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 G-2にある高層マンション。  そのマンションを、浅井京介は見上げていた。 「……どういうことだ」  知らず、口からもれるつぶやき。  彼は知っている。目の前のマンションを。  なぜならそこには、美輪椿姫の家があって。  自身、浅井京介の家もある。  間違いはない。  マンション名も同じだ。 「……何故だ」  ここは無人島のはずだ。  少なくとも、先ほど確認した説明書には、そのような説明がなされていた。  じゃあ、目の前のマンションは? 「……似ているだけだろう」  馬鹿らしい。  そう言いたげに首を振ると、京介はマンションへと入る。 (確かめればすむことだ)  エレベータに乗ると、最上階のボタンを押す。 「どうなっているんだか……」  ゲームのこと。  知り合いのこと。  この島のこと。  たくさんの疑問が次から次へと膨らんでいく。  だがそれらを吐き出すことができない。  仮説はいくらたてても、仮説でしかない。  現状を説明できる、確たるものがほしい。 「宇佐美……」  卓越した頭脳の持ち主の名前をつぶやく。  彼女がいれば、多少の解決策が見つかるかもしれない。  現状に納得のいく説明がされるかもしれない。  これからの方針を定められるかもしれない。 「……なんであいつを頼りにしなきゃいけないんだよ」  馬鹿らしいと。  再度首を振る。  それと同時に、エレベーターの駆動音が止みドアが開く。  その先には、何やら白く丸い物体があった。 ■  怖いです。怖いです。  あの神父様が合図をしたと思ったら、隣の人の首輪が点滅し始めて。  それで、しばらくしたら■が飛びました。  みんなが慌てて離れて。  私も兄さまに連れられるままに離れて。  神父様が何かを言っていたのだけど、私には聞き取れませんでした。  いいえ、聞きたくもありません。  あの人は神父の恰好をしていました。  ということは、神に仕える職の方です。  それなのに何故、このような酷い行いに加担されているのでしょうか。  いえ、そもそも。  このような催しはあってはならないことです。  生き残りをかけての殺し合いだなんて、人の為すことではありません。  みんなは協力していかなくてはなりません。  そう抗議しようとしたら、いきなり目の前が真っ暗になりました。  そして気がつくと、どこかの建物の中にいました。  周りには誰もいません。  さっきまで隣にいたはずの兄さまも。  後ろにいた他の生徒会の方々も。  姿の見えなかった支倉先輩も。  みんな、いません。一人ぼっちです。  その事実に気づいたら、急に怖くなってしまいました。  あの女の人の叫び声を。  あの神父様の非道な行為を。  思い返してしまい、怖くなりました。  死ぬのは嫌です。  痛いのも嫌です。  でも、一人でじっとしているのも嫌です。  だから、私は誰かを捜しに行くことにしました。  みんなと力を合わせれば、こんな酷い催しなんて止めることができるはずです。  そしたらいきなりエレベーターが動き始めました。  私はボタンを押してませんから、誰かがここに来たということです。  さっそく人に会える、とうれしくなりましたが、何故かそこで神父様の言葉を思い出してしまいました。 『殺し合いをしてもらいたい』  とたんに、良くない想像をしてしまいました。  考えてみれば、まったく知らない人が来るかもしれないのです。  その人が優しい人なんていう保証はどこにもありません。  優勝とやらを目指す人が来るかもしれません。  そんな当たり前の結論に行き着いた時には、エレベーターはすぐ下の階まで来ていました。  今からでは隠れる時間も、場所もなくて。  私は、自分の着ていたローレル・リングを、頭からかぶりました。 ■  京介は目の前の光景に戸惑っていた。  彼の目の前には、白くて丸いもの。  そしてその物体は、小刻みに震えている。  彼を恐れているのは明白だ。 「……おーい、大丈夫か?」  敵意がないことを示そうと呼び掛けるも、返してくる余裕はないようだ。  どう呼びかければいいか途方に暮れる彼だったが、すぐに考えを改める。  そもそも京介の目的は、このマンションが自身の知っているマンションと同じであるかを確かめるためだ。  目的のフロアまで来たので、後は奥まで行って確かめるだけ。  目の前で震えているのの相手をするのが目的ではない。  震えているだけなら、おそらくは背をむけても大丈夫。  