「守るべきもの」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら

守るべきもの」(2016/03/20 (日) 18:43:44) の最新版変更点

追加された行は緑色になります。

削除された行は赤色になります。

*守るべきもの  殺し合いという言葉を聞いて、連想できる意味は多くは無い。  法律で殺人が罪となり、倫理観から罪と悪は同義になり、信頼関係から悪は忌避すべきものとなった。  ならば、殺し合いとはイコール悪である。忌避すべきものと考えるのが通常である。  少なくとも、現代では。  法が施行され、倫理観が共有され、信頼関係が必須の現代では。  故に、向坂環は考える。  法が施行されているのは、彼女が生きていた世界での話だ。  殺し合いを推奨しているこの状況では、法について考えるのは意味が無い。  とすれば倫理観を共有できるかは怪しく、信頼関係の構築も難しいものとなるだろう。  当たり前のように受け取り、当たり前のように信じ、当たり前のように生きていた世界は、この状況とイコール関係を結ぶことが出来るとは限らないのだ。  故に、考える。  自身の身の振り方を。  最悪のケースについてを。 「……どうしよう、かしらね」  煩わしそうに頭を掻くと、環は整った顔立ちに似合わぬ溜息を吐きだした。諸々の想いを乗せた溜息だった。  彼女にとっての最悪とは、自身の死では無い。寧ろ、自身の生存はそれほど重視していなかった。 「まさか三人とも、とはね……」  向坂雄二、河野貴明、柚原このみ。名簿に記載されていた三つの名前は、彼女の良く知る名前である。  実弟と幼馴染たち。その関係と重要性に、言葉は必要ない。 「困っちゃうじゃない、まったく」  おどけた口調で言葉を零すも、その目にふざけた様子は見られない。  つまるところ、彼女は葛藤していた。  皆と揃って帰るハッピーエンドか。  三人だけは絶対に帰すノーマルエンドか。 「……手は、あるのよね」  呟き、懐に手を入れる。取り出した代物は、銃。  ソレは片手で弄べるほどに軽くて。こんなものが人一人の命を奪うのに十分な代物であるという事に、少なからず違和感を覚える。  シグザウアーP226。  長時間水に浸しても作動する、耐久性の高い自動拳銃であるらしい。  銃火器類に憧れを持っているわけではないが、これが向坂環にとって初めての銃火器との出会いだというのなら、こんな出会い方は一生したくなかった。 (さぁ……どうする?)    別に、手を汚すことを厭うわけではない。彼らの未来の為ならば、自身の手など幾らでも汚そう。  だが……問題は其処では無い。彼女が躊躇う理由は、其処には無い。 (三人の内、一人だけなんて……)  主催者の言葉に乗って他を全員排除すれば、残るは環も含めた四人になる。最後の一人しか帰れないのでは、自身を数に含めなくとも、取捨選択を迫られてしまうのは明らかだ。  三人の内一人でも誰かを捨てなければならいのは、環の望む結果では無い。  ならば、何が最良か? (……まだ、決めるべきではないかもしれないわね)  最悪のケースに備えるのは結構だが、行動方針を決めるのは時期尚早かもしれない。  なるべく情報を集めつつ、その中で最良の方法を模索する。  煮え切らない結論だが、今はそれが一番の方法だろう。 「……無事でいなさいよ、本当に」  守るべき三人の顔を思い浮かべ、祈るように呟きを漏らす。  手の届く範囲に、三人はいない。  今は、ただ無事を願う。  ――――それだけしか、出来ないのだから。 【一日目/0時30分/A-7、ボート小屋内部】 【向坂環@To Heart2 XRATED】 [状態] 健康 [装備] シグザウアーP226 [所持品]基本支給品、ランダムアイテム×1~2 [思考・行動] 基本:現状に置いて、最良の方法を模索する 1:幼馴染たちと弟との合流 【備考】 ・転入後からの参戦 |No.029:[[裏vs裏]]|[[投下順]]|No.031:[[前途多難]]| |No.023:[[コミカルライフ]]|[[時系列順]]|No.006:[[ココロの声]]| |COLOR(yellow):GAME START|向坂環||
