1 名前: ◆1000VJ0J4k [sage] 投稿日:2008/11/28(金) 21:48:48 0
はるか昔、中華なファンタジーな世界。
世界には人が点在しているだけで、平和でした。
そんな俗世を離れた仙境と呼ばれる世界に、一人の仙人が降りました。

その仙人は宝貝(パオペイ)を作らせたら仙界一。 素晴らしい宝貝を次々と開発していきます。
しかしこの仙人、少々ぐうたらな上ボケが入っていて、物の整理が出来ません。
そこら中に散らかり、肝心な時に見つからない始末。
自業自得ですが、理不尽な業を煮やした仙人は一つの手段を講じました。
「自分で整理するのは嫌だ。だから、宝貝自身にやってもらうぢゃ!」
宝貝に擬人化する術をかけ、自分で片付いて貰おうというのです。
こうして様々な宝貝は人型をとる事ができるようになり、自分の意思を持つことになったのです。

しかし、それは良い事ばかりではありません。
意思を持った宝貝たちは、自己主張をするようになります。
ただの自己主張ならどうでもいいのですが、中には用途を外れた意思を持つものも現れたのです。
例えば、髪切りハサミとして作られたにもかかわらず、武器になりたいと主張するもの。
道具として強力すぎるもの。致命的な欠陥のあるもの。
そんな宝貝たちは、仙人の元にいては自由に自分を表現できないと、人間界へと逃げ出してしまったのです。

慌てた仙人は、残った宝貝達を集め、逃げた宝貝たちを連れ戻すように命じます。
こうして、宝貝たちの追跡劇が始まったのです。

※宝貝とは
パオペイといい、いわゆるマジックアイテムです。
擬人化し、人間の姿となって自律行動が出来ます。
大ダメージを受け行動不能になると元の姿に戻ります。

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キャラ用テンプレ&テンプレ記入例
名前:陽光炉
性別: 女
外見年齢:40代後半
体格: 樽
容姿:パーマに割烹着のおばちゃん
性格: がっちり肝っ玉母さん
原体: 炉
特殊能力:炎・光属性
備考: 宝貝を作る炉の宝貝。灼熱の炎と光を駆使する。
   全ての宝貝は陽光から作られており、重傷を負った者を回復させる事もできる。

【名前】
名前の構成は漢字三文字が基本です。
前ニ文字で呼び名、最後の一文字で原体を現す字を。
テンプレ記入例のキャラは炉の宝貝なので最後に炉の一文字が入っています。
呼び名は陽光オバサンとなります。
まあ、一種の雰囲気作りという事でご了承ください。

【能力についての注意事項】
【時間】【空間】【治療】の三つの能力は扱いは難しいデスヨー。
匙加減とかパワーバランス、使い所や欠点や制約の付け方。
便利な能力ですが使い勝手はかなり難しいですのであまりお勧めできません。

【キャラ作成のワンポイント】
武器系の原体は便利!
特殊能力や属性をつけるのに説得力が必要ないです。
また、戦うために作られた武器は当然他の用途がある道具系の宝貝より基本戦闘力は高いです。

2 名前: ◆1000VJ0J4k [sage] 投稿日:2008/11/28(金) 21:50:22 0
ジャンル:中華ファンタジー
コンセプト:短期バトル
期間(目安):1シナリオ2週間から1ヶ月
GM:(なし)
決定リール:(あり)
○日ルール:(あり)3日
版権・越境:(なし)
名無し参加:(なし)
敵役参加:(あり)
避難所の有無:(あり)総合避難所使用。


敵役と討伐隊の二極戦闘。
人間界に居座る脱走宝貝のところに追跡宝貝が登場したところからスタート。
敵役の希望次第で、一戦闘のみで終わらすことも、段階を経る事も可能。

戦闘描写の練習用の側面が強いです。
ストーリーは特に考える必要なし。
敵のいる場所に到着、ラストバトルからスタート。
キャラクターレギュレーションは宝貝であること。
基本的に持つ武器は原体に由来しますが、特殊能力は自由です。
原体は何でもありですが、世界観が中華ファンタジーなので近代的なものは不可です。
しかし、近代的なものを置き換えればOK。
例えば時計→日時計、砂時計。ステレオ→鐘、音叉などなど
この世界に妖怪・魔物の類はいません。
名前の一部に正体の名前が入っていること。
敵味方共に全員が顔見知りである事。
ストーリー的な起伏は求めないので、正体不明の謎の男などは却下です。
また、ストーリーの簡潔化の為にも個対個の範疇の内に収まっていましょう。

3 名前: ◆1000VJ0J4k [sage] 投稿日:2008/11/28(金) 21:50:41 0
【レスの構成について】
レスは受動行動と能動行動に大別されます。
受動行動は相手が攻撃してきた時に受ける、躱す、防御するなどの受動的な行動描写です。
能動描写は相手に攻撃した時の能動的描写です。
まあ、攻撃と防御だけには限りませんが、ね。

更に行動描写・心理描写・台詞・効果説明でそれぞれの行動が構成されます。
行動描写・・そのままキャラクターの行動。走ったり、殴ったりなど。
心理描写・・キャラクターが思ったこと。
台詞・・キャラクターが口に出していった言葉。
効果説明・・行動に伴う解説。
行動描写で火の術を発動だけでは、火の玉を飛ばすのか、手足に火を纏うのか判りませんよね。
それを補完する為の描写です。
火の術を発動し、手に炎を纏わせた。この炎は体から離れることはないが、触れたものは火傷してしまうだろう。
といった感じで。
第三者にもわかりやすく説明を入れるとスムーズにレスの応酬が運ぶでしょう。

また、疑問などは避難所で小まめに解決していきましょう。
ボタンの掛け違えも一言聞くだけで大概は解決するものです。

【注意事項】
スレを勧めていくうちに、一度や二度はやっちまった!となる事があります。
その時に、やっちまった・・・吊ってくる・・・となってはいけません。
失敗を指摘された時の衝撃もわかりますが、それ自体は大した問題ではないのですから。
あのレスのあそこはまずいでしょ→oh!ならこう直してみたらどうかな?
というやり取りさえできれば十分なのですから。
むしろ、こうしたやり取りでを重ねて色々学習していく為のスレですのでね。
失敗を深刻に受け止めず、やり直しが聞くものだ、という意識を持ちましょう。

TRP系スレ総合避難所@なりきりネタ
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1223106569/l50
テンプレ投下や打ち合わせ・質問などにお使いください。

まとめサイト【千夜万夜】
http://verger.sakura.ne.jp/
TRP用語集や代理投稿スレなどがあるのでご利用ください。

4 名前:愚断 ◆1000VJ0J4k [sage] 投稿日:2008/11/28(金) 22:00:04 0
【シナリオ1:鉱山の兇刃】

追跡宝貝達は人界に散り、逃亡宝貝を探していた。
気配を消し、人界に紛れる宝貝もいるが、見つけるのは不可能な事ではない。
宝貝の力は人界においては強すぎるのだ。
何らかの行動を起こせば必ず噂となり、朧気ながらも知れる事になる。

しかし、今回は全くそのような必要はなかった。
まるで隠そうともしない強烈な剣気がある山から立ち上っているのだから。
強烈過ぎるその気配に誰もが理解するだろう。
そこにいるのは、大剣の宝貝【愚断】だと!


擬人化した宝貝たちが集団脱走し、それを追う追跡宝貝たちが出発してから一週間。
人界の山中に一人の男が仁王立ちしていた。
この男、愚断剣という。
筋骨隆々の巨躯を惜しげもなく見せ付けるように上半身は何も身につけておらず、手に持つ大剣を地面に突き刺している。
これは何も意味のないことではない。
この山は鉱山であり、金気が宿る。
剣の宝貝である愚断は剣を突き刺す事により山の金気を吸い取り己を強化しているのだ。

仁王立ちしたまま愚断は待っていた。
自分は剣である。
だが、どこまで切れ味が鋭くなるか突き詰める為に作られた為、実際に戦いの場に持ち出される事はなかった。
愚断にはそれが我慢できなかったのだ。
剣である以上、戦うことは至上の目的。
それができず飼い殺しのような状態だった仙界での生活が。

だからこそ人界に下ったのだが、人界には愚断を満足させるような獲物はいなかった。
この鉱山の周囲には一切の生き物の気配はない。
なぜならば・・・・

そうして今、愚断は待っている。
仙界からの追っ手を!
戦いを!

鉱山の中腹、広く場の開いた場所で愚断は微動だにせず立っていた。

#########################################

名前:愚断剣(ぐだん)
性別: 男
外見年齢:30代前半
体格: 筋骨隆々の巨躯
容姿:目つきが鋭く、厳しい顔。髪は長く、整っていない。
性格: 武人・戦うことに生きがいを見出している。
原体: 大剣・諸刃の大剣で短めの槍ほどの長さがある。
特殊能力:なし
備考:どこまで切れ味が鋭くなるか突き詰める為に作られた大剣。
   剣としてはトップクラスの能力を持つが、特殊な能力や属性はない。

5 名前:方頭 ◆J.2feuKGh2 [sage] 投稿日:2008/11/29(土) 08:58:26 0
名前:方頭丁(ほうず)
性別:男
外見年齢:14,5歳
体格:小柄
容姿:少年漫画に一人はいるツンツンした髪型の小僧
性格:お調子者
原体:中華包丁(方頭刀)
特殊能力:伸縮自在包丁、方家式包丁術
備考:中華包丁の宝貝。本体である中華包丁を得物に戦闘する
普段は通常サイズだが仙界にあるお化けサイズの野菜を調理するため巨大化できる
が、大きさに比例して体力他諸々の消耗が激しくなる。

6 名前:方頭 ◆J.2feuKGh2 [sage] 投稿日:2008/11/29(土) 09:00:42 0
愚断のいる鉱山を進む追跡宝貝たち
その中に一人の少年―――の姿をした宝貝がいる

「ううぅ、なんで僕はこんなところに居るんだよぅ…」

こんにちわ!僕の名前は方頭丁、方頭って呼んでください
まだ宝貝として作られて日は浅いですが、こう見えて結構デキる包丁捌きの料理人ですよ?
いつもは仙人さまのため厨房を走り回っているはずなんですが
今回、宝貝たちを追跡するため部隊を組むにあたって、

厨房長 「おい、方頭!例の部隊で手が足りないそうだ、手伝いに行ってこい。
 お前みたいなガキでも荷物持ちくらいにはなるだろう。
 …なに、なんで自分なのかって?バカモノ!新入りが口答えするな、さっさと行けぃ!

なんて感じで人界に送られてしまったのだった。僕、包丁なのに!
と、愚痴をいっていても始まらないか
僕らが今、目指しているのは近づく前か妖しい気配がバリバリな鉱山
その気配の中心である山の中腹である
やがて開けた場所が見えてくる、とそこには男が一人、大剣と共に佇んでいたのだ!

「うわぁ…明らかにすごいやる気なおじさんだよ」

僕とはハッキリ違う“武器”としての存在感を持った空気を纏ってる宝貝
まずいってコレ、どーすんの僕!?

「ここまで来れましたけど、どうしましょう、鉄甲さん!?」

僕は一緒に追跡隊の一員としてやってきた女性に問いかけた

7 名前:鉄甲 ◆zJpkiOXmJ. [sage] 投稿日:2008/11/29(土) 16:45:54 0
>>6
追跡隊の一員の女は獣の皮で出来た服に獣の頭を模した帽子を被ったなんとも
女性らしくない出で立ちであった、血生臭く他を威圧する獣で出来た服の女は
見た目若々しいパオペイにこう答えた

「来た以上目的を果たすだけさ、ぶっ飛ばす・・・」

帽子の奥から覗かせたその眼は帽子や服にされた獣をも遥かに凌駕する凶暴性を秘めていた

両の拳を合わせ愚断に礼をする
深く吸い込んだ空気をゆっくり吐き山の空気を体になじませながら
眼を愚断へと向ける

「久しぶりだね愚断・・・ここしばらく雑魚、雑魚、雑魚、雑魚しか食ってないからねぇ
アンタと殺り合えるなんて嬉しい限りだよ・・・本当、仙人の下を脱走してくれたのを感謝するよ」

追跡隊の人間とは思えない不謹慎な発言である
彼女の中の溢れ出る闘志は彼女の体を壊すような勢いで滲み出ていた
最初は言葉、次に体を通してその事が伝わるだろう
しかし、今はまだ言葉だけで留めておく、彼女はこの楽しみを台無しにはしたくない
それなりの礼儀を持ってこの楽しみを味わいたいと思っている
腐っても格闘家である

8 名前:龍紋 ◆OK6hKA/.GA [sage] 投稿日:2008/11/29(土) 22:14:59 0
名前:龍紋爪 (りゅうもんそう)
性別:男
外見年齢:10代後半
体格:小柄だが筋肉質である
容姿:鱗の刺繍があるタイツに、緑色の長髪。左右に一本づつ長い髭がある
性格:基本的に明るいが、年齢のためか揺れやすい
原体:龍の紋様が施された爪切りバサミ
特殊能力:「切断」と「整形」
備考:討伐隊に加わったものの、自分の存在意義や他人との関係に疑問を感じている。
   岩などを切断し、思い通りの形に整形することで、命を吹き込むことができる。単純な命令を聞くことができるが、5分程度しか命は与えられない


9 名前:龍紋 ◆OK6hKA/.GA [sage] 投稿日:2008/11/29(土) 22:45:10 0
>>6>>7
「お、いたいた。二人とも速いんだから」
二人のパオペイから遅れること数秒、龍紋は息を切らしながらやってきた。
皆で一緒に出かけたはずなのだが、山の濃い霧のせいで一瞬はぐれてしまったのだ。
しかし、愚断の強い気を追っていたため、ゴール地点は一緒だったらしい。
龍紋は爪切りの宝貝である。といっても装飾された、いわばお飾りのハサミ。いつもは小さな部屋で窓をボーッと眺めたりしている。
先輩に当たるハサミ達はつめを切ったり髪を切ったり草木を刈ったり色々してるのに、自分はただ飾られてるだけ。
そんな中で脱走した宝貝の討伐隊に召集されたのだ。初めての下界。初めての世界。仕事なんてそっちのけで遊びたいって言うのが本心。だから寄り道しちゃっても仕方ない。
「いやぁ参ったよ。山なんて登るのはじめてでさぁ、つい野道に気がいっちゃってね」
とか言ったものの、鉄甲の姉さんはもう既にやる気満々らしい。
「鉄甲の姉さん、やる気なのは構わないけど、あんまりやりすぎないでね。その、コナゴナに壊しちゃうとか、そういうのは仙人様に怒られるよ・・・」
龍紋は正直、愚断の気持ちがよく分かる。だって外の世界って面白そうじゃん!
だから愚断には仕事以外に、同情に似た感情を抱いている。
愚断をこれからどうしようとか、自分がこれからどうすればいいのか、それはまだ考え中。


10 名前:愚断 ◆1000VJ0J4k [sage] 投稿日:2008/11/29(土) 23:43:42 0
>6>7>9
愚断は山の中腹、開けた場所に剣を突き立て仁王立ちしていた。
追っ手の宝貝を、敵を、待っていたのだ。

そして三人の宝貝が現われた。
待ち望んだ敵が・・・。
だが、愚断は微動だにせず、目も開けなかった。
方頭が最初に現われ後続を呼び、鉄甲が闘志を溢れ出しながら口上をきる。
そして最後に現われた龍紋。
目を開けずとも三人の気配を察し、その力量を読み取っていたのだ。

漸く愚断は動いた。
ギ・ギ・ギと軋む音がするかのようにゆっくりと顔を上方へと向けてゆく。
まるで大きな力に逆らって無理やり顔を上げているようで、コメカミや胸に太い血管が浮かぶ。
そして目が見開かれた。
顔が上方に向いているので、必然的に凄まじく見下した状態になる。
いや、事実その眼光は三人を見下している。

しかし、目が見開かれた瞬間に場の空気は凍りついた。
鉄甲が闘志を体から滲み出すのと同様に、怒りの気を一気に噴出させたのだ。

辺りを凍りつかせた愚断の怒気は口を開かずとも雄弁に物語っていた。
【お 前 達 で は 不 足 だ !】と。
それでもなお口を開いたのは、かろうじて鉄甲だけが戦う為の宝貝だったからだろう。
「ここは試合場ではないぞ!!!」
ビリビリと辺りの空気を震わせる愚断の怒号とともに、ダンという音が響く。

直後、愚断の姿は消えていた。その場から。
愚断は一瞬にして間合いを詰め、三人の目の前に迫っていたのだ。
そして横薙ぎに振るわれるのは短い槍ほどの巨大な大剣!
凄まじい剣圧と共に振るわれるその斬撃は三人纏めて真っ二つにする力が込められていた。

11 名前:方頭 ◆J.2feuKGh2 [sage] 投稿日:2008/11/30(日) 01:36:09 0
>7 鉄甲
「やっぱりそうなるんだよね…」
分かってた、分かってたよ、こうなるの
内心では話を聞いてくれたらいいなーって思ってるよ
けど、どう見たってこの二人闘う気マンマンだもの
お互いにもう話すべきことなんざありませんよ、って顔に書いてあるもの
もういいよ、僕も覚悟決めたし!

>9 龍紋
そんなやけっぱちな気持ちでいたところに
いつの間にかはぐれていた龍紋さんが戻ってきた
寄り道とか勘弁して欲しい、いや間に合ってくれたのは助かるよモチロン。

>10 愚断
「何はともあれ、いくぞ愚断!……出来たら大人しく仙界に帰ってくれたら
 嬉しいな――――って、えええぇぇぇー!?」

ちょ、近い、じゃなくて速い!
愚断は戦いが始まると共に凄まじい気迫をそのままに
こちらへと疾駆、瞬く間に距離を詰め来たのだ
彼の本体である大剣が唸りを上げて横一文字に振り払われる。
ええい、もう全力でやると決めたのだ
ここでやらねば漢が廃る!

僕も気合と共に手の内へと出現させた中華包丁に霊力を込める
普段は厨房長にこき使われてお化けな大きさの野菜をきるために使う
巨大剣へと変化させ、三人を守る壁とする。

「方家式包丁術・段の型、守り!
 包丁なめんなー!戦場とか旅行とかでも使えるように頑丈なんだからなー!」

12 名前:魔 鏡也 ◆jucVyRORyI [sage] 投稿日:2008/11/30(日) 12:51:42 0
>7-11
「やれやれ、まだ登らなきゃならないのかい。
 皆と違って僕は頭脳労働者なんだけどねえ」
黒い宮廷服を身につけた一人の青年が、そうぼやきながら山を駆け上っている。
だが口調とは裏腹に、彼は汗一つかいていなかった。

彼の名は魔鏡也。占術用の鏡が本性の宝貝だ。
どちらかというと回収実行部隊というよりは、データ収集の方に重きをおいているのだ。
「戦闘は皆に任せて高みの見物といきたいけど・・・・・・そうそう上手くはいかないだろうねぇ」

「・・・・・・そろそろ先発隊が接触したと思うんだけどねえ」
>「ここは試合場ではないぞ!!!」 
ビリビリと辺りの空気を震わせる愚断の怒号とともに、ダンという音が響く。 
魔境の口元に、にんまりと人の悪い笑みが浮かんだ。
「やれやれ、どうやら間にあったみたいだねえ」
愚断は3名の宝貝でも取るに足らない相手だと思っているようだ。
>「方家式包丁術・段の型、守り! 
> 包丁なめんなー!戦場とか旅行とかでも使えるように頑丈なんだからなー!」 
魔境は応援に入るでもなく、そのまま周りの風景に解けこむように姿を消してしまった。

魔境が回収部隊からはぐれたのは、もちろん故意である。
先に回収部隊に一戦交えてもらって、愚断や部隊参加の宝貝達の能力を「見る」ためだ。
なせなら彼の能力は――――。

13 名前:火々 鍋 ◆8SPHqobdCs [sage] 投稿日:2008/11/30(日) 18:08:23 O
「なんか、大変そうだね方頭君」
愚断がさっきまで立っていた場所のやや後ろの茂みから、女料理人が現れ
呑気に微笑みながら方頭らに話しかけた。
彼女の名は、「火々鍋」脱走した調理器具の宝貝らを連れ戻すために自ら追跡隊に志願した中華鍋の宝貝である。
「ごめんねぇ〜回り込むのに時間かかっちゃって…そんな場合じゃないか」
そう言うと彼女は掌から炎を発生させた。
「ちょっと熱くなるけど我慢してね」
掌の上で徐々に大きくなっていく炎を愚断の方へ放つと、爆発的な速度で燃え広がり、炎の壁となって愚断と方頭等を囲んだ。

14 名前:愚断 ◆1000VJ0J4k [sage] 投稿日:2008/11/30(日) 21:38:42 0
>11
一刀の下に三人を纏めて凪ぎきろうという瞬間、愚断の目の前に鉄の壁ができた。
>「方家式包丁術・段の型、守り!
> 包丁なめんなー!戦場とか旅行とかでも使えるように頑丈なんだからなー!」
方頭の声が響く中、愚断のコメカミの血管が破裂する。
「タワケがっ!!横腹で我が刃を受けようてか!!」
愚断はこれを剣の横腹と取る。
食材を叩き潰すにも使われる中華包丁の刀身だが、同じ刃を持つ者としてそれが許せなかった。
そして何より、包丁が戦場や旅行で使えるのに対し、剣は戦場のみでしか使えない。
この矜持の違いが愚断の怒りに火をつけたのだ。

あるいは普段の戦いならばこれで愚断の一撃を防げたかもしれなかった。
巨大化した中華包丁はまさに鉄の壁。
しかし、ここは鉱山。
山の金気を吸い、己を鍛え続けていた愚断の刃は鉄の壁に吸い込まれるように切り裂いていく。

>13
中華包丁を挟んで方頭の側。
鉄の壁から生えたような刀身が凄まじい勢いで迫ってくる。
あわや方頭の首を、といった刹那、鉄の壁の向こう側から声がかけられた。
>「ちょっと熱くなるけど我慢してね」
声の主は愚断ではなく、火々。
それと共に刃の機動はそれ、方頭の髪の毛を数本刈り取り壁の向こうに消えていく。

愚断は方頭の首を狩ろうと思えば十分に狩れた。
しかしそれをしなかったのは武器の宝貝特有の合理的戦略思考の為であった。
新たなる敵の出現、そして周囲を取り囲むような炎の壁。
敵一人に拘り退路を断たれるなど愚の骨頂。
それに何より、現われたのが炎を扱う火々である事が大きかった。
あらゆるモノを切り裂く事のできる愚断と言えども、炎は斬りようがない。
更に、山の金気が愚断を強化するように、刃を持つ金気属性の愚断は炎を苦手とするのだ。

軌道を変え剣を引き抜くと、その勢いのまま剣を振りぬく。
その剣圧で僅かに緩んだ炎の包囲網を飛び越えた。

15 名前:龍紋 ◆OK6hKA/.GA [sage] 投稿日:2008/11/30(日) 22:23:14 0
>>10>>11
愚断は鉄甲の言葉など意に介さぬ様子で三人を侮蔑すると、その場からとてつもない速さで剣をなぎ払ってきた。
方頭が包丁舐めんなとかいいながら大きな包丁を出現させた。多分それを盾にするつもりだろう。
だが、舐めんなといわれても大剣対包丁である。勝てる見込みは少ない。

「ごめんよ方頭、命は惜しいんでね!」

言うと、龍紋は振り払われた包丁とは反対方向、やや斜め後ろに飛びのいた。
>>13
何か遠くのほうからボソッと声がするやいなや、目の前に炎の壁が燃え広がった。
飛びのいた先が炎のサークルの外だったため、龍紋は炎に包まれることはなかった。

「これは・・・火々の姉さんの仕業だな!?途中ではぐれたと思ったら急に攻撃してきて、何考えてんだよ?」
>>14
火々に文句をたれていると、目の前に愚断が降り立ってきた。炎の輪から逃れるためだろう。龍紋は僅かに危機感を感じたが、愚断に聞きたいこともあった。

「これはこれは・・・愚断のおじさんじゃありませんか」

龍紋は武器も構えず、飄々とした態度で愚断に話しかける。

「あのさ、おじさん・・・なんで下界に来たの?楽しそうだったから?」


16 名前:鉄甲 ◆zJpkiOXmJ. [sage] 投稿日:2008/11/30(日) 22:48:34 0
>>9
「コナゴナに砕けるような軟なパオペイではない」
息を切らす龍紋の問いに背中越しで答える
愚断は強いかもしれない、しかしそれを差し引いてもパオペイ事態が壊れるという事は珍しいのだ
原体に傷がつく事はあるかもしれないが原体がコナゴナになるというのは聞いた事は無かった
なので次にこう返した
「コナゴナにできるならしてみたいものだな」 口だけ笑って見せた

>>10>>11>>13>>14>>15
鉄甲は激怒した、この自分を不足と言わんばかりの愚断の目
そして試合場ではない発言に自分を侮辱されたと思った鉄甲は己の拳を握り締め奥歯を噛み締めた
それからすぐ愚断は直ぐに自分たちのところに剣を振るいに来ていた彼の本気かそれとも手を抜いているのかは
分からないが、彼の剣を睨みつけていた

剣が自分たちの近くに迫ろうとしていたとき
>「方家式包丁術・段の型、守り!
 >包丁なめんなー!戦場とか旅行とかでも使えるように頑丈なんだからなー!」

方頭の中華包丁が自分の目の前に現れ愚断の剣を遮った、かに思えたが直ぐに裂かれていく
鋭さを求め切れ味を極めた愚断にはただの中華包丁では意味が無かったようだ
このままでは方頭もろとも斬られると思い方頭を引っ張り愚断の太刀を避けようと思ったときだった

>「ちょっと熱くなるけど我慢してね」
回り込むと別ルートから来た火々鍋の炎の壁 
どうやら愚断も炎には分が悪いらしく一度体勢を立て直すようだ、しかも
龍紋も近くに居る

今が好機

大地を蹴り上げ炎の壁に突っ込みその炎を体に纏いながら炎を突破した
そして愚断を捉えると龍紋に叫んだ
「龍紋!愚断を殺れ!!」

まさに手土産、炎の壁から自分の拳へと炎を拝借し拳を愚断へと向けて突き出していた
愚断が最初に向かってきたときも相当なスピードであったが、鉄甲とて戦う宝貝
脚力の能力は愚断のそれと同じであった
「愚断、ここは試合場じゃないんだよ?本気出さないと痛い目すら見れなくなるよ」
鉄甲は笑顔で語っていた

17 名前:愚断 ◆1000VJ0J4k [sage] 投稿日:2008/12/01(月) 12:30:00 0
>15>16
>「あのさ、おじさん・・・なんで下界に来たの?楽しそうだったから?」
炎の輪から脱出し、身に纏わりつく火を消す為転がる愚断に龍紋が声をかけてきた。
この戦いの場において何故?という疑問が頭をよぎったが、そんな事はどうでもよかった。

重要なのは、体制を崩しているにも拘らず龍紋は攻撃をしてこないという事。
そこに愚断は龍紋の心の揺らぎを感じ取っていた。
だからこそ応えた。
「【業】故に、だ!」
揺ぎ無い心で。
追撃がくるのはわかっていた。
武器の宝貝としてこの機を逃す事はない。
鉄甲は必ず来る。
それに備える為、態勢を立て直しつつ剣を構える。

対して、龍紋には言葉を持って当たったのだ。
「奴(仙人)にとっては極限の刃を作り出す事が目的だったのだろう!
しかし!俺はどうなる!
作り出された瞬間に存在理由が消滅する俺は!
宝剣、至高の剣などと奉られるなど耐えられるか!!
道具ならばその用途を全うする業を果たさねば何の意味がある!!」
ここまで吼えた時点で、炎の壁が大きく膨らんだ。
そこから鉄甲が飛び出してくる。

迫る鉄甲に剣を突き出し迎え撃つ愚断。
両者の差は剣と拳の間合いの差によって決まった。
炎の中から飛び出した鉄甲が愚断の懐に入るのが一瞬だけ早かった。

愚断の剣は鉄甲の獣の皮の服を切り裂くに終わり、鉄甲の拳は愚断の腹部へとめり込んでいた。
>「愚断、ここは試合場じゃないんだよ?本気出さないと痛い目すら見れなくなるよ」
「ぐ・・・がっはああああ!」
笑顔で語る鉄甲とは裏腹に、愚断の顔が苦悶に歪む。
鉄甲の拳には確かな手ごたえが感じられるだろう。
攻撃の一点に集約される剣は、一度守勢に回ると意外な脆さを露呈するのだった。

18 名前:風鉄 ◆8POt/p0q3w [sage] 投稿日:2008/12/01(月) 17:45:05 0
>>15-17
「む…、やはり始まっておったか…
 鉄甲め、勝手に仕掛けおって!
 戦闘に不慣れな者も居るというのに、何を考えておるのか…」

愚断と鉄甲たちが戦っている場所から少し離れた崖の上に立つ人影があった
女仙人然とした若い美女だが、その正体は風の力を宿した鉄扇である
観賞用として造られた武器宝貝だが、実戦にも十二分に対応できる性能を持つ
そのため、仙人の警護役としての役割も負っている
己の職分を超えて欲望に走る宝貝に制裁を下すべく、周囲の反対を押し切って追跡隊に志願した
当人は追跡ではなく「討伐」だと思っている

「お主ら、攻撃の手を緩めるでない!
 そのまま一気にトドメを刺してしまうのじゃ!」

周囲に響く大きな声で、鉄甲たちに短気決戦で決着を着けるよう呼び掛ける
鉄甲の言うとおり、愚断はまだ本気を出してはいないだろう
なればこそ、今のうちに一気に畳み掛けておく必要があるのだ
仙界一と謳われる剛剣が本気を出せば、一対一ではまず歯が立たなくなるだろう

19 名前:鉄甲 ◆zJpkiOXmJ. [sage] 投稿日:2008/12/01(月) 20:27:30 0
>>17>>18

>「ぐ・・・がっはああああ!」

初撃が入った瞬間、鉄甲の顔が急に引き締まる。ここで手を抜くわけには行かない
一撃が入ったのなら次のを決めて、また次のと繋げなければならない

>「お主ら、攻撃の手を緩めるでない!
 >そのまま一気にトドメを刺してしまうのじゃ!」

風鉄の指示に従うのはしゃくだが、ここを押し込んでおかないと自分の思い描く展開には
ならないと悟った、鉄甲の思い描く展開は愚断が本気を出す事
今ここで愚断の本気を引きださなければ戦いの楽しみが無くなるからである
風鉄には悪いが本気を出させないまま倒す事はさせない

