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一方通行のアルトアイゼン奪取事件から一週間が経過した。 連邦軍、DCはそれぞれアルトアイゼンの捕獲、または破壊を画策したが、一方通行は単機でそれを阻止していた。 またDCは、本拠地アイドネウス島に襲撃をかけると予想し、「ラストバタリオン」を一度集結させる。 「しかし・・・本当に来るのだろうか・・・」 基地内部のハンガーでエルザム・V・ブランシュタインは一人呟く。 (たとえあのPTといえど、ただの一機で突入してくるのだろうか・・・?) 「やぁ、誰かと思えばエルザム少佐じゃあないか」 思考を巡らせているうちに、エルザムは誰かに声をかけられた。 「これは、コウヅキ博士ではありませんか」 エルザムが振り向くと、そこにはアマガツ・コウヅキが立っていた。 「例のPTの件で、集結させられたのかい?」 「ええ。しかし、本当にここへ来るのでしょうか・・・」 ヴィーーー!!ヴィーーー!! その時、緊急アラートがハンガー内に響いた。 「!?」 『緊急事態発生!繰り返す緊急事態発生!南西30km地点において高エネルギー反応有り!』 「今なら君が一番早くたどり着ける。無茶はしないでくれたまえ!」 エルザムの肩を叩きそう言うと、アマガツは離れてカタパルトのハッチを開いた。 「了解した!エルザム・V・ブランシュタイン、リオンFで出る!!」 ゴウッ!という轟音と共にエルザムの乗るリオンFは飛翔する。 (・・・一方通行は今は依頼で別の場所にいるはずだが・・・?一体何が起こっているというのだ・・・) 飛び行くリオンを見送りながら、アマガツは考えていた。 (・・・まさか、な) ―――観測地点 「なんだ・・・これは・・・」 エルザムの目には、信じられない光景が映っていた。雲は渦巻き、その中心には黒いオーロラが発生していたのだ。 「これは・・・ビアン総帥が言っていた、異星人によるものなのか・・・?」 ゴオォ・・・ピシッビキィッ! その時、渦の中央が開き、空に皹が入った。そして一瞬、門のような物が見えたのをエルザムは確認していた。そして、 ガシャァァァァン!! 空が砕け散った。そして、できた穴から白銀の閃光が大地に突き刺さった。その衝撃で機体が煽られる。 「ッ・・・。何が、起きたというのだ?」 落下地点を確認すると、漆黒の機動兵器がそこにはあった。AMでもPTでもない、まったく異質な兵器がそこにはあった。 「・・・こちらエルザム機。観測地点において正体不明機を発見、これより捕獲を試みる。」 そして、運命の歯車が、ゆっくりと、回り始めた。 誰かが泣いていた。真っ暗闇で誰かが泣いていた。俺はそれに気づいて辺りを見回した。誰もいなかった。それでも声は聞こえる。 『・・けて・・・だれか・・・たすけて・・・』 誰だ。いったいこの声の主はどこにいる。どうして助けが必要なんだ。答えてくれ。俺は暗闇を歩く。音は響かない。 『・・・おねがいだから・・もうやめて・・・』 声は近づく。不思議と恐怖を感じない。何故だろうか。知っている気がする。何故。理由が判らない。 『あなたは・・・どうして・・・』 光が見えた。俺は走った。この光の先には何かある。声の主もきっといる。そう感じた。そう信じた。 そして、扉にたどり着いた。そして、なんの躊躇いの無く開いた。絶対に『奇跡』があることを、『希望』があることを。 ―――その先にあったのは、耐え難い絶望とも知らずに。 「ん・・・」 目が覚めた。俺は違和感を感じる右手を前に伸ばしていた。そして一言。 「・・・夢?」 それにしては現実味を帯びた夢だ。結局、声の主は判らなかった。何だったのだろうかあれは。そして、 「ここどこ?」 