*守るべきもの  殺し合いという言葉を聞いて、連想できる意味は多くは無い。  法律で殺人が罪となり、倫理観から罪と悪は同義になり、信頼関係から悪は忌避すべきものとなった。  ならば、殺し合いとはイコール悪である。忌避すべきものと考えるのが通常である。  少なくとも、現代では。  法が施行され、倫理観が共有され、信頼関係が必須の現代では。  故に、向坂環は考える。  法が施行されているのは、彼女が生きていた世界での話だ。  殺し合いを推奨しているこの状況では、法について考えるのは意味が無い。  とすれば倫理観を共有できるかは怪しく、信頼関係の構築も難しいものとなるだろう。  当たり前のように受け取り、当たり前のように信じ、当たり前のように生きていた世界は、この状況とイコール関係を結ぶことが出来るとは限らないのだ。  故に、考える。  自身の身の振り方を。  最悪のケースについてを。 「……どうしよう、かしらね」  煩わしそうに頭を掻くと、環は整った顔立ちに似合わぬ溜息を吐きだした。諸々の想いを乗せた溜息だった。  彼女にとっての最悪とは、自身の死では無い。寧ろ、自身の生存はそれほど重視していなかった。 「まさか三人とも、とはね……」  向坂雄二、河野貴明、柚原このみ。名簿に記載されていた三つの名前は、彼女の良く知る名前である。  実弟と幼馴染たち。その関係と重要性に、言葉は必要ない。 「困っちゃうじゃない、まったく」  おどけた口調で言葉を零すも、その目にふざけた様子は見られない。  つまるところ、彼女は葛藤していた。  皆と揃って帰るハッピーエンドか。  三人だけは絶対に帰すノーマルエンドか。 「……手は、あるのよね」  呟き、懐に手を入れる。取り出した代物は、銃。  ソレは片手で弄べるほどに軽くて。こんなものが人一人の命を奪うのに十分な代物であるという事に、少なからず違和感を覚える。  シグザウアーP226。  長時間水に浸しても作動する、耐久性の高い自動拳銃であるらしい。  銃火器類に憧れを持っているわけではないが、これが向坂環にとって初めての銃火器との出会いだというのなら、こんな出会い方は一生したくなかった。 (さぁ……どうする?)    別に、手を汚すことを厭うわけではない。彼らの未来の為ならば、自身の手など幾らでも汚そう。  だが……問題は其処では無い。彼女が躊躇う理由は、其処には無い。 (三人の内、一人だけなんて……)  主催者の言葉に乗って他を全員排除すれば、残るは環も含めた四人になる。最後の一人しか帰れないのでは、自身を数に含めなくとも、取捨選択を迫られてしまうのは明らかだ。  三人の内一人でも誰かを捨てなければならいのは、環の望む結果では無い。  ならば、何が最良か? (……まだ、決めるべきではないかもしれないわね)  最悪のケースに備えるのは結構だが、行動方針を決めるのは時期尚早かもしれない。  なるべく情報を集めつつ、その中で最良の方法を模索する。  煮え切らない結論だが、今はそれが一番の方法だろう。 「……無事でいなさいよ、本当に」  守るべき三人の顔を思い浮かべ、祈るように呟きを漏らす。  手の届く範囲に、三人はいない。  今は、ただ無事を願う。  ――――それだけしか、出来ないのだから。 【一日目/0時30分/A-7、ボート小屋内部】 【向坂環@To Heart2 XRATED】 [状態] 健康 [装備] シグザウアーP226 [所持品]基本支給品、ランダムアイテム×1~2 [思考・行動] 基本:現状に置いて、最良の方法を模索する 1:幼馴染たちと弟との合流 【備考】 ・転入後からの参戦 |No.029:[[裏vs裏]]|[[投下順]]|No.031:[[前途多難]]| |No.023:[[コミカルライフ]]|[[時系列順]]|No.034:[[ココロの声]]| |COLOR(yellow):GAME START|向坂環||

表示オプション

横に並べて表示:
変化行の前後のみ表示: