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剣と天使



誓った言葉があった。
交わした約束があった。
その答えは――――










風の無い夜だった。
季節は分からないが、夏か冬かと問われれば冬寄りだろう。何時もの長袖のシャツで事足りる程度とはいえ、座っているだけの現状では若干の肌寒さは否めない。
見上げれば満月。遮るもののない月明かりは、煌々と地上を照らしていた。
まるであの日の焼き回しだな、と。こんな時だというのに、少年――――衛宮士郎の口からは苦笑が零れた。
そう。自嘲というよりは、苦笑。

「怒られるよなぁ、きっと」

剣の荒野。
黄金の王。
結んだ剣戟。
斬り飛ばした右腕。
開いた孔。
巻きついた鎖。
そして――――

「……っ」

脳裏にノイズが走る。
眼を瞑れば鮮明に思い出せる光景は、体感時間で言うならばまだ大した時間は経っていないはず。
後悔は無い。
宣言した言葉も。
下した判断も。
駆けた脚も。
飛び込んだ先も。
その全てに、後悔はない。
後悔など、ない。

「ああ、けど……」

けれども。
もし願うのなら。
もし願えるのならば。

「……逢いたいな」

あの声に。
あの顔に。
あの姿に。
あの存在に。
あの全てに。

「……怒るだろうな」

憧れていたあの子に。
救ってもらったあの子に。
殺されかけたあの子に。
共闘したあの子に。
怒ってくれたあの子に。
泣いてくれたあの子に。
信じてくれたあの子に。
赤色の似合うあの子に。
大好きなあの子に。

「ああ、怒られよう」

馬鹿、と。きっと殴られる。
馬鹿、と。きっと罵られる。
馬鹿、と。きっと責められる。
馬鹿、と。きっと――――泣かれる。
許されることは無いだろう。
ずっと責められることだろう。
決して忘れられることは無いだろう。
それでも――――それは如何に素晴らしいことだろうか。

「……ああ、そうだ」

繋いだはずのラインは閉じられたまま。
開ける回路は限られている。
体力はともかく、魔力は覚束ない。
固有結界の展開など、もっての外。
足りないものはいくらでもある。
だけど、それでも、

「後悔なんてない、けれど……」



立ち止まっていては、始まらない。










「要は聖杯戦争の延長みたいなものか……」

座っていた縁側から、室内へ。
勝手知りたる自分の家。生活臭のない偽物でしかない家だが、張ってあった結界を始め、存在していたものが丸ごと模倣してあるのは好都合だった。
お茶を片手に支給されたルールブックを読み直し、重要な点には印をつける。
闇雲に動いても得られるものは無い。飛びだしたい気持ちを抑えつけ、まずは現状把握に努める。
情報が如何にモノを言うかは、前回の聖杯戦争で身に染みている。かつての自分ならいざ知らず、今の士郎は自分の現状を把握できないほど能天気ではなかった。

「……くそっ」

聖杯戦争について説明を受けた日。あの時と同じ憤りが士郎の中で燃え上がる。
あの広間。意識が朦朧としていた中でも、周囲のざわめきと叫び声は感じ取れていた。
総勢58名。どういう理由かは分からないが、自分のような例がある以上は、皆が皆望んで来たわけではないはずだ。
それに、全員が全員魔術師というわけでもないようだ。不幸にも記載されている姉代わりの人物の名前がその証拠。
だがそんなことよりも、記載されているいくつかの名前に士郎は瞠目した。

衛宮切嗣、イリヤスフィール・フォン・アインツベルン、葛木宗一郎

馬鹿な、と士郎は首を振った。あり得ない、と口から言葉が零れた。
切嗣は五年前に死亡。イリヤスフィールはギルガメッシュに、宗一郎はアーチャーに殺された。
三人の死は、全て士郎の眼前の出来事。しかとその両目で確認したはずだった。
否、そもそもあの広間で聞こえていた声は誰のものだった?一度聞いたら忘れられない、あの厭な声は誰のものだった?

