増えるジジイに逃げるジジイ ◆1yqnHVqBO6
ジジイが空から降ってきた。
白髪鬼はパピーを抱えながら窓を突き破り、病院へと入った。
場所は普通の病室。あるのは殺風景なベッドだけ。
白髪鬼は散乱した窓硝子の破片を踏みしめ、ベッドまで歩き。
ベッドに破片がかかっていないのを確認するとパピーをそこに横たわらせた。
場所は普通の病室。あるのは殺風景なベッドだけ。
白髪鬼は散乱した窓硝子の破片を踏みしめ、ベッドまで歩き。
ベッドに破片がかかっていないのを確認するとパピーをそこに横たわらせた。
そして、融合を解く。
白髪鬼の体を滝のような汗が濡らしていた。
慣れない護神像の使用。
パピーのために可能なかぎり振動を与えないよう注意しながらの最速の維持。
人智を超えた未知の力の最大限の行使は
老体である白髪鬼から確実に体力を奪っていた。
慣れない護神像の使用。
パピーのために可能なかぎり振動を与えないよう注意しながらの最速の維持。
人智を超えた未知の力の最大限の行使は
老体である白髪鬼から確実に体力を奪っていた。
白髪鬼はパピーの傷を手当てしようと物資を探しに部屋を出ようとした。
ドアへと歩き、ドアノブを回そうとするその寸前に
ドアが蹴り飛ばされたような勢いで開けられる。
ドアが蹴り飛ばされたような勢いで開けられる。
ドアを開けられる寸前。
気づいた白髪鬼は一歩後退し、懐に忍ばせておいた拳銃を抜く。
気づいた白髪鬼は一歩後退し、懐に忍ばせておいた拳銃を抜く。
開かれたドアの先にいたのは白髪鬼が参加していたシルバーバトルの乱入者、猿谷甚一。
白髪鬼と向かい合う形で彼もまた銃を構えていた。
だが白髪鬼の姿を眼にしておや、という風に眉を上げる。
だが白髪鬼の姿を眼にしておや、という風に眉を上げる。
「まさかまた会うことになるとは。
縁というのも分からんもんですな教授」
縁というのも分からんもんですな教授」
「おお、お前さんは。そうかそうか、ここにいたのか」
猿谷は笑顔で白髪鬼に語りかけ。
白髪鬼も笑顔でそれに返す。
白髪鬼も笑顔でそれに返す。
「そういえば、わしに撃たれた傷はどうなった?」
「それがここに来ておかげさまで傷ひとつないキレイな体に。
むしろいっそう健康になったくらいで」
むしろいっそう健康になったくらいで」
二人はかつてお互い殺しあった間柄であったことには
まるで頓着していなかった。
まるで頓着していなかった。
そして、銃口を向け合いながらの会話は
自然と銃口を降ろした会話へと移る。
自然と銃口を降ろした会話へと移る。
「ご隠居をどこかで見かけませんでしたかね?」
「いやあ、見とらんなあ。一緒ではなかったのか?」
「それが出発したのは別々の場所のようで。
そういえばそこにいる男の子は何です?
やけにハイカラなかっこをしているようですが」
そういえばそこにいる男の子は何です?
やけにハイカラなかっこをしているようですが」
猿谷の問いかけに白髪鬼は笑みを浮かべたまま答える。
「そこで拾ったんじゃよ。今から手当てしようというわけだ」
「ほほう。白髪鬼と恐れられた教授も優しいところがあるんですなあ」
顎を撫でながら感心したように呟くと猿谷はパピーへと近寄ろうとする。
その動きを白髪鬼が制する。
犬に命じるかのように手を掲げて猿谷の動きを止める。
犬に命じるかのように手を掲げて猿谷の動きを止める。
「お前さん。このゲームではどうするつもりだ?」
白髪鬼の問いに猿谷は不思議そうな顔をする。
「どう、とは?」
「このゲームでどう動くか。
そして優勝したら何を要求するかということだ」
そして優勝したら何を要求するかということだ」
猿谷はああ、と得心がいったように頷く。
「いやあ。わたしのような小市民の老いぼれには
何でもという言葉が一番困るのですよ」
何でもという言葉が一番困るのですよ」
少しはにかむような口調で猿谷は続ける。
「ただ、そうですなあ。
もっと人を殺せる場が欲しいとでもお願いしてみましょうか」
もっと人を殺せる場が欲しいとでもお願いしてみましょうか」
「ずいぶんと謙虚じゃな。殺しがしたいのなら
大量破壊兵器でも要求してみたらどうだ。
とんでもないものをもらえるんじゃないか?」
大量破壊兵器でも要求してみたらどうだ。
とんでもないものをもらえるんじゃないか?」
白髪鬼の言葉に猿谷はぶんぶんと首を振る。
「そんなそんなもったいない!
