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ファンタジーロボット大戦2

1 :名無しになりきれ:2010/07/14(水) 14:04:27 0
時はネフティス歴845年、時の精霊ネフティスに、感謝の意を込めて制定された暦も、800年以上の時を刻んだガイネア
その西部に位置するエウロペア大陸。
西部にある神聖ローガンブリア帝国と東部にあるティルネラント王国との間では、数年前から小競り合いが頻発していた。
両国間の関係は悪化の一途を辿り、本格的な戦争が始まるのも時間の問題ではないかと、ささやかれ始めたころ。
帝国内では王国軍の侵攻に対して、精霊兵器で構成された義勇軍が結成された。
物語は、とある没落貴族の少年が戦争で名を挙げて、過去の栄光を取り戻そうとするため、義勇軍に参加しようと、義勇軍本部がある街、ロンデニオンにやって来たところから始まる

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
舞台は人と精霊が存在する世界、ガイネアの西方に位置し
神聖ローガンブリア帝国、ティルネラント王国、ファールデル教国の3国が存在するエウロペア大陸が舞台

簡単なルール
決定リールあり、後手キャンセルあり
名無し参加なし、敵役のみの方歓迎
途中参加大歓迎!
バランスは考えてください

2 :名無しになりきれ:2010/07/14(水) 14:05:58 0
テンプレ&設定
人物設定
名前
年齢
性別
容姿
体格
性格
身分
所属 (神聖ローガンブリア帝国義勇軍、ティルネラント王国軍、ファールデル教国傭兵隊、それ以外)から選択してください
説明

機体設定
機体名
精霊の種類
精霊の名前
精霊力(エネルギー)一般的な精霊兵器が2000程度
耐久力 (S〜すごい、A〜結構いい、B〜いい方、C〜普通、D〜ちょっと苦手、E〜苦手、G〜最悪)
運動性
装甲
武装
機体&精霊説明

世界設定
人と精霊が存在する世界、ガイネアにある
文明としては精霊文化以外は中世地球文明に準じる
精霊設定
精霊は世界中のありとあらゆるものに存在し、宿っている
契約することによって使役することが出来る。契約した精霊を物に宿すことによって、機械を動かすエネルギーとしての面もある
精霊兵器は精霊のそういった部分を活用している
人工物には精霊は誕生しにくい、ある程度の時が経ったものや、人の思いが集中したものには、物の精霊が誕生する
精霊にも、ランクが存在し、下位の精霊は一般人でも多く使役出来るが上位になればなるほど、使役出来るには、ある種の心の強さが必要になってくる。自分の限界を超える量やランクの精霊を操ろうとしたら、心に異常をきたし、最悪、死に至る
しかし、精霊の方から協力してくれる場合はその負担は少なくなる
また、精霊を使役することによって精霊魔法とよばれる能力で超常現象を起こすことができる
舞台
神聖ローガンブリア帝国、ティルネラント王国、ファールデル教国の3国が存在す
るエウロペア大陸が舞台
世界にはほかにも大陸や島国が存在している

国設定
神聖ローガンブリア帝国
皇帝アーネス3世が統治する、エウロペア大陸西部にある国
建国から400年以上経ち、豊かな国土と温暖な気候とで平和な国として栄えて来たが、最近ティルネラント王国との小競り合いが絶えない(味方)

ティルネラント王国
ペネロペ女王が統治する大陸東部の新興国家、小国が散在し群雄割拠の大陸西部を十数年で武力により統一した軍事国家
最近、帝国に小競り合いを仕掛けている(敵)

ファールデル教国
教皇タチバナノスクナが治める宗教国家、大陸南部に位置する
正義の精霊セイティスを信仰するセイティス教の総本山がある国、国を挙げて傭兵稼業をおこなっている
初代教皇ファールデルにちなんでファールデルを国号にしている(中立)

質問待ってます

3 :名無しになりきれ:2010/07/14(水) 14:06:56 0
TRPG参考サイト
千夜万夜
PC:ttp://verger.sakura.ne.jp/
携帯:ttp://verger.sakura.ne.jp/top/top.htm

最近アクセス規制が多いので代理投稿スレも活用してください
ttp://yy44.60.kg/test/read.cgi/figtree/1270477718/

避難所(質問等はこちらへ)
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/computer/20066/1273290591/

4 : ◆a.mi.go/2U :2010/07/17(土) 05:50:51 0
ごめんよ

5 :アデラ ◇D35J0dU8pk :2010/07/19(月) 22:44:16 0
>324 
>「ほんは、はひーはいははいほはほ(そんな、マリーはいらない子なの)?」 

「それを今から判断するんだよお嬢さん。 
 我々にとって有用か、そうでないかをじっくりと!隅々まで!心ゆくまで!精根尽き果てるまで!」 

アデラはマリーウェザーの頬を縦に横にとしばらく弄んでいたが、そのうち気づいたことがある。 
きめの細かい玉のような肌。 
整った顔の造詣。 
入念に手入れされた赤い髪。 
衣装は東洋風の見慣れないものであったが、生地はしっかりとしていてその意匠も豪奢かつ華麗である。 

ローガンブリア、ティルネラント、どちらの出身であるとしても、貴族の血統には違いないだろう。 
義勇軍兵士に連れていかれるマリーウェザーを見ながら、アデラは近くにいたもう一人の兵士に言伝した。 

「手荒にするなよ。彼女の身元次第では、交渉材料に使える可能性がある」 

>兵士A「あの…アデラさん…今聞いた話は、墓場まで持って行きますから」 

「心づかい感謝する。 
 だが、私もそれほど気に病んでいるわけじゃないんだ。月のアレもないから楽なもんだよ」 

下ネタを自然に垂れ流しながら、アデラは朗らかに微笑む。 
彼女だって隙あらば、抱えた設定を暴露してやろうと思っていたのだからして。 
そして目的が果たされた今、わりとスッキリしてしまったのである。 

「それに、いざとなれば養子という手もあるしな!」 

サムズアップで爽やかに言い放つと、アデラは駆け出していた。 
搭乗機であるコルバス・コラックスの調整が終わり次第、即出撃の可能性がある。 
精霊機の担当技師にメンテナンス終了までの時間を確認しなければならない。 

6 :アデラ ◇D35J0dU8pk :2010/07/19(月) 22:45:56 0
(翌日) 

>319 
ルーシ鉱山地下道より、ティルネラント王国の奇襲を抑えた翌日のことである。 
義勇軍は本拠地奪還のため、ロンデニオンへの攻撃を開始。 
そして、アデラ率いるレイヴン隊に与えられた任務は、空中戦艦スレイプニルの護衛であった。 
無論、隊の飛行能力をかわれてのことである。 

「何度見てもデカいな」 

精霊機コルバス・コラックスに搭乗し、艦の横につけて飛行していたアデラは、スレイプニルの巨体を横目に呟いた。 
スレイプニル艦首に設けられた主砲は強力な遠距離攻撃を可能としており、大出力の熱線を受けたものは例外なく破壊されることだろう。 
――件の精霊機エンマのように。 

「とにかく、スレイプニルを有効に運用できれば我らの勝利は堅い。 
 レイヴン隊、油断なく周囲を警戒せよ。この戦艦が今作戦の鍵だ」 

その言葉通り、レイヴン隊の面々は戦艦側面・前方上空をすっかり固めている。 
しかし。 
スレイプニルの第一射は、自陣の最前線――昨日から義勇軍に編入された帝国軍将校機をなぎ払っていた。 

「……自、自陣前線に熱線照射を確認」 

義勇軍の念導会話は混乱した。 
一体何が起こったのか。 
アデラは混乱と驚愕を理性で押さえ込むと、念会話のチャネルを素早くスレイプニル艦橋へと切り替えた。 

「こちらレイヴン1、アデラ・グラーフストレーム。 
 スレイプニルの射撃が味方機に命中したのを確認した。 
 誤射か。機器の不具合か。砲手と使役精霊の様子は。 
 スレイプニル、応答せよ」 

早口でまくし立てるような通信内容。 
何か、何か嫌な予感がする。 
アデラの頬を冷や汗が伝った。 

【アデラ : 戦艦スレイプニルに事態を確認】 

7 :アデラ ◇D35J0dU8pk(代理):2010/07/21(水) 14:14:49 0
>前スレ327
> 「アデラさん、とりあえず今はゆっくりしましょう。戦闘は他の人に任せて、次に備えましょう」

レオンの優しい言葉に、だがアデラ・グラーフストレームはかぶりをふった。

「ありがとう。 しかし、そうもいかないようだ」

今、アデラはメンテナンス中の精霊機コルバス・コラックスの操縦席にいる。
再び戦場に、と息巻いて自機の調整終了を待っていた女傭兵であったが、どうやら戦局は一段落ついたようである。

街中に鳴り響いていた警報が止み、義勇軍の精霊機が次々と帰還してきている。
これはつまり、今回の奇襲――その主体は様々であったが――を何とか凌いだということだ。

「キミの言うとおりゆっくりしたいところだが、私は今から義勇軍本部に出頭して次回作戦の指示を受けるよ。
 今戦闘によって状況は大分変わった。
 把握することが増えた」

例えば、奇襲による味方の被害状況。
援護に現れた帝国軍の規模。
地下道の調査とティルネラント側の認識。
以上の情報如何によっては、ロンデニオン奪還作戦に修正が入るかもしれない。

「新しい作戦の通達前に、話に割り込んでおきたくてね……。
 隊長職の癖かもしれないが、部下に命令するとき、その言葉に裏づけが欲しいんだよ。
 ……まぁ、自己満足に近いと言えばそうなんだが」

アデラは少し苦笑する。

「キミこそ、少し休んだらどうだ。どうせ明日からは、また馬車馬のように働かされるんだからな!」

一通りコルバスの基本動作を確認したアデラは、操縦席を飛び降りて義勇軍の作戦本部へ足を向けた。
背後にいるレオンに手を振るのも、もちろん忘れなかった。

・・・

「主力部隊がロンデニオン正面、助攻部隊が地下道を通って奇襲の線はかたいかな……」

アデラは歩きながらひとりごちた。
義勇軍に待つという選択肢はない。
ロンデニオンに駐留するティルネラント軍には、後背から増援が迫っているのに違いないのだから。
そして義勇軍の作戦の肝――地下からの奇襲の成否は、主力部隊がどれだけ敵主力をひきつけられるかどうか、これに尽きるだろう。
敵にがっちりと守備を固められては、奇襲部隊は敵の真中にひょっこり現れる形になる。

『 Pray 』(祈れ)

相棒の精霊フギン=ムニンが無責任に呟く。
彼の言うとおり、この謀、どちらに傾くも五分五分といったところ。
偉大なるセイティスよ、我らに正義を。

【アデラ : >6に続く】

8 :ヨハンナとパティ ◇/23EAU3tOg (代理):2010/07/21(水) 14:18:30 0
「えっ、ちょっ、ちょっと…」『マリーちゃん、マリーちゃん』
レゾナンティウスはさっきの青年に気をつけろと忠告するつもりだったのだけれど…
「うるさいうるさいうるさいー!」『ひデぶっ!』
マリーウェザーのやり場のない気持ちがレゾナンティウスに炸裂する!

「(ファーブニールって、このまえのぼっちゃん?ナニしにきたの?まさか…)」
”戦場で女の子がなにを目指すんだよ”というレオンの言葉がマリーの脳内をかすめた。
「(さっきのもなれなれしかったし、コイツはいきなりだきついてくるし…
 二人っきりだし、”キミがムリョクな女の子だってことをおしえてやる”とか…!)」

旅芸人のお姉さま方と親しかったマリーウェザーはけっこう耳年増だ。
義勇軍のモラルの高さなんてマリーは知らない。背筋が凍った。
なんともいえない空気が部屋の中を流れて…

「(いけない、セッテーではあのとき会ってないはずなんだった)」
はっと気づいたマリーはおどろおどろしい様子…しかしどこか間抜けな様子…を作って。
「おにーさん…セナカにワルいセーレーが…っておもったんだけど、
 うゆゆ…みまちがいだったみたい。てへっ☆」

「そんなことよりさ、アデラママはだいじょうぶだったの?」
問いかけるマリーは、距離を置くためにレオンの対角線へと移って。
その後もどこかぎこちなく応じるマリーだった。



翌日。朝食を摂ってから数時間経ち、ようようお腹もこなれてきたころ。
マリーウェザーは今日も”取調室”に軟禁状態されていた。
朝食には青年も同席し、その後も色々話したけど、彼が出て行ってからもうだいぶ経つ。

「はぁ、たいくつ…」
『(ヨハンナちゃんのお利口タイムももう限界かな…)』
レゾナンティウスの読み通り、マリーはキツネのぬいぐるみを抱いて唱えた!

「パシュペリキャメリン、プミポンっ、パーミラィオンっ♪」
宿舎の中でぬいぐるみが精霊機になるとどうなるか、答えは明白。
ぬいぐるみを中心とした光の渦は屋根を突き抜け、クレハ・ラクシュミーの姿を現した。

「ヒトはパンのみにて生きるにあらず!デザートも出ないなんて、ギャクタイだよっ!
 はぁー、すっきりした。なんではじめからこうしなかったんだろ」
『(きっと、今の今まで忘れてたんだよね)』
マリーだって連行されて気が動転してたんだから仕方がない。

「どっちに行こう…うん、せっかくだから、マリーはあの赤いタワーをえらぶね♪」
クレハ・ラクシュミーに乗ったマリーは、義勇軍基地から飄々と飛び去った。
こんなことは義勇軍の想定の範囲内なのだけれど、マリーはそれに気づいてなくて…!?

【レオンをめいっぱい警戒しながら面会に応じる。翌日、宿舎を突き抜けて脱走】
【基本ステータス:
  ttp://verger.sakura.ne.jp/top/genkousure/fr/tenpure.htm#yohanna
身分偽称など:
  ヨハンナ・トデスキーニ => マリーウェザー
  ハウリンティウス16世 => レゾナンティウス
  ティアリア・ドラウパディー => クレハ・ラクシュミー
    (ウサミミ妖精 => キツネミミ妖狐)】

9 :フィリップ ◇i3/u6CmHbc (代理):2010/07/21(水) 14:26:04 0
セラとの遭遇(前スレ301)の後、セラのイグニスに従って地下道からロンデ二オンに出たフィリップはロンデ二オンで機体の修理を受けると、正式にティルネラント軍に編入され、ロンデ二オン防衛部隊の指揮下に入った。

第二次ロンデ二オン攻防戦は両軍主力の会戦というありふれたかたちで幕を開けた。
地上の義勇軍の主力を援護すべく、上空から航空戦艦が護衛の航空精霊機の群れを引き連れて飛来するのも、このような大規模な戦いではそう珍しいことではない。
都市の防空システムが敵の航空戦力にいくらかの打撃を与えるのもいつも通り。
このありふれた戦場の風景に、王国軍によって罠が仕掛けられていることを何人の人間が知っていただろうか?

ありふれた戦況に王国軍が仕掛けた罠
―戦艦スレイプニルの裏切り―

罠かかった獲物を仕留めるべく、鋼鉄の鎧を纏った狩人達が飛び立つ。
そのなかに愛機スィゴーニュを駆るフィリップ・アルザスの姿もあった。
【フィリップ、王国軍航空部隊とともに出撃】

10 :スレイプニル ◆eqAqXE3VMc :2010/07/21(水) 16:26:31 0
>6
>「こちらレイヴン1、アデラ・グラーフストレーム。スレイプニルの射撃が味方機に命中したのを確認した。
>誤射か。機器の不具合か。砲手と使役精霊の様子は。スレイプニル、応答せよ」

「私はスレイプニル艦長、サマウス・シセンサー。これは誤射でも機器の不具合でもない。
我々の意志である。戦争の火種となっている義勇軍を殲滅すること。それが限りなく和平への近道だと私は考えている。
…君たちにも大義があろうが、どのみちそれを成すためには審判を受けなければならぬ…。
その審判は時を超え古から現れた、この帝国戦艦スレイプニルに下してもらおうではないか」

艦長の念会話が終了した直後、義勇軍にむけての戦艦スレイプニルの攻撃が始まる。

「精霊パルス送信、ジャミング開始!同時に迎撃圧縮砲発射!」
サマウス艦長の下、教科書通りに展開される操艦術に艦の護衛をしていたレイヴン隊は不意をつかれる形となった。

前スレ>328
空に散る義勇軍の精霊機たち。
サマウスは己の裏切り行為に手を小刻みに震わせながら珈琲を飲んでいた。
「…これは戦争を早く終わらせるためなのだ…」と自分に言い聞かせながらもその表情は空漠としている。

「艦長!前方より熱源反応あり!本艦に向け高速接近中!」
オペレーターの叫び声でサマウスはふと我にかえった。

「迎撃しろ!!」
「ダメです!迎撃圧縮砲網突破!艦橋に突っ込んできます!」

「機関全速!最大戦速!回避運動に移れ!」
「間に合いません!衝突まで後10秒!」
「ぐ!!」

ずり落ちていく艦橋。

強襲迫撃艇「サイカ」から射出された謎の精霊機の長物がスレイプニルの艦橋を一刀両断したのだった。

首を斬りおとされた巨大な戦艦は意志を失ったかのように空中を少しばかり前進すると、
けたたましい轟音とともに大地を削りながら不時着する。

【スレイプニル轟沈】

11 :エルトダウン ◆iGrjUqKhz2 :2010/07/21(水) 17:02:37 P
先刻から何度も砲撃の音が鳴り響いていたが、その轟音を最後に砲撃は鳴り止んだようだった。
地上に落下するスレイプニルを横目にエルトダウンとサイアニスはロンデニオンの中央部へと移動していた。

「思ったより妨害が少ないね。目標の大型精霊機も補足している、すぐそこだ」

市街地を潜り抜ける。くねくねと道が曲がっている所を見ればやはりここは都市でもあり要塞でもあるのだろう。

『エルトダウン、当たりだ。やはりこの障壁はあの精霊機からのものだな。…行くぞッ!』

シュヴァルツ・ヴァルトが先に突出する。

キュイィィン…

ホロウ・クロウラーのブースター部分に精霊力が収束される。

グウウウンッ!!

精霊力を解放すると先に突出したシュヴァルツ・ヴァルトを軽く追い抜かすホロウ・クロウラー。
ドップラー効果でブースターの音がまるで美しいヴァイオリンの様に響き渡る。

そうしてホロウ・クロウラーはシュヴァルツ・ヴァルトよりも一足先に大型精霊機の近くまで来ていた。

"スゲエな。こンだけ強力な障壁をあんな所まで展開できるとはねェ"

「だが、やるしかないのだろう?よろしく頼むよ、ファラーシア」

【ホロウ・クロウラー、魔法障壁を展開する大型精霊機と交戦】

12 :マリーウェザー(=ヨハンナ)とレジーナ◇/23EAU3tOg :2010/07/22(木) 17:16:11 0
【こちらの手違いで乱丁してすみませんが、>8の前にこのレスが入ります】
〜前回までのあらすじ〜
これは、自分の存亡をかけて戦う、青き自称アイドルの物語である。
アルバニアンに跳んだヨハンナはローガンブリア畜生に囲まれて大ピンチ!
避けて走ってぶつかって潜って、こうなりゃ奥の手はロー畜になりすますっきゃない!
わたしはマリーウェザー、ママのむすめよ!とすがった手を、アデラは突き放すのだった。

アルバニアン義勇軍宿舎の一室では今、マリーウェザーの取調べが行われている。
調査官は、良くいえば人懐っこく、悪くいえば馴れ馴れしい、十代半ばに見える青年。
何も知らないマリーは、青年の求めに応じて適当に歌を歌っていた。
「ソンザイがー かわるほどのー ユメーをもって、みたくなるー♪」

青年はポーカーフェイスこそ崩さないもの、意識においては時折考え込んでいる。
しかしながらマリーウェザーは自分の歌に酔いしれているからまったく問題ない。
…いや、感づいている者が一人、いや一匹はいて。

もちろん、青年は伊達や酔狂で歌を頼んだわけじゃない。
口ずさむ歌次第ではマリーウェザーの身元を特定できるとにらんでのこと。
青年「(どれもこれも聴いたことのない曲調のものばかり…
 賛美歌でもマドリガルでもない。どこかのク土歌だろうか)」

青年「(身なりや精霊機の所有から考えると貴族らしくもある。
 しかし、だとすると旧教圏の出身、という推理は間違いか?)」

なぜなら、それらの地域では赤髪は気性が激しく多情などと忌み嫌われるから。
兄弟殺しのカインや裏切り者ユダなど、凡そヒールは赤髪だったと伝えられている。
今回は関係ないだろうけど、黒髪もまた魔女の象徴とされる。

青年「(体面第一の貴族がわざわざ厄介者をめとるとも思えない。
 とすると、高級娼婦の親類かもしれないな。刺客にするならそっちだろうし」
結論からすると、マリーウェザーつまりヨハンナは旧教圏の貴族なので、
青年の推理はだいぶ外れている。けれど捜査はまだまだこれから、なはずだ。

青年「(しっかし、旧教圏にしては赤髪だし、
 東洋風の衣装にしては下はドロワーズ…解せないことだらけだ)」
パンツじゃないから恥ずかしくないもん!
ミニスカの下のドロワーズなんて、中身のパンチラさえ防げばそれでいいもの。まる。

そんな折、”取調室”に向かう一つの足音があった。

>327 レオン「義勇軍所属のレオニール・ルラン・ファーブニールです。彼女に面会をしたく、馳せ参じました」

部屋の前に立っていた、見張りの兵士がレオンを取り次ぎ、扉を開けて。
青年「これはこれはファーブニール卿。ちょうどよいところにいらっしゃいました。
 僕、ちょっと用事があるので、その間よろしくお願いします」

青年はそう言うと、調査と連絡のために電光石火の勢いで部屋から出て行った。
ただ、そのとき見張りの兵士に一言だけ耳打ちをして。
「『綺麗な薔薇には刺がある』っていうから、棘が刺さらないように気をつけてね」
マリーが武器を隠し持っていないかどうか確認してないという合図だ。

13 :アデラ ◇D35J0dU8pk:2010/07/24(土) 00:14:16 0
>10
> 【スレイプニル轟沈】

『 Sleipnir down 』

傭兵アデラの相棒、精霊フギン=ムニンは抑揚もなく呟いた。

帝国からの増援として期待された大型空中戦艦スレイプニルが沈んでゆく。
黒煙を吐き出して、機首と高度を徐々に下げながら。
制御はもうきかないのかもしれない。接地面は、彼の墓標となるに違いなかった。

「……レイヴン1より義勇軍本部。
 戦艦スレイプニルの造反と、そして撃沈を確認した。
 やったのはファールデルの"七星"。
 これは勲章ものだぞ」

アデラは、同郷であるファールデル傭兵の戦績を報告し、戦艦の最後を見届ける精霊機・七星に「Good kill(よくやった)」とファールデル式手信号を送る。

「味方強襲迫撃艇の活躍によって、戦艦離反による損害は大幅に抑えられた。
 作戦続行は可能。繰り返す、作戦続行可能」

スレイプニルの反乱は、ものの十数分で完結した。
後方に控えていた強襲艇サイカの機転による即時対応の効果が大きい。
また、戦艦反逆による損害は帝国軍の最新鋭機2機、レイヴン隊をはじめ護衛についていた飛行精霊機が十数機。
スレイプニル級戦艦を引き換えにしての打撃としては、あまりに釣りあわない。

「スレイプニルの手綱を握るのはヴォータンであって、サマウス卿、貴方ではなかった。
 貴方はローガンブリアの戦士を、ただいたずらにヴァルハラに案内しただけだ。
 これしきで戦争は終わらない。戦いは続く」

スレイプニルの艦長サマウス・シセンサー。
破壊された艦橋の中で、まだ存命だろうか。 造反有利と、笑っているであろうか。

「我々だって望んでいる。 ローガンブリアの平和を。ファールデルの平和を。
 我々はそれを脅かす者と戦ってそれを勝ち得ようとしている。

 ……だが貴方は味方を、同志を、ローガンブリアという国を売ってそれを手に入れようとしたのだ。
 私は…その考えには賛同できない」

耳を劈く轟音。
スレイプニルはロンデニオン近郊の森林地帯に墜落した。
八本脚の馬の名を冠した巨大戦艦はもうもうと舞う土煙にまかれながら沈黙を保っている。

厳しい眼つきでその様を横目にしながら、アデラは義勇軍各隊当てに念導会話を発信した。

「護衛対象消失につき、レイヴン隊は戦艦護衛任務を解除。
 本部の通達に従い、予備兵力となって各隊の支援を行う」

【アデラ : レイヴン隊に被害を出しながらも健在。スレイプニル護衛から、各隊の支援に配置換え】

14 :アデラ ◇D35J0dU8pk:2010/07/24(土) 00:15:17 0
>次の一手 (1/2)

帝国正規軍から、やっと派遣されてきた増援部隊。
その目玉でもあった戦艦スレイプニルの裏切りは、義勇軍に大きな動揺を与えていた。

それは当然のことだった。 今回の会戦はスレイプニルの遠距離射撃のおかげで、義勇軍の方に分があったのである。
しかし、それが消えてなくなってしまった。造反という最悪の形で。

しかも敵側には広域バリアを出力する大型精霊機が存在し、頼みの地上部隊の突撃も失敗に終わっている。

「手詰まりか……」

アデラは精霊機コルバス・コラックスの操縦槽で考えていた。
念導会話装置からは、味方部隊の一時撤退案すら出されている。

だが、撤退の手は無い。
ここで退けば、ロンデニオンに敵増援が到着し更に堅固となるのは必定。
後方の都市アルバニアンは守るに易い要害だが、ティルネラントとの物量差を考えるとどこまで持ちこたえられるかは不安が残る。
こちらには、正規軍である神聖ローガンブリア騎士団の増援はあまり期待できないのだから……。(※正規軍は中央で頑張っている)

「あの"大盾"(広域バリア発生精霊機)を何とかしなければ、我々に勝機はない。 思考と記憶を司るフギン=ムニン、打破の可能性を示唆しろ」

アデラは闇の宝珠に宿る精霊フギン=ムニンに命令した。それは思考の整理のためである。

『 Use Surprise attack (地下道奇襲部隊に攻撃要請) 』

「ダメだ。盾の向こうは敵の包囲網が形成されている。かつ、こちらから支援はできない。奇襲部隊の人数では盾を壊す前に全滅だ」

『 Converging fire with SAIKA (サイカによる集中砲火) 』

「ダメだ。高火力の強襲迫撃艇だけは盾を突破できるかもしれないが、バリアを再展開されればサイカ搭載部隊は孤立無援」

『 Charge (全部隊の火力集中) 』

「地上部隊が何回突破を試みたと思ってる! あの大盾は突撃衝撃力を激減させる。
 それどころか、ところどころに隙を生じて少数の突撃をのみを許し、包囲殲滅を仕掛ける狡猾さだ……」

どれも決め手に欠ける。
考えろ考えろ考えろ。そして観察しろ。冷静に、持てる知識と勘を総動員しろ。

そして運さえも呼び込め。さもなくば勝利は遠い。

15 :アデラ ◇D35J0dU8pk:2010/07/24(土) 00:16:13 0
>次の一手 (2/2)

『 Use ASL (ASLを利用する) 』

不意に聞きなれた単語が耳に入った。
ASL(人工精霊研究所)。
戦場に現れては無差別攻撃を繰り返し、その「研究」を進める知的な無法者たち。

その研究の最先端たるASLの精霊機が、バリアを隔てたティルネラント陣に乗りこんでいる。
そして、いつものようにテストを開始した。

『 ASL attacks Aegis 』

アデラは目を見開いた。
敵にすればこのうえなく厄介な連中。
だが、今は。

「ASLの介入を確認。 標的は、あの"大盾"だ!」

光明これにあり。昨日の敵は今日の友。棚から落ちてきたものは何だ。
運命の女神の前髪を掴み損ねるわけにはいかない。

アデラは念話装置をブロードキャスト(義勇軍全軍向け)に調整すると、発声した。

「レイヴン1から義勇軍全軍。
 現在、敵の大盾をASLの2機体が攻撃中。
 
 チャンスは今しかない。
 ヤツらの交戦中、盾(バリア)の出力が弱くなった隙を見計らって全軍突撃を敢行する。
 
 地上部隊は弾丸陣を敷き、敵の包囲を中央突破。
 強襲艇サイカは上空より接近し支援爆撃及び搭載精霊機投下。
 レイヴン隊および飛行部隊は上空より支援行動。

 …本部、どうか本作戦の承認を求む」

たっぷり1分の後、アデラの顔には汗とともに笑みが浮かんだ。
一介の傭兵が立案した突貫作戦、「大盾破壊作戦」承認。

「全軍、ポイント285のトーチカ付近に待機。
 陣を形成し時を待て。 
 戦場荒らしの暴れっぷりが、戦局そのものを変える瞬間を!」 

『 be a Randgrith 』

【アデラ : ASLと広域バリア発生精霊機("大盾"と呼称)の交戦を確認。バリアの弱体化を狙って待機】

16 :大盾の女 ◆eqAqXE3VMc :2010/07/24(土) 01:10:23 0
>11
ロンデニオン中央部にその機械の巨人はいた。

「ASLがくる…」

巨人の内部で真紅に彩られた唇が艶かしく動く。操者の女だけは気づいていた。

ホロウ・クロウラーの突然の強襲に虚をつかれた防衛部隊は動く事も出来ずにただただ見とれている。

巨人の操者は黒衣を纏った魔法使いのような女。
女は魔法障壁を展開しながらも巨人の左前腕部をホロウ・クロウラーにむけ射出する。

大質量を持った鉄塊の拳。その拳一つが小型の精霊機ほどの大きさ。

巨人の鉄拳は精霊力を推進力に変えホロウ・クロウラーに襲い掛かる。

【ホロウ・クロウラーにあいさつがわりのロケットパンチ】

17 :エルトダウン ◆iGrjUqKhz2 :2010/07/24(土) 01:33:38 P
巨大な精霊機を前に高速で翻弄しつつ敵の弱点を探る。

「なるほどね…義勇軍は高みの見物か。それとも、漁夫の利を得るつもりかな?
 まあ、それが"戦場荒し"の宿命か。構わないよ。そこで指を咥えて見えてるがいい」

"汚ェヤローどもだぜ。もともとテメェらがおっぱじめた戦争だろうによォ"

そうこうしている内に遅れてシュヴァルツ・ヴァルトも到着した。

『所詮は義勇軍とて烏合の衆だったという事さ、エルトダウン。
 奴らの個々は何の力も持たない。個々の力が無いからこそ、徒党を組むのだ…

 エルトダウン、大型になれば大型になるほど欠陥も多く、脆弱性も高い。
 とにかく、とっととこの"デカブツ"を始末するぞ…』

甲高い、精霊力が凝縮されるときに発生するノイズが響く。
一つ目のノイズの元はホロウ・クロウラーのブースター。
二つ目のノイズの元はシュヴァルツ・ヴァルトのナックルブラスター。

「では、一足先に叩きますよ。…無いとは思っていますが、くれぐれも…」

結局最後まで言わずにホロウ・クロウラーのブースターを解放した。

ブゥゥゥンッ!!

まるでヴァイオリンの音をバックに踊るかのように"デカブツ"をエイサーグラディウスで叩き始める。
高速で移動している分、エイサーグラディウスの威力は増大する。

ホロウ・クロウラーが狙うのはある一点のみ。
とにかく、とことん装甲を削ったところにシュヴァルツ・ヴァルトの一撃を叩き込む算段だ。

ブースターに凝縮された精霊力が底を尽いた時、ホロウ・クロウラーはちょうど"デカブツ"の正面に居た。


18 :エルトダウン ◆iGrjUqKhz2 :2010/07/24(土) 01:42:43 P
だが、その場に静止した瞬間だった。

ズドンッ!!

ホロウ・クロウラーが後方に吹っ飛ぶ。

「痛ッ…痛いあいさつだことで。今の一撃で損壊率も47%まで行ったか…あと一発でアウトか。
 だが、間を空けたのが失敗だったねえ…サイアニス、すまない」

ガチャリ…ズドン、プシュゥゥ…

エルトダウンがWARNINGと書かれたレバーを押し上げる。
すると、ホロウ・クロウラーの腕部がパージされ、吸気口が現れる。
その吸気口から空気が吸収されるのを確認すると、

『了解した。行くぞ…シエロ…』

手の甲にナックルブラスター用の精霊力を凝縮したまま、
足元に転がる義勇軍の精霊機の残骸を蹴飛ばし勢いをつける。
精霊機とは思えないほど俊敏に"デカブツ"へと接近する。

『ここからは私が相手をしようじゃないか、"デカブツ"。
 直接拳を交えるのも良いだろう?かかってくるんだな…』

シュヴァルツ・ヴァルトがゆっくり腕を前に出す。
そうして、手の甲を相手に見せ付けると人差し指をクイクイッと引いた。

『エルトダウン、ゆっくりと空気を吸うが良い。
 久々に緊迫する相手だ、じっくりと楽しまさせてもらうぞ…』

そうしてシュヴァルツ・ヴァルトはその拳で"デカブツ"の脚部を殴った。

【ホロウ・クロウラー後退。シュヴァルツ・ヴァルトが交戦中】

19 :大盾の女 ◆eqAqXE3VMc :2010/07/24(土) 15:42:57 0
常人には存在すら知覚できぬ精神の高次領域を駆使し
ロンデニオン全域を包み込むように展開されている魔法障壁。

>18
>『ここからは私が相手をしようじゃないか、"デカブツ"。
>直接拳を交えるのも良いだろう?かかってくるんだな…』

シュヴァルツ・ヴァルトは精霊力を凝縮させた拳で"デカブツ"の脚部を殴りつけた。

ゴバーン!!

大型精霊機の片足が爆音をあげ四散する。

爆発の中から白煙を巻きつかせながら現れる大型の精霊機は片足が無い状態で空中をホバリングしている。

「魔法障壁を展開させながらASLと戦うのは流石に骨がおれる」

操者の黒衣の女は心情を吐露してしまう。

その時、ロンデニオン防衛本部からの新たな指令がくだった。

『魔法障壁の展開を直ちに止め、敵精霊機の殲滅に専念せよ』と。

その命令に黒衣の女は目を細め薄い笑みをたたえる。

「ふふふ…そうこなくては…」

大型の精霊機の背中部分から放出されている魔法障壁の源は凝縮されると六枚の翼に変化した。

この段階でロンデニオンを包んでいた魔法障壁は失われる。

「死ねASL!!」

六枚の羽が同時に七色に発光すると羽の一枚一枚が鋭利なブレードと化し
シュヴァルツ・ヴァルトを左右から挟みこむように一瞬六斬の剣撃が繰り出される。

【魔法障壁がなくなりました】
【シュヴァルツ・ヴァルトさんに精霊エネルギーでできているブレードと化した翼(伸縮自在)が六枚、左右から鞭のように襲いかかります】

20 :フィリップ ◇QzzonL2xIE :2010/07/24(土) 23:33:02 0
航空戦艦スレイプニルの轟沈と新たな航空戦力の出現は、王国軍に傾きかけていたパワーバランスを逆転させた。
「うろたえるな!賊も内通者をだして混乱しているに違いない!新手と合わせて各個撃破せよ」
声音からして動揺を隠しきれていない指揮官が命じる。

>アデラ、イオ
王国軍航空部隊は兵力を二つに分け、1隊を新手の強襲艦(サイカ)に、もう1隊を義勇軍航空隊に差し向けた。
義勇軍と交戦している部隊のなかで、特に義勇軍を引きつけている精霊機があった。

「卑怯者め!」
「アルバニアンの恨み!」
「スクラップのくせに!」
義勇軍から罵声を浴びながら戦っているのはフィリップのスィゴーニュである。
アルバニアンの対空陣地に対する奇襲攻撃で義勇軍に憎悪されているスィゴーニュには、何機もの精霊機が群がっていた。
スィゴーニュは味方の精霊機と連携しながら、敵の火線をかわし、確実に敵機の数を減らしていった。

個々人に技量の差はあっても、所詮は志願兵の寄せ集めである義勇軍と、職業軍人の集団である王国軍の練度の差は、操縦に一定の技量を必要とする航空精霊機で戦う場合に顕著に現れた。
これまで部隊を二つに分けたハンデを各人の技量と練度でカバーしてきた王国軍だったが、義勇軍レイブン隊の頑強な抵抗に遭遇する。
【王国軍航空部隊、隊を二つに分け、サイカ、義勇軍と交戦開始】
【義勇軍と交戦中の部隊はレイブン隊と接敵】

21 :エルトダウン ◆iGrjUqKhz2 :2010/07/25(日) 01:30:18 P
『障壁を解除したな…いち、に…さん、し、ご…六枚か。
 避けるのは困難か。ならばッ!!』

サイアニスはレバーをガクンと下に落とした。
それに呼応するようにシュヴァルツ・ヴァルトは地面を殴る。

ドッグォォォンッ!

シュヴァルツ・ヴァルトの足元に小さなクレーターが出き、そのままその穴に落ちていくシュヴァルツ・ヴァルト。
そしてその穴の上をからぶるエネルギーブレード。ここまでがサイアニスの計算だった。
だが最大の誤算は地面を殴る前に"デカブツ"を殴ってしまっていた事。
折角収束させた精霊力もそれで殆ど失われていたのだ。
結果出来たのは小さなヘコみだけ。

『しまっ…避けきれない…ッ!?』

六本のエネルギーブレードがシュヴァルツ・ヴァルトに接触する。
小さなヘコみの分だけ直撃しなかったが、それでも気休め程度にしかならない。
搭載している損壊率計はすでに70%をオーバーしていた。

『くっ…私としたことが…愚かだった…

 だが…障壁を解除したのが根本的な間違いだ!!既に私は鉄の翼へ救援要請を出している!位置情報と一緒になッ!』

サイアニスは体勢を立て直すと、"デカブツ"に背を向けた。

「サ…サイアニス!?何を…バカな事はしないでください!」

"な…70%越えなんだろ?あんなデカいヤツの攻撃が当たっちまったら…"

エルトダウンは今にも助けに行きたかったが、ランページ・アトモスフィアを発射する為に空気を吸収している。
今助けに行けば、結局両方やられるのだろう。出来る限り効率的かつ現実的に。それがASLのやり方だ。

『エルトダウン、私の最後の仕事は終わった…あとは鉄の翼が来てくれる。後はよろしく頼んだ…』

"お…おイ。冗談だろ!?エ、エルトダウン!助けにいかねーのかよ!?おい!!"

『フフフ…冗談だッ!!くたばれ!デカブツがッ!!』

精霊機ではあり得ないような動きをする。それはいわゆるバック中と言われる動き。
そうしてシュヴァルツ・ヴァルトは"デカブツ"の懐へと入り込む。

どんな生き物でも、相手が諦める姿勢を取ると油断するのだという。
それが例えどれだけ熟練した兵士であっても、一国の主であっても。

懐に入り込んだシュヴァルツ・ヴァルトはまずは"デカブツ"に背を向けながら肘打ち。
そしてそのままバックブローを放ち、その腕を軸にして逆側の腕の拳で機体全身を捻りながら思い切り殴った。

最後に"デカブツ"自身を思い切り蹴飛ばし、後方へと退避した。

「ヒヤヒヤさせないでくれ、サイアニス。一瞬、本当に君が諦めたのかと思ったよ」

【ホロウ・クロウラー、シュヴァルツ・ヴァルト共に中破。"デカブツ"に格闘コンボ】

22 :マリーウェザー(=ヨハンナ)とレジーナ◇/23EAU3tOg :2010/07/25(日) 05:31:09 0
「はぁ〜、ヒサビサのシャバの空気はおいしいな〜♪」『なんというヒドイン』
マリーウェザーはにこにこしたまま、右腕を振ってレゾナンティウスに手刀を入れた。

「にしても、ぎゆーぐんのヒト、ぜんっぜんおいかけてこないね。
 きっとみんな、ヨハンナのミリョクにタジタジなんだー…♪」
一人恍惚とした表情を浮かべる、マリーウェザーもといヨハンナ。
頭カラッポの方が夢詰め込めるとはよく言ったもの。

「んんぅ〜、思ってたよりもぜんぜん早くついちゃった…」
今ティアリア(クレハ)が腰を落ち着けているのは、
アルバニアン基地から脱走したとき目標としていたあの赤い塔。
この辺はどうやら廃城跡のようで、あたりに人の気配はなくて。

「よーし、次はあっちの…ほえ?」
北の空に、逆さにしたサラダボールのような何かが、見えた、と思ったら消えて。
二人は気づいていないけど、魔法障壁だった。
仮にロンデニオンの市域を、城郭都市としては大きい2平方キロメートルの円形とおく。
円球状のバリアなら、その頂点は少なくとも√(2÷3.14)≒800mほどの高さになる。
貴方の知るところの新東京タワーすら634mでしかない。これは大いに目立つ。

「ヨハンナわくわくしてきたゾ☆ 次の目的地はあっちに決まり!」『えぇ〜…』
「なーにシンパイしてくれてるの?ありがと。でも、ボスが来たボタンもあることだし!」
ロンデニオンへとティアリアを羽ばたかせよた次の瞬間。
妖狐の尻尾をギシッとつかむ黒い影が!

「アレ?ねぇ、あんまり高度上がってないんだケド」
『…!?お肌の触れあい回線が開いた…?』
”お肌の触れあい回線”というのは、多くの精霊機に搭載されている、
念波通信等が使えないとき等のための接触回線である。

青年「つかまえた!にしても飛べるなんて、キミの精霊機はすごいや。
 もしかしてその機体、ティンカーベルが乗ってるのかな!」
昨日マリーウェザーことヨハンナをお茶もとい取り調べていた青年だった。
「コンニチハ、ボク、マリーウェザーダヨ」
黄色いメカ口調で返すヨハンナ。笑顔が引きつっている。

青年「キミ、基地から脱走したんだって?ごめん、朝のにんじん嫌いだった?」
「そんなことないよ、マリーちゃんとにんじん食べられるもん!」
青年「あはは、それは失礼。それじゃお詫びに、鬼ごっこでもしようか」
「う、うん…」
内心ナニソレと思ったもの、逆らったらどうなることか…とマリーは思っている。

青年「じゃあ、僕が鬼だ。100・99・98…」
青年は鬼ごっこの振りをして少し時間を稼いでいる間に一つ仕事をするつもりだった。
その仕事は、王国軍の不意の奇襲を防ぐため、この近くにある地下道入り口を塞ぐこと。

青年「…3・2・1。もういいかい」
青年はまずレーダーを確認した。さっきクレハに発信器を取り付けたのだ。
青年「感度は良好…ん?そこは…地下道…!」思わず顔が険しくなる青年。
その目で確認すれば、林の中、崩れた廃城の柱によって塞がれていたと思われる洞穴。

青年「…スクワレル1より基地へ。例の少女が地下道に侵入。
 これから後を追う。そちらも気をつけられたし」
青年は地下道の中から入り口を隠蔽し、レーダー上のマリーの反応を追った。
【人気のない廃城でストーカーと鬼ごっこ。隠れた場所が例の地下道でしたとさ】


23 :大盾の女 ◆eqAqXE3VMc :2010/07/25(日) 14:49:41 0
>21
>『エルトダウン、私の最後の仕事は終わった…あとは鉄の翼が来てくれる。後はよろしく頼んだ…』
>"お…おイ。冗談だろ!?エ、エルトダウン!助けにいかねーのかよ!?おい!!"
>『フフフ…冗談だッ!!くたばれ!デカブツがッ!!』

「う!!」
大盾の女は完全に不意をつかれた。

次々と打ち出される格闘技に巨体を立て直そうと女は操作するものの、
動かそうと思った部分へと狙い済ましたかのように繰り出されるシュヴァルツ・ヴァルトの疾風怒濤の攻撃で
攻撃も防御も塞がれてしまい滅多打ちにされる形となる。

ドッグォォォンッ!

最後の蹴りで轟音とともに建物へとめり込む大型精霊機。

「…く…ASLゥ〜…やつらの脅威は最新の精霊機だけではない…。
最大の脅威は極限まで知力と反応力を鍛えあげられ戦闘マシーンと化している操者!!」

損傷部分からはパシッパシッと火花が散り数秒の沈黙後、轟音が大気を揺らす。

ドッカーン!!

大型の精霊機は大破した。吹き飛ぶ大型精霊機の頭部。
千切れた首の部分からは生物に例えるなら血管のようなものがブラブラと垂れ下がっている。

それは突然、蜘蛛の巣のように拡散すると投網のようにシュヴァルツ・ヴァルトとホロウ・クロウラーに覆い被さる。

「お土産だよASL!」
大型精霊機の頭部に搭乗していた黒衣の女はワイヤーネットにしかけられた爆導索を残してロンデニオン市街のどこかに撤退した。
頭部は脱出用の小型の戦闘機のような機能を持っていたらしい。

ボン!ボボン!ボン!

シュヴァルツ・ヴァルトとホロウ・クロウラーを捕獲しつつ爆導索が仕掛けられているワイヤーネットは小爆発を起こす。

【大盾の女:撤退。爆導索爆発(目くらまし程度でそんなに威力はありません)】

24 :アルタイテン ◆xYMjE4hM7rwp :2010/07/26(月) 12:32:53 0
『存外、呆気 い 沈だッ …シか 我が身 満た ハ十分…』

轟沈し、そのまま薙ぎ倒された木々の中で沈黙していたスレイプニルの内部から、
バキンッと鋭い割れるような音がすると、黒い大量の水晶が次々と溢れ、地を駆け抜けて次第に巨大化する。
黒水晶はついに小山程度の大きさになり、身悶えする様に何度か振動してから宙に浮き上がる。
そして、地に写るその巨大な影から、“災悪”が身を乗り出した。


アルタイテン。しかしその形状は前回現れた時とは大きく異なっている。
肩より伸びる腕は四本に増え、背中の翼の他に下半身の水晶体からも翼が六枚も広げられていた。
何より目を引くのは両脇に浮いている、巨大な剣を握り締めた、これも巨大な鉄拳。

二度目の出現を果たした悪魔は戦場を見渡し、不気味に微笑む。

『前回よ モ充実 てハ  よ な……良カろウ…』
「状況の確認。採取を開始」

『「剣の力、不完全ながら試させてもらう」』



相も変わらず意味不明な、あるいは意味の無い言葉を発して、
アルタイテンは赤い粒子をばら撒きながら、戦場へとその巨躯を食い込ませた。

【アルタイテン、スレイプニルより出現】

25 : ◆kfNCJM9MUprk :2010/07/26(月) 16:20:14 0
>13
「Good kill(よくやった)」

沈黙したスレイプニルを眼下に周囲を見渡す七星に向かって信号を送る
隊長格らしき機影に向けて返礼代わりに右腕を振り上げて見せると

イオはサイカに向け通信を発する
「すまねぇな兄者ぁ。本当はこの壁抜くための『手』使っちまってよ」
『…スレイプニル造反はこちらの想定外と言わざるを得ん。それに
>15状況は確実に動いている。本艦はこのままロンデニオンに…』
サイカ通信兵が割り込むように報告する
『敵航空部隊を補足!既に敵別動隊が義勇軍と交戦している模様!』
>20
『迎撃用意!零戦部隊(零式戦闘部隊)は防空にあたれ。イオへの援護は今は考えるな』

数的には帝国側に利があった為、今回は単艦で増援に駆けつけたが
本来ならばサイカ級複数、もしくは護衛艦をつけるのが普通である
【七星】を射出した迫撃滑走砲も連射は出来ないからだ

『聞こえていたなイオ?お前からも敵増援部隊は遠い。
ロンデニオンへ向かえ。可能であるなら義勇軍の救援を頼む』
「承知したッ!」

26 :イオ ◆kfNCJM9MUprk :2010/07/26(月) 17:00:24 0
七星の背部に意識を集中し、ロンデニオンに向けて飛行すべく
精霊力を解放しようとしたその時だった
>24
背中に冷たい気配を感じる。カガセオと会った時と似た感じだ
あろう事かその気配は既に沈黙している”馬モドキ”の方から発せられている

「カガセオよぅ。アイツお前の知り合いか?」
その名を呼ばれた精霊は訝しげに答えた
カガセオ『…あんな奴は知らぬ。性質は似ているが、根本的な何かが違う
ただ、一つ言えるのは…』

__”元”味方から出てきたっつうより隠れてたって感じだな
それに、俺のカンもコイツ自体が"やべえ"っつってる__

イオ&カガセオ「奴は”敵”ということ!」

言うが速いか、赤い粒子をバラ撒く形容しがたいカタマリ…”アルタイテン”に向けて急降下。
さらに加速しながらも、いつの間にか抜いていた小銃をアルタイテンの頭部に照星を合わせる。
あわや接触の直前、乾いた快音と共にアルタイテンの額と思われる箇所から爆炎が上がる。
対する七星は黒い光の尾を引きながらアルタイテンの後方に回り込み
撃鉄を引き直す

【イオ:アルタイテンと交戦】
【サイカ:王国軍別動隊と交戦】

27 :エルトダウン ◆iGrjUqKhz2 :2010/07/26(月) 18:34:26 P
ドカン!と何度も爆音が轟く。"デカブツ"からは精霊力が火花の様に漏れ出していた。
そしてドッカァァン!という轟音を最後に"デカブツ"は吹き飛んでしまった。

『やったか…ン……?ワイヤーネットか。…!これはッ!!』

機体を覆うように降り注いできたワイヤーネットには炸薬が付いていた。

"爆導索だ!エルトダウン、ヤバいぞ!"

「安心しなファラーシア。この大きさだと閃光弾程度の威力しかない。あながち、煙玉の様に撒いたんだろう」

そうしている内に機体全身に絡みついた爆導索が炸裂する。

ボムッボムッ!!

その爆発は多少の衝撃こそあったもののやはり低威力であった。

『フン…小賢しい。だが、これで我々も安心だな。撤退するぞ』

サイアニスとエルトダウンはお互いに中破した機体を操り、ロンデニオンの郊外へと機体を向けた。

郊外へ逃げる途中、ちょうど左方向にタブーリストのコードフィフス…アルタイテンがその姿を現していた。
エルトダウンは、機体が万全ならな、と歯がゆい思いをしながらも撤退を続けた。

【ホロウ・クロウラー、シュヴァルツ・ヴァルト共に中破。郊外へ撤退中。追撃可】

28 :アデラ ◇D35J0dU8pk の代理:2010/07/27(火) 21:50:28 0
>19 【魔法障壁がなくなりました】
>23 【大盾の女:撤退。爆導索爆発(目くらまし程度でそんなに威力はありません)】

ティルネラント王国軍の広域バリア発生精霊機――通称"大盾"の障壁が消失した瞬間。
傭兵アデラ・グラーフストレームは叫んでいた。

「全軍吶喊(とっかん)!いけいけいけーッ!」

ときの声を上げて、義勇軍部隊は一丸となって敵陣へ突き進んだ。
先陣を切ったのは先の増援で義勇軍に加わったローガンブリア騎士団の精霊機。
戦艦スレイプニルの裏切りという汚名を返上すべく、勇敢にも敵の矢面に立ったのである。

敵陣から容赦なく矢弾が降り注ぐ。しかしその弾幕に足を止める者は誰一人としていなかった。
幾多のソード、アクス、スピア、ランスの切っ先は、ただ正面の壁――敵陣中央を向いている。
その刃に一寸たりともぶれは無い。

「怯むな義勇の猛者ども、突破機動で敵の包囲に孔を穿て!」

今回義勇軍が採用した陣形「弾丸陣」はベクトルや矢印(→)に形状が似ている。
先頭部隊の突撃で敵陣に割って入り、矢印の左辺右辺に展開した部隊がその間隙を維持・拡張する。
そして敵を2つに分断し包囲するのだ。

「よし、先頭部隊が敵陣に割り込んだ」

地上部隊の突撃と、飛行部隊の支援にて電撃戦を挑んだ義勇軍。
あと少し。あと少しで敵包囲を貫通できる。
味方の空中支援も上々の効果を上げていた。

しかし。

『 New Enemis are approaching fast 』

「ああ……制空権の確保はまだだったな」

自分の右目に住まう闇の精霊・フギン=ムニンの警告を受けたアデラは、眼前に迫るティルネラント王国軍・航空部隊の姿を確認した。



29 :アデラ ◇D35J0dU8pk の代理:2010/07/27(火) 21:52:12 0
>20
> 【義勇軍と交戦中の部隊はレイブン隊と接敵】

「正式な訓練を施された操手の機動だ。しかも手馴れている」

アデラは対峙する敵部隊をそう評した。

精霊機ズィゴーニュをはじめ、敵対する王国航空部隊の錬度は高い。
連携も鋭く、単機で誘い込まれたり、追い込まれた義勇軍機はすぐに火を噴いて落ちていった。

だが、全てはもう遅いのだ。

レイヴン隊は、空中で互いの前方に常に味方機を捉える機動――円陣による防御機動――にて、敵の突撃に対応し、逆襲できる体勢を整えていた。
機体性能が違いすぎる。下手に手を出せば的になることは分かっていたから。
そして、おもむろに敵航空部隊に呼びかけた。

「あーあー。こちら義勇軍外国人傭兵団所属、レイヴン隊だ」

搭乗機コルバス・コラックス据付の拡声器で敵航空機にコンタクトをとったのは、レイヴン隊隊長アデラ・グラーフストレーム。
多少のハウリング音とともに、よく通る女性の声が響き渡った。

「ティルネラント王国の勇敢なる航空部隊諸君。よく聞いてくれ。
 
 神聖ローガンブリア帝国義勇軍は……つまり、我々は既に勝っている。
 
 キミ達の念会話装置のチャネルを開き、司令部からの通信に耳を傾けたまえ」

ブツッ、という拡声器のスイッチオフの音。アデラは言うべきことを彼らに伝えると、元の防御態勢に戻った。
眼下では義勇軍の突破部隊とティルネラントの包囲部隊が喰うか喰われるかの激戦を繰り広げている。
泡をくった王国軍は予備兵もこの乱戦に兵力を割き始めていた。

敵も味方も、今は目の前の突破戦・防衛戦に夢中だった。
その攻防に全力を投じ、注力し、釘付けだった。
そしてそれは「彼ら」が突入するにはいいタイミングだった。

30 :アデラ ◇D35J0dU8pk の代理:2010/07/27(火) 21:53:46 0
(地下道奇襲部隊の進入)

ティルネラント王国軍、念会話装置。
それは、おおよそ全ての王国軍精霊機に設置が義務付けられている。
しかし、突如そこから聞こえてきたのは、先ほどまでの作戦指令オペレータの野太い声ではない。
まだ幼さの残る、青年将校と思しき人物の言葉であった。

「あーあー。本日は晴天なり。
 ティルネラント王国軍の皆さん、聞こえておりますでしょうか」

何事か。誰からの通信か。

「私は神聖ローガンブリア帝国義勇軍所属のオルヴァー・グランフェルトです。
 地下道からの奇襲部隊・ミストルティンの隊長です。一応。
 私は嫌だといったんですが強引に任命されました…」

何事か…!

