【学園都市】電脳神話デビチル!Ⅱ【TRPG】

1 : シャルル ◆Z6yK3vQwuU [sage] : 2012/06/03(日) 20:06:55.77 0
マザーコンピューター"ゼウス"に支配され、人々が心の自由を奪われた世界にて――
人類が生み出した最後の希望、その名は”デビルチルドレン”!

ジャンル:SF風未来ファンタジー
コンセプト:打倒ゼウス! 人々の心の自由を取り戻せ!
GM:無し
NPC:共有式
名無し参加:あり
決定リール:あり
レス順:無し
版権・越境:このスレの設定に合わせてコンバートをお願いします
敵役参加:あり
避難所の有無:あり
備考:コメディスレなので細かい事は気にせずに楽しみましょう!

前スレ
学園都市TRPG
http://kohada.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1316326533/l50

避難所
【学園都市TRPG】電脳神話デビチル!避難所
http://yy44.60.kg/test/read.cgi/figtree/1338721396/l50
2 : シャルル ◆Z6yK3vQwuU [sage] : 2012/06/03(日) 20:14:25.99 0
基本は味方側がデビチルで敵側が天使での参加となりますが、その他の種族での参加も可能です。

テンプレ(デビチル用)

名前
外見性別
外見年齢
髪の色
瞳の色
容姿
備考
好きなもの
嫌いなもの
うわさ①
うわさ②
普段の能力
魔人化後の能力
抑えられない衝動

・普段の能力はバトルものにしてはちょっとショボい能力がベターです。
・魔人化後の能力はガチバトル仕様でOKです。
・魔人化は強力ですが使い過ぎると人格が崩壊してしまいます。これをトライブ化と言います。
・抑えられない衝動とは、運命を切り開くためにデビルチルドレンに搭載された、一般的には良くないと思われる癖の事です。
・デビルチルドレンは作られた存在ですが、プログラムとしての人生経験を持っています。好き嫌い、うわさ等に反映されます。

テンプレ(その他の種族用)

名前
外見性別
外見年齢
髪の色
瞳の色
容姿
備考
好きなもの
嫌いなもの
うわさ①
うわさ②
能力
3 : シャルル ◆Z6yK3vQwuU [sage] : 2012/06/03(日) 20:25:02.97 0
―― 今までのあらすじ ――

【リンネ編】
舞台は、悪魔の力に目覚めた者達が集う学園都市。
ある日、怪盗角砂糖と名乗る者による、学園の宝を盗むという犯行予告が行われる。
犯行を阻止するために奔走する学園の生徒シュナ、シャルル、トム達。
彼等は怪盗角砂糖の元にたどり着き、彼を倒す事に成功する。
すると突然意識が遠ざかっていく。夢現の中、シュナが仲間達に真実を告げる。
実はこの学園都市があるのは、【リンネ】という、プログラムで出来た架空世界だった。
怪盗角砂糖を倒す事に成功した事は、現実世界に誕生する資格を得た事を意味する。
こうしてシャルルとトムは現実の世界に誕生したのだった。
現実世界は、古に作られたスーパーコンピューターにして神たるゼウスに支配されたディストピア。
デビルチルドレンとは、人類の最後の希望をかけて開発された対ゼウス兵器だったのだ。
同時に誕生したデビルチルドレンであるユダ
怪盗角砂糖のモデルとなった堕天使シュガーを仲間に加え、ゼウス打倒の戦いが始まる。

【アキヴァ編】
彼等に課せられた最初のミッションは、かつて華やかなる文化を誇ったというアキヴァの街を解放する事。
襲い掛かってくる雑魚天使達を倒しながら
ゼウスの魔の手から逃れるために地下に潜って活動しているオタク達と合流するが
天使達の表向きのリーダーカルレアに見つかって、戦闘となった。
戦闘の末勝利をおさめ、カルレアは堕天して仲間となる。
カルレアは、昔の反乱で、失敗作ではあるものの天使を堕天させる矢を受けた事があったのだ。
カルレアは、アキヴァの天使を統べる真のリーダーはソニアであると告げる。
一行はソニアを堕天させる方法を探るべく
昔カルレアを撃った弓矢『キューピッドの弓矢』を開発した天才科学者ピュグマリオンの元へ行く。
紆余曲折の末にピュグマリオンの協力を得る事に成功。そして、キューピッドの弓矢は改良されていた。
シャルル達は本部に突入し、ソニアを誘き出す。
しかし仕込まれていたプログラムにより、ソニアを中心にアキヴァ中の天使が合体して巨大天使怪人が現れた。
シャルルとトムは、戦闘用ロボに変形したビッグキャットで応戦。
勝利したところで、巨大天使怪人を魔法の矢が貫く。
ソニアは見事にゼウスの呪縛から解き放たれ、アキヴァは解放されたのだった。
4 : シャルル ◆Z6yK3vQwuU [sage] : 2012/06/03(日) 20:25:52.03 0
用語集
アバター【あばたー】
大昔の人体実験で生まれた、情報体となった元人間。
情報体なので、デビチルと同じく天使に攻撃を加える事が出来る。

学園都市遺跡エデン【がくえんとしいせきえでん】
ゼウスが待ち構えるラストダンジョン。

カタコンベ【かたこんべ】
人々がゼウスの目を逃れて様々な活動を行うための地下の隠れ家。

ゼウス【ぜうす】
暫定ラスボス。世界を支配するスーパーコンピューター。
人々の心の自由を許さないディストピアを形成している。

デビルチルドレン【でびるちるどれん】
人類の最後の希望として開発された、対ゼウス用プログラム兵器。
架空世界リンネでの気の遠くなるような倍率の選別を潜り抜けて生まれてきた精鋭らしい。
自由意思を持つことによって生み出される偶然性によって、完璧なるプログラムゼウスに立ち向かう。
要するにうっかりや想定外の事故こそが勝利につながるというよく分からんコンセプトで生み出されたプログラム。

天使【てんし】
ゼウスが使役するプログラム。各街に配備され、人間達を支配している。
情報体なので、普通の人間には傷つける事が出来ない。
堕天使……ゼウスの支配を脱してデビチル側についた天使。

トライブ【とらいぶ】
暴走して意思を失ったデビチルの成れの果て。
魔人化能力を使い過ぎるとこうなるらしい。

ヘル【へる】
何故かゼウスの支配が届かない地区。
リンネのシステムがあり、ゼウスに認識されない特異体質のアバター
リリスが中心となって、デビチルの生成が行われている。

ホスト【ほすと】
その町の天使達を総括する、ホストプログラムたる天使。
これを倒すか堕天させるとその街を制圧した事になる。
多くの場合、表向きのリーダーとは別人である。

リンネ【りんね】
デビチルを作り出すためのプログラムであり、生まれる前のデビチル達が生きる架空世界である。
5 : エルザ・ガレドルード ◆af328Wa1zg [sage] : 2012/06/04(月) 23:54:43.09 0
前スレ>>364
>「えーと……それって味方も巻き込みます?」

さっそくシャルル上官から質問が来る。

「ポジティブ!肯定でアリマス!敵味方問答無用で巻き込むでアリマス!」

胸を張った姿勢を維持しつつ、シャルル上官の質問に応答する。
あぁ、やっぱり、と言う顔をするシャルル上官。
自分はニパリと口に笑みを浮かべ、付け足しの言葉を発した。

「しかし、ご安心をシャルル上官殿!
リンネで自分のパンプキンボムで死んだ上官殿も先輩殿もおりません!
せいぜい大怪我程度でアリマス!治療すれば戦場に復帰できるでアリマス!」

言いつつ、その手には先ほどの爆風で巻き上げられたカツラが握られていた。
所々が縮れ、アフロ状態になりつつあるソレを持ち主に手渡す。

「スキンヘッドも素敵だと思うのでアリマス!男性の価値基準は髪の毛だけではないのでアリマス!
 どうか、希望を捨てぬよう!いざという時は自分が責任を取るでアリマス!」

貴方にピッタリなカツラを探す的な意味で。
ビシリ!とカツラの持ち主である男に敬礼をし、自分は再びシャルル上官に向き直る。

「この能力の他にも、『実用的』な体術、また銃術を会得しているでアリマス!」

この『実用的』な、という言葉の指すところとは、無論殺す事に長けた術の事だ。
しかし、対天使用でなく、あくまで対人用の技術なのだが。
説明は不要と考え、この言葉の真意はあえて省くことにする。

「どうぞ自分、エルザ・ガレドルードを有効活用してくださいでアリマス!
 ところでシャルル上官殿、次の目的地は何処でアリマスでしょうか!」

【次スレ&避難所作成お疲れ様です&ありがとうございます!】
6 : シャルル ◆Z6yK3vQwuU [sage] : 2012/06/06(水) 00:26:27.10 0
>「ポジティブ!肯定でアリマス!敵味方問答無用で巻き込むでアリマス!」
>「しかし、ご安心をシャルル上官殿!
リンネで自分のパンプキンボムで死んだ上官殿も先輩殿もおりません!
せいぜい大怪我程度でアリマス!治療すれば戦場に復帰できるでアリマス!」

「あ、あはははは。それなら安心ね!」

アタシはにこやかに笑いながら相槌を打つ。
現世に目覚めるデビルチルドレンはろくな殺傷力の無いお笑い系能力ばかり、と思っていたが……
こういう危険な方向に有能な方向性もあるわけか!
見れば、カツラが飛んだアニメ映画オタを慰めている。
しかしハゲ男性にとってのカツラとは周囲にバレない事が死活問題なわけで、バレてしまったら一巻の終わりという事に彼女は気付いていない。

>「この能力の他にも、『実用的』な体術、また銃術を会得しているでアリマス!」

「何!? それは大変心強い!」

実用的、が強調されているのが気になるが敢えて聞かない事にしよう。

>「どうぞ自分、エルザ・ガレドルードを有効活用してくださいでアリマス!
 ところでシャルル上官殿、次の目的地は何処でアリマスでしょうか!」

「ナビゲーター役のボクの出番ですね!」

シュガーちゃんが嬉々として登場。
猫バス内のモニターに世界地図が映し出され、地図上にいくつか光る点が現れる。

「アキヴァと同じように、反ゼウス勢力がくすぶっていそうな街を狙っていきましょう!
こちらが候補です」

・芸術の都パリス
かつて華やかなる文化を誇った芸術の都。
ゼウスに支配された現在では見る影もなくなった……と思いきや
一部のよく訓練された芸術家達がカタコンベで以下略

・音楽の都ヴィエナ
かつて華やかなる文化を誇った音楽の都。
ゼウスに支配された現在では見る影もなくなった……と思いきや
今宵も地下の隠れ家でジャイアソリサイタルが行われる。

・魔法都市ロンディニウム
大昔の科学全盛期に何故か極秘で魔法省があったとされるどこまで本気なのか分からない国の首都。
脈々と続く魔法使いの末裔達がゼウスの支配下となった今も
地下に潜り日夜どこまで本当なのか分からない儀式を行っている。

エトセトラエトセトラ。
他にも聖都ヴァチカーノやらうどん崇拝都市カガワやら有象無象の個性的の街のデータが表示される。
画面を見ながら次の目的地を吟味する。

「音楽の都、なんて楽しそうね!」

楽しそう、とかいう基準でいいのか、という気もするが、他に判断材料も無い以上仕方がない。
それより前に何か忘れていないか。

「……トム君を連れ戻しに行きましょう!」

【新章開始前の幕間につき新規参加者まだまだ大歓迎中です!】
7 : ジュゼッペ・メンエル ◆Jfz4HKK5EfS9 [sage] : 2012/06/07(木) 02:51:28.23 0
かつて華やかなる文化を誇った音楽の都『ヴィエナ』、しかしその輝かしくも華やかな栄光は今や地に堕ち、荒廃していた。
その荒廃した都市に不自然にそびえ立つ近代的な超高層建築物。
それはこの地を支配する天使、ジュゼッペ・メンエルがこの地に来て一番最初に人間達に作らせたものだった。

「地上の雑音はボクの研究の妨げになる」

ただそれだけの理由で都市の幾千もの人間が駆り出され、奴隷の如く働かされた。
幾千もの人間の屍の上に立った塔、今、ジュゼッペはその最上階の専用研究室に居た。
ただ、それは研究室というにはあまりに広く、そして研究室というにはシンプルだった。
溶接され固定された鉄製の大きな手術台が等間隔に何十台も並べられている。
ただそれだけのシンプルな部屋。
真白い壁、真白い床、鼻を刺激するアルコールの香り、それに僅かに混じった血の匂い。

「さーるてぃーろいやーりー♪」

人間達が口にすれば不快で苛つくソレも、自分が口遊む分には何の問題も無かった。
その明るい曲調の後にはぐちゃぐちゃ、と、不快な音が続く。
手術台の上には機械とも人間ともつかない奇妙なモノが置かれている。
その時、不意に研究室のドアが開いた。

「ジュゼッペ様、ご報告が」

抑揚のない声が室内に響く。
顔の右半分、そして身体に至っては包帯で巻かれていない所の方が少ない異様な姿の天使がそこにいた。
彼女の名前はオトマール・フェアエル。ジュゼッペの副官だ。
だが、ジュゼッペはその部下を名前で呼んだ事はたったの一度も無い。

「たまりーえぱーすてぃあらーやーれーすてぃんぐぁー♪」

オトマールの言葉がまるで聞こえていないかのように、ジュゼッペは上機嫌に手を動かし続ける。
ぐちゃぐちゃと音が響き続ける。
しかし、流石ジュゼッペの副官と言った所か、オトマールは臆する事無く言葉を紡ぐ。

「アキヴァが人間達に堕とされたようです」

「さーるてぃーろいや……何て?」

初めてジュゼッペはオトマールの言葉を聞く姿勢を示した。

「アキヴァが人間達に堕とされたようです」

抑揚も無く紡がれた同じ言葉にジュゼッペは口に笑みを浮かべる。

「アキヴァ、って確かアレだよね?真面目馬鹿と騎士道馬鹿の支配してる都市でしょ」

「ソニア様と、カルレア様ですね」

オトマールが言い直すがジュゼッペは当然の如く聞いていない。

「……ふーん、隙でも突かれたかな?にしてもゴミに反逆を許しちゃうなんて。
 甘温い支配してるからゴミがつけ上がるんだよ。やっぱり支配は恐怖に限るよ。
 で?何?ゼウス様からアキヴァ奪還の命令でも下った?」

「いえ、特にそういうわけではありません。しかし、変な情報があります」

その言葉に初めてジュゼッペは手を止めてオトマールを見る。
8 : ジュゼッペ・メンエル ◆Jfz4HKK5EfS9 [sage] : 2012/06/07(木) 02:52:03.85 0
「何?その変な情報って」

「アキヴァ解放のメインとなったのにはどうやら悪魔という存在があったとか」

「悪魔ぁ?」

「はい。私達を滅ぼす術を持ち、さらに不思議な技を行使するそうで。
さらに真偽は確かではありませんが次の目的地は此処ヴィエナという情報も入っています」

相も変わらず何の感情も交えず話を続けるオトマール。
その話をにんまりと口を三日月のように歪めて話を聞くジュゼッペ。
一瞬の沈黙の後、ジュゼッペが興奮気味に口を開いた。

「良い……凄く良い!悪魔って何それ!?凄い!すんごく良い!
 捕まえたらボクの自由にしていいの?解剖は実験は改造は?やってていいよね?いいね!今やってる実験よりもすんごく良い!」

手に持っていたメスを投げ捨てるとジュゼッペはクルリと踊るように一回転。
オトマールはそれを何の感情も感じられない瞳で見つめる。

「あ~早く来ないかな悪魔ちゃん!ボクが大切にトロットロに実験解剖改造してあげる!
 あ、でもでも、新作のゴミを使った『サイボーグ』の実験テストもしたいし!迷っちゃうなぁ!
 そうだ!ねぇ?根暗馬鹿、今、地下の失敗作は何台ほどある?たしか結構あったよね?」

『根暗馬鹿』、ジュゼッペがオトマールを呼ぶ時の名称だ。

「はい、結構あります。脳内に爆薬を埋め込んだゴミが多数」

「じゃあソレ!ソレを悪魔ちゃんの迎えに行かせよう!ボクながらナイスアイディア!
 あぁ、急いて急いていらっしゃいな悪魔ちゃあん!」

まるで歌うようにそう言うと再びクルリとジュゼッペは踊った。
9 : ジュゼッペ・メンエル ◆Jfz4HKK5EfS9 [sage] : 2012/06/07(木) 02:54:55.51 0
名前 ジュゼッペ・メンエル
外見性別 女
外見年齢 15歳
髪の色 黒
瞳の色 赤
容姿 赤黒いシミのついた白衣 死人のように白い肌 淀んだ瞳に腰まで伸びた髪
備考 目に映るモノは実験対象、自らの部下も例外ではない。その姿とは対照的に口調は明るい
好きなもの 研究 実験 改造 解剖 悪魔(実験対象として)
嫌いなもの 音楽(五月蠅いから) 役立たず 失敗作 自分を理解しないモノ
うわさ① 自分の部下だろうと容赦なく解剖、実験、改造の対象にするらしい
うわさ② 悪魔に興味津々、自分の手元に置いて改造、実験、解剖をしたいらしい
能力 自らの開発した戦闘実験用動物(人間や動物、天使達の混合獣)の使役。ドーピング。

名前 オトマール・フェアエル
外見性別 女
外見年齢 18歳
髪の色 白
瞳の色 黒
容姿 顔半分、そして身体を全体的に包帯で覆っている
備考 ジュゼッペの施術によって感情、自我を失っている
好きなもの なし
嫌いなもの なし
うわさ① ジュゼッペの命令には絶対服従らしい
うわさ② 幾多の実験の代償として身体はボロボロらしい
能力 今までの実験で培った危機回避能力+生き残る術
10 : シャルル ◆Z6yK3vQwuU [sage] : 2012/06/08(金) 00:37:45.75 0
―― 特オタ連合本部 ツブラーヤ事務所

トム君を拾いにやってきたそこでは、帰ってきたウ○トラマン第37話上映会が行われていた。

「トム君、そろそろ次の街に……」

スクリーンを見ると、ウ○トラマンと怪人がド迫力でぶつかりあっている。
おっと、ウ○トラマンが怪人の謎のビームに吹き飛ばされた! 頑張れ、超頑張れ!

「立てー! 立つのよウ○トラマン!」

【果たして彼らはアキヴァを脱出する事が出来るのか!?】
11 : アイネ ◆AymL.Uu50M [sage] : 2012/06/08(金) 01:06:02.04 i
その、瞬間というのはよく分からなかった。
気がつけばそこにいた、という表現が適切だろう。
まずは五体が満足か確認する。…よし、少し喉が渇いているが、他は特に問題ないようだ。
どうやら私は、無事に転生出来たらしい。
…そう、転生だ。私は今までいた学園都市…否、リンネからこちらの現実世界へと、産まれ落ちたのだ。
その辺の経緯については概ね把握している。何も問題ないだろう。

よし、頭も体も正常だ。そう思いながら、次に周囲を観察する。
見たところ、誰もいない様子だ。
留守ならば仕方ない。私は仕方ない仕方ないと呟きつつ、台所を求めて彷徨い歩く。
台所はすぐに見つかった。ポットも茶葉もある。
私はやかんに水を入れ火に掛け、茶葉の支度をする。
お湯が沸騰するのを待ち、茶葉を仕込んだポットに注ぐ。
これを二分程蒸らし、カップに注いだら完成だ。

「ふぅ、美味しい…やっぱりお茶はいいモノです…」

気がつけばここに、勝手に上がり込んで勝手に茶をいれくつろぐ怪しい少女の図が出来上がっていた。
12 : アイネ ◆AymL.Uu50M [sage] : 2012/06/08(金) 01:06:43.25 i
名前 アイネ・リヴァイアス
外見性別 女
外見年齢 14
髪の色 透き通るような水色
瞳の色 深い青
容姿 髪はショート、全体的にあどけない雰囲気。デニムの丈の短い上着とショートパンツを着ており、腰のホルスターには6本のペットボトルを下げている。
備考 おっとりして見えるが実は好奇心旺盛、厄介事にはすぐ首を突っ込む。
好きなもの おいしい水、お茶、ジュース全般、お風呂
嫌いなもの 汚水
うわさ① とても器用で、家事からピッキングまで何でもこなせるらしい
うわさ② 体力がなく、少し走る程度で音を上げるらしい
普段の能力 触れた液体を自在に操る事が出来る。汎用性は高いが、殺傷能力は極めて低い。
魔人化後の能力 基本能力の拡大版。液体を遠隔操作出来るようになり、また高圧の水弾を射出するなど殺傷能力が格段に跳ね上がっている。
抑えられない衝動 絶えず水分補給が欠かせない。
13 : エルザ・ガレドルード ◆af328Wa1zg [sage] : 2012/06/09(土) 01:49:05.64 0
>>10 11
シュガー情報担当がモニターの地図に目標点を記していく。
主な候補は3つ。芸術、音楽、魔法、の都市
他にも様々にあるがとりあえず候補地としてはこの3つ。

>「音楽の都、なんて楽しそうね!」

そう言ったのはシャルル上官。楽しそうかどうかで作戦地を選ぶとは……。
これもシャルル上官の余裕の表れでアリマスでしょうか?
それともこれから初任務の自分の緊張を解してくださっているとか?
……感謝感激でアリマス!
そんな事を考えているとシャルル上官は何かを思い出したかのように言葉を放つ。

>「……トム君を連れ戻しに行きましょう!」

そう言ったシャルル上官が訪れたのは特オタ連合本部 ツブラーヤ事務所。
そこでは何か特撮物の上映会が催されている。どうやらトム先輩はそれに夢中のようだ。

>「トム君、そろそろ次の街に……」

シャルル上官の言葉が止まる。スクリーンには異形のラバースーツを身に纏った者どうしの戦闘が行われていた。
一方の異形がピンチといった所か、しかしこういった娯楽物は『落して上げる』が常套手段。
この後にはいかにもな大逆転が待ち構えていることだろう。現実ではこうはいかない。
一旦苦境に立ったが最後。よっぽどの奇跡か、相手側の致命的なミスが無い限りは負けて終わりだ。
現実は非情でアリマス。ポルナレ○でアリマス。

>「立てー! 立つのよウ○トラマン!」

いつの間にかシャルル上官も夢中になっている。ここで邪魔するほど自分は野暮ではない。
自分は観賞の邪魔にならぬように小さく敬礼をし、そこらに在った紙に『巡回に行ってくるでアリマス』と書き残し部屋を出る。
一応ペンを一本護身用として持ち歩く。いざという時は刺突武器にも投擲武器にもなる頼もしいモノだ。
既に制圧された地域だが、いくら警戒しても警戒のし過ぎという事は無い。
不意に芳しいお茶の香りが鼻孔をくすぐった。

「ぬ?」

普通の人間とは違う気配に、思わず声が漏れる。
物陰に身を潜め、台所を覗き見る。そこにはお茶を飲みくつろぐ少女の姿。
普段なら何も気に留める事のない光景だが……。その気配は人間の纏うものとは明らかに違う。
というか、気配もそうだが出で立ちも怪しい。あの腰のホルスターに装着してモノは?
何か液体が入っているようにも見える。何かの毒液か?それとも液体燃料?

>「ふぅ、美味しい…やっぱりお茶はいいモノです…」

少女はそう言いながらお茶を口に含む。ペンを逆手に構え、音を殺して少女の背後に忍び寄る。
少女は完全にお茶の世界に浸っている様子だ。雰囲気からこちらに気付いている気配はない。
背後から柔らかな首に僅かにペン先を押し当てる。この状態なら腰のホルスターに触れる前に首を貫ける。

「……何者でアリマスか?敵側のスパイならこのままその首を貫くでアリマス。
そうでないならお茶を置いて両手を上げ、自分の納得出来る状況の説明をお願いするでアリマス。
ちなみに変な動き、素振りを見せようものなら問答無用で首を抉り貫くでアリマス」
14 : トム ◆GAazGNP2wQ [sage] : 2012/06/09(土) 02:46:02.93 0
帰って○たウルトラマン第37話

ファンの間で不屈の名作として語られるその話は、トムの心に言いようの無い衝撃を与えていた。

まず、第一話から共に暮らしてきた主人公の恩師と、恋人が、宇宙人の手で惨殺されるのだ!
これだけでもまだ衝撃的だと言うのに、今回の相手怪獣はウルト○マンが○ブンから授けられた最強兵器、今まで幾多の怪獣の首を切断した(比ゆではなく、首だけですめばいいほう、通常両腕(時には四肢)切断後、首をはねる。)ブレスレットを全く寄せ付けない!
そしてエネルギーの補給が難しい夕方と言う事もあり、更に心が乱れているウル○ラマンは怪獣に一方的にぶちのめされ、更にそこを敵の宇宙人が強襲!
防衛軍の援護むなしく、星人の光線がウルトラマンへ炸裂する!

>「立てー! 立つのよウ○トラマン!」

「うるせぇ!上映中は静かにしろ!」
「しっ!!」

どっかで聞いたような女声に、一斉に響く殺気だった同志達の声。
何大丈夫、ウルトラマンは必ず勝つ!
さぁ、ここから逆転の…逆転…逆……。

ウ○トラマンは敵の宇宙船に磔にされ、まるで見世物のように市街地へと引かれていく…。

「地球人に告ぐ、貴様等の守護神、~~~~~は、死んだ!!」

高らかに市街地に響く星人の声!
え?え?えぇ?

子供達の声が、人々のざわめきが場を支配する中、ナレーションが入り、番組終了……。

――――

暗転していた上映会場がゆっくりと明るくなると、そこには完全に絶望した表情の同志達…。
そして俺もまた、何が起きたのか信じられんと言った顔をしているだろう。

現在、37話以降の話は発掘されていない。
そして、このウルト○マン以降のシリーズもまた、発掘されていないのだ。

いくつか他に後の時代に作られたのだろうウ○トラ以外の特撮巨大ヒーローは存在するが、このシリーズはここまでしかまだ見つかっていない。

まさか……。

「ま…負けて、終わりなのか?」
「そんな…そんな馬鹿な…」
「でも、負け方は凄く納得できたぞ。あそこまでやられたら負けるしかない…」

口々に起きた事の感想を述べるオタ達…。
そうだ。
これで終わりだったとしても何も不思議ではない。
現に、最初のシリーズ、ウ○トラマンが死んで終ってるし、2作目も絶対母星に帰り着く前に過労死するだろうなって感じで帰ってたし…。

そうか…負け…。
負けて……終わりか……。
斬新過ぎるなおい…。
15 : トム ◆GAazGNP2wQ [sage] : 2012/06/09(土) 02:56:10.56 0
不意に、どこからか涙をうっ、うっと泣き声が聞こえてきた。
それを皮切りに、涙声は波紋のように広がっていく。

「そんな…希望が…俺たちの心のよりどころが…あんな事に…」
「そうだよな…、どうあがいても、計算高い奴が最後に勝つんだよな…」
「奇跡も魔法も無いんだよ…あへ…あへへ…」

…どんなに正義が負けそうでも、最後に必ず勝利する完全懲悪物の登場人物に自分達を照らし合わせ、未来に希望を見出していた俺達に、これはきつすぎた。
はかない夢は作品がもたらした不意の現実に粉々に叩き潰され、皆は言いようの無い絶望に声も出ない。

それは俺も同じだ…。

シャルル先生の言う運頼みも、いつまで続くかなんかわかんない。
いつ本格的に計算高いゼウスの刺客が現れ、あのウルトラ○ンのように完全敗北するかわからないのだ。

いや、必ずなるだろう。

俺たちが世界のバグだったとしても、そのバグを取り除く機能が、世界に存在しないはずがないのだ。

第一世界なんてそんな劇的に変わるはずが無い。

ゼウスの支配が万年単位で続いて、人類がだんだんとゼウスに適合し、そして新たな姿へと変わっていく。
それが本来の世界のあり方なのかもしれない…。

だから俺たちのしている事なんて…、大きな力の前じゃ…。

【特撮見てくよくよし始める。】

>>12
新規の方っすね!よろしくお願いします!
16 : シャルル ◆Z6yK3vQwuU [sage] : 2012/06/10(日) 12:37:35.18 0
>「地球人に告ぐ、貴様等の守護神、~~~~~は、死んだ!!」

星人に圧され続けるウルトラマン。でも心配ご無用。
物語の法則に則ると、終了十分前に大逆転劇が……ある事もなく、そのまま負けた。

「えぇええええええええええええええっ!?」

>「ま…負けて、終わりなのか?」
>「そんな…そんな馬鹿な…」
>「でも、負け方は凄く納得できたぞ。あそこまでやられたら負けるしかない…」

「ウ○トラマンの馬鹿あ! なんであんなのにやられちゃうのよ……」

アタシはすっかりウ○トラマンの世界に入り込んでいた。
映像を巨大なスクリーンに投射する映画、というらしい技術は凄いものだ。
最初は何となく見ていたのに、すぐに引き込まれてしまった。
特オタ達は葬式モードに突入し、場は沈痛な雰囲気に包まれる。
そこに、突然騒々しい人たちが乱入して来る。人情ドラマオタの面々だ。

「聞けばここには映画、という設備があるそうじゃないか!」
「特オタだけでそんな素晴らしい設備を使うとは許さん!我々にも使わせろ!」

人情ドラマオタはあっという間に上映室を占拠し、何かの上映会が始まった。
人生楽ありゃ苦もあるさ~♪とかいうオープニングテーマと共に始まったのは
何やら爺さんが手下二人を引きつれて悪代官と戦う時代劇である。

―― 約一時間後 ――

「この印籠が目に入らぬか!!」
「ははーっ!!」

物語は大団円のうちに幕を閉じた。これぞ一話完結ものの安心感。

「黄門様かっけー! 印籠出すだけだけど。
イイハナシダナー。よし! 明日からまた頑張ろう!!」
「切り替え早ッ!!」

返す返すも映画って凄いね!

「大丈夫、ウ○トラマンは負けない! どこかにある38話を探しに行きましょう!」

「元気になって貰えて何よりです!」
「ご出立ですか? こっちも連れて行きましょうか」

アタシはツブラーヤ事務所を後にし、猫バスに向かう。
人情ドラマオタ達が胴上げをするようにトム君を担ぎ上げ、後ろを付いてくる。
17 : アイネ ◆AymL.Uu50M [sage] : 2012/06/10(日) 13:38:54.31 0
>「……何者でアリマスか?敵側のスパイならこのままその首を貫くでアリマス。
そうでないならお茶を置いて両手を上げ、自分の納得出来る状況の説明をお願いするでアリマス。
ちなみに変な動き、素振りを見せようものなら問答無用で首を抉り貫くでアリマス」

何、なになに何この状況!?
ただお茶を飲んでくつろいでいたら、いきなり背後をとられて殺害宣告されちゃってるし!
何を言ってるかわからないと思うけど、私自身何が起こったのかさっぱりですよ。
とりあえず落ち着くためにもう一口お茶を飲んで…と。

「わ、私は通りすがりのデビチルですよ…とっても無害な一般人ですよ」

ゆっくりと手を上げる。
と、その前にお茶に指を突っ込んでおくのを忘れない。
指先からお茶にかけて、極細の「水の糸」が伸びる。透明なため、視認は困難だ。
私の能力はあらゆる液体を操作すること。お茶も例外ではない。
次の瞬間、カップのお茶が宙に浮き破裂する。殺傷力はないが、目潰しには十分。
相手の手が緩んだ一瞬を利用して、私はすばやく距離をとった。

「で、あなたこそ一体何者です?この私に凶器を向けるなんて失礼千万ですよ」

相手のほうに向き直りつつ、腰のペットボトルの中に指を浸す。
状況はいまだによくわからないが、売られた喧嘩は買うまでだ。
18 : エルザ・ガレドルード ◆af328Wa1zg [sage] : 2012/06/11(月) 00:51:52.91 0
>「わ、私は通りすがりのデビチルですよ…とっても無害な一般人ですよ」

その答えを丸々鵜呑みにするほど自分はお人好しではない、しかし……。
自身をデビチルと言った事、さらに大人しく指示に従う様子の少女に多少気が緩んだ。
が、それが駄目だった。完璧な自分の油断である。
不意に少女の飲んでいたお茶が宙に浮きあがり、破裂するかのように弾けた。
今のが手榴弾だったら?毒だったら?硫酸だったら?ともかく戦場なら確実に死んでいた。
濡れた顔面を腕で拭うと、ペロリと唇を舐める。僅かにお茶の味が口に広がった。

>「で、あなたこそ一体何者です?この私に凶器を向けるなんて失礼千万ですよ」

「……なるほど、この不思議な技はデビチル特有のモノでアリマスね。
 自分の名前はエルザ・ガレドルード。先ほど、非礼は謝罪するでアリマス、が」

そこで一旦言葉を切る。
恐らくは自分とタッチの差でこの世界に来たばかりのデビチルであろう。
だからといってほんの少し先に来た自分が先輩だ、などと威張り散らすわけではない。
上官に罵られ『シゴキ』を受けるのはいい、先輩の苛めじみた訓練もいい。
そう言った意味での不条理な暴力には慣れている。だが、それ以外の沸点はどうやら低いようだ。
『同期にお茶をぶっ掛けられた』程度でむかっ腹が立ってしまう程に。

「しかし、今の行為をにっこり笑って水に流せる程、自分は大人ではないのでアリマス」

右手に持っていたペンを少女に向けて投げ捨てる。しかし、当てる気はない。
単なる目晦ましに過ぎない、自分の本命は……。
おもむろに左手を広げる。
数瞬遅れて、カンッ、と地面に何かが落ちる音。それは今しがた精製した『パンプキンボム』だった。

「Blast」

自分が呟くと眩い閃光と炸裂音が室内に響き渡る。
右腕で自身の眼前を覆いながら、右手に握り締めたソレを確認した。
シャルル上官に披露した時の様な2個同時精製。
脳内時計では現在既に5秒が経過していた。
室内に充満した煙で少女の姿は視認できないが、大体の居場所は気配で分かる。
こういう時に手榴弾はつくづく便利だ。『大体の居場所』さえ分かれば問題ないのだから。
殺す気はない。そもそも『溜め』が5秒程度じゃ直撃したとしても吹っ飛んで怪我と火傷をするくらいだ。
だが、少女のあの体格なら直撃しなくとも不意打ちなら爆破の衝撃によって身体を吹っ飛ばして壁に叩きつけるぐらいは出来るだろう。
自分は気配のした方向目掛け、手榴弾を放り投げた。

「Blast」

今度は先程の閃光と炸裂音に加え衝撃と熱風を伴った爆発。足に力を入れ衝撃に耐える。
勝負あり、と自身が納得出来るまで身体の力は抜かない。
自分はまわりの煙のはれるのを待ちつつ、周囲の警戒を続けた。
19 : シャルル ◆Z6yK3vQwuU [sage] : 2012/06/14(木) 01:04:18.32 0
ところで、猫バスの内部は豪華キャンピングカーのようになっており、内部に台所等もある。
外から見た大きさよりも中の方が広いような気がするのは気のせいだろうか。
それはそうと……

「シャルルさん、大変です!! 突然新参同士が喧嘩を始めました!」

「何じゃあ!?」

猫バスの近くまで来ると、シュガーちゃんが慌てた様子で駆け寄ってきた。
すっかりアキヴァ的思考に染まったアタシは思った。
デビチル同士が戦うなんてまさか……ゼウスの謀略!?
トム君が気にしていた事がもう起こってしまったのか!?
猫バスの扉が開いた途端、中から煙が溢れ出て来た。

「ストップ、ストーップ!
それは仲間割れさせて敵対勢力を内部から崩壊させるためのゼウスの罠よ! 乗っては駄目!」

アタシは、単なる憶測をもはや疑うべくもない真実のように叫びながら、中に踏み入った。
20 : アイネ ◆AymL.Uu50M [sage] : 2012/06/14(木) 19:37:14.73 0
左右のペットボトルに指を入れ、私は構えを取った。
不意に相手が何かを投げつける。
その瞬間、引き抜いた指に従ってずるりとペットボトルの水が出てきた。
水は蛇のような軌跡を描いて、空中のそれを絡め取る。
しかし…

「しまった、ブラフですよ」

次の瞬間、閃光と炸裂音が私を襲う。
慌てて目を閉じたものの、視力の回復には数秒を要するだろう。
ならば…

数秒後、今度こそ本物の爆発が起こる。
衝撃と熱風の中、普通の人間なら壁に叩き付けられていただろう。
だが、私は普通ではない。
煙の中から現れた私の姿は、全くの無傷だった。
体の前面に、膜状に張り巡らせた水が衝撃を全て受け止めたのだ。

「名付けてレイニーカーテン、ですよ」

水の壁は大きく渦を巻いている。
これなら、たとえ貫通されても大きく軌道をそらすことが出来るだろう。
さて、ここからは私のターンですよ。
目に物を見せて…と、あれ?

>「ストップ、ストーップ!
>それは仲間割れさせて敵対勢力を内部から崩壊させるためのゼウスの罠よ! 乗っては駄目!」

不意に飛び込んできた女性が、目の前で大きく手を広げ叫んでいる。
言ってることはちんぷんかんぷんだが、要はこの楽しい喧嘩を止めにきたのだろう。

「やれやれ、興が冷めたですよ。それで、あなた方は何者なのですよ?
ああ、申し遅れたですけど私、アイネと申すデビチルですよ。」

壁を作っていた水流を蛇のように操り、ペットボトルへと戻す。
そしておもむろにポットを手に取ると、何事もなかったかのようにお茶を注ぎ飲み始めた。
お茶は命の水なのですよ。
21 : エルザ・ガレドルード ◆af328Wa1zg [sage] : 2012/06/15(金) 21:31:56.64 0
火薬の香り入り混じる煙が去った後に姿を現したのは無様に倒れている少女ではなかった。
少女の全面を覆い守る様に膜状の水が広がっている。

「……ぬ」

思わず声が漏れる。別にそこまで動揺しているわけではない。
しかし、今のコンビネーションは自分の十八番、しかも今のは確実に不意打ちに近かった筈。
なのに少女は事も無げに受け止めた。この少女も相当の場数を踏んでいるのか、それとも天稟か。

>「名付けてレイニーカーテン、ですよ」

そう言って少女は得意気な顔をする。
思わず自分の顔に笑みが浮かぶのが分かる。久しぶりに楽しい決闘が出来そうだ。
少女の能力は水を操る能力……否、最初のお茶を操っていたところを見ると、水だけではない。
という事は液体操作?ともかく自分の能力と違い、とても汎用性の高い能力だ。
まあいい。次はその水の壁ごと吹き飛ばせる火力に設定すればいいだけの話。
そう考えながら新たに『パンプキンボム』を精製しようとした時のことだった。

>「ストップ、ストーップ!それは仲間割れさせて敵対勢力を内部から崩壊させるためのゼウスの罠よ! 乗っては駄目!」

突然シャルル上官が手を広げて止めに入ってきた。
反射的に自分はボムの精製を中止し、踵を揃えて敬礼をする。
前の少女はなんだか気の抜けたような表情をしていた。

「ネガティブ、否定でアリマス!シャルル上官殿、自分は」

目の前の少女と決闘を、と言おうとするが、少女の言葉が自分の言葉を遮る。

>「やれやれ、興が冷めたですよ。それで、あなた方は何者なのですよ?
ああ、申し遅れたですけど私、アイネと申すデビチルですよ。」

壁となっていた水は生き物の様に蠢き腰のペットボトルへ戻っていく。やはり、液体操作か。
だが、今はそんな事はどうでもいい。

「その態度はシャルル上官殿に失礼でアリマス!お茶を置き、姿勢を正して挨拶をするでアリマス!」

アイネの慇懃無礼な態度に自分はアイネに食って掛かった。
22 : トム ◆GAazGNP2wQ [sage] : 2012/06/16(土) 05:04:03.52 0
……こー門様の活躍に、自分を照らし合わせて元気になってる俺って何て単純…。
ごめんよウルトラ○ン、俺もやっぱほら、元気ださんばいけないわけなんよ。
だってほら…あったらしい冒険が始まるらしいし!!

うわっはー!ここんとこずうううううっと篭りっきりだったからうれしいねぇ!俺は!
もうアレだぜ!一回アキヴァから一人で脱走しようとしてカルレアさん配下の天使にとっ捕まった事まであんだぜ俺は!
性がうずくうううううう!次の町、気になるぅううううう~~~おっしゃああ!

さて人情オタによってツブラーヤから運び出された俺は、一路、アキヴァ丸三工房へと足を向けていた!
この工房はアキヴァ解放前にミリオタが秘密裏に武器開発、生産を行っていた場所であり、アキヴァ解放後は本格的に武器工房としての役割を与えられ、豊富な予算と優秀な人材の手で日夜武器の研究と改良、開発、生産が行われているのだ。

「クラタの親父さん!何か武器くれ!」
「おお!トムか!いよいよ出発か!!」

工房の開けっ放しのシャッターをくぐり、機械油臭い工房内で俺の突発的なお願いに応じたのは、小指の無い頬に傷を負った浅黒い中年のおっさん、クラタさんだ。
クラタさんは快活な声でそう答えると、シートに包まった一丁のライフルを俺に手渡した。
早速シートをはがしてみると、中からは鈍く輝く特殊合金で出来たM16似のアサルトライフルが現れる。

「命中精度はまぁまぁってとこだが、強度は最高だ!至近距離で熱しられたり、爆弾が炸裂しても暴発、破損の心配は無い!」

頼もしいクラタさんの言葉に、俺は銃を受け取ると、早速試写すべく備え付けの屋内射撃演習場へと向かった。
射撃演習場へ入る前にボディアーマーを着込み、ヘルメットをつけ、防弾ゴーグルをつける。
これらが無くて兆弾喰らっても俺は平気だが、全て規定だし、痛いのは嫌だから面倒くさがったりはしない。
さてそれら防弾着の着用を終え、いよいよ射撃演習場へ入り、ライフルに装弾する。
ライフルは思ったよりぐっと軽く、これなら長時間かついでいても肩が疲れる心配は無いだろう。

『的を出すぞ』

クラタさんの声と共に、前方、100mの位置に的が出現した。
俺は立った姿勢のままライフルを構え、発砲する……はずれ。
二発目、今度は先ほどの反省を活かして少し照準を調整…的の端に命中…。
三発、四発、五発……。

とりあえず全弾撃ちつくしての感想は、ああ、やっぱ俺、こういうの使うのはイマイチかなぁ…って所か?

「クラタさん、やっぱ俺ライフル系駄目だわ、他にない?」
「わがままな奴め、なら取って置きの奴をくれてやろう」

そう言って、クラタさんが取り出したのは…。
23 : トム ◆GAazGNP2wQ [sage] : 2012/06/16(土) 05:19:13.75 0
丸三工房をホクホク顔で出た俺は、るんるん気分で猫バスへと向かっていた。

もう、勝った同然?これ?
うはって位強力な武器ゲットしちゃったんだけどこれ、いいのかな?
うはっ☆
これはまぁ、もう他のメンバーいらねぇだろ?
ってか俺だけでよくね?次の戦い?

……うーん、ってかそうだよな、シャルル先生何か前回天使殺すなとかイチイチ煩かったし、あの軍人女は見るからに役立たずっぽい雰囲気だし。

…俺だけで行くかw
そうだな!俺だけで行けば天使生け捕りし放題!
うはうはで即効プロジェクトサキュバス完遂じゃん!

よしそうと決まればここに長居は無用。
俺は近所のバイク屋で学園都市で乗り回してた型と同じタイプの奴をデビチル特権で拝借すると、エンジン全開、一路アキヴァのゲートへと向かう!

「あ!ちょ!またトムさんだ!」
「トムさんちょっと!どこに行かれるんですか!出立の届出が出てませんよ!」
「シャルル先生が出発っつってたぜ!確かめてきなよ!」
「な!んな事に騙されると…」
「はいさいなら~~」

正面ゲートで天使達が止めにかかろうとするが、エンジンフルスロットル、手荒な事ができない天使達を振りほどき、一路、アキヴァを後にする。
そういやシャルル先生達がどこに向かうか何か全く聞いてなかったが……。
ま、いいかw

行く場所が違ったら違ったで俺が行った先を勝手に攻め落としちまえばいいんだしw
さーどんな楽しいたびが俺を……ん?

荒野を疾走する俺のオートバイの前に、ゆらり、と人影が見えた。
荒野の向こうから、人影はゆらり、ゆらりとこちらへよろめきながら歩いてくる…。
あれは…人?人か?

