1 名前: ◆pPAOEY1pWs [sage] 投稿日:2006/10/08(日) 23:18:17
サタンの邪悪な野望を阻止するため、再び平和な世界を取り戻すため、
勇気ある騎士よ、今こそ立ち上がれ!!さあ、まずは自己紹介の紙に記入だ!!

【年齢】
【性別】
【職業】
【魔法・特技】
【装備・持ち物】
【身長・体重】
【容姿の特徴、風貌】
【性格】
【趣味】
【人生のモットー】
【自分の恋愛観】
【一言・その他】

※サタン側に参加する人も記入願います。

――――――騎士達の凄まじい戦いの過去だ!!――――――
騎士よ、今こそ立ち上がれ!!〜重なる心と想い編〜(7番目のスレ)
http://etc3.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1140352917/
騎士よ、今こそ立ち上がれ!〜サタン復活編〜(6番目のスレ)
http://etc3.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1137064700/
騎士よ、今こそ立ち上がれ!!!α (5番目のスレ)
http://etc3.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1123051856/
騎士よ、今こそ立ち上がれ!!!!4
http://etc3.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1118044563/
騎士よ、今こそ立ち上がれ!!!3
http://etc3.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1105623580/
騎士よ、今こそ立ち上がれ!!
http://etc3.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1102512969/
騎士よ、今こそ立ちあがれ!
http://etc3.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1093884248/
騎士よ、今こそ立ち上がれ!!〜行くぜ大決戦!編〜
http://etc3.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1148035082/301-400

2 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2006/10/08(日) 23:28:39
いつまでサタンと戦うんだww

3 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2006/10/09(月) 00:22:39
カイザーと互角にやり合える元騎士の現パン屋店主役でよかったら参加するぜ!

4 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2006/10/09(月) 00:26:38
まだサタン生きてるのかよ!はよいてまえ

5 名前:サンタ[sage] 投稿日:2006/10/09(月) 00:38:00
我は今しばし、眠りにつくとしよう……
人の子らの鐘が福音を告げる刻までな……

(血のように赤い衣を纏い、ねじ曲がった角を持つ獣を従えた男は、
そう呟いて目を閉じた)

6 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2006/10/09(月) 00:40:07
666の獣(トナカイ)を従えた赤い血に染まった(ような色の)服を着た男だ!!
人間一人入りそうな袋をもったあの男だ!!

7 名前:マックス ◆BsGlQvuzhQ [sage] 投稿日:2006/10/09(月) 02:05:43
>315
マックスの怪力を利用して振った長槍の一撃は、ラジャリの驚異の身体能力に軽くいなされた。
手元の長槍は怪力による速度と、男一人の体重の反発を受けたと言うのに、折れそうな気配は全く無い。
「そういうアンタもつくづくデタラメな野郎だなっ!」
マックスの顔は笑っている。サタンとの戦いの時の様に、心底楽しそうに。
マックスは刃を腕で受けた時のラジャリの目の色が、一瞬だけだが変わったのを見逃していなかった。
マックスの強さとは非常識さである。普通と大差無く見えて、実は全く違う戦法である所である。
幾ら相手が強かろうと、彼の様な人間を相手にしたことは殆ど無いだろう。
「暗殺失敗した時点で……」
そう呟きながらマックスの右手が思い切り握られる。
その握力の為に傷だらけの拳が、普通の拳とはまた違う形をしていた。
その拳を思い切り振り被り、力を溜める。完全なる無防備。完全なる前のみへの攻撃態勢。
先程鳴った笛が、チェンバル王の異変を知らせる物であった事など彼は知らない。
だが、何かを告げるという意味はある筈だ。急がねば。そう思った故にマックスが取った行動である。
マックスは確実に前から来ると読んでいた。その読みは当たり、ラジャリは正面から駆けてきた。
だが短刀を投げられた事は読んでいなかった……訳では無い。
マックスは短刀を投げられた刹那、それを抜かんとばかりにスピードを上げるラジャリを見て……。
ニヤリと、笑った。
「アンタの……」

ラジャリと短刀の位置が重なったその瞬間、マックスはこめかみへの激痛と脳への衝撃を感じた。
しかし、その時既にマックスの右拳が姿を消し、同時に短刀を彼方へ弾き飛ばしていた。
マックスの体勢は攻撃を受けて尚、その拳の一撃を放つ為に、寸分崩れる事無く立っている。
次の瞬間にはその拳は、ラジャリの顔面目掛けて動いていた。

8 名前: ◆BsGlQvuzhQ [sage] 投稿日:2006/10/09(月) 02:22:26
訂正です。

>315→前スレ>315

9 名前: ◆HpH6dBLcFw [sage] 投稿日:2006/10/12(木) 15:15:13
前318-321
風に大きく翻る皇国旗目掛けて、巨人は進む。
一歩ごとに地響きを鳴らし、逃げ散る兵隊や、射掛けられる矢をわずらわしげに払いながら。
その足が急に地に貼り付いたまま上がらなくなった。
巨人はいぶかしげに首を捻り、足元を見る。足首から先が厚く氷に覆われていた。
そこから細く一条の氷が伸びている。それを目で追う。
その先にいたのはセシリアだった。すぐさま火球を吐き付けた。

その瞬間、脇腹に衝撃が走る。続いて広がる痛みに思わず身をのけぞらせた巨人を、誓音の斬撃が襲う。
「グアアアアァァァッ!!」
激痛に巨人が咆哮を上げた。しかし右腕は誓音の目論見通りには落ちず、まだ繋がっていた。
のけぞった分だけ、刀が浅く入ったからだ。その右腕を振り、いまだ宙にある誓音の体を地面へ叩きつけ、
腹に刺さった槍を抜き、飛んできたと思しき方向へ投げ返した。
それから自分の足に向かって火球を吐き、氷を溶かす。
プスプスと黒煙を上げる足を半ば引きずるようにして、巨人は前進を再開した。

>7
ラジャリは駆ける。マックスは動かない。
投げた短刀がマックスに届く直前、ラジャリは大きく腕を引き、全力でマックスのこめかみへ叩きつけた。
もちろんこれだけで倒せる相手ではないことは承知の上。本命はこの後。
そのまま左の掌打をもう一発。さらにもう一度右を返す。
相手の脳を強引に揺さぶる技だ。顎先を掠める打撃も同様の効果があるが、
マックスが相手では首の筋力で押さえ込まれる可能性がある。
それゆえにラフなやり方を選択した。
そして二発目の掌打が打ち込まれる。マックスの頭が揺れた。

三発目が入ったかどうかはラジャリに判断できなかった。マックスの拳に殴り飛ばされたからだ。
文字通り宙を飛んだラジャリは空中で体を捻って手を地面につき、ロンダートからバク転で着地する。
額が大きく切れて、血が溢れている。とっさに顎を引いて拳に額をぶつけたからだ。
(顎か顔に食らっていたら間違いなく立てんな…)
額で受けたおかげでダメージはない。
――などと言う事はなく、血が止まる気配も全くない。

「…これでは敵わんな。逃げるが勝ち、か」
ラジャリは踵を返して駆け出す。
しかし最初にマックスへ迫ったときのようなスピードは無く、追えば簡単に捉えられそうだ。

10 名前:イル ◆uKCFwmtCP6 [sage] 投稿日:2006/10/12(木) 18:58:11
>9
投げた槍は巨人の脇腹に浅く突き刺さり、誓音の右腕を狙った斬撃は、巨人の右腕を断ち切るに到らずに終わる。
思っていたよりも巨人の耐久力は強い。
中途半端な攻撃では倒せず、こちらの被害が大きくなる一方だ。

