1 名前:"超監督"カオスルーラー ◇cR7CVi4c.o[sage] 投稿日:2009/08/09(日) 12:50:36 0
神聖ミルディアス王国暦315年―――

沈む魔王城から垂れ流された"迷宮力(めいきゅうちから)"は、
世界全域を混沌の渦巻くダンジョンへと作り変えようとしていた。
人々を震撼させる謎の冥魔獣、異世界連結、交通渋滞、税率上昇。

―――だが、そんな絶望的な状況に立ち向かう組織があった。

集うは、超一流の能力を持った人格破綻者。
並びに財政破綻者、及び設定破綻者。
彼らに与えられた称号は、公務員。
身に纏う装備は、軍の横流し品。


これは、人生と言う名の迷宮に挑むロクデナシ共の物語である。

2 名前:【前回までのあらすじ】 ◆cR7CVi4c.o [sage] 投稿日:2009/08/09(日) 13:02:24 0

―――"オペレーター"は戦慄する。
「きゃああああっ!?
 魔力波形パターン虹! フィールド絶賛拡大中―――"MAY-Q"反応ですっ!!
 セーフティデバイスリリーヴしちゃってもいいですかっ!? いいですよねっ!?」

―――"メカニック"が叫ぶ。
「慌てるな皆の衆!! こんなこともあろうかと……こんなこともあろうかと!!」

―――"チーフ"がごねる。
「…げ。あそこ上海亭じゃない? あー…今のは誤報よ! 見なかったコトにしましょ」

―――"セクレタリ"が窘める。
「僭越ながら局長。これは恩を言い値で売りつける絶好の機会であります」

―――"ドクター"は目を逸らす。
「……処置なし。バカにつけるクスリなら、とっくに売り切れてるわよ」

―――"コック"が溜息を吐く。
「アンタたち、最後の晩餐くらい黙って食べられないもんかねぇ」

―――修道女が糾弾する。
「あーっ! ひょっほひひはん? ほへははひほ!(字幕:ちょっと兄さんソレ私の)」

―――破壊者は憮然としていた。
「……ふひひほほほひへははははへふは(字幕:口にモノを入れたまま喋るな)」

―――"マスターミルダンティア"は動かない。
「明鏡止水――――闇鍋定食」


          ・―――― 第一話『こちらみ!』 ――――・


3 名前:"超監督"カオスルーラー[sage] 投稿日:2009/08/09(日) 13:03:45 0
●はじめに
『こちらみ!』は、参加者が捏造したキャラクターや一発ネタを通して、
ゲーム/アニメ/ラノベっぽい世界で適当にストーリーを紡いで遊ぶスレだ。
ただし台詞はアドリブ。BGMはランダム。超監督はニートが仕様なので気をつけよう。


○世界観説明
剣と魔法のファンタジーがベース。
公序良俗に反しない範囲で何でも有り。
異空間や異世界が頻繁(はんざつ)に現れる。


○利用上の注意
推奨動作環境:積極・能動・自発・自立・覚悟・自己責任・精神年齢18歳以上
サポート対象外:消極・受動・追従・依存・甘え・他力本願・精神年齢18歳未満


○キャラクター作成テンプレート
【名前】
【年齢】
【性別】
【容姿】※
【性格】※
【自由記入欄】上記以外の項目を任意に追加記入可。

※※迷ったら「すごい/ふつう/がっかり」から好きなのを選んでくれ。

4 名前:"超監督"カオスルーラー[sage] 投稿日:2009/08/09(日) 13:04:58 0
○共有NPC (N:なんとなく P:プレイヤー C:キャラクター)
忙しくてまとまった時間はとれないが、なんとなく参加したい。
キャラクター作るのは面倒だが、単発PCじゃ物足りない参加者のために、
いつでも誰でも気軽に動かせる、出来合いのキャラクター群を用意してみた。

・"オペレーター"ミーア:操作手。落ち着きの無い娘
・"メカニック"ウリバー:整備士。落ち着きの無いおっさん
・"チーフ"ナーヴァ:局長/作戦部長。落ち着きが無い方の29歳
・"セクレタリ"マーヤ:秘書/補佐官。落ち着いた妙齢
・"ドクター"アイネス:医療/技術顧問。落ち着がある方の29歳
・"コック"ホーマ:料理人。落ち着いたおばちゃん
・"マスターミルダンティア"ラガン先生:師匠。曖昧な決戦存在の爺さん

勝手に新しい共有NPCを生み出して増やしてもらえれば、モアベター。
その場限りの単発PCを捏造してネタを投下してくれるのが、ベストだ。
繰り返すが、誰でも使用可だから各自で演りやすいように微調整してくれ。
場合によっては人物描写の整合性がなくなるかもしれないが、そこは割り切ろう。


○舞台裏
http://jbbs.livedoor.jp/study/10466/


●最後に
はじめに"超監督はニート"と所信表明をしておいた。
だが、このスレに於いては"絶対権力を有する"ニートだ。
有事の際には超監督の最終判断が、あらゆる要素に優越する。
"最終判断"の出番が来なくていいように、お互いを認め合っていこう。



―――――さあ、物語を始めようか。ただし適当に。

5 名前:"紫煙の死神"ナギ・セノー ◆LtWG0drAw. [sage] 投稿日:2009/08/09(日) 13:06:03 0

「―――くそっ!
 何故だ……何故動かないシャイニングエックスっ!?」

熱血かつ芝居がかった絶叫が、二番ケージ内部に反響する。
拡声器を通したマッドな声が、強化フェンス越しに応えた。

『言っとくが、機体の整備は完璧だぜえ!
 後はお前さんの根性次第だ、シロー!』

「ああ。わかったぜ……だけど、俺の名前はナギだ!」

ケージ上部に張り出した管制室から追い討ちが掛かる。

≪……貴方の集中力が足りていないだけよ、シロー君≫

「―――だから、俺はナギ! ナギ・セノーだっ!!」

≪シローさん、起動シークエンス・リトライに入ります≫

最後に、オペレーターの事務的な宣言が空しく響いた。


【名前】"紫煙の死神"ナギ・セノー
【年齢】17
【性別】♂
【容姿】英雄伝承歌の主人公
【性格】中二病患者
【自由記入欄】
【装備】※精霊機神"シャイニングエックスFb(ファイアーボンバー)"
【特技】高機動戦闘
【階級】少尉
【パーソナルコード】"ライダー"(自称"エレメンタラー")
【備考】何故か所属部隊が、ことごとく壊滅の憂き目に遭う疫病神

 自分がカッコイイと思う偽名を勝手に名乗っている。本名はシロー。
 酒に弱く煙草を深く吸うと咳き込むが、格好を付ける為だけに嗜む。
 搭乗機も実は機神などではなく、精霊機をフルカスタムした趣味機。
 精霊力をE.F.(エレメンタルフォース)と呼び通すのがジャスティス。
 搭乗時・非搭乗時を問わず、天性の精霊力に任せた突撃戦術が主軸。
 
※正式名称:精霊機"ヴァローナ"
 型式番号:MEFV-X07K Custom Edition
 機体概要:全高約7mの汎用人型魔導機装(光の精霊神と脳内契約)
 攻撃武装:精霊力ブレード(命名"クラウソラス")
 防御武装:精霊力フィールド(命名"アインソフオウル")
 動力機関:精霊力エンジン(命名"マクスウェル")
 特殊装備:肩部魔導スピーカー(命名"オルフェウス")


※精霊機とは……精霊力を主動力源とした大型魔導機械の総称である。
 土木建築用重機から軍用機まで、現在は普及過渡期の段階にあり、
 搭乗者が契約する精霊のランクに応じて性能が個体毎に異なる。
 様々なサイズや形状のバリエーションが生み出されている。

6 名前:Interlude ◆LtWG0drAw. [sage] 投稿日:2009/08/09(日) 13:07:32 0
【始動/Aパート】

「うー。あっついわねー」

袖のダラけたカットソーにホットパンツ姿の最高責任者が管制室に入って来る。

「それなら、空調設備導入の予算を取ってらっしゃいな」

白衣のポケットに手を突っ込んだままの金髪の美女は、どこか涼しげだ。

「なーんであんたが管制室に居るわけ?」

「あの、チーフ! 私がセンパイを呼んだんです。その――」

「――仕事中よミーア、その呼び方はやめなさい」

「すみません、センパ…ドクター・アイネス」

なんとなく自己主張に失敗したオペレーターは、魔導液晶に視線を落とした。

「技術顧問としてパイロットのコンディションをモニターしているだけよ。
 貴女こそ、今ごろ顔を出した理由を聞かせてもらいたいものね…
 …ナーヴァ局長兼作戦部長?」

「ん。市長から入電ー。こないだの損害請求と抗議文が何枚も何枚も―――」

通常の冥魔獣はまだしも、対巨獣戦が毎度の様に長時間に及べば、
戦闘継続時間に比例した市街地への被害は、今後も蓄積の一途を辿る。
度重なる予算委員会からの圧力。市民感情の悪化。彼女の胃壁は限界だった。
短期決戦の切り札である精霊機による戦果と、その政治的影響に賭けるしかない。
ナーヴァは額に手の甲を当て、喧騒が続く眼下の起動実験場へと鋭い視線を送った。

≪整備した俺を信じろ!! いや、俺が整備したマシンを信じろ!!≫

≪ウリバーさんの想い、無駄にはしない!! ようし、もう一回だ……≫

「――技術主任とパイロットがアレでは、防護壁が何枚あっても足りないわ」

「整備の腕と精霊力を買ったんだけどねー。ちょっち失敗だったかしら?」

ケージ内では、起動テスト初日からクライマックスを迎えようとしていた。

≪う、うおお…美しい緑の大地を……!
 この青い惑星(ほし)が回り続けるためにっ!!≫

≪クリスタルが反応してやがるな―――いけるぞシロー、今だ!!≫

≪≪"―――エレメンタル・イグニッションッ!!"≫≫

「…あ。ヴァローナ、再起動成功ですっ!」

「ホンっとに、あつっくるしいわねー」

「……それには同意しておくわ」

書面上は夏季休業期間真っ只中の三人が、それぞれ安堵、倦怠、呆気の溜息を吐いた。

7 名前:Interlude ◆LtWG0drAw. [sage] 投稿日:2009/08/09(日) 13:08:15 0
【始動/Bパート】

<<……警報であります>>

けたたましいサイレンと、やる気の無い声が鳴り響いたのは、
ヴァローナが初回起動に成功してから僅か数分後の事だった。

<<王都魔導波タワー付近に"MAY-Q"フィールド発生であります――>>

「警報!? なーんでマーヤがアナウンスしてるのよ?」

「あの…それは、私がここに居るからじゃないでしょうか」

数少ない仕事を奪われ、オペレーターの存在意義はさらに後退した。

<<――冥魔獣3・冥魔巨獣1の反応が確認されたのであります>>

「彼女の声……覇気というモノが全く感じられないわね」

「とにかく―――総員、丙種戦闘配置よ。ブリッジに上がって!」

宣言された丙種戦闘配置は、対冥魔獣戦を想定した警戒態勢だ。
臨戦態勢及び戦闘準備を意味する甲/乙種でないのには理由がある。

「どうするつもり? あの子、とてもじゃないけれど使いモノにならないわよ」

「―――"ブレイカー"を出すわ」

「生憎だけど、彼は電池切れ。おまけに非番で洗濯当番……今頃は甲板上の人ね」

「あっちゃー。洗濯物出すの忘れちゃってたわ」

「こう忙しいと、お洗濯もままなりません」

「ナーヴァに限っては、ガサツなだけよ」

「うっさいわね。"シスター"の方はどうしたの?」

「上海亭です」

「ラガン先生は?」

「盆栽いじりです」

「な…なら、仕方ないわね!」

ブリッジに上がれば手の空いている者が集まってくると思いたかったが、
建前上は夏季休業中だ。人員が確保できないという可能性も充分に有り得た。
そういった際、当局では通信機器の不具合で事態を把握していなかったコトとする。

「……。(ナーヴァのこの表情……無かったことにするつもりだわ)」

「…。(ごまかす気ですね、チーフ)」

<<……繰り返すのであります。
  王都魔導波タワー付近に"MAY-Q"反応。
  冥魔獣3・冥魔巨獣1が確認され――――>>

本来ならば市民並びに関係者各位を恐怖のどん底に叩き込む筈の警報は、
今回に限っては、どこまでも棒読みで加速も停滞も予感させないモノだった。

8 名前: ◆LtWG0drAw. [sage] 投稿日:2009/08/09(日) 14:05:27 0
【"超監督"◆cR7CVi4c.oが、前回のあらすじ解説しか仕事をしてないのは仕様だ。

 ――――断片的かつ混沌とした情報ばかりで、何がなにやらわからない。
 初見じゃ上級者向けに見えるかもしれんが……残念ながら、こういうスレだ。
 甲板・ブリッジなんかがあるコトから判る通り、艦(ふね)の内部から物語は始まった。
 
 1.精霊機ケージ……"メカニック"が整備作業中。
 2.ブリッジ(艦橋)……不特定多数の局員が集結中。
 3.甲板(天候:晴れ)……壊し屋が洗濯中。
 4.上海亭(王都の大衆食堂)……修道女が殴り込み中。
 5.その他の場所……状況、特になし。自由。
 
 現在、戦艦"リリィ・ガンガー号"は王都湾上に浮かんでおり、周りは海。
 街は魔導技術先進国の王都だ。都会にありそうな場所/モノなら大抵揃ってる。
 参加希望者は好きな場所に登場するなり、ネタを投下して反応を見るなりしてくれっ!
 
 ―――不明な点は舞台裏(>>4)まで、どうぞお気軽に!】

9 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/08/09(日) 17:09:30 0
なにこれこの前と違うw
アッシュはどしたの?

10 名前:エニーシャ ◆IZh0JJtPKA [sage] 投稿日:2009/08/09(日) 17:37:36 0
【名前】エニーシャ・ローデス
【年齢】18
【性別】女
【容姿】金髪、引き締まった体つき。
【性格】生真面目(空回り型)、貧乏性
【女度】がっかり

【特技】剣技
【階級】少尉
【装備】二振りの魔力剣(バスタードソード、ショートソード)
【契約精霊】剣の精
【目標】借金完済

【備考】
・半年前に精霊との契約を終えたばかり
 …そのため制御が甘く、余計なものを壊しては管理部にorz
・もとは王都警備隊の有力ルーキー
 …が、ミスで先々代の王墓を吹っ飛ばし、損害賠償で破産した挙げ句に魔捜局へ左遷。





<<……警報であります>>

サイレンが船内に鳴り響いた時、エニーシャは同室の友人とチェスに興じていた。
右手に握ったクイーンを額に当て、やや平坦な口調で絞り出すようにぼやく。
「マーヤ補佐官…せめて形だけでも、もう少し意欲を」

「しょうがないよー。人いないし、暑いと働きたくないし、この局ってお金無いし」
そう言いつまらなそうにチェス盤を片づける少女は、軍学校時代からの友人である。
名前はキファ。硬質な印象の彼女とは対照的にころころと表情の変わる、明るい少女だ。

「それは程度の差はあれ、どの部署も同じだ。警備隊でも一時は飯すら――」
「お金ないし」
「廃棄同然の」
「お金ないし」
「食料庫が鼠で」
「“また”支給の魔力剣折っちゃったんでしょ? 一本うん百万の」
「パンに……噛み跡…………が……………………」

徐々に勢いを無くすエニーシャに、笑顔の情報通がとどめをさす。
「で、こないだの魔術制御検定受かった?」
「…………さて、支度をしようか」
「そろそろ局が負担してくれなくなるよー」
「言うな…この年齢で二度目の破産は御免だ…」

項垂れつつ、戦闘服を着込む。
魔力繊維を織り込んだ黒のパンツ――但し古着。
愛用の防刃ジャケット――愛用しすぎて多分耐久性能はとうに越してる。

比較するのも悲しいほどに真新しい二振りの魔力剣を最後に背と腰の剣帯につなぎ、準備完了。
今回は、どうか折らずに済みますように。



――麗しき財政破綻者の物語が今、始まる。

11 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/08/09(日) 17:51:20 0
マーヤ「最初にブリッジに来た方には黒板けしが落ちるのであります。」にやり

12 名前:メイ・リーファ ◆CGsmHeQJubOP [sage] 投稿日:2009/08/09(日) 19:10:57 0
【名前】メイ・リーファ
【年齢】16ね。
【性別】女の子ね。
【種族】竜神ね。敵はとてもがかりするよ。
【属性】火炎ね。
【特技】太極刀ね。かなーり強いよ。
【髪の毛の色】両把シニヨン茶色いね。つの生えてるけどお団子にかくしてるよ。
【容姿の特徴・風貌】目は緑いね。龍柄のチャイナドレス着てるよ。
【性格】ふつうね。
【趣味】料理ね。すごいよ。
【嫌いなもの】たばこね。たばこ吸うのは死ぬか?
【好きな食べ物】甘いものね。とくにあんみつ!
【階級】そんなものないよ。
【簡単なキャラ解説】このふね居心地がいいね。気にいたから住んでるよ。
【一言】よろしくおねがいするよ!

13 名前:メイ・リーファ ◆CGsmHeQJubOP [sage] 投稿日:2009/08/09(日) 19:19:22 0
>>9
アシュ? それスパイスの名前か? おいしいか? 
警報鳴てるよ。マヤやる気ないよ。おまえブリッジ行かなくていいか?

>>11
むー。危険のにおい! リリガンガこわいところね。

>>10
(探し物をしている。貧乏臭い部屋を見つける。入り口からひょっこり顔を出す。)

着替えしてるか? いそがしいか?
エニシャはたぶんエプロン持てないね。料理しないね?
キファ持てたらあとで取りにくる!

(どこかに行く。「走るな!」と張り紙してある廊下を走る。)

>>7
(階段をトコトコのぼる。上には甲板がある。ドアを開ける。目を細めて潮風を吸い込む。)

お日様! 気持ちいいね! あはー。うみねこうるさいよ!
おいブレイカ! 食堂エプロン足りないよ!
ホマ調理場に立たせてくれないね。とても困てるよ。洗濯はやくする!

(洗濯かごが置いてある。爪先で蹴って催促する。はやくはやく!)

14 名前:名無しになりきれ[] 投稿日:2009/08/09(日) 22:24:43 0
アッシュなんていないよ

15 名前:名無しになりきれ[sage ] 投稿日:2009/08/09(日) 23:54:44 0
アッシュ、その名を持つ特務大尉は甲板にいなかった。
なぜなら船が大きく揺れた拍子にたたらを踏んで波間の人となったからである。
この世の無常を噛みしめるかのように海中に没するアッシュ。
それを目撃したのは白き輝きを放ち、風に揺れる洗濯物だけであった。
…とかなんとか。

16 名前:エリアス ◆HjQYbfcR9Q [sage] 投稿日:2009/08/10(月) 00:28:51 0
【名前】 アクエリアス
【年齢】 永遠の夏厨
【種族】 不詳
【性別】 ♀
【容姿】年中夏休み
【性格】年中行楽気分
【装備】額/ゴーグル
    上半身/タンキニにパーカー
    下半身/ショートパンツ
    足/サンダル
    右手・左手/精霊魔導銃“ツインマーキュリー”(外見は水鉄砲)
乗り物/精霊魔導器“タイタン”(外見は車輪の無いケリンチョ)
【得意属性】水

>7
世界は未曾有(みぞゆう)の事態に陥っていた!

><<……繰り返すのであります。
  王都魔導波タワー付近に"MAY-Q"反応。
  冥魔獣3・冥魔巨獣1が確認され――――>>

ヤバイ。ヤバイ。まじでヤバイよ、マジヤバイ。
MAY-Qヤバイ。
(中略)
とにかく貴様ら、MAY-Qのヤバさをもっと知るべきだと思います。
そんなヤバイMAY-Qに立ち向かう我ら超偉い!

猛スピードで艦内を疾走するはケリンチョ。
良く見ると車輪は無く地上から少し浮いて滑走している。
そのうえに乗っているのはサンダルに水鉄砲のどうみても夏厨です本当にありがとうございました。
「ほいさー!」
勢いよくブリッジへの扉をあける。

>11
「ぎゃあああああああああ!!」
猛スピードでぶつかっては他愛のない悪戯も凶悪な破壊兵器と化す!
黒板消しと言う名の破壊兵器が顔面にめりこんでド派手にすっころんだ!

17 名前:名無しになりきれ[] 投稿日:2009/08/10(月) 01:43:25 0
お、やべ、精子出そう

ビャッビャッビャ

夏厨の顔面にかかる

18 名前:ナフィス ◆Bn2na9AVLk [sage] 投稿日:2009/08/10(月) 01:57:12 O
【名前】ナフィス(本名不明)
【年齢】??(見た目は20代前半)
【性別】男
【容姿】サングラス、赤髪短髪、筋肉質の長身、顔は整っている
【性格】気まま
【装備】精霊魔導器・ホワイトファング
【所持品】予備のサングラス、ライター、タバコ、財布
【キャラ解説】職を失い街中でフラフラしていた所を拾われ、今は局員の一人として真面目?に働いている。
10歳までの記憶が無いため、実名と実年齢が不明。
しかし本人はあまり気にしていないようだ。
何かに縛られるのが嫌いで暇があればその辺をフラフラしている。
戦闘能力は比較的高いが、戦うこと自体めんどうで嫌いらしい。
ナフィスの精霊魔導器は拳に直接装備するグローブタイプになっている。

19 名前:ナフィス ◆Bn2na9AVLk [sage] 投稿日:2009/08/10(月) 02:00:44 O
【戦艦リリィ・ガンガー号 自室】

>>7<<……警報であります>>

………。
おいおいおいおい!
ふっざけろよ、何が警報だよ。
人が優雅に休憩を楽しんでる時に警報だぁ…?
いくらマーヤちゃんでも俺の休憩を…
<<王都魔導波タワー付近に"MAY-Q"フィールド発生であります――>>
<<――冥魔獣3・冥魔巨獣1の反応が確認されたのであります>>
<<……繰り返すのであります。
  王都魔導波タワー付近に"MAY-Q"反応。
  冥魔獣3・冥魔巨獣1が確認され――――>>
……最悪だよ…。
こりゃ厄日だな今日は…。
しゃあねぇ…諦めてブリッジに向かいますか…。
つーかマーヤちゃんのアナウンスは緊張感に欠けるね。

>>16さて、ブリッジに着いたは良いけど……。
「一人で何をやってるのさ、エリアスちゃん。」
女の子が顔面から転んじゃ駄目でしょ。
ってか、あんまり人集まってない気が…。
>>15あ、洗濯物が干しっぱなしになってるじゃん。
後で中に入れとかないと。

20 名前:名無しになりきれ[] 投稿日:2009/08/10(月) 12:53:04 0
おふ

21 名前:エリアス ◆HjQYbfcR9Q [sage] 投稿日:2009/08/10(月) 13:30:59 0
>19
>「一人で何をやってるのさ、エリアスちゃん。」
「気をつけろ。トラップ“ブラックボードイレイザー”だ!
他にも仕掛けてあるかもしれない!」

>17
顔に液体がかかった。泣きっ面に蜂である。
言葉は良く聞こえなかったが、頭上には白い液体が入ったグラスを持った男がいる。
「カルピスだと!?」
どこからともなく色とりどりのビキニを身に付けたマッチョ男軍団が現れた。
艦内の公序良俗を守る特殊部隊である。
軽快な掛け声と共にカルピス男を神輿のように持ち上げる。
「どっこいしょー!」
「どっこいしょー!」
そして外に向かって勢いよく放り投げた!
「「「どっこいどっこいどっこいしょー!!」」」
カルピス男は空の彼方へ消え去った。ということは何かまずい発言をしたのだろう。
この船では公序良俗に反する言動をするとこうなるのだ。くわばらくわばら。
MAY−Q発生地点を見やり、黒板消しで顔をふきながら呟く。
「今のカルピス男は……MAY-Qから出てきた冥魔獣の一種か……?」

22 名前:名無しになりきれ[] 投稿日:2009/08/10(月) 15:00:39 0
ごめん、テコンV発信させた




ブゥゥン…

23 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/08/10(月) 15:16:36 O
>>22
著作権違法で消去しまつた

24 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/08/10(月) 17:36:26 0
マーヤ「作戦成功であります。」にやり
ナーヴァ「甘っちょろいぞ補佐官。」
マ「といいますと?」
ナ「今度は二段重ね白チョークで。基本っしょ。」ぬりぬり
マ「そーなのかー。」

25 名前:名無しになりきれ[] 投稿日:2009/08/10(月) 19:22:09 0
そして、遠距離爆撃機が発射されると

やがて多田野が唸った

26 名前:メイ・リーファ ◆CGsmHeQJubOP [sage] 投稿日:2009/08/10(月) 20:17:16 0
>>14
うん。アシュないね。めずらしスパイスだたか? ホマにきけば知てるかもね。

>>15
ブレイカ飛んだよ! ごめんね! ちょとつよく蹴りすぎたよ。あはー。
ひとりであがってこれるか? たのしいか? わたしもいしょにおよぐか?
あいやー。とおいところに行てしまたよ。

(手を伸ばす。でも腕が短いので届かない。すねる。)

>>17
行儀よくないのだめね。ふねにいられなくなる。いなくなたら楽しくないよ。

>>19
あとでじゃエプロン間に合わないよ! いますぐてつだうといいよ!

(洗濯かごを漁る。誰かの半そでシャツを振る。)

>>20
都の人わたしたち見ると石投げるね。あまり人目につくよくない。夏は、とくによくない。

>>21
ブリジさわがしね。でもマチョ軍団とてもとてもよい仕事するよ。

(ブリッジを見上げる。太陽がまぶしかったので敬礼のポーズをする。)

>>22
おおー。あまりふかいりすると危なさそなの来たね。ロボットの出番か?

>>23
爆発したか? わたし知てるよ。ちょさくけんのかほごしゃかい、たいへんね。

>>24
これも知てるよ。同じのふたつめはハドル高いね。りあくしょんげいにんのかい、たいへんね。

>>25
これちょとわからないね。人間のひこうきなかなかはやいけど、わたしよりおそいよ。

27 名前:名無しになりきれ[] 投稿日:2009/08/10(月) 22:14:11 0
ビュク…ビュクク…

28 名前:エリアス ◆HjQYbfcR9Q [sage] 投稿日:2009/08/10(月) 22:21:47 0
>26
甲板のメイちゃんに敬礼し返し、そのポーズのまま固まる。
MAY−Q発生地点でとんでもない光景が展開され始めたからだ。

>22-23
ロボットが出たり爆発したりしている。

>25
飛んできた飛行機が爆撃を仕掛けると
アッ――――!! などという奇声まで響き渡る始末。

今回のMAY−Qはいつにも増してヤバそうな事は想像に難くない。

29 名前:ラム・ダオ ◆MeEEeH/kao [sage] 投稿日:2009/08/10(月) 22:40:49 0
リリーガンガー号の一室。
そこは青々とした竹の香りが漂い、清廉とした空気に包まれていた。
その中心で鋏を片手に真剣な表情で盆栽に向き合う男が一人。
"マスターミルダンティア"ラガンその人であった。

「あ、センセ?そちらよりこの枝を思い切って行っちゃうほうがバランスがいいですわよ。
それに気脈の流れもよくなってこの子も元気になります。」
盆栽を挟んでラガンに向き合う一人の女。
ふわふわの緑髪、タレ目がちな緑瞳、藤色のワンピースを着こなすラム・ダオである。
どこにでもいるような女性である。
ただ一点、大きな植木鉢を背負っている以外には。

パチンと鋏が音を立て、枝を落とすのと同じくして艦内放送がなり響いた。
<<……繰り返すのであります。
  王都魔導波タワー付近に"MAY-Q"反応。
  冥魔獣3・冥魔巨獣1が確認され――――>>
「あらあら、今は人手もないでしょうに。」
「いくのか?」
おっとりとした言葉と共に歩き出すラム・ダオにラガンが一言声をかける。
それに応えるように歩みを止め、小さく会釈しながら言葉を綴る。

「ええ。森を失ったドルイドを拾っていただいたのに、することといえば艦内の空気清浄くらいでは申し訳ないですし。
猫の手くらいにはなるかもしれませんしね。」
そういいもう一度会釈をし、部屋を出た。

ラム・ダオは森を失ったドルイドである。
森を守るべきドルイドが守りきれずに逃げたのだ。
琥珀で出来た植木鉢【白亜プランター】に神木【ホメオツリー】の苗を植え。
その負い目から放浪していたところを魔捜局に拾われ今に至る。
拾われてから暫くは放心状態であったが、艦内での生活を送るうちに回復してきた。
今ではその能力を使い艦内の澱んだ空気を清浄化してきたが、戦いに赴いた事はない。

>26
ブリッジへ向かう途中、甲板に出て深呼吸。
太陽の日差しを全身で受けるかのように手を伸ばすと、活力が沸いてくるのがわかる。
背負ったホメオツリーも潮風に枝を揺られている。
甲板にははためく洗濯物と、メイの姿。
今日の洗濯当番はメイではなかったはず・・・と少し首をかしげながらも深く考えることは無かった。
「メイー。王都魔導波タワー付近に"MAY-Q"反応がでたのですって!
今日は私も出ようと思うの。ブリッジまでご一緒しない?」
のんびり待ったりした声で甲板のメイに声をかけ、ブリッジへと向かう。

30 名前:ラム・ダオ ◆MeEEeH/kao [sage] 投稿日:2009/08/10(月) 22:41:16 0
【名前】 ラム・ダオ
【種族】 人間
【年齢】 22
【性別】 女
【容姿】 ふんわり緑髪・緑瞳・タレ目
【性格】 おっとりおねいさん
【自由記入欄】
【装備】 白亜プランター・神木ホメオツリー
【特技】 ドルイドマジック
【階級】 中尉
【パーソナルコード】 ディープフォレスト
【備考】森を失ったドルイド僧
    僅かに残った土と神木ホメオツリーを白亜プランターに入れ放浪中に拾われた
    いつも白亜プランターを背中に背負っている。

    白亜プランター:琥珀で出来た鉢植え。丈夫で壊れない。
    ホメオツリー:ラム・ダオの森の神木。30センチほどでは葉ないが枯れてはいない。
           たまに様々な実をつける。

31 名前:名無しになりきれ[] 投稿日:2009/08/10(月) 23:23:55 0
女多目だな
こりゃ精子役が必要

32 名前:名無しになりきれ[] 投稿日:2009/08/10(月) 23:39:02 0
オラオラチンポチンポれいやれいや

33 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/08/11(火) 00:04:54 0
チッ・・・
この女、タマ蹴りやがった・・・

34 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/08/11(火) 00:26:25 0
テコンVって何よw?

35 名前:エリアス ◆HjQYbfcR9Q [sage] 投稿日:2009/08/11(火) 00:38:55 0
>27 >31 >32
「「「どっこいしょー!」」」
マッチョ男軍団が再び出動し三人を船外へ放り投げる。

>33
「サッカーボールを蹴って何が悪い!」

>34
「テコンドーで戦うロボットだな」

36 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/08/11(火) 00:45:06 O
残念だが当然。男らしい最期と言える

37 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/08/11(火) 00:54:59 O
>>34
韓国アニメ
日本のマジンガーZのパクリ
マジンガーZの二年後に放送される
パクリ疑惑がもちあがるとプロデューサーは
三年前から考えていたが入院などして発表が遅れた
その間に日本がパクったと言い切ってそれが韓国世論に受け入れられたのは有名な話
当時韓国は日本の文化は禁止だったため一般人はパクリとは知らず
同じ事例としてはバビル二世、キャンディキャンディ、ドラえもん等が有名
ユンソナが日本に来て
トンチャモンが日本でもやってる
韓国アニメの優秀性と人気が誇らしい
と、ドラえもんをさしてコメントした
ネタのようだが本当の話

38 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/08/11(火) 01:04:12 0
テコンVは実際人気マジンガーよりも上だったけどな

39 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/08/11(火) 01:08:11 O
>>38
条件が違いすぎて比較は成り立たないだら

40 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/08/11(火) 01:11:24 0
マジンガー知ってる奴自体少ない

実際日本でもテコンVの方が知名度高いんじゃないかね

41 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/08/11(火) 01:27:01 O
いくらなんでもそれはない

42 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/08/11(火) 01:35:48 0
お前は社会を知らな過ぎだよ

43 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/08/11(火) 01:41:14 0
>>37-42
いらっしゃい
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1248704603/
私が朝まで話を聞くから

44 名前:"黒衣の魔術師"ブレイカー ◆v/ikj/qTK2 [sage] 投稿日:2009/08/11(火) 02:05:29 0

――――海上の空は、果てしなく青かった。


夏の日差しが陽炎を呼ぶ甲板上に、ドラム缶を運び上げている黒のタンクトップ姿。
中身は全て脱水作業を終えた直後の衣類であり、その重量は非人道的な域に達する。
甲板に張り巡らされた精霊機牽引用鋼線には、すでに大量の洗濯物が風に揺れていた。

「良い風だ―――どうやら、俺は洗濯の神に愛されているらしい」

王都湾上に浮かんだ離れ小島、バハムート級万能戦艦"リリィ・ガンガー号"―――
それが、"ミルダンティアの闇""王都の暗部""連合憲章の格子欠陥""悪の秘密結社"
などと関係者間での好評をほしいままにする特務機関、通称"魔捜局"のアジトだった。

「……その代わり、クジ引きの神には見放されている様だが」

都市部から隔離された"備品にして本部施設"などというわけのわからない共同生活空間。
最低水準の生活環境の維持は、本来の任務に匹敵し得る文字通りの死活問題であり、
その要諦は、局員達の相互扶助協定による庶務の分業体制に集約されていた。

「そろそろ、ノラ達の餌の時間か―――」

先程まで静かだったブリッジが、今は何故か騒然としている。
おそらく、局長のふわふわティータイムが終わったのだろう。
任務を仕上げるべく、魔術師は洗濯バサミを手に取った。


【パーソナルコード】"ブレイカー"
【年齢】20
【性別】♂
【容姿】灰髪/灰瞳/長身
【性格】すっかり丸くなった
【装備】墨色の戦闘服
【特技】次元交錯弦共振励起縮退魔導力場歪曲半径加速制御崩壊特異点領域跳躍魔法
【階級】特務大尉


※ふわふわティータイム……謎の茶会。招かれて無事に帰還した者は少数
※ノラ達……拾ってきた捨て猫が増えすぎて、名前が覚えきれなくなった

45 名前:"黒衣の魔術師"ブレイカー ◆v/ikj/qTK2 [sage] 投稿日:2009/08/11(火) 02:06:37 0

『お日様! 気持ちいいね!』

「ああ……あまりの心地良さに溜息を禁じ得ない」

『あはー。うみねこうるさいよ!』

「そうだな。お前ほどでは無いが」

『おいブレイカ!』

「大声を出さなくても聞こえている」

『食堂エプロン足りないよ!』

「こちらは人手が足りていない」

『ホマ調理場に立たせてくれないね』

「俺が"コック"の立場でも、そう判断する」

『とても困てるよ』

「奇遇だな。今こちらも同様の思いだ」

『洗濯はやくする!』

「――――待て。MaTECに着信だ」

≪やっほー、私よ。いま時間ある? ちょっち聞いて欲しい話があるんだけど…≫

虚空にポップアップしたコミュニケーターウィンドには、上司の笑顔と"LIVE"の文字。
"チーフ"の物言いは普段に比して神妙だ……何らかの緊急事態が起こったと判断した。

※MaTEC(まてっく)……Mana Telekinesis Expansionary Communicatorの略称。
魔捜局員に支給される小型通信機。音声/映像/文字の複合情報を綜合的に扱う。

46 名前:Interlude ◆LtWG0drAw. [sage] 投稿日:2009/08/11(火) 02:07:46 0

『あ、洗濯物が干しっぱなしになってるじゃん』

ブリッジには、いつの間にかクルー達が沸き始めていた。
ナーヴァだけは、どこか魂の抜けたような眼だ。

「…私の分は干されてないけどね」

―――緊張感の無い者。


『ほいさー! 
 ぎゃあああああああああ!!』

衝撃は質量に比例するが速度には二乗で比例する。
マーヤが無表情で小さくガッツポーズをした。

「だ、大丈夫ですか? アクエリアスさん」

―――狡猾な罠を踏み抜く者。


「白い翼に閃光(ひかり)を乗せて!
 灯せ精霊力(きぼう)のイグニッション!
 精霊機神シャイニングエックスファイアーボンバー!
 "超時空エレメンタラー"ナギ・セノー少尉、定刻通りに只今――
 ――参上ぅどわあっ!?」

二連装黒板消しに充填された白粉が騎乗兵の頭頂で解放される。
マーヤとナーヴァはブロックサインで密かに互いを讃え合った。

「……惨状、ね」

―――直前の歴史から何も学ばない者。


「ロクデナシばっかりであります」

彼女が己の所業を祀り上げる神棚は、限りなく低い。

47 名前:Interlude ◆LtWG0drAw. [sage] 投稿日:2009/08/11(火) 02:08:30 0

「――――では、説明しましょう」

ブリッジの巨大なメインモニターに情報が表示される。
ドクターは伊達眼鏡を装着すると、ポインターを手に取った。

「今回、王都魔導波タワーで発生した"MAY-Q"は、"フィールド"及び"ゲート"複合型です」
 フィールド要素は現在、魔導波の正常な送信を阻害し、王都を混乱させていますが――」
 
「あー。そっちには、上海亭の方を片付けた後でシスターに行ってもらいましょう。
 後回しよ、後回し。都営放送の集金、前々から気に食わなかったのよねー」
 
「――問題なのは、ゲートから襲来した冥魔獣の方ね。
 現在確認されている冥魔獣は計4体。M型が3、L型が1です。
 彼らは出現直後に短距離跳躍を繰り返し、現在はミルディネ湾――
 ――つまり我々の現在位置、リリィ・ガンガーの元へ向かっています」
 
「わかったっ!
 都心があんまりにも暑いんで、こっちで水浴びでもしようってんだな?」

「いいえ、違います。
 今回の冥魔獣はそのような知能を持っていないわ。
 彼らが目指しているのは、ずばり、ヴァローナの精霊力エンジンです」

「シャイニングエックスが、この世界を変えるマシンだってコトに気付かれたのか……」

「それも、おそらく違います。
 起動実験とゲート出現が同時だったのは、あくまで偶然であり、
 光源に集まる昆虫の様に、純粋に精霊力に引かれたモノと推測されます。
 あとは、ナーヴァ作戦部長―――?」

「―――ええ。作戦は、こうよ!
 少尉は、ヴァローナでL型を甲板まで誘引。
 各員は、甲板に上がって来たM型を各個撃破して。
 M型を全滅させた後にL型へ一斉攻撃。これを殲滅します」
 
「これは、冥魔獣の"ポーン"が有する行動特性―――
 即ち、"クイーン"を外部の脅威から護衛しようとする…
 …あるいは、その原因を排除しようとする習性を利用した作戦です」

説明中に同時多発的に起こった『○○はおやつに入りますか?』系の質問を、
絶対零度の冷酷さで全て無視したドクターは、充実感と共に伊達眼鏡を外した。


※「"フィールド"及び"ゲート"複合型」
フィールド型:三次立体的に特殊空間が展開されるMAY-Q
ゲート型:二次平面的に異空間へ連結されるMAY-Q

※「M型が3、L型が1」……妖魔獣の大まかなサイズ上の分類
M型/L型:体長2〜3m/体長10〜15m

※短距離跳躍……冥魔獣が標準装備する謎の空間転移能力

※クイーン/ポーン……冥魔獣群を統率する個体/それ以外の個体

48 名前:Interlude ◆LtWG0drAw. [sage] 投稿日:2009/08/11(火) 02:09:22 0

「ときにシロー君」

「ナギだが、何だ?」

「今すぐシャワーを浴びて来なさい」

「何言ってるんだアイネスさん。これくらいのダメージどうってことないぜっ!」

「……その様子じゃ、渡したマニュアルすら読んでいないようね。
 精霊機のコックピット内部は精密魔導機器の塊なのよ?
 粉塵まみれのままで搭乗する事は許可できません」

「―――うおおぉっ!! マーヤさん、あんたって人はーっ!?」

「ひほふひはひほへはひはふ(記憶にないのであります)」

軋み始めた人間関係を余所に、オペレーターが口を開いた。
それは、あまりに普通過ぎて誰も指摘しなかった疑問だった。

「あの! 甲板で戦闘になるということは…お洗濯物、どうなるんでしょうか?」

「作戦の性質上、犠牲になるのは確実だけれど……止むを得ないわ」

「別に、いいんじゃなーい? 背に腹は代えられないもの」

「ず、ずるいですチーフ! お洗濯物、自分だけ出し忘れたからって」

―――事態は、思わぬところで紛糾した。
連合憲章に謳われる基本的人権などという概念が、もし仮に実在するならば、
市民の安全と生活を保障する公的機関に於いて先ず、これが守られるべきである。
議論の終息には、痺れを切らしたチーフが強権を発動するのを待たねばならなかった。

49 名前:Interlude ◆LtWG0drAw. [sage] 投稿日:2009/08/11(火) 02:10:21 0

「―――というわけで。現在ブレイカー特務大尉には甲板にて、
 オブジェクトの可及的速やかな回収作業を進めてもらっています」

示し合わせた様にMaTECのウィンドが開き、この短時間で幾分やつれた表情が映し出される。

≪―――こちら"ブレイカー"だ。
 現在の進行状況は回収率20%強と言った所か。
 魔法でも使わない限りは間に合わない。増援を要請する≫

通信の終わり際に、その異変は起こった。不審な水音の様なモノが確認されたのだ。
まるで、人体のソレに近似した質量を持つ何らかの物体が海に放り込まれた様な音だった。
当該事象との連関性の有無は不明だが、その直後にブレイカーの姿がフレームアウトしている。

≪ブレイカ飛んだよ!≫

「"ブレイカー"、反応ロストしました! 追跡できません!」

「…あんのポンコツ!」

「……無様ね」

「で、あります」

ブリッジに漂うのは―――ひたすらどんよりした、ぐだぐだ感だ。
空気を読めない騎乗兵は、バスタオルを肩に掛けて能天気に出て行く。

「くっ……すまない、みんなっ!
 おれが…おれがこんなダメージを受けたばっかりに……」

「チョークをかぶったくらいで大げさであります。さっさと行くであります」

「任せとけって。早風呂と早食いは得意科目だからなっ!
 その代わりシャイニングエックスの花道づくり、頼んだぜ!」

「そういうわけで……ラム・ダオ中尉?
 シロー君がスタンバるまでに、現場(せんたくものかいしゅう)の指揮、お願いね。
 中尉の補佐には、ローデス少尉を……ランクCの実力、見せてちょうだい。
 彼の到着次第、乙種戦闘配置に切り替えるものとします。



 ――――作戦開始! 総員、甲板に出撃せよ!」

50 名前:"黒衣の魔術師"ブレイカー ◆v/ikj/qTK2 [sage] 投稿日:2009/08/11(火) 02:11:28 0

「―――こちら"ブレイカー"だ。
 現在の進行状況は回収率20%強と言った所か。
 魔法でも使わない限りは間に合わない。増援を要請する」

そして、着水―――ありのまま、今起こった事を分析する。
"ドラム缶に手を伸ばそうと思ったら何時の間にか海中にいた"
おそらくは超スピードの格闘術……恐ろしい竜気の片鱗を味わった。

『ブレイカ飛んだよ!』

「なん…だと?」

『ごめんね! ちょとつよく蹴りすぎたよ。あはー』

「それでは、攻撃自体は意図的なモノだったと?」

『ひとりであがってこれるか? たのしいか?』

「お前の手を借りる方が危険だ……そちらは楽しそうだな」

『わたしもいしょにおよぐか?』

「せっかくだが、これは海水浴とは少し違う。
 さらに言えば着衣水泳の訓練でもない―――水難事故だ」

『あいやー。とおいところに行てしまたよ』

――――我々は一体、何故このような地点に到達してしまったのだろうか。
それは局員にとって極めて哲学的な問いであり、省察を免れ得ないテーゼだった。

51 名前:冥魔獣M型・鮫人間タイプ[sage ] 投稿日:2009/08/11(火) 03:04:47 0
海中を泳ぐ影が跳躍する!
冥魔獣だ。
船艦の胴に張り付いた魔物は鋭い鉤爪を用いて、そのまま登攀して甲板まで登って行く。
甲板に上りきると、その姿が明らかになった。
3mはあろうか…鮫を思わせる人型の魔物だった。
頭部は巨大な鮫で、全身の皮膚は青黒く、鉤爪までも備えている。

「ギャェー!」

冥魔獣は吠え声を上げると、手近な人間に鉤爪を振るい、大口を開けて噛みついた!

52 名前:名無しになりきれ[] 投稿日:2009/08/11(火) 12:09:42 0
デブ視ね

53 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/08/11(火) 12:47:56 0
なんつーか…
このスレまとまりがないんですよ
文章書きたい奴はトリップつけろや
基本だろ?

54 名前:エニーシャ ◆IZh0JJtPKA [sage] 投稿日:2009/08/11(火) 16:35:51 P
かくして、任務(せんたくものかいしゅう)は開始された。

中尉の指示を仰ぎつつ無数の布地と格闘していると、自然と浮かんでくる疑問がある。
何故洗濯物如きにここまで――
いや、役所仕事にはうるさい制約がつきものである。上層部もやむを得ずに決断したに違いない。
自己完結。そうでもしないとモチベーションが維持できない。

「中尉殿! 作業状況をご報告致します。
外す・受け取る・運搬の三段作戦が功を奏し、回収率は現在8割強!
しかし、S級ターゲット――布団・カーテン類は未だ手つかずであり、形勢は予断を許しません」
ブリッジのぐだぐだ感とは対照的に、背筋を伸ばしてそう報告する。

「何かご指示は?」

ラム・ダオ中尉。物腰は常にふんわりと優雅、主な仕事は空気清浄。
様々な意味で艦内に癒しをもたらすこの女性を、彼女は姉のように尊敬していた。
今回も、指揮経験の有無は知らずとも向ける眼差しには期待と熱意がこもっている。
キラキラ、キラキラ。

……若干、鬱陶しいかもしれない。

55 名前:エニーシャ ◆IZh0JJtPKA [sage] 投稿日:2009/08/11(火) 16:37:33 P
*  *  *  *  *

ところで話は少々遡る。
噂の特務大尉はどうなったのだろう? 見捨てられたのか? ――否。

これはエニーシャがブリッジに到着した直後のこと。

>「あいやー。とおいところに行てしまたよ」
「メイ、任務中だ。私語は――」
むっとした様子でメイを見遣った彼女は、波間に浮かぶ黒い影に気づいて悲鳴を上げた。
水音の後に反応ロスト、とは聞いていたが、あんな二重の意味で遠くに行きかけているとは!?

「と……と…………特務大尉殿ーーー!?」
手すりが揺れる金属音。次いで、ふらふらと甲板に膝をつく鈍い音。
額に手を当て目眩を抑えるかのように、

「あ……あ、ああ。
爆死・枯死・墜落死、およそ人間の考え得るあらゆる死線を乗り越えてというか踏み越えて来られたゾンビ級の超人、黒雑巾の魔術師“ブレイカー”特務大尉が、伝説を更新しようとしていらっしゃる……!!」

馬鹿にしているわけではない、念のため。
エニーシャは尊敬する(ようには聞こえないが)特務大尉を救うべく、背中の剣を抜いた。
…とどめを刺すわけでもない、念のため。

目を伏せ、体の正中線に沿って剣を掲げ持つ。

「「I'm Elisha : a descendant of Rudes family.」」

その声に呼応し、バスタードソードの刀身が赤く輝く。
汗が額を滑る。これならまず失敗しないはずだが――

「「――Realize.」」

その瞬間、輝く刀身がフッと消失し――代わりに巨大な投網が出現した。
「特務大尉殿、お捕まり下さい!」
二重の意味で遠いところへ行きかけた大尉に投げよこしたその網は、着水してなお彼女の手に残る柄を中心に生成され続けている。
通常なら水没してしまうはずのそれは、意志をもつかのように特務大尉の方向へ進んでいる。
数秒もしないうちに手元へ届くだろう。

――但し。
「ご存じかもしれませんが、私は剣の精としか契約しておりません。
よって、その網は無数の“刃”です! お怪我なさらぬよう!」
その網は、小さなナイフのようなものが無数に組み合わさってできていた。
触れただけでパックリいく程の鋭さはないが、うっかり手を滑らせれば大惨事である。

……どうか、無事のご帰還を。

*  *  *  *  *

56 名前:エニーシャ ◆IZh0JJtPKA [sage] 投稿日:2009/08/11(火) 16:48:19 P
――と、そんな救助だか嫌がらせだかわからない一幕を挟んで今に至る。

網はエニーシャの手を離れた瞬間に消失する。
そのため彼女は手すり際を中心に、がっしょんがっしょんと賑やかに金属製の網を引きずりながら、作業にいそしんでいた。

途中で体型に関する罵倒を受けた気がしたが、騒音でよく聞こえない。
それに、おそらく自分のことではないはずだ。太れる程、食費に金をかけられるはずがない!

……その時。
投げ降ろした“刃”にザクリと手応え。
ぎょっとする。中尉へ向けていた視線を思わず外し、海を見る。

決して特務大尉を斬ってしまったわけではなかった。
そこには、海中を泳ぐ鮫を思わせる人型の魔物――冥魔獣M型。(>>51

「敵襲ーーーー!!!」
叫んだのと同時、戦艦の胴を登攀していた影が甲板へとたどり着く。
それは“ポーン”であり、報告が正しいなら合計3体。
刀身の消失したメインウェポンを左手に持ち替え、右手にショートソードを構える。

>「ギャェー!」
>冥魔獣は吠え声を上げると、手近な人間に鉤爪を振るい、大口を開けて噛みついた!

「く……っ」
爪を打ち払ったところでその腕に噛みつかれてしまう。
何とか魔獣を蹴り飛ばして逃れるが――犠牲は大きかった。

「な……せ、洗濯物が……っ」
蹴り飛ばした魔獣は、いくつかあるドラム缶のうちの一つに突っ込んでいた。
甲板に衣類がぶちまけられる。
「あ、洗い直しではないか……何ということを!!」

――彼女は無駄なほど任務に忠実である。

57 名前:名無しになりきれ[] 投稿日:2009/08/11(火) 17:13:17 0
ちゃんと自己紹介はした?糞ガキ

58 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/08/11(火) 17:49:46 0
馬が銃持って突っ込んでくるぞ!!!

59 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/08/11(火) 18:04:51 0
たかが洗濯で何でこんなに絶体絶命になるんだよ
面白いわ
読んでてニヤニヤしてしまうw

60 名前:エリアス ◆HjQYbfcR9Q [sage] 投稿日:2009/08/11(火) 19:56:05 0
>46
>「だ、大丈夫ですか? アクエリアスさん」
「ああ、なんとか……」
> 「――参上ぅどわあっ!?」
「ナギ・セノー君! なんということだ、やはり他にも罠が!」

>53
「トリップ……旅はいいな! 我はレジャーが好きだ。行楽が好きだ。観光が好きだ。
船に乗って色んなところにいける魔捜局はサイコーだ!」

>57
「何を言ってるんだ! 我は魔捜局発足時からいるじゃないか!
それに夏厨とはガキではない。全身全霊で夏を楽しむ者のことだ」

>51
などと呑気に乗組員と話している場合ではない。
サメ人間が襲ってきた!
高速駆動する精霊魔導器“タイタン”を起動し、二丁一組の魔導銃“ツインマーキュリー”を構える。

>56
「洗濯物を穢すとは……許さん!!」
無駄に高速で滑空しながら、ドラムに突っ込んで態勢をくずした魔獣に魔力を打ち込む。

61 名前:メイ・リーファ ◆CGsmHeQJubOP [sage] 投稿日:2009/08/11(火) 20:04:38 0
>>28
エリアス元気ねー! わたしも元気よー! あれー? エリアス固またよ。ぜんまいなくなたか?
(誰かの半そでシャツをぶんぶん振る。小首をかしげて同じ方を見る。街の空ですごい爆発が起こっている。)
おおー。あれすごいね。たまやー!

>>29
ラムダオー! ご一緒するー! 今日はラオスと盆栽食べなくていいか? まどうはタワ行くか?
(誰かの半そでシャツを投げ出してついていく。行先を聞いて少しがっかりする。)
わたしあそこあまり好きじゃないね。近づくとつのがゆんゆんするよ。でもラムダオいしょなら行てもいいよ。

>>50
海水浴ちがうかー? 魚とってるかー? ブレイカ遠くてなに言てるか聞こえないよ。歌てるか?
(ブレイカーが流れる。近視の人がしてるみたいに目を細くする。でも本当は見えてる。)

>>51
あるく魚みつけた! ばんごはんごちそうになるよ。しょくざいは新鮮いちばんてホマが言てたね。
ずんばらりされてみるか? わたしの太極刀なんでも切れるよ。
(頭のお団子髪が微妙に動いた気がする。)

>>52
ふとりすぎ健康によくない。長生きできないね。

>>56
エニシャ漁師だたか? 魚たくさんとれたか? 
けがしたか? だいじょぶか? だたらばんそうこうはるといいよ。これかなーり効くよ。
(エニーシャの腕に治癒符を貼る。竜気が篭もっている。)

>>57
わたしメイ・リーファね。かいきゅう? ないよ。

>>58
馬もいる! きょうはどうぶつの日か? てぽう持てるね! 危ないよ!
(馬の蹄が甲板に当たってカンカン音を立てる。銃を撃って追いかけてくる!)

きゃー! きゃー!
(弾を避けながら甲板中を走り回る。)

あははははは!
(ドラム缶をなぎ倒して走り回る。だんだん楽しくなってくる。)

>>59
洗濯おもしろいよ。でも洗濯ものきれいにならない。ふしぎね。

>>60
エリアスぜんまいなくなてなかたね。がんばて魚たくさんとるといいよ!

62 名前:ナフィス ◆Bn2na9AVLk [sage] 投稿日:2009/08/11(火) 20:22:10 O
>>21>「気をつけろ。トラップ“ブラックボードイレイザー”だ!
他にも仕掛けてあるかもしれない!」
ブラックボードイレイザーって…
普通に黒板消しって言えよ、分かり難い。
ってか随分と古典的なトラップだな。
黒板消しトラップに引っかかる奴なんて久しぶりに見たぞ。
>>17そこに追い討ちをかけるかの様に現れたカルピス野郎。
しかし彼も悲惨な事に、マッチョ軍団によって海に放り出されてしまった。
ご愁傷様です。
>「今のカルピス男は……MAY-Qから出てきた冥魔獣の一種か……?」
「いや、流石に違うだろ。MAY-Qからあんなのが出てくるようになったら世界は終りだ。」
頼む、誰でも良いからこの状況を収束できる人物をブリッジに寄越してくれ。
俺のような平局員にはどうにも出来ん。
>>26ちょいと目を向ければ甲板でリーファちゃんが洗濯物をこっちに向かって振ってるし…
俺は苦笑いしながら手を振り返す。
冥魔獣が現れたってのに何だこのほのぼの感は。
緊張感の欠片も感じられん。
>>46だが、そうこうしているうちに段々とブリッジにも人が集まって来た。
これは非常に助かりますね。
>>47>「――――では、説明しましょう」
お、ドクターの説明が始まった。
>「――問題なのは、ゲートから襲来した冥魔獣の方ね。
 現在確認されている冥魔獣は計4体。M型が3、L型が1です。
 彼らは出現直後に短距離跳躍を繰り返し、現在はミルディネ湾――
 ――つまり我々の現在位置、リリィ・ガンガーの元へ向かっています」
Mが3体にLが1体か…
めんでぇなぁ…。
>「―――ええ。作戦は、こうよ!
 少尉は、ヴァローナでL型を甲板まで誘引。
 各員は、甲板に上がって来たM型を各個撃破して。
 M型を全滅させた後にL型へ一斉攻撃。これを殲滅します」
「へいへい、了解。さっさと殲滅して眠りたいもんだね…。」

63 名前:ナフィス ◆Bn2na9AVLk [sage] 投稿日:2009/08/11(火) 20:31:09 O
作戦も聞いた事だし、さっさと甲板に移動しますか。
>>51で、甲板に着くと早速1匹目の冥魔獣が登場。
パッと見はなかなか強そうだね。
>「ギャェー!」
>>56冥魔獣はエニーシャに襲いかかった。
どうやら腕に噛みつかれたようだ。
「おいおい、大丈夫か!?」
>「な……せ、洗濯物が……っ」
「あ、洗い直しではないか……何ということを!!」
「いや〜今はそっちよりも自分の心配をした方が…。
 とりあえずさ、俺も加勢するよ、エニーシャちゃん。」
俺はホワイトファングを装着し、オーソドックスに構える。
「おらよっと!」
渾身の右ストレートを冥魔獣に放つ。

64 名前:名無しになりきれ[] 投稿日:2009/08/11(火) 21:36:54 0
やられた!

ヘナップ

65 名前:ラム・ダオ ◆MeEEeH/kao [sage] 投稿日:2009/08/11(火) 23:12:17 0
>49
シローがスタンバイするまでの現場指揮を任され、ラム・ダオは驚きに目を見開いた。
猫の手くらいには役立つだろうと思いブリッジにやってきたのだから。
しかしそれも数瞬の事。
「あらあら、実戦経験もない私に委ねるだなんてチャレンジャーですわね。
判りました。エニーシャ、よろしくね。」
目を閉じ、胸に手を当てながら了解の旨を伝える。

>54
早速甲板に出て総出で任務(洗濯物の回収)にいそしむ中、エニーシャはてきぱきと働いていた。
八割を回収し背筋を伸ばして報告をしてくれる。
そんなエニーシャに微笑みながら
「あらあら、そんなにかしこまらなくても。
ラム・ダオでいいのに。」
そういいながら両手を広げると、突風に煽られ飛んできた布団、カーテンの類がその腕の中に納まった。
天地自然の理を知り協力を仰ぐのがドルイドマジック。
森を失ったとはいえ、神木を背負ったラム・ダオの周囲は彼女にとって親しめる自然なのだ。
風の力を借り、洗濯物を回収する事は難しいことではなかった。
そして、華奢に見えるがその実土と神木を入れたプランターを背負い続けるラム・ダオは意外と力があったのだ。

>51
しかしそんなのんきに洗濯物と格闘している時間は短くも終わりを告げる。
予想よりも早く冥魔獣が現れ、甲板までよじ登ってきたのだ。
鮫型の冥魔獣はエニーシャに襲い掛かり、蹴飛ばされドラム缶を散乱させる。
飛び散る洗濯物。

>60>61>63
慌てて迎撃態勢に入る面々に、パン!と手を叩いて潮騒の中よく通るラム・ダオの声が響く。
「みなさん。思ったより早く冥魔獣がやってきたようです。
洗濯物は私に任せ船を傷つけない程度の力で撃退を!
この馬と鮫は斥候でしょう。
本命が直ぐ来るでしょうから、速やかに撃退し次に備えるように。
実戦経験の無い私に皆さんの戦いを見せてください。」
台詞を言い切ったラム・ダオが掌を開くとそこには赤い花が一輪咲いていた。
花から漂う香りが甲板に広がる。
この香りをかいだエニーシャ・エリアス・メイ・ナフィスの戦闘力が20%上昇する。

各員に補助魔法をかけた後、ラム・ダオの周りには風が集まってきている。
目的は勿論散らかった洗濯物を集める為だ。
足元が洗濯物の山で埋め尽くしつつ、その風はラム・ダオの声をブリッジまで運ぶ。
「斥候を放つ目的はこちらの力を図る為と、座標を知る為でしょう。
クイーンが短距離跳躍で直接船に付けられないように防御ネット展開をお願いします。
・・・ふぅ・・・指揮としてはこんな感じでいかがですか?」
落ち着いてテキパキと指示を出しているように見えるが、やはり初陣。
結構必死だったりすることが最後の一言に顕れていた。

66 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/08/11(火) 23:56:04 0
お、ここで代打ノリ、中村ノリ!!!

67 名前:エリアス ◆HjQYbfcR9Q [sage] 投稿日:2009/08/12(水) 14:59:49 0
>65
専ら空気清浄機担当のはずのラムちゃんがてきぱきと指示を出している。
>「本命が直ぐ来るでしょうから、速やかに撃退し次に備えるように。
実戦経験の無い私に皆さんの戦いを見せてください。」
「了解だ、ラムちゃん!」
フローラルのいい香りが広がる。

>61
メイちゃんがドラム缶をなぎ倒しながら馬を引きつけている。
花の香りの効果もあってか、すごいスピードだ。
その隙に、空になって転がっているドラム缶を掠め取り、馬の背後をとる。
「ほいやっさー!」
ドラム缶をかぽっと馬の顔にかぶせる。

68 名前:冥魔獣M型・鮫人間タイプ[sage ] 投稿日:2009/08/12(水) 17:13:44 0
エニーシャに噛みついた冥魔獣M型・鮫人間タイプ(以下サメ男)は、
直後にエリアスの魔力を打ちこまれて船べりまで吹き飛ばされた!
着地点には太極刀を構えるメイ・リーファの姿。
「グルゥワァァーム!!!」
空中で体を反転させたサメ男は、顎を開けてメイ・リーファを喰らわんとする!
頭からメイ・リーファを呑みこむかに見えた瞬間、横からナフィスの右ストレートを叩き込まれるサメ男。
サメ男の横っ腹には大穴が開き、傷跡からは血の代わりに謎の黒い靄が吹き出る。

だが…サメ男は、やられる間際に仲間の冥魔獣たちに信号を送っていたのだった。
「ヘナップ!」(飽きっぽそうな奴に攻撃を仕掛けろ…死亡に追い込めるはずだ!)
奇妙な叫び声を上げるとサメ男は黒い粒子となって消滅した。

69 名前:Hermit ◆b6./ifc./kXO [sage ] 投稿日:2009/08/12(水) 18:35:00 0
ガコン!
船がひときわ大きく揺れ、ドボドボと船上の荷物が海に消えてゆく。
リリィガンガー号のマストには、巨大な触手が巻きついていた。
まだ触手以外は海中に居るため、タコタイプかイカタイプかは判別出来ないが冥魔巨獣のものであろう。

触手は消滅したサメ型ポーンの近くにいるナフィスに絡みつくと、体を締め上げながらそのまま海中に引きずりこむ!
別の触手は馬のポーンが発する信号を感知して、メイとエリアスを馬型ポーンごと薙ぎ払った!

70 名前:メイ・リーファ ◆CGsmHeQJubOP [sage] 投稿日:2009/08/12(水) 20:16:55 0
>>64
およ? 冬の暑くるし服のござるいたと思たよ。気のせいだたか? 影はふつうね。

>>65
とてもよいにおいね! わたし知てるよ。これいやされるというよ。
ラムダオ洗濯もの取るの上手ね。でもなに喋てるかぜんぜんわかんないね。あはー。
(ドラム缶をひっくり返して走る。洗濯ものが散らばる。風が持っていく。楽しそうにまき散らす。)

>>66
魚。馬。つぎは海藻ね。おおきいどうぶつ3つになたか? 海藻はどうぶつだたか?

>>67
あはははは! あはー?
(銃の音が静かになる。振り返る。馬が消えている。新しいのが居る。)
おおー。あるくドラム缶みつけたよ! めずらしものね。これ洗濯に使てるのとちょと似てるね。
こんどエリアス追いかけられる役やるか? あれー? でも馬いなくなたね。どこ行たか? 

>>68
とてもおおきい歯ぎざぎざ並んでたね。ひょとしてわたしのこと食べるつもりだたか?
でもわたしつかまえるには遅すぎね。食べられるのそちね。
(いつの間にかサメ男の後ろに立っている。しょんぼりした目で黒い靄を見る。)

>>63
ナフィスけんか強いね。よい知らせあるよ。ナフィスのシャツ洗濯する前より大きくなたね。
ふりまわしてたらこうなたよ。どういたしまして。
(半そでシャツを両手で投げて返す。伸びてべろべろになっている。)

>>69
とても大きいの出たね!
(お団子がほどけて角が出てくる。手でパキンと折り取る。角が竜気を吸って太極刀の姿になる。)

はいや。
(自分にも触手が向かってくる。軽く切り捨てる。)

あれー?
(触手からなぎ払われたものが甲板の上を飛んでいく。とても楽しそう。)

ちょと今のしっぱいしたね。
(また攻撃されるのを大人しく待つ。)

あはははははー!
(次の触手につっこんで行ってなぎ払われる。すごい勢いで弾かれて空を飛ぶ。)

71 名前:エリアス ◆HjQYbfcR9Q [sage] 投稿日:2009/08/12(水) 23:19:16 0
>68 >66
サメ男は消滅。代打で海苔の化け物が現れた!

一方馬はといえば、ドラム缶を被って右往左往している。
「とどめだ!」
>69
その時! 馬もろとも海に弾き飛ばされた!
「あ〜〜れ〜〜〜〜!!」
海に落ちる。水精霊との親和性は高いので溺れることはないが海水浴をしている場合ではない。
すぐに一緒に落ちてきたタイタンの上に這い上がる。
「仲間まで見境なく飛ばすとは……冥魔獣ハンパない!」

>70
「メイちゃん乗れ!」
一足遅れて弾かれてきたメイちゃんを後ろに乗るようにキャッチする。
「料理の腕の見せ所だ!!
タコサシかイカサシか知らないけど切りまくってくれ!!」
ヒットアンドアウェイの要領で操縦しつつ自分も精霊弾を連射する。

72 名前:Interlude ◆v/ikj/qTK2 [sage] 投稿日:2009/08/12(水) 23:39:44 0

『ご存じかもしれませんが、私は剣の精としか契約しておりません。
 よって、その網は無数の“刃”です! お怪我なさらぬよう!』

―――甲板の縁を擦る金属独特の、それでいて内実が不在の空虚な音が響く。
海中より引き上げられたのは、極細の刃にうっかり手を滑らせる以上の大惨事だった。
"剣の網"の中身は大方の予測通り、振れば涼しげな貝殻の音が鳴る素敵な墨色の郵便箱だ。



……

「あの子たち、チームワークがあるんだか微妙に無いんだか、わからないわねー」

「局長。全く無いという可能性を見落としているのであります」

「考えてみればさー。あの中でまともな戦闘経歴があるのって少尉と特務大尉だけ?」

「いえ。正規の訓練を受けているのは、王都警備隊出身のローデス少尉一人…です」

「"まともな"戦闘経歴となると、二人ともバッテンであります」

「あちゃー。それじゃ、ダオ中尉にはちょっち悪いことしちゃったわね」

「……作戦終了後には、現場の指揮体制の抜本的見直しが必要だわ」

「チーフ、"クイーン"は想定外の早さで甲板に到達!
 それから―――こちらに高速で接近する機影を確認しました!」

「機影? 新手の冥魔獣じゃないのね?」
 
「……魔導波タワーで確認された所属不明機と同じタイプかしら」

「いえ。それよりずっとサイズが小さいです。この識別信号は――――"ゴースト"…?」

73 名前:"ゴースト" ◆/rhlAKoCtQ [sage] 投稿日:2009/08/12(水) 23:40:48 0

≪こちら"ゴースト0(ゼロ)"―――間も無くそちらに到着する。着艦許可を寄越せ≫

「……あら。彼じゃない。予定よりも早かったのね」

「…げ。アイツ何でこんなタイミングで現れるのよ!?
 ごめーんミーア、私ちょっち留守中だって言っといて」

「―――こちらリリィ・ガンガーです。ナーヴァ中佐は現在留守中だそうです」

≪……巫山戯やがれ。もうデッキのキルトパーティが光学的に確認出来る距離だ。
 戦闘配備中にブリッジに詰めてねえ指揮官が何処に居る? いいから繋げ小娘≫

「うぅ……チーフ、私このひと嫌いです」

「私だってそうよ!」

「…! デッキ先端、ナフィス隊員が目標に捕獲されました!」

「―――くっ。聞こえてるわね、イングラム? 絶対にヤツを潜行させないで」

≪ランクCのL型か。こいつはデカい貸しになりそうだな、ナーヴァ≫

「……丁度いいわ。彼のレクイエムにヴァローナの代わりをやってもらいましょう」

≪悪いが、好きにやらせてもらうぜ。
 ――――空挺の戦り方を見せてやる……!!≫

「うぅ…私のキャミソール…」

「……どうという事はないわ。白衣なら代わりは幾らでもあるもの」

「私の万国旗もであります」

急制動から着艦姿勢に入った魔装機の姿勢制御用スラスター噴射によって、
鋼線の上に留まっていた薄手の衣類たちは、喜んで青空へと羽ばたいていった。


【名前】イングラム
【年齢】32
【性別】♂
【容姿】錆鋼色の髪/錆鋼色の瞳/無精ひげ
【性格】雑
【装備】錆鋼色の軍用ジャケット/魔装機"レクイエム"※
【階級】軍籍剥奪
【パーソナルコード】"ゴースト"

※正式名称:魔装機"レクイエム"
 型式番号:AFV-00 Prototype
 機体概要:全高約3mの軍用魔導装甲
 白兵武装:レインフォースドメタルナイフ×2/魔導力収束サイズ×1
 射撃武装:魔導力リボルバーライフル×2
 防御武装:魔導力バリアシールド
 動力機関:魔導力リアクター
 特殊装備:対魔術兵装トレンチコート

※魔装機……精霊機開発の原型となったパワードスーツの総称。

74 名前:"錆鋼の審判"イングラム ◆/rhlAKoCtQ [sage] 投稿日:2009/08/12(水) 23:42:49 0
漆黒の魔装機は、ライフルでM型二体を撃ち抜きながら着艦した。同時にトレンチコートをパージ。
デッキに張り巡らされている精霊機牽引用鋼線を魔導強化鋼のサバイバルナイフで毟り取る。
折り畳まれていた四本の背部可動式メインスラスターをX字に展開すると再び飛翔した。
L型冥魔獣の周囲を旋回機動。海魔に牽引ワイヤーを巻き付けて、フルブースト。
バーニアを全開して目標をデッキに引きずり上げ、その動きを停止させる。

≪――――おい聞こえてるか、デッキのロクデナシども≫

MaTECでは無く魔装機の外部スピーカーから鳴り出すのは、音割れした声――
――それでいて、ヘヴィスモーカー特有のくすんだ深みのある響きだった。

≪レクイエムのマニュピレーターがオシャカになる前に、お前達でデカブツを仕留めろ!≫

現在の出力はジェネレーター性能の限界値に近い。
それでもなお、冥魔獣にはパワー負けしていた。
機体と鋼線の接触部が摩擦で火花を散らす。

≪何せこのサイズ差だ……そう長くはもたん。
 とっとと片付けて、冷えたビールで一杯と行くぞ。
 
 各員、一斉攻撃――――中華娘と行楽娘に続け!!≫

75 名前:ラム・ダオ ◆MeEEeH/kao [sage] 投稿日:2009/08/13(木) 00:20:23 0
黒い霧となって文字通り霧散する鮫型冥魔獣。
馬型もドラム缶を被せられ、メイとエリアスともども海底から伸びた巨大な触手に弾き飛ばされた。
エリアスとメイはタイタンに乗り触手にヒットアンドウェイで攻撃している。
残るは海苔型だが・・・
「それ」は突如として現れた。

>73
魔装機レクイエム。
そしてゴーストことイングラム。
瞬く間に馬型と海苔型の冥魔獣を撃ち抜き、魔導強化鋼を使って「クイーン」の冥魔獣を潜行させまいと絡めとる。
限界の綱引きと共にしとめるように指示を出すその声に、ラム・ダオの柳眉が歪む。
「手間は省けるけど・・・相変わらず歪で不自然だわ〜。」
精霊を使いパワードスーツとする魔装機がラム・ダオは好きになれなかった。
有るべき自然の姿を歪めたその姿はドルイドとして相容れぬものだからだ。
しかしかといってそれもまた一つの姿である以上、否定する気にもなれないのだが。

「お手伝いはしたいけど、手が足りない・・・。
そんな時には手を増やしましょうか〜。よい苗床も作られたようですし。」
足元に集まった洗濯物を畳む手を休め、口元に持ってくる。
そしてフーと吹きかける仕草をした。
掌には何も乗っていないのだが・・・否、乗ってはいるがそれは目に見えないほどの粒子なのだ。
風に乗りきらきらと光る輝きだけがその存在を知らしめていた。


ゴーストに打ち抜かれた馬型、海苔型の冥魔獣の傷口が急速に塞がっていく。
しかしそれは冥魔獣の再生能力ではない。
その証拠に塞がった傷口は冥魔獣とは異質な樹木質となっている。
異変は傷口だけでなく、全身に及ぶ。
ところどころから枝葉が生え、ついには脳天に一輪の花を咲かせるに至る。

ラム・ダオの放った術は敵の傷口から寄生植物を侵入させ乗っ取るものだった。
光を反射し風に運ばれた菌糸は脳と運動中枢をのっとり、電気刺激を送り強制的に限界以上の力を引き出すのだ。

「イングラムさん、無理をさせてはレクイエムの精霊がかわいそうですわよ〜。お手伝い致します。」
乗っ取られた馬型と海苔型の冥魔獣は牽引ワイヤーに取り付きレクイエムと共に冥魔獣を引き上げるのを手助けするのだった。
その様子を見ながら飛んでいった洗濯物を風で引き寄せる。
「うふふ、キャミソールも無事救出ですわ。」
手元に舞い込んだキャミソールを嬉しそうに畳むでいた。

76 名前:ナフィス ◆Bn2na9AVLk [sage] 投稿日:2009/08/13(木) 01:04:19 O
>>65>>68「ナイスサポートだ、ラムちゃん!」
ラムちゃんのサポートにより俺の戦闘力は20%アップした俺の右ストレートは見事に鮫野郎の横っ腹を貫いた。
>「ヘナップ!」
奇妙な叫び声を上げ、鮫野郎は消滅した。
「ふっ…俺にかかれば魚介類なんてこんなもんだ…。」
>>70「って、ちょっとメイちゃん!!?何をしてくれちゃてんのさー!?」
メイちゃんが投げてきた俺のシャツは完全に伸びてしまっていた…。
「…俺がいったい何をしたってんd」
>>69伸びたシャツを手に落ち込んでいると突然現れた触手に体を締め上げらる。
「!!?ざっけんなよー!」
俺の叫びも虚しく、予想通り海へと引きずり込まれてしまった。
(さすがにこれはマズイぞ!海の中じゃ身動きが…)
という俺の心配はどうやら不要だったみたいだ。
>>74どっかの誰かさんが冥魔獣ごと俺をデッキに引きずり上げてくれた。
>≪――――おい聞こえてるか、デッキのロクデナシども≫
>≪レクイエムのマニュピレーターがオシャカになる前に、お前達でデカブツを仕留めろ!≫
>≪何せこのサイズ差だ……そう長くはもたん。
 とっとと片付けて、冷えたビールで一杯と行くぞ。
 
 各員、一斉攻撃――――中華娘と行楽娘に続け!!≫
「わーっ!ちょ、ちょっとストップ!俺も居るんだってば!くそっ!」
大急ぎで触手から逃れ、一時陰に避難する。
「ったく…散々だな、今日は…。シャツはこのザマだしよ…。」
俺は皆の一斉攻撃を、デッキの端でタバコに火をつけて傍観する事にした。
今日は十分頑張った、少し位の一服は許してくれるだろう。

77 名前:Hermit ◆b6./ifc./kXO [sage ] 投稿日:2009/08/13(木) 02:07:18 0
>70
メイ・リーファの一撃で冥魔巨獣の触手の一本が切り落とされる。
触手は切り口から透明な粘液を噴き出しながら跳ねまわり、やがて動きを止めた。

>74
ブォン!
一瞬にして冥魔巨獣の全身に魔導強化鋼が巻きつき、強力な力が海上に引き上げようとする。
冥魔巨獣は逆に引き上げようとする者たちを水面下に引き込もうと魔導強化鋼に力を込めた。
しかし…さらに加わった力が冥魔巨獣の姿を露わにする。

ザザ―ン!
海魔の引き上げで海が盛り上がり、生まれた波のうねりが戦艦を大きく揺らした。
流れ込んだ海水は甲板を浸し、床に滑りを発生させる。

引き上げられた冥魔巨獣は、巨大な赤黒い頭部を持つ大ダコだった。
大ダコは赤い光を放つ眼球で宙を浮かぶ魔装機を一度、忌々しげに睨みつける。
操られたポーン二体に視線を移した大ダコは触手を振って、即座に元冥魔獣を叩き潰した。
そこにエリアスの精霊弾がめり込む。
しかし埋まった銃弾を気には留めずにマストに4本の長大な触手を巻きつける。
冥魔巨獣は船を転覆させ、敵を己のフィールドたる水界に引き込まんと触手に力を込めた。
戦艦上はグラリグラリと揺れて、もはや立っていられない程だ。

ベキリ!
そしてマストが中ほどから折れた。
冥魔巨獣は目的を船の転覆から魔装機を撃ち落とす事に変え、触手で掴んだマストを魔装機に叩き込んだ!

78 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/08/13(木) 08:39:28 O
島レベルの巨大戦艦
10メートルクラスのモンスター
俺の認識が間違ってるのか?

79 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/08/13(木) 13:28:51 0
>>78とは別人だが、7メートル級のロボットをホイホイ積める空母だとかなりでかいぞ
現実世界のスーパーキャリアーは300メートルあるし

80 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/08/13(木) 13:32:00 0
失敬、空母じゃなく“戦艦”だったな
いわゆる戦闘空母とか航空戦艦みたいなもん?
スレ汚しスマソ

81 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/08/13(木) 15:49:34 O
王都湾上に浮かんだ離れ小島、バハムート級万能戦艦"リリィ・ガンガー号"―――


82 名前:エニーシャ ◆IZh0JJtPKA [sage] 投稿日:2009/08/13(木) 17:08:21 0
>>63
>ナフィス
>「いや〜今はそっちよりも自分の心配をした方が…。」
エニーシャは無言で首を振り、悔しそうに足元を見遣った。
数々の魔術機構が設置された甲板には、所々汚れた機械油で黒ずんだ箇所がある。
散乱した衣類のいくらかには油染みがついてしまっていた。

「…くっ。対象に損害発生。湯と台所用洗剤による早急な対処が必要だ!
さもなければクリーニング代を払う羽目になる!」
――どうやら、この場合は任務に忠実というより単に小市民的なだけのようだ。
数分後、メイがもの凄い勢いで蹴散らしたドラム缶からこの比ではない量がぶちまけられることは、この時のエニーシャには知るよしもなかった。

ともあれ、その場をエリアスとナフィスに任せて一旦後退する。

>>61
>メイ
>「エニシャ漁師だたか? 魚たくさんとれたか?」
「剣を振ることができなくなったら、そういう生活も悪くないな。飢えずに済む。
だが今、網に捕らえたのは魚ではなく、メイが水没させた特務大――」

>ブレイカー
>―――甲板の縁を擦る金属独特の、それでいて内実が不在の空虚な音が響く。
>海中より引き上げられたのは、極細の刃にうっかり手を滑らせる以上の大惨事だった。
>"剣の網"の中身は大方の予測通り、振れば涼しげな貝殻の音が鳴る素敵な墨色の郵便箱だ。

「――たい……い…………ど……………………郵便箱だ……」
開いた口が塞がらない。話には聞いていたが、実際に目にしたのは初めてだった。
「本当に溺死されかけていたのか。ま、まあ…いる以上は生きてはいらっしゃる……はず」
深く考えてはいけない。そう言い聞かせつつ、柄だけとなった剣を掲げて、

「「――Break.」」

その言葉と共に展開したままだった魔術式が正常に終了され、一旦素粒子レベルまで分解された“刃”が再び刀身の形に収束する。
調子を確かめるように剣を振る。復元率は問題無し。だが、負傷した右腕の自由が予想以上にきかない。

>けがしたか? だいじょぶか? だたらばんそうこうはるといいよ。これかなーり効くよ。
腕に貼られたのは、札のような何か。『かなーり効く』の言に違わず、痛みがあっと言う間に引いていく。
「凄いな。どうやったんだ? ありがとう、メイ」
礼を言い、もう一度剣を振る。今度はそこまでの不自由さはない。安心し、再び甲板上の戦闘に戻った。

83 名前:メイ・リーファ ◆CGsmHeQJubOP [sage] 投稿日:2009/08/13(木) 17:20:36 0
>>71
(ゆっくり空を飛んで宙返りをする。すごい速さでタイタンが来る。膝を折ってすとんと着地する。)

エリアスー! わたしたちふたり揃たら無敵ね。ばんばん撃つとよいよ。わたしどんどん切るよ!
(独立上托。架剣する。剣が青空と太陽を反射してきらめく。)

タコ刺しー!
(薄切り)

タコカルパチョー!
(削ぎ切り)

タコマリネー!
(ビネガーかける)

タコ焼きー!
(火方術で焼く)

エリアス今よ! ひみつ特訓の成果みせるね。海と空の竜気に乗るよ。カトバクドロプタン!
(太極刀が火行の竜気で燃え上がる!)

火竜太極刀・逆鱗ざーん! 一刀両断ね!
(真上から垂直に切る。とても大きいタコを二枚に下ろす)

>>74
シロー! バロナちょと小さくなた? あれー? これシロとちがうものか? クロか?

>>75
花咲かおねえさんね! 海藻どうぶつ手下にしたね。めずらし花でたね。ラムダオはクロと知り合いか?

>>76
ナフィスおかえりね。ふく大きいか? ナフィスもと大きくなればよいよ。でもたばこ吸てるから大きくなれないね。

>>77
なかなかおもしろい戦いだたよ。でもいちどで食べるにはちょとたくさんね。食堂の寒い部屋いぱいになるね。

>>78-81
ふたつとも大きいよ。タコとても大きいね。リリガンガとてもとてもとても大きいね。

>>82
ばんそうこう貼ただけよ。ポスト食べられないね。エニシャ釣たか? ふり回して遊べるね。きとブレイカより役たつよ。

84 名前:エニーシャ ◆IZh0JJtPKA [sage] 投稿日:2009/08/13(木) 17:38:30 0
ナフィスが捕らえられ、海で活動する術を持たない彼女が焦りを募らせていた時、その機体は現れた。

>>74
>バーニアを全開して目標をデッキに引きずり上げ、その動きを停止させる。
>≪――――おい聞こえてるか、デッキのロクデナシども
>各員、一斉攻撃――――中華娘と行楽娘に続け!!≫

「了解!」
好機。そしてこれを逃したら後が無い。
再び水中に隠れられてしまえば攻撃は当たりにくく、衝撃は容易に逃がされてしまう。逃げられる恐れもある。

巨獣の横手に回り、スピード重視の直線的な動きで一気に切り込もうと――

>>77
>海魔の引き上げで海が盛り上がり、生まれた波のうねりが戦艦を大きく揺らした。
>流れ込んだ海水は甲板を浸し、床に滑りを発生させる。

>冥魔巨獣は船を転覆させ、敵を己のフィールドたる水界に引き込まんと触手に力を込めた。
>戦艦上はグラリグラリと揺れて、もはや立っていられない程だ。

――水。揺れ。最悪の足場。
攻撃を中断、転がるようにその場を逃れて手近な壁に背を押しつける。
もはや衣類がどうのこうのと言える状況ではなかった。甲板上のあらゆる荷が暴力的な勢いで飛び交っている。
どうすればいい?

エニーシャは緊張した面もちで思考を巡らせた。
顔をしかめた。首を振った。天を仰いだ。今は遠く旅空にあるだろう友人の怒り顔を思い出してみた。
――半ば自棄になって息を吐く。覚悟は決めた。
「同じ過ちを二度は犯さない。多分。
――I'm Enisha : a descendant of Lusry Rodes, the blue sword dancer.」

その声に呼応し、大気と自身が保有する魔力が流れ込んだ二本の剣が赤く輝く。

「「Second.」」

その声と共に輝きが白色に転じる。
負荷を受けた刀身が早くもピシリと軋みだした。
……質、落としませんでしたか? 装備課の人。
それでも通常の金属より遙かに魔力容量の大きい特殊合金で作られたそれは、崩壊することなく形状を保っている。

「「――Realize.」」

ショートソードの刀身が金属繊維と化し、解けた。それは床面を蛇のように這い、冥魔獣の体に絡みついていく。
鋼糸それ自体にできることは、巨獣の体表面にさしたる痛痒もないような切り傷をつくる程度だ。あの巨体なら引きちぎることも容易だろう。

彼女にとっては、一本でも繋がっていることだけが重要だった。

エニーシャは残ったバスタードソードを右手で持ち、ゆっくりと左上段に構えた。
呼気と共に、それを胸の前で水平に振り抜く。
無論、この場から動けない彼女の剣が直接魔獣に届くことはないが――
刹那、直径3m程の三日月型の白い光が、全く動かしていないはずのショートソードの柄の部分に生じた。
それは鋼糸を伝い、目にもとまらぬ速さで冥魔獣に向かって飛来する。
触れる、もしくは光が鋼糸の先端に達した瞬間、光に込められた「魔力的活性化状態にあるバスタードソードの斬撃」は解放され、傍の物体を斬り刻むだろう。※
縦に切るメイの斬撃と合わせて十字になるように、ダメ押しの一撃が加えられた。


揺れが激しいので接近もできず、狙いが定まらないので誘導線をつけた遠隔攻撃を行った。
バスタードソードが発揮するはずの物理的衝撃を魔力情報に変換、活性化状態の鋼糸を導体に目標地点に誘導、着弾と同時に元の物理的衝撃として再生。
無論変換効率は100%ではなく、「魔力的活性化状態にあるバスタードソードの斬撃」を直接命中させた時に比べて威力が劣る。

85 名前:ラム・ダオ ◆MeEEeH/kao [sage] 投稿日:2009/08/13(木) 22:22:33 0
>76
ふわふわと浮く巨大な蓮の葉に乗ったラム・ダオがナフィスの元へとやってくる。
浮遊科の植物を顕在化させて揺れ海水が浸す甲板からその身をを隔離させていたのだ。
抱える洗濯物の山で姿は見えないが、ちゃんと見えてはいるようだった。
「ナフィスさん、一服終わったら洗濯物運ぶのを手伝ってくださいな。
こちらはもう一度洗うものですからタバコの臭いは気にしたくてもいいですわよ〜。」
激しい戦闘の最中に似つかわしくない空間がそこに造成されていた。

>77
その背後で響き渡る轟音!
寄生植物に乗っ取らせたポーンに体は巨大な触手に押し潰され、マストはへし折られる。
しかし横目でエリアスが打ち込んだ精霊弾が触手にめり込むのを見て、微笑みながら呟いた。
「うふふふ。植物の生命力を侮ってはいけませんわ〜。
お日様とお水、そして養分がこれだけあるのですもの。
お手伝いすると言ったからには全うさせて頂きます。」
その言葉の意味は直ぐに理解できるだろう。

叩き込まれたマストがレクイエムに当たる直前、別の触手が盾となって激突を防いだのだ。
その触手は先ほど寄生されたポーンを潰した触手。
そして、エリアスが精霊弾を撃ち込んだ触手。

叩き潰されたポーンの肉体から溢れ出た菌糸は、エリアスが撃ち込んだ精霊弾の傷口から侵入し寄生したのだ。
クイーンの巨体さ及び抵抗力により全身を乗っ取る事は出来ないでいたが、触手一本を乗っ取る事には成功したのだ。

かくしてレクイエムへの攻撃を防いだあとは、エリアス・メイ・エニーシャの連携攻撃により蛸型のクイーンは十字に切り裂かれることになるのであった。
「皆さん、お疲れ様です。
初めて実践を目の当たりにしましたけど凄い迫力でしたわー。
皆さんの戦闘力には感服です。
冥魔獣は沈黙。一応完全に死んでいるか判りませんので注意を怠らないように。
怪我した人は来てくださいね〜。ヒーリングかけますので〜。」
四つ切になったクイーンはこれで完全に死んだのだろう。
寄生化した触手から樹木化が広がっている。
暫くすればクイーンの死体はポーンと同様霧散するか、寄生植物の養分となって果てるだろう。

86 名前:エリアス ◆HjQYbfcR9Q [sage] 投稿日:2009/08/13(木) 23:36:34 0
>72 >83-84
>「エリアスー! わたしたちふたり揃たら無敵ね。ばんばん撃つとよいよ。わたしどんどん切るよ!」
「人呼んで魔捜局の無敵コンビ!」
別の意味での無敵の様な気がするのは気のせいである。
かくして、命がけの3分クッキングが始まった!
>「タコ刺しー! タコカルパチョー!」
「アクアブレード!」
水の精霊力が刃となってタコを切り刻む。
>「タコ焼きー!」
「ファイアーショット!」
炎属性付与の精霊射撃。
>「エリアス今よ! ひみつ特訓の成果みせるね。海と空の竜気に乗るよ。カトバクドロプタン!」
「よしきた!」
>「火竜太極刀・逆鱗ざーん! 一刀両断ね!」
「プリズミックミサイル!!」
エニーシャちゃんの攻撃も加わり十字にずんばらりされるタコに、様々な属性の精霊弾の乱れ撃ち。
オーソドックスな物に加え、今回は酢の精霊や醤油の精霊などにも協力してもらった。

浮いているドラム缶を拾って飛びまわり、飛散物を回収しながら甲板に帰還。
ドラム缶の中にはドロップ品の・タコ刺し・タコカルパチョ・タコマリネ・タコ焼き がこんもりと入っている。
甲板には素敵な黒い郵便箱が設置されていた。
>「ポスト食べられないね。エニシャ釣たか? ふり回して遊べるね。きとブレイカより役たつよ。」
「ポストはもっとすごいものだ。手紙を入れれば世界中のどこでも届くんだぞ!」

>85
タコが樹木化しつつあった。
「緑はいいものだ。
美味しい料理になったうえに緑化にも貢献できてタコも思い残すことはないだろう」

87 名前:ジュリエット ◆b6./ifc./kXO [sage ] 投稿日:2009/08/14(金) 01:05:08 0
腐った魚の様な異臭が漂う甲板で透明な粘液がドロリと動いた。
先程のメイ・リーファの一閃で斬り落とされた触手から噴き出したものだ。
粘液は船の揺れに紛れ、すでに船橋楼の扉から戦艦内部へと入り込んでいた。
階段を伝って滴り落ちる粘液は、一か所に集まると人の姿を模る。
この、蛸型の冥魔巨獣の体液内に潜んでいたスライムこそが人間がクイーンと呼んでいる個体である。

「では、戦いはあの子たちに任せてわたくしはエーテルを吸い上げるとしましょう。
―――――あら?変ですわね。エーテルの反応がずいぶんと弱いわ…。
先程、確かにこの船から高濃度のエーテルを感知したのですけれども…。
わたくしたちの接近に気づかれて隠されてしまったのかしら?
新しい巣を作るだけに十分な量だと思ったから、わざわざこんな遠くまで寄り道しましたのに…。」

ズシーン!
倒された冥魔巨獣の触手が甲板を叩く振動が船の内部にまで伝わる。
スライムの超感覚は、即座に甲板上の冥魔獣たちが死んだことを告げた。

「―――なんてこと!こんなに早くあの子たちが全滅しましたの!?………ならば仕方がありませんわね。
体内のエーテルを半分以上使うことになりますが、包囲攻撃されるよりはましというものです。
残念ながら塔の方は諦めねばならないでしょうけれど…。」

ゼリー状の肉体を持つ少女が思念を集中すると透明な体内のあちこちにボゥ…と毒々しい紫の光の塊が発生してゆく。
そのまま少女が静かに両手を掲げると光の塊は腕に集まっていき、掌から胞子のように放たれた。
紫の光を浴びた周囲の空間は軋み、奇妙に捻じれてゆく。
さながら一枚の絵をハサミでバラバラに切り刻んで、紙片で別の風景を創り上げるように。

オォォォォォォォオォォォォォォォン!
床からも壁からも叫び声のような音が響く。
天井が床と化し、何所へも繋がらない階段が壁から生え、クローゼットの中に廊下が現れる。
瞬時に艦内部の構造は激変し―――リリィ・ガンガー号の内部はMAY-Q化した。

「異構造と化せば地の利は無意味…エーテルの発生源はわたくしが先に抑えますわ。」
少女の姿をしたスライムはペタペタという足音を立てて、異様に曲がりくねった船内を歩き始めた。


【名前】 "不純無き"ジュリエット
【年齢】 不明…10代後半ぐらいの見た目
【性別】 不明…少女の様な姿でいることが多い
【容姿】 透明なゼリー状の肉体を持つ少女
【性格】 好戦的、高慢
【自由記入欄】
【種族】 冥魔獣・スライムロード
【位階】 ルーク
【サイズ】M型 165cm程度

88 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/08/14(金) 10:10:00 O
クイーンかルークかどっちやねん

89 名前:メイ・リーファ ◆CGsmHeQJubOP [sage] 投稿日:2009/08/14(金) 17:13:44 0
>>84
エニシャも息ぴたりね。いまの演舞タテヨコ切りと名づけるよ。ちょと長いか? やぱりタコ切りでよいね。

>>85
ラムダオー。タコ足ひとつもらてくよ。お花の栄養わけてもらてありがとね。これホマにお土産するよ。

>>86
どこでもか? これはとてもよい箱よ。でもわたし字かくのにがてね。エリアスに届かせる絵はがき描くね。

>>87
あれー? リリガンガいつもとちょと違うね。迷路? むむ。ホマの料理のにおいよ。たぶん食堂こちね!

>>88
おおー。すごいツコミ装備してるね。でもわたしチェスわからないね。あとでキファに教えてもらうよ。

90 名前:ジュリエット ◆b6./ifc./kXO [sage ] 投稿日:2009/08/14(金) 22:01:36 0
下半身だけをスライム化させ、立体迷路と化した船内をズルズル這うスライムロード。
廊下の行き止まりには、横倒しになった箪笥が床から生えていた。
足?を止めたジュリエットは箪笥の引出しを開けて中を見た。
そして奇怪な設備を発見して、引出しの中に身を躍らせる。

「中にあるのは、底に水を満たした空洞の陶器の椅子だけ…。
いったいこの空間は何の設備なのかしら?
もしや――――――――――――貯水槽?
ならば…念のために破壊しておきますわ!」

バキン!
ジュリエットはスライム状の腕を鞭のように伸ばし、陶器の椅子に巻きつけると渾身の力を込めて破壊した!
「長期戦となればこのタンクの破壊は、じわじわと彼らのダメージになることでしょう。」

そのままゲル化させた腕を振るって、謎の小部屋内部にある扉を突き破る。
今度の部屋は、大小様々な壺と食器を備えていた。

「この良い香りからするとここは食糧庫でしょうか?
―――――あら、足音が聞こえてきますわ。
どうやら、人間がここへ入り込んだようね…待ち伏せて各個撃破するとしましょう。」

厨房には一つで数十人分は賄えるであろう巨大な鍋があり、中をオニオンスープが満たしている。
隣の鍋の中はコーンポタージュで、さらに隣の鍋は味噌汁だった。
「うふふ…これは奇襲には持って来いですわね。」

ドボン!
全身を液体化したジュリエットは鍋の一つに入り込んだ。

91 名前:エリアス ◆HjQYbfcR9Q [sage] 投稿日:2009/08/14(金) 23:45:33 0
>87
>オォォォォォォォオォォォォォォォン!
「なんだ!?」

>89
「一人で行ったら危ないぞ!」
メイちゃんを追って艦内に入る。
が、そこには廊下ではなく見たことがない部屋が広がっていてメイちゃんの姿はない。
代わりに、軽快なBGMに合わせ夏季休暇中らしくラジオ体操を踊るマッチョ軍団の姿が!
壁には、“マッチョ軍団控室”という掛け軸がかけてある。
待てよ。マッチョ軍団控室は、普段は決して行きつく事ができないはずだ。
その場所は専ら謎であり、リリィ・ガンガー号七不思議の一つにもなっている。
行けるはずの無い場所に来れてしまったという事は……
「MAY-Q化か!!」
思わず叫ぶと、今まで一心不乱にラジオ体操を踊っていたマッチョ軍団がいきなり反応した。
マッチョA「MAY-Q化、それはいかん! 皆の者! 出動だ!」
「お前たちは公序良俗を守る部隊だろう。関係なくないか?」
マッチョB「何を言う。公序良俗とは公の秩序、善良の風俗の略!
      艦内が混沌渦巻くダンジョンになるなど言語道断!」
「なるほど、それもそうだな」
マッチョ達が艦内に一斉に散らばっていくを見届けてから、自分も部屋を出る。
次はどこにつながるのだろか。

92 名前:ラム・ダオ ◆MeEEeH/kao [sage] 投稿日:2009/08/15(土) 00:09:35 0
>89
蛸型のクイーン冥魔獣が樹木化しきる前にメイが足を一本切り取り以っていく。
「ええ、どうぞ〜。
これも生命の循環、ですわ〜。」
メイの言葉に応えながら、食べられないものならばホーマが止めるだろうとそのままにしておいた。
全ての生命は命の循環の中に身を置く。
樹木化然り、食料になるのに然り。
それは自然の流れであり、自然の営みを尊重するドルイドのラム・ダオにとっては冥魔獣といえどもその中の一つでしかないのだ。

>87
洗濯物を抱えつつ浮遊化植物の葉に乗り船内に戻ろうとすると、リリーガンガー号内部が鳴動する。
扉の向こうに広がるのはまるで騙し絵のような迷宮の世界。
もはや迷う事なきMAY-Q化である。
現象としてのMAY-Q化は事実として受け止めても、その理由にラム・ダオの柳眉を曇らせた。

自然発生するMAY−Q化には予兆があり、当然ブリッジで観測される。
しかしそれが全くない。
更には襲来の時点で防御フィールドが展開を要請しており、当然展開しテイルだろう。
即ち自然現象として発生するはずが無いのだ。
となれば、内部から人為的に起こされたMAY−Q化となる。
内部にMAY-Q化を起こせるだけの何者かがいることになる。

「洗濯物を届けるのも骨ですわねぇ。」
事態を重く見たラム・ダオは抱えていた洗濯物を葉に下ろし、掌を口元に持ってきて広げる。
扉から内部へ向け、フーっと吹きかると、立体迷宮の壁に藻とも苔とも知れぬものが付着する。
既に内部に入っていったメイとエリアスが気にはなるが・・・
だからこそ、まずは内部構造の把握に取り掛かったのだ。

吹きかけられた苔は床や壁、天井にうっすらとその領域を急速に広げていくか、全体を覆うまでは暫くかかりそうである。
「内部に敵がいるようですから、皆さん、注意してくださいね〜。」
まだ内部へ入っていないメンバーに注意を呼びかけた。

93 名前:メイ・リーファ ◆CGsmHeQJubOP [sage] 投稿日:2009/08/15(土) 20:33:48 0
>>90
トイレ壊れてるね。とびらも壊れてるよ。どして食堂引越ししたか? ホマ居るか? お土産もてきたよ。

>>91
エリアスー。手つなぐよ。きけんがあぶないね。あれー? エリアスいなくなた。さきの馬とおなじか?

>>92
むむ。調理場よごれよくないよ。でもちょとラムダオ育てる野菜と似てるね。これそうじしたらだめか?

94 名前:"錆鋼の審判"イングラム ◆/rhlAKoCtQ [sage] 投稿日:2009/08/15(土) 22:02:29 0
"リリィ食堂"――――
本来ならば"リリィ・ガンガーズキャンティーン"の名称が与えられる筈だった当該区画は、
その女主人たる特級厨師"コック"ホーマの「長い」の一声によって現在の通称を得るに到った。
私費を投じて不法に改装された個人店舗ほどの空間は、彼女の戦場であり、統べるべき城だった。

『あいよ。チンジャオロースお待ち』

「―――相変わらず不味いな。お前の料理は」

『不味いのはアンタの舌の方さね』

「肉の入ってねえチンジャオロースは、チンジャオロースとは言えないんじゃねえのか」

『言うんだよ。厚生予算が取れない時期はね』

「…ったく。これでコンバットレーションだけはキッチリしてやがるのが不思議なくらいだ」

『黙ってお食べよ。メイちゃんが持って来てくれた蛸も入ってるだろ』

「……ああ。肉の代わりが蛸、野菜の代わりも蛸だ」

『明日からは、卵の代わりも蛸になるよ』

……その一言によって、昨日までは壁だった方向が突如として騒然となった。
戦闘終了直後に発生したMAY-Qは、艦内部に数多くの歪曲と混乱をもたらしたが、
彼女にとって最大の不幸は、食堂がよりによってブリッジと亜空間連結されてしまった事だ。
こと食堂施設の管理/運営に於いては歴戦の女傑の食材収支予測が、ここで初めて裏切られる。
即ち――――

『オムライスを注文するであります』

『あ。私カルボナーラお願いしますっ!』

『親子丼激盛りとギョク、タコ抜きで頼むぜい!!』

『私、チャーシューとメンマと、それからくんたま4つねー』

『……アイスコーヒーをいただけるかしら?』



――――卵は、二秒で品切れになった。

95 名前:エニーシャ ◆IZh0JJtPKA [sage] 投稿日:2009/08/16(日) 02:15:48 O
樹木に侵され、四つに切られ、穴だらけになった食材兼肥料から溢れた液体が甲板を濡らす。

「目標沈黙。任務完了致しました。――Break.」

パチン、涼しげな表情で剣を収める。
だが額や首を流れ落ちる大量の緊張の跡は隠しようがなかった。

――良かった。絡まらなくて。

「ナフィス殿。姿が無いと思ったら、洗濯物の保護を優先したのか!
感謝する。さあ湯を沸かそう。今なら…まだ、間に合う!!」




…などと気の抜けたことを言っている場合ではなかったようで。

聞き覚えのある、唸り声のような音が艦内から響いた。
「は?MAY-Q化…艦内が?」

信じられない思いで手近な覗き窓をそろりと覗き込む――
女子トイレの個室。

「…セクハラだな」

無人で良かった。

何故か微妙に顔を赤らめた彼女は呟いた。

「任務完了はまだ先か。
フィールド型のMAY-Q…作為的なものか?
何にせよ迂濶には動けな………メイ?エリアス!?いきなり行くなーーー!!?」

光の速度で味方が分裂していく――

「チームワークはがっかりのようです、チーフ…」

彼女は肩を落とした。
ちなみにその間、中尉は冷静に状況分析や内部探査を進めている。

エニーシャは本日何度目かの溜め息をついた。
油汚れやらトイレやらにいちいち糞真面目に反応する自分とは大違いの落ち着き様だ。

>「内部に敵がいるようですから、皆さん、注意して下さいね〜。」

「…了解です」

…頼りにしています、中尉殿。
気を取り直して、

「ブリッジでの予測通りヴェローナのエネルギーを敵目標と考えるならば、シロー殿の様子が気がかり…
中尉殿の魔術で何か手がかりは得られますか?」


96 名前:ジュリエット ◆b6./ifc./kXO [sage ] 投稿日:2009/08/16(日) 14:15:11 0
厨房と食堂は区切られており、構造上は厨房からは食堂の全景が見えるが逆からは見え難くなっている。
厨房に侵入した冥魔獣が発見されなかったのは、ホーマが食堂に料理を運んでいる最中だったからだ。
その食堂は、いまや前衛芸術の趣が漂っていた。
床や天井の一部が捻じれて柱となり、壁に掛かる鏡もこの場では無い風景を映している。

不意に食堂から何か喧騒が聞こえ、次いで卵料理の注文が続々と響き渡った。
驚嘆すべき事にリリィ食堂はMAY-Q化してなお、営業を止めていなかったのだ。
(人間たちはMAY-Q空間でも普通に活動をしますのね…いえ、この者たちはあの子たちを容易く倒してしまった…。
歴戦の者たちならば、この程度では動じないと考えた方が良さそうですわね。)

いつの間にか厨房の床には緑色の苔が侵食していた。
(この微量なエーテル…自然の物では無いようですね。これは…効果を確かめなければなりませんわ。)

ジュリエットは自分の体の一部をコップ一杯分ほど切り離す。
ポトリ…ウジョウジョ…。
床に落ちた小さなスライムは、もぞもぞと動いて緑色の苔の上に乗ると自らの体に取り込み始める。
透明なスライムの体が緑色に変わった。

『なんだい!これは!?厨房を汚すんじゃないよ!』
緑色の厨房に食堂から戻ったホーマの怒号が飛ぶ。
すぐさま箒と塵取りが用意され、厨房に浸潤した苔とスライムはゴミ箱行きとなった。
(…………。)

『料理は無事なようだねぇ…。注文はオムライスにカルボナーラ、親子丼激盛り。
チャーシューとメンマとくんたま4つにアイスコーヒーに…その他色々と。』

注文の料理が手際良く作られる。
和風料理には味噌汁。
こってりした料理にはオニオンスープ。
さっぱりした料理にはコーンポタージュが添えられて、食堂やブリッジにも運ばれていった。
(熱い…ですわ。)

97 名前:エリアス ◆HjQYbfcR9Q [sage] 投稿日:2009/08/16(日) 22:21:05 0
>90
苔に覆われた壊れたトイレに出た。
???「犯人は貴様か!」
背後から声がかけられる。トイレの掃除用ブラシとスッポンを持った男がいた。
???「トイレ戦士カッポンポン見参! トイレの平和を乱す悪党め、覚悟!」
MAY-Qとはまさに混沌空間。何が起こっても不思議ではない。
これもMAY-Q化の影響で気まぐれに出てくる取るに足らない何かだ。
が、トイレブラシを突き出して異様な迫力で押し迫ってくる!
「待て! 便器の破壊も苔も我がやったのではない!」
カッポンポン「騙されんぞおおお!!」
壊れたトイレの空間に追い込まれ、身動きが取れなくなった。
「いい加減に……うわあああああああああああああ!!」
壊れたトイレが謎の吸引力を発揮して吸いこまれた!!
ワープ壺ならぬワープトイレ。

98 名前:ラム・ダオ ◆MeEEeH/kao [sage] 投稿日:2009/08/16(日) 22:58:20 0
壁や床、天井を這い覆うように広がる苔。
それはラム・ダオの広げた森といえる。
森はラム・ダオの領域。
入り口で精神集中しているラム・ダオにはMAY−Q化した内部構造を感覚として把握しつつあった。

>93>94>96
メイが壁に広がる苔をまじまじ見ていると、苔とは異なる植物が急速に芽を出し茎を伸ばしていく。
それはチューリップのような姿をしているが、花は人間の口に見間違わんばかりの奇怪な植物だった。
そしてその奇怪な花は見た目だけでなく機能的にも相応しい力を発揮するのであった。
「メイ、掃除しちゃダメよ〜。
艦内部がMAY−Q化したから私の領域を広げているの。
全容把握まではまだ時間がかかるわ。
局長。そちらに冥魔獣の反応はありますか?
一瞬だけ食堂にそれらしい感覚があったのですけれど直ぐ消えてしまって〜。」
奇怪な花はラム・ダオの声を流す。
MaTECは支給されているのだが、機械とは相性が悪いのでこのような方法で連絡を取るのが常であった。

苔全体はラム・ダオの感覚と繋がっている。
ジュリエットが切り離した小さなスライムが苔を含んだ時にお互いにそれを知っただろう。
しかしホーラに手早く掃除されてしまったので確証を持つには至らなかったのだ。


>95>97
精神集中を解き、エニーシャに応える。
内部構造の変化とメイの居場所を説明。
「艦内の広がりが大きくてヴェローナとシローさんは把握できていません。
メイはブリッジと直結した食堂にいるわ。
エリアスは・・・反応が消えた?
とりあえずは食堂まで道標をつけたから合流して頂戴。
私はここで把握領域を広げながら必要に応じてサポートするわ。
この苔の広がるところは私の感覚内だから。」
その言葉通り、入り口から食堂までの道筋に矢印型の光苔が繋がっていった。
途中エリアスの消えたトイレには一際明るく赤く光る光苔が瞬くだろう。


99 名前:ジュリエット ◆b6./ifc./kXO [sage ] 投稿日:2009/08/17(月) 19:49:43 0
スライムロードは己の分身たるスライムが緑の苔を取り込んだ瞬間、
何者かに見られているようなザラリとした感覚を味わった。
(この苔は…どうやら何者かに感知された様ですわね。しかし、すでに…。)

ズズ…。
食堂に響くスープを啜る音。
ジュリエットは何人かの者達が己を吸い込んだのを知覚した。
(奇襲は成功…殺りましたわ!)

ジュバー!
突然厨房のオニオンスープが膨れ上がり、ゴポゴポと音を立てながら食堂に流れ込む。
食堂の床に広がった茶色のスープは人型に盛りあがり、エコーのかかったような高い声で話しかけてきた。

「皆様、動かないで下さる?今、あなた方の飲んだ飲み物にはわたくしの分身が含まれておりましたの。
わたくしがその気になれば、今すぐ皆様の体内を突き破るのも造作の無い事ですわ!
お仲間の方々の命が惜しければ、わたくしを案内してくださらない?先程発生した強いエーテルの源に。」

ジュリエットは飲み込まれたスライムを軽く動かし、何人かの乗組員の胃を突き上げた。
そして、くすくすと笑いながら言葉を続ける。

「わたくしとした事が大変失礼致しました。自己紹介がまだでしたわね。
わたくしは"不純無き"ジュリエット。あなた方風に呼ぶなら…冥魔獣ですわ。

100 名前:メイ・リーファ ◆CGsmHeQJubOP [sage] 投稿日:2009/08/17(月) 20:26:09 0
>>95
エニシャ心配だいじょぶよ。リリ食堂いくだけね。やとエプロンかわいたよ。これでホマの手伝いできるね。

>>98
ナバー。ラムダオ何か言てるよ。そうじだめか? 冥魔それらし時間めいきゅうー。あれ? なんだたか?

>>94
クロおつまみ定食おまちどうね! むむ。ナフィスと似てるにおいするね。たばこ吸うよくない。料理の味わからなくなるね。

>>97
さぱり定食のひと、お待ちどうね! あれー? お客さんかなーりエリアスそくりね。でもさき居なくなたばかり。ふしぎね。

>>96
こてり定食のひと、おまちどうね! このオニオンスプちょといつもと違うふいんきね。かくしあじ変わたか?

>>99
かくしあじ女の子だたか? わたしメイ・リーファね。ジュリエトよろしくね。シロ探してるか? 迷子か?

101 名前:エリアス ◆HjQYbfcR9Q [sage] 投稿日:2009/08/17(月) 21:20:24 0
>99-100
ワープトイレは厨房の壺につながっていた。
厨房は苔まみれになってオニオンスープまみれになっていた。
食堂に行ってメイちゃんと感動の再会を果たす。
>「さぱり定食のひと、お待ちどうね! あれー? お客さんかなーりエリアスそくりね。でもさき居なくなたばかり。ふしぎね。」
「ああ、短い間にとても色々な事があった」

>「皆様、動かないで下さる?今、あなた方の飲んだ飲み物にはわたくしの分身が含まれておりましたの。
わたくしがその気になれば、今すぐ皆様の体内を突き破るのも造作の無い事ですわ!
お仲間の方々の命が惜しければ、わたくしを案内してくださらない?先程発生した強いエーテルの源に。」
「“紫煙の死神”を探してるのか。やめておいたほうがいい。
奴は伝説の英雄伝承歌の主人公で精霊機神を駆る者! 帰り撃ちになるのがオチだろう」
>「かくしあじ女の子だたか? わたしメイ・リーファね。ジュリエトよろしくね。シロ探してるか? 迷子か?」
「確かに迷宮内で迷子になってるかもしれないな」

102 名前:名無しになりきれ[] 投稿日:2009/08/17(月) 21:30:58 0
空気を読め

103 名前:名無しになりきれ[] 投稿日:2009/08/17(月) 22:33:54 0
カ・ラ・ケ
魔法の言葉だ覚えておけ

104 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/08/18(火) 16:57:10 0
適当な気持ちでプレイしてるならやめちまえ

105 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/08/18(火) 19:16:47 0
中華娘はおっぱい見せるとよいよ

106 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/08/18(火) 19:33:31 O
中華娘
TRPGはそれぞれのキャラクター視線でお互いの描写を取り入れながらの合作SSみたいなモノ
だから質雑とは違い全レスの必要はない
小説形式でレスをしてくれるとありがたい

107 名前:メイ・リーファ ◆CGsmHeQJubOP [sage] 投稿日:2009/08/18(火) 20:23:29 0
>>105-106
あとでどしたらよいかきいてくるね。いまはいつもどおりよ。ごめんね。

>>104
てきとう定食のひと、お待ちどうね! てきとうなタコ料理よ。てきとうに食べるね。

>>103
からけ定食のひと、お待ちどうね! ゆでタコよ。からしラー油ケチャプつけて食べるね。

>>102
くうき定食のひと、お待ちどうね! ただの食器よ。料理ないよ。食べたふりの動きするね。

>>101
エリアスー! そくりさんとちがたね。とても会いたかたよ。
出てきたつぼだいじにするよ。あれはよいものね。
さぱり定食おいしいか? わたし持てきタコよ。たくさん食べるお疲れなおるね。

シロ迷子ね。ジュリエト迷子のほごしゃか? 
(ジュリエットの話を聞く。何を喋ってるか分からない。でも礼儀正しそうな感じがする)

シロいないと帰りオチか? だたら会うとよいよ。
早ぶろ早ぐい得意と言てたよ。お風呂終わたらきと食堂くるね。
ブレイカ呼んだら洗濯だたよ。シロも呼んだら来るね。シロー! ごはんよー!

108 名前:名無しになりきれ[] 投稿日:2009/08/18(火) 21:23:16 0
話は聞かないみたいですね

109 名前:エリアス ◆HjQYbfcR9Q [sage] 投稿日:2009/08/18(火) 23:32:07 0
>107
>「さぱり定食おいしいか? わたし持てきタコよ。たくさん食べるお疲れなおるね」
「うまいうまい」
タコに夢中で幸いスープはまだ飲んでいなかった。

>「シロ迷子ね。ジュリエト迷子のほごしゃか?」
「だからその者は冥魔獣だと……は!!」
ジュリエットと名乗る冥魔獣を純粋に気遣っているメイちゃんを見て思う。
冥魔獣だからといって最初から敵意むき出しでは何も始まらない。
話が通じる以上対話による解決の努力をはからなければ!

わざわざ少女の姿をしていてジュリエットと名乗るいうことは……そうか!
名探偵ばりに直感した。
スライムは冥魔獣でありながら精霊機神を駆る伝説の英雄ナギ・セノー君に禁断の恋をしてしまったのだ!
まさか直接言えないので精霊機神のほうを探していると言っているのだ!
>「シロも呼んだら来るね。シロー! ごはんよー!」
「水の精霊力を感じる……奴はまだシャワーを浴びている!
またとないチャンスだ。生シャワー中に突撃してコクれ!」
さあ、水の精霊力はどこだ? ピコーン!
「そこだあああああ!!」
机のテーブルクロスを勢いよく引き剥がす。

110 名前:ジュリエット ◆b6./ifc./kXO [sage ] 投稿日:2009/08/19(水) 02:12:35 0
ジュリエットの前で、スリットの入った服装の少女がメイ・リーファと名乗った。
奇襲を掛けたというのに全く動じた様子は無い。
それどころか、器用に両手に盆を乗せてテキパキと料理を運んでいる。
(これは…強者の余裕?わたくしに全く脅威を感じていないようですわね…。
シロというのは…白…城…いえ、呼べば来るという事は生き物の名前かしら?)

「初めまして、メイ・リーファ様。シロ…とは何ですの?それがエーテルの源なのでしょうか?
宜しければ、わたくしをそのシロへ案内して下さらない?」

些か引き攣った笑顔で、シロについて聞き返す。
そこに何やら恰好も怪しい年齢不詳の女が話に割って入った。
しかも、なぜか得心がいったというような表情をしている。

『水の精霊力を感じる……奴はまだシャワーを浴びている!
またとないチャンスだ。生シャワー中に突撃してコクれ!』

「精霊力…確かあなた方はエーテルの事をそう呼んでいましたね。
こちらの意図と脅威は伝わっているようで安心致しましたわ。
その生シャワ―にエーテルがあるのですか?
もし、罠であれば少なからず犠牲が出ることになりますがよろしくて?」

『そこだあああああ!!』
エリアスは机のテーブルクロスを勢いよく引き剥がす!
食堂のテーブル上には、シャワーを浴びている途中のナギ・セノ―が出現した。

「………これがシロ?先ほどの高濃度のエーテルは感じませんわね…。
シロ様、状況はお分かりになって?
わたくしはこの場に居る者の体内に己が分身を飲み込ませましたの。
さあ…お仲間の命が惜しければ、おとなしくエーテルを渡しなさい!」

111 名前:メイ・リーファ ◆CGsmHeQJubOP [sage] 投稿日:2009/08/19(水) 19:08:32 0
>>109
>「うまいうまい」
>「だからその者は冥魔獣だと……は!!」
(さりげなくお盆を寄せる。タコ入り黄花湯を蓮華ですくう。)
エリアスこちのスプもおすすめよ。あーんするよ。あれー? 飲まないか?
冥魔獣いま食べてるタコよ。どしたか? のどつまたか? スプ飲むか? やぱり飲まないね。エリアス防御つよいね。

>「水の精霊力を感じる……奴はまだシャワーを浴びている!
>またとないチャンスだ。生シャワー中に突撃してコクれ!」
生シャワ? おおー。それたぶん知てるよ。いつもナバ飲んで唸てるのシャワ版ね!
コクる楽しそう。わたしも突撃してコクりたいよ。でもコクるどうすればいいか? 太極刀いるか?

>>110
>「初めまして、メイ・リーファ様。シロ…とは何ですの?それがエーテルの源なのでしょうか?
>宜しければ、わたくしをそのシロへ案内して下さらない?」
ジュリエトはじめましてね。シロはシロよ。エテル? わからないよ。でもとても強いエレメンタ竜気もてるね。
ところでジュリエトぷにぷに美味しそね。
(お団子頭の上に丸いフキダシが出てくる。その中でババロアと杏仁豆腐の隣にジュリエットを置いてみる。)
じゅるり。れいぞうこ案内するか? すぐ近くよ。

>食堂のテーブル上には、シャワーを浴びている途中のナギ・セノ―が出現した。
シロそれ隠さないとだめね。こちもはじめましてね。女の子たくさん見てるセクハラよ。これ着るとよいよ。
(リリー食堂のエプロンを着せてあげる。男の子の体型と合わないかも。)

112 名前:Interlude ◆LtWG0drAw. [sage] 投稿日:2009/08/19(水) 22:20:17 0

シャワーの音が、水滴と共に17歳の張りのある肌を滑り落ちてゆく。
鎖骨から胸、脇腹、太もも、ふくらはぎ、足首を伝わって排水溝へ。

「あっ……枝毛?」

この年頃特有の、僅かに残された未発達さを思わせる形の良い指先。
それが、一般的な同性に比して随分と長い髪の間を行き来している。

「おかしいな。ちゃんと毎日手入れしてるのに」

この場合の"手入れ"というのは、英雄伝承歌の主人公の多くが有する、
"重力に反逆した髪型"を人為的に再現/維持する為の実力行使を指す。

「……まあ、いいか。今は甲板でL型が待ってるしなっ!
 強大な魔力の冥魔獣が艦(まち)を襲う! 絶体絶命のピンチ!!
 次々に倒れ伏す仲間達! そこで颯爽と登場するシャイニングエックスっ!!
 くうっ!! こいつは燃えるっ! ―――流石のおれでも燃えざるを得ない展開だぜっ!?」

シャワーブース内には、熱湯によるそれとは別種の熱気が立ち込めていた。
即ち、騎乗兵が無駄に昂ぶらせた感情によって励起された精霊力が。
それは、MAY-Q発現の知覚/認識を致命的なまでに阻害していた。

「そうとなりゃ、次の登場ゼリフを決めとかないとな。
 "光"と"希望"は、ブリッジに上がるときに使っちまったから……。
 やっぱり"愛"か。このフレーズは、いつか使ってみたいと思ってたんだよな。
 その上で、こう…表現者としての熱い衝動みたいなモノも同時に前面に押し出して――
 
 "神速のヴォーカリスト"ナギ・セノー!
 横隔膜の臨場感(プレッシャー)!
 肺胞の昂揚感(インフレイト)!
 咽喉で気迫(パワー)を伝えよう! 届け、精霊力(あい)の歌(ナンバー)よっ!!
 
 ――悪くない。特に無理矢理感(ちからづよさ)が秀逸だな。自分の才能に震えが来るぜ……!」

ファッションヴォーカリストは、迸る己の詩的素養に満足してシャンプーのボトルを手に取った。

「ああっ!? 急いでたからシャンプーハット持ってくんの忘れたっ!?」

目蓋をきつく閉じてから、シャンプーをこれでもかと泡立てる。
なんとなく呼吸も止めて、頭頂から毛先にかけて泡を延ばした。
髪の毛をマッサージする様に絞りながら、ぬるま湯で洗い流す。

「……いや、待てよ? あいつら熱血ってもんをイマイチわかってないからな。
 もっと直接的かつ積極的なアプローチでハートを揺さぶった方がいいかもしれん」


―――揺さぶられたモノは、パーティションだった。
"垂直に垂れた"シャワーカーテンが開け放たれる。
その裏面は"水平に掛けられた"テーブルクロスだ。

「"超高速のロックンローラー"ナギ・セノー!
 心臓の鼓動(エイトビート)!
 胸腔の律動(バイブレーション)!
 口唇で情熱(エナジー)を与えよう! 受け取れ、精霊力(あい)の歌(なん…だと?」

オルフェウスを通して甲板に響き渡る筈だった口上は、リリィ食堂の換気扇に無残に吸い込まれた。

113 名前:ラム・ダオ ◆MeEEeH/kao [sage] 投稿日:2009/08/19(水) 22:22:33 0
食堂に不純なきジュリエットの出現。
そしてその分身が多数の乗務員の体内に侵入。
そのことを苔との共有感覚により知ったラム・ダオは大きくため息をついた。
「こうなっては領域を広げながらサポートとも言ってられませんわねえ。」
困ったような顔をしながら他のメンバーに状況を伝える。

##############################

食堂には様々な料理の匂いが立ち込める。
その匂いの坩堝が突如として調和され、甘い桃の香りが室内に満たされる。
香りと共にラム・ダオは食堂に現われた。
「あらあら、カオスだとは思っていたけれど想像以上ねえ。」

体内にジュリエットの分身の侵入を許し腹を押さえる乗務員達。
ほぼ確実に状況把握を斜め上で行ってしまっているであろうメイとエリアす。
何の因果か裸にエプロンのシロー。
そして不純なきジュリエット。

ホーマからいつもの蜂蜜入りの白湯を受け取り、ゆっくりとジュリエットの前へ進み出る。
ジュリエットを美味しそうな目で見ているメイに食べてはダメよ、と釘をさしてから話しかけた。
「はじめまして。森を失ったドルイド、ラム・ダオですわ。お見知りおきを。
私、今日始めて実践というものをしましたが、冥魔獣もいろんな種類がいるのね。
意思疎通が可能なのならば落ち着いてお話したいと思います。」
そういいながらテーブルに着き、ジュリエットにも座るように促す。

「慌てなくてもよろしくてよ。
もう既にあなたの分身がクルーの中へ入ってしまっているのでしょう?
除去できなくもないでしょうけれど、あなたはそれほど暇を与えてくれないでしょ。
本体を、という手もあるけれど、あなたの核を的確に潰すのはもっと難しいでしょうし。
いうなればもうチェックメイト状態ですから、余裕もあるでしょう。
お互いこんな状態で無いと落ち着いて話しも出来ないでしょうから、この時間を有意義に使いましょ?」
にっこりと微笑み、グラスを傾ける。

ゆったりと白湯を飲みながら、シローは気分によってその力の上下が激しいので今はエーテルが出したくとも出せないこと。
そして、彼の騎乗の精霊機とセットで無いと本領は発揮できない。
肝心の精霊機"ヴァローナ" は艦内がMAY-Q化したことにより、どこにあるか把握できていない事を告げる。

一通りの情報を与えたあと、本題に入る。
「今私のこの苔が領域を広げて位置を探っていますわ。
それまでにいろいろ聞きたい事がありますの。
あなた方冥魔獣はどこから来て、何を目的としていますの?」
微笑みながら尋ねるその言葉は時間までもゆっくりとしたもののよに感じさせる響きが篭もっていた。

114 名前:"紫煙の死神"ナギ・セノー ◆LtWG0drAw. [sage] 投稿日:2009/08/19(水) 22:23:39 0

『そこだあああああ!!』【>109

「きゃあああああああっ!?」

『シロそれ隠さないとだめね』【>111

「ちょ…待て! お気楽娘ども――」

『こちもはじめましてね』

「――そっちに挨拶するのは違うだろっ!?」

『女の子たくさん見てるセクハラよ』

「……この場合、どー見てもおれの方が被害者じゃないのか?」

『これ着るとよいよ』

「冗談きついぜ。スタイリッシュが売りのヒーローが、そんなフリフリしたエプロンを――――」

されど飲食物並びに連関物の貯蔵、調理、供給、消費を至上目的とする食堂という特殊施設内にあって、
衣服として着用するに足る機能を有する代替品の存在は望むべくも無いが、現況の要請は喫緊であった。
人類は、その永い進化の過程に於いて、過酷な外的環境に適応し得る生得的な体表防護組織を手放した。
現在の我々に自己の物理的輪郭を認識し規定させしめるのは、肉体を被う着衣の身体感覚に他ならない。
故に、剥き出しの自己存在を外気に晒す際の本能的戦慄は、累積的変化による獲得形質の代償でもある。
斯かる恐怖を駆逐するのが理性であれば、社会的自我を喚起し警鐘を鳴らす主体もまた、理性であった。


「――――イークイップ!!」


セコンドの手により投げ込まれたリリィ食堂制式エプロンの装着を以って、サービスシーンは終焉を告げた。



……

『………これがシロ?先ほどの高濃度のエーテルは感じませんわね…』【>110

「どこぞの飼いイヌの名前だろそれはっ!? おれはナギ! ナギ・セノーだっ!!」

『シロ様、状況はお分かりになって?』

「せめてシローと発音できんのかっ!?」

『わたくしはこの場に居る者の体内に己が分身を飲み込ませましたの。
 さあ…お仲間の命が惜しければ、おとなしくエーテルを渡しなさい!』

「よくわからんが、人質と引き換えでスライム冥魔に強制魔力供給……?
 そーゆーのは、どっちかってゆーとブレイカーの役回りじゃないのか?
 甘酸っぱい初体験を、よりによってゼリー生命体如きに奪われたとあっちゃ、
 こっちにだって、霊長類最優ヒト化のプライドってもんが――」

――それが、個人的な不都合でしか無いコトはわかっていた。
傷つけられたプライドは? ―――いつか100倍にして返せばいい。
そうやって奪われた精霊力は? ―――一ひと眠りして回復を待てばいい。
だったら、危険に晒される仲間の命は? ……どうなる? おれはどうすればいい? 考えろ―――

115 名前:"紫煙の死神"ナギ・セノー ◆LtWG0drAw. [sage] 投稿日:2009/08/19(水) 22:37:03 0

―――人質が人質として有効なのは、存命しているからだ。
故に、目的が達成されるまでの間は無事でなければならない。
しかし自身を明け渡せば、用済みの人間が安全である保証は消える。
いくつもの修羅場を共に助け合い戦って来たかけがえの無い仲間たちの安全が――――

『おい、シロー! 俺ぁ味噌汁のおかわりまでしちまったぜ。
 欲しいってんだからくれてやれ。男冥利に尽きるだろうが! 』

いくつもの修羅場を共に―――

『げ。アレって私のビールにも入ってたのかしら。
 女の子がああ言ってるんだし、ぱーっとあげちゃったら?
 もしもの時は、職権濫用して二階級特進させたげるからさあー』

助け合い戦って来た―――

『実に惜しい人材を亡くしたのであります。無念であります。
 ですがコーンポタージュは美味だったのでトントンであります』

かけがえの無い―――

『ご、ごめんなさい。シロー君。私たちを助けるために…。私……
 最後にヴァローナのセーフティデバイスリリーヴしたかったです』

仲間たち……?

『……死ぬと決まったわけでは無いわ。彼の精霊力なら、あるいは――』

「――アイネスさんソレだ! その言葉が聞きたかったっ!!」

思考を絡め取る混迷の糸は、ブリッジクルーとの絆をも巻き込んで、ものの見事に吹っ切れた。

「……とにかく、このまま大人しくやられるものかよ!
 おれのエレメンタルフォースは、シャイニングエックスを動かす為にあるんだっ!」

精霊騎士の感情と意志が精霊力に変換され、クリアグリーンのフォースとして現界する。
体表面に残っていた水分は弾き飛ばされ、濡れて貼り付いていた髪の毛が立ち上がった。

「―――エレメンタラーは、決して冥魔の言いなりにはならない」

真正面から向き合って少女の華奢な肩を掴んだ。
無駄にコラーゲンが豊富そうな肌が逃げない様に。
仲間を攻撃する素振りを見せたら、力尽くで止める。

「おれの仲間に、手を出すな……!!」

駆け引きでナメられるわけにはいかない。
強い意志の光を宿した瞳で見つめる。
一点の曇りも無い裸エプロン姿で。



……

『慌てなくてもよろしくてよ―――』【>113

―――時間間隔を延長させる様なドルイドの声が響いたのは、その時だった。
それでも精霊騎士は逃がさない。彼女の両肩も、瞳も。黙って少女の言葉を待つ。
すでに、精霊力がまれに良くある有頂天に達しつつあるのは確定的に明らかだった。

116 名前:名無しになりきれ[] 投稿日:2009/08/20(木) 00:09:12 0
誰か支援して

117 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/08/20(木) 08:16:47 0
ミーンミーmッミーン…

緊急事態です

118 名前:ジュリエット ◆b6./ifc./kXO [sage ] 投稿日:2009/08/20(木) 18:52:07 0
じゅるりという音が食堂にひときわ大きく響く。
メイ・リーファの口の端から垂れかかった涎は、すぐさま舌で拭われた。
(これは…捕食者の目?危険な子…!)

不意に食堂に甘い香気が漂う。ジュリエットは香気の分子に含まれる微量なエーテルを感知した。
(この気配は先程の苔に含まれていたエーテルと同じもの…。)
鉢に入った木を背負った、見た目からして非常に怪しい女が食堂に入ってくる。
女はラム・ダオと名乗り、ジュリエットに座るように促す。

「これは御丁寧に…ラム・ダオ様。」
ジュリエットは勧められた椅子には座らずにグニャリと下半身を椅子状に変化させ、
ナギ・セノー(以下、シロ―)が上で着替えているテーブルを挟んでラム・ダオに正対した。
念のために指の一本をテーブルの裏側に隠し、ラム・ダオに向けて伸ばしてゆく。
このスライム状の触手は密度を高めて射ち出せば、テーブル板や人体を貫くだけの破壊力はある。
(この女、とりわけ危険な雰囲気ですわね…本能が警戒せよとの信号を発していますわ。)

――席に着いたラム・ダオは、精霊力についての一通りの情報を語った。
「…そう、精霊機ヴァローナ。それとシロー様が合わさった時に多量のエーテルが生成される…という事ですね?
それだけ聞ければ十分ですわ。わたくしはシロー様と精霊機を頂ければ退去しましょう。
どのみちあの子を倒された以上、わたくし単体で運べるエーテル量には限界がありますしね。」

続いて、冥魔獣がどこから来て何を目的としているかを尋ねてくる。
「語るまでもありませんわ!女王様の子らを率いてエーテルを収集し、巣に持ち帰る事がわたくしの目的!
その目的を阻む者は、いかなる手段を持ってしても排除します!
…わたくしたちが何処から来たのかについては、お答えしかねますわ。」

その時、エプロンに着替え終わったテーブル上のシローが突如緑に輝いた!
シローの伸ばした両手がジュリエットの肩にあたる部分を掴む!
『―――エレメンタラーは、決して冥魔の言いなりにはならない』
「このエーテル量は先程の半分程度でしょうか。エーテルが精霊機で増幅されるとの言葉に偽りは無さそうですね。
ですが…………残念ながら交渉は決裂のようですわねぇっ!!」

バシャーン!ゼリー体の顔をシローの顔に近づけ、そのまま張り付ける。
『ごぼごべぼびび…げぼげぶぅばぁ…!! (おれの仲間に、手を出すな……!!)』
ジュリエットの顔部分に頭を取り込まれたシローが喚く。
シローの体も肩を掴む両手からスライムにズブスブと沈んでゆく。
沈む腕は引いても抜けず、逆に絡みついて全身がスライムの体内に取り込まれる。
ジュリエットは取り込んだシロ―を衰弱させるべく滾る精霊力を吸い取り始め、
同時に吸収したオニオンスープの塩分を利用して強い浸透圧を発生させた。
それを受け、シローの目や鼻からは尋常ではない量の血がドクドク流れ、スライムの体も赤色に染まる。

「シロー様は瀕死にして、精霊機と一緒に連れ帰ることにしますわ!さようならラム・ダオ様!」
ズォムッ!!スライム状の触手が槍の様な勢いでラム・ダオ向けて撃ち込まれた!

119 名前:名無しになりきれ[] 投稿日:2009/08/20(木) 19:35:22 0
『ごぼごべぼびび…げぼげぶぅばぁ…!! (おれの仲間に、手を出すな……!!)』
『ごぼごべぼびび…げぼげぶぅばぁ…!! (おれの仲間に、手を出すな……!!)』
『ごぼごべぼびび…げぼげぶぅばぁ…!! (おれの仲間に、手を出すな……!!)』
『ごぼごべぼびび…げぼげぶぅばぁ…!! (おれの仲間に、手を出すな……!!)』

120 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/08/21(金) 00:17:40 0
ここはネギま方式取り入れたほうがいいな

121 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/08/21(金) 01:18:49 O
>>120
詳しく

122 名前:ラム・ダオ ◆MeEEeH/kao [sage] 投稿日:2009/08/21(金) 22:07:44 0
>118
甘い香りが漂う食堂でジュリエットとの会話が暫しの間、続く。
ゆったりとした談笑のようだが、その実水面下では激しい攻防が繰り広げながら。
一面苔むした食堂は全てラム・ダオの感覚領域。
しかし苔に触れぬようにテーブルの裏側に隠れ伸びていくジュリエットの指には気付いていない。

お互いに微笑を絶やさず進む会話は唐突に終わりを迎えた。
>ですが…………残念ながら交渉は決裂のようですわねぇっ!!」
「残念ですわ。でもとても有意義な会話でした。
いろいろ知れましたし・・・何よりもあなたの注意をほんの僅かでも引けたのですから・・・!」
突如として立ち上がりシローを身体に取り込んでいくジュリエットに対しても、ラム・ダオの笑みは消えない。
その言葉と共にクルー達は一斉に咽喉を押さえ悶え苦しみだした。
食堂のところどころで嘔吐の音が立ち上がる。

吐き出されたのはマリモのような藻の塊。
食堂に現われた時、桃の香りと共に微細な藻を室内に流していたのだ。
藻はクルーの体内に入り、ジュリエットの分身たるスライムを養分として一気に繁殖したのだ。
そう、ラム・ダオがジュリエットに会話を持ちかけたのは注意をそらして分身の異変に気付く事を遅らせる為だったのだ。

お互いに人質の解放とシローの取り込みという一手ずつを成功させた。
次なる一手はジュリエットから放たれる。
>「シロー様は瀕死にして、精霊機と一緒に連れ帰ることにしますわ!さようならラム・ダオ様!」
立ち上る殺気はジュリエットの攻撃を意味する。
それに対し、それがどこから来るかラム・ダオは把握していない。
それでもラム・ダオは席を立つ事はなかった。

「交渉決裂した今、無事に帰れますかしら?
私は非力ですから、恐ろしいあなたと無防備に対峙しませんわよ?
私には心強い仲間が多くいますもの。
ねえ、エニーシャ?」
どこかからか確実に迫るく攻撃を前に全く動じてはいない。
信じている・・・そんなレベルではないのだ。
疑ってすらいないのだ。・・・仲間を・・・!

優雅に、ゆっくりと、ジュリエット越しにシローに話しかける。
「シロー?人質の救出は完了しましたわよ?
そういえばあなたは・・・人質、ですか?
それとも・・・戦士ですか?
今のままでは言いなりになっているかのように見えてしまいますわよ?」
血をどくどくと流しジュリエットを赤く染めるシローの事もまた、疑ってはいなかった。

123 名前:エニーシャ ◆IZh0JJtPKA [sage] 投稿日:2009/08/22(土) 15:16:16 0
>「交渉決裂した今、無事に帰れますかしら?
>私は非力ですから、恐ろしいあなたと無防備に対峙しませんわよ?
>私には心強い仲間が多くいますもの。
>ねえ、エニーシャ?」

答えの代わりは、破裂音にも似た激しい踏み込みの音。
並び座った局員の陰から飛び出し、一呼吸で交渉席に迫ったエニーシャが大上段に剣を振りかぶる。
刃は、既に赤い魔力光を宿していた。

「やああああっ!」

叩きつけるような斬撃が厚いテーブル板、そしてその裏のジュリエットの凶刃を両断する。

「仲間一人守れず、この職業がつとまるか!」

冥魔獣を睨み付け、寄り添うようにラム・ダオの傍らで剣を構える。
赤い輝きは先ほどよりは弱まったものの、未だ消えていない。
近くにエリアスとメイもいる。これでほぼ囲んだような形になっただろうか?

>「シロー?人質の救出は完了しましたわよ?
>そういえばあなたは・・・人質、ですか?
>それとも・・・戦士ですか?
>今のままでは言いなりになっているかのように見えてしまいますわよ?」

ラム・ダオは微塵の動揺も見せず、ゆったりとシローに語りかけている。
エニーシャは彼女ほどに落ち着いていることはできなかったが、それでも我を忘れて飛び出すような真似はしなかった。
大丈夫。彼ならきっと。

「時間がない。起きろ、シロー――ではなかった、何だ、その」

暫し目線を宙に彷徨わせ、やがて思い出したと大きく頷く。
そのこだわりは全く理解できず、従ってほとんど忘れかけていたのだが、確か――

「――貴方を信じる。紫煙の死神ナギ・セノー!」


124 名前:メイ・リーファ ◆CGsmHeQJubOP [sage] 投稿日:2009/08/22(土) 20:03:11 0
>「きゃあああああああっ!?」
>リリィ食堂制式エプロンの装着
それ女の子の声よ。あれー? ひょとしてシロ女の子だたか? 
そいえば髪の毛長い肌きれいね。エプロンかなーり似合てるよ。かわいいね。

>シローの体も肩を掴む両手からスライムにズブスブと沈んで
おおー。エリアスあれ突撃してコクる言うか? でもシロがジュリエトのなか突撃したと違うか?
コクる食べると似てるね。わたしちょと真似できないよ。もとかんたんだたらコクてみたかたね。ざんねん。

>ジュリエットは取り込んだシロ―を衰弱させるべく滾る精霊力を吸い取り
冥魔のごはん竜気だたか? ごはん食べられない悲しいね。シロのあまてるからはんぶん分けてもらうとよいよ。
でもずとコクてるとシロ死ぬね。死んだら竜気出ないよ。わたしもちょと困るね。

>「人質の救出は完了しましたわよ?」
>攻撃を前に全く動じてはいない。
ラムダオー! 皆の命の恩人ね。
苔まりも大変なことになてるね。壁のそうじするのひととても大変よ。床テブルそうじするのひととてもとても大変ね。

>ジュリエットの凶刃を両断する。
>「――貴方を信じる。紫煙の死神ナギ・セノー!」
エニシャー! 皆の命の恩人の命の恩人ね。
でもシロこのなかでいちばん信じるできないひとよ。へなちょこシロね。だからわたしじぶんできることするよ。


(手に持っていたトレーをテーブルに置く。ジュリエットの手を両手で握ってエーテルを流す。)
ジュリエトわたしの竜気もわけてあげるね。
あまりいぱいないけどおそすわけするよ。コクるのちょと休憩してほしいよ。たくさんコクるシロ壊れるだから・・・ね?

125 名前:エリアス ◆HjQYbfcR9Q [sage] 投稿日:2009/08/22(土) 23:17:05 0
>118
>「シロー様は瀕死にして、精霊機と一緒に連れ帰ることにしますわ!さようならラム・ダオ様!」
「そいつを離せ! 駆け落ちは双方の合意のもとにするものだ!」

>124
>「おおー。エリアスあれ突撃してコクる言うか? でもシロがジュリエトのなか突撃したと違うか?
コクる食べると似てるね。わたしちょと真似できないよ。もとかんたんだたらコクてみたかたね。ざんねん」
「確かにコクるの一つの形ではあるだろう。だが真の愛とは奪うものではなく与えるもの!」

>122-123
>「シロー?人質の救出は完了しましたわよ?
そういえばあなたは・・・人質、ですか?
それとも・・・戦士ですか?
今のままでは言いなりになっているかのように見えてしまいますわよ?」
>「――貴方を信じる。紫煙の死神ナギ・セノー!」
そこでメイちゃんが予想外の行動に出た。
>「ジュリエトわたしの竜気もわけてあげるね。
あまりいぱいないけどおそすわけするよ。コクるのちょと休憩してほしいよ。たくさんコクるシロ壊れるだから・・・ね?」
さすがのジュリエットも一瞬とまどった。チャンスだ!
「メイちゃんの言う通りだ。コクるとはこうやるのだ! 
キミのハートにロックオン! プレゼント・フォア・ユー!」
ナギ・セノー君を撃つ!
精霊弾はスライムを通過し、ナギ・セノー君の左胸に撃ちこまれた。
とどめを刺したように見えかねないが、精霊力を注ぎこむ回復技である。

126 名前:メイ・リーファ ◆CGsmHeQJubOP [sage] 投稿日:2009/08/23(日) 18:26:17 0
>>125
>「真の愛とは奪うものではなく与えるもの!」
シロジュリエトに竜気あげてるね。シロ・・・ジュリエト愛してるか?
(ちょっぴり表情に影が差す。)

>「コクるとはこうやるのだ! キミのハートにロックオン! プレゼント・フォア・ユー!」
>精霊弾はスライムを通過し、ナギ・セノー君の左胸に撃ちこまれた。
おおー。エリアスもコクたか? それならわたしも真似できるよ。シロのハトにロクオンね! 受け取るとよいよー!
(太極刀を力いっぱいシローの左胸に突き刺す。)

あれー? でもこれシロもと死ぬちがうか? 愛とても痛いね。
(ふつうに刃物で刺しただけ。)

127 名前:ジュリエット ◆b6./ifc./kXO [sage] 投稿日:2009/08/23(日) 19:06:23 0
ガコン!バシャッ!
…いや、ガバシャコンッ!!
薪割りを思わせるテーブルの切断音と水風船が破れるような音は、全くの同時に響いた。
それほどにエニ―シャの一撃は鋭く速かった。
ジュリエットの手から伸びた触手は赤く輝く剣で寸断され、零れた水の様に床の上で形を失う。
――ちなみに今エニ―シャが絶ち割ったテーブルは、セランカ諸島の高級木材を使った年代物。
食事を美味しく食べるには雰囲気も必要との信念を持つホーマが自腹で用意したものだった。

「とんだ伏兵が居ましたわね…!ですが、人質の存在はお忘れかしら!?
それともこの者たちの命は失っても惜しくなくて?」

ジュリエットは思念波で分身たるスライムを動かそうとしたが、微動だにしない。
無残に砕けた黒いテーブルの周囲では乗組員たちが、ゲホゲホと藻の塊を吐き出していた。
「なんですの…これは!?わたくしの分身が残らず藻に食われて…。今までの交渉はこのための時間稼ぎ…?
そう…よくも抜け抜けと時間を有意義になどと言えたものですわね!」

ジュリエットの頭部はゾワゾワと動き、邪悪な蛇を模していた。
ラム・ダオギリと睨むと腕を鞭状に変化させる。
「貴女は早目に葬っておくべきでしたわ!」

その変化させた腕にじわりと温かい感触が伝わる。
メイ・リーファがジュリエットの手を両手で握っている。
その華奢な手からエーテルが流れ込んできた。
『ジュリエトわたしの竜気もわけてあげるね。
あまりいぱいないけどおそすわけするよ。コクるのちょと休憩してほしいよ。たくさんコクるシロ壊れるだから・・・ね? 』

「な、何のつもりですの?」
冥魔獣は目の前の人間の行動が理解できずに戸惑う。
獲物が自分から食べてくださいと言いだすなどあり得ないことだ。
思わず鞭状に変化させていた両腕を止めてしまう。
しかしすぐにハッと思い直す…人間は狡猾だ。これもおそらくは罠…!

『キミのハートにロックオン! プレゼント・フォア・ユー!』
そこに軽快な声と共に異物がスライムの体を通過し、シロ―の左胸に撃ちこまれた。
シローの発光は一層強くなり、スライムの赤と緑の光が混じり合い、濁った黄色の光が空間を満たす!
『シロのハトにロクオンね! 受け取るとよいよー!』
が…またしても予想外のメイの刺突ですぐに緑の光がちょっと弱まる。

「く…人間の考えはまったく理解できませんわ。
この人数とてわたくしが敗れる事はありえませんが、シロー様のエーテルをむざむざ失ってまで戦うのは愚挙ですわね。
ですから、これで引く事に致します。
――時に貴方がたは海水浴はお得意?さあ、ここまで追ってこれるものなら追ってきなさい!海の中まで!」
ジュリエットは体内にシロ―を抱えたまま近距離テレポートで海中へと飛んだ。

128 名前:ラクリス☆クラリン ◆b6./ifc./kXO [sage 人集めCM] 投稿日:2009/08/23(日) 19:27:02 0
(王都魔導波タワーから光が放たれ、王宮上の空間に巨大なホログラフが出現した。
ミルダンティアの第三王女ラクリス・クラリン・ミルダントの姿だ。その光景は船上からでも見える。)

市民の皆様ー聞こえますかー!
私はミルダンティアのプリンセス…ラクリス・クラリンですわ!
このたび、王宮では評判の芳しくないミルダンティア王都立市街魔術迷宮捜査局を
もっと市民の皆様に親しんで頂けるようにマスコットキャラクターの公募を行う事に致しました。

応募の方法は>>3の受付で用紙を貰って捜査局に参加するだけ。
5行コテ様も大歓迎ですわ!いえ…いっそ3行からでも!

親切で経験豊富な隊員さんたちと市民の皆様との懸け橋となる有意義なお役目です。
皆様、恐れる事など何もありませんわ。
奮ってご応募下さいませ!

129 名前:ラム・ダオ ◆MeEEeH/kao [sage] 投稿日:2009/08/23(日) 23:42:13 0
人質を奪われギリギリと睨みつけるジュリエットに微笑み返しで応えるラム・ダオ。
>「貴女は早目に葬っておくべきでしたわ!」
異形と貸し腕を鞭上に変化させるが、それに無防備に背を向ける。
最早己の仕事は終わったといわんばかりにホーマに二杯目の蜂蜜入り白湯を注文した。
絶対の自信があったのだ。
最早己に何の危険も及ばない、と。

その後エリアスがシローにエーテルを打ち込み、メイがその左胸に刃を突き立てる。
この行動に思わず一言・・・
「あらあら、見事な飴と鞭だ事。」
驚きの表情と共にもれ出た言葉だが、心配はしていなかった。
折角手に入れたエーテルの塊たるシローをむざむざと死なせはしないだろう。
ジュリエットがどのような手を使ってでも救命する事になるのだから。

>――時に貴方がたは海水浴はお得意?さあ、ここまで追ってこれるものなら追ってきなさい!海の中まで!」
その言葉と共にジュリエットが消える。
言葉からすれば海中に逃れるのだろう。
「あら、生命の母たる海。そこは自然に溢れ・・・いいえ、自然そのものでしてよ?」
蜂蜜入り白湯を一口啜り、そっと精神を集中させ海と同調させる。
それは海流。海のうねり。海中に広がる植物プランクトン。
海中のジュリエットはそれらから己を包むかのようなラム・ダオの感覚を感じ取るだろう。
「深度・・・、X軸・・・Y軸・・・ね。
ホーマ、食堂を苔塗れにしちゃってごめんなさいね。
みんな、お疲れ様。お還りなさい。」
海中のジュリエットの位置を特定し伝えると、ホーマに一言詫びる。
そして、それは起こった。
艦内を覆っていた苔が、吐き出された藻が・・・ラム・ダオが発生させた植物が一斉に動き出したのだ。
質量保存の法則を無視してラム・ダオの背負う白亜プランターに吸い込まれていく。

ラム・ダオの発生させる植物はこの世界の環境では長く生きられないから・・・

艦内は既に斥力領域・MAY-Qフィールドにより元通りになっている。
苔や藻を回収した後、甲板に戻っていった。

甲板で植物化した冥魔獣を同じように白亜プランターに回収し、潮風と太陽に照らされながらゆっくりと蜂蜜入り白湯を楽しみながら海を見つめていた。

130 名前:"紫煙の死神"ナギ・セノー ◆LtWG0drAw. [sage] 投稿日:2009/08/24(月) 00:04:54 0

―――それは、ひんやりとして、すべすべしたような肌触りだった。
それでいて温かいような、柔らかいような独特の感触に包み込まれる。

「ぼ……ごぼばばべばびぶべびばぶっ!?
 (こ……このままでは死んでしまうっ!?)」

生命の境界でゼリー少女の体内を押し進み、彼女のうなじの部分から何とか顔を出した。



……

『今のままでは言いなりになっているかのように見えてしまいますわよ?』【>>122

「力尽くでゆーこと聞かされてるのがわからんのかっ!?」

『――貴方を信じる。紫煙の死神ナギ・セノー!』【>>123

「この世に自分ほど信じられんモノがあるかっ!!」

『でもシロこのなかでいちばん信じるできないひとよ。へなちょこシロね』【>>124

「ああっ!? でも他人から言われるとなんか腹立つぞっ!?」

『キミのハートにロックオン! プレゼント・フォア・ユー!』【>>125

「まさか、エリアスあんた―――おれのコトを……?
 ……おれはバカだな。今まで、こんなに近くにあった愛に気が付かなかった」

ピンク色をした精霊力が、身体から溢れて垂れ流さんばかりに湧き上がって来る。
実際、高濃度のソレは毛細血管を破られた色々な箇所から蜜の様に滲み出ていた。
身体を覆った輝きは、一時的に薄いヴェールとなって冥魔との粘膜的接触を遮断する。

「いかにも細胞分裂とかで増えそーなお前にはわかるまい。
 人間様の感情の機微が! このおれの身体を通して出る力が!
 ―――愛の力にて、性悪ゼリーを断つ!! やああってやるぜっ!!」

ゼラチン質の身体の奥へと吸引される速度を遥かに凌駕する烈光の奔流。
大出力の精霊力が右腕に渦巻いて、握り込む様にした掌で収束する。
それは剣と形容するには、あまりに無骨なフォルムだった。

131 名前:"紫煙の死神"ナギ・セノー ◆LtWG0drAw. [sage] 投稿日:2009/08/24(月) 00:05:54 0

「このまま、ありったけのエレメンタルフォースをブチ込んでやるっ!
 愛しのジュリエット……おれと一緒に天国に行こうぜえっ!! "クラウ・―――"」

『シロのハトにロクオンね! 受け取るとよいよー!』【>>126

「―――がはッ!?」

完全な奇襲で心臓を刺し貫かれ、右手に収束していた光条は虚空に霧散した。

「リーファ、何でそーなる……?」

ああ……おれを助けるため、冥魔を斬ろうとしてくれたのか。

『あれー? でもこれシロもと死ぬちがうか?』


うっかりミスだったんじゃないですか――――

――――中に、おれが居ますよ?


『愛とても痛いね』

それは、愛じゃない。愛はソレじゃない。

「何で―――」

―――繰り返す言葉。
潰えた声は、ひときわ虚しく響いて今、途切れた。
この絶望の向こう側へ、おれは還ろうっていうのか?

『く…人間の考えはまったく理解できませんわ――』【>>127

――こちらも全く同じ感想だった。
いや。それも正確には不要なのだろう。
おれはもうこれ以上、何も感じなくていい。
至上の愛……冥魔の体内という悠久の帆に、
シャワーを浴びたばかりの穢れなき身を委ねる。
この悲劇の向こうに辿り着けるのなら、おれは、もう――――

132 名前:ルナルド ◆SiFiw1brbM [sage] 投稿日:2009/08/24(月) 13:43:26 0
地上とはまったく異質の進化を遂げた世界、海。
元を正せば地上人類も海から発生したとの事だが、いまやこの世界にその面影はまったく無い。
この一面を水に覆われた世界の住人は独特の流線型のフォルムを持つ者ばかりだ。
だが今はそれらの生物を横目に、異質な―明らかに二足歩行のための形状を持つ―物体が悠々と泳いでいた。

「さてと、そろそろつながるか。あー、あー、こちらルナルド・ファシス。階級は伍長。
パーソナルコードはフルトブラント。リリィ・ガンガー号……ってその疲れた声は局長か?」
自身の上司に軽口を叩き、伸ばした黒髪は後ろで纏め、明らかに軍規定からは逸脱しているが
水上及び水中運用機“ヴィカース”を操る精霊機教導部隊からの派遣軍人である。
もっとも、左遷ではあるのだが。

「あ?ナギが美女と水中ハネムーン?そりゃあ羨ましい限りだな。妬ましいから間男が行って掻っ攫って
来てやるとするか。現在位置は判るのかい?」
先ほどまでのにやけた表情を消し去り、獰猛な笑みを浮かルナルドは制御盤を異様な速度で操作し始めた。

133 名前:ルナルド ◆SiFiw1brbM [sage] 投稿日:2009/08/24(月) 13:44:18 0
【名前】ルナルド・ファシス
【年齢】29
【性別】男
【容姿】黒髪黒目の中肉中背
【性格】普段は飄々としているが割りと熱しやすい
【装備】精霊機「ヴィカース」、軍式装備一式
【特技】
【階級】伍長
【パーソナルコード】フルトブラント
【備考】 精霊機教導部隊に居たが部隊長と馬が合わず殴り倒して左遷される。その際に伍長に降格。

 気持ちはわかるという理由でナギ・セノーの名前で呼んでやっている数少ない人物。
 気持ちはわかるが武装名をいちいち叫ぶのだけは正直いかがなものかと思ってる模様。
 精霊機ヴィカースは航空能力が削られている反面水中での運用が可能な機体。
 教導部隊員なので操縦技術に関しては折り紙つき。

134 名前:ジュリエット ◆b6./ifc./kXO [sage] 投稿日:2009/08/24(月) 23:41:30 0
エメラルドに輝く海の下では、色とりどりの魚が鮮やかな珊瑚の森を縫う。
イルカの群れは楽しげに泳ぎ、地引き網は陽光に煌めき、新型精霊機は海底を歩き、
曰くありげな沈没船は周囲に霊気を放ち、野良リヴァイアサンは鯨を食べていた。
(あら、意外に賑やかですのね…。)

上にはリリィ・ガンガー号の巨大な船影。
ジュリエットはリリィ・ガンガー号の真下に飛んでいた。
(MAY-Q化に大幅にエーテルを使ってしまいましたし、シロ―様の輸送を考えるならこのまま退くべきですわね。
ですが……あの澄まし顔の女に一矢も報いず退くのは癪ですわ!)

ゼリー状の透明な体が辺りの海水を吸収して肥大化する。
ただし、水中に落としたガラスが見えないようにその姿を視認することは難しい。
ただ空洞になった中心部に収まるシローが見えるだけだ。
(シロー様。もう少し我慢を。)

ジュリエットは膨大な海水を取り込んで水龍の姿となると船の真下に突撃した!
ゴオォォォォォン!!
ジュリエットの一撃は戦艦の底を突き破り精霊機を格納するケージまで達した!
ケージ内部に海水が滝の勢いで浸水する!
「オーホッホ!沈みなさい!海の藻屑とおなり!」

135 名前:ジュリエット ◆b6./ifc./kXO [sage] 投稿日:2009/08/25(火) 18:12:33 0
船底部は精霊機の格納のために広い空間となっている。
おそらくは、どの部分を攻撃されても精霊機を格納するケージに達してしまっていただろう。
水龍と化したジュリエットは首を伸ばしてケージを覗く。
鎮座するのは鋼で出来た人型、精霊機。

「ラム・ダオ様のお話では、これが精霊機ですわね!お土産を頂いておきますわ!」

ヴェローナに蛇のように絡みつき、船底に空いた穴まで引きずりこむ。
ギリギリ…バキリ!
轟々と流れ込む海水の勢いとスライムの絡みつきで、ヴェローナの左腕が折れて海中に沈んでゆく。

「後一撃加えたいところですが、このままではシロー様が持ちませんわね……仕方ありません。
ラァ・ユェーグに戻って延命措置を施しましょう。」

リリィ・ガンガー号の浮かぶ王都湾より約南方1000kmに位置するセランカ諸島。
ジュリエットは、この多くの火山島を擁する常夏の楽園を目指して泳ぎ始めた。
瀕死のシローと頭部が損壊したヴェローナを中に抱えて。

136 名前: ◆b6./ifc./kXO [sage] 投稿日:2009/08/25(火) 18:16:15 0
>135
×頭部が損壊した
○左腕が損壊した

137 名前:ラム・ダオ ◆MeEEeH/kao [sage] 投稿日:2009/08/25(火) 21:58:32 0
>134
煌く陽光を浴びながら蜂蜜入り白湯を啜るは甲板の上。
突然大きな衝撃が走る。
巨大なリリーガンガー号が大きくうねり、とても立ってはいられないような揺れが続く。
何とか手すりにつかまり落下を免れたラム・ダオであったが、蜂蜜入り白湯を頭から被り全身ぐっしょりと濡れてしまっていた。
「まったく・・・ランクAの実力に位置され、艱難辛苦を乗り越えるといわれたシローとは思えませんわね。
それにしても・・・激しい意趣返しだこと・・・!」
ぽたぽたと前髪から蜂蜜入りハーブを滴らせながらラム・ダオのコメカミがぴくぴくと動く。
何はともあれ状況把握と精神を集中させ【海】とシンクロさせていく。

そこで感じ取ったのは巨大な龍の形。
リリーガンガー号の真下で蠢いている。
「ただの海月だという訳ではなかった、という事ですか。
これでは皆さん大変でしょうし、もう一仕事いたしましょう・・・。」

海中にて、微細な異変が起こっていた。
それは攻撃というにはあまりにもか弱く、小さな動き。
しかしその小さな動きは大きな変化をもたらすことになる。

海中の植物性プランクトンが、ジュリエットに取り込まれた海水に含まれる植物性プランクトンが一斉に動き出したのだ。
狙いはダメージを与える事ではない。
透明な巨大な龍に鮮やかな緑色をつけることだったのだから。

「さあ、後はお手並み拝見・・・
願う事ならばもう暫しの思考の時間を与えて欲しいものだわ・・・。」
小さく息をつくラム・ダオの背負うホメオツリーに実が一つついていた。

138 名前:エリアス ◆HjQYbfcR9Q [sage] 投稿日:2009/08/26(水) 00:00:24 0
>126 >131
>「おおー。エリアスもコクたか? それならわたしも真似できるよ。シロのハトにロクオンね! 受け取るとよいよー!」
「おおっ、キミもできるのか!」
>「―――がはッ!?」
>「あれー? でもこれシロもと死ぬちがうか? 愛とても痛いね。」
「…………もしや普通に刺しただけ?」

>127
スライムはナギ君を取り込んだまま近距離テレポートで消えた。
「させるかああ!」

>128
「マスコット……その手があったか! こうなったらドナルド号を出撃させる!」
精霊機格納庫へ走る。
操作が簡単で誰でも乗れるマスコット的精霊機ドナルドで助けに行こう、そうしよう!

>135
格納庫はプールと化しつつあった。
丁度精霊機神シャイニングエックスFbが海中に引きずり込まれるところだった。
その時に左腕がもげる。
「ナギ君が精魂込めてフルカスタマイズした精霊機神に対してなんたる扱い!」
ドナルドに乗り込み、船底の穴から出る。
そして沈んでいきつつあった左腕を拾う。

>137
どこまでもドナルドな精霊機に乗って緑色の水竜を追う。
中にはナギ君と精霊機神の本体が捕らわれていた。
「ナギ君、左腕は無事だぞ!!」
精霊機神の左腕をふりかざしながら叫ぶ。もちろんスピーカーを通してドナルド化された声で。

139 名前:ルナルド ◆SiFiw1brbM [sage] 投稿日:2009/08/26(水) 00:10:29 0
通常駆動から戦闘駆動への移行を済ませるのとほぼ同時、開きっぱなしにしておいた回線から聴こえる激しい破砕音。
今では愛すべき我が家とも言えるリリィ・ガンガー号の悲鳴。
生半の攻撃では沈まないとスペック上のデータを知ってはいても、自身に募る焦りは止められない。

連れ去られたシローとリリィ・ガンガー、どちらを優先するべきか逡巡するが制御盤へと転送されたデータに皮肉気
な笑みを浮かべる。
「彼氏もご馳走も得たってのに、まだそんな所で土産まで漁ってるとはな。
噂の美女はかなりの欲張りらしい。」

ルナルドの駆る"ヴィカース"は従来の戦闘型精霊機に搭載されている機体を空へと翔けさせる機能は無い。
代わりに各箇所から取り込んだ水を機体内部で圧縮し吐き出すことにより水中での高速機動を獲得している。

「ありゃあ…なんだ…?」
リリィ・ガンガー号が目視可能な距離まで近づくと、どこには海底には似つかわしくないほど鮮やかな緑で装った龍
と、その身に抱かれ弱々しく精霊力の光を放つシローが居た。

「あんたが噂の美女か?
これからハネムーンって所だろうが悪いな、ウチの息子はまだ婿には行かせられないんだ。」
いつもの軽口は忘れず、しかし愛機の武装を開放し、ルナルドは新緑の龍と対峙した。

140 名前:"錆鋼の審判"イングラム ◆/rhlAKoCtQ [sage] 投稿日:2009/08/26(水) 01:44:44 0

―――阿鼻叫喚の地獄絵図と化したリリィ食堂。
至るところに撒き散らされるのは、吐瀉物と絶望の気配。
一時的な行動不能状態に陥っているブリッジのメインクルー達。
致命的な放心状態にて自我境界線を彷徨っている"コック"ホーマ。
前者は生命の危機を脱した代償であり、後者は純然たるとばっちりだった。

「相変わらず騒がしいランチタイムだったが――」

下水道以下の臭いには慣れている。食後の一服を燻らせながら軽口を叩いた。

「――これで漸く静かになったな、ナーヴァ」

『…う。初めて二日酔いよりひどい目にあったわ…。
 悪いけどイングラム…ちょっち現場指揮…お願い―――』

―――ガラス製のビンが何本か倒れてテーブルに転がる音。
被害者の中で辛うじて意識を保っていた最後の一人が突っ伏す。
その上に広がり続けるビールの海は、盛大に泡立って彼女を歓待した。



……

艦内のMAY-Q化によって食堂と連結されたオペレーター席。
コンソール上のMaTECに≪SOUND ONLY≫の入電があったのは、
錆鋼色の軍用ジャケット姿が魔装機の元へと向かう直前の事だった。

≪さてと、そろそろつながるか。あー、――≫【>>132

「こちら"バハムート"ブリッジだ。所属と階級は?」

≪――あー、こちらルナルド・ファシス。階級は伍長。
パーソナルコードはフルトブラント≫

「やれやれ……教導隊崩れまで配属されていたとはな」

伍長の通信を自分のMaTECに中継させて、歪んだ艦内を駆ける。
食堂の出入り口の通路には、ジムに向かう"落とし穴"が出来ていた。
その先のジムのバスケットボールコートに、魔装機ケージが融合している。
ゴール下で起動を待っていた魔装機に、背中から飛び込む様にして乗り込んだ。

≪リリィ・ガンガー号……ってその疲れた声は局長か?≫

「期待に副えなくて悪いが、俺は局長代理だ。コールサインは"ゴースト"――」

――状況説明は、起動したマシンを前傾姿勢でホバー移動させながら行う。
艦内通路は人間が歩くには充分過ぎるスペースが確保されていると言えたが、
直立時で3m近い魔装機の走行には狭く、接触した壁面や天井が火花を散らした。
進路上の障害物を容赦無く弾き飛ばしながら向かう先は無論、艦底精霊機ケージだ。

141 名前:"錆鋼の審判"イングラム ◆/rhlAKoCtQ [sage] 投稿日:2009/08/26(水) 01:45:27 0

≪あ?ナギが美女と水中ハネムーン?そりゃあ羨ましい限りだな≫【>>132

「俺には、エプロン姿の花嫁が強奪された様にしか見えなかったが」

≪妬ましいから間男が行って掻っ攫って来てやるとするか。現在位置は判るのかい?≫

「大体の予想は付くさ。式場のヒロインを抱えて階段を降りた後は――」

シールドチャージで隔壁をブチ抜いて、レクイエムが精霊機ケージに突入する。

『これが精霊機ですわね!お土産を頂いておきますわ!』【>>135

「――空き缶をブラ下げた、真っ白なオープンカーに乗り込もうって訳だ」

魔装機のマニュピレーターが、精霊機の左腕部を海魔と同時に掴んだ。
…だが、その綱引きは、数秒後のパワー負けすら迎えられずに決着する。
白兵戦闘用に強化されている筈のヴァローナの左肘間接部が、容易に断裂した。
搭乗者の精霊力供給が無いとは言え、一瞬で魔導鋼の延展性の限界を超える圧倒的な力。

『マスコット……その手があったか! こうなったらドナルド号を出撃させる!』【>>138

切迫した状況下で出撃した友軍機は……誤解可能な余地が存在しないほどにドナルドだった。

「聞こえてるかフルトブラント……ついでに行楽娘。
 状況は最悪だ。ヴァローナが中破の上で奪取された。
 今からデータを送る。レクイエムのビーコンを追尾しろ。
 魔装機単機じゃ、このモンスターは抑えきれん。オーバー!」

精霊機の左腕部は海中に破棄して、二本のナイフを逆手に装備する。
水中の薄暗い視界内で、ブレードの表面が薄紅色のビームで彩られた。
機体背面の四本のスラスターがトレンチコートを押し上げてX字に展開する。

『ナギ君が精魂込めてフルカスタマイズした精霊機神に対してなんたる扱い!』

投棄されたパーツを回収に向かう原色の後姿は……やはり目が痛くなるほどのドナルドだった。

「奴に喰らい付け、レクイエム―――ブースト!!」

刀身に生成された複合的なビーム層は、水中環境に於いても有効だった。
直接水分子と接する上層が、下層のエネルギーの減衰率を低減させる。
基底層の魔導粒子が龍鱗を溶断。実体のブレードの到達後に解除。
食い込んだ魔導強化鋼の刃が、海魔の巨体に魔装機を固定する。

<<―――Just Marriage!!>>

外部スピーカーを直接押し付けて、海魔に祝辞を。

『ナギ君、左腕は無事だぞ!!』

善き報せは共に訪れた。その福音を運んだのは……どう見ても最終鬼畜全部ドナルドだった。

<<随分とゴキゲンなランデヴーじゃないか"ジュリエット"
  お前さえ良ければ、その幸せを幾らか分けてもらいたい所だ。
  例えば、抱えてる荷物をブーケの代わりに放り投げるってのはどうだ?>>



※BEAM……Barrier Extrusive Alteration Mana

142 名前:エニーシャ ◆IZh0JJtPKA [sage] 投稿日:2009/08/26(水) 06:18:22 0
>「キミのハートにロックオン! プレゼント・フォア・ユー!」
>「シロのハトにロクオンね! 受け取るとよいよー!」
華麗な連係攻撃の前に撃沈するシロー――………………え?
魔弾を受けて燃え上がりかけた精霊力の輝きが、見る間に失われていく。

>「リーファ、何でそーなる……?」
>「何で―――」
うわごとのような呟きも徐々にフェードアウトしていく。
エニーシャは、心配というより想定外すぎて頭が真っ白になっていた。最早、中段に構えたまま彫像状態である。

>「――時に貴方がたは海水浴はお得意?さあ、ここまで追ってこれるものなら追ってきなさい!海の中まで!」
>ジュリエットは体内にシロ―を抱えたまま近距離テレポートで海中へと飛んだ。
「っ――!? 待て!!」
ここにおいてようやく放心状態から解放され、慌てて手を伸ばす。
だが全ては遅かった。指先は、虚しく宙を掻くのみに終わる。

甲板へ向かうラム・ダオ。
格納庫へ駆けるエリアス。
短い通信の後、精霊機に乗り込むイングラム。

私はどうしよう――

迷うその時。突然、轟音と共に大きな縦揺れに襲われた。
残骸と化したテーブルを支えに転倒を防ぐ。次いで起こった不安定な揺れは収まる気配を見せない。
遠くに聞こえる水音、コンソールに灯る多数のレッドランプから事態を把握する。

「船底に穴を開けられたか? 局長、ご指示を! …………局長? ……あ。」
苦みと心配が半々に混じった複雑な表情で地獄絵図を見遣る。
そこでは、指示を出すべき中央系統の人々が例外なく蒼白な顔をしてその場に突っ伏していた。

「局長? ミーア操作手?」
返事はない。
この状況を放置するわけにもいかないと思い、迷った末にイングラムが立ち去った後のコンソールに向かった。

「被害箇所は……格納庫並びに――」
ぶらさがっている簡易操作表を見る。
「…………並びに? ――ええいマニュアルはどこだ!?」
埃を被った辞書のようなマニュアルを席の下から引っ張り出す。
なかなか文字を追うのをやめようとしないエニーシャは、実は機械が苦手である。
コーヒーらしき茶色の染みに無駄に苛立ちつつ…本当に大丈夫だろうか?

「……最近の機械は機能が煩雑だ」
コンソールパネルを前に言う台詞でも、この年齢で言う台詞でもないが…
ともあれ、ようやく手順を理解した彼女はたどたどしい手つきでパネルを操作していく。

「だいたい支給のMaTECからして、もう少し機能の簡便化を図って欲しいものだ。
私はJ-PHONEで十分だったのに――」
損害箇所、浸水状況を確認。隔壁は自動で降下済。…浸水率、なおも上昇?
理解。MAY-Q化のせいで意味を成さない隔壁が多数。
反応機構をマニュアル操作に。アナウンス後、改めて隔壁降下。浸水率、安定。
バランサーを確認。…ちょっとまだ危ない。
全ての排水機構をアクティブに。…うん、おそらくこれで沈みはしない。
揺れが徐々に収まっていく。

「切り離しまでは…さすがに私の判断ではできないな」
最後にイングラムやエリアスとの通信がONになっていることを確認し、操作を終える。
「意外と似ているものだな……」
精霊機と。扱ったことは無いが、一応は契約した精霊がいるということで多少の操作知識はあった。

「さて、後はどうしたものか。上手くいくと良いのだが…どうか、無事で」

143 名前:メイ・リーファ ◆CGsmHeQJubOP [sage] 投稿日:2009/08/26(水) 21:03:39 0
>>129
>エリアスがシローにエーテルを打ち込み、メイがその左胸に刃を突き立てる。この行動に思わず一言・・・
>「あらあら、見事な飴と鞭だ事。」
ラムダオあめくれるか? あめおいしいね。とてもよいものよ。でもシロの目からべつのあめ流れてるね。

>>131
>「―――がはッ!?」
>――――中に、おれが居ますよ?
シロごめんね。わたしうかりしてたよ。でもかなーりすきりしたよ。

>>138
>「…………もしや普通に刺しただけ?」
・・・あはー。
(コクリとうなずく。)

>>127
>「な、何のつもりですの?」
>思わず鞭状に変化させていた両腕を止めてしまう。
おすそわけ知らないか? シロエテルいぱいあまてるからジュリエトにいぱいおすそわけ。
わたしちょとあまてるからちょとだけおすそわけするよ。

>「時に貴方がたは海水浴はお得意?さあ、ここまで追ってこれるものなら追ってきなさい!海の中まで!」
>ジュリエットは体内にシロ―を抱えたまま近距離テレポートで海中へと飛んだ。
追いかけこするか? でもさき甲板でうまの冥魔とやたばかりね。冥魔は追いかけこ好きね。

>>140
>「相変わらず騒がしいランチタイムだったが――」
>食後の一服を燻らせながら軽口を叩いた。
ゴストわたしたばこきらいね。たばこ吸うのは死ぬか? シロと同じハトにロクオンされたいか?

>>128 ラクリス
>(王都魔導波タワーから光が放たれ、王宮上の空間に巨大なホログラフが出現した。)
>このたび、王宮では評判の芳しくないミルダンティア王都立市街魔術迷宮捜査局を
>もっと市民の皆様に親しんで頂けるようにマスコットキャラクターの公募を行う事に致しました。
あれー。ラクリス今日は歌わないね。まそうきょくかんばしくないか? かんばしくないよくないことか? 
マスコトかわいいね。わたし大きいのペンギン着てみたいよ。

>>138
>「マスコット……その手があったか! こうなったらドナルド号を出撃させる!」
>精霊機格納庫へ走る。
おおー。ドナルド乗たら追いかけこ楽しいね。エリアスわたしも一緒に連れて行くとよいよ。

>>139
>「これからハネムーンって所だろうが悪いな、ウチの息子はまだ婿には行かせられないんだ。」
>いつもの軽口は忘れず、しかし愛機の武装を開放し、ルナルドは新緑の龍と対峙した。
ルナルドビカス泳ぐの速そうね。ドナルドビカスどち速いか? ルナルドドナルドちょと似てるね。
ルナルドシロのおとうさんだたか? わたしルナルドおとうさん呼ばないとだめか? 

>>142
>「切り離しまでは…さすがに私の判断ではできないな」
>最後にイングラムやエリアスとの通信がONになっていることを確認し、操作を終える。
エニシャリリガンガ動かせるか? リリガンガの沈むちょと安心した。ミアいらなくなるね。
ブリジの皆うごかないよ。いまだたら誰もおこらないね。リリガンガでいろいろ遊べるよ。


わたしもドナルドで遊ぶよ。せかくだからこの赤いボタン押してみるね。
(ドナルドの助手席で『非常用』と書いてあるボタンを押す。)

でも遊んでばかりよくないだからエリアスのお手伝いするよ。
(『緊急用』と書いてあるレバーを引く。)

144 名前:ルナルド ◆SiFiw1brbM [sage] 投稿日:2009/08/26(水) 21:39:43 0
今まで相対したどの冥魔獣とも合致しないほどのスケールと、神秘的とすら言えるフォルム。
リリィ・ガンガー号の艦体を貫く火力。
加えて内包されたシロー。
そのどれもが圧倒的なまでの戦力差を伝えてくる。

<<聞こえてるかフルトブラント……ついでに行楽娘。――>>
先刻こちらの通信に応じた局長代理。コールサイン通りの底冷えのする声を海底へと響かせる。

<<――魔装機単機じゃ、このモンスターは抑えきれん。オーバー!>>
通信終了するやいなや龍へと喰らいつく魔装機。
と、破棄されたヴァローナの腕を回収に向かう……原色の怪人。
何時だったかの艦内パーティーで整備班の連中が拵えたどこぞの外食産業のマスコットを模した代物。
昔、名前のせいでアレと揶揄されたなと暗い過去が蘇るが、直ぐに頭から締め出す。

「了解、大将。こっちは周りから削り取っていく!
振り落とされないようしっかり抱きついててくれ。」

機体速度を示す針をレッドゾーンへと叩き込み、構えたランスへと精霊力を余すことなく巡らせる。
推進力全てを衝突力とする一本の投擲槍と化した機体。

一交差の後、龍の体に反対側まで突き抜ける穴が開く。
突撃は成功したかに見えたが、ルナルドが感じるのは違和感。
スケールとフォルムから予想していた装甲よりはるかに脆弱な感触。

「チッ、外面と中身がまるで別物ってことかよ。それならっ。」
ルナルドは口元を笑みへと歪め、機体を反転させると再度深緑の龍を穿つべく全速力で突撃した。

145 名前:エリアス ◆HjQYbfcR9Q [sage] 投稿日:2009/08/26(水) 23:48:57 0
>141-144
>「ルナルドシロのおとうさんだたか? わたしルナルドおとうさん呼ばないとだめか?」
「な、なんだってー!? 随分若いお父さんだな!」
レクイエムがスライムに取り付き、ヴィカースが突撃する。
「よーし、いくぞー!」
とりあえず精霊機神の左腕を頭部のもしゃもしゃ部分に固定。
もしゃもしゃ頭にはいろいろからまるというイメージをそのまま再現してある。
無駄な方向に高度な技術が使われている、それがドナルドクオリティ。
まずはケチャップグレネードとカラシグレネードを起動して……
>「わたしもドナルドで遊ぶよ。せかくだからこの赤いボタン押してみるね。」
非常用と書かれたボタンをメイちゃんが押した。
「何だ? 何が起こるんだ!?」
操縦室内にアメリカンな謎の声が鳴り響く。
『HEY! MEはハンバーガーの精霊マックだYO!
MEと契約しない? そうすれば人生バラ色! 友達に自慢もできるぞ!』
「良く分からないからとりあえずスルーだ」
>「でも遊んでばかりよくないだからエリアスのお手伝いするよ」
今度は緊急用と書いてあるレバーを引いた。
――ランランルー!
ドナルドが絶妙な効果音に合わせ、両腕クロス→合唱→バンザイの動作をする。
(イメージ画像ttp://www.youtube.com/watch?v=OiwxMxzCPNg
バンザイした手から謎の破壊光線らしきものが発射された!
「おおっ、すごい!」

146 名前:ジュリエット ◆b6./ifc./kXO [sage] 投稿日:2009/08/27(木) 00:51:56 0
透明な水龍は、夜光虫の如き緑の発光色に彩られている。
水龍が身動きするたびに薄暗い海中の岩肌には微妙な陰影が刻まれた。
(この光は…またしてもあの女の仕業…!何所までも忌々しいこと!)

その緑の水龍となったジュリエットに精霊機ヴィカースが立ちはだかる。
水中で最も速く泳ぐ魚、カジキをも超えるスピードで。
(くっ…選択を誤りましたか…。撤退するなら移動に特化した形状にするべきでしたわね。
この形態では攻撃力はあっても移動力は落ちますわ…。)

中にヴェローナを包む水龍の全長は10mを超えた。
今や殆どが海水の体全てに指令を伝え、形状を変化させるには少なからぬ時間がかかる。
(ならば、優先して倒すべきは…この速い人形!)

背後から迫ってくるのは魔装機レクイエム。
――衝撃。
二本の刃が水龍の背に突き刺さっていた。
レクイエムは、突き刺さった双刃を持ち、そのまま手綱の様に水龍の動きを制する。
そして下からはヴェローナの腕を拾ったマスコット的精霊機ドナルドが怪しく目を輝かせていた。
緑の光の照り返しで顔がとても怖い。

取り込んだ海水を噴出したヴィカースが破壊鎚の勢いで水龍に迫ってくる。
機影は水龍を穿ち、胴体にパンをかじった様な穴を開けた。
千切れた部位は、すぐさま海の塩に溶けてゆく。
(海水を取り込みすぎましたわね…再生が追いつきませんわ。この一撃で仕留めなければ…!)

蜂の様な動きで反転したヴィカースの再度の突撃。
(速すぎて突撃は避けられませんわね…でも、これならどうかしら!)

ジュリエットは素早く尾を撓らせてヴィカースに正対する。
自身の中にはシローとヴェローナ。
突撃すれば、シローは間違いなく死ぬ。
狙い通りに接近するヴィカースが龍の頭部直前で減速する。
(動きを止めたのが過ち…これで終わりですわ!)

龍の顎がヴィカースを喰らわんとする。
まさにその瞬間、海が禍々しく輝き、振動が水を震わせる。
(この光は何……キャアァァァァ!)

下方から発射された破壊光線がジュリエット、レクイエム、ヴィカース、ヴェローナにシローを包み込む!
ドナルドが放った破壊の光は水龍の体を四散させ、余りある程の威力だった。

ボコッ…!ボコッ…!
地獄の輝きが消えると水龍の姿は巻き上がる泡と共に消えていた。

147 名前:メイ・リーファ ◆CGsmHeQJubOP [sage] 投稿日:2009/08/27(木) 20:18:19 0
>>144
>機体を反転させると再度深緑の龍を穿つべく全速力で突撃した。
むむ。やぱりビカス泳ぐの速いね。海で魚みたい動くよ。わたしたちも負けられないね。
(ドナルドの助手席の窓ガラスにぺったりはりつく。外の様子を眺める。)

>>145
>『HEY! MEはハンバーガーの精霊マックだYO!
>MEと契約しない? そうすれば人生バラ色! 友達に自慢もできるぞ!』
あはっ。
マクとエリアス契約したらマクエリアスね!
(ボタンを押したら精霊に話しかけられた。)

>『HEY! MEはハンバーガーの精霊マックだYO!
>MEと契約しない? そうすれば人生バラ色! 友達に自慢もできるぞ!』
あはー。
(もういちどボタンを押す。気に入ったらしい。)

>『HEY! MEはハンバーガーの精霊マックだYO!
>MEと契約しない? そうすれば人生バラ色! 友達に自慢もできるぞ!』
ふふっ。あははははは!
(ボタンを叩いて何回も再生する。ヘンなツボに入ったらしい。)

>――ランランルー!
>バンザイした手から謎の破壊光線らしきものが発射された!
>「おおっ、すごい!」
おおー。花火でたか? まぶしいね! ドナルドとても大きい竜気よ。さすがマクはひとあじちがうね。
(いつのまにか丸いサングラスをかけている。)

>>146
>ボコッ…!ボコッ…!
>地獄の輝きが消えると水龍の姿は巻き上がる泡と共に消えていた。
あれー? ジュリエト逃げたね。わたしたち追いかけこ負けたか? ひょとしてわたしまたまちがたか? 
(爆発がおさまる。サングラスを頭の上に乗せて首をかしげる。)

148 名前:ルナルド ◆SiFiw1brbM [sage] 投稿日:2009/08/28(金) 00:28:39 0
静謐な海中を泡立たせ再度の突撃。
先刻の一撃は龍の体を削りこそすれ、さしたるダメージは与えていないようだった。
食いちぎった部位は水に溶け、傷跡からは血の一滴も流れる様子は窺えない。
見た目こそは龍だが、おそらくは微細な多生物が成す群体か固定形状を持たない粘体生物なのだろう。

ならば遠慮はいらない。
搭載されているもう一つの武装、4門のワイヤーアンカー・クロウで切り離してやればいい。
特大サイズのケーキを一人分の大きさにカットし持ち帰る。
それで事足りるはずだ。

気取られぬようランスは構えたまま、アンカーの射出口をアクティブにして突き進む。
まさに決定打を放とうとしたその瞬間、龍がその巨体を撓らせその身に包んだシローとその愛機を穂先
へと晒す。

「コイツっ!?ここまでの知能もありやがんのかっ!!」
このまま攻撃を続行すればシローの死は明白。
ルナルドは機体を起こし減速、加速のために取り込んだ水を逆噴射させ龍の鼻先で停止する。
龍の口が勝ち誇った笑いを浮かべた後、こちらを捕食するためその顎を開く。

『ラン…ラン…ルー!!』
地獄の底から響いてくるような声と直後に溢れる破滅の光。
見れば龍の体がボコボコと沸き立ち、末端から消失していく。

「な、何が起こった!?」
下方を見ればそこには忘れていた……忘れたかったドナルドの姿。
何か悪い夢でも見ているようだが今の状況を造りだしたのがアレであるのは間違いないようだ。
龍の体が遮蔽物になっているからこちらへの被害はないが、その恩恵もあまり持ちそうにない。

ルナルドは即座に眼前のシローを龍から抜き取ると、レクイエムへとアンカーの照準を合わせる。
「すまん大将っ、文句は後で聞く。」
発射、レクイエム後部の武装ラックへと狙い違わず喰らい付く。
限界までその身に海水を取り込み最大戦速で離脱を図る。

「エリアス嬢ちゃんに、あの笑い声は竜神の小姐かっ!こっちまで殺す気かっ!?」
涙目になりながら恨みの声をあげる。
しかし延々と繰り返される『ランランルー』にかき消されその声が届くことは無かった。

149 名前:マーヤ ◆b6./ifc./kXO [NPCであります sage] 投稿日:2009/08/28(金) 06:30:46 0
「冥魔獣の反応が消失したであります。おそらく撃破したものと思われます。
精霊機中破、ケージ損壊、食材の冥魔獣化、今回の戦闘による金銭的被害は計算したくありません。」
冷静かつ緊張感の無い声が、回復したブリッジの乗組員を再び絶望の底に追いやる。

「ケージの浸水で精霊機の格納は不可。帰投の精霊機は速やかに甲板に放置するであります。」
各精霊機、及び魔装機に速やかにアナウンスを入れる。

「ローデス少尉、御苦労様でありました。
今回の事件で我々は一人の有能なオペレーターを得たのであります。
少尉が正式にブリッジに異動するなら給与は現在の1.5倍まで出せるであります。」
そして補佐官は、エニ―シャに向かって白紙の異動届けを差し出した。
アイネスの処方した苦い薬に呻くミーアの目の前で。

150 名前:ラム・ダオ ◆MeEEeH/kao [sage] 投稿日:2009/08/28(金) 23:46:03 0
海面を白く染める泡とうねりが海中での決着を示していた。
それを甲板で確認した後、ラム・ダオは艦内へと戻っていく。

#################################

>149
「おめでとう、エニーシャ。栄転ね。」
パチパチパチという拍手と共にブリッジに戻ってきたラム・ダオ。
変わらぬ笑顔でエニーシャを讃えた後、ナーヴァの前に進み出る。
「局長。短い間でしたがお世話になりました。
今この場を以って除隊させていただきます。」
穏やかな口調ではあったが、決して冗談ではない響きを持った声ではっきりと伝える。
そして更に続ける。

「今日初めて戦闘をして、色々判った事がありました。
冥魔獣が、MAY-Qがどういったものか。
そこでここに勧告いたします。
あなた方人類は直ちに降伏し、世界を明け渡しますよう。
それが聞き入れられない場合、実力を持って排除いたします。」
言葉と共に溢れ出る殺気がブリッジ内の空気をビリビリと震わせる。
台詞を言い切ると一礼し、ブリッジを後にしようと歩を進める。

途中思い出したように歩みを止め振り返り、
「私はこれから【女王】と呼ばれるものの元へ参ります。
良きお返事をお待ちしておりますが、次に会う時は敵同士でしょう。
いいえ、今この場で既に敵同士ですわね。
良いのですよ?実力を持って止めていただいても。」
穏やかな笑みで挑発するようにブリッジ内を見回す。

151 名前:エリアス ◆HjQYbfcR9Q [sage] 投稿日:2009/08/29(土) 00:21:20 0
>146-147
>「マクとエリアス契約したらマクエリアスね!」
「それはいいセットだ! そもそもハンバーガーとマックシェイクではカロリーが高すぎる」

破壊光線はドナルドの見た目からは想像できないほど強力だった!
味方まで吹き飛ばしかねないほどだが、メイちゃんに言う。
「心配ない。あの二人なら必ずうまくやってくれる!!」

>「あれー? ジュリエト逃げたね。わたしたち追いかけこ負けたか? ひょとしてわたしまたまちがたか?」
「違う、勝ったんだよ。我らの勝ちだ! あれ?」
メイちゃんが丸いサングラスをしている事に気づく。
「ハンバーガーの精霊から授かったのか! いいな〜。
きっといい事があるから大事にするんだぞ」

>148
レクイエムを引っ張って離脱するヴィカースの姿が見えた。ナギ君も連れている。
「見ろ、みんな無事だ!」

>149
>「ケージの浸水で精霊機の格納は不可。帰投の精霊機は速やかに甲板に放置するであります。」
「了解!」
言われた通りドナルドを甲板に鎮座させる。
「これにて一件落着! 来週のこちらミは〜」
謎の次回予告をしながらブリッジへ戻る。

>150
「ハ……ハハハ。ラムちゃんも冗談を言うようになったか」

>「私はこれから【女王】と呼ばれるものの元へ参ります。
良きお返事をお待ちしておりますが、次に会う時は敵同士でしょう。
いいえ、今この場で既に敵同士ですわね。
良いのですよ?実力を持って止めていただいても。」
「……ラムちゃんじゃないな。お前は誰だ? その娘から離れろ! スピリットショット!」
実体を傷つけずに精神にダメージを与える、精神生命体であるP型冥魔に絶大な威力を発揮する精霊射撃を放つ。

152 名前:名無しになりきれ[] 投稿日:2009/08/29(土) 01:04:36 0
あおぉぉぉ

ラムちゃんだっぺ

153 名前:アイネス ◆b6./ifc./kXO [sage] 投稿日:2009/08/29(土) 04:06:24 0
衝撃を伴うラム・ダオの宣告。
それがもたらした混乱から一早く脱したアイネスが口を開く。
「冗談…じゃないようね。ラム・ダオ中尉。」

『……ラムちゃんじゃないな。お前は誰だ? その娘から離れろ! スピリットショット!』
ケリンチョを疾走させてブリッジに入ってきたエリアスが精霊射撃を放ったが、アイネスはおそらく無駄だろうと思った。
精神を冥魔に支配されているなら『女王と呼ばれるものの元へ参ります』などという言い方はしまい。
わざわざ冥魔の元へ行くと宣言する必要も無いはず…。

「落ち着きなさい夏厨娘。中尉は冥魔獣に操られていないはずよ………少なくとも直接精神に寄生するというやり方では。
お金や権力に目が眩んでも、お金や権力に操られているとは言わないでしょ?―――あら、もしかしたら言ったかしら?」
エリアスを窘め、ラム・ダオに冷たい視線を向ける。

「色々分かったって……何が色々判ったのかしら?
賢い中尉殿には冥魔獣やMAY-Qがどういった物かが、お判りになったようだけど、私にはさっぱりだわ…!
今すぐ人類が冥魔の女王に降伏しようにも降伏すべきかの判断材料は、すこぉ〜し少ないんじゃなくて?
是非、鈍い私たちにも中尉殿が考え付いた御高説を拝聴させて頂きたいものだわ。」

(ここで本気の中尉と戦闘になれば、確実に一人や二人は持ってかれるわね…。
ブリッジのクルーは回復したばかり…動かすのは酷。他に中尉を確実に制圧できそうなのは…。
流石に新米たちでは荷が重い…。ラガン先生は…姿が見えない?この肝心な時に!ならブレイカーを…。)

アイネスは大げさに身振りを交えながら「賢い」や「御高説」を強調してラム・ダオに話しかけた。
中尉の注意を逸らし、デスクのMaTECに近づくのが、少しでもさりげなく見えるように。
素早くつかんだMaTECを後ろ手にして、回線をブレイカーに合わせて開く。
(この時間を稼ぐやり方はさっきの食堂と同じね。それは向こうもだけれど…いや、もしかしたらすでに仕掛けている?
後は、あの鈍感コンテスト優勝者がどれぐらいで気づくか……………最悪の場合も考えたほうが良さそうね。)

154 名前:エニーシャ ◆IZh0JJtPKA [sage] 投稿日:2009/08/29(土) 15:06:00 0
『ローデス少尉、御苦労様でありました。』
「い、いえ!? あの、その」
騒然としたブリッジからそろりそろりと離脱を図っていたエニーシャが、ガタンと音をたてて静止する。
緊急事態とはいえ、勝手に操作してよいわけがない。淡々とした労いが嫌みのように聞こえてならない。

『今回の事件で我々は一人の有能なオペレーターを得たのであります。
少尉が正式にブリッジに異動するなら給与は現在の1.5倍まで出せるであります。』
「もも申し訳ありま……せ…………はい? わ……私がですか!?」
正直、悪戯かと思った。
だが右手に収まる白紙の異動届は穴が空くほど見つめても、ドッキリマークが見つからない。

まずは、驚き。同時に評価されたことを素直に喜んだ。
次いで考えたのは、今期の返済間に合うだろうか、と切実なところ。
それから、背に突き刺さる敵意に居心地の悪さを覚える。ミーアだ。冒頭から散々に存在意義を侵されてきた可哀想なミーアだ。
気付け代わりの蹴りの加減を間違えたのもマイナス点だろう。これは……嫌われたな。
だが、何より強く思われるのは、先の――

「チーフ。私は」

『おめでとう、エニーシャ。栄転ね。』
「中尉殿! お帰りなさいませ。いえ…その…」
優しく賛辞を送ってくれる上司に、言葉を中断して困ったような微笑みを返す。

甲板で何をしていたのだろう? 髪や服がすっかり濡れてしまっている。
鼻腔をくすぐる甘い香りがいつもと違う。背負ったホメオツリーの香に混じるのは、あの蜂蜜とハーブのものだろうか。
コップ一杯など大した量ではないし、タオルで拭いもしただろうが、服や彼女の長い髪はそう簡単には乾いてくれないようだ。

ポケットを探ると、洗いざらして模様の薄れた花柄のハンカチが手に触れた。
もう少しマシなものを持っておけば良かったと後悔しつつ、それをそっと差し出しかけた、その時。

『局長。短い間でしたがお世話になりました。
今この場を以って除隊させていただきます。』

悪戯であって欲しいと思った。
おっとりと変わらぬ笑顔は穴が空くほど見つめても、ドッキリマークが返ってこない。

淀みないラム・ダオの宣言はさらに続いた。
エリアスの魔弾が撃ち込まれ、アイネスの問いが投げかけられる。
それら全てを薄紙一枚隔てた世界の出来事のように感じながら、考える。
自分の仕事は何だ? 冥魔獣に組する者を捨て置いていいのか?
なら、無謀であるとわかっていても。

剣を手に、一歩。
銀光が――

>「私には心強い仲間が多くいますもの。ねえ、エニーシャ?」

二本の剣が音を立てて床に突き立てられた。
両手を広げて敵意が無いことを示して、無防備なエニーシャはゆっくりと歩み寄る。
アイネスの動きには気づいていたが、注意を逸らす意図はない。
増援を呼んで争うことになれば中尉も怪我を免れない、その前に説得を終えないと――まだ、説得できるはずだと。

――ラム・ダオへの信頼と仲間意識が、彼女に判断を誤らせた。

「私も……知りたいです。中尉殿、なぜですか?
冥魔獣は残酷です。今回だってそうでしょう? エーテルを手に入れる、ただそれだけのためにこの船を沈めることまでしようとした。
一歩間違えば、シロー殿だけでなく大勢のクルーが命を落としていました。勝手ではありませんか? 私たちが何をしました?
なのになぜ、人であるはずの貴女があちらの味方をなさるのですか?
なぜ、“あなた方人類”などと奇妙な言い方をされるのですか?
中尉殿は人間の――いえ、私たちの仲間でしょう?」

155 名前:"紫煙の死神"ナギ・セノー ◆LtWG0drAw. [sage] 投稿日:2009/08/29(土) 20:24:54 0

『ナギ君、左腕は無事だぞ!!』【>138

『――ウチの息子はまだ婿には行かせられないんだ」【>139

「ヴィカースか! 特化型だけあって変態的な水中機動だぜ。
 向こうはドナルドか。アレはあらゆる要素が変態的だな……」

戦闘開始と同時に、精霊騎士は冥魔の体内で意識を覚醒させていた。
ジュリエットの体液は、肺の中に満ちると直接酸素を取り込めるらしかった。

「それにしても、この高飛車誘拐魔―――
 あれだけのパワーがあるってのに、なんで反撃しないんだ?」

逃亡を始めてからの水龍の動きは、少しおかしかった。遠慮の様な。迷いの様な。

「おれが、居るから……か?」

仮にそうだったとしても、それは捕食者が餌を守ろうとする意図でしかないはずだ――

「一体なんだってんだよ! 急に現れて、勝手にひとをこんなトコまで連れ出して…」

――だが精霊騎士は、存在しないかもしれない何らかの"感情"を勝手に感じ取った。
客観的判断材料も論理的根拠もない、直感。強いて言うなら、それはバカの特権だ。

「冥魔は、おれたちの敵なんだろ……?」

おれは、目の前の人達を無情な運命から助ける正義のヒーローになりたかった。
おれは、年もとれずに死んじまった母さんに約束した。必ず夢を掴んでみせるって。
だから、正体不明の人類の敵……冥魔獣の存在を知ったときも、不謹慎だけど嬉しかった。
だから、冥魔は生命を賭して戦う相手だと決めた。精霊機神に立てた誓いがおれの誇りだった。

だけど―――

((――冥魔のごはん竜気だたか? ごはん食べられない悲しいね――))【>124

おれだって、今まで食ったパンの枚数なんて覚えてない―――冥魔も、生きたいだけなのか?

「おれたちは一体、何と戦ってるんだ……?」

流体になっているジュリエットの体内を"泳いで"ヴァローナの胸部に取り付いた。
だが、ドクター曰く「精密魔導機器」満載のコックピットを水中で開くのは不味い。

「くっ……あきらめるものかよ! DELSなら外からの遠隔操作だって―――」

搭乗者の居ない暗黒のコックピットシート。
各種ディスプレイ、コンソール、モニターは全て沈黙。
その中で、DELSのボディに組み込まれたエレメンタルプレートだけが僅かに反応した。
真っ白なギターを改造したDELS。それが、ヴァローナの操縦桿でありスロットルレバーだった。

「そうさ。冥魔はおれの敵だ……倒さなくちゃいけないんだ。だから――」

何故なのだろう―――今に限って、熱血も精霊力も沸いて来なかった。

「――だから動けよ……どうして動いてくれないんだよ、シャイニングエックス?」


※DELS(でるす)……Direct Elemental Link Systemの略
エレメンタルオーブを媒体としたマンマシンインターフェイス群の総称。
搭乗者のイメージに依る直感的な操作並びに直接的な精霊力供給を可能とする。

156 名前:"紫煙の死神"ナギ・セノー ◆LtWG0drAw. [sage] 投稿日:2009/08/29(土) 20:26:38 0

『――ランランルー!』【>145

それは、ラスボスが持っていてもおかしくないBランク武装の発動だった。
具体的なスペックは"一瞬で相手の周囲の空間ごと破壊する。相手は死ぬ"

「誰だ、あのコンビにしょーもないオモチャ預けたのはっ!?
 ―――あんなもんもらっちまったら持たねえ、ぞ……」


((このままではシロー様が持ちませんわね……))【>135


―――不意に、その澄んだ声を思い出す。

状況がはっきり思い出せないが、おれは彼女の声を聞いていた。
理由もいまいち理解出来ないが、彼女はおれを気遣ってくれた。

―――そうだ。おれは彼女に借りがあったんじゃないのか?

…いや、貸し借りなんて大した問題じゃない。
このままじゃ格好がつかないだろ、ナギ・セノー?
エレメンタラーが冥魔の女の子に庇われっ放しなんてのは。

「……ッ!! うおおおおっ!!」

暗く沈黙していたヴァローナのカメラアイに、緑色の光輝が点った。

「廻れ、マクスウェル!!」

精霊力エンジンが、フルドライブで応える。

「歌え、オルフェウス!!」

肩部装甲が上下に開いて、魔導スピーカーが露出する。

「アイン・ソフ・オウル……全力全開だっ!! おれを――――」


ヴァローナがジュリエットの正面へと飛び出した。
機体前面に展開された精霊力フィールドは、光の盾だ。
その輝きが緑色から青、藍、紫色へとグラデーションする。


「――――"おれたち"を護れ!! シャイニングエックス!!」

157 名前:"錆鋼の審判"イングラム ◆/rhlAKoCtQ [sage] 投稿日:2009/08/29(土) 20:30:17 0

≪――ええいマニュアルはどこだ!?≫【>142

「"オペレーター"―――いや、ローデス少尉か?
 その様子じゃ、ブリッジの連中は未だ寝てやがるのか。
 操艦を頼んだぞ少尉。オペレートマニュアルはシートの下にある。オーバー!」

≪――大将。こっちは周りから削り取っていく!
 振り落とされないようしっかり抱きついててくれ≫【>144

「魔装機相手に無理を言ってくれるじゃねえか、精霊機乗り。
 気を付けろ伍長。さっきからターゲットの動きが妙だ。
 この戦況……どんな隠し玉が出てくるかわからん」

『――ランランルー!』【>145

「チッ……伍長、6時方向だ!
 俺に構うな―――回避マニューバーをとれ!!」

視界内のあちこちで複数の"CAUTION"が一気に点灯するが、無視を決め込む。

≪すまん大将っ、文句は後で聞く≫【>148

ヴィカースよる繋留と加速―――直後、水蒸気爆発の衝撃が何もかもを飲み込む。
意識と視界のホワイトアウト。それを一瞬に留めるには、尋常ならざる精神力を要した。
フレーム強度も装甲も精霊機に劣る魔装機内部で、計器も自身も死ななかったのは、悪運か。

「MAY-Q反応―――
 "ゲート"を開いて逃げた……か?」

ターゲット並びに精霊機の同時ロスト―――任務失敗。
爆心地に漂うのは、冥魔の緑鱗と紫色の精霊力の残滓だけだ。
モニターの片隅で最後まで点滅していた警告表示に視線を落とす。

「バカな―――ヴァローナにランクAの精霊力反応だと?
 それだけの力を何故、脱出に使わなかった? "ライダー"……!」

一連の状況が不自然過ぎる。冥魔から何らかの精神操作を受けて裏切ろうとしたのか。

「……各機は速やかに損害状況を報告。
 伍長のヴィカースは、このままライダーとレクイエムを牽引。
 アクエリアス機! そっちはターゲットの生体サンプルを採取して帰艦しろ」

冥魔との長時間に及ぶ一次的接触。ライダーに検査と監視を回す理由は充分だが――

「――ブリッジには、ターゲットを完全に殲滅したと伝えておけ」

何にせよ、目の前で地獄の釜の蓋が開いたのは、これが二度目だ。

≪さて、後はどうしたものか。上手くいくと良いのだが…どうか、無事で≫【>142

「コーヒーでも淹れて待ってるんだな、少尉。
 くれぐれもマニュアルのページには溢さない様に、だ。
 それから灰皿の用意を頼む……こっちは気が向いたらでいい」

――――今は、不味い煙草が無性に恋しかった。

158 名前:"錆鋼の審判"イングラム ◆/rhlAKoCtQ [sage] 投稿日:2009/08/29(土) 20:34:04 0

『これにて一件落着! 来週のこちらミは〜――』【>151

「――"行楽中華娘、始末書を作成するの巻き"で決まりだ。
 ブリッジミーティングが終わったら、お前らコンビは"自習室"行きだ。覚悟しておけ」

心底不味そうに煙草を銜えながら、最大の戦果と戦禍をもたらした二人の間に割って入る。
そこへさらに、MaTECのウィンドウが割って入った。整備中の"メカニック"からの個人通信だ。

≪おぉいゴースト! 何て無茶苦茶やりやがる。魔装機はジョッキーじゃないんだぜぇ?
 両腕のアクチュエーターが二基共オシャカ寸前だっての! こんな扱い方じゃ持たねえぞ。
 マシンもリペアラーもパイロットのカラダもだ。こりゃあ、リミッターの搭載も考えといてくれい!≫

「―――レクイエムをどう使おうが俺の勝手だ。リミッターなんざ必要ねえ」

食堂の清掃当番を押し付け合っている連中の騒ぎを横目に見ながら、ブリッジに上がった。



……

『うう…精霊機ケージは使えないはずです。パイロットのみなさんに連絡しなくっちゃ――』

何とか喋れるまでに回復した"オペレーター"ミーアの職業的実意の発露――

『――ケージの浸水で精霊機の格納は不可。帰投の精霊機は速やかに甲板に放置するであります』【>149

――それは、覇気が感じられないながらも速やかなアナウンスに遮られた。

『ああっ!?』

『今回の事件で我々は一人の有能なオペレーターを得たのであります――』

都内魔導列車の環状線に乗っているミーアの後ろの窓から夕日が差し込む。
次のカットで暗室の中央で椅子に座っているミーアにスポットライトが当たる。

『…絶望しましたっ! 私がお仕事しなくても全然へっちゃらなブリッジに絶望しましたっ!!』

ブリッジに、彼女の存在意義をフォローするべくお互いに空気を読み合う独特の一瞬が訪れる。

『あ、あの…。私、もしかして要らない子ですか?』

―――だが、その一瞬が明暗を分けた。

≪……だから、リミッターが気に食わないってんなら、せめてAISのナビを――≫

メカニックとMaTEC越しの応酬をしながらブリッジに入って来たゴーストの第一声は――

「――要らねえって言ってる!!」

――タイミング、声量、孕んだ怒気。全てに於いて狙い済ましたかの様な一言だった。

『…っ!』

小さく息を飲んだミーアが、俯きながらブリッジから駆け出して行く。
『あちゃ〜。泣ーかせた』 『……朴念仁ね』 『人でなしであります』
ブリッジ内の有形無形の糾弾を一身に受け、錆鋼の亡霊は魂魄を吐いた。


※……Artificial Intellectual Spirits

159 名前:Interlude ◆LtWG0drAw. [sage] 投稿日:2009/08/29(土) 20:38:57 0
【異界の少女T】

――――エプロン姿の騎乗兵は、裂帛の気魄と共に拳を突き出す。
その拳に応えたのは、やや遅れて正面から打ち出された、ただ一つの拳のみだ。
チョキは無し。他は全員パーだった。勝ち組はブリッジ行き。負け組みは食堂行きだった。



……

制服に着替えた騎乗兵が、食堂の床に散らばった食器やら空き瓶やらを回収して行く。

「なあ……ブレイカー…さん」

『"ブレイカー"で構わない』

黒衣の魔術師は、精霊銀製のモップで床を拭き取りながら答えた。

「それじゃブレイカー。さっき、どうしてグーを出したんだ」

『……無作為に決定した結果だ』

―――端的に言うと、ただの不幸というコトらしかった。
いろんな意味での負け組み二人きりの食堂に沈黙が降りる。

「……あの、さ。ちょっと訊きたいコトがあるんだ」

のそのそとトラッシュボックスに歩いて行き、両腕に抱えた空き瓶を放り込む。
あえて入り口近くに設置されたソレを選んだのは、背中を向けたかったからだ。

「誰かのコトをさ……何て言うか、その。
 気になって、どうしようもなくなった経験って、あるか?」

『……ああ』

「ははっ……そっか。自分で聞いておいてなんだけど、意外だったな。
 戦場を駆け巡ってばっかりで、女っ気なんて無さそうなイメージがあった」

『その認識は間違ってはいない。彼女とは戦闘の混乱の中で出逢った。
 我々とは血の色も、拠る世界さえも異なる少女だった』

「それって……人間じゃ、ないってコトだよな」

―――戦場で出逢った異界の少女。

「もしかして、敵、だったりするのか?」

『……いや。戦友と呼べる数少ない存在だった』

「戦友ってコトは、軍人か? まさかとは思うが魔捜局の誰か――」

『――彼女とは、戦闘中に死別した』



―――それは、いま一番聞きたくなかった言葉だった。

160 名前:Interlude ◆LtWG0drAw. [sage] 投稿日:2009/08/29(土) 20:42:01 0
【異界の少女U】

『誤解の無い様に言っておくが―――死んだのは、俺の方だ』

「なるほど。そういうコトか……何だよ、情けないこったな――」

魔術師の語る"彼女"は、おそらく生きているのだろう。不思議な安堵感――
――だが、それは反動を伴って騎乗兵の精神を波立たせ、辛辣な言葉を吐かせた。
吐き出さずには居られなかった。その相手が、魔術師なのか自分自身なのかもわからずに。

「――ヒロインの目の前でやられちまうなんて、熱血ヒーロー失格だぜ」

『世界が終焉を望んでいたからだ』

「意味がわからない」

『彼女を未来に向かわせる為だ』

「矛盾してないか、それ」

『……俺は、数多くの者の未来を奪う事で死に損なって来た存在だ。
 最期に"未来へ収束させる為の力"を世界へと還元したに過ぎない』

「あんたの勝手な理屈だろ、そいつは。残された方はどうなる?」

―――護れなかったヤツは、どうすればいい?

『彼女は俺の"鞘"だった―――魔力と真名を残して来たつもりだ』

「それだけ残されたって……忘れられなくなっちまうだけだろ?
 そんなもんいらないから、ずっと傍に居る方がいいに決まってる!」

―――ジュリエット。その名を思い浮かべるだけで、血液が騒ぎ出す様な気がした。

『理想を抱いて溺死するのは、愚者の所業だ』

「溺死したってのは、あんた自身のコトか?」

『―――俺は"愚者"たる己を葬り去って"魔術師"になった』

「そうかよ……だったら、おれは愚者で充分だ」

『お前も、いずれ思い知らされる時が来る』

―――そんな言葉は聞きたくなかった。認めたくなかった。

「そんなの、わかるものかよ! おれは……おれは、あんたとは違う」


『…そうさね。違うんだよ――――』


――――何処か虚ろなその声は、しかし圧倒的な戦慄を伴って食堂内に響いた。

161 名前:"錆鋼の審判"イングラム ◆/rhlAKoCtQ [sage] 投稿日:2009/08/29(土) 20:46:28 0

『おめでとう、エニーシャ。栄転ね――』【>150

泣きながら出て行ったミーアと入れ替わる様にして、ドルイドがブリッジに戻った。
正確には"現れた"―――理由は不明だが、すでに"向こう側"の勢力という事らしい。

『――私はこれから【女王】と呼ばれるものの元へ参ります。
 良きお返事をお待ちしておりますが、次に会う時は敵同士でしょう――』

『……ラムちゃんじゃないな。お前は誰だ? その娘から離れろ! スピリットショット!』【>151

こちらも、吸わずに口に溜めた煙を盛大に吐き出しながらベルトのホルスターに手を掛けていた。
アグニMPT――空挺時代から愛用している50口径の大型拳銃――のグリップが音も無く掌に馴染む。

『冗談…じゃないようね。ラム・ダオ中尉』【>153

―――そのアイネスの意図を察して、一瞬逡巡する。

『――是非、鈍い私たちにも中尉殿が考え付いた御高説を拝聴させて頂きたいものだわ』

このインテリ金毛女狐に協力してやるのは業腹だが、
貴重な貸しを作って置く為の悪くない機会にも思えた。

「……その話は、俺も興味があるな。
 初めて会った時の事を覚えてるか"元"中尉? 俺は良く覚えてる」

話題は適当に選ぶ。状況を鑑みれば論理的整合性を確保した発話内容は不要だと判断した為だ。

「魔装機を一目見たお前は「歪で不自然だ」と言った。こいつは、その延長って訳か?
 人間も、冥魔も、世界そのものをひっくるめて天然自然の一部と捉えるなら、
 お前が自然淘汰の流れに従おうって理由で寝返ったところで驚きはしない。
 弱肉強食の概念に照らし合わせれば、冥魔は間違いなく強者だからだ」

ドルイドとしての矜持が残っていれば、幾つかのキーワードに食いついてくれるか―――?

「……そうやって何でもアニミズムの枠で括っちまうってのは、ドルイドのサガなんだろうな。
 だが、俺のマシンには精霊力も血も通っていやしない。流れてるのは魔導力とオイルだけだ」

『私も……知りたいです。中尉殿、なぜですか?――』【>154

少尉が――おそらくは演技抜きで――食って掛かったのは好都合だった。
アイネスを背中に庇う位置に移動し、ドルイドにアグニMPTのマズルを向ける。
実力行使に及ぶ場合、鎮圧は容易い。問答を終えても撤退しない様なら――――狙い撃つ。

162 名前:Interlude ◆v/ikj/qTK2 [sage] 投稿日:2009/08/29(土) 20:55:39 0
【魔捜局の鬼札】

『…そうさね。違うんだよ。植林材とはモノが違うんだ。なにしろ天然の古木だからね……』【>160


―――想定を超越したあらゆる状況を突破し得る存在を"切り札"と称するのであれば。
概念の破壊者たる黒衣の魔術師"ブレイカー"は間違い無く、この世界の切り札であった。
だが一方で……それは"そうそう容易に引けるモノでは無い"が故に与えられた役割でもある。

「すまないが"コック"……ブリッジからコールが掛かっている」

世界の切り札は、清掃を終えたばかりの食堂フロアに正座させられていた。

『わざわざ現地まで出向いてねえ。アタシ自身の足で買い付けに行ったんだ……』

「"俺にコールが入る状況"だ。事態は一刻を争うと判断するべきだろう」

調理師は遠い目で、真っ二つに割れたセランカチークのテーブルの表面を撫でる。

『セランカの夏は、そりゃあ暑かったもんだよ……』


――――リリィ食堂の女傑は、難攻不落だった。


『―――…っ。
 (ホーマさん、いつもの長話でも説教でもない……。
 あのブレイカーの言葉ですら止まらないってのか?)』

食堂の出入り口付近に位置する騎乗兵は、調理師の死角で気配を殺す事に成功している。
それは、偶然がもたらした幸運でしかなかったが、救援要請を託すに値する配剤でもあった。
この危機的状況を打開する108の方法が脳裏を過ぎり―――最も穏便と思われる小技を採択する。


「確かに【我々が居るこの地】と比較すれば、熱帯に属する【セランカの夏は過酷なモノ】だろう。
 ―――しかしながら、観光名所として誉れ高い【セランカブリッジ】は気候の賜物とも言える。
 伝統の工法には学ぶ所も多い筈だ。機会があるならば【そう遠くない内に訪れたい】ものだ」

魔術師はピッチアクセントとストレスアクセントを駆使して、ToCマニューバーの行使に踏み切った。

『…―――!!
 (【この場は任せろ】【状況は苦境】―――【ブリッジ】【直ぐに向かえ】……か。
 ナイスToCっ! 恩に着るぜブレイカー! だけど死ぬなよ? 絶対に死ぬなよっ!?)』

『伝統工法と言えばねえ。世話になったナクティ=ヤンチャイは、現地でも指折りの家具職人で……』

「ああ……明日は…雨だろうか―――」

全力で騎乗兵を死地から脱出させた魔術師は――――数刻後、墨色のポストの姿で発見された。


※ToC(とーし 別名:ローズ)……Technique of Communications.
読んで字の如く。魔捜局の中でも一部の人間しか修得していない趣味的な諜報技術。
口頭による直接的な情報伝達が不可能な状況下に於いて、強引な意思疎通を可能とする。

163 名前:ラム・ダオ ◆MeEEeH/kao [sage] 投稿日:2009/08/29(土) 23:07:45 0
空気の凍りつくブリッジでエリアスが弾かれたように行動に出る。
>「……ラムちゃんじゃないな。お前は誰だ? その娘から離れろ! スピリットショット!」
アイネスの言葉も間に合わず放たれる精霊射撃。
「迷いながらの攻撃ならしないほうがいいわよ?
それにエリアス?あなたには少し女の子らしさが足りないわ。」
すっと流し目でエリアスを捉えると同時に、相互間に魔法陣が三つ形成される。

現われたのは巨大な鏡を持つ二人のガチムチマッチョ。
本来リリーガンガー号の風紀を司る精霊を支配下に置き利用したのだ。
持たれるのは魔法反射鏡。
スピリットショットは魔法反射鏡に跳ね返され、残る二つの魔法陣を通過する。
一つは属性変化魔法陣。
もう一つはエネルギー増幅魔法陣。
どちらも高位の魔法使いのみによって扱われる術であり、ドルイドの術とは系統を異にするものであった。
この三つの魔法陣により、スピリットショットの効果は精神に腐女子属性を追加する効果を持たされ三倍になってエリアスへ跳ね返る!

エリアスをあしらった後、冷たい視線を向けるアイネスに目を向ける。
>是非、鈍い私たちにも中尉殿が考え付いた御高説を拝聴させて頂きたいものだわ。」
>「魔装機を一目見たお前は「歪で不自然だ」と言った。こいつは、その延長って訳か?
(中略)
> 弱肉強食の概念に照らし合わせれば、冥魔は間違いなく強者だからだ」
アイネスの言葉を補完し強調するようにイングラムが続く。
その手には50口径の拳銃が握られているが、ラム・ダオがそれを気にする様子はない。

ラム・ダオの視線を奪ったのは横からは渇いた音と共に床に突き立てられる剣だった。
>「私も……知りたいです。中尉殿、なぜですか?
(中略)
>中尉殿は人間の――いえ、私たちの仲間でしょう?」

無防備に両手を広げ、近寄るエニーシャ。
その瞳には信じられない、信じたくないという感情と、決意を秘めた強い光りが入り混じっている。
「エニーシャ・・・」
困ったように表情を曇らせたラム・ダオの右手に血が伝い滴り落ちる。
その手には巨大な剣が握られており、その刀身はエニーシャの腹部を貫いていた。
「駄目じゃない、既に敵同士、と言ったのに無防備に間合いに入っては・・・。
残念だけど私は人ではなく森なの。そして、あなたたち人類は・・・いいえ、この世界は在るだけで倒すべき敵なのよ。」
ぐっと力を込め剣でエニーシャを押し、そのまま手を離す。
「その剣は【ラム・ダオ】。生贄の命を刈り取る剣の上位精霊の具現よ。
餞別にあげるわ。あなたが剣の精霊との対話に成功すれば命は取り留めるでしょう。」

164 名前:ラム・ダオ ◆MeEEeH/kao [sage] 投稿日:2009/08/29(土) 23:08:12 0
エニーシャを一瞥した後、手から滴る血をそのままに今度こそアイネスに向かい口を開く。
「あら、そんなにこそこそしなくてもいいのよ?全通信チャンネルを開いてくださいな。
これは私から全人類への宣戦布告なのですから。」
アイネスの目論見を看破し、それを微笑みながら認めたのだ。

そしてイングラムの質問にも応える。
「私の生み出す植物はこの世界では1時間と生きてはいられません。
この神木ホメオツリーも、白亜プランターがあるからこそ生きながらえている・・・
そう、それは私の失った森がこの世界とは別の場所にあったからなのです。
森を失った事も、世界の変革もまた天地自然の流れと思っていました。
先ほどまでは・・・
MAY-Qを世界を蝕む異世界、と言う位置づけが間違いだと気付いたのです。
いうなれば世界の回帰。
ゴースト、あなたの言うような弱肉強食などではなく、それ以前に・・・私の世界を取り戻す為にあなたたちと敵対する事を選んだのですよ。
世界同士の生存競争として、ね。」
説明を終えると、銃を突きつけるイングラムに視線を移して言葉を続ける。

「私をドルイド、と仰いましたがあなたはドルイドについてどのくらい知っていますか?
森と共に生き、自然の力を行使する魔術師?
それも一面である事は否定しませんが・・・ドルイドとは、知識と経験を受け継ぎ蓄積していく者という一面もあるのです。
そして神木ホメオツリーはあらゆる遺伝子を蓄積し、顕在化させることの出来る進化の木。
私は最早数える事のできぬラム・ダオの蓄積した結晶。
あなた方の有史以前からの知識を持つ者。
同時に森の苗床。
だからこそ、ラカン先生はディープフォレスのとコードで私を手元に置いたのでしょうけどね。
もし私を倒したいのであれば、私の知識にない・・・全く新しい呪術で、技術を携えてください。」
台詞の終焉と共にホメオツリーに唯一つついていた実に亀裂が入る。
まるで卵のように。

中からは透明な何かが溢れ出てくる。
30センチほどのそれは、少女と蛸が7:3の割合で融合したような姿。
それは植物化して取り込まれた冥魔獣とジュリエットの破片がホメオツリーで再構築された姿だった。
「力の関係上ポーンの特徴はほとんど出ないようなのね。
混沌たるジュリエット、と言ったところかしら?
さて、宣戦布告も終わりましたし、参りましょうか。座標軸をお願いね。」
スカートの裾をあげ、アイネスとイングラムに軽く一礼するラム・ダオの足元に魔法陣が現われ光を放つ。
それは既に失われた長距離転移魔法陣だった。

165 名前:ルナルド ◆SiFiw1brbM [sage] 投稿日:2009/08/30(日) 03:07:37 0
慣れた手つきで機体制御用のスラスターを操作し、甲板へと着艦。
ヴィカースから降り、大きく一伸び。
戦闘の余韻に浸ることも無くすっかりとだらけているルナルド。

『これにて一件落着! 来週のこちらミは〜』
『――"行楽中華娘、始末書を作成するの巻き"で決まりだ。
ブリッジミーティングが終わったら、お前らコンビは"自習室"行きだ。覚悟しておけ』
エアリスとメイ、そしてイングラムの騒がしい遣り取りが聞こえてくる。

「よう、エアリス嬢ちゃんに、小姐。
こちとら味方に撃たれるのは慣れてるが、次からはもう少し避けやすいので頼むわ。」
二人の背中を叩き、教導隊――自軍の練兵の為に仮想敵役を務める部隊――出身らしいジョークでその場を濁すと、

「大将もおつかれさん。さっきは悪かったな。」
上着のポケットからジッポを取り出し、火のついていないタバコを噛むように咥えているイングラムへと差し出す。

次いで自分のタバコへと火をつけ満足げに紫煙を吐き出し
「俺は一旦部屋に戻って着替えてくるわ。いつまでもこんな堅っ苦しいもん着てられん。」
王都に定期報告へと行っていた間常に制服着用だったのがよほど堪えたのか、伝言を頼むと自室へと帰っていった。



リリィ・ガンガー号ブリッジ。
割り当てられた自室で着替えを済ませ、諸々の報告へとやって来たルナルド。
しかしそこは一触即発の空気に包まれていた。

アイネス、イングラム以下クルー達に取り囲まれているラム・ダオ中尉。
その手は赤く染まり、足元にはエニーシャが少し離れた位置にエアリスが倒れ伏している。

『――もし私を倒したいのであれば、私の知識にない・・・全く新しい呪術で、技術を携えてください。』
言い終えると同時に背負ったプランターから奇怪な人型の冥魔獣を召還するラム・ダオ。
この男性クルー達の口に上がらない日は無いとすら言える艦内きっての癒し系美人がどういうわけだか宗旨替えをし、
敵となった事だけは把握できた。

かつての同僚に対する好意の感情はもちろんあった。
しかし雑念を振り払うと、腰のホルスターから自動拳銃を抜きラム・ダオへと照準を合わせた。

166 名前:ヴェルデトリポカ ◆b6./ifc./kXO [sage] 投稿日:2009/08/30(日) 19:13:51 0
セランカ諸島は、火山によって隆起した大小合わせて100以上の島々から構成されている。
熱帯モンスーン気候区で、ヤシの木が多く生える南国情緒あふれるリゾート地だ。
人口密度は局所的で2、3の大きな島に人が集中しているだけで、殆どは地図も存在しない未開の島々。
人を拒む未開の火山島の一つには、一月前から奇怪なピンクのオブジェが居座っている。
生物の内臓を裏返したかのような巨大なピンクの塊は、体の半分近くを泥に埋めながら蠢動していた。
この肉塊…ラァ・ユェーグは冥魔獣の移動拠点であり、それ自体が冥魔巨獣であった。

「ジュリエットが戻らない…何故!何故なの!遊んでいるの!?そうね?そうなのねぇぇぇ!!
どうしていつもいつも必要な事の出来ないダメな子なのぉぉぉ!!どうして?どうしてぇぇぇ!?」
ラァ・ユェーグの内部、部屋中に金糸が張り巡らされた一室で、生ける肉壁が甲高い金切り声を浴びてビクリと揺れた。
天井には黄金の糸で作られた蜘蛛の巣に張り付く巨大な蜘蛛の姿。
煌めく蜘蛛の巣は、体長4m近い蜘蛛を乗せても撓まない所を見ると尋常な強度ではなさそうだった。
黄金の体色の巨大な蜘蛛の頭部からは、蜘蛛の頭の代わりに人の胴体が生えている。
異形の女は長い金髪を振り乱し、肌と同じ色の白磁の如き両手で顔を覆う。

『ヴェルデ姉様、ジュリエットは倒されたのだ。反応が突然消えたぞ。』
床は壁同様に生物の肉らしきもので出来ていたが、硬口蓋(口の中の上部分)程度の硬さを備えている。
そのピンクの床の上には、30cm程度の青い半透明の瓶。
瓶の構造は蓋の無いクラインの壺であり、瓶の中では小さな人が体育座りで天井の黄金蜘蛛を見上げていた。
落ち着いた感情の感じられない声を発したのは15、6ぐらいの見た目をした瓶の中の少女だろう。

「あの子は相応しくなかったのよ…!そう、ポーンで十分だったんだわ!私、今から女王様の巣まで行ってくる!」
『ヴェルデ姉様は、こんな風につくられて可哀そうだ。』
「ああ…カリス、分かってくれるのね!私は可哀そうだわ!」
『ヴェルデ姉様でも迂闊に女王様の巣には近づいてはいけない。この世界の生き物が巣まで入り込むのだ。このように。』

床や壁の所々では不気味な粘液が分泌され、赤黒く発光している。
その、赤い光に満たされた部屋の床に突然異質な白い光が立ち上った。
光は床に幾何学模様を刻みながら輝く光の柱を作り、病んだ赤色を白色の光で塗りつぶす。
白柱の光源たる魔法陣は目的を果たすと一瞬で消え去り、後には一人の人間の姿が残った。

「誰、誰なのぉぉぉ!!ラァ・ユェーグは閉ざしていたはずなのにぃぃぃ!!どうして人間が入ってくるのぉぉぉ!?」
黄金の蜘蛛は、取り乱した様子とは相反して音も無く軽やかに床に着地した。

【名前】"黄金紡ぐ"ヴェルデトリポカ
【年齢】不明…人体部分は人間に換算して20代中盤ぐらいの見た目
【性別】不明…人体部分は人間の女性
【容姿】腰から下が黄金の蜘蛛の体をした妙齢の女、金眼金髪
【性格】ヒステリック、攻撃的、臆病、人の話を聞かない、人の話を全く聞かない
【自由記入欄】
【種族】冥魔獣・ゴールドアルケ二―
【位階】ナイト
【サイズ】M・蜘蛛部分4m程度

167 名前:エリアス ◆HjQYbfcR9Q [sage] 投稿日:2009/08/30(日) 23:19:40 0
>163
>「迷いながらの攻撃ならしないほうがいいわよ?
それにエリアス?あなたには少し女の子らしさが足りないわ。」
マッチョ×2が現れた!
「こらマッチョ! 操られてるんじゃない!うわー、だめだー!」
2枚の鏡に跳ね返された精霊射撃の直撃を受けて吹き飛ばされて気を失った。

夢の中にピンクのワンピースを着た姉ちゃんが現れた。
「我が名はエアリス……精霊の女王……」
Earth(エアリス)。アースとも読む。
人と精霊が共に生きるこの世界の名にして、精霊を統べる者。
あらゆる精霊の頂点に立つ精霊の女王とされている。
「お願いがあります。まだ生まれたばかりの私達の世界をどうか守って……」
ピンクワンピースの姉ちゃんがいきなり無茶言ってきた。
「変な事を言うなあ。この世界はずっと昔からあるよ」
「人間の尺度で言うとそうでしょうが、永遠を生きる者から見ると赤子にも等しい最も新しい世界なのです。
精霊が変化を拒まず人と共存する道を選んだこの世界は、信じられないほどの速度で発展を遂げた。
それが仇になりました。
あまりにも多くのエネルギーを持ちすぎたために、旧き世界の餌食になろうとしているのです。
どうか、私の……私達のこの世界を守ってください」
「そんな無茶な! 我はD〜Eランクです! もっと強い者に頼めばいいと思います!」
メイちゃんと組むとC、ドナルドに乗るとBになるのは例外である。
「だってわたしと名前が紛らわしいんだもん」
精霊の女王はナチュラルに言い放った。
「それだけ!?」
「コホン、冗談です。不思議に思ったことはありませんか?
契約せずともあらゆる精霊が力を貸してくれること……」
「普通そうじゃないのか? メイちゃんもそんなもんだぞ」
「その通り。彼女は竜神。あらゆる意味で人知を超えています。
その彼女とコンビを組めているあなたもまた……後は分かりますね?」
「分かりません、先生! 我はどこからどう見ても真人間です!」
「これを御覧なさい」
周囲に鮮やかな景色が広がる。さざなみ打ち寄せる真っ白な砂浜。
精霊の女王の声でナレーションが入る。
――今は昔、禁忌をおかした精霊がいました――
目の前で向かい合っているのは、人間の少年と人であらざる少女。
――彼女は水の精霊。なんと人間の少年と恋に落ちてしまったのです――
少年を拒むかのように首を横に振る少女。
「いけない……あなただって分かっているはず。
人と精霊はつかず離れずで共存していけるの。許される関係は“契約”だけ。
精霊に近づきすぎた人間は必ず破滅の道をたどる……」
少女を抱き寄せる少年。
「大丈夫。きっと大丈夫だから」
――そして二人は……――
「な、何たるメロドラマ」
思わず目をそらす。数秒後に目線を再び戻した時。
なぜか二人はナギ君とブレイカーに置き換わっていた。
「ウホッ、いい男」
「や ら な い か?」
合言葉のようなセリフを交わすと、手を取り合って背景に薔薇の花弁を散らしながらくるくる回り始めた。
「意味と趣旨がわからーーーん!!」
とはいうものの美少年と美青年。ビジュアル的には悪くない光景。
それに禁断の愛という意味では、人間と精霊の恋と一緒である。
「……これはこれでアリだ!」

新ジャンルに目覚めてしまったところで目が覚めた。
「うーむ。精霊の女王はなんて言ってたんだっけ……」
最後のインパクトが強すぎて忘れてしまった。

168 名前:魔捜局御一行様 ◆b6./ifc./kXO [sage] 投稿日:2009/08/31(月) 18:15:12 0
その日、上海亭に冥魔獣かと疑うような奇態な姿の一団が出現した。
その集団は全員が全員、海洋生物の着ぐるみを着ていたのである。

「や〜ん可愛い!やっぱりクジラのくーりゃんが一番ですねっ!」
「ペンギンのペンちゃんは…すっすでに獲られている!ならカジキングよ!よこしなさい!」
「リヴァイアサンのりばいあサンって…おいっ!どんな洒落だよ!!」
「イルカのいるたんも中々であります。」
「………この金魚の金さんって奴、海洋生物じゃないんだけど。」
「アタシぁはスタンダートにマグロ大将かねぇ。」
「我クラゲン也。」

それは魔捜局の局員たちだった。
港へと戻った魔捜局の面々には、公募マスコットの着ぐるみ数十体が作成されて支給された。
リリィ・ガンガー号のイメージからか、ほとんどは海洋生物の着ぐるみだった。
そして…遺憾な事に公募マスコットの人員は確保が出来なかった為、局員の中からマスコット役を選ぶ事になった。
市民の懸け橋となる重大な役割…喧々諤々の推薦(押し付け合い)になるのも当然である。

――後、ついでに今後の方針についても話し合っていた。

「メカニックとしちゃ、シャイ二ングエックスのサルベージは譲れねぇな!」
ウリバ…りばいあサンが海王の如く吠えた。

「却下よ。却下!リリィガンガーの修復だけで今年の予算は全て吹っ飛んだの。」
ナーヴ…カジキングのカウンターが海王の轟きを退ける。

「ヴェローナの反応は、すでに近海よりロスト。サルベージは砂漠の中で針を見つけるより難しいであります。」
マ…いるたんが補足する。こうかはばつぐんだ。

「中尉が冥魔と手を結べたとすれば、次にどう出てくるかが…ぁ。」
ア…金さんは頬杖を突こうとして体勢を崩しかける。

「このカルパッチョ…オリーブだけは良いもの使ってるねぇ!」
マグロ大将はご機嫌だ。

「以逸待労。」
クラゲンもご機嫌だ。

海の生き物たちの議論が白熱するにつれて、何故か近くのテーブルからはそそくさと人が離れて行く。
そして次第に閑散とする店の中には…さらに海の生き物たちが続々と集まって来るではないか!

それを見たカウンターの店主は何も言わず、諦めたようにそっと目を伏せた。

169 名前:ラム・ダオ ◆MeEEeH/kao [sage] 投稿日:2009/08/31(月) 21:32:55 0
足元に煌く魔法陣に身を任せるラム・ダオ。
術が発動し、その身を虚空の彼方へと誘わんとする瞬間、ブリッジに渇いた音が響いた。
バス・・・
誰が撃ったかは定かではないが、弾は狙いを違わずラム・ダオの左頭部に穴を開ける。
弾は穴を開けるだけに留まらず、穴の周囲を黒く染めその範囲を広げようとしていた。

光りの中、僅かに体制を崩しながらもラム・ダオは感心しながら口を開く。
「転移魔法発動瞬間を狙っての致命の一撃。
しかも弾には枯死の呪いを付与するだなんて・・・この念の入り用、素晴らしいわ。
でも・・・残念。」
黒く染まる穴の領域を囲むようにラム・ダオの右頭部全体が茶色く染まり、塵となって崩れ落ちる。
細胞内の自殺因子を操作し、呪いの感染前に頭部を切り離したのだ。
「言ったでしょう?私は人の形をした深き森。
例えどこか一部を傷つけられたとしても再生する。
私を殺すには足りなかったけれど、宣戦布告のお返事として受け取っておくわ。」
右半分の頭部を失って尚ラム・ダオの穏やかな表情特徴は崩れることはなかった。
たおやかな笑みと共に光に包まれ、ブリッジから姿を消した。

>166
ヴェルデトリポカのヒステリックな声が響くラァ・ユェーグに現われた光柱から現われたのは・・・
混沌たるジュリエットと右頭部を失ったラム・ダオだった。
見る間に再生を終え、ゆったりとした笑顔で、静かにそして荘厳な声を紡ぎだす。
「・・・お帰りなさい。」
来訪した者の言う言葉ではない。
しかし、その笑顔に、その言葉に、人の話を聞かぬ筈のヴェルデトリポカすらも・・・
本能で・・・否、自覚すら出来えぬ遺伝子の記憶が・・・
心地よく包まれていく。

170 名前:名無しになりきれ[] 投稿日:2009/09/01(火) 12:25:18 0
おい、スレ主さっさと出てこいや
ヴォケ

171 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/09/01(火) 13:53:25 O
>>170
やめろよ
出てこれたら迷惑だ
それをいうなら、出ていけや!にしてくれ

172 名前:メイ・リーファ ◆CGsmHeQJubOP [sage] 投稿日:2009/09/01(火) 18:56:41 0
>>148
>「エリアス嬢ちゃんに、あの笑い声は竜神の小姐かっ!こっちまで殺す気かっ!?」
>涙目になりながら恨みの声をあげる。
ルナルドなにか言てるね。でも聞こえる小さいよ。きとわたしたちにありがと言てるね。よいこと気持ちいいね。

>>156
>ヴァローナがジュリエットの正面へと飛び出した。
>「――――"おれたち"を護れ!! シャイニングエックス!!」
シロおきたか? ねぼすけよくないね。ドナルドらんらんるーバロナ竜気どち強いか勝負よ!

>>157
>「……各機は速やかに損害状況を報告。
>伍長のヴィカースは、このままライダーとレクイエムを牽引。
>アクエリアス機! そっちはターゲットの生体サンプルを採取して帰艦しろ」
ゴストレクイエム元気か? ドナルドマク元気ね。ジュリエトの尻尾みつけたよ。冷蔵庫にしまて夜ごはん食べるね。

>>149
>「少尉が正式にブリッジに異動するなら給与は現在の1.5倍まで出せるであります。」
>そして補佐官は、エニ―シャに向かって白紙の異動届けを差し出した。
>アイネスの処方した苦い薬に呻くミーアの目の前で。
エニシャひぱりタコか? エニシャびんぼうなくなるよかたね。マヤとても働き者ね。ミア真似するとよいよ。

>>151
>破壊光線はドナルドの見た目からは想像できないほど強力だった!
>味方まで吹き飛ばしかねないほどだが、メイちゃんに言う。
>「心配ない。あの二人なら必ずうまくやってくれる!!」
でもジュリエト逃げられたね。バロナもとられたよ。ルナルドゴストだめだめね。力でないたばこ吸てるせいよ。

>メイちゃんが丸いサングラスをしている事に気づく。
>「ハンバーガーの精霊から授かったのか! いいな〜。
>きっといい事があるから大事にするんだぞ」
たからもの守るは得意よ。これエリアスのすいちゅうゴグルとおそろいね。あはー。ちょとうれしいね。

>>165
>戦闘の余韻に浸ることも無くすっかりとだらけているルナルド。
>「よう、エアリス嬢ちゃんに、小姐。
>こちとら味方に撃たれるのは慣れてるが、次からはもう少し避けやすいので頼むわ。」
仲間に撃たれるひごろの行いよくないね。きとたばこよくない。でもルナルドけがする困るだからマクにお願いするね。

>>158
>「――"行楽中華娘、始末書を作成するの巻き"で決まりだ。
>ブリッジミーティングが終わったら、お前らコンビは"自習室"行きだ。覚悟しておけ」
>心底不味そうに煙草を銜えながら、最大の戦果と戦禍をもたらした二人の間に割って入る。
じしゅうしつおもしろいものないつまらないね。しまつしょあとでいいか? マヤからクレヨンもらてくるね。

173 名前:メイ・リーファ ◆CGsmHeQJubOP [sage] 投稿日:2009/09/01(火) 18:59:32 0
>>150
>「私はこれから【女王】と呼ばれるものの元へ参ります。」
>穏やかな笑みで挑発するようにブリッジ内を見回す。
ラムダオジュリエトいしょ働くにしたか? わたし知てるね。これことぶき退局と言うよ。ラムダオもびんぼうなくなるか?

>>154
>「い、いえ!? あの、その」
>騒然としたブリッジからそろりそろりと離脱を図っていたエニーシャが、ガタンと音をたてて静止する。
>緊急事態とはいえ、勝手に操作してよいわけがない。淡々とした労いが嫌みのように聞こえてならない。
エニシャわるいことしたか? ゴストエニシャに頼む言てたよ。だれも怒らないね。リリガンガの命の恩人ね。

>「私も……知りたいです。中尉殿、なぜですか?」
>「一歩間違えば、シロー殿だけでなく大勢のクルーが命を落としていました。勝手ではありませんか? 私たちが何をしました?」
エニシャ・・・。それ言たらだめよ。わたしたちタコやつけたよ。魚も馬も海藻もやつけたよ。まいにちごはんも食べてるよ。
生きることは戦うことよ。わたしたち生きてるね。ラムダオも生きてるね。人間冥魔生きてるね。生きるやりかた決めるは皆ちがうよ。

>>167
>新ジャンルに目覚めてしまったところで目が覚めた。
>「うーむ。精霊の女王はなんて言ってたんだっけ……」
エリアスだいじょぶか? むむ。よだれ出てるね。おいしいの食べる夢みたか? わたしもそれ食べたかたよ。

>>164
>「さて、宣戦布告も終わりましたし、参りましょうか。座標軸をお願いね。」
>それは既に失われた長距離転移魔法陣だった。
ラムダオさよならちょとさみしいね。盆栽の床屋いなくなるラガン老師きとざんねんね。いつでも遊びくるとよいよ。再見〜。

>>168
>その日、上海亭に冥魔獣かと疑うような奇態な姿の一団が出現した。
>その集団は全員が全員、海洋生物の着ぐるみを着ていたのである。
>「ペンギンのペンちゃんは…すっすでに獲られている!ならカジキングよ!よこしなさい!」
ナバごめんね。わたしの杏仁豆腐とどいたらちょとわけてあげるね。しまつしょもがんばてかくよ。
(食卓の上に画用紙を広げる。ご機嫌でクレヨンの箱を開ける。)

ペンギンしまつしょかくのたいへんね。知らなかたよ。ペンギンのれんしゅういるね。
(着ぐるみは手がひれでつるつる。クレヨンを上手に動かせない。画用紙から線がはみ出る。しょんぼりする。)

>次第に閑散とする店の中には…さらに海の生き物たちが続々と集まって来るではないか!
>それを見たカウンターの店主は何も言わず、諦めたようにそっと目を伏せた。
なにか悲しいことあたか? わたしたちもさき悲しいことあたよ。ラムダオとても遠くで働くことになたね。
上海亭の杏仁豆腐ちょと水ぽいね。むむ! にょろ〜ん・・・。
(杏仁豆腐を上手にすくえない。さらにしょんぼりする。)

ペンギンえさたべるもたいへんね。知らなかたよ。むむ! にょれろ〜ん・・・。甜品たべるだめか? かき氷しないとだめか? 
(手が滑ってスプーンを落とす。涙目になる。)

174 名前:名無しになりきれ[] 投稿日:2009/09/01(火) 20:43:02 0
スレ主の反応よろ

175 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/09/01(火) 21:16:28 O
>>174
だからスレ主自体いらねえっつの
嫌がらせか!

176 名前:ヴェルデトリポカ ◆b6./ifc./kXO [sage] 投稿日:2009/09/01(火) 21:48:49 0
* * * * *

『ボクはラム・ダオを迎え入れても悪くないと思うぞ。次の謁見の時に共に女王様の所へ赴こうではないか。』
ラム・ダオとの対話を終え、青い瓶の中の少女は納得したように呟く。
「え?ええと…?でも、さっき女王様の巣にこの世界の生き物を近づいちゃいけないって言ってなかった?
言ってた…言ってたわよね?どういう事?ああ、カリスが何を考えているのか私、分からないわ…!」
ヴェルデトリポカが眉根に皺を寄せる。

『宜しく貪欲な森。』
少女入りの青い瓶はラム・ダオが瞬きをした一瞬の間に目の前の床まで移動していた。
このクラインの壺はさっきから瞬きするたびに位置を変えている。
瓶の移動の瞬間は、ヴェルデトリポカもジュリエットも偶々同時に瞬きをしてしまうため認識していない。
ちなみに眼を閉じないように試みていれば、その間は同じ空間に留まっているのが確認できる。

『そして、混沌たるジュリエット。』
『べるで姉しゃま、かりしゅ姉しゃま、御機嫌よう。ただ今戻りまちたわ。』
「ああ、随分縮んで…べ…別に私は一番ダメな妹の事なんか心配してないんだから…全然心配してなかったんだからね!
―――で、ラム・ダオさん?貴女には、まず手並みを見せてもらいましょうか。
この近くの島々は、ほぼ全てが広大な原生林。貴女の立てた策を用いるにはうってつけでしょ?」

ヴェルデトリポカがガラスを引っ掻くような声を上げると肉壁に刻まれた皺が洞窟の口のように広がり、
ラァ・ユェーグの内部に南国の爽やかな風を吹きこむ。
開いた穴から見えたのは、水面から生える木々がマングローブ林を形成する風景だった。
冥魔の移動砦ラァ・ユェーグは、その半ばを干潟の泥に埋めながら水没林の緑に身を隠していたのだった。

【名前】"清涼な"カリス・ポォツェット
【年齢】不明…16、7ぐらいの見た目
【性別】不明…少女の様な姿
【容姿】青い半透明な瓶の中に小さな人が入ってる、青眼青髪
【性格】無愛想、冷静、断定口調
【自由記入欄】
【種族】冥魔獣・ボトルインプ
【位階】ビショップ
【サイズ】2S・30cm程度

【名前】ラァ・ユェーグ
【年齢】不明
【性別】不明
【容姿】全長約30Mのピンクの肉塊
【性格】自らの意思で動く事は無い
【自由記入欄】
【位階】ポーン
【備考】内部はMAY-Q空間になっており外観より広い。家賃はエーテルでお願いします。

177 名前:エリアス ◆HjQYbfcR9Q [sage] 投稿日:2009/09/01(火) 23:42:40 0
>172
>「たからもの守るは得意よ。これエリアスのすいちゅうゴグルとおそろいね。あはー。ちょとうれしいね」
「ああ、これは我が小さい時に亡くなった母親の形見だそうだ」
言われてみればメイちゃんがマックからもらったサングラスとおそろいだ!
良く見ると同じロゴが付いている。

>173
「エリアスだいじょぶか? むむ。よだれ出てるね。おいしいの食べる夢みたか? わたしもそれ食べたかたよ」
「うん。ある意味美味しかった」
何か重大な事を忘れてしまったような気がする。
ラムちゃんは本当に向こう側へ行ってしまったそうだ。
さらにエニーシャちゃんはその時の怪我で重傷らしい。
だがしんみりしている場合ではない。メイちゃんがペンギンだ!
「……なぜに着ぐるみ!?」

>168
話によると着ぐるみ着て上海亭で魔捜局の宣伝をするらしい。
「これを着て上海亭に行けばいいのか。人魚姫アリエール」
これは着ぐるみというかコスプレというか
下半身の魚部分とアクセサリーがセットになっているというおっさんが着たら絶望的な仕様になっている。
しかも歩けない。明らかに設計ミス。
便利なケリンチョを持っているからこれが割り当てられたのだろう。

>「ペンギンえさたべるもたいへんね。知らなかたよ。
むむ! にょれろ〜ん・・・。甜品たべるだめか? かき氷しないとだめか?」
「食べさせてあげるよ!」
スプーンを拾って新しいスプーンを持ってくる。
歩けないけどその代わり上半身自由でウマー。

178 名前:エリアス ◆HjQYbfcR9Q [sage] 投稿日:2009/09/02(水) 00:10:34 0
♪――♪――♪
こちらミルダンティア王都立市街魔術迷宮捜査局
こんなに長い名前でもたいていみんな知ってます
ミルダンティア市民なら誰でも分かる
でもこちらミでいいじゃん 短くていいじゃん
こちらミでいいじゃん 短くていいじゃん
市民的に愛されてます
こちらミルダンティア王都立市街魔術迷宮捜査局
♪――♪――♪

大音量で宣伝用の歌を流すラジカセを設置。
そして用意されたポスターを酒場の掲示板に貼る。

【魔捜局員募集!
市民の皆さん、ミルダンティア王都立市街魔術迷宮捜査局、通称魔捜局で一緒に働きませんか?
局員達はみんな仲良し! 世界の平和を守るとってもやりがいのあるお仕事です!
希望者は応募用紙に記入して提出すれば即採用!】

さらに応募用紙の山を置く。

【名前】
【年齢】
【性別】
【容姿】※
【性格】※
【自由記入欄】上記以外の項目を任意に追加記入可。

※※迷ったら「すごい/ふつう/がっかり」から好きなのを選んでくれ。

「これで思わず入局したくなること間違いなしだな!」
すでに店主以外海の生き物ばかりになった酒場内を見渡しながら言った。

179 名前:メイ・リーファ ◆CGsmHeQJubOP [sage] 投稿日:2009/09/02(水) 20:56:28 0
>>177
>話によると着ぐるみ着て上海亭で魔捜局の宣伝をするらしい。
>「これを着て上海亭に行けばいいのか。人魚姫アリエール」
エリアスかなーり似合てるね。髪飾りもよいだけどアテナのすいちゅうゴグルもよいよ。

>「食べさせてあげるよ!」
>スプーンを拾って新しいスプーンを持ってくる。
おいひいよー! エリアスありがとね。お礼にタイタンの代わりわたしの背中のせさせるさせすね。
(かんだ。)

とにかくペンギンおなかすべるだからきと速いね。リリガンガ戻たら甲板でやるよ。花火もやりたいね。

>>178
>♪――♪――♪
おおー。魔捜局の歌で宣伝するか? ラクリスに歌てもらうか?
(頭のお団子の中で角がむずむず動いた!)

>こちらミルダンティア王都立市街魔術迷宮捜査局
これわたしの鍵盤符の出番ね!
(白と黒の細長い霊符をたくさん出す。テーブルの上に並べて鍵盤にする。)

>こんなに長い名前でもたいていみんな知ってます
マクの竜気おすそわけしてもらて作た霊符よ。あはははは!
(ペンギンのひれの先で鍵盤符を押す。ドナルドの美声が出る。)

>ミルダンティア市民なら誰でも分かる
皆いしょに歌うね!
(指が広がらないのでばんばん叩くだけ。和音にへんな音が混ざる。)

>でもこちらミでいいじゃん 
いいじゃん!

>短くていいじゃん
いいじゃん!

>こちらミでいいじゃん 
いいじゃん!

>短くていいじゃん
いいじゃん!

>市民的に愛されてます
>こちらミルダンティア王都立 
いぇい!

>市街魔術迷宮捜査局
しがいまじゅちゅめいきゅうー! そうさきょく!

>♪――♪――♪
あはー。これとても好きになたよ! あしたまで覚えるね。
(鍵盤を左から右にさっとなでて歌の振り出しに戻る。)

180 名前:ルナルド ◆SiFiw1brbM [sage] 投稿日:2009/09/02(水) 22:49:40 0
右手は突き出すように銃把を掴み、左手は引き付けるように銃底を包む。
幾度と繰り返し覚えさせられた動作は淀みなく、ルナルドはピタリとラム・ダオの頭部へとポイントする。
突きつけられた拳銃は名銃工「ガストン・ミルト」が創りだし、幾多の銃とのトライアルを経て軍正式拳銃へと採用された
ミルト・バリアント45口径、装弾数9発。
総重量は他に比べると若干重いが、その分射撃時の反動を軽減し銃口の跳ね上がりを抑え込んでくれる。

すでに薬室には初弾が装填されており、後はトリガーを引くだけで容易く人命を奪うことができるはずである。
しかし悠然と立っているラム・ダオは微塵の隙も無く、すでに白兵戦なら艦内きっての達人であろうエニーシャも無力化されている。
このまま撃ったのでは反撃を食らいこちらが倒れるのは容易に想像できた。

睨み合うこと数秒、ラム・ダオの足元に膨大な魔力量を持つ魔法陣が光とともに展開され、その瞬間わずかではあるが注意が足元へと
注がれるのを見て――発砲。

ダンッ!
装填されている弾丸は弾頭に魔術刻印が施されており、射手の精霊力に呼応し"壊死"の魔術を発動させる仕掛となっている。
人であれば体組織が腐り、植物であれば枯れ果て、鉱物であれば砂塵と化し零れ落ち、金属であれば腐食し崩れる。
精霊器を操れない者が様々な形態をとる冥魔獣に戦うのに有効とされている術式である。

「……嘘……だろ?」
狙い違わず命中したはずの必殺の一射。

『転移魔法発動瞬間を狙っての致命の一撃。しかも弾には枯死の呪いを付与するだなんて・・・この念の入り用、素晴らしいわ。
でも・・・残念。』
『――私を殺すには足りなかったけれど、宣戦布告のお返事として受け取っておくわ。』
頭の左半分を消失しながらも艶然と微笑みブリッジから消え行くラム・ダオをルナルドは呆然と見送るしかできなかった。


悪夢としか言いようの無い時間から開放され、倒れている二人へと駆け寄るクルー達。
腹部から剣を生やし、絶命していてもおかしくない状態のエニーシャ。
なぜかにへらっと笑いながら体をくねらせているエリアス。
『……これはこれでアリだ!』
意味のわからない寝言まで叫んでいる。

ラム・ダオが光の中へと消えていった場所にふと目を向けると、その場にしゃがみ塵となった彼女の体組織を調べているイングラム。
「よう……何かわかったかい?大将。」
答えを期待するわけでもなく、さらにルナルドは続ける。
「……しかし同僚を撃つのも辛いが……確実に殺ったはずなのに、何事も無かったかのように行っちまうのもしんどいもんだな……。」
かつての仲間が人ではない何かに変貌してしまったという事実。
小さくこぼすルナルドの声は、酷く乾いていた。

181 名前:ルナルド ◆SiFiw1brbM [sage] 投稿日:2009/09/03(木) 01:12:51 0
「……嘘……だろ?」
つい先程同じ呟きを洩らしたような気もするが、目の前の光景を見れば無理も無いことだった。
破損したリリィ・ガンガー号の修復や負傷したクルーの治療のため一旦帰港した魔捜局の面々に突き出される数種類の着ぐるみ。
鯨にカジキに、イルカ。
幻獣であるリヴァイアサンや魚の尾ひれにアクセサリーが付いた物、果ては金魚などまで揃っている。

今一つ評判のよろしくないミルダンティア王都立市街魔術迷宮捜査局のイメージアップの為に公募したマスコットへの応募が全く無く
局員達にそのツケが回って来たということだった。

始めは渋りもしたが上司達が選ぶのを――中には嬉々として着る者も居たが――見て、ルナルドもその内の一つへと手を伸ばした。

「こいつは!?侮れねえフィット感だぜ……。」
ルナルドが選んだのはサメ。目の部分には凶悪な角度のV字型のサングラスが鎮座している。
もこもことした重量感とは裏腹にその出来は匠の一品とも言える動きやすさだった。

上海亭で局長のナーヴァへと王都に定期連絡に来ていた際の報告を済ませ一息ついていると、ケリンチョに乗って疾走する人魚姫と
ぽてぽてと歩くペンギンの姿。
『これを着て上海亭に行けばいいのか。人魚姫アリエール』
『エリアスかなーり似合てるね。髪飾りもよいだけどアテナのすいちゅうゴグルもよいよ。』

「よう、エリアス嬢ちゃんに小姐。似合ってんじゃねぇか。
嬢ちゃんは女っぷりが上がってるし、小姐も可愛いさに磨きがかかってるぜ。」
ひょいっと器用に片ヒレを挙げて挨拶するルナルド。
着ぐるみの着用を渋っていた最初の感じとはうってかわり、満更でも無さそうな雰囲気だった。

182 名前:ヴェルデトリポカ ◆b6./ifc./kXO [sage] 投稿日:2009/09/03(木) 22:21:43 0
ヴェルデトリポカが思念波が放つと、ラァ・ユェーグ内部の冥魔獣全てに命令が行き渡る。
何分、冥魔獣の思念波による意思伝達。中にはこの世界の人間には理解不能の部分も少々あるかも知れない。

《あーあー。聞こえてる?聞こえてるわよね?
ラァ・ユェーグに住まう全ての女王様の子らよ、これより私たちは女王様のために多くの事を成すの。
作戦は幾つかあって、以下のものを同時多発的に行うわ。
参加しようという冥魔獣はキャラクター作成テンプレートに己の存在を刻みなさい。
尚、新参加者が居ないようなら二つは水面下での暗躍という事になります。》


作戦A・精霊機を奪取せよ!(指揮官"混沌たるジュリエット")
《わたくちは先の戦いで奪い損ねた精霊機の再奪取を致ちまちゅ。
内部に残ってりゅわたくちの破片を辿って、場所の特定はしゅでに出来まちた。
精霊機は、ここより遥か西方の砂漠を見はらす大奇岩に転移ちていまちたわ。
ここは、かちゅて大地の女神を信奉する一族が造り上げた迷路都市が岩肌に刻まれていまちゅ。
精霊機の転移は女神の意思が関わっていりゅかも知えないので、くえぐえも用心ちてくだちゃいね。》


作戦B・ラム・ダオの大作戦(仮)!(指揮官"黄金紡ぐ"ヴェルデトリポカ")
《私はラム・ダオさんの立案に沿って侵攻します。
作戦を成功させるため、あなた方はこちらの指示に従い、陽動なり奇襲なりを行いなさい。
具体的な場所や作戦は未定のため、しばらくはラァ・ユェーグで待機。
尚ドルイドは監視し、不審な動きを見せるようなら…分かっていますね?分かった?分かってるわよね!?》


作戦C・エーテルプラント計画(指揮官"清涼な"カリス・ポォツェット)
《セランカの孤島、キキーリャをエーテルプラントの実験場にする。
ディープフォレストの技術提供は、新しいエーテル収奪方法を可能としたのだ。
キキーリャ島は他島との交流は殆ど無く、住民が消えても長く発覚しない。
キミたちがするのは、キキーリャ島の住人を捕らえて一か所に集めるだけだぞ。簡単すぎるな。》


○キャラクター作成テンプレート
【名前】
【年齢】
【性別】
【容姿】
【性格】
【自由記入欄】上記以外の項目を任意に追加記入可。
【位階】※

※参考(ナイト=攻撃型/ルーク=防御型/ビショップ=魔術型/ポーン=汎用型/その他の捏造も歓迎)

183 名前:Interlude ◆CIptpZ5NA6 [sage] 投稿日:2009/09/04(金) 02:16:03 0

私は魔捜局のエースにして弱冠二十歳の美少女だ。
二十歳になるけれど、少女。あくまでも永遠の少女なのだ。
さらに言うと美青年の人型魔術兵装を従える模範的修道女だ。
弱点と言えば同年代より胸囲が控えめなことくらいの完璧超人だ。
成長期に風の上位精霊魔術を極めた代償で、以降の刻が静止したのだ。

「…どうして私がこんな現場を担当しなきゃいけないのよ――」

関係者の全てに疎まれる魔捜局の本部施設の所在地は、僻地だった。
私企業の営利優先、利潤追求の資本主義が横行する王都ミルダンティア。
この地に在って、湾上に浮かぶ戦艦に出前をしてくれる酔狂な店は限られる。

「――ま、しかたないか。ココのマーボー豆腐、結構おいしいし」

"リリィ食堂"の規模はメインのコックが一人にウェイトレスが五人。
しかも狭いため、食事時には座席を確保する為の戦場と化す。
狼になりきれず、かと言って調理の腕に覚えが無い局員は、
その栄養補給手段の多くを外部供給に頼らざるを得ない。
すなわち―――大衆食堂"上海亭"の出前ランチである。

「――――魔捜局の捜査官よ。
 当局のオペレーターが、こちらで"MAY-Q"反応を観測したわ」

ざわ…ざわ…ざわ…と昼食時の上海亭の空気がさざめく。
平和ボケした客は、何事かとこちらに訝しげな視線を送って。
わかっている客は、速やかに壁に向かい両手を広げて立った。

私は、ざっと店内を見回す。

老いた魔術師。
筋骨隆々の戦士。
胸の大きな獣使い―――彼女は、後で公務員侮辱罪でしょっぴこう。

暇そうな学生や、くたびれたサラリーマン、アルバイトらしき店員etc.

「ああ、ウェイター?―――そう。その花マルはんばーぐ。
 できたてよね?…調査の必要があるわ。当局が徴発します」

出撃命令発令直前に兄さんに奪われた、乙女の昼食。
それを再びこの様なカタチで与え給うた主に深く感謝した。


【パーソナルコード】"シスター"
【年齢】20
【性別】♀
【容姿】銀髪/翠瞳/可憐
【性格】天衣無縫
【装備】夜色の修道服/人型魔術兵装"ディフェンダー"
【特技】上位精霊の魔術制御による急加速突撃並びに零距離射撃を主軸とした空間戦術
【階級】少佐


※"MAY-Q"(めいきゅう)……"Magical Absolute Yard Quark(魔的絶対場素粒子)"の略
※徴発(ちょうはつ)……魔捜局の業界用語で「黙って寄越さないと暴れる」の意

184 名前:"錆鋼の審判"イングラム ◆/rhlAKoCtQ [sage] 投稿日:2009/09/04(金) 02:17:06 0

――――何故、俺は飯屋で楽隊の真似事なんぞをしてる?
幽霊海賊"かいぞくん"のマントと眼帯を御仕着せられた錆鋼の傭兵は、
不機嫌そうに、だが精密に精霊銀製トロンボーンのスライドを動かしながら自問する。

「元・空挺だぞ、俺は……」

サイズが合わない髑髏のキャプテンハットが、腕を遠いポジションに動かす毎に傾いていく。
必要な酸素を短いブレスでホールドする作業も、タールで長年スポイルされた肺には辛かった。



……

『よう……何かわかったかい?大将』【>180

「……ああ。わかったぜ。
 伍長が操縦だけじゃなく射撃の腕も確かだって事ぐらいは、な―――」

―――そして、この弾丸を受けて生存していた"冥魔"の異常性も。

『……しかし同僚を撃つのも辛いが……
 確実に殺ったはずなのに、何事も無かったかのように行っちまうのもしんどいもんだな……』

「だが"そういう相手"なんだよ。俺達が……魔捜局が戦っているのは」

忌々しげな表情で、ソレを手に取った。
戦場の亡霊たる自分には似合いであろう――
――幽霊海賊"かいぞくん"、その衣装を。

『……嘘……だろ?』【>181

「――――現実を受け入れろ、伍長。
 戦場から兵士を生還させるのは正確な形勢認識と戦況判断に他ならない」

『こいつは!?侮れねえフィット感だぜ……』

辛うじて人型のマスコットを選んだ傭兵に比して、
伍長の選択は、挑戦的かつアグレッシブなモノだ。

「……侮れないってのは、お前の適応力もらしいな。
 愛しのウンディーネも大喜びで泣き崩れる色男だ」

『よう、エリアス嬢ちゃんに小姐。似合ってんじゃねぇか。
 嬢ちゃんは女っぷりが上がってるし、小姐も可愛いさに磨きがかかってるぜ』

「精霊の涙で殺されちまわない様に精々、気を付けるこったな――――"フルトブラント"」

傭兵の自己成就的予言は、直後に発令された上海亭遠征にて泣きを見る事で実現することになる。

185 名前:"紫煙の死神"ナギ・セノー ◆LtWG0drAw. [sage] 投稿日:2009/09/04(金) 02:18:00 0

――――割り当てられたのは、またしてもマニアックな女装だった。

「……くっ。これが"バンド内部の音楽(ファッション)性の違い"とゆーヤツかっ!?」

海魔セイレーンのマスコット"せいれたん"の衣装という名目の下、
セクハラに近いボロ布を無理矢理に纏わされたギタリストは吼える。

「だが、おれは演らなきゃならないんだ……なぜなら!」

昼食時の上海亭という海戦場に投げ込まれた悲劇の歌姫は、速やかに覚悟を完了した。

「そこにサウンドがある限り、おれは超高速のロックンローラーだからだっ!」

楽曲自体はどう聴いてもスカのビートだったが、そこは勇気とロック魂で補えばいい。
例えギターの主な仕事がバッキングで、ひたすら裏打ちのカッティングであっても、だ。

「――――おれの歌を聴けえっ!!」

『皆いしょに歌うね!』【>179

ミュートが甘いギターのブラッシングノイズ。
ヒレをでたらめに操るキーボードの不協和音。
ブラス隊だけは妙に呼吸が合っている不条理。

"でもこちらみ! でイイじゃん"

『いいじゃん!』

"短くてイイじゃん"

『いいじゃん!』

"市民的に愛されてます こちらミルダンティア王都立――"

『いぇい!』

"――市街魔術-M-A-Y-Q-Ah――――!! 捜査局っ!"

『しがいまじゅちゅめいきゅうー! そうさきょく!』

186 名前:"黒衣の魔術師"ブレイカー ◆v/ikj/qTK2 [sage] 投稿日:2009/09/04(金) 02:18:54 0

――――白地の特攻服を身に纏った魔術師が、詠唱を開始した。
その胴部には、無駄にボタンが配列された十本のベルトが垂れ下がる。
宣伝予算不足の影響は、衣装毎の制作費配分の偏重となって露骨に現れていた。

"―――I am the ash of my brass..."

衣装の背面部には、縦書きで"無礼烏賊ー(ぶれイカー)"の四文字。
刺繍ではなく、毛書。マスターミルダンティアが一筆を認めた業物だった。
通常の墨の代わりに、ミルディネキングテンタクラーのイカスミを用いてある。

「編成に必要なブラスセクションは、こんなところだろう―――」

カウンターの上に並んだのは、トランペット、トロンボーン、サキソフォーン、etc.
黒衣の魔術師の精霊銀錬成魔術は、もはや本人にもよくわからない領域に到達していた。



……

自身はテナーサックスを手に取った。
リード――魔術師の嗜み――を懐から取り出す。
リガチャーのネジを回している間に、硬質な音が聞こえて来た。

『…うん、たん。…うん、たん。…うん――』

奇しくも二/四拍に強勢が置かれるスカの楽曲に於いて、バックビートに埋没する打音。
銀のカスタネットを選択したオペレーターは、楽隊内での有様までが実に彼女らしかった。

187 名前:"墨染の悪魔"シスター ◆CIptpZ5NA6 [sage] 投稿日:2009/09/04(金) 02:20:35 0

――――修道女は、野菜室に片脚を突っ込んだ姿勢で静止した。

『メカニックとしちゃ、シャイ二ングエックスのサルベージは譲れねぇな!』【>168

謎の海洋生物群によって、ものすごい勢いで店内がワンダーランドに侵食されていく。

『却下よ。却下!リリィガンガーの修復だけで今年の予算は全て吹っ飛んだの。』

花マルはんばーぐの添え合わせのブロッコリーより検出されたMAY-Qの残滓。
導かれた推測通り、今回の"ゲート"は上海亭厨房内業務用冷導庫野菜室だった。
だが―――

「―――この状況ってMAY-Q放っとくよりも、まずいんじゃ…?」

普段であれば見なかったコトにするのだが…
…今回は、例外的に看過できないファクターが存在する。
嫌でも――本当は無意識の内に探していた――その背中が視界に入った。

  "無礼烏賊ー(ぶれイカー)"

「イカ……?
 イカのマスコットなの?
 ―――はやく何とかしないと」

《……あのブレイカーが、装備の意匠や衆目を意に介するとは思えないが》

闇色に光る精霊銀のロザリオが、修道女の胸元で《声》を響かせる。

「身内の私が恥ずかしいって言ってるのよっ!
 ディフェンダー、兄さんを止められないかしら?」

《……奴との戦いは望むところだ、シスター。
 私は、未だ"時計塔"での一件を忘れていない。
 ――――指示を》

どうやってあの恥ずかしい衣装を脱がせればいいの…?
いいえ。ここは兄さん自ら服を着替える様に差し向けるのが得策。
たとえば、衣装をクリーニングせざるを得ない事態にさえ追い込むには――

「――さりげなく現界して、偶然を装って通りかかって、うっかり坦々麺か何かぶちまけなさい」

《考え直せ、シスター……その作戦には構造的欠陥がある》

「…私の・言うコトが・聞けないって・いうの?」

《……そうではない。飲食店の厨房で冷蔵機器に"入ろうとして"いる我々は、
 すでに作戦の実行が不可能な程の注目を集めてしまっている、という事だ》 

「だったら実力行使で隠すしかないわね……一瞬でも、長く」

どこからともなく取り出したリード――美少女の嗜み――をくわえて濡らす。
白銀のアルトサックスを手に取って、ストラップを首に掛けながら駆け出した。

「…ええ。これは不可抗力よ。私も、仕方なくやるんだからっ!」

私に気付いた兄さんは、演奏しながらさりげなく自分の隣を空けてくれた。
その素振りを無視して、ついでに足を踏んでやって背中合わせのカタチになる。
身長が足りないせいで文字の上半分は隠せなかったけれど、ユニゾンは完璧だった。

188 名前:"紫煙の死神"ナギ・セノー ◆LtWG0drAw. [sage] 投稿日:2009/09/04(金) 02:21:51 0

『これで思わず入局したくなること間違いなしだな!』【>178

「つまり、おれのエンジェリックデスヴォイスが市民の凍えたスティールハートを――」

『――あはー。これとても好きになたよ! あしたまで覚えるね』【>179

中華娘のキーボードがイントロのグリッサンドを奏でる。もうワンコーラスの合図らしい。

「リーファ、練習目当てのセッションなんてくだらねえぜ! ここからは"ライブ"だっ!!」

あからさまに不慮の事故を装ってエフェクターを踏み、トーンをディストーションさせる。

「黄金のメタルの魂……これだ―――これがおれの求めていたサウンドだぜえっ!!」

近隣住民による通報を受け、上海亭の周囲に展開していた王都警備隊機動班。
部隊が店舗内への突入を開始するまで、重金属のリフが鳴り止む事は無かった。

189 名前:Interlude ◆CIptpZ5NA6 [sage] 投稿日:2009/09/04(金) 02:27:01 0

『―――イベント使用許可願いの届出? そんなもん知るものかよ。
 オーディエンスが居れば、そこがおれのオフィシャルステージで……
 いや、これは魔装じゃなくストラディキャスターU世……だから、ちが――』

王都警備隊に両脇を固められ、ギターを押収される自称"超高速のロックンローラー"

『おれは国家権力の横暴に反逆―――いや待てよ。エニーシャを知ってるだろ!?
 おれたちは、あんたらの元同僚とロックの絆で結ばれたファミリーじゃねえのか!!
 エニーシャが信じたおれを信じてくれ! 貧乏な時も、貧しい時も、貧困の時も共に――』

彼は、騒音防止条例抵触の疑いがあるとして、任意不在の任意同行をさせられて行った。

『おれは太陽がやってるよーに魂の水素を核融合させただけだぜ! だから――
 ――だから弁護士をっ! 誰か弁護士を呼んでくれっ!』

……それは、調子に乗ってアンプのボリューム調整でやんちゃをした報いだったのか、
それともロックの信仰者に等しく内在する原罪だったのか、私はいまだにわかりません。

190 名前:ラム・ダオ ◆MeEEeH/kao [sage] 投稿日:2009/09/04(金) 22:55:52 0
>176
ラァ・ユェーグに吹き込む南国の風に髪を靡かせ、ラム・ダオは気持ちよさそうに目を細める。
「ええ。それでは早速準備に取り掛からせてもらうわ。」
三姉妹に笑みを向けながら優しく手をあわせ、ゆっくりと広げる。
掌から零れ落ちるのは一つの球根。
それは肉の床に触れた瞬間、ビシッという小さな音を立て根を張り広げた。
それは融合といっていいだろう。
僅かな間にラァ・ユェーグはその姿を変えていく。
泥に埋まった部分が変形し、根となり地中深く伸びていった。

「ヤドリギの球根が融合し終わるまでに、これからのお話をしておきましょう・・・。
それから、紹介するわ・・・」
そういいながら背負った白亜プランターから小さな琥珀を取り出した。

########################################

リリーガンガー号へのジュリエット襲撃から一ヶ月。
それは何の前触れもなく起こった。
大陸東方域で大規模な地震が発生。
海底火山が爆発し、王都より東方へ3000kmに位置する大陸東端の海上大灯台スカラブレイが津波に飲み込まれた。
全世界規模でMAY-Q化現象が起こっている中、この大災害に対する調査救助復旧活動は思うように進まなかった。
そんな中、更なる災害が引き起こされる。
東方域の地震から一週間後。
大陸北方域で大規模な地震が発生。
王都より北方へ3000kmに位置するガーベリア凍土要塞が崩壊した。

続けざまに起こる大規模地震に人々はMAY−Q化現象の活発化か?と不安に慄いたが、王国首脳陣はその原因を特定していた。
海上大灯台スカラブレイの水没では確証をもてなかったが、ガーベリア凍土要塞の崩壊で確信に至る。
そしてそれを裏付ける報告が次々になされる事になる。

ガーベリア凍土要塞は地震により崩壊したのではなく、ガーベリア凍土要塞崩壊によって地震が引き起こされたのだ、と。
最北端にあり、それ以北何もないにも拘らず要塞を置いていた理由。
それは大陸を支える要石を守る結界であったのだ。
要塞最奥部に位置していた結界装置たるオベリスクは溶解していた。
それを行ったのは・・・たった二体の冥魔獣だった、と・・・。
これにより大陸を支える要が一つ崩壊し、北方域全体に地震が引き起こされたのだ。
この報告を受け、調査中である海上大灯台スカラブレイにも同じ事が起こったのだと王国首脳陣の誰もがわかっていた。
そしてこれはほんの前兆でしかない。
次にくるであろう被害の予想も、その先に引き起こされる大陸崩壊という最悪の被害も・・・。

残る要石は王都より西方へ約2000km。大陸西端王墓都市トゥビヴェール。
王都より南方へ約1000km。大陸南端セランカ諸島マジンシア大神殿。
そして、王都魔導波タワー。

すぐさまに魔捜局に通達される事になる。
王墓都市トゥビヴェールに赴き来るであろう冥魔獣に備え要石の結界・・・オベリスクを守れ、と。
同時に王直属のロイヤルナイツがセランカ諸島マジンシア大神殿へと向かう事になる。

191 名前:ラム・ダオ ◆MeEEeH/kao [sage] 投稿日:2009/09/04(金) 22:56:19 0
大陸西端王墓都市トゥビヴェール。
気候は安定し地下水脈を要しオアシスが点在するも、そこに緑が溢れる事はない。
沈黙を守る墓の陰の気のせいか、荒涼とした大地と砂漠が入り混じる不毛の大地となっていた。
岩と砂、そして巨大な墓標が立ち並ぶ、人を寄せ付けぬ地となっていた。
砂は通常の砂漠とは異なりその細かさから文字通り砂の海となっており、海洋生物が如き生物群が棲息している。

魔捜局が王墓都市トゥビヴェールに到着する直前。
既に冥魔獣の進行は始まっていた。
数百に上る冥魔獣と都市を守る墓守の一族の激しい戦いが繰り広げられる。

巨大な蝿型冥魔獣が空を駆け巡り強酸を吐き出す。
犀型の冥魔獣は地響きを鳴らし全てのものを踏み潰さんと進む。
砂中に蠢く蚯蚓型冥魔獣が砂の中に引きずり込む。

「こちらの意図に気付いて防御を固めていると想定してそれなりの戦力を揃えたが無用だったか。」
激しい戦いながらも圧倒していく戦況を見ながら向き質な声で呟く。
引き連れてきた冥魔獣は殆どの位階がポーンであるが、墓守達を壊滅へと追い込んでいく。
「都市全体が墓だ。どこで死んでも手間は要らんな。」
墓守の戦士の胸を貫きながらユゴスは歩を進める。
目指すオリベスクは・・・その先にあるのだから。
大陸を崩壊に導く要石を破壊する為に。


【名前】ユゴス
【年齢】不明…見た目20代
【性別】不明…マネキンのような男性の造詣
【容姿】黄色がかったガラス質な体。
【性格】機械的
【自由記入欄】
【種族】アンバーノイド
【位階】ナイト
【サイズ】S型・180センチ

192 名前:ナーヴァ ◆b6./ifc./kXO [sage NPCよん] 投稿日:2009/09/05(土) 01:14:34 0
「さ〜て…束の間の息抜きに街をぶらぶらするのも悪くないわね。」
ナーヴァは大通りに差し掛かると立ち並ぶ露店に目を向けた。

「今のうちに装備の補給を済ませておきたいわね〜。軍用品の横流しも限界あるし、掘り出し物でもないかしら?
ん〜魔装迷彩の投げナイフに銃剣、軍用アクアラングに魔弾…こんなもの露店で堂々と売ってるなんて世も末ね。
異常に安いんだけど、出所は知らない方が良さそ………何これ、戦闘用鍋?」

眼光の鋭い露店商の老人がしわがれた声で呟いた。
『聞いた事は無いかね?トゥビヴェールの精霊舞踏を起源とする鍋を使う武術を、な。』
「な…無いわね。それよりこっちの精霊弾を255発ほど頂ける?」
『古来より熱した鉄鍋は魔を払うとして…うんぬんかんぬん…それが東方に伝わり…うんぬんかんぬん…。』
「ご、ごめんなさい〜!MaTECに緊急通信が入ったわ〜!さいなら〜!」

しかし、老人の長話を打ち切るように都合良く鳴ったナーヴァのMaTECは凶報を告げる。
ナーヴァの顔は即座に軍人のものになり、MaTECを全員通話モードに合わせる。
「通達、魔捜局局員は至急リリィ・ガンガー号に集合!
三時間…いえ、一時間後に出航!目的地は王墓都市トゥビヴェール!」


Q・局長、全速のリリィ・ガンガー号はどれぐらいで2000kmを走破するんですか?
A・―――気にしたら負けよ!そんな事考える暇があるなら鍋でも磨いてなさい!

193 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/09/05(土) 20:56:38 0
そういう参加はいらんから
つーか勘弁

194 名前:ヴェルデトリポカ ◆b6./ifc./kXO [sage] 投稿日:2009/09/05(土) 20:59:00 0
蒼白き砂海に剣戟の音と魔術の炸裂音が交錯する。
崩れ落ちるは墓守。陵墓の内なる神を守る守護者たち。
地に立つは異形。陵墓の内なる神を脅かす悪魔たち。
神とは柱たる石。神の右足の骨とも伝えられる地の底まで伸びる神柱だった。

月白は惨劇を完全な闇で覆い隠すでもなく、強く照らして晒すでもなく。
心許ない光で適度に隠す事によってさらなる恐怖を演出していた。

砂金の如き髪を揺らして黄金の人蜘蛛が指を繰る度に命の糸が断たれる。
指から伸びる十糸の煌めきは崩れ落ちた守護者たちをマリオネットの様に操り、かつての同胞に剣を振るわせた。
人形の繰り手はヴェルデトリポカ。この地にやって来た冥魔獣の一体。

「ああ、カリス一人を残してきて大丈夫だったかしら…?
ジュリエットの話では狡猾な女狐って話だし、心配だわ…心配だわ…。
それに…子供を造り出すなんてまるで女王じゃないの…!」

不興気な顔のヴェルデトリポカの目前には四角錐の建造物が林立していた。
石組みの巨大建造物を見上げる。これがこの地の王を祭った墓なのだろう。
王墓は幾つもあり、どれに神柱が隠されているのかは分からない。
捕らえた墓守の中にも一人として口を割る者はなかった。
「ふぅ…これは、当たりなのかしら?今度は当たりだといいけど。
まったく…墓なんてもの、造る気が知れないわ…。」

動きを止めたヴェルデトリポカの側方で、砂の中に伏せていた守護者が襲撃者の頭部に矢を放つ。
矢は襲撃者に命中する直前、空中で動きを止めていた。
目を眇めれば細い糸が矢を絡め捕っているのが見えるかも知れない。
宙に浮く矢は瞬時に反転すると、矢返しの術を掛けられたかのように正確に守護者の頭部に命中した。
「ああ…駄目よ、駄目!お痛しちゃ!めっ!」

付近の守護者が残らず動きを止めるとヴェルデトリポカは陵墓の一つの石段に足を掛けた。
ユゴスがまだ墓守たちと戦っているのが見えたが、女王を異にする個体に余り近寄りたくは無い。
同胞という意識がまるで感じられないのだ。
「あれらを待つ必要も無いわね、無いわ。ここの柱は私が砕いておきましょう。」

黄金の蜘蛛は陵墓に穿たれた暗黒の口の中に消えた。

195 名前:"夢幻の世界"クイーン ◆cR7CVi4c.o [sage] 投稿日:2009/09/06(日) 00:48:17 0

――――その美女は、パジャマ姿に裸足でぺたぺた歩いて来た。

「どうやら、私が眠っている間に新しい下僕が増えたようね―――」

―――ここは、アストラル・ラァ・ユェーグ。
時空の概念を超越した、精神世界面の玉座の間だ。
集うのは、冥魔貴族三姉妹とラム・ダオのエーテル体。
彼女達四人をこの場に召喚した張本人である謎の美女が、
ポスト型の抱き枕を両腕で抱いたまま、玉座の上に正座した。

「お前に称号を与えるわ―――"鬱蒼茂る"と名乗りなさい。いいわね。
 ラァ・ユェーグで気を付けなければいけないのは二つだけ……簡単よ。
 ひとつ、私の言い付けを守ること。ひとつ、家賃のエーテルを納めること」

―――"鬱蒼茂る"ラム・ダオに人差し指を立て、此処での在り方を教示した。

「早速だけど・ヴェルデ? ラムは・お前の・管理下に・置きなさい。
 お前が・許せば・ラムの好きに・作戦行動を・とらせても・良いわ」

―――"黄金紡ぐ"ヴェルデトリポカに、ゆっくり・はっきりと決定を伝える。

「それからジュリー、よくやったわね。
 ご褒美としてお前にも配下を与えるわ。
 そうね……あと1レスほど待っていなさい」

―――"混沌たる"ジュリエットの功績を褒め称え、側に寄らせ頭を撫でる。

「カリス、お前はあとで私の部屋にいらっしゃい。
 ……寝起きは、のどが渇くから」

―――"清涼な"カリス・ポォツェットを見て、こくんっ。とノドを鳴らす。

「…行きなさい、私の娘たち――――エーテルの海は広大だわ」

そう呟いて彼女が立ち上がると、召喚された四人の精神は現実世界へ――
――クイーン自身の精神は夢の世界へと、それぞれ送還されていった。


【外見】謎の美女
【位階】クイーン
【備考】グレート・リンクの際に"魔王"マオの身体と記憶を奪ったP型冥魔
 エーテルを収集する目的は全くの謎であり、配下にも明かしていない 
 強さは、だいたいブレイカー1000個ぶん。冥魔側の機械仕掛けの神

※グレート・リンク……観測上世界初とされる、地下魔王城を中心としたMAY-Q反応

※P型……精神生命体型。世界に既存の諸実体/概念に憑依して現界するタイプの冥魔

※「――1レスほど待っていなさい」
 RES……Ramble Extent Secondsの略
 ごく限られた冥魔のみが認識可能な高次元変数から算出される環境変遷単位
 人類の感覚では、同じ1レスであっても全く異なる時間経過として観測される

196 名前:"砂嵐の月"カムシン ◆GXjNfbVyU. [sage] 投稿日:2009/09/06(日) 00:49:07 0

――――砂漠を見晴らす岩壁の街に、冷たい夜が忍び込む。

「ようやく完成したか……オレの"シェイダール"」

迷路都市の中心部に構築されたMAY-Qドミニオンは、ドッグの様相を呈している。
ラァ・ユェーグの冥魔貴族は、一ヶ月間で当該地域を攻略、精霊機を回収/分析――
――リバースエンジニアリングにより冥魔製精霊機をロールアウトさせていた。

「この力があれば、クイーンにより多くのエーテルを供給できる……」

細く研ぎ澄まされた様な、象牙の月。
照らし出されるのは、"ヴァローナ"の白。
薄闇の影に沈むのは、"シェイダール"の黒。
その狭間で、少年は主たる冥魔の幼女に問うた。

「―――で、ちびすけ。オレはどうやってこの迷路の外に出ればいい?」


【名前】カムシン
【外見】ナギ・セノーの2Pカラー
【性格】好戦的で高慢で中二病患者
【装備】※邪霊機"シェイダール"
【位階】バロール
【自由記入欄】
"混沌たる"ジュリエットの体内に残留したエーテル組織と、
ナギ・セノーの個体情報から生み出された、人間-冥魔ハーフ。
"邪死眼"によって対象のエーテルを略奪する程度の能力を持つ。

※正式名称:邪神霊力冥魔機"シェイドアール"
 機体概要:全高約7mの汎用人型エーテル機装
 攻撃武装:ゲヘナ・シャムシール
 防御武装:ゲヘナ・テリトリー
 動力機関:シャイターン・レヴ
 特殊装備:メス・アイン・ハラア

197 名前:ルナルド ◆SiFiw1brbM [sage] 投稿日:2009/09/06(日) 00:49:53 0
リリィ・ガンガー号ハンガー。
先の襲撃で壊滅的なダメージを受けたケージも復旧し、そこにはいつもの活気が戻っていた。
怒鳴っているとしか表現できない大声で指示を飛ばすウリバー整備主任と、いつもの事だと言わんばかりに駆け回るその部下達。
その喧騒の中、クリップボードを片手にルナルドはヴィカースの換装を眺めていた。

艦の復旧作業の間久しぶりの陸の休日を満喫していたクルー達だったが、MaTECからの緊急通信がその終わりを告げた。
全員が集まるのを――拘留されていて大遅刻した者も一名居たが――確認した後、いつに無く真面目な顔をしたナーヴァが重々しくその口を開く。
伝えられたのはガーベリア凍土要塞の崩壊並びにオベリスクの破壊、一週間前のスカラブレイ灯台を襲った大津波も同様の原因からとの事。
つまるところわずか七日間の間に大陸はその支柱たる要石を守る結界を二つも失ったのだった。
残るオベリスクは三つ。
王都魔導波タワー、マジンシア大神殿そして王墓都市トゥビヴェール。
王都には軍と警備隊が駐留し、神殿にはロイヤルナイツが出向、残る王墓都市へは魔捜局を当てるということらしい。

「そして俺は囮、敵主力の目を引きつけて他の局員で王墓内部のオベリスクを死守、と。
まあコイツじゃ墓の中までは行けんしな。」
ヴィカースを見上げながらルナルドは先程のミーティングを思い出し一人語散る。
自分の受け持つ戦場は見晴らしの良い砂漠。
航空能力の無いヴィカースでは平面戦闘しか出来ない。

「おい、ルナルド。脚部のホバーユニットへの換装と追加スラスターの取り付け作業は終わったぞ。」
手にしたペンをこめかみに当て思案しているとウリバーが大声を出しながら近づいてくる。

「武装はどうする?いつものランスの代わりにブレードは積んであるが。」

「あぁ、ありがとさん。そこをさっきから悩んでんだよ。
まあ順当に言えばアローあたりなんだろうが……おい、とっつぁん。このキャリバーって何だ?」
各武装のスペック表を眺めていた視線がある一点で止まった。
途方も無い長銃身に反比例するような小口径。
精霊力の収束値も既存の射出兵装の実に4倍以上の数字を示している。

「あん?そいつか。こないだ仕入れてきたんだが、まあ精霊機用の狙撃銃みたいなもんだな。
射程も弾速も威力も今までの比じゃないが、その分リチャージも長い。とてもじゃないが……ってお前!?」

「そのまさかさ、キャリバーを積んでくれ。」
玩具を与えられた子供のような笑みを浮かべ整備主任へと返答するルナルド。

<<揚陸ポイント到着まで間も無くであります。各員装備の最終チェックを速やかにお願いするであります。>>
そしてそれを待っていたかのように響く無感情な声。
いよいよもってミーアの仕事を奪いつつあるマーヤによる通信であった。

198 名前:エリアス ◆HjQYbfcR9Q [sage] 投稿日:2009/09/06(日) 11:05:39 0
>189-190 >192
ナギ君が拘留されてから一カ月。
度々地震速報が入りつつも穏やかに時が過ぎていく。
その時、傍から見ると犬の散歩をしていた。といってもただの犬ではない。
王都を守る無敵の精鋭部隊、王都警備隊……のマスコット海(カイ)くん。通称お父さん犬。
「ところで父上、父上はどうして犬なのだ?」
「お前にはまだ早い! こんなところで死亡フラグを立てるわけにはいかない」
「?」

>「通達、魔捜局局員は至急リリィ・ガンガー号に集合!
三時間…いえ、一時間後に出航!目的地は王墓都市トゥビヴェール!」
もし犬になった理由を語りだしたら死亡フラグが立つところだった。
それを難なく回避した父上は只者ではない。父上は感慨深げに言った。
「ついにこの時が来たようだな……。これは世界同士の生存競争だ。
この前の魔王騒動などは比ではない大規模な戦いになることだろう。
史上最強のライバルキャラも登場するかもしれない。
べ、べつに心配なんてしてないからな! 我らには必ずや精霊の加護がある」
「父上も……どうかご無事で!」
行きかけた時、呼び止められた。
「待て!」
眼光の鋭い露天商の商人から鍋を買ってくれた。
「鍋一つください。……これを持って行くといい。必ずや役に立つだろう」

戦闘用鍋(もちろんお鍋の蓋もセット) を 手に入れた!

199 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/09/06(日) 19:21:18 O
ジュリエットとスレ主は同一人物なのか?
それともキャラ乗っ取り?

200 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/09/07(月) 15:19:13 O


201 名前:カリス・ポォツェット ◆M5/Bnz694. [sage] 投稿日:2009/09/07(月) 22:42:05 0
キキーリャ島は、MAY-Qによる異界と化している。
内部の世界は時間が速く進み、1瞬の秒の間が千の千倍ほどの時の流れとなって過ぎ去る。
もはや島の内部は、どれぐらいの日月が過ぎているのか知れなかった。

青い瓶の表面には変幻する光景が映し出される。
映るのは島に植樹されし世界を閉ざす大樹。
その世界樹には島の到るところから集積された生命の力がエーテルに変換されて、このラ・ユェーグまで流れ込む。
しかし奪うのは極僅か。命が絶えるまで奪いはしない。僅か一口。
それを繰り返す。毎日毎日毎日。永劫に。圧縮された時の中で。

「ダムの建設ですっかり懐が潤ったではないか。ディープフォレスト。
エーテルの奔流といったところか。一滴の雫も永劫の時で大河の如き流れとなるのだな。」

ラム・ダオの背後から抑揚のない声が掛かる。
「もはやラ・ユェーグの冥魔獣は、ボクたちの女王に創られた者より、キミに造られたものが多いぐらいだ。
たった一月で、これだけの子供を生み出すのはおそらく女王でも難しいぞ。
間違いなく今のラ・ユェーグの女王蜂はキミだな。いっそ、クイーンを名乗ってみるというのも一興ではないのか。」

ラム・ダオの前には表面に砂漠を映す魔妖の瓶。
冥魔カリス・ポツェットの瓶の表面に映る光景は王墓都市トゥビヴェールへ変わっていた。
無慈悲な太陽が昇り始め、行われた戦闘の苛烈さを知らしめる。

「キミのかつてのお友達だな。ジュリエットを退けた。」
日の出と共に現れるは戦艦。
ドッグでは精霊機や魔装機、イカダにカヌー、浮輪にシュノーケルと色々なものを用意している。
どうやら迷走しているようだが、ロープを用意するところをみると機人で小型舟を牽引するのかも知れない。

「ボクたちの位階は、女王様が人間の盤上遊戯になぞらえて付けた。
人間がポーンだのクイーンだの分類しているのを知って戯れにつくったそうだ。
キミの自慢のユゴスはヴェルデ姉さまと同じくナイトだったか。ぜひとも力を見せてもらいたいものだな。」

202 名前:エリアス ◆HjQYbfcR9Q [sage] 投稿日:2009/09/07(月) 23:47:52 0
>191 >194 >197
><<揚陸ポイント到着まで間も無くであります。各員装備の最終チェックを速やかにお願いするであります。>>
浮輪に胴体を通しながら双眼鏡で目的地の方を見る。
「王墓にしては妙に荒れてるような……」

>201
「誰かが我々を見ている! メイちゃんもそう思わないか?」
見えない監視カメラに向かってカメラ目線で手を振ってみた。

203 名前:名無しになりきれ[] 投稿日:2009/09/08(火) 01:48:30 0
ノースから合併策が

204 名前:ラム・ダオ ◆MeEEeH/kao [sage] 投稿日:2009/09/08(火) 23:21:16 0
>201>202
キキーリャ島のプラントを見るラム・ダオにカリスの抑揚のない声がかけられる。
「あら、今は鬱蒼茂る・・・よ?」
ゆっくりと振り向き、たおやかな笑みと共に応えるその言葉は小川のように穏やかだった。
一ヶ月の間にキキーリャ島を実験プラントとし、数多の冥魔獣を生み出し二つの要石を攻略。
カリスがラム・ダオにクイーンを名乗ってみるのも一興ではないかと冗談めかすだけの成果はあっただろう。
しかし、それに対してラム・ダオは揺らぐ事はない。
「クイーン?ふふふ。そういったものの枠の外側にいる私には意味のないことだわ。」
まるで遠い昔を思い出すように目を宙にむけカリスに語る。

遥か古の昔、世界外界に追いやられた時、冥魔獣は世界と運命を共にした。
しかし森は違う道を選んだ。
ドルイド僧を苗床にし、今の世界に残ったのだ。
数え切れないドルイド僧が『ラム・ダオ』という名と共に受け継ぎ、その身を苗床にして森を守ってきたのだ。
その分岐は決定的な違いを与え、そして今、悠久の年月を越え再び交わる。

「生存競争に敗れた者達に与えられた最後のチャンス。
あなたたちはそのチャンスを得て進化し、戻ってきた。
ならば私はあなたたちを迎え入れる世界の一角でありたいのだけなのですもの。」
ゆっくりと見つめる優しげなその瞳の奥にカリスは深く懐かしき森を見るだろう。
カリス自身がその森を見たことはない。
しかし、その身に、その遺伝子に刻み込まれた記憶が知らしめている。
ラム・ダオがその身の内側に内包せしMAY−Q空間に広がる深き森を・・・。

表面に砂漠を映す妖魔の瓶を見ながら変らぬ笑みを讃え続ける。
嘗ての仲間と、己が生み出せし冥魔との戦いを予感しながら。
いや、生み出した、というのも語弊がある。
ユゴスを含め、多くの冥魔獣はラム・ダオが内包する森の中で生態系を築き生き続けてきた者達なのだから。

>キミの自慢のユゴスはヴェルデ姉さまと同じくナイトだったか。ぜひとも力を見せてもらいたいものだな。」
「ええ。海上大灯台スカラブレイとガーベリア凍土要塞はあまりにもあっけなかったから。
今回の戦いでその真価を見せることになるでしょうね。」
見せることになる・・・否、見せざる得ないだろう。
カメラ目線で手を振るエリアスにおかしそうに噴出しながら応えた。

「こちらのプラントのエーテルは全てクイーンに回してくださいな。
家賃分には十分でしょう?
残った仕事もありますし、株分けしたほうへ行くわ。お暇でしたらご一緒しますか?」
砂漠の戦闘の行く末を見る事無く部屋を出ようとするラム・ダオ。
その間際、思い出したようにカリスに言葉をかけるのであった。

205 名前:ルナルド ◆SiFiw1brbM [sage] 投稿日:2009/09/09(水) 00:17:18 0
リリィ・ガンガー号甲板。
揚陸用のボートをヴィカースへと括り付ける作業が行われていた。
精霊機で牽引し最短・最速のルートで王墓都市へと実働部隊を派兵する為である。

その作業の傍ら、実働部隊のメンバーは装備のチェックに没頭していた。
武器弾薬の確認から浮き輪の準備まで。

『王墓にしては妙に荒れてるような……』
片手で浮き輪を保持し、もう片手で双眼鏡を覗いていたエリアスが訝しげな声を上げる。

「そりゃ、長い年月砂漠の嵐をまともに受けてんだ。
痛みもするだろうさ。」
その声に答えながら手持ちのスコープを覗き込むルナルド。
その筒先には所々煙を上げている王墓都市が映っている。

「って、おい!すでに襲撃されてないか!?」

206 名前:エニーシャ ◆IZh0JJtPKA [sage] 投稿日:2009/09/09(水) 00:40:36 0
* * *
気がつけば、広漠な荒地に一人。
捻れたシルエットの赤茶けた岩山を、何故か黙々と登攀する自分がいた。
浮かぶはずの疑問は、意識に登る寸前で何かに薄められるように消えていく。
見上げた空は鈍色で、乾いた風は細く啼くような音を耳に届けた。終着点には、一人の美しい女性が待っていた。
事物を透過するような凛とした眼差しには、よく知る誰かの面影を感じた。

『ようこそ。百の石塔からたった一つの正解を選び取った貴方の幸運を賞賛するわ』
「…………?」
『もう少しお喜びなさい? 異相に解(ほど)かれきる前に辿り着いた人間なんてそう――あら? 導き手がいたようね――』
女性が軽く手を一振りすると、胸に何かを引かれたような感覚が生じる。
『契約の糸の先にいるのは――   』
口にされたその真名は、紛れもなくエニーシャが契約する剣の下位精霊のものだった。
だがそれを耳にしても、彼女は何を驚くでもなく視線を彷徨わせるばかりである。
女性はいささか落胆した様子であった。そして近寄り、エニーシャの額に軽く触れた。
刹那に思考の霧は払われ、体温が急低下する。
「あ…………貴方、は……!」
『自力で我を取り戻すくらい期待していたのだけれど――まあ、いいわ。
さ、貴方の話を聞かせて頂戴?
何をしたい? 何が欲しい? 貴女は私の退屈を紛らわせてくれる?』
女性は底の見えない微笑みを浮かべながら、芝居がかった仕草で手を広げた。
『――ようこそ。“王威の祭剣”ラム・ダオの祭壇へ』



『そう……』
ことの経緯を話し終えたエニーシャが恐る恐る女性の様子を伺う。
彼女はあからさまに不満げだった。それだけ? とでも言いたげだ。

『それだけ?』
(……そのままか!?)
何が不興を買っているのかわからないエニーシャは、狼狽えながらも必死に繰り返す。
「ご期待に添えず申し訳在りません、精霊様。しかし、どうか力をお貸し下さい。
私は、身勝手に生物を傷つける冥魔獣を許すことができません。
命は惜しくありません。ですが、奴らから人間を守るため、また中尉殿を正しい道に引き戻すため、まだ世を去るわけにはいかないのです。
ですから、どうか――」

『26点』
「――はい?」

『剣は権威の象徴。それは革命、将、王…何かを支配し、大きな流れを生むもの。
…貴女はどの器でもないわね。ただの兵』
「…私は、何かおかしなことを申し上げたでしょうか」
女性は返答せず、さもつまらなそうな表情で逆に尋ねた。
『……貴方、相手を斬る覚悟はある?』
「それはもちろん――」
『斬られる覚悟は?』
「あります」
『貴方が? 仲間が?』
「……どちらも」
『冥魔の女王を倒さないと仲間が皆死んでしまいます。エーテルに満ちたシローさんを私に捧れば皆は助かります。どうする?』

「…………わかりません」

207 名前:エニーシャ ◆IZh0JJtPKA [sage] 投稿日:2009/09/09(水) 00:47:15 0
『…「無理」すら言えない辺り、予想を裏切らないわね。
貴女、仲間の遺体に気をとられて背中を切られるタイプじゃない?』
「………………仲間を守るために戦う身ですから」
『そう。それで守れるならいいけれど。
何にせよ、仲間一人失ったくらいですぐ戦力外になるようではねぇ』
「――っ」

『それから、貴女の一面的な見方も少しねえ…。
そうね…例の中尉さん?
この世界からすれば、突然悪に寝返って自分を慕う部下まで殺そうとした極悪人。
向こうからすれば、故郷を取り戻そうと敵地にありながら真実に目覚めて単独で敵を下した勇敢なるヒロイン――。
最終的にどちらが正義として語られるかは、二つの世界のいずれが勝利するかによるでしょうね』
「ですが…冥魔は」
『人間の食事を一品つくるのに何が起こってるかしら? 船一つ沈めるより余程酷いわよ?』

>エニシャ・・・。それ言たらだめよ。わたしたちタコやつけたよ。魚も馬も海藻も
やつけたよ。まいにちごはんも食べてるよ。
>生きることは戦うことよ。わたしたち生きてるね。ラムダオも生きてるね。人間冥魔生きてるね。生きるやりかた決めるは皆ちがうよ。

意識を失う寸前に耳にと届いたメイの言葉がリフレインする。

『ほら? 今みたいな問答でも貴女は簡単に揺れてしまう。…斬る覚悟も危ういじゃないの』

「――貴女はやはり冥魔の味方をなさるのですね」
そんなことを言ってしまったのは……やはり、これ以上触れられたくなかったからなのだろうか。

『21点。…話を理解しているの?
ラム・ダオの名を継いだ私は確かに森の一部となったけど、何よりも剣よ。
力を託すに足る者を求め、弱い貴女に落胆する――そこに冥魔も何も無いわ』
「……私に何をさせたいのですか」
『どうすればいいのか、と聞いて欲しいところね』
「お答え下さい! ……お願いします」

返ってきた言葉は、答えではなかった。
『半端な人間には何も守れず、勝利もない――敗者とわかっていて力は貸せない』
愕然と見返すエニーシャの顎が急に掴まれ、上向かせられる。
翡翠色の女性の瞳に射抜かれる。

『――でも、28点。必死になってきたわね。真面目なところも誉めてあげるわ。
そうね。条件をつけましょうか』
「……条件?」
『ええ、とても単純な条件。
……例の中尉さんが、今後貴女の前に現れたとしましょう――』
浮かんだのは、意地の悪い笑み。

『――躊躇せずに殺すと誓いなさい。そういう覚悟、貴女にできる?』

それは、いずれ向き合わなければならない問題。
あの時の自分はできなかった。ルナルドに任せてしまった。
放置して、次に誰に危険が及ぶかわからなかったというのに。
次は――

…………

エニーシャは女性から身を離して静かに膝をつき、頭を垂れた。

「精霊様。どうぞ私をお斬り下さい――私は、そのように強くはなれません」
いずれは結論を出さねばならぬとしても、まだ無理だった。
共に過ごした姿が記憶に焼き付いているうちは。

208 名前:エニーシャ ◆IZh0JJtPKA [sage] 投稿日:2009/09/09(水) 01:07:02 0
『…嘘でもイエスと言えばいいのに』
憐れむような声が落ちてくる。
「偽りで過ぎた力を得て、制御を失うような無様は晒したくないのです。
…死人を出したくありません」
『そう』

頭は上げない。きっともう上げることもない。

『……やれやれ諦めたのかしら? なら最後に一つ、いい話をしてあげましょう。
結局、剣の本質は“純粋な力”なの。
王位や革命の象徴とされるのは、それらに武力が不可欠だったからというだけ』

頷く。

『話は変わるわ。この世界は珍しいのよ。精霊と人間がこの世界のような共存の仕方をしているなんて滅多にないわ。
だからこそこの世界はエネルギーが大きく、それだけ魅力的な――……つまり、ね。
私の中の森が冥魔の世界を望んでも、私の本質は今の世界に惹かれているということ。
だから――』

神妙に頷き、言葉を待つ。

『だから――
”あの”ラム・ダオから離れた隙に貴女の軟弱な根性を叩き直して、奴らにけしかけてやろうとしたのに』

「……え?」

『前回の来訪者から400年よ? 退屈極まりない400年。
次を待つのはもう御免なの。――なのに貴女ときたら、期待外れもいいところ。』

「すみませ…ん……?」
『不本意だわ。全く不本意。いったい私にどうしろと言うの? ねえ』
「私に聞かれましても…」
『……まあ…珍しい程馬鹿正直だし…面白いといえば…妹には好かれて…』

「あ、あのー」
何やら葛藤があるらしく、ぶつぶつ呟く精霊の姿からは先の威厳はすっかり失われていた。
話が掴めず、エニーシャが恐る恐る頭を上げた瞬間、その額に再び冷たい手が触れた。

「……!?」
『――28点。及第点まであと2点。
その差を埋められるようになったら、もう一度私を呼びなさい。
やっぱり今の貴女に力は貸せないわ。けれど、命だけは助けてあげる』
「え。あ、あの」

目を白黒させて問おうとして、唇が痺れて上手く動かないことに気がつく。
触れられた場所から力が抜けていくのがわかった。
視界が歪んでいく。

『貴女の行動は逐一チェックしているから――余りに情けないようなら、斬るわ』
「…………押し売り?」
『お黙り。
急ぎなさい。……時間は、あまりないわよ』

――どういう意味ですか?
その問いが言葉になるより先に、意識は遠い世界に向かっていった。

* * *


209 名前:エニーシャ ◆IZh0JJtPKA [sage] 投稿日:2009/09/09(水) 02:43:03 0
白い天井。不潔そうではない程度に、ところどころ黄ばんだ染みがある。
見覚えがあるような…ぼんやりと考えるうち、脇からかかった聞き慣れた声で一気に覚醒する。
『ようやく目が覚めたのね』

リリィ・ガンガーの医務室、ベッドの上。
ドクター? と呟いたつもりだったが、声は掠れて音にならなかった。
いったい何日眠っていたのだろう。

『安静にしていなさい。まだ少し熱があるから』
身を起こそうとした瞬間にその台詞が来るのは、経験というものなのだろうか。
自分の体に視線を落とせば、薄い寝巻きの奥に固く巻かれた包帯が見えた。
――夢では無い。

「その…私の荷物は…」
『服は部屋に戻しておいたわ。武器はそこよ』
アイネスはそれきりこちらに背を向け、棚やデスクへ向かって診察の準備を始めた。
ベッドの脇に視線をやれば、見慣れた2本の剣――そして、1本の銀色の長剣。
気遣いだろうか、伸ばした手はギリギリで届く位置である。
長剣には何の魔力も感じられない。ただの剣だ――今は。

――こちらも、夢ではなかった。

「2点、か……重いな」

問題は山積み。体を治したら、いくらでもやることがありそうだ。
鬱々とため息をつく。酷い状況ではないか。
良かったことなど、治療中である限りは三度の食事に困ることは無いことくらいである。

「私は…何を覚悟すればいいんだ…?」

『――言い忘れていたけど』

薬瓶を持ったアイネスがベッド脇に戻り、声をかけてくる。
独り言に触れないのは、聞こえなかったのか、聞こえなかったことにしたのか。

『3万ね』

「………………いつから医務室は有料に!?」

『いいえ、セランカチークの――』

「…………あっ」

問題は――山積みである。


210 名前:混沌たるジュリエット ◆OCiexBIRJ6 [sage] 投稿日:2009/09/09(水) 19:21:48 0
広大な砂漠を見はるかす大奇岩は数十万年の間、砂漠の風に打たれながら複雑に形を変えた岩山だった。
構造は穴だらけの立体の洞窟…いや、規模は桁違いだが公園に設置される枠登り遊具に近いかもしれない。
洞窟の壁一面には、古代の都市が穿たれており、かつての栄光を忍ばせる。
精霊に指定された空間に造られた祭祁の都―――精霊指定都市。
太古の女神像が鎮座する祭壇の前には、双子の白騎士と黒騎士の姿。
一方の黒騎士の前では、一人の少年が挑戦的な目で顎を上げている。

『―――で、ちびすけ。オレはどうやってこの迷路の外に出ればいい?』

「カムちン。迷路の外で遊びたければシェイダールで遠乗りちても構いまちぇんわ。
ただち、※晩御飯までには帰ってくるんでちゅよ。」

少年に声を掛けたのは混沌たるジュリエット。
水魔スキュラを思わせるフォルムの冥魔獣。
上半身は少女。下半身は八本の澄んだエメラルドの触手。
目や髪も同色であり、それは全身に強く含まれる葉緑素の現れであった。
体長は40cm程度だが、その小さな体には強い妖気を纏わせる。

「わたくちは、べるで姉しゃまたちが失敗した時に備えてアレの準備をちてまちゅ。
アレを動かちゅ前には合図ちまちゅから、わたくちの思念波を感じたら砂深くに潜るか空高く飛びなちゃい。」

少年に命ずると、ジュリエットは裾長のスカートを思わせる下半身を動かして女神像に近づいた。
台座の前に立ち止まると緑の触手を伸ばして刻まれた文字をなぞり始める。
冥魔の接触に反応するように巨大な女神像が淡い燐光を発し始めると小さき冥魔獣は瞑想するかの様に瞳を閉じた。


※晩御飯=何らかの計画の比喩。おそらく。

211 名前:ヴェルデトリポカ ◆b6./ifc./kXO [sage] 投稿日:2009/09/11(金) 00:18:04 0
砂海の中からブロンズの如き光沢の細長い棒が浮かび上がる。
長さは4m近く、太さは男の腰ほど。
棒は背面に2列の鋭い棘を持ち、腹面の7対の触手をくゆらせて砂海を泳いでいる。
先端はパイプのように空洞となっており、時折辺りを見まわすかのようにグニャリと曲がる。
この棘だらけの棒は、今の世界には誰も知る者の無いハルキゲニアという生物に似ていた。

ズズゥゥゥゥゥゥウム!!
砂漠に振動が響き、驚いたトゲトゲの生き物が砂中に潜る。

「ああっ!何なの!何なの!いい加減にしてほしいわ!中はうっとおしい罠とガラクタばっかりぃい!」
死者の眠る世界から帰還したヴェルデトリポカが黄金の体に曙光の輝きを宿らせる。
この王墓の中に神柱は無かった。外れだったのだ。
ピラミッドは半壊し、崩れた台形に変わっていた。
要石が見つからない腹いせにヴェルデトリポカが王墓に修復困難なダメージを与えたのだ。

「こんなに馬鹿でかい墓を幾つも幾つも…!何を考えてるのっ!?人間は?無駄でしょうに。
もう私、どうにかなってしまいそうだわ…!」

ゴゴォォォォォオン!!

時を置かず連続して崩落音が響き、三つの王墓が幾何学的で優美な姿を醜く変じる。
崩れた王墓から出てきた冥魔獣たちは、人には解せぬ思念波をヴェルデトリポカに送ってきた。
「要石が無い…?あんたたちも外れたの?もう無傷の王墓は一つしか残ってないわねぇ!
これだけ手間を取らされたんですもの…私がぶっ壊さないと収まらないわ!
もし、私の邪魔をしたらアンタたちでもただじゃ置かないからねぇっ!」

辺りを睨み付けるとヴェルデトリポカは、最後に残った王墓の中へと姿を消した。
異形の冥魔獣たちは追いかねる様にピラミッドを取り巻き、円陣を築く

ササーン!
突如、砂中から十数の棘が生えた。
棘だらけの棒にも似たハルキゲニア型の冥魔獣が、王墓に近づく振動音を感知して再び砂上に現れたのだ。
砂上を駆けるのは、魔捜局が誇るアヒル型揚陸用ボート"ホワイトスワン"
名前からしてアヒルでは無いのかもしれなかったが、それはどうでも良い事だ。
ハルキゲニア型冥魔獣はホワイトスワン号に並走すると、砂中に沈めるべくゴン!ゴン!と棘だらけの体をぶつけ始めた。

212 名前:エニーシャ ◆IZh0JJtPKA [sage] 投稿日:2009/09/11(金) 02:16:15 O
虚空に手を振るエリアスとメイの頭上に影が落ちる。
「すまない、待たせ――ん?ああ、スナウミウシか。珍しいな、この季節に」

的の外れたコメントと共に、遥かな監視者の気配に気づかぬエニーシャが乗船エリアに現れる。遅刻ギリギリだ。
装備のチェックは既に終えていた。前回と異なるのは、銀色の剣が背に増えたことだけだ。
軽く体を伸ばせばパキリと軽い音が聞こえ、苦い笑みが浮かぶ。
数日の体慣らしは、寝ぼけた身体を叩き起こすには不十分だったようだ。

『そりゃ、長い年月砂漠の嵐をまともに受けてんだ。
痛みもするだろうさ。』

そう言い、ルナルドがスコープを覗き込む――その表情が一変、緊張の色を帯びた。

『って、おい!すでに襲撃されてないか!?』

――出遅れたことを悟った彼女がボートに飛び乗ろうとするのと同時、敵影確認を告げるアナウンスが艦内に響き渡った。

* * *

「――ドナルド」

揚陸ボートの前列左に腰をかけ、エニーシャは硬い声で呟いた。
「そして、アヒル」
その呟きは、決して名前ミスなどではなく。
「お教え下さいメカニック…うちの装備の仕入れはいったいどういう基準で行われているんだ――!?」
痛切な叫びは、疾走するボートの後方に瞬く間に消えていった。
このボート、搭乗者の心理的要素を除きさえすれば間違いなく一級品なのだが。

「縮小すると自然公園の池に浮かんでいそうだな…家族連れやら逢い引き中の男女やらが、こう…」
額を押さえた彼女のどうでもいいぼやきを中断させたのは、周囲を囲んだ異質な気配。
「……来る」

細長い冥魔獣が砂上に姿を現わし、船の左右に並走を始める。
エニーシャは咄嗟に剣を抜こうとした。が、狭い船内、僅かに反応が遅れてしまう。
接近した許した冥魔が船の腹を打ち、大きな横揺れが船を襲った。
「っ……」
縁を掴んで何とかバランスを保つ。
斬り払おうにも、揺れは間を置かず何度も連続している。下手な行動をとれば、砂海の肥やしとなるのは自分の方だった。


213 名前:ラム・ダオ ◆MeEEeH/kao [sage] 投稿日:2009/09/12(土) 00:29:26 0
無数の陵墓が林立する王墓都市トゥビヴェールの中心部にユゴスは佇んでいた。
既に都市は蹂躙され大勢は決したが、それ以上歩を進めようとはしない。

ゴゴォォォォォオン!!

耳をつぐざむ轟音と共に王墓が崩れ落ちる。
それを聞きユゴスがおもむろに手を前に差し出すが・・・
バチっという電撃音と共にその手が弾かれる。

>「要石が無い…?あんたたちも外れたの?もう無傷の王墓は一つしか残ってないわねぇ!
>これだけ手間を取らされたんですもの…私がぶっ壊さないと収まらないわ!
>もし、私の邪魔をしたらアンタたちでもただじゃ置かないからねぇっ!」
「ふむ・・・やはり全ての王墓を壊さねばこの結界は破れないか。
それにしても本当に人の話を聞かぬな、ヴェルデトリポカ・・・。」
不可視の壁を前に小さく息をつき再び立ちすくむ。
その先に潜む墓守達の本隊と、そこに守られしオベリスクを思いながら。

王墓都市トゥビヴェールはそれ自体がオベリスクを内包した一つの大きな墓である。
墓を、そしてオベリスクを守る為に代々の王はそこに王墓を築いた。
祖霊による守りで二重の結界を敷いたのだ。
故に今ヴェルデトリポカが躍起になって破壊しまわる王墓にはオベリスクなどないのだ。
が、結果としてはオベリスク破壊の為の手順をふんでいる訳なのでユゴスはそのままにさせていた。

ただ立ちすくんでいたユゴスが突如と振り返り、手を翳す。
『ヴェルデトリポカよ。強い敵が現われた!急ぎ王墓の破壊を!』
信号を発しながらユゴスは体内の屈折率を変えていく。
掌に光りが収束し、高温で周囲の空気を歪めながら発射される。

光線は砂を巻き上げ、壁を貫き、ハルキゲニア型冥魔獣と併走するホワイトスワンの正面へと迫る!

214 名前:エリアス ◆HjQYbfcR9Q [sage] 投稿日:2009/09/12(土) 15:42:42 0
>211-213
>「……来る」
「……光線キタ―――――!!」
説明書に“逢引を邪魔する者を追い返すスイッチ”と書いてあったボタンを押す。
「波 動 砲 発 射!!」
アヒルの口が開き、発射された派動砲が光線を迎え撃つ!

その間に、古代生物ハルキゲニアが巨大化したような冥魔獣に対峙する。
戦闘用鍋を構えたところでお鍋の中からポワッとインチキおじさんが登場した!
「我が名は……えーと、鍋の精霊インチキオジサン!」
「一瞬悩んだ挙句そのまんまかい!」
「見よ、魔を払う熱した鉄鍋の力!」
インチキオジサンが気合を入れると、鍋に精霊力が付与され真っ赤に燃え上がる!
「むむ!? お主、太極刀の使い手じゃな!?
そこのお嬢さんは剣の精霊を従えておるか……この際剣も包丁も似たようなもんじゃ!」
メイちゃんの太極刀とエニーシャちゃんの剣もついでに燃え上がる!

215 名前:ヴェルデトリポカ ◆b6./ifc./kXO [sage] 投稿日:2009/09/13(日) 13:58:51 0
石室には闇。静謐な空気が春霞のように黄金の人蜘蛛を包む。
神聖なる世界を侵す魔を拒むかのように、その空気は重い。
陵墓の内部は王の眠る安息の地であり、現世と幽世とを繋ぐ回廊。
天文学に基いた複雑な構造と各所の罠は、盗掘者に対する守り。
玄室に積まれる煌びやかな黄金の剣、王冠、工芸品、模型などの財宝は現世の生活の再現。
ただ、今回の襲撃者は莫大な副葬品などに何の興味も無かったのだが。

「ああ…なんて色褪せた輝きかしら。私が紡ぐ糸の1000分の1の輝きも無いわねぇ…目障りだから溶けなさい!」
ヴェルデトリポカが口を開け、消化液を吐き散らすと玄室の銀を除く全ての金属が腐り、或いは溶けた。
立ち上る白煙は部屋を包み、異臭が立ち込める。
この無意味な破壊は回廊中に探索の糸を張り巡らせ、最後に残った王墓にも要石が無い事が判明しての事だ。

『ヴェルデトリポカよ。強い敵が現われた!急ぎ王墓の破壊を!』
「五月蝿いわねぇ…今、やっているところよぉ!」

ヴェルデトリポカが棺に納められた王のミイラに杭の様に伸ばした爪を突き刺し消化液を注入すると、
ミイラは熱した鉄板に水を注いだような音を立ててドロドロに溶けた。

王の亡骸が耳を塞いでも尚聞こえる程の凄まじい怨嗟の声を発する。
その声に呼応するかのように砂漠の一角の今まで何も無かった空間に輝く柱が現れた。
玄室の壁を破壊して外に現れたヴェルデトリポカの口元に残酷な笑みが広がる

「ああ!やっと見つけたわぁ。今までこそこそと隠れて震えてたのねぇ!」

ミイラの破壊と時を同じくして王墓群を見守るように佇む数体のスフィンクスが瑠璃の輝きを放つ。
破壊された王墓の主の思念は清冽なオーラとなって石像に宿り、動かぬスフィンクス像を動かしたのだ。

オオー!
咆哮を上げて、近寄ってきた冥魔獣の群れを踏みつぶすスフィンクス。
そのうちの一体が王墓の天辺を溶解して現れたヴェルデトリポカに飛びかかってくる。
しかし、ヴェルデトリポカが向かってくるスフィンクスから素早く飛び退った時には、すでに宙に網が張られていた。
突進したスフィンクスの体には糸が食い込み、そのまま絡め取られる。

「往生際の悪い犬ども…女王の名において黄泉に下りなさい!」
背後からザクンと突き立てられた十爪から消化液が分泌され、霊力に満ちた神獣の体を溶かしてゆく。
スフィンクスは無念を噛みしめるように唸ると倒れ、ただの瓦礫となって砂の上に崩れ落ちた。

「アハハッ!石ころに戻ったわねぇ。でも寂しくはならないわよぉ…すぐにお仲間を増やしてあげるから!」
ヴェルデトリポカは悠々とオベリスクに向かって歩き、近づく墓守たちを蹴散らす。
伸ばした爪で、或いは吐きだした糸で、または致死の消化液で。
ヴェルデトリポカは輝く柱に取りつくと強靭な糸の力を持って柱を折らんと金糸を巻きつけ、オベリスクの姿を黄金の繭へ変える。
締め上げる繭の中で、大陸の要石たるオベリスクは誰かに助けを求める様にミシリと悲鳴を上げた。

216 名前:ルナルド ◆SiFiw1brbM [sage] 投稿日:2009/09/14(月) 02:49:08 0
砂塵を巻き上げ疾駆する機影。
ルナルドの駆るヴィカースは魔捜局秘蔵の揚陸艇ホワイトスワンに先行する様に砂漠を疾走していた。
後手に回ってはいるが、まだ完全に手遅れでもない。
王墓都市に眠る代々の王の偏執とも言える防御網。
すなわち自身の安息たる墓すらも礎とし、オベリスクを守るべく構築された多重結界。
王墓都市トゥビヴェールのオベリスクを破壊するには全ての王墓を破壊する必要がある。

視認できる王墓は二つ、しかしその片方も戦闘区域へと到着する頃には轟音と共に崩れ落ちていた。

「そっちでも確認したか?王墓は残り一つ。こいつを壊されたらチェックメイトだ。
外の連中はなんとかするから墓掃除を頼む。」
送信を終えると都市を取り巻くように展開している冥魔獣へと肉薄する。

二百を優に超える冥魔獣の群れ。
高速で接近する精霊機へと一斉に攻撃を開始する。
巨大な蝿や犀、蚯蚓などその姿に統一感は無くさながら冥魔獣の展覧会といった様相だ。
ルナルドはヴィカースを走らせブレードを引き抜くと群れの中へと突撃した。

斬り、払い、貫く、手近な冥魔獣へとブレードを振るい死体の山を築いていく。
もとより上位階の冥魔獣や冥魔巨獣との戦闘を前提に創られた精霊機と下位の冥魔獣ではその力に圧倒的な差がある。
ましてやポーンクラスの冥魔獣ではいかに数で勝ろうとも精霊機を破壊することは容易いことではない。

「とは言え……この数はさすがにしんどい。」
操縦席のルナルドがぼやくのとほぼ同時、視界を灼き尽くす程の光線が遥か後方へと向かい延びて行く。
いつぞやの破壊光線を彷彿とさせる程の出力を持った光線の先には揚陸艇ホワイトスワン。
しかもその傍らには棘だらけの不気味な容姿をした冥魔獣が並走している。
王墓へと向かう者を迎撃すべく敵が用意した伏兵なのだろう。

ルナルドが仲間達を襲う惨状に絶望しかけた刹那、それは起こった。
アヒルもとい白鳥の口が開き、これまたいつぞやの破壊光線に匹敵する光線が吐き出される。

「ま、またあんなモン付けてやがったのかっ!」
双方の光線がぶつかり、その力を誇るかのように押し合い激しい光を撒き散らしながら対消滅する。
当たり前のようにあのような兵器を使うのは恐らくエリアスだろう。
相変わらずの規格外っぷりである。
とりあえず一安心するのもそこそこに、ルナルドはヴィカースのスラスターを一気に点火し冥魔獣の群れから抜け出すと
キャリバーをホワイトスワンと並走する冥魔獣へと向ける。

精霊機内部のジェネレーターから賄われた精霊力が砲身の内部で圧縮加速され超高速で撃ち出される。
射出された弾丸は甲高い咆哮を上げながら不気味な冥魔獣の後部、尻尾と思しき箇所へと突き刺さった。

217 名前:冥魔獣ハルキゲニア型[sage] 投稿日:2009/09/14(月) 22:21:57 0
ギィン!と金属音が響き、冥魔獣ハルキゲニア型の尾にヴィカースの弾丸が突き刺さった!
装甲を貫くのに特化したカータイナ合金の徹甲弾は冥魔獣の胴体を駆け抜け、穴を開ける。
冥魔獣ハルキゲニア型は動きを止めるとドサッと倒れた。
周囲の雑魚冥魔獣も二つのビームのぶつかりの巻き添えで、ほとんど蒸発してしまったようだ。

218 名前:ラム・ダオ ◆MeEEeH/kao [sage] 投稿日:2009/09/14(月) 22:43:40 0
あらゆるものを融解させる光りの収束は波動砲によって相殺された。
「・・・。」
ただ相殺されただけならユゴスも驚きはしない。
しかしまさかアヒルの口から波動砲とは流石に予想だにしておらず、思わず呆気に取られてしまったのだ。

そうしている中、ヴェルデトリポカが最後の墓所を破壊し、オベリスクを出現させる。
墓守たちの最後の抵抗か、王墓の主の怨念か。
スフィンクスが瑠璃色の光りを放ち冥魔獣を踏み潰しながらヴェルデトリポカに迫るのだが・・・
王威の守護獣もヴェルデトリポカの前には成す術もなく崩れ去っていく。

ここまでこればオベリスクの破壊は出来たも同然。
迫る敵を近づけなければいいだけ。
砂塵を巻き上げ疾駆し、冥魔獣を屠るヴィカースはホワイトスワンに取り付くハルキゲニア型冥魔獣を攻撃している。
その威力たるや恐ろしく、遠目で見てもハルキゲニア型冥魔獣に穴を開け動きを止める。
二つのビームの衝突の余波で雑魚冥魔獣諸共蒸発する様を見ながらユゴスは分析を終えていた。

「大したものだが・・・戦力を集中させすぎだな。
アヒルの口からあの高出力は驚いたが、連射は利くかな?
私は日輪さえ天にあれば無尽蔵だ!」
小刻みに翳した手を移動させながら光線を放ち続けるユゴス。
一面光りの壁のように迫る光りの弾幕。
このままだと、ホワイトスワンもヴィカースもその光りの奔流が飲み込むだろう。

219 名前:NPCメイ[sage] 投稿日:2009/09/14(月) 23:28:52 O
>>214
太極拳刀が燃え上がったね。
お鍋の精霊さんアリガト!
龍と火は相性良いよ。

(光線の弾幕を飛び越えてオベリスクに向かってジャンプ。
お団子から龍の角が飛び出る。
溢れる龍気が尾を引いて龍を形づくる。
気の龍の頭に乗って飛んでいく。)

あはぁ!龍に乗ってひとっ飛びね!

(金色の糸でぐるぐる巻きにされて締め付けられるオベリスクに太極刀を振りかざす。)

炸!爆!燻!焔!赫龍斬!
繭真っ二つね!

(金糸の繭は切り裂かれて燃え上がる。
炎は糸を辿ってヴェルデトリポカに迫る。)

勢い余ってオベリスクまで真っ二つにしちゃったよ。

(真っ二つになったオベリスクに気の龍が十重二十重に巻き付いて締めあげる。)

みんな、オベリスクは私が守るよ。
近寄るのはみんな切り刻んで黒焦げにするよ。

220 名前:名無しになりきれ[] 投稿日:2009/09/15(火) 14:14:42 0
もうあいつはスルーでいいの?

221 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/09/15(火) 15:27:16 O
どいつ?

222 名前:エリアス ◆HjQYbfcR9Q [sage] 投稿日:2009/09/16(水) 00:26:29 0
>216-217
逢引を邪魔するものを追い返す波動砲は伊達ではなかった。
周囲の冥魔獣も一掃されている。

>218
「光線たくさん来る―――――!!」
波動砲は一回撃つとしばらく出ませんから―――、残念ッ!
「なんてこった、ドンドコドーン!」
「うろたえるでない! 受け取るのじゃヴィカース!」
インチキオジサンがお鍋の蓋を前方に向かって投げた。
さらにインチキパワーによってお鍋の蓋が精霊機のシールドサイズに巨大化する!
「我が鍋の蓋の内側はピカピカに磨かれた鉄鏡! 
あらゆる光線を跳ね返す最強の鏡面装甲シールドなのじゃ!!」
「すごいぞ、お鍋の蓋!」

>219
「あれ?」
メイちゃんが飛んで行った気がする。
「……まさかね」
インチキオジサンがシリアスな顔をして呟く。
「間もなくオベリスクが破壊される……予感がする。
もしも破壊を免れえないなら決して要石を奪われるでない。よいな!?」
「奪われる……!? 奴らの目的はあれを破壊して大陸を崩壊させる事じゃないのか!?」
「大陸を支える要石、人間の間ではそう言われておるのか。正しいが一面しか現しておらぬ。
この世界の始まりの時、精霊は人々に力を供給し続ける事を約束した。
契約の証として五つの都市に力の根源たる五つの要石……我々が言うところのクリスタルを祀らせた。
それが精霊指定都市の始まりじゃ。とにかくあの石の正体は無尽蔵の精霊力の結晶!」
「そういえば冥魔の目的は……精霊力の収集だ! もう二つ向こうに渡ったって事か!」

223 名前:ヴェルデトリポカ ◆b6./ifc./kXO [sage] 投稿日:2009/09/16(水) 22:03:21 0
ヴェルデトリポカは太極刀を持つ少女を険しい顔で睨みつけ、憎々しげに呟く。
「な、何なの…この小娘!私の糸をこんなに簡単に斬るだなんて…!」
メイ・リーファの一撃は、オベリスクを裁断していた。
オベリスクを包む繭も斬撃と同時に燃え上がり、瞬時に色を真緋に変えている。
そして―――――熱い。

「痛………あぁうあぁう!」
ヴェルデトリポカは慌てて腹部後端の出糸管から糸を切り離すと、身をよじって糸を伝う炎を振り払う。
お尻の辺りには微かに焦げ跡。

「あ…ああ…私のお肌が…!いや…!いやぁぁぁぁ!
有害なこの世界の光に気を配ってエーテルの膜まで張って守っていたのに…!こ、焦げて…!
よ、よくも…やってくれたわねぇ!ちょっと若くて肌がすべすべだからって調子に乗るんじゃないよ!小娘ぇぇ!!」
しかしヴェルデトリポカは激高しながらも警戒し、容易には近づかない。
堅固な金糸を容易く断ち切った太極刀の威力を侮るつもりは無いのだ。

キィィィィィィィ!
激高する冥魔獣に対しオベリスクに巻きつく光龍が牙を剥き、高周波の吠え声で鼓膜を震わす。
その声が戦闘の合図となった。

流水を思わせる滑らかな舞踏の動きで迫るメイに対し、
ヴェルデトリポカは、カサカサと急発進と急停止を繰り返す機械的な動きで太極刀の射程外へと飛び退る。
同時に周囲の空間へ金糸の弦を張り巡らせ、切り離した爪を矢としてエーテルで固定。
そして常に一定の距離を取りながら、メイの接近を封じるために糸を吐きかける。

太極刀の一閃!
ひらりと糸を躱して接近したメイに足の一本を切り落とされる。
斬撃の鋭さに斬られた感覚は無いが、纏わせた炎は瞬時に断面を炭化させて、じわじわと火傷の痛みを与える。
「くっ…あぁぁぁ!あっ!あっ!あぐぅっ!この痛み…今から千倍にして返してあげるわ!」
ヴェルデトリポカが叫んだ瞬間、宙に作られた矢衾が念動力で一斉に発射される。
射出された十爪は弩の矢の速さを遥かに超え、稲妻となってメイ・リーファへ突き刺さった!
「良い気味ぃ…アハハッ!随分風通しのいい体になったわねぇ…!」

プシュー!!
メイ・リーファは突き刺された箇所から空気を噴き上げると、膨らませた風船を放した時のように萎みながら飛び回る。

『サツキィーーー!俺の愛しさと切なさと心強さの結晶がーーー!』
MaTECからはウリバ―の叫び。
自律型精霊人形サツキ―――この人形は精霊力を注ぐと注いだ人間そっくりの姿を取る。
後は風船のように膨らませれば完成!
メイ・リーファに竜気を注がれていた精霊人形は、楽しげな顔のままポスンと砂の上に落ちた。

224 名前:ヴェルデトリポカ ◆b6./ifc./kXO [sage] 投稿日:2009/09/16(水) 22:43:44 0
「これは…要石は……高濃度のエーテルの塊!?」
ヴェルデトリポカが叫び声を上げる。
竜気の縛めを失ったオベリスクは左右に倒れると力強い輝きを発し始めていた。
エーテルの濃度は今までに集めたものの比では無い。

「そう…そういう事。コーティングされてたから今まで気付かなかったのね………でも。」
途端にヴェルデトリポカに疑念が湧く。
ラム・ダオは北と東の要石は溶解したと語った。それは聞いた。
二つの要石を破壊したのはラム・ダオ子飼いの冥魔獣。
ならば、オベリスクがエーテルの塊である事も報告を受けて知っていたはずではないのか…?
なのに私には何も知らされていない…!
膨大なエーテルを溜めこんだオベリスクも本当に溶解させてしまったとも思えない。

「やっぱり…ユゴスの監視に強引に付いてきたのは正解だったよう…ねぇ…。」
発した声には軽く怒気が籠っている。

オベリスクはかなりの重量があるが、短距離跳躍を繰り返せば運ぶのも難しくないだろう。
当然ながらユゴスの援護には入らない。
ヴェルデトリポカは再び金糸でオベリスクを巻き上げると体内に残る異界の物質を集め、跳躍の準備に入る。

リパルション―――異界の物質とエーテルを反撥させて空間を渡る技法。
正確には渡るというより跳ね飛ばされるといった方が正しいかもしれない。
長きに渡って異界に居住する事により、冥魔獣たちが身に付けた能力。

巻き上げたオベリスクに7本の足を抱きつかせて覆いかぶさる。
砂海の彼方に首を向けたヴェルデトリポカの周りには陽炎の様な歪みが生じ始めていた。

225 名前:ラム・ダオ ◆MeEEeH/kao [sage] 投稿日:2009/09/16(水) 23:58:04 0
>222>224
光の弾幕を繰り出した後、ユゴスは即座に追撃体制に入っていた。
相手を過小評価しない。
これで倒せるとは思っていないのだ。
が、無傷だとも思っていなかった。
ダメージを受けた敵を一気に殲滅するつもりであったが、一瞬その動きが止まる。

ユゴスの視界の隅にヴェルデトリポカの姿が映ったのだから。
そしてその怒気を敏感に察してしまったから。

ヴェルデトリポカはオベリスクに取り付き空間跳躍の体制に移っている。
その意図は明白だった。
「目先の価値に惑わされたか。だがそれも良かろう。」
オベリスクは要石を守る結界装置。
無尽蔵に精霊力を供給するクリスタルに一番間近に位置するが故に高濃度のエーテルの塊と化している。
その力を利用して結界装置として機能しているので当然なのだが・・・
本来の目的の要石はオベリスクの下にある。
極限に凝縮した要石は逆にその力を内在させ発散しないので、ヴェルデトリポカが見間違えるのも無理はない。
だが、ユゴスはラム・ダオを通じてそのことを知っていた。
なぜならば遥か昔、精霊との契約の場に【ラム・ダオ】はおり、その記憶をラム・ダオは受け継いでいるのだから。

目的物を見誤っている事に気付いたが、すぐにどうでもいいという結論に達する。
どのみちオベリスクを破壊し除去しなければ要石を手に入れることは出来ないのだから。
結果的にはヴェルデトリポカはその手順をふんでいる事になる。
後は自分が要石を回収すればいいだけの事。

この間、ほんの数瞬。
凝縮された時間の中での思考だが、その数瞬が運命を分ける。

思考を終わらせ再度動き出したユゴスの視界一面に広がる光の海。
鏡面装甲シールドと化した鍋の蓋は光の弾幕を一点集中させユゴスに打ち返していたのだから。
「・・・・!!!!」
言葉を発するまもなく光の本流に飲み込まれるユゴス。
しかしその体はプリズムが如きもので、一身に受けた光を拡散し、受け流していく。
ユゴスを基点に四方八方に広がる光の収束は周囲の冥魔獣を融解させ、そのうち一本はヴェルデトリポカへの直撃コースを進む。

光の本流が消えた後、ユゴスはその場に立っていた。殆ど溶けかけた体で。
拡散させたとはいえ、弾幕を一点集中させた光の熱量はその許容量を軽く越えていたのだ。
「感謝するぞ・・・我ら敗残者に戦いの場を与えてくれて・・・。」
どろどろと聞かして溶けていく中、小さく言い残してユゴスは気化した。

こうしてユゴスは消滅した・・・かに見えたが、消えていなかった。
見えはしないが、そこに感じるプレッシャーが魔捜局一行に確かに敵の存在を教えていた。
そして風に乗りその声は届く。
「旧世界の支配者の姿を見よ。」
その声を発したのは一匹の蚊だった。
弱々しくと部下の腹が裂け、一滴の血が砂漠に滴り落ちる。
それと同時に砂は巻き上げられ竜巻が起こる。

竜巻の中に10メートルを越えようかと言う巨大なシルエットが現われる。
「ガアアアアアアアア!!!」
空を振るわせる方向と共に竜巻ははじけ、無数の真空の刃となって飛び散る。
それと共にホワイトスワンに影が落ちる
機械と生物の融合。
一種昆虫じみた異形のドラゴンがホワイトスワンの頭を叩き潰した。

226 名前:エニーシャ ◆IZh0JJtPKA [sage] 投稿日:2009/09/17(木) 17:38:22 P
キャリバー、波動砲等の力を借り、ホワイトスワンはついにオベリスクまであと僅かというところまで辿りついていた。

>>223
《サツキィーーー!俺の愛しさと切なさと心強さの結晶がーーー!》
座席下に置いたMaTECから、ウリバーの悲痛な叫び声が響く。
「メカニック…?」
《……………懐古と夏の結実……歩みと活力の象徴……あぁぁ……》
沈痛な表情で片耳を押さえたエニーシャは、迷わず音量設定を「最小」にした。
ともかく。
最初、メイが後部座席で急に風船を膨らまし出した時は目を白黒させたし、本部指示の作戦だと聞いた時はさらに首を捻ったが――
全てはボート到着までの時間稼ぎ。作戦関係者に、心の中で大賛辞を送る。

続く光の弾幕は、鍋精霊の恩恵で回避に成功する。
精霊機がパスされた鏡面シールドは、見た目はともかく性能は「最強」の名に恥じないものだ(リリィの装備課が目を輝かせるかもしれない)。
倒したか。…期待は、しかしすぐに甘いものであると知る。
姿は消えた。だが、この空気が重いような独特の感覚――やはり、まだ何かいる。
オベリスク周辺に発生した不自然な陽炎も気がかりであったが、なぜかこちらから注意を外してはならない気がした。

『そういえば冥魔の目的は……精霊力の収集だ!
もう2つ向こうに渡ったってことか!』
「…つまり、現時点で私たちへの精霊力の供給はその2つ分は縮小していると?
元より精霊力の豊かな世界、未だ面だった問題は発生していないが…何が起こっても不自然はないな…」

エニーシャは背から片手半剣を引き抜き、右手で構えた。
宿る橙色の光はいつもの赤い魔力光とは異なる色――鍋精霊の恩恵の証。
呪文を唱えて精霊の助力を請い、自らの精霊力もそこに重ねていく。

『旧世界の支配者の姿を見よ。』
風に乗り来る声は、そう大きいわけでもない。
なのに、背筋に冷たい汗が伝う。巨人の恫喝を受けてさえも、こうもプレッシャーは感じまい。
一手先を見透かす老獪さ、立ち塞がる者全てをうち倒す強靱さ――確かな年月、荒波を生き抜いてきた強者だけが持つ何か。
やがて予兆も無く発生した竜巻の中心に現れたのは、一つの異形のシルエットだった。

227 名前:エニーシャ ◆IZh0JJtPKA [sage] 投稿日:2009/09/17(木) 17:40:07 P
10mは越す巨体、機械と混合したような奇妙な体――
詳細を知る前に、細かく軽い砂海の砂が舞い上がり、視界を黄土色に染める。

竜巻が弾けて生まれた不可視の刃を察知することが出来たのは3つの幸運が重なったからだ。
一つ、砂煙。二つ、無理にでも目を開けていようとした咄嗟の判断。三つ、彼女が剣士であったこと。
「――伏せろ!!」
爆音のような風音に負けじと怒鳴り、船縁に貼り付くように身を低くする。
動きが遅れた金髪が数本引きちぎられ、足元に落ちた。ヒヤリとする。
そうしてそっと相手の様子を伺えば――既に気配は動いており、危機感を抱いた頃には視界が薄暗くなっていた。
衝撃。浮遊感。
ザバン、水に飛び込んだような音をたて、左半身から砂に突っ込む。
ホワイトスワンの頭を潰され、自分が衝撃で砂海に落下したことに気づくのにそう時間はかからなかった。

体が沈んでいく。だがその速度は、水よりは幾分か遅い。
何とか溺れる前にボートの破片と思われる木片にしがみつくことに成功する。
他の皆は無事だろうか?
自由な右手を用い、剣で砂上に降り立ったドラゴンの胴体を指し示して、
「――Shoot」
刹那、込められていた力が一条の橙色の閃光となって解放される。
相変わらず制御が甘く、魔力に振り回されるように僅かに狙いは狂ったが――相手はこの巨体、さしたる問題にならないと思いたかった。


228 名前:名無しになりきれ[] 投稿日:2009/09/18(金) 00:20:01 0
>>211
そんなのも分からないの?
甘すぎ

229 名前:ルナルド ◆SiFiw1brbM [sage] 投稿日:2009/09/18(金) 00:30:42 0
精霊力を導力とし撃ち出された鉄鋼弾は青白い尾をたなびかせ正体不明の冥魔獣へと襲い掛かった。
鉄が砕けるかのような甲高い音を上げ着弾すると、重々しい音とともに冥魔獣が大地へと倒れ伏す。
まず一体、オベリスクへの行く手を阻む障害は排除した。

しかしこちらの動きを縫い止めるかのように、先刻放たれた光線がその数を増し降り注ぐ。
前方に見えていた王墓も最後の一つが崩壊し内包されていたオベリスクは大地にその姿を現している。

――作戦失敗――その言葉がルナルドの頭を過ぎったその時、
(うろたえるでない! 受け取るのじゃヴィカース!)
荘厳な、それでいてどこかシニカルな声が響く。
その声に突き動かされるかのように愛機の左腕を前へと突き出すと、そこには白銀に煌く一枚の盾。

「……というかこれ鍋の蓋じゃないか?」
よくよく見てみると中央に樹脂の取っ手が付いている。
藁にも縋る気持ちで取っ手を掴み迫り来る光線へと向けると、その全てを射手へと跳ね返してしまった。
「ちょっ!?すげぇ、鍋の蓋まじすげぇ!!」
その光景に我を忘れて驚愕の声をあげるルナルド。

跳ね返した先、敵の射手が居たであろう場所には濛々と湯気が立ち上っている。
自身の光線をその身に受け蒸発してしまったのであろう。
付近の敵反応は全て消え、ホワイトスワンもオベリスクへと行軍を再開している。
ルナルドもヴィカースを動かしそれに追走しようとしたその刹那、静寂を取り戻した砂海に確かにその声は響いた。

『旧世界の支配者の姿を見よ。』

砂塵を巻き上げ、発生する竜巻。
その中に見える長大なシルエット。
『ガアアアアアアアア!!!』
咆哮と共に竜巻は爆発四散し砂漠を削る。
大気を震わせ、絶大な恐怖を撒き散らしながらその姿を現した機械の鎧を纏った異形の竜がホワイトスワンの頭部を打ち砕いた。

飛び散る残骸。吹き飛ばされる仲間達。
数秒何が起こったのか理解できず、ヴィカースを操るのも忘れ呆然とするルナルド。
突如として現れた冥魔巨獣に匹敵する体躯を持つ新たな敵。

「ふざけんなああああああ!!」
絶望に呑まれ絶叫を上げながらヴィカースを突撃させたその時

『――Shoot』
強い橙色の閃光が竜の体へと突き刺さりその身を大きく揺らす。
見れば体の大半を砂へと沈めながらもエニーシャが竜へと輝く剣を突き出していた。
無事だった――冷静さを取り戻し周囲を見回すと他の仲間達も退避を済ませている。

バシュッ!
排熱のため跳ね上がっていたキャリバーの放熱板がその役目を終え、次弾の準備が整ったことを報せる。
安堵感のためか呆けた様に開いていた口を釣り上げると、エニーシャの攻撃が命中した場所へと違わずキャリバーの照準を定め、
発砲した。

230 名前:エリアス ◆HjQYbfcR9Q [sage] 投稿日:2009/09/18(金) 20:34:30 0
>225-227
>「――伏せろ!!」
タイタンを抱えて伏せる。
続く一撃でホワイトスワンが木端微塵になり飛ばされる。
空中でタイタンの上に乗る。飛ばされた衝撃で鍋がどこかに行ってしまった。
と思ったらインチキオジサンの頭に被られて砂海の上を難なく一人歩きしていた。
「現れたか旧き支配者め! ドゥビエールは渡さんぞお!
皆の衆、ぶっとばすのじゃああ!!」
鍋を被ったインチキオジサンはなぜか対抗心満々で檄を飛ばしながら奇妙なダンスを踊り始めた!
それを見ると戦闘力が上昇した……ような気がした。
そういえば戦闘用鍋はドゥビエールの精霊舞踏が発祥だったりする。
エニーシャちゃんとルナルドさんに続き攻撃を仕掛ける。
「サンダーアロー!!」
相手がなんとなく機械っぽいから電撃。帯電した矢のように見える射撃を放つ。

231 名前:混沌たるジュリエット ◆OCiexBIRJ6 [sage] 投稿日:2009/09/18(金) 22:45:07 0
ヴェルデトリポカが空間跳躍する寸前に強い光が照射される。
ユゴスを溶解させた光の弾幕は拡散し、一条の閃光となってヴェルデトリポカを襲う。
太陽を凌ぐほどの眩い閃光に視界は白に染まり、網膜を焼く。
ヴェルデトリポカは咄嗟に体を倒し、オベリスクを盾とするが、
柱の影に収まりきらなかった右足全てと腹部後端は瞬時に爛れて溶け落ちた。
辺りには肉が焦げた臭いと金属の焼ける臭いが混じり合い、異臭が発生する。
金色の体液も砂に零れるや沸騰音を立てて蒸発していた。

『クッ…カッ…アアッ……!』

砂塵を巻き上げる颶風がヴェルデトリポカの悲鳴をかき消す。
大砂海に竜巻が発生する。
造られた幾筋もの砂柱は天まで届く塔となり、たちまちトゥビヴェールの空は昏くなった。
空と地上の境目も分からないほどのサンドスコール。

『あぁ…ああ…痛い…痛ぁぁい…!足が…私の足が…!
………うう…あぁ…こ、これは…一旦退くしか…な…ない…わねぇ…。
でも…まだ…まだよ…このままじゃ…ああ!シヴェレィアの次元牢に…閉じ込められるのは…嫌…!』

荒れ狂う黄色き闇の上にはシュイダール。
ジュリエットは黒き冥魔製精霊機の乗り手に思念波を送る。
「かむちん…要石は丁度その真下でちゅわ。破壊したおべりしゅくからえーてるが漏れてるはずでちゅ。
せんさーを使ってしゅいだーるの火力を要石に集中、破壊しなしゃい。」

ゴオォォォ!!
シュイダールのランチャーから発射された魔弾が死の雨となって要石に降り注ぐ。
弾は砂の海を潜って地の底まで達し、地底50kmに達する要石の基底部に亀裂を入れ、粉々に破砕する。
『な…何…目が痛い…何も見えないわ……………っ痛ぁぁああああ!がっ!あぁ!!』
(…さようならヴェルデ姉様。)

「…すからぶりぇえは〈水〉の災害で水没。がーべりあは〈地〉の災害で崩壊でちたわね。
ここのくりすたりゅの力は〈火〉か〈風〉…壊したら何が起きるのかちら?
かむちん、旧きものが暴れている内に要石の核たるくりしゅたるを回収。
かたすとろふが起きる前にくりしゅたるをる・るりえーに持って行きなしゃい。」

―――シュイダールの姿が砂塵に消える。

232 名前:ラム・ダオ ◆MeEEeH/kao [sage] 投稿日:2009/09/18(金) 23:28:09 0
>227>229>230
カカカカカカと鳴き声とも機械音とも取れぬ音を出す異形のドラゴン。
バラバラになったホワイトスワンに一瞥もくれず次なる目標をヴィカースへと定める。
その巨体を一歩踏み進めた瞬間、動きが止まる。
その動きを止めたものは一筋の閃光だった。
橙色の閃光に脇腹を貫かれた異形のドラゴンの視線がエニーシャに注がれる。

貫かれたとはいえ、その巨体からすれば針が一本貫いたようなもの。
大きく手を振りかざしエニーシャに振り下ろさんとした所で貫かれた脇腹がはじけ飛ぶ。
「ギャアアアアアアア!!」
異形のドラゴンの絶叫が響き渡る。

ヴィカースの追撃が炸裂したのだ。
本来ならば分厚い装甲により、ここまでダメージを受ける事はないはずだった。
しかし蟻の穴から堤も崩れるの言葉通り、針の如き穴がその威力を肉体内部へと導き爆発させたのだった。

脇腹に大きな穴を開け、動きが鈍った所にエリアスの雷の矢が突き刺さる。
矢は装甲に阻まれたが、走る雷が大穴の開いた脇腹から内部を焼いていく。
そして再度絶叫がこだまする。

>231
内部から焼かれ口から煙を吐く異形のドラゴンの背後で巨大な竜巻が発生した。
空と地上の境目もわからぬ砂嵐の中、異形のドラゴンは融解を始める。
脇腹から零れ落ちる体液は地表につくと同時に弾かれ消える。
「グハハハ!痛快かな!見よ、これが敗残者の姿だ!
陽光は肌を焼き、雨は皮膚を穿ち、空気すら毒となり臓腑を焦がす。
大地すら我が地を拒み、死して土に還る事すら許されぬ!!」
そう・・・異形のドラゴンは旧世界の支配者。
しかしこの世界においては異物でしかない。
ヴェルデトリポカたち冥魔獣のように進化をしていないその身は現世界に存在を否定されているのだ。
ラム・ダオの現出させる植物群と同様に、この世界では生きて生けないのだ。

「だが・・・ドルイドの苗床の中で悠久の時を過ごし朽ちていくよりも・・・!
こうして戦い死ねることこそ本懐なり!
クリスタル回収の邪魔はさせん!!」
上空から降り注ぐ魔弾が地を抉るのを心地よく感じながら身体を起こす。

崩れかけた身体で浮遊し、カブトムシのような羽根を広げる。
小刻みに震える羽根から繰り出されるのは超音波。
あらゆる感覚を、そして計器を狂わせるのだ。
巻き起こる砂嵐の中、相手の動きを鈍らせ、異形の龍は大きく口を開く。
崩壊必死のその身体で最後の死の吐息・・・黒い光線が吐き出された!

233 名前:エリアス ◆HjQYbfcR9Q [sage] 投稿日:2009/09/20(日) 00:57:46 0
>231-232
砂避けを兼ねてゴーグルを装着。通常の視界に精霊力視覚が重なって見える。
「くっ……また持って行かれるのか!?」
凄まじい精霊力を発しているあたりに魔弾が降り注ぎ、ここまで時折魔弾の流れ弾が落ちてくる。
異形の龍が発する超音波の中、砂に埋まっているエニーシャちゃんを引き上げに行く。
水から引き揚げるより困難を伴い、なかなかうまくいかない。
そうしている間に、異形の龍は大きく口を開いた。
「危ない!!」
エニーシャちゃんの前に庇うように立つ。迫りくる漆黒の吐息に、思わず目をつぶる。
だがいつまでたっても何も来ない。
数秒後、恐る恐る目を開けると、鍋の精霊が鍋を持って必死で防いでいた。
「鍋……どうしてそこまで助けてくれる!?」
精霊とは本来気まぐれな存在。契約しない限り身を削ってまで尽くす事は無い。
「お前を守るようにあのお方から仰せつかったからな……」
「あのお方って!?」
鍋の精霊はそれには答えず、光線を防ぎながらも必死に訴えてきた。
「良く聞け……まだ我々に勝ち目はある。
なぜなら四大のクリスタルはそれ自体最後の砦を守るための結界。
何があろうと王都魔導派タワーだけは守り抜け……!! 彼の地に眠るは “賢者の石”。
四大属性を統括する第五のクリスタル……!!」
異形の龍が力尽き黒い光線が収まった時。
物言わぬ鍋が砂の上に転がっているだけであった。

234 名前:ラム・ダオ ◆MeEEeH/kao [sage] 投稿日:2009/09/21(月) 00:27:36 0
黒き光線を吐き出しながら異形のドラゴンはその体が崩していった。
その全てを吐き出したあと、満足するかのように完全崩壊し、その身体は消滅する。
死力を尽くした一撃は鍋の精霊に防がれたが、その役割は果たしたと言える。
なぜならば、直後、大陸西方域全体に地震が発生したのだから。
そして巻き起こる巨大な竜巻、荒れ狂う砂嵐。
シュイダールがクリスタルを奪った事により精霊力は途切れカタストロフが起きようとしているのだ。

###############################

大陸西方域が地震に襲われ、その震源たる王墓都市トゥビヴェールが砂嵐に飲み込まれる同時刻。
大きく鳴動する森にラム・ダオは立っていた。
その揺れを心地よさそうに感じながら・・・。
周囲には無数の残骸が森に飲み込まれようとしていた。
バハムート級戦艦1隻、ティアマト級巡洋艦4隻、無数の精霊機。
ロイヤルナイツのほぼ全戦力の骸を飲み込み、森は動き出す。
それは直径30キロにもなった株分けラ・ユェーグ。
大陸各方域での地震エネルギーを地脈に伸ばした根で吸収してここまで巨大化したのだった。

巨大な森と化したラ・ユエェーグの中心に立つラム・ダオの背負う白亜プランターに小さな亀裂が入る。
背負ったまま見ずともそれが何を意味するかはわかっていた。
「ユゴス・・・ヴェルデトリポカ・・・
あなたたちの命、無駄にはしないわ・・・。」
そっと目を伏して王墓都市トゥビヴェールの顛末に思いを巡らせた。

暫しの沈黙の後、目を伏したままそっとクリスタルを手に取り差し出した。
「さ、これを・・・。ジュリエットが持ってくるクリスタルもあわせて例の所へ。
私はこのまま王都へ向かいます。
全て揃った時・・・世界は裏返る・・・!」
カリスにクリスタルを渡したあと、ラム・ダオはまっすぐと北を向く。
遥か1000キロ先の王都、魔道タワーに守られし第五のクリスタル、エーテリックを見据えて。

大陸南方域を襲う地震の中、巨大なラ・ユェーグは北上を始める。
移動したあとには・・・押し潰され大きな穴を穿たれたマジンシア大神殿があった。
しかしそれもセランカ諸島全体が巻き起こす大噴火のマグマに塗り潰されてしまった。

################################

王墓都市トゥビヴェールとマジンシア大神殿での敗北が王都に知らされたのはすぐのことだった。
とりわけロイヤルナイツ壊滅、そしてXO型冥魔獣の北上の衝撃は凄まじかった。
すぐさま"マスターミルダンティア"ラガンを筆頭に主力軍が編成され迎撃に出撃。
4日後、王都より南方400キロのトルメキア大平原での決戦が決定。
リリーガンガー号の魔捜局にもトルメキア大平原に向かう命が下る。

しかし・・・エニーシャのもつ長剣ラム・ダオが淡く光り、脳内に語りかける。
『決戦の地を見誤るでないぞ。我らが戦場は王都魔導派タワーだ!』

235 名前:カリス・ポツェット ◆M5/Bnz694. [sage] 投稿日:2009/09/21(月) 22:54:56 0
元は肉塊の如き薄気味悪い姿であった株分けラ・ユエェーグは、短い間にその姿を一変させていた。
その肉体を糧として無数の木々を背に密生させ、今や広大な森と化している。
その生ける森の葉を震わすのはドルイドの声。
『ユゴス・・・ヴェルデトリポカ・・・
あなたたちの命、無駄にはしないわ・・・。』

「ヴェルデ姉様は殺しても死ぬとは思えないのだが。」

『さ、これを・・・。ジュリエットが持ってくるクリスタルもあわせて例の所へ。
私はこのまま王都へ向かいます。
全て揃った時・・・世界は裏返る・・・!』

ラム・ダオの手に彩雲の煌めき。この世界の精霊力の結晶は抱えるほどの大きさも無かった。
差しだされたクリスタルは瞬きする瞬間ラムダオの手から消え、代わって瓶の中に縮んだ姿で現れていた。
クリスタルを見るカリスの表情も声音も変わらない。
「世界を裏返す。なるほど創世が目的だったか。最後のクリスタルを得ればそれも叶うな。
女王様の命が出ている以上もボクも後ろで傍観というわけにも行くまい。」

最後の一音節を発し終えた時には、すでに青い瓶の気配は森に無い。

王都魔導波タワーの遥か上、たゆたう雲海の中にル・ルリエーは在る。
大樹の根の様に絡み合う漆黒の触手の塊とでも表現すればよいのだろうか。
空に浮かぶ闇の触手は蠢き、のたうちながら絶えず長さや太さを変えていた。
ある触手の一本が糸の様に細くなり消滅するや、別の空間から現れた触手が成長し、大樹の幹の如く太くなる。
それは異界の狭間に存在する触手の本体がこの世界を横切る度に姿が変化しているように見えるがためだった。
"異界の門"ル・ルリエー"
この時空に存在しながら同時に別の時空にも存在する冥魔獣。

ル・ルリエーは、のたうつゴルゴンの髪よりもおぞましい触手で三つのクリスタルを愛撫していた。
闇の檻の中に漏れる苦悶の声。クリスタルの中の精霊たちが悲痛な溜息を上げる。
「四つ目を持ってきたぞ。ル・ルリエー。」
汚れた粘液を滴らせた触手が新たな虜囚を闇の檻の中に呑み込む。
忌まわしき冥魔獣が精霊の魂を穢し、屈服させんとクリスタルに纏わりつく。

吹きすさぶ風によって雲海に切れ間が覗き、闇の根の一本に身を置いたカリスは眼下の大地を眺めた。
「キミの出番は第五のクリスタルを手に入れるまでお預けだ。
ボクも陽動ぐらいはしなければなるまい。もしかしたらここに戻ってくる事は無いかもしれないが。」

カリスは瞬時に空間跳躍で生ける森に戻った。森には所々窪みに雨水が溜まって沼が出来ている。
ドルイドを探す。ラム・ダオは沼に浮かぶ巨大な皿型の葉に座ってズズ…と茶飲みを傾けている。
「クリスタルは時空の牢獄に閉じ込めた。女王様は異界の門は媒体に提供すると仰せだ。
それと今度の戦いにはボクも参加させてもらうぞ。
―――もし全て終わって生き残っていたらボクにもその飲み物を一口貰えるかな。」

236 名前:エリアス ◆HjQYbfcR9Q [sage] 投稿日:2009/09/22(火) 16:12:01 0
>234
「鍋、どうした? ……うわ!?」
大地震に続き、至る所で竜巻が発生し始めた。
クリスタルが奪われた事による大災害の予兆だ。
鍋を拾って後ろにエニーシャちゃんを乗せて全速力でリリィ・ガンガー号まで撤退する。

―――――――――――――――――――
4日後、王都にて。トルメキア大平原での決戦が決まる。
「ついにこの時が来たか……」
カイ君は意味ありげに呟くと、リリィ・ガンガー号へ電話をかけた。
関係ないが使っているのはソフトバンクの電話機である。
「魔捜局から適当に何人か王都警備隊の応援を要請する!
理由? ……いや、その〜大陸崩壊の恐怖におののく市民による暴動が頻発して手に負えないのだ!」

237 名前:精霊界にて ◆HjQYbfcR9Q [sage] 投稿日:2009/09/22(火) 16:16:24 0
アストラル・アース――人間には精霊界と呼ばれている、精霊にだけ認識できる精神世界にて。
なぜかアストラル・ラユェーグと酷似したデザインの玉座の間に四大の大精霊は集っていた。
玉座に腰掛けるは精霊皇帝“カイザー”。全ての属性を統括する第五元素の支配者。
「皆に集まってもらったのは他でもない。4つのクリスタルが奪われた。
一万二千年の因果に決着をつける時が来たようだ。全力で人間達をサポートするように」
サポートしてないで自ら迎え撃てよと思うが、精霊達はこの世界に合わせて進化をした結果
自ら実体化して物質界に干渉するには莫大なエネルギーを使うようになってしまった。
よって人間をけしかけて使ってもらうしかないのだが
これにも制限があって人間は精霊力を行使しすぎると不都合が起きる。
大抵は死ぬ。ラッキーな例だと不老になる。まかり間違えて犬になった人もいる。
要するに精霊達は強大な力を持ちながらそれを行使する術がないのだ。
「このような事になるぐらいならあの時情けをかけるべきではありませんでしたね……」
と、大地の大精霊エアリス。
人間との橋渡し役を任されているため精霊の女王と認識されているが、実は中間管理職である。
「仕方あるまい。あの頃は同じ姿をした同胞だったからな。
だがこの度は違う。我々とあの者達は全く異なる方向に進化を遂げた相容れぬ存在。
情けは無用だ」

決起集会が終わり、閑散とした玉座の間で大地の大精霊エアリスが呟く。
「人間は私達と契約して本当に良かったのかな。
自然を支配する強大な文明の力は本当に人間を幸せにしたのかな……?」
その答えは誰にも分からない。人間は契約した後の世界しか知る由が無い。
精霊と契約を交わした時が世界の創世とされているのだ。それ以前の記録はあるはずがない。
「この戦いで結論が出る。
たとえ冥魔に負けて文明を失っても人間は昔のように生きていける。
それでもこの世界を守り抜いてくれたなら私達の判断は正しかった事が証明される。
証明してくれると信じてる」
と、水の大精霊アクエリオン。エアリスは頭を振った。
「違う、信じてるんじゃない。力尽くで勝たせるつもりでしょ?」
「ふふっ、そうだね。正しくても正しくなくても関係ない。一万二千年の想いを貫くまで」

「大変じゃー」
そこにポワッとインチキオジサンが登場。
「アクエリオン様、頑張ったんじゃが風のクリスタルも奪われてしもうた!」
「上出来だよ。あの子をよく守ってくれたね。キミは十分役目は果たした」
インチキオジサンの頭をぺちぺち叩きながら答えるアクエリオンであった。

238 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/09/22(火) 20:35:35 0
スレ主はまだ戻らんのか・・・

239 名前:ラスボス候補[sage] 投稿日:2009/09/22(火) 21:15:02 O
>>238
いまさらどの面下げて?
奴が戻るなら俺は辞める

240 名前:ルナルド ◆SiFiw1brbM [sage] 投稿日:2009/09/22(火) 22:02:46 0
神聖ミルディアス王国軍本部
王墓都市トゥビヴェールでの激戦より生還し、ルナルドはその報告の為古巣へと戻っていた。

「ファシス伍長、報告書は読ませて貰った。だが俄かに信じ難いのも事実だ。
冥魔獣製の精霊機に旧世界の神、契約も無しにその身を投げ出す精霊か。
この内どれか一つだけでも今まででは考えられないことだな。」
ルナルドの対面、椅子に座り刺すような視線を向けているのは"切れ者"と名高いサンダース大佐。
数々の作戦を指揮し、その全てを生き抜いてきた猛者である。

「はい。ですが全て事実であります、大佐殿。」
答えるルナルドもいつもの伝法な口調ではない。

「わかっている、伍長。まずは良く生還したと言っておこう。
マジンシア大神殿へと赴いたロイヤルナイツはほぼ全滅した。ああ、損耗率ではなく言葉どおりの意味だ。
その上XO型指定の冥魔獣が王都目指して進行中との事だ。」
王直属の近衛騎士。出自の高さも求められるゆえ軍に比べれば小数だが最新鋭の装備を有する王国最強の部隊。
そのほぼ全戦力がたった一戦で無くなったと言う。

「これに伴い上層部はマスターミルダンティアを筆頭とした迎撃部隊を編成。
現状のほぼ全戦力を投入してトルメキア大平原で決戦予定だ。魔捜局もこれに宛がえとの命令だが――」

「それについてですが大佐殿。自分の同僚、アクエリアスとローデス少尉ですがそれぞれ精霊より言われたことがあると。
王都魔導派タワーを死守、"賢者の石"を奪われてはならない、と。
自分はそちらの話に明るくないので判りませんが……捨て置いてはいけない気がします。」
うむ。と呟き熟考するサンダース大佐。
そこへ秘守回線での通信が入る。

「ああ、貴方でしたかビッグ・ダディ。相変わらず呪いは解けませんか?ハハハ、不便ではないのですかな?
魔捜局から王都警備隊への応援……すでに先方への連絡は済ませてある?なるほど、了解しました。」
サンダース大佐は普段の雰囲気からは想像も出来ないほどのフレンドリーさで通信を終えると咳払いを一つしてルナルドへと告げた。

「上へは私から伝えよう、伍長。魔捜局員は損傷著しい為此度の決戦には使えそうも無い。
まあしかし遊ばせとくのもなんですから王都の暴動鎮圧にでも廻せば良いでしょう、とな。
それと王都の戦力はこちらでも出来る限りの手は打つ。だがあまり数は期待できん、貴様達が要と思え。」
にやりと不適な笑みを交わす将校と下士官。

「了解いたしました大佐殿。」
いつもの不敵な顔に戻ったルナルドはサンダース大佐へと敬礼をし、古巣を後にした。

241 名前:ラガン ◆b6./ifc./kXO [sage] 投稿日:2009/09/23(水) 00:45:04 0
王直属の第一軍団ロイヤルナイツがマジンシア大神殿にて壊滅したため、
王国軍本部はトルメキア大平原に精鋭数軍団を集結させて戦力の集中を図った。

第二軍団の王弟ガラハド公爵率いるペリカン騎士団。
第三軍団の銀獅子ヴァーリ侯爵のムスペッル精霊機甲団。
第四軍団の宮廷魔道士デュランダルの魔道兵団。
第五軍団にはサンダース大佐の下、機動戦隊ホワイトタイガーが集う。
そして第六軍団に八百六十八屍将軍サダーハ・ルオ率いるソフトバンク騎士団。
マスターミルダンティア・ラガンは総司令官として全軍を束ねる。

築かれた陣営の中では、指揮官が集まり戦術について意見を戦わせていた。
「遮蔽物の少ない平野ならば野戦は必定、精鋭たる我が騎士団は圧倒的に優利である。
小賢しい冥魔獣どもの奇襲に脅かされることも無いのだからな!
ここは防御を固め、敵の側面を騎馬隊で挟撃するというのが最善だ。」
大将たるガラハド公が防御を重視したシールドウォールの陣形を主張する。

「冥魔獣…それもXO型を相手にして騎士の戦い方が意味を持つとも思えんが?
勝ち戦にしか出た事がない王弟殿下には分からぬか。フッ。」
百の戦場を駆けた勇者、銀獅子ヴァーリが疑問を呈し、嘲笑う。

「XO型は巨大な山か森の姿をしている。これを人の手で崩すのは不可能と言わざるを得んな。
だが、我々の勝利は約束されている。
これ程の事態に議会も承認せざるをえなかったのだよ。S級指定の封印兵器"破壊の雷霆"を使う事に。」
デュランダルが険悪な両名に議会の決定を伝える。

それを聞いてサンダース大佐が渋面を作る。
「ふむ。使えばトルメキア平原の風景は雷精が踊り狂う地獄のものに変わるな。
数年…下手をすると数十年は回復しまい。破壊の余波がどれぐらいになるのかも想像できん。」

「だが、使わねば多数の市民が…いや、世界が犠牲になるのですよ。大佐。」
デュランダルは反対するような意見が出た事に意外そうな顔を見せ、反論する。

混乱した市民から生卵を投げ付けられたサダーハ将軍が卵も拭わぬままに重々しく口を開く。
「我々は勝つしかない。勝てば市民も拍手で迎えてくれる。」

さらに紛糾しそうな一同の言い争いをラガンは手で制する。
「今度は躊躇わぬ…我が剣で終わらせる。全軍は短距離跳躍してくるM型を迎撃せよ。
我は単騎駆けでXO型を足止めする。森の動きが止まったら破壊の雷霆を用い、我ごと焼きつくすのだ。」

全軍に指令が伝わる。
神聖ミルディアス王国暦315年9月トルメキア平原の戦いが始まった。

人と異形の行軍に大地が揺れる。

242 名前:混沌たるジュリエット ◆OCiexBIRJ6 [sage] 投稿日:2009/09/23(水) 00:49:23 0
ゴキゴキ…ゴキゴキ…!
無数の巨大な甲虫が生ける森から湧き出てくる。色は茶や黒。
たちまち上がる悲鳴。騎士団に広がる混乱。
小型の冥魔獣たちは短距離跳躍で部隊の只中に現れては突撃するという防御を考えない戦法を取った。
直接本陣に切り込まれるという騎士の常識を打ち破られた戦法に油断したガラハド公が真っ先に戦死する。

「ここは、ら・えーぐに任せてわたくちたちも王都魔導波タワーに向かいまちゅ。」
シュイダールが眼下の戦いを余所に飛行する。
カムシンの肩には小さなスキュラを思わせるジュリエットが張り付いていた。

「しゅいだーるの扱いも大分慣れたようでちゅわね。」
絶影の速度で飛ぶシュイダール。飛んだ後には黒いオーラの残滓。
散発的に飛んでくる砲弾も命中する前に黒い影は遥か彼方に消えていた。
行く手に見える王都魔導波タワーが陽の光に照らされ深紅に輝く。

ガガガ……パシュッ!
シュイダールが空から銃弾を浴びせるも着弾点に虹色の波紋が現れ魔弾を防ぐ。

「なゆほど…要石自体を削って塔に改造したのでしゅか。防御結界も最大れべるのようでちゅね。」
鼎をひっくり返したような混乱の続く市内に黒い精霊機が降り立った。

243 名前:エニーシャ ◆IZh0JJtPKA [sage] 投稿日:2009/09/23(水) 03:47:24 P
エリアスに砂から助け出され、ようやく体に自由が戻る。
エニーシャはタイタンの座席から、カタストロフの中で融解していく“敗残者”を神妙に見つめていた。

「――私たちは、勝者か? ……この世界は勝者が身勝手に占領したものか?」
やっとの思いで帰還したたった一つの故郷に拒絶された者たち。
躊躇いもせず彼らに刃を向けた自分。
それは、もしかしたら本当に身勝手で――。

それでも、この世界を冥魔に明け渡そうとは微塵も思えずに。

(…私には、私たちを救うことしかできそうにない)
――彼ら同様、自分の故郷もこの世界だけ。
何に代えても自分たちの世界を守ってみせると心から言うことができたなら、かつて酷評を下したあの精霊も力を貸してくれたのかもしれない。


244 名前:エニーシャ ◆IZh0JJtPKA [sage] 投稿日:2009/09/23(水) 03:58:08 P
* * *

砂漠の激戦より四日、時刻は昼。
エニーシャは消灯もせず、汚れた服もそのままにベッドに突っ伏していた。
と――開錠と扉が開いて軋む耳障りな音と共に微風が頬を掠める。
聞こえた足音が驚いたように一瞬止まり、
『あ。お帰りー』
「…ただいま。普通は逆だが」
エニーシャは顔も上げずに返答する。
声は同室の友人――キファのものだった。

『だってエニーシャ、昨日の夜から帰って来ないんだもん。何やってたの?』
「訓練後、食堂の手伝いだ。
食器洗いかと思っていれば、模様替えだの塗り替えだの補修だの次から次へと」
『この状況で呑気だね…お皿でも割ったの?』
「テーブルを割った」
『なにそれこわい』
からかうようなその言葉と共に何か硬いものが投げ寄越される。
受け取り、眺める――“元気ハツラツ?”。
『オゴリだよ。時期的にいいかと思って』
「時期?…ああ、今朝の召集で大平原戦の決定が発表されたな。
確かに今は体調を崩している場合ではない」
『うん違うけどそういうことで』
「? ま、まあ。ありがとう」

寝転がったまま飲むのは流石に行儀が悪い。
疲れた体を起こしてベッドに腰掛け、栓を開ける。
「そちらはどうだ?」
『事務も、やっぱ今回のことでいろいろ大変だよー。
この後に及んで特別予算もセコくてさ、チーフが怒ったのなんのって』
友人は意地の悪い笑みを浮かべ、
『だーかーらー、うっかり建造物壊したりすると殺されちゃうぞ〜。
ま、大平原みたいに何も無いトコならいくらエニーシャでも』
「そのことだが――
――実は先刻、王都の暴徒鎮圧に派遣してもらうよう願い出て来たんだ」
『………え、えぇ!?』
「正式な辞令はまだだが――」
『らしくないよ!?最前線行かなくていいの?やっぱまだ体キツい?』
「いや体調は良好だが…その、笑わないで欲しい。
夢で精霊様のお告げがあった」
『…え?』
「妙な話をしている自覚はある。――が、私の夢以外にもいろいろとあったんだ」

あの鍋精霊とのやりとりを思い返す。
「精霊様は、王都の石を守れ、本当の決戦は平原ではないとおっしゃった。
私はその言葉に従うつもりだ。
…最も、明確な裏付けなど何一つ存在しいが。
都の父上――愛称だ。実父ではない――は何か感じ取っていらっしゃるようだが、シスターが担当した事件以来王都でMAY-Q反応は見られないし、な…」


245 名前:エニーシャ ◆IZh0JJtPKA [sage] 投稿日:2009/09/23(水) 04:27:15 P
「――できるなら、ただの夢であって欲しい」
『そんな話で人集まるの…?』
信用はされたようだが、そんな話呼ばわりだ。苦笑いを漏らしつつ、
『危うい。ルナルド殿が報告のついでに本部に掛け合ってくれるそうだが。
この緊急事態、不確かな情報をもとにどれだけの兵を回してもらえるか」
突拍子も無い話。キファは恐れるよりも困惑しているように見える。
――ふと、何かに気付いたように彼女の動きが止まった。

『あれ?じゃ、やっぱりブリッジに異動する話は断ったんだ?』

180度方向を転じた話に、エニーシャはかくんと肩を落とした。
「い、今更か?断ったよ。私はまだ前線に――」
『…ついに臓器売買に手を』
「染めるか!給与のことか?私はこのままでも充分やっていける」
『もやしマヨネーズご飯』
「私の昼食にケチをつけるな!?」
『よく動けるね』
「人間の適応能力を甘く見ない方がいい。
…ともかく。ブリッジは私には合わない。
それにこの戦いに限って言えば――」
エニーシャの表情が再び硬さを増した。

「――前線にいれば、いずれはお会いできるだろうし」

――誰に?とは聞かれなかった。
あの経緯を既に聞いているキファにはそれが元中尉を指す言葉だと伝わったはずだ。

沈黙。今度こそ空気が重くなる。

『――ねー』

その声は場違いに明るく、同時にいつになく穏やかな調子だった。
『この後暇?』
「…暇だが、できれば寝かせて欲しい」
『あ、じゃあ今夜でいいや。
今夜、部屋にいられる』
「多分――」
『よし!絶対ね、絶ーっ対!』
悪戯っぽい笑顔を浮かべて迫る友人。勢いに呑まれる。
気が付けば暗い気分も忘れ、わけもわからず頷いていた。
「りょ、了解した――何だ急に?」
『いいからいいから。約束ね!』
「わ、わかった…」

それを聞いて満足げに笑った友人は、机から数枚の書類を手に取り、
『もう行くね。まだ仕事が残ってて』
忘れないでと何度も念を押しつつ部屋を後にした。

静けさを取り戻した室内は快適ではあったが、寂しい。
そんな自分に苦笑しつつ、空瓶を屑入れの脇に置いたエニーシャは再びベッドに身を預けた。



――結論から言えば、その約束は破られることなった。

リリィ・ガンガーは決戦前最後の補給とメンテナンスのため、間もなく都の港へ向けて舵をとる。

正式に指令を受けたエニーシャ含む少数の局員が王都警備隊と合流したのは、この日の晩のことだった。


246 名前:エニーシャ ◆IZh0JJtPKA [sage] 投稿日:2009/09/23(水) 06:08:24 P
【×『部屋にいられる』→○『部屋にいられる?』
他にも誤字脱字は盛り沢山だが、訂正は文意が違ってしまったここだけに。
失礼致しました。】

247 名前:ラム・ダオ ◆MeEEeH/kao [sage] 投稿日:2009/09/23(水) 22:08:40 0
トルメキア大平原での戦いが始まって十数時間後。
ラム・ダオは王都魔導波タワーの頂上に立っていた。
王国の主力、そして耳目がトルメキア大平原に向いている中での侵入は容易であった。
王都魔導波タワーの頂上でラム・ダオは遥か南方を見据える。
「ええ・・・そうですとも・・・!
ラガン先生?あなたを足止めするためですから・・・このくらいはしますわ・・・。」
悲しげな呟きは魔道タワー上空に渦巻く風に流され消えていく。
そしてその日・・・
   ・・・トルメキア大平原は地図の上から消滅した・・・・!


>「なゆほど…要石自体を削って塔に改造したのでしゅか。防御結界も最大れべるのようでちゅね。」
時同じくして魔道波タワーに到着したジュリエットの声ににこやかに振り向く。
「ええ、あまりに強力な要石。通常の攻撃では破壊は不可能。
でも・・・この強力な力を利用すれば・・・ね。強力な結界であるからこそ、それを破る力ともなる。
そしてこの神木ホメオツリーは全ての進化を司る・・・精霊の進化すらこの枝葉の道標に記されているのだから・・・
同調できるのよ。」
そういいながらラム・ダオは背負っていた白亜プランターを下ろす。
白亜プランターの一部分には穴が穿たれており、そこから神木ホメオツリーの根が突き出ていた。
その根はラム・ダオの背中に融合し伸びている。
神木ホメオツリーもまたラム・ダオの内なる森に根ざしていたのだ。

「私はこれから神木ホメオツリーと共に魔道波タワーを取り込みます。
完全に取り込みクリスタルをダッシュするまで約二時間。お願いできるかしら?」
そういいながらラム・ダオはその姿を徐々に変えていく。
それは正に木との一体化。
樹木化しつつも尚その笑みは変る事無く、徐々に魔道波タワーに根を張り、それも一体化させていく。

それと同時にラム・ダオの体からは無数の種が王都全土に撒かれていった。
種は地表につくと同時に急速に芽を出し樹木として育っていく。
まるでその寿命を早送りさせるかのように。
王都の各地で樹木が乱立。
巨大食虫植物や蔦・根が侵食し破壊を行い混乱を広げていく。

「・・・エニーシャ・・・あなたはここまで・・・辿り着ける・・・?
世界の・・・いいえ・・・あなたの全てを賭けて・・・!」
世界を裏返す戦いの最中、ラム・ダオの脳裏によぎったのはエニーシャの屈託の無い笑みだった。

248 名前:ラム・ダオ ◆MeEEeH/kao [sage] 投稿日:2009/09/23(水) 22:09:10 0
トルメキアへ威厳では激しい戦いが繰り広げられていた。
各所で立ち上る爆炎。
怒号と剣戟の叫び声。
そして阿鼻と叫喚のシンフォニー。

激戦を極める長時間の戦いの中で、遂に王国軍は乾坤一擲の突撃を敢行する。
「ぬああああああ!!いけええええ!!!」
「すまん!!」
数十の冥魔獣をなぎ倒し、それ以上の傷を負いながらサンダースが血路を開く。
文字通り血の道を一気に駆け抜けるラガンがその長剣を株分けラ・ユェーグの頂点に・・・
そこに佇みしラム・ダオに振り下ろす。
威力は凄まじくラム・ダオを瞬時に蒸発させしめ、ラ・ユェーグを真っ二つにした。
が・・・・。
その手ごたえにラガンの背筋に冷たいものが走る。
あらゆる全ての知識を受け継ぐラム・ダオにしては抵抗が無さ過ぎる。
直径30キロの冥魔獣にしてはあまりにも軽すぎたのだ。
事実それは間違ってはいない。
まるで卵の殻のように厚さ10m程の肉壁の内側は空洞であった。
しかし、まるきり何も無いわけではない。
空の中心に約30Mほどの高速回転する何かを見たとき、ラガンは全てを悟った。

調査によれば大陸各地の大地震エネルギーを地脈を通して吸収し巨大化したという事だったのだ。
だとすれば膨大なエネルギーであり、直径30キロとしてもまだ小さいと言わざる得ない。
それが殻だけが30キロであり、内実30mに凝縮している・・・それが意味することは・・・!

「ええ・・・そうですとも・・・!
ラガン先生?あなたを足止めするためですから・・・このくらいはしますわ・・・。」
蒸発したダミーラム・ダオの破片が呟き、ラガンの考えを肯定する。
「い・・・いかん!これは罠だ!!」
ラガンの叫びも苛烈を極める戦場に響き渡らせるにはあまりにも小さく、そしてあまりにも時間が無さ過ぎた。

ラガンが株分けラ・ユェーグを両断した瞬間に宮廷魔道士デュランダル以下魔道兵団が雷霆を発動させたのだ。
全ての音を塗りつぶし、全ての色を消し飛ばす轟雷がラ・ユェーグの中心に降り注ぐ。
その瞬間、中心で高速回転していたものから闇が溢れ・・・いや・・・それは闇ですらない。
奈落の絶対無の領域が溢れる。

結果としてトルメキア大平原は雷精が踊り狂う地獄とはならなかった。
大陸全土の地震エネルギーが超絶に圧縮されたところに、雷霆の天のエネルギーが加算され、限界を超えさせたのだ。
それは光も闇も逃さぬ奈落の虚星となって絶対無の領域を広げ・・・
王国軍主力も、冥魔獣たちも、轟雷も・・・トルメキア大平原ごと飲み込んだのだった。

249 名前:名無しになりきれ[] 投稿日:2009/09/24(木) 03:09:58 0
さすがにトルメキアはパクリだろう

250 名前:混沌たるジュリエット ◆OCiexBIRJ6 [sage] 投稿日:2009/09/24(木) 19:57:16 0
夜空には鉛色の雲が濁流となって渦を巻く。渦の中心は王都魔導波タワーの遥か頭上。
グラムサイト〈真視〉を持つものなら暗雲を透過して、禍々しい気配を放つ名状し難きものの姿を捉えるだろう。
闇の牢獄に囚われた四つのクリスタルの姿も。

その混沌の中心たる街を無数の緑が覆う。
ごく短い間に王都ミルディアスは密林へと変容していた。
針葉樹に広葉樹にシダ類、桃やトネリコといった神聖とされる木々、すでに失われた太古の植物たち。
複雑怪奇に絡み合い群生する植物の枝からは無数の果実が垂れ下がっており、地に落ちる前に芽吹くものもあった。
大地は緑の絨毯。腐った果実や落ち葉に雑草が生い茂り、その上に巨樹の根が血管の様に張り巡らされる。

異相の森の宙空には黒曜石の死神が浮かぶ。
シュイダールは王都魔導波タワーに近づく者は警備兵、一般市民の別無く銃撃の洗礼を浴びせていた。
しかし威嚇射撃で退く者には、追撃を掛けない。
不要な損耗や護衛対象から離れる事を厭うからか、あるいは半分流れる人間の血がそうさせるのかは分からない。
視界の確保の為に透明なコクピットの中には、半仮面を身に付けた操縦者と小さなスキュラの姿が覗く。
半仮面は魂がそうさせるとの理由で付けているのだが、彼もいつかは若さゆえの過ちに気づくのだろうか。

「かっこ悪いでしゅわ…やはりわたくちたちには人間の感覚は理解し難いでしゅわね。」

冥魔獣の全否定にも陶酔するような操縦者のポエムは変わらない。
『(※都合によりポエム部分はカットしてお送りします。)』

色彩を抜かれた森に人の気配。
ジュリエットはシュイダールの拡声機能を使って森に踏み入る侵入者に警告を発する。

「下がりなしゃい!人の子らよ。近づけば死の洗礼を浴びせる事になりましゅわよ!」
人を威圧する波動も口調のせいで少しだけ減じているかもしれない。

「あや?懐かしい顔ぶれがいましゅわね…王都湾以来でしゅが、わたくちを覚えていて?
不純無きじゅりえっとと名乗ったしゅらいむろーどを。
わたくち、らむ・だお様に新たな命と姿を授かりまちたの。見違えるようになったでしょう?
さあ!見なしゃい!あれに見える要石の塔を取り込んだらむ・だお様の神々しい御姿を!しょしてひれ伏しなしゃい!」


【名前】"混沌たる"ジュリエット
【年齢】一ヶ月と少々
【性別】不明
【容姿】下半身が半透明なエメラルド色の触手と化した少女、髪も目も同色
【性格】好戦的、高慢
【自由記入欄】
【種族】冥魔獣・グリーンアルジースキュラ
【位階】ポーン
【サイズ】2S型 40cm程度

251 名前:エリアス ◆HjQYbfcR9Q [sage] 投稿日:2009/09/24(木) 23:46:01 0
暴徒鎮圧という名目で集められた寄せ集めのような部隊は秘密会議を開いていた。
ちなみに司会は父上だ。
「……というわけで各自王都魔導波タワーを死守せよ。以上!!」
解散しかけたその時だった。

>242 >247 >250
外から聞こえてくる銃声。
市街中心部のほうを見れば正体不明の植物がわらわら生えてくるではないか。
それを見て、なぜか懐かしいような不思議な感覚に襲われる。
「そうか、これは“森”だ……創世の前、人間が住んでいた世界だ」
創世以前の事なんて誰も知るはずもないのに何でこんな事を思うのだろう。

その時、空間にノイズが走り、部屋の中心に美女の立体映像のようなものが浮かび上がった。
「魔王マオ……!」
魔王の姿をした美女は荘厳な声で語り始めた。
「警戒しなくともよい。お初にお目にかかる。妾は“夢幻の世界”クイーン。冥魔の女王だ」
当然さらに警戒を強める一同。クイーンは言葉を続ける。
「まずは部下どもの今までの狼藉をわびよう。すまなかった。
話を聞いておくれ。我々は敵同士ではないのだ。汝らの真の敵は……精霊だ。
1万2千年前、奴らは自らの野望を実現するためだけに汝らを籠絡し、我らを世界から追放した。
以後我らは外界で辛酸を舐めることを余儀なくされ……汝らは精霊どもの傀儡として利用され続ける事になった。
恐れる事などない。我らと生きる道を選ぶがよい。
そうすれば歪んだ文明社会が生み出すあらゆる苦しみから解放される。
交通渋滞も税率上昇も無い……受験競争も利権を巡っての戦争も無い。
妾の治める美しき箱庭の中での永遠の平和を約束しよう」
「精霊は無力だった人間に発展する力を与えてくれたんだ!
舌先3寸で不戦勝に持ち込もうったってそうはいかないぞ!」
冥魔の女王の声に、僅かに怒気がこもってくる。
「まだ分からぬか? 汝らは汚らわしい精霊どもに騙されたのだ。
奴らが何の見返りも無しに力を供給すると思うてか?
クリスタルとは人間の精神エネルギーを吸収し精霊に供給するための装置!
精霊どもはそれにより有り余るエネルギーを手に入れほんの一部を精霊力として貴様らにくれているに過ぎぬ!
奴らは最初から……手に余る力を手に入れた貴様らが垂れ流すどす黒い感情が目的だったのだぞ!
いい加減目を覚ませ、我らと手を組もうではないか!」
なるほど、作り話にしては筋が通っている。あるいは全て真実かもしれない。
でも不思議と気持ちは少しも揺れなかった。
「だが断る!! 今更そんな事は問題じゃない!!」
女王の立体映像につかつかと歩み寄る。
「ネットもテレビも無い……冷蔵庫もクーラーもない
人間達がそんな美しき野生の王国で生きれると思ってか!!」
どんっ!! と人差し指をつきつけて力説する。さらに父上のダメ押しが入る。
「エリアスの言う通りだ。人間だって進化した。もう昔には戻れない!」
「キ――ッ!! 折角降伏の機会を与えてやったのに無駄にして!
バカな奴ら! 後悔しながら死んでいけばいいわ!!」
クイーンは捨て台詞を残して姿を消した。
激昂するあまり素の口調が出てしまい、威厳もへったくれもない。

252 名前:エリアス ◆HjQYbfcR9Q [sage] 投稿日:2009/09/24(木) 23:48:06 0
しばしの沈黙の後、父上が口を開く。
「創世の前……世界は森に覆われていたそうだ。
自然の化身達が支配する世界で、人間達は穏やかに暮らしていた
だが旧き支配者達の中に、永遠に続く変わらない世界に飽きた者が現れた。
これが後に精霊と呼ばれるようになる者達だ。
彼らは当時小さく、弱く、取るに足らない存在に過ぎなかった人間に無限の可能性を見いだした。
だから世界を変えゆく力を与えた……。おっと、長々話してる場合ではない。
要するに何が言いたいかと言うと……彼らの想いに応えようではないか! さあ出撃だ!!」
父上は勢いよく前足を振り上げた。

タイタンの後ろに父上を乗せて疾走しながら言う。
「父上が犬になった理由……なんとなく分かった気がする」
「そうか」
「今の演説を聞けばわかる。父上は若いころ精霊に恋をしたんだな?
それで色々と人間が知るはずの無い事を知った」
「今日はそこまで! あえて言う必要はない。何も言わずとももうすぐ全てが明らかになるだろう」
「そうか」

>250
森に突入しようとすると、漆黒の精霊機……のようで精霊機でない何かから警告が発せられる。
威勢よく出動したものの予想以上に大変な事になっている。
「くっ……なんてプレッシャーだ!」
とりあえずお約束のセリフを言ってみた。
「おかしいな……タイミング的にそろそろ出て来る頃なんだが……」
父上は後ろで訳の分からないセリフを呟いた。

253 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/09/25(金) 19:10:41 0
>父上は後ろで訳の分からないセリフを呟いた。

日本語としておかしい

254 名前:ルナルド ◆SiFiw1brbM [sage] 投稿日:2009/09/26(土) 02:55:40 0
<<……というわけで各自王都魔導波タワーを死守せよ。以上!!>>
王都某所、秘守回線を通じて響く父上の激。
王都への無差別攻撃を警戒し戦力を複数個所に分け待機。その一つにルナルドは居た。
中心地よりやや離れた廃工場に集まったのは十余人。
顔ぶれは様々で軍警察や王都警備隊、果てはロイヤルガードの紋章を付けている者も居る。
その彼らに唯一ある共通点、それはルナルドを除く全員が魔装機の操縦者であるという事だった。
サンダース大佐の根回しにより捻出された機甲戦力。
建物の入り組んでいる王都においては精霊機を上回る戦力となるだろう。

「おい、なんだあれ!?」
哨戒任務に当たっていた軍警察の若者が声を荒げる。
若者が指し示す方向、市街中心部は樹木に覆われその範囲を徐々にではあるが広めているようだ。

「あれは森?……ってことはまさか元中尉殿自らお出ましかよ。
それとあの黒い精霊機、砂漠に居たやつか!!」
船上と砂漠での辛酸を思い出し、はき捨てるように一人語散るルナルド。

「あの森を創り出してるやつは冥魔獣も産み出すから気をつけてくれ。
植物がある場所は全部そいつの領域だと思った方が良い。
あの邪魔な黒い精霊機はこっちで引き付けるから皆はタワーの方を頼む。」
居並ぶ仲間へと情報を伝えると待機姿勢をとっている精霊機へと駆け出した。

サンダース大佐のもう一つの置き土産。
膝を折り傅く様な姿勢をとっている精霊機。
いつもルナルドが搭乗しているヴィカースでは無い。
全長8メートル弱、緩やかな曲線を描く装甲は白銀で所々に金色の縁取りが施されている。
地上戦はもとより高出力のブースターとスラスターによる高速空戦も可能。
砂漠で見た黒い精霊機が現れた場合を考え用意された機体、ロイヤルナイツが使用している精霊機"アイギス"。

搭乗席に乗り込み各武装をチェックするルナルド。
長剣型の二本のブレード、左腕にマウントされている小口径の精霊弾を連射できるアロー、そしてキャリバー。
さらに神の持つ無敵の盾の名を冠するこの精霊機には搭乗者の精霊力を増幅し全周囲に強力なバリアを形成する特殊兵装も搭載されている。

「ちっ、やはり使えないか。」
しかし制御盤には使用不可の文字。
ルナルドの少ない精霊力では展開する程の出力が得られないようだ。
元より最精鋭部隊が使用する機体だけに搭乗者に求めるスペックも高いらしい。
これが有れば戦況を有利に運べるが使えないものは仕方ない。

アイギスを垂直に離陸させるとその眼下には複数の小隊に別れ中心地へと疾走する魔装機部隊が見える。
黒い精霊機と同高度まで上がるとブレードを抜き放ちブースターの出力を最大にする。
白く煌く精霊力の残滓を散らしアイギスはシュイダールへと突撃した。

255 名前:混沌たるジュリエット ◆OCiexBIRJ6 [sage] 投稿日:2009/09/27(日) 16:44:10 0
精霊機アイギスが放つ白色の光が魔樹の森を柔らかに照らす。
墨を流した様な黒に浮かび上がった森は、今も蠢き成長を続けていた。
シュイダールの漆黒の装甲は精霊機の光を吸い込み、己を闇に同化させながらも闇以上に深い暗黒を湛える。
長大な湾曲刀を構えた冥魔機は、光の微片を振り撒く精霊機を迎え撃った。

『死にゆく前に聞くが良い…お前の死神となる男の名を。オレは"砂嵐の月"カムシン!
その目に焼き付けるが良い。オレの操る邪神霊力冥魔機シュイダールの力を!
そして舌に味わえ、敗北の苦き味を!肌に感じろ、オレのプレッシャーを!』
ザン!シャッ!
シャムシールが黒雷の閃きとなって放たれた二発の精霊弾を両断する。

ガシュガシュガシュ!
しかし連射されていた残りの精霊弾はまともに命中した。
「かむちん!何を馬鹿な事をやってゆの!素直に避けなしゃい!」

すかさず操縦者に叱責を飛ばし、意識を敵に集中する。
「………機体こそ違うもののこの感覚は覚えがありましゅ…王都湾の海中以来でちゅわね。
今度は容易く破れはしまちぇんわ…。」

アイギスは目前。
『心配するな、ちびすけ。オレのシュイダールは最強の中の最強。無敵の中の無敵。
神々の黄昏の只中にあってすら決して墜ちる事は無い。
今、それを証明してやる………発動しろ!ゲヘナ・テリトリィー!』

アイギスのブレードの一閃に人型に刈り取られた闇が砕け無数の幻像が生まれた。
シュイダールは数十の分身を作りながら、黒い奔流となって全方位からアイギスを取り囲んで閉じ込める。
やおら黒渦の中から一体の漆黒の冥魔機が突出し、確かに質量の伴ったシャムシールの一撃を繰り出す。
エーテルによって作りだした分身は単なる虚像では無く攻撃能力をも有するのだ。
さらに一体の冥魔機がシャムシールを振り下ろす。
二刀のシャムシールを両腕の双刃で防ぐアイギス。
精霊機が動きを止めると無数の冥魔機が一斉に襲いかかった。

『男なら最高の死に方をしたいだろう?白い騎士!圧倒的な力の差で落とされれば悔いも残らないはずだ!』

ゴスゴスッ!ガガッ!ギィン!
衝撃と共に見る間に白い装甲に醜い傷跡が刻まれる。
上下左右からの全方位攻撃に精霊銀が飛び散り、輝きを失いながら暗い森へと落ちてゆく。

天空にも深い闇色の森。
渦を巻いた灰色の雲は動きを止め、水鏡の滑らかさとなって地上の森の鏡面世界を創り出す。
その様は別の世界が空から現出し、墜ちてくる錯覚を起こさせた。

256 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/09/27(日) 17:17:34 O
決定リールのレベル越えてリレー小説レベルじゃねーか

257 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/09/27(日) 17:39:56 0
ダメージが明言されてないから問題ないんじゃないの?

258 名前:ルナルド ◆SiFiw1brbM [sage] 投稿日:2009/09/28(月) 03:58:09 0
白光と化し大気を切り裂き疾走するアイギス。
対するシュイダールは湾曲した刃を持つ大剣を掲げ迎撃の構えをとる。
眼下には成長を続ける暗黒の森林。
この戦場に於ける敵のキーパーソンがラム・ダオなのはもはや間違いないだろう。

ならば――ルナルドは思索する。
如何にアイギスが優れた性能を、桁外れの火力を持っていようとラム・ダオには通用しないのだろう。
かつての船上で聞いた言葉、もし彼女を倒したいのであれば其の知識にない全く新しい呪術で、技術で立ち向かって来い。
すでにこの機体はマジンシア大神殿で敗北を喫している。
しかしそれと同時に此処での自身の役割が明確となってくる。
周囲にシュイダール以外の敵は見当たらない。あの黒い精霊機への信頼がそれだけあるということなのだろうか。
シュイダールが居る内は冥魔獣を産み出すといった余計なエネルギーは使わないのではないか。

敵機の目を完全に此方へと向けさせるため左腕のアローで牽制射。
ワンカートリッジ分の精霊弾が超音速でシュイダールへと飛来する。

『死にゆく前に聞くが良い…お前の死神となる男の名を。オレは"砂嵐の月"カムシン――』
朗々と響く声と共にシャムシールを一閃。弾丸を両断する、かに見えたが頭の数初を切り落としただけで残りは装甲へと着弾する。

「なんだ?尊大な台詞の割りに随分間の抜けたヤツだな。」
先ほど考えたことが実はまったくの的外れだったのではないかと渋面になるルナルド。
ふと、以前どこかで受けたような視線を感じるが、そのまま加速しブレードの刃圏へとシュイダールを捉える。

『心配するな、ちびすけ。オレのシュイダールは最強の中の最強。無敵の中の無敵――
――今、それを証明してやる………発動しろ!ゲヘナ・テリトリィー!』
光芒一閃。しかしその斬撃が捉えたのは闇の塊。
裂かれた闇は四散し、周囲に蒔かれた闇の断片と同じ数だけシュイダールがその姿を現す。

幻覚、そう判断しどこかに居るであろう本体へと全神経を集中させようとするルナルド。
突出してきた二体の斬撃を二刀で迎え撃つ。
どちらかが、もしくは両方が見せかけの攻撃と断ずるが双剣へと響く二つの衝撃に体勢を崩される。
その隙へと一斉に斬りかかる無数のシュイダール。

『男なら最高の死に方をしたいだろう?白い騎士!圧倒的な力の差で落とされれば悔いも残らないはずだ!』
アイギスの運動性能と精霊銀の複合装甲に助けられ致命傷こそ無いものの無数の刃に斬り刻まれ、削り取られた装甲の欠片と共に森へと墜ちて行く。

(世界が喰われていく……)
視界には灰色の空、墜ち行くは漆黒の森。その相似した光景による錯覚なのか湧き上がる焦燥感。
(そんなこと許せるかっ!)
全方位からの斬撃により朦朧とする意識の中、スラスターを操作し体勢を回復させ着地出来たのは奇跡か、それとも卓越した操縦技術に拠るものだろうか。
接地の衝撃により意識を取り戻したルナルドはシュイダールを見据えるとキャリバーを引き抜き照準を合わせる。
天へと衝き出されたその砲身から反撃の咆哮が放たれた。

259 名前:カリス・ポツェット ◆M5/Bnz694. [sage] 投稿日:2009/09/28(月) 20:34:41 0
12体の魔装機が王都魔導波タワーに包囲網を敷く。
魔捜局に先行した魔装機部隊だ。
『こちら白羊宮、応答せよ磨羯宮。』
『磨羯宮、こちらからも王都魔導波タワーを確認。頂上に敵影を補足。』
『巨蟹宮 金牛宮も定位置に着いた。いつでも攻撃可能。』
『行くぞ!ゾディアックストリームアタック!』

今しも王都魔導波タワーに迫らんとする操縦者の眼前に、突如として白雨の空間が現出した。
機体の内部から何処からともなく、破裂する水道管の勢いで水が噴き出る。
たまらず操縦者がコクピットのドアを開けると外からも激流が押し寄せ、コクピット内部は瞬時に水没した。

「さて、少し邪魔させてもらうぞ。」
水流で造られた多段滝をボトルが流されてゆく。
カリスの瓶の中には圧縮された異界の液体が数千万立方メートル以上蓄えられている。
微かに白く濁った色を持ち、その味は塩味と甘みの絶妙なバランス。
カリスが空間を操り圧縮した液体の一部を放出したのだ。
何も無い空間から滝の如く噴き出した水流は、魔導波タワーに向かう魔装機たちを激流に呑み込んでいた。
数体の魔装機は洗濯機の中に入り込んだようにグルグル周ったあげくに、地面に叩きつけられ破砕。
別の数体は操縦者ごと陸上で溺れた。

「貴方がた人間は勝利者。ガラスの靴を履けた末の妹。だが靴を履けなかった姉たちにも物語はあるのだ。」
宙から湧き出る白い水は激流のカーテンとなって魔導波タワーの周りを包みこむ。
一度激流の中に入り込めば、侵入者は流れるプールに投げ込んだ浮輪の如く永遠に流され続けるだろう。

「その物語を今から始めようではないか。主役は交代する。君たちの物語は…ここで終幕だ。」

260 名前:エリアス ◆HjQYbfcR9Q [sage] 投稿日:2009/09/28(月) 21:22:24 0
襲いかかってくる植物を粉砕しながら飛ぶ。
「魔導波タワーまで行くのが大変だな……」
そうしていると父上が何かの電波を受信した。
「む? きた!」
「何がきたのだ?」
「水の大精霊アクエリオン……私の契約精霊だ。
一緒に大きな声で呼んでみよう! せーの!」
何だこのノリと思いつつも呼んでみようとする。
が、現れた誰かに口をふさがれた。清涼感あふれる青い髪の少女だった。
さすがラムちゃんの森、何がでてくるか分からない。
「呼んではいけない。過ちを繰り返してはいけない!」
「えーと……誰?」
少女はさらりと爆弾発言をした。
「ボクはキミの姉にあたる。といっても4000年前に死んだが」
「何を言っているのだ。エリアスに姉などいない!!」
わめく父上を放置して少女は語り始めた。
それは歴史の彼方に消え去った、古代文明崩壊の真実だった。
「古代ミルディアス帝国を知っているか? 全世界を支配しながら一夜にして滅び去った古代文明。
その国の軍事力の要となっていたのが精霊機神だった」
「知ってるぞ。ナギ君あこがれの超高度古代文明精霊機」
「そう伝わってるだろう。だが実際は物質界に顕現した精霊そのものだ。
その操縦者、いや、依り代は究極の精霊魔術によって作られる半妖といわれる者達だった。
いわば精霊魔術師とその契約精霊の間に生まれる人と精霊のハーフ。
彼らは魔法生物とみなされ人間扱いされず、やがて戦争の道具としてのみ利用されるようになっていった。
そしてある日、ついに反乱を起こした。ただ人間として扱って欲しいというたった一つの願いのために。
だが栄華を極めた帝国は一夜にして滅亡。反乱軍の一人だったボクもそのさなかで死んだ」
「……」
「そして反乱軍の唯一の生き残りとなった半妖が神聖ミルディアス王国の前身、ミルディアス公国を建国した。
かの有名な精霊皇帝カイザーの子、ミルダント1世だ。
彼は半妖を作り出す魔術を禁忌として未来永劫まで堅く禁じることにした。
だけど4000年の時がたち、その禁忌はついに破られた。
水の大精霊と契約した精霊魔術師によって。そう、キミのお父さんだ……」
暫しの間の後、相手はとても単純な事が言いたいことに気付いた。
「つまり我は精霊機神を呼べるわけだな? いい事を教えてくれてありがとう」
少女は焦り始めた。
「何でそうなる!? 確かにキミが精霊機神を呼び出したらこの場は勝てるかもしれない。
でもそれは決して手を出してはならない破滅の力。人間とは愚かなものだ。
超常の力に目が眩みまた古代帝国と同じ道をたどるだろう。
今ならまだ間に合う、冥魔の女王に降伏するんだ! キミにはボクみたいな思いはさせたくない!」
これで分かった、こいつは不戦勝のために性懲りもなく篭絡しにきたクイーンの手下に違いない。
だけど、少女の表情は演技にしてはあまりにも真に迫っているように見えた――。
「すまない、姉上。それでもやってみるよ。
禁忌がいつか破られるものなら、過去もいつか乗り越えられるもの。それは今!!」
少女に笑いかけ、空に手を掲げる。母の手をつかもうとする幼子のように。
「創世の神の一柱に汝が子アクエリアス=シラートが乞う。
我が身を依り代に降臨せよ……気高き海原の女王アクエリオン!!」
降りてきた精霊力の奔流に飲まれ、何も分からなくなった。

―――――――――――――――――――――――
王都上空で、凄まじい精霊力の渦が巻き起こる。精霊魔術の素養がない者にも見えるほどに。
その中から現れしは、精霊機神“創世の”アクエリオン。
輝く青と白銀の装甲まとう、水を統べる美しき精霊の女王。
それは人間の愚かさを一身に背負わされた殺戮の天使か、未来を切り開く人と精霊の絆の証か――

261 名前:ラム・ダオ ◆MeEEeH/kao [sage] 投稿日:2009/09/28(月) 22:24:06 0
王とは太古の森に沈み、その中心で突出した魔道波タワーはそそり立つ神木となる。
その頂点で神木と融合したラム・ダオは遥か上空を見上げていた。
ゆっくりとその身を沈め地上に降りつつある漆黒の森。
ル・ルリエー。
四隅にクリスタルを抱き、その中央に最後のクリスタルを迎え入れようと大きく穴を穿つている。

自分を受け入れるル・ルイエーを見つめながらラム・ダオは無防備だった。
全能力を魔道波タワーの取り込みと融合に傾けているから。
その姿は既に神木と言えど、未だ芯は犯しきれておらず、最後のクリスタルを固守している。

その最中、ラム・ダオの周囲では苛烈なる戦いが繰り広げられる。
白と黒の精霊機が火花を散らし、包囲網を敷いた魔装機部隊がカリスの濁流によって落とされる。
激流のベールに守られるなか、王都各所でも爆発や戦いの音が響き渡っていた。

その濁流の中でも【それ】は明確に感じられる。
顕れし精霊機神“創世の”アクエリオンの存在が。
その力に呼応するかのように神木が揺れる。
この激戦の最中微動だにしなかった巨大な神木が。

ホメオツリーは有史以前からの全ての歴史を、そして進化の道筋を現す神木。
当然4000年前の記憶もその枝に記されている。
根を期限とするならば揺れたのは4000年前。
比較的高い位置にある枝と言えるだろう。
その枝の先端・・・即ち代ミルディアス帝国の終焉を記す場所に大きな実が成る。
それは記憶の果実。
果実にはアクエリオンのデータが記されていた。

正式名称:精霊機神"創世の"アクエリオン
機体概要:物質界に顕現した精霊そのもの。 大きさは適当に可変。
攻撃武装:アイスソード(氷の魔力剣)/ハイドロポンプ(巨大な魔導砲)
防御武装:モイスチャーヴェール (あらゆる攻撃を防ぐ水の膜)
動力機関:エネループ(精霊機神とその依り代が合わさると精霊力を無限に生成する謎の機構)
特殊武装:エターナルフォースブリザード(対象を瞬間氷結させ粉砕する。相手は死ぬ)

果実は潰れ蒸発し、王都の全冥魔獣へと運ばれる。
現れた恐るべき敵を知らせる為に。


262 名前:ラム・ダオ ◆MeEEeH/kao [sage] 投稿日:2009/09/28(月) 22:25:09 0
#################################

太古の密林と貸した王都の各所で戦いは続く。
植物群を焼き払い、なぎ倒す戦士たち。
巨大な蝿取り草が騎士を串刺しにし、ウツボカズラの溶液が精霊機を溶解させる。

そんな戦場の一角。
エニーシャの前に一体の旧世界の支配者が立ちはだかる。
それはイソギンチャクのような異形だった。
イソギンチャクと違うところは触手部分が人型の手であり、中央に巨大な目が一つ鎮座している。
「それは王威の祭剣・・・!百の石塔に隠されし生贄を立つ禍の剣!」
エニーシャの持つ長剣ラム・ダオを見るや、襲い掛かってきていた100の手が一斉に退く。
まるで恐れるかのようにジリジリと後ろに下がっている。
これはそれだけではなかった。
「何故まだこんなところに?」
「終焉を与えし力の象徴!」
「流れを断ち切る恐るべき刃!」
全方向から聞こえる囁きは、森そのものの声だった。
畏れ慄くような声と共にエニーシャの回りから旧世界の支配者が森の木々があとずさっていく。

「駄目だ!行かせるな!」
「審判を下させるな!」
うねりのような声がエニーシャを包むが、それでもエニーシャの周囲に近寄れるものはいない。
やがては密林の中、ポッカリとドーナッツのように周囲が開けてしまう。
しかし・・・近寄れずとも森の抵抗は確かにあった。
エニーシャの視界が白く霞むのは花粉を飛ばし間接的に攻撃をしようというのだった。
斬れもしない顆粒の攻撃。
霧のように立ち込める花粉の中、エニーシャの脳内に声が響く。
『あなたの手にしているものは何!?斬り開き進め!!』と。

263 名前:エニーシャ ◆IZh0JJtPKA [sage] 投稿日:2009/09/29(火) 04:33:01 P
都の各所で起こる戦いの中――エニーシャは、“森”に圧されていた。
「……っ」
伸び来る木の枝に右腕を強打され、手から離れた剣が弧を描く。
痛みと悔恨に表情を歪める。
向こうの次撃は既に準備されており、拾う時間は無かった。


森の侵食が始まった時、エニーシャはタワーに繋がる大通りにて哨戒任務にあたっていた。
道を封鎖して主を守り、人の命を奪わんとする旧世界の木々。
増殖のスピードは、彼女が斬り捨てるスピードを遥かに上回っていた。
やがて仲間とは離され、足場はせばまり、剣を握る握力は次第に失われ――今の窮状である。


…一か八か。彼女は使いこなせないことを承知で背の長剣を引き抜いた。
――その時。森がざわめいた。…自分を中心に後退している?
『それは王威の祭剣・・・!』
木々の間から磯巾着のような植物が歩みでる。
思わず牽制に剣を一振りした瞬間、ざわめきはさらに大きくなった。
「森が…恐怖を…?」
だが――不本意ながら、恐怖を抱いたのはそう呟いたエニーシャもまた同じだった。
森の言葉が苛烈な色を帯びていくのだ。
彼女は理解した。恐怖は批判へ、批判は排斥へ――先程までは無い、鬼気迫った敵意が全方位から体を貫いていることを。
体の芯が冷たくなる――動けない。

不意に。周囲の空間が押し狭められる。
――否、周囲の木々から溢れた白い粉塵が彼女に迫る。
それが命を繋ぐ本来の意義を失い、むしろ奪うための存在であることは想像に難く無い。
咄嗟に呼吸を止めて身を伏せるも、それは動揺のためか一瞬遅れた行動だった。
僅かに吸い込んだ花粉に肺を焼くような痛みを感じ、たまらず咳が出る――それは悪循環の始まり。
数度咳き込めば、最早どこの粘膜を損傷したのか分からない程の苦痛にさいなまれていた。

…“終わり”なのだろうか?

朦朧とする意識に、そんな疑問が浮かぶ。
終われない。終われるはずがない。
その言葉が意識を埋め尽くす。

そして現実から乖離を始めた意識に、あの剣の精霊の声が響く。
立て――道を開け、と。
それには力が足りない。彼女一人では――

(……精霊様)
『遅かったわね、落第点さん』
不透明な笑みを浮かべた剣の精が、闇の中に浮かんでいるのが見えた。


264 名前:エニーシャ ◆IZh0JJtPKA [sage] 投稿日:2009/09/29(火) 04:38:37 P
(――力をお貸し下さい)

闇に浮かぶ精霊に語りかける。
こちらの状況を知らぬわけでもないだろうに、精霊はしれっとした面持ちで問いを投げ掛ける。

『何のために?』
(故郷を守るために)
『どうして?』
(ミルダンディア、そしてこの世界を愛すが故に)
『何を失っても?』
(その時は、一生を贖罪に捧げます)
『何を失わせても?』
(彼らの故郷を奪うことになるのは、承知しております――それは一生、忘れない)
『随分傲慢になったわね』
(それでも…譲れません)

答えは、自分でも奇妙に思う程にすらすらと浮かんできた。
精霊の瞳に、からかうような光が宿る。
『負債だらけの人生だこと』
(…。慣れておりますので)
『無理しちゃって。
…まあ。及第点を割りまではしていないわ』
精霊は面白そうに笑み、軽く手を叩いて歩み寄ってくる。
『覚悟させた私が言うのも何だけど――もう少し気楽に生きなさいな』
(……?)
『真面目すぎる人間を相手にするのは疲れるの』
(は、はい)
精霊の手に握られていたのは、見覚えのある一振りの長剣。
いつの間にか、吸い付くようにエニーシャの首筋にあてられている。
呆気にとられる、そのうちに――

『長い付き合いになる相手なら、特に…ね?』

その言葉と共に、胸にじわじわと熱を感じ出す。
この感覚は――知っている。
『貴女と契約してあげる。望む通り、審判を下してらっしゃい。
力は、相応の意思と対価の元にのみ――』

刹那、体に現実感が戻ってくる。
精霊の姿は最早見えず、声も聞こえない。
だが握る剣の中には確かな存在を感じた。

意識を失っていたのはどれくらいの間だろう?
変わらず続く花粉により、呪文は唱えられそうにない。
――だが、問題無い。
握る剣に銀色の輝きが宿っていく。
共に在る意思さえあれば――言葉など、いらない。


265 名前:エニーシャ ◆IZh0JJtPKA [sage] 投稿日:2009/09/29(火) 04:43:22 P
* * *

「けほ…っ」
顔を拭い、咳き込みながらも身を起こす。
花粉は治まっていた。幸い、呼吸器系の深刻な障害が出る前に危機は脱したようだ。
銀光が収まった時、状況は一変していた。
彼女の周囲、大通りに繁茂していた植物の多くは、人の頭よりやや上の部分でごっそりとその身を失っていた。
その断面は、鋭利な刃物によるものに見える。
比較的近くにいた隊員たちの様子を見ると、やはりというかなんというか、放心状態である。
だが流石に我に返るのも早い。すぐさま植物への攻撃、前進が再開される。
大きな損傷を受けた森は、明らかに再生速度の低下を見せていた。

「…成功したようだな」
光を失った剣をだらりと提げ、呟く。
小刻みに肩を震わせ、片目を押さえ――泣き笑いのような表情を浮かべて。

「…当たり前といえば当たり前、か」
破壊の瞬間、聞こえてしまったのだ。森の悲鳴――旧い旧い故郷の嘆きが。

剣の精と契約を結んだ上、深く同調した状態にまで持っていけたのは幸いだった。
だが、いかなる事情があるかは知らないが、名が表す通りに彼女は森の苗床でもあるのだ。
同調すれば、それは当然聞こえてしまうべき声だった。
「……ええ。大丈夫です」

言い聞かせるような言葉は、しかし本心とかけはなれたものでもなく。
「私の故郷は森ではない…このミルダンディアですから。
精霊と人が共にあり、予測のつかない変化を生み出すこの世界は、本当に歪で美しい。
必ずや、守り抜いてみせます――何に代えても」

道を塞ぐ植物を牽制するように剣をかざし、立ち上がる。
視界が開けたおかげで、ルナルドとエリアス――こちらは本人か若干自信が無いが――の現在の状況もだいたい把握できた。
「頼んだ…二人とも」
タワーへの道が拓けるまで持ちこたえること――それがまず第一の任務だった。



266 名前:混沌たるジュリエット ◆OCiexBIRJ6 [sage] 投稿日:2009/09/29(火) 22:24:10 0
アイギスの砲身が紫電に輝き、轟きを上げる。それは戦神の咆哮。
内部に千の光の精霊を閉じ込めた精霊弾は砲身から放れると唸りを上げてシュイダールに迫った。
太陽を擬した輝きが黒い冥魔機の分影を次々と白光に溶かしてゆく。
『させるかぁ!受けるがいい、死神からの愛の告白!メス・アイン・ハラア!』

シュイダールの胸の装甲が開き、露わとなるのは眼を模した不気味な文様。
直接装甲に嵌め込まれた紅玉の如き瞳はカッと不吉な赤い閃光を発した。
それは触れたもの全てのエーテルを奪い、吸収する邪視眼。

白と赤の衝突。
空に巨大な火花が生まれ、再現された太古の森に偽りの朝をもたらす。
生まれた光は、あらゆる影を…否、光の中に居る者全ての意識をも呑みこんでゆく。
その瞬間、光に呑まれた者の意識が捉えた光景は無限に広がる海。
いや―――――小宇宙。

『何が起きた…ここはどこだ!くっ…まさか邪視眼が暴走したのか!?』
「これは…女王様の造る空間に似ていましゅわ…?」
いつの間にか光に呑まれた者は裸で星の様な輝きが散りばめられた空間に浮かんでいる。

《是は汝らの意識の中にして我の意識の中なり》
「誰でちゅか!名乗りなしゃい?」

どこからか懐かしい声が脳に直接響く。
周囲に煌めく無数の光は集まると人型のシルエットを象り全員の意識に思念で語りかけた。
《我は汝らがエーテルと呼ぶものなり ここは生者の愛も憎しみも死者の記憶もが集まるエーテルの海》
「エーテルの…海?」
《汝ら定命のものは死んだ後エーテルの海に沈み そしてやがては別の生を体験するべく次の肉体を得る》
《個々の成長と変化が全体の進化を促すゆえに しかし我ら無限の生命はただ同一の存在が永遠にある》
《定命の生命たる汝らは我ら無限の生命には持てぬものが生み出せる そう命の源たるエーテルを》
《エーテルとは気であり活力であり精神 命そのものであり精霊が物質界に存在するには不可欠のもの》
《だがそれゆえに利用され易い 自らはエーテルを生み出せぬ無限生命体によって》
《精霊皇帝カイザー然り 夢の大精霊クイーン然り 森の大精霊ホメオツリー然り》
「女王様が…精霊?何を馬鹿な事を言ってるのでしゅか!」

《エーテルの海と物質界の間に精霊界が創られたがためにこの世界は強い精霊力で繁栄を迎えた》
《だが今 精霊界は物質界に近づき過ぎ そして強い精霊力の放出はさらに二つの世界を近づける》
《二つの世界の衝突は二つの世界の滅亡を意味する 守護者たちよ世界の均衡を守るのだ》

覚醒は唐突に訪れる。気が付けば一瞬にして元の森。
「今のは…今の話が本当なら以前のわたくちは…いえ冥魔全ては夢を素材に創られたもの…。」

空に吹きすさぶ風が冥魔の声を吹き飛ばす。
『ちびすけ、何をボーッとしてるんだ?。破壊と破壊、精霊と冥魔がぶつかり合う最高のステージで。』

267 名前:混沌たるジュリエット ◆OCiexBIRJ6 [sage] 投稿日:2009/09/29(火) 22:28:04 0
シュイダールが根の這う大地に着地する。
天の鳴動。見上げれば森を押し潰すような圧倒的な精霊力。
『くっ…このエレメンタルフォース!レェウギアの十三使徒に匹敵するか…!』

魔導波タワーを利用した思念波によって、シュイダールに新手の精霊機のデータが届く。
「水の…精霊機神。」
『ほう、かの水の創世機神ならば相手にとって不足は無い。その青をシュイダールの黒が塗り潰す!』

木立を縫って一陣の黒風が駆ける。
目の前には白。共に墜ちた精霊機アイギス。
『ほう、オレの邪視眼を見て生きていたのは、お前が初めてだ………これを喰らって生きていられればな!』

シュイダールの肩から煙が上がる。
煙の中から現れた黒い弾丸は蛇の軌跡を描いてアイギスを追尾し、着弾点で爆音を響かせた。
白煙が視界を遮る。
『オレは全てを呑みこむ砂漠の砂嵐。風を捉える事などできまい!』
シュイダールは背後。
雷速の湾曲刀の閃きがアイギスの両足を刎ね飛ばす。
『惜しかったな…白い騎士。十度戦えば、一度ぐらいはオレに勝てたかもしれないがな…。」

―――白騎士が傾ぐ。

268 名前:ルナルド ◆SiFiw1brbM [sage] 投稿日:2009/09/30(水) 03:34:33 0
破壊を生み出す喜悦の声か、それとも開放を望む怨嗟の呻きなのか、放たれた精霊弾は軋んだ唸りをあげ冥魔機の虚像を食い破り突き進む。
だが現存するいかなる装甲をも貫くだけの運動エネルギーを持った魔弾はシュイダールの放った朱の光によって絡めとられる。
すべてのエーテルを略奪する邪視眼の魔光。
それによって精霊力を奪われた弾丸ではいかなる速度を持っていようとも機体の周囲に展開される力場を貫くことは出来ない。

それだけに留まらず魔眼は射線上に居たアイギスにもその効果を発揮していた。
出力の大幅低下。
空と大地という彼我の距離のおかげかエンジンの完全停止こそ起こりはしなかったが駆動力たるエーテルを奪われ、アイギスは最大の武器ともいえる運動性を失っていた。

『ほう、オレの邪視眼を見て生きていたのは、お前が初めてだ………これを喰らって生きていられればな!』
眼前には颶風の勢いで迫るシュイダール。
ルナルドも回避行動をとるが放たれた追尾弾が無駄な努力だとあざ笑うかのように無慈悲に追い立てる。
かろうじて巨木の陰へと機体を割り込ませ弾頭へとアローを連射する。

爆音――至近距離での爆発に吹き飛ばされるアイギス。
残っていた精霊力も尽き搭乗席も次第に暗闇に支配される。

しかし完全な闇へと沈んでいく最中、荘厳たる威圧感を伴い遥か天空にそれは顕れた。
白と蒼の精霊機神、"創生の"アクエリオン。

無論ルナルドは見たことは無い。しかしこの世界に生まれた生物であるならば判る。
遺伝子に刻まれた全ての生命の母の記憶。
滂沱と頬に伝うのは涙。
戦場の只中だというのに迫り来る敵も忘れその姿を仰ぎ見ていた。

269 名前:ルナルド ◆SiFiw1brbM [sage] 投稿日:2009/09/30(水) 04:38:00 0
(あの爆発からどれだけたった?)
時間にすればほんの数秒、しかし途方も無い年月を経たような感じをルナルドは覚えていた。
違和感はそれだけではなかった。
完全に停止していたはずの機体だが搭乗席には光が戻り、エンジンは再動し、制御盤に映る精霊力数は正常値を遥かに超える数字を示していた。

「どういうことだ?」
精霊機神が供え持つ精霊力を無限に供給する動力機関"エネループ"。
それによりもたらされた奇跡であるのだがルナルドは知らない。

「なんにせよ……まだ戦えるってことか。」
回復したレーダーで敵の位置を把握しようとしたその時、ぞくりとルナルドの背中に冷たいものが滲む。

『オレは全てを呑みこむ砂漠の砂嵐。風を捉える事などできまい!』
レーダーの指し示す光点は背後。
距離を取ろうとするも光の速度で閃いた斬撃に脚部を両断されるアイギス。

『惜しかったな…白い騎士。十度戦えば、一度ぐらいはオレに勝てたかもしれないがな…。」
前進しようとした勢いそのままに大地へと傾いていく。

「その一度を……今っ、掴むんだよ!!」
全推進力を点火させ一気に空へと翔け上がると体勢を建て直し、空中でシェイダールへと正対する。
再装填を終えているキャリバーを構え、シェイダールの足元へと発砲。
当てるつもりはない。
狙い通り足元への着弾を確認する。

「エリアス嬢ちゃんの邪魔はさせん、もう少し俺に付き合ってもらうぜ?」
確認したわけではないが確信はあった。
この局面であれだけのことをしでかすのはエリアスしかいない。信頼ともいえるのかもしれない。
カムシンへの宣言を終えるとルナルドはキャリバーを収めアイギスの両腕を悠然と広げる。
その両の掌を基点とし眩い輝きを放つ純白の力場が展開された。

270 名前:ルナルド ◆SiFiw1brbM [sage] 投稿日:2009/09/30(水) 05:13:24 0
アイギスに搭載されている特殊兵装インビシブルフィールド。
精霊機に搭載されている精霊力フィールドを凌駕する出力と防御力を有する最強のバリア。
王の剣にして盾たるロイヤルナイツ専用機のみに搭載を許された機能である。

搭乗者の精霊力を増幅、発動させるため生半可な精霊力では使用することは不可能。
最初はルナルドも当然のように使用不可の表示が示された。
だが今は違う。
場に精霊機神が存在し無限の精霊力が供給される今なら発動することができる。

しかし、ルナルドがインビシブルフィールドを発動させたのは剥ぎ取られた装甲の代わりに使うからではない。
このバリアは盾であると同時に剣でもある。

「カムシンと言ったか?さっきは無様を晒して済まなかったな。
お詫びと言っちゃ何だが今から精霊機の乗り方ってやつを教えてやるよ!」
バリアを纏ったまま急加速、複雑な空中機動を描きシェイダールへと突進する。

縦横無人に突撃を繰り返し、そのつどシュイダールの装甲をバリアが削っていく。
装甲分のデッドウェイトが無くなり機体本来の速度を発揮する。
一筋の光弾と化したアイギスは一際高く舞い上がりバレルロールを行いながらシェイダールへと疾走した。

271 名前:名無しになりきれ[] 投稿日:2009/09/30(水) 13:12:10 0
そこでバレルロールはないわ

272 名前:カリス・ポツェット ◆M5/Bnz694. [sage] 投稿日:2009/09/30(水) 19:57:36 0
光が森を塗り潰す中、カリスの脳裏に古代ミルディアス帝国最後の日の映像が浮かぶ。

砲撃。大気が悲鳴を上げる度に仲間が一人、また一人と大地の抱擁を受ける。
僅か百にも満たない半妖たちの起こした反乱は帝国の圧倒的な軍事力の前に
セランカ大山脈の寒村マジンシアまで追い詰められていた。
「やっぱり無謀な反乱だったんだミルダント…もう降伏しよう。
これ以上、抵抗を続ければ帝国はこのまま村ごと破壊してしまうつもりだ。」
『自由は掴めぬ遠い夢だった…か。――聞いているか!皇帝ヴ・シュ!我々は降伏する!』

武装解除して、投降する反乱軍たち。
皇帝は後ろ手に縛られ囚われた半妖たちを睥睨する。
「帝国は決してテロを許さない。お前たちの裁きは神が下そう。
この聖剣ラグナ・フラタニティで斬られても生きていられたら、斬られた奴は無実だったのだろう。
無論、死んだら有罪だ。匿った村人たちも同罪故に聖剣の裁きを受けてもらう。」

『な…に!首謀者は私だ!村人は何の関係もない!』
『テロに加担するものもテロリストだ。まずは貴様から死んでもらおうか。』
皇帝が剣を一振りする。

「危ないミルダント!逃げて…貴方は生きて…自由を掴んで…!」
背に侵入する異物の感触。
倒れる直前、大地から天へ向けて噴き出す間欠泉の如き光の轟流で視界が塞がった。
ミルダントの姿に輝く精霊機が重なる。
その日…光の爆発にセランカ大山脈は崩れて消え去った。僅かな島々の残骸を残して。

* * *

訪れる覚醒。
「今のは…魂がボクの中から飛び出ていたような感覚だ。
もしかしたら本当に飛び出ていたかもしれない。」

空から高周波と低周波が入り混じった異音が森に響く。
ラム・ダオが果実を潰した際に発した微細な電流が信号となって新たな敵の情報を伝える。

「精霊機神。かつてミルディアス帝国を滅ぼし、今また破滅を齎すもの。」
海の青と砕ける波の銀を纏わせて魔導波タワーに向かうアクエリオン。
カリスは湖にも匹敵する膨大な水量の液体を亜空間内で線のレベルにまで凝縮。
鋼鉄をも貫く水のレーザーと化した白の液体がアクエリオンを襲う!
「だが、同じ水の属性ならボクは負けない。このポカリスこそ至高の液体なのだ。」

273 名前:エリアス ◆HjQYbfcR9Q [sage] 投稿日:2009/10/01(木) 00:29:31 0
>266
エーテルの海から覚めてみると精霊力の奔流の中。
「母上……か?」
『そうだよ。よく呼んでくれたね』
「一体どうすれば……!?」
『迷う事はない。一緒に王都魔導波タワーまでの道を切り開こう!』
さっきまでは当然そう思っていた。
エーテルと名乗る存在に衝撃の事実を告げられた今となってはどうしていいか分からない。
「分かりません、校長先生! どうして二つの世界の均衡は崩れた?」
『要らん事を聞いちゃったか。長いから一回しか言わないよ。
森の大精霊ホメオツリーが一人の少女を選んだのが始まりだった。
本来ホメオツリーとは世界の均衡を保つ存在。世界の中心にそびえ立つ生命の樹。
でも森の大精霊は、ある時とある少女と永遠を共にする事を願ってしまったんだ。
絶えず循環するべき定命の者の魂を呪縛する事は決して侵してはならない禁忌だった。
その結果、少女は悠久に捕らわれの身となり、森の大精霊は本来の姿を忘れ……
やがて意識までも同化して互いの区別もつかなくなっていった。
そして今世界を食らう化け物になろうとしている……。
一応クイーンと組んでるみたいだけど……賢者の石を取り込んでしまったらどうなるか分からない』
「そんな……」
『大丈夫、勝算はある。エニーシャが持っている剣だよ。
今はラム・ダオって呼ばれてるみたいだけど正体はラグナ・フラタニティ……人間と精霊を分離する力を持つ王威の祭剣!
あれならホメオツリーとラム・ダオを分離できるかもしれない!』
「それって……有名な血塗られた魔剣じゃないか!」
『それもまた事実……なぜなら超常の回復力を持つ半妖を殺すほぼ唯一の手段だから』
「……」
暫しの沈黙の後。

「そんな……我の超常の回復力はギャグキャラ補正じゃなかったのかあああああ!!」
『ツッコミどころ違うわあああああああ!!』
激しく叫びながら合体完了。
水の中に浮かんでいるような、それでいて五感を母たる精霊機神と完全に共有している不思議な感覚。
右手には壮麗なる氷の剣。左手には巨大な魔導砲。
「ねんがんの アイスソードを てにいれた!」
そんな気合の掛け声とともに、上空から一直線に魔導波タワー目指して飛ぶ。

>272
魔導波タワーを覆うのは謎の激流のカーテン。なんだあれは。
『来るよ!』
「な、なにをする きさまー!」
白い液体のレーザーが飛んでくる。さてはカルピスか!
「エターナルフォースブリザード!!」
『いきなり特殊武装かい!』
白い液体は想像を絶する膨大な量の透明な氷になって砕け散る!
「な!? カルピスじゃない! ……何者だ?」
>「だが、同じ水の属性ならボクは負けない。このポカリスこそ至高の液体なのだ。」
それは、ボトルに入った小さな少女だった。
どうしてだろう、親近感のような因縁のようななんともいえない気持ちになる。

――――――――――――――――――――――
「リオン……エリアス……頼んだぞ!」
カイ君は上空を一度だけみてから、タイタンに乗って走り始める。

>265
器用に後ろ脚で立ってタイタンに乗ったカイ君が飛んできた。
「乗れ、エニーシャ殿! 必ずや貴方を大尉のもとまでお連れする!
森の大精霊とラム殿は心の奥底の願いをその剣にこめて託したんだ……。
ラム殿を永き呪縛から解き放てるのは貴方しかいない!」

274 名前:混沌たるジュリエット ◆OCiexBIRJ6 [sage] 投稿日:2009/10/01(木) 00:48:32 0
傾いだアイギスは、しかし倒れなかった。
腰から下を失いながらも宙に浮かぶ姿からは、なお強い戦意を発している事が伺える。
『所詮、足など飾りということか…!』

ゴッ!
アイギスの砲身の僅かな動きにカムシンは攻撃を感知し、シュイダールを跳躍させて攻撃を躱す。
精霊弾が爆音を響かせて地面を抉る頃には、黒の騎士はすでに樹上。
だが、キャリバーからの一撃は最初から土砂を巻き上げるのが目的かのように冥魔機を粉塵の柱に包んだ。
『目晦ましか…小賢しい!』

掌に汗が滲む。
戦場に満ちる尋常では無い精霊力…これは一体!?

『カムシンと言ったか?さっきは無様を晒して済まなかったな。
お詫びと言っちゃ何だが今から精霊機の乗り方ってやつを教えてやるよ!』

アイギスが舞う。高速…いや、光速で。
周囲に燦々と光る精霊機の残像が増えてゆく。
『このオレの眼ですら捉えられない…だと!まさか無影陣か!?』
「かむちん!自分設定はいい加減にしなしゃい!」

光の波動を纏うアイギスが迫る。
刹那、シュイダールが絶影の動きで消えた。
神速の回避。
しかし―――しかしである。
シュイダールが如何に速くとも、それよりも速いものが存在すれば動きを捉えられる。
黒騎士のシャムシールが一度閃く間に白騎士は二度の攻撃を掛ける。
アイギスの絶影を超える速度は闇の鎧を削り取り、シュイダールの動力炉をむき出しとする。
そこに正面から光弾と化したアイギスが一際高く舞い上がりバレルロール!

『自殺する気か!白い騎士!ならば全ての光を呑みこむシャイターン・レヴに心まで呑まれるがいい!』
自らを光の弾丸とした精霊機が黒の冥魔機を突き破る。
一瞬の後、シュイダールがあった空間に闇が散って砕けた。
舞い散る残骸が光の波動に溶ける。
後には、何も残らない。
ただ黒い風が吹くだけ。

275 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/10/02(金) 00:37:16 0
ちょっと戦闘引き伸ばしすぎじゃないの?

276 名前:カリス・ポツェット ◆M5/Bnz694. [sage] 投稿日:2009/10/02(金) 18:49:31 0
アクエリオンを前に懐かしいような懐かしくないような不思議な感覚がカリスの心に湧きあがる。
まるで遠い昔に会った事がある様な…。
「そんなはずは無い。ボクは初めて見るはず…だ。」

水の精霊機神に放った至高の液体ポカリスは氷結し、粉砕され、森に銀氷の涙を降らせていた。
「エターナルフォースブリザード。これ程の攻撃力の源は一つしか無い…アークエリアス・ゼロ。」
精霊機神の動力機関はボクも造り出せなかった究極の液体で満たされていたのか。」

絶対零度の凍気が迫る前に濁流のカーテンを亜空間を通し瓶の中に引き戻す。
「残念だが液体の勝負ではボクの負けのようだ。だが、まだ終わっていない。
女王様に創られたボクは死ぬまで女王様のために戦うまでだ。」

『カリス…我が娘よ、思い出しなさい!』
精霊機神から響く強烈な、しかしどこか優しい波動が冥魔の瓶を震わせた。
瓶の中のポカリスが声に反応して共震する。

「くっ…ボクを娘だと…。ボクは冥魔の女王につくられた…。
だが、このザラっとした感覚は…何だ…。」
大きく首を振り、息を吐く。心が揺さぶられる。
どうすべきなのかを決めかねる。このまま水の精霊機神と戦うべきか?
しかし圧倒的な液体力の差。表面張力でも浸透圧でもカロリーでも売上でも勝ち目は薄いだろう。

『非行はいい加減にしろ! お前をそんな子に育てた覚えは無い!』
白い犬が現れる。エニ―シャを連れて森を抜けたカイ君の叫び。
『カリス、お前は私と母さんの子だ! エリアスの姉でもある。
お前は私から受け継いだシラ―ト一族の力に目を付けられ、冥魔に転生させられたのだ!
だが、もう私も母さんも怒ってないから帰ってこい!』

白い犬を目にした瞬間、幼い頃の記憶が蘇る。父への憧憬。母への思慕。温かい毛皮。
「スミマセンデシタ。オトウサン。」
反射的に声も出ようというものだ。

『待ちなさい、カリスは私の子よ!親権もこちらにあるわ!』
半透明なクイーンの映像が空間に現れ、カリスの心にさらに波を立てる。
クイーンの抗議にお父さんが解決策を示す。

『ならば、クイーンとアクエリオンでカリスを引っ張るのだ。
より強い力で引っ張り込んだ方の愛が強い!すなわち本当の母親だ!』

277 名前:エリアス ◆HjQYbfcR9Q [sage] 投稿日:2009/10/03(土) 14:16:20 0
>276
父上が前世の記憶らしきものを思い出しちゃってる――!
前世でも母上は父上の契約精霊で、前世でも父上は犬になったらしい。
もしかしたら生まれ変わるたびに結ばれているのかもしれない。

>『ならば、クイーンとアクエリオンでカリスを引っ張るのだ。
より強い力で引っ張り込んだ方の愛が強い!すなわち本当の母親だ!』
「分かった!! 必ず連れ戻す!」
両手の武装を解除し、瓶を鷲掴みにする。
「渡さないわ! カリス、あなたは異界に帰って再教育よ!」
遥か上空のモズクから伸びてきた漆黒の触手が瓶に絡みつく。
『「今乗り換えればカイ君のしゃべるスリッパプレゼントおおお!!」』
「おまけでつろうったってムダよ!」
想像を絶する引っ張り合いが始まった。
……これって傍から見るとかなりシュールじゃないか? とは言わないでおく。
「大体娘って言ってもお前にとっては手下でしかないだろう!」
「心外ね。いいでしょう、教えてあげましょう」
クイーンは静かに語り始めた。
「……選択と分岐を繰り返しながら歴史は進む。
1万2000年前、人類は無限の可能性を与えられた。
でも無限の可能性を得るという事は、切り落とされる可能性も無数に増えることなの」
「切り落とされる可能性!?」
「そう。手の届かない望み、叶わなかった願い、実現されなかった無数の未来……
私はそういった想いの欠片達を外界で形にしていった」
そこで衝撃の事実に思い至る。
「まさか……あなたが作ろうとしている世界は……願った事が全てがかなう夢の世界!?
美しき箱庭の中での永遠の平和……
全ての苦しみから解き放たれた世界……そういうことだったのか!」
――ピシッ
不吉な音がする。見れば、決して壊れないはずの瓶にひびが入っている。
「くっ……クイーンに渡すぐらいなら……!」
が、その決意とは裏腹に、瓶を掴んだ手が離れる。母上が拒否しているのだ。
『夢の大精霊よ、娘をよろしくお願いします』
「目を覚ませ母上! たとえ死んでもエーテルの海に帰ってまたいつか生まれ変われる!
でも向こうに渡したら永遠にクイーンに捕らわれたままだ!」
『すまないエリアス、私にはできない』
内輪で言い争っている間にも瓶はモズクにぐるぐる巻きにされ、遠ざかっていく。
「姉上―――!!」

278 名前:エリアス ◆HjQYbfcR9Q [sage] 投稿日:2009/10/03(土) 14:20:07 0
必死の叫びもむなしく姉上はモズクに引っ張り込まれ……なかった。
モズクから驚くべき思念が伝わってくる。
《……女王サマ、かりすヲ返シテアゲマショウ》
「「「な、なんだってー!?」」」
あまりの展開に驚愕する一同に、父上が適切な解説を入れる。
「ル・ルリエーに捕らわれた4つのクリスタルは、戦場に渦巻く多量の感情エネルギーを取り込んでいた。
決意も勇気も……憎しみも恐怖も全て……夢の産物には決して手の届かない生命の輝きだ。
そこにリオンの母の愛が決め手となったのだ!」
積み上げてきた計画の最後の詰めを誤ったことを悟ったクイーンの、嘆きの叫びが響く。
「洗脳するはずのクリスタルに洗脳されたなんて……とんだ誤算だったわ!!
あ……あははははは!! 願った事全てが叶う夢の世界……最初から叶わぬ夢だったのね」
「クイーン……」
外界で、世界に見捨てられた想いの欠片達にずっと手を差し伸べてきた夢の大精霊。
今となっては、悲劇の女王に見えた。
しかし、彼女の肩に優しく置かれる手があった。
「英雄王!! どうしてここに!? 
というより世界の危機だというのに今まで何してたッ!?」
それは、精霊皇帝の末裔、英雄王ミルダント16世。彼は傷心のクイーンに優しく微笑みかけた。
「クイーン、もう喧嘩はやめよう……帰って来い。夢は現実があってこそ存在できるものだ」
「カイザー……私の負けね」
どうやらミルダント16世には精霊皇帝カイザー本人が乗り移っているらしい。
カイザーは願ってもない事を告げた。
「しかし実現する夢もある。その証明に君の娘を物質界に再構成しよう」
クイーンは、迷いの無い顔で頷いた。そして高らかに宣言する。
「娘よ、永き夢から覚める時が来た。もう一度生きなさい! 
新たな仲間たちと共に未来を掴みなさい!」
姉上が入っている瓶が、終わらない夢に閉じ込めていた殻が砕け散る――。
眩い光に、視界がホワイトアウトする。
やがて光の中から現れたのは、人間と変わらない姿をした一人の少女。

279 名前:ラム・ダオ ◆MeEEeH/kao [sage] 投稿日:2009/10/03(土) 22:39:00 0
クイーンとカイザーの邂逅。
そしてカリスの転生再構築。
それぞれの世界の頂点に立つもの同士のそれはそべての戦いに終止符を打つものであった。
・・・筈・・・だった。
だが、王都を覆う空気は変らず、上空のル・ルイエーは最早神木と化した魔道波タワーに届きそうなほど沈んできている。

『・・・ザ・・・・』
それは全ての人々、冥魔の脳に直接響く。
まるでノイズのような音は徐々に一つに纏まり、柔らかな声となる。
『残念だわ・・・クイーン・・・私は世界を反転させあなたたちの世界になりたかった・・・
でも・・・所詮夢は眠りの中でしか存在できぬ儚きものだったのね・・・。』
その声の主を誰もが知っていた。
魔法波タワーと、神木ホメオツリーと同化しているドルイド、ラム・ダオの声だと。

王都の中心にそり立つ神木に目をやった者は見るであろう。
激流の幕がいとも容易く霧散し、消え去る様を。
今まで半トランス状態で上空を見上げていたままだったラム・ダオが己を睥睨している様を。
『夢から覚めたのであれば最早あなたは不要・・・。
全ての世界を原初へと還しましょう!!』
荘厳たる宣言は世界の破滅だった。
夢の大精霊のクイーンが夢を諦めた事により、ラム・ダオと森の大精霊ホメオツリーは完全に同化。
水の大精霊の予想した通り、世界を喰らう化け物と化したのだ。
それが実行できるだけの力を携えて。

「本気でそれが出来るとでも?私たちを前に?」
クイーンの肩を抱きながら精霊皇帝カイザーがホメオツリーを睨みつけるが、その表情はすぐに凍りつく事になる。
樹皮からせり出したラム・ダオのかざす手に握られているモノを目にしてしまったから。
それはエーテルのクリスタル!
既に魔道波タワーの同化を完了し、その地下に封印された最後のクリスタルを手に入れていたのだ。
神木の巨大な根が、王都に撒き散らされた太古の森の根が、クリスタルを取り外した時に起こる地震を押さえ込み、気付かせないでいたのだった。

『出来るわ。
預けておいたクリスタル・・・返して貰います・・・!』
その言葉と共に、神木の枝が伸び上空のル・ルイエーに突き刺さる。

それは枝と言っていいのだろうか?
まるで根の様にル・ルイエーを抉り・蹂躙し・同化していく。
その姿はル・ルイエーという漆黒の葉を誇る巨大な樹。
『全てのクリスタルを手中にし、全ての進化の歩みを記録した生命を司る大精霊たる私に不可能はない。
世界よ!帰結せよ!我が元に一つに返るのだ!』
最早ラム・ダオでもホメオツリーでもなくなった漆黒の神木は世界を喰らい始める。
異界の門たるル・ルイエーを通し向こう側の世界をも・・・!

280 名前:カリス ◆M5/Bnz694. [sage] 投稿日:2009/10/05(月) 04:02:33 0
冥魔の入っていた蒼いボトルが波飛沫のように千の破片となって砕け散る。
暖かい光がカリスを包む。目の前には4000年前共に戦った水の精霊機神。
「父よ。母よ。妹よ。ただいま…!」

光の中で冥魔だった頃の姉と妹が頭をよぎる。
一瞬、胸を針でつついたような痛み。
「ヴェルデ姉様…ジュリエット…さようなら…。」
こうして冥魔カリス・ポッェットは人間…正確には半妖カリス=シラートとして再転生した。
ポカリスを水の羽衣として身に纏い、手には青い缶を持って大地を踏みしめる。

光が消えると身が竦むほどの威圧感に肌が粟立つ。
眼前の二人の大精霊をも上回る圧倒的な存在感で世界を威圧する黒き大樹。
その姿は枝葉を星々に届かせ、根は大地を貫いて冥府に通ずるという世界樹そのもの。
「どうやらラム・ダオは生も死も超越したエクスデス状態と化してしまったようだな。
有史以来からの膨大なエーテルを取り込んだエネルギーはこの世界全てを森で浸食するに足るはずだ。
いけない…このままでは…。宇宙の 法則が 乱れる!」

突如、地中から…いや上からも下からも、あらゆる空間から湧き出したモノがカイザーとクイーンを捉えた。
根が、蔦が、蔓が、枝が…森の全てが捕らえた大精霊を喰らう。
カイザーの体から無数の花が咲く。血の色の妖花。白き星型。毒々しい紫の蕾。
クイ―ンの体から無数の実が生る。眼球の如き実。腸の果実。血管が浮かぶ房。
「くっ。いまやクイーンすら上回るというのか。」

周囲の空間が揺らぎ、植物が湧きだす。今の攻撃方法を見ていなかったら躱すことすら出来なかっただろう。
カリスは素早く飛び退くと手にした青い缶でポカリスと蒼汁(アオジル)を混ぜ合わせた。
蒼汁は単体でも危険だ。二つの液体を混ぜ合わせる事によって凄まじい攻撃力が生まれる。
死んだ藻の色となり果てたポカリスを発射して纏わりつく周囲の植物に攻撃!
噴霧を受けた部分の蔓が切れ、花が萎れ、葉が枯れる。
しかし、巨大な森には僅かの損傷も与えない。
それどころか枯らした速度に倍する速度で蔓が繁茂し、新たな蕾が開き、葉が生い茂る。
「やはり無駄か。既知の技術だけでは五元素を取り込んだ大精霊には到底対抗できない…!」

見上げれば、空には別の世界が覗く。
精霊と冥魔の争いが起きず、無限の森がそのまま存在し続けた別の可能性の世界。
「もう時間が無い。この世界が別の世界と完全に融合すれば、
融合した世界を分かつためにも膨大なエネルギーがいる。チェックメイトだ。」

オォォォォォン。
森に音叉の様な音が響く。音源は無限に湧き続ける植物の中にぽっかりと空いた空間。
そこに立つ女騎士が持つ剣は忘れようもない。かつて自らの命を奪った剣。
ポカリスを噴霧しながら剣の持ち主…エニ―シャに駆け寄る。
「王威の祭剣ラグナ・フラタニティ!だが使い手たる騎士よ。それだけではラム・ダオは倒せない。
剣の声に耳を傾け、秘められた真の力を解放するのだ…!」

281 名前:名無しになりきれ[] 投稿日:2009/10/06(火) 19:17:18 0
オォォォォォン。

282 名前:エリアス ◆HjQYbfcR9Q [sage] 投稿日:2009/10/07(水) 00:56:15 0
>279-280
「姉上、お帰りー!」
「カリス、会いたかったぞー!」
父上がそのまま感動の再会モードに入ろうとしているのを母上が制する。
『再開を喜ぶのは後だ……!』
母上が危惧していていた通りにホメオツリーは暴走を始めた。
「ちょっと、そんなことをしたら夢の供給元もなくなるじゃない!
私の言う事を聞きなさ――い!」
『クイーンが後先考えずに手下にするからだ』
「うっさいわ!」
クイーンと母上の精霊漫才をなんとか止めて攻撃を仕掛ける。
「させるか! エターナルフォースブリザードおおお!!」
瞬間凍結される漆黒の大樹。
が、次の瞬間には何事も無かったように解凍された。
「な…んだと!?」
『やはり即死攻撃無効か!』

「だがっ! シラート一家がそろったからには不可能は……あ」
口上してる間にカイザーとクイーンが雑魚のごとくあっさり蹂躙されていた。
「あの人、溢れだす勇気だけで敵を倒せるんじゃなかったっけ?」
『それは……その〜、勇気だけで敵を倒せたら苦労しない!』
「ですよねー、ハハハ」
アイスソードを一閃して蔓を切り落とす。

――リオン、上!
どこからかクイーンの声が聞こえてきた。精神生命体だからテレパシーはお手の物である。
上を見てみると、時空が不安定になった空から小さな輝きが落ちてくるのが見える。
「渡すかああああああ!!」
ダッシュして奪取する。正確には空中を飛んでいるのでダッシュではないが。
『これは……』
――私は冥魔の軍団を作るにあたって様々な世界から夢の欠片を集めていた。
それは永きにわたって時空の狭間に存在し、無数の世界から流れ込む夢を取り込んだもの
「夢の……クリスタル!」

283 名前:エニーシャ ◆IZh0JJtPKA [sage] 投稿日:2009/10/07(水) 04:45:24 0
壮大な家庭内騒動はここに決着した。
砕けた瓶と光の洪水の奥から現れた美少女が、別離の痛みと再会の喜びを噛みしめながら新しい一歩を踏み出す。
精霊王と夢の女王、職場の同僚に元冥魔――
奇妙なはずの家族が当たり前に、幸せそうに寄り添う。
その様子をタイタンの上、カイの後ろでこっそりと眺めていたエニーシャの口元には自然と微笑みが浮かんでいる。

――その時。微かなノイズと共に、意識に何かが滑り込む不快感。

『残念だわ・・・クイーン・・・私は世界を反転させあなたたちの世界になりたかった・・・』

息を呑み、神木に目をやる。
カリスが構成したはずの激流の幕が綻び、やがて消え去った。
水のヴェールが解けた先にあったのは、最も会いたくて最も会いたくなかったあの女性の姿だった。
漆黒の世界樹と化したモノに2つの世界が蹂躙されていく。
エニーシャの記憶にある女性の面影は失われつつあった。

……どうすればいい?
カイに説明された内容はこうだ。これは樹の精霊の寵愛を受けて時に逆らった者の末路であり、彼女は存在の輪郭すら見失って森と溶け合っていると。
救ってやってくれ、と。

………………どうすればいい?
彼女は精霊との対話には成功したが、その全てを把握しているわけではない。
神木とラム・ダオの融合が進行した今、いかなる方法を用いて切り離せば良いのか。

『王威の祭剣ラグナ・フラタニティ!だが使い手たる騎士よ。それだけではラム・ダオは倒せない。
剣の声に耳を傾け、秘められた真の力を解放するのだ…!』

「……わかった」
カリスに促され、緊張した面もちで意識を集中させる。

彼女は以前から、細かい術の制御が不得手だった。
ただの経験不足だと思っていた。
だが、今ならそうではないとわかる。全ては意志力の欠如だった。
――ならば、少しずつであっても前に進めているはずだ。

「“ラグナ・フラタニティ”。……兄弟愛、だったか」
刀身にそっと指を這わせ、草の汁を拭う。
「人と、精霊。存在する次元すら違う両者は交わり、与えあい、子を成しすらした。
私たちは異なる存在同士だからこそ、補い合えたのだろうな――」
2つの種族の血を引く家族を一瞬視界に映し、微笑んで目を伏せる。

「……兄弟、か。近いのかもしれない」
目を伏せたまま、剣を掲げて呟く。

「……力をお貸し下さい、精霊様。あの方を解放するにはどうすれば良いのですか?」

284 名前:ラム・ダオ ◆MeEEeH/kao [sage] 投稿日:2009/10/07(水) 23:15:19 0
世界の回帰を宣言した虚無の神木が最初に行ったのは最大障害の排除。
即ち夢の大精霊クイーンと精霊皇帝カイザーへの攻撃だった。
二人を囲む360度全天からの攻撃。
それは最早大地や空と言うレベルではなく、空間そのものが侵食されている事を表している。

二人を捕らえた【森】は更に手近なカリスにも触手を伸ばすが、辛くも避けられる。
それでも追撃をするが、カリスの蒼汁とポカリスの混合液により枯らされた。
『新しきものか!だが微々たる物・・・!』
僅かながらでも抗うカリスに虚無の神木はその力の源泉を見抜いた。
カリスは最早冥魔ではなく、新しく生まれた者。
それは未だホメオツリーに登録されざるものなのだから。

過去出現したあらゆる技術、生命は全てホメオツリーの記憶下にある。
故にあらゆる対抗策が用意されているのだが、生まれたばかりのカリスには対応し切れていない。
それがカリスがエニーシャの元まで行くのを許した唯一の原因だった。

虚無の神木のラム・ダオの顔が小さく歪むが、それ以上の追撃が出来なかったのはもう一体の大精霊のためだった。
精霊機神、"創生の"アクエリオン。
>「させるか! エターナルフォースブリザードおおお!!」
対象を氷結・即死させる恐るべき必殺技も既に解析された過去の技術に過ぎない。
薄皮一枚凍らせるだけで必殺技は破られる。
『精霊機神、"創生の"アクエリオン。あなたもまたホメオツリーの枝の一つに過ぎない。
森羅万象の文字に【森】がついているのは伊達ではない事をするが良い・・・!』
カイザーとクイーンの戒めを解き、空中で夢のクリスタルを掴んだアクエリオンを一陣の風が巻きつく。

決して強風とはいえぬが、その風はアクエリオンにとっての滅びを運んでいた。
纏うモイスチャーヴェールが、握るアイスソードが、そして装甲が一瞬で塵となって霧散した。
存在自体が塵とならなかったのは左右に展開する二人の大精霊のガードのお陰だろう。
「例え森羅万象を司っていようとも!」とクイーン。
「五つのクリスタルを手中に収めていようとも!」とカイザー。
「「我等とて大精霊!多少の時間稼ぎくらいはさせてもらうぞ!!」」
息のあった二人の大精霊が強く輝き、アクエリオンを守っているのだ。
空間からはいでた『森』の侵食を光りの領域が阻んでいるが・・・

『面白い。だが・・・何時まで持つのかな?』
今まで相反していた二人の大精霊が協力した新しき力だが、それも圧倒的量の前には本当に時間稼ぎにしかならなさそうだった。


285 名前:ラム・ダオ ◆MeEEeH/kao [sage] 投稿日:2009/10/07(水) 23:15:28 0
>283
『――躊躇せずに殺すと誓いなさい。そういったはずでしょう!!』
声と共にエニーシャの頬に風がそよぐ。
直後、即頭部への衝撃と共にエニーシャは吹き飛び荒地に転がる事になる。
三回転ほどして止まったエニーシャは、先ほどまで自分がいたところにハイキックを放った体制で見下ろす剣の大精霊を見た。
そう、ここは。“王威の祭剣”ラム・ダオの祭壇。
エニーシャの精神世界でもある。

エニーシャ本体は太古の森と化した王都にあり、目をふしたまま剣を掲げているのだ。

つかつかと這い蹲ったエニーシャの元まで歩み寄り、しゃがみその顔を覗き込む。
『あなた・・・この期に及んでまだ迷っているわね?
私の真の名を知り、虚無の神木と化したラム・ダオを前にしてどうすればいいのかもわからずにいる・・・!』
エニーシャの顎を掴み顔を上げさせ、その目をじっと見つめる。
どれだけ時間が経っただろうか?
十秒?五分?
時の感覚が曖昧な空間にて、いつの間にか剣の大精霊の顔が見慣れた顔に変っていることに気付くだろう。
ドルイドの中尉ラム・ダオの顔に。

『だから・・・だからこそ・・・私はあなたを選んだのよ・・・。』
柔らかな表情と口調で優しくエニーシャの頭を撫でながら語りかける。
『私はずっと迷っていたの。あらゆる事に結論を出せず、今もう自分でもなくなってしまった・・・。。
貴女も同じ・・・今この時になっても迷っている・・
だからこそあの時、ホメオツリーと融合したラム・ダオの人間部分を集約してこの剣を託したのよ。
迷い続け、結論を出せない私そっくりなあなたに・・・
この剣はラグナ・フラタニティであると同時に人としてのラム・ダオそのものでもあるの。
審判を下す力はあるけれど・・・振るうのはあくまで貴女。
自分自身では出来ないから・・・お願い・・・私たちを・・・終わらせて・・・。』
優しい口調は徐々に震え、やがて消え入りそうな声になってゆく。
表情も柔らかなものから苦痛・悲哀・懇願・・・人間の弱さが混じっていく。
それ以上の変化を見せぬため、エニーシャを、いや、エニーシャに抱きついたのも人の弱さゆえだろう。
リリーガンガー号でのドルイド『ラム・ダオ』にはなかった弱さ。
人である部分を曝け出しエニーシャにしがみつくラム・ダオは小さく震えていた。
『ごめんなさいエニーシャ・・・辛い役目を託してしまって・・・お願い・・・助けて・・・。』
か細い・・か細い声を残し、ラム・ダオはエニーシャの胸から消えていった。

################################

そうしてエニーシャは目を開く。
目を伏せてから数秒しか経っていない王都に戻ってきたのだ。
掲げた剣は刀身が消えうせていた。
いや、消えたのではない。
掲げられた刀身は空間・・・いや、次元すら切り裂きその身が見えなくなっているのだ。
それを意識した瞬間、鈍い光と共に刀身が再び姿を現す。
あらゆる次元を切り独立した空間に現れた刀身がラグナ・フラタニティの真なる力の発揮を知らしめている。
『いきなさい、エニーシャ。あなたは全てを切り裂く審判の力を手に入れた!
あなたの想いを届けるのに障害となりえるものは何も無い!そう、距離すらも!』
そよ風と共に剣の大精霊の声が耳に届いた。

286 名前:ルナルド ◆SiFiw1brbM [sage] 投稿日:2009/10/08(木) 00:40:43 0
鬱蒼と茂る大森林のその一角。
辺りに木々は無く、周囲をごっそりと抉られたかの様な空間が出来ていた。
虚無を動力とし全てを呑み込むシェイダールの悪魔の心臓と、命を糧とし闇を塗りつぶすアイギスの光の盾。
その激突の結末である。

無謬の大地に倒れ伏すアイギス。
光と闇という対を成す機体同士の戦いはシェイダールの消滅という結果に終わった。
紙一重で勝ちを拾った白い騎士もその腕をその脚をもがれ、大破という表現では追いつかない残骸と化している。
ひしゃげた搭乗席のハッチを抉じ開け転げるように這い出るルナルドも体のそこかしこに傷を負い手ひどい状態だった。
アイギスの残骸に背を預け頭を数度振る。

「今まで遣り合った操縦兵の中でお前が一番強かったよ……カムシン。」
空へと還ったカムシンへと黙祷を捧げ最強の敵へ敬意を表す。
そのまま暫く空を仰ぎ見ていたがまだ此処での戦いが終わったわけでは無く、よろよろと立ち上がるルナルド。

「お前もありがとうな。短い間だったが最高の相棒だったよ。」
シェイダールとの衝突から自分を守ってくれたアイギスへと敬礼をする。
別れを済ませ搭乗席に積んでおいた軍用ライフルを取り出すと覚束ない足で魔道波タワーへと歩き出した。

287 名前:ルナルド ◆SiFiw1brbM [sage] 投稿日:2009/10/08(木) 00:42:56 0
道すがら数体の冥魔獣を撃ち倒しようやくタワーへとルナルドが到着した頃、戦いは一応の決着を見せていた。
エリアスと憑依した精霊機神と清冽な水気を纏う少女。
ミルダント16世陛下と冥魔の女王。
それぞれお互いがお互いを守るかのように寄り添い、塔を包囲している。
周りには王都警備隊と器用にタイタンに乗る"父上"、その背後には同僚のエニーシャも居る。

多大な犠牲を払ったが両陣営の頂点が互いに手を取り、大陸を廻る戦いの清算を終えようとしている。
だがその時居並ぶ者たちの脳へと直接叩きつけられる強烈な思念。
ひび割れた声は次第に柔らかさを帯び、かつて聞いたことのある声へと取って代わる。

『残念だわ・・・クイーン・・・私は世界を反転させあなたたちの世界になりたかった・・・』
ラム・ダオの声で最後の一言が告げられたその時、世界は地獄と化した。

カイザーとクイーンを皮切りとしそこかしこで流血が飛沫く。
空間が捩れ、森が怨嗟の声をあげ全てを蹂躙する。
イニシアチブこそ取られはしたがこちらも反撃を開始する。
しかし対象を凍結させ必滅の理を告げるアクエリオンの奥義も、ラム・ダオの知識の埒外を行くカリスの神秘もその侵攻を遮断するには至らない。
ルナルドや王都警備隊の攻撃などは数瞬動きを止めるのが精一杯だった。

『王威の祭剣ラグナ・フラタニティ!だが使い手たる騎士よ。それだけではラム・ダオは倒せない。
剣の声に耳を傾け、秘められた真の力を解放するのだ…!』
声を振り絞るカリス。
どうやらこちらの切り札はエニーシャの持つ長剣らしい。

「絶対に少尉に敵を近づけるな!」
ルナルドも両手に構えた銃から弾丸を撒き散らしながら声を張り上げる。
一本でも多くこちらへと引き付ける為に銃身の加熱も無視して撃ち続ける。
"父上"ことカイの号令の下生き残った王都警備隊もその身を盾にせんと突撃する。

どれ程時間が経ったのか、肩を足を抉られ意識を失いかけたその時、視界の端で眩い光が膨れ上がり弾ける。
見れば手に刀身の無い、しかしルナルドでも知覚できる程絶大な威力を秘めた剣を掲げ立つエニーシャ。
その光景を目にしたときルナルドは勝利を確信した。

288 名前:カリス ◆M5/Bnz694. [sage] 投稿日:2009/10/08(木) 05:08:48 0
アクエリオンが手にする夢のクリスタルが無限に変幻する光景を映す。
宝石の様なカスケード。砂漠の魔天楼。無数の剣が墓標のように刺さる丘。苔むす鉄巨人が佇む空の庭園。
不可思議な世界が滝の様に押し流されては、新たな光景へと変ずる。
夢の結晶の中に映る無数の世界を見たカリスに一つの考えが浮かんだ。
「夢変化………夢のクリスタルがあれば夢変化ができるかもしれない。
―――夢変化とは新しい物語を一つ考え出して、自分でその中に飛びこむ夢変化人たちに伝わる術。
彼らでも夢の中の物を現実に持ち込むことはできないが、夢のクリスタルにクイーンが道を造れば或いは…!」

アクエリオンへの攻撃を防ぐクイーンに思念を送ってみる。
《女王様、貴方の元を離れてこのようなお願いは心苦しいが、どうか夢幻の世界への道を開いて欲しい》

『―――夢の中の物は今だこの世界には存在しない物。ラム・ダオにも対抗できるかもしれない。
だけど夢は混沌に属する世界。覚醒したまま夢に落ちるのはとても危険なの。
夢に取り込まれれば、二度と帰ってこれないかもしれない。
…でも、取りだす物によっては避けられないような結末も回避出来るかもしれないわね。
良いわ…極僅かの間だけ夢幻界の道を開きましょう。』

夢のクリスタルが全ての景色を消して透明な結晶となる。
「エリアス…そのクリスタルを持ったまま何かを思い浮かべるのだ。
そして思い浮かべた世界に入り、そこからグッドエンドに繋がりそうな物を持ってくるのだ。
武器でも精霊機でも他の物でも良いが時間は殆ど無い。おそらく一つしか持ってこれないはず。」

クイーンがすかさず警告を入れた。
『夢はちょっとした事で崩れる不安定なもの。すぐに戻らなければ貴方も夢の住人になってしまう。分かった?』

カリスはエニ―シャを背にして、ルナルドの横に並ぶ。
「ボクはエリアスの姉カリス。ボクもキミたちを、いや…この世界を守らせてもらうぞ。」

手に持つ缶の中に蒼汁混合液に加えて壊滅的な味と名高いゴーヤドリンクとアロエエキスを混ぜ込む。
本来は全て体に良いもののはずだが、その力が反発しあったのか缶の中は名状し難いものの饗宴と成り果てていた。
金魚が死んだ水槽の匂い。仮に口にしたとしても決して胃が受け付けぬ味。精霊をも死に至らしめるに足る効能。
悪魔の水、反エリクサーが完成していた。
「みんな…口と鼻を塞ぐのだ。決して吸い込んではいけない。」

噴霧した空間に侵入した植物がドロドロに溶け、溶けたそばから新しい森が生まれる。再び噴霧。さらに森の再生。
この終わりの無い攻防とも思える戦いにも終幕は訪れる。
鈍い光。腹に響くような低周波。ラグナ・フラタニティが強烈な波動を放ち、その刀身を見せていた。
「ラグナ・フラタニティの力を引き出したか。その剣でラム・ダオが創る森の世界を斬り裂けば全て終わる…!
但し、制御を誤って斬り過ぎればこの世界にも影響が出るぞ。」

声に緊張感を滲ませてカリスが後ろに飛び退く。
警備隊も剣の攻撃領域から離れるべく左右に分かれると、
エニ―シャの視界が荘厳とすら思える虚無の神木で塞がった。

289 名前:エリアス ◆HjQYbfcR9Q [sage] 投稿日:2009/10/09(金) 00:11:03 0
>284 >288
氷の剣は消え、装甲までも砕け散った。
もう夢のクリスタルにかけるしかない。

「分かった……行ってみるよ!」
といったもののうっかり美少年二人組とか持ってきそうで気が気でない。
その時、母上の肩の上に軽やかに“ブレイカー”が降り立つ。
「安心しろ、俺が導く。お前はただ一番役立ちそうな物を持ってくるだけでいい」
詩を謳いあげるようなブレイカーの声にいざなわれ、夢の世界へ入っていく。

「それは人と魔が果てなき抗争を繰り広げる世界――」
展開されるのは、定番のファンタジー。それこそどこにでもあるようなお伽噺だった。

――魔族が支配する世界を作ろうとする者達がいた。

魔族の王、狡猾な幽鬼、妖艶なるラミア……
この手の物語に定番の人の世を蹂躙する悪しき者達。
彼らはただ自分達の世界を取り戻したいだけではなかったのか。

――人間が支配する世界を守ろうとする者達がいた。

亡国の姫君、賢き魔導師、人に与する妖魔……
これまた定番の邪悪に立ち向かうべく集った勇者達。
彼らはただ自分達の世界を固持したいだけではなかったのか。

――その戦いは、開けてはいけない破滅の箱を目覚めさせてしまった。世界を食らう禁断の箱……。

そうか、これはどこにでもあるお伽噺なんかじゃない。
この世界ととてもよく似てはいないか。
人間と冥魔の争いの末に虚無の樹を目覚めさせてしまったこの世界と。

――戦いの果てに……両者は一つになり、破滅の箱を封印した。

夢の物語はハッピーエンドを迎えた。
ただ一つ現実と違わないといけないのは、これからするべきは封印じゃない。
ラムちゃんを悠久の呪縛から解き放つのだ。
それができるかもしれないものが、見つかった。持って帰るべきものが。
「キミ達に……決めた!!」
それを引っ掴んで現実界に連れ帰る。

訪れる覚醒。
彼らは確かにこっちの世界に来ていた。それを見てブレイカーが微笑んでいる。
「お前ならそうすると思っていた」
夢の物語ではアッシュと呼ばれていたこの人は一体何者なのだろうか。
彼は深紅の服を着ていて、妖魔の少女を残して戦場に散った。
「ブレイカー、あなたは夢変化人なのか!?」
「さあな」

290 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/10/09(金) 00:38:49 O
チャロを読んでいないと判んねえんじゃね?

291 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2009/10/09(金) 00:52:05 0
読んでれば面白さは増すが読んでなくても問題なく話は繋がる
と好意的に解釈してやれよ

292 名前:エリアス ◆HjQYbfcR9Q [sage] 投稿日:2009/10/09(金) 01:15:00 0
仕上げに王都湾の海水を巻き上げる。
『最新武装アイスクラフトッ!!』
アイスクラフトとは一瞬で色んな氷の彫像が作れてしまう無駄な方向にすごい最新武装だ。
海水を材料に作りあげるは、壮麗なる氷の空中ステージ。
そこに全速力で飛ぶのは……デッキブラシ。
ブラシに引っ掛かっているのは精霊犬と精霊猫と精霊鹿。
これこそ夢の世界から連れ帰った者達である。
洗濯物状態でセットになっていたので一まとめで連れてこられたのだ。
三匹の動物がぽてぽてと空中ステージに着地する。

「うわー、だめだー!」
「世界オワタ!」
そこかしこから絶望の声があがる。が、見た目で侮ってはいけない。
彼らこそ夢の世界でブレイカーと一緒に冒険していた癒し系キャラ達。
この世界では聞いた事がない、歌を媒介にした魔法を使う者たちだ。だからこそ最終兵器として抜擢した。
精霊犬は一礼すると歌い始めた。

♪―♪―♪
世界の始まりの日 生命(いのち)の樹の下で
くじらたちの声の遠い残響 二人で聞いた

失くしたものすべて 愛したものすべて
この手に抱きしめて 現在(いま)は何処(どこ)を彷徨い行くの

答えの潜む琥珀の太陽
出会わなければ 殺戮の天使でいられた
不死なる瞬き持つ魂
傷つかないで 僕の羽根
この気持ち知るため生まれてきた

一万年と二千年前から愛してる
八千年過ぎた頃からもっと恋しくなった
一億と二千年あとも愛してる
君を知ったその日から僕の地獄に音楽は絶えない

♪―♪―♪―♪

精霊鹿は木魚で精霊猫は口笛のカオスバンドで奏でられるそれは、遥か遠い世界の歌。

293 名前:エリアス ◆HjQYbfcR9Q [sage] 投稿日:2009/10/09(金) 01:19:34 0
メイちゃんがステージに降り立ち、ドナルドの美声のキーボードを並べる。
「――あはー。これとても好きになたよ! あしたまで覚えるね」
ついでギターを抱えたナギ君が降り立つ。
「練習目当てのセッションなんてくだらねえぜ! ここからは"ライブ"だっ!!
純白の天使の魂……これだ―――これがおれの求めていたサウンドだぜえっ!!」
続いてブレイカーも。
「ミルダンティア王立軍魔術兵装開発局特殊戦技研究班の最高機密…
…対人指向性最終鬼畜音響魔導戦略兵器と賛美された、この―――
攻撃魔術よりも爆発力のある、俺の歌を聴いてもらおうか!!」
「ええ。これは不可抗力よ。私も、仕方なくやるんだからっ!」
例によってシスターがブレイカーの後を追って降り立った。

♪―♪―♪―♪
世界が終わる前に生命(いのち)が終わる前に
眠る嘆きほどいて 君の薫り抱きしめたいよ

耳すませた海神(わだつみ)の記憶
失意にのまれ立ち尽くす麗しき月
よみがえれ 永遠(とわ)に涸れぬ光
汚されないで 君の夢
祈り宿しながら生まれてきた

一万年と二千年前から愛してる
八千年過ぎた頃からもっと恋しくなった
一億と二千年あとも愛してる
君を知ったその日から僕の地獄に音楽は絶えない
♪―♪―♪―♪

さらにカオスにして、それでいて清廉なるバンドの歌声が響き渡る。
そしてとにもかくにもエニーシャちゃんの剣に不思議パワーは集まったのだ!!
「今だ!! いけええええええええええええ!!」

294 名前:カリス ◆M5/Bnz694. [sage] 投稿日:2009/10/10(土) 20:04:32 0
「犬と猫と鹿…夢の世界から切り札を手に入れようという試みは失敗か…!」
設営された氷の舞台で緩やかに歌い始める動物たち。
カオスな霊歌に魔捜局メンバーの演奏までもが加わり、混沌の森に重低音が満ちてゆく。
この歌に耳を傾けると、心の奥底に眠っている大切なものを呼び起こしてくれそうな気がする。

「いや、この歌は精霊力を増幅する………ような気がする。」
聞いた事のない霊歌に確信は持てないが、周囲の空間が何かのパワーで満たされる

「いけない…結界を作って精霊力の流れを制御しなければパワーが集まりすぎて暴走しかねない。
次元を斬り裂くほどの力なんて暴走させるわけにはいかないな。
この舞台………氷の精霊舞踏にはもってこいか。」
カリスはポカリスを操って水のブレードを作ると靴の裏に張り付けた。
そのまま軽やかに氷の舞台に乗ると足元を蹴って滑り始める。
トリプルアクセル…トリプルトウループ…トリプルルッツ。
ジャンプと回転による舞踏で華麗に舞うたびに刃が氷上に呪術的な文様を刻む。

優美な氷上舞踏で描かれた魔法陣が銀光を放ち始めると、
空間に満ちていた不思議なパワーがエニ―シャの剣に向けて一点へと収束してゆく。
そしてライブのクライマックス。エリアスの掛け声に自分の声を重ねる。
『今だ!! いけええええええええええええ!!』
「今だ!! いけええええええええええええ!!」

295 名前:エニーシャ ◆IZh0JJtPKA [sage] 投稿日:2009/10/15(木) 01:19:53 P
>>285
気づけば、体が宙に浮いていた。

『――躊躇せずに殺すと誓いなさい。そういったはずでしょう!!』
スロー映像のような空中三回転。ようやく認識する“痛い”。
地面と熱い抱擁を終えたエニーシャは悶絶して声も出せない。
ジャリ…砂を踏みしめる音が耳鳴りの奥で微かに聞こえた。
『あなた・・・この期に及んでまだ迷っているわね?』
尖った声を辿って顔をあげた途端、無造作に顎を掴まれて上向かせられる。
細腕に不似合いに強い力にエニーシャは顔を歪めた。

やがて叱責が途切れ、沈黙が落ちる。
……冷え切った翡翠の眼差しがほんの一瞬、儚く揺れた。

『だから・・・だからこそ・・・私はあなたを選んだのよ・・・。』
「…………え?」
血と樹液でぐちゃぐちゃに汚れた髪を梳くように優しく撫でる手。
次の瞬間、エニーシャの表情が驚愕に彩られた。
なぜならそこにいたのは精霊でもなく、離反者ですら無く――
「中尉……殿……………?」
――“ディープフォレスト”ラム・ダオだったから。

絡んだ糸を慎重に解くように、剣に託した思いがゆっくりと語られる。
胸がズキンと痛んだ。牙に切り裂かれるよりも剣に貫かれるよりも。
何一つとして気づかず、優しい笑顔にただ甘えていた後悔ばかりが募る。

「だから、ですか…?
“覚悟”“力”、様々に言葉をすりかえながら、貴女は私に迷いと向き合わせた。決断させようとした。
そして、それは――」

言葉を飲み込む。
「……いえ」
(それは――本来、貴女自身が望んでいらしたこと。…けれど。
“その貴女”はとうにいない)

『自分自身ではできないから・・・お願い・・・私たちを・・・終わらせて・・・。』
(中尉殿…本音を申せば今すぐこの剣を投げ捨ててしまいたい…!
貴方も私も故郷が大切だっただけで……終わらせる資格など私には)
『ごめんなさいエニーシャ・・・辛い役目を託してしまって・・・』
「謝らないで下さい……っ」
『お願い・・・助けて・・・』

そこにいるのは本来の、失われた、彼女の知らないラム・ダオ――同じ人間だった。
緑の髪を不器用に撫でる。そして掠れた声で一言、「はい」と答えた。

本当は結論はとうの昔に出ていた。あとは足を前に出しさえすれば良かった。
しかしその一歩は余りに重く、背負いきるには彼女は余りに弱い。
世界を選択する恐怖が彼女の足を迷わせていた。
……だが、それもこれでお終い。
腕の中で震える華奢な姿を放っておけない――その気持ちが背中を押した。

「終わらせて来ます。私たちを……仲間を信じて下さい」

*  *  *

296 名前:エニーシャ ◆IZh0JJtPKA [sage] 投稿日:2009/10/15(木) 02:59:20 P
むせかえるような青い香りを吸い込みながら、ゆっくりと瞼を上げる。
膨張する森とそれを撃退する同僚たちの背中が見える。
消えたように見えた刀身は、隣の次元に入り込んでいた。意識を向けた瞬間、それは空間を切り裂いて現界する。
力の破片が意識に突き刺さり、苦悶の声が漏れた。維持するだけで存在が削り取られていく。

『その剣でラム・ダオが創る森の世界を斬り裂けば全て終わる…!
但し、制御を誤って斬り過ぎればこの世界にも影響が出るぞ』
頷く。……背負うものは、酷く重い。
だが。振り返ったルナルドと目が合って、引きつりはしても微笑みを返せる自分がいる。
「いくら…なんでも……無茶、しすぎだ……」

気分は、不思議と落ち着いていた。

息を吐き、基本的な中段の構えをとる。
胸を張り、下腹を落とす。目線は水平、視野は広く。
両の小指から中指さえしっかり締めてしまえば、後は気楽に、柔らかく握ればいい。
一つ一つを朝の素振りでも行うかのように確認する。
過ぎた力を手にしても、いつもの自分でいられるように。

『『今だ!! いけええええええええええええ!!』』

――【ラム・ダオ】を介し、【森】全体の座標を取得。

「やああああっ!!」
刹那、再び空間を渡った刀身が“もう一つの世界”を抉った。
樹木が一斉にピタリと動きを止めた。静寂。次の瞬間、ある者は猛り、ある者は黒霧を噴いて消滅する。
頭上の世界像には亀裂が生じていた。神木を中心にエーテルで縛るような強引な結合構造が崩壊し出したのだ。
だが、神木から絶えずエネルギー供給を受ける【森】は瞬く間に再生されていく。
【剣】の力の放出は未だ途切れない。破壊と再生、二つの速度は拮抗しているように思われた。

しかし、彼女には仲間がいた。
魔捜局のセッションと夢の住人の霊歌のパワーが、ゆっくりと【剣】に吸収されていく。
釣り合った天秤に少しずつ、少しずつ分銅が重ねられる。【剣】は、着実に【森】を押し始めていた。

――視界が回る。
「……っ…………」
ふいに遠のいた意識を気力で繋ぎ止め、己を叱咤する。
その体には無数の裂傷が、辺りの建物にはいくつかのクレーターが刻まれている。
柄を包む異様に眩しい淡青色光を含め、正常な状態には見えない。
事実、暴走寸前まで陥っていたのだ。もし彼女一人だったのなら、王都一帯は既に焦土と化していた。
未熟な術者を助けるのは、周囲に満ちる氷の気配。
カリスの精霊舞踏が操作する疑似的な超低温大気は、あらゆる物理現象を停止へ導く。
それが【剣】のエネルギー過剰を抑えて暴走を止め、軌道を外れた破壊の力をいなしていた。
(まだ…いける)

「――中尉殿おおおおおおお!!」
血と汗を散らして、喉が破れんばかりに叫ぶ。

「貴女は……【森】ではなく人です! 人として生まれて人として生きていたはずです!
森の精を愛するなら、融合などしてはいけなかった。
個を保った“合体”すら超え、違う存在であることを否定してはなりませんでした。
私たちは違う存在だからこそ補い合えたはず。……少なくとも、ここはそういう世界でした!!」

エニーシャは、もう一度【剣】を振り上げた。
「だから――」   一か八か。

――【ラム・ダオ】を介し、虚無の神木を占める【ホメオツリー】部分の座標を取得。

「離れてええええええええええ!!」
人と精霊を切り離すと言われた淡青色の光が、虚無の神木を包み込んだ。

297 名前:ラム・ダオ ◆MeEEeH/kao [sage] 投稿日:2009/10/16(金) 06:37:49 0
最早王都は・・・そして世界は虚無の神木と一体化していた。
例え間近にいなくともその行動はすべて把握できる。
魔捜局のセッションと夢の住人の霊歌のパワーを上乗せされ、カリスの精霊舞踏により制御されたラグナ・フラタニティ。
その力は凄まじく確実に森を切り裂いていく。
だが・・・二人の大精霊に抑えられているとはいえ、五つのクリスタルから無尽蔵に流れ込むエネルギーは即座に森を再生させていく。
例え押され削られたとしても、それはほんの一部でしかない。
にも拘らず、虚無の神木は苦痛に揺れていた。
振るわれる刃よりも、清廉なるバンドの歌声が、エニーシャの気迫が、ラム・ダオを気押していたのだ。

『『今だ!! いけええええええええええええ!!』』
エリアスの、カリスの、ルナルドの・・・
世界を守ろうとする全ての者達の思いが重なった時・・・虚無の神木は動く。
「ラグナ・フラタニティ・・・それもまた我が身に刻まれた過去の産物・・・!」
あらゆる進化の軌跡と記録を司るホメオツリーの中に、ラグナ・フラタニティもまた記録されている。
その破壊方法すらも・・・!

可聴域を超えた音波を発し、ラグナ・フラタニティとの共鳴作用を強めていく。
その効果はすぐに現れる。
座標軸を固定し、エニーシャの振り上げた刀身にひびが入る。
振り下ろされる刹那・・・ラグナ・フラタニティは粉々に砕けた。
しかしエニーシャは止まらない。
>「離れてええええええええええ!!」
叫びと共に振り下ろされるのは淡青色の光の剣。

今までのラグナ・フラテニティはいわば鞘をつけた状態に過ぎない。
光っていた刀身は鞘から漏れ出した淡い光。
しかし今、刀身が砕けた事によりその本来の刃が振るわれることになる!

切り裂くのではない・・・全てを包み込むように。
それは過去に作られた力ではない。
今を生きる全ての者達の、未来に賭ける想いの刃!
過去に生きる虚無の神木には抗えぬ力!

光の中、位置に関係なくあらゆる者が目の当たりにするだろう。
その奇蹟の様を。
虚無の神木の漆黒は打ち払われ、瑞々しい巨木となっていく。
それは本来のホメオツリーの姿。
そして、ゆっくりと幹から離れていく一人の女の姿を。

「エニーシャ・・・ありがとう・・・。
私は・・・そしてホメオツリーは耐えられなかった。
世界が別れ、分離していく事に・・・。
でもそれは違ったのね・・・。
世界は分かれたのではなく、広がっただけなのに。
違う存在だからこそ・・・補えあえる・・・。」
ゆっくりと・・・ゆっくりと・・・
ホメオツリーから分離したラム・ダオはエニーシャの胸に・・・。

光が収まった時、王都は新緑の森となっていた。
それまでの禍々しさのない、瑞々しく生命に溢れた森。
その中央に立つ巨木、ホメオツリーは清らかなオーラを以って世界を支える。
そしてあらゆる世界を繋ぐ存在となっていた。

空は晴れ渡りホメオツリーの根元、木漏れ日の注ぐ中、涙を流し抱き合うエニーシャとラム・ダオの姿があった。

298 名前:カリス ◆M5/Bnz694. [sage] 投稿日:2009/10/17(土) 00:40:33 0
氷のステージの上で足を前後に開くとつま先を大きく開き、背を反らして天を仰ぐカリス。
稲葉雨亜(いなばうあ)という豊穣を齎す天の恵みに感謝を表す動作によって精霊舞踏を終える。
天からは葉々を通して太陽の光が幾本もの筋となって降りそそぎ、森の緑を鮮やかを際立たせていた。
緑の屋根の隙間から覗くホメオツリーの頂きが空の青に霞む。

「どうやらホメオツリーは、この世界と別の世界を支える天柱になってしまったようだ。
もし、これが倒れることがあれば無数の世界が崩壊する。
これからキミたちは、この世界樹を狙う者たちから樹を守らなければならないだろう。
光あれば闇あり、それはいつの日か必ず現れるのだから。」
エリアスやルナルド、魔捜局のメンバーに何所かで聞いたようなセリフを述べる。

「どうやって元の世界に戻るのかは知らないがキミたちもありがとう。」
振り返って、白亜のように真っ白になった異世界の精霊獣たちに礼を述べる。
氷の精霊舞踏が生み出す絶対零度の凍気は、水や氷の属性を持って無さそうな彼らを凍らせかけていた。
だが、体を覆う霜の事など彼らは気にも留めていないだろう。
バンドで熱く滾ったハートは心まで凍らせる事は出来ないのだから!

そしてホメオツリーの根元では幹から分離したラム・ダオをエニ―シャが抱きとめていた。
天を貫く巨樹の根元で二つの影が一つに重なる。
「これは、あらあら後は若い人同士に任せて私たちは退散した方が良さそうね…という奴だな。
これからの事は彼らに任せるとしてボクはどうしたものか。
帝国兵だった頃も反乱軍として帝国に反旗を翻した時も冥魔として生きていた時も多くの命を奪ってきた。
このまま普通に暮らすというわけにもゆくまい…。
そうだな―――――――――流しのポカリス売りとして旅に出るのも良いかもしれない。」

魔捜局や警備隊が上げる勝利の歓声に背を向けたカリスは、大気に溶けた森の香気を胸に吸い込む。
「うっ…少し肺に入ったか…。」
吸い込んだフィトンチッドが肺の中に満たされた黒い神木の有害な花粉や胞子を滅してゆく。
もちろん肺に入った所で少しも問題は無い。むしろ癒される。

(家族や仲間と過ごす幸せなどボクには……過ぎたものだ。)
踏みしめる落ち葉が立てるのは別れの音。
薄く微笑んでいたカリスは、彼方を見据える旅人の顔になると森の外へと歩き始めた。

そして………。

少し歩くとチラッと後ろを振り返る。
もう少し森を歩くと再び背後を伺う。
だんだん動きがのろくさとし始めた。

まるで誰かが止めてくれるのを待っているかのように。

299 名前:エリアス ◆HjQYbfcR9Q [sage] 投稿日:2009/10/17(土) 23:09:49 0
>296-297
「ラムちゃん、お帰り……!」
永久に涸れぬ光、穢れ無き夢、そして生命の樹。
遥か古より続いた神々の争いは今この時をもって終わりを告げた。
「そういえば……クリスタルが取り込まれたままだけど」
『クリスタルはもともと世界樹の雫をそれぞれの大精霊達が結晶化させたもの。
争いが終わった今、この最後の一つもあるべき場所へ帰しましょう。そうだよね? クイーン』
クイーンが微笑みながらうなづく。
夢のクリスタルをそっと手放すと、溶けるようにホメオツリーに吸い込まれていく。

『お帰りなさい、ホメオツリー』

♪―♪―♪―♪
君がくり返し大人になって
何度も何度も遠くへ行って
見守る僕が眠れない僕がくしゃくしゃになったとしても
君の名を歌うために…

一万年と二千年前から愛してる
八千年過ぎた頃からもっと恋しくなった
一億と二千年あとも愛してる
君を知ったその日から
一万年と二千年前から愛してる
八千年過ぎた頃からもっと恋しくなった
一億と二千年たっても愛してる
君を知ったその日から僕の地獄に音楽は絶えない
♪―♪―♪―♪

遠くから歌が聞こえてくる。歌っているのは夢の住人たちか、それとも母上?
抱き合っているのはエニーシャちゃんとラムちゃん?
それとも出会った頃の父上と母上?
はたまた本当の世界の始まりの1シーンをみているのか。
「何度も別れなきゃいけないんじゃない、何度も出会えるんだ。
それってきっとすごく素敵な事……」

300 名前:エリアス ◆HjQYbfcR9Q [sage] 投稿日:2009/10/17(土) 23:12:20 0
>298
カリスにさりげなく声がかけられた。足元から一人事が聞こえたとも言う。
「出掛けりゃいいってもんじゃない」
そこには白い犬。いくら人間に戻るんじゃないかと期待してもやっぱり白い犬。
落ち葉を踏みながらトコトコ歩く。
「いい季節だ……」
そして目の前に青い缶に腰かけた女性が空から降りてくる。青い缶とは何かは言うまでもない。
ttp://a1679.g.akamai.net/f/1679/9660/1h/www.aeonshop.com/item/images/490210205121702.jpg
「リオン! よくやった! エリアスはどうした?」
水の大精霊は自らが腰かけている青い缶をなでながら答えた。
「もちろんここに」
「……なっ、なっ! なんということだ!」
衝撃のあまりカイ君はぱったりと倒れた。気を失っているようだ。もしくは寝たふりをしているのかもしれない。
「ああっ、カイ! 
介抱したいのは山々だけど大変困ったことに私はこの缶の上から動けない!」
水の大精霊は、本当かどうか疑わしい説明的な台詞を言いながら焦り始めた。

301 名前:ルナルド ◆SiFiw1brbM [sage] 投稿日:2009/10/18(日) 03:05:02 0
視線の先にはラグナ・フラタニティを正眼に構えたエニーシャ。
目が合うとぎこちなく、しかしどこか清々しさのある笑顔が確認できる。
「無茶した甲斐があったってもんだ……。」

『『今だ!! いけええええええええええええ!!』』
重なった声は特設された氷のステージで魔捜局の同僚と奇妙なナマモノの奏でる演奏に合わせ精霊舞踏を披露しているカリスのものだろうか。
裂帛の気合と同時に振り下ろされる一閃。

視界を眩い光が埋め尽くしていく。
最初は天地を割り裂く鋭さを、次第に世界を包み込むような柔らかさを持って。
薄れ行く意識の中でルナルドは誰かの切なる願いを込めた声が聞こえたような気がした。


閉じた瞼に感じる木漏れ日の眩しさに意識を取り戻す。
最初に目にしたのは空を覆う鮮烈な緑。
この世界には無い筈の、しかしどこか懐かしさを感じる新緑の森。
魔導波タワーに根を張った一際巨大な樹、ホメオツリーの下ではエニーシャとラム・ダオが抱き合い再開の涙を流していた。
(終わったか。)
感慨深げにそれを見つめるルナルド。
人と冥魔、お互いの世界を削り合う戦いに終止符は打たれたのだ。

『これは、あらあら後は若い人同士に任せて私たちは退散した方が良さそうね…という奴だな――』
声の方を見れば先程まで氷のステージで見事な舞を踊っていたカリス。
その表情はどこか寂しげに見える。
聞くとは無しに耳に入ってくるのは帝国兵、反乱軍、そして冥魔。
先の二つは何のことか解からないが最後のは解かる。
そんなことがあるのだろうかと思索するがミルダント16世陛下の隣に居るのも元は冥魔の女王。
そういうものかと納得するも別段恨み辛みが沸いてくるわけでも無かった。
ルナルドが見たのは迫る脅威にその身を晒し、仲間を守っている姿だけだったのだから。

(やれやれ……。)
よっこらしょとオッサンくさい台詞を吐きながら立ち上がるとルナルドは沸きやまない歓声に背を向け、とぼとぼと歩くカリスを追う。
その傍らにはいつ現れたのか白い犬。
『出掛けりゃいいってもんじゃない』
妙に渋い声でカリスへと話しかけている。
「そうだな、ポカリス売りとして生きてくなら店があった方が良いだろう?リリィ・ガンガーの売店なんてどうだ?
あそこは何時だって人材を求めてるからな。特にボクっ娘ポジションは今のところ空席だ。」
戸惑っているカリスへと畳み掛けるように声をかけた

302 名前:カリス ◆M5/Bnz694. [sage] 投稿日:2009/10/18(日) 19:07:13 0
『出掛けりゃいいってもんじゃない。』
白いお父さん犬―――カイ君の声に止め掛けていた足が完全に止まった。
叱責するような、それでいて諭すような声に含まれている感情は何だろうか。
人間の感覚は取り戻したばかりのせいか複雑な機微が思い出せない。

『そうだな、ポカリス売りとして生きてくなら店があった方が良いだろう?リリィ・ガンガーの売店なんてどうだ? ――』
実年齢より10才は渋く感じる声のルナルドが勧誘に加わる。
思い浮かべてみる。エプロンに三角巾を身に付けて売店に立つ姿。ポカリスを列をなして買いに来るお客たち。

「それも…悪くないかもしれない。」
考えが呟きとなって漏れ出たタイミングを見計らったかのように青い缶に腰かけた女性が降ってきた。

『リオン! よくやった! エリアスはどうした?』
カイ君が水の大精霊に尋ねるも返ってきたのは残酷な現実。
そう………エリアスは巨大な精霊力を行使した反動で青い缶へと変わり果てていたのだ!

「あれが…エリアス…あんな姿に変わってしまって…!元に戻す方法は無いの…パパ!パパ!」
カリスは驚嘆のあまりに倒れたカイ君に取り縋って、ゆさゆさ揺すって無理やり起こした。

『パパは止めなさい…! 諦めるのはまだ早い。
姿は変わり果ててしまったが、あの青い缶の中の液体は人の体液に近いミネラル比率。
ならば…後は肉体の材料があれば元の体を復元できるかも知れない。』

「なら…ボクの体を使って!」
『そんな事はできん!命を粗末にするのはいい加減にしろ!
そんな事をしてエリアスが喜ぶと思っているのか! 他にも方法はある。ゴニョゴニョ…。』

カリスとカイ君は駆け、草花と木の根に浸食された市場に辿りついた。
商品が散乱する無人の商店でカイ君が咥えた買い物かごに次々に商品を入れる。
『まずは骨の材料だがカルシウムたっぷりの骨っこを使う。私の大好物だからだ。』
「お肉はこっちの最高級のロースとタンを使おう。」
『いかん!肉の材料は特売品の100グラム98ミルダンティア$のを使うのだ。
あまりに高級品を使うとエリアスの人格に不具合を起こしてしまうからな。』

お金を置いて会計を済ませると急いで水の大精霊の元に戻る。
非常事態ではあるが、王都警備隊の一員であるカイ君が火事場泥棒をするわけにはいかないのだ。
『リオン、最後の仕上げは任せたぞ。しかし、これは賭けだ。
成功すれば元に戻るかもしれないが、失敗すればとんでもないものが生まれるかもしれない。』

鷹揚に頷いた水の大精霊は青い缶の中に骨っこと肉、他にも色々な食材を混ぜ込み、蓋を閉めるとシェイク!
それを3分程続けると缶容器の上面に付けられたプルトップを引っ張って缶を開ける。
開いた缶の中からは濛々と湯気が立ち込めて辺りを包むが、吹き抜けた森の薫風によってすぐに散らされた。

303 名前:エリアス ◆HjQYbfcR9Q [sage] 投稿日:2009/10/18(日) 23:15:35 0
>302
父上と姉上がどこかに駆けていった。
(母上、何で教えてあげないのだ!?
ブレイカーが墨色の郵便箱になるのと同じでしばらくしたら戻るって!)
母上は悪戯っぽく笑うだけ。

>『リオン、最後の仕上げは任せたぞ。しかし、これは賭けだ。
成功すれば元に戻るかもしれないが、失敗すればとんでもないものが生まれるかもしれない。』
(うわあああああああああ!!)
そしてほねっこと肉を投入されシェイクされる。
(うわなにするやめ……!)

もうもうと立ちこめる湯気が晴れ、それは竹から出てくるかぐや姫のよろしく缶の中から出てきた。
縁に手がかけられ、上半身が出てくる。ここまでは成功。
しかし下半身が人外になってたらどうしようかと最後まで気が抜けない。
無事に足まで人間型の全身が出てきたのを見て、カイ君が安堵の吐息をもらす。
「良かった、元通りだ……!」
「良く見てごらんなさい、少し違いますよ」
水の大精霊に促されよく2,3歩離れてよく見てみるカイ君。
「これは……!」
少し背が伸びて、今まで4頭身イメージだったのが6頭身イメージに。
服の胸部分には“ZERO”というロゴ。さらに手には青い缶の噴射器!
「姉上、おそろいだ!」
抱き合う姉妹の傍らで水の大精霊が意味不明の解説をし、カイ君が渋い声で締める。
「シトラスフレーバーによるすっきりとした後味はそのままに、甘さを強化することで
さらに美味しく生まれ変わりました!」
「めでたしめでたし」

304 名前:混沌たるジュリエット ◆OCiexBIRJ6 [sageジュリエットEND] 投稿日:2009/10/19(月) 02:26:13 0
貌を上げても瞳には何も映らない。
視界は靄がかかったようにぼやけていた。
その混濁したキャンバスの上に最前の光景が描かれる。
濃密な森の緑と夜の黒と精霊機の白。色は互いに混じり合うこと無く一つが全てを塗り潰す。白、白、白!
ジュリエットは、この場まで逃れざるを得なくなった原因―――直前の敗北を思い出して唇を噛む。

朦朧とした意識が明晰となるに従い、次第に瞼の中の霧が晴れてゆく。
最初に瞳が映したのは蒼穹を縦に分断する緑柱の塔。
間断なく続く穏やかな音に周囲を見渡せば、漣に揺れる紺碧。
アイギスの攻撃の直前に発動させた短距離跳躍はジュリエットの体ををミルディネ湾まで運んでいた。
「ここは海……森からは大分離れたようでちゅわね…かむちんも姿が見えまちぇんね…。」

まるで永い夢から醒めたようだ。

冥魔には本能として造物主に逆らう事のできないプログラムが組み込まれている。
女王に仕えて至高の供物を捧げる蜜蜂のように。
女王の為に広い地下神殿を築く働き蟻のように。

―――心地良い喪失感。

遺伝子の奥深くに刻まれた刻印が今は効力を失っていた。
今の肉体に造りかえられた時に造物主の認識をクイーンからラム・ダオに変えている。
そしてホメオツリーがラム・ダオと分離した事によって遺伝子の呪縛も消え去っていた。
正確には主の喪失で主に服従するプログラムが表に発現しなくなったのだ。

主の不在に心許なさより、呪縛から解き放たれた解放を感じる。
まるで枷を嵌められた奴隷の身分から女王となったような。
異界で生きてきた冥魔たちには、遺伝子という概念は無い。
故に、心の奥に語りかけてくるこの声は――――血の囁き。
「これからは、今までのくいーんに代わってわたくち自らがくいーんになりまちゅ!」

女王を失った蜂の群れの一匹から、新たなる女王蜂が生まれた。
「強い子供を産むためにもまじゅは男探しでちゅわね。」

陽炎の様に消えたのはスライムと藻の緑と蛸と少女を合わせた一時の悪夢。破れた夢の産物。
夢は破れても夢のままなのだろうか。
潮騒が言葉を紡ぐなら、潮風が詠うなら、破れた夢に何を語りかけるのか。

『さあおいで、夢の続きを見せてあげよう…。』

波が奏でる涕泣に風が憂愁を乗せて何処か遠くへと運んでいった。

305 名前:ラム・ダオ ◆MeEEeH/kao [sage] 投稿日:2009/10/19(月) 23:10:00 0
王都を覆う神木にはたわわな実が列を連ねる。
その一つが熟し、ゆっくりと皮を破り落下する。
轟音と共にシラト一家の中央に落ちたのは豪華なテーブルとティーセットだった。
「カリス。約束のお茶をしましょう?」
ラム・ダオがエニーシャと共に歩み寄る。
決戦前の約束を果たす為に・・・。

麗らかな日差しと和やかなお茶会。
穏やかな時間の流れの後、カップを静かに置きラム・ダオはゆっくりと一同を見渡す。
「皆さん・・・ありがとうございました。
世界を・・・そして、私たちを救ってくれて。」
穏やかな笑みを浮かべたまま、ぽろぽろと零れる涙をそのままに言葉を紡ぐ。
「ホメオツリーと分離した今、私は定命の者のとしての命を全うします。
ずっと長い間夢見ていたこの時を迎えられる・・・。」
その意味は・・・透けていく体が示していた。
万の時が人間であるラム・ダオをその流れに迎え入れようとしているのだ。

「もとより私はこの時代の人間ではありません。
ドルイドとして正しき自然の流れに身を置くことは無常の喜び。
そして、惜別の涙は人間の自然の感情。
私は今、人間に戻れたのですから。
そして死とは、ドルイドにとっては自然の循環の一つでしかないのです。
私は本当の意味で自然と一体になれる。
本当にありがとうございました・・・。」
深々と頭を下げ、最後に柔らかく穏やかなドルイドとしてではなく、明るく楽しげな人間の笑みを浮かべ、ラム・ダオは消えた。

しかし皆感じることが出来るだろう。
あらゆるところにラム・ダオの存在を感じられることを。
言葉通り、自然そのものとなり世界を見守るラム・ダオの微笑が柔らかな風となって世界に吹き渡る・・・。


#################################

それから暫く後、通信が回復したトルメキア大平原からラカン以下連合軍の無事知らせる通信が入る。
ブラックホールのより引き起こされた空間歪曲を利用し、ラカンが別次元への脱出口を開けていた、と。
また、ホメオツリーの実からこの戦いで命を落とした者達が生み出される事も。

306 名前:カリス ◆M5/Bnz694. [sage] 投稿日:2009/10/22(木) 03:34:40 0
『カリス。約束のお茶をしましょう?』
森の中で始まったのは、ラム・ダオ主催のティーパーティー。
ホメオツリーからひと際大きな実が落ちて割れると、中から現れたのは素敵なテーブルとティーセットがひとそろい。
「中々良い茶葉だな。そうだ…給仕はボクに任せて貰おうか。
今の時代の知識を仕入れた時にお茶会の作法も習得しているから心配はいらない。」

さっと木の影に回ったカリスは、一瞬でメイド服に着替えて戻る。
「お帰りなさいませ御主人様!ボク、今日から新しく御主人様にお仕えするカリスって言います!」
鬱蒼茂る森の中での平和なお茶会。まるで先程の死闘が冗談のよう。
「あ…わわ〜!ポットが〜!」
給仕の作法としてポットを運ぶ時には、あえて覚束ない足取り。
「危なかったぁ…てへへ。初日からご主人様に怒られちゃうところだったよ〜!」
テーブルに着く各人のティーカップにお茶を注ぐと辺りを包む良い香り。至福の一時。

―――――コト。
静かに置かれたカップが告げるティータイムの終わり。
正しき時の流れが波に攫われる砂の城のようにラム・ダオから姿を奪ってゆく。
楽しげな声と表情で話しながらも、その姿は陽の光に霞ませて。
「そんな…せっかく人間に戻れたというのに…!お母様…どうにかならないの!?」

険しい顔でホメオツリーを眺める水の大精霊アクエリオン。
『本人が自然の循環を望んでる以上は無理ね。
そもそもこの世界は天国や地獄を信じてる人の魂は天国や地獄。輪廻転生を信じてる人は転生するようになってるの。
この辺りのシステムはとってもややこしいんだけど…彼女は自然の循環を望むドルイドだから蘇生はまず無理。
でも…もし彼女が望むような世界になれば、いつかは新しい命としてこの世界に循環されるかも知れないわね…。』
「そうか―――ならば、お茶会の続きはそう遠くはならないな。」

######################

神聖ミルディアス王国暦316年―――

人々を震撼させた謎の冥魔獣の脅威は去った。
しかし、いつの時代も争いの火種は絶えることが無い。
神木によって多数の異次元と連結したこの世界には、毎週の様に魔王や邪神が降臨する。

―――だが、そんな絶望的な状況に立ち向かう組織があった。

集うは、超一流の能力を持った人格破綻者。
並びに財政破綻者、及び設定破綻者。
彼らに与えられた称号は、公務員。
身に纏う装備は、軍の横流し品。

人生と言う名の迷宮に挑むロクデナシ共の物語は―――――。

307 名前:エニーシャ ◆IZh0JJtPKA [sage] 投稿日:2009/10/22(木) 03:51:40 P
エニーシャは走った。全力で走った。巨樹から分離していくラム・ダオの元に。そして万感の思いを込めて抱き締めた。
華奢な肢体を折ってしまいそうだ――なのにどうしても腕の力を緩める気になれない。
幼子にでもなったかのように、感情がまるで制御できない。
その感情は、謝罪・安堵・喜び…片言の言葉となって口から零れ、熱い液体となって頬を濡らす。
エニーシャは泥と涙で汚れた自分の顔を袖口で乱暴に拭った。そして泣いているのは自分だけで無いと気づく。
内懐を探り、取り出した小さな布地を上司の頬に押し当てる。
それは別離の時に差し出し損ねた、あの色褪せた花模様のハンカチだった。
「……おかえりなさい、中尉」
そう言い、エニーシャは屈託の無い笑顔でもう一度中尉に抱きついた。

* * *

「美味しい…」

そして今。大樹の陰ではささやかな茶会が行われていた。

「――あ、それでドクターに預けた届けが1週間も放置されてしまいまして。通りでミーア操作手が睨んで――」

提案者はラム・ダオ。カリスとの約束であるらしいそれに、エニーシャもまた相伴に預かっていた。

「――季節は秋、しかも何やら立派な姿…エリアスも夏厨引退か。私より背が高いんじゃないか?――」

明るい会話、上品な茶、葉を広げる豊かな木々が心を癒す。

「――〜〜〜っ。カ、カリス、その、すまん、ミスをした、茶で舌を火傷した、ポカリスエット…って溢れてる溢れてる!――」

この日のエニーシャはいつになく饒舌だった。
思うことを、思うまま言葉にする。
ただ一つだけ口にしなかったのは――

「中尉」

“この茶会…急いだのは何故…?”

「……………空気が美味しいですね。私も森が好きになりました」
通信機には【呼び出し15件】の表示。
すみません。今だけ、規則に背きます。


308 名前:エニーシャ ◆IZh0JJtPKA [sage] 投稿日:2009/10/22(木) 03:55:48 P
――その時は不意に訪れた。
談笑していたラム・ダオが何かに気づいたように言葉を止め、カップを置く。
そして穏やかな笑顔を浮かべ、涙をこぼしながら語る。
『ホメオツリーと分離した今、私は定命の者のとしての命を全うします。
ずっと長い間夢見ていたこの時を迎えられる・・・。』

「中尉……体が…!?」
――ああ、だから急いでいたのだ。
悲しい予感は的中してしまった。

「そんな…これでは余りに…報われません…!!」
現世に繋ぎ止めるようにラム・ダオの手を握りしめる。――そして後悔した。
その感触は既に現実感を失いつつあった。
――ぽん。
たしなめるように、頭の上に手が置かれる。
ラム・ダオの笑顔が曇ることはなかった。ただ少し困ったように揺れただけ。

『ドルイドとして正しき自然の流れに身を置くことは無常の喜び。
そして、惜別の涙は人間の自然の感情。
私は今、人間に戻れたのですから。
そして死とは、ドルイドにとっては自然の循環の一つでしかないのです。』

淀みない言葉。おそらくとうに覚悟は決まっていたのだろう。
そしてエニーシャもまた思い出す。
自分がしたのは――彼女がさせてくれたのは――こういう覚悟であると。
だから泣くな。斬った【森】と中尉のためにも泣くな。みっともない姿を見せるんじゃない。
しかし何度言い聞かせても溢れる涙は止まらない。
――“失う相手”と、“失わせる相手”が同じだなんて。

『私は本当の意味で自然と一体になれる。本当にありがとうございました・・・。』
「――あの!」
エニーシャが口を開きかけた刹那だった。
風が吹いた。
木の葉が舞い、目を細める。
再び瞼を開いた時、ラム・ダオがいた場所にはもう何も残されていなかった。
呆然と立ち尽くす。最後の言葉も間に合わせられなかった――

(…いや)
そうではない。
そこにラム・ダオはいた。そこでない全ての場所にも彼女はいた。
言葉を焦る必要などなかったのだ。
彼女は、1万と2000年後も決して絶えないサイクルの中で微笑んでいるのだから。

「……貴女のことを心から尊敬しておりました」

聞こえてますよね――?

「皆、きっといつか同じ場所にいきます。それまで……待っていて下さい」
呟き、目を閉じる。
魔捜局で起こった様々な出来事を思い返しながら、彼女は暫くそうしていた。


309 名前:エニーシャ ◆IZh0JJtPKA [sage] 投稿日:2009/10/22(木) 04:04:45 P
やがて――流れ落ちた涙が乾いてしまう頃。
深呼吸を一つ、仲間たちへ振り向く。
「……待たせた」
肩をすくめる。視線の先には、手に握った通信機。
「【呼び出し23件】…大目玉だな」
その何かを吹っ切ったような微笑みは――ラム・ダオにはまだ及ばないけれど――穏やかに澄んでいた。
通信機を操作し、回線を開く。

「――エニーシャ・ローデスよりミーア操作手」

《少尉〜〜〜? もー、何してたんですかぁっ!
作戦終了の報告からいくら経ったと思ってるんです?チーフがカンカンですよ!》

「あー…その……すみません」

《…事件の中心メンバーがお花見してたって証言があるんですけど》

「すみません、しかし花見ではなく茶――」

《すみませんで済んだら軍隊はいりません!っていうかホントに何してるんですかー…。
とにかく、中央庁舎に即刻集合ですからね!急いで下さいねっ!》

「了解」

プツン。

報告、始末書、修繕、その他事後処理諸々。何より王都のど真ん中を占領する神木――“柱”の影響が未知数だ。
一苦労だと苦笑する横顔を、励ますように軽やかな風がくすぐる。
わかっている。待ち受ける困難が常識外れであればある程、それは自分たちの領分だ。
それはとても達成感のある仕事で――きっと、楽しい。

「――よし。帰ろうか」
エニーシャは明るく、楽しげな笑顔を浮かべて一歩足を踏み出した。


310 名前:エリアス ◆HjQYbfcR9Q [sage] 投稿日:2009/10/22(木) 23:08:34 0
>305-309
森のお茶会が始まった。落ち葉の絨毯の上で精霊犬と精霊猫が戯れている。
姉上が完璧な作法で給仕する。
「そんな知識まで仕入れていたとは……!」
>「――季節は秋、しかも何やら立派な姿…エリアスも夏厨引退か。私より背が高いんじゃないか?――」
「そうだ。何も夏にこだわらなくてもアクエリアスはオールシーズン宣伝している!」

>「皆さん・・・ありがとうございました。
世界を・・・そして、私たちを救ってくれて」
「水臭いぞ。仲間じゃないか……どうした!?」
ラムちゃんの体が次第に透けていく。
彼女はずっとこの時を望んでいたのだ。笑って見送るべきなのだろう。
でもせっかく人間に戻ったのだからもっとお話ししたかったな。
遥か古、森の大精霊が見初めた少女とはどんな人だったのだろう。
だけどラムちゃんが最後に浮かべた笑みでその答えが分かった気がした。
>「私は本当の意味で自然と一体になれる。本当にありがとうございました・・・。」
同じように笑い返す。
「ラムちゃん、安心して。あなたが愛した世界樹は我らで守る……!」

涙を流すエニーシャちゃんに精霊犬がそっと寄り添う。
「こことは違う世界に千の風になってって歌があるんや……。こういう事やったんやな」

>「――よし。帰ろうか」
「そうだな。姉上も一緒に帰ろう!」

――――――――――――――――――――

そして時は流れ、神聖ミルディアス王国暦316年―――
世界は未曾有(みぞゆう)の事態に陥っていた!

<<神木ホメオツリー付近に邪神出現反応発生であります――>>

<<……繰り返すのであります。
 神木ホメオツリー付近に邪神出現>>

ヤバイ。ヤバイ。まじでヤバイよ、マジヤバイ。
神木ヤバイ。
(中略)
とにかく貴様ら、神木のヤバさをもっと知るべきだと思います。
そんなヤバイ神木を防衛する我ら超偉い!

猛スピードで艦内を疾走するはスクーター。
良く見なくても車輪はあるが地上から少し浮いて滑走している。
乗っているのは水中雪山両用ゴーグルに青い缶のどうみてもオールシーズン対応です本当にありがとうございました。
「ほいさー!」
勢いよくブリッジへの扉をあけた!

311 名前:ルナルド ◆SiFiw1brbM [sage] 投稿日:2009/10/23(金) 02:51:59 0
王都郊外の小さなプールバー。
カウンターの奥では店主である大柄の男がむっつりとした顔で黙々とグラスを磨いてる。
休日ともなれば軍関係者でごった返す店内も今は二人の客の貸切となっていた。
一人は30代一歩手前といった風貌に軍用のジャケットを羽織り、もう一人は壮年だが引き締まった体躯に軍服を品良く着崩している。

「ご苦労だったな曹長。まずは良く生還したと言っておこう。」
グラスを置き壮年の男が口を開く。
手元には酒のつまみだろうかウィング、リブ、サイ、ドラムと鶏の各部位を揚げた物が山となっていた。

「そちらこそ大佐殿。こうして再開できて奢ってもらえるとは至上の喜びですよ。」
紫煙をくゆらせながら年不相応の渋い声でもう一人の男が答える。

「君も彼女の最後を看取ったのだったな……。」

「ええ、笑って逝きました。もっと湿っぽくなると思ったんですがね、みんな強くなった。」
目を閉じれば新緑の屋根と木漏れ日の照明、草の芳香と落ち葉の絨毯。
最後の茶会の光景が思い出される。

王都での戦い以降いろいろな事があった。
世界を繋ぐ神木の出現。
ミルダント16世陛下の婚儀。
仲間との別離。
そして――魔捜局の解体。

「そういえば曹長、もう軍歴を偽る必要もあるまい。こちらへ戻す手続きはあらかた終わっているが?」

「いいえ大佐殿。俺は伍長としてあそこへ残ろうと思います。」
魔王の力の消失と共にMAY-Qも消え世界は平和を取り戻したかに見えた。
だが世界を繋ぐ神木を狙う異世界の侵略者の襲来。
その防衛には現存する最も戦い慣れた部隊、即ち解体された魔捜局がそのまま当てられた。
王都へと根を下ろした巨木を守ろうとした者の名を冠した新たな組織として。

「そうか……なんとなく君ならそう言うと思っていた。独立防衛局"ラム・ダオ機関"だったか。」
二人は薄く笑い合うとグラスを傾け中身を飲み干した。



そして時は流れ、神聖ミルディアス王国暦316年―――
幾度と神木を狙う戦いが起き、しかし神木はその姿を今も王都に残していた。
またそれを守る者たちも。

<<いつまでごねてやがるんだ伍長、今動かせる精霊機はそれしかないんだ我慢しろ!>>
通信機からはがなり立てるウリバーの声。
(そうは言うがな……)
操縦席に身を沈めながらルナルドは嘆息する。
この前の戦闘で破損したヴィカースは何故か交換パーツの在庫が狂っており未だ修復が間に合っていない。
方々に求めてみても返ってくる答えは「取り寄せには時間がかかる」の一点張りだ。
ここまで来ると何かの陰謀を感じてしまう。

「あークソっ、わかったよ!こちらルナルド・ファシス伍長いつでも出れる!!」
自棄になって怒鳴り返すと、自分の搭乗している――どこまでも原色で彩られた無駄に高スペックな――精霊機"ドナルド"の発艦を待つ。
<<そうこなくっちゃなぁ!カウント3――>>
ウリバーの嬉しそうな声が余計に腹立たしい。

「しかし次から次へと沸いてきやがるな。まだまだ世界は平和とは言えないらしい……。」
先に出撃しているエニーシャやエリアスやカリス、そして他の同僚達を視界に収め――

「――俺達の戦いはこれからだぜ!」
精霊機のバーニアを全開にし飛び立った

312 名前:END ROLL[sage] 投稿日:2009/10/24(土) 23:27:24 0
CAST PC

ヴェルデトリポカ ◆b6./ifc./kXO
エニーシャ ◆IZh0JJtPKA
エリアス ◆HjQYbfcR9Q
カリス・ポォツェット◆b6./ifc./kXO
・カリス=シラート
"ゴースト" ◆/rhlAKoCtQ
"黒衣の魔術師"ブレイカー ◆v/ikj/qTK2
"紫煙の死神"ナギ・セノー ◆LtWG0drAw.
ジュリエット ◆b6./ifc./kXO
・混沌たるジュリエット ◆OCiexBIRJ6
"砂嵐の月"カムシン ◆GXjNfbVyU.
"墨染の悪魔"シスター ◆CIptpZ5NA6
ナフィス ◆Bn2na9AVLk
"夢幻の世界"クイーン ◆cR7CVi4c.o
メイ・リーファ ◆CGsmHeQJubOP
ユゴス ◆MeEEeH/kao
ラム・ダオ ◆MeEEeH/kao
ラァ・ユェーグ ◆b6./ifc./kXO
ルナルド ◆SiFiw1brbM

313 名前:END ROLL[sage] 投稿日:2009/10/24(土) 23:37:11 0
CAST NPC

"オペレーター"ミーア
"メカニック"ウリバー
"チーフ"ナーヴァ
"セクレタリ"マーヤ
"ドクター"アイネス
"コック"ホーマ
"マスターミルダンティア"ラガン先生
キファ
マッチョ軍団
ラクリス・クラリン
大地の大精霊エアリス
剣の精霊
カイ君
鍋の精霊インチキオジサン
水の大精霊アクエリオン
サンダース大佐
ガラハド公爵
ヴァーリ侯爵
宮廷魔道士デュランダル
サダーハ・ルオ
ミルダント16世(精霊皇帝カイザー)
デッキブラシ
精霊犬
精霊猫
精霊鹿

314 名前:名無しになりきれ[sage] 本日のレス 投稿日:2009/10/25(日) 02:23:00 0
以下NG集

こちら"ミルダンティア王都立市街魔術迷宮捜査局"!

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