起き上がってみると窓からは荒野と施設が見える。何かの基地か何かだろうか。・・・基地? 「何で基地って分かったんだ?」 その時、部屋の扉が開いた。突然の出来事に俺は身構えた。 「おや、目が覚めたようだな。・・・それと、身構えないでくれないか」 「あ、ああ・・・すいません、つい」 (この人が俺を助けてくれたんだろうか?) 確証などない。ただ、そんな気がした。この人からは悪意を感じられない。 「私はエルザム・V・ブランシュタイン。君は一体どこの所属なんだ?DCにはあのような機体は存在しない。連邦のものでもないようだが」 「DC・・・?それは・・何かの組織?というか、ここは?」 「我々はディバインクルセイダーズ。腐敗した連邦を打破するために決起した組織だ。・・・君は一体何者なんだ?」 「俺は・・・?・・・俺は・・・」 俺は自分の手を見つめ、 「俺は・・・誰なんでしょうか?」 「何・・?」 俺には、目覚める前までの記憶が無かった。 「記憶喪失、と?」 エルザムって人は俺に聞いてきた。 「えぇ・・・目が覚める前までの記憶が、ブッツリと」 「困ったな・・・あの機体について何か知らないかと思ったのだが」 「・・・ダルクの事ですか?」 その言葉を聞いて、俺は反動的に答えてしまった。 「あれ・・?なんで、俺・・・?」 「どうやら、覚えている事もあるようだな。動けるようならついてきたまえ」 俺は促されるがまま、起き上がってついていく事にした。 ―――シミュレータルーム 「君の荷物を少し調べさせてもらった。君の名前は『眞田悠斗』のようだな」 「『眞田悠斗』・・・それが、俺の名前・・・」 悠斗は自分の名にある種の懐かしさを感じていた。 「それで、何故ここに?」 悠斗が連れられて来た所は、AMのシミュレータルームだった。 「君にはパイロットとしての技量があるのかもしれない。だからここへ連れてきた」 「・・・確かに。アレに乗ってたからパイロットではあると思うんですけど」 悠斗はここへ来る前に自分が墜落した事等の今までの経緯を聞いていた。これまでにどんな事件が起きたかも含めて。 「俺にも戦え・・と?」 「あまり戦わせたくは無いが、状況が状況だからな・・・」 「・・・分かってますよ。戦いを対話で止められないなら、戦うしかありませんから」 (まるで様々な戦いを見てきたような言い方だな・・・) エルザムは悠斗を見ながら。そんな事を考えていると、 「エルザム少佐・・・博士が呼んでいます」 そこへ、儚げな印象を持つ少女がエルザムを呼びに来た。 「博士が?」 「はい」 「わかった。君はそこで待っててくれないか?」 「え、あ、はい・・・」 エルザムは少女に連れられていってしまった。残された悠斗は、 「とりあえず、手当たり次第にやるか・・・」 ―――アマガツの執務室 「・・・それで、用とは?」 「いやぁ、彼、目覚めたみたいだねぇ。今は?」 「現在、シミュレータで彼の腕を見ているところです」 「そうか、そうか・・・いやはや、彼については彼女から情報を聞いてはいたが、すこぶる元気のようだねぇ。」 椅子に深く腰掛けた白衣の男性、アマガツ・コウヅキはエルザムを横目で見つつ資料を拝見していた。その隣には先ほどの少女がいた。 「では本題に移ろう。彼を『501部隊』に配属させたいのだよ。出来れば『ブラックエンゼル』も持っていきたかったがね・・・」 それを聞いてエルザムは驚愕した。何故彼をこのタイミングで起用するのか、その真意が掴めなかった。 「今、彼の戦闘データをリアルタイムで記録しているが、これは素晴らしいな。」 モニターを見ながら、アマガツは歓喜した。そしてエルザムに向き直り、 「それほどの価値が、彼にはあるのだよ、エルザム少佐。このままにしておくのも勿体無いくらいさ」 「しかし・・・既に12人目の候補がいたのでは?」 