巨人は右腕を誓音を振り落とすように振るい、脇腹に刺さった槍を掴むと、イルの方に投げ返す。
勢いよく飛んできた槍はイルの遥か頭上を通過し、地平の彼方へ飛んでいく。
あの勢いを考えると、進行方向に城があったとしても、ものともせずに貫いていくだろう。

とても力が強く、耐久力も凄まじい巨人。
他の兵が放ったと思われる氷の術を、自身の足ごと火炎弾で溶かす。
巨人の足から黒煙が上がり、その半炭化しかけている足を引きずりながらも進む。
理性が消失た巨人は、生半可なことでは止まらない。

イルの現在の打撃力では巨人を倒すことは不可能。
巨人に効くような魔術を使用しても、その魔術の魔力に反応して誘爆する可能性もある。
誘爆などしたら、この模擬戦場にいる騎士達は一人残らず消え去ってしまう。
オーガスは何事もなく生きてそうだが。

イルはローブの袖口から切札とも言える赤い水晶を取り出す。
この水晶を使えば、一時的にだが身体能力や魔力が大幅に上昇する。
だが、イルの肉体では水晶の負荷に耐えられず、水晶の効力が途切れた後に、神経を削り取るような激痛が起きる。
なるべくならこの水晶は使いたくはない。
巨人と騎士達の様子を見て、使わざるを得ない状況を見極めることにした。



11 名前:マックス ◆BsGlQvuzhQ [sage] 投稿日:2006/10/12(木) 23:15:15
>9
「お……?」
マックスは確かな手応えと同時に、予想外のダメージを受けていた。
ラジャリは吹き飛ばされはしたものの、空中で体勢を立て直すと、見事に着地をしてのけた。
だが、ダメージは確かに与えたようだ。額から血を流している。
ラジャリは分が悪いと見たのか、踵を返して逃走をはかった。
「……逃げるなら……」
彼は揺れる視界の中、走り去るラジャリの後ろ姿を捉えた。マックスの表情が苦々しげな笑みに変わった。
「……いや……もう遅いな……」
一歩足を踏み出す。揺れていた視界は更に揺れた。だがマックスの足は止まらない。
確実に視界が揺れていた。足腰はふらついていた。だが転ぶことはなく、足の勢いも増していく。
数秒経った頃にはラジャリを、もう十数メートル先の所までに捕捉していた。
「……大人しく……しろっ!」
一気に追い抜き、振り向き様にラジャリの両脚目掛けて蹴りを放つ。


12 名前:セシリア ◆TI6/2FuWqw [sage] 投稿日:2006/10/18(水) 02:45:14
>9
氷は巨人の足を捉え、前進を阻む。
だがセシリアが次の一手を打つよりも、巨人の反応のほうが素早かった。
その視界にセシリアが映ったとたんに火球を吐く。
それなりに距離もあり、単発。避けるにあたって難となる事は何一つない。
だが、その威力は問題だった。最小限の動きでは直撃は受けずにすむが、余波が及ぶ。
セシリアは追撃を諦め、大きく横に跳んで火球の炸裂を回避した。

>「グアアアアァァァッ!!」
舞い上がった爆煙と土ぼこりが演習場を渡る風に吹き散らされ始める。
その瞬間、巨人の咆哮が轟いた。セシリアは魔石の力で風を起こし、強制的に視界を確保した。
晴れた煙の向こうには血を流しながらも足を前へ運ぶ巨人の姿があった。
血が出ているのは明らかに刀傷だ。誓音の音撃だろうか。セシリアは考えた。
だが、すぐに思い直す。誰がダメージを与えたかは関係ない。
足止めをしたはずの敵が何事もなく前進していることのほうが重要だ。

――何事もなく?いや、巨人の足からは煙が立ち昇っている。
それでようやく、自分の足ごと氷を炙って溶かしたのだと気づいた。
目指しているのは変わらずに本陣である。
「……ふむ」
セシリアは拳を顎にあてて少し考え込む。
妨害さえしなければ巨人はこちらへ攻撃を仕掛けては来ないというのは良くわかった。
つまり、何よりも本陣襲撃を優先させているわけだ。
では、知能が低そうな巨人が、何を持って本陣の位置を判断しているか。

軽く地を蹴って飛び上がり、そのまま本陣へ向かった。
着地はせずに並ぶ兵の頭上を掠めるように飛行する。
そして本陣を離れたセシリアの手には、旗手からもぎ取った皇国旗が握られていた。
旗は一流だけではないのでまだ本陣にも皇国旗は翻っているが、
目前でこれをちらつかせれば巨人の気は十分に引けるのではないかと考えたのだ。
「さあ、陛下はこちらにおわすぞ!」
セシリアは声を張り上げて巨人の目の前を何度も飛び過ぎた。

13 名前: ◆HpH6dBLcFw [sage] 投稿日:2006/10/19(木) 04:11:12
>11
ラジャリの耳に背後から迫る足音が届く。
地面を踏み締め、蹴り付けるそのリズムは急速に接近してきた。
次の瞬間にはラジャリと並び、さらにその次の瞬間には前に出る。
>「……大人しく……しろっ!」
そして最後の一瞬、足音が止み、代わりに振りぬかれた足が空気を引きちぎる音が木々の梢を揺らす。

そう、丸太程度へし折りかねないマックスの蹴りは、ラジャリの足を刈ることなく『振りぬかれた』のだ。
逃げ出したときとは打って変わり、素早く跳躍して蹴りをかわしたラジャリの口元には笑みが浮かんでいた。
空中でマックスの肩に手を当て、着地と同時に腕を絡ませる。
マックスの蹴りの余勢、着地の反動、関節の反作用、全てを利用して――
「ぉおおおおっ!!」
ラジャリはマックスを投げ飛ばした。そのまま枝をへし折りながら、マックスは森を飛び出す。
良くて肩が抜ける、悪ければ二度とまともに動かなくなるような投げ方だが、
ラジャリの手にはそういった手応えはなかった。

「どこまでも化け物だな。……せいぜい化け物同士仲良くしていることだ」
そう言い残して森の中へ姿を消す。だがそこで膝をつき、崩れ落ちた。
出血が多すぎたせいで、意識が朦朧とし始めている。
「くっ、ここまでか……まぁ、時間稼ぎはアレがやってくれるだろうが……どうなるかな」
『アレ』と口にするのと同時に視線を上げる。重なり合った葉の隙間から、巨人の姿が見えた。
恐らくマックスはその視界に入るだろう。

>12
巨人は進む。止まる気配は微塵も無い。視界に映る旗は急速に大きさを増してゆく。
そして、視界から消えた。
ぶんぶんと左右に首を巡らせる。皇国の紋章が入った旗が飛び回っていた。
>「さあ、陛下はこちらにおわすぞ!」
そうか、ここが本陣か。なら次は――オーガスの打倒だ。巨人は即座に判断し、行動に移した。
目標であるオーガスを探す。…が。当然ここにオーガスはいない。
逃げ遅れている兵士達やマックスが視界に入る。
巨人は目に付くもの全てにて当たり次第に火球を吐き、手足を振り上げ暴れだした。

14 名前:巨人[] 投稿日:2006/10/19(木) 15:25:28
おーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!

