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「けれど彼は前を見る」(2012/03/25 (日) 17:26:37) の最新版変更点
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*けれど彼は前を見る ◆1yqnHVqBO6
火花が散ると、周囲の空気が弾け。
影が二つ交わった。
デッキの力を使い、
ダメージを負った体を補おうとする杉村だが
目の前での攻防に立ち入る隙を見いだせない。
「機械……か?
違うな。お前はなんだ?」
斬撃を蔓で自らの体を持ち上げて躱した
雛苺は地面を這わせていた蔓を鞭としてレオに叩きつける。
「無駄だ」
だがそれもレオが周囲に散布する
炎の粉で節々に火がつき
崩れ落ちてしまう。
「多くには相性が存在する。
お前の力が植物に関するものなら、俺は火を力にする。
火は木を焼き払うものだ」
杉村からの攻撃のために作っていたのだろう二刀は
雛苺だけに狙いを限定するとひとつの刀に戻る。
「人形」
雛苺の言葉にレオは興味深げにその先を待つ。
「ヒナは人形なの」
「人ではないということか」
頷く雛苺に得心が行ったのか
それ以上、問いかけることはなく。
炎の戦士は周囲に幾つもの炎球を展開する。
「おまえの“願い”はなんだ?」
「ヒナには誰かを傷つけてまでやることなんてないの」
その時だけ、
雛苺の声色が大人びたものに変わったのは気のせいか。
「願わなくていい毎日が欲しいの。
闘わなくてもみんなで楽しく生きれる毎日が欲しいの」
雛苺の言葉に、レオはその眼に微かな痛みと郷愁を浮かべる。
「それこそ、夢物語だったよ。人形」
雛苺の言葉に何の感銘を受けることはなく。
レオは一つの“願い”として聞くだけ。
「雛苺、一瞬でいい。
あいつの動きを止めてくれないか」
杉村の要請に雛苺は何の疑いもなく頷く。
失態ばかりをしている杉村を信じる彼女の姿に
眩しさを感じ。杉村は沸き起こる闘志を体中に巡らせた。
雛苺の四方から蔓が生え
幾重にも互いに重なり合い絡み合い編まれていく。
それは一つの大槌となり、レオを叩きつけんと襲い掛かる。
それを冷静に巨大な炎の剣で焼き払ったレオは
そのまま雛苺へと襲いかかる。
しかし、雛苺へと向かうために踏み出した地面が
崩れ落ち、レオは宙へと舞い上がる。
雛苺が大槌と同時に地面へと潜らせ張り巡らせていた大網が
地中深くからレオを掬い上げる。
大きさは大槌よりも遥かに大きい。
炎をだいぶ消費したレオに焼却しきれるものではない。
幾重もの網目に覆われたレオを見て
杉村は勝負にかける。
――FINAL VENT――
蔓の網を突進で引き千切り
白銀の大虎がレオの前へ現れる。
大虎はそのままレオの首根っこを鷲掴みにすると
地面に押し付けながらジグザグ走行で杉村へと走る。
圧倒的な膂力で生み出される摩擦は
アシャの装甲をも大幅に削り取っていった。
待ち構える杉村は手に構える両手のクローを
研ぎ澄ませるとレオを迎え撃つために
アッパーを打つ体勢になる。
この一撃が胸を貫き抉れば
あの男は死ぬだろうという直感があった。
暴力への忌避感は絶えず杉村に付き纏っていた。
幼いころから、今の今まで。
七原との出会いによりかなり克服は出来ても、
生来の性質はがんじがらめの鎖となっている。
けれども、殺すことを覚悟に入れる必要はある。
七原や、三村のような希望を絶やさないためにも。
「そろそろだな」
白の虎に引き擦られるレオが静かに言った。
「おまえは最初の時点で俺に負けている、仮面ライダー。
そう、おまえが仮面ライダーだから」
レオの言葉にいぶかしむ杉村の耳にもそれは聞こえた。
ぴしり。
音が聞こえたのは腹部から。
いいや、正確にはベルトから。
「俺たちは負けたら護神像に喰われる。
お前たちは鏡の化け物に食われる」
「ヒロキ!?」
慌てた雛苺の声が聞こえたが
杉村はそれに応えるどころではなかった。
デッキに入っていたその罅は気づかぬ間に
どうしようもないほどデッキを摩耗させ。
ついには砕け散った。
鋼の装甲が解け、現れるのは
ただの中学生に過ぎない少年。
舌舐りがたしかに聞こえた
鋼と鋼が擦れ合う金属音ではあったが。
彼に従っていた虎は今、
標的をレオから杉村へと変えた。
「それが定めだ。俺達の。
力を持てば負けた時に喰われる。
それから逃れる術はない」
反応できない。
いや、正確には反応はできる。
だが杉村にはわかってしまう。
これには何も出来ない。
鋼の装甲に人の拳で通る攻撃は、ない。
それは、蛙が蛇に睨まれるのと似ていた。
単純な圧倒的力差が産み出す無力感と諦念。
何が言葉を武器にだったのだろう。
自分はみねねに何も言い返すとができなかった。
何が収まってはいけない命だった?