そう判断して、京介は奥へと向かう。 「ま、待ってください……」  消え入りそうなくらい小さな声が、京介に向けて発せられる。  京介はそれが聞こえていたが、あえて無視して目的の号室まで向かう。  ガチャリ  ドアノブは抵抗なく回る。  中に入り電気をつけると、見慣れた居住空間が現れた。 「マジかよ……」  間違いはない。  絶景の望めるこの部屋は。  安っぽい家具で埋められているこの部屋は。  数々のクラシック音楽のCDがあるこの部屋は……  それらが指し示すことに、思わず京介は頭を抱える。  疑問は膨らむ。  吐きだすこともできないまま、膨らんでいく。  それはあまりにも膨大すぎて。  とても説明できるようなことばかりで。  だから彼は、ひとまず思考を放棄することにした。 ■ 「あ、あのう」  ゆさゆさ 「あのう」  ゆさゆさ 「あの……」 「……寝かしてくれ」  不機嫌そうな声が返ってきて、思わず少女、東儀白はその手を止める。  しかし、 「で、でも知らない人の家で寝てしまうのは……」  どことなく間の抜けた発言。  殺し合いの場だというのに、あくまでも規範を外れないように白はふるまおうとする。  そんな彼女を不機嫌そうな目で京介は見やると、 「……ここは俺の家だ」  そう言って再び枕に突っ伏し、 「鍵、掛けといてくれ」  指で玄関の方を指し示すと、再び眠りについた。 【一日目/0時30分頃/G-2】 【浅井京介@G線上の魔王】 [状態] 疲労(中) [装備] [所持品]基本支給品、ランダムアイテム [思考・行動] 基本: ? 1:睡眠中 【備考】 ・第二章以降からの参戦 【一日目/0時30分頃/G-2】 【東儀白@FORTUNE ARTERIAL】 [状態] 健康 [装備] [所持品]基本支給品、ランダムアイテム [思考・行動] 基本: 殺し合いを止めたい 1:仲間を集めたい 2:兄さまたちに会いたい 【備考】 ・体育祭後からの参戦 |No.002:[[純粋]]|投下順|No.004:[[醒めない夢]]| |No.003:[[純粋]]|時系列順|No.005:[[目的は凛然なりて]]| |No.000:[[オープニング]]|浅井京介|| |COLOR(yellow):GAME START|東儀白||
*スローカーブ  G-2にある高層マンション。  そのマンションを、浅井京介は見上げていた。 「……どういうことだ」  知らず、口からもれるつぶやき。  彼は知っている。目の前のマンションを。  なぜならそこには、美輪椿姫の家があって。  自身、浅井京介の家もある。  間違いはない。  マンション名も同じだ。 「……何故だ」  ここは無人島のはずだ。  少なくとも、先ほど確認した説明書には、そのような説明がなされていた。  じゃあ、目の前のマンションは? 「……似ているだけだろう」  馬鹿らしい。  そう言いたげに首を振ると、京介はマンションへと入る。 (確かめればすむことだ)  エレベータに乗ると、最上階のボタンを押す。 「どうなっているんだか……」  ゲームのこと。  知り合いのこと。  この島のこと。  たくさんの疑問が次から次へと膨らんでいく。  だがそれらを吐き出すことができない。  仮説はいくらたてても、仮説でしかない。  現状を説明できる、確たるものがほしい。 「宇佐美……」  卓越した頭脳の持ち主の名前をつぶやく。  彼女がいれば、多少の解決策が見つかるかもしれない。  現状に納得のいく説明がされるかもしれない。  これからの方針を定められるかもしれない。 「……なんであいつを頼りにしなきゃいけないんだよ」  馬鹿らしいと。  再度首を振る。  それと同時に、エレベーターの駆動音が止みドアが開く。  その先には、何やら白く丸い物体があった。 ■  怖いです。怖いです。  あの神父様が合図をしたと思ったら、隣の人の首輪が点滅し始めて。  それで、しばらくしたら■が飛びました。  みんなが慌てて離れて。  私も兄さまに連れられるままに離れて。  神父様が何かを言っていたのだけど、私には聞き取れませんでした。  いいえ、聞きたくもありません。  あの人は神父の恰好をしていました。  ということは、神に仕える職の方です。  それなのに何故、このような酷い行いに加担されているのでしょうか。  いえ、そもそも。  このような催しはあってはならないことです。  生き残りをかけての殺し合いだなんて、人の為すことではありません。  みんなは協力していかなくてはなりません。  そう抗議しようとしたら、いきなり目の前が真っ暗になりました。  