エルザムは、興奮気味のアマガツにそう訊ねた。 「あぁ・・・彼はね、もういいんだよ。はっきり言って技量に差がある。今はこっちの彼が重要だ・・・ん?」 突然、アマガツは言葉を止めた。困惑したエルザムはすぐに訊ねた。 「どうしたのですか、博士?」 「いや・・・彼、いないんだよ・・・」 「なんですって!?」 「ちょっと待ちたまえ・・・もしもし、彼は・・・厨房?」 「・・・は?」 「・・・どうやら彼は、自分で自分の食事を作っているようだ・・・」 あまりにも突飛な事態に二人は困惑した。 ―――食堂 「で、君は何をしているのかね?」 「もぐもぐ・・・むぐ?」 二人が厨房に行くと、悠斗は調理を終えて一人料理を食べていた。 「んぐ・・げふ。用事は済んだんですか?」 「それは、この人から聞いてくれ」 「私はアマガツ・コウヅキ。見ての通り、単なる博士だよ」 悠斗からは、怪しい人物にしか見えなかった。 「で、その博士は一体何の用です?」 「そうだね・・・君、我が501部隊に来てくれ」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・は?」 「君の力が、必要なのだよ」 「ですが・・・」 突然の要求に、悠斗は戸惑う。 「俺、あ、いや、自分は・・・自分には・・・」 「いや、そのままの口調で構わない。・・・無理強いはしない・・・ただ、君にも、君にしか出来ることはあるはずだ」 アマガツは悠斗の目を真っ直ぐ見てさらに続けた。 「私たちは戦争をしている。たくさんの命が失われている。だが私達はその命を軽んじたりはしない。」 「・・・」 悠斗はただ聞いていることしか出来なかった。記憶の無い自分には聞いている事しか出来ないと自覚していたからだ。 「君の力なら、この戦争を早く終わらせることが出来るのかもしれない」 「・・・俺の、力が・・・?」 そして、アマガツはこう切り出した。 「これは私の個人的な、切なる願いさ。君の力で、この世界を救って欲しい」 悠斗はしばらく考え、そして、 「やってみますよ・・・俺にまだ、何がやれるか、分からないですが」 「そうか、やってくれるかね!なら話は早い、後で部屋に来てくれたまえ!」 そう言うとアマガツは嬉しそうに食堂を後にした。 「・・・あの、エルザムさん」 出口を見つめながら、悠斗はエルザムに質問した。 「・・・何かな?」 同じような状態で、エルザムは答えた。 「・・・あの人、相当な変人ですね」 「・・・察してくれ」 ―――アマガツの執務室 悠斗はエルザムに連れられ、執務室前まで来ていた。厳重なロックを潜り、冷たい扉の前まで来た。 その途中、エルザムは緊急の用で戻らないと行けなくなり、途中からは不思議な少女に連れられて来た。そして悠斗は扉をノックした。 『入りたまえ』 その言葉を聞いて、悠斗は一呼吸おいてから、 「失礼します」 そう言って悠斗は部屋に入った。 「よく来たね、歓迎するよ」 (うっわぁ・・・) 悠斗に衝撃が走った。何故なら、資料は散乱しファイルもバラバラになっていた。はっきり言って、汚い。 (片付けたい・・・すごく片付けたい・・・) 悠斗は言いようの無い気分に駆られた。そしてふと気づくと、すぐ側には二人の少女がいた。 「紹介しよう、こちらから、ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケ中佐。そして、坂本美緒少佐だ」 そう紹介された少女達は再び悠斗を見つめなおした。 「初めまして、眞田大尉」 「こちらこそ、初めまして・・・大尉?」 突然の階級呼びに、悠斗は違和感を感じた。何故大尉なんだ? 「あぁ、君はエルザム少佐の部隊の所属だったってことにしてあるから、そのつもりで」 「・・・はぁ!?