1 名前:名無しになりきれ[] 投稿日:2010/04/17(土) 20:25:29 0
さて、と言う訳で立てたぞ。SFTRPGだ
概要は以下の通りだ。目を通しとくと後々自分や同僚の為になるぞ

基本の形は

SFってのは共同作業で創り上げる世界観としては余りに面倒だ
何故って、古くからのガチでハードなSF好きと、とりあえず光学迷彩したり粒子砲撃ったりしたりライトなSF好きとの認識の差が激しいからな
と言う訳で今回は、ある世界の科学力によって並行世界とのアクセスが可能になった
しかしアクセスを受けられたのは一部の科学が発達した(程度は伏せる)世界のみだった!
とすれば、程度や方向性の違う科学力が矛盾せずに存在出来る
その気になれば現代人の一人が偶然波長があって、超科学の世界にご招待!
みたいなキャラでの参加も可能で、お手軽感が増し増しって寸法だ
まあとは言え『ガチ』の連中ががこれをSFと認めるかは疑問が残るけどな

と、こんな所だ。更に下に続く

通信が成功したのは惑星がいいか、それとも並行世界がいいか →何も意見が出なかったから異世界としといた
発達した科学は魔法と区別が〜ってのはナシ。便宜上SFだからな
でも魔法に技術体系の似た科学なら問題ナシ。ようはちゃんと科学っぽくするか理屈付けで考えろってこった
その理屈は屁理屈でもおk。でも忘れんな、あくまで『サイエンス』フィクションだからな

って訳だ。じゃあ仲良くやってくれ
あと避難所等が欲しかったら言ってくれれば良い
http://jbbs.livedoor.jp/computer/20066/
ここいらで借りれば文句も少ないだろう。外部だが管理人は何処の誰だか分からんって形になる

2 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2010/04/17(土) 20:27:58 0
そしてテンプレだ
項目の追加などはご随意にやっちまってくれ


名前:
職業:
元居た世界の名称:(決めていればで構わない。他の同僚と同郷でも問題ないが、その故郷の世界観を尊重する事を忘れないようにな)
性別:
年齢:
身長:
体重:
性格:
種族:(タコ足星人みたいのがいても変じゃないからこの項目を作った。エルフっぽい外見や獣人とかでも問題無いだろう。
    そう言った遺伝子構造だったのだ。で一応の説明が付く。でもしつこいようだが、あくまでSFである事を留意)
外見:
備考:(生い立ちやら、好きな事を書けばいい)



元居た世界の『科学』の名称や形態:(構想があるなら頑張りすぎない程度に書くといい
                  無いなら無理せず『ライトなSF』『戦争続きだった為軍事的な物が多く』『宇宙開発特化』とでも書いておけばいいさ
                  別にこのスレは空想科学展覧会場って訳でもないんだからな)



※:テンプレを見たら誤解を招きそうだったから書いとくが、何も必ず『異世界人』である必要はない
  中心の世界で生まれ、中心の世界の混合科学を漠然と知っているような人間でも何ら問題はないぜ
  複数の種族のハーフなんてのもいるんじゃないか? 五本足のかわいこちゃんってのは……どうなんだろうな。需要はありそうだ

3 名前: ◆o6YVWr9M.. [sage] 投稿日:2010/04/17(土) 20:29:47 0
『ハローハロー。異世界の皆様、聞こえますでしょうか?
 我々は貴方々と時空の異なる世界の住民でございます。文字通りの異世界ですね。
 そしてこの通信が示すように、我々はつい先日、かねてより開発を進めていた異世界間通信を完成させました。
 無論、ある程度の技術を有した世界でなければ受信が出来ないと言う真に残念な、改善すべき点もある技術なのですが。
 ともあれ今はこの通信の主旨を述べましょう。
 異世界の皆様、我々の世界へいらっしゃいませんか?
 と言うのも実のところ、この通信技術は一人の天才によって齎された天啓のような物でして。
 我々の世界は全体的な技術は、高いとは言えないのです。
 しかし勘違いなさらぬよう。我々は決して、貴方々の技術を無償で頂戴したいなどと言う訳では御座いません。
 
 我々は代わりに、この世界を提供いたしましょう。この世界に訪れた、異世界の皆様に。
 
 見てみたいとは思いませんか? 貴方々とは全く異なる技術体系、想像すらしなかった科学の在り方。
 それらがこの世界を器として、混ざり合うのです。
 その器の中に描かれる模様が一体如何なものなのか、気になりませんか?
 
 ……さて、これで我々の通信は終了です。
 もしこの提案をお受け頂けるのならば、『合意』の意を送信して下さい。
 何処へ、とは言いません。送信さえして頂ければ、我々はそれを何としてでも受信致します。
 猶この通信は様々な異世界へ、無節操に送信しております。
 でなければ意味がありませんし、少なからず、我々が一方的な侵略を受ける事に対する抑止策の意味合いもあります。
 我々が皆様が望むのは未知の世界の構築であり、植民地の作成ではありませんので、不快感を覚えるかもしれませんが、悪しからず。
 
 それでは皆様、『まだ見ぬ世界』でお会いしましょう。猶この通信は、概念言語なるものを使用しております』



「……と、これが初めての異世界間通信の原文です。この通信から、この世界の基準で一世紀。
 この世界は通信文の内容にあった通り、変わりました。様々な技術体系を持つ科学が集い、『まだ見ぬ世界』を作ろうとしました」

長々しい教科書の例文をつらつらと読み上げ、一呼吸置いた女性はそう述べた。
学校、教科書、教師、どれも旧時代のものではあるが、様式美などの意味を有して、この世界に現存している。
学校関連だけではなく、異世界それぞれの、昔の街並みを保存した住宅街だってあるくらいだ。

「この世界が元々有していた技術は二つ。一つはさっきの異世界間通信ですね。
 そしてもう一つは、異世界人を誘致する技術でした。ただそれだけの技術から始まったこの世界は、
 文字通り『まだ見ぬ世界』へと変貌を遂げました。そしてそれは今もまだ、続いているのです」

多種多様で高度な技術が集いながらも、この世界は何処か、ちぐはぐな様相を示す所がある。
まだ集まった技術同士が混ざり合っていなかったり、また技術と技術の隙間が存在するからだ。

「ですがそれは決して悪い事ではありません。それらを含めて、『まだ見ぬ世界』なのです。
 この先、この世界はまだまだ変化していくでしょう。進化していくでしょう。新たな姿を見せるでしょう」

一旦言葉を切り、女性は視界に並ぶ生徒達をおもむろに見渡す。
視界を左右に一往復させてから、彼女は言葉を再開した。



「貴方達もいつか、どんな形でも構いません。その『まだ見ぬ世界』を築き上げる一助となりましょうね」

4 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2010/04/17(土) 20:30:23 O
※このスレは基本age進行です
※荒らしには話し合いで理解を求めましょう
※二日ルールです。期限を過ぎたキャラはNPC扱いになります
※版権も越境も許可します

5 名前: ◆o6YVWr9M.. [sage] 投稿日:2010/04/17(土) 20:31:31 0
と言う訳で参加します
今回は導入文だけなので、テンプレは後ほど

6 名前: ◆o6YVWr9M.. [sage] 投稿日:2010/04/17(土) 20:34:22 0
>>4
おっと忘れてた。その手のルールも決めなきゃだな
二日は厳しいので五日でいいだろう。参加者が増えたら意見を募って決めてもいい
版権や越境は申し訳ないが無しとする
どうしてもやりたかったら、それらをベースとしたオリジナルで来てもらおうか

7 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2010/04/17(土) 20:35:51 0
またやどかりの無責任放置スレか

8 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2010/04/17(土) 20:38:24 O
フランクなつもりなんかしらんが、えらい上から目線だな
っゆー印象を持った

9 名前: ◆uGoe3Ttvpo [sage] 投稿日:2010/04/17(土) 22:12:51 O
《こちらドール01、こちらドール01。誘導を感謝する》

前方の機械へ、解放した通信で連絡する。反応はない、原始的な誘導機械だったのだろうか?それ以上の思考を
中止し、大気圏への突入を開始するためにスラスターを吹かせ、角度を調整する。

《ドール02より、幸運を祈る》

《ドール03より、同じく》

《ドール01より、有難う。これより大気圏に突入する。突入時には通信が途絶することが予想される。アトゥ》

《こちらアトゥ、了解。これより衛星軌道から貴船の後方支援に入る。最適の健闘を》

プツリ、と通信が切れる。突入開始したのだ。機体の表面温度が跳ね上がるのがグラフから見て取れる。この後、
無事に大気圏を突破できたら迷彩を展開させ、データ収集に入らなければならない。恐らく休む暇は今しかない。
オートパイロットに切り替え、投薬量を調整し、一時的な休息に身を委ねる。
意識を閉じる瞬間にふと、思考に引っ掛かった数値……元素の比率の異常を示す数値に、自分は今、確かに違う
宇宙に居るのだと実感する。
我々よりも原始的で、豊かな資源を持つ宇宙へ。


10 名前:ドール01 ◆uGoe3Ttvpo [sage] 投稿日:2010/04/17(土) 22:16:07 O
名前:ドール01
職業:帝国軍人
元居た世界の名称:ミスト3
性別:男(正確に言えば子供を産まない方)
年齢:1歳(コピー元から完全に分離されて一年)
身長:脳を納めたポッドの大きさなら約40センチ。ポッドを納める戦闘機の大きさなら約20メートル。船外活
動用の人形を言えば170センチ前後
体重: ポッドは約800グラム。戦闘機は約2.5トン。人形は50キロ前後
性格:堅物
種族:人類と姿形は良く似た種族
外見:ポッドは金属製の円筒。戦闘機はコックピットが見当たらないくて、一見流線型のなめらかな金属の固
まりに見える。前後の区別はつくはず。人形は二本足の人形ロボット、知らない人が見れば宇宙服に見えるかも。
備考:ミストと言う世界のにある帝国の軍人。帝国の命を受けて、中心世界への侵略の足掛かりを掴みに来た。
“ドール隊”の隊長。
“ドール隊”には他にドール02、ドール03、母艦を操作しているアトゥがいる。
元居た世界の『科学』の名称や形態:次元跳躍はあまり得意ではない(現に帝国はドール隊しか送り込めなか
った)
時間跳躍は不可能
ワープ航法は可能
主に自身の体を作り変える生体工学が発展している


【と言うわけで参加します。よろしくおねがいしまする】

11 名前: ◆udCC9cHvps [sage] 投稿日:2010/04/18(日) 15:18:14 O
「博士?博士〜もう朝ですよ。起きてくださいよぅ」

博士、と呼ばれる人を揺する人影。
小柄なその人物はボサボサの頭で全裸に引っかけるように着た白衣の人物を必死に揺り起こしていた。
しかし、その「博士」はわがままな事でも有名である。

「眠いからヤダ」

「ヤダって……ご飯冷めちゃいますよ?」

「朝から白米とかどこのザパニーズよ。絶対食べないんだから」

そういうと博士は布団に潜り込むと目を閉じる。
大丈夫。いつものことだ。

「ハニートースト」

ピクリと布団が蠢く。大丈夫後は、勢いで押し返せる。

「チョコレートドリンク。後……」

「おk。服来てぐから用意しといて」

撃沈。これがこの家の毎朝の光景である。

「早く来てくださいね?」

そう言い扉を開けたとき、ゲートが開かれたのだった。
「あれ?」

気付かずに扉をくぐったのは幸か不幸か……
くぐった先に広がるのはみたことのない世界。

「どうしよう。どうしよう……」

12 名前:◆udCC9cHvps [sage] 投稿日:2010/04/18(日) 15:24:27 O
名前:C
職業:主夫
元居た世界の名称:別な世界を認識していなかった為特になし。
性別:雌雄同体
年齢:12547963歳(現実世界に直すと15歳)
身長:低い
体重:軽い
性格:穏やか
種族:ダッチワイフ
外見:ショタ
備考:人間にごく近いが別種の生物。
   とあるずぼらな研究者の家事を担当していた。
元居た世界の『科学』の名称や形態:人間によく似たダッチワイフと呼ばれる生物が居る世界。
   基礎科学力は現代と同じだがエネルギー制御に関する知識が豊富。
   ダッチワイフは元居たとある世界では性的嗜好も含めた玩具のような存在。

13 名前:】◇o6YVWr9M[sage] 投稿日:2010/04/18(日) 23:14:42 0
中心世界で最も高いと称されるビルがあった。
とは言え形状はビルと言うよりも、塔――地表から天へ伸びる針のそれに近い。
異世界間通信が成されてから初めに集った四つの世界、
彼らの各様な科学によって建てられたそのビルは名を『未知への指標』と言い、程無く建築百周年を迎える。
にも関わらず、百年間依然変わる事の無い銀色を湛えていた。
当時の科学技術の粋とも言えるこの建築物は、『異世界人同士の変わらぬ親交』のモチーフなのだ。

そして『未知への指標』の最上階、宙空に浮かぶ無数のモニターによって仄明るい部屋があった。
モニターは尖塔の先端とは思えぬ程広い部屋の中を暇無く、球形を描くようにして並んでいる。
球の内側には一体如何なる原理によってか、浮遊する円卓と、椅子が一脚だけ。
巨大な卓と見比べれば不釣合いな、しかし十分に大きく優雅さを醸す椅子には、一人の男性が腰掛けていた。
姿は標準的な『中央世界人』のナリを、上等な――合成でない天然のウールを用いたスーツで包んでいる。

更に彼の隣には、一人の女性が凛と澄ました態度で佇んでいた。
長い睫毛に縁取られた目を瞑り、薄い唇を真一文字に結んで屹立する彼女は、男性と同じくビジネススーツを纏っている。
すらりと細い頭身の彼女は容姿も相まって、クールビューティと呼ぶに相応しい。
ただ人によっては、スーツやスカートに覆われていない四肢に、薄い線が幾重にも走っている事に、目が行くかも知れないが。

不意に軽やかな電子音が二つ、重なりながら室内に響く。
伴って、球を成すモニターが二枚、朧気な赤色に染まった。
女性の切れ長な目と唇が開かれる。

『大気圏外にて、未知の通信を確認しました。また新たな『来訪者』のようです』
「へえ、随分と久しぶりだね。それも同時に二つとは……動向は分かるかい?」

『来訪者』と言うのは、異世界から訪れた何者かの呼称だ。
100年前に発せられた通信は今も異世界の狭間をさ迷っている。
故にこうして、新しい『来訪者』が来る事も有り得るのだ。

『片方は街中に現れたようです。危険は今の所ありません。
 もう一方は……どうやら迷彩を展開したようです。大気流動、熱源、その他全ての感知要素から捜索中……見つけました』
「ありがとう……。ふむ、しかし降ってくるとなれば急いで近隣の一般人を避難……いや、まずはエネルギー拡散力場の展開だね」

滔々と語る男性は一度言葉を切り、それと、と繋ぎの一言を挟む。

「『私』の手配を早急に頼むよ、ジェリー君」
『既に向かっております』
ジェリーと呼ばれた女性はそう報告したきり、再び目を閉ざした。




14 名前:クロウン・アイソトープ◇o6YVWr9M..[sage] 投稿日:2010/04/18(日) 23:15:24 0
>>9

「やれやれ、力場展開が間に合ったようで何より。……それにしても、避難勧告を出した筈なのに、全く何だねこれは」
視界に広がる人々の群れに、『男性』は嘆息を零す。
意を決して人混みに飛び込むと、前の人達に断りを入れながら押しのけ、進んでいく。
人垣の向こうでそそり立つ、流線型の『来訪者』へと。

