ラッキーガール



「……いいのかね?」
「構いません」

 B-3の廃墟地帯。
 闇夜に紛れるように、二つの影が森林部へと移動していた。
 久宇舞弥とアーチャーである。

「目的は充分果たしました。これ以上この場に留まる事に益はありません」
「爆発音については確かめないと?」
「はい、必要性がありません」

 きっぱりと。舞弥は従者の言葉を否定した。
 謎の爆発音が鳴ってから、既に一時間以上も時間が経過していた。

「爆撃を予想し身を潜めていましたが、追撃の様子はありません。動くならば、今が限度かと」
「そうか……成程。ならば、言う事も無い」

 アーチャーとて、かつては戦場を生きた人間である。
 機微の察知に関しては、舞弥よりも長けていた。
 そしてマスターである舞弥が自身の考えに基づいて行動しているのならば、彼の口からは特段言うことも無い。

「このまま森林部を抜けて、まずは修智館学院へと向かいます。アーチャーは先行して出口付近で哨戒を」
「了解した」

 並走していた赤い外陰が翻り、音も無く先を駆ける。
 その姿が見えなくなるまでに時間はかからない。
 成程、ステータスが低くとも其処は流石の英霊であった。
 器盤からして、ただの人間とは一線を画す。
 本人は能力が制限されていると言っていたが、充分そこらの兵器を凌駕する力量はある。
 ならばそう易々と後れを取ることは無いだろう。

(……嫌な予感がする)

 にも関わらず、舞弥の胸中からは不安が拭えないのは何故なのか。
 ねっとりと、へばり付くようにして鎮座する感覚。
 かつて何度も体験してきた、第六感に近い危機察知能力。
 それは無くなることなく、舞弥の胸中を捉えて離さない。



「……無事でいてください、マダム」



【一日目/2時00分/B-3】
【久宇舞弥@Fate/Zero】
[状態] 健康
[装備] ベレッタM92
[所持品] 基本支給品×2、ランダムアイテム0~2(白鳥水羽のもの、確認済み)、令呪×3(アーチャー)
[思考・行動]
基本:衛宮切嗣、もしくはアイリスフィール・フォン・アインツベルンとの合流
1:切嗣、マダムとの合流
2:修智館学院へ向かう

【備考】
  • 参戦時期は原作二巻以降。



【一日目/2時00分/B-3】
【アーチャー@Fate/stay night】
[状態] 健康
[装備]
[所持品]
[思考・行動]
基本:マスター(舞弥)に従う
1:舞弥に従う

【備考】
  • 参戦時期は原作召喚前。











「うーい……女の子に力仕事させるたぁ、随分なアトラクションじゃあないかね?」

 同、B-3。廃墟地帯。
 寒風吹き荒れる瓦礫の山にて、一部の瓦礫が崩れて穴が空く。
 月明かりに照らされて穴から這い出てきたのは……ボロボロの服装の少女が一人。
 煤にまみれ傷のついた身体は、年頃の少女の姿としては痛ましい。

「一時間近くも瓦礫の下とか、罰ゲーム以外の何物でもないじゃないですかー……へっぷしっ!」

 見事な絡み具合を見せた牢獄に嵌ってしまってから、既に一時間が経過。
 どうにかして抜け出すも、既に身体は疲労困憊である。

「いや、ほんと、もう無理ぃ……」

 女の子のか弱い細腕で、よく脱出できたものだ。
 後ろの物言わぬ瓦礫を見ながら、そうユイは思った。
 尤も、彼女一人で出られたわけではない。這い出たのは紛れもなく彼女自身の力であるが、そこに至るまでの経路を敷いたのは、またも活動を停止した月霊髄液のおかげである。
 何てことはない。一時間が経過し、また月霊髄液動かせるようになった。だがその事実を知ることなく、しかし月霊髄液が正しくユイの思考を読み取った結果が、瓦礫の一部撤去である。
 尤も、魔術師で無いユイでは長時間は扱えない。
 つまり、月霊髄液は次の使用まで、またも一時間のインターバルを必要とすることになったと言うわけだ。

「あ゛ー……」

 尤も、ユイ自身は一切気が付いていないし、知らない事である。
 何よりも彼女は這い出たことで精いっぱいだった。

「きっつ……」

 そして言葉の通り、彼女はもう動こうと言う気は起きなかった。正直今すぐにも倒れそうだった。と言うか倒れた。
 ガシャン。身体に新たな痛みが走るが、もう反応する気力も起きない。

「あー、マジ疲れた……」

 先輩たちは何をしているのだろうか。
 ふと頭に過った、皆の顔。
 神に反抗していた仲間たち。
 皆がこんなことに巻き込まれていなければいいな、なんて。
 そんな事を考えながら、彼女の意識は途絶えた。





【一日目/2時00分/B-3】
【ユイ@Angel Beats!】
[状態] 健康
[装備] トンプソンセンター・コンデンター@Fate/Zero、月霊髄液@Fate/Zero
[所持品]基本支給品
[思考・行動]
基本:主催者をぶっ飛ばす
1:疲れた、もう無理

【備考】
  • 参戦時期は未定
  • 爆発音が周囲一帯に響き渡りました
  • 月霊髄液は使用不可です。次に使用できるのは一時間後になります



No.032:フィギュアスケーターと殺し屋と大男 投下順 No.034:ココロの声
No.025:Monsters 時系列順 No.026:由真と動物奇想天外
No.010:bad end 久宇舞弥 No.:
No.010:bad end アーチャー No.:
No.023コミカルライフ ユイ No.:
最終更新:2016年04月26日 00:22