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「仁義なきウマウマ:8スレ目721」(2011/04/09 (土) 09:35:57) の最新版変更点
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721 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage] 投稿日:2011/03/20(日) 07:43:24.84 ID:7Ik+G17h0 [2/8]
「――それで?ど、どうだったかしら?」
私は今、自宅に遊びに来ている先輩の前でウッーウッーウマウマを踊り終わったばかり。
かねてから持っていた『ニコニコにウッーウッーウマウマをUPしたい』という野望を叶えるため、私は人知れず練習を重ねてきた。
そして今日はいよいよそれを他人にお披露目することにしたのだ。
まあ…その……他人と言っても、か、彼氏なのだけれど………。
前哨戦とはいえ、彼氏の前で猫耳+シッポ+メイド服で踊るのはなかなか気恥ずかしいものね…。
しかし私の心配を他所に、彼の下した評価は最高級のものだった。
「…振り付けとリズムはバッチリだし、腰のキレも申し分ない。はっきり言って完璧だ。今すぐ撮影して投稿しても問題はないだろう」
「そ、そう。それは何よりだわ。」
よかった…。
妹たちに見られて気まずくなったこともあったけれど、苦労して練習した甲斐があったというものね。
これでとりあえずは及第点…。
「――だが、俺は動画のUPには反対だ。一つだけ重大な問題があるからな。」
な、なんですって!?私のウマウマのどこが気に入らないと言うの!?
こんな恥ずかしい格好までして踊っているというのに!
「どうしてよ!?だってあなたは今、私の踊りは完璧だって……。」
「だからそれが問題なんだよ!」
「…えっ?」
先輩は何が言いたいのかしら?完璧だと言っておきながらUPに反対するなんて、全然意味がわからないわ。
そして少し間を置いてから、彼はその理由を赤面しながら叫んだ。
「俺が心配してる問題ってのは、お前が可愛いすぎるってことだっ!
猫耳メイド姿の瑠璃なんて……こんなのUPしたら絶対に再生数がうなぎ上りになるに決まってるだろ!」
「なっ………」
この人はいきなり大声で何を言い出すのかしら!?
もうっ。そ、そんなこと言われたら…は、恥ずかしいじゃないの……。
「そ、それの何が問題だというのよ!?」
「だってもしも有名になったら…。
お前がその……変なヤツに変な目で見られたりとか………さ、最悪の場合オカズにされたりするかもしれないだろ!?
俺はお前の彼氏としてそんなの絶対に嫌なんだよ!」
「先輩……」
要するに彼はヤキモチを焼いているのね?まったく、そんなことで嫉妬するなんてくだらないんだから…。
でも……そ、そのくらい、私を思ってくれているということ…なのよね?
きっと先輩は、私をとても大切にしてくれているんだわ。
そう思うと頬が緩んでいくのを止められない。
せっかく練習したのに…と思う気持ちもあるけれど、彼がそう言うなら………
「し、仕方がないわね。あなたがそんなに言うなら考えてあげなくも………」
私がそう言いかけた時、突然部屋の襖がガラッと開いた。
「「ちょっと待ったぁー!」」
そして、それと同時に聞こえてきた、この無駄に威勢のいい声の主は………
722 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage] 投稿日:2011/03/20(日) 07:44:25.44 ID:7Ik+G17h0 [3/8]
「ねえさまのおどり、とってもおじょうずでした!」
「でも…ルリ姉が辞退するって言うなら、あたしにも考えがあるんだよね」
「なっ!?何でお前らがここに!?」
それは、他ならぬ私の妹たちだった。
そういえば存在をすっかり忘れていたわ……なんたる不覚ッ………
「ちょっと!いつから見ていたのよ!?」
「いつからって…最初から。ルリ姉が高坂くんに『あなたに見てもらいたいものがあるのよ…』って言ってるとこからずっとだけど?」
「そ、そんなに前から見ていたのね………」
まったく…自分の部屋だというのに、油断も隙もあったものではないわ。
…あら?もしかして、ということは――
「…あっ、もちろん二人がラブラブしてるとこも見てたよ~。ふふふ…高坂くんって、すっごいヤキモチ焼きなんだね?」
私たち二人の顔はみるみるうちに真っ赤に染まった。
やはりそこも見られていたのね………。こ、この子はいつも一言多いのよっ。
普段ならすぐに制裁を加えるところだけれど、今は先輩もいるし…。
しかし、ここでうろたえてはいけないわ。姉としての威厳を保つためにもね。
「そ、それで?何か用事でもあるのかしら?私たちは今忙しいのよ。用がないんだったらさっさと…」
「そのことなんだけどさぁ。ルリ姉がやめるんだったら、あたしが代わりにウマウマ踊ってニコニコにUPする。別にいいでしょ?」
「「んなっ!?」」
私としたことが、驚いて先輩の声と極限までシンクロしてしまったじゃないの。
この子が私の代わりにウマウマを踊ってニコニコにUPする?一体どうやったらそんな展開になるのかしら?