「……嘘だろ?」

一度気がつけば、バラバラだったピースは気味が悪いほどに繋がっていく。
衛宮切嗣、イリヤスフィール、葛木宗一郎、あの声の主――――

「死者の、蘇生?」

馬鹿な、と。されど零れた言葉は、あまりにも弱弱しい。
死んだ者は生き返らない。やり直しなんて出来る筈がない。それはこの世の理。
だがそれでも。そんな世界の法則を無理矢理にでも捻じ曲げることができるのならば、それは奇跡以外の何でもない。理を超越した何かでしかない。
何故、と問いかけるのは簡単だ。けれども、この場に答えてくれる相手はいない。
お世辞にも士郎は魔術の知識があるとは言えない。寧ろ魔術師という観点から見るなら、知識は一般人のそれと変わらない。あくまでも毛が生えた程度だ。悩めども悩めども、その答えが出てくるはずは無かった。



「いいえ、中々に的を得ているわ」



否、答えはあった。
ただし、それは背後から。
士郎の全く予期しない方向からだった。

「動かないで」

反射的に動きそうになるのを、首筋に突きつけられた冷たい感触が抑える。
迂闊と言えば迂闊。幾ら考え事をしていたとはいえ、これほどの接近を許してしまったのは失態以外の何物でもない。
油断と過信。原因は思い当たれど、自らの愚行を後悔するには遅い。
だが、まだ死ぬと決まったわけではない。未だ生きているのがその証拠。
聖杯戦争の終盤まで生き抜いただけあって、それなりに士郎は冷静に現状を顧みることができた。

「……アンタは、このゲームとやらにのっているのか?」

先に口火を切ったのは士郎。手はテーブルの上に乗せ、抵抗の意思がないことを示す。
だが、それと平行して脳内で設計図を構築する。大きくある必要も、荘厳である必要もない。思い浮かべるは何の変哲もない短刀。
投影魔術。衛宮士郎に許された唯一にして全ての魔術。
骨子や基本構成は甘くて構わない。必要なのは、注意を引くこと、其の一点のみ。
幸いにして、ここは勝手知りたる我が家。背後を取られているとはいえ、地の利は士郎にある。

「……いいえ。そういう貴方は?」
「のっていない」

断固とした口調で士郎は言い切る。
剣戟を重ねたあの城で、アイツとは違う道を進むと宣言した。その言葉に、例えその場限りであろうとも、偽りを弄するつもりはない。

「……そう」

しばしの沈黙の後、先に動いたのは背後の人物。
首筋にあてられていた冷たさが消え、代わりにすぐ横を流れる銀髪の髪。
一瞬だけあの城で最期を見た少女の姿が重なり、すぐにそれを打ち消す。
似ているのは、髪の毛だけ。
着ている服は制服で。
眼の色は琥珀色で。
どこか人形めいた無表情さで。
あの少女とは、似ても似つかない。

「情報を」

少女の名前は――――立華奏。

「情報の、交換を」

凛とした声が、室内に響いた。





【一日目/0時30分/H-5】
【立華奏@Angel Beats!】
[状態] 健康
[装備]
[所持品]基本支給品、ランダムアイテム
[思考・行動]
基本:ゲームに乗るつもりは無い
1:情報の交換

【備考】
  • 参戦時期は未定



【一日目/0時30分/H-5】
【衛宮士郎@Fate/stay night】
[状態] 精神的疲労(小)
[装備]
[所持品]基本支給品、ランダムアイテム
[思考・行動]
基本:対主催、生きて帰る
1:情報の交換
2:何で死んだ人間が……

【備考】
  • 十六日目、DEAD END24より参戦
  • 単体での固有結界の使用は不可



No.007:教諭として 投下順 No.009:oath sign
No.005:目的は凛然なりて 時系列順 No.009:oath sign
GAME START 立華奏 No.018:ぼくの/わたしのいやなこと
GAME START 衛宮士郎 No.018:ぼくの/わたしのいやなこと