」

「うむ、物凄い変態(どく)が1人身近にいるものなぁ」
俺もちょっと変な人間だなぁと感じることも多々あるが、感性は普通のつもりだ。
だから、クロ子が言う変態には当てはまらない。少なくとも自分ではそう思ってるぞ。

>「へ、へへへへへ変態ちゃうわ!いいかい、僕はなあ!変質者に怯える女の子がいるところにならいつでも・どこでも現れるよ!?
> これは正義感の発露さ!でも女の子が竹の棒でお互いを叩き合ってると思うとドキドキするね!変質者が出るのも頷ける!」

変態ってのは、こういう奴のことを言うんだよな!

>「部長!部長ぉぉぉ!困ってる女子を放っておけないと思います!ので!
> 僕はこれより夜を待って現地入りして内情調査をしてまいります!二週間ぐらいで帰ってくるつもりなのであしからず!」
>「それでは!」

「長ぇ!どんだけ深くまで内情調べてくるつもりなんだよ!
 と、とりあえず逐一報告は入れろよ!あとお前が不審者ってことで捕まっても知らんぞ!」
重装備で走り去って行くQJの背中に声を投げ、俺はため息をつきつつ部室に戻る。
「…あいつ1人でいいんじゃねーの?」
そんなことを思ってしまうのも決して間違いではないはずだ。

「とりあえず俺らは普通にやるか。まず今日一日はとりあえず情報収集にあてて、
 張り込みは明日の放課後、かな?たぶん部の活動中に不審な人影を見てるっぽいしな。
 たぶん精神的に参っちゃってると思うから、聞き込みは女子がやった方がいいか。
 んじゃ女子部員への聞き込みはマギャーよろしく。他の奴らも情報収集進めてくれ。
 その情報をもとに明日張り込みを行おう。QJは…ほっときゃいいか。
 じゃ――解散。あ、鍋の片付けは後で俺がやるから心配しなくていいぞ」

そして俺は自分が取り分けた小皿の中身を空にすると、部室から出る。
うちの部員が夜中に行動するというから生徒会へ夜間行動許可申請に向かうのだ。
「活動の一環」であればわりと簡単に認可されるあたり、正式な部活っていいもんだな。
一応風紀委員が部内にいるわけだし、以前のような深夜徘徊にならないように
しっかりと手回しをするのが部長たる俺の仕事なのだ。
情報収集は――俺は別にいいか。部員に頑張ってもらえばいいのだ!

――――――

そして、次の日の放課後である。
QJを除く奴らが集まっている。あいつ今どうしてるんだろう。
「そいじゃ、情報収集の結果。報告頼む」
報告が終わり次第、張り込みに向かう手筈となっているのだ。

144 :楯原まぎあ ◆MyZeP7HDKc :2011/09/01(木) 17:43:09.12 O
>「これは……こってりとしたホルモンにこってりとしたバーゲンが見事にマッチして鮮やかなハーモニーを奏でている…。
 こりゃ新感覚スイーツとか言っとけば馬鹿なメス共から金が取れるレベルですぜ…」

よく分からないけど満足してくれたみたい、交渉成功とばかりにガッツポーズを取る。
まぎあは、遊李のこういうざっくばらんな言動がとても好きだった。

何はともあれ、これで遊李も晴れて『N2DM部』の一員となったのだ。
結果としては、この鍋パーティーが歓迎会のようなものになったのかもしれない。
部活動の容認、遊李の入部、『N2DM部』にとって、きっと今日は特別な日になったことだろう。

>>134
いつの間にか味が大きく様変わりしていた鍋(勿論良い方向に)を堪能している最中だった。
まるで剣の刃のように、一枚の紙片が、突如部室の扉に差し込まれていた。

>「旦那ァ、早速依頼ですぜェ。なになに……女子剣道部からの依頼か…。
 あそこは可愛い娘が多いって事で有名だ…恩を売っといて損は無さそうですぜ。」

不幸の手紙ならぬ幸せの手紙が送られてきたのかと思ったが、そうではなかったようだ。
確かに女子剣道部は容姿端麗な者が多い、まぎあも横から依頼文を覗き込んで確認する。

「……この主将の方も、不安を感じているみたいですね。
 これって、もしかすると幽霊なんでしょうか? それとも……妖精かも♪」

そう言って、あっけらかんと笑う。
相手が相手なら無神経と思われても仕方のない振る舞いだが、ここでは恐らくその心配はないだろう。
まぎあがこういう人間であると深く理解してくれている者は、『N2DM部』部員を除くと極僅かだ。

>「女子剣道部……運動部で、メンバーの代理とかの依頼は時々あったっすけど、
 こういう依頼は珍しいっすね。ひょっとして、変態(どく)を以って変質者(どく)を制すって事っすかね」
>「へ、へへへへへ変態ちゃうわ!いいかい、僕はなあ!変質者に怯える女の子がいるところにならいつでも・どこでも現れるよ!?
 これは正義感の発露さ!でも女の子が竹の棒でお互いを叩き合ってると思うとドキドキするね!変質者が出るのも頷ける!」

特定の人物を指した発言でもないのに、鰐の言葉に過剰な反応を見せる十兵衛。
それどころか、やましい想像でもしているのか、顔のパーツがだらしなくたるんでいる。

145 :楯原まぎあ ◆MyZeP7HDKc :2011/09/01(木) 17:47:34.19 O
正義感の発露か性欲の発露かはともかく、十兵衛は単身部室を飛び出して行った。
まぎあは十兵衛が出しっぱなしにしたままのドリームキャストを片付けながら、その背中を見送る。
事件と聞くといてもたってもいられないのだろう、と好意的な笑顔で。
――でも、どうせドリキャスを遊ぶなら『デスピリア』とか『イルブリード』とか、
  『Dの食卓2』とか、もっと面白いゲームがあるのに。

>「とりあえず俺らは普通にやるか。まず今日一日はとりあえず情報収集にあてて、
 張り込みは明日の放課後、かな?たぶん部の活動中に不審な人影を見てるっぽいしな。
 たぶん精神的に参っちゃってると思うから、聞き込みは女子がやった方がいいか。

「そうですねぇ。ただでさえ女の子ばかりの中に、男の子は入り辛いとも思いますし」

 んじゃ女子部員への聞き込みはマギャーよろしく。他の奴らも情報収集進めてくれ。
 その情報をもとに明日張り込みを行おう。QJは…ほっときゃいいか。
 じゃ――解散。あ、鍋の片付けは後で俺がやるから心配しなくていいぞ」

「了解です! それではお言葉に甘えて、よろしくお願いいたしますね。では!」

意気揚々と、まぎあは部室を後にした。

今日は始業式だったが、既にいつも通り部活動は行われている。
ならば向かう場所は自ずと限られている、まぎあの足は女子剣道部の部室に向かっていた。


――九月二日、次の日。
放課後、『N2DM部』部室には十兵衛以外の部員達が集まっていた。

>「そいじゃ、情報収集の結果。報告頼む」

まぎあはわざわざ席を立って、元気に手を上げて見せる。

「私はあの後、女子剣道部の部室におじゃまさせていただきました!
 数人の部員の方が残ってらっしゃったので、質問を交えつつ談笑を。
 念のため内容を総括しておきましたが、う〜ん……有力な情報はありませんねぇ」

♪女子剣道部部員の方々の証言♪
☆人影が目撃されているのは、決まって女子剣道部が部活動を行っている日のみ。
☆持ち物がなくなった、部室が荒らされたなどの目に見える被害はなし。
☆ついさっきスパイのような格好をした不審者を見た。
☆部員の一人である明円さんが、女子剣道部内で虐めを受けている。
☆女子剣道部がレズビアンの集まりという噂は事実無根です、『N2DM部』どうにかして。

♪マークや☆マークが躍る報告書を、部員達に一枚ずつ配っていく。

146 :楯原まぎあ ◆MyZeP7HDKc :2011/09/01(木) 17:54:58.67 O
「どの部員さんも『人影を見た』とは言いますが、他には何も分からないそうです。
 それ以外は他愛もないお話で。明確な手掛かりは、『スパイのような格好』のみですねぇ…。
 依頼人である主将さんのお話もお聞きしたかったんですけど、残念ながら昨日はお会い出来ませんでした」

困ったような微笑みを浮かべて、軽くため息をついて肩を落とす。

「ついでに部室のそばにいた方にもお話を聞こうと思ったら、全速力で逃げられちゃいますし…。
 むぅ〜…なかなか上手くいきませんね! でも皆さん、頑張りましょう!」

エイエイオー、と一人拳を上げて己を鼓舞して見せた。

147 :梅村遊李 ◆89ggxEkiHQ :2011/09/01(木) 20:49:04.96 O
>>144>「……この主将の方も、不安を感じているみたいですね。
 これって、もしかすると幽霊なんでしょうか? それとも……妖精かも♪」
梅村の横から依頼の手紙を覗き込んだまぎあが冗談めいた口調で笑う。
だが、梅村にとっては冗談では済まない話である。
「ば、ばばば馬鹿言っちゃいけねぇよお嬢さん!幽霊なんてのは居ないって上田教授が…」
2ヶ月程前にも似たようなセリフを無意識に言ってしまった梅村の額からはダラダラと冷や汗が落ちていた。

>>142>「んもーそういうこと言うな!依頼に大小はないし依頼者にも序列はない!
 恩を売るなんて考えはしない!ただ承った依頼をこなすことのみが我らの仕事だ!
 そりゃ可愛い子相手だとテンション上がるけど!建前的には、さ!」
梅村の可愛い娘には恩を売っとけ発言を否定する部長。
「さすが旦那、殊勝な心掛けでさァ。俺も見習いたいもんですよ。」
口ではそう言っているものの、全く心がこもっていない棒読みである。

>>138>>140>「女子剣道部……運動部で、メンバーの代理とかの依頼は時々あったっすけど、
> こういう依頼は珍しいっすね。ひょっとして、変態(どく)を以って変質者(どく)を制すって事っすかね」
>「へ、へへへへへ変態ちゃうわ!いいかい、僕はなあ!変質者に怯える女の子がいるところにならいつでも・どこでも現れるよ!?
> これは正義感の発露さ!でも女の子が竹の棒でお互いを叩き合ってると思うとドキドキするね!変質者が出るのも頷ける!」
依頼を聞いた小羽がなかなかに失礼な発言をするが、あながち間違っていないのは九條を見れば分かるだろう。
「あいつら竹刀で叩かれんのが大好きだからなぁ。俺に言ってくれりゃ竹刀でも鞭でもいくらでも叩いてやるってのに。」
涼しい顔して九條とはまた違った変態発言をさらっと言う。
梅村の目には「女子剣道部=竹刀で叩かれるのが好きな連中」という法則が成り立っているようだ。
>「部長!部長ぉぉぉ!困ってる女子を放っておけないと思います!ので!
> 僕はこれより夜を待って現地入りして内情調査をしてまいります!二週間ぐらいで帰ってくるつもりなのであしからず!」
>「それでは!」
ヒートアップした九條は怪しげな重装備をすると一人で部室を出て行ってしまう。

148 :梅村遊李 ◆89ggxEkiHQ :2011/09/01(木) 20:52:21.81 O
>「とりあえず俺らは普通にやるか。まず今日一日はとりあえず情報収集にあてて、
 張り込みは明日の放課後、かな?たぶん部の活動中に不審な人影を見てるっぽいしな。
 たぶん精神的に参っちゃってると思うから、聞き込みは女子がやった方がいいか。
 んじゃ女子部員への聞き込みはマギャーよろしく。他の奴らも情報収集進めてくれ。
 その情報をもとに明日張り込みを行おう。QJは…ほっときゃいいか。
 じゃ――解散。あ、鍋の片付けは後で俺がやるから心配しなくていいぞ」
「分かりやした。情報収集は得意分野でさァ、とっておきの情報を仕入れてきますよ」
自信に満ちた表情で部長にそう返し、梅村は部室を後にした。

翌日、部室には九條以外の部員が揃っている。
どうやら彼は本当に単独で行動しているようだ。
>「そいじゃ、情報収集の結果。報告頼む」
最初に手を挙げたのはやはりまぎあだった。
>「私はあの後、女子剣道部の部室におじゃまさせていただきました!
 数人の部員の方が残ってらっしゃったので、質問を交えつつ談笑を。
 念のため内容を総括しておきましたが、う〜ん……有力な情報はありませんねぇ」
まぎあは何やら女の子らしいマークが多用された報告書を部員に配っていく。
一通り目を通すが犯人を絞れるような有力情報は無さそうだ。
「次は俺の番ですぜィ。風紀委員の力を使えば情報収集なんざ朝飯前。
 なんと…風紀委員を使って生徒1000人に聞き込みました…。」
自慢気に懐から報告書を取り出し、声高々に読み上げる。
「学園内の生徒1000人に聞いた女子剣道部人気ランキングー。」
既に部室の空気が変わりつつあるが、梅村はせんな事は一切気にせず報告書を読み上げていく。
「第1位…女子剣道部部長、神谷美紀。721票。
 一言コメントは『ポニーテール萌え』『踏みつけてほしい』『俺の竹刀も握っ(以下略』等気持ち悪いコメントで一杯でさァ。
 続いて第2位は…」
こんな調子で人気ランキングと投票数、一言コメントを紹介していく。
部室の空気はなんとも言えないものになっていた。
「という事で1番人気は部長らしいですぜ?なかなか有力な情報じゃありやせんか?」
梅村はドヤ顔で報告書を懐にしまった。

149 :小羽 鰐 ◆DeLd.MSvGY :2011/09/01(木) 22:16:26.68 0
>>141 >>143
>「へ、へへへへへ変態ちゃうわ!いいかい、僕はなあ!変質者に怯える女の子がいるところにならいつでも・どこでも現れるよ!?
>これは正義感の発露さ!でも女の子が竹の棒でお互いを叩き合ってると思うとドキドキするね!変質者が出るのも頷ける!」

「もう、九條さんを突き出して解決でいいんじゃないっすかね……」

完全装備で走り去っていく九條。思いもよらず変態(どく)を
炙り出してしまった形になった小羽は、諦観した様にそう呟く。
そして、自分は何も見なかったとでも言うかの様に、九條が走り去っていったドアから
視線を逸らし、部長の話を聞く姿勢に入った。

>「とりあえず俺らは普通にやるか。まず今日一日はとりあえず情報収集にあてて、
>張り込みは明日の放課後、かな?たぶん部の活動中に不審な人影を見てるっぽいしな。
>たぶん精神的に参っちゃってると思うから、聞き込みは女子がやった方がいいか。

部長から出された指示は情報収集……しかしながら、聞き込みは女子の方がいいと
言いつつも、ナチュラルに小羽をその任務から外しているのは何やら含みでもあるのだろうか。

(……まあ、別にいいっすけどね)

>「了解です! それではお言葉に甘えて、よろしくお願いいたしますね。では!」
>「分かりやした。情報収集は得意分野でさァ、とっておきの情報を仕入れてきますよ」

「それじゃあ、今回は私も色々調べてみるっす」

普段は色々役立つ情報を持ってくる九條だが、今回は役立たない気配が濃厚である。
楯原は基本的に真面目に依頼をこなそうとするのだが、どうにも空回りする事が多い。
梅村に限っては、あの性格だ。これくらいの事件で部活動に全力を尽くすか不安である。
さてどうしたものかと考えつつ、小羽は指示を受けた梅村と楯原を見送ると、
着ていたエプロンを丁寧に畳んで机の上に置き、部室のドアへと手を掛け……ふと、後ろを振り返った。
見れば、そこには食器を片付けつつ、何やら書類をそろえ始めた忙しそうな部長の姿。
小羽は数秒の間その姿を見ていたが、やがてするりと扉の外へと抜け出て行った。

150 :小羽 鰐 ◆DeLd.MSvGY :2011/09/01(木) 22:19:30.92 0
>>146>>147

――――――翌日

結果を言うと、部員達の持ってきた情報はまさしく玉石混合であった。

楯原は真面目に聞き込みをしてきたらしく、その情報は豊富であった。
しかしながら、どうにも情報の中に誰かの影が見え隠れしている。主に九と條が苗字に付く人間の姿が。
ついでに、何やらやけに重い内容も混じっている気がする。

次に、梅村だが……
>「学園内の生徒1000人に聞いた女子剣道部人気ランキングー。」

「え。頭大丈夫っすか」

彼に関しては、一見、玉石の石しか持っていない様に見える。
ドヤ顔で発表されたその内容は、思わず小羽が辛辣なコメントを挿入してしまう程であった。
……そうして何とも言えない空気が部室内に流れる中、小羽の番が回ってきた。

「そうっすね。私はとりあえず昨日一日中、修練所の観客席から見学してただけっすけど……」

「剣道部部長と、それから明円っていう女生徒。あの二人は強いっすよ。
 多分、剣道の試合なら勝てないっす」

中指で瓶底眼鏡を上げながらドヤ顔でそう言う小羽。
だがその後、先の幽霊騒動でも使ったハンディカメラを取り出して言う。

「他に気になった事としては、応援席にやけに熱の入った男性生徒の集団がいたって事っすかね。
 ……あれは剣道の応援というよりはアイドルの応援っすね」

151 :九條十兵衛 ◆mJkMShtvmg :2011/09/02(金) 04:39:18.30 0
夜半、僕は行動を開始した。
下降ワイヤーを使って寮を抜け出し、学園のクラブハウスエリア、その端にそびえる剣道場へ。
道場に併設された、更衣室兼部室は男子剣道部と女子剣道部とできっちり割断されている。
男子の方の、誰も得しない排水口のヌメリのようなファッキン汗スメルが女子エリアを侵食しないようにという配慮だ。

迷わず女子更衣室へ足を向ける。
プランとしては、夜のうちに天井裏あたりに忍び込んで、夜明けからみっちり24時間体制での見張り。
学園のセキュリティは独自のもので、動体、赤外線、二酸化炭素等々様々な検知機能を備えたセンサーが巧妙に隠蔽されている。
アマチュアの変態ならば三秒と存在すること能わないだろう。
だが僕は違う。プロの犯行って奴を見せてやるぜ。

センサーは遠隔操作されているが、緊急用に直接操作命令を出すことができる。
もちろん特殊なキーとパスワードが必要だ。問題ない。僕は中等部の頃暇にあかせてこの学園のすべてのセキュリティを掌握した。
そのとき仕掛けておいたスパイウェアは、今でもセキュリティシステムの中でひっそりと生き続け、定期的に情報を送ってくれる。
キーに関しても、封入されてるプログラムさえわかっていればハード的な問題は技術研の天才がなんとかしてくれた。

管制室の人の目だけは誤魔化せないので、センサーの死角を利用して近づき、キーに封入したプログラムでハッキングをかける。
『不審者がいない映像』のダミーデータをセンサーに読み込ませれば、モニターをチェックしてる分には僕の姿が見えなくなる。
部屋でかたかたキーボード叩いてるだけでハッキングした気になってるのはまだまだアマチュア。
実地でツールを使えてこそのプロなのさ。

センサー地帯を抜け、対覗きの地雷原をワイヤーで越え、排気ダクトを通って屋内へ潜入。
天井裏に居住スペースをつくり、テントを張った。
水場がちょっと遠いけど、ガストーチでお湯も沸かせるし良い寝床が出来た。
さて、夜が明ける前に盗聴器をいくつか仕掛けとくかな。
これは僕が聴く用じゃなくて、デコイの意味を持つ。
更衣室から盗聴器が見つかれば、風紀委員が大っぴらに動ける大義名分をつくれるからね。

ふう。ここまで頑張ったんだから、ご褒美にスパッツの一つでもくれないかなあ。
剣道部員は美人揃いで有名だというし。あとゆるい百合な気配もあると言うし。その言葉だけで十年は戦えるよ!

――――――――――

>『そいじゃ、情報収集の結果。報告頼む』

衛星通信機から聞こえてくる部長の声に、僕は短く応答の意を返した。

「こちらコールサイン『クイーンジャック』。これより報告上げる。静聴されたし」

今日一日の観察結果を述べていく。
剣道部長の形の良い額から滴る玉の汗とか、副部長の所作に漂う色気とか、篭手を脱いだ直後の肌の瑞々しさとか。

「あと部員一人一人の制汗剤の銘柄とか克明にレポートしたんですけど、いります?」

肝心の不審者の姿はなかった。
そりゃそうだ、フツーに部員が練習してる剣道場で不審者を見かけるはずがない。
え?じゃあなんでお前はそんなところにいるのかって?万が一ってこともあるだろ!ふざけんな!!
あ、小羽ちゃんが見学しに来てたのは知ってる。わざわざ危険を冒して手ェ振ったのにガン無視って。

>☆ついさっきスパイのような格好をした不審者を見た。

なんだって?そんなあからさまな不審者が存在するというのか!!許せんな!顔が見てみたいわ!!
もし僕がそんな奴に鉢合わせたら、迷わずぶん殴るね!
そして風紀委員に引き渡してやる!女子の平和を脅かす奴はこの僕が許さん!
ん?なんだ、さっきから僕の肩を叩いてる奴がいる。
うるさいなあ、今大事な報告中なんだってば。大事な――って、

「あれええええ!?」

バっと振り向くと、女子剣道部の副部長が僕の肩に手をかけていた。

152 :九條十兵衛 ◆mJkMShtvmg :2011/09/02(金) 04:39:57.62 0
ここ、天井裏ですけど。どうしてこんなところに?っていうかなんでバレた!?
という疑問が舌を動かす前に竹刀が僕の背中にヒットした。っひい!癖になっちゃう!

「こ、こちらクイーンジャック!非常にマズい、ヤサがバレた!これより機材を放棄して撤退を――」

「させないわ。既にあなたは包囲されてるもの……フフ、さあて、あなたがどこの誰さんなのかみっちり聞こうかしら」

がっしと襟を掴まれて――スポーツやってる娘って力あるなあ。
さすがあの糞重い竹刀を振ってるだけのことはある。
僕は制圧されていた。回りにはたくさんの剣道娘。
わお、どこの桃源郷ですかここ。スパッツくださいよ。一枚ぐらいさあ!

「この無線機の向こうにあなたのバックがいるわけね?――あー、テステス、聴こえるかしらそちらのどなたかさん?
 このところ不審者騒ぎでみんな怯えててね。技術研から便利なアイテムを借りてきたのよ。煩悩脳波を検出する
 変態探知機『はだかボックス』。そしたら天井裏から物凄い煩悩が検出されたってわけ。今もビンビン反応してるわ」

なんてことだ!マッチーの奴、そんな便利なもの隠してやがったのか。
僕にはロクな道具もよこさないくせに。やっぱ美人ってぬるゲーなんだなあ。

「これで不審者事件は一件落着。もう部長の手を煩わせることもないわ。なんだか最近部活に昇格したっていう……なんでも部?
 だかなんだかに頼みに行ったみたいだけど、所詮馬の骨のベンチャー部活。三桁年続く老舗の剣道部をどうこうしようなんて笑止」

「ま、待ってください!不審者って、たぶんその人じゃないです!わたしが見たのは、もっと背が高くて肩幅も広くて……」

と、抑えられてる僕を遠巻きに見ていた一人の女子部員が異論を唱えた。
明円とか言う、部内でも部長の次ぐらいに強かった女の子だ。でもみんなの反応は冷たく、誰もそれに同じなかった。

「黙らっしゃい」

副部長がぴしゃりと撥ねつける。取り付く島もないって感じだ。

「よろしくて?大事なのはことの真偽じゃないの。『不審者は捕まえた』って事実があればそれで良いのよ。
 空気を読みなさいよ空気を。貴女、最近増長してるんじゃなくて?まぐれで二位になったからって、浮ついてるんじゃないかしら」

なんでこの副部長、明円ちゃんにこんなに厳しいんだろう。
説教ってれべるじゃない。ネチっこい嫌味が八割だ。
いくら美人でも、こうネチネチと責められたんじゃあ気萎えもするってもんだよなあ。
黙ってれば綺麗な人なのに、副部長。

「べ、弁護士を呼んでくれ!あとのことは法廷でお話しします!」
「お黙り。さんざん私達を恐怖に怯えさせておいて、自分は法の庇護を受けようったってそうはいかないわ。マキ、恵、縄を」

あっという間に剣道部員が持ってきた縄で拘束され、更衣室の中に転がされた。
ブラックジャケットを脱がされ、縄抜けのツールも破壊されてしまった。
これってもしかして、私刑(リンチ)ってやつですか?
副部長は僕のほうなど一個だにせず通信機に話しかける。

「というわけで、不審者のお仲間さん。あなたがたのお仲間は、そうね、残りの学園生活を保健棟で過ごすことになりそうだわ。
 心配しないで、授業はベッドの上でも受けられるから☆ ……むしろ、風紀委員を呼ばないだけ感謝してほしいわ」

嘘だ!風紀委員を呼んだら老舗の看板に傷がつくとかそういう理由だろう!
女の子に取り囲まれて罵られるのはやぶさかじゃあないが、社会的な暴力は勘弁して下さい。
反駁しようとして、別の剣道部員に竹刀で後頭部をスパーンとやられて、僕は意識を失った。

153 :九條十兵衛 ◆mJkMShtvmg :2011/09/02(金) 04:41:19.59 0
――――――――――

僕は今、隠し持っていた予備の通信機のレシーバーを耳に隠して音を聞いている。
メインで使ってるものじゃないのでひどく音質が雑だ。
学園はムダに広いから、電波帯を考えると小さいものは相応に性能が悪い。
ノイズ混じりで聞こえてくるのは、上靴が廊下を叩く音、それから女の子の断続的な息遣い。
総合して、走る足音と荒い呼吸。

『ごめんくださいっ!』

鈴のような声と同時、引き戸がガラっと開く音。
良かった、辿りつけたみたいだ。広大な学園の中でピンポイントに場所を説明するのは難しかった。
しかもそれが、見張りの女子部員の目を盗んでってんだから、相当な苦労だったよ。
通信機の向こうで、声の主が二の句を継いだ。

『女子剣道部の明円です。――N2DM部の皆さんに、依頼があって来ましたっ!』

――状況を説明しよう。
あのあと盛大にボコられ、目を覚ました頃には既に窓の外がオレンジ色に染まっていた。
女子剣道部は僕を更衣室に放り込んだまま練習を再開したようだ。
どうやらマジで僕を監禁するつもりらしい。

今日はジャンプの発売日だから早く帰りたかったのになあ……と半ば絶望していると、休憩時間に明円ちゃんが僕のもとに訪れた。
この娘、いっつも一人だ。
他の子達が仲良く休憩してるときにも、一人輪から外れてここに居る。
とても剣道部ナンバーツーとは思えない待遇だ。
謙虚でスタイルも良いし、クリクリっとしててラインのはっきりした眼とか魅力的なのになんでハブられてるんだろう。

僕らはいろいろな話をした。
明円ちゃんは不審者を見ていて、それが僕ではないことを知っている。
とにかく犯人をでっち上げればいいという副部長のやりかたは絶対おかしいと思ってる。
できることなら協力する。そう言ってくれた。
だから僕は虎の子の通信機を預けて、土壇場の賭けに出たのだ。
――N2DM部に、僕の奪還を依頼する。

『――以上がわたしがここに来た経緯です。九浄さんは今、無実(?)の罪で私刑に処されようとしています。
 真犯人は他にいます。でっち上げられた犯人を裁いただけじゃ何も解決しないんです。どうか、本当の不審者を捕まえてください』

ただ、それだけじゃこの問題は終わらない。
僕が助からなきゃハッピーエンドとは言えないんだよおおお!
真犯人を捕まえたところで、既に僕という犯人がいる以上、犯人は二人もいらない。副部長が揉み消してしまうだろう。

『剣道部は力が全ての価値観です。九條さんを救い出すには、真犯人を捕まえた上で、副部長の判断を覆すほかない。
 揉めたとき、剣道部では"勝ったほうの言うとおり"なんです。つまり副部長達を試合で打ち負かさなきゃ、九條さんを救えません』

現在の剣道部の力関係は部長、明円ちゃん、副部長の3トップ。
明円ちゃんはこちら側に回ってくれたので、ナンバー4を加えた三人。
これが僕を救い出すに当たって倒さなきゃならない部員。必然、3対3の団体戦になる。

『今の剣道部は、不審者に対する恐怖で少しおかしくなってしまってるんです。だから、こんな道理に反した真似を……。
 お願いします、どうか真の変態を見つけ出して、剣道部にかかった疑心暗鬼の闇を真実の光で切り開いてください!』

▼N2DM部・第4,5依頼▼
依頼者:九條十兵衛
依頼内容:冤罪を晴らし真犯人の逮捕を!

154 :部長:2011/09/02(金) 13:19:58.39 0
1人1人の報告を聞いていく。ま、ぶっちゃけた話そんな耳寄りな話はないだろう。
不審者確保に繋がる有効な情報が簡単に転がってるなら今頃とっくに捕まってるさ。

>「私はあの後、女子剣道部の部室におじゃまさせていただきました!
> 数人の部員の方が残ってらっしゃったので、質問を交えつつ談笑を。
> 念のため内容を総括しておきましたが、う〜ん……有力な情報はありませんねぇ」

「おう、ご苦労」
こいつのことだ、きっと話しかけて数分もしないうちに和気藹々としてんだろう。
こういう辺り俺のようなコミュ障予備軍には真似できねぇなと報告書を読みながら思う。
とりあえず真ん中のは明らかに俺のよく知る人物のことのような気がしなくもない。
しかし別にそんなねぇ?誰かが虐められてるとかそんなの調べてこなくても!

>「ついでに部室のそばにいた方にもお話を聞こうと思ったら、全速力で逃げられちゃいますし…。
> むぅ〜…なかなか上手くいきませんね! でも皆さん、頑張りましょう!」

「えっ」
それって不審者じゃないんですか――そんな俺のツッコミは声になることなく。
次のバイソンの報告の内容があまりにも内容だったのですっかり飛んでしまった。

>「次は俺の番ですぜィ。風紀委員の力を使えば情報収集なんざ朝飯前。
> なんと…風紀委員を使って生徒1000人に聞き込みました…。」

「おお!いやなんか悪いな!わざわざ風紀委員の力なんか使って貰っちまって!」
だがしかし俺は少しバイソンを見直した。片手間でやってくれても十分だったのに、
まさかそこまでしてくれるとは思いもしなかった。そんな簡単な作業でもないし。
危うく忘れがちだったが、やはり風紀委員No.2の座は伊達ではなかったということだ。
1000人にもに聞いていれば流石に少しは有力な情報が…

>「学園内の生徒1000人に聞いた女子剣道部人気ランキングー。」
>「という事で1番人気は部長らしいですぜ?なかなか有力な情報じゃありやせんか?」

「えっと、クロ子は何かあったか?」
もうスルーでいいよな!ツッコむの疲れたんだよ!

>「そうっすね。私はとりあえず昨日一日中、修練所の観客席から見学してただけっすけど……」
>「剣道部部長と、それから明円っていう女生徒。あの二人は強いっすよ。
> 多分、剣道の試合なら勝てないっす」

ふむ、クロ子が言うなら実際強いのだろう。クロ子ですら剣道の試合では無理、と。
まぁ流石に剣道の試合をする羽目になる訳ないし、これも必要な情報ではなかったか。

>「他に気になった事としては、応援席にやけに熱の入った男性生徒の集団がいたって事っすかね。
> ……あれは剣道の応援というよりはアイドルの応援っすね」

「んー、俺はてっきりそういうおっかけの犯行だと思ってたんだけどさ。
 ただそういう応援席があるならわざわざ剣道場の外をウロウロする必要はねぇんだよな」
そして俺は腕を組む。やっぱり足を動かして直接張り込むしかないか。
あとは最後の1人、――QJからの報告だ。

155 :部長:2011/09/02(金) 13:20:11.05 0
>「こちらコールサイン『クイーンジャック』。これより報告上げる。静聴されたし」

そして告がれる報は剣道部の魅力を存分に伝えてくれる。また無駄に臨場感溢れてるよ。
「あぁ、お前やっぱり変態だな。流石の俺もドン引きだよ」
一体こいつは何を調査しに行ったのだろう。冷静にしみじみ考えてしまう。

>「あと部員一人一人の制汗剤の銘柄とか克明にレポートしたんですけど、いります?」

「うん、お前もう帰れ」
ビックリマーク付けて大仰にツッコミ入れるのもめんどくさい。だって酷すぎるこいつ。
あまりにも酷いと人間って素になれるんだなぁと新たな発見があったのだ。
まぁそんな感じでどう見ても不審者だが特に心配はしていない。見つかるなんてポカ、
このQJがするとは思えないしな。無駄な信頼がここにある。

>「あれええええ!?」
>「こ、こちらクイーンジャック!非常にマズい、ヤサがバレた!これより機材を放棄して撤退を――」
>「させないわ。既にあなたは包囲されてるもの……フフ、さあて、あなたがどこの誰さんなのかみっちり聞こうかしら」

見つかってやんの。これまでありがとうQJ!お前の変態っぷりは楽しかったよ!

>「この無線機の向こうにあなたのバックがいるわけね?――あー、テステス、聴こえるかしらそちらのどなたかさん?
> このところ不審者騒ぎでみんな怯えててね。技術研から便利なアイテムを借りてきたのよ。煩悩脳波を検出する
> 変態探知機『はだかボックス』。そしたら天井裏から物凄い煩悩が検出されたってわけ。今もビンビン反応してるわ」

「あー…そりゃ反応するよなぁ…」
それは仕方ない。太陽が東から登って西へ沈むのと同じぐらい仕方のないことだ。
その後も無線機の向こうから剣道部の偉い人の声が聞こえてきた訳だが、
とりあえずなんでも部とか呼ぶのはやめて欲しいものである。俺の部はN2DM部!
名前はちゃんと呼べよ!

>「というわけで、不審者のお仲間さん。あなたがたのお仲間は、そうね、残りの学園生活を保健棟で過ごすことになりそうだわ。
> 心配しないで、授業はベッドの上でも受けられるから☆ ……むしろ、風紀委員を呼ばないだけ感謝してほしいわ」

「ジャック!応答しろジャック!ジャーーーーーッック!!!!!」
スネークっぽく叫んでみる。当然無線は向こうから切られ、こちらからのコールも応答なし。
だがしかし特に心配出来ないのは何故だろうか。やはりQJの自業自得だからか。
「…不審者は捕まった、と。これもう解決でいいんじゃね?」
そして俺はPSPを取り出した。買ったばっかのグランナイツヒストリーをプレイ。
他の部員の反応も気にせず、俺はレベル上げに勤しむ。

156 :部長:2011/09/02(金) 13:21:43.36 0
>『ごめんくださいっ!』
>『女子剣道部の明円です。――N2DM部の皆さんに、依頼があって来ましたっ!』

「――やっと来たか」
だいたい一時間は経ったろうか?だいぶ夕日も沈みかけ始めた頃だ、来客があったのは。
QJのことだ、捕まってあのまま何もしない訳がない。必ずなんらかの方法で、
こちらにアクションをとりにくるだろうというのはもう分かり切っていた。
「じゃあ、聞かせてもらおうか――依頼を!」

>『――以上がわたしがここに来た経緯です。九浄さんは今、無実(?)の罪で私刑に処されようとしています。
> 真犯人は他にいます。でっち上げられた犯人を裁いただけじゃ何も解決しないんです。どうか、本当の不審者を捕まえてください』

「QJは犯人じゃないことなんて、俺たちが1番知ってるんだ。
 ――了解だよ、最初からそのつもりだったしな。ま、さっさと真犯人捕まえて…」

>『剣道部は力が全ての価値観です。九條さんを救い出すには、真犯人を捕まえた上で、副部長の判断を覆すほかない。
> 揉めたとき、剣道部では"勝ったほうの言うとおり"なんです。つまり副部長達を試合で打ち負かさなきゃ、九條さんを救えません』

「えっ」
何この子。今試合とか言わなかった?えっ?真犯人捕まえてそれで終わりじゃダメなの?
試合?えっ?剣道で勝たなきゃダメってこと?戦いがすべてってことですか?

>『今の剣道部は、不審者に対する恐怖で少しおかしくなってしまってるんです。だから、こんな道理に反した真似を……。
> お願いします、どうか真の変態を見つけ出して、剣道部にかかった疑心暗鬼の闇を真実の光で切り開いてください!』

その目には涙も浮かんでいる。でも明円ちゃんだっけ?この子虐められてんだろ?
自分を虐めてる奴らなのに「剣道部を救って」みたいなことよく言えるな。
でもま、やんないわけにもいかないしな。立ち上がってこの子の頭をポンポンと叩く。
「はいはい。何だってやるよ、やってやるよ。それが俺たち――N2DM部だからな」
そう言って、笑顔を向けてやる。

「さてと、じゃあまずは犯人の確保だ!バイソン!お前剣道場近くを警戒しろ!
 今までの目撃情報を顧みるに、その頻度は非常に高い!毎日である可能性も高い!
 今日だって、たぶん来るだろう!おそらく、犯人の狙いは――これだ」
そう言って俺が取り出したのは剣道場の練習風景が収められた写真。
昨日、校内のとある場所で売っているのを見つけた。美人だらけで有名な女子剣道部、
それは高値で取り引きされていた。か、買ったのは情報収集の為だからな!
だが、応援席ではカメラの所持は認められていないはず。実際、写真移りも不自然で。
「練習風景を盗撮し、高値で売ってるんだろうな。見つけ次第しょっぴいちまえ!
 張り込みがキツそうなら、風紀委員の
データベースから同じような
 ことをやらかした奴を探してみろ。ここまで目撃証言があるのに捕まってない、
 おそらく経験豊富な常習犯…以前にもとっ捕まってる可能性がある」

「んでもってクロ子、マギャー、ついでに明円ちゃんも。俺たちは乗り込むぞ、剣道部へ」
そう告げて、部室を後にする。俺を戦闘に、向かうは剣道場。

「頼もう!」
俺は大声を上げながらずかずかと乗り込んだ。呆気に取られた面持ちでこちらを眺めてくる。
「今日、この剣道場で不審者が捕まったと思う!だか、そいつは違うんだ!
 そりゃ不審者ではあったかもしれないが、君達の頭を悩ませていた奴とは別人だ!
 証言者もいる!この明円ちゃんとかな!そして、その犯人はもう捕まえた!
 天井裏に潜んでいたことは謝る!だがそれはその不審者を捕まえる為だったのだ!
 どうか、解放してほしい!」
一瞬の沈黙の後、やがてざわつき出す女子剣道部員たち。男俺だけかよ。
実際は真犯人はまだ捕まっていない(と思う)が、こういうのはハッタリが重要なのだ。
やがて前に出てくる人物がいる。見るからに性格のキツそうな女。俺の苦手なタイプ。
おそらく、こいつが話で聞いた副部長だろう。当然、言ってくる言葉も予想通り。
いや不審者は捕まえた、こちらの決定である、指図される言われはない、と。

157 :部長:2011/09/02(金) 13:22:19.07 0
「あぁそう言うと思ったさ!だから!俺たちはこの剣道部に試合を申し込む!
 聞いているぞ!この剣道部、"勝った方の言うとおり"なのだと!」
そして俺は一歩下がり、クロ子、マギャー、明円ちゃんを前に出すようにして。
「男が出ると物言いがつくかもしれんからな!歴とした女同士の戦い!
 この3人で、挑ませてもらう!そちらも3人、選抜するがいい!
 もし我らが勝ったら!先ほどお前らが捕まえた九條十兵衛の解放!及び!
 この、明円ちゃんの副部長就任を求める!」
明円ちゃんがびっくりしてる。そんなこと聞いてないと。言ってないもんな。
世間話で出すということは、一般部員は虐めを進んでは行っていないと言うことだ。
おそらくは副部長に言われて虐めに加担しているのだろう。
この女が失脚すれば、明円ちゃんが虐めに遭うことはなくなるはずだ。

「受けないなんて、ないよな!なぁ神谷美紀部長さんよ!」
副部長をすっとばし、沈黙を守っていた部長に声をかける。この部長の性格を考えれば…
「ありがとうミキティ!受けてくれると思っていた!」
こうなる。
「試合開始は今から30分後!先鋒戦、副将戦、主将戦!先に2勝した方の勝ちとなる!
 流石にこの二人は防具持ってないから、有志が貸してくれると嬉しい!」
こういうのは有無を言わせないのが1番なのだ。ほらな、主導権はこっちのもの。

――――――

「さて、作戦会議である!」
着替えさせ、あとは防具を付けるだけとなった三人を集めて作戦会議。
何も勝算がない訳ではない。ある程度は、勝つ見込みも考えている。
「明円ちゃん、向こうの3人はどうなるかわかるか?」
 「部長、副部長、それに恵ちゃんだと思います。順番に主将、副将、先鋒になるかと」
「了解。じゃあ明円ちゃんは副将だ。君が副部長より強いことは知ってるんだ。
 もう一度、副部長を打ち負かし、新しい副部長としての力を見せつけろ!」
 「わ、私は別に副部長になんか…」
「それじゃダメなのだ!君が剣道部で孤立していることは知っている!
 だが、何故君はまだ剣道部を続けているのか?剣道が好きだからだろう!?
 楽しくやりたいと、思わないのか?あの女を引きずり下ろせば、それは叶う!」
 「…」
あまり納得していないかもしれないが、そんな長々と説得している暇はない。

「マギャー、お前が先鋒だ。…がんばれ」
本人にはとても言えないが、はっきり言って全く期待ができない。
剣道部レギュラーをにこのマギャーが一本決めるとか…イメージの欠片もできねぇぞ。
まぁ、一敗は仕方ない。二勝すればいいんだからな。

「クロ子が主将になる。…大丈夫だ、お前は書記だから。ガチでやらせようとは思ってない」
そう伝える。二敗になるって?この俺が根回しをしていないとでも?
「元はと言えばこの依頼を持って来たのは誰だ?剣道部主将だろ?
 当然、真犯人がQJじゃないことも知ってるんだよ、あの人は。ただどうしても
 副部長に言い負けちまうらしいから、どうも強く出れないらしい。
 大丈夫、負けてくれる。…はず」
はず、と言ったのは絶対と言い切れないからだ。一応そんな感じの返答はしてくれだが、
武士がタイムスリップしたような人だ、例えばクロ子の戦闘力を見抜いたとしたら。
あの人のことだ、戦いに身を投じやがる可能性も高い。本当に読めない。
「…もうすぐ試合開始だな。とりあえずマギャー!がんばれ!勝てれば儲けもんだ!」

試合開始直前、俺は許可を得て更衣室に入り、そこに転がってるゴミに声をかける。
「拘束は解けないけど、観戦はしていいってよ。見てけよ、お前のために皆頑張るんだから」

158 :楯原まぎあ ◆MyZeP7HDKc :2011/09/02(金) 22:15:49.95 O
>「次は俺の番ですぜィ。風紀委員の力を使えば情報収集なんざ朝飯前。
 なんと…風紀委員を使って生徒1000人に聞き込みました…。」

すごい……! 私なんて精々数人程度にしか聞き込み出来なかったのに、
遊李さんはやはり格が違います、まぎあは遊李が得意気に披露する人気ランキングに真剣に聞き入っていた。

>「という事で1番人気は部長らしいですぜ?なかなか有力な情報じゃありやせんか?」

「私の力では手に入れられなかった情報ばかりです!
 さすが遊李さん! 風紀委員の鑑! もはや富貴委員!」

精一杯賛辞の言葉を並べ立てて、遊李の頭にどこから用意したのか月桂樹の冠を乗せる。

>「そうっすね。私はとりあえず昨日一日中、修練所の観客席から見学してただけっすけど……」
>「剣道部部長と、それから明円っていう女生徒。あの二人は強いっすよ。
 多分、剣道の試合なら勝てないっす」

「やっぱりそれなりの実力をお持ちの方々なんですねぇ。
 鰐さんでも勝てないなら、私に至ってはきっとものの十秒ですね!
 でも、もちろんその時は粉骨砕身で勝つ為に頑張ります」

まあそんな日はきっと明日明後日……どころか永遠に来ませんけれど〜、とけらけらと明るく笑った。


>「こちらコールサイン『クイーンジャック』。これより報告上げる。静聴されたし」

思わず鳥肌の立つレベルに病的な十兵衛の通信が途切れ、剣道部副部長である女生徒に威圧的で挑戦的な物言いに取って代わる。

>「この無線機の向こうにあなたのバックがいるわけね?――あー、テステス、聴こえるかしらそちらのどなたかさん?
 このところ不審者騒ぎでみんな怯えててね。技術研から便利なアイテムを借りてきたのよ。煩悩脳波を検出する
 変態探知機『はだかボックス』。そしたら天井裏から物凄い煩悩が検出されたってわけ。今もビンビン反応してるわ」

「十兵衛さんはそんないやらしい方ではありませんよぉ?
 あっ、そっか! その機械はきっと壊れているんです!」

こちらの声は届いているようだが、それに対して返答は特になかった。
通信の向こうで失笑されていても到底分かるはずはない。

159 :楯原まぎあ ◆MyZeP7HDKc :2011/09/02(金) 22:17:04.67 O
>「というわけで、不審者のお仲間さん。あなたがたのお仲間は、そうね、残りの学園生活を保健棟で過ごすことになりそうだわ。
 心配しないで、授業はベッドの上でも受けられるから☆ ……むしろ、風紀委員を呼ばないだけ感謝してほしいわ」

捨て台詞を残し、通信が切断された。
僅かの静寂――これは間違いなく仲間の危機だった……が。

>「…不審者は捕まった、と。これもう解決でいいんじゃね?」

部長はPSPを取り出し、発売されたばかりの新作のゲームを遊び始めた。

「…はっ。十兵衛さん、まさか真犯人の方を庇って……?
 なんて……なんて心優しい人なんだろう」

そうじゃなければ部長が助けに行かない理由が思いつかない、部長と十兵衛さんは心で通じ合っているのだ、
私もそんな"つうかあの仲"になれるといいなぁ、そんなことを考えながら部長に倣ってゲームで遊ぶことにした。
プレイするのはもちろん『戦国TURB』、何故ならこのゲームもまた特別なゲームだからです。


『ごめんくださいっ!』

『N2DM部』部室への突然の来訪者、まぎあが『戦国TURB』から『戦国TURBF.I.D』にディスクを取り替えようとしていた時だった。
※ちなみに『戦国TURBF.I.D』とは『戦国TURB』のファンディスクである。
 プレミアが付いており高値で取引されている。ファン必携※

『女子剣道部の明円です。――N2DM部の皆さんに、依頼があって来ましたっ!』

虐められっ子明円さんの口から語られる来訪までの経緯、私刑の危機に瀕する十兵衛、そして――

>『剣道部は力が全ての価値観です。九條さんを救い出すには、真犯人を捕まえた上で、副部長の判断を覆すほかない。
 揉めたとき、剣道部では"勝ったほうの言うとおり"なんです。つまり副部長達を試合で打ち負かさなきゃ、九條さんを救えません』

>「んでもってクロ子、マギャー、ついでに明円ちゃんも。俺たちは乗り込むぞ、剣道部へ」

――永遠に訪れることのないと思っていた日、それは今日だった。

160 :楯原まぎあ ◆MyZeP7HDKc :2011/09/02(金) 22:18:10.61 O
>「さて、作戦会議である!」

剣道着に袖を通した三人と、それに向かい合うようにして立つ部長。
部長が明円に対し、熱い言葉を投げかけている。
だが、まぎあには二人が何を話しているのかが分からない。それが日本語なのかどうかも。

>「男が出ると物言いがつくかもしれんからな!歴とした女同士の戦い!
 この3人で、挑ませてもらう!そちらも3人、選抜するがいい!
 もし我らが勝ったら!先ほどお前らが捕まえた九條十兵衛の解放!及び!
 この、明円ちゃんの副部長就任を求める!」

先ほどの部長の宣言を聞いてから、まぎあの頭は真っ白になっていた。

>「マギャー、お前が先鋒だ。…がんばれ」

「……え? えっ……あの、わ、わたし……」

名前を呼ばれ、口を開けた間抜け顔で部長を見る。
せん、ぽう? って……。
もはや先鋒という言葉の意味すら脳に浮かばない、完全に冷静さを欠いてしまっている。

>「…もうすぐ試合開始だな。とりあえずマギャー!がんばれ!勝てれば儲けもんだ!」

まぎあを鼓舞する言葉に何も返すことが出来ない、戦場へと向かう三人の後についていくことしか出来なかった。


静まり返った修練所、息が詰まりそうなほどの静寂。

「一同、礼」

審判を務める女生徒の凛とした声がこだまする。
相手の女生徒三人は防具がかちあう音を響かせながら、深々と頭を下げる。
まぎあもぎこちない動作で礼を返した。

「先鋒、前へ」

震える足を隠すことも出来ないまま、命令されて動く人形のように進み出る。
まぎあの前に向かい合う先鋒――名は、恵と言ったはずだ――には、当然ながら臆した様子は微塵もない。

「それでは……――始めッ!」

審判の合図とほぼ同時に、恵が風を切るように向かってきた、素人相手に時間を掛けるつもりはないようだ。
頭部に振るわれた鋭い剣撃を紙一重のところで避ける、だが見切って回避したわけではない。
情けない悲鳴を上げながら、床に引かれた境界線の隅に逃げ込んだだけだ。
竹刀を握る手は震え、切っ先は恵にではなく明後日の方を指してしまっている。

161 :楯原まぎあ ◆MyZeP7HDKc :2011/09/02(金) 22:21:05.50 O
――勝てっこない……勝てっこない! だって……私なんか何も……何も出来ないッ!!

