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「I want to smile for you」(2011/12/04 (日) 20:55:06) の最新版変更点
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**I want to smile for you ◆W91cP0oKww
「行くぜ、真紅」
「ええ」
秋也と真紅が二手に分かれて駆け出す。
秋山はどちらを狙うか一瞬苦悩するがすぐに決めて地面を踏みしめて接敵した。
その相手とは。
「やっぱり俺か」
「おおおおおおおおおおっっ!」
秋山は身体能力的にも差がある秋也を狙うことに決めた。
手に持った剣を横薙ぎに一閃。
それは常人にはとてもじゃないが見極められない一撃であるが秋也は安々とヴァルセーレの剣で防ぐ。
止められるとは思っていなかったのか秋山の動きが一瞬止まる。隙はそれだけで十分だった。
剣を振り払い秋山の腹部目がけてヴァルセーレの剣を横薙ぎに振るう。
「がァっ!」
「ホームランってな! これでも元野球部、バッティングには自信があるぜ」
直撃を食らった秋山はたたらを踏み、崩れ落ちそうになるが気合で態勢を元に戻す。
元に戻る勢いついでに秋也の頭目がけて頭突きをするが既に秋也は離脱している。
その代わりに。
「あら、私を忘れてもらっては困るわ」
バラの花弁の奔流が秋山に迫る。真紅がダークウィングとの戦闘の傍らに精製したものだ。
さすがに剣で薙ぎ払うには面倒だと思ったのか、秋山はベルトからカードを取り出して武器を召喚する。
――SWORD VENT――
カードの恩恵により天から舞い降りる突撃槍――ウイングランサー。
それを手に取り、迫る花弁を一刀両断、するはずだった。
「なっ!?」
花弁は即座に方向を変えて秋山ではなく、落ちてくるウイングランサーを狙った。
真紅が遠くでニヤリと笑う。してやったりといった顔だ。
こうなってしまってはただ座して待つのではなく自分で動いて取りに行くしかない。
秋山はそう判断して後退してウイングランサー目がけて跳躍しようとするが。
「俺を忘れんなよ!」
秋也がそれを許さない。レミントンによる銃撃が空を翔ける。
弾丸は見事命中して秋山をのけぞらせた。
その間にウイングランサーは花弁によって吹き飛ばされあらぬところに行ってしまった。
「邪魔ばかりして!」
「これは“闘い”なんだ、当たり前だろ!」
秋山は悪態を吐いて剣を強く握り締め、横に縦に縦横無尽に襲うヴァルセーレの剣を受け止める。
袈裟に振り落とされるのを下段からの振り上げで受け止め、横薙ぎの斬撃は力任せに弾き返す。
返答替わりの唐竹割りは安々と受け止められた。
「……何故当たらない!」
「さぁな、やっぱり迷ってんじゃないのか!」
ヴァルセーレの剣と秋山の剣が打ち鳴らす金属音が次第に大きくなり、斬裂の音だけが世界に音となって広がっていく。
五月蝿いぐらいに響く金属音。だがそれを咎める者は誰もおらず。両者は一心不乱に刃を走らせる。
(最初と比べて動きが単調だ、幾ら速くてもこれなら俺でも戦える!)
秋山の動きは確かに速かった。仮面ライダーナイトの名は伊達ではない。だが、現在はただ速い“だけ”だ。
何の戦略も無くただ心の赴くままに暴れているだけ。そんな攻撃は幾多の修練と修羅場を乗り越えた秋也には通用しない。
「くそっ!!」
「……それでも受けているのが精一杯だな、コンチクショウ」
傍からは秋山が一方的に秋也に攻撃を繰り出しているように視えるだろう。
だが実態は違う。追い詰められているのは秋山の方だ。
斬撃は徐々に雑になってはいるし、息も上がってきている。
(でも最初の勢いがなくなってきている……このまま持久戦に持ち込むと勝てる!)