「おい!誰だ!そこの!動くな!」

俺は謎の人影に、いつでも例の武器が出せるように懐に手を入れながら、声を張り上げる。
ちなみに今の俺の姿は学園の制服と、上にジャンパー、今俺はジャンパーの懐に手を入れているのだ。
24 : トム ◆GAazGNP2wQ [sage] : 2012/06/16(土) 05:37:54.29 0
俺の声に気づいたのか、影はふらふらとした足取りを止め、しばらく立ち尽くした後、その場に崩れ落ちた。

……やっぱ…これは天使…じゃないよな?こんな雰囲気だし。

俺は懐から手を抜かないまま恐る恐る人影へと近づき…。
驚愕した!美人だ!すっげえ美人だ!
緑髪でウェーブかかった髪、白すぎず黄色すぎない肌、整った幼さの残る顔。
しかし目元にはクマが浮かび、頬もやせこけている上、砂にまみれ、ぜぇぜぇと息を荒げているため美しさは台無しになってしまっている。

俺はとりあえず彼女を抱き起こすと、日差しをさけるために近くの岩場に移動し、日陰に置いた。

「み…水だよな、こういう場合は…」

苦しげな彼女を救おうと、俺はバイクの後ろに積んでいたトランクから水筒を出し、彼女の口へと運んだ。
すると、彼女は一気に覚醒し、むさぼるように水筒の水を飲み干してしまった。

「危ないところを助けていただいてありがとうございます」

年は俺と同じくらいだろうか?
ぼろぼろの作業着を纏った彼女は、丁寧に深々とお辞儀をすると、俺の顔をじーっと見つめてきた。
彼女の顔には深い疲れが浮かび、ここのまでの道のりが、いかに厳しいものだったかが伺える。

「いや、別にいいっすよ、それより何でこんなとこうろうろしてたんすか?」

とりあえず半端な敬語で話しかける俺。
いや、初対面でタメ口はなれなれしぎるだろう名と、相手敬語だし。

「はい…私はこの先の音楽の都ヴィエナで作業員をやっているイトと言うものです。
アキヴァがデビルチルドレンと言う方々に解放されたと聞いて、是非お力添えをいただけたらと思い、こうしてゼウス軍の目をかいくぐり、アキヴァまでやってきたのです。」

弱弱しくそういうイトさん。
おお!こ…この展開は、さっきみた爺さんの人情ドラマそのものや!!

「私達の町のホストはそれはそれは残虐な個体で…。このままでは人間は……。だからどうかデビルチルドレン様のお力でこの状況を打開していただきとうございまして…。」
「わかりました!」

そう言って、イトさんの手をとる俺!

「不肖、デビルチルドレントム・ジリノフスキーがその腐れホストをぶっ潰してごらんに入れます!」
「まぁ、ではあなた様が…。」
「さぁ!ヴィエナへ向かいましょう!!案内をお願いします!」
「わかりました!私にお任せくださいませ!」

心なしか俺の登場にすっきりしたイトさんは、元気が出てきたのだろう。顔に生気が戻り、顔に笑顔が浮かんだ!

うひょーー!こりゃ幸先いいな!!
もう絶対こりゃ俺一人で怪傑しなきゃだぜ!
ほっほーいっと♪
25 : シャルル ◆Z6yK3vQwuU [sage] : 2012/06/16(土) 11:24:45.42 0
>「ネガティブ、否定でアリマス!シャルル上官殿、自分は」

>「やれやれ、興が冷めたですよ。それで、あなた方は何者なのですよ?
ああ、申し遅れたですけど私、アイネと申すデビチルですよ。」

二人の答えから一つの可能性に思い当たる。
……二人は加入早々来たるべき戦いに備えて戦闘訓練をしていた!
とんだ早とちりである。

「いえ……ただの喧嘩だと思います」

納得した表情のアタシにシュガーちゃんがポソッと突っ込む。

>「その態度はシャルル上官殿に失礼でアリマス!お茶を置き、姿勢を正して挨拶をするでアリマス!」

「ごめんねー、上官って呼ばれてるけどそんなんじゃないのよ。彼女軍隊マニアらしくて。
まあ言うなればアタシ達はゼウス打倒を目指す解放軍ってところかしら。
それで現世に目覚めたあなたはアタシ達のチームに転送されてきたってわけ。
アタシはシャルル、能力はお菓子を出す事! お茶とお菓子が揃えば最強ね!」

そう言って、お茶菓子を出して見せた。そしてお茶会を始め……ようとした時。
正面ゲート警備の天使達が駆けこんできた。

「トムさんがゲートを突破し一人で先に行ってしまいました!」

「ぬゎにぃいいいいいいいいい!? 何時の間に!?
シュガーちゃん、出発!!」

「はいっ!!」

猫バスは猛スピードで出発した!
トム君が普通にヴィエナに向かっているなら、すぐに捕まえられるはずだ。
……この時のアタシはトム君にまだ次の行先を言っていなかった事実を忘れていたわけだが。
26 : ジュゼッペ・メンエル ◆Jfz4HKK5EfS9 [sage] : 2012/06/16(土) 13:28:35.44 0
「悪魔ちゃん歓迎の準備できたー?」

血の付着した白衣をそのままに、ジュゼッペは超高層建築物の最上階の自室で寛いでいた。
傍に控えるオトマールは感情を感じさせない声で応える。

「はい、全てはジュゼッペ様の仰せのままに」

オトマールのその言葉にジュゼッペはパンと手を叩く。上機嫌な証拠だ。

「いいねいいねー。じゃ、いつ悪魔ちゃんが来ても大丈夫ってわけだ!」

豪華な装飾の施された椅子をクルリと一回転させると、勢いをつけて立ち上がる。
それはまるで、無邪気な子どものよう。
いや、『よう』と言うと語弊がある。ジュゼッペは確かに持っていた。
子ども特有な残虐さを、そして、大人特有の残酷さを。

「ねーところでさー、根暗馬鹿がボクの副官になってどれ位経つ?」

窓を見ながら何となしにジュゼッペはオトマールに聞く。
その質問はとても唐突で意図の分からないものだったが、淡々とオトマールは答えた。

「ハイ、21年と6か月、そして12日と記憶しています」

「ふーん、そっか……根暗馬鹿は意外と長持ちだね」

今までジュゼッペの副官となって5年以上持った者はいなかった。
それを考えれば、この4倍以上持っているオトマールの長さは異例だろう。
不意に目を細め、窓からオトマールに振り返るジュゼッペ。その手にはリモコンらしきものが握られていた。

「じゃあさー、ボクの性格とかもよく分かってるって事でしょ?
 じゃダメじゃあん、ゴミを脱走させちゃあさ♪」

ジュゼッペがボタンを押した瞬間、オトマールの右腕が音と共に弾けた。
火薬と血液の香りがジュゼッペとオトマールの鼻腔を擽る。
オトマールの腕の付け根は、まるで出来そこないの蛇口のように血液を吐き出し続けている。

「……申し訳ありません」

自分の右腕が弾けたというのに、何の感情も籠らない声で謝罪の言葉を紡ぐ。

「うーん、痛覚切っちゃうとお仕置きにならないなぁ。ま、いいや取りあえずのお仕置きはソレで」

ジュゼッペはさして面白くもなさそうに言うと、黒光りする重厚な机に添えつけてあったボタンを押す。
27 : ジュゼッペ・メンエル ◆Jfz4HKK5EfS9 [sage] : 2012/06/16(土) 13:30:14.96 0
「お呼びですか、ジュゼッペ様」

2秒と立たないうちに10数体の天使が声を揃え一糸乱れず同時に現れた。
天使達の目に光は無く、頭部から右目に掛けて奇妙な機械が植えつけられていた。
情報体と無機物の融合、本来ならあり得ない技術を施すことはジュゼッペの得意技だった。
ヴィエナの天使達には一部の例外を除き、全員に同じ施術がなされている。
感情と自我、痛覚を消し、目的の遂行のみに従事する操り人形、此処での天使の定義はそれだ。

「うん、呼んだ。なんかさ、ゴミの中から脱走者出ちゃったから捕まえてきて。
 あとさー、逃げたゴミ管理してたのって、誰?」

ジュゼッペが言うと、後方から天使が一名歩み出る。

「はい、私で」

「ハイ処刑、っと♪」

その天使が言い終わらないうちにジュゼッペは手に持ったリモコンのボタンを押す。
次の瞬間、天使の頭部がスイカのように弾けた。他の天使は微動だにしない。

「んじゃ、役立たずの処刑も終わった事だし……ゴミを捕まえに行ってきて。殺しちゃダメだよ?
 一応、ゼウス様からのご命令だし。でも、生きてればいいから。腕無くなっても脚無くなっても、生きてればね」

ジュゼッペの命令を聞き終えた天使達は一斉にその人間の捕縛に向かう。
室内に残されたジュゼッペは面白そうに口を歪めると、自室の受話器を取り、情報室に連絡する。

「あのさ、もうそっちに逃げたゴミの情報行ってるでしょ?んじゃさ、その逃げたゴミと一緒の班のゴミに伝えといて。
『自分たちで首括るか、他のゴミに吊るしてもらうか、それともボクの実験台になるか、どれがいい』って。
ちなみに10分以内ね。そうだ、首吊る場合は外に晒してあげよう、逃げたゴミが戻って来た時に後悔するように」

ボクながらグットアイディア、最後にそう言って受話器を置くと、まだ室内にいるオトマールに目を向ける。
オトマールは包帯から青ざめた肌を見せながら、未だに右腕から血液を垂れ流し続けていた。

「あれ?まだ居たの?いいよ行って。とっととその腕くっ付けてきちゃいなよ邪魔だから。
 後、ボク今からゴミの決断聞きに行くからさ。腕付け終ったらココの掃除よろしくね」

そう言ってジュゼッペは踊る様にして自室から出ていく。
残されたオトマールはジュゼッペを見送った後、自分の弾けた腕を拾いよろよろとその場を後にした。
28 : アイネ ◆AymL.Uu50M [sage] : 2012/06/16(土) 20:26:15.97 0
>「その態度はシャルル上官殿に失礼でアリマス!お茶を置き、姿勢を正して挨拶をするでアリマス!」

>「ごめんねー、上官って呼ばれてるけどそんなんじゃないのよ。彼女軍隊マニアらしくて。
>まあ言うなればアタシ達はゼウス打倒を目指す解放軍ってところかしら。
>それで現世に目覚めたあなたはアタシ達のチームに転送されてきたってわけ。
>アタシはシャルル、能力はお菓子を出す事! お茶とお菓子が揃えば最強ね!」

「では気軽にシャルルと呼ばせていただくですよ。
私の能力は液体を操ること、もちろんお茶も操れるですよ」

と、そんなやりとりがあって…。
さて、私たちを乗せたバスは猛然と荒野を走っていた。
…というか、私の迷い込んだ場所は猫バスの中だったらしい。
しかし私は、そんなことは関係ないとばかりにお茶を飲んでくつろいでいた。
どうやら状況を察するに、もう一人の仲間が独断で先攻しているらしい。
私に喧嘩を吹っかけてきたエルザという女にせよ、どうやらこのチームは協調性に欠けているようだ。
でも、そんなことはどうでもいい。
きれいな水とおいしいお茶と、私を退屈させない日常があればそれでいいのだ。
たとえそれが絶える事のない戦火であろうと、だ。
リンネにおける生温い学園生活も悪くはなかったが、ここにはそれ以上のものがある。
それだけで、私は満足していた。

「見つけました!トムさんの乗っていたバイクです!」

前方を見据えていたシュガーが声を上げ、猫バスは急停車する。
探していた彼はというと、一人の女性を抱え上げバイクに乗せようとしているところだった。
と、そのときだった。

「待ったですよ…何かが近づいてくるですよ」

荒野の向こうから、脱走者を追う天使の一勢が迫ってきていた。
29 : ジュゼッペ・メンエル ◇Jfz4HKK5EfS9[sage] : 2012/06/18(月) 00:06:59.24 0
脱走者探索を命じられた天使達は5人1組のチームを組んで捜索中だった。
別に仲間意識があるわけではない、それが一番効率の良い方法だと命じられていたからだ。
ちなみに各天使達は無装備だった。これは天使達の驕りでも過信でもない。
ゴミ相手に装備はいらないよね?と、かつて、主のジュゼッペが発した言葉を従順に実行しているだけだ。
最低限の防弾防刃のベストに腕には通信、記録用のデバイス、それ以外の装備は無い。
各方面に散っていた捜索隊の1組が奇妙なモノと向かい合っていた。

「脱走者とは『あれ』でしょうか?」

「いえ、違います。『情報』と照らし合わせても合致しません」

「ではアレは、一体なんでしょう?データはアレ等を『人』と断定してません」

「1人を除いて私達と同じデータの集合体と認知します」

抑揚の無い、感情を感じさせない声で各々が喋る。
捜索隊の1組が遭遇したモノとは、猫バス。悪魔を運ぶ乗り船。
中には無数のデータの集合体。それこそまさに天使の天敵、悪魔達だ。
他にも一台のバイクと、近くには情報体と人間が一つずつ。

「アレは私達が捜索を命じられたモノではありません、命令の範囲外です。
 ……それに、今、脱走者が捕まったそうです。帰還の命令が下りました」

それらを前にして組のリーダー格の天使が言葉を発する。
同時に彼女らの主が欲してやまない悪魔達を前に、全員が踵を返し、背を向けた。
悪魔達に一瞥もせずに天使達は飛び去っていく。興味はない、と言わんばかりに。

その頃、ヴィエナでは1人の首吊り死体と4つの挽肉を前にジュゼッペが立っていた。
ジュゼッペの手には彼女自身が開発した自動高速連射式散弾銃が握られている。
毎秒18発、60発入りの大型弾倉を瞬く間に空にしてしまう対人用の化物兵器だ。

「んー、威力はまあまあだね。もうちっと反動を押さえたいけど……ま、合格ラインでしょ」

そう言って散弾銃を近くにいた天使に投げ渡す。天使は慣れた手付きでその対人用の化物を受け取った。
ちょうどその時、脱走者の捜索を命じられた天使達が戻って来る。
その彼女等の手にはボロ雑巾のようになった脱走者が抱えられていた。
全身に青痣が広がり、腕と脚の間接は本来向くべきではない方向にねじ曲がっている。
30 : トム ◆GAazGNP2wQ [sage] : 2012/06/18(月) 00:07:07.76 0
最新鋭エアバイクSDLⅠは大型のバイクなので後ろに荷物を積んでいても問題なく運転手が少し尻を前にずらせばもう一人乗せる事ができるのだ。
さてイトさんに俺の後ろにしがみついてもらい、いざヴィエナとやらへ向かおうとした矢先、前方にあろう事か天使の一団が現れた!!
やべぇと思って振り返れば、そこには猫バス…。

しまった!挟まれた!

……いや別に挟まれちゃいないか、片方、味方だし。

「ぁあ……もうこんな所まで……」

そう言って、がたがたと震えだすイトさん。
ううーーか弱い女の子が背中で震える、いいねーーー、超いいねーーー。

っとそうこう言ってる間にシャルル先生等が乗っている猫バスが追いついてきた。

「おはみっく」
「おはみっくじゃありませんよ!勝手に出ていっちゃ駄目じゃないですか!」
「いやぁ…、何かこう、こっちの世界に慣れてきたせいでこう、何ていうんだ?一箇所にぼーっとしてらんなくなったというか…」
「そんなのんきに会話してる場合じゃありません天使が!!」

俺の背中で震えるイトさんが、悲鳴に近い警告を発した。
うーみゅ…正直あのレベルの天使ならシャルル先生他デビルチルドレンが3人もいる現状では全く恐れるに…。

「あれ?一人増えてね?」
「あ、彼女は…」
「だからのんきに会話してる場合ではありません!早く逃げなきゃ!」

イトさんの言葉に、俺はちらっとシャルル先生を見る。
どーせおやさしい先生の事だから殺すなとかガンジー見たいな事言い出すのだろう。
幸い相手の天使銃器の類は持ってないみたい(相手が人間なので反撃が怖くないためコストの安い槍とかでも十分戦える)だし、任せて大丈夫そうだ。

「先生、俺、殺せってんならやれますが…それはシュガーちゃんの前でやっていい事じゃないっすよね?任せてぃいっすか?」

ぷるぷると震えるイトさんを猫バスの中へ避難させながら、俺はシャルル先生にお願いする。
別にシャルル先生が「いえ、トム君、やっちゃって構わないわ」とか言ったら俺は嬉々として新兵器を試してみるのだが…。
まぁ、俺も殺傷は好きじゃないし…。

……ってか俺が何もしないのはよくないよな。

「前言撤回!俺も手伝います!」

ポキポキと拳を鳴らしながら、俺は猫バスから外へ出た。
どうせあんな槍如きじゃ俺は死なないんだから一人二人羽交い絞めにして拘束する位の役にはたてるだろう。
痛いのは嫌だが、皆で戦うんだから仕方あるまい!
31 : ジュゼッペ・メンエル ◇Jfz4HKK5EfS9[sage] : 2012/06/18(月) 00:08:34.54 0
「わお、おかえり~!自由の旅は楽しかった?旅費はゴミクズ5個分だったけど気分はどお?
 悪魔ちゃんに救援求めて、まるで成果も無い結果ってどお?どんな気持ち?ねえぇ、今どんな気持ち?」

半ば放心状態の脱走者の男に尋ねるが反応は無い。
そんな脱走者にジュゼッペは笑いながら告げる。

「捕まっちゃったからってそんなに落ち込まないで!そんな君にラッキーチャァンス!
 あのね、あの娘!君とちょっと良い仲だったよね?アレさぁ、今吊るしたばっかなんだ!
 もしかしたら助かるかも!ほらほら、頑張って力を振り絞って助けてみようよ!」

土気色の肌をした首吊り少女を指差し告げるジュゼッペ。
誰の目に見ても死んでいるのは明らかだった。
しかし、希望を夢見た男は少女を助けようとねじ折られた両腕両足で這いずる。

「ほらー、頑張って頑張って!彼女も助けを待ってるよ!ガンバレガンバレ!」

言いながら散弾銃を持った天使にハンドサインを送る。
そして天使の手に持っていた散弾銃を受け取ると首を吊った少女掛けてぶっ放した。
女の首から上は、まるで破裂するかのように吹き飛び、地面に落ちた。

「ん~、でも残念!今死んじゃったぁ!あ~あ~!神様ってなんて残酷なんでしょう!?」

その光景に男が固まる中、ジュゼッペは笑いながら手を叩き鳴らし、大げさに言葉を叫ぶ。
顔は心底愉快そうに、面白そうに笑っていた。まるで極上の喜劇でも見たかのように。

「あ~、面白かった!君さぁ本当に生きてると思ったの?そんなわけ無いじゃぁん!
あんな顔色死んでるに決まってるじゃん!何マジになっちゃってんの?バカなの?死ぬの?
 でも残念、死なせません!君アレね。これからボクの実験道具ですから!よろしくね~!はい連れてって!」

そう言って連れて行かれる男を見ながら、ジュゼッペは満足そうに微笑んだ。
後ろには猫バスと遭遇した天使達が控えている。

「ん、お帰り。言わなくてもいいよ理解してるからさ。悪魔ちゃん達が来るんでしょ?
 クフフフ、じゃあコレはそのまんまでいいや、悪魔ちゃん達を出迎える良い飾り付けになるからね」

ジュゼッペは差した『コレ』とは挽肉なった首吊り死体達。

「……ボクのデバイスにもデータ送っといてね、悪魔ちゃん達がどんなのだか知りたいからさ。
 さてと、じゃー、ボクはそろそろ準備しなくちゃねぇ、悪魔ちゃんの歓迎会のさ」

そう言って去っていくジュゼッペの背に続くように、全捜索隊は列をなし、彼女の城に入っていった。
32 : エルザ・ガレドルード ◇af328Wa1zg [sage] : 2012/06/18(月) 23:54:45.62 0
猫バスが発進して数分、自分は早くも後悔していた。
……武器の調達を忘れたでアリマス。
自分の能力は単体では今一つ効果を発揮しない。
いや、強力と言えば強力なのだけれども、攻撃のパターンが限られ過ぎるのだ。
初見ならまだしも、長期戦になればなるほど不利になる。ナイフの1本でもあれば話は別なのだが。
などと思案しながらバスに揺られていた時だった。

>「見つけました!トムさんの乗っていたバイクです!」

シュガー情報担当が声を上げる。立ち上がってみると確かに抜け駆け先討ちに出たトム先輩の姿があった。
トム先輩は見知らぬ女性を抱えている。誰であろうか、随分とくたびれた格好をしているが。

>「待ったですよ…何かが近づいてくるですよ」

アイネの言葉が耳をかすめる、その視線の先を追うと……翼を広げた複数の天使の姿がある。

「……あれが、天使でアリマスか?」

聖書や絵本の中に出て来るような姿を思い描いていた自分はそのあまりのギャップに、思わず口から言葉が漏れる。
頭部に埋め込まれた機械、感情を伺えない人形の様な瞳、そして天使に似つかわしくないベスト、通信機器。
唯一純白に輝く翼ぐらいしか自分の中のメルヘンな天使のイメージと合致しない!
いや、だから何、と聞かれればただイメージとあまりに違うからビックリしたというだけなのだが。
ともかく、既に臨戦態勢で外に出ているトム先輩を援護すべく自分も外に出る。

「トム先輩殿、援護するでアリマ……ス?」

思わず言葉が途切れたのは、自分が外に出た時、天使がこちらに背を向け飛び去って行ったからだ。
天使側に分が悪いと感じたから?
いや、違う。あの去り方は逃げ出す様な感じではない。まるで仕事は終わったと言わんばかりの。
では何をしに来ていたのだ、あの天使達は。斥候にしては堂々とし過ぎている。自分は視線を猫バスに移す。
自分と入れ違いで猫バスに乗った女性……可能性であるのなら彼女の捕獲?それでもあっさりし過ぎている。
天使達の目的が、まるで読めない。ただ、目的地は近いという事だけは理解できた。
自分はトム先輩に敬礼し、バスの中に戻っていった。
33 : シャルル ◆Z6yK3vQwuU [sage] : 2012/06/18(月) 23:56:21.79 0
>「では気軽にシャルルと呼ばせていただくですよ。
私の能力は液体を操ること、もちろんお茶も操れるですよ」

「お茶も操れるなんて素敵ね! じゃあアタシもアイネ、と呼んでいいかしら?」

そんなこんなで、新たな仲間を加えて猫バスは走る走る。

>「見つけました!トムさんの乗っていたバイクです!」

トム君は、誰かをバイクに乗せるところだった。
アタシはそれを見て思わず笑ってしまう。

「やれやれ、またなにかが始まりそうな予感ね」

>「待ったですよ…何かが近づいてくるですよ」

アイネのその声に、場の空気が一変、緊張が走る。
天使の一団が現れた。

>「……あれが、天使でアリマスか?」

天使の異様な姿に、エルザさんが、驚きの声をあげる。
アキヴァの天使もギャルだったが、あれはまだ黙っていればイメージ通りの天使に近かった。

「アキヴァにいた天使と違う……!
地域によってバリエーションがあるのかも……」

>「ぁあ……もうこんな所まで……」

天使はおそらく彼女を追ってきたのだろう。
いきなり脱走者を拾うとはトム君はつくづく運がいいというか何というか。

「大丈夫よ! この中に入って!」

>「先生、俺、殺せってんならやれますが…それはシュガーちゃんの前でやっていい事じゃないっすよね?任せてぃいっすか?」

ところでアタシ達は安定した統治体制を転覆させようとする“悪”魔だ。
悪い一団といえば真ん中にリーダーっぽいセクシーお姉さんがいて左右に手下がくっついていて
やっておしまい!という掛け越えと共に手下が「イー!」とか奇声を発しながら襲い掛かっていく……。
それをアタシ達に当てはめて想像すると……やっぱ無い無い。
34 : シャルル ◆Z6yK3vQwuU [sage] : 2012/06/18(月) 23:57:16.92 0
「え? うん、任せといて!」

>「前言撤回!俺も手伝います!」

「我も行くぞ!」

トム君が前に進み出て立ちはだかり、カルレアさんがすらりと日本刀を抜き放つ。

「カルレアさん、どこにいたの!?」

「道場にこもって鍛錬していた!」

猫バス内に道場なんてあるの!? 初めて知ったよ!
ともあれ、エルザさんにアイネもいる。
一人一人の迫力はともかく、人数だけなら結構な一団になってきた。
アタシもお菓子のロッドを具現化し、臨戦態勢に入る。

>「トム先輩殿、援護するでアリマ……ス?」

いざ戦闘開始――と思われたが。

なんと天使が踵を返し、帰っていくではないか。
予想外の出来事に、とっつかまえて捕虜にするとかいう判断をする間もなく、呆然と見送ってしまう。

「まさか……アタシ達に恐れをなして逃げ出した!?」

「……だといいが、何か裏があるような気がしてならん……」

疑問を残しつつも、アタシ達は猫バス内に戻る。
さて、トム君が拾った人は、イトさんと言って、ヴィエナから逃げてきたらしい。
何たるラッキー。最初から、攻略地の内情を知る者が味方にいるメリットは大きい。

「そうなの……。警備も厳重だったでしょうに本当によくここまで……。
でももう大丈夫よ。丁度次はそこを解放しにいこうかと思っていたところなの!
案内よろしくね!」

乗組員を一人加え、猫バスは再び走り出す。
35 : アイネ ◆AymL.Uu50M [sage] : 2012/06/19(火) 19:50:00.44 0
やってきた天使の一勢を前に、私たちは各々構えを取る。
敵の戦力は5体、こちらの手勢なら苦戦はしないだろう。

>「我も行くぞ!」

>「カルレアさん、どこにいたの!?」

その中で、当たり前のように日本刀を構える人がひとり。
…全く存在に気づかなかった…いつからいたのだろう、この人は。

>「トム先輩殿、援護するでアリマ……ス?」

いよいよ戦闘開始かと思われたその時。
不思議なことに、天使たちはくるりと踵を返し退却してしまった。
予期しなかった出来事に、思わず構えを解いてしまう。

「なんのつもりですよ、あの天使たちは…?」

何はともあれ、無傷で戦闘を回避できたのだから良かったと、私たちは猫バスへと引き返す。
イトという女性も一緒だ、どうやらこのまま保護して同行することになりそうだ。
猫バスは一同を乗せ、目的地へとひた走る。
さて、ようやく全員が一堂に会したのだから、ここは腕の見せ所だろう。
私は手早くお茶の支度をすると、自慢の水芸を披露する事にした。

「はいなー、アイネさん自慢の水芸ですよ!さぁさぁ、お茶をどうぞですよ」

空中で自在にお茶を変幻させながら、各々のカップにお茶を注いでいく。
見所はやはりイルカを形作った所だろう。それとも竜のほうか。
これぞ液体操作の真骨頂。というか液体操作はこれくらいしか芸がない。
戦闘には不向きな能力なのだ。こればかりは仕方がない。
お茶会と聞きつけて、シャルルも能力でお茶菓子を振舞ってくれる。
楽しいお茶会になりそうだった。

「それにしても、先ほどの天使たち…まるで人形みたいでした」

「確かに、まるで何かに操られている様な…不自然な挙動だったですよ」

お茶を飲みつつ、シュガーの言葉に相槌を打つ私。
敵の正体は計り知れない。警戒しておくに越したことはないだろう。
お茶会を楽しむ一行をよそに、目的地ヴィエナはもう目前へと迫っていた。
36 : ジュゼッペ・メンエル ◇Jfz4HKK5EfS9[sage] : 2012/06/20(水) 01:01:10.16 0
「暇だね暇だよ暇だからさー、カタコンベに潜むゴミクズを殺してきて!」

歓迎会の準備を終え、唐突に放たれたジュゼッペの言葉に動揺する事無く天使達は命令を実行しようと歩き出す。
そんな天使達を見て、両手を叩きながらジュゼッペは上機嫌に笑った。

「ウェイト!ストップ!やだなやだなー!冗談だよイッツジョーク!」

此処はジュゼッペの自室、彼女は豪華絢爛な椅子と共にくるくると回りながら無邪気に言う。
天使達は既に歩みを止め、再び無表情な顔で彼女の前に整列する。

「んー、そりゃさぁ、ゴミ溜めの場所分かってるけど『人間殺し』はご法度だよ。ゼウス様に怒られちゃうよ?」

だが、それが理由ではない。ただ単純に人間がカタコンベで繁殖するのを待っているだけだ。
この地、ヴィエナの電力供給率はいつもギリギリだった。
というか、ジュゼッペの拠点としている塔以外には碌に供給されていない。
それは電力供給出来る人間、つまり作業員が常にギリギリしかいない、というよりも塔以外は確保されていないことを意味する。
では、ジュゼッペが人間を見逃しているのか?それも違う。ジュゼッペは電力供給よりも己の実験を優先している。
故に、電力供給がギリギリ間に合っているのならそれ以外は己の実験に使ってしまおう。と、そういう算段だ。
だが、それだけで人間がそんなに極端に減少するわけではない。理由はジュゼッペの子どもじみた残虐さにあった。
ジュゼッペは僅かなヘマをした人間を処刑したり、気に入らない部下を爆破したりと好き放題のやり放題。
人間の処刑、と言ってもジュゼッペ自身は天使なので人間は殺せない。だから、殺す時はいつも人間同士にやらせていた。
その処刑を、オヤツを齧りながら喜劇でもみるように愉快そうに眺めるのがジュゼッペの日課だった。
37 : ジュゼッペ・メンエル ◇Jfz4HKK5EfS9[sage] : 2012/06/20(水) 01:02:08.99 0
「見てよ見てよ!アレほら!自分の命欲しさに親友を殺してる!笑える!泣いてるし!ゴミってホント馬鹿!
 ありゃ!?今度は自分の首掻っ切ったよ!何々?クヒヒ!わけがわからないよ!だったら初めから死ねばいいのに!」

これは、ある日の『処刑』を観戦したジュゼッペの台詞である。
無論、人間達も黙っていたわけではない。何度も何度も恐怖を怒りで染め上げ反乱を繰り返した。
だが、その度にジュゼッペが造ったキメラやサイボーグ、そして恐怖によって支配された同じ人間によって虐殺されてきた。
そしていつしか人間は反乱することを諦めた。
カタコンベに籠り、ジュゼッペの恐怖に怯える毎日を過ごすようになったのだ。
まあ、そんな訳でジュゼッペがこの地に来てから人間の数がガンガン減っていった。
その減少量は後に彼女自身が「ヤバ、やり過ぎた。ボク、ゼウス様に怒られるかも」と焦った程だ。
そんな訳で、今、ジュゼッペは人間を面白半分に処刑したり実験したりするのを最低限我慢していた。
カタコンベの位置は全て把握している。いつでも捕縛できる。しかし、今は繁殖を優先させるべきだ。
それは分かっているのだが、しかし、今までやっていたのを我慢するには限度がある。
実験や改造、処刑のアイディアは山ほどある、でも、それを実行する素材がない。
電力供給率は今もギリギリ。ブラック企業も真っ青という過酷な作業を現在の人間に課している。
それでも過労で毎日のように死んでいた頃に比べれば優しくなっている。現在の過労死者数は3日に1人ペースなのだから。
故に常に彼女は欲求肥満だった。だが、そんなジュゼッペに朗報が訪れる。悪魔の存在だ。
最低限の実験しかできない退屈な毎日に、最高のスパイスが加わった。彼女は自室にて待つ、最高の実験道具が到着するのを。
38 : エルザ・ガレドルード ◇af328Wa1zg [sage] : 2012/06/21(木) 22:10:02.74 0
バスの中、お茶会もそこそこに自分は全員から外れ、先ほどの天使の事を思案していた。
お菓子を4、5個適当に持ち、もしゃもしゃと食べながら考える。
なんだか気持ちが悪いもやもやが、胸の奥に魚の小骨の様に引っかかっていた。
先程の天使達の態度はあまりに釈然としなさ過ぎる。

>「はいなー、アイネさん自慢の水芸ですよ!さぁさぁ、お茶をどうぞですよ」

猫バスのお茶会ではアイネが水芸を披露していたが、別段それに興味はなかった。
というか、先に奇襲といえども一戦交えているのだ。
彼女の能力が液体操作という事も知っているしそれぐらい容易に可能だろうという事も承知している。
むしろ、彼女の本当に恐ろしい所は液体操作なんかではない。
咄嗟の状況でパニックにならない心の強さと、何処で培ったか知らないが天才的に的確な判断能力だ。
先程の一戦を思い返しても分かる。……あぁ、いけない考えが逸れた。ともかく今は天使だ。

>「それにしても、先ほどの天使たち…まるで人形みたいでした」
>「確かに、まるで何かに操られている様な…不自然な挙動だったですよ」

ふと、アイネとシュガー情報担当の言葉が耳に入る。
……人形、操り……。もしやホストが天使をコントロールして遠隔操作?いや、だったら尚更不自然だ。
ふと、先ほど初めて姿を現したカルレア戦闘担当をちらりと見る。彼女は元副官だったという。ならば解るかもしれない。
自分は席を立ち、お茶会に参加しているカルレア戦闘担当とシャルル上官に近寄ると敬礼する。

「お楽しみの所、申し訳ないでアリマス。少々ご質問があるのですがよろしいでしょうか?」

2人が快く承諾してくれたので自分は質問を続ける。

「ありがとうございます。ではカルレア戦闘担当殿、まず天使はホストの命令に絶対服従なのでアリマスでしょうか?
 というより、命令以外の事はしないのでアリマスか?
例えば、この不審なバスを見かけても詰問せず、バスから不審な人物が出て来ても反応も無く飛び去ってしまう。
そう言ったことはアリマスのでしょうか?」

カルレア戦闘担当が答える前に2つ目の質問に移る。

「次に、天使の肉体内部に人工物を埋め込むことは可能でアリマスでしょうか?」

そう、身に着けるのと、内部に埋め込むとのじゃ大分違う。

「あの天使達の頭部には明らかに後付の人工物が埋め込まれていました。
自分は天使を自分たちと同じ情報体と聞いているでアリマス。現実的に考えて情報体に人工物を埋め込むのは不可能。
ですが実際には天使達に埋め込まれていた、情報体に人工物を埋め込む技術が少なくともヴィエナにはあるという事でアリマス。
そういった技術を持った天使に、カルレア戦闘担当殿は心当たりないでアリマスか?」

それだけ言うとカルレア戦闘担当の言葉を待った。
39 : シャルル ◆Z6yK3vQwuU [sage] : 2012/06/23(土) 03:53:46.73 0
「はいなー、アイネさん自慢の水芸ですよ!さぁさぁ、お茶をどうぞですよ」

机の上で、小さなウォーターイリュージョンが繰り広げられる。
お茶の噴水の上でイルカがはねる。

「まあ可愛い! お茶請けは任せといて」

ケーキに饅頭、シュークリームなどなどのお菓子を出す。
和やかに盛り上がりつつも、話題はやはり先程の天使へ。

>「それにしても、先ほどの天使たち…まるで人形みたいでした」
>「確かに、まるで何かに操られている様な…不自然な挙動だったですよ」

「う~ん、確かにアキヴァの天使はあんなのじゃなかったねえ」

>「お楽しみの所、申し訳ないでアリマス。少々ご質問があるのですがよろしいでしょうか?」

エルザさんが改まって質問を申し出てきた。

「ええ、アタシに分かる事なら」

>「ありがとうございます。ではカルレア戦闘担当殿、まず天使はホストの命令に絶対服従なのでアリマスでしょうか?
 というより、命令以外の事はしないのでアリマスか?
例えば、この不審なバスを見かけても詰問せず、バスから不審な人物が出て来ても反応も無く飛び去ってしまう。
そう言ったことはアリマスのでしょうか?」
>「次に、天使の肉体内部に人工物を埋め込むことは可能でアリマスでしょうか?」

矢継ぎ早にされた二つの質問の最初の方に、カルレアさんが答える。
40 : シャルル ◆Z6yK3vQwuU [sage] : 2012/06/23(土) 03:54:38.24 0
「それが、話はそう単純では無くてな。
まず、アキヴァでは天使を統率する天使長とホストが別だったのだ。
我が天使長、ホストは我が副官のソニア。
ソニアがホストだと言う事実はごく一部の上層部しか知らなかった。
念には念を入れてのゼウスの策、だろう。
ホストとはゼウスの支配の要であり急所だからな。矢面に立たせておくのは危険すぎる。
万が一天使長が狙われてもホストが無事ならゼウスの支配は及ぶ。
だから、最初の質問の答えはNO、だ。そもそも大部分の天使はホストが誰かすら知らぬ。
“天使長”の命令に従うかといえば、基本的にはそうだな。
それでもアキヴァのじゃじゃ馬天使どもの手綱を握るのは大変だったが……。
二番目の質問だが、何分修行ばかりしていたもので他の街の情報に疎く……すまぬな」

そこで、カルレアさんに代わって情報担当のシュガーちゃんが引き継ぐ。

「普通は不可能だと思います。
ただ、S型……マニアの間ではボクっ娘型とか男の娘型と言われていますが
この型の天使は直接の戦闘向きではない代わりに特殊な能力を搭載されています。
例えばボクだったら情報処理能力に秀でているので、リンネ世界の構築に協力する事が出来ました。
なので、情報体と物質を繋ぐような能力を搭載されている者もいるかもしれませんね」

「なるほどなるほど……」

こうして時は過ぎ――ついにヴィエナに到着した。
シュガーちゃんとカルレアさんが旅番組風に街の名前を紹介する。

「甦れ古の旋律!」
「音楽の都――ヴィエナ!」

それを見て実感が湧く。さあ、ヴィエナ編の始まりだ。

「むぅ、我は何でこんな事を……」
「……気にしたら負けです」
41 : トム ◆GAazGNP2wQ [sage] : 2012/06/23(土) 15:54:31.60 0
バスの中はシャルル先生と新しく入ってきたお姉さんの二人による楽しいお茶会が開催されていた。
うーみゅ、俺以外見事に女ばっかで居心地があんまよくないぞ…。

とりあえず食べなれたシャルル先生印のお菓子を手にとってつまんでいて、ふと、イトさんが手をつけていない事に気がついた。

「イトさん、これ別に生身の人間でも食えますから大丈夫ですよ。」

俺はそういえば俺たちが化け物の類だった事を思い出し、彼女にそう言ってみたが、彼女は笑顔で軽く首を横に振った。

「いえ、そう思われたのならごめんなさい。でも違いますわ。長い間まともなお食事にありつけておりませんでしたから、急にカロリーの高い物を食べると胃がおかしくなってしまいそうで…。」

それを聞いて、俺はなるほどと納得する。
同時に、長い間まともなご飯も食えないような生活を人間にさせる駄目ホストに、ひそかに怒りがわいて来た。
どうやらそのヴィエナにいるホストは、よっぽどろくでなしの駄目な奴らしい。

…どうでもいいけどあの姉ちゃんの水芸すげえなぁ。
あれ?そういやあの軍人女の能力って何だろ?
まいっか、お互いの能力なんて知らない方がいざという時(演出的な意味で)便利だし。

「…今更ですが不思議な事ができるのですね。皆様こんな事ができるので?」

水芸を眺めていたイトさんが、紅茶を少しづつすすりながらちらっと、シュガーちゃんに尋ねた。
シュガーちゃんは急に話しかけられてちょっとびっくりしたのか、少し間があった後

「そうですよ。でもどんな能力を皆が持っているかは、後のお楽しみです。」

といつもの笑顔で返答した。
42 : トム ◆GAazGNP2wQ [sage] : 2012/06/23(土) 16:49:34.28 0
>「ありがとうございます。ではカルレア戦闘担当殿、まず天使はホストの命令に絶対服従なのでアリマスでしょうか
>「普通は不可能だと思います。

「あの天使達は…改造手術を施されていて、いつでもジュゼッペが自分の手で消せるようになっているのですわ。」

みんなの会話を聞いていたイトさんが、口を開いた。

「だから例え感情があったとしても、消滅の恐怖からジュゼッペに逆らえない。
……町全体を、ジュゼッペは恐怖で押さえ込んでいるのです。」

そう言って、がたがたと震えだすイトさん。

「大勢の人間がジュゼッペのために無残な死を遂げてきました。
いえ、ただ死ぬのではありません。
おぞましい事にジュゼッペは人間を…人間を使ってみた事もないような化け物を次々と作り出していくんです。
迂闊な陰口だけで連行され、ジュゼッペは自分が人間を殺せないので周囲の人間にその人間を殺せと命じ…。
…父や母が…自分の子供に殺されたり…親友同士で…殺しあったり…」

語るイトさんの声はだんだんと涙ぐみだし、遂に号泣してしまった。
…何?人間を家畜扱いした挙句、可能な限り残虐な方法で殺してるっつー事?
おいおいおい…許せないどころの騒ぎじゃないだろ、それ。
そんな奴は絶対倒さなきゃ駄目だ!!

「許せないなその、ジュゼッペって天使、ぜってーぶっ殺してやらないと」

涙目のイトさんは、涙でぐじゅぐじゅになった顔を上げると、お願いしますと声にならない声で言った。
そしてようやく到着するヴィエナ…。
俺は遠方から双眼鏡でヴィエナを確認し…。

「や…野郎!ぶっ殺してやる!!」

SDLⅠを猫バスから持ち出し、怒りのままにヴィエナ目指してアクセルをふかさんとした!

「落ち着け!トム、何があった!」
「ジュゼッペの野郎、俺たちを熱烈歓迎してくれるみたいですよ!門のとこ見てくれ!」

俺を羽交い絞めにして止めるカルレアさんに、俺は双眼鏡を手渡し、門を指差す。
彼女にも見えたはずだ…門の上から垂れ下がる、無数の首吊り死体が。

「先生!今回は間違ってもカタコンペと合流したりするのはやめよう!絶対ああいうタイプはカタコンペの位置とか把握してる!
行った途端俺達が世話になった人とかが連れさらわれて怪人化される結末が見える!!
いきなり正面突破で力押ししよう!!どうせキメラなんっつったて大したのはいない!
いざとなったら俺がトライヴになって奴等全部蹴散らすから、今回だけは解放するまでここの人間と関わるのはやめよう!
それからイトさんも!」

「へ?私?」

「俺が送るから、アキヴァへ向かってください!すぐに!!
案内はいらない!あなたを守れる自信が無い!」

「そんな、でも…」

「犠牲者になるのがもう見える!ああいう残虐なタイプはこっちが守り切れない所を的確についてくるんだ!だったら守る物を最初から作らなきゃいい!そうすれば、敵だって奪う物が何も無い!
それから…」

俺は持ってきたトランクからクラタさんに作ってもらったM16モドキを出して組み立てると、新しく来たお姉さんと軍人女に差し出した。

「使える人、いたら使ってください、小さいのもありますよ」

そう言って俺が指したトランクの中には、ダイナマイト数本と、シグ・ザウエルが2丁、それからケースに入った各種大量の弾丸が入っている。
43 : ジュゼッペ・メンエル ◆Jfz4HKK5EfS9 [sage] : 2012/06/24(日) 01:03:18.33 0
「ウェルッカァァァムッ!待ってたよォォッ!あっくまちゃァァァァん!」

その声は悪魔を運ぶ猫バスが領地周辺に設置していたセンサーに引っかかった瞬間に響いた。
音源はヴィエナの真ん中、ジュゼッペが居城とする塔の拡声器からだ。

「いやぁん!ホントにボクの所に来てくれるなんて!感謝感激の極みにございますぅ!」

完全にふざけきった媚を売る様なその声の主。無論ジュゼッペだ。
本人は専用の椅子に座りながら専用のモニターで猫バスの姿を確認している。その手にはマイクが握られていた。
無数に張り巡らされたセンサーに備え付けられた極小の監視カメラが悪魔達の動きや音声を無遠慮に拾う。

「まずね歓迎の言葉とか言いたい事はいろいろ有るんだけど、まず警告ね!
 えぇとね、逃げるの禁止!今そこにいる全員、後退することはみっとめませーん!」

くるくると椅子を回し、愉快な声色で宣言する。

「逃げたらね、このヴィエナのゴミども皆殺しだから!老若男女関係ないから、いい?
 正義の味方の悪魔ちゃんはそんな事になったら悲しいでしょ?だから逃げちゃダメ!」

無論、そんな事は出来っこない。……と、先ほどまでジュゼッペは考えていた、が。
そういえば、と思い出したのだ。人間の補給地なら、一か所とっておきの場所があるじゃないか、と。

「え?そんな事して困るのはお前だろって?残念!ボクは全然困りません!だってアキヴァがあるからねぇ!
 ゴミはそこから確保するよ!まだまだ沢山いるんだろうし、何より元気が良さそうだもんね!
 騎士道馬鹿も乗ってるんでしょ?安心して!君の配下は改造してボクの部下に加えるからさ」

言いながらジュゼッペはケラケラと愉快そうに笑いこける。
副官のオトマールはそんなジュゼッペを無表情で見つめていた。

「というわけでね、逃げちゃダメだから。分かった?ドゥーユーアンダスタン?
 でさ、これだけじゃ一方的過ぎるから優しいボクは譲歩してあげる。
 悪魔ちゃん達がこのヴィエナの領地にいる間、カタコンベのゴミは殺さないっていうのはどう?」

その言葉をいったい誰が信じられるだろうか?
遊び半分で人間を吊るし、新型の銃器の的にするような天使の言葉を。

「信じる信じないは悪魔ちゃんの自由だよ?でも、さ。此処でそのバスの誰か1人でも逃げるようなら……。
 さっきも言ったけど、カタコンベのゴミは確実に皆殺しだから。
 ね、君達がどうしなきゃいけないか、どう行動しなきゃいけないか理解しようよ悪魔ちゃぁん」

再びケタケタと笑い声を上げながら、悪魔達の返答を待つジュゼッペ。
その瞳と声は狂喜の色に満ちていた。
44 : トム ◆GAazGNP2wQ [sage] : 2012/06/24(日) 02:19:49.87 0
【番狂わせ失礼、次書き込めるのが一週間後なので。】

怒りのままに戦闘開始しようとした俺は、突如聞こえてきたジュゼッペの声に、刹那驚き、その内容を聞いて…。


……キレた


いや、怒りのままにヴィエナに突撃せんとしたわけではない。
俺はジュゼッペの話が終った瞬間、俺は即効で猫バスに戻ると、「来て下さい」と一同に呼びかけた。
……勝つ。
いや、勝たなければならない。

そしてプロジェクトサキュバスを完遂し、ジュゼッペ陵辱エンドを達成しなければならない!!
あいつの声は俺にどストライク直球だ!
もう肉便器にして穴ががばんがばんになるまで……

……駄目だ、怒りを静めようとふざけた事考えてみたが全然頭が冷えない。
頭を冷やせ、見ただろう!37話を!!
37話、星人は強力な怪獣だけじゃなく、心理戦でヒーローの心から平常心を奪って冷静な戦いをできなくしていた。
奴はそのタイプだ!
ここで怒りのままに戦っては奴の思う壺だ!