いいんですかそれ、捏造じゃないですか!」 驚愕する悠斗に対し、 「いやはや、これくらいはしないとね・・・」 「いいんですか・・・」 「まぁ、博士のすることだ、諦めてくれ」 口を閉ざしていた坂本少佐はそう呟いた。 「坂本少佐ァ・・・」 慌てふためく悠斗は年下であるにも関わらず、坂本少佐達に救いの目を向けた。そして、 「それでは手続きは既に完了している。至急アドリア海まで飛んでくれないか」 「・・・へ?アドリア海?」 まったく話についていけない悠斗は目を白黒させていた。 その為に二人に来てもらったんだからねぇ、と二人に目をやる。 「という訳で、頑張ってきてくれ」 「え?・・・え?ええええええええええええええええええええ!?」 そして、連れられていく悠斗。 「そんなぁぁぁぁぁ!!」 部屋から連れ出される悠斗。それを見送り、 (『ブラックエンゼル』も搬入したかったが、アードラーのじじいが厄介だったからな・・・) そう考えながらキーボードを打ち込みつつ通信を入れた。 「カスミ、一方通行に連絡を。そろそろ次の依頼を頼みたいな」 『はい』 ウィンドウに映った少女・・・カスミは短く答えた。 「よろしい。あとでそちらに行くから、待っててくれ」 『・・・分かりました』 少し嬉しそうな口調で答え、通信を閉じた。 「さて・・・どうなることやら・・・」 代えの白衣に着替えつつ、アマガツは呟いた。 「これで、世界は変わるな・・・革新にはカンフル剤は必要だ。来るべきときが来るそのときまで・・・私は・・・」 [次回予告] 501部隊に配属された悠斗。しかし、ハプニングは続出、問題は発生、散々な目に遭ってしまう。 そして配備される悠斗の翼。新たな異邦人達、続発する失踪事件。そしてその時世界は・・・ 次回、【】運命の歯車は回り始めた
一方通行のアルトアイゼン奪取事件から一週間が経過した。 連邦軍、DCはそれぞれアルトアイゼンの捕獲、または破壊を画策したが、一方通行は単機でそれを阻止していた。 またDCは、本拠地アイドネウス島に襲撃をかけると予想し、「ラストバタリオン」を一度集結させる。 「しかし・・・本当に来るのだろうか・・・」 基地内部のハンガーでエルザム・V・ブランシュタインは一人呟く。 (たとえあのPTといえど、ただの一機で突入してくるのだろうか・・・?) 「やぁ、誰かと思えばエルザム少佐じゃあないか」 思考を巡らせているうちに、エルザムは誰かに声をかけられた。 「これは、コウヅキ博士ではありませんか」 エルザムが振り向くと、そこにはアマガツ・コウヅキが立っていた。 「例のPTの件で、集結させられたのかい?」 「ええ。しかし、本当にここへ来るのでしょうか・・・」 ヴィーーー!!ヴィーーー!! その時、緊急アラートがハンガー内に響いた。 「!?」 『緊急事態発生!繰り返す緊急事態発生!南西30km地点において高エネルギー反応有り!』 「今なら君が一番早くたどり着ける。無茶はしないでくれたまえ!」 エルザムの肩を叩きそう言うと、アマガツは離れてカタパルトのハッチを開いた。 「了解した!エルザム・V・ブランシュタイン、リオンFで出る!!」 ゴウッ!という轟音と共にエルザムの乗るリオンFは飛翔する。 (・・・一方通行は今は依頼で別の場所にいるはずだが・・・?一体何が起こっているというのだ・・・) 飛び行くリオンを見送りながら、アマガツは考えていた。 (・・・まさか、な) ―――観測地点 「なんだ・・・これは・・・」 エルザムの目には、信じられない光景が映っていた。雲は渦巻き、その中心には黒いオーロラが発生していたのだ。 「これは・・・ビアン総帥が言っていた、異星人によるものなのか・・・?」 ゴオォ・・・ピシッビキィッ! その時、渦の中央が開き、空に皹が入った。