ヴァルセーレの剣には触れた魔物の力を奪い、蓄える能力がある。秋山の剣に何度も触れて、肉体にも大きな一撃を与えた。
仮面ライダーの力はヴァルセーレの剣の能力によって吸収されたのだ。
最もそれに気づかない秋山はだんだんと落ちていく動きに戸惑いを隠せない。
「チッ!」
舌打ちと共に秋山は一旦後退して新たなカードをデッキから取りだそうとするが、その動作は最期まで行われない。
秋也は素早くヴァルセーレの剣からレミントンに持ち替えて銃撃。カードは見事撃ち抜かれ、秋山の手から弾かれた。
「そのカードがお前に力を与えてるってのはさっきの動作でわかった。もうそれは使わせない」
戦闘の間も秋也は秋山の動作などを観察していた。カードによってウイングランサーが召喚されたことを把握していたのだ。
杉村や桐山のように打倒し、一撃を与えることができないのなら頭を使うまで。
「…………だ」
「なんだ?」
「どうしてだ! お前達は大切なモノを奪われたはずだ! どうしようもない現実を変えたいはずだ!
なのに何故協力する! 何故優勝を目指さない! 何故平然と“闘い”を否定する! 」
秋山の慟哭が辺りに響く。それは泣いているのか、怒っているのかどちらとも取れない慟哭。
だが、秋山の心からの叫びであることだけは確かだ。この慟哭に全員が動きを止める。
「答えろ秋也! 真紅!」
「そうだな……」
「そうね……」
秋山の問いに二人は静かに答える。先程まで金属音が響いていた戦場とは思えない静けさだった。
「俺は数えきれない程の後悔をしてきた」
「私も後悔したわ、もっと力があればいいのになんて何度も思った」
こんなハズでは、もっとうまくやれたらなどの後悔は飽きるくらいにした。
「銃で撃たれて痛い思いだってした、大切な人が死んで悲しい思いだってした」
「もうこんな運命から逃げ出そうとさえ思った時もあったわね」
大切なモノの喪失、いっそ死んでしまいたい。痛くて悲しい感情は何時だって色褪せなかった。
「だけど、現実が痛くても悲しくても投げ出したくても」
「例えどれほどの苦渋が待ち受けていたとしても」
先行きが見えない暗い現実、騙され裏切られ、果ては死ぬかもしれない未来が降りかかろうとも。
「「乗り越えなくてはいけない」」
そこで足を止めたらおしまいだから。理想を貫くという意志が諦めを許してはくれない。
「確かに苦しいさ、この道のりは。果てが見えない」
「むしろ果てなんてあるのかどうかすらわからないわ」
この行先は崖で一人では登れないかもしれない。
「だから、協力するんだ。一人じゃ苦しいからさ」
「それに優勝なんてナンセンスよ、たった一人だけなんて寂しいしね。一人で飲む紅茶も美味しくないわ」
それなら二人で助け合いながら登ればいい。いつだって人は助け合いながら生きていくものだから。
人は一人では生きてはいけないから。
「それに俺は“闘い”を否定しているわけではないんだ」
「私達だって“闘い”を肯定しなくてはいけない時もあるわ」
「俺は、いや俺達は護る為の“闘い”をするんだ」
「大切な人達に胸をはって誇れるような“闘い”を、ね」
その理想はこの戦場では一笑されることだろう。ここはバトル・ロワイアル、たった一人の優勝者のみが生き残れる狂気の戦場だ。
護るだなんて何だ? そう疑問符を浮かべられることだろう。
それでも秋也や真紅にとっては貫きたい理想だったのだ。
「……俺だって護りたかった」
誰にも聞こえない小ささのつぶやきだが、二人の耳には届いた。蚊の鳴くようなつぶやきだが、確かに届いた。
「俺だって護りたかったさ! 正義の味方として力を使いたかった! あのふざけた影の奴を倒す為に協力したいさ!
胸をはれる”闘い”だってしたかった!」
それは秋山の本心だということが痛いほどに理解できた。顔は仮面で隠れているが涙が止めどなく流れている、二人はそんな気がした。
「だが、俺は……救わなくてはいけない! 今も眠っている恵理を!