デッキが砕け散ったら容易く死ぬ命だったのに。
そして、無力感が杉村を縛り付け。
大虎の爪が杉村の両眼を抉った。
赤、だったのか最後に見た光景は
杉村はぼんやりとそんなことを考えながら
あらん限りの絶叫をほどばしらせる。
喪った目を抑え、恐怖に屈して。
無力感に怯え、雛苺のことすら忘れて。
ひたすらに無様に虎から逃げる。
暗い、ここは暗すぎる。
奈落の遥か底のように。
救いの手は訪れない。
仮面ライダーの定めからは逃れられない。
――大丈夫。大丈夫だから。
そのとき、杉村を抱きしめる小さな体を感じた。
「ひゅ、ないちご……?」
呂律の回らない口で、杉村は雛苺の名を呼んだ。
「に、げろ。まきこまれる」
それは精一杯の勇気だった。
見捨ててしまった雛苺に対するせめてもの。
――ヒナはね。嬉しかったの。
誰かと心が通じて。ヒロキの前で起きたとき。
ヒナはひとりで眠るわけじゃないんだって。
杉村にはその言葉の意味がわからない。
雛苺の声が直接耳に届いてるものではないことにも気づかない。
足がもつれ、転んで、蹲り。みっともなく震える彼には。
――守ってあげて。ヒロキにはそれができるって知ってるから。
ヒナの大切な人たちの明日を守ってあげて。
みんなが笑顔で前に向けるんだもの。知っているもの。
「雛苺……?」
抱きしめていた彼よりとても小さな人形が
徐々に形を失っていっていることに、
杉村はようやく気付いた。
「俺を、庇って……?」
杉村の両眼がまだあったのならば。
少女の人形の背に痛々しいほどの
爪痕が残っているのが見えただろう。
「どうして? どうしてなんだ?」
怯えにかき混ぜられた意識は徐々に明瞭になり。
恐怖で凍った心が雛苺の無機物であるはずの
体の熱によって溶けていく。
――だから、お“願い”します。ヒロキ。
そう言って、雛苺は杉村の掌に静かに口づけをした。
涙で濡れた接吻。これは契約。そしてこれは託し。
咆哮が聞こえた。
白銀の大虎、デストワイルダーが今、顎を開き。
杉村を喰おうとしているのがわかる。
歴史の道標、神崎士郎が産んだ鏡の怪物。
その鋭利な鉤爪から逃れる人はいない。
喰われる運命から逃れる人間はいない。
故に、打開するには喰われる宿命と引き換えに
“願い”を追い求める仮面ライダーが
人を助けなけらばならない。
永劫に続く悪循環、ジレンマ。
それが仮面ライダー龍騎、城戸真司が闘い続けた運命。
逃れることは誰にもできない。
けれど。
もしも。
その心。
――絆があったのなら。
「俺は……わかった。
思い出せた。刻むことができた。ありがとう」
杉村は両手を包み込むように合わせる。
祈りにも似たその動き。
契約による執行は目の前にもう――
――――――――。
“願い”は多くの場合、矛盾を孕んでいる。
雨竜みねねの場合は特に顕著だった。
しかし、彼女の想いの強さが本物なら、
それはいつしか蜘蛛の糸をつかむまでになるだろう。
その矛盾を内包し、
それが産み出す葛藤に揺れ動いたのならば
爆弾魔は本当に全てを失ったまま死ぬだろう。
黒き血の人間を造った
赤き血の神でもそれは変わらないのだとレオは知った。
レオが今求めるのは自分が闘う理由。
恐らくそんなことのために闘うのは自分くらいだろうと
レオは自覚している。
いや、ここに来たばかりの時に
闘った龍騎は違ったかもしれないが。
しかし奴は死んだのだと北岡は言っていた。
