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「レボリューション(下)」(2011/06/22 (水) 22:56:20) の最新版変更点
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**レボリューション ◆1yqnHVqBO6
「これで5人だ」
絶望、
そのさらに先の虚無。闇。
それを目の当たりにしても心が折れぬ人間など――――
咆哮。それは王というよりも野獣に似ていた。
今の今まで倒れ伏していた幼き雷帝、
ゼオンが身体中の力を掻き集め、立ち上がる。
「ノール、水流をあの子とミツルの周りに展開させるんだ!」
来栖がゼオンの復活を予測していたかのような自然さで
ノールに指示を出す。
「オーケー!」
水がゼオン達の周りを龍のようにとぐろ巻く。
「魔本をよこせ少年!」
高ぶった心はそのままに。
王として相応しい修羅の心を十二分に備える
ゼオンはそれが正しい指示として来栖に魔本を投げ渡す。
その速度。まさに豪速球。
だがそれを空中で見事にキャッチした七原が来栖へとそのまま放る。
魔本を手に持った来須圭悟。
叫ぶ。ゼオンと同じように。
咆哮する。
最高の。雷の術を。
ミツルの電撃と同じタイミングで。
――ジガディラス・ウル・ザケルガ ――
水流が。水龍へと変わる。
まるで、ゼオンの弟である彼の『あの術』のような強大さを持って。
まだだ、まだ。
誰も諦めていない。
ありったけの巨大な龍が一つの電磁石となり。
それをノールがチャンの周囲へと動かし。体内磁石を狂わせる。
風水によって築かれた異能を弾く結界は解かれ。
チャンの身体能力もまた、半減する。
針の穴よりも小さい勝機が見え始めた。
「ハハッ」
来栖が朗らかにカラカラ笑う。
――つまり君の“願い”は正義の味方になりたいってことでいいんだよね!?
短い間の同行者の言葉が来栖の脳裏をよぎる。
それに今ならなんと応えるだろうか。
決まっている。
未来日記所有者4thたる来須圭悟は確信できる。
「俺の“願い”はやっぱ」
そしてチャンは気づいている。
誰の指示でこれを成したのか。
「ああいう奴をボコることなんだよな」
来須圭悟は。
仮面ライダーナイトにカードを――
仮面ライダーオルタナティブ・ゼロに意志を――
「なんで俺が会うまともな奴はいつもテロ系なんだろうなあ」
大地を。チャンが蹴る。
重点的に強化された脚力。
それが産み出す速度は誰であろうと反応はできない。
「まあいいさ。やっちまえ、“革命家ども”」
――託す。
チャンの残る左腕が手刀の形を取り、
来須圭悟を両断する。
そして、攻撃地点が誰にでも読めていたのなら。
後手での対応は可能。
残る戦士。
仮面ライダーナイトサバイブ、龍騎、ローゼンメイデン、オルタナティブ・ゼロが
チャンを打倒せんと雪崩のように攻撃を繰り出す。
先陣を切るのは予期せぬだろう大幅な強化を果たした秋山蓮。
まだそのスペックはチャンに悟られてはいない。
闘いの決着を遅らせる理由はない。
己が分身を幾つも作り出し、チャンへと斬りかかる。
「着地点を観測した。その程度のことで私を倒せると?」
今の状況は互角にも程遠い。
魔神、魔王、魔怪、そのどれもが彼を形容するには慎ましすぎるのだから。
数多くの分身による全ての攻撃を
チャンはただ一つの動作で薙ぎ払う。
それはただの回し蹴り。
だが、仮面ライダーの力すら付与された
その足が産み出す威力と余波はいかなるものをも寄せ付けない。
秋山の後に続くのは七原とカントリーマン。
魔界の大剣を完全に使いこなすに足るスペックを得た七原が
天高く飛び上がり、天空ごと突き刺すかのように
チャンの頭頂へ落下速度を乗せて突き刺そうとする。
チャンの脚はまだ回し蹴りから戻されていない。
ならば必然、揚げられた脚は踏みしめるように勢いよく降ろし。
開いた左拳を大剣に沿えて、急激に回転させることで
接地えネールギーを分散。剣の軌道を逸らす。
「馬鹿の一つ覚えのように上からの攻撃か。温すぎる」
そして背後からはカントリーマンが新たに斬りかかる。
それにも対応しようとチャンが
足を動かそうとして。
動かない。
正確には動きが鈍い。
脚が深く埋まる地中は泥濘を超えて沼のようなネバつきを持っている。
何故、一箇所だけ土がこのようになっているのかとチャンは眉を上げる。
「来栖がただ殺されるためだけにそこにいると思ったのかい?」
膨大な電気を込められ続けた水流を周囲に蠢かせ。
ノールが我が意を得たりと大粒の汗を浮かべつつも
彼には似合わない獰猛さを秘めた表情で微笑む。
「始めから来栖に誘導されていたんだよ。
ボクが細工した場所へね」
チャンの反応が。ついに遅れる。
如何なる力を持つ脚であろうとも、いやだからこそ。
足場の悪さが決定的な要因となる
城戸真司に託された龍騎の力と、
霧島美穂によって生かされた命を携え。
ドラグセイバーはついにチャンの右腕を切り飛ばし。
奇跡の執刀、ついにチャンの体に致命傷を負わせる。
そして、
喪った命への悲しみを堪え、
七原は叫ぶ。闘いをともにした戦友に。
「場は整ったぜ」
周囲に散乱していた支給品。
真紅はそこから彼女の持ち物を見つけた。
懐中時計。
真紅の力を元に物の持つ時間を
ほんの少し巻き戻せることができる時計。
「右ストレートパンチだ。やってやれ」
ソレを用いて、
