君は光、僕の光
これは夢だった。
あのときの夢だった。
蒼星石の死を目の当たりにして。
意識を手放した後の。
泣いている翠星石と夢の世界で出会ったときの。
あのときの夢だった。
蒼星石の死を目の当たりにして。
意識を手放した後の。
泣いている翠星石と夢の世界で出会ったときの。
「おまえの木は、これです」
そう言われて桐山は背後を振り返った。
そこには荒野の砂漠が広がっていた。
草木も生えない。生命も失った荒廃していくだけのどこか。
そこには荒野の砂漠が広がっていた。
草木も生えない。生命も失った荒廃していくだけのどこか。
「足元を見るですよ」
そう言われて、桐山は足元を見ると、
そこにはようやく顔を出した芽があった。
光を放つ原色だけが生を許されるような厳しい世界。
人の営みから外れれば、砂漠は生命を育むのが困難だ。
そこにはようやく顔を出した芽があった。
光を放つ原色だけが生を許されるような厳しい世界。
人の営みから外れれば、砂漠は生命を育むのが困難だ。
「これがおまえの木です」
涙に濡れた目元を袖で何度も拭って
翠星石は桐山の隣にしゃがみこんだ。
翠星石は桐山の隣にしゃがみこんだ。
「乾ききった木。
今までずっと育つことがなかったんですね」
今までずっと育つことがなかったんですね」
桐山は何も言わない。
あのときの彼にはまだ多くのことがわからなかったから。
あのときの彼にはまだ多くのことがわからなかったから。
「でも、ずっと誰かの思い出が
ここを守ってくれていたんですよ。
おまえは、覚えていますか?」
ここを守ってくれていたんですよ。
おまえは、覚えていますか?」
「わからない」
「そう」
翠星石は寂しそうに微笑んだ。
「人形の翠星石には羨ましいです。
人形は遊び終わったら部屋の片隅に置かれて、
子供たちは広い世界に行ってしまう。
喜ぶべきだっていうのは、わかっているんですけどね」
人形は遊び終わったら部屋の片隅に置かれて、
子供たちは広い世界に行ってしまう。
喜ぶべきだっていうのは、わかっているんですけどね」
桐山には翠星石が何を言っているのかわからなかった。
「辛かったら、呼べばいいんじゃないのか……?」
翠星石は桐山を横目で見てふふっ、と笑った。
「そうですかね?」
「そうだろう。少なくとも、俺は、おまえが呼んだら来る」
「無理ですよ」
桐山の視界が徐々に狭まって、うす暗くなっていった。
「だって。おまえは起きたら
ここのことを忘れてしまうんですもの」
ここのことを忘れてしまうんですもの」
桐山は――――――
……………………………。
――――――忘れていない。
スプンタ・マンユの装甲からハルワタートの水が流れている。
真っ赤な水が行き着く先は桐山の倒れている場所。
真っ赤な水が行き着く先は桐山の倒れている場所。
桐山の指が、ぴくりと動いた。
赤い血。桐山の指先に触れて、心臓を失い。
死に行く桐山、霞のように消えそうな意識をわずかに目覚めさせた。
赤い血。桐山の指先に触れて、心臓を失い。
死に行く桐山、霞のように消えそうな意識をわずかに目覚めさせた。
「……ァ」
弱々しく開いた口。
声を出せはしない。血を失いすぎた。
気力で繋いできた体力もここで尽きた。
何も、言えない。
声を出せはしない。血を失いすぎた。
気力で繋いできた体力もここで尽きた。
何も、言えない。
――おいおい、だらしないな桐山。
声が聞こえた。彼の声が聞こえた。
――死にそうか、そうかあ、でもなあ、俺はさあ、そっからチャンへ決めたんだよねえ
何も言えない。桐山にはまだ早かった。
なったばかりの世界の敵には、世界の終末はあまりに大きすぎた。
だから、もう、死ぬしか道がない。
天野雪輝とガッシュ・ベルのコンビの一撃には勝てなかった。
なったばかりの世界の敵には、世界の終末はあまりに大きすぎた。
だから、もう、死ぬしか道がない。
天野雪輝とガッシュ・ベルのコンビの一撃には勝てなかった。
――アンコールしてんだけどなあ、俺は
無理だ。
――無理じゃないよ
できない、ひとりでは、もう立ち上がる体力もない。
――なら、呼べよ、あいつらの名前をさ
言われるがままに、桐山はそうした。
魂魄が体から離れかけているのがわかっていても。
暗闇と無音の世界にうずくまる少年は、名前を呼んだ。
魂魄が体から離れかけているのがわかっていても。
暗闇と無音の世界にうずくまる少年は、名前を呼んだ。
金糸雀
翠星石
蒼星石
真紅
雛苺
雪華綺晶
水銀燈
生命を失った桐山の視界に、7つの光が灯った。
それは、たしかに終末を迎えた世界にはありえざる星の光だった。
ランタンに燈された灯りのように小さいけれども。
太陽よりも強い熱と温もりがあった。
それは、たしかに終末を迎えた世界にはありえざる星の光だった。
ランタンに燈された灯りのように小さいけれども。
太陽よりも強い熱と温もりがあった。
――忘れてなかったんだろ? なら来るって
苦笑混じりの声が桐山の耳に届いた。
灯りは桐山に喉を与えて、同時に手を動かす力もくれた。
だから、叫ぶ。力の限り、声の限り、叫ぶ。
血に濡れた喉は本当に声が出ているのかわからない。
それでも、
灯りは桐山に喉を与えて、同時に手を動かす力もくれた。
だから、叫ぶ。力の限り、声の限り、叫ぶ。
血に濡れた喉は本当に声が出ているのかわからない。
それでも、
――叫べ
それでも
――感じるのも考えるのも後回しだ。呼べ
それでも
――絶望の世界の果てに
桐山は
――俺の名を!!
