「教会旋法の考察」(2019/11/06 (水) 04:32:26) の最新版変更点
追加された行は緑色になります。
削除された行は赤色になります。
*教会旋法の考察
東方Projectに関する楽曲では、時々&bold(){教会旋法}という、現代とは少し風変りな旋法が用いられることがあります。
----
***&bold(){教会旋法}って何ぞや
教会旋法とは、西洋音楽史において中世に成立した、「グレゴリオ聖歌」を中心に使われた旋法のことです。
バロック音楽が形成されていくに従って現在の長音階・短音階が定まるようになり、それに伴い教会旋法は廃れていきましたが、近代では教会旋法の新たな可能性を追求して創作を試みる作曲家も現れてきました。
教会旋法には様々な種類が存在します。ピアノの黒鍵をなくした状態で、白鍵の任意の音から1オクターブ上までの音程間隔を使います。調号は一切ありません。(例:レミファソラシドレ、ミファソラシドレミ、ソラシドレミファソ)
特に、東方の楽曲も含めて教会旋法の中で比較的ポピュラーなのは、ドリア旋法です。
鍵盤上で、Dの音から1オクターブ上のDまでの白鍵だけを順に弾くとドリア旋法になります。つまりは、
・ドリア旋法:D-E-F-G-A-B-C-D
という旋法になります。
そしてこのドリア旋法は、ニ短調(Dm)の自然短音階と構成音がよく似ています。
・ドリア旋法 : D-E-F-G-A-&bold(){B }-C-D
・ニ短調自然短音階 : D-E-F-G-A-&bold(){Bb}-C-D
ニ短調自然短音階の第六音は、フラットにされたBbですが、このBbを半音あげてナチュラルにしてやることにより、ドリア旋法が完成します。つまり、自然短音階から見て第六音が半音上げられることが、ドリア旋法であることを特徴づけているのです。
この、自然短音階から見て第六音が半音上げられた音を、特別に&bold(){ドリアの六度}と呼称されたりします。
イ短調(Am)の場合、ドリアの六度にあたる音は&bold(){F#}の音です。
----
東方の楽曲では、この「ドリアの六度」が一時的に使用(借用)されている箇所が随所に見受けられます。
&italic(){※完全にドリア旋法のみで作曲された楽曲は存在しておらず、ドリア旋法の雰囲気を一時的に醸す為にドリアの六度を用いるだけなので、ドリア旋法の第六音を一時的に借用しているに過ぎない。}
&u(){尚、ドリアの六度にあたる音そのものは、主旋律・伴奏共にどちらにも使用(借用)されます。}
&bold(){ただし、東方の楽曲を分析するにあたって、教会旋法・ドリア旋法に関することには以下のような点で問題が生じてきます。}
・&italic(){1. 作曲者(ZUN氏)が教会旋法を意識して作られたフレーズか。}
・&italic(){2. コード進行との響きの兼ね合いで生じた偶成的な音か。}
・&italic(){3. 教会旋法ではなく一時的な転調によって偶成的に出現したものか。}
主にこれらの判断基準が非常に曖昧で、そもそもZUN氏が教会旋法を理解した上で作曲をしているのか、感覚的に生まれた音なのかどうかという点についても、本人が公に発言していない限りでは我々は推測するしか出来ず、またその解釈も人それぞれなので、一般論化が難しいとされます。
またドリア旋法も含めて、実際の教会旋法を用いた楽曲の響きとは、私達が現代で普段聴いている長旋法や短旋法とは違った雰囲気を持っている為、楽譜上ではドリアの六度であっても、教会旋法的な雰囲気を持っているか否かで判断が分かれます。
さらに、[[神主進行辞典>http://www43.atwiki.jp/tohomusicdb/pages/160.html]]に記載されている、&bold(){『漸近線』}進行の「Am-G-D (in Am)」には、3つ目のDのコードの構成音中にドリアの六度が用いられています。しかし、ポピュラー音楽でもこのようなコード進行は健在ですが、果たしてこの進行が教会旋法独特の雰囲気を醸し出しているかと問われれば、決してそうとは言えず、コード進行から偶成的にドリアの六度が出来てしまったという場合がほとんどです。
----
以下は、教会旋法の雰囲気を醸し出しているか否かに関わらず、&u(){&italic(){とりあえず}}ドリアの六度にあたる音(第六音♯)が用いられている楽曲例を、個人的解釈も添えながら分類し、リストアップしたものです。