「どうした愚断?行くぞ!ほら、ほら、ほら」
僅かの時間に何発もの拳を相手に叩き込む!常人には見えない速さの拳が愚断に繰り出される
しかし、剣を持つ手は狙わず、愚断の怒りを刺激するように攻めて行く

20 名前:風の谷の名無しさん@実況は実況板で[sage] 投稿日:2008/12/01(月) 20:47:33 0
>>14
文字通りの鉄壁となって大剣と激突する包丁、しかし

「覇っ!―――って、なぁぁー!?」
仙人自慢の逸品たる名剣は易々とその刀身を喰い込ませていく!
「所詮、包丁対剣じゃこの程度ですかー!?」
と早くも諦めかけたとき、救いの手が差し伸べられる

>13
彼らを囲むように広がった炎の壁、今回共に追跡隊としてやってきた宝貝の中の一人
火々による、援護であった
炎に囲まれることを警戒したのだろう、愚断はとっさに身を引きその場を離脱する
おかげで方頭の首を捕らえるはずだったろう一撃は髪を掠めるに留まった

「い、今のはマズかった。火々さん、ありがとう助かりました。」
半ばまで断ち切られた包丁を元の大きさに戻しながら火々に礼を言う
先ほどの一撃で大分霊力を持っていかれたことに冷や汗を流しつつ体勢を整える
すると

>17-19
風鉄が現れ追撃の指示を出す、見れば鉄甲が愚断へと迫り果敢に攻め立てているのだが
「まずい、あれ挑発してる!」
このままでは危険である、方頭は次こそは力になろうと彼らへと駆け出しつつ、叫んだ
「鉄甲さん、それじゃダメです!」

21 名前:方頭 ◆J.2feuKGh2 [sage] 投稿日:2008/12/01(月) 20:49:57 0
な、名前欄が大変なことに…>20は自分ですゴメンナサイ

22 名前:魔 鏡也 ◆jucVyRORyI [sage] 投稿日:2008/12/01(月) 22:18:45 0
>>16-19
>「お主ら、攻撃の手を緩めるでない! 
 そのまま一気にトドメを刺してしまうのじゃ!」 

「あーあ、風鉄姐さんもなんというか・・・・・・。
わざわざ愚断のダンナに自分の居場所を教えてやるこた無かったってのに」
魔鏡に言わせれば、愚断が敵と認識するのはせいぜい武器として作られた風鉄と鉄甲くらいだ。
他の連中の攻撃など(自分も含めて)物の数ではないと考えているに違いない。
そしてそれはあながち的外れではない。
戦闘力の高さのみで判断すればの話だが。

>20
「風鉄姐さんが奇襲を仕掛けて鉄甲姐さんと一気に畳み掛ければ、案外愚断のだんなもあっさり折られたかね?
 ……いや待て、それはいささか楽観的観測だったね……」
鉄甲が愚断を挑発しているのを見て、魔鏡は冷笑した。
「なんというか、武器連中の業と矜持とやらは度し難いねえ」

>「鉄甲さん、それじゃダメです!」 
鉄甲の意図を察したらしい方頭が血相を変えて駆け出した。
「まあ待て方頭くん、姐さん達はあれでも武道派なんだから放っておいても自分で何とかするさ」
周りから見れば、何も無いところからいきなり手が伸びて方頭を止めたように見えるだろう。
「逆に、今の君がしゃしゃり出ても足手まといになるとしか思えないんだけどねえ、僕は。
 おっと!暴力反対。僕ですよ、僕」
何も無い場所から姿を現したのは、なんと方頭そっくりの少年だった。
ただし偽者の方は、服などの合わせが全て逆になっている。
まるで鏡に映したかのように。
「やあ、暫くぶりですね、龍紋くんに 火々姐さんも」
実は、方頭を止めたのは単に風鉄と鉄甲、愚断の全力を見たいだけなのだが……。
魔鏡はおくびにもそんな様子は出さない。

「それより、なぜ方頭くんが愚断のダンナの攻撃を受け止め切れなかったか考えてみた方がいい。
 方頭くん、なぜ愚断のダンナはここで宝貝達を待ち受けていたんだろうねえ。
 攻撃を受けてみて、何か気づいた事は無いかい?」

23 名前:愚断 ◆1000VJ0J4k [sage] 投稿日:2008/12/01(月) 22:50:57 0
>18>19>20>21
> そのまま一気にトドメを刺してしまうのじゃ!」
その場に響き渡る風鉄の声。
それに呼応するように鉄甲の連撃が愚断の体に叩き込まれた。
が、その様子とは裏腹に鉄甲の攻撃は愚断をしとめるためのものではない。
剣を叩き落す訳でもなく、急所を打ち抜くわけでもない。
それは愚断の本気を引き摺り出す為の攻撃だった。

「鉄甲さん、それじゃダメです!」
鉄甲の意図に気付いた方頭が叫ぶが、既に時は遅かった。
恐らくは魔鏡が止めに入らなくとも結果は同じだったろう。

>「どうした愚断?行くぞ!ほら、ほら、ほら」
「お・・お・・・おおおお・・・・鉄甲!
言った・・・筈・・・だ・・・。ここは、試あ・・・。」
愚断はもはや防御する事もなく打たれ続け、数十発の後に吹き飛んだのだ。
最後に何かを言おうとしたが、それを言い切ることはなかった。
しかし、愚断と最も近い間合いで拳を振るい続けていた鉄甲には言い知れぬ寒気が走っただろう。

吹き飛ばされ、転がり、仰向けに倒れる愚断。
そしてもはや起き上がってくることはなかった。
倒れたままただ一言。
「磨采・・・。」
それだけ朽ちにすると、愚断の人の形は崩れ、一本の大剣へと変る。
そう、原体となったのだ。

24 名前:磨采 ◆1000VJ0J4k [sage] 投稿日:2008/12/01(月) 22:51:07 0
確かにダメージは受けたが、まだ原体になる程のダメージではなかったはず。
追跡宝貝たちが訝しんでいると、愚断剣の転がる側の土が盛り上がり、一人の男が出てきた。
今まで愚断の強烈な剣気に紛れ気付かれずに地中に潜んでいたのだ。
糸目のスキンヘッド、整った風体。
存在感がないのだが、これでも宝貝なのだ。

「愚断の旦那、ようござんしたねい。
それにしてもこんなになるまでとは、不器用なお方だ。」
おもむろに愚断剣を拾い、しみじみと語りかける。
拾い上げた刀身は刃こぼれがし、無数に皹が入っている。
これが火々と鉄甲の攻撃で受けたダメージだった。

その刀身にそっと手を当てながら磨采は追跡宝貝たちへと向きかえる。
「まあ、気付いているとは思いますが、愚断の旦那の名誉の為にもあえて言わせてもらいます。
名の通り愚直に断つ事だけを追及したお方だ。
このお方にとっては人の形を取る事すら不純物以外何者でもない。
つまりは・・・この原体でこそ愚断の旦那はその力を発揮できる。
今までの旦那で力量を測っていたとすると大怪我しますぜ?」
にやりと笑いながら刀身に当てた手を這わし切ると、先程まであった皹や刃毀れは嘘のように消えていた。

「方頭君とは馴染みですが、なにぶん存在感がないのでねい。
自己紹介させてもらいますと、あっしは磨采。
チンケな砥石の宝貝ですが、刀剣を扱わせてもらえるならちったぁ自信があります。
ほれ、このように。」
残酷な笑みを浮かべ、愚断剣をおもむろに振る磨采。
直後、ボトリという音が山に響いた。

それは鉄甲の左手が落ちた音だった。
磨采のおもむろに振った愚断剣の剣閃は、鉄甲の反応する事も許さずにその左手を切り落としたのだ。
「いやなに、今のは挨拶代わり、という事で。
痛みもないでしょう?
直ぐにくっつければ落ちて左手は元通りくっつきますよ。
そのように斬りましたのでね。」
鉄甲の手を切り落とした後も追撃するわけでもなく、笑みを浮かべたまま待っている。
そしてゆっくりと周囲を見回し、一人一人確認するように数えるのだ。

「ひい、ふう、みい、よお、いつ、む・・・ん?・・・あんたは、数に入れて、いいのかな?」
龍紋を見ながら小首を傾げて見せる。
が、気の抜けた風情もそこまでだった。

緩やかに、しかし隙のない構えを取りながら口を開く。
「土気は金気を生む。五行相生の法則。
最強の剣たる愚断の旦那の女房役は砥石のあっしが一番って事で。
折角旦那が本気を出そうってんですから、そちら様方も全力できてください。
でないと・・・楽しめませんのでねい・・・!」

登場時の気の抜けていた磨采は既にいない。
本性を現し全力を出す愚断剣と、それを操る磨采。
二人の醸し出す剣気が山を包む
まるで首下に白刃を当てられたかのような緊張感にその場が支配されていた。

25 名前:磨采 ◆1000VJ0J4k [sage] 投稿日:2008/12/01(月) 22:52:56 0
名前: 磨采砥
性別: 男
外見年齢:20代前半
体格: 細身
容姿:糸目でスキンヘッド。
性格: 控えめで目たたない。
原体:砥石
特殊能力:刃系宝貝の修復増強・触れたものを全て刃と化す
備考:砥石の宝貝。剣の扱いにおいては高い能力を発揮する。
    愚断剣を得物にしている。

26 名前:鉄甲 ◆zJpkiOXmJ. [sage] 投稿日:2008/12/02(火) 00:26:29 0
>>23
「弱っちいな・・・」
そこには拍子抜けする鉄甲が居た、ただ吹き飛ばされて起き上がらない愚断
所詮最初の勢いだけの自惚れ屋かと思ったが、地面が盛上がりそこから何者かが現れた
「なんだハゲモグラか・・・」
既に目的を果たした鉄甲には目の前に誰が出ようと興味などなかった
彼の言葉も耳に入らず、適当に受け流す程度、彼女からすれば
糸目のハゲ野郎がペラペラと能書きをタレ始め、原体の愚断を拾いあげ愚断の擁護をした

「ふぁっあああ〜〜」
彼女は大きくあくびを始めた、まったくの油断でしかない
左手を口元に近づけ欠伸を仰ごうとした時、一瞬何かが通り過ぎたかと思うと
手が軽くなるのを感じた、そしてボトリという音が足元から聞こえた・・・
手の違和感と聞きなれない音、彼女は今までに感じたことのない物を感じた
ゆっくりと足元に目をやる・・・すると

「う、うわあああああああああ・・・っ」

自分の左手がボトリと落ちていた、磨采の言葉など聞いてもおらず
自分の落ちた手を拾い上げる

「あたしの、あたしの左手、あたしの左手がぁぁぁぁ・・・」
左手を切り口に当てるとすっと・・・くっつく、にもかかわらず鉄甲は蹲り
自分の左手を押さえながらガクガクと震えていた、彼女の中で何かが消え去り、何かが解き放たれた
解き放たれた先には先程までの獣の姿はなく、怯えるただの少女がそこにいた

「ぁぁぁ・・・・ああ・・・あああ・・・・」
泣いているのか、その声は震え身を低くして小刻みに震えている
余りの出来事に取り乱す彼女、このような事が起きたら誰もが取り乱してしまうかもしれない
しかし・・・今目の前で怯え震えている少女は、彼女の本質ではない・・・。

もしかしたら、左手ではなくそのまま首を落としていれば、磨采の都合の良いように状況は変わったかもしれない

27 名前:鉄甲 ◆zJpkiOXmJ. [sage] 投稿日:2008/12/02(火) 00:44:43 0
―――――敗北の宝貝―――

鉄拳甲・・・鉄甲と呼ばれる拳を守ると同時に拳の威力を上げる格闘武器の宝貝である。

彼女の性格を尋ねたなら
彼女を知るものは皆彼女の暴力性、加虐性、などを彼女の性格として挙げるだろう


しかし、彼女は生まれもってしてそのような性格ではなかった
彼女の暴力性は彼女を守るための虚勢でしかない、そう、彼女の中の彼女を守ろうとする一面が
暴力性を剥き出しにした性格として普段から表面に現れているだけでしかない・・・では本当の彼女はなんなのか?


彼女は戦うための宝貝として生まれた、それとは裏腹に彼女は、それはそれは臆病で戦う事を避ける
武具の中では最弱とまで言われるほど争いを好まぬ大人しい宝貝だった
弱く、弱く・・・ただの少女でしかない武具達の虐めのような稽古で毎日地べたに這い蹲っていた
それが今の一面を生んだのかもしれない

だが、彼女の真の力はただ稽古を着ければいいというわけではなかった
彼女の能力、それは敗北を味わう事で自身が急激に成長するというものであった、厳しい虐めの現実も
彼女を強く鍛え上げるためのものでしかなかった。

敗北に敗北を重ね、その都度倒れても、誰も手を貸さない・・・彼女は自分で立ち上がらなければならない
立ち上がるたび起き上がる力が強くなるのを感じた彼女は、自分の中で何かがめまぐるしく動くのを感じた
エネルギーの流れ、それは彼女の急速成長という能力のエネルギーが駆け巡っている事を教えてくれた
敗北の中でその力を感じ、自分に立ち上がる力を与える・・・自分が成長していく事を感じた
それからである、彼女はあらゆる事も全力で向かい、その度に挫折の経験を味わっていった

しかし、彼女能力は敗北を無駄にしない能力
彼女の中で負ける事は恐れる事ではなくなった、敗北こそが自分を創り、自分を立ち上がらせる
逆境こそが自分の本質を感じれる瞬間であり自分を強くしてくれる場だと

彼女の能力は急速成長、味わう苦痛や敗北感それをエネルギーに変えて自分を急速に強くする能力
そしてその派生である 見切り は彼女が味わった苦痛を体で覚え、苦痛を和らぐ力がある
そして2度苦痛を味わうもんかと彼女の体に働きかけ、攻撃を避けたり受け流せるように急速成長に役立てる

その二つがある限り彼女は
彼女は敗北の宝貝であり、勝利の宝貝でもある
敗北の中から立ち上がった時の彼女こそが本来の彼女であり、格闘家鉄拳甲である

――――――――――――――――――――――――――――――

「うぐ・・・うぐっ・・・うう、・・・ううう・・・ずず」
左手で涙と鼻をぬぐい立ち上がる、地面に顔を着けていた為おでこに土がついている
それを手でぬぐうと、彼女の顔は泣き腫らした目と赤い鼻になっていた
呼吸を落ち着けると 磨采へと拳をむけ腰を落とし構える

今までの喧嘩スタイルの我流の型ではなく、仙人直々の拳法の型で向き直り 今までの口調ではなく
落ち着いた口調で磨采に語りかける

「先程は見苦しいところをお見せした、我こそは仙境流仙拳の使い手、鉄拳甲!そなたら二人を見くびっていた事を詫びよう
そなたらのような強者の前でしか本当の自分を曝け出せないのでな・・・ 先程の事で動揺して名前を聞きそびれた
差し支えなければそなたの名を聞いておきたい」

磨采の名前を聞く彼女は遊びで戦いをやっていた鉄甲ではない
彼女こそが敗北の宝貝であり本当の鉄拳甲である

28 名前:龍紋 ◆OK6hKA/.GA [sage] 投稿日:2008/12/02(火) 18:14:47 0
>>17
>「【業】故に、〜道具ならばその用途を全うする業を果たさねば何の意味がある!!」
愚断は思いを自分にぶつけてきた。しかしそれは、龍紋の思い描く答えとは違っていた。
下界への好奇心を持っていたわけでもなく、己の本分に還りたかった。そう言うのである。

「なんだぁ〜、そんな理由か」

愚断と龍紋の境遇は飾られているだけの存在としてとても似ていたが、龍紋の考えは違った。

「外の世界に興味があるなら、一緒に世界を廻れるかもって、そう思ってたんだけどね」

龍紋は愚断への落胆とともに、邪な考えが浮かんだ。自分は自分と同じ考えを持つ宝貝と、旅に出よう、そんな邪な考えが。
>>16>>18>>19>>20
>「龍紋!愚断を殺れ!!」
それに返答しようとするやいなや、鉄甲がすさまじい速さで突撃し炎を纏った拳を愚断の腹に命中させる。
そしていつの間にか現れた風鉄が果敢に皆を攻め立てる。
しかし鉄甲はまるで愚断を挑発するように、どこか手を抜いて攻撃している
方頭もそれを悟ってか、鉄甲を諌めている。
「鉄甲さん、早く済ませて早く帰ろうよ〜」
>>22
そこへ、方頭そっくりの少年が何も無い場所から姿を現した。
>「やあ、暫くぶりですね、龍紋くんに 火々姐さんも」
方頭が二人!?と龍紋は驚いた。方頭が双子だったなんて話は聞いたことがない。なのに
面識があるような態度で接してくるこの男は一体誰だろう?

「ええと・・・ご兄弟の方ですか?」
>>23>>24
そんなことをしているうちに、鉄甲がラッシュを決めたせいか、愚断は原体に戻る。

「なんだ、もう終わりかぁ。皆お疲れ様〜」

両手を振り皆に帰るよう促す。が、横たわる愚断剣の傍らには一人の宝貝が立っていた。
自己紹介を済ませると、男は造作もなく鉄甲の左手を切り落とす。
その瞬間が速すぎて、龍紋の目では追えなかった。
その恐怖が、龍紋の危機感を刺激する。
>「ひい、ふう、みい、よお、いつ、む・・・ん?・・・あんたは、数に入れて、いいのかな?」
「う・・・そりゃちょっとばかし覚悟は足りなかったかもしれないよ?でも俺だって、た、戦えるんだ」
>>26>>27
慌てふためいていた鉄甲も、泣きながら戦闘体制に入る。
この場は全員でかからなければ、スクラップにされてしまう。
いま一つ乗り気でなかった龍紋も、命惜しさに、無事に帰って旅をするために、戦闘体制に入った。


29 名前:方頭 ◆J.2feuKGh2 [sage] 投稿日:2008/12/02(火) 22:26:05 0
>22>28
>まあ待て方頭くん、姐さん達はあれでも武道派なんだから〜
「うわ!?何ですか、急がないとあれじゃ……え、ええぇぇぇっ!?」
駆け出そうとした方頭を唐突に遮る声と手、焦っていた方頭はその相手を怒鳴りつけようとして……涼しげな顔をした自分と対面する

>ええと・・・ご兄弟の方ですか?
「え、いや違います、というかこっちが聞きたいよ!?」
龍紋の問いにますます慌てる方頭であるも

>逆に、今の君がしゃしゃり出ても足手まといに〜
>なぜ方頭くんが愚断のダンナの攻撃を受け止め切れなかったか〜
>なぜ愚断のダンナはここで宝貝達を待ち受けていたんだろうねえ。
先程までの危機感を忘れそうな混乱に陥る方頭であったが、声まで涼しげな眼前の自分が厳しい事実を指摘してくる
その飄々とした調子が次第に冷静さを取り戻させた
「魔鏡さん、ですか?確かに今の僕じゃ勝負にならないのは分かってます。でも、あれは今止めないと」
今回一緒にやってきた追跡宝貝の一員だと見当をつけながら反論する、だが

>23-27
「あなたは……磨采さん!?脱走していたのは聞いてましたがあなたもここに居たなんて!」
地面から現れた砥石の宝貝、彼は言ってみれば縁の下の力持ち、たしかに目立つ役どころではなかった
だが顔馴染みである方頭は彼の腕を知っており
瞬く間に鉄甲を襲った絶技がその技量を如実に示している

「皆さん、あの人を侮っては駄目です!」
宝貝たちへと呼びかける方頭に先程以上の焦りがやってくる
「初撃で霊力を持ってかれすぎた回復しようにも時間もない……どうすれば
 このまま鉄甲さんに任せるしかないのか?」

30 名前:火々 鍋 ◆8SPHqobdCs [sage] 投稿日:2008/12/03(水) 02:51:34 O
「あらら、あっさり抜けられちゃった」
自分が危機的状況に追い込まれているというのに、火々は眉一つ動かさず微笑みを浮かべている
「まぁどうにかなるでしょ」
シンプルに言うなら、ただ何も考えずに楽観視だであったが
本当にどうにかなってしまった。

だが、現実はそんなに甘くない。
磨采の登場と鉄甲の損傷
徐々に不穏な空気が立ちこめる中、彼女の第一声は…
「すっごぉい!方頭君!見た!?今の見た!切った部分がくっついたよ
それに砥石でしょ?いいなぁ〜ねぇ磨采さん愚断さん
私から厨房長に頼むからさ〜厨房こない?人とかは流石に無理だけど、斬りがいのあるものは一杯あるよ」
子供のように無邪気に目を輝かせ、ハシャぎ、あまつさえ、脱走者である磨采と愚断を厨房に誘っている
愚断と磨采の腕さえ有れば、材料がかなり新鮮なままで料理することが可能なはずだ。
そうを考えただけで心が踊る。

31 名前:風鉄 ◆8POt/p0q3w [sage] 投稿日:2008/12/03(水) 09:52:04 0
>>19-20
>>22-26
「愚か者め、何をしておるか!
 …くっ、やはり鉄甲などに本隊を任せたのが迂闊であったか」

鉄甲は挑発的な攻撃を繰り返すばかりで、決定打を打ち込もうとしない
方頭が諌めているが、全く聞く耳を持っていないようである
更に、他の者たちも余り積極的に介入しようとしていない
ほとんどの連中がこの状況を素直に楽しんでいるという有様である

「自ら原体に戻ったじゃと!?
 不味い…、奴と組む前に手を打たねば!」

鉄甲の攻撃を受け、突如として愚断が原体である大剣へと姿を戻した
しかし、それはダメージの蓄積による反動ではなく、「自分で」である
それに危機感を覚えた風鉄は、崖から飛び降り鉄扇を構え、護風を作り始めた
護風は風の障壁だが、原体状態の宝貝を包み込んで封印する力も持っている
簡易的なものだが、成功すればほぼ完全にその宝貝を無力化できるのだ
しかし、降り立った時には既に遅かった…

「磨采か…
 やはりお主も降りて来て居ったのだな
 原体となった愚断を振るえる者など、奴自身を除いてお主しか居るまい
 …さてと、随分と厄介なことになったものじゃ」

突如地面から現れた磨采によって、既に愚断剣は握られていた
仙界無双と謳われる剛剣と剣のプロフェッショナルである砥石
これらの宝貝の組み合わせは、風鉄が想定していた最悪の事態である
油断していたとはいえ、鉄甲ほどの実力者の腕を一瞬で斬り落とすほどである

「お主ら、覚悟を決めよ
 こうなっては、一対一ではわしや鉄甲ですら歯が立つまい
 命を賭さねば、勝機は無いということじゃ」

>>27
「こ、これは…!」

風鉄は、鉄甲が「敗北の宝貝」の二つ名で呼ばれる由来を知っていた
蔑称と勘違いしている無知な輩がよく、彼女をからかって殴り飛ばされている
もちろん蔑称ではなく、敗北や危機に瀕した覚醒を称えたものである
この覚醒で、鉄甲は敗北を勝利の糧として強くなってきたと言っても過言ではない
先ほどの粗暴な雰囲気は鳴りを潜め、対照的に礼儀正しいものとなっている
よほど腕を切られたのが悔しかったのだろう
ここまで激しい覚醒は見たことが無い

32 名前:魔 鏡也 ◆jucVyRORyI [sage] 投稿日:2008/12/03(水) 16:52:08 0
>19 >23 >29
>ええと・・・ご兄弟の方ですか?
「やだなあ龍紋くん、僕のことが分からないなんて寂しいよ」
>「魔鏡さん、ですか?確かに今の僕じゃ勝負にならないのは分かってます。でも、あれは今止めないと」
「はい正解。拍手拍手」
鉄甲がラッシュを叩き込んでいるのを尻目に、魔境はぱちぱちと手を叩いた。

>24 >26
やがて愚断は本性に戻り、代わりにスキンヘッドの男が現れた。
>「あなたは……磨采さん!?脱走していたのは聞いてましたがあなたもここに居たなんて!」

磨采は名乗りをあげると、目にもとまらぬ速さで鉄甲の腕を切り落とした。
鉄甲は相当のショックを受けたようだ。
>「いやなに、今のは挨拶代わり、という事で。
>直ぐにくっつければ落ちて左手は元通りくっつきますよ。」
「ありゃ〜。また随分と派手な登場だ。これで鉄甲の姐さんも「敗北の宝貝」の本領発揮かねえ?
ああ、そう言えば東洋では、ある程度弱ると首を挿げ替えて力を取り戻す妖怪の話があったねえ。
確か餡……なんだったかな?」
方頭の警告を聞いているのかいないのか、魔境は相変わらずのんびりとした風情だ。

>「初撃で霊力を持ってかれすぎた回復しようにも時間もない……どうすれば
> このまま鉄甲さんに任せるしかないのか?」
「まあまあ、僕の名前を当てた方頭くんにはご褒美にいい事を教えてあげるよ。
ここは鉱山だから、金気の場所でもあるんだよ。
君の包丁を地面に刺しておくと回復出来るし能力強化も出来るよ〜」
方頭の顔をした魔境は、そこで猫のように目を細めた。
「……ちょうど愚断のダンナが、君の素敵な包丁に傷をつけたみたいにねえ」

>28
>「ひい、ふう、みい、よお、いつ、む・・・ん?・・・あんたは、数に入れて、いいのかな?」
龍紋を見ながら小首を傾げて見せる。
>「う・・・そりゃちょっとばかし覚悟は足りなかったかもしれないよ?でも俺だって、た、戦えるんだ」
「そうかい!それじゃあ、龍紋くんの代わりに僕を頭数から外してくれるかな?こう見えても平和主義者なんだ」

>「土気は金気を生む。五行相生の法則。
>最強の剣たる愚断の旦那の女房役は砥石のあっしが一番って事で。
>折角旦那が本気を出そうってんですから、そちら様方も全力できてください。
>でないと・・・楽しめませんのでねい・・・!」
「おやおや、お二人とも本気かい?宝貝を宝貝が使うなんて忌諱もいいところじゃないか。
結果どうなるのか知らないわけでもあるまいに。
それとも何かな、そこまで愚断のダンナに入れ込んでるってことかい?」
魔境はが呆れたように首を振ると、処置無しというように肩をすくめた。
「……やれやれ、せめて磨采のダンナが見目麗しい女性だったらねえ。
陰陽的にも僕としてもすごぶる燃えるんだけどねえ」
魔境はつらつら喋りながら、その姿を方頭から 火々鍋へと姿を変えた。
そして、先ほど 火々がやったように掌の上で炎を発生させる。

「五行では土気は金気を産むんですよねえ。
それでは風鉄姐さん、風はどうでしょう?木気と同じように火気を育てるんでしょうか?
いやはや、僕は不勉強でいけませんねえ」
そういい終えると、偽 火々鍋は炎を放った。
「では皆さん、思う存分どうぞ」
炎は爆発的な速度で燃え広がり、本物が愚断に放ったときのように炎の壁となって磨采に迫る!

もちろん魔境も、この炎攻撃で磨采を倒せるなどとは思っていない。
これは単なるきっかけだ。
他の宝貝が磨采達に仕掛けるための。
そして魔境自身は、楽して高みの見物としゃれ込むつもりなのだ。

33 名前:磨采 ◆1000VJ0J4k [sage] 投稿日:2008/12/03(水) 23:22:16 0
左手を切り落とされた鉄甲が蹲り泣きじゃくる。
手は元通りくっついているのだが、衝撃が大きかったのか、嗚咽は止まらない。
そんな様子に呆気に取られた磨采だったが、龍紋が戦いの意思を見せることで頬を歪ませた。
「上々。やっぱりやる気になってくれないと斬りがいがありやせんからねい。」
それは残酷な愉悦の笑みだった。

そんなやり取りをしていると、風鉄がやってくる。
>「お主ら、覚悟を決めよ
> こうなっては、一対一ではわしや鉄甲ですら歯が立つまい
> 命を賭さねば、勝機は無いということじゃ」
「賭け?何を差し出しても賭けにもならないって事を実感してもらいましょうかねい。」
状況を的確に判断し一同に声をかけるが、磨采はその判断が正しい、とは思わない。
鉄甲は先程の一撃で戦意喪失。
アタッカーを欠いたチームがどう足掻こうと、もはや物の数ではない、と。
せいぜい斬り応えのある獲物程度のものだった。

が、磨采は所詮は道具の宝貝。
鉄甲の二つ名の理由を知らなかったのだ。
涙を拭い立ち上がる鉄甲を見て、チリリと磨采の首筋が焼け付くような感覚に襲われた。
先程までの粗野な顔でも、泣きじゃくっていた顔でもない。
凛とした欠く投下の本性を見せた鉄甲の口ぶりに、磨采の残酷な笑みが消えた。

「そりゃようござんした。
あっしは武人というわけじゃございませんで、そう改められるとかえって恐縮なのですがねい。
ま、愚断の旦那を持つ以上、こちらも応えさせてもらいましょう。
磨采砥。崑崙派仙剣をたしなんでおりやす。
それから、愚断の旦那から・・・『それでいい』ですってよ。
風鉄さん、これで賭けくらいにはなりそうですねい・・・・!」
追跡宝貝たちの態勢が整うのを見るや、磨采は剣を構え、腕に力を込める。

今ここに真の戦いの火蓋が切られようとしているのだ。

最初に仕掛けたのは魔鏡だった。
>「五行では土気は金気を産むんですよねえ。
>それでは風鉄姐さん、風はどうでしょう?木気と同じように火気を育てるんでしょうか?
方頭だった魔鏡は火々に姿を変え、炎を走らせる。
「風は木気。火を育てるが土を抉るのでねい!それではちと面倒になる。
行きますぜ?地走り蛟!!」
風鉄の操る風は木行に属する。
木は水で育ち、火を生み、金に斬られ、土を抉る。
つまり風鉄は愚断にとっては相性的に組しやすいが、土気の属性を持つ磨采にとっては天敵となりうる。

風鉄に視線を送り、そういいながら磨采は愚断を振るい、己の足元を切りつけた。
斬りつけられた地面には無数の亀裂が走り、地をのたうつ蛇のようにそれぞれ追跡宝貝たちに迫る。
強烈な斬撃が生んだ真空刃が地面を切り裂きながら走っているのだ。

直後、炎が磨采のいた場所を嘗め尽くしたのだが、そこには既にその姿はなかった。
ただ切り取られたかのような穴があるのみ。

消えた兇刃は風鉄ではなく、火々の下へと現われる。
「折角お誘いいただいたのを無碍に断るのも悪いですしね。
宝貝の生け造りってのをやってみましょうかねい!」
火々の足元から磨采の声と剣先が生えていた。
直後地面は切り取られ、磨采が飛び出てくる。

「この山は鉱山、そしてこの下には坑道が縦横に走っているんですよ!」
地の利を知り尽くした磨采の兇刃が火々へと迫る!


