無題:6スレ目225

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225. VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2011/01/06(木) 10:52:47.49 ID:BhkmyQAO 「それでね、私が何言ってももう全ッ然聞く気がないわけ! こっちはようやく準備が整って、さあ、これからだってときなのよ!? まだ借金だらけで……もう、もう私……生きていけないよぉ……」 唐突に始まったが、俺、高坂京介は、今絶賛大ピンチの真っ只中にいた。 原因はもちろん、俺の目の前にいる酔いも回っていい感じに泣きが入っているねーちゃんだ。 かつては、俺が泣きながらこの人に頭を下げたっけ。 元売れっ子作家、転じて元盗作犯、そして新たに元同人ゴロの経歴が 追加されるかされないかの瀬戸際に立たされている伊織・フェイト・刹那さん。 「どうしてこうなった……」 思わずそう呻いた。 たまたま街で遭遇し、喫茶店に入って話をしていたら、いつの間にかこんなことに……。 ビールを注文しだした辺りで気づくべきだったぜ。 あと、周囲の俺に向ける視線が痛い。 視界の隅で、こそこそ囁きあっているおばさん連中に、 何人か見たことのある顔が混じっている気がするのは、気のせいだ、幻想だ。 その幻想をぶちなんちゃらだ。 っつーか会話の内容から察するに、ここの支払いはもしかして オレガハラウコトニナルノデセウカ……? 向かいの駄目な大人は、相変わらず愚痴をこぼし続けていた。 矛先は主に、都のエラい人である。 青少年を守る法が、巡り巡って俺の小遣いを食いつぶすなんて、 世の中何が起こるか分かったもんじゃねーな。 「あの……フェイトさん、さすがに飲みすぎじゃないか?」 恐る恐る声をかけると、フェイトさんはこちらを睨みつけ、 「あによー妹さんにはいっつも優しくしてるくせにー」 舌っ足らずな口調でそう答えた。 すごい誤解されてるな。 あの時は、まあ、気まぐれみたいなもんだったし? 一応、あのケータイ小説の中には、ほんの少しだけ、 クリスマスの俺の頑張りも含まれていたもんで、ちょこっと 悔しかっただけですから、ええ。 それより、フェイトさんの言い方だと、まるで俺がどシスコンみたいじゃねえか。 とりあえず、高坂京介シスコン説を否定しようと、フェイトさんに 向き直ると、彼女は肩を震わせ、俯いていた。 次の瞬間、聞こえてきたのは、 「……それに私のこと大好きだっていったのに」 「本当にすごい誤解されてるな!?」 黒猫といいアンタといい、いつまでアレを引っ張るつもりだよ! 226. VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2011/01/06(木) 10:57:31.51 ID:BhkmyQAO 「ちょっとちょっとちょっと! あれはあの雰囲気の中、 思わず出た言葉であってでだな!?」 必死に説得を試みるも、アルコールに脳みそまで溶かされたフェイトさんに、 どれだけ伝わったのやら疑わしい。 「あの、フェイトさん……。俺、そろそろ帰らねーと……」 そう言って、立ち上がった途端、フェイトさんに右手を掴まれる。 「あのね、私、お金がないの」 存じております。 「だから……ね……? そ、その……大好きって言ってくれたキミなら、 京介くんになら、僕の……じゃなくて、私の―――」 たどたどしくはあるものの、フェイトさんの話し方はハッキリしていた。 さっきまでのは酔っ払ったふりだったのか。 いつもは透き通るような白い肌も、真っ赤に染まり、 それが単にアルコールのせいだとも思えなかったのは、 彼女の発した言葉のせいだった。 「私の体、売ってあげる」 あまりの衝撃的発言に、軽く放心状態になりつつも、うろんな頭で俺はこう考えていた。 この人、遂に堕ちるとこまで墜ちやがった。 322. VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2011/01/07(金) 01:03:12.49 ID:A.1PcpE0 しかし俺も健全な男子高校生であって、フェイトさんはなんだかんだ言って美人である。 