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「裏vs裏」(2016/07/09 (土) 05:25:55) の最新版変更点
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*裏vs裏
口元をマフラーで隠し。
物思いに耽るように目を閉じて。
■
会場には、約60名の参加者。
目立った名前は無し。一般人が大半。
ホールには何名か此方側の人間、若しくは近しい人間がいた。関係者か参加者かは現時点では不明。
多くは若者。高校生くらいが大半を占める。
首輪は爆発物。外そうとしたり、余計な刺激を与えると爆発する。
禁止エリアは放送ごとに告知。侵入すれば首輪が爆発。
「……」
そこまで考えて、斬島切彦は思考を放棄した。元より意味の無い思考であった。
ディバックを探ると、何の変哲もない包丁が出てきた。数は一本。他に特別なモノが見当たらないことから、おそらくこれが支給品なのだろう。
くるくると、危なげなく包丁を振るう。空気を切る音が響いた。
「……了解」
名簿に名前が無い。
その意味については未だ真意を図りかねるが、与えられた役割については理解できた。
『悪宇商会』の一員として、この喜劇をサポートしろ。
まだ年端もいかぬ少女。
輪をかけて小柄な体躯。
武器は包丁一本のみ。
条件は、傍から見れば無理難題もいいところである。
――――だが、『斬島切彦』の名は常識を凌駕する。
裏十三家の一つにして、『刃』を使用することに長けた血筋。
代を重ねるごとに濃く、強く、束ねられた血は、一流の剣士程度を歯牙にもかけない。
そして、そんな『斬島』の中でも、この六十六代目『斬島切彦』は別格。
『刃』があれば、得物はなんでもいい。バタフライナイフでも遂行して見せよう。
包丁一本は、寧ろ過ぎた武装である。
仮に、もし、問題があるとすれば――――
「はぁい、其処の包丁眺めている危ないお嬢さん。手を上げて、私の質問に答えてもらえるかしら?」
いつの間にかに後ろにいた、この命知らずの事か。
■
朱鷺戸沙耶は後悔していた。
言うまでもなく、目の前に佇む危険人物に声をかけた事に対してだ。
(マズったかな?)
濃密過ぎる繰り返しの日々のおかげで、日常生活では必要の無い才能が培われた。
感謝はしよう。おかげで、相手がどれくらい強いかは分かった。
文句も言おう。おかげで、相手がどれくらい強いかが分かってしまった。
(……やっぱ、逃げればよかった)
どうせ気がつくのならば、声をかける前に気付きなさいよ。今となっては後の祭りだが、自分自身の馬鹿さ加減に最早溜息すら出てこなかった。
死に過ぎて馬鹿になったか、突然のことに呆けてしまったのか。どちらにせよスパイ失格である。
「手を上げて、こっちを振り向いてくれると嬉しいのだけど」
言いつつ、じりじりと後退する。なるべく足音を立てないように、静かに、ゆっくりと。
銃を構えているのは此方。
距離は大凡十メートル。
相手は後ろ向き。
条件だけを見れば、寧ろ分は此方にありそうである。
にも関わらず、勝てるヴィジョンが見えないのは何故か。
「……おい」
答えは簡単である。
「其処、退け」
相手の方が、段違いに強いから。
――――ヒュッ
風切り音が鳴る前に動くことが出来たのは、ただ幸運なだけだった。
一歩、とはいわずに盛大に後退。ついでにディパックを前方に投擲して。
恐怖を前に思わず体が動いた形だったが、ソレが沙耶を救った。
「……へぇ」
刹那、細切れになるディパック。
言葉は必要なかった。彼我の差は、何よりも明白だった。
「っ!」
相手が何をするよりも速く、沙耶は後ろへと飛んだ。
背後は窓。勢いをつけた沙耶の身体は、軽々と窓を破った。
退路は予め確認してあった。スパイの基本事項である。
「このまま……っ!?」
がくん、と。地面を蹴ろうとして膝が落ちた。そのままロクな受け身も取れず突っ伏す。
何事かと振り返り、沙耶の思考は思わず止まった。止まってしまった。
――――血を流す、踝。
「う、そ……」
アキレス腱を切られた。医学的な知識はないが、直感で理解した。
「やるじゃん」
そうして顔を上げれば、目の前には死神が。
無造作に構えられた包丁に、血は一滴たりとも付いていない。
「……化け物」