そうだ、37話だけじゃない、俺が今まで学園都市で経験してきた幾多の怪事件…。
この性のせいで人の倍も経験した事件で見てきた凶悪な犯罪者達。
奴等はまずこちらが怒り狂い、心が乱れる様を見て楽しむんだ!!
そしてそれを見て逆に冷静になると乱心し、何をしでかすかわからなくなる!
大抵の場合、乱心して隙ができて倒される場合が多いが、今回の相手はコンピューターだ、相手も冷静に、次のこちらの心の動揺を誘う手をとってくるだろう…。

「まず、聞いてください、今回の敵は俺が思うに…。」

猫バスの中なら敵に声が聞こえる心配は絶対にない!
ヘルの最高技術の結晶たるこのバスの中はデビルチルドレンある限り絶対安全だ!
俺は防音状態を確認し、イトさんを含む全員に敵に対するプロファイリングを語った(上記参照)。

「つまり、今回の相手、ジュゼッペを倒すには…」

俺は一度区切ると、全員を見回して、三つの指を立てた。

「三つの方法が考えられます。」
45 : トム ◆GAazGNP2wQ [sage] : 2012/06/24(日) 03:17:55.22 0
「一つ、最悪の方法です」

言って、俺はアキヴァの方を指差す。

「このまま帰り、アキヴァで戦いましょう。」

「そんな…」

悲鳴を上げるイトさんに、俺は冷酷に話を続ける。

「連中がアキヴァに攻めてくるのなら、こちらも全戦力を動員して総力戦で戦う事ができる。
俺たちだけで戦うより、絶対確実にジュゼッペ軍を倒せる。
無論、双方に多大な犠牲を出すでしょう、しかし、少人数で戦うよりもよっぽど現実的で確実な方法だ。

…それに俺が思うに、ジュゼッペはヴィエナの住民を皆殺しにする事などできません。
あれは単なる脅しです。
もしそんな事をしたら、ジュゼッペは管理対象を全て失ったという事で、ゼウスからの責任追及される事は免れないでしょう。
思うに今の状況でも奴は危ない状況だと思うんです。
なぜなら、さっき言ったようにヴィエナ住民を皆改造獣にする事ができるのなら、俺達が来る前にとっくにそれをやり、他の町から人間をさらっていたはずです。
それができないのは、奴が住民皆殺しなんぞできない証拠です。
ただ、俺達が逃げた事でそれなりに残酷な事はしてくるでしょう。
もしかしたらとち狂って本当にやりだすかもしれない。」

そこまで語って、イトさんが青い顔をしている事に気づいた。
俺たちを信じて、頼ってくれたのに、頼った対象が見捨てようとしているのだ。
こうなるのは無理ないだろう。
彼女を安心させるため、俺は取り繕うように、手を振って、この作戦は使いませんと宣言した。

「これではヴィエナを解放する意味がありません!そうですよね?」

そう言って一同を見回した後、次の作戦を俺は話しだす。

「次に、力押しです!」

ぐっと手に力を篭め、俺は熱く語る。

「全員で魔人化し、電撃戦で一気に敵の本拠を叩き潰します!
ヘルに戻ればトライヴ化を戻す手段だってあるかもしれないから場合によっちゃトライヴ化もする必要があるでしょう!
…まぁ、真っ先に俺がトライヴ化しますが…とりあえず、トライヴ化を考慮すれば力押しでも勝つ見込みは十分にあると思うんです。」

「あの…トライヴ化とは何でしょう?」

また怖い事を考えてるのでは?
そう考えているのだろうイトさんの問いに、俺はうーんと考えた後、端的に説明する。

「超人になって周囲の敵を殺しまくれる最後の切り札ですよ。」
「そんな便利な力なら何故出し惜しむのですか?」
「使うと死ぬまで理性が無くなって周囲に呪いをばら撒き続ける存在になるからですね」
「ひっ…」

おぞましい俺たちの力に、ドン引くイトさん。
思わず俺たちから距離をとってしまう。
まぁ、何て一般的な反応でしょう。
46 : トム ◆GAazGNP2wQ [sage] : 2012/06/24(日) 04:41:28.04 0
「で、3つ、これがおそらく考えうる最良の方法です!!」

言うならば逆ナックル戦法とでも言おうか…。

「まず敵の戦力が知りたいので、一回真面目に正面突破試みて、どうにか敵の主力を引き釣り出すか、カタコンペで敵の情報を聞きます。
次に、的の主戦力を叩く準備ができたら、相手がそれからやってくるだろう精神的揺さぶりに対する対抗策を編み出します!
即ち!
『多分カタコンペの抵抗勢力の家族が改造された怪人とか出て来た時どうするか!』
『多分あいつはその改造された怪人が俺達に殺されると怒って俺たちを殺しにかかってくる人間が親戚が友人にいる人間を改造してるだろうのでそいつ対策をどうするか』
『後多分小さい子供とかそういう力の無い存在で作られた怪人とか出てくるだろうからそれ対策をどうするか』
『そしてそれら全部無表情で倒しても最強の怪獣的な切り札をあいつはもってるだろうからそれを「戦う前に如何に潰すか」』
『それからやりそうな事はあいつは逐次その辺の「カタコンペと関係ない住民」をとっ捕まえて俺たちに対する心的ゆさぶりをかけてくるだろうからそれをどうするか』
『後改造手術とか実況生放送しだしそうなのでそれをどうするか』
もうとにかく人の命を残虐に奪う事でこっちの動揺を誘ってくるでしょうからそれをどうやめさせるかが今回の戦いのポイントです!
ちなみに一番効果的なのは奴よりも残虐に人間を殺して見せてドヤ顔する事でしょうが、それは駄目でしょう。
後もう、人を見たら残酷に殺されるもんだと思い、何か親しくなれそうな天使を見たらその天使の死亡フラグだと思う事が大事です!!
無防備な心で行ったら一生物のトラウマ作られる事は必死!
事前に幼さゆえの残虐さをもった奴が何するかを徹底的に考え、それに対抗する術を徹底して考えておくのです!!
後、それでもどうしても守れないポイントとか出てくるだろうし、命惜しさに人間側から裏切る人間がアキヴァの時の数倍…いやっつーかもうカタコンペの人間全員裏切るもんだと考えてきましょう。
そう行った心構えで望み、先んじてあいつのやりそうな事を潰していけば、あいつは仕舞いに「面白くないよ、全然」とか言って最強の怪物を出してくるはずです!
そいつを軽くぶっ潰しても多分ジュゼッペは「何で僕がキメラたちを自在に操れたと思う?」とか言ってそれより強くなって襲い掛かってくるでしょうから…あ、第五形態位まで変貌するもんだと思っておくといいですよ、それも実力で倒します。
ぶっちゃけ敵が力押しで攻めてくる怪物よりはこっちの方が絶対強いので、卑劣な手段を先読みして潰し、戦力で勝るがなるべく楽しく戦いたがってるあいつに戦力の逐次投入もしくは一斉導入をやらせます!
しかしこっちもデビチルが4人もいてカルレアさんもいるんだしいざとなりゃトライヴもあるから力勝負なら負けません!!
ポイントは敵の残虐行為=こっちがやられたらへこむ事をいち早くイメージし、死亡フラグという死亡フラグをへし折る事です!!
とりあえず今この場であいつのやりそうな事を一人最低10個、あげましょう!!
そんでカタコンペ行って状況を確認して、そこからどう潰していけるかを考えましょう!!
逆に死亡フラグを立たせるとか有効です!敵は死亡フラグが立ったキャラを積極的に狙ってくるでしょうから、それを利用して潰すんです!!
例え死亡フラグびんびんな哀れな死に方をしそうにないキャラが死んでも、殺して方が「あーこんなやつしか殺せなかった」と感じればそれは無駄な努力じゃありません!!
さあ皆さん!イトさんも、ジュゼッペがやりそうなこっちが凹む事をバンバン考えましょう!
それからもうわかってると思いますがこうしてる間にもアキヴァ目指してジュゼッペの人質確保部隊が進んでるはずですからそれをまず潰すようにアキヴァに早急に連絡してください!
戒厳令しいて接近する物あらば撃てとか命令して!
そうすっと地下から迫ってくるでしょうから対地ソナーと上空警戒、それから人間に化けたヴィエナ天使とかにも徹底して注意を払うよう指示を!」

興奮して矢継ぎ早にまくし立てる俺。
もう絶対犠牲者とか出るだろうが、それを最小に防ぐ事はできる!
そしてこの先に考えうる事は学園都市で幾多の残虐事件に相対した俺たちならば十二分に予想可能だ!!

死亡フラグを感じ取れる視聴者の側から見れば、鬱フラグは叩き折れる!!
ジュゼッペ!!貴様を倒すために地獄のそこからやってきた鬱クラッシャーズの力、思う存分見せ付けてやる!!
47 : アイネ ◆AymL.Uu50M [sage] : 2012/06/24(日) 19:59:44.19 0
>「や…野郎!ぶっ殺してやる!!」

遠くヴィエナへと双眼鏡を覗いていたトムの様子が一変するのを見て、私はすばやく腰のボトルを開けた。
取り出した水をレンズ状に成型し、双眼鏡のように覗き込む。
そこに映し出されたのは、門に吊るされたいくつもの死体だった。

「これはひどいですよ…こんなの、人間のすることじゃないですよ…」

思わず、そう呟く。
今回の敵は手ごわいなんてもんじゃない。
おそらく敵は、どんな非情な手段を用いてでもこちらを潰しにかかるだろう。
私たちは、物理的なものだけでなく精神的な敵の攻撃をも、耐え凌がなければならないのだ。
ならばこちらも非情になるしかないか…それとも。

>「使える人、いたら使ってください、小さいのもありますよ」

と、そのときトムがこちらにトランクを差し出してきた。
中にはダイナマイトに拳銃、そして弾薬が詰まっている。
私は、少し迷ってから拳銃をひとつ手に取った。
私の能力は殺傷力に乏しい。やがて必要になるときが来るだろう。
幸いにも、拳銃の扱いには覚えがある。
というか、拳銃の扱いに慣れる学園生活というのもいかなものだったのだろう。
私は手馴れた様子で拳銃の動作を確認すると、いくつかの弾薬とともにポケットに突っ込んだ。

「ありがとうですよ、使わせてもらうですよ」

そう礼を言ったときだった。
ブツッという音とともに、遠方から拡声器の放送が聞こえた。

>「ウェルッカァァァムッ!待ってたよォォッ!あっくまちゃァァァァん!」

そのまま放送は続く。その内容は…まるで悪魔の言だ。
これではどちらが悪魔か分かりやしない。思わず頭を抱えたくなった。
落ち着くためにお茶を一口飲む。大丈夫だ、このくらいのことで折れる心ではない。
そして、怒りに燃えるまなざしで語るトムの3つの作戦を聞いた。
確かに、この状況では相手の戦力を測るのが先決だろう。
作戦を聞き終えた私は、お茶をすすりながら手を上げた。

「ひとつ、作戦があるですよ」

お茶をテーブルに置き、話を進める。

「この状況を、敵は必ず監視カメラを使って見物しようとするですよ。
逆に言えば、監視カメラを潰せば相手の裏をかくことができるですよ。
しかし、無数にある監視カメラ全てを潰すにはどうしたらいいか…。
答えは簡単ですよ。この街の発電施設を潰せばいいですよ。
どうやら敵は機械に頼るタイプらしいですよ、ならば電力がなければ何も出来なくなるはずですよ。
発電施設の管理はこの街の人間が行っているはず、カタコンペで情報を集めて発電施設を潰すのが得策ですよ」

一通り語り終えた私は、再びお茶を手に取る。
相手は正面突破くらい、当然対策してくるだろう。
裏をかくには、発電施設を潰す他ない。おそらく警備も手薄なはず。
48 : エルザ・ガレドルード ◆af328Wa1zg [sage] : 2012/06/25(月) 01:46:10.79 0
カルレア戦闘担当、シュガー情報担当、そして途中乗車してきたイトさんの言葉を聞き、そうでアリマスか、と納得する。
とするのなら、やはりあの天使達は改造され操られている。命令『のみ』を実行する機械の様に。
だから命令外の自分達は無視された。命令されていないから。
命令に疑問も抱かず、唯忠実に実行する、兵士としては理想的で一番扱いやすいタイプだ。
味方なら良いのだが、敵にすると至極厄介……さて、どうしたものでアリマスか。

>「や…野郎!ぶっ殺してやる!!」

突然のトム先輩の絶叫に近い憎悪の叫び。その手には双眼鏡が握られていた。
カルレア戦闘担当もトム先輩に双眼鏡を見て顔を顰めている。

「カルレア戦闘担当殿、自分にも見せてもらってよろしいでしょうか?」

そう言った自分に一瞬の戸惑いを見せるが、カルレア戦闘担当は双眼鏡を自分に手渡す。
双眼鏡を映し出された光景に一瞬何が写っているのか理解が出来なくなる。
食肉工場の吊るされた肉がぶら下がっているのかと誤認するが、それは違う。
吊るされたいたのは人間、それも所々に弾痕が刻まれており、もはや原型を保っていない。
つまり、吊るした後に銃火器の的にしたのだ。

「……あれが天使の所業でアリマスか」

自分の想像する天使のイメージが木端微塵に吹き飛んだ。自分の声が低くなるのを感じる。
こんな凄惨な光景を再び目にするとは思わなかった。
対トライブ狩り専用部隊、リンネで自分が席を置いていた部隊だ。リンネで学生過程を終了して即座に入隊した。 
部隊の目的はトライブ狩りと称してデビチルを狩るトライブ狩りの殲滅部隊。
トライブもデビチルも無差別に殺す輩どもに死の鉄槌を、がコンセプトだった。
そこで幾度となく見せられた光景がこれだ。目の前で上官や先輩、同期を失ってきた。反吐が出るほど。

>「使える人、いたら使ってください、小さいのもありますよ」

いつの間にかトム先輩はトランクを差し出す。中にはダイナマイトに拳銃、そして弾薬が詰まっている。

「武器の支給感謝でアリマス!ありがたく使わせていただくでアリマス」

と同時にアイネも武器の物色を始める。少し迷った後、拳銃を手に取った。
随分と手慣れた手付きだ。銃火器の使用経験があるのだろうか?……愚問でアリマスね。
リンネはそういう場所だった。一般の学園生活とは程遠い空間だ。
自分も拳銃を手に取り、動作の確認をする。出来ればナイフも欲しい所だが。
49 : エルザ・ガレドルード ◆af328Wa1zg [sage] : 2012/06/25(月) 01:48:25.85 0
>「ウェルッカァァァムッ!待ってたよォォッ!あっくまちゃァァァァん!」

そんな事を考えている時だった。突如女の声が響き渡った。
ふざけきった放送内容。それは恐らくヴィエナを管轄する天使ジュゼッペの声だろう。
その放送内容はあまりにふざけきっていた。完全にこちらを馬鹿にしている。
が、戯言だと決めつける事は出来ない。それは門に吊るされた首吊り死体が示している。
一度猫バス内に入り込み作戦会議を行う。トム先輩は怒りに燃えながら作戦を立案する、が。
無論、1、2は却下。となると3の作戦だが……なんというか、これは作戦というか……。
自分の解釈が間違っていないのなら、常に最悪の事態を想定し、適宜善処し対応せよ。という事になる。
……これは作戦でアリマスでしょうか?いや、ヴィエナ軍の総力を知るのも大切だとは思うが。

>「ひとつ、作戦があるですよ」

今度はアイネが口を開く。

>「この状況を、敵は必ず監視カメラを使って見物しようとするですよ~
  発電施設の管理はこの街の人間が行っているはず、カタコンペで情報を集めて発電施設を潰すのが得策ですよ」

なるほど、確かに一理ある。というか……まったくもって正論だ。
自分はそういったアイネに続けるように言葉を紡いだ。

「……しかし、アイネ。多分、あの天使が自分の弱点を把握していないでアリマスかね?
 それなりに警備を固めているのでは?……故に、手薄にする為には囮が必要でアリマスね。
 一か所で派手に暴れて他を手薄にする……自分が魔人化すれば可能でアリマス。まあ、少々の危険は伴いますが
 情報を集めた後の陽動作戦、自分なら遂行できる自信がアリマス」
50 : シャルル ◆Z6yK3vQwuU [sage] : 2012/06/26(火) 01:49:23.04 0
女性ばかりの中で、トム君が居心地悪そうにしている。
ユダ君は、他のチームに異動ということでいったんヘルに回収されたのだった。

>「イトさん、これ別に生身の人間でも食えますから大丈夫ですよ。」
>「いえ、そう思われたのならごめんなさい。でも違いますわ。長い間まともなお食事にありつけておりませんでしたから、急にカロリーの高い物を食べると胃がおかしくなってしまいそうで…。」

「そうだったの……。
ゼウスは心の自由は奪えども生存だけは保証するはず。
作られてから長い時がたって、本格的に壊れ始めてるのかもしれない……」

>「あの天使達は…改造手術を施されていて、いつでもジュゼッペが自分の手で消せるようになっているのですわ。」
>「だから例え感情があったとしても、消滅の恐怖からジュゼッペに逆らえない。
……町全体を、ジュゼッペは恐怖で押さえ込んでいるのです。」

「なんたる輩だ……堕天した我が言うのも変だがそれでも高潔なる天使か!」

イトさんの口から、ヴィエナを支配する天使ジュゼッペの所業が告げられる。
これには、同じ立場だったカルレアさんも怒り心頭である。

>「や…野郎!ぶっ殺してやる!!」
>「落ち着け!トム、何があった!」
>「ジュゼッペの野郎、俺たちを熱烈歓迎してくれるみたいですよ!門のとこ見てくれ!」

「カルレアさん、最初の相手はあなた達で良かったかもしれない……」

門の所に釣り下がっている物を見て、思わずそう呟く。
改めて、カルレアさんソニアさんコンビが相手だった時の常識は通じない事を実感する。

>「いざとなったら俺がトライヴになって奴等全部蹴散らすから、今回だけは解放するまでここの人間と関わるのはやめよう!
それからイトさんも!」

それを聞いて、ぺち、とトム君の頬を叩く。

「冗談でもトライヴになる、なんて言ったら駄目よ。あれは神に負ける事を定められた悪魔の象徴なの……」

しかし、自分でもわかる。その声に、アキヴァの特別授業の時のような力強さはない。
ジュゼッペの悪魔の所業、ならぬ天使の所業に怖気づいてしまっているのだ。
こんな弱弱しい説得では、火がついてしまったトム君が止まるはずもない。

>「使える人、いたら使ってください、小さいのもありますよ」

トム君が出したのは、数種類の銃器類。
普通に考えたら、持っておいた方がいい。だけどアタシはあえて手を出さなかった。
アタシもユダ君と同じ、そこに無い物を出現させる能力。召喚系と言うべきか生成系と言うべきかは分からないが。
とにかく、物量押しで中途半端に足止め位は出来る能力なばっかりに、お笑いのような戦法でなんとかしのいできたクチなのだ。
だから銃火器は使い慣れていない、というのもあるけど、手を出せばこのまま彼の気迫に流されてしまうような気がして。
幸い、アタシの魔人化後の能力は純然たる戦闘系だ。
そして、長い学生生活を経て、魔人化しても周囲を無差別に攻撃する事はない程度の魔力制御術は身に付けてある。
51 : シャルル ◆Z6yK3vQwuU [sage] : 2012/06/26(火) 01:51:38.96 0
>「ウェルッカァァァムッ!待ってたよォォッ!あっくまちゃァァァァん!」

突然、ふざけた声が響く。

「何処から!?」

見れば、街の真ん中にいかにもな塔が聳え立っているではないか。

「ボ、ボスの居城が分かりやすすぎるっての! 馬鹿と煙は高い所が好きってね!」

空元気の軽口を叩くと、しーっ、聞こえますよ!とシュガーちゃんに口を塞がれる。
ジュゼッペは、聞こえたか聞いていないか知らないが、そんな事は構わず言いたい放題。

>「信じる信じないは悪魔ちゃんの自由だよ?でも、さ。此処でそのバスの誰か1人でも逃げるようなら……。
 さっきも言ったけど、カタコンベのゴミは確実に皆殺しだから。
 ね、君達がどうしなきゃいけないか、どう行動しなきゃいけないか理解しようよ悪魔ちゃぁん」

>「来て下さい」

そして始まる作戦会議。トム君は物凄い勢いで作戦を語り始めた。
その中で、またトライブ化の言葉が出て来るが、今度は何となくスルーしてしまっていた。
いつものノリを完全にジュゼッペに削がれてしまっていた。

>「ひとつ、作戦があるですよ」

アイネさんが、具体的な作戦を提案する。

>「この状況を、敵は必ず監視カメラを使って見物しようとするですよ~
  発電施設の管理はこの街の人間が行っているはず、カタコンペで情報を集めて発電施設を潰すのが得策ですよ」

「なるほど、アキヴァでは発電施設自体が天使の本拠地だったけど
わざわざアホみたいな塔を立ててるあたりを見るに、ここではおそらく別!」

>「……しかし、アイネ。多分、あの天使が自分の弱点を把握していないでアリマスかね?
 それなりに警備を固めているのでは?……故に、手薄にする為には囮が必要でアリマスね。
 一か所で派手に暴れて他を手薄にする……自分が魔人化すれば可能でアリマス。まあ、少々の危険は伴いますが
 情報を集めた後の陽動作戦、自分なら遂行できる自信がアリマス」

自分から魔人化しての陽動を申し出た、という事は魔人化能力をある程度制御できる、と見ていいのだろうか。
見た所二十歳前後。高等課程を修了しているのなら、トム君やアイネよりは出来る可能性は高いだろう。

「……一人では心配ね。陽動するとなったらアタシも一緒にやるわ。
アタシの魔人化は変身系だから結構ビジュアル的に迫力あるし。
それより、シュガーちゃん、さっきS型は直接の戦闘向きではない、と言ったわよね」

「はい」

「ならばあいつ自身の戦闘能力は大したことはない。
おそらく、恐怖による支配があいつの一番の強みよ。
破るには、まずは人間同士で殺し合う事だけは阻止しないといけない……」

としたら手始めにするべきことは……
52 : シャルル ◆Z6yK3vQwuU [sage] : 2012/06/26(火) 01:53:30.31 0
「まずは徐行運転で街中を練り走るのよ!」

「はい!?」

そして……アタシは皆が作戦会議を続ける傍らで、練り走る猫バスからウグイス嬢のような放送を発信していた。

『ヴィエナの皆さん、アキヴァを解放したデビルチルドレンがやって参りました!
温かいご声援をよろしくお願いします!』

止まっていても徐行運転していてもいきなり襲撃される危険性があるのは一緒。
これで下手にカタコンベ民が出てきて殺される、という危険性も考えたが
これ程の恐怖で支配されているなら、簡単には出て来ないだろう。
何もせずにこもっていては相手の士気を向上させるだけである。
自分でも突飛な行動だとは思うが、それで相手がドン引いてくれればもうけものだ。
53 : ジュゼッペ・メンエル ◆Jfz4HKK5EfS9 [sage] : 2012/06/27(水) 00:47:42.12 0
「籠った?籠っちゃった?悪魔ちゃん困って籠っちゃった?」

モニターに映し出される映像を見ながらジュゼッペは笑いながら首を傾げる。
完全にバスの扉を閉め切っていることから何かこちらに聞かれたくない話をしているのは容易に想像できる。
ということは、防音対策はバッチリというわけだろう。すなわちこちらの声は聞こえていない、と。

「んー、逃げ出す様子はないね。よかったよかった!」

ジュゼッペはマイクを放り投げるとテーブルに並べられたお菓子に手を伸ばす。
クッキーにチョコレート、マカロンにシュークリーム、各種ケーキに各種アイス……etc。
それが所狭しと専用テーブルに並べられている。

「根暗馬鹿。悪魔ちゃん達が次にする行動ってなんだと思う?」

ガリガリとクッキーを齧りながらジュゼッペはオトマールに問いかける。

「はい、複数可能性として考えられますのは強行突破、情報収集、奇襲戦、何処かに潜んでの作戦会議。
 高い可能性でこの内のどれかがかと思われます」

お菓子を咀嚼する音が響く中、淡々とオトマールが言葉を述べる。

「だよねー、ボクもそう思ってた。確かに普通に考えればそうなんだけどー、それじゃあつまんないよね
 もっとこうなんというか意外性?みたいのがボク的には欲しいかなって思っちゃったり、って?」

5つめのクッキーに手を伸ばし、クッキーを取る前にその手を止めた。
それはモニターから流れてくる音声に耳を疑ったからだ。

>『ヴィエナの皆さん、アキヴァを解放したデビルチルドレンがやって参りました!
  温かいご声援をよろしくお願いします!』


「ねえ、根暗馬鹿、あれ何だと思う?」

「街宣、でしょうか?」

「うん。ボクもそう思う」

意外過ぎるでしょ、再度クッキーを齧りながらぼそりと呟く。
その顔には上機嫌な笑みが浮かんでいる。余計悪魔が気に入ったようだ。
54 : ジュゼッペ・メンエル ◆Jfz4HKK5EfS9 [sage] : 2012/06/27(水) 00:50:07.85 0
「普通さぁ、街宣する?敵地に来て街宣する?しないよねぇうん絶対しない。
 やっぱ発想が普通じゃないのかな悪魔ちゃんって、ねえ根暗馬鹿」

「そうですね。通常敵地に来て街宣は行わないかと」

「クヒヒ、だよねぇ。いいねいいねぇ!しょっぱなから楽しませてくれるじゃん!
 んじゃ、さ!楽しませてくれたお礼をしよう!根暗馬鹿、アレよろしく!あと、もうお腹いっぱいだから捨てといてコレ」

「承知しました」

そう言ってオトマールはサービスワゴンに大量のお菓子を乗せ、一礼して部屋を出ていった。
先程投げ捨てたマイクを拾い上げ、ポンポンと叩く。
無論、バスが完全に閉め切られているのは承知の上だ。
というか、聞こえていようがいまいがジュゼッペにはあまり関係なかった。

「あっくまちゃぁん!楽しい街宣ありがとう!ボクね、悪魔ちゃん達の為に歓迎会の準備をしたんだぁ!
 だ・か・ら、楽しい街宣のお礼を兼ねて今から歓迎会を開始しまぁす!それじゃあ皆様行ってみよう!」

その言葉の後に猫バスに向けて『何か』が疾走してくる。
背中に翼は無い、天使ではない。身体の各所に武器や金属を埋め込まれた人間達だ。
手を切られ電動鋸を縫い付けられた者。皮膚を剥がされ筋肉を削られ鉄板を埋め込まれた者。
両腕に銃火器を埋め込まれた者、脳と臓器以外全てが機械化した者、機械と融合させられ人の形を成していない者。
ジュゼッペの作り出した狂気の産物のほんの一握りが猫バス目掛けて疾走する。
ジュゼッペ曰く失敗作、出来損ない、役立たず、生クズゴミ、価値無し、つまりは生かしておく理由もさしてない。
が、どうやらコレ等も人間としてカウントされるのかジュゼッペには殺す事が出来なかった。
かといって普通の人間には殺せない化物。故に塔の地下の劣悪な環境で幽閉していたのだが、それを解放した。

『このボクの領地に来る悪魔ちゃん達を殺してみてよ、そしたらさ元の姿に戻してあげる』

とても信じられなかったが彼らはその言葉に縋るしかなかった。僅かな希望を抱きながら。

「さぁて!人間を救う為にやってきた悪魔ちゃん!救われる為に人類の希望を殺すヒトデナシ!
 生き残るのはどっちかな?どっちなのかな?どっちでもいいよボクが楽しめるならさ!さぁ楽しませてよ悪魔ちゃぁん!」
55 : アイネ ◆AymL.Uu50M [sage] : 2012/06/27(水) 18:24:55.73 0
>「……しかし、アイネ。多分、あの天使が自分の弱点を把握していないでアリマスかね?
 それなりに警備を固めているのでは?……故に、手薄にする為には囮が必要でアリマスね。
 一か所で派手に暴れて他を手薄にする……自分が魔人化すれば可能でアリマス。まあ、少々の危険は伴いますが
 情報を集めた後の陽動作戦、自分なら遂行できる自信がアリマス」

>「……一人では心配ね。陽動するとなったらアタシも一緒にやるわ。
アタシの魔人化は変身系だから結構ビジュアル的に迫力あるし」

「じゃあ、囮は二人に任せるとして、発電施設を潰すのは私とトムがやるですよ。
とにかくまずは、発電施設の場所を突き止める必要があるですよ」

そう言って、イトのほうを見やる。

「案内はイト、あなたに一任するですよ。
正直、道中イトを守りきれる自信はないですよ。それでも、お願いできるかですよ?」

地元の人間ならある程度は地の利が利くだろうと考えての采配だ。
分からなければ仕方ない。気は進まないが、カタコンペへ潜ってそこの人間に問うしかないだろう。
また、巨大な施設を攻撃するなら相応の火力が必要になる。
そう判断した私は、トムの用意したトランクからダイナマイトを持ち出した。
さすがにダイナマイトを扱った経験はないが、要は導火線に火をつければいいのだろう。
とりあえず作戦としてはこんなものか、そう判断して手元のお茶を飲み干す。
さぁ、戦争の時間だ。

>『ヴィエナの皆さん、アキヴァを解放したデビルチルドレンがやって参りました!
温かいご声援をよろしくお願いします!』

シャルルが猫バスの拡声器で、朗々と名乗りを上げる。
いつからこの猫バスは、選挙カーになったのだろう。
とはいえ人間たちの士気を高め、天使共を挑発するには悪くない作戦だ。
これだけ騒げば、相手から手を出してくる事は明白である。
そら、来た。
56 : アイネ ◆AymL.Uu50M [sage] : 2012/06/27(水) 18:25:28.69 0
>「あっくまちゃぁん!楽しい街宣ありがとう!ボクね、悪魔ちゃん達の為に歓迎会の準備をしたんだぁ!
 だ・か・ら、楽しい街宣のお礼を兼ねて今から歓迎会を開始しまぁす!それじゃあ皆様行ってみよう!」

その放送の直後、猫バスのモニターを見ていたシュガーが声を上げる。

「何かが…人間が近づいてきます、数多数!」

「あれが…人間?」

「反応は確かに人間のものです。しかし…」

こちらに迫ってくる異形の姿は、とても人間とは思えなかった。
ある者は体中に武器を縫い付けられ、またある者は歪な機械に全身を覆われている。
いずれにせよ、とても正視に堪えない姿だ。
彼らもまた何らかの方法で操られているのだろう。
しかし、相手は人間…殺すわけにもいかない。
そうこうしているうちに、猫バスは異形の者に取り囲まれてしまう。

「ここは私が出るですよ!」

そう言って、私は猫バスを飛び出した。
殺せない相手なら、死なない程度に手加減するまでだ。

「いくですよ、シーサーペント!」

腰のボトルから飛び出した水が、生き物のようにうねり手近な異形の者に迫る。
あっという間にそれは首に絡みつくと、相手の口へと飛び込んだ。
一時的に粘性を帯びた水は、いともたやすく相手の気管を塞ぎ、肺にまで侵入する。
しばらくもがき苦しんでいた異形の者は、やがて酸欠で倒れた。
一時的に溺れさせただけだ、死ぬことはあるまい。
襲い来る敵の攻撃をたくみに避けながら、幾本もの”蛇”を同時に操って敵を沈めていく。
えげつない攻撃方法だが、大抵の敵には効果があるため重宝している必殺技だ。
相手が倒れるまで時間がかかるというのが難点といえば難点だが。
幸いにも異形の者たちの動きは素人同然、回避するのはそう難しくなかった。
57 : エルザ・ガレドルード ◆af328Wa1zg [sage] : 2012/06/28(木) 00:44:29.82 0
>「……一人では心配ね。陽動するとなったらアタシも一緒にやるわ。
アタシの魔人化は変身系だから結構ビジュアル的に迫力あるし」

自分の言葉にシャルル上官が乗っかってくる。これはマズイ。
確かに人数が多い方が陽動の成功率は高い、が、自分の魔人化を前提としている以上出来れば1人の方が……。
完全に制御しきれる自信がない。魔人化後はリンネ内での渾名がフレンドリーファイアで通っていたほどだ。

>「じゃあ、囮は二人に任せるとして、発電施設を潰すのは私とトムがやるですよ。
とにかくまずは、発電施設の場所を突き止める必要があるですよ」

ぐぬぬ……と考えているうちにどうやら役割分担は決まってしまったようだ。
ここで無下に、一人で大丈夫でアリマス!なんて言おうものならシャルル上官の顔に泥を塗ることになる。
……しょうがない、なるべく制御できるよう心がけよう…………無理だろうけど。

>『ヴィエナの皆さん、アキヴァを解放したデビルチルドレンがやって参りました!
温かいご声援をよろしくお願いします!』

いつの間にか拡声器で名乗りを上げているシャルル上官。
無駄に相手を刺激して注目されるのは好ましくは……いや、既に注目されてるから今さらだろう。

>「あっくまちゃぁん!楽しい街宣ありがとう!ボクね、悪魔ちゃん達の為に歓迎会の準備をしたんだぁ!
  だ・か・ら、楽しい街宣のお礼を兼ねて今から歓迎会を開始しまぁす!それじゃあ皆様行ってみよう!」

相変わらず人を舐めきったその態度と口調。精神年齢はそんなに高くはなさそうだ。
多分、自分の思い通りにならないと気が済まないタイプであろう。

>「何かが…人間が近づいてきます、数多数!」
>「あれが…人間?」
>「反応は確かに人間のものです。しかし…」

アイネとシュガー情報担当が動揺の声を上げる。自分も身を乗り出してその異形の姿を確認し……そして。

「……外道が」
58 : エルザ・ガレドルード ◆af328Wa1zg [sage] : 2012/06/28(木) 00:46:07.23 0
思わず口から言葉が漏れる。胃を締め上げられるような嫌な感覚が自分を襲う。
人体に何かを仕込むのは珍しいことではない。
心臓や関節、呼吸器、それらの人工物を内蔵した一般人など幾らでもいる。
しかし、これは……あまりに、酷い。人体の強化というよりも狂気の沙汰だ。

>「ここは私が出るですよ!」

そう言って、アイネは猫バスを飛び出した。

>「いくですよ、シーサーペント!」

そう言うなり腰のボトルから蛇の様にうねりを上げ、異形の口に飛び込む。
あれは、気道を塞いでる?ああまで器用に動かせるでアリマスか。
だけど、あれじゃあ1人に時間を掛け過ぎている。器用に異形の攻撃を避けてはいるが多勢に無勢。
避けそこなえばそこでお終いだ。自分はシュガー情報担当に声を掛ける。

「シュガー情報担当殿!目を塞いでくださいでアリマス!自分の合図があるまで決して開けないよう!
 シャルル上官殿とトム先輩殿も衝撃に備えてください!」

自分は窓から両手を出すと握った物を異形に向けて投げる。無論パンプキンボムだが1つではない。
両手での同時精製×3なんとか両手に収まるギリギリの数、計6個のパンプキンボムだ。

「アイネ!早くこっちへ!」

最低限をアイネに告げる。先に一戦交えているアイネの事だから既にこちらの意図は読めていることだろう。
それ前提での自分の行為だ。バスを出たのがアイネじゃなかったらこんな無茶はしない。
それにこの場で此方の手の内を晒すのはよくない。相手の戦力がどれ程かも分かっていないのだから。

「シュガー情報担当殿、合図と同時に全速力であの『人達』を振り切ってください!」

既に10秒いかないまでもそれに近い時間が経過している。それなりの『溜め』になっている。
6個のパンプキンボムは地面に落ち、異形達の周りをころころと転がっていた。
どれも直撃はしないが軽くても軽傷やら気絶、悪ければそれなりの怪我を追う事は確実だ。
軽傷だとしても閃光をまともに受ければ数秒間は視力が失われる。その間に撤退だ。
今、あの外道が見たいのは自分達と異形との殺し合い。なら無駄に見せつけてやる必要もない。

「今でアリマス!Blast!」

自分はアイネがこちらに駆け込んでくるギリギリのタイミングでシュガー情報担当に向けての合図を叫んだ。
59 : トム ◆GAazGNP2wQ [sage] : 2012/07/01(日) 00:37:27.27 0
デビチルの孔明たる俺を差し置いて、作戦がガンガン進んでいく。
気に食わない…。
一番気に食わないのは、その作戦が一々的を射ている事だ。

発電施設破壊の計画には俺は口を挟めなかった。
軍人女は思ったよりも頭がキレる奴であり、この水使いのねーちゃんも冴えている。
つまり、やっぱりこっちでも俺は役立たずというわけかい…。

そして俺と水のねーちゃんが発電施設破壊、他が囮という仮想プランが出来上がった。

>「案内はイト、あなたに一任するですよ。
正直、道中イトを守りきれる自信はないですよ。それでも、お願いできるかですよ?」

「わかりましたわ。…ご安心ください、この町の建物その他の構造、マイク、カメラの位置は熟知しておりますので。」

!?

「え?何でそんな…。もうカタコンペ寄る必要なくないですかそれ!」
「うふふ、入念に下調べしておきましたから。紙とペンがあればすぐに詳細な見取り図を…」

>『ヴィエナの皆さん、アキヴァを解放したデビルチルドレンがやって参りました!
温かいご声援をよろしくお願いします!』

突如聞こえてきたお馬鹿な声に、やたら高性能なイトさんに驚くより先に思わずつんのめってしまった。

「せんせえええええええええあんた何敵の神経逆撫でするような事してるんですかああああああ!」

あああああああせんせーの馬鹿な言動のせいでヴィエナの人達が

『あははははは、君達が助ける前にこーしてあげるよおおおおお』
とか
『デビチルを応援するような奴は一族皆お前以外ひどい目にあわせてやるよーーー』
的な事になるんじゃ……。

しかし!!
俺の危惧していた事は起こらず、幸いにしてヴィエナから改造人間が数体現れただけで特にこれ以上ジュゼッペがこの行為に対して悪い事をしてくる事はないようだ。
先生、迂闊な言動は慎んでくれ、頼むから!

>「さぁて!人間を救う為にやってきた悪魔ちゃん!救われる為に人類の希望を殺すヒトデナシ! ~

さてどうしよう。
M16モドキじゃ攻撃力が足りないからアッチで戦う事になるだろうけど、曲がりなりにも元人間。
正当防衛だけれども撃ち殺すのは……。

いや!撃たなければ…。

撃つの?

何で?

俺が向こうの立場に立たされたら、どうよ?