34 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2008/12/04(木) 19:33:46 O
OCN全サーバー規制中です

避難所にも伝えてください

35 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2008/12/04(木) 19:54:42 0


36 名前:火々 鍋 ◆8SPHqobdCs [sage] 投稿日:2008/12/04(木) 20:23:27 O
と呑気なことを言ってみたものの、それで易々と納得するのであれば、こんな苦労はしない事は彼女も重々承知の上ではいるが
それだけ、磨采と愚断の合わせ技が見事であったという事である。
であるが、この場の流れと磨采の雰囲気からして、これ以上の戦闘は必然的であるのは明白である。
彼女も底抜けの馬鹿ではない。
だが、彼女は他の宝貝らのように戦闘態勢をとる訳でもなく、磨采の返答を心待ちにしている
だが正確には、戦闘態勢は既にとっていた
自分の体温を急激に上げている真っ最中であった。
きっと磨采は自分から始末してくると予見しての準備であった
彼女の火と熱を操る能力は、中華鍋として生まれた彼女にとって最高に相性の良い能力ではあるが、その気になれば、陽 光炉に匹敵する火力を出すことも可能である。

予見は見事に的中し、磨采は真っ先に火々から狙ってきた
だが、磨采迫っている時には、彼女の体温は既に鉄をも溶かす温度にまで達している
そして、磨采が視界に現れた時、彼女はその凶刃を避けようとはせず
自らその刃を右肩に深々と突き刺し受け止めたと同時に、磨采の顔を鷲掴みにした。
「それは…残念です」
苦痛に顔を歪ませながら、弱々しく磨采に話す。

37 名前:方頭 ◆J.2feuKGh2 [sage] 投稿日:2008/12/04(木) 22:00:57 0
>私から厨房長に頼むからさ〜厨房こない?〜
「僕だってそれが出来たらいいですよ…ホント」
火々が磨采を冗談半分で説得、とうか懐柔しようと試みている横で方頭は尚も焦っていた。

>君の包丁を地面に刺しておくと回復出来るし能力強化も出来るよ〜
「分かってるんです。でも今のあの人、磨采さん相手にそんなことをしていては……」
先ほどから魔鏡の言っている通り金気に満ちたこの山であれば
方頭に全力以上の力を出させることも可能にし得るだろう。
だがすでには彼は消耗しており、それを成すためには時間が掛かる。
そんな隙を一流の使い手たるあの宝貝が見逃すはずはない以上
鉄甲、風鉄といった武闘派がいても自分だけ迂闊に無防備な状態となる訳にはいかなかった。

>行きますぜ?地走り蛟!!
方頭が動けずにいる中でおしゃべりはここまで、と言わんばかりに磨采は愚断剣を振るう。
「まずい!段の型、守り、ううっ!?」
もともと戦闘畑ではない方頭に避ける程の技量はなく
またそばにいる魔鏡を放っておいて逃げることも出来ず先程と同様の巨大包丁での防御を張る。
辛うじて防ぐものの状態はさらに悪化する
このままでは先に自分が霊力切れで倒れると苦痛に顔を歪める方頭であったが

>自らその刃を右肩に深々と突き刺し受け止めたと同時に、磨采の顔を鷲掴みにした。
「火々さん!?……仕方がない僕が力になるためにはこれしかっ!」
自らを囮に磨采を捕らえた火々の痛々しげな姿を見て助けに行こうとする自分を彼は押し止めた
磨采の注意が火々に向いている今しか回復できる時間はない
彼は自身の得物を地面に突き立て、土地の金気をその身に取り込む

38 名前:風鉄 ◆8POt/p0q3w [sage] 投稿日:2008/12/04(木) 23:52:59 0
>>32>>33
「お主、相変わらず面妖な術を使いおる…
 儀式鏡の為せる技というべきか業というべきか
 …どちらにせよ、今回ばかりはお主の力も借りねばならぬのでな
 その力、頼りにさせてもらうぞ」
風鉄は、魔鏡のことを余り信頼していない
魔鏡の力を考えれば、その目の前でこちらの手の内を見せたくなくなるのだ
自分の技をコピーされるというのも、余り気持ちのいいものではない
しかし、それ故に下手な武器宝貝よりも遥かに戦力となりうる
一方で、この状況を利用しようとする腹黒さも持ち合わせているように感じる

「考えるに及ばず!
 風は木気、火を育て鉄を溶かす力と出来るものじゃ
 そして、木気たる風は土や石を削り取る
 弱点属性を補い合えば、勝機は…あるっ!」
魔鏡の問い掛けにそう答え、鉄扇を目一杯開く
そして、何度も仰いで球状に固まった風の塊を作り出した
刹那、折り畳んだ鉄扇を振り下ろして風の塊を一刀両断すると、弾け飛んで突風となる
突風は周辺を走り、偽火々鍋の炎を煽り立て凄まじい業火に変えてしまった
すると、炎を超えて真空刃がこちらへと迫ってくる

「苦し紛れの小細工か…?
 反撃にしては…
 …っ!
 しまった、奴らは地下じゃ!」
鉄扇で難なく弾き返すが、すぐさま炎の跡に姿が無いことに気付く
地下の坑道に潜って姿を隠し、そこを進んでいたのだ
気付いた時には既に遅く、火々鍋の足元から飛び出して襲い掛かっていた
「磨采は、苦手な風の自分を先に襲う」と踏んだことも誤りであった
しかし、その展開は思わぬ様相を呈していた

>>36-37
「火々鍋…、まさかお主、これを狙っておったのか!
 無茶なことを…、今助けるぞ!」
風鉄は走り出すと、飛び上がって磨采の背後に回りこむ
そして、鉄扇を二つに分離すると瞬時に身構えた

「せやああぁぁぁぁっ!」
二つの折り畳んだ鉄扇を振り上げ、磨采の両肩に一気に振り下ろす
両肩を砕き、愚断を振るえないようにしようというのだ

39 名前:磨采 ◆1000VJ0J4k [sage] 投稿日:2008/12/05(金) 14:06:19 0
全ては磨采の思惑通りに動いていた。
火々を殺さず戦闘不能にする事により戦力を一つ無効化させる。
それは同時に様々な餌なのだ。
一人獲物を狩るというのは最大の隙にもなりうる。

「隙」という餌に食いつき方頭は鉱山の金気を吸い取る。
「救出」という名の餌に釣られ、風鉄がおびき寄せられる。

隙を見せることにより相手のアクションを誘導したのだ。
傷を負い霊力の底が見えかけている方頭は獲物としてはあまりにも足らなさ過ぎる。
更に、まともに構えられては相性が悪い風鉄がわざわざ間合いに入ってきたのだ。

全ては思惑通り、のはずだった。
ただ一点を除いて。

それは火々の覚悟!
磨采は心のどこかで火々を侮っていたのかもしれない。
この期に及んで厨房に誘うその言動からすでにその術は始まっていたのだろう。
火々は磨采の想定するより遥か高み。
武器の宝貝すら容易に辿り着けぬ覚悟を以って磨采を待ち構えていたのだった。

切っ先が火々の肩口に触れる瞬間、愚断はその覚悟を察した。
それが磨采に伝わるまで刹那の時間を要したのだ。
時間的に見ればほぼ同時に磨采も気付いたといってもよいのだが、基準となる時間感覚があまりにも早すぎたことが致命的だったのだ。
磨采の動き、剣技は一瞬で数太刀振るえるほどに速い。
故に、磨采にそれが伝わる刹那の間に、剣先は深々と火々の肩口へと突き刺さってしまっていたのだ。

>「それは…残念です」
刃を肩で受けた火々が磨采の顔を鷲掴みにする。
ただの鷲掴みではなく、灼熱を持った手での鷲掴みである。
ジュッと焼ける音と共に感嘆の言葉が漏れる。
「くうううう!やりやす・・・ねい!」
このまま突き刺さった愚断剣を振り下ろせば、火々は肩から脇腹まで切り裂かれる。
が、既にこの時背後には風鉄が迫ってきている。
綿密に組み立てられた戦略は予定外の行動をとるを許すほど余裕はなかった。

最初から火々を殺す為に急所を刺していれば事態は変っていたのかもしれない。
しかし、「餌」にする為に敢えて急所を外したが為に、火々の覚悟に一瞬の遅れを取る。
その遅れが振り返る一瞬にしわ寄せとなって現われた。

本来ならば振り向きざまに両断するつもりであったが、そうも行かない。
愚断剣を振り下ろすのではなく振り上げた。
磨采は振り返る事無く・・・否、振り返ることができず、愚断剣を頭上に横にして風鉄の一撃を受けた。
両肩を粉砕される事は免れたのだが、ズンという重い双撃を受け諸刃が磨采の手に筋をつける。
「お仲間の熱血、よく味わいなせえ。」
鉄扇を受けたままの態勢で手を軽く捻る。
刀身についた血のりを払う動作の応用なのだが、この局面に至ってはそれすら攻撃手段となるのだ。
なんといっても今愚断剣についている血のりは灼熱の火々の血なのだから。

背後の風鉄に血のりを浴びせながら磨采自身も体捌きで顔を鷲掴みにする火々の手から逃れた。
「ふひひひ・・・いい塩梅だねイ・・・!」
顔に火傷を負い、左手に切り傷を負いながらも磨采は愉悦に浸り、その気は膨らんでいく。

40 名前:龍紋 ◆OK6hKA/.GA [sage] 投稿日:2008/12/05(金) 19:21:33 0
>>32>>33
方頭に化けていた魔鏡が今度は火々に化け炎の壁を放ち、戦いの火蓋は切って落とされた。
先ほどまで化けていた魔鏡の正体にやっと龍紋も気付いたが、今はそんなことに驚いている場合ではなかった。
磨采が愚断剣を振り下ろすと、その場から衝撃波が発生する。刃物ではあるが戦う宝貝ではないため
磨采にとっては様子見の攻撃でも、龍紋にとっては改心の一撃となる。
いち早く戦闘体制に入っていたためか素早く飛びのいたためか、剣の衝撃波は頬を掠めるに止まった。
自分はおそらく必勝の一撃は繰り出せない。
だからサポートに周り、隙を作るべきだと感じた龍紋は【シザーハンズ】・・・両手に片刃のハサミを10本、各指に出現させた。
そばにあった岩を真っ二つに「切断」すると、手のひらにある鉄ヤスリで、その岩をものすごい速さで磨り、二頭の虎の形に「整形」する。
するとどうだろう、まるで本当に二頭の虎がいるように、二つの岩が動き出したではないか。
>>36>>38>>39
火々と風鉄の攻撃により、磨采もこちらには気がついていないようだ
「いまだ、いけっ!」

龍紋がけしかけると、二頭の虎は鋭い牙をむき出しながら磨采に襲い掛かった。


41 名前:鉄甲 ◆zJpkiOXmJ. [sage] 投稿日:2008/12/05(金) 21:28:19 0
>>33
>磨采砥。崑崙派仙剣をたしなんでおりやす。
>それから、愚断の旦那から・・・『それでいい』ですってよ。

「磨采、その名覚えたぞ・・・」
鉄甲も構えを変えて自分にとってベストの位置をキープする
近すぎてもダメ、離れすぎてもダメ、磨采の剣をかわせて尚且つ直ぐに攻めに転じれる位置を
確保しなければならない、幸い他の宝貝達が磨采を囲んでいるように配置しているので
現状自分が突出して前に出る必要も無い

最初に動いた魔鏡、しかしそれを蹴散らすように磨采の攻撃が来た
磨采の地を這う刃を鉄甲がかわす事は問題なかった、他の宝貝はこれを対処できているかは分からないが
今磨采視線をから外すのは命取り、非常ではあるが他人の心配をしていられるほどの余裕は鉄甲にはない
「今は攻めの気を錬るしかない」
彼女の闘志をいつでも外に放てるように攻撃の準備をしておく

反撃に転じたのは火々、自らの滾る炎をに前面に押し出した火々の捨て身の攻撃
そして風鉄の援護、一瞬の出来事、流石の磨采もこれには降参だろう思われたしかし

>「ふひひひ・・・いい塩梅だねイ・・・!」
火傷を負いながらも磨采はまだ立っていた、風鉄の追い討ちも磨采を仕留めるまでには行かなかったようだ
風鉄に火々の炎が飛ぶ

「お前等!よくやったよ!」

沈黙を破り鉄甲が叫ぶ、今がその時である
火々と風鉄に集中している磨采の視線をこっちに集める

「仙境流仙拳奥義!動覇残影掌!!」

鉄甲が磨采めがけて高速で突き進む、しかしそのまま磨采にぶつかるのではなく磨采の数m前で止まる
すると、急激に止まった鉄甲の体から飛び出るように鉄甲の形をした闘気だけが磨采めがけて飛んでいく
これは闘気だけで相手を攻撃する仙境流の奥義である。
そして

「磨采!覚悟!」
高速の拳が最初に愚断と闘ったときのように繰り出される。ただしあの時と違うのは威力だけではない
今度は剣を握る力を衰えさせようと磨采の手と肩にも繰り出している

>>40
流石は龍紋、石造の虎とは凄い
磨采への深追いは避けるべきである、龍紋の虎にこの場は任せて
今一度闘気を蓄えるため、再び間合いを確保するため下がる

42 名前:磨采 ◆1000VJ0J4k [sage] 投稿日:2008/12/05(金) 23:13:21 0
>「お前等!よくやったよ!」
火々と風鉄の攻撃を凌ぎきると鉄甲が気勢を発し磨采の気を引く。
高速で間合いを詰める鉄甲は数メートル手前で突然止まるが、攻撃自体は止まってはいなかった。
分身ともいえる闘気だけが鉄甲の体をすり抜けそのまま向かってきているのだ。

突然の急停止にもかかわらず向かってくる攻撃。
にも拘らず磨采の対応は落ち着いたものだった。
「不用意に名乗りなんぞ上げるからっ!」
道具たる磨采は知らずとも武器であり武人の愚断は知っていたのだ。
本来ならば間合いと呼吸を崩されるところだが、仙境流を名乗った時点でこの攻撃は想定内。
微妙に間合いを外し懐に入れぬように闘気鉄甲の攻撃を捌いていく。
磨采には愚断ほどの耐久力はない。
急所への一撃は致命の一撃となりうる為、的確に打ち落としていく。
が、それに気を取られるあまり、ついには右手への一撃を許してしまう。

弾かれるように跳ね上げられる右腕。
にも拘らず、磨采は愚断剣を離さなかった。
いや、離せなかった。
その手は愚断剣を握っているのではなく、愚断剣と融合しているのだから。
「ふひっ!これが因果って奴でさあ〜。」
弾き飛ばされても離れぬ愚断剣を見せ付けるように体勢を立て直し、闘気鉄甲を切り捨てる。
切り捨てられた闘気鉄甲は形を崩し、霧散してした。

魔鏡が戦慄した宝貝が宝貝を使うという事。
それが何ゆえ忌諱であるか・・・
使われる為に生まれた宝貝が使うという因果を超えた代償がこれなのだ。
お互いの宝貝は徐々に融合し、果ては自我すら境目がなく消える。

その結果を知っていてもなお愚断剣を使う磨采と使われる愚断の覚悟が更に切れ味を増しているのだ。

闘気鉄甲が消えた直後、その揺らめく戦う闘気の残滓から二頭の虎が磨采に襲い掛かってきた。
龍紋の放った石造りの虎たち。
鋭き爪と牙が繰り出されるが、そのまま磨采を通り抜けてしまう。

磨采の背後に着地した虎の一頭は三等分に切り分けられ石へと戻る。
もう一頭は肩口を切り裂かれてはいるが、致命傷にはなっていないようだ。
そして当の磨采は左肩に三本の筋をつけていた。
すれ違いざまに目にも止まらぬ攻防が繰り広げられていたのだ。
左側の虎が切り刻まれなかったのは火々の灼熱アイアンクローが効いていたからだった。
顔を鷲掴みにされた磨采の左目は焼け爛れて既に開いていない。

「さあて、あまり愚断の旦那ばかりに頼っていてもいけませんしねい。
仕込みは上々!」
顔からの煙も薄れてきたところで、磨采は地面に深々と愚断剣を突き立てた。
そのまましゃがみ、ついには刀身の全てが埋まるまで。

「山に眠りし鉱脈よ!金気の粋たる愚断剣の呼びかけに応えよ!
山津波!剣山舞踏!!」
立ち上がる勢いを利用し、一気に愚断剣を地面から引き抜いた。
直後、山全体が鳴動し、足元から鉱物の柱が無数に飛び出てくる。
「気をつけなせえ。あっしは触れたもの全て刃と化す砥石。
その柱は全て鋭利な剣と思いなせえ!」
そう笑う磨采を中心に10mクラスの鉱物の柱が衝撃を伴いながら次々と生えてくる。

まさに槍衾。
遠目で見ていると、鉱山全体に巨大な針が生え、まるでハリネズミのように見えるだろう。
そして磨采の言うとおり、その針一本一本が形に問わず鋭い剣なのだ。

林立する剣山の中、串刺しにされ石に戻る虎を見上げながら一つ息を付き、辺りを見回した。

43 名前:方頭 ◆J.2feuKGh2 [sage] 投稿日:2008/12/06(土) 19:07:14 0
>「隙」という餌に食いつき方頭は鉱山の金気を吸い取る。
戦場では本来なら確実に仕留められる者、弱者から葬られていくのが常である。
だがこの戦いにおいて、磨采という宝貝は愚断剣の力を存分に発揮することを目的としているのだ。
ならば彼がその剣を振るうのはそれに見合う武人であり
こと戦闘に関してはまったくの素人である上、霊力を失い、今なお虫の息である方頭ではありえない。
それならば不用意に踊り出るよりも、この鉱山という自身にとっても有効な地の利を生かすべき。
今は歯痒いが回復に努め、万全の状態で助勢に入るべきだ。
……少なくとも方頭にとってはそれが最良の策だと確信していた。
だが、厨房でしか働いたことのない方頭と、武具たちとも交流を持って戦いを知る磨采
この二者の違いはそのまま“戦場”というもののスケールの違いとなって現れる。

磨采が手にした愚断剣を大地に向かって突き下ろしていき、やがて方頭同様に得物の刀身を地に埋め込む。
戦闘はいまだ続いており、彼自身手傷を負っているにもかかわらず、だ。
宝貝が宝貝を使う、という忌諱ゆえにすでに半同化している状態なら
自分もまたこの地の金気で回復出来ると踏んだのか?と方頭は訝しがる。
その直後、自身の読みの甘さを知る。

>「山に眠りし鉱脈よ!金気の粋たる愚断剣の呼びかけに応えよ!
>山津波!剣山舞踏!!」
大地から剣と共に解き放たれた莫大な霊力が磨采にとっての“戦場”―――この鉱山全体を駆け巡る。
それはすぐさま一つ一つが方頭の体を軽々を貫く程の大きさを持った“剣”の形に変じて
大地を覆いつくす暴力となって迫る。
「そ、そんなっ!?これ程の規模で地勢を利用するなんて!」
霊力も回復しきっていない、それ以前に自身の術では防ごうにも圧倒的すぎる質量の群れ
戦闘畑でない彼には迫りくる剣山を避けるだけの身のこなしもない。

「方家式包丁術・丁の型、全材一絶・守り!!!」
方頭は最後の足掻き、愚断の初撃と激突した以上の大きさ、地中から伸び出る柱の一本よりも
なお大きく包丁を変化させる。
仙界の厨房で調理する巨大な食材のなかでも一際硬いものを叩き切るため
気力と集中をもって放たれる一振り、方頭に使えるなかで最も高位な術である。

だが、所詮戦いの始まりで愚断が語った通り、包丁は戦場で使われることを目的としていない
ましてや消耗していたとあっては結果など考えるまでもなし。
一本目の柱が刀身の腹に叩きつけられ全体が大きく歪む。
二本目が続けざまにやって来て刃こぼれを起こす。
三本目、四本目がそれぞれ刃先と峰の側に罅を入れる。
最後に五本目が根元に突き刺さり、限界を超えた得物が巨大化を保てなくなり元の大きさに戻る。
「ぐあっ!?……っ!うああぁっ!!」
防御を失った方頭はそれ以降、完全に無力、六本目が左足を抉り、七本目が右肩を吹き飛ばす

八本目が右胸を貫いたところで方頭は力尽き、煙のように姿は消える。
跡にはただ剣山の合間にボロボロの包丁が残っていただけだった。

44 名前:火々 鍋 ◆8SPHqobdCs [sage] 投稿日:2008/12/08(月) 00:26:39 O
決死の反撃も磨采の戦闘意識を殺ぐまでに至るものではなかった。
だが、危うくの所で風鉄の助けが入ったお陰で真っ二つになるのを避けることが出来た。
すぐさま、磨采から離れ間を取り、乱れた呼吸を整える
思った以上に傷は深いが、辛うじて満身創痍にまで達してはいない。

だが、それは磨采とて同じことだ。
剣と腕が融合し始め、自分の自我さえ揺らぎ始めているのかもしれない。

鉄甲、龍紋の攻撃を磨采は耐え、遂に大技を繰り出してきた
ということは、向こうは決着を急いでいるといるのかも知れない。
ならば、火々の選択は一つ
「全力でここを凌ぎきるだけです」
足元から生えてくる剣の柱に向かい、異常なまでに高まった熱を炎に変え放つ。
それだけではなく、火力を一点に集中させることにより、火の鑓を作り出し、柱を真正面から迎え撃つ

45 名前:鉄甲 ◆zJpkiOXmJ. [sage] 投稿日:2008/12/08(月) 22:17:33 0
>>42>>43
>「不用意に名乗りなんぞ上げるからっ!」

少なくとも、ここで不意打ちをするほど鉄甲も落ちてはない
格闘家としての誇りは彼らと対峙するということで奮い立っているからだ
それに、気を逸らさせると言う意味では成功したのかもしれない、風鉄、火々も無事だ

>その手は愚断剣を握っているのではなく、愚断剣と融合しているのだから

「くそっ!やはり融合が始まってたか」

話は聞いていた、宝貝が宝貝を使用するというのを禁ずる理由は、一つの宝貝としての存在が許されなくなると・・・
磨采と愚断は欲望に狩られそれを行ってしまった、融合化が進んではいるがまだ取り返しはつくかもしれない
このまま宝貝でなくなる前に、宝貝として終止符を打つ事が彼らへの手向けだからだ

>そう笑う磨采を中心に10mクラスの鉱物の柱が衝撃を伴いながら次々と生えてくる。

ついに磨采大技を繰り出してきた、向こうも切羽詰ってるようだ
この戦いも終わらせなければ、磨采と愚断だけじゃない、他の宝貝も傷ついてしまう

「なんの!これしきぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!」
大地から柱が出てくる前に素早く地面を蹴り上げる、勢いよく高く飛ぶが地面からの柱も
鉄甲を追うがごとく勢いよく生えてくる

鉄甲は柱の刃になってないところを見つけそこを蹴り上げる
蹴ればその勢いで駆け飛び、また次の柱の刃になっていないところを蹴り上げる
三角とびの要領で次々と飛びながら回避していく

>「ぐあっ!?……っ!うああぁっ!!」
迫り来る柱を蹴り続けると柱の群がる奥から方頭の断末魔が聞こえた、ふとこの山に来る前のことを思い出す
愚断の場所を突き止めたときに方頭を半ば強引に山へ連れてきた自分として、彼の最後の声を聞くのは
鉄甲の中で無念と自分への不甲斐なさを感じた
「なぁに、方頭心配するな・・・この私が付いてる、何かあったら守ってやるよ」
結局、自分のことだけで彼を助ける事が出来なかった・・・

「すまない、方頭・・・」
磨采の攻撃が落ち着くと、彼の声がしたところへ飛んで行く
剣山の合間にボロボロの包丁を見つけると、剣山の間に手を伸ばし包丁を取り上げる
剣山のような場所に手を伸ばした事で鉱石の柱に腕が当たり傷つくが、それでも鉄甲は方頭をこんな場所に置いたままにするのは
忍びなかった


「仇はとるよ・・・」
方頭に告げると、自分の腰の帯のところに包丁を括り付け
磨采へとの決着をつけるべく再び柱を蹴り上げ飛んでいった

46 名前:風鉄 ◆8POt/p0q3w [sage] 投稿日:2008/12/08(月) 22:47:50 0
>>39-45
「ぐぅっ!」
灼熱の火々の血が風鉄の顔面に襲い掛かる
ジュッという焼け焦げる音と共に、額と右の頬が黒く焼かれていた
焦げた部分からは、煙のようなものが上がっている
木気に属する風鉄にとって、火は逆に苦手な相手である
しかし、直ぐに何事も無かったかのように見返す

>「ふひひひ・・・いい塩梅だねイ・・・!」
「大した余裕じゃな…
 じゃが、武器ではないお主にその手傷は辛かろう
 これでお主らの有利はいくらか削がれたな…」
膨らむ磨采の気に押されぬよう、気をしっかり持って強気で臨む
油断は許されないが、迷いも許されない
鉄甲の闘気の分身と龍紋の石虎が間隙を縫って追撃を仕掛ける
だが、既に愚断は磨采の右腕と融合しており、鉄甲の分身を退けてしまう

「宝貝同士の融合じゃと…、何ということを!
 お主ら、絶対に触れてはならぬ禁忌に触れおったな!
 よもやお主らの関係が融合まで進んでおったとは…
 最早こやつらは宝貝ではない…、魔物じゃ…!」
驚愕の事実ではあったが、そこから発揮される力もまた尋常ではないのだ
磨采が愚断と融合した右腕を地面に突き立て、無数の鉱石の柱を召喚する
それらは龍紋の石虎を貫き、消滅させてしまった
風鉄も、足元から出てきた鉱石の柱を飛び上がって回避する
しかし避け切れず、鎌鼬を放って柱を切り捨て何とかを難を凌ぐ

「しまった!
 方頭!」
その混乱の中で、柱に巻き込まれた方頭が原体へと戻ってしまう
こうなってしまっては、仙人様でなければ元に戻すことはできない
人間で言えば、「死んだ」も同然の戦闘不能状態である

「おのれ、磨采、愚断!
 お主らを生きて連れ帰ることこそ我が使命であった…
 だが、最早宝貝としての尊厳まで捨てた者どもに対する情けは失せた
 お主らの望む通り、徹底的に叩き伏せてくれよう!」
そう言うと、磨采の斜め上方に飛び上がり、鉄扇を構える
竜巻のように渦巻く護風に包まれた風鉄の体は高速回転を始める
辺りにつむじ風を巻き起こしながら、空中を飛び回っている

「高い山中なれば、地上よりも天に近い
 天は風吹き荒ぶ時がある故、時として我が力に増幅をもたらすのじゃ
 そして、今こそがその時!」
そう言うと、風鉄を中心に渦巻く護風から無数の鎌鼬が放たれる
幾十もの真空破が前方から一斉に磨采に飛び掛かってきた

「岩をも切り裂く我が鎌鼬の味、存分に思い知るがいい!」

47 名前:魔鏡 ◆jucVyRORyI [sage] 投稿日:2008/12/09(火) 00:02:58 0
>37-43
>行きますぜ?地走り蛟!!
>方頭が動けずにいる中でおしゃべりはここまで、と言わんばかりに磨采は愚断剣を振るう。
>「まずい!段の型、守り、ううっ!?」
魔境は意外そうな顔をした。
まさか弱った体で真正面から磨采の攻撃を受けるとは思わなかったのだ。
おそらく自分を庇ったに違いない。
「助かったよ方頭くん。君はいい子だ、実に気立ての優しい、いい子だよ」
これで方頭はさらに霊力を浪費した。
そのぶんではとても戦場で長生きできないねえ、と魔境は内心で冷静に値踏みしていた。

>38
「お主、相変わらず面妖な術を使いおる… (中略)その力、頼りにさせてもらうぞ」
「いやいや、僕のようなか弱い宝貝にはとてもとても」
魔境は苦笑しつつ肩をすくめた。

火々と風鉄の連携攻撃も、磨采に決定的な一撃にはなりえなかった。
>「いまだ、いけっ!」
>「お前等!よくやったよ!」
「龍紋くんはともかく・・・・・どうして武人はこうも非効率なんでしょうねぇ」
必殺の一撃なら隙を狙って叩き込むべきだろうと武人の矜持を持たない魔境は思ってしまう。
>「仙境流仙拳奥義!動覇残影掌!!」
畳み掛けるように龍紋が二頭の石虎を操り、鉄甲が渾身の技を叩き込もうとする。
磨采にとってはある程度想定内だったようだが、鉄甲と龍紋の実力は彼の予想の上を行ったようだ。
>「ふひっ!これが因果って奴でさあ〜。」
「どうやら、始まってしまったようですね」
>弾き飛ばされても離れぬ愚断剣を見せ付けるように体勢を立て直し、闘気鉄甲を切り捨てる。
>切り捨てられた闘気鉄甲は形を崩し、霧散してした。
龍紋が作った虎の一頭は斬られて石へと戻り、もう一頭は肩を斬られたようだ。
だが一方で、切れ味を増した筈の磨采の傷は確実に増えていた。
「火々姐さんのおかげで磨采のダンナの左目は完全に死んでいるようだね。
攻撃するなら左からと言いたいところだが、それすら誘いの罠かもしれないねえ。くわばらくわばら。
本当はこの場を死ぬ気で離脱して、ダンナ達が勝手に自滅するのを気長に待つのが一番なんだけどねえ。
まあ・・・そうそう上手くはいかない、かねえ」
それ以前に鉄甲や風鉄が受け入れるとも思えないのだが、ついぼやかずにはいられなかった。