「……さて、ようこそ『来訪者』さん。私はこの『中央世界』の『議長』、
 クロウン・アイソトープだ。私は、我々は君と君の世界を歓迎しよう。……これは、聞こえているのかな?」

普段の癖から握手を求めようと差し出された手は、しかし巨大な金属の円筒を前に中を泳ぐ。


そして彼とその仲間がもしも、目の前での出来事を確認していて、尚且つ通信を再開していたならば。
各々の前に『まったく同じ姿をして、同じ名を名乗った男』がいる事を理解するだろう。


>>11

慌てふためく『C』は瞬く間に、押し寄せた周りの人々に取り囲まれてしまう。
彼らは口々に「ようこそ」だとか「歓迎するよ」等と言った事を口走っているのだが、
果たして混乱を窮めている『C』にそれらの言葉は届いているだろうか。
言語の壁に関しては、『中央世界人』に生きる者は皆『概念言語変換機』を所持している。
それにより言葉の概念のみを抽出して送り出しての会話を行っている為、通じるには通じる筈なのだ。

「やれやれ、こちらも一応避難勧告は出したんだけどなあ。体内の大気とか、本人にその気が無くても危険な場合だってあるのに」
そこに再び『男性』が、クロウンが訪れる。

「……さて、ようこそ『来訪者』さん。私はこの『中央世界』の『議長』、
 クロウン・アイソトープだ。私は、我々は君と君の世界を歓迎しよう。……これは、聞こえているのかな?」

奇しくも『他の三人』と同じ事を口走りながら、ひとまず彼は目の前の、少年の姿をした『C』に握手を求めた

15 名前:クロウン・アイソトープ◇o6YVWr9M..[sage] 投稿日:2010/04/18(日) 23:16:35 0
名前:クロウン・アイソトープ
職業:中央世界議長
元居た世界の名称:中央世界
性別:男、メイル
年齢:一律で51歳
身長:180cm
体重:75kg
性格:おおらか
種族:
外見:スーツ
備考:初めの『四世界』と『中央世界』から選出された『議長』の一人の完全クローン体
   5人いた内の4人が死去した後、残った一人が『議長』としての職務であった『平和、異世界人間の親交の維持と発展』
   の為に時世界の技術を用いて作らせた、いわば『議長』と言うシステム
   ちなみに彼らは第二世代で、オリジナルと第一世代は死去している。


元居た世界の『科学』の名称や形態
オリジナルのいた世界はオーソドックスに高い技術を有していた。
中でもクローン技術は長けていて、完全な同個体の製造や後天的要素の複製、寿命の問題等もクリアしていた。

また中央世界は『四世界』を初めとして、集った様々な異世界の技術が混合された科学を有している。


【ドールさん、Cさん、よろしくお願いします】


16 名前:ドール01 ◆uGoe3Ttvpo [sage] 投稿日:2010/04/19(月) 00:27:54 O
偵察を開始して数時間。なんとも意外な形で機体を表に晒す事になった。

《ビーコンを受信しました》

機体に積まれた対話学習型のAI、YITHが私の意識上に二次元的なウィンドウを展開した。ウィンドウに表示され
た地図には、予測されるビーコンの発信源が表示されている。

《それがどうした》

元々偵察に来たのだ、交信すべき相手がいるとは思えない。

《“貴殿が見えない、後十時間で事故と処理し、捜索隊を派遣する”ビーコンから発信された内容です》

《……無視することは?》

《あまり推奨できません、こちらの存在が既に気付かれていた、と考えるのが妥当でしょう。それに》

我々の母艦と隊員達は未だ気付かれていないようだ、とYITHは推測した。気付かれているのなら、既に隠れる意
味はない。むしろ捜索隊を組織されて、母艦や隊員達を発見される可能性を無闇に増やすよりは、こちらから接
触に応じた方が幾分マシだ、と。

《選択の余地は無いようだな》

機首を旋回させて、全ての迷彩を切る。ビーコンで指定された周波数に無線を合わせ(ごく原始的な方式の電波
だった)通信を開始した。

《こちらドール、只今機体の不調によりレーダーに写らなくなっていたようだ。そちらに着陸願う。繰り返す》

何度かの反復の後、着陸の許可が下り、ドール01はゆっくりとその体を巨大な都市の交差点へ降ろしていった。

17 名前:ドール01 ◆uGoe3Ttvpo [sage] 投稿日:2010/04/19(月) 00:30:24 O
「……さて、ようこそ『来訪者』さん。私はこの『中央世界』の『議長』、
 クロウン・アイソトープだ。私は、我々は君と君の世界を歓迎しよう。……これは、聞こえているのかな?」

僅かな驚きと共に、画面上に写る男の姿を眺める。姿形が我々とそっくりだ。と言っても脳の摘出手術を受ける
前、と言う意味でだが。

《人形へ、ドール01の意識をインストール完了しました。並列化しますか?》

《いや、しなくていい。“私”とは分けてくれ。次にドール01に乗る機会があれば、その時にでも》

《了解しました。これよりYITHはドール01の人形へのコピー、“ドール01”の支援に入ります》

そうして、戦闘機に乗る“私”は船外活動用の人形にインストールされた“私”の二人になった。


∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵

戦闘機のハッチが開き、中からは宇宙服のような形をした人形、ドール01が出てくる。戦闘機の前で立つ男、ク
ロウン・アイソトープに向き合い、無造作に自己紹介をした。

《こんにちは、私はドール。この国の文化は知りませんが、私は貴方達に敬意を払うつもりだし、貴方達が私に
敬意を払う事を望んでいます》

【ドール01:クロウンと接触】

18 名前:◆udCC9cHvps [sage] 投稿日:2010/04/20(火) 00:07:03 0
状況が分らずにただおろおろと周囲を見渡す。
そんな「彼」をよそに彼を取り囲んだ人物たちは奇妙なニュアンスの言葉で接してくる。

「あ、あう……」

実のところ、Cには人と接した経験が全くない。その原因は保護者である所有者にあった。
彼の所持者である「博士」は尋常ではない程の独占欲の持ち主であり、彼女の意志のもとCは外界から隔離された存在だった。

そのため彼に与えられた世界は「博士」と自分。それから時折、顔を見せる「アケミチャン」という人物で構成されており、
このような人だかりは初めての経験であった。
混乱を通り越して思考停止に陥ったC。その時だ。そんなCの様子に気づいた人物が現れる。

「……さて、ようこそ『来訪者』さん。私はこの『中央世界』の『議長』、
 クロウン・アイソトープだ。私は、我々は君と君の世界を歓迎しよう。……これは、聞こえているのかな?」

Cの周辺の人をのかしながら現れる壮年の男性。その差し出された手は何処となく温かみを感じさせるものだった。

「クロウン・アイソトープ?」

名前。と思しき内容の部分を抽出すると言葉として発してみる。
そして、そこでCはとんでもない事に気がついた。

今、自分が何をしていたのか?と言う事だ。

いま、じぶんははかせのしょくじをつくっていたのではないだろうか?

「……うわわわあぁぁぁあああああああああああああああああああああああ!!」

19 名前:◆udCC9cHvps [sage] 投稿日:2010/04/20(火) 00:07:50 0
「博士?は〜か〜せ〜?」

「どうでした?」

「ダメです。こうなったらこの人は誰にも止められませんよ……」

薄暗い研究室の一角に備え付けられた小さな食事台。
その上にはもう冷めてしまったチョコレートドリンクとハニートーストが並んでいる。
その前にペタリと女の子座りで座ると何もない空間を見つめている人物がいた。

「にしても、不思議な話ですよね。あの子犬君が出て行ったなんて……」

「ですねぇ。でも家出とは限らないんじゃあないかな?」

「まぁな。普通ダッチは家出とかはしないからな。捨てられるならあるけど」

「つまり、それだけ条件付けをしてなかったんでしょうね。博士。あの子にベッタリだったし」

「本当、皮肉なもんだよ。本来なら依存しなければ生きていけないダッチに依存していたなんてな」



切れかけの蛍光灯の明かりの中、彼女は飽きることなく幻想に浸っていた。



20 名前:クロウン・アイソトープ ◆o6YVWr9M.. [sage] 投稿日:2010/04/20(火) 04:31:10 0
> 《こんにちは、私はドール。この国の文化は知りませんが、私は貴方達に敬意を払うつもりだし、貴方達が私に
> 敬意を払う事を望んでいます》

銀色の円筒から現れた、ドールと名乗る宇宙服めいた姿の――恐らく男にクロウンは改めて握手を求めた。
ドールは概念言語変換機を持っていないが、クロウンも伊達に『議長』をしている訳ではない。
これまでに中央世界を訪れた異世界人達の言語体系から、ドールの挨拶に近いものを想起する。

「恐らくあっていると思うのだが、間違っていたら申し訳ない。ようこそドールさん。
 勿論、我々は『来訪者』の皆さんをおしなべて歓迎し、経緯を払います。
 ……ところで、こちらの世界へ来られたのは貴方だけですか? 」

実のところ、クロウンは既に彼の同胞達が来ている事を把握している。
初め一つだった反応は途中から三つに別れ――しかし迷彩を展開した為捕捉出来たのはドール1のみだったのだ。
とは言え発見は、捜索を続ければ時間の問題だろう。
だが、もしもここで『ドール01』が嘘を吐いたのならば、その時は彼らに『来訪者』ではなく。
『侵略者』と認識を改める必要が、少なくとも警戒心を抱く必要が出てくる。
おしなべて歓迎するとは言ったが、敵意の香りが僅かにでもするのならば用心するのも、また重要な仕事だ。

「もしも同胞の皆様がいるのなら、そちらにも出迎えが必要ですから」


【ドール01に鎌をかける。嘘があった場合仲間達を含めて警戒対象に】
>>14
 > そして彼とその仲間がもしも、目の前での出来事を確認していて、尚且つ通信を再開していたならば。
 > 各々の前に『まったく同じ姿をして、同じ名を名乗った男』がいる事を理解するだろう。
 は無かった事に。申し訳ないです。】


>>18

> 「あ、あう……」
> 「クロウン・アイソトープ?」

「えぇ、私の名前です。私は貴方を歓迎致しますよ。……ところで、こちらの世界へ来られたのは貴方だけですか?
 もしも同胞の皆様がいるのなら、そちらにも出迎えが必要ですから」
握られた手から返ってくる微かな温度を感じながら微笑み、しかしクロウンは『C』にも同胞の確認を怠らない。
だが『C』は何やら呆然とした様子で、押し黙っている。
隠し事かと一瞬考えたクロウンは、しかし過去に何度か彼のような『来訪者』がいた事を思い出す。

> 「……うわわわあぁぁぁあああああああああああああああああああああああ!!」
直後、狼狽を顕にした叫び声が上がる。

「やはり……! っ、ひとまず落ち着いて下さい。貴方は望まずしてこの世界に来てしまった。そうですか?
 もしそうならば、我々は貴方を全力で援助します。この世界での暮らしは勿論、貴方の故郷とのアクセスもです」
言い聞かせてはみるが、果たして『C』に彼の言葉が届いたかは分からない。
それでもクロウンは、話が通じるまで何度でも会話と説明を試みるだろう。


>>19
『ハローハロー、異世界の皆様。聞こえますでしょうか? 我々は貴方達との親交を望む者達です。
 ハローハロー、聞こえているならば、応答を下さい。我々は何としてでもそれを受信致します』

異世界への通信は、今も変わらず行われている。
果たして博士が、彼女の住む世界がこの通信を受信する時は、来るのだろうか。

【博士は女性……で良かったですか? もし違ったら脳内修正をお願いします】

21 名前:◆udCC9cHvps [sage] 投稿日:2010/04/21(水) 00:11:01 0
絶叫の瞬間に脳裏を駆け巡るのは阿修羅をも凌駕するような形相の主の姿。
絶望。と言うには大げさかも知れない。
しかし、これは彼にとって地獄に落とされたのよりも絶望的なことでもある。

なぜなら、道具には持ち主が、玩具には使用者が、奴隷には所有者が、必要なのだから。

(どうしよう!どうしようどうしようどうしよう。どうしよう!!)

「やはり……! っ、ひとまず落ち着いて下さい。貴方は望まずしてこの世界に来てしまった。そうですか?
 もしそうならば、我々は貴方を全力で援助します。この世界での暮らしは勿論、貴方の故郷とのアクセスもです」

そう言うアイソトープの声。しかし、もう遅い。圧倒的なまでに遅いのだ。
いくら、Cが世間知らずであろうともここが見たことのない場所であることは理解できる。

そして、彼の主はそれをよしとする事は今までの人生で置いて一度もなかった。
図らずとは言えそれを破ったのだ。「博士」はもう着替えを終わらせたところだろう。
となれば当然Cが居ない事にも気づいているはずである。

つまる話、必要のない道具は捨てられる。そう言う事だ。

「僕…どうすれば良いのでしょう。
 多分、捨てられる……そうなったら、……うぁ」

そう呟きながらCはくず折れる。
握りしめた掌の感触だけがこの瞬間がリアルだという事を物語っていた。

【大丈夫。博士は女性です】

22 名前:ドール01 ◇uGoe3Ttvpo [sage 代理投稿 gt;175] 投稿日:2010/04/21(水) 20:06:51 0
「恐らくあっていると思うのだが、間違っていたら申し訳ない。ようこそドールさん。
 勿論、我々は『来訪者』の皆さんをおしなべて歓迎し、経緯を払います。
 ……ところで、こちらの世界へ来られたのは貴方だけですか? 」

《そうですね、“私”は確かに一人ですよ。“ドール”は一人しかいません》

さしのべられた手を無視する。それが挨拶なのだとしても、残念ながらこの人形では過出力過ぎて握りつぶして
しまうのが関の山だろうから。目の前の男も、それくらいは察してくれるだろう。

《ドール01、指示を》

YITHが“感づかれている”と言う内容の警告文を意識内にモニターする。

(嘘は一つも吐いていない。後は相手方の認識次第だ。仮に私に対して攻撃してきたとしても、帝国にとって戦
争への良い口実になるだけだ。“分裂を当然の事とする種族としての意識の違いを認識せずに、主観によって判
断され、国民を殺された”とかな)

どちらにしろ、何も問題はない。気づかれていたことは意外だったが、逆に言えばそれは迷彩状態は全く補足で
きなかったと言うことになる。
愛機は単独で星間航行が可能であることが強みであり、迷彩についてはそこまでではない。この時点で、軍事力、
情報戦についてはこの世界とミスト03ではかなりの開きがあることがほぼ確定できた。もっとも警戒しなければ
ならないはずの異世界の戦闘機を、こちらが近づくまで完全にロストしていたのだ。

(たしかアトゥはこちらを逐一監視していたな?)

