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綾崎ハヤテの焦燥




 爆発音が聞こえた。



 微かに、でも確実に。
 研ぎ澄まされた聴力は、遠方の不遜な音を拾い上げた。
 振り向いて眼を凝らしても、その先に異常は見えない。
 広がる暗闇の中では、判断基準は先ほどの爆発音のみ。
 当然ながら、自然に出来たとは考えにくい。

「お嬢様……」

 零れた言葉は一つの単語でしかないが、少年の心中を如実に表してもいた。
 少年の名は綾崎ハヤテと言う。
 まだ学生の年齢でありながら、三千院家に執事として仕えており、広い屋敷内を同僚のハウスメイドと共に管理している。
 執事としての経歴こそ短いが、その手腕と培われた技術は、他の一流の執事たちと比べても遜色は無いだろう。
 だが今の状況で必要なのは、そんなモノではない。

「……」

 ハヤテが向かおうとしているのは、地図の端に記載されている三千院邸という建物である。
 三千院邸とは先述の通りハヤテが仕える主の屋敷であり、まず間違いなく彼の知人たちはそこへ向かうと予想できる。
 運が良ければ、邸宅内にある設備で脱出、ないし外部と連絡が取れるかもしれない。
 現状、最優先で向かうべき場所である。

 だが、だが。

 考えに反して、ハヤテの足は止まっていた。
 彼の眼は先ほどまで自分が踏破してきた道に向いていた。
 僅かに生じた一つの考えが、彼の歩みを止めているのだ。

 もしも先ほどの爆発音に彼の主が巻き込まれていたら。
 或いは、関係していたら。

 悪い想像は、簡単にすることが出来た。
 それこそ、嫌なほど明確に。そして鮮明に。

『ハヤテ……』

 思い浮かべたのは自らが仕えている主の顔。だがその顔は涙に濡れ、恐怖に歪んでいた。
 あくまでもこれは自分の想像でしかない。想像でしかないが、ハヤテは思わず拳を握りしめた。

「……決まってるじゃないか」

 僅かな逡巡を経てハヤテは顔を上げた。
 迷い無く地を蹴り、先ほどまで上ってきた坂道を下っていく。
 目的地は勿論、先ほどの爆発音の場所。
 驚異的な身体能力とバランス感覚が、山中の悪路を踏破していく。




 迷うぐらいなら行動する。
 己の直感に任せて。








 もしも。そう、これはもしもの話である。
 もしも彼がもう少し冷静ならば、こんな行動はしなかっただろう。
 例えば殺し合いの宣告を受けていなかったら。
 例えば彼のすぐそばで人が殺されなければ。
 例えば視界に主の姿を見つけなければ。
 例えば相手もハヤテの存在に気が付いていなければ。
 例えば両者が同時に手を伸ばそうとしなければ。
 例えば、例えば、例えば――――

 そう、例えば――――もしも主である三千院ナギが彼を救うために王玉を破壊していなければ。
 そしてそのせいで、三千院家の相続件を失っていなければ。

 彼はきっと冷静に思考し、冷静に推測し、冷静に行動をしただろう。
 爆発音なんかに思考を取られなかっただろう。
 余計な推測をしなかっただろう。
 主を守るためだけに最善の行動ができただろう。



 ……誰が悪いわけでもない。
 ただ……時期が悪かった。
 それだけなのだ。



【一日目/1時00分/C-3、山中】
【綾崎ハヤテ@ハヤテのごとく!】
[状態] 健康
[装備]
[所持品]基本支給品、ランダム支給品×1~3
[思考・行動]
基本:最優先は三千院ナギとの合流、時点でその他知り合いとの合流
1:爆発音の方へ向かう

【備考】
  • 参戦時期はナギが相続権を失い、ムラサキノヤカタに移った頃


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No.029:裏VS裏 時系列順 No.016:深夜の図書館、少女が二人
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