次に仕掛けたのは、愚断の剣ではなく磨采だった。
>「山に眠りし鉱脈よ!金気の粋たる愚断剣の呼びかけに応えよ!
>山津波!剣山舞踏!!」
さすがの魔鏡の顔からも笑みが消えた。
「そ、そんなっ!?これ程の規模で地勢を利用するなんて!」
>直後、山全体が鳴動し、足元から鉱物の柱が無数に飛び出てくる。
>「方家式包丁術・丁の型、全材一絶・守り!!!」
>方頭は最後の足掻き、愚断の初撃と激突した以上の大きさ、地中から伸び出る柱の一本よりも
>なお大きく包丁を変化させる。
>仙界の厨房で調理する巨大な食材のなかでも一際硬いものを叩き切るため
>気力と集中をもって放たれる一振り、方頭に使えるなかで最も高位な術である。
方頭は魔鏡を庇おうと、一太刀目で生えてきた柱を叩き折った。
「いい判断だ方頭くん、さあこちらへ!」
魔鏡は折られて平らになった柱の上に飛び乗った。
折れた柱は折れたままの状態でまっすぐ上に伸びる。
この上に載れば剣山舞踏から逃れる事が出来る筈だった。
だが伸ばされた魔鏡の手を、方頭にはもう掴む力は残っていなかった。
>「ぐあっ!?……っ!うああぁっ!!」
魔鏡の乗った柱は天高く空に伸び、力尽きた方頭は、迫りくる剣山によって貫かれた。

48 名前:魔 鏡也 ◆jucVyRORyI [sage 慇懃無礼なのは仕様です。気を悪くしないで下さいね。] 投稿日:2008/12/09(火) 00:59:18 0
>「すまない、方頭・・・」
>磨采の攻撃が落ち着くと、彼の声がしたところへ飛んで行く
>剣山の合間にボロボロの包丁を見つけると、剣山の間に手を伸ばし包丁を取り上げる
>「仇はとるよ・・・」
「おやおや、鉄甲の姐さんが仇を取ってくれるそうですよ。
方頭くん、嬉しいでしょう?
自分が死にかけている時には見向きもしなかったのに、戦闘不能になったとたん飛んで来てくれたってね」
そう言って魔境は冷笑した。今頃やってきた鉄甲の行為を皮肉ったのだ。
だが珍しく、その口調にはいつも程の毒は無い。
> お主らを生きて連れ帰ることこそ我が使命であった…
> だが、最早宝貝としての尊厳まで捨てた者どもに対する情けは失せた
> お主らの望む通り、徹底的に叩き伏せてくれよう!」

「足手まといが消えてほっとした。口でなんと言おうがそう顔に書いてありますよ、姐さん達。
・・・・・・まあ、それにはほぼ同意しますけどねえ。かくいう僕も頭脳労働者で場違いもいいとこだし」
柱を蹴り上げ飛んでいった鉄甲の背中を見送りながら、魔鏡はすっと目を細めた。
「でもまあ、僕は貸しを作るのは好きでも借りは嫌なんだよねえ。
ましてそれが、年下の男の子だとねえ」

>「高い山中なれば、地上よりも天に近い
> 天は風吹き荒ぶ時がある故、時として我が力に増幅をもたらすのじゃ
> そして、今こそがその時!」
>そう言うと、風鉄を中心に渦巻く護風から無数の鎌鼬が放たれる
>幾十もの真空破が前方から一斉に磨采に飛び掛かってきた
>「岩をも切り裂く我が鎌鼬の味、存分に思い知るがいい!」
「龍紋くん!今度は磨采のダンナ達を地中に逃がさないでくれ!
動きを封じるまでは無理でも、彼らの動きを制限するんだ。君なら出来る!」
魔鏡は風鉄が魔法を放つ瞬間、柱から飛び降りた。
地面に到着するまでの刹那に、彼は三度姿を変える。
風鉄に姿を変えた魔鏡は、今見たばかりの鎌鼬を真似て磨采へと放つ。
魔鏡の本性は水鏡だ。
火々の炎を真似た時は6割程度の威力だったが、風を真似る場合は8割程度にはなるはずだ。
鉄甲や龍紋が動くための機や、 火々が体勢を立て直すくらいの時間は稼げる筈だ。

49 名前:磨采 ◆1000VJ0J4k [sage決めちゃってください] 投稿日:2008/12/09(火) 23:21:12 0
「ほう!やはり天敵の分は分としてありますか・・・。」
剣山の林立する山の中、それを見つけて磨采は感心したように呟いた。
【それ】とは、火々の正面に聳え立つ巨大な鉱物の柱。
柱といっても鋭い刃物の性質を与えられている凶器が、綺麗に縦半分溶かされているのだ。
巨大な質量を凌ぎきる火々の熱量に思わず感嘆の言葉を漏らした。
が、折からの傷にこれだけの力を出せば消耗の程も推して知れるというもの。

止めを刺さんと一歩踏み込んだ瞬間に周囲に膨れ上がる気に気がついた。
それは直上、竜巻を纏った風鉄。
怒気を孕んだ叫びと共に術を展開する。
更には背後上空から闘気の塊。

降り注ぐ真空の刃に磨采は一歩も引かず迎え撃つ。
「くははは!上等!!」
剣を振り数知れぬ真空の刃を打ち消しているのだ。
全ての真空の刃を打ち消すその姿は徐々に磨采のものとは離れていっている。
飄々とした職人ではなく、戦いに生きがいを感じる武人のそれに。
体だけでなく、精神の融合も始まっている証拠だった。

次々と真空刃を打ち消す磨采に意外なところから攻撃が加えられる。
それは風鉄に姿を変えた魔鏡だった。
上空の二人の気が強すぎて、魔鏡の気に気付くのが遅れたのだ。

上空からの攻撃に対処している中、この遅れは致命的なものだった。
横から放たれた真空刃を撃ち落す余裕はない。
八割の威力といえども、木剋土。
相性的に十分な脅威となる。
だから、磨采は迷う事無く左腕でそれを防いだ。
防いだといっても、跳ねられる場所が首から左腕に替わったのみ。
大ダメージには変わりないが、それで十分だった。
「ぬがああああ!構うか!左腕ぐらいくれてやるわっ!!」
跳ね飛ぶ己の左腕を見ながら磨采は愚断剣を横凪に振るう。

その一太刀で周囲の柱は切り落とされ、崩れ落ちてくる。
鳴り響く轟音と舞い上がる土煙が辺りを埋め尽くす。

土煙を突き破るように飛び出てきたのは勿論磨采。
「剣が振れる腕が一本!あればそれでいい!!
鉄拳甲!!!!」
顔は焼け爛れ、肩に傷を負い、左腕を失った磨采はまるで一本の剣のようだった。
この期に及んで標的を鉄甲に定めたのは武器の宝貝同士の矜持なのだろうか?

空中で二人は交錯する。
全てを切り裂く剣と全てを砕く拳。
先に体に届いたのは間合いの広い愚断剣。
鉄甲の身体を両断しようと切っ先が腹に当たる。
が・・・
*ピシッ*
小さく皹の入る音が空に響いた。

愚断剣の切っ先は鉄甲の腰に括りつけられていた方頭だった包丁に当たっていたのだ。
金気を吸い、守る事に終始し倒れた方頭に・・・

50 名前:鉄甲 ◆zJpkiOXmJ. [sage] 投稿日:2008/12/10(水) 02:05:50 0
>>48
>おやおや、鉄甲の姐さんが仇を取ってくれるそうですよ。
>方頭くん、嬉しいでしょう?
>自分が死にかけている時には見向きもしなかったのに、戦闘不能になったとたん飛んで来てくれたってね」

返す言葉はなかった、結果として方頭は倒れ魔鏡も方頭の手を握る事が出来ず
お互いのやり場のない憤りにそれぞれの思いでいっぱいだったからだ

「魔鏡、私はお前の顔以上に自分をぶん殴りたいよ・・・・・・でもね、これで終わり
終わりにする、刺し違えてでも二人は倒す・・・なぁに・・・方頭の仇は討つ
この体二つになっても、半分になった体だけでアイツを殴るよ・・・」
そう告げると決着を着けるべく飛び立った

>>49
柱が崩れ土煙があがり、そこから 磨采が飛び出してきた

「愚断!そして 磨采!!ここで決着をつけるよ!!」

>「剣が振れる腕が一本!あればそれでいい!!
>鉄拳甲!!!!」

片腕をなくし、あの憎らしい顔も醜く焼けただれ・・・今の磨采は全身を利用した長剣でしかなかった
辛うじて愚断の意識が先行して彼を武人として形作っているのだろう。
終わりにしなければならない、磨采も愚断もここで止める!

「うぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

自身の拳に全てを賭けた一撃 1発の拳に全力だけを集中したこの技は威力だけは大きいが
拳が当たらなければ意味がない、間合いを見誤れば最大の隙を生みかねない
そして、彼女は空中という状況でその間合いを見誤った・・・

手負いの磨采ではあるがそれでも剣の速さは変わらず、鉄甲の拳は僅かながらに届かなかった
鉄甲はしくじったと思った瞬間、鉄甲の中の時間がゆっくりになるのを感じた、超人的な感覚は自分の動きと愚断の剣の動きを遅れさせ
何も出来ぬまま剣が自分を横切る瞬間を待たなければならなかった

(これで終わりだ・・・まったく・・・笑えないねぇ・・・拳が・・・後ちょっとだっていうのに・・・足りないよ・・・届かないよ
この身が裂けても・・・この拳は奴に当てる・・・でも、そんなに上手く行く分けないよねぇ・・・ごめんね、方頭)

磨采と愚断の剣は鉄甲を一刀両断しようとしたその瞬間

>*ピシッ*
>小さく皹の入る音が空に響いた。

!? 
一瞬の出来事だった、空に響いたその音は自分の腰に差していた方頭の原体が愚断とぶつかった音だった
方頭!? そう悟った瞬間、鉄甲の目つきが変わる

「磨采!愚断!あんた達二人はよくやったよ!だからこれで終わりだ!砕く!」

方頭が防いでくれた僅かな瞬間を利用し鉄甲は磨采に拳が届く距離まで来る事が出来た
一瞬ではあるが、この一瞬は鉄甲にとって拳が届く以上に大きな一瞬であった、その一瞬に拳を叩き込むよりももう一手間
磨采の左側の方から手を伸ばし頭を手前に引き寄せるという事を追加できた

「零距離行くぞ!!!天昇聖光拳!!!!」
その拳は引き寄せた磨采の腹から上に昇るように顎を通して天高く突き上げられていた
鉄甲の拳は輝いていた、その光は暗雲立ち込める山の空を貫き天に光の柱を作り上げた

51 名前:龍紋 ◆OK6hKA/.GA [sage] 投稿日:2008/12/10(水) 22:46:24 0
>>42>>43
二頭の虎の攻撃を見て、龍紋は確信する。

「そうか・・・あいつ、片目しか見えてないんだ!」

磨采の姿は突如現れた無数の鉱物の柱に覆われて、やがて見えなくなる。
先ほど力を使いすぎたせいか、回避にまで力が回らない。しかし鉱物はその鈍重さとは反比例した速度を持って襲い掛かる。あわてて体制を崩した龍紋の左足に、深々とその刃は刺さった。

「ぐあぁ・・・!」

悲鳴を上げたのは、一人だけではなく。やがて人の形をしたそれは、一振りの包丁へと姿を変えた。
>>44>>45
やはりここで、戦闘用の宝貝との差が出てしまった。火々は戦闘用宝貝ではないが、鉱物とは相性がいい。その炎を纏い、これを防いだ。
鉄甲は身軽な身のこなしを持って、これを回避している。やがて方頭の下へ降りた鉄甲は、懺悔をしているようだ
龍紋は左足の痛みに苦悶の表情を浮かべながらも、方頭の無念さを嘆いた。
>>46>>47>>48
>「龍紋くん!今度は磨采のダンナ達を地中に逃がさないでくれ!
動きを封じるまでは無理でも、彼らの動きを制限するんだ。君なら出来る!」
そういうと魔鏡は今度は風鉄に化け、本物の風鉄と共に攻撃を開始する。

「そんなこと言っても、あ、足が・・・」

方頭が無残にやられてしまったことと、足を怪我したことで龍紋は再び、戦う意欲がそがれていた。
>>49>>50
愚断剣が空中にいる鉄甲を捕らえた。が、何かがその攻撃を防いだ。
>「零距離行くぞ!!!天昇聖光拳!!!!」
次々と放たれる怒涛の一撃を、龍紋はただただ傍観するしかなかった


52 名前:磨采 ◆1000VJ0J4k [sage] 投稿日:2008/12/10(水) 23:28:21 0
愚断剣が鉄甲の身体を捉えた瞬間、小さく響いた音。
それが全てだった。
融合が進む愚断と磨采は強靭な力を手に入れたが、引き換えに柔軟さを失っていたのだ。
一つの器物としての領域を超えた歪。
小さく入ったヒビは愚断剣から磨采の身体へと広がっていく。

そして迫る鉄甲の拳。
研ぎ澄まされた超感覚により間延びした時間の中、スローモーションのように迫るその拳をただ見ている他なかった。
左目が潰れ、左腕が切り落とされた状態では防ぐ手立てもない。
>「零距離行くぞ!!!天昇聖光拳!!!!」
腹から顎へと上るように突き上げられる拳が作り出す光の柱。
「ぐあああああああああ!!!」
暗雲立ち込める谷之を貫く光の柱の中、愚断と磨采の絶叫が響き渡る。

光の柱が消えた後、磨采が龍紋の近くに落ちてきた。
地面に叩きつけられたその体は右腕が砕け、愚断と磨采を分離していた。

ダメージに動きが取れぬにも拘らず、磨采は満足気な顔をしていた。
集まってくる追跡宝貝たちを見上げながらにやりと笑う。
「ぐっは・・・はは・・・は・・・
愚断の旦那を使って・・・負けるとは、情けねえや。
敗因は・・・そうさね。あっしが砥石だって事を忘れてたからかねい・・・。
それに・・・魔鏡さん、あんた意外と熱いお人だったんだねい・・・。」
血を吐きながら弱々しく笑ってみせる磨采。

思い起こせば勝敗は火々を突き刺した時に既に決まっていたのかもしれない。
灼熱と化した火々を刺した事で、切っ先が僅かに痛んでいたのだ。
砥石として修復して然るべきなのに、磨采は戦いを優先した。
それが最終的に包丁の原体に戻った方頭に力負けするという事態を引き起こしたのだから。

「負けちまったが、あっしも愚断の旦那も・・・満足しているんですぜ?
風鉄さん・・・あんた、あたしらが道具としての本分・・・を放棄した、と思っているようですが・・
戦う・・・事こそ、剣の本分じゃ・・・ないでしょうかねい・・・
仙界で飾られているより・・・ずっと・・・
そういった意味じゃ・・・龍紋さん・・・あんたは・・・?
顔に書いてありますぜ?
あたしらが・・・羨ましい・・・てねえ・・・。
まあ・・・いい・・・
もうあたしらは十分満足しました・・・。」
そういい残すと磨采は力尽き、原体である砥石の姿へと戻った。

山に吹く風に紛れ、愚断の声が鉄甲の耳へ届く。
【よい戦いだった。】と。

ここに鉱山での戦いが幕を閉じたのだった。

53 名前:風鉄 ◆8POt/p0q3w [sage] 投稿日:2008/12/11(木) 10:32:16 0
>>48-51
「お主という男は…!
 いや、わしとて何も語ることは出来ぬ…」

この状況でそれを言い放つ魔鏡の態度に腹が立つ
だが、あながち間違いではないため、言い返すことを辞めてしまう
しかし、本当に何を考えているか分からない男である
言い知れぬ不安を感じながら、己に姿を変えた魔鏡を背後から見据える
一方、愚断はこちらの鎌鼬を全て捌ききっていた
しかし、これは予め分かりきっていたことではある
この二人の融合による強大な力に隙を作るには、仙力を目いっぱい注がねばならない
中途半端な攻撃では、足止めにすらならないことは既に証明済みだ

「分かっていたこととはいえ、ああも見事に捌かれるとはな…
 宝貝と宝貝の融合、そこまでにして強大な力を生むか
 やはり、宝貝たる者…」

方頭を戦闘不能にされた怒りは、鉄甲の攻撃を激しくする
鎌鼬による隙を突き、攻撃を仕掛けていた
しかし、危うく避けられると風鉄も諦めかけた瞬間である
なんと、愚断の一撃が原体の方頭によって防がれていたのだ
一瞬の出来事では会ったが、風鉄の目にはその光景が何なのか目に見えていたのだ

「馬鹿な…、原体によってこそ力を発揮する愚断を…
 ましてや磨采に振るわれている状態で止めたじゃと!?」

その光景に風鉄は、驚きを隠せない
そして、鉄甲の一撃が磨采を愚断ごと捉える
激しい光が辺りを包み、目が眩み絶叫が響いたその刹那には、磨采は龍紋の側へと落ちていた
ついに、魔人と化した融合宝貝は落ちたのだ

>>52
「磨采…、そのような感情を持つことこそが禁忌だったのだ…
 愚弾は武器として、武器であり過ぎたのだ
 武器は本来戦いのための道具、わしにも闘争本能は少なからず…ある
 認めたくないことだが…
 じゃが、それこそがわしらの戦うべき相手、違うか?
 お主らはお主ら自身に負けたのだ、お主ら自身の感情にな…」

この時、風鉄は心の中である確信を持っていた
欲望や嫉妬、憎悪など、それらは全て個々の感情から生み出されるものなのだと
感情は強ければ強いほど、時として強大な力を生み出す
それが欲望に走り力を求めた愚断と磨采、怒りと哀しみに燃えた鉄甲の力なのだろう
そして、その「感情」に対する自身の怒りや不安も、また「感情」なのだろうと…

「…この事実、仙界に帰って一刻も早く仙人様に報告せねばなるまい
 さもなくば宝貝の逃亡は繰り返されるばかりのみじゃ…」

そう呟くと、風鉄は何者にも振り返ることなくその場を後にした
最早、風鉄には他の者のことなど眼中には入っていない
そう確信した以上、最早鉄甲たちとて油断のならぬ相手なのだから

54 名前:魔 鏡也 ◆jucVyRORyI [sage お疲れ様でした。] 投稿日:2008/12/12(金) 20:47:32 0
>49-53
>暗雲立ち込める谷之を貫く光の柱の中、愚断と磨采の絶叫が響き渡る。
「どうやら、終わったみたいですねえ」

>光の柱が消えた後、磨采が龍紋の近くに落ちてきた。
>地面に叩きつけられたその体は右腕が砕け、愚断と磨采を分離していた。
>ダメージに動きが取れぬにも拘らず、磨采は満足気な顔をしていた。
>「ぐっは・・・はは・・・は・・・
>愚断の旦那を使って・・・負けるとは、情けねえや。
>敗因は・・・そうさね。あっしが砥石だって事を忘れてたからかねい・・・。
>それに・・・魔鏡さん、あんた意外と熱いお人だったんだねい・・・。」
魔境は風鉄の顔のままで微笑んだ。
「そうお感じになったとしたら、それはきっと火々姐さんの心でしょう。
僕はあくまで、他者を映す鏡に過ぎませんから」

>「負けちまったが、あっしも愚断の旦那も・・・満足しているんですぜ? (中略)
もうあたしらは十分満足しました・・・。」
そういい残すと磨采は力尽き、原体である砥石の姿へと戻った。
>「磨采…、そのような感情を持つことこそが禁忌だったのだ… (中略)
> お主らはお主ら自身に負けたのだ、お主ら自身の感情にな…」
「……本当にそうでしょうかねえ?」
魔境は風鉄の言葉に異を唱えた。
「なぜ心のままに生きてはいけないんだい?
僕たちは泣き、笑い、怒り、悲しむ心をもっている。好奇心もあれば、欲もあります。
道具として生きる事しか許されないというのなら、最初から感情など与えなければ良かったのですよ。
そうは思いませんか?龍紋くん」

>「…この事実、仙界に帰って一刻も早く仙人様に報告せねばなるまい
> さもなくば宝貝の逃亡は繰り返されるばかりのみじゃ…」
「仙人様にご報告なさるおつもりなら、その前に僕から一つ忠告しておきますよ」
立ち去ろうとする風鉄の背中を見送りながら魔境は口を開く。
「仙人様にとってはねえ、愚断の旦那達も僕も、皆さんも、姐さんも全部同じ道具なんですよ。
 そう。自分の代わりに手足となって動く便利な道具でしかない。
 自分の手に負えないと感じたら、壊して新たに作り直す程度の存在でしかないんですよねえ」
魔境は足元に横たわる愚断達の本体を見下ろした。

「報告も結構ですが、長生きしたければ、自分だけは特別だと思わないことですよ。
 なにせ逃亡している連中も、追う僕らも、元は同じ仙人様が作った宝貝なんですからねえ」
魔境は顔を上げ、風鉄の顔のままで妖しい笑みを浮かべた。
「僕は時々思うんですよ。
もし仙人様が僕達宝貝を疎ましいと思われた時……僕たちは一体、どうなるのでしょうかねえ?
例えば僕らが逃亡した宝貝を全て回収した後、消滅しろと命じられたら素直に従えるのか?と……ねえ」

55 名前:魔 鏡也 ◆jucVyRORyI [sage] 投稿日:2008/12/12(金) 20:49:36 0



「―――――――― などと思った時期が、僕にもありました」
そこまで語った魔境は、今までの真面目な顔が嘘のようにぱっと明るく表情を変えた。
「やだな皆さん、冗談ですよ、じ ょ う だ ん。はははは、もしかして本気になさいましたか?」
魔境はそう言ってひとしきり笑った後、今度は鉄甲に姿を変えた。
そしてこほんと一つ咳払いをすると
「いやいや、まあ皆様の素晴らしい戦いも見られたことですし、僕も大満足ですよ。
姐さん達のナイスなデータも色々とれましたし、ねえ。
いやはや、火々姐さんの鎖骨も捨てがたいですが、鉄甲姐さんの胸もなかなか・・・・・・」
そう言って魔鏡は、鉄甲の姿のままなまめかしいポーズを取って見せた。
「ははは、嫌だなあ姐さん、ほんのお茶目な冗談ですって」
魔境はそう言うと、突然鉄甲達の前から姿をくらました。
直後、愚断と磨采の原体も跡形もなく消えうせる。

「 いやいや、あいにく僕は力仕事は苦手でねえ。
鉄甲姐さん、 火々姐さん達をお運びする大役はお譲りしますよ。
僕は旦那達を連れて、一足先に戻る事にしますよ。
申し訳ないですが人間達への事後処理もどうかよろしくお願いしますねえ。
では姐さん達、方頭くん。ご縁があればまたご一緒しましょうねえ」

それだけ言い残すと、魔境の気配はその場から完全に消え失せた。

56 名前:鉄甲 ◆zJpkiOXmJ. [sage] 投稿日:2008/12/12(金) 22:59:02 0
全力を出し切り自分が創った光の柱を見ながら地面へと落ちていく鉄甲
地面に倒れたとき、磨采と愚断がどうなったのかは分からない、頭がボーっとして
自分がどうなったのかもハッキリしない。

そしてゆっくり意識が確かになっていくと、磨采と愚断の事を思い出す
「磨采!愚断!」
起き上がろうにもうまく力が入らない、膝を突きながらゆっくりと起き上がる
まず目にした光景は愚断と分離した磨采が倒れているのを確認した
近づいていくと磨采はとても満足そうな顔だった

>愚断の旦那を使って・・・負けるとは、情けねえや。
>敗因は・・・そうさね。あっしが砥石だって事を忘れてたからかねい・・・。

「十分よくやったよ・・・また相手してやらぁ・・・逃げ出すときはまた言いな
今度はもっと強くなって今度はお前を泣かせてやるよ!、へへっ」

全力を尽くした相手に敬意を表しつつも、冗談を交えながら普段の自分に戻っていく鉄甲
磨采は最後の言葉を言い終えると原体へと戻っていく、原体を見ると、そのボロボロの姿から
どことなく寂しさだけが鉄甲の中に残っていった

>山に吹く風に紛れ、愚断の声が鉄甲の耳へ届く。
>【よい戦いだった。】と。

自分を横切った風を感じながら空を見上げる

「ああ、いい戦いだった・・・またな愚断」

そう呟くと、今度は腰に差していた方頭を手に取りやさしく撫でる

「あんたも、私を守ってくれて有難うな・・・方頭、アンタほど良い男を見たことないよ」

方頭を握る手に力が入る、敗北以外では涙を見せない鉄甲であったが、この時ばかりは
涙を流しながら方頭に感謝の気持ちを表していた

>「…この事実、仙界に帰って一刻も早く仙人様に報告せねばなるまい
>さもなくば宝貝の逃亡は繰り返されるばかりのみじゃ…」

風鉄の言葉に魔鏡が食いついてるようだ、だがそんな魔鏡を余所に風鉄は行ってしまった
鉄甲もまた彼女の言葉に感じるものはあったがあえて考えず、言葉にもしないようにした

>いやはや、火々姐さんの鎖骨も捨てがたいですが、鉄甲姐さんの胸もなかなか・・・・・・」
>そう言って魔鏡は、鉄甲の姿のままなまめかしいポーズを取って見せた。

少し魔鏡に乗っかってみた

「寂しい男だねぇ魔鏡ー・・・そんな私を真似たもんじゃなくて、本物を味わってみたいって気はないのかい?」
なまめかしいポーズに片腕で胸を寄せて少し前にのめりながら挑発する

「無論、ぶっ飛ばすけどねぇ」

魔鏡も去り、鉄甲は、どうしても用事があり直ぐに仙境へと帰っていった
今は方頭を元に戻してやりたい、その思いで仙境に戻っていった

57 名前: ◆1000VJ0J4k [sage] 投稿日:2008/12/13(土) 23:06:24 0
剣山と化した山。
そして天を穿つ光の柱。

まさに人外魔境の戦いを山一つ離れた山中で見守る男が居た。
これだけ距離が離れていると宝貝といえども察知する事は難しいだろう。
しかし、男は戦いの行く末を的確に見抜いていた。
「うーん。よもや愚断君が敗れるとはねい。」
男は愚断と磨采をよく知っていた。
その力の程も。

故に負けるとは思わず、のんびりとしていたことに小さく後悔をしていた。
「折角来たというのに無駄足だったか。仕方がない・・・。」
肩を落とし煙と共に男は消え、その場には一枚の紙が残されるのみ。

その紙には【導果】と書かれている。

男は仙術によって作られた式神だったのだ。

これより逃亡宝貝たちの間に愚断敗れるの報が流れる事になる。
愚断といえば仙界にも轟く剛剣。
そして磨采は刃を扱わせれば比肩する者なしといわれる。
その二人が協力していてなお敗れた、という報は並々ならぬ衝撃を与えるのだった。

そのほうを聞き、逃亡を諦め仙界へ戻る宝貝も居る一方で、追跡に危機感を覚え、逃亡宝貝たちは徐々に結束していく事になる。
バラバラに逃げていた宝貝たちがグループを作り始めたのだ。

これより宝貝追走劇は更に苛烈な戦いが繰り広げられる事になるのであった。


               【シナリオ1:鉱山の兇刃】終劇




                     感謝



58 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2008/12/22(月) 00:26:39 O
保守

59 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2008/12/27(土) 18:42:29 0
補習

60 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/01/03(土) 15:41:39 0
捕手

61 名前: ◆1000VJ0J4k [sage] 投稿日:2009/01/10(土) 21:47:12 0
【シナリオ2・享楽都市シャンバラ】
人界西部。
くたびれた漁村が一晩で大都市と化していた。
人々が恐る恐る変貌した漁村に入ってみると、そこは楼閣が立ち並び、市場が開かれる活気溢れる都市だった。
そして何より、酒の池、肉の柱、あらゆる快楽が渦巻いていた。
噂を聞きつけ人々は都市に集まり、物と金が流れる。
いつしか人々はそこを【享楽都市シャンバラ】と呼ぶようになった。

#######################################

崩れ落ちた楼閣の中、倒れている女が一人。
それを取り囲むように数人の男女が女を見下ろしていた。
「さて、もう判ったろう?大人しく降参してくれんかね?」
その中の一人、導果が諭すように女に声をかける。
女は未だ動けずとも顔を上げきっと導果を睨みつけた。
口に出さずともその眼光が雄弁に返事をしていた。

「ふぅ・・・頑固だねい。
君のお仲間は説得に応じてくれたよ?
それとも、あちらで原体に戻った仲間の後を追うかい?」
女の眼光に肩を竦めながら導果は女の左右を見るように促した。
右手には申し訳なさそうにさっと顔を背ける男。
左手には原体に戻り、ボロボロになった椅子や盾が転がっている。

「導果先生。あんた程の人がわからないわけじゃないだろうに!
あの愚断ですら敗れたんだよ!いつまでも逃げ切れるわけじゃ・・・」
女の言葉は途中で途切れてしまう。
それは導果の穏やかな表情の奥。
眼に宿るあまりにも冷たい光を見てしまったから。
「残念だよ。君もここで楽しく暮らして欲しかったのだけれどねえ。」
そっと手を上げると、そこには太さ3メートル、長さ10メートルにもなろうかという鉄の柱が宙に現われていた。
導果はそのまま無慈悲に手を振り下ろす。

圧倒的な質量に潰された女の姿は既にそこにはない。
ただボロボロになった槍が一本転がるのみであった。

「しかし導果先生、奴の言った事も・・・。あの愚断ですら敗れたって。」
敵を全て倒し終わった後、後ろに立っていた男がおずおずと口を開く。
「うむ。確かに愚断君と磨采はもはや兵器の宝貝レベルの強さに達していた。
それが敗れたというのだから皆も不安になろう。
が、それは彼らが純粋なる戦士だったが故に敗れたのだよ。
彼らには戦術はあっても戦略はなかった。
それが敗因なのさ。
我々にはそれがある。そして協力体制も。
安心したまえ。
さあ、楼閣を再建し、結界を解こうか。
追っては退けたのだ。楽しまなくちゃ!この享楽都市、シャンバラで!」
導果が高らかに宣言すると、楼閣がみるみるうちに再生していく。
そして空気が変り、一気に周囲の喧騒が流れ込んでくる。

