少女と筋肉と遊園地
「……ええと、理樹と鈴と恭介と謙吾とクド公と……」
B-1、海上遊園地の一画。
備え付けのベンチに座りながら、筋骨隆々の大柄な少年が頭を悩ましていた。
身に着けているのは、赤いバンダナと特注製であろう学生服。
手に持っているのは、一枚の紙切れ。
「ああと……これも恭介のバカの……いや、んなわけねぇか」
ぶつぶつと独り言を呟きながら、少年は先ほどから何度も参加者名簿と空とを交互に見比べる。
当然、名簿に書いてある内容は変わらないし、見上げた空は夜空のままである。
生気のない眼を上下に動かすその姿は、不気味を通り越して、いっそシュールであった。
「……」
だが、どんな物事にも限界はある。
人が永遠に走り続けられないように。
自動車が永遠に走行できないように。
飛行機が永遠に飛べないように。
寧ろ、彼の本来の気性を考えれば、今この瞬間まで彼が頭を働かせていたという事に敬意を表すべきだろう。
……つまり、何事かと言うと。
ぶちっと、一発。
「あああああああああああああああああああああああああっ!!!」
吼えた。
それはもう、周りを厭うことなく。あらん限りの声で。
「だあああああああああああああっ!! 止めだ、止めっ!!!」
元来、少年は頭を働かせて動くタイプでは無い。
その場のテンションでコトを決める事は多々あるし、感情的な面があることも否めない。
決して頭が悪いわけではないが、所謂作戦的なものは友人たちに一任することの方が多い。
とすれば目的は大きく、且つシンプルな方が分かりやすい。
では、少年――井ノ原真人が今優先するべき事は?
「皆と合流! とりあえずはこれだろぉがっ!」
がしがしと頭を掻きむしり、真人は声を上げた。
何故に最初にその結論に至らなかったのかが不思議でならないが、そのことを顧みることはない。
思い立ったが吉日。善は急げ。
自慢の肉体は何の為にある?
自慢の筋肉は何の為にある?
「いよおおおおおおしっ!!! 待ってろ、理樹いいいいいいいいいいっ!!!」
普通こういう場面で叫ぶとすれば、大概は意中の異性であるのが御約束なのだが……これはこれ。
先ず何よりも最優先すべき事を脳に刻み、第一歩を踏み出そうとし、
「ひゃああああああああああ!!?」
■
今更ぶっちゃけるまでもなく説明が面倒なので、端的に状況を解説。
柚原このみ、観覧車内で目を覚ます。
↓
暫く待ったが動く気配がないので、とりあえず扉を開けて鉄骨を渡る事に。幸い、それほど高所でもない。
↓
強風+突然の大声=足を滑らせる。
↓
僅かな間しか耐えられず、悲鳴と共に落下。←ついさっきまで、ココ!
■
「あ、あの……だ、大丈夫でありまするか?」
「……へっ、舐めるなよ……この程度、俺の筋肉なら……」
「わわわ! ダメです、そっちに人はいません! 此方を向いてください!」
「へへっ、また……」
「だ、ダメです! 気を確かに! 気を確かに!」
【一日目/0時30分/B-1 海上遊園地内】
【柚原このみ@To Heart2 XRATED】
[状態] 健康
[装備]
[所持品]基本支給品、ランダムアイテム×1~3
[思考・行動]
基本:ゲームに乗るつもりは無い
1:動揺
【備考】
【一日目/0時30分/B-1】
【井ノ原真人@リトルバスターズ! 海上遊園地内】
[状態] ほぼ健康、一時的な脳震盪
[装備]
[所持品]基本支給品、ランダムアイテム×1~3
[思考・行動]
基本:ゲームに乗るつもりは無い
1:ノックダウン寸前
【備考】
最終更新:2015年11月29日 03:22