真紅は英雄になろうとしていた男が使った銃を復元させる。
「相棒!!」
狙いを定めて。
真紅は捕鯨銃を撃つ。
右腕は先ほど切り飛ばされた右半身のまま、カントリーマンを退けるには時間が足りない。
左腕は残っているが地面に突き刺さった大剣が進路を邪魔している。
どけるにはこれも時間がない。
ならば、いっそ両方向をこの両脚で。却下だ。
着地したところを狙われるが必然。
チャンに残された防御手段は左腕のみ。
左腕に想波をコーティングしてもなお、
強大な一撃を防ぎきるには能わず。
左の掌を突き破り、腕の中。深く深くへと銛がうたれる。
好機。
ついに好機がやってきた。
七原はすぐさま距離を取り、真紅の側へ戻り。
秋山、カントリーマンも最大の一撃を繰り出すためのカードを取り出す。
――FINAL VENT――
――FINAL VENT――
チャンの今の武器はその両脚のみと言っていい。
ならば、狙うべきは上空からの圧倒的な攻撃。
同じ高さからの攻撃は片脚をスイッチすることで、いくらでも対応できるだろう。
だが高高度からの攻撃にはどうしても脚だけで迎えうつには限度がある。
引き脚。引き手。
伸ばされた手脚は威力を放った後、改めて元の位置に戻さなければ
再び十全の威力を発揮することができないのは人体の理。
頂点をも超えた武ですらそれから完全に逃れること、叶わない。
龍騎は空高く飛び。
ミラーモンスターの火炎を推進力に
チャンへと一個の槍のように突撃する。
カードの効果が明確に現れる直前。
ナイトサバイブもまた空高く飛び。
バイクへと変形したミラーモンスターと共に
マントに漆黒のミサイルへと姿を変える。
「準備は。聞かなくてもOKだよな!?」
空高く飛び上がるのは仮面ライダーオルタナティブ・ゼロとて同じ。
背に負うのは宿敵のローザミスティカの力を借りた真紅。
「当然。だから」
七原からそっと離れて。
真紅はあらん限りの薔薇の花弁の嵐を七原の背へと送り。
推進力とする。
「やりとげなさい……相棒!!」
本来なら持たぬはずのオルタナティブ・ゼロの蹴り技。
だが今、友の力を借りてここに成されるのならば。
付けるべき名はただ一つ。
――RIDER KICK――
三方向からの同時攻撃。
これを迎え討つには今のチャンには些か心もとないか。
いや、これはただの“劣勢”。
乗り越えようと奮起するに相応しい障害が
最強の前にようやく現れただけに過ぎない。
「楽しい。楽しいぞ諸君!!」
チャンは渾身の力をこめた蹴り技でそれら
全てを一度に退けんとする。
瞬間。チャンの身体中に雷を伴った水龍が巻きつかれる。
チャンの動きが止まる。
「もう、限界なんだ」
ノールが、ミツルが、ゼオンが膝を付きながらも。
チャンを睨みつける。
「全力をくらえ」
そして三人のライダーの攻撃が、
チャンを。
「見事也!
戯れではなしに私の本気を真っ向から引き出すとは。
無双の孤独を耐え忍び続けた甲斐があったというもの!」
両の手が使えなくなろうとも。
奥の手が使えないことには決してならない。
言葉遊びにすらならない道理。
――天地開闢 有為転変――
封印魔法、発動。
ありとあらゆる周囲の想波がチャンへと集められていく。
八卦鏡の助けがないとしても、
産み出される威力は会場丸ごと滅ぼすことすら可能だろう。
破壊が、周囲のエリアごと彼らを包み。
断とうとする。
それでも退かない防人の全力攻撃。
三人の仮面ライダーの同時攻撃。
余波が周囲一帯を吹き飛ばして彼らはまだ攻撃を打ち砕かれてはいない。
「膝を屈することを良しとはせず。
立ち向かい続けるか勇者達よ!」
チャンは喝采する。
まだ誰も諦めてはいない。
最強を倒すことを。
“願い”へ、未来へ進むことを彼らは諦めてはいない。
だから、
「受けて死ね」
力を使い果たしたミツルは既に変身が解かれ。
普段の姿に戻っている。
それでも。
彼は闘い続ける。
――エターナル・エンド――
ミツルの封印魔法も加わり。
エネルギーのせめぎ合いはさらに激化する。
チャンのベルトにあるデッキはとうに壊れ。
仮面ライダーの意匠は消え失せている。
残るは己の鍛錬のみで辿りついた想波の闘法たる悟りのみ。
そして、チャンの攻撃はついに破られ。
仮面ライダー達の攻撃がチャンを打ち砕く。
ハズだったのに。
カントリーマンが手駒にした不死人達に守られていた朧が。
度重なる精神への負担に耐え切れず心を無くした者が。
あまりの衝撃に眼を醒まし。
起き上がり、戦場を破幻の瞳で見つめる。
破幻の瞳があらゆる異能から身を守り。
彼女の諦めが全てを台無しにする。
諦めが。
勇者達を殺す。
変身が解かれた仮面ライダー達はそのまま落下し地面を転がる。
立っているのはぶつかり合いにより、
インペラーのデッキを壊されていたチャンのみ。
だが仮面ライダーの運命であるミラーモンスターの襲来はない。
ミラーモンスターの乱入ごと消し飛ばす苛烈なる激突。決闘。
それを最悪の形で邪魔されたチャンは特に動じることもなく
一足飛び出朧の眼の前へと現れる。
「やめろ!」
カントリーマンの懇願にも似た制止の声も虚しく。
チャンはあっさりと朧を蹴り飛ばす。
全ての水を使い果たしてしまい。
合体すら解かれてしまったノールに
内蔵の全てが壊された朧が肉の弾丸となり。
体内からから突き出た骨がノールの身体中を突き刺す。
死体となって崩れ落ちるノールと朧を尻目に
異能殺しの軛から解放されたゼオンが真っ先にチャンへと突進する。