自分の中でフェイトさんを買うということが最低な行為だと理解しつつも、正直なところ……。 っていうか、どっちみち俺がここの代金払うしかねーじゃねぇか! 「お願い……ダメ?」 「……」 アルコール+αで頬を染めているうえに上目遣いで俺を見上げるフェイトさん…… ぶっちゃけたまらんのだが、ここはどうするべきだ?俺!ってか考えるまでもねぇよ!ダメだよな?常識的に考えて。 「私は、嫌いじゃないよ?京介くんのこと」 「……」 「むしろ……す」 言い掛けたところで俺は、 「ちょっと待ってください!!」 とフェイトさんを黙らせた。 これ以上は聞いてはいけない気がする。いや、しかし本当にフェイトさんが…… いやいや!ないない!ありえねーって!ありえない……よな?ありえる……のか?わかんねー! けど、なんにせよ今この人は酒の力も借りてるわけだし、少し落ち着かせる方がよさそうだよな。 俺自身を落ち着かせる為でもあるが。 「分かりました。どっちにしろココの代金は俺が払うしかないんで、とりあえず店から出ましょう」 「ほんとに!?」 両手で俺の右手を握り大きく目を見開くフェイトさん。 この顔は俺がここの代金を払ってくれたことに対する驚きなのか、 俺がフェイトさんを買わなかったことに対する驚きなのか、どっちなのか俺にはわからん。 っていうかなんで驚いてんだ?この人。 323. VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2011/01/07(金) 01:03:41.62 ID:A.1PcpE0 「フェイトさんお金無いんでしょう?なんにせよ俺が払うしかないじゃないすか」 「そ、そうね」 とりあえずその手、放してくれませんかね? いつまで掴んでるんでしょうか……。 「その……ご、ごめんね」 まるで拍子抜けしたように少し焦った様子でフェイトさんは立ち上がり、どこぞの小動物のように忙しく帰る準備をはじめた。 「私、ちょっとトイレ言ってくるね」 「じゃあ、先に出ときますんで、表で待ってますから」 俺がそういうとフェイトさんは何も言わず小走りでトイレまで駆けていった。 いったい何を思い、何を考えているのか俺にはさっぱりわからん。 俺が代金を支払い、店を出てから十分ほどして、ようやくフェイトさんが出てきた。 なんとなくだが、雰囲気が変わったような?やっぱ女性だし化粧直しとかしたんだろうか。 「おまたせ」 若干、酔いが冷めたような表情でフェイトさんが微笑みかけてきた。頬がし少しだけ赤らんでいるが。 普通にしてりゃ……っていうか、普通に可愛いんだけよなぁ…… いかん、このままでは……。 324. VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2011/01/07(金) 01:04:41.10 ID:A.1PcpE0 「じゃあ時間も時間なんで、俺はこれで」 軽く右手を上げて挨拶を済まし、正直なところフェイトさんと如何わしい関係になりたい気持ちを抑え、 今日の事は忘れてさっさとこの場を離れようと、背を向け帰ろうとした時、 「待って!あの……そ、相談が、あるの……」 フェイトさんが言いながら、またもや右手を掴んできた。 そりゃ反則でしょおおおおおお、と心のなかだけで力の限り叫んでおいた。 振り返ると、俯いていたため表情はわからなかったが、俯くということはそういう事なんだろうか。 「長くなりそうだから、家に来てくれない?」 えっ 「駄目……かな?」 えええええ!?この人正気か!? 「駄目ってわけじゃないけすけど……」 断りきれない俺情けねぇ……。 ってか家に行くってことは、あれだろ?つまりそういうことだよな?そういうことになっちゃうわけだよな? 何度も言うが、俺だって男なんだよ?ぶっちゃけりゃそりゃフェイトさんとヤりたいよ! でもこういう形で?「私の体、売ってあげる」なんて言葉、確実の酒の勢いというか酒のせいというか、そうだろ? そうに決まっていて、そういう女性につけこみ行為に及ぶというのは人間としてやっちゃいけねーことなんだよ。 325. VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2011/01/07(金) 01:05:17.23 ID:A.1PcpE0 それに、 「フェイトさん、酔ってるでしょ?」 