そして気がつくと、どこかの建物の中にいました。  周りには誰もいません。  さっきまで隣にいたはずの兄さまも。  後ろにいた他の生徒会の方々も。  姿の見えなかった支倉先輩も。  みんな、いません。一人ぼっちです。  その事実に気づいたら、急に怖くなってしまいました。  あの女の人の叫び声を。  あの神父様の非道な行為を。  思い返してしまい、怖くなりました。  死ぬのは嫌です。  痛いのも嫌です。  でも、一人でじっとしているのも嫌です。  だから、私は誰かを捜しに行くことにしました。  みんなと力を合わせれば、こんな酷い催しなんて止めることができるはずです。  そしたらいきなりエレベーターが動き始めました。  私はボタンを押してませんから、誰かがここに来たということです。  さっそく人に会える、とうれしくなりましたが、何故かそこで神父様の言葉を思い出してしまいました。 『殺し合いをしてもらいたい』  とたんに、良くない想像をしてしまいました。  考えてみれば、まったく知らない人が来るかもしれないのです。  その人が優しい人なんていう保証はどこにもありません。  優勝とやらを目指す人が来るかもしれません。  そんな当たり前の結論に行き着いた時には、エレベーターはすぐ下の階まで来ていました。  今からでは隠れる時間も、場所もなくて。  私は、自分の着ていたローレル・リングを、頭からかぶりました。 ■  京介は目の前の光景に戸惑っていた。  彼の目の前には、白くて丸いもの。  そしてその物体は、小刻みに震えている。  彼を恐れているのは明白だ。 「……おーい、大丈夫か?」  敵意がないことを示そうと呼び掛けるも、返してくる余裕はないようだ。  どう呼びかければいいか途方に暮れる彼だったが、すぐに考えを改める。  そもそも京介の目的は、このマンションが自身の知っているマンションと同じであるかを確かめるためだ。  目的のフロアまで来たので、後は奥まで行って確かめるだけ。  目の前で震えているのの相手をするのが目的ではない。  震えているだけなら、おそらくは背をむけても大丈夫。  そう判断して、京介は奥へと向かう。 「ま、待ってください……」  消え入りそうなくらい小さな声が、京介に向けて発せられる。  京介はそれが聞こえていたが、あえて無視して目的の号室まで向かう。  ガチャリ  ドアノブは抵抗なく回る。  中に入り電気をつけると、見慣れた居住空間が現れた。 「マジかよ……」  間違いはない。  絶景の望めるこの部屋は。  安っぽい家具で埋められているこの部屋は。  数々のクラシック音楽のCDがあるこの部屋は……  それらが指し示すことに、思わず京介は頭を抱える。  疑問は膨らむ。  吐きだすこともできないまま、膨らんでいく。  それはあまりにも膨大すぎて。  とても説明できるようなことばかりで。  だから彼は、ひとまず思考を放棄することにした。 ■ 「あ、あのう」  ゆさゆさ 「あのう」  ゆさゆさ 「あの……」 「……寝かしてくれ」  不機嫌そうな声が返ってきて、思わず少女、東儀白はその手を止める。  しかし、 「で、でも知らない人の家で寝てしまうのは……」  どことなく間の抜けた発言。  殺し合いの場だというのに、あくまでも規範を外れないように白はふるまおうとする。  そんな彼女を不機嫌そうな目で京介は見やると、 「……ここは俺の家だ」  そう言って再び枕に突っ伏し、 「鍵、掛けといてくれ」  指で玄関の方を指し示すと、再び眠りについた。 【一日目/0時30分頃/G-2】 【浅井京介@G線上の魔王】 [状態] 疲労(中) [装備] [所持品]基本支給品、ランダムアイテム [思考・行動] 基本: ? 1:睡眠中 【備考】 ・第二章以降からの参戦 【一日目/0時30分頃/G-2】 【東儀白@FORTUNE ARTERIAL】 [状態] 健康 [装備] [所持品]基本支給品、ランダムアイテム [思考・行動] 基本: 殺し合いを止めたい 1:仲間を集めたい 2:兄さまたちに会いたい 【備考】 ・体育祭後からの参戦 |No.002:[[純粋]]|[[投下順]]|No.004:[[醒めない夢]]| |No.003:[[純粋]]|[[時系列順]]|No.005:[[目的は凛然なりて]]| |No.000:[[オープニング]]|浅井京介|| |COLOR(yellow):GAME START|東儀白||

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