農業手伝う旅人に寝食提供 「ウーフ」を導入

農業手伝う旅人に寝食提供 「ウーフ」を導入 つしま大石農園 人手不足解消、交流人口増に期待
6/8(土) 11:21配信

長崎新聞
農業手伝う旅人に寝食提供 「ウーフ」を導入 つしま大石農園 人手不足解消、交流人口増に期待
茶葉を乾燥させるホーンさん=長崎県対馬市、つしま大石農園

 農作業を手伝ってもらう代わりに宿泊場所と食事を無料で提供する英国発祥のシステム「WWOOF(ウーフ)」。国内でも受け入れ先(ホスト)が徐々に増える中、長崎県対馬市上県町の茶生産販売業、つしま大石農園がこのほど、対馬で初めて導入した。5月には英国から訪れたダイアナ・ホーンさん(27)が農業を手伝う「ウーファー」として同農園に1週間滞在、島の生活を楽しんだ。

 ■英国女性も滞在

 ロンドン出身のホーンさんは専門学校を卒業後、19歳で「さまざまな仕事を体験したい」とオーストラリアに渡り、シドニー近郊の野菜農家でウーファーを体験。自家製パスタを提供するイタリアの農家民宿やスペインのハーブ農家などで経験を積み、昨年11月に来日した。香川県のオリーブ農家や山口県の小麦農家などでの滞在を経て、5月19日から1週間、大石農園で茶摘みや紅茶の製造を手伝った。

 大石農園にウーフを導入したのは代表の大石孝儀さん(69)の次男、裕二郎さん(37)。高齢化が進み人手が足りないこと、島の交流人口を増やしたいとの思いからだったという。昨年11月にホストとして日本のウーフ事務局(北海道)に登録し、サイト上でウーファー希望者とやりとりをしてきた。これまで20~30代の大学生や会社員ら5人を受け入れたが、外国人はホーンさんが初めてだった。

 5月24日、ホーンさんは発酵させた茶葉の乾燥を担当。裕二郎さんから英語や身ぶり手ぶりで手順を教わって作業し、終日、紅茶作りに取り組んだ。夜は大石さん家族と一緒に晩ご飯を囲み、裕二郎さんの母、悦子さん(67)手作りのヒラスの煮付けなどを味わった。

 悦子さんは近所からもらったヒラスについて「対馬にはお裾分けの文化があります」と翻訳アプリを使って紹介。自家製のサンショウみそに、ホーンさんは「いい匂い! 少しスパイシー」と笑顔を見せた。将来、「地球のどこか気に入った所」に農場を開くことが夢というホーンさんは、対馬での思い出を胸に次の大分県に向けて旅立った。

 ■長崎県内には5カ所

 日本にウーフの事務局が設置されたのは1994年。事務局によると、5月末現在、ホスト数は国内に計441カ所、長崎県内には大石農園を含め、大村市や長崎市、新上五島町に計5カ所ある。ウーファーの滞在は数日から長くて数カ月。生活費がかからず旅ができるとして好評という。

 対馬での導入について、孝儀さんは「新茶の季節は特に人手が足りないので手伝ってもらえて助かる」。裕二郎さんは「対馬は高齢化や人口減少が進んでいるが、シイタケ栽培などにウーフを導入していくと人手不足解消や移住希望者の発掘にもつながるのではないか」と期待を寄せる。

 ◎ズーム/WWOOF(ウーフ)

 「World Wide Opportunities on Organic Farms」(世界に広がる有機農場での機会)の略。環境や食の安全に配慮した農家と、地方での生活に関心を持つ旅人を引き合わせる仕組みで、1971年に英国で始まった。現在、世界60カ国以上に事務局がある。

最終更新:2019年06月14日 18:20
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