洪水のように溢れ返るネガティブな思考。
それを、いつもの楽観的思考で上書きしていく。
その作業はまぎあにとってはもはや機械的で、すっかり慣れたものだった。

笑っていよう、楽しいことを考えよう、そう誰の耳にも届かないほどの小さな声でぶつぶつと呟く。
その間も、恵はじりじりと距離を詰め迫ってくる。

――ううん、何も出来ないなんてことないわ! 人はみんな誰しも力を持ってるんだもの!

まぎあは思い立ったように頭を覆い隠す兜に手を掛けると、それを脱ぎ捨てて床に放った。
恵の足が一瞬止まる、訝し気な視線が兜の奥からひしひしと感じる。

「……? あぁっ、これですか? だって邪魔なんですもの。
 こんな物被っていたら、とてもじゃないけど声なんて出せません♪」
「はい…? 貴方、馬鹿?
 試合中に防具を外すなんて……。しかも、その理由が声ですって?
 笑えない冗談は止めて戴ける?」

恵の言葉には答えず、まぎあは静かに瞳を閉じる。
そして、すぅっと深呼吸して一拍置いた後、

「Ah〜〜〜♪」

――ハミングを歌い始めた。
ファンタジーのお話に出てくる、森に住むプリンセスのような声で、寧ろそのもので。
右手を口元に当てながら、世界の裏側までも届くような大きく澄んだ声で。
いつの間にか防具を全て脱ぎ捨て、楽しそうに踊りながら歌い続ける。

「……もう結構。貴方のお遊戯に付き合う時間は無い」

その様子を呆然と見つめていた恵だったが、やがて竹刀を真っ直ぐに構え直す。
それでも、まぎあは歌うのを止めるどころか更に楽しそうな声を轟かせる。
恵が強く一歩を踏み出し、足袋と床を擦る甲高い音が響いた。
その音でようやく恵の竹刀が目前にまで迫っていることに気づいたのか、まぎあはハッと口を紡ぐ。
だが先程のように怯える様子は微塵もない、それどころか朗らかな笑顔を見せる。
まるで、旧知の友人に再会出来て喜んでいるような顔で。

「まあ! ありがとう、私の声を聞いて来てくれたのね!」

アニメのキャラクターのようにどこか芝居がかった声を、試合の行く末を見守る女子部員の方に向ける。
手を振るが、もちろんその中にまぎあの友人などいない、相手はそのすぐ後ろだ。

162 :楯原まぎあ ◆MyZeP7HDKc :2011/09/02(金) 22:26:30.64 O
「キャアアァァッ!? やだっ! ゴ、ゴキブリー!!」
「イヤアァァァァ!! ネズミ…! ネズミがいっぱい!!」
「ヒイイィィィ!! は、鳩ぉ!? フンが、フンがあああぁぁ…!!」

部員達の至る所から悲痛な声が上がり、座っていた女子部員達が蜘蛛の子を散らすように逃げていく。
おびただしい量のゴキブリ、ネズミ、鳩が一斉に恵を中心に取り囲む。

「…………え、ちょ」
「ふふっ。一度某アニメ映画の真似をして歌ってみたら、本当にこの子達が集まってしまって…」

架空のお話のように歌で呼び寄せたわけではない、まぎあの発した声の音階に偶然にも動物達が反応しているのだ。

「最初はもちろん驚きましたよ? 鳩はともかく、ゴキブリにネズミなんてって…。
けれども、私の声に惹かれて来てくれました。それからはずっと私のお友達なんです」
「やっ……いや、やだぁ…!! わ、わ、私虫ダメなのぉ…!!」
「まあ、どうしてですか? この子達、貴方のこと気に入ったみたいですよ!」

数匹のゴキブリが恵の足の周りを楽しそうに這い回っている。

「いやあぁぁ……! やめてお願い、助けて!! 助けっ……」
「みんな、仲良くしてあげてね!」

その声を合図に動物達の群れが、雪崩のように恵に覆い被さった。
それはまるで餌にたかるハイエナのような光景だった。


「えへへ……すみません。頑張ったんですけど、負けてしまいました」

まぎあの試合は終了した、当然の反則負けだ。
果たしてその『反則』とは、『試合上の意味』だけを指しているのか、それは分からない。
恵は口から泡を吹いて失神したまま担架に乗せられ、保健棟へ運ばれていった。

「むぅ〜……こうなったなら私は死に物狂いで応援します!
 鰐さん、明円さん! 頑張ってください〜!」
イチ、ニー、サン、ダアァァァッ!! と声を上げて、拳を上げる。
まぎあなりに、精一杯の応援をしているつもりだ。
その後ろで動物達もバタバタと飛んだり跳ねたりしている。
彼らもこの試合の行方を見届けるつもりなのだろう。

163 :梅村遊李 ◆89ggxEkiHQ :2011/09/03(土) 00:35:56.02 O
「ったく、旦那もひでーよなァ。
 女子剣道部と試合ってんなら俺を出してくれりゃいいのによォ。
 せっかくあの生意気な副部長を調教するチャンスだってのによー。」
>「あはは…しょうがないよ、梅村君出したらまともな試合になりそうにないし…。
 ってか梅村君は剣道のルール知ってるの?」
部長に女子剣道部の警戒と前科のある者の検索を頼まれた梅村は不服そうな顔をして風紀委員室に居た。
パソコンを使って前科のある生徒を検索しているのは同じく風紀委員の山崎。
毎度毎度梅村にこき使われる可哀想な人物である。
「失敬な野郎でィ。ルールは知らんがとりあえず竹刀で相手を叩きのめせばいいんだろィ?
 俺の得意分野じゃねぇか。」
>「間違ってないけど間違ってるよ…。」
呆れて溜め息をつく山崎の手元には部長から拝借した女子剣道部の練習風景が収められた写真がある。
「で、どうなんでィ?やっぱりアイツの停学は解けてたか?」
その写真の撮り方を見た梅村はある1人の人物を思い出し、山崎に検索を依頼していたのだ。
>「うん。つい1週間前に復帰したみたい。両刀使いになって帰ってきたって噂はどうやら本当みたいだ。
 今回の事件も99%コイツの仕業だろうね。」
パソコンに映ってはいるのはゴツいオカマ。
名をKIKKO(キッコー)という。
梅村が風紀委員に就任したばかりの頃、男子バスケ部で今回の事件のように部活中に不審な人物を見掛けるという相談が風紀委員に持ち込まれた。
その時にも男子バスケ部の写真が女子達の間で出回っていた。
「逃げ足が早く、背が高くて肩幅が広いって証言だけじゃイマイチだったが…この写真の撮り方を見てピンときたぜ。」
まぎあに渡された月桂樹の冠をクルクルと回しながら深い溜め息をつく。
梅村にしては珍しく心底嫌そうな顔をしている。

164 :梅村遊李 ◆89ggxEkiHQ :2011/09/03(土) 00:39:29.50 O
>「以前は風紀委員の半分を使ってなんとか捕まえれたけど、今回はN2DM部にきた依頼でしょ?
 まあ、君が声をかければ動かない事もないだろうけど…」
「いいや、今回は俺が1人で何とかしてやらァ。野郎も俺が1人で居れば逃げねぇだろうさ。
 手間かけさせたな、冷蔵庫にあるハーゲン○ッツ食って良いぜェ。その代わりボスには内緒にしとけ。」
>「え!?ホントに良いの?何か梅村君最近優しくなった?
 とりあえずありがたく頂くね。怪我しないようにお気をつけて〜。」
ひらひらと手を振り風紀委員室をでる梅村を見送る山崎。
梅村が出て行ったのを確認し冷蔵庫の中にあったハーゲン○ッツを取り出すとポツリと呟いた。
>「怪我しないようにってのは無理か……なんたって相手はあのKIKKOだもんなぁ…。」

女子剣道部部室前。
そこには鉄板入りバンテージを巻いた梅村の姿があった。
梅村は部室の中で繰り広げられる部長達のやり取りを部室の前で聞きながら座り込んでいた。
ふと、嫌な気配を感じ…ゆっくりと立ち上がる。
「よっこいしょーいち…。出てきな、KIKKOさん。俺しか居ねぇよ。」
>「えっ!ちょっとホントに梅村君!?どんだけー!」
嬉しそうに梅村の前に姿を現した身長190近くある長身、そして鍛え上げられた肉体をもつオカマ、KIKKOが現れた。
「せっかく停学明けたってのにまた停学になりてぇのかィ?
 今回もテメーの仕業なんだろ?女もイケる口になったってのはマジみてーだな。」
20cm以上身長差があるにも関わらず、恐れる事なくKIKKOに拳を向ける。
>「女の子だったら誰でも良いってわけじゃないわよ?戦っている美しい女の子が好きなの。
 もちろん男の子も好きよ。梅村君みたいに可愛くて強い子なんて最高よ。」
>「停学なんか大した事ないわ、写真も高く売れて自分の欲も満たせるんだもの。多少のリスクは承知の上よ。
 けど、あなた1人で私を捕まえて停学に出来ると思って?」

165 :梅村遊李 ◆89ggxEkiHQ :2011/09/03(土) 00:45:02.42 O
以前KIKKOを捕まえようとした梅村は返り討ちにされてしまったのだった。
>「あの時は楽しかったわねぇ。あなたとの戦いで疲れたところを捕まえに来た風紀委員には腹が立ったけど、あんなに楽しませてくれたのはあなたが最初で最後よ。」
気色悪いウィンクを梅村に飛ばすとKIKKOも構える。
「あの時の俺と思うんじゃねェ。今度はテメーが俺にぶちのめされる番だ。」
>「カモーン梅村くーん!また返り討ちにしてあげるわー!」
梅村は両手をアゴにつけ、頭を振り始める。。
KIKKOは梅村を中に入り込ませないように鋭いジャブを放つが…
>「あ…当たらない!どんだ…ぐぇぇ!!?」
ジャブをかいくぐった梅村の左ボディーブローがKIKKOの腹部に突き刺さる。
そして更に顔面への左アッパー、右ストレートとコンビネーションを浴びせる。
KIKKOの顔面はすぐに血塗れになり、後ろに倒れる。
「立てよ。まだ死んでねぇだろ?」
KIKKOは梅村の呼びかけに応えるように笑みを浮かべながら立ち上がる。
>「ちょっとちょっと〜!ホントに強くなったわねぇ!もうどんだけー!
 けど、私の美しい顔を傷付けた罪は……キッチリ取って貰うぞコラあぁぁ!!」
KIKKOは一転して怒りの形相で梅村に殴りかかる。
対する梅村は余裕の笑みを浮かべていた。

>>162女子剣道部の部室を開けようとすると、中から泡を吹いて失神している生徒が担架で運ばれて出てきた。
そういえば部室内が騒がしかったなと思いつつ担架を見送り、改めて部室の扉を開ける。
「お忙しい中失礼しやすぜ。真犯人候補の登場でィ。変態オカマ超人のKIKKOさんだ。」
右手に掴んでいたKIKKOを部員達の前に放り投げる。
KIKKOの顔面はボコボコに腫れ上がっていて人相は確認出来そうにない。
「ちょっと手強い相手だったんで手加減があまり出来やせんでした。申し訳無いねェ。
 ところで一体いつからここは鳩やらゴキブリやらネズミを飼うようになったんだィ?」
まぎあの後ろに居る動物達を指差し質問する梅村の顔にはかすり傷程度しか見当たらず、とても満足そうな顔をしていた。

166 :名無しになりきれ:2011/09/03(土) 11:27:39.32 0
明け円「超究武神覇斬!!」

スパァン!一本!

167 :小羽 鰐 ◆DeLd.MSvGY :2011/09/04(日) 01:17:11.30 0
>>153 >>157 >>158
>「こちらコールサイン『クイーンジャック』。これより報告上げる。静聴されたし」
スピーカーの向こうから聞こえる九條の声。その報告内容に

「芋羊羹も悪くないっすね……」

反応する以前の問題として、小羽は九條の報告を聞いてすらいなかった。
お茶を片手に啜りつつ、芋羊羹をついばんでいる。
だが、これに関しては小羽が薄情というより、むしろ変質者の様な格好で出て行った
九條の方に非があるといってもいいだろう。

>「あれええええ!?」
>こ、こちらクイーンジャック!非常にマズい、ヤサがバレた!これより機材を放棄して撤退を――」
>「させないわ。既にあなたは包囲されてるもの……フフ、さあて、あなたがどこの誰さんなのかみっちり聞こうかしら」

そうしている内に、スピーカーの奥では何やら不穏な空気が漂い始める。
争うような音と、やがて聞こえた少女の声……どうやら、九條は剣道部に捕獲されてしまったらしい。

>「…不審者は捕まった、と。これもう解決でいいんじゃね?」

「普段は大人しい人だったっすけど、まさかあんな事件を起こすなんて驚いたっす。
 ……インタビューはこんな感じでいこうと思うっす」

お茶を飲み終えた小羽は、部員達が飲んだコップを洗いながら、犯人の近所の住民のようなセリフを吐く。
どうやら部長と同じく九條の心配はあまりしていない様だ。
最も、それは無関心というよりはある種の信頼というべきものなのだが。
―――――

それからの展開は速かった。
部室にやってきた剣道部員、明円の依頼。そして何故か決定した、異色の剣道試合。
更に、部長が取り出した写真から推測した、犯人像。

かくして、それぞれの要素を虱潰しに解決すべくN2DM部は動き出す。


……余談だが、部長が取り出した盗撮写真はさりげなく小羽が全部接収した。

―――――
>「クロ子が主将になる。…大丈夫だ、お前は書記だから。ガチでやらせようとは思ってない」

「ガチでやっても、剣道のルールでやるなら勝てないっすよ……まあ、そこら辺はなんとかするつもりっすけど」

そうして始まった作戦会議。剣道の胴着を着込んだ小羽は、借り受けた防具に消臭スプレーを
大量に吹き付けながら、部長の語るこの試合の流れを把握した。
小羽に求められているのは、どんな形でもいいのでとにかく剣道部部長に勝利する事。
中々の重責だが、それを背負った小羽は、気だるげに竹刀を片手で持つと、
無造作に振り下ろす。竹刀が空気を断つ澄んだ音が、響き渡った。

一回戦。楯原の試合は実に……実にお粗末な結果だった。
試合の途中だというにも関わらず防具を脱いだ楯原は、彼女自身の「特技」を用いて、
昆虫等を呼び出し、結果反則負けと相成った。

>「むぅ〜……こうなったなら私は死に物狂いで応援します!鰐さん、明円さん! 頑張ってください〜!」

笑顔を振りまき悪びれる様子も無く戻ってきた楯原に声を掛けられた小羽は

「……」

――――楯原の言葉を、無視する。まるで、今の楯原には話す価値すらないと告げるかの様に。
彼女の何かを見透かしているかの様に。眼鏡を外し、手ぬぐいを頭に巻くと、面を被る。

168 :小羽 鰐 ◆DeLd.MSvGY :2011/09/04(日) 01:17:56.48 0

そして、二回戦。

予想に反し――――いや、或いは予想通りと言うべきか。
剣道部副部長vs明円の試合は、文字通り一瞬での決着を見せた。
試合開始直後に副部長が放った上段からの一撃。明円はそれを竹刀で受け流すと、
体制が崩れた副部長に高速の連撃を繰り出したのだ。

剣道部員の誰かが「超究武神覇斬!」などと勝手に技名を叫んでいた様だが、
それも決して大げさではない。ゲームの技を彷彿とさせるまでにその攻撃は研ぎ澄まされていた。
まさしく――――天賦の才を持つ人間の動きだった。
副部長は、成す術も無く面を取られ、呆けた様に膝を付く。まさしく、圧倒的な決着だったのだが……

「違います副部長!これは、私の運が良かっただけです!副部長は強いです!!」

声の主は勝者である円……恐らくは悪気は無いのだろう。
ただ、副部長へ気を使っての言葉なのだろうが、この場面においてその言葉は、最悪の侮辱だった。
副部長は、憎しみとも言える怒気を見せ、円の胸倉を掴むが……やがて、一礼し自陣へと戻っていった。
何故怒ったのか判らないという表情を見せる円を見た小羽は、誰にも聞こえないよう面の下で、小さくため息を付く。



――――そしていよいよ大将戦。

二刀を構えた小羽の眼前には、竹刀を正眼で構える剣道部の部長の姿。
凛とした姿勢こそ取っているが、しかしその構えに覇気は無い。
恐らくは「部長」の言葉通り、手を抜くつもりなのだろう。
このままいけば、当初の目的どおり勝利をつかめるのだが

(……はぁ。私もおせっかいっすね)

眼前に立った剣道部部長が礼をする直前、小羽は彼女にだけ聞こえるように呟く

「さて……悪いっすけど、本気だして貰うっすよ」

怪訝な表情を浮かべる剣道部部長。直後、試合開始の合図が出る。

――――その瞬間。剣道部部長の身体が数m程吹き飛び、膝を付いた。

驚く剣道部部長の眼前に居るのは、右手の竹刀を振り下ろした小羽の姿。
周囲の部員達から驚愕と、直後に非難の声が上がる。

小羽は、竹刀の打突部「以外」の箇所を力任せに剣道部部長の竹刀に叩きつけたのだ。
それこそ、相手の竹刀をへし折らんという勢いで。

169 :小羽 鰐 ◆DeLd.MSvGY :2011/09/04(日) 01:20:00.09 0
油断していた事と、二刀であるというのに、並みの一刀流剣士以上の力が込められているという
意外性によって、部長は本来なら流せたその攻撃に対応出来ず、結果こうなったのである。
当然ながら、小羽の行った行為はマナー違反である……だが、ルール違反ではない。
小羽は悪びれる様子も無く、体制の崩れた剣道部部長に追撃を入れるが――――

「どういうつもりっすか?負けてくれると思ったっすけど」

小羽の追撃は、剣道部部長の卓越した竹刀捌きによって弾かれていた。
それを確認した小羽は淡々とした声でそういうが、部長は何かを堪えるかの様に声を漏らす。

「……お前の剣は剣道ではない。そんな剣に、例え演技であれ、私は負けられない」
「この部活は勝った方が正しいんっすよね?だったら剣道もなにも関係ないと思うっすけど」
「……違う!それは!」
「違わないっすよ。だから、今みたいな事になってるんじゃないっすか。
 副部長の価値を損ねない為に、過剰に擁護する後輩。それに誇りを傷つけられる副部長。
 そんなものが生まれたっす。まあ、安心するっすよ。私が勝って、仲良くする様に言ってあげるっすから」
「……そんな事は、そんな解決などダメだっ!!!!私は、私は――――!!!!」

それからの戦いは一進一退だった。
剣道部部長の精密な本気の連打を、直感と身体能力で裁きながらルール違反スレスレの攻撃を出す小羽。
その戦いは両者の高い実力も相まって、部員達が感嘆するレベルで均衡していたが
……やがて、あっけなく。当然の様に決着が付いた。

「―――― 一本!!」

剣道部部長の竹刀が、小羽の胴を打つ音が響く。部員達から上る歓声。

そう。この試合は――――剣道部の勝利に終わった。

小羽は、防具を脱ぎながら剣道部の部長の目を見据えたが……やがて、下を向き
ふと息を吐くと、自陣へと戻っていく。そうして待機していた部長達に向けて口を開く。

「……すみません。どうも負けたみたいっす。私の力不足っす」

戻ってきてみれば、梅村が今回の事件の真犯人らしき人物を連行してきていた。
となれば後は勝者である剣道部部員達の判断によって、この事件の顛末は決まる事になる。

(まあ、あれなら大丈夫っすね)

……試合を終えた剣道部部長の目は、今までの副部長に言い包められていたそれとは異なっていた。
恐らく、あの彼女であれば最良の判断ができるだろうと、小羽は防具を脱ぎつつ考える。

「今回の事件の犯人に関してだが、私から提案させて貰おう――――」

程なくして、剣道部部長が口を開いた。
その内容は、当然部員達の虚栄心を満たす様な内容ではなく……

170 :九條十兵衛 ◆mJkMShtvmg :2011/09/04(日) 07:50:25.00 0
>「試合開始は今から30分後!先鋒戦、副将戦、主将戦!先に2勝した方の勝ちとなる!

明円ちゃんが剣道場に戻ったのは、それから30分ほどのちのことだった。
小羽ちゃんと楯原ちゃん、それから彼女たちの前に立つ部長。朗々と通る声は竹刀の打音に水を打った。
信じてましたよ部長!きっと助けに来てくれるって!あっ、こっちくる!もう縄解いてもいいのかな!

>「拘束は解けないけど、観戦はしていいってよ。見てけよ、お前のために皆頑張るんだから」

ひぃ!めっちゃ冷たい目をしてるーっ!?
もうなんか、養豚場の隅に固められた豚糞を見るような目!男にンな目で見られたって興奮しねえんだよ!!
でも、なんだかんだ言いつつも助けに来てくれるみんなの仲間意識が心に染みる。涙も出ちゃう。

「あ、ありがとうごぜぇますだ部長〜〜。それはそうと、お土産にスパッツの二三枚貰ってきましょうよ」

……うわあ、人間ってここまで蔑視的な目付きができるんだぁー。
好感度がミシミシと音を立てて下がってく。QJ株ストップ安であります。
さて、話を本編に戻そう。そろそろ崩れに崩れきったキャラを元に戻さないと、人気投票でハブられちゃうぞ。

この度の剣道勝負、試合形式は先鋒・副将・大将の変則団体戦。
前から順に楯原ちゃん、明円ちゃん、小羽ちゃんが出場することになる。
てっきり部長が大将戦出ると思ったんだけど、流石に女子と剣道勝負はアレだよね。僕が代わりたいよね。
で、先鋒戦。

「大丈夫です。楯原ちゃんは勝ちますよ。僕はスパッツを履いた女子に関しては見誤ったことはない」

僕はキメ顔でそう断言した。

>「……? あぁっ、これですか? だって邪魔なんですもの。こんな物被っていたら、とてもじゃないけど声なんて出せません♪」

えっ。
何脱ぎだしたのこの娘。いやエロい意味じゃなくて!だったら大歓迎だけど!
試合中に防具を脱ぐのは即刻反則退場級だ。今回は素人ということもあって審判の注意だけで済みそうだけど――って。

>「Ah〜〜〜♪」

歌い出したーーーっ!?
さすがの僕もこれは予想外だよ!きみは軽々と想像の斜め上を飛び越えていくな!それともスパッツを履いてないのかな!?
楯原ちゃんは――オペラか宝塚でも通用しそうなぐらい幅広い音程と声量で何事かを歌い上げる。
剣道というと「キエエエエエ!」とか「エィヤアアアアアア!」とか気合入れる人をよく見かけるけど、これもその類?

>「まあ! ありがとう、私の声を聞いて来てくれたのね!」
>「キャアアァァッ!? やだっ! ゴ、ゴキブリー!!」

「うええええええ!?ぶ、部長!楯原ちゃんってあんなスキル持ってたんですか!?」

なんと。老朽化した剣道場のそこかしこから種々累々の小動物が湧いてきて、楯原ちゃんの対戦相手に襲いかかった!
特技:声帯模写って!虫やねずみや鳥の声まで真似できるのかよ!ただのメルヘン娘かと思ったらとんでもない爆弾抱えてやがる!
とまあ、そんな感じで。

>「えへへ……すみません。頑張ったんですけど、負けてしまいました」

まあ普通に反則負けだよね!剣道はすぽぉつであって超人コンテストじゃないんだよ!
それにしても楯原ちゃん、声真似上手い割にモノマネのレパートリーがやけに少ないなと思ったら、そっち方面に特化してるのか。
いやいやなるほど、"人間の以外"レパートリーには自信アリってわけね。

171 :九條十兵衛 ◆mJkMShtvmg :2011/09/04(日) 07:54:39.86 0
>「お忙しい中失礼しやすぜ。真犯人候補の登場でィ。変態オカマ超人のKIKKOさんだ。」

と、そこへなにやら巨体のヒトだったモノを抱えて梅村くんが帰ってきた。
何引きずってるかと思えばこいつ、結構前に男子バスケ部に出入りしてた変態・亀甲じゃないか!

「いひゃのひゃひゃへはいっほーほ。ひひゃひぶりね、いんひゅう(今の名前はKIKKOよ。久しぶりね"淫獣")」
「ふっ、よせやい。僕もきみと同じように、過去の名は捨てたんだ。人はそうやって、手ぶらで大人になっていく」
「まだ半年も経ってない昔の話じゃないの」

KIKKO(旧名:亀甲くん)とは春頃に体育館の天井裏で出会った。
彼は男子バスケ部の写真を盗撮し高値で売りさばく悪党だったが、僕はそういうことはしない。
ただ純粋に女子のスパッツだけを追い求める一本気の通ったプロのジェントルだったんだ。
そういう美学の違いで僕達は袂を分かち、KIKKOは風紀委員と流血上等の死闘を演じた末に逮捕、停学となった。
あと女バスはスパッツじゃなくて短パンとかいう面白みの欠片もないファッキン衣服だったので僕はそっと天井を後にした。

「ねえ、梅村君はアナタのお仲間なんでしょう?なんとか取り計らえない?」
「処分の減刑をかい?それとも、ここに居る全員の目を盗んで逃走する手引きかい?」
「フフ、そのどちらもアナタには容易いことだろうけど…私にも美学があ・る・の。これは支払うべきコストで、受けるべきリスクよ」
「眩しい信念だ。きみが女の子で、もしもスパッツを履いていたら、おもわず求愛しているところだよ」
「うふ、私は両刀だからどっちもいけるわよん。それで頼みというのはね。剣道部のみんなに余計な不安を煽ってしまったでしょう。
 私、この外見だから。それでも、危害を加えるつもりは毛頭なくて……ただ眺めてるだけで幸せだったと伝えて欲しいの」
「それはそれで別の恐怖を呼びそうだけど。きみの眼光は強烈だからね」
「心底嫌になるわ。こんな身体になんて、生まれたくなかった。ねえ知ってる?私がこの半年で女の子も好きになったのは――」

KIKKOは、ゆっくりと子供に――自分自信に語りかけるように。ズタボロの唇を動かした。
既に剣道場の中央では副将戦が始まっている。明円ちゃんと、副部長。KIKKOUする実力者同士の互角戦。
亀甲くんの、アオタンで塞がりかけてる顔の割に小さな瞳が、真っ直ぐに試合中の二人を捉えていた。

「――強くて、美しい。そんな存在がこの世界に在っても良いんだって、教えてもらったから」

――――――――

さて、副将戦。楯原ちゃんが反則負けしちゃったので、ここを逃すともう後がない。
両者中央に寄り、蹲踞、礼。瞬間、副部長が仕掛けた。いつ振り上げたのか見えない速さで上段・唐竹割りの一撃。
しかしそれに対応する明円ちゃんもまた、部内二番姫の剣客だ。竹刀の根元でかっちり受け止め、鍔迫り合いに持ち込んだ。

ここで剣道について少し紹介しよう。
ルールは至って簡単、各防具に設定された3箇所ないし4箇所の『有効部位』に、竹刀の『打突部位』を当てるだけ。
やることはこれだけなんだけど、打つ場所が決まってるということは当然相手の護りも固いし、駆け引きが必要になる。
そして忘れちゃいけないのは、ルールとは別に審判に一本を認識させるためのある種のアピールが必要だという点。
これについては色々あるんだけど一番ポピュラーなのが『残心』だね。日常生活でも多少は聞いたことあるんじゃないかな。
言ってみれば野球やテニスで言う所のフォロースルーの一種なんだけど、武道はその形の整いも配点が課されるのだ。
残心がピシっと決まらないと、どれだけ上手く打突が入っても審判に一本と認識してもらえない。

『副部長!もう真犯人は見つかりました!これ以上こんなことつづけても、徒らに闇を攪拌するだけですっ!』

あ、明円ちゃん、マイクつけたまま試合に出てる……。おかげで試合中の二人の会話が筒抜けだ。
まあホントは試合中に選手が会話なんてモロ注意対象なんだけど、ナンバーツーとスリーの試合だ。口出しできないんだろう。

『……貴女、どうして剣道をやっているのかしら?』

息一つ乱さず、氷の表情で副部長が囁いた。
どういう意味だろう。色んな邪推をしちゃうよね。明円ちゃんは、そのままの意味で受け取ったみたいだけど。

『そんなの、剣道が好きだからに決まってますっ!』
『そうね、私も好きよ、剣道』
『だったら! 同じ剣道好きのわたしと同じ気持ちのはずです! こうして刃を重ねる時も! 貴女からは、熱が伝わってこないっ!』
『……同じ気持ち? 私と? 貴女が?』

172 :九條十兵衛 ◆mJkMShtvmg :2011/09/04(日) 07:57:30.37 0
僕は視力が良い方じゃないけれど、面頬の向こうで副部長の柳眉が吊り上がったのだけはわかった。
いや、わかってしまった。全身から迸る怒気とも言うべき熱気が、それまで休火山のようだった副部長の背から噴いたのだ。

『勘違いも甚だしいわ。貴女、自分の狭い了見が世界の常識と思ってるんじゃないでしょうね。
 それならどうして貴女は一人なのかしら。剣道部員はみんな剣道が好きよ。でも、貴女のことは好きじゃない。
 何故か分かるかしら。気持ちが同じじゃないからよ。女の子って共感する生き物なの――貴女とは、一ミリも共感できない』

副部長の気勢が強くなる。比例して、鍔迫り合いも明円ちゃんが押され始めた。
審判はなんで反則とらないんだ。明らかにまともな剣道をやろうとしてないだろう!

『貴女が……っ!わたしとみんなとの共感を!心を通わす魂の繋がりを!隔てたんじゃないですかっ!』

『ほぅら、すぐそうやって都合の良い敵を作り上げて。打ち倒せばそれで解決?殴り捨てればそれで満足?
 そうやってあらゆる現実から目も耳も塞いで、見えない敵と戦い続けてきた結果が今の貴女よ。本当に私と戦ってるのかしら』

『それでも、わたしの剣が誰かを救えるのなら!戦い続けていきたいんですっ!』

『現実に気づきなさいな。貴女が握っているのは竹刀よ、誰も救えやしないわ。他人も――貴女自身を護ってくれるわけでもない。
 刃のないただの竹の棒よ。貴女がそれで殴ろうとしている相手は誰?本当に貴女を虐める嫌味な副部長?』

『――――!! ……っぁあああああああああああ!!』

刹那、明円ちゃんが弾けた。曲げた膝、反った背中のバネを全解放、抑えこみに来ていた副部長の竹刀を跳ね上げる。
大きくバランスを崩す副部長を尻目に、明円ちゃんは右足を軸に一回転。得た速力を竹刀に乗せて、がら空きの面を――『一閃』!
剣が副部長の頭上を滑っていった一瞬後に、スパァン!

「一本!」

打音が響く頃には、既に明円ちゃんは残心を完了。審判が高々と旗を上げる。
お、音を置き去りにした……。ナンバーツーと言うからには相当なもんだと思っていたが……これがこの学園の剣道部か。

「出た……」
「あれが先の部内戦で明円さんが出した神速の廻転跳ね上げ面――」
「――『超究武神覇斬』!」

以上、部員のコメント。
てゆうか、なんか色々と言葉選びのセンスに引っかかるものあったけど、今ようやく確信した。
明円ちゃんって、剣道部長に負けず劣らずの厨二病娘だったんだね……。

『また……負けた。何が足りないの?わたしはこんな娘に、負けるわけにはいかないのに……!』

打ちひしがれる副部長。気持ちはわかる、真面目にやってる人間からすればあんなおふざけ剣道は冒涜以外の何者でもない。
しかもそれで結果出しちゃってるってところがまた致命的なんだ。弱ければ、雑魚がネタに走ってるって認識だけで済む。
だけど強ければそれだけ、注目度は増えるのだ。敵も増える。疎まれる天才っていうのはこういうふうに生まれるんだろうなあ。
そして膝をつく副部長に、明円ちゃんは最低最悪の一言で止めを刺した。

>『違います副部長!これは、私の運が良かっただけです!副部長は強いです!!』

言葉尻はうまく聞こえなかった。言い切る前に、明円ちゃんは副部長に胸ぐらを掴まれていたからだ。
うわあ、もの凄い形相で睨んでるよ。洒落じゃなく殺しかねない雰囲気だ。

「今のはマズかったよ明円ちゃん……。部長、念の為に仲裁に入ったほうが……」

「貴女のそういうところが!全ての原因だってことがどうしてわからないの!?」

おっと。副部長は暴力に訴えるという選択をぎりぎりで回避したみたいだ。怒りを吐きつけるように、吠える。
とはいえ副部長も大人気ないなあ。そんな部員みんなでハブらなくたって、波長の合う娘はいるだろうに。

173 :九條十兵衛 ◆mJkMShtvmg :2011/09/04(日) 08:00:22.58 0
「今ようやくわかったわ……貴女は剣道が好きなんじゃない。剣道やってるカッコイイ自分を演じてるだけよ。
 いつもいつもそうやって借り物の言葉で取り繕って。貴女の真意がわからない!そんな貴女と仲良くできない!」

「わ、わたしはただ、楽しく剣道ができればって、わたしの思う楽しい剣道を……」

「貴女のは剣道じゃない!剣道をテーマにしたお芝居でしかないのよ!今こうやって貴女と話してる私は何!?
 貴女のお芝居の登場人物なんかじゃないわ!貴女と誠実に向き合って!切磋琢磨したいただの女の子よ!!」

「う……」

ああ、明円ちゃんの眼がすっごい揺れてる。涙目とは違う、あれは泳いでるんだ、眼が。
めちゃくちゃ痛いところをつかれて、でも反論できない、そんな顔。怒鳴られたショックや悲しさなんかじゃない。

「不実よ、貴女は……。もっと私達の顔を見てよ。楽しく部活をする方法なんて、いくらでもあるんだから……」

言うだけ言って、副部長は一礼して退場した。
あとには釈然としない面持ちの明円ちゃんだけが残って、審判に尻を蹴られて放り出された。
うーん、後味の悪い結果になっちゃったなあ。今後二人の関係に修復は見込めるんだろうか。
その辺、我が部きってのお節介焼きが僕の隣で難しい顔してるので、そっちに頑張っていただこう。

というわけで大将戦。
我が部きっての……なんだろうね、あの娘は。中学の頃は荒れてたらしいけど、僕をしてその情報はからっけつだ。
今は部室の書記兼お茶くみ係に落ち着いているけれど、ときどき小羽ちゃんと話してると猛獣に睨まれた気分になる。
それはきっと錯覚じゃないんだろう。あの瓶底メガネの奥で一体何を考えているのやら、くわばらくわばら。

さて、小羽ちゃんの戦闘スタイルについて描写しておかねばなるまい。
彼女が握るはスタンダートな竹刀ではなく、両の手に太刀と小太刀。驚くなかれ、二刀流である。
小羽ちゃん未経験者って感じなのに大胆な選択をしましたねえ。あれかな、八百長だしネタに走ったのかな。

――と。
僕は己の認識の甘さを末代まで祟ることになる。いや祟らないけどさ。

ドドォン!とすごい音。小羽ちゃんと剣道部長ががっぷり四つ噛み合った瞬間、世にも奇妙な光景が。
あの剣道部最強と名高い剣道部長・神谷さんが数メートルは吹っ飛び、尻餅をついてるではないか!

もの凄いドーザー戦術を見た。確かに相手に尻餅をつかせれば反則はとれるけど……残念ながら戦略としては成立しない。
やりすぎれば故意に転ばせたとして、自分も反則をとられるからである。
ていうかそれ以前の問題だよ!礼儀を尊ぶスポーツだからねこれ!女の子といえども紳士協定は守ろうよ!
神谷さん怒っちゃったじゃん!小羽ちゃんどんどん追い詰められてく。うわ、竹刀が16本ぐらいに見えるよ。

「部長……」

僕は真剣な面持ちで部長に提案した。

「神谷さんのスパッツの色当てゲームしましょうよ。僕はオーソドックスに黒だと思いますが、部長の見解は?」

スパァン!
『一本!』

はい、ものすごい勢いで大将戦終わっちゃいました。すごかったなあ、神谷さんの逆袈裟胴。
明円ちゃんの超究武神覇斬もすごかったけど、彼女のはその比じゃない。学園十傑を決めるなら間違いなく呼ばれるだろうね。
……たぶんそこには、小羽ちゃんも入ってるだろうけれど。

>「……すみません。どうも負けたみたいっす。私の力不足っす」

「え。これってもしかして、もしかしなくても僕がこれから肋骨と無縁の生活を送るフラグですか?」

どーすんだよ!負けちゃったじゃないか!
小羽ちゃんなんだか満足気な顔してるし!いやいやいや、何も解決してないからね!?何一つ終わっちゃいないからね!?

174 :九條十兵衛 ◆mJkMShtvmg :2011/09/04(日) 08:03:33.47 0
>「今回の事件の犯人に関してだが、私から提案させて貰おう――――」

しばらくだんまりだった神谷さんが、不意に顔を上げた。
カースト最頂天に君臨する絶対王者の下知に、ざわついていた剣道部員たちがぴしゃりと水を打つ。

「漸々に待たせたな皆。私にもあまりに珍妙な案件だった故、暫し黙考の時を皆には頂いた。
 不甲斐ない部長であいすまなかった。もう大丈夫だ。私の中で結論は出ている。不躾ながら、皆にはこれに順じてもらおう」

頷く皆さん。僕も全力で首を縦に振る。
もともと僕を犯人にしたがってたのは副部長一派だ。僕が犯人じゃないと知ってる神谷さんの意見が通るなら、それ以上はない!
神谷部長、いやお神谷様は鷹揚に頷き返すと、判決文を読み上げるように厳粛な声で言い立てた。

「――――別に犯人が二人いてもよかろう」

その場に居た全員が――状況の飲み込めてない僕を除いて――付和雷同に頷いた。
……あ、あれ?あれれれれれれれ?なんかおかしくない?いやだって、犯人いるし、ここに。梅村くんが捕まえてきてくれたじゃん。

「それは良いが……お主、何故天井裏に潜伏していた? 不審者の調査に必要だったとは思えんが」

「決まってるじゃないですか!いつ入り込むや知れぬ変質者から皆さんを護るために24時間密着警備ですよ!!」
「なるほど。言ってることはよくわかった。いやわからんが、微塵も理解できんが、言いたいことはよく伝わってきた」
「ですよねー!神谷部長ならきっとわかってくれると信じてましt――」
「変質者は貴様だぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーっ!!!」

ボグゥ!
神谷さんの愛のあるアッパーカットが僕の右頬に突き刺さり、体幹ごとプロペラのように舞う身体。
一回、二回、三回転ぐらいしたあたりで畳の床に激突し、激しくバウンドしてようやく停止した。

「うぐぅ……」

ふふふ、転がったのが畳の上で助かった。剣道場の畳面は柔道の授業でも使えるように底面にスプリングが仕込んであるのだ。
ていうか神谷部長もそれを計算して殴り飛ばしたんだろうけど、幸いにも身体は動く。用意してあった脱出ルートで、逃げきって――
ガチャン。
硬質な音と、手首に冷たい感触。風紀委員の手錠が僕の左手首をシャレオツなシルバーで彩っていた。
わお、素敵なブレスレットをありがとう!なんてボケってる場合じゃない!なんでナチュラルに逮捕されてるの僕!

「べ、弁護士!弁護士を呼べーっ!これは官警の横暴だあ!言っちゃうぞ、あの言葉言っちゃうぞ――わけがわからないよ!!」

ガチャン。右手首にも別の風紀委員の手錠がかけられ、僕はずるずると引っ張られていく。
どこ行くの!?まさか風紀委員の委員棟ですか!?や、やめて!それだけは!行くなら風紀委員長を呼んでくれ!
どうせなら美人に調教されてえよおおおおおおおおお!

「く、ふ、ふはははははははは!このままじゃ済まさんぞ女子剣道部!必ず貴様らのスパッツの色を……特定する!!」

捨て台詞でセクハラしながら、僕は剣道場の外に控えていた護送車(私有地内なのでノー免許で運転可)に放り込まれた。
防弾プレートで固められた扉が帳を下ろす。外界とを閉ざす昏い契約の輪が、暗闇の中でちゃり、と音を立てた。

――――――――

「行きましたか、部長」
「ああ。悪は去った。これで我々も部活に専念できるぞ。インハイはもうすぐだ、気合を入れよう」
「そうですね、確執が浮き彫りになったりもしましたけど、時間はなによりの特効薬です」
「ところで、あの男は最後に何を言っていたのだろうな」
「はあ、スパッツがどうの、とかですか」
「うむ。珍妙なことを言う者よ。我々は女子剣道部。――袴の下に何も履くわけがなかろうに」


▼N2DM部・第4,5依頼▼
依頼者:九條十兵衛
依頼内容:冤罪を晴らし真犯人の逮捕を!→『冤罪は晴れ』『真犯人(+α)は逮捕された』のでミッションコンプリート!

175 :名無しになりきれ:2011/09/04(日) 17:58:58.20 0
ネットにうpとか正気の沙汰とは思えねぇ

176 :ぶちょー:2011/09/04(日) 22:24:30.30 0
うむ!筆が進まん!少し待ってくれ!
プリーズウェイトアフューモーメンツ!(英語1)

177 :名無しになりきれ:2011/09/04(日) 22:30:43.03 0
このままこのペースで回す気とかアホか
ぶちょー眼を覚ませ、いやむしろ寝て落ち着けww

178 :部長:2011/09/05(月) 03:33:22.17 0
流れるようにその3試合は終わった。まぁぶっちゃけた話俺は見てただけだが。
俺は何もやってないと言っても過言ではないが、それを認めてしまうと涙が流れるので
あえてその辺りは考えないことにするのである。泣いてない!泣いてないぞ!

>>158
最初の試合はメルヘンに終わった。
…んー、ちょっと事実との齟齬があったかもしれない。訂正が必要だろうか。
でもメルヘンじゃね?こう、歌声につられて小動物達が集うとかさ!童話みたいだろ!
その小動物のチョイスに関して議論の余地があるかもしれないことは否定できないが、
ともかくなんだかマギャーが楽しそうだったのでよしとしたいと思う。思います。
しかし俺の横でどや顏で「勝ちますよ」とか言ってた奴を俺はどうすればいいと思う?