「えー。 ティルネラント王国司令部は我々、義勇軍が占拠しました。

 司令官のクローディアス閣下も、今はこの通りです。
 口元を塞いでもらってますが、元気です」

なにやら、うめくような声が聞こえる。
どうやら、ティルネラント王国ロンデニオン駐留部隊作戦司令官・クローディアスはすでに拿捕されているようだ。
この放送を耳にして動揺の渦中にあった王国軍兵士たちも、状況を把握しつつある。

「投降してください。
 今後、この通信を通してあなた方に作戦指令が届くことはありません。
 あなた方に高度な連携や秩序だった作戦行動はもう不可能です。

 捕虜の処遇に関して、ローガンブリア帝国軍及び義勇軍は寛大です。
 更に、ティルネラントの属国となってここに派遣されている皆さんには特に恩情があると思います。
 繰り返します……」

同内容の通信が繰り替えされる中、地上部隊の混乱は収まってゆく。
諦めた者もいる。未だ抵抗する者ももちろんいる。
だが、先ほどまでの魔女の釜の底をひっくり返したような騒乱は、水面に波紋が広まるように沈静化を辿った。

【アデラ : 空中にて防御体勢。※ひと段落したらアルタイテン出現の報告を受ける予定】
【義勇軍 : 奇襲部隊の敵司令部占拠によって敵の士気を激減。このまま停戦を狙う】



31 :マリーウェザー(=ヨハンナ)とレジーナ◇/23EAU3tOg :2010/07/28(水) 22:09:22 0
【>22の続き】

「きちゃった…でもまだまだだよっ!
 ふっふっふ、こーいうバショだとよく音がひびくからバレッバレなんだから〜」
地下道の奥から、入り口に現れた鬼(=監視役の青年)を見ていたマリーだったけど…
なんと、鬼は地下道に入るやいなや、イキナリ入り口を塞いだのだ!

「へ、へ ん た い だ ー !!!!!」
『だから言ったじゃない。気をつけた方がいいって』
「こんなトコにとじこめて何するツモリなの!?どうしよっ、とにかくにげなくちゃ」
クレハ・ラクシュミーは碧の燐光を発しながら…北へ!



「しつこいな、ホントにもーう!いーかげんにあきらめてよ」
精霊機チェイスは、もうかれこれも数十分続いている。
クレハが速いというよりは、追跡者が意図して追い込んでいるのだった。
なぜなら、その先にローガンブリア義勇軍の地下道奇襲部隊が先行しているから。

「にしても、さっきから魔方陣みたいなの見かけるけどなんだろー?」
けれどもマリーウェザーに考える時間は与えられなくて。
三叉路の向こう側には、奇襲部隊の背後を守る小隊が控えていた。

「む、まえにもダレかいるし!ゼンモンのゾウさん、コウモンのキリンさん!?」
『前門の虎、後門の狼ね』
「どっちでもいいでしょ!あぁうぅっ、こうなったら、そっち!」

マリーウェザーが選んだ道は外れ。予めティルネラント王国軍が塞いだ道だ!
地下道からは複雑に絡み合ったいくつもの小径が延びている。
両軍とも、地下道全体に対策を行うのは、時間的・兵員的に考えて得策ではなかったのだ。
義勇軍兵士A「怪しい奴!逃がすな、追え」

マリーウェザーのすぐ後に、例の監視役の青年が現れて。
青年「待って。あの子は僕が引き受けるから」
義勇軍兵士A「こ、これは…!?ご助力のほど感謝いたします」
青年「ご苦労さま。防衛ライン、もうちょっと下げた方がいいかもしれないね」

マリーウェザーが”マッピング未了区域”に近づいていることを確認すると、
青年はブーストをかけて一気に距離を詰めた。
青年「さあ、鬼ごっこは終わりだ。そっちの水は甘くないよ。金属反応も出てるしね」

青年の機体が投げナイフを投擲すると、
それはクルクルと回転しながらクレハの脇を飛んでいった。
「ひっ」

ナイフが地に刺さった、と思ったら、その地点で小爆発が起きて。
マリーウェザーも思わず、クレハを静止させる。

青年は続けて数本のナイフを放り投げ、それは全て王国軍の地雷を撃ち抜いた。
二機の前で連続して閃光がほとばしり、その煌めきによってマリーは思わず目をつむり。
さらにもう一本、奥へとまっすぐ投げると、今度は地に落ちる前に爆発が起こった。
どうやら三次元センサー式のトラップも仕掛けてあるようだ。


32 :マリーウェザー(=ヨハンナ)とレジーナ◇/23EAU3tOg :2010/07/28(水) 22:10:12 0
青年「おいたはやめるんだ。アリス、もう目覚める時間だよ」
「まだおわりじゃないもん!クレハァァァァァビィィィィムッッッッ!」

マリーウェザーは道の奥に向かってクレハビームを放った!
まばゆい光を発し、地下道いっぱいの竜巻が周囲の壁を削りながら伸びて。
飾り程度の威力しかないけれど、センサー爆弾を起爆させるには十分だ。

青年「ふーん。なるほどね…」
青年はコクピットの中で薄ら笑いを浮かべた。
マリーウェザーは道が開けるなりさらに奥へと進む。

「うゆ、行き止まりなの…!?」
『このカベ、最近できたみたいだ。撃ち抜けると思うよ』
振り向けば、青年の機体が間近にせまっている。

「しょうがない、これなかなかキレイだったから、もうちょっともってたかったけど」
するとマリーウェザーは、ジュエリィボックスから黄色い宝石を取り出した。
そしてクレハにスターダストアローを構えさせた。

『願いは翼。今ここで、輝く羽となれ――パーフェクト・エナジー!』
黄色い宝石は粉々に砕け散り、黄金の光をまき散らし。

マリーウェザーが使ったのは、消耗品のフェアリーキューブ。
予め魔法を仕込んでおくか、あるいはそうしたのを譲ってもらって使う道具だ。
そしてこのキューブの効果は、急速充填。

フェアリーキューブの発した光は黄色から緑へと移ろい、
スターダストアローの藤頭へ跳ねると、一気に精霊機一機半ほどの大きさへと膨らんだ。
それは先のアルタイテン戦で見せたもの(前スレ196)より大きい。

「痛撃のリンフォルツアンド・あんこーっるっ!」
マリーウェザーはスターダストアローのチャージショットを放ち、
義勇軍の侵攻を防がんがために王国軍によって積まれていた土嚢を、強引にぶち抜いた!

クレハの武装は威力がイマイチな割に吹っ飛ばし効果は強いので、地形破壊効果に限れば、
場合によってはツインバス●ーライフルやディバイン●スターのような運用も可能なのだ。
とはいえ、ここは突貫工事で十分な耐久力が確保できなかったとみるべきか。
一歩踏み出すとさらにクレハビームを撃ち、トラップを処理する。

「じゃあねーばいばい☆ オニごっこ、ホントにおわっちゃったね。
 あーいするチっカぁラ〜、目をとじったっらったっしっかっめ〜るよ♪」
マリーは一直線に、散らかった土嚢の先に見えた、光あふれる出口へと。

けれどそこは断じて終点などではなくって。
マリーウェザーの出現地点はロンデニオン美術館の一角…
そう”ヴァルハルへ続く穴”の出口だったのである。
待機していた王国軍の小隊が飛んで火に入る夏の虫、とばかりにクレハを取り囲む。

『これはちょっとまずいんじゃないかな…』
「まだボスが来たボタンもつかってないし!」

君は生き延びることができるか!?

【地下道を強引に突破し、”ヴァルハルへ続く穴”出口から出現。王国軍に取り囲まれる】


33 : ◆88duu8Vf16 :2010/07/29(木) 23:56:09 0
意気揚々と彼女の元にやってきたところまではよかったのだか、彼女は妙に警戒
するので、ちゃんと話すことができなかった
僕は彼女に嫌われてしまったのだろうか・・・・・・変な偽名まで使って、おか
しな格好までして、いろいろと質問したのに、「うん」とか「そう」とか「わか
んない」の3パターンで反された
特にちゃんと話せないままこの日の面会は終わった

「レオン様、そう気を落とさないで下さい。ヨハンナさんも変装して、偽名まで
使い、演劇のお話に出てくる人のような身の上までお話しになって・・・・・・


そこまで言ってフェニキアは吹き出した
よほど彼女の変な変装が面白かったのだろう

そう、それは僕が自分の無力さにうちひしがれながら、取調室からでてきたとき
のことだ
フェニキアはイグニスを格納庫に置いてきたあと、僕のことを待っていてくれた
のだ

「お疲れ様でしたレオン様・・・・・」
後に続くことばがいっぺんに引っ込んだという様子だ
そこで彼女は見てしまう
僕の後から出てくるマリーウェザーさん(ヨハンナ)の姿を
案の定、彼女はマリーウェザーさんがさるまで、笑いを堪えるのに必死だった


そんなことがあり、彼女の笑い栓は緩みっぱなしだ
なんだか疲れたよ

僕はアデラさん言葉を思い出し、馬車馬ってどれくらい働くのだろうか思いをは
せながら、自室に向かった


34 : ◆88duu8Vf16 :2010/07/29(木) 23:57:13 0
〜翌日〜

昨日は早めに寝たことによって、体調は万全だ
少し早く起きすぎたのか、今日は久々にフェニキアの力を借りず自分で起きられ

食前の軽い運動にと、軽く外で木剣を振り爽やかな汗を流したあと、フェニキア
が朝食を作っているであろうから、部屋に戻ることにした
いつも通り、フェニキアの作る朝食は美味しかった
もうすぐ出撃というという時間だった
他の人達は先に出撃していたのだが、僕は彼女にあうことにした
どう話しかけようかと考えながら取調室に向かう
突然、轟音ともに視界が光でいっぱいになった

「な、なんだぁ!」

頭部に激しい衝撃が走る。僕の意識はそこで途切れた

「レオン様!!レオン様!!!」

……遠くからフェニキアの声が聞こえる
頭が痛い、意識がはっきりとしないのはわかる。体も動かない
息苦しくて、暗いし、何かが体の上に乗って重い

「早くここの瓦礫をどけてください!!レオン様が!レオン様が!!」

フェニキアが騒いでいるな、淑女がそんな声を出したらだめじゃないか

「……フェニキア?」

口からなんとか声を絞り出せた。それはびっくりするほど、弱々しい声だった

「レオン様、しっかり!今は助けますから!」

光が見え、体に乗っていた瓦礫が取り除かれていく

「レオン様!よかった。生きていらした!!頭から血が!他にどこか痛いところはないですか?」

「あ、本当だね。ぬるってするよ。はは、大丈夫だよ、他には痛いところはないよ。ヨハンナさんは?」

取調室の方から光が広がってきたから、そこにいたであろう彼女が心配になる

「彼女は機体に乗って逃走しました。」

フェニキアは彼女が逃走した方向を指でさしながら、彼女が逃げた経緯を教えてくれた

「そうなんだ……基地を、この帝国貴族の僕にこのような目に遭わせて、彼女は何もなしに逃げていったのか、そうか……フェニキア、いくよ」
「レオン様、そのお体でどこに?」
「彼女を追うんだよ。このままでいいわけがないだろ!」

35 : ◆88duu8Vf16 :2010/07/30(金) 00:05:14 0
僕は彼女が向かったという廃墟を目指した
彼女を追った人間から、彼女が洞窟の奥に逃げたという報告もあり、廃墟につくとすぐに探した
精霊機が通れるような穴だすぐに見つけることができ、彼女を追って僕も洞窟の奥に入っていく
彼女の精霊機の気配をフェニキアが追いかけ、徐々に距離をつめていく
精霊機が通れるとはいえ、そこは狭くイグニスを通すのは簡単じゃない
でも、僕は彼女への怒りから、乱暴な操縦で洞窟を高速で疾走していく

「レオン様、追いつきます!!」

洞窟の先に光が見え、抜けた
そこにはキツネ耳の奇妙な機体が目の間にたたずんでいた

「見つけたぞ!ヨハンナさん!基地をめちゃめちゃにした罪を償ってもらうぞ!!」

そして、僕は気付いた。クレハの向こうに王国軍が待ち構えていた

「レ、レオン様〜」
「フェニキア!翼をだして攻撃!!」

先手必勝ということで、翼を出現させ、羽を王国軍に向けて大量にばらまいて爆発させた

「ヨハンナさん!戦って!」

逃げるよりも、ここは前に出て活路を開こうと爆発を逃れた王国機に切り掛かる

36 :黒衣の女 ◆eqAqXE3VMc :2010/07/30(金) 15:42:17 0
>30
ロンデニオン防衛本部の占拠によって王国軍の士気は激減し、
魔法障壁を出していた大型精霊機の成れの果ても敗走を強いられる形となった。

地表ぎりぎりを飛行しながら逃走を試みる巨大な鋼鉄の首に
義勇軍は追撃をしかけるも次々と返り討ちにあい撃墜されてしまう。

>24>26
「…?この精霊力は?」
黒衣の女は戦場に突如現れた巨大な精霊力を知っていた。
戦艦の遺骸から赤い粒子をばら撒きつつ、その巨躯を戦場に出現させた異形の巨大精霊機。

「…アルタイテン」

戦場に散った多くの命を吸って大輪の花を咲かせたかのような血塗られた精霊力を感じる。
黒衣の女はアルタイテンに神々しささえ感じたのだが美しい花を見ればそれで自分を飾りたくなるのが女の性根。

鋼鉄の首は空高くに舞い上がると、アルタイテンに向け急降下する七星の後ろに重なり共に急接近する。
イオの攻撃でアルタイテンの額と思われる箇所から爆炎が上がる。
七星は矢継ぎ早にアルタイテンの後方に回り込み撃鉄を引き直している。

七星の真後ろから現れる鋼鉄の首。

「これ以上は傷つけるんじゃないよ!!」
女はイオにむかって言うと操縦している鋼鉄の首の下から無数の触角を噴き出させて七星の体に絡みつかせ動きを奪う。
同時にアルタイテンの頭部の隙間という隙間から触角を差し込もうとしている。

女の精霊機を使役している精霊は「木」
触角を根と考えるのなら女は東洋に伝わる薬草、冬虫夏草のようにアルタイテンに寄生するつもりなのだ。

「ほらほら新しい体だよ」
七星の攻撃で亀裂の入ったアルタイテンの額の部分に、今にも触角がめり込もうとしている。

【首だけになった大型の精霊機(王国軍)の触角が七星を縛りつけています】
【同時に鋼鉄の首はアルタイテンさんに寄生しようとしています】

37 :アルタイテン ◆xYMjE4hM7rwp :2010/07/30(金) 18:48:39 0
『……ん ?もウ湧いテき な…タ トス 愛さ たイ か』

『「防御及び回避行動は不要と判断」』

接近する反応を確認し、真上を見上げた時には既に、敵機ではなく迫る弾丸がスローになって見えていた。
しかし宣告通り、避けも防ぎもせずにアルタイテンは顔部に直撃を受ける。
次々着弾と同時に炸裂する敵弾が、煙幕の如きドス黒い爆煙を周囲にふり撒く。

だが、数秒も経たない内に黒煙の中で紅い光が怪しく揺れたかと思うと、
数発の光線と光の剣が飛び出し、周囲の空間ごと煙を全て薙ぎ飛ばす。

『「……私を………壊すの…?」』

寂しげに呟いた言葉とは逆に、ほぼ全弾を喰らったはずの頭部は殆ど傷付いておらず、
軽くニ、三度頭を振ると極小さな黒い水晶片が、ただパラパラと落ちるだけ。
少々亀裂でも入ったようだが、この程度では何をされても致命傷とはならない。


少女の声が感情らしいものを覗かせたのは一言、一瞬のみ。
すぐさま右腕を強く引き構えると、その巨躯を活かしてあっというまに七星との距離を詰め、
腕の内部からクリスタルが飛び出して右腕を全て穿ち通す凶悪なドリルへと変貌させようとした…

その時。

>「これ以上は傷つけるんじゃないよ!!」

『「―――??発言、意図不明」』

突然響いた声の主は、目の前の敵機を謎の触手の様な物で絡め取り、簡単に動きを封じてしまった。
さしもの「影」も一瞬に起きた事が理解出来ずに困惑したが、相手をよく見れば、成程合点がいく。
新手の巨大生物かと思ったそれは、どうやら大型の精霊機、その首であった。
特徴と感じる気配から、「木」の精霊を宿らせているらしい。
そして理解が済んだ今ならば、先程の発言の意図が解る。

『「考えたな。だが、相性というものがある。言葉で足らぬならば、良かろう。来るが良い」』

直後、大量の触角が亀裂の走った額目掛けて次々と伸びてくる。
しかし結局、そのどれもが額に刺さることは無かった。何故ならば……


『「この身に迫る災悪……今こそ薙ぎ払い、刈り取れ、“剣”よ」』

「―――――空―――――」

触角を伸ばしていた鋼鉄の首が、強い打撃で引き剥がされたから。

つい先程まで首が居た空間には、未だに唸る拳があり、その拳はアルタイテンの腹部から生える様に現れた、
「影だけ」の巨人のものであった。
黒き巨人は拳を納め、役目は終えたと言わんばかりにサラサラと消えて行く。
最後にアルタイテンを一瞥すると、不機嫌そうに「赤と藍の頭髪」を揺らして、巨人は完全に消え去った。

『「“剣”の発動を確認…………上出来」』

うんうん、と安心したように何度か頷くと、四本の腕全てから光剣を伸ばして七星と鋼鉄の首に向き直る。
いつも以上に、狂気に染まった視線を向けて…

『「ヒトよ…所詮は縋って居るのだろう。そう……ここで外しておけ」』
【アルタイテン、鉄の首、七星と戦闘開始】

38 :マリーウェザー(=ヨハンナ)とレジーナ◇/23EAU3tOg の代理:2010/07/30(金) 22:27:35 0
青年「ほぅら、言わんこっちゃない…」
仄暗い穴の中から、冷静に出口の戦況を見つめる青年。
そこへマリーウェザーの後を追うレオンのイグニスが通り過ぎて。

青年「さてと、僕はもう元の仕事に戻るとするかな。
 …スクワレル1より連絡。ルートC48、レベル7にマーク。すぐに手を打たれよ」
青年は元来た道をさかのぼっていった。



クレハを取り囲む王国軍の精鋭数機。両者は膠着状態に入っていて。
「ローチクといいこの人たちといい、いたいけな女の子をイジメてたのしいワケ?」
『(いたいけな女の子は土のうをブチ破ったりしないと思うな…)』

王国兵A「来たか。しかしこいつぁたまげた。でけぇぬいぐるみだぁなぁ」
王国兵B「見かけに騙されるなよ。見たところ単機で来ているようだ。
 見慣れない機体であるし、どれほどの性能があるか知れん」

王国兵C「へへっ、今日の手ガラは俺のモンだなっ!…いただきっ」
王国兵B「おい、待てジョーン!!」
王国兵のチャコール色をした機体が、クレハを標的そして戦斧を振り上げる!

「かかるキノコははらわにゃならぬっていうし、マリーのせいじゃないもん!
 メタフィジ・ポスタル・シリアルキリングっ♪
 …ツンボタン・ピュアボタン・デレボタン同時おしでゲージ3本つかって超必殺技発動!
 乙女@天地創世<<プリンセスビギニングオブザコスモス>>!」
 
クレハが両手を握り合わせて首の後ろへと回すと、クレハの背の方に七芒星の円陣が現れ…
何もないはずの場所(ある者はそれを”ハンマースペース”と呼ぶ)から、
一振りの薙刀を抜き出した!
…レイピアは剣士の身長の3/4ぐらいの長さがあるので、小太刀ではリーチが合わない。

王国兵C「なにっ!?」兵士は戸惑いを覚えるも歩みを止めず。
「ひっさーつ!そぉどぶれいくっ☆あばら〜んちっ!」
マリーは王国兵Cの機体に刃を向けさせると、目にもとまらぬ速さの突きを繰り出させた。
王国兵C「うおおぉぉ!?」その衝撃は戦斧の刃を砕き、精霊甲冑の輝きを曇らせ。

「今ので16×2回、次で満願っ!」
一旦刃を引くと、おおきく振りかぶって上方斜め45度へと相手を吹き飛ばす!
王国兵C「ぐああああぁぁぁ!!」
王国兵の機体が落ちた地点を見やると、マリーからはだいぶ小さく見えた。

王国兵C「うぐっ!…へへっ、まだ動けるじゃん。…ツメが甘いんだよッ!」
兵士はレバーを引き、侵入者へと返し矢を浴びせようとするけれど…

精霊A「疑似脊髄損傷度6割突破…情報の伝達に重大な齟齬が発生しています」
精霊機の疑似脊髄は多重化され、機体の各所に分散しているが、その全てに
損傷が生じていた。これでは、”部品”は無事でも”兵器”としての体を成さない。
王国兵C「チィッ!機体を破棄し、一時”転進”するッ!」


39 :マリーウェザー(=ヨハンナ)とレジーナ◇/23EAU3tOg の代理:2010/07/30(金) 22:28:22 0
「はっはっはー、二度とあいまみえることもないだろう」
けれど、これは決闘ではない……!マリーの背後から……王国兵の白刃が迫って……!
王国兵D「ククク…ヤツは二十一家の中でも最弱……!生きて帰れると思」
次の瞬間、王国兵Dの視界が紅蓮に染まった。

>35 レオン(先手必勝ということで、翼を出現させ、羽を王国軍に向けて大量にばらまいて爆発させた

王国兵D「馬鹿なっ!?」
王国兵Dは犠牲になったのだ…マリーに続いて現れたレオン…フェニキアの羽の犠牲にな。
けれどそれでヨハンナの好感度が一つ上がったりはしなかった。
なぜって、マリーウェザーはまったく後ろを見ていないから。

>「ヨハンナさん!戦って!」
「うゆゆ…イヤなよかーん…」
マリーウェザーが聞き覚えのある声のした方に振り向くと、やはり見覚えのある機体。

「カンキン王子の次はユーカイ犯?今日のオトコ運はまったくサイアクだね。
 それに、”戦って”ってなんなのー!?サインちょうだいなら分かるんだけど」
つまりマリーは、レオンの戦いたい相手というのがマリーだと誤認していて。

王国兵A「こいつら規格外の性能を持ってやがる…
 それにあのポンコツ(=イグニス)!旧式にしては、ふざけた火力だぜぇ」
王国兵E「なぁに、こっちだって精鋭機がくることは把握している」

もとよりこの地下道を使っての奇襲は少数精鋭で行われるだろうと予想されていた。
当然伏兵もそれを想定して置かれている。

「ちょっとちょっとこれはまずいじゃないカナ〜…」
いくら高性能機が二機といっても、物量差はどうしようもない。
しびれをきらした王国軍が、二人へ十字砲火を浴びせかけんとして…!?

『クレハのバリアーなら問題ないはず。ちょっと揺れるかもしれないけど我慢してね』
レゾナンティウスも実はそこまでの自信はないが、マリーを不安がらせる訳にもいかない。
そのとき。

王国兵B「何ぞあの朱い光は!?」
光の源を辿ると、虚空を揺れる黒い塊が見えて。
…それが、王国兵Bの見た、最後の景色となった。

>24 アルタイテン(アルタイテンは赤い粒子をばら撒きながら、戦場へとその巨躯を食い込ませた。

「ねぇ…ねぇってきいてるの!」
クレハ・ラクシュミーの全天周囲もまた、血のように紅い光の嵐を映し出していた。
例の如くクレハの衝撃緩衝機構は完璧で、外部装甲に受けた力を全くマリーへ届かせない。
けど、逆にそれがマリーウェザーの恐怖を喚起していて。

まださほど減衰していないアルタイテンの朱光は、
クレハのバリアーに干渉されてもなお本体に牙をうずめた。
レゾナンティウスも防御に努めたもの、そもそも彼の精霊力は
クレハにとってキャパシティオーバーなので、よくて多少変換効率が上がるだけだ。

『左腕がちょっとまずいかな…でも後は大丈夫』
「そっか…」
雨が止んだ後…地は精霊機から流れ出るオイルで滲んでいて。
アルタイテンの無差別攻撃は、二機を取り囲む王国兵たちをも屠っていたから。

40 :マリーウェザー(=ヨハンナ)とレジーナ◇/23EAU3tOg の代理:2010/07/30(金) 22:29:15 0
「よく分からないけど…にげるなら今のうちしかないよね」
マリーウェザーは人気のない方…北西に向かって舵を切った。
王国兵F「お、おい待て!」

>30【義勇軍 : 奇襲部隊の敵司令部占拠によって敵の士気を激減。このまま停戦を狙う】

そのときローガンブリア義勇軍よりのアナウンスが伝わる。
アルタイテン乱入による混乱もあり、手負いのクレハでもかろうじて市域から抜けられて。
遠く視界の向こうへ目を馳せると、ノルトゼーの大海原が見えた。

マリーはほっと一息つき、ふと目線を下げると…ラナンキュラスの花が添えられて。
花売りの少女からもらった花(前スレ220)。まだクレハの中に置きっぱなしだった。

「…パティ、やっぱりヨハンナ、もどろうと思うの」
『えっ。だってクレハちゃんはちゃんと修理しないとまともに使える状況じゃ』
「左の手だけでしょ!そんなのどうだっていいじゃない」
レゾナンティウスの慰留も聞かず、再びロンデニオンへと進路を取るマリーだけれど…!?

【王国軍の伏兵と交戦するも、アルタイテンの流れ弾により両者大打撃】
【混乱に乗じて逃走を図るも、何を血迷ったかUターン。ぶれぶれ】

41 :イオ ◆kfNCJM9MUprk :2010/07/30(金) 23:52:03 0
巨大な、そして禍々しき『ソレ』の顔部からは黒煙が立ち上る
が、予想通り。と言うべきか手応えを感じない

「今のが効くようなタマじゃないよなぁ!さあ楽しもうぜ…!」

黒煙の中から紅い光が見えたのと同時に降り懸かる光の剣の合間を紙一重で左に右に避け、紅い光から延びる帯にまとわりつく様にかわしながら螺旋を描き接近
【七式】を抜き放とうとした、その時
機体に衝撃が走った
砲撃や打撃によるモノでは無い、無理に機動を止められた為だ
___いつの間に俺の背後を…?___
七星の四肢には植物の蔓らしき触手が巻き付いている

>「これ以上は傷つけるんじゃないよ!!」

触手の元を確認するよりも早く、主と思わしき女の怒号が飛び込むが
意図が解らない。
七星は触手に絡まれたまま、触手の主がアルタイテンに近付こうとした所でようやく姿を確認した
___見た事がある___
作戦会議で確認していた王国軍側の巨大精霊機………の頭部だ
頭部下の破損孔から縛っているモノとは別の触手をアルタイテンに向けている

>「ほらほら新しい体だよ」

どうやらアルタイテンを支配するつもりか
触手がアルタイテンに着くか着かぬかその瞬間

首の方がアルタイテンとは逆方向に『吹き飛ばされていた』

42 :イオ ◆kfNCJM9MUprk :2010/07/31(土) 00:14:45 0
「冗談じゃねぇな!」

まだ『首』の触手による拘束は外れていない!
首だけとは言え質量では七星を未だ上回っている。
この衝撃力を受けると云うことは反応兵器に巻き込まれるのと同義

「気張りやがれよ!カガセオ!」

叫ぶと同時に七星の背部から触手の合間を無理矢理こじ開ける様に精霊力が噴出
更に脚部からも力場を展開し辛うじて自由になった腕で触手を掴む

「”首”でも喰らいやがれぇぇぇぇぇぇぇえ!!!」

【脚部の力場を軸に左に回転し全ての衝撃力をぶつけるべく
『首』を巨大なハンマーに見立ててアルタイテンの側面に迫る】

43 :黒衣の女 ◆eqAqXE3VMc :2010/07/31(土) 02:04:10 0
>「―――――空―――――」
アルタイテンの腹部から生える様に現れた「影だけ」の巨人の拳に鋼鉄の首は吹き飛ばされる。

それは見覚えがある拳だった。ゴウケンのエンマの拳だ。
開戦前にロンデニオンの街で見た衝撃的な精霊機の様相は女の記憶に新しい。

ゴウケンは昨日、まだ義勇軍を裏切る前の、心に逡巡を残していたサマウス艦長の砲撃によって戦死したと聞く。
その機体が何故ここに?よく見れば下半身の水晶体からも見覚えがある翼が六枚。

>『「ヒトよ…所詮は縋って居るのだろう。そう……ここで外しておけ」』

狂気の視線とともに四本の光剣が鋼鉄の首と七星に向けられる。

「なにかっこつけてんのよ!泥棒ネコのくせにー!!」

黒衣の女は空中で鋼鉄の首の体勢を整えると、まだ七星と繋がっている長い触手を使い機体の反動と遠心力を
利用して七星の機体をアルタイテンの頭部に衝突させようとする。が…。

>「”首”でも喰らいやがれぇぇぇぇぇぇぇえ!!!」

「ふぇ?」
どうやら考えていることは一緒のようだった。

「あがーっ!!」
鋼鉄の首は精霊力を最大にして斜め上に上昇するとアルタイテンとの衝突を回避する。

今は後手にまわってしまったために回されてしまったが同じ条件ならば
質量のある首のほうが振り回されるということはないだろう。

鋼鉄の首はアルタイテンと少し距離をとると七星を空中でグルグルと回し始めた。

「私が今倒さなければならないもの。それは義勇軍!」

触手に秘められた爆導索が爆発すると遠心力で加速した七星がアルタイテンに弾丸のように飛ばされる。

【イオさんをアルタイテンさんに飛ばし返しました】

44 :フィリップ ◇QzzonL2xIE :2010/08/01(日) 07:19:44 0
 >アデラ、イオ両氏
 何が起こったのか、よく解らなかった。
 ただ「降伏」という言葉だけはとても明瞭にかつ強烈にフィリップの脳裏に焼きついた。

―ネフティス歴844年8月23日―
 この日、神聖ローガンブリア帝国を構成する小領邦の一つ、アルザス領はティルネラントとのあいだに降伏協定を結んだ。
 戦闘で負傷した領主ジャン・アルザスに代わって、降伏文書調印したのは、留学先の帝都から急遽呼び戻された、ジャンの嫡男、フィリップ・アルザスだった。
 調印式で、ティルネラント側の貴族や軍人、外交官から浴びせられた嘲弄と憐憫の視線をフィリップは忘れることはできない。

(もう一度あの屈辱を味わうくらいなら・・・)
 玉砕を覚悟したフィリップが機体を義勇軍に突入させるよう、ネージュに命じようとしたときだった。

「我々は当方のサイカ級航空戦艦を包囲している。艦と乗員の生命を救いたければ、降伏を拒むわが軍の部隊が安全圏まで撤退するのを認められたし」

 対サイカ隊の隊長の声が響いた。

【王国軍別働隊、サイカを包囲。サイカを人質に王国軍の降伏拒否者を安全に撤退させるよう、義勇軍に要求】


45 : ◆88duu8Vf16 :2010/08/01(日) 21:59:17 0
>「カンキン王子の次はユーカイ犯?今日のオトコ運はまったくサイアクだね。
 それに、”戦って”ってなんなのー!?サインちょうだいなら分かるんだけど」

カッコ良く助けたつもりだったけど今回も彼女は僕に心を開いてはくれなかった
しかも、僕が彼女と戦いたいと思っているらしい
「この戦いが終わったら、是非サインを貰うよ」
>王国兵A「こいつら規格外の性能を持ってやがる…
 それにあのポンコツ(=イグニス)!旧式にしては、ふざけた火力だぜぇ」
王国兵E「なぁに、こっちだって精鋭機がくることは把握している」
と、軽口は言ってみたものの王国軍は僕たちの周りを包囲している
ピンチであることに代わりはなかったが僕の先制攻撃が功を奏したのか、彼らからの攻撃はなかった
どちらが動くかの一触即発の状況を破ったのはどちらでもなかった
>アルタイテンは赤い粒子をばら撒きながら、戦場へとその巨躯を食い込ませた。
再び現れたアルタイテンが赤い光の雨をまき散らせながらその姿を現した
「また現れたのか!!」
「来ます!」
フェニキアがとっさに叫び、羽を機体を覆うように広げる
赤い雨が周りに激しく降り注いだ
雨、と表現出来るほどの破壊の光が僕たちの襲う、激しい衝撃がくる
羽が守ってくれているとはいえ、アルタイテンの攻撃は激しさを極め、いくつかは羽を破って機体をえぐった
「……っく!!」
マリーさんの方をちらっと確認する
むこうは優秀なバリアがあるらしく、損傷はイグニスに比べ軽微だった
すぐに攻撃は止んだ
王国軍にあの攻撃を防御する手段はなくほとんど戦闘不能だった
その状況を見てマリーさんは……
>「よく分からないけど…にげるなら今のうちしかないよね」
王国兵F「お、おい待て!」
この場からはなれ北西に向かおうとしていた
僕はそれを追うとする精霊機の前に立ちはだかり、彼女の追撃を拒んだ
「マリーウェザーさん!逃げるなら今だ!ここは僕に任せて!!」
女の子を助けるの男として当然の行動とアルタイテンの攻撃で数を減らしたとはいえ、未だその包囲を単機で相手を出来るものではなかった
「ここを通すわけにはいかない!!」
満身創痍のイグニスに鞭打ち、敵集団に突入していく
目前にいる敵機を切り伏せる
「我こそは神聖ローガンブリア帝国が子爵ファーブニール家、嫡男!レオニール・ルラン・ファーブニール!
我が剣に臆さぬならばかかってこい!」
一度は言ってみたかった言葉だ
戦場でファーブニール家の名前を高らかに叫ぶことが出来た
あとは目の前の敵を倒して武勲にするのみ
魔法の矢、フェニキアの羽根を駆使して敵を1機、また1機と撃破していく
5機ほど撃墜したところで背後から敵の一撃をうける
「うわっ!」
イグニスの膝が地面につくこれまでかという場面で戦場の声が響いていく
>「投降してください。……」
義勇軍が王国軍の司令部を占拠したという放送が戦場を駆け巡る
王国軍兵H「なん…だと…」
王国軍兵I「やってらんねぇな」
王国軍兵H「せめてこいつの首でもとって手柄にしねぇとな」
王国軍兵I「帝国貴族様の首を持って出世させてもらいますかね」
下卑た笑い声でイグニスのに近づく王国軍兵2人、イグニスは動かない
「うごけない、万事休すか」
「レオン様、あけらめなないで!」
【レオン:手柄を狙う王国軍兵に追いつめられピンチ】

46 :イオ ◇kfNCJM9MUprk:2010/08/02(月) 21:31:09 0
>「私が今倒さなければならないもの。それは義勇軍!」

鋼鉄の首の上昇に釣られ引き上げられ振り回される七星

__まだこれほどの余力があるとは__

爆導索の発破と共に解放されると

「おもしれぇ!”後で”相手してやる」

太刀を構え更に精霊力を片翼のみに絞り横に回転を加えると
七星は『黒い竜巻』と成った 荒れ狂いながらもアルタイテンの方向へと飛来する
その途上、アルタイテンの周囲に展開されていた四本の腕の内一本の光の剣が触れた途端、光の剣が『竜巻』の方に喰い散らかされ
光の破片の消失を待たずに剣の持ち手は無残にも回転方向に引きちぎられ
制御と腕としての機能を完全に失っていた
【腕だったモノを後目に『竜巻』はアルタイテンの首筋(左側)に喰らいつく】

47 :?0~0d0?0?0ly^:2010/08/03(火) 19:01:05 0
>44
0?0?0?0?0?0ns?0D0f0D0_R%R??0kSV?0U0?0?0?0?0?

00S0nz^?0nbKR?0g SV? 0K

48 :◇kfNCJM9MUprk の代理:2010/08/03(火) 23:57:36 0
>44
フィリップ別動隊から包囲されるサイカ級。
しかし赤い陣場織りを羽織る艦長らしき人物は顔色を変えることはなく

「この程度で包囲の積もりとはな…なめられたものだ」

通信士にフィリップ全隊に対してのみ通信を絞るよう指示する。
もっとも戦況は兎も角、場は荒れ狂っているし、仮に傍受されようが
大した問題ではないのだが

「私はサイカ級艦長、暁 安房守真之(アカツキ・アワノカミマサユキ)と申す。
貴公等の意図は理解した。
この戦が飽くまでも教国との合戦であるのなら悪くはない賭けである
…しかし今回の我々の立場を理解出来るのならば
その手は寧ろ死路へと繋ぐ一手となろう」

ファールデル教国は言わば傭兵である。
作戦を全う出来ないのであればその程度と言うこと
当然人質としての価値は無いのだ

すでに零戦部隊はサイカ級の周囲にて展開している
サイカ前方に一機。左右後方にそれぞれ二機ずつ配置されている。
内一機ずつが小銃を構え、直ぐ脇には突撃の号令を今か今かと待ちかまえる
槍を携えた零式が配置されていたが、それでも一向に仕掛けようとしないのは
既に彼等には討つ”価値”がないと判断した為である
マサユキは続けた

「我々は将兵は無論、乗員各位すべからく”死人”(しびと。簡単に言えば戦場に置いて一切恐れない者の呼び方の一つ)である。
貴公等が向かって来るならば、戦国暁一門の誇りと意地でもって迎え討つ所存。
…しかし敢えて申そう。
貴公等の死に場所は此処に非ず!
このまま退き返すのならば追撃はしない。
急ぎ本隊へと合流し撤退に死力を尽くせ!!」

奇しくも彼等は飛行部隊。うまく立ち回れば味方はより多く助かるであろう
否、或いはサイカ級一隻に目を付けてしまったのは彼等の不運と呼ぶべきか

互いの部隊に緊張が走る
【マサユキ隊フィリップ隊に交渉】
【零戦部隊は臨戦状態で待機】

49 :マリーウェザー(=ヨハンナ)とレジーナ◇/23EAU3tOg の代理:2010/08/03(火) 23:58:28 0
前回のハイライト〜ライ麦畑のキャッチャーを志すマリーは、踵を返しロンデニオンへ!
※このテキストは開発中のものです。実際の製品とは異なることがございます。
しかしマリーウェザーの頭がホールデン並におめでたいのはまちがいない。

ロンデニオンに戻ってきてみれば、災厄の塊アルタイテンは未だ宙に浮いている。
あれをなんとかしないうちは、ロンデニオンは落ち着きそうにもない。
市域への侵入を許せば、ロンデニオン市民がメギドの矢に巻き込まれてしまう。
けれどもマリーは、アルタイテンを遠くに見たまま動けずにいて。

『マリーちゃん、あまりボロボロのクレハでうろうろしてると、敗残兵狩りに遭うよ』
クレハというかレゾナンティウスの修理魔法では、しょせん表層を作ろう程度の効果。
左腕がぷらんぷらんと揺れているのはどうしようもなくて。

「べつに、そんなのこわくないでしょ!
 ちょっと考えごとしてるんだから、邪魔しないでよ」

「クレハちゃんのバリアじゃ、みんなどころか自分もまもれない…。
 じゃあ、あれを射ぬくしかないの…?」
『だから、無理だって』
意を決して、マリーはようやくクレハの歩を進めるも、その足取りは軽くない。



>45 【レオン:手柄を狙う王国軍兵に追いつめられピンチ】

王国軍の機兵が、のそ…のそ…とイグニス・フロゴーシスへ近づいていく…!
王国兵A「絶望がお前のゴールだ!」
王国兵W「お前を、殺す」

王国兵K「おいおい、一思いにやっちゃ面白くねぇなぁ。
 だってこいつは俺たちの大切な仲間を殺りやがったんだぜ?
 短い時間でも、たぁっぷり苦しんでもらわないとなぁ!まずは腕だ」

王国兵Kの駆る機体が、イグニスの腕を斬り落とさんとブロードソードを振り上げる!
その刃は肉切り包丁のように、イグニスの装甲へ食い込むかと思われた…だが。

そう……王国兵は……気づいていない……!
その台詞を言われて……本当に死んだ人はほとんどいないと言うことに……!

王国兵Kが剣を振り下ろそうとしたまさにそのとき、周辺広範囲が蒼光で染まった!
王国兵A・W・K・その他もろもろ「qwsでfrgtyふじこlp;@:!!!」
巻き込まれた機体は短時間行動不能となった。
…精霊機のみに作用する魔法兵器だけど、もちろんイグニスも巻き込んでしまう。

義勇軍兵士A「そこまでなのですよ!あなたたちは完全にホウイされているのです!」
義勇軍兵士B「ああファーブニール様、申し訳ございません!
 ですが、ロンデニオン美術館の文化財を守るためには」
気の利かない兵士Bの声を遮るように、兵士Cが大声で割り込んで。

義勇軍兵士C「あの!あの!気づいたらファーブニール様が囲まれてて!
 ファーブニール様を助けるにはこれしか方法がなかったんです!
 それじゃ、あたしたちはコイツらを連行しなきゃいけないので、また!」

レオンに意識があることを確かめると、彼らは作業に戻った。
王国兵を精霊機から引きずり下ろし、そして本部へと連行していくのだった。

50 :マリーウェザー(=ヨハンナ)とレジーナ◇/23EAU3tOg の代理:2010/08/03(火) 23:59:19 0
マリーウェザーは、ロンデニオンの外れからアルタイテンへと近づいていた。
「ここからなら、あれを狙いうちできるかも」
『無理だよ…』「そんなの、やってみなきゃわかんないじゃない!」

けど、レゾナンティウスの言うとおり、クレハは弓を持つことさえ叶わない。

「なんで!どうしてなの!」
『さっきも言ったと思うけど、今のクレハは左腕が使えない。だから』
「そんな!ならどうしたらいいの…?」
『ここは兵隊さんに任せて、僕たちは帰ろう?』

弓が使えないとなると、クレハの武器で頼りになるのは扇ぐらいしかない。
ビームの威力は雀の涙ほどもないし、
ソードブレイク・アバランチは一品物の相手にはまず効かないから。

「…いいよ、ボスが来たボタンをつかう!」
そう言うとマリーは、引き出しから立体パズルを取り出した。
『…はぁ』
「はぁ、じゃなくて手伝ってよ。5分で完成させる!」

そう…この立体パズルこそが、”ボスが来たボタン”の封印を解く鍵なのである。
別に3000年前に作られた遺物とかではなく、
単にマリーウェザーのいたずら防止のためのロックに過ぎない。
だからって5分で解ける代物でもない。

『マリーちゃん、そこ、それじゃなくあれ』
「うるさいな!よこから口はさまないでよ!ここであってるの!」
『(手伝ってって言ったのはマリーちゃんなのに…)』

果たしてマリーウェザーは”ボスが来たボタン”の封印を解除できるのか!?
次回もマリーと一緒にレリーズ!

【マリーウェザー:アルタイテンに近寄るも打つ手がなく、パズルの時間】
【→レオン:義勇軍の一隊、範囲魔法を使ってレオンを囲む王国兵らを鎮圧・連行】

51 :アルタイテン ◆xYMjE4hM7rwp :2010/08/05(木) 18:10:10 0
『「…………………」』

剣を構えたまま、目の前で行われている回し回されのやり取りを後目に、何やら下でコソコソしている機体(マリーウェザー達)を眺めていたが、
どうやら振り回される側が決まったらしい。
こちら目掛けて投擲されてきたのは太刀を構えた体勢の七星。凄まじいスピードを生かして回転を加え、竜巻となって迫ってくる。
……何やら合体攻撃のようになっているが、実は協力関係にでもあるのだろうか。
と、これは流石に油断が過ぎたか。

『「左腕壱、損傷……消失」』

駆け抜ける衝撃と、粉々になって消える腕。
本物の竜巻も顔負けの威力で、左肩より伸びる腕の一つが一瞬で消し飛んでしまった。
七星は尚も勢いを増して、今度は頭部へと喰らい付こうとしているらしい、が。
そうそうやらせはしない。
すかさず残った三本の腕を伸ばすと、もう眼前まで飛び込んできていた竜巻を普段からは想像できない速度で掴む。というより殴る。
グシャッと潰れたような音で急停止したが、回転していたおかげか、巨大な拳を三発同時に食らったにも関わらずあまり機体に破損はなかった。
そのまま暫く監察していたが、求めるものが見つからなかったらしくそのまま放り捨てた。

しかし、圧迫から解き放たれた七星は見ただろう。
真上から轟音と共に空を斬って迫る、巨大な剣を。

『「メガロ…………タイタンが鉄槌……」』

アルタイテンが従えていた二つの宙に浮く巨大鉄拳。
その一つが、「斬る」ことよりも「潰す」ことに特化した超長大な剣を叩き付けたのだ。

『「…命中?回避?………確認不要」』

命中も確認せずに振り抜いたが命中していなかったとしてもあの一振りで凄まじい風圧が生じたはず。
巻き込まれて無事な筈がない。
そう決め付けて思考を切り替え。吹き飛んだ腕の基部からバキバキと黒い水晶が筍のように伸び、
少しずつ変形してから砕けると、そこには再生した腕が既に光剣を構えていた。
見た目はしっかりしているが、前回のようにならない為に力を節約しているので少しばかり脆い。
それを悟られないよう、ここは強めに出る必要がある。

『「精霊力圧縮開始。魔素変換。数値修正……発射」』

合図と共に全身から次々と発射される鋭利な黒水晶柱。
普段ならばこの後、発射された水晶から全方位に光線がばら撒かれるのだが、これもまた節約。
水晶弾は大量に撃ちだされているが、光線を放っているのはごく一部のみだ。
しかしそれでも、混沌を招くには十分。

『「“それ”なら、多少は使えるか…」』

大きいとも小さいとも取れない微妙な声で述べると、目の前でアールの回避に専念している鋼鉄の首へと全速で突撃する。
同時に胸部の装甲が三つに展開され、アルタイテンの無機質な外見からは想像できない、生々しい「口」が現れた。
真っ赤に染まった口内には血管のようなものが脈打ち、やたらと綺麗に並んだ鋭い歯が唸りを上げる。

『「私を取り込みたかったのだろう?喜べ、“取り込んでやる”」』

【アルタイテン、七星を斬り払い、鋼鉄の首を取り込もうと突撃】

52 :黒衣の女 ◆eqAqXE3VMc :2010/08/06(金) 16:50:45 0
暗い甘味の中。静かにせりあがるのは生か死か。

…ここは…?私は生きているのか?

