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――――なんてことない気紛れ。ただの気紛れだった。 「チクショウ、寝過ごせなかった」 枕元の目覚まし時計を確認しながら彼はそう呟いた。 6時50分。 早朝、木漏れ日が心地いい時間帯。 そして今日は新学期。 休む気満々で昨夜床に就いたのだが、逆に気負ってこんな結果になってしまった。 「まあ、こんなこともあるさ」 良く言えば楽観主義、悪くは言わない。 いちいち自分の悪いところを気にしていたら気が滅入ってしまう。 起きてしまったら、起きてしまったでしょうがない。 彼は着替えを済ませ、冷蔵庫をあさり始めた。 「おうおう、素晴らしい朝だ」 快晴。 なんてことない天気がいいだけの朝だったが、不思議にもそんな感じだった。 「こんな日に飛べたらどんなにいいか…」 通学路の空に向けて呟いた。 時々、こんな奇妙な思いに苛まれる。 このまま空に溶け込みたい、流れゆく雲になりたい。 物心ついたときから彼は、『自由』に憧れるようになっていた。 空想にふけりながら歩みを進めていき遂に校舎が見えてきた。 しかし、彼は立ち止り、耳を澄ませた。 ザンッ ザンッ ザンッ 何やら風を切るような音が聞こえてくる。 普段の彼だったらまず関わらない、そんな類いの出来事が起きている気がした。 だが、今日は違った。 気紛れにも足を向けてみることにした。 「えっ?」 気がつくと彼は空を飛んでいた。否、ぶっ飛ばされていた。 ありえない。 理性が追いつかない。 異常なことが自分の身に起こっている。 暗く硬い地面が迫っている。 彼は、半ばあきらめつつ腕で頭をかばっていた。 空を切る感覚が冷たく、何とも心地がいい。 意識が闇に沈む前、不覚にもそんなことを思っていた。 「いやー悪かった」 全く悪びれる様子もなく、目の前の少女は言った。 「まさか、こんな時間のこっちのここに人が居るなんて」 「アレをやったのはあなたですか?」 無傷なことに驚嘆しながらそう言った。無論冗談である。 「そーいえば名前がまだだったね」 「私は、蘇芳 恋(すおう れん)この学校の2年生、君の先輩♪」 冗談を無視して、かわいらしいポーズを決めつつ自己紹介している。 「で、蘇芳さ…」 「先輩」 「えっ」 「先輩!」 ようやく意図を察し再び呼びかける。 「蘇芳先輩」 「あー良い響きーー」 目を細め御満悦といったところだ。 ナンダコノヒト メンドクサイ 彼はそんな思いに支配されはじめていた。 めげずに現状把握に努めてみた。 「さっきのアレはなんだったんですか?」 「私以外に誰かいた?」 「はい?」 あきらめたくなってきた。 「ごめんね…ホントに気がつかなくて」 呟くようにそう言う。 いまいち会話が噛み合わない。 さっき起きた超常現象を彼女はさも自分がやったかのように謝っている。 「もしかして帰れないの?」 やはり意味がわからない。彼はとっくにあきらめていた。 「仕方ないなー」 やれやれ、といった感じでこちらに向き直る。 「じゃあね、次会った時は名前教えてね!」 突然思い出したかのように自己紹介を求めてくる。 そして… 彼はきっちり寝過していた。 12時38分。 「なんだ、やればできるじゃないか」 鮮明な『夢』の余韻に浸りつつ彼は満足げに呟いた。 たまには早起きもしてみるもんだな… そう思いながら彼は二度寝の態勢に入っていた。 第三話 (カムイ外伝)
――――なんてことない気紛れ。ただの気紛れだった。 「チクショウ、寝過ごせなかった」 枕元の目覚まし時計を確認しながら彼はそう呟いた。 6時50分。 早朝、木漏れ日が心地いい時間帯。 そして今日は新学期。 休む気満々で昨夜床に就いたのだが、逆に気負ってこんな結果になってしまった。 「まあ、こんなこともあるさ」 良く言えば楽観主義、悪くは言わない。 いちいち自分の悪いところを気にしていたら気が滅入ってしまう。 起きてしまったら、起きてしまったでしょうがない。 彼は着替えを済ませ、冷蔵庫をあさり始めた。 「おうおう、素晴らしい朝だ」 快晴。 なんてことない天気がいいだけの朝だったが、不思議にもそんな感じだった。 「こんな日に飛べたらどんなにいいか…」 通学路の空に向けて呟いた。 時々、こんな奇妙な思いに苛まれる。 このまま空に溶け込みたい、流れゆく雲になりたい。 物心ついたときから彼は、『自由』に憧れるようになっていた。 空想にふけりながら歩みを進めていき遂に校舎が見えてきた。 しかし、彼は立ち止り、耳を澄ませた。 ザンッ ザンッ ザンッ 何やら風を切るような音が聞こえてくる。 普段の彼だったらまず関わらない、そんな類いの出来事が起きている気がした。 だが、今日は違った。 気紛れにも足を向けてみることにした。 「えっ?」 気がつくと彼は空を飛んでいた。否、ぶっ飛ばされていた。 ありえない。 理性が追いつかない。 異常なことが自分の身に起こっている。 暗く硬い地面が迫っている。 彼は、半ばあきらめつつ腕で頭をかばっていた。 空を切る感覚が冷たく、何とも心地がいい。 意識が闇に沈む前、不覚にもそんなことを思っていた。 「いやー悪かった」 全く悪びれる様子もなく、目の前の少女は言った。 「まさか、こんな時間のこっちのここに人が居るなんて」 「アレをやったのはあなたですか?」 無傷なことに驚嘆しながらそう言った。無論冗談である。 「そーいえば名前がまだだったね」 「私は、蘇芳 恋(すおう れん)この学校の2年生、君の先輩♪」 冗談を無視して、かわいらしいポーズを決めつつ自己紹介している。 「で、蘇芳さ…」 「先輩」 「えっ」 「先輩!」 ようやく意図を察し再び呼びかける。 「蘇芳先輩」 「あー良い響きーー」 目を細め御満悦といったところだ。 ナンダコノヒト メンドクサイ 彼はそんな思いに支配されはじめていた。 めげずに現状把握に努めてみた。 「さっきのアレはなんだったんですか?」 「私以外に誰かいた?」 「はい?」 あきらめたくなってきた。 「ごめんね…ホントに気がつかなくて」 呟くようにそう言う。 いまいち会話が噛み合わない。 さっき起きた超常現象を彼女はさも自分がやったかのように謝っている。 「もしかして帰れないの?」 やはり意味がわからない。彼はとっくにあきらめていた。 「仕方ないなー」 やれやれ、といった感じでこちらに向き直る。 「じゃあね、次会った時は名前教えてね!」 突然思い出したかのように自己紹介を求めてくる。 そして… 彼はきっちり寝過していた。 12時38分。 「なんだ、やればできるじゃないか」 鮮明な『夢』の余韻に浸りつつ彼は満足げに呟いた。 たまには早起きもしてみるもんだな… そう思いながら彼は二度寝の態勢に入っていた。 (カムイ外伝) [[第三話]]

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