第三話


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怪しい黒ずくめの男が過ぎ去ったあと、余裕綽々で学校に間に合った俺こと恒成とその幼馴染の蛭川は始業式に参加し、
特にこれといった事はなく閉幕。その後教員の指示により、新入生諸君らは自分たちの教室へと足を踏み入れた。
「おー、恒成君とは一緒のクラスだねぇ。改めましてよろしく!」
結局、ファッキンぱっつん小動物系巨乳糞美少女型幼馴染(以後、蛭川で統一する)とは不運にも一緒のクラスだった。
「死ね」
俺は幼馴染に軽く挨拶を交わし、黒板に貼られていた座席表を参考に自分の席に座った。
「おおー、恒成君のおとなり!やったー!」
「黙れ」
そろそろクラス全員集まり、先生から自己紹介や事務報告などが言い表されようとする雰囲気の最中、唯一ひとつだけ空席の所があった。
(まだ来てない奴がいる・・・まさか、初日から不登校か!?)
その勇敢で強靭な精神力を持つ猛者を心から表彰したいところだが、約束の時間を破る者は俺がこの世で一番嫌いな性格の一つだ。
よって、その不登校者がどんな華奢で可憐な美少女であろうとも、次この部屋の引き戸を開けたその瞬間力一杯ぶん殴ることにしよう。
そんなことを考えていたら、先生の心底どうでもいい自己紹介もいつの間にか終わっていたので、
俺はこのくだらない有象無象の高エントロピー豚箱空間から一番で抜け出した。
「ちょっ、待ってよー」
蛭川がまたもや俺の背中を追尾してくる。
「待たぬ」
追いつかれぬよう、俺はいっそう足を速める。
その間、廊下で烏合の衆に何度もぶつかったが、同情の意とせめての気休めとして我が崇高なる唾を吐いてやった。
「なんでそんなに急いでるのーっ?」
「始業式のプログラムは教師による号令の挨拶で締め括られた瞬間に終わったのだ。
 そして、ここにいる存在理由が消滅した。即ち、帰宅!!」
正論とはまさにこのことを言うのだろうと、自分で言い放ったキメ台詞がかっこよすぎて鳥肌実。
「ええー!それ理由になってないよー!急いで帰らなくてもいいじゃん」
論破された。
「き、詭弁だな。まあ、要するに、だ。一刻も早く帰りたいんだ。
 俺は欲に甘いんだ!快楽(エピクロス)主義者なんだよ!!
 うわあああああ!!ベッドにヘッド擦り付けながら潜り穿って寝たいいいいい!!
 ベッドイントゥ!!コークスクリューダイビングゥ!!もふもふもふもんっぐぅわああああ!!!」
遂に発狂した。
年経ても大成せず、糊口を凌ぐためまた“賤吏”に戻るが、“賤吏”の上役に使役される毎日をして鬱憤が溜まり、遂に発狂した感じの気分だ。
「ヒャッハーーー」
校門はもう目の前だ。
この敷地外に出れば晴れて楽園の彼方(アヴァロン)。
徒歩10分という奇跡の近さが唯一利点のションベン高校からおさらばすることができる。
さあ、踏み出すん(カットビング)だ、俺!
「うおおおおおおっおっおっ!?」
が、駄目。
校門をくぐろうとしたまさにその瞬間、俺は何者かによってコースを遮られた。
「何だ貴様ァ!」
「やあやあ!威勢いいね!初日から走りこんでるねえ!!新入生かな?
 どうだい?我が陸上部に入らないか?君ならインターハイ狙えるよ!!」
そう言い張るやけにハイテンションな青年は、スポーツ刈りのデコ助野郎。
「あ?リクジョウブ?」
まさか、初日からもう既にクラブ『勧誘』が始まっている、だと?
そんな馬鹿な。
思わぬところで足止めを食らってしまった。
「おーい、恒成くーん!」
まずい、蛭川に追いつかれてしまった。これは一生の不覚。
そしてこうなったのも森羅万象全て何もかもこのスポーツ野郎のせいである。
「どうだい?陸上部に・・・」
「俺は入らん。いや、入れん。何故なら既に部活に“入っている”からだ・・・
 そう、『帰宅部』っ・・・!」
我ながら正論過ぎて血ヘド吐きそう。
「あー、残念ながらこの学校には『帰宅部』は無いんだよねぇ。
 どっかしらの部活に入らないといけない規則なんだ」
何だと?なんて傲岸不遜で横暴な校則なんだ。
俺は更に胸糞悪い気持ちで胸いっぱいにした。
「と、言うわけで陸上部に」
「誰が入るかチンカス!精々ハゲ散らかしてほざいてろワレェ」
俺は一目散に立ち去った。ただし、校門とは逆の方向に、だ。
「あれっ?恒成君どこ行くの?」
馬鹿な女だ。そんなもの決まっているだろうに。
「―――――選考(ドラフト・ワン)だ」