……無理!できない、俺には撃てない。
学園都市でも、さ、トライヴはモウ人間じゃないから何回か手にかけた事が無きにしもあらずだったけど、人間は…ね。
撃てないわ。
っというか…、撃ったら、何か、越えちゃいけない一線を越えちまうみたいで…。
60 : トム ◆GAazGNP2wQ [sage] : 2012/07/01(日) 01:12:13.86 0
結局の所、俺は何もできなかった。

今、俺達はどうにかあの改造人間達を振り切って既にヴィエナに進入し、「監視カメラや集音マイクの死角であり、かつ猫バスが隠れられる絶好の場所」にいる。
具体的に言うと何か用水路みたいなところの橋の下で、そこにちょうど猫バスがすっぽり入れる位の用水路への入り口があるのだ。
橋の上からは一応死角になっているし、本格的な捜索が始まれば簡単に見つかってしまうけれども、一時しのぎにはなるだろう。

「捜索隊が組まれて探されたら…とかでしたらご心配には及びませんわ、ほら。」

そう言って、イトさんが指した先には…何か機械を取り付けられた隠し監視カメラと隠し集音マイクがある。

「ここの監視カメラと集音マイクは正常作動しているように見えるよう、あらかじめ偽装してるのです。ここは監視が行き届いている事になりますから、捜索は後回しになるはずです」

………。

俺は、無言でイトにM16の銃口を向けた。

「こんなできすぎた事、信じられると思うか?」
「!?」
「よく考えてみたらあのジュゼッペが脱走者何てむざむざ出すのはおかしい!天使が俺達とあった途端引き換えしたのも不自然だ!
てめぇグルだろ!!」

俺の言葉に、イトは強く首を振る。

「そ…そんな!そんなの誤解ですわ!私は本当に…」
「天使でも改造人間でもないってか?親や兄弟を人質に取られて俺達を罠に落としいれようとしてるっつーのも十分に考えられる!」
「………そんな守るような家族…私にはおりませんわ…。」
「っ!」

イトの言葉に俺は少し怯んでしまったが、それでも銃口は動かさない。
少し俯いた状態で、俺をじっと見つめるイトに、俺はしっかりと狙いを定める。

「じゃあクローン人間か?人造怪人か?どっちみち、あんたを信用できない!」
「…………では、撃ってくださいまし」

そう言って、目を瞑るイト。

「私にはあなた方を信頼させるにたる物がございませんわ。私を疑うのであれば……撃ってくださいまし。その代わり…」

…怖いのだろうか、毅然とした口調とは裏腹に、小さく震えながら、イトは言葉を続ける。
段々と、口調が震えてきていた。

「ヴィエナは……ヴィエナの人間は、きっと解放してください。」

それだけ言うと、イトは両手でぎゅっと拳を作り、深緑色のウェーブの髪を震わせ、しっかりと目を瞑った。
肩が徐々に小刻みに震えだし、彼女が怖がっている様子がわかる。

……だ、騙されるな!こいつは、こいつはこういう風にできているだけだ!!
こいつは……。

……俺は、救いを求めるように周囲の仲間達を見回した。
61 : シャルル ◆Z6yK3vQwuU [sage] : 2012/07/01(日) 13:49:46.66 0
>「せんせえええええええええあんた何敵の神経逆撫でするような事してるんですかああああああ!」

「大丈夫、何処に行っても行動が筒抜けならじっとしていても一緒よ」

……え、何? イトさんがやたらと高性能だったって? 早よ言え早よ。
襲い掛かってくる改造人間達の反応は、間違いなく人間のものであった。
逆に言えば、まだ本質的には人間だという事だ。ならば……

>「シュガー情報担当殿!目を塞いでくださいでアリマス!自分の合図があるまで決して開けないよう!
 シャルル上官殿とトム先輩殿も衝撃に備えてください!」

エルザさんが爆弾を投げる。
爆発までの間、アタシは放送で改造人間達に脅しをかけておく。

『アタシ達が勝ったらジュゼッペを捕虜にしてあなた達を元に戻させる!
もちろんうまくいく保証はない。
でも……ジュゼッペのいう事を聞いても100%元に戻してくれない。断言する!
それを踏まえて次に会う時までにどっちに付くかよく考えておいて!』

>「今でアリマス!Blast!」

改造人間達の反応を見る間もなく、後方で爆音が響いた。
そして猫バスはイトさんの手引きで、刺客の目を逃れるべく死角へ――なんちゃって。
62 : シャルル ◆Z6yK3vQwuU [sage] : 2012/07/01(日) 13:51:13.55 0
>「捜索隊が組まれて探されたら…とかでしたらご心配には及びませんわ、ほら。」
>「ここの監視カメラと集音マイクは正常作動しているように見えるよう、あらかじめ偽装してるのです。ここは監視が行き届いている事になりますから、捜索は後回しになるはずです」

イトさん……? いくらなんでも高性能すぎない?
と思った矢先、トム君が銃口を突きつける。

>「こんなできすぎた事、信じられると思うか?」
>「!?」
>「よく考えてみたらあのジュゼッペが脱走者何てむざむざ出すのはおかしい!天使が俺達とあった途端引き換えしたのも不自然だ!
てめぇグルだろ!!」

「ま、まあまあ!」

自ら疑惑を追及しつつも、いたたまれなくなって救いを求めるような視線をこちらに投げかけてくるトム君。

「ごめんなさい。証拠になるものが無い以上、拘束させてもらうわ。グミロープ」

グミのロープでイトさんを簀巻きにし、犬の散歩のような感じにする。

「アキヴァでも用水路が天使の目を逃れるための通路として使われていた。
ここに来た事自体は間違ってはいないはず……。
それになんの手がかりも無しにうろうろするよりはいてくれたほうがたとえ敵の罠だとしても判断材料の一つにはなる」

アキヴァの天使は臭いとか汚いとか言う理由で用水路に入りたがらなかったが
ここの天使も機械を埋め込まれている関係上湿気の多い場所は苦手だろう。

「イトさん、用水路の中の道は分かる?
地下から発電所に侵入したり……は出来るかしら」

もちろん、案内できると答えたとして、突拍子もない場所に連れて行かれる可能性も無きにしも非ず。
付いていくか付いていかざるかが問題になるわけだが。
63 : アイネ ◆AymL.Uu50M [sage] : 2012/07/03(火) 23:02:05.73 0
機械化されていても所詮は人間、何とかなるだろうと思っていたが、その物量に苦戦を余儀なくされていた。
この人数を一人で捌くのは無理だ。そう感じ始めていた時だった。

>「アイネ!早くこっちへ!」

エルザの声だ、このタイミングで声をかけるということはおそらく…。
私は最後にシーサーペントで二三人の異形の者を突き飛ばすと、猫バスへと走った。

>「今でアリマス!Blast!」

勢いよく猫バスに飛び乗ると同時に、背後で爆音が轟く。
それと同時に猫バスは急発進して、包囲にできた隙を抜け出した。

「ナイスアシストですよ、エルザ」

そう声をかけ、猫バスの扉に背を預け一息つく。
せっかく仲間がいるのだから、無理をするのは控えよう。
ここにいる者達はいずれもリンネより選び抜かれた逸材、背を預けるに足る者だ。
そうこうしているうちに、猫バスはイトの案内で橋の下、下水溝へと隠れ潜んでいた。
ここならばしばらくは見つからない、そうイトは言う。

>「ここの監視カメラと集音マイクは正常作動しているように見えるよう、あらかじめ偽装してるのです。ここは監視が行き届いている事になりますから、捜索は後回しになるはずです」

その言葉に対し、トムはイトに銃口を向けた。
確かに、この状況は出来すぎている。トムの持つ疑念は分からなくもない。
だが、しかし…。

>「ヴィエナは……ヴィエナの人間は、きっと解放してください。」

「………」

私は答えることが出来なかった。
イトの必死な言葉にも、トムの何かを訴えるようなまなざしにも。

>「ごめんなさい。証拠になるものが無い以上、拘束させてもらうわ。グミロープ」

そのままイトは拘束された。確かに、安全策としては妥当だろう。
だが現状では、イトの言葉に頼るしか作戦の遂行はままならない。
それにしても、グミで拘束とはいかがなものだろう。
あとでべたついたりしなければいいのだけど。などと余計な心配をしてしまう。
それよりも、今大切なのはイトの今後の扱いについてだ。
彼女の言葉を、信じるか否か。

「イトの言葉、私は信じてあげてもいいと思うですよ。
このまま発電施設へ向かうにせよ、カタコンペへ向かうにせよ、私達はイトの言葉に従うしかないですよ。
もし罠に案内されたとしても、私達にはそれを切り抜けるだけの力がある、そうじゃないかですよ?」

私はイトの言葉を信じる。
そして、それ以上に仲間の強さを信じる。
それが私の答えだった。
64 : エルザ・ガレドルード ◆af328Wa1zg [sage] : 2012/07/04(水) 01:12:26.26 0
無事、あの異形の者達から逃げ切った自分達はイトさんの手引きで隠れ場所まで誘導された。
しかし、いくらヴィエナ出身だからといってここまで知り尽くしているものだろうか。些か不自然の様な……。

>「ここの監視カメラと集音マイクは正常作動しているように見えるよう、あらかじめ偽装してるのです。
  ここは監視が行き届いている事になりますから、捜索は後回しになるはずです」

そのイトさんの言葉が引き金になったのか、突然、トム先輩がイトさんに銃口を向ける。
トム先輩の表情は疑心暗鬼に染まっていた。

>「こんなできすぎた事、信じられると思うか?」
>「!?」
>「よく考えてみたらあのジュゼッペが脱走者何てむざむざ出すのはおかしい!天使が俺達とあった途端引き換えしたのも不自然だ!
てめぇグルだろ!!」
>「じゃあクローン人間か?人造怪人か?どっちみち、あんたを信用できない!」

責め立てるトム先輩、そして『信用できない』というその言葉にイトさんは寂しげ表情を浮かべる。

>「…………では、撃ってくださいまし。私にはあなた方を信頼させるにたる物がございませんわ。
私を疑うのであれば……撃ってくださいまし。その代わり…」

はっきりとした口調とは裏腹にイトさんの身体は震えていた。それが本当なのか演技なのか、自分には判断がつかない。

>「ヴィエナは……ヴィエナの人間は、きっと解放してください。」

トム先輩は困ったような顔をし自分達を見渡す。まるで救いを求める様に。
それを見かねたのかシャルル上官が割って入り、イトさんをグミロープで拘束する。
実際問題、今はイトさんを頼る以外に確たる当ては無い。しかし、そのイトさんには疑惑がある。
結論から言えば、シャルル上官とアイネは現状維持、というかこのまま続行。
トム先輩は疑惑が払拭し切れていないのか未だに銃口をイトさんに向けている。
シャルル上官がイトさんに質問する中、自分はおもむろに……。

「……トム先輩殿、失礼するでアリマス」

トム先輩から慣れた手付きでM16を奪い取るとイトさんの眼前に銃口を定める。

「自分の考えとしては、アイネが言っていたように例えこれが罠であっても切り抜ける自信はアリマス。
 しかし、不安の芽は刈り取っておくのが最上の選択とも考えているでアリマス。
 なのでここでイトさんを射殺するのも選択の内、トム先輩殿が殺りにくいようなら自分が撃ちます。
 なぁに、遠慮は要りません。こういうことは手慣れたモノ、でアリマスよ」

リンネにいた頃と同じことをすればいいだけ、本当に手慣れたモノだ。
トリガーに指を掛け、引き絞る。それで終わる。問題は何も無い。汚れ役は慣れている。

「ただ、トム先輩殿。仮にこの場でイトさんを撃ち殺す事になろうと絶対に後悔はしないでください。
 殺した後に殺した事を後悔するのは、殺された者に対しての最大の侮辱でアリマスので。
 さあ、ご選択をトム先輩殿、シャルル上官殿、自分はどのような選択にも答えるでアリマス」

自分の選択は持たない。兵士はただ上官と先輩の命令に従うだけだ。
65 : ジュゼッペ・メンエル ◆Jfz4HKK5EfS9 [sage] : 2012/07/04(水) 02:29:21.37 0
「…………」

先程までの上機嫌が嘘の様にジュゼッペは不機嫌だった。それはもう誰の目から見ても明らかなほどに。
悪魔は失敗作とはいえ自身の造った作品を事も無げにあしらい、そして誰一人殺しもせずに逃走した。
失敗作が一方的に殺されるのならまだ良い。
それはそれで人類を守る為の悪魔が人を殺すという愉快な見世物を観賞出来たからだ。
だが結果は殆どたった一人の水を操る悪魔に翻弄され逃走されて終わるという無惨な結果。

「……失敗作とはいえさ、一応ボクの作品なんだけどなぁ。ねぇどう思う根暗馬鹿?」

そう言って振り返ったジュゼッペの手にはリモコンが握られていた。
オトマールが返事を返す前にその右足が付け根から爆ぜるように千切れ飛ぶ。
右足を無くし思わず前のめりに倒れたオトマールの頭をジュゼッペは踏みつける。

「ボクの研究不足かな?ボクが悪いの?ねぇ?どうなのボクのせいなの?なんでこんなつまんない結果になっちゃったの?」

ぐりぐりと煙草の吸殻を踏み消すようにオトマールの頭を踏みにじる。
床にはオトマールの作った大量の血溜まりが広がっている。

「……あー、むかつくなぁ。ちょっと悪魔ちゃんのこと舐め過ぎたかな」

ひとしきり踏みにじったオトマールの頭を蹴り飛ばすとモニターに目を向ける。
高速で切り替わるモニターに悪魔の姿は無い。地上に張り巡らされた極小の集音機と監視カメラ。
死角はあるがそれだって些細なものだ。
領地に入ってほんの少ししか経過していない中で悪魔にそう都合よく発見されるわけがない。
ということは……。

「地下にでも逃げられたかな?ゴミどもと合流する気かな?それとも、発電所狙い?
 1日、2日の塔のみの自家発電は出来るけど……そこやられちゃうと厄介だよねぇ」

地下にはジュゼッペの一方的な虐殺放送が流れる拡声器が備え付けてあるがそれ以外はノータッチだ。

『だってあんな汚い所なんてモニターを通して見るのも嫌だし大して面白いことなんてないでしょ?』

いつの日かのジュゼッペの台詞だ。ともかくゴミの溜り場は把握していても見てはいないというのが現状だった。
もし、悪魔達が地下に逃げ込んでいたとしたらそれはそれで厄介な事である。

「……はぁ、しょうがない。地下のゴミ溜めのお掃除兼アレの戦闘実験だ」

そう言ったジュゼッペの顔が僅かに歪む。もうゴミの繁殖云々はどうでもよくなっていた。

「根暗馬鹿、アレの調整終わってるよね。もう行けるでしょ?」

ボロボロになったオトマールに一切の悪気なくジュゼッペは語りかける。
66 : ジュゼッペ・メンエル ◆Jfz4HKK5EfS9 [sage] : 2012/07/04(水) 02:30:34.06 0
「……は、い。問題、あり、ません」

痛みは無いが血を流し過ぎたのだろう、息も絶え絶えに言葉を返す。

「じゃあアレ」

ジュゼッペはリモコンをポチと押す。今度はオトマールの身体が爆ぜる事は無かった。
代わりに数秒後、異質なモノがジュゼッペの部屋に訪れていた。
雪の様に白い髪。ジュゼッペと同じような濁った赤い瞳。そして片方しか生えていない翼。
身体年齢は10歳に満たないだろう。
それらはすべて異質だが、もっともソレを際立たせているのは獣の様に鋭い爪を備えた長い右腕だった。

「おはよう、シャムエル。気分はどうかな?」

「…………良好です」

「そう、じゃ、とっとと行ってきて。まずは失敗作の処理、その後にゴミ掃除だよ?
出来たら悪魔ちゃんも捕獲する事、わかった?」

「…………はい」

そう言った次の瞬間にはジュゼッペの自室の壁は綺麗に切り取られていた。
シャムエルと呼ばれた少女の既に姿は無い。

「天使とゴミの融合体のプロトタイプ、『シャムエル』。クヒヒ、父親は失敗作でも娘は使えるもんだねぇ。
 さて、次の手段はどうするのかな悪魔ちゃん。失敗作と違って、シャムエルは簡単にはいかないよ
 ……根暗馬鹿、足直したらそこの壁の修復と床の掃除ね。とっととよろしく」

そう言ってジュゼッペは地下への放送を始める為、拡声器のマイクを手に取った。
67 : ジュゼッペ・メンエル ◆Jfz4HKK5EfS9 [sage] : 2012/07/04(水) 02:32:39.41 0
>『アタシ達が勝ったらジュゼッペを捕虜にしてあなた達を元に戻させる!
もちろんうまくいく保証はない。
でも……ジュゼッペのいう事を聞いても100%元に戻してくれない。断言する!
それを踏まえて次に会う時までにどっちに付くかよく考えておいて!』

その悪魔の言葉を聞いた次の瞬間、そこにいるジュゼッペに失敗作と言われた人間達は爆発により吹き飛んでいた。
普通の人間だったのなら重症は免れないだろう、しかし、そこは一応強化人間だ。
その数十秒後にはアイネに失神させられた人以外が軽い傷を負いながらも意識を取り戻していた。

「……大丈夫か?」

「あぁ、なんとかな……アレがジュゼッペ様の言っていた『悪魔』か」

「……でも、『悪魔』には見えなかったよな」

こちらは殺す気だったのに関わらず、水の力を使う不思議な悪魔は自分達を殺さなかった。
そして爆発により失神している自分達を殺す事が出来たであろうに、殺さなかった。
さらには最後の悪魔の言葉、殺そうとした自分達を、元に戻す、と助けると言ってくれた。

「……この後、どうする?」

「このまま戻っても、また、あの地下の中で実験という名の拷問の日々だぞ」

「いやだ、俺は……俺はそんなのいやだ。もうあの暗闇は……」

そう、このまま戻ってもジュゼッペは自分達をよくやったなどと褒めてはくれない。
それどころか、罰と称して今まで以上に酷い実験を施すだろう。
だったら、だったら……、あの悪魔に希望を託してみるのもいいかもしれない。

「なぁ、俺達、悪魔側に」

そう言いかけ時、自分と話していた人間の首がころりと落ちた。
よく見れば自分の以外の全ての人間の首が断たれ、身体は複数に分断されている。
誰がいつのまにどうやってこんな事をしたのか……。自分の後ろに気配を感じ振り返る。

「……シェリ」

そこにいたのは自分の愛しい娘だった。自分の身を犠牲にして守りたかった娘だった。
雪の様に白い髪、濁った瞳、片翼、鋭い爪の付いた長い右腕。風体こそ変わってしまったがすぐに分かった。
が、男が娘の名前を呼びきる前に、右腕は鞭のようにしなり、その爪は無慈悲に男を両断していた。
その無感情な目にはかつての父親に対する親愛は浮かんでいない。ただ粛々と命令を実行するのみ。
だがそれは機械による操作ではなく、長期間の絶対的な恐怖に、精神、身体的な拷問による洗脳だった。
かくして少女の人間の心は壊され、身体は改造され、人間と天使の融合体となった。
片翼の少女は空を飛び、自身の全ての感覚を駆使して悪魔を追う。
それは機械によって改造された天使には絶対に出来ない能力であった。
68 : トム ◆GAazGNP2wQ [sage] : 2012/07/06(金) 21:51:53.76 0
すいません、何かたいして文章書いてないのに長すぎるとか出たのと、再来週大事なテストがあるので、しばらく休ませてください。
イトさんはとりあえず道案内する便利なNPCに、トムは場の緊張感からくるストレスで胃を痛めて猫バスに戻った事にしてください。
すみません。
69 : シャルル ◆Z6yK3vQwuU [sage] : 2012/07/08(日) 21:44:35.24 0
>「イトの言葉、私は信じてあげてもいいと思うですよ。
このまま発電施設へ向かうにせよ、カタコンペへ向かうにせよ、私達はイトの言葉に従うしかないですよ。
もし罠に案内されたとしても、私達にはそれを切り抜けるだけの力がある、そうじゃないかですよ?」

「そうね、悩んでいても始まらない」

アイネさんの後押しで方針が決まりかけた時。
エルザさんが唐突に、トム君の銃を奪いイトさんに突き付ける。

>「……トム先輩殿、失礼するでアリマス」

「……なにを!?」

>「自分の考えとしては、アイネが言っていたように例えこれが罠であっても切り抜ける自信はアリマス。
 しかし、不安の芽は刈り取っておくのが最上の選択とも考えているでアリマス。
 なのでここでイトさんを射殺するのも選択の内、トム先輩殿が殺りにくいようなら自分が撃ちます。
 なぁに、遠慮は要りません。こういうことは手慣れたモノ、でアリマスよ」

「敵の差し金にしては疑わし過ぎて随分お粗末じゃないかしら。
それに……今までにアタシ達を始末する隙はいくらでもあったはずよ」

エルザさんのあまりの冷静さに、幾分かの動揺と畏怖を覚えついイトさんを庇う。
もちろん、何を考えているか分からないジュゼッペの事だから
こうやって混乱するアタシ達を見て楽しんでいる可能性もあるのだ。
それとも、混乱させる事自体、ひいてはイトさんの処遇を巡っての仲間割れを起こさせる事が目的かもしれない。

>「ただ、トム先輩殿。仮にこの場でイトさんを撃ち殺す事になろうと絶対に後悔はしないでください。
 殺した後に殺した事を後悔するのは、殺された者に対しての最大の侮辱でアリマスので。
 さあ、ご選択をトム先輩殿、シャルル上官殿、自分はどのような選択にも答えるでアリマス」

トム君を見ると、真っ青な顔をしている。
彼はまだ、イトさんを信じたい気持ちと疑いの板挟みになっているようで。
70 : シャルル ◆Z6yK3vQwuU [sage] : 2012/07/08(日) 21:45:15.75 0
「……今はやめておきましょう?
その……しかるべき処置をするのは敵だとはっきりしてからでも遅くは」

アタシの言葉が途中で止まったのは、トム君がおもむろに、崩れ落ちるように倒れようとしていたからだ。

「トム君!?」

慌てて支えて猫バスまで連れて行き、シュガーちゃんとカルレアさんにお願いする。
極度の緊張から来るストレスによるもの、だそうだ。
戻ってエルザさん達に告げる。

「トム君疲れちゃったみたい。
少し休めばよくなると思うけど回復を待ってる時間はない。アタシ達で先に行かなきゃ。
エルザさん……やっぱり一端は信じてみよう。
そうすれば、その選択が正しかったのかいずれはっきりする。
ここで殺したら、本当に敵だったのかずっと分からないままになってしまうかもしれない。
そうなったら、トム君は一生後悔するよ……」

そして、グミの拘束を解く。
本当に敵なら元々気休め程度にしかならないものだし、一端は信じると決めたからにはとことん信じてやる。

「イトさん、道案内頼りにしてるわよ!」

「……ありがとうございます。こちらです」

イトさんの案内で、アタシ達は歩き始めた。
71 : アイネ ◆AymL.Uu50M [sage] : 2012/07/10(火) 19:49:30.73 0
トムから銃を奪いイトに突きつけるエルザ。
一瞬にしてあたりの空気は緊迫に包まれる。

>「自分の考えとしては、アイネが言っていたように例えこれが罠であっても切り抜ける自信はアリマス。
 しかし、不安の芽は刈り取っておくのが最上の選択とも考えているでアリマス。
 なのでここでイトさんを射殺するのも選択の内、トム先輩殿が殺りにくいようなら自分が撃ちます。
 なぁに、遠慮は要りません。こういうことは手慣れたモノ、でアリマスよ」

確かにエルザの言うことは一理ある。
しかし、果たしてイトは本当に敵なのだろうか。
私には、とてもそうに思えなかった。
彼女が本当に敵なのなら、決着はすでに付いているように思うからだ。
だが、私たちは今もこうして無事でいる。

>「ただ、トム先輩殿。仮にこの場でイトさんを撃ち殺す事になろうと絶対に後悔はしないでください。
 殺した後に殺した事を後悔するのは、殺された者に対しての最大の侮辱でアリマスので。
 さあ、ご選択をトム先輩殿、シャルル上官殿、自分はどのような選択にも答えるでアリマス」

エルザの詰問するようなその言葉は、トムの心を容赦なくえぐる。
そんなこんなで心労が祟ったのだろう。
トムは青白い顔で、そのまま倒れこんでしまった。
シャルルが慌てた様子で猫バスへ彼を担ぎこむ。

>「トム君疲れちゃったみたい。
少し休めばよくなると思うけど回復を待ってる時間はない。アタシ達で先に行かなきゃ。
エルザさん……やっぱり一端は信じてみよう。
そうすれば、その選択が正しかったのかいずれはっきりする。
ここで殺したら、本当に敵だったのかずっと分からないままになってしまうかもしれない。
そうなったら、トム君は一生後悔するよ……」

そう言って、シャルルはイトの拘束を解いた。

「私は異存ないですよ。彼女を信じていこうですよ。」

そして、私たちはイトの案内で下水溝を進み始めた。
72 : アイネ ◆AymL.Uu50M [sage] : 2012/07/10(火) 19:50:00.21 0
下水溝の中は薄暗く、あたりには異臭が立ち込めている。
何かが腐った匂いに汚物の匂い、それにかすかだが血の匂いが入り混じっている。
道を進むには、猫バスから持ち出した懐中電灯の明かりだけが頼りだ。

「うう、汚い水は嫌いですよ、それにこの匂い、何とかならないかですよ」

思わず文句が口から出る。だが、そんなことを言ってもどうしようもない。
汚い水は本当に嫌いだ。水使いとして、できればそんな水で戦闘をするのは避けたいところだ。
腰に下げたボトルの中の水は、いざというとき飲料としても大丈夫なきれいな水が入っている。
中には飲めないものもあるが…いや、これは追々説明する機会があるだろう。
さて、果たしてどれだけ進んだのだろう。
イトは不意に古いはしごの前で立ち止まると、上を指差した。

「この上が発電施設になっております。
でも気をつけてください、おそらく見張りの者がいるはずです。」

「見張りがいるなら倒すまで、ですよ。私たちなら心配ないですよ。」

私はそう言うと、はしごを登った。
ここからはいつ戦闘になるか分からない。慎重に進む。
はしごを登った先は、思いがけず広い空間に出た。
あたりはやはり薄暗く、ただ轟々と機械の稼動する音だけが響いている。
どうやらこのフロアには敵の気配はない。そう判断して、私はほっとため息を付いた。
それにしても思ったより広い空間に出た事で、私は少々戸惑いを覚える。

「さて、この施設を破壊するとして、問題はどこに爆弾を設置すればいいのかですよ」

「メインタービンがあるのはこの先のフロアです。
そこを破壊すれば、おそらく機械は作動を停止するはずです。」

そう言って、イトは前を指差した。
それに従って、私たちは周囲を警戒しながら発電施設内を歩き始める。
73 : エルザ・ガレドルード ◆af328Wa1zg [sage] : 2012/07/12(木) 00:23:58.84 0
トム先輩殿が心労で倒れ、シャルル上官とアイネの意見により結局イトさんの件は保留となった。

「……そうでアリマスか、なら、自分は従うだけでアリマス」

心なしか自分の中の緊張の糸が緩んだ気がした。
手慣れたモノであってもやはり知ってる人物を殺すというのは良い気分ではないのだから。
イトさんの案内で下水溝に入る。鼻が曲がりそうな臭いに思わず顔を顰めた。

>「うう、汚い水は嫌いですよ、それにこの匂い、何とかならないかですよ」

水を操るアイネはやはり人一倍水に気を使うらしい。ぐちぐちと文句を言いながら下水溝の道を進んでいく。
やがて、古い梯子の前で立ち止まるとイトさんは上を指差す。

>「この上が発電施設になっております。
でも気をつけてください、おそらく見張りの者がいるはずです。」
>「見張りがいるなら倒すまで、ですよ。私たちなら心配ないですよ。」

自分も先ほどトム先輩から拝借したM16をちらりと見て頷く。
ここから先は、手の内を見せない、などと言ってられないかもしれない。
領地に電力を供給しているであろう発電所はジュゼッペにとって致命的な重要拠点の筈だ。
だが、梯子を上りきって出た先は薄暗く広い空間、機械の稼働音のみがそこに響いている。
何もいない。それが返って不安を掻きたてる。

>「さて、この施設を破壊するとして、問題はどこに爆弾を設置すればいいのかですよ」
>「メインタービンがあるのはこの先のフロアです。
そこを破壊すれば、おそらく機械は作動を停止するはずです。」

そう言って歩き始めるアイネとイトさん、そしてシャルル上官に自分は声を掛ける。

「……急いだ方がいいでアリマスね、藪突いて蛇が出てこないうちにさっさと片してしまいましょう。
 アイネ、シャルル上官殿、見張りは引き受けるでアリマス。急ぎでお願いするでアリマス」

ジュゼッペがみすみす此処を破壊させるとは思えない。
何か必ず仕掛けてくるはずだ。自分は後方に陣取ると気を引き締めてM16構える。
74 : シャルル ◆Z6yK3vQwuU [sage] : 2012/07/14(土) 22:55:13.29 0
>「……急いだ方がいいでアリマスね、藪突いて蛇が出てこないうちにさっさと片してしまいましょう。
 アイネ、シャルル上官殿、見張りは引き受けるでアリマス。急ぎでお願いするでアリマス」

「ええ、後ろはお願い!」

何事もなく、メインタービンがあるというフロアに辿りつく。
恐る恐る扉を開けた途端。

「あーっ、侵入者さんですか!? というか噂のデビチルさんですか!?」

フツーに見張りの人に見つかった。そりゃ見張り位いるわな。
見たところ男女二人。
普通の人間のようだが、この街の人間はジュゼッペに恐怖で洗脳されているので油断は禁物だ。
アタシは慎重に言葉を選びながら話しかける。

「ええ、確かにデビチルよ。落ち着いて話を聞いて。
この発電所を機能停止させれば……勝てるの。だから……」

続きを言う必要は無かった。

「どうぞどうぞ破壊してください。ジュゼッペのアンポンタンの支配はもううんざりです!」

積極的に破壊を依頼する女性の方の見張りを、男性の方の見張りが血相を変えて窘める。

「何を考えているんだグミ! ジュゼッペ様に改造されるぞ!」
「だって堂々とピアノがひけない世の中なんてもう嫌です!
アキ先輩だってこの前言ってたじゃないですかあ! 大ホールでコンサートしたいって!」
「そうじゃなくてせめて見逃したように装えと……。
俺たちは何も見てません!見てませんから!」

アタシは、騒いでいる見張り達にも聞こえるように言った。

「幸い見張りもいなかったし誰もこないうちに爆弾を設置しましょう。
設置したら危ないからすぐ離れなきゃね」
75 : アイネ ◆AymL.Uu50M [sage] : 2012/07/16(月) 19:40:14.40 0
>「……急いだ方がいいでアリマスね、藪突いて蛇が出てこないうちにさっさと片してしまいましょう。
 アイネ、シャルル上官殿、見張りは引き受けるでアリマス。急ぎでお願いするでアリマス」

エルザをその場に残し、私とシャルル、そしてイトは次のフロアへと進む。
特に誰かに遭う訳でもなく、次のフロアへの扉はすぐに見つかった。
慎重に扉を開くと、そこには。

>「あーっ、侵入者さんですか!? というか噂のデビチルさんですか!?」

あっけなく見つかってしまった。
相手は人間の男女二人。反射的に戦闘態勢に構える。
特に武器などを所持している様子はない。
これならばすぐに沈められるだろう。いや、油断は禁物だ。
だが、相手には全く敵意は感じられず…。

>「どうぞどうぞ破壊してください。ジュゼッペのアンポンタンの支配はもううんざりです!」

というか、過剰に友好的だった。
シャルルの突拍子もない街宣も、意外とあなどれない。
彼ら二人のやり取りを聞いて、私はこの街がかつて音楽の都と呼ばれていたのを思い出す。
音楽…私には縁遠いものだ。
まだリンネで学生をしていた頃に、縦笛を吹いたことがある程度だ。
それでも、彼らにとって音楽は生きる糧なのだろう。
この街を救うことは、すなわち彼らの手に音楽を取り返すことなのだ。
その重みを、私は心の奥底で噛み締める。

>「幸い見張りもいなかったし誰もこないうちに爆弾を設置しましょう。
設置したら危ないからすぐ離れなきゃね」

どうやら見張りの件については、ここには誰もいなかったと言う事でまとまったらしい。
その声を聞いて、すぐに部屋を飛び出した二人を見送って、私は爆弾の設置に取り掛かる。
といっても、適当な場所に置いて着火するだけだが。
私はタービンのすぐ下の隙間に爆弾を置くと、いつも肌身離さず持っているライターで導火線に火を付けた。

「3分後には爆発するですよ。すぐに退避を!」

そう大声で二人に告げると、私たちはその場から退避すべく駆け出した。
76 : ジュゼッペ・メンエル ◆Jfz4HKK5EfS9 [sage] : 2012/07/18(水) 22:12:58.10 0
軽い地響きが数度続き、塔の電源はバツンと落ちる。
しかし、10秒と立たないうちに塔は非常電力により先程までの光を取り戻していた。
だがこれも一時凌ぎにしかならない。2,3日もすれば非常用電力も尽きヴィエナは完全な闇に包まれるだろう。

「……はぁ、やってくれちゃったねぇ、悪魔ちゃん」

ジュゼッペの口調こそは明るいがその目は笑っていない。
先程、地下への放送を流しに行ったのだが思いのほか悪魔達の動きが速いので諦めて塔の自室に戻っていた。

「ボクが悪魔ちゃんを追いつめて遊ぶはずがぁ?いつの間にか追いつめられてますぅ?」

ふぅ~、と長い溜め息をつき、クルクルと椅子を回転させる。

「……もしかしてボク、このまま負ける?」

ピタリと椅子の回転を止め、思わず呟く。フルフルと身体を震わせ、手に握ったソレを強く握り締める。
先程からずっとスイッチのONになったソレはマイクだった。
つまりジュゼッペの今までの弱気な発言も全てヴィエナに流されている。
暫くの間、マイクからは噛み殺す様な荒い息遣いが響きそして……。

「なぁ~んちゃって!びっくりした?ダメージ受けたと思った?ぜ~んぜんだよぜ~んぜん!」

急に飛び抜けて明るい声が街に響く。

「でもまあよくやったよ悪魔ちゃん!ここまでやるとは思っても無かったもん!流石だね!ナガレイシだね!」

パチパチパチパチ、とマイクを通して拍手が送られる。
そしてその拍手が止まると同時に、ジュゼッペの口調が変わった。

「だからね、もういいよ。生け捕りと解剖と実験は諦めたよ。
 後、電力供給をしてたクズ共も今までご苦労様。ご褒美に『歌わせてあげる』よ」

一方その頃。
爆破から避難した悪魔と人間達の前にいつのまにか1人の少女が居た。

「……こんにちは、シャムエル。私の名前」

雪の様に白い髪、濁った瞳、片翼、鋭い爪の付いた長い右腕。その姿はまさに『異形』だった。

「……殺しに来ました。貴方達を」

そう言うやいなやその長い右腕が鞭の様にしなり1人の人間の首を飛ばしていた。
飛び散る血飛沫に、次々に上がる悲鳴、それはまるで老若男女による悲鳴の混声合唱のように。

『天使とゴミの融合体のプロトタイプ、シャムエル。悪魔ちゃん、君達の相手だよ。
 スペックは並の天使を上回り、ゴミも天使も殺せる。シャムエルは天使のルールにも人間のルールにも縛られない』

今までの様な子どもっぽい笑い声ではなく、氷の様な冷たい笑い声。

『じゃあね悪魔ちゃん。生きてたら、また会おう。
 あとクズどもは今までの分、思う存分歌えばいいよ。耳障りな合唱をさ、最後の1人になるまで』

ジュゼッペの言葉が終わるのを待ち、シャムエルは濁った瞳を悪魔達に向ける。

「……それでは開始しましょう。殺し合いを」

言い終わったその瞬間、ジャムエルは鞭の様な右腕を悪魔目掛けて横薙ぎに払った。
77 : シャルル ◆Z6yK3vQwuU [sage] : 2012/07/21(土) 01:34:41.34 0
こうして、発電所爆破は案外あっさりと成功した。
発電所で働いていた人達も無事に逃がす事が出来た。
外に出ると、先程の男女二人組が早々と勝利を喜び合っている。

>「でもまあよくやったよ悪魔ちゃん!ここまでやるとは思っても無かったもん!流石だね!ナガレイシだね!」

「ジュゼッペ負け惜しみざまあみそしる。やりましたよ先輩、自由を掴みましたよ!」

「俺達は何もやってないけどな」

>「だからね、もういいよ。生け捕りと解剖と実験は諦めたよ。
 後、電力供給をしてたクズ共も今までご苦労様。ご褒美に『歌わせてあげる』よ」

「安心するのはまだ早いわよ!」

アタシはロッドを構え、戦闘態勢に入る。何かが来る――!
仰々しく空から降臨? それとも地響きをあげて地中から出てくるか!?

>「……こんにちは、シャムエル。私の名前」

否、それはいつの間にかそこにいた。

>「……殺しに来ました。貴方達を」

人間が一人、止める間もなく首を飛ばされる。

>『天使とゴミの融合体のプロトタイプ、シャムエル。悪魔ちゃん、君達の相手だよ。
 スペックは並の天使を上回り、ゴミも天使も殺せる。シャムエルは天使のルールにも人間のルールにも縛られない』
>『じゃあね悪魔ちゃん。生きてたら、また会おう。
 あとクズどもは今までの分、思う存分歌えばいいよ。耳障りな合唱をさ、最後の1人になるまで』
78 : シャルル ◆Z6yK3vQwuU [sage] : 2012/07/21(土) 01:35:22.44 0
「あのねえ……人間はゴミでもクズでもないんだから処分しないで頂戴!!」

しかし怒りをぶつけるべき対象は今ここにはおらず、今戦うべき相手もまた哀れな被害者――

>「……それでは開始しましょう。殺し合いを」

「【鉄壁防御《ソーカセンベイ》】!」

振るわれた異形の右腕。超固い煎餅で受け止めて勢いを殺し避ける時間を作る。
煎餅は粉々に砕け散った。
元見張り(女)が、煎餅の破片をかじりながら叫ぶ。

「お望み通り思う存分歌ってやるです! アキ先輩、指揮を!」

「ああ」

元見張り(男)は、落ちていた木の枝を拾い、指揮棒のように構える。
しかし、人々はそれには目もくれず悲鳴をあげるばかり。

「そんな……
みんな!この日のためにこっそり練習してきたじゃないですか、悪魔を賛美する讃美歌を!」

「俺では駄目みたいだ……ミルヒー……ミルヒーさえいれば……!」

「ミルヒーって!? 【甘美盲目《パイダークネス》】!」

アタシはシャムエルの顔にパイを飛ばしながら尋ねる。

「私達の師匠で天才音楽家で、この街が音楽の都だった時代を知っている化け物のような人です」

大昔から生き続ける人間……間違いない、ミルヒーとやらはアバターだ!
そうだとしたら何か必殺兵器を持っている……かもしれない。
79 : トム ◆GAazGNP2wQ [sage] : 2012/07/21(土) 03:49:34.73 0
【すみません、一身上の都合でTRPGを断念せざる得なくなりました。
ここで抜けさせていただきます。

トムの懐に持ってた武器と、イトの正体について俺が考えていたやつは避難所に乗せておきますので、後はどうかご自由にお使いください

…こんな形で抜けてしまい、大変申し訳ありません、とてもとても、楽しかったです。】
80 : アイネ ◆AymL.Uu50M [sage] : 2012/07/21(土) 21:48:56.72 0
爆弾の設置後、私たちは避難誘導しながら建物の外へと出た。
直後、派手な地響きと共に街明かりが落ちる。
どうやら爆破は成功したらしい。

>「……はぁ、やってくれちゃったねぇ、悪魔ちゃん」

ジュゼッペの声だ。
声の調子から察するに多少なりともダメージはあったのだろう、落胆の色が伺えた。
塔はいまだ煌々と光を放っているが、非常電源も数日と持たないだろう。
初めての戦果に、私は思わず笑みを浮かべていた。

>「なぁ~んちゃって!びっくりした?ダメージ受けたと思った?ぜ~んぜんだよぜ~んぜん!」

きっと強がりだろう、そうに違いない。
この街の生命線を断ったのだ、ダメージがない訳がない。
これを機に一気呵成に攻め込むべきだろう。
そう思いシャルルに声を掛けようとした、そのとき。
それは、すぐ目の前にいた。

「片翼の、天使…?」

>「……こんにちは、シャムエル。私の名前」

>「……殺しに来ました。貴方達を」

それは無表情のまま長い右腕を一閃させる。
鈍い音を立てて、一人の頭が落ちた。

>『天使とゴミの融合体のプロトタイプ、シャムエル。悪魔ちゃん、君達の相手だよ。
 スペックは並の天使を上回り、ゴミも天使も殺せる。シャムエルは天使のルールにも人間のルールにも縛られない』

要は天使のハーフなのだろうか。
いずれにせよ、目の前に立ち塞がった敵は倒すまでだ。
81 : アイネ ◆AymL.Uu50M [sage] : 2012/07/21(土) 21:49:39.64 0
「行くですよ、シーサーペント!」

水の蛇を生成し、シャムエルへと差し向ける。
しかし、動きが素早く捉えられない。
これでは先にやったような窒息技は無理だろう。
シーサーペントで相手を窒息させるには、少なくとも十数秒その場に留めておく必要があるのだ。

「ならばとっておきを出すまでですよ。フレイムサーペント!」

いつもは使わない別のボトルから生成した蛇に、ライターで火を付ける。
するとそれは一瞬で燃え上がり、激しく焔を上げ始めた。
液体制御の能力は、なにも水だけを操作できるものではない。
液体であればなんでも…そう、例えば液体燃料でも操ることが出来るのだ。
ちなみに手元は水流制御で火が来ないようにしてある。
やけどをせず安全に技を使うことが可能なのである。
生成した炎の蛇は、複雑な軌道を描きながらシャムエルへと襲い掛かる。
少しでも当てることができれば、相手はたちまち炎上するだろう。

>「俺では駄目みたいだ……ミルヒー……ミルヒーさえいれば……!」

>「ミルヒーって!? 【甘美盲目《パイダークネス》】!」

> 「私達の師匠で天才音楽家で、この街が音楽の都だった時代を知っている化け物のような人です」

「なるほど知識人か、これが終わったら是非紹介して欲しいですよ」

この街に詳しい人間であれば、戦略を立てる上でも何らかの役に立つだろう。
とはいえ、まずはこの局面を打破しなくてはならない。
私はフレイムサーペントを操りながら、懐から拳銃を取り出し銃口をシャムエルへと向けた。
82 : エルザ・ガレドルード ◆af328Wa1zg [sage] : 2012/07/25(水) 06:25:15.25 0
施設の爆破は拍子抜けするほど順調に進んだ。見張りを仲間に引き込めたのも大きかった。
かくして電力施設は爆破され、ヴィエナの電力はジュゼッペの本拠地一か所を残し潰えた。
そして本拠地から響くジュゼッペの落胆の声。

>「なぁ~んちゃって!びっくりした?ダメージ受けたと思った?ぜ~んぜんだよぜ~んぜん!」
>「でもまあよくやったよ悪魔ちゃん!ここまでやるとは思っても無かったもん!流石だね!ナガレイシだね!」

しかしそれも一変し急に明るい声色になる。
演技なのか本音なのか判別は難しいが……。ジュゼッペの性格からいって強がりの可能性が高いだろう。

>「だからね、もういいよ。生け捕りと解剖と実験は諦めたよ。
後、電力供給をしてたクズ共も今までご苦労様。ご褒美に『歌わせてあげる』よ」

が、明るかった声色が再び変わった。今まで聞いたことも無いような静かな声。
おそらくこっちがジュゼッペの素なのだろう。

>「安心するのはまだ早いわよ!」

「了解でアリマス!……!?」

シャルル上官の声に応え、銃を構えようとした時だった。
目の前にいるその片翼の天使の存在に何故気付かなかったのか。

>「……こんにちは、シャムエル。私の名前……殺しに来ました。貴方達を」

次の瞬間、異様に長いその右腕が一閃する。止める間など在りはしなかった。
1人の人間の首が跳ね飛び、血飛沫撒き散らしながら倒れる。

>『天使とゴミの融合体のプロトタイプ、シャムエル。悪魔ちゃん、君達の相手だよ。
 スペックは並の天使を上回り、ゴミも天使も殺せる。シャムエルは天使のルールにも人間のルールにも縛られない』
>『じゃあね悪魔ちゃん。生きてたら、また会おう。
 あとクズどもは今までの分、思う存分歌えばいいよ。耳障りな合唱をさ、最後の1人になるまで』

>「……それでは開始しましょう。殺し合いを」

ジュゼッペの言葉が終わるのを待っていたかのように片翼の天使、シャムエルは宣言する。
再び右腕が鞭の様にうねりを上げ横薙ぎに放たれた。
83 : エルザ・ガレドルード ◆af328Wa1zg [sage] : 2012/07/25(水) 06:26:40.11 0
>「【鉄壁防御《ソーカセンベイ》】!」

その放たれた右腕はシャルル上官の巨大な盾(煎餅)によって一瞬阻まれるが即座に砕かれる。
が、その隙のお陰でシャムエルから距離を取れた。自分は後方へ飛び退いて銃を構え発砲を開始する。
しかし、シャムエルはその銃弾を器用に避ける。いや、銃弾を、というよりも自分の手の軌道を見てる?

