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何も為し得なかった世界



 表か裏か。
 吉か凶か。



 ユラユラユレル。
 ユラユラ、ユレル。










 夜風が頬を撫ぜる。
 満月が辺りを照らす。
 目覚めてから彼是三十分以上の時間が経っていた。
 それはつまり、あの惨状から三十分以上の時間が経っていた事を示す。

「理樹……」

 この場にはいない友の名を呼ぶ。
 呼んでから、後悔したかのように顔が歪んだ。

「鈴……」

 この場にはいない妹の名を呼ぶ。
 先ほどまでとはうって変わり、声には震えと嗚咽が混じっていた。

「俺……俺は……」

 両手で顔を覆い、肩を震わせる。
 まるで迷子の子どものように。
 まるで捨てられた子犬のように。

 拳を叩きつけても、現実は変わらない。

「どうすればいいんだ……」

 上手く行っていた。上手く行っていたはずだった。
 もう少し、もう少しで二人は強くなれるはずだった。
 自分たちがいなくなっても、二人で生きていけるはずだった。
 憂いも無く、送り出せるはずだった。

「何でだ……」

 なのに……なのに……

「何でだよ……っ!」

 叩きつけた拳は、すでに自身の血で真っ赤に染まっていた。
 痛みは感じない。感じる事が、できなかった。

「もう少しだったんだよ……っ!」

 何回もやりなおした。
 何度でも世界を廻らせた。
 それが仮初だと分かっていても。
 二人の為に繰り返してきた。
 ゴールは、もう少しの筈だった。

「何なんだよ、これは!」

 見上げた空には、変わる事無く月が輝く。
 嘆きも慟哭も。全ては夜の闇に溶けていく。
 事切れたように、青年は動きを止めた。

「……どうする」

 幸か不幸か。青年の頭の回りは早い方だ。
 こうやって嘆いている間にも時間は過ぎて行く。
 守れるものも、守れなくなる。

「どうする」

 ぱっと思いついたのは三つ。
 一つは、理樹と鈴のどちらかを優勝させる為に他を排除する。
 一つは、全員を排除する。自分が優勝して願いを叶えてもらい、全てを無かった事にする。
 一つは、この場からの脱出。首輪を解除し、二人を連れて脱出する。

「優先するのは理樹と鈴の生存」

 絶対条件。寧ろ、これさえ守れれば後はかまわない。
 そのことを念頭に置き、考察を開始。
 一つ目……現実的といえば現実的。どちらかさえ生きていれば遂行可能。
 二つ目……同上。ただし、願いを叶えるという約束を守ってもらえるかが分からない。賭けるには分が悪い。
 三つ目……可能であれば選びたい選択肢。ただ、あまりにも現実性が無い。

「一か、二か……」

 他に選択肢が無い以上、上の二つのどちらか、もしくは併用をするしかないだろう。
 握りしめた拳が、初めて痛みを訴えた。

「……急ごう」

 言い聞かせるように、青年は行動を始める。
 まだ非現実的で、言うほどの覚悟も無い。
 それでも行動しなければ。その想いだけで動く。



 まだ夢は、終わってはいない。





【一日目/0時30分/F-2】
【棗恭介@リトルバスターズ! エクスタシー】
[状態] 精神的疲労(小)、右拳に裂傷
[装備]
[所持品]基本支給品、ランダムアイテム×1~3
[思考・行動]
基本:理樹と鈴の生存優先
1:理樹と鈴を生存させるためにあらゆる方法を模索する

【備考】
  • 鈴ルート直後からの参戦


No.020:メイドと英霊 投下順 No.023:コミカルライフ
No.015:少年――音無伊御の驚愕 時系列順 No.006:コミカルライフ
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