試合に至るまでは少し強引だったわけで、悪いことしたなぁという気持ちはあった。
マギャーが争いごととか苦手なのも知ってたし、無理にやらせて俺だって少し凹む。
向こうも完全なる素人相手に本気出したりしないだろうし、とりあえずは無事に、
ただ無事に帰ってきてくれりゃそれでいいと思っていたのだ。ホントだぞ!
最初から勝ち数には入れていなかった以上、わりと善戦(?)したことは喜ばしいこと。
しかし少し相手の子には同情を禁じ得ない。ちょっと可哀想だよなぁ。
担架で運ばれていくのを見てそんなことを思った。後で菓子折り持って謝りに行こう。

>「えへへ……すみません。頑張ったんですけど、負けてしまいました」

「おう、お疲れ。こっちこそ、すまんかった」
帰って来たマギャーに労いの言葉と、あと謝罪の言葉。勝手に挑まさせたのは俺だ。
それを気にしているような素振りはないが、俺が気にするのだ!この俺が!
それに少なくとも試合中、面を脱ぎ捨てマギャーワールドに入るまでの姿は、
…とてもじゃないが、見ていられなかったのは確かなのだ。震えてたぞ、こいつ。
マギャーの頭をポンポンと叩いて、もう一度謝ってみたりする。聞こえない程小さな声で。
頭をポンポン叩くのは明円ちゃんにもやったが女性にはどうもやってしまう癖がある。
男にはやんねぇよ!気持ち悪いだろうが!あとクロ子には一回しかやったことねぇな。
言ってなかったが俺はわりと身長が高いので大体の女子なら違和感なく頭叩けるのだ!

>>163
>「お忙しい中失礼しやすぜ。真犯人候補の登場でィ。変態オカマ超人のKIKKOさんだ。」

二回戦が始まる、その直前。よく知る声とともに剣道場の扉が開かれる。
そこから出て来たのはバイソンだった。なんかキモいの連れて来てる。うわキモッ。
顔はボッコボコ(おそらくバイソンの仕業だろう)だが、キモいってのは分かるのだ。
だって俺は知ってるから。少なくとも顔と名前は。ほんとそれだけだけど。
とはいえやはりバイソンが真犯人を捕まえたということは、俺の推理は当たってたのか。
よかったよかった。自分で言っときながら半信半疑だったのだ。結果オーライ。
「ご苦労。だが、今まだ試合中でな。ちょうどいいしお前も観戦していくといい」
少し詰めて俺の横にスペースを作り、そこにバイソンを座らせる。
あと俺の逆横でキモいのと変態が会話してるんだけど知り合いだったのかよ。
類友って奴か。俺は思わず納得してしまう。どうして俺こいつ部に入れたんだろう。

そういえばこの真犯人を見て思い出したが俺の剣道部写真がどっかいっちまった訳だが。
べ、別にそんな大事でもねぇよ!ただ大枚はたいて買っちまったから、勿体無いなって!

179 :部長:2011/09/05(月) 03:34:31.53 0
二回戦は、まぁ前情報通り。順当に、実力で、勝敗が付いたってことだろう。
超究武神覇斬、って声が聞こえた。あぁ、そんな感じだ。必殺技でもおかしくない。
俺は剣道の知識なんか全くないから(えっへん)、正直よくわからんのではあるが、
そこに、実力の大きな隔たりがあることはわかる。素人でもわかるのだ、その上で

>「違います副部長!これは、私の運が良かっただけです!副部長は強いです!!」

こんなこと言われたら、そりゃキレるわな。俺わりと明円ちゃんに同情的だったけど、
さすがにちょっと虐められてもしゃーないんじゃないかとすら思えてきたぞ。
そりゃ副部長も胸ぐら掴んだりするわ。この人も、だいぶ真面目なんだろうな。

>「今のはマズかったよ明円ちゃん……。部長、念の為に仲裁に入ったほうが……」

横の変態がそんなことを言っている。いや無理だろ!女同士のいざこざは怖いんだぞ!
どうしようか悩んでいたがなんとか暴力沙汰にはならなかった。ふぃー、危ねぇ。
副部長ブチ切れ。そして言いたいだけ言って退場。なんか焦げ臭くなってきたぞ。
これ、前より関係悪くなってんじゃね?戦わせない方が良かったのかもな、と思うぞ。
あれ?この2人戦わせたのって俺だよな?…俺のせいか!?俺のせいなのか!?

>>167
そんでもって最後の試合だ。
「やっぱりそんなこったろうと思ったんだよなぁ」
これ試合中の俺の呟き。そりゃ、なんでもかんでも俺の思い通りにいくとは思わないさ。
しかしクロ子が自分から実力出しに行くとは思わなかった。
そんでもって、自分の土俵とはいえ実力出したクロ子と対等以上の力を持つ剣道部部長。
なんつーか、こりゃ名勝負だなぁと思わず嘆息してしまうのだ。
俺のお膳立て全く無視かよとかそういう不満はあるけどさ、そんなことよりも、
――ただ、その試合に見入ってしまう。

>「部長……」
>「神谷さんのスパッツの色当てゲームしましょうよ。僕はオーソドックスに黒だと思いますが、部長の見解は?」

そしてそんな俺を現実に戻してくれる声。時々こいつの人間性を疑いたくなる。
この流れでその提案が出来る心根はすごいと思えるぞ。尊敬の念すら覚える。
「俺をお前側に引き込むんじゃない!俺は一般人だ!変態じゃないんだ!」
とかツッコミを入れているうちに「一本!」って声が聞こえる。
しまった見逃した!畜生!こいつのせいで!こいつのせいでー!!

>「……すみません。どうも負けたみたいっす。私の力不足っす」

「あー…ま、しゃーない。お疲れ、お前にも考えがあったんだろ」

負けたのはクロ子だったらしい。そりゃそっか、いくらクロ子が強いってもなぁ。
最初は負けるつもりだっただろう剣道部部長に本気を出させようとしたのはクロ子だ、
いくら俺のことが嫌いでもさすがにそれだけで俺の希望ガン無視するこたないだろうし、
普通にやれば勝てたであろう戦いを勝てなくしたことにもクロ子なりの理由があるはず。
つーか俺エスパーじゃないんだからそんな他人の考えなんかわかるはずないんだけど、
そうであって欲しいと考えることになんの無理もねぇだろ。俺が泣くぞ。

180 :部長:2011/09/05(月) 03:35:31.55 0
>>170
>「え。これってもしかして、もしかしなくても僕がこれから肋骨と無縁の生活を送るフラグですか?」

「うん、まぁそうだな。骨は拾ってやるから」
負けたことが全然悔しくないのはやっぱりこいつのせいだよなぁ。
真犯人は捕まえたから何にも心残りないし、QJが捕まったのも自業自得で。
だから、

>「――――別に犯人が二人いてもよかろう」

俺も本当にそう思うよ!ていうかこいつ犯人だよね!間違いなく!
ミキティの見事なアッパーカットから通報があってやってきた風紀委員の連行までを、
俺は生暖かい視線で眺めていた。いやなんつーか、面白いよな!人の不幸って!
「じゃあなQJ!時々は面会に行ってやるよ!」
気持ち悪いことを叫びながら連行されていくQJに、俺は笑顔でそう告げて。
晴れやかな気持ちで、送り出したのだ。

「迷惑をかけたな!結果的に解決したのはこいつだから礼はこいつに言うように!」
そういってバイソンを示す。はっきり言ってバイソン以外のN2DM部の面々って
ただいたずらに剣道部を引っ掻き回しただけのような気がするのだ。
「では!また何かあればいつでも依頼に来るといい!
 クロ子!マギャー!バイソン!QJ!…は居ないんだった。帰るぞ!撤収!」
そう告げて剣道場を後にする俺たち。俺以外の奴らは先に部室へ帰らせ、
俺は剣道場に戻りマギャーが召喚したゴキブリに殺虫剤噴射したり
鳩のフンを掃除したりする。一応この辺はちゃんとしてかないとな。
こういうことやるのはいつも俺な気がする。部長って何だっけとか時々本気で思う。

部室に戻り、全員にジュースを振る舞う。メロンクリームソーダなんかねぇよボケ!
俺の分も少し口を付けて冷蔵庫へしまい、机から報告書を取り出して書き始める。
正式な部活動として認可されてからの条件として、依頼をこなす度に報告書の提出。
基本的にN2DM部に来るような依頼は生徒会などには出せないような小さな依頼。
だが、一応そういうのも生徒会で把握しておくことにより…とか、そういう理由らしい。
単なる思いつきで正式な部活動にしたもんだと思ってたんだがちゃんと打算もあるようだ。
「俺たちは生徒会の下部組織、底辺組織ってことになるんだよなぁ。
 生徒会に何か不利益になる依頼とかやった場合認可が取り消しになる可能性もある。
 ま、それでも俺は来た依頼は全部やるつもりだけどさ」
そんなことを言いながら報告書をまとめ上げる。ただ俺は大変字が汚いので、
これをクロ子に清書してもらうつもりだ。珍しい!書記っぽい仕事!

「あ、そだバイソン。QJのことだけど、なんとかNo.2の力とか使って、
 今日…一日はまぁ頭冷やして貰うとして、明日辺りにでも釈放とか出来ねぇ?
 一応俺も、あのクソ女――生徒会長にかけあってみるつもりだけど」
報告書にも、「依頼解決のため潜入を部長が指示」と一文を書き加えてある。
当然俺にも何らかの処分が加わると思うが、まぁQJ1人にだけ背負わせられないさ。
みんな忘れてるかもしれないが――俺は部長だぜ?

181 :部長:2011/09/05(月) 03:36:41.07 0
「明円ちゃんと副部長、どうなるかね。ま、時間が解決するだろ。
 俺たちにはもうどうしようもないし、どうする義理もない。ほっとくだけ、か」
そうぼやいて、俺は立ち上がる。おもむろに扉に近づき、開け放って。
「ほっとけるかーーーーーーーーーーっっ!!!」
俺は脱兎の如く駆け出した。

辿り着いたのは剣道場。今日何回来るんだよ俺は。往復そんなに近くねぇんだぞ。
「失礼!」
ずかずかと中に入り、見回す。相変わらず、いや以前以上に孤立する明円ちゃん。
俺は彼女のところに近づき、「ちょっとこの子借りてくから!」と無理やり連れ出す。
ミキティだけ笑ってた。他みんな亜然としてたな。連れて来たのは剣道場の裏。

「説教ターーーーーーイム!!!!!」
俺は明円ちゃんを正座させ、ビシッと指をさす!まずはこの子だ!
この子がどうにかならんとどうにもならん!矯正出来るのか?知らん!
出来ねぇならそれまでだ!ただほっとけねぇだけだ!やれるだけやる!
俺が色々やってそれでも無理ならもうどうしようもねぇんだ!俺にはさ!

「はい静聴!お前言われたよな!?今日副部長に色々!何か感じなかったか!?
 何も思わなかったのならもう俺は何も言えねぇよ!でもな!そんなことねぇだろ!
 思うところはあったはずだ!自分の今までの行動を!省みるところが!何か!」
明円ちゃんの表情が変わる。やっぱり、あそこまで面と向かって言われたら、そりゃな。
「しかし、さっき見たぞ!結局何も変わっていない!お前は何も変わってない!
 それも仕方ねぇかもしれない!今までの自分を否定されたようなもんだからな!
 でもな!それでも!歩み寄らなきゃ、お前はいつまでも、そのままなんだよ!
 はっきり言ってなぁ!俺は第三者だ!お前らの仲裁なんかできねぇんだ!
 仲違いした2人の間はその当事者でしか解決なんかしない!
 ――話し合え!対話しろ!考え、不満、全てをぶつけろ!歩み寄りは、それからなんだ!」
もっと私達の顔を見て。そう最後に呟いた副部長の顔が頭の中にフラッシュバックする。
こいつ、今までわりと自分が一番正しいと思ってたんだろうな。何も見ずに、前だけ見て。
それは違う、ともっと言ってやるべきだった。今日だけでもかなり揺れたこいつだ。
少しずつでも、話をして。価値観の相違を日に日に埋めて行って欲しいんだ。
当然、俺の役目じゃない。もっと、身近で。こいつのことをずっと見てきた奴だ。
 「でも!副部長は私と話なんか…」
「それでいい!お前が副部長と話をしたいと思えるなら!最初の一歩目を踏み出すなら!」
明円ちゃんの腕を掴み、立ち上がらせる。俺はしっかりと、彼女の目を見て。
「――俺が、対話への道筋をつけてやる」

俺は剣道場へ戻る。向かう先にまっしぐら、副部長の元へ。
「おいっす副部長!明円ちゃんが話がしたいって!してやってくれ!」
 「別に、私に話すことなんてないから」
デスヨネー。
そりゃ予想はある程度していた。つまり対抗策はある!俺だって奥の手がある!
膝をつき、頭を下げて、手を地面に!これがジャパニーズ土下座!DO☆GE☆ZA!
「頼む!」
 「どいてくれる?」
デスヨネー!
予想以上にこれは強敵だぞ。ちょっと安請け合いしすぎたかもしれぬ。
 「この剣道部は"勝ったほうの言うとおり"よ。どうしても頼みたいなら、
  ――私を剣道で打ち負かしてみたら?」
それが出来ねぇから土下座してんだろうが!やっぱりこういうタイプは苦手だ!
そして副部長は俺を無視して通り過ぎていった。諦めん!諦めんぞ!

182 :部長:2011/09/05(月) 03:37:41.51 0
次の日から。
俺はちょっと部室に顔を出し、依頼が来てないかチェックして。
来てたらその場にいる部員に適当な指示を出して。あとは剣道場へ向かい。
ひたすら副部長に土下座するのが、俺の毎日の放課後になっていた。
最初の数日はうんざりしたような表情だったが、最近はもう無表情なんだけど。
これに快感を覚えるようになったらQJの仲間入りなんだろうな。永遠に御免被りたい。
今日で何日目の土下座となったろうか。ふと気付くと、俺の横にももう一つ土下座。
 「副部長!…お願いします!私と、お話してください!」
明円ちゃんだった。おせーよ。お前今まで何してたんだよ。
 「…ふぅ。やっと、私の方を見てくれた、と思っていいのかしら?」
おや、好感触だ。これはいけるかもしれない!もう土下座懲り懲りなんだよ!
 「毎日毎日土下座されるのもそろそろ嫌になっていた頃よ。仕方ないから、話、してあげる。
  だけど、私が貴女のことを嫌いなのは変わらないから。それだけ、覚えておいてね」
 「は、はい!」
そうして2人は更衣室の方に消えていった。これでようやく俺の役目も終わりか。
これでどうにかなった、などとは思わない。ただ、これから対話を繰り返して。
2人が認め合える、一歩目になるといいよな。

 「だから貴女は!どうして…」
 「違います!私は…」

…なるのか?

▼N2DM部・第4依頼▼
完遂!

――――――

色々な依頼をこなしながら日々は疾風の如く過ぎていく。
10月。最初にあったのはクロ子の誕生日だった。ささやかながらパーティーしたぞ。
デパートで見つけた無駄にディテールにこだわった秋刀魚の塩焼きのストラップ。
これが俺からの誕プレであった。我ながらひどいセンスだと思うが、気持ちが重要なのだ。

二学期中間テストも終わり、今は10月の第2月曜日。つまり、体育の日。即ち――。
「体育祭であるっ!」
我らのメインイベント、部活対抗リレーを前に、もう一度高らかに宣言する。

当然ながら文化部は文化部同士で行われる。だから勝てる可能性もあるのだが、
『一位になれば部費倍増』とかいう噂が流れているせいで参加部全て目が血走っている。
まぁそれは俺もそうだけどな。貰えるものは貰っときたいじゃねぇか!
一周200mのトラックを一周ずつ5人でリレー。必ず男女混合でなくてはならないという。

それにしても、なぜ俺がアンカーなのか。それぞれの部活動の部長がアンカー、
とかいうアホみたいなルール決め腐ったゴミに天誅を与えたい。マジで。
だって俺がアンカーとか無理に決まってんだろ!

「とりあえずマギャーよ、お前が最初のランナーだ。…無事に一周してくれ」

やがて、ピストルの音が鳴り響く――。

▼依頼受付中!▼
(ネタを拾えるのはリレー後となります)

183 :楯原まぎあ ◆MyZeP7HDKc :2011/09/05(月) 15:37:16.22 O
>「おう、お疲れ。こっちこそ、すまんかった」
そう言って、部長がまぎあの頭をポンポンと軽く叩く。
まるで子供にするような仕草だったが、嫌な気分は微塵もない。
どんな形でも、人から優しくされるのはとても嬉しくて暖かいことなのだ。

>「お忙しい中失礼しやすぜ。真犯人候補の登場でィ。変態オカマ超人のKIKKOさんだ。」

二試合目が始まる直前に遊李が現れた。
傍らには、酷い顔をした大男。どうやら"これ"が真犯人らしい。
まぎあは、ひとまず事件はこれで解決? そう考えたが、試合はまだ終わっていない。

第二試合、明円vs副部長の戦いはあっけなく幕を閉じた。
――『超究武神覇斬』格好いい! 私もリミット技覚えたいなぁ。

>『また……負けた。何が足りないの?わたしはこんな娘に、負けるわけにはいかないのに……!』
>『違います副部長!これは、私の運が良かっただけです!副部長は強いです!!』

副部長が明円の言葉に酷く憤慨している、今にも殴りかからんとする勢いだ。
誰か止めに入った方が良いのでは、と部員達の顔を窺う。

>「貴女のそういうところが!全ての原因だってことがどうしてわからないの!?」
>「今ようやくわかったわ……貴女は剣道が好きなんじゃない。剣道やってるカッコイイ自分を演じてるだけよ。
 いつもいつもそうやって借り物の言葉で取り繕って。貴女の真意がわからない!そんな貴女と仲良くできない!」

…………ああ、まただ。
私また悪いことを考えそうになってる、『演じてる』『借り物』『取り繕い』。
それは全て明円さんが言われていること、私には関係ないのに。
そうそう、関係ない。深呼吸深呼吸、楽しいこと楽しいこと。
……よし、もう平気♪

第三試合目、鰐vs部長。大トリだ。
宣言した通り、まぎあは死にもの狂い――ある種狂っているかのような様相で鰐を応援する。
まぎあの鼓舞に合わせて、動物達も慌ただしく右往左往に体をバタバタさせている姿は、まるで魔物使いのようだ。

>「……」

しかし、鰐は何の反応も返さなかった。
聞こえなかったのかなぁ、深く考えることはせずとにかく声を掛け続ける。
だが、一度もこちらに視線が向くことはなかった。

まぎあは間違いなく鰐が勝利するものと確信していた、負けるはずがないのだと。
だが、結果は――

>「……すみません。どうも負けたみたいっす。私の力不足っす」

善戦虚しくの敗北だった。

184 :楯原まぎあ ◆MyZeP7HDKc :2011/09/05(月) 15:38:40.57 O
落ち込んでいるように見えたので元気付けようと思い――しかし、開いた唇をすぐに閉じた。
いつものように掛ける言葉が見付からない、また**されてしまったらどうしよう、と思った。
……**? **なんかじゃない、鰐さんは聞こえなかっただけ。
結局まぎあは、毒にも薬にもならない、当たり障りのない笑顔を浮かべるだけだった。

>「漸々に待たせたな皆。私にもあまりに珍妙な案件だった故、暫し黙考の時を皆には頂いた。
 不甲斐ない部長であいすまなかった。もう大丈夫だ。私の中で結論は出ている。不躾ながら、皆にはこれに順じてもらおう」
>「――――別に犯人が二人いてもよかろう」

剣道部部長『神谷』の言葉に約一名を除いた全員が納得しているようだった。
元々十兵衛さんは真犯人の方を庇うつもりでいたようだし、これで良いんだと思う、
晴れて事件は解決、めでたしめでたし!
視界の隅で神谷が十兵衛に渾身のアパカッ!を喰らわされて連行されていったが、
依頼解決に湧く(大量発生的な意味でなく)動物達を宥めていたまぎあは、全く気付かなかった。

>「では!また何かあればいつでも依頼に来るといい!
 クロ子!マギャー!バイソン!QJ!…は居ないんだった。帰るぞ!撤収!」

「はい、部長! 剣道部の皆様、失礼致します!」

会釈をして、皆と共に剣道場を後にする。
――しかし、何かを忘れているような気がした。

暫くして、部長も部室に戻ってきた。
部長が注いでくれたジュースを口にして、ほっと一息。
部長は報告書を書いている、これが正式な部として認可された上での最低限の義務なのだろう。

>「俺たちは生徒会の下部組織、底辺組織ってことになるんだよなぁ。
 生徒会に何か不利益になる依頼とかやった場合認可が取り消しになる可能性もある。
 ま、それでも俺は来た依頼は全部やるつもりだけどさ」

「そうですよね! 私も部長に賛成ですっ。困ってる人をほうってはおけません!」

部長の重みのある言葉に比べると、まぎあの言葉は遙かに軽い物だった。
『借り物』ですらない、月並みな台詞。
このジュースのように甘い考え。
そして、既にまぎあは別のことに思いを馳せていた。
――……う〜ん?? やっぱり何か忘れてるような??

185 :楯原まぎあ ◆MyZeP7HDKc :2011/09/05(月) 15:40:45.42 O
『やぁ! みんな、今日もハッスルしてる?
いやー、本当に剣道って素晴らしいね、ハハッ☆
人間ってのは非常に面白いよ。見ていて飽きない。
それにしても僕を忘れていくなんて、彼女も酷いと思わないかい?
……え? さっきから話してるお前は誰って?
おやおや、君も頗る酷い奴だなぁ、僕も一応今回の戦いの参加者なのだぜ?
まっ、自己紹介してなかったから仕方ないのかな……。
コホン……僕の名前は『御堂島 胡飢蝋』(みどうしま・ごきろう)。
彼女――『楯原まぎあ』――のパートナーの一人、いや一匹さ!
以後、お見知りおk

シューーーーーーーーーーーー

【御堂島 胡飢蝋、ゴキジェットプロにより死亡。
 加害者:部長 死因:思い上がり】


その場所は多少閑散してはいたが、それなりの賑わいを見せていた。
オールドな雰囲気を醸し出す商店街、学園を後にした帰り道、まぎあは真っ直ぐここに向かった。
八百屋の店主と仲睦まじく言葉を交わす。

「まーちゃん、今日もおつかい? エライねえ」
「もう、まーちゃんは止めて下さいっていつも言ってるじゃないですか〜」
「あっはっは! ごめんごめん、何にする? 良い大根が入ってるよ!」
「う〜ん……じゃあ、お大根を。それとキャベツに、トマト、あとは…………」


野菜類の詰まった袋を抱えて、家路を小走りながらも慌てた様子で駆けてゆく。
そして、ある家の前で足を止めた。
その家の様相は、ごく一般的な日本家屋といったところだ。
表札には『槇矛(てんむ)』と書かれている。
もちろん、『楯原』とは読まないし、読めるはずもない。
だが、まぎあはチャイムも鳴らさずに安っぽい門に手を掛けた。
そこがあたかも我が家であるかのように。


「伯母さん、ただいま帰りました〜!」
「……遅かったわね」

視線も合わさずに呟く、無感情でまるで関心がない様子だ。

「えへへっ…すみません、部活動が長引いてしまって。
 お買い物の荷物、ここに置いておきますね?」
「……………」
「それでは私は自分のお部屋に入ります。伯母さん、おやすみなさい!」

そう言って深々大げさに頭を下げると、『伯母』と呼ばれた女はようやくこっちを見た。
まるで害虫でも見るかのように、顔を酷く歪ませている。
それに気付いていないのか、笑顔を返し、まぎあは靴を履くと小さな庭に出る。
そこには小さな物置がポツンと備えていた、精々ロッカー五〜六個分程度の大きさだ。

186 :楯原まぎあ ◆MyZeP7HDKc :2011/09/05(月) 15:44:00.68 O
この『槇矛』の家は母方の親戚に当たる。
小学生の頃、両親が事故で揃って他界してからは、ここに預けられて暮らしている。
別にシンデレラのようにこき使われたり、手酷い仕打ちを受けることはない。
今日の買い物も、まぎあが自発的に申し出たことだ。

その物置には、手作りのネームプレートが掛けられていた。
そこには丸ゴシック体の可愛らしいブロックで、文字が象られている。
『Magia』――まぎあ、と。
この道具入れに使うような物置が、まぎあの暮らす部屋だ。
別にシンデレラのようにこき使われたり、手酷い仕打ちを受けることはない。
――何一つ関わろうとしないだけだ。
この物置は、いわば隔離シェルターのような物だった。
まぎあは鍵を差し込み、戸を開く。ガタガタと、とても煩い。
中には数冊の本と、両親が写った写真立て、薄い掛け布団。
そして申し訳程度の量の私服が、ハンガーで上から掛けられている。

「お父さん、お母さん! ただいま〜♪」

靴を脱いで中に入る、脱いだ靴は使い古されたコンビニ袋に入れる。
明かり代わりの蝋燭に火を灯してから、戸を閉めた。

「ねえ聞いて聞いて、今日はね〜? 私大活躍だったんだから!」

写真相手に身振り手振りを交えながら、楽しそうに『N2DM部』のことを語り出す。
部員達のこと、依頼のこと、取り留めのないこと。
その話の大半は、いや全てが――嘘だった。
虚実、虚栄。まるで、役立たずの弱い自分を覆い隠して、消し去るかのように。
全てがまぎあにとって、都合の良い話に作り替えられていた。


月日は流れ、早いもので十月。依頼もそこそこに増えていた。
そして鰐の誕生日パーティー、まぎあはプレゼントに『ワニ革のブレスレット』を贈った。
喜んでくれたら嬉しいな♪ 気分も軽い、財布も軽い。

そんなこんなでまたもや流れる月日、そして訪れた一大メインイベント。
それは、

>「体育祭であるっ!」

体育祭、厳密に言うならば部活対抗リレーだ。
参加者ほぼ全員が獣のような眼をして、闘気と殺気に満ち満ちている。
『一位になれば部費倍増』という噂は耳にしたが、この様子を見ると嫌でも信憑性が増してくる。
部長も目は血走ってこそいないが、勝ちに行く気は満々のようだ。
ちなみにアンカー、大トリだ。
なんて部長に相応しい役所っ、まぎあは部長が華麗に走り抜けてゴールテープを切る姿を妄想している。

187 :楯原まぎあ ◆MyZeP7HDKc :2011/09/05(月) 15:45:13.91 O
>「とりあえずマギャーよ、お前が最初のランナーだ。…無事に一周してくれ」

「は〜い! "無事"に一周してみせますっ!」

大きく右手を上げて手を降りながら、元気に駆けていった。


まぎあを含め、全員がスタートラインに立つ。
見よう見まねの『クラウチングスタート』の体勢を取るまぎあ、理由はなんとなく速そうだから。
それを見た隣の女子生徒(肥満体型)も、即座に真似をする。

「それでは……位置について、よーい――」

パンッ、と銃声が大きく鳴り響く。
全員がそれに併せて駆け出す中、何故かまぎあは微動だにしない。

「…ッ!? ちょ、ストップストップ!!」

審判が慌てて止めに掛かる。
何故なら、ピストルの引き金はまだ引かれていなかったのだから。
では先程の銃声は何だったのか。
まぎあが、ピストルの音を模写してスタートの合図を早めたのだ。
そうして全員をフライングさせて出鼻を挫くことで、身体面並びに精神面でリードする為に。

「えー……と。全員、位置について。フライングは一度までですよ」

気を取り直して、再度上空に向けられるピストル。
そして、今度こそ、本物の銃声。
合図と共に飛び出すように駆ける、まぎあが予想した通り他の全員は一歩遅れている。
『フライングは一度まで』、その言葉が烙印のようにのしかかり、スタートが遅れたのだ。
これなら暫定一位でバトンを渡せるはず、息せき駆けながら確信する。
50m、100m、150m……後ろを向く余裕はない、でもこの調子で行けば……!

スタートラインで待機する遊李の姿が遠くに見える、ターンを抜け最後のストレート。
160m……170m……たまらず遊李に向かって叫ぶ。

「遊李さ〜んっ!! やりました! 暫定一位で……っ!?」

その横を疾風のように駆け抜ける巨体……まぎあの『クラウチングスタイル』を真似していた、女子生徒(超肥満体型)だ。

「そ、そんな…っ!」

最後の力を振り絞って、女子生徒(激肥満体型)に必死で追い縋る。
だが、距離はどんどん離されていく、女子生徒(デブ)があまりに速すぎるのだ。
既に次のランナーにバトンを手渡そうとしている。

「っ、遊李さん…!」

それに数秒遅れて、まぎあも遊李にバトンを繋いだ。

「すみません…っ、お願いしますっ!」

188 :楯原まぎあ ◆MyZeP7HDKc :2011/09/05(月) 15:46:55.23 O
【私明日は諸事情によりレス出来ないかもしれません、念の為ご報告です!ではでは!】

189 :梅村遊李 ◆89ggxEkiHQ :2011/09/05(月) 22:23:18.29 O
梅村は部長の横に座り2回戦、3回戦を見届ける。
自分が予想していたよりも遥かに上を行く明円と剣道部部長の実力に少し驚いているようだった。

結果は1勝2敗で剣道部の勝利で終わってしまう。
>>170>「え。これってもしかして、もしかしなくても僕がこれから肋骨と無縁の生活を送るフラグですか?」
「安心しな、気が向いたら…2年に1回位の頻度で見舞いに行ってやらァ。」
焦る九條を横目に勝敗なんざどうでも良いといった表情で無情に切り捨てる。
剣道部部長の華麗なアッパーカットを受けた九條はいつの間にか現れた風紀委員2名により手錠をかけられてしまう。
1人は山崎、そしてもうは1人超絶目つきの悪い風紀委員No.3の斎藤だった。
「おや、斎藤さんじゃねぇですか?こんな所で何してるんでィ?」
>「変態が2人居っから連行してくれって神谷に頼まれたんだよ。
 テメーこそ何やってんだ?たまには仕事しろ仕事。」
>「ちょ、ちょっと梅村君!?そのボコボコになってるのってもしかして…」
そう言ってボコボコになったKIKKOを指差す山崎。
「ああ、変態オカマ超人のKIKKOさんだぜィ。相変わらず巨体に似合わねースピードだったが、今の俺の敵じゃねェ。」
ふふん、とドヤ顔をかます梅村に山崎と斎藤は呆れた表情を見せる。
>「この戦闘バカが。まあいい、2人は連れてくぜ。山崎、コイツら車に乗せろ。」
山崎は九條とボコボコのKIKKOを引き連れて剣道部を出て行った。
「どうぞご勝手に。ああ、あと悪いんですがあの変態営業部の方は今日だけみっちり絞って釈放って事にしてもらえませんかねェ?
 (風紀委員にバレたのは)今回が初めてみたいですし、ボスに言って生徒会長殿に掛け合ってもらえば余裕でしょ?」
>「…テメーがそこまで肩入れするとはな…珍しい。ただし今回だけだぞ?良いな?」

190 :梅村遊李 ◆89ggxEkiHQ :2011/09/05(月) 22:26:48.61 O
「ありがとうございやす。」
梅村が軽く頭を下げ礼をすると、斎藤も剣道場を出て行く。
>「では!また何かあればいつでも依頼に来るといい!
 クロ子!マギャー!バイソン!QJ!…は居ないんだった。帰るぞ!撤収!」
「へーい。」
部長の一声により梅村達も剣道場を後にするのだった。

少し遅れて部室に戻ってきた部長はジュースを振る舞うと公言する。
「あ、んじゃメロンクリームソーダで。」
という梅村の注文は一瞬で却下され、ショックを受けていた。
>「あ、そだバイソン。QJのことだけど、なんとかNo.2の力とか使って、
 今日…一日はまぁ頭冷やして貰うとして、明日辺りにでも釈放とか出来ねぇ?
 一応俺も、あのクソ女――生徒会長にかけあってみるつもりだけど」
「そんな事だろうと思いましたよ。安心して下せェ。既に手は回してありますんで。」
不服そうにオレンジジュースを飲みながら応える。
手にはPSPが握られており、スターオーシャンセカンドストーリーのレベル上げに没頭しているようだ。

>>181>「明円ちゃんと副部長、どうなるかね。ま、時間が解決するだろ。
 俺たちにはもうどうしようもないし、どうする義理もない。ほっとくだけ、か」
梅村はそんな事は関係無い、と言わんばかりに華麗にスルー。
>「ほっとけるかーーーーーーーーーーっっ!!!」
「何を1人で騒いでんだか…。忙しいお人だねィ。……ん?」
脱兎の如く駆けだした部長を横目で見送り、ゲームを続ける梅村の携帯が鳴る。
ちなみに梅村の着信音はロッキーのテーマである。
「もしも〜し。おう、どうした海李?あ〜…分かった。今日は兄ちゃん帰るよ。夕飯は何が良いんでィ?」
電話の相手は梅村の8つ下の弟、海李(かいり)だった。
梅村の家は母子家庭で母と梅村と海李の3人暮らしだ。
今日は母が帰ってこれないので夕食を作って欲しいとの事だった。
梅村も自分の弟は相当可愛いらしく、弟と電話している間の表情はとても穏やかだった。
「ってわけで俺は帰るぜィ。そんじゃ。」
電話を切るとそそくさと部室を出て行った。

191 :梅村遊李 ◆89ggxEkiHQ :2011/09/05(月) 22:30:51.03 O
「ただいま、良い子にしてたか〜海李?」
>「お帰り兄ちゃん!ハーゲン○ッツ買ってきてくれた?」
家に帰ってくるなりハーゲン○ッツの確認をする辺りが梅村の弟っぽさを醸し出している。
「おうよ、しかも海李の大好きなストロベリーだぜィ。」
>「やったぁ!兄ちゃん大好き〜!」
足元に抱き付いてくる海李を優しく抱き上げる梅村は、どこにでも居る普通の優しい兄そのものだ。
「まずは夕飯食ってからだな。今日は兄ちゃんが久しぶりにカレー作ってやるよ。」
>「なんですと!今日は凄いな!記念日だな!」
梅村は腕まくりをするとキッチンへと向かい料理の準備を始める。


「いっただきまーす。」
兄弟2人で食事をするのは約1ヶ月ぶりだった。
梅村は基本取り調べ室で寝泊まりし、母が帰って来ない日だけ家に帰って弟の世話をする事になっている。
「ちゃんと薬は飲んでるのか?」
>「うん、最近ちょっとだけ慣れてきた。でもやっぱりお薬はマズい。お薬もハーゲン○ッツみたいな味なら良いのに。」
「ははっ…それなら俺も毎日飲みたいもんだぜィ。」
海李は生まれつき体が弱く毎日数種類の薬の服用を義務づけられていた。
梅村が弟を過保護気味にしてしまう理由の1つである。
「ご馳走様でした。美味かったか?」
>「うん!ハーゲン美味かった!」
そっちかよ、と心の中でツッコミを入れ食べ終わった皿を洗い、2人で仲良く風呂に入る。
風呂から上がると海李がゲーム機を持ち出し、1時間程ゲームをする。
「よし、そろそろ寝る時間だぜィ?」
>「え〜!もうちょっとゲームするー!」
ワガママを言う海李を抱き上げ無理矢理ベッドへと連行していく。
>「兄ちゃん…今度はいつ帰って来るの?」
「……母ちゃんが居ない時…だな。」
>「そっか…」
「ほら、もう寝ないと明日寝坊しちゃうぜィ?」
>「そうだね…おやすみー!」
海李は何故母が居ない時にしか梅村が帰って来ないのかを知らない。
子供ながらに何か聞いちゃいけない理由があるのだろうと感づいているのだった。
「悪いなァ海李。いつか…ずっと一緒に暮らせる日が来る…それまでの辛抱でィ…。」

192 :梅村遊李 ◆89ggxEkiHQ :2011/09/05(月) 22:34:23.98 O
―――時は流れ、10月。
女子剣道部の一件から依頼もそこそこ増え、やっと部活っぽくなっていた。
小羽の誕生日パーティーには粉状のハバネロを大量に入れたメロンクリームソーダをプレゼント。
即座に見破られ、九條に飲ませられてしまうというハプニングもあったが、今となっては良き思い出だ。

>>182>「体育祭であるっ!」
声高々に宣言する部長とは裏腹に梅村のやる気は皆無であった。
『1位になれば部費倍増』という噂につられ燃えている輩が多い中、「部費が増えたところで自分の財布に入ってくるわけじゃないし」というのが梅村の考えである。

>>187だが、どんなに梅村にやる気がなくても選手に選ばれたからには走らなければならない。
軽くストレッチをしながらまぎあのスタートを見守る。
>「それでは……位置について、よーい――」
パンッと確かに銃声が鳴り響く。
まぎあ以外の選手は皆一斉に駆けだした。
「あ〜あ…こりゃダメだ。」
これで自分が遅れても文句は言われないだろうと安心したのも束の間。
>「…ッ!? ちょ、ストップストップ!!」
審判がストップに入る。
何事かと思いきや、銃の引き金はまだ引かれていなかったのだ。
「なるほど…なかなかエグい手を使うお嬢さんだ。ありゃ2回目は確実に出遅れちまう。」
そう、銃声はまぎあが音を模写したものだった。
2回目のフライングは失格というルールを利用し、参加者全員を精神的に追い詰める。
「ちっ……しょうがねぇ。俺もちったぁ本気で走りますか。」
予想通りまぎあは他の選手よりスタートダッシュを切り、1位で最後の直線まで来た。
だが…
>「遊李さ〜んっ!! やりました! 暫定一位で……っ!?」
超肥満体型の女子生徒がまぎあを颯爽と追い抜いていく。
動けるデブとかそういうレベルではない。

193 :梅村遊李 ◆89ggxEkiHQ :2011/09/05(月) 22:38:24.93 O
体型からは想像出来ないスピードを見せつけ、次の走者へとバトンを渡した。
>「っ、遊李さん…!」
>「すみません…っ、お願いしますっ!」
まぎあからバトンを受け取った梅村はニヤリと笑うと小さな声で「任せな」と呟いた。

超肥満体型からバトンを受け取った男子生徒もやはり超肥満体型であるにも関わらず、とてつもないスピードを見せつける。
まぎあからバトンを受け取った時点で50m近く離されていたが、梅村はぐんぐん距離を縮めてゆく。
梅村は頭は空っぽだが身体能力はずば抜けているのだ。
「余裕だな。こんだけ離せばテメーらでもなんとかなるだ…あれれィ?」
超肥満体型男子生徒を50m以上突き放し独走していた梅村だったが、かっこよく小羽にバトンを渡そうとした瞬間に気付く。
バ ト ン が な い
梅村はバトンを150m地点に落としていたのだ。
ダッシュでバトンを取りに戻り、再び小羽にバトンを渡す時には下から3番目になっていた。
「あの…その………まあ、よくある事だよな。頑張ってくれィ。」

194 :名無しになりきれ:2011/09/06(火) 00:16:22.25 0
▼N2DM部・依頼届▼
依頼者:体育祭実行委員

どうも、今体育祭の実行委員総括を任せてもらっとります稲坂言います。
皆さんお楽しみ頂けとるようで、今年も大成功と言って差し支えありませんな。
ただ問題が一つ、体育祭のトリを飾る華のイベント、騎馬戦に一組欠員が出てしもうたんですわ。
五人一組で誰でも参加可能、熱い迎撃戦と心理戦の楽しめる最高に盛り上がる競技なんですが・・・
実行委員としても大トリのイベントで頭数が足らんというのは回避したいわけでっせ。
別に優勝しろとまでは言いまへん、あんさんがたN2DM部の皆さんには、とにかく引っ掻き回してもろうたいんですわ
どうせ優勝するのは当代最強と謳われる生徒会チームですのんで・・・

依頼内容:欠員の出てしまった騎馬戦への参加

195 :小羽 鰐 ◆DeLd.MSvGY :2011/09/06(火) 23:34:15.91 0
>>174 >>182 >>185
疑わしきは処罰という司法の精神も真っ青な大岡裁きが行われていたり、
昆虫の残党が処理されたりと、剣道試合は事後処理も含めて騒々しいものと終わった

そう、剣道の試合は終わった。


……残暑が齎した熱はとうに引き、半月が雲間に顔を見せる。
校舎の古びたコンクリに貼り付けられた時計が示す時刻は丑寅。
動くもの全ては眠りに落ち、魍魎達が蠢くとされる丑三つ時。
そんな夢現の時の中、月光に薄く照らされる木製の建造物。
学園が剣道場に、二つの影があった。

一つは銀。月影の中に無手で佇み、双眸のみを獣の如く闇に浮かべる銀髪の少女。
一つは黒。月光の中に木剣を携え、凛とした姿勢が一振の刀を想起させる黒髪の少女。

「――――それで、この手紙はどういうつもりだ、小羽。
 私に門限を破らせたのだ。事と次第によっては、相応の仕打ちを覚悟して貰うぞ」

月光を境界とでもするかの如く対峙する二人の内、初めに口を開いたのは黒髪の少女
剣道部部長、神谷美紀。その手には『果たし状』と書かれた手紙が握られている。
神谷は木剣の切っ先を眼前の月影に佇む銀髪の少女……N2DM部書記、小羽鰐へと向ける。
切っ先を向けられた小羽は、酷く気だるげに自分自身の眉間を揉む。

「いや、すみませんっす……ただ、ちょっと神谷先輩に頼みごとをしようと思いまして、
 こうしてお呼びさせて貰ったっす」

「頼みごとだと?……馬鹿者、時間を考えろ。それに、果たし状とはどういう了見――」

「……まあ、あれっす。果たし合いが頼みごとなんっす」

小羽の言葉を聞いた神谷は額に青筋を浮かべるが、一度深呼吸して呼吸を整える。

「小羽、それはつまり今日の試合の報復戦という訳か?
 ならば無駄だ。お前では私には勝てん。何故なら――私は強いからな。
 今日はお前達に世話になったから見逃してやる。命令だ早く帰……っ!?」

「帰らないっすよ。神谷先輩には、まだ一つだけ教える事があるっす」

神谷のセリフの末尾に小羽によって投擲されたのは、小銭……所謂「指弾」であった。
初動無しで放った小羽も驚異的だが、それに反応し小銭を叩き「切った」神谷もまた恐るべきというべきだろう。

「……貴様の言う「教える事」が何かは知らんが、
 ここまで挑発されては、いくら温厚な私でも黙ってはいられんぞ。強者としてお前を、指導してやる」

「それでいいっすよ……はぁ。本当に、こういうのは私のガラじゃないっすけどね……」


――――数瞬後、二つの影が神速をもって加速し、月光の境界線にて交錯した。


196 :小羽 鰐 ◆DeLd.MSvGY :2011/09/06(火) 23:35:03.46 0
「……ばか、な……この動き、昼間のものより……」

……月影の中で、神谷が磨き上げられた木製の床にその膝を付く。
手に携えた木剣はその半ばから刀身を失っており、ただの木の棒と化している。
そんな神谷を月光の中から見下ろすのは、銀の狼の如き少女――――小羽鰐。
その手には、へし折った木剣の一部を握っている。

「……実は私、武器とか使うの苦手なんっすよ。それに、こんな姿を大勢に見られたくなかったっす」
「っ……つまり、私は、手加減されていたと、いうのか……っ!?」
「違うっすよ。あれはあれで本気っす。剣道での勝負なら、神谷先輩が
 最強なのは間違いないっすよ……さて、先輩。ここで質問っす」
「くっ……なん、だ……」

腹に拳を打ち込まれたのだろう。息を切らせながら、神谷は小羽の瞳を睨むようにして見る。
そんな神谷の視線を正面から受け止めた小羽は、何かを押し殺すかの様な声で問う。

「今回、私は先輩より強かったっすけど――――例えば今、私が『剣道部は廃部にしろ』なんて言ったら、
 そんな私を、先輩は自分より正しいと思うっすか?」

その問いかけに、まるで意味のわからない問いかけに、神谷は思わず息を止める。

「……神谷先輩。先輩は、汚い手で勝とうとした私を倒して『勝った者のみが正しい』という考えを否定したっすね。
 だから、今の私が何を伝えたいかを、神谷先輩なら判ってくれると信じてるっす」

「お願いしますっす。剣道部を、『私みたいに』しないであげてくださいっす」

膝を付いたまま何かを考え込んでいる部長を置き、小羽は剣道場から退場していく。
星空は何事も無かったかの如く静寂を保つ。まるでこの夜の出来事が夢現であったとでも言うかの様に。



この夜より数日後、剣の強さ以外には興味を持って居なかった神谷が、
同部の副部長と部員である明円の関係を改善させようと(本人的にはさりげなく)行動をする様になった。
これが「部長」が行った説得の成就に影響があったかどうかは、誰も知らない。



197 :小羽 鰐 ◆DeLd.MSvGY :2011/09/06(火) 23:36:07.07 0
>>182 >>187 >>193
――――――

季節は十月。青々と茂っていた木々もその葉を紅や黄色に染める時節。

>「体育祭であるっ!」

体育祭が!開催されていたっ!!