「お、おい、お前何言ってんだよ!?」
「まったくだわ。いきなり出てきて意味のわからないことを言うのはやめて頂戴。そもそも代わりに踊るって言っても……」
「出来るよ?あたし、ルリ姉の踊り見てたら覚えちゃったしぃ~。嘘だと思うんだったら見せてあげよっか?」
「おねえちゃんのおどりも、すっごくおじょうずですよ!」
下の妹まで…。
しかも、私の練習風景は妹たちにずっと見られていたというの?この子たちが寝静まったであろう時間を選んでいたつもりだったのに!
アレを身内に見られていたなんてすごく恥ずかしい………。
でも、この子が踊るウマウマも少し見てみたい気もするわね………
「い、いいわ…。そこまで言うならやってみなさい……」
「OK。決まりだね。それじゃあ高坂君、BGMよろしくぅ~」
「お、おう!」
妹の合図で、さっきまで私が踊っていたウッーウッーウマウマのBGMが再び流れ出した。
Vi undrar är ni redo att vara med…♪
ふん。あれは単純なように見えて極めようとすると意外に難しいのよ。
こんな素人じゃ……………あら?振り付けとリズムはバッチリだし、腰の動きにキレもある………。
…Nu är vi här med Caramelldansen!
しかも、最後のオリジナルのキメポーズもなかなか可愛いわね。
け、結構やるじゃないの……………
723 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage] 投稿日:2011/03/20(日) 07:45:37.85 ID:7Ik+G17h0 [4/8]
「ま、まあまあね…。」
「へえ~。上手いもんだな。」
「やっぱりおねえちゃんもおじょうずです!」
踊り終わった妹は私たちからの賛辞の声にたいそう満足したらしく、自信たっぷりに先輩に尋ねた。
「どうだった?あたしのウマウマ、ルリ姉のより可愛いでしょ?」
「ちょっと!先輩に何を訊いているのよ!?」
この子は何を考えているのかしら?まさか私と張り合うつもり?
「えっ!?いや、まあ…確かに上手だったぜ………」
先輩、あなたもあなたよ?
その…否定してくれたっていいじゃない!私の方が可愛かったって言ってくれてもいいじゃないの!
「えへへ~。高坂くんに褒められちゃった。それじゃ、あたしがルリ姉の代わりに踊っても問題ないよね?」
妹はわざと私の方を見ながら得意げな顔をしている。
その時、私は確信した。
この子は絶対に場をかき乱すためだけにこんなことを言い出したに違いないわ…!
「だいたいにして、何故あなたが私の代わりに踊る必要があるの?全然意味がわからないわよ?」
「別に深い意味なんてないよ?ただの思いつきだからさ~。いいじゃん。だってルリ姉はもうUPしないんでしょ?」
「…ふん。好きにしたらいいわ。勝手にニコニコでもどこでも――」
「いや…ダメだ!!!」
私が言い終わらないうちに、突然先輩が私たちの会話に大声で割り込んできた。
ちょっと先輩、私の時にはそんなに早く即答してくれなかったじゃない!?
「えっ?どうして?どうしてなの高坂くん!?」
…どう見ても口元が笑っているわよ……。まったく、なんてわざとらしい聞き方なのかしら。
「そんなの決まってるだろ!お前の踊りを全国のロリコン軍団の目に晒すわけには…」
「ええ~……でも私、ルリ姉が辞退するんだったら五更家の代表としてどうしてもやりたいんだよねぇ~」
「どんなこだわりだ!つか代表ってなんだよ!?…だが、そういうことなら………。」
まったくだわ。何が五更家の代表よ?また訳のわからないことを…。
でも、先輩が何やら考え込んでいるような…?