黒衣の女は目覚めた。

女は戦場に現われた巨大な「口」に飲み込まれたはずだった。

それは生と死のキス。

生まれては泡のように消える意思。

醜い自分など惰ろしてしまえと女は永遠の眠りにつこうとする。

【どこかわからない世界にいます】

53 :フィリップ ◇QzzonL2xIE :2010/08/09(月) 18:55:57 0
>アデラ氏 
 マサユキの「貴公等の死に場所は此処に非ず!」という言葉は追い詰められた敵に対して武士の情けをかけたものだったのかもしれないが、その言葉は航空隊の将兵の士気に壊滅的な打撃を与えた。 
  
<スィゴーニュ、コックピット内 ネージュ視点> 
「降伏なんて冗談じゃない!俺は降伏などしない!」 
次々と味方が降伏していくのを見た彼女の主が、半狂乱で叫んだ。 
「1機だけで何ができる?今、ここで死ぬのは無駄死にだぞ」 
彼女の悪魔で冷静な答えに対し、あくまで降伏を拒絶する言葉を並べ立てる主。 
(言葉では、説得できないか) 
 そう感じた彼女は強硬手段に出ることにした。 

精霊機スィゴーニュには、精霊力を衝撃波に変換する精霊風と呼ばれる装備がある。 
 彼女がこの装備を使って、極めて弱い衝撃波を主の身体に送り込むと、彼女の主は意識を失い、座席に倒れ込んだ。 
(ここからは私の仕事だな) 
  
「こちらは、ティルネラント王国軍、フィリップ・アルザスの使役精霊ネージュ。 
戦闘継続不可能となった主に代わりレイヴン隊に降伏を申し入れたい」 

【王国軍航空部隊降伏】 
【ネージュ、フィリップに代わり、レイヴン隊に降伏を打診】 

54 :イオ ◆kfNCJM9MUprk :2010/08/10(火) 22:50:58 0
>51
巨大な拳を三発”同時”ではあったものの
彼のモノの目的は破壊よりも観察を意識したが故
そのまま押し潰そうとはせず当てたところで止めた為、七星の破損は軽微だ
しかし、搭乗者にとっては深刻な事態を引き起こしていた
__定在波__
衝撃波は一定方向から波のようにやって来るが
その威力には振れ幅があり一定ではない
しかしその『波』を反射する『壁』があると
波と波が重なり共鳴し凄まじい威力を発揮する

七星の突撃の衝撃力に対しアルタイテンの拳の衝撃の壁により生まれた定在波は
さらには七星の装甲を伝播して、イオ自身に襲いかかっていた

「ぐッ………フッ!!!」

操縦席内部は血の海と化していた
薄れていく意識の中、自らになお影が差すのが判った

>『「メガロ…………タイタンが鉄槌……」』

恐らくは『剣』であろう巨大な柱が七星に向けて降り懸かろうとするその刹那

「……ダイソン流空戦術!秘技木の葉返し!!」

『剣』が七星に振れるか触れないか、その刹那、機体を反転させて回避するが、問題はすぐ先にあった
間近から見る限りでは切っ先さえも見えぬほどの長さと並みの精霊機を裕に越える厚みを備えしその『剣』の軌跡は空気の層をごっそりと巻き上げた為
七星は突風に巻かれる木の葉の様に空中できりもみ状態となってしまった

「チィッ…!今どうなってやがる…!」

息も絶え絶えに姿勢制御を試みる所にカガセオが続ける

『奴が首を喰らったようだな。しかも奴にとっては良い意味でな
大きすぎる相手であろう。我が封印を解いたらどうだ?』

眼下ではアルタイテンがその姿を変異させつつある
全身の水晶体が不気味に明滅し脈打つように動いているのが判った

「…!それも笑えねぇぞ!情けねぇが他の”きっかけ”に賭けるか」

七星の左腕の籠手をスライドさせると杭を五つ取り出すと七星の正面に五角形の頂点の位置を執りながら浮遊する
杭の先端はアルタイテンの方を向いているのを確認すると
七星は太刀を構え刀印を斬り始めた

「臨!兵!闘!者!皆!陣!烈!在!前!…五芒封陣!」

本来であるならば要塞周囲に展開する陣術であるが今回はアルタイテンの胴体に直接打ち込んでその力を少しでも押さえ込む事に徹する

融合途中で無警戒なのか容易にアルタイテンの胴体に五つの杭が打ち込まれ
逆五芒星が描かれる

【アルタイテン上方にて待機】【ヘルプ】

55 :飛陽 ◆fLgCCzruk2 :2010/08/11(水) 00:05:21 0
人物設定
名前 飛陽(とびかげ)
年齢 製造から2年と少し
性別 人格は男、一人称は拙者+ござる
容姿 車両型精霊機(キャタピラ式の正方形3両編成)
体格 横 中型精霊機の肩幅程度 縦 中型精霊機の腿の高さ  
性格 イイ
身分 戦闘車両
所属 なし(その日暮らし)
説明 帝国と王国の紛争が始まる以前から双方及びファールデルの死の商人たちが互いの資金と技術を
出し合って有事の際に自分たちが安全に逃げられるように作った疑似人格搭載の車両型精霊機 
戦争が深刻化する中完成した飛陽はしかし商人たちが密通容疑で処刑されたことで、搭乗者を持たずまた
車両型という前時代的な設計思想は誰からも相手にされず記録さえもとられず破棄され今に至る。

現在はうち捨てられた廃工場で戦場で漁った廃品を使い自身のアップ、ダウングレードを繰り返し
自分のカタログ作りに奔走している、ちなみに名前は教国の商人がつけたもの。

56 :飛陽 ◆fLgCCzruk2 :2010/08/11(水) 00:49:07 0
機体設定
機体名 飛陽
精霊の種類 木
精霊の名前 ジェニファー(サボテン)
精霊力 2500
耐久力 C
運動性 C
装甲  C
武装  
無線式アイアンクロウ:先頭車両のダンパーのように納まっているかぎ爪、
計4本あり本体から近い距離を刺したり引っ掻いて攻撃する
3連木砲×2:先頭車両の運転席の代わりに格納されている
固着式煙幕:2両目背部に装着された砲台、煙に巻かれた相手の機体にべったり張り付く、
気化すると短い間有毒ガス発生
液体トリモチ:煙幕とは弾が違うだけ、様々な蛍光色の液状の粘着物質を撒く。
間接に染みたりすると相手の行動を封じることも
高衝撃閃光撒菱:踏むか強い当たり方をすると眩しく五月蝿くすごい勢いで爆発する撒菱、
でも火力は全然ない
ドレイン鍵縄:3両目背部の装着されており相手機体に引っ掛けて相手の精霊力を吸う効果があり、
貯蓄モードで結晶化させ補給や爆弾にも使えるように、放出モードで吸いっぱなしの開けっ放し
後部ドリル:3両目の尻についてる多数のドリル、これで穴掘って逃げる、攻撃力は高いがまず当たらない
通信ジャック:木の精霊が植えた豆の種の周辺の情報が入手できまた介入できる。
スキャナー:スキャンできます(低性能)
機体&精霊説明
破棄された飛陽は自分の使命を失い朽ちていくのを待つだけだったがいつの間にか自分の
上に置かれていたサボテン(木の精霊)のジェニファーが宿ったことにより行動するようになった。
何かに目覚めたこれは機械として発展することを目標として現在に至る。シンプルな構造で
他の精霊機の装備のようにもなれる機体であり、改変性が妙に高くパーツや外見が変っても性能を保つ
ようになっている。3両バラバラに戦う事も可能で全部潰さないと死なない。

基本戦術は土中から相手を襲ったり逆に引きずり込んだりする。また装備で撹乱することを専らとする。
精霊の力を借りて「脱皮」する空蝉の術や通信ジャックからの五車の術でやる気もさげる。

ジェニファー:飛陽にいつの間にか宿った奇矯な精霊、言葉は話せないが態度はまさに植物の健康状態の
ソレであり、気分がいいとたまに花をつける。飛陽の疑似人格を発展させた張本人で飛陽はジェニファーには
絶対服従の間柄となっている。

57 :飛陽 ◆fLgCCzruk2 :2010/08/11(水) 01:22:27 0
ぼこっと音を立てて地面からドリルの付いた箱が乗り出してくる。
「今日もいい日和でござる、戦場は拙者のユートピアでござる」
いいながら後続車両も姿を現す。ドリル付きの箱の後には物々しい爪をした腕が付いた箱、
最後に砲台を乗せた箱がキュラキュラと音を立てて出てくる。

「こないだなんかサヒュアジンにコルバス・コラックスまで手に入っちゃって拙者もうウハウハでござる」
車両からはそんな独り言が聞こえてくるが中には誰も乗ってはいない、人が見たら幽霊かと思う
カも知れない。そんな彼の名は「飛陽」今では最先端と言われる無人の精霊機の先駆けとも言える
存在である・・・誰も認めないが・・・

「理想郷は人の手で作り出せるとはまさに至言でござる、拙者のカタログも大体Cランクまで
は大分埋まったしもう少し機体を集めたらBランクにアップグレードでござる」
その声の主は人ではなく車両に搭載された疑似人格のものであった。

ソレは戦場に現れると静かに吹き飛ばされた末端のパーツ、それも比較的に損傷が少ないもの
を回収し、操縦槽の直撃だけで済んでいるものはそっと隠したりしていた。
帝国も王国も区別なく戦場を漁るその車両は周囲の怒号も異形の巨人も何処吹く風であまりに
普通に活動していた。だがその時不意に箱もとい飛陽は上空の巨人、アルタイテンと七星に気付いた。

「ああいうのは流石に使い道がないでござるなあ、少しだけサービスしたら帰るでござる」
そう言うや否や車両の一つが巨人に向けて砲撃を開始する。乾くと毒ガスになる煙幕を・・・
「あれだけ大きいと煙幕全部使っちゃうでござるなあ、まあでもちっさい方には煙が
行かない分よしとするでござる」

そう言って今度は急いで後退する、潜るのはなるべく最後の手段である。
【参加希望なんですが、この設定でできますかね?】

58 :アルタイテン ◆xYMjE4hM7rwp :2010/08/11(水) 12:10:01 0
『「数値安定。中々に良質」』

全ての腕を組んで翼を伸ばし。アルタイテンは「それ」を味わうかのようにゆらゆらと浮かんでいた。
先程まであったおぞましい「口」はもう閉じたが、
未だに胸部装甲が咀嚼しているかの如くモゾモゾと動いている。
本来このような力の取り込み方はしないのだが、前回の戦場にて今まで通りの摂取では問題があると判断し、
直接の摂取も行える手段を自らに施した。
ほとんどスピードの出ないアルタイテンでわざわざ突進しなくてはならないのが非効率的だとは思ったが、
少々の手間と一瞬の加速を活かせば、どうやら無理でもなさそうだ。

『「摂取終了…?…エラー……」』

全身に今しがた取り込んだ敵機の精霊力を満たしたところで、僅かに拒否反応が起こった。
少女と同化しながらも、「影」は直接的な摂取のもう一つの問題点を思い出し、苛立つ。

『ヒトの意思……そ か、不純 も強すぎる 考え  な…』

一瞬の硬直。その隙に何処からか数本の杭のようなものが鋭く空を斬り、胴へと綺麗に並んで突き刺さる。
直後に強い脱力感。思わず少女との同化が解けてしまうところだった。
ミシミシと震えながら杭の飛んできた方向に首を向けると、陣を切り、構える七星。

『「出力…26%低…下………魔素…変換…率………貴…様何を…施し…た……」』

別の力を取り入れたばかりで、出力などにムラが出来るこの瞬間にこのタイプの攻撃はかなり辛い。
何とか杭を内側から押し出そうとするも、刺さっている箇所の再生がやたらと遅い。
かといって手で引き抜こうと思えば、全身がほぼ麻痺に近く、震える巨大な手で小さな杭を抜く繊細な作業など到底出来ないのだ。
ここは取り敢えず攻撃を仕掛けねばと突進の体勢に入ったとき、謎の煙と共に、何か粘液のようなものが装甲に付着する。
地に目を落とすと、あれは戦車…だろうか?ともかくこちらに向けられた砲台からして、あれが撃ってきたに違いない。
自由の利かない状態に、正体不明の煙幕。アルタイテンは荒れ狂い、そして混乱していた。


>【どこかわからない世界にいます】
何処までも続く赤黒い空間に、立ち込める紫の霧。
ここはアルタイテンの体内とも言えるべき場所であり、しかしアルタイテンを壊しても内部にこんな空間は無い。
そこでまさに今消えようとする黒衣の女の前に、何処からか、白い光が降りてくる。
光は暫く女の顔の周りをふよふよと飛んでいたが、目を覚まさないと見るや、唐突に言葉を発した。

「起きよ、女。此処は寝床等では無い」

それはかなりドスの利いた低い、しかしどこか若い男性の声。
しかしまだ女は目覚めない。すると光は少しずつ大きくなり、形を作り、そして、

「起きろと謂って居る」

大きな鉄の掌で、女の頬を思いっきりぶっ飛ばした。ヤバい勢いだった。死んだかもしれない。
だがそんなこともお構いなしに、まるで精霊機のような姿をした男は軽々と女を抱え上げて名乗った。

「私の名はゴウケン。貴様、何用で此処に来た」

―――とても身勝手に。

【アルタイテン、怒りと混乱で硬直中。幽霊?黒衣の女の前にゴウケン出現】

59 :アルタイテン ◆xYMjE4hM7rwp :2010/08/11(水) 12:32:58 0
>>57
【イラッシャイ…マセェ……というか既に勝手に絡んでしまいました。
よろしくお願いしますね。】

60 :飛陽 ◆fLgCCzruk2 :2010/08/11(水) 23:18:34 0
「おおー当たった、当たったでござる」
飛陽はアルタイテンに煙幕が着弾したことを確認すると今度は煙幕の代わりに
今度は液体トリモチを砲台に装填すると空中の水晶群に狙いを定める。

「ああいう兵装は拙者にも是非とも欲しいモノでござる、とりあえず動いてない奴と
攻撃してる奴両方狙ってみるでござる。鹵獲できたらめっけもんでござる!」
嬉々とした調子で言うと飛陽は後先を考えずにまたも全弾を発射する。

これで煙幕とトリモチは打ち止めで残りの兵装はほぼ接近戦の物のみである。
あの巨人が地面に降りればなんとかなるが、未だその気配はない。飛陽はバラバラに
なれば空戦ができなくもないがそのための機動性を有していないのでまずやらない。
あたり一面にジェニファー製の豆の種をばら撒くと戦況を知るために出てきた穴へと向かい身を隠す。

(さてさて今はどんな状況でごるのかな)
そう考えながら戦場をまじまじと見ていた。
【飛陽、アルタイテンの周りの水晶にトリモチをばら撒いた後に出てきた穴に避難】
【ありがとうございます、こちらこそよろしくお願いします】

61 :エルトダウン ◆iGrjUqKhz2 :2010/08/12(木) 08:02:29 P
郊外の小高い丘で鉄の翼の救援を待っていたエルトダウンは、
時たま響く、重苦しい轟音を静かに聞いていた。

「やっぱり、この音がすると戦場に居るっていう気分になれるね。
 これだから戦争屋は困るよ。いつまでもこんな汚らしい旋律を聞かせるなんて」

ところどころで今もなお小規模な反抗作戦が行われているのだろう。
郊外からでも確認できるほどの爆発が何度か起こり、街からは煙が上がっている。

"戦争ってのは悲しいモンだよなァ…人が死んで、精霊も死んで、残るのは鉄クズしかねェ"

空から大地を覆っていた影がホロウ・クロウラーをも覆い始める。
街は燃え、少し視点をずらすとASLではタブーリストと呼ばれるリストに記載されている、
通称『コードフィフス』がすっくと立ちすくんでいるのだ。

――この状態を一言で表すならばそれはすなわち『混沌』だ。

エルトダウンはふいにそんな事を思い浮かべる。

「悲しい事だけど、この世界がこんなにもバランスを取れてるのはその戦争のおかげさ。
 あと十年…あと十年のうちに恐らく、もっと大きな戦争が起きる。

 東の大陸じゃあ結構張り詰めた雰囲気らしいからね…」

困ったものだ、と言わんばかりに溜息をつく。
すると、シュヴァルツ・ヴァルトが丘を登ってくる。

サイアニスはホロウ・クロウラーよりも損傷した機体を操っていたが、
自ら哨戒と偵察に名乗りを上げたのだ。

『ビンゴさ。コードフィフスと戦闘を行っていた機体があった。
 王国も帝国もしばらくはあっちに気を取られている事だろうな』

シュヴァルツ・ヴァルトがもくもくと黒煙の吹き上がる方向を指差す。
煙の切れた合間からは紫水晶―アメジストの事―が顔を覗かせていた。

「あれは返り血か、それともオイルか。確かめてみたいけど……

 …!?なんだ、列車砲か…?いや、違う。煙幕かな。戦場でも花火遊びが好きなのは居るんだね」

黒煙と煙幕が入り混じった煙の隙間に小さな穴が見えた。

"すんげェ微弱な反応ならさっきから感じてるぜ。ちょうどあの穴のあたりだ"

穴のほうを凝視するエルトダウンとサイアニス。
すると穴から何かが紫水晶に向けて放たれた。

「はは、なあるほど。トリモチランチャーか。ジャンク屋か何かかな?ああいう人って応援したくなるね」

【エルトダウン達は郊外からアルタイテンと飛影を監視】

62 :黒衣の女 ◆eqAqXE3VMc :2010/08/12(木) 15:49:26 0
>58
血の空に血の大地。ここはアルタイテンの心象風景か?
女がコロリと寝転がると黒衣に包まれた二つの胸の膨らみがぬるりと垂れる。

>「起きよ、女。此処は寝床等では無い」
「…?…」
少し瞼をひらく。長い睫毛の隙間からは、ぼやけた光の人影が見える。
>「起きろと謂って居る」
ドガッ!女の頬にとんでもない衝撃。鉄?これって鉄?
>「私の名はゴウケン。貴様、何用で此処に来た」
「ぁ…が…が…。…あごが…ひゃずれ…たぁ…」
女は軽々と持ち上げられた。男の逞しい腕は女の重さなどこれっぽっちも感じていないらしい。
「あぐ…あぐぅ…」
女は顔を横に向けている。別に照れているわけでもなく必死で顎を手ではめようとしているだけ。
ポコンッと骨の音がして顎がもとに戻る。口から垂れた涎を手で拭いお姫様抱っこのままゴウケンを見つめる黒衣の女。

「おまえ…生きていたのか?」黒衣のエシエンフラウ(女の名)は問う。
馴れ馴れしくもあるその問いにゴウケンは戸惑うであろうが女はロンデニオンの街で彼を見て気にかけていたのだ。
「ここはどこだ?…アルタイテンの胎のなかなのか?
私にはわからない…まさか、おまえがアルタイテンってことはなかろうな?」

エシエンフラウは白い手をゴウケンの胸に当て下ろして欲しいと催促する。
赤い大地に女の爪先が触れた瞬間、赤い世界が悲鳴をあげ歪み始めた。

「なにごとだ!?」
それはエシエンフラウの精霊機である鋼鉄の首がアルタイテンの体内で暴れているのが原因だった。
主の魂を求め暴れ狂う鋼鉄の首。使役している精霊は木の精霊ドリュアデス。
アルタイテンの精霊炉まで到達した触手でもある根は精霊力を吸い肥大化を初めている。

同時に外の世界で起きる現象。それは…。

>>54/61
アルタイテンの上方で待機している七星の機体に付着している触手の破片が肥大し機体を再び締め付け始める。

それと程なくして鉄の翼の救援を待っていたエルトダウンにも異常が起きる。
機体の爆導索を仕掛けられた部分から巨大な根が生え機体を締め付け始めたのだ。正体はワイヤーネットに仕込まれた鋼鉄の首の根の破片。
締め付ける根の成長を止めるにはアルタイテンの体内で成長をしている本体でもある鋼鉄の首を破壊するしかないだろう。

【アルタイテンさん:鋼鉄の首が中で暴れんぼう】【七星さん:根っこ締め攻撃】
【エルトダウンさん:根っこ攻撃。アルタイテンさんの中にいる、本体である鋼鉄の首を破壊したら根っこは死にます】
(ひきずりこんでしまいました)

63 :マサユキ ◆kfNCJM9MUprk :2010/08/12(木) 23:29:39 0
フィリップの率いていた別動隊がサイカを後にしたその直後であった
仁王立ちのまま隊を見守るマサユキは七星を射出した方角に目をやると
ロンデニオン側から極めて広範囲に流星の如く飛来する火線が見える
無論その放火はこちらにも及んでいる
流星のいくつかはサイカに触れる前に壁の様なモノに遮られる

通信士「精霊結界、出力16%低下!戦闘行動に支障なし!」
「回避行動は最小限!七星に向け最大戦速!零戦部隊はサイカを盾にしつつ進軍せよ!」

サイカ後部にある精霊力の力場がより大きくなり艦艇を加速させる
零戦部隊は結界内部に収まる様、隊を整えた
__この絶え間ない無差別砲撃…何より、この精霊波形、間違いない
コードフィフス…アルタイテン。彼奴(イオ)はこの情報を知らない
死ぬタマでもないが、おそらくガッついて返り討ちに遭うだろうな__

イオを案じる(?)マサユキ。不意に背後から気配を感じた
振り返らずにその”影”に向けて手振りのみで『始めよ』と合図する
黒ずくめの影はマサユキのみに聞こえる様、語りかけた

影『ヤタガラスから動きがあった模様。アデラ・グラーフストレームに対して
本国への緊急召還が転移法を用いて行われた模様』
『なりふり構わんな。あの化け狐が…フリーランサーとは言えアデラほど目立つ奴をこの機で、とはな,余程重要な任務があると見えるな?』
影『申し訳御座いません。目的までは』
『…簡単に尻尾は出さんか』
マサユキは『始めよ』と逆の手振りで『さがれ』と指示すると背後の気配は消えていったと同時に通信士から報告が飛び込む

「敵性対象!七星に対して…こ、これは剣!?」
「報告が不明瞭だぞ何が…」

マサユキはモニターを見て絶句した
天を衝かんと言わんばかりの長さを誇る巨大な剣が、その巨大さに対して一切の驕りなく、神速でもって”豆粒”に対して振り抜かれる常軌を逸した光景が映っていた
マサユキは口を開けて唖然としながらも言葉を発する

「あの豆粒は七星か!?外部には損傷は見あたらないが…」
通「五芒封陣の構えです」
「滑走砲に撤甲弾を装填!魔針銃(マシンガン)、散布射撃しつつコードフィフスに接近せよ!零戦部隊は自律攻撃群を黙らせろ!」

五芒封陣成功と同時に零戦部隊は散開
【アルタイテンに対して針状の炎の精霊弾を雨の如く撃ち掛ける】

64 :イオ ◆kfNCJM9MUprk :2010/08/13(金) 01:22:34 0
耳や目から流れる血を腕で拭い呼吸を整えアルタイテンに向き直る

>『「出力…26%低…下………魔素…変換…率………貴…様何を…施し…た……」』

「フー…その杭はな。ある秘法でカガセオの力の極一部を封入してある。
『死を司る星の力』って奴をな。魔素変換がどうとか言ったな?
この陣術は大抵の精霊の動きを魔素の段階から阻害する為の術だ」

敢えて講釈を垂れたのは時間稼ぎだ。我ながら狡いが直に仕掛けられる、
太刀を構え突撃を試みようとした直後
>57突如地面が隆起を始め回転掘削機の付いた車両の前面部が顔を覗かせる
連なりながら二両目三両目が姿を現した。何やら芋虫の様でもある

何やら独り言をひとしきり述べた後
>車両の一つが巨人に向けて砲撃を開始する。乾くと毒ガスになる煙幕を・・・
「あれだけ大きいと煙幕全部使っちゃうでござるなあ、まあでもちっさい方には煙が 行かない分よしとするでござる」

何やら訳が判らないが隙を作ってくれた事に間違いない

「恩に着るぜって…もういないのか。さては忍びか…」

煙幕と毒の為アルタイテンは混乱し攻撃は無差別と云うより無軌道を極めている
そして胴体部分のみの動きが明らかに異常だ
今が好機!今度こそ突撃を…仕掛け、られ…ない!
>62先程まで自由だった七星の手足の挙動が重い
完全に振り切ったと思っていた触手だが根を張っていたらしい
>63この機に畳みかける様に朱き雨がアルタイテンに降り注がれ着弾点が朱く滲んではすぐさま元の色に戻るを繰り返す

「思ったより早いじゃねぇか?」
真之「お前はこの好機にて何故仕掛けん!?」
「それは…首野郎の罠だ!」

恨めしい視線を触手に向けると五芒封陣で使用した杭を取り出して
根元付近に差し込むと、触手はさらに強く締め上げようと暴れるが
やがて触手の動きは緩くなりボロボロと崩れ落ちた
今度こそ自由となった七星。
太刀を片手に垂直に持ち左手をシノギにあてがって集中する

「さっきのといい、今のデカブツといい、あの首野郎がまだ支配されてないって事か…」

65 :イオ ◆kfNCJM9MUprk :2010/08/13(金) 01:37:31 0
七星の左手はカガセオの力を受けて紫色の光を帯びシノギから切っ先に向けてゆっくりと撫でると刀身は黒く染まり紫色の光を怪しく称えた

「七式…無命村正」

そう呟いて太刀を肩の高さに持ち左手と左脚を同時に引き重心を後ろへ
切っ先と神経をアルタイテンの胴体へと向けると、そのままの状態で一気に間を詰める『縮地法』
…もっとも今アルタイテンは七星の方を見てはいないが重心を崩さず接近するには最適と考えた為だ
七星の間合いにアルタイテンの胴体が入る

「引導をくれてやる!」

七星の渾身の突きと共に放たれた黒い波動はアルタイテンの胴体の『左側』を飲み込んだ
__な!?確かに心中を狙ったはず__

重心と精霊力を一気に切っ先に移し胴体に触れる直前だった
不規則に揺れるが故に狙った箇所がズレてしまったのだ

【アルタイテンごしに巨大精霊機(首)を攻撃するも失敗】

66 :アルタイテン ◆xYMjE4hM7rwp :2010/08/13(金) 23:18:56 0
>「おまえ…生きていたのか?」

「……さて、な…艦砲を受け、之の様な場所で長々と過ごして居ては、
最早己の生死さえも解らぬ。存外、之が死霊と謂う者なのやも知れぬな」

女の当然の問いに、アッハッハと軽く笑いながら答えるゴウケン。
しかし飄々としながらも、何処か馴れ馴れしい目の前の女性について色々と考えてはいた。
自分はこんな容姿で目立つものだから、相手が自分の事を知っていて、自分は相手を知らないというのは良くある事だ。
まぁ今回もそんなところだろうと踏んでいるのだが。

>「ここはどこだ?…アルタイテンの胎のなかなのか?
私にはわからない…まさか、おまえがアルタイテンってことはなかろうな?」

「アルタイテンとは……よもや、『器』の事か?であれば違うな。
此処はあれの胎内では無い。只彼の者が羽を落ち着ける為だけの場所…
……私が『器』だと?私は剣にして刃、界を染める白。然し、器から生み出された存在なのは確かか」

聞く側からすればゴウケンの言葉は何を以ってしても意味不明だろうが、
実は自分もまだ色々と頭の中が混乱しているので、説明のしようがない。

するつもりも無いのだが、と内心冷めて溜息を吐いていると、突如として空間大きく揺れた。
噎せ返る程濃かった紫霧は瘴気の如く更に強く立ち籠めて視界と酸素を奪っていく。
そんな様子を悠然と、ただ不思議そうに顎(?)に手を当て眺めていたゴウケンだったが、
突然女性へ向き直ると、不意にその名を呼んだ。

「思い出したぞ。貴様は。……エシエンフラウ。ロンデニオンの要で在った貴様が此処に居ると謂う事は、
落ちたと思って良いのか?」

実はまだ考えていたらしい。
ようやっと思い出せたのがそんなに嬉しいのか、声が少しばかり明るい。

『まったく……どこまでもダメなヤツだぁ………』

轟音のせいで誰にも聞こえない呟きが、ゴウケンの髪の中から零れて消えた…

67 :アルタイテン ◆xYMjE4hM7rwp :2010/08/13(金) 23:19:50 0
>アルタイテンの精霊炉まで到達した触手でもある根は精霊力を吸い肥大化を初めている。

『ぐゥ…!ガ っ!!クハ !翠……溢レる……!
イィイヒひひヒヒャヒゃヒひヒヒャあアああはハはハハぁ!!!!!』

『「出力、上昇を確認。魔素変換率安定。障壁展開、リロード」』

自らの体内で敵機が暴れているにも関わらず、「影」は笑い、
アルタイテンは四本の腕で愛おしそうに振動する腹部を撫でる。
同時に、起こした上体は弱体化どころか放つ狂気を強め、その力を増していく。
周囲にばら撒く弾幕はより激しく。身に纏う装甲はより強固に。
何よりもアルタイテンを包むような形で、影が差す謎の空間が発生する。
恐らくは防御壁であり、今でこそまだ簡易なものだが、その厚さは確かに少しずつ肥大化している。

>この機に畳みかける様に朱き雨がアルタイテンに降り注がれ着弾点が朱く滲んではすぐさま元の色に戻るを繰り返す

『「……無駄な事………ただ見ていれば良いのに」』

広がる闇の領域を切り裂くように、突然次々と赤い流星が装甲に降り注ぎ、しかし火花のように小さく消えて吸い込まれる。
死角から急に現れたサイカをまるで意に介さず、振り向かないままに声は呟く。
しかし、それは決して「無視」するという意味ではない。
先程まで無差別に発射されていた弾幕が一旦止むと、次の瞬間には全てがサイカに向けて発射される。
それもいやらしい事に、どうやらサイカの端々を狙っているらしく、凄まじい量の水晶弾や怪光線が、サイカの装甲を抉りながらも少しずつ掠めていく。

まだ沈まれては困る。それでは求めるものが手に入らないから。

>「七式…無命村正」

『「……………!」』

>「引導をくれてやる!」

視界が七星の接近を捉えた時には既に、胴の左半分が抜け落ちていた。
しかし、それでもアルタイテンの笑みは止むことがない。

『「……違う………そうではない…」』

その失われた左半身から水晶が伸び、七星の下半身を取り込んで完全に固まり、動きを封じる。
そして、再び胸部装甲が軋むような音と共に展開し、あの「口」が現れた。
しかも先程よりも凶暴そうに。

『「だが、貴様にくれる答えは無い…去ね」』

【アルタイテン、何故か活性化。やっぱり体内を何とかすれば弱体化】

68 :飛陽代理 :2010/08/14(土) 08:55:22 0
「いやまあ拙者もトリモチで光学兵器を黙らせるとかどだい無理だと思ってたでござるよ。
結果は火を見るよりも二階から目薬でござったな」
飛陽が空中の水晶群に放ったトリモチは命中こそしたものの当然それで光線の雨が止む筈もなく
張り付いたそれをあっさりと貫いた光線が打ち止めの2両目の砲台に容赦なく命中し破壊する。どうやら
威力や命中率の減衰、小さな水晶片の破壊や墜落といったものさえ確認できないところを見るとやはり
相当に手の込んだ武器のようだ。ついこの間拾って付けたばかりのスキャナー(1両目正面窓ガラス)で
見てみても大きすぎる精霊力の塊しか移らない。これでは何も言えそうに無かった。

「ウホッ!シャコタンで命拾いしたでござる。でもこれは参ったでござるねえ、目を付けられちゃったから
そばの大穴に駆け込むのも難しそうでござる・・・拙者の砂地の迷彩ボディも全然効果ないみたいだしぃーって、うん?」
ぼやきながら巨人を警戒していると豆粒いや、普通のサイズの精霊機がなにやら力を爆発的に増大させて
いや、本来隠していた力を解放して巨人に突撃していく。その威力は凄まじくサイズ差補って余りあるダメージを
与えたように見えた。

(どうやら王国軍側も降伏し出してそろそろお暇しないとまずいでござるねえ)
周辺の開きっぱなしの回線を傍受しながら飛陽はぼんやりとそう考えていた。七星の側に援軍も駆けつけて
この場は納まりそうだと思ったが・・・
(いや、むしろこれはチャンスではござらんか!今アレとの戦いに加勢しお役に立てば拙者は帝国側に
かんなり良いイメージで表舞台に立てるのでは!?いつかは実績を立てねばならぬし・・・
やはりやるなら今しかないでござる!)
「やるでござるよジェニファー、拙者たちの夜明けはここらで始まるのでござる!」

【飛陽 2両目砲台が破壊された後アルタイテンの足元に突撃】

69 :マリーウェザー(=ヨハンナ)とレジーナ◇/23EAU3tOg :2010/08/14(土) 14:47:45 0
【本文(1/2)】
前回のハイライト〜マリーは”ボスが来たボタン”の封印、立体パズルを解きはじめ…!?

「ちょっと、これはまんないじゃん!いったいどうなってるんだよ!」
『(まあ、この状況じゃ仕方ないんじゃないかな…)』
マリーは5分で解いてみせると言ったけど、砲撃音に揺れる戦場ではどだい無理な話だ。

手ににじんできた汗が、パズルのピースを手から除けて。
金色のカケラが床面に落ち、ことんという音を立てて。
マリーは席から上半身だけを倒し、いらいらした様子でそれを手にして。

床に目をやれば、クレハの足元に茂るヒースの荒野が、
全天周囲モニターによって映し出されていた。
複雑な気持ちを抱えながらそれを眺めるマリー。
そしてアルタイテンのほうを見ると、黒いカケラが散らばされていて…!?



>30【義勇軍 : 奇襲部隊の敵司令部占拠によって敵の士気を激減。このまま停戦を狙う】

>「投降してください。
> 今後、この通信を通してあなた方に作戦指令が届くことはありません。
> あなた方に高度な連携や秩序だった作戦行動はもう不可能です。

司令部が占拠されたと放送されたあと、王国軍の”転進”は早かった。
これもクローディアスの人徳であろう。一部を除き、彼には人徳がなかったのだ。
ただ、彼らも軍事拠点や運びきれない物資などは撤退を決めたときに焼き払っている。
そのため、王国軍が引き払った後も火の手は多くて。

ティルネラント王国軍との戦闘は概ね沈静化しており、
この街が静まるのも時間の問題であるかのように思えた。
が、義勇軍による奪還をこころよく思わない勢力は王国軍の、
というよりも、生粋のティルネラント人に限らなかくて。

義勇軍所属の或る精霊機に、こつん、と石が当たる。
最初は一つ。けど、それは一度では済まず、しだいに石も大きく数多くなっていって。
義勇軍兵士「なに…!投石…だと…!」

ロンデニオン自警団「俺たちを見捨てて逃げたくせに、今さらのこのこ帰ってきやがって!
 そんなに騎士ごっこがしたきゃヨソでやりやがれ!
 もうこの街にはティルネラントもローガンブリアもいらないんだよ!」

市民はローガンブリア義勇軍に敵意を抱いたのだ。
王国側のプロパガンダ(前スレ212-213)が効を奏したのだろうか。
いや、もともとローガンブリアには一定数、義勇軍を快く思わない人々が存在していた。

”選別”されたローガンブリア義勇軍の人材は非常に優秀だ(前スレ260)…確かに。
けれど、一体どれだけの人がその入軍条件を満たせるだろうか?
皮肉なことに、その高潔な理念こそが、
市井の臣に”ブルジョアジーの騎士ごっこ”と思わせる根源となっていたのである。

70 :マリーウェザー(=ヨハンナ)とレジーナ◇/23EAU3tOg :2010/08/14(土) 14:49:45 0
>51 アルタイテン(合図と共に全身から次々と発射される鋭利な黒水晶柱。

「あ、アレは…」
アルタイテンが水晶を散らせるのを見ると、マリーはとうとうパズルを放り出した。
「えーい、やめやめ!とっておきはさいごまで取っておくものだし!」

「けど、このキョリじゃあのコウゲキをふせぎきんない…。
 しかたない、レジーナ、あの水晶をたたきわるよ!…ちょっともったいないけど」
『えっ。ちょ、ま、こんなボロボロのクレハで!?』
そのときすでに、クレハには加速がかかっていて。

「カ、ゼ、が、ソーラヘ、む、かうよーうに、
 ボ、ク、もいーつか、と、び、た、つ、んだ♪
 で、き、るーさー、しんじてーるよっ♪
 ……やるしかないから、やるの!」

「飛び道具はもうつかえないけど、まだボクの背中にはハネがあるんだ!
 ほかの水晶からはなれてるのだけわるだけでも、町へのヒガイはへらせるハズ!」
傷ついた羽を広げながらもあくまで煌びやかに舞うクレハの、
ただ一つだけ自由になる腕には孔雀色の扇を広げさせ。

もちろん黒水晶だってただ的にされるために生み出されたわけじゃない。
彼らのレゾンデートル、混沌の豊穣を得るためにめいめいが八方へと光の尖端を向けて。
『右…?いや正面だ!次、10時の方向!』「うん!」
クレハの躯(からだ)を傾けて、斜めにS字カーブを描いて。

無闇に乱れ矢を放っていたときと違い、今度は近づくまで純粋に回避に専念できるから、
レゾナンティウスの操縦補正があれば余裕で避けきれる。

「よし…そこ!」
はぐれ水晶と距離を詰めると扇に手をかけ、
左、そして右に返し、斜め上から一気に断ち切る。
そしたら自由落下に任せたまま、水平方向のみ回避行動をとって。

割れた水晶から流れる光子は、穿つ刃ではなく断末魔の悲鳴。
それを見届けたら、マリーはクレハを、
極力タゲを取らないようにして次の黒塊へと向かわせて。

「次も…きめてみせる!」
まるで無敵時間があるかのようにすぅっと切り上げ、目標を両断した…はずだったのだけど。

べたん。

>60飛陽(今度は液体トリモチを砲台に装填すると空中の水晶群に狙いを定める。

「きゃっ、当たっちゃった!?ウソ、ちょっとなにこれ!」
そう、水晶を一つ一つ刈り取ろうとしたマリーのクレハは、
その水晶ごと飛陽のネズミ捕りに引っかかってしまったのである。

幸いにも、他の水晶もすべて落とされたので蜂の巣になることはないけれど、
地に転げ落ちたクレハは今や、蜘蛛の糸に絡め取られて主の食卓に並んだも同然。
「べたべたしてキモチわる〜い〜!はなせ、はなしないよッ!」

【マリー:パズルを放棄し、アルタイテンの水晶を扇で割りにいく。
 そして飛陽のとりもちにひっかかる】
【義勇軍:ロンデニオン市民の暴動に遭う】

71 :エシエンフラウ(黒衣の女) ◆eqAqXE3VMc :2010/08/14(土) 16:50:15 0
>>66
>「アルタイテンとは……よもや、『器』の事か?(中略)然し、器から生み出された存在なのは確かか」
「……」
エシエンフラウは無言で人形のような顔。
「…さして問題ではない…。世界そのものが混沌のカタマリなのだから…」
無表情で赤い唇だけを柔らかく動かす。

>「思い出したぞ。貴様は。……エシエンフラウ。ロンデニオンの要で在った貴様が此処に居ると謂う事は、落ちたと思って良いのか?」
「ああ、すでにロンデニオンは落ちていることだろう。今ごろクローディアス殿も冷たい石畳の上で猛省していることであろうな。
人は理念だけでは縛ることはできぬ。やはり人を繋げるのは心なのだ…」

赤い世界は瘴気を強め更に赤みを増し、空に狂ったような鳴動が轟く。
振り返りエシエンフラウは微笑するとゴウケンにそっと抱きついた。

「…私には真実が必要なのだ。ゴウケン…」
エシエンフラウの瞳は濡れている。狂った世界に二人だけの沈黙が流れる。
ゴウケンの頬に女の冷たい手が触れると触れた手の芯からはぬくもりが徐々に頬に伝わった。
すると突然地を割り噴き出してきた触手が、悲鳴とともに女を縛りあげ地の底に引きずり込む。

「ゴウケン!!」
名を呼んで女は意識を取り戻した。ここは鋼鉄の首の操縦席。
「…ゆめ?…いや…私はゴウケンに触れた…現実よりも近いところで…あの男に触れた…」
ドグゥオン!!突如、思考を突き破る衝撃波。
七星から繰り出される無命村正がアルタイテンの左胴部を抉り取る。

>>68
>「やるでござるよジェニファー、拙者たちの夜明けはここらで始まるのでござる!」
突撃をしてくる飛陽にアルタイテンの底部のクリスタルが砕け散り散弾を撒き散らす。
その散弾の奥から飛び出してくる鋼鉄の首の触手。
アルタイテンの体内を這いクリスタルを内部から砕いた触手が飛陽に巻きつかんと襲い掛かってきているのだ。
選択@触手を砲撃で破壊した場合。
バラバラに砕け散った触手が急速に根を張り足元を絡みつかせて動きを奪う。
選択A避けきれずに触手に捕まった場合。
触手に引っ張り込まれ空中に放り投げられる。(CMでやってる例の戦車みたいに)

>>70
>「べたべたしてキモチわる〜い〜!はなせ、はなしないよッ!」
飛陽のとりもちにひっかかっているマリーウェザーにクリスタルの破片が降り注ぐ。
見上げれば確認できるであろう。アルタイテンの水晶部分のあちこちから鋼鉄の首の触手が内部から突き破って
寄生虫のようにわらわらと飛び出している。
それはアルタイテンの精霊炉と融合しつつある鋼鉄の首の使役大精霊ドリュアデスが暴走しているからなのだ。

【アルタイテンさんの中で依然暴れている鋼鉄の首】【飛陽さんに選択攻め】【ヨハンナさんにクリスタルの破片を降らす】

72 :飛陽代理:2010/08/15(日) 19:07:46 0
選択のA
「空ってこんなに高かったんでござるなー、こういうアトラクションでも一儲けできそうでござる」
飛陽はあっさりと触手に捕まると天高く放り投げられてしまった・・・が
「しかし叩きつけるのが正解でござったな。各車両分離!カモン!ムササビウイーング!」

言うが早いか車両同士の連結部分が外れて砂地の迷彩が施された車両側面の白線が外側へ延びるとそれが
フレームとなりドームを半分にしたような翼膜が各車両から生えた。そしてキャタピラも一度車体後部に
スライドしたあと外向きになり靴底を合わせるように元の位置に戻ると今度は車両後部の扉が開き小型の
精霊炉が露出しキャタピラと共に火を噴き空を飛び始める。

但し1両目は運転席の窓が降りて砲台が前にせり出しているし、ドリルの付いた3両目は前面の扉から精霊炉が
突き出ている。突然分離し変形したその様は一見すると無残に解体したものに見えるが2両目の姿を見ると
てんとう虫を連想させる。2両目だけだが。

「これが拙者の名の由来でござる!モグラに改名しろっつった奴は残念でござったな!」
これが飛陽の切り札の一つだったが依然として窮地に変りはなかった。実は今のスペックでは長くも早くも
飛べないのである。撤退したかったがこうなってはそれも難しい。光線を避けつつ飛陽は反撃の手段を探して
トリモチの付いた>>70を見つける。どうやら空戦のできる機体のようでこの場はアレを使うしかなさそうだ。

「そこの変な機体、まだ戦えるでござるか!」

【アルタイテンに投げられた後分離飛行?マリーウェザーに接触】

73 :フィリップ ◇QzzonL2xIE の代理:2010/08/15(日) 22:46:53 0
>アルタイテン氏、及び対アルタイテン戦に参加中の諸氏
 
 義勇軍は、アルバニアンを奇襲したスィゴーニュの降伏を認めなかった
 なんとか、義勇軍の包囲を突破し、後方への帰還を急ぐスィゴーニュの前に巨大な水晶の塊が見えた。
(あの大きさでは、上昇するのは無理だな)
そう考えたネージュは、高度をあげて、アルタイテンをやり過ごすそうとした。

アルタイテンの上空を通り抜けようとしたネージュの気を変えさせたのはアルタイテンに拘束された(ように見える)クレハだった。
(ハウリンティウスには借り(前スレ239で機体を修理してもらった)がある)
 借りは返せるときできるだけ間を開けずに返す。
それが彼女のポリシーだった。

 「死の雪」(雪のように小さな精霊力の塊=小型爆弾)が上空からアルタイテンに降り注ぐ。
 アルタイテンの各所で小さな爆発が起こる。
 爆発は外壁だけでなく、戦闘によって生じた細かい亀裂から内部に入ったいくつか「死の雪」によって内部でも生じた。

(ハウリンティウスよ、借りは返したぞ)
 そう呼びかけながら、ネージュは戦域から離脱すべく機体を加速させた。

【スィゴーニュ、義勇軍の包囲を突破、アルタイテンを攻撃後、戦域離脱を図る】


74 :マリーウェザー(=ヨハンナ)とレジーナ◇/23EAU3tOg の代理:2010/08/16(月) 23:36:32 0
やれ忍耐だの退屈だのと、
芸もない話ぢやないか!……チエツ、苦労とよ。
ドラマチックな夏こそは
『運』の車にこの俺を、縛つてくれるでこそよろし、

        ――ランボヲ「忍耐」中原中也訳より

クレハは飛陽のトリモチ全弾掃射に巻き込まれ、地に臥しては身動きがとれない。
「クレハちゃん!うごいてよクレハちゃん!なんでうごかないの〜。。。
 くっ、こうなったらアイツのココロもいっしょにつれてく!」
けれど、動けないのに致命傷を与えられるなら、そもそも接近戦なんてしかけてない。

>71 【ヨハンナさんにクリスタルの破片を降らす】

そうこうしているうちに、光、いやそれは陽光を寄せては反らすクリスタルなのだけど、
ともかく、シャワーのように浴びてはいけなさそうなモノが頭上に散らばっていて。
「そんな、ウソでしょ!?カワイイ魔女学園じゃないんだよ、
 フラグミス一回でバッドエンド直行なんてぇー!?」

マリーウェザーは単に半狂乱というだけあって、ふざけてるわけじゃない。
ここは絶対に笑ってはいけない戦場24時である。
乱麻を絶つ快刀を求めてあちこちカチャカチャと動かすマリー。
けれども動かないものは動かなくて…!

『マリーちゃん、いいから僕のいうこと聞いて!
 これから呪文を詠唱するから、それが終わるころバリアを張って、
 終わったらクレハを人形に戻して。そのときは僕にしっかりつかまっててね、いいね』
「えっ」

レゾナンティウスは、マリーの応えを聞くでもなく詠唱をはじめて。
『蒼穹の調律師として命ず、エリンより流れしトゥアハ・デ・ダナーンの眷属よ――』
もともと他の選択肢なんてない。
それにレジーナ、いやパティの言うことなら信じられる、きっと…とマリーは思った。

マリーは意を決して、クレハを精霊機から人形へと戻して。
自由になったって、クレハにまとわりついていたトリモチが頭上から降ってくる…
いや、こなかった。

レゾナンティウスが、本来装甲修復に使うはずのヒーリングブリーズで作り出した皮膜。
ヘロディアスの娘が脱ぎ捨てた、七つのヴェイルのような皮膜。
それがトリモチの落下速度を和らげていた。けれど、崩壊もまた、時間の問題。

『マリーちゃん…飛ぶよ!しっかりつかまっててね』
「うんっ!」

マリーにしがみつかれたレゾナンティウスは、
トリモチの薄い箇所から一直線に突き抜けた。
流れる風は強く、マリーは目を開けていられなくって。

それでも、二人なら、怖く、ない。


75 :マリーウェザー(=ヨハンナ)とレジーナ◇/23EAU3tOg の代理:2010/08/16(月) 23:37:18 0
マリーとレゾナンティスは柔らかく大地に降りる。
目を開いて後ろのほうを見ると、トリモチの小海原に、
アルタイテンの幾多の破片が突き刺さっていて。

「…あぶ、なかった」
思わず、レゾナンティウスを抱きしめる腕の力が強くなってしまう。
『ぐ、ぐるじ…』

「ようし…第二ラウンド、はじめるよ!」
『えっ、まだやるの!?』
「トーゼンでしょ!」

レゾナンティウスの奮戦も…いや空しくはないけれど、
ともかく、マリーは再びクレハを精霊機に展開して。

>72 飛陽「そこの変な機体、まだ戦えるでござるか!」

話しかけてきた相手は明らかにこちらを向いている。
けれど、マリーウェザーは聞かなかったことにしようとした。
「クレハちゃんはヘンな子じゃないしー。きっとうしろの人にはなしかけてるんだね」

しかし、後ろを振り向いてみても誰もいない。
マリーはとうとう、扇の切っ先を3機に向けて言い放った。
「マリーのかわいいクレハちゃんをブジョクする、
 その口をふさぐくらいの力は残ってるよ!」

マリーウェザーだけはやる気十分だけど、クレハにはまともに使える武器が残っていない。
その理由は>50で示されている。
喩えるなら、ビームサーベルしか使えないνガ●ダムといったところなのだ。

【トリモチから自力脱出。飛陽の問いかけにかんしゃくを起こす】

76 :エシエンフラウ(黒衣の女) ◆eqAqXE3VMc :2010/08/17(火) 16:01:29 0
アルタイテンに取り込まれつつある鋼鉄の首はその体内で暴走していた。

「くっ!とりこまれているのかとりこんでいるのか…」
鋼鉄の首の触手は体内を食い破りアルタイテンの表層の所々から飛び出しては、
溺れるもののようにまわりの精霊機に掴みかかろうとしている。
エシエンフラフは操縦席で制御しようとするものの精霊ドリュアデスは言うことを聞いてくれない。

どうやら王国軍は撤退を開始しているために、この空域での戦闘の被害は義勇軍側に多大にありそうだ。

――飛陽は触手でひっぱり上げられると地面に叩きつけられそうになる。

だが、いつのまにかアルタイテンの上空から舞い落ちている白い雪のようなものが
傷ついた装甲の隙間から入り込んで内部のドリュアデスにダメージを与えていた。

雪の精霊力は木の精霊ドリュアデスの動きを鈍くする。触手は空中で飛陽を力なくはなすと萎れ枯れ果てていく。

>「これが拙者の名の由来でござる!モグラに改名しろっつった奴は残念でござったな!」
そして落ちると思ったはずの戦車型の精霊機が空を飛ぶ。
>「そこの変な機体、まだ戦えるでござるか!」
>「クレハちゃんはヘンな子じゃないしー。きっとうしろの人にはなしかけてるんだね」
変な機体と言うならばお互いにかなり個性的な機体に見えるのだが…そういうことは本人たちが一番わからないらしい。

一方、フィリップの雪の精霊力で弱体化した鋼鉄の首はアルタイテンに完全に取り込まれつつあった。

「こ、このまま私はアルタイテンに取り込まれてしまうのだろうか?…たすけて…ゴウケン…」

【エシエンフラウ:ゴウケンにヘルプ】【触手枯れました同時に>>62のエルトダウンさんへの攻撃も消滅です】

77 :飛陽代理:2010/08/17(火) 17:40:38 0
>「マリーのかわいいクレハちゃんをブジョクする、その口をふさぐくらいの力は残ってるよ!」
「結構でござる。それよりお主の機体、見たところ空戦が可能の様でござるな。それにずっと何か喚いて
いたでござろう。正直通信が五月蝿くて他が聞き取れなかったでござるがお主、まだとっておきが
あるのではござらんか?貯めに時間がかかるから諦めて接近戦をやっていたようでござるが」

先ほどの戦闘でクレハが水晶に踊りかかるまでに妙に時間がかかったのを飛陽は見ていた。撤退もせずに
負傷した軽量機でそんなことをするので玉砕でも覚悟したのかとも思ったが、七星の戦闘を思い出しまた
彼女と話しているうちにピンと来たのである。攻防の両立ができなかったのではないか?と

「もしそうなら拙者が手を貸すでござる。現状あのデカイのを追い出すにはもう少し火力が必要、しかし
生憎拙者にはそれはないでござる。お主に心当たりがあるなら拙者がソイツを撃たせてやるでござるよ」
そう言うとクレハの足元に3両揃って着陸する。飛陽は軽量の空戦機ならばリフト代わりになることも出来るのだ。

「まだ闘うなら拙者に乗るでござる、少しだけならお主に回避の助けにもなるしその下がった精霊炉の出力も
いくらか補ってやれるでござる、腕は・・・これ使えるでござるか?」
言ってアイアンクロウの一つが1両目から外れてクレハの左手の辺りに飛んでいくとコントロール権が譲渡される。

【飛陽、マリーウェザーに共闘要請及び無線式アイアンクロウの左手を一つ譲渡】

78 :マサユキ ◆kfNCJM9MUprk :2010/08/18(水) 02:47:14 0
>>67
先程まで無差別に発射されていた弾幕が一旦止むと、次の瞬間には全てがサイカに向けて発射される。

サイカの展開する結界を容易に撃ち抜き端々からは爆炎と黒煙が巻き上がる…
艦橋及び艦内からは怒号と足音とで場は騒然となっていた

通信士1「敵からの包囲攻撃!障壁を突破!精霊混乱!出力低下!」
通信士2「第三から第七区画で火災発生!損傷は軽微!」
マサユキ「遊んでいるのか…奴め!消化班応急で構わん!結界再展開は一時中断!精霊力は滑走砲にまわせ!!進路は…コードフィフス!」
操舵士「はっ!」

マサユキの特攻を臭わせる指示に対して船員達は揺るぐ様子はない
しかし、通信士がすぐさまこう切り出した

通信士1「お館様!お頭はどうするのですか?」

お頭とは本来、零戦部隊を預かるはずのイオの事だ
七星の切り札が失敗し、あまつさえアルタイテンに捕縛されているのだ
モニターに映る七星を見るマサユキの眼からは諦めの色は見えない。それどころか口元は微かに笑っている

マサユキ「こちらの攻撃に巻き込まれる様な仕込みは受けていない。
我々も味方を巻き込むような仕込みは受けてない。そうだな?」

通信士が短く返事をしたすぐ後だ
>>73
マサユキ「雪…だと?それもアルタイテンを集中的に」

華やかで、どこか怪しい光を湛えた雪の様なモノがいつの間にか
アルタイテンを囲んでいた

通信士1「王国軍機確認!スィゴーニュ、精霊波長はネージュの物で間違いないかと」
スィゴーニュはアルタイテンよりも高々度から攻撃を展開しており、その雪はすでにアルタイテンのあちこちで爆発を引き起こしていた
こちらの索敵にかかる以前に仕掛けていたと言うことになる

マサユキ「実に天晴れ、と言わざるを得んな」

サイカは大きく旋回しながら、ようやくアルタイテンを正面に捉えると
マサユキの号令が艦内に響く

マサユキ「総員退艦準備!本艦はこれよりアルタイテンに対して特攻を掛ける
零戦各位は余力のある者のみ脱出艇の直援にあたり旗艦へと合流せよ」

言い終えると警報が鳴り響くと同時に艦橋を後にする。退避中の同胞にぶつからないよう配慮された別の通路を通って

79 : ◆kfNCJM9MUprk :2010/08/18(水) 04:17:51 0
通信士「退艦準備完了しました!」

サイカ乗員の全てが艦橋に集まった事を確認すると

マサユキ「では往け!」
乗員全員「御武運を!!!!!」

サイカ上部の艦橋区画が丸ごと本艦から離れると結界を張りながら
サイカ進行方向とは逆方向へ推進していく脱出艇を後目に

「さて、『我ら』も往こうか!」

鎮火させただけの状態のサイカは明らかに先程とは比べものにならない程の早さで飛翔した為、船体から巨大な怪物の咆哮の如き悲鳴を上げていた

>>67
そして、再び胸部装甲が軋むような音と共に展開し、あの「口」が現れた。
しかも先程よりも凶暴そうに。
『「だが、貴様にくれる答えは無い…去ね」』

イオ「訳がわかんねーんだよ!テメェ!!」

粋がってみせるが無命村正を振るおうにも脚は水晶で封じ込められて踏み込む事が出来ない
本調子に戻ったコイツは遠当てでどうにか出来るようなタマではない
かといって足元を削ってからでは遅すぎる

__食らいつく直前を狙うしかねぇ__

左後方に太刀を突き立てて姿勢を低くする
突き立ててから程なく割れた胴体の上部、”上顎”が七星に覆い被さる

__今!__

アルタイテンの胴体は、人間の顔でいうところの口元から鼻を半径とした円に衝撃が走り直後に七星を中心に水晶片が飛びちった

七星はすぐさま後方へ飛び退くと砕け散った水晶片が元在る場所へと戻ろうとしていた

七星は敢えて太刀を突き立てて置くことで剣戟による力を溜めて居合いの要領で振り抜き、その威力を倍増したのだ

【サイカ高速で接近中】

80 :アルタイテン ◆xYMjE4hM7rwp :2010/08/18(水) 21:29:54 0
「………………?………」

ある程度言葉を紡いだとき、何を思ったのか、
微笑したエシエンフラウがそっと凭れ掛かってきた。
纏う白き装甲越しに、やがてじんわりと彼女の体温が伝わってくる。
疲れているのだろうか。そう思って体勢もそのままにじっとしていると、今度はその手が頬へと充てがわれる。
この顔に最早柔らかさも体温も、そもそも皮膚が無いが、そんな特殊装甲の固まりに触って、彼女は何か楽しいのか?
だがそれでも、熱などは感じることが出来る。体同様、最初は冷たいのかと思っていた掌から仄かな温もりが流れてくる。

その時だった。一瞬に脳裏を過ぎる、温かい笑みを浮かべた女性。
胸を抉る痛みと共に響く、おそらくはその女性のものであろう、途切れ途切れの小さな声。

『迷わな―――と貴方は―――いつも―――正し―――強くて―――』

聞き取れないところがあっても、何と言っているかは解る。憶えている。
それは、彼女が遺した最後の言葉。彼女を「護れなかった」自分に、深く突き刺さって、今も抜けない最期の言葉…

酷く永く感じる一瞬だった。消えゆく彼女の面影。そしてそれに重なるエシエンフラウ。
ゴウケンはただ、見つめることしか出来なかった……その時。

>突然地を割り噴き出してきた触手が、悲鳴とともに女を縛りあげ地の底に引きずり込む。
「ゴウケン!!」

叫ぶ声。気付けばもうそこにエシエンフラウは居なかった。
ここでようやっと、言い表せない感覚から抜け出して一息つく。

「……主を連れ戻しに来たか…全く、随分と面倒見の良い精霊も居たものだな」

やれやれと首を振り、また一人でここを漂おうかとしていると、
唐突に頭の上で声が響く。甲高くて、妙にハイテンションで、こういう時に一番聞きたくない声が。

『くぉらゴーケン!それでも男か!!さっさと追いかけろー!!』
「…ゼクシス…貴様、居たのか……」
『居たよ。ずっと居た。でもゴーケンが寝てたから静かにしといてやったのだよ。感謝したまへ』
「其れは有難い……では之からも其の様に…」
『ばっきゃろー!そんなこたぁどうでも良いんだよ!!さっさと追っかけなきゃ、さっきの女あのデロデロヤローに喰われちゃうぞ!』


「…何……?………いや………私には…関係の無い……」

>「死の雪」(雪のように小さな精霊力の塊=小型爆弾)が上空からアルタイテンに降り注ぐ。

『「防御壁出力……完全に遮断できるものでもなかったか」』

突然舞い降りた「雪」によって、機体の各所が爆破される。
しかも運の悪いことに、相性のせいで内部に取り込んだ敵精霊機から供給されるエネルギーが激減してしまった。
周囲を薙ぎ払い、敵を寄せ付けなかった触手も次々と枯れて行き、攻撃手段と共に防御が手薄になる。

『「…行動に支障は無し。残りも全て吸収する」』

何にせよ、搾り取れる力は後僅か。早々に食い尽くして反撃に転じようと、
一気に鋼鉄の首を噛み砕こうとした、その時。

81 :アルタイテン ◆xYMjE4hM7rwp :2010/08/18(水) 21:31:37 0
「……邪魔するぞ、影よ……」
『うみみゃあ!おっとと………!い、意外と重いなちくしょーめ!』

操縦席にまで食い込んだ牙が押しのけられ、エシエンフラウの体を大きな腕がそっと包む。
同時に消えかかっていたドリュアデスがずるずると引っ張り出された。
そのまま両名を機体外へと連れ出したところで、“影”が現れ聞き取れない言葉で怒りを吐く。