この日に至るまでに、定期テストや小羽自身の誕生日パーティーなどがあり、
そこで貰ったしょうもないものから高級品まであるプレゼントは、未だに小羽が
寝起きする宿直室の枕元に大切に飾られてるといった事、一度、微笑みながらそれらを
メンテナンスしている姿を目撃されてしまった事等、色々イベントはあったのだが、
これを語るのはまた別の機会とさせて貰う。

今行われているのは『一位になれば部費倍増』という噂が流れる部活対抗リレー。
当然N2DM部も参加しており、やけに気合の入った部長のお陰で小羽も半ば無理矢理参加させられていた。
走者としては代三順に配置されており、体操服の上に下がジャージといったロマンの欠片も無い服装で、
部活のメンバー達の様子を瓶底眼鏡の下からやる気なさげに眺めている。

第一走者は「楯原まぎあ」
驚くべきとことに、彼女は素晴らしいスタートダッシュを見せ、初め、集団のトップに躍り出た。
整った楯原の容姿も相俟って、観客からの応援と歓声が聞こえるが、同部である小羽はその姿を
冷静に見つめるだけであった……まるで、手品の仕掛けに気付いた観客の如く。

しかしながら――――どんな物事にもイレギュラーはつき物である。
楯原の前に立ちふさがったイレギュラーは「走れるデブ」だった。
陸上部もかくやといった走れる……いや、「素早いデブ」の姿に、応援席からどよめきが起こる。
結果、必死の健闘にも関わらず楯原は二位という順位でバトンを繋いだ。

そして、第二走者は「梅村遊李」
風紀委員No2にしてN2DM部新入部員の彼はその自信に伴った運動性能を保有していた。
圧倒的な速さを持って高速のデブ二号へと追いつき、追い抜いた。
小羽の眼前に来た段階でその距離は相当に開いて

>「余裕だな。こんだけ離せばテメーらでもなんとかなるだ…あれれィ?」

開いて
開いて……

「……。さすが風紀委員のNo2さんは違うっすね。凄いっす。尊敬するっす」

高速でコースを逆走しバトンを持ってきた梅村に、小羽は相変わらずの淡々とした声で
そう賞賛(?)を送ると、バトンを受け取り走り出す。

眼前に居る生徒達の中で、先頭を行くのはまるで宙を舞うかの如く滑らかな
美しいフォームで疾走する三人目のデブ(男)。
他の追随を許さないその速度に、陸上部の生徒が膝を付き、涙ながらにリタイアを宣言する。
そんな陸上部を尻目に――――梅村が抜かれた生徒達を再度抜き返し、小羽はいつの間にか二位に位置づけていた。
観客席からは何時の間に追い上げてきたのだという驚きの声が上がる。
しかしながら、瓶底眼鏡な容姿が影響しているのか応援の声は前の二名の半分も無い。

そんな微妙な空気の中、小羽はとうとう一位の天空のデブに並び、追い抜――――けない。
最後の最後で、デブは力強く地面を蹴ると、数mを一気に跳躍したのだ。
後に観客の一人は語る「あのデブには――――翼が生えていた」と。

「……バトン、頼むっす。私は向こうでスポーツドリンク用意してるっす」

だが、小羽は特に落ち込んだ様子も無くそんなセリフを吐くと、
次の走者である九條へとバトンを力強く差し出した。現在先頭との差は数m。

198 :九條十兵衛 ◆mJkMShtvmg :2011/09/07(水) 17:52:53.94 0
目を覆いたくなるような酸鼻極まるあの事件から半月――
無実の罪で投獄され、しかし仲間たちの助力によって恐怖の風紀委員棟・拘置所から脱出した僕は、
目の前を掠めて行った巨悪の存在に腹の怒りが跳梁跋扈、学園に巣くう陰謀を打ち砕かんと孤軍奮闘を開始したのだった――!

「――で、またしても投獄されたわけだけど」

「前科何犯かしらこれで。この半月で随分と増えたわよねぇ、どんだけ〜」

いや違うんですってば!ほら、部長があれから毎日剣道場に土下座に行ってるって話を聞いたからさ。
そんな高度なプレイに何故僕を混ぜない!と発奮して僕も向かったんだけどつい習慣で天井裏に隠れちゃったんだよね!
そしたら運悪くあの事件のときに仕掛けといた盗聴器が発見されて、当初の目的通り風紀委員喚ぶ大義名分になっちゃったってわけ。
……という流れがこの半月の間に5回ぐらいあって、いい加減部長も梅村くんも庇いきれなくなって、僕はこんなところにいるのです。

「はあ、前科ついちゃったなあ。これじゃもうまともな部や委員会には出入りできないね」

「あら、生徒手帳の賞罰ページが全部罰で埋まってからが本番よん。いいじゃない、どうせ娑婆には持ち越さない前科だし」

「きみと一緒にするなよなあ!」

この学園の罰則規定は少し変わっている。
限りなく一般社会に似せて定められたそれにおいて、『無期停学』は『禁錮』と同義だ。

有期停学よりも重い罰。
風紀委員直轄の委員棟地下にある、フツーの学生には関わりようのない『拘置所』に数日ぶち込まれるのだ。

そんなわけで僕は拘置所の談話房で、同じく今度は女子テニス部を覗いて捕まったKIKKOと共にカードゲームの商談に興じていた。
KIKKOの盗撮技術と僕の情報網を駆使して作った、学園の美人どころをカードにしてトレーディングするゲーム『しろくろ!』である。
"会いにいけるカードゲーム"をコンセプトにして開発したこれは、カード毎にHP・攻撃力・固有スキルが設定されていて勝負も熱い。
最近剣道部に実地で取材する機会に恵まれたので、そのあたりのスキル関連をKIKKOと見直していたところだ。

「出版部の知り合いに聞いたら、土日の夕方からなら輪転機貸してもらえるってさ。紙とインクさえ調達できれば商品化もできるよ」

「あとはデータベースの充実ね。バスケ、剣道、テニスと集めたから、今度は空手部あたり狙ってみようかしら」

「楽しみだなあ。カードゲームは本当に儲かると言うからね。なんでも金を刷ってるみたいな錯覚に陥るんだとか」

お金が入ったら、まずスパイキット一式を新調しよう。
それからN2DM部にPCを二台増設して、パソ研の技術者を雇って、ネットで依頼届けが出せるシステムを構築するんだ。
ホームページも作るし、学校裏サイトで露骨に宣伝もしちゃうぞ。半年後にはうちの部も最大手だ。

「ちょっと!わたしのカードの固有スキル『疼く右眼(笑)』ってなんですか!!」

僕らのやり取りを隣で眺めていた明円ちゃんが不平を叫んだ。
彼女の手には『しろくろ!拡張パック Ver.剣道部』の中身が握られている。

「ああそれね。アドバイザーとして副部長にスキル考えてもらったんだ」

明円ちゃんがキっと横を向く。副部長が薄ら笑いで睥睨していた。

「あら、貴女みたいなアンポンタンの邪気眼娘にはぴったりの名前だと思わない?」

「きぃーーっ!貴女って人は!貴女って人は!」

諸手に拳を掲げてポカポカ殴りに行く明円ちゃん。天地魔闘の構えで迎撃する副部長。
二人がなんで拘置所に入ってるかと言えば、彼女たちなりのコミュニケーションの結果らしい。河原で殴り合ったんかこいつら。

あの事件からうちの部長の尽力によって、ようやくお互いに橋頭堡をかけた明円ちゃんと副部長は、相変わらず仲が悪いそうだ。
それでもちゃんと、自分の"嫌い"を真正面から相手に伝えられるようになっただけ大きな進歩だと神谷さんは言っていた。
……天井裏から引き摺り出された僕にアームロックをかけながらね。

199 :九條十兵衛 ◆mJkMShtvmg :2011/09/07(水) 17:55:12.27 0
「フフ、だけどこの肖像権丸無視のゲーム、風紀委員にでも見つかったら大変なことに――って何よこれ!
 私のカードの固有スキルが『クサレ石頭』になってるじゃない!誰が差し替えたの!?」

「ふふふ……アドバイザーとして呼ばれたのは貴女だけじゃないってことですよ副部長ーーっ!スキありッ!!」

明円ちゃんが丸めた雑誌――あれジャンプじゃん!どんだけ凄まじい握力してんだあの娘!
とにかく丸めたジャンプを副部長の脳天に叩きこむ。超究武神覇斬だ。五体投地で気絶する副部長。

「っふ、また詰まらぬものを……わたしの剣は悪を絶つために在ると云うのに……」

いちいちひらがなセリフに漢字を使いたがる辺りが明円ちゃんのパーソナリティを如実に顕してるね。
と、気絶していたかと思われた副部長が倒れたまま足を振り上げ、反動で飛び上がってそのまま明円ちゃんに飛び蹴りを食らわせた。

「ちょっ!蹴り技とか反則――」

「喧嘩に反則もへったくれもないわ!残虐ファイト上等よーーっ!!」

どたん、ばたん、べきべき。たちまち乱闘となった談話房に風紀委員の看守が飛んで来る。
二匹の猛獣を静めるように、さすまたを使って抑えこむ。だが相手は学園の中でも指折りの実力を持つ二人。
手に負えないと判断した看守は仲間を喚び、入れ替わるように僕らは談話房から追い出された。

「囚人番号1786、出ろ!」

僕が右往左往していると看守長からお呼びがかかり、制服と生徒手帳の入った籠が手渡された。

「こんな時でなんだがお前はこれで釈放だ。そこの更衣室で着替えてそのまま退出して良いぞ」
「どうもお世話になりました。シーユーネクストアゲイン!」
「ナチュラルにまた来ようとするんじゃない!俺にお勤めご苦労様でしたぐらい言わせてみろ。……もうやるなよ?」
「パードゥン?」
「GoodLuck.(くたばれクソ野郎)!」

――――――――

>「体育祭であるっ!」

で、現在に至る。うだるような夏の気配は消え失せ、秋ちゃんが大気を制圧し出す頃。
ここまでに色々、小羽ちゃんの誕生日イベントとかあったけどそこらへんは割愛するっぽい。
僕は気持ちの篭りに篭った手編みのスパッツをプレゼントしたんだけどね。
まさかベアークローでお応えされるとは思わなかったよ!あれは小羽ちゃん、マジの眼をしていたね。

閑話休題、そんなこんなで体育祭。
部活対抗リレーなんていう、文化部涙目の種目への参戦が決定した僕たちである。
第一走者は楯原ちゃん。なんと、スタートの雷管銃の音を声真似しよったであの娘!!
声一つでここまで戦い抜けるんだなあ。ひょっとしてN2DM部のラスボスは彼女かもしれぬ。

>「遊李さ〜んっ!! やりました! 暫定一位で……っ!?」

――が。その脇を突風と共に駆け抜けていく影がある。
慣性と質量が大気を裂き、行く先行き後に風を巻き起こす!まるで列車が隣を抜けていったみたいだ!

風の主は"ふくよか体型"の女子だった。巨体に見合わなすぎるとんでもないスピードで楯原ちゃんを引き離していく!
もうなんかいろいろとおかしいよ!楯原ちゃんは身体も細い方だから、デブと比べるとまさに大人と子供のよう。
あっという間に差を付けられ、暫定二位で梅村くんにバトンが渡った。

>「余裕だな。こんだけ離せばテメーらでもなんとかなるだ…あれれィ?」

……この野郎。ものすごい追い上げでデ部の第二走者を抜き放ったと思ったら、バトン落としてやんの!
ていうかバトン拾いに行って、通常より二倍近くの距離を走っておきながらこの男三位に漕ぎ着けやがった。
とんでもないなあ、今からもっととんでもない女子が走るわけだけど。

200 :九條十兵衛 ◆mJkMShtvmg :2011/09/07(水) 17:58:18.68 0
バトンの渡った小羽ちゃんは追い上げる追い上げる、瞬く間に二位へと復帰した。
だけども一位との差、たったの30センチが縮まらない!敵もさる者というか、間違いなく『本物』だ。
まったくのダークホースだった。

「ここまで百貫デブばっか集めた部活があったなんて!!」

>「……バトン、頼むっす。私は向こうでスポーツドリンク用意してるっす」

「救急箱も用意しといてよ。――こっから先は、泥仕合を覚悟する」

バトンを受け取った僕は勢いまで受け取ったかのように自分の身体を前へ飛ばす。
とはいえ僕は一般的な文化系の生徒だ。そこまで足は速くないし、スタミナはもっとない。追い抜かすなんてことは、できない。

『さあ部対抗リレーも佳境に入って参りましたっ!逃げるふくよか男子、追いすがるはN2DM部!両者の差は――僅か1メートル!
 ここで解説者をお迎えしましょう。なんでリレーの解説に呼ばれたのかさっぱりわからない女子剣道部部長、神谷美紀さんです』

『ご紹介に預かり光栄だ。三度の飯より青春の汗が大好き、むしろそれでご飯が食べれる程良い塩味、剣道部部長の神谷美紀だ』

学園きっての美姫の登場にギャラリーが湧く。ちょっと待て、今頑張って走ってる僕は丸無視ですか!
っていうかなにそのキャッチコピー。また明円ちゃん辺りが余計な入れ知恵したのか!?

『神谷さんはスポーツ力学について造詣が深いんだとか』

『そうとも。私は勤勉なあすりーとだからな。すぽぉつ力学とやらにもとても詳しい』

横文字使えてないよーっ!
誰だよホント、この人にカタカナ語言わせようとしてる奴!

「……まあ、僕なんだけど」

そろそろだな。僕は前もって仕込んでおいた仕掛けを発動。
追いつけないし、追い越せないなら――せめてこの順位を維持して部長につなぐ!

『あーっと!N2DM部、ふくよか男子の背後にピタリとついて走り始めました!進路妨害にはあたらないので反則ではなさそうですが、 
 一体何の意味があるのでしょう、解説の神谷さん!』

『うむ。あれは"すりっぷすとりーむ"という奴だな。高速で進む物体の背後に回るとなんやかんや色々あって空気抵抗が消えるのだ』

『えっと……前の走者を風避けにして走ってるってことですかね……?』

『詳しい原理はもっと複雑なのだが、まま、そういう感じに思えば良い。あのように走ると、向かい風が追い風に変わるそうだ』

スリップストリーム。
物体が高速で移動すると気圧の変化が起きるのは、電車が入ってきた駅のホームに起きる突風で説明できる。
風が起きる=気圧が高くなるということは、別の場所では気圧が低くなってるということだ。
それが物体の背後。ここに入ると気圧の高低差の関係で物体に対し引力みたいなのが発生し、楽に並走できるという仕組みなのである。

201 :九條十兵衛 ◆mJkMShtvmg :2011/09/07(水) 18:00:56.37 0
『なるほど……空気力学を利用した戦術的走法というわけですね。確かに引っ張られているというか、引き摺られている感じです』

『それがすりっぷすとりーむだ』

『おっとぉ!N2DM部、転倒ー!これは痛そうです――って、こけて転がりながら第一走者にピタリとくっついてますよ!?』

『うむ。すりっぷすとりーむだな』

『ホントに意味わかって言ってますか神谷さん!?』

まあ、スリップストリームとか今やってるコレと何の関係もないんだけどさ!
僕は技術研の新開発した極細の難視ワイヤーでふくよかさんと自分の身体を繋いでいた。
フツーは違和感で気付きそうなものだけど、本番の緊張感に加えこれだけ体格差があると気付かずに僕を牽引してくれる。

で、さっきコケて。
もう今の僕はほとんど引き摺られてるようなもので、傍から見れば違和感丸出しなのだけど、もちろん手は打ってあるのだ。

前日に明円ちゃんを通じて神谷さんにスポーツ工学の学術雑誌を渡しておいた。
出版部に協力してもらって作った出鱈目の雑誌だ。

スリップストリームについて、"かなり大袈裟に"脚色して書いた雑誌だけど、流石の神谷さん、鵜呑みにしたみたいで。
そうなれば来たるリレーの解説ににわか仕込みの知識をドヤ顔で喋りだすことは充分予想できたのである!

物言いがついても、解説者がスリップストリームについて信じ切っている以上そこには説得力が生まれる。
(自称)スポーツ工学に詳しい人間が正しいと言うのだ。白いものも黒くなる。しろくろっ!だ。

「ぬっがあああああああああああ!」

ていうかすごく痛いです!マジで全然気づかねーなこのデブ!ものすごい勢いで地面に摩り下ろされてるよ僕!
なんとかスニーカーで地面に立って、水上スキー状態にまで立て直す。アンカーはすぐそこだ!

「部長!――ファイットぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

某栄養ドリンクのコマーシャルの如く、腕をあらん限りに伸ばして部長へバトンをつなぐ!
渡した瞬間、ワイヤーがふくよかくんから外れて、僕は灼熱のグラウンドにポーンと投げ出された。
ふくよかくんもまたアンカーにバトンを渡し、予想以上の疲労に首を傾げながらクールダウンを行っていた。

「暫定二位……頼みますよ、部長!」

202 :部長:2011/09/08(木) 04:04:40.56 0
>>187
第一走者はマギャーである。まぁ正直、第四走者と同じくらい走りには期待できない。
基本的に俺の作戦として第二走者と第三走者でどれだけリードを広げられるか、なのだ。
だから無事に一周してくれること、それだけを願った。反則とかされたら困るし。
さすがに隣に居るデブ女には勝てるだろうからドベはないだろぐらいの気持ちで、
スタートのピストルの音を聞いていたのだが、マギャーだけスタートしやがらねぇ。
「はぁ!?」
結局、理解するのに少し時間が必要だった。マギャーの奴、なんつーことしやがる。
あの笑顔の下はそんなに黒かったのか…とか思う。いや有効な作戦かもしれねぇけどさ。

フライングの恐怖に踏み出しが遅れる他のランナーを抑え、マギャーは一位で走り抜ける。
まさかの一位通過か、と思いきやデブに並ばれ、そして追い抜かれる。
マギャーが遅いんじゃない。むしろ俺の予想を越えて早かった。だが追い抜かれる。
このデブが、更に早いってことだ。ったくよ、今のレースは文化部限定の筈だろ?
文化陸上部とかいうわけのわからんのが参加してるのは聞いたが、それだけの筈だ。
どこのどいつだよ、このアスリートは。

>>193
次の走者はバイソン。はっきり言ってこいつには何も心配してない。
確かに頭は足りてないかもしれないが運動神経は俺が保証しよう。当然、足もだ。
デブ2号との差がどんどん縮んでゆく。デブ2号もこいつめちゃくちゃ早いぞ。
あっという間に抜き去り、悠々と一周して来たバイソン。その手には何も握られていない。
バトン落としたことなんかここから見れば一目瞭然なんだよ!走ってて何故気付かねぇ!
1人逆走する姿はとてもシュールだった。しかしこんだけのタイムロスだ、
普通は最下位になるはずだろうによくもまぁ持ちこたえたもんだよ。

>>197
そんでもって次はクロ子。こいつに関してはもっと心配してない。
身体能力については俺は重々承知してるし、どっかの誰かと違って地頭もある。
「クロ子なら、バトンを落としたりなんかしねぇさ」
そう聞こえるように呟く。勿論、バトンを落としてくれやがりました奴に向けてだ。

すぐに二位まで上がってくる。気がつけば、何時の間にか、背後にいるその走り。
灰色の幽霊、ネイティヴダンサーのようだ。オグリキャップのおじいちゃんな!
ともかく一位を追い抜くのも時間の問題だろう、そう思っていた。一位でバトン渡せば、
第四走者はあいつだ。あの手この手で二位以下に妨害をしかけて一位を不動のものとし、
あとは俺が悠々とゴール、そんな光景を脳裏に浮かべていた。
――デブ3号が、跳躍するまでは。

「デ部の奴らめ…」
思い出したぞ、デ部。マジであるんだよデ部って部活が。俺も詳しくは知らないが。
しかも設立したのはつい最近だという。一体あのクソ女は何をトチ狂ったのか。
しかしそれ以上は俺も知らないのだ。活動、実態、全てが謎に包まれている。
唯一わかっていること。それは部員が全員、平均を遥かに越えた肥満体であることだ。
ともかく、我らとデ部との一騎打ち、との様相を呈し始めてきた。
しかし残った走者は、どうにも頼りないのが2人。

>>200
QJにバトンが渡る。さぁどうなる。こいつが普通に走るとは思っちゃいないが。
前を走るデブ4号に、ピッタリ張り付くようにその背後を追走するQJ。
何故か解説をやってるミキティが言うには、スリップストリームとかいうらしい。
だが、たかだか200mの距離でんなもんが必要になる訳がない。普通に走れよってことだ。
見てみろよ、あの走り方。どう見ても不自然だろ。つーか走ってねぇぞ。
ほら、コケたりして…おい!審判!止めろよ!どう見ても不正が行われてんぞ!
自分のチームではあるが流石に看過出来ないレベルの不正である。何故みんな何も言わん!
だがまぁわりと傷だらけになってしまったQJの努力を無駄にするわけにもいかないし、
結局俺もだんまりを決め込むのである。チキンとでも何とでも呼ぶがいいさ。

203 :部長:2011/09/08(木) 04:06:20.97 0
>「部長!――ファイットぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

「いっぱぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁつ!!!!!!」
バトンが渡される。一位との差はほぼないと言っていい。まだまだ、逆転可能な状態。
走るのはデブ5号。アンカーが部長、というルールにこいつも則っているのなら、
こいつがきっとデ部長なのだろう。デブり方も今までのデブとは桁が違う。
それで、だ。
「なんでそんなに速く走れんだよ!!!!」
人体力学的におかしいだろ。どう考えても。走れるデブにも限度がある。
みるみるうちに、確実に、着実に。その差は開いていくのだ。

マギャーはその七色の声を使い、自分以外をフライングさせスタートから優位に立った。
バイソンは人並み外れたその脚力で、バトンを落とさなければ一位だった。
じゃあ、俺は?
クロ子はとんでもないほどのその身体能力であっという間に二位まで上り詰めた。
QJはその狡猾さ小狡さで不正を行いつつもその順位のまま耐え切った。
ならば、俺は?

『ほぼ、決まりだろうな』
ミキティの声が聞こえる。俺もそう思うよ。逆転できる差じゃあない。
ハッタリもきかせられない、実力だけで順位がつく。その場合俺には勝ち目なんかない。
大きな背中がどんどん遠くなる。畜生――だからアンカーなんか嫌だったんだよ。
俺がみんなの足を引っ張ることになることなんて、容易く想像出来たんだから。
「クソッ!」
クソッ!クソッ!なんで俺の足の筋肉はこの程度の速さでしか動かせないんだ!
身長は高い方のつもりだ!その分ストライドある筈だろ!なんで!なんでだよ!
どうして!どうして!あいつと――あのデブとの差が開いていく一方なんだ!

やがて、一位と二位の差より二位と三位の方差の方が短くなってきた頃。
俺は最終コーナーで、もう一度足に力を入れる。せめて、一矢報いたい。
ただそれだけだったのに、俺の足が耐えきれなくなって。足首が、変な方向に曲がって。
「…あれっ?」

足の自由が利かなくなり、平衡感覚は失われ――俺の世界は反転した。

204 :部長:2011/09/08(木) 04:06:51.73 0
――――――

「すまん!」
天幕の下、ここは出張保健棟。保健委員長の柳生先輩は、捻挫だと言っていた。
わりと酷い捻挫らしく、しばらくは松葉杖生活のようだ。自業自得だ、何も言わん。
保健委員長と聞くと女性っぽいイメージがあるかもしれないが、柳生先輩は男性である。
ガチムチな体でホモっぽいし、厳しい人だから「人間の屑」などと言われることもあるが、
アイスティー奢ってくれたり、マッサージしてくれたりと、打ち解けるといい人だ。
保健医と共に保健棟を取り仕切ってるだけあって、内科検診も外科手術もお手の物。
その辺のボンクラ医者よりよっぽど医者やってると思う。柳生先輩は人間の鑑。

そして、冒頭。謝ったのは当然N2DM部の面々に対して。心配かけさせたしな。
結果的に、リレーは途中棄権ということになった。そりゃ仕方ないけどな。
ちょっと大袈裟に痛がりすぎたかもしれん。担架で運ばれながらそんなこと思った。
結局優勝はデ部だったが、部費倍増はデマだったらしい。会長が放送してた。
デマ流したのも生徒会じゃねぇの?真剣な勝負にするため、とかで。ありそう。
「俺が無理矢理参加させといて俺のせいでリタイアしてちゃ様ねぇよな。
 どうやら向こう二週間程度は松葉杖だとさ。…ま、俺で良かったよ」
わざとらしく溜息をついて、俺はパンに齧り付く。今は昼休みの時間なのだ。
みんな自分のクラスに戻って飯食いたいかもしれないが、俺が引き止めた。
寂しいんだよ!分かれよ!

>>194
昼休みが終われば後は午後の部を残すだけとなるが、俺はもう参加出来そうにねぇな。
「メシ食いながらでいいから、ちょっとこれ見てくれ」
そう言って取り出したのは、リレー直前に実行委員から渡された紙。
「こんな時だが、依頼だ!」

「最終種目、騎馬戦。人数足りなくなったから参加してくれ、だとよ」
全員が目を通したあたりで簡単に説明する。そんなに大した依頼ではない筈だ。
優勝しろとも言われてないし、ひっかき回すのに適任はいる。
「五人一組らしいけど、俺こんなんなっちまったしな…
 補充出来りゃいいけど、最悪四人でも参加出来るようには稲坂に話つけとくわ。
 しっかし、騎馬戦ねぇ…」
危険なんだろうな、とか思うのだ。そもそもが騎馬戦って大体四人一組だろ?
五人て、1人多いじゃねぇか。ましてや、この学園だぞ?普通の騎馬戦だと、思うか?
「騎馬戦ぐらい、普通にやればいいのにな。…ともかく、頼むわ。
 二つ返事でOKしちまったから、出来るだけ参加してやってほしい。
 埋め合わせは、するからさ!」
そう言って、俺はパンの最後のひとかけらを口の中に放り込んだ。

▼N2DM部・第5依頼▼
依頼者:体育祭実行委員
依頼内容:欠員の出てしまった騎馬戦への参加

205 :名無しになりきれ:2011/09/08(木) 04:50:27.17 0
☆学園の騎馬戦・ルール概説☆

・参加人数は五人です
・参加者は全員が武者役になります。騎馬はリアル馬です。農業科からの提供のミニチュアホースです
・この馬は体高が低く、また気性も温厚で人に従順な品種なので馬術を知らなくても操馬が可能です
・5人はそれぞれオフェンス二人、ディフェンス二人、キャプテン一人の構成とします
・5人はそれぞれ頭に紙風船をとりつけ、支給される紙刀で割られると死亡扱いとなります
・両チームのキャプテンの紙風船が割られた時点で試合終了、割ったチームの勝利です

206 :名無しになりきれ:2011/09/08(木) 04:54:02.13 0
>この馬は体高が低く、また気性も温厚で人に従順な品種なので馬術を知らなくても操馬が可能です

「それポニーだよね!? え、なに? 俺らポニーに乗って騎馬戦すんの!? 訳が分からないよ!」

未だに常識を捨て切れていない一般生徒Aが思わずツッコミを叫んでいた

207 :名無しになりきれ:2011/09/08(木) 05:41:01.72 0
>>205
武士っぽいこととか大好きな神谷先輩がアップを始めたようです

208 :名無しになりきれ:2011/09/08(木) 06:44:24.66 0
>>205
・両チームのキャプテンの紙風船が割られた時点で試合終了、割ったチームの勝利です
  ↓
・キャプテンの紙風船が割られた時点でそのチームは敗退、最後まで生き残ったチームの勝利です


一対一形式だとターン回しが遅くなるので本家騎馬戦の形式に則ってサバイバル戦でいきましょ
オフェンスとディフェンスは頭の風船割られたらペナルティを受けた上で復帰

209 :名無しになりきれ:2011/09/08(木) 11:51:28.48 O
デブ「我々は全国のデブ達に勇気を与える為に活動している
デブだから運動が出来ない?デブだからモテない?
否!断じて否だ!
デブだって、痩せたスポーツマンに勝てる!
デブだって、トークを工夫すればモテる!
ただデブというだけで虐げられている全国のデブに、
希望の光を示す為に、我々は活動しているのだ!!覚悟が違うのだよ!!」



210 :名無しになりきれ:2011/09/08(木) 12:54:32.89 0
豚吉(デ部員A)「そのためには次の騎馬戦で常勝生徒会を地に這い蹲らせる必要があるデブ…」
脂美(デ部員B)「その通りラード…。他にも、ちょっと顔が良いからってチヤホヤされてる女子剣道部も血祭りに上げるべきラードォォ…」

農業課生徒「あの…俺らが大切に育ててきた子達が潰れちゃいますんで…その…」
体育祭委員「そうだよね…ボクの方から委員長に体重制限を設けるように伝えておくから…その…安心して、ね?」

デ部ッ!勝負の場に立つことなくッ!!敗退ッッッ〜〜ッ!!!

211 :楯原まぎあ ◆MyZeP7HDKc :2011/09/09(金) 10:48:14.93 O
【遅くなってしまってすみません!思うようにレスが書き出せなくって…
 今日中になんとか出来なかった場合は残念ですが棄権することにします…
 なのでもう少しだけ時間を下さい!ペースを乱してしまって本当に申し訳ないです】

212 :ぶちょー:2011/09/09(金) 18:36:07.48 0
>>211
別に順番変わっても特に問題はない投げ方したつもりだし、どうしても書けないなら
「飛ばしてくれ」と言ってくれりゃいいさ!
順番変わって、俺の前にでもなれば、それでいいかな!

棄権するってのがどういう意味なのか(この依頼限定なのか、スレ自体なのか)わからないけど、
自分の書ける範囲で、参加してくれればいいから!
みんなの行動全部にアクションとらなくても、ある程度被せつつ自分の行動だけ書くのもありだと思うし!
とにかく「書けないからスレ参加やめます」とか、ちょっと悲しいからさ!
リアル事情とかならともかく!俺泣いちゃうぞ!

213 : ◆89ggxEkiHQ :2011/09/10(土) 11:27:29.86 O
え〜と
先に投下しちゃって大丈夫な感じですかね?
とりあえず19時位まで待ちますね!

214 :ぶちょー:2011/09/10(土) 12:09:12.06 0
>>213
せやな!頼んだ!

215 :梅村遊李 ◆89ggxEkiHQ :2011/09/10(土) 19:20:06.86 O
>>197「おー。やるじゃねぇかィ瓶底眼鏡。行けー。他の眼鏡とは違う所見せたれィー。」
梅村からバトンを受け取った時点では下から3番目だったが、小羽は他の走者をごぼう抜きにするとあっという間に2位に帰り咲いてしまう。
最後の最後というところで追い抜く事は出来なかったが差は数m程度。
これなら優勝も十分狙える。
「次の走者は…あ……駄目だ。終わった。」
>>200小羽の次の走者は九條だったのを確認すると梅村は諦めたように肩を落とす。
梅村の頭の中では「九條=変態無能営業」という失礼な方程式が確立されており、運動能力的な面では全く期待されていない。
だが、九條は良い意味で梅村の予想を大きく裏切る事となる。
「おいおい…ピッタリ2位確保してやがるじゃねぇか…。
 ってかアレ引きずられてね?完全に引きずられてね?」
どっからどう見ても1位の肥満体に引きずられてるようにしか見えないが、神谷部長の『スリップストリーム』発言により皆騙されているのだ。
なんにせよこれはN2DM部にとって好都合な展開であり、理由はどうであれ現在2位である事に変わりは無い。
>>203アンカーである部長にバトンが渡る。
九條と同じく身体能力的な面では全く期待していないが、梅村は別の面で部長に期待していた。
それは―――
「行けー旦那ー。主人公補正だー主人公補正見せたれー。」
そう、梅村は部長の「主人公補正」という超抽象的な物に期待していたのだった。
しかし部長は九條とは逆に悪い意味で梅村の期待を裏切る事となる。
1位と2位の差はどんどん広がり、2位と3位の差はどんどん縮まってしまう。
そして遂に…
「あっちゃ〜…転けた……。」
最終コーナー、ゴール目前で部長は見事に転倒…梅村の期待した主人公補正は微塵も披露される事なくリレーはリタイアという形で幕を閉じた。

216 :梅村遊李 ◆89ggxEkiHQ :2011/09/10(土) 19:26:38.51 O
>>204>「すまん!」
>「俺が無理矢理参加させといて俺のせいでリタイアしてちゃ様ねぇよな。
 どうやら向こう二週間程度は松葉杖だとさ。…ま、俺で良かったよ」
出張保健棟、クラスに戻ってメロンクリームソーダを食べようと思っていた所を部長に引き止められた。
>>209「部費倍増がガセだった以上順位なんざどうだって問題じゃありやせん。
 問題はあのデ部共が1位で、うざったい演説をかましてた事でさァ。」
ハーゲン○ッツを食しながらデ部への怒りを露わにする。
>「こんな時だが、依頼だ!」
>「最終種目、騎馬戦。人数足りなくなったから参加してくれ、だとよ」
そんな梅村を横目に部長は新たな依頼を発表する…それは騎馬戦に参加し、引っ掻き回して欲しいという依頼だった。
引っ掻き回すだけなら梅村の十八番である。
>>205-208依頼と騎馬戦のルールを聞いた梅村は不機嫌な表情から一転、ニヤリと笑みを見せる。
騎馬戦のルールは頭の風船を割られれば死亡扱いというものであり、顔面への攻撃はルール違反という事は書かれていない。
仮にルール違反だとしても事故を装えば1発退場は有り得ないだろう。
ならば梅村の答えは一つ。
(生徒会とデ部共の顔面を痛めつけるチャンスっ!)
頭の紙風船を割る前に紙刀で顔面を散々痛めつけるつもりなのだ。
生徒会の連中と梅村は非常に仲が悪い。
風紀委員No.2の身でありながら学園の風紀を乱しまくっていると言っても過言ではない梅村は生徒会にとって目の敵でしかない。
梅村は梅村で問題を起こす度に自分ではなく風紀委員長に責任を負わせようとする生徒会が大嫌いだった。
風紀委員長に止められ生徒会には手を出さないでいるが、顔を合わせる度にいつか痛めつけてやろうと考えていた。
今回はその絶好のチャンスである。

217 :梅村遊李 ◆89ggxEkiHQ :2011/09/10(土) 19:28:38.23 O
>>210デ部を潰してから生徒会を潰すか…それとも逆か……そんな事を考えているうちにデ部の不参加が表明される。
そうとなれば狙いは生徒会チームのみ。
考えてみればデ部を叩くチャンスはいくらでもあるが生徒会を叩くチャンスは滅多に無いのだ。
>「騎馬戦ぐらい、普通にやればいいのにな。…ともかく、頼むわ。
 二つ返事でOKしちまったから、出来るだけ参加してやってほしい。
 埋め合わせは、するからさ!」
「任せて下せェ。生徒会チームなんざボコボコの血祭りにしてやらァ。
 問題は2人分の欠員をどうするかって所でさァ。」
部長は先のレースで足を挫いてしまい、まぎあは体調不良を訴え騎馬戦への出場を辞退した。
「どうしたんですかィ?まさか女の子のh…」
という最低な発言をしようとした瞬間部長から後頭部を強打されたのは言うまでも無い。
「稲坂さんが3人でも良いってんなら俺と瓶底眼鏡と変態営業でも構いやせんが、5人じゃなきゃならねぇってんなら助っ人が必要ですぜィ。」

218 :小羽 鰐 ◆DeLd.MSvGY :2011/09/10(土) 22:24:00.90 0
>>200>>203

>「救急箱も用意しといてよ。――こっから先は、泥仕合を覚悟する」
>『なるほど……空気力学を利用した戦術的走法というわけですね。確かに引っ張られているというか、引き摺られている感じです』

手渡したバトンを受け取り男らしい台詞を言い放ち駆け出した九條。
その九條は今、摩り下ろされる大根の如く地面を「疾走」していた。
どの様な理屈かは判らないが、まるで前方の肥満体に、文字通り引き摺られるようにピタリと追走する九條。
小羽はそんな姿を見てスポーツドリンクを用意していた手を止め、嘆息して救急箱を取り出す。

>「暫定二位……頼みますよ、部長!」
>「部長!――ファイットぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

言葉と共に、いよいよバトンがアンカーである部長に託された。

>「いっぱぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁつ!!!!!!」

「おつかれ様っす九條さん。随分と個性的な走りでしたっすね。
 ……とりあえず、無茶が過ぎると、いつか大きい怪我するっすよ。
 だから、今後は気をつけてくださいっす」

雄雄しく叫び疾駆する部長。
そんな部長の雄姿を気にしていない様子で、小羽は、クールダウンしている九條へと近づくと、
その大き目の擦り傷に薬箱から取り出した消毒用エタノールをドバドバと無表情にぶちまける。
そして、意外にも丁寧に傷口に包帯を巻き、それを終えた後、ぽんぽんと包帯を軽く叩いて
再びスポーツドリンクの準備に取り掛かる。
そして
ったのだが

>「…あれっ?」

背後で響いた、拍子抜けする様な声。そして盛大な転倒音。
それを耳にした小羽は一瞬ビクリとしその動きを止めた。
そうして振り返り、状況を認識した瞬間その足は走り出していた。

「誰か!急いで保険委員を呼ぶっす!!
 部長、足の感覚はあるっすか!?触れた場所に痛みは感じるっすか!?」

駆け寄った部長の状況を確認すると、小羽には珍しく大声で周囲に指示を飛ばす。
集まってきた野次馬は、小羽の放つ威圧感に隷属させられるが如く保険委員を呼びに走る。
やがて担架が現れ、痛みに呻く部長を搬送していく――――

219 :小羽 鰐 ◆DeLd.MSvGY :2011/09/10(土) 22:24:43.12 0
>>204>>217

>「俺が無理矢理参加させといて俺のせいでリタイアしてちゃ様ねぇよな。
>どうやら向こう二週間程度は松葉杖だとさ。…ま、俺で良かったよ」

「全く……友達もいないのに、運動会で張り切ろうとするからっすよ。
 もし骨とかに異常があったら、どうするつもりだったっすか」

保険委員の設営した天幕の下、小羽は簡易ベッドに腰掛け、パンを齧る部長に毒づく。
その声は何時もの淡々とした物に比べ、少々棘がある様に感じるが気のせいだろう。

ちなみに、今回の小羽は部長に言われるまでもなく初めからこのテントに居座っている。
小羽の応援に来る肉親はいないのだから、それはある意味では当然と言えるだろう。
工事現場の職人が食べる様な色気の欠片も無い銀色の四角い弁当箱。その中身をついばみながら
小羽は部長の口からでる台詞を黙って聞く。

>「こんな時だが、依頼だ!」

そして、箸を口に入れたままため息を付く。
目の前の人物がそういう人物という事を改めて認識させられた様に。


依頼の内容とは、騎馬戦の数合わせだった。
それは突飛ではあるものの、比較的単純な内容だったのだが――――

「勝ち抜くだけなら今の戦力でもいいかもしれないっすけど、
 問題は……人数が、足りない事っすね」

そう、問題は代理をしようにも人数が足りない事だった。
部長がコネクションを使いかけあっても、どうしても一人足りない。
それは、楯原が体調を崩してしまった為だ。
この時節には相応しくない夏の名残のような暑さの影響だろうか。
顔色を悪くした彼女は今、部長の横の簡易ベッドで寝込んでいる。
小羽は彼女に先ほど作った冷えたスポーツドリンクを手渡したが、騎馬戦の開始までに
体調が回復するかは五分五分といった所だろう。

「とりあえず、外を見て適当な人を探してみるっすか」

――――そう言って、小羽が天幕の外に出た瞬間。



突然だが、馬とは非情に臆病な生き物である。それは、草食動物といった被捕食者の性質故。
他者からの害意や危険の存在を敏感に察知する事により、彼らはかつて野生を生き延びてきたのだ。

「「「「ヒヒイイイイイイイン!!!!!!!」」」」

「ど、ど、どうしたけべお前達!!どーどー!落ち着くべよー!?」

天幕の外には、騎馬戦に用いられる複数のポニー達が繋がれていた。
そしてそのポニー達は、小羽の姿を目視した瞬間、肉食動物にでも遭遇したかの如く一斉に激しく暴れだしたのだ。
栗色のおさげ髪の農業課の女生徒が必死になだめなければ、暴走して方々に走り去ってしまっていた事だろう。
落ち着いている馬といえば、ポニーであるにも関わらずサラブレッド並の体格を持ち、
王者の風格すら漂わせている黒毛のポニーが一頭いるくらいであった。
小羽の額に汗が一筋流れる。この学園の騎馬戦で求められるのは、上手な馬の扱い方。
果たしてこの草食動物に本能的な恐怖を早期させる少女に、それが叶うのだろうか……。

とりあえず、眼前の農業課の生徒を勧誘できないかと脳内で思考を巡らせる事で
そんな現実を見なかった事にするのであった。

220 :名無しになりきれ:2011/09/10(土) 23:51:26.89 0
I AM GREAT NINZYA

221 :名無しになりきれ:2011/09/11(日) 00:34:30.49 0
帰宅部だったんだが、なんとなくバスケやってる奴がかっこいいと思って
喪友達と二人で某スポーツ店にオリジナルのジャージを特注した。
背中には架空の高校の名前、腕には自分の名前がはいってるやつ。

それを着て県予選の会場に乗り込み、わざと目立つ通路で観戦してた。
(すでに全国出場を決めて、他県の代表を視察に来たという設定)
壁によりかかりながら、人が近くを通る時を見計らって

俺「なかなか面白いチームだな・・・」
友「ああ・・特にあの7番」
俺「お前と同じポジションだな。どうだ?止められそうか?」
友「さあな・・・・」
俺「おいおい・・・エースがそんな弱気でどうすんだよ」

こんな感じのやりとりを繰り返した。
たぶんカッコよかったと思う。

222 :九條十兵衛 ◆mJkMShtvmg :2011/09/11(日) 06:29:15.50 0
>「おつかれ様っす九條さん。随分と個性的な走りでしたっすね。

グラウンドに五体投地の僕に小羽ちゃんが寄ってきて、要請の通り救急箱を開いてくれる。
エタノールの瓶を取り出して……ってぎゃあああ! 荒い! 荒いよ消毒の仕方が!
そんな戦国武将みたいな豪快なかけ方すんなよなあ! 僕の擦り傷は広範に渡ってるから、一番効率いいやり方なんだろうけど。

>「……とりあえず、無茶が過ぎると、いつか大きい怪我するっすよ。

そして包帯の巻き方は丁寧だった。しかも速くて正確、野戦病院みたいな巻き方だけど、固定も完璧でそつがない。
あっという間にミイラが完成。なんだか手馴れてるなあ小羽ちゃん。ますますこの娘の過去がわかんないぞ。

「万全だよ、ありがとう。あとは部長の健闘を祈――」

疾走中に部長に目を遣った途端、積み上げたジェンガを崩したときみたいな『やっちまった感』が僕を襲った。
部長がコケた。それも足を深刻なグネり方をして、モーターレースのクラッシュ事故みたいにグラウンドへ叩きつけられた。

「うわわわわ、大変だ……!今のはヤバかったよ、小羽ちゃん!」

僕が声をかけるより速く小羽ちゃんはスタートダッシュしていた。
まるで狩りをする肉食獣みたいに一瞬でトップスピード、そして倒れる部長へまっしぐら。

> 部長、足の感覚はあるっすか!?触れた場所に痛みは感じるっすか!?」

小羽ちゃんがあそこまで取り乱すなんて、よっぽどまずい状態なのか。
僕も鈍足ながら駆け寄って、だけどもそのままどうすることもできず、まんじりと保健委員を待った。

――――――――

まあ当然だけど、僕らは走者棄権でリタイアとなった。
部費倍増の話もガセだったらしいから完走できなかったこと自体は気にしてないんだけどさ。

>「俺が無理矢理参加させといて俺のせいでリタイアしてちゃ様ねぇよな。 
 どうやら向こう二週間程度は松葉杖だとさ。…ま、俺で良かったよ」

「なに弱気になってんですか、命があっただけ儲けものですよ」

部長は重度の捻挫ということで、もう殆どの競技を棄権する羽目になってしまった。
松葉杖ってだけでも十分大事なのだけど、当人はあっけらかんとしてるというか。

> もし骨とかに異常があったら、どうするつもりだったっすか」

どっちかっつうと小羽ちゃんのが打撃だったっぽい。さっきから部長の傍を離れようとしないもん。
なんていうか、僕らに対する小羽ちゃんと、部長に対する小羽ちゃんではなんか違うよね、空気的なものが。
まるで親猫に寄り添う子猫みたいだ。あれ、なにこの脇役みたいな考え方。日に当たりすぎたかな。

>「こんな時だが、依頼だ!」

ホントにこんな時だよ!足吊りながら何言い出すのこの人!
でも同時に、こんな時でも変わらないなあ部長は、とちょっとだけ安心する。
リレーでコケてからというもの、やっぱりなんだかしおらしかったからね、部長。やっぱこのノリでなくちゃ。

>「五人一組らしいけど、俺こんなんなっちまったしな…
 補充出来りゃいいけど、最悪四人でも参加出来るようには稲坂に話つけとくわ。しっかし、騎馬戦ねぇ…」

この学園の騎馬戦はシャバの運動会でやるような肩車合戦とは違う。
乗るのは馬。ガチの馬だ。農業科の育てた学園ブランドのポニーを駆り、敵の大将首(紙製)を取り合う本格的な競技だ。
さすが体育祭のトリを飾るだけあって手が込んでるというか、ぶっちゃけこれ目当てで参加するグループも多い。
それだけ複雑で、楽しみ甲斐のある種目というわけだ。

223 :九條十兵衛 ◆mJkMShtvmg :2011/09/11(日) 06:33:07.10 0
>「任せて下せェ。生徒会チームなんざボコボコの血祭りにしてやらァ。問題は2人分の欠員をどうするかって所でさァ。」

「うん問題はまだあるね!この危険人物をどうしてくれようか頑張って考えようね!」

さておき、欠員二人。そう、楯原ちゃんが腹痛を訴え、今は部長のとなりのベットで同じようにうんうん言ってるのだ。
体調が復帰する見込みは小羽ちゃんの見立てで五分五分。流石に3人で騎馬戦を戦うわけにもいくまい。

>「とりあえず、外を見て適当な人を探してみるっすか」
>「「「「ヒヒイイイイイイイン!!!!!!!」」」」

小羽ちゃんがテントから出た瞬間、農業科が待機させていたポニーたちが一斉にビビって逃げ出した!
まるでサバンナでライオンに出くわしたかのよう……っていうかどう見ても小羽ちゃんだよね!悪いけど僕も馬に同感だ!

「欠員二人……せめて一人だけでも補充したいところだよなあ。僕のコネも使えないし」

僕の知り合いは殆どがインドア系でこの手の体育祭には出席すらしていない。
KIKKOにでも声をかけようかと思ったけど、あの野郎空手部覗いた件で風紀委員に追われてるんだと。
さすがに梅村くんとかち合わせるわけにもいかなかったので僕は泣く泣く諦めた。
八方塞がりだ。腕っ節が強くて馬術にも長けていて合戦とかに強い関心を持った人間が都合よく現れない限り……

「――お困りのようだな、N2DM部の諸兄よ!」

パカラパカラと馬蹄の音を響かせて、天幕の向こうに馬と人のシルエット。
布越しにも漂う凛とした気配と、篭手の匂いをエイトフォーで無理やりごまかしたかのような部活臭。
ま、まさか――

「天知る地知る我知る人知る、刃の銀光は宵闇を切り裂く暁光!人の世に入りて悪と鬼とをざんば斬り。
 三度の飯より武士っぽいことが大好き、むしろ休日は岐阜県まで足を運んで往時の戦に想いを馳せる。剣道部長の神谷美紀だ!!」

「か、神谷部長!」

休日にそんなことやってたのか!とんだ歴女だぜ!
天幕の向こうから姿を表した神谷さんは、ポニー(たぶん自前)の腹を足で小突きながらこっちへパカパカ寄ってくる。
なぜ降りない。アホかこの人。

「私を呼んだな?いやさ呼ばれなくとも登場しよう。義に生きるが我が常道、大恩あるN2DM部の危機に駆けつけないで何が武士か!」

アホだこの人ーーっ!
いやあんた武士じゃねーし!ただの行き過ぎた歴女じゃん!ちょっと筋金入りすぎて剣道部長になっちゃったけど!

「でも、助かります。丁度人手が不足してたところで……ん? そういえば、剣道部からは出場しないんですか?」

この競技は所属関係なしの自由参加だから、当然部活から団体で出場したって良い。
剣道部なんか、いかにもこういうのが好きそうな連中揃っているし。明円ちゃんとか。副部長とか。

「それがな、明円も副部長も騎馬戦の前の二人三脚に出るのでな。あれらの息を合わせる一環で、私が勧めた」

それは……また当人たちにとっては苦境で苦行な提案だなあ。絶対引きずり合いながら走るよあの娘たち。
ともあれ、確かに前の種目やってる間に準備するんだから、明円ちゃんたちは参加できないわけだ。

「それに――小羽。お前とも"あれっきり"にはしたくなかったのでな」

神谷さんは、小羽ちゃんを見て、にやりと笑った。犬歯を見せる獰猛な笑いだ。
それは僕らみたいな非戦闘員にはけして見せない、武人同士にのみ通じる記号的な笑い。

「楯原部員の穴は私が埋めよう。"必要であれば"もう一人キャプテン枠を、私の人脈で工面するが――?」

神谷さんは部長に水を向けて。
小羽ちゃんにしたのと同じ種類の笑みをつくった。

224 :ぶちょー:2011/09/12(月) 00:45:22.80 0
朝書く!

225 :部長:2011/09/12(月) 14:58:22.19 0
>>217>>219>>223
>「稲坂さんが3人でも良いってんなら俺と瓶底眼鏡と変態営業でも構いやせんが、5人じゃなきゃならねぇってんなら助っ人が必要ですぜィ。」
>「勝ち抜くだけなら今の戦力でもいいかもしれないっすけど、
> 問題は……人数が、足りない事っすね」
>「欠員二人……せめて一人だけでも補充したいところだよなあ。僕のコネも使えないし」

と、いうことで現状の問題点は人数が足りないことに尽きるだろう。如何ともしがたい。
いくら稲坂が実行委員の総括とはいえ無理はどこまで通せるのだろうか。
俺の横のベッドで寝込むマギャーに目をやる。参加は無理そうなのはご覧の通りだ。
そんでもって寡数で参加出来るようになったとしてもだ、はたしてどこまでやれるもんか。
一応「引っ掻き回してほしい」と頼まれている以上、すぐに敗退ってのもよくない。
優勝しなくてもいいとはいえ、ある程度は活躍しねぇと依頼完遂には程遠いだろう。

「別にアテがないわけじゃねぇけど…」
考えてみる。確かに俺は友達は居ない(だが改めて言われるとわりと傷つく)が、
わりと顔は広いつもりである。無駄に色んなところに恩売ってきたし、頼み込めば
二つ返事で参加を了承してくれる奴もいると思う。戦力になる奴もいるさ。
だが、そういう奴って既に騎馬戦参加してる気がするんだよなぁ。トリイベントだし。
参加締め切りまでそんなに時間がある訳ではないはず。昼休みいっぱいが精々だろう。
誰かが自分から参加させてくれって言いに来ないかな、とかそんな都合のいい未来を、
クロ子が出てった瞬間に天幕の外から聞こえた鳴き声を聞きながらぼんやり考えていた。

>「――お困りのようだな、N2DM部の諸兄よ!」

そして、都合のいい未来は実際にあったのである。俺が思っていたよりすぐ近くに。

>「天知る地知る我知る人知る、刃の銀光は宵闇を切り裂く暁光!人の世に入りて悪と鬼とをざんば斬り。
> 三度の飯より武士っぽいことが大好き、むしろ休日は岐阜県まで足を運んで往時の戦に想いを馳せる。剣道部長の神谷美紀だ!!」
>「私を呼んだな?いやさ呼ばれなくとも登場しよう。義に生きるが我が常道、大恩あるN2DM部の危機に駆けつけないで何が武士か!」

いや、ま、有難いんだけどさ。ここ一応出張の保健棟だぜ?馬で入ってきたぞ馬で。
そこのマギャーみたいに体調崩した奴とかもいるんだし、静かにした方がいいだろ!
ほら見ろみんなめっちゃ見てるぞ。まぁミキティのこういうところは結構有名だけどさ。
「まぁ、感謝するよ。むしろ一番適任だ!ありがとよ、これで参加できる!」
ミキティぐらいの実力者なら他のとこからも助っ人要請がありそうなもんだが、
うちの部に参加してくれたことで我らの戦力は大幅アップ間違いないだろう。

>「楯原部員の穴は私が埋めよう。"必要であれば"もう一人キャプテン枠を、私の人脈で工面するが――?」

ミキティの人脈を考えてみる。やはり男子剣道部部長とかか?あの忍者男。
「I AM GREAT NINZYA!」とか叫んでるのを時々見る。全然忍んでねぇ。
どうしても腑に落ちなくて、一度どうして剣道部なのか聞いてみたことはあるが、
忍術部がないから1番近い部活に入ったらしい。それでどうして剣道なんだよ。
女子剣道部の部長が部長なら男子剣道部の部長も部長だなぁと俺は納得するのだ。
閑話休題、とりあえず。
「いや、必要ねぇだろ。もう5人、人数は揃ってんだから」

226 :部長:2011/09/12(月) 14:59:03.79 0
えっ?って感じのN2DM部部員に対して、俺は淡々と現状を述べる。
「俺はさっき言ったのは、『4人で参加出来るように話つけてみる』ってな。
 欠員はマギャーの分だろ。『俺は参加しない』なんて一言も言った覚えはないぜ?」
頭おかしいってか?はっはっは、褒め言葉だぜ。足はこんなことになったが、
上半身は健康なのである。踏ん張れないのはきついかもしれないが、なんとかなるだろ。
たぶん。たぶんな!

昼休みが終わる直前ぐらいだろうか。稲坂に話を通し、そろそろ解散、って時だ。
天幕の下に生徒会長が現れた。怪我人の把握か、さすが仕事熱心な生徒会長様だな。
そういえば「生徒会チームが優勝する」みたいなこと稲坂が言っていたな。
生徒会チームってことは当然あの完全無欠女も出場するのだろう。うぜぇ!
保健委員長から話を聞いているその姿を見ていたら、ふと目が合って、そして。
――笑った。
あいつは常日頃から厳格な生徒会長の仮面を被っている。笑顔なんか見せる筈がない。
それでも、俺は気づいたのだ!それは嘲笑だった!張り切りすぎて足を怪我した俺への!
長過ぎる金髪をはためかせてこの天幕を後にするその背中を忌々しげに睨みつけ、
「おい、お前ら!」
体育祭午後の部に向け、一旦解散しようとするN2DM部(とミキティ)を俺は呼び止めた。
「騎馬戦、――優勝するぞ!異論反論は認めん!」

柳生先輩に頼み込み、捻挫した右足首に痛み止め。局所麻酔をしこたま打ってもらう。
痛みはなくなった。ていうかほぼ右足の感覚がなくなった。これでいいさ、とりあえず。
次はポニー。出来るだけ足腰のしっかりしたのを選ぶ。選んだのは芦毛の頼りなさそうなの。
「よし、お前の名前は『世界最強丸』だ!」
勝手に名前付けないで欲しいべ、とか農業科の女子に涙ながらに言われたがガン無視。
下半身を、完全にポニーと固定する。これで足が使えなくても落馬の心配はない。
準備は、完了だ。

そういえばこの準備中、二人三脚が行われていたな。よく知る人物がぶっちぎってた。
明らかにあれおかしいよな。片足繋がれた横の人物と競争してたもん。2人してさ。
はたから見るとすごい息が合ってるように見えたよ。つーか実は仲良いんじゃねぇのか。

>>205-208
「では、作戦会議だ!」
もうすぐ時間である。作戦なんか、ぶっちゃけあったもんじゃねぇけどな。
「まず、俺がキャプテンである!これについては異論はないだろう!
 オフェンス2人、ディフェンス2人?…そんなのクソ食らえである!
 今こそ、全員オフェンスだ!攻撃こそ最大の防御であることを叩き込んでやれ!
 だが!俺がやばそうなら時折防御に回ってくれると嬉しいぞ!俺基本逃げてるから!」
戦闘開始は近い。絶対に優勝してやる。俺は何にもしねぇけどな!しゃーねぇだろ!
とにもかくにも、あのクソ女の鼻を明かしてやらんことには俺の腹の虫は治まらん。
そういえばバイソンも生徒会は嫌いだと聞く。きっと俺ぐらい燃えてくれるだろう。

「さて、開戦である。日陰者達の天下取りだ。
 GO AHEAD!(――進軍せよ!)」

227 :ぶちょー:2011/09/12(月) 15:09:20.36 0
とりあえず、この依頼終了までにマギャーの反応がなければ、
心苦しいが継続の意思なしと判断させてもらい、1人新規さん募集することになると思う!
ぎょーむれんらく!

228 :梅村遊李 ◆89ggxEkiHQ :2011/09/13(火) 17:50:53.18 O
>>223まぎあの穴埋め要員として神谷が参上。
神谷の実力は小羽との戦いで実証されているため、梅村が口を出す事は無い。
問題はもう一人の欠員をどうするべきかと考えていたが…
>>225->>226>「いや、必要ねぇだろ。もう5人、人数は揃ってんだから」
部長の口から思いもよらぬ言葉が発せられる。
>「俺はさっき言ったのは、『4人で参加出来るように話つけてみる』ってな。
 欠員はマギャーの分だろ。『俺は参加しない』なんて一言も言った覚えはないぜ?」
一瞬呆気に取られたような表情を見せ…ニヤリと笑う。
「流石旦那でさァ。頭がイカレてるぜィ。」
出場メンバーも決まり、戦闘準備をしようと解散するメンバーを部長が呼び止める。
>「騎馬戦、――優勝するぞ!異論反論は認めん!」
梅村は何も言わず手をヒラヒラと振って応える。
頭の中では既に生徒会を血祭りにする算段が出来上がっていた。

>「では、作戦会議だ!」
開戦数分前。
出場メンバーは部長の元に再び集まった。
>「まず、俺がキャプテンである!これについては異論はないだろう!
 オフェンス2人、ディフェンス2人?…そんなのクソ食らえである!
 今こそ、全員オフェンスだ!攻撃こそ最大の防御であることを叩き込んでやれ!
 だが!俺がやばそうなら時折防御に回ってくれると嬉しいぞ!俺基本逃げてるから!」
梅村の考えと部長の考えは完全に一致していた。
生徒会をぶちのめすのが目的で参加しているのだ、ディフェンスなんて最初から頭に無い。
>「さて、開戦である。日陰者達の天下取りだ。
 GO AHEAD!(――進軍せよ!)」
「レッツパーリィーだぜィー!
 テメーら!旦那の護衛は任せた!
 行けーサディスティックバイオレンス号!」
サディスティックバイオレンス号と名付けた馬に跨がり我先にと先人を切って行く。

229 :梅村遊李 ◆89ggxEkiHQ :2011/09/13(火) 17:51:54.55 O
目的は生徒会チームただ一つ。
「見ーつけたー。」
途中で襲いかかってきた輩を血祭りにしている途中、生徒会副会長を勤める高等部2年の城戸と遭遇する。
辺りに生徒会メンバーらしき人物は見当たらない。
どうやら梅村と同じく単騎で特攻してきたらしい。
>「おや、誰かと思えば風紀委員No.2(笑)の梅村君じゃないか。」
中指でメガネをクイっとしながら梅村を挑発。
梅村は生徒会の中でも最も城戸が嫌いだった。
「おやおや、誰かと思えば生徒会副会長(爆笑)の城戸さんじゃありやせんかィ。」
血祭りにしていた生徒を放り投げると城戸に紙刀を向ける。
>「爆笑ってなんだ爆笑って。まあ良い。梅村君、N2DM部に入ったってのは本当かい。」
「…本当ですが、何か?」
>「ふっ…ふはははっ…。そうか本当だったのか。
 いや、君がN2DM部などという無能な部長が勤める無能共の集まりの部に入ったというのが信じられなくてな。
 君も運動能力だけは有能だから信じられなかったのだよ。
 部活なんて面倒だと言っていた君がまさか運動部ではなくN2DM部に入るなんて…くっくっくっ…。」
梅村は表情を変える事なく城戸の言葉を聞いていたが、内心は怒りが爆発しそうな状況だった。
黙ったまま城戸目掛けて紙刀を振り下ろす。
それを受け止める城戸。
二つの紙刀がぶつかり合った時、鉄と鉄がぶつかり合う音がした。

230 :梅村遊李 ◆89ggxEkiHQ :2011/09/13(火) 17:54:41.82 O
「随分堅い紙だねぇ城戸さん。鉄でも仕込んでんじゃねぇかィ?」
>「これは気を紙刀に流す事によって硬化してるだけだ。
 君の方こそ鉄を仕込んでるんじゃないか?」
「いや、俺も城戸さんと同じく気を流して硬化してるだけでさァ。」
梅村は生徒会を血祭りに仕上げるために紙刀に鉄の棒を仕込んでいた。
城戸はそんな梅村の考えを先読みし、同じく鉄の棒を仕込んだのだった。
「城戸さん、アンタさっきからN2DM部を無能呼ばわりしてるが嶋田の件をもう忘れちまったのかィ?」
>「忘れるわけが無い。アレは僕達生徒会が長い時間をかけて…!?」
城戸は気付いた。
話をしながら攻防を繰り返すうちに梅村の攻撃が早く、重くなっていく事に。
「それなら旦那達を無能だなんて言えねぇ筈ですけどねェ。
 なァ…城戸さん。俺達風紀委員やアンタ達生徒会は何のために存在すんでしたっけ?」
>「愚問だな。生徒達の身を守り、学園の風紀を維持するためだ。」
「その通り。大正解でさァ。しかし嶋田の件を解決したのは誰だったでしょう?」
>「あんな滅茶苦茶な解決法があるかっ!
 被害にあった生徒達の証言や暴行現場の写真があったから良かったものの、下手をしたら僕達や君達が潰されていたのかもしれないんだぞ!」
「確かに嶋田相手にあんな滅茶苦茶で泥臭い方法は生徒会や風紀委員は選ばない。
 というより選べない。アンタの言う通り一歩間違えりゃ潰されかねない、非常にリスクの高い方法でィ。
 …けど、旦那はそれを迷う事なく実行した。
 悪事が行われてるのを黙って見過ごせねぇって言ってな。
 俺のように強いわけでもねぇ、かと言って頭がキレるわけでもねェ。
 馬鹿な行動としか思えねぇだろうねィ、アンタには。俺も馬鹿だと思ったさ。弱っちいクセに敵地に素っ裸で特攻しに行ったようなもんでさァ。
 けど、そんな馬鹿が先陣切ったから嶋田を捕まえられたんでィ。俺達が1歩踏み出すのを躊躇している横を旦那は全力疾走で駆け抜けて行きやがったのさ。
 笑えるだろィ?普段は風紀を守る、生徒を守るって偉そうにしてる俺達が何も出来ずにいる時に『無能』な旦那が先陣切って行きやがるなんてよ。
 いや〜大した無能っぷりでさァ。」
ついに梅村の紙刀が城戸の紙刀を弾き飛ばす。
が、梅村は自分の紙刀を手放した。

231 :梅村遊李 ◆89ggxEkiHQ :2011/09/13(火) 17:56:46.74 O
>「………何のつもりだ?さっさと風船を割れ。言っておくがそんな話を聞いたところで僕のN2DM部に対する評価は…」
「ああ、別にN2DM部を評価してくれなんて言わねぇさ。
 アンタ達生徒会にどう思われようが俺達は俺達の好きなようにやらせてもらうからねィ。
 ただ…風紀委員会も生徒会も変わらなくちゃならねェ。強くならねぇといけねぇんだ。
 力の話じゃねェ。嶋田のような強い権力を持った奴にも立ち向かえる勇気を持った組織にならなきゃならねぇ。
 その為には城戸さん、生徒会副会長のアンタの力が必要なんだ。」
そう言って左手を城戸に差し出す。
>「梅村君……君がそこまで学園の事を考えていたとは…。
 分かった僕達の力で…グハッ!!?」
城戸は梅村の握手に応えるため左手を差し出した。
がっしりと左手を掴んだ瞬間に梅村は嫌らしい笑みを浮かべ、自分の方へと思い切り引っ張ると同時に右ストレートを顔面へとお見舞いした。
「相変わらずの大馬鹿野郎だねィ城戸さん。ここは戦場だぜィ?敵の握手に素直に応じるなんて…」
>「き…貴っ様ー!!謀ったな!最初からこれが目てグファッ!!!」
「敵に気を許す城戸さんが馬鹿なんでさァ。ああ、安心して下せェ。頭の風船は割らないでおいてあげますんで。
 そのかわり騎馬戦に復帰出来ないようにさせていただきやす。」
ディフェンスとオフェンスは頭の紙風船を割られてもペナルティを受け復活出来るルールになっている。
ペナルティの内容は書かれていないが、いくら紙風船を割っても復活されては面倒だ。
そこで梅村は紙風船は割らず、ボコボコにして再起不能にするという手段を選んだのだ。
城戸の顔面が鮮血に染まり、そろそろ満足した梅村が左手を離そうとした、その時―――
「おっとっと…。皆さんお揃いで…」
いつの間にか残りの生徒会メンバーに囲まれていた。
生徒会チームが片付けたのか、他のチームは既にほとんど見当たらない。
4対1。
生徒会長の紙風船を割れば優勝したも同然。
しかし、隙が見当たらない。
梅村の予想を遥かに上回る威圧感を放っている。
「あっちゃ〜。こりゃちょっとマズい感じかねェ?」
梅村遊李、絶対絶命のピンチである。

232 :名無しになりきれ:2011/09/13(火) 21:17:03.28 0
「おやおや、城戸君ともあろう人が油断をしたね」

城戸をボコる梅村を取り囲む生徒会の四人。

彼らが持つのはいずれも騎馬戦のレギュレーションを逆手にとった合法改造紙刀だ。
急遽参戦することになったN2DM部には伝えられてなかったが、規則を流し読めばそこにはこう書いてある。
『紙風船を破壊できるのは紙製の武器のみ』
この騎馬戦では『紙製』であれば原則どんな武器も使って良いのだ。
紙刀は支給される基本武器に過ぎなかったのである!

庶務は他の生徒から鹵獲した紙刀を両手に二刀流。
会計は紙縒り糸を弦にし細い紙筒を矢にした紙弓を番え。
書記は紙製の長柄に打突部位を接合した紙薙刀。

そして会長は――――

233 :名無しになりきれ:2011/09/13(火) 22:21:35.87 0
紙ドリルだッ!!(ギュリリリリリー)

234 :小羽 鰐 ◆DeLd.MSvGY :2011/09/14(水) 01:47:18.96 0
ポニーを手懐ける方法を思案していた小羽であったが、
そんな彼女の背後から、突如として馬蹄の音が響いた。
そうして差し込んだ大きな影に小羽は振り向き、瓶底眼鏡の下から視線を向ける。

>「天知る地知る我知る人知る、刃の銀光は宵闇を切り裂く暁光!人の世に入りて悪と鬼とをざんば斬り。
>三度の飯より武士っぽいことが大好き、むしろ休日は岐阜県まで足を運んで往時の戦に想いを馳せる。剣道部長の神谷美紀だ!!」

大仰な名乗りと共に其処に泰然自若と其処に君臨するのは、女子剣道部部長である神谷であった。
神谷は、先の借りを返すといったある意味ではとても彼女らしい理由を以って、
N2DM部への協力を申し出てきたのである。最も――

「それに――小羽。お前とも"あれっきり"にはしたくなかったのでな」

小羽に向けられる戦意滾るその視線を見れば、ただ恩義だけが理由とは言い切れないだろう。

「……いや、私はあれっきりでいいっす。あれから暫く、手のひらに痣が出来て痛かったっすし」

しかしながら、視線をぶつけられた小羽本人は、気だるげな様子で
その闘志を終始のらりくらりと流していた。


(まあでも、これで四人は揃ったっすから、あと一人くらいはなんとか……)

神谷の闘志を受け流しつつそんな事を考えていた小羽だったが、
その平静はしかし、この部活随一の行動力を持つ男によって吹き飛ばされる事となった

>「いや、必要ねぇだろ。もう5人、人数は揃ってんだから」

「……ひょっとして部長、足し算が出来ないっすか?流石の私もそれは引くっすよ」

嫌な予感を感じつつも何時も通りの若干辛辣な台詞を吐く小羽であったが、
そんな言葉は耳に入っていないとでいうかの様に部長は続ける

>「俺はさっき言ったのは、『4人で参加出来るように話つけてみる』ってな。
>欠員はマギャーの分だろ。『俺は参加しない』なんて一言も言った覚えはないぜ?」

「……はい?」

>「おい、お前ら!」「騎馬戦、――優勝するぞ!異論反論は認めん!」
>「さて、開戦である。日陰者達の天下取りだ。 GO AHEAD!(――進軍せよ!)」

部長の宣言した欠員補充の方法は、「部長自身」の参戦。
あまりに無謀なそのアイディアに小羽は呆けていたが、その間にも話は進行していき、
結果、彼女が突っ込みを入れた時には部長の参戦は既に決定事項となり、
流れとしても、もはや覆りそうのない域に至っていた。

小羽は前に伸ばしかけた手を下ろすと、小さくため息を付く。

背後のグラウンドでは、なにやら喧嘩めいた会話をしつつ、
二人三脚をした二人の女子が猛スピードでトップを独走していた……。

235 :小羽 鰐 ◆DeLd.MSvGY :2011/09/14(水) 01:49:59.44 0
――――砂煙が舞い、怒号と馬の嘶きが行き交う。
各々が敵の首を狙いただ己が功を求める此処は戦場。

そんな興奮状態の中であるにも関わらず、戦場の一角には空白が出来ていた。

「……いやいや、流石にこれは行き過ぎっす」

空白の中心にいるのは一人の少女。瓶底眼鏡でお馴染みのN2DM部書記、小羽鰐である。
彼女は今、漆黒のポニーと呼ぶにはあまりに大きな馬にまたがっていた。
馬の名は「マキケード」。農業科の生徒には黒王と呼ばれ、親しまれ畏怖されている馬である。
小羽をその背に乗せてくれるポニーが唯一マキケードだけであり、
また、マキケードもその背を許したのが小羽だけであったという
お前は武将かと言いたくなる様な出来事があった事から、この様な采配となったらしい。
おかげで、ただでさえ小羽に並のポニーは近づこうとしないのに、その威圧感が倍増。
極めつけは、最初の方で小羽が部長の方へ向かっていこうとした数人の不良生徒を瞬殺してしまった事から、
今や、誰一人彼女に近づこうとしなくなっていた。

「はっはっは!いい馬(とも)に出会ったな小羽。だが、馬上戦の勝敗を決めるのは、馬ではなく騎手の腕だ。
 見ていろ、戦国乱世を生き抜いた、武将の如きこの剣を!行くぞ我が友よ!!」

「……いやいや。何か勝負挑まれてるっぽいっすけど、
 私、そんなにやる気無いっすからね。早く帰って寝転がりながら羊羹食べたいっすから」

訂正。近づくものはいるのだが、それは基本的には神谷であった。
彼女はまさしく武人を体言したかの様に馬を自在に繰ると、向かい来る者を次々になぎ倒し、
向かってこない者も次々に殲滅していっている。そうして度々小羽に挑戦的な言葉を残すのだが
小羽の方はそもそもこのイベントにさしてやる気が無いらしく、マキケードに身体を任せ、ダレている。
部長の指示した全員オフェンスの命令に従う様な動きはせず、
どちらかと言えば、先の不良瞬殺など、ディフェンス敵な行動に徹している。

――――と。

「……ん。あれ、梅村さんっすかね」

見れば、視線の先には梅村がいる。そしてその周囲には複数の人影

>「おやおや、城戸君ともあろう人が油断をしたね」

それは、現職の生徒会役員の面々であった。彼らは各々に武器を持ち、梅村を取り囲んでいる。
現実の戦でも遊戯の戦でも、基本的に数というものは武器である。
あれだけの人数、しかも手練に囲まれては、梅村といえども分が悪いだろう。
しかし、通常ならここから援護に向かうべきではなく、ディフェンスを続けるべきなのだろう
みすみす死地に飛び込む行為は自殺行為に過ぎない――――だが

「――――貸し一つっすよ。紙パンチ」

小羽は即座にマキケードを繰ると、生徒会役員達の近くへと走らせ、「紙を巻いた」拳を力任せに振った。
音を置き去りにするかの様なその拳が、生徒会の中でも一番若く小柄な会計の一人が持つ紙製の薙刀と衝突し、
そしてそのまま会計の少年を馬ごと大きく吹き飛ばす。少年は

「ふふふ、待っていましたこの時を。貴女の相手はこのぼkあれえええええっ!!?」

と、何やら小羽に因縁があるかの様な言葉を吐いていたが、それを言い終える事無く再起不能となった。

「……それじゃあ、後は自分でなんとかしてくださいっす。私はディフェンスに戻るっす」

疾風の様に現れた小羽は、再び疾風の様に去っていく。
結局、何故か小羽は完全なディフェンスは選ばなかったのだ。
ヒットアンドウェイ。攻めのリスクを削った戦法であったが、それでもリスクがある事に変わりは無い。

236 :小羽 鰐 ◆DeLd.MSvGY :2011/09/14(水) 01:51:39.68 0
……だが、今回の小羽のこの行動の問題点は、其処ではなかった。
小羽がこの行動を取った事によって発生した一番の問題は


「        」


紙製のドリルを手で遊ばせる生徒会長が呟いた、たった一言。他の者達には聞こえなかったかもしれないが、
小羽の耳には確かに届いたその言葉。聞いた瞬間、小羽の顔色が蒼白となり、その動きが嘘のように堅くなった。
……完璧超人とも揶揄される生徒会長。その強さの一つには、情報収集能力の高さと心理掌握能力もある。
勝利の為には手段を選ばない鋼鉄の仮面を被った生徒会長が、一体ナニを言い放ったのか。
詳細は判らないが……恐らく、それは小羽の過去に起因する何かだろう。

馬を繰り、生徒会長達から離れると、小羽は自身の心臓部の服を掴み、
激しく乱れた呼吸を整えようとする。

だが、そんな事で回復は難しいだろう。
結果、この騎馬戦において小羽の戦力は大きく減衰する事となった

237 :九條十兵衛 ◆mJkMShtvmg :2011/09/14(水) 16:36:49.78 0
>「いや、必要ねぇだろ。もう5人、人数は揃ってんだから」

神谷さんの提案に、部長はふてぶてしく笑いを返した。
うわ、やる気だこの人。重度の捻挫で歩くこともままならないだろうに、っていうか凄い痛いだろうに今。

「っふ、よかろう。その意気や気に入った!足が捻挫しようが骨が砕けようが実家が焼けようが戦い抜くが良い!」

いや実家焼けたら帰れよ!あ、骨が砕けても帰ったほうがいいと思うな!
まあ部長は実家焼けてもなければ骨も砕けちゃいないのでその心配はなさそうだけど。……焼けてないよね?

>「オフェンス2人、ディフェンス2人?…そんなのクソ食らえである!
 今こそ、全員オフェンスだ!攻撃こそ最大の防御であることを叩き込んでやれ!」

「それには僕も賛成ですね。下手に守りに入って交戦時間を長引かせれば、それだけ生徒会チームに調子づかせることになる」

なにせ相手は学園最強(笑)なのだ。
かち合った時点で負け確定、みんな生徒会チームとは戦いたくないだろう。
ってことは僕ら有象無象連中が潰し合ってる間、生徒会チームはそのおこぼれをちょいちょいと摘むだけで体力を温存できるのだ。
やるなら短期決戦。最初からクライマックス。一直線に生徒会チームとぶつかり合って、こちらが疲れてないうちに潰す!

>「さて、開戦である。日陰者達の天下取りだ。 GO AHEAD!(――進軍せよ!)」

「オーキードーキー!」

農業科から借り受けた『プライマリーイズグレイト号』に跨り、僕はその腹を踵で叩いた。
弾かれるように駿馬は出撃する!

――――――――

『さあ二人三脚もいよいよ最終走! 陸上、ソフト、サッカーと走りの本職が集い盛り上がってまいりました』

『あーっと剣道部コンビ、速い!踏み込み専門とは思えぬフットワークで後続をグングン引き離しております!』


「あはははは!副部長休んでてもいいですよ!? わたしが引き摺ってあげますから!!」

「……あまり右腕をくっつけないでもらえるかしら。邪気眼が伝染るわ」

「伝染りませんよ!!」

「どうかしら。最近剣道部で打ち込みの時に技名ボソっと呟くのが流行ってるみたいだけど、貴女発信でしょう」

「う、そ、そんなこと言ったら副部長だって脳味噌くっついたら石頭伝染るんじゃないですか!?」

「脳味噌くっつく状況なんてそうそうないと思うけど!」


『ぶっちぎりです!なにやらぎゃあぎゃあ叫んでいますがそれでも速い!』

『よくあれだけ全力疾走しながら喋れますねあの人達』

――――――――

238 :九條十兵衛 ◆mJkMShtvmg :2011/09/14(水) 16:39:12.28 0
うっぷ。
ヤバい、何がヤバイって馬の背中の上ってさ、他の乗り物とは比較にならないぐらい上下運動が凄いの。
ポニーは体高も低いから自転車みたいなノリでいけるかなと思ったのが甘かった。なんでみんな平気なんだ。

「うはははははは!どーだ小羽!この流れるような剣さばき!流星の如く敵将首を刈り取る一閃!」
「ほらほら小羽!お前がそこでふわふわしているうちに私は両の指では収まらぬ数を撃墜したとも!」
「こ、小羽!見ろ!馬術というのは馬の使役のみにあらず。心通わせ一体になって初めて騎上の者と言えるのだ!」

………………。

「あいつもしかして私のこと嫌いなのか!?」

神谷さん涙目。いや、あんだけまとわりついたらそりゃ鬱陶しがられますって。
しかし先月付き合いが始まったばかりの神谷さんにとっては、小羽ちゃんのテンションは未知の領域なのかもしれない。
基本的に剣道部って強い人間に尊敬が集まる場所だから、ああやって冷たくあしらわれることには慣れてないだろうし。
ここはN2DM部きっての常識人であるこの僕がカドの立たぬようにフォローしてあげねば。

「いやあ。いつも大概あんなんですよ。僕なんか三回に一回ぐらいしか返事してもらえないですし」

「き、貴様と一緒にするなぁぁぁああ!」

その怒り方は理不尽すぎるよ!?
神谷さんはぷりぷり怒って他の敵を殲滅しに行ってしまった。やれやれ、常識人はつらいぜ。

さて、戦況は悪くない。
さすがにこの騎馬戦はバトルロイヤル形式、いきなり生徒会チームとはかち当たれなかった。
スタート地点がバトルフィールドの端と端だったからね。ここまで綺麗に離されると、大会側の作為を疑うレベル。

ともあれとにかく僕達は、生徒会チームに一直線で至れるルートで進撃を繰り返した。
向かってくる者は梅村くんと神谷さんが切り捨て、前線を抜けてきた猛者を小羽ちゃんが仕留め、取りこぼしを僕が追う。
それで生徒会チームも同じように進撃してくるものだから、あっという間に僕達以外のチームは全滅しかかっていた。

>「……ん。あれ、梅村さんっすかね」

あ、そう言えばさっきから梅村くんの姿が見えない。見えないと思ったら、一人で生徒会の斥候とバトってやんの。
相手は血祭りに上げたみたいだけど(犯罪行為)、夢中になってる間に生徒会の他の連中に取り囲まれていた。

>「あっちゃ〜。こりゃちょっとマズい感じかねェ?」

「こ、この危険人物!サバンナの野生動物じゃないんだからもうちょっと頭使って動こうよホント!」

で、本家野生の獣女がヘルプに回る。
紙パンチとか言うただ手に紙巻いただけのパンチで生徒会の一人を――って、吹っ飛んだよ!?
相変わらず物理法則をないがしろにしてるなあ小羽ちゃんは!あんま神様に石投げてるとそのうちバチが当たるよ!
するとあら不思議。ホントにバチが当たったみたいで。

「――小羽ちゃん!」

突如胸を押さえて震えだす小羽ちゃん。どうしちゃったんだ一体。
目に見えて動きが悪くなり、猛獣のようだった覇気がしぼんだ風船のように失せていく。

>「おやおや、城戸君ともあろう人が油断をしたね」
敵は一人撃沈。こちらも一人が戦線離脱。互いのキルレートは同一なれど、喪失した戦力比はケタが違う。
N2DM部チームに占めていた小羽ちゃんの戦闘能力はそれだけ強大だったのだ。

「おのれよくも小羽を!お前の無念必ず晴らすぞ弔い合戦だ!!」

……なんか一人凄い張り切ってる剣道部長がいるけれど、部長を前線に出せない以上僕ら3人で手練4人を相手にしなきゃならない。
いや、僕は正直戦闘員として数えらんないから、戦力比は一気に1:2。恐ろしいオッズである。
城戸くんは戦闘不能だろうって?いやいや、顔面血だらけにしたぐらいでギブアップじゃ生徒会は名乗れまい。

239 :九條十兵衛 ◆mJkMShtvmg :2011/09/14(水) 16:41:44.75 0
「城戸くん、これを使え」

生徒会の庶務――二刀流の人が地面に落ちていた紙刀を拾い上げ、城戸くんに放る。
城戸くんは眼鏡もボロボロでレンズを失っているけれど、その眼に宿す闘志は僕の眼にもはっきり映る。

「やってくれたな梅村君……風紀委員というのは誰も彼も卑怯な手が好みらしいね……。
 そう、君の大好きなボスとやらも、どうせ汚い手を使って委員長に登り詰めたんだろう?お顔がよろしいものなぁ!」

思い出したぞ……生徒会副会長・城戸くん。
かつて男子剣道部に在籍し、そのあまりの理屈っぽさに顰蹙かって退部したという男。
彼の眼鏡は特殊な度が入っていて、かけてる時の方が見えづらいらしい。なんでも――裸眼だと『見えすぎる』んだとか。

「やれやれ、城戸くんにスイッチが入ってしまったか。こうなるとネチネチと鬱陶しいからあまり関わりたくないんだよな。
 しょうがない、なら俺はあそこでフラフラしてる銀髪の女の子を貰おうか」

二刀流の庶務が小羽ちゃんの方へ馬を走らせる。なんてことだ、あのままの小羽ちゃんじゃあきっとあの男は倒せない!
いや詳細は僕も知らないけどさ。誰さんなのあの二刀流。
よし、じゃあ僕はそこで伸びてる会計くんと戦おうかな!不戦勝かも知れないけどしょうがないよね!気絶してるし!

「ふむ、ならば私はあの大将首を狙おうではないか!いざ覚悟!」
「あっ神谷部長!そんな単騎で突っ込んだら危ないですよ!」
「うははははは!今の私は神谷部長ではない! 神谷武将と呼b――」

パァン!と快音一つ。横合いから跳んできた『矢』が神谷さんの紙ふうせんを射抜いた!
神谷さんは何故か吐血しながら馬の上にべちゃっと倒れる。

「ぶ、武将ーーーー!」
「ぐ……抜かったわっ……!わ、私の死を敵国に悟られぬよう、三年は影武者を立てて……」
「いいからさっさとペナルティ受けて帰ってきてもらえますかね」
「そうだな。ではちょっと行ってくる」

すっと真顔に戻った神谷さんは再び馬を駆りパカパカとペナルティエリアに駆けていった。
よ、よくも神谷さんを……許せない!
僕は矢の発射源をキっと睨む。紙弓に次矢を番えこちらを狙うのは――生徒会の書記を担う女子生徒。

「着弾確認。一騎撃墜。射撃結果良好。弾道データを補正して次の射出フェーズに移行します。――こんにちは生徒。何か質問は?」
「え、えっと……今日のスパッツの色は?」
「履いてません。何も」
「な、何ィ!? ――っとぉ!」

突如僕の跨る馬が嘶き、それにビビった僕は身を伏せて馬の首にしがみついた。
その頭上スレスレを紙矢が擦過して行ったのを知ったのは、後に巻き起こる風を感じたからだ。
見えなかった。あんな軽い素材でそんな初速が出せるなんて。紙で人が殺せるんじゃないのか!

「射撃失敗。今回の反省点は対象の騎馬にまで気を配らなかったことです。私は反省しました。反省フォルダに格納します。
 なお、この紙弓は全てレギュレーション規格のものです。軽さ故に初速は出ますが物理的な破壊力は微小です。ご安心を」

つまり、紙風船を破壊することだけに特化した装備ということらしい。
っていうか、今まで突っ込まずに我慢してたけど……メカってわけじゃないよね?あと心を読むな。

「回答します。私は生徒会書記・高等部ニ年の東別院です。趣味は特定商品の売上げ推移をAmazonで見守ることです」

「モノローグに回答するなよ!何一つ答えになってないし!」

「あなたはN2DM部所属の九條十兵衛氏と認識しました。この診断は生徒名簿で五回の確認をしているので間違いありません。
 生徒会長(マイマスター)の司令において同氏を敵性存在と判断します。――何か質問は?」

そして三発目の矢が番えられる――
一気に形成が逆転し、逆境に立たされた僕達。どうなるN2DM部!待て次回!!
……部長、元気かなあ。

240 :部長:2011/09/15(木) 03:32:41.82 0
俺は下半身が使えない。OK?無理やり固定してあるけど、ただそれだけだ。
微妙な重心移動とかできないから、乗馬にはどう考えても向いていないよな。
トコトコと、歩くぐらいしか出来そうにない。多少は走れるけど、どうにもなぁ。
それに、いざ「ちょっと身を乗り上げる」とかそういうことも出来ないから、
いざかち合ったときにリーチの差が凄い出るよな。ったく、全くもって不便だぜ。
ま、かち合うつもりなんか最初からないけどな!この俺を誰だと思っていやがる!

ともかく、戦闘開始から俺は基本自分の身を守ることだけに全てを割いている。
だって無理だもん!なんだよこの競技!恐ろし過ぎるだろ!最悪死人が出るぞ!
言っとくけどなぁ!俺一般人だからな!しかも怪我人!何も出来ないんだからな!
幸いにもクロ子が俺の方に向かって来た輩をぶちのめしたお陰で、大方の奴らは
こっちに向かって来なくなった。さすがDQN殺しには定評のあるクロ子だなぁ。

>>231
ふと気づくとバイソンが副会長をボコボコにしている。左手を掴み、殴って殴って。
あれ?さっきまでなんかわりと格好良さげなやりとりと戦いをしていたような。
ていうかやめたれよ!さっさと紙風船割ればいいがな!私怨混じってんぞ私怨!
ほーら囲まれてやんの。フルボッコに熱中し過ぎなんだよ。こいつ根っからのSだな。
助けてやりたいとは思うが俺には無理なんだよ!ひたすら逃げるので精一杯なんだから!

>>235
>「――――貸し一つっすよ。紙パンチ」

それにほら、こうやって俺より凄い奴が助けに入ってくれるんだからさ。
挑もうとした会計を軽くパンチで吹き飛ばす。一体何が起こってるんだよ。
ま、これで全く心配はいらねぇだろ。あまりあいつに戦わせたくはないんだが、仕方ねぇ。
クロ子なら簡単に生徒会チーム全員、は無理にしても半分ぐらいは再起不能に――

>「……それじゃあ、後は自分でなんとかしてくださいっす。私はディフェンスに戻るっす」

すぐに馬を返し、その場から離れてしまうクロ子。その様子がおかしいのは明らかだ。
顔色が悪い。突然体調を崩した、とかそんなんじゃない。これは、おそらく――。
「…あのクソ女」
そうだとは言い切れない。だがあいつが口を少しだけ動かしたのは見えた。両目2.0だぞ。
そして、その直後にクロ子の様子がおかしくなったのだ。因果関係は、論じるまでもない。

>>239
視界を移す。向こうにQJとミキティがいる。ミキティが走り出そうとした瞬間、
その頭の紙風船が割れるのが見えた。…マジか。戦力がだいぶ落ちたのは間違いない。
…まぁ、ちょっとだけ考えはあるんだけども。
「ミキティ!かくかくしかじか」
ペナルティエリアに向かうミキティが俺の横を通り過ぎる瞬間、「あること」を伝える。
風船割られたオフェンスorディフェンスは10分間待機、というペナルティが与えられる。
当然ミキティもそれに従うことになるが…10分も待ってたら勝負ついちまうだろ?
だから――。

書記とQJが会話してる。あの書記、東別院とか言ったよな。メカメカしくて覚えてる。
そんでもって東別院が矢を放っ――矢かよ!なんで矢なんか使ってんだよ!
ミキティもあれにやられたのか。何とかQJは避けたみたいだが、二発目はどうだ?
東別院が次の矢をつがえるのが見える。流れるように、躊躇いもなく放たれる矢。
その軌道、向かう的に狂いはない。ちぃ、流石に2人も抜けられるのはきつい――。
「ていやー!」
見覚えのある2人組が、その射線上に割って入り、片割れがその紙矢を体で受け止めた。
俺に見覚えがあるだけでQJに見覚えがあるかは知らねぇけど…つーか刺さってるぞ!
どうなってんだよ!結構グサっと刺さってんだけど!大丈夫なのかよ!おい!

241 :部長:2011/09/15(木) 03:34:44.79 0
「はいどーも!僕は放送部員の◯△(まるやま)!こっちは□×(かどなし)です!」
「ですです!」
「2人揃って放送部名物記号コンビです!」
「ですです!」
「嶋田先生の件ではお世話になりました!あの人の横暴に何も出来なかった僕ら!
 あなた達のお陰で、僕ら放送部は矜恃を取り戻せたんです!」
「ですです!」
「ということで手助けしましょう九條さん!あなたの放送、かっこよかったです!」
「ですです!」

俺は始まってから逃げまくっていた。だけどさ、ただ逃げていただけじゃないんだぜ?
とはいえ、俺は種を撒いただけだけどな。ただ、逃げながら、声をかけていた。
「生徒会の奴らに一矢報いたくないか?」――そうやってな。
本当に、この学園は、負けず嫌いが多いぜ。俺らに味方しちまうほどにな。
生徒会は最強!敵わない!…そんな風潮に嫌気が差してた奴が、わりといるんだよ。
しかし、どうでもいいがこいつら放送部だろ。体育祭の放送の仕事どうしたんだよ。

こいつら記号コンビだけではない。QJの近くに、まだ何とか残っていた奴らが総結集。
殆ど全滅してたんだけど、何チームかは残ってたんだぜ。全員集めりゃ、多人数だ。
人海戦術だとばかりに東別院に向かって行く。何人かは撃ち抜かれ、脱落しても。
弓なんてもんは所詮後衛の武器だ。ましてや多対一でどうにかなるもんかよ。
そんなこんなのうちに俺はQJにだいぶ近づいていた。背後から、声をかける。
「さぁ、QJ。お前が大将だ。あの書記、一思いに踏み潰せ」
ひとつ不安なのはあの書記の武器は本当に弓だけなのかってことなんだけど、
まぁさすがにそんなとこまで気は回らないから頑張ってくれQJ!あとは頼むわ!
そして俺は世界最強丸を走らせる。向かうはもちろん――クロ子のところへ!