先程まで激しい戦いが行われていたなど誰も思わないだろう。
不夜城と化した都市はまるで一つの生き物のように蠢くのであった。

62 名前: ◆1000VJ0J4k [sage] 投稿日:2009/01/10(土) 21:47:23 0
【享楽都市シャンバラ図】

 ┌──────────────────────────────│                             
 │            城壁                             │              
 │  ┌────────────────────────────│                                                      
 │  │                                        │         
 │  │  ┌───────┐                         │                                 
 │  │  │          │  ┌───┐                │                   
 │  │  │          │  │     │   ┌─────────│                              
 │  │  │  楼閣     │  │鐘楼  │    │             │
 │  │  │          │  │     │   │             │         海    
 │  │  │          │  └───┘    │             │                  
 │  │  └───────┘             │             │                       
 │  │                            │             │      
 ───                            │  館          │        
                                  │              ────┐       
  門                              │               船着場 │ 
                                  │                    │          
 ───   ┌────┐                 │            ┌────┘             
 │  │  │      ∴∴∴∴∴巛巛巛巛     │            │                           
 │  │  │ 酒家   ∴酒池∴∴巛巛巛巛    │            │                               
 │  │  │      ∴∴∴∴∴巛肉林巛巛    │            │                                       
 │  │  │       ∴∴∴∴ 巛巛巛巛巛   └────────                                        
 │  │  └────┘∴∴∴∴巛巛巛巛                  │                                           
 │  │                                         │            
 │  └────────────────────────────│                                                    
 │                                            │          
 │                                            │          
 └───────────────────────────── ─│    

 └──────────────────────────────   

63 名前: ◆1000VJ0J4k [sage] 投稿日:2009/01/10(土) 21:47:30 0
城壁:足場は広くないが、歩行には不自由しない。
門:門は開いており、大通りに繋がっている。平面、広い。
楼閣:宿屋。ある程度の大きさの部屋が連なっている。遊郭も兼用。
酒家:広い室内空間。障害物は可動のテーブルや椅子、瓶
酒池:酒家に隣接している池。溜まっているのは高級酒
肉林:林。ある程度の感覚で木々が植えられている。
鐘楼:10階建ての塔。内部は狭く、多層式
館:広い建物。海に繋がっている。
船着場:海からの出入りする場所。海と繋がっている。

出入りは自由ですので、初期配置はどこでも構いません。
また、追跡・逃亡側共に乱入歓迎。
どこにいても、また外部から入ってきてもOKです。

64 名前:導果 ◆1000VJ0J4k [sage] 投稿日:2009/01/10(土) 21:48:11 0
享楽都市シャンバラが出現してから一ヶ月。
昼夜を問わず人は行き交い、嬌声が響く。
この都市には逃亡宝貝が集い、それを追う追跡宝貝も潜入している。

そんなシャンバラのどこか・・・
闇に包まれたその場所に護摩壇の火がともされる。
火の光は薄暗く、闇を照らすにもあまりにも少ない。
その護摩壇の前に鎮座するのはこの都市の主、導果であった。
火に浮かび上がる宝貝たちを眺めながら小さく笑みを漏らす。
「ふふふ、今宵の宴も盛大なものになりそうだ。」
導果が護摩壇に何かを投げ入れると火は一際大きく燃え上がり、光が広がってゆく。
それは波となり享楽都市シャンバラ全体に広がってゆく。

シャンバラにいる宝貝たちはその異変に直ぐに気付いただろう。
光の波が広がるにつれ、人間たちが消えていくのだ。
その原因も宝貝ならば直ぐにわかるだろう。
【結界が張られた】のだ、と。
相違軸をずらし、別空間を作り上げたのだ。
結界内でどれほどの破壊活動を行おうとも、人間たちは気付く事無く、そして実際の建物が破壊される事はない。
そう、享楽都市シャンバラは宝貝たちだけの戦いの場へと一瞬にして変貌したのだ。

宝貝しかいなくなった都市のあらゆる場所から導果の声が響き渡る。
「ようこそ、享楽都市シャンバラへ!追跡宝貝の諸君。
一つ提案があるのだが、君達もこの都市で面白おかしく過ごさないかね?
道具としての使命に縛られる事なく、人生を謳歌しようではないか!
勿論強制するものではない。
だが、その場合は私たちの宴へと招待される事となる。
同士諸君、今宵も宴を存分に楽しもうではないか!」
最初は追跡宝貝たちに、そして終わりにはシャンバラで過ごす逃亡宝貝たちへのメッセージ。
これが戦いの火蓋を切る言葉であった。

#######################################

名前:導果筆(どうか)
性別: 男
外見年齢:50代中盤
体格: 中肉中背
容姿:壮年の紳士。白髪メッシュを結っている。
性格: 穏やか
原体: 筆
属性:木
特殊能力:具現化・仙術
備考: 宝貝達から導果先生と呼ばれる壮年の紳士。
   元は仙人が秘伝書を記す為の筆であった。
   愚断と磨采が敗れた報を流し、逃亡宝貝たちがグループ化するのを促す。
   享楽都市シャンバラの市長の座についている。

65 名前:流木刀 ◆m4uANq7fb2 [sage] 投稿日:2009/01/11(日) 01:07:21 O
今回の追跡宝貝に選ばれた宝貝の中に一際目付きの悪い宝貝が居る。
木刀の宝貝、流木刀だ。
目付きの悪さとちょっとアレな服装で近寄り難さMAXといった感じである。
彼の右手には木刀が握られている。
その木刀は今まで幾度となく死線を潜り抜けて来た相棒、と言っても過言ではない。
不器用な彼には共に行動する仲間が居なかったのだ。
だからこれまでの追跡の任も全て一人で行なって来た。
しかし最近、逃亡宝貝達が集結しつつあるという情報が仙人の耳に入り、初めて他の宝貝と組む事になったのだ。
戦闘能力が高くても複数の宝貝を1人で相手をするのは難しい…仙人はそう判断したのだろう。
流木刀は正直、他の宝貝と組むのが少し嬉しかった。
だが、それを表に出す事は無い。
出したくても出せないのだ。
可哀想な程に本心を表に出す事が出来ない。
戦闘能力は高い、だが絶望的に協調性、積極性が低い…。
それが流木刀だ。

66 名前:流木刀 ◆m4uANq7fb2 [sage] 投稿日:2009/01/11(日) 01:09:33 O
せっかくチームを組んだにも関わらず流木刀はシャンバラに着くなり仲間達から離れ、林の中で一人佇んでいた。
何故林の中なのか…特に意味は無い。
一人になれれば何処でも良かったのだ。
「あのクソじじい…。余計な事しやがって。
俺ぁ仲間なんか居なくて良いっつってんのによ…。」
>>64仙人に対する心無い言葉を呟いているうちに導果の声が響き渡った。
「………使命に縛られる…か。やっぱ分かってねぇな、導果のオッサン。」
導果のメッセージを聞き終えると、辺りに人が居ないのを確認し、林から出る。
彼は木刀をしっかりと握りしめ、一人で門へと歩み始めるのだった。

67 名前:火々 鍋 ◆8SPHqobdCs [sage] 投稿日:2009/01/11(日) 18:34:26 O
導果が話している最中、火々は酒場にて食事をとっていた。
本来ならば、皆と共に行動するのが一番なのだが、真っ先に1人抜けた為、それを機に皆散ってしまったのだ
とはいえ、遊びや空腹であるから食事をとっている訳ではなく、ここに調理場の宝貝が来ているかどうかを確かめる為の食事なのである
幸い頼んだ品はしっかりと目の前に残っている
「…まぁ、残しちゃうのもアレだしね。別に問題はないよね」
協調性には欠くが実力はある面々だ。まぁ問題ないだろう…そう考えながら、炒飯を口に運ぶ
「ん〜味とかはまぁまぁだけどなぁ…アテが外れたかな」
とぶつぶつ文句を垂れながら次々と料理を平らげていく間、火々は背後から何者かの視線を感じた。
(あちゃ〜誰かに見つかちゃったかな。でも、まだ料理が残ってるし)
苦肉の策として、残っている料理を手に振り向いて、視線の主を確認した

68 名前:猛牙 ◆OK6hKA/.GA [sage] 投稿日:2009/01/11(日) 21:46:27 0
楼閣に一人、明らかに遊郭や宿泊が目的ではない井出達の男が暖簾をめくり姿を現した。
身の丈は大熊程はあろうか。二の腕は女人の腰ほどもあろうか。赤く逆立つ長髪と隆々とした背筋と相まって、その姿は鬼を連想させる。

「匂う、匂うぞ。哀れにも仙界を逃れた宝貝の匂いがプンプン匂ってくるわ。」

男の目的はただ一つ、鉄甲と戦うことである。仙界無双剣と謳われた愚断とその相棒、磨采を屠り去った宝貝、鉄甲。
彼女と戦えれば猛牙にとっては、シャンバラがどうなろうと逃れた宝貝がどうなろうと知ったことではないのだ。

「この匂い、鉄甲のものであってくれよ。フフフ」

猛牙はずかずかと、楼閣の奥へと入っていった


69 名前:猛牙 ◆OK6hKA/.GA [sage] 投稿日:2009/01/11(日) 21:57:09 0
>>64
そんな折、遊郭の間に結界が張られ、人々の姿が消えてゆく。すぐにそれは導果の仕業だとわかる。
>「ようこそ〜楽しもうではないか!」

「結界か。成程自分たちの造り上げた建物は壊されたくないと見える。
 それにしても・・・ククク。
戦い以上に面白おかしく人生を謳歌できるものなどあるのか」


70 名前:鉄甲 ◆zJpkiOXmJ. [sage] 投稿日:2009/01/11(日) 22:24:53 0
>>68
「ようこそ、おいでやすー」

暗い楼閣の中、急に灯篭に灯が灯り廊下を明るく照らす
猛牙を出迎えたのは鉄甲ではなく、着飾った女だった
結界の中を移動できるのは宝貝だけ、たぶんこの女も宝貝の一人だろう

「あんさんのお目当ての子は、今お稽古の最中どす
でも、あんさんは、そんなのは関係なさそうなお顔をしとりやすなぁ」

女は来るりと後ろを向くと流し目で猛牙を見るや手招きをした

「案内いたしやすー丁度最上階でお琴を弾いとりやす」



楼閣の最上階

雪洞の明かりが部屋を明るく照らすと、それはそれは大そうなお召し物を着た鉄甲が居た
鉄甲は目を瞑りながら琴を弾き、感覚だけで演奏していた
無心に浸るように、その音色を奏でながら来訪者が来るのを待っていた


「随分上達しましたなぁ・・・ここに着た時は全然弾けなかったのに」

女は階段を上がりながら鉄甲の上達具合にしみじみと昔を思い出していた

71 名前:老耳 ◆u3WkyZqsK. [sage] 投稿日:2009/01/12(月) 00:54:12 0
酒池のほとりに腰掛け、釣りを楽しむ老人の姿があった
無論、酒の溜まった池に魚など居るはずはない
この老人が『釣っている』のは、その『酒』である
正確には『汲んでいる』と言うべきで、釣り糸の先には瓶子が付いている
汲んだ酒の入った瓶子を手繰り寄せ、そのまま飲み干してしまう
それを延々と繰り返しているのだ
一見無意味に見える行為だが、この老人にとってはこの上ない楽しみである
しかし、周囲の異変に感付いたようにその手を止めてしまう

「やれやれ…、導果先生も存外に宝貝遣いの荒いお方じゃ…
 逃亡の身では、静かに酒を楽しむことも出来んのう…」
ゆっくりと立ち上がると、腰の曲がった体でゆっくりと歩き出す
こうなった以上、戦いは避けられないだろう
しかし、追跡宝貝たちはほぼ全員が戦闘に向く力を持った者たちのはずである
極端に言えば、単なる老いぼれ耳掻きに過ぎない老耳が敵う道理は無い
そう、この老人が目指すべき場所は「安全な隠れ場所」である

「わしの長年の経験が囁いておるぞ
 建物の中…、あの店屋の中ならば安全じゃ」
そう言い切ると、酒池の目の前にある酒家へと向かっていった
酒家はシャンバラきっての居酒屋で、老耳も行き着けにしている場所である
酒池や肉林は酒家の敷地であり、『酒釣り』も実はここの名物なのである
入り口を開け、勇んで店内へと足を踏み入れる

「ふむ、やはり誰も居らんの
 わしの貸切みたいで何だか浮かれたくなるわい
 ふぉっふぉっふぉっ」
呑気に笑いながら、人々の居なくなった広い店内を見渡す
普段は連日、大勢の客で賑わっているのだ
しかし、その呑気な笑いと物言いは次の瞬間には真っ青な顔へと変貌していた
奥の席に一人、座って食事を取っている女が居たのだ
人間は結界によって、消えてしまっているはずである
しかも見かけない顔、追跡者として派遣された宝貝である可能性が高い
こんな場所でふてぶてしく一人で食事を取っている以上、待ち伏せなのだろう

「ここ、こんな事なら肉林にでも身を潜めるんじゃった…
 じゃ…じゃが、今ならあの小娘も気付いておらぬやもしれん…
 そ〜っと…そ〜っと…」
慌てて向きを変えると、慎重に一歩ずつ出口へと向かっていく
逃げるが勝ち、そう自分に言い聞かせながら

72 名前:火々 鍋 ◆TE9XPeSK0E [sage] 投稿日:2009/01/12(月) 18:09:44 O
振り向くとそこには、白髭の老人が居た
しかし、結界内ということはこの老人も宝貝に違いないのだが…何か様子がおかしい。
様子からいって、専ら戦う気など無いように見える。
その気の無い者に対し、いきなり攻撃するのは気が引けるが
このまま見逃してしまえば、仙人からなんやかんや言われかねないし、好戦的な連中に絡まれでもしたら一溜まりもないだろう。
(とりあえず、足止めして説得してみようかな)
そうと決まると、料理を置き、見様見真似であるが拳を構えた。
呼吸を整え、右手に熱を込める。
「拳炎弾」
突き出した右拳から拳大の炎弾が放たれる。
狙いはあの老人の視線にあるこの店の扉。

73 名前:猛牙 ◆OK6hKA/.GA [sage] 投稿日:2009/01/12(月) 20:17:56 0
>>70
「そうか。では案内してもらおう」

現れた女宝貝に特に驚いた様子もなく、猛牙は女の後ろを歩く。
どうやら、戦意のないものには危害を加えるつもりはないようだ。
階段を上ったところで琴の音色が聞こえてくる。
>「随分上達しましたなぁ・・・ここに着た時は全然弾けなかったのに」

「鉄甲が弾いているのか?・・・うん、なかなかのものだな。
 俗世のぬるま湯に浸かった甘い音色を奏でておるわ」

障子をめくったところに、仙界にいたころとは見た目が異なる鉄甲がいた。身にまとう
雰囲気は、以前の覇気を纏った彼女とは別人であるかのようだ。
中に入ったところで、猛牙はドカッとあぐらをかき、その場に座る。

「その曲が終わったら、いつでもかかって来い。
 貴様の腕がその音色のように堕落したものでないことを願っている」


74 名前:老耳 ◆u3WkyZqsK. [sage] 投稿日:2009/01/12(月) 21:39:34 0
「ひいぃっ!」
老耳は悲鳴を上げるほどに驚いて腰を抜かしてしまう
目の前の扉に炎弾が撃ち込まれ、一瞬で消し炭になってしまったからだ
既にこちらの存在を察知されてしまっているようだ
しかも、相手は火を使う能力を持つらしい
木は火の勢いを強めるが、それは木属性に対する威力も高まるということだ
例え老耳に戦いが出来たとしても、不利な相手である

(心の声:こ、このままじゃ捕まってオダブツじゃ…!
      何とか誤魔化さねば…)
「やや、止めるんじゃ、お嬢さん!
 わしゃ…そのぅ…お、おまえさんらの仲間なんじゃ!
 仙人様から極秘任務を言付かっておる先遣隊の一員なんじゃよ!
 じゃからして、単独行動を取っておるのじゃ!
 わしのことは見なかったことにするんじゃ、ええの?
 いい子じゃから、な?」
やはり、目の前の女は追跡者だった
慌てふためきながら、今さっき思いついた嘘を捲し立てる
我ながら下手な芝居だとは思ったが、この場を誤魔化すくらいなら…と思った
誤魔化すことなど出来そうにもないが、今そこまで考える余裕は無い
とにかく老耳は必死になっていた

75 名前:導果 ◆1000VJ0J4k [sage] 投稿日:2009/01/12(月) 22:50:36 0
>72>73
「いやいや、気配は消していたはずですが、まさか気付かれるとは・・・。」
老耳が慌てふためいてまくし立てていると、消し炭となった扉の陰から導果が現われた。
穏やかな笑みを讃えながら室内に一歩踏み出す。
「シャンバラの料理はお気に召したかな?
今はここは人々が行き交い、古今東西の料理が並べられる。
できれば共にここに住んでいただきたいのだが・・・。
おふた方とも、そういきり立たずに酒でも酌み交わしませんか?」
そういう導果の手にはいつの間にか杯が握られていた。
それだけでなく、火々と老耳の近くのテーブルにも杯が酒をなみなみと讃え置かれていた。

>70>73
楼閣の屋根の上、導果は静かに佇んでいた。
気配を消し、そっとその下での事を感覚の目で見守っていたのだ。
静かな水面のように事を奏でる鉄甲。
それとは対照的に溢れ出る闘気をそのままに座る猛牙。
その二人の動静を静かに、まるで楽しむかのように。

>66
冷たい月明かりが指す大通り。
結界の為、人々のいる相違からは切り離されている為にひたすら静寂が支配していた。
石畳の上を歩く流木の足音すら響いてしまうような中、それは現われた。
門の影から滲み出てくるように男が一人。
導果筆。
このシャンバラの市長にして仙人が使っていた筆の化身。
「ようこそシャンバラへ!
問答が通用しそうな雰囲気ではないが、問おうか。
我が同士となってここでくらさんかね?
ここにいれば例え仙人自身が来たとしても安全を保障しよう。」
両手を広げ、にこやかに流木に向かって誘いをかける。


76 名前:流木刀 ◆m4uANq7fb2 [sage] 投稿日:2009/01/12(月) 23:42:23 O
「ちっ…。ハズレか?誰も居ねぇじゃねぇか…クソがっ。」
一番人が集まりそうな大通りを狙った流木刀だが、人の気配は全く無い。
暫く歩いた末、諦めて来た道を戻ろうとしたその時。
>>75門の影から導果が現れた。
そして同志となるように誘って来る。
仙人が来た場合も安全を保証するという。
一般の宝貝にしてみればかなりオイシイ話だろう。
だが、そんな話に流木刀が乗る筈が無い。
「分かってねぇ…。分かってねぇよ、導果のオッサン。」
にこやかな導果に対し、流木刀の眼光は鋭いままだった。
「俺が求めてんのは平和だの安全じゃねぇ。
 俺が求めてんのはな、スリルだ。
 強ぇ奴と戦った時にしか味わえねぇスリル…。
 俺がお前ら逃亡宝貝達を捕まえてんのだってジジイの為じゃねぇ。
 自分がスリルを味わう為だ…ま、アンタにゃ理解出来ねぇだろうが…なっ!」
話終わると同時に思い切り地面を蹴り、一気に導果との距離を縮める。
「おらぁっ!」
そして導果の脳天めがけ木刀を全力で降り降ろした。

77 名前:鉄甲 ◆zJpkiOXmJ. [sage] 投稿日:2009/01/12(月) 23:53:15 0
>>73
あぐらをかき座り込んだ猛牙、鉄甲は琴を引きながら喋る

「猛牙かい?・・・あんたのような奴を投入してくるって事は、仙人さまは
もう形振りかまっていられなのかねぇ・・・」

>「その曲が終わったら、いつでもかかって来い。
> 貴様の腕がその音色のように堕落したものでないことを願っている」


琴を弾きながら話を続ける

「残念だけど、私はもうあんたを楽しませられるほどの野蛮な女であることは捨てたのさ・・・
猛牙、私は戦い以外の道を見つけたのさ・・・ここの連中だってそうさ・・・仙境で生きる道を捨てて
新しい道を見つけた奴ばっかりさ・・・・・・」

最後の弦をパチンはねて、琴の演奏を終える

「私はここで、色んな事を教わったよ・・・踊や作法、活け花なんてのもしたさ・・・料理だって習ったよ
だけど、私にとって一番有難かったのは、字を教わったことだよ・・・導果先生に直接教えてもらった
こんなグズでどうしようもない女を、それなりに通用できる女にしてくれたのもこのシャンバラのおかげさ・・・」

悲しげな目で猛牙を見つめる

「猛牙・・・悪いが帰っておくれ・・・あんたが此処で暮らしたいってんなら歓迎するが・・・違うなら出て行っておくれ」

78 名前:猛牙 ◆OK6hKA/.GA [sage] 投稿日:2009/01/13(火) 19:17:23 0
>>77

「そうか・・・俗物に染まってしまったか。が、っかりだ」

猛牙はゆっくりと腰を上げると、口を開く

「牙を持たぬものには生憎興味がなくてな。今のような状態の貴様をやっても詰まらん」

呆れたように首を振ると、猛牙は鉄甲に背を向ける

「だがいいことを聞いた。貴様もここにいる戦えぬ宝貝達も、導果を拠り所にしている
のだな」

ニヤリと笑うと、猛牙は鉄甲に首を傾け一瞥し、戦いを誘うように一言添える

「ではまず、導果を殺るとしよう。奴の首を持って闊歩でもすれば、シャンバラの
猛者共が怒り狂って牙を剥いてくるだろう。
その中に貴様も加われば、俺にとっての理想郷の出来上がりだ」

再び首を元に戻すと、猛牙は障子の戸を開け捨て台詞を残し、部屋を出て行こうとした

「じゃあな」

79 名前:導果 ◆1000VJ0J4k [sage] 投稿日:2009/01/13(火) 22:53:16 0
>76
「ふむ、スリルかね。
そういった言葉が出るのは愚断剣か斬象矛に剛羅楯くらいだと思っていたがねい。
まさか君の口から出るとは。」
流木の鋭い眼光も柳に風の如く受け流す導果は呆れたような笑みを浮かべ言葉を返す。
返答している間に流木は既に間合いを縮め、必殺の一振りを導果の脳天目掛けて振り下ろしていた。
しかし導果は微動だにしない。

木刀が振り下ろされる刹那、導果の足元から鉄柱が斜めに突き出し、二人の間に割って入る。
あるいは導果が鉄柱で受け止めようとしたならば、鉄柱ごと叩き伏せられていただろう。
しかし、斜めに生えた鉄柱は流木の振り下ろす力を削ぎ殺し、斜めへと逸らしていく。
「彼らとてスリルを楽しむという言葉は口にしないだろう。
何故だか判るかね?
彼らすらがそうであるように、君如き力では戦いにスリルではなく、リスクしか伴わないからだよ!」
体制が崩れた流木の横で導果は大きく手を広げる。
そこには十数の【衝】の字が浮いていた。

直後、【衝】の字は事象としての具現を得て、衝撃波となって流木に襲い掛かる。
一つ一つはそれほどの威力ではないものの、あらゆる角度から襲い掛かる衝撃波は防ぎきれるものではないだろう。

一方、導果は衝撃波の反動で流木から距離を取り、佇まいを正している。
「君のパワーが10とすれば私は6か7の間だろう。
スピード、バネ、スタミナ、どれをとっても君のほうが上だろうね。
だが君は私に勝てない。
それを身体で理解するまで、せいぜい足掻いてくれたまえよ!」
余裕の笑みを浮かべながら導果は一歩、流木へと無防備に進みだす。

*斬象矛(ざんしょうほう)・矛盾を実際にやってみるために作られた最強の矛。
あらゆるものを切り裂くその刃は空間すら切り裂き、普段は空間に切れ目を入れているのでその刀身を見る事はできない。
*剛羅楯(ごうらじゅん)・矛盾を実際にやってみるために作られた最強の盾。
あらゆる攻撃を遮断し、使用者を外部から完全遮断する事ができる。

80 名前:鉄甲 ◆zJpkiOXmJ. [sage] 投稿日:2009/01/13(火) 23:57:46 0
>>78
鉄甲はうつむき、猛牙と目をあわさないようにする
猛牙の一言一言が鉄甲には厳しく突き刺さる・・・。

>再び首を元に戻すと、猛牙は障子の戸を開け捨て台詞を残し、部屋を出て行こうとした

>「じゃあな」

「待ちな」

部屋を出て行こうとした猛牙を呼び止める
「アンタには無理だよ・・・猛牙」
下を向けていた顔が上に上がる
悲しげな表情ではあるが、目に力が入り何処となく怒っているようにも見える
「アンタを満足させれるかどうかは分かんないが・・・私に出来るだけの事はしてあげるよ」

鉄甲が肩の力を抜き着物をスッとずらすと、色っぽくうなじが見える
蛹から蝶が抜け出るように着物からさっと抜け出ると、赤い専用の戦闘服を着た鉄甲が現れる

「猛牙、私を倒したところでシャンバラは堕ちやしない・・・導果先生もね・・・
この鉄拳甲・・・・・・一度は牙を捨てた身だが、これで最後にさせてもらうよ・・・」

上を向き屋根の上の導果に聞こえるように大きな声で叫ぶ
「先生!私はコレでシャンバラから出て行かせてもらうよ!これが私が出来る先生への恩返しさ!
それと、そこは危ないから屋根の上には居ないほうが良い!ここは私に任せて他の奴のところに行っておくれ!」

そう叫び終わると、鉄甲の体が激しい光に包み込まれる
あまりの激しさに目を開けていることが出来なくなるほどだ激しい光の後
今度は衝撃波が辺りに広がる、その衝撃波はあっという間に楼閣の屋根と辺りの壁を吹き飛ばし
楼閣の最上階は空を見渡せる天空の闘技場へと姿を変える、下を覗けばかなりの高さが伺えるほどだった

鉄甲を包んでいた激しい光は収まりやがて二つに分かれる、二つの光は鉄甲の両腕を包み込むと
まばゆい光を放つナックルダスターへと姿を変えた

「待たせたね猛牙・・・アンタを楽しませられるかは分かんないけど・・・・・・アンタが私を楽しませられないのは確かだよ」

81 名前:流木刀 ◆m4uANq7fb2 [sage] 投稿日:2009/01/14(水) 18:26:43 O
>>79「もらったぁぁ!!」
流木刀は勝利を確信した。
木刀を降り上げた瞬間にも、導果は微動だにしなかった。
もし降り下ろす寸前に何らかの防御手段を取ったとしても、それを破って導果に大ダメージを与える自信があった。
が…導果はそんなに甘い相手ではなかったようだ。
「なにっ!!」
導果の足元から斜めに突き出した鉄柱が、木刀を降り下ろす力を殺す。
斜めに逸れてしまった事で体制まで崩してしまった。
「っの野郎!」
本来なら即座に体制を立て直し、次の攻撃に移りたいところだ。
だが導果の放った十数の衝撃波が次から次へと様々な角度から襲いかかるため、上手く身動きが取れない。
「ぐっ…!うざってぇ技を…!
身体で理解だぁ?…ふざけんじゃねぇ!
誰がそう簡単に敗けを認めっかよおぉ!!」
導果が笑みを浮かべたまま無防備にこちらへ1歩踏み出した瞬間を狙い、流木刀も踏み込んで木刀を横に振るう。
しかし衝撃波を受けている状態での一撃のため、威力は先ほどの一撃の半分と言ったくらいだ。

82 名前:猛牙 ◆OK6hKA/.GA [sage] 投稿日:2009/01/14(水) 21:58:52 0
>>80
鉄甲の引き止める声に体を向けると、眩い光と常人など軽く吹き飛ばしてしまうような衝撃波が当たり一体を包んだ。
やがて収束する光の中から、戦闘体制に入った鉄甲が姿を現した。

「美しい・・・」

鉄甲の容姿がではなく、恐らく光のことだろう。
前線から退いていたとはいえ、一度は頂点に上り詰めた
その鉄甲の練磨された闘気の輝きに、猛牙はただただ感嘆するばかりだった。
>「待たせたね猛牙・・・アンタを楽しませられるかは分かんないけど・・・・・・アンタが私を楽しませられないのは確かだよ」
その言葉に眉一つ動かさず、猛牙は返事を返す。

「確かに、楽しむ間すらありはしないかもな・・・・・・はぁあ・・・!」

猛牙は腰の後ろに背負った、自分の身の丈ほどもある両刃の斧を右手一本で掲げると
お返しとばかりに、体中から赤く濁った闘気を吐き出す。
実害こそないものの、闘気は二人のいる空間を包み、ぐにゃりと幾重にも彎曲させる
やがてその闘気はそこにいる宝貝達の空間を振動させ、楼閣全体を揺らす。まるで空気が、楼閣がその宝貝を恐れ震えているような。

「貴様たちが俗事に感けている間も、俺はあらゆるものを破壊してきた
 ただはむかうものだけを、ただ立ち向かってくるものだけを。」

マグマのように荒くれた闘気は少しずつ収束し、猛牙と斧全体を包みこむと
猛牙の体中の血管が膨れ上がり、今にも破裂しそうなほど膨張する

「貴様に教えてやろう。牙を剥いたものは牙を持って報われるということを。この猛牙斧という猛々しい牙にな!」


83 名前:導果 ◆1000VJ0J4k [sage] 投稿日:2009/01/14(水) 22:28:41 0
>81
数十の衝撃波に晒されながらも流木の瞳から光が消えることはなかった。
それどころか闘志をむき出しにして立ち向かってくる。
「・・・それでいい。」
満足気に笑みを浮かべながら一歩踏み出した瞬間、それに併せて流木も踏み込んでくる。
絶妙のタイミングに回避は不可能!
とっさに上げた腕には、いつの間にか盾が装着されている。
*ガッ*という鈍い激突音と共に導果の身体が浮く。

衝撃波を受けている状態での一撃の為、威力は落ちているとは言ってもそこは武器の宝貝。
それでも盾ごと導果を吹き飛ばすだけの威力は刀身に込められていたのだ。

「はっはっはっは!やればできるじゃないか!
だがまだまだ。
もっと滾ってもらわねばな!」
僕とを受けた盾がその衝撃に耐え切れず形を崩し【盾】という文字に戻り消えた。
それと引き換えに転倒を免れた導果だが、余裕の表情は消えない。
刀身ではなく一種の鈍器である木刀の特性であろう。
盾越しにも衝撃が伝わり、右腕をだらりと力なく垂らしながらも。

流木の肩越しに、楼閣の屋上が光と共に吹き飛び、赤く濁った闘気が迸るのを見て導果の笑みは一層大きくなる。
あちらでも戦いが始まったことを示しているのだから。
「さあ、死力を尽くし私を倒してみたまえよ!」
大通りの隅、酒家を背に流木を挑発する。

#######################################

>80>82
>「先生!私はコレでシャンバラから出て行かせてもらうよ!これが私が出来る先生への恩返しさ!
>それと、そこは危ないから屋根の上には居ないほうが良い!ここは私に任せて他の奴のところに行っておくれ!」
楼閣の屋根に気配を殺し階下の様子を窺っていた導果だが、鉄甲に声をかけられにやりと笑う。
そして場所を鐘楼の屋根の上に移した瞬間、楼閣の屋根は吹き飛んだ。
鉄甲が戦闘態勢に入り、それに答えるように猛牙が闘気を迸らせる。

二人の闘気が巻き起こす空間の振動に、鐘楼の屋根の上にいる導果の裾や袖がはためく。
「出て行く、か。まあよいさ。シャンバラも丁度頃合だしね。
せいぜい最後に大輪の花を咲かせてくれたまえ。」
それを見ながら導果は満足気に笑うのだった。
二人の熾烈な戦いを歓迎するかのように!

