メイドと英霊
サーヴァント――召使の意。フランス語のセルヴァンに相当。
サーヴァント――冬木の聖杯戦争にて召喚される、特殊な使い魔。
■
「――――問おう」
闇夜に響く、凛然とした声。
「汝が我を招きしマスターか」
視界を覆うような光の後に、目の前に顕現した白銀の鎧に身を包んだ少女。
H-8一帯に点在する遺跡。その中心部。
支給されたディパックから突然人が顕れるという非常事態にも、マリアは慌てず対応していた。
「初めまして。三千院家に仕えております、マリアと申します」
自己紹介の後、45度の角度に腰を曲げる。
最敬礼。一部の過ちも無く、三秒の後に顔を上げる。
――――目の前には、少し困惑したような表情の少女。
「……サーヴァント、セイバー。召喚に応じ、現界しました」
「サーヴァント? ということは同業の者ですか。互いに大変ですね」
「同業? いいえ、私はセイバーのサーヴァント(英霊)であり、失礼ながらマスターとは与えられた役割が異なる」
「役割? 細かくサーヴァント(召使)の種類が分けられる程の家柄でありましたとは……失礼ながら主のお名前をお伺いしてもよろしいでしょうか?」
「いえ、ですからマスターは貴女で……」
「え?」
「え?」
互いの間に生まれる空白。
予期していない応答に、さしもの二人も首をかしげる。
「……もしかしたら、互いの認識がずれているのかもしれませんね。改めて自己紹介さていただきます、三千院家ハウスメイドのマリアと申します」
「……セイバーのサーヴァントとしてこの場に喚ばれました。便宜上ではありますが、セイバーとお呼びください」
「分かりました、それではセイバーさんと。私の事もマリアと呼んでいただければ結構です」
「そうですか、マスターと呼ぶよりもそちらの方が私としてもしっくりくきます」
「……一つ、質問をよろしいでしょうか?」
「私に答えられることであれば」
「その……マスターとは?」
「? マリアのことですが」
「え?」
「え?」
再び生まれる空白。
もはや認識がずれているどころのものではない。
だがおかげで、互いに理解した事もある。
ああ、何か違う。
「……失礼ではありますが、現状について説明を願えますか?」
言いだしたのは、どちらが先か。
兎にも角にも、時間は三十分ほど進む。
■
聖杯戦争、聖杯、マスターとサーヴァント、令呪。
バトルロワイアル、参加させられた知人、首輪、支給品。
互いの情報交換は、意外にもすんなりと済んだ。
「私は魔術師ではないけれど、現界に必要な魔力とやらは大丈夫なのですか?」
「十分な量とは言い難いですが、このバトルロワイアルの間のみなら問題はありません。宝具を連発することさえなければ大丈夫でしょう」
「それは良かった。説明を聞く限りでは相当量の魔力が必要そうですので」
「最長で四日間ですから、無駄な行動さえなければ一切の供給がなくても大丈夫です。私自身も少ないですが魔力の生成は可能ですから」
ジュースを飲みつつ交わすような会話ではないが、長く話していれば喉だって乾く。
マリアがミルクティー、セイバーがイチゴ牛乳を片手に話を進める。
「ところで、今後の行動指針は?」
「そうね……当面はナギ、ハヤテくん、ヒナギクさんの探索でいいかしら」
「異論はありません」
「良かった。それじゃ、早速……」
「お待ちを」
立ち上がろうとしたところを片手で制される。
代わりにセイバーが立ち上がった。
「召喚時には、名のある魔術師でも相当な魔力を消費すると聞く。見たところ顔色も優れぬようですし、少し休憩してからの方がよろしいのでは?」
ランタンの灯りに照らされたマリアの顔色は、お世辞にも良好とは言い難い。
ロクな準備も無いままに召喚&召喚主は魔術師で無いとくれば、寧ろここまで意識を保っているという事が奇跡に近い。
今は無理に動くよりも休む方が大事。そう考え、マリアに休憩を説くが……
「……ダメよ」
ただ一言。
柔らかく、しかし強い意志を持って拒否される。
「ナギはね、弱いの」
差し出された手すら退けて、マリアは立ち上がった。
「多分、この悪趣味な舞台の参加者の中で一番弱い。頭はいいくせに自分の殻に閉じこもってばかりの子だから、コミュニケーション一つ満足にとれない」
軽く身だしなみを整え、ディパックを担ぎあげる。
その動きに、疲労の重みは一切見られない。
「今、もしかしたら一人で震えているかもしれない。迫る危険に怯えているばかりかもしれない。……あまり、時間は無駄にしたくないの」
柔和な微笑み。言葉の端端に込められた強い意志。
最初こそ驚いたような表情を見せたセイバーだったが、すぐにあの凛とした表情に戻った。
「……ならば、無理をなさらないように」
幾ら言葉を重ねようと、このマスターは自分の言う事を聞かないだろう。
なれば、無理に引きとめようとするのは下策。その意思を尊重する事こそが正しいであろう。
なによりも、この身は――――
「ここに誓いを……我が剣は貴女と共にあり、貴女の運命は私と共にある」
セイバーの、サーヴァントなのだから。
【一日目/1時00分/H-8、遺跡内部】
【マリア@ハヤテのごとく!】
[状態] 健康
[装備] 令呪(セイバー)×3
[所持品]基本支給品、紙パックジュース×8
[思考・行動]
基本:ナギ、もしくはその他知り合いとの合流
1:ナギ、もしくはハヤテくんとの合流
2:セイバーと行動
【備考】
- 参戦時期は未定
- 聖杯戦争、魔術、魔術師について大まかな説明を受けました
【一日目/1時00分/H-8、遺跡内部】
【セイバー@Fate/stay night】
[状態] 健康
[装備] 風王結界、エクスカリバー
[所持品]
[思考・行動]
基本:マリアに従う
1:マリアと行動
2:ナギ、ハヤテ、ヒナギクとの合流
【備考】
- 四次終了後、五次召喚前からの参戦
- ナギ、ハヤテ、ヒナギクの身体的特徴を聞きました
最終更新:2015年11月29日 03:34