無題:8スレ目325

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325 名前: ◆5yGS6snSLSFg[sage] 投稿日:2011/03/09(水) 03:04:04.35 ID:k1Ouee8ko [3/9] 「ただいま。……あれ? 出掛けんの?」 「おかえり。うん、ちょっとね」 「どこ行くんだ? そんなにやにやしちまってよ」 帰宅早々玄関で靴をはく桐乃を見つけ、なんとはなしに声をかけた。 オシャレな恰好はいつも通りだが、今日はそれに加えて満面の笑みが張り付いていたからだ。 「えっへっへ~、今からブリジットちゃんとメイト行くの」 「ブリジットと? おまえ、ブリジットに嫌われてなかった?」 偽装デートの一件以来、ブリジットにとってこいつはメルルを莫迦にしたお姉さんとしか映っていないはずだが。 「あやせが取り計らってくれたの。あたしがオタクを莫迦にしてるって誤解もといてくれたしね」 「ふーん」 あのあやせがねえ。そんなことはないんだろうけど、あやせの場合なんか裏がありそうで怖い。 「あ……昼からは家で一緒にメルル見るけど、ブリジットちゃんに色目使ったらぶっ殺すから。大人しく部屋に籠っててよね」 「つーかーわーねーえっての」 だから、俺はロリコンじゃないって言ってるだろ。 「ふんっ、どうだか。……行ってきます」 「……行ってらっしゃい」 リビングにあるソファで横になっていると、玄関の扉が開く音がした。 「帰って来たのか?」 寝ぼけ眼をこすり、玄関へと繋がる扉を見つめる。 すると、ガチャリとその扉が開いた。 「今日はお母さんたちいないから、ここの大きいテレビで見れるよ」 「お、おじゃまします……」 桐乃に続いて、ブリジットが申し訳なさそうに顔を出す。今日の彼女は白いワンピースを着ていた。綺麗なブロンドと相まってとても似合っている。 俺の姿を見つけた桐乃が途端に嫌そうな顔をした。 「げ……あんた、そこで何してんの? 今日はここでメルル見るって言ったじゃん。さっさと部屋に戻ってよね」 「俺がどこにいようが俺の勝手だろ? ……心配しなくてもおまえらが帰ってきたらどくつもりだったさ」 渋々ソファから重たい腰を持ち上げ、自分の部屋へと足を向ける。 ブリジットはというと、先ほどまでの険悪な空気にすっかり怯えていて桐乃の後ろに隠れるようにしてこちらの様子を窺っていた。 ……ブリジットに悪い事しちゃったかな。 しかし、たった半日一緒にいただけだと言うのにえらく懐かれてるな。 まあ、元から趣味は一緒だしな。それにリアにも好かれていたことから考えるとこいつは姉としての才能があるのかもしれない。 そんなことを考えながら、桐乃たちの方を横目で見つつすれ違う。 326 名前: ◆5yGS6snSLSFg[sage] 投稿日:2011/03/09(水) 03:05:25.18 ID:k1Ouee8ko [4/9] 「あれっ?」 俺と目があった瞬間、ブリジットが疑問の声をあげた。 「あの……まちがってたらごめんなさい…………もしかして、あの時の彼氏さんですか?」 「「げっ!?」」 うめき声に近い声をあげる俺と桐乃。 しまった……加奈子と同じ感じで大丈夫だろうと勝手に脳が判断してた。よくよく考えたらそんなことありえないのに。 そして、それは桐乃も同じだったらしい。 おろおろと慌てるばかりで、一向に言い訳が出てくる気配はない。 最終的にこちらをキッと睨み付け、「早くなんとかしなさいよ」というオーラをこれでもかと迸らせている。 「はっ!?  ま、まさか“同棲”というやつですか!?」 ブリジットが全力で行ってはいけない方向に勘違いし始めたこともあり、仕方なく俺が事情を説明してやった。 まったく、桐乃もこれくらい自分でやれよな。なんでそんなに慌ててんだよ。 「とまあ、そういうわけだ。わかってくれたか?」 「はい」 ブリジットはにこりと微笑んで素直な返事をくれた。誰かさんもこれくらい素直ならいいのにな。 prrrrrrrr 俺がブリジットへの説明を終えるのを待ってくれていたかのようなタイミングで桐乃の携帯電話が鳴った。 「あやせ? どうしたんだろ」 さてと、俺がここにいてももうやることないし自分の部屋に戻るか。 桐乃が電話中なので無言で立ち去ろうとすると、ブリジットが俺に手を振ってくれた。 その微笑ましい光景に思わず頬が緩んでしまう。小さい子って、いいなあ……。 はっ!? ち、違うぞ!? 今のはロリコン的な意味ではなくてだな。どちらかというと娘を想う親父のような気持ちなんだよ! きっと!! 一人勝手にどきどきしてしまった気恥ずかしさから、足早にリビングを後にする。 