無題:8スレ目429

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429 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2011/03/10(木) 15:56:33.24 ID:qluO/kkUo [2/6] 『もしもし~』 「麻奈実、こんな時間に悪い」 『ん~ん、気にしないで~。それで、きょうちゃんどうしたの?』 「ああ。急で悪いんだが、今日泊めてくれないか?」 オッス、オラ高坂京介。地元の国立大学に通う19歳。 さて、冒頭の会話を気にしている諸君も多かろう。これには深い理由があるんだが、その説明は後にさせてもらう。 ま、いつものことっちゃいつものことなんだけどな。 「こんばんは~」 「おう、きょうちゃん。いらっしゃい」 「あ、爺ちゃん。こんばんは」 俺が麻奈実の家の玄関をくぐると、麻奈実の爺ちゃんがいた。どうやら、たまたま通りかかったようだ。 「やっと婿に来てくれる気になったのかい?」 「残念。そうじゃないんだ」 「ちぇ~。期待したんじゃがなぁ」 この問答もいつものこと。つか、爺ちゃん。来るたんびにそればっかじゃねえか。何年同じことやらせる気だ。 それに、老い先短いジジイが「ちぇ~」と言ってもかわいくないからやめとけ。 爺ちゃんは不満そうに口を尖らせながら、奥にいる麻奈実を呼んだ。程無くして、見知った顔の幼馴染がやってきた。 「きょうちゃん、いらっしゃ~い」 「おう。悪いな、急にこんなこと頼んじまって」 「気にしないで~。さ、上がって上がってぇ」 麻奈実はどうやら風呂上りらしく、なんかほっこりしてた。女子大生にしては地味だが、麻奈実らしいパジャマを着て、髪はポニーテール。 なんでポニーテールなんだ?髪洗った後はしないもんじゃないのか?いや、よくは知らんが。 そうそう、高校のときの麻奈実はショートカットだったが、今はセミロングくらいまで伸ばしている。理由は知らん。 「きょうちゃん、ご飯は食べた~?」 「メシは食ったんだけど、風呂はまだでな。悪いけど、貸してくれるか?」 「うん、いいよ~。うちはみんな入っちゃったから、ゆっくりしてね~」 俺は夜風に当たって冷えた体を暖めるため、田村家の風呂を借りることにした。しかし、運が良かったぜ。 みんな入った後なら、普通は流しちまうもんだからな。電話したときに、最後の一人が入ってる最中だったのかもしれんな。 勝手知ったる田村家の廊下を進み、俺は風呂場へと直行した。 「ふぃ~」 体を洗い、湯船に浸かった俺の口から自然と声が漏れる。自分で言うのもなんだが、爺臭いことこの上ない。 けどよ、若いからって声が出ないってことも無いだろ?きっとあれだ、日本人のDNA的なものが作用してるんだ、うん。 そんな不毛な論理展開を繰り広げていると、脱衣所から麻奈実が声を掛けてきた。 「きょうちゃ~ん。お湯加減どお~?」 「おう、ちょうどいいぜ」 「よかった~。タオル、置いとくからね~」 「あいよ~」 やっぱ、あいつといると落ち着くな。さっきまでくさくさした気分でいたんだが、こんな何気ない会話で癒されるんだから、麻奈実はすげーと思う。 心も体もほんわかできた俺は、非常にいい気分で湯を堪能した。 430 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2011/03/10(木) 15:57:23.81 ID:qluO/kkUo [3/6] 「……というわけだ」 「そっか~。それで追い出されちゃったんだね~」 風呂から上がった俺は、田村家に来たときと同じ格好で麻奈実と向き合ってるわけだが……。 爺ちゃんよぉ……、いつぞやと同じように布団を並べて敷くとか、芸が無いぜ。もうこの程度じゃ俺は動揺せんのよ。……大人になるって、かなしいことなの。 今の説明でわかると思うが、俺と麻奈実は今、布団の上だ。決していかがわしい意味じゃないからな。勘違いしないように。 そして、俺が麻奈実にSOSを発信した経緯を説明していた。 簡単に言っちまうと、桐乃に追い出されたんだよ。 今日は両親共に不在、俺も桐乃より早く帰宅していた。そういうわけで桐乃が帰ってきた後、夕食を食べてリビングでシスカリをプレイしていたわけだが……。 