無題:8スレ目9

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9 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage] 投稿日:2011/03/01(火) 23:28:42.64 ID:t89Ck0Vpo [2/8] 窓から外を眺めながら私は大きくなったお腹をなでる。 言葉では言い表せない愛しさと、やりは言葉では言い表せない後ろめたさ、 そして生まれてくるこの子への謝罪をしながらなでた。 「いよいよ来週……かぁ。元気に生まれてくれるといいなぁ」 子供は親を選べない。なんて残酷なことなんだろう。 この子は生まれる前から罪を背負って……いや、両親に罪を背負わされて生まれることになる。 「妹も……兄を選べないよね」 ふと考えてしまう。 あの人と兄妹でなかったら……。 例えばまなちゃんのような幼馴染だったら、例えば瑠璃のような後輩だったら、 こんなに悩まずに済んだだろうか。 「……いっっっまさらねぇ」 いい加減にしよう。 何度も考えたことで、何度も同じ答えを出した問いだ。 「兄妹じゃなかったら、あいつが私を気にかけてくれるわけないじゃん」 「おい、そりゃどういう意味だ」 独り言に返答があったことに驚いて、入り口に目を向ければ最愛の人であり、 お腹の子の父であり、たった一人の血の繋がった兄が立っていた。 「ななななな!!!ははは入るときはノックしてっていつも言ってるでしょ!?」 「したっつーの。返事なかったから寝てんのかと思ったんだよ。んで?さっきはどういう意味だよ?」 ベッドに手をおいて顔を近づける。 流石私の兄貴だ、顔を近づけてもなんともないぜ。私は心臓バクバクいっててなんともありすぎるケド。 「……兄妹じゃなかったら、あんたと私接点出来そうに無いじゃん?3つも歳離れてるしさ」 「バーカ」 「わっ、ちょ、なにすんのよ!」 急に頭をワシワシとなでられる。 別にいやなわけじゃない。むしろうれしいんだけど、こういう反応になってしまうのは体に染み付いた習慣。 こうやって頭を撫でているときの兄貴はとても優しい顔をしてる。 その顔は私にだけ向けてくれる、私だけの表情。 それが私がこうして頭をなでられるのが好きな一番の理由だ。 「……お前みたいな不器用で鈍くさいやつ、俺が放っておくかよ」 頭から頬に手を移して、さっきよりももっとやさしい表情で言ってくれた。 「それに、男ってのは好きな女の子にアプローチかけずにはいられないモンなんだよ。」 「あに……き……」 そうしてゆっくりと兄貴が顔近づけてくる。 そういえば久しくキスもしてない。 したいけど、盛り上がっちゃったらこまるな。 でもしたいな。 そんなことが頭でグルグルしてるうちに、あと数センチの距離まで兄貴が近づいてきて 10 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage] 投稿日:2011/03/01(火) 23:30:52.31 ID:t89Ck0Vpo [3/8] 「「真昼間からなにやっとんじゃーーー!!呪い[ピーーー]わよ!?(ブチ殺しますよ!?)」」 「オウフ!!!!!???」 変態鬼畜兄貴があらわれた! あやせは一気に距離を詰め、その場で反転しながらキックを放った!! あやせのハイキック!!京介の頬を蹴り抜いた!! 京介は膝を付いた!! 瑠璃が勢いよく走り、京介の膝を踏み込んでニーキックを放った!! 瑠璃のシャイニングウィザード!! <<バリーーーン!!!>> 京介は窓ガラスを割って外に落ちた!! 変態鬼畜兄貴をやっつけた!! 「兄貴ーーー!?あ、あんたらなにしてくれちゃってんの!?」 「ハッ!しまったつい癖で」 「……悪気は無いわ。リア充氏ねばいいのに、とかは思ったけれど」 「[ピーーー]気満々だよね!?むしろ120%殺意だよね!?」 「「シラナイ、ワカラナイ。デンパカナニカダ」」 唐突に現れた二人の親友は、登場してすぐいい雰囲気をぶち壊してくれた。 残念半分、安心半分なのは私だけの秘密だ 11 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage] 投稿日:2011/03/01(火) 23:33:06.17 ID:t89Ck0Vpo [4/8] 「危なかった。主人公補正とギャグ補正と十二の試練が無ければ死んでいた」 「つまり11回は死んだのね、わかります」 「あと1回でキチンと死ぬですね、よくわかります」 「なにこの黒いの×2、超怖い」 「つかお前ら、まず言うことg」 「「ついカっとなって脚が出てしまった。今では反省してる。だが後悔はしていない。」」 兄貴が戻ってきて(なぜか無傷で帰ってきた)二人は頭を下げた。 しかし二人があまりにも清々しい顔をしているので謝っているように見えない。 むしろ誤っている。 「コホン……調子はどう?桐乃。なにか悪いところはない?ブラコン以外で」 「強引に話進めたよ、この厨二病患者。」 「厨二病は不治の病よ。普段は影を潜めていても発作的に出てくるわ」 ドヤ顔で即答された。 「まあ、私は今日は特に用は無いのだけれどね。この子が久しくあなたと会ってないというものだから、引っ張ってきたわ」 「わ、ちょ!瑠璃さ……ん」 瑠璃があやせの手を引いて私の前に立たせる。 「久しぶり、桐乃」 「うん、久しぶり……あやせ」 そこから言葉が続かない。あやせも同じなようで視線が私と瑠璃の間をいったりきたりしている。 「「あの!」」 やってしまった。あやせも同じような顔をしてる。 マンガやゲームでよくあるシチュだけど、コレは実際によくあるからこまる。 「兄さん!ここは若い二人に任せて私達は7巻の続きをやりに行きましょう!!」 「え?ちょ!おmえええええええええ!!!!!!!!!」 私やあやせが制止するよりも、兄貴が返答するより早く瑠璃は兄貴の手を持って外に出て行ってしまった。 12 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage] 投稿日:2011/03/01(火) 23:34:18.83 ID:t89Ck0Vpo [5/8] 「……いいの?桐乃。目の前が浮気現場だよ?」 「……大丈夫、瑠璃はそんなことしないって分かってるし。仮にしちゃっても……1回は不問」 実際は1回どころじゃ足りない。 瑠璃のおかげでどれだけ私と兄貴が救われたか。 千手観音でもないと数え切れない。 「心が広いね、桐乃は。じゃあ、私もちょっとお兄さんを借りt」 「あやせの枠ねーから!!」 「…………」 「「…………ぷっ」」 ああ、やっと戻れた。 「ははははは!!!ひどいよ桐乃。いくら実際に枠が無くても最初に言い切らなくても」 「なに言ってのよ、あやせなんて今でも兄貴のストライクゾーンど真ん中なんだから、釘刺しておかないと!」 変わってない。お互いずいぶん変わっちゃったけど、ぜんぜん変わってない。 「もう……相手の好みなのに勝算がないとか、わけがわからないよ」 「ヤンデレ無表情フェイスでその言葉言うな!契約契約言ってきそうなのよ」 「わたしと契約して夫婦n」 「ドタマぶち抜くわよ?」 「マジごめん」 大分オタクになってしまったようだけど、基本の部分ではやっぱり変わってない。 いや、第一に私じゃなくて、私とあやせを対等にして話をしてくれてる。 あやせは成長したんだ。 「あ、言い忘れてた」 「ん?なに?」 「……おめでとう、桐乃」 「!!……うん!ありがとう!あやせ!!」 だからもう一度、親友になれるよう私も成長していこう。 13 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage] 投稿日:2011/03/01(火) 23:39:02.83 ID:t89Ck0Vpo [6/8] 「ところで兄さん、この懐かしのゴスロリ&ネコミミをつけた、ギリギリ四捨五入20歳の女を見てくれ。こいつをどうおもう?」 「すごく……イタいです」 「うれしいこと言ってくれるじゃないの、それでこそわざわざ引っ張り出して来た甲斐があったというものだわ」 「お前、それでいいのか?」 病院の中庭のベンチにつれてこられたかと思うと、いきなりくそみそな展開になった。 というかこいつ家からコレで着たのか24にもなって。 「大丈夫よ、兄さん。桐乃とあやせの友人は17歳を言い張ってるわ」 「可奈子は別格だろ。つか、現役高校生って言っても信じるわ」 「いえ、私が言ってるのは中のh」 「やめろ、王国民に殺される」 あの精鋭部隊はモニター越しでも会うのはごめんだ。 訓練されつくした動きは美しいというが、アレはもう一回りしてキモイ。 それにしても今日のコイツはどうもおかしい。 社会に出て、『黒猫』が大分いなくなってからこんなことはなかったのに。 「……マジで恋人の続き……始める気なのか?」 「はんっ!」 瑠璃は鼻で笑ってベンチから立ち上がった。 昔よりは短いが、長い黒髪と漆黒のスカートがふわりと揺れた。 「仮に続けたとして、そしてエンディングまでたどり着けたとして、  それは一体誰が得をするのかしら?」 「……自分から言い出しておいて、ずいぶんな言い草だな」 実際はあの二人にゆっくり話しさせたかったことくらい分かってる。 それでもわざわざこの話題を口実にする理由など無かったはずだ。 「……ついにあなたは、お父さんになるのよ」 「……ああ」 瑠璃が、いや黒猫が背中を向けたまま、ベンチに座ったままの俺に話す。 14 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage] 投稿日:2011/03/01(火) 23:39:57.97 ID:t89Ck0Vpo [7/8] 「厨二病に感染されていなくても、こういうしかない子の父親になるよ。禁忌の子の……ね」 「……ああ」 そんなことは分かってる。 そのあたりは全部覚悟して今ままで来たんだ。 「子供がかわいそう、あなた達がかわいそう、ご両親がかわいそう……いくらでも同情はできるわ。  ……けれど、私は……私達はそんなことしてあげない」 「……」 黙って黒猫の言葉の続きを待つ。 きっとコイツの言いたいことはこんなことじゃないはずだ。 「……ずいぶん空気が読めるようになったのね?ここで私の言葉をさえぎらずに、続きを待つなんて」 「お褒めに預かり光栄だよ」 黒猫は少しだけ振り向いて視線だけをこちらに向けた。 過去の俺を咎めるの言葉ともに。 だから俺はそれを皮肉って返してやる。 「同情なんてしてやらない。私でも、あやせでも、麻奈実先輩でもなく、  あの子を選んだあなたを私は絶対に許さない。だから……」 そこでクルリと振り向いて満面の笑顔で、とても残酷でうれしい言葉をぶつけてきた。 「ありがとう、おめでとう、さようなら初恋の人」 なにもいえない。何も思い浮かばない。だけど何か言わなくてはならない。 だからこそ、俺は動いてない頭とカラカラの喉にムリヤリ仕事をさせてこういってやる。 「俺の方こそありがとう、そして悪かった。お前にばかりこんな仕事をやらせちまって」 「かまわないわ。それにこれは私が、私の意志でやったことよ」 「そうか……だったらこの場で、この言葉でお前に誓うよ」 「……聞かせて頂戴」 ああ、ホントに俺は、なんてバカな男なんだろう。 振った女にこんなこと聞かせるなんて。 「俺達が幸せになれないわけない」 END

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