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ココロの声」(2016/04/26 (火) 00:23:21) の最新版変更点

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*ココロの声  直井文人にとって、この殺し合いの目的なんてどうでも良かった。  誰が死のうと関わりのない事だし、一々助けてやる義理も無い。  優勝者は願いを叶えてもらえるらしいが、そんなものに興味は無い。  面倒事に巻き込んでくれた主催者たちには、当然償いはさせるが、自分から積極的に動こうとは思わない。  つまりは、わざわざ労力を割いてまで如何こうしようとは考えていなかったのだ。  ――――名簿を見るまでは 「音無……さん?」  震える声で言葉を紡ぐ。  震える声で名前を呼ぶ。  文人が手に取った――本当に何の気なしに取った――名簿には、彼のよく知る名が記載されていた。  音無結弦  名簿のやたらと人数の多いア行、その最後にその名前は記載されていた。 「なん……で……」  音無結弦とは、文人を救った人物の名前である。  無論これは彼らの関係を一言で言い表した場合であり、彼からすれば「救われた」などと言う言葉で表されるほど、簡単な仲ではない。  もしも時間が許すのであれば、文人は結弦について、七日七晩を通しても語り切れない想いを持っている。  故に文人は思う。  いけない。この人は、こんな場所に居てはいけない。こんな場所に居るべき人間ではない、と。 「あの神父……よくもっ!」  驚愕は憤怒に。尊敬する人物をこんな低俗な諍いに巻き込み、命を脅かそうとする悪辣さに対して。  文人は聡明である。聡明であるが、こんな状況で冷静さを保てるほど落ち着いた人物ではない。  生じた怒りに身を任せるように、自身が先ほどまで座っていた椅子を思いっきり蹴り飛ばす。  派手な音を立てて椅子は転がり、壁にぶつかって動きを止めた。 「落ち着け……落ち着け、文人」  空しく響き渡った残響音。耳障りな荒い呼吸音。  一度感情を外に出すことで、無理矢理に落ち着かせる荒療治。  そうとも。抑制できないのであれば、抑制できるレベルに落とせばよい。  怒りは収まらないが、先ほどまでに比べれば数段マシであろう。  思考できる程度まで落ち着きを取り戻したなら、次にするべき事は自然と浮かび上がってくる。 「まずは……」  参加者名簿を広げ、顔見知りが他にいないかを確認する。  立花奏、日向秀樹、仲村ゆり、あとはユイ。以上の四名。記憶の片隅に引っかかった名前にマーカーを引く。  58人中、自分達を含めた6名。まぁ、最後の記憶を思い返せば、友好的に手を取れそうな人物たちではある。多分。  思わぬところで恵まれたな。溜息と共に言葉を吐き出す。不幸中の幸いと言うやつだろう。  他に気になる事があるとすれば、名簿にある音無伊御と言う名前。  音無と言う苗字は全国的にあるものではない。とすれば結弦の関係者である可能性は高いが、本人の口から何も聞いていない以上は、如何ともし難い。  まぁ会った時に訊けばいいだろう。文人にとっての最重要人物は音無結弦である。その他のことなど正直どうでもいい。 「じゃあ、次は……」  次に考えるのは彼らが向かいそうな場所。  地図を広げ、皆が集まりそうな場所を特定する。本当であれば結弦以外の人物と手を取りたいとは思わないが、現状が現状だ。何が自分にとって最優先すべき事柄であるかを履き違えてはならない。  行動指針は決まっている。  覚悟なんてものは既に済ました。  ならば、もう此処にいる必要性は無く――――    ――――タンッ  衝撃。 「な……ん……?」  崩れる膝。  熱を帯びた腹部。  地面に手を付くことで無様に倒れる事だけは防ぐが、行為自体に意味は殆ど無い。  その証拠に、息をつく間もなく頭部に固いモノが押し当てられる。 「――――っ」 「悪いな」  言葉と、音と、衝撃は同時。  何があったのか。何が起きたのか。  その全てを理解するには、もう遅い。 (……音無……さん)  ただ一つ。  