応力ひずみ線図

書きかけ項目です。最下段の項目への加筆を求めます。
また、基本となる重要な事項なので不明な点は筆者(Library)まで。
できるだけ詳しく書いたつもりです。

概要

応力ひずみ線図(英、Stress Strain Diagram)は、応力と歪の関係を表したグラフ。
金属だろうがなんだろうが逃げられない恐怖の一品。
心配しなくても授業でやるから大丈夫。
某顧問の先生は機械系でSS曲線書けない奴がいてなぁ・・とボヤいてたり。
系に限らず基本らしい。
金属をメインに取り扱う。

見方

応力ひずみ線図はぐぐって参照。
横軸に歪、縦軸に応力をとっているのは、高校物理でやったフックの法則と同じであり、理解しやすい。
実際、全てのSS線図は最初は弾性変形をし、後に塑性変形をする。
普通のバネに観るように、弾性領域内では応力を除くと歪は0に戻る。
しかし、弾性領域を超えると応力を無くしても歪が0とならない。
では、応力を掛けているときの歪量つまり、SS線図を見て除荷した時の歪量を予測することは可能か?
可能である。
なぜなら、応力を掛けて一定量変形させたとき、その中身は弾性変形+塑性変形であるから、
弾性変形分を取り除けばいい。
それはつまり、SS線図上のある点と交差する、傾きをヤング率で取った直線と、横軸との交点である。

用語

要所要所を押さえていくと、弾性変形が終わる荷重を降伏応力(YS)、その試料が示す最大の公称応力を引張応力(TS)と呼ぶ。
応力ひずみ線図には明確な降伏点を示すものと示さない物の二つがある。
降伏点とは、(ほぼ)弾性変形終了時に応力が減少する点のことと理解されよう。
降伏点を示すものに関しては降伏点直後の下げ止まった応力を降伏応力という。この下げ止まった点を下降伏点、先程から言っている降伏点を厳密には上降伏点と呼ぶ。
普通は上降伏点は降伏点でいいと思う。
一方、降伏点を示さないものは、厳密に降伏応力を示すことが出来ない。
そのために耐力を使って降伏点を定める。
耐力は、普通x%耐力といった使い方をし、
x%の永久歪みが残る応力をx%耐力と呼ぶ。
工学的には、0.2%耐力を普通、降伏応力としている。
ただし、場合によっては0.1%耐力をとっているところもある。

応力ひずみ線図の全体的な解釈

応力ひずみ線図は前述のように弾性変形領域と塑性変形領域に分けられる。
弾性変形領域では、原子はその配列を保ったまま変形する。
そのために、その傾きは本質的に原子間に働く力(の第一項)であるヤング率に等しく、フックの法則にしたがって変形する。
次に、降伏応力以上の応力がかかったとき、試料は塑性変形を始める。
塑性変形は転位が動くことによって発生する。
なぜなら、転位がない部分の剪断変形に必要な応力は極めて高く、転位が動くこと無しにせん断変形することは考えにくい。
もし、転位が極めて動きにくいのなら、セラミックス金属間化合物のように脆性破壊するだろう。
つまり、降伏応力は転位を稼動させるために必要な応力と言い換えることもできよう。(解釈優先。厳密さは要検証)

明確な降伏点を示すものと示さない物の違い

降伏点を明確に示すものと示さないものの違いを考える。
示さない物はラウンドハウス型、もしくは連続降伏型と呼ばれる。
示す物は謎。非連続降伏型?よくわからない。
ラウンドハウス型は緩やかに傾きが緩くなり、明確な降伏点を示さない。
これは試料内の転位が連続的に稼働していることを示す。
一方、非連続降伏型のものは明確な降伏点を示す。
先ほどと対比させると、上降伏点までほとんど転位は稼働せず、上降伏点を超えてから一斉に転位が稼動したと考えられる。
では、上降伏点を降伏応力と定義するべきか?
ところがそうではない。
やはり下降伏点の応力こそが降伏応力である。
後出しになったが、実のところ、下降伏点よりも高い応力で、上降伏点よりも左の領域はわずかながら塑性変形している。
塑性変形しているということは、極めて僅かではあるが転位は稼動しているということになる。
やはり、転位を稼動させるのに必要な応力は下降伏点の応力といえる。
では、なぜ上降伏点が存在できるのか。
その答えは簡単で、大部分の転位が固着されているから、である。
転位周辺には転位の存在によって応力場が存在し、これによって比較的簡単に動くことができる。
しかし、例えば侵入型元素の炭素が転位線の下側に位置したとすると、その部分の歪は緩和され、応力場も弱くなる。
転位のポテンシャルが下がるために、その転位が乗り越えるべきポテンシャルが増大する。
これを転位が固着されていると表現し、このような雰囲気をコットレル雰囲気と呼ぶ。
しかし、一定以上の応力がかかるともはや固着し続けることは出来ず、一斉に転位が動き始める。
これは試料全体の転位が動くまで続き、この間既に塑性変形したところは変形せず、未変形領域が連続的に変形していく。
既に変形した部分はリューダース帯と呼ばれ、未変形領域との境をリューダース前線と呼ぶ。
リューダース帯が全体に広がるまでが下降伏点の後の水平線である。