>「やってくれたな梅村君……風紀委員というのは誰も彼も卑怯な手が好みらしいね……。
> そう、君の大好きなボスとやらも、どうせ汚い手を使って委員長に登り詰めたんだろう?お顔がよろしいものなぁ!」

クロ子のところに向かう途中、さっきバイソンにボコられてた副会長の声が聞こえた。
うわー、1番バイソンに言っちゃいけないこと言ったぞー。知ーらないんだー。
たぶんバイソンはブチ切れるだろうな。付き合いそんな長い訳じゃねぇけど、わかるさ。
まぁ副会長のその声も怒気に溢れていたし、さっきのフルボッコ相当頭に来たんだな。
さすがに副会長たるもの競技外まで恨みを持っていけねぇだろうから、ここでやるのか。
メガネ外してたし、あいつ本気モードだな。バイソンはどこまでやれるもんか。

「バイソン!」
走りながら俺は叫ぶ。この声量ならバイソンに届くだろう。耳を貸すかは知らんが。
「落ち着け、とかは言わん!キレていいぞ!むしろブチ切れろ!もっと、もっとだ!」
普通なら「相手の言葉に耳を貸すな!」とか、「冷静になれ!」とかなのかな?
だが生憎そんなこと言ったって冷静になるような奴じゃない。瞬間湯沸かし器みたいな奴だ。
いいぜ、もっとブチ切れればいい。切れて、我を忘れた人間の力、思い知らせてやれ。
「勝ったら――ハーゲンのマルチパックぐらいは奢ってやろう!」
いくらだっけか。あれミニパックが入ってるから普通に六個買うより安いよな?

242 :部長:2011/09/15(木) 03:35:50.57 0
そして、クロ子の近くに辿り着く。俯き、息も荒い。こんなクロ子、そうは見れない。
ふと気付くとこちらに向かってきている生徒会庶務、二刀流。クロ子狙いだろうか。
かっこいいヒーローなら、「クロ子の代わりに俺が相手だ!」とかになるのか?
言っとくが俺にそんな役目を期待するんじゃねぇぞ!そんなガラじゃねぇよ!
俺は、誰かに助けて貰わなきゃ何も出来ないんだ。ホントにな。悲しいぐらいに。

だからこそ――誰かを助けたいと。いつでも思っているんだ。

「何を言われたのかは知らねぇし、知ろうとも思わねぇ。どうせくだらねぇことだろ!
 そう!全部くだらねぇことなんだよ!俺にとっては!お前のこれまでなんか!
 俺が知っているお前は!N2DM部の創成メンバーで!書記の!クロ子だ!
 いつも俺に毒吐いてさぁ!俺が毎日どれだけ枕を濡らしていると思っている!
 ってそんなことはどうでもいい!ともかく!お前自身がどう思おうと!
 俺は勝手に!お前の現状を決めている!そして!それが俺にとってのお前の全てだ!
 だから!お前がN2DM部の一員である限り!それがずっと続いている限り!」
ちょっと疲れた。一呼吸。腕を伸ばしてクロ子の顔を掴み、強引にこちらを向かせて。

「――俺は、いつでもお前の味方でいるから!何も心配することはない!俺がついている!」
うわ気持ち悪っ。自分で言うのもなんだがキモいぞ俺。カッコいいこと言おうとして失敗。
「だから!願わくば俺の味方でもあって欲しいんだ!つまりは!何を言わんかというと!」
そして、俺はかなりこちらに肉薄してきた生徒会の庶務を指差す。
「…立ち直ってあれをどうにかしてくれ」
要約すると、こういうことです。

そして俺はその場から脱兎。逃げた先で生徒会会計がのびてたので頭の風船割っといた。
さて。副会長はバイソンが相手して、書記はQJと有象無象。さっき庶務とクロ子で…。
あれ?何かを忘れているような気がしなくもなくもない。会計潰して、えっと――。
「こんにちは、部長さん」
うん。まぁ正直忘れてた訳じゃないんだけどな。考えたくなかっただけだ。会長の存在を。
「生徒会チーム、あなたのチーム。それぞれ個別に戦っています。
 私たちキャプテン同士で決着付けるのも、乙なものだと思いませんか?」
相変わらず仮面被ったこいつの慇懃な態度には吐き気がする。感情の欠片もない。
そういえばいつからだろうか、俺と2人きりの時以外はこんな喋り方になったのは。
むしろこっちが素で俺との時だけ演技しているのか?そんな風にさえ思っちまうんだ。

「クロ子に、何を言ったんだ?」
「あら、貴方には関係ないでしょう。女同士の、秘密のお話もあるんですよ」
「…そうかよ」
「悠長にお話をしている時間はありませんね。神谷さんが戻ってきたら面倒です。
 終わらせてしまっても、よろしいですか?」
その腕の紙製のドリルが唸りをあげ…ていうか紙製のドリルってなんだよ!
どうやって動いてんだよ!おかしいだろ!つーかその姿とのギャップがデカ過ぎるわ!
ともかく、こちらに向かって来る。俺に抗う術はない。はい、お疲れ、ここで終わり。
――じゃ、ないんだぜ?
「稲坂ーーーーー!!!!」

243 :部長:2011/09/15(木) 03:36:20.08 0
『あーあー、ここで緊急の放送でございます。体育祭実行委員総括、稲坂言います。
 もう終盤に差し掛かり、白熱した騎馬戦ですが、ちょいと物言いが付きましてな。
 生徒会チームが強すぎる、ハンデを付けるべきではないか――って話ですわ。
 確かに至極尤もな意見だと思いまして…試合中でのルール変更、ほんま恐縮ですが、
 そういうことに実行委員内で決定しやしたんで、宜しゅうお願いしますわ。
 追加ルールは一点!生徒会チーム以外のチームのキャプテンは戦闘中一度だけ、
 風船が割られたメンバーを、ノーペナルティで、復活させられます!』

「ミキティーーーーー!!!!」
「応!!!!」
俺の呼びかけに答えるように、俺と会長の間に割って入り、そのドリルを受け止める。
「久しぶりだな生徒会長よ!貴殿とは、もう一度刀を交えてみたいと思っていたのだ!」
一瞬の鍔迫り合い。ノリノリだな。まぁ相手は刀じゃないけどな!ドリルだけどな!
俺相手だからと気を抜いていただろうクソ女は、体勢を立て直すため距離をとる。
「随分、卑怯な手を使うんですね」
「卑怯?なにがだ?ルール変更があっただけだろ?」

稲坂を口説き落とすのは骨が折れたが、結局あいつもエンターテイナーだったな。
俺があいつの名前を叫んだ瞬間、ルール変更の放送をしてくれるよう頼んどいた。
ほら、見てみろよ。盛り上がってるだろ?さっきまで負けムードだったのにな。
元々「騎馬戦を引っ掻き回せ」って依頼だ。最高な形で果たせたと。俺は思うぜ。
相変わらずあのクソ女は無表情だ。だがわかるさ、あいつだって少なからず焦った。
その仮面の下。驚きの色が浮かんだこと。俺には見えてるんだぜ?幼なじみだからな!

会長とミキティの一騎打ちが始まる。思わず見入ってしまう、息もつかせぬ攻防。
だが、少しずつミキティが押されてるのがわかる。ミキティが弱いとかじゃない。
あのクソ女が、規格外過ぎるんだ。見ろ、汗一つかいてねぇ。涼しい顔でいやがる。
「おい、お前らー!」
俺は声を張り上げる。俺が一番信頼している、仲間達に向けて!

「さっさと片付けて、俺を助けろ!」

244 :梅村遊李 ◆89ggxEkiHQ :2011/09/15(木) 20:59:18.48 O
>>232-243「おやおや、城戸君ともあろう人が油断をしたね」
梅村を囲んだ生徒会チームのメンバーはそれぞれ紙で作られた二刀、弓、薙刀、ドリルを装備していた。
何故生徒会長がドリルという武器を選んだのかは不明である。
「おたくらのNo.2は底抜けのマヌケですねィ。実力はあるかもしれねぇが、俺には絶好のカモでしたよ。」
挑発的な言葉を交えながら隙をついて退路を探すが…無駄だった。
生徒会長だけでも手に余るというのに他に3人も生徒会メンバーが居る時点で万事休すである。
しかしそんな梅村に救いの手が差し伸べられた。
>「――――貸し一つっすよ。紙パンチ」
>「ふふふ、待っていましたこの時を。貴女の相手はこのぼkあれえええええっ!!?」
ポニーと呼ぶには大き過ぎる黒い馬に乗って小羽が参上。
紙を巻いた拳を会計が持っていた薙刀と衝突させ、薙刀ごとその小柄な身を吹き飛ばした。
「ちっ…。ムカつくが助かったぜィ、瓶底眼鏡。」
>「……それじゃあ、後は自分でなんとかしてくださいっす。私はディフェンスに戻るっす」
梅村の疑問に応える事なく小羽は去って行った…。
状況は多少マシになったもののピンチという事に変わりは無い。
「助けに来たなら最後まで面倒見てけってんだよ……あの状態じゃ無理か。」
会計を吹き飛ばした時の覇気が無くなった小羽の背を見送り、何があったのかは分からないが戦力にならない事を察する。
生徒会長の仕業であろうということは予想出来るが、小羽が戦力から外れたのは相当な痛手だ。
>「おのれよくも小羽を!お前の無念必ず晴らすぞ弔い合戦だ!!」
小羽の異変に気付いた神谷が一人で盛り上がっている。
そうだ、まだこっちには神谷という強力な切り札が残っていた。
勝機は―――まだある。

245 :梅村遊李 ◆89ggxEkiHQ :2011/09/15(木) 21:01:30.52 O
>「城戸くん、これを使え」
生徒会庶務は落ちていた紙刀を城戸に放る。
紙刀を受け取った城戸はボロボロであるにも関わらず目は死んでいない。
むしろ闘志に満ち溢れている。>「やってくれたな梅村君……風紀委員というのは誰も彼も卑怯な手が好みらしいね……。
 そう、君の大好きなボスとやらも、どうせ汚い手を使って委員長に登り詰めたんだろう?お顔がよろしいものなぁ!」
「喧嘩に卑怯もクソもねぇんですぜ城戸さん。
 むしろ俺にとって卑怯だなんて褒め言葉でしかねぇ。
 けど城戸さん……ボスを侮辱すんのは許さ…」
>「バイソン!」
>「落ち着け、とかは言わん!キレていいぞ!むしろブチ切れろ!もっと、もっとだ!」
>「勝ったら――ハーゲンのマルチパックぐらいは奢ってやろう!」
ボスへの侮辱に梅村の怒りゲージが一瞬でMAXにまで上り詰めそうだった。
しかし梅村の耳に届いた部長の言葉で怒りゲージはMAXの直前で踏み止まる。
「旦那ァ!今の言葉忘れんで下さいよー!あ、あともし負けたら承知しやせんぜ。」
部長の方を振り向かずに言葉だけでそう応える。
「助かりやしたぜ…旦那…」
あのまま怒りゲージMAXで闘っていたら、今の城戸相手には瞬殺されていただろう。
部長は梅村の怒りを煽る為に言葉をかけたらしいが、それが逆に梅村に冷静さを取り戻す事になる。
キレた状態で勝てるのは自分より確実に格下の相手に限定される。
城戸の実力は梅村より上である可能性が高い。
心は熱く、頭は冷静でなければ城戸には勝てない。
「無抵抗な野郎をボコるのも気が引けてたところでィ。(ウソ)
 城戸さん、死んでも化けて出るのは勘弁して下さいねィ。」
他の生徒会メンバーがN2DM部のメンバーと対峙するのを横目で確認する。
梅村は新聞で作ったメリケンを拳にぐるぐる巻きにして馬から降りる。
「馬の上じゃ戦い難いだろィ?ここからは騎馬戦じゃねぇ、男同士のガチ喧嘩だ。」
>「面白い……受けて立とうじゃないか。」
城戸が馬から降りた瞬間に鋭いステップインからジャブを5、6発放つ。

246 :梅村遊李 ◆89ggxEkiHQ :2011/09/15(木) 21:03:38.06 O
新聞メリケンを装備している梅村の拳にはジャブとはいえ十分殺傷能力はあるが……当たらない。
ボクシングのジャブというのはあらゆる格闘技の中でも最速を誇ると言っても過言ではない。
ボクサーが相手のジャブを避けたりガードが出来るのは反射神経が良いというだけではないのだ。
相手の打ってくる際の癖やリズムを読んだり、経験則によって避けている事が多い。
無論目で見て避ける事も出来るが、それでもジャブを全て避けるというのはほぼ不可能…の筈。
>「ふっ……ふははははっ!素晴らしいジャブだ。
 ノーモーションでありながら当たれば致命傷であろう威力を備えている。
 だが…今の僕には当たらないよ。」
城戸は明らかに余裕をかましている。
その証拠としてジャブを放った梅村にカウンターを打ち込む機会が数回あったが、あえて打ち込まなかった。
「気に入らねぇなァ城戸さん。まさかアンタ程の人が打ち込む機会を逃す筈がねぇ。
 舐めてんのかィ?」
>「いや、悪いね。あまり早くケリをつけるのも面白くないかと思ったんだが…君がお望みなら速攻でケリをつけよう…!」
城戸は踏み込みと同時に紙刀を縦に振り下ろす。
バックステップでは避けきれないと判断した梅村はサイドに避けるが…
>「甘いっ!」
それを読んでいた城戸は紙刀を横に振るった。
「がはっ………!」
城戸の紙刀が梅村の脇腹にめり込む。
鉄の棒が入っている紙刀の威力は木刀と同等、もしくはそれ以上だ。
>「肋がイったか…。降参したまえ、君では会長どころか眼鏡を外した僕の足下にも及ばない事が分かっただろ?」

『剣道三倍段』という言葉がある。
適当に説明すると剣道は他の格闘技と違い武器をもっているため、それを倒す為には相手の三倍の力量が必要という意味だ。
今の梅村にはどう考えても城戸の三倍の力量は無い。
肋をやられた梅村がここから逆転するなど無理な話だ。
しかし梅村は痛めた脇腹を抑えながら笑みを浮かべる。
「確かにアンタは強ェ…だが、喧嘩ってのは腕っ節の強い奴が勝つってわけでもねぇのさ。」
懐に手を突っ込み、数枚の写真を取り出すと城戸に見せつける。
写真に写っていたのは下着姿の生徒会長だった。
「ん…なんだそれh…ブハァ!!」

247 :梅村遊李 ◆89ggxEkiHQ :2011/09/15(木) 21:05:19.74 O
写真を見た城戸が鼻血を噴き出し、上体が仰け反るのを梅村は見逃さなかった。
肋が痛むのを我慢し、城戸の懐へと潜り込む。
「コラってやつでさァ。欲しいなら後でくれてやりますよっ!」
そう言いながら渾身の右ボディフックをお見舞いする。
「メキメキッ」という感触が梅村の拳に伝わる。
>「ゲホッゲホッ…う……梅村君……君って…奴は…卑怯の塊か…ゴホッゲホッ……」
「喋んねぇ方が良いですぜ城戸さん。折れてはいなくても2、3本は間違いなくヒビが入ってる筈でィ。
 しっかしまあ、折る気で打ったんだが…なかなか頑丈だねィ。さて…」
脇腹を抑えながら倒れている城戸の腹部に右足を乗せ携帯を取り出す。
>「あ……悪魔か君はっ!ゲホッ!ゴホッゴホッ!」
「よし、バッチリ撮れた。これを新聞部にバラまかれたくなかったら生徒会長の写真の件は黙っておいて下せェ。
 まあ、生徒会副会長様が風紀委員No.2程度の俺に負けたって全校生徒に知られても良いってんなら話は別ですが…」
コラであろうが生徒会長の下着姿写真を所持している事が生徒会長にバレたら梅村もタダでは済まない。
もしかしたら風紀委員長にまで嫌われてしまう可能性もある。
それだけは何としても避けなければならないと思い、考えついた手段がこれだった。
>「ぐっ……覚えていろ…いつか…ゴホッ!……いつか必ず復讐してやる!」
「はいはい、せいぜい頑張って下せぇ。サディスティックバイオレンス号、行くぜィ。」
城戸のセリフを適当に聞き流し頭の紙風船を足で踏みつぶす。
馬の上から城戸を見下ろし不敵な笑みを見せつけ、部長の元へ向かった。
「ちっくしょうめ……結局痛み分けかよ…。」
城戸の前では余裕を見せていたが梅村も肋を相当痛めていた。

部長の元へと向かう途中に稲坂の放送が入り、生徒会チーム以外ノーペナルティで一度だけ復活出来る事を知る。
試合中にそんなルール変更がされるとは思いもよらなかったが、これはかなり好都合な展開だった。

>「おい、お前らー!」
>「さっさと片付けて、俺を助けろ!」
助けを求める部長の声が近い。
辺りを軽く見回すと…部長、神谷、生徒会長の姿が見えた。

248 :梅村遊李 ◆89ggxEkiHQ :2011/09/15(木) 21:07:16.32 O
神谷と生徒会長がとんでもないスピードで攻防を繰り広げているが、少しずつ神谷が押され始めている。
「どきなー神谷さんっ!」
神谷と生徒会長の間に馬に乗った梅村が猛スピードで割って入る。
生徒会長とすれ違い様に3、4発拳を繰り出す。
最初に放った不意打ち気味の1発だけ頬を掠めるものの、やはりかわされてしまった。
神谷の隣に並び、部長に向けて親指を立てる。
「風紀委員No.2兼N2DM部、梅村遊李参上でィ。旦那ァ…約束通りハーゲン貰いにきやしたぜィ。」
口調は軽快だが、梅村は苦笑いで汗をタラタラと流しながら脇腹を抑えている。
>「梅村君…まさか肋を…」
「大丈夫でさァ。折れちゃいねー筈…多分。
 とりあえず…他の奴らが来るまで俺達が生徒会長を抑えるしかないみたいですねィ。」
>「し、しかし…」
自分の頬をバシッと叩き気合いを入れ、脇腹を思いっきり殴る。
これが梅村流の気合いの入れ方なのだ。
「ぬぐぐぐっ……い、痛くねぇ…こんなもん……行くぜィ神谷さんっ!」
>「まったく…噂通りのやんちゃ坊主だっ!」
梅村と神谷が生徒会長に攻撃を仕掛ける。
二人の攻撃は初めてにしては息が合っている…
しかしやはり梅村の攻撃にはキレがなく、2対1でありながら生徒会長は焦るどころか余裕の表情で二人の攻撃を捌く。
「はぁ…はぁ……この化け物が…」
梅村の息も途切れ途切れになり、相当苦しそうだ。
このままでは5分と持たずに二人ともやられてしまうだろう。

249 :名無しになりきれ:2011/09/15(木) 21:35:20.43 0
http://kamome.2ch.net/test/read.cgi/nanmin/1316090050/

立てといたよ!

250 :小羽 鰐 ◆DeLd.MSvGY :2011/09/16(金) 22:02:48.28 0

>「――小羽ちゃん!」

かけられた九條の言葉も小羽には届かない。
汚泥の濁流にでも飲み込まれた様に小羽の思考は乱れている。

(……落ち着くっす。あれは過去っす。
 だから、私は、違う、私は、私が――――私のせいで)

何とか自己暗示をかけようと思うものの、その動機は収まらない。
脳裏にフラッシュバックする映像は、病院で眠り続ける一人の少女。
そして、無機質に向けられる数多の感情の無い瞳。瞳。瞳。瞳。

>「 いいんですか?『また』忘れられてしまいますよ? 」

「……っ!!」

たったそれだけ。それだけで、小羽は動けなくなってしまった。
生徒会長の言葉は、小羽の心を鎖の様に締め付け絡め取る。
そうして馬上で静止した小羽の前方に、一人の少年が立ちふさがる。
その両手に紙の二刀を持ち、表情から意思の強さが見える少年。
その体勢の隙の無さは、彼が只者ではない事を表している。

「よ。俺は生徒会庶務の……いや、自己紹介は止めとくか。
 弱ってる女の子を狙う様な俺に、名乗る権利なんて無いんだろうからな。
 N2DM部の小羽鰐さん。会長が何を言ったかは知らないけど、その恨みは俺が背負う。
 だから会長じゃなく――――俺を恨んで負けてくれ」

そうして、生徒会庶務は抵抗の様子すら見せない小羽に近付かんとし……しかし足を止めた。

それは、二人の間に割り込む影があったから。

眼前の少年の様に精悍な訳ではない。副会長の様に端整な訳でもない。
彼はただの少年だった。そして、学園に存在するちっぽけな部活の「部長」だった。

「……部長、すみませんっす。私はどうも無理みたいっすから、
 後は他の部員のサポートをしてくださいっす」

小羽は部長の背中を視界に入れた。しかしそれでも、その背中を見ても、
日頃の様に毒を吐く気力すら出ないらしい。何とかそんな言葉だけを呟くと――――部長が、吼えた

>「何を言われたのかは知らねぇし、知ろうとも思わねぇ。どうせくだらねぇことだろ!
>そう!全部くだらねぇことなんだよ!俺にとっては!お前のこれまでなんか!
>俺が知っているお前は!N2DM部の創成メンバーで!書記の!クロ子だ!
>いつも俺に毒吐いてさぁ!俺が毎日どれだけ枕を濡らしていると思っている!
>ってそんなことはどうでもいい!ともかく!お前自身がどう思おうと!
>俺は勝手に!お前の現状を決めている!そして!それが俺にとってのお前の全てだ!
>だから!お前がN2DM部の一員である限り!それがずっと続いている限り!」

「……」

唖然とする小羽。普段、情けない姿ばかりを見せている部長が吐く、熱い言葉。
泥臭くて、格好いい装飾なんて、何一つされていない、ただどこまでも、剥き出しの言葉。
そしてその言葉は、どんな美辞麗句よりも「心」に染み入る言葉で……

251 :小羽 鰐 ◆DeLd.MSvGY :2011/09/16(金) 22:03:28.96 0
>「――俺は、いつでもお前の味方でいるから!何も心配することはない!俺がついている!」
>「だから!願わくば俺の味方でもあって欲しいんだ!つまりは!何を言わんかというと!」

>「…立ち直ってあれをどうにかしてくれ」

「……はぁ」

「…………全く。全く全く全く。恥ずかしい言葉を言うっすね。
 恥ずかしい言葉過ぎて、笑いそうで……部長の顔を、まともに見られないじゃないっすか。
 全く、どうしてくれるっすか」

部長に強引に腕を引かれた小羽は、その言葉を全て聞き終えると、
瓶底眼鏡に隠されたその視線を下に向け、顔を伏せる。
お陰でどんな表情を浮かべているのか判別は出来ないが、
その身体と声が小刻みに震えている事から、何かを堪えているのは判る。
去り行く部長を視界の端で見送ってから――――小羽は前へと視線を向けた。

顔を上げた勢いで瓶底眼鏡が地面に落ちた為、今やその怜悧な瞳が露になっている。
そして、その瞳には先ほどまでの迷いや恐怖といった色は無い。

「……ありがとうっす。待っててくれるなんて、随分紳士っすね。」

「いいや、俺は紳士なんかじゃない。ただの生徒会庶務で、会長の部下さ。
 会長が時々話してる君の所の「部長」がどんな男か興味があったから、待ってただけだ。
 それ以外の意味は無い。だから――遠慮せずに攻撃して負けてくれ」

「やっぱりいい人っすね。出会ったのが前世だったら、惚れてたかもしれないっす。
 ―――まあ、私は負けないっすけどね」

「奇遇だな。俺もそう思った所だよ――――遠慮はしない。全力で行くぞ」

まるで鏡像の様に、小羽は静かに。庶務の少年は快活にそう言い合って――同時に駆けた。
馬を繰り、正面からぶつかり合う。

「さて……剣道三倍段。なら『八刀流』って最強だと思わないか?」

交差の直前、庶務の少年は懐に手を入れると、そこから6本の紙刀を取り出した。
それらを指の間に一本ずつ挟み、文字道理の八刀を以って小羽に切りかかる。
唸りを上げる全面攻撃の攻撃はそれぞれが並みの剣道部員の一撃以上の威力を有しており、
まさしくそれは必殺の八撃であった。その剣戟は容赦なく繰り出される。
対する小羽は、その拳に紙を巻き構え、馬の背に両足で立つと……前傾姿勢を取る。

―――そして交差の直後。

弾け飛んだのは庶務の紙風船であった


「……悪いっすね。『私を』待ってくれている人がいるみたいっすから。
 だから、今の私は無限の刀でも止められないっすよ」


小羽のジャージの端が、切り裂かれたかの様な跡を見せる。
しかし、その風船は割れていない。見れば、庶務の持つ鉄を中に入れた八刀の紙刀が、
その鉄ごと中ほどから折れ曲がっていた。まさしく、力ずくの勝利である。

「……ははっ。まさか、鉄をへし折るとは思わなかったぜ。完敗だ。すみません会長」

去り行く小羽の背を見送りつつ、庶務の少年はさっぱりとした様子で大の字になり、砂の上に寝転がる。

252 :小羽 鰐 ◆DeLd.MSvGY :2011/09/16(金) 22:04:16.01 0
>「はぁ…はぁ……この化け物が…」

梅村と神谷。二人の兵を相手にして尚、生徒会長の表情には余裕があった。
繰り出される剣戟を拳を、華麗に優雅にさばき続ける。
それはまさしく超人とでもいうべき技巧である。
2対1にも関わらず、押されているのはこちら側。このままでは、負ける。
周囲の観戦者達がそう思った、その時であった

生徒会長の背後からその紙風船を狙い放たれた、暗殺者の如き拳。
生徒会長は紙を巻いたその拳を、反射的に紙ドリルで受け止める。

「……ども、遅れたっす。N2DM部書記、小羽鰐。約束どおり、部長の味方をしに来たっすよ」

>「小羽、やはり来たか!流石は私の宿命の戦友だ!……というか、小羽、眼鏡取ったのか?」

「……いや、神谷さんと戦友になった覚えは無いっすけど。眼鏡は落としただけっす」

ニヤリと不敵に笑いそう言った神谷の言葉を、小羽は淡々とした声色で受け流す。
そして、神谷と梅村に対してわざと聞こえる様に声を掛ける。

「梅村さん。神谷さん。私はこれからこの生徒会長さんの背後を取り続けて、
 延々と攻撃し続けるっす。だから、正面からの攻撃は任せるっすよ」

それは、会長としてみてはかなり嫌な宣言だっただろう。
小羽程の身体能力の持ち主が、背後から攻撃を仕掛けてくる中、
神谷と梅村という実力者達を相手にしなければならないという事を示しているのだ。

……ちなみにこの背後からの攻撃において、小羽が正面から攻撃を仕掛けないのは、
今、小羽がそいの右腕を使う事が出来ないからだ。先ほどの庶務との先頭で、
小羽の右腕は大きなダメージを受け、とても攻撃に使う事など出来なくなっていたのである。


253 :九條十兵衛 ◆mJkMShtvmg :2011/09/18(日) 00:40:21.19 0
「キル・ゼム・オール(殲滅します)。データの補正は完璧です。私は己の二の轍を踏みません。ご清聴ありがとうございました。
 ――それでは、靖国かヴァルハラでお会いしましょう。ごきげんよう」

無感情に引かれた紙の鏃が僕の眉間より少し上を捉える。
動きを補足された。避けきれない。無慈悲の一撃は、狙い過たず僕の紙風船を穿――――

>「ていやー!」

不意に眼前が影で覆われた。紙矢と僕との軌道を隔て、その一閃を身に受けるのは、一人の生徒。
って刺さってるよ!物理的な殺傷力は微小じゃなかったのかよ!
まるでアンテナが生えたみたいに胸に突起物を立てた生徒――飛び込んだ二人組の片割れと、その相方が僕を振り返る。

>「はいどーも!僕は放送部員の◯△(まるやま)!こっちは□×(かどなし)です!」
>「ですです!」

「放送部員――ああ、第二依頼参照の!」

見覚えがあると思ったら、夏前に起こったあの事件。ヘキサゴンファミリーがブンシャカで深呼吸してからのヨッシャ事件。
部長が放送室をジャックしたときにコマの隅で右往左往してた放送部の二人組だ。

>「ということで手助けしましょう九條さん!あなたの放送、かっこよかったです!」
>「ですです!」

「助かった、けど……どうしてきみたちが?」

疑問に対する応えは、各地で上がった反撃の狼煙。
陸上部が。サッカー部が。法律研究会が。手芸部が。吹奏楽部が。その他あらゆるチームの残党がその轡を並べて吠える。
このバトルロイヤルにあっては敵同士の益荒男たちが、なのに刃を付和雷同に揃えている。

>「さぁ、QJ。お前が大将だ。あの書記、一思いに踏み潰せ」

質問に対する答えは、後ろから投げられた知ってる声。
そうして僕は理解した。この状況を創り上げたのが誰の手によるものなのか。
あるいは僕は知っていた。極限の逆境で神憑り的な煽動力を発揮する、とある男の存在を。

「――最ッ高のセッティングですよ、部長!!」

今や。僕の両翼には両の指や収まり切らない数の援軍がある。

――――――――

「踏み潰すと仰りましたか、あなたの上司。私は暴力的な表現は好みません。もっとファンシーに換言することを要請します」
「ふぁ、ふぁんしーと来たか……」

いきなりキャラ付けが変な方向にいってるなあ。まあでも、踏み潰すだろうが蹂躙するだろうがやることに変わりはない。
なにせこれだけの人数が僕の味方についたのだ。相手は一人。こっちは二桁。赤ん坊が采配をとったってそうそう負けやしないぜ。
グゲゲゲゲゲ……その涼しい顔で余裕ぶっこいてられるのも今のうちだぁ!

「ヒャア!我慢できねえやっちまいなお前ら!!」
「優位に立った途端もの凄い表情になりましたね九條さん……」
「ですです……」

僕の合図で、残党組は一斉に東別院さんに飛びかかった。
相手の武器は弓。射撃武器であり狙撃武器だ。近接武器に対する迎撃力に乏しく、また混戦にも弱い。
誰が敵かわからないバトルロイヤルという状況だからこそ効果的に扱えたが、大多数で囲んでいる今そのアドバンテージは皆無!
波状攻撃でフルボッコだ!文字通り蹂躙してやるぜ!

「――回答します。私に視えるのは、多勢に単騎で勝利するファンシーな結末だけです」

刹那。豪雨が降り注いだ。

254 :九條十兵衛 ◆mJkMShtvmg :2011/09/18(日) 00:41:15.66 0
ドドドドド!といくつもの轟音を引き連れて降ってきたのは紙色の雨。上空から垂直に降り注いだ紙矢が残党組の脳天を穿つ!
あまりの勢いに僕は目を開けていられなかった。視界が開けたとき、東別院さんに飛びかかった連中の紙風船は残らず割られていた。

「なん……だと……です」
「です……です」

僕の左右でバックアップに回っていた記号コンビが呆然と呟く。僕も同じ気持ちだった。
たった一瞬で。記号コンビを除く援軍が全て倒されてしまったのだ。
何が起こったかは大体見えた。跳びかかった連中の頭上、その『一つ一つに正確に紙矢が降り注いだ』――!

「回答します。"こんなこともあろうかと"直上に紙矢を先んじて多数垂直発射しておきました。それが自由落下してきただけのこと」

「……まさか。二桁の人間が有機的に動いてたんだぜ、その全部の機動を推測しなきゃそんな芸当、」

「推測しました。筋肉の収縮、目線の動き、攻勢の気配を総合すれば高精度での機動予測が可能です」

「――!!」

僕は言葉を失った。二の句が継げなかった。
どう考えても人間の芸当じゃない。だって最初に僕が東別院さんと会敵した直後から、『彼女は3射しか撃ってない』のだ。
つまり僕らが彼女に遭遇する前から、こうなることを予測して上空に矢を放っていたってことになる。
読んでいたのか。部長が残党勢力に声をかけて回っていたその時から。多勢が僕に味方して、東別院さんに差し向けることを――!

「これが、生徒会長直属の"役員"……!」

何のことはない。これが生徒会のトップに立つ五人の一角というわけだ。
執行部や諜報部すら統括する生徒会役員五名は、言い換えれば『学園で最も優れた五人』。

副会長の卓越した眼力や、庶務のあらゆる雑務をこなす万能の手腕のように。
書記の東別院さんは、全ての結果を先読みする究極のシミュレーション能力を備えているのだ。

「私のお友達がこのスキルに名前をつけてくれました。『神託機械《ラプラスプラス》』――私はこの能力名を気に入っています」

明円ちゃんだろ!そのお友達って間違いなく明円ちゃんだろ!!
気に入ってるんだ……高校生にもなってそのラノベ作家みたいなセンスはヤバいと思うよ。

「さあ、お次の策をどうぞ。残り二人の手駒をお好きなように運用し私に立ち向かってください。
 その全てに、打破という二文字で回答差し上げます。私はこの言葉も好きです」

「……生憎と陣頭指揮は僕の畑じゃないんだ。僕の得意分野で勝負させてもらう」

馬の腹に踵をぶつけて走らせる。記号コンビに防御重視で撹乱するよう指示を出して、僕は東別院さんから距離をとった。
相手の弓はここまで届く。だからこの距離は撤退じゃあない。見極めるんだ、この逆境を打破するプランを――!

「手練手管を凝らしても無意味です。あなた達が何人束になってもそれは有象無象の域を出ません」

「ひ、酷い言われようです!」
「ですです!」

記号コンビが憤慨する。東別院さんはどこ吹く風、長い睫毛を伏せたまま。ああやって風を肌で感じて演算してるんだろう。
彼女の能力は未来予知や心理誘導の類じゃない。『ラプラスの悪魔』をパクった三次元演算システムだ。
風の流れや、人の動き、気配の高まり、筋肉の軋み……色々な情報を統合して、次に起きる現象を推測する。

もちろん未来を完璧に読み切るなんてことはできないだろう。だけど大まかな方向性さえ分かればあとは気構えの問題だ。
東別院さんのスキルの本質は予測推測じゃない。『どんな事態にも的確に対処できる』という冷静さなのだ。

255 :九條十兵衛 ◆mJkMShtvmg :2011/09/18(日) 00:46:10.22 0
「お気を悪くされたのであれば謝罪します。しかし、私は常に正しいことを言っています。真実のみを喋っています。
 お世辞や甘言は、他ならぬあなた達に対する不実です。彼我の戦力差を鑑みれば、端的に言って、そちらの勝率は皆無です。
 お三方の筋力値・運動神経・動体視力では如何なる連携でも私の紙風船に手を届かせることすら不可能です。――何か反論は?」

「有象無象とバッサリ切り捨ててるわりには、随分と僕達のことについて詳しいじゃないか!」

「私が参照するのは客観的なデータのみです。私主観では、あなた方は三方ともに同じ有象無象に過ぎません」

ひ、酷い言われようだ……。犬や猫が人間から見れば個体差を判別しにくいのと同じ理屈じゃないか。
彼女が見ているのは『データとしての僕ら』。今こうやって対峙してる人間を見てのことじゃあない。

「……燃えてくるじゃないか。是非とも名前を覚えて帰ってもらいたいね」

「? 私は既にあなたの所属と名前を知っています。N2DM部営業・九條十兵――」

「僕が部長になんて呼ばれてるか知ってるかい? いつも聴いてる曲や、最近見て感動した映画のタイトルは?」

「……それは私には必要ない情報です。教えてもらわずとも結構です。それを教えるあなたにとっても時間の無駄です」

「そんなことはないさ。自分の趣味のためならいくらでも時間を費やせる。そうだろ記号コンビ!」

水を向けられた放送コンビは、ニヤリと笑ってそれに応える。

「そうですね。我々も放送の為なら寝食だって惜しみませんよ。何故なら我々は――」

「「――暇人だから」」  「ですです!」

記号コンビが跳躍する。空中で交差するように、有機的な意志を加えた変則立体機動。
時間差と落差を利用した二連撃は、単発の弓では絶対に捌き切れない連携だ。こっちが一人やられても、もう一人が紙風船に届く!

「回答します。如何なる手段を講じようとも私の優位は揺るぎません。それが会長命令です」

パパァン!と快音二連続。記号コンビの風船が同時に割れる。
東別院さんが何をしたかと言えば――紙の長弓をぶん回しやがった。そんなのアリかよ!弓は人を殴るもんじゃないぞ!
比較的馬上に近い所で風船を割られた□×くんはなんとか体勢を立て直したが、空中で撃墜された○△くんが落馬してしまった。

「ご覧のとおり。あなたの上司が用意してくれたチャンスもこれで打ち止めです。私の勝利は磐石の――ッ! どこに?」

東別院さんが初めてその眼を見開いた。貴重なシーンだったのにじっくり眺めちゃいられなかった。
何故なら僕は、そのとき上空に放り出されていたからである!

「我々にできるお手伝いはここまでです九條さん。ご武運を祈ってますよ」
「ですです!」

地面にへたり込む○△くんの尻の下には、リレーで使った僕の難視ワイヤーが敷かれていた。
一端は僕のベルトに。もう一端は――馬上の□×くんが握っている。
あの時、さっきの攻防で。僕と□×くんとでピンと張ったワイヤーを、落馬した○△くんが体重を乗せて思いっきり踏み抜いた。
ワイヤーは盛大にたわみ、生まれた張力に勢い良く引っ張られた僕はもの凄い勢いで馬上から発射されたのである!
さながら人間投石機。東別院さんの――弓矢よりも古代から用いられてきた攻城兵器を再現したのだ。

「おおおおおおああああああああ!!!」

あまりの加速度と頬叩く風の強さに吐きそうになりながら、射出された僕という弾丸は一瞬で東別院さんに到達する。
すれ違いざまに紙刀を彼女の紙風船に引っ掛けて、勢いに任せて振り抜いた!

紙風船を破壊したのを視界の端で確認したと同時、僕はグラウンドに叩きつけられた。何度も転がり、ようやく慣性を使い切る。
肩から着地したことでなんとか僕の紙風船は守りきったけど、左腕が上がらない。日差し以外の灼熱感が襲ってくる。
それでも不敵にドヤ顔で、僕は言ってやった。

「覆したぜ……きみの私見を!」

256 :九條十兵衛 ◆mJkMShtvmg :2011/09/18(日) 00:49:12.45 0
無敵にも見える東別院さんの演算スキルにも穴はある。
如何に強力なシミュレーション能力と言えども、見えて、聞こえて、感じられる情報から判断するしかないということだ。
だから、僕のワイヤーのように『隠し持っている』要因についてはまったく予想ができない。完全な乱数となる。
隠すこと・隠れることは――僕の得意分野だ。

シンプルに言えば『意表を突く』ことこそが彼女を攻略する最大の足がかりなのだ。
いやらしく言うと東別院さんというシステムを僕の乱数でハッキングしたってわけだね!

「……しかしその程度の不意打ちが、勝率にどれほど影響すると言うのです。一割以下の可能性に賭けたというのですか」

もちろん仰るとおり、既に完璧な東別院さんのシミュレーションに、ほんの少し穴を空けただけに過ぎない。
勝率ゼロが、1%に変わっただけだ。いやひょっとするともっと低いのかもしれない。だけど。

「そこはそれ、人はみな生来のギャンブラーだからさ。僕みたいに磐石・安定・堅実な人生を送ってるとたまに言いたくなるんだ。
 ――『分の悪い賭けは嫌いじゃない』ってね」

東別院さんは、再びほんの少しだけ目を見開いた。
それはさっき見れなかった僕へのサービスなのかもしれない。すぐに閉じてしまったけれど。

「少し、あなたに興味が湧きました。――自己紹介を要請します」

その言葉が聞きたかった。
営業心得その2。意表を突くプレゼンテーションで顧客の興味を独占しろ。

「N2DM部・営業担当の九條十兵衛です。暇なときに電話してね!」

――――――――

>「はぁ…はぁ……この化け物が…」
>「梅村さん。神谷さん。私はこれからこの生徒会長さんの背後を取り続けて、延々と攻撃し続けるっす」

東別院さんとの戦闘を終えて僕が駆けつけたとき、生徒会長を囲むうちの部員+αは既にズタボロだった。
紙風船を割られてないのが奇跡みたいだ。梅村くんは吐血してるし、小羽ちゃんは眼鏡どっかいってるし。

「うははははは!楽しいな!楽しいな会長殿!!今という時間がずっと続けばいいのに!」

……なんか一人だけスッゲーテンションの人がいるのは置いといて。
神谷さんさっきペナらなかったっけ。あー、そういえば部長が稲坂くんを犠牲に捧げて召喚してたような。
それにしても、学園でも指折りの武闘派三人と渡り合って息一つ乱さないとはマジで化物じゃないか生徒会長。

「部長、なにのほほんと観戦してるんですか。生徒会長のスパッツの色は黒以外ありえないって結論は出たでしょう!
 なんなら僕が確かめてきますよ!あのジャージの下にどんなエルドラドが広がってるのか、この僕が眼に焼き付けてきます!!」

僕は剣激の最中に駆け込もうとして、馬足を止めた。
振り返る。

「……聞こえますか、部長。この歓声、この熱狂。この学園に遍く全ての学生がこの戦いに注目しています。
 当代最強と呼ばれた生徒会長。それと張り合う生まれたばかりの無名部活。ありえないほどドラマチックな戦いですよ。
 だったら――決着をつける最後の一撃は、この上なく劇的であってほしい。それを担うのは部長以外にありえません」

僕も。小羽ちゃんも。梅村くんも。楯原ちゃんも。神谷さんや記号コンビやここまで僕らに味方した全ての人の一つの願い。
癖者ぞろいの僕らをここまでを導いてきたたった一人の生徒の、最高にカッコ良いクライマックスを。

「重心移動ができないなら、必要ないぐらいに全身でぶつかってやりましょう。
 リーチの差に不満があるなら、気にならない程密着すればいい。ミッチャクですよミッチャク、ボディトゥーボディ。
 美人の生徒会長とぬるぬる接触プレイなんて、うらやましいなあもう!」

半ばヤケクソ気味に僕は部長の騎馬のケツを紙刀で引っぱたいた。
痛みよりも尻に異物が触れたショックで、馬は高く嘶き全速前進で走りだした!

257 :部長:2011/09/18(日) 23:15:08.95 0
同年同月同日のほぼ同じ時刻に同じ病院で産声をあげて。おまけに家が隣同士とくる。
そりゃ親は仲良くなるし、当事者の俺達だって当たり前のように一緒に育ってきた。
何も感じられない小さな頃は、別によかった。年を経て、分別を得て、気づいたこと。
いつも俺の横にいた女は、いつも俺の遥か上を行っていた。俺だけじゃない、誰よりも。
俺がどんなに苦労しても、どんなに頑張っても。軽々とそれを超えてきて、笑顔を見せる。
そして俺は、本気を出すことを辞めた。努力することを諦めた。逃避行動だな、つまり。
中等部に上がる頃には会話もなくなり、いつの間にか笑顔も見なくなったが…。
会長となって演説するあいつの姿。吐き気がするほど、変わらず。完璧のままだった。

ってことで、俺がこいつのことを嫌いなのは完全に俺の都合だ、こいつは悪くない。
何か特別な過去とか期待してたのならすまんな!そんなんねぇよ!俺パンピーだから!
そもそも言っちゃなんだがこんな完全無欠人間が嫌われるなんて嫉妬位しかねぇだろ。
昔は「すーちゃんを守れるぐらい強くなる!」とか言ってたらしい。親に言われた。
いや、誰があいつを守るんだよ。見てみろ!涼しい顔して攻撃を捌き切るその強さ!
史上最強と呼ばれる生徒会長、澤村栖久里(すくり、俺はクリスと呼んでる)の姿を!

>>248
>「風紀委員No.2兼N2DM部、梅村遊李参上でィ。旦那ァ…約束通りハーゲン貰いにきやしたぜィ。」

「あぁ!明後日な!明後日!」
まず最初にやって来たのはバイソン。紙風船も無事だってことは勝ったってことか。
あの副会長結構厄介な人物だと思ってたし、ぶっちゃけ足止め程度かなと思ってた。
うむ、バイソンのことを見くびっていたのは素直に認めよう。謝る。胸の中でな!
とはいえ脇腹に痛みがあるようなのは傍目から見ても十分に分かる。抑えてるしな。
まぁ、庇いつつなんとかやってくれ――とか思ってたら自分で脇腹殴ってた。
いや馬鹿じゃねーの。さすがに口に出しては言わないけど馬鹿じゃねーの。
俺みたいな人間にはちょっとその行動は理解出来なかったのである。怪我は大事にしろよ!

ともかく、これで2対1。バイソンは見るからに負傷者ではあるが、数の上では優勢だ。
たかが頭の上の紙風船、そんなに大したもんじゃない。一発当てれば、それで終わる。
なのに終わらないのは――このクソ女を褒めるしかねぇんだろうな、畜生め。
あのドリルほんとに紙で出来てんのかよ。あんなに打ち合いとかしてたら曲がるだろ。
ま、現状劣勢だな。ミキティとバイソンの紙風船もいつ割られるかわかったもんじゃねぇ。
でも俺がまだ焦ったりしないのは、俺には駒があるからだ。部長という役職って素敵。

>>252
>「……ども、遅れたっす。N2DM部書記、小羽鰐。約束どおり、部長の味方をしに来たっすよ」

「待ちわびたぞクロ子よ!さっさとそのクソ女をどうにかしろ!」
あんなゴミのような説得で立ち直ってくれるか心配だったがどうやら功は奏したらしい。
まぁクロ子なら俺があんなこと延々と語らなくても自力で復活したのかもしれないが、
俺が思いたいから俺の言葉で元気になってくれたと思うことにする。俺の中ではだ!