《はい、こちらの状況は常に観測されています》

と言うことは、迷彩が補足できなかったと言う事実はアトゥにも当然観測されている事になる。

(これをもって主要任務を達成。これより補足の情報収集に入る)

あとは自身の生死など問題ではない。完全なる蛇足だ。帝国は侵略を確定し、そう遠くない未来にこの世界に攻
め込むことだろう。

《さて、私が提供できる技術は微々たる物だが。この世界の発展に役立ててもらいたい》

私は目の前の男、アイソトープにそう言った。取り敢えず何らかの手続きが必要だろう。私はそれについての指
示を仰いだ。

23 名前:クロウン・アイソトープ ◆o6YVWr9M.. [sage] 投稿日:2010/04/22(木) 02:32:15 0
>「僕…どうすれば良いのでしょう。
> 多分、捨てられる……そうなったら、……うぁ」
呆然と絶望の同居した表情で、『C』は譫言を零す。

「捨てられる……ですか? 一体誰に?」
過去に意図せずこの世界を訪れた者達も程度の差はあれど、元の世界での人との繋がりを憂慮していた。
家族に、恋人に、身を置く組織にと、対象もまた多様だった。

「……ですが、大丈夫ですよ。我々は貴方の生涯をバックアップ致します。そのような規約があり、過去の貴方と同じ境遇の人々にもそうして来ました。
 貴方の世界にアクセスする事が出来たのなら、時間跳躍技術の使用解禁許可も出ます。これも規約で決まっている事です。」
クロウンは『C』を何とか安心させようと、クロウンは希望を連ねていく。
だが彼の言葉には一つ、意図的に開けられた穴があった。
時空跳躍により人生のやり直しが可能とは言ったものの、それはあくまで『目的の異世界にアクセスが出来たのならば』なのだ。
過去に『C』と同じく望まずこの世界に来た人間は数多といる。
しかしその中で生涯の内に故郷に帰る事の出来た者はほんの一握り、一摘みだけだった。
無論帰れなかった彼らが不幸な一生を終えたかと言えばそうではないが、それにしても無念があったにはあっただろう。

とは言え、仕様の無い事なのだ。
異世界間通信を受信するには、それなりの技術力が必要不可欠だ。
それを持ち合わせなかった世界が、そう突然と技術躍進を迎えるなど、まず有り得ない。
その世界の元々の技術がそれなりであり、更に過去類を見ない程の天才がいるか、生まれでもしない限りは。

「落ち着いたなら、ひとまずは『未知への指標』……有り体に言ってしまえば役場のような物ですが、
 そちらへ案内致しましょう。そこで当座の生活や今後について手続きが出来ますから」

24 名前:クロウン・アイソトープ ◆o6YVWr9M.. [sage] 投稿日:2010/04/22(木) 02:33:18 0
>《そうですね、“私”は確かに一人ですよ。“ドール”は一人しかいません》

「なるほど。付かぬ事をお聞きしました。申し訳ありませんね」
握手を求めてはみたものの、応えられる事は無さそうな気配を感じ取ってクロウンは手を引いた。
もっとも目の前の、恐らくは金属の塊であろう存在に手を預けて大丈夫なのか。
と内心で恐々としていた彼は、やはり心の内だけに収めて安堵の嘆息を零した。

ともあれ、ドールの返答には恐らく嘘があった。少なくともクロウンが嘘と認識する偽装が。
彼の同胞が同時にこの世界を訪れている事は、まず間違いないのだ。
中央世界に出現してから迷彩を展開するまでの反応は、確認されていたのだから。
けれども、その事を言及する事は出来ない。
聞き直した所で正答が得られる訳でもなく、ならば警戒や懐疑を表立って見せた所でメリットは何一つないのだ。

>《さて、私が提供できる技術は微々たる物だが。この世界の発展に役立ててもらいたい》
「ありがたい事です。ところでその……飛行船ですか? ともかく貴方が乗ってきた『それ』は、どうしましょうか。
 本来ならば『来訪者』の方には幾つかの書類――元の世界の事や自分達の生態を書いて頂く物ですね。
 それを提出して頂き、それから専用の住居へご案内するのですが……。流石にこのように大きな物を収容出来る施設は、限られておりまして。
 もしよろしければ、こちらでお預かりしようかと。勿論、都合を付けろと申されましたら、そのように致します」

もしも預かる事が出来て、かつ仕組みの解明が出来るようならば、彼の同胞を探すのは途端に容易くなるだろう。

「いやはや、それにしても素晴らしい迷彩技術ですね。
 この中央世界はお恥ずかしい事ながら、この手の技術は著しく低い次元に留まっておりまして。
 やはりこう言った技術は、どこの世界もそう簡単に明かしたがりませんからね。中々上手くいかないものです」

これはつまり『中央世界自体にはそのような技術は無いが、他の世界は隠し持っている』と言っているのだ。
それなりの思考力さえあれば、この情報から『様々な世界が地に伏せ機を伺っているのだ』と理解出来るだろう。

元々は四世界の自作自演による、大規模な異世界間での争いや侵略の防止手段。
言わばブラフだったのだが、今となっては実際にそのような世界も潜んでいるだろう。
それでも依然変わらず利用出来る事ではあるので、『侵略者』の可能性がある異世界人にはこの事をそれとなく述べるようになっている。

「……失礼、少々口を滑らせました。情けない話です。よろしければそろそろ、
 『未知への指標』……有り体に言ってしまえば役場のような物ですが、そちらへ案内致しましょう。
 そこで先程申し上げた書類の作成が出来ますので」

【ちょいと争い事への火種を臭わせてみました
 水面下での争いとか、演出しちゃってもいいと思います】

25 名前:ドール01 ◇uGoe3Ttvpo[sage] 投稿日:2010/04/25(日) 19:35:24 O
戦闘機は、アイソトープの申し出を受け入れ、危険だから勝手に弄らないよう頼んで、しかるべき所に預かって
もらうことにした(実際、戦闘機の表面はエキゾチック物質を押さえ込むためのシールドを展開させているため、
生身で触れるのはかなり危険だった)。
それに戦闘機には“私”の本体の一つがいる。いずれ統合するので、将来的に見れば私自身と言い換えても良い。
もしも何かあったとして、勝手に問題を処理してくれるだろう。

(しかしなかなか遠いな)

色々な手続きを行うと言う施設まで連れていかれる途中なのだが、かなり遠い。つく気配が見えない。
乗り物は原始的な四輪車(あくまで二次元的に空間を認識する知覚体だから使っているのかもしれないし、単な
る趣味なのかもしれない)で、今は専用の道路らしき上を通っている。

《今からそこで住民コードと生体ネットワークへのアクセス権、仮の居住区が与えられ、勤務できる研究施設の
紹介も行うそうだが、生体ネットワークとは?》

共に車に乗ったアイソトープに質問する。生体ネットワーク。共有の仮想空間だろうか?我々と同じように基本
的な居住空間を仮想空間に頼っているなら、有り難いのだが。実際、異世界からの人口が不明な以上、そのよう
なある意味無限の空間に頼るのは有りそうなことだった。


【ドール01:アイソトープに質問】


26 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2010/04/26(月) 00:03:12 O
「はい。……多分、無いです」

そこで一旦区切ると、差し出されたお茶を飲み干す。
これで6杯目。早くもCの体に異変が現れ始めたと言うことだ。

あれからなされるがままにCは未知への指標と呼ばれる建物へと足を運んだ。
その建物はCの知る様な建築様式を使わず、又、未知の物質で構成されていた。
そして、そこ「未知への指標」の個室でこれまでの経緯を聞き、
又自分自身についての話せる限りのことを話して聞かせた。

「……」

質問官の沈黙。それは先の質問に対する答えが原因だ。
そして、その質問は「元の世界に帰るための受信装置が有るか否か」
残念ながらCの居た世界にそんなものは無い。

「そうです。……えと。
 多分、もう直ぐ死んじゃうと思いますが、僕たちの事を話しても構いませんか?」

27 名前:◆udCC9cHvps [] 投稿日:2010/04/26(月) 00:22:28 O
取り忘れorz

28 名前:クロウン・アイソトープ ◆o6YVWr9M.. [sage] 投稿日:2010/04/28(水) 06:09:14 0
>25

「――このような原始的な乗り物は、始めてですか?」
機械の身体を持つ『ドール01』に表情の変化などは見受けられない。
だが何処と無く自動車を注視していたように思えた彼に、後部座席に座るクロウンは問いかける。

「この自動車から感じる慣性や振動はストレス、或いは無駄である。と言うのは、貴方がそう思っているかはどうであれ、尤もな話です。
 ですが我々『中央世界』では、こう言った『過去の遺物』を切り捨てての未来と言うものを、あまり好しとはしていないのですよ。
 『まだ見ぬ世界』を目指しながらも、振り返ればそこに今まで見てきた世界もあって欲しい。と言う願いに基づいてね」

『ドール01』からの返事は返ってこない。
何かを考えているのか、それとも単に聞き流されたのか。

>《今からそこで住民コードと生体ネットワークへのアクセス権、仮の居住区が与えられ、勤務できる研究施設の
>紹介も行うそうだが、生体ネットワークとは?》
結局後部座席クロウンの問いは、ドール01の尋ね事によって塗り潰された。
どうやら今後のあらましについては『運転席』のクロウンが既に説明を終えていたらしい。
詳細を語らなかった事への不備を運転席の自分に感じながらも、
話しながらの運転で事故を起こすよりはマシかと、クロウンは思い直す。
果たしてドール01が二人のクロウンに気が付いたかはともかく、後部座席のクロウンは質問の答えを紡ぐ。

「生体ネットワークとはですね。名称通り、……とは言え中には『生体』でない方々もいるのですが。
 ともかくこの世界の住民誰もがアクセス出来る電脳領域のようなものですよ。
 主な用途はコミュニケーションや情報共有。事故や病気等への対応も行っております。
 ……勿論、厳重なプロテクトを配備した上でのシステムですので、ご安心を」

一通りの説明を終えてから、中には――食事や排泄を殆ど必要としないような人々は、年単位で電脳領域にアクセスしている。
と言う事を、クロウンは冗談交じりに補足した。
ちなみに数多のクロウン達もこれを用いる事で、それぞれの知識や情報を共有している。
無論通常の使用では不可能であろう、『議長』と言うシステムである彼のみの特例ではあるが。

「……ですが殆どの種族は、一般的な生活を全うしなければ生命活動を維持出来ませんからね。
 なので住民の殆どは、コードに対応した居住区に住んでいます。
 こちらは異世界通信や転送技術の応用による物でして。丁度……あちらに」

窓の外に見える、空の額縁のようなゲートをクロウンは指差す。

「アレを入り口として、位相の少しずつ異なる居住空間へ転送する訳ですね。
 ご近所さんへの移動は、相手方の許可が出れば可能です。
 とは言え一応、昔ながらの住宅街もございますので、お望みとあらば」

言い終えて、彼は「さて」と言葉を繋ぐ。

「到着ですよ。ようこそ、『未知への指標』へ。ようこそ、『まだ見ぬ世界』へ」
運転席のクロウンが車を降りて、ドール01が面するドアを開いた。
クロウンの見上げる視線を追えば、天高く聳え立つ銀一色の尖塔が見えるだろう。

29 名前:クロウン・アイソトープ ◆o6YVWr9M.. [sage] 投稿日:2010/04/28(水) 06:10:09 0
>>26
>「はい。……多分、無いです」
意気消沈した様子の『C』を前に質問官は沈黙を禁じ得なかった。
困窮の気配を滲ませてはいけないと分かっていながらも、
真一文字に結ばれた唇から、細めまいと意識する余り強張った目元から、
どうしても切迫感が染み出してしまう。

「そうです。……えと。
 多分、もう直ぐ死んじゃうと思いますが、僕たちの事を話しても構いませんか?」

更に続いた『C』の言葉に、とうとう質問官は平静を保とうとしていた表情さえもを崩した。
息を呑み、彼が生体ネットワークへアクセスする際の癖――右のこめかみに手を添えてクロウンを呼ぶ。
『来訪者』の話した旨を全て伝達すると、質問官は再び『C』へと視線を戻す。

「……もう暫く、お待ち下さい。クロウン議長をここへ呼びました」
それから数分もしない内に、クロウンもまた険しい表情で、『C』の元へと駆け付けた。

「……死んでしまう、とはどう言う事ですか? 我々は断固として、それを阻止する義務があります。お話を、聞かせて下さい」

30 名前:光デジモン ◆j.Ypl7DW.o [sage] 投稿日:2010/04/29(木) 01:30:00 0
味方の宇宙艦隊の霊界戦艦の大ゴモラ零号が仲間に為った。
宇宙戦艦エンタープライズ∞号も仲間に為った。
最強最大最高無敵超高性能宇宙戦艦ヤマト号も仲間に為った。
理科学習型サイエンスフィクションTRPGでもOK。
某カルト教団熱狂宗教団体宣伝活動型TRPGでもOK。
海外ドラマ風味スペースオペラ宇宙活劇型TRPGでもOK。
亜空間とか超空間とか異次元とか死後の世界とかワームホールを使ったワープ航法もOK。

31 名前:ウィリアム・M・イーデン ◆8YviwaLTZE [sage] 投稿日:2010/04/30(金) 19:24:23 P
したたかに打ち付けた腰が痛い。
それはそうだ、先程まで月面を見下ろしていたのが
突然、1Gの重力環境下なのだから。
艦を墜落させることなく対処したクルー諸君の優秀さには頭が下がる。

「スタリオン、オーウェル、共にロスト! 干渉レーダー反応なし! 肉眼でも確認できません!」
「地球からの追跡は?」
「本艦のみ健在の模様ですが…」

クラップ級巡洋艦『コノート』艦長、アンリ・クルーゾー中佐が現状を確認しているが、
どうやら私が想定していた中では最悪の事態になっているようだ。
艦橋の兵が動揺しながらも上げて来る報告が嫌でも耳に入ってくる。
被害の大きさもそうだが、自らに圧し掛かる重責を考えると胃の中がチリチリする感覚を覚えた。
とはいえ既に賽は投げられたのだ。
私は備え付けのミネラル・ウォーターを一飲みし、報告がひと段落ついた所で艦長に話しかける。

「ともかくもエデンの門は開かれた… 或いは地獄の釜の蓋が。艦長、状況はどうかね?」
「ご覧の通りですよ、大使殿。我々だけが『当たり』を引きました」
「貧乏籤にならん事を祈るばかりだな」

私が覗き込む艦長席の正面のモニターに、外部カメラの映像が出力された。
『コノート』は大気圏内に全長292メートルの船体を浮かべている。推定高度は600メートル。
眼下には、一目見て市街地だと分かる建造物郡が確認できた。どうやら我々は彼らの鼻先に乗り込んでしまったらしいな。
どこか懐かしいものから何の施設か見当すら付かないビルまで様々で、パッチ・ワークのような印象を与える。
子供達… そう、我々人類と良く似た姿の少年少女達がこちらを見上げている施設もある。学校だろうか?
そんなふうに観察していると、アンリ艦長が眉を顰めながら話しかけてきた。

「しかし、突然宇宙人の軍艦が現れたにしては、随分と無警戒なものですな」
「彼らにとってはそう珍しい事態では無いのではないかな。
 それに『中央世界』が我々の知る通りの情勢ならば、何の備えもしていないとは考えにくい。
 たとえ君が砲術長の尻を蹴っ飛ばして、あのビルにメガ粒子砲を撃ち込んでも
 『スター・トレック』の防御シールドみたいなもので防いでしまうのだろう」
「なるほど。檻の中の熊を怖がる子供は居ない… というわけですか」



名前:ウィリアム・モートン・イーデン
職業:官僚
元居た世界の名称:特に無し。単に「われわれの宇宙」という言い方をする。
性別:男
年齢:42
身長:175cmほど
体重:70kgほど
性格:石橋を叩きながら渡る
種族:イングランド人(ただし国民国家的な自意識は希薄)
外見:古典的スーツ・スタイル。ややアナクロ趣味。
備考:地球連邦政府外務局所属の公務員。
   世界間移動に成功したのが彼の乗艦だけだったため、結果的に「全権大使」となってしまった。