「ハルワターートッ!
完全、合体だ!!」
完全、合体だ!!」
視界が完全に晴れた。
桐山の視界に映るのはかつて桐山が通っていた学校。
デウスの核に閉じ込められていた時に何度も見た校舎。
桐山の視界に映るのはかつて桐山が通っていた学校。
デウスの核に閉じ込められていた時に何度も見た校舎。
そこの校庭で、桐山の認識では闘っていた。
桐山は手を伸ばす。倒れ伏したスプンタ・マンユの方へ、
《マエストロ》の指がピアノの奏者のように優雅に動いて。
伝う水が桐山とスプンタ・マンユを結びつけた。
桐山は手を伸ばす。倒れ伏したスプンタ・マンユの方へ、
《マエストロ》の指がピアノの奏者のように優雅に動いて。
伝う水が桐山とスプンタ・マンユを結びつけた。
桐山にはもう心臓の鼓動は聞こえない。
器官の代わりをハルワタートが埋め合わせた。
砕かれたスプンタ・マンユを光が包む。
器官の代わりをハルワタートが埋め合わせた。
砕かれたスプンタ・マンユを光が包む。
「何度もっ! 何度もさあっ!!
何なんだよ! ローゼンメイデン!!」
何なんだよ! ローゼンメイデン!!」
「借りるぞ……ローゼンメイデン」
7つのローザミスティカ。
天野雪輝に砕かれた雪華綺晶のローザミスティカを赤い水が包んで、
砕かれた宝石の欠片を繋ぎあわせた。
天野雪輝に砕かれた雪華綺晶のローザミスティカを赤い水が包んで、
砕かれた宝石の欠片を繋ぎあわせた。
「ハード」
旅人の杖が光に導かれて、
スプンタ・マンユへと辿り着き。砕けた友へ銃を与えた。
スプンタ・マンユへと辿り着き。砕けた友へ銃を与えた。
「秋山蓮」
真っ赤な色の仮面ライダーナイトがばらばらに散った装甲を
パズルのピースのようにスプンタ・マンユと組み合って、一つになる。
パズルのピースのようにスプンタ・マンユと組み合って、一つになる。
「キク」
スプンタ・マンユを通して流れ込んでくるキクの知識が、
桐山の指を導き、創造をもっと先へと高め、引き上げていく。
桐山の指を導き、創造をもっと先へと高め、引き上げていく。
「川田省吾」
《四宝の剣》が神の手から離れて光へ突き刺さる。
宝貝は不安定な護神像の現在をより強固なものに作り変えた。
宝貝は不安定な護神像の現在をより強固なものに作り変えた。
「完成だ、みんな」
ローザミスティカがスプンタ・マンユの中に入る。
スプンタ・マンユが光りに包まれて、形を変えていく。
スプンタ・マンユが光りに包まれて、形を変えていく。
「名付けよう。0からの創造ではないが――――お前の名は!
俺のドール! 護神像NO.XX、ワイルドセブン!!」
俺のドール! 護神像NO.XX、ワイルドセブン!!」
「させるか、ザケルガ!」
雷電が桐山へと放たれる。
直進だけの電撃でも、今の桐山には避けられるかどうか――
直進だけの電撃でも、今の桐山には避けられるかどうか――
「遅いねっ!」
雷撃は桐山の目の前で一刀両断された。
霧散した電撃を斬り裂いたのは七原の手に握られた刀。
七つのローザミスティカ、スプンタ・マンユ、仮面ライダーナイト、《四宝の剣》、旅人の杖で造られた。
初めての桐山のドール。光を象徴する機械機関戦士。
霧散した電撃を斬り裂いたのは七原の手に握られた刀。
七つのローザミスティカ、スプンタ・マンユ、仮面ライダーナイト、《四宝の剣》、旅人の杖で造られた。
初めての桐山のドール。光を象徴する機械機関戦士。
「よう、とーちゃん! 俺、何をすればいい!?」
「黙れ。ふざけたことを言うな。
だが、そうだな。おまえは俺が初めて創った光のシンボルだ。
それなら、俺は、おまえにこう言おう」
だが、そうだな。おまえは俺が初めて創った光のシンボルだ。
それなら、俺は、おまえにこう言おう」
右手を伸ばす。天野雪輝へと。
《神業級職人》の手が絶望の世界を切り裂いて。
《神業級職人》の手が絶望の世界を切り裂いて。
「”もっと、光を”。あいつへも」
【ロスタイム突入】
悔い改めよ、ハーレクイン | 投下順 | 深海からの天体観測 |
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