どうやら学校で嫌なことがあったらしく、桐乃はかなり不機嫌だった。そんな心境が影響したのか、アイツのプレイは乱れまくり。おかげで俺の勝ちが続いちまったわけだ。 それが桐乃の不機嫌度に拍車を掛け、プレイは乱れ、俺に負けるという悪循環に陥った。 俺も桐乃が変なのは気付いたからな、どうしたのか声を掛けたんだが……。まあ、いつもの憎まれ口で返されてな。 そっからは売り言葉に買い言葉。ご近所様にも聞こえるくらいの白熱した口論になり、アイツに追い出された……というわけだ。まったく理不尽な話だ。俺のことだけどよ。 「いくら夏だからって、こんな寒空の下放り出しやがって」 「で、わたしに助けを求めたんだね~」 「そういうわけだ。幸い、ケータイは持ってたんでな。これで麻奈実に繋がらなかったらと思うと……」 「えへぇ~」 いやいや、麻奈実さん?俺は何も褒めちゃいませんぜ?むしろ、今の会話で照れるトコありました? 「それで、きょうちゃんはどうするの?」 「ん?なにがだ」 「きょうちゃんは、桐乃ちゃんに謝りたいんだよね~?」 麻奈実のヤツ、今の話を聞いてなかったのか?俺は完全な被害者だぞ。謝られこそすれ、俺が謝る道理なんざ一切無え。 そんな俺が、桐乃に謝りたいだなんて思うはずが……。 「相変わらず、よく気付くよな」 「きょうちゃんのことだもん。わかるよ~」 「まったく……。お前には敵わねえよ」 まあ、俺もつい言葉過ぎちまったトコもあるしな。桐乃が不機嫌なこともわかってたのに、大人気ない対応をしちまった。それは謝らないといけないと思う。 だからって、アイツが謝らなくていいことにはなんないぞ! 「それで、どうするの?」 「今日はおとなしくしとくよ。アイツも、一度言った言葉を素直に下げられるようなヤツじゃないしな。一晩経てば、少しは落ち着くだろ」 「じゃ、明日謝るんだね~」 「そういうことだ」 麻奈実はまるで自分のことのように嬉しそうな顔をしてやがる。ったく、俺もお節介お節介と言われるが、お前には負けるよ。 いや、あれか?孫のケンカを見守るおばあちゃん的ポジションというか、そういう心境までシフトチェンジしちまったのか? 「もう少し素直で可愛げがありゃ、こんなことにはならねーのにな」 「そんなこと言っても、きょうちゃんが桐乃ちゃんのことを大切に思ってるのはばればれだよ?」 「お前まで俺をシスコン扱いか?」 「だって、しすこんさんでしょ?」 ぐっ!即座に言い返せない自分が憎い! それに、こいつの言葉って妙な説得力があるんだよな。将来は教師か占い師になったらどうですか、麻奈実さん。 「はぁ~。これが弟とかだったら、こんなに苦労しねーのかな?」 「どうだろう?うちはロックだけだからわかんないよ」 「お前は苦労してなさそうだけどな」 「そんなことないよ~。男の子の気持ちって、やっぱりわからないもん」 麻奈実でもそういうときがあるのか。なんか意外だな。ウチと違って、麻奈実とロックの姉弟仲は良好に見えるからな。 俺もロックみたいな弟なら、もっと扱いやすいのによ~。 431 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2011/03/10(木) 15:58:15.60 ID:qluO/kkUo [4/6] 「でも、桐乃ちゃんがうらやましいな」 「なんで?」 「だって、なんだかんだ言っても、きょうちゃんは桐乃ちゃんのためにがんばってるでしょ?わたしもそんな優しいお兄ちゃんがほしかったな~、って」 「そうかい。俺も麻奈実みたいな妹がほしかったよ」 そうすりゃ、こんな理不尽極まりない扱いはされないだろうし、俺の生活に奇妙な変化をもたらしてくれることもなかっただろうに……。 ま、そんな「もしも」の話なんかしたって、意味は無いのにな。 ……ん?麻奈実のヤツ、なんで頬が赤いんだ?おまけに蕩けそうな顔しやがって。 「おい、麻奈実!」 「ひゃわっ!!?いいいいきなりなに!きょうちゃん!?」 「い、いや。お前が心ここにあらずだったから、強めに呼んだだけだ」 「そそそそう!?ごごめんね」 「あ、謝らなくていいぞ~」 そんなに驚くことだったか?おまけに、まだ顔が赤いぞ。体調良くねえのかな。 「麻奈実、夏風邪か?顔が赤いぞ」 「そそうかな!?」 