すると、俺が階段の一段目に足をかけたところでリビングから桐乃の叫び声が聞こえてきた。 「嘘でしょ!?」 なにごとかと思い、リビングへと戻る。 リビングの中を見ると、桐乃が青ざめた表情で電話をしていた。 桐乃の台詞から電話の相手かはあやせだと思われるが、あやせとの電話で桐乃が青ざめるような事態ってなんだ? まさか、またオタク関連じゃねえだろうな。 だとすると、また俺がいわれもない変態のそしりを受けたり、あやせからハイキックをもらたりすることにならないとも限らない。 ううっ、考えただけで胃が痛い。桐乃だけでなく俺も青ざめちまいそうだ……。 327 名前: ◆5yGS6snSLSFg[sage] 投稿日:2011/03/09(水) 03:07:27.51 ID:k1Ouee8ko [5/9] 「どうしてもあたしじゃないと駄目なの? ………………そっか。わかった。今から行くね」 ピッと電話を切った桐乃はまるでこの世の終わりかというような顔をしていた。 「お、おい……桐乃? いったいどうしたんだ?」 「今日来るはずだったモデルの子が急にこれなくなって、それで代打が必要なんだって」 「お、おまえ以外にはいないのか?」 「もう服は変更がきかなくて、その子の体型に一番近いのがあたしだから……」 「そ、そうか……」 そりゃあ……ご愁傷様。モデルも大変だな。  ・ ・ ・ ・ ・  がっくりうなだれる桐乃をなぐさめるため、俺はブリジットに声をかけた。 腰を落とし、目線の高さをブリジットと合わせる。 「お姉ちゃんな、これから仕事に行かなくちゃならないみたいなんだ。悪いな。もしよかったら、また、一緒に遊んでくれるか?」 「そうですか……でも、わかりました。お仕事がんばってくださいね」 ブリジットは一瞬残念そうな顔をしたものの、すぐさま笑顔を作って見せた。 こんな風に割り切れるのも、小さいながらに仕事の大変さをわかっているブリジットならではだろう。 「だってさ。ブリジットは俺が送るから、おまえは仕事頑張ってこい。今から行くってことは急ぐんだろ?」 「……うん、ありがと」 妹の意外な素直さに少し驚いたが、「でも」とさらに言葉を続ける桐乃。 「あんたブリジットちゃんに馴れ馴れしくしすぎ。ちょーキモい。……このロリコン」 「ぐっ……」 「お兄さんはロリコンなんですか?」 「決して違う!」 「ブリジットちゃんに手だしたらぶっ殺すからね!」 先ほどまでばたばたと何やら用意していた桐乃だったが、そんな不穏な捨て台詞を残して出て行き家には俺とブリジットが取り残された。 「さてと、桐乃も行っちまったし帰るか? 送ってくよ」 そういえばブリジットってどこに住んでるんだろ。 しかし、ブリジットはうつむきがちにもじもじするだけで、うんともすんとも言わない。 「どうしたんだ?」 「あ、あの……せっかく来たので……彼氏さん……じゃなかった。お兄さんとお話ししたいなあ……なんて。ダメですか?」 「お、俺と?」 「はい」 「俺はいいけど、俺と何を話すんだ? あ、その辺適当に座ってくれ」 言っとくけど、あの桐乃の兄貴だからってメルルとかに特別詳しいわけじゃないからね。 そりゃ、その辺の一般的な高校生とかよりは詳しい自信はあるけどさ。悲しいことに。 すると、二人掛けのソファの片隅に腰をおろしたブリジットが口を開いた。 328 名前: ◆5yGS6snSLSFg[sage] 投稿日:2011/03/09(水) 03:08:59.40 ID:k1Ouee8ko [6/9] 「れっ、恋愛についてですっ!」 「ぶふぉあ」 ブリジットの宣言に思わず吹き出してしまう。 俺は、若干顔をひきつらせながら、 「あ、あのね……さっきも言ったけど俺と桐乃は兄妹で、恋人同士じゃないんだよ?」 と、諭すように優しく言ってやる。 「じ、実はお兄さんが私の好きな人にふんいきが似てたので……それで、ちょっと相談というか……お話聞いてもらえたらと思って……」 「え…………ブリジットちゃんにも好きな人ができたの?」 「は、はい」 顔を真っ赤にしてうつむくブリジット。 ま、まじかよ。誰だ、そのうらやまけしからんやつは。以前会った時は好きとかよくわからないって言ってたのに。 やっぱり同い年くらいのやつなんだろうか。でもこの年頃の女の子って、うちの妹のもそうらしいけど、同い年のやつはガキに見えるらしいから年上だったりするのかな。 だとしたら、俺はそいつをロリコンと呼ばざるを得ない。こんな小さな子の純情を弄ぶなんて許せん。 ……弄ぶのくだりは完全に俺のイメージだけど。 だが、この前まで好きってのもよくわからないと言っていた子が、いきなり「好きな人ができた」とか言うのは年上として少し不安ではある。