元居た世界の『科学』の名称や形態:
宇宙移民の開始から100年ほど経過した世界。人類の居住圏は恒星系内に広がりつつある。
宇宙移民者の自治権獲得問題に端を発する20年ほど続いた戦乱のなかで、物理科学・機械工学が発展した。
基礎技術は宇宙時代の黎明期レベルだが、異世界間通信を受信した事により
文字通り歴史が変わってしまっている。
世界間移動技術は2人の天才により齎されたが、完全なオーバーテクノロジーであり
「安全性・安定性とは無縁で、辛うじて可能」なレベル。

32 名前:ドール01 ◆uGoe3Ttvpo [sage] 投稿日:2010/05/03(月) 01:08:16 O
「アレを入り口として、位相の少しずつ異なる居住空間へ転送する訳ですね。
 ご近所さんへの移動は、相手方の許可が出れば可能です。
 とは言え一応、昔ながらの住宅街もございますので、お望みとあらば」

なるほど、と相槌を打ちながら、内心では首を捻る。
原始的な生活への回帰を望むのはどの種族にも有ることだが、それは滅びへの第一歩でもある。歴史を実感にお
いて忘れ、過去の事象をロールする事は現実からの逃避に他なら無いからだ。
国家や、それに類する纏まりはそれを禁止し、対抗する者と争うことによって、結果的なバランスを得るのが普
通の在り方のはずだが……いいや、それはこれから知識として得るものの一つだ。つまり後で調べればそれでい
い。

車が止まる。ありがたいことに運転席のアイソトープが扉を開けてくれた。この人形では、開けようとしたら壊
してしまっていただろう。後でこの人形もローチューンしなければ……それにしてもクローンが二人も居て、ど
うにもやりにくい。

「到着ですよ。ようこそ、『未知への指標』へ。ようこそ、『まだ見ぬ世界』へ」

そこには銀色に輝く尖塔が有った。
宇宙エレベーターの類いだろうか?いや、むしろ……この高さはひょっとして。

《異次元への交信を主とする構造物のようです。今は様々な機能が付属しているようですね》

つまり、我々がこの世界に来た原因の一つだった。

∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴

構造物内部で案内された部屋で様々な検査を受け、契約書を書き、IDカードを受けとる。やはりこの世界はどこ
か自分達の社会と似通っている。特に苦労もせずにすべての概念を理解できた。

(やれやれ)

いくつもある検査室の一つの前、機械のセッティングのために、暫く待っていてくれと待ち惚けをを食らってい
る最中、突然映像の緊急入電が入った。完全に匿名の映像。ウィルスの類いではない。私に向けた映像でも、な
い。

自動再生される。
なにかが壊れて行く。
何かが崩れて行く。
分解され、崩壊し、朽ち果て、あらゆる物体の質量は纏めて一つに収束し……そこで映像は途切れた。

(YHITH)

《わかりません、観測状況すらはっきりしない映像です。現在解析にメモリーを》

(違う、そうじゃない。時間だ。撮影日時。)

《時間……百五十時間後……?これは、未来からの,入電、ですか?》

その時、途切れたと思われたノイズ混じりの映像が再開された。

『は.)/{く、%^た*>>#{ま』

《はやく、うごいて、まだまにあう》

YHITHがすぐに再翻訳する。ノイズが意味を持ち、誰かを代表像する。

《このうちゅうは、もうもたない》


33 名前:クロウン・アイソトープ ◆o6YVWr9M.. [sage] 投稿日:2010/05/04(火) 05:20:04 0

「……まさか艦隊でやってくるとは。それにしても随分と挙動が安定しないようですが、大丈夫なのですかね」
新たな来訪者と言う事で派遣されたクロウン・アイソトープは、手を目の上に添えて空を見上げ、呟いた。
あの浮遊艦船が墜ちた所で、既に街にはエネルギー拡散力場の展開準備が整っている。
見物に集まっている庶民達には何ら危険は及ばないが、艦内の乗員達はそうはいかないだろう。
この『中央世界』を訪れた以上、彼らは既に『来訪者』であり、尊重すべき人々なのだ。
落下の慣性による人体への影響を少しでも抑えるべく、エネルギー拡散力場は相当上方に展開してある。
また艦内にどのような種族がいようとも対応出来るよう、多種多様な人種から構成された医療スタッフも、既に手配済みだ。

「……おや、持ち直しましたか。どうやら優秀なクルーをお持ちのようだ」
自分の手配した全てが徒労の泡となり弾けた事に、クロウンは小さく息を漏らす。
徒労に終わったと言う事はつまり、最上の結果が頭上の彼らに訪れたと言う事なのだから。
ともあれ、例によって見物に集まった民衆に立ち退くよう勧告しながら、
クロウンは車の助手席から自分に馴染みの品を取り出す。
紅白二色の安っぽい塗装を施された、旧式にも程がある拡声器。
無論これよりも優れた技術や製品は幾らでもあるのだが、
それでもこのような旧時代の遺物が使われているのは、ひとえにクロウンの趣味によってだ。

「もしもし、聞こえますか? 私は『中央世界』の『議長』、クロウン・アイソトープです。
 当方には貴方々を迎え入れるだけの心積もりと、準備があります。
 よろしければこちらの誘導に従い、前方に見える尖塔の敷地内で着陸願えますか?」

それにしても、と拡声器から口元を離してクロウンが呟く。

「『中央世界』の成立から百周年記念の祭典まであと六日……より正確には143時間と45分か。
 一週間も無いと言うのに、随分と忙しくなってしまったものだ。勿論、嬉しい悲鳴ではあるのだがね」

【よろしくお願いします。次のレスでは、クロウンが他の方に話した情報は大体伝えたって事で話を進めちゃって下さい】

34 名前:◆udCC9cHvps [sage] 投稿日:2010/05/04(火) 18:06:32 0
「クロウン。アイソトープ……さん。と呼べばいいんでしょうか?
 わざわざ来てくれたんですか?あ、でもその方が良いかもしれないし……」

とにかく、と区切りを入れると又、お茶でのどを潤してから言葉を吐く。

「まず、さっきの話ですけど……先に教えて置かなければならないと思います。
 僕を助けるのは無理だと思います。だって、トンビが鷹を生むなんて事はないでしょう?」

それから自らの身の上について知りうることすべてを話した。
まず、ダッチワイフと呼ばれる種族について。
次にその種族がストレスに異常なほどに弱いという事について。
その為、他者に依存していなければいけないという事について。
そして……

「だから、その特定の人物との絆が立たれたりした場合……
 その特定の人物に依存できなくなった場合。確実にストレスで死んでしまうんです」

そう告げて、いったん息を吐く。

「だから、何か手伝えることがあれば……教えてください。
 この世界の技術力は分りませんが、何かお役に立てることがあるかもしれないです」

それは心からの言葉だった。
なぜならばCは他人のためにしか行動を起こせない。だから、他人のために残りの時間を使う。
それがCの出した答え。この選択が正しいかは分らない。
でも、Cにはこの選択肢しか浮かばなかった。


35 名前: ◆udCC9cHvps [sage] 投稿日:2010/05/04(火) 18:07:20 0
「ほ〜らぁ、いい加減にセンチメンタルジャーニーから帰ってきなさい!」

「うっさい。明美は向こう行け〜」

「ぶつよ?」

「分りました」

そう言うと彼女はよろよろと立ちあがる。
それを見かねた「明美」が肩を貸してやると露骨に嫌そうな顔をする。

「本当に相変わらずの虚弱児っぷりねぇ。」

「文句ある?」

「有るから言ってる。
 それよりも聞いたよ?公安の人が言うには入る人も出る人も居なかったって」

「だから?」

「……本当にサヴァン症患者ですありがとうございました」

「だからなんだよ。ぶつぞ」

「ぶったらそっちが怪我をすると思うんだけど」

「命拾いしたな」

「相変わらず態度だけは無駄に大きい……」

「てめぇ。だれが貧乳だ」

そんな漫才を繰り広げつつ明美は博士をソファーへとたたき落とす。

36 名前: ◆udCC9cHvps [sage] 投稿日:2010/05/04(火) 18:08:36 0
「何すんだ!?泣くぞ!!」

「泣けよ。泣きたいんじゃないん?」

「泣きたいです」

涙目で訴える博士。その理由はもはや言うまでもない。

「まあいいわ。あの子の性格から考えたら何者かに誘拐された可能性が高いってことよ。
 それだけじゃない。相手側は多分、何らかの跳躍技術を使ってきた可能性が高い」

「どうして言いきれるんだよ?お前バカか?バカだろ」

「逆に聞くけどそれ以外に考えられる?」

「……無いな」

「でしょ?となるとその線しかないのよ。で、これ知ってるかしら?」

そう言うと明美は手帳を取り出して文字を書いて見せる。

「『ハローハロー、……めんどくさい」

「これはここ数日の間にとある電波域に流され続けている特殊な電波よ。
 発信場所も特定できないし、悪戯にしては手が込みすぎている……」

「大体わかった。つまり、その外側からこれを垂れ流してる連中のせいで
 ウチの家政夫が消えたんじゃないかって言いたいんだな?」

「そう言う事。どう?やってみない?」

「ハニートーストとチョコレートドリンク、それからシーザーサラダを持ってこい話はそれからだ」

37 名前:ウィリアム・M・イーデン ◆8YviwaLTZE [sage] 投稿日:2010/05/06(木) 02:00:38 P
「ウィリアム・モートン・イーデンです。
 地球連邦政府ならびに我が文明圏に住む全ての人々を代表し、ご挨拶申し上げます。議長閣下」

『未知への指標』と呼ばれた施設の一室。
この世界への滞留に関する一連の手続きを終えた後、私はクロウン・アイソトープ議長との会見を要請し、
そして彼は「数分もしないうちに」現れた。
そういえば私を出迎えてくれた車の運転手まで「アイソトープ議長」だったのを思い出し、少し背筋が寒くなる。
補佐(兼お目付け役)として私に随行しているクラリッサ・ミラー少尉は、
アイトソープ議長というのは一種の集合意識体であり、我々に応対しているのは端末のようなものではないか、
という推測を述べていたが…。

ちなみに当初は『コノート』艦長アンリ中佐に随行してもらう予定だったが、
彼は先方指定のパーキング・エリアに着陸した『コノート』艦内に残っている。
今頃クルーの滞留手続きだの参謀連中との会議だのに忙殺されているのだろう。

「ぶしつけな訪問となった事を謝罪したい。お恥ずかしい話ながら、我々の持つ技術では事前にアポイトメントを取る事が出来る確証がありませんでした。
 にも関わらず、我々をこうして迎え入れて頂いた事を感謝致します」

私は愛用のホンブルグ・ハットを外して胸に当て、議長と握手を交わす。
どうもこういう習慣は世界が異なれど存在しているものらしい。人型生命体ゆえの収斂進化のようなものだろうか?

「さて、正直なところ我々の技術力はそれほど高いわけではありません。
 確かにユニークな物も存在するでしょうが、ライターを使いこなす人間に火打石の使い方を教授するようなものでしょう。
 私としてはむしろ、貴国における文化・芸術面での多様化に貢献できると考えています」

観測の結果判明したのだが、この世界には
我々の世界の物理学の常識を一変させ、爆発的な技術革新を齎し、世界の有り様を変えてしまった物質…
『ミノフスキー粒子』が存在しない。
とはいえ議長に述べたように、この世界の技術レベルにおいては最早無用の長物かも知れず、
そうでなければ(文明の坩堝にガレー船で乗り込んできたような)我々にとっては重要なカードになる可能性もあるので、
今は伏せておくことにする。

「ですがその前に、我々とあなた方の間で解決すべき『人道上の』案件があるのです」

私は決して博愛主義者というわけではない。
ただ相手の価値観や倫理観、こちらに対する態度を見極める意味で、敢えてナイーヴな話題を出すことにした。
ミラー少尉が取り出した書類を議長に手渡し、確認をしてもらう。

南欧の空のように青い髪の少女の写真。年齢は14〜15歳くらいだろうか。
彼女の名前。出身地。住所。家族構成。
それらの情報が全て『中央世界の言語』で書かれている。洗練された文体とは言いがたいかも知れないが。
別の写真もある。こちらは「TIME」誌の表紙のスキャンだ。
やや緊張した面持ちの青い髪の少女が、しかし強い決意を瞳に宿しながら多数のマイクとカメラに向かい何かを語りかけている。

「率直に申し上げる。彼女は『中央世界』の人間です。
 世界間移動技術の開発の際の『事故』で、期せずして招待してしまった。
 我々の世界の暦で10年ほど前のことです」

そう、確かにあれは事故だったとされている。
実際のところは当時の世界間移動技術の第一人者であった人間が『異世界の存在の証明』のために拉致したようなものだが。
彼女の「『まだ見ぬ世界』への道を照らす灯火になりたい」という発言は、
帰るべき世界を失った少女への憐憫もあいまってセンセーショナルに報道されたものだ。

「3年後、彼女は亡くなりましたが… 多くの有意義な情報や知識を、我々に提供してくれました。
 ―――地球連邦政府は彼女の御遺族に対し、一連の不幸な経緯に関する然るべき賠償をする用意があります」

38 名前:テンタクル・フランツ[sage] 投稿日:2010/05/06(木) 21:52:26 0
> 「まず、さっきの話ですけど……先に教えて置かなければならないと思います。
>  僕を助けるのは無理だと思います。だって、トンビが鷹を生むなんて事はないでしょう?」

> 「だから、その特定の人物との絆が立たれたりした場合……
>  その特定の人物に依存できなくなった場合。確実にストレスで死んでしまうんです」

盗み聞きなど俺の趣味では断じてないが、暫し俺は立ち止まり、耳を澄ます。
扉から漏れ出てくる声が興味深い事を語っているのは認めるが、それ以前に俺とて空気を読む位の配慮はある。
それにしてもこの、扉の隙間から滲み出ている気配は一体なんだ。
この『中央世界』本来の風習と言葉回しを取り上げるならば、通夜のようではないか。
話が終わるまでは待つ腹積りでいたが、やめだ。
これ以上、一分一秒でもこのカビが映えそうな湿っぽい空気を吸っていたら、俺の臓腑の健康が損なわれる。

「話は粗方聞かせてもらった、入るぞ。緊急事態だからと聞いて来てみれば、随分と難儀な性を持っているようだな、小僧」

面を見てみれば成る程、見るからに軟弱そうな顔立ちと矮躯をしている。
それにしても、コイツは何故こうも驚いているのだ。
出し抜けに俺が部屋へと押し入ったからか?
それともお前達や『人間』と大差ない顔貌に、触手の手足が何本も生えているのが、そうも不思議か?
ふむ、或いは両方と言う可能性もあるか。いずれにせよ、その程度で機嫌を損ねる程狭量な俺では無いわ。

「名前は知らんが、お前。依存出来ねば、ストレスが嵩めば死ぬと言ったな。ならば解決は容易い事だ。
 お前に依存出来るモノを与え、ストレスを感じさせぬだけの処遇を与えればいい。それだけの事だろう」

一足歩み寄ると、小僧は微かに怯えた表情を覗かせ身体を震わせた。
いかんいかん、俺の存在が圧倒的である事は自明の事実である。
であるが、それ故にこの小僧にストレスを与える事になっては、本末転倒甚だしい。
この俺に転倒など、最も似あわぬ言葉ではないか。
ともあれ平時であろうが漲る俺の圧倒的存在感を殺す事など、俺自身ですら能わぬが。
それでも多少の努力を経て、俺は小僧の傍まで近寄った。

「俺の言葉をよく聞け。いいか……お前は必ずその主たる人物の元へ、腕の内へ帰る事が出来る。
 その身に秘めた温もりを損ねる事なく、だ。何故なら……」

一息吐き、俺は絶対の確信を籠めて、続きを紡ぐ。
言葉に込めた自信と重みは、その内容が虚言や無根拠のものであろうと、完全たる説得力を生む。
誰もが信じ込む程に。

「この『中央世界』に訪れた者が不当な死に至る事を、この俺が認めぬからだ。
 『四世界』が一角、『アクアリウム』の『議長』アネモス・フランツの血族である、このテンタクル・フランツがな」

触手を二本、小僧の肩へと運んだ。

「理解したか。いや、するのだ小僧。お前はただその未来に依存すればいいのだと。
 未来は決して逃げぬ、お前がその腕に飛び込んでくるまで、ずっとな。
 ……ところで、アイソトープ氏よ。もし良ければこの小僧の身柄を、俺が預かっても構わんか?
 知らぬ間に孤独死されていたのでは、堪らんだろう。俺が責任を持って、ストレスのケアをしてやろう。
 おい小僧、して欲しい事があれば遠慮なく述べるがいい。撫で撫でだろうが抱っこだろうが、何でもしてやるぞ」

39 名前:テンタクル・フランツ ◆bYX6ZoqH5Cq0 [sage] 投稿日:2010/05/06(木) 21:53:52 0
初っ端から酉を忘れてたぜ!