84 名前:鉄甲 ◆zJpkiOXmJ. [sage] 投稿日:2009/01/15(木) 08:31:54 0
>>82
猛牙の攻撃的な闘気に楼閣が揺れるのが分かる
赤く滾る闘気はやがて猛牙の斧、そして血管へと移って行く
猛牙の闘おうとする意志の強さを感じ、鉄甲もかつて自分が捨て去った熱い気持ちを思い出していく

>「貴様に教えてやろう。牙を剥いたものは牙を持って報われるということを。この猛牙斧という猛々しい牙にな!」

猛牙が言い終わると同時に鉄甲は既に動いていた、しかし猛牙はこの動きに違和感を感じただろう
もし第3者が見たならば、鉄甲が猛牙に向かいただパンチを繰り出してるだけの様に見えるが・・・

まず先に猛牙に届いたのは衝撃、そして拳、衝撃の音
順序がおかしいのである。

拳の着弾と同時に衝撃が来るのであるが、拳より先に拳の衝撃が来ている
単純な話、鉄甲の動きが早く音と姿が追いついていないだけである。
僅かなさでしかないが、動きの速さ衰えていないようである

「牙なんざな折れちまうよ・・・」

その声が聞こえたときは既に、別の拳が届き終わっているだろう

85 名前:流木刀 ◆m4uANq7fb2 [sage] 投稿日:2009/01/15(木) 20:03:46 O
>>83ガッという鈍い音が響く。
「ちっ…盾かよ。どうなってんだ…。」
タイミングはバッチリ、回避は不可能だと思った。
あの一瞬でいつの間に盾を出したのか、流木刀は頭の中でそれを考えていた。
導果は流木刀の最も苦手なタイプだ。
ガチガチの近距離戦でこそ流木刀は本来の力を発揮する事が出来る。
導果のように距離を取り、しかもトリッキーな攻撃を仕掛けるタイプは非常に苦手だった。
焦る流木刀とは対照的に、右腕をだらりと垂らしながらも導果の余裕の表情は消えない。
「タヌキ野郎が…余裕ぶっこいてられんのも今のうちだぞコラ…。」
次の手を考えていると、楼閣の屋上が吹き飛ぶのが見えた。
どうやらあちらでも戦いが始まったようだ。
それに触発されてか、流木刀の闘志が激しくなる。
「お望みどおり、ぶっ倒してやんよおぉぉ!!」
酒家を背に挑発する導果に向かい走る。
「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァ!!」
一撃で仕留める作戦から手数で攻める作戦へ――
あらゆる角度から導果に連続で木刀を叩き込む!

86 名前:火々 鍋 ◆TE9XPeSK0E [sage] 投稿日:2009/01/15(木) 20:39:47 O
「…そ…そうなんですか?」
狼狽した老人の言うことを間に受けた火々は首を傾げる。
「いや…でも、ん〜」
何かが引っかかっているような気がして考え込むが全くわからない

そう考え込んでいる最中、消し炭にした戸の裏から導果が姿を表した。
だが、愚断のように敵意を向けず、笑顔で勧誘してきた。
しばらく黙りこんだ後、火々は静かに椅子に座り残っていた料理を食べ、酒で流しこんだ。
「確かに材料は一級品みたいですが…それを作る料理人の腕は三流ですね
 どんなに珍しい料理が作れても基本が出来ていないなら話になりません
 それに物珍しさを売りにしている時点でどうかと思いますよ?
 確かに初めは儲かりますが、次第に飽きられるのがオチです
 ここで腕を振るうのぐらいなら、この店で小さな屋台やってたほうがマシです」
そう導果に言い、火々は足元に火を放った

87 名前:導果 ◆1000VJ0J4k [sage] 投稿日:2009/01/16(金) 00:09:21 0
>86
導果の誘いに火々は考え込むように黙り、静かに料理を食べ、酒で流し込む。
その様子を顎に手を当てながら見守っていたが、返ってきた言葉は辛辣なり拒否。
「ふむ、それは残念。しかしそれもまた一つの道だねい。
ならば盛大に宴の一部となってもらおうか!」
足元に放たれた火を気にする様子も無く宣言をする。
その表情は誘いを断られたというのに、微塵も曇っていない。
むしろこうなる事を望んでいたかのように歓喜の笑みで満ちていた。

長く垂れた裾に火がついたとき、突如として酒家の壁が割れ、何かが飛び込んできた。
くるりと宙を舞い、テーブルの上に柔らかに着地したのは導果その人である。

###################################

>85
鉄甲と猛牙との戦いに触発された流木は闘志を漲らせて迫る。
酒家の壁を背にした導果に対し、あらゆる角度から繰り出される木刀に死角はない。
が、導果の笑みは消えることはなかった。
「はっはっは!君は地の利というものを学ぶべきだね。
この享楽都市シャンバラがどうやって作られたか、教えてやろう。」
そういいながら繰り出される木刀から逃れる為、後ろへと跳躍する。
背後にあるのは壁。
だが、導果がそれに触れる瞬間、壁は大きく口を開き導果を酒家へと通したのだ。

導果の能力は具現化。
その筆で書き記されたものは形を得る。
寂れた漁村を一夜にして享楽都市にしたのはこの能力があってこそだ。
そして具現化したものは導果の筆一つであらゆる変化を可能にする。

導果を中に吸い込んだ壁の割れ目は大きく口を開け、瓦礫は命を得たように飛礫と化した。
大小無数の梁が、レンガが、流木へ殺到するのだ。

####################################

「はっはっは、老耳翁よ、不意打ちの姦計を台無しした事はお詫びしますぞ。
しかしあっさりと倒されては興醒めというもの。
激しく宴を楽しもうではないですか。」
導果は回転しながら袖や裾についた火を払い、宙に舞う。
着地地点は壁の穴から飛び込んできた導果と同じ位置。

激突するかに見えたが、二人の導果は交じり合い、二面四臂の導果と化した。
「流木よ、これが天の刻、人の和、だ。これしきの事で倒れてはいまい?」
導果の四本の手には、それぞれ剣、環、鎖鎌が握られている。
「さあ、盛大に宴を楽しもうではないか!」
そういうや否や、大きく口を開け、未だ土煙が舞う壁の穴に向かって鎖鎌の分銅を放つ!

88 名前:猛牙 ◆OK6hKA/.GA [sage] 投稿日:2009/01/16(金) 18:10:06 0
>>84
猛牙が言葉を口にし終わるか否かのところで衝撃、鉄甲の拳、そして破裂音が響く。
それは鉄甲の速さがマッハを越えた証。
猛牙は防御の体制をとることも適わず、攻撃を受ける。
反撃に回ろうにも、あまりの速さにその姿を目で捉えることは至難だろう。
そして風の中から声だけが耳に届く。
>「牙なんざな折れちまうよ・・・」
その声とは違う方向から、確かに拳と衝撃だけは猛牙に届く。
2、3歩後ずさりする猛牙。しかし彼の体には、目立った外傷は見られない

「迅いな、まるで雷神だ」

猛牙の表情は変わらず、余裕を見せている
どうやら猛牙を取り巻く不気味な赤い闘気が、その衝撃を最小限に留めているようだ

「だが、軽い。その程度では何億何兆打ち込もうとも我が牙は折れぬ」

猛牙は斧を後ろに引き込むと、横一線に力いっぱいその場を薙ぎ払う。
斧の切っ先から放たれた闘気は剃刀のような切れ味をもって放射線状に広がる。
その階上にいる全てのものに届くような衝撃が、全体を駆け抜けた

「終えぬならその身、逃れられぬ範囲まで破壊するのみよ」


89 名前:鉄甲 ◆zJpkiOXmJ. [sage] 投稿日:2009/01/16(金) 21:36:28 0
>>88
パンチを決込んでも猛牙の表情は変わらず、鉄甲もかつてほどの力が出せないことを悟る
今の自分に出来るのは見た目だけの早いだけのこけおどしでしかない事を
猛牙からの賛辞は、自分の拳の力のなさを気付かされる

>「だが、軽い。その程度では何億何兆打ち込もうとも我が牙は折れぬ」

御もっともだ、手ごたえの無さに少々ではあるが焦りを感じる。
猛牙の強さの一つは闘気のコントロールだ、彼を渦巻く闘気は彼を守るために働いている

「どうしよう・・・・・・」

弱音を吐いていると、猛牙の横一線から放たれる闘気は今度は攻撃へと転じた
剃刀のような切れ味の闘気が鉄甲へと迫り来る

腕をクロスさせ、正面を固め大きく後ろへと下がる、放物線上に放たれる闘気から逃れるすべは無く
肌を多くさらしている鉄甲にとっては防ぎ様がなく鋭い痛みが体中を走る、肌を出しているところに
鋭利な物で切られたかのような切り傷が出来る(宝貝なので血は出ない)

「うわあっ!・・・・ああぁぁぁぁ・・・・・・」

悲鳴とまでは行かないものの、痛みに悶絶する声が漏れる
あまりの痛さに両膝を突く

「痛い・・・痛い・・・痛いよぅ・・・くっ!」

反撃に転じようと拳を突き出し、自分も闘気の衝撃弾を繰り出すも
スピードはなくよれよれとした動きに、子供ですら当たっても痛くなさそうな弱い一撃が飛んでいく

90 名前:流木刀 ◆m4uANq7fb2 [sage] 投稿日:2009/01/16(金) 21:38:24 O
>>87「地の利もクソもあるかよ!!」
導果は流木刀の攻撃を逃れる為、後ろへ飛ぶ。
しかし後ろは壁だ。
逃れる術は無い、今度こそ…と思ったのも束の間。
壁が導果を飲み込んだのだ。
「んだとおぉぉっ!!?」
そして今度は大小無数の梁とレンガが流木刀を襲う。
「ちっくしょうがぁぁぁあ!!」
木刀で何とか捌こうとするが、どんなに頑張っても全てを防ぐ事は不可能だった。

「けほっ、げほっ…。
くっそ…痛ぇじゃねぇかゴラァ!」
土煙が舞っている中で、流木刀はダメージを負いながらも立っていた。
目はまだ死んでいない。
むしろ更に眼光が鋭くなっている。
「おらぁ!」
土煙が舞い、未だ視界が悪いにも関わらず突如飛んで来た分銅を木刀で打ち返す。
「もう許さねぇ。マジでぶっ飛ばす!後悔すんなよ導果のオッサン!!」
分銅が飛んで来た方向に向かって飛ぶ。
土煙の中から現れた流木刀の手に握られている木刀は、先ほどの2倍以上はあろうかという大木刀に変わっていた。
もちろん重さも先ほどの比ではない。
だが流木刀は重さなど丸っきり感じていないかのように、軽々と大木刀を導果に打ち込んでいく。

91 名前:火々 鍋 ◆TE9XPeSK0E [sage] 投稿日:2009/01/17(土) 20:01:05 O
「へ?あ…あれ」
今目の前で起こっていることに頭がついていかず、火々はただ呆然とその光景を眺めるしかなかった
(ありのままに起こったことを話すと、もう1人の導果が現れて、合体した
 幻術や体術じゃなくもっと恐ろしいものの)
「ってそうして場合じゃない」
この際、あの老人のことは思考の外に置いておこう
いや、導果が何か話しかけてたのだから、やはり、逃亡側のはず
異論は認めない

一先ず立ち上がり、導果との間合いをとる
その間に流木が仕掛けてはいるが…
「流木さん!離れて」
そう促し、先ほど放った炎弾よりも大きな炎弾を放った
しかし、これは必殺の一撃にはならないだろう
相手は四腕の魔人、この程度ならば容易くあしらえるだろう
もしかしたら、ここにいる二人では刃が立たないかもしれない
「ここは一旦退いて、猛牙さんと合流しましょう」

92 名前:導果 ◆1000VJ0J4k [sage] 投稿日:2009/01/18(日) 23:12:56 0
>88>89
楼閣全体を揺るがす猛牙の攻撃範囲はフォロアー全域に及び、鉄甲を切り裂いた。
悶絶する鉄甲の様子を楼閣から見ながら導果は笑っていた。
シャンバラでの生活に安寧するうちに鉄甲の力は確かに落ちた。
だからこそ、猛牙の攻撃によるダメージは導果にとって待ちかねたものでもあるのだから。
「ふっふっふ。これでいい。鉄甲・・・敗北の宝貝よ!
君は打ちのめされ、敗北するたびに強くなる。
さあ、そこから這い上がり嘗ての己を越え、激しき宴を!」
傍から見ればもはや勝負はついているように見えるだろう。
だが導果は信じている。
いや、信じているのではない。疑ってすらいないのだ。
これから更に激しさであろう鉄甲と猛牙の戦いを祝福していた。

>90>91
打ち返された分銅をキャッチし、導果は土煙を凝視していた。
相手は武器の宝貝。
瓦礫や分銅で倒せるなどとは思っていない。
いや、倒すつもりなどないのだから。
なるべく長く痛めつける為の戦いなのだ。

ギラリと四つの手に握った刃を光らせ土煙から出てくる流木を待っていた導果の表情が驚愕に凍りついた。
現われた流木の手に握られていた木刀が二倍以上になっていたのだから。
獲物が大きくなれば重量も増す。
これほどの超重の武器と化した木刀ならば打ち込み方も自ずと決まってくる。
そう考えるのはやはり導果が道具の宝貝だからなのであろう。

導果の想定に反し、流木は大木刀を軽々と打ち込んでくる。
「お、おおおおお!」
通常の流木の攻撃ならば二本の腕を使えば受け止められるだろう。
が、これはどう考えても無理。
四本の腕を使ったとしても受け止めた腕後と叩き伏せられる。
直感的に感じた導果はギリギリのところで身体を躱した。

鼻先を掠めながら床に叩きつけられる大木刀。
勿論その気を逃すつもりはない。
「ふん!所詮は力任せの単純攻撃か!」
そういいながら導果は剣と鎌を叩きつける。
木刀にではない。
これだけの大木刀を打ったとしても導果の腕ではどうにかなるものではない。
だから、床にめり込む大木刀に剣と鎌を交差させ床に打ち込み、鎖を絡めた。

剣、鎌、鎖で大木刀を床に縫いつけ流木の動きを封じようというのだ。
そしてその隙に残った圏で流木に襲い掛かる!
>「流木さん!離れて」
だがそれは火々からの攻撃で中断を余儀なくされる。
間合いを取り、巨大な炎弾を放ったのだ。
本来ならば不意打ちクリティカルヒットというところだが、今の導果はニ面。
流木を見据える顔のほか、周囲を警戒するもう一つの顔がその攻撃を察知していた。

武器を手放した三つの手を掲げると、その掌には【瀑】【布】【壁】の文字がそれぞれ書かれていた。
文字は三文字連なり具現化される。
大瀑布を思わせる滝の壁が火々の火炎弾を遮り、水蒸気爆発が起きる。

吹き飛ぶ机や椅子、窓。そして揺らぐ酒家。
「ぐっは・・・・やはり本来が属ではない術は・・・」
煙の中、姿は確認できないが、導果の声はする。
この爆発の中、無事ではないようだが、倒せてもいないようだった。

93 名前:流木刀 ◆m4uANq7fb2 [sage] 投稿日:2009/01/18(日) 23:50:32 O
>>92流木刀の攻撃はギリギリのところでかわされた。
そして大木刀が床に叩きつけられた瞬間を狙って導果は剣、鎌、鎖を使い大木刀を床に縫い付けた。
「てめっ、んの野郎!」
木刀を解放しようとする流木刀に、導果が圏を持って襲いかかる。
>>91>「流木さん!離れて」
万事休すかと思われたその時、火々の炎弾が導果に放たれた。
その炎弾が導果にクリーンヒットする事は無かったものの、武器を手放した事により木刀を解放する事が出来た。
「よし、これで存分に…」
>「ここは一旦退いて、猛牙さんと合流しましょう」
この言葉に流木刀は真っ向から反対した。
「ふざっけんな!何で俺がテメェの…」
そこまで言ってさっき火々に助けられた事を思い出す。
あそこで助けられていなければ、武器を手放すどころか、導果に殺られていたかもしれない。
「…煙が邪魔で何処に導果のオッサンが居るか見えやしねぇ…退くぞ。」
声で導果の位置を確認する事は可能だが、今は火々の作戦に従う事にした。

94 名前:火々 鍋 ◆TE9XPeSK0E [sage] 投稿日:2009/01/19(月) 03:06:01 O
「…はい」
少し間を置いて流木に返事をすると、火の壁をその場に作り出し、流木の後を追った。
直ぐに追わせない為の火の壁だが、水蒸気で充満しているあの場ではそこまで長くは持たないだろう
火の手があがる酒屋を背に一先ず大通りを目指す
出来ればこれで気がついてくれればいいが…
生粋の戦闘狂である彼がもし、その真っ最中であるのならば
十中八九、彼は私たちを見捨てるかもしれない

やっとの思いで大通りに抜け出たその時である
「…流木さん、ちょっと」
いつもの脳天気な声ではなく、その声は静かに震えていた
(…こういうことしてる場合じゃないんだけどなぁ)
頭の中ではそう考えているが、体の中から溢れ出しそうな感情を抑えることが出来ない
「このバカたれがぁぁぁ!」
流木が顔を向けた瞬間、渾身の力で平手打ちを叩き込む
熱々の手のひらで叩かなかったのは最後の良心かも知れない
「1人じゃどうにもならない相手だからこうしているんですよね?
 それなのに、あなたは何なんですか?
 来るなり勝手に行動して、そのせいでこうなっているんですよ
 自覚が無さ過ぎる!
 逃げる時も逃げている最中もずっとふてくされている感じで
 確かに戦う力ならば我々よりも武器であるあなた達には適わない…ですが
 導果さんにはそれを埋めるだけの知恵がある
 さっきのあれだってもしかしたら、そのほんの一部なのかもしれない
 そんな相手に1人で立ち向かうつもりですか
 そんなに頼りないんですか?ねぇ…答えて下さいよぉ!!!」

95 名前:猛牙 ◆OK6hKA/.GA [sage] 投稿日:2009/01/20(火) 22:21:25 0
>>89
両膝を突きうずくまる鉄甲を見て、猛牙は勝機とばかりに突進を始めた。
しかしその猪の如き侵攻は鉄甲の放つ衝撃弾によって遮られた。
猛牙の猛攻が、ではない。遮られたのは猛牙の闘志。

「なんだその覇気のない技は・・・避ける価値もない」

よれよれと進む衝撃波を片手でいなすと、猛牙はうずくまる鉄甲の前で立ち止まった。
見下ろす猛牙の目は、まるで肥溜めを見るかのように霞み、蔑んでいた。

「こんなものがあの愚断を倒したというのか?あの誉れ高き兇刃をこんなものが・・・」

もはや猛牙にあるのは鉄甲に対する蔑みよりも、血沸き肉踊る戦いが終わってしまうという絶望が勝っていた。
猛牙は左手一本で鉄甲の頭を鷲掴みにするとそのまま高々と持ち上げ、鉄甲を見上げる形になる。
猛牙より身長の低い鉄甲は宙を浮き、体重の全てが首にかかる。

「貴様の二つ名は確か、敗北の宝貝・・・だったな。なるほど楽しむ間すらありはしない。愚断を倒したというのも嘘なのだろう」

猛牙は弱いものいじめは嫌いである。
仙境にいたころ、鉄甲の仇名が敗北の宝貝であるということを聞いてから愚断を倒したという報を聞くまで
鉄甲は敗北を続ける弱い宝貝なんだと思い込み、眼中になどなかったのである。
もし彼が二つ名の本当の意味を知っていれば、彼は絶望などせず、掴んだ頭を地面に叩きつけていたであろう。

「もはや貴様に興味はない。消えうせい」

猛牙は大きく振りかぶると、左手に抱えたそれをまるで野球選手が遠投するかのように楼閣から放り投げた。
>>94
放り投げたその先に、火の手があがる酒屋が見える。

「炎・・・火々の仕業か?相手は誰だ・・・導果ならばこの俺が奪い取ってやる」

そう言うと猛牙は、ゆっくりと楼閣の階段を下りていった


96 名前:流木刀 ◆m4uANq7fb2 [sage] 投稿日:2009/01/20(火) 23:21:03 O
>>94導果から逃げ出した流木刀は非常に不愉快そうな顔をしていた。
欲しい物を買って貰えなかった子供のような表情だ。
暫しの沈黙を経て、大通りに抜け出たその時
>「…流木さん、ちょっと」
火々からいつもと違った調子の声がかかる。
「あん?んだよ…」
いつもと違ったその調子に、流木刀が振り返った瞬間――
>「このバカたれがぁぁぁ!
火々の平手打ちが流木刀の顔面に放たれた。
「!?!?!?」
あまりに衝撃的過ぎて声も出ない始末だ。
そんな状態の流木刀に次から次へと指摘をしていく火々。
それを流木刀は黙って聞いていた。
「……俺は…今までずっと一人で戦って来たんだ!
今さら他人に頼れるかってんだよ!
俺ぁ…一人で居たいんだよ!
てめぇらと一緒に戦うくらいなら一人で戦った方がマシだ!!」

97 名前:導果 ◆1000VJ0J4k [sage] 投稿日:2009/01/20(火) 23:21:50 0
>93>94
「くくくく・・・なんともはや、最後の宴に相応しくしてくれる・・・!」
酒家に取り残された導果が術を解くと、水蒸気は消えうせる。
それによって足止め代わりに火々が放った火の壁は急速に勢いを得て、紅蓮の炎の壁となった。
半壊した酒家は瞬く間に炎に包まれてゆく。

酒家を燃やす炎が天まで昇り、大通りを明々と照らす中、地面が微振動を起こす。
「やれやれ、仲間割れですか?そんな態では宴が盛り上がりませんよ?」
それと共にどこからともなく聞こえてくる声は・・・導果のものだった。
声と共に地震は大きくなり、いよいよ大通りに石畳も歪み始める。

「はっはっはっは!言ったはずですよ。この都市は私の思うがままだ、と!」
大通りの中央、石畳が突如として隆起し、高さ2m程の石柱となった。
その上に乗っているのは導果!
既にその手に武器はなく、二対の腕組をして流木と火々を睥睨していた。

しかし地面の異変はまだ収まらない。
導果の断つ石柱と同様に、大通りのそこかしこに石柱が林立し始めたのだ。
逆に隆起していない部分は石畳の隙間から泥が滲み出し、沼と化してゆく。

酒家が炎に焼けくずれる頃には振動が収まっていた。
が、その代わりに大通りは完全に沼と化し、足場といえば不規則に林立する石柱のみとなっていた。

98 名前:鉄甲 ◆zJpkiOXmJ. [sage] 投稿日:2009/01/22(木) 19:33:06 0
>>95
「はっ放せ・・・・・・」頭をつかまれジタバタともがく鉄甲
力が入らない、急激な運動をして心臓が爆発しそうになる老人のごとく
体が鉄甲の思いとリンクしていないのだ
動こうとする意思に体がついていかない、体の感覚が鈍く感じる
自分が力を込めようとすればするほど肩透かしを食らうように力が体を通り過ぎていくのを感じる

猛牙の言葉が自分の中を通り過ぎていく
自分は何者なのか?自分は何でこんな事をしているのか・・・
薄れていく意識の中

>「もはや貴様に興味はない。消えうせい」

体が開放されたのが分かる、そして猛牙が遠ざかっていく
自分が投げ飛ばされたというのが分かったと気付くと既に楼閣からかなり遠ざかっていた
体が徐々に落下の体勢に入る

このまま消えてしまえればどれだけ楽か・・・・・・そう思い眼を瞑ると深い闇に意識がどっぷりと浸かっていった。

>>97

私は誰なのか・・・?何故こんな所で傷ついているのか・・・?
暗い闇の世界に、地べたに這い蹲り動かない少女が見える・・・これは私なのか?
こんなに傷ついて・・・このままこの少女と共に闇の中に消えよう・・・。

「鉄甲、立ちなさい!まだ修行は終わってませんよ!」

この声は・・・聞き覚えがある・・・厳しく、そして懐かしい・・・師匠・・・・・・

「鉄甲、貴女がそこで地面に顔を埋めている限り誰もあなたに手を貸しませんよ!」

厳しいな師匠・・・でも、もう立ち上がる気力が無いんですよ・・・体に力が入らないんです
体を流れる私の力が・・・私の中をただ過ぎていくだけなんです・・・。

「忘れたのですか鉄甲?貴女に流れるその力こそが、無限の活力その物!貴女の中を駆け巡る力を
繋ぎとめていくことは出来ない、だから体を力に任せるのです」

体を力に任せる・・・?・・・・・・

「思い出しましたか?」

そうか・・・そうだった・・・流れる力を塞き止めることは出来ず・・・ならその力を理解し、その流れに身を任せる

「そう・・・それでいい・・・貴女はアナタでしかない・・・無理に気張ろうとするから、上手く力が入らないのです
あなたに流れる力、それは貴女自身・・・貴女の中に流れる力が繋ぎとめられる事を拒否したなら、好きにさせてあげなさい」

師匠!私は!
叫ぼうとした瞬間、今度は闇ではなく沼に浸かっていた

99 名前:火々鍋 ◆8SPHqobdCs [sage] 投稿日:2009/01/23(金) 01:43:46 0
「 意 地 を 張 る の も 大 概 に し て く だ さ い !」
身勝手な流木の理由を聞き、遂に火々の堪忍袋の尾が切れる。
爆裂音と共に両手には火が灯り、髪を結っていた紐も焼き切れた。
「そんなに一人がいいなら、目を閉じ、耳を塞ぎ、口を塞いで孤独に暮らせばいい
 それさえも出来ないお前はなんだ!中途半端、何もかもが中途半端
 孤独したければ好きにするばいい!しかし、他人に迷惑をかけないよう勤めるべきだ」
徐々に勢いを増す両手の炎と体温、そして、茜色に染まっていく毛髪
いや、染まっているのではなく、炭のように赤く燃えているのだ。
普段は髪留めの紐によって抑えていたのが、現れたのだ。

激怒に歪み、流木を睨みおろしていた表情が、何かを悟ったように冷たい表情に一変する
「なるほど、そうか…そうなんですか
 結局、あなたは誰かを背負う重さから逃げているだけの臆病者だったんですね
 孤独ならば、孤立すれば…それから逃げられると…だから、あなたは弱いんだ!!!」
そう言って、流木に背を向ける。
「帰れ…何も背負えない臆病者なんて居ても邪魔なだけです
 それに導果さんは確か木属性の宝貝、火属性の私なら、あなたが戦うよりもずっと勝てる見込みがある。
 それとも、これ以上駄々をごねるのなら………炭にしてやろうかガキ」
冷たく、そして、侮蔑するようにそう吐き捨る。
その言葉には殺意が滲み出ていた。

>「やれやれ、仲間割れですか?そんな態では宴が盛り上がりませんよ?」
突如、導果の声が聞こえ、足が止まる
「宴の肴が腐っていては元も子もないでしょう?それだけですよ。さっさと姿を現したらどうです?」
そう返してみせるが、状況は最悪といっても過言ではない。
地震によって膝がつき、身動きが出来ず、そして、挙句の果てが仲間割れ
だが、火々の目には諦めの陰りなどなかった。

そして、遂に現れた導果とそれを追う様に乱立する石柱の数々
タイミングを見計らい、生えてくる石柱に飛び乗り、導果と同じ高さにまで昇る
「ならば、その結界ごと燃やし尽くすだけです。」
そう告げ、炎弾を放とうとした瞬間だった。目の前を流れ星…いや、人型の何かが通過する
驚きのあまり動きが硬直し、視線は流れ星ならぬ地に落ちた流れ人に視線がいく

100 名前:魔刃 ◆GmAYO.kF/g [sage] 投稿日:2009/01/23(金) 18:18:28 0
「クフフフ…、人の命の儚いこと儚いこと…。
 宝貝の命もまた然り、ってとこかしら?
 やっぱりあたしの血塗られた宿命の前に、安穏の時なんて無いのねえ。
 あ〜あ、つまんないわ。」

楼閣のてっぺんから、宝貝たちの戦いを見下ろしている男が居た。
今まで戦闘のできない者たちに紛れていたが、次々と起こる異変の前に姿を現したのだ。

「この様子、導果センセが派手にやらかしちゃったみたい。
 面倒事はイヤだったから隠れてたけど、随分と乗り遅れたわね〜。」

クネクネした動きでその場を歩き回っている。

101 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/01/23(金) 22:43:52 0
分かってると思うけどレスしちゃだめだよ

102 名前:導果 ◆1000VJ0J4k [sage] 投稿日:2009/01/23(金) 23:08:57 0
>99
「これはまた美しい!
激昂したあなたは最高の料理ですな。」
火々の結っていた髪の紐が焼き切れ、美しく広がっていく。
髪だけでなく、その見も茜色に染まる。
あまりにも上昇した体温のお陰で周囲の空気が歪み、ところどころ火々身は歪んで見える。
石柱の上に立ち、目線が等しく揃った火々を導果は眩しそうに見つめる。
迸る熱気に包まれたこの姿こそ、導果が待ち望んだ事態なのだから。

>98
ゆっくりと組んだ二対の腕をほどき、力を込めた刹那。
それが飛び込んできた。
ダッパーーーンと水音を響かせ立ち上る水しぶき。
その中心に見えるはボロボロになった鉄甲の姿。
「はっはっは!程よくやられましたな、鉄甲。
これで漸く内燃炉も稼動する、というところかな?」
ボロボロになった鉄甲の姿を心配するでもなく、労わるでもなく。
導果は心底喜んだように声をかけ、石柱を蹴る。

宙に舞う導果の四本の腕には【土】【水】【壁】【挟】の文字が浮いていた。
それと共に火々の左右には見上げるほど大きな壁が競りあがる。
岩や土ではなく、沼の泥で出来上がった壁は衝撃を吸収し、全てを飲み込む壁。
それが左右から飲み込み押し潰す為に迫るのだ!

103 名前:鉄甲 ◆zJpkiOXmJ. [sage] 投稿日:2009/01/24(土) 23:45:00 0
沼に落ちた瞬間大きな水柱が立つ
バッサーンと白い柱が立つとブクブクと泡が立ちはじめる

「!」
水中でカッと目を見開く
今度は沼から自分が着水した時以上に水柱が立つ
吹き上がる間欠泉の如く水は空へと吹き上げられる

「ウオオオオオオオオオオオ!」
鉄甲の体から溢れる闘気は辺りの水を巻き込みながら空へと上昇していく
丁度沼の水が程よくなくなった辺りで闘気を抑えると、巻上げられた水が、雨の様に落ちてくる
ザアーーと降りしきる雨はしばらくすると止みだした

体からは抑えてるはずの闘気が薄っすらだが漏れ出し、自分の出している闘気と闘気がぶつかり合い
体中でスパーク現象が起きている様である。

「ようやく過去に近づけたかね・・・」

>>99>>102
水にぬれた鉄甲は頭が冷えたとばかりに辺りをゆっくり見渡すと自分が先程まで居た楼閣が見えた
それを見て自分が随分遠くまで飛ばされたと気がつく
「おや?先生・・・そして、久しぶりの顔だね」

自分の視界に入ったのは、導果先生と以前追跡側として愚断剣を追いかけた知った顔だった。
火々が来るのは分かっていた、どうやら自分は火々と先生が対決していた場所に飛ばされたようだ

>「はっはっは!程よくやられましたな、鉄甲。
>これで漸く内燃炉も稼動する、というところかな?」

「さあてどうだろうね?だけど今は自分の中の溢れ出る力を慣れさせないとダメだからねぇ
まだ体とうまく馴染まないよ・・・だが、時間の問題さね」

軽く右手を上げると、拳の周りに光りだしていく
輝くというより光集まっていくという感じに近い

「調節ができないからねぇ、少し派手になっちまうが良いかい?」

そう言うと自分の拳に溜めた光が勢い良く天高く昇っていく、以前魔采を葬った時のような激しい光の柱が放たれる
ようやく、昔の感を取り戻したようだ。

104 名前:火々 鍋 ◆TE9XPeSK0E [sage] 投稿日:2009/01/25(日) 02:47:04 O
何者かが巻き上げた大量の水は重力に逆らうことなく、雨のように降り注ぐ
別に濡れても問題は無いが、今濡れる訳にはいかない
右手を上げ、頭の上に巨大な火球を作り出し、傘代わりにする
なんとか耐え凌いだ頃には、人を飲み込めるほどの大きさだった火球も西瓜と同程度の大きさに萎んでしまった。
一難去った所で、改めて視線を乱入者に向けた
「…なっ」
その時、火々は絶句した。
そこにいたのは、対愚断の時に共に行動した鉄甲だったのだ。
「…な、なんであなたがそこに居るんですか!」
己の目を疑うのも無理は無い
別に鉄甲は愚断らのように自らを表す場に飢えていた訳ではないし、追跡隊に身を置けば常に戦いに困ることもない
はたから見れば充実した生活に見えている
それなのに、わざわざ裏切りに走るのは何故か

その理由を問い詰めようとした瞬間、視界が暗くなった
余りにも鉄甲の裏切りが衝撃的だったのか
今、戦いの場に身を置いていることを忘れてしまっていた。
迫る泥の壁、避けることは不可能
そう判断し、両腕を横に広げ、壁に向かって火を放つが
それも虚しく火々は泥の壁に飲み込まれてしまった
そして、駄目押しと言わんばかりに鉄甲の光の柱が泥の壁事火々を吹き飛ばす…はずだった。
泥の壁が吹き飛び、何も残らないはずの石柱の上には、得体の知れない茶色い球体が乗っかっている。

105 名前:常鎧 ◆UVc7vUxoUI [sage] 投稿日:2009/01/25(日) 11:12:41 0
「ナンダなんだ?もう始まってるジャネーか!」
闘いを始めている導果達の所へガッチャガッチャと音を鳴らしながら
近づいていく大きな影が一つ。背中のパイプのようなところからは蒸気を吹かし。
その声は普通の人間ではありえないほどノイズがかかっている。
この大男の名は『常鎧』全身鎧の宝貝である。原体は言うまでもなく鎧。
重い体を必至に動かし導果達の元へと走っていく。

「いけね、スッカリ倒すコト忘れて遊んじまった!」
性格は単純、この一言に尽きる。何もかもが単純で考えることを嫌う。
今回追跡体に加わったのも特に使命感があるわけでも、
逃亡者達に恨みがあるわけでもない。理由は単純。仙人に行ってこいと言われたからである。
そんな馬鹿が今まさに戦っている導果と手甲、火々の元へと駆けつける。
「ヤイヤイてめぇ等!!この鉄壁の宝貝である常鎧様が
 来たカラにはもうオシマイだってんだ!!大人しく降参しやがれ!」
背中に刺さっている何でもないようなガラクタ(大剣?)を抜き、
構えて威勢よく自分の目の前に映る宝貝達に叫ぶ。
興奮したせいか沸騰したヤカンの様な音をたて、背中のパイプ達から蒸気が一斉に上る。

出だしは上々、後は敵である逃亡者をこのまま勢いに任せて倒せれば完璧。
「あー……トコロで誰が俺と戦う相手ナンダ?」
その言葉に逃亡者組も追跡者組もどういった反応を示すのだろうか。
あろうことか常鎧は敵と味方の区別もできないほどの馬鹿のようだ。

106 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/01/25(日) 21:57:15 0
分かってると思うけどスルーだよ

107 名前:導果 ◆1000VJ0J4k [sage] 投稿日:2009/01/25(日) 23:27:34 0
>103
水柱を上げながら気勢を発する鉄甲を導果は傘を具現させ差しながら満足気に見ていた。
気炎万丈充実した鉄甲と、嘗ての仲間の裏切りに驚く火々。
その隙を逃さずに火々は左右から迫る泥壁に飲み込まれてしまう。

それもそうだろう。
硬い壁ならばいざ知らず、軟体ともいえる泥には殆どの攻撃は通用せずに飲み込まれるだけなのだから。
まず一人・・・
少々あっけなさを感じながら息をつく導果だが、それを直ぐに間違いだと知らされることになる。

閉じた泥壁を吹き飛ばす鉄甲の光柱が過ぎ去った後、そこには火々はいなかった。
変りに茶色い球体。
原体に戻ったのであれば鍋が残るはず。
いや、あの光の柱を受けて未だ留まるその茶色い球体に導果は戦慄と期待感を覚える。
それは戦いの歓喜と言う物だろう。

>95>96>100
戦いの歓喜を全身に満たしながら導果はぐるりと辺りを見回す。
沼には流木。
そして隠そうともしない闘気の塊。
そう、猛牙も猛直ぐそこまで来ている。
迸る闘気に紛れてしまいそうだが、ぬるっとした狂気・・・その主たる魔刃も見逃す事はない。
宝貝たちがここに一同に階層としているのだ。
導果の宴の為に!
「調整?最後の宴だ。そんなものは必要ない。
もう直ぐ役者も揃う事だしね。思う存分やってくれたまえよ!」
嬉々とした導果の宣言が沼に響き渡る。

>105
そして最初に現われたのは・・・常鎧だった。
ガシャリ、ガシャリと重苦しく金属がこすれる音と蒸気を吹かしながら現われた鉄の塊。
背負った巨大な剣を引き抜き啖呵を斬るが、イマイチ判っていないようだった。
>「あー……トコロで誰が俺と戦う相手ナンダ?」
「愚鈍なる常鎧よ!お前の相手は私だ。尤も、私のところまで辿り着けたらだがね。」
そう言いながら振るわれる二本の腕には【広】【深】の二文字が。

途端に沼の範囲は広がり、常鎧の足元まで広がる。
ぬかるみ、そして深い沼に常鎧がゆっくりとだが沈んでいく。

108 名前:鉄甲 ◆zJpkiOXmJ. [sage] 投稿日:2009/01/26(月) 00:48:01 0
>104
泥の壁が吹き飛ぶとそこには茶色い球体があった
一瞬見た感じではなんなのか分からないが、鉄甲にはそれがなんであれどうでもよかった
軽く頭をよぎったのは何らかの手段で泥と自分の攻撃を防いだ火々なのだろうと
だとしたら、結局答えは同じである

「アラよっと!」

軽く腕にスナップを効かし光の玉を投げる
投げ方自体はただのキャッチボールのような感じであるが
投げられている光弾は尋常ではない速さである、光速ではないものの
剛速球という言葉では言い表せないほどの早さである
鉄甲の光弾は茶色い球体の横をかすっていく

「あららー?狙いが外れちまったか、まあ次は・・・!」
と次を投げようとしたときである。
ガシャンガシャンと音が近づいてくる

>>105 >>107
後の方へ目を向ければ仙境きっての馬鹿である常鎧であった
なんとなく予想はついていた、たぶん常鎧はこの後名乗りを上げる
そして・・・

>「あー……トコロで誰が俺と戦う相手ナンダ?」
相変わらず振りの常鎧に仙境に居た頃を思い出す、懐かしい気持ちとともに
もう戻れないのだという気持ちが鉄甲の胸に響く

「常鎧!久しぶりだねぇ〜私を覚えてるかい?鉄甲だよ鉄甲、流石のアンタも覚えてるだろ?」

そう呼びかけると先生の力により足元が沼へと変わっていく
先生は自らが倒すべき敵だと名乗ったようだ・・・だが、ちょいとばかり昔の心を思い出した鉄甲は
ほんの少し、軽いイタズラ心がくすぐられた

「おい常鎧、そのままだと沈んじまうぜ〜!常鎧助けてやろうか?
ついでだから教えておくと、お前を沈めた奴の仲間はお前の目の前にあるその茶色い球だ
もし助けたら、協力してその茶色いのを倒さないか?」

流石の常鎧もこれに釣られるとは思えないが
鉄甲の中では淡い期待が満ちていた、なんとなく・・・そうなんとなく
自分のくだらない嘘を信じて行動してしまう常鎧を想像したら、仙境の頃人をからかって遊んだ自分を思い出し
笑えるんじゃないと・・・

109 名前:火々 鍋 ◆TE9XPeSK0E [sage] 投稿日:2009/01/27(火) 16:35:55 O
茶色い球体の正体、それは火々の火力によって焼かれ、固まった土である。
先に固まった土が泥を押し広げ、火々が入るスペースを作り
熱によって土が陶器のように固まったのだが
それに加え、周りの固まっていない泥が衝撃を吸収し、吹き飛んだことにより、卵のように綺麗に残ったのだ。

「クソッ…これが狙いだったんですか!」
と上記で説明したように現状は偶然の賜物であるが、当人はすっかり勘違いしている
「火力を逆に利用して捕縛とは…いや、違…」
息が苦しい…火の勢いも弱まってきている
「(このままだと…やられる)」
そのとき、陶器独特の鈴のような音が響く
「(…追撃!?何故…いや、そこはいい…追撃するつもりなら…こっちの渾身をぶつけるだけ)」
いつまで気を保てるかわからないが、淡い希望にかけるしかなかった

110 名前:常鎧 ◆UVc7vUxoUI [sage] 投稿日:2009/01/27(火) 21:53:29 0
誰が敵なのか、誰が味方なのか判断ができずにポリポリと頭を掻いている常鎧。
>「常鎧!久しぶりだねぇ〜私を覚えてるかい?鉄甲だよ鉄甲、流石のアンタも覚えてるだろ?」
すると鉄甲が手を振り常鎧に呼びかける。しばらく硬直していた常鎧だったが、
人の顔ぐらいは覚えられるらしく嬉しそう(?)に一回蒸気を噴出させると勢いよく手を振る。
「おお、鉄甲の姐さん!!久しぶりじゃねーか!!元気シテたか!?」
表情というものはないがどことなく常鎧が嬉しそうなのは伝わってくる。
しかし、その直後に常鎧の足元が沼になり重く鈍重な常鎧はただその泥濘に嵌るよりなかった。
>「愚鈍なる常鎧よ!お前の相手は私だ。尤も、私のところまで辿り着けたらだがね。」
「ウオオッ!!ナンダこりゃ!?おい!元に戻しヤガレってんだ」
大声で吠えるがそんな言葉でやめるわけもない。敵の思惑通り
どんどん沼に浸かっていき腰辺りまであっという間に飲みこまれてしまう。
進もうと足を動かしても全くの手ごたえのなさに常鎧が焦っていると鉄甲が語りかける。

>「おい常鎧、そのままだと沈んじまうぜ〜!常鎧助けてやろうか?
ついでだから教えておくと、お前を沈めた奴の仲間はお前の目の前にあるその茶色い球だ
もし助けたら、協力してその茶色いのを倒さないか?」
「本当か!?よっしゃ!そうときたらサッサと引っ張り出してクレや姐さん!!」
鉄甲の申し出に懐疑の念を持つどころかさっさと引っ張りだしてくれと頼む常鎧。
後ろの方の条件など完全に聞いちゃいない。手をのばして鉄甲が握ってくれるのを待っている。
だが、そこでようやくおかしいと理解したのか手をゆっくり降ろす。
「なあ姐さん。ナンデ俺の味方だって言うナラ、そいつと仲良くシテルんだ?
 もしかして姐さん!アンタ逃亡者か!?………ソウカ、じゃあ手助けはイラネ!!
 姐さんは嫌いジャねえが逃亡者と仲良くシテたら爺の奴に怒られちまう!!済まねえな!」
とは言ったものの。すでに沼には体の大部分が使っており今は肩まで使ってしまっている。
(さあて、ドウすっかなぁ。参っちマッタぜ!!)

3択−ひとつだけ選びなさい

答え@カッコイイ常鎧は突如脱出のアイディアがひらめく

答えA仲間がきて助けてくれる

答えB脱出できない。現実は非常である

正直なところAの答えに頼るのは不可能に近い。
おそらく他の人間は自分のことで精いっぱいだろうし
仲間が来ても鉄甲なみのパワーファイターや特殊な能力を有してなければ
凄まじい重量の常鎧を引っ張り上げるなど不可能!
「ってことは。@シカねーだろうがッ!!ウオオオオオオオオ!!!!」
力を込め沼から出ようと奮闘しはじめる常鎧…しかし抵抗するたびに
まるで文字通り泥沼にはまるがごとく体が沈んでいく。それは剣を振るってみても
何をしようと変わることはなかった……そしてとうとう首まで浸かってしまう。

答えB−脱出できない。現実は非常である。

「ここまでってコトか……ッテわけダ!!どうやらお前には辿りつけナカッタぜ!!」
最後の最後に導果にそう叫ぶと常鎧は泥沼へと落ちていった……

111 名前:猛牙 ◆OK6hKA/.GA [sage] 投稿日:2009/01/27(火) 22:33:15 0
階段を下り、ようやく楼閣の入り口までやってきた猛牙には
そこに入ってきたときとはまるで違う光景が目に入ってきた。
自分の手前まで侵食している深く濁った沼。
ターゲットとしていた導果の姿。
先ほど自分が投げ飛ばし、覇気の感じられなかったはずの鉄甲。
今にも沈み、顔だけ見えている常鎧。
そして見える茶色い球体に、柱、柱、柱。
三つ巴、三竦みの状態であると猛牙は察知した。
今自分がいる場所までは沼は侵食してきていない。ならば足をとられぬようここから動かないのが賢明。
猛牙は状況判断をし、何がもっとも自分を優位にし、何がもっとも自分を楽しませてくれるのかを分析した。
まず、やはり敵である導果と先ほどとは違う強力な光に包まれた鉄甲が一番脅威であろう。
その次に不気味に浮かぶ謎の球体。これは何かの罠の可能性もある。
最優先で破壊しなければならない。常鎧はどうなっても知らん。
分析の終わった猛牙は、茶色い球体へその場から斬撃を放った。


112 名前:導果 ◆1000VJ0J4k [sage] 投稿日:2009/01/27(火) 22:54:16 0
>108>109>110>111
「ふん、力馬鹿というのなんぞあっけないものだ。」
成す術なく沼に沈む常鎧を一瞥して鼻で笑う導果の眼には侮蔑の光が宿っていた。
鉄甲が弄ぼうとしていたようだが、どちらにしても結果は変らない。

となると、あとは火々だった謎の球体。
下手に攻撃してカウンターを喰らっては溜まったものでは無いと思案をしている矢先にそれに気付く。
猛牙の攻撃波動。
「中々どうして、巡り合せというものだな!」
放たれた斬撃の向かう先は都合よく謎の球体。
下手に手を出せぬ球体に攻撃を仕掛けてくれるばかりか、攻撃という隙間で見せてくれるのだ。

「ふははは!礼を言うぞ!猛牙!」
タンと石柱を蹴り宙を舞う。
向かう先は猛牙の直上。
四本の腕には全て【衝】の字が浮かび上がっている。

猛牙の頭上で炸裂する四連衝撃は一つの大きな衝撃波となって猛牙を襲う!


一方、一瞥したまま省みる事のなかった常鎧。
沼に沈んでいき、あることに気付くだろう。
足先に硬いものが当たる事に。

元々沼は相手の機動力や滑らす事により攻撃力を減ずる為にあったのだ。
深くしたと手底なしにはなっていない、という事なのだ。
ましてや長身巨躯の常鎧がしっかりと直立すれば首までの深さしかない。
足掻くあまり体制を崩し、完全に沈んでいただけだったのだ。

113 名前:千本 ◆/EORinH9pI [sage] 投稿日:2009/01/27(火) 23:39:34 0
「導果センセイ…、お久しぶりです…
 そしてさようなら…」
導果の背後から突如影が現れ、三言呟くと両手を合わせた
線の細い痩せた感じの若い男がいつの間にかこの場に来ていたのだ
縫い針だが、戦闘用の特殊能力を移植され人間形態での戦闘力を飛躍的に高めている
千本は飛び上り、導果の真上に回り込むと、懐から一本の針を取り出し投げ付ける

「秘技、串刺しの術!」
真上から投げ付けられた針は、最初は指で摘めるほどの小さなものであった
しかし、一瞬にして槍のように巨大化したのだ
巨大な針の先が導果の体を脳天から刺し貫こうとしている

「導果センセイ…、孤独だった僕に優しくしてくれたお礼です…
 楽に逝っちゃってください…」

114 名前:火々 鍋 ◆TE9XPeSK0E [sage] 投稿日:2009/01/28(水) 01:03:44 O
気を失い掛けたその時、何者かの攻撃により球体が切り裂かれ、瞬時にその方向へ炎を放った
その瞬間、球体は大爆発を起こし、飛散する

バックドラフトという現象をご存知だろうか?
火災現場で起こる現象の1つで、密閉された空間にて不完全燃焼が起こり
一酸化炭素ガスが充満した中に大量の空気が入った瞬間、大爆発が起こるといった現象であるが
まさに、今この場でそれが発生したのだ。

爆炎を両腕に集め、肺の空気を取り替えるかのように深呼吸する
「くはぁ…死ぬかと思った」
体調を整えると即座に辺りを確認する
導果は猛牙に食いついている最中のようだ。
(手助けはかえって邪魔になるだけ…ならば)
視線を下ろし、鉄甲と授鎧を睨む
その目には憤怒の色が出ている
「…授鎧さん…何ふざけているんですか?みんな必死になっているのに…1人泥遊びですか
 一生そこで遊んでろ屑鉄!
 そして、あなたは何なんですか!
 戦えればどうでもいいんですか!
 返答次第では…わかりますよね?」

115 名前:鉄甲 ◆zJpkiOXmJ. [sage] 投稿日:2009/01/28(水) 19:38:04 0
>>110
「悪いねぇ〜・・・はっはっはっアンタの言うとおり逃亡者だよ私は、はっはっはっ」

哀れにも沼へと沈んでいく常鎧の姿が可笑しく
ここしばらく笑って居なかった鉄甲は久しぶりにこの出来事を楽しんでいた

「はーはー・・・ああ、可笑しかった」
指で涙を拭うと、 沈みゆく常鎧に語りかける

「常鎧、落ち着いてちゃんと立ってみな、お前くらいだったら足が着くはずだよ?」
実際問題、この沼は相手の動きを止めるためでありそんなに深い訳ではない事は
沼に入った鉄甲が知っている

すると、球体の方で爆発が起きる

>>114
どうやら火々が何らかの手段で球体から出てきたようだ

>そして、あなたは何なんですか!
>戦えればどうでもいいんですか!
>返答次第では…わかりますよね?」

「なんだいなんだい・・・折角出てきたと思ったら忙しいお嬢さんだねぇ・・・
私にはアンタの言ってる事がわかんないねぇ・・・戦えれば?」

鉄甲は両手を軽く広げ、分からないのポーズを取る

「まあ、アンタの言いたい事は分かるさ、どうせ私が酔狂で戦い求めて裏切ったとでも言いたいんだろ?
なら今の答えで満足かい?アンタに私の気持ちなんざわかんないよ・・・」

先程までの笑顔は消えて、また悲しげな表情に戻る

「火々、今度はアンタに聞くよ・・・アンタは自分の生き方に満足してるかい?」

116 名前:猛牙 ◆OK6hKA/.GA [sage] 投稿日:2009/01/28(水) 21:33:11 0
>>112
斬撃を放ったその刹那、上空から声が響く。
>「ふははは!礼を言うぞ!猛牙!」
言うなり、大きな衝撃波が上空から降り注ぐ。

「ふん、隙ができたと思い掛かってきたか。なかなかどうしてこずるい奴よ」

体に闘気を蓄え、衝撃波を迎撃しようとしたときである。
巨大な破裂音とともに炎の渦が真横から飛んでくるのが目に入る。
前門の狼、後門の虎。どちらにせよダメージを負うのは避けられない。
ならば猛牙に相性の悪い炎を避けることが先決。
そう判断した猛牙は、闘気の結界を解くと、手を広げまともに導果の衝撃波を食らった。

「あ・・・・ぐぁあ・・!!」

真上からやってきた衝撃波は猛牙を押しつぶし、やがて猛牙は大の字に倒される。
しかしその衝撃もすぐに飛んできた炎の渦によってかき消され、その場には仄かな焦げ目と凹んだ大地
そして寝転がる猛牙の姿が残った。
除に立ち上がり口から煙を吐き出すと、今まで押さえ込んでいた闘気が再び放出する。

>>113
「千本・・・あぁ・・・邪魔だっ・・・諸共に消え去れ!!」

憤怒の表情を浮かべた猛牙はその怒りをも闘気に乗せて、左手から巨大な闘気玉を形成する。金気を帯びたその巨大な玉は
木属性の導果には脅威となるだろう。そしてその玉を中に浮かせると、
大きく振りかぶりバッターのように斧の腹の部分を玉に打ちつけ、巨大なそれを二人のいるほうへ打ち飛ばした。


117 名前:導果 ◆1000VJ0J4k [sage] 投稿日:2009/01/28(水) 23:14:03 0
>114>116
衝撃波を放った瞬間、導果の猛一つの顔は謎の玉が爆発する様を見ていた。
猛牙の残撃が当たった瞬間、巻き起こるバックドラフトと言う名の大爆発は導果のいた場所にもその猛威が及ぶ。
だが、カウンターを想定していた導果はその備えも既にしていた。
二本の腕を背中に回し、【緩】【壁】の二文字を具現化させる。
爆炎は不可視の壁によりその勢いを減じ、導果にダメージを与える事はなかった。

一方、猛牙は爆炎を避けるために衝撃波をまともに喰らう道を選ぶ。
全ては導果のペースで戦いが進んでいた。
この時までは・・・。

>113
> 楽に逝っちゃってください…」
いつの間にか背後に回っていた千本が放った鍼が巨大化し、導果の脳天を貫いたのだ。
猛牙と謎の玉に注意が言っていた為、これに対応する術はなかった。
「せ・・・千本・・・君が来ていたとは・・・な・・・。」
脳天を貫かれ呻く導果。
その言葉を最後に導果はグラリと体制を崩し倒れていく。
そう、脳天を貫かれた導果は・・・

今の導果は二人の導果が重なり二面四臂。
脳天を貫かれた瞬間、導果は股二人に分かれたのだった。
脳天を貫かれた導果は沼に落ち、その姿が消える。
残ったのは針に串刺しにされた【導果】と書かれた一枚の紙だった。
無事だった導果は空中で向きかえり、千本をうち倒さんと力を込めていた。

その刹那、猛牙を押し潰したクレーターから凄まじい闘気が迸る。
そこには憤怒の表情の猛牙が巨大な闘気玉を打ち飛ばしていた。
金気を帯びた巨大球を前に導果は即座に対応する。
もはや千本の相手をしている場合ではないのだから。

巨大闘気玉の前に現われる爆炎の壁。
金気を剋する炎の壁で迎え撃とうと言うのだ。
壁と玉が触れた瞬間、大爆発が巻き起こる!

辺り一帯を吹き飛ばさんとする爆発のあと、詩化して導果は未だに空中に立っていた。
「ふふふ・・・やはり退気の火気では天敵の分は拭えぬか・・・!」
空中に佇む導果の左手と右足は消失し、脇腹にも大きな穴が開いていた。
如何に五行相克を操ろうとも、本来の属性ではない術では防ぎきれなかったのだ。
導果はその言葉を最後に体制を崩し、姿を消した。
残ったのはボロボロに千切れた【導果】と書かれた紙だった。
そう、二人の導果は導果の術によって具現化していた式神だったのだ。


「いやー見事見事!私を倒すとは!」
二人の導果が敗れ去った後、沼地に導果の声が響き渡る。
その声の元はシャンバラ上空。
そこには更に導果が立っていた。
楼閣の屋根の上で様子を窺っていた導果が、上空で今までの気を溜め、大きな文字を書いていたのだ。

「さて、宴も十分に盛り上がった。十分であろう。
追跡宝貝の諸君。輪が誘いに応え集まった逃亡宝貝の諸君。
もはや君達は用無しだ!散ってくれたまえ!」
地上で戦う宝貝たちを睥睨し、荘厳に、そして残酷に導果は宣言する。
月明かりに照らされ夜空に浮かぶのは巨大な【剛】【化】【剣】【乱】の四文字。

導果の振り下ろす手とともに、文字は具現を得る!
一本2mから大きいものでは5mもあろうかと言う剣が無数に出現し、豪雨の如く享楽都市シャンバラ全域へと降り注ぐ!