「そりゃ光栄だ」
開いていた筈の距離を一瞬で詰め、連撃も正確無比な一撃も思いのまま。これを化け物と言わずして、何と呼べばいいのか。
迂闊だった。自分の愚かさに臍を噛むが、全ては遅い。
「……あーあ、失敗しちゃった」
後悔はある。反省もある。納得など、当然ない。
だが、現実はあくまでも現実であり、何が変わるわけではない。
ならば受け入れよう。せめて、真っ直ぐに前を見て。
「……ごめんね」
一人の少年を想う。黒髪の、中性的な少年。
せめて、彼の進む道に光があることを願い――――
「じゃあな」
&COLOR(red){朱鷺戸沙耶@リトルバスターズ! EX=死亡}
■
「……どうも、重いな」
腕を振るう。
何気なく振るった筈なのに、どこか鈍い。
制限だろうか。広間での説明を鑑みれば、自分にも適用されているのは当然である。
「ま、つまるところ――――」
制限をものともせず盛り上げろ、ということか。
また面倒な案件を押しつけてくれたものだ。言葉にも表情にも出さないが、内心うんざりする。殺らせるなら素直に殺らせろというのに。
まぁ、これはこれで上にも考えが有るのだろう。『悪宇商会』の力を示す為でもあり、ヒマ人どもの欲を満たす為でもあり、己が力を示す為でもあり。
それに、たかだかこの程度で支障を来たすほど、『斬島切彦』の名は安くない。
「了解了解……いっつおーるらいと」
得物を収め、マフラーで口元を隠し。
おそらくはどこかで見ているであろう観客共に向けて、親指を下に向ける。
――――さぁ、始めよう
【一日目/1時00分/G-5、住宅街】
【斬島切彦@紅】
[状態] 健康
[装備] 包丁
[所持品]基本支給品
[思考・行動]
基本:『悪宇商会』の一員として虐殺する
1:人が集まりそうな所へ向かう
【備考】
・参戦時期は原作二巻以降
・名簿に名前が載っていません
|No.028:[[魔術師たちの夜]]|[[投下順]]|No.030:[[守るべきもの]]|
|No.028:[[魔術師たちの夜]]|[[時系列順]]|No.016:[[深夜の図書館、少女が二人]]|
|COLOR(yellow):GAME START|斬島斬彦|No.032:[[フィギュアスケーターと殺し屋と大男]]|
|COLOR(yellow):GAME START|COLOR(red):朱鷺戸沙耶|COLOR(red):GAME OVER|
*裏vs裏
口元をマフラーで隠し。
物思いに耽るように目を閉じて。
■
会場には、約60名の参加者。
目立った名前は無し。一般人が大半。
ホールには何名か此方側の人間、若しくは近しい人間がいた。関係者か参加者かは現時点では不明。
多くは若者。高校生くらいが大半を占める。
首輪は爆発物。外そうとしたり、余計な刺激を与えると爆発する。
禁止エリアは放送ごとに告知。侵入すれば首輪が爆発。
「……」
そこまで考えて、斬島切彦は思考を放棄した。元より意味の無い思考であった。
ディバックを探ると、何の変哲もない包丁が出てきた。数は一本。他に特別なモノが見当たらないことから、おそらくこれが支給品なのだろう。
くるくると、危なげなく包丁を振るう。空気を切る音が響いた。
「……了解」
名簿に名前が無い。
その意味については未だ真意を図りかねるが、与えられた役割については理解できた。
『悪宇商会』の一員として、この喜劇をサポートしろ。
まだ年端もいかぬ少女。
輪をかけて小柄な体躯。
武器は包丁一本のみ。
条件は、傍から見れば無理難題もいいところである。
――――だが、『斬島切彦』の名は常識を凌駕する。
裏十三家の一つにして、『刃』を使用することに長けた血筋。
代を重ねるごとに濃く、強く、束ねられた血は、一流の剣士程度を歯牙にもかけない。
そして、そんな『斬島』の中でも、この六十六代目『斬島切彦』は別格。
『刃』があれば、得物はなんでもいい。バタフライナイフでも遂行して見せよう。
包丁一本は、寧ろ過ぎた武装である。
仮に、もし、問題があるとすれば――――
「はぁい、其処の包丁眺めている危ないお嬢さん。手を上げて、私の質問に答えてもらえるかしら?」
いつの間にかに後ろにいた、この命知らずの事か。
■
朱鷺戸沙耶は後悔していた。
言うまでもなく、目の前に佇む危険人物に声をかけた事に対してだ。
(マズったかな?)
