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 桜吹雪の校門。  幼馴染たちと歩む道。  眼を瞑れば鮮明に思い出せる、昨日までの平穏な日常。  ――――ダムッ、ダムッ  隣に住む妹のような存在。  今年から高校生となり、自分たちと同じ学校に通うことになった。  どことなく抜けている感のある、天然気味な幼馴染。  ――――ダムッ、ダムッ  少し離れたところに住んでいる友人。  何をするにも一緒な、友人というよりも腐れ縁的な仲。  姉に頭の上がらない、お調子者の幼馴染。  ――――ダムッ、ダムッ  友人の姉。  遠方の名門学園に通っていたらしいが、最近になって帰ってきた。  友人共々頭の上がらない、姐御な幼馴染。  ――――ダムッ、ダムッ、シュッ  ――――パサッ…… ■  高らかと放物線を描き、バスケットボールがゴールに吸い込まれる。  ドリブルからシュートまで、流れるような一連の動作。  ロクな反応を見せる事も出来ずに、河野貴明は只眺めることしかできなかった。 「先制ポイントはいただきました。さ、どうぞ」  言葉と共にボールを渡され、そこで漸く貴明は我に帰る。  慌ててスタート位置へと戻り、先ほどと同じように1on1の形へ。  が、相手ほどに動くことが出来ず、あっという間にボールを奪われてしまう。 「仕切り直しですね。お願いします」  位置を逆に。再び、貴明がディフェンスに。  今度は決められまいと相手の一挙手一投足に注目するが、それより早くに3Pシュート。  リングに触れることなく、ボールはゴールを通過した。 「2ポイント先取。あと1ポイントですよ」  伸ばし放題の髪の毛をかき上げれば、見える勝ち誇った表情。  が、貴明とて男の子。言われたままで引き下がるタマではない。  せめても一矢を報いようと、ボールをバウンドさせながら考える。  右か、左か。 「……」  部活でみっちりとやっているわけではないので、難しい技術を要するのは論外。  右か左か。抜き去ってレイアップが一番確実。  劣っているのは技術。  勝っているのは体格。 「……っ!」  鋭く小さく息を吐き出して、右から攻めにかかる。  自らの体を盾に、無理矢理ゴール下を目指す。  適正な判断を下す審判がいるわけではないので、多少強引でもファウルを受ける事は無い。  相手もそれを分かっているのか、その場で無理に押し止まろうとはしない。  ゴールまで、あと三歩。 「……くっ!」  シュートへと体勢を変える。  あと二歩。 「させません!」  言葉と共にプレッシャーが強くなる。  バランスが崩れるが、既に体勢は戻すことが出来ない。  無理矢理に右足を踏み込む。  あと一歩。 「おおおおおおおおおお!!!」  声を上げながら体を空中へ。  距離は十分に射程圏内。  体育の授業で、見よう見まねで覚えた体勢でボールを運び、 「させないと、言ったでしょう!」  放ったボールに、相手の指先が僅かに触れた。  息を呑む音が貴明の耳に届く。  それは、どちらのものか。  ボールはバックボードに当たり、リングに当たり、  そして―――― ■ 「では、私はこのカツサンドをいただきます。春野さんも、どうぞ」 「ええと……それではチョココロネをいただきますね。ありがとうございます」 「ちくしょう……」  敗者は、何時だって惨めなモノである。  自分のディパックから無慈悲にも支給品を奪われていくのを見ながら、貴明はさめざめと涙を流す。 「……でも、参加していない私まで貰っていいのですか?」 「問題ありません。最初に河野さんも了承した事ですから」  伸ばし放題の髪の毛をかき上げながら、宇佐美ハルは未だに蹲っている貴明を見やる。  よほどあの一発を外したのが効いたのか、あれから未だにこの調子である。  正直、見苦しいことこの上ない。 「ええと……」 「声をかけてはいけません。勝者の言葉など、敗者には毒でしかないのですから」  フッ、と。哀愁漂う笑みを浮かべるハルを見て、春野姫は出しかけた言葉を飲み込む。  果たして何もせずに見学に徹していた自分が勝者に値するのかは疑問であるが、そう言われてしまっては出来る事も無い。  手元のパンと貴明とを交互に見ていたが、とうとう意を決したようにチョココロネを口に運ぶ。 「うぅ……」  情けない声を漏らしながらも、漸く貴明は顔を上げた。  ずるずると這うようにして自身のディパックへと辿りつくと、中から適当に一個を掴んで取り出す。 「コッペパン……」  敗者とは、何故にこんなにも惨めなのだろうか。  とうとう自分のディパックにすら見放されたような気がして、貴明は思わず上を仰ぎ見上げる。  残念ながら、無機質な体育館の天井しか目に映りはしなかったが。 