『キサ 剣よ…何ノつ りダ?』

黒い霧の様なものの中で、紅い三つの光がギラギラと揺れる。
しかしそんなことなどお構いなしに、白き闘士はエシエンフラウを地に降ろす。
その後ろではドリュアデスを適当に地面に転がして荒く息をしている少女。
ゼクシスは闇の精霊であり、今回のような暗がりでは力を増す。故に、いつも通りの30cm程の姿ではなく、普通の少女と変わりない身長だ。

「…力を得るに、人の意思が邪魔だと謂ったのは貴様ではないか」
『ソの不 物に用 なイ…だが、精霊ま  り上ゲるとハ何 と訊イテ る』
「……どうせもう取り出せる力も無いのだ。そんなもの、砕いた所で意味も在るまい?」
『貴様………』

何か言いかけたところで、影は消えた。

>アルタイテンの胴体は、人間の顔でいうところの口元から鼻を半径とした円に衝撃が走り直後に七星を中心に水晶片が飛びちった

『キヒッ!?』

影がゴウケンに気を取られていたその隙に、七星が太刀にて「口」を破壊したらしい。
アルタイテンは低く咆哮すると、痛みに悶えるように割れた口が開閉を繰り返す。
だがこの程度ではまだ致命傷にも至らない。すぐさま破損箇所は薄いながら修復される。
まだ取り込んだ力は残っている。ならば喰らうよりも破壊してしまった方が良いか。
再び腕から四本の光剣を伸ばした時、こちらに高速で迫り来るサイカが視界に写った。

特攻か?面白い。
理解した頃には既に七星をサイカに向けて投げつけていた。
投げた動きと同時に、アルタイテンは加速を始める。
全身の黒水晶がバチバチと赤い雷を走らせ、携えた二つの巨大鉄拳は剣を前方に突き出し、突撃の構え。
それは、アルタイテンの攻撃手段の中で、最強を誇るエネルギーを纏っての体当たり。

『「天地揺るがし…潰せ…ディス、ハルキュオン……!」』

82 :エシエンフラウ ◆eqAqXE3VMc :2010/08/19(木) 16:17:38 0
鋼鉄の首に突き刺さったアルタイテンの牙はゴウケンによって押しのけられエシエンフラウは救われた。
七星によって、アルタイテンの体に開けられた大穴からは現実の青い空が見え体内に吹き込む大気がエシエンフラウの髪をなびかせる。

>『キサ 剣よ…何ノつ りダ?』>『貴様………』

白き闘士の傍らでは三つの紅い目をもつ影が聞き取れないほど小さな怨念の言葉を吐いて消えていった。

「たすかった…礼を言おうゴウケン」

エシエンフラウは消える影に底知れぬ恐怖を感じながらも空のむこうにさらなる恐怖を見つけだす。
サイカが特攻を仕掛けアルタイテンに向かって来ているのだ。

『ギャウギャウ!』
正気に戻ったドリュアデスは突然何かを叫びエシエンフラウを抱え空に飛び出す。
するとドリュアデスは背中の大きな花びらを翼に変化させエシエンフラウを抱えたまま滑空しながら戦闘空域から脱出する。

「ゴウケーーン!!」
エシエンフラウの悲痛な叫びも、激突しようとしている巨大な二つの力がかき消した。

【エシエンフラウ:離脱】(今日はこれしか書けません。ごめんなさい)

83 :戦国暁一門 ◆kfNCJM9MUprk :2010/08/20(金) 02:21:59 0
精霊結界を全開に最大戦速を超える速度でアルタイテンに向かうサイカ
そのサイカに向かって高速で飛翔する七星。

イオ「ぬ?うおぁ!?」

サイカ突撃に気が付いたと同時にアルタイテンに投げ飛ばされたらしい

イオ「間合いを取るのに丁度いいか?」

サイカから発せられる結界の精霊流に乗り砲身から艦橋のあった辺りまで螺旋を描きながら高速で駆ける

イオ「ひゃっほぉぉぉぉぉ………!」

艦橋のあった辺りで勢いに乗ったまま急上昇するがアルタイテンが七星の姿を確認する頃には…と言うより、既に狙いはサイカの方に向いていた

>>『「天地揺るがし…潰せ…ディス、ハルキュオン……!」』

赤き雷を従えたその姿は破壊紳そのもの…!
双方の精霊力がぶつかり合い、赤き雷が天を薙ぎ地を打ち砕きサイカの翼を喰い破り装甲を削る
そしてアルタイテン周囲に展開する部隊にも無軌道に襲い掛かる
接触直後こそ互角と思われた押し合いであったが力の差は歴然
アルタイテンは腕を用いてサイカの砲身を潰しに掛かろうとしていた

マサユキ「発射までに保てばいい!精霊力を砲身に回せ」
??????「御意」

滑走砲発射の為、魔素粒子移動操作を行うとディス ハルキュオンと精霊結界とで成る精霊力の流れはまるでサイカの砲身に渦を巻いて吸い込まれ…
今度はサイカ自身が赤い雷を纏う。しかしアルタイテンの時とは違い明らかに雷はサイカ全体を蝕んでいた

マサユキ「よく耐えたな!褒めて遣わす!撃ち込め」

船体の全てはやがて赤熱し小爆発を所々で見せる
砲身の内側が赤い光で満たされると砲身からアルタイテンの傷口めがけて砲弾が放たれる
赤い雷を纏った砲弾は、一瞬でアルタイテンの胴体を喰い破ってしまった
刹那に見せたその奇跡は飛翔する”龍”の姿そのものであった

”龍”を放った直後、砲身は蒸発しながら爆発
本体もアルタイテン周囲に展開している部隊が龍の咆哮が聴こえる頃には崩れ落ちていった

【サイカ、アルタイテンに零距離砲撃】
【七星はアルタイテンの遥か上空へ急上昇】

84 :戦国暁一門 ◆kfNCJM9MUprk :2010/08/20(金) 02:23:37 0
訂正
刹那に見せたその奇跡は→刹那に見せたその軌跡は

です

85 :マリーウェザー(=ヨハンナ)とレジーナ◇/23EAU3tOg の代理:2010/08/20(金) 23:36:59 0
>77 飛陽
>「もしそうなら拙者が手を貸すでござる。現状あのデカイのを追い出すにはもう少し火力が必要、しかし
>生憎拙者にはそれはないでござる。お主に心当たりがあるなら拙者がソイツを撃たせてやるでござるよ」

マリーの返事を待つでもなく、飛陽チームは手前に参じて。
「ちょっとちょっと、アンタたち女の子をフォワードにしようっていうの…?」
マリーは明らかに不満たっぷりな様子。けれど、他に道もなさそうで。

>「まだ闘うなら拙者に乗るでござる、少しだけならお主に回避の助けにもなるしその下がった精霊炉の出力も
>いくらか補ってやれるでござる、腕は・・・これ使えるでござるか?」

「メダ■ットじゃあるまいし、つかえるわけないでしょ−!」
例によってかんたんに激昂するマリー。でも、ふと考えて。

「ねぇ、レジーナ。
 そのツメって風の粒子になじませて、スターダストアローでうちだせるとおもう?」
『たぶん、やってやれないことはないと思う…』

「わかった。あんなの花の魔法使いマリーウェザーがバビっとやっつけちゃうんだから!
 そうときまったら、そこのあなたは砲座担当ね」
飛陽チームに告げると、そのうちの一機の上にスターダストアローを寝かせ。

「かりたツメを芯にして、荷粒子精霊砲をうちこむよ。
 とっておきというほどとっておきでもないケド、あたるとイタいハズ!
 いーい?おねがいみんな、チカラを貸してほしいの`*:;,.★」
どうやらマリーも気分がノってきたらしく、声に媚びがかかっている。

まずはスターダストアローに矢…すなわちアイアンクロウをセット。
「それじゃレジーナ、おねがい」
『うい…』

如意宝珠を持つようにしたクレハの手のひらから、緑色の珠が現れては矢へと吸い込まれ。
矢すなわちアイアンクロウはやがて緑色に光り、その光の層も、だんだんと、厚くなって。
「そらいろにっとーけーたー日ー々も かーがやーきー出ーすー BRAND NEW DAY♪」

「いくよおおおおおお!ヘビィ、ザ・スターシャインシューットっ☆」
クレハの風の粒子、それだけではなく、飛陽チームの力も合わさって、爪の矢は七色の軌跡を描き。
何物にも染まらぬ漆黒の闇を塗りたてんと、矢先はアルタイテンを凝視して…!

【→アルタイテン:かぎ爪を矢にし、精霊魔法の粒子でコーティングしたものを発射。
 高速徹甲弾的な効果を狙ってます】

86 :飛陽代理:2010/08/22(日) 08:53:15 0
>「ちょっとちょっと、アンタたち女の子をフォワードにしようっていうの…?」
「失敬な、エスコート先がフロントまでだっただけでござる。」
飛陽はこともなげに言う。

>「メダ■ットじゃあるまいし、つかえるわけないでしょ−!」
マリーウェザーの言葉に落胆するもその先を聞いてはっとする。
「やはり無理でござるかって、なぬ?」

自分の鉤爪を打ち出すと言われてその手があったかと感心する飛陽、
(カタログに追加武装としての自分のページを追加しなければ)そんな風に考えながらマリーウェザーに告げる。
「しからば、じゃんじゃん撃っちゃってー!でござる、まだあと3つあるでござる」
マリーウェザーが矢を放つと残りの3本の腕もスターダストアローの傍に待機させる。
「威力の程は如何でござるかなっと、あれは!」

その時凄まじい轟音が空気が振るわせる。サイカがアルタイテンに特攻をかけたのだと分かると同時に赤い光が
見える。経験上これでダメならまた水晶が飛び散ることになる。1両目の砲台を爆発後に備えて用意しておく。
「・・・こう言っちゃなんでござるが、あれで弱ってくれれば拙者たちがトドメを頂けるでござるな」
飛陽はサイカの特攻の結果を不埒な想いと共に期待した。

【スターダストアローに次の弾(腕)を用意、水晶拡散に備えて1両目砲撃準備、サイカの
攻撃の行方を窺うの3本でお送りします】

87 :名無しさん@自治新党スレでTATESUGI値審議中:2010/08/22(日) 09:22:37 0
字だけのなりきりから画像も使えるなりきりへ!なりきり@ふたばでなりきりをしてみよう!
http://nov.2chan.net/34/futaba.htm

88 :エルトダウン ◆iGrjUqKhz2 :2010/08/22(日) 23:38:18 P
エルトダウンとサイアニスは困惑していた。
未だ来ぬ遅すぎる救援、そして鋼鉄の宿り木。
今現在、宿り木は枯れているが、それと同時に救援もまだなのである。

「これ以上の戦闘は危険か…まさか君にそんなことを言われるとはね」

『私は当然の事を言ったまでだ。
 両機共に損壊率70%オーバー、精霊炉のエネルギー変換効率も格段に低下してきている。
 
 確かにデータは必要だが、機体が大破してしまっては本末転倒だ。笑いの種にもなりはしない』

吐き捨てるように言う。恐らくサイアニスも相当苛立っているのだろう。
エルトダウンにではない。ASLにでもない。自分自身にである。

「…両国ともこの戦闘で結構な打撃を受けただろうね。
 教国はサイカ級1隻に2個師団ほど。帝国はスレイプニル級1隻に…」

『私はそんな話などしていない。我々ASLにそんなどうでもいい国勢など必要は無い。
 必要なのは世界を動かす力。90度、45度、22度…いやそれすらも望まない。
 たった5度、5度だけ世界を違う方向に傾けれる力が必要なのだ。

 見えるか、この火の海が。何百、何千、何万といった人間の命が軽く弄ばれる。
 だがその実態はどうだ。国と国同士のアホらしい対立じゃないか』

"でもよォ、んなこと言ったってアンタもオレらも人を殺してきたんだぜ?
今更もどれねえし、同じ穴の狢だろうよ。違うか?"

余計なことを…とエルトダウンは思う。
お互いに黙り込んだままだ。空気は非常に悪い。

『とにかく、コードフィフスと戦闘を行うのは危険だ。
 戦闘だけではない、軽い干渉でも我々の命を危うくする。素直に救助を待つべきかと思うが?

 …それと、ファラーシア。私だって好きでこんな事をしている訳ではない』

その言葉の意味を理解できるものはサイアニスを除いてこの場には居なかった。
鉄の翼の艦長であるアルヴェリヒならばあるいはその真意を汲み取ることが出来たのかもしれない。

そんな事を考えながらエルトダウンはサイアニスの言うとおりにしていた。

(救援が来るまで何も起きなければ良いんだがね…)

89 :マリーウェザー(=ヨハンナ)とレジーナ◇/23EAU3tOg :2010/08/23(月) 22:10:01 0
「あ!しまった」 
『どうしたの?』 
「ヘビィ、ザ・スターシャインブラストにしとけばよかった!」 
『ふぅん…』 

どちらにしたところで、マリーの衣装がロリ服じゃなくて 
エセ巫女装束であるところに変わりはないのだけど。 

>「しからば、じゃんじゃん撃っちゃってー!でござる、まだあと3つあるでござる」 

飛陽チームより渡された鉤爪を、すぐさま矢として弓にセットする。 
「わかった!重心がフラつくまでうちつづけるっ!」 

「モワ・シュート!」一発目の矢が翠色の尾を引いて。 
「迷夢!」次いで二発目が天を翔け。 
「猛亜艇炎!」そして、三発目。 

「これぞわがオウギ!夏の嵐≪ゲルトルート≫!」 
マリーは勢いで奥義と口にしたけれど、 
速射を優先したので、>85の初弾と比すと威力はだいぶ劣る。 

撃った鉤爪はどうなるかって? 
遠い昔より正義のヒーローが腕を飛ばすと必ず戻ってくると 
相場が決まってるんじゃないカナ?カナ? 

>「・・・こう言っちゃなんでござるが、あれで弱ってくれれば拙者たちがトドメを頂けるでござるな」 

「いま第二形態になられたらこまるね…」 

【飛陽チームに用意してもらった矢(爪)を撃ち尽くす】 

90 :フィリップ ◇QzzonL2xIE の代理:2010/08/23(月) 22:36:14 0
戦場を離脱したスィゴーニュは最寄りの王国軍基地に不時着し、そこで補給と修理を受けていた。

 意識を取り戻したフィリップは基地内で第二次ロンデニオン攻防戦での両軍の被害の概要を知らされた。

義勇軍(教国軍含む)
 サイカ級1隻、約2個師団
王国軍
ロンデニオン駐屯の第6軍団、スレイプニル、1個航空師団
王国の属国、2個師団

ロンデニオンを奪還し、王国軍にかなりの損害を与えた義勇軍の大勝といえる。

 戦局とは直接関係ないが、攻防戦の最中に第3王子ルーデルが毒殺されたことは、ルーデルを後ろ楯としていた王国軍航空隊にとっては大きな打撃となった。
【フィリップ、戦場から離脱、後方の王国軍基地へ撤退。ロンデニオン戦の被害(概算)がまとまる】

91 :名無しさん@自治新党スレでTATESUGI値審議中:2010/08/28(土) 16:19:59 0
おつかれさまです

92 :アルタイテン ◆xYMjE4hM7rwp :2010/08/30(月) 18:56:30 0
オ オ オ オ オ オ オ オ オ ォ ォ ォ ォ ォ オ オ オ……!!!


戦場に響くそれは、聞く者全ての恐怖をあおり、命の底に怖れを溶かす。
“影”のものでも少女のものでもない、アルタイテン自身の咆哮。
……否、断末魔であった。

腹に風穴を開けられた人型の上半身はもがくように腕を伸ばしながら、ボロボロと影になって消えてゆく。
ところどころが再生しかけていたが、マリーウェザーと飛陽の合体攻撃によって、それも哀れ砕け散る。
自慢の巨大な鉄拳は、片方が剣を握ったまま地を揺るがして突き刺さり、
もう片方は先程の衝突の際、完全に消滅した。
前回のように、再び下半身の結晶体だけとなってしまったアルタイテン。だが、今回は失敗ではない。


『グっ……くク…ま も、予想  展 トなッた…が』
“影”は不適に笑う。そうだ、今回はこれで十分。目的は達した。
ならば、これ以上ここに留まるのもただ時間を無碍にするだけ。
早々に「収穫物」を回収して戻るとしよう。

数秒後、アルタイテンに変化が起こる。
アルタイテンを構成しているのは、特殊な黒い水晶装甲。
装甲とは言っても、それはどうみてもただの黒く透き通っただけの水晶にしか見えず、
いつも周囲の様子が鏡のように映りこんでいる。当然、今現在もその装甲には周囲の風景が撃つっているのだが、
ここで、「ありえない」ものが黒き魔晶の中に現れる。

「目玉」である。大量の巨大な眼球が、アルタイテンから生える全ての黒水晶に映し出され、
ギョロギョロと動いて辺りを見回し始めたのだ。
勿論、周囲の風景のどこにも目玉など浮いていない。
一体何個あるのだろうか、そう簡単に数えられるような数ではない。
全ての目はそれぞれ別の動きをして、何かを必死に探しているようだった。

『…さぁ……見え キたか…』

目玉達の向ける視線の先。それは、「何か」が「失われた」場所である。
敵に敗れ、倒れた機体が、艦が、命が。
薙ぎ倒され、押し潰された木々や草花、砕けてしまった岩などでさえもその対象となる。
しばらくすると目玉がこの戦場にある全ての「失われたモノ」を見つめ、視線を固定する。

『信仰たルハ、我が力…………!』

【アルタイテン、攻撃ではないが不審な動きを見せる】

93 :飛陽代理:2010/08/31(火) 21:23:24 0
傍目には戦闘続行はできそうにない巨人を見遣りながら飛陽はしかし、その様子を不審に思っていた。
(単なる沈黙・・・と考えるわけには行かぬでござるな、あれだけ暴れて撤退でも反撃でもなく沈黙、
ここは様子見もせずに退いたほうよさそうでござる)
飛陽がそう考えマリーウェザーに声をかけようとしたその時、巨人に変化が現れた。

水晶から何か飛び出すかと思えば目玉が除いている。やはりまだ奥の手があるようだが・・・
「・・・!ジェニファー突然何を!?・・・わ、わかったでござる。マリー殿!上昇でござる!
拙者たちの出力を限界まで上げるんでござる!『何か』が起こる前に少しでも上に行けとジェニファーが言ってるでござる!」

飛陽は己の主であるサボテンの警告に従いマリーに自分たちに乗ってなるべく高度まで飛行することを促す。
「これ以上何かあるとしても拙者にいたっては文字通り『撃つ手がない』でござるからな」
逃げるが勝ちでござるよ、と言うと自分の精霊炉の出力を上げ始めるともう一度巨人、アルタイテンを見つめる。

(あの不死身さ、攻略にはいささか手間が必要でござる・・・)
この大型機への対策は自分のカタログとは別途に考えておく必要がある。逃走準備を整えつつ
無人の戦車は巨人の黒水晶に映る眼球の動きを追う。そしてあることに気が付く。
(ターゲットは生き残っている機体ではないのでござるか・・・?)

しかしそれでもジェニファーの命は絶対である。そしてわざわざこのサボテンが口を出してくる
時は決まっていつも重大な危機が迫っている時だけである。そして今回もまたそうに違いなかった。

【飛陽、ジェニファーの警告を受けマリーウェザーに避難勧告及び自身の避難準備】
備考:アイアンクロウ打ち止め

94 :イオ ◆kfNCJM9MUprk :2010/09/01(水) 00:13:57 0
>>93>>89
アルタイテンの不気味な気配を感じ取り上昇する飛陽とマリー
その視線の先には中空にて太刀を青眼に構え集中する一機の精霊機が佇んでいた
帝国式と教国式の中間より教国寄りの外見、色あいは蒼を基調とし、装甲部分は黒に肩先、肘部、膝、額当て、背中に二本腰に二本ある刀の拵えの装飾部分には耐魔法防御により金色にみえる部位が夜空の星々を連想させる

「…はぁぁあ…!!」

アルタイテンが撃ち抜かれた直後から既に上空で攻撃の準備に掛かっていたのだ
両手で持ち切っ先で一瞬天を衝くと、周囲の光が太刀に吸収され、その為に辺り一面が闇で覆われると白刃が再び紫の気炎で染まり上がる
闇の中から碧色の眼光が飛陽とマリーを捉え直後に念話が飛び込む

「俺はイオ。この機体な七星ってんだ。まずは、そうだな…
そっちの芋虫??助かったぜ!改めて礼を言う。で次いでっちゃ何だが…
あのデカブツを討つのにもう少しだけ手を貸してくれねぇか?
…そっちの嬢ちゃんもよ?」

七星は既に大技の連発で精霊炉が限界に来ている事
直接仕掛けようが連携しようがこれが恐らく最後の攻撃であると言うこと
故に最大限の一撃を二人に託そうという話を伝えた

「この村正を矢と見立てて奴に撃ち込んでくれ
大きすぎる故、飛陽は弓をつがえて放つ所までは支えてやってくれ」

七星の精霊炉限界まで村正に力を注げば倒すに至らずとも深手を負わせられる筈だ

「強制はしないぜ?たぶん退くにも最後の好機のはずだからな」

力強くも研磨された紫色の炎が太刀の表面にて渦巻く…

【七星、飛陽&マリーウェザーに協力要請】

95 :マリーウェザー(=ヨハンナ)とレジーナ◇/23EAU3tOg:2010/09/01(水) 23:45:27 0
この四つの生き物には、それぞれ六つの翼があり、
その周りにも、内側にも、一面に目があった。
彼らは、昼も夜も絶え間なく言い続けた。
「聖なるかな、聖なるかな、聖なるかな、

              ――「ヨハネの黙示録」第4章8節

>92アルタイテン(腹に風穴を開けられた人型の上半身はもがくように腕を伸ばしながら、ボロボロと影になって消えてゆく。

飛陽とマリーウェザーの放った矢が、アルタイテンのトルソーを貫いた。
力を溜めて撃ち込んだ初弾は、その体躯に大きな穴を穿ち、
間髪を入れずに続いた残弾は、その回復する時間を与えず。
黒水晶は既に結晶体を残すのみとなり、再生する様子も見られない。

「すごいイリョク…ジブンの才能がおそろしい!さっすがユニヴァーサルアイドル」
『タマは飛陽さんのツメだったでしょ』

けれどアルタイテンは落ちも消えもせず、ただただその場に浮遊していて…!?
>「目玉」である。大量の巨大な眼球が、アルタイテンから生える全ての黒水晶に映し出され、
>ギョロギョロと動いて辺りを見回し始めたのだ。
「ナニアレ…邪気眼?きんもー…☆…」

>93 飛陽
>「・・・!ジェニファー突然何を!?・・・わ、わかったでござる。マリー殿!上昇でござる!
>拙者たちの出力を限界まで上げるんでござる!『何か』が起こる前に少しでも上に行けとジェニファーが言ってるでござる!」

「わ、わかった…」
飛陽チームにまたがったまま、水晶に見入るマリーウェザー。
けど、今度はイオの支援要請が入って。

>94 イオ
>あのデカブツを討つのにもう少しだけ手を貸してくれねぇか?
>…そっちの嬢ちゃんもよ?」

悠長に自己紹介をする余裕は、半パニック中のマリーにはないようで。
「ちょ、どっちについてけばいいのー!?」

ニア 七星の村正を撃ち込んでアルタイテンにトドメを指す
   飛陽といっしょに戦線から離脱する

96 :マリーウェザー(=ヨハンナ)とレジーナ◇/23EAU3tOg:2010/09/01(水) 23:46:21 0
システム「じかんぎれ です」
「どこの宇宙にきらめく君の詩よ!?」

『飛陽さんの言うとおり、アレはよくないものだよ』
マリーに確認を取るでもなく、レゾナンティウスは魔法の詠唱を始めた。
『大精霊ヘーゲルより伝授せしの転化の力…アウフハーベン』
空を、アルタイテンの闇の力に意図的に感応させると、暗雲が立ちこめた。

『マリーちゃん、クレハビーム、上に向かって撃って』
「う、うん…」

クレハビームを天に放つと、
それは遠く遠く、ロンデニオン北方の海に巨大な竜巻を生じさせて。
この戦場からも見える竜巻が消えたかと思うと、今度はあたり一帯に雨が叩きつけられる。

『蒼穹の調律師として命ず、大気にあまねく精霊よ、
 我より目を離せし敵影を聖獄に閉じ込めよ。エシェット・ロット!』

詠唱こそ違うもの、手段としてはヒーリングブリーズと同じだ。
海より降らせた雨水中の塩分を結晶化させ、
天まで届かんばかりの塩の巨柱を、アルタイテンの周囲に七本立てた。

『これで少しは時間稼ぎになる…かな?
 これができるくらいの相手となると、相当な精霊力を持っているはずだけど』
呆然と眺めていたマリーは、はっと気づくと飛陽チームに意向を聞いて。
「ど、どうするの?にげるの?やるの?」

【アルタイテンの周囲に巨大な塩柱を立て、行動を封じようと試みる】
【七星に協力するか否か、飛陽に確認】

97 :飛陽代理:2010/09/02(木) 18:28:40 0
「いやでござる。拙者はこのまま逃げ遂せ・・・!あ、はい、はい、左様で・・・
・・・手伝うでござる。さあ早くするでござるよ!」
この場でアルタイテンに少しでも手傷を負わせたいジェニファーに命令されて
飛陽は渋々ながら二人に協力することにした。

「ほらさっさと足場を詰めるでござる!そっちのはさっさと拙者たちにその剣を乗っけるでござる!」
指示しながら飛陽はせっせとマリーの土台から村正の土台へと変るべくマリーを乗せていた3両のうち
2両を腕の高さまで移動させて位置を固定する。

「なんにせよこっからずらかるのが一番でござるが、これも安全確保でござる。
凡夫盛んにして行えば鬼神もこれを避くと昔から言うでござるからな、どかんとイッパツ
ヤッテ見せるでござるよ!マリー殿!」

(なんか拙者踏み台が板に着きつつあるでござるなあ、自立型の武装パックも
いいかも知れないでござる)
また別のことを考えながら飛陽はマリーの発射体制を整えると辺りの確認に入る。
「相変わらず不気味でござるが多分オールグリーンでござる」

そう言って自分の出力を衝撃に備えて高めておく。
【渋々七星に協力、両者にその胸を告げて早速用意に入る】
【砲台の支えになる準備完了】

98 :マリーウェザー(=ヨハンナ)とレジーナ◇/23EAU3tOg:2010/09/02(木) 23:44:56 0
>97 飛陽
>凡夫盛んにして行えば鬼神もこれを避くと昔から言うでござるからな、どかんとイッパツ
>ヤッテ見せるでござるよ!マリー殿!」

「うん、やってみるよ!」
『ええ、まだやるの?せっかく僕が足止めしたのに…。しかも、それたぶん効かない』
「そんなのやってみなきゃ分からないでしょ!さあ、いっくよー」
レゾナンティウスの憂いを余所目に、マリーは燦然と弓を構えさせて。

>「相変わらず不気味でござるが多分オールグリーンでござる」
「マジカルプリ●セスポジションっていうのもワルくないよね。
 それじゃ、スターダストアロー☆マジカル・シュートっ!」

イオの注力を受け紫色に縁取られた村正が、風を切ってアルタイテンへと進んでいく…!
クレハの出力は、その矢に推進力を与える程度でしかないけど、
もともと攻撃力に劣るクレハでは、それでも十分だ。

【七星が全力を注ぎ込んだ矢を、アルタイテンに向かって撃つ】

99 :名無しさん@自治新党スレでTATESUGI値審議中:2010/09/05(日) 11:21:01 O
あげておこう

100 : ◆88duu8Vf16 :2010/09/05(日) 11:35:39 O
義勇軍に助けられたあとマリーを追いかけようと機体を動かそうとレバーを操作する・・・・・
動かない、動かない、何度、何度操作してもレバーはぴくりとも、
「レオン様!!この気配、よくありません!」

「わかってるよ。フェニキア・・・だってもう手遅れだよ。うん、僕の身体も動かない・・・・・・よ」

僕の足元から腰にかけて、黒い影がうごめき、いまも徐々に身体を侵食していく

影が身体を登っていくにつれ、意識が遠きそうになる
激痛や熱さ、そういったものはない
眠り落ちていく感覚、それもただの眠りじゃない
睡眠の魔法、薬を使わた絶対的な眠気が僕を誘い、落としていく

「・・・・・・フェニキア、僕はダメだ。君だけでも、君だけでも逃げてくれ」

フェニキアの身体には影は侵食していない
ファーブニール家の守護精霊は伊達じゃないみたいだ

「レオン様、そんな弱気な。
私が助けますから、必ず助けますから、あきらめないでください!」

「こいつは並じゃないよ。フェニキアでも、すぐには無理なんじゃないかな?
だから、君だけでも逃げて!」

操作盤をいろいろといじる、上半身は動く、どうやら僕が動かせるところはイグニスも動くみたいだなら話はやい

「じゃあね、フェニキア。必ず助けに来てね」

「レオン様、お待ち下さい!」

僕は彼女の言葉に手を止めることなく、シートの下の緊急脱出ようのレバーを力いっぱい引っ張るとフェニキアのシートが勢いよく飛び出す
もちろん、僕の分は作動しなかった
旧式のバネ式だったけど、彼女なら大丈夫だな
安心して、すぐに僕の意識は途切れた

一連の出来事を遠くで眺めている人影
???「これで物語が加速し、世界は正しき方向に歩みを始める」
男はイグニスが影に飲み込まれるのを見届けるとすっとその姿を消した

101 :名無しさん@自治新党スレでTATESUGI値審議中:2010/09/05(日) 18:13:03 0
パー速VIPにロボ系なりきり出来たな

102 :名無しさん@自治新党スレでTATESUGI値審議中:2010/09/05(日) 18:28:57 0
てst

103 :アルタイテン ◆xYMjE4hM7rwp :2010/09/08(水) 19:51:03 0
『視認、完了…………』

アルタイテンの全身で蠢いていた目玉が、更にその瞳を大きくする。
見つめる先は戦場で「存在」を「失った」もの全て。
つまり、「過去」のもの。それらは等しく、彼の者の「力」と化す。

途端に全ての目玉が瞬きをする。
再び開いた瞳の黒目には、二本の針が映っていた。
それは時計の針ような、というよりそのもの。
針は一方が一方を追うように、ゆっくり、ゆっくりと古びた音と共に回っている。

しかし、その様が普通の時計であったのはほんの一時。
瞬間、目に映りこんだ針達は互いの立場を逆転させ、逃げていた針が追ってきた針を追い、追っていた針が逃げ始める。
反時計回り。だが異常はそれだけではない。
最も異を放つのはその尋常ならざる回転速度である。あまりに速過ぎる。最早針一本の動きを見極めることも不可能な程だ。
アルタイテンの黒水晶の鏡に映る無数の瞳の中、超高速で逆回転を繰り返す二本の針。
その光景は見るものに言いようのない不安と恐怖を与える。

『 ァ、「失せしモノ」達よ……今一度ノ 起ト、心地良 暗き怨嗟 我ニ…』

影の声に応えるように、戦場に変化が生じる。
目玉に見つめられていたもの達が全て、「甦った」のである。
爆散し、修復不能の鉄塊に成り果てていた精霊機が立ち上がり。轟沈し、艦首から真っ二つにへし折れた艦が大空を飛び。
死に逝った命達も、人間であろうが動物だろうが、絶命する直前の姿で立ち尽くし、
焼き払われ焼け野原と化していた地に、花と緑がたちまち溢れ返る。

しかし、違和感。何が?色が薄い。違う、「透けている」。
それに「動かない」。再び形を取り戻したものはいずれも幻のように透けていて、かつ、甦ったその場から動かない。
先程とはまた異なった、不安。静寂が更に恐怖を引きずり出す。

『く、ケヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒャァアアハハハハハハ!!!!
十 だ、つイに、遂 揃っ  「源」が!イィヒひひヒヒヒヒヒヒヒひ!!』

静寂を切り裂いて響き渡る、“影”の狂喜の笑い声。それは、心の底から、嬉しそうに。


『モ 直グ、もウ直ぐだ!二度と失敗ナど在るものか!!』




             『待っていてくれ………“カメリア”………!』




マリーウェザー達の塩柱や、七星の太刀が届く、その直前に。
失われたもの達の幻と同じように、アルタイテンもまた、幻影のように、消えた。

【アルタイテン、戦場より消失】

104 :名無しさん@自治新党スレでTATESUGI値審議中:2010/09/09(木) 17:24:39 O
>>3に避難所あるんだしここの参加者は代理投稿はそちらでやっていただけないか?
代理を頼む側に落ち度はないんだが一部の奴がこのスレのコテの依頼だけ拾って、飛ばした他の依頼レスを記載すらしないから混乱するんだ。

105 :マリーウェザー(=ヨハンナ)とレジーナ◇/23EAU3tOg:2010/09/09(木) 21:04:20 0
アンニュイなレゾナンティウスをよそに、意気揚々と刃を射たマリーウェザー。
彼女の目は塩柱7本の中心をまっすぐに見すえていて、
ゆえにその中心にある”はず”のアルタイテンの起こした事象に気づかず。
得体の知れない圧迫感さえ、射撃の期待と不安のさなかに埋もれてしまって。

>103 アルタイテン
>マリーウェザー達の塩柱や、七星の太刀が届く、その直前に。
>失われたもの達の幻と同じように、アルタイテンもまた、幻影のように、消えた。

矢は、そう七星の村正は、塩柱を貫通し的確に標的を貫いた、はずだった。
しかしその衝撃は軽く、散り乱れるものはただ白い白い塩の粒子のみ。
ターゲットを穿つタイミングより、地に刺さった時に大きな音を立てた。

「…よく分からないけど、おわったの?」
『…とりあえず、もういなくなったみたいだね』
「どっちでもいいよ。みんな、助かったんならね」
緊張が解けると、腰の重くなるマリーだった。

「それはそうと」『ん?』
「だれもいない…」『…踊るの?』
「ちがうよ!今のうちににげるよ。
 ヨハンナ、デザート二日もぬいたらエイヨウシッチョーでしんじゃうもん!」

『了解したよ、ヨハンナちゃん』
「パティに操縦まかせてもいい?」
『もちろん』

イオと飛陽は、マリーウェザーつまりヨハンナがとらわれの身の上にあることなんて
知らないだろうから、足早に礼(?)を返して。

「いっしょにたたかってくれてありがとう!
 だけど東のソラからアクにおびえるヒトのヒメイがきこえるの。
 ごめんねマリーウェザーはもう行かなくちゃならないの。
 じゃあね、また会いましょう♪」

そう言い残すと返事も聞かないうちに舞い上がり、悲鳴が聞こえたはずの東の空…
単に実家シュトロウス領に向かって飛んでいくのだった。

「そのさきをっ絶・え・ず照らし な〜がらっ♪
 未来 形の〜今 つ〜か〜みたいのっ書ぁき かっけ〜のDestiny♪」
(ヨハンナ編第一部・完)

【ヨハンナ、戦闘終了を受けてロンデニオンから逃走】

106 :飛陽 ◆fLgCCzruk2 :2010/09/10(金) 19:36:11 0
二人と一体の渾身の一撃はしかし相手を倒すには至らなかった。
当る直前にまんまと逃げられたようだった。それも飛陽の戦利品である他の機体の残骸から
いささか信じ難いが精霊や霊魂のようなものまで方法こそ不明だが根こそぎ持っていった様だった。

戦場は酷い有様だった。帝国側は当初の目的を果たしたとはいえまるで交換でもしたかのように此方の
は大きな被害を被っている。しかも戦場には生きている者以外は誰も、何も残ってはいない。
たった今の今まで戦いがあったのかというくらい殺風景になっていた。

残された兵たちもじきに取り返した町へ向かい仲間と合流するのであろう。飛陽はと言えば辺りの
再索敵の真っ最中だった。もっともマリーはさっさとどこかへ行ってしまったが。

「反応消失、まんまと仕留め損なったでござるが・・・こりゃ酷いでござるなあ。
えげつない漁り方をするもんでござる。拙者の取り分は一つもなし、せめてあの戦艦についてる高射砲くらいは
欲しかったでござる、ジェニファーもご立腹で踏んだり蹴ったりと」

実際は撃墜されなかっただけでも相当に幸運なのだがこの機体は納得しかねるようで、主たるサボテンの
真っ当な危機感から来る苛立ちとは別に自身の儲けがないことにのみ執心している。

「まあ偶にはこういう事もあるし早速あのでっかい奴への対策も考えないといけないので拙者はもう帰るでござるが、
お主、また縁があったら会うでござるよ。今ならなんとこの周波数に連絡すれば拙者が援軍にやってくるでござる!
今度はカタログも持ってくるから安心でござる。2回目のご用命からは呼び出す拙者も選べちゃうからさあ大変!
次世代量産機候補の飛陽をよろしくでござるよ!」

別れを告げるかと思いきや突然宣伝文句を捲くし立てると飛陽は自分が出てきた穴へと戻っていく。
「では、これにて御免」
飛陽は砂煙を立てて走り去っていく。

【飛陽、戦闘終了後取り分なしにがっかりしながら隠れ家に帰還】

107 : ◆fLgCCzruk2 :2010/09/10(金) 21:59:34 0
すいません、脱字です
「別れを告げる前に」の前に「残ったイオに」という
言葉を付け忘れてました。

108 : ◆88duu8Vf16 :2010/09/11(土) 20:41:21 O
黒い影に誘われ、イグニスごと闇に覆われた
周りを見渡しても暗く、コクピットから先は全く見えなかった
声を出してみても、全く響かない
「困ったな」
体は動くようになったが機体はピクリとも動かない

???「ようこそ、私の世界へ
レオニール・ルラン・ファーブニール」

突如、声をかけられる
どうやら、僕を招いた張本人がやってきたみたいだ
その声はよく澄んだ美しい声で声楽に励む少女のようだった

「僕の名前を知っているということは、適当に連れて来たってわけじゃないね」

僕は精一杯の勇気で気丈に振る舞う
そうしなければ彼女?の強烈なプレッシャーに負けてしまいそうだった
「うん、話に聞いた通りにそれなりに勇気と知性をもっているようね

それに顔も悪くない」

イグニスのリアシートのほうに人の気配がする
振り向くとそこには黒い生地に白レースのドレスを着た少女がそこに足を組み、座っていた

「ごきげんよう、レオン
はじめまして、私は闇の精霊ノワール
突然だけどあなたは私の奴隷になって貰うわ」

その言葉と同時に彼女から影が伸び、僕の体を包み僕の意識は途絶えた

「これで私のかわいい奴隷ちゃんの出来上がり」

109 :エルトダウン ◆iGrjUqKhz2 :2010/09/14(火) 18:19:18 P
『終わった…か』

コードフィフス、即ちアルタイテンが消えた。と同時に戦場から砲火が鳴り止んだ。

ホロウ・クロウラー、シュヴァルツ・ヴァルト両機のブザーが鳴り響く。
相互通信用のブザーだ。

[こちら鉄の翼、アルヴェリヒだ。現在座標はイクス4528、ワイ2755。速度約110ノットで航行中。
 そちらの座標を確認した。あと86セカンドで回収予定地点に到達する。準備を頼む]

「えらく遅かったじゃないか。一体どうしたんだい?」

エルトダウンがアルヴェリヒに問う。

[ああ、そのことだが…回収後にゆっくり話をしよう。大事な話だからね]

そして予定の時刻。二機の半壊した精霊機は低空飛行をしている鉄の翼に格納された。


――鉄の翼・ブリッジ

[二人ともご苦労だった。ハデにやられたようだが…あまり国家間の戦争には介入しない方が良いと思うよ]

アルヴェリヒは二人からの報告書に目を通しながら言った。

『で、大事な話とは一体なんだ。また何か問題でも?』

[ああ、そのことだがね。本日の明朝、本部から通達が来た]

明朝、本部から通達。その二言でエルトダウンとサイアニスを取り巻く空気は変わった。
ASLは本来、明朝に通達など非常時以外は行わない。明朝に通達があった場合、たいていが重要な通達なのだ。

「明朝に通達。朝イチ…ですか」

[ああ、君達の精霊が休息中の今しか言えないことだ。よく聞いてくれ。
"N2-ALW"プランが始動した。我々は反対したんだがね…
ヌル2-アサルトリーサルウェポンプラン。通称、"N2-ALW"プランだ]

空気が凍った。ヌルとは過去にASLが生み出した人間を媒体とする精霊の事だ。
人間を媒体として生み出した精霊は理論上はとんでもない精霊力を生み出す事ができる。

それを兵器転用しようというのだ。

「アサルトリーサルウェポン…。突撃用殺戮兵器…か。確かにヌルの力を持ってすれば名前に恥じぬ能力は獲得できるだろうね」

ブリッジでは計器類の電子音と、ゴオゴオと空を飛ぶ音しか聞こえなかった。

『…で、我々はどうすればよろしいのですか。三国の関係も悪化しつつあります。
 データ収集ならばなんら問題は無いのですが…?』

その後もしばらくの沈黙が続いた。
アルヴェリヒが口を開く。

[N2は完成次第、戦場に投入される…
本部からは君たちへの命令は一切無いが、私がこの方面としての命令を下そう。
 
もしもN2が実戦投入され、戦場で鉢合わせになったときは迷わず破壊してくれ。
その後の処置はこちらがなんとかする。よろしく頼む…

では、ゆっくりと休息をとってくれたまえ]

110 :飛陽 ◆fLgCCzruk2 :2010/09/15(水) 22:15:47 0
ここは放棄された国境線沿いの高山地帯その戦場跡地。
元は激戦区で放棄されたあともASLやならず者たちが一時期秘密裏に
拠点を設けるがそれも攻撃されてすっかり荒野と化して、禿山の
頂をわざわざ仰ぎ見る者もいなくなったこの場所は今は「無人の」のねぐらとなっていた。

「ただいまーでござる」
先ほどの戦闘で傷つき収穫もなく戻ったのは暫定でこの場の主となっている無人機、飛陽であった。
ちなみに今話している場所は高山内に入るための地下トンネル入り口である。
「おかえり飛陽、随分やられたね」

そう言って迎えたのはこの高山地下基地の留守を預かる技術者であった。
「申し訳ないけど今回は取り分なしでござるよ、面目ない」
技術者の方も彼の通信はこちらに繋がっており事情は把握しているので仕方が無いと慰めた

「戻ってこれただけ良しとしよう、さあ、合言葉を言って」
「あいよでござる、アジャラカモクレンキューライソ、テケレッツノパッ!」
そして口でパンパンと言う。正面にあった門が開くと奥へと進む。

「色々検討することもあるでござるが、なによりもまず皆のことが先でござる。変わりないでござるか?」
飛陽の問いに技術者はいつもと変らず平和だと答えた。焼けた禿山、それは少し前までのこの山の姿。

自分達のアジトを欲したジェニファーと飛陽はここを見つけた後は、例によって地下から各町や戦場から、
農民、兵隊果ては競争に敗れ自棄になっていた技術者などを片っ端から誘拐もとい拉致改め亡命させて
ここに匿ったのである。今では付近に詰めている両国の兵士も抱きこみ、復興に尽力したおかげでここは
平和そのものである。三国及びASLにもバレる心配はなかった。

「ジャンク屋稼業も隠れ家的な持ち味を出すために有効でござるが、今回はとかく酷い目に遭ったでござる」
あとで技術者に全員召集をかけるように伝えると修理の為にドック入りする飛陽。
謎の大型機体に動き出した戦況、自分の販路の構築と振って湧いた予定に当分は振り回されそうだった。

111 :イオ ◆kfNCJM9MUprk :2010/09/16(木) 19:07:03 0
村正に残る全精霊力を注ぎ込みヨハンナ達の手により放たれた『矢』は空を裂き、矢を中心に黒き気が螺旋状に巻き上げ、その大地を穿つ

どうやら標的…アルタイテンは何処かへ姿を消した直後であった
視界が暗くなっていく。外から声が聴こえるが…

マリー「いっしょにたたかってくれてありがとう!
だけど東のソラから…ク……ヒトのヒメイが…こえ…の。
ごめんねマリー……ザーはもう行かなくちゃ………の。
じゃ…ね、また………」
飛陽「まあ偶にはこういう事……し早速…でっかい……対策も考えないと……拙者は…帰るでござるが…」

周波数とカタログのあたりまでは何とか意識を保たせていたが…

「では、これにて御免」

と飛陽の後ろ姿を見た所で遂に視界は黒くなり
七星は墜落していく

落下から地上の半ば辺りで白い機影が七星を受け止め、既に意識はないが語りかける
「大義であったな。回収艇も近くに来ている。」

白い機体は散開していた零戦部隊に対し

「ご苦労であったな旗艦クニヌシまで撤収する
念の為、私が殿を務める弐番機参番機は七星を頼む」

零戦部隊が先行する形で戦場を後にする
最後尾の白い機体がロンデニオンに一度向き直ると繰者は呟いた

「あの化け物が鼻先で暴れていたとは思えんな…
いや、あるいは奴め、あれで本調子ではなかったと言うべきか」

振り返り隊列についても次の事を考えていた

(この戦闘を報告せざるを得んな。この結果なら『奴等』もそれ程調子には乗らぬ筈…
とは言え先人はとんでもないモノを残してくれる物だな…)

【イオ:現在意識不明、復帰次第ロンデニオン潜入予定】

112 :王国軍空軍将校 ◆kfNCJM9MUprk :2010/09/16(木) 21:06:20 0
>>90
概要を伝え終えた士官と入れ替わるようにしてポットとマグカップを持った一人の男がフィリップの前に歩み寄る
勲章から察するに中佐相当である事が見てとれるが
その風貌は軍人とも貴族とも取りがたいもので髪は肩にかかるほど、軽くウェーブのかかり外側にハネていた。手入れもしているとは思えない。
もっとも特徴的と言える丸い縁の眼鏡の下は、どこか疲れたような憂いを秘めている。
長身痩躯の体型が余計に頼りなさげな印象をフィリップに与えた
眼鏡の将校はフィリップに一礼すると挨拶を始めた

「気分はどうだい?ああ、僕はアーサー。アーサー・ローレンス
第四軍団の後方支援の一部を担当させて貰った…と言ってもろくに役にたたなかったんだけど」

眼鏡の男は何かに気付き

「そうだった。コーヒーでも飲むかい?」

ベッドの枕側、側面に備え付けてある簡易デスクに
ミルクポーションとシュガースティックがそれぞれ入った小さなバスケットを中央に
八分までコーヒーを注いだマグカップを互いの手元に置いた

「砂糖とミルクは好きなだけ使ってくれ。」

そう言うと、自身はシュガースティックを五本ミルクポーション5つほどマグカップに入れスプーンでかき回しながら続ける

「先の戦いでは良く生き延びてくれたね。
報告ではセラ殿下に追従してくれたとか…いや、前置きはこの辺にしておこう
君に話しておきたい事と、頼みたい事がある
まず、話しておきたい事はルーデル王子が急逝された事…
僕達にとっての後ろ盾が失われた事だけど、彼の周辺でも同じような変死が確認された事から殺害されたと言っていい
犯人に関する目星はそれなりに付いてはいる
そして頼みたい事だけど、よく聞いてくれ
ここから先の話は君の将来に大きく関わる重要かつ危険を含む内容だ
セラ王女を無事送り届けた君だから話せる事でもある
この国に潜む闇に向かう覚悟があるのなら…翌日0時にスィゴーニュの左隣の格納庫内で待つ
そのつもりが無いのならば、今の話を聞かなかった事にして
ここで王国の指示を待てばいい」

【アーサー:フィリップに接触】

113 :名無しさん@自治新党スレでTATESUGI値審議中:2010/09/16(木) 21:34:12 0
>>112
この国に潜む闇に向かう→この国に潜む闇に立ち向かう
です

114 :フィリップ ◆i3/u6CmHbc :2010/09/17(金) 23:46:36 0
>112
 王国軍では、精霊を使ったテロを防ぐため、属国の人間が精霊を伴って基地に入ることを禁じている。
 スィゴーニュを操り、フィリップをこの基地まで運んだネージュも、今は機体での待機を強いられている。

高飛車なネージュに反発しながらも、いつも彼女の助言をアテにしていたフィリップにとっては、ネージュの助言なしで重大な決断をくださなければならない状況に追い込まれたことになる。
 アーサーの差し入れたコーヒーが、まだ気だるさの残る意識をクリアにしてくれたのが、せめてもの救いだった。

 アーサーはおそらく、セラ皇女の派閥の人間で、何らかの謀議に参画しているのだろう。
そして、その陰謀のために正規の軍人ではないフィリップを駒として利用するつもりであろう、とフィリップは推測した。

セラ皇女に対する印象は悪くない。
地下道で遭遇したときに交わした通信で触れた、凛としていながらも、決して優美さを失ってはいない話し方は、彼女が有能であるともに、人を惹きつける魅力をもつ人物であることを感じさせた。
そのうえ、単身敵地に乗り込み、敵機を奪取したと聞いたときは、その勇気と機転に驚かされた。
今回、彼女の兄弟であるルーデル皇子の死を受けて、彼女もまた、王位に一歩近づいたはずだから、後ろ楯としては、申し分ない。

 問題はアーサー達の目的である、「この国の闇に立ち向かう」ということのほうだった。
このような言い回しは、悪くすれば、クーデターの謀議と誤解されかねないため、相当に慎重に使われるものだった。
 このような言い回しで、フィリップに加担を勧めたのだから、もし、彼が加わらなければ、秘密を守るためにアーサー達はフィリップを消すだろう。
幸い、属国の人間であるフィリップを消してもあまり波風が立ことはない。

いずれにしても、彼に選択肢はないのだという事実に思い至った時には、フィリップの足は自然に愛機のほうへと向いていた。

【フィリップ、アーサーの誘いを受ける】

115 :飛陽 ◆fLgCCzruk2 :2010/09/19(日) 23:40:26 0
「修復完了、各部の改修も済んでます」
クルーの声を聞いて修理用ハンガーから飛陽がキュラキュラと音を立てて現れる。
「ご苦労さんでござる、早速でござるが拙者はまた出稼ぎに行ってくるでござるよ」

そう告げるとクルーの技術者からいくつかの疑問と心配の声が挙がる。
「そのボディは前より馬力が出ますが飛行機能がオミットされています。武装の改良があったとしても
逃走用の手段は減っているのでくれぐれもお忘れのないように、それとどちらへ?」

聞かれてその機械は流暢に返答を返す。そういえば言ってなかったと
「ロンデニオン先にある国境線を攻める、というよりは売れ残りの敗残兵共を刈って来るでござる」
行き先を告げられてドック内に動揺が走る。潜入こそし易い機体だがそれはあまりに無謀だった。

「この間の戦闘で帝国はロンデニオンを取り返すことには成功したが治安は最悪、本国同士での戦力に
それほど差はないものの小国を潰して兵力を蓄えている王国側が明らかに有利、もう一度ロンデニオンを
奪い返されたらこの辺の帝国側の勢力が消えてしまうでござる」

それだけは避けなければならない、まだもう少し戦争を続けてもらわなければならない。その為には
「だからここでちょっかいを出すんでござる、何全滅させようって事じゃないでござる、距離は少しある
でござるが直線な分だけアルバニアンよりかは近いでござる、山降りるでござるが」

作戦は簡単だった。一つはロンデニオンとは水源を異にしていること、付近の村や駐屯地は王国側という
ことで川に毒を流すこと。以前破壊されたケルン大橋のティルネラント領側に出て彼らの駐屯地に奇襲をかけ、
被害を与えるというものである。当然反対の声が上がるが。


116 :飛陽 ◆fLgCCzruk2 :2010/09/20(月) 00:02:54 0
「何を甘いことを言ってるでござる、拙者達がこれでおまんま食ってるんでござるよ、
そんなに嫌なら解毒剤を用意して作戦後に付近の住民を攫ってくればいいだけでござろう」
本当は致死性の毒が良かったが、2,3日寝こむくらいのものでも良いと言うと彼らは
渋々ながら準備を進める。これで良い、最初に譲歩することで後は円滑に事が進む。

相談の結果、遅効性の致死毒を撒いて作戦後に解毒剤を王国軍でないところに配布して回るという事で話は付いた。
「リサイクルとかエコとか言い出されるとこっちが困るんでござるよ、拙者の通った後を調べる奴も漏れ無く
轢き潰してやるでござる」
そう言って飛陽はサボテンのジェニファーを連れ、毒を搭載して装いも新たに山を下っていった。

【飛陽、ロンデニオン先のティルネラント領に隠密裡に攻撃に向かう】
【今回の変更点:精霊力2700に上昇、飛行機能なし、代わりに各車両の武装が追加
 撒菱が液体トリモチに加えられました。張り付いて爆発します。
 煙幕が可燃性になりました、着火が可能になりました。
 1両目背部に2両目と同じ砲台、2両目の側面にアンカー、3両目側面に鉤爪が追加されました。

117 :飛陽 ◆fLgCCzruk2 :2010/09/21(火) 20:07:15 0
「だからあ、ここの司令官殿に会わせて欲しいんでござるよー、呼んできて欲しいでござる」
「ござるござる五月蝿いぞ!しかもなんだ!機体から降りずに司令官を連れてこいとは何様のつもりだ!全く、
こっちはただでさえ市民の怒りの矛先を向けられているというのに・・・」

飛陽は今ロンデニオンの入り口で足止めを食らっていた。というのもアルバニアン、ロンデニオンを巡る戦いから数日の後、
そして今から遡ること数時間前・・・飛陽はティルネラント領へと侵攻していた時のこと。
時刻は夕方、遠方から詰所の付近を見れば周囲を十はくだらない数の精霊機と車両が巡回していた。

ここから更にこの近辺の村々の状況を知った上でなければ毒は撒けない。バレて阻止される可能性はもちろん
解毒薬の配布にしに行って途中で見つかれば、村に付く前にご和算という危険もある。あくまで狙うのは
王国軍、そのために地中からジェニファーに種を撒いてもらい、辺りを偵察しているのだが、

(やっぱし面倒いでござるなあ、流すまでなら余裕でござるがここを突っ切って届けるとなると厳しいでござる。
拙者以外に解毒剤を持たせた誰かに時間差で行ってもらう方がいいでござるな)
そう思い地中深くを慎重に村よりに進んでいく。ジェニファーの力を抑えてもらっているとは言え0にはできない。

(でもやっぱ毒はいいでござる、医薬品と違って品質が落ちてもの毒性がほとんど落ちないでござるからな)
できるものならこの場でやってしまおうと思い持ってきた薬が車両内で揺れる。

詰所の辺りは前回の敗戦からいくらか兵が集結しているようだった。これが他所に撤収してくれればいいが
またロンデニオンに流れ込まれるのまずい。
(近々雨が振りそうでござるな、早めに仕掛ける必要があるでござる)

彼の作戦はこうだった。自分がまず毒を撒く、その後時間を置いて詰所に奇襲をかけて騒ぎを起こしている間にもう片方に
近隣住民に解毒剤を渡して一時保護して(攫って)もらう。その為にはまず協力者を探さねばならない。
機会はこの僅かな間しかなく効果もまた然り。地下から付近を伺っていた飛陽は一転、ロンデニオンへ向かったのだった。

「今何時だと思ってるんだ!また住民から嫌がらせを受けるだろうが!勘弁してくれ!」
「勘弁してくれって言われても、それに拙者無人機だから降りるも何もないんでござるってば」
「嘘をつけ!喋る無人機があるわけないだろう!おれは幽霊でも見てるってのか!」

そんな不毛な話をいくらも続けながら飛陽は足止めを食っていた、カタログもいらないと言われてしまったばかりだ。
「チャンスなんでござるよ!王国軍に追い討ちをかけられるんでござるよー!」
夜中にそんな声が木霊するが遥か遠く街中からは怒声が一つ返ってきただけだった。

【飛陽、毒殺作戦の為に協力者を募りにロンデニオンへ来訪、現在外門で足止め中】

118 :アーサー ◆kfNCJM9MUprk :2010/09/21(火) 20:23:44 0
___某日0時
スィゴーニュの格納されている区画のフィリップから見て、すぐ左隣の格納庫
整備員用の出入り口手前には既にアーサーが前回と変わらない姿で立っていた
フィリップの接近に気が付き、格納庫に招き入れる

「こっちだ」

フィリップが足を踏み入れると格納庫内は一気に光源に照らされる
そこには一機の騎士然とした精霊機。ネイビーブルーを基調とした色合い
サーメット状の頭部、雄々しくも流線的な全身像の機体がフィリップの目に映る
唖然とするフィリップに構わずに、

「これは王国空軍の次期主力機となる”はず”だったシュバリエと言う機体だ
現在では飛行能力をオミットされた陸戦機が既に実戦投入されている」

アーサーはひとつ咳払いをして眼鏡の縁を指で支えて直すと

「…まず機体の説明をさせてくれ
背部に格納型のスラスター、脚部には精霊力の力場を展開して、地面の移動及び滞空時のスライド移動を可能にしている。
専用剣としてアロンダイト、それからネージュをこの機体に同調させればスィゴーニュの武装も直ぐに使える。
君にはこの機体でティルネラント領の駐屯地へ向かい、現在増援として進軍中のアレス将軍の部隊へ合流…
彼の父メドラウトは今回の暗殺事件に一枚噛んでいるらしい。つまり君への依頼は彼等への潜入調査を行って貰いたい」

懐から小さな箱を取り出しフィリップに手渡す

「その中には探知魔法を誤魔化せる特殊加工を施した、ピアス状の念話通信機が入っている。ああ、穴は開けなくて良いよ。
貼り付くようになっているんだ。必要な時に付けるといい。使い方は…」

左耳のピアスに指先で軽く二回つつくと

「これでもう片方に宿っている精霊に呼びかけて通話する事が可能だ
後で皇女にも渡しておこう」

また眼鏡を直す仕草をし、フィリップに視線を投げかけ

「…メドラウト卿は強硬な強国主義者でアレス将軍も、戦争を勝利に導く事で王国主導の平和を実現出来ると信じているけど…そこはいいんだ
ただ、ルーデル王子殺害は腑に落ちない。そしてセラ皇女にも先の戦場で”彼等”からの刺客を放たれていたと、”ある”筋から聞いている
ルーデル王子もセラ皇女も、こう言っては何だけど、直接政治に関わろうとするようなタイプじゃない。いちいち殺害という方法を取ろうとするには訳があるはず。ともかくルーデル王子の二の舞を避けるには情報が必要だ」

119 :アーサー ◆kfNCJM9MUprk :2010/09/21(火) 21:00:02 0
>>118の続き
「実は君が依頼を受けなくともメドラウト卿からの合流通知が来てたはずだ
もっとも、その場合は僕達の行動が制限されているだろうけど。
四機しかないがシュバリエ級量産機の飛行型を用意してある…
出撃は今から1時間15分後だ」

機体設定
機体名 シュバリエ指揮官機(カッコ内は量産機)
精霊力 3500(3000)
耐久力 C(D)
運動性 A(B)
装甲 C(C)
武装
アロンダイト(ロングソード)
ダガー(ダガー)
ネージュ・フュズィ(ヴァン・フュズィ)
精霊風(精霊風)
死の雪(毒の風)

120 :フィリップ ◆i3/u6CmHbc :2010/09/24(金) 23:44:14 0
>118-119
 格納庫に足を踏み入れると、そこには、彼の愛機と酷似した精霊機がその威容を示していた。
その機体のデザインは、スィゴーニュのフォルムをより洗練したものであった。
王国軍の現主力航空精霊機「ガルーダ」にはない格闘装備がある点も、格闘性能の向上を目指したスィゴーニュの設計思想を継いだものといってよかった。
 おそらく、帝国から亡命した技術者を中心に開発されたのだろうが、性能はともかくこれほどまでに帝国的なフォルムでは、制式採用に至らなかったのも頷ける。

<コックピット内>
 武装まで互換していたのには、さすがに驚いたが、基本的なマニュアルはスィゴーニュとほとんど同じだったので、マニュアルの確認を素早く済ませると、ピアスのテストを兼ねてアーサーに呼び掛ける。

「まずはこのような扱い易い機体を与えてくれたことに感謝を。
 出撃前に確認しておきたいことと、お願いしておきたいことがある。
 確認しておきたいことだが、貴官らの意図(フィリップのスパイ行為)がメドラウト卿に漏れた場合の行動方針を伺いたい。
 次にお願いだが、ことが無事に済めば、スィゴーニュを返還していただきたい。
 私の精霊がそちらの方が居心地がよいらしいので」

【フィリップ、スパイ行為が発覚した場合の行動方針を質すとともに、事後におけるスィゴーニュの返還を要請】

121 :飛陽 ◆fLgCCzruk2 :2010/09/25(土) 00:53:14 0
(どうしたものか、どうしたものか、このまま押し問答をしていても埒があかないでござる。
む、この手があったでござる!)