15 名前:誓音 ◆aGZ9OPSgQQ [sage] 投稿日:2006/10/20(金) 22:02:52
振り上げられた刀は見事に腕を切断できなかった。
>「グアアアアァァァッ!!」
絶叫する巨人。
そして誓音はふっとんだ。
地面に着地する誓音。
どうやら思った以上に堅いらしい。
これは困ったものだ。
少々しかめっつらをする誓音。
するとどっからか声が響く。
>「さあ、陛下はこちらにおわすぞ!」
セシリアだ。
セシリアの機転で巨人は振り返る。
そしてオーガスを探し出す。
これはチャンスだ。
誓音は怪物の手を下に向け、力を蓄える。
そして巨人が暴れ出した。
誓音は灰色の怪物の手を白く輝かせる。
暴れるという行動は少なからずとも闇の属性を持つ。
即ち光の属性が有効と見た。
じわじわと怪物の手が灰色から白へと変化する。

-武洗白手の砲!発動。

武洗白手の砲、これは誓音が持つ大砲手の一つだ。
これは闇に犯されてる人間の闇その物を攻撃する砲。
対象物の闇の精神のみを攻撃し、浄化するため、
実際の肉体的ダメージはほとんど皆無に違い。
誓音は手を巨人の頭に向けた。

-雪光砲!

白い粒子状の砲が王に向かって放たれた。

16 名前:イル ◆uKCFwmtCP6 [sage] 投稿日:2006/10/20(金) 23:28:41
>12>13>15

>「さあ、陛下はこちらにおわすぞ!」
一人の騎士がオーガス皇国の旗を持ち、旗を見せつけるようにして、何度も巨人の前を横切る。
巨人はその旗の動きに反応してか、何かを探すような素振りを見せる。
巨人が何かを見つけることができたかどうかは知らないが、近くにいた兵士達に向けて火炎弾を放ち、手足を振り回して暴れだす。

誓音が暴れる巨人の頭部を狙って、白い粒子の砲弾を放った。
白い粒子の砲弾は魔族のイルにとっては、非常に相性が悪いのか、見ているだけで気分が悪くなる。
巨人にあの砲弾が効くかどうかは分からない。
だから、巨人にはあまり効果がないと仮定して、イルは動いた。

イルはローブの袖下から長剣を取り出し、呪文を唱える。
イルの姿がその場から消えると、次の瞬間には、巨人に狙われた兵士達の目の前に立っていた。

兵士達を狙っていた火炎弾を、イルは魔力を込めた長剣を振るい、かき消した。



17 名前: ◆pPAOEY1pWs [sage] 投稿日:2006/10/22(日) 23:12:49
ランべの呪文詠唱はいよいよ終盤に入る。
じわじわと魔力を上げるランべ。全てこの一発で決まるつもりだ。

そして…これで…

ランべは静かに目を閉じる。
思えばあの時途絶えるはずだった命だった。
あの修羅場とも言える壮絶な戦で死んでいった仲間の事を考えると自分は随分長生きしたものだ。

「(今更悔いなど無い…)」

ランべは目を静かに開いた。
ランべから見る巨人は、濁りに濁り最早そこに何者かがいるという事しか分からない。

強者必衰の理は余りにも残酷だった。

「(これで全てを終わらせる…)」

静かに微笑むランべ。


「(そしてこれで……お別れだ。)」


ランべは上空を見た。
分身のランべとローズは抱えられて以前そこにいた。
口を動かす分身ランべ。そしてそれを黙って聞き入るローズ。
ランべは…再度決意した。

18 名前:セシリア ◆TI6/2FuWqw [sage] 投稿日:2006/10/23(月) 02:43:15
>13>15
巨人は周囲を飛びまわるセシリアをしばらく目で追っていたが、
不意に視線を下げ、何かを探すようなそぶりを見せた。
何かを見つけたのか、それとも見つからないゆえの癇癪かはわからないが、
すぐに大暴れを始める。

「花火を見たい気分ではないんだ、すまないが」
空中で旗を地面に向かって投げ、その勢いで一回転したセシリアは呟きながら左腕を構える。
旗が突き立つ。同時にセシリアも撃ちまくった。巨人本体ではなく、火球が狙いだ。
『演習』で兵が死ぬなど、これほど馬鹿らしいことはない。
ところかまわず撒き散らされた火球を次々に落としていく。
撃ち漏らしもあるが、それくらいはまぁ避けるなりなんなりしてもらおう。

セシリアが右手側の火球撃ち落し、真正面から飛んできたものを
半回転してマントで弾くと同時に白光が空へと駆け昇る。
巨人とじゃれている隙に誰かが攻撃を仕掛けたようだ。
なるほど足元から上に向かって放てば周囲の兵も巻き込まずにすむ。
セシリアは光が収まり繰らぬ内に、もう一度氷を放った。狙いも同じく足だ。
ほんの短い間しか足止めできないのは先ほど証明済みだが、
裏を返せばほんの数秒は確実に止められたということでもある。
今放たれた一発で片がつかなかった場合、その『ほんの数秒』で十分追撃は可能になる。

19 名前: ◆HpH6dBLcFw [sage] 投稿日:2006/10/25(水) 15:46:53
>15-18
巨人が吐き出した火球をセシリアがことごとく撃ち落していく。
だが巨人はそれを気にかける様子も無く逃げ散る兵士を蹴り飛ばし、
暴れる馬を引っ掴んで投げ、火球を吐きまくり…
つまるところ何一つ変わることなく淡々と大暴れを続けていた。

だから、下方に白く光るものに気がつくのが遅れた。
そして、気がついてそちらへ目を向けた瞬間、
巨人はその光が誓音からの一撃である事を知覚することも出来ずに撃ち抜かれた。
痛みは無い。だが何か体が溶け落ち、萎んでいく、そんな不快感があった。
実際にいくらか小さくなっている事には気がついていない。
頭を振り乱して悶える巨人の足を、再び氷が覆う。
それでも巨人は苦悶する事をやめなかった。
凍りついた足が折れる。
前のめりに地面に倒れこんだ巨人はなおも足掻く。
――まだだ、まだ目的は果たしていない。

「ガァアアアアア――――ッ!!!」
両腕をついて上体を起こし、そこから飽きもせず火球を吐いていた巨人が大きく咆える。
脇腹から、二対の肢が生えた。先には指は付いていなかった。
体内の魔力が妙な干渉を起こした結果が、肉体に現れたのだろうか。
すねの中程から先がなくなった足も変化を始めている。
急速に長さを増し、その分太さを減じながら何本にも枝分かれし、
最終的には下半身全部がムチのような触手の塊へと変貌を遂げた。

巨人―であったもの―は元からあった両の腕と新たに生えた肢で体を支え、
背からも生えた触手を出鱈目に振り回し、辺り一体をくまなく薙ぎ払い始めた。
合間合間に火球を吐く事も忘れない。
兵士をふっ飛ばし損ねて地面を打ち据える触手が、盛大に土ぼこりを上げていた。

20 名前:イル ◆uKCFwmtCP6 [sage] 投稿日:2006/10/25(水) 18:20:29
>18>19
誓音の放った白い光の砲弾が巨人の頭部に当たる。
その効果により巨人の体は若干ながら縮み、頭を振り乱して悶え苦しむ。
空を舞う騎士が苦しむ巨人の足下を凍りつかせ、巨人は前のめりに倒れた。

今が巨人を討つ絶好の機会なのだろう。
名も知らぬ兵士達がこぞって巨人に向かっていく。
だが、巨人の内包する魔力が変異し、さらに危険なものに変わっていくのをイルは感じ、その場から動かなかった。