降伏後の挙動

もし転位が動くだけならば、非連続降伏型に見るように水平線になるはずである。
しかし、実際には降伏後の変形では降伏応力よりも高い応力を要する。
これは加工硬化によって起こっている。
加工が進むとき、同時に断面の収縮も起こっている。
もし、断面の収縮による応力(公称応力とは異なる)の増大よりも加工硬化の割合が小さいとき、
リューダース帯のように、ある点を起点としてさらに塑性加工が進展し、くびれると予想される。
そうなれば後は断面収縮(ネッキング)した部分はますます応力が増大し、破断に至る。
そうならないためには断面収縮率よりも高い加工硬化率を保つことが必要で、断面収縮率よりも加工硬化率が高いとき、
断面収縮に寄る応力の増大をペイできるだけの加工硬化が起こり、材料は一様に変形する。
公称応力としては、加工硬化率と断面収縮による応力の増加率が一致したときに最大値を示し、これが引張応力と呼ばれる。
破断に関しては詳しくないので省略する。

応力ひずみ線図と実用材料

靱性

応力は試料にかかる力を規格化(示強変数に)したものであり、ひずみは変位を規格化したものである。
詰まるところ、規格化しなかった応力ひずみ線図(F=kx)が掃く面積はエネルギーであり、
応力ひずみ線図が掃く面積が大きい材料は高い靱性を示す。
そのため、靱性はその試験片がシャルピー衝撃試験によって計測されたエネルギー(吸収エネルギー)を用いて示される。
シャルピー衝撃試験はまぁ、ぐぐる。
このことからわかるとおり、靱性は、良く伸び、良く加工硬化し、高い引張応力を持つほどよくなる。
普通、同じTSを持つ鋼材でも降伏比(YS/TS、以下YR)が低いほうが良い靱性を示す。
なぜなら、
YR=1のとき、加工硬化をまったく示さずに直ちに破断することが予測される。
YRが低い時、その材料は加工硬化を行い、TSに達するまで塑性変形を行う。
加工硬化率が高い状態が維持されるので、ネッキングを起こすまでの変形量は高くなる。
よって、同一の降伏応力を示す材料では、一般にYRの低いほうが良い靱性を示す。
しかし、不適切な熱処理が行われた材料では塑性変形を示さずに破断する脆性破壊を示すため、、靱性は低下する。
原因としては例えば、組織の偏析、不均質な組織、粗大な第二相や組織の存在が挙げられる。(入門金属材料の組織と性質p112)
靱性を向上させるには、上記の逆で、偏析の少ない、均一で微細な組織、第二相の存在が挙げられる。
これらを得るためには、熱処理はもちろんのこと、望む組織を得るための熱間加工との適切な組み合わせが必要である。
この技術はTMCPとして知られている。

現在、TMCP鋼はほぼ日本が独占している状態であるが、最近では韓国でも実用化され、出荷されている。
ただ、日本の高炉メーカー4社が1980年頃からTMCPを稼動させていたのに比べて極めて後発であり、さすがにまだ負けてはいないと思う。


関連項目


参考文献

  • 100万人の金属学
  • 金属学への招待
  • 金属学ミニマムマキシマム
  • 鉄鋼材料の科学
  • 金属物性学の基礎
  • 入門金属材料の組織と性質
  • 超鉄鋼
  • JFE技報
  • 新日鉄技報
  • 鉄と鉄鋼がよくわかるシリーズ(新日鉄)
最終更新:2011年02月23日 05:38
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