>「行くですよ、シーサーペント!」

同じくアイネもその隙を突き、先ほどの戦闘でやったように水を蛇の様に操る。
しかしシャムエルの速度についていけていない。先程の相手達とは圧倒的に格が違うという事だろう。

>「ならばとっておきを出すまでですよ。フレイムサーペント!」

そして今度は別のボトルから水の蛇を造りだし、驚く事にそれに火を付けて操り始めた。
本当に応用の効く能力でアリマスね……少し羨ましいでアリマス。
多分あの液体は何かの液体燃料なのだろう。液体操作の能力は伊達じゃない。

>「俺では駄目みたいだ……ミルヒー……ミルヒーさえいれば……!」
>「ミルヒーって!? 【甘美盲目《パイダークネス》】!」
> 「私達の師匠で天才音楽家で、この街が音楽の都だった時代を知っている化け物のような人です」
>「なるほど知識人か、これが終わったら是非紹介して欲しいですよ」

「無事に済んだら、でアリマスけどね」

戦闘をこなしながらの会話は中々難易度が高い。というか、普通の人間では出来ない。
それだけ悪魔側の個々の戦力が高いと言う事だろう。
そしてそれだけ高い戦力を持つ悪魔3人を事も無げに相手にしているこの天使もまた相当の戦力を保持している。

「シャルル上官殿、アイネ!自分が埒を開けるでアリマス!その隙に!」

自分の能力を知っている2人なら理解出来ただろう。
M16をバーストからフルオートに切り替え、シャムエル目掛けて乱射する。
たちまち弾倉が空になるが何も問題ない。弾切れになった瞬間にM16をシャムエルに投げる。
殺傷能力のないただ放り投げられたM16を避けることなくシャムエルは右腕で弾いたがそれが自分の狙いだった。
瞬時に両手にてパンプキンボムを精製し、2個同時に投げつける。銃を弾くのに利用したその右腕は定位置に戻っていない。
これなら空中でパンプキンボムを弾かれる心配も無いだろう。
シャルル上官やアイネの能力の応用性の高さを見ていると、自分ながら相変わらず捻りのない、と思う。
しかしこれはリンネ内の実戦の中で学んだ最初の技、初見の相手ならほぼ確実に視力を奪える自分の十八番だった。

「Blast!」

その言葉と同時に2個のパンプキンボムがシャムエルの前で勢いよく炸裂した。
84 : シャルル ◆Z6yK3vQwuU [sage] : 2012/07/29(日) 09:23:13.03 0
アタシが撃ったパイは、あっさりと弾かれてしまった。
こちらの動作を見て、攻撃の軌道を予測しているらしい。
実戦経験豊富なエルザさんが宣言する。

>「シャルル上官殿、アイネ!自分が埒を開けるでアリマス!その隙に!」

「ええ!」

エルザさんは、M16を放り投げた隙にパンプキンボムを爆発させるという作戦に出た。

>「Blast!」

この作戦は見事成功し、パンプキンボムはシャムエルの目の前で爆発する。
それを見て、アタシは拘束の呪文を唱える。

「弾力拘束《グミロープ》!」

シャムエルにまきつくグミ。
もちろんこのままではすぐに引きちぎられて終わりだが――

「今よ、アイネ!」

この隙にフレイムサ―ペントで襲えばひとたまりも無いだろう。
85 : アイネ ◆AymL.Uu50M [sage] : 2012/07/29(日) 20:58:21.30 0
>「シャルル上官殿、アイネ!自分が埒を開けるでアリマス!その隙に!」

「了解ですよ!」

その隙にと、私は生成した炎の蛇を3体に分裂させる。
今のところ同時に操れる最大数だ。
分裂し同時に襲い掛かる3体の蛇を避けきるのは至難の業だろう。
そうこうしているうちに、エルザが撃ち尽くしたM16をシャムエルに向かって投げつけ…。

>「Blast!」

シャムエルの目前で爆発が起きる。
瞬間的に視界を奪われたところに、さらにシャルルの攻撃。

>「弾力拘束《グミロープ》!」

グミによって拘束されたシャムエル、そこに絶対的な隙が出来る。

>「今よ、アイネ!」

「あいあいさ、とどめですよ!フレイムサーペント!!」

3方向から同時に襲い掛かる炎の蛇。
液体燃料で造られた蛇に触れようものなら、たちまち激しく炎上することになる。
炎の蛇に触れるということは、すなわち液体燃料を浴びて火を付けられる事と等しいからだ。
当たればひとたまりも無い一撃。避けきることは不可能なはずだ。
86 : シャルル ◆Z6yK3vQwuU [sage] : 2012/08/05(日) 22:50:41.04 0
>「あいあいさ、とどめですよ!フレイムサーペント!!」

アイネの必殺技が見事に炸裂した。
炎の蛇がシャムエルに触れた瞬間引火し、燃え上がる。

「終わった……わね」

哀れな少女の最期を見届け冥福を祈ろうとしたその時だった。

「ジュゼッペ様……万、歳……」

灼熱の炎に焼かれながら、シャムエルは左手を高々と掲げる。
死ぬなら悪魔を道連れに――最終奥義の予備動作。
純白の光が集まっていく。今までに何度か見た事があるので分かった。

「まずい、セレスティアルスターだわ!」

それは天使の必殺技。
天から無数の光の柱が降り注ぎ、神に反逆する悪しき者を焼き払う捌きの光だ。
87 : アイネ ◇AymL.Uu50M [sage] : 2012/08/08(水) 22:50:39.71 0
見事炎の蛇は命中し、シャムエルに引火し燃え上がる。
一本の火柱となった彼女を見つめ、ほっとため息をつき炎の蛇を回収する。
この戦いで燃料を使い過ぎてしまった。
絶えず燃焼する炎の蛇は、形を維持するだけで燃料を消費してしまう。
もう一度フレイムサーペントを使うには、どこかで燃料を補給しなければならないだろう。

>「終わった……わね」

「ええ、なんとか…疲れたですよ」

そう言葉を返し、もう一度シャムエルのほうへ向き直る。
と、その時違和感を感じた。

>「ジュゼッペ様……万、歳……」

そう言いながら左手を高々と上げるシャムエル。
あれは…何か技を使おうとしている!?
掲げた手のひらに、白い光が集まっていく。

>「まずい、セレスティアルスターだわ!」

「あれがセレスティアルスター!?」

上級天使の必殺技だ、その威力は強力無比だと聞く。
私はすぐにシャルルの傍へ駆け寄り、ボトルからありったけの水を取り出す。

「シャルル、防御体制を!私一人では耐えられないですよ」

そう叫びながら、噴水のように水を制御し、頭上に水の壁を生成する。
水の壁は衝撃に強く、物理攻撃に弱い。
攻撃が光の属性であるならかなりの割合で減衰できるはずだ。
いまだ炎上するシャムエルから光の柱が立ち上る。
次の瞬間、無数の光が雨のように降り注いだ。
88 : シャルル ◆Z6yK3vQwuU [sage] : 2012/08/11(土) 06:52:07.28 0
アタシは発電所から出て来た一般人達に声をかけた。

「早く! アイネの周りに集まって!!」

>「シャルル、防御体制を!私一人では耐えられないですよ」

「ええ、分かってる! 水膜防御《スターチシロップ》!」

本来は水飴を体に纏う事により炎系の攻撃を防ぐ防御魔法。
全身がべたべたになるのが難点だ。
しかし今回はアイネの水の壁を水飴でコーティングして補強、二重にする。

そして、セレスティアルスターが降り注ぐ。
裁きの光は当たった部分を蒸発させて穴を穿っていく。

「お願い、持ちこたえて――!」

光がひとしきり雨のように降り注いだ後。

「終わった……?」

「とどめが来るよ!! 端に寄って!!」

人々が蜘蛛の子を散らすように壁際に寄った瞬間、特大の光柱が地面に突きたつ――!
地面に穴が開き、カラメルのような香ばしい香りが漂う。
暫しの沈黙が場を支配した後。

「助かった……のか!?」
「やった……もう発電所で働かなくていいんだ!」

人々は発電所から解放された歓喜につつまれる。
そこで、先程の元見張りの女性が声を上げる。

「まだですよ。まだジュゼッペのアンポンタンに鉄拳制裁をしてません!
デビチルさん達、わたしたちのカタコンベに一緒に来てください!」

カタコンベへのお誘いがかかった。
行ってミルヒーとやらに紹介してもらうとしよう。
89 : アイネ ◇AymL.Uu50M [sage] : 2012/08/14(火) 21:47:02.10 0
頭上に傘のように広げた水の防御膜、それをシャルルの放った水飴がコーティングしていく。
水飴ならばこちらでも操作が可能だ。
こちらからも操作を行い、より防御に適した形へと整形していく。
そこへ降り注ぐ光の柱。二重となった防御膜で受け止めていく。
光の当たった箇所が蒸発し消えていく。
それを一瞬で補強し、次の攻撃に備える…その繰り返し。

>「とどめが来るよ!! 端に寄って!!」

その声と共に防御を解除、壁際へと走る。
直後、巨大な光の柱が地面へ突き立ち、大地をえぐる。

「ふぅ、なんとかこらえきれたですよ」

あたりの歓声に混じり、ぽつりと感想を漏らす。
ひとまず敵を撃退することに成功した。
これほどの強さの手駒を出してくることは、相手もそうやすやすとはできまい。
しばらくは安心して良いだろう。
そのとき、見張りをしていた女性が声を上げる。

>「まだですよ。まだジュゼッペのアンポンタンに鉄拳制裁をしてません!
デビチルさん達、わたしたちのカタコンベに一緒に来てください!」

「もちろん行くですよ。さっき言っていたミルヒーという者も紹介して欲しいしですよ」

かくして、私たちは地下にあるというカタコンベへと案内される運びとなった。
迷路のような路地裏を抜け、地下へと続くはしごを下ってゆく。
それから3層ほども下っただろうか。
こちらです、との声を受け開かれた扉の先は広い空間だった。
あたりには椅子が並び、正面の舞台にはピアノが設置されている。
そこは、小さいながらも立派なコンサートホールだった。

「ミルヒーにお会いしたいのでしたね、こちらでお待ち下さい」

そう言われ、ホールの椅子へと座り待つ事となった。
なぜか舞台の幕が下り、そのまま暫し待たされる。
数分後、小さなブザーの音と共に、舞台の幕が上がった。
舞台の上には楽器を持った演奏者たち。
そして、低いピアノの旋律と共に、その演奏会は始まった。
90 : シャルル ◆Z6yK3vQwuU [sage] : 2012/08/16(木) 23:06:46.23 0
私達は、グミさん達によってカタコンベに案内された。
そこはコンサートホールのような場所。

>「ミルヒーにお会いしたいのでしたね、こちらでお待ち下さい」

言われるままに待っていると、何故か演奏会が始まった。
ピアノから始まり、オーボエ、弦楽四重と旋律が幾重にも重なっていく。
優しく、心が洗われるようなメロディがホールに響き渡る。
演奏が終わった時アタシは立ち上がって拍手していた。
指揮者の男性が演台から降りてくる。

「デビチルちゃ~ん! よくぞキテクレマシター!!
何年待ち続けた事デショ~ウ!」

「あ、どうも……よろしくお願いします! あなたがミルヒー……ですね」

たじろぎながらも握手をする。
かなりの年輩に見えるが、白い髪をおかっぱ位の長さまで伸ばし、やたらとハイテンションだ。

「今の曲は悪魔よ人の望みの喜びよ……人類の希望のために戦うデビチルへ捧げる曲デース」

「不思議……魔力が回復したような気がするわ!」

「ふふふ、気付きマシタカ? デビチルも天使もその本質はプログラム、音楽とは音の高低。
モールス信号って知ってマスヨネ? その応用ナノデース!
私は長年研究に研究を重ねプログラムにプログラムに信号を送り影響を及ぼせるような音楽を開発したのデス!」

「すごいじゃない……! あなた達がジュゼッペ討伐について来てくれれば楽勝ね!」

「それが、そう簡単ではないのデース。
このホールは演奏が最大限の効果を発揮するように作ってアリマース。
どこでも芳しい効果を発揮できるわけではないのデス」

「それじゃあ…ジュゼッペ達をここにおびき寄せるってこと?
でもアイツ……ちょっとやそっとじゃ来そうにないわよ?」

こうして作戦会議が始まった。
91 : アイネ ◇AymL.Uu50M [sage] : 2012/08/22(水) 07:32:20.53 0
演奏は素晴らしいものだった。
いくつもの旋律が響き合い、重なり合い、ホールを満たしてゆく。
目を閉じればそこに高原の花畑が広がる。そんな演奏だった。
やがて演奏は終わり、私は惜しみない賛辞を込めて拍手をする。
すると舞台から、指揮台に立っていた男が降りて近づいてきた。
白い髪、かなりの年配に見えるが、瞳だけはまるで少年のように生き生きとしている。

>「デビチルちゃ~ん! よくぞキテクレマシター!!
何年待ち続けた事デショ~ウ!」

どうやらこの老人が話に上がっていたミルヒーという人物らしい。
彼の話によると、音楽をプログラムとして天使に影響を及ぼす事が可能らしい。
その話が本当なら、戦力としてかなり期待できる。

>「それが、そう簡単ではないのデース。
このホールは演奏が最大限の効果を発揮するように作ってアリマース。
どこでも芳しい効果を発揮できるわけではないのデス」

>「それじゃあ…ジュゼッペ達をここにおびき寄せるってこと?
でもアイツ……ちょっとやそっとじゃ来そうにないわよ?」

「奴をこの地下施設までおびき出すのはまず不可能ですよ。
地上でも同じような効果が期待できるような場所…
野外コンサートホールのような場所はないのかですよ」

「それならば丁度いい野外ステージがアリマース。
そこなら十分な効果が期待できるのデス」

「よし、ではそこにジュゼッペをおびき出すですよ
そうだ、猫バスの拡声器を使えば効果も増強できるのではないのかですよ」

「あとはおびき寄せ方だけですよ。
下手に策を弄するよりも、真っ向から挑発したほうが効果があるように思えるのだけどどうですよ?」

私たちは話し合い意見を出し合う。
こうしている間にも、ジュゼッペは私たちを血眼になって探しているだろう。
あまり作戦に時間は掛けられない。
92 : シャルル ◆Z6yK3vQwuU [sage] : 2012/08/23(木) 04:28:58.78 0
野外ステージにジュゼッペをおびき寄せる事になった。

>「あとはおびき寄せ方だけですよ。
下手に策を弄するよりも、真っ向から挑発したほうが効果があるように思えるのだけどどうですよ?」

「そうね……最初の時みたいに猫バスで挑発しましょうか。
問題は――この人数で地上まで行ってたら絶対途中で攻撃されるわね」

「それならば大丈夫デース、こちらにドウゾ。
昔使われていた設備みたいデース」

隣の小部屋に案内された。
ミルヒーがスイッチを押すと、がくんっ、という振動があり、上昇する感覚――
やがて天井が開き、空き地のような場所に出た。
なるほど、確かに一段あがっていて後ろに壁があり、野外ステージ跡に見えなくもない。
取り壊されずに放置されていたのは、いい感じに朽ち果てているのが幸いしたのだろう。

「アタシ達が来たのを知ってた、という事は外の声は聴く手段はあるのよね
猫バスの放送が聞こえたら演奏隊をこっちに連れて来て頂戴」

「合点デース」

「さあ――こちらです」

アタシ達は、イトさんの案内で安全なルートを辿り猫バスへと走る。
93 : アイネ ◇AymL.Uu50M [sage] : 2012/08/26(日) 11:40:02.05 0
私たちは猫バスに戻るべく、イトの案内で再び地下水道を駆けていた。
それにしても、と私は思う。
あの半人半天使の少女には酷いことをしてしまった。
もし私たちにその意思があれば、互いに血を流すことなく解決できたのではないか。
話し合いで解決できたのではないか…そう思ってしまうのだ。
今もそうだ。私たちは、敵の首領を倒すべく行動している。
出来ることなら、互いに血を見る戦いはしたくない。そう思う。
私がそう考えるのは今に始まったことではない。
かつてリンネにいた頃…そう、トライブ狩りとして活動していた頃からだ。
かつての仲間たちが怪物と変化して暴れてしまっている。
それを解決するためには、殺してあげるしか方法は無かった。
殺さずに済むならそうしてあげたい…。
そんな風に思うのも、私の能力が戦闘向けではないからだろう。
私のこの能力は、本来は後方支援や医療班として活動するのに適している。
前線で戦わないからこその甘ったれたぬるい思想、そう思われても仕方のない発想だ。
でも、だからこそ。
シャムエルと対峙した際に、殺したくないと思ってしまった。
その甘い考えは、いつか私を殺すだろう。
生き抜くためには、この戦いを終わらせるためには、私はもっと心を強く持たなければならない。

そうこう考えながら走っているうちに、私たちは猫バスへ到着した。
猫バスへ乗り込んだ私たちは、最後の戦いに向けて装備を点検、補充する。
そう、これが最後の戦いだ。
気を引き締めて挑まなければならない。

「では、これが最終決戦ですよ。行くですよ」

「お願いします、どうか私たちを救ってください」

イトさんの懇願に、私たちは強く頷き返す。
そして、猫バスは唸りを上げて発進した。
94 : シャルル ◆Z6yK3vQwuU [sage] : 2012/08/28(火) 01:51:30.64 0
何やら色々と思いを巡らせている様子のアイネに、アタシは言う。

「アタシ達の目的は《ホスト》を倒すか寝返らせること。
そうすれば犠牲者がこれ以上増える事はなくなるわ。
頑張りましょう!」

>「では、これが最終決戦ですよ。行くですよ」

>「お願いします、どうか私たちを救ってください」

イトさんのその真剣な眼差しは、どう見ても本心からの物に見えた。
よもや向こうの手の内の者のは見えなかった。
アタシは拡声器をひっつかんで叫んだ。

「ジュゼッペ!! どうせあと数日もすれば電気が切れて真っ暗。
そうなればあなた達に勝ち目はないわ!
でも心優しいアタシ達が勝機をあげる。正々堂々空き地で決闘よっ!!
観念して出てきなさーい!!」

「本当にこんなので出てくるんでしょうか……」

シュガーちゃんがポソッと呟くのが聞こえた。

「正直自信はないけど出て来てくれなきゃ困るっ……!」

野外ステージに付くと、演奏隊はすでに準備を整えていた。
息を呑んで塔の方を見つめ、相手の反応を待つ。
95 : アイネ ◇AymL.Uu50M [sage] : 2012/09/02(日) 22:09:33.65 0
>「ジュゼッペ!! どうせあと数日もすれば電気が切れて真っ暗。
そうなればあなた達に勝ち目はないわ!
でも心優しいアタシ達が勝機をあげる。正々堂々空き地で決闘よっ!!
観念して出てきなさーい!!」

街中にシャルルの声がキンキンと響く。
これほどの大音量だ、ジュゼッペが聞き逃すはずもない。
私たちは、臨戦態勢を保ったまま返事を待つ。
暫しの沈黙。
未だ返事はない。
思わず私はシャルルに声を掛けようとした、そのときだった。

「やぁ悪魔ちゃん達、その心意気には実に感謝するよ!
お礼にボクの作った最高傑作でなぶり殺しにしてあげる。
本当の恐怖をじっくり味わうといいよ」

辺りにジュゼッペの声が響く。
そして、ずんずんと言う足音、にしては大きすぎる物音。
その正体はすぐに分かった。

「これがボクの最高傑作だ、しっかり味わってね悪魔ちゃん」

声は、その獅子を模した頭部から響いていた。
獅子、そう、獅子だ。
ジュゼッペは果たして、獅子を象った巨大ロボットに搭乗していた。
しかも、現れたのはそれだけではなかった。
上空から轟音が響いたと思ったら、空には怪鳥の姿があった。
搭乗しているのは副官のオトマールだ、ぐるぐると旋回している。
さらに、獅子の後ろから二体のロボットが現れる。
一体はゴリラのようだ、そしてもう一体はワニのような姿をしている。

「驚いたろう、だがまだこれだけじゃない。合体!ビッグジュゼッペ!!」
96 : シャルル ◆Z6yK3vQwuU [sage] : 2012/09/04(火) 01:06:06.92 0
>「やぁ悪魔ちゃん達、その心意気には実に感謝するよ!
お礼にボクの作った最高傑作でなぶり殺しにしてあげる。
本当の恐怖をじっくり味わうといいよ」

永遠のような数秒の時が流れた後、ジュゼッペが動いた。
獅子を象った巨大ロボに登場し、彼女は姿を現す。

>「これがボクの最高傑作だ、しっかり味わってね悪魔ちゃん」

それと同時に、ライオンロボのスピーカーから変な歌が流れ始めた。

『こんにちは(こんにち鷲)おかえりんこ(おかえりんゴリラ)
こんばんは(こんばんワニ)さようなら(サヨウナラ)
魔法の言葉で……』

「リンネにいた頃普通のCMが流れなくなった時に流れまくった洗脳ソングじゃない……!
何か一か所無理のある改変がされてるけど!」

>「驚いたろう、だがまだこれだけじゃない。合体!ビッグジュゼッペ!!」

「まさか……」

そのまさかだった。唖然とするアタシ達の前で4体の巨大ロボが合体する!
97 : シャルル ◆Z6yK3vQwuU [sage] : 2012/09/04(火) 01:07:29.68 0
「「「「攻強皇國機甲(こうきょうこうこくきこう)ビッグジュゼッペ 爆 誕 !!」」」」

トンデモないものが爆誕してしまった!
アタシは超展開に少々気圧されながらも、猫バス変形のスイッチを押す。

「アイネ、こっちも巨大ロボットで対抗するわよ! ビッグキャット変形!!」

猫バスが二足歩行の戦闘形態へと変形。
次の瞬間、アタシ達は二人並んで操縦席のような場所に座っていた。

「いっけぇえええええ!! 決戦兵器ビッグキャット!! 百烈猫パンチ!!」

二体の巨大ロボがぶつかりあい、互角の戦いを繰り広げる。
ちなみにビッグキャットの操縦は、精神感応型になっていて
水晶玉のようなものに手をかざして念じる事で行うようになっている。
ビッグジュゼッペから、再び歌が流れ始めた。

「今唱える挨拶の魔法 こんにちはありがとうこんばんわさよなら
たび重なる大災害で傷ついた世界を救えぽぽぽーん!!
西暦XXXX年世界は混乱の渦中輝かしい未来へと導くべく
技術者たちが立ち上がったグレートさよなライオン
世界を救うためAC! 世界に巣食う悪と熱い激闘繰り広げる
ハイパーさよなライオン 楽しい仲間達AC!
あいさつをするたびにほら 友達が増えるね ぽぽぽぽーん!!」

遥か古のゼウスの創造の時の事を歌った歌なのだろうか。
度重なる大災害に見舞われ人心が荒んだ世界をどうにかして救おうと思ってゼウスは作られたのだろうか……。
ここでいう”挨拶”とはよく言えば布教悪く言えば洗脳の類のもので
友達が増えるとはゼウスに帰依する者が増えるという事なのかもしれない。
そんな事を思っていると突然、ビッグキャットの操縦が効かなくなった。
ふらふらと相手の巨大ロボに近づいていく。

「もしかして、あの合体ロボに取り込まれそうになってる……!?」

念じても祈っても一向に反応してくれないビッグキャット。
頼みの綱はミルヒー率いる演奏部隊しかない。準備はまだ整わないのだろうか。

「お願い早く……!」
98 : シャルル ◆Z6yK3vQwuU [sage] : 2012/09/04(火) 01:35:01.64 0
【何故か避難所が書けない・・・。
すぐに書けるようになるとは思いますが一応避難所用の文をこっちに投下しておきます。スレ汚し申し訳ありません。】

ごめんなさい、合体ロボでワニとライオンがいたらもうあれしか思いつきませんでした。
演奏隊に適当に何でもいいから演奏させてやればとりあえず猫ちゃん我に返ると思います。
実はビッグキャットはあの合体ロボの5体目として作られた物だったりしてとか色々妄想が広がります。
最終的には合体ロボ達を手に入れてもいいかもw

元ネタは分からなくても全く支障はないと思いますが
一応ここに載せておきますのでもしも気になったらどうぞ。
http://www58.atwiki.jp/fortestaccato/pages/20.html

参考までにビッグキャットについて
・ビッグキャットは乗り込んだデビルチルドレンの能力を使う事が出来る

操縦描写があるところを前スレより抜粋↓
我に返り、目の前の大きいボタンを押す。
ベルトのようなものが出てきて体が何か所か固定され、画面に大きくBATTLE MODOという文字が出た!
今までは回避専念モードだったのか!?
操縦桿は無い、その代わりに、水晶玉のような球体が出て来た。

『精神感応式操縦になってます。その玉に触れて念じたらその通りに動きます!
もちろんデビチルの特殊能力も反映されますよ!』

精神感応型操縦……昔ながらの操縦桿式のようにややこしい操作は必要なく
モーションキャプチャー式のように操縦者の運動能力が足を引っ張る事もなく
思った通りに即動く最も簡単で優れた操縦方式……と見せかけて、この操縦方式には別の難しさがある。
思った事がそのまま反映されてしまうので、間違って雑念が入るとその通りに動いてしまう。
更に、今みたいに2人乗りだったりすると本当に息がぴったり合っていないとタコ踊りなんて事になりかねない。
99 : アイネ ◇AymL.Uu50M [sage] : 2012/09/12(水) 02:37:29.71 0
>「「「「攻強皇國機甲(こうきょうこうこくきこう)ビッグジュゼッペ 爆 誕 !!」」」」

驚いたことに、本当に合体ロボットだった。
だが驚くべきはまだこれからだ。

>「アイネ、こっちも巨大ロボットで対抗するわよ! ビッグキャット変形!!」

搭乗していた猫バスが変形を始める。
二足歩行の戦闘形態になり、それにあわせて操縦席も変化する。
目の前には精神感応型の水晶玉の操縦桿。
幸いリンネで一度そのような操縦形態の乗り物に乗ったことがあるため、何とかなりそうだ。
そして、二対の巨大ロボは激しくぶつかり合う。
パワーでは互角といったところか。
だが、そのときビッグジュゼッペから、不思議な歌が流れ始めた。

>「今唱える挨拶の魔法 こんにちはありがとうこんばんわさよなら
たび重なる大災害で傷ついた世界を救えぽぽぽーん!!
西暦XXXX年世界は混乱の渦中輝かしい未来へと導くべく
技術者たちが立ち上がったグレートさよなライオン
世界を救うためAC! 世界に巣食う悪と熱い激闘繰り広げる
ハイパーさよなライオン 楽しい仲間達AC!
あいさつをするたびにほら 友達が増えるね ぽぽぽぽーん!!」

歌詞の意味は不明だが、ここで歌を流す理由が何かあるはずだ。
そう身構えたとき、操作もしていないのにビッグキャットが動き出した。
まるで吸い込まれるように、相手のビッグジュゼッペへと近づいていく。

>「もしかして、あの合体ロボに取り込まれそうになってる……!?」

「おそらく歌の波動で操縦を妨害してるですよ。このままだと危ないですよ」

まるで近づくビッグキャットを受け止めるかのごとく、相手のライオンの口が大きく開いていく。
あと一歩で接触すると思われた、そのとき。
正面の演奏舞台から、その声は響いた。

「それではこれから演奏会を始めマース」

声の主はミルヒーだ。
彼の振るう指揮棒に合わせて、まるで小川から水が溢れ出すように演奏が流れる。
音楽の効果があったのか、操縦が戻った。
すばやく後ろにジャンプして距離をとる。ここからは反撃の時間だ。
私はあらかじめ目星を付けていた場所へ近づくと、おもむろに床を踏み抜いた。
狙いは正確、踏み抜いた箇所から噴水のごとく水が吹き上がる。
埋設されていた水道管を破壊したのだ。これだけ水があれば、思うままに能力が使える。
私はビッグキャットの腕に水を纏わせると、相手の巨大ロボへと向き直った。
100 : シャルル ◆Z6yK3vQwuU [sage] : 2012/09/16(日) 03:02:47.31 0
ミルヒー達が演奏しているのは、水の戯れ――
それによってアイネの能力が強化されているようだ。

「ハイドロ猫ぱーんち!!」

アタシの叫ぶ頭の悪そうな技名と共に、鋼鉄をも穿つ高圧水流のパンチを放つ!!
ビッグジュゼッペはド派手に吹っ飛ばされて、後ろの建物にめり込んだ。

「さぁ、降伏しなさい!!」

アタシは降伏を求める。が、それ程簡単に応じる訳はなかった。

「挨拶するたびに仲間が増える……!
ビッグキャット、こっちに来い……!」

答えたのは、ビッグキャットの肩の上に乗ったシュガーちゃん。

「お姉ちゃん、猫は自由を愛する個人主義の動物だ。
元々ゼウスのために戦う合体ロボには馴染まなかったんだ……」

「シュガー! お前が出て行ったばかりにボクは……絶対に許さない!!
でも……今からでも帰ってくるなら許してやる!」

「ごめん、それは出来ない……」

シュガーちゃんがモニターに移り、自らの過去を語る。

「ボクとジュゼッペ姉さんは、この街を二人一組で支配する双子の長として作られた。
でも、ボクはゼウスの支配に疑問を持ってしまった。きっと失敗作だったんだ。
そして、同じようにゼウスの支配に疑問を持ったビッグキャットと共に脱走した……」

そして、ジュゼッペに語りかける。

「姉さん、姉さんだって好き放題してもうゼウスの忠実な手駒とはいいがたいじゃないか!!
もういい加減自由になろう!?」

その言葉を聞いてか聞かずか、ビッグジュゼッペはふらふらしながらも立ち上がり、塔に向かって突進し始めた。

「ちくしょおおおおおお!! こうなったら……全て吹っ飛ばしてやる!!」

「何を……!?」

モニターにイトさんが移り、衝撃の事実を告げる。

「急いで止めてください!! あの塔はこの街の本拠地にして――自爆装置!!
塔が壊れた瞬間、この街は消し飛びます!」
101 : アイネ ◇AymL.Uu50M [sage] : 2012/09/19(水) 07:19:32.46 0
シュガーの口から、衝撃の過去が明かされる。
彼女はジュゼッペの双子の姉妹だったのだ。

>「姉さん、姉さんだって好き放題してもうゼウスの忠実な手駒とはいいがたいじゃないか!!
もういい加減自由になろう!?」

しかし、彼女の言葉は届かない。

>「ちくしょおおおおおお!! こうなったら……全て吹っ飛ばしてやる!!」

>「急いで止めてください!! あの塔はこの街の本拠地にして――自爆装置!!
塔が壊れた瞬間、この街は消し飛びます!」

塔に向かって走るビッグジュゼッペ、あれは自爆しようとしている!

「シャルル!水あめを出せるかですよ?」

私はシャルルにそう問いかける。
残された時間でできることはこの方法しかない。
ぶっつけ本番だが、この際仔細は言ってられない!

「合体技!水あめバインド!!」

シャルルが生み出した水あめを私が操作する合体技だ。
ねばつく水あめはまるで生き物のようにビッグジュゼッペを絡めとる。
もがけばもがくほどに水あめは絡まり、徐々に動きを封じていく。
やがて完全に動きを封じられたビッグジュゼッペは、その場に力なく座り込んだ。

「さぁお姉ちゃん、この街を開放してあげよう?」

シュガーが優しい声で、そう問いかける。
するとコックピットが開き、中から一人の天使…ジュゼッペが出てきた。

「わかった、ボクの負けだよ。この街を開放しよう」

途端、周囲から歓声が湧き上がる。
この街の人々だ、どうやら物陰に隠れて私たちの戦闘を見守っていたらしい。

「これで一件落着ですよ、シャルル」

私たちはコックピットでハイタッチを交わす。
これでこの街も救われた。皆に安寧な日々が戻ったのだ。
私はボトルの水を一気に煽ると、暖かい日差しに手をかざした。
102 : シャルル ◆Z6yK3vQwuU [sage] : 2012/09/19(水) 22:34:15.63 0
>「シャルル!水あめを出せるかですよ?」

「出すっきゃないでしょ出すっきゃ! ――《粘着拘束》スターチシロップ!」

大量の水飴を作り出すと、その水飴をアイネがすかさず操作する!

「「合体技!水あめバインド!!」」

そして目出度く合体ロボの水飴簀巻きが完成し――

>「さぁお姉ちゃん、この街を開放してあげよう?」
>「わかった、ボクの負けだよ。この街を開放しよう」

一瞬にして祝賀モードに突入するヴィエナの街。
アイネとハイタッチを交わし微笑み合う。

>「これで一件落着ですよ、シャルル」
「ええ、やったわ!」

その時、合体ロボからもう一人、フラフラと包帯まみれの女性が出て来た。
あれ? 何か忘れてない? そう、ホストは表向きのリーダーとは別――!
一瞬戦慄が走ったが……包帯の女性は意外な言葉を発した。

「ありがとうございます、これでもうジュゼッペ様の実験台にならなくていいのですね――」

この街のホスト天使はとうに、ジュゼッペの度重なる実験で壊れていたのだった。
そういえばこの街の天使は皆ジュゼッペの改造を受けていた――。
ホストは機能しておらず、ずっと前からヴィエナは名実ともにジュゼッペの支配の下に動いていたのだ。

「フフフ、フフ、ハハハハハハ!」

負けたというのに、ジュゼッペは面白くて仕方がないという風に笑い出した。

「やっぱり面白いよ悪魔ちゃん! このボクを負かすなんてね!
こうなったらもうゼウスをぶっ倒してみてよ! 悪魔に負ける神なんて最高に面っ白いじゃ~ん!」

「ええ、アンタに言われなくてもそのつもりよ!」

不敵に笑ってみせながら、アタシは確信した。ゼウスは、確実に壊れ始めている――!
急がなければ。このままでは心の自由どころか、人々の命すら、危ない!
103 : キラー ◇k2hGkgyEGM [sage] : 2012/09/20(木) 22:04:33.23 0
【猫バス内】
その中で、しきりに自分の機械の手を眺めている紫色の髪をした凄く怪しい子供とは思えない見た目をした男がいた

「…チッ、…」

小さく舌打ちすると傍にある茶色い手袋をはめる

「…異常なし…よし…」

手を握ったり開いたりして確認する

「……さて、他の人が来るのを待つか…フフフ」

気味の悪い笑みを浮かべて、猫バスに座る
104 : アイネ ◇AymL.Uu50M [sage] : 2012/09/21(金) 22:40:50.01 0
ヴィエナの街はすっかり祝賀ムードだった。
ミルヒーらは開放記念の音楽祭を執り行うと言い、その準備に奔走している。
私たちはと言うと、早速開かれた祝賀会の席についていた。
ずっと天使に抑圧されていたにも関わらず、豪華な料理や酒が並ぶ。
どうやらこの街の人間たちは、思ったより強かに生きていたらしい。

「それでは、悪魔たちとヴィエナの開放を祝して、乾杯!」

「「「かんぱーい!」」」

イトさんが音頭を取り、祝賀会がスタートする。
煌びやかなムードの中、私たちは街の今後について語り合っていた。
この街の天使たちは全員、機械によってジュゼッペに支配されている。
しかし、ジュゼッペはその装置を破壊し、全員を解放することを約束したそうだ。
そして天使たちの力で発電所をはじめ街を復興していくとのこと。
少し時間はかかるが、この街もやがては本来の賑わいを取り戻していくのだろう。
私はジュースを片手にそんな話を聴きながら、元の姿を取り戻したヴィエナへ思いを馳せた。
ちなみに私以外の全員には酒が振舞われている。不公平なことこの上ない。
まぁ、外見からしてちびっ子なので仕方のないことだが。

さて、本来ならこの街にしばらく逗留していきたいところだが、そうも言っていられない。
まだ開放されてないほかの街で、私たちを待つ人々がいるのだ。
それに、この街を見て分かるとおり、ゼウスの支配は完璧ではない。
早くしなければ、また多くの犠牲が出てしまう。
この街に留まるのは今夜限りにして、明日には出発したほうがよいだろう。
そこまで考えたところで、私は一旦宴の席を立つことにした。
理由は大したことではない、急にいつものお茶が欲しくなったのだ。
私が水を操る能力者のためか、私の体は人より多くの水を必要とする。
ジュースでも別に構わないのだが、やはり水分補給は水かお茶に限る。
宴の席でお茶を所望するのも気が引けるので、自分で取りに行くことにしたのだ。
シャルルに一声かけてすばやく席を立ち、猫バスへと向かう。

「さてさてお茶はっと…ん、誰かいるですよ?」

猫バスに入り冷蔵庫を物色していた所で、気が付いて奥へと声をかける。
その気配は人間のものではない。
声に応じて出てきたのは、紫色の男だった。
髪から来ているスーツまで紫色。手には茶色の手袋をつけている。
怪しげな気配はぷんぷんしているが、どうやら敵ではないらしい。
おそらくはここに転送されてきた新しいデビチルだろう。そう当たりをつけて声をかける。

「はじめまして、私はアイネと申すデビチルですよ。あなたは?」

そう言って、私は右手を差し出した。
105 : シャルル ◆Z6yK3vQwuU [sage] : 2012/09/24(月) 00:08:29.64 0
一回負けを認めてしまえば案外素直なもので、ジュゼッペはシュガーちゃんと再会を喜び合っている。

「そうだ――この合体ロボは君達にあげよう」
「どうやって持って行くのよそんなもん」
「心配ご無用、元々この子達のセットの一つだったビッグキャットが呼べば飛んでいくはずだ」
「ふーん、便利なのね」

そんなこんなで――

「「「かんぱーい!」」」

イトさんの音頭取りで、盛大な祝賀会が始まった。
そういえば、この人の正体って結局なんだったのだろう。
最後まで裏切らずに助けてくれたのだから、敵ではなかったのは確かなはずだ。

「……ま、いっか!」

スパークリングワインを一口飲む。
見れば、アイネがジュースを片手に少し不満げな顔をしている。

「まあまあ、そんな顔しないで。ほら、アタシの飲む?」

リンネにいた時代なら生徒に酒を勧める不良教師になってしまうが、今更そんな事を気にするものでもない。
なんてったって厳密な事を言ってしまえば、この現実世界ではアタシ達は全員0歳児なのだ。
でも水使いのアイネはやはり水が一番らしく、猫バスへと水を取りに向かうのであった。
一人になったアタシのところにイトさんがゆっくり歩いてくる。

「イトさん……色々ありがとう、本当に助かったわ」

「いえ、お礼を言わなければいけないのはこちらの方です。ジュゼッペを倒してくれて……
また、どこかでお会いする事があるかもしれませんね。それでは」

「え、あ、ちょっと……。もう行っちゃうの?」

「ええ、ここのように壊れた天使に苦しめられている街がきっと他にもたくさんある……」

「じゃあ、一緒にいかない?」

「お誘い有難いのですがそれはできません。でも、また、お会いする事があるかもしれませんね」

そう言って微笑むと、イトさんは外に出ていく。

「ちょっと待って!」

急いで外に出て辺りを見回すも――イトさんの姿はすでに跡形もなく消えていたのであった。
106 : キラー ◇k2hGkgyEGM [sage] : 2012/09/24(月) 00:09:53.11 0
>「さてさてお茶はっと…ん、誰かいるですよ?」

自分のことかと気づいてその不気味な男は顔を上げた

「…」

ジッと何故か手を見てる

>「はじめまして、私はアイネと申すデビチルですよ。あなたは?」

「…私はキラー・ヨカゲシ、同じくデビチルです」

と、普通の自己紹介を行った後、右手を両手で握り締める

「…ハァ、ハァ」

なんだか息が荒くなっていく

「すみません、貴方の右手…とても美しいです…」

と、言ってると目が危険な色を宿してくる

「貴方の手…舐めても良いですか?」
107 : アイネ ◇AymL.Uu50M [sage] : 2012/09/25(火) 01:04:32.06 0
握手を求めて差し出した右手は、キラーと名乗る男によってがっちりホールドされた。
しかもキラーの息がハァハァと荒くなっている!
これは危険だ、今すぐ腕を振り切って逃げるべきだと頭のどこかで警鐘が鳴る。

>「すみません、貴方の右手…とても美しいです…」

変な発言に引き続き、とうとう目の色まで怪しくなってきた。
軽く振り切ろうと試みるも、ホールドされた手はまるで機械の腕に捕まれたように動かない。
やばい、この人本物だ。
あとはもう能力を使って強引に引き剥がすしかない。
そう思って自由な左手で腰のボトルのキャップを開けたとき

>「貴方の手…舐めても良いですか?」

思わぬ発言に、思わず動作が止まる。
手を…舐める?何を言ってるんだろう、この人は。
手フェチ…なのだろうか?それで手を舐めるのを求めているとか。
考えても仕方ない。この場で取れる最善の策は何か、それだけを考える。
最も穏便に、速やかにこの状況を解決する方法とは…。

「い、いいですよ。少しくらいなら、舐めても」

断ったら何されるか分からない。そう考えての判断だった。
キラーは怪しげな目の色はそのままに、薄く笑みを浮かべて私の手を口元に近づける。
次の瞬間、べろりと未知の感覚が右手の甲を襲った。
手の甲を舌が這い回り、ぬめりと生温かい感触を残していく。

「はいそこまで!もう十分だろですよ」

我慢できるのはここまでが限界だった。
思わず強引に振り切り、二三歩距離を開ける。
ボトルの水を展開し、大急ぎで右手の甲を洗った。

「それがあなた…キラーの『衝動』なのかですよ?」

落ち着いたところで、そう問う。
デビチルというものは、何らかの抑えられない衝動を持つものだ。
かくいう私も、水分補給を欠かせないと言う衝動を持つ。
初対面の人物にいきなり手を舐めさせろと言う背景には、そのくらいしか思い当たらなかった。

「そんなことより、今外でデビチルの祝勝会をやっているですよ。
ぜひ、一緒に行ってみないかですよ」
108 : ノビ ◇g3t.dBpmII [sage] : 2012/09/25(火) 22:12:23.84 0
私は目が覚めました。そこは知らない場所でした。
でも、のちのち知ることとなりました。
そこがリンネではないということにでした。

「ほぉえぇー………ねぇむぅいぃよぉ…」
109 : アリア ◆MrCU99fX9rYk [sage] : 2012/09/25(火) 22:57:07.82 0
「……チッ、マリアのお願いとはいえ、なーんでアタシが悪魔なんかと……」

バッサバッサ、と、純白の翼を羽ばたかせながらアタシは舌打ち交じりに愚痴を漏らした。
ことの発端はほんの数時間前。

ちょいと数時間前に時間を戻す。

あれはアタシがちょうどヴィエナ陥落の報告を定期連絡の天使から受け取った時だ。
人間も天使達も休日の安息日。そんな貴重な日にその一報は届けられやがった。

紅茶とショートケーキの甘い香りが執務室を満たしている。

アタシとマリアの2人分のおやつタイム。そんな愛しの時間を切裂く凶報だ。

「おい、マリア。ヴィエナ陥落だとよ。例の悪魔さん達の仕業らしーぜ」

数枚に束ねられた紙を投げる様に渡すと、マリアはわたわたと慌てながらその報告書を受け取った。
イライラしていたとはいえ乱暴に書物を扱い過ぎたか……。などと後悔した時にはもう遅い。

「あらあらまあまあ、アリアちゃん。モノをそんな乱雑に扱ってはなりませんよ~」

のんびりとした口調の中にも多少の棘。後に続くは確実なお説教だ。
アタシはそれを回避すべく軽く舌打ちをし、話題を変えた。

「チッ、てかアキヴァにヴィエナ……これで2か所目じゃん?奇跡は2度も続かないぜ?どーいうことだ?」

「それはまあ、悪魔さん達の力が本物という事でしょうね~」

チラチラと片手に持った報告書に目を通しながらマリアは間延びした声で言った。
ちなみにもう片方の手にはショートケーキの苺を串刺しにしたフォークが握られている。

「何を呑気な……次のターゲットは此処かもしれねーんだぞ?悠長にしてる場合かよ?」

ホントはマリアとのおやつタイムを楽しみにしていたのだが、この状況では仕方がない。
この幸せな空間を自らの手で壊すのは嫌だが、すぐに隊を編成して迎え撃つ準備をしなくては……。
非常にホントに、マジで後ろ髪引かれる思いなのだが……マリアとケーキ食べたかったし。
……いやいや、一時の幸せと悠久の平穏。どちらを選ぶかは分かりきってることじゃねーか。しっかりしろアタシ!