>「ガァアアアアア――――ッ!!!」
二本の腕で上半身を支え続け、火炎弾を吐き続けていた巨人は咆吼を上げる。
巨人の脇腹から指の無い腕が生え出し、下半身からは触手を生やす。
巨人は巨人でなくなった。
上半身から四つの腕で体を支え、無数の触手のみとなった下半身と、背中から生やした触手をゆらゆらと漂わせている。
巨人の内包していた魔力に何らかの刺激を与えてしまった為に、このような変化を起こしてしまったのだろう。

「もう…使うしかないようですね…」
イルは手にしていた赤い水晶を飲み込む。
体の中で水晶が溶け、体に力がみなぎってくる。
イルは化け物に向かっていった。

化け物は触手を縦横無尽に振り回して暴れ、火炎弾も忘れずに吐いている。
どれだけの兵士達が被害にあったのだろうか。
近くにいたチェンバル国の兵士達は全滅していることだろう。

イルの目の前に触手が叩き付けられた。
土埃が煙幕のようにイルの視界を遮る。
イルは飛び上がって土埃の中から脱出すると、地面を叩き付けた触手の上に乗り、化け物に向かい走る。
触手の終着点、化け物の背中に到達すると、イルは魔力を込めて切味を増した長剣を、化け物の背中に振り下ろした。



21 名前:セシリア ◆TI6/2FuWqw [sage] 投稿日:2006/10/28(土) 05:46:39
>19-20
光が失せ、巨人が苦悶する。その足を狙い過たず氷が包んだ。
だが巨人はその身を捩って身悶え続ける。
表面が澄み溶かしていた足がその動きに耐えられなかったのだろうか、
周囲を包んだ氷ごと砕けて折れ、巨人は地響きを立てて倒れこんだ。

巨人はそれでも体を起こし、火球を吐き続ける。
倒れこんだのを好機と見たか、一部の兵士が巨人へ向かっていったが、
彼らは自身が持っている武器が木剣である事を失念しているらしい。
「下がれ、あとは我らがやる!」
だが一喝された兵士らが実際に巨人から離れたのは、巨人の体に異変が起きてからだった。

虫の肢のようなものが脇腹から生え、両腕とともに体を支え、
下半身はばらばらと解れるようにして触手へと変化した。
そしてそれを出鱈目に振り回し始める。人や木や馬が軽々跳ね飛ばされていく。
その光景自体は先ほどとあまり変わらないが、頻度は数十倍だ。
何かを狙っているわけではなく、届く範囲内で闇雲に振っているようで、
草の根ごと抉られた土が舞い上がり、視界を遮っている。
さらに触手の隙間を縫いながら火球も吐き出している。
それを撃ち落したセシリアは、間髪要れずに指輪の魔石を起動した、
地面が隆起し、壁を作り出す。次いで鎧の魔石でその壁を凍らせる。
巨人の頭の位置が下がったため、ほぼ水平に火球が飛んで来るためだ。
撃ち漏らせば背後の味方に被害が出てしまう。

一応後顧の憂いを断ったセシリアの目に、土煙の中を巨人に向けて駆けて行く影が映った。
長髪、身長からすると女性だろうか。この状況下でわざわざ接近を図ろうというのだから、
何がしかの『手段』は持っているのだろう。とめる必要はないと判断したセシリアは巨人の後方へ回った。
のべつ幕なし振り回されている触手を先に何とかしないと、本体へ攻撃を届かせるのは面倒だと見たからだ。
左手を土煙に向かって大きく振る。突風が吹き抜け、舞い上がる土の中に一筋の道を作る。
はっきりと位置を確認したセシリアは、左腕を、今度は振り上げ、さらに振り下ろす。
土で出来た槍が幾本も天へ伸び、真空の刃がそこへ向かって放たれた。


22 名前:誓音 ◆aGZ9OPSgQQ [sage] 投稿日:2006/11/01(水) 22:36:06
はっきりと分かる手応え

―効いた…!!

即座に次の攻撃に移ろうと取りかかる・
足が折れても足掻きに足掻く巨人。
ここまで来たら後は押すのみ。
しかし、戦闘とはいつも思いも寄らない事が起こる。
突如変化は始まる。
誓音の全身の肌に寒気が走る。
瞬く間に触覚の塊となる王。
誓音は唖然とする暇もなく背後に飛ぶ。
火球が襲ってきたからだ。
余りにも急な攻撃に避けきることはできなかった誓音。
誓音の怪物の手先に火が当たる。
「っ!!」
誓音は手先を見た。
白さに焦げの黒が混ざる。
誓音は暫くそれをじっと見た後、
巨人をしっかりと睨んだ。
ここまできたら最早救うも何もないような気がした。
しかしここで諦めたらお終いだ。
過去が声掛ける。

―殺ッチマエヨゥ

そう、
ファルコンとカイザーに救われたのにまた落ちてどうする。
誓音は一瞬歪んだ心蔵を手でうつと
軽やかに飛び上がった。
イルの魔力が恐ろしいほど上がる。
誓音は巨人に向けた手は相変わらずの白さを持っている。

「唸れ…」

-白虎砲!!

白き虎と化した砲が巨人の胸元へ飛んでいく。

23 名前:ホーリーバトル・グリオン・ギャビ・ローズ ◆pPAOEY1pWs [sage] 投稿日:2006/11/01(水) 23:43:06
>19-22
最早国王の状況は最早悲惨の一言であった。
足は折れ、その身は前へ倒れ、足掻くも何も出来ない状況。
まあ、嘗ての戦争の誇り高き勇者達が集団リンチ受けて、
魔術の力で強くなっただけの王様が無傷でいられる事はまず無いと思っていたが…。
まるで最後の悪あがきかのように暴れ続けている巨人をなんとも言えない表情でみつめるローズは呟いた。

「……酷い有様ね…」

そのつぶやきは呆れている様子が伺える。ローズを抱えるランべも黙り込む。
しかし、だからといってその目は完璧な勝利を見ている訳ではなかった。
二人は知っているのだ。
どんな生物でも窮地に追い込まれたときこそ恐ろしい物は無いという事と…

嫌な予感は大抵当たってしまうを。

>「ガァアアアアア――――ッ!!!」

猛獣のように叫ぶ嘗て王だった者。
そしてそいつの肉体に禍々しき変化が起こる。
脇腹に生えた四肢、そして次第にそれは肉体内で繰り返し起こる変化によって大きなものとなっていき…
王はあっという間に触角の化け物と化した。

「これは…」

思わずローズが何か言おうとした次の瞬間だ。
触角の化け物の触角の一部がもの凄いスピードでローズ達を襲ってきた。

「!?!!!キャァアッ!!」

思わずローズが叫ぶ。
しかしランべの分身はローズをいっそう強く抱きかかえるとまるで地上にいるかのように軽やかに左に飛び避けた。
ランべの分身のローブの端が少し欠ける。

ローブの端が欠ける?

一瞬それに寒気を覚える。
ローズはゆっくりと顔を上げる。そう、意識してないのにゆっくりと。
そして…そこに居たのは…

「――――ラン…べ…?」


半分肉体が欠けた、ランべだった。

ローズの顔色が変わる。
ランべは優しく笑う。

地上にいるランべは最後の呪文の一文を叫んだ。

「「Yo !God. It changes into the shuttlecock that brings my soul close to you and
it falls behind!」」


聖なる偉大なマリアの御加護!!!


