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167 名前: ◆5yGS6snSLSFg[sage saga] 投稿日:2011/01/23(日) 11:34:41.54 ID:NZgMtXqQo [2/7]
『なんだか姉ちゃんの様子が変なんだ』
「ふーん。おかしいってどんな風にだ?」
おまえに言われなくても麻奈実の様子が変なのは既に知ってるよ。
だって、最近のあいつ妙に付き合いわりいんだもん。
いつぞやの前髪切り過ぎた時みたいに、露骨に避けられてるわけじゃないから見て見ぬふりしてきたけどな。
『なんか悩んでるっぽいんだよ。部屋にこもって「うーん」とか唸ってる』
だが、家族にまでおかしな様子を見せているとなれば話は別だ。
俺の心の平穏のため、麻奈実の異変の原因を突き止めなければならない。
「わかった。俺に心当たりがないこともない。俺にまかせろ」
「まじ!? かっけー! さすがあんちゃ」
――ブツッ。
ロックの返事を聞き終わる前に電話を切る。
そう、俺には心当たりがあった。
あの時――麻奈実は確かにこう言った。
「きょうちゃんのせいなんだけどなぁ」
あの時はなんのこっちゃと聞き流したが、思い返してみればあの時気づくべきだったのだ。
麻奈実は俺のせいで何やら悩んでいるのだと。
168 名前: ◆5yGS6snSLSFg[sage saga] 投稿日:2011/01/23(日) 11:35:25.97 ID:NZgMtXqQo [3/7]
――チッ。自分の浅はかさが嫌になるな。
「さて、誰からあたろうか」
麻奈実を問い詰めたところで決して素直に話すまい。
もし、本当に俺が原因で悩んでいるのであれば、そのことを他でもない俺にだけは絶対に言わないだろう。断言してもいい。
なぜなら、逆の立場なら俺だってそうするからな。
だから、麻奈実以外の所から探りを入れる必要がある。
できれば共通の知り合いが理想的だ。俺と麻奈実の共通の知り合いは……
「赤城と黒猫とあやせくらいか……」
赤城というのはもちろん兄の方な。
「……赤城はないな」
麻奈実のことであいつの相談をもちかけるというのはなんとなく気に食わない。
となると残るは黒猫かあやせだが……
「黒猫はなぜか麻奈実のこと嫌いみたいだしなあ。やっぱりあやせしかいないか」
携帯を手に取りあやせの番号を呼び出し、発信ボタンを押す。
prrrr
相手を呼び出すコールが規則的に続く。
よ、よかった。今回は着拒されてるなんてことはなかった。
ガチャ。
『…………何か用ですか?』
まるで不審者と会話するかのように訝しげな声を発するあやせ。
169 名前: ◆5yGS6snSLSFg[sage saga] 投稿日:2011/01/23(日) 11:35:55.32 ID:NZgMtXqQo [4/7]
「よう。元気にしてたか? 最近会ってないから心配でさあ」
『用件をどうぞ』
「……事務的すぎんだろ」
もうちょっと構ってくれてもいいんじゃないかなあ?
「まあいいや。実は麻奈実のことで相談があってな」
『え? お姉さんのことですか?』
それから俺はあやせに麻奈実の付き合いが悪く様子がおかしいこと、ロックに聞いた部屋にこもって唸っていることを告げた。
「なにか心当たりはないか? どうやら俺が原因らしいんだが」
『………………』
「……あやせ?」
『はあ…………お兄さんって人は……それ、本気で言ってます?』
「あん? どういう意味だ?」
『まあいいです。……お姉さんなら別に悩んでるとかそんなんじゃないですから安心してください』
えらく簡単に断言するじゃないか。
どうやらあやせは麻奈実の異変の原因を知っているらしい。
170 名前: ◆5yGS6snSLSFg[sage saga] 投稿日:2011/01/23(日) 11:36:44.74 ID:NZgMtXqQo [5/7]
「こっちはこっちで事情があってな。あいつの様子がおかしい理由を調べないといけないんだよ」
『大丈夫です。明日になればわかりますから』
「明日?」
明日って何かあったっけ?
『用件はそれだけですか? それだけなら……』
「まあ待て。用件ならまだあるぞ。俺とおまえの将来のことなんだけどな」
『おやすみなさい、お兄さん』
ブツッ――ツーツーツー。
用件があるって言ってんのに切りやがった!? そんなに俺と電話するのが嫌か!?
くそっ、あんまりひどい扱いを続けてると泣いちゃうぞ?
……だけど、明日になればわかるってどういうことだ?
「おはよう~、きょうちゃん」
「おう、おはよう」
いつもの丁字路。そしていつもの間延びした、柔らかな朝の挨拶。
『明日になればわかりますから』
麻奈実の身体をまじまじと眺める。
別段変わった様子はない。いつも通りの、見慣れた…………いや、何かが違う。
171 名前: ◆5yGS6snSLSFg[sage saga] 投稿日:2011/01/23(日) 11:37:11.02 ID:NZgMtXqQo [6/7]
「あ……髪型、ちょっと変わったのか?」
「えっ!? わ、わかるの!?」
「なんでそんな驚いてんだ。……へえ、ちょっと……いい感じじゃないか。…………似合ってるよ」
思わず感想が漏れ出てしまった。
妙に気恥ずかしくなり、麻奈実から顔をそらす。
お、俺は何を言ってるんだ? そんなつもりじゃなかったんだけどな。
「そ、そうかな? えへへ~」
麻奈実はかばんをぱたぱたと鳴らし、にへら~とゆるい微笑みを浮かべてみせる。
もしこいつに尻尾があったなら、きっとちぎれんばかりに振っていることだろう。
……全然悩んでるようには見えねえな。
あやせ、明日になればわかるって本当か? 俺にはさっぱりわかんねえぞ。
俺の心配をよそに、麻奈実はさっきからずっと俺の隣で上機嫌にしている。
麻奈実の様子がおかしい理由は俺にはわからないが、こんな顔ができるってことはどうやら俺が心配することじゃねえみたいだな。
…………だけど、麻奈実はいったい何を悩んでたんだ?
「ま、なんでもいいか」
「え? な~に、きょうちゃん?」
「なんでもねえよ。ひとり言」
おわり