「とにかく!今から隊を編成するからマリアは人間達に動揺が広がらないようにしてくれ」

そう言って執務室を出て行こうとするアタシにマリアはのんびりとした口調でストップを掛ける。

「アリアちゃん、ちょっと待ってくだふぁい。報告書を見ると~もぐもぐ、陥落させられた割には天使側の犠牲が少ないんでふよね~」

モグモグとケーキを頬張りながらマリアは言う。
110 : アリア ◆MrCU99fX9rYk [sage] : 2012/09/25(火) 22:59:51.17 0
「……あぁ?だから?それがどうしたってんだよ?」

マリアが何を言いたいか今いち理解できない。そりゃ天使側の損害が少ないのは良いことだけどよ……。
つか、物食いながら話すなよ。相変わらず行儀悪ぃな。

「ん~、これは私の推測なんですけど~……悪魔さん達は……ん~、なんというか平和的と言うか……」

むーむーと唸りながら言葉を探るマリア。

人間達に行う説法はあんなにも凄ぇのにどうしてこういう自分の言葉で言うのは苦手なのかねぇ。

「……ん~、あ~、つまり~……そう!平和的なんですよ!」

時間を掛けた割にはシンプル過ぎる回答が飛び出した。

「アンタが悩んでる最中に聞いたよそりゃあ。だからなんだってんだよ……結局のところ墜とされてるのは事実だろうが」

「だから!平和的なんです!話し合えば分かるはずです!同盟です!そうです!悪魔さん達と同盟を結びましょう!」

言っている意味が理解できない。
それはアタシの頭の出来が悪ぃからか?それともマリアの言ってることが突拍子もねぇからか?
…………いやいや、確実に後者だろうが。
しかもさっきまでののんびり口調がいつの間にか急変してる。確実に悪い兆候だコレ。

「はぁ?おいマリア何言ってんの?同盟?悪魔と?マジでか?」

「マジです大マジですよ、アリアちゃん!そこでアリアちゃんにお願いが!」

頬に付いたホイップクリームをふき取りもせずにずいと真剣な顔でこちらに攻め寄るマリア。

マリア本人は決め顔のつもりだろーが、全然決まってねぇ……。てか、この顔のマリアはもう言い出したら聞かねーかんなー。

「……アタシにどうしろってーのさ?」

「悪魔さん達を此処に呼んでください!そして話し合いましょう!話し合えば全て解決です!
平和的に解決!毎日の平穏が約束された世界!それこそがゼウス様の望みですよ!」

薄々感じてた予感が的中。ホント、無茶苦茶言うよなー……マジで。
ていうかゼウス様的にはオッケーなのそれ?そこんとこの基準ホント曖昧だよなぁ。
でもまあ、マリアがこうなっちまったらアタシが嫌って言っても聞かねーだろうな。

「……あぁ、もう!分かったよ。で、場所は分かってんの?」

「無論です!」

そう言いながら束ねられた紙から一枚を抜き出しアタシに差し出す。それは悪魔達の現在地を示す地図だった。

「その地図は特殊な魔法が掛けられてて、対象者が動いてもすぐに場所が分かる優れものです。
 一応その地図の中での対象者は悪魔さんのリーダーですのでその地図に頼れば一発解決ですよ~」

ストーキング仕様かよ、いつの間に仕掛けたんだこんなの。……いや、どうやって仕掛けたんだ?
てかこれ、地下の『魔法狂い』の奴等の作品じゃねーの?没収品をこんな躊躇なく使用するかね普通。
てかゼウス様の教えに背いた奴等の道具を使用ってどーよ……。ま、いっか。マリア(いつも)の事だし。
111 : アリア ◆MrCU99fX9rYk [sage] : 2012/09/25(火) 23:02:31.83 0

「はぁ、りょーかい。行ってくるよマリア。アタシのケーキ食うんじゃねーぞ」

「お願いね~アリアちゃん。悪魔さん達のご馳走も用意して待ってるからね~」

成功前提かよ、まったく。

そんな呑気な言葉を背に私はマリアの執務室を出て自室にて愛用の十文字槍を手に取る。

何があるかわかんねーしなぁ……念を入れ過ぎて悪いってこたねーだろ。
そうしてアタシは悪魔達と同盟を結ぶ特使としてロンディニウムを飛び立ったのだ。

時間戻し終了。

そして数時間後の飛行を経て、煌びやかに彩られたヴィエナ上空にアタシは来ている。

なるほどねー…平和的、確かになー。

そこら辺に争った形跡はあるものの、天使が磔にされてるわけでもなし人間達の死体が転がっている訳でもない。
何より人間達が喧しいほど楽しそうに騒いでいる。こんな光景がアタシ達の領地以外でもお目に掛かれるとは。

「……マリアの勘はいっつもあたるんだよなー、っと!」

言いながらアタシは一気に急降下する目標は地図に対象者として貼り付けられていたあの桃色髪の女の目前。

凄まじい勢いで着地したアタシを見る女。地図の対象者はコイツと連動している。

「アンタ等かヴィエナを陥落させた悪魔達ってのは……」

純白の翼を折りたたみ十文字槍を肩に担ぎながら、アタシは女に問う。

ていうか……あれ?やば、これ明らかに敵役の登場じゃん?同盟結ぶ特使の登場の仕方じゃないじゃん!訂正訂正!

「おっとっと、身構えるのは勘弁しろってね。アタシは特使だ。
 アタシの主様がアンタ等と話がしたいって言ってね、その取次ぎに来たって訳。
 別に喧嘩しに来たんじゃねーよ。そう警戒しなさんな悪魔さん。
 おっとそれと自己紹介。アタシの名前はアリア。アリア・チェリーブロッサムだ、よろしくな」

そう言って口に笑みを浮かべながら目の前の桃色髪の女に手を差し出した。
112 : シャルル ◆Z6yK3vQwuU [sage] : 2012/09/27(木) 03:13:40.63 0
会場に戻り、チーズを食べながらふと思う。
あれ、イトさんはヴィエナから逃げてきた人じゃなかったっけ。
何で何処かに旅立ったんだろう……。

「……ま、いっか。チーズうまっ!」

最近忘れられがちだが、アタシのデビチルとしての衝動はチーズを見たら食べずにはいられない事である。
チーズが一皿無くなったところで、水を取りに行ったアイネの事を思いだす。
様子を見に行ってみようと外に出ると……目の前に一人の天使が急降下してきた。

>「アンタ等かヴィエナを陥落させた悪魔達ってのは……」

台詞といい登場方法といい、これって余所の街から来た敵……だよね!?
いくらなんでも情報が伝わるのが早すぎじゃね!?

>「おっとっと、身構えるのは勘弁しろってね。アタシは特使だ。
 アタシの主様がアンタ等と話がしたいって言ってね、その取次ぎに来たって訳。
 別に喧嘩しに来たんじゃねーよ。そう警戒しなさんな悪魔さん。
 おっとそれと自己紹介。アタシの名前はアリア。アリア・チェリーブロッサムだ、よろしくな」

「何ですって……!?」

降伏の申し入れ、なわけはないにしても何らかの取引を持ちかけようと言うのか。
天使長が悪魔と話し合おうとすること自体びっくりである。
ジュゼッペとは逆の意味でゼウスに怒られそうな天使長だ、といらん心配をしてしまう。
もちろん100%信じるわけにはいかないが、罠にしても一気に敵の懐に潜りこめるチャンスだ。
それに、アタシもアイネも先の戦闘で疲弊している。この場でドンパチ始めても確実に負け戦だろう。
ならば……差し出された手を握り返す。

「悪い話ではなさそうね。その話乗ったわ!
アタシはシャルル・ロッテ。それとあれが仲間の……」

猫バスの方からアイネ達が歩いてきているのが目に入ったので紹介しようとして、ふと気づく。
アイネ…”達”? また見知らぬ人が増えていた。おかっぱの眼鏡娘とスーツ姿の男性。
手を振って彼らを呼ぶ。

「おーい、こっちこっち~!」
113 : ノビ ◇g3t.dBpmII [sage] : 2012/09/28(金) 00:44:30.05 0
メガネをかけると知らない天井がみえた。
白っぽく濁った意識の表層で、聞くともなしに耳朶を打つ雑音。

>「おーい、こっちこっち~!」

遠くから聞こえる声。

「ねぇー…どーしてー?どうしてノビをよんでるの?」
私は、私の心の中に住んでいる青いネコに聞いてみた。
青いネコは首をぷるぷるふって「知らない」って言っている。
114 : アイネ ◇AymL.Uu50M [sage] : 2012/09/30(日) 23:15:16.52 0
人の手を舐める変態はともかく、他に異常がないか車内を見渡した。
すると、隅のほうに見慣れない人影がひとつ。

>「ほぉえぇー………ねぇむぅいぃよぉ…」

見慣れないおかっぱ少女がひとり。
風体を見るに、この少女もデビチルなのだろう。

「起きるですよ、起きるですよー」

いくら声を掛けても目を覚ます様子は無い。
面倒なので、引きずって連れて行くことにした。
キラーを伴い、肩に半ば担ぐようにしておかっぱ眼鏡の少女を連れ歩く。

>「おーい、こっちこっち~!」

シャルルの呼び声が響く。
手を振ってこちらに呼びかけているが、誰かを伴っているようだ。
近づいてみて驚く。彼女と会話をしているのは見慣れぬ天使だ。
この街にまともな天使はいない。なら彼女は何者だろう。
私は十分に警戒しながら、彼女らに近づいた。

「新しいデビチルが増えたようなので連れてきたですよ。それでこちらは…?」

見知らぬ天使のほうへと向き直る。
シャルルは警戒している様子はないが、だからと言って安心は出来ない。

「私はアイネ。アイネ・リヴァイアスですよ。以後お見知りおきを」

警戒しながらも、簡単な自己紹介を済ます。
相手が不用意に動こうものなら、即座に水を用いて攻撃する構えを取っている。
先の戦いでまだ疲弊しているが、戦えないわけではない。
115 : アリア ◆MrCU99fX9rYk [sage] : 2012/10/02(火) 01:47:22.72 0
>「何ですって……!?」

桃色髪の女は驚愕の声を上げた、そりゃそーだ。色んな意味で驚愕だろーよ。
天使のアタシだって驚いたんだ。敵側の悪魔が驚かねーわけねーよ。
しかしまあ意外な事に桃色髪の女は少し戸惑った様子を見せた後、アタシの手を取った。

>「悪い話ではなさそうね。その話乗ったわ!
  アタシはシャルル・ロッテ。それとあれが仲間の……」

おいおい、決断早いな罠だったらどーすんだって……って、いやいやその辺は折り込み済みなんだろーな。
なんせ、アタシ達天使の支配する都市を2か所も堕とした奴等のリーダーさんだ。
ま、どっちにしろ罠じゃねーし。アタシ等、つか、マリアの目的は平和的解決だ。マリアの望みはアタシの望みってね。

>「おーい、こっちこっち~!」

とシャルルが呼べば数人の悪魔達がこちらに来る。
眠そうにしているおかっぱ頭の女と紫色髪の男、それに水色髪の女。

……なんというか濃いな。色んな意味で。

>「新しいデビチルが増えたようなので連れてきたですよ。それでこちらは…?」

水色髪の女の深い青色の瞳が警戒心ビンビンの状態でアタシを見つめてくる。
おいおい随分熱い視線だな惚れちまいそうだぜ。ってそりゃねーわ。アタシはマリア一筋だし。
まあセルフ突っ込みはさておき『新しいデビチル』?悪魔ってのは増えんの?増殖すんの?なにそれこわい。

>「私はアイネ。アイネ・リヴァイアスですよ。以後お見知りおきを」

一応、挨拶はしてくれたもののなんつーか相変わらず警戒心ビンビンだな。

「喧嘩しに来たんじゃねーからさ、そんな警戒すんなってアイネ、って、あー呼び捨てでいいか?
 どーもアタシは丁寧語とか礼儀作法が苦手でね、すぐに素が出ちまう。シャルルもいいよな呼び捨てで。
 で、シャルルには挨拶したけどもう一回だ。アタシはアリア、アリア・チェリーブロッサム。よろしくなアイネ!」

そう言ってアタシは満面の笑みを浮かべアイネに手を差し出した。
116 : マリア ◆MrCU99fX9rYk [sage] : 2012/10/02(火) 01:50:32.78 0
一方その頃、ロンディニウムでは……

「あらあらまあまあ、どうしましょう~……」

アリアちゃんにお願いごとをしてから数刻後、私は絶賛お悩み中だった。
思い出されるのはアリアちゃんとの会話の内の一部。

『お願いね~アリアちゃん。悪魔さん達のご馳走も用意して待ってるからね~』

「そういえば私~……悪魔さん達の好きな料理知らないですよ~……」

言いながら無駄に広い執務室兼応接室をグルグルと飛び回る。

むー、私の悪い癖ですね~。室内を飛び回るのもですけど~、リサーチせずに不用意な事を言うのもですね~。
悪魔さん達の歓迎場にはあの広い食堂を利用するのでよいとしまして~…。
あ~、もうアリアちゃんを追いかけてっても間に合わないですし~……ん~……こうなったら……。

私はいそいそと執務室兼応接室を出ると、教会内にある厨房に足を運ぶ。

「こんにちは~」

ひょっこりと顔を覗かせる。そこには様々な食材を絶賛調理中の料理人達が居た。

おそらく厨房は下ごしらえの段階でしょうけど、良い香りですね~。
それにしても……は~……安息日だというのに皆さん今日も頑張ってますね~……。
別の日に休日を与えていますけど、本来の安息日に休みを与えられないのは申し訳ないです~。
などと考え事をしていれば私の声に気付いた料理人の1人が声を上げる。

「あ、マリア様じゃないですか!おはようございます!」

「「「「おはようございます!マリア様!」」」」

続くようにして次々と周りの料理人も私に対して挨拶をする。まるで唱和ですね~。

「あ、おはようございます~、安息日にお疲れ様です~」

思わずその迫力に気圧されて同じ言葉を返してしまいますが、今の時間を見れば『おはようございます』は些かおかしいような~……。
まあ~、この『人達』は此処で働いてもらってる時からこうなのでもう慣れてしまっているのですけど~、違和感って残るもんですよ?

「ところでなんの御用ですかマリア様?今日の料理内容に何か変更でも?」

料理長が一旦手を止めこちらにやってくる。

大柄で強面で少し怖い料理長ですけど、話してみれば気さくで良い人なんですよ~。

「いえいえ~、そういうわけじゃないんですけど~……あのですね、皆さんにお願いが」

私がそう言った次の瞬間の事でした。

「なんでしょう!?マリア様!」「何かお悩みがあるのですか!?」
「私達『人間一同』!救世主マリア様とアリア様のお願いには、全力で!お答えしますよ!なあ皆!」
「その通りだともマリア様とアリア様は俺達を救ってくださった救世主ですから!」

料理長以外の料理人の方々もわさわさと集まってきちゃいました。
117 : マリア ◆MrCU99fX9rYk [sage] : 2012/10/02(火) 01:53:51.08 0
「……あ~、いや~、あのですね~」

あまりの迫力に圧されていると

「テメェ等静かにしねぇか!マリア様が困ってるじゃねぇか!」

と、料理長が一喝してくださってやんごとなきをえました。

「……ふぅ、すいませんねマリア様。うちの連中がいつも五月蠅くて」

「いえいえ~、人間の皆さん一同のご協力にはいつも感謝しております~」

「あ、で、マリア様。お願いと言うのは?」

「あ~、そのですね~近いうちにこの都市に悪魔さん達が来るんですよ~」

「悪魔ってぇとアレですかい?最近都市の次々と解放して騒がしてるって噂の」

料理長が顔を顰めながら言います。他の料理人達の反応もよろしくないですね~。

「えぇ、その悪魔さん達です~、で、私達の都市は解放される理由がないのですけど~……」

私がそこまでいうと料理長が納得したような顔をしてくれました~。理解が早くて助かります~。

「あ、もしかして地下に潜伏してる『魔法狂い』の奴等の件ですかい?」

「そうなんですよ~。『魔法狂い』さん達が悪魔さんと組んでしまったら、戦力的に他の都市に劣ってる私達には少し不利かと。
 そうなると~、此処は以前と同じ状況に戻ってしまうので結構困ってるんですよ~」

「そりゃ……確かに……。あの『魔法狂い』がのさばってたあの状況に戻るのは……」

「俺は嫌ですよ!魔法を使えないからって!あんな差別のを受けるのは!」
「そうだ!あの『魔法狂い』達のせいでどれほど魔法を使えない都市の住人がどれほど迷惑してたか!」
「いや、迷惑ってレベルじゃねぇよ!魔法の実験に掛けられてそのまま戻れなくなった奴が何人いる!?」
「そうだ!マリア様とアリア様が来てくれたからこの都市は普通の都市に戻れたんだ!」

「だから黙ってろっつってんだろ!テメェ等!」
118 : マリア ◆MrCU99fX9rYk [sage] : 2012/10/02(火) 01:58:35.66 0

再び騒ぎ出した料理人達を再び料理長が一喝しました。

「で、ですね~。私は悪魔さん達と同盟を結ぼうかと思うんですよ~」

「ど、同盟?」

「えぇ~、私達は悪魔さんに危害を加えません。ですから、悪魔さんもこっちに危害を加えないでくださいね~。
 っていう、同盟です。で~、皆さんにはその悪魔さん達をお迎えする為のご馳走を作ってもらいたいんです」

「ご馳走、ですか」

「えぇ、美味しい料理は人も天使も幸せにします。お腹減ったままじゃ平和的なお話なんて出来ません。
 ですから皆さんの作る美味しい料理を食べてもらって平和的な話し合いを~……。
 と、思いついたんですけど~、悪魔さん達の好きな料理が分からないのと、一体いつ来るのかも分からないので~。
 大変申し訳ないのですが~、皆さんにはしばらくこの教会に泊まり込みをしてほしいのです~。
 あ、もちろんその分賃金は上乗せしますし、泊まり込んでくれた日数分のお休みも与えますので~」

そして一拍開けて私は頭を下げて言った。

「どうかお願いします!」

「そんな!マリア様!頭を上げてください!もちろん協力しますよ!なぁ!テメェ等!」

「つまり同盟の成功失敗は俺達の手に掛かってるって訳ですね!」「くぅ~!盛り上がってきた!絶対成功させるぞ!」
「ああ!この街をもうあんな『魔法狂い』のモノにさせるもんか!」

思わず顔に私の笑顔に浮かぶのが分かる。それと同時に感動で涙ぐんでしまう。

この都市の人は良い人が多くて、優しい人が多くて……私はとっても感動です!

「皆さん!ご協力ありがとうございます!」

そうして私は再び料理人の方々に大きく頭を下げた。
119 : シャルル ◆Z6yK3vQwuU [sage] : 2012/10/04(木) 23:37:41.80 0
>「新しいデビチルが増えたようなので連れてきたですよ。それでこちらは…?」

「魔法都市ロンディニウムから来た親善大使さんよ」

>「喧嘩しに来たんじゃねーからさ、そんな警戒すんなってアイネ、って、あー呼び捨てでいいか?
 どーもアタシは丁寧語とか礼儀作法が苦手でね、すぐに素が出ちまう。シャルルもいいよな呼び捨てで。
 で、シャルルには挨拶したけどもう一回だ。アタシはアリア、アリア・チェリーブロッサム。よろしくなアイネ!」

当然だが、アイネは警戒しているようだ。
アリアにちょっとタイムの目配せをして、デビチル達を円陣状に集める。

「はいはいみんな、集まって~」

かくかくしかじか、云々かんぬん
罠だとしても乗ってみよう、という事を端的に伝える。

「ちょっとあなた、聞いてる? ……手がどうかした!?」

スーツ姿の男性が、アタシの手ばかり見ている気がする。
もしかして、手フェチ……!? そんなマニアックな。
もしそうだとしたら……この流れで行けばアリアは全員に握手を求めるかもしれない。
交渉決裂しかねない事態が起こらないのを願うばかりである。
120 : ノビ ◆g3t.dBpmII [sage] : 2012/10/05(金) 01:21:25.61 0
>「起きるですよ、起きるですよー」

(おきてるのに)

私は無口になっていた。もともと大人しめだし、天然ボケのところもあったけど
そういうありふれたぼんやりしていて聞いていませんでしたっていうのとは違ってた。
なんていうか時間の流れ方が変わっていた。へんなところで止まっちゃったっていうか。

>「私はアイネ。アイネ・リヴァイアスですよ。以後お見知りおきを」

「…私の名前はノビです。もしかして…あなたはハチ公ソースのことを知っていますか?」
私はアイネをじっと見て言った。
音楽の時間に聞いていたアイネ・クライネ・ナハトムジークが頭の中で流れてて
青いネコもすやすやと眠っている。その青いネコが眠っている部屋というと
学校の音楽室で、先生が飼っていたペットの名前がハチだったことを思い出していて
ハチ公ソースのことが口からあふれだしたのだった。
もしかしたらアイネならハチ公ソースのことを知っているかもしれないと。

>「はいはいみんな、集まって~」

「どうして?集まるのになにか意味ってあるの。それをするのが正しいっていうことが
ゼッタイにたしかで、ちゃんと安心していられることがあるの?」
私はとがった声でシャルルに質問をするとためいきをついた。
でも蟻を踏んでしまわないように確かに集まって、シャルルのことを
ながいこと目をあけてみていた。
121 : アイネ ◇AymL.Uu50M [sage] : 2012/10/08(月) 21:15:10.10 0
>「…私の名前はノビです。もしかして…あなたはハチ公ソースのことを知っていますか?」

「ハチ公ソース?ちょっと何を言っているのかわからないですよ」

ノビの言葉に対し首を振る。心当たりは全く無い。
それにしてもハチ公ソースとは何だろう?
ハチ公はかの伝説の忠犬ハチ公だとして、ソースとは一体…?
もしかして、商標登録されたハチ公印のソースでも売られているのだろうか。
いずれにしても、考えたところで仕方ない。
私はノビからアリアへ向き直り、彼女の話に耳を傾けた。

「こちらこそよろしくですよ。敵ではないことは一応把握したですよ」

そう言いながら、差し出された彼女の手を握り返す。
罠の可能性は十分にある。しかし、今争う理由もまた無いのだ。

>「はいはいみんな、集まって~」

シャルルの呼びかけに集い、話を聞く。
要するに彼女の話に乗っかろうと言うことらしい。

「状況は分かったけど、アリアの話を鵜呑みにするのは早計ですよ。
ここはひとつ、ロンディニウムを直接視察するのはどうだろうですよ」

私たちデビチルはあくまで人間の味方だ。
人間たちが何不自由なく暮らしているのを検分できたら、問題は何一つないだろう。
それに、私にはロンディニウムを見物したいという思いがあった。
かの街は大変美しい教会のある都だと聞いたことがある。
ごみごみしたアキヴァや殺風景なヴィエナと違い、さぞ見所があることだろう。
たまには観光気分で行動するのも悪くは無い…と思う。
122 : シャルル ◆Z6yK3vQwuU [sage] : 2012/10/08(月) 21:27:04.30 0
>「どうして?集まるのになにか意味ってあるの。それをするのが正しいっていうことが
ゼッタイにたしかで、ちゃんと安心していられることがあるの?」

「えーと、それはね……」

どうやら眼鏡娘は不機嫌らしい。何か気に障るような事を言っただろうか。
こちらを見ている彼女は、努力して目を開けているようで……

「こっちの世界に目覚めたばかりでお疲れみたいね。
猫バスの中で休めるから安心して」

とにもかくにも即席の作戦会議は進み、程なくして結論は出た。

>「状況は分かったけど、アリアの話を鵜呑みにするのは早計ですよ。
ここはひとつ、ロンディニウムを直接視察するのはどうだろうですよ」

「そうね、人間達が幸せなのは天使側の思い込みって事もあるわけだし……
アタシ達の目で見て確かめましょう!」

再びアリアのほうに歩み寄って、その事を告げる。

「一つ、お願いがあるの。
一度アタシ達自身で街の様子を見てから話し合いの席に臨みたいのだけど……いいかしら?」
123 : アリア ◆MrCU99fX9rYk [sage] : 2012/10/09(火) 17:03:54.43 0
シャルルがこちらに目配せをしてくる。

あー、ありゃちょっと待ってて、ってヤツか。作戦タイムね、OKOK。

アタシは軽く片手を振りそれに答えた。

暫くした後、シャルルが近寄ってくる。どうやら答えが出たみてーだな。

>「一つ、お願いがあるの。
一度アタシ達自身で街の様子を見てから話し合いの席に臨みたいのだけど……いいかしら?」

「ん、あー……なんだそんな事かい。いいぜ全然オーケーだよ。
断る理由なんて全然ねーし、むしろ、街の様子見てもらった方が話し合いも進みやすいだろーし」

グッ、と親指を立て、アタシは了承のサインを出す。
そしてその他の悪魔と適当(ちなみに握手は止めた。何でって?だって紫髪はアタシの手をジロジロ見てくるし、ノビは不機嫌そうだし)に挨拶を済ませた後

「それじゃあ早速行くか、って言いたいとこだけど……アンタ等、悪魔のくせに翼がねーのな。
 イメージじゃ蝙蝠っぽい翼でも生えてるもんだと思ったけど……それじゃ飛べねーわな。
 ま、アタシだけ先に飛んでくってのも何だし、そこのファンタジーな乗り物に乗らせてもらってもいいかい?」

猫の様な奇妙な大型バスを指差し言う。
 
さっきから気になってたけど、なかなか可愛いじゃねーか。
なんだ?生きてんのかありゃ?不思議な生き物もいたもんだな。

「でさ、シャルル。ちなみにバス内は禁煙かな?いやー、結構長距離飛んだら疲れてさー。
あ、ちなみに天使の中じゃ飛行速度はトップクラスなんだぜアタシ。 
ま、それはともかく出来たら一服してーところなんだけどさ。ダメかい?
ロンディニウムでも禁煙の風潮が結構あってさ、喫煙者肩身狭いんだよなー。主様も煙草あんま好きじゃねーし」

と、一気に捲し立て、懐から出した煙草を口に加えピコピコ動かし誇示しながら悪魔達のリーダーであるシャルルに聞いた。
124 : シャルル ◆Z6yK3vQwuU [sage] : 2012/10/12(金) 05:43:40.90 0
アリアは、アタシの申し出をあっさりOKした。
一体どんな街なのだろう、楽しみだ。
油断してはいけないとはいえ、観光気分が無いと言ったら嘘になるだろう。

>「それじゃあ早速行くか、って言いたいとこだけど……アンタ等、悪魔のくせに翼がねーのな。
 イメージじゃ蝙蝠っぽい翼でも生えてるもんだと思ったけど……それじゃ飛べねーわな。」

「あんまり悪魔っぽく見えないでしょ? でも変身すると羽が生えてきたりするのよ。」

>「ま、アタシだけ先に飛んでくってのも何だし、そこのファンタジーな乗り物に乗らせてもらってもいいかい?」

「もちろん! 乗り心地抜群の猫バスの旅へようこそ!」

>「でさ、シャルル。ちなみにバス内は禁煙かな?いやー、結構長距離飛んだら疲れてさー。
あ、ちなみに天使の中じゃ飛行速度はトップクラスなんだぜアタシ。 
ま、それはともかく出来たら一服してーところなんだけどさ。ダメかい?
ロンディニウムでも禁煙の風潮が結構あってさ、喫煙者肩身狭いんだよなー。主様も煙草あんま好きじゃねーし」

煙草吸う天使もいるのか――!
煙草を吸うデビチルもいるのだから天使が吸っても何ら不思議はないのだが、ちょっと意外。
未成年者が煙草なんて吸ったら駄目よ~と一瞬言いかけたが、ここは学園都市ではないのだ。
増してや、目覚めたばかりのアタシよりもこの天使の方がおそらく年上になるのだろう。

「うーん、匂いがこもったら困るわねえ……」

その時、シュガーちゃんがすかさず口を挟んだ。

「換気設備付きの喫煙室を確認済みです」

「マジで!? ……という事で大丈夫みたいよ」

と、このように猫バス内には様々な設備が備わっているのだ。
いつの間にか部屋が増えていたり、色々と計り知れない乗り物である。
こうして、アタシ達は猫バスに乗り込んでいく。
画面に出ている目的地候補の中からロンディニウムを選択し、自動操縦で発進した。
125 : ノビー ◆g3t.dBpmII [sage] : 2012/10/15(月) 01:29:22.63 0
>「ハチ公ソース?ちょっと何を言っているのかわからないですよ」

「いい。あなたにはわからないよ」

>「こっちの世界に目覚めたばかりでお疲れみたいね。
 猫バスの中で休めるから安心して」

「ほんとう?」
わたしは、うれしいというより訝しげに聞いた。

「そのネコばすのなかにたべものはある?わたし、おなかすいちゃったよ」

>「もちろん! 乗り心地抜群の猫バスの旅へようこそ!」

私は猫バスに乗り込むと真っ先に食堂に入って席についた。

「すみません。うどんを湯がいてください。
すみません。だれかいませんか?」
と言ってわたしは変なふうに笑う。
どんなふうに変かっていったら、顔に暗い穴があくように。
126 : アイネ ◇AymL.Uu50M [sage] : 2012/10/16(火) 00:06:34.84 0
かくして、私たちのロンディニウムへの旅は始まった。
自動操縦の猫バスに揺られるだけの暢気な旅だ。
今回はデビチル一行に加え、天使であるアリアも同乗している。
そのことが微かな緊張を与えてはいたが、概ね暢気な旅と言っていいだろう。
私は特に座るでもなく、思い思いに過ごす他のメンバーを観察していた。

>「すみません。うどんを湯がいてください。
>すみません。だれかいませんか?」

「うどん?了承したですよ。ちょうどお昼だし、他の人もうどんでいいのかですよ?」

奇妙な笑みを浮かべるノビに返事を返し、他のメンバーにも問いかけた。
ちょうど退屈していたし、と私は料理をすることにする。
全員へのオーダーを聞き終え、私は調理場に立った。
まずは大鍋にお湯を沸かし、うどんをゆでる準備をする。
その間にも隣でだし汁の準備をし、具材を包丁で切る。
タンタンと言う小気味良い音が、猫バスの中に響く。
料理をするのは楽しい。私はこれでも料理は得意である。
はじめは能力の制御のために始めた料理だったが、今ではすっかり趣味になっている。
液体を操るという私の能力は、料理をするときにとても便利なのだ。
ほどなくして全員分の料理を作り終え、中央のテーブルへと運んだ。
温かい湯気を放つうどんが食欲を誘う。

「それでは、いただきまーす。ですよ」

出来立てのうどんに箸を伸ばす。
うどんの茹で加減、だしの具合、共に完璧である。
私は満足のいく出来に、舌鼓を打った。

「ところで、ロンディニウムという街はどんな街ですよ?古くは魔法都市、と聞いたですよ」

食事をしながら、私はさりげなくアリアに問う。
魔法とは私たちが使う特殊能力と深い関わりがある。
というか、魔法の延長線上にあるのが私たちの能力なのだ。
物理法則を無視した能力を、制限こそあるものの無尽蔵に扱える。
それを魔法と呼ばずして何と言おう。
なので、魔法の研究が盛んだったと言うその都市には大いに興味があった。
もしかしたら、私たちの力となる何かがそこにあるかもしれない。
うどんをすすりながら、私はそんなことを考察していた。
127 : アリア ◆MrCU99fX9rYk [sage] : 2012/10/19(金) 04:04:37.99 0
>「換気設備付きの喫煙室を確認済みです」
>「マジで!? ……という事で大丈夫みたいよ」

「お、マジか、ありがたい!それじゃさっそく」

言いながらアタシも猫バスに乗り込み喫煙室に入り、咥えていた煙草に愛用のライターで火を点けた。
そして思いっきり吸い込む、心が落ち着く、心地良い。はー、ようやく一息つけたなぁ……。

そうやって数本の煙草を楽しんだ後、喫煙室を出ると何やら良い香りが漂っていた。
中央のテーブルには人数分のどんぶりが置かれている。

お、美味そう。アイネが作ったのか?つか、悪魔が料理、ねぇ……。
こうして見てる分にはどーにも悪魔っぽくない、ていうか普通の人間みたいじゃねーか。

>「それでは、いただきまーす。ですよ」

そのアイネの言葉を合図に食事が始まった。
アタシは出来たての温かなうどんを音を立ててズルズルと啜る。

美味い!

「おー!マジ美味ぇ!うちの教会専属料理人達に勝るとも劣らねーぞこれ、スゲーなアイネ!」

そうアイネを褒め称える。瞬く間にどんぶりの中は空になった。

>「ところで、ロンディニウムという街はどんな街ですよ?古くは魔法都市、と聞いたですよ」

他の奴等より早く食事を終えたアタシにアイネは質問してくる。まあ、これから行く街だしなぁ。

「あぁ、ホントに遥か昔の話だなそりゃ。もう魔法を使う連中は一部除いて全員地下に潜っちまった。
 今は普通の……いや、他の都市に比べちゃ人間が住みやすい街になってると思うぜ。
なんせ外から逃げて来た人間が『此処は楽園だ!』、なーんて感激するぐらいだし。
ショッピングモールに娯楽施設、高級デパート、他の都市じゃご法度だってモンがうちじゃオーケーだし。
 ゼウス様も主様も何を基準にオーケー出してんだかねぇ、ま、アタシにゃよくわかんねーし、どうだっていいや」

そう言ってアタシは悪戯っぽい声を上げてケラケラ笑う。

「ま、娯楽ったって流石に賭け事やら風俗はうちの主様が認めなかったからダメだったけどさ。
 観光したいんなら東門から入る事をお勧めするよ、そーいう施設がごちゃごちゃしてる場所だから退屈はしないと思うぜ。
 人間やら天使の暮らしがみたいなら北門、西門は工場やら開発施設ばっかであんま面白くねぇからお勧めしねーな。
 南門は人力発電施設があるくらいだし、見学してーならやっぱアタシ的に東門か北門をお勧めするぜ」
128 : シャルル ◆Z6yK3vQwuU [sage] : 2012/10/21(日) 01:05:34.25 0
>「すみません。うどんを湯がいてください。
すみません。だれかいませんか?」

>「うどん?了承したですよ。ちょうどお昼だし、他の人もうどんでいいのかですよ?」

「構わないけど……作ってくれるの?」

台所をのぞきこむとアイネが手際よく料理をしていた。
液体を操る能力がうどんをゆでるのに一役買っている。
程なくして美味しそうなうどんが食卓に並んだ。

「いただきまーす。美味し~い! 凄いじゃない!」

>「ところで、ロンディニウムという街はどんな街ですよ?古くは魔法都市、と聞いたですよ」

>「あぁ、ホントに遥か昔の話だなそりゃ。もう魔法を使う連中は一部除いて全員地下に潜っちまった。
 今は普通の……いや、他の都市に比べちゃ人間が住みやすい街になってると思うぜ。」

アリアの話によると、魔法使い達は地下に潜っているらしい。
都市の枕詞が示す人々が地下に追いやられている点は、他の都市と一緒のようだ。
科学文明の全盛期には魔法の存在は公には否定されていたらしいけど――
やっぱりこの世界には確かに魔法が実在するのね。

>なんせ外から逃げて来た人間が『此処は楽園だ!』、なーんて感激するぐらいだし。
ショッピングモールに娯楽施設、高級デパート、他の都市じゃご法度だってモンがうちじゃオーケーだし。
 ゼウス様も主様も何を基準にオーケー出してんだかねぇ、ま、アタシにゃよくわかんねーし、どうだっていいや」

何故ゼウスはロンディニウムに限ってそのような統治を許しているのだろうか。
例えば、そうまでしても住民を自分たちの側につけておかないと危険、とか――?
ロンディニウムには何か秘密が隠されているのかもしれない。
視察でその手掛かりを掴まねば!

「えーと、じゃあ東門でいい?」

目当てはもちろんショッピングモールに娯楽施設! 
……じゃなかった、出来るだけ人が多い所にいって情報を集めるのだ!
やがて、中央に大教会がある立派な都市が見えてきた。
129 : のびー ◆AmSKbD5biY [sage] : 2012/10/21(日) 22:39:06.31 0
>「うどん?了承したですよ。ちょうどお昼だし、他の人もうどんでいいのかですよ?」

「あなたが作るの?」
わたしは目を見開いて驚いた。ハチ公ソースのことも知らないくせに
アイネはうどんを作ると言った。
そしてしばらくしてテーブルの上にはうどんが置かれた。
スープには色がついていて変な臭いがする。

わたしは眉をつりあげる。
わたしは白いものしか食べられない。
うどんと言っても麺しか食べられないのだ。

>「それでは、いただきまーす。ですよ」
アイネの暢気な顔。毒うどん作ったくせに笑顔。
まるで変態のよう。

>「おー!マジ美味ぇ!うちの教会専属料理人達に勝るとも劣らねーぞこれ、スゲーなアイネ!」
たちまち空になるどんぶり。
アリアはまるで飢えた野良犬のようで品性のかけらもないようにみえた。
わたしは他の人もそんなふうなのか恐る恐る見てみた。するとシャルルは

>「いただきまーす。美味し~い! 凄いじゃない!」
うわっつらだけの言葉。いったい何がすごいのか教えて欲しい。
理由や意味がないことは人は嫌う。迫害されて陰口を叩かれる。
そんな生き方をしていたらだめ。気をつけなさい。

わたしはため息を吐きながら流しの前までくると
うどんの汁を捨てて水で洗ってから箸の先にぐるぐると
捲きつけながらもちもちと食べた。湯がいてって言ってるのに
アイネはうどんに味とかつけるなんて常識がまったくない人間と思う。

>「ところで、ロンディニウムという街はどんな街ですよ?古くは魔法都市、と聞いたですよ」
>「あぁ、ホントに遥か昔の話だなそりゃ(略)
>「えーと、じゃあ東門でいい?」

「いいよ。どこでも。ここは楽園なんかじゃないし」

猫バスは東門についた。
わたしは窓からそっと外を見る。
外は人々で溢れかえっている。

「あのー、バスっていつころ出発するんですか?しばらく自由行動でいいですか?」
わたしは運転手さんに聞いて、出口を降りる。
門をくぐるとお店とかがあって目移りする。
ちょうど噴水の中央に見事な彫像が立っていてその肩に美しい蝶が止まっていた。
蝶は群れをなしてお花畑を飛ぶべきなのに…。
わたしは小石を掴んで投げたけど、当たりそうになっても蝶は逃げなかった。

「お花畑に帰るの!!」
と叫んで、わたしはもう一度小石を投げた。
130 : アイネ ◇AymL.Uu50M [sage] : 2012/10/24(水) 22:16:35.26 0
「”魔法使い”達は地下に、なるほど…ですよ。」

どうやらこの街にも複雑な事情があるらしい。
何故他の街は完全なディストピアになったのにも関わらず、この街の統治は完璧なのだろう。
これは調べてみなくてはならない。そう強く感じた。
調べるにはまず人の集まる東からだろう。

>「えーと、じゃあ東門でいい?」

>「いいよ。どこでも。ここは楽園なんかじゃないし」

「賛成ですよ。まずは買いm…聞き込みから始めなくてはですよ。」

概ね賛成と言うことで話は付いた。
猫バスは東門から街に入る。案の定街は人で溢れ返っていた。
どの人間たちも一様に楽しそうだ。統治による重圧があるようにはとても思えない。
私たちは猫バスをシュガーに任せ降りた。
街の煌びやかな様子や豊富な商品に思わず目移りする。
しかし、ここは我慢と己を律し聞き込み調査を開始する。
返ってきた答えは皆同じ、この街を賛美するものばかりだった。

「この街?ああ、いい街だよ。平和だし物資も豊富、暮らしに困るようなことは何もないさ。」

「昔は魔法使いの連中が取り仕切っていたが、今はその頃よりずっと豊かなもんさ」

「俺は他の街からの移民だが、ここはまるで楽園さ。領主様のおかげだよ」

本当にこの街の住人は豊かに暮らしているようだ。
私たちの目的は、ゼウスによる圧政から人々を解放すること。
しかしこの街にはその圧政の影も形も見られなかった。
これではこの街を開放する理由がない。
これも、ゼウスのエラーによるものなのだろうか。
ふと見ると、ノビが噴水の彫像に向けて石を投げている。
あの子は何をしているのだろう…そう思ったが、声をかけるのはやめておいた。
そんな折、私はひとつの不穏な噂を耳にした。

「なんでも地下の連中が、近日中にも蜂起しようと結託しているらしい。
 奴等は乱暴な連中だ…何をするもんかわかったもんじゃねぇ。」

この話に信憑性はない。だが、注意しておくことに越したことはないだろう。
街での情報を一通り集め終えた私は猫バスへ戻った。
他のメンバーの顔を見るに、集まった情報は同じようなものだったようだ。
私はお茶で渇いたのどを潤しながら、今後について考える。
天使の申し出による調停は、現時点では全く異論のないものだ。
今後彼らにこの街の管理を任せたままでも、何も問題はないだろう。
つまり、今回私たちはお役御免と言うわけだ。
せっかくなので、ここで観光していくのも良いかもしれない。
131 : シャルル ◆Z6yK3vQwuU [sage] : 2012/10/26(金) 07:37:42.66 0
ノビがうどんの汁を捨てて麺だけをもそもそ食べていた。何だありゃ。

>「いいよ。どこでも。ここは楽園なんかじゃないし」

「そうね、ここは楽園なんかじゃない。
ゼウスは人類を楽園《ユートピア》に導くために造られた――
でも蓋を開ければ出来た物はディストピアだったっていうありがちな話ね……」

だがしかし。目にしたロンディニウム、そこはまさしく楽園だった。
立ち並ぶ店店。語らう人々。美しい噴水。
見た事も内容な活気と平和が両立した奇蹟のような街だ。

>「なんでも地下の連中が、近日中にも蜂起しようと結託しているらしい。
 奴等は乱暴な連中だ…何をするもんかわかったもんじゃねぇ。」

「……やっぱりそこだけは他の街と一緒なのね」

もしその勢力に今回の調停の情報が流れたら
同盟締結を阻止しようとここぞとばかりに狙って調停の場に攻め込んでくるかもしれない。

「ところで魔法使いの居住地域はどこから入るの?」

アタシはアリアに聞いてみた。
魔法――もしかしたら、アタシ達の能力の原型かもしれない力。
立ち入り禁止区域、とかでなければどんな人たちなのか実際に見ておきたいものだ。
132 : アリア ◆MrCU99fX9rYk [sage] : 2012/10/29(月) 23:02:24.71 0
>「えーと、じゃあ東門でいい?」  
>「いいよ。どこでも。ここは楽園なんかじゃないし」
>「賛成ですよ。まずは買いm…聞き込みから始めなくてはですよ。」

各自の意見とのことで今後の方針は決まった。
東門の門兵も余裕で乗り越え(アタシがいたから)、中へ進む。
いつもの東門の雰囲気だ。人間達が楽しげに犇めき、アタシの部下の黒服達が違反者を目を光らせて見張っている。

「まあ、好きにしてくれ。アタシはアンタ等が戻って来るまで一服してっからさ。
 あーそれと違反行為はしてくれんなよ?まあ、賢明なアンタ等の事だからんなこたしねーだろーけどさ」

度を過ぎた違反行為はアタシ直属の黒服天使が容赦なく捕まえに行くからなー……。
 
「ま、かつての人間並に常識しってりゃ問題ねーだろ。じゃまあ、ごゆっくりー」

笑いながらそう言いアタシは再び口に煙草を咥え、喫煙室に入る。
そしてどれ位の時間が流れただろう、いつの間にかシャルル達は猫バス内に戻っていた。

山盛りになった灰皿を見て思わず苦笑する。こりゃいくらなんでも吸い過ぎたなー。

>「なんでも地下の連中が、近日中にも蜂起しようと結託しているらしい。
  奴等は乱暴な連中だ…何をするもんかわかったもんじゃねぇ。」
>「……やっぱりそこだけは他の街と一緒なのね」

喫煙室から出たアタシはそのやり取りに口を挟んだ。

「ま、前々から蜂起の話はそれこそ腐るほどあったけど煙だけさ、燃え上がるこたーなかった。
 だけど今回はアンタ達がいるから『魔法狂い』共も事情が違うんだろーな。煙じゃすまそーとしない。
 ッたく、何処で情報が漏れたんだかね。てか機密情報ったってそんなもんか。ま、ザルに水を入れるようなもんだからねー」

漏れるのは自明の理ってヤツだ。

>「ところで魔法使いの居住地域はどこから入るの?」

「……あー、何?会いたいの?『魔法狂い』の奴等に」

シャルルの質問に少しだけアタシの声が低くなる。

これが純粋な『魔法狂い』の興味から出た質問ならいいけど……これが別の意味だったらマズイ。
悪魔と『魔法狂い』が結託したら勝てない、こともない、と思うが……街に被害は避けられない。
アタシはある意味、街の中心に悪魔と言う名の爆弾を運んじまったようなもんだ。取扱いは存分に注意しなければならない。

「一応、正常な『魔法狂い』は普通に人間として暮らしてるよ。北の居住区に行きゃ会えんだろ。
 街で罪を犯した『魔法狂い』は人力発電所の地下で強制労働中、っつったって他の施設よりはマシな扱いさ。
 三食休憩付の週休2日だからな。どこぞの都市より大分マシなもんだろ。で、その他は全員カタコンベだ
 カタコンベの場所はアタシとマリアが把握してるが、悪ぃがアタシからアンタ達には話せない、『まだ』な」

それと、『魔法狂い』のことを詳しく教えといたほうがいーだろ。

「『魔法狂い』は分かりやすい格好してっからすぐに分かると思うぜ、なんてーか、ほら『こだわり』ってーのかな。
 アイツ等全員、魔法を使える奴はいろんな『マスク』をしてんのさ。個性みたいなもんかね?
ガスマスクみたいのから馬の被り物みたいのまで、色々あっけど奴等が使える魔法によってマスクの形も異なる。
あー、ちなみに魔法についてだけど、奴等の魔法はアンタ等のとはちょっと違うぜ」

資料で見たシャルル達の魔法を思い出す。

「アンタ等は無から何かを生み出したり、何の前触れも無く何かを操ったりと出来るけど奴等は違う。
奴等は体内から出る煙を媒介に魔法を行使する。物を通して煙を出す奴もいるけど……あー大体は手のひらや指先、口からかな。
基本魔法は1人1種類、効果は様々だがまったく同じ魔法を使う奴はいない。似たような魔法ならあるけどね。
それと、『魔法狂い』達の使う大体の魔法はアタシ等天使にゃ通用しない、此処までで質問あるかい?」
133 : キラー ◇k2hGkgyEGM [sage] : 2012/10/30(火) 23:17:41.97 0
彼は皆と行動していなかったはずだ
どういうことかわかるだろうか?