飛陽はそれまでに手に入れた各国の通信用の周波数のうち王国軍側だけを除き帝国と帝国領側の
一般回線に出来る限り広範に通信を行う。というより一方的に発信のみを行う。内容は・・・

「えー、ローガンブリア帝国の方々に告げます。拙者はこれから、かくかくしかじかと言った理由で
毒を撒いてくるでござる。皆様にはこれからここにくる者たちから薬を受け取ってしばらくしてから、ケルン大橋の
方へ届けに来て欲しいのでござる。この作戦に賛同してくださった方は是非とも参加して欲しいでござる。それでは」

自分のこれからやろうとしている事を、大っぴらに喧伝して任せてしまおうという考えた。
もし誰も集まらなかったら薬を届けに来た自分の所の人員にそのままやらせればいい。

「何だ、お前何をした、いや、何を言ってるんだ!」
詰所内からも突然漏れ出した放送とその内容に眼前の兵士の顔は先ほどとは打って変わり
緊張したものに変わっていた。既に辺りの通信はこの機体に掌握されていた。
とは言えあくまで回線に割り込める程度で自由に操れるわけではないが。

「ご安心を、拙者今回は帝国の見方でござるからして!」
そう言うと忙しなく今度はきた道を引き返す。相手が言いたかったことや危惧など欠片も
気づかず彼は手配を済ませたつもりになっていた。彼の中の倫理は甚だ奇妙だった。
「今日の夕方には雨が振ってしまうでござるから、急がねば!」

雨が降る前に汚染された川の水を飲ませた後に攻撃し、その後雨による川の増水で渡ってこれない
間に駐屯地以外の解毒を済ます。もう時間がなくなりふりも構えない。そもそも有効となる時間が短く
失敗の危険も高いので当の本人もそれほどこの作戦に期待はしていないのだ。やる以上はいたって本気だが。

【飛陽、拠点のスタッフに指示を出し、街で作戦を大っぴらに宣伝した後、駐屯地へ向かう】

122 :名無しになりきれ:2010/09/28(火) 01:39:38 O
ペルは牛乳を運んでいた。

「よいしょよいしょ」

(保守です)

123 :飛陽 ◆fLgCCzruk2 :2010/09/29(水) 22:52:36 0
不味い、もうじき夜明けになってしまう。農村部の朝は早い。一刻も早く
毒を流さねば村の住民に毒を盛れなくなってしまう。王国軍だけでは効果は半減してしまう。

そんな不安を抱いて土中を猛進していると>>122の少女が既に牛乳を運び出しているではないか!
焦った飛陽は少し離れた土中から少女に話しかける。

「あーもしもしお嬢ちゃん、もう水汲みは終わったしまったでござるか?それなら良いんでござるがまた水を汲みにくる
だろうから先に言っておくでござるが、これからこの先の川に毒、つまりばっちいの撒かれるんでござるよ。で、帝国さんの
格好をした王国さんがお薬を持ってくるからそれを飲むんでござるよ。動物たちにも効果があるし、毒は今日の夜には川から
消えてるはずでござるから。とにかくこの話をご両親にするんでござるよ!いいでござるな!でなきゃ今日は水飲まない!いいでござるな!」

突然の出来事に呆然とする女の子に「川がすごくばっちくなる事とお薬が届けられることを知らせろ」という旨の事を少女に命じて
飛陽はその場を後にもう直見えてくる詰所へと去っていく。

やがて目的の場所が見えてくる。あれこれと画策した割に大概意味を成さなかった。始めからこうしておけば良かったのだと飛陽は
半ば自棄になりながらそう思った。
「こうなったら川に飛び込み様に毒をぶん撒いてその足で突撃してやるでござるよぉー!」

そう吠えながら以前は橋がかかっていたその川に車体を突っ込むと荷台を開く。無色の毒が水に溶け出していく。
少しすればこの川に毒が蔓延する、そして今日の昼から夜の間に高確率で雨が降ることは事前に拠点で
確かめている。雨が川が増水すればこの量の毒も川下へどんどん流れて消えてしまうことだろう。

後は後続の到着を待つだけだ。隠密裏に事を成さなかった(成せなかった)以上相手方にももう気づかれている事だろう。
川から顔を出して岸に車体を上げると早速哨戒機が数機やってくる。ここで被害を出してはいけない。単独の
自分のような者がやってきた理由を想像させてはいけない。あくまで強行偵察のフリをするのだ。警告を無視して
飛陽は敵陣へ全速力で突っ込んだ。

【飛影、川に毒を撒いた後詰所に朝駆け、戦闘開始 後続部隊がロンデニオンへ出発、】

124 : ◆eqAqXE3VMc :2010/10/05(火) 07:21:07 O
>>123
地面から声がしてペルはびっくりした。
ロンデニオンの地下には悪魔が住んでいるという噂は本当だった。

震えるペルに飛陽は、川の水は飲んじゃダメッと釘をさす。
その時ペルは半信半疑だったが後日本当に川に毒が流されたことを知り彼女はさらに震えあがった。

−−そして−−

川から飛び出しパワフルに突撃してくる飛陽に哨戒機の脚部が当たり哨戒機はひっくり返る。

兵士A「おわっ!!」

兵士B「敵襲だ!!」

飛陽の奇襲に兵士たちは大騒ぎ。

部隊長「なんだぁ?強行偵察か?ならば砲の位置や布陣を変える必要があるなぁ」
部隊長は少し困惑したように顎髭を右手でゴシゴシとしごいている。

部隊長「で、後ろの敵の数は?強行偵察の後ろには間髪入れずに突貫してくる部隊があるはずだが(想像)」
部隊長ムラキは上着を羽織ると自分の精霊機に乗り込んだ。
灰色の機体の背中部分には巨大な三日月刀を背負っている。

「ラドムーム出る!!」

機体から光の輪が広がり木々を一瞬だけ照らすとラドムームは明け方の大地を浮遊しながら飛陽に急接近する。
飛行していると言うよりはまるで重力を操っているかのように空中で幻惑の動きをみせるラドムーム。

「我が名はムラキ。貴様の真意はよくわからんが降り懸かる火の粉は払うまでだッ!!」
今まさに、ラドムームの三日月刀が飛陽の機体の前部に切り付けられんとしていた!

125 :セラ ◆eqAqXE3VMc :2010/10/06(水) 07:07:24 O
ティルネラントの東。海に面した古城でセラは休養していた。

朝日で海面が黄金色に輝きはじめる。

テラスの猫足テーブルに頬をペタリとつけて考えごとをしているセラ。
テーブルの上にはある人物から届けられた一枚の手紙と念話ピアスが置かれている。

「ふむー…」
指でピアスをつついて小さいため息をつくとセラは立ち上がって海を見た。
波はなく大きくうねっている海にとても大きな力を感じる。

「すすむしかないよね」
セラは手紙と念話ピアスを手にとるとあしばやに精霊機の格納庫に向かう。


−−−城門が開き改修されたセラの愛機セラフィーが姿を現す。ブレードや翼は内装され、その姿は実にシンプルになっていた。

「ちょっと可愛くないってゆうか、フォルムがてろんてろんになっちゃってるけど隠密行動には最適ね。この姿なら傭兵や賞金稼ぎとかにしか見えないはずよ。ね?アロル」
セラは操縦席でお供である見習い兵士のアロルに尋ねた。

「はいセラ姫さま。おわっ!」
アロルの精霊機アルフィーはセラフィーとは正反対に重装備でカモフラージュされている。
いかにも荒っぽい賞金稼ぎな感じ。そのため肩についていた盾を城壁にぶつけそうになってしまった。


「アロル!しっかり姫様をお守りするんだぞー!!姫様ー!!ご武運を祈っておりますぞー!!」
ドルガン翁とセラの影武者の娘が城壁で手をふっている。

「ありがとう。その言葉、嬉しく思う」
皇女セラは微笑むとアロルと共に古城をあとにした。

【いちおう動いてみました】

126 :エルトダウン ◆iGrjUqKhz2 :2010/10/07(木) 00:23:48 P
――ASL極東方面第2研究局・地下21階最高機密区域

極東方面第2研究局とは"ジパング"と呼ばれる小国に建設され、世界中に散らばるASLの研究局の中でもかなり高度な研究をしている研究局である。
そしてここはその最下層にある何重にもロックがかけられた研究室。

《精神融合点到達まで43セカンド。被検体のヘルス値は良好。精霊素体にも異常ありません》

厳粛な雰囲気の中、ガラス越しに横たわる人間と大量の機材を眺めながら一人の研究員が言う。

《精神融合開始します、5、4、3、2、1、エンゲージ》

チチッとガラスの向こうで何かが発光すると辺りは一斉に静まり返った。
しばらくして、研究員の眺めるモニタに変化が現われる。

《被検体から超高濃度精霊力の漏出を確認。精霊力、測定不能。被検体のヘルス値がどんどん上昇していきます》

そしてその研究室で一番大きなモニタに"精霊現出:媒体/Human"の文字が表示される。
と、同時にその部屋にいた全ての研究員が歓喜し手を叩いた。

《やりました!主任、成功ですよ!被検体にも異常は現われていません!その上、測定不能なほどの精霊力が!
歴史的瞬間です!ヒトを媒体として精霊を生み出すことに成功したんですから!》

<落ち着きたまえ。まだプランの第一段階が終わっただけではないか。
この後、"アレ"には精霊機の扱い方も行動パターンも学習させねばならん。

全員、防護服を。濃密な精霊力が漏出しています。直接、皮膚に当てると健康に害を及ぼす恐れがあります>

主任―サエザキと言う―は全員が防護服を着たことを確認すると、では、と言ってからガラスの向こうの部屋へと続く扉のロックを開けた。
サエザキはその時にあふれんばかりの精霊力を防護服越しにも確かに感じることが出来た。

"アレ"は既に目を覚ましていた。

<おはよう、セラエノー・シャーズ君。53時間と34分ぶりの目覚めはいかがかな?
全く…君たち兄弟には何度も驚かされるよ。
兄のエルトダウン君は精霊機の扱いに対して凄まじい適性を持っていたが、
今度は弟の君にも、まさか精霊をコントロールする適性があるとはね>

ただ目を開けて真っ白な天井をぼーっと眺めていたセラエノーはエルトダウンと言う単語を聞くとすぐさま反応した。

「兄は…兄は元気ですか。兄には僕のこと話してくれましたか…?」

か細い腕を天井に真直ぐ上げながらセラエノーはサエザキに問う。

<すまない、実は彼はもっと西の方へと派遣されていてね。連絡も取れないんだ。
恐らく、彼は君がエルトダウン君の後を追ってASLへと所属したことも知らないだろう。出来る限り急ぎはするが…>

「いえ…構いません。どうせ兄も僕のことなんて殆ど覚えて無いでしょうから。
突然家を出て行った兄と僕は兄弟であって他人の様なものですから…

では、サエザキ主任。早速、精霊機の扱い方や行動パターンを学びたいと思います」

そうしてセラエノーは立ち上がると他の研究員とろくに会話もせず、サエザキと共に部屋を出て行ったのだった。

【N2-ALW計画の始動です。一応動いてみました】

127 :飛陽 ◆fLgCCzruk2 :2010/10/08(金) 19:22:36 0
>>貴様の真意はよくわからんが降り懸かる火の粉は払うまでだッ!!
振り下ろされた三日月刀に機体の中央を合わせると急ブレーキをかけて車体で受け止める。
大事なのは攻撃用の砲台が壊されないことだ。三日月刀の先端がわずかに車体の前面を切り裂くが
致命傷には程遠い。地面に刀身がめり込んだ事に焦る空気がこちらにも伝わってくる。

「いいでござるなあ〜、そのあれって間がなんとも堪らないでござるぅ」
備え付けの鉤爪で勢い余って地面に刺さった刀身を押さえさせる。
「人型相手のやり方をうっかりしちゃった時の感じ、焦ってる感じが最高でござるなあぁあー!」

吠えて腕をその場に残すと詰所の奥に見える倉庫と貯水場へ突進する。
「せいぜい足りない分を村から取り上げて嫌われるがいいでござる!」

そして強引に体をぶつけて二箇所を壊して回る。怒声を上げて殺到してくる敵機の群れを
車高の低さをいいことに悠々と接近しては通り抜けていく。勿論射撃によるダメージは
きっちり溜まっているのだが。

「次からは足元叩ける様に訓練しとくんでござるよー」
そう言って今度は煙幕と地雷入りのトリモチを所構わす撃ちまくり3両バラバラに分裂して戦場をより
ティルネラント領側へと脱出する。

「あ、そうそう、拙者スポンサー(自分)からこの機体の宣伝を頼まれてるんでござるよ、ご入用の際は
この周波数までどうぞでござる。」
言い終わるが早いか最後に自分のチラシを1両目の木砲か詰所の方へとばら撒いて全力で駆け去っていく。

後はこのまま雨が降るの待てばいい、何とか上手くいったかと飛陽は帰路についた。

【飛陽 詰所の食料庫と貯水場を破壊、詰所も小破、実は撃破寸前のダメージで逃走】
【後続部隊 ロンデニオンで同調者を得られず出発 予報では村に到着する頃雨が降る模様】

128 : ◆eqAqXE3VMc :2010/10/08(金) 21:58:21 O
>>127
>「いいでござるなあ〜、そのあれって間がなんとも堪らないでござるぅ」

「いくないでござるわぁ!!」
ムラキは操縦桿を力いっぱい操作して切り返そうとするが、
飛陽の鉤爪によって地面に刺さった刀身を押さえられてしまう。

>「人型相手のやり方をうっかりしちゃった時の感じ、焦ってる感じが最高でござるなあぁあー!」

「焦ってなどおらぬが!!」

ラドムームは三日月刀をあっさり手放すと回転して飛陽を蹴り飛ばそうとしたが
急発進した飛陽は間一髪で蹴りを避け詰所の奥に見える倉庫と貯水場へ突進する。

>「せいぜい足りない分を村から取り上げて嫌われるがいいでござる!」

「何を言っている!?強盗でもあるまいし!我我は軍だぞ!物資を確保するときは村の者にきちんと金を払っておるわー!!」

飛陽は強引に体をぶつけて倉庫や貯水場を壊して回る。怒声を上げて殺到していくムラキ隊を
車高の低さをいいことに悠々と接近しては通り抜けていく。

>「次からは足元叩ける様に訓練しとくんでござるよー」

「なめるなよ!ござるの人よ!武雲釜李頭無力(ムーンプリズムパワー)!命苦増量(メイクアップ!)」

ムラキが髭面を震わせると機体が発光して七色に輝きラドムームの両手の指先から圧縮砲がマシンガンのように放たれる。
がしかし、ティルネラント方面へと逃走する飛陽が3機に分裂し煙幕や地雷を放ったため狙いが定まらない。

「な、なんなんだあいつはーッ!?」

とりあえずムラキは真ん中の機体に狙いを定め集中砲火して機体をひっくり返すほど攻撃したが
一回転しながらも飛陽は逃げて見えなくなった。

最後におまけの宣伝チラシを残して…。

一人の兵士が水晶スクリーンでチラシを確認するとムラキに言った。

「隊長。あれなら隊に2〜3機はあっても損はしないんじゃないですか?」

【ムラキ。飛陽を逃がす】

129 :セラ ◆eqAqXE3VMc :2010/10/11(月) 08:25:03 O
ロンデニオンと飛陽のアジトとのちょうど中間地点の街ストロベリーフィールズは周囲に複数の農村を有する農業の街。
セラとアロルは街の酒場で情報収集をしつつ夕食をとっていた。まわりのテーブルでは若い男女がぶどう酒を飲み騒いでいる。
農作物の収穫も終わり街は収穫祭を目前にして賑わいを見せ始めているようだ。

「今ってアレス将軍のとこでフィリップと言う人がスパイ行動を始めようとしているのよね?
…奇遇と言うかなんと言うかフィリップってたしかロンデニオンの地下道ですれ違った人だわ。
たしかに私もお兄様の敵討ちは果たしたいのだけれど…。
うしろにメドラウト卿がいるのでは一筋縄ではいかないと思うの」

セラはジャムをたっぷり挟んだパンを頬張り横目で壁を見る。

酒場の壁には貼り紙がはってありアデラやヨハンナ、アルタイテンにイオ、そして飛陽に賞金がかけられていた。

黙って頷いていたアロルが口を開く。

「ASLの動向も気になりますが今は近場のものから片付けていくしかありませんね」

「……判断は私がする」

「はっ!!申し訳ございません」
アロルは縮み上がる。時折見せるセラの得体の知れぬ威圧感はティネルラント王家の人間の証なのだろう。

【セラの行動は未定です】

130 :セラ ◆eqAqXE3VMc :2010/10/12(火) 16:31:36 0
セラはスプーンの先をスッと壁に突き出して一枚の指名手配書を指し示す。

「その飛陽ってお尋ね者…。最近水面下っていうか裏の世界で派手に暴れまわっているそうね。
噂だと毒を撒き散らしてそこら辺一帯の住民を皆殺しにしようとしたりとか
小隊を単独で壊滅状態に陥れたりとか悪行の数々を繰り返しているって聞いたわ…。
今、私たちって賞金稼ぎにカモフラージュしているわけなんだけど、
それにリアリティーをつけるためには誰か一人を狩っといたほうがいいと思うんだけどどうかしら?
ま、アリバイ工作みたいなものね。ついでに機体の試運転もかねてはいるんだけどね」

どこまでが本当なのかわからないような飛陽の情報をセラはアロルに語る。

「そうですねー…いいと思います」
アロルは考えているフリをしながら適当に答えた。セラに逆らっても無駄だからだ。

しばらくの沈黙のあと二人の座っているテーブルに一人の若い占い師風の女が寄って来る。

「あの。ごめんなさい。あなた方は賞金稼ぎの方々ですよね?
郊外にある精霊機を拝見させていただきました。そして私は感じました。
あなた方の精霊機には他の賞金稼ぎにはない強い力がある、と。
そこでお願いがあるのです。私の兄を見つけて下さい!お金ならあります!」

占い師は金貨の入った小袋をテーブルの上に置いた。
セラは断る気持ちにもなれずにとりあえず話を聞くことにした。

話の内容を簡単に説明するとこうだった。ここから数キロ北にいった禿山に「お宝沼」という沼があり、
一年前に占い師の兄とその友人たちが宝を探しにむかったところ三人は化け物に遭遇して占い師の兄だけが行方不明になってしまった。
占い師の少女はその「お宝沼」の付近を調べて兄を探し出して欲しいと言う。

「でも…行方不明になったのは一年も前の事なんですよね?」
アロルは困ったような顔で少女に問う。少女が黙っているとセラが口を開く。

「ま、正直言ってこういうことでしょ?普通の人探しなら私たちでなくっても出来るはずだし、
ようは「お宝沼の化け物」を退治しろってことなんでしょ?」

占い師の少女はスカートを握り締めて小さく「はい」と答えた。

「いいわ。引き受けたわ。でも私はこんな、はした金なんかいらないわ。お代はお宝沼のお宝だけで充分よ」

セラはテーブルの小袋には手を付けずに快諾し明日に備えて宿屋へむかった。

――次の日の早朝。
「姫様!アレス将軍がこちらへ進軍してきているとの情報が入りました!」
アロルのうち耳にセラは半分ほど目を開く。
「目的は?」
「わかりません」
「…将軍の目的は飛陽討伐なのだろうか?まさか私ということはあるまい。
目的がわからぬのなら捨ておけ。私は少女との約束を果たさねばならぬ…」

セラはむくりと起き上がり準備を整えるとアロルと一緒に精霊機で禿山のお宝沼へとむかった。

【禿山のお宝沼(飛陽さんのアジトの近く)に向かう予定です】
【お宝沼の化け物(?)を退治?調査?する予定です】

131 :飛陽 ◆fLgCCzruk2 :2010/10/12(火) 19:33:37 0
結果から言えば作戦は概ね成功であった。後続部隊の現着の遅れと雨の予想外の
弱さに想定したいた程の被害を出すことはできなかったが村人に被害は出ず、また
自分の宣伝もできた。

食料の買出しに来ていた敵部隊が既に届けられていた解毒剤を村人から毒の話を聞き
入手してしまったのだ。おかげで被害が押さえられてしまった。
しかし敵陣に単機で突撃し一人も撃破せずに生還することで自分の能力は存分に見せつけた。

敵の部隊長に付けられた傷は浅くなかったが飛陽は満足して帰路に着いた。
「くっそー、あの機体今度あったら必ず鹵獲してやるでござる。その前に技術班にいくらか再現
させるんでござるが、あーもしもし?飛陽でござる。これから帰るでござる」

二両目のダメージがひどかったが帰るまでには保つだろう。今度はアジト側からの報告を聞く。
「え!そう、本当に!?注文あったでござるか!良かったでござるなあ、前は耕作車仕様のしか
売れなかったでござるから嬉しいでござるなあ〜。それで数とタイプは、うん、うん無印?ああ、
自分のところで改造してみたいって、支払いは?あ、下取り。わかったでござる。じゃまたあとで」
近隣の両国の兵士に袖の下を渡しておくこと忘れないようにと釘を刺してから回線を切る。

「これからでござるな!ジェニファー!」
先程の部隊から注文を受け意気揚々と引き上げる。ここまで長かった、精霊機も人々に知られて
久しく味方の機体を今度は敵が使うというのも最早珍しい光景ではない。逆もまた然りだ。自分は
憎まれても機体はちゃんと見て貰える。いい時代になったものだと飛陽は思った。

「今度は遠征に出ていたジャンク屋部隊も戻ってくるでござるから、新しいバリエーションも
考えないといけないでござるな。よし決めたでござる」

そう言うとここから距離が近い沼地へと向かうことにする。底なし沼を改造して作ったもう一つの兵器工場。
沼の底へ沈みそこから地下工場プラントへ行きそこでボディの換装と報告をする。

「これで相手さんの量産機が丸々一機手に入るでござる。無茶して見るもんでござるな」
ボコボコの体を走らせながら飛陽は地上を走っていく。自分の手配書が出回っている事など露も知らずに。

【飛陽 沼地のプラントへ帰還予定 詰所に被害 村人に犠牲者なし】

132 :フィリップ ◆i3/u6CmHbc :2010/10/12(火) 23:06:11 0
フィリップの合流したアレス将軍率いる第3軍団は、帝国領内の反帝国武装勢力の殲滅を主な任務とする。
その特性から軍団内部の中核部隊は全て生粋のティルネラント人で占められ、属国の者には彼らの梅雨祓い程度の役割しか与えられていない。
それ故、第3軍団に配属された属国出身者は身分が低い者が多い。
そのような背景をもつ属国出身者の中では、小領とはいえ、領主の息子であるフィリップの身分は際立って高いものといえた。
だから、アレス将軍が彼を属国部隊との連絡将校として司令部に置いたのは間違った判断ではなかった。
もしも、フィリップがスパイでなかったならば。

フィリップはその日、偵察に出ていた属国部隊の者から、飛陽一味のアジトがストロベリーフィールズ近くの沼地にあるとの報告を受けた。
フィリップは、その報告をすぐ司令部に上げるとともに、ピアスを通して、セラに転送した。
【フィリップ、アレス将軍に合流、司令部附きの連絡将校に】
【セラに飛陽のアジトの情報を転送】

133 :エルトダウン ◆iGrjUqKhz2 :2010/10/13(水) 00:05:33 P
「――ストロベリーフィールズですか?」

アルヴェリヒから告げられた地名に驚愕するエルトダウン。
ストロベリーフィールズ。
辺境…というほどでもないがASLが必要とする様な場所ではないハズだ。

[ああ、ストロベリーフィールズだ。
あそこの近くにはかつて西部支局が建設した研究施設がある。
そこから精霊機についての研究結果をまとめたレポートを取ってきてほしい]

「レポート?昔の西部支局も…なんて体たらくだ。レポートなんて置いてくるもんじゃあないでしょう」

当然だ。レポートとは研究者にとって非常に重要なもの。
全ての研究結果がそれに詰まっているのだ。放置するなど考えられない。

"そーいうなよ、エルトダウン。あそこはあそこでえらい穴ボコだらけだそうだぜェ?さっき、サイアニスの姉ちゃんが言ってた"

そう。ストロベリーフィールズの付近では多くの争いが繰り広げられた。
ASLに関する戦闘だけでも4、5回は行った。やはり反ASL派との戦闘だ。

そして最終的にASLは施設を放棄。
その際にレポートや機材などが施設の奥深くで置き去りにされてしまったのだ。

「ン…了解っと。ストロベリーフィールズですね。ホロウ・クロウラーで出ます。

…それと、N2-ALWプランについては?」

エルトダウンが一番気になっていたことだ。
もしかすると対峙するかもしれないのだ。

[一昨日までは連日情報が送られてきていた。しかし、昨日から途端に…
フム…応用と発展か。東の連中が考えそうなことだ。

一応、調べさせてはいるが被験者も未だ不明。分かった事といえば研究主任くらいか。
研究主任、及び計画立案者はアキラ・サエザキ。君とも一度面識があるようだが?]

面識がある。そう言われしばらく記憶を辿るエルトダウン。

「サエザキ…?覚えてませんね。まあ、とりあえず今後も何かあればよろしく頼みますよ。アルヴェリヒ艦長」

と、そういってファラーシアを銀時計に押し込むと鉄の翼のブリッジを後にした。

【ストロベリーフィールズへ出撃予定】

134 :セラ ◆eqAqXE3VMc :2010/10/13(水) 07:35:22 O
うす暗い農道をセラとアロルは禿山にむかい精霊機を駆る。広々とした牧草地は、まだ朝の静けさにつつまれている。
やがて、だんだんと岩場が姿をあらわしてきて遠くに見えていた禿山が近づいてきた。
進行方向には延々と大岩壁の連なる山腹が見えていて、左側の岩壁の下を覗き込むように下を見ると
一番下の谷間に亀裂が一本走っているのが目に入った。アロルは感嘆の声をあげる。

「姫様!谷の下を見て下さい!あの地平線まで続く亀裂を!古の時代に神々との戦いで大地につけられた傷跡だそうですよ!」

「え〜。嘘でしょ…。アルタイテンもびっくりじゃん!この土地ってASLとアンチASLの激しい戦闘もあったって聞くし、昔っから、いわくつきの土地なのかしらね…」

ストロベリーフィールズの街は小さく霞んで見えた。辺りにはまるでお化けのような枯木が生え荒れた大地の所々には大小様々な形の沼が点在している。

突如セラのピアスが輝く

「ふむ。フィリップから連絡が入ったわ!禿山の沼付近に飛陽のアジトがあるそうよ!送信されてきたデータによると、この近くかも」

「え!!姫様!!あれは?飛陽では!?」

「へ!?」

セラは遥か遠くに、よたよたと煙りをはきながら近づいて来る飛陽を発見する。機体は著しく損傷しているようだ。

「どんぴしゃ。怖いくらい」

セラたちは岩場の裏に機体を隠し飛陽の動向を伺いながらピアスをつついて送信する。

「ありがとうフィリップ。けしてムリはしないように。ご武運をお祈りしています」

両手を組んでフィリップのスパイ作戦の成功を祈るセラ。

「ちょっと予定変更ね。人探しと化け物退治とお宝探索は後回し。…極悪飛陽のやつ、アジトに帰るつもり?あいつってどんな所に住んでるの?」

【セラ。禿山の沼に到着。岩場に隠れ飛陽を観察。沼はあちこちに複数あります】

135 :飛陽 ◆fLgCCzruk2 :2010/10/14(木) 23:28:10 0
「お帰りなさい飛陽さん、今日は一番奥の沼に入ってください」
アジト近くの湿地帯、沼地手前で手負いの飛陽はドックに入るための支持を待つ。

管理と機密保持の為に沼地のドックに鉱山地下基地を経由せずに入るには当日通じる
沼に沈む必要があり割と緊急時に使用するのでその機会は少なめで今日来たのも単純に
気持ちが高揚していたからである。

「ああ、一番奥でござるかあ。一旦落ちた後戻らないとでござる。まあ仕方ないでござるが」
そう言って鉱山から一番離れた沼に3両毎浸かりずぶずぶと沈んでいく。

「損傷がひどいので機体の洗浄よりも破棄する方が良いかもわからんでござる」
「あ、前のボディ治ってますから、すぐにデータ移植しますか?」

基地内の管制官に頼んで「換装」の準備に入る。その間に他のスタッフがそういえばっと
漏らす。自分の手配書が出回り随分と大げさに書かれているそうだ。

「失礼でござるなあ。こう見えて色々頑張っているのに......念のため確認しておくでござるか
もしかしたら誰か乗り込んでくるか知れないし。拙者達の心得確認!」
沼の底へと沈んでいきながら通信先から声が聞こえてくるがその途中で一番ダメージが大きかった
2両目が機能を停止する。やはり保たなかったか。

「一つ、侵入者が来たら武装解除を全部所に通達!二つ、即時全員撤収!三つ、ほとぼりが冷めたら帰る事!」
全員から元気のいい返事が聞こえてきて飛陽は満足する。これなら何時誰に襲われても概ね平気だろう。

「山頂の緑豊かなアジトが懐かしいでござる」「僕らもですよ」
談笑しながら沼の底へ落ちると1両目と3両目がドックを目指して進む。2両目は後で回収して修理が
できなければ破棄するように言っておいたので心配はない。これからの事を考えると一度意識を
落とすのがもったいなく思えて来てしまう。飛陽は上機嫌だった。

【飛陽 沼に沈んでドック行きボディを以前のものに換装中 尾行に気づかず】

136 :セラ ◆eqAqXE3VMc :2010/10/17(日) 19:20:08 O
沼の底にズブズブと沈んでいく飛陽を観察しながらセラとアロルは驚愕していた。


「え〜…入水自殺?」

「ま、まさか、そんなのありえないですよ!きっとお宝です。
お宝沼のお宝探しをしてるんですよ!!」

「ふえっ!あの悪党め!お宝を横取りする気!?許せないっ!!」

二人は慌てて沼の底の調査を開始した。
沼の底は沈澱した粘度の強い泥でドロドロしており、
舞い上がった泥で視界が悪い。

「見て!飛陽よ!!」
セラは機能を停止した2両目を発見する。

ボブーンッ!!

「うわあ〜!!」「きゃああ〜!!」

2両目は損傷が思ったより激しかったらしく回りの泥水を蒸発させながら水中で爆発した。

「今の爆発はなに〜!?お宝沼の化け物!?化け物の仕業なの!?」

泥けむりと、爆発で発生した気泡で水中の視界はすこぶる悪い。

すると泥けむりに紛れて二人の機体に巻き付くように、長く巨大な物体が出現する。

「んっ!!きゃあぁあぁあぁ!!」

巻き付かれた機体に謎の怪物(?)から電流が流されセラとアロルは気絶してしまった。

137 :セラ ◆eqAqXE3VMc :2010/10/17(日) 19:21:03 O
目が覚めて数秒してからセラは気がついた。部屋が甘いジャムの匂いで充満していることに。

「この…ジャムの匂いって…」

白っぽく濁った意識の表層でセラは、この匂いに覚えがあることを実感する。
濃厚でいて気高さを感じさせるジャムの香り。
ストロベリーフィールズの酒場で食べたジャムトーストと同じ香り。

「気がついたかい?」

ベッドから身を起こしたセラの目の前には、捜索を依頼された占い師の兄がいた。

「あっあなたは!!」

セラの表情に男は察したらしく答える。

「ああ。ストロベリーフィールズのジェームズさ」

そう。一年前にお宝沼のお宝探しに出かけ、化け物に襲われて行方不明になったとされた男、ジェームズ。
彼の後ろの台所では大鍋に入れられた苺がグツグツと煮られていて
壁には「苺王」と漢字で書かれた掛け軸が垂れ下がっている。
勿論セラには漢字は読めない。

138 :セラ ◆eqAqXE3VMc :2010/10/17(日) 19:22:04 O
「お帰り!飛陽ッ!」

窓の外で飛陽の名を呼ぶ声が聞こえた。セラは窓に飛び付いて外を見る。

驚いたことに飛陽のまわりを嬉しそうに沢山の子供がとり囲んで歩いている。

「おい飛陽!この家に女がいるんだぜ。精霊機乗りの女。あっちの建物には精霊機乗りの男がいるんだぜっ」

子供が言っているのは多分セラとアロルのことだろう。

お宝沼の化け物に襲われて気絶していた所を飛陽のアジトの者に助けられた。
そんなところなのだろうか。

「ほら、見ろよ!」
突然子供が窓を開ける。なんとデリカシーのない子供なのだろう。外から窓を開けられたセラは飛陽と対面を果たす。

「こ、こんにちは」と引き攣った笑顔のセラ。

すると後ろからジェームズがこう言った。

「飛陽くん。この子(セラ)、…君のお嫁さんにどうだい?」
「へ…?」

セラの目は豆粒みたいになり全身が真っ白になった。

【セラ=沼の化け物(?)に襲われて気絶後に隠しアジトで飛陽さんと接触】
(村人の一部に誘致した人にたいして産めよ増やせよ派がいるのかも…という設定)

139 :フィリップ ◆i3/u6CmHbc :2010/10/18(月) 01:11:21 0
【飛揚のアジトに通じる坑道】
暗い行動をシュバリエを戦闘に、進む帝国軍歩兵部隊。

ネージュ「それにしても酷いものだ。敵の拠点攻略にこんな手段を使うとは」
シュバリエの後ろには歩兵を満載したトロッコが数機の旧式精霊機に引かれて続いている。
フィリップ「ティルネラント貴族にとって、、属国の人間など、所詮使い捨ての駒にすぎないのかもな」
彼らが今進んでいる坑道にしても、発見されるまでには、属国から徴用された多くの鉱山作業員の犠牲を必要としたのだから。

【王国軍の歩兵と精霊機の混成部隊が部隊が坑道から飛陽のアジトに侵入】

140 :フィリップ ◆i3/u6CmHbc :2010/10/18(月) 01:13:57 0
重大な間違いがあったので、訂正します。
×シュバリエを戦闘に
○シュバリエを先頭に

141 :飛陽 ◆fLgCCzruk2 :2010/10/18(月) 17:42:27 0
>「こ、こんにちは」「はい、こんにちはでござる」
表情が追いつかないようで少女は挨拶を入れてくる。かなりの上玉だ、これなら
人買いに売り飛ばせれば住民の2週間分の食い扶持くらいにはなるだろう。

「なーなー飛陽ー、あっちの機体と勝負してみろってー、今洗ってるけどすっげーカッコいいじゃん!」
「はいはい拙者は忙しいんでござるよ、またこんなとこまで来て、さっさと街戻るでござる。
近々久しぶりにお客が来るんだから、カッコつかないでござる」「えー!」

ぶうぶう文句をいう子供たちを返してもう一度セラを見る。
ボディを戻して目が覚めて見れば何やら騒がしく話を聞くにどうやら尾行されていたようだ。
少々浮かれ過ぎていた。幸い沼のヌシのお陰で今こうして優位に立てているのだが

>飛陽くん。この子、…君のお嫁さんにどうだい?
「黙れジェームズ、本来なら誰であれここを突き止められた以上『武器持ち』はすぐ処分するのが
決まりだ。わざわざ庇い立てするためにあの子たちを呼んだのも貴様だな。ここに来た人間で
貴様だけが未だに人間様なんて考えを持っている。あの時助けたのは完全に失策だった」

それまでのござるの口調を剥ぎとり声も重たく歪ませて吐き捨てる。飛陽はこの男が大嫌いだった、
ジェニファーの恩恵抜きで学習した数少ない感情の一つがこの嫌悪だった。根拠もなく余裕ヅラをし
能があるわけでもないのに自分を見下して来る。そのくせ住民達には何故か受けが良い。飛陽は
この男が大嫌いだった。

「・・・連れないな、そんな事じゃ誰も付いて来てくれないぞ?」
やはりここで潰そうと思った矢先にその報せは入った。

142 :飛陽 ◆fLgCCzruk2 :2010/10/18(月) 18:12:59 0
「・・・侵入者でござるな、拙者は他の者達と応対に出てくるでござる。それとそこの娘、お主達の機体は
落ちてきたドックで今は洗浄中でござる。相手は後でしてやるでござるが、お主達が義理を覚える生き物なら、
最悪の場合住民の非難を助けて欲しいでござる。話は後で聞いてやるでござるよ。では!」

ゆっくりと車体を動かすと二人から遠ざかっていく。ジェームズの始末は後回しだ。
飛陽はジェニファーを通してアジトの中では人の出入は概ね把握できる。それこそ入り口から出口まで
ジェ二ファーの蒔いた種が鉱山中に根を張っている為会話は筒抜けである。他の者には黙っているが
アジトはまさに飛陽の腹の中と言っても過言ではない。

(入り口からじゃない、妙な場所から入ってきたでござる。強引にここを掘り当てたんでござろうか)
耳を澄ませば侵入者の会話が聞こえてくる。

「確かに賊はいそうだけどよう、今更俺たちなんかいるのかよ。」
「精霊機だけでいいような気もするな、まあそれもない俺たちの人員整理なのかもな」
「そこ、私語は慎め!」

・・・・・・どうやら士気は低いようだ。精霊機も何機かいるようだが問題はそこではない。歩兵がいる。これが一番重要だ。
何とかして精霊機と分断さえしてしまえば、この手の兵士はあっさり篭絡できる。

「管制官、聞こえるでござるか!」「はい、どうかしましたか」「侵入者でござる、数は不明ながら歩兵がいる。住民に
非難通達と分断の用意をするでござる」「はっはい了解です!、でも分断って?」

短い会話の応酬をしながら飛陽相手を目指して走る。まだ距離がある。
「修理機のリペイドに乗って修理作業のフリをするんでござる、問答無用ならどうにもならんでござるが
降伏を勧めてきたなら時間稼ぎができるでござる。それと食料と雇っていた娼館のねーちゃん達を
用意するでござる!最悪街まで通して降伏すれば相手は降りてくるでござる。そこが狙い目でござるよ」

そこまで言って通信を切る。王国軍側の前線兵士は概ねコレで引き込むことができた。入り組んだ鉱山内で
もしかすれば隊が分かれるかも知れない。基地に務める者は他に行き場の無いものやここに根を張った者ばかりだ
躊躇うものはいないだろうが、実力はどうかといえば不安しか無い。飛陽は久しぶりに不安を思い出していた。

【飛影 ボディがもどる フィリップの元へ急行、セラたちを放置】
【アジト内の人員 避難の時間稼ぎと降伏の姿勢、一部歩兵を離反させるための準備】

143 :セラ ◆eqAqXE3VMc :2010/10/19(火) 18:15:18 O
ごつごつと連なる険しい禿山の頂の一角に飛陽のアジトはあった。

>「はい、こんにちはでござる」
「……」
セラは飛陽の車体から、ひょっこりと人の顔でも出て来るものだろうと想起していたのだけれど
その気配はない。それもそうなのだ。飛陽は飛陽そのものなのだから。

「彼は疑似人格搭載の車両型精霊機なのさ」

ジェームズがこっそり耳打ちする。なるほど、精霊機の根源は太古から存在したと伝えられているけど、その本流から分岐し独自性の進化を期待されながらも
不運に歴史の闇に消えた、さながら亜種とも言える代物。それが飛陽なのだろう。
ASLのような華々しい研究機関から産まれた最新鋭の精霊機とは
対極の位置に鎮座しているとも言える異形の精霊機。

話を聞けばジェームズもセラたち同様、飛陽たちのアジトの者に助けられたらしい。

「あのー私たち…」

セラがジェームズを街に連れ戻したいと言う旨を伝えようとしたところ緊急の報せがはいる。

>「・・・侵入者でござるな、拙者は他の者達と応対に出てくるでござる。それとそこの娘、お主達の機体は
>落ちてきたドックで今は洗浄中でござる。相手は後でしてやるでござるが、お主達が義理を覚える生き物なら、
>最悪の場合住民の非難を助けて欲しいでござる。話は後で聞いてやるでござるよ。では!」

「あ…えっ!?」

セラがまごついているとジェームズも飛陽同様慌ただしくその場をあとにする。

「すまないが鍋の火を消しておいてくれないか。私はあの子たちを守らねばならないからね。
兵士たちに踏み潰されてぐちゃぐちゃにされてしまったらかなわんからな!」

「ちょっと!待って!」
ジェームズはセラの制止も聞かずに走っていってしまった。

「もうっ!侵入者ってなんなのよ?いちおう助けてもらった恩もあるから今回だけは手をかしてあげるけど!!」

数分後。セラは洗浄された己が光の精霊機セラフィーを起動させる。
アロルは怪物から受けた電撃のショックで今だに眠っているようだ。

「セラフィーいくわよ!!」
光の翼を推進力に変えドックから飛び出したセラフィー。

「敵はまだ!?」
背中に光を纏った精霊機はアジトの空で腕組みをしながら仁王立ちをしている。

【セラ。迷惑かえりみずアジトの空中でぷかぷか仁王立ち。侵入者がフィリップさんなことは、まだ知りません】

144 :フィリップ ◆i3/u6CmHbc :2010/10/19(火) 23:22:13 0
>飛陽氏
【王国軍歩兵部隊】
アジト内に突入した兵士たちは、全抵抗を受けることなく、アジトとそれに付随する街を制圧することに成功した。
街の住人たちは、占領者たちに対して従順であり、なんでも惜しみなく差し出した。
特に娼婦たちの勝者に媚び、好意を得ようとする態度は、兵士たちの警戒を解くのに効果があった。
「自分たちの女さえ守れぬ者が、武装した兵士に挑む気概を持っているはずがない」と彼らには思われたのである。
こうなると、もともと士気の低かった彼らから戦意が失われるのは早かった。
侵入開始から一時間ほどで、歩兵部隊は無力化されたのである。

【王国軍歩兵部隊、街をあげての降伏に気をよくし、戦意を喪失】

145 :フィリップ ◆i3/u6CmHbc :2010/10/20(水) 00:11:41 0
>セラ氏
フィリップとしては、歩兵部隊が秩序を失い、無力化していくのを座視することはできない。
彼は兵士たちに呼びかけて、部隊の士気を維持しようとしたが、所詮、焼け石に水であった。

秩序を失った兵士たちの矛先は、日頃彼らを抑圧していたティルネラント人士官にも向けられた。
部隊内の各所で、兵士たちに暴行されるティルネランド人士官のの姿が見られたが、それは精霊機部隊でさえ例外ではなかった。

「これはどういうことだ!」
自分に銃口を向けてくる配下のパイロット達に対してフィリップはト問うた。
その問いは、言葉ではなく、銃撃によって応えられた。

数の上では劣勢なフィリップは一旦上空へ逃れようと、機体を飛翔させた。
そこにはセラのイグニスもいるのだが、部下たちからの銃撃に加えて、アジトの対空砲まで相手にしているフィリップにはそれに気づく余裕などはない。

【フィリップ、反乱した部下に追われて、アジト上空へ】
【セラのイグニスには気付かず】

146 :飛陽 ◆fLgCCzruk2 :2010/10/22(金) 21:50:14 0
「・・・ホントよく考えつくよねえ、こういう事」
「貴重な労働力でござる、歩兵ともなれば山肌開墾させるのにもってこいでござるよ」
いつの間にか追いついていたジェームズに答えるとエレベーターに乗り街へ急ぐ、セラはといえば機体ごと先に飛んでいった。

「後は仕上げればいいだけでござる、ただ新型で空戦となれば単独で相当やるはずでござる、手伝ってもらうでござるからな」
口調を戻してジェームズに指令を出すが彼はどこ吹く風だ。戦闘用に改修した修理機でこちらと並走している。
ずんぐりとした卵のような機体には簡素なバズーカが取り付けられていた。修理機だったこの機体「リペイド」は
ジェームズが勝手に改修したもので飛陽の系列機を除けばこのアジトで戦力呼ばわりできるのはこれぐらいである。

「コイツでできそうなのは女性の盾替わりくらいだよ、それでいいのかい」
「雇ったおねえちゃん達を無事に返さないとこの作戦は二度とできないでござる、信用あってこそできる作戦
なんでござるからね!」

そういいながら街へ出るためのエレベーターに乗る二機、虫のような車両と黒い卵のような機体、お粗末ながらも
漸く現場にたどり着く。セラはと言えば侵入口と思わしき横穴から外に出た後二人を追い越して空を飛んでいってしまうと
警戒体勢にとっていた。

(古臭い見た目の割にあの性能、中身だけ取り替えた類でござるか。もしかしたら外に出さない方が、
あるいは良かったのか知れないでござるな)
ジェニファーの様子がおかしい事を考えればどちらかがババである事は想像出来る。色が悪くなっているのに
花を付けて厚みを増している。普段よりも明らかに何かを警戒しているようだった。

やがて山頂へと辿りつくとそこには予想通りの光景が目に入って来た。

>「これはどういうことだ!」
使い捨ての敗残兵と貴重な本国の兵士、装備の差もあり数は当然使い捨てから多く登用される。だがそれは
裏を返せば連帯感が異なる者たちがその場に居合わせるという事でもある。自分の生から真っ先に諦める
兵士たちがこの全面降伏と未曾有の好待遇に舞い上がらないはずがなかった。

居心地よく安穏と暮らせる場、それを目の前に差し出して本音を引き出してやれば腹の中の澱は堰を切ったように
濁流の如く溢れ出す。士官から強奪したらしい旧式の精霊機で攻撃をする者も出始めた。

(故人曰く『兵を得んとすればまず餌をやれ』、全く以てイイ言葉でござる・・・)

「大成功だな、それじゃ後宜しくね」「こっちのセリフでござる」
数は多くても所詮は歩兵だ、新型の巨人を前にいつまでも気勢を張り上げておけるものでもない。
こちらに引きこむには彼らの遺志で、はっきりと、自分たちの言葉で言わせてやらなければいけない。

147 :飛陽 ◆fLgCCzruk2 :2010/10/22(金) 21:53:15 0
できる限り優しく、自然に、それが自分たちの意思だと間違えられるように。
「皆様ー、お取り込み中の所申し訳ないでござるが拙者このアジトの責任者の飛陽と言うものでござる」
大声で割って入ればその言葉に視線が集まる。

「なんだお前は、今更出てきやがって!ここはもう俺たちの街なんだよ!おとなしくしてやがれ!」
その言葉に今度は自分の方に銃弾が飛んでくるが一向に構わず続きを言う。
「ええ、そうでござるよ、この街はもうお主達の、そして拙者達の街でござるよ」

聞く者全員に、静かに静かに淡々と言葉を紡いで噛み締めさせてやる

「お主達はこれまでよく戦ってきたのでござろう、だが国は敗れたばかりにやりたくもない戦いに毎日駆り出され
明日をも知れぬ身、他に道はなく戦場に居続ける日々にうんざりしてたのでござろう。お主達はティルネラント
王国軍ではござらん、拙者達の仲間でござる。だからこそ今憎き王国軍と戦っているのでござる。
もし良ければこのまま残って街を盛り立て欲しいのでござるが」

その露骨な言葉に周囲に警戒と動揺が走る。それでいい、あっさりと信じて飛びつかれては困る。

「もちろんいきなりで警戒するのは分かるでござる。しかしここは働き手が足りていないのは事実だし、
皆似たような境遇の者ばかりの場所なんでござるよ。居てもらえれば心強いのでござる。それにここら一帯の
国境線は両国に渡って買収済みなんでござるよ実は。おかげで平和で状況も好調そのもの!すんなり
帝国側にだっていけちゃうでござる!なんだったら拙者が一走り言ってあなたの故郷のあの人を連れてくる事だって
できるんでござるよ!」