そして一瞬、門のような物が見えたのをエルザムは確認していた。そして、 ガシャァァァァン!! 空が砕け散った。そして、できた穴から白銀の閃光が大地に突き刺さった。その衝撃で機体が煽られる。 「ッ・・・。何が、起きたというのだ?」 落下地点を確認すると、漆黒の機動兵器がそこにはあった。AMでもPTでもない、まったく異質な兵器がそこにはあった。 「・・・こちらエルザム機。観測地点において正体不明機を発見、これより捕獲を試みる。」 そして、運命の歯車が、ゆっくりと、回り始めた。 誰かが泣いていた。真っ暗闇で誰かが泣いていた。俺はそれに気づいて辺りを見回した。誰もいなかった。それでも声は聞こえる。 『・・けて・・・だれか・・・たすけて・・・』 誰だ。いったいこの声の主はどこにいる。どうして助けが必要なんだ。答えてくれ。俺は暗闇を歩く。音は響かない。 『・・・おねがいだから・・もうやめて・・・』 声は近づく。不思議と恐怖を感じない。何故だろうか。知っている気がする。何故。理由が判らない。 『あなたは・・・どうして・・・』 光が見えた。俺は走った。この光の先には何かある。声の主もきっといる。そう感じた。そう信じた。 そして、扉にたどり着いた。そして、なんの躊躇いの無く開いた。絶対に『奇跡』があることを、『希望』があることを。 ―――その先にあったのは、耐え難い絶望とも知らずに。 「ん・・・」 目が覚めた。俺は違和感を感じる右手を前に伸ばしていた。そして一言。 「・・・夢?」 それにしては現実味を帯びた夢だ。結局、声の主は判らなかった。何だったのだろうかあれは。そして、 「・・・ここどこ?」 起き上がってみると窓からは荒野と施設が見える。何かの基地か何かだろうか。・・・基地? 「何で基地って分かったんだ?」 その時、部屋の扉が開いた。突然の出来事に俺は身構えた。 「おや、目が覚めたようだな。・・・それと、身構えないでくれないか」 「あ、ああ・・・すいません、つい」 (この人が俺を助けてくれたんだろうか?) 確証などない。ただ、そんな気がした。この人からは悪意を感じられない。 「私はエルザム・V・ブランシュタイン。君は一体どこの所属なんだ?DCにはあのような機体は存在しない。連邦のものでもないようだが」 「DC・・・?それは・・何かの組織?というか、ここは?」 「我々はディバインクルセイダーズ。腐敗した連邦を打破するために決起した組織だ。・・・君は一体何者なんだ?」 「俺は・・・?・・・俺は・・・」 俺は自分の手を見つめ、 「俺は・・・誰なんでしょうか?」 「何・・?」 俺には、目覚める前までの記憶が無かった。 「記憶喪失、と?」 エルザムって人は俺に聞いてきた。 「えぇ・・・目が覚める前までの記憶が、ブッツリと」 「困ったな・・・あの機体について何か知らないかと思ったのだが」 「・・・ダルクの事ですか?」 その言葉を聞いて、俺は反動的に答えてしまった。 「あれ・・?なんで、俺・・・?」 「どうやら、覚えている事もあるようだな。動けるようならついてきたまえ」 俺は促されるがまま、起き上がってついていく事にした。 ―――シミュレータルーム 「君の荷物を少し調べさせてもらった。君の名前は『眞田悠斗』のようだな」 「『眞田悠斗』・・・それが、俺の名前・・・」 悠斗は自分の名にある種の懐かしさを感じていた。 「それで、何故ここに?」 悠斗が連れられて来た所は、AMのシミュレータルームだった。 「君にはパイロットとしての技量があるのかもしれない。だからここへ連れてきた」 「・・・確かに。アレに乗ってたからパイロットではあると思うんですけど」 悠斗はここへ来る前に自分が墜落した事等の今までの経緯を聞いていた。