名前:テンタクル・フランツ
職業:『中央世界』の治安維持
元居た世界の名称:大戦争の果てに陸地の無くなった世界。通称『アクアリウム』
性別:男、もしくはオス
年齢:25
身長:172
体重:54
性格:尊大。でも可愛いもの好きだったり
種族:『アクアリウム人』としか。
外見:威圧的かつ精悍な相貌……に火星みたくタコ足っぽい触手が生えてる
備考:『四世界』の一つ、『アクアリウム』の『議長』が祖父だった
   祖父も父も、『中央世界』の平和を護るべく生きて、他世界の陰謀によって死んだ
   



元居た世界の『科学』の名称や形態:軍事に関わる技術が卓越していたが、全て失われた……と言う事にされている
                 『中央世界』への侵略を防ぐブラフの基軸となっていた
                 表向きには医療技術や進化の方向性に関する理論や、それをある程度制御する技術などを『中央世界』にもたらしたとなっている


【よろしくお願いしまっさ。四世界の一角とか、色々突っ込んだ設定にしちゃったけど大丈夫ですかね。不味かったらなかった事にします】

40 名前:クロウン・アイソトープ ◆o6YVWr9M.. [sage] 投稿日:2010/05/08(土) 09:43:24 0
>>32
何やら上の空の様子で立ち尽くすドール01の顔部を、クロウンが微かに身体を屈めて覗き込む。

「どうかなさいましたか? 検査の準備が整いました。これで検査は最後となります。
 検査を終えたらIDカードや生体ネットワークへのアクセス権を有効化して、後は完全に自由です。
 勿論案内役等が必要でしたら、私が一人付き添いますのでお申し付け下さい」

ドール01の受信した映像を知らぬクロウンは、ただにこやかに微笑んだ。
それからはっと思い出したように目口を開き手を叩くと、彼は再び微笑の表情を模って口を開く。

「そう言えば、ドールさんはとても運がいい。もうじき、この『中央世界』が成立してから百年が経つのですよ。
 六日後、それを記念しての祭典が催されます。この世界を知り、馴染み、何より楽しむ為にも、是非参加して下さい」



>>34>>38

予期せぬ告白に、クロウンの表情は図らずも硬くなる。
けれども出し抜けにドアを叩き開け、当然の立ち居振る舞いで闖入してきたテンタクルに、
彼の顔に巣食っていた緊迫は余さず払われてしまった。

> 「俺の言葉をよく聞け。いいか……お前は必ずその主たる人物の元へ、腕の内へ帰る事が出来る。
>  その身に秘めた温もりを損ねる事なく、だ。何故なら……」
> 「この『中央世界』に訪れた者が不当な死に至る事を、この俺が認めぬからだ。
>  『四世界』が一角、『アクアリウム』の『議長』アネモス・フランツの血族である、このテンタクル・フランツがな」

一点の曇りも感じさせない口上に、クロウンは苦笑さえ浮かべる。
破天荒な言動と物腰だが、彼の視線と声色からは少年への温情が溢れていた。

「やれやれ……貴方はお祖父様の代から、変わりませんね。血は争えないと言う事でしょうか。
 ともあれ、彼の言う通りです。私だってこの世界を訪れた、この世界に生きる人々が不当な死を迎える事を認める訳にはいきません。
 何としてでも、あなたには生きて、幸せな未来を迎えて頂きます。それが私の義務ですから」

もっともクロウンは最悪の場合、徹底的な投薬と管理を『C』に施してでも、とさえ考えていたが。

>「……ところで、アイソトープ氏よ。もし良ければこの小僧の身柄を、俺が預かっても構わんか?
> 知らぬ間に孤独死されていたのでは、堪らんだろう。俺が責任を持って、ストレスのケアをしてやろう。
> おい小僧、して欲しい事があれば遠慮なく述べるがいい。撫で撫でだろうが抱っこだろうが、何でもしてやるぞ」

不意に放たれたテンタクルの問いに、クロウンの表情に苦味が滲む。
それを多少の笑みで緩和を図りつつ、彼は答えた。

「それは……彼が構わないならば、私からは何も言う事はありませんが……。
 ……どうでしょうか?」

苦笑いを浮かべたまま、彼は『C』に尋ねる。

41 名前:クロウン・アイソトープ ◆o6YVWr9M.. [sage] 投稿日:2010/05/08(土) 09:46:43 0
>>37

> 「3年後、彼女は亡くなりましたが… 多くの有意義な情報や知識を、我々に提供してくれました。
>  ―――地球連邦政府は彼女の御遺族に対し、一連の不幸な経緯に関する然るべき賠償をする用意があります」

呈示された写真や名前に、クロウン・アイソトープは微かに双眸を見開く。
だが内心では表情を強張らせ、彼の胸の内では心臓が地響の如く鼓動を打鳴していた。

何故なら彼女は十年前に、『中央世界で殺された事になっている』のだから。
『四世界』によるブラフの牽制があるとは言え、それでも猶暴挙に出る『世界』は存在する。
いや、存在したのだ。

自世界の軍事技術を至上の物と信じ、『中央世界』への侵略を画策した世界が。
『議長』であるクロウンや、当時『中央世界』の治安維持を担っていたテンタクル・フランツの父は、事前にその事を察知していた。
だが証拠を掴むには至らず――故に彼らへの反撃は、攻撃を受けた後にしか出来なかった。
そうなれば当然人が傷付き、死に至る。不当な死に。
丁度その頃だった、写真の少女が行方不明となり、『生体ネットワーク』を用いてさえも発見出来なくなったのは。

そしてクロウンとテンタクルの父は、彼女の行方不明を、利用した。
機先を制して、侵略を図る世界の撃退を行う為に。
罪もない少女を世界ぐるみの実験に巻き込み殺したとして、その世界の住民全員を追い返し、
二度と『中央世界』に干渉出来ないよう封鎖を施した。

その後テンタクルの父は、少女の死を汚したとして、自ら命を絶った。
表向きは事故として、実は裏の陰謀に巻き込まれたとされていた彼の死には、更にその奥があったのだ。

ともあれ、今更『行方不明の真相』などが分かっても、困るのだ。
しかして、クロウンは決断する。

自身と生体ネットワークの接続を最低レベルにまで引き下げ、
面に悲哀の色を滲ませて、緊張によって張り付いた唇を引き剥がした。

「彼女の遺族は……もういません。せめて彼女への哀悼と感謝を、決して忘れぬようにして下さい。
 ですが、そのような真相だったとは……彼女の死についての処理は、我々が行いましょう。
 ……ところで先程貴方も仰いましたが、貴方の世界は『世界間移動技術』を自作したそうですね」

確認するように、クロウンはウィリアムの瞳を覗き込む。

「実はこの『中央世界』の『異世界間転移技術』には百年間解決されていない欠陥があるのです。
 時に無作為に、異世界から人を呼んでしまう……丁度彼女と同じような事故を起こしてしまう欠陥が。
 通信にあったようにあの技術は、一人の天才による天啓に等しい物でして、修正する事すら叶わないのです。
 そこで、もしよろしければ、貴方の世界で開発された『世界間移動技術』を参考にさせて頂きたい。
 ……彼女のような、この世界で今も続く悲劇を、不当な死をこれ以上引き起こさない為にも。……お願い出来ますか?」



【テンタクルさんよろしくお願いします。『四世界』に関しては特に何も考えてなかったので、ぶっちゃけ早いもん勝ちです
 代わりって訳じゃありませんけど、コチラもお父様の死を勝手に脚色してしまいましたです。ご容赦を】

42 名前:C ◆udCC9cHvps [sage] 投稿日:2010/05/10(月) 00:18:05 0
目の前で繰り広げられる『闖入者』とアイソトープの会話。
そして、その闖入者「触手(テンタクル)・フランツ」の言った言葉にCは驚いていた。

「えっと……」

両肩に乗せられたやたら生ぬるいそれを眺めながらぼんやりとした気持ちの中で思い出すのは博士の言っていた言葉。

「ありがとう、ございます」

『ヤべぇ。触手強ェー』という言葉はかつて博士が『エ・ロゲ』と言うアプリケーションを起動していたときに言っていた言葉だ。
その言葉から導き出される事はただ一つ。この触手は強いという事だ。
長いものには巻かれろと言う話ではないが、少なくとも抵抗する理由も無い。
そして、何よりこういった事を他人に言ってのける人間に悪人はいないとアケミチャンは言っていた。故に、

「それじゃあ、お言葉に甘えさせてもらいます。でも、……僕、割と向こう側に居た時は働きづめでしたよ?」

事実だ。Cが向こうに居た時はズボラでガサツで欠陥人間な博士の世話をしていたのだ。
その結果は推して知るべし。

「だから、心配は要りませんよ!」

そう言うと笑って見せる。その裏側に有る重大な事実を隠して。

「そう言う訳ですので、まずは何かやれる事を見つけたいのですが、何かありませんか?
 炊事・洗濯・掃除、それから博士ほどではありませんが一応、機械に関しても知識はありますし……」

そこで思いついたように手を打つ。そして咳払いをしてから一言言い忘れていた事を口にする。

「ごめんなさい。言い忘れてましたね……僕の名前はC。CIBISUKEのCです」

43 名前:名無しになりきれ[sage] 投稿日:2010/05/12(水) 00:55:16 0
乱立荒らし対策保守

44 名前:テンタクル・フランツ ◆bYX6ZoqH5Cq0 [sage] 投稿日:2010/05/13(木) 19:50:51 0
> 「だから、心配は要りませんよ!」

何だと、それはつまり撫で撫でも抱っこもいらんと言う事か。
この俺が直々に可愛がってやると言うのに、何故こうも斯様な連中は俺の寵愛を拒否するのだ。
『議長』の血族たる俺の言葉が無下に扱われるなど、不名誉極まりない。
いつか此奴には、俺の全身全霊を込めた可愛がりを受けさせてやろう。
あくまで俺の名誉の為にな。他意はない。
……そう言えば、いつまでも小僧では味気がない。ここらで名前を聞いておきたいものだ。

> 「ごめんなさい。言い忘れてましたね……僕の名前はC。CIBISUKEのCです」

「C? チビスケ……? 随分とまた、捻りの欠如した名前だな」

それにスペルも文字が足りていないようではないか。
アルファべットを一文字抜きか。プラトニックを示唆しているとしたら……随分と親父臭い感性の持ち主だったのだろうな。
この小僧……Cの名付け主は。

「ふむ、これを期に俺が新たな――最高にイカした名を付けてやってもいいぞ。
 そうだな……『小さき恋の王』と言う意味で『アモリス・バーシリスケ』と言うのはどうだ!
 元の名の名残として『スケ』の韻も残して……む、何だ、不満か。むう……ならば良いだろう。何も無理に改名を強いるつもりもない」

自信はあったのだがまさか不満に思われるとは、よもや思わなんだ。
軽い失望を禁じ得ないが、この程度で挫折感を味わうような俺ではない。
異世界人同士の価値観の相違から生まれた不幸だったのだと早々に切り捨てると、改めてCを見据えた。

「ともあれ、俺の元で世話をすると決まったからには、居住の手続きが必要だろう。
 多少順序は倒錯しているが、別段問題はあるまい。丁度俺も、野暮用があってな。
 検査と手続きが終わったら、正面ゲートの傍で待っているがいい。アイソトープ氏も一人、付いていてくれるだろう」

そうとだけ告げると、俺は早々に部屋を立ち去る。
野暮用と言うのは、C絡みの事だ。
心配いらないと笑う奴ほど心配すべきだと言う事を、あの小僧は知らんと見える。
知らぬままの方が都合が良いから、教えはせんがな。


45 名前:テンタクル・フランツ ◆bYX6ZoqH5Cq0 [sage] 投稿日:2010/05/13(木) 19:52:03 0
何の面白みもない用事を済ませ、正面ゲートへ向かう。
しこうして、若干挙動不審、或いは借りてきた猫の様を晒すCをアイソトープ氏より引き取った。
それから数分歩き『チャンネルゲート』の正面へと至る。
別荘地もあるにはあるが、陸生の種族にはちと辛い水深にある為こちらを選んだ。
何より向こうには、見られては不味い物もちらほら転がっているからな。

「Cよ。これから向かう先は俺も久しく足を運んでいない。そもそも使う予定が無かったからな、清掃用の機器も無い。
 故に備え付けの……アイソトープ氏の嗜好を過分に反映した原始的な器具を用いての、大掃除が必要となる訳だが」

多少大仰に、咳払いを一つ。

「俺はお前を過度に甘やかすつもりはないが、酷使するつもりもない。
 お前の故郷ではどうあれ、ここでは全ての種が平等だ。働けばそれに見合うだけの見返りを約束しておこう」

反応は見届けず、Cに背を向け門に向き直る。
が、一つ二つ伝え忘れた事を思い出し、触手の根元を捻じり振り返った。

「無論、報酬はやるのだから全てお前に一任する、と言う意味ではないぞ。
 見ての通り、手なら有り余っているのだ。それと……これを渡しておこう」

内側の触手に包んであったピルケースと、それを携行する為のポーチをCに差し出す。

「ストレスの緩和剤だ。無論、このような物に頼らなくても良いようにするのが最上であり、
 尽力もするが……現実問題、全てのストレスを取り除くと言うのは無理があるだろう。
 どうしてもストレスが振り切れぬなら、それを服用しろ。俺の世界の技術の産物だ。ストレスだけなら、完全に忘れられる」

だが、と言葉を繋いだ。
決して忘れてはならない留意事項が、あるのだ。

「忘れられるのは、あくまでストレスだけだ。例えば慢性的な不安から兆すストレスならば、
 その不安をどうにかせねば薬などその場凌ぎにしかならん。そう言う場合は、気兼ねなく俺に言え。
 それから、その薬は毒ではないにせよ、決して過剰に摂取して良い物ではない。一日に一錠が限度だ。順守しろよ」