なんだか……厭な予感がするわね……………
そして、私の悪い予感は案の定的中してしまった。
「な、なあ瑠璃……。やっぱりさ、最初の予定通り、お前が踊ってUPしたらどうだ?」
「な、なんですって!?」
ちょっと待って頂戴。さっきと言ってることが違うじゃないの。
私を全国の変態から守りたいんじゃなかったの!?
「だってよ…それならお前の妹がUPしなくても済むんだろ?まあマスケラの仮面でも被ってやれば問題なさそうだし…」
「そんな今更……」
なんなのよ、先輩のこのテキトーな返事は!?さっきまでの熱意はどこへ行ってしまったのよ!?
そしてなんなのよ、妹のあの勝ち誇ったようなニヤケ顔は!?
「だって、最初に『ニコニコにウッーウッーウマウマをUPしたい』って言ったのお前だろ?よく考えたら無理矢理止めるのも悪い気がするしな」
「そうだよ~。高坂くんもいいって言ってくれたんだし。よかったじゃん、ル・リ・ね・え?」
「ぐっ……」
そうよ。確かに最初に『ニコニコにウッーウッーウマウマをUPしたい』と言い出したのは私よ。
でも………でも、なんかこれじゃあ私よりも妹の方が彼に大切にされてるみたいじゃない!
724 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage] 投稿日:2011/03/20(日) 07:49:32.67 ID:7Ik+G17h0 [5/8]
そしてここで、私はある事実に気付いた。
…ハッ!私と付き合っている以上、私の妹=彼の義妹になるんだわ!
だから彼の持っている強烈なシスコンスキルが発動されて、義妹を必死でロリコンユーザーから守ろうとしているのね!?
これは裏を返せば、あの子を義妹と意識するくらい私と真剣に交際してくれている、という証でもあるのだけれど、なんか複雑な気分ね…。
というより、釈然としないわ…。
しかもあの様子から見て、間違いなくあの子は姉である私に喧嘩を売っているじゃないの!
こうなったら…あの子に、“妹”の立場というものををわからせる必要があるわね………
一人、胸の内でこんな風に強く決意すると、私は妹を勢いよく指差して言い放った。
「こうなったら…勝負よ!もう一度二人で踊って、『どっちが踊りをUPするべきではないか』を決めるのよ!」
ええ。自分でも相当変な提案をしたのはわかっているつもりよ。それに、結局何を決めるのかがイマイチわかりにくいということも…。
でも………これはもはや女の意地よ!いくら相手が妹とはいえ先輩の好みに関して負けたことは我慢出来ないわ!
「お前まで何で変なこと言ってんだよ!?」
「ル、ルリ姉、いきなりどうしたの!?」
「あら?自信がないならいいのよ?所詮あなたは私の妹…。
妹という人種は、姉には絶対に勝てないように作られているものだし、怖気付くのは当然よね?」
「ムカッ……」
私の用意した大きな釣針に、我が妹はまんまと食いついた。
「わ、私は別にいいよ?ルリ姉がそこまで言うなら…う、受けて立ってあげる!それでいいよね?高坂くん?」
ふふふ。上手くこっちの挑発に乗ってきたわね。
「これで決まりね…。勝敗決定は先輩に委ねることにしましょう。いいわね、先輩?」
「ええっ!?俺が審査すんの!?またおかしなことになってきたなぁ………」
今日こそは覚悟なさい、我が妹よ。
屈辱的な敗北によって、最近生意気になってきたその態度を徹底的に改めさせてあげるわ!
