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コミカルライフ




「……で、これってなんて罰ゲームですか?」

 真っ暗な室内。澱んだ空気。
 ランタンをつけなければ、一歩たりとも進めやしないような室内で、ユイは目覚めた。

「あのですね、私にはもっと相応しいスタート地点ってのがあると思うのですよ。こんな埃まみれの一室じゃなくてね?」

 転がっていた砂袋を、諸々の想いを乗せて力の限り思いっきり蹴飛ばした。
 衝撃で中身が零れ、それはそれは盛大に埃が舞う。

「そりゃあね、高望みしちゃいかんとは思いますよ? でもね、でもですね。私は女の子なのですよ?」

 ふわりと揺れる、桃色の長髪。
 開いた口からちらりと見える、二本の八重歯。
 お尻の辺りから伸びている、黒い悪魔尻尾。
 寒さなんか気になりません、絶対領域ミニスカート。
 実年齢よりも幼く見える、可愛らしい顔つき。

「保健室のベッドとかならまだしも……暗い汚い空気悪いのフルコンボとか、どんな罰ゲームですかごらぁっ!!!」

 その全てが、盛大にぶちまけられた文句で台無しである。

「ええいっ、むっかっつっくううううう!!! こういうバラエティーってかお笑い系にはそれ相応の役柄の人がいるんですよっ! 野田先輩とかね、日向先輩とかねっ!」

 げしげしげし。
 足元に転がる段ボールを親の敵のように踏みつける。
 反動で部屋中に舞う埃も、もはや気になりはしない。

「ええい、想像できるぜぇ……このか弱きユイにゃんが下劣な男どもにあんなことやこんなことや純粋な青少年のみんなには見せられないようなあばんちゅーるをされちゃうのを想像してニヤニヤしてんでしょ、この変態陰険エロ神父めっ!」

 段々とヒートアップしていく言葉。激しくなっていく身振り手振り。
 幸か不幸か、周りには誰もいない。
 ノンストップ暴走機関車。
 いまなら快速一直線。
 まだ見ぬ終点までれっつごー。

「ちっくしょー、せめて支給品はマトモなのが……壺?」

 ディパック内を占領する大瓶。
 骨董品の類ともとれるソレを持ち上げ……

「ぬあっ!?」

 ぶちまける。
 突如として重くなったソレがユイの手を離れ、地面にぶつかり割れる。
 ランタンの灯りが、隙間から漏れる液体を照らす。

「……最悪」

 何の支給品かは分からないが、覆水盆に返らずを地で行く現状にさしものユイでもテンション駄々下がり。
 慌ててディパックを持ち上げるのが関の山だった。
 代わりに、怒りのボルテージは沸々と。
 やや乱暴気にディパックの中に手を突っ込み――――表情が一転する。

「くっくっく……このユイにゃんを怒らせた罪は重いぜぇ、神父さんよぉ? このマグナムが火を吹く前に、辞世の句でも並べときなぁ!」

 滅茶苦茶ではあるが、ハードボイルド風に恰好つけたいのは分からなくも無い。
 やや芝居かかった手つきで懐から取り出した銃は、気分を高揚させてもおかしくは無い代物だ。
 胡桃材から削り出したグリップとフォアエンド。
 一般的な銃とは似つかない、十四インチもの長い銃身。
 シリンダーやスライドの見当たらない、シンプルな外観。
 残念ながらそれはマグナムでは無くトンプソンセンター・コンテンダーです、ありがとうございました。

「さぁて、この情熱的な熱い口付けを所望するのは一体全体誰でしょうかねぇ……ぐっふっふっふ」

 眼前に構え、頭の悪い笑い声を漏らす。
 『死んだ世界戦線』では陽動舞台だったので、それほど銃に慣れているわけではないが……引き金を引けば出るだろう。多分。
 照準も何もなく、ただ前に銃口を向け。

「それじゃあまずは……景気づけに一発、イッちゃいましょうかっ!」

 引き金を、引く。





 ――瞬間、目の前が白く染まった。





 説明書に目を通していなかったユイには知る由もないが――本来であれば、トンプソンセンター・コンデンターは射的競技用のスポーツ拳銃である。
 当然、競技用である以上は有効射程距離、威力共々抑え目に造られているのが普通だ。

 だがしかし。しかし、である。

 このコンテンダーは、とある人物により改造済みである。
 狩猟用ライフルの大口径弾を使用できるように交換された、ハンティング仕様の銃身。
 使用される弾はボトルネック構造のライフル用カートリッジである、・30-06スプリングフィールド弾。
 装弾数一発のみの単発式拳銃ではあるが、その威力はそこらの拳銃の比では無い。
 となれば当然、発射時の反動も相応の物がある。

「にゃわあああああああああああ!!?」

 反動で上へと跳ね上がる腕。
 それでバランスを崩す程度で済めば何ともなかっただろうが……世の中、そうは上手く行かない。
 ユイは知る由も無いが、彼女がいる場所はB-3一帯に広がる廃村地域。
 廃村であれば物資は撤去された後かと思われがちだが、意外と物資を置いたまま立ち退く民家は多いのだ。
 ご多聞に漏れずユイの家もそういう廃屋の一つであり――さらに運が悪い事に、農家だったので袋入りの飼料が積み重なっていたりする。
 とすれば、後は説明も不要であろう。



 粉塵爆発。



 僅かな火花でも引き起こるこの大惨事は、木製の壁如き簡単に破壊する。
 飛び散る破片、燃え上がる炎、身を焼く熱風。
 人一人を破壊するなど、造作も無い。

 ――――マトモに食らえば、の話ではあるが。

 誤解されがちではあるが、爆発の恐ろしい事とは爆発時のエネルギーではない。 
 爆発時に飛び散る破片と、生じた熱風。
 主に人体を損傷させるのは、上記の二つが原因である。
 つまりは、マトモにその二つを喰らわなければ、生存の確率は大きく上がるのである。
 そして幸運なことに、ユイの支給品にはこの状況を打開する支給品があった。

 月霊髄液(ヴォールメン・ハイドラグラム)

 とある天才魔術師が製作した魔術礼装。
 総重量140kg近く。大凡10Lもの水銀。先ほどユイが床に散らばしたソレである。
 所有者の意思を汲み取り攻撃に転じ、時には超剛性の防御膜を張り巡らす。
 オリジナルのそれとは性能と比べれば大きく劣化はしているものの、その能力は健在。
 爆発程度から人一人を守る程度、わけはない。
 ……もっとも、

「ぬおお!? あ、ちょ、えええええええええええ!!?」

 オリジナルから大きく劣化して支給されたこと、ユイ自身は魔術師ではなく一般人であること。
 以上の二つから、月霊髄液の活動時間は早々に限界を迎えてしまう。
 守りが解けてユイが目にしたものは、瓦礫に覆われて身動きできない身体と視界。
 元を正せば最初から最後まで完全にユイの一人相撲でしかなかった一連の流れ。
 とはいえ、この爆発音と叫び声を聞いて誰が反応してくれるかは――――



 ――――また、別のお話。





【一日目/1時00分/B-3、廃村内農場】
【ユイ@Angel Beats!】
[状態] 健康
[装備] トンプソンセンター・コンデンター@Fate/Zero、月霊髄液@Fate/Zero
[所持品]基本支給品
[思考・行動]
基本:主催者をぶっ飛ばす
1:誰か助けてー!

【備考】
  • 参戦時期は未定
  • 爆発音が周囲一帯に響き渡りました
  • 自分一人では脱出できません
  • 月霊髄液は一時間後に再び使用可能です


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