今のこの人はアルコールに脳まで溶かされてるんだ! 「よ、酔ってないもん!」 完全に酔ってる。だってこんな喋り方しねーもん。 「酔ってない証拠に、ほら!」 「えっちょっ!」 この瞬間、俺の中の時間が止まった、気がした。 いや、衝撃的すぎて実際に止まったね!ザ・ワールドだよ!スタンド使いだよこの人! 俺の初めてが、俺の唇が……、俺の唇に柔らかい感触が。 あろうことか、フェイトさんは酔ってない証拠にとキスをしてきた。 掴まれていた右手をグッと引き寄せ、こう……なんというか気付いたらキスされてた。 しかし、なぜにキス?と俺が戸惑っていると、 「息、くさないでしょ?」 なに初々しいカップルが「キスしちゃった」みたいなニュアンスで言ってんだよ! それにくわえてさっきより頬が赤くなってんじゃねぇか! そして俺!なるほど!って納得してんじゃねぇ!他にやり方あっただろーよ! 「なにやってだ!完全に酔ってるじゃねぇか!」 つい大きい声を出してしまったと思えば、フェイトさんは「えーでもぉ」とかなんとか甘えるような口調に言葉で、 掴んでいる俺の右手を左右にぶらんぶらんふりながら拗ねだした。 やべぇ……窓越しから覗くどっかで見たことあるようなおばさんや、その他のお客さんがチラチラこっち見てるよ……。 フェイトさんは聞く耳をもたず、どうしようと俺がアタフタしていると、ジャストタイミングでタクシーがこっちに来るのが見えた。 そのタクシーはまるで神の使いのように見え、俺には「その人を乗せて、君は帰りなさい」と声まで聞こえたね。 フェイトさんに掴まれたままの右手を逆に引っ張り、なんとかタクシーを捕まえ、 タクシーのおっちゃん、もとい天使には「これでこの人の家までお願いします!」とお金を渡し扉を閉めた。 フェイトさんをタクシーに乗り込ませるのにはかなり手こずったのは、言わずもがなお分かりだろう。 フェイトさんと一緒にいるとろくなことがねぇよ……。 喫茶店代とタクシー代を合わせ俺の財布の中身はすっかり厚みがなくなり、泣きそうになりながら俺は家に帰った。 ─つづけたい─
225. VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2011/01/06(木) 10:52:47.49 ID:BhkmyQAO 「それでね、私が何言ってももう全ッ然聞く気がないわけ!  こっちはようやく準備が整って、さあ、これからだってときなのよ!?  まだ借金だらけで……もう、もう私……生きていけないよぉ……」 唐突に始まったが、俺、高坂京介は、今絶賛大ピンチの真っ只中にいた。 原因はもちろん、俺の目の前にいる酔いも回っていい感じに泣きが入っているねーちゃんだ。 かつては、俺が泣きながらこの人に頭を下げたっけ。 元売れっ子作家、転じて元盗作犯、そして新たに元同人ゴロの経歴が 追加されるかされないかの瀬戸際に立たされている伊織・フェイト・刹那さん。 「どうしてこうなった……」 思わずそう呻いた。 たまたま街で遭遇し、喫茶店に入って話をしていたら、いつの間にかこんなことに……。 ビールを注文しだした辺りで気づくべきだったぜ。 あと、周囲の俺に向ける視線が痛い。 視界の隅で、こそこそ囁きあっているおばさん連中に、 何人か見たことのある顔が混じっている気がするのは、気のせいだ、幻想だ。 その幻想をぶちなんちゃらだ。 っつーか会話の内容から察するに、ここの支払いはもしかして オレガハラウコトニナルノデセウカ……? 向かいの駄目な大人は、相変わらず愚痴をこぼし続けていた。 矛先は主に、都のエラい人である。 青少年を守る法が、巡り巡って俺の小遣いを食いつぶすなんて、 世の中何が起こるか分かったもんじゃねーな。 「あの……フェイトさん、さすがに飲みすぎじゃないか?」 恐る恐る声をかけると、フェイトさんはこちらを睨みつけ、 「あによー妹さんにはいっつも優しくしてるくせにー」 舌っ足らずな口調でそう答えた。 すごい誤解されてるな。 あの時は、まあ、気まぐれみたいなもんだったし? 一応、あのケータイ小説の中には、ほんの少しだけ、 クリスマスの俺の頑張りも含まれていたもんで、ちょこっと 悔しかっただけですから、ええ。 