放送を境に北岡が物思いにふけるのをレオは目撃していたが
みねねには教えなかった。
迷ったやつから死ぬ戦場、放っておけばいい。
風が吹きすさび、野原の草をそよがせる。
それは、春という季節を連想させた。
レオはその季節を本の上でしか知らないが
その形容が相応しいと直感的に思った。
そして、その風は徐々に勢いが増していき、
意識しなければ吹き飛ばされないほどにまでなった。
「……今のおまえはなんだ?」
“願い”を喪った少年は仁王立ちする大虎へと声をかける。
いや、正確には虎の胴体に開いた大穴から覗く男へ。
制服の端を千切り、眼を覆った杉村は
ようやく倒れた大虎をまたぎ、レオへと歩をすすめる。
眼を喪ったはずなのに
それは正確な足取りで。
「おまえの“願い”はなんだ?」
レオの10歩前で立ち止まる杉村。
杉村の周囲に浮かぶ光が杉村の前に行くと
抱きしめるように杉村は両手でそっと覆う。
「勇気は、この胸に」
それは懺悔か。誓いか。
ほのかに瞬く光を解放するように、
覆っていた手を広げると周囲に旋風が巻き上がった。
杉村の変貌を目の当たりにした
レオは炎を構え、油断なく杉村を見る。
「“願い”は正義。
そして俺は、俺は――」
風の流れが水流のように引き絞られて
その全てがレオへと焦点をつける。
「――杉村弘樹だ。行くぞ防人。
俺は既に、お前とも絆を結ぶと決めている」
&color(red){【雛苺@ローゼンメイデン 死亡確認】}
&color(red){【残り 21名】}
【レオナルド・エディアール@WaqWaq ワークワーク】
[状態]:疲労(中)、軽度の打撲、
[装備]:アシャ@WaqWaq ワークワーク、
[道具]:基本支給品一式
[思考・状況]
基本行動方針:頭スッキリ。お目々パッチリ。俺、どうしよう?
1:杉村に興味
2:キャンチョメに興味があるがお預け。
3:他の“神”らしき女にも会いたい。
4:防人以外にも戦えるやつがいるみたいだ 。今はどうでもいいが
※由乃の返り血を浴びています。
【杉村弘樹@バトルロワイアル】
[状態]:疲労(大)、精神的疲労(小)、心の力消費(中) 、全身裂傷、
指の爪剥離、両眼失明、勇気を刻みました、覚醒
[装備]:英雄の証@ブレイブ・ストーリー~新説~ 、雛苺のローザミスティカ
[道具]:基本支給品×2、
[思考・状況]
基本行動方針:正義
1:レオと闘う
[備考]
この殺し合いを大東亜帝国版プログラムだけでなく、
それとよく似た殺し合いの参加者も集められていると暫定的に推測しています。
仮面ライダーへの変身の仕方を理解しました。
カードの使い方も大体把握しました。
覚醒した杉村は空気を読むことで周囲10mの状態を把握することができます。
参戦時期:琴弾と合流後、桐山襲撃直後
|[[そして誰かいなくなった]]|投下順|[[First bet]]|
|[[そして誰かいなくなった]]|時系列順|[[First bet]]|
|[[そして誰かいなくなった]]|レオナルド・エディアール|[[]]|
|~|杉村弘樹||
|~|雛苺|&color(red){GAME OVER}|
----
*けれど彼は前を見る ◆1yqnHVqBO6
火花が散ると、周囲の空気が弾け。
影が二つ交わった。
デッキの力を使い、
ダメージを負った体を補おうとする杉村だが
目の前での攻防に立ち入る隙を見いだせない。
「機械……か?