118 名前:千本 ◆/EORinH9pI [sage] 投稿日:2009/01/29(木) 00:16:05 0
>>116-117
「さすがセンセイ…、こんな程度じゃ堪えませんか…」
嬉しそうにやつれた顔を歪ませながら微笑んでいる
次の攻撃に移るべく、指の間に仕込んでいた複数の針を露わにさせる
しかし、すぐさまその場を離れる道を選んだ
猛牙の闘気玉が凄まじい勢いで迫ってきていたからだ

「ああ…、酷いなあ、猛牙さん…
 確かに寝てて出遅れちゃいましたけど、一応仲間ですよ、僕…」
(この猪突猛進野郎…、いつか殺してやる…)
恨めしそうな表情をしながら、泣きそうな声で猛牙に抗議する
幾分かの憎悪と殺意を抱いたが、今は導果の始末が先決である
二人の導果は式神だったが、千本は身じろぎ一つせず針を弄っていた
導果はあらゆる呪術に長けた筆の宝貝であり、この程度の小細工は朝飯前だろう
そして、導果の声がしたと同時に空を見上げる

「センセイ、嬉しいですよ!
 あなただけは他の誰にもやらせない!
 原体に至る全てを僕の手で始末して差し上げますからね!」
しかし、導果はその千本の物言いに答えることなく四つの巨大な字を描き出した
千本はこれが直ぐに危機的状況を生む大技だと感付いた
あれだけ巨大な術印字を一瞬にして大成させる筆など、導果以外に無いだろう
文字通り、頭上に巨大な剣が無数に現れ、降り注いできた
トンデモな術を披露してくれるものだ

「センセイ、僕まだ終わりたくないんですよ!
 秘技、千本針の術!」
自らの名を冠した術をいきなり口にする
その瞬間、千本の体は細かく分解され始めた
だがよく見れば、体が無数の細かい縫い針になってしまっているのだ
これが「千本針」と呼ばれる所以である
無数の針と化した千本の体は降り注ぐ巨大な剣の雨を難なく掻い潜る

「この分だと他の人たちは戦闘不能かな?
 早く止まないかなあ…
 単純な術だけど結構仙力使っちゃうんだよね」
剣の雨を掻い潜りながら、辺りを見回そうとする
しかし、その中では他者の様子など確認の仕様もないだろう

119 名前:常鎧 ◆UVc7vUxoUI [sage] 投稿日:2009/01/29(木) 22:30:13 0
>「常鎧、落ち着いてちゃんと立ってみな、お前くらいだったら足が着くはずだよ?」
泥沼の中でいつ意識が消えるものか待っていた常鎧に鉄甲の声が届く。
常鎧は素直に鉄甲の言うとおりに屈んでいた身をシャンと伸ばす。
「アリャ?……なんでいなんでいッ!普通に足が着くジャアねえか!!
 ガーッハッハッハ!!どんなもんだい!!」
沼から顔だけ出してすぐさま調子に乗り始める常鎧。
鉄甲の助言がなければそのままずっと沼の中に沈んでいたが、
常鎧は足がつくことをさも自分が発見したかのように嬉しがっている。
>「…授鎧さん…何ふざけているんですか?みんな必死になっているのに…1人泥遊びですか
>一生そこで遊んでろ屑鉄!
そんなところに自力で土玉から脱出した火々が常鎧を怒鳴りつける。
「な…な…ナンだとぉ〜!!おい火の字!
 屑鉄ッテノハ言いすぎじゃあねえのか!?
 俺だってソレナリに真面目にヤッテルってのっ!!
 泥も本気で死ぬカト思ったんダゾ!!やい!!聞いてるのか!!おい火の字!!」
怒っているのか鉄甲のときよりも数倍蒸気を吹かし火々を指差しながら
ノソノソと沼地から這い上がろうとしている常鎧。
最も喋りに集中しているのか沼地から上がろうとしても手が滑ったりで一行に進んでない。
更には火々は鉄甲との掛け合いで忙しいようだ。
「ウムググ!!!無視シヤがって!!」
悔しそうにしながらモソモソと沼地から這い上がる。体中泥だらけで
火々の言った屑鉄そのまんまだ。黙って座ってれば汚いガラクタに見えるだろう。
羽織っている着物もまるでボロ雑巾。今日着てくるんではなかったと後悔しても先に立たず……

「ウガ〜!俺の一張羅がぁ!!!畜生畜生っ!!導果の奴モウ許さねー!!」
そう叫んで導果の元へとダッシュしている丁度その時。
猛牙の放った巨大な闘気玉と炎の壁が互いにぶつかりあい、凄まじい大爆発が起こる!!
「アガガグガガガ!あ痛っ!!」
その激しい衝撃に当てられ吹っ飛ばされ転がりそのまま頭を地面にぶつける。
何とも情けないがそれだけの衝撃がさっきの戦いで発生したということもまた事実。
当の導果は左手と右足を失い。脇腹には風穴が空いてしまっている。
いや、これでもさっきの衝撃を考えると軽く済んだのかもしれない。
しかし、一番恐ろしいのはさっきの衝撃でも、ましてや猛牙でもない。
一番恐ろしいのはこの状況の中でも笑っている導果本人。
>「ふふふ・・・やはり退気の火気では天敵の分は拭えぬか・・・!」
そしてその言葉を最後に一枚の紙切れを残し消え去る導果。
紙切れには様々な呪術のようなものが書かれており。それが式神であることを見るものに伝える。

>「いやー見事見事!私を倒すとは!」
沼地に響き渡る声、声の元を探すとそこはシャンバラの上空。
桜閣の屋根の上で何やら大きな文字を書いている。
>「さて、宴も十分に盛り上がった。十分であろう。
>追跡宝貝の諸君。輪が誘いに応え集まった逃亡宝貝の諸君。
>もはや君達は用無しだ!散ってくれたまえ!」
その宣言とともに【剛】【化】【剣】【乱】の文字が浮かぶ。
「なんだアリャ?」
呑気に構えている常鎧が次に見たものは導果の手の合図により一斉に天より
地上に向かって降り注ぐ剣の嵐だった。
「うおおおおおお!?」
鈍重な常鎧に降り注いでくる剣が避けれるはずもない、
覚悟を決め両腕を交差させ致命傷を避けようと頭の前に出す。
次の瞬間何本もの剣が常鎧に突き刺さっていく。
「ウググググググググ!!」
必至に耐えているがあっという間にハリネズミのように剣に覆われてしまった。

120 名前:火々 鍋 ◆TE9XPeSK0E [sage] 投稿日:2009/01/31(土) 17:32:32 O
「全く!」
鉄甲の問いに火々は迷うことなく、堂々と答える
「その目は憐れみですか?
 この火々鍋には夢がある!だが、そこまでの過程には壁があり、それを超える為の目標がある
 それを何一つ成し得ていない以上、私は現状に納得など出来ない
 他人から貰った生き方に満足しているようなあなたとは違うんです!鉄甲!」
腕の炎が強まり、鉄甲に仕掛けようとした瞬間

空に現れた第三の導果が話し、そして、大技を仕掛けてきた。
導果の言動に火々は呆然とした。
なんの躊躇いもなく仲間を捨てたその導果の行動が理解出来ず思考が停止したのだ。
しかし、その状態の中、1つだけ確かなことがある
(こいつを許してはいけない)

大剣の雨が直前まで迫り来る瞬間
「この外道がぁ!お前だけは絶対に許さない」
腕の炎の勢いが急激に強まる
「現体ごと消し炭になれ!煉獄爆炎掌」
まるで巨人の掌を思い起こすほど巨大な炎の掌が導果に向かって放たれる
飛んでくる大剣はドロドロに溶けてなくなり、火々に向かうことはなかった

121 名前:鉄甲 ◆zJpkiOXmJ. [sage] 投稿日:2009/01/31(土) 23:56:24 0
>他人から貰った生き方に満足しているようなあなたとは違うんです!鉄甲!」

「馬鹿が!知った風な口を聞くんじゃないよ!!」
鉄甲がキレることなど日常茶飯事だろう、だがその怒り方は違っていた
ここシャンバラに来てから怒る事などなく、平穏のまま過ごしてきたが
火々の発言にめずらしく感情を爆発させる

闘気が爆発したかのような怒りの気迫は辺りを静まり返らせるほどだ

「火々、私はねぇ・・・もう宝貝としての生き方なんざしたくないんだよ!!
アンタは、料理を作る道具だろうよ、だけど私は誰かをぶっ飛ばすだけの道具さ
自分の生まれてきた意味を理解してる私らは、その用途用途に合ったことをしてればそれでいいだろうさ
だけどねぇ・・・私は、鉄甲の宝貝として生きる以前に・・・・・・女なのさ・・・」

「今まで人をぶっ飛ばすだけの人生を送ってきた女に、男を振り返らせるほどの魅力なんて無いのさ」

鉄甲が仙境を捨て、ここシャンバラに来た理由
それは、男を愛したが故、武具として生きる事を捨て、女として生きるために此処へ来たのだった
ある日のこと、逃亡した宝貝を追っていた鉄甲は一人の男に恋をした
しかし、思い叶わず・・・自分が家事もできないただの闘う事しか取り柄がない女である現実を突きつけられた
鉄甲は自分の生き方を恥じた。それからである、鉄甲は女として生きる事を決意したのは。

「此処に来て・・・今までの生き方を捨てて・・・別人として生きると決めたのに・・・もう無理なんだね
所詮、私は宝貝・・・武具の宝貝が恋に生きる事事態が・・・間違いだったんだろうね」

鉄甲の胸には風鉄の「宝貝は徹して宝貝たるべし」という言葉がよぎる
今の鉄甲はこの言葉の意味を理解した


「ああ・・・悲しい、生きていく事がこんなに悲しいのか!今までの生き方がどれだけ無意味なのか!
自分という存在を捨て去る事がどれほど哀れなのか!なぜ苦しまねばならない!!
こんなに苦しくて!こんなに切ないのなら!!いっそ心などなければいいのに!!」

「どうして私たちに心を与えた!!!」

自分の押さえていた感情を解き放ったとき鉄甲の目には
巨大な剣が無数に降り注いでくるのが見えた、避ける事など容易い事
しかし、今の手甲には自分が何をすべきかなど考える余裕など無かった・・・

ただ、頭をよぎるは苦しみからの解放・・・このまま悲しみが終わるのなら、幕が下りるのなら
それはそれでいいのだろう・・・・・・

空から降ってきた剣に埋もれながら、訪れる闇を迎え入れた

122 名前:導果 ◆1000VJ0J4k [sage] 投稿日:2009/02/01(日) 00:02:22 0
激しい戦いが繰り広げられるシャンバラ。
しかしこの場はそんな戦いの音も遠く、静寂の闇に包まれている。
音もなく燃え盛る護摩壇は炎の柱となって前に座る導果の顔を照らしている。
その目が見据える先は護摩壇の前に浮かぶ三枚の札。

それぞれに【導果】と書いてあり、一枚はビリビリに千切れ、もう一枚は真ん中に穴が開いている。
そして最後の一枚は文字が薄くなり、突如として燃え上がる。
「ふふふ、あれで生き残るばかりか反撃をして倒すとは!
まあ、我が門出を祝う贄としては相応しかろう。」
燃え盛る護摩壇の炎は立ちあがる導果の影を伸ばし、その影は更に後ろに佇む巨大な人型へと至っていた。

#######################################

剛・化・剣・乱の巨大な四文字に余ってシャンバラ全域に巨大な剣を豪雨と降らした導果。
流石に力を使い果たしたのか、肩で息をしている。
空中でぐるりと見回し、生き残っているものがいないかと、視線をやった刹那。
その視界が眩い光に眩む。

眩んだ目に映ったのは巨大な剣を溶かしながら突き進む炎の掌。
認識できたのはそこまでだった。
力を使い果たしていた導果はそれ以上の反応をする事無く炎に包まれ姿を消した。

後に残ったのは空から落ちてくる【導果】と書かれた紙の燃えカスだった。
そう、この導果もまた前の二人と同様式神だったのだ。


123 名前:導果 ◆1000VJ0J4k [sage] 投稿日:2009/02/01(日) 00:02:33 0
三人の導果が消えると同時に、沼地や石柱は消え、元通りの大通りとなる。
直後、海に面した館の向こうで轟音が響いた。
見やると館越しでもはっきりと判る巨大な水柱。
とともに、大地を振動させ、*ズシン、ズシン*という重いものが落ちる音。

その正体は直ぐに目の当たりにする事になる。
シャンバラで一番大きな館を踏み潰しながら巨大な人のようなもの、が現われたのだ!
見上げるその大きさは10mを越えようかと言う巨大なそれは、頭に当たる部分がなかった。

雲が晴れ、月明かりが照らすと、それの醜悪な正体がはっきりと見えるだろう。
「それ」は数多くの宝貝の原体がより集められて人の形を形成しているのだ。
そして頭の部分には導果が両手を広げて笑っている。
「ふん、愚かな女だ。己の宿業に耐え切れず、そのまま果てたか。
利用もし終えたところでもはや用済。丁度良かったわ!」
無数の剣に貫かれた鉄甲を一瞥し、侮蔑の言葉を吐いた後、生き残った宝貝に目を戻す。
「諸君!良くぞ生き残った!
是非とも祝ってくれたまえよ!我が門出を!」
高らかに吼える導果は語りだす。
その目的を、そして享楽都市シャンバラの意味を。

「知っているかね?我々宝貝は神珍鉄で出来ていることを。
そして宝貝となるために、膨大な仙気が込められている事を。
宝貝は使用し、戦うことによって仙気を発散する。
戦いが激しければ激しいほど!
そして原体に戻る瞬間、全ての仙気を吐き出すのだよ。
それと同様に、人は欲望が高まると人気を発する。
仙と人の気は膨大な力となり、それを制御すれば私は更なる高みに上れる!
そう・・・私自身が道具としての宿業から脱し、仙人となるのだ!」

導果がシャンバラを作り、逃亡宝貝を集めたのは、追跡宝貝とのより大きな戦いをさせる為だったのだ。
そしてまた結界を作り、戦いの場を切り離したのは人気を発する人間を守る為。
戦いと享楽。
シャンバラとは二つの宴によって発せられる気を集める都市装置だったのだ。

「諸君らが苛烈な戦いを繰り広げてくれたお陰で充分に気は溜まった。
見よ!これがその成果、人仙融合、鬼道兵器、大崑崙だ!」
気を集め、仙界の鉱物である宝貝を使い作り上げたその巨人は、いるだけで醜悪な気を周囲に撒き散らす。

「生き残ってくれていて本当に礼を言おう。
この大崑崙の試運転には丁度良い。
絶望し、倒れ、大崑崙の一部となるが良い!」
残酷な笑みを浮かべた導果が複雑な印を結ぶと、大崑崙が動き出す。
その太い腕を無造作に振るうと、暴風が巻き起こる。
暴風は巨大な空気の壁となり、宝貝たちに襲い掛かる。

124 名前:千本 ◆/EORinH9pI [sage] 投稿日:2009/02/01(日) 00:49:19 0
「な、何だと…?
 センセイがあんな巨大に!?
 あ、あれも術なのか…?」
巨剣の豪雨を耐え切り、元の姿に戻ってみて驚愕の表情を浮かべる
やはり、三人目の導果も偽物であった
しかし、今度の巨大な導果は一体何なのであろうか?
術で作り出す幻影や分身体にしては、余りに大仰で馬鹿馬鹿しいものである
そしてそれは、木偶の坊ではなく巨大さに見合う醜悪で濃厚な気を発している
並みの宝貝であれば、息をするのでさえ苦しくなるほどのレベルだ
おそらくは、疑いようもない本物の「巨大な」宝貝なのだろう

「アハハハハハ!
 思い上がりをほざかないでよ、センセイ!
 仙人通り越して天帝や神にでもなるつもり?
 ちゃんちゃら可笑しくて理解できないね!」
しかし、実際は圧倒的な気の前に押し潰されそうになっている
こんな馬鹿みたいな気、今まで味わったことなんてない
宝貝を宝貝が使うことは禁忌だが、これはそんなものなどお話にならない
宝貝を通り越して、今の導果は「天災」そのものである
懐から針を一本取り出し、気を込めながら構える

「ぐうぅっ…、な、なんて凄まじい風…!
 ひ、秘技・気針縫いの術!」
目に見えるほどの凄まじい風圧が空気の壁となって迫ってきている
咄嗟に身構え、手に針の形をした針を作り出す
それを用いて、目にも止まらぬ速さで己の身を地面に縫い付けた
よく見れば、縫い糸のようになった気が気の針の尻から伸びている
そのまま蹲り、襲い来る突風に必死で耐えた
気の針と糸によって縫い付けられた千本は、がっちりと地面に固定されていた

「さすがです…さすが僕にこんな無様な真似をさせてくれる方だねえ!
 けどその図体、いい的だよ!
 戦技、串刺しの術!」
そのままの態勢で無数の針を導果目掛けて投げ付ける
それらは最初のものと同様、平均的な人間ほどに巨大化し、導果の間接部に飛んで行く
手足を狙うことで、巨体の動きを封じようという策である

125 名前:火々 鍋 ◆TE9XPeSK0E [sage] 投稿日:2009/02/04(水) 02:17:09 O
気がつくと火々は壁に叩きつけられていた。
突如石柱がなくなり、間髪を入れずに風の壁に吹き飛ばされたからだ

「…っ!!」
余りの衝撃に声も出ず、火々は地に伏した

ここで倒れている場合じゃない…立て立ってあの男に思い知らせろ
「…あなたは…仙人じゃ…ない」
ゆっくりと立ち上がり、巨人を睨みつけると、それに向かって駆け出していた

千本の放った針が頭上を通り過ぎた時、何かを閃いたのか
巨大化した針の一本に飛び乗り、そのまま巨人の膝に刺さった
「思った通りです」
宝貝の集合体であるが故にその表面は、非常に登りやすい状態になっていた
払い落とされる前に火々は登り始めた

126 名前:導果 ◆1000VJ0J4k [sage] 投稿日:2009/02/04(水) 22:28:47 0
>124>125
「くくく!こんなものかね!まさに蚊の刺すようなものではないか!」
大崑崙の頭部部分に鎮座する導果は複雑な印を結びながら笑う。
大崑崙は導果に操作されるまま腕を上げ、頭部の導果を守る。
逆に言えば頭部以外の防御は一切なく、放たれた巨大な針は膝や肘に突き刺さる。

それもそのはず、操縦者たる導果さえ無事ならば大崑崙の耐久力で凌ぎきれるからだ。
針を突き刺したまま構わず動きを続ける。
間接部分に刺さってはいても構わずに!
バキバキと突き刺さった針を折りながら進むのだ。

「ん?懐かしい顔でも見つけたのかな?」
膝に突き刺さった針を足がかりに大崑崙に上り始める火々に気付き、導果は残酷な笑みを浮かべた。
この大崑崙はシャンバラでの戦いで倒れた多くの宝貝にて構成されている。
追跡、逃亡問わず、だ。
術を持って練り上げてその一体一体の力を導果は引き出すことができるのだ。

そして胴体部分をよじ登る火々は見覚えのある宝貝を目の当たりにするだろう。
共に厨房にあり、追跡に旅出ていた宝貝。
名を霊蔵庫という。
その力も直ぐに思い当たったはずだ。
「火々よ、旧知の者の術で葬ってやるのは私の情けだよ!
霊蔵よ!その力を我が為に解放せよ!放熱結界展開!」
導果が放った呪文が大崑崙の身体を這い、霊蔵の原体へと流れ込む。
それと共に青白く光り始める霊蔵。

直後、大崑崙の周りの空気は凍りつき、ダイヤモンドダストが舞う。
逆に大崑崙から少し離れた場所には熱風が吹き荒れるだろう。

霊蔵庫の能力は熱の分別。
周囲の熱を排出する事により、極寒の世界を作り出すのだ!

127 名前:千本 ◆/EORinH9pI [sage] 投稿日:2009/02/04(水) 23:34:52 0
「ちっ…、あんな程度じゃ針治療にもなりゃしないか…
 やっぱり、頭になってるセンセイを直接叩かなきゃ…」
地面に体を固定したままの状態で、天を突くほど巨体を見上げる
針は確かに刺さったが、これと言って影響が出た様子はない
物理的な耐久力が桁違いなのだ
ここに居るメンツだけでは、こんな化け物を直接倒すなど不可能である

「あの鍋女、僕の針を利用して直接取り付いた!?
 何をするつもりだ?」
大崑崙の体をよじ登っていく火々鍋の姿が見えた
しかし、直ぐに導果による妨害が開始された
いきなり大崑崙の周囲が凍り付き始め、更に外側の周囲に熱風が吹き荒れ始めたのだ
取り込んだ宝貝の力を利用しているのだろう
千本の居る場にも、熱風が襲いかかって来た

「ぐうぅぅ…
 僕を焼き、鍋女を凍らせて一気に勝負を着ける気か!
 僕を…舐めるなあぁぁっ!」
その一言と共に、いきなり千本の体が熱気を帯び始める
千本は、自らの扱う針に熱気を込めることができる特殊能力を持っている
それは、針を原体とする己自身も例外ではない
しかし、金属性である彼は、普段苦手とする熱の力を出そうとはしない
だが今は、そのままの状態で居るよりはこの熱風に耐えることはできる

「センセイ…、僕はね、普通の宝貝じゃないんですよ…
 ただの道具宝貝に戦う力を植えつけられた準戦闘用宝貝…
 ですから、内包している仙気は武器宝貝と同等以上のものがあるんですよ?
 だから、驚いてくださいね、センセイ…」
そう呟くと、熱風の中で一本の針に仙気を込め始める
自分の中に残る仙気を有りっ丈、注ぎ込み始めたのだ
それは、凄まじい熱風の中で小さくとも強いうねりとなって逆らっていた
今、千本は自らの命をも引き換えにするつもりで捨て身の策を講じようとしている

128 名前:火々 鍋 ◆TE9XPeSK0E [sage] 投稿日:2009/02/07(土) 02:52:41 O
順調に登っていく中、火々はそれを見て愕然とした
それは、火々の兄弟子にして、他の追跡隊に居た霊蔵庫の現体に手をかけていたからだ

瞬間、導果の力によって霊蔵の能力が発動し
火々は声を上げる間もなく凍りついた。
火々にとって霊蔵の能力は対にして最悪の力
それを間近で受けてしまったのだから一溜まりもない

凍てついた火々はそのまま重力に逆らわず真っ逆様に落ちていく
そのまま落ちてしまえば現体ごと粉々になるのは間違いない

その時、何かの取っ手に引っかかり、間一髪の所で難を免れたが、その偶然も直ぐに無駄となるだろう


「情けないのぅ情けないのぅ」
暗闇の中、聞き慣れた声が聞こえる
「魔炎とまで呼ばれた儂の孫がこの体たらくとは…」
忘れる訳がない…これは超えなければいけない者の声…炎々鍋
火々の祖父に辺り、火力が有りすぎて隠居という名義で軟禁されていたのだが、隙を見て逃亡した。
火々の追っている宝貝の一つである
「これ…起きぬか火々」
目を見開くと、そこには邪な笑みを浮かべた炎々がそこに居た
「…あれ?」
「呆けとる場合か、お前さんは今あの若造の手によって、死の淵をさまよっておるわけじゃが…
 儂から助け舟を出さない訳でもない…断るならば、このまま落ちて粉々に砕けるがよい」
さらに炎々が邪な笑みを強め迫ってくる
本心からいけば、断りたい気持ちで一杯だった
しかし、ここで断ると言うことは同時に自分の死と導果の手によって様々な悲劇を止められないことに繋がっていく
「…理由はなんなのですか、あなたが其処までする理由は」
そう訪ねると炎々は笑みを消し、怒りを露わにして火々に返す
「あの若造!儂を騙した上にこんなガラクタの混ぜ込みおって許さん…楽には死なせんぞ
 じゃからの儂のかわいい孫よ…儂が力を貸そう…あの若造を…あの若造を消し炭にしておくれ」
と炎々は火々の返答を聞かず、火々の体に腕を突き立て、そのままズブズブと体内に侵入してきた

氷漬けになった火々は、引っかかっていた鍋ごと落下した。
だが、その瞬間、共に落ちた鍋が火々に吸収され、火々を黒い炎が包む

129 名前:導果 ◆1000VJ0J4k [sage] 投稿日:2009/02/07(土) 23:29:24 0
>127>128
放熱結界を発動させた後、導果は満足気に周囲を見回していた。
自身の作り上げた大崑崙のその力によっていたのだ。
周囲にはダイアモンドダストが舞い、取り付いていた火々は凍りつき落ちた。
その極寒世界を一歩出れば灼熱の突風によって吹き荒れた荒野。
金属性の千本はひとたまりもあるまい。

ここに導果は完全勝利と、仙界での勝利を確信した。
「くはははは!見たか!
最早私は道具の域を完全に超えた!
仙界よ!待っていろ!私の存在を認めさせてやる!」
高らかの勝利宣言の後、漸くその異変に気付く。

熱風に晒された荒野に気配がする。
声ははっきりと聞き取れないが、確かに千本は生きていた。
それだけではない。
凍り付いて落ちたはずの火々が黒い炎に包まれているのだ。

それは勝利に酔っていた導果の気分を害するに充分であった。
「宴の幕も下りようという時に無粋な!
役割を終えた道具は大人しく退場しろ!」
再び印を結ぶと、それに呼応するように大崑崙は大きく手を振り上げる。

その手は無数の雷が束になったように変形し、横薙ぎに振るわれる!


大崑崙の足元の火々に、そして千本に。
無数のかみなりの鞭は全てを飲み込みは介すべく石畳を砕きながら迫るのだ!

130 名前:火々 鍋 ◆TE9XPeSK0E [sage] 投稿日:2009/02/10(火) 19:01:35 O
雷の鞭の束が迫り来る。
その時、火々を包んでいた黒い炎は消え、ゆっくり瞼を開いて鞭の束を堪忍する
「…クカカカカ、たかがその程度か若造」
火々らしからぬ発言と邪悪に歪んだ笑みを浮かべると次の瞬間、火々の姿はそのまま鞭の中へ飲み込まれていった

「クカクカカカカッ!ククカカカカッ!」
しかし、不気味な笑い声は消えずに残っている
それは、火々がまだ無事でいるという事実でもある。
笑い声は徐々に導果の元へ近付いていき、急に消えた

「女の体ではあるが…やはり、若い肉体はいいのう」
導果が気がついた時には火々は導果の背後で仁王立ちしていた。
だが、その出で立ちは先ほど導果と対峙していた火々とはうって変わっていた
邪悪な笑みを浮かべる両目は紅く染まり、黒い炎を纏う左腕はまるで鉄(クロガネ)のように黒く怪しく輝く
「我が孫ながら発想は良かったが、ツメが甘かったな
 だが、儂のように体内を溶かしながら進めば…分かっていても何もできなかったであろう」
火々の背後には、まだ煙を上げている穴があった。
「さて、茶番もここまでにするかな」

131 名前:運金[] 投稿日:2009/02/10(火) 20:43:08 O
あげ

132 名前:導果 ◆1000VJ0J4k [sage] 投稿日:2009/02/11(水) 22:29:09 0
>130
それは正にのた打ち回る蛇の群れ。
石畳を粉砕しながら雷の鞭の束は薙ぎ払われた。
飛び散る破片に舞い上がる土煙。
それに晒されて生きていられる者などいないと確信を持っていたのに。
導果の表情に笑みは浮かばなかった。
荒れ狂う雷鳴の中でも確かに火々の笑みは耐える事無く続いているのだから!

土煙を凝視する導果の背後、それは突如として現れた。
>「女の体ではあるが…やはり、若い肉体はいいのう」
背後に火々が仁王立ちしている。
しかしその気配は火々であって火々ではない。
完全に背後を取られながらも導果は振り向かなかった。
否、振り向けなかった。
道具の宝貝でありながらも、今ここで動けば殺られる直感で感じていたのだから。
そしてその背後の者の正体も察していた。
「ご老公、あなたには大崑崙の動力、八卦炉の一卦をになうと言う重要な役割を与えていたつもりでしたがねい。
満足せずにわざわざ出て来られるとは、流石は亀の甲・・・!」
勿論判っていた。
騙し、薬で無力化したのだ。
隙あらば逆襲をしようと思っていることなど。
しかし、そのような隙を与えるほど導果も不用意ではない。
原体に戻してしまったからには完全に無力と思っていたが、ここで火々と融合を果たすとは流石に想定外であったのだ。
背を向けたまま顔を引きつらせながら密かに手は字を描く。

>「さて、茶番もここまでにするかな」
「左様ですな!今一度原体に戻し大崑崙に組み直して差し上げよう!」
言葉と同時に導果は大崑崙を離れ宙を舞う。
それと同時に手から字は零れ落ち、大崑崙へと吸い込まれていく。
こうも近すぎると放熱結界も意味を成さない。
そこで苦し紛れに作動させた大崑崙の昨日、【土角結界】。
沼地で火々を閉じ込めた泥の壁が今一度火々の足元から競りあがってくるのであった。

133 名前:導果 ◆1000VJ0J4k [sage] 投稿日:2009/02/16(月) 23:32:26 0
「小賢しいわ!」
足元から競りあがってくる泥の柱を見て火々は、否、炎々は黒い炎を全身から噴出させる。
その高温に泥の水分は一瞬にして消し飛び、土は陶器になる暇もなく塵となって霧散した。
「クカカカカ!不出来な孫と同じと思うなよ!逃すか!!」
塵を蹴散らし炎々は宙を舞う導果の後を追い飛んだ。
そして間髪いれずに黒い炎に包まれた手刀で導果を貫いたのだ。

胸板を貫かれた導果は声を上げるまもなく黒い炎に包まれた。
あっけない勝敗、かに思えたが、そうでないことは当の炎々が一番良くわかっていた。
あまりにも手ごたえがなさ過ぎたからだ。
「ふふふ、簡単な幻術に引っかかっていただけるとは。
さて、あなたがどうやって倒されたか、再現しようではないですか。」
声の主は導果。
大崑崙の足元で悠々とした笑みを浮かべながら手を上げていた。
それと共に大崑崙から八つの水球が放たれ、炎々を取り囲む。

「己、小癪な!」
炎々は黒い炎を最大限に噴出させるが、八つの水球の囲いを破る事はできない。
そう、できないのだ。
「くくく、無駄だと判りませんか?
全開は大掛かりな陣を用意しましたが、この大崑崙をもってすれば指先一つで再現できる。
水角を歪ませた狂水式八卦陣です。
己の強すぎる炎でメトルダウンを起こすがいい。」
そう、炎々が魔炎と呼ばれる理由。
それはあまりにも強すぎ、制御の聞かないその火力にあった。
炎々自身の強すぎる火力を逆利用し、自滅を誘引しているのだ。

狂水式八卦陣の内側では黒い炎が濁流となって渦巻き、既に炎々の姿は見えない。
自分の強すぎる炎に焼かれ、炎々は原体に戻るだろう。
導果の完全勝利である。
そう、炎々が相手ならば・・・

己の勝利を疑っていなかった導果はこの後驚愕の光景を目にすることとなる。
黒い炎の濁流が徐々に小さくなっていき、一点に集まっていく。
そしてその炎の色は黒から赤、そして白へ。
ついには光輝く黄金へと変化していくのだから。

134 名前:導果 ◆1000VJ0J4k [sage] 投稿日:2009/02/16(月) 23:32:36 0
「なっ・・・?どういうことだ?炎々翁にはこのような力はないはずっ!?」
眩い黄金の炎に手を翳し、目を細めながら驚く導果。
直後、八つの水球は破裂した水風船のように飛び散り、蒸発しつくした。
陣から解き放たれ降りる【ソレ】は・・・
「炎々・・・いや、火々・・・なのか?」
「・・・さあ・・・ね?」
恐る恐る尋ねる導果に対し、火々はどこまでも穏やかであった。
メトルダウンを起こす瞬間。
最大の魔炎の中、火々は炎々を越え、進化したのだ。
最強の火力を持ちながらソレを制御する存在へと。

火々はゆっくりと手を上げる。
その動作に導果は最大級の危険を感じ反射的に大崑崙を動かした。

大崑崙のては巨大な壁となり、火々を叩きつぶさんと繰り出される!
が・・・その壁が火々に届くことはなかった。
間接に突き刺さった千本の針。
砕かれ折られたその針の先端が、今、遂に大崑崙の間接の中心部を捉えたのだ。
「導果。無駄だよ。
あんたは道具でありながら道具をないがしろにしすぎた。
逃亡した宝貝も・・・追跡してきた宝貝も・・・」
ふとよぎるのは鉄甲の最後の言葉。
揺れる【心】に苦しんでいた鉄甲すらも導果は弄び利用していたのだ。

「ば、馬鹿な・・・!私の大崑崙があんな針ごときに!
う・・・く・・・寄るな!よる・・・っ・・・」
大崑崙が動きを止め、身一つになった導果は脆かった。
圧倒的なプレッシャーで歩み寄る火々に取り乱し、後ずさりをするが・・・
最早逃れられるはずもなかった。

「ああ、そうさ。千本の針だけじゃない。
それをきっかけに大崑崙を構成する宝貝たちがあんたを拒否したのさ。」
悲しげに諭すような火々の声。
そしてその手は導果の胸を貫いていた。
「く・・・くそう・・・私が・・・!道具である事から脱却した私が・・・」
導果の最後の言葉だった。

「心を踏みにじったあんたは道具にすらなれないのさ・・・。」
悲しげに原体に戻った導果筆を握る火々は夜空を仰ぎ見ていた。

        シナリオ2・享楽都市シャンバラ 終劇

135 名前:導果 ◆1000VJ0J4k [sage] 投稿日:2009/02/16(月) 23:34:34 0
はい、チェイサーズ2終劇にございます。
最後まで息が続かなかったのは私の不徳の至り。
これからの課題にしたいと思いますですよ。

参加してくださった皆さん、ROMしてくださった皆さん。
お付き合い頂きありがとうございました。
お疲れ様でした。
とても楽しかったです。

それでは、またいつか、どこかで。
再見。

【擬人化】チェイサーズ【TRP】

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