「ちょっと動くなよ」 「ひゃうっ!?」 俺は麻奈実のおでこに自分のおでこをくっつけた。うん、熱は無いな。でも、まだ顔が赤い。やっぱ風邪かな? 「今日はもう寝るか。熱は無いけど、なんか調子悪そうだしな」 「う、うん!そうだね!」 「?」 う~ん。なんか麻奈実の様子がおかしいぞ。ま、寝れば治るだろ。 麻奈実は部屋の電気を消し、眼鏡と髪ゴムを外して布団に入った。俺も布団に入って寝る態勢に移行する。 明日は妹様のご機嫌を直さなきゃいけないしな。やれやれ、お兄ちゃんも楽じゃねえ。 「おやすみ、きょうちゃん」 「おやすみ、麻奈実」 俺は布団に入ってすぐに目を閉じたんだが、麻奈実が話しかけてきたため寝ることは出来なかった。 「ねえ、きょうちゃん」 「ん~?」 「さっきのわたしが妹だったらって話だけど……」 「おう」 「きょうちゃんは、わたしが幼馴染より妹だった方がよかったのかな?」 「……」 「きょうちゃん?」 「いや、お前は幼馴染の方がいいわ」 「ほえ?」 「俺はさ、今のこの関係が心地良いんだ。きっとお前が妹だったら、そうならないんじゃないかって思う」 「……」 「だからさ、今のままがきっと一番なんだろうよ」 「……えへへ~。そっかぁ~」 「ああ。さ、もう寝ろ」 「うん。おやすみ、きょうちゃん」 「おやすみ」 おわり 432 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2011/03/10(木) 15:58:48.12 ID:qluO/kkUo [5/6] おまけ その日の夜中――――。 「きょうちゃん、起きてる?」 「……」 「もう寝てるかな?」 「……」 「きょうちゃん。わたしもね、今のままが良いと思うんだ」 「……」 「でもね、もっともっときょうちゃんといっしょにいたいとも思ってるんだよ」 「……」 「それって、わがままかな?」 「……」 「きっと、わがままだよね」 「……」 「でもね、多分わたし、我慢できないと思うんだ」 「……」 「だから、わがままなわたしを許してね」 「……」 「おやすみ、きょうちゃん」 「……」 おわり
429 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2011/03/10(木) 15:56:33.24 ID:qluO/kkUo [2/6] 『もしもし~』 「麻奈実、こんな時間に悪い」 『ん~ん、気にしないで~。それで、きょうちゃんどうしたの?』 「ああ。急で悪いんだが、今日泊めてくれないか?」 オッス、オラ高坂京介。地元の国立大学に通う19歳。 さて、冒頭の会話を気にしている諸君も多かろう。これには深い理由があるんだが、その説明は後にさせてもらう。 ま、いつものことっちゃいつものことなんだけどな。 「こんばんは~」 「おう、きょうちゃん。いらっしゃい」 「あ、爺ちゃん。こんばんは」 俺が麻奈実の家の玄関をくぐると、麻奈実の爺ちゃんがいた。どうやら、たまたま通りかかったようだ。 「やっと婿に来てくれる気になったのかい?」 「残念。そうじゃないんだ」 「ちぇ~。期待したんじゃがなぁ」 この問答もいつものこと。つか、爺ちゃん。来るたんびにそればっかじゃねえか。何年同じことやらせる気だ。 それに、老い先短いジジイが「ちぇ~」と言ってもかわいくないからやめとけ。 爺ちゃんは不満そうに口を尖らせながら、奥にいる麻奈実を呼んだ。程無くして、見知った顔の幼馴染がやってきた。 「きょうちゃん、いらっしゃ~い」 「おう。悪いな、急にこんなこと頼んじまって」 「気にしないで~。さ、上がって上がってぇ」 麻奈実はどうやら風呂上りらしく、なんかほっこりしてた。女子大生にしては地味だが、麻奈実らしいパジャマを着て、髪はポニーテール。 なんでポニーテールなんだ?髪洗った後はしないもんじゃないのか?いや、よくは知らんが。 そうそう、高校のときの麻奈実はショートカットだったが、今はセミロングくらいまで伸ばしている。理由は知らん。 「きょうちゃん、ご飯は食べた~?」 「メシは食ったんだけど、風呂はまだでな。悪いけど、貸してくれるか?」 「うん、いいよ~。うちはみんな入っちゃったから、ゆっくりしてね~」 俺は夜風に当たって冷えた体を暖めるため、田村家の風呂を借りることにした。