これまでにどんな事件が起きたかも含めて。 「俺にも戦え・・と?」 「あまり戦わせたくは無いが、状況が状況だからな・・・」 「・・・分かってますよ。戦いを対話で止められないなら、戦うしかありませんから」 (まるで様々な戦いを見てきたような言い方だな・・・) エルザムは悠斗を見ながら。そんな事を考えていると、 「エルザム少佐・・・博士が呼んでいます」 そこへ、儚げな印象を持つ少女がエルザムを呼びに来た。 「博士が?」 「はい」 「わかった。君はそこで待っててくれないか?」 「え、あ、はい・・・」 エルザムは少女に連れられていってしまった。残された悠斗は、 「とりあえず、手当たり次第にやるか・・・」 ―――アマガツの執務室 「・・・それで、用とは?」 「いやぁ、彼、目覚めたみたいだねぇ。今は?」 「現在、シミュレータで彼の腕を見ているところです」 「そうか、そうか・・・いやはや、彼については彼女から情報を聞いてはいたが、すこぶる元気のようだねぇ。」 椅子に深く腰掛けた白衣の男性、アマガツ・コウヅキはエルザムを横目で見つつ資料を拝見していた。その隣には先ほどの少女がいた。 「では本題に移ろう。彼を『501部隊』に配属させたいのだよ。出来れば『ブラックエンゼル』も持っていきたかったがね・・・」 それを聞いてエルザムは驚愕した。何故彼をこのタイミングで起用するのか、その真意が掴めなかった。 「今、彼の戦闘データをリアルタイムで記録しているが、これは素晴らしいな。」 モニターを見ながら、アマガツは歓喜した。そしてエルザムに向き直り、 「それほどの価値が、彼にはあるのだよ、エルザム少佐。このままにしておくのも勿体無いくらいさ」 「しかし・・・既に12人目の候補がいたのでは?」 エルザムは、興奮気味のアマガツにそう訊ねた。 「あぁ・・・彼はね、もういいんだよ。はっきり言って技量に差がある。今はこっちの彼が重要だ・・・ん?」 突然、アマガツは言葉を止めた。困惑したエルザムはすぐに訊ねた。 「どうしたのですか、博士?」 「いや・・・彼、いないんだよ・・・」 「なんですって!?」 「ちょっと待ちたまえ・・・もしもし、彼は・・・厨房?」 「・・・は?」 「・・・どうやら彼は、自分で自分の食事を作っているようだ・・・」 あまりにも突飛な事態に二人は困惑した。 ―――食堂 「で、君は何をしているのかね?」 「もぐもぐ・・・むぐ?」 二人が厨房に行くと、悠斗は調理を終えて一人料理を食べていた。 「んぐ・・げふ。用事は済んだんですか?」 「それは、この人から聞いてくれ」 「私はアマガツ・コウヅキ。見ての通り、単なる博士だよ」 悠斗からは、怪しい人物にしか見えなかった。 「で、その博士は一体何の用です?」 「そうだね・・・君、我が501部隊に来てくれ」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・は?」 「君の力が、必要なのだよ」 「ですが・・・」 突然の要求に、悠斗は戸惑う。 「俺、あ、いや、自分は・・・自分には・・・」 「いや、そのままの口調で構わない。・・・無理強いはしない・・・ただ、君にも、君にしか出来ることはあるはずだ」 アマガツは悠斗の目を真っ直ぐ見てさらに続けた。 「私たちは戦争をしている。たくさんの命が失われている。だが私達はその命を軽んじたりはしない。」 「・・・」 悠斗はただ聞いていることしか出来なかった。記憶の無い自分には聞いている事しか出来ないと自覚していたからだ。 「君の力なら、この戦争を早く終わらせることが出来るのかもしれない」 「・・・俺の、力が・・・?」 そして、アマガツはこう切り出した。 「これは私の個人的な、切なる願いさ。