「循環型悲劇症候群」(2012/11/23 (金) 18:03:28) の最新版変更点
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*循環型悲劇症候群
それは、天文学的確率で起こったことではあった。
なにが彼らの世界を繋げたのか。
起こったことの原因を追求する時間は彼らにはなく。
彼らは物語の終着点で産まれる一つの種を
どこまでも広大な無意識の海に作った。
偶然にも同じ終わりへと至った幾つもの世界。
終わるならばそこから
新たな物語が産まれるのは必然。
「世界の時間を止めたね」
「ええ」
「君が望んだように私達は君の記憶を閉じよう。
君が今度こそ彼を玉座へと押し上げるために」
「わかった」
「ひとつ訊きたいのだけれど」
「なんだ?」
「君は永劫の狂いを受けいれてまでして
彼という偶像に縋るのかい?」
「黙れ」
ぬばたまの外衣を纏った真なる赤き血の神は
賢人を穿つような眼で睨みつけた。
「狂っているのは世界だ。
だから私が狂うのも許される」
「……そう」
嘆息した賢人は傍らにいる
無邪気な笑みを絶やさぬ悪魔に命じて少女の記憶を閉じ。
神の力の大部分を行使し滅びいく世界の時と壁を再構築した。
それは、あくまで間に合わせのものに過ぎなかったが。
――――――――。
賢人ヨキは横たわっていたベッドから降りると
慣れた手つきで衣服を脱ぎ去り。肢体を露わにする。
ヨキの常人より白い肌は日光にはあまり映えず
ここに見る者がいれば今が夜でないことを惜しんだだろう。
熱が空気へと溶けるまで待っていた椀にためたお湯から
タオルをとりだすと寝汗を拭き取り、
じっとりと湿った肌を一新したことに恍惚めいた息をついた。
「オーディンの素体を見つけた」
「お前は背後から声をかけるのがよほど好きなんだね」
着替えたヨキの後ろから聞こえた声に
賢者は皮肉をこめて応えた。
「もうここに存在できるようになったか」
振り返ったヨキが眼にしたのは鏡の中ではなく
確固たる存在感をもって佇む神崎士郎の姿。
「チャンが消費した想波の量は膨大だ」
「しかし、それだけでここに来るのは危険だと思うけどね。
他に想波の闘法を使うのは魔導師だけだ」
「いや…………」
表情を変えず言葉を濁した神崎にヨキは眉を上げた。
「もう一人いる。……正確には二人か」
「そうなのか」
興味深げにヨキは微笑み首を傾げた。
「勇者や革命家、魔王が落ちても依然として
脅威は残っているということだね」
「白薔薇は本当に俺達に協力するのか?」
「……少し、話をしよう。
私のスプンタ・マンユはある人形の魂を喰らった」
静かに、単調な口調で語り始めたヨキに
壁に背を預けた神崎は耳を傾ける。
「その人形は双子の姉と仲睦まじく暮らしていた。
彼女達もいつかは殺しあわなければならない運命にあったが。
恐らくその姉は薔薇乙女ではなく、
本当の意味で人形に近かったのだろう。
停滞と安寧が彼女の正気を保つ術だった」
ヨキの底知れぬ瞳から自嘲の色がほのかに浮かんだが
神崎士郎は何も言わずに賢者を見ていた。
「しかし彼女たちは本能としてローザミスティカを、
己の理想を追い求め続けるよう
刷り込みにも似た意志を持たされてある。
だから少女は、双子の妹である少女は願ったのだ」
そこで一旦、言葉を切ると、
ヨキは歴史の道標の反応を見極めようと目を細める。
茫洋とした、蜃気楼のような男の持つおぞましき欲望は
双子人形の話を聞いて何を想うだろうかと。
「己が己で在り続けるために。
自分は彼女とは正反対の、鏡合わせの闘いをしようと。