自分を救ってくれた人の名が、文人が抱いた最期の言葉だった。 &COLOR(red){直井文人@AngelBeats!=死亡} ■  支倉孝平からすれば、この殺し合いとやらは端から出来レースであった。  千堂伊織と千堂瑛里華。彼のよく知る二人の吸血鬼の力を持ってすれば、こんなくだらない催しはすぐに終わるに違いない。その行き着く結末がなんであれ、だ。  だから自分が出来ることは何も無い。せいぜい何処かの家の部屋の隅で隠れているのが自分の出来ることだろう。  特別な力はなく、強い意志も無い。  知り合いが人外であっても、孝平自身は何の変哲もない一般人なのだ。  ――――貴方は、それでいいの?  あの日、千堂瑛里華に問われた言葉が脳裏に蘇る。赤い眼と、溢れる涙。呆気なく記憶の消去を選んだ自分に対し、他人事の筈なのに、彼女はひどく悲しんでいた。  結局自分はそれを良しとせず、彼ら吸血鬼と付き合っていくことを決めた。思い出を築くと言う原初の考えをもって、確かにあの日を楔に自分は昔の自分とは分かれた筈だった。    だが、今回は規模が違う。    記憶を失う程度がせいぜいの前回と、命を失いかねない今回。  一笑に付すには、あまりにも現実離れしたこの所業。  一秒先には、もしかしたら死んでいるかもしれない。  故に、支倉孝平は自身の決断を一枚の硬貨に任せた。 「表が出たら乗る。裏なら乗らない」  こんな軽々しく物事を決めるなんて、随分と安っぽい意志だとは思った。  だが大層な意志を以って、自分に何が出来るのか。ただの一般人でしかない高校生が。  だから、運任せ。  本当ならそもそも人殺しなんてものに手を染めたくはなかったが、支給されていたパソコンが孝平の思考に一つの選択肢を与えていた。 『首輪の裏に記載されている番号をメモし、メールで送信すれば首輪の解除方法を教える。まずは三人分。時刻は指定しない』  デスクトップに『解除方法』と銘打たれて置いてあったメモ。  裏ということは、取り外しでもしない限り読み取ることは不可能。  その真偽がどうあれ、溺れていれば藁でも縋りたくなるのが人間だ。  硬貨が表なら、積極的に殺して集める。  硬貨が裏なら、死体から剥ぎ取る。  そうして出た結果は――表。 「……よく出来ているよ」  偶然か、或いは必然か。  自身のいる消防署内には、自分以外にもう一人いた。  阿呆みたいに騒いでくれていたおかげで、場所は容易に特定できた。  隙だらけだったおかげで、仕留める事すら手間取らない。  簡単なものだ。弾丸二発で、人は死ぬ。 「……その上、相手が所持していたのは刃物。順調すぎだな、ははっ」  まるで仕組まれていたみたいだ。本当に。  普段ならば絶対に言わないような軽口すら零して、孝平は今しがた自分が殺めた人物の首に刃を入れる。  返り血が掛からない様に、背後に回ってから切り裂く。  既に穴の開いた頭部から血は流れているが、首輪を外す際に血塗れになりたくはない。  念には念を入れて行動する。まだこれは一人目なのだ。 「……一つ目」  鈍く光る銀色の首輪を死体から取り外し、大きく長く息を吐く。  賽は投げられた。  もう後戻りは出来ない。 「……謝らないよ。まだ、死にたくはないから」   【一日目/0時30分/H-2、消防署内】 【支倉孝平@FORTUNE ARTERIAL】 [状態] 健康、精神的疲労(小) [装備] 大鉈 [所持品]基本支給品、ノートパソコン、S&W M37 エアーウェイト(3/5) [思考・行動] 基本:生存優先、ノートパソコンのメモに従う 1:首輪を三つ集める 2:死にたくない 【備考】 ・体育祭後の参戦 ・ノートパソコンのメモには、以下の事が書いてあります ①首輪の裏に記載されている番号を送信すれば、首輪の解除方法を教える ②まずは三つ必要 |No.033:[[ラッキーガール]]|[[投下順]]|No.035:[[]]| |No.030:[[守るべきもの]]|[[時系列順]]|No.006:[[醒めない夢]]| |COLOR(yellow):GAME START|支倉孝平|No.:[[]]| |COLOR(yellow):GAME START|直井文人|COLOR(red):GAME OVER|