恵理の為ではなく俺自身の為に、俺が俺である為に! 幸せになる為に!」
大切な人と共に歩む未来、それはこの世のありとあらゆるモノをとっぱらってでも欲しいモノだった。
その為に仮面ライダーになった。だが、その思いと同時に考えたこともあった。
これでいいのか? 疑問に対する答えは出せなかった。その疑問を封じてただ一心不乱に戦うことしか出来なかった。
「恵理を護れなかった俺にっっ! 護る為に動く資格なんてないんだ!」
それはある種の呪いであろう。秋山をどこまでも苦しめるが最後の拠り所としている呪い。
ぬぐってもぬぐっても落ちない汚れのように。それからは願いを叶えるまでは永遠に解放されない。
「お前達がだぶるんだよ、……いくら裏切られても人を信じ続けるあのバカみたいなお人好しと」
秋山の脳裏に浮かぶのはモンスターから人を護る為だけに変身するある一人の男。
馴れ馴れしく、何度も衝突したこともあるが不思議と決別まではしなかった。
この戦場でも変わらずに人を護る為だけに力を使っていることだろう。
「戦うのが全員俺みたいなライダーだったらよかった……それだったら心置きなく戦えるから……。
なのに、何故お前達なんだ……!」
秋山は頭を抱えて悩みこむ。秋也達がライダーではないということはよく分かっている。
だが、戦わなければ願いを叶えられない、戦わなければ生き残れない。
俺が死んだら誰が恵理を救うんだ。なら戦うしかないじゃないか。
心中での重いつぶやきは当然の如く誰にも聞こえなかった。
「もうこれ以上――――俺を迷わせるなっっ!!!!」
「なら俺達がお前を救ってみせる。こっちへ来いよ、お前が立っている場所は暗すぎて何も見えないぜ?」
「ええ、私達は諦めない、絶対に」
「それでも、だ。俺は、もう戻れないんだ」
再度空気が凍った。秋山はこの一撃で決着をつけるのだろう。秋也達にもその気迫が伝わってくる。
全ては次の一瞬で決まる。ダークウィングは再び真紅との戦闘を開始した。
真紅は意地でも秋也に近づかせない様に花弁の奔流を操りダークウィングを翻弄させる。
「行くぞ―――っ!」
疾駆。一陣の黒い風が吹いた。秋也に音速の一撃が押し迫り――。
「ガハッッ……痛いな……何度味わってもこういうのは慣れない」
――秋山の剣が突き刺さった。
「だけど、捕まえた、ぜ! 幾ら動きが速くてもこれだったら、捉えられる!」
「なっ…………!」
ただし秋山が狙った胸への音速の突きは秋也が体を無理やりそらすことにより右肩に。
秋也はわざと攻撃を受けることにより秋山に接敵する作戦を取ったのだ
作戦は見事に成功した。秋山が狼狽している内に左手にはレミントンが握られる。
「これだけ近いとすっげー衝撃になるだろっ!」
トリガーを引く。銃口から弾丸が発射された。
至近距離からの大量の弾丸の銃撃は仮面ライダーの防御力といえども耐え切れるものではない。
そのまま秋山は勢い良く吹き飛ばされ宙に浮く。
(俺は、負けるのか? やっと、楽になれる、のか……?)