激変と狂乱を己の心に抱いていこうとね」
ヨキの話が終わり、何を思考したのか。
しばらく押し黙り、時計の針が鳴らす音だけが室内に響く。
「白薔薇は言っていたな。
己の求めるものは確かな抱擁と肉の感触だと」
「つまり、協力をとりつけるのであれば
提示するのは彼女の願いに
最も近い究極の少女像でいいということさ」
「なるほど、よくわかった」
背を壁から離すと神崎士郎は足元から空気と同化するように
ゆっくりと姿を消していく。
「……七原秋也が引き継ぎのため、
ハルワタートに喰われた」
「へえ」
「アールマティは――」
「たしかにいたね。
仕留め切れなかったのは大きな痛手だよ」
「それでも“願い”を叶えるのはこの俺だ」
ヨキは滅多に無いことではあるが
神崎士郎の言葉に嘲けりをこめて口の端を歪めた。
「妄執にとらわれた男よ。
おまえもまたあの赤き血の神と
同じ失敗を繰り返すだけだ」
ヨキの背後で浮かぶスプンタ・マンユが
能面の瞳、虚の空洞を歓喜と渇望に歪ませる。
「真の勝利は私が掴む」
【E-4/一日目/午後】
【ヨキ@WaqWaq】
[状態]:ダメージ(中)、疲労(小)、BMによる火傷 (処置済み)、
[装備]:スプンタ・マンユ(玉四つ、ドラグブラッカー、蒼星石のローザミスティカ完食)
@WaqWaq、ヒミコのレーダー@BTOOOM!、スタンガン@BTOOOM!、
[道具]:
[思考・状況]
基本行動方針:優勝して赤き血の神を抹殺する
1:動く。
※神の血をあびたことで身体能力大幅上昇
※どれほどパワーアップしたのかは後続にお任せします
|[[少年よ、我にかえれ]]|投下順|[[束の間のコミックショウ]]|
|[[PARADIGUM]]|時系列順|[[束の間のコミックショウ]]|
|[[弔いのボサ・ノバ]]|ヨキ|[[賢人は無限の幕、羽織り]]|
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*循環型悲劇症候群
それは、天文学的確率で起こったことではあった。
なにが彼らの世界を繋げたのか。
起こったことの原因を追求する時間は彼らにはなく。
彼らは物語の終着点で産まれる一つの種を
どこまでも広大な無意識の海に作った。
偶然にも同じ終わりへと至った幾つもの世界。
終わるならばそこから
新たな物語が産まれるのは必然。
「世界の時間を止めたね」
「ええ」
「君が望んだように私達は君の記憶を閉じよう。
君が今度こそ彼を玉座へと押し上げるために」
「わかった」
「ひとつ訊きたいのだけれど」
「なんだ?」
「君は永劫の狂いを受けいれてまでして
彼という偶像に縋るのかい?」
「黙れ」
ぬばたまの外衣を纏った真なる赤き血の神は
賢人を穿つような眼で睨みつけた。
「狂っているのは世界だ。
だから私が狂うのも許される」
「……そう」
嘆息した賢人は傍らにいる
無邪気な笑みを絶やさぬ悪魔に命じて少女の記憶を閉じ。
神の力の大部分を行使し滅びいく世界の時と壁を再構築した。
それは、あくまで間に合わせのものに過ぎなかったが。
――――――――。
賢人ヨキは横たわっていたベッドから降りると
慣れた手つきで衣服を脱ぎ去り。肢体を露わにする。
ヨキの常人より白い肌は日光にはあまり映えず
ここに見る者がいれば今が夜でないことを惜しんだだろう。
熱が空気へと溶けるまで待っていた椀にためたお湯から
タオルをとりだすと寝汗を拭き取り、
じっとりと湿った肌を一新したことに恍惚めいた息をついた。
「オーディンの素体を見つけた」
「お前は背後から声をかけるのがよほど好きなんだね」
着替えたヨキの後ろから聞こえた声に