>「梅村さん。神谷さん。私はこれからこの生徒会長さんの背後を取り続けて、
> 延々と攻撃し続けるっす。だから、正面からの攻撃は任せるっすよ」

「えげつねぇ」
思わず呟いてしまうのである。背後からのクロ子プレッシャーとかかなりのもんだろう。
そう告げた通り、クソ女の後ろから攻撃をし続けているが…見てわかる違和。
左腕しか使っていない。ここからでも分かるのだから、会長も既に感づいている筈だ。
クロ子を手負いにさせるとは、あの庶務やっぱり凄かったんだな。見た目通り。

3対1となった。とは言えど2人は負傷者。ミキティもスタミナ切れてきたか。
とはいえ見た感じは膠着だ。これを観戦している大多数はそう感じるだろう。
だけど俺は分かるよ。勝ち目ない。あのクソ女、全く本気出してやがらねぇ。
もう少し手を伸ばせば紙風船を破裂させられるのに、わざと已の所で止めている。
あいつは生徒会長だからな。体育祭の成功を誰よりも願う1人だ。そして分かってんだ、
さっさと終わらせたら――熱狂してるオーディエンスが納得しないってことをさ。
場を盛り上げて、盛り上げて。最高のところでケリを付ける。それを狙ってんだ。
大ピンチからの――大勝利ってか?ったく、クソ女が。

258 :部長:2011/09/18(日) 23:17:01.48 0
例えば、バイソンが脇腹を痛めておらず、クロ子が右腕を使うことが出来ていたなら。
そんなこと考えてみたりもするが、たらればは意味がないことだって先生も言ってた。
このままでは会長の勝利は揺るぎない。それが今の純然たる事実であって、以外はない。
熱気包まれる中で、当事者の1人である俺は。心底冷めた目をして、見守っていた。

>>256
>「部長、なにのほほんと観戦してるんですか。生徒会長のスパッツの色は黒以外ありえないって結論は出たでしょう!
> なんなら僕が確かめてきますよ!あのジャージの下にどんなエルドラドが広がってるのか、この僕が眼に焼き付けてきます!!」

「何言ってんのお前」
あまりの下衆っぷりに気の利いたツッコミなど出よう筈はない。尊敬するよ、マジで。
高等部三年の城ヶ崎先輩(面識ナシ)の履いているものだったらまだ興味はあるが、
何故あんなクソ女の履いているスパッツに思いを馳せねばならんのだ。理解不能。
QJは戦いに参じようとする。頑張れ!お前が活躍する姿想像出来ないけど頑張れ!
とか心の中で声援を送っていたところ、QJは馬を止める。そして、こっちを向いて。

>「……聞こえますか、部長。この歓声、この熱狂。この学園に遍く全ての学生がこの戦いに注目しています。
> 当代最強と呼ばれた生徒会長。それと張り合う生まれたばかりの無名部活。ありえないほどドラマチックな戦いですよ。
> だったら――決着をつける最後の一撃は、この上なく劇的であってほしい。それを担うのは部長以外にありえません」

「え、やだ。断る」
突然何を言い出したこのQJは。劇的な一撃て。スポーツテスト万年E評価のこの俺が?
以前から感じていたが、こいつ俺のことなにか特別な人間だと思っているフシがある。
そんなことはないことは俺が一番分かってるさ。俺、自慢じゃないが何にもねぇぞ。
「だってさ、あれ見てみろよ。あのクソ女全然本気出してねぇぞ。
 いやたとえ本気だったとしても、あんなレベル高い戦いの中に俺が入ってどうすんだ。
 俺キャプテンだろ?俺の紙風船が割れたら終わりなんだ。危険には近寄れない。
 それにほら、俺足怪我してるから。無理矢理固定してあんのはお前も知ってるだろ?
 微妙な重心移動とか出来ねぇし、いざって時に身を乗り出せないからリーチの差が…」

>「重心移動ができないなら、必要ないぐらいに全身でぶつかってやりましょう。
> リーチの差に不満があるなら、気にならない程密着すればいい。ミッチャクですよミッチャク、ボディトゥーボディ。
> 美人の生徒会長とぬるぬる接触プレイなんて、うらやましいなあもう!」

「相変わらず変態だなお前!つーかせっかくそんなプレイするならあのクソ女よりも…
 って、おい!お前何した!この野郎!ちょ!止まれ!世界最強丸よ!」
しかし、下半身が使えない俺。走り出す世界最強丸を止められず、揺られるしかない。
「ちぃっ!…おい!QJ!恨むからな!」
そう捨て台詞を置き残して、俺は世界最強丸の行く先を見据える。
――腹、括るか。

259 :部長:2011/09/18(日) 23:17:57.72 0
「全員注目!静聴しろ!」
戦いの場へ向かう最中。俺はあらん限りの声を張り上げる。こうなりゃヤケだ。
「今残っているチームはもはや2チームだけだ!生徒会チームと、我らのチーム!
 そして、生徒会チームは生徒会長だけだ!一方俺のチームは全員揃ってる!
 こんな状況、想像出来たか!?あの当代最強と呼ばれた生徒会チームを、
 聞いたことのない寄せ集めみたいなチームが、追い詰めてるんだぞ!」
ぶっちゃけ実際には追いつめられてるんだけどそのことは秘密。シークレットなのだ。

「そんな中!俺は!マジで何も出来ない!みんな見てただろ!俺逃げてただけじゃん!
 でもさ!俺はあえて挑むんだよ!最強の奴に!しかも!勝つつもりだぜ!すげぇだろ!
 『何も出来ない奴』が!『何でも出来る奴』に!勝っちゃうことがあるってこと!
 お前らに!見ていて欲しいんだ!人間には!色んな可能性があるんだって!」
疲れた。挑む前に既に息切れそう。メガホンとか欲しい。
「でもさ!俺弱い!一方相手は最強の生徒会長だ!出来るなら逃げ出したいよ!
 だから!声援をくれ、諸君!お前達の声が、言葉が!俺の背中を押してくれる!
 ヘタレな俺でも――この紙刀を握り続けられるんだ!」

もうあのクソ女は目と鼻の先に居る。動線上にいたミキティがその場から離れた。
風船は割れてない…あぁそう、邪魔はしないってことね。お気遣いありがとうございます。
あの女は近い。ていうかこのクソ女笑顔なんだけど!はぁ、いつぶりに見たやら。
鋼鉄の生徒会長様がそんな顔見せちまっていいのか?写真高値で取引されるだろうな。
「久――りに、――くん――気が見――の――」
ボソボソとクソ女が喋るのが聞こえた。何て言ったのか、よく聞こえなかったが。

あぁ、近いよ。めっちゃドリル構えてるよ!無理。絶対無理。無理に決まってんだろ!

「こなくそおおおおーーーーっっ!!!!」

▼N2DM部・第5依頼▼
完遂!

260 :部長:2011/09/18(日) 23:18:30.21 0
――――――

体育祭は、体育の日。祝日だ。その次の日は振替休日になって、学校は休みになる。
そしてその次の日。水曜日だな。授業が終われば、あとはいつもの俺の空間だ。
「おーっす」
松葉杖付きながら中に声をかける。扉さえ自力で満足に開けらんねぇのは不便だな。
まぁ苦労すりゃ開けられなくもねぇんだけど、開けてもらえるならその方が楽だし。

「昨日はお疲れさん。まぁ、負けなかったのは世界最強丸のおかげ、だな」
俺だって十中八九、それどころか十中九、九九九九九九九は負けると思ってた。
あのクソ女にすら予想出来なかったこと。鬼気迫って走ってくる世界最強丸に、
会長が乗っていた馬がビビっちまって、暴れ出したんだ。さすがに面食らった。
そんなチャンスを逃す訳にはいかねぇ。俺は紙刀を渾身の力を込めて伸ばした。
クソ女もすげぇもんだ、暴れる馬の上だぞ?正確に、ドリルで突いてくるんだから。

俺は机の上に、昨日の写真を並べる。決着の瞬間の、写真だ。俺すげぇ顔になってる。
しかし写真部ってすげぇんだな。連写機能が付いてるカメラって訳でもないのに、
よくもこんなジャストタイミングでシャッター切れるもんだ。勘がすげぇの?
「引き分け、か。一応優勝ではあるけどさ」
その写真には、同時に割れる紙風船が。鮮明に写し出されていた。

持ってきた二つのビニール袋。そのうち片方を袋ごとバイソンに投げ渡す。
「ほれ、約束のモンだ。ありがたく思えよ!」
わりと高くてビックリしたんだけど。いや一応約束だし買ってやるけどさ!
あと俺松葉杖だから当然歩くのもかなり遅くなる。買ってから来るまでの時間考えると
もしかしたら溶けてるかもしんないけど、まぁそれはそれ。俺は何も言わない。
「お前らにも、ほれ!」
残りのメンバーにはホットコーヒーを投げ渡す。すっかりぬるくなってるけどホット。

「一昨日の筋肉痛がまだ残ってるよ…。依頼来るまで、少しまったりしてるか」
そして俺は机に頭を投げ出した。

▼依頼受付中!▼

261 :ぶちょー:2011/09/18(日) 23:28:39.27 0
んー!マギャーはどうやら継続参加はない!っぽいので!一名!新規参加を募集!
普通に今まで部に居たってことでいいけど、不自然さが感じられるなら
「今まで病気で入院してた」ってのでもいいよ!
部員以外でもいいけど、拠点が部室である以上ちょっとやりにくいと思うよ!

んでもってぎょーむれんらく!
これは俺の勝手な考えなんだけど、あんまり長寿スレにするつもりはない!ので!
第10依頼(+番外過去編)あたりを目処にスレ完走したいと思う!
勝手に決めて悪いかなぁとも思ってるので、ずっと続けたいというのなら構わないけど、
俺は居なくなります!
そういうことで、よろしく!

262 :ぶちょー:2011/09/18(日) 23:36:14.44 0
ちょいと補足!
天幕の下で見た嘲笑は表情の下の笑い!
今回の笑顔は表情!
うまく説明出来ないけどニュアンスで分かってね!

263 :名無しになりきれ:2011/09/19(月) 00:54:16.99 0
▼N2DM部・依頼届▼
依頼者:生徒会役員・庶務

体育祭では世話になったな。あれだけ熱狂的な盛り上がりを経験できたのは生徒会役員として誉れの至だ。
俺個人としても全力で完全燃焼できたので非常に満足している。会長もご機嫌だしな。
さて、体育祭の後と言えば……そう、文化祭だ。丁度模擬店の出店枠が一つ余っていてな、こいつを君らに進呈したい。
部として研究成果を発表するブースにしても良いし、何か適当な模擬店でも開いたって良い。
経常利益はそのまま部費にペイバックするリーズナブルな特典付きだ。
この話は生徒会からN2DM部への報奨的な意味もある。場所も一等地だ、立地の良さはこの俺が保障しよう。
どうだ?この出店枠、ひとつ貰ってくれないだろうか。

依頼内容:文化祭での模擬店ブースを進呈

264 :梅村遊李 ◆89ggxEkiHQ :2011/09/19(月) 21:42:16.65 O
結局俺達は生徒会チームと引き分ける事しか出来なかった。
最終的に4対1というあれだけ有利な状況になっても、引き分けにしか持ち込めなかったのが悔しいねィ。
しかしまあ、『何も出来ない奴』が『何でも出来る奴』相手に立ち向かう勇姿が見れただけでも儲けもんだ。
あ、あと初めて生徒会長の笑顔が見れたけど、笑うとなかなか可愛いじゃねぇかィ。
うちのボスの方が万倍可愛いけどな。
>「今回は競技だったから良かったものの、風紀委員と生徒会が争うなど…おい、聞いてるのか?」
その麗しのボスは俺と城戸さんがやり合った事について若干ご立腹気味だった。
やっぱり騎馬戦とはいえ肋をやったのはマズかったらしい。
「おいザキィ。俺ァハーゲン買って来いって言ったじゃねぇか。
 スー○ーカップじゃねぇかよコレ。どういうk…ゴフッ!」
不服ながらもスー○ーカップを食する俺の脇腹をボスのミドルが直撃する。
>「私の話を無視してアイスを食べるとは良い度胸だなあ。」
や、ヤバい…某世紀末救世主のようなオーラを纏って指ポキしていらっしゃる…。
これはなかなかのキレ具合だぜィ……。
「じょ、冗談でさァ。しかしアレですぜィボス。騎馬戦と言えば肋の1本や2本…」
>「それは騎馬戦じゃなくて喧嘩だ。」
ぐっ……反論する前に反論を被せてきやがる…。
女ってのは人の話を聞かねぇ生き物なのかィ?
「まったくボスは心配性だねィ。大丈夫でさァ、貴女の梅村遊李はそう簡単には死にはしやせん。」
>「お前の馬鹿さ加減は死なないと治らないと思うんだが。
 というか死んでも治らんか。」
可愛い顔してサラッとひでぇ事を言いやがる。
それもまたボスの魅力の一つか…。
「さ…ボスに虐められっから部活に行ってきまさァ。」
>「はぁ…暫くは大人しくしてろよ?お前だって肋痛めてるんだからな?」
「へーい…了解しやした。」
俺は食いかけのスー○ーカップを心配性なボスの目の前に置き、部室に向かう。
改めて考えてみると、ボスにこんだけ心配して貰えるなんて俺は幸せ者だぜィ。
……良い意味で心配されてんだよなァ?

265 :梅村遊李 ◆89ggxEkiHQ :2011/09/19(月) 21:46:09.47 O
>「おーっす」
俺が部室に着いてから数分後、松葉杖をついた旦那が登場。
手にはビニール袋が二つぶら下がっている。
>「昨日はお疲れさん。まぁ、負けなかったのは世界最強丸のおかげ、だな」
相変わらず訳の分かんねーお人だ。
アンタが選んだあの駄馬がやったのは、生徒会長に特攻かましただけじゃねぇかィ。
結果的に生徒会長の紙風船を割ったのはアンタだぜィ、旦那。
>「引き分け、か。一応優勝ではあるけどさ」
無能と呼ばれるアンタが超が10個ぐらい付いてもおかしくない有能な生徒会長相手に引き分けまで食らいついたんだ、大したもんでィ。
1万2000年に一度の奇跡と言っても過言じゃねぇとすら思える。
「そういや旦那、約束の品は…」
>「ほれ、約束のモンだ。ありがたく思えよ!」
俺の催促に旦那は即座に反応し、ビニール袋を一つ投げ渡す。
「さっすが旦那。約束は守る男ですねィ。」
さっきは山崎の野郎がハーゲンじゃなくてスーパーを買って来やがったからハーゲン成分が足りなくなってた所だ。
ありがたく頂き………
「旦那……俺ァ、シェイクなんて頼んじゃねぇですけど?」
何でハーゲンがシェイクになってるんでィ?
何をやってくれてんだこの松葉杖…。
>「一昨日の筋肉痛がまだ残ってるよ…。依頼来るまで、少しまったりしてるか」
旦那はそう言うと机に頭を投げ出しやがった。

ムカついたから机に顔面を叩きつけてやろうかと思ったが、とりあえず買ってきただけで今回は良しとしてやるかねィ…。


俺は冷凍庫にアイスをしまい、椅子に座りPSPを取り出す。
依頼が来るまで暫しレベル上げを…と思ったがすぐに依頼ボックスが『カタン』って鳴りやがった。

「旦那ァ。生徒会の庶務から依頼でさァ。」
依頼内容を要約すると、文化祭で模擬店の出店枠が余ってるからくれてやるって事だった。
しかも売上は部費になるらしい。
生徒会もたまには人の役に立つ事するじゃねぇかィ。
「こんな美味しい依頼は滅多にありやせんぜィ。問題はどんな店を出店するか…
 生徒会や教師にバレねぇように、旦那をサンドバックに出来る人間サンドバック店なんてどうですかィ?
 1発100円にすりゃ相当稼げますぜ。ってか俺も客として行きますよ。」

266 :長志 恋也 ◆4PYkPn.guGfT :2011/09/19(月) 22:33:11.36 0
四季の足音が廊下に響く
枯葉を思わせる顔貌 枯木同然の長身痩躯
形姿に反して瑞々しい若葉のごとき命 舞い上がる桜吹雪によく似た思考回路
眩い陽光に網膜を焼かれた盲人のごとく 己の頭上に太陽が すなわち天賦の才が 煌々と輝いていると疑わず
自称言葉の芸術家であり 秋空の気まぐれな心を ファッションとして纏う伊達男

「ったく――どいつもこいつも。この学園にゃ俺の芸術を理解出来る奴はいないのか?」

遍く生命から拒絶を受ける孤高の冬を気取り 廊下を歩き続ける
孤独な旅の始まりの地にして終着点 万能の二文字を冠に君臨する 卑しくも気高い救済者達の巣へ
扉を乱暴に開く ノックは無用 天国の門を気取るには ここはあまりに俗世染みている

「よう、身の程知らずの理想論者共は顕在らしいな。息災で何よりだ」

開け放った扉に身を寄り添わせ 挨拶を一つ 
胸ポケットに眠っていた華奢で甘い褐色の恋人に口付けをする
己の天分を氷の刃のように研ぎ澄まし 猛暑の太陽のように高みへと至らせるべく後にした地へ 今再び帰って来た 
炎天の下で吹き抜けた風の中に 遠く過ぎ去った少年期を見るような感覚が込みあげる

「仮にこの学園が天国か――或いは地獄だとして。どうやら俺は傲慢のあまり神の懐から追放された熾天使だったらしい」

追放者に行き場はない 再び天に昇る事は許されず 地獄の住民にすら忌み嫌われる
残されたのは同じく禁忌を 禁断の果実を食み楽園を追放された者達の住処
過去の 父の 己の過ちを踏み台に理想を築きあげる俗世のみ

「まあそんな訳で、だ。Please help Me.(行き場がないんでまた置いてくれ)――だぜ」




名前:長志 恋也(おさ・れんや)
誕生日:8月7日
年齢:17歳
性別:男
所属:元剣道部
髪の毛の色、長さ:亜麻色・セミロングのオールバック
容姿の特徴・風貌:細身で背が高い、性的、年齢+20歳くらいに見える伊達男
性格:気取り屋
好きなもの:漫画の『BLEACH』・シガレット系のお菓子
嫌いなもの:自分への暴力
特技:想像力豊か
趣味:詩を考える事
自分の恋愛観:――躊躇わず 悔やまず 振り返らず それが愛なのか
         いいや違う それは愛を知らぬ愚か者共の戯言だ
         兎のように臆病に 蛇のように執着して 鷹のように気高く自分を顧みてこそ 愛は育めるのだ
人生のモットー:――信念はいらない 信条も 信仰も 主義主張も必要ない
          それらはどれも人生を縛る鎖であり 未来を閉ざす鍵に過ぎないのだから
          人生を駆け抜けるにはただ 現在進行形の決意だけがあればいい
簡単なキャラ解説:
漫画『BLEACH』のコミックス巻頭とかにあるオシャレな文章に多分な影響を受けている
元々のナルシスト気質と相まって色々と取り返しがつかない感じになっている
驚くほどに貧弱。芸術の啓蒙活動とかなんとかでN2DM部を離れ色んな部活を転々としていたが、
どこも追い出されて結局N2DM部に帰って来た


267 :名無しになりきれ:2011/09/20(火) 13:39:33.09 0
VIPから来ました

      ハ,,ハ
     ( ゚ω゚ )  お断りします
    /    \
  ((⊂  )   ノ\つ))
     (_⌒ヽ
      ヽ ヘ }
 ε≡Ξ ノノ `J

268 :名無しになりきれ:2011/09/20(火) 14:03:20.16 0
8 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/09/20(火) 14:01:26.16 ID:szrOPyuJ0
制服はブレザーでいいんだろ?
部長
http://uproda.2ch-library.com/430690z4S/lib430690.jpg
小羽 鰐
http://uproda.2ch-library.com/430833FgF/lib430833.jpg

269 :名無しになりきれ:2011/09/20(火) 14:17:10.24 0
vipからきますた

270 :名無しになりきれ:2011/09/20(火) 16:54:12.12 O
>>268
ワロタ

271 :小羽 鰐 ◆DeLd.MSvGY :2011/09/20(火) 22:31:11.71 O
すみませんっす。
今日は忙しくてレス出来ないっす。
もしあれなら、一ターン飛ばしてやってくださいっす

272 :ぶちょー:2011/09/20(火) 23:01:22.98 0
>>271
構わん構わん!一日ぐらい空いたって!
そうやって言ってくれるだけでありがたいのである!

でもまー章の変わり目だし、QJ書けるなら先に書いてくれてもいいよ!
順番変わっても問題ないしな!かといって別に今まで通りクロ子の後でもいいし、
その辺りは臨機応変に行こう!

273 :長志 恋也 ◆4PYkPn.guGfT :2011/09/20(火) 23:03:57.00 0
そう言えばテンプレと導入だけ置いて挨拶を完全に失念していました
失礼しました
遅くなってしまいましたが新規参加希望です。よろしくお願いします

274 :九條十兵衛 ◆mJkMShtvmg :2011/09/20(火) 23:07:37.11 0
そですねえ、僕の今晩のスケジュールが偶然にも開いていたら書きます
書かなかったら今晩はスケジュールが埋まる何かがあったってことでお察し

>>273
よろしくお願いしますー

275 :ぶちょー:2011/09/20(火) 23:07:56.91 0
>>273
いらないいらない!俺そういう堅苦しいのなしでいこうと思ってるから!勝手に!
読んで楽しい導入部!それ書いてくれただけで十分なほど新規参加の挨拶だと思うよ!
うん!

276 :小羽 鰐 ◆DeLd.MSvGY :2011/09/21(水) 22:36:20.18 0

(この三人を相手にこの余裕……一体、どんな身体能力してるっすか。
 これだと、もし私が万全だったとしても快勝は無理っすね)

傷を負っているとはいえ、一発一発が大の大人を易々と昏倒させ得る梅村の打撃。
紙製であるにも関わらず、竹刀と変わらぬ威力を有する神谷の剣撃
片腕とはいえ、獣の如き暴力性を内包した小羽の拳撃

三方向から繰り出される破壊の嵐。それは、当代最強と称される
生徒会長の見事と言える技巧によって受けきれられていた。
梅村と神谷の二人きりだった時に比べれば、余裕の態度は減衰しているとはいえ、
生徒会長の所作には未だ余力が見て取れる。

小羽は背後から攻撃しつつも、その規格外な超人的身体能力と
まるで「遊んでやっている」とでもいう様な雰囲気に、小さく舌打ちをする。

>「部長、なにのほほんと観戦してるんですか。生徒会長のスパッツの色は黒以外ありえないって結論は出たでしょう!
>なんなら僕が確かめてきますよ!あのジャージの下にどんなエルドラドが広がってるのか、この僕が眼に焼き付けてきます!!」

ついでに、背後から聞こえてきた九條の台詞にも舌打ちをする。
どうやら彼は生徒会役員の一人を撃破した様で、それ自体は驚くべき事であるのだが、
いかんせんその台詞が全てを台無しにしてしまっていた。
実の所、その台詞の後に実に男らしい……と言えなくも無い言葉を放っていたのだが、
意識的に九條の声をシャットアウトする様に心がけ始めた小羽がその台詞を耳にする事は無かった。

……だが、小羽の耳にはとどかなかったとはいえ、その言葉と行動は確かに何かを動かしていた。
そう。N2DM部が「部長」。非力な一人の少年を、動かしたのである。

九條によって前進を促された馬は、真っ直ぐに生徒会長へと突き進む。
部長は無理矢理進まされた様な事を叫んでいるが、しかしそれは半分本当で、半分は……本当ではないのかもしれない。

何故なら、仮に足を縛り付けているとはいえ、あるいは馬の扱いに慣れていないとはいえ、

>「全員注目!静聴しろ!」

本当に初めから進む覚悟が無い人間は、

>「そんな中!俺は!マジで何も出来ない!みんな見てただろ!俺逃げてただけじゃん!
>でもさ!俺はあえて挑むんだよ!最強の奴に!しかも!勝つつもりだぜ!すげぇだろ!
>『何も出来ない奴』が!『何でも出来る奴』に!勝っちゃうことがあるってこと!
>お前らに!見ていて欲しいんだ!人間には!色んな可能性があるんだって!」

どんなきっかけがあれ

>「でもさ!俺弱い!一方相手は最強の生徒会長だ!出来るなら逃げ出したいよ!
>だから!声援をくれ、諸君!お前達の声が、言葉が!俺の背中を押してくれる!
>ヘタレな俺でも――この紙刀を握り続けられるんだ!」

こうやって、前を向こうなどしないのだから

>「こなくそおおおおーーーーっっ!!!!」

277 :小羽 鰐 ◆DeLd.MSvGY :2011/09/21(水) 22:37:06.52 0
小羽は大きく後退すると、生徒会長と部長の交錯を見つめていた。
視線の先にある両者の表情はまるで異なるものだったが、何故か似ている様に感じられる。

一人は、必死。死に物狂いの形相で、眼前の少女へと向けて必死に手を伸ばす。
どれだけ遠かろうと、どれだけ離されていようと、辿り着く。
何よりも強い意思が内包されている表情。

もう一人は、笑顔。余裕の中に混じっていた空虚と孤独が融解していく様な、優しい笑顔。
長い長い間待っていた誰かと、やっと再開できた。
そんな、まるで物語のヒロインの様な笑顔であった。

互いが互いを保管する様な対極でちぐはぐな表情を浮かべた二人は
互いの武具を互いの頭上へと伸ばし、そうして全く同時にこのイベントを終了させる条件を満たして――――


小羽は、まるで眩しいモノでも見たかの様にその結末を見届ける。
祝福をするかの様に、その口元には微笑を湛えて。ほんの少しだけ寂しさを交えつつ……

▼N2DM部・第5依頼▼ 完遂!




>「昨日はお疲れさん。まぁ、負けなかったのは世界最強丸のおかげ、だな」

再開した日常。その中のN2DM部の部室において、松葉杖を付いた部長が
机上に写真を飾りつつそうぼやく。フレームの中に収められているのは、
同時に弾け飛ぶ風船の姿。そしてその脇に移るN2DM部の面々。

「負けなかったっすけど、勝てもしなかったっすよね」

缶コーヒーを投げて寄越してきた部長に対し、小羽は片手でそれを受け取ると、
相変わらずの淡々とした表情で、辛辣にそう述べる。

「けどまあ……部長にしては頑張ったと思うっす」

が。いつもと異なり、小羽にしては非情に珍しく付け加えるようにしてそう言うと、
部長の机に、お茶と切り分けれたタイガー屋の羊羹(限定品)を二つ、コトリと置いた。

「もう一つは、部長からあの生徒会長さんとか役員の人達に渡してあげて欲しいっす。
 個人的に生徒会は好きじゃないっすけど、正式な部になった以上、
 これから部長や皆がお世話になるだろうっすからね」

まるで気恥ずかしいかの様に、小羽は視線を逸らしつつそう言うと、
そそくさと彼女の定位置に戻り、その腕を枕に寝る体勢に入る。

ちなみに、梅村と九條にもちょっと高級な羊羹を切って渡している。
この二人に小羽が全うなお茶請けを出すとは、珍しい話である。
恐らくは、体育祭の労い的な意味が込められているのだろう。


278 :小羽 鰐 ◆DeLd.MSvGY :2011/09/21(水) 22:37:48.01 0


――――と、そんな麗らかな時間の中で、依頼ボックスがカタリと音を鳴らした。

腕を枕に寝ようとしていた小羽であったが、耳から梅村が読み上げる依頼の内容が
入ってくるにつれ、顔だけをゆっくりと上げ気だるげな様子で思案を開始する。

>「こんな美味しい依頼は滅多にありやせんぜィ。問題はどんな店を出店するか…
>生徒会や教師にバレねぇように、旦那をサンドバックに出来る人間サンドバック店なんてどうですかィ?
>1発100円にすりゃ相当稼げますぜ。ってか俺も客として行きますよ。」

「いくら部長がぼっちでも、殴られる趣味は無いと思うっす。九條さんじゃないんっすから。
 ……とりあえず、梅村さんと九條さんと部長で水着相撲大会でも開くといいっす。
 『参加』費用1000円くらいで、そういう趣味の人がもりもり集まると思うっす」

生徒会の庶務から齎されたその依頼に、小羽は面倒くさそうに提案を出す。
さりげなく九條に酷い事を言っているが、気にしたら負けなのだろう。

そんな風に相変わらずの空気が流れている時であった。


>「よう、身の程知らずの理想論者共は顕在らしいな。息災で何よりだ」
>「仮にこの学園が天国か――或いは地獄だとして。どうやら俺は傲慢のあまり神の懐から追放された熾天使だったらしい」

部室の扉が開くと、そこには一人の少年が立っていた。
なにやら聞いていると呻きたくなるような言葉遣いのその少年は、扉に身を寄り添わせ
格好良いポーズ……をしようとして頑張りすぎてしまった感じの格好いいポーズを取ると、キメ顔で台詞を述べる。

この様な個性を持つ人間など、学園広しといえども数える程しかいないだろう。
そしてこの人物をN2DM部の面々でも初期から在籍している小羽は良く知っている。

彼の名は!
彼の名は――――!!

「すみませんっす。ここはカウンセラールームじゃないっす」

バタン。音を立てて扉を閉めると、小羽は席に戻りお茶を一口啜る。
なにやら再度扉が開かれる音がしたが、小羽はもはや何も聞こえていないかの様に平穏に羊羹を啄ばみ始めた

279 :九條十兵衛 ◆mJkMShtvmg :2011/09/23(金) 01:46:57.84 0
何事も根詰めすぎはよろしくない。心と体によろしくない。
適度なガス抜き方法や、ほっと一息つける瞬間を心得ていないと、ストレス社会じゃ寿命がマッハ。
そんなわけで営業マンとしては、外回り中にいつでもサボれるいきつけの隠れ家を確保しておきたいものだ。
学園東部の商業区画、その片隅に位置する学生喫茶『Canal(運河)』は、そういった僕のセーフ・ハウスの一つである。

「……以上が先日の体育祭で使った難視ワイヤーの使用報告さ。視認性が低いというのは存外に有用だね」

僕がテーブルの上に滑らせた封筒を、対面のマッチーが摘み上げ、中身を検める。
ミルクと砂糖をだばだばに入れた甘々のカフェオレを静かに啜りながら、レポートの採点を待つような気持ちで僕はそれを眺めた。

「ふむ、確かに。喜べ九條君、これで人類はまた一歩進化へと近づいた」
「いつもいつも大袈裟だなあ、たかだか学生の自由研究じゃないか。そんなに頻繁に人類が前進してたまるかよ」
「おや、進化はお嫌いかね」
「そうやって前だけ見て邁進したい連中が、学校教育からブルマを奪ったんだぜ」
「君は脳みそを中学生から進歩させるべきだと思うが」

乾いた笑いでお茶を濁す。濃いコンデンス・ミルクで濁したお茶は、カップからマッチーの喉へと嚥下されていった。
なんで技術研の部室じゃなくてこんなところでマッチーと会ってるかと言えば、過日の体育祭でのアレに起因する。
まあぶっちゃけて言えば、活躍しすぎたんだよね僕ら。

N2DM部――その部長と仲間たちは、今や一躍学園内のヒーローだった。
なにせ当代最強と謳われる生徒会チームを瞬く間に4タテし、とりわけ最強(インフレし過ぎ)の生徒会長と互角に戦い果せたのだ。
結果的には引き分けだったとはいえ、気持ち的には大勝利ですよ。いやもう、そういう話をそこかしこで聞いた。

廊下を歩けば『よっ、人間投石機!』と声がかかるし、購買に行けば購買部の生徒からカレーパンがサービスされるし、
寮に帰れば『あの銀髪の可愛い子誰よ。あんなんお前の部にいたっけノーマークだったわ』とマイクが集う。
出版部の知り合いの話では、もう既に非公式でN2DM部を題材にしたキャラクタービジネスまで始まってるらしい。
僕は袖の下を貰って黙認したけれど、部長や小羽ちゃんは怒るだろうなあ。くわばらくわばら。

で、例に漏れず技術研でもN2DM部は大好評。
僕が直接赴いたら絶対仕事にならないからって理由でこんな学園の外れまで連れ出されたのだ。

「『何も出来ない奴』が『何でも出来る奴』に勝っちゃうこともある……か。君のとこの部長は啓蒙家だな。
 だが良い言葉だ。我々非リアに勇気と希望を与えてくれる。将来私が自伝を書くことがあったら各章ごとに挿入しよう」
「どんだけくどいサブミナルだよ……」
「体育祭と言えば九條君、その4タテの件で室長がおかんむりだったぞ。諜報員が名前売ってどうする、と」
「……まだ僕をスパイにする気なのかな、あの人」

生徒会諜報部の室長が僕を勧誘するのに熱を入れてることはなんとなく耳に入っていた。
高等部に上がるときにきちんと足を洗ってお断りを入れたはずなのに、あの人は未だに僕が堅気でやってけないと思ってるらしい。
僕はこんなにも常識人なのに!

「それはそうだろう、中等部の頃の君の実績を知っていればどこの諜報室だって引き抜きにかかる」
「いいんだ。営業は顔を売るのが仕事だからね、これからもばんばんメディアに露出していきますよ」

だからこうやって有名になっていくのは、僕が諜報員の世界から一歩ずつ遠ざかっていく儀式でもあるんだ。
N2DM部を有名にする。同時に僕も最高の営業として業界で一目置かれる人材になる。両方叶えるには、まだまだ実績が欲しいところだ。
依頼もバシバシこなして、学園の枠を飛び越えて全世界に部長の痴態を放映してやるぜ!

「おっと、そろそろ日が暮れちゃうじゃないか。まずいな、長居しすぎた」
「おや、何か用事でもあったかね」
「この喫茶店、外の看板に『Canal』って店名が書いてあるだろ。あれね、"C"だけ電飾がついてないんだ。だから日が暮れると――」
「…………。」
「ちなみにここの夜間経営、知り合いのKIKKOっていうオカマなんだけどさ」
「可及的速やかに出ようか。今度知り合いの漫研女子にここの場所を教えてやることにしよう」

とり急ぎ勘定を済ませ店内を脱出した僕達は、すれ違いに入店してくる筋骨隆々の漢たちの熱視線を尻に受けながら撤退した。
しかしマッチー、鬼畜だな。漫研女子も幻想の中で生きていたかっただろうに。

――――――――

280 :九條十兵衛 ◆mJkMShtvmg :2011/09/23(金) 01:50:23.85 0
炭火の上でパチパチと弾ける脂を見ていると、なんとなく人生の儚さについて思いを馳せてしまう。
全然似てないんだけど、ぎとぎとのあぶくが弾けて美味しそうな脂が淡白な身を彩っていくその過程に人の成長を感じるんだ。
爽やかな好青年が脂ぎったオッサンになっていく様子って、きっとこんな感じなんだろうなあ。

僕は部室の隅っこで、窓を全開にしながら七輪を団扇で煽いでいた。明々と燃える炭火の上には金網があり、その上にはサンマが一匹。
購買部の水産科エリアでうまそうなサンマが泳いでいたので、つい一尾買ってきてしまった。炭と七輪は去年使ったのが物置に。

ああ、やっぱご飯炊けばよかったなあ。塩焼きにするなら大根おろしも欲しかった。醤油はあるけど、ちょっと寂しい。
箸を上手く使って身を開くと、真っ白の身と真っ黒のワタの両方からじゅわぁっと脂が溢れてくる。
内臓は苦手って人もいるけれど、このとびきり苦い部分を甘い白身と一緒に口に放り込むとご飯がなくても心が満たされるのだ。

……ああ、もうすっかり秋だなあ。
今度銀杏を拾ってこよう。空炒りしても美味しいし、茶碗蒸しに入れてもなかなかオツなんだよね。
学園の裏山にはアケビから栗や銀杏まで秋の木の実が海のように広がっている。山菜も美味しくなる季節だね。
ビバ、食欲の秋。ダンケシェン、食欲の秋。ハイル食欲の秋!

>「おーっす」

扉の外で部長が声を上げた。扉を開けろってことだな、よしよし、僕は恭しく引き戸を全開にする。
一日ぶりの英雄の凱旋だ。

>「昨日はお疲れさん。まぁ、負けなかったのは世界最強丸のおかげ、だな」

「またまたぁ、その世界最強丸(暗黒微笑)を見事に乗りこなしたのは部長じゃないですか」

足を固定された状態であんな変則挙動をされたら、フツーは手綱を手放して上体が反ってしまう。
紙刀を振るもクソもあったもんじゃない。それを耐え切ったんだから、それは紛れもなく部長の根性と執念の為せる業だ。
よっぽど負けたくなかったんだなあ、なんか恨みでもあるのかしら。生徒会長に。

>「お前らにも、ほれ!」

梅村くんにアイスを渡したかと思ったら、僕らにも缶コーヒーが放られた。
……ぬるい!人肌じゃないかこれ、懐であっためたりしたのかな。仕方ないので七輪の上に置いておいた。
そのうち熱くなって飲めるようになるだろ。温めすぎて爆発しちゃったら、まあそれも話のタネになるんじゃないかな。

と、僕の定位置にちょっと上等な羊羹がことりと置かれた。小羽ちゃん……ようやくデレたんだね!!
今まで半分発酵した羊羹とか新たな生物が芽生えちゃってる羊羹とかしか出てこなかったのを鑑みれば大きな進歩だ!
人類は一歩前へ踏み出したぞ!僕達はやったんだ!ようし、やる気が出てきたし今日も契約取るために外回りを――

カタン、と。
あっけなく次の依頼は投函された。くそう、あの依頼ボックスめが……僕より営業成績いいんじゃないか?
入っていたのは生徒会・庶務の二刀流さんからの依頼だ。どうやら文化祭で出店枠を一つ貸してくれるらしい。

出店の立地ってのは集客率に直結するので良いとこには当然競争率が高くなる。
フツーは企画の内容や部活自体の業績なんかを加味して厳正なる審議の上で振り分けられるんだけど……
依頼書に記されていたのは、うちみたいな零細部活がとれるようなレベルじゃない超優良立地だった。

「こ、こりゃ凄いですよ店長!いや部長!!企画によっちゃ部費半年分ぐらい稼げるんじゃないですか!?」

模擬店ってのは人件費がかからないから普通の店よりお安くしても利益が出る。
特にウチは学園の生産科から直接卸してもらえるので仕入れ値も破格、ビッグビジネスのチャンスなのだ。
そんなわけでN2DM部の部室は騒然、いざ商戦とばかりに企画会議が勃発した。

281 :九條十兵衛 ◆mJkMShtvmg :2011/09/23(金) 01:53:34.20 0
>「生徒会や教師にバレねぇように、旦那をサンドバックに出来る人間サンドバック店なんてどうですかィ?」

「体育祭のヒーローをどう扱うつもりなんだよ! そんなもん嬉々としてやる危険人物なんか……結構いるなあ」

とりあえず目の前に一人。こいつ部長に何の恨みがあるんだ……。

>「いくら部長がぼっちでも、殴られる趣味は無いと思うっす。九條さんじゃないんっすから。

「ないよ!! 殴られる趣味とかないからね!? そういうの信じちゃう読者がいるだろやめろよ!!」

>「……とりあえず、梅村さんと九條さんと部長で水着相撲大会でも開くといいっす。
 『参加』費用1000円くらいで、そういう趣味の人がもりもり集まると思うっす」

「『参加』させるなぁぁぁぁぁーーっ!! もりもり集めて何する気!? エントロピーを凌駕する地獄絵図だよ!!」

いやいや、参ったぜ、小羽ちゃんからそんな発言が出るとは思わなんだ。
漫研女子に媚びようったって無駄だ!連中は三次元の男の絡みには全力で目を背けるぞ!

「ホントもーきみたちはなってない!マーケティングとゆうものを一から学び直せっ!
 いいかい、せっかくの好立地で初めから客層絞ってどうすんだよ!もっと万人受けする業種で、かつ見栄えの良い特色で客を引く!
 ――つまり、スパッツ喫茶を開こうってわけですよ!! 大丈夫、ウェイトレスの制服は全部僕が魂込めて手編みするから!!」

うーん、懐かしいなこの空気。
この如何にも斜陽な部活ですっていうgdgdした空気が僕は好きだったのだ。
シリアスな長編よりギャグテイストの短編のほうが読者ウケはいいんだよ。そんな折、扉が再びガラっと開いた。

>「よう、身の程知らずの理想論者共は顕在らしいな。息災で何よりだ」
>「まあそんな訳で、だ。Please help Me.(行き場がないんでまた置いてくれ)――だぜ」

……うっわぁ。
長身痩躯を扉にもたれさすその姿は、春先にN2DM部から飛び出してってその後消息知れずだった部員の一人。
長志くんは相変わらずだなあ。その、セリフの括弧の中まで日本語で喋っちゃう野暮ったさが彼の魅力だ。

>「すみませんっす。ここはカウンセラールームじゃないっす」

ナチュラルに小羽ちゃんが扉を閉めた。
ぎゃー!挟まれてる挟まれてる!長志くん横から潰されて凄い顔になってる!
流石N2DM部きっての孤高のお方、久しぶりに顔出した部員にも容赦がない……。

「小羽ちゃん!今の態度はちょっといただけないぞ!」

僕は立ち上がり、扉を開けて長志くんを救出した。
流石に今のは酷い。僕は長志くんを代弁するように言葉を叩きつけた。

「――患者が自分で助けを求めたんだ!それがどんなに勇気のあることかわかるだろ!!」

欝でも躁でも厨二病でも、患者は自分がそういった病気だとなかなか信じないし、認めたがらない。
それが、こうやって自分の足で治療を求めに来ただけでも進歩なんだ!リハビリも治療も周囲の手助けから始まるんだぞ!

「大丈夫ですよー、ちゃんとあなたは社会に復帰できますからねー。
 通行人みんなが自分を見てるなんてことはないんですよーミクシィに悪口書かれてるなんてこともありませんからねー」

僕は患者を安心させるために、つとめて明るい声を作って対応した。
厨二病の特効薬ってどこに売ってるんだろうね。誰かこの子を助けてあげてください。

282 :ぶちょー:2011/09/24(土) 03:31:29.16 0
ごめん!今日書けそうにない!

283 :名無しになりきれ:2011/09/24(土) 03:51:21.66 0
たっぷり寝てから書いてくれw

284 :部長:2011/09/25(日) 03:17:18.32 0
依頼BOXが音を鳴らす。いつもなら俺がダッシュでそこまで行くんだけども、
現状の俺は松葉杖だから立ち上がるのも億劫なので音に反応するぐらいしか出来ない。
俺以外の皆も気づいたみたいだし誰か取りに行くだろ、ということで俺は上体を起こす。
そんでもってバイソンが読み上げる依頼を腕組んで無言で聞いていた。文化祭、か。
正直なところ俺文化祭にあんまりいい思い出がないからサボりたかったんだけど、
さすがに依頼ときては断るわけにもいかんだろう。ぼっちには辛いイベントである。
しかし生徒会とは別に知らん仲でもないんだし、わざわざ依頼BOX使わずとも対面で
話通せばいいのにな、とかいう考えは胸の奥に閉まっとく。まぁ事情があったんだろ。
しかし庶務だからしゃーないとはいえあんな筋肉モリモリの男を使いっ走りにするとは。

ともかく依頼内容は了解した。依頼というよりは生徒会からの報酬的なものに近い。
だってよ、見てみろよこの立地。「偶然一つ余っていて」ってレベルじゃねーぞ。
こんな一等地、他の部活やらも欲しがるに決まってんだろ。なんでこんな場末の部活に。
どうにも、恣意的なものを感じざるを得ない。おいおい、賄賂じゃねーんだから。
利益が部費になるってのもうますぎる話だし…言っちゃなんだが怪しい臭いがするぞ。

とはいえ色々裏を考えてみても俺らが生徒会の思惑なんざわかるわけねぇんだし、
一応依頼という名目である以上俺は無下に扱うことなどない。つーか、受けるわそら。
予想外だがせっかくの金儲けのチャンスである。機会は有効につかわねぇとな。
そして、本格的に寒くなる前に、我がN2DM部部室に暖房器具を揃えるのだ!
俺が寒がりなんだよ!寒いの大っ嫌いなの!

▼N2DM部・第6依頼▼
依頼者:生徒会
依頼内容:文化祭の参加

>「こんな美味しい依頼は滅多にありやせんぜィ。問題はどんな店を出店するか…
> 生徒会や教師にバレねぇように、旦那をサンドバックに出来る人間サンドバック店なんてどうですかィ?
> 1発100円にすりゃ相当稼げますぜ。ってか俺も客として行きますよ。」

「待て!俺である必要が欠片もねぇんだけど!
 サンドバッグなら普通のサンドバッグ使えや!俺が死ぬわ!」

>「いくら部長がぼっちでも、殴られる趣味は無いと思うっす。九條さんじゃないんっすから。
> ……とりあえず、梅村さんと九條さんと部長で水着相撲大会でも開くといいっす。
> 『参加』費用1000円くらいで、そういう趣味の人がもりもり集まると思うっす」

「『ぼっちでも』っていう枕詞は必要ないんじゃないですかクロ子さぁーん!
 殴られる趣味とか全然関係ないよね!お前ただそれ言いたいだけだよね!
 んでもって水着相撲大会とかもう秋なんですけど!わりともう肌寒いんですけど!
 しかも男だけかよ!何だその絵ヅラ!俺たちをどうしたいんだよ!マジで!」

>「ホントもーきみたちはなってない!マーケティングとゆうものを一から学び直せっ!
> いいかい、せっかくの好立地で初めから客層絞ってどうすんだよ!もっと万人受けする業種で、かつ見栄えの良い特色で客を引く!
> ――つまり、スパッツ喫茶を開こうってわけですよ!! 大丈夫、ウェイトレスの制服は全部僕が魂込めて手編みするから!!」

「万人受けって言葉はQJ受けって意味じゃねぇからな!知ってるかい!
 …ええい!さっきのクロ子ネタの直後だと変な意味に聞こえるじゃねぇか!
 兎も角いい加減お前の常識は社会の非常識であることに気づくべきだと心から思うよ!
 ていうかさ!根本的に問題があるぞ!ウェイトレス足りてねぇ!
 このままだと俺たちもスパッツ履く羽目になるんだけど!」

285 :部長:2011/09/25(日) 03:17:38.66 0
ここで全員の提案を確認してみよう。
バイソン:人間サンドバッグ店
クロ子:水着相撲大会
QJ:スパッツ喫茶
…こいつらワザとやってんのか?
俺はこう見えても依頼には真摯に向き合ってる。ほんとだぞ。思い返してみろ。
だからわりと真剣に考えてたのに…いやこいつらも真剣なのかもだけど。特に三番目。

「ちくしょう!ここにいるとツッコんでばかりで喉が枯れる!ちくしょー!
 誰か!誰か俺を助けろぉー!マギャー!は居ないんだったああああ!」
体育祭中調子を崩したマギャーは今日も学校休んでいるらしい。
見舞いに行きたいのは山々だがあいつの家俺知らねぇや。
しかしマギャーがいたからって俺の心労が増すだけなような気もするのではある。
誰か、俺の心のオアシスみたいな奴が。俺の心に平穏を齎してくれやしないものか。
そんな風に考えていると、ふとノックもなしに、扉の開く音。

>「よう、身の程知らずの理想論者共は顕在らしいな。息災で何よりだ」

「もっとツッコミ所の塊がきたぁーーーーーっっ!!!」

こんな喋り方する奴もこんな独特の雰囲気を纏わせるとも俺が知る限り1人しか居ねぇ。
扉を開けて入ってきたのは、やはり俺の思った通りの人間だった。
さすがにバイソンはポカーンとしてしまうだろうが、クロ子とQJは知り合いだしな。
だからこの2人によるなにか病気の子のような扱いも、以前と変わらず、昔の光景。
「ともかく、久しぶりだな。どうした?」
俺は普通。ツッコミ所満載ではあるのだが、なんというか、人間の凄いところで。
慣れるんだよ。ある程度。

>「仮にこの学園が天国か――或いは地獄だとして。どうやら俺は傲慢のあまり神の懐から追放された熾天使だったらしい」

「あぁ、つまり色んなところから追い出されてきたと。お前らしいよ」
風の噂で色々評判聞いていたしな。ほぼ悪評だったけど!いい評価0だったけど!