人をただ殺すというのは存外味気ないものですよ。
狭い空間内で面と向かって一人ひとり殺す。そういうのが好みなんです」
人をただ殺すというのは存外味気ないものですよ。
狭い空間内で面と向かって一人ひとり殺す。そういうのが好みなんです」
「ハハ。ならこのゲームでもお前さんは」
「ええ! 精一杯、殺すだけです。
もう叶えてもらったようなものですよ」
もう叶えてもらったようなものですよ」
白髪鬼は笑い。
猿谷は老後の生きがいを語るような口調で言う。
事実そうなのだろう。外からわざわざやってきて殺し合いに参加するような男だ。
よほど殺しが好きでなければやれないことだ。
猿谷は老後の生きがいを語るような口調で言う。
事実そうなのだろう。外からわざわざやってきて殺し合いに参加するような男だ。
よほど殺しが好きでなければやれないことだ。
だが
「賛同できんなあ」
白髪鬼はガッカリしたように呟き。
改めて猿谷に銃口を向けた。
改めて猿谷に銃口を向けた。
「殺しを目的にするのは芸がなさすぎる」
銃口を向けられ。
鉛玉が飛び出すだろう昏い昏い穴を目の前にかざされても
猿谷は動じない。
鉛玉が飛び出すだろう昏い昏い穴を目の前にかざされても
猿谷は動じない。
「それなら教授はどうするおつもりで?」
「わしはなあ」
白髪鬼は楽しげに笑う。
銃のトリガーをゆっくり引きながら笑う。
銃のトリガーをゆっくり引きながら笑う。
「英雄の道を歩んでみたいのだよ」
鉛玉が吐き出される。
銃弾が猿谷の顔のすぐ横を通り過ぎる。
護神像を駆っていたことによる疲労が狙いを外す一助となり。
それを見抜いていた猿谷は銃が火を噴く直前に体ごと大きく地面へ倒れこむ。
銃弾が猿谷の顔のすぐ横を通り過ぎる。
護神像を駆っていたことによる疲労が狙いを外す一助となり。
それを見抜いていた猿谷は銃が火を噴く直前に体ごと大きく地面へ倒れこむ。
追撃はない。
白髪鬼の体を濡らす滝のような汗が物語っていた。
本来は立っていることすら辛い状態だったのだと。
白髪鬼の体を濡らす滝のような汗が物語っていた。
本来は立っていることすら辛い状態だったのだと。
だが猿谷はそうそう容易くあの白髪鬼を倒せるとは思っていないのだろう。
殺せる相手は確実にキッチリ殺しておくべきと判断したのか
猿谷は銃口を横たわっているパピーへと向ける。
猿谷は引き金を引き絞り。撃つ。
殺せる相手は確実にキッチリ殺しておくべきと判断したのか
猿谷は銃口を横たわっているパピーへと向ける。
猿谷は引き金を引き絞り。撃つ。
「合体だ。クシャスラ」
その寸前。
銃弾を外した白髪鬼はすぐさまクシャスラと融合する。
銃弾を外した白髪鬼はすぐさまクシャスラと融合する。
だが、間に合わない。
射線を遮るには疲れが溜まり過ぎていた。
射線を遮るには疲れが溜まり過ぎていた。
手を伸ばしても叶わない。
正確に狙いを定められて発射する弾丸は容赦なくパピーの体を蹂躙するだろう。
正確に狙いを定められて発射する弾丸は容赦なくパピーの体を蹂躙するだろう。
そうはさせん。
白髪鬼は強くそう思う。
あれは子供。子供を守るのは英雄たる務め。
英雄には観客たる子供の存在が不可欠。
いわば絶好のファクター。
少年を救い出し、死の淵から救った英雄として記憶されておきたい。
白髪鬼は思う。
英雄には観客たる子供の存在が不可欠。
いわば絶好のファクター。
少年を救い出し、死の淵から救った英雄として記憶されておきたい。
白髪鬼は思う。
手を限界まで伸ばす。
疲労が白髪鬼を鎖のように雁字搦めに縛る。
疲労が白髪鬼を鎖のように雁字搦めに縛る。
――そんなにその子供を救いたいか?