彼はアイネの質問に答える前に幸せそうな、『本当に幸せそうな顔で』いきなり寝たのだ
いきなりのことで分からない、とりあえず寝たのだ、いきなり、何の前触れもなく


そんな彼はもちろん皆とは近くにいない、そう、近くにいないはずだったのだ!、ついてきていないはずだったのだ!
だが彼は…

「んー、杏仁豆腐を二つ頼めるかな?」

なんとノビの真横にいたのだ!、気配もなく、いきなり真横にいたのだ!

「ん~?、何をそんな驚いているのだね?、私はさっきからいたぞ?」

それは本当なのだろうか…、まったく気配はなかった

そんな彼は…不気味すぎた…、そして今も…

「あー、さっきはいきなり寝てすまんね、そして初めて会う人もいるようだからもう一回自己紹介をしよう」

そう不敵に笑って彼はこめかみをいじくって立ち上がる

その異様に大きな身長、変わった服装、その彼のどれもが不気味な威圧感があった

「私の名前は、キラー・ヨカゲシ、変わった名前なのは気にしないでくれ
年はこう見えても18歳とかそのあたりだ、よろしく頼むよ…」

と、大胆不敵な笑みを濃くして言った…
134 : ノビー ◆g3t.dBpmII [sage] : 2012/10/31(水) 00:06:35.37 0
気球がおりてくる。わたしは腰を浮かして噴水から逃げた。
学校のプールに塗られている青いペンキと同じ色の空には雲ひとつ浮かんでいない。
UFOなんて子供じみたことをいっているわけじゃないけど、
気球はこんな日に空に浮くものだし、一休みするために降りる場所は広場が相応しいはずだ。
もしもわたしが操縦士だったら絶対そうするのに。

噴水をあとにした私は街の声を聞く。

>「なんでも地下の連中が、近日中にも蜂起しようと結託しているらしい。
  奴等は乱暴な連中だ…何をするもんかわかったもんじゃねぇ。」

「なあに、どうしたの?」
わたしは街の人に聞きなおした。
すると前の道を歩いていた女が足早に遠ざかる。その正体はアイネだった。
まったく人騒がせで、ブスのくせに大げさ騒ぎ立てるからうんざりする。

>「なんでも地下の連中が、近日中にも蜂起しようと結託しているらしい。
  奴等は乱暴な連中だ…何をするもんかわかったもんじゃねぇ。」

>「……やっぱりそこだけは他の街と一緒なのね」

謎の会話はたびたび繰り返されていた。
シャルルの言葉は難解な場合が多い。

>「ところで魔法使いの居住地域はどこから入るの?」

>「……あー、何?会いたいの?『魔法狂い』の奴等に」

「魔法狂い?いったいなんの話なの?」
わたしにはちんぷんかんぷんな会話だった。
それにいつのまにか、隣にキラーがいる。

>「私の名前は、キラー・ヨカゲシ、変わった名前なのは気にしないでくれ
 年はこう見えても18歳とかそのあたりだ、よろしく頼むよ…」

「私の名前はノビよ。こちらこそよろしくね。それで
こいつがシャネルで…これがえっと、アイラ。そんでもってこいつはシムラよ。
たしかにそうよ。名前と顔が似てるから間違わないでね」

キラにそういったあと、わたしはアリアの話を思い出して問う。

「どうして天使に魔法狂いの魔法が聞かないの?」

「アイラとシャネルは魔法狂いに会いたいの?それはどうして?」

「キララは杏仁豆腐が好きなのはなぜ?わたしと同じで白いものしか食べられないの?」

窓の外には、午後の陽射しが油をこぼしたようにいっぱいに溢れていた。
135 : アイネ ◇AymL.Uu50M [sage] : 2012/11/01(木) 01:54:28.28 0
「外で黒服の天使たちを見かけたですよ。あれは警察組織か何かですよ?
 この街の警備システムは、彼らが管理しているのかですよ?」

猫バスに戻った私は、車内で待っていたアリアにそう問う。
これ程の賑わいある街を作り上げたのだ、彼らのような組織があってもおかしくはない。
問題は、その警察組織である彼らが行き過ぎた取締りをしていないか、その一点にあった。
この街の様子を見るに心配するようなことはないと思うが、行き過ぎた取締りは軋轢を生む。
その軋轢は火種となり、やがて社会を内側から崩壊させるだろう。
その心配があっての質問だった。

>「ところで魔法使いの居住地域はどこから入るの?」

>「……あー、何?会いたいの?『魔法狂い』の奴等に」

その質問には私も興味があった。
この街において負の存在である彼らは、どのような生活を送り、どのような思いを胸に秘めているだろう。
出来ることなら直接会い、話を聞いてみたかった。
また、魔法と言う力も気にかかった。力ある存在は否応なく社会を歪ませる。
魔法狂いたちとの均衡が取れているからこそ、この街が成立しているのだろう。
アリアの話によると彼らは地下のカタコンベに隠れ住んでいるらしい。
しかし、その場所は教えてもらえなかった。
おそらく、力ある彼らの側に私たちが付くのを恐れたのだろう。
無理もない話だ。私たちは存在するだけで街を崩壊させるポテンシャルを秘めているのだから。

「ひとつ質問ですよ。なぜ天使にとって脅威でない魔法狂いたちを弾圧したのですよ。」

一応、彼らはかつてこの街で横暴を働いていたことは住民たちからの聞き込みで知っている。
しかし、それとこれとは話が別だ。
天使にとって脅威でない、人間にだけ害悪となる存在ならば、放って置いても問題はなかったはずだ。
なぜ天使でありながら人間の側に付き、彼らを取締ったのか。それが問題だった。
何故この街の天使たちは人間を大切にするのだろう。
他の街では見られなかったその違いが、喉に刺さった骨のように気がかりだった。

>「んー、杏仁豆腐を二つ頼めるかな?」

そのとき、今まで寝ていたキラーがようやく目を覚ましたようだった。
のんびりしたものだ、この異様な風体の男は何を考えているのかいまいち掴めない。

「杏仁豆腐ならシャルルに頼むと良いですよ。
 一度自己紹介は済ませたけど、私はアイネですよ。改めてよろしく」

ノビのいい加減な紹介を訂正しつつ、私は彼に自己紹介をする。
念のため、もう握手するのは控えておいた。

>「アイラとシャネルは魔法狂いに会いたいの?それはどうして?」

「それはね、ノビ。彼らが力ある集団だからですよ。
 この街は人間と天使、そして魔法狂いたちの微妙なバランスで成り立っているですよ。
 だから魔法狂いに話を聞くことで、この街について深く知ることが出来るですよ。
 それと、私の名前はアイネですよ?」

念のため訂正をつけつつ、彼女に簡単な説明をする。
これで通じたのだろうか…微妙なところである。
136 : アリア ◆MrCU99fX9rYk [sage] : 2012/11/05(月) 23:42:08.95 0
>「外で黒服の天使たちを見かけたですよ。あれは警察組織か何かですよ?
  この街の警備システムは、彼らが管理しているのかですよ?」

「あー、黒服の天使達はアタシの部下さ、全員ね。アイネの言う通り、街の警備はアイツ等に任せてる。
 って言っても行き過ぎた取り締まりは無いと思うぜ。
そういうのがあった場合は逆に人間側から大教会に通報がある、見かけた場合も即通報してくれって双方に言ってあるし。
 それに大教会とうちの部下は同僚じゃないから妙な仲間意識が在るわけじゃないしな、多分情報の隠匿も無い」

>「ひとつ質問ですよ。なぜ天使にとって脅威でない魔法狂いたちを弾圧したのですよ。」

「あー、それな。やっぱ気になるよな、えっとな」

アイネの質問に答えようとしたその時だ。

>「ん~?、何をそんな驚いているのだね?、私はさっきからいたぞ?」

今の今までいなかった奴が急にノビの隣に現れた。

……結構悪魔ってなんでもありなのな。さすがにもう多少の事じゃおどろかねーけどさ。

>「私の名前は、キラー・ヨカゲシ、変わった名前なのは気にしないでくれ
  年はこう見えても18歳とかそのあたりだ、よろしく頼むよ…」

「あー、よろしくなキラー!……握手は……した方がいいか?しない方がいいか?」

一応、台詞の前半分はキラーに、後半分はアイネに。
最初に会った時のアタシへの手への異様な視線が忘れられなかったからだ。

>「私の名前はノビよ。こちらこそよろしくね。それで
  こいつがシャネルで…これがえっと、アイラ。そんでもってこいつはシムラよ。
  たしかにそうよ。名前と顔が似てるから間違わないでね」

そのノビの言葉に思わず口に浮かべていた笑みが消える。
何故なら、コイツはノビは、今、言ってはならない事を言ったからだ。

「おい、先天的に脳にバグ抱えてんのか、強烈な電波受信してんのか、それとも唯の馬鹿なのかふざけてんのか知らねーけどさ。
 いずれにせよ名前、間違えてんじゃねーよ」

名前というものはそのモノを特定するだけじゃない。
誰かがそのモノの為に必死に考え、悩み、そして付けてくれたものだ。
礼儀作法、言葉遣い、態度、清潔感、容姿、このどれが悪くてもアタシはそれだけでソイツを判断したりしない。
だけど、名前を間違えられのはダメだ。それがワザとなら、悪ふざけならなおの事ダメだ。
それはアタシ自身を、いや、それ以上にアタシに名を与えてくれたゼウス様を侮辱する行為だ。

>「どうして天使に魔法狂いの魔法が聞かないの?」

「その質問、たった3文字の名前を間違える馬鹿に教えたって意味ねーだろ?
 だから、アタシは、アンタの、質問には、答えない。今後一切な。アタシは無意味な行動はあんま好きじゃねーんだ」

そう言ってノビの質問を切り捨て、アイネに向き合う。
137 : アリア ◆MrCU99fX9rYk [sage] : 2012/11/05(月) 23:43:20.86 0

「で、アイネの質問は、なぜアタシ達にとって脅威でない魔法狂いたちを弾圧したか、だったな」

今の重い空気を払拭しようと、一回咳払いをして質問に答える。

「あ~、最初は弾圧するつもりはなかったんだ。『魔法狂い』ったってカテゴリーは人間に類する、つまりは保護すべき存在だ。
 だけど、魔法狂いどもはアタシ達の統治を許さなかった。というよりも、自分達以外の特別な者の存在を認めなかった。
 で、アタシ達に反乱をしてきたわけ。まあアタシ達は人間には迂闊に手を出せないし、魔法も効かなかったしな。
 ま、それこそ初めのうちは『そのうち分かってくれるだろう』って静観してたんだけどさ……」

そう言ってアタシはポリポリと頬を掻く。

「でもそんな反乱の時、人間に……あー、つまりは魔法を使えない普通の人に、結構な被害が出てな。
 というか魔法都市っつったって魔法を使えない者、魔法を使えても能力が弱い者が大多数の都市さ。
 反乱が続けば続くほど、苦しむのは彼等だ。それはダメだ、それは許しちゃいけない。
 アタシ達天使の目的は『人間達の悠久に続く平和の管理』だ。だから大多数が苦しんでるその現状は見ていられなかった。
 だから主様とアタシは少数の魔法狂い共を切り、大多数の普通の人間達を取る事に決めたのさ、これが魔法狂い弾圧の理由って訳」
138 : シャルル ◆Z6yK3vQwuU [sage] : 2012/11/06(火) 00:44:26.83 0
魔法狂い達は弾圧されてるとはいっても、三食休憩付の週休2日という
他の街の人間達と比べると破格の厚待遇だった。
カタコンベの場所は流石に今は教えてくれないらしい。

>「んー、杏仁豆腐を二つ頼めるかな?」

「あら、どこ行ってたの!?」

キラーさんが突然現れた。いや、ずっといたけど気配を消していたのか?
とにかく、これが彼の能力なのかもしれない。

>「私の名前はノビよ。こちらこそよろしくね。それで
こいつがシャネルで…これがえっと、アイラ。そんでもってこいつはシムラよ。
たしかにそうよ。名前と顔が似てるから間違わないでね」

「アタシらは高級ブランド創始者と某大作RPG7作目の踊り子剣士と大物お笑い芸人かい!
どんなカオスなパーティーだよ! シャルル、アイネ、アリアよ」

アナグラムのように名前の文字が入れ替わってごちゃごちゃになっていたらしい。

>「杏仁豆腐ならシャルルに頼むと良いですよ。
 一度自己紹介は済ませたけど、私はアイネですよ。改めてよろしく」

「アタシは”お菓子の魔女”シャルル。はい、杏仁豆腐」

能力で出した杏仁豆腐をキラーさんに渡す。

>「どうして天使に魔法狂いの魔法が聞かないの?」
>「その質問、たった3文字の名前を間違える馬鹿に教えたって意味ねーだろ?
 だから、アタシは、アンタの、質問には、答えない。今後一切な。アタシは無意味な行動はあんま好きじゃねーんだ」

その様子を見ていて、リンネ時代にしていた研究の一端を思い出した。
魔術の世界では、名前には特別な魔力が宿るとされる。
偉大な魔術師を巡るとある伝説では、魔術師は普段決して真名を名乗らない。
真名を敵に知られる事は弱点を知られる事そのものだからだ。
名前を書いた相手が必ず死ぬという恐怖のノートを巡る息詰まる戦いの伝説、なんてのもあったわね。
その伝説も、いかにして敵の真名を掴むかというのが最大のキーポイントになっていた。
奇しくもここは魔法都市、もしかしたら何か関連があるのだろうか――

>「で、アイネの質問は、なぜアタシ達にとって脅威でない魔法狂いたちを弾圧したか、だったな」

アリアは大多数の一般人守るため、と答えた。
元々ゼウスが作られたのは人間達の悠久の平和のためであるので、別におかしなところはない。
だけど、何か引っかかる。そう、話の流れが遥か遥か大昔の一神教による魔女弾圧に奇妙な程一致するのよね。
真実とはいとも容易く時の流れに埋もれるもの。
一度強固な統治体制が確立されてしまえば、何が善で何が悪か操作する事なんて統治者の思いのままなのだ。
この街には何か秘密がありそうな気が……。

「北区に行ってみましょう。居住地域の様子と――それから、図書館ね」

文献調査で何か手がかりが掴めるかもしれない、アタシはそう考えたのだ。
天使にとって都合の悪いものがあればとっくに処分されてるんじゃないかって?
その通り。だけど、見逃される程度の他愛もない物語の中に、意外と真実は隠されていたりする。
139 : シャルル ◆Z6yK3vQwuU [sage] : 2012/11/06(火) 00:45:05.69 0
―― ロンディニウム学園付属図書館

こうしてアタシ達は北区にある図書館にやってきた。
勉強をする学生や、本を借りに来た市民たちでそこそこ賑わっている。
“歴史”のコーナーの本を手に取る。
思った通り、アリアから聞いた通りの情報しか出て来なかった。
次に”小説”のコーナーへ。
帯によると何やら大ヒットしたらしい王道の魔法学校もののファンタジー小説を手に取る。
魔法学校に入学した少年の、闇の魔法使いとの戦いの物語だった。
所々見てみると――箒にまたがって行う空中競技。手に汗握る魔法バトル! なかなか面白い。

「ねえねえ、結構面白いわよ」

と仲間達に本を勧めながらもアタシは考えていた。
闇の魔法使い――? そもそもこの街の魔法使い達は果たして一枚岩なのかしら……?
140 : ノビー ◆g3t.dBpmII [sage] : 2012/11/06(火) 23:42:18.62 0
>「それはね、ノビ。彼らが力ある集団だからですよ。
 この街は人間と天使、そして魔法狂いたちの微妙なバランスで成り立っているですよ。
 だから魔法狂いに話を聞くことで、この街について深く知ることが出来るですよ。
 それと、私の名前はアイネですよ?」

「ふーん。しることって大切なことってノビしってる。
でもしらなかったほうがよいことも世界にはあるから。気をつけなさい」
わたしはパチパチとまばたきをしながらアイネに忠告した。
秘密を知ってしまったら殺されることもある。
よくしらべたねぇと拍手をされながらピストルでズドン。
アイネのブスの顔が苦悶に歪むのだ。

そんな心配をしているとアリアが尖った声で…

>「その質問、たった3文字の名前を間違える馬鹿に教えたって意味ねーだろ?
 だから、アタシは、アンタの、質問には、答えない。今後一切な。アタシは無意味な行動はあんま好きじゃねーんだ」

「もともと、あなたが質問に答える意味もないじゃん。
もう、まどろっこしいのよ。べつにあなたがいる意味もないし。
この先なにかあるっていうの?なにをみせてくれるっていうの?
嘘かほんとかわからないことぺらぺら話されても時間のむだなのよ」
わたしは鼻白んだ顔を隠すように、アリアを一瞥すると椅子に腰をおろす。
目標とか目的とか意味とか意味がわからない。そもそも質問を聞いてどうするの?

――ロンディニウム学園付属図書館。

>「ねえねえ、結構面白いわよ」

「ふーん、おもしろそう。ねむくって字とか読むのは疲れるけど。
本の世界って夢と現実がごちゃまぜになってるから不思議ね。
ほんとうのこととウソがまじりあってるんだもの」
私は欠伸をかみ殺しながら椅子に座ってテーブルにうつぶせになる。
途端に瞼がおもくなる。思考が蕩けて意識が所々飛んでゆく。
現実の世界で色々なことを考えてるのがばかばかしく思えたりする。
141 : キラー ◇k2hGkgyEGM [sage] : 2012/11/07(水) 23:49:17.98 0
>「私の名前はノビよ。こちらこそよろしくね。それで
こいつがシャネルで…これがえっと、アイラ。そんでもってこいつはシムラよ。
たしかにそうよ。名前と顔が似てるから間違わないでね」

「ノビた…、じゃないのか、ノビさんだね、よろしく」

ジッと手を見詰めてる

「……、おっと、私はロリコンじゃない…」

変なことをつぶやく

>「キララは杏仁豆腐が好きなのはなぜ?わたしと同じで白いものしか食べられないの?」

「き、き、キララ?…、まぁいいか。
いや、なんとなく、だ」

と、ひきつった笑みを浮かべて言う

>「杏仁豆腐ならシャルルに頼むと良いですよ。
 一度自己紹介は済ませたけど、私はアイネですよ。改めてよろしく」

「OK,ありがとうアイネさん」

この男、衝動や見た目はともかく基本的に礼儀正しい性格のようだ

>「あー、よろしくなキラー!……握手は……した方がいいか?しない方がいいか?」

「あぁ、NICE TO MEET YOU、よろしく…、握手…、あくしゅ…、しゅ…、手…、あ!、いやなんでもない!」

一瞬、目に危険な色を宿したようだがすぐに元に戻る
…、手に対する視線が相変わらず半端ないが

>「おい、先天的に脳にバグ抱えてんのか、強烈な電波受信してんのか、それとも唯の馬鹿なのかふざけてんのか知らねーけどさ。
 いずれにせよ名前、間違えてんじゃねーよ」
>「その質問、たった3文字の名前を間違える馬鹿に教えたって意味ねーだろ?
 だから、アタシは、アンタの、質問には、答えない。今後一切な。アタシは無意味な行動はあんま好きじゃねーんだ」

「む、同行者が失礼を働いた、すまない」

代わりにキラーが頭を下げて謝る

「私が代わりに質問させてもらいます、なぜ、貴方達に魔法狂いの魔法が聞かなかったのでしょうか?」

と、もう一度聞く
142 : キラー ◇k2hGkgyEGM [sage] : 2012/11/07(水) 23:49:57.07 0
>「あら、どこ行ってたの!?」

「ずっと寝てました、それで貴方達の声で起きてですね、普通に歩いてきたはずですが…」

>「アタシは”お菓子の魔女”シャルル。はい、杏仁豆腐」

「すみません、感謝します」

>「もともと、あなたが質問に答える意味もないじゃん。
もう、まどろっこしいのよ。べつにあなたがいる意味もないし。
この先なにかあるっていうの?なにをみせてくれるっていうの?
嘘かほんとかわからないことぺらぺら話されても時間のむだなのよ」

「まぁまぁまぁ、お二人とも落ち着いてください、はいノビさん、アリアさん」

一つずつノビとアリアに渡す

「ここで争わないで下さいよ、彼女の無礼は私がもう一度謝ります、すみません」

と、頭を下げる、………、以外に仲間想いなのかもしれない

そして図書館へ…

>「ねえねえ、結構面白いわよ」

「えぇ、なかなかに興味深い本があります」

そういって彼が読んでいるのは……、読んでいる本の題名は…『手』
内容は絵、彫刻などで作った手の写真集だ

「『手』……、あぁ、この彫刻の手、なんてすばらしいのでしょう、この絵のしなやかな手も捨てがたい!
まさかこんな本に出会えるなんて~♪」

本当にうれしそうな顔をしている、周りの視線に気付かずに

「ハッ!、すみません、浮かれてました、……、早く目的の本を見つけましょう……こんな公式の場においてあるかどうかは怪しいですけど…」

一瞬、キラーの周りを見る目が鋭くなる
143 : アイネ ◇AymL.Uu50M[sage] : 2012/11/10(土) 22:05:17.43 0
アリアがノビと口論している。原因はノビが名前を間違えたせいだろう。
しかし仲裁に入るのはやめておいた。キラーに任せておけば大丈夫だろう。
ノビに対して不満があったのも事実だ。彼女の態度にはそこはかとない悪意を感じるのだ。
ノビだって明確な悪意の元行動しているわけではないのだろう。
しかし、どうしたって彼女の言動が気に食わないのは事実だ。
これでは今後の行動に支障が出てしまう。何か対策を講じるべきだろう。
といっても、彼女の行動は全く読めない。さて、どうしたものやら…。

>「で、アイネの質問は、なぜアタシ達にとって脅威でない魔法狂いたちを弾圧したか、だったな」

アリアが強引に空気を変えてくれた。これで話し合いに集中できると言うものだ。
彼女の話によると、魔法狂いたちは人間に害為す存在だったらしい。
より多くの人間を救うため、少数であった魔法狂いたちを弾圧した。
なるほど、確かに合理的な方法だ。私が彼女の立場であっても、その方法を推奨しただろう。
それで完成したのがこの街か…ここのホストたる天使は、本気で人間たちを大切に思っているらしい。
天使の個性による差なのか、それともゼウスのエラーなのか、本気で分からなくなってきた。
いずれにせよ、ここのホストと話し合ってみたい。そう強く感じた。

そもそも人間がゼウスを作り上げたのは、より優れた統治者を作るためだ。
人間以上の存在…天使による統治こそが、人間の恒久的な幸せになると考えられたのだ。
しかしゼウスは人間を抑圧しディストピアを作り上げた。
最初のボタンの掛け違えはどこだったのだろう?
エラーを誘発したゼウスの設計?
それとも、人間以上の存在を作ろうとしたその考え方?
考える程に、わからなくなる。
目下私たちの敵であるゼウスは、果たしてどんな存在なのか。
いずれこの目で確認しなければならないだろう。

そうこうしているうちに、猫バスは北区にある図書館へとたどり着いた。
蔵書数はなかなかに多そうだ。これなら調べがいもあるというもの。
私は他の書物に目もくれず、この街の行政について書かれた本を探し始めた。

>「ねえねえ、結構面白いわよ」

あちらではなかなか楽しそうな本を見ている様子だ。
一人離れたキラーが異常なテンションなのは、見なかったことにしたほうがよいだろう。
そのとき、私の目に一冊の本が目に留まる。
どうやら、この街で行われている行政会議の議事録のようだ。
こういう議事録を公開しているのはなかなかに珍しい。
内容をぱらぱらと見て、驚く。
人間と天使たちが綿密に話し合って、行政を決めているらしいのだ。
行政に人間の主張が多分に盛り込まれている。それだけでも驚くべきことなのに。
ゼウスの基本姿勢から大きく外れたその議事録を見て、私は不安を隠せなかった。
私たちの真の敵とは何者だろう。ゼウスか、天使たちか、はたまた人間か。
こんな平和な街を作るために、私たちは頑張ってきたのではないか。
私はどうすればいいのか、いつの間にか分からなくなっていた。
144 : アリア ◆MrCU99fX9rYk [sage] : 2012/11/12(月) 00:30:56.87 0
>「もともと、あなたが質問に答える意味もないじゃん(略)嘘かほんとかわからないことぺらぺら話されても時間のむだなのよ」

「そーかい、別にアタシは信じてくれなんて一言も言ってないぜ?アタシは質問されたから答えたのみだ。
 それに、テメェの言葉は悪魔の総意じゃなくテメェ個人の意志だろ、この世界にうんざりしてんならテメェが」

消えちまえ、そう続けようとした時、アタシとノビの間にキラーが割って入った。
その両手には白い杏仁豆腐、アタシの大好きなさくらんぼもご丁寧に添えてある。

>「まぁまぁまぁ、お二人とも落ち着いてください、はいノビさん、アリアさん」

「あ?え?」

急に差し出された杏仁豆腐を疑問符いっぱいの顔で受け取る。

いや、これはキラーが食べたかったからシャルルに注文したんじゃ……。

>「ここで争わないで下さいよ、彼女の無礼は私がもう一度謝ります、すみません」

アタシは気まずそうにポリポリと頬を掻く。

「んだよ、別にアンタが謝る様な事じゃ……、あー、いや、アタシも悪かった、かな」

そうだ、唯のくだらない戯言にカッとなり過ぎた。
アタシは一応この都市のマリアの護衛長兼治安の長なんだ、短絡的に言葉を暴言を発するわけにはいかない。
ま、些かの手遅れ感もあるが……。

アタシは手渡された杏仁豆腐を口に運ぶ。まろやかな甘みと、さくらんぼの優しい甘みが気持ちを落ち着かせてくれる。

キラーの奴、まさかこの為に杏仁豆腐を?偶然?それともこの展開を読んでたのか?
……だとしたら、唯の仲間思いなだけじゃなくてそーとーの策士だな。良い意味で。

そして場所は北区の学園付属図書館へ。
この図書館は学園付属ながらもそこらの図書館に負けない蔵書数を要する。
ちょっとした子ども向けの絵本から小難しい哲学書まで、数千、数万冊の書物を保管してある。

>「ねえねえ、結構面白いわよ」
>「ふーん、おもしろそう。ねむくって字とか読むのは疲れるけど。
  本の世界って夢と現実がごちゃまぜになってるから不思議ね。
  ほんとうのこととウソがまじりあってるんだもの」

シャルルは児童文学のコーナーへ、そしてノビは相変わらず訳わからない事を言っている。
それを見てアタシは思った。

そうか、ああいう電波タイプの言葉は流しちまえばいーんだ。いちいち相手にする必要なんかねーんだな。

あー、んで、他の二人は、っと。

そうして周りを見渡せば、アイネが行政の議事録を広げて難しい顔をしている。

「難しそうな顔して読んでんなアイネ。頭の良さそうなアンタの事だ、その文書、理解できねーでその顔って訳もねーだろ。
 そんなに人間側の主張を取り入れるのが珍しいこったねぇ?ま、今までの都市を見てたらそー思うわな」

茶化すように笑うとアタシは少し真面目にアイネを見る。

「そこの会議にさ『魔法狂い』の主義主張も取り入れたかった、話し合いたかった、って主様が言ってた。
 甘過ぎなんだよな、うちの主様は……。でも、アタシもホントはさ、主様と同意見だったよ。
 人間も、魔法狂いも、天使も、全員仲良しでやれればいいんだけどな。ま、アレだ。世の中ままならねー、ってやつさ。
 でもまぁ、現状を後悔はしるわけじゃねーぜ、今のこの都市が、アタシ等の信じた道なんだからさ」
145 : アリア ◆MrCU99fX9rYk [sage] : 2012/11/12(月) 00:37:17.92 0
ま、天使はともかく、人間は全員が全員別個の考え、主義主張を持っている。それがこれだけの人数生活してんだ。
だから、当たり前だけど、それを纏め上げんのは相当難しい。でも今の現状はアタシとマリアが『正しい』と思って取った手段だ。
だから、これからはこの現状よりも、もっと、さらに、より良くしていかなきゃならない。
出来たら魔法狂いも含めて、だ。それが、天使の務め、だとアタシは思う。

アタシがそう言った時だ。

>「『手』……、あぁ、この彫刻の手、なんてすばらしいのでしょう、この絵のしなやかな手も捨てがたい!
  まさかこんな本に出会えるなんて~♪」
>「ハッ!、すみません、浮かれてました、……、早く目的の本を見つけましょう……こんな公式の場においてあるかどうかは怪しいですけど…」

「ノビもだけど、キラーも存外に読めねーよな……、ま、ちょっと変わった性癖があるくらいで性格はいいからノビよかマシか」

キラーの浮かれきった言葉に、そう独り言を呟くと、アタシはキラーの元まで歩んでく。

「確かにこんな公式の場にはねーんじゃないかな、アンタ等の目的の本は、って何が目的の本かはよくわかんねーけどさ。
 ま、多分だけど、アタシ等の事とか、魔法狂いの奴等の事が詳しく書いてある本だろ?しかも裏の事がさ」

アタシは右胸の内ポケットから金色に輝く鍵の束を取りだす

「アタシはさ、嘘とか誤魔化しとかあんま好きじゃねーんだ。だからシャルル達が望むなら、見てみるかい?
 禁書庫を、さ。魔法狂い達に係わる書物、呪物、アタシ等に係わる書物、宝具、それが収められてる場所さ。これはその鍵」

鈍色の輪っかに何十もの鍵が括りつけられている。アタシはそれを誇示するようにじゃらじゃらくるくると回す。

「この鍵束は決められた手順で全てを使い切らなきゃいけない鍵、その手順を知ってるのはアタシと主様。
 しかもこの鍵はこれだけの数があっても片鍵でね、もう片方は主様が持ってるし、もう片方の鍵束の手順を知ってるのも主様だ。
 つまり、アタシと主様の許可を取って尚且つ同行させなきゃ見られない訳だけど、アタシは許可するぜ。後は主様次第だけどな」

アタシは言いながらパッと懐から一枚の地図を取り出す。
その地図は今、この図書館の全体図を映し出し、そのある一点がピコピコと点滅している。
無論、その点滅しているのは悪魔達のリーダーたるシャルルのマーカーだ。

「これも多分、その禁書庫から取って来たモノさ。ま、これは魔法狂い達が作ったモノだけどな。
 その人物を知っていれば、即座に場所を知らせてくれる優れもの。ちなみにシャルル達の場所が分かったのもコレのお陰さ。
 ま、対象と話したりして詳しく知ってなきゃただの点が蠢く地図だけどな。
 だからシャルル、アンタ知らないうちに魔法狂いか、もしくはそれに近しい人物と会話してんじゃないか?アキヴァか、それともヴィエナかで」

アタシはシャルルにそう告げ、キラーに向き直る。

「あー、その、なんだ。さっきはその悪かったな、気を使ってもらって」

今のアタシは少しバツが悪そうな顔をしているのだろう。
慣れない事をするからだ、まったく。

ポリポリと頬を掻くとアタシは握手の為にキラーの前に手を勢いよく差し出した。
無論、キラーの特殊な性癖を知った上での行為だ。

「いや、悪かったな、は適切じゃねーな。だから、あー、なんだ言い難いなもう。ともかく!ありがとうな、キラー!」
146 : ノビー ◆AmSKbD5biY [sage] : 2012/11/12(月) 21:08:46.20 0
私の発言にたいして、キラーはいわゆるフォローというものをしてくれた。
でも、名前を間違えただけであんなにアリアが怒るなんてありえないと思う。
もともと大人しめの私なのに苛立ったり困惑したりさせられた。

だから私は机に不貞寝。もう杏仁豆腐なんていらない。
なんにもいらない。ぜんぶいらない。
アイネも勝手に本を読んでたらいいし、
アリアとキラーも仲良く握手でもしてたらいい。

教室でもみんな私から離れていくし、ここでもそうなのだ。

(きらい。みんなだいっきらい)
歯噛みして、机に突っ伏していると、お腹が痛くなってくる。
だから、そっと席を立ってシャルルに小声で

「お腹が痛いから、トイレに行ってきます」
そう言った。あとのことはシャルルに任せるのだ。
147 : キラー ◇k2hGkgyEGM[sage] : 2012/11/13(火) 21:52:27.80 0
なんとかこの事態を治めることができた、もしこのまま雰囲気が悪くなったりしたら堪らない

(もう少し…仲良くしようとは考えないんですかね…)

別に私はノビさんが嫌いなわけじゃあない、ただ…相手側から協力関係を、しかもこっち側に乗り出してきたのだ

そんな度胸あることをして襲いに来るとは考えにくい、…信用を失えば面倒くさいにことになる

(………、先が思いやられます)

頭を抱えるキラーだった……

>「ふーん、おもしろそう。ねむくって字とか読むのは疲れるけど。
本の世界って夢と現実がごちゃまぜになってるから不思議ね。
ほんとうのこととウソがまじりあってるんだもの」

「まぁ、そういうのは物の書き方……ですね、まぁ面白いのであればいいんじゃないでしょうか?」

私はそういうとそばを離れる

単純に他のみんなの様子を見るためだ、そこでアイネさんとアリアさんの姿を見かける

>「そこの会議にさ『魔法狂い』の主義主張も取り入れたかった、話し合いたかった、って主様が言ってた。
 甘過ぎなんだよな、うちの主様は……。でも、アタシもホントはさ、主様と同意見だったよ。
 人間も、魔法狂いも、天使も、全員仲良しでやれればいいんだけどな。ま、アレだ。世の中ままならねー、ってやつさ。
 でもまぁ、現状を後悔はしるわけじゃねーぜ、今のこの都市が、アタシ等の信じた道なんだからさ」

そんな話をしている二人気付いた私、そしてその発想の元であるアイネさんのところに行く

「………アイネさん、あなたこんな風に感じていませんか?」

「ゼウスは本当に敵なのか?、本当の敵はほかにいるのではないか?、と…違いますか?」

答えを待たずに私は言う

「別にあなたがどう考えようと私は構いません、ただ私は自分のやるべきことをやるだけですから…」

いったん区切り、間を開ける

「………ただ…、もしあなたが私の前に立ちはだかることになったら……、容赦はしません」

私は、かる~く殺気を向けて言った、…正直言って私は仮にも仲間に手を向けたくはない

それも女性などと……、そんなことになりたくない、だからこの後笑って私は言う

「ま、ま、今はそれを考えるべき段階じゃないと私は思うんです。
もう少し、気持ちを落ち着かせましょう、決断を決めるのは…、まだ先だと思いますから」

と、優しい笑みを浮かべて言った
148 : キラー ◇k2hGkgyEGM[sage] : 2012/11/13(火) 21:53:01.59 0
そこでアリアさんが話しかけてくる

>「確かにこんな公式の場にはねーんじゃないかな、アンタ等の目的の本は、って何が目的の本かはよくわかんねーけどさ。
 ま、多分だけど、アタシ等の事とか、魔法狂いの奴等の事が詳しく書いてある本だろ?しかも裏の事がさ」
>「アタシはさ、嘘とか誤魔化しとかあんま好きじゃねーんだ。だからシャルル達が望むなら、見てみるかい?
 禁書庫を、さ。魔法狂い達に係わる書物、呪物、アタシ等に係わる書物、宝具、それが収められてる場所さ。これはその鍵」
>「この鍵束は決められた手順で全てを使い切らなきゃいけない鍵、その手順を知ってるのはアタシと主様。
 しかもこの鍵はこれだけの数があっても片鍵でね、もう片方は主様が持ってるし、もう片方の鍵束の手順を知ってるのも主様だ。
 つまり、アタシと主様の許可を取って尚且つ同行させなきゃ見られない訳だけど、アタシは許可するぜ。後は主様次第だけどな」
>「これも多分、その禁書庫から取って来たモノさ。ま、これは魔法狂い達が作ったモノだけどな。
 その人物を知っていれば、即座に場所を知らせてくれる優れもの。ちなみにシャルル達の場所が分かったのもコレのお陰さ。
 ま、対象と話したりして詳しく知ってなきゃただの点が蠢く地図だけどな。
 だからシャルル、アンタ知らないうちに魔法狂いか、もしくはそれに近しい人物と会話してんじゃないか?アキヴァか、それともヴィエナかで」

「………」

私は考え込む、………、確かにそんなところに行くのは魅力的だ、役に立つ可能性も多いにある、しかし…

と、考えているところでアリアさんがまた話してくる

>「あー、その、なんだ。さっきはその悪かったな、気を使ってもらって」

…?、さっき…?、と、考えているとアリアさんが手を差し伸べてくる…え…?

>「いや、悪かったな、は適切じゃねーな。だから、あー、なんだ言い難いなもう。ともかく!ありがとうな、キラー!」
「………」

しばらく硬直してしまった

「あ………、いえ、別に礼を言われるほどでもないですよ」

ようやく思考が追いついた私はそう言う、事実あんな場所で口論など聞きたくもないし信頼関係も失いたくはない

………、そして一番の問題点…それは……

「…ハァ、ハァ…」

目の前でアリアさんが差し出す『手』……、くぅっ!、舐めたい!、しかしそんな意思を押し殺して握手をする

「ハァ、ハァ……こ、これからよろしくお願いしまう…」

しまった、噛んでしまった、…、が、我慢だ、ここであの衝動を出してしまえば信頼関係はパーになってしまう!、耐えろ、耐えるんだ私!