違うな。お前はなんだ?」
斬撃を蔓で自らの体を持ち上げて躱した
雛苺は地面を這わせていた蔓を鞭としてレオに叩きつける。
「無駄だ」
だがそれもレオが周囲に散布する
炎の粉で節々に火がつき
崩れ落ちてしまう。
「多くには相性が存在する。
お前の力が植物に関するものなら、俺は火を力にする。
火は木を焼き払うものだ」
杉村からの攻撃のために作っていたのだろう二刀は
雛苺だけに狙いを限定するとひとつの刀に戻る。
「人形」
雛苺の言葉にレオは興味深げにその先を待つ。
「ヒナは人形なの」
「人ではないということか」
頷く雛苺に得心が行ったのか
それ以上、問いかけることはなく。
炎の戦士は周囲に幾つもの炎球を展開する。
「おまえの“願い”はなんだ?」
「ヒナには誰かを傷つけてまでやることなんてないの」
その時だけ、
雛苺の声色が大人びたものに変わったのは気のせいか。
「願わなくていい毎日が欲しいの。
闘わなくてもみんなで楽しく生きれる毎日が欲しいの」
雛苺の言葉に、レオはその眼に微かな痛みと郷愁を浮かべる。
「それこそ、夢物語だったよ。人形」
雛苺の言葉に何の感銘を受けることはなく。
レオは一つの“願い”として聞くだけ。
「雛苺、一瞬でいい。
あいつの動きを止めてくれないか」
杉村の要請に雛苺は何の疑いもなく頷く。
失態ばかりをしている杉村を信じる彼女の姿に
眩しさを感じ。杉村は沸き起こる闘志を体中に巡らせた。
雛苺の四方から蔓が生え
幾重にも互いに重なり合い絡み合い編まれていく。
それは一つの大槌となり、レオを叩きつけんと襲い掛かる。
それを冷静に巨大な炎の剣で焼き払ったレオは
そのまま雛苺へと襲いかかる。
しかし、雛苺へと向かうために踏み出した地面が
崩れ落ち、レオは宙へと舞い上がる。
雛苺が大槌と同時に地面へと潜らせ張り巡らせていた大網が
地中深くからレオを掬い上げる。
大きさは大槌よりも遥かに大きい。
炎をだいぶ消費したレオに焼却しきれるものではない。
幾重もの網目に覆われたレオを見て
杉村は勝負にかける。
――FINAL VENT――
蔓の網を突進で引き千切り
白銀の大虎がレオの前へ現れる。
大虎はそのままレオの首根っこを鷲掴みにすると
地面に押し付けながらジグザグ走行で杉村へと走る。
圧倒的な膂力で生み出される摩擦は
アシャの装甲をも大幅に削り取っていった。
待ち構える杉村は手に構える両手のクローを
研ぎ澄ませるとレオを迎え撃つために
アッパーを打つ体勢になる。
この一撃が胸を貫き抉れば
あの男は死ぬだろうという直感があった。
暴力への忌避感は絶えず杉村に付き纏っていた。
幼いころから、今の今まで。
七原との出会いによりかなり克服は出来ても、
生来の性質はがんじがらめの鎖となっている。
けれども、殺すことを覚悟に入れる必要はある。
七原や、三村のような希望を絶やさないためにも。
「そろそろだな」
白の虎に引き擦られるレオが静かに言った。
「おまえは最初の時点で俺に負けている、仮面ライダー。
そう、おまえが仮面ライダーだから」
レオの言葉にいぶかしむ杉村の耳にもそれは聞こえた。
ぴしり。
音が聞こえたのは腹部から。
いいや、正確にはベルトから。
「俺たちは負けたら護神像に喰われる。
お前たちは鏡の化け物に食われる」
「ヒロキ!?」
慌てた雛苺の声が聞こえたが
杉村はそれに応えるどころではなかった。
デッキに入っていたその罅は気づかぬ間に
どうしようもないほどデッキを摩耗させ。
ついには砕け散った。
鋼の装甲が解け、現れるのは
ただの中学生に過ぎない少年。
舌舐りがたしかに聞こえた
鋼と鋼が擦れ合う金属音ではあったが。
彼に従っていた虎は今、
標的をレオから杉村へと変えた。
「それが定めだ。俺達の。
力を持てば負けた時に喰われる。
それから逃れる術はない」
反応できない。
いや、正確には反応はできる。
だが杉村にはわかってしまう。
これには何も出来ない。
鋼の装甲に人の拳で通る攻撃は、ない。
それは、蛙が蛇に睨まれるのと似ていた。
単純な圧倒的力差が産み出す無力感と諦念。
何が言葉を武器にだったのだろう。
自分はみねねに何も言い返すとができなかった。
何が収まってはいけない命だった?