「あの……元気出してください」 「……うん」  優しい言葉が身に染みる。  寝転がったままコッペパンを口に運べば、何も変わりやしないモサモサ感。  それでも体とは現金なもので、腹が減っていれば味気なくとも美味しく感じるのだから不思議なモノである。 「河野さん」 「ん?」 「多少は、スッキリしましたか?」 「……うん」  既に一足先に食べ終えていたハルからの問い。  その意図を正しく理解して、貴明は頷いた。  頷いて、頭を下げる。 「ありがとう」  突然の行為に驚く姫。  先ほど同じくニヒルに笑みを浮かべるハル。  対照的な二人の姿を見比べられる程度には、貴明は余裕を持つことができた。 「いえいえ、お気になさらずに。 ……それではお腹も膨れたところで、此処からの脱出方法を考えましょう」  ハルが指差すは、体育館の扉。  固く閉ざされた扉。  三人を拘束する扉。  場所はB-6。  修智館学院敷地内、体育館の中。 【一日目/1時00分/B-6】 【宇佐美ハル@G線上の魔王】 [状態] 健康 [装備] [所持品]基本支給品、ランダムアイテム×1~3 [思考・行動] 基本:ゲームからの脱出 1:まずは体育館から出る 2:知り合いと合流 【備考】 ・参戦時期は未定 【一日目/1時00分/B-6】 【河野貴明@To Heart2 XRATED】 [状態] 健康 [装備] [所持品]基本支給品、各種パン@現実×7、ランダムアイテム×1~2 [思考・行動] 基本:ゲームに乗るつもりは無い 1:まずは体育館から出る 2;知り合いとの合流 【備考】 ・二年進級時からの参戦 【一日目/1時00分/B-6】 【春野姫@あっちこっち】 [状態] 健康 [装備] [所持品]基本支給品、ランダムアイテム×1~3 [思考・行動] 基本:皆との合流 1:宇佐美さんと河野くんと行動する 【備考】 ・参戦時期は原作四巻以降 |No.010:[[bad end]]|投下順|No.012:[[いざ、行かん!]]| |No.010:[[bad end]]|時系列順|No.017:[[真夜中の邂逅、少女と少女とサーヴァント]]| |COLOR(yellow):GAME START|宇佐美ハル|| |COLOR(yellow):GAME START|河野貴明|| |COLOR(yellow):GAME START|春野姫||
*light step  桜吹雪の校門。  幼馴染たちと歩む道。  眼を瞑れば鮮明に思い出せる、昨日までの平穏な日常。  ――――ダムッ、ダムッ  隣に住む妹のような存在。  今年から高校生となり、自分たちと同じ学校に通うことになった。  どことなく抜けている感のある、天然気味な幼馴染。  ――――ダムッ、ダムッ  少し離れたところに住んでいる友人。  何をするにも一緒な、友人というよりも腐れ縁的な仲。  姉に頭の上がらない、お調子者の幼馴染。  ――――ダムッ、ダムッ  友人の姉。  遠方の名門学園に通っていたらしいが、最近になって帰ってきた。  友人共々頭の上がらない、姐御な幼馴染。  ――――ダムッ、ダムッ、シュッ  ――――パサッ…… ■  高らかと放物線を描き、バスケットボールがゴールに吸い込まれる。  ドリブルからシュートまで、流れるような一連の動作。  ロクな反応を見せる事も出来ずに、河野貴明は只眺めることしかできなかった。 「先制ポイントはいただきました。さ、どうぞ」  言葉と共にボールを渡され、そこで漸く貴明は我に帰る。  慌ててスタート位置へと戻り、先ほどと同じように1on1の形へ。  が、相手ほどに動くことが出来ず、あっという間にボールを奪われてしまう。 「仕切り直しですね。お願いします」  位置を逆に。再び、貴明がディフェンスに。  今度は決められまいと相手の一挙手一投足に注目するが、それより早くに3Pシュート。  リングに触れることなく、ボールはゴールを通過した。 「2ポイント先取。あと1ポイントですよ」  伸ばし放題の髪の毛をかき上げれば、見える勝ち誇った表情。  が、貴明とて男の子。言われたままで引き下がるタマではない。  せめても一矢を報いようと、ボールをバウンドさせながら考える。  右か、左か。 「……」  部活でみっちりとやっているわけではないので、難しい技術を要するのは論外。  右か左か。抜き去ってレイアップが一番確実。  劣っているのは技術。  勝っているのは体格。 「……っ!」  鋭く小さく息を吐き出して、右から攻めにかかる。  自らの体を盾に、無理矢理ゴール下を目指す。  適正な判断を下す審判がいるわけではないので、多少強引でもファウルを受ける事は無い。  相手もそれを分かっているのか、その場で無理に押し止まろうとはしない。  ゴールまで、あと三歩。 「……くっ!」  