君の力で、この世界を救って欲しい」 悠斗はしばらく考え、そして、 「やってみますよ・・・俺にまだ、何がやれるか、分からないですが」 「そうか、やってくれるかね!なら話は早い、後で部屋に来てくれたまえ!」 そう言うとアマガツは嬉しそうに食堂を後にした。 「・・・あの、エルザムさん」 出口を見つめながら、悠斗はエルザムに質問した。 「・・・何かな?」 同じような状態で、エルザムは答えた。 「・・・あの人、相当な変人ですね」 「・・・察してくれ」 ―――アマガツの執務室 悠斗はエルザムに連れられ、執務室前まで来ていた。厳重なロックを潜り、冷たい扉の前まで来た。 その途中、エルザムは緊急の用で戻らないと行けなくなり、途中からは不思議な少女に連れられて来た。そして悠斗は扉をノックした。 『入りたまえ』 その言葉を聞いて、悠斗は一呼吸おいてから、 「失礼します」 そう言って悠斗は部屋に入った。 「よく来たね、歓迎するよ」 (うっわぁ・・・) 悠斗に衝撃が走った。何故なら、資料は散乱しファイルもバラバラになっていた。はっきり言って、汚い。 (片付けたい・・・すごく片付けたい・・・) 悠斗は言いようの無い気分に駆られた。そしてふと気づくと、すぐ側には二人の少女がいた。 「紹介しよう、こちらから、ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケ中佐。そして、坂本美緒少佐だ」 そう紹介された少女達は再び悠斗を見つめなおした。 「初めまして、眞田大尉」 「こちらこそ、初めまして・・・大尉?」 突然の階級呼びに、悠斗は違和感を感じた。何故大尉なんだ? 「あぁ、君はエルザム少佐の部隊の所属だったってことにしてあるから、そのつもりで」 「・・・はぁ!?いいんですかそれ、捏造じゃないですか!」 驚愕する悠斗に対し、 「いやはや、これくらいはしないとね・・・」 「いいんですか・・・」 「まぁ、博士のすることだ、諦めてくれ」 口を閉ざしていた坂本少佐はそう呟いた。 「坂本少佐ァ・・・」 慌てふためく悠斗は年下であるにも関わらず、坂本少佐達に救いの目を向けた。そして、 「それでは手続きは既に完了している。至急アドリア海まで飛んでくれないか」 「・・・へ?アドリア海?」 まったく話についていけない悠斗は目を白黒させていた。 その為に二人に来てもらったんだからねぇ、と二人に目をやる。 「という訳で、頑張ってきてくれ」 「え?・・・え?ええええええええええええええええええええ!?」 そして、連れられていく悠斗。 「そんなぁぁぁぁぁ!!」 部屋から連れ出される悠斗。それを見送り、 (『ブラックエンゼル』も搬入したかったが、アードラーのじじいが厄介だったからな・・・) そう考えながらキーボードを打ち込みつつ通信を入れた。 「カスミ、一方通行に連絡を。そろそろ次の依頼を頼みたいな」 『はい』 ウィンドウに映った少女・・・カスミは短く答えた。 「よろしい。あとでそちらに行くから、待っててくれ」 『・・・分かりました』 少し嬉しそうな口調で答え、通信を閉じた。 「さて・・・どうなることやら・・・」 (『X-11』や『ゴースト』、『XG-70』も気がかりだが・・・) 代えの白衣に着替えつつ、アマガツは呟いた。 「これで、世界は変わるな・・・革新にはカンフル剤は必要だ。来るべきときが来るそのときまで・・・私は・・・」 [次回予告] 501部隊に配属された悠斗。しかし、ハプニングは続出、問題は発生、散々な目に遭ってしまう。 そして配備される悠斗の翼。新たな異邦人達、続発する失踪事件。そしてその時世界は・・・ 次回、【】運命の歯車は回り始めた

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