濃密過ぎる繰り返しの日々のおかげで、日常生活では必要の無い才能が培われた。
感謝はしよう。おかげで、相手がどれくらい強いかは分かった。
文句も言おう。おかげで、相手がどれくらい強いかが分かってしまった。
(……やっぱ、逃げればよかった)
どうせ気がつくのならば、声をかける前に気付きなさいよ。今となっては後の祭りだが、自分自身の馬鹿さ加減に最早溜息すら出てこなかった。
死に過ぎて馬鹿になったか、突然のことに呆けてしまったのか。どちらにせよスパイ失格である。
「手を上げて、こっちを振り向いてくれると嬉しいのだけど」
言いつつ、じりじりと後退する。なるべく足音を立てないように、静かに、ゆっくりと。
銃を構えているのは此方。
距離は大凡十メートル。
相手は後ろ向き。
条件だけを見れば、寧ろ分は此方にありそうである。
にも関わらず、勝てるヴィジョンが見えないのは何故か。
「……おい」
答えは簡単である。
「其処、退け」
相手の方が、段違いに強いから。
――――ヒュッ
風切り音が鳴る前に動くことが出来たのは、ただ幸運なだけだった。
一歩、とはいわずに盛大に後退。ついでにディパックを前方に投擲して。
恐怖を前に思わず体が動いた形だったが、ソレが沙耶を救った。
「……へぇ」
刹那、細切れになるディパック。
言葉は必要なかった。彼我の差は、何よりも明白だった。
「っ!」
相手が何をするよりも速く、沙耶は後ろへと飛んだ。
背後は窓。勢いをつけた沙耶の身体は、軽々と窓を破った。
退路は予め確認してあった。スパイの基本事項である。
「このまま……っ!?」
がくん、と。地面を蹴ろうとして膝が落ちた。そのままロクな受け身も取れず突っ伏す。
何事かと振り返り、沙耶の思考は思わず止まった。止まってしまった。
――――血を流す、踝。
「う、そ……」
アキレス腱を切られた。医学的な知識はないが、直感で理解した。
「やるじゃん」
そうして顔を上げれば、目の前には死神が。
無造作に構えられた包丁に、血は一滴たりとも付いていない。
「……化け物」
「そりゃ光栄だ」
開いていた筈の距離を一瞬で詰め、連撃も正確無比な一撃も思いのまま。これを化け物と言わずして、何と呼べばいいのか。
迂闊だった。自分の愚かさに臍を噛むが、全ては遅い。
「……あーあ、失敗しちゃった」
後悔はある。反省もある。納得など、当然ない。
だが、現実はあくまでも現実であり、何が変わるわけではない。
ならば受け入れよう。せめて、真っ直ぐに前を見て。
「……ごめんね」
一人の少年を想う。黒髪の、中性的な少年。
せめて、彼の進む道に光があることを願い――――
「じゃあな」
&COLOR(red){朱鷺戸沙耶@リトルバスターズ! EX=死亡}
■
「……どうも、重いな」
腕を振るう。
何気なく振るった筈なのに、どこか鈍い。
制限だろうか。広間での説明を鑑みれば、自分にも適用されているのは当然である。
「ま、つまるところ――――」
制限をものともせず盛り上げろ、ということか。
また面倒な案件を押しつけてくれたものだ。言葉にも表情にも出さないが、内心うんざりする。殺らせるなら素直に殺らせろというのに。
まぁ、これはこれで上にも考えが有るのだろう。『悪宇商会』の力を示す為でもあり、ヒマ人どもの欲を満たす為でもあり、己が力を示す為でもあり。
それに、たかだかこの程度で支障を来たすほど、『斬島切彦』の名は安くない。
「了解了解……いっつおーるらいと」
得物を収め、マフラーで口元を隠し。
おそらくはどこかで見ているであろう観客共に向けて、親指を下に向ける。
――――さぁ、始めよう
【一日目/1時00分/G-5、住宅街】
【斬島切彦@紅】
[状態] 健康
[装備] 包丁
[所持品]基本支給品
[思考・行動]
基本:『悪宇商会』の一員として虐殺する
1:人が集まりそうな所へ向かう
【備考】
・参戦時期は原作二巻以降
・名簿に名前が載っていません
|No.028:[[魔術師たちの夜]]|[[投下順]]|No.030:[[守るべきもの]]|
|No.028:[[魔術師たちの夜]]|[[時系列順]]|No.036:[[綾崎ハヤテの焦燥]]|
|COLOR(yellow):GAME START|斬島斬彦|No.032:[[フィギュアスケーターと殺し屋と大男]]|
|COLOR(yellow):GAME START|COLOR(red):朱鷺戸沙耶|COLOR(red):GAME OVER|