白髪鬼の眼にクシャスラが浮かぶ。
ああ。助けたいな。
――受け入れる覚悟はあるか?
クシャスラは白髪鬼にそう語りかける。
だがクシャスラはそもそも語る相手を間違えている。
だがクシャスラはそもそも語る相手を間違えている。
白髪鬼は鬼。
津幡共仁は鬼。
鬼に受け入れられないものなど。
喰えないものなどあろうはずもない。
喰えないものなどあろうはずもない。
力をくれるなら……よこせ。何だろうとかまわん。
白髪鬼は。
鬼は。
津幡共仁は数千年の願いを流し込まれる。
鬼は。
津幡共仁は数千年の願いを流し込まれる。
津幡共仁の脳に流れてくるのは“願い”
下衆な“願い”。高尚な“願い”。優しい“願い”。
ありとあらゆる“願い”が津幡共仁へと流れこむ。
ありとあらゆる“願い”が津幡共仁へと流れこむ。
震える体を必死に津幡共仁は抑える。
喜びのあまり震えそうになる体を必死に抑える。
喜びのあまり震えそうになる体を必死に抑える。
これだ。これなのだと津幡共仁は歓喜する。
願い。星の数のようにある願い。
それを背負うことは彼の行動そのものに意味をもたらす。
それを背負うことは彼の行動そのものに意味をもたらす。
受け継いだ、ある“願い”に沿う生き方をする一方で
他の受け継いだ“願い”を踏みにじる。
他の受け継いだ“願い”を踏みにじる。
そんな傲慢な生き方ができる。
まさに英雄に相応しい道。
まさに英雄に相応しい道。
ああ。これだから。
人生は面白い。
人生は面白い。
津幡共仁は願いをインストールし、
本当の意味で護神像を駆る者となる。
本当の意味で護神像を駆る者となる。
これまでのやりとりは一瞬にも満たない刹那。
銃口は已然としてパピーに向けられたままであり。
疲労は津幡共仁の体に重くのしかかっている。
疲労は津幡共仁の体に重くのしかかっている。
だが今の津幡共仁には新たに得たであろう能力がある。
手が届かないのなら。
足が動かないのなら。
体そのものを――
足が動かないのなら。
体そのものを――
子供の為に。死の淵で苦しむ子供の為に。
不安を消し去ってやる為に。
不安を消し去ってやる為に。
ジジイは。
ジジイは分裂する!!