まさか、ほんとに騙されてなんかいないだろうな。 「その人ってどんな人なんだ?」 さりげなくどころか直球で探りを入れる。 ……しまった。探りを入れるにしても、もっと上手い言い方があったろうに。 これじゃあ、ただの出歯亀じゃねえか。 「じ、実はその人、ちょっと前まで私とかなかなちゃんのマネージャーやっててくれた人なんですけど……」 ……ま、まさか……嘘だろ? 「じむしょの人に聞いたら、もうやめちゃったって聞いて……連絡先も……わからないって」 最後の方はほとんど泣き出しそうになっていた。 あれ以来、あやせからの相談は受けていない。こいつらに俺の素性聞かれたらどうすんだろうと思ってはいたんだが、まさかやめたことになってるとはな。 ひょっとすると、俺のマネージャーの真似事は前回をもって完全に終了ということだろうか。 「この前、お兄さんたちを見てやっとわかったんです。これが好きって気持ちだったんだって。せめてありがとうくらい…………ふぇぇ……ぐすっ……」 感極まったブリジットはついに泣き出してしまった。 い、痛い! 心が痛い! 半分俺のせいで泣かしてるみたいなもんだし! これはばらすべきなのか? いや、でも、あやせに黙ってばらしちゃってもいいもんだろうか? 後になってあやせに怒られるのだけはまじで勘弁願いたい。 329 名前: ◆5yGS6snSLSFg[sage] 投稿日:2011/03/09(水) 03:10:04.41 ID:k1Ouee8ko [7/9] 「うう……ぐすっ…………ひっく…………」 「………………ブリジット」 「ふぁい?」 俺の呼びかけに反応したブリジットは、目に涙を浮かべながらこちらを見上げる。 なんだか背徳的な感じがして、不覚にもどきりとさせられてしまう。 「ちょっと待っててくれ」 そう言い残し、ブリジットの返事も聞かずに自分の部屋に駆け上がる。 机の引き出しを開け、お目当ての物をひっつかみ、急いでブリジットのもとへと戻る。 「ふう……待たせたな」 「お、お兄さん? どうしたんですか?」 「ちょっとな」 そのまま歩を進め、ブリジットの隣に腰を下ろす。 そして、先ほど取ってきたお目当ての物・サングラスをかけ、片手で自分の前髪をかきあげた。 効果は抜群だったようで、先ほどまでべそをかいていたブリジットの表情がぱあっと明るくなる。 「マネージャーさん!」 「悪かったな。色々、事情があってさ」 ブリジットはぶんぶんと首をふり、怒ってないことをアピールしてくれる。 そして、 「マネージャーさん!」 もう一度大きな声で叫ぶと、そのまま俺に抱き着いてきた。 そのまま、ぐずるブリジットの頭を撫でてやる。ブリジットの綺麗なブロンドヘアーは、その見た目に違わずさらさらだった。 「ごめんな。でも、これ加奈子には内し――」 がちゃり。 リビングに不吉な音が響いた。 「あ、あああ、あんた……」 俺の腕に頭を抑えられ、苦しそうにぐずっているブリジット。 現行犯で逮捕されても文句は言えない。 330 名前: ◆5yGS6snSLSFg[sage] 投稿日:2011/03/09(水) 03:11:39.40 ID:k1Ouee8ko [8/9] 「ちっ、違うんだ! これには深いわけが!」 「黙れロリコン! あんだけ言ったよね!? ブリジットちゃんに手を出したらぶっ殺すってさあ!」 「人の話を聞け!」 「問答無用!」 ぐわ、と手を振りあげた桐乃を見て覚悟を決め、俺は静かに目を閉じた。 俺の顔を衝撃が襲うのをいまかいまかと待っていたが、一向に衝撃は襲ってこない。 何事かと思い目を開くと、そこにはブリジットが立ちはだかっていた。 「わたしのマネージャーさんをいじめないでください!」 「ブ、ブリジットちゃん!? どいて、そいつ殺せない!」 「殺しちゃだめです! お姉さんのばか~!」 ブリジットが発した言葉は桐乃にとって致命傷だったようだ。 ぺたん、とその場に座り込みがっくりと項垂れる。 「あとで…………説明……してもらうかんね」 力なくそう呟くのが精一杯みたいだった。 我が妹ながらこの反応はどうなの? ブリジット溺愛しすぎじゃね? それに比べて俺の命の軽い事……。 本気で殺しにかかってきたわけじゃないってのはわかってるけどな。 「お姉さん、今せつめいします」 「「えっ?」」 またしても俺と桐乃の声がハモる。 「わたし、この人とけっこんするんです! よろしくお願いします、お義姉さん!」 もはや口を開けて茫然とするしかない俺たちをよそに、ブリジットは一人にこにこといつもの素直な笑顔を湛えていたのだった。 おわり

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