ランべは巨大な白いマリア像と化すと、光の無数の粒子となり、巨人の餌食となった屍に宿った。

24 名前:ホーリーバトル・グリオン・ギャビ・ローズ ◆pPAOEY1pWs [sage勝手に盛り上がってごめんなさい・・・] 投稿日:2006/11/01(水) 23:45:53
そしてランべの粒子を受けた屍は生き返る。
ローズは凄まじい光の中、自分を抱えているランべの目だけを見ていた。
そして気付く。

嗚呼…この男は…。

そして、生きが返った屍はイル、誓音、セシリアを助けようと生き返った兵達は巨人を押さえつけた。
聖なる御加護を受けた人間の力は凄まじく、
先ほどまで巨人の前ではただの虫けら当然だった者達の力は、まるで狩る側になったかのように豹変していた。

ローズを抱えていたランべに罅が入ったのがわかった。

25 名前: ◆HpH6dBLcFw [sage] 投稿日:2006/11/02(木) 05:10:55
>20
大きく振り上げられた触手の一本が地面を激しく叩く。その上に、何かが乗ったのを巨人は感じた。
すぐさま触手を振り上げてそれを払い落とそうとしたが、その反動すらも利用して一散に駆け寄ってくる。
それがオーガスの手の者―イルであると気づいたときには、その姿は視界から消え、
次の瞬間には背中を激痛が走りぬけた。
「ゴガァァァァァァッ!!」
痛みに身を捩り、背に乗っていたイルを跳ね飛ばす。
長く深く走っていた傷は、薄く煙を上げながら見る間にふさがっていく。

>21
一層激しく振り回し始めた触手の一部が、動きを止める。同時に再びの苦痛。
セシリアの生み出した土の槍によって、下半身部分の触手が串刺しにされていた。
さらに新たな痛み。風の刃が土の槍ごと触手を一気に切り飛ばしていく。
巨人は反射的に残っている触手を振るい、土塊と触手の切れ端をまとめてなぎ払い、
セシリアへ叩き付けた。

>>22-24
後方のセシリアに気を取られている隙に、巨人は完全に兵士たちに囲まれていた。
これまでそうしてきたように、触手を振り回して跳ね飛ばす。
だが、これまでとは違い、跳ね飛ばされた兵士たちはすぐに起き上がり、徐々に包囲を狭めていく。
すぐに一人の兵士が巨人の肢に取り付いた。巨人は肢を振ってそれを振りほどく。
その間に別の兵士がほかの場所に取り付く。
いかに強化されているとはいえ、一人一人では巨人に適うべくもない一兵卒だが、
取り付き、振りほどかれ…と繰り返すうち、巨人の動きは明らかに阻害され始めた。

巨人は先ほど氷から抜け出したように、自分の足元に火球を吐き一気に脱出しようと、大きく胸を反らせ息を吸い込む。
そして体を振り戻した瞬間、その胸元を誓音の技が襲った。同時に火球が炸裂し兵士を吹き飛ばしたものの、
先ほど感じた不快感がより強く巨人を苛む。

「ゴオオオオオオアアアアアアッッッ!!」
一際大きく咆えた巨人の傷が一気に治癒する。――が、それに伴って全体が徐々に萎んでいく。
暴走した魔力は活動の源であると同時に、身体を構成している一部であるため、
急速な身体の再構築によって失われた魔力の分だけ体積が減っているのだ。
やや小さくなったながらも完全に元の姿を取り戻した巨人は、
回りに群がる兵士を触手で遠ざけはするが、しかし動こうとはしかった。

今、巨人と化した王の脳裏にあるのはオーガスの打倒、それのみである。
しかし思考力に乏しいながらも現状の戦力差ではそれが困難であることは理解できた。
(そもそもオーガスがいる場所を間違えているわけだが)
だが、持ち得るすべての手段を用いて、オーガス打倒を果たすという目的は何があっても曲げられない。
――では、どうすべきか。
『持ち得るすべての手段』、その最後に置かれたものをここで使うより他はない。

巨人の体内を魔力が駆け巡る。
兵士達を跳ね除け続ける間にも魔力の加速はとどまる気配を見せない。
やがて巨人の身体が小刻みに震えだす。鍋蓋が蒸気でカタカタと音を立てるように。
放っておけば今にも『蓋』を跳ね飛ばして、何かが弾けだしそうな様子だった。

26 名前:イル ◆uKCFwmtCP6 [sage] 投稿日:2006/11/04(土) 22:27:49
>21->25
確かな手応えがあった。
化け物は苦悶の叫びを上げて触手を激しく振り回し、痛みに身を捩らせる。
化け物が激しく動く為、その場に立っていられなくなった。
イルは軽やかに跳躍し、化け物から離れた地面に着地する。

オーガス騎士達の化け物に対する攻撃は止むことはない。
激しく振り回される触手に大きな土の槍が突き刺さり、突き刺されて動かなかった触手を、土の槍ごと真空波が切り飛ばす。
空に忌々しき巨大な聖母の像が現れ、光の粒を戦場にばら蒔く。
倒れた兵達の屍に光の粒が浴びせられ、兵達は死者の国から舞い戻り、再び化け物に挑んでいく。
人間達にとって聖なる加護のバックアップを受けた為、死ぬ前よりも格段に強くなっている。
今度は簡単にやられることは無いだろう。

化け物は、自身の体に張り付いてくるゾンビ兵達を振りほどこうと触手を振り回す。
ゾンビ兵達は振り払われるものの、すぐに化け物にまた張り付きにいく。
そのことに煩わしさを化け物は感じたのだろう。
ゾンビ兵達を一気に焼き払おうと火炎弾を吐く体勢をとる。
火炎弾を吐こうとした瞬間、誓音の虎の形を模したエネルギー体が化け物に当たった。

>「ゴオオオオオオアアアアアアッッッ!!」
化け物は大きな叫び声を上げると肉体を再生させる。
代償として肉体の大きさが縮んでいるが、暴走した魔力が消費している為であるからだろう。
だが、化け物の内包する魔力が急激に高まる。
残りの魔力を無理矢理に高めるそのやり方。
あれでは肉体が耐えきれずに爆発してしまうだろう。

「自爆を狙っているのですか?」
化け物の体が小刻に震え出す。

「そんなことはさせません!!」
イルは化け物に向かって走り、先程と同じ様に触手に飛び乗って、化け物の体を走る。

「その魔力、貰わせていただきます」
イルは化け物の魔力を無害な形で大気中に放出するべく、長剣を化け物の背中に突き刺そうとした。


27 名前:セシリア ◆TI6/2FuWqw [sage] 投稿日:2006/11/07(火) 14:05:27
>22-26
隆起した土が触手を縫い止め、動きを止めたところで風の刃が根元からそれを切り飛ばしていく。
巨人は切断された触手が地へと落ちる前に残った触手を水平に振り、
触手の切れ端と抉れた土をまとめてセシリアへ向けて飛ばした。
セシリアはその場でくるりと一回転してマントを大きく振る。
巻き起こった旋風が、飛んできたものを弾き飛ばす。周辺に盛大に土煙が立ち、また視界を塞いだ。

もう一度風を起こして土煙を払うのと、光るものが戦場に降り注いだのはほぼ同時だった。
上空を見上げると聖母像が輝いている。いぶかしみながら視線を水平へ戻すと、
光を浴びた兵士たちが起き上がるのが見えた。折れた腕を揺らし、血の跡を引きずって、
兵士たちは巨人へ向かってゆく。すぐに触手で跳ね除けられるが、即座に起き上がり、また巨人へ向かう。
程なくして巨人の足元は兵士たちに完全に押さえ込まれた。
巨人は煩わしげに大きく身をのけぞらせる。火球を吐いて爆風で兵士を一気に散らすつもりだろう。
反らせた身体を勢い良く前へ戻す。その瞬間、白い光を曳いた虎がその胸元へ飛び込んだ。
同時に火球が炸裂し、兵士と地面を一気に吹き飛ばす。