宙に浮いている間、秋山の頭は今まで歩んできた道の走馬灯がほとばしった。
恋人の恵理との幸せな毎日。その日々を壊されたあの日――仮面ライダーになった日。
神崎優衣との出会い。孤独な闘いの毎日。城戸真司との出会い。
全てが早送りのように流れていく。
(恵理……すまない。俺はここまでのようだ……)
そして、最後に秋山は最愛の恋人の事を思い浮かべながらゆっくりと意識を手放した。
◆ ◆ ◆
「何とか、勝てたな……」
「何とかじゃないわよ! 貴方一歩間違えば死ぬところだったのよ! わかっているの?」
「わかっていたさ、でもこうでもしないとあいつを止めることなんて出来なかったから」
あの激しい戦いの後、秋也達はやっとのことで探し出した薬局で怪我の治療と疲労回復の為の休息をしていた。
最も、病院と違って本格的な治療道具はないので傷口の消毒、止血、包帯を巻くなどのことしか出来なかったが。
「本来なら手も足も出なかった。身体的にも差があったし。勝てたのはこいつに迷いがあったからだよ。
それぐらい本来は強いと思う」
「仮面ライダーだったかしら。恐ろしい力ね、これは善にも悪にもなる」
秋也はデイバッグに突っ込んでいた四角いカードケースを取り出す。
ちなみに秋山は弾丸の衝撃を受けたダメージが大きいのか目を覚まさずに眠ったままだ。
「何の変哲もないカードケースだけど、ものすごい力になるんだな」
「そうね……」
どこか上の空の真紅はじっと掌の上に乗っている光をただ見つめている。
ローザミスティカ。水銀燈の生きた証だ。
「あの子は……きっと誇りを持って生き抜いた」
「うん、その水銀燈って子もきっと最後の最後まで諦めなかったと思う。真紅の宿敵だったんだろ?」
「ええ。あの子とは何度もぶつかったわ」
「そんな子が簡単に屈する訳ないよ」
「さすが、気持ちのいい啖呵を切っただけはあるわ、慰め方は天下一品ね」
真紅が薄く笑い、秋山との戦いでの宣言を茶化した。それを秋也は真正面から受け止めて笑い返す。
「でも、俺は実際、細かいこととか考えてないよ。
みんな笑って暮らせる世界が欲しい。せめて手の届く範囲だけでもいいから、それだけを考えていたんだ。
こいつも、真紅も、俺も全員が笑って生きていければいいのになって、さ」
【E-4/市街地/一日目・早朝】
【七原秋也@バトルロワイアル】
[状態]:強い決意、右肩に刺突痕(応急処置済み) 、腹部に中ダメージ(ヴァルセーレの剣が吸い取った力で回復)、疲労(大)
[装備]:信史のピアス@バトルロワイアル
[道具]:基本支給品×2、レミントンM870(0/8) 、レミントンM870(8/8)、ヴァルセーレの剣@金色のガッシュ、レミントンM870の弾(22発)
カードデッキ(ナイト)、不明支給品×1
[思考・状況]
基本行動方針:真紅と共にプログラムの打倒
1:今は休息を取る。
2:脱出の為の情報収集、工具等の道具集め。 大学に向かうことも視野に入れる。
3:次にあの子に会ったら……
4:仲間を頼る。そして一緒に強くなる。
※本編終了後から参戦。
【真紅@ローゼンメイデン】
[状態]:左足からアンモニア臭。 疲労(大)
[装備]:
[道具]:基本支給品、ホーリエ、ハリセン@現実 、ローザミスティカ(水銀燈)
[思考・状況]
基本行動方針:七原秋也と行動をともにし、脱出する 。
1:今は休息を取る。
2:秋也が苦しい時は側にいる。
【秋山蓮@仮面ライダー龍騎】
[状態]:ダメージ(大)、疲労(極大)
[装備]:
[道具]:
[思考・状況]
基本行動方針:??????
1:????
[備考]
参戦時期:少なくとも恵理が目覚めるより前、手塚との出会い以降からの参戦
水銀燈を新種のミラーモンスターだと認識?