しかし、運が良かったぜ。 みんな入った後なら、普通は流しちまうもんだからな。電話したときに、最後の一人が入ってる最中だったのかもしれんな。 勝手知ったる田村家の廊下を進み、俺は風呂場へと直行した。 「ふぃ~」 体を洗い、湯船に浸かった俺の口から自然と声が漏れる。自分で言うのもなんだが、爺臭いことこの上ない。 けどよ、若いからって声が出ないってことも無いだろ?きっとあれだ、日本人のDNA的なものが作用してるんだ、うん。 そんな不毛な論理展開を繰り広げていると、脱衣所から麻奈実が声を掛けてきた。 「きょうちゃ~ん。お湯加減どお~?」 「おう、ちょうどいいぜ」 「よかった~。タオル、置いとくからね~」 「あいよ~」 やっぱ、あいつといると落ち着くな。さっきまでくさくさした気分でいたんだが、こんな何気ない会話で癒されるんだから、麻奈実はすげーと思う。 心も体もほんわかできた俺は、非常にいい気分で湯を堪能した。 430 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2011/03/10(木) 15:57:23.81 ID:qluO/kkUo [3/6] 「……というわけだ」 「そっか~。それで追い出されちゃったんだね~」 風呂から上がった俺は、田村家に来たときと同じ格好で麻奈実と向き合ってるわけだが……。 爺ちゃんよぉ……、いつぞやと同じように布団を並べて敷くとか、芸が無いぜ。もうこの程度じゃ俺は動揺せんのよ。……大人になるって、かなしいことなの。 今の説明でわかると思うが、俺と麻奈実は今、布団の上だ。決していかがわしい意味じゃないからな。勘違いしないように。 そして、俺が麻奈実にSOSを発信した経緯を説明していた。 簡単に言っちまうと、桐乃に追い出されたんだよ。 今日は両親共に不在、俺も桐乃より早く帰宅していた。そういうわけで桐乃が帰ってきた後、夕食を食べてリビングでシスカリをプレイしていたわけだが……。 どうやら学校で嫌なことがあったらしく、桐乃はかなり不機嫌だった。そんな心境が影響したのか、アイツのプレイは乱れまくり。おかげで俺の勝ちが続いちまったわけだ。 それが桐乃の不機嫌度に拍車を掛け、プレイは乱れ、俺に負けるという悪循環に陥った。 俺も桐乃が変なのは気付いたからな、どうしたのか声を掛けたんだが……。まあ、いつもの憎まれ口で返されてな。 そっからは売り言葉に買い言葉。ご近所様にも聞こえるくらいの白熱した口論になり、アイツに追い出された……というわけだ。まったく理不尽な話だ。俺のことだけどよ。 「いくら夏だからって、こんな寒空の下放り出しやがって」 「で、わたしに助けを求めたんだね~」 「そういうわけだ。幸い、ケータイは持ってたんでな。これで麻奈実に繋がらなかったらと思うと……」 「えへぇ~」 いやいや、麻奈実さん?俺は何も褒めちゃいませんぜ?むしろ、今の会話で照れるトコありました? 「それで、きょうちゃんはどうするの?」 「ん?なにがだ」 「きょうちゃんは、桐乃ちゃんに謝りたいんだよね~?」 麻奈実のヤツ、今の話を聞いてなかったのか?俺は完全な被害者だぞ。謝られこそすれ、俺が謝る道理なんざ一切無え。 そんな俺が、桐乃に謝りたいだなんて思うはずが……。 「相変わらず、よく気付くよな」 「きょうちゃんのことだもん。わかるよ~」 「まったく……。お前には敵わねえよ」 まあ、俺もつい言葉が過ぎちまったトコもあるしな。桐乃が不機嫌なこともわかってたのに、大人気ない対応をしちまった。それは謝らないといけないと思う。 だからって、アイツが謝らなくていいことにはなんないぞ! 「それで、どうするの?」 「今日はおとなしくしとくよ。アイツも、一度言った言葉を素直に下げられるようなヤツじゃないしな。一晩経てば、少しは落ち着くだろ」 「じゃ、明日謝るんだね~」 「そういうことだ」 麻奈実はまるで自分のことのように嬉しそうな顔をしてやがる。ったく、俺もお節介お節介と言われるが、お前には負けるよ。 いや、あれか?孫のケンカを見守るおばあちゃん的ポジションというか、そういう心境までシフトチェンジしちまったのか? 「もう少し素直で可愛げがありゃ、こんなことにはならねーのにな」 「そんなこと言っても、きょうちゃんが桐乃ちゃんのことを大切に思ってるのはばればれだよ?」 