・ &bold(){1. 教会旋法らしい雰囲気を醸し出しているもの}
[[妖怪の山 ~ Mysterious Mountain]] (Aメロの6小節目)
[[神さびた古戦場 ~ Suwa Foughten Field]] (A部の7小節目)
[[メイガスナイト]] (A部の3小節目)
[[ゴーストリード]] (イントロの4小節目)
・&bold(){2. コード進行(Am-G-D)から偶成的にドリアの六度が出現したと思われるもの}
[[おてんば恋娘]] (サビの6小節目)
[[幽霊楽団 ~ Phantom Ensemble]] (イントロの2~3小節目)
・&bold(){3. 一時的な部分転調(調の揺らぎ)によって偶成的にドリアの六度が出現したもの(ほぼ確信)}
[[千年幻想郷 ~ History of the Moon]] (Aメロの3~4小節目、G#m→D#mへ転調)
[[風神少女]] (Aメロの3小節目、Fm→Dmへ転調)
[[廃獄ララバイ]] (テーマの8小節目、F#m→C#mへ転調)
[[死体旅行 ~ Be of good cheer!]] (Bメロの5~8小節目及び13~16小節目、Em→Bmへ転調)
[[華胥の夢]] (イントロの2小節目 Cmを中心とする内、Gmへ転調)
・&bold(){4. 和声法においてドリアのⅣの和音を用い、旋律的短音階上(vi#→vii#の流れ)に出現するもの}
[[風神少女]] (サビの11小節目、Bbのコードの上に乗り、vi#の次にvii#へ上行する。コードもその次にCへ進行する。)
[[スプートニク幻夜]] (イントロの4小節目、E→F#の進行において、vi#の音が出現。その後にvii#も現れる。)
・ &bold(){検討中}
[[U.N.オーエンは彼女なのか?]] (サビの2小節目)
[[霊知の太陽信仰 ~ Nuclear Fusion]] (サビの3~4小節目)
----
更に知識をお持ちの方々は、是非とも編集・改訂にご協力をお願いします。
執筆(2/21):白鷺ゆっきー@黒雪ごはん >>[[Twitter>https://twitter.com/yuki_02010]]
*教会旋法の考察
東方Projectに関する楽曲では、時々&bold(){教会旋法}という、現代とは少し風変りな旋法が用いられることがあります。
----
***&bold(){教会旋法}って何ぞや
教会旋法とは、西洋音楽史において中世に成立した、「グレゴリオ聖歌」を中心に使われた旋法のことです。
バロック音楽が形成されていくに従って現在の長音階・短音階が定まるようになり、それに伴い教会旋法は廃れていきましたが、近代では教会旋法の新たな可能性を追求して創作を試みる作曲家も現れてきました。
教会旋法には様々な種類が存在します。ピアノの黒鍵をなくした状態で、白鍵の任意の音から1オクターブ上までの音程間隔を使います。調号は一切ありません。(例:レミファソラシドレ、ミファソラシドレミ、ソラシドレミファソ)
特に、東方の楽曲も含めて教会旋法の中で比較的ポピュラーなのは、ドリア旋法です。
鍵盤上で、Dの音から1オクターブ上のDまでの白鍵だけを順に弾くとドリア旋法になります。つまりは、
・ドリア旋法:D-E-F-G-A-B-C-D
という旋法になります。
そしてこのドリア旋法は、ニ短調(Dm)の自然短音階と構成音がよく似ています。
・ドリア旋法 : D-E-F-G-A-&bold(){B }-C-D
・ニ短調自然短音階 : D-E-F-G-A-&bold(){Bb}-C-D
ニ短調自然短音階の第六音は、フラットにされたBbですが、このBbを半音あげてナチュラルにしてやることにより、ドリア旋法が完成します。つまり、自然短音階から見て第六音が半音上げられることが、ドリア旋法であることを特徴づけているのです。
この、自然短音階から見て第六音が半音上げられた音を、特別に&bold(){ドリアの六度}と呼称されたりします。
イ短調(Am)の場合、ドリアの六度にあたる音は&bold(){F#}の音です。
----
東方の楽曲では、この「ドリアの六度」が一時的に使用(借用)されている箇所が随所に見受けられます。
&italic(){※完全にドリア旋法のみで作曲された楽曲は存在しておらず、ドリア旋法の雰囲気を一時的に醸す為にドリアの六度を用いるだけなので、ドリア旋法の第六音を一時的に借用しているに過ぎない。}