シュートへと体勢を変える。  あと二歩。 「させません!」  言葉と共にプレッシャーが強くなる。  バランスが崩れるが、既に体勢は戻すことが出来ない。  無理矢理に右足を踏み込む。  あと一歩。 「おおおおおおおおおお!!!」  声を上げながら体を空中へ。  距離は十分に射程圏内。  体育の授業で、見よう見まねで覚えた体勢でボールを運び、 「させないと、言ったでしょう!」  放ったボールに、相手の指先が僅かに触れた。  息を呑む音が貴明の耳に届く。  それは、どちらのものか。  ボールはバックボードに当たり、リングに当たり、  そして―――― ■ 「では、私はこのカツサンドをいただきます。春野さんも、どうぞ」 「ええと……それではチョココロネをいただきますね。ありがとうございます」 「ちくしょう……」  敗者は、何時だって惨めなモノである。  自分のディパックから無慈悲にも支給品を奪われていくのを見ながら、貴明はさめざめと涙を流す。 「……でも、参加していない私まで貰っていいのですか?」 「問題ありません。最初に河野さんも了承した事ですから」  伸ばし放題の髪の毛をかき上げながら、宇佐美ハルは未だに蹲っている貴明を見やる。  よほどあの一発を外したのが効いたのか、あれから未だにこの調子である。  正直、見苦しいことこの上ない。 「ええと……」 「声をかけてはいけません。勝者の言葉など、敗者には毒でしかないのですから」  フッ、と。哀愁漂う笑みを浮かべるハルを見て、春野姫は出しかけた言葉を飲み込む。  果たして何もせずに見学に徹していた自分が勝者に値するのかは疑問であるが、そう言われてしまっては出来る事も無い。  手元のパンと貴明とを交互に見ていたが、とうとう意を決したようにチョココロネを口に運ぶ。 「うぅ……」  情けない声を漏らしながらも、漸く貴明は顔を上げた。  ずるずると這うようにして自身のディパックへと辿りつくと、中から適当に一個を掴んで取り出す。 「コッペパン……」  敗者とは、何故にこんなにも惨めなのだろうか。  とうとう自分のディパックにすら見放されたような気がして、貴明は思わず上を仰ぎ見上げる。  残念ながら、無機質な体育館の天井しか目に映りはしなかったが。 「あの……元気出してください」 「……うん」  優しい言葉が身に染みる。  寝転がったままコッペパンを口に運べば、何も変わりやしないモサモサ感。  それでも体とは現金なもので、腹が減っていれば味気なくとも美味しく感じるのだから不思議なモノである。 「河野さん」 「ん?」 「多少は、スッキリしましたか?」 「……うん」  既に一足先に食べ終えていたハルからの問い。  その意図を正しく理解して、貴明は頷いた。  頷いて、頭を下げる。 「ありがとう」  突然の行為に驚く姫。  先ほど同じくニヒルに笑みを浮かべるハル。  対照的な二人の姿を見比べられる程度には、貴明は余裕を持つことができた。 「いえいえ、お気になさらずに。 ……それではお腹も膨れたところで、此処からの脱出方法を考えましょう」  ハルが指差すは、体育館の扉。  固く閉ざされた扉。  三人を拘束する扉。  場所はB-6。  修智館学院敷地内、体育館の中。 【一日目/1時00分/B-6】 【宇佐美ハル@G線上の魔王】 [状態] 健康 [装備] [所持品]基本支給品、ランダムアイテム×1~3 [思考・行動] 基本:ゲームからの脱出 1:まずは体育館から出る 2:知り合いと合流 【備考】 ・参戦時期は未定 【一日目/1時00分/B-6】 【河野貴明@To Heart2 XRATED】 [状態] 健康 [装備] [所持品]基本支給品、各種パン@現実×7、ランダムアイテム×1~2 [思考・行動] 基本:ゲームに乗るつもりは無い 1:まずは体育館から出る 2;知り合いとの合流 【備考】 ・二年進級時からの参戦 【一日目/1時00分/B-6】 【春野姫@あっちこっち】 [状態] 健康 [装備] [所持品]基本支給品、ランダムアイテム×1~3 [思考・行動] 基本:皆との合流 1:宇佐美さんと河野くんと行動する 【備考】 ・参戦時期は原作四巻以降 |No.010:[[bad end]]|[[投下順]]|No.012:[[いざ、行かん!]]| |No.010:[[bad end]]|[[時系列順]]|No.017:[[真夜中の邂逅、少女と少女とサーヴァント]]| |COLOR(yellow):GAME START|宇佐美ハル|| |COLOR(yellow):GAME START|河野貴明|| |COLOR(yellow):GAME START|春野姫||

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