…とは言ったものの………。
悔しいけれど、相手に妹属性がある限りこちらの状況不利は覆らない。こうなったら……奥の手を使わせてもらうわよ。
私はメイド服のポケットから秘密兵器――“赤縁眼鏡”を取り出して装備した。
「どう?先輩。似合うかしら?」
「うん…。その…すげえ似合ってるよ…………」
見なさい、先輩のあの締まりのない顔を。
(少し残念だけれど)先輩が眼鏡属性に弱いことはわかっているわ。
こんなところでコレを使うことになるなんて不本意だけど、完全勝利をおさめるためには仕方がないわね。
先輩の惚気た様子に気がついたのか、妹も必死に反撃してくる。
「こ、高坂くんっ!あたし、高坂くんのために一生懸命頑張っちゃうから応援してね?」
ふふふ。無駄よ。そんな風にキラッ☆とした感じで応援してねアピールをしたところで………
「お、おう!頑張れよ!」
えっ!?先輩がなぜか顔を赤らめているわ!?彼にはロリコン趣味はないはずなのにどうして?
…そうか。
この感じ、どこかで見たことがあると思ったら…キラッ☆はあのスイーツ女の雰囲気そのものじゃないの!
おそらく偶然だとは思うけど、これ以上ここで彼に実妹の影を感じさせてはマズイわね。一気に形勢が不利になってしまう。
早急に手を打たなくては…。
これ以上の妹属性強化を危惧した私は更に動いた。
「ねえ、“兄さん”」
「な、なんだよ?それにお前、その呼び方…」
「余所見をしないで、ちゃんと私の方を見ていてね?“兄さん”。」
「ああ…。」
さり気なく呼び方を『兄さん』に変える。これで、私にも擬似妹属性が付加されたわ。
そして口調も自分の中では精一杯の色気を出してみた…つもり。これでスイーツ女のような雰囲気も多少は押し流せたはずよ。
――ふっ。ここまでするなんて、妹相手にしては少し大人気なかったかしら?
725 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage] 投稿日:2011/03/20(日) 07:50:31.91 ID:7Ik+G17h0 [6/8]
「ちょっ!?ルリ姉、なんかズルくない!?」
「あら、何のことかしら?それよりそろそろ始めるわよ。先輩、BGMの用意を」
「…ん?あ、ああ。じゃあ…流すぞ!」
Vi undrar är ni redo att vara med…♪
こうして、私たち姉妹は激しく火花を散らした。
一見すると二人で延々と同じ動きをしているだけに見えるかもしれないけれど、これは久しぶりの私と妹との真剣勝負。
この勝負だけには絶対に負けられない。この子の姉という立場としても、先輩の恋人という立場としてもね。
ウッーウッーウマウマ(゚∀゚) ウッーウッーウマウマ(゚∀゚)……………♪
何故だろう。身体がとても軽い。
まるで私の体内にある闇の波動が全て解放されていくようなこの感じ…。
今の私なら、長年夢見ていたあの漆黒の闇の中へと飛んで行けそうな気さえするわ…。
…Nu är vi här med Caramelldansen!
そして曲が終わってフィニッシュを決めた後、私は確かな手応えを感じずにはいられなかった。
――勝った。
ダンス自体は我ながら今までで最高の出来。これなら本当にニコニコにUPしてもまったく恥ずかしくない。
事前のアピール合戦も明らかに私が優勢だったし、これで負けても悔いは……いいえ、これで負けるわけがないわ。
隣を見ると、妹も何だかやり切った表情をしている。
この子のこんな表情を見るのも何だか久しぶりだわ。
「…準備はいいかしら?」
「あ、あたしはいつでもいいよ?」
お互いの意思を確認し、私たちは同時に叫んだ。
「「先輩(高坂くん)!どっちのウマウマが好き?」」
シ~ン。
…………………………あら?返事がないのだけれど…
726 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage] 投稿日:2011/03/20(日) 07:51:49.40 ID:7Ik+G17h0 [7/8]
「ちょっと!高坂くん、話聞いてる?」
「まさか、この後に及んで『決められない』と言うわけではないでしょうね?」
「えっ!?あっ!いやっ!えーと、そのっ」
彼は私たちに詰め寄られてかなり焦っている。明らかによく見ていなかった様子だ。
この人は嘘が苦手だからすぐわかるわ。
わざわざ『余所見をしないで見ていてね』って言ったのに…。
「い、いやぁ~……ふ、二人ともすごいよかったよ!うん!か、可愛かった!」
何なの?この投げやりなコメントは?こんなにわかりやすい棒読みは久しぶりに聞いたわよ。
「…それで?早く私たちの質問に答えて頂戴。『どっちが踊りをUPするべきではないか』今すぐに決めなさい」
「そうだよ!当然あたしだよねっ?」
「い、いや、それは、その、あの、えーと…」
もう!こんな時くらいはっきりして欲しいものだわ。
いくら先輩が恋人だからって私にも限界というものが………それにしても、彼はやけに落ち着かないわね。
それに、よく見ると彼の目が別の方向をチラチラ見ているような…。
そう思って先輩の目線を辿っていくと…………………………
なんとその先には、私たちの踊りを頑張ってマネしている下の妹の姿があった。
「にいさま…わたしのおどりもおじょうずでしたか?」
「ああ!とっても可愛いぞ!まあ……強いて言うならもうちょっと腰の動きを………」
そして私たちを無視して妹の問いかけには即答する先輩。
こ、この男ッ……………
「先輩………?」
「高坂くん………?」
私たちの鋭い視線に気がついた先輩は慌ててフォローに走った。
「い、いや!もちろんお前らも可愛かったぞ!うん、惚れ惚れした!…それでさ、も、もしよかったらなんだけど………」
またテキトーな返事を……って、今度は何かしら?
