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「幕は対話篇にて降ろされる」(2013/04/04 (木) 08:56:15) の最新版変更点
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*幕は対話篇にて降ろされる
歯車が天井を覆い、回ることなく、止まっている。
光を放つ女神は玉座に座り、穏やかな瞳で来訪者を迎え入れた。
無数の歯車は茨のように絡みあって天蓋を成し、
螺旋階段の中央に聳え立つ巨塔の内部は広大な機械じかけの森となっていた。
ここは、かつて薔薇乙女が過ごしていた空間。
ローゼンクロイツが生命の神秘を探求したアトリエ。
こんにちは、ワイルドセブン。我が子らの想いの果てに産まれたドール。
待っていましたよ、貴方のことを
光は少女の姿をしていた。
月の光で出来た絹によって織られたローブだけを着、
瀟洒なドレスとはまるで違う質素な姿なのに、圧倒される神々しさを持っていた。
これが、女神。
闇夜に光を与える存在。
「典子の姿をしてるのは俺を誘惑するためかい?
なら、悪いね。俺は一途なんだ」
ワイルドセブンの軽口に女神は柔らかな笑みを湛えて。
中川典子のかたちをとった女神は胸に手を当てた。
この姿は貴方の記憶を元に構成しています。
私に明確な肉体はないのですから。
「そりゃ残念。絶世の美女でも拝めるのかと思ってた」
そう言ってワイルドセブンは笑った。
それでは、ワイルドセブン。“願い”を私に。
最も力ある高貴な魂を三柱に据え、
私は神儀を執行しましょう。
「俺の“願い”――――」
静かに瞳を閉じてワイルドセブンはこれまでの出来事を想い出す。
死にゆく人達、自分に手を差し伸べてきた人達、
自分が手を差し伸べようとしてきた人達、
ともに歩いてきた人達。
「秋山に聞いたんだけどさ。
日本っていう国があるんだ。
俺の育った大東亜共和国とよく似ているけど、
色んなところで違う国。
そこではロックも何も禁止されていなくてさ。
俺は想ったよ、羨ましいし、そんな国があったら
俺も殺しあわなくてよかったかもなって」
瞳を開くとワイルドセブンは造り物の瞳に確かな意志を燃やし、
女神へと語りかける。
「俺はずっと日陰で蹲っている人達が
光の道を歩けるようにしたかった。
居場所を与えたかった。
みんなの光を遮る木を少しだけ切り倒したかった」
女神は静寂を保ったまま、
どことなく楽しげにワイルドセブンに耳を傾けている。
「殺し合いに勝てば“願い”が叶う。
確かにそういうのは凄いと想うよ。
でも、もしも、ギター抱えて歌も歌えない奴が、
そんな殺し合いに乗ったって“願い”は叶わないんだ。
俺達に必要だったのは光へ歩ける道だった」
ワイルドセブンの手には剣が現れ、
女神へと向ける、口にするのは犯行の言葉。
「“願い”を告げるよ、女神様。
“殺し合いなんてくっだらねえ、ハルネラはこれで打ち切りだ”」
それでは、世界の壁はどうするのですか?
三千年で壁はまた崩れる。ハルネラの必要性はまだ残るのですよ。
「さあね。なにせ三千年先の未来だ。
我儘でガキなクソッタレの意見だけどさ。
ユッキーだってかなり良い線打ってたんだし、
きっと大丈夫だよ。俺達はもういいんだ。
みんな、あんたが想うほど弱くはないんだよ。きっとね」
初めて女神はくすり、と人間によく似た笑みを零した。
なんと傲慢なのでしょう
「かもね」
沢山の人が貴方を憎むでしょうね
「テロリストってそんなもんじゃん」
誰も貴方に感謝しないかもしれない
「そんなヤツの“願い”でも叶えるのがあんたなんだろ?
無意識の海で行われるハルネラは人の意識に確かに刻み込んじまう。
『俺達はこれでしか救われない』ってね。
だから、俺は世界に巻き返しの薇螺子を挿しこむ」
本当にそれでいいのですね?
「くどいぜ、女神様。たしかにあんたは俺達の“お母様”だけどさ。
ブルーハーツは一人じゃ結成できない。
情熱の薔薇は一人じゃ咲かせられない。
殺し合いで叶えられる“願い”なんて、たかが知れてるんだ!!
さあ、どうするお母様!? これが俺達の選んだ道だ!