アリスゲーム等の正規の形でローザミスティカを手に入れたわけではないので
ローザミスティカは所有者に力を与えますが同時に心身を蝕みます。
同意のもとで手に入れたらどうなるかは後続の書き手にお任せします。
あと人工精霊も。
[共通備考]
F-2の墓場には、参加者の元いた世界の脱落者、関係者の墓が多数存在。(※死者に限る)
|[[水のように優しく、華のように激しく]]|投下順|[[ニートの異常な恐怖~また俺は如何にして働きたくねえと思うようになったか~]]|
|[[水のように優しく、華のように激しく]]|時系列順|[[ニートの異常な恐怖~また俺は如何にして働きたくねえと思うようになったか~]]|
|[[対主催]]|秋山蓮|[[レボリューション(上)]]|
|~|七原秋也|~|
|~|真紅|~|
**I want to smile for you ◆W91cP0oKww
「行くぜ、真紅」
「ええ」
秋也と真紅が二手に分かれて駆け出す。
秋山はどちらを狙うか一瞬苦悩するがすぐに決めて地面を踏みしめて接敵した。
その相手とは。
「やっぱり俺か」
「おおおおおおおおおおっっ!」
秋山は身体能力的にも差がある秋也を狙うことに決めた。
手に持った剣を横薙ぎに一閃。
それは常人にはとてもじゃないが見極められない一撃であるが秋也は安々とヴァルセーレの剣で防ぐ。
止められるとは思っていなかったのか秋山の動きが一瞬止まる。隙はそれだけで十分だった。
剣を振り払い秋山の腹部目がけてヴァルセーレの剣を横薙ぎに振るう。
「がァっ!」
「ホームランってな! これでも元野球部、バッティングには自信があるぜ」
直撃を食らった秋山はたたらを踏み、崩れ落ちそうになるが気合で態勢を元に戻す。
元に戻る勢いついでに秋也の頭目がけて頭突きをするが既に秋也は離脱している。
その代わりに。
「あら、私を忘れてもらっては困るわ」
バラの花弁の奔流が秋山に迫る。真紅がダークウィングとの戦闘の傍らに精製したものだ。
さすがに剣で薙ぎ払うには面倒だと思ったのか、秋山はベルトからカードを取り出して武器を召喚する。
――SWORD VENT――
カードの恩恵により天から舞い降りる突撃槍――ウイングランサー。
それを手に取り、迫る花弁を一刀両断、するはずだった。
「なっ!?」
花弁は即座に方向を変えて秋山ではなく、落ちてくるウイングランサーを狙った。
真紅が遠くでニヤリと笑う。してやったりといった顔だ。
こうなってしまってはただ座して待つのではなく自分で動いて取りに行くしかない。
秋山はそう判断して後退してウイングランサー目がけて跳躍しようとするが。
「俺を忘れんなよ!」
秋也がそれを許さない。レミントンによる銃撃が空を翔ける。
弾丸は見事命中して秋山をのけぞらせた。
その間にウイングランサーは花弁によって吹き飛ばされあらぬところに行ってしまった。
「邪魔ばかりして!」
「これは“闘い”なんだ、当たり前だろ!」
秋山は悪態を吐いて剣を強く握り締め、横に縦に縦横無尽に襲うヴァルセーレの剣を受け止める。
袈裟に振り落とされるのを下段からの振り上げで受け止め、横薙ぎの斬撃は力任せに弾き返す。
返答替わりの唐竹割りは安々と受け止められた。
「……何故当たらない!」
「さぁな、やっぱり迷ってんじゃないのか!」
ヴァルセーレの剣と秋山の剣が打ち鳴らす金属音が次第に大きくなり、斬裂の音だけが世界に音となって広がっていく。
五月蝿いぐらいに響く金属音。だがそれを咎める者は誰もおらず。両者は一心不乱に刃を走らせる。
(最初と比べて動きが単調だ、幾ら速くてもこれなら俺でも戦える!)
秋山の動きは確かに速かった。仮面ライダーナイトの名は伊達ではない。だが、現在はただ速い“だけ”だ。
何の戦略も無くただ心の赴くままに暴れているだけ。そんな攻撃は幾多の修練と修羅場を乗り越えた秋也には通用しない。
「くそっ!!」
「……それでも受けているのが精一杯だな、コンチクショウ」
傍からは秋山が一方的に秋也に攻撃を繰り出しているように視えるだろう。
だが実態は違う。追い詰められているのは秋山の方だ。
斬撃は徐々に雑になってはいるし、息も上がってきている。
(でも最初の勢いがなくなってきている……このまま持久戦に持ち込むと勝てる!)