こうして掲示板の前に立って何十分過ぎただろうか、中々お目当ての部活が見当たらない。
張り紙はどれもカラフルに彩られていて虫唾が走るものばかりで、それでいて全く興味を示せない。
「もうそろそろ諦めようよ、恒成君。
 時間はまだたっぷりあるし、体験入部とかしてじっくり選べばいいじゃん・・・
 今日はこの辺にして一緒に帰ろう、ね?」
馬鹿な女だ。こういう面倒なことは早めに決めておいたほうがいいのだ。
どうせ後になってどうしても決断を強いられる羽目になり、やりたくも無い部活動に強制的にやらされるのだ。
俺の昔の友人は、先輩達の強い押しによってか、特に入る予定でもなかったバレー部に入部してしまい、そこで地獄を見た。
結局、友人は情けないことにバレー部を一年でやめてしまい、本来入りたかったであろう吹奏楽部に行った。
だったら、せめて早々に自分で選るのが最良の選択というものだ。当たり前だがな。
が、しかし、どれも面倒で喚起されない部活ばかりだ。これだから低俗愚民共は。
と、掲示板の隅の方にある質素な張り紙が映った。
「秘密結社ゴランノス=ポンサー エージェント募集 拠点:4階暗室」
と、極太マジックで殴り書きされている。
正直俺は不意打ちを食らった。少し心時めいたりもした。とにかく、全体を見渡す限りではこれが一番興味を惹かれた。
「これだな」
「え?決まったの?」
キョトンとした蛭川を尻目に、早速示されている部室へと足を運び、この場を後にする。
そして、
「たのもー!!」
俺は暗室と呼ばれる教室の扉を大きく開け放った。
「何事ぞ!?」
男の声。中には青年が二人ほど居座っている。
一人はボストンフレームのメガネでヒョロそうな、いかにも「拙者、アニメ大好きでござるよ、デュフフフ」系のオタク。
もう一人は、怪しげな紋章の刺繍が入った学生帽を深く被り、漆黒の前髪で顔が完全に隠れていて、
たいそう肌色が悪く、サイケデリックを感じる少し小柄な少年。
この二人、雰囲気(オーラ)だけでも相当「できる」奴だと流石の俺ですら感じ取れるほどひしひしと伝わってくる。
やはり、『秘密結社ゴランノス=ポンサー』など怪しすぎた。やめるか?
いや、ここまで来たからにはもう引き下がれない。やるしかないだろう。
「俺は・・・入部希望者(エージェント)だ!!」
「「!!」」
青年二人の顔は鳩が豆鉄砲を食らったかのような極めて驚愕な様子の形に変形した。
いや、学生帽を被ったほうの顔の様子は伺えなかったがそんな感じがした。
「そうか・・・エージェントか!
 ようこそ、我らが秘密結社ゴランノス=ポンサーへ・・・!!」
ボストンフレームが握手を求めてきたが払い退ける。
「勘違いするなよ?俺は部活動がめんどくさいから、一番どうでもいい部活を選んだだけだ。
 貴様らなど眼中に無い」
これを聞いたボストンは驚いていたが、しばらくして何か理解したのか、ニヒルな笑いを浮かべ始める。
「ふむ、ツンデレですか。まあ、こういうエージェントもありですかね・・・クヒヒヒヒ」
「あの」
俺の後ろにこっそりといた蛭川が唐突に発言する。
「恒成君がここに入るのなら、私も入部志願(エージェント)したいです!」
これは驚倒した。
「なっ、蛭川!?、お前いいのか?
 こんな意味不明な部活に入って・・・」
蛭川は静かに首を縦に振った。
そして、ボストンは過剰な反応を示す。
「おおおお!!!おおおおお、お、女の子だ!
 女の子がエージェントになったぞ!!しかもおっぱい美少女だ!!」
かなり大声だったからか、蛭川の頬が少し赤くなったように見えた。
「おい、菊池よ、女子だぞ女子!これで歴代女子エージェント二人目だな!
 レンたん以来の・・・」
「その名を口にするな」
菊池と呼ばれたサイケ少年は、声自体は高めだがかなりドスの利いた声でボストンを黙らせた。
何か言ってはいけない事だったのだろうか。
タブーっぽいがどうしても気になってしまい、ついつい訊いてしまった。
「レンたんとは?」
それを聞いたボストンが、その問いに答えようと口を開いたが、それを遮るように菊池という名の少年が、
「蘇芳恋。去年、エージェントだったが、消えた。
 消えたというのは、行方不明という意味だ。
 だが、それに関して君ら新入りが気にする必要は全く無い」
と淡々と述べた。
何だこの重い空気。
蘇芳恋?
行方不明?


あまり首を突っ込まないほうがいいかも知れないな。

(末端)


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