&u(){尚、ドリアの六度にあたる音そのものは、主旋律・伴奏共にどちらにも使用(借用)されます。}
&bold(){ただし、東方の楽曲を分析するにあたって、教会旋法・ドリア旋法に関することには以下のような点で問題が生じてきます。}
・&italic(){1. 作曲者(ZUN氏)が教会旋法を意識して作られたフレーズか。}
・&italic(){2. コード進行との響きの兼ね合いで生じた偶成的な音か。}
・&italic(){3. 教会旋法ではなく一時的な転調によって偶成的に出現したものか。}
主にこれらの判断基準が非常に曖昧で、そもそもZUN氏が教会旋法を理解した上で作曲をしているのか、感覚的に生まれた音なのかどうかという点についても、本人が公に発言していない限りでは我々は推測するしか出来ず、またその解釈も人それぞれなので、一般論化が難しいとされます。
またドリア旋法も含めて、実際の教会旋法を用いた楽曲の響きとは、私達が現代で普段聴いている長旋法や短旋法とは違った雰囲気を持っている為、楽譜上ではドリアの六度であっても、教会旋法的な雰囲気を持っているか否かで判断が分かれます。
さらに、[[神主進行辞典>http://www43.atwiki.jp/tohomusicdb/pages/160.html]]に記載されている、&bold(){『漸近線』}進行の「Am-G-D (in Am)」には、3つ目のDのコードの構成音中にドリアの六度が用いられています。しかし、ポピュラー音楽でもこのようなコード進行は健在ですが、果たしてこの進行が教会旋法独特の雰囲気を醸し出しているかと問われれば、決してそうとは言えず、コード進行から偶成的にドリアの六度が出来てしまったという場合がほとんどです。
----
以下は、教会旋法の雰囲気を醸し出しているか否かに関わらず、&u(){&italic(){とりあえず}}ドリアの六度にあたる音(第六音♯)が用いられている楽曲例を、個人的解釈も添えながら分類し、リストアップしたものです。
・ &bold(){1. 教会旋法らしい雰囲気を醸し出しているもの}
[[妖怪の山 ~ Mysterious Mountain]] (Aメロの6小節目)
[[神さびた古戦場 ~ Suwa Foughten Field]] (A部の7小節目)
[[メイガスナイト]] (A部の3小節目)
[[ゴーストリード]] (イントロの4小節目)
・&bold(){2. コード進行(Am-G-D)から偶成的にドリアの六度が出現したと思われるもの}
[[おてんば恋娘]] (サビの6小節目)
[[幽霊楽団 ~ Phantom Ensemble]] (イントロの2~3小節目)
・&bold(){3. 一時的な部分転調(調の揺らぎ)によって偶成的にドリアの六度が出現したもの(ほぼ確信)}
[[千年幻想郷 ~ History of the Moon]] (Aメロの3~4小節目、G#m→D#mへ転調)
[[風神少女]] (Aメロの3小節目、Fm→Dmへ転調)
[[廃獄ララバイ]] (テーマの8小節目、F#m→C#mへ転調)
[[死体旅行 ~ Be of good cheer!]] (Bメロの5~8小節目及び13~16小節目、Em→Bmへ転調)
[[華胥の夢]] (イントロの2小節目 Cmを中心とする内、Gmへ転調)
・&bold(){4. 和声法においてドリアのⅣの和音を用い、旋律的短音階上(vi#→vii#の流れ)に出現するもの}
[[風神少女]] (サビの11小節目、Bbのコードの上に乗り、vi#の次にvii#へ上行する。コードもその次にCへ進行する。)
[[スプートニク幻夜]] (イントロの4小節目、E→F#の進行において、vi#の音が出現。その後にvii#も現れる。)
・ &bold(){検討中}
[[U.N.オーエンは彼女なのか?]] (サビの2小節目)
[[霊知の太陽信仰 ~ Nuclear Fusion]] (サビの3~4小節目)
----
更に知識をお持ちの方々は、是非とも編集・改訂にご協力をお願いします。
執筆(2013/02/21):白鷺ゆっきー@黒雪ごはん >>[[Twitter>https://twitter.com/yuki_02010]]
表示オプション
横に並べて表示:
変化行の前後のみ表示: