ヴェスナ・エスタ・ホリシア
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雑踏の騒がしさの中でひとりの少年が足を進める。
オールバックだった髪を最近下ろして、
何処に向かうという宛もなく少年はぶらぶらと放浪していた。
オールバックだった髪を最近下ろして、
何処に向かうという宛もなく少年はぶらぶらと放浪していた。
季節は冬に入ろうとする時期。
無遠慮にコートの隙間から入ってくる冷気に首を竦め。
日暮れとともにポツポツと彩られ始める街灯と広告灯があった。
無遠慮にコートの隙間から入ってくる冷気に首を竦め。
日暮れとともにポツポツと彩られ始める街灯と広告灯があった。
ビルの森を多種多様な人々と擦れ違い。
すいすいと難なく人混みを進んでいく。
途中で光るような白い肌と真鍮の肌の、
瞳はどちらも金色をした双子とすれ違って。
すいすいと難なく人混みを進んでいく。
途中で光るような白い肌と真鍮の肌の、
瞳はどちらも金色をした双子とすれ違って。
少年はしばし天を振り仰いだ。
耳を澄ませば喧騒をも斬り裂くギターの音が聴こえた。
駅前のライブハウスから音が鈍く漏れていたようだ。
この音が少年の額に針を刺すような痛みを与えて。
駅前のライブハウスから音が鈍く漏れていたようだ。
この音が少年の額に針を刺すような痛みを与えて。
指で痛みのもとを抑えた少年は、
自分がとめどない涙を流していたことに気づいた。
自分がとめどない涙を流していたことに気づいた。
それでもいい、と誰かはいった。
だって、おまえは前に忘れたとき、涙も置いていったしな。
通りがかった三人組の少年。
眼鏡をかけた黒髪の少年が
袖でいくら拭っても止まらない涙に戸惑う彼へと
ハンカチを差し出した。
眼鏡をかけた黒髪の少年が
袖でいくら拭っても止まらない涙に戸惑う彼へと
ハンカチを差し出した。
「なんで泣くんだ?」
明るい髪の色をした少年が尋ねた。
「思い出したから」
「なにを?」
虎のような奇妙な痣を顔に縁取った鬣をした彼が首を傾げた。
「俺たちの道のりを」
レントゲンも誤魔化す水の心臓が新たな鼓動を紡いでいく。
天気は雲ひとつ無い青空から燃えるような夕暮れへ。
ウィンドウに展示されたTVは紛争を報道し続け、今日も誰かが泥の中、星を見上げる。
天気は雲ひとつ無い青空から燃えるような夕暮れへ。
ウィンドウに展示されたTVは紛争を報道し続け、今日も誰かが泥の中、星を見上げる。
物語の扉は閉められて。
覗き見ていた少年達は安堵し、笑いあって無意識の海を歩きはじめた。
覗き見ていた少年達は安堵し、笑いあって無意識の海を歩きはじめた。
さあ、次はどこへ行こうか。
てくてく、てくてく、
彼らは今も昔も新たな道を歩きはじめていく。
てくてく、てくてく、
彼らは今も昔も新たな道を歩きはじめていく。