分裂。それこそがクシャスラの真の能力。
部屋をジジイが埋め尽くす。
猿谷の視界をジジイが染めていく。
今この瞬間。
猿谷の世界はたしかにジジイが支配していた。
猿谷の視界をジジイが染めていく。
今この瞬間。
猿谷の世界はたしかにジジイが支配していた。
吐き出される銃弾を壁となったジジイがその体で弾く。
銃弾を通さない装甲が銃弾から子供を防る。
疲労で動くことはできなくとも増えることはできる。
銃弾を通さない装甲が銃弾から子供を防る。
疲労で動くことはできなくとも増えることはできる。
「こりゃ逃げないわけにはいかんようですなあ!」
想像の埒外であろう事態を眼にしながらも
猿谷は冷静に状況を判断して逃げ出した。
猿谷は冷静に状況を判断して逃げ出した。
津幡共仁は。
白髪鬼は。
鬼は子供を防ることができた。
白髪鬼は。
鬼は子供を防ることができた。
【D-3/一日目/早朝】
【猿谷甚一@銀齢の果て】
[状態]:健康
[装備]:ニューナンブM60(3/5)@現実
[道具]:基本支給品×2、不明支給品×1~2(本人確認済)勇者の剣(ブレイブレード)@ブレイブ・ストーリー~新説~、ノコギリ@現実、救急箱@現実
[思考・状況]
基本行動方針:優勝を狙う。
1:協力者を探す。 津幡共仁には用心する。
2:ひとまず病院を拠点にする。
[備考]
※ワタルから幻界の知識をある程度得ました。
[状態]:健康
[装備]:ニューナンブM60(3/5)@現実
[道具]:基本支給品×2、不明支給品×1~2(本人確認済)勇者の剣(ブレイブレード)@ブレイブ・ストーリー~新説~、ノコギリ@現実、救急箱@現実
[思考・状況]
基本行動方針:優勝を狙う。
1:協力者を探す。 津幡共仁には用心する。
2:ひとまず病院を拠点にする。
[備考]
※ワタルから幻界の知識をある程度得ました。
【D-3病院/一日目/早朝】
【津幡共仁@銀齢の果て】
[状態]:疲労(極大)
[装備]:クシャスラ@waqwaq、コルト・シングル・アクション・アーミー(5/6)@現実
[道具]:基本支給品、簡易工具セット
[思考・状況]
基本行動方針:英雄として行動する
1:少年(パピプリオ)を治療をする。そのあと休む
2:万一の場合はティオという名の参加者に少年の最後を伝える。
3:ガッシュという名のものを危険視
[状態]:疲労(極大)
[装備]:クシャスラ@waqwaq、コルト・シングル・アクション・アーミー(5/6)@現実
[道具]:基本支給品、簡易工具セット
[思考・状況]
基本行動方針:英雄として行動する
1:少年(パピプリオ)を治療をする。そのあと休む
2:万一の場合はティオという名の参加者に少年の最後を伝える。
3:ガッシュという名のものを危険視
[備考]
※香川教授のミラーワールド研究レポートは研究室にそのまま放置されています
※工具は現地調達品です
※香川教授のミラーワールド研究レポートは研究室にそのまま放置されています
※工具は現地調達品です
【レオパルドン・パピプリオ@金色のガッシュ!!】
[状態]:右腕喪失、恐慌状態 、気絶
[装備]:魔本@金色のガッシュ!!
[道具]:基本支給品一式、月の石@金色のガッシュ!!、不明支給品0~1
[思考・状況]
基本行動方針:死にたくない、ルーパーの所に帰りたい
1:……(気絶中)
2:ティオを探してガッシュのことを伝える。あと守ってもらいたい
[状態]:右腕喪失、恐慌状態 、気絶
[装備]:魔本@金色のガッシュ!!
[道具]:基本支給品一式、月の石@金色のガッシュ!!、不明支給品0~1
[思考・状況]
基本行動方針:死にたくない、ルーパーの所に帰りたい
1:……(気絶中)
2:ティオを探してガッシュのことを伝える。あと守ってもらいたい
[備考]
※19巻、レインと戦った直後から参加。
※出血は止まりかけているが、傷口はそのままです。
※19巻、レインと戦った直後から参加。
※出血は止まりかけているが、傷口はそのままです。
混迷する少年少女のバトルロワイアル | 投下順 | 絆を結び/憎しみを放つ |
混迷する少年少女のバトルロワイアル | 時系列順 | 絆を結び/憎しみを放つ |
老後の楽しみ | 猿谷甚一 | [[]] |
歪む世界!? 空から飛来する黒い影! | 津幡共仁 | [[]] |
レオパルドン・パピプリオ | [[]] |