ヴァルセーレの剣には触れた魔物の力を奪い、蓄える能力がある。秋山の剣に何度も触れて、肉体にも大きな一撃を与えた。
仮面ライダーの力はヴァルセーレの剣の能力によって吸収されたのだ。
最もそれに気づかない秋山はだんだんと落ちていく動きに戸惑いを隠せない。
「チッ!」
舌打ちと共に秋山は一旦後退して新たなカードをデッキから取りだそうとするが、その動作は最期まで行われない。
秋也は素早くヴァルセーレの剣からレミントンに持ち替えて銃撃。カードは見事撃ち抜かれ、秋山の手から弾かれた。
「そのカードがお前に力を与えてるってのはさっきの動作でわかった。もうそれは使わせない」
戦闘の間も秋也は秋山の動作などを観察していた。カードによってウイングランサーが召喚されたことを把握していたのだ。
杉村や桐山のように打倒し、一撃を与えることができないのなら頭を使うまで。
「…………だ」
「なんだ?」
「どうしてだ! お前達は大切なモノを奪われたはずだ! どうしようもない現実を変えたいはずだ!
なのに何故協力する! 何故優勝を目指さない! 何故平然と“闘い”を否定する! 」
秋山の慟哭が辺りに響く。それは泣いているのか、怒っているのかどちらとも取れない慟哭。
だが、秋山の心からの叫びであることだけは確かだ。この慟哭に全員が動きを止める。
「答えろ秋也! 真紅!」
「そうだな……」
「そうね……」
秋山の問いに二人は静かに答える。先程まで金属音が響いていた戦場とは思えない静けさだった。
「俺は数えきれない程の後悔をしてきた」
「私も後悔したわ、もっと力があればいいのになんて何度も思った」
こんなハズでは、もっとうまくやれたらなどの後悔は飽きるくらいにした。
「銃で撃たれて痛い思いだってした、大切な人が死んで悲しい思いだってした」
「もうこんな運命から逃げ出そうとさえ思った時もあったわね」
大切なモノの喪失、いっそ死んでしまいたい。痛くて悲しい感情は何時だって色褪せなかった。
「だけど、現実が痛くても悲しくても投げ出したくても」
「例えどれほどの苦渋が待ち受けていたとしても」
先行きが見えない暗い現実、騙され裏切られ、果ては死ぬかもしれない未来が降りかかろうとも。
「「乗り越えなくてはいけない」」
そこで足を止めたらおしまいだから。理想を貫くという意志が諦めを許してはくれない。
「確かに苦しいさ、この道のりは。果てが見えない」
「むしろ果てなんてあるのかどうかすらわからないわ」
この行先は崖で一人では登れないかもしれない。
「だから、協力するんだ。一人じゃ苦しいからさ」
「それに優勝なんてナンセンスよ、たった一人だけなんて寂しいしね。一人で飲む紅茶も美味しくないわ」
それなら二人で助け合いながら登ればいい。いつだって人は助け合いながら生きていくものだから。
人は一人では生きてはいけないから。
「それに俺は“闘い”を否定しているわけではないんだ」
「私達だって“闘い”を肯定しなくてはいけない時もあるわ」
「俺は、いや俺達は護る為の“闘い”をするんだ」
「大切な人達に胸をはって誇れるような“闘い”を、ね」
その理想はこの戦場では一笑されることだろう。ここはバトル・ロワイアル、たった一人の優勝者のみが生き残れる狂気の戦場だ。
護るだなんて何だ? そう疑問符を浮かべられることだろう。
それでも秋也や真紅にとっては貫きたい理想だったのだ。
「……俺だって護りたかった」
誰にも聞こえない小ささのつぶやきだが、二人の耳には届いた。蚊の鳴くようなつぶやきだが、確かに届いた。
「俺だって護りたかったさ! 正義の味方として力を使いたかった! あのふざけた影の奴を倒す為に協力したいさ!
胸をはれる”闘い”だってしたかった!」
それは秋山の本心だということが痛いほどに理解できた。顔は仮面で隠れているが涙が止めどなく流れている、二人はそんな気がした。
「だが、俺は……救わなくてはいけない! 今も眠っている恵理を!