ユッキーの言葉を借りるなら――――リベンジの時間だぜ」
声高く叫ぶワイルドセブン。
聞き入れる女神の表情は変わらず。
しかし、女神の手元には一冊の本が現れていた。
ならば、私は、いいえ、運命は貴方に……
抗い、解放を願う皆に最後の試練を与えましょう。
女神の手元で本がパラパラとめくれていく。
何度も聴かれたオルゴールと同じく想いと情熱を乗せて。
これは運命の奔流の中に産まれた一人の人間の物語。
一輪の花から産み落とされた世界の中心点。
世界の真ん中で、帰る場所を守りきった戦士の。
宇宙から、地底から、異空から、外宇宙から、
そして、私の権限体のひとつからさえも守りきった。
彼の意志と側で見守り続けた少女の想いと意志が篭められた物語、対話篇。
女神の言葉とともに、彼女の光が形を変えていく。
我が光と我が子の物語を以って、
いでよ、私のドール、我らの主人公。
はじめに肉体が作られる。
筋骨隆々の手足はたとえ星だろうと砕き、
苦境の荒野でも生き抜く活力を秘めていて。
貴方の意志は私の意志。
貴方の罪、あらゆる全ては私の罪。
嵐のように乱れ狂った鬣が産まれてくる
ドールの苛烈さを教える。
背中に生えた薇螺子が
薔薇乙女と同じく彼がドールだとわかる。
私のドール、《怪物》サクラテツ。
貴方の敵は貴方を育んだ運命を変えんとする
不遜極まる革命家、ワイルドセブン、または七原秋也。
歯車が回り出す。
轟音生み出し濁流のように息吹が流れていく。
周囲をとりまく世界が日が昇るように変わっていく。
――――――――――防衛せよ
無数のビルディングが倒壊し、
砂漠が侵食し、削りとらんとする死の世界。
荒野の砂漠。水一滴もない世界。
《怪物》の背に生えた薇が巻かれていく。
キィキィとささやかな悲鳴とともに、
ドールに命が宿っていく。
世界のメモリーに記された紛れもない最強のひとり。
このドールには私の力も加わっています。
今や彼が殺し合いの理そのもの。
分離した力である以上、
もはや私すら光にはなれません。
気がつくと女神はどこにもいない。
声は脳内に直接流れこみ、
問いかける、最後の意思を。
LastQuestion、《勇気の物語》で《対話篇》を乗り越えてください。
今ならまだ引き返せます。
それでも――巻きますか、巻きませんか?
「わかりきったことを聞くなよ女神様!
”巻き返す”。その一択のためにここまで来たんだ」
右手にはレオナルドの刀。
左手には川田の散弾銃。
ステージの中央でマイクに向かって叫ぶように、歌うように、
ワイルドセブンは言った。
「たとえ滅ぶしかない三千年でも!
零から三千の間にブルーハーツが生まれんのなら。
それは最高にロックンロールな三千年だ!!」
そしてサクラテツの拳がワイルドセブンの胸を強かに打ち。
ワイルドセブンは彼方の山へと吹き飛び、衝突した。
【会場:荒野の砂漠、水一滴もなし】
【最終試練開始】
|[[ワイルドセブン]]|投下順|[[]]|
|[[ワイルドセブン]]|時系列順|[[]]|
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*幕は対話篇にて降ろされる
歯車が天井を覆い、回ることなく、止まっている。
光を放つ女神は玉座に座り、穏やかな瞳で来訪者を迎え入れた。
無数の歯車は茨のように絡みあって天蓋を成し、
螺旋階段の中央に聳え立つ巨塔の内部は広大な機械じかけの森となっていた。
ここは、かつて薔薇乙女が過ごしていた空間。
ローゼンクロイツが生命の神秘を探求したアトリエ。
こんにちは、ワイルドセブン。我が子らの想いの果てに産まれたドール。
待っていましたよ、貴方のことを
光は少女の姿をしていた。
月の光で出来た絹によって織られたローブだけを着、
瀟洒なドレスとはまるで違う質素な姿なのに、圧倒される神々しさを持っていた。
これが、女神。
闇夜に光を与える存在。
「典子の姿をしてるのは俺を誘惑するためかい?
なら、悪いね。俺は一途なんだ」
ワイルドセブンの軽口に女神は柔らかな笑みを湛えて。
中川典子のかたちをとった女神は胸に手を当てた。
この姿は貴方の記憶を元に構成しています。
私に明確な肉体はないのですから。
「そりゃ残念。絶世の美女でも拝めるのかと思ってた」
そう言ってワイルドセブンは笑った。
それでは、ワイルドセブン。“願い”を私に。
最も力ある高貴な魂を三柱に据え、
私は神儀を執行しましょう。
「俺の“願い”――――」
静かに瞳を閉じてワイルドセブンはこれまでの出来事を想い出す。
死にゆく人達、自分に手を差し伸べてきた人達、
自分が手を差し伸べようとしてきた人達、
ともに歩いてきた人達。
「秋山に聞いたんだけどさ。
日本っていう国があるんだ。
俺の育った大東亜共和国とよく似ているけど、
色んなところで違う国。
そこではロックも何も禁止されていなくてさ。
俺は想ったよ、羨ましいし、そんな国があったら
俺も殺しあわなくてよかったかもなって」
瞳を開くとワイルドセブンは造り物の瞳に確かな意志を燃やし、
女神へと語りかける。
「俺はずっと日陰で蹲っている人達が
光の道を歩けるようにしたかった。
居場所を与えたかった。
みんなの光を遮る木を少しだけ切り倒したかった」
女神は静寂を保ったまま、
どことなく楽しげにワイルドセブンに耳を傾けている。
「殺し合いに勝てば“願い”が叶う。
確かにそういうのは凄いと想うよ。
でも、もしも、ギター抱えて歌も歌えない奴が、
そんな殺し合いに乗ったって“願い”は叶わないんだ。
俺達に必要だったのは光へ歩ける道だった」
ワイルドセブンの手には剣が現れ、
女神へと向ける、口にするのは犯行の言葉。
「“願い”を告げるよ、女神様。
“殺し合いなんてくっだらねえ、ハルネラはこれで打ち切りだ”」
それでは、世界の壁はどうするのですか?