ふむ、告げるべき事はこれくらいか。
言い忘れが無い事を頭の中のみで確認すると、Cの背に触手を添え、軽く押す。
ゲートを超えると、半世紀ほど時間を遡ったかのような家屋の玄関へと辿り着いた。

「さて……では始めるとしようか、大掃除を」

46 名前:C ◆udCC9cHvps [sage] 投稿日:2010/05/17(月) 23:13:48 0
「ケホッ……すごい埃。一体いつから掃除してないんですかぁ?」

そう言うと埃叩きで上から埃を下へと落としてゆく。
大掃除。と言ったがこれはそんな物じゃあない。
どちらかと言うと倉庫の片づけと言った方が近いし、事実そうなのだろうとも思う。
マスクの代わりにハンカチを口にあてながら叩く。叩く。更に叩く。
そうこうしている内に幾らかはマシになってきたその屋敷の中の調度品を見ながら先の言葉に対する答え。と言う物を返す。

「テンタクルさん?……さっきのアモリスなんとかっていうの。僕、あれでもかまいませんよ?」

流石に聞いた直後は驚いたが、だとしても人の好意を無に帰す事は出来なかった。

「それにしても……ちょっと読んでも構いませんか?これ」

そう言うと先程まで雑巾がけをしていた本棚のガラス戸をあけて本を一冊取り出す。
その背表紙には「倫理式発電基礎理論」と書かれており見るからにエネルギー関連の書物である。

「ロジカルジェネレーターの基礎理論ですか……随分旧式ですね。今のエネルギー関連の技術はどの程度なんですか?」

そう聞きながらもCの手は書物を凄まじいペースで、それこそただ捲って居るだけといった様子で読んで行く。

「え?あぁ、僕、これとほぼ同じ内容の本を暗記するぐらい読んだ事があって……」

そう告げると本棚に本を戻し、いったん休憩をしないかと持ちかける。

「お茶でも淹れてきます。お茶葉ってありますか?」

【掃除開始。どうやら規制の影響をもろに食らっている様子ですね】

47 名前:名無しになりきれ[] 投稿日:2010/05/21(金) 18:29:20 0
A Girl

48 名前:クロウン・アイソトープ ◆o6YVWr9M.. [sage] 投稿日:2010/05/22(土) 17:21:18 0
それぞれの『自分』とその周囲の動向を、議長室のクロウンは生体ネットワークによって知覚していた。

「久しぶりの来訪者と言うのは勿論喜ばしい事だが、何故こうも皆問題を抱えてくるのだろうねえ。
 いやはや、それにしてもテンタクル君が出てくるとは。助かったには助かったけど、
 彼は本当に父親に……祖父殿にそっくりだねえ」

言いながら、彼は口元に寂寥感の滲む曲線を描く。

「本当に……生き写しと称しても差し支えないくらいに……」

呟いて、しかし彼は自身の言葉が含む愚かしさの響きを自ら悟った。
寂寥の気を漏らしていた笑みに、一抹の苦味が浮かぶ。

「……そう言えば、彼の『噂』についてはどうだい? ジェリー君」

胸の内で蟠り尾を引く自分の発言を塗り潰すべく、クロウンは傍らの秘書に問いを放つ。
彼女は『アクアリウム』の人種であり――テンタクルに関する『噂』についての調査を任されていた。
『噂』と言っても、非常に些細で朧気な物だ。
『テンタクル・フランツは何か隠し事をしている』と。
一笑に付してしまっても問題ないくらいの、ともすれば妄言と切り捨てさえ出来そうな『噂』だが、
それでも調査をするのが彼らの仕事である。

「そうですね、在ると言えば在る。無いと言えば無い。と言った所です」

「つまり、何も見つかっていないと言う事か。うん、結構な事だ」



ウィリアムの応対をしていたクロウンは、狭く真っ白な個室に一人、佇んでいた。
だらりと垂らされた腕には、旧式の回転式拳銃が握られている。
ここは『理不尽の墓場』と呼ばれていた。
呼ばれていたと言っても、この場所を知るのはクロウン以外にはいないのだが。

社会を、世界を回していく上でどうしても避けられなかった理不尽。
それを知ってしまったクロウンが、生体ネットワークへの接続を切り、一人で秘密を抱え死んでいく為の部屋だ。
クロウンが『議長』と言うシステムとしてあり続ける為に、この世界を綺麗に保ち続ける為に。

そして、狭い室内に銃声が駆け巡る。
特殊な建材を用いられたその部屋は、彼の死体を瞬く間に分解してしまった。


同時刻、『ドール01』へ再び未来からの映像が送られる。
以前変わりのないその映像は――しかし唯一、送信された時刻が更に未来へと推移していた。

49 名前:テンタクル・フランツ ◆bYX6ZoqH5Cq0 [sage] 投稿日:2010/05/23(日) 05:22:37 0
> 「ケホッ……すごい埃。一体いつから掃除してないんですかぁ?」

「知らん。宛てがわれて以来一度も使った事が無いからな。少なくとも父の代から殆ど使われてはいなかった」

少なくとも100年には及ばないだろうから安心しろ、と付け足しておく。
自分で言っておいて何だが、こうも汚くてはもう100年分の汚れが加えられても大差なさそうだがな。
ともあれありったけの掃除用具を触手で振るい、文字通りの意味で手当たり次第埃を払っていく。

> 「テンタクルさん?……さっきのアモリスなんとかっていうの。僕、あれでもかまいませんよ?」

「む? ……ほう、そうか」

思わず口元が緩み、それを悟られぬように意図して掃除の箇所を変える。
それにしても、素晴らしい心掛けではないか。
うむ、素晴らしくはあるのだが、

「……だが断る、と言っておこうか。お前の返事が構いませんよ、である以上な。
 何も無理に名を変える必要などなく、また俺とて好意の押し売りをするつもりは毛頭ないのだからな」

酷く口惜しくはあるが、その為に道理を曲げる訳にもいくまい。
何より先程の改名の下りに、俺の未熟な精神から
独占欲に似た感情が滲んでいなかったかと言えば、それを否定する事は出来ぬ。

> 「それにしても……ちょっと読んでも構いませんか?これ」
> 「ロジカルジェネレーターの基礎理論ですか……随分旧式ですね。今のエネルギー関連の技術はどの程度なんですか?」

図らずも口元を苦々しく歪めていると、不意にCが一冊の本を提示して尋ねた。
何の本だったかまでは見ていなかったが、少なくともここにある物は見られた所で構わんだろう。
別段問題ない旨を返すと、Cはすぐさまに本を開き、凄まじい速度で頁を捲り始めた。
傍目には紙面に目を通していないのではないかと疑いたくなる程だが、
奴の鮮やかな瞳は微かにだが揺れ動いている。
感心が表情の管理を俺の意図から奪い取り、驚愕の色を微かに浮かべさせた。

「……エネルギー関連の技術は、高度な物となるとどうしても軍事が関わってくる。
 故に何処の世界も、落としたがらんのだ。悪い事とは言わん。
 最悪の事態を想定して事を動かすのは当然だからな」

だが、と言葉を繋ぐ。


50 名前:テンタクル・フランツ ◆bYX6ZoqH5Cq0 [sage] 投稿日:2010/05/23(日) 05:23:21 0
「お前は今、どの世界の思惑にも囚われてはいない。より正確には、手の届かぬ所にいると言うべきか。
 だからこそ、お前は何でも出来る。もしもお前が何らかの技術を齎せば、それは余さず偏らず世界に浸透するだろうな。
 ……その手の本は、良く読むのか? 

> 「え?あぁ、僕、これとほぼ同じ内容の本を暗記するぐらい読んだ事があって……」
> そう告げると本棚に本を戻し、いったん休憩をしないかと持ちかける。
> 「お茶でも淹れてきます。お茶葉ってありますか?」

「ならば技術として改善の余地がどれだけあるか、お前に可能で、
 尚且つお前が好しと思うのならば考えておいてくれ。返答はその内でいい
 ……ふむ、休憩か。いいだろう。だが茶葉などはない。あっても発酵とかそう言うレベルでは無くなっていると思うがな。
 一通り調達してこよう。その間、その本棚に収められている本は好きに読むといい」


――そう言って、テンタクルは一度外へと出て行った。
本棚にはこの世界では然程珍しくもない、新たな住民にこの世界を知ってもらう為の本がどれも埃を被って並んでいる。
だが一冊だけ、僅かに埃の薄い本がある事に、Cは気付くだろうか。
よく見てみれば、その本の前も同じく埃が薄く溝となっている箇所があった。
丁度触手が這った後のように。

本にはテンタクルの父が残した、『アクアリウム』の技術による新型兵器が記されている。
そして裏表紙の内側にはこう書かれているだろう。

『『崩落の時』に備えて』と。

【5日ルールぶっちぎってすいませんでしたー!】

51 名前:ウィリアム・M・イーデン ◆8YviwaLTZE [sage/出先にネット環境がありませんでした、申し訳ない] 投稿日:2010/05/24(月) 02:15:59 P
アイソトープ議長との2度目の会合は数時間後に行われた。
空いた時間にこの世界の見聞を広めておきたいものだったが、
結局本国への報告と技術交流に関する資料の取り寄せだけで終わってしまった。
報告、とはいっても異なる世界の間でリアルタイム映像通信などは使えるはずもなく、
ミノフスキー粒子の干渉共振現象を利用して情報を送信する。
それで19世紀の電信のような情報量での交信となり、非常に時間を食ってしまうのだ。

件の『世界を失いし少女』に関しては、我々の世界の人間に戒口令を徹底させるよう指示してある。
議長がはっきりと「こちらで処理する」と述べた以上、何らかのデリケートな問題を孕んでいる筈だ。
わざわざ藪を突いて蛇を出す事もないだろう。



「我々の持つ『世界間移動技術』の概略に関する資料を用意しました。
 <<コノート>>のほうから議長宛で生体ネットワークにアップロードされているのを、ご確認頂けると思います」

そう言いながらも私自身は紙の資料を手にしている。長年の習慣というのは一朝一夕で抜けないものだ。
随員として同行しているミラー少尉などは、なにやら文字の流れるホログラムを確認している。
生体ネットワークに意識をリンクさせてコマンドを実行すれば、あのような便利機能も簡単に使えるらしい。
適応の早さは彼女の技能ゆえだろうか? あるいは単に私が歳を食っただけなのか。

「この技術は非常に未熟なものです。
 物体を送り出すための『ゲート』を安定して展開させるためには非常に大規模な施設が必要であり、
 送り出した物が無事に配達先に届くという保障もない。
 また、この『超長距離移動演算施設』の基礎設計を行った人物も既に死亡しています。
 我々としては、あなた方の転移技術の提供を受ける事を考えているのですが…」

52 名前:ウィリアム・M・イーデン ◆8YviwaLTZE [sage] 投稿日:2010/05/24(月) 02:16:43 P
私は本国が寄越した『もうひとつの資料』を確認する。
こんな物騒な出自を持つモノを外交の場に寄越した本国の連中にはうんざりだが、
普段どおりに感情を表に出さず、淡々と説明を続けた。

「…実は、我々の世界でもそちらと同様の問題が持ち上がったのですよ。
 こちらの資料は、未完成な『受け入れる』技術を使用し続けた場合、予想される危険性が指摘された際の文章です。
 結局、解決策として『超長距離移動演算施設』には『送り出す』機能だけを与える事になりました。
 一方通行になってしまいますが、先方にも同等以上の技術があるならば帰り道の案内には困りませんからな?」

地球連邦軍内の軍閥による内乱が勃発していた時期、まだまだ研究途上であった世界間移動技術の軍事転用が計画されている。
『時空震動弾』と名付けられたそれはABC兵器やソーラ・システムに代わる戦略兵器として期待されたものの、
軍内で大きな影響力を持っていた人物に致命的な危険性を指摘されるに至り、開発計画は中止。
この資料はそのとき学会に提出されたレポートの抜粋、および再現実験に関する簡単な補足である。
私は『受け入れる』技術とだけ説明したが、時空震動弾とは要するに
「異なる宇宙の一部を切り取って持ち込む事により、周囲を空間ごと破壊する」というコンセプトだったと聞いている。

この文章からは軍事利用に関する部分が見事に削られているが、大意は伝わるよう編集し直されたらしい。
曰く。
呼び込む物が「単なる物質」(ここには議長が述べた人間も含まれているのだろう)なら良いが、
宇宙の在り様を変えてしまうようなモノを呼び込んでしまう可能性もある。
実際に「円周率の変動」という有り得ない筈の現象が観測され、
原因は物理法則の異なる宇宙からの情報の流入、という推測が示されている。
このような状態が続けば時空間の不安定化を招き、『多元世界(Plural Worlds)』化や
最悪の場合、宇宙そのものが消滅してしまうのではないか…。

「私は専門家ではないので、この文章がどこまで正しいのかは分かりません。
 あなたがたの宇宙が100年間変わらず存続しているということは、我々の懸念は単なる杞憂だったのかも知れない。
 いずれにせよ、技術交流を行うならば情報交換は不可欠でしょう。
 互いの外交チャンネルの確立のために、中央世界からも我々の宇宙に人員を派遣して頂きたい。
 その際にはウィーン条約に基づく外交使節団としての身分の保証をお約束します」

我々の宇宙に彼らの大使が駐在すれば、必然的に彼らの転移技術や通信技術も持ち込まれる事になる。
いきなり地球ごと吹き飛ばされるような真似をされるリスクも減るだろう。
まずは近くに立ち観察する必要があるのだ。
人間も、国家も、技術も、世界も。


53 名前:フランチェスカ・パレート ◆CfFRANCAxY [sage] 投稿日:2010/05/26(水) 20:25:17 0
――『メルク界』と名乗る、此処以外の何処かの宇宙――
一面が真っ白な、白い、白い、白い、白い部屋。

スポンジ状の壁面は全ての音を吸い込み、
心臓の鼓動すら聞こえなくなるのではないかと思わせる。

白い机につっぷす少女は、虚ろにつぶやく。
「久しぶりの依頼だし。…どうせ、どうせ。」

少女は数時間前―恐らく―の事を思い出す。
『はぁ?腐乱カスじゃない。占いって結構馬鹿にならないモノね。
 大事な実験の日だというのに、朝から腐乱カスの顔を見るなんて最悪だわ』
『まったくですわぁ。お姉さまに謝りなさいな。腐乱カスは腹を切って死ぬべきよ!』
「…っ!」
通り過ぎる間際、三人組の最後の一人がうつむきがちに言った。
『ごめんね、フランカちゃん』

何時間経ったのだろう。この白い部屋は感覚を奪う。
「私がいなくなっても誰も困らないよ。なら、跳べる筈だよね」
少女の声を、無機質な非情の壁が吸い込む。
「異界跳躍っていわれても、どうすればいいのか分からないよ。
 あ、白い壁の中に、赤い点が浮いたり消えたりしてる…」
この声もまた、吸い込まれた。

「この実験っていつ終わるんだろう。でも、帰っても、また。」
「私がこの実験に選ばれたのは、私がこの世界に要らないからなのかな。
 なら、なんで…なんで神さまは、この世界に私を生ませたの…?
 みんなッ!なくなっちゃえば、いいのっ、にっ!」
少女の目から、大粒の涙がこぼれ落ちた。
そのとき。
少女の体を、白い煌めきが包み込む。まるで白い部屋が彼女を喰らうように。




