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裏vs裏



 口元をマフラーで隠し。
 物思いに耽るように目を閉じて。










 会場には、約60名の参加者。
 目立った名前は無し。一般人が大半。
 ホールには何名か此方側の人間、若しくは近しい人間がいた。関係者か参加者かは現時点では不明。
 多くは若者。高校生くらいが大半を占める。
 首輪は爆発物。外そうとしたり、余計な刺激を与えると爆発する。
 禁止エリアは放送ごとに告知。侵入すれば首輪が爆発。

「……」

 そこまで考えて、斬島切彦は思考を放棄した。元より意味の無い思考であった。
 ディバックを探ると、何の変哲もない包丁が出てきた。数は一本。他に特別なモノが見当たらないことから、おそらくこれが支給品なのだろう。
 くるくると、危なげなく包丁を振るう。空気を切る音が響いた。

「……了解」

 名簿に名前が無い。
 その意味については未だ真意を図りかねるが、与えられた役割については理解できた。

 『悪宇商会』の一員として、この喜劇をサポートしろ。

 まだ年端もいかぬ少女。
 輪をかけて小柄な体躯。
 武器は包丁一本のみ。
 条件は、傍から見れば無理難題もいいところである。



 ――――だが、『斬島切彦』の名は常識を凌駕する。



 裏十三家の一つにして、『刃』を使用することに長けた血筋。
 代を重ねるごとに濃く、強く、束ねられた血は、一流の剣士程度を歯牙にもかけない。
 そして、そんな『斬島』の中でも、この六十六代目『斬島切彦』は別格。
 『刃』があれば、得物はなんでもいい。バタフライナイフでも遂行して見せよう。
 包丁一本は、寧ろ過ぎた武装である。
 仮に、もし、問題があるとすれば――――



「はぁい、其処の包丁眺めている危ないお嬢さん。手を上げて、私の質問に答えてもらえるかしら?」



 いつの間にかに後ろにいた、この命知らずの事か。










 朱鷺戸沙耶は後悔していた。
 言うまでもなく、目の前に佇む危険人物に声をかけた事に対してだ。

(マズったかな?)

 濃密過ぎる繰り返しの日々のおかげで、日常生活では必要の無い才能が培われた。
 感謝はしよう。おかげで、相手がどれくらい強いかは分かった。
 文句も言おう。おかげで、相手がどれくらい強いかが分かってしまった。

(……やっぱ、逃げればよかった)

 どうせ気がつくのならば、声をかける前に気付きなさいよ。今となっては後の祭りだが、自分自身の馬鹿さ加減に最早溜息すら出てこなかった。
 死に過ぎて馬鹿になったか、突然のことに呆けてしまったのか。どちらにせよスパイ失格である。

「手を上げて、こっちを振り向いてくれると嬉しいのだけど」

 言いつつ、じりじりと後退する。なるべく足音を立てないように、静かに、ゆっくりと。
 銃を構えているのは此方。
 距離は大凡十メートル。
 相手は後ろ向き。
 条件だけを見れば、寧ろ分は此方にありそうである。
 にも関わらず、勝てるヴィジョンが見えないのは何故か。



「……おい」



 答えは簡単である。



「其処、退け」



 相手の方が、段違いに強いから。



 ――――ヒュッ



 風切り音が鳴る前に動くことが出来たのは、ただ幸運なだけだった。
 一歩、とはいわずに盛大に後退。ついでにディパックを前方に投擲して。
 恐怖を前に思わず体が動いた形だったが、ソレが沙耶を救った。

「……へぇ」

 刹那、細切れになるディパック。
 言葉は必要なかった。彼我の差は、何よりも明白だった。

「っ!」

 相手が何をするよりも速く、沙耶は後ろへと飛んだ。
 背後は窓。勢いをつけた沙耶の身体は、軽々と窓を破った。
 退路は予め確認してあった。スパイの基本事項である。

「このまま……っ!?」

 がくん、と。地面を蹴ろうとして膝が落ちた。そのままロクな受け身も取れず突っ伏す。
 何事かと振り返り、沙耶の思考は思わず止まった。止まってしまった。



 ――――血を流す、踝。



「う、そ……」

 アキレス腱を切られた。医学的な知識はないが、直感で理解した。



「やるじゃん」



 そうして顔を上げれば、目の前には死神が。
 無造作に構えられた包丁に、血は一滴たりとも付いていない。

「……化け物」
「そりゃ光栄だ」

 開いていた筈の距離を一瞬で詰め、連撃も正確無比な一撃も思いのまま。これを化け物と言わずして、何と呼べばいいのか。
 迂闊だった。自分の愚かさに臍を噛むが、全ては遅い。

「……あーあ、失敗しちゃった」

 後悔はある。反省もある。納得など、当然ない。
 だが、現実はあくまでも現実であり、何が変わるわけではない。
 ならば受け入れよう。せめて、真っ直ぐに前を見て。

「……ごめんね」

 一人の少年を想う。黒髪の、中性的な少年。
 せめて、彼の進む道に光があることを願い――――



「じゃあな」



朱鷺戸沙耶@リトルバスターズ! EX=死亡










「……どうも、重いな」

 腕を振るう。
 何気なく振るった筈なのに、どこか鈍い。
 制限だろうか。広間での説明を鑑みれば、自分にも適用されているのは当然である。

「ま、つまるところ――――」

 制限をものともせず盛り上げろ、ということか。
 また面倒な案件を押しつけてくれたものだ。言葉にも表情にも出さないが、内心うんざりする。殺らせるなら素直に殺らせろというのに。
 まぁ、これはこれで上にも考えが有るのだろう。『悪宇商会』の力を示す為でもあり、ヒマ人どもの欲を満たす為でもあり、己が力を示す為でもあり。
 それに、たかだかこの程度で支障を来たすほど、『斬島切彦』の名は安くない。

「了解了解……いっつおーるらいと」

 得物を収め、マフラーで口元を隠し。
 おそらくはどこかで見ているであろう観客共に向けて、親指を下に向ける。



 ――――さぁ、始めよう





【一日目/1時00分/G-5、住宅街】
【斬島切彦@紅】
[状態] 健康
[装備] 包丁
[所持品]基本支給品
[思考・行動]
基本:『悪宇商会』の一員として虐殺する
1:人が集まりそうな所へ向かう

【備考】
  • 参戦時期は原作二巻以降
  • 名簿に名前が載っていません



No.028:魔術師たちの夜 投下順 No.030:守るべきもの
No.028:魔術師たちの夜 時系列順 No.036:綾崎ハヤテの焦燥
GAME START 斬島斬彦 No.032:フィギュアスケーターと殺し屋と大男
GAME START 朱鷺戸沙耶 GAME OVER