恵理の為ではなく俺自身の為に、俺が俺である為に! 幸せになる為に!」
大切な人と共に歩む未来、それはこの世のありとあらゆるモノをとっぱらってでも欲しいモノだった。
その為に仮面ライダーになった。だが、その思いと同時に考えたこともあった。
これでいいのか? 疑問に対する答えは出せなかった。その疑問を封じてただ一心不乱に戦うことしか出来なかった。
「恵理を護れなかった俺にっっ! 護る為に動く資格なんてないんだ!」
それはある種の呪いであろう。秋山をどこまでも苦しめるが最後の拠り所としている呪い。
ぬぐってもぬぐっても落ちない汚れのように。それからは願いを叶えるまでは永遠に解放されない。
「お前達がだぶるんだよ、……いくら裏切られても人を信じ続けるあのバカみたいなお人好しと」
秋山の脳裏に浮かぶのはモンスターから人を護る為だけに変身するある一人の男。
馴れ馴れしく、何度も衝突したこともあるが不思議と決別まではしなかった。
この戦場でも変わらずに人を護る為だけに力を使っていることだろう。
「戦うのが全員俺みたいなライダーだったらよかった……それだったら心置きなく戦えるから……。
なのに、何故お前達なんだ……!」
秋山は頭を抱えて悩みこむ。秋也達がライダーではないということはよく分かっている。
だが、戦わなければ願いを叶えられない、戦わなければ生き残れない。
俺が死んだら誰が恵理を救うんだ。なら戦うしかないじゃないか。
心中での重いつぶやきは当然の如く誰にも聞こえなかった。
「もうこれ以上――――俺を迷わせるなっっ!!!!」
「なら俺達がお前を救ってみせる。こっちへ来いよ、お前が立っている場所は暗すぎて何も見えないぜ?」
「ええ、私達は諦めない、絶対に」
「それでも、だ。俺は、もう戻れないんだ」
再度空気が凍った。秋山はこの一撃で決着をつけるのだろう。秋也達にもその気迫が伝わってくる。
全ては次の一瞬で決まる。ダークウィングは再び真紅との戦闘を開始した。
真紅は意地でも秋也に近づかせない様に花弁の奔流を操りダークウィングを翻弄させる。
「行くぞ―――っ!」
疾駆。一陣の黒い風が吹いた。秋也に音速の一撃が押し迫り――。
「ガハッッ……痛いな……何度味わってもこういうのは慣れない」
――秋山の剣が突き刺さった。
「だけど、捕まえた、ぜ! 幾ら動きが速くてもこれだったら、捉えられる!」
「なっ…………!」
ただし秋山が狙った胸への音速の突きは秋也が体を無理やりそらすことにより右肩に。
秋也はわざと攻撃を受けることにより秋山に接敵する作戦を取ったのだ
作戦は見事に成功した。秋山が狼狽している内に左手にはレミントンが握られる。
「これだけ近いとすっげー衝撃になるだろっ!」
トリガーを引く。銃口から弾丸が発射された。
至近距離からの大量の弾丸の銃撃は仮面ライダーの防御力といえども耐え切れるものではない。
そのまま秋山は勢い良く吹き飛ばされ宙に浮く。
(俺は、負けるのか? やっと、楽になれる、のか……?)