吹きぬけた風が土煙を運び去った後には、身悶える巨人の姿があった。
大きく咆哮し、身を捩る。と同時に切り落とした触手が次々と再生していった。
それに伴って肉体が縮小していく。回復に要するエネルギーは身体を分解することで得ているらしい。
吹き飛ばされた兵士たちがまた巨人に寄って行くが、巨人は密度を取り戻した触手の攻撃でそれを寄せ付けない。
しかし前進を再開するかと思われた巨人はその場にとどまり、ただ寄ってくるものを跳ね除けていた。

が、すぐにその身体がひきつけを起こしたように震えだし、内在する魔力が急速に膨れ上がるのが感じられるようになった。
「…さしもの陛下と言えどこれに巻き込まれては――」
いや、たぶん無事でいるだろう、とセシリアは思ったが、兵や自分らが無事でいられる自信はない。
なんとしても食い止めなくてはならない。すぅ、と細く息を吸った。
鎧と腕輪とマントの留め金の石がそれぞれ光を放つ。
「ぃ行けぇっ!!」
セシリアが叫ぶと同時に、氷片混じりの旋風が巨人の足元から吹き上がった。


28 名前:誓音 ◆aGZ9OPSgQQ [sage] 投稿日:2006/11/10(金) 22:11:09
多大なる猛撃。
復活する兵。
それは、どこか幻想的に感じられる。
誓音は驚いた。
何が起きたのか分からない。
一時的でも、
人が生き返るというのは
そう簡単な事ではない。
兵に抑えられる王。
こんな異様な光景の中、
誓音は王が突如震え始めたのに気付く。
この流れ。
このパターン。
誓音は察した。

「自爆する気ですか…!?」

誓音は地面に手を当てた。
イル、セシリアもなんとか止めようとする。
そして誓音も。
地面が白く輝く。
「我!天神に捧ぐ!」

―白柱砲!!

そして次の瞬間王の胸に一筋の光が地面から出、
王の心臓を貫いた。
最後の精神へのトドメのつもりだ。
一瞬にして
抵抗力を無くさせ神へ屈服させようとする光は、
王を貫き天高く舞い上がる。
誓音は王を睨んだ。

29 名前:ホーリーバトル・グリオン・ギャビ・ローズ ◆pPAOEY1pWs [sage] 投稿日:2006/11/10(金) 23:08:38

地上の激闘の中、宙は静かだった。

「……ランべ?」

名前をもう一度呼ぶ。しかしランべは何も語らない。目についた十字の罅。
ローズはその罅を見たことがあった。

――それは、医学本に記されたある病気に犯されてる証。
その病は名前は忘れたが確か原因不明の聖病の一つで、よく歴代の英雄達がなると言われており、その症状は…

身体の中をじわりじわりと蝕み、最終的には十字の罅が入り砕け散るという物。

ローズは震えた。そしてスッとランべの顔に触れる。
するとランべのローズを抱えていた腕が砂となり堕ちた。
そしたらローズも堕ちる。

しかしローズは綺麗に宙を一回転するとローズは地面に着地した。

―ストンッ…。

着地し暫く呆然とする。
そして、いずれランべの残っていた身体は灰となり次々にローズの頭上に振ってきた。
気付けば本物のランべも灰と化していた。
戦場の中、ローズだけは水を打ったかのように静かになっていた。

…そしていずれ灰と一緒に手紙が振ってくる。

暫くじっとした後地に堕ちた手紙に気づきそれを拾い上げるローズ。
自爆しようとする巨人。それを止めようとするイル。そしてローズは手紙を開いた。
そしてローズは、そこにあった文字に目を見開く。
そこに書かれた文字の一つ一つを拾い上げる。

――ランべ…貴方…。

「ロ、ローズ殿!!」

するといきなり死んだはずの暗殺者の剣士が駆けて来た。

30 名前:ホーリーバトル・グリオン・ギャビ・ローズ ◆pPAOEY1pWs [sage] 投稿日:2006/11/10(金) 23:13:40
気付けばマリア像の力を受けた兵達の傷が無くなっている。
暗殺者はおどおどした様子でローズに聞いた。
「い、いいい一体何が起きたんですか!?ききき気付いたらこの状況でありまして。」
「黙れ。」
そう一喝するローズ。それに暗殺者の顔は固まる。
しかしそんな暗殺者に目もくれず、ローズは手紙を丸め剣を抜いた。

「…全く…かっこづけにもほどがあるわね…。」

そう呟くと巨人を鋭い眼光で見る。
そして次の瞬間、ローズは薔薇の種を数個地面に落とす。(>>25)
そして、水筒の水を剣の刃にぶっかけながら、先ほど語ったランべの言葉をローズは思い出した。。

『絶対的不利な状況の中、嘗ての歴代の戦士達に勝利を掴ませた力を知ってるか?』

…それは…。

"大切なモノを護るという意志!!"

そしてローズ種に向かって剣を突き刺した!!

――ザクッ!!!

「「毒炎の赤き薔薇!!発動!!」」

そう大声で叫ぶ。そして次の瞬間地面に一直線に亀裂を入れながら赤い薔薇が巨人へ暴れ狂いながら襲いにかかっていった!
+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
毒炎の赤き薔薇
対象者に蔓をからみつかせ、炎上する薔薇。

31 名前: ◆HpH6dBLcFw [sage] 投稿日:2006/11/13(月) 02:53:19
>26
周囲にいる兵士達を跳ね飛ばし続ける触手に、イルが飛び乗り、走る。
先ほどとまったく同じに巨人の背まで駆け上り、剣を振り下ろした。
切っ先が深々と瀬に埋まる。巨人は即座に触手を伸ばしイルを投げ飛ばした。

>27-30
その瞬間、胸板から背に刺さった剣までを大地から立ち昇った白い光が貫き通した。
完全にイルに意識を取られていた巨人にはそれを避ける術などなかった。
自らの黒々とした部分を照らし出されるのを嫌がるかのように身を捩る巨人へ、
さらに吹雪と炎が襲い掛かる。烈風に吹き上げられた氷片が巨人の全身をくまなく切り裂き、
踊る炎が血の吹き出す傷口を炙る。血と肉の焦げる臭いもまた、
氷片とともに風に巻き上げられて行く。

それぞれが多大な打撃を巨人にもたらした。
負った傷を治癒しなければ魔力が高まりきる前に死に至る可能性がある。
しかし、傷を治すには魔力を消費する。
魔力を消費しすぎると、自爆の威力が小さくなってしまう。
巨人は傷を治癒しないことを選択した。
流れ出る血の量と比例してますます魔力が高まっていく。
ほんの数秒で、針で突付けば破裂するのではないかというほどまでになった。

そして、実際に弾肩口の辺りで小規模な爆発が起き、血と魔力が溢れ出た。
もちろん誰かが針で突付いたわけではない。
深手を負った体は、魔力を循環させ増幅する器としての強度を持たず、
高まった魔力の圧力に負けてしまったのだ。
開いた水門から水が流れ出ていくように、巨人の傷口から勢い良く魔力が流れ出してゆく。
やがて、巨人の身体は砂と化して崩れ落ち、内部に残っていたいくらかの魔力が一気に吹き出して、
跡形もなく吹き散らされた。