なんだか……また厭な予感がするわね……………
そして、私の悪い予感は再び的中してしまった。
「もしよかったら………今度はこの子も入れて3人d「「この…ロリコンッ!!!!!」」
(終わり)
721 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage] 投稿日:2011/03/20(日) 07:43:24.84 ID:7Ik+G17h0 [2/8]
「――それで?ど、どうだったかしら?」
私は今、自宅に遊びに来ている先輩の前でウッーウッーウマウマを踊り終わったばかり。
かねてから持っていた『ニコニコにウッーウッーウマウマをUPしたい』という野望を叶えるため、私は人知れず練習を重ねてきたの。
そして今日は、いよいよそれを他人にお披露目することにしたのよ。
まあ…その……他人と言っても、か、彼氏なのだけれど………。
前哨戦とはいえ、彼氏の前で猫耳+シッポ+メイド服で踊るのはなかなか気恥ずかしいものね…。
しかし、私の心配を他所に、彼の下した評価は最高級のものだった。
「…振り付けとリズムはバッチリだし、腰のキレも申し分ない。はっきり言って完璧だ。今すぐ撮影して投稿しても問題はないだろう」
「そ、そう。それは何よりだわ。」
よかった…。
妹たちに見られて気まずくなったこともあったけれど、苦労して練習した甲斐があったというものね。
これでとりあえずは及第点…。
「――だが、俺は動画のUPには反対だ。一つだけ重大な問題があるからな。」
な、なんですって!?私のウマウマのどこが気に入らないと言うの!?
こんな恥ずかしい格好までして踊っているというのに!
「どうしてよ!?だってあなたは今、私の踊りは完璧だって……。」
「だからそれが問題なんだよ!」
「…えっ?」
先輩は何が言いたいのかしら?完璧だと言っておきながらUPに反対するなんて、全然意味がわからないわ。
そして少し間を置いてから、彼はその理由を赤面しながら叫んだ。
「俺が心配してる問題ってのは、お前が可愛いすぎるってことだっ!
猫耳メイド姿の瑠璃なんて……こんなのUPしたら絶対に再生数がうなぎ上りになるに決まってるだろ!」
「なっ………」
この人はいきなり大声で何を言い出すのかしら!?
もうっ。そ、そんなこと言われたら…は、恥ずかしいじゃないの……。
「そ、それの何が問題だというのよ!?」
「だってもしも有名になったら…。
お前がその……変なヤツに変な目で見られたりとか………さ、最悪の場合オカズにされたりするかもしれないだろ!?
俺はお前の彼氏としてそんなの絶対に嫌なんだよ!」
「先輩……」
要するに彼はヤキモチを焼いているのね?まったく、そんなことで嫉妬するなんてくだらないんだから…。
でも……そ、そのくらい、私を思ってくれているということ…なのよね?
