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目的は凛然なりて



「何だよ・・・貴明に、このみ、アネキ、それにいいんちょまでいやがる」

支給品に入っている、参加者名簿。そこには、向坂雄二の知り合いの名前が羅列されていた。

「くそっ・・・そうだ、武器!」

参加者に呆然としていた意識を引き戻し、未だに確認をしていなかった自分の武器をようやく確認する。

「これは・・・ボウガンか」

雄二が取りだしたのは、扱いやすいようにと軽量化されたボウガンだった。
このゲームにおいて、いわゆるアタリの武器。
それは、まだ高校二年生になったばかりという彼の心に、いくらかの安心感を与えた。

「よし、これなら」

説明書を見て、試しに一発撃ってみる。
狙いは、数メートル先にある木の幹。
たかが数メートルとはいえ、よく狙いを定めて放つ。
その甲斐あり、矢は狙ったところにちゃんと当たった。

「・・・ふぅ」

安堵の息を吐き、ボウガンを下ろす。
おそらくは、銃を手渡されるよりもこっちの方が楽。
予想以上の自衛手段ができたことは、雄二にとって当然喜ばしいものだった。


だから、気がつかなかった。
優れた武器を持ったことで生じた、その油断に。
足音を忍ばせて、背後からやってきた人物に。


まったく気がつけなかった。




カサ・・・

音を、雄二の耳は捉えた。
その音はやけに大きく響き、また雄二自身に言葉で表せない何かをかきたてた。
同時に、雄二の中で時が止まる。

何かがマズイ。

血が一気に冷えたような、あの感覚。
直感に従って後ろを振り向き。
バットを振りかぶった人物を目撃した

「うおお!!」

ぶん、と。
唸るような音を立てて振るわれた一撃を、ぎりぎりのところで雄二はかわした。
だが、突然のことにそのまま尻もちをついてしまう。

「悪いな、死んでくれ」

一言。宮沢謙吾はそれだけ告げると、金属バットを振りおろそうとする。

「う、動くな!」

命の危険に、正しく雄二は反応し、手に持ったボウガンを構える。
矢先は謙吾の顔面へと向けてあり、一押しすれば発射できる状態。
だが、雄二に撃つ気は無い。
この状況を見て、引いてくれればいいと思っていた。
だが、

「撃たないのか?」

その状況でも、謙吾は引こうとしない。
顔面に照準されたまま、その鋭い眼光で雄二を捉えて離さない。

「な・・・」

撃たなければ、殺される。
逃げることが不可能であることを、本能的に雄二は理解した。
だがそれでも、雄二は撃ちたくなかった。

「なんで・・・殺そうとするんだよ!」

理解できない。
こうやってゲームに乗ることを。
殺し合いを肯定するかのような発言を。
そして、発言とは裏腹にまだ迷いのある表情を。

「・・・友人を・・・理樹と鈴を守るためだ!」

バットを振り下ろす。
しかし、雄二はそれを転がって避ける。

「ふざけんな!」

怒鳴って、立ち上がりボウガンを向ける。

「そんなことして、そいつらは喜ぶのかよ!」

喜ぶわけがない。
そんなことは、謙吾自身言われるまでもなく理解している。
だがそれでも、

「俺が、決めたことだ」

謙吾は理解している。痛いほど理解している。
友人たちの、致命的ともいえる弱さを。
自身や井ノ原真人のように力に優れているわけでもなければ、棗恭介のように頭脳明晰でもない。
片やナルコレプシーという持病持ちで。片や極度の人見知り。
この世界で友人二名が何もせずに生き残るには、もはや奇跡を祈るしかない。
だが、そんな不確定要素に身を預けるほど、謙吾は信心深いわけではない。
だから、行動する。仲間たちを助けるために、どんな禁忌にでも手を汚す覚悟はできている。
どうせすでに死んだ身。今使わずしてどこで使うというのだ。

「!・・・馬鹿野郎っ!!」

説得は不可能。逃げることも不可能。
では、どうするのか?
そんなこと、問うまでもない。

「少し、頭を冷やせ!!」

引き金にかけた指に力を込める。
狙いは、致命傷を与える個所じゃなければどこでもいい。
ほんの少しでも足止めして、頭を冷やすことが出来れば、元に戻ることが出来るかもしれない。
そんな淡い期待を込めて、引き金を、引く。