*ココロの声  直井文人にとって、この殺し合いの目的なんてどうでも良かった。  誰が死のうと関わりのない事だし、一々助けてやる義理も無い。  優勝者は願いを叶えてもらえるらしいが、そんなものに興味は無い。  面倒事に巻き込んでくれた主催者たちには、当然償いはさせるが、自分から積極的に動こうとは思わない。  つまりは、わざわざ労力を割いてまで如何こうしようとは考えていなかったのだ。  ――――名簿を見るまでは 「音無……さん?」  震える声で言葉を紡ぐ。  震える声で名前を呼ぶ。  文人が手に取った――本当に何の気なしに取った――名簿には、彼のよく知る名が記載されていた。  音無結弦  名簿のやたらと人数の多いア行、その最後にその名前は記載されていた。 「なん……で……」  音無結弦とは、文人を救った人物の名前である。  無論これは彼らの関係を一言で言い表した場合であり、彼からすれば「救われた」などと言う言葉で表されるほど、簡単な仲ではない。  もしも時間が許すのであれば、文人は結弦について、七日七晩を通しても語り切れない想いを持っている。  故に文人は思う。  いけない。この人は、こんな場所に居てはいけない。こんな場所に居るべき人間ではない、と。 「あの神父……よくもっ!」  驚愕は憤怒に。尊敬する人物をこんな低俗な諍いに巻き込み、命を脅かそうとする悪辣さに対して。  文人は聡明である。聡明であるが、こんな状況で冷静さを保てるほど落ち着いた人物ではない。  生じた怒りに身を任せるように、自身が先ほどまで座っていた椅子を思いっきり蹴り飛ばす。  派手な音を立てて椅子は転がり、壁にぶつかって動きを止めた。 「落ち着け……落ち着け、文人」  空しく響き渡った残響音。耳障りな荒い呼吸音。  一度感情を外に出すことで、無理矢理に落ち着かせる荒療治。  そうとも。抑制できないのであれば、抑制できるレベルに落とせばよい。  怒りは収まらないが、先ほどまでに比べれば数段マシであろう。  思考できる程度まで落ち着きを取り戻したなら、次にするべき事は自然と浮かび上がってくる。 「まずは……」  参加者名簿を広げ、顔見知りが他にいないかを確認する。  立花奏、日向秀樹、仲村ゆり、あとはユイ。以上の四名。記憶の片隅に引っかかった名前にマーカーを引く。  58人中、自分達を含めた6名。まぁ、最後の記憶を思い返せば、友好的に手を取れそうな人物たちではある。多分。  思わぬところで恵まれたな。溜息と共に言葉を吐き出す。不幸中の幸いと言うやつだろう。  他に気になる事があるとすれば、名簿にある音無伊御と言う名前。  音無と言う苗字は全国的にあるものではない。とすれば結弦の関係者である可能性は高いが、本人の口から何も聞いていない以上は、如何ともし難い。  まぁ会った時に訊けばいいだろう。文人にとっての最重要人物は音無結弦である。その他のことなど正直どうでもいい。 「じゃあ、次は……」  次に考えるのは彼らが向かいそうな場所。  地図を広げ、皆が集まりそうな場所を特定する。本当であれば結弦以外の人物と手を取りたいとは思わないが、現状が現状だ。何が自分にとって最優先すべき事柄であるかを履き違えてはならない。  行動指針は決まっている。  覚悟なんてものは既に済ました。  ならば、もう此処にいる必要性は無く――――    ――――タンッ  衝撃。 「な……ん……?」  崩れる膝。  熱を帯びた腹部。  地面に手を付くことで無様に倒れる事だけは防ぐが、行為自体に意味は殆ど無い。  その証拠に、息をつく間もなく頭部に固いモノが押し当てられる。 「――――っ」 「悪いな」  言葉と、音と、衝撃は同時。  何があったのか。何が起きたのか。  その全てを理解するには、もう遅い。 (……音無……さん)  ただ一つ。  自分を救ってくれた人の名が、文人が抱いた最期の言葉だった。 &COLOR(red){直井文人@AngelBeats!=死亡} ■  支倉孝平からすれば、この殺し合いとやらは端から出来レースであった。  