それより、フェイトさんの言い方だと、まるで俺がどシスコンみたいじゃねえか。 とりあえず、高坂京介シスコン説を否定しようと、フェイトさんに 向き直ると、彼女は肩を震わせ、俯いていた。 次の瞬間、聞こえてきたのは、 「……それに私のこと大好きだっていったのに」 「本当にすごい誤解されてるな!?」 黒猫といいアンタといい、いつまでアレを引っ張るつもりだよ! 226. VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2011/01/06(木) 10:57:31.51 ID:BhkmyQAO 「ちょっとちょっとちょっと! あれはあの雰囲気の中、  思わず出た言葉であってでだな!?」 必死に説得を試みるも、アルコールに脳みそまで溶かされたフェイトさんに、 どれだけ伝わったのやら疑わしい。 「あの、フェイトさん……。俺、そろそろ帰らねーと……」 そう言って、立ち上がった途端、フェイトさんに右手を掴まれる。 「あのね、私、お金がないの」 存じております。 「だから……ね……? そ、その……大好きって言ってくれたキミなら、  京介くんになら、僕の……じゃなくて、私の―――」 たどたどしくはあるものの、フェイトさんの話し方はハッキリしていた。 さっきまでのは酔っ払ったふりだったのか。 いつもは透き通るような白い肌も、真っ赤に染まり、 それが単にアルコールのせいだとも思えなかったのは、 彼女の発した言葉のせいだった。 「私の体、売ってあげる」 あまりの衝撃的発言に、軽く放心状態になりつつも、うろんな頭で俺はこう考えていた。 この人、遂に堕ちるとこまで墜ちやがった。 322. VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2011/01/07(金) 01:03:12.49 ID:A.1PcpE0 しかし俺も健全な男子高校生であって、フェイトさんはなんだかんだ言って美人である。 自分の中でフェイトさんを買うということが最低な行為だと理解しつつも、正直なところ……。 っていうか、どっちみち俺がここの代金払うしかねーじゃねぇか! 「お願い……ダメ?」 「……」 アルコール+αで頬を染めているうえに上目遣いで俺を見上げるフェイトさん…… ぶっちゃけたまらんのだが、ここはどうするべきだ?俺!ってか考えるまでもねぇよ!ダメだよな?常識的に考えて。 「私は、嫌いじゃないよ?京介くんのこと」 「……」 「むしろ……す」 言い掛けたところで俺は、 「ちょっと待ってください!!」 とフェイトさんを黙らせた。 これ以上は聞いてはいけない気がする。いや、しかし本当にフェイトさんが…… いやいや!ないない!ありえねーって!ありえない……よな?ありえる……のか?わかんねー! けど、なんにせよ今この人は酒の力も借りてるわけだし、少し落ち着かせる方がよさそうだよな。 俺自身を落ち着かせる為でもあるが。 「分かりました。どっちにしろココの代金は俺が払うしかないんで、とりあえず店から出ましょう」 「ほんとに!?」 両手で俺の右手を握り大きく目を見開くフェイトさん。 この顔は俺がここの代金を払ってくれたことに対する驚きなのか、 俺がフェイトさんを買わなかったことに対する驚きなのか、どっちなのか俺にはわからん。 っていうかなんで驚いてんだ?この人。 323. VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2011/01/07(金) 01:03:41.62 ID:A.1PcpE0 「フェイトさんお金無いんでしょう?なんにせよ俺が払うしかないじゃないすか」 「そ、そうね」 とりあえずその手、放してくれませんかね? いつまで掴んでるんでしょうか……。 「その……ご、ごめんね」 まるで拍子抜けしたように少し焦った様子でフェイトさんは立ち上がり、どこぞの小動物のように忙しく帰る準備をはじめた。 「私、ちょっとトイレ言ってくるね」 「じゃあ、先に出ときますんで、表で待ってますから」 俺がそういうとフェイトさんは何も言わず小走りでトイレまで駆けていった。 いったい何を思い、何を考えているのか俺にはさっぱりわからん。 俺が代金を支払い、店を出てから十分ほどして、ようやくフェイトさんが出てきた。 