きっと先輩は、私をとても大切にしてくれているんだわ。
そう思うと頬が緩んでいくのを止められない。
せっかく練習したのに…と思う気持ちもあるけれど、彼がそう言うなら………
「し、仕方がないわね。あなたがそんなに言うなら考えてあげなくも………」
私がそう言いかけた時、突然部屋の襖がガラッと開いた。
「「ちょっと待ったぁー!」」
そして、それと同時に聞こえてきた、この無駄に威勢のいい声の主は………
722 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage] 投稿日:2011/03/20(日) 07:44:25.44 ID:7Ik+G17h0 [3/8]
「ねぇさまのおどり、とってもおじょうずでした!」
「でも…ルリ姉が辞退するって言うなら、あたしにも考えがあるんだよね」
「なっ!?何でお前らがここに!?」
それは、他ならぬ私の妹たち…日向と珠希だった。
そういえば存在をすっかり忘れていたわ……なんたる不覚ッ………
「ちょっと!いつから見ていたのよ!?」
「いつからって…最初から。ルリ姉が高坂くんに『あなたに見てもらいたいものがあるのよ…』って言ってるとこからずっとだけど?」
「そ、そんなに前から見ていたのね………」
まったく…自分の部屋だというのに、油断も隙もあったものではないわ。
…あら?もしかして、ということは――
「…あっ、もちろん二人がラブラブしてるとこも見てたよ~。ふふふ…高坂くんって、すっごいヤキモチ焼きなんだね?」
私たち二人の顔はみるみるうちに真っ赤に染まってしまった。
やはりそこも見られていたのね………。こ、この子はいつも一言多いのよっ。
普段ならすぐに制裁を加えるところだけれど、今は先輩もいるし…。
しかし、ここでうろたえてはいけないわ。姉としての威厳を保つためにもね。
「そ、それで?何か用事でもあるのかしら?私たちは今忙しいのよ。用がないんだったらさっさと…」
「そのことなんだけどさぁ。ルリ姉がやめるんだったら、あたしが代わりにウマウマ踊ってニコニコにUPする。別にいいでしょ?」
「「んなっ!?」」
私としたことが、驚いて先輩の声と極限までシンクロしてしまったじゃないの。
日向が私の代わりにウマウマを踊ってニコニコにUPする?一体どうやったらそんな展開になるのかしら?
「お、おい、お前何言ってんだよ!?」
「まったくだわ。いきなり出てきて意味のわからないことを言うのはやめて頂戴。そもそも代わりに踊るって言っても……」
「出来るよ?あたし、ルリ姉の踊り見てたら覚えちゃったしぃ~。嘘だと思うんだったら見せてあげよっか?」
「おねえちゃんのおどりも、すっごくおじょうずですよ!」
珠希まで…。
しかも、私の練習風景は妹たちにずっと見られていたというの?この子たちが寝静まったであろう時間を選んでいたつもりだったのに!
アレを身内に見られていたなんてすごく恥ずかしい………。
でも、日向が踊るウマウマも少し見てみたい気もするわね………
「い、いいわ…。そこまで言うならやってみなさい……」
「OK。決まりだね。それじゃあ高坂君、BGMよろしくぅ~」
「お、おう!」
日向の合図で、さっきまで私が踊っていたウッーウッーウマウマのBGMが再び流れ出した。
Vi undrar är ni redo att vara med…♪
ふん。あれは単純なように見えて極めようとすると意外に難しいのよ。
こんな素人じゃ……………あら?振り付けとリズムはバッチリだし、腰の動きにキレもある………。
…Nu är vi här med Caramelldansen!
しかも、最後のオリジナルのキメポーズもなかなか可愛いわね。
け、結構やるじゃないの……………
723 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage] 投稿日:2011/03/20(日) 07:45:37.85 ID:7Ik+G17h0 [4/8]
「ま、まあまあね…。」
「へえ~。上手いもんだな。」
「やっぱり、おねぇちゃんもおじょうずです!」
踊り終わった日向は私たちからの賛辞の声にたいそう満足したらしく、自信たっぷりに先輩に尋ねた。
「どうだった?あたしのウマウマ、ルリ姉のより可愛いでしょ?」
「ちょっと!先輩に何を訊いているのよ!?」
この子は何を考えているのかしら?まさか私と張り合うつもり?