>「まあそんな訳で、だ。Please help Me.(行き場がないんでまた置いてくれ)――だぜ」

「いつでも戻ってこい、って言ったのは俺だしな。お帰り、サレ夫。またよろしくな。
 バイソンとは初対面だよな?一応挨拶しとけよ。第一印象って重要だから。うん」

話は元に戻る。
サレ夫にも一応現在の議題の流れを伝える。文化祭で何やるよ、って話だが。
しかし俺とサレ夫以外の全員、なんか「案出したんだからお前も出せよ」みたいな、
そんな雰囲気を出している気がする。しかしぶっちゃけ何も浮かばない。
だんだんイラついてきて貧乏ゆすりが止まらん。何も浮かばない俺にもだし、
どう考えても採用するに値しない意見を出してきた俺の大事な部員(棒)に対しても。
「いいよ!お前らの意見、取り入れてやんよ!」
なんか吹っ切れた。そして俺は企画書を書き始める。

数分。
「ほらよ!これでいいんだろ!」
俺が持っている企画書には、でかでかと『人間サンドバッグ水着相撲スパッツ喫茶』
と、書かれている。
「メインは2つ!人間サンドバッグと水着相撲!どちらも参加料をとる!
 人間サンドバッグは俺がやんだろ!いいよ!入院ぐれぇ慣れてる!
 参加しない奴もそれを観戦しながらの喫茶軽食も楽しめる、ウェイトレスはスパッツ!
 ――ほらよ、これで満足か!?」
そして俺の渾身のドヤ顔。

286 :梅村遊李 ◆89ggxEkiHQ :2011/09/25(日) 19:02:33.67 O
俺の発案した万人受けすること間違い無しの人間サンドバック屋はどうやらこの部の人間には受け入れられねぇらしい。
おかしいな…絶対的な自信があったんだが…。
>「いくら部長がぼっちでも、殴られる趣味は無いと思うっす。九條さんじゃないんっすから。
> ……とりあえず、梅村さんと九條さんと部長で水着相撲大会でも開くといいっす。
> 『参加』費用1000円くらいで、そういう趣味の人がもりもり集まると思うっす」
この瓶底眼鏡は何をトチ狂った事言ってやがんでィ。
何で俺がそんな気色わりぃ大会を開かにゃならんのだ。
あわよくば参加までさせるつもりか?
「んな大会に参加すんのはKIKKOさんみたいな奴だろィ?誰も野郎が水着で相撲する姿なんざ見たくねぇよ…。」
いやしかし…そうは言ったものの……この変人だらけの学園は意外とそういうのが受けたりするのか…?
KIKKOさんのような変人が学園内に潜伏している可能性は非常に高い…あながち悪い提案じゃねぇかもしれねぇ。

>「ホントもーきみたちはなってない!マーケティングとゆうものを一から学び直せっ!
> いいかい、せっかくの好立地で初めから客層絞ってどうすんだよ!もっと万人受けする業種で、かつ見栄えの良い特色で客を引く!
> ――つまり、スパッツ喫茶を開こうってわけですよ!! 大丈夫、ウェイトレスの制服は全部僕が魂込めて手編みするから!!」
それに続いてこのスパッツ野郎の発言…。
コイツはスパッツと結婚すりゃ良いんじゃねぇかとすら思っちまう。
そんなにスパッツが好きなら口にスパッツ詰め込んでやろうかこの野郎。
スパッツで窒息死すんなら本望だろう。
「とりあえずアンタはスパッツに魂吸い取られて死んで下せぇ。」

287 :梅村遊李 ◆89ggxEkiHQ :2011/09/25(日) 19:04:26.22 O
>「ちくしょう!ここにいるとツッコんでばかりで喉が枯れる!ちくしょー!
 誰か!誰か俺を助けろぉー!マギャー!は居ないんだったああああ!」
さっきから全員の提案に突っ込んでいる旦那の喉にもガタが来たようだ。
残念ながら助けを求めたお嬢さんは学園を休んでいる。
このままじゃ旦那の喉がヤバい…そう思った時、扉を開ける音が聞こえた。
>「よう、身の程知らずの理想論者共は顕在らしいな。息災で何よりだ」
>「もっとツッコミ所の塊がきたぁーーーーーっっ!!!」
どうやら旦那の求めていたツッコミ要員じゃねぇみてぇだ。
見覚えのねぇ顔だが…直感で分かる。
コイツは俺のいけ好かねぇタイプだ。

>「仮にこの学園が天国か――或いは地獄だとして。どうやら俺は傲慢のあまり神の懐から追放された熾天使だったらしい」
>「まあそんな訳で、だ。Please help Me.(行き場がないんでまた置いてくれ)――だぜ」
コイツはアレかィ?
俺をイラつかせる天才ですかィ?
コイツの発言を聞いてるだけで殺意の波動が抑えきれなくなりそうなんですけど。
>「いつでも戻ってこい、って言ったのは俺だしな。お帰り、サレ夫。またよろしくな。
 バイソンとは初対面だよな?一応挨拶しとけよ。第一印象って重要だから。うん」
「俺ァ風紀委員No.2の梅村でさァ。趣味はテメーのようないけ好かない野郎を調教する事。
 とりあえずよろしく頼んますぜェ。」
手始めに軽く調教してやろうかとも思ったが、何か吹っ切れた旦那が企画書を書き始めたから保留しといてやる。
数分後…旦那は『人間サンドバッグ水着相撲スパッツ喫茶』と書かれた企画書を書き上げた。
長ったらしい名前だな…。
>「メインは2つ!人間サンドバッグと水着相撲!どちらも参加料をとる!
 人間サンドバッグは俺がやんだろ!いいよ!入院ぐれぇ慣れてる!
 参加しない奴もそれを観戦しながらの喫茶軽食も楽しめる、ウェイトレスはスパッツ!
 ――ほらよ、これで満足か!?」
なんかもうノリで全部ひっくるめたなこの人…。
しかもドヤ顔までかましてやがる…。
「まあ、良いんじゃねぇですかィ。今回の依頼は何か達成条件があるわけじゃねぇし、自分達が楽しめればそれで良いでしょ。」
人間サンドバックになる旦那が楽しめるかどうかは不安だが…本人が良いってんなら良いか。

288 :長志 恋也 ◆4PYkPn.guGfT :2011/09/27(火) 09:56:10.32 0
>「すみませんっす。ここはカウンセラールームじゃないっす」

人は誰しも板挟みの中で生きている 時折それが姿を得て襲ってきたとしても不思議はない。
骨の軋む音 肉が嘆く音 我々はそれらに涙を流し 絶望すべきではない
それは当たり前の事であり 一切の成長の放棄であり 神の悪意に対する敗北宣言に他ならないのだから

「ふ……ふふ、相変わらずだな、クロックダイル、時計を飲み込んじまった滑稽な鰐よ。
 お前さんの腹の底で眠る時計は、相変わらず過去を指したままらしいな。
 このイカれた理想郷も、お前さんの時の歯車にこびりついた錆は落とせなかったか?だとしたら……残念な事だ」

過去は八つ裂きに引き裂いても 地の底へ埋めても 胸の奥深くへと飲み下しても 蛇のように這い出でてくる
人は過去から逃れる事も 過去を殺す事も出来ない 過去は無理に己を拒む者にこそ永久の辛苦を与えるものだ
受け入れなければ 人はいずれ過去に殺される

>「小羽ちゃん!今の態度はちょっといただけないぞ!」

「お前も、久しぶりだな。お前はもう少し過去に囚われてもいいと思うぞ。前科とかな」

>「――患者が自分で助けを求めたんだ!それがどんなに勇気のあることかわかるだろ!!」

「分からないから、ああなんだろう。クロックダイルの牙は鋭く、力は強く、故に奴は助けられ方ってものを知らないのさ」

思いは正しく伝わらない 人の心は目には見えない それが例え自分の心であったとしても
だと言うのに何故人は 目と目で通じ合い 言葉を交わさずとも通じ合える そんな幻想を抱き続けるのか
正しく伝わらず 目には見えず それでも分かり合いたいからこそ 人は言葉を生み出したと言うのに

>「大丈夫ですよー、ちゃんとあなたは社会に復帰できますからねー。
 通行人みんなが自分を見てるなんてことはないんですよーミクシィに悪口書かれてるなんてこともありませんからねー」

「なるほど……つまり今回の依頼はカウンセリングって訳だ。いいだろう、人の心を救うのは芸術の使命だ。任せておけ。
 で、どこにいるんだ?黒き闇に心を囚われた哀れな子羊とやらは」

――自分の姿も 自分には見えない

289 :長志 恋也 ◆4PYkPn.guGfT :2011/09/27(火) 09:57:02.67 0
>「いつでも戻ってこい、って言ったのは俺だしな。お帰り、サレ夫。またよろしくな。
 バイソンとは初対面だよな?一応挨拶しとけよ。第一印象って重要だから。うん」

「――Sir.Leo、獅子座卿か。その名で呼ばれるのも、随分と久しぶりだな。
 ともあれ……ただいま、だ。敬愛すべき創造主様」

髪を掻き上げ 後ろに流し 広げた視界の端に視線を向ける

>「俺ァ風紀委員No.2の梅村でさァ。趣味はテメーのようないけ好かない野郎を調教する事。
 とりあえずよろしく頼んますぜェ。」

「長志恋也――数ある俺の呼び名の中で、最もこの世界に近い名前だ。
 とびきりの親しみを込めて呼んでくれて構わない。
 なに、俺は寛大だからな。野牛が獅子に挑む愚を看過するくらい造作のない事だ」

悪意なき言葉が常に善良とは限らない
己の姿も 己の心も見えないのなら 人はどうして正しい言葉を紡げるだろうか

>「いいよ!お前らの意見、取り入れてやんよ!」

唐突に上がる叫び声 臆病者か老人の歩みのごとく 遅々として進まない会話を憤慨が打ち破る
ペンが走る音 加速 崩壊 統合 構築 創造主の手が言葉の瓦礫を解き明かし 組み立てていく

>「ほらよ!これでいいんだろ!」
>「メインは2つ!人間サンドバッグと水着相撲!どちらも参加料をとる!
 人間サンドバッグは俺がやんだろ!いいよ!入院ぐれぇ慣れてる!
 参加しない奴もそれを観戦しながらの喫茶軽食も楽しめる、ウェイトレスはスパッツ!
 ――ほらよ、これで満足か!?」

「なるほど、万能の名を冠する俺達にはうってつけのやり方って事か?
 いっそ国道沿いにでも開店した方が繁盛しそうだな」

数とは強さだ 数とは柔軟さだ 数とは万能性だ
切れる手札が無限にあり それを自由に選ぶ事が出来るのなら 決して敗北は訪れない

「まあ、任せておけ。この俺の美しさをこの学園中に知らしめてやろうじゃないか」

左手を腰に 右手の平を上に向けて肩の高さに 長身痩躯で曲線美を描く
男の気分は既にウェイター 水着相撲とサンドバッグの未来は どうやら完全に度外視しているようだった

290 :小羽 鰐 ◆DeLd.MSvGY :2011/09/27(火) 22:33:14.43 0

九條は相も変わらず己の欲望に忠実な代案を出し、
部長は、各々がフリーダムすぎる部員の意見に状況処理能力が限界なのか
『人間サンドバッグ水着相撲スパッツ喫茶』
などという、頑張りすぎて収集が付かなくなった地方の喫茶店の様な複合案を企画として出してきた。
そして、梅村はその混沌とした企画に同意をする様子を見せている。
長志に至っては、相も変わらず常人には読解が極めて難しい散文じみた台詞を放ちつつ、
何故かウェイターをやる気満々の様子でポージングを決めている。

要するに、ボケが多すぎて現在のN2DM部内は収集が付かなくなっているのである。
このまま行けば、なんやかんやで部長の出したカオス案を採用し、当日酷い目に逢ったりしたのだろうが――――

「……全部纏めるんだったら、変則的なコスプレ喫茶なんていいんじゃないっすかね」

この日は珍しく、机に突っ伏していたままの小羽が、部長の企画に対する対案を出してきた。
普段の彼女であれば、依頼遂行の内容には口を出さず、決まった計画を淡々とこなす筈なのだが……

「部員全員がコスプレをして、客はそれぞれの部員の指定した内容で勝負して、
 勝てたら飲食代無料。負けたら料金倍。そんな喫茶店っす。
 勿論、勝負内容は「人間サンドバック倒せなかったら負け」とかでもいいっす。
 水着かスパッツは……まあ、私が着てもいいっす。流石に、私なんかに需要は無いと思うっすけど」

抑揚無く、今にも欠伸でもしそうな様子で言葉を紡ぐ。
その内容は驚くべき事に、本当に驚くべき事に、九條の願望ですら是とし、
あまつさえ自分がその一端を担う事を厭わないという内容であった。
普段であれば、九條に存在を否定する様な瞳すら向けるであろうに、今回はそれも一切無い。
まるで全員の願いを組み込み叶え、この文化祭を心から楽しんで貰いたいとでも言うかの如き言動。

まるでツンからデレの移行期にすら感じられてしまうこの反応は、
普段の小羽を知る者からすれば、ある意味気味悪くすらあるかもしれない。

「……まあ。決めるのは部長っすから、私の意見は一つの提案くらいに考えて欲しいっす」

そう言うと小羽は定位置からゆっくりと立ち上がり、部室のドアへと向かい手をかける。
そこで一度振り返った、その表情は微笑。
といっても、瓶底眼鏡で目は隠れており見えているのは口元だけだが。

「私は今日は用事があるので、ここで失礼するっす。
 内容が決まったら携帯電話に連絡くださいっす」

そう言うと小羽は、これも彼女にしては珍しく、部活動の終わりすら待たずに部屋を出て行った。

――――――――

「……」

リノリウムの廊下。九月に入り日も短くなり橙色の日差しが差し込む様になった
人気の無いそこを小羽鰐は歩き……一度立ち止まり、ポケットに手を差し入れる。
そこから聞こえるのは、くしゃりとした紙の音。響きからするに、どうやら手紙大の紙の様だ。
それが間違いなく入っている事を確認すると、小羽は再び歩き出した。
目的地は、どうやら自室と化している宿直室――――

廊下に、人はいない。寂しいほどに。

291 :九條十兵衛 ◆mJkMShtvmg :2011/09/29(木) 02:27:44.04 0
>「いいよ!お前らの意見、取り入れてやんよ!」

ツッコミどころの嵐に耐えかねたのか、部長は弱キック(貧乏揺すり)によるゲージ溜めを完了して必殺技を放った。
そう!N2DM部のリーダーたるこの男にはッ!快刀乱麻の如く難題を破断する必殺の切り札があるのだ!

>「メインは2つ!人間サンドバッグと水着相撲!どちらも参加料をとる!
 人間サンドバッグは俺がやんだろ!いいよ!入院ぐれぇ慣れてる!
 参加しない奴もそれを観戦しながらの喫茶軽食も楽しめる、ウェイトレスはスパッツ! ――ほらよ、これで満足か!?」

必殺☆とりあえず自己犠牲。
……ときどきこの人、本気で殴られるのが好きなんじゃないかと疑りたくなるよ。
いや、この場合は僕らがあんまりにも苛めすぎたからムギャオーしちゃったとゆうのもあるんだろうけれども。

「うーん正直、部長がサンドバッグになっても悲壮感ありすぎてスカっとしないんじゃない?」

梅村くんに水を向けてみる。
いくら部長が殴られ慣れしているとは言え、なにせキングオブザぼっちと呼ばれたお方だ。
ウザキャラで通ってる人間ならまだしも、殴る側としても本気でかわいそうになってくるサンドバッグは如何なものか。

>「まあ、良いんじゃねぇですかィ。今回の依頼は何か達成条件があるわけじゃねぇし、自分達が楽しめればそれで良いでしょ。」

こいつ……正論言いやがった……! 一番常識的じゃない奴が!
ていうかこの内容で一人だけ楽しめないお方があらせられるんだけどそこについてはスルーなのね!

>「なるほど、万能の名を冠する俺達にはうってつけのやり方って事か? いっそ国道沿いにでも開店した方が繁盛しそうだな」

「メニュー増やしすぎて何がメインだか分からなくなった飯屋みたいだけどね。僕は蕎麦屋で食べるカレーが好きだよ」

彼は本気で言ってるのか皮肉で言ってるのかよくわからないけど、人間サンドバッグは確実に法律に抵触すると思う。
主に風営法あたりに。

>「……全部纏めるんだったら、変則的なコスプレ喫茶なんていいんじゃないっすかね」

と、ここでN2DM部のご意見番、小羽ちゃんが沈黙を破った。
部長が一緒くたにした闇鍋のような内容の企画案を、スマートな言葉で総括してくれている。

>「部員全員がコスプレをして、客はそれぞれの部員の指定した内容で勝負して、
 勝てたら飲食代無料。負けたら料金倍。そんな喫茶店っす。
 勿論、勝負内容は「人間サンドバック倒せなかったら負け」とかでもいいっす。

「お、おおー……」

流石は部長の首紐を握る影のドンだけあって舵の切り方が一級品だ。
その見事なプレゼンテーションに僕の営業としてのプライドが素直に関心する。
これなら風営法にも校則にも引っかからないし、人間サンドバッグ先輩にも若干の救いがある!
料金を賭けたギャンブル性も、癖者ぞろいのこの学園にあってはハートをグっとキャッチしてくれる『ウリ』になる。
そして僕が最も聞き捨てならなかったのは、その後に彼女が言った言葉――

>「水着かスパッツは……まあ、私が着てもいいっす。流石に、私なんかに需要は無いと思うっすけど」

「なん……だと……!?」

口に運ぼうとしていた羊羹がポロリと落ちて玉露の中に沈んでいった。

292 :九條十兵衛 ◆mJkMShtvmg :2011/09/29(木) 02:28:26.69 0
あの小羽ちゃんが……確かにスタイルはいいし、分厚い眼鏡の奥に隠された、インディ・ジョーンズが草葉の陰で泣いて喜びそうな
柳眉麗眼は侮れないし、というか寮の中で極秘に使いまわされてる女子生徒人気白書(2011版)でもかなりホットワードだけど!
僕の脳裏は!小羽ちゃんがスパッツを履いたことによる総攻撃力の上昇値よりも!ああそれよりも!!

「なんか悪いものでも食べたのか小羽ちゃん! だ、誰か出張保健棟の手配を……!」

あの小羽ちゃんが!僕の数々のセクハラを核汚染された性犯罪者を見るような目付きで黙らせていた小羽ちゃんが!!
そんな衆目に己の肢体を晒すような真似を肯定的に見るなんて、そんなの小羽ちゃんじゃないやい!
もしかして双子の妹とかいたりする?是非紹介してください!!

>「私は今日は用事があるので、ここで失礼するっす。 内容が決まったら携帯電話に連絡くださいっす」

そして、本日何度目かの驚愕。
席を立ち、部室の出入口まで歩いた彼女が振り向いたとき――小羽ちゃんは『笑っていた』。

いつも無表情で、動かすとすれば部長に対する罵りしかでてこないあの口が、きゅっと両端を上げていたのだ。
それはあまりに見慣れない表情で。

――ぞっとするほど魅力的な微笑みだった。

「……じゃ、じゃあ僕は喫茶に使う機材と食材を手配してきます。コーヒーはインスタントでいいですよね」

僕は部室に蔓延した妙な空気を払底するように腰を上げた。
購買部の問屋部門へ行って、文化祭用の食材を発注してこなくちゃならない。
喫茶店をやるなら、コーヒー・紅茶・軽食ぐらいは出せるようにするべきだろう。

「パスタとか、ピラフとか、冷凍のをチンして出すっていうのもアリですけど……誰か料理とか、できます?」

こういうのを一番ソツなくこなせそうなのはやっぱり小羽ちゃんなんだけど、彼女はウェイトレスに回したい。
となれば僕ら男手が裏方で料理とお茶を作らねばならないわけだけど、如何にも生活能力なさそーなのが4人。

「ちなみに僕はコンロを使う料理は目玉焼きしか作れません。包丁を使う料理はサラダまでです」

まあフツーに暮らしてれば親が作ってくれたり、僕らみたいに寮で食事が出てくるだろうからこの歳で料理スキルは珍しい。
僕の知り合いに"ほぼ鍵っ子"みたいな奴がいたけれど、インスタントがなかったら死んでたと豪語している。

「冷凍モノでもいいんですけどね、海千山千の模擬店ライバルと渡り合うには既製品より一味加えないと」

そりゃ、冷凍モノだけ食べるならわざわざ店で食わなくたって良いわけで。
コスプレ喫茶っていう付加価値を求めてみても、目下目玉商品が小羽ちゃん一人である以上、サイドアームも固めたい。

なんだかんだ言って、料理のマズいところに客はこないのだから。
秋刀魚の脂を吸った備長炭が、七輪のなかでパチリと音を立てて弾けた。

293 :部長:2011/09/30(金) 05:58:43.96 0
>「まあ、良いんじゃねぇですかィ。今回の依頼は何か達成条件があるわけじゃねぇし、自分達が楽しめればそれで良いでしょ。」
>「なるほど、万能の名を冠する俺達にはうってつけのやり方って事か?
> いっそ国道沿いにでも開店した方が繁盛しそうだな」
>「まあ、任せておけ。この俺の美しさをこの学園中に知らしめてやろうじゃないか」

「えっ」
うわ!こいつらわりと同意してやがる!
待て待て、俺がこんな訳のわからない企画を書き上げたのは別にやりたい訳じゃなく、
一緒くたにしてしまうことで自分達の挙げた提案の可笑しさに気づいて欲しかっただけ!
それなのに!おい!2人連続で肯定の意思表示が出てるんだけど!どうしよう!
本当に俺サンドバッグになっちゃうよ!そりゃ入院には慣れてるけどさ!
でもやっぱり怖いじゃん!あの庶務みたいなガチムチマッチョごろごろいるんだし!

>「……全部纏めるんだったら、変則的なコスプレ喫茶なんていいんじゃないっすかね」

平静を装いつつこのまま採択されてしまったらどうしようと内心ガクガクブルブルし、
最早何も言えない状態に陥ってしまっている俺の耳に入ってきたのは、クロ子の提案。

>「部員全員がコスプレをして、客はそれぞれの部員の指定した内容で勝負して、
> 勝てたら飲食代無料。負けたら料金倍。そんな喫茶店っす。
> 勿論、勝負内容は「人間サンドバック倒せなかったら負け」とかでもいいっす。
> 水着かスパッツは……まあ、私が着てもいいっす。流石に、私なんかに需要は無いと思うっすけど」

俺が出したぐちゃぐちゃにかき混ぜただけの案と違い、確りと料理のされている案。
ぐうの音も出ないというか俺がますます惨めに見えてくるのは気のせいだろうか。
コスプレ喫茶というのは古今東西学園祭の出し物としてはありだと思えるし、
それに勝負というエッセンスを加えることにより普通のコスプレ喫茶と一線を画す。
…あれ?俺の人間サンドバッグは確定なの?

>「……まあ。決めるのは部長っすから、私の意見は一つの提案くらいに考えて欲しいっす」
>「私は今日は用事があるので、ここで失礼するっす。
> 内容が決まったら携帯電話に連絡くださいっす」

「お、おう、お疲れ。また電話する」
背筋が凍るような微笑を見せて、部室を出て行くクロ子。俺は見送るしか出来ない。
それにしても…いやぁ、瓶底眼鏡をかけてくれていて本当によかった。
眼鏡のない状態で…あの瞳で笑顔とか向けられたらさすがの俺もヤバかったぞ。

「ともかく」
漂いかけた変な空気を一喝するように、俺は口を開く。
「クロ子の案でいいと思う。異論はないよな。あっても認めん」
いちいち議論するのは性に合わんのだ。それに珍しいクロ子の提案なら尊重したい。
あそこまで言ったのに「ごめん、お前の意見全部却下で」とかよくないと思うの。
「全員コスプレ、か。まぁコスプレの内容は各自考えてくれ」
コスプレ、の方はまぁなんとかなるとして、問題となると喫茶、の方になる訳だが。

>「……じゃ、じゃあ僕は喫茶に使う機材と食材を手配してきます。コーヒーはインスタントでいいですよね」

「まぁその辺の手配はお前に任せとけば抜かりはねぇだろ。頼りにしてるぞ営業担当」
俺には珍しくストレートな褒め言葉だが実際そうなのだから仕方ない。
変態でさえなければ尊敬に値する人物だと思っている。本当に、変態でさえなければ。

294 :部長:2011/09/30(金) 05:58:55.54 0
>「パスタとか、ピラフとか、冷凍のをチンして出すっていうのもアリですけど……誰か料理とか、できます?」
>「ちなみに僕はコンロを使う料理は目玉焼きしか作れません。包丁を使う料理はサラダまでです」
>「冷凍モノでもいいんですけどね、海千山千の模擬店ライバルと渡り合うには既製品より一味加えないと」

「料理っつっても、あんまメニューとか増やせねぇしな。予算そんなある訳でもないし、
 仕入れのこと考えてもある程度絞んねぇと、品切れるか在庫ロスになるか」
色んな品目があるのも結構なことだが、作るの手間だしそもそもそんなスキルはねぇ。
いっそのこと、料理は一品とかどうだろう。極限まで切り詰めに切り詰めると。
「んじゃ、カレーでも作るか。作り置きしとけば温めて盛り付けるだけで大丈夫だし、
 トッピングするだけで種類が増やせる。ハンバーグカレー、カツカレー…。
 トッピングに載せる奴ぐらいなら冷凍食品使ってもいいだろうし、楽だしな」
あとまぁいくらでもボッタクレるのである。ココイチとか酷いじゃん、あれ。
勝負で料金が変わる以上、多少負けが込んでも利益が出るようにはしたいもんだ。

「うし、とりあえず準備期間だな。文化祭当日は――いつだったっけか」
壁に貼られたカレンダーに目をやる。アイドル研から貰った知らないアイドルのやつ。
「一ヶ月後、か。まぁ準備期間としては十分だろ。わりとやることは多いけどさ。
 机とか椅子――はそこの教室のを流用するか。クロスつけりゃそれっぽく見える。
 あとは看板とか、食器の買い付け。食材の下ごしらえ――は当然直前になるけど、
 一応メインとなるカレーの味には拘らねぇとな。その辺はクロ子に任せてもいいし…」
色々やらなきゃいけないことは山積みだが、しかし俺はこの足である。
二、三週間は松葉杖なので、最悪普通に歩ける頃には残り一週間切ってるかもしれん。
荷物持ちすら出来ないんだよなぁマジで。どうしようかな。いやさ、俺部長じゃん。
部員のみんなが頑張ってんのに俺だけ何もしないってのも良くねぇじゃん。
とは思うけど実際何も出来ないのは確かな訳で。ふむ、俺が無力なのはいつもの事だが。

「とりあえず俺は企画書纏めて生徒会に提出。ここに居ない面子には連絡入れとくわ。
 メニューはほぼ一品のみだし厨房担当は1人でも大丈夫だと思うから、あとは
 ドリンク担当がいれば残りは配膳に回れて、人手は少ねぇけどなんとか店は動くか。
 まぁそのなんだ、みんな頑張ってくれ。つーことで――解散」
それぞれが自分が考える自分の仕事をこなすために、それぞれの行動を開始する。
俺はとりあえず余分に貰っといた文化祭出店申請企画書を取り出し、記入する。
俺、字きったねぇなー。

「もしもし、クロ子か?俺俺。んーと、かくかくしかじかってことになったから。
 あー、んでもって別にスパッツとか水着とか、無理に着なくてもいいからな?
 そういうのは全部QJに任せとけば良いわけだし。コスプレっつっても、
 ほら、メイド服とかそういう露出が少ないのとかさ!どうだろ!」
一方的に通話を切る。なんかクロ子の態度が変だった気がするので気配り気くばり。
別に俺がメイド服が大好きとかそういう下心はあんまりないので誤解しないように!

――一ヶ月は、短い。

295 :ぶちょー:2011/09/30(金) 06:02:48.40 0
http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1317330091/

一応次スレ立てたけどこのスレ使い切ってから移動してね!

296 :梅村遊李 ◆89ggxEkiHQ :2011/09/30(金) 21:02:07.78 O
>「まあ、任せておけ。この俺の美しさをこの学園中に知らしめてやろうじゃないか」
「美しさじゃなくて馬鹿さ加減の間違いだろィ。」
このナルシスト野郎、いちいちムカつく発言をしやがる。
コイツぁ瓶底眼鏡以上に気にくわねぇぜ…。

それにしても、旦那の提案に乗っかってやったのに何で旦那は「えっ」て顔をしてんでィ?

>「……全部纏めるんだったら、変則的なコスプレ喫茶なんていいんじゃないっすかね」
>「部員全員がコスプレをして、客はそれぞれの部員の指定した内容で勝負して、
> 勝てたら飲食代無料。負けたら料金倍。そんな喫茶店っす。
> 勿論、勝負内容は「人間サンドバック倒せなかったら負け」とかでもいいっす。
> 水着かスパッツは……まあ、私が着てもいいっす。流石に、私なんかに需要は無いと思うっすけど」
旦那の提案でほぼ可決かと思われたその時、瓶底眼鏡が新たな提案を出した。
>「……まあ。決めるのは部長っすから、私の意見は一つの提案くらいに考えて欲しいっす」
>「私は今日は用事があるので、ここで失礼するっす。
> 内容が決まったら携帯電話に連絡くださいっす」
しかも提案を出すだけ出して本人は真っ先に帰りやがった。
しかも飛びっきりの気味悪い微笑を見せて…何だっていうんでィ…まったく…。
>「ともかく」
瓶底眼鏡の微笑を見た後の部室内の妙な空気を取っ払うように旦那が口を開いた。
>「クロ子の案でいいと思う。異論はないよな。あっても認めん」
異論があっても認めないなら最初から聞くなよ…。
何だかんだ言ってこの人も結構ツッコミ所が多い人だ。
コスプレの内容は各自考えておけって言われてもコスプレなんかした事もねぇから衣装も無ェんですが……。
後で山崎にでも相談してみるか…。
>「……じゃ、じゃあ僕は喫茶に使う機材と食材を手配してきます。コーヒーはインスタントでいいですよね」
>「パスタとか、ピラフとか、冷凍のをチンして出すっていうのもアリですけど……誰か料理とか、できます?」
>「んじゃ、カレーでも作るか。作り置きしとけば温めて盛り付けるだけで大丈夫だし、
 トッピングするだけで種類が増やせる。ハンバーグカレー、カツカレー…。
 トッピングに載せる奴ぐらいなら冷凍食品使ってもいいだろうし、楽だしな」
ふっ……まさかこんな所で俺の料理スキルを披露する時がこようとはねィ…。
しかもカレーを作るときたもんだ。

297 :梅村遊李 ◆89ggxEkiHQ :2011/09/30(金) 21:04:50.00 O
こりゃ俺に戦闘以外でも見せ場を見せろっていう神からのメッセージか?
やってやろうじゃねぇか、魅せてやるよ俺の完璧なるカレーを。
>「うし、とりあえず準備期間だな。文化祭当日は――いつだったっけか」
>「一ヶ月後、か。まぁ準備期間としては十分だろ。わりとやることは多いけどさ。
 机とか椅子――はそこの教室のを流用するか。クロスつけりゃそれっぽく見える。
 あとは看板とか、食器の買い付け。食材の下ごしらえ――は当然直前になるけど、
 一応メインとなるカレーの味には拘らねぇとな。その辺はクロ子に任せてもいいし…」
「ちょっと待って下せェ旦那。カレーは俺が引き受けましょう。
 おっと、心配は無用でさァ。最高のカレーを披露してやりますよ。」
旦那の疑いの眼差しが突き刺さる。
だが、俺の絶対的な自信を感じとったのか…疑いながらも渋々了承してくれた。
見てな旦那…一カ月後にはその疑いの眼差しを感動と尊敬の眼差しに変えてやるぜィ。
>「とりあえず俺は企画書纏めて生徒会に提出。ここに居ない面子には連絡入れとくわ。
 メニューはほぼ一品のみだし厨房担当は1人でも大丈夫だと思うから、あとは
 ドリンク担当がいれば残りは配膳に回れて、人手は少ねぇけどなんとか店は動くか。
 まぁそのなんだ、みんな頑張ってくれ。つーことで――解散」
部室を出た俺は山崎に連絡し、コスプレの衣装を準備してもらうように頼む。
とは言え俺はカレー作りがメインなのでコスプレをするか否かは微妙な所だが…。
まあ、早く作り終えたらコスプレしながら客と勝負すんのも面白そうだ。
何より、勝てば倍の料金を得られるってのは素晴らしいルールだ。
クックックッ…この大金ゲットのチャンスを逃す手はねぇや。
最高のカレー作りと客から大金を巻き上げるのが今回の俺の役目か…面白くなりそうだ。

298 :長志 恋也 ◆4PYkPn.guGfT :2011/10/02(日) 15:59:31.44 0
>「……全部纏めるんだったら、変則的なコスプレ喫茶なんていいんじゃないっすかね」

時計を飲み込んだ鰐が口を開く 解き放たれたのは過去に研ぎ澄まされた牙ではなかった
獅子座卿を自称する男の両眼が正しく獅子のように見開かれる 
驚愕が見えざる手となり男の首を締めて呼吸の権利を奪った

>「……まあ。決めるのは部長っすから、私の意見は一つの提案くらいに考えて欲しいっす」

去り際に残された微笑みは魅惑ではなく驚愕の弾丸となり 男の元より幾許もない平常心を粉々に撃ち砕いた

「おい、創造主様。悪いが火急の依頼だ。――幽霊退治をしてもらえるか。ありゃ何か悪い者が取り憑いてるに違いない」

時代遅れの冗談と共に 体内を這いずり回る悪寒の蠕虫を残さず吐き捨てる

>「ともかく」「クロ子の案でいいと思う。異論はないよな。あっても認めん」
 「全員コスプレ、か。まぁコスプレの内容は各自考えてくれ」

「ふん……衣装なんぞに頼らずとも、俺達は誰もが仮面《ペルソナ》を被って生きているだろうに」

十七年間の歳月が創り出した大いなる自我の車輪は たった一発の弾丸で崩壊するほど脆くはない
僅か数秒でいつも通りの回転を取り戻し 全身で曲線美を描きつつ右手で髪を掻き上げ 平常運転を再開

>「……じゃ、じゃあ僕は喫茶に使う機材と食材を手配してきます。コーヒーはインスタントでいいですよね」
>「パスタとか、ピラフとか、冷凍のをチンして出すっていうのもアリですけど……誰か料理とか、できます?」
>「冷凍モノでもいいんですけどね、海千山千の模擬店ライバルと渡り合うには既製品より一味加えないと」

「コーヒーならこの俺が作ってやってもいいぞ。身嗜みとして一式揃えたはいいが、あの苦味は十年後の楽しみとして永眠願いたいところだったんでな」

男にとっての身嗜みとは 思想 嗜好 過去 未来 全てを意味する言葉だった
悪魔の漆黒 接吻の甘美 地獄の灼熱 それらが同居する混濁を好む姿勢さえも ダンディズムを装う為の 化粧に過ぎない

>「料理っつっても、あんまメニューとか増やせねぇしな。予算そんなある訳でもないし、
 仕入れのこと考えてもある程度絞んねぇと、品切れるか在庫ロスになるか」
>「んじゃ、カレーでも作るか。作り置きしとけば温めて盛り付けるだけで大丈夫だし、

男は暫しの黙考 卓越した想像力の根を未来に向けて張り巡らせる

>「とりあえず俺は企画書纏めて生徒会に提出。ここに居ない面子には連絡入れとくわ。
 メニューはほぼ一品のみだし厨房担当は1人でも大丈夫だと思うから、あとは
 ドリンク担当がいれば残りは配膳に回れて、人手は少ねぇけどなんとか店は動くか。
 まぁそのなんだ、みんな頑張ってくれ。つーことで――解散」

「ちょっと待った、だぜ。創造主様。ついでに営業担当、お前もだ。想像力を働かせないと頭が錆び付くぞ。
 コーヒーにしてもそうだがな、俺達にはこれと言ってオンリーワンの一品が出せない以上、細やかな気配りを売りにした方がいいんじゃないのか?
 カレー一品じゃ昼時以外に来店したお客様には、ご満足頂けないだろう。盛者必衰の理からは、出来れば逃げ切りたいもんだ」

男は己の特異点である想像力を 衣装のように纏う
献身的でお客様第一のウェイター気分で思考の歯車を巡らせていく
所謂 ロールプレイの開始

「生き様は不器用極まりない俺達でも、サンドイッチや握り飯のような軽食くらいは作れるだろう。
 食事の前に運動をしているんだから、ドリンクもそれに合わせて考えた方がいい。
 カレーも重すぎず辛すぎずに留めるべきだろう。あの猛牛男に誰か伝えておくんだな
 品切れや余りが怖いなら、軽食は時間帯を制限するか、いっそ売り切り御免とすればいい」

建設的思考をファッションとして身に付けて 男は滔々と語る

「まあ、最終的な判断はお前らに任せるさ。こんな事で長考するのは性に合わないんでな。俺は精々、衣装の調達にでも時を費やすさ」

身を翻し 背中越しに落葉を思わせる所作で右手を振って 理想郷を後にした

299 :小羽 鰐 ◆DeLd.MSvGY :2011/10/02(日) 22:50:53.94 0

「後一ヶ月……っすか」

現在は使用されていない宿直室。今や私室と化しているその部屋の中で、
古めかしい室内に敷かれた布団の上に寝転がりながら、小羽はそう呟く。
視線の先には、昨年の園芸部が無料で配っていたカレンダー。
そのカレンダーが表記する数字の一つに付けられた丸。つまりは文化祭の決行日である。

暫くそれを見つめた小羽は、わずかの間寂しげな顔をすると、
無造作に置いてある収納用の段ボール箱から、入院患者が着る様な
水色の寝巻きを取り出し、学校指定の服を脱ぎ……そこで鳴り響いた電子音にその手を止める。
電話とメールの機能以外持ち合わせていない骨董品の様な携帯電話、その薄緑色の古臭い液晶画面に
表示されていた名前は、N2DM部の部長のものだった。
小羽は、特に考える事も無くその電話を受ける。

「……あの企画、通ったっすか。良かったっす。
 それで機材と食材の担当は九條さんで、企画申請及び書類管理が部長、調理は梅村さん、
 長志さんは飲み物及びコーヒーの発注。私は総合的な補助になった訳っすね。
 九條さん長志さんは特に問題ないっすし、適任だと思うっすけど……梅村さんが
 心配っすね。あの人、前回の鍋の事を考えると、カレーに変な物入れかねないっすよ?」

そこまで言って一呼吸置き、小羽は思案を巡らせる。

「……そうっすね。本来は私が手伝うのが一番簡単だとはおもうっすけど、
 残念ながら、今回は部員の皆さんが用意する備品の管理と会計、その他雑務で手が回らないと思うっす。
 だから、長志さんにも料理補助に行ってもらって、部長が手の空いてる時に味見なりしたらどうっすかね?」

部長から知らされた決定事項に、積極的に意見を出す小羽。
いつもなら「そうっすか。了解したっす」とやる気無く行って眠る様な彼女だが、
どうやら今回の文化祭にはかなり気合が入っている様だ。

「……部長の趣味がメイド服なのは判ったっすけど、私に着せても映えないと思うっすよ?
 どうせ着せるならあの生徒会長さんに頼み込んだらど――――」

小羽がそう言い掛けた所で、通話が切れた。
趣味を暴露したのが恥ずかしかったのかどうかは定かではないが、ツーツーと鳴り響く音に、
肩を竦めつつ、小羽は携帯電話を充電器へと戻した。そして、小さく呟く


「……メイド服の下にスパッツっすか」


―――― 一ヶ月は短い

だが、その短い間でも時間を有効に使えば行える事は山の様にある。
この準備期間において、小羽は与えられた仕事はそつなくこなし、
与えられていない仕事にも、援軍として率先して参加する事だろう。

とにかく。小羽鰐は、こんかいの文化祭を成功とすべく全力を尽くす。

300 :九條十兵衛 ◆mJkMShtvmg :2011/10/04(火) 04:11:33.04 0
飲食経営の基本中の基本中だけれど、食材の廃棄(ロス)を減らすためには仕入れのコントロールが重要だ。
多すぎず少なすぎずの需要のラインを見極めることももちろん大事だが、そこにもうひと工夫加えてやる。
各種料理の間で、余剰分の食材を使いまわせる体制をつくること――食材の汎用性を高めるのだ。

当然ながら、発注する食材の種類は少ないほうが良い。
種類が多様であればあるほど、工程が複雑であればあるほど、素材を余らせるリスクが増大するからだ。
特に長期の経営を見込めない3日限りの学祭模擬店では、決められた期間できっちり売り切ることがより必要とされる。
利率向上のキモは、如何に少ない食材で多彩なレシピを演出するかにある。

>「んじゃ、カレーでも作るか。

部長の提案はまさに模範解答。
カレーはパスタとかと違って付け合せで色々変えられるから、米とルーを大量に注文しておくだけで良い。

>「生き様は不器用極まりない俺達でも、サンドイッチや握り飯のような軽食くらいは作れるだろう。

何より素晴らしいのは、カレーに付け合わせるものって基本的に一品でも料理になるカツレツとかだから、
時間帯でカレーの売れ行きが落ちてきてもトッピングを他の軽食に使いまわせるのだ。
カツレツはカツサンドに、ハンバーグはハンバーガーに、といった具合にである。

図ってか図らずか全力で利益追求に傾注することとなった僕達は、役割分担を決めて解散と相成った。
というわけで僕は機材と食材を手配するべく、学園の生産学科に買い付けに訪れたのだった。

「はい、米とカレールウ、それからチルドのお惣菜各種ですね。納品はひと月後。承りました」

購買部から生産学科に出向しているブローカーと商談をつける。
幸いにも僕らは早い段階から模擬店の中身を決められたので、値上がり前の安値で購入することに成功した。
これが文化祭一週間前とかになると、みんなこぞって食材を買い付けに来るから混雑するし、需要に合わせて価格も上がるんだよね。
なるべく買い足さずに済むように多めに発注しておいたから、余剰分は他の模擬店に横流ししても良いかもしれない。
純正の高い食材より安値で取引しても、十分利益の出る計算だ。ビジネスのチャンスだぜ。

「……ああ、それからスパイスをいくつか用意できるかな」
「スパイスですか。ナツメグからコアントローまで取り揃えてますけど、ルウを使うのでは?」
「うちの戦闘担当がカレーに造詣深いらしくてね。どうせならオリジナルのカレーにも挑戦させてみようと思って」
「強気な経営ですねえ」
「期待されてるからね。あんな一等地貰っちゃあ、男の子たちは張り切るしかないのさ」

これまでずっと逆境だったN2DM部が、初めて歓迎された状態で何かを為せるのだ。
小羽ちゃんも張り切ってるし、今回部員のみんなが全体的にテンションがおかしい。
……これがお祭り感覚ってやつなのかな。
楽しくて、そわそわして、どこか胃袋が空回りしてるような、浮き足立つ感じ。

そうだ。喫茶でやる勝負の内容も考えとかなきゃな。
利きスパッツなんてどうだろう。いやさそこまでキワモノに傾かなくても、純粋にトランプやUNOで遊んでも良い。
『しろくろ!』のデモンストレーションとかもできそうだ。

ああ、パーティの接待側になるっていうのはわくわくするなあ。
勝っても負けても楽しい戦いというものを、僕はこれまでとんと知らなかったから。
水面下で何かが終わり始めていて、取り返しがつかなくなってしまっていっていることに気づかなかった。

――牙の抜けた獣がどういう末路を辿るかなんて、簡単に想像できたはずなのに。

一ヶ月は、短い。



【学園TRPG――つづく】

次スレ
http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1317330091/

501 KB [ 2ちゃんねる 3億PV/日をささえる レンタルサーバー \877/2TB/100Mbps]

新着レスの表示

掲示板に戻る 全部 前100 次100 最新50
名前: E-mail (省略可) :


read.cgi ver 05.0.7.9 2010/05/24 アクチョン仮面 ★
FOX ★ DSO(Dynamic Shared Object)