第一話


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チロロロロロロロロロ
「・・・ん」
覚醒して最初に映ったのはぼやけた淡い天井の色と、腐り、点々と不快な錆びついた焦げ茶色。
チロロロロロロロロロ
体はまだ完全に目を醒ましていない。
右を向く。
すると、震えながら小刻みにビートを打つ金属音に気がついた。
「うぜぇ・・・」
ぶん殴る。そして、静寂が訪れ、また深い眠りへと誘われる。
だが、今日は何か違う。何か昨日から心に掛けていたある事があったはずだ。
思い出せない、思い出せないがどうやら俺の奥底から不思議な焦燥感が芽生え始めているのに気がついた。
なぜそんなに俺は焦ろうとしているのか、この腑に落ちないものは一体何者だ?
そうやって自問自答を繰り返す余地も無く、まもなく俺は睡眠の妨げとなる声を聞く。
「おーい、恒成くーん!」
その声は窓からやってきた。
聞きなれた甲高い声。どうやら、女には間違いない。そして俺の名を知っている。
「恒成君?起きないとー、遅れちゃうよー?」
煩いな。少し静かにしてほしいものだが、「遅れる」とはどういった事なのだろう。
さて、今日は何か特別な日だったはずだ。そろそろ何かやべえな。我が脳よ、覚醒するのだッ!
「うーん、新学期早々遅れるのは恥ずかしくないのー?」
ああ、この声だ。近所の幼馴染(ファッキンぱっつん小動物系糞美少女)だ。
名前は、確か蛭川 結水(ひるかわ あけみ)だったな。
ったく、新学期、朝っぱらから大声出してつるんで来るなよ。
いくら学校が同じになったとはいえ、俺は毎回こいつに起こされるのか?
新学期早々。新学期。・・・シンガッキ?
「って、うわあああああああああああ!!?
 はあああああああぁぁぁぁぁ・・・・・・
 ・・・・・・っべー、遅刻じゃん」
絶句し半ば諦めかけて一旦冷静になり、絶望とため息に入り混じり、よくもこう腑抜けた声も出たなぁと我ながら感心、
するはずも無く、形振り構わず形を整え家を飛び出した。
「あっ、まっ、待ってよ恒成君ー」
追いかけてくる小動物をシカトしつつも俺は徒歩10分という奇跡の近さが唯一利点の新たな高校へとわき目も振らず一心不乱に走り行く。
「チクショー!学校近いから油断してた!受験苦労して受かったはいいが、この近さが逆にデメリットになろうとぅわッ!!?」
誰に説明していたわけでもない独り言をごてごてとほざいていた俺は、何の天罰か、曲がり角で何者かに衝突した。
「イッテテテテテ・・・あ、すみません、お怪我は?」
ぶつかった相手に目をやると、なんとそこには金髪ロン毛美少女が。
なんだ、このテラ王道学園物展開術は。さすがにこの展開はベタ過ぎるよ神様。
がしかし、ただ一つ斬新なのは、彼女なんかそれはもうめっちゃ殺意むき出しなことだった。
「・・・運が良かったね。僕があとちょっと気分が悪かったら、君、
 ―――――死んでた」
「えっ」
俺は不覚にもブルった。
「じゃあね。曲がり角には気をつけなよ。偶然は必然だから・・・」
そう言って少女は立ち去っていった。いや、さっきのは本当に少女だったのか、それすら疑えるほどの溢れるカリスマオーラがそこにはあった。
が、俺にはこんな珍事を気に留める余裕は無い。
一刻も早くニューハイスクールの大地を踏まなければならないのだ。
「はぁっ、はぁ、つ、恒成くんっ・・・あのねっ、ちょっと聞いて」
後方からカルガモのように付きまとってくるファッキン幼馴染が俺様をせき止めようとする。
「話は後だ!俺には一刻の猶予も許されないのだ。分かるな?高校だ。お前も走れ!」
「あのっ、その高校のことなんだけどっ!」
「あー?」
「今日の登校時間が9時30分なの」
「で?」
「今の時刻は8時20分」
「ふーん・・・え」
俺はギアを6段階下げ、強制的に走行を停止させた。俺が急にブレーキをかけたせいか、ファッキンあひる川がぶつかって来た。
「うわっぷ!いっ、いきなり止まんないでよ」
「おい」
俺は踵を軸にくるっと華麗に回転し、ぱっつんファッカーの胸倉を掴んだ。
「ひゃっ!?つ、恒成君・・・?」
さあ、尋問の開始だ。
「お前、なぜそれを早く言わなかった?」
「恒成君が凄く一生懸命に走ってたから中々追いつかなくて、それで、言いそびれて・・・
 って、恒成君、顔近いっ」
「てか、お前、遅刻するーとか言ってなかったか?なぜ嘘をついた?」
「はっ、あ、いやーその、恒成君全然起きてくれなかったから、少しでも早く起きて欲しかったというか・・・
 あの・・・みんな見てるから、そろそろ離」
「貴様、我が高貴なる安らぎの一時を略奪した罪は大きい・・・
 どう落とし前をつける?あー?」
「はぅ・・・ご、ごめんなさぃ」
「その辺にしといてあげては如何ですか?」
横から何者かが介入してきた。
容姿は、真っ黒なシルクハットに燕尾服。ステッキまで持ってやがる。どう見ても見るからに怪しい宗教団体の方にしか見えない。
「誰だ?テメェ」
「はい、ワタクシ、こういう者です」
そう言って、こちらにスっと手馴れた手つきで名刺を取り出し、差し出された。
だが、そこには何も書かれていない。名刺ではなくただの紙切れのようだ。
「あ?ふざけてる?」
「いえいえ、滅相もございません。ただ、あなたがもしこれがただの白紙として見えたなら、それまで。
 逆に、これが白紙ではない『何か』に見えたのなら、それもまた然り」
「意味分からんし気持ち悪い。失せろブラッキー」
そう言って俺は黒執事らしき人を一蹴し、幼馴染の尋問に戻ろうと顔を戻した所、カルガモファッカーはすっかり困りきった顔になっていた。
「そろそろ離してくださし・・・」
そういえば俺はずっと胸倉を掴んだままだった。しかもやけに重い。胸ばっか成長しやがって。
そうして俺はすかさず手を離した。ぱっつりファッキングの制服には掴んだ痕のしわがくっきりとよっていた。
「では、私はこれで失礼致します。また、『今度』お会いしましょう・・・クフフフ・・・」
「あ?まだいたのか。とっとと失せろマザ○ァッカー。下賎な笑いかましやがって、二度と会うかッ!」
とは言ったものの、内面では少しばかり訝る何かの不安が心を過ぎった。

(末端)


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