宙に浮いている間、秋山の頭は今まで歩んできた道の走馬灯がほとばしった。
恋人の恵理との幸せな毎日。その日々を壊されたあの日――仮面ライダーになった日。
神崎優衣との出会い。孤独な闘いの毎日。城戸真司との出会い。
全てが早送りのように流れていく。
(恵理……すまない。俺はここまでのようだ……)
そして、最後に秋山は最愛の恋人の事を思い浮かべながらゆっくりと意識を手放した。
◆ ◆ ◆
「何とか、勝てたな……」
「何とかじゃないわよ! 貴方一歩間違えば死ぬところだったのよ! わかっているの?」
「わかっていたさ、でもこうでもしないとあいつを止めることなんて出来なかったから」
あの激しい戦いの後、秋也達はやっとのことで探し出した薬局で怪我の治療と疲労回復の為の休息をしていた。
最も、病院と違って本格的な治療道具はないので傷口の消毒、止血、包帯を巻くなどのことしか出来なかったが。
「本来なら手も足も出なかった。身体的にも差があったし。勝てたのはこいつに迷いがあったからだよ。
それぐらい本来は強いと思う」
「仮面ライダーだったかしら。恐ろしい力ね、これは善にも悪にもなる」
秋也はデイバッグに突っ込んでいた四角いカードケースを取り出す。
ちなみに秋山は弾丸の衝撃を受けたダメージが大きいのか目を覚まさずに眠ったままだ。
「何の変哲もないカードケースだけど、ものすごい力になるんだな」
「そうね……」
どこか上の空の真紅はじっと掌の上に乗っている光をただ見つめている。
ローザミスティカ。水銀燈の生きた証だ。
「あの子は……きっと誇りを持って生き抜いた」
「うん、その水銀燈って子もきっと最後の最後まで諦めなかったと思う。真紅の宿敵だったんだろ?」
「ええ。あの子とは何度もぶつかったわ」
「そんな子が簡単に屈する訳ないよ」
「さすが、気持ちのいい啖呵を切っただけはあるわ、慰め方は天下一品ね」
真紅が薄く笑い、秋山との戦いでの宣言を茶化した。それを秋也は真正面から受け止めて笑い返す。
「でも、俺は実際、細かいこととか考えてないよ。
みんな笑って暮らせる世界が欲しい。せめて手の届く範囲だけでもいいから、それだけを考えていたんだ。
こいつも、真紅も、俺も全員が笑って生きていければいいのになって、さ」
【E-4/市街地/一日目・早朝】
【七原秋也@バトルロワイアル】
[状態]:強い決意、右肩に刺突痕(応急処置済み) 、腹部に中ダメージ(ヴァルセーレの剣が吸い取った力で回復)、疲労(大)
[装備]:信史のピアス@バトルロワイアル
[道具]:基本支給品×2、レミントンM870(0/8) 、レミントンM870(8/8)、ヴァルセーレの剣@金色のガッシュ、レミントンM870の弾(22発)
カードデッキ(ナイト)、不明支給品×1
[思考・状況]
基本行動方針:真紅と共にプログラムの打倒
1:今は休息を取る。
2:脱出の為の情報収集、工具等の道具集め。 大学に向かうことも視野に入れる。
3:次にあの子に会ったら……
4:仲間を頼る。そして一緒に強くなる。
※本編終了後から参戦。
【真紅@ローゼンメイデン】
[状態]:左足からアンモニア臭。 疲労(大)
[装備]:
[道具]:基本支給品、ホーリエ、ハリセン@現実 、ローザミスティカ(水銀燈)
[思考・状況]
基本行動方針:七原秋也と行動をともにし、脱出する 。
1:今は休息を取る。
2:秋也が苦しい時は側にいる。
【秋山蓮@仮面ライダー龍騎】
[状態]:ダメージ(大)、疲労(極大)
[装備]:
[道具]:
[思考・状況]
基本行動方針:??????
1:????
[備考]
参戦時期:少なくとも恵理が目覚めるより前、手塚との出会い以降からの参戦
水銀燈を新種のミラーモンスターだと認識?
アリスゲーム等の正規の形でローザミスティカを手に入れたわけではないので
ローザミスティカは所有者に力を与えますが同時に心身を蝕みます。
同意のもとで手に入れたらどうなるかは後続の書き手にお任せします。
あと人工精霊も。
[共通備考]
F-2の墓場には、参加者の元いた世界の脱落者、関係者の墓が多数存在。(※死者に限る)
|[[水のように優しく、華のように激しく]]|投下順|[[ニートの異常な恐怖~また俺は如何にして働きたくねえと思うようになったか~]]|
|[[水のように優しく、華のように激しく]]|時系列順|[[ニートの異常な恐怖~また俺は如何にして働きたくねえと思うようになったか~]]|
|[[対主催]]|秋山蓮|[[レボリューション(上)]]|
|~|七原秋也|~|
|~|真紅|~|
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