あとにはチェンバル王が倒れていた。かたわらには巨人の背に刺さっていた剣が突き刺さっている。
連合側の王の一人がその姿を見つけ、即座に号砲を撃たせた。
――総大将の撃破による、演習の終了である。
やがてチェンバル軍の近衛と典医がやってきて王の身体を調べ始めた。
気を失っているだけとわかると、すぐに王を運んで本陣へ戻っていく。
とりあえずの区切り、というわけである。

『あとのこと』に関してはまた別の話だ。
もっとも補償にいくらかかった、などという話をわざわざ聞きたい者もいないだろうが。

他に言うべきことがあるとすれば――
チェンバル王の器では未来永劫オーガスに勝つのは無理であるということだけだった。


32 名前:イル ◆uKCFwmtCP6 [sage] 投稿日:2006/11/13(月) 13:50:01
>27->31
イルは化け物の背に長剣を突き刺すことができた。
そして、これから魔力を放出させようとする矢先、化け物がイルに触手を向けてくる。
イルが触手に気付いた時には、触手はイルを掴み、大地に投げ捨てていた。
イルは地面に叩き付けられる前に、魔力で体を包み込む。
魔力が衝撃を緩和し、激突の際、多大なダメージを負うことはなかった。

イルは身に覆った魔力を消し去り、再び化け物に挑もうとする。
だが、他の騎士達が化け物に対し、大規模な攻撃をしており、迂濶に攻めていっては巻き添えを喰らってしまう。
イルは騎士達の連続攻撃の切れ目を待つことにした。

連続攻撃に切れ目が現れ、イルは化け物に向かう。
化け物の体は今にも張り裂けそうな程、魔力が膨れ上がっている。
魔力を放出させて助けようとするなど、もう不可能である。
殺すしかないと、イルは思った。
だが、事態はイルの予測とは裏腹に、良い方向に向かっていくことになる。

化け物の傷口から小規模な爆発が起こり、爆発が起きた傷口から、血や魔力が流出する。
その流れは止まることはなく、魔力が流れ出るに従い、化け物の体も砂に変わっていく。
化け物の体が全て砂と変わった時、残った魔力が弾け、化け物の体は跡形もなく消え去った。
化け物が居た場所には、チェンバル国王が倒れていた。

模擬戦終了の合図の号砲が鳴った。
チェンバル国王の下に側近等が近付いて、国王を調べた後、国王を自陣に運んでいく。
イルは地面に突き刺さった長剣の下に行き、長剣を地面から抜き、ローブの袖口に入れた。

イルは誓音の方に歩いていく。

「これで私達の仕事も終りでしょう。
 私達も本陣に戻りましょう」
イルは誓音にそう言うと、オーガス軍の本陣に向かい歩いていった。



33 名前:セシリア ◆TI6/2FuWqw [sage] 投稿日:2006/11/18(土) 15:37:20
>31-32
渦を巻いた風が勢いを増す直前、白光が巨人を貫く。
間髪を入れずに風が氷とともに荒れ狂う。
そこへ、誰が放ったものか炎が纏わりつき、氷で引き裂かれた巨人の身体を焼く。
背に刺さった剣が、炎を反射してぎらぎらと光っていた。

風と炎が収まりかけ、巨人の姿が見え始める。
黒く焦げた皮膚の隙間から赤い血と肉が覗いていた。
さっき見せた回復力であれば、おそらくこの傷も瞬時に塞げるだろう。
だが巨人はそうしようとはしなかった。
傷口から血があふれる。その流れ出た分を補うかのように魔力が一気に膨れ上がる。
セシリアは魔石を構えた。竜巻で巨人を上空まで吹き上げ、そこでもう一撃食らわせるつもりだ。
だが、風が渦を巻き始める直前、巨人の身体が弾けた。

――間に合わなかった。セシリアはそう思った。だが予想していた衝撃は来なかった。
見れば弾けたのは肩口だけで、そこから血と魔力が流出している。
恐らく、高めた魔力を物理的な力に変換して放出するのに体の強度が追いつかなかったのだろう。
肩の傷から始まった崩壊は全身に及び、やがて砂となって崩れていった。
身体の中心部に残っていた魔力も砂の器を破って弾け、風となって散っていく。
セシリアはマントを口元に当てて砂が運び去られていくのをやり過ごし、
それから草や砂が波紋状に広がる中心に眼をやる。
そこに倒れていたのはチェンバル王だった。
どういう経緯でかは知らないが、恐らく何がしかの術を施されたのだろう。
先陣を切るために、自ら進んで。
伝え聞く王の気質ならそれくらいやるはずだ。
そういう気質自体はセシリアは嫌いではなかった。
(それによってこうむった迷惑を許せるほどではないのだが)

程なくして周囲に舞っていた砂埃が収まり、視界が晴れる。
ほぼ同時に号砲が鳴る。演習終了の合図だ。
すぐに連合軍のほうから馬車を連れた一部隊がやってくるのが見えた。
倒れている王の身体を改め、それから馬車に乗せて後送していく。
この模擬戦は日程の最後、つまり今回の演習はこれですべて完了というわけだ。

「やれやれ、再編にどれほど手間を取られるか……」
セシリアは振り返って呟いた。
騒動の大きさの割には被害は少なくすみそうだが、
使い物にならなくなった兵や装備が皆無というわけではない。
そしてそれらの調達にはまた予算がかかる。
抗魔戦争からまだ間もなく、国土の復興にも同様に予算を取られている現状で、
速やかな再編は望めないだろう。

だが――多くの兵が、本物の死線を潜った。
今回はそれで良しとしなければならないだろう。
経験は金を積んで得られるものではない。
そしてその経験は、これから先起こるであろう戦い、
恐らくは、あるもの全てをかき集めてみてもなお足りない、
そんな戦いへむけ、小さいながらも確実に有利な材料のひとつになる。

セシリアは空を見上げた。
そんな小さな成果を、一体いくつ積み上げれば届くものだろうか、と考えながら。

34 名前:名無しになりきれ[] 投稿日:2006/11/21(火) 22:42:57
正義とはなんぞ

35 名前:誓音 ◆aGZ9OPSgQQ [sage] 投稿日:2006/11/23(木) 00:14:56

チェンバル王に当たった光は胸を貫き、
そしてチェンバル王は燃えていった。
しかしそれでもチェンバル王は挫けない。
王はなんとしてでも自爆する気だった。
まさに満身創痍だ。

「っ…!!」

誓音は防御壁を出そうと構える。
しかしそれは無駄な行動となった。
魔力の循環が上手くいかなくなった国王が自爆する前に魔力漏れをしたのだ。
国王はみるみるうちに元に戻った。
それと同時に鳴り響く模擬戦終了の合図の号砲。

模擬戦はこうして終わった。

呆然と立ってた誓音にイルが話しかける。

>「これで私達の仕事も終りでしょう。
> 私達も本陣に戻りましょう」

「・・・そうですね・・・。」

ぽつりとそう言うと誓音は本陣に向かう。

その後、チェンバル王がどうなったかは誓音は知らない。

36 名前:ホーリーバトル・グリオン・ギャビ・ローズ ◆pPAOEY1pWs [sage遅くなって申し訳ないわ] 投稿日:2006/11/29(水) 00:44:00
薔薇の蔓は巨人を抑えつけ、紅く燃え上がった。
しかしそれだけじゃ収まらない事ぐらい重々承知だ。
体内の魔力の強力な荒れを感じ取るよローズは剣を腹に狙いを定めた。
本来ならば頭に投げつけて殺してやりたいところだが、今回はそういう訳にはいかなかった。
狙いをしっかりと定めるローズ。そして身を反らした!