なんとなくだが、雰囲気が変わったような?やっぱ女性だし化粧直しとかしたんだろうか。 「おまたせ」 若干、酔いが冷めたような表情でフェイトさんが微笑みかけてきた。頬がし少しだけ赤らんでいるが。 普通にしてりゃ……っていうか、普通に可愛いんだけよなぁ…… いかん、このままでは……。 324. VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2011/01/07(金) 01:04:41.10 ID:A.1PcpE0 「じゃあ時間も時間なんで、俺はこれで」 軽く右手を上げて挨拶を済まし、正直なところフェイトさんと如何わしい関係になりたい気持ちを抑え、 今日の事は忘れてさっさとこの場を離れようと、背を向け帰ろうとした時、 「待って!あの……そ、相談が、あるの……」 フェイトさんが言いながら、またもや右手を掴んできた。 そりゃ反則でしょおおおおおお、と心のなかだけで力の限り叫んでおいた。 振り返ると、俯いていたため表情はわからなかったが、俯くということはそういう事なんだろうか。 「長くなりそうだから、家に来てくれない?」 えっ 「駄目……かな?」 えええええ!?この人正気か!? 「駄目ってわけじゃないけすけど……」 断りきれない俺情けねぇ……。 ってか家に行くってことは、あれだろ?つまりそういうことだよな?そういうことになっちゃうわけだよな? 何度も言うが、俺だって男なんだよ?ぶっちゃけりゃそりゃフェイトさんとヤりたいよ! でもこういう形で?「私の体、売ってあげる」なんて言葉、確実の酒の勢いというか酒のせいというか、そうだろ? そうに決まっていて、そういう女性につけこみ行為に及ぶというのは人間としてやっちゃいけねーことなんだよ。 325. VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2011/01/07(金) 01:05:17.23 ID:A.1PcpE0 それに、 「フェイトさん、酔ってるでしょ?」 今のこの人はアルコールに脳まで溶かされてるんだ! 「よ、酔ってないもん!」 完全に酔ってる。だってこんな喋り方しねーもん。 「酔ってない証拠に、ほら!」 「えっちょっ!」 この瞬間、俺の中の時間が止まった、気がした。 いや、衝撃的すぎて実際に止まったね!ザ・ワールドだよ!スタンド使いだよこの人! 俺の初めてが、俺の唇が……、俺の唇に柔らかい感触が。 あろうことか、フェイトさんは酔ってない証拠にとキスをしてきた。 掴まれていた右手をグッと引き寄せ、こう……なんというか気付いたらキスされてた。 しかし、なぜにキス?と俺が戸惑っていると、 「息、くさないでしょ?」 なに初々しいカップルが「キスしちゃった」みたいなニュアンスで言ってんだよ! それにくわえてさっきより頬が赤くなってんじゃねぇか! そして俺!なるほど!って納得してんじゃねぇ!他にやり方あっただろーよ! 「なにやってだ!完全に酔ってるじゃねぇか!」 つい大きい声を出してしまったと思えば、フェイトさんは「えーでもぉ」とかなんとか甘えるような口調に言葉で、 掴んでいる俺の右手を左右にぶらんぶらんふりながら拗ねだした。 やべぇ……窓越しから覗くどっかで見たことあるようなおばさんや、その他のお客さんがチラチラこっち見てるよ……。 フェイトさんは聞く耳をもたず、どうしようと俺がアタフタしていると、ジャストタイミングでタクシーがこっちに来るのが見えた。 そのタクシーはまるで神の使いのように見え、俺には「その人を乗せて、君は帰りなさい」と声まで聞こえたね。 フェイトさんに掴まれたままの右手を逆に引っ張り、なんとかタクシーを捕まえ、 タクシーのおっちゃん、もとい天使には「これでこの人の家までお願いします!」とお金を渡し扉を閉めた。 フェイトさんをタクシーに乗り込ませるのにはかなり手こずったのは、言わずもがなお分かりだろう。 フェイトさんと一緒にいるとろくなことがねぇよ……。 喫茶店代とタクシー代を合わせ俺の財布の中身はすっかり厚みがなくなり、泣きそうになりながら俺は家に帰った。 ─つづけたい─

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