三千年で壁はまた崩れる。ハルネラの必要性はまだ残るのですよ。
「さあね。なにせ三千年先の未来だ。
我儘でガキなクソッタレの意見だけどさ。
ユッキーだってかなり良い線打ってたんだし、
きっと大丈夫だよ。俺達はもういいんだ。
みんな、あんたが想うほど弱くはないんだよ。きっとね」
初めて女神はくすり、と人間によく似た笑みを零した。
なんと傲慢なのでしょう
「かもね」
沢山の人が貴方を憎むでしょうね
「テロリストってそんなもんじゃん」
誰も貴方に感謝しないかもしれない
「そんなヤツの“願い”でも叶えるのがあんたなんだろ?
無意識の海で行われるハルネラは人の意識に確かに刻み込んじまう。
『俺達はこれでしか救われない』ってね。
だから、俺は世界に巻き返しの薇螺子を挿しこむ」
本当にそれでいいのですね?
「くどいぜ、女神様。たしかにあんたは俺達の“お母様”だけどさ。
ブルーハーツは一人じゃ結成できない。
情熱の薔薇は一人じゃ咲かせられない。
殺し合いで叶えられる“願い”なんて、たかが知れてるんだ!!
さあ、どうするお母様!? これが俺達の選んだ道だ!
ユッキーの言葉を借りるなら――――リベンジの時間だぜ」
声高く叫ぶワイルドセブン。
聞き入れる女神の表情は変わらず。
しかし、女神の手元には一冊の本が現れていた。
ならば、私は、いいえ、運命は貴方に……
抗い、解放を願う皆に最後の試練を与えましょう。
女神の手元で本がパラパラとめくれていく。
何度も聴かれたオルゴールと同じく想いと情熱を乗せて。
これは運命の奔流の中に産まれた一人の人間の物語。
一輪の花から産み落とされた世界の中心点。
世界の真ん中で、帰る場所を守りきった戦士の。
宇宙から、地底から、異空から、外宇宙から、
そして、私の権限体のひとつからさえも守りきった。
彼の意志と側で見守り続けた少女の想いと意志が篭められた物語、対話篇。
女神の言葉とともに、彼女の光が形を変えていく。
我が光と我が子の物語を以って、
いでよ、私のドール、我らの主人公。
はじめに肉体が作られる。
筋骨隆々の手足はたとえ星だろうと砕き、
苦境の荒野でも生き抜く活力を秘めていて。
貴方の意志は私の意志。
貴方の罪、あらゆる全ては私の罪。
嵐のように乱れ狂った鬣が産まれてくる
ドールの苛烈さを教える。
背中に生えた薇螺子が
薔薇乙女と同じく彼がドールだとわかる。
私のドール、《怪物》サクラテツ。
貴方の敵は貴方を育んだ運命を変えんとする
不遜極まる革命家、ワイルドセブン、または七原秋也。
歯車が回り出す。
轟音生み出し濁流のように息吹が流れていく。
周囲をとりまく世界が日が昇るように変わっていく。
――――――――――防衛せよ
無数のビルディングが倒壊し、
砂漠が侵食し、削りとらんとする死の世界。
荒野の砂漠。水一滴もない世界。
《怪物》の背に生えた薇が巻かれていく。
キィキィとささやかな悲鳴とともに、
ドールに命が宿っていく。
世界のメモリーに記された紛れもない最強のひとり。
このドールには私の力も加わっています。
今や彼が殺し合いの理そのもの。
分離した力である以上、
もはや私すら光にはなれません。
気がつくと女神はどこにもいない。
声は脳内に直接流れこみ、
問いかける、最後の意思を。
LastQuestion、《勇気の物語》で《対話篇》を乗り越えてください。
今ならまだ引き返せます。
それでも――巻きますか、巻きませんか?
「わかりきったことを聞くなよ女神様!
”巻き返す”。その一択のためにここまで来たんだ」
右手にはレオナルドの刀。
左手には川田の散弾銃。
ステージの中央でマイクに向かって叫ぶように、歌うように、
ワイルドセブンは言った。
「たとえ滅ぶしかない三千年でも!
零から三千の間にブルーハーツが生まれんのなら。
それは最高にロックンロールな三千年だ!!」
そしてサクラテツの拳がワイルドセブンの胸を強かに打ち。
ワイルドセブンは彼方の山へと吹き飛び、衝突した。
【会場:荒野の砂漠、水一滴もなし】
【最終試練開始】
|[[ワイルドセブン]]|投下順|[[幕はインガノックにて降ろされる]]|
|[[ワイルドセブン]]|時系列順|[[幕はインガノックにて降ろされる]]|
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