徐々に動揺の色が変わり始める。戸惑いを残しつつも何人かは目の色が完全に変わっている、やはり
生き汚くならざるを得ない訳あり物件があった、こういう者を抱き込めば流れは最早こっちのものだ。

「もちろん否と答えても拙者達は追わないし、責めないでござる。お主達がこの街を自分の街
だと言うならそれもいいでござろう、但しそれは自分の街の人を守れたならの話でござる」

今度は彼らの後ろでジェームズが避難させていた女たちに視線が移る。そして・・・

「俺、やるぞ!」「俺もだ!」「辞められるんなら辞めてやる!」「俺たちは王国軍なんかじゃないんだ!」
口々に離反の言葉を吠える兵士たちに内心でほくそ笑みながら飛陽はその背中をそっと一押しした。

「さあ、後はあの残った王国軍を片付けて、自分たちの平和な暮らしを取り戻すでんござるよ!」「おおー!」
士気も高まった事を確認すると最後の仕上げとばかりに上空の機体へと砲塔を向けた。

【飛陽 フィリップと対峙 王国軍歩兵 造反 一部機体の強奪 士気増大】

148 :セラ ◆eqAqXE3VMc :2010/10/23(土) 07:32:01 O
「モォ〜モォ〜」数え切れないほどの牛が緑の丘で草をはみ、牧場犬のセシリアがワンワンと吠える。
牛飼いの娘ペルは遠くに見えるストロベリーフィールズの街に、蟻のように群がるアルス将軍の王国軍を見つめていた。
その遥か向こうには禿山がそびえ立つ。

毒撒き事件の一件で再び両軍の緊張は高まり、反王国勢力である義勇軍は
奪還したロンデニオンに戦力を結集しつつある。

アルス将軍が何を目的としているのかやストロベリーフィールズに駐屯した理由は依然不明だった。

ただ街の中心地には我が物顔に精霊機が立ち並び、その主たちは収穫祭で彩られた街へと足を運んでいる。
とりあえずは王国の兵士たちにとっては、つかの間の休息になっていることだろう。

一部の者たちを除いて…。



149 :セラ ◆eqAqXE3VMc :2010/10/23(土) 07:33:04 O
−−飛陽のアジト−−

セラが異常に気がつくまでには数分を要した。

「生身の歩兵が侵入してたの!?」
機体の水晶モニターで街中を拡大したセラは女たちに骨抜きにされる兵士たちや
自軍に衝突している兵士たちを確認する。

「え、どうして…?」

セラが静観していると歩兵たちの意識は飛陽の巧みな口車によって一本の道へと誘導され反乱へと昇華された。

フィリップと同行していたシュバリエ級量産機(>>119)の搭乗者イサーム・ガラムは
裏切り者たちの銃弾の飛び交うなか、舌打ちをしながら街の教会の屋根に精霊機を飛び移す。

「フン。フィリップの坊ちゃんがどれほどの良家の出かは知らないが、結局は統括できなかったということ。ただそれだけのこと。
きれいごとだけでは人心は掌握出来ぬ…。ただこれ以上、我等士官が凌辱されることだけは許されぬ。
軍法違反は万死に値するものだ。裏切り者はその性根同様、毒の力で肉ごと魂まで腐らせてやろう」
イサームの表情はこの反乱を予期し自ら欲していた、と言う感じに伺えた。
醜い笑みを浮かべながら精霊機を操ると、シュバリエ級量産機から毒の風が緩やかに吹き出し、
教会の周辺の畑をゆっくりと枯らしていく。教会を取り囲みシュバリエに銃撃していた歩兵たちは
枯れていく畑と精霊機の歩兵に対しての本気の攻撃に恐怖し逃走した。

「あの精霊機!シシミアの畑を枯らしているのか!?」

激昂したジェームズがリペイドの簡易バズーカで教会の屋根のシュバリエを砲撃すると
シュバリエ量産機は毒の風を纏ったまま飛翔する。
避けられた簡易バズーカの弾は遠くの岩壁を砕いていただけに過ぎなかった。

「シュバリエの毒の風だあ!!退避しろー!!」一部の歩兵たちが逃げ惑う。

「くっくくくく!!地べたをはいずり回る小虫どもがっ!!死ねぇ!!」

シュバリエが低空飛行を敢行すると精霊力を帯びた毒の風が機体の通り道に吹き荒れ
毒の風を受けた町並みが色を失いながら灰塵と化していく。

150 :セラ ◆eqAqXE3VMc :2010/10/23(土) 07:34:03 O
「よけたよ!」

「あいつ速えーな!」

「お兄ちゃんおしっこー」

「あとにしろよ!」

「あっ!また、飛んできた!」

対空砲でフィリップを狙っていた街のわんぱく子供たちは無差別に毒攻撃をしているイサームのシュバリエに攻撃目標をかえている。
子供たちの半数は戦災孤児であったために精霊機に対しては、悪いものというイメージが強いのだろう。
それにこの街の子供たちは大人に大人しくしていろと言われて大人しくする子供たちではなかった。


「精霊機乗りのお姉ちゃーん!そっちにも行ったよー気をつけてー!!」

「がんばれお姉ちゃーん!やっつけてー!」


セラは子供たちの対空砲撃から抜け出た一機の精霊機に気がつく。

「侵入者って王国軍?それもアルス将軍の紋章つきの!」

それはフィリップの駆るシュバリエ級精霊機の飛行型。
お互いに出会った時の機体とは異なっているため二人は気がつかない。

「…フィリップは飛陽のアジトの場所をある程度知っていたから…。
もしかして攻めて来たこの王国軍のなかにはフィリップがいるの!?」

セラは念動ピアスに指を当て念話を始める。

「フィリップ。聞こえますか?セラです。あなたはどこにいますか?アジトの上空に飛んでいる精霊機は私です。
それとあなたが飛陽討伐に来たというなら出来る限り温情のある形でことを進めていただきたいのです。
あなたにも大義がありましょう。しかし私にもここの者たちに恩義があるのです」

念話を終え一息入れたセラは飛陽の砲塔が空に向いていることに息をのむ。

「狙っている!?」怪訝な表情を見せるセラ。

「聞こえるか!?フィリップ!お前も風を使え!!みな殺しにするぞ!!」
イサームは鷹のように目をギラつかせながら街に毒を撒き散らしている。

【フィリップの同僚イサームのシュバリエ級量産機が飛行しながら無差別の毒攻撃中】

151 :フィリップ ◆i3/u6CmHbc :2010/10/24(日) 23:05:33 0
>飛陽氏
反乱軍の中でも比較的冷静な者たちは、この基地には飛陽以外まともな精霊機がいないことに気づいていた。
それに対して彼らは旧式とはいえ数機の精霊機を有している。
ならば、飛陽さえ倒してしまえば、この街は完全に自分たちのものになる。

このことに思い至った者たちのなかに、士官から強奪した精霊機を駆る男がいた。
彼は、飛陽の注意が上空に向かったのを見ると、飛陽を倒すべく、攻撃を仕掛けた。

【反乱軍精霊機のうちの一機が飛陽に攻撃を仕掛ける】

152 :フィリップ ◆i3/u6CmHbc :2010/10/24(日) 23:54:07 0
>セラ氏
>「フィリップ。聞こえますか?セラです。あなたはどこにいますか?アジトの上空に飛んでいる精霊機は私です。
それとあなたが飛陽討伐に来たというなら出来る限り温情のある形でことを進めていただきたいのです。
あなたにも大義がありましょう。しかし私にもここの者たちに恩義があるのです」

ピアスを通して突然届いたセラの言葉はにわかには信じ難いものだった。
だが、その声は地下道で聴いたものと同じ、柔らかくも、決して力強さを失わない声だった。
だから、フィリップはそう遠くない場所にいるであろう相手が間違いなくセラ王女本人であるという不思議な確信が持った。

「殿下とこのようなかたちで再びお会いすることになるとは思ってもいませんでした。
私は殿下と同じくアジトの上空にいます。
私の機体は青い航空用精霊機「シュバリエ」です。
私の他にも同型機がこの戦域にいますが、私の機体には指揮官機を示す徽章があるので、すぐ見つけることができるはずです。
こちらの詳しい状況は殿下との合流後にお話しますので、殿下の精霊機の特徴を教えていただけますか?」

街を破壊しているイサームはティルネラント貴族出身の士官であった。
そしてティルネラント軍の軍紀では貴族将校を処断できるのは、同じ貴族出身の上官を除けば王族だけである。
フィリップはこのような理由から、イサームに対する対応より、セラとの合流を優先したのである。

【フィリップ、セラとの合流を優先】
【イサームへの対応は後回し】

153 :飛陽 ◆fLgCCzruk2 :2010/10/28(木) 19:44:11 0
「貴様ぁ!それは拙者たちのウリでござる!真似するなでござる!」
辺り一面を腐らせながら飛びまわるイザームに向かって怒る飛陽、わざわざこの編成にあの兵装の機体を
配備するあたりどうやら本当に歩兵を使い捨てにするつもりだったようだ。気を取られていると
何者かに側面から攻撃を受けた。どうやら懐柔されなかった歩兵の一人がやったようだったが損傷は軽微だ。

「もらったーーー!」
(馬鹿なお利口さんが!)
なおも側面から射撃を続けようとする相手に3両目がアンカーを伸ばすとそれは足に絡みつき精霊力を奪いとって
いく。見る間に動きを鈍くした機体に向けて鉤爪を一つ飛ばしてコクピット毎潰すとイザームへと標的を変える。

「ああいう手合いはまずいでござるな、このままでは連中が目を覚ますでござる」
戦闘は行わずセラの方へ避難した隊長機らしき機体は今は放っておくことにする。戦うならまずセラとだろうと踏み
彼女の力量と出方を確認する意味でも手は出さないつもりだった。

「飛陽、まずいぞ。あいつ畑を枯らしてる。それに子ども達も出てきてしまっているみたいだ」
「あの馬鹿共め、あれほど帰れと言っておいたのに!」
変形し空戦に出ようとする直前にジェームズから通信が入る。その内容に怒りがこみ上げてくる。

「子ども達を今すぐにでも避難させないと!」
「もう襲い!あの手の奴はそんな動きを見たら真っ先に狙うでござる、こっちに引きつけたまま落とすでござるよ!」
誰かを庇おうとした矢先に奪われるのは戦場の常である。助けるならば一層迅速に敵の全滅を行わなければならない。

畑だけでなく建物も腐らせる所を見るにまともに突っ込めば自分もただでは済むまい。
だがこの手の兵器に対してジェニファー好相性といえる精霊だった。

「久々に空蝉の出番でござるよ!」
そう言って変形し空へ飛び立った直後に機体の表面を苔や蔦が次々と生え出しては覆っていく。
すっかり着膨れた機体は更に肥大化しながらイザームの機体へと接近していく。しかしその速度と言えば
飛ぶというより浮くという方が正しいほどに遅かった。

毒に煽られて身に纏った植物が次々枯れていくがそこからまた生えてきて機体を毒から守るがこちらの攻撃は
といえば空中で放つトリモチと近距離を浮遊する鉤爪、そして子どもたちとジェームズの援護射撃だけで
機動力の高い機体にしてみれば当たるほうがどうかしている。

下の方では歩兵連中もだいぶおとなしくなってしまっていたが今更引くには引けない以上問題は無いはずだった。
目下の問題は好戦的な眼前な機体と攻撃を受けた街の復興だった。しかし速度の差は歴然で防戦一方である。

(待つでござる、さっきから見ていればコイツは相手を痛ぶるように攻撃をしているでござる。ならば待て、
必ず調子に乗って接近してくる時が来るでござる。仕掛けるならその時!)

回避は容易いが攻撃を仕掛けにくいようジェームズと子ども達の間で距離を取りながら、飛陽はその機会を
待つことにした。

【飛陽 襲ってきた歩兵を撃破後に空中にてイザームに持久戦の構え】

154 :セラ ◆eqAqXE3VMc :2010/10/29(金) 23:46:10 0
>「殿下とこのようなかたちで再びお会いすることになるとは思ってもいませんでした。
>私は殿下と同じくアジトの上空にいます。
>私の機体は青い航空用精霊機「シュバリエ」です。
>私の他にも同型機がこの戦域にいますが、私の機体には指揮官機を示す徽章があるので、すぐ見つけることができるはずです。
>こちらの詳しい状況は殿下との合流後にお話しますので、殿下の精霊機の特徴を教えていただけますか?」

「やっぱりそうなのね!私からは貴方が見えているわ!」

フィリップの死角から飛び出したセラは急接近すると「落ちたフリをします」と短く囁き
シュバリエの背中にセルフィーを押し付けるようにしがみつかせ、
密着した機体を町外れの森に墜落させるべく不時着をねらう。
遠目にはセラがフィリップに体当たり攻撃を敢行し2機とも墜落したように見えることだろう。

その落下の途中。

「え!?あれは飛陽?正気なの!?」
まるで囮になるかのように空対空戦に挑む飛陽の姿をセラは目撃する。

深い影が落ちる森の中。セラは精霊機のハッチから身を乗り出す。
そして賞金稼ぎに成りすましていることと、今は身分を表に出したくないということをフィリップに伝える。
もともとの目的はメドラウト卿とアレス将軍が何者かと裏で密約を交わしているということの真相を暴くための隠密行動。
それにあのイサームクラスの精霊機乗りには、裏でどんな命令がくだされているかは推測できず不気味だった。

「ごめんなさいフィリップ…。私は飛陽の街の者に助けてもらった恩があります。
それにこの街には飛陽が必要なようです。彼を討伐して街を制圧しても、この街に未来はないでしょう。
例え街の者を皆殺しにしてティルネラント人を送り込んだとしても、そこには希望がないのです。
今の私は皇女としてイサームを抑制することはできません。でも一人の人間として彼を止めてみせます」

今の状況ではセラは飛陽側につくことを告げた。

【セラ:飛陽討伐に対して疑問視】

機体設定
機体名 セラフィー(イグ二ス同型機)
精霊力 3000
耐久力 D
運動性 S
装甲 D
武装
ダガー
短機関銃(両腕に内装)
カロリックミサイル
ホーリークルセイド(強力な圧縮砲)
光の翼
隠しブレード

(イサームの攻撃は明日書くかもしれません)

155 :セラ ◆eqAqXE3VMc :2010/10/30(土) 05:00:18 0
イサーム・ガラムは風よりも速い高速の世界の住人。
数々の戦場で、反射的に機械的に無造作に、網膜に映ったすべての敵を一瞬であの世送りにしてきた。

「ぷ…くっくっくっく…あっははははー!!」
今、高笑いする彼の網膜に映っているもの。それは空蝉へと変形し空中戦を挑んできた飛陽。

「これは何かの冗談か?赤子が手を捻ってくれと、手を差し出してきたようなものではないか!」
シュバリエは飛行船のように空に浮かぶ飛陽の周辺を悠々と旋回しつつ毒の風で攻撃している。

「あいつ飛陽のまわりを蝿みたいに飛んでる!」
「遊んでんだよ!」
「なめんな!うちおとせー!!」
シュバリエの攻撃目標は飛陽。対空砲を使用している子供たちや精霊機のジェームズもシェバリエの行動が読めていることで
狙いは付けやすい状態になってはいたものの如何せん素人に毛が生えたようなもの。撃墜など夢のまた夢だった。

「どうやら植物の精霊の加護を受けているようだな」
イサームは飛陽の周辺でしつこく旋回を続けている。吹き荒れる風は精霊の力を宿しているようだった。

「なんだかやばいぞ!飛陽くん!!」ジェームズの怒号が通信越しに響く。

なんと毒の風と混合された精霊風が飛陽の機体を包み込んでいる苔を強風で剥ぎ取り蔦をカマイタチで切り裂いているのだった。
シュバリエは旋回しつつ上昇すると飛陽の直上である台風の中心部に移動し照門を飛陽にあわせる。

「完全に破壊はしないぞ飛陽。俺があのお方に命令されたことは、お前の疑似人格システムの回収だからな」

轟音一発。シュバルツのヴァン・フュズィから飛陽に向け弾丸がとぶ。

【イサーム:毒の風+精霊風で飛陽を台風攻撃しつつ直上(台風の目)から発砲】

156 :飛陽 ◆fLgCCzruk2 :2010/10/31(日) 20:35:35 0
この山の中であれば通信は傍受できる、それは王国の機体でも帝国の機体でも変わらない。
それ故にセラの機体から盗み聞いた内容は飛陽にとっては非常に危険なものだった。
(まさか王国のお姫様だったとは、ババはこっちでござった。もしも処分していればこの先はなかったやも
知れんでござるな、ジェームズに借りが一つでござるな。しかし)

(それもこいつを落としてチャラでござるよ!)
上空にいるイサームを睨め上げる。しかしジェームズからの警告に前後して新たな攻撃を繰り出して来た
シュバリエに今の飛陽は為す術もない。蓑虫のようだった機体から次々と草木の鎧が剥ぎ取られて、毒と鎌鼬で
地金に傷を彫り込まれていく。

そして彼を弄ぶ風の頂上にいるイサームからの攻撃でついに1両目が被弾し高度を保てずに落下していく。
「大丈夫かい飛陽くん!」
慌てて助けに来ようとするも腐食と斬撃の強風に阻まれて近づけずに二の足を踏むリペイド。その間にも
残る2両が傷ついていく。だが当人からの返事は至って平静だった。

「落ち着くでござるジェームズ、拙者はもう「詰み」に入っているでござるよ」
その言葉に焦りを覚えて逆に落ち着け無くなったジェームズは語気を荒げる
「君は今の自分の状況が分らないのかい、もう君自身いくらも保たないぞ!」

「おまえさんがこの山に来て、もうじき1年になるでござるなあ、時が経つのは早いでござる。覚えているでござるか、
当時おまえさんはここに来た時に連れの連中にまんまと騙されて死にかけていた」
通信機から突然昔話が流れ始めた事にジェームズは思考が鈍くなっていくのを感じていた。

「飛陽、何を」「始めの頃は山の環境に慣れずばたばたと飽きもせずに倒れていたでござるなあ」
そこまで言われて何を言わんとしているのか、何を企んでいるのかがまだ理解できない。

「空戦をこなす機体に乗る者は違わず尋常ではない肺活量とまるで山暮らしでもしたかのような気圧への適応を
見せるでござる。現にそれほどの高度から飛行してくる者も少なくない」

「それじゃこの山の環境は彼らのハンデにはならないってことじゃないか・・・」
2両目が追撃を受けて高度を僅かに下げる。何とか3両目に煙幕を当てて台風の中に煙幕を撒くがそれも外周へと
流れてしまうが構わずに撃ち続ける。2両目の砲台に残っているはもう地雷とトリモチくらいだ。

「作用でござる、この高さが奴らのホームグラウンド、では更にその上は?」「その更に上?」
彼もまた残り少ない弾薬で援護射撃を続けつつ見上げれば、そこにはイサームのシュバリエがいるだけだ。

「山の頂上よりもっと、自分の居場所よりももっと高い所を調子にのって飛び回ってるアレのいる所は、
果たして奴のホームグラウンドって奴なんでござるかねえ」

157 :飛陽 ◆fLgCCzruk2 :2010/10/31(日) 20:39:43 0
そしてと、呟くと墜落した1両目の木砲で2両目に狙いを付ける。まだ中には使い道の無かった地雷がいくらか
残っている。爆発すると勢いだけは凄まじい撒菱が。3両目が2両目を庇うように上に位置取ると3両目の後部の
ドリルが猛回転を始めて自ら外装を捨てていく。

「そろそろ息切れするはずでござるよ、あんだけ馬鹿笑いしてたんでござるから、ジェームズ!拙者が突っ込んだら
空かさず拙者を撃つんでござるよ!」

言っていることに理解が追いつかないままに事態が進んでいく。何とか分かったことは3両目が突っ込んだら命中
如何を問わず3両目を追撃して爆破しろという事なのだろう。自分の体を安易に特攻に使えることが飛陽の
一番の強みなのかもしれなかった。

「1つ落ちたな、なら残りもとっとと落としてやらんとな。玩具で遊ぶなど士官のする事ではないからな!」
また高笑いを挙げながら照門を3両目に向ける。ドリルを回転させながら向きを変えようとしているがこれ以上高度は
出せない。その無様さに愉悦感を覚えながら引き金を引こうとしたとき。それは起こった。

「敵機照準合わせ確認!目標拙者!撃てえー!」「ままよ!」
1両目の砲台が負傷した2両目を攻撃して破壊したのだ。それだけならまだしも機体のサイズに不似合いな程の
爆発が起こり直上の3両目が「跳んで」来たのである、それもドリルをイサームへ向けて真っ直ぐに。

(さて、果たして伸るか反るか)
飛陽は自身の行く末を3両目に託して天を見上げた。

【飛陽 イサームに自身を射出 @回避した場合ジェームズのバズーカで3両目が破壊されて爆風に煽られる。
               A直撃または避けきれなかった場合は地上に落下する。】

158 :ベネディクト ◆cJRWM8Cy/viL :2010/10/31(日) 20:52:40 0
名前 ベイル・ベネディクト
年齢 ?歳(悠久の時を生きているため本人でも覚えていない)
性別 女
容姿 20代前半の見た目で、ショートボブの黒髪の端正な顔付きの美女
    だが、常に漆黒のローブを身に纏い、不気味さと妖艶さを醸し出す
体格 ややグラマラスだが、ローブのために余り見えない
性格 無感情で根暗な性分だが、興味を示した者への対応は積極的
身分 無身分流民・占い師
所属 無所属
説明 太古の昔、精霊と共存していた神秘的な部族の生き残り
    精霊兵器を擁する侵略者によって故郷を滅ぼされ、ただ一人生き残った
    肉体を変えつつ幾星霜もの時を生き延びてきたため、既に生前の姿や心はない
    感情が僅かに残る他は、侵略者に対する復讐心のみである
    神出鬼没に現れては無差別攻撃を仕掛けるため、「闇の戦場荒らし」の異名で恐れられている
    普段は旅の占い師になり済まし、旅先の街に潜伏している

機体設定
機体名 セヴェルヴァ
精霊の種類 闇の中位精霊
精霊の名前 万闇の権化(精霊自称の二つ名らしく、真名は不明)
精霊力(エネルギー) 5000
耐久力 B
運動性 A
装甲 C
武装
 ダーク・トレンチナイフ(闇のオーラを刃先に纏ったトレンチナイフ)
 ダークソウル(闇属性のエネルギーを球状にして掌から撃ち出す)
 スピリットチェーン(指先から発せられる精神エネルギーの鎖)
 デッドソウル・ブラスター(球状に凝縮した闇のエネルギー奔流を敵機にぶつける)
機体説明
 ローブに身を包んだ闇の魔法使い然とした漆黒の精霊兵器
 単独隠密行動用の精霊兵器を改造したもので、ステルス性に極めて優れている
 主に中距離から相手を牽制・撹乱し、その隙を突く戦法を得意とする
 属性エネルギーをとにかく扱うため、操者の精神損耗が激しいのが欠点
 パワーはさほどでもないため、接近戦は得意ではない
精霊説明 闇の中位精霊・万闇の権化(通称ゴンちゃん)
 自らを「万闇の権化」と名乗る、傲慢で我の強い闇の精霊
 力で言えば中位精霊程度だが、本人いわく実際は闇属性を統べる立場にある実力者らしい
 ベイルに復讐の旅をさとし、他者の肉体を乗っ取って生き永らえる禁術を教えた張本人
 実体化すると、黒騎士と形容するに相応しい荘厳な外観をしている

159 :エルトダウン(副) ◆iGrjUqKhz2 :2010/10/31(日) 21:51:05 P
ギュイィィン…ピッ!

髪の毛よりも細いほどの閃光が走る。
そしてほんの少し間を空けて、

ジジッ…グォォォンッ!

――強烈な爆発が一つ。そしてその黒煙の中に立つ"鬼"が一匹。

《ビーッ、ビーッ…研究局総合本部は非常事態宣言を発令。施設内に残っている研究員は手持ちのマニュアルに従って速やかに…》

「ルルイエ、よく聞いて。僕の行った通りに逃げるんだ。良いね?
 君はエルトダウンとセラエノーと一緒に、A8ブロックのダクトから地下水路へ。
 そこから外へ出られるはずだ。出来る限り、遠くへ逃げて。そして、この惨事を誰かに伝えてくれ」

燃え盛る炎をの中で二つの大きな影と、二つの小さな影。

『エイヴンは?アナタはどうするの…?』

一人の女と、一人の男。そして、恐らくその子供が二人。

「僕はなんとかしてアレを止めてみる。我々が、いや、僕が犯した罪だ。僕が償わなくて、どうするんだい?」

男はフッと女に笑いかけた。
ルルイエはエイヴンの手をぐっと握り締めると、二人の子供を抱え炎の中を走り抜けていった。

女は肌を黒く染めながら走る。そして男に向けて言うのだ。男には聞こえもしないのに。

『お願い、死なないと約束して…私がこの子たちを守るから。…エイヴン…』

媒体が不完全な状態での精霊生成によって引き起こされたASLの研究局一つが消し飛ぶ程の大惨事。
公には「単なる事故」として片付けられたものの、ASLはきちんとその惨事についての資料を保存していた。
その惨事はとある一人の"実に優秀な"研究員の生命と引き換えに鎮まった、とASLのデータベースは記録している。
ネフティス暦826年の事だった――

「ふむ、どうやら先客がいるようだね。これはオブザーバーとして暖かく見守る、が模範解答かな?」

"違いねェ。俺たちの目的はあくまでも19年前の研究資料を取りに行く、ってだけだぜ。エルトダウン"

機体の外からは砲撃の音や、爆発音が聞こえる。
エルトダウンは「すでに捕捉されてしまったか」と思いつつも盛り上がった土地に機体を隠した。

「どこの誰だかは知らないけども、お互い潰しあってくれるなら好都合さ。
 我々が首を突っ込むことではないからね。…もちろん、巻き込まれたなら全力で叩き潰すが…ね」

【エルトダウン、飛陽らの戦闘を傍観】

160 :セラ ◆eqAqXE3VMc :2010/11/01(月) 04:21:58 0
金属同士が衝突して発生する高い金属音が空に短く響き
弾丸を打ち込まれた飛陽の一両めは傷口から爆音と炎を吐きだしながら市街に墜落した。

「1つ落ちたな、なら残りもとっとと落としてやらんとな。玩具で遊ぶなど士官のする事ではないからな!」
ヴァン・フュズィの銃口は飛陽の三両目にゆっくりとむけられる。

「なにッ!?」

一瞬の出来事にイサームは混乱した。攻撃目標の思わぬ爆裂。
飛び交い小爆発を生む撒菱にシュバリエの機体のあちこちに搭載された小型の水晶カメラ
(人口の眼球のようなもの)が破壊され操縦席の水晶モニターに死角が生まれる。

「小細工を!!」
潰された複数の小型の水晶カメラは装甲内に収納されると予備である水晶体が内部で入れ替わり
ギョロギョロと人口の眼球が再び飛び出し、まばたきの如く赤く点滅しながら操縦席の水晶モニターを復元させる。
この機能はイサーム専用のシュバルツにカスタマイズされて搭載された機能であり機体の死角を完全に消失させるために追加装備されていたものだ。

しかし再起動の一瞬をついてモニターには信じられない光景が映る。爆風の波に乗り突貫してくる飛陽とその先端のドリル。

「なにいいいいッ!!」
不意の出来事にイサームは思わずシュバルツの右足を突き上げドリルの盾にする。
もちろん右足は回転するドリルをうけ、空に紙くずのように装甲をばら撒きながら四散していく。

「くっ!!こいつ!!な…なんだ?はぁッはあ…息苦しいぞ…。それに…シュバルツの出力がおちる!!なぜだ!?なぜだッあ!?」
イサームは生まれて初めての劣勢に思考を鈍らせつつあった。

残った左足で飛陽の底部を蹴り上げ機体を離脱させるとシュバリエは市街に自由落下を始める。
標高が高く空気が薄い場所では生身の肉体も疲弊し、機体に宿る精霊も風を集めるのに通常より何倍もの精霊力を必要としたらしい。

民家を数軒潰しシュバルツは不時着した。
底部を蹴られた飛陽も尻餅をつくように一度バウンドし地上に不時着する。

「飛陽くーん!無事かー!?」リペイドで駆けつけるジェームズ。

「まったく、こんな無茶な作戦はないだろ…。一年前にシシミアの実が育つかどうか私と賭けたじゃないか。
危うく収穫前に王国軍に枯らされてしまうところだったけどね。どうにもこうにも一年もかけて賭けごとをしていた相手がスクラップじゃ私はかなしくなるよ」
通信のむこうで鼻水をすする音が聞こえる。

「ぐっ…ぅ…おのれ!!子虫ごときが!!」シュバリエはジェームズのリペイドにダガーを投擲する。

「わっぷ!!」ダガーは操縦席の真下に突き刺さった。精霊炉には直撃していなかったために爆発はしない。
片足のシュバリエは投擲時にバランスを崩し狙いを外した様だ。

「くそ!!あいつあんな近くに!!」
ジェームズは飛陽を守るためにバズーカを放とうとしたが突き刺さったダガーが配線を切断していたために精霊機はピクリとも動かない。
「…こ、こうなったら白兵戦だ!!」
今度は短銃を片手にハッチを開けようとするものの敵精霊機の巨大なダガーの柄の部分が外からハッチに引っかかっていたためにビクともしない。

シュバリエはというとロングソードを構え再び空へ急上昇している。
片足の精霊機は自ずと子供たちの対空砲の的になったが、そんなことは、もはや気にもしていないかのようだった。

「あいつ…何をするつもりだ!?」

シュバリエは精霊機の上昇できる限界点まで達すると機翼を下げ最高速を生み出しながら滑空を始めた。
遠くの街並みが切り裂かれている。それは真っ直ぐに飛陽とジェームズを軌道上に捉えて向かってくる。
落下速度と精霊力をカタパルトとして、弾丸と化したシュバリエがロングソードの刀身に渾身の風の精霊力を込め
飛陽と動けないジェームズを斬断しようと急接近しているのだった。

【シュバルエ:弾丸みたいに突撃してきて、すれ違い様にロングソードで飛陽と動けないリペイドを真っ二つにするつもり。
斬断するためにすごく接近します】

161 :フィリップ ◆i3/u6CmHbc :2010/11/03(水) 22:05:22 0
>飛陽氏
歩兵たちは飛陽に挑んだ精霊機たやすく撃破されるのを見た。
「あいつ、化物なのか!?」
「あのジョンがやられたのか!?」
彼らのなかでもエース級のパイロットの側面射撃をかわした飛陽に対して歩兵たちから畏怖の声があがる。

畏怖はやがて、恐怖へと変わり、一つの凶行を引き起こす。
「飛陽、この基地の者たちは今、我々の手中にある!」
兵士たちは、飛陽が上空に去った後、基地内の非戦闘員を人質にすることに成功したのである。

【歩兵部隊、飛陽が上空に離脱した隙に基地の非戦闘員を人質にとる】

162 :フィリップ ◆i3/u6CmHbc :2010/11/03(水) 23:20:21 0
>セラ氏
「いきなり男に抱きつくとはあの女、デリカシーのカケラもないのか?!」
セルフィーにしがみつかれたとき、機体を制御しながらネージュが発した言葉であるが、彼女の主はそのようなことなど気にとめていないようだった。

なぜ、落ちたフリをしなければならないのか?そしてなにより何故皇女がこのようなところにいるのか?
これらの疑問が、フィリップを思索に没入させていたからである。

それらの疑問のかなりの部分はセラの説明を聞いて氷解した。なぜセラが飛陽に助けられることになったのかはまではわからなかったが。

「私は飛陽を討つために派遣されてきました。費陽につくことはできません。
しかしながら、私には隊長として部下の暴走を止める義務があります。
そこで、私はイサームとの戦いに関してのみ、殿下にご協力させていただくこととさせていただきます」

自らの意思を示した後で、フィリップは精霊機から降りて地面に跪き、王国の皇女への礼を施した。
しかし、彼の精霊であるネージュは主の傍らに立ったまま精霊機から身を乗り出したセラを、値踏みするように見上げていた。

【フィリップ、イサーム戦に関してのみ、セラに協力すると表明】

163 :飛陽 ◇fLgCCzruk2:2010/11/07(日) 21:53:18 0
時を遡ること飛陽が自ら2両目を破壊する少し前のことである。上空のシュバリエが愉悦に浸っている間に
それは起こった。

「飛陽、この基地の者たちは今、我々の手中にある!」
通信機越しに聞こえてきた声は歩兵たちのもの。状況を理解しきれずただ自分たちの身が危うい
事だけが唯一確かなことだった。そしてそれ故に今、残った者たちを人質に取りこの場を凌ごうとしていた。

「あいつら、逃げ出したとばっかり思ってたのに、状況が見えてないのか!」
「割れさすのが一番いいと思ったんでござるが、これは拙者の判断ミスでござるな。これが一番
周りへの危害を抑えられると思ったんでござるが、所詮は敗残兵でござる」

通信機の向こうではなおも降伏しなければ彼らの命はないだの、自分たちの要求を聞けだの見当違いな
事を言っている。ここにいる人間は全て飛陽のモノである。少なくとも飛陽はそう思っている。

言い換えればここの人間は飛陽がいなければ生きられないのだ。この機械はそういう人間を見繕って
ここまで連れて来たのだ。ジェームズやここで育った子供たちを除いては。

「忙しいから手短に済ませてやるでござる。よく聞くでござるよ」
「あ、ああ、人質が大事なら、おとなしくするんだな、お前が作った街なんだろう、だったら」
「好きにしろでござる」

言葉を遮って無造作に渡されたのは呆気無くそれだけに冷たいものだった。聞き返してくるが無視する。
「ここにいるのはそれぞれ後は死ぬだけだった連中でござる。客の取れない娼婦、競争に敗れた技術者、
戦火に焼け出された難民、そしてお主達、裏切り者の末路なんて一つでござる。そしてそんな連中はこの
ご時世いくらでもいるんでござるよ。嘘だと思うなら、自分たちの顔と人質の顔を見比べるんでござるな、
違いが見つからないはずでござるよ、そいじゃ」

「ま、まて、待ってくれ!」
無視して通信を切ると砲撃の準備に移る。ジェームズから抗議の声が挙がる。当然と言えばそうかも知れない。
「飛陽君、今のはどういうつもりだい!あんな煽り方すれば、彼は本当にやるかも知れないんだぞ!
君は街の人が大事じゃなかったのかい!」

「好ましくはあったが重要ではないでござる。それだけでござる」「それだけって」
「皆が皆お前みたいにそれなりな生き様してるわけじゃないでござる、だから皆はお前を希望みたいに
好んだ。故に拙者はお前を嫌った。」

「そんな、そんな大げさな」
今まで自分に接してきてくれた人々の内側を教えられてもジェームズは信じなかった。この街ではと機械が言う。
「拙者が死ねば誰も生きてはおれぬ身よ、ただお前を除いては」

164 :飛陽 ◇fLgCCzruk2:2010/11/07(日) 21:53:57 0
ジェームズの沈黙に被せるように一言だけ告げる。話の続きをしたかったら上を見ろ、と
そこにはイサームが残る車両に攻撃をしているところだった。


そして時は2両目を自ら爆散させた後へと戻る。遥か高空からイサームが突っ込んでくる
「くっそう!このままじゃ、どうすれば」
狼狽えるジェームズを他所に飛陽は新たな複数の機体の反応を感知していた。
(やれやれ、厄介事ってモンはフィーバーする時は連チャンでお出ましになるもんでござる)

「ジェームズ、新手には正真正銘の全面降伏をするんでござるよ」
「新手!?飛陽くん今はそれよりも」
言葉を遮り辺りに散った鉤爪がそれぞれ別個の生き物のように動き出した。2本はコクピットのハッチを
破壊しジェームズを露出させると片方の手が彼を雑に人の群れの中へと放り投げもう2本はリペイドの
足を付け根を突き刺し切断する。

ごろんと機体を仰向けにするとジェームズを投げ終えた2本が今度はリペイドの腕を取ってバズーカを構え直す。
さながら後ろに倒れ込みながら撃つかのような姿勢だ。(既に倒れているが)残った弾を撃つが僅かに減速しただけで
それもいくらも経たず元の速度を取り戻す。

(この機体が予想外に手強かったってのもあるでござるが、少数精鋭で来られるとは、傭兵も雇った
方がいいかもしれんでござるな)
指揮官機、セラの機体、そして新手の反応、そのいずれもが目の前の相手より手強いであろうことは想像するに難くない。

アジトに人がいない時期というのもあったがそれがいたとして何が変わったかはわからない。平和であったがこの場には
戦力が足りなかった。今となっては「自分たち」を呼び起こすことも叶うまい。

「思ったよりしぶとかったでござるが、拙者後がつかえてるんでこれにて失礼するでござるよ!」
そう告げると真っ直ぐに突っ込んでくるシュバリエに向け鉤爪でリペイドのバズーカを撃ちその一方で最初に撃破した
旧型の精霊機へ再度アンカーを射出すると自分を走る分と合わせて一気にその直線上から離脱する。

165 :飛陽 ◇fLgCCzruk2:2010/11/07(日) 21:54:42 0
「忌々しい小細工ばかり弄しおって、子虫が這ったぐらいで逃げられる訳があるまい!」
飛陽の苦し紛れの逃亡に怒りを更に膨らませたイサームが吠える。しかし全速での突撃は最早止める事も逸らす事も
できず地面へ激突しないよう、そして邪魔な丸い機体だけでも両断しようとそのまま突っ込んでいく。

そこへ3両目がいた空白を埋めるように1両目がのろのろとリペイドの隣までやって来る。すぐそこまでイサームが迫った時
リペイドに刺さったダガーを引き抜き自分に、そして鉤爪をリペイドの精霊炉に刺すと2機揃って盛大に爆発する。

自滅をしないようすれ違いざまに切り捨てようとしたイサームとしては離脱前に巻き込まれた形である。
シュバリエは自爆の衝撃に揺さぶられてバランスを崩すと地上に落ちた後滑り転がってそれきり動かなくなる。

「おつむで負けてちゃ、拙者立つ瀬がないでござるよ、しばらくそこで伸びてるでござる」
小さく勝ち誇るが戦闘力は欠片も残ってはいなかった。ここが潮時だと飛陽は決心した。

「そこで見てる奴!拙者たちは見ての通りもう丸腰でござる!用があるなら出てくるでござるよ!
それと馬鹿共!とっとと砲台から離れるでござる!あとでぶっ飛ばすでござるからな!」

【飛陽 リペイドと1両目の自爆でイサームを自滅させるも戦闘能力の著しい低下 降伏を思案
子供たちに怒号及び降伏のために隠れている人にハッタリも込めて出てくるように呼びかけ】


166 :セラ ◆eqAqXE3VMc :2010/11/09(火) 02:37:15 0
そよ風に緑の匂いが漂い、木漏れ日をうけた皇女が銀色に輝いている。
ここは溶岩の熱によって溶かされた大山脈の万年雪が、飛陽のアジトである禿山の一角に産み落とした奇跡の森。

>「私は飛陽を討つために派遣されてきました。飛陽につくことはできません。
>しかしながら、私には隊長として部下の暴走を止める義務があります。
>そこで、私はイサームとの戦いに関してのみ、殿下にご協力させていただくこととさせていただきます」

「その言葉うれしく思う。事情はのちのち説明しよう」
やわらかいセラの言葉のあとにフィリップは精霊機から降りて地面に跪き、皇女への礼を施す。
「よい!フィリップ!!そのようなことはせずともよい!」
少しだけ頬を赤らめた皇女が精霊機の操縦席に身を隠すと入れ替わるように青白い幼女が操縦席から顔を覗かせた。
異世界の光の精霊ウィル・オ・ウィスプの系列をもつセラの使役精霊「ウィー」の久々の登場だ。
彼女は恐ろしく無口で主人であるセラもその声を聞いたことがない。
「………」
ウィーはフィリップやネージュを一瞥して舌を出すと素早くハッチを閉める。
「とりあえずフィリップ。私はいきます!
お互いこの地で散ってしまったとしても、それは運命としてあきらめましょう!」
セラフィーは光の翼を羽ばたかせ飛陽たちのいる市街に向かう。

「ふおおおおお!!」
人の群れに放り込まれたジェームズを難民たちの沢山の手が受け止める。
「だいじょうぶか?ジェームズ?怪我はねえか?」
「心配したわよ!手とか足がなくなってない?目は見える?」

「だいじょうぶだ。離してくれみんな。あんまり余計なとこをぺたぺたと触ってくれるな」
心配顔の難民たちの胴上げから苦笑いしながらジェームズがおりると

>「忌々しい小細工ばかり弄しおって、子虫が這ったぐらいで逃げられる訳があるまい!」
技術者の一人が作った小型の通信機から聞こえてくるイサームの怒声。そう、戦闘はまだ終わっていない。
「ティルネラント王国では、こんな人間を精霊機に乗せているのだ…。戦争はとうぶん終わらないだろう…」
ジェームズの悲しげな独語に難民たちが、ため息をついた瞬間、爆音が一同の鼓膜をふるわせる。
飛陽の頭脳的な攻撃でイサームのシュバリエがついに沈黙したのだ。

>「おつむで負けてちゃ、拙者立つ瀬がないでござるよ、しばらくそこで伸びてるでござる」
>「そこで見てる奴!拙者たちは見ての通りもう丸腰でござる!用があるなら出てくるでござるよ!
>それと馬鹿共!とっとと砲台から離れるでござる!あとでぶっ飛ばすでござるからな!」

「やった!やったぞ!飛陽くん!」とジェームズ。
「やったあ!やっつけたー!」「おにいちゃん…おしっこもれた…」
子供たちはというとワイワイと小躍りしながら砲台から離れて、虫のような精霊機の背中に乗りながらどこかへ隠れていく。
怒られるまえには、逃げるが勝ち。怒りも時間が経てば少しは収まるというもの。ここの子供たちは強かだった。

「もう、終わった…の…?」
セラの精霊機は、中破?した飛陽の近くに舞い降りて辺りを見回していた。
傍受していた飛陽とジェームズの会話からも飛陽討伐は好ましくないということをセラは確信している。
まだ残っていることと言えば「フィリップの飛陽討伐」の件に、
ジェームズをストロベリーフィールズの妹の所へ連れ戻すということ。
もうお宝沼の怪物退治は考えないことにしていた。欲に溺れた人間が犠牲になるだけなのだから。

「…小…虫…ごときが…」
シュバリエの中でカラカラに渇いた喉から張り付いた声を搾り出すイサーム。その体の一部からは重力にしたがって小物が落下する。
よく見れば、それはピアス。
セラとフィリップがアーサーに渡されたものと酷似してはいるものの、その色は光を飲み込んでしまいそうな深い闇と同色だった。
さしずめ闇の念話ピアスと言ったところか。

光の精霊フィーがそわそわしている。
「ん?まわりに精霊反応?…なにもの?…神出鬼没のASLとか?それとも…」

【フィリップさんの飛陽さんへの対応待ちです】

167 :フィリップ ◆i3/u6CmHbc :2010/11/09(火) 23:03:20 0
【帝国軍歩兵部隊】
兵士たちは、イサームのシュバリエと彼らの隊長機(フィリップ)が撃墜されるのを見た。
これでティルネラント側の精霊機は全滅し、彼らを飛陽から守るのは彼らの手の中にある人質だけである。

だが、それさえも飛陽には通じなかった。

さらに飛陽の言葉に覚悟を決めた住人たちが、彼らを取り囲むように迫ってきていた。
その時、地下基地での勝敗はほぼ決まっていた。

反乱者たちは絶望し、呆然自失している間に住人によって巧みに分断され、武装解除されていったのである。

【反乱軍、住人に武装解除され、地下基地での戦いは終結】

168 :エルトダウン ◆iGrjUqKhz2 :2010/11/09(火) 23:45:45 P
静観。それに尽きる、とエルトダウンが思った矢先…
コクピット内に配置されたサブディスプレイに"CAUTION"の文字が現れる。

「捕捉された…?しまった。ファラーシア、しっかり精霊力は制御してくれないと困るね」

そして外部のマイクが拾ったのだろう。スピーカーから、まるで『おふくろさんが泣いてるぞ』のように『出て来い』と聞こえた。
出来る限り無駄な労力は割きたくなかったエルトダウンだったが、これでは仕方が無い、と機体をゆっくりと起こし反抗の意思は無いように伝えた。

"ハハ、サイアニスのねーちゃんを連れてくるべきだったなァ。あのねーちゃんならパパッと片付けてくれるだろうによォ。ビビんなよ、エルトダウン"

ファラーシアが嘲笑する。元はといえばコイツが仕事を疎かにしたから捕捉されたんだ、とエルトダウンは思っていた。
周波数を切り替え、とりあえずは社交辞令の様な事を言っておく。

「あー、見ての通り敵対心は無いですよ。こちらはフリーランスの傭兵です。名前はウィンスタース・ホール」

偽名である。簡単に身分は明かせない。だが、この状況下では身分を明かさなくてもいずれは問われるだろう。
心理的にもさきに名乗っておいた方が好都合なのだ。
もちろん、その殆どがアドリブである。

「そちらの所属と名前は?」

だが、エルトダウンは知らなかった。
目の前の機体に、以前に一度だけ遭遇した事があるということを。
ロンデニオンの戦いのときに、かなり遠方からだが、確認済みだった。

【エルトダウン、姿を現しましたが身分詐称。】

169 :フィリップ ◆i3/u6CmHbc :2010/11/10(水) 00:03:35 0
>飛陽、セラ両氏

>「とりあえずフィリップ。私はいきます!
お互いこの地で散ってしまったとしても、それは運命としてあきらめましょう!」

(殿下はあのようなことを言われたが、俺が飛陽を撃てば、殿下は飛陽を庇われるのだろうか?)

今の飛陽の被害状況では、空戦能力は失われているか、著しく低下しているであろう。
今の状況で飛陽を庇うということは地上でひたすら防御に徹するということを意味する。
いくらセラフィーといえども、上空から一方的に攻撃を受け続ければ、長くはもたないだろう。

つまり、今の状況でセラが飛陽を庇うということは飛陽のために自らを犠牲にするということであり
飛陽から受けた恩義のために、この地で散る、ということだった。

(俺に殿下を討つことができるだろうか?)

フィリップは心に迷いを抱えたまま、機体を飛翔させ、飛陽へと銃口を向けた

【フィリップ、上空で飛陽に銃口をむけたまま静止】

170 :セラ ◆eqAqXE3VMc :2010/11/10(水) 17:02:51 0
飛陽の言葉に反乱した王国の歩兵たちの心は揺れ動く。

>「ここにいるのはそれぞれ後は死ぬだけだった連中でござる。客の取れない娼婦、競争に敗れた技術者、
>戦火に焼け出された難民、そしてお主達、裏切り者の末路なんて一つでござる。そしてそんな連中はこの
>ご時世いくらでもいるんでござるよ。嘘だと思うなら、自分たちの顔と人質の顔を見比べるんでござるな、
>違いが見つからないはずでござるよ、そいじゃ」

「だ、騙されるな!今人質を解放したら俺たちは皆殺しにされるぞ!」
「誰にだよ!?飛陽にか?フィリップ隊長か!?それともイサーム副隊長か!?」
歩兵たちの会話が虚しく響く。それを強い眼差しで見つめる人質たち。

「なあ兵隊さんたち。あんたら覚悟ってものが出来てないみたいだな…。
その銃の引き金を引くつもりがあるなら引くがいいさ。引く覚悟があるのなら。
俺たちには、この土地で生きる覚悟がある。もちろん死ぬ覚悟も。
プライドなんか捨てていい加減どうするか覚悟を決めたらどうだい?
まあ、俺たちと共に生きていくってのも、そうとうありだと思うんだが…」
「……」
アジトの住民たちが、反乱者たちの脱力した手から銃を奪うことは容易だった。

*************************************************

飛陽の言葉に答えエルトダウンが出現する。
と、ほどなくしてに上空から飛陽に向けられるフィリップの銃口。

「どうしてもフィリップは飛陽を討ちたいってことね。とんでもない極悪人ってわけでもないのに」
セラは精霊機の両腕をひろげて飛陽を銃口から庇うように立つ。まるで十字架にかけられたキリストのように。
「フィリップには私は撃てないはず…たぶん…ね…」
盾となるセラフィー。その胸部には光が集束し球形の発光体が生まれる。

「フィリップ!私はホーリークルセイドを使います!そのような機体が貴方を蝕んでいるのです!!
貴方の心は本来、雪のように純粋で真っ白なはず!」

【セラ:ホーリークルセイド(強力な圧縮砲)の発射準備中】

171 :飛陽 ◆fLgCCzruk2 :2010/11/14(日) 20:16:52 0
物陰から現れた新手の精霊機はその独特な外見と奇妙な精霊力から一目で「こいつも厄介だな」と
飛陽に思わせるに充分な存在だった。

>「あー、見ての通り敵対心は無いですよ。こちらはフリーランスの傭兵です。名前はウィンスタース・ホール」
そう名乗る声が聴こえるが知らばっくれていること以外は何も分らない。次いで所属と名前を聞いてくる。
これでは逆に自分が名乗るだけである。とはいっても飛陽の製造以前の情報履歴は残ってないのだが

「拙者はただいま鋭意売り出し中の飛陽でござる。何故か懸賞金がかかってるでござるが賞金首を
取ることもあるでござる。それとお主、おとなしくASLって名乗ったほうがいいでござるよ。
そこまで補給に事欠く作りの機体に乗ってて傭兵は無理があるでござる」

パーツの流用ができなさそうな試作機か特機のようなホロウ・クロウラーを見て思ったことを言う。
根拠は全くないが言いがかりで相手の琴線に触れるようであれば何か言ってくるだろう、そう考えていると
自分がロックオンされている事に気付き上空のシュバリエを補足する。そして自分を庇うセラの姿も

>「フィリップ!私はホーリークルセイドを使います!そのような機体が貴方を蝕んでいるのです!!
貴方の心は本来、雪のように純粋で真っ白なはず!」

「あ、あいつやっぱり拙者を諦めてなかったでござる、仕方ない。お客人少々お待ちを」
自称フリーの傭兵にそういうと残った3両目が今度は墜落したイサームのシュバリエの元へ走っていき
「よっこいしょ」と乗り上げる。傷ついた機体が軋むがこれ以上潰れるということはないと踏んでのことだ。

「隊長殿、何故拙者をまだ狙うのでござるか、もうお主一人でござるよ。これ以上の戦いは無意味でござる、
お嬢さんも武器を納めるでござるよ。話し合いが大事でござる」

歩兵連中を裏切らせ乱戦に雪崩込んだり人質替わりにとイサームの上に陣取っていながら
言うセリフではない。セラにも武器を納めるように言う。

「確かにこのままおめおめと帰ったらお主の経歴に傷がつくでござろう、しかし安心めされい。お主はむしろ
異名とかエピソード付きで帰れるんでござるよ!何故お主が一人か?それはお主を残して隊の者全員が
裏切り者だった。というのはどうでござろう」

172 :飛陽 ◆fLgCCzruk2 :2010/11/14(日) 20:19:27 0
誰が知るわけでもないが一応嘘ではない。

「歩兵が反乱を起こして鎮圧しようとしたところコイツがお主の暗殺を図ろうとした、またはコイツが裏切ったから
歩兵が離反してお主が孤立した。どっちだっていいでござる。生還するのはお主だけなんでござるから。」

シュバリエの上で機体をぐらぐらと揺らす。暗にイサームを売れと言っているのである。
この間に格納庫にある予備の自分の体を片っ端から起動させて少しづつここに近づけさせていく。
人格を移していないので簡単な動きしかできないが数を揃えればそれなりのハッタリは効くというものである。

「説得力がないかもしれないでござるが、万一お主に仲間殺しの異名が付いたらめっけもんでござる。
士官ならそっち方面からの出世の道も開けるし、逆に上司にどういう事かと問い詰めたっていいんでござる。
もしそれがお嫌なら証人としてそのお嬢さんに証言してもらうってのも手でござる。去る姫君だけは賊の魔手から
なんとかお救いしたとかなんとか、ん〜いい話でござる!」

飛陽からしたらこんな「やんごとない」VIPをいつまでも囲っている方が問題だった。また実は知っているぞと
言っておくことで相手にプレッシャーをかけておきたいという気持ちもあった。

フィリップ相手に次から次へと代替案を出しては落としにかかるが、最後の方には歩兵達と同じく仲間に
なるように言うなどまさ節操の欠片もない様子だった。

「いやいや決して拙者自分の命が惜しいわけではござらん。お望みと有らばこの首差し出してもいいでござるよ。
ただ〜、部隊壊滅の責は最早拙者の首一つでは到底賄い切れないのではござらんかな〜っと」

実際問題新型の機体を複数狩りだしてまで行った賊の討伐でこれほどの人的、物的被害を出せば
任務を遂行してもそれは返り討ちに遭ったという見方の方が強いだろう。

「隊長殿も可哀想でござるな部下に恵まれない、あいや上司かも知れんでござるがそれにしても〜んぬっふっふっふっふ」
挑発混じりに相手の現状を教える。激昂されたらそれまでだが冷静さが残っていれば自分の進退くらい
は考えられるだろう。飛陽は言うだけ言って後はおとなしく相手の出方を伺うつもりでいた。イサームの上で。

【飛陽 フィリップに(あとセラにもそれとなく)撤収勧告 今度はイサームを人質に
エルトダウンには話がつくまで待ってもらうよう打診】

173 :フィリップ ◆i3/u6CmHbc :2010/11/14(日) 22:01:59 0
>飛陽、セラ両氏
彼女の主は決して純真なだけの穢れのない真っ白な雪のような心の持ち主ではない。
たしかに、純真さはフィリップの心の大きな部分を占めているのかもしれない。
しかし、それだけではないことを、長年フィリップとともにあったネージュは知っていたのである。

「イサーム卿、貴官もティルネラント貴族ならば、敵の捕虜となって利用されるより、名誉ある死を選ぶべきではないか?」
フィリップはイサームに自爆を勧めたのである。

無論、飛陽を牽制する意図もあったが、元同僚の名誉と、セラとの秘密を守ろうとする心理も働いていた。

そして、銃口を飛陽から反らし、イサームのシュバリエへと向けた。

【フィリップ、イサームに自爆を勧めるとともに、攻撃目標を飛陽からイサーム機へと変更】

174 :セラ ◆eqAqXE3VMc :2010/11/15(月) 17:35:06 0
魔力が横溢した時にのみ感じられる激しい衝動がセラの中にこみ上げ
精霊機に産み落とされた世界のシルエットがプラズマ化した大気によって淡く輝く。
今まさに、獲物を求め解き放たれようとしているホーリークルセイド。

(フィリップがアーサーに何を言われたのかはわからないけど、彼はどんな形であろうとシュバリエから降りるべきよ。
泥棒を追いかけてると自分が泥棒の顔になってるって話があるけど、今のフィリップの心には明らかに影が落ちているわ)

思案を巡らせているセラ。刻々と変化する状況。

>「隊長殿、何故拙者をまだ狙うのでござるか、もうお主一人でござるよ。これ以上の戦いは無意味でござる、
>お嬢さんも武器を納めるでござるよ。話し合いが大事でござる」

「私も話し合いをするのは大賛成」精霊機はほんの少し光を弱めた。
そして、イサームを人質に続く飛陽の撤収勧告のあとフィリップの口から驚くべき言葉が発せられる。

>「イサーム卿、貴官もティルネラント貴族ならば、敵の捕虜となって利用されるより、名誉ある死を選ぶべきではないか?」
「そ、そのようなことをする必要はありません!!」セラの精霊機は完全にホーリークルセイドの光を失っていた。

「くっくっくっく…あっはっはっは…」シュバリエからイサームの擦れた笑い声。
「俺はティルネラント貴族の名誉や誇りなど、とうの昔に捨てている。あのお方に忠誠を誓ったあの日から!」

疲弊しきった顔のイサームが足元に落ちている闇のピアスを拾い何かを祈ると意図せずに頭に進入してくる笑い声。
その後、ピアスから暗闇が広がり操縦席を満たしイサームを飲み込んだ。

「え?え!?うわああああああああ!!!!」
命丸ごとイサームを飲み込んだ闇は、この一瞬だけ力を増幅させシュバリエを体内から喰らっている。
がらんどうになったシュバリエは飛陽の三両目の重さで潰れ、体外に闇を溢れ出させると暗闇の渦に三両目を飲み込んでいく。

カチカチと歯を鳴らして震えている光の精霊フィー。
沈没船のように三両目を飲み終えた闇から複数の黒い手が、
もの凄い疾さでフィリップや飛陽、エルトダウンの精霊機に伸びていく。
人間なら軽く一掴み出来るほどの巨大な黒い手。掴まれたら闇に引きずられてしまうことだろう。

【この場にいる全員の精霊力に反応して無差別に襲い掛かる巨大な闇の手】

175 :セラ ◆eqAqXE3VMc :2010/11/15(月) 17:40:16 0
×セラの精霊機は完全にホーリークルセイドの光を失っていた。
○動揺したセラの精霊機は完全にホーリークルセイドの光を失っていた。
すみません。前に「動揺した」を入れて下さい。
それと、闇の手は溺れるものは藁をも掴むみたいな一時的な、しょぼい敵です。

176 :エルトダウン ◆iGrjUqKhz2 :2010/11/16(火) 00:48:30 P
/そこまで補給に事欠く作りの機体に乗ってて傭兵は無理があるでござる」

的確で鋭い突込みがエルトダウンを襲う。

「ま、言われてみれば…ね。ちょっと無理がありすぎたかな」

ポリポリと頭を掻く。ほんの小さく、まいったな、と呟いた。

"まァ、なんにせよ俺らはこの戦闘に介入するつもりはねェからよ。安心しな、ござるの兄ちゃん"

ファラーシアは確かにそう言った。が、エルトダウンは参戦する気でいた。
主な理由はやはりデータである。局地的戦闘のデータを得れる機会なのだ。逃すわけにはいかない。

「フム、今はいろいろとややこしそうだから私はオブザーバーでいるよ」

そういいつつも、エルトダウンはゆっくり静かにホロウ・クロウラーの武器の安全ロックを外していった。
そして最後のビックアルバレストの安全ロックを解除しようとした瞬間、

"まずいッ!エルトダウン、出せェ!最大戦闘速度だ!"