――『中央世界』――
『中央世界』首都の一角にある庭園。
その庭園を巡回していた警備員らしき人物は、奇妙な現象を目撃した。
突然白い光が目を射たかと思うと、次の瞬間年端もいかない少女が現れたのだ。
学生かと思われるが、如何せん荷物が多い。
「君!所属は?」
「あ、あ…」
体に、力が、入らない…。少女は畏怖の表情を浮かべ、バランスを崩して尻餅をついた。
手で喉を押さえ、なんとか気分を落ち着かせる。
「メ、メルク界から来ました…フランチェスカ、パレート、です」
小さな声でそう言うと、少女は書状を差し出した。

原始的な紙の書状には、顔写真つきで次のように書かれていた。

『『まだ見ぬ世界』代表者様
                      メルク界銀河連邦大統領 アナトール・ド・リシュリュー

メルク界銀河連邦政府は、貴世界との世界間交流の件について『合意』する。
貴世界との交渉にあたり、次の者を特命外交官に任じる。

    フランチェスカ・パレート
(以下略)』

この書状が政府に届けば、私の居所も決まるのだろう、とフランチェスカは思った。

54 名前:フランチェスカ・パレート ◆CfFRANCAxY [sage] 投稿日:2010/05/26(水) 20:28:05 0
名前:フランチェスカ・パレート
職業:脳波コントロール機器のモニターを務める学生
元居た世界の名称:メルク界
性別:女
年齢:16
身長:154cm
体重:kg単位で2桁前半
性格:不安定で、向き不向きに極端な差がある
種族:異世界人だが、装備等を除けば中央世界の人類と差はない
外見:ブレザー制服
備考:某政府系研究機関の登録者中、最凶のモニター。テスト中に暴走させたデバイスは数知らず。
そのため、普段はあまり脳波コントロール機器を使わない。
みなし子で家族がいない。元の世界では寮生活を送っていた。

元居た世界の『科学』の名称や形態:
宇宙進出、光学兵器、量子転送技術やオートメーションなど一通り開発された世界。
脳波コントロール機器が普及しており、その品質検証を多感な少年少女に担わせている。
有人世界間航行については未だ研究段階。

【宜しく御願い致します。】

55 名前:ヒヨコ戦艦 ◆0pPPHCf0SY [sage] 投稿日:2010/05/28(金) 22:33:03 0
範馬勇次郎&江田島平八&ヒヨコ戦艦が参戦してSFTRPG世界観を大冒険&超究極鬼探検旅行するよねー!?♪。

56 名前:◆udCC9cHvps [sage] 投稿日:2010/05/28(金) 22:58:08 0
「「お前は今、どの世界の思惑にも囚われてはいない。より正確には、手の届かぬ所にいる」かぁ。
 本人にはそんな実感ないです……」

テンタクルが出て行ったその後、虚空に向けてCは呟く。
彼はここにある本はどれも有用だと言っていた。もちろんそれは日常生活に対してであり、
また恐らくは帰路を見つけるためにも有用なのかもしれない。

「…改善か。どうしましょう、この技術が僕たちの世界では#$(’!(乾電池)に該当する技術だとか言ったら、
 ……やっぱりまずいですよね?」

この事は一旦、胸の中にしまうと決め、とりあえずテンタクルが帰ってくるまでの間、本を読んでみようと一冊の本に手を掛ける。
その時、ふとした違和感を感じた。
例えるのなら、ピアノの鍵盤の内、一つだけ黒鍵が足りない。そんな些細な、しかし重大な違和感だ。

「……これ?おかしいです。おかしいですよ?」

Cは気づいてしまった。その異変に。

「この本だけ埃が掃われてる?……とりあえず、読んでみましょう」

しかし、同時にこれを読むのははばかれる気がした。
なぜか彼、テンタクルの秘密を知ってしまう様な、そんな気がして……

「いけないな。うん。いけませんよね?」

そう呟くと手に取った本を棚に戻す。
ただし、その場所を記憶して……

「それより、お台所の様子も見ておきましょう」

振り返り、やはり気になるのだろう本の位置を見つめるとCは台所へと向かう。
そこには一通りの食器があるのを確認し、ポットを手に取る。大丈夫だ。使用には問題ない。

それを確認して、皿を洗い始めると鳴り響く呼び鈴。

「はぁい!おかえりなさいです〜!!」

その呼び主をテンタクルと疑わないCは何処からどう見ても主夫らしい動きで玄関へと向かう。
しかし、パタパタと言う間抜けなスリッパ音と共にCが出迎える事になった人物は予想さえしてない人物だった。

「はぁい?ちびちゃん元気してた?」

「あ、ああああ!!あけみちゃん?」

「うん。まさかの事態に明美ちゃんも正直驚いてんのよねぇ……とりあえず上げてくれない?君の保護者って人にも話がしたいし」

【筆が遅くて申し訳ないです】

57 名前:クロウン・アイソトープ ◆o6YVWr9M.. [sage] 投稿日:2010/05/31(月) 19:48:36 0
すいません、ちと諸事情で投下が遅れます

58 名前:光神電車男 ◆KpDCfjoRew [sage] 投稿日:2010/05/31(月) 21:54:18 0
所で宇宙旅行で惑星探検をしていて何時の間にかチョンピースと言う宇宙語の未知の言語を見付けたのだが全力で解読を頼むよ皆様!?♪。
オールパーフェクトスペースマルチバースフォースブリザードと言う未知の暗号を見つけたのだか解読を頼む!?♪。

59 名前:テンタクル・フランツ ◆bYX6ZoqH5Cq0 [] 投稿日:2010/06/04(金) 19:46:24 0

「帰ったぞ、茶葉と水は勿論食器も調達した。……何だ、結局一冊しか読まなかったのか?」
 
先程の異様な速読には驚嘆したが、それだけに一冊と言う数字は正直、
この世界の言葉で言うなら肩透かしを禁じ得なかった。
俺がこの言葉を使うとどうにも諧謔にしかならぬが故に、内心のみに留めねばならんのが面倒だ。
ともあれ小僧がどのような本を読んだのかと触手を伸ばす。

「……ん? 何だ、据え置きの食器を使うのか? 随分と放置されていたが、使えるのかそれは」

が、用意された食器にふと目が行き、俺はその手を止めた。
更に視線は食器から小僧へと推移して、

「……誰だ? そいつは」

そこには見覚えの無い女がいた。


【遅れてすいませんっス。お話を聞く体勢が出来ましたって事で】

60 名前:クロウン・アイソトープ ◆o6YVWr9M.. [sage] 投稿日:2010/06/05(土) 14:49:20 0
「ようこそフランチェスカさん。我々は貴女と貴女の世界を歓迎します」

『未知への指標』へと案内された彼女を自分から自分へと引き継いで、クロウンは応接を始めた。
彼は自分から手渡された彼女の書状に目を通す。
一枚二枚とめくっていく内に、彼は『交渉材料』――要するに相手方、メルク界が有している技術の概要――無論技術そのものではなく――を発見した。
たった一つの世界が築き上げたにしては、随分と高度、かつ多岐に渡る技術だ。
地の技術力が高いのか。多種多様な技術が混合された中央世界の技術とは、互いに革新を齎し合えるだろう。

「……おや?」

その中で一つ、クロウンは興味深いものを見付けた。
『脳波コントロール』、名称のみで概要の書かれていない、正真正銘未知の技術。
だが名称を認めると同時に、彼は一つの事を脳裏に浮かべていた。

某所の研究所に保管してある、『ドール』の飛行船である。
外部のシールドを中和し内部をスキャンした所、円筒の中枢部には『脳』が収められていた。
内蔵されていた『脳』は、外部からの呼びかけには一切応えなかった。
単に応答の手段がないのか、それとも何処かに潜んでいる筈の仲間――正しくは彼自身だが、それをクロウンが知る筈もない――の事を漏らさぬよう黙秘しているのかは分からない。
だがこの『脳波コントロール』技術の実質によっては、『ドール』との膠着状態が打開出来るかもしれないのだ。

「……フランチェスカさん。この脳波コントロール技術とは、一体どのような代物で?
 差し支えがなければ住民登録を終えた後で、貴女の一存で決め兼ねるならば、本国へと打診をお願いしたいのです。
 無論、貴女や貴女の世界には相応のお礼を致します。例えば技術提供でしたら、このような……」

クロウンは己の嗜好で持ち合わせているメモ帳にペンを走らせて、彼女に差し出す。
彼女が理解出来るかは分からないが、紙面に記された技術はどれもメルク界には無い物が取り上げられていた。
普通ならば、ただ一つの技術と交換するには破格と言える。

「勿論、断られたとしても技術提供は問題なく行うのですがね。早急を心がけさせて頂く、と言う事です」

逆説を辿るならば、断られた場合は「行う」と言いつつも、いつになるかは分からないと言う事でもあった。


【遅れてすいませんでした
 脳波コントロール技術下さいな。フランチェスカさん個人に対しては要求の尊重。
 メルク界に関しては暗に交換条件を突きつけた、って感じでお願いします】

61 名前: ◆8YviwaLTZE [sage] 投稿日:2010/06/05(土) 18:02:08 P
【すみません、この手のスレへの参加は初めてだったのですが
 実は>>48の時点で参加取り消し判定になってましたか?
 だとしたら全く空気読めてませんでしたね、ご迷惑おかけしました】

62 名前:クロウン・アイソトープ ◆o6YVWr9M.. [sage] 投稿日:2010/06/05(土) 18:11:21 0
いやいや、まさか。そんな判定を出せる人なんていませんですよ
ぶっちゃけ自分がミスりました! てっきりアクション返したつもりでいたら
ボールが足元に転がってたって感じです。申し訳ございませんです。
今日明日の内にはアクションお返ししますです。

63 名前: ◆8YviwaLTZE [sage] 投稿日:2010/06/05(土) 18:22:23 P
【おっと、それはとんだ失礼を。
 了解です、お騒がせしました】

64 名前:フランチェスカ・パレート ◆CfFRANCAxY [sage] 投稿日:2010/06/06(日) 21:14:35 0
「失礼します」
応接に現れたのは、中央世界議長クロウン・アイソトープ氏。
中央世界議長という肩書きがどれほどの権威を持つのかはまだよく分からないけれど、
とにかくすごい人だというのは分かる。どうしても体がこわばってしまう。

机に着くと、アイソトープ議長は以前渡した紙の書状をめくって。
「あ…」
そうだった。
実は不自由で重ったい紙の束ではなく、電子端末に納めたものもあるのに、渡しそびれていた。紙媒体のものは、もし『まだ見ぬ世界』つまりこの『中央世界』で
端末が使えない時のための配慮であった。
どうしよう。
言おうかなと思って言えないうちに、アイソトープ議長からの質問を受ける。

> 「……フランチェスカさん。この脳波コントロール技術とは、一体どのような代物で?
> 差し支えがなければ住民登録を終えた後で、貴女の一存で決め兼ねるならば、本国へと打診をお願いしたいのです。
> 無論、貴女や貴女の世界には相応のお礼を致します。例えば技術提供でしたら、このような……」

「脳波コントロール技術というのは、…」
なんだろう?少し言葉に詰まる。
元いた世界ではありふれているものだから、改めて考えたことがなかった。

「はい。どうしたいか思い浮かべるだけで動かせる、リモコン要らずの機械のことです。
 例えば、甘いコーヒーが好きだと思っているだけで、
 砂糖の量を調節してくれるコーヒーメーカーや、
 どんな料理を作りたいかって考えるだけで火加減を調節してくれるクッキングヒーターがあります」
我ながら間の抜けた回答だな、と思った。
そういえば、自分に害意のある相手を狙う小さなミサイルみたいなものもあるけれど…。
ちょっと物騒だと思ったので、言わなかった。

「でしたら国のほうに相談してみます。
 それと、こちらに脳波コントロール機器のサンプルがあるので、お渡しします…」
差し出したのは渡しそびれていた端末と、それから掃除機。
だいたいどのあたりを掃除したいか思い浮かべるだけで部屋を綺麗にできる優れモノ(?)だ。。
四角い部屋を丸く掃く人が使っても、隅々まで残さず掃除してくれる。

スキーム上、軍事技術等の提供は厳しく制限されているけれど、
脳波コントロール技術そのものは"あまりにありふれている"ために、それほど注意されていなかった。
考えてみれば掃除機一つだって、脳波の読み取りや、利用者保護のためのセキュリティ機構
掃除範囲決定のための推論機構など、いかにでも軍事転用できそうなものだけれど。

居住区の貸与、生体ネットワークへのアクセス権、護身用の軽火器の携帯許可など…
およそこちらでの生活に必要なものについては確認のみで要求が通った。
さて、あと必要なものは…
「…こちらの世界に、学校、というか、青少年の教育を行う施設があれば、転入手続きを取りたいのですが…」
なぜだか、ちょっぴり気恥ずかしかった。

フランチェスカが転移に成功したことにより、
メルク界は『中央世界』との通信チャネルを開くことができた。
軍事技術や宇宙航行技術の提供を要求されるとにらんでいたが、
実際に要求されたものは、メルク界では"ごくありふれた"脳波コントロール技術。
メルク界は、脳波コントロール技術に関する基礎から応用まで幅広い資料を
(ただし、兵器など直接的な軍事技術は除いて)『中央世界』に供与した。

65 名前:◆udCC9cHvps [sage] 投稿日:2010/06/07(月) 00:38:20 O
「帰ったぞ、茶葉と水は勿論食器も調達した。……何だ、結局一冊しか読まなかったのか?」

アケミチャンの突然の来訪から少し経ち、手持ち無沙汰だったので二人で窓拭きをしていたときテンタクルは帰宅した。
茶葉と水、食器まで調達してきた様だが……どうやらこの世界の水は余り飲料には向いていないらしい。

(えー。僕、少し水飲んじゃいましたよぉ)

「……ん? 何だ、据え置きの食器を使うのか? 随分と放置されていたが、使えるのかそれは」

「あ!……はい。大丈夫ですよ。
 わざわざ茶器まで用意して貰ってすみません。じゃあ、入れてきますね」

そう言うと荷物を受け取り、台所へと向かう。
しかし、退室直前にテンタクルに呼び止められる。

「……誰だ? そいつは」

「えっとぉ……僕の知り合いの方で、うん…本人同士の方が早いと思うんですけど……」

「そ、ね。詳しい話とかは明美ちゃんがしとくからちびちゃんはお茶をお願いね」

その言葉を聞き、Cは退室する。
そして、アケミチャンはテンタクルへ長くなるからと断り、座るようにすすめた。

「私の名前は明美。名生は無いわ。と言うかちびちゃん……
 Cくんの居た世界で名生を持ってる人はほんの一握りよ」

そこで区切り、次に明美はここに来た経緯。正確にはこれた経緯を話す。

「で、私達がここにいる理由だけど……平行世界間に置ける断列エネルギー領域からの採電により発生したある種のブラックホール的な物を通ってしまったみたいなの。
 つまり、偶然ね」

「この世界に関してはソープランド?だったかしら……兎に角、そんな感じの名前の人に聞いてるわ。
 そして貴方はアクアリウムって言う軍事関連の世界に属している」

どこから取り出したのだろうか分からないが紙とペンを取り出し、明美は今の話の関連図を書いてみせる。
やたらと丸こいその文字は多少読みにくく感じるが、それでも読む分には問題は感じられない。