千堂伊織と千堂瑛里華。彼のよく知る二人の吸血鬼の力を持ってすれば、こんなくだらない催しはすぐに終わるに違いない。その行き着く結末がなんであれ、だ。  だから自分が出来ることは何も無い。せいぜい何処かの家の部屋の隅で隠れているのが自分の出来ることだろう。  特別な力はなく、強い意志も無い。  知り合いが人外であっても、孝平自身は何の変哲もない一般人なのだ。  ――――貴方は、それでいいの?  あの日、千堂瑛里華に問われた言葉が脳裏に蘇る。赤い眼と、溢れる涙。呆気なく記憶の消去を選んだ自分に対し、他人事の筈なのに、彼女はひどく悲しんでいた。  結局自分はそれを良しとせず、彼ら吸血鬼と付き合っていくことを決めた。思い出を築くと言う原初の考えをもって、確かにあの日を楔に自分は昔の自分とは分かれた筈だった。    だが、今回は規模が違う。    記憶を失う程度がせいぜいの前回と、命を失いかねない今回。  一笑に付すには、あまりにも現実離れしたこの所業。  一秒先には、もしかしたら死んでいるかもしれない。  故に、支倉孝平は自身の決断を一枚の硬貨に任せた。 「表が出たら乗る。裏なら乗らない」  こんな軽々しく物事を決めるなんて、随分と安っぽい意志だとは思った。  だが大層な意志を以って、自分に何が出来るのか。ただの一般人でしかない高校生が。  だから、運任せ。  本当ならそもそも人殺しなんてものに手を染めたくはなかったが、支給されていたパソコンが孝平の思考に一つの選択肢を与えていた。 『首輪の裏に記載されている番号をメモし、メールで送信すれば首輪の解除方法を教える。まずは三人分。時刻は指定しない』  デスクトップに『解除方法』と銘打たれて置いてあったメモ。  裏ということは、取り外しでもしない限り読み取ることは不可能。  その真偽がどうあれ、溺れていれば藁でも縋りたくなるのが人間だ。  硬貨が表なら、積極的に殺して集める。  硬貨が裏なら、死体から剥ぎ取る。  そうして出た結果は――表。 「……よく出来ているよ」  偶然か、或いは必然か。  自身のいる消防署内には、自分以外にもう一人いた。  阿呆みたいに騒いでくれていたおかげで、場所は容易に特定できた。  隙だらけだったおかげで、仕留める事すら手間取らない。  簡単なものだ。弾丸二発で、人は死ぬ。 「……その上、相手が所持していたのは刃物。順調すぎだな、ははっ」  まるで仕組まれていたみたいだ。本当に。  普段ならば絶対に言わないような軽口すら零して、孝平は今しがた自分が殺めた人物の首に刃を入れる。  返り血が掛からない様に、背後に回ってから切り裂く。  既に穴の開いた頭部から血は流れているが、首輪を外す際に血塗れになりたくはない。  念には念を入れて行動する。まだこれは一人目なのだ。 「……一つ目」  鈍く光る銀色の首輪を死体から取り外し、大きく長く息を吐く。  賽は投げられた。  もう後戻りは出来ない。 「……謝らないよ。まだ、死にたくはないから」   【一日目/0時30分/H-2、消防署内】 【支倉孝平@FORTUNE ARTERIAL】 [状態] 健康、精神的疲労(小) [装備] 大鉈 [所持品]基本支給品、ノートパソコン、S&W M37 エアーウェイト(3/5) [思考・行動] 基本:生存優先、ノートパソコンのメモに従う 1:首輪を三つ集める 2:死にたくない 【備考】 ・体育祭後の参戦 ・ノートパソコンのメモには、以下の事が書いてあります ①首輪の裏に記載されている番号を送信すれば、首輪の解除方法を教える ②まずは三つ必要 |No.033:[[ラッキーガール]]|[[投下順]]|No.035:[[由真と動物奇想天外]]| |No.030:[[守るべきもの]]|[[時系列順]]|No.006:[[醒めない夢]]| |COLOR(yellow):GAME START|支倉孝平|No.:[[]]| |COLOR(yellow):GAME START|直井文人|COLOR(red):GAME OVER|

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