突然叫びだすファラーシア。あまりにも唐突だったので、エルトダウンはすぐに反応することが出来なかった。

「なっ…!!間に合わな…ッ!?」

迫り来る黒き手。恐らく人間ならば一飲みに出来るほどの大きさだろう。
極限の軽量化機体であるがゆえ、比較的小柄な大きさのホロウ・クロウラー。
もしかすると引きずり込まれるかもしれない、そう思ったときにはすでに黒の手は目前に迫っていた。

しっかりと、それでいてどこかゼリー状のような感じでホロウ・クロウラーを掴んでいた。

"気付かなかったぜ…急に成長しやがった。なんてヤローだ、チクショウ!"

ホロウ・クロウラーの機体背部からは、最大出力でブースターを噴かしているためか、
本来ならば余剰分の精霊力が青い粒子となって現れるのだが、今回はそれが赤色、というよりもオレンジ色の粒子になっていた。
だが、それでも黒い闇の手は機体をがっしりと掴んで離さない。
それどころかゆっくりと後ろに引っ張られているような感覚まである。

「そんなバカな。なんてパワーだよ、まったく。でも、これは良い情報かもね。出力面の改良が少し必要か…」

【ホロウ・クロウラー、闇の手に捕捉されました】

177 :飛陽 ◆fLgCCzruk2 :2010/11/17(水) 00:34:10 0
「あ、こらお主!そんな事言って本当に自爆したら苦労して手に入れた最新型が!」
フィリップの呼びかけに焦りつい本音をこぼしてしまう飛陽。急いでフォローに入るべくとイサームに通信しようと
した時、不吉な言葉を聞くことになる。

>俺はティルネラント貴族の名誉や誇りなど、とうの昔に捨てている。あのお方に忠誠を誓ったあの日から!」
直後に戸惑いの気配を含んだ悲鳴が挙がったかと思うと乗っているシュバリエから嫌な異音が聞こえ始め
飛陽の重量に耐えられなくなり潰れる。

「本当に自爆って何じゃああぁあこりゃああぁああー!」
潰れたシュバリエの装甲ごとどこかへ向かってズブズブと沈んでいきその上吹き出した黒い手に
抑えつけられるといよいよ以て異常事態に飲み込まれていく。

その時既にドリルの方を引きずり込まれた3両目の連結部に面した扉が開くと何かが勢い良く飛び出していく
「ジェニファー!おお、今回はちゃんと連れてってるでござる!グッジョブでござる!」
サボテンの植木鉢にどうやったのか木の根や草でできた小包が括りつけられている。

ジェニファーについているのは飛陽の基底格、中枢と言うべき人格を司る部品であった。これが
それぞれの車両に組み込まれ同時に起動することで普段のしぶとさを発揮するのであるが
起動している部品の記録や引き継ぎができていない時に全て破壊されればそれは飛陽の死を意味する。

飛陽は自分の人格を作る人工知能は量産しなかったのである。厳密に言うとスペアの生産はしている
のだがそれは同時に起動する、つまり飛陽が複数人存在するという状態が発生しなようにしてるのである。

それは一重にジェニファーとの約束もあるが飛陽が機械の中で「個」を持つためにとっている行動でもあった。
「ジェニファーの拙者の換えはすぐそこまで来てるでござる!そこまで逃げるでござるよ!」

半ば以上体を吸い込まれ身動きが取れなくなっているが目一杯叫ぶ。
今の飛陽の人格は核の名残だがこの取り返しの付かない余白こそが「個」と呼びうるものかも知れないが
それは誰が知るものでもなかった。

遠方の地面に墜落したジェニファーは闇と同じように地面へと沈み姿を眩ませる。それを見届けた時には最早
闇の中から空を見上げるような体勢になっていた。

(これまででござるな、しからば)
「各々方!今から最後の拙者が自爆する故、明かりが見えたらそこに明かりを集中させるでござる!
威力ではなく、光量を優先させるでござる!コヤツは、多く、ひか、ちょっ、このっ!」

機体の機能が軒並み奪われつつある状態に飛陽は焦りよりも怒りを覚える。
「調子に乗るなこのお化けがああああああぁあああぁああーー!」
直後に爆発。暗闇の渦に明かりが灯り手が少しだけ怯む。

【飛陽 全機ロストにより戦闘不能 ジェニファー 地中からこちらへ向かっている最中の予備のボディとの合流を急ぐ】

178 :フィリップ ◆i3/u6CmHbc :2010/11/18(木) 02:50:54 0
セラのホーリークルセイドを霧散させ、飛陽との舌戦でも優位にたって、フィリップの心に一瞬、油断が生まれた。
その時を見計らったかのように、黒い手がシュバリエを包みこんだ。
操主の油断故か、反応の遅れたシュバリエは為す術も無く、闇に飲み込まれていった。

【フィリップ(闇色の触手の中)】
フィリップは何もない闇のなかで半ばまどろみながら、ティルネラントが侵攻してきたときのことを思い出していた。

彼の父の領国であり、彼の故郷でもあるアルザス領は、強大な王国軍の前に為す術も無く蹂躙され、多くのものが失われた。
そのなかでも最も残虐だった士官がイサーム・カラムであり、軍紀を遵守し、必要以上の血を流さなかったのが、セラの第4軍団の将兵であった。

だから、フィリップはイサームと同じ隊に配属になったとき、必ず彼に復讐すると決意していたし、イサームへの冷酷な態度もここから発している。
セラがフィリップの「心の影」と考えたものは実はフィリップのイサームに対する個人的な復讐心であって、機体の特性によって生じたものではなかったのである。

【シュバリエ、闇のなかに飲み込まれる】
【フィリップの過去の回想、「心の影」の正体を特定】

179 :セラ ◆eqAqXE3VMc :2010/11/18(木) 17:09:41 0
「あの方に忠誠?あの方って誰!?」とセラが呼びかけると
「え?え!?うわああああああああ!!!!」と断末魔の叫びで答えるイサーム。

「イ、イサーム!!どうしたの!?なぜ、闇の精霊がここに!?」
…返事はなかった。

イサームのシュバリエから噴出した無数の闇の手が一瞬の隙をつきエルトダウンとフィリップを捕らえる。
闇の精霊と一言でいってもアデラのように巧みに使いこなせる者もいれば
レオニール・ルラン・ファーブニールのように囚われてしまう者もいる。
ならばこの闇の手の正体は一体何か。この場にいる者に知る術はない。

「くっ…飛んでっ!セラフィー!!」
まばたき一つの差で急上昇し、闇の手から逃れるセラ。
水あめのように伸び、空まで追いかけてきた闇の手たちは光の翼の羽ばたきによって払い落す。
だが光と闇がぶつかった衝撃はセラフィーの精霊力を激しく消耗させた。

「やっ…ばい。フィーは闇は苦手なんだよねぇ。ん…?
…あれ?よく見たらASLの精霊機も捕まっちゃってる?ぷぷ…油断してたのね」
(あいつはアルタイテンとの一回戦めで圧縮砲の雨をアルタイテンごと私に放った戦場荒し。
あの時にセラフィーの腕を飛ばされなかったらアルタイテンを一突きにして勝負はついていたのよ。たぶんね)

「光の翼で闇の手を斬ったら、みんなを助けてあげれるんだけどー…ASLだけは見殺しにしちゃおうかな?」
空中の安全圏にいるセラが目を細めてにやにやしていると

>「各々方!今から最後の拙者が自爆する故、明かりが見えたらそこに明かりを集中させるでござる!
>威力ではなく、光量を優先させるでござる!コヤツは、多く、ひか、ちょっ、このっ!」

「…だって!聞いてるASL?光の翼で闇の手を斬ってあげるから、あなたも手をかしなさい!!
闇の固まりにむけて全弾一斉掃射の飽和攻撃よ!ケチるんじゃないわよ!!」
(まー私は余力を残すけど。それに飛陽の三両目から精霊が逃げるのをみたわ。自爆って言ってもあのタイプはホントに死ぬことはないはず)
そう言いつつ心で思いつつ急降下し、光の翼でホロウ・クロウラーを掴んでいる闇の手を斬断するセラ。

「次はフィリップ!」
セラが急旋回してフィリップを救出に向かおうとした瞬間。

>「調子に乗るなこのお化けがああああああぁあああぁああーー!」
飛陽が爆光をあげると闇の手たち一瞬怯む手を見せたが、まどろみの中のフィリップは動かず、シュバリエと共に闇の中心に引きずり込まれる。
闇の中心は三両目の爆心地。つまり闇の手に引きづられて飛陽の自爆に巻き込まれる形となるフィリップ。

爆光の中にイサーム・ガラムの幻影らしき黒い影が現われる。

「逃さん…おまえだけは…逃さんぞ…フィリップ!!」
プライド。劣等感。戦闘本能。イサームのどす黒い心の闇がフィリップの心に侵入してくる。
飛陽の爆光にもフィリップのシュバリエだけは逃さなかった闇と同化したイサームのその執念には凄まじいものがあった。

【エルトダウンさんは救出】【闇の手がフィリップさんを飛陽さんの自爆に巻き込む】

180 :エルトダウン ◆iGrjUqKhz2 :2010/11/21(日) 20:42:09 P
ずぶずぶと機体が闇に沈んでいく。
もうこれまでか、と思われたときだった。

/「…だって!聞いてるASL?光の翼で闇の手を斬ってあげるから、あなたも手をかしなさい!!

"へへへ、良いねーちゃんだな。ありがとよ!エルトダウン、行くぜェ!お礼参りだッ!!"

出力が最大状態のホロウ・クロウラー。
一気に加速する。ある程度のG耐性があるエルトダウンも急な加速に少し嗚咽を漏らした。

「助けてもらった以上はね。もっとも、飛び道具なんてこのアルバレストくらいしかないんですがね」

後方支援装備ならばカノン砲があったのだが、
今回の出撃は資料の回収。よって偵察仕様の装備なのだ。
特別な武装は殆ど無い。

"無の精霊の力を見せてやんよ。エルトダウン、アルバレストの準備は良いなァ?合図と同時に発射しろよォ、いいなッ!"

フッと鼻で笑うエルトダウン。しかし、ここはファラーシアに従うことにした。
そして、ファラーシアのカウントダウン。
ゼロの合図と共にエルトダウンがビッグアルバレストの引き金を引く。

空気中を真直ぐに、黒い塊に向けて飛んでいくボルト。

「…ファラーシア、何をしたんだい?特に変わった様子は見えないけど…」

"まァ見てなって。着弾時が勝負だ。もっとも、トドメを刺すのは他の連中に任しちまうがな"

そしてボルトが黒い塊に直撃する…と同時に着弾点からまばゆい光が漏れ出す。
周囲の大気がその光に吸い込まれるように収束される。

「アレは…ランページ・アトモスフィアと同じ原理を?考えたね、ファラーシア」

ランページ・アトモスフィアの弾丸生成は主に二段階に分かれている。
一段階目は吸気口より吸入した大気をファラーシアの力を利用して大気の弾丸を作る。
二段階目は機体に備えられた特殊な機構によってそれが拡散しないように固定するのだ。

そして、今回は一段階目のみを利用したのだ。
ファラーシアがボルトに細工をし、衝撃が加わると大気の塊を作り出すようにしておいたのだ。
だが、本来の二段階目がないため、大気は固定されずに拡散される。

そうして、収束された大気がチチッと輝き、
着弾点の付近が吹き飛んだ。

勿論、火薬を使ったわけではない。火も出ない。ただ、空気を利用しただけの爆発。

"まァ、俺が本気だしゃあこんなモンよ。汚ねェ塊に大穴開けてやったぜ、ハハハ"

【闇の固まりにダメージを与えました】

181 :飛陽 ◆fLgCCzruk2 :2010/11/23(火) 19:03:07 0
ジェニファーは地中を進んでいた。新手に備えて呼んでおいた自分たちの増援へ向かって。
サボテンのくせに地中に潜り掘り進むという気味の悪いことをしながら。

植物の精霊でありながら人型を取っていないこの精霊の目的はひどく単純なものだ、足がわりに
使っている飛陽と大差がない。つまり増加である。旅先の土地に自分の種を撒いては増やすという
本能に則って行動する。名前は誰が付けたか分らないが何時の頃から名前を問われればそう教えている。

知能が高く(というか話せないだけで人とあまり遜色が無い)自分の目的の為に何が必要かを
考え放置されていた飛陽を手に入れた。初めはぎこちなかった彼の人格回路が今の性格になったのも
この植物のせいである。廃材の山から使えそうな部品を飛陽に集めさせてはジャンク弄りが好きそうな
人間達に飛陽を嫌というほど弄らせた。

その結果がアレである。幸いにして量産こそできたもののできあがるまでの過程は全く不明である。
脱出の際に稼動していた人格回路を次のボディに移植すれば「さっきまでの」飛陽は復活する。

ジェニファーは知識はあっても情がある訳ではない。個に拘る飛陽の心情までは理解出来ないし
する気もない。ただ自分の為にあちこちを駆け回る行動と利害が一致していたから
咎め立てするようなことはしなかった。ただそれだけである。

正直ジェニファーは即座に複数の飛陽の人格を目覚めさせたほうが防衛しやすいだろうと思っていた。
何の為のバックアップかとジェニファーは不思議がる。心なしかトゲの数が増えている。

この本体が死んでも既に根を張り育った種を新しいジェニファーにすればいい。そう思っている、
またそのような構造をしているこのサボテンは、ある程度同じことができるということで
飛陽を選んだのだが彼が同じことをした事は殆どない。

それがまたジェニファーに不可解の念を覚えさせるのだ、既にこれまで移動してきた土地で
次の自分になれるまでに育ったモノがいくつかある。それ故この飛陽の保護も乗り気でない。

今暴れている黒い手もそうだが新手を感知したときにあった嫌な何かはエルトダウンには見当たらなかった。。
人でないジェニファーに気のせいという概念はない。アジト内の総力を集めなければ不安要素たる
何かは排除できない。現に飛陽と修理機の2機を使ってやっとの相打ちである。

迫る危険の大きさに反比例してジェニファーは、人間でいう所の「気怠さ」に似たものを感じていた。

【ジェニファー、精霊機用のエレベーターに接近】

182 :フィリップ ◆i3/u6CmHbc :2010/11/25(木) 01:38:52 0
<フィリップ視点>
どれくらい夢のなかを彷徨っていただろうか。
フィリップの意識が覚醒しかけたとき、彼と彼の機体は飛陽の爆発によって引き起こされた闇の大波に飲みこまれようとしていた。
(俺はここで終わるのか・・・)
同僚を売った報いを受ける時がきたのだ。
フィリップが再び薄れてゆく迫り行く死を受け入れ、目を閉じたとき、大気の槍が闇を貫いた。

<ネージュ視点>
「お前をこんなところで死なせてたまるか!」
ネージュはそう叫ぶと、エルトダウンの砲撃によってできた亀裂から機体を脱出させようとする。
一方、闇の手もそう簡単に獲物を逃してはくれない。
周囲から凄まじい力での圧迫に耐えきれず、翼は折れ、左腕は失われた。
精霊に守護されていない人間ならば容易に圧死するであろう重圧を受けて、彼女の主が意識を手放してもなお
ネージュは闇の先の光を目指して歩みを進めた。

無間に続くかと思えた闇からやっと這いでたとき、威容を誇ったシュバリエは単なる精霊機の残骸と成れ果てていた。

【シュバリエ、闇から脱出する過程で大破】

183 :セラ ◆eqAqXE3VMc :2010/11/25(木) 16:48:47 0
ホロウ・クロウラーの無の精霊力が闇に大穴を穿つ。
「…あっ!」セラは驚きの声を洩らした。
操者であるファラーシアの技量には感心するが、同時に歯がゆさを感じる。
優れた力をどうして万人のために使おうとしないのだろう。

「や、やるわねー…戦場荒しさん」操縦席で小さく囁くセラ。
一方、闇に開いた亀裂から吐き出されるように這い出てくるシュバリエ。

「フィリップが生きていてくれた!!」喜色を浮かべたセラの機体に光の精霊力が漲る。
「冥府へと導く破邪の煌きよ。我が声に耳を傾けたまえ。聖なる祈り。永久に紡がれん…。
災いよ灰塵と化せ!!ホーリークルセイド!!!!!」
機体胸部で集束した光が圧縮され闇の集合体に解き放たれる。

ぐわああああああーっ!!!!!

闇と同化したイサームの怪が膨張し爆ぜると、光の影に成り下がりすべては消失した。
精霊力を消耗したセラフィーはというと地上に落下し、
地面の前で翼を、ひと羽ばたかせさせて空気のクッションに舞い降りる。

「飛陽もシュバリエも大破。今回は引き分けってことでよろしくて?」深呼吸をして、まわりを見渡す。
ジェニファーも感じていた先ほどまであった何かに見られているという気配はすでになかった。

「追い払った闇がどこまで深い闇かなんて私にはわからないし…。
ただ言える事は、あの闇の精霊力がイサーム一人の力だとは考えられないってことね…。
アルス将軍本人が何らかの形で闇と通じているのか、
それともイサームの単独行動だったのかはわからず終いだったけど…」

セラの独り言のあとに急接近してくる二つの精霊力。
「うそ…」
風圧が地面を圧倒して砂埃が巻き起こると目の前に現われたのは2機のシュバリエ。
「おみごとですフィリップ殿。飛陽討伐に成功なされたようですね」
飛陽の残骸を確認したシュバリエの操者の声は平淡で喜びも何も感じられない。
ただイサームのシュバリエの残骸に目をむけたときに薄い笑みを浮かべたように思われた。
「彼は…(くす)いえ、何でもありません。我がシュバリエにお乗り下さいフィリップ殿。帰還いたしましょう」
シュバリエの大きな手が大破したフィリップの機体に差し伸べられる。

「…(イサームって厄介者だったてこと?なんかそんな感じ。
これを見越しての飛陽討伐だったとしたら恐るべしアルス将軍ね。
白か黒かわからないような灰色の部下は、体裁よく消そうとしてたってこと?
イサームはミッションクリアしたとしてもあの二人に殺されたてたのかもね…)ちょっとかわいそう」
セラは如何にも自分は正義の賞金稼ぎだという風に堂々と精霊機の胸を張ってみせた。
新手の2機のシュバリエが無駄な争いをすることはないことは予想できたのだが。

「あー疲れたー。私はただの賞金稼ぎなのに巻き込まれちゃったんだよー。ピュ〜ピュ〜♪」
誤魔化すセラだったが案の定シュバリエの二人の操者はそんなことなど気にもとめていなかった。


【闇の手消滅】【新手のシュバリエの操者がフィリップさんを迎えに来る】
【エルトダウンさん以外は消耗しちゃっているので話の中では日を置いたほうがいいのかな?】

184 :セラ ◆eqAqXE3VMc :2010/11/28(日) 17:37:50 0
ジェニファーが精霊機用エレベーターの前まで近づいたときに、ちょうど良いタイミングで扉が開く。出てきたのは厳つい精霊機。
それは化け物の電気ショックから回復したアロルのアルフィーだった。それは、見上げているジェニファーを大跨ぎして戦場に駆けて行く。
「え?サボテン!?今のサボテンだったよな?まだ目がぼやけてるのか?」と操縦席で、かぶりを振るアロル。

一方、街――
四機あるシュバリエのうち二機は大破。残っている二機のシュバリエの操者がアジトの住民たちに拡声器で問いかける。
「無駄とわかって聞こう。我々が破壊された街の復興を支援する代わりに、
街の統治権を我がティルネラントに譲渡するというのはどうか?」
アジトの住民たちは一斉にジェームズを見、彼は怪訝な表情でシュバリエの操者に答える。
「復興支援などいらん!その代わりこの土地を二度と戦場にしないと約束をしてもらおう!」
シュバリエの操者たちは快活に笑いジェームズのを案を承諾すると一陣の風とともに飛陽のアジトをあとにする。
「ふう…去ったか…。飛陽くんみたいに頭が回らんからあんなことを言ってしまったよ…」
「平和が一番ッス!」歯の欠けたメガネの技術者がジェームズの肩をたたいた。

「フィリップは新手のシュバリエに乗って行っちゃったのかな?
いちおう解決したってことよね?それに今回は、ASLは巻き込まれっちゃっただけみたいだし…。
こんな辺鄙な所を何で飛んでいたかは不明だけど…。あとはジェームズさんの問題ね」

で、話の結論から言うと、セラはジェームズの妹をアジトに呼び一緒に住まわせることに決めた。
もともとはストロベリーフィールズの農場で使用人として生活していたジェームズたちは下界の暮らしに満足していなかったのである。
ジェームズが行方不明になった後に、妹は農場から逃げ出し占い師になったという事だ。

――復興しつつあるアジトの民家でセラとアロルはイチゴジャムのたっぷり塗られたパンを頬張っている。
「おいしいおいしい。次はどこへ行こうかな…」

【フィリップさんが迎えにきたシュバリエで帰ったかどうかはお任せ。エルトダウンルート発動?】

185 :飛陽 ◆fLgCCzruk2 :2010/11/28(日) 19:06:50 0
アロルの機体に遅れて飛陽のボディが現着した時には既に二機のシュバリエは飛び去っていった後だった。
取り急ぎ新しい体に回路を移植する(構造は企業秘密だ)と飛陽は声を荒らげて復活したことを示す。
今度の体は灰色の幾分簡素な機体だった。

「さあ、第二ラウンドでござる!っておや?」
しかし街の様子からいって概ね事態は収拾が着いたような空気を見せており、彼はジェニファーや
ジェームズから話を聞いて情報の整理をすることとなった。

それから少しして

(見計らったように現れた二機、それも隊長機と同格と思わしきスペック、そして統治権を求める、これは・・・)
飛陽は自分が会ってはいない彼らの思惑を考えていた。幾つか見当がつくのはイサームが最後にしたことが
当人にとって予定と違っていたであろうこと。そうでなければあんな悲鳴は上がらない。

そしてイサームが自分を明らかに「人間として」捉えに来たのでないことは彼の攻撃から予想できた。
対人用とも取れる腐食風なんぞ使えば最悪中身は残らないだろう、生死を問わないといっても死体が
残らねば話にもならない。そして現れた二機が自分を見逃した理由、それは何か。

自分が容易に倒せるからだろうか、それならばむしろその場で終わらせる方が合理的だ、イサームは
何かは知らされていない何かをして自滅し、そして後から来た二人は彼の任務を知らなかった可能性がある。
切り捨てる予定の者に適当な理由を宛てがい当人以外はそれを知らないという訳だ。

根拠は薄かったがそれくらいしか今は思い付かない。そして今一番重要なことは統治権を求められたことだ。
敵は「無駄と知りつつ」言ってきた。引き上げた彼らはジェームズの言い分を承諾したそうだがどこまで本当か
分かったものではない。

(ここはティルネラント領外の無法者のアジト、攻め込まれる理由は事欠かない、ここで仕留められなかった
ことは失敗だったかも知れんでござる)

流石に今すぐは皆疲労が激しいので後で言うことにするが飛陽は思いついた最悪の事態に備えての
対処を練り始めていた。現状で残った問題はただ一つ、新手の男の対応だった。ここで彼の目的を
聞いておかねばならない。皆に後日集まるように告げるとエルトダウンへと向き直り

「それで、お主はどうするでござるか?拙者の首ならまた今度、別の用ならそれはそれ、もし戦闘がしたい
だけとかだったら後で他の機体で模擬戦でもするでござる。機体の整備がしたければそれもして行くと
いいでござる。それで問題がなければ後で一つ頼まれて欲しいんでござるが」

一方的に捲くし立てる返事を待つ。山の天気は変わりやすい、もしかしたらこれは嵐の前触れなのだろうか。

【飛陽 なんとか復活、エルトダウンに質問攻め、色々と考え中】

186 :エルトダウン ◆iGrjUqKhz2 :2010/12/01(水) 13:38:04 0
呆気なかった。エルトダウンは殆どボーっとしていただけである。

"で、これからどーすんだ、エルトダウン?もちろん、資料は取りに行くがここから無責任に逃げだすつもりかァ?"

「ン…そんなワケないよ。私は逃げも隠れも責任逃れもするつもりはないさ。ちゃんと話し合って…」

エルトダウンとファラーシアが今後について話し合っていると、

/いいでござる。それで問題がなければ後で一つ頼まれて欲しいんでござるが」

「まさか。私はそもそもこの戦闘に巻き込まれただけの存在だよ。君の首を取るなんてとんでもない」

"機体の整備くらいはしておくべきじゃねェか?慣れねェ偵察装備だ。ちょーっと見ておくだけでも大分違うと思うぜ"

それもそうだ、とエルトダウン。

「じゃあ、ご好意に甘えるとするよ。少し整備させてもらう。
 けど、そのお願いは聞けるかわからないね。私たちも仕事があるんだよ。とっても重要な」

エルトダウンは正直言ってこれ以上かかわりたくはなかった。今すぐにでも鉄の翼に帰りたかった。
嫌な感じがするのだ。胸騒ぎが。

(N2-ALW…音沙汰無しか。そろそろ動いてもいいハズだぞ、極東支局の変態マニアどもめ)

そう、例の悪魔の話である。極東支部、ジパングにて開発された人間を媒介とする人工精霊"ヌル"の後継型。
もともと、仕事の速さと質には定評のあるASL極東支部。その中でも秘匿中の秘匿を扱うと噂される第2研究局の開発だ。とっくに完成していてもおかしくはない。
むしろ、もう戦場に投入されてると考える方が自然である。
それがエルトダウンの胸騒ぎの原因であった。

どうかこれがただの気のせいであるように、とエルトダウンは思いながら、簡単な機体チェックのためにホロウ・クロウラーから飛び降りた。

【一応あいまいな返事を】

187 :セラ ◆eqAqXE3VMc :2010/12/03(金) 15:24:16 0
フィリップを裏切りアジトの住人になった兵士たちの群れの中。
紛れ込むようにそのピアスの男はいた。
名前はブラッド。金色の短髪に、こめかみから旋毛にかけて雷のようにジグザグな切り込みがはしっている。
両耳で揺れる漆黒のピアスはイサーム・ガラムが身に着けていたものと同じ形。
男は痩せこけてはいたが眼光鋭く、黒曜石を削ってできた彫刻のような筋肉を身に纏っておりとても元敗残兵には思えない。

男は兵士たちの集団から違和なく離脱すると、戦闘によって破壊され広場と化した街の一角で、
飛陽の残骸を調べていたようだったが、お目当てのものは見つからず焦燥の色をあらわにする。
「…チッ!」小さく舌打ちをするブラッド。
彼が目的の物がすでに消失したと諦め、密かにアジトの近くまで迎えに来ているであろう
仲間との合流ポイントに移動を始めようと思った矢先、 灰色の戦車がこちらに接近して来た。
それは飛陽であった。

飛陽はエルトダウンと会話を始める。
飛陽の傍ら。ホロウ・クロウラーから飛び降りた男にもブラッドは見覚えがある。
もちろん直接出会ったことはないのだが仲間のスパイが、
ASLの施設から生きた情報の一部を盗みだすことに成功していたため彼の特徴を知っていたのだ。

そして人口精霊"ヌル"の後継型の存在も…。

飛陽の声を聞き生存を確認したブラッドはニヤリと笑うと
何知らぬ顔で兵士たちの群れに再度溶け込み時を待つことにした。

=夜=

アジトの遥か上空。朧げな月の光と同化するかのように銀色に輝く機体が浮かんでいる。
ラドムームだった。
「このポイントから下降してブラッドという男を回収する。それが今回の任務か。
しかしこの下は山岳地帯のはず。このような所で何をしているのだブラッドと言う男は…」
生命の存在できない虚空。精霊機の中でムラキの独語が宙に舞う。

地上へ下降し始め、雲の底を抜けると眼下に広がるのは寂寥感漂う山岳地帯。
「ん?あれは?隠しアジトではないか?」
機体の足の裏。望遠した重力の底に見えるのは飛陽のアジト。
「今回の指令は親愛なるイサーム卿からの命令ではあるが何かしら腑に落ちん。
なぜこのようにコソコソせねばならんのだ。精霊反応を探知されてはならぬよう
一度世界の外に出て、降りてこなければならんとは…。まことにまどろっこしい!」

月の精霊の加護を受けているラドムームは宇宙空間を移動することが出来た。
それを買われ今は亡きイサームに指名されていたわけであったのだが…。

ムラキはラドムームの精霊炉を停止させパラシュートを開くと、夜の帳に紛れつつアジト付近の岩山に機体を降下させる。
「うむ。定刻通りにポイントへの侵入に成功。あとはブラッドを待つだけか…」

その頃。ブラッドは飛陽の眠るドッグに侵入していた。果たして飛陽が、眠るのかどうかは定かではなかったが。
ブラッドはジェ二ファーが入り込むであろう機体部分をそっと抉じ開け闇のピアスを掌に乗せ念じる。
念動を受けたピアスからは無数の黒い触角が生え、それは飛陽内部に侵入しあるものに触れると、
その情報を抜き出しどこかへ送信した。

「本当は擬似人格システムそのものを回収したかったんだが仕方ねぇ。データだけを抜き取らせてもらったぜ」
ブラッドはそう言い残すと外にいるムラキと合流して飛陽のアジトをあとにする。

ロンデニオンとの戦線辺りまで移動し安全を確保したラドムームの中。
ブラッドはムラキに伝えた。
イサーム卿がセラや飛陽たちによって討たれたということを…。
「なんとぉおぉ〜…」
友人のイサームの死に、顔面を震わせ怒りに燃えるムラキの両眼。
激しいムラキの怒りを感じ、ブラッドは心の中でほくそ笑んでいた。
【今回は伏線回収のお話でした】

188 :飛陽 ◆fLgCCzruk2 :2010/12/03(金) 21:35:55 0
「ふーむ、二十年近く前のデータ、でござるか」
周囲の人々がまだかろうじて無事な建物や基地へと避難して夜を過ごしている頃、飛陽はドックで
客人の話に耳を傾けていた。

「拙者が作られたのが二年といくらか前でござるから流石に知らないでござるなあ。
破棄されてたここを使い回しちゃいるでござるが、その前にも何度かここにはASLや野盗が入ってた
んでござる、売り払えるものは殆どなかったから前任者が黙って持ってったんじゃござらんか?」

ただ、と飛陽が付け加える

「初めてここの機材を技術部にイジらせた時、中身が初期化されてたんでござる。そのままでも
なければ再起不能でもない。何か変だなとは思ったんでござるが、あ!思い出したでござる!
なんかものものしい記録用紙が隠してあったんでござる。日記もあったんでござるがどっちも血とか染みが
あって祟られてそうなので麓の沼地に祠を建てて祀ってあるでござる」

中身は見たら襲われること請け合いだろうから見ていないと念を押しておく。こういう日頃の心がけが
大事である。ちなみに正体はバレてると思ってるので自分からバラしてしまっている。

「まあ後日山を降りたら探すといいでござる」
そこまで話すと今度は頼みの件に移る。
「で、さっき言った頼みなんでござるが簡単でござる、近々また一戦ありそうだからその時に
こちら側に付いて軽く一撫でして欲しいと言うんでござるよ」

どうにもこのまま済ませてくれる手合いとは思えない。もしも大規模な戦闘がここで起こったら
今度こそどうにもなるまい。

「まあ逃げる分にはそれほど問題がないので文字通りその暇があればでいいでござる」
互いに要件を伝えその場は解散する。そして時間は皆が寝静まった夜へと移る。

(さて、明日から大忙しでござるな、皆を別のアジトへ一度移してそれから、む?)
何者かがドックへ入ってくる。自分に乗ってジェニファー用のコクピット(というより戸棚)をこじ開け何かを
飛陽に入れる。当のジェニファーは街の除染作業のため今は畑に植わっている。

(なんぞ拙者でも乗っ取ろうというんでござろうか、何にせよまだ仲間がいたようでござる)
敢えてなすがままでいることで、相手の行動を観察する。何かはよく分らないが自分と同調した何かが
どこかへ自分の情報を送信しているらしい。

189 :飛陽 ◆fLgCCzruk2 :2010/12/03(金) 21:39:05 0
>本当は擬似人格システムそのものを回収したかったんだが仕方ねぇ。データだけを抜き取らせてもらったぜ

深夜の曲者はそう告げるとどこかへと去っていく。彼らの狙いはやはり機械としての自分だったのか。
(なるほど、機体のシステムに同化することでセキュリティに引っ掛からないのは大したものでござるが、
それはつまり自分から送信してるってことでござる。送り先は・・・ふむふむ)

飛陽が「自分から」そこへ同じように自分の情報を送信すると直後に異物が持っていた宛先が消失する。
しかし二度目の自ら送信した履歴は飛陽の中に残ったままだ。ギリギリ間に合ったようだ。

(相手に取り憑いて頭の中を覗いてる最中、それを相手が自覚して逆に自分を覗き返しているとは夢にも
思わんでござろう、同じ穴の狢がミイラになるとは正にこの事)
飛陽も飛陽で強引な乗っ取りには同じ手を使うことが無いわけでは無いので大した驚きはなかった。

送信先に極めて単純なウイルス(開けると同じデータが次々開かれる類のもので防がれると形を変える)を
送ると飛陽は目の前の選択に頭を悩ませた。

(とりあえず朝になったら皆を他のアジトに移す、これは決定。ではその後は?この送り先に乗り込むか、
それとも来るかどうかわからない敵を待つか・・・)
攻めるなら一刻も早く行かねばなるまい。その場合守りがいない以上このアジトは敵襲があった時に落ちる。
守るのなら飛陽のデータはそのまま明け渡すことになるだろう。どうすべきか。飛陽は決断した。

「巧遅拙速に如かず、でござるか」
翌朝、飛陽はアジト内の者に「念のため」と言いここから離れたアジトへ移るよう言い渡し撤収させると
ジェームズ達に鉢に分けたシシミアや他の農作物の苗を持たせ基地から退去させる。

そしてセラ達に自分がこれから帝国領内にいるであろう先日のシュバリエの乗り手と繋がりのあると覚しき者
の元へ向かう事を告げた。
(敵の場所は帝国領内、敵の名前はメドラウト、それだけ分かれば充分でござる)

【飛陽 一度基地を放棄し送信先へ乗り込もうとする】

190 :フィリップ ◆i3/u6CmHbc :2010/12/03(金) 22:59:04 0
【ストロベリーフィールズ、第3軍団本営】
迎えに来たシュバリエのうち一機に同乗して第3軍団に帰ったフィリップはアレス将軍から呼び出しを受けた。

赤い髪に精悍な顔立ちのアレス将軍は30代半ば。軍団を指揮する将軍としては異例の若さで、王族を除いた軍団指揮官の最年少者である。
「フィリップ卿、ご苦労だった。君のおかげで不純物を多少なりとも減らすことができた。礼を言う。」
ここで言う不純物とは、生まれながらのティルネラント人ではないティルネラント軍人を指す。

(これがメドラウト卿の側考え方なのか)
あの日、アーサーからフィリップに渡されたのはシュバリエだけではなかった。
アーサーが「この国の闇」と呼んだ宮廷、議会、そして軍を巻き込む派閥抗争に関する資料もフィリップの手に渡った。

191 :フィリップ ◆i3/u6CmHbc :2010/12/03(金) 23:15:52 0
それによると、今ティルネラントの上流階級の間にはいくつかの派閥があって、そのうち一つを率いているのがメドラウト卿とのことだ。
派閥抗争による弊害の一つは特定の派閥による情報の独占を引き起こす点にある。

アレス将軍がムラキの手に入れた飛陽の人格システムの解析を軍全体で行うのではなく、第3軍団だけで行うと決めて
それに対する援助のためにフィリップを使者としてАSLへと派遣したのはこのような背景があったのである。

【飛陽の人格システム解析のためアレス将軍がフィリップをАSLに派遣】

192 :エルトダウン ◆iGrjUqKhz2 :2010/12/04(土) 01:07:45 0
/「ふーむ、二十年近く前のデータ、でござるか」

「そうなんでござるよ」

戦場で出会った彼―飛陽というらしい―と完全に打ち解けてしまったエルトダウン。
ふざけて彼の独特な口調を真似する。

/あって祟られてそうなので麓の沼地に祠を建てて祀ってあるでござる」

"おうおう、そりゃあ良かったぜ。祀るってこたあ、即ち保管するとほぼ同義だからなァ"

ファラーシアは相変わらずの態度であったが、
飛陽の話を聞いているエルトダウンは真剣であった。
もしも中身を見ていたのならば……ASLのマニュアルでは飛陽を始末しなければならなかった。
だが、幸い彼は見ていないようだ。胸を撫で下ろすエルトダウン。

/「まあ逃げる分にはそれほど問題がないので文字通りその暇があればでいいでござる」

"ハハハ、そんなに緩くて良いのかァ?まあ、資料の件もあるしな。
 俺らからしてみりゃあ廃棄されてるもんだと思ってたからなァ。そんくらいはお安い御用よォ。な、エルトダウン?"

「うん、そうだね。ASLじゃあ指令を受けてない戦闘に介入するのはかなりタブーだけど、今回くらいは良いだろう」

ASLも案外緩いな。ファラーシアはエルトダウンの言葉を聴いてそう思っていた。

――その頃、鉄の翼ブリッジ

『アルヴェリヒ艦長代理。例のティルネラントの使節はどう処理したので?』

鉄の翼で待機していたサイアニス。アルヴェリヒは手に持った書類に目を通している。

[フム…スパイの可能性も捨てきれない。事実、過去に何度か空き巣にはあってるワケだし。
とは言うもののもはやASLも各方面で分裂状態。極東のN2がある以上…な。
どうやらフィリップ…と言ったか、彼も精霊機乗りらしい。いざとなれば加勢してもらえばいい]

その知らせは明朝、突然に届いた。
相手はティルネラント。とある高性能のシステムの共同研究を申し立ててきたのだ。
勿論、そのシステムはある程度ASLにも渡る手筈になっている。そうでなければ共同研究など受け入れるわけが無い。

更に言えば、各方面の研究局の技術力との差別化を図る為でもあった。
極東方面は既存の技術の応用力がずば抜けて高い。
南方面では地道な作業に定評がある。特筆するならばその蒸気機関である。
他のどの研究局よりも効率的で低コストの蒸気機関を開発したのもASL南部支局だ。その一部はホロウ・クロウラーにも流用されている。
極北方面はもはやASLとは別の組織である。北極点の環境保全のために日夜努力しているらしい。

そこで西部支局は独自の技術の発展をスローガンにすることを決めた。
既にランページ・アトモスフィア等の独自機構の開発に成功している。独自力で攻めるしかない。

『例のヤツも、すでにこちらに輸送されたと聞きます。もしも我々と接触して来たならば…艦長代理、貴方ならどうしますか?』

[私かい?私ならばN2を使って、生意気な西部支局を技術力ごと武力で接収するね。もしくは、完膚なきまでに叩き潰す。君は?]

冷酷に、それでいて楽しそうに言う。ああ、この人もASLの人間なのだとサイアニスは思う。

『私ですか?……私にはわかりません。私は使うよりも使われる側、駒のほうが似合っていますから』

【エルトダウン、飛陽の提案を受け入れる】

193 :セラ ◆eqAqXE3VMc :2010/12/04(土) 17:04:36 0
翌朝。朝の湯浴みを終えたばかりのセラが、宿舎の窓辺でほてりを冷ましていると飛陽が来た。
彼は、先日のシュバリエの乗り手と繋がりのあると覚しき者の元へ旅立つことに決めたらしい。

「ありゃ?その送信された場所って座標軸からすると白亜の塔じゃない?真っ白くて大きな塔が廃墟の真ん中に一本そそり立っているの…
私も子供の頃行ったことがあるんだけど不気味ところよ。もとは聖都として繁栄してたとこらしいんだけど今じゃ王族の墓所みたいになってる。
場所はストロベリーフィールズの東。ちょっと足をのばせば海。そのむこうはジパングってところ。
それと、その都には王族以外足を踏み入れてはならないと言う掟があるの。まあ、理由はわからないけど気にすることじゃないかも。
古代王族の末裔たちが特別感を出したいだけに決まってるから…。でも誰もいないはずの場所に送信されたとか気持ち悪い…。
幽霊にでも送信したのかしら…」

セラはそそくさと着替えて愛機に乗り込むと飛陽を追いかけながら話し続ける。

「ストロベリーフィールズにはアレス将軍が駐屯しているから下手に動いたら斥候に見つかって面倒なことになると思う。
でも禿山から少し下って大陸を横断してる峡谷を使ったら、逆に近道になると私は思うんだけど、どう?
谷沿いにもいくつかの街はあるから補給にもことかかない。まー補給する必要もなく白亜の塔まで直行出来ると私は思う…」

セラの言う峡谷とは古の時代巨神が大地を斬って造られたと噂される大峡谷。谷底に水はなく荒地ではあったが戦車なら走行可能だろう。

【中途半端になってしまってごめんなさい。お話を進めていただいても結構です】

194 :セラ ◆eqAqXE3VMc :2010/12/05(日) 19:21:56 0
=ストロベリーフィールズ近郊、第三軍団本営=

飛陽のウィルスによって白亜の塔にはデータは送信されなかった。
現在、データが存在する場所は飛陽本人と、直接飛陽と邂逅を果たしたブラッドの闇のピアス。
しかし闇のピアスはムラキのもとからアレス将軍の手に渡りフィリップのもとへ、
終いにはASLの手に渡ることとなった。それは何故か。

ムラキはイサームの友人ではあったが、その前に一人の武人。
ブラッドの行動を不審に思った彼はブラッドをアレス将軍の前につき出したのである。

「血を流すことを恐れぬ者だけが覇道を歩むことを許されるのだ。賢しい宮廷の老人たちにその資格はない」
本営から東の空、白亜の塔の方角を見つめながらアレス将軍はひとりごちた。

195 :エルトダウン ◆iGrjUqKhz2 :2010/12/05(日) 19:59:40 0
――ASL極東方面第2研究局・特別研究用区画

ジパングにASLの前身となるTU(※)が創設されて以来、ジパングではジパングに古来より伝わる伝説、
"鬼伝説"を再現しようと試みてきた研究者達がいた。

196 :エルトダウン ◆iGrjUqKhz2 :2010/12/05(日) 20:21:49 0
彼らはASLの総合研究局との併合を拒み、独自に精霊機の開発を進めていたのだ。

TU時代、精霊機の研究・大量生産が盛んだった頃の負の遺産、
製造ナンバー"キ-零壱『鴉天狗』"ならびに"キ-零弐『酒呑童子』"。
それらがある日、突然、特別研究用区画ごと忽然と姿を消していたのだ。
もちろん、そこに居た研究員ごと、文字通り消滅してしまった。

その謎の怪事件は迷宮入りしたままであった。
しかし、その二機の精霊機があれから数年経った今、発見された。

――鉄の翼

[フム…南部支局からの救援要請と同時に送られてきたこの写真だが…]

『コイツらですか、南部支局の管轄領を荒らしまわった所属不明機は』

鉄の翼のブリッジで、送られてきた情報を見ながらサイアニスとアルヴェリヒが会話している。

[TU時代の遺産だ。あの頃は制御する、という概念自体我々には無かったからな。
大火力、大出力。どう考えてもオーバースペックだ。
どうやらあの頃は、ただ作って放置、研究者どもの完全な自己満足だったらしい]

禍々しいその姿。ジパングを代表する妖怪に相応しい圧倒的な破壊力。
犯人は分かっていた。ASL極東支部、そして恐らくそれらの精霊機はN2-ALW計画によって生み出された物。

『南部支局の3分の2が灰になったのも無理は無い…か。しかし驚きました。まさかヌルの後継型機体が"2つ"も存在するなんて…』

はぁ、とアルヴェリヒが大きな溜め息をつく。隣に座っていた通信官に耳打ちをする。

[ともかく、エルトダウン君と連絡が付き次第、すぐに呼び戻す。
言いたくないが、君一人ではコイツらを止めることはまず無理だ]

『……わかっています。…ですが、彼と共同でも東の最新技術によって改装されたこのような"鬼"を相手にするのは…』

当たり前だ。旧世代の機体ならば基本スペックは最新鋭の機体であるホロウ・クロウラー、シュヴァルツ・ヴァルトには及ばない。
しかし、南部支局からの情報を見る限りでは、その殆どが最新の技術に取り替えられているようだった。

[安心したまえ、サイアニス君。我々には無人兵器"黒い風"がある。それに、ティルネラントもローガンブリアも放置はしまい]

激しい戦闘になるぞ、と最後に付け加えるアルヴェリヒ。

『どちらも有人機。搭乗者が気になりますね。これだけ高濃度の精霊力を直で浴びて無事で済むとは思いませんが』

[ともかくいつでも出れるようにしておいてくれたまえよ。整備は怠らないように]

【ヌル2が2機存在する事が判明。そろそろ本格的にN2ルートに入らせてもらいます】

※TU(技術研究共同体、テック・ユニオン。後にASLとなる組織)

197 :飛陽 ◆fLgCCzruk2 :2010/12/07(火) 19:48:02 0
白亜の塔、王国と帝国を巡る情勢がまだ穏やかであった頃、戦乱の以前に建てられたティルネラント王族の
霊廟である。国交があった時は定期的にそれぞれの交流の場としての役割も持っていた。それ故に
ローガンブリアの領内にあったのだが、最近ではいよいよ顧みられることもなくなった場所である。

「ふむ、つまりは限りなく王国領に近い帝国領ということでござるか」
道を進みながら飛陽がうなる。エルトダウンはと言えば祠の方へ回っているので
合流は多少遅れるかも知れないとの事だった。ちなみに今はシュバリエにボロボロにされた事を受けて
新しい緑系の迷彩のが施された新しい体に換装していた。

そんな中にスパイらしき人物が兵器の情報を送るとなれば後は予想がつく。
墓地を秘密裏に何らかの研究施設へと改修している可能性が高い。
(存外バチ当たりな話でござる。まあ拙者には関係ない話でござるが)

血のついた紙媒体に恐れをなして丁重に祀っておきながらそんな風に考える。
これから他人の墓で戦闘するかもしれない事を思えばまずバチが当たる筆頭はコレなのだが。
進路を登録されている地図と照らし合わせているとセラから説明が入る。

谷底を行けば見張りに見つからずに安全に行けるだろうとの事だったが飛陽は乗り気でない。
このまま敵に見つかったまま目的地まで追われた方がいい気がしているのだ。それというのも

「いや、拙者はこのまま真っ直ぐ見つかりながら行くでござる。注意がこちらに向けばまず間違いなく
お主は見つからんでござろう。それに後から客人もやりやすいはずでござる」
そう言うと進路を変えずに直進する。

もちろん何の考えもなくこんな発言をしているわけではない。最悪目的地の兵と挟み撃ちに合う危険は
あるが、国境付近の軍が自国内にある、相手側の霊園に殺到し戦闘まで起これば嫌でも帝国軍は
こちらに来る。あとは戦闘さえ起こしてしまえば乱戦に乗じて逃げる機会が生まれる。

自分たちと相手しかいない状況を、飛び陽炎は極力避けたかった。
「人気の失せた所には、やはり鬼か蛇か人しか住まないでござるよ」
大地を踏みしめながら、飛陽はごちた。

【飛陽 自分は直進してセラに別ルートからの進むことを提案】

今回の飛陽の変更点 装甲と耐久力がBに トリモチと撒菱が別れたので一両目の背部に
撒菱ランチャー装着 二両目背部の砲台がトリモチのみのランチャーになりました。

198 :セラ ◆eqAqXE3VMc :2010/12/09(木) 16:33:31 0
廃墟と化した街の中央。人間を見下すかのように、聳え立つ白亜の塔。
白い外壁は何千ものアーチ状の窪みで装飾され、その一つ一つの窪みには、
塔を外敵から守護するかのように武具を纏った「巨像」が起立している。

塔の内部は見た目とは真逆に漆黒の虚(ウロ)で満たされており
主のいないはずの闇に複数の声が響き渡る。

「我々のもとに送信されてくるはずの情報はウィルスによって破壊された。そこまではいい。問題はそのあと…
アレス将軍はフィリップと言う者をASLに使いに出しピアスにバックアップされている情報を何食わぬ顔でASLに引き渡したのだ。
その行動は明らかに我々を愚弄している!」

「よもや我らの目的に彼奴は気づいておるのではあるまいな?それならば第三王子のように消えてもらわねばなるまいて」

「いや。消すにはまだ早い。まだ我らには手足となって働くものが必要じゃ。
それに彼奴は王国一の機動力を誇る大三軍によって守られておるのじゃぞ。容易い敵ではない。
下手に尻尾を見せてしまえば噛み付く口実を与えてしまうことになるじゃろう。
彼奴がストロベリーフィールズに駐屯しておるのはジパングに侵攻するためではなく、我らを牽制しておるのかも知れぬ」

「ならばジパングに潜伏している闇の下僕たちを早々にASLに侵入させピアスを取り戻さねばならんな。
我らには我らの擬似人格システムの利用法がある。あれが手に入りさえすれば我らは絶対的な力を手に入れることが出来る。
そうなれば王国軍も帝国軍も纏めて蹴散らすことができるのだ!」

この時。虚に潜む声の主たちはASLや飛陽の行動を知るよしもなかった。

199 :セラ ◆eqAqXE3VMc :2010/12/09(木) 16:34:11 0
>「いや、拙者はこのまま真っ直ぐ見つかりながら行くでござる。注意がこちらに向けばまず間違いなく
>お主は見つからんでござろう。それに後から客人もやりやすいはずでござる」

(うー。嫌われちゃった?残念。相手は機械なのに…なんだかふられたみたいな気持ち)
ふと飛陽の言葉を思い出しながらセラが操縦桿に力をいれると峡谷をぬけた。白亜の塔は目と鼻の先だった。
「何が起こるかはわからないから警戒してねアロル」
「……」追従するアロルからの返事はなく替わりに衝突音が峡谷に鳴り響く。
音のした方向を見れば峡谷の岩壁に衝突し煙をあげているアロルの機体がある。損傷は軽微だが様子がおかしい。
まさかと思い互いの機体の胸部を合わせ胸郭を開き精霊機の中を確認すると、大汗をかいてぐったりしているアロルがいた。
彼の額に手をあて熱を確認するとまるで焼け石のようだった。
「大丈夫!?すごい熱じゃない!!ど、どうしよう…。えっと…ここから一番近い街は…
ジパングしかないわね。はやく治療しないと!」

=ジパング・ティルネラント大使館=
アロルの病状は深刻だった。大使館の医師の話では命の危険があり、
数日以内に特効薬を飲ませなくてはならないということだった。
大使の話によると、旅の薬売りが特効薬をもってASLにむかったということだったので
セラは予定を変更してASLにむかうことにした。

=ASL施設内部=
フィリップは廊下で少女とすれ違う。
「おにぃさん。元気のでる薬いらんあるか?」
ASLに使者として派遣されたフィリップに気安く話しかけてきたのは中国風の少女。
チャイナ服姿で背中に薬箱を背負っており、一見、薬売りの少女のように見える。

「これ飲んだら高濃度の精霊力にも耐えられるあるよ。暴走した精霊力のなかでも毒されないある。
元気百倍あんぱんまんある。ほんとあるよ。リーフイせっかく遠くから来たのにASLの人、
薬がいらないかもしれないと言ったある。話が違うある。リーフイは呼ばれてきたあるよ。責任者呼ぶある!」

リーフイはぷんすか怒りながらフィリップについていく。

「おにぃさ〜ん、ティルネラント人あるね?ティルネラント人はお金持ちあるから、この薬を買うあるね〜」
背中から抱きつきフィリップの首に手をまわすとリーフイのその手には小さなナイフが隠されていた。

「アレスの犬め。闇のピアス渡すある。渡さなければ首と胴が別々に故郷に帰ることになるあるよ。持ってないって言うなら今すぐ殺すある」
肌蹴たリーフイの胸元には黒い宝石のペンダントが見え隠れしている。

200 :セラ ◆eqAqXE3VMc :2010/12/09(木) 16:36:02 0
地を這うように進む精霊機を先頭に数機の精霊機の集団が進行している。
ラドムームのムラキであった。
「飛陽…か…。あの時、偶然出会ったものが、これほど深く我が人生に侵食してこようとは…」
隊の両翼を守りながら疾走する戦車型の精霊機は数日前に飛陽から購入した代物である。

ムラキには飛陽討伐の命令がおりていた。
何故ならアレス将軍は、データを回収出来なかったメドラウト卿が
オリジナルの飛陽の健在を知れば再び彼を狙ってくると考えたからである。
ならばオリジナルを破壊してしまおうと一度交戦経験のあるムラキ隊が送り込まれることとなったのだ。

「ムラキ隊長!!シュバリエから飛陽発見との連絡が入りました!!場所は白亜の塔から西へ5キロ地点。
聖都に進入されたは厄介だと、こちらの合流を待たず空爆を開始するとのことです!!」

「なにっ!!?貴族がなめたマネを!!イサームの敵を討つのはこのオレだ!!」
ラドムームの眼光が血塗られた月光のように妖しく光る。

そして飛陽。

天空から飛来し、糸で結ばれているかのように飛陽に直進していく誘導弾は二機のシュバリエが放ったものだ。

「我らは貴族ゆえ…。聖都での戦闘は好まぬ。古の王族への香華として墓前で散ってもらうぞ飛陽…」

【セラ:ASLに向かいました】
【ASL施設内でフィリップさんがメドラウト卿のスパイにナイフを突きつけられました】
【飛陽さんは白亜の塔から5キロほど離れた地点でシュバリエから空爆攻撃されました】

201 :フィリップ ◆i3/u6CmHbc :2010/12/10(金) 00:19:14 0
<ネージュ視点>
ネージュは少し不機嫌であった。
ASLに来てからフィリップに急に女運が向いてきたような気がするのだ。
鉄の翼でフィリップを応対したサイアニスという女性はいかにもフィリップの好みそうなタイプであったし、
施設に来てからも(油断させるための罠という可能性はあるにせよ)基地の女性たちから好意的に見られているようである。

ネージュにとって、これはかなり重大な問題であった。
過去の主の何人かは、特定の女性を愛するあまり、それまで彼らを守護してきたネージュを遠ざけ、非業の死を遂げているからである。
それゆえ、今日もネージュはフィリップのあとをつけ、主が変な女に引っ掛からないよう、見張っていた。

チャイナ服姿の少女がフィリップに声をかけたとき、ネージュは彼女のことを気にも止めなかった。
(しつこい女を主は好まない。この女は警戒しなくてよいか)
しかし、その少女に対する侮りは数瞬後には怒りに代わっていた。

「小娘が、私の主を脅すとはいい度胸ではないか」
物陰から出たネージュはりーフィに向けてこう言い放った。

【ネージュ、りーフィと対峙】

202 :エルトダウン ◆iGrjUqKhz2 :2010/12/10(金) 02:15:57 0
/「小娘が、私の主を脅すとはいい度胸ではないか」

[困るねえ、勝手に入り込んで、そんなことしてもらっちゃあ。
んああ、私の名前はアルヴェリヒ・ツィーゲ。フィリップ君だったね。その者は知り合いかい?]