魔本を用いての術ブースト。
それに頼ることはできない。
側にいたノールは死に、
ミツルも疲弊で動くこともできずただチャンを睨みつけている。
心の力をありったけ振り絞った術で己の体を強化し、
チャンへと殴りかかる。
だが、消耗が。ダメージが大きすぎた。
「まだだ。俺は! 俺はガッシュを殺した貴様を必ず殺す!」
復讐の念すべてをこめての攻撃をチャンは足裏で受け止める。
「ガッシュ?」
チャンがゼオンの怒りを目の当たりにして言う。
「誰だそれは?」
それはただの言葉。
ブラフである可能性も十分にあった。
だが、ゼオンは。
王の素質と資質を十二分に兼ね備えたゼオンは理解してしまう。
その言葉に、嘘はないと。
ゼオンの眼から光が喪われる。
己の徒労を知り。力が抜ける。
そして、
諦めてしまったゼオンの体をチャンの足裏が拳ごと押し返し。
踏み潰す。
真っ赤な血の塊となった三人。
地面を転がっていた七原達はようやく立ち上がる。
疲労の影を隠しきれなくとも。七原は憤り、叫ぶ。
「どうしてだ!
どうしてそんなことができる!?」
七原に眼を向けたチャンは先の中断された
問答の続きであるかのように嘲笑う。
「無意味だからだ。
幾億の“願い”も、信念も。
その全てが虚でしかないだからだ。
死ねば、裏切られれば全てが無へと変わる」
チャンは七原達の方へと歩き出す。
握る拳がなくとも溢れんばかりの闘気が対峙する者達へ突き刺さる。
「だから私は想うのだよ。
闘争だけが実。
“願い”のためであろうと復讐のためだろうと、
それによって突き動かされた戦士の織り成す闘争は」
そこにあるのは空虚な最強に残されたほんの少しの郷愁か。
チャンは続ける。
「闘争だけは。真実で在り続けると」
恐らくは、これがチャンの心。
これに真っ向から触れた者は既に死した勇者ワタルだけだろう。
たしかな重みを持った言葉。
受け止めるには殺意もなく、真摯過ぎて、灼かれそうなその想い。
ある意味で潰されそうな純粋さ。常人は触れることすら厭うであろうソレ。
だが、今の彼らは違う。
カントリーマンは言う。
「『私』の中には生きている。
医師としての『私』が救った命が、『私』達を救おうとした際の言葉を憶えている。
『生きろ』。
旅人として殺し合うことしかしてこなかった『俺』はその言葉で、
医者として行動してきたこの世界での『私』が救われたように想えた」
秋山は言う。
「アンタの願うソレは。求めるソレは。
真実じゃない。ただの地獄だ。
闘い続けなければ生き残れない。
それは確かだ。だが…………」
秋山は確信をこめて告げる。
「殺しあい続けなければ生き残れない“願い”は。
きっとそんなに多くないんだ。
殺し合いを産むほどの“願い”は。
そんなにあっていいものじゃない」
何を言われようともチャンは動じない。
ただ自らと闘ってくれるだろう者達へ歩み寄るだけ。
「良い意志を感じる」
そして、間合いに入り。
チャンは攻撃へと移る。
「だが。意味はないがね」
最大の好機を逃したがゆえの脱力は
秋山とカントリーマンの力を、意志を疲労以上に奪っている。
体が。チャンに立ち向かう力を与えてくれない。
「お前達もまた、諦め。ここで死ぬのだから」
前蹴りが秋山へ繰り出される。
それを七原が前に出て庇う。
ただ一人、欠片たりとも諦めておらず。
体を動かす力を持っていた七原が大剣で受け止める。
受け止めきれなかった衝撃が。
オルタナティブ・ゼロのデッキをついに壊す。
仮面ライダーの運命が七原を襲う。
ミラーモンスター、サイコローグが現れ、七原へと襲いかかる。
七原が、喰われようとする。
「お前は本当に諦めないんだな。七原」
それを阻むのは、
七原と真紅の生き様を短い間だが共有した
仮面ライダーナイト、秋山蓮。
サイコローグの腕が、秋山蓮を貫く。
「一度殺したらもう戻れない、か」
清々しい顔で
秋山は、最期の言葉を遺そうとする。
「それでも、同じ道を歩むことはできるんだな」
そして、渾身の力でサイコローグの首を跳ね飛ばし。
秋山蓮が最後にその眼に映すのは。
親友のデッキを受け継いだ男の姿。
「願わくば……俺のナイトを受け継ぐ者も。
いや、これは俺には過ぎた――」
羨望混じりの言葉。最後までは述べられず。
カードデッキを握り締めたまま、膝をつき。
秋山蓮もまた、死ぬ。
倒れ伏していく者達の命が。
意志が、“願い”が、七原の心を震わせて。
人知れず引き継ぎを終えていたハルワタートを呼び寄せ。
ハルワタートに選ばれ。
闘志が“願い”のインストールを終わらせ。
破裂しそうな程の数多の“願い”が七原の脚を、更に前へと動かす。
生身で。一振りの大剣を手に。
チャンへと挑む。
「愚行なり。革命家、七原秋也よ」
けれども。
どれほどの意志が宿ろうと、“願い”が宿ろうとも。
それはチャンの攻撃が
七原の胴体を突き破る妨げにはなってくれない。
だが。だが、それでも。
「アンタは死んだら意味がないって言うけどさ」
七原は大量の血を吐き出しながら、
力の抜けた手から大剣を落としながらもチャンを見つめる。
「俺は知っているんだ。
短い間しか一緒にはいられなかったけど。
悲しい別れもたくさんあったけど。
少ししかわかり合うことが出来なかったとしても。
俺は知っている」
意志が七原の手に銃を握らせ。
チャンの顔へと狙いを定める。
零れ落ちる命を。必死に繋ぎとめながら。
震える手で。
「死んだんじゃない。
みんな生きていたんだ!