賢者は皮肉をこめて応えた。
「もうここに存在できるようになったか」
振り返ったヨキが眼にしたのは鏡の中ではなく
確固たる存在感をもって佇む神崎士郎の姿。
「チャンが消費した想波の量は膨大だ」
「しかし、それだけでここに来るのは危険だと思うけどね。
他に想波の闘法を使うのは魔導師だけだ」
「いや…………」
表情を変えず言葉を濁した神崎にヨキは眉を上げた。
「もう一人いる。……正確には二人か」
「そうなのか」
興味深げにヨキは微笑み首を傾げた。
「勇者や革命家、魔王が落ちても依然として
脅威は残っているということだね」
「白薔薇は本当に俺達に協力するのか?」
「……少し、話をしよう。
私のスプンタ・マンユはある人形の魂を喰らった」
静かに、単調な口調で語り始めたヨキに
壁に背を預けた神崎は耳を傾ける。
「その人形は双子の姉と仲睦まじく暮らしていた。
彼女達もいつかは殺しあわなければならない運命にあったが。
恐らくその姉は薔薇乙女ではなく、
本当の意味で人形に近かったのだろう。
停滞と安寧が彼女の正気を保つ術だった」
ヨキの底知れぬ瞳から自嘲の色がほのかに浮かんだが
神崎士郎は何も言わずに賢者を見ていた。
「しかし彼女たちは本能としてローザミスティカを、
己の理想を追い求め続けるよう
刷り込みにも似た意志を持たされてある。
だから少女は、双子の妹である少女は願ったのだ」
そこで一旦、言葉を切ると、
ヨキは歴史の道標の反応を見極めようと目を細める。
茫洋とした、蜃気楼のような男の持つおぞましき欲望は
双子人形の話を聞いて何を想うだろうかと。
「己が己で在り続けるために。
自分は彼女とは正反対の、鏡合わせの闘いをしようと。
激変と狂乱を己の心に抱いていこうとね」
ヨキの話が終わり、何を思考したのか。
しばらく押し黙り、時計の針が鳴らす音だけが室内に響く。
「白薔薇は言っていたな。
己の求めるものは確かな抱擁と肉の感触だと」
「つまり、協力をとりつけるのであれば
提示するのは彼女の願いに
最も近い究極の少女像でいいということさ」
「なるほど、よくわかった」
背を壁から離すと神崎士郎は足元から空気と同化するように
ゆっくりと姿を消していく。
「……七原秋也が引き継ぎのため、
ハルワタートに喰われた」
「へえ」
「アールマティは――」
「たしかにいたね。
仕留め切れなかったのは大きな痛手だよ」
「それでも“願い”を叶えるのはこの俺だ」
ヨキは滅多に無いことではあるが
神崎士郎の言葉に嘲けりをこめて口の端を歪めた。
「妄執にとらわれた男よ。
おまえもまたあの赤き血の神と
同じ失敗を繰り返すだけだ」
ヨキの背後で浮かぶスプンタ・マンユが
能面の瞳、虚の空洞を歓喜と渇望に歪ませる。
「真の勝利は私が掴む」
【E-4/一日目/午後】
【ヨキ@WaqWaq】
[状態]:ダメージ(中)、疲労(小)、BMによる火傷 (処置済み)、
[装備]:スプンタ・マンユ(玉四つ、ドラグブラッカー、蒼星石のローザミスティカ完食)
@WaqWaq、ヒミコのレーダー@BTOOOM!、スタンガン@BTOOOM!、
[道具]:
[思考・状況]
基本行動方針:優勝して赤き血の神を抹殺する
1:動く。
※神の血をあびたことで身体能力大幅上昇
※どれほどパワーアップしたのかは後続にお任せします
|[[少年よ、我にかえれ]]|投下順|[[束の間のコミックショウ]]|
|[[PARADIGUM]]|時系列順|[[束の間のコミックショウ]]|
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