…が、

―パンッ!!

血管が弾ける音が響く。
「…!?」
ローズは身を反らしたまま刀を落とす。目の前に現れたのは血の赤い大木だった。
大量の血と魔力を吹き出し小さくなっていく王。
ローズは暫くそれを無表情でじっとみると固まっていた腕を下に降ろした。
「…魔力…漏れ……ってやつですか…」
そばにいた暗殺者が呟く。
要するに王の身体は自分の中の巨大な魔力の変化についてこれなかったのだ。
ローズは暫く黙り込むとため息を一つ付き腰に手をついた。
そして暫くぐいっと目を抑えると地面に堕ちた刀を拾い、王に背を向ける。

「ロ、ローズ殿…どちらへ!?」
「家へ帰るわ。」
「え!?雇い主様の家へですか!?」
「…何仰ってるの?私の家よ。もう私は貴方たちみたいな人間に一切触れたくもないわ。」
「い、いや!でも貴方様が消えてしまわれたら…わ、私は、雇い主様にどのように報告すれば…!!」

慌てて訪ねる暗殺者にローズは一つため息をつくと暗殺者の方へ振り返り言った。

「そうね…薔薇騎士ローズは天下の皇帝騎士様様を殺そうとした己の罪の意識に芽生え、
それを償うために『神に最も近い不条理』を殺しに旅立ったとでもお伝えしておけば。

きっと貴方の雇い主様はさぞ、愚かな女の改心を知り顔を青ざめてお喜びなるでしょうし。」


37 名前:ホーリーバトル・グリオン・ギャビ・ローズ ◆pPAOEY1pWs [sage] 投稿日:2006/11/29(水) 01:15:14
そう言うとローズは再度背を向け歩き出す。
ローズの発言を聞き顔を青くする暗殺者、鳴り響く号砲。
そして次の瞬間風が吹いたかと思うと、足下にローズがくしゃくしゃにしたランべの手紙が張り付いた。
++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
拝啓、薔薇騎士ローズ様へ

ひさしぶりだな、ローズ。
あの戦い以来、お前が様々な場所、時間を彷徨い歩いているという事を風の噂で聞いている。
お前にはどうやらまだあの戦いの傷が残っているようだな。無論、それは私も同様だ。
あれ以来私は戦に出る度にその傷が疼き、剣を握る手が震える。
しかしそれに耐えても戦に出るのが戦士たるもの、
私はいつもその手の震えを抑えながらあの後も戦に出てきた。しかしだ。
抗魔戦争の時だけは違った。
手の震えはなかった。心臓の鼓動が激しくなることもなかった。

ただ、剣を握る気にならなかったのだ。

そして、悟った。
これは私が死んでしまった事を。
嘗ての勇ましき戦を憎み、愛した男であったランべは死んだのだと。
それならば今の私は存在することに意味など無いだろう。
私はそう思い、自ら命を絶とうとしたの…

だ が、

突如状況は一変した。絶対者の情報が入ってきたからだ。
絶対者の話を聞けば聴くほど絶対者はどうもあの悲劇の根本のような気がしてならない。
そして私は絶対者となんらかの接触をするべきだという考えに至った。
しかしだ、私は先ほど書いたようにもう戦士としては使い道は無い。
そこでお前の力を借りようと考えたのだ。

38 名前:ホーリーバトル・グリオン・ギャビ・ローズ ◆pPAOEY1pWs [sage] 投稿日:2006/11/29(水) 02:07:31

そうと思えばまずはお前を捜さなければならなかった。
しかし私はお前とは戦上の関係しかない故、家も知らない上、
お前は彼方此方の戦に顔を出す故、なかなか接触が出来ない状況。
なので私は情報を少々操作し、餌を撒かせてもらうことにした。
それがオーガス皇帝騎士暗殺だ。
何、お偉いさんと皇帝騎士に近い人間をちょっくら監禁して化けなければならなかったが
それぐらいは腐れ縁の仲間と一緒にやれば容易い。

そして案の定君は網に掛かってくれた。

それを知り私は大層愉快になった。
やはり人とはいつ騙しても楽しいものだ。
こうなればさらに騙すのが男という者だろう。
そこで今度は私が死ぬという小芝居をする事にした。
まんまと騙されたか?ん?ん?そーれ悔しがればーかばーか。

ま!どうせお前の事だ!人一人殺すのに沢山死者を出すと思って蘇生術も死ぬ前にしてやってやると思うからそれでチャラにしておけ!

…と、言うわけで私は生きている。
取りあえず今回はお前が何処にいるのかいつでも分かるよう超強力な探知魔法を付け、いつでも呼び出せるようにできた事だし、
(実はこの手紙の封筒を開けると魔法が掛かるように設定しておいたのだ。)
絶対者の存在を知らしただけでも十分な収穫だろ。
俺は取りあえずここらへんでドロンする。
また強制的に呼び出すと思うがそんときはよろしく。


では、また絶対者編で会おう!

PS.人とはそう数年で変わるものじゃないぞ?ローズ。

                       Byランべ

39 名前:イル ◆uKCFwmtCP6 [sage一応、個人エピを投下します] 投稿日:2006/11/29(水) 23:13:21
合同演習は終った。
暗殺者のことはオーガスに知られず、チェンバル国王が化け物へと変化したのは、魔力の暴走による事故として処理された。

「くそ……そんな面白そうなことがあったんなら、この俺も遊びに行ってやれば良かったぜ……
 あんまり楽しめそうにないと思ったから魔界に残ったのによぉ……」
地上から帰ってきたイルの土産話を聞いたFALCONは、本当に悔しそうに言った。
サタンとの戦いの後、魔界に帰ったFALCONは、絶対者という底の知れない強敵と戦う為、厳しい修行を日夜行っている。
今回の合同演習の一件は、現在のFALCONの強さを試す、絶好の機会だったことだろう。

「はぁ……FALCONって本当に戦うのが大好きなんだね」
イルは呆れたように言った。
イルはFALCONと一緒に修行をするのは好きだが、戦うことは余り好きではない。

「くくく……当たり前だろ。
 戦闘民族の血を引く俺にとって、戦うことは最高の喜びの一つなんだ」
FALCONは自慢気に答える。
その予想通りの回答に、イルはため息をつく。

「そんなんじゃ、絶対にいつかまた死んじゃうと思う。
 FALCONは魔界でやることがあるんだから、死んじゃいけないの。分かってる?」
現在、FALCONは魔界に領地を持つ魔王の一人に数えられている。
七つの大罪を司るような大魔王ではないが、
ガストラ帝から魔界を救ったことや、仲間と共にサタンを撃退したということで、他の魔族達に高く評価されているのだ。

「あぁ……分かってるさ……
 俺が死ぬ時はな、限界まで突っ走っていった後だ。
 何があっても、俺は立ち止まらないっていう強敵との約束があるんだからな……」
FALCONは着ていた黒いコートのポケットから、黒く塗られたサイコロを取り出す。

「俺は……必ず大切な奴らを守ってみせるぜ……なぁ、ザジン……」
FALCONは黒いサイコロを握り締めながら、あの世にいる強敵に届くよう祈りながら囁く。
そんなFALCONを、イルは暖かい目で見つめ、ずっと支えていこうと心の中で誓ったのであった。




騎士よ、今こそ立ち上がれ!!8

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