と、そこでノビ君がシャルルに話しかけている

>「お腹が痛いから、トイレに行ってきます」

そんな声が聞こえた私は

「もし禁書庫に行く際に誰かを置いていくのもひどいので誰かがいなかった場合私が残ります」

そういうと衝動を無理やり抑え込み。トイレの近くに立つ

(………、やっぱり………舐めておきたかったな………)
149 : シャルル ◆Z6yK3vQwuU [sage] : 2012/11/13(火) 21:54:46.88 0
皆は膨大な量の本にそれなりに興味を示しているようだ。

>「ふーん、おもしろそう。ねむくって字とか読むのは疲れるけど。
本の世界って夢と現実がごちゃまぜになってるから不思議ね。
ほんとうのこととウソがまじりあってるんだもの」

「そうよ。
いかにも尤もらしいお堅い本が嘘で塗り固められている事もあれば
荒唐無稽な夢物語の中にも一片の真実が隠されていたりもするの。
不思議でしょ?」

>「『手』……、あぁ、この彫刻の手、なんてすばらしいのでしょう、この絵のしなやかな手も捨てがたい!
まさかこんな本に出会えるなんて~♪」

手の本をみているキラーさんはとても嬉しそう。
まるでアタシが様々なチーズを前にしている時みたいね。

>「ハッ!、すみません、浮かれてました、……、早く目的の本を見つけましょう……こんな公式の場においてあるかどうかは怪しいですけど…」

「いいのよ。デビチルならみんなそうなんだから」

一方アイネは正統派路線で、この街の行政等の本を調べていた。
そんなアイネに、キラーさんが物騒な事を言い始めた。

>「………アイネさん、あなたこんな風に感じていませんか?」
>「ゼウスは本当に敵なのか?、本当の敵はほかにいるのではないか?、と…違いますか?」
>「別にあなたがどう考えようと私は構いません、ただ私は自分のやるべきことをやるだけですから…」
>「………ただ…、もしあなたが私の前に立ちはだかることになったら……、容赦はしません」

「仮にゼウスが本当の敵ではないとしても…そんな事にはならないんじゃないかな。
だってゼウスの圧政があるべき姿とはどうしても思えないしアイネだってきっとそう。
解放されたアキヴァやヴィエナの人々の嬉しそうな顔といったら……!」

それを見てアリアが声をかける。

>「難しそうな顔して読んでんなアイネ。頭の良さそうなアンタの事だ、その文書、理解できねーでその顔って訳もねーだろ。
 そんなに人間側の主張を取り入れるのが珍しいこったねぇ?ま、今までの都市を見てたらそー思うわな」

そして話は一気に核心へ――

>「アタシはさ、嘘とか誤魔化しとかあんま好きじゃねーんだ。だからシャルル達が望むなら、見てみるかい?
 禁書庫を、さ。魔法狂い達に係わる書物、呪物、アタシ等に係わる書物、宝具、それが収められてる場所さ。これはその鍵」

アリアはこの街の”主様”――おそらくホストの許可が出れば、禁書庫を見せてもいいと言った。
そして彼女は、マーカーが光る不思議な地図を示す。どう見ても魔法のアイテムにしか見えない。

「それって……!」
150 : シャルル ◆Z6yK3vQwuU [sage] : 2012/11/13(火) 21:55:29.50 0
>「これも多分、その禁書庫から取って来たモノさ。ま、これは魔法狂い達が作ったモノだけどな。
 その人物を知っていれば、即座に場所を知らせてくれる優れもの。ちなみにシャルル達の場所が分かったのもコレのお陰さ。
 ま、対象と話したりして詳しく知ってなきゃただの点が蠢く地図だけどな。
 だからシャルル、アンタ知らないうちに魔法狂いか、もしくはそれに近しい人物と会話してんじゃないか?アキヴァか、それともヴィエナかで」

「すでに魔法狂いかその仲間に会ってるですって……!?」

今までの道中で出会った人々を思い浮かべる。
ただの人間ではなく不思議な魔法のような力を持つ人々。それに該当するとしたアバターしか考えられない。
ミルヒー、ピュグマリオン……それから、リリスさんもだ。
でも魔法狂いの魔法は天使には効かないと言っていた。
しかしアバターは天使やデビチルと同じ情報体に属するから天使に攻撃を加える事が出来る……。
そうじゃないとすれば他に考えられる人は――まさか、イトさん……!?
アタシが頭を捻っている間に、アリアとキラーさんが打ち解けつつあった。

>「あー、その、なんだ。さっきはその悪かったな、気を使ってもらって」
>「いや、悪かったな、は適切じゃねーな。だから、あー、なんだ言い難いなもう。ともかく!ありがとうな、キラー!」
>「ハァ、ハァ……こ、これからよろしくお願いしまう…」

一方、ノビーはその様子を見て不機嫌な様子。

>「お腹が痛いから、トイレに行ってきます」

「大丈夫……?」

>「もし禁書庫に行く際に誰かを置いていくのもひどいので誰かがいなかった場合私が残ります」

アタシも付き添うように見せて、ノビーに付いていく。
ところでデビチルは情報体だ。
現実世界に転生してしばらくしてふと気づいたのだが、トイレに行く必要がないのである。
でも精神的な要因でお腹が痛くなることは十分に考えられる。
キラーさんに外で待ってもらって、女子トイレ内まで一緒に入って行ってノビーに言い聞かせた。

「確かにあの怒りっぷりは普通じゃないとも思うけど、人も天使も色々過去があるものよ。
名前を間違えられるのを特に嫌うようになった理由が何かあるんじゃないかな。
それにキラーさんはフォローしてくれたでしょ?
アイネもとってもいい子だからまだあなたが来たばかりで戸惑ってるだけですぐに仲良くなれるよ。
アタシ達は現実世界に転生できた時点で選び抜かれてるのよ。
きっとあなたの力が役に立つときがくるわ」

元気が出るGABA入りのチョコレートを渡し、励ますようにぽんっと軽く肩を叩く。

「アタシはアリアから話を聞いておくからノビーをお願いできる?」

キラーさんにノビーを頼み、アリアやアイネの元へ戻る。
ノビーの事が気にならないわけではなかったが、キラーさんが付き添ってくれるというのもあるし
禁書庫を前に久々に研究者としての探究心が疼き、抑えきれずにいたのだ。

「ごめん、お待たせしました。金書庫だけど……アタシは見たい。
アリア、当主の天使様のところへ案内してくれるかしら?」
151 : アイネ ◇AymL.Uu50M[sage] : 2012/11/15(木) 22:47:40.63 0
>「難しそうな顔して読んでんなアイネ。頭の良さそうなアンタの事だ、その文書、理解できねーでその顔って訳もねーだろ。
  そんなに人間側の主張を取り入れるのが珍しいこったねぇ?ま、今までの都市を見てたらそー思うわな」

「よその都市とは大違いですよ。正直驚いたですよ。」

素直に感想を述べる。本当にここの行政はよく出来ているのだ。
ただ少数派の魔法狂いたちを放逐したから出来たというわけではない。
真に人間の幸せを願っていなければ、こんな行政は出来まい。
ここにはゼウスの作るディストピアではない、本当の楽園があると確信できた。
この街の天使たちなら信用しても構わない、そう感じた。
そのとき、キラーがこちらに近づいてきた。
議事録を読んで不可解な顔をする私に思うところがあったのだろう。声を掛けてくる。

>「………アイネさん、あなたこんな風に感じていませんか?」
>「ゼウスは本当に敵なのか?、本当の敵はほかにいるのではないか?、と…違いますか?」
>「別にあなたがどう考えようと私は構いません、ただ私は自分のやるべきことをやるだけですから…」

>「………ただ…、もしあなたが私の前に立ちはだかることになったら……、容赦はしません」

「心配は要らないですよ。私は仲間を裏切るような真似はしないですよ」

キラーの放つ殺気に対し、私は笑顔で言葉を返す。

>「ま、ま、今はそれを考えるべき段階じゃないと私は思うんです。
  もう少し、気持ちを落ち着かせましょう、決断を決めるのは…、まだ先だと思いますから」

「確かにそうですよ。ゼウスが今後どう動くかもわからないですよ」

そうだ、この幸せな街は砂上の城とも限らないのだ。
ひとたびゼウスが動けば、崩れてしまうかもしれない平和。
私たちが考えるべきは、今後のこの街を守ることだろう。
もしゼウスが動けばこの治安は崩れてしまう。しかし開放すると言うのも危険だ。
開放された街は、すなわちゼウスに敵対すると言うことだ。
これまでどおりの平和な街でいられるか。不安なところである。

>「仮にゼウスが本当の敵ではないとしても…そんな事にはならないんじゃないかな。
  だってゼウスの圧政があるべき姿とはどうしても思えないしアイネだってきっとそう。
  解放されたアキヴァやヴィエナの人々の嬉しそうな顔といったら……!」

シャルルが会話に加わる。彼女の言うことも道理である。
少なくとも、これまで私たちが行ってきた解放運動は間違ってはいなかった。
この街では、これまでの道理が通じない、ただそれだけの話だ。
私はボトルの水をごくごくと飲む。少し冷静にならなければならないだろう。
152 : アイネ ◇AymL.Uu50M[sage] : 2012/11/15(木) 22:48:14.74 0
>「アタシはさ、嘘とか誤魔化しとかあんま好きじゃねーんだ。だからシャルル達が望むなら、見てみるかい?
  禁書庫を、さ。魔法狂い達に係わる書物、呪物、アタシ等に係わる書物、宝具、それが収められてる場所さ。これはその鍵」

この街の裏の顔、魔法狂いたちの作ったアイテム。確かに興味のあるところだ。
アリアは言葉を続けながら一枚の地図を取り出す。
一見するとこの図書館の地図にしか見えない。しかし、その地図は今私たちが居る一点を示していた。

>「これも多分、その禁書庫から取って来たモノさ。ま、これは魔法狂い達が作ったモノだけどな。
  その人物を知っていれば、即座に場所を知らせてくれる優れもの。ちなみにシャルル達の場所が分かったのもコレのお陰さ。
  ま、対象と話したりして詳しく知ってなきゃただの点が蠢く地図だけどな。
  だからシャルル、アンタ知らないうちに魔法狂いか、もしくはそれに近しい人物と会話してんじゃないか?アキヴァか、それともヴィエナかで」

知らないうちに出会っている…?果たしてそんな人物が居ただろうか。
私もこのパーティーに最初から居たわけではない。
そんな私に思い当たるのは、ヴィエナに行く途中で出会ったイトさんだけだ。
どこか不思議な雰囲気を持った彼女…確証はないが、そうかもしれないとぼんやり思った。
そんなことを考えているうちに、アリアとキラーが会話をしている様子だ。

>「いや、悪かったな、は適切じゃねーな。だから、あー、なんだ言い難いなもう。ともかく!ありがとうな、キラー!」

驚いたことに、アリアがキラーに対し手を差し出している。
初めて彼に会ったときの一幕が頭をよぎる。
このままでは、彼の衝動が発動してアリアの手を舐めてしまう!
慌てて止めに入ろうとした私だった。が、

>「ハァ、ハァ……こ、これからよろしくお願いしまう…」

キラーは手を舐めようとしなかった。
表情から察するに、どうにか衝動に打ち勝ったらしい。
偉いぞキラー、ですよ。私は心の中でそう呟いた。
ここで手を舐めて一悶着あったら面倒なことになっていただろう。
彼の衝動は今後何かと問題を引き起こす可能性がある。
今後は、周りが気を払ってサポートしていく必要があるだろう。
そう思ったとき、ノビがシャルルに話しかけているのが目に留まった。

>「お腹が痛いから、トイレに行ってきます」

体調でも悪いのだろうか。心配である。
様子を見に行こうかとも思ったが、先にシャルルが向かっていった。
彼女に任せておけば安心だろう。私はアリアと共に待つ事にした。

「ところでアリア。先ほど話していた主様、とはどんな人ですよ?
 優しい方なのは分かったけど、アリアはずいぶんと信用しているなと思ってですよ」

何気なく問いかける。別に他意はない。
ただ、どうせこのまま会いに行くなら、先に話を聞いておくのも悪くないと思ったのである。

>「ごめん、お待たせしました。禁書庫だけど……アタシは見たい。
  アリア、当主の天使様のところへ案内してくれるかしら?」

「私もその禁書庫とやらをぜひ見てみたいですよ
 それに、その主様というの方とも話してみたいですよ」
153 : ノビ ◆AmSKbD5biY [sage] : 2012/11/17(土) 00:13:12.39 0
>「もし禁書庫に行く際に誰かを置いていくのもひどいので誰かがいなかった場合私が残ります」

「いいよ。むりしなくって。余計なお世話しないで」
私は呆れたような顔してそっぽをむく。
キラーは明らかに、アリアにたいして何かの気持ちをおさえている。
そんなキラーの気持ちを邪魔するほど、私は野暮ではないのだ。

だから、わたしはトイレに入って鏡をみた。
映っているのは、小さく固くなってしまったような顔。
じぶんでも、こどもみたいな顔をしてるって思いながら
私はお腹をおさえて痛みがおさまるのを待っていた。

>「確かにあの怒りっぷりは普通じゃないとも思うけど、人も天使も色々過去があるものよ。
 名前を間違えられるのを特に嫌うようになった理由が何かあるんじゃないかな。
 それにキラーさんはフォローしてくれたでしょ?
 アイネもとってもいい子だからまだあなたが来たばかりで戸惑ってるだけですぐに仲良くなれるよ。
 アタシ達は現実世界に転生できた時点で選び抜かれてるのよ。
 きっとあなたの力が役に立つときがくるわ」

「……わたし、選ばれたくなんかなかった。
わざわざ転生させられてこんな嫌な思いをするなんて信じられないよ。
もう前に住んでたところに帰りたい。こんなところなんていや」

だだをこねる私に、シャルルは励ますようにチョコをくれた。
でも私は白いものしか食べられない。だから

「……これ、あげる」
トイレから出て、キラーにチョコを差し出した。

「……さっきは、ありがと」
キラーの目を見れずに、私は言った。心臓がどきどきした。
こめかみがじんじんとして意識が白んだ。

「あなたは、なんのためにたたかうの?わたしにはそれがわからないの。
それなのにみんな狂ってるみたいに何かをしようとしてる。
それって私のほうが狂ってるの?だれとも争いごとなんてしないで
ねむっていたいの。これってわたしが欠陥品だからなの?」

それから、わたしはシャルルについていって話を聞くことにした。
私と神様、どっちがおかしいものなのか。それを知りたいって思ったから。
154 : アリア ◇oCL64YbIlM[sage] : 2012/11/18(日) 17:22:07.27 0
腹を壊したノビ、ノビの案内の為に残ると言ったキラー、そしてノビの心配をしてトイレまで付いてったシャルル。

それぞれ散って行ったが結局は禁書庫へ行くことへ決定したらしい。
……にしても、なんだかんだで、仲間思いの連中が多いよなー。
最初は、悪魔なんて、って思ってたけど、これなら安心してマリアに会わせられそうだ。

と、考えていた時だ。

>「ところでアリア。先ほど話していた主様、とはどんな人ですよ?
  優しい方なのは分かったけど、アリアはずいぶんと信用しているなと思ってですよ」

アタシと2人でシャルルの帰りを待っていたアイネが話しかけてくる。

「あぁ、主様はアタシの大切な恩人さ。主様がいなきゃ今のアタシはいねーよ。
それと主様はどう思ってるかわかんねーけど、アタシは――」

>「ごめん、お待たせしました。禁書庫だけど……アタシは見たい。
  アリア、当主の天使様のところへ案内してくれるかしら?」
>「私もその禁書庫とやらをぜひ見てみたいですよ
  それに、その主様というの方とも話してみたいですよ」

そこまで言いかけたタイミングでシャルルが戻って来た。
言いかけた続きが多少気になる素振りを見せながらも、アイネもシャルルに同調する。

「そか、まー、話し合いはもともとこれは主様からの申し出だからな、受けてくれてこっちが礼を言うよありがとう。
 それで禁書庫なんだけど、中央の大教会の地下、危険管理指定な場所にある。ま、『禁書庫』だしな」

アタシはそこまで言うと、少し気まずそうな顔をして頬を掻く。

「それで、だ。散々見せる見せる言って申し訳ないが、先に主様と話し合いをしてもらいたい。
さっきも言ったけどもう一つの片鍵の手順が分かるのは主様だけだ。アタシ1人の一存じゃ入れない。そこは理解してほしい」

それと、と付け足して黒服の懐をもぞもぞと漁る。
地図といい、鍵束といい、なんとも収容性に優れた内ポケットだ。

「んー、お、あったあった。ほれ、シャルル」

そう言ってアタシが投げたのは使い古された手のひらに収まる布袋だ。

「もう夕方だ。夜になると地下に逃げた魔法狂いの動きも活発になる。
 夜に外に出るのは危険ってこった。一応夜間の警備強化と夜21時以降の一部の人間以外は外出禁止令は出してる。
 ま、それはいい。アタシが言いたいのは、多分、主様の許可が取れても今日は禁書庫は見られない。
 大教会の地下の殆どを占める禁書庫だ。ざっと雑に見ても3、4日は余裕で潰れるぜ。そんな長い時間地下にいたんじゃ気分も参っちまう」

途端にアタシは顔に悪戯っぽい笑みを浮かべる。

「だから、役に立つのがソレさ。アタシと魔法狂いの友達との共同開発!中身の減らない金貨袋~!」

胸を張り、ドヤ顔で昔見たアニメの某青狸の真似をする。

「こういう街は珍しいんだろ?だったら地下の調べものがてら、地下の空気に詰ったら東区で好きなだけショッピングでもするといい。
 あー、でも、あんまりの常識外れな多用は止めてくれよ。経済バランス壊しちまうし、何よりアタシが主様に怒られちまう」

ケラケラ笑って、シャルル達に告げる。まあ、この2人ならその心配も無用だろう。
155 : アリア ◇oCL64YbIlM[sage] : 2012/11/18(日) 17:23:32.30 0
「んじゃ、行こっか。あー、それと、大教会の天使は街の天使やアタシみたいにフランクじゃないから気を付けろよ。
 主様は別だけど他の奴等は徹底的に冷静でなんてーか、融通の利かないお堅い奴等ばっかりだ。
 あー、そいや、昔なんかの本で読んだことあんな……あ、そうだ『お役所体質』、そういう表現がよく合うぜ」

説明してて、思った。
あー……やべ、マリアにゃ会いたいけどあんまり大教会行きたくねー。

―大教会ホール1F受付―

そんなこんなで大教会に付いた途端にアタシは受付の修道服の天使に呼び出される。

「アリア様、先日の北区からのクレームの処理が2件。東区からのクレームの4件の対応書類が未だ提出されてませんが」

ほら、早速来たよ。

「いや、口頭で言ったろーがよ。北区は学園でのいじめ問題、首謀者4名は誠心誠意の謝罪の上で1週間の人力発電所、労働賃金は慰謝料として被害者へ。
 そんでそれを2か月放置した馬鹿教師は2か月停職、その間の仕事は人力発電所。労働賃金の30%は同じく被害者に。 
 んで心を入れ替えたら教師復職で、半年間の間、給料の30%をカット、その30%は学園の清掃費用に回せ」

修道服の天使はアタシの言葉を一言一句聞き漏らさず、羽ペンで書類に書き留めてく。

「わかりました、続いて東区からのクレームですが……」

少し責める様な視線に、思わず目を逸らす。

「チッ、わかってんよ。うちの部下がやり過ぎたって話だろ?だがあれはカツアゲと暴行を目撃したからの事だ。
 事情はもう部下から聞いた。それとうちの部下と目撃者の証言はとってある。少し過剰かもしれねーが、正当な判断だ。
 部下を処罰する理由はねーよ。むしろ、路地裏で女をレイプしようとした奴と弱い子どもから何度も金巻き上げよーとする奴に手心なんて加えるかよ」

アタシの逸らした視線は、もう既に修道服の天使と向き合っている。

確かに全治2週間の怪我を負わせたのは少し過剰だったかもしれない。しかし、アタシの部下は間違ってない。

「つまりやり過ぎではないと?」

「そのとーりだ。アンタ等も少しはな、加害者の通報を鵜呑みにすんじゃなくてそっちで考えてくれ。
 言われたとーりやるばっかが仕事じゃねーだろ。ちったぁ頭使って考えろ」

そう言うと、アタシはこの話は打ち切りだ、と言わんばかりに両手を振る。
156 : アリア ◇oCL64YbIlM[sage] : 2012/11/18(日) 17:24:06.02 0
「主様が招いた客人を連れてきた。主様は?」

「……2階の応接室にてお待ちしております」

ぶっきらぼうに答える天使に、思わず溜め息を吐き、シャルル達に向き直る。

「だとさ、とっとと行こーぜ」

アタシ達は受付を通り長い階段を上がると、広い廊下を歩いて行く。
夕日に染まったステンドグラスが美しく廊下の絨毯を彩っている。
廊下にはゼウス神の彫像やアンティークが高そうな花瓶。壁には宗教画が等間隔で飾られていた。

「人間と天使が一緒に過ごして、人間側の意見を譲歩するとさっきみたいな弊害も少なからず出て来る。
 ハハッ、ま、そういうことする人間は少ないけどな。でも、0には出来ない。難しーもんだよな」

長い廊下を歩きながらアタシは独り言のように呟く。
そうして、応接室の巨大な扉の前にたどり着いた。

「んじゃ、主様とご対面と行きますか。そうそう、あんま心配してねーけど、一応注意事項。
 うちの主様はアタシみたいに短気じゃねーし、大抵の無礼は大らかに許してくれる。
 だが、ゼウス様を侮辱する発言や行動はくれぐれも止めた方がいい。マジで、な」

失礼します。シャルル達に忠告した後、アタシはそう言って扉を開く。
そして広い円卓の一番後ろの席で出迎えるのは数時間ぶりに会うマリアの姿。

「お帰りなさい、お疲れ様~、アリアちゃん。
 そして、こんにちは……あら~?時間的にはもう、こんばんは、かしら?
 まあ~、それはともかく初めまして~、悪魔さん達。
 私はマリア・マーガレット。この都市のホストを務めさせていただいてます。この街は貴方達を歓迎しますよ」

そう言ってマリアは、いつものように、にっこり、と、微笑みを浮かべた。
157 : シャルル ◆Z6yK3vQwuU [sage] : 2012/11/23(金) 08:38:13.94 0
>「だから、役に立つのがソレさ。アタシと魔法狂いの友達との共同開発!中身の減らない金貨袋~!」
>「こういう街は珍しいんだろ?だったら地下の調べものがてら、地下の空気に詰ったら東区で好きなだけショッピングでもするといい。
 あー、でも、あんまりの常識外れな多用は止めてくれよ。経済バランス壊しちまうし、何よりアタシが主様に怒られちまう」

「凄い……! ありがとう、常識の範囲内で使わせてもらうわね」

アタシ達の事を信用してくれているのね。ん? 今魔法狂いの友達って言った……?

「へー、魔法狂いの友達もいるの? 本当に交友関係が広いのね」

そしてアタシ達はガチガチのお役所体質の大教会に案内された。
ゼウスが信仰のみならず政治まで全てを支配する今の世の中では大教会とはいうのは実質教会兼役所となるので無理も無い事かもしれない。
お役所体質の天使とのやり取りの末に、ようやくこの都市のホストであるマリアさんの元へたどり着く。

>「お帰りなさい、お疲れ様~、アリアちゃん。
 そして、こんにちは……あら~?時間的にはもう、こんばんは、かしら?
 まあ~、それはともかく初めまして~、悪魔さん達。
 私はマリア・マーガレット。この都市のホストを務めさせていただいてます。この街は貴方達を歓迎しますよ」

いかにもこの街のホストらしく、物腰柔らかで器が大きそうな方だ。
アタシは恭しく礼をして自己紹介をする。口調も相手に釣られて自然と丁寧になる。

「始めまして。わたくしはこのチームのリーダーのシャルル・ロッテです。
この度は画期的な調停の席に招いて戴き歓迎です」

仲間達にも礼をするように視線で促し、本題に入る。

「単刀直入に言いますと、是非とも禁書庫を見せて戴きたいのです」

結論から先に言っておいて、経緯を続ける。

「話し合いに先だって街の様子を見させて戴きましたが
人と天使が共存しているのは他の街には見られないのでとても素晴らしく感激しました。
アタシ達の目的は飽くまでも人間の幸福。
全世界の人間達がこのように幸せに生きられるようになれば必ずしも貴女方と対立する必要は無いと思うのです。
どのような経緯でこの街がこのようになったのか探って他の街にも応用できれば……と思うのですが
そのためにも是非とも禁書庫を見てみたいのです」
158 : キラー ◇k2hGkgyEGM[sage] : 2012/11/24(土) 23:00:12.33 0
>「いいよ。むりしなくって。余計なお世話しないで」

なんとなくノビ君の考えてることは予想はつく…、だったらむしろ止めてくれ!!

>「アタシはアリアから話を聞いておくからノビーをお願いできる?」

まさか頼みごとをされるのは予想だった…、という顔をしているんだろうな、私は

「えぇ、もちろんですよ」

と、私は柔らかな態度で言う、そして少しするとノビ君が戻ってくる、とたんに私に何かを差し出してくる
それはチョコだった、受け取るとノビ君が予想外なことを言ってくる

>「……さっきは、ありがと」

目を合わせないでそう言ってくれた…、照れてるのだろうか?、それ以上に私は意外と感じた、そしてさらに飛んでくる言葉に驚いた

>「あなたは、なんのためにたたかうの?わたしにはそれがわからないの。
それなのにみんな狂ってるみたいに何かをしようとしてる。
それって私のほうが狂ってるの?だれとも争いごとなんてしないで
ねむっていたいの。これってわたしが欠陥品だからなの?」

「…、私は何のために戦う…か…、もちろん、私の為ですよ」

と、私は笑いながら言う

「人は…、いえ、意識あるものはすべて狂っているのです、誰もが欠陥をもちます。
しかしだからこそ意識ある、『生』あるものは美しい…、成し遂げようとする、狂ってもなおすること…、それは生きることを成し遂げようとするのじゃないですか?
私は少なくともそう考えています…、欠陥のない存在はいないのですよ…私自身、欠陥は数多くあるのですから…」

と、笑って言う

「さ、行きましょう、みなさんから遅れてしまう」

私は…、もらったチョコレートを口に入れる…、苦くて、甘かった
そしてアリアさんの後に続く…、アリアさんへの報告を盗み聞きした私は、なぜか胸がモヤモヤした

>「お帰りなさい、お疲れ様~、アリアちゃん。
 そして、こんにちは……あら~?時間的にはもう、こんばんは、かしら?
 まあ~、それはともかく初めまして~、悪魔さん達。
 私はマリア・マーガレット。この都市のホストを務めさせていただいてます。この街は貴方達を歓迎しますよ」

「初めまして、私の名前はキラー・ヨカゲシ。
好きに読んでもらってもかまいません…、私たちをこのような場所に歓迎してくださり、誠にありがとうございます、光栄です」

と、片膝をつき、頭を下げて言う、…言葉が間違ってはいないか気になった…
159 : アイネ ◇AymL.Uu50M[sage] : 2012/11/27(火) 21:40:41.65 0
猫バスに乗ってほんの少し、私たちは大教会へとたどり着いた。
時刻はもう夕刻、教会にかかる西日がまぶしく見えた。
教会に入るとすぐ、黒服の天使が話しかけてくる。
話はどうやらアリアにあるようだった。私たちはそれを待ちながら聞くともなしに聞いていた。
話の内容は、この街の警察組織である天使たちの事務処理のようだ。
アリアは矢継ぎ早に飛んでくる質問に対し、流暢に答えている。
その応答は驚くほど適切で、とても人間味のある答えだった。
これらの質問を処理できなかった天使たちのほうが、おそらく天使としては普通なのだろう。
天使たちはあくまでゼウスの末端個体、彼らは機械的に人間を管理するのが普通だ。
しかし天使の上位個体は、より人間に近い感性と独立した思考回路を持つ。
この場合、上位個体であるアリアたち一部の天使の考えが、この街を動かしているのであろう。
ゼウスのやり方は、人間を機械的に管理し保護するというのが一般的だ。
人間を家畜のように管理された街では犯罪も起こりえず、交通事故すら起こらない。
これで、表面的には「平和で安全な街」が形成される。ディストピアの出来上がりである。
しかしアリアたちは、人間の尊厳を遵守し自主性を許している。
なぜ彼女らがそんな思考を持つに至ったのだろう。興味のあるところだった。
…と、などと考えているうちにアリアの話は終わったようだった。

>「主様が招いた客人を連れてきた。主様は?」

>「……2階の応接室にてお待ちしております」

>「だとさ、とっとと行こーぜ」

促されるまま、私たちは長い廊下を歩く。

>「人間と天使が一緒に過ごして、人間側の意見を譲歩するとさっきみたいな弊害も少なからず出て来る。
  ハハッ、ま、そういうことする人間は少ないけどな。でも、0には出来ない。難しーもんだよな」

「しかし、あなたたちは人間たちに自由意志を許しているですよ。
 今まで見てきた街では、人間は犯罪を犯す前に檻に閉じ込められていたですよ」

私はそう言葉を返す。
ゼウスの機械的な処理ではない、温かな血の通った処罰。
それが与えられているだけでも、大きな違いである。
160 : アイネ ◇AymL.Uu50M[sage] : 2012/11/27(火) 21:41:36.59 0
やがて私たちは大きな扉の前にたどり着いた。
ここが応接室らしい。扉は開き、私たちは中へと通される。
中にあるのは巨大な円卓。その一番奥に、一人の女性が座っているのが見えた。

>「お帰りなさい、お疲れ様~、アリアちゃん。
  そして、こんにちは……あら~?時間的にはもう、こんばんは、かしら?
  まあ~、それはともかく初めまして~、悪魔さん達。
  私はマリア・マーガレット。この都市のホストを務めさせていただいてます。この街は貴方達を歓迎しますよ」

「お招きに預かり光栄ですよ、マリア。私はアイネ・リヴァイアスと申すですよ」

なるほど、と思った。
彼女のようなおおらかな女性がホストであれば、あるいはこんな街が生まれるのかもしれない。
私たちは促されるままに部屋へ通され、席へとつく。
応接間に円卓とは、これもまた彼女たちの精神の表れだろうか、とも思う。

>「単刀直入に言いますと、是非とも禁書庫を見せて戴きたいのです」

シャルルがそう切り出す。彼女らしいやり口だ。
確かに禁書庫は気になるところだ。あるいは、この街の秘密が眠っているのかもしれない。
しかし私は、禁書庫よりもホストであるマリアそのものに興味があった。
街を作り、動かすのは人である。
この街の最高権力者である彼女がどんな人物なのか、そこが気になっていた。
なので私は、禁書庫の話が終わったところで。

「マリア。あなたはどうしてこの街をこんな風に作ろうと思ったですよ?
 この街が他の街と大きく違うのはあなたも承知のはず。
 なぜ人間を管理せず自由にさせているのか、その考えが聞きたいですよ」

ゼウスの侮辱にならないよう言葉を選びながら、そう質問した。
161 : マリア ◆MrCU99fX9rYk [sage] : 2012/11/29(木) 16:11:10.89 0
まぁ~、本当に……なんというか、普通の人間さんっぽいですね~、悪魔さん達は。
しかし報告書によるとこれで不思議な御業を使うと言いますし~、でも良い人達そうですねぇ。

これが私の悪魔さん達を間近で見た第一印象でした。

>「始めまして。わたくしはこのチームのリーダーのシャルル・ロッテです。
  この度は画期的な調停の席に招いて戴き歓迎です」
>「初めまして、私の名前はキラー・ヨカゲシ。
  好きに読んでもらってもかまいません…、私たちをこのような場所に歓迎してくださり、誠にありがとうございます、光栄です」
>「お招きに預かり光栄ですよ、マリア。私はアイネ・リヴァイアスと申すですよ」

「あらあらまあまあ、これはこれはご丁寧に。
 悪魔さん達にはわざわざご足労頂いて……本来ならこちらからお出向きしなければいけない所ですのに。
 あ~、そんなキラーさん頭を上げてください。そんな畏まった態度は無しでお願いします。
 ……でもやっぱり、私の目に間違いはありませんでしたね~。悪魔さん達は良い人達ですね~」

ね、だから言ったでしょうアリアちゃん?私はアリアちゃんに得意気な視線を送る。
悪魔さん達の前だからでしょう。アリアちゃんは、『はいはいそのとーりでした』と、うんざりしたような顔をする。
ついでに付け足すなら、『だからそんな得意気な視線を今アタシに送ってくんな』という声が聞こえてきそうな気がする。
人前では私達は完璧な主従関係に徹している。即ち、私が所謂『主様』でアリアちゃんが『従者』という設定だ。
アリアちゃん曰く、『一応の上下はしっかりしといた方がいーだろ、色んな意味で』だそうですけど……。どういう意味でしょう?

>「単刀直入に言いますと、是非とも禁書庫を見せて戴きたいのです」

「あ~、禁書庫ですかぁ、それはもう……」

悪魔さん達のリーダー、シャルルさんの言葉に私は一旦言葉を止める。

……って、禁書庫?禁書庫ってあの禁書庫ですか!?
あれ~?ちょっとアリアちゃん?あれ?なんで悪魔さん達が禁書庫の存在を?というかもしかして、言いました?

アリアちゃんをガン見すると、露骨に視線を逸らす。

あ、言いましたね。絶対にアレ、アリアちゃん禁書庫の存在をバラしましたね?
いや~、アリアちゃんの性格分かってますけど~……それだけ悪魔さん達が信用できるって事でしょうけれども。

>「話し合いに先だって街の様子を見させて戴きましたが(中略)そのためにも是非とも禁書庫を見てみたいのです」
162 : マリア ◆MrCU99fX9rYk [sage] : 2012/11/29(木) 16:12:53.49 0
「や~、それは私達の街を褒めてくださって大変光栄なのですが~……禁書庫ですかぁ……」

いやぁ~、私だって分かってるんですよ~?下手に隠すのが必ずしも良い結果を生まないって事は。
でも、なんでもかんでも見せてしまうのが最良の結果を生むとは限らないのではな~、とも思うのです。

「ん~、シャルルさん。大変申し訳ないのですが~……一晩、私に考える時間をいただけませんか?
 アリアちゃんが貴方達を信用しているのは分かりました、でも~、禁書庫はそう気軽に見せられる場所ではないんですよ~。
 呪物や取扱い注意の本や宝具がわんさか保管してある危険な場所ですし、ですから大変申し訳ないのですが簡単に許可を出すわけには……」

そう言って私はペコリと頭を下げる。

「ですので、ごめんなさい。一晩時間をくれると嬉しいです」

>「マリア。あなたはどうしてこの街をこんな風に作ろうと思ったですよ?
  この街が他の街と大きく違うのはあなたも承知のはず。
  なぜ人間を管理せず自由にさせているのか、その考えが聞きたいですよ」

と、一時会話が途切れたタイミングでアイネさんから質問が飛んできた。
私はそのままの態勢でアイネさんの方向に視線を向ける。

「えと、ん~……確かに私達の街は確かに他の街と色々と大きく違いますね~。
 アイネさん、私達の、天使の目的は『人間さん達の悠久に続く平和の管理』、と言うのは聞きましたか?
 ただ、私達がするのは『悠久の平和』の管理であって、人間さん達の管理ではありません。
 もともと此処は人の世ですからね~、私達がなんでもかんでもがんじがらめにしては人という種は遠からず途絶えてしまいます。
 ですから~、出来るだけ人間さん達の自主性、みたいのを取り入れているんです~……と言ってもまだ問題は山積みですけど……」

アハハ、と気まずそうに私は笑う。
ん~、少し暗くなってしまいましたね~……いけませんいけません!

私はゴホン、と咳払いをし、声の調子をガラリと変える。

「まあ、難しいお話はここまでにしましょう~。今日は悪魔さん達も色々とお疲れでしょう。
 だからまずはお食事にしましょう!食事は人も天使も、そしてきっと悪魔さん達も幸せにします!
 何か食べたい物や飲みたい物はありますか?出来る限り、リクエストにはお答えしますよ~。
 なんでも言ってください!今日は悪魔さん達の歓迎会、みたいなものですから!」

そういって私は出来る限りの微笑みを浮かべた。
163 : シャルル ◆Z6yK3vQwuU [sage] : 2012/12/01(土) 14:28:21.45 0
>「ん~、シャルルさん。大変申し訳ないのですが~……一晩、私に考える時間をいただけませんか?
 アリアちゃんが貴方達を信用しているのは分かりました、でも~、禁書庫はそう気軽に見せられる場所ではないんですよ~。
 呪物や取扱い注意の本や宝具がわんさか保管してある危険な場所ですし、ですから大変申し訳ないのですが簡単に許可を出すわけには……」
>「ですので、ごめんなさい。一晩時間をくれると嬉しいです」

「もちろんです。良い答えを期待しております」

>「えと、ん~……確かに私達の街は確かに他の街と色々と大きく違いますね~。
 アイネさん、私達の、天使の目的は『人間さん達の悠久に続く平和の管理』、と言うのは聞きましたか?
 ただ、私達がするのは『悠久の平和』の管理であって、人間さん達の管理ではありません。
 もともと此処は人の世ですからね~、私達がなんでもかんでもがんじがらめにしては人という種は遠からず途絶えてしまいます。
 ですから~、出来るだけ人間さん達の自主性、みたいのを取り入れているんです~……と言ってもまだ問題は山積みですけど……」

管理の方法はその街に配備された天使の自主性に任されているということだろうか。
否、天使はゼウスの端末、と聞いている。
この街にはゼウスにとって、人間達を力で抑えつけるよりも懐柔したほうがよい特殊事情があるのではないだろうか。
思い当たる事と言えば結局は魔法狂いに行きつくわけだが。

>「まあ、難しいお話はここまでにしましょう~。今日は悪魔さん達も色々とお疲れでしょう。
 だからまずはお食事にしましょう!食事は人も天使も、そしてきっと悪魔さん達も幸せにします!
 何か食べたい物や飲みたい物はありますか?出来る限り、リクエストにはお答えしますよ~。
 なんでも言ってください!今日は悪魔さん達の歓迎会、みたいなものですから!」

アタシは皆の好物を思い浮かべた。
アイネは美味しいお茶、ノビはうどんをわざわざ汁から出して食べていた。
キラーさんは……手?

「お気遣いありがとうございます。デビチルには個性的な嗜好がありまして。
ではお言葉に甘えて……各種お茶、何も味がついていないうどん
手羽先、それからチーズの盛り合わせを用意していただけると嬉しく思います」

手が好きだからといって手羽先が好きかどうかは微妙なところではあるが。
164 : キラー ◇k2hGkgyEGM[sage] : 2012/12/05(水) 23:27:45.53 0
>「あらあらまあまあ、これはこれはご丁寧に。
 悪魔さん達にはわざわざご足労頂いて……本来ならこちらからお出向きしなければいけない所ですのに。
 あ~、そんなキラーさん頭を上げてください。そんな畏まった態度は無しでお願いします。
 ……でもやっぱり、私の目に間違いはありませんでしたね~。悪魔さん達は良い人達ですね~」

「ではお言葉に甘えて」
そういうと立ち上がる

>
「まあ、難しいお話はここまでにしましょう~。今日は悪魔さん達も色々とお疲れでしょう。
 だからまずはお食事にしましょう!食事は人も天使も、そしてきっと悪魔さん達も幸せにします!
 何か食べたい物や飲みたい物はありますか?出来る限り、リクエストにはお答えしますよ~。
 なんでも言ってください!今日は悪魔さん達の歓迎会、みたいなものですから!」

>「お気遣いありがとうございます。デビチルには個性的な嗜好がありまして。
ではお言葉に甘えて……各種お茶、何も味がついていないうどん
手羽先、それからチーズの盛り合わせを用意していただけると嬉しく思います」

(…なぜに手羽先を選んだ!!?)

「あ、ではローストチキンを…それと白米をお願いします」
と、私は頼む
165 : アイネ ◇AymL.Uu50M[sage] : 2012/12/05(水) 23:29:30.23 0
禁書庫の話はどうやら明朝に持ち越されたらしい。無理もない話だ。
セキュリティの厳重さから見ても、そうやすやすと人様に公開出来る代物ではないのだろう。
なんだか無理な相談を持ちかけたようになってしまって、少々申し訳なく思えてきた。

>「えと、ん~……確かに私達の街は確かに他の街と色々と大きく違いますね~。
  アイネさん、私達の、天使の目的は『人間さん達の悠久に続く平和の管理』、と言うのは聞きましたか?
  ただ、私達がするのは『悠久の平和』の管理であって、人間さん達の管理ではありません。
  もともと此処は人の世ですからね~、私達がなんでもかんでもがんじがらめにしては人という種は遠からず途絶えてしまいます。
  ですから~、出来るだけ人間さん達の自主性、みたいのを取り入れているんです~……と言ってもまだ問題は山積みですけど……」

「貴重なご意見をありがとうですよ。少し分かった気がするですよ」

自主性…そんな一言で片付けられる代物ではない気がするが、少なくとも嘘はついていないのだろう。
やはり、何か外的な要因があってのこの統治なのだろうか。
だとしたら、魔法狂いたちの件もあながち的外れではないのかもしれない。
考えられるとすれば、何か天使の思考に影響を及ぼすマジックアイテムとか…。
さもなければ人間たちに強く出れない特殊な事情でもあるのだろうか。
いずれにしても、考えるのは明日になってからだ。
のども渇いてきたし、今日のところはもう休みたかった。

>「まあ、難しいお話はここまでにしましょう~。今日は悪魔さん達も色々とお疲れでしょう。
  だからまずはお食事にしましょう!食事は人も天使も、そしてきっと悪魔さん達も幸せにします!
  何か食べたい物や飲みたい物はありますか?出来る限り、リクエストにはお答えしますよ~。
  なんでも言ってください!今日は悪魔さん達の歓迎会、みたいなものですから!」

>「お気遣いありがとうございます。デビチルには個性的な嗜好がありまして。
  ではお言葉に甘えて……各種お茶、何も味がついていないうどん
  手羽先、それからチーズの盛り合わせを用意していただけると嬉しく思います」

「お茶!おいしいのをよろしく頼むですよ」

何はともあれお茶がいただけるのならそれ以上何も望むまい。
事前にある程度準備してあったのだろう。料理はすぐに運ばれてきた。
豪華な料理が並ぶ…本当に歓迎会をやるようだ。
何ももてなしを受ける理由のない私たちからすれば、なんだか申し訳ないのだが。
さて、歓迎会が始まって30分、私は料理を肴にお茶をごくごくと飲んでいた。
ここのお茶は実においしい。きっと水が良いのだろう。
キラーはローストチキンをおかずにご飯を食べている。意外と普通だ。
シャルルは次々と運ばれてくるチーズに夢中になっている様子。
きっと彼女の衝動はそれなのだろう。でなければあんな大量のチーズ食べれる訳がない。
ご満悦のところ申し訳ないのだが、私はシャルルとキラーに話しかける。
166 : アイネ ◇AymL.Uu50M[sage] : 2012/12/05(水) 23:30:28.92 0
「禁書庫の話、もし断られたらどうするつもりですよ。
 私としては、魔法狂いたちのカタコンベを当たる方が無難に思えるですよ」

そう話を切り出す。
正直なところ、禁書庫を見せてもらえるかどうかは五分だと踏んでいる。
次善の策は用意しておくに越したことはない。

「もてなしてもらって何だけど、私はまだあの天使たちを信用したわけじゃないですよ。
 あまり期待するのはやめたほうがいいですよ」

まさか罠に嵌められるとかそんなことはないだろうが、用心はすべきだ。
私はそのままお茶を片手に、今度はマリアの元へと話しかけに行く。

「豪華なおもてなしをどうもありがとうですよ。
 私はおいしいお茶をいただけてご満悦ですよ。
 さて、マリア。マリアは性善説と性悪説はご存知かですよ。
 人間の本性は善なるものか悪なるものか、その辺はどう考えているですよ?」

何のことはない、ただの禅問答だ。
もしこの質問をゼウスにしたら、間違いなく悪だと即答されるだろう。
でなければ、人間の平和のために人間を拘束するなんて思考に陥るはずがない。
まあ、悪だという考えは私も概ね賛成なのだが。
167 : マリア&アリア ◆MrCU99fX9rYk [sage] : 2012/12/10(月) 02:30:35.10 0
悪魔さん達の歓迎会が始まって30分が経過した頃でしょうか~、アリアちゃんが私に話しかけてきました。

「主様、そろそろ飲酒はご自重なされてはいかがでしょう。明日のご公務に差支えが」

そう言って片手に持った水を私に差し出す。

ゆらゆらと視界と身体が揺れてますね~。良い感じにお酒が回ってきた証拠です~。
というかぁ、これぐらいじゃ酔った内に入らないですよ、アリアちゃん分かってますでしょう?

「ん~、まだ大丈夫ですよぉ~…酔ってません。アリアちゃんは心配性ですねぇ~」

「酔ってる人の酔ってない発言程当てにならないものは無いですよ。というかなんですかその緑色のお酒は?」

「あぁ~、これはですね~……アブサンと言いまして最近はハマってるんですよ~」

アリアちゃんはテーブルの上に乗っている瓶を取り、ラベルを見る。

「……アルコール度数……70度!?いやいやいや、主様洒落にならねーですってコレ
 いやこれマジでやべーって、洒落になんねーですって」

そんなこんなでアリアちゃんと話しているとアイネさんがこちらに近寄ってくる。

>「豪華なおもてなしをどうもありがとうですよ。
  私はおいしいお茶をいただけてご満悦ですよ。
  さて、マリア。マリアは性善説と性悪説はご存知かですよ。
  人間の本性は善なるものか悪なるものか、その辺はどう考えているですよ?」

唐突な質問ですね~……まあ、私もお酒が入っているので大して気にはしませんけど~。
168 : マリア&アリア ◆MrCU99fX9rYk [sage] : 2012/12/10(月) 02:32:20.25 0
「ん~、善か悪か、ですかぁ~。まあ、まず私達天使の立場の見解としては、人間さんの本性は性悪説ですねぇ。
 根拠としては私達『天使』の存在がそれを証明してしまってまいす。
 人間さん達がもともと善で在るならば、私達、管理者が作られる理由はないですしね~」

そういって私は緑色の液体をグビリと飲み干します。

焼くような刺激が喉から食道、そして胃へと降りていく。すでに空になった瓶が5本テーブルの上に乗せられていた。

「でも~、私個人の意見を言わせてもらうのなら~……性善説、を支持しますね~」

空になったグラスに新たな緑色のお酒を注ぐ。これで6本目。

「元々、性善説の意味は『善を行うべき道徳的本性を先天的に有しており悪の行為はその本性を汚損・隠蔽することから起こるとする説』、です。
 アイネさんはアキヴァやヴィエナと比べ、この都市は良い、と言ってくださいましたね~。
 他の人間さん達も同じように言ってくれます。しかし、そんないい都市でも犯罪が起こってしまうのです。
 しかし、アキヴァやヴィエナは人間さん達にとって劣悪な環境にも関わらず、犯罪らしい犯罪がまるで起こりません。
 私的な意見ですけど、環境によって人間さんは変わってしまうんですよ~。善が先天的ならば、悪は後天的です。
 それが恵まれた環境、他の都市よりも規制が緩やかなこの都市なら、ある程度の犯罪も許される。
 元々、善だった人間さんが、ぬるま湯の様な環境にいずれ満足することなく悪の行為に走る。 
 どちらが正しいのか難しい問題ですよね~、アイネさん?」

酔いが回ってるからでしょうかね~、いつもより口数が多くなってしまってますね~。

「あと、今更ですけど……性善説と性悪説、これは本来意味合い的にはどっちも同じなんですよ。
 『人は生まれつきは善だが、成長すると悪行を学ぶ』というのが性善説で『人は生まれつきは悪だが、成長すると善行を学ぶ』というのが性悪説です。
 つまり、どちらの見解でも結局「人は善行も悪行も行いうる」のであって、まあ区別するのはナンセンスですよ~」

そうして私はゆらゆら揺れる視界の中、再びグラスにお酒を入れ、グイッと飲み干した。
169 : シャルル ◆Z6yK3vQwuU [sage] : 2012/12/12(水) 01:02:01.15 0
ゴーダチーズ、チェダーチーズ、カマンベールチーズ……
次々とチーズを口に放り込んでいると、アイネが話しかけてきた。

>「禁書庫の話、もし断られたらどうするつもりですよ。
 私としては、魔法狂いたちのカタコンベを当たる方が無難に思えるですよ」

「もぐもぐ……え、でもカタコンベはまだ見せられないって…むぐむぐ」

>「もてなしてもらって何だけど、私はまだあの天使たちを信用したわけじゃないですよ。
 あまり期待するのはやめたほうがいいですよ」

アイネのその言葉にはっとする。
危ない危ない、すっかりチーズで餌付けされるところだったわ。
アイネは見た目は年端もいかない少女だが、メンバーの中でで一番冷静かもしれない。

そしてアイネは、マリアに禅問答のような問いを仕掛ける。
対するマリアは、酔っていい気分になったのか饒舌に語っていた。
どうやらマリアは他の街の惨状を本当の意味では知らないようね。
犯罪が起こらないのは当然、ヴィエナなんて支配への反逆という”犯罪”を企てた時点で抹殺されていたのだから出来るはずがないのだ。

>「あと、今更ですけど……性善説と性悪説、これは本来意味合い的にはどっちも同じなんですよ。
 『人は生まれつきは善だが、成長すると悪行を学ぶ』というのが性善説で『人は生まれつきは悪だが、成長すると善行を学ぶ』というのが性悪説です。
 つまり、どちらの見解でも結局「人は善行も悪行も行いうる」のであって、まあ区別するのはナンセンスですよ~」

「そうね。
本来善だが放っておくと悪に走ってしまうから統制しなければいけない、のが性善説。
本来悪だが統制する事によってそれを抑える事ができる、のが性悪説。
結果的には一緒なのよね~。でも、恐怖以外で統制する方法はないのかしら」

すぐに思いつくのは、信仰や崇拝。しかし畏敬と畏怖は紙一重。やはり恐怖と密接に結びついている点は否めない。
いや、人々を団結させる方法がもう一つあった。畏れ多い者への畏敬とはある種真逆。
どこか天然っぽい不思議な魅力のある目の前の人物への”力になってあげたい”という思いで団結させ統制する、のがこの街の統治方法!?

そうこうしているうちに、夕食会は終わる。

「御馳走様でした。本当に素敵な晩餐会だったわ。……特にチーズ」

アタシは、アリアからお借りした魔法の袋を広げて仲間達に見せながら言う。

「さて、散歩がてら買い物でも行きましょうか」

ただ遊びに行くわけではない。アリアは、夜になると魔法狂いの動きが活発になる、と言っていた。
運が良ければ遭遇できるかもしれない。

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