「えっ!?いや、まあ…確かに上手だったぜ………」
先輩、あなたもあなたよ?
その…否定してくれたっていいじゃない!私の方が可愛かったって言ってくれてもいいじゃないの!
「えへへ~。高坂くんに褒められちゃった。それじゃ、あたしがルリ姉の代わりに踊っても問題ないよね?」
日向はわざと私の方を見ながら得意げな顔をしている。
その時、私は確信した。
この子は絶対に、ただ場をかき乱すためだけにこんなことを言い出したに違いないわ…!
「だいたいにして、何故あなたが私の代わりに踊る必要があるの?全然意味がわからないわよ?」
「別に深い意味なんてないよ?ただの思いつきだからさ~。いいじゃん。だってルリ姉はもうUPしないんでしょ?」
「…ふん。好きにしたらいいわ。勝手にニコニコでもどこでも――」
「いや…ダメだ!!!」
私が言い終わらないうちに、突然先輩が私たちの会話に大声で割り込んできた。
ちょっと先輩、私の時にはそんなに早く即答してくれなかったじゃない!?
「えっ?どうして?どうしてなの高坂くん!?」
…どう見ても口元が笑っているわよ……。まったく、なんてわざとらしい聞き方なのかしら。
「そんなの決まってるだろ!お前の踊りを全国のロリコン軍団の目に晒すわけには…」
「ええ~……でも私、ルリ姉が辞退するんだったら五更家の代表としてどうしてもやりたいんだよねぇ~」
「どんなこだわりだ!つか代表ってなんだよ!?…だが、そういうことなら………。」
まったくだわ。何が五更家の代表よ?また訳のわからないことを…。
でも、先輩が何やら考え込んでいるような…?
なんだか……厭な予感がするわね……………
そして、私の悪い予感は案の定的中してしまった。
「な、なあ瑠璃……。やっぱりさ、最初の予定通り、お前が踊ってUPしたらどうだ?」
「な、なんですって!?」
ちょっと待って頂戴。さっきと言ってることが違うじゃないの。
私を全国の変態から守りたいんじゃなかったの!?
「だってよ…それなら日向がUPしなくても済むんだろ?まあマスケラの仮面でも被ってやれば問題なさそうだし…」
「そんな今更……」
なんなのよ、先輩のこのテキトーな返事は!?さっきまでの熱意はどこへ行ってしまったのよ!?
そしてなんなのよ、日向のあの勝ち誇ったようなニヤケ顔は!?
「だって、最初に『ニコニコにウッーウッーウマウマをUPしたい』って言ったのお前だろ?よく考えたら無理矢理止めるのも悪い気がするしな」
「そうだよ~。高坂くんもいいって言ってくれたんだし。よかったじゃん、ル・リ・ね・え?」
「ぐっ……」
そうよ。確かに最初に『ニコニコにウッーウッーウマウマをUPしたい』と言い出したのは私よ。
でも………でも、なんかこれじゃ私よりも…私の妹の方が彼に大切にされてるみたいじゃない!
724 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage] 投稿日:2011/03/20(日) 07:49:32.67 ID:7Ik+G17h0 [5/8]
そしてここで、私はある事実に気付いた。
…ハッ!私と付き合っている以上、私の妹=彼の義妹になるんだわ!
だから彼の持っている強烈なシスコンスキルが発動されて、義妹を必死でロリコンユーザーから守ろうとしているのね!?
これは裏を返せば、あの子を義妹と意識するくらい私と真剣に交際してくれている、という証でもあるのだけれど、なんか複雑な気分ね…。
というより、釈然としないわ…。
しかもあの様子から見て、間違いなくあの子は姉である私に喧嘩を売っているじゃないの!
こうなったら…あの子に、“妹”の立場というものををわからせる必要があるわね………
一人、胸の内でこんな風に強く決意すると、私は日向を勢いよく指差して言い放った。
「こうなったら…勝負よ!もう一度二人で踊って、『どっちが踊りをUPするべきではないか』を決めるのよ!」
ええ。自分でも相当変な提案をしたのはわかっているつもりよ。それに、結局何を決めるのかがイマイチわかりにくいということも…。
でも………これはもはや女の意地よ!いくら相手が妹とはいえ先輩の好みに関して負けたことは我慢出来ないわ!