「ぐっ・・・!」

放たれた矢は、謙吾の右肩を貫く。
しかし、それしきで謙吾は止まろうとはしない。

「うおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
「なっ!」

次矢を装填する余裕は無い。
雄二はボウガンを盾替わりにバットの一撃を受ける。

「っ!」

腕がしびれる。衝撃を殺しきれない。
間髪いれず、今度は胴体を打たれる。

「かはっ・・・」

衝撃に体が泳ぐ。
状況は完全に謙吾が有利。
雄二に抵抗する術は無い。
続いて頭を打たれる。

「ち、くしょ・・・」

様々なことが思い浮かぶ。
学校のこと。
家のこと。
可愛らしいクラスメートのこと。
天真爛漫な幼馴染のこと。
気の強い姉のこと。
そして、女性が苦手な大親友のこと。

(最後に思い浮かんだヤツが貴明とはね・・・)

大親友の顔を思い浮かべ、知らず知らず雄二は微笑む。

「頼んだぜ・・・」

誰に聞こえることもないそのつぶやき。
どこかにいる親友に想いを託して。
雄二はついに意識を手放した。




「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

やった。ついにやってしまった。
見ず知らずの他人を、俺は確かにこの手で■した。
何度も殴打した。動いてないのが分かっていながら、ひたすら殴り続けた。
目の前の、さっきまで生きていたそいつは、もう動かない。二度と動かない。

「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

事実だ。避けることのできない事実だ。
ウソ偽りは無い。目の前のソレは、事実で、真実で、まぎれもない現実だ。

「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお・・・」

受け入れろ。自らが生み出したその罪を。
友人たちを守るべく犯した罪を。
自分で選んだその罪を。

受け入れるんだ!宮沢謙吾!

「お・・・お・・・おおお・・・」

逃げるな、背けるな、逸らすな。
目の前のそれは、自分が犯した禁忌だ。
そして、これからも犯し続ける禁忌だ。
決意を固めろ。
全てを背負おう。
何一つあますことなく、忘れることなく、自分が犯した全てを背負おう。

「・・・・・・・・・」

さぁ、歩け。踏み出せ。
もう戻ることはできないんだ。許されないんだ。
だから、進め。その先に何があろうとも。


進め、宮沢謙吾。





【一日目/0時30分頃/D-4】
【宮沢謙吾@リトルバスターズ!】
[状態] 右肩に刺し傷、疲労(中)
[装備] 金属バット
[所持品]基本支給品、ランダムアイテム
[思考・行動]
基本:理樹、もしくは鈴を優勝させる
1:理樹、鈴以外は殺す
2:リトルバスターズの面々には会いたくない

【備考】
  • リフレイン前からの参戦




D-4の森の中を、三ツ廣さちは走る。


いつだって明朗快活な彼女であったが、今はその顔を恐怖に歪めている。
それも、そのはず。最初に見せしめの形で殺された少女は、さちの友人だった。
悲しみに暮れ、知り合いの死に動揺しながらも、なんとか彼女は立ち直ろうとした。
まずは他の知り合いを捜すため、南にある新都へと向かうことにする。
だがその途中で、人が殺されるところを見てしまった。
バットでの一撃。鈍い音とともにひしゃげる体。
目の前で行われている殺人に、必死で保たせていた彼女の精神は崩れた。


そこからは何も覚えていない。
どこをどう走ったかなんて知る由もない。
方向も、道筋も、全てがでたらめ。
ただ、あの場から遠ざかるために走っているにすぎない。

「っ!」

何かに引っかかる。
バランスを立て直すことなく、勢いに従うようにして、盛大に転んだ。

「あぐぅ・・・」

頭を打ったのか、視界が回る。
何もかもが暗く、遠くなっていくのを感じる。

(うあ・・・)

耐えきれない。止まれない。抗えない。
意識を侵略する闇に飲み込まれて。
さちは、意識を手放した。





【一日目/0時30分頃/D-4】
【三ツ廣さち@車輪の国、向日葵の少女】
[状態]疲労(中)、気絶
[装備]
[所持品]基本支給品、ランダムアイテム
[思考・行動]
基本: ?
1:気絶中

【備考】
  • 本編第一章から参戦


向坂雄二@To Heart2 XRATED=死亡

残り55名



No.004:醒めない夢 投下順 No.006:2A-18
No.004:スローカーブ 時系列順 No.008:剣と天使
GAME START 三ツ廣さち No.026:Lost
GAME START 宮沢謙吾