デッキが砕け散ったら容易く死ぬ命だったのに。
そして、無力感が杉村を縛り付け。
大虎の爪が杉村の両眼を抉った。
赤、だったのか最後に見た光景は
杉村はぼんやりとそんなことを考えながら
あらん限りの絶叫をほどばしらせる。
喪った目を抑え、恐怖に屈して。
無力感に怯え、雛苺のことすら忘れて。
ひたすらに無様に虎から逃げる。
暗い、ここは暗すぎる。
奈落の遥か底のように。
救いの手は訪れない。
仮面ライダーの定めからは逃れられない。
――大丈夫。大丈夫だから。
そのとき、杉村を抱きしめる小さな体を感じた。
「ひゅ、ないちご……?」
呂律の回らない口で、杉村は雛苺の名を呼んだ。
「に、げろ。まきこまれる」
それは精一杯の勇気だった。
見捨ててしまった雛苺に対するせめてもの。
――ヒナはね。嬉しかったの。
誰かと心が通じて。ヒロキの前で起きたとき。
ヒナはひとりで眠るわけじゃないんだって。
杉村にはその言葉の意味がわからない。
雛苺の声が直接耳に届いてるものではないことにも気づかない。
足がもつれ、転んで、蹲り。みっともなく震える彼には。
――守ってあげて。ヒロキにはそれができるって知ってるから。
ヒナの大切な人たちの明日を守ってあげて。
みんなが笑顔で前に向けるんだもの。知っているもの。
「雛苺……?」
抱きしめていた彼よりとても小さな人形が
徐々に形を失っていっていることに、
杉村はようやく気付いた。
「俺を、庇って……?」
杉村の両眼がまだあったのならば。
少女の人形の背に痛々しいほどの
爪痕が残っているのが見えただろう。
「どうして? どうしてなんだ?」
怯えにかき混ぜられた意識は徐々に明瞭になり。
恐怖で凍った心が雛苺の無機物であるはずの
体の熱によって溶けていく。
――だから、お“願い”します。ヒロキ。
そう言って、雛苺は杉村の掌に静かに口づけをした。
涙で濡れた接吻。これは契約。そしてこれは託し。
咆哮が聞こえた。
白銀の大虎、デストワイルダーが今、顎を開き。
杉村を喰おうとしているのがわかる。
歴史の道標、神崎士郎が産んだ鏡の怪物。
その鋭利な鉤爪から逃れる人はいない。
喰われる運命から逃れる人間はいない。
故に、打開するには喰われる宿命と引き換えに
“願い”を追い求める仮面ライダーが
人を助けなけらばならない。
永劫に続く悪循環、ジレンマ。
それが仮面ライダー龍騎、城戸真司が闘い続けた運命。
逃れることは誰にもできない。
けれど。
もしも。
その心。
――絆があったのなら。
「俺は……わかった。
思い出せた。刻むことができた。ありがとう」
杉村は両手を包み込むように合わせる。
祈りにも似たその動き。
契約による執行は目の前にもう――
――――――――。
“願い”は多くの場合、矛盾を孕んでいる。
雨竜みねねの場合は特に顕著だった。
しかし、彼女の想いの強さが本物なら、
それはいつしか蜘蛛の糸をつかむまでになるだろう。
その矛盾を内包し、
それが産み出す葛藤に揺れ動いたのならば
爆弾魔は本当に全てを失ったまま死ぬだろう。
黒き血の人間を造った
赤き血の神でもそれは変わらないのだとレオは知った。
レオが今求めるのは自分が闘う理由。
恐らくそんなことのために闘うのは自分くらいだろうと
レオは自覚している。
いや、ここに来たばかりの時に
闘った龍騎は違ったかもしれないが。