フィリップと謎の女が対峙しているところに偶然通りかかったアルヴェリヒ。
艦長だが、あくまで代理であり、航行技術もそれほど真剣に学んだわけではない。
故に彼、アルヴェリヒはオートパイロットシステムに任せて自分は鉄の翼内をブラブラすること多いのだ。

[ン、そこのレディ。知ってるか?ASLではちゃんと認可された人間じゃないといかなる施設にも入れないことになってるんだよ。
どこから潜り込んだのかは知らないけど、薄汚いネズミは死刑にしなければならないってマニュアルに書いててね。死刑だよ、わかる?]

とは言うもののASLの殆どの施設の管理はずさんである。
時たま、コソ泥や物乞いが入り込んでくるのだ。もちろん、毎回マニュアル通りの適切な方法で処理される。

[えーっと、とりあえず身分証明書に当たるものを5秒以内に掲示してもらおうか。
理由があるなら10秒まで待ってあげるよ。コンマ1秒でもオーバーしたら君の頭に穴が開くと思っていてくれたまえ]

フフッとアルヴェリヒは不敵な笑みを浮かべると、腰から回転式拳銃を取り出し、二人に向けた。

[さ、早くしたまえ。時は有限だ。このように浪費するものではないと、私は思うがね。
ああ、それとここでは君たちの国の法は通用しないと思っていてくれたまえ。では、よろしく]

そうして、やや怒り気味にチャイナ服姿の女に言った。

――ジパング・極東支部第2研究局・エントリーロビー

「ダメだ。我々は薬屋ではない。帰るんだ」

ジパングの研究局はずさんなASLの中でも割と水準の高い警備体制が敷かれている。
守衛の男は突然「薬がほしい」と言ってきた女を追い返しているところである。

「薬売り?そんな人間は来ていない。薬ならば街の薬屋を訪ねろ。そこに薬が無ければここに持ってくることだな。被検体は一体でも多いほうがいい」

そうして軽く守衛があしらっていると、その女は大使館から渡されたであろう書類を突きつけてきた。

「大使館のお墨付きか。異国の要人か、それとも観光客か…?フン、良いだろう。薬売りは来ていない。
 これは本当だが、もしかすると研究員の中に特効薬を持っているか、製薬できる人間がいるかもしれない」

極東支部はASLの中でもかなりイレギュラーな存在だ。国家に帰属しないASLだが、ジパングとの関係はかなり親密だ。
その大使館からの令状付きなのだ。関係保持の為にも薬を手配しなければならない。

「少し時間がかかる。ここで待っているか、もしくは街医者を訪ねてみろ。その判断はお前に任せる」

その守衛の男の言葉は少々キツかったが、どこか優しさを含んでいた。

【アルヴェリヒ:チャイナ女とフィリップに銃を突きつけて、身分証明を要求。
 ジパング:セラに待つか街医者を訪ねるかを迫る】

203 :セラ ◆eqAqXE3VMc :2010/12/11(土) 16:48:13 0
>「小娘が、私の主を脅すとはいい度胸ではないか」

「ふん。おまえ、こいつの精霊あるね?女もスパイも度胸が肝心ってことあるよ」
主の命がリーフイの手に預けられている以上、ネージュが手を出せないことは容易に推測できる。
が。そこに現われたのはアルヴェリヒ・ツィーゲ。

>[さ、早くしたまえ。時は有限だ。このように浪費するものではないと、私は思うがね。
>ああ、それとここでは君たちの国の法は通用しないと思っていてくれたまえ。では、よろしく]

(こ、こいつ…まじあるか!?あの目はまじあるね!)
「かまーん!!シャウロン!!」
リーフイが叫ぶと廊下の天井の通風孔の蓋がガランと落ち、ぬるりと大蛇のような精霊が顔を出した。
否。大蛇というよりも頭に角を生やし爛々と燃える大きな両眼は伝説の龍を想起させる。
グワッ
その場にいる者を威嚇し開いた真っ赤な口からは、突如高濃度の霧が噴出されると周囲の視界を奪っていく。

霧にまぎれリーフイはしゃがみ込むと犬よりもはやく廊下をひたひたと走り猿のように通風孔まで跳躍する。
ボゴン!背中に背負っていた薬箱は狭い通風孔の入り口にぶつかって木枠や引き出しからバラバラに砕け散ったが、
本人は通風孔の中に潜り込むことに成功し外部に逃走することにも成功する。

「失敗ある!結局ピアスは手に入らなかったある!」
半べそでASLから飛び出して来るリーフイにセラが気がつくのに時間はかからなかった。
「あの子。見るからに外部の人間だし、いかにも薬売りって格好してる…」
それは、先ほどASLの職員に待つか街医者を訪ねろと言われたセラが待ちきれずに精霊機に乗ってジパングに帰ろうとした時のこと。

セラは逃げるリーフイの眼前ににドーンと精霊機の足を落す。
「あなた薬屋さんでしょ?万能薬をもってるでしょ?」
「ビックリしたある!万能薬なんてもうないあるよ。でも作るのは簡単ある。シシミアの実をすり潰すだけでいいある。
わたしは先を急いでいるある!どけある!しみたれおんな!」
「そ、それを言うなら、しみったれでしょ!私はしみったれでもないんだけど。しみたれは汚らしい…」
いつの間にかリーフイは消えていた。少し離れた所から東洋風の精霊機がもの凄い速さで飛んでいく。
「なんだか一人でばたついてしまっているみたい…。なるほど。シシミアの実って飛陽さんのアジトになっていたやつね。ジェームズさんが育てていた珍しい実…。
ほんとにもう運がいいのか悪いのかわからないわ。それってすごくいい香りがしたから、貰ったのものを私の操縦席に置いてあるんだよね」

セラは大使館に帰りアロルにシシミアの実を潰して飲ませた。医師の話では数日も安静にしていれば体力も回復するそうだ。

【リーフイ逃げました】【セラはジパングの大使館に帰りました】

204 :飛陽 ◆fLgCCzruk2 :2010/12/11(土) 17:36:06 0
目的地までもう少しという時に限ってトラブルは起こるものである。
セラの連れの少年が熱を出したというのだが症状は高山病のものに近い。ストロベリーフィールズ付近特有の風土病で
村やアジトに薬はあるだろうが大分離れてしまっていた。

それにしても山を離れてから発病するとは何とも間の悪い男だと飛陽は思った。
セラが少年を連れて街へと引き返す姿を見送ると、飛陽は構わず目的地へ向け出発する。

程なくして大きな白い塔が見えてくるのと、それと同時に複数の機影が自分へと
向かってくるのが分かったのはほぼ同時である。空を飛ぶ機体は先日見たシュバリエ、
そして今大地を蹴立てて迫り来るのは・・・

「おや、拙者をお買い上げ頂いた方々ではござらんか」
アジトが襲撃された次の日、飛陽に襲撃という名の売り込みをかけられた駐留部隊がそうとは知らずに
購入していった機体が確かにそこにあった。

構造は人が乗るコクピットが追加され武装もティルネラントの聖霊機が使う機関銃が取り付けられている他
鉤爪でなく正面に盾が据付られている。動きがぎこちないのは慣れていないのかはたまた
一人乗りで他の車両に操者がいないせいか。

当然だが車両の一つ一つは一機の聖霊機よりも撃たれ弱い。飛陽のようによく動くならそれなりの
適性と訓練が必要となる。一車両一人に乗っているとなれば人的な被害は膨れ上がるだろう。
そのため本体以外の車両は自動操縦にできるよう設定できるのであるが、この設定も弄った側の技術に
よるので一定の戦果を出すのは難しい。

とはいえ飛陽からすれば一番攻撃が当たりやすい高さなので相性は良くない。売り方と飛陽という
機体を考えれば、売った後日に戦場で出くわすことも珍しくはない。そもそもあまり売れないが。

「ふむ、新型に拙者にいつかの隊長格、拙者窮地でござるがここまで警戒されるとは、
拙者の知名度も中々のようでござるな」

場違いな感動を覚え胸を熱くさせていると自分へと空爆が始まった気付く。もとより直線であまり速度のでない
飛陽が弾を振りきれる訳もない。その場で急停車して砲塔を誘導弾へと向ける。
自分が留まることで弾の進路は単純なものとなる。

空中から飛来した誘導弾は僅かに角度を修正しながらこちらへと迫ってくる。作りたての撒菱ランチャーから
起用にも一発ずつ弾を撃ってこれを迎撃すると辺りを伺う。

「皆さんお揃いでござるな、できればここを通して欲しいのでござるが」
様子見を兼ねてこちらから声をかける。白亜の塔の目前で、三者まんじりともせず睨み合う。

【戦闘開始 飛陽 呼びかけを行って様子見の構え】

205 :セラ ◆eqAqXE3VMc :2010/12/12(日) 16:39:24 0
遠くに見えるのは暗雲を背景に白い塔が亡霊のように浮かびあがる姿であり
その足元は数百年間もの間、人の住まなくなったがらんどうの建物で埋め尽くされている。

今、戦場となるのは元聖都から僅かに離れた大地。春の海の波のように緩やかな丘が連なり、波間に浮かぶ船のように大岩と林が、
それぞれ遮蔽物と死角を生み出している。丘の合間を縫う様に小川や池なども存在し地上戦を挑むには多彩な土地と言えよう。

相殺された誘導弾の残骸から立ち昇る煙を追って空を見上げれば、
頭上を二機のシュバリエが獲物を狙う鷹のようにぐるぐると旋回している。
表向きは飛陽討伐。だが実は飛陽オリジナルの人格システムを破壊しメドラウト卿に渡ることを阻止すること。
ブラッドと言うスパイの捕獲はこれほどまでに急激に事態を折り曲げていた。

アレス将軍もメドラウト卿もことの全容が明るみに出れば王国そのものを敵に回してしまうことになる。
この戦いは覇権を奪うための言わば裏工作。渦中にいる飛陽はたまったものではないだろうが。

>「皆さんお揃いでござるな、できればここを通して欲しいのでござるが」

ラドムームは小高い丘に立ち、持っていたティルネラント旗を地面に突き刺す。

「どこへ向かおうとしているのだ飛陽?メドラウト卿に金で雇われでもしたか?」
ムラキは問う。目星はついているが証拠はない。適当に鎌をかけたつもりだった。
飛陽にとっては意味不明な質問だろう。
「軽率な口は慎めムラキ」とシュバリエから声。
「慎んでいただきたいのは貴公らのほうだ。飛陽討伐は我らに直々に下された命令。
横槍は止してもらいたい。最新鋭のシュバリエ二機が賊一人を相手に動いていると見えては白亜の塔の老人たちに訝しまれますぞ」
「……。そうか。ならば我らシュバリエは、空から貴下たちのお手並みをゆるりと拝見することにしよう」
「ありがたい。ムラキ隊の戦いぶり、とくとごらんめされい!」

両翼の戦車隊から機関銃が放たれる。陣形は地形を利用したものではなくあくまでも隊形を優先したもの。
左右から掃射される弾丸の交点には飛陽。つまり飛陽は十字砲火を受けることになる。
真ん中の本体の精霊機隊はというと飛陽の砲撃を警戒しながら盾を構え間合いを詰めていく。
先の戦闘よりも防御力が向上していると判断したムラキは近接戦闘による斬断が有効と判断したようだ。

【シュバリエは静観】
【戦車隊が右翼左翼から十字砲火。真ん中の精霊機隊が盾を構えながら接近中。真ん中の本体の後ろにムラキのラドムームが追走】

206 :フィリップ ◆i3/u6CmHbc :2010/12/12(日) 23:37:15 0
>エルトダウン氏
<フィリップ視点>
リーフィから解放され、強ばっていた身体から力が抜け、倒れそうになるのをネージュが支え、なんとか態勢を整える。
(できるだけ、動揺していることを隠すようにしなければ)
「お初にお目にかかります。アルヴェリヒ殿。ティルネラント王国軍第3軍団所属、フィリップ・アルザスです。
これが私の身分証明書です。ご覧になられますか?」
そう言って、フィリップは自分の身分証明書をアルヴェりヒに差し出した。

【フィリップ、アルヴェリヒに身分証明書を差し出す】

207 :飛陽 ◆fLgCCzruk2 :2010/12/16(木) 18:35:27 0
ムラキがメドラウトの名を口にした時の好意的でない態度から目的の人物が
それなりに後ろ暗い人物であると飛陽は推察する。それならばと思い口八丁でやり過ごせないものかと
言葉を探していると攻撃が開始されてしまう。

急いで分離して回避行動をとるが停車していた為に避けきれなかった分のかダメージを受ける。
追加装甲にいくつかの弾痕を刻みながら、分離した前二両は左右の敵車両と精霊機隊の間へと向かうが
同じようにムラキ隊の車両も自動操縦の各車両を切り離して飛陽を包囲する。

「中々に仕込みが上手く言ってるようで実に何より!」
搭乗者の覚えも悪くないようで飛陽はとても満足そうだった。傍目には頭数が4つ増えて完全に
包囲されているのだが、ある程度進んで聖霊機隊へ近づくと飛陽は彼らに背を向けて車両へと突進する。

上から見れば左右の車両とムラキ達で形成された三角形の縦の直線と内部を逆戻りしている風に
見えたことだろう。各車両の機関中がこちらを向くが気にせずに突っ込む。背後から肩透かしを食らったムラキ
達が援護攻撃を始めるが多少の損耗はやむを得ないと諦める。

「っ!?どうなってんだ!どうして撃たない!クソっ!」
相手の乗り手の衝撃の声が伝わる。何故かすぐ側の車両が飛陽を撃ってくれないのである。
命令を受付け実行し続けているのに。故障なのだろうか。

答えは否である。問題が起きたのは飛陽が車両の射線軸の後方にムラキ達を巻き込んだからである。
味方に弾が当たらないように行動するのは基本事項であるし、それを避けて援護できるのは
地味に人の判断力があってこそである。

生身の打ち合いなら気をつける事でも多少頑丈な聖霊機なら仕方がないと装甲便りに味方毎撃つことが
できる。だがそういった現場の判断を自動操縦は出来ない。きちんと味方の為を思って行動している。
先に相手が倒れるとしても撃たないのである。

「安全装置はデリケート故、人間みたいに強引にはできないんでござるよ」
自分はできる事を棚上げすると各車両をトリモチと撒菱で動きを止めていく。
いくつかは武装とキャタピラをトリモチで封じられ、いくつかは足元で撒菱が爆発してひっくり返る。

腕が無いので取り付けた武器が使えなくなる、ひっくり返されると亀のように
戻れなくなってしまう等無力化する状況が人型よりも多いのが車両型の泣き所である。
まあ、後者は起こしてもらえれば戦線復帰が可能なのだが。

そうこうしている内にも中央の聖霊機隊からの援護射撃は散った飛陽を確実に捉えており二両を封殺
しているうちにも被害が蓄積されていく。

(やっぱしまずいでござるな。アレを撃つにはもう少し目的地に近づく必要があるでござる、しかし)
上空ではシュバリエがじっと戦況を見ているせいで押し通ることができずにいた。

【飛陽 分離後に同タイプを撃破 ダメージ増加、中央のムラキ隊と交戦開始】

208 :エルトダウン ◆iGrjUqKhz2 :2010/12/16(木) 23:24:37 0
N2-ALW計画の要であるヌルは完成していた。
しかし、ヌルは今までの精霊機と殆ど同じ構造。ただの上位互換に過ぎなかったのだ。
革新的技術を欲するASLは思案し、一つの案を導き出した。

――搭乗者を必要としない、それでいてフルスペックで稼動できる精霊機

それこそがN2-ALW計画の真なる目的だった。
精霊機大量生産時代という暗黒時代の負の遺産、"キ号精霊機"まで持ち出したのはそのためだった。


ASLは方面によって区分けされており、対立までも生じてしまっている。
しかし、表面上は全ての研究局が友好状態を装っているのだ。
それ故、今回の話は起こるのである。

鉄の翼はエルトダウンの帰還を待つことなくジパングへと向かった。
極東方面からの要請である。あくまで友好を保つためにその要請を受け入れたのだ。

/これが私の身分証明書です。ご覧になられますか?

[ああ、君が。書類上では既に見知っているよ。伝達も受けている。身分証明は構わないよ。
しかし……あの女は誰なんだい?フィアンセ…ではないようだけれども]

鉄の翼がジパングに駐留中、鉄の翼へと女が侵入、さらにそれをみすみす取り逃がすという異例の事態。
狙って起こったものとしか考えられなかった。
恐らく狙いはフィリップの持ってきた人格プログラム。

(なるほど、画期的な技術だ。狙われるのは仕方あるまいね)


極東支部の考え。それは、ヌル2をその身に宿すセラエノーシャーズ、そしてもう一人、謎の人間。
彼らが搭乗する機体、"キ号精霊機"にフィリップによりもたらされる人格プログラムを導入するというもの。
そうすることにより、搭乗者が搭乗時は勿論、搭乗していない、即ち無人の状態でも100%かそれに近い数値で稼動できるというものだ。

しかし、アルヴェリヒもエルトダウンもサイアニスもその計画は知らない。
ましてや、極東支部の人間でも知っているのは一部だけだろう。

後にこの人格プログラムの一件が、とんでもない事態を引き起こすことも知らずに。

――ストロベリーフィールズ 麓の沼地

「ここらへんかな。彼の言っていた祠とやらは」

ホロウ・クロウラーからパッと飛び出すと、沼地をずぶずぶと歩き進めた。
辺りは一面、枯木ばかり。その上、濃霧まで出ている。

「ストロベリーフィールズって名前とは裏腹に不毛な土地だね。誰の命名だよ、まったく」

"確かになァ。けどよォ、ちょーっと前までは戦乱で血が流れてたんだろ?それがストロベリーに見えたとかだろうよ"

他愛も無い会話をしていると濃霧の中にポツリと寂しく立っている祠を見つけた。
近寄り、中身を確認する。

「これだね。ちゃんと花まで供えてあるよ。飛陽くん、ありがとう。じゃ、帰ろうか」

"あーエルトダウン。誠に申し訳ないことだがよォ、ホロウ・クロウラーを濃霧で見失っちまった。ハハハ、沼地で迷子になっちまったぜ、ヒャッハー"

209 :セラ ◆eqAqXE3VMc :2010/12/17(金) 17:10:17 0
ムラキの戦車隊は模擬戦闘で見せた高い能力を実戦で発揮することは出来なかった。
電子化された姿勢制御機能や射撃統制装置は宝の持ち腐れ。
逆に敏感な安全装置が目標の後ろにいる友軍に反応し射撃を停止させている。

「ええい!かまわず撃たんか!」「撃て!撃てー!」
多勢に無勢であるが故に、逃げる飛陽を追う形になると予測していた本隊の精霊機隊は
意に反し懐に潜り込んできた敵に対し浮き足立つ。
見れば、飛陽を包囲しようとしていた両翼の戦車隊も沈黙。隊は逸早く翼を?ぎ取られしまった形だ。

「こしゃくな!!蜂の巣にしろ!!」
方陣に近い陣形をとっていた中央の精霊機隊は盾の隙間から散弾を撒き散らす。
飛陽の低い車体は流線的装甲によって避弾経始であり、
波間に消える船のように地形を盾としながら疾走する戦略によって散弾は主に大地を削る羽目となった。

「やつは大地の子か?大地がやつを味方している!
やむおえん!こちらも三機一組となり、地形を利用しつつ独自の判断で飛陽を攻撃!砲撃には充分警戒しろ!!」
中央の九機の精霊機隊は三機一組となって散開し攻撃を開始。

兵士「こんちくしょう!目線が変わるだけでこれほど厄介なものなのかよ!足元ー!!」
その場で精霊機の左右の足をドタバタさせながら旋回し、飛陽に散弾を放つ兵士もいたが感覚がつかめず直撃までには至らない。
間合いを取れば相手優位で砲撃の危険性が高く、接近戦では慣れない下からの攻撃。ムラキ隊は苦戦していた。

「我が友イサームをやっただけのことはある!!」
ラドムームが巨大な三日月刀を振り回しながら飛陽の車両本体に接近して来る。
分離した車両のどれに人格が宿っているかはムラキには判断できなかったのだが、それは単なる偶然。

「おまえの人格システムは破壊しなければならん!ブラックボックス的なものもまとめてな!
おまえがメドラウト卿と合流し、そのシステムを利用されることはあまりにも危険過ぎるのだ!!」

【三日月刀で飛陽さんに斬りかかるラドムーム】

210 :セラ ◆eqAqXE3VMc :2010/12/17(金) 17:14:17 0
×翼を?ぎ取
○翼をもぎ取

本体の精霊機隊は全部で9機の予定です。
ラドムームを合わせて10機になります。

211 :セラ ◆eqAqXE3VMc :2010/12/19(日) 15:24:09 0
名前 タロ・ムラキ
年齢 39
性別 男
容姿 あごひげ
体格 立派
性格 真面目
身分 ティルネラント王国第三軍部隊長
所属 ティルネラント王国
説明 飛陽とは因縁もち

機体設定
機体名 ラドムーム
精霊の種類 月
精霊の名前 ムチマロ
精霊力 3000
耐久力 B
運動性 C
装甲 B
武装 三日月刀
ビームマシンガン×2(両腕に内蔵)
グレネード×4
サテライトライフル(月の精霊力の込められた対物ライフル。直進性が強く射程が広い)

機体&精霊説明
月の精霊力を宿した銀色の精霊機。重力を操り飛行する。
宇宙空間でも行動可能。

212 :セラ ◆eqAqXE3VMc :2010/12/19(日) 15:52:50 0
人物設定
名前 リーフイ
年齢 14
性別 女
容姿 いちおう可愛い
体格 普通
性格 悪。毒舌。
身分 不明
所属 メドラウト卿のスパイ
説明 運動神経に優れ拳法も使える。

機体設定
機体名 シェンロン
精霊の種類 霧
精霊の名前 シャウロン
精霊力 2000
耐久力 C
運動性 B
装甲 C
武装
ドラゴンクロー(龍の首を模した腕部に装備されている牙状の武器)
ドラゴンファイヤー(龍の首を模した腕部に装備されている火炎放射器)
機体&精霊説明
両腕部のドラゴンは分離し自由飛行が可能。

213 :セラ ◆eqAqXE3VMc :2010/12/19(日) 17:12:26 0
機体設定
機体名 アムーラ
精霊の種類 月の低級精霊
精霊の名前 人の数ほど
精霊力 2200
耐久力 C
運動性 C
装甲 C
武装 ロングソード
大盾
機関銃
グレネード×4
バズーカ(3機)

機体&精霊説明
ムラキ隊の量産型精霊機

【出番とかあんまりないと思いますけどいちおう】

214 :飛陽 ◆fLgCCzruk2 :2010/12/19(日) 22:33:47 0
四角い体と言ってもきっちり四角四面という訳ではない。被弾した場合に被害はなるべく
減るようにいくらか丸みを帯びている。まあサイコロのようだと言えば聞こえはいいだろうか。
三つの車体に別れた飛陽を追いムラキ隊もまた三つの隊へと別れる。

しかしムラキ以外は飛陽の動きを追い切れない。決して早くはないのだが、地形が有利に
働いているというのが大きかった。ある程度整えられた林、緩やかな段差のある地面、
足元のゴキブリを叩くのに反射神経が特化している人間がたまにいるが、機会が手でそれを
行おうとすれば話は違ってくる。障害物があるなら尚更だ。

飛陽からすれば驚異なのは自分よりも早い機体と同直線上並ばれることと飛行型を相手にする
事なのだが今はどちらも揃っている。僅かずつだが確実に白亜の塔へと近づいているがまだ遠い。
これ以上寄ればシュバリエが再度攻撃してくる危険もあったし何よりムラキが間近に迫っていた。

>「おまえがメドラウト卿と合流し、そのシステムを利用されることはあまりにも危険過ぎるのだ!!」

ムラキの声に飛陽は確信する。間違いなく目的の人物は黒。そして自分が接触することを阻止
しようとしている。これを使わない手は無かった。始めに彼らは言った。「金で雇われたか」と、
そして「軽率な口は慎め」と、これはつまり「勝手に内輪の話をバラすな」もしくは「件の人物に聞かれたら
どうするのだ」という風にも取れる。

(なんだか分からんでござるが、誤解しているなら好都合でござるよ)
ラドムームが接近しながら繰り出してきた突きを鉤爪でなんとか避けるがとうとう追いつかれてしまう。
並走しながら追撃を重ねるムラキを撒くことができない。どうすればと飛陽は思案する。

(今拙者の二両目と三両目はあそこ、ならば)
切り離した自分を敢えて追い詰められるように追っ手の前へ身を晒す。ほんの少しの間に
ムラキ隊と飛陽の立ち位置は入れ替わっていた。塔側に飛陽、その前にムラキ。

追い詰められながらも連結して一機へと戻ると、飛陽は停車して追って達と睨み合う。
敵の敵が味方となるのか、それとも敵のままなのか、分らなかったが彼はこの状況に一石投じる事にした。
(これで上のがどういう奴らかもわかるでござるな、さて吉と出るか凶と出るか)

「・・・・・・は、話が違うでござる!く、謀ったなメドラウトオオオオオオオォォ!」
激情を演じて目の前にトリモチと撒菱をばら撒きながら塔へと身を翻す。一度見せた手の内
である以上ほとんど回避されて反撃が飛んでくる。もったいなかったが追加装甲を破棄してそのまま
塔へと向かう。件の人物に賊と内通しているという濡れ衣が着せられた事で相手に動揺が広がるのが伝わる。

ムラキ隊も直ぐ様追ってくるが攻撃の厳しさは先程と変わらない。しかしこれで何かの変化はあるはずだった。
塔はもう目前、彼らに動きがあり次第、飛陽は「支度」を済ませるつもりだった。

【飛陽 いつもの形態に ムラキの言いがかりを肯定することで状況を掻き回そうとする】

215 :セラ ◆eqAqXE3VMc :2010/12/22(水) 16:38:32 0
戦況にシュバリエの操者達は焦った。

「ムラキ隊は何を遊んでいる!このままではエサに逃げられてしまうぞ!」
もはや静観出来る状況でもなく、二機のシュバリエは飛陽の追撃を始める。
そう、まるで兎を追う鷹のように。

>「・・・・・・は、話が違うでござる!く、謀ったなメドラウトオオオオオオオォォ!」

激情を演じる飛陽の機体から繰り出される無数のトリモチや撒菱。
地上ではラドムームが回避運動をしながらそれらを斬り払い飛陽の後部車両に飛び乗ることに成功。
ぐうん、と機体の重さで沈むマニュピレータ。

「謀った?貴様も騙されたということか?飛陽。それならば我々につけ。大三軍のアレス様にな。
メドラウト卿は表向き、王国の良心と謳われてはいるが、国王を唆して戦争を始めた張本人。
武人なら誰もが許せぬような下衆の男なのだ。
まあ、我々に従うことがかなわぬと言うのであれば貴様は予定通りに破壊しなければならぬ。
ASLで解析中のコピーよりもオリジナルのほうが明らかに利用価値は高いはず…。
どうだ?この話。貴様が仲間になれば、きっとアレス様もお喜びになろう」

三日月刀は天に振りあげたまま。
返答しだいでムラキは飛陽の電脳を破壊するつもりだったのだが…。
「うぉおーっ!?」
突然、飛陽の追加装甲が剥がれ落ち、装甲と共に大地に滑り落ちるラドムーム。
それを尻目に近づく二機のシュバリエ。

「馬鹿なやつだ!もう見てはおれぬ!」
塔は目前。限界点と判断したシュバリエは超低空飛行で飛陽に鉄槍を振りかざした。

瞬間。影が機体を薙ぐ。
謎の衝撃によって宙へ飛ばされたシュバリエは、肩口から胸郭へと火を噴きあげたのち悲鳴のような爆音を残し宙に散華した。
「あ!!あれは!!」残ったシュバリエの操者が声を震わす。
どこから現われたのであろうか。影の正体は漆黒の精霊機。
「…シュバリエを斬断するなど…。あのような芸当が出来る人間はこの世にたった一人。まさか…あのお方が生きておられたとは…。
しかし何故…。本当にあのお方ならば、何ゆえ我々の前に立ちはだかるのだっ!?」

漆黒の精霊機は答えず、赤い両眼を妖しく点滅させると背中から無数の誘導弾を射出させた。
「くっ!!」
シュバリエは急旋回しつつ応射し、互いの誘導弾は絡み合う巴蛇を想起させつつ空を爆炎で装飾させる。
「例えあのお方でも空でシュバリエに敵うものか!!」
空を舞うシュバリエの操者の眼前に影。
「何ぃ!」
漆黒の精霊機の手がシュバリエの頭を鷲掴みにしていた。シュバリエの操者に漆黒の精霊機の動きは見えなかったのだ。
「なんと言う膂力か!!化け物め!!」操縦桿を動かし抵抗するもののノズルからは虚しく精霊力が噴出されるだけ。
もう一方の手が紙を剥ぐように胸板を引き剥がすと、恐怖にひきつった操者の姿が表に出る。
漆黒の精霊機は掴んでいた頭を強引に機体側に引き付けると膝頭でむき出しの操者を座席ごと潰す。
そしてあたりに飛び散った装甲がきらめきを放ちながら雪のように舞う。

潰れた胸を露にしシュバリエが無残に落ちた。地上ではムラキが驚愕していた。
「…まさか…。ルーデル王子…」
ルーデル王子。王国の第三王子。毒殺されたと噂されていたセラの腹違いの兄である。

「白亜の塔にようこそ。飛陽君」漆黒の精霊機から若い男の声。
続きムラキ隊の兵士たちが同士討ちを始める。残ったのはバズーカを装備している三機のアムーラ。
9機の兵士のうち三人がメドラウト卿の息のかかったスパイだったのである。
「ムラキ隊長。貴方は殺したくありません。白亜の塔までご同行願います」

216 :セラ ◆eqAqXE3VMc :2010/12/22(水) 16:53:56 0
ムラキは捕虜となって白亜の塔に拘束される予定です。

【シュバリエ二機とも撃墜されました】
【ムラキ隊にはスパイがいて同士討ち。残ったのは三機のアムーラ】
【ルーデル王子。漆黒の精霊機で登場しました】

【ルーデル王子:飛陽さんを白亜の塔へご招待】

217 :フィリップ ◆i3/u6CmHbc :2010/12/23(木) 23:58:57 0
>エルトダウン氏
りーフィによる襲撃を受け、アレス将軍は人格システムの安全の確保のため、フィリップをストロベリーフィールズに呼び戻す決定をした。
それと同時にアレス将軍からASLに送りつけられてきた抗議文書はASLの危機管理能力に疑問を呈し、
国際法によってその身の安全を保障されている使者の安全すら守れないようでは、将来、王国とASLとの友好関係に「憂慮すべき事態」が生じる可能性があると警告していた。

>セラ氏
ーストロベリーフィールズ、第3軍団本営ー
ムラキを通じて「ルーデル王子復」活の一報を受けたアレス将軍は、白亜の塔へのフィリップの派遣を決める。
(残っているシュバリエはあれしかない。
それに何度も死線をくぐり抜けたあいつならあるいは・・・)

【アレス将軍、ASLにりーフィの襲撃に対して抗議し、フィリップをASLからストロベリーフィールズへ召喚。】
【フィリップの白亜の塔への派遣が決定】

218 :飛陽 ◆fLgCCzruk2 :2010/12/26(日) 18:04:26 0
逃げようとした矢先に背部に乗られて車体が沈む。飛陽の上でムラキが何かを言い始める。
内容はと言えば、自分をメドラウト卿の手先と思い込んでの寝返りの打診だった。
しかし幸か不幸か返事をする前に乗っているムラキ毎装甲が剥がれ落ちてしまう。

(おあ"ぁ!折角引っかかってくれたというのに!)
これでは勧誘に応じる態度を取っても信用して貰えるかは疑わしい。見す見す好機を逃した形になってしまった。
内心で焦る飛陽と露骨に慌てるムラキ。二人を見て焦れたシュバリエが上空から迫って来る。
ついに来たかと身構えると片方が何者かの手によって爆散する。

瞬時に判断できたのは影の正体が武器ではなく機体だということくらいだ。人の目に優しい淡い緑色の
迷彩をまとった飛陽の車体とは正反対である。見ていると両者は交戦を開始する。
どうやら味方同士ではないようだ。

シュバリエの動きは悪くなかった。少なくとも以前戦ったイサームより劣るということは無い、
にも拘らずあっさりとコクピットを潰されて地面へと落下していく。黒い機体の速さはセラの機体か隊長格の
シュバリエ程度はあろうか、しかし単純な力で圧倒的な差があった。

(それに比べて拙者のスペックはそこのアムーラとどっこいどっこい、速さ、力、技量、
どれをとっても状況改善の見込み無しでござる)

>「白亜の塔にようこそ。飛陽君」

逃げる為にちらちらとムラキ隊を見ていると不意に声をかけられ、それと同時にムラキ隊で同士討ちが始まる。
あれよあれよと言う間にたったの3機へと数が減った。彼らは黒い機体の手の者だったらしい。
戦いの構図は飛陽対ムラキ隊(1対14)から飛陽対新手の黒い聖霊機とアムーラ(1対4)へと変わっていた。

ムラキはと言うと流石に身動きが取れないようだった。死人が生きていて敵になり「味方」は全滅、
裏切りによって部下も全滅しともすればムラキ対新手(1対4)にも成りかねない今の状況で
即座に動けというのは難しいだろう。

先程と一転して降伏勧告をされたムラキは恐らくこのまま、ではどうやってこの状況を脱するのか。
数も戦力もない今、飛陽は奥の手を使うことにした。砲塔を黒い機体へ向けて何かを撃ち出す。
弾は、黒い機体の頭上で破裂すると辺りに笛を吹く様な音と真っ赤な煙をばら蒔いて消滅する。

そしてそれを見計らって飛陽は一般回線へと通信を入れる。
「周辺を警ら中のローガンブリア兵へ救援を求む!こちらは賞金首の飛陽!白亜の塔にて
ティルネラントの補給活動を発見!現在攻撃を受けている、至急来られたし!繰り返す・・・」

219 :飛陽 ◆fLgCCzruk2 :2010/12/26(日) 18:07:32 0
先程撃ったのはローガンブリアの信号弾である。
飛陽がこういう時のために用意しておいた物でティルネラントのもある。
新型や施設云々と言えば尻込みして来ない可能性があるので敢えて補給活動などと言って
直ぐに来られるようにしたのだがそれでも五分といったところだ。何せ敵国とはいえトップの墓である。
隠れ蓑にしていたとはいえ踏み込みにくいかも知れない。

「生憎と、拙者の頭は企業秘密でござってな。体以外売るつもりはござらん」
小さく断りを入れて見栄を切る。

それでもこの場をやり過ごすにはたった二人ではどうにもならない事は明らかだ、援軍を呼ぶしか無い。
だがアムーラ三機は殺気立ってこちらを照準内に収めているし、上空の機体も余裕がある。
正直数が減って乱戦にならなくなった分不利になったと言える。

「・・・大人しくしていて欲しかったのですが、仕方がありません。ここで回収するとしましょう」

飛陽の突然の反抗にがっかりしたようなため息を吐くとそれが合図となったのか、
アムーラの攻撃が飛陽に向けて開始される。尻を叩かれる形となって三両目が爆発する。

その隙に二両目の背部の砲塔がぐるぐる回り始めると煙幕を周囲に掃き出して大きめの『繭』を作る。
接近すれば視界にべっとり貼りつくので時間稼ぎになるだろうと踏んでのことだ。
飛陽はこのままゆっくりと後退して先程動きを封じた車両型を味方に組み込むつもりだった。

煙幕が近くに着弾したバズーカの爆煙で吹き散らされるが構わず吹き続ける。一機繭に包まれると完全に触れた
面に塗料が付着して目隠し状態になる。いくらも続けられるものでもないが、いまはこうするより仕方ない。

「そこの隊長機!呆けてないでさっさと逃げるでござるよ!あ奴の狙いにはお主の口封じも入ってるでござる!」
相手からすればさっきの飛陽の大声が別に意味で狂言だったと誤解されたかも知れないが、
それでも変わらない出来事、即ちムラキの暗殺を示すことでムラキと一時的にでも共闘しておきたかった。

戦いは始まったばかりだが、ムラキと飛陽の命のカウントダウンは早くも始まっていた。

【飛陽 ルーデルに対して反抗し煙幕の中に籠城しつつゆっくりと後退、ムラキに呼びかけ
     及び周辺のローンガンブリア兵へ救援要請】

220 :ルーデル ◆eqAqXE3VMc :2010/12/28(火) 17:09:32 0
>「そこの隊長機!呆けてないでさっさと逃げるでござるよ!あ奴の狙いにはお主の口封じも入ってるでござる!」

「飛陽!お前はいったいどっちの味方なのだ!?それに逃げろだと?ぐぐぅ…」
ムラキの混乱も無理はない。もとはティルネラント同士の内部紛争。それに拍車をかけるように続く仲間の裏切り。
しかし明らかに不利な状況にムラキは飛陽と共に戦場から離脱することを決意し、手始めに友軍に状況を説明し命令を下す。

「よく聞け!生き残った戦車隊は飛陽を援護!敵は裏切り者のアムーラ3機。
それに漆黒の精霊機には充分に警戒しろ!奴は強い!やすやすと撃ち落せると思うな!」

遠くで命令を聞いていた戦車隊は、すでに仲間同士で車体を牽引し体勢を整えている。

「会話は聞いていましたぜ!だからアムーラには俺を乗せとっけって言ったでしょうが!
それは良いとして隊長!飛陽と一緒に真っ直ぐに俺たちのいる方向に下がって来て下さい!
敵の予想進路に火線を重ねて集中砲火を浴びせてやりますぜ!!」

ムラキの戦車隊も飛陽のように煙幕を吐きつつ戦闘配置につく。
吐き出された煙幕は所々霧がかかったように地上に死角を生みだし、
その霧の海に浮かぶ無数の島となった小高い丘に戦車隊は陣をとり砲撃を開始した。

爆音が一つ響く。

後退する飛陽を追いかける敵側に霧はなく1機のアムーラが戦車隊の砲撃で四散。
アムーラ隊もバズーカで応戦するものの戦車隊は砲撃終了と同時に霧の海に消え再び違う丘から現われては砲撃を再開する。
戦車隊が始めての土地でこのような迅速な対応が出来る理由はただ一つ。
簡易電脳で視認され立体化された地形が水晶スクリーンに投影され、戦場をまるで俯瞰で見ている状態を作り出しているのだ。

「とりあえず霧の海に逃げ込むぞ!飛陽!そしてそのあとは……。そのあとに考えるぞ!!」

後方からは残存したアムーラ2機が接近し砲撃をしているものの飛陽が作り出した繭のために命中率は低い。
というか攻撃そのものが弱弱しい。理由は飛陽を生け捕りをしなくてはいけないからだ。
目標の位置が完全に把握できない以上、火力の高い武器は使用できないのだろう。

漆黒の精霊機はというと戦車隊の砲撃を悠々と避けながら空から飛陽に接近中。

「このマハーカーラからは逃げられない」

精霊機。マハーカーラの操者には余裕があった。
兎にも角にもまずはムラキ隊を殲滅し残った飛陽をゆっくりと捕獲すればそれでいい。

アムーラが飛陽の進路を断つべく進行方向に立ち塞がる。それをムラキのラドムームが切り払おうと三日月刀で応戦。
その時だった。マハーカーラの額から黒い光が地上にむけ放たれたのは。

「ぬあ!!」ムラキは咄嗟に飛翔する。

地上に残されたアムーラは一瞬で蒸発し飛陽の進行方向には、巨大なエネルギーで削られて出来た大穴が出現した。
黒い光が生み出した爆発は大地を破壊し凄まじい爆風と土砂を飛陽に浴びせかける。

221 :飛陽 ◆fLgCCzruk2 :2011/01/02(日) 00:22:48 0
残存したムラキ隊を戦力に加えることに成功したものの状況は膠着状態に陥っていた。
車両型の弱点は横転と飛行型である。横に並べば機体の身長差が生じるが上から狙い打たれることには
人型も車両もあまり違いはない。

それ故に煙幕を張って時を稼ぐ以外に手段がないのである。敵にあるのは慢心ではなく余裕。
飛陽を捉える為に加減しているのも、言い換えれば彼が生き長らえているのもその余裕の為である。
もしも用は無いと見切りを付けられればこの場の全員は今頃皆殺しとなっていてもおかしくない。

曲がりなりにも相手ができそうなのはムラキのラドムームだけである。彼を援護して後退するのが
最善なのだが問題が一つあった。そこまで煙幕が保たないのだ。

>「とりあえず霧の海に逃げ込むぞ!飛陽!そしてそのあとは……。そのあとに考えるぞ!!」
残る2機のアムーラの内1機を他の車両との連携でダルマ状態にした所でムラキから共闘を承諾する
声が聞こえる。振り返ればムラキがアムーラと切り結ぼうしていた。

これで数の上では4対1、と思った飛陽の予想は過程を違えてではあるが現実のものとなった。
黒い光が味方機諸共に地面を薙いだのである。広い範囲に大きめの、良く言えば塹壕、悪く言えば
落とし穴にもなりそうな穴が出来上がっている。真っ向から土砂を叩きつけられた飛陽は
「オーウ・・・」と呻くのがやっとだ。

「なんて威力だ・・・」「掠ってもマズイな」「これはもう駄目かも分からんね」
兵士と共に感想を述べているとムラキのことに思い当たり辺りを見回す。今ので蒸発してしまったのだろうか、
だが上空に逃れたことに気づくと飛陽は今度は怒号を発した。

「的だぞ降りろ!」
言うが早いか黒い機体は先程の光をムラキへと放つ。他の2両がアンカーで急いで引きずり下ろす。
その時妙な事が起きたのである。間に合わずに当たって四散すると思われたムラキの機体が損傷こそすれ
無事に地面に戻れたのである。自由落下ではありえない勢いでラドムームが落下したのである。

「密集隊形!」
飛陽は叫ぶと他の二人とラドムームを囲み煙幕を吐きながらぐるぐると回りだして煙幕の繭を更に濃く、大きくする。
アジト襲撃で懲りて以来煙幕からは毒を抜いておいた事が功を奏した。お陰でこうして連携ができるのだから。

しかしこの状態は相手がその気になればさっきの攻撃で一掃できる配置でもあり全て相手の出方
次第という弱点がある。はっきり言って手詰まりだった。

222 :飛陽 ◆fLgCCzruk2 :2011/01/02(日) 00:26:07 0
(どうするか、背後にはこの大穴、前には敵のエース、煙幕が切れるのも時間の問題)
頭を悩ませながらラドムームの周りを回遊する車両達、ちなみに視界は最早全員塗料べったりで
俯瞰の画面を頼りにしている状態だった。その飛陽はふと有ることに気が付く。

他の2機は人が乗るにあたって飛陽のボディを改修したものだが異なる点は武装が鉤爪から機関銃、
機会制御が人操作に変わったくらいである。故に今2両目に備え付けの煙幕を各々で使っているのだが、
彼らにはまだ3両目がある。飛陽の頭脳にいつもより高めに電圧が走る。

ドリルの着いた3両目、大穴、煙幕、這いつくばったムラキ。
「これでござる!各々方、よく聞くでござる!」

飛陽は起死回生の一手を説明した。内容は至極簡単、敵に気付かれないように2機の3両目を切り離し
ラドムームが穴の底へアンカーを持って降ろす。2機は急いで穴を深く奥へと掘り進む。高さが合わないので
ムラキは這いずることになるがこれで逃げ道を作る事ができる。穴が開いたら用済みの2両目は自爆させる。

後は穴掘りの音を消すために散発的に威嚇射撃をしながら残った1両目は飛行形態となり順次穴底へ
軟着陸をすればいいのだ。問題は敵が前述の通りまとめて片付けようとしたり視界が潰れるのを
承知で地上戦を仕掛けて来ると詰むとい事だった。

「ディック、トム、やれるか」
飛陽の案を受けたムラキが部下へと問うと、二人は応と答えた。ラドムームが3両目を2機とも穴底へ
降ろすと二人はぐるぐる回り方を自動操縦に切り替え、3両目のトンネル掘りへと指示を出す。

「そのままずっとそうしているつもりですか」
黒い機体から声がかけられる。3人が自分の作業をこなしているのだ。何が何でもここは
繋げなければいけなかった。

「やかましい!煙幕が切れるまででござる!それくらい待てぬでござるか!それからまずは
名を名乗れでござる!拙者は飛陽ちゃん!」

そうして飛陽は、いつバレるかも分らない舌戦を始めたのだった。

【ムラキ隊、煙幕の下で逃走用のトンネルを突貫工事中、飛陽、ルーデルへ会話及び威嚇射撃】

223 :ムラキ(セラ) ◆eqAqXE3VMc :2011/01/04(火) 02:44:25 0
>「ディック、トム、やれるか」
「やらいでか!上手くいきゃあ大峡谷に抜け出せるかもしれやせんぜ!」
もこもこと土に潜っていく飛陽モドキたち。

>「やかましい!煙幕が切れるまででござる!それくらい待てぬでござるか!それからまずは
名を名乗れでござる!拙者は飛陽ちゃん!」

「飛陽ちゃんですか…。あなたのことは知っています。僕の名前はルーデル。
この精霊機「マハーカーラ」で世界を破壊する者です。そして飛陽。あなたは新世界の鍵となるもの。
ここで僕たちの仲間になればあなたの命は保証すると約束いたしましょう」

威嚇射撃を悠々と避けつつ、勧誘は自分に飛陽が従って当然という口調で行われた。
それを聞いたムラキは返答によっては飛陽を破壊しなければならないと再び思案する。

飛陽の返答を待たずに先に開いたもの、それは漆黒の精霊機マハーカーラの肩に装着されている貝殻のような大盾。
両肩の開いた大盾内部からはダムルー(太鼓)のような円形の物体が現われ大気を振動させていく。
ドン。ドーン。ドーーン。
変調しながら鳴り響く重低音にまず始めに異常をきたしたのはラドムームの装甲だった。
「装甲ランクB―固有振動周波数同調完了―」
マハーカーラの両肩のダムルーから煙幕の繭に向け破壊振動が照射されラドムームの装甲が瀬戸物のようにひび割れていく。
「何故だ!?装甲が砕け散る!?」
破壊されていく理由はマハーカーラの両肩の太鼓から照射されている指向性の高いソリタリーウェーブによるもの。
目標物の固有振動周波数に太鼓の周波を合わせているために逆に強度が低くても材質の異なる飛陽や戦車隊の装甲は依然健在だ。

「このままでラドムームはもたん!いっそ煙幕の外に出て刺し違えるか!?」
ムラキは一人、特攻を決意する。
「早まりなさんな隊長さんよー!!今の敵さんのわけのわからん太鼓攻撃で掘ってた地盤が車両ごと下の空洞に落ちましたぜ!!」
「なに!?どういうことだ?」
「延々と掘らなくっても地下道がすでに地の底にあったってことですぜ」
「馬鹿な!ロンデニオンの地下遺跡のように、ここにもそのようなものが!?ならば話は早い!」
ムラキはわざと通信回線を故障したようにしルーデルに聞こえるように叫んだ。
「メドラウトの…ガ…手に渡るぐらいなら死ね飛陽!!ガー…」
そして皆で地下道に逃げ込み、そのあとに無人の戦車隊の2両目を自爆させ土で穴を埋める。
これで皆死んだということに偽装出来れば、すべては万々歳であった。

戦車隊を先頭に飛陽、ムラキが地下道を行く。進む方向は勿論白亜の塔と正反対の方向。
地下道は広く精霊機でも立って歩けるほどだった。

「煙幕が晴れて、我々の死体があがらなければルーデル王子も訝しむだろう。
だが流石に地下に逃げたとは思わんか?彼がこの地下道の存在を知っていたとしたら話は別だろうがな。
それにしても毒殺されたはずの王子が生きていたとは。祖国に戻って語っても誰も信じないだろう」
ムラキは顎髭をしごきながら誰に話そうとしているわけでもなく宙に言葉を投げつける。
飛陽等がイサームの仇ということは今は頭にないらしい。

「とりあえず飛陽。今のお前は我々の捕虜だ。そこの所は重々肝に命じておけ…」
そのムラキの言葉には力がなかった。一同はどこまで続くともわからない地下道を進んでいく。

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