「面倒だし、簡潔に言うわ。そちらへのエネルギー関連の協力をするから、
 変わりにさっき言った平行世界間を移動するための技術に関しての研究に協力して欲しいの」

66 名前:クロウン・アイソトープ ◆o6YVWr9M.. [sage] 投稿日:2010/06/08(火) 20:40:46 0
> 「…実は、我々の世界でもそちらと同様の問題が持ち上がったのですよ。
>  こちらの資料は、未完成な『受け入れる』技術を使用し続けた場合、予想される危険性が指摘された際の文章です。
>  結局、解決策として『超長距離移動演算施設』には『送り出す』機能だけを与える事になりました。
>  一方通行になってしまいますが、先方にも同等以上の技術があるならば帰り道の案内には困りませんからな?」

「勿論です。既に当『中央世界』との行き来は当然として、他世界の住民を誘致する事に成功した世界も存在します」

後者に関しては『中央世界』を経由していない事を、クロウンは加えて説明する。
そしてその事が、決して『中央世界』の恣意――言葉を選ばずに言うならば政治上の優位に立つ為や保身の為で無い事も。

> 「私は専門家ではないので、この文章がどこまで正しいのかは分かりません。
>  あなたがたの宇宙が100年間変わらず存続しているということは、我々の懸念は単なる杞憂だったのかも知れない。
>  いずれにせよ、技術交流を行うならば情報交換は不可欠でしょう。
>  互いの外交チャンネルの確立のために、中央世界からも我々の宇宙に人員を派遣して頂きたい。
>  その際にはウィーン条約に基づく外交使節団としての身分の保証をお約束します」

「貴方々の懸念は正しく尤もです。そして正鵠を射抜いてもいる。
 ……一つ、お見せしたい物があるのですが、構いませんね? 先程の『帰り道』や『異世界人の誘致』にも関係していますので」

言いながら、クロウンはこめかみに右手の人差し指を添える。
所作に厳密な意味はない。ただレトロな物品を好む彼の嗜好から来る、茶目っ気のようなものだ。
ともあれ彼は生体ネットワークは通して自身の権限によって、その場にいるウィリアムとミラー少尉を空間転移の対象に指定する。
彼らが転移させられた先は同じ『未知への指標』の内部で、やはりクロウンがいた。

「こちらです。ここから先はあまり刺激が好ましくない場所でして。ご足労を願う事になりますが、ご了承下さい」

クロウンが先導し階段を下り二重のドアを潜り、彼らは小さな部屋に至る。
如何な物質かは分からないが透明な壁ごしに、開けた空間の見える部屋に。
塔の一階層を丸々使ったと見える円形の空間はただただ真っ白だった。

「……面白い物を、ご覧に入れましょう」

再び、クロウンは人差し指でこめかみを軽く叩く。
透明な壁の向こうで床が開き、放水用のノズルらしき物が姿を覗かせた。
ノズルはゆっくりと回転を初め、前触れもなく放水を始め――散布された水は徐々に加速を得ながら、天井へと向かっていく。

「実はですね。これ、何の技術も用いてないんです。中央に見える、一世紀以上前からある散水器以外は」

67 名前:クロウン・アイソトープ ◆o6YVWr9M.. [sage] 投稿日:2010/06/08(火) 20:42:17 0
頭上を見上げながら、クロウンは説明を紡ぐ。

「ただこの壁の向こうの空間には、この『中央世界』ではない世界が張り付けられているのです。
 ……いや、少し語弊がありますね。正確には『中央世界』の上に、別の世界を上塗りしているのですよ。
 『他の世界で言う重力に当たる力が、上方に向けて働いている世界』をね」

これはつまり、丁度ウィリアムの提示した資料にあったように、『異世界を切り取り、持ち込んでいる』のだ。
広大な砂漠から一握の砂を持ち去る程度の事とは言え『切り取る』と言うとやはり忌避される事が殆どではある。
だが『物資や技術の提供には必要不可欠』である為、結果的には許容されていた。
ちなみにクロウンの説明には、重力の働く方向が下であるのだとか、重力は方向ではなく質量によって働く物である等と言う撞着はあるが、『上下』はあくまで感覚的な例え話である。

「『中央世界』は、例えるならば真っ白なキャンパスなのです。その為、このような事が可能な訳ですな。
 無論重力はこの『中央世界』でも地面に向けて働いていますが、それは『偶然』そうであっただけの、
 『そうであるからそうである』と言った物に過ぎないのです」

さて、と一息吐いてから、クロウンは更に説明語りを続ける。

「見ての通り、壁の向こうの世界は『重力が上方へ』働いています。
 それではその世界の一部に、『重力が下方へ』働いている世界を『上塗り』したら、どうなるでしょうか」

言うや否や、彼は生体ネットワークを介してその操作を行う。
忽ち、天井に溜まっていた水が部屋の中央に引き寄せられ、細微な飛沫となって飛散する。

「……と、まあこう言う事ですな。無論、人間や物質自体は『重力に従う物』に過ぎないので、この世界との行き来は普通に出来るのですがね。
 ともあれこれらの『世界の切片』を用いる事で、我々は予め重大な事故が起こるかどうかを観測している訳です。
 ……なので貴方々の世界に関しても、同じ事が必要となりますが、よろしいですね?
 大気成分などについては貴方々の検査結果からある程度分析出来ますが、それだけでは解明出来ない事もありますのでね」

クロウンの言葉の裏には、『不自然に夭折した少女』の像があった。
無論その事を表に取り上げはしないが、前例がある以上それを念頭に入れて思考するのは当然の事だ。

【遅れてすいませんでした】

68 名前:クロウン・アイソトープ ◆o6YVWr9M.. [sage] 投稿日:2010/06/11(金) 20:14:14 0
>>64

脳波コントロール技術のサンプルとして受け渡された掃除機は
試運転と言う名目で、すぐさま然るべき研究室へと送られた。
多少彼の想定した――より非道徳的な――物とは違ったが、
脳波による機械の操作が可能と言うのであれば、彼が展望した目的は果たす事が出来る。
即ち、本来は機械を制御する脳に干渉する事で『ドール』から情報を引き出すつもりであったが。
そうではなく逆に、機械から脳へと逆に辿る事で、言わば脳へのクラッキングを行うのだ。
無論それなりのセキュリティは存在するだろう。
だが『中央世界』には元々『生体ネットワーク』と言う、
管理者側からならば一方的な干渉も可能である個々への接続が存在する。
打開策を見出す事は、然程困難でもないと言うのがクロウンの公算だった。

「ご協力に感謝します。フランチェスカさんと、メルク界に。
 つきましては迅速な技術提供と……学校ですか?
 『中央世界』では基本的に、生体ネットワークを介した個別授業が教育となっていますが……」

一呼吸置いて、彼は続ける。

「『今まで見てきた世界』の保存に情操教育を兼ねて、学生達が一つの教室に集い、授業を受ける。
 そんな昔ながらの『学校』も存在します。
 お望みでしたらどちらでも手配する事が出来ますが、如何ですか?」

69 名前:テンタクル・フランツ ◆bYX6ZoqH5Cq0 [sage] 投稿日:2010/06/11(金) 23:23:18 0
「小僧、緑茶やダージリン……名称が分からなければ癖の弱い茶葉は青いキャップのボトル。
 癖の強い茶葉や、ミルクを入れるつもりなら赤のボトルだ。
 コーヒーは自分が飲みたいのなら赤を使え。面倒なら水道水でも構わん。普通に飲める代物だ」

故郷が故郷であるが故に、俺は水にはそれなりに喧しい気質を持ち合わせている。
何もその拘りを他人に強要するつもりは更々無いがな。
ともあれCが部屋を出たのを見届け、俺は小娘の前に立つ。

「長話になる事なら気にするな。見ての通り立つ足には困っておらんのでな。
 ……とは言え、オキャクサマを前に突っ立って話を聞くのも不躾か。お言葉に甘えるとしよう」

勿体ぶった前振りを置いてから、俺は椅子へと腰を下ろす。
と言うのも一般的な表現を当て嵌めたまでで、実際には俺の体に腰などと言うものはないのだがな。
折角だ、椅子を使うのに適した体型、即ち二足歩行の一般的な人型へと姿を編み変えておくか。
触手を絡ませ捻じれば、一応人の形を取る事は出来るのでな。
俺は相対する……少なくとも見た目は中央世界人のそれと何ら変わらぬ、アケミと名乗った小娘に向き合う。

> 「この世界に関してはソープランド?だったかしら……兎に角、そんな感じの名前の人に聞いてるわ。
>  そして貴方はアクアリウムって言う軍事関連の世界に属している」

「オイオイ、物騒な事を言うんじゃない。我が故郷アクアリウムが高い軍事技術を有しているなどと言うのは、『あくまで噂』だ。
 根も葉もない、な。アクアリウムはこの中央世界に医療や定向進化に関連する技術を提供している。それだけだとも」

触手を一本伸ばしペンを絡め取り、アケミの提示したメモに訂正の文を書き加える素振りを見せ――だが取り止める。
ふむ、その細く研ぎ澄まされた目は、信じておらんな? あぁ怖い怖い。
まあこれでもかと言う程分り易く仕立て上げられた嘘なのだから、信じられる方がマズいのだが。

> 「面倒だし、簡潔に言うわ。そちらへのエネルギー関連の協力をするから、
>  変わりにさっき言った平行世界間を移動するための技術に関しての研究に協力して欲しいの」

「その件に関してはアイソトープ氏の方が適任だと思うのだがな。まあ良かろう。そのように話を通しておこう。
 困った振りをして往来をさ迷えば一人位釣れるだろうから、その方が早いかもしれんがな」

皮肉に笑みを添え目を閉ざし、しかし俺は再び解き放った視線でアケミを射抜く。
一応仕事柄、釘を刺しておかねばならん事があるのでな。

「……だが、お前達のエネルギー技術に関しては、この中央世界への提供は控えてもらおう。
 この世界の関連技術水準よりも、僅かに上を行く程度にな。今現在、この世界はエネルギーに関して困窮していない。
 争いの火種にもなり得る以上、それらの技術は小出しでいいのだ。……そのように話を通すが、構わんな?」

この小娘は紛わず己の『世界』を意図した人間であり、あの小僧とは違う。
自らの周囲だけを『セカイ』と認識してあの小僧の持つ技術であれば、
『中央世界』は交渉も腹蔵もなく、圧倒的なまでに平等に世界へ浸透させられたのだろうが、まあ特には問題ない事柄ではあるか。
百の益が十の益に変わった所で、益には違いないのだからな。

70 名前:テンタクル・フランツ ◆bYX6ZoqH5Cq0 [sage] 投稿日:2010/06/11(金) 23:24:40 0
「……そう言えば聞き忘れたし聞かされた覚えもないが、お前はあの小僧に近しい人間と見て構わんのだな?
 あの小僧の生態を聞くに、そのような者がいるのは心強い。
 そこでだ。お前を交えて、お前達が元の世界へ帰る術が見つかるまでの身の振りについて尋ねたい」

一応、この世界に訪れた『来訪者』が何もしなくてもそれなりの暮らしを保証されている事に関しては、
既にアイソトープ氏から聞いているだろうから軽く確認を取るだけに留めた。

「……ともあれだ。基本的に働かざる者食うべからずとの諺はこの世界では適用されん。
 だが、希望者には勤労の場を設ける事も『中央世界』は取り計らっている。他にも旧時代的な『学校』等もだな。
 ……そう言えば、あの小僧が幾つだかは知らんが、随分と世界の狭そうではあったな。給仕のような扱いであれば、当然か」

扱い自体を責める旨の発言ではない事を補足し、俺は提案を述べる。

「どうだ、あの小僧を『学校』に通わせてみると言うのは。
 あやつの種族は随分とストレスに弱いようだが、それは身を置かされてきた環境が為に、耐性を得る進化が出来なかったからではないのか。
 そう仮定すれば、情操教育を受けさせるのは中々悪い事ではないと思うが、どうだ?」

71 名前:フランチェスカ・パレート ◆CfFRANCAxY [sage] 投稿日:2010/06/16(水) 17:34:33 0
>>68
>「『今まで見てきた世界』の保存に情操教育を兼ねて、学生達が一つの教室に集い、授業を受ける。
> そんな昔ながらの『学校』も存在します。
> お望みでしたらどちらでも手配する事が出来ますが、如何ですか?」

「それでは、後者……昔ながらの『学校』に通わせて頂きたく思います」
特に学校にいい思い出があるわけでもない。
それでもなんとなく学校に行かないと落ち着かないのがフランチェスカだった。

脳波コントロール技術は、『中央世界』ではメルク界の思惑とは異なった形で応用された。
メルク界はそのことにまだ気づいていない。
『中央世界』から見返りとして送られた技術
――恐らく、これもまた『中央世界』では枯れた技術なのだろう――
も、すぐさまメルク界の研究機関へと送られた。
しかし、『中央世界』程の研究開発力を持たないメルク界にあっては、解析にはまだまだ時間がかかるのだろう。

メルク界から『中央世界』への転移に成功したのは、フランチェスカただ一人だった。
といっても華々しい活躍があるわけでもない。
フランチェスカの仕事といえば、メルク界政府と『中央世界』との橋渡しをするだけだ。
それもクロウン氏に渡した端末で大体の用は足りるから、
あとはせいぜい『中央世界』の世情調査や機器のモニタリングがあるくらい。
そもそも落ちこぼれのフランチェスカにそこまでの期待は持たれていない。良くも悪くも。

―――――

「ねむい……」
フランチェスカは重たいまぶたをこすった。
メルク界についてから数日経つのに、まだ時差ボケが治ってない。
(無理に寝ようとするから悪いのかな、今日は寝ないで起きててみよ……)
『中央世界』についてからずいぶん体を動かさないといけないことが増えた気がする…
脳波コントロール装置の普及したメルク界にあっては、たいていの事はリモコンでできた。
とはいえ『中央世界』の生活が原始的という訳でもなく、単に慣れていないだけなのかもしれない。

昨日は『学校』のクラス決めのためのプレースメント・テストがあった。
異世界の住人が一同に介する『中央世界』ゆえ、世界間の交流を兼ねた学校生活であっても、
授業に支障をきたさない程度の同質性は要求されるらしい。
学生が過ごしやすいように、という配慮ではあるが……テストがテストであることに代わりはなかった。
寝ぼけまなこのフランチェスカはただでさえ高いとはいえない学力にマイナス補正がかかっていた。
点数を見るだけでなく面接等ではかる定性分析もあったけど、ガチガチだった。
変に頑張ってついていけないクラスに入れられるよりはマシかもしれないけど……
しかしそれは今のフランチェスカの慰めにはならない。

「そういえば、時間割を決めなくちゃいけないんだっけ……」
端末を開いて生体ネットワークにアクセスし、『学校』の講義要項を開く。
フランチェスカはしばらく選択科目の一覧を眺めると、溜息をついた。
それぞれの世界から『中央世界』に来る者はふつうそれなりの向学心
――探求心と言い換えてもいい――を持っているものらしい。
そういう者が多いせいか、フランチェスカが見てもピンと来ない科目も多かった。
大体、フランチェスカは元の世界で科目選択をしたことはあっても、時間割を組んだことなどない。
まあ、特に考えない者は科目名などのフィーリングで適当に決めるのだろう。
もちろんフランチェスカもその一人だった。
「これでよし、と」

問題がなければ数日中のうちに『学校』へ通い始められるはずだ。
(学校が始まる前に、この世界の子がどんなこと考えてるのか調べておこう……)
フランチェスカはファッション情報やら芸能情報を調べはじめた。
学業よりも周りの目が気になるフランチェスカであった。

72 名前:名無しになりきれ[] 本日のレス 投稿日:2010/07/20(火) 12:08:49 0
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