ここでも! どこでも! 命が続くまで、必死に!!
未来の為に生きてきたんだ!!」
だから。
七原は血まみれの顔で笑みを浮かべる。
「アンタもたしかにここで生きていたって憶えてやる。
背負ってやる。そして、一緒に死んでやる。
けど未来に繋げてやる」
震える手を鼓舞して七原は引き金を振り絞る。
チャンは動くことができない。
七原の胴体を貫いている脚を抜くことも。
地面に置かれている脚を動かすこともできない。
彼の体を渾身の力でカントリーマンが羽交い締めにしているから。
「さようならだ。最強」
虚闇のような銃口を目の前にし、
チャンは笑みを浮かべた。
銃声が虚無に響く。
その笑みの意味を知ることは誰にもできないだろう。
………………………………………………………………………………………………。
暗い。寒い。砂のように生命が零れていくのを七原は感じていた。
視界は闇で覆われて。体の先から熱が喪われていって。
側にいるハルワタートが教える。
次の防人を。
――いや、俺1分も防人やった気が全くしないんだけども。
まあ、いっか。チクショウ。いや、チクショウじゃないか。
ああ、でもやっぱりやっぱりコンチクショウ。
チャンにはカッコつけたけどまだまだ生きてえよ俺――
けれども、
自分の頭が小さな小さな膝の上にあることだけはわかった。
――よかった。
どこに吹き飛ばされたんだと思ってたけど無事だったんだな――
友の無事を知り、七原は安堵する。
押し寄せる悲しみと無念を抱きながら。
――ごめん。ごめんな典子。俺、帰ることできないみたいだ。
すまない、すまないノブ。俺、約束破っちまったよ。
川田。俺、俺。お前みたいに戦えたのかな?――
顔に雨があたる。
温かい。そしてとても優しい雨が。
大粒で、なのに、不思議なほどにささやかな雨が。
――悲しませちゃったよな。
でも、でもさ。俺は伝えたいんだ。お前に――
必死に七原が真紅の顔があるであろう所へ手を伸ばす。
小さな手がそれを強く強く握りしめる。
「俺、最期に――――」
言葉が出ない。
出るのはもう、血だけで。
ヒュウヒュウとした呼吸音だけが七原の口から流れる。
引き継ぎの時間がやってくる。
七原の体を雨ではない水が包み、砕き、溶かす。
そして、ハルワタートの口へと吸い込まれる。
七原秋也もまた、革命の志半ばで死ぬ。
だが。
新たな防人、真紅が彼の“願い”、知識を全て受け継ぐ。
“願い”は、七原の意志はローザミスティカに刻まれた。
――俺、最期にさ。
良い友だちを守ることができて。
本当に良かった――
七原秋也との消えない絆とともに。
&color(red){【猿谷甚一@銀齢の果て 死亡確認】}
&color(red){【来須圭悟@未来日記 死亡確認】}
&color(red){【朧@バジリスク~甲賀忍法帖~ 死亡確認】}
&color(red){【ノール@waqwaq 死亡確認】}
&color(red){【ゼオン・ベル@金色のガッシュ!! 死亡確認】}
&color(red){【秋山蓮@仮面ライダー龍騎 死亡確認】}
&color(red){【チャン@ブレイブ・ストーリー~新説~ 死亡確認】}
&color(red){【七原秋也@バトルロワイアル 死亡確認】}
&color(red){【残り 28名】}
|[[レボリューション(上)]]|投下順|[[レボリューション(続)]]|
|[[レボリューション(上)]]|時系列順|[[レボリューション(続)]]|
|[[レボリューション(上)]]|真紅|[[レボリューション(続)]]|
|~|ミツル|~|
|~|カントリーマン|~|
|~|秋山蓮|&color(red){GAME OVER}|
|~|七原秋也|&color(red){GAME OVER}|
|~|来須圭悟|&color(red){GAME OVER}|
|~|ノール|&color(red){GAME OVER}|
|~|朧|&color(red){GAME OVER}|
|~|ゼオン・ベル|&color(red){GAME OVER}|
|~|猿谷甚一|&color(red){GAME OVER}|
|~|チャン|&color(red){GAME OVER}|
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**レボリューション ◆1yqnHVqBO6
「これで5人だ」
絶望、
そのさらに先の虚無。闇。
それを目の当たりにしても心が折れぬ人間など――――
咆哮。それは王というよりも野獣に似ていた。
今の今まで倒れ伏していた幼き雷帝、
ゼオンが身体中の力を掻き集め、立ち上がる。
「ノール、水流をあの子とミツルの周りに展開させるんだ!」
来栖がゼオンの復活を予測していたかのような自然さで
ノールに指示を出す。
「オーケー!」
水がゼオン達の周りを龍のようにとぐろ巻く。
「魔本をよこせ少年!」
高ぶった心はそのままに。
王として相応しい修羅の心を十二分に備える
ゼオンはそれが正しい指示として来栖に魔本を投げ渡す。
その速度。まさに豪速球。
だがそれを空中で見事にキャッチした七原が来栖へとそのまま放る。
魔本を手に持った来須圭悟。
叫ぶ。ゼオンと同じように。
咆哮する。
最高の。雷の術を。
ミツルの電撃と同じタイミングで。
――ジガディラス・ウル・ザケルガ ――
水流が。雷を纏い、水龍へと変わる。
まるで、ゼオンの弟である彼の『あの術』のような強大さを持って。
まだだ、まだ。
誰も諦めていない。
ありったけの巨大な龍が一つの電磁石となり。
それをノールがチャンの周囲へと動かし。体内磁石を狂わせる。
風水によって築かれた異能を弾く結界は解かれ。
チャンの身体能力もまた、半減する。
針の穴よりも小さい勝機が見え始めた。
「ハハッ」
来栖が朗らかにカラカラ笑う。
――つまり君の“願い”は正義の味方になりたいってことでいいんだよね!?
短い間の同行者の言葉が来栖の脳裏をよぎる。
それに今ならなんと応えるだろうか。
決まっている。
未来日記所有者4thたる来須圭悟は確信できる。
「俺の“願い”はやっぱ」
そしてチャンは気づいている。
誰の指示でこれを成したのか。
「ああいう奴をボコることなんだよな」
来須圭悟は。
仮面ライダーナイトにカードを――
仮面ライダーオルタナティブ・ゼロに意志を――
「なんで俺が会うまともな奴はいつもテロ系なんだろうなあ」
大地を。チャンが蹴る。
重点的に強化された脚力。
それが産み出す速度は誰であろうと反応はできない。
「まあいいさ。やっちまえ、“革命家ども”」
――託す。
チャンの残る左腕が手刀の形を取り、
来須圭悟を両断する。
そして、攻撃地点が誰にでも読めていたのなら。
後手での対応は可能。
残る戦士。
仮面ライダーナイトサバイブ、龍騎、ローゼンメイデン、オルタナティブ・ゼロが
チャンを打倒せんと雪崩のように攻撃を繰り出す。
先陣を切るのは予期せぬだろう大幅な強化を果たした秋山蓮。
まだそのスペックはチャンに悟られてはいない。
闘いの決着を遅らせる理由はない。
己が分身を幾つも作り出し、チャンへと斬りかかる。
「着地点を観測した。その程度のことで私を倒せると?」
今の状況は互角にも程遠い。
魔神、魔王、魔怪、そのどれもが彼を形容するには慎ましすぎるのだから。
数多くの分身による全ての攻撃を
チャンはただ一つの動作で薙ぎ払う。
それはただの回し蹴り。
だが、仮面ライダーの力すら付与された
その足が産み出す威力と余波はいかなるものをも寄せ付けない。
秋山の後に続くのは七原とカントリーマン。
魔界の大剣を完全に使いこなすに足るスペックを得た七原が
天高く飛び上がり、天空ごと突き刺すかのように
チャンの頭頂へ落下速度を乗せて突き刺そうとする。
チャンの脚はまだ回し蹴りから戻されていない。
ならば必然、揚げられた脚は踏みしめるように勢いよく降ろし。
開いた左拳を大剣に沿えて、急激に回転させることで
接地えネールギーを分散。剣の軌道を逸らす。
「馬鹿の一つ覚えのように上からの攻撃か。温すぎる」
そして背後からはカントリーマンが新たに斬りかかる。
それにも対応しようとチャンが
足を動かそうとして。
動かない。
正確には動きが鈍い。
脚が深く埋まる地中は泥濘を超えて沼のようなネバつきを持っている。
何故、一箇所だけ土がこのようになっているのかとチャンは眉を上げる。
「来栖がただ殺されるためだけにそこにいると思ったのかい?」
膨大な電気を込められ続けた水流を周囲に蠢かせ。
ノールが我が意を得たりと大粒の汗を浮かべつつも
彼には似合わない獰猛さを秘めた表情で微笑む。
「始めから来栖に誘導されていたんだよ。
ボクが細工した場所へね」
チャンの反応が。ついに遅れる。
如何なる力を持つ脚であろうとも、いやだからこそ。
足場の悪さが決定的な要因となる
城戸真司に託された龍騎の力と、
霧島美穂によって生かされた命を携え。
ドラグセイバーはついにチャンの右腕を切り飛ばし。
奇跡の執刀、ついにチャンの体に致命傷を負わせる。
そして、
喪った命への悲しみを堪え、
七原は叫ぶ。闘いをともにした戦友に。
「場は整ったぜ」
周囲に散乱していた支給品。
真紅はそこから彼女の持ち物を見つけた。
懐中時計。
真紅の力を元に物の持つ時間を
ほんの少し巻き戻せることができる時計。
「右ストレートパンチだ。やってやれ」
ソレを用いて、
真紅は英雄になろうとしていた男が使った銃を復元させる。
「相棒!!」
狙いを定めて。
真紅は捕鯨銃を撃つ。
右腕は先ほど切り飛ばされた右半身のまま、カントリーマンを退けるには時間が足りない。
左腕は残っているが地面に突き刺さった大剣が進路を邪魔している。
どけるにはこれも時間がない。
ならば、いっそ両方向をこの両脚で。却下だ。
着地したところを狙われるが必然。
チャンに残された防御手段は左腕のみ。
左腕に想波をコーティングしてもなお、
強大な一撃を防ぎきるには能わず。
左の掌を突き破り、腕の中。深く深くへと銛がうたれる。
好機。
ついに好機がやってきた。
七原はすぐさま距離を取り、真紅の側へ戻り。
秋山、カントリーマンも最大の一撃を繰り出すためのカードを取り出す。
――FINAL VENT――
――FINAL VENT――
チャンの今の武器はその両脚のみと言っていい。
ならば、狙うべきは上空からの圧倒的な攻撃。
同じ高さからの攻撃は片脚をスイッチすることで、いくらでも対応できるだろう。
だが高高度からの攻撃にはどうしても脚だけで迎えうつには限度がある。
引き脚。引き手。
伸ばされた手脚は威力を放った後、改めて元の位置に戻さなければ
再び十全の威力を発揮することができないのは人体の理。
頂点をも超えた武ですらそれから完全に逃れること、叶わない。
龍騎は空高く飛び。
ミラーモンスターの火炎を推進力に
チャンへと一個の槍のように突撃する。
カードの効果が明確に現れる直前。
ナイトサバイブもまた空高く飛び。
バイクへと変形したミラーモンスターと共に
マントに漆黒のミサイルへと姿を変える。
「準備は。聞かなくてもOKだよな!?」
空高く飛び上がるのは仮面ライダーオルタナティブ・ゼロとて同じ。
背に負うのは宿敵のローザミスティカの力を借りた真紅。
「当然。だから」
七原からそっと離れて。
真紅はあらん限りの薔薇の花弁の嵐を七原の背へと送り。
推進力とする。
「やりとげなさい……相棒!!」
本来なら持たぬはずのオルタナティブ・ゼロの蹴り技。
だが今、友の力を借りてここに成されるのならば。
付けるべき名はただ一つ。
――RIDER KICK――
三方向からの同時攻撃。
これを迎え討つには今のチャンには些か心もとないか。
いや、これはただの“劣勢”。
乗り越えようと奮起するに相応しい障害が
最強の前にようやく現れただけに過ぎない。
「楽しい。楽しいぞ諸君!!」
チャンは渾身の力をこめた蹴り技でそれら
全てを一度に退けんとする。
瞬間。チャンの身体中に雷を伴った水龍が巻きつかれる。
チャンの動きが止まる。
「もう、限界なんだ」
ノールが、ミツルが、ゼオンが膝を付きながらも。
チャンを睨みつける。
「全力をくらえ」
そして三人のライダーの攻撃が、
チャンを。
「見事也!
戯れではなしに私の本気を真っ向から引き出すとは。
無双の孤独を耐え忍び続けた甲斐があったというもの!」
両の手が使えなくなろうとも。
奥の手が使えないことには決してならない。
言葉遊びにすらならない道理。
――天地開闢 有為転変――
封印魔法、発動。
ありとあらゆる周囲の想波がチャンへと集められていく。
八卦鏡の助けがないとしても、
産み出される威力は会場丸ごと滅ぼすことすら可能だろう。
破壊が、周囲のエリアごと彼らを包み。
断とうとする。
それでも退かない防人の全力攻撃。
三人の仮面ライダーの同時攻撃。
余波が周囲一帯を吹き飛ばして彼らはまだ攻撃を打ち砕かれてはいない。
「膝を屈することを良しとはせず。
立ち向かい続けるか勇者達よ!」
チャンは喝采する。
まだ誰も諦めてはいない。
最強を倒すことを。
“願い”へ、未来へ進むことを彼らは諦めてはいない。
だから、
「受けて死ね」
力を使い果たしたミツルは既に変身が解かれ。
普段の姿に戻っている。
それでも。
彼は闘い続ける。
――エターナル・エンド――
ミツルの封印魔法も加わり。
エネルギーのせめぎ合いはさらに激化する。
チャンのベルトにあるデッキはとうに壊れ。
仮面ライダーの意匠は消え失せている。
残るは己の鍛錬のみで辿りついた想波の闘法たる悟りのみ。
そして、チャンの攻撃はついに破られ。
仮面ライダー達の攻撃がチャンを打ち砕く。
ハズだったのに。
カントリーマンが手駒にした不死人達に守られていた朧が。
度重なる精神への負担に耐え切れず心を無くした者が。
あまりの衝撃に眼を醒まし。
起き上がり、戦場を破幻の瞳で見つめる。
破幻の瞳があらゆる異能から身を守り。
彼女の諦めが全てを台無しにする。
諦めが。
勇者達を殺す。
変身が解かれた仮面ライダー達はそのまま落下し地面を転がる。
立っているのはぶつかり合いにより、
インペラーのデッキを壊されていたチャンのみ。
だが仮面ライダーの運命であるミラーモンスターの襲来はない。
ミラーモンスターの乱入ごと消し飛ばす苛烈なる激突。決闘。
それを最悪の形で邪魔されたチャンは特に動じることもなく
一足飛び出朧の眼の前へと現れる。
「やめろ!」
カントリーマンの懇願にも似た制止の声も虚しく。
チャンはあっさりと朧を蹴り飛ばす。
全ての水を使い果たしてしまい。
合体すら解かれてしまったノールに
内蔵の全てが壊された朧が肉の弾丸となり。
体内からから突き出た骨がノールの身体中を突き刺す。
死体となって崩れ落ちるノールと朧を尻目に
異能殺しの軛から解放されたゼオンが真っ先にチャンへと突進する。
魔本を用いての術ブースト。
それに頼ることはできない。
側にいたノールは死に、
ミツルも疲弊で動くこともできずただチャンを睨みつけている。
心の力をありったけ振り絞った術で己の体を強化し、
チャンへと殴りかかる。
だが、消耗が。ダメージが大きすぎた。
「まだだ。俺は! 俺はガッシュを殺した貴様を必ず殺す!」
復讐の念すべてをこめての攻撃をチャンは足裏で受け止める。
「ガッシュ?」
チャンがゼオンの怒りを目の当たりにして言う。
「誰だそれは?」
それはただの言葉。
ブラフである可能性も十分にあった。
だが、ゼオンは。
王の素質と資質を十二分に兼ね備えたゼオンは理解してしまう。
その言葉に、嘘はないと。
ゼオンの眼から光が喪われる。
己の徒労を知り。力が抜ける。
そして、
諦めてしまったゼオンの体をチャンの足裏が拳ごと押し返し。
踏み潰す。
真っ赤な血の塊となった三人。
地面を転がっていた七原達はようやく立ち上がる。
疲労の影を隠しきれなくとも。七原は憤り、叫ぶ。
「どうしてだ!
どうしてそんなことができる!?」
七原に眼を向けたチャンは先の中断された
問答の続きであるかのように嘲笑う。
「無意味だからだ。
幾億の“願い”も、信念も。
その全てが虚でしかないだからだ。
死ねば、裏切られれば全てが無へと変わる」
チャンは七原達の方へと歩き出す。
握る拳がなくとも溢れんばかりの闘気が対峙する者達へ突き刺さる。
「だから私は想うのだよ。
闘争だけが実。
“願い”のためであろうと復讐のためだろうと、
それによって突き動かされた戦士の織り成す闘争は」
そこにあるのは空虚な最強に残されたほんの少しの郷愁か。
チャンは続ける。
「闘争だけは。真実で在り続けると」
恐らくは、これがチャンの心。
これに真っ向から触れた者は既に死した勇者ワタルだけだろう。
たしかな重みを持った言葉。
受け止めるには殺意もなく、真摯過ぎて、灼かれそうなその想い。
ある意味で潰されそうな純粋さ。常人は触れることすら厭うであろうソレ。
だが、今の彼らは違う。
カントリーマンは言う。
「『私』の中には生きている。
医師としての『私』が救った命が、『私』達を救おうとした際の言葉を憶えている。
『生きろ』。
旅人として殺し合うことしかしてこなかった『俺』はその言葉で、
医者として行動してきたこの世界での『私』が救われたように想えた」
秋山は言う。
「アンタの願うソレは。求めるソレは。
真実じゃない。ただの地獄だ。
闘い続けなければ生き残れない。
それは確かだ。だが…………」
秋山は確信をこめて告げる。
「殺しあい続けなければ生き残れない“願い”は。
きっとそんなに多くないんだ。
殺し合いを産むほどの“願い”は。
そんなにあっていいものじゃない」
何を言われようともチャンは動じない。
ただ自らと闘ってくれるだろう者達へ歩み寄るだけ。
「良い意志を感じる」
そして、間合いに入り。
チャンは攻撃へと移る。
「だが。意味はないがね」
最大の好機を逃したがゆえの脱力は
秋山とカントリーマンの力を、意志を疲労以上に奪っている。
体が。チャンに立ち向かう力を与えてくれない。
「お前達もまた、諦め。ここで死ぬのだから」
前蹴りが秋山へ繰り出される。
それを七原が前に出て庇う。
ただ一人、欠片たりとも諦めておらず。
体を動かす力を持っていた七原が大剣で受け止める。
受け止めきれなかった衝撃が。
オルタナティブ・ゼロのデッキをついに壊す。
仮面ライダーの運命が七原を襲う。
ミラーモンスター、サイコローグが現れ、七原へと襲いかかる。
七原が、喰われようとする。
「お前は本当に諦めないんだな。七原」
それを阻むのは、
七原と真紅の生き様を短い間だが共有した
仮面ライダーナイト、秋山蓮。
サイコローグの腕が、秋山蓮を貫く。
「一度殺したらもう戻れない、か」
清々しい顔で
秋山は、最期の言葉を遺そうとする。
「それでも、同じ道を歩むことはできるんだな」
そして、渾身の力でサイコローグの首を跳ね飛ばし。
秋山蓮が最後にその眼に映すのは。
親友のデッキを受け継いだ男の姿。
「願わくば……俺のナイトを受け継ぐ者も。
いや、これは俺には過ぎた――」
羨望混じりの言葉。最後までは述べられず。
カードデッキを握り締めたまま、膝をつき。
秋山蓮もまた、死ぬ。
倒れ伏していく者達の命が。
意志が、“願い”が、七原の心を震わせて。
人知れず引き継ぎを終えていたハルワタートを呼び寄せ。
ハルワタートに選ばれ。
闘志が“願い”のインストールを終わらせ。
破裂しそうな程の数多の“願い”が七原の脚を、更に前へと動かす。
生身で。一振りの大剣を手に。
チャンへと挑む。
「愚行なり。革命家、七原秋也よ」
けれども。
どれほどの意志が宿ろうと、“願い”が宿ろうとも。
それはチャンの攻撃が
七原の胴体を突き破る妨げにはなってくれない。
だが。だが、それでも。
「アンタは死んだら意味がないって言うけどさ」
七原は大量の血を吐き出しながら、
力の抜けた手から大剣を落としながらもチャンを見つめる。
「俺は知っているんだ。
短い間しか一緒にはいられなかったけど。
悲しい別れもたくさんあったけど。
少ししかわかり合うことが出来なかったとしても。
俺は知っている」
意志が七原の手に銃を握らせ。
チャンの顔へと狙いを定める。
零れ落ちる命を。必死に繋ぎとめながら。
震える手で。
「死んだんじゃない。
みんな生きていたんだ!
ここでも! どこでも! 命が続くまで、必死に!!
未来の為に生きてきたんだ!!」
だから。
七原は血まみれの顔で笑みを浮かべる。
「アンタもたしかにここで生きていたって憶えてやる。
背負ってやる。そして、一緒に死んでやる。
けど未来に繋げてやる」
震える手を鼓舞して七原は引き金を振り絞る。
チャンは動くことができない。
七原の胴体を貫いている脚を抜くことも。
地面に置かれている脚を動かすこともできない。
彼の体を渾身の力でカントリーマンが羽交い締めにしているから。
「さようならだ。最強」
虚闇のような銃口を目の前にし、
チャンは笑みを浮かべた。
銃声が虚無に響く。
その笑みの意味を知ることは誰にもできないだろう。
………………………………………………………………………………………………。
暗い。寒い。砂のように生命が零れていくのを七原は感じていた。
視界は闇で覆われて。体の先から熱が喪われていって。
側にいるハルワタートが教える。
次の防人を。
――いや、俺1分も防人やった気が全くしないんだけども。
まあ、いっか。チクショウ。いや、チクショウじゃないか。
ああ、でもやっぱりやっぱりコンチクショウ。
チャンにはカッコつけたけどまだまだ生きてえよ俺――
けれども、
自分の頭が小さな小さな膝の上にあることだけはわかった。
――よかった。
どこに吹き飛ばされたんだと思ってたけど無事だったんだな――
友の無事を知り、七原は安堵する。
押し寄せる悲しみと無念を抱きながら。
――ごめん。ごめんな典子。俺、帰ることできないみたいだ。
すまない、すまないノブ。俺、約束破っちまったよ。
川田。俺、俺。お前みたいに戦えたのかな?――
顔に雨があたる。
温かい。そしてとても優しい雨が。
大粒で、なのに、不思議なほどにささやかな雨が。
――悲しませちゃったよな。
でも、でもさ。俺は伝えたいんだ。お前に――
必死に七原が真紅の顔があるであろう所へ手を伸ばす。
小さな手がそれを強く強く握りしめる。
「俺、最期に――――」
言葉が出ない。
出るのはもう、血だけで。
ヒュウヒュウとした呼吸音だけが七原の口から流れる。
引き継ぎの時間がやってくる。
七原の体を雨ではない水が包み、砕き、溶かす。
そして、ハルワタートの口へと吸い込まれる。
七原秋也もまた、革命の志半ばで死ぬ。
だが。
新たな防人、真紅が彼の“願い”、知識を全て受け継ぐ。
“願い”は、七原の意志はローザミスティカに刻まれた。
――俺、最期にさ。
良い友だちを守ることができて。
本当に良かった――
七原秋也との消えない絆とともに。
&color(red){【猿谷甚一@銀齢の果て 死亡確認】}
&color(red){【来須圭悟@未来日記 死亡確認】}
&color(red){【朧@バジリスク~甲賀忍法帖~ 死亡確認】}
&color(red){【ノール@waqwaq 死亡確認】}
&color(red){【ゼオン・ベル@金色のガッシュ!! 死亡確認】}
&color(red){【秋山蓮@仮面ライダー龍騎 死亡確認】}
&color(red){【チャン@ブレイブ・ストーリー~新説~ 死亡確認】}
&color(red){【七原秋也@バトルロワイアル 死亡確認】}
&color(red){【残り 28名】}
|[[レボリューション(上)]]|投下順|[[レボリューション(続)]]|
|[[レボリューション(上)]]|時系列順|[[レボリューション(続)]]|
|[[レボリューション(上)]]|真紅|[[レボリューション(続)]]|
|~|ミツル|~|
|~|カントリーマン|~|
|~|秋山蓮|&color(red){GAME OVER}|
|~|七原秋也|&color(red){GAME OVER}|
|~|来須圭悟|&color(red){GAME OVER}|
|~|ノール|&color(red){GAME OVER}|
|~|朧|&color(red){GAME OVER}|
|~|ゼオン・ベル|&color(red){GAME OVER}|
|~|猿谷甚一|&color(red){GAME OVER}|
|~|チャン|&color(red){GAME OVER}|
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