Labyrinth



 誓ったんだ。
 これからは、強く生きるって。



 それでも。
 皆を見捨てて、逃げだしたあの時のことを。
 眼が覚めて、僕と鈴しか生き残れなかった現実を。
 何よりも、それを受け入れてしまった僕自身を。



 後悔しない日は、ない。










 手にした金属バットは、驚くほど僕の手に馴染んでいて。
 構え、踏みしめ、振るうまでの一連の動作は、一切滞る事が無かった。
 嘆くわけではないけど、僕の体はお世辞にも恵まれているとは言い難い。
 華奢で、小柄で。余計な肉が付いていないと言えば聞こえはいいが、女の子と間違えられるような肉質と言うのは、男児にとっては死活問題もいいところだ。
 同部屋の幼馴染に合わせて鍛えた事もあったけど、生来から肉が付き難い体質なのか、筋肉質な体型になることはなかった。
 つまりは……力仕事は、あまり得意じゃないんだ。
 得意じゃ、なかったんだ。

「……僕は」

 バットを振った。
 ブン、と。
 風切り音が鳴った。

「……僕は」

 バットを振った。
 ブン、と。
 風切り音が鳴った。

「……僕は」

 バットを振った。
 ブン、と。
 風切り音が鳴った。

「……僕は」

 バットを振った。
 ブン、と。
 風切り音が鳴った。

「……僕は」

 バットを振った。
 今度は、風切り音は鳴らなかった。

「……僕、は」

 体幹が崩れて、体が泳ぐ。
 今度は、バットを振る事すら出来なかった。

「……」

 僕は、神様なんて信じない。
 奇跡は自分で起こす事が出来るんだから。
 絶望は自分で決める事なんだから。
 そう、あの時に。繰り返す一学期に学んだのだから。
 学んだ、はずなのだから。

「……っ」

 かさり、と。右手が何かに触れた。
 視界の端に、一枚の紙が映りこむ。
 参加者名簿との見出しが付いているそれは、ついさっきまで目にしていたやつだ。

「……ねぇ、恭介」

 今は亡き……いや、亡いはずの友人の名前。

「……どうすればいいのかな」

 井ノ原真人、棗恭介、能見クドリャフカ、宮沢謙吾。
 赤ペンで線を引いた四人の名前を見ながら、僕は力なく言葉を零した。

「僕は……」





【一日目/0時30分/C-8、発電所内】
【直枝理樹@リトルバスターズ!エクスタシー】
[状態] 健康、精神消耗(小)
[装備]
[所持品]基本支給品、金属バット@リトルバスターズ!エクスタシー、ランダムアイテム×1~2
[思考・行動]
基本:?
1:?

【備考】
  • Refrain、虚構世界から鈴と二人で脱出後からの参戦




No.012:いざ、行かん! 投下順 No.014:少女と筋肉と遊園地
No.012:いざ、行かん! 時系列順 No.006:少女と筋肉と遊園地
GAME START 直枝理樹
最終更新:2015年11月29日 03:20