しかし奴は死んだのだと北岡は言っていた。
放送を境に北岡が物思いにふけるのをレオは目撃していたが
みねねには教えなかった。
迷ったやつから死ぬ戦場、放っておけばいい。
風が吹きすさび、野原の草をそよがせる。
それは、春という季節を連想させた。
レオはその季節を本の上でしか知らないが
その形容が相応しいと直感的に思った。
そして、その風は徐々に勢いが増していき、
意識しなければ吹き飛ばされないほどにまでなった。
「……今のおまえはなんだ?」
“願い”を喪った少年は仁王立ちする大虎へと声をかける。
いや、正確には虎の胴体に開いた大穴から覗く男へ。
制服の端を千切り、眼を覆った杉村は
ようやく倒れた大虎をまたぎ、レオへと歩をすすめる。
眼を喪ったはずなのに
それは正確な足取りで。
「おまえの“願い”はなんだ?」
レオの10歩前で立ち止まる杉村。
杉村の周囲に浮かぶ光が杉村の前に行くと
抱きしめるように杉村は両手でそっと覆う。
「勇気は、この胸に」
それは懺悔か。誓いか。
ほのかに瞬く光を解放するように、
覆っていた手を広げると周囲に旋風が巻き上がった。
杉村の変貌を目の当たりにした
レオは炎を構え、油断なく杉村を見る。
「“願い”は正義。
そして俺は、俺は――」
風の流れが水流のように引き絞られて
その全てがレオへと焦点をつける。
「――杉村弘樹だ。行くぞ防人。
俺は既に、お前とも絆を結ぶと決めている」
&color(red){【雛苺@ローゼンメイデン 死亡確認】}
&color(red){【残り 21名】}
【レオナルド・エディアール@WaqWaq ワークワーク】
[状態]:疲労(中)、軽度の打撲、
[装備]:アシャ@WaqWaq ワークワーク、
[道具]:基本支給品一式
[思考・状況]
基本行動方針:頭スッキリ。お目々パッチリ。俺、どうしよう?
1:杉村に興味
2:キャンチョメに興味があるがお預け。
3:他の“神”らしき女にも会いたい。
4:防人以外にも戦えるやつがいるみたいだ 。今はどうでもいいが
※由乃の返り血を浴びています。
【杉村弘樹@バトルロワイアル】
[状態]:疲労(大)、精神的疲労(小)、心の力消費(中) 、全身裂傷、
指の爪剥離、両眼失明、勇気を刻みました、覚醒
[装備]:英雄の証@ブレイブ・ストーリー~新説~ 、雛苺のローザミスティカ
[道具]:基本支給品×2、
[思考・状況]
基本行動方針:正義
1:レオと闘う
[備考]
この殺し合いを大東亜帝国版プログラムだけでなく、
それとよく似た殺し合いの参加者も集められていると暫定的に推測しています。
仮面ライダーへの変身の仕方を理解しました。
カードの使い方も大体把握しました。
覚醒した杉村は空気を読むことで周囲10mの状態を把握することができます。
参戦時期:琴弾と合流後、桐山襲撃直後
|[[そして誰かいなくなった]]|投下順|[[First bet]]|
|[[そして誰かいなくなった]]|時系列順|[[First bet]]|
|[[そして誰かいなくなった]]|レオナルド・エディアール|[[少年よ、我にかえれ]]|
|~|杉村弘樹|~|
|~|雛苺|&color(red){GAME OVER}|
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