「お前まで俺をシスコン扱いか?」 「だって、しすこんさんでしょ?」 ぐっ!即座に言い返せない自分が憎い! それに、こいつの言葉って妙な説得力があるんだよな。将来は教師か占い師になったらどうですか、麻奈実さん。 「はぁ~。これが弟とかだったら、こんなに苦労しねーのかな?」 「どうだろう?うちはロックだけだからわかんないよ」 「お前は苦労してなさそうだけどな」 「そんなことないよ~。男の子の気持ちって、やっぱりわからないもん」 麻奈実でもそういうときがあるのか。なんか意外だな。ウチと違って、麻奈実とロックの姉弟仲は良好に見えるからな。 俺もロックみたいな弟なら、もっと扱いやすいのによ~。 431 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2011/03/10(木) 15:58:15.60 ID:qluO/kkUo [4/6] 「でも、桐乃ちゃんがうらやましいな」 「なんで?」 「だって、なんだかんだ言っても、きょうちゃんは桐乃ちゃんのためにがんばってるでしょ?わたしもそんな優しいお兄ちゃんがほしかったな~、って」 「そうかい。俺も麻奈実みたいな妹がほしかったよ」 そうすりゃ、こんな理不尽極まりない扱いはされないだろうし、俺の生活に奇妙な変化をもたらしてくれることもなかっただろうに……。 ま、そんな「もしも」の話なんかしたって、意味は無いのにな。 ……ん?麻奈実のヤツ、なんで頬が赤いんだ?おまけに蕩けそうな顔しやがって。 「おい、麻奈実!」 「ひゃわっ!!?いいいいきなりなに!きょうちゃん!?」 「い、いや。お前が心ここにあらずだったから、強めに呼んだだけだ」 「そそそそう!?ごごめんね」 「あ、謝らなくていいぞ~」 そんなに驚くことだったか?おまけに、まだ顔が赤いぞ。体調良くねえのかな。 「麻奈実、夏風邪か?顔が赤いぞ」 「そそうかな!?」 「ちょっと動くなよ」 「ひゃうっ!?」 俺は麻奈実のおでこに自分のおでこをくっつけた。うん、熱は無いな。でも、まだ顔が赤い。やっぱ風邪かな? 「今日はもう寝るか。熱は無いけど、なんか調子悪そうだしな」 「う、うん!そうだね!」 「?」 う~ん。なんか麻奈実の様子がおかしいぞ。ま、寝れば治るだろ。 麻奈実は部屋の電気を消し、眼鏡と髪ゴムを外して布団に入った。俺も布団に入って寝る態勢に移行する。 明日は妹様のご機嫌を直さなきゃいけないしな。やれやれ、お兄ちゃんも楽じゃねえ。 「おやすみ、きょうちゃん」 「おやすみ、麻奈実」 俺は布団に入ってすぐに目を閉じたんだが、麻奈実が話しかけてきたため寝ることは出来なかった。 「ねえ、きょうちゃん」 「ん~?」 「さっきのわたしが妹だったらって話だけど……」 「おう」 「きょうちゃんは、わたしが幼馴染より妹だった方がよかったのかな?」 「……」 「きょうちゃん?」 「いや、お前は幼馴染の方がいいわ」 「ほえ?」 「俺はさ、今のこの関係が心地良いんだ。もしお前が妹だったら、そうならないんじゃないかって思う」 「……」 「だからさ、今のままがきっと一番なんだろうよ」 「……えへへ~。そっかぁ~」 「ああ。さ、もう寝ろ」 「うん。おやすみ、きょうちゃん」 「おやすみ」 おわり 432 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2011/03/10(木) 15:58:48.12 ID:qluO/kkUo [5/6] おまけ その日の夜中――――。 「きょうちゃん、起きてる?」 「……」 「もう寝てるかな?」 「……」 「きょうちゃん。わたしもね、今のままが良いと思うんだ」 「……」 「でもね、もっともっときょうちゃんといっしょにいたいとも思ってるんだよ」 「……」 「それって、わがままかな?」 「……」 「きっと、わがままだよね」 「……」 「でもね、多分わたし、我慢できないと思うんだ」 「……」 「だから、わがままなわたしを許してね」 「……」 「おやすみ、きょうちゃん」 「……」 おわり

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