「お前まで何で変なこと言ってんだよ!?」
「ル、ルリ姉、いきなりどうしたの!?」
「あら?自信がないならいいのよ?所詮あなたは私の妹…。
妹という人種は、姉には絶対に勝てないように作られているものだし、怖気付くのは当然よね?」
「ムカッ……」
私の用意した大きな釣針に、我が妹はまんまと食いついた。
「わ、私は別にいいよ?ルリ姉がそこまで言うなら…う、受けて立ってあげる!それでいいよね?高坂くん?」
ふふふ。上手くこっちの挑発に乗ってきたわね。
「これで決まりね…。勝敗決定は先輩に委ねることにしましょう。いいわね、先輩?」
「ええっ!?俺が審査すんの!?またおかしなことになってきたなぁ………」
今日こそは覚悟なさい、我が妹よ。
屈辱的な敗北によって、最近生意気になってきたその態度を徹底的に改めさせてあげるわ!
…とは言ったものの………。
悔しいけれど、相手に妹属性がある限りこちらの状況不利は覆らない。こうなったら……奥の手を使わせてもらうわよ。
私はメイド服のポケットから秘密兵器――“赤縁眼鏡”を取り出して装備した。
「どう?先輩。似合うかしら?」
「うん…。その…すげえ似合ってるよ…………」
見なさい、先輩のあの締まりのない顔を。
(少し残念だけれど)先輩が眼鏡属性に弱いことはわかっているわ。
こんなところでコレを使うことになるなんて不本意だけど、完全勝利をおさめるためには仕方がないわね。
そして先輩の惚気た様子に気がついたのか、我が妹も必死に反撃してくる。
「こ、高坂くんっ!あたし、高坂くんのために一生懸命頑張っちゃうから応援してね?」
ふふふ…。無駄よ。そんな風にキラッ☆とした感じで応援してねアピールをしたところで………
「お、おう!頑張れよ!」
えっ!?先輩がなぜか顔を赤らめているわ!?彼にはロリコン趣味はないはずなのにどうして?
…そうか。
この感じ、どこかで見たことがあると思ったら…キラッ☆はあのスイーツ女の雰囲気そのものじゃないの!
おそらく偶然だとは思うけど、これ以上ここで彼に実妹の影を感じさせてはマズイわね。一気に形勢が不利になってしまう。
早急に手を打たなくては…。
これ以上の妹属性強化を危惧した私は更に動いた。
「ねえ、“兄さん”」
「な、なんだよ?それにお前、その呼び方…」
「余所見をしないで、ちゃんと私の方を見ていてね?“兄さん”。」
「ああ…。」
さり気なく呼び方を『兄さん』に変える。これで、私にも擬似妹属性が付加されたわ。
そして口調も自分の中では精一杯の色気を出してみた…つもり。
これで、スイーツ女のような雰囲気も多少は押し流せたはずよ。
――ふっ。ここまでするなんて、妹相手にしては少し大人気なかったかしら?
725 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage] 投稿日:2011/03/20(日) 07:50:31.91 ID:7Ik+G17h0 [6/8]
「ちょっ!?ルリ姉、なんかズルくない!?」
「あら、何のことかしら?それよりそろそろ始めるわよ。先輩、BGMの用意を」
「…ん?あ、ああ。じゃあ…流すぞ!」
Vi undrar är ni redo att vara med…♪
こうして、私たち姉妹は激しく火花を散らした。
一見すると二人で延々と同じ動きをしているだけに見えるかもしれないけれど、これは久しぶりの私と日向との真剣勝負。
この勝負だけには絶対に負けられない。この子の姉という立場としても、先輩の恋人という立場としてもね。
ウッーウッーウマウマ(゚∀゚) ウッーウッーウマウマ(゚∀゚)……………♪
何故だろう。身体がとても軽い。
まるで私の体内にある闇の波動が全て解放されていくようなこの感じ…。
今の私なら、長年夢見ていたあの漆黒の闇の中へと飛んで行けそうな気さえするわ…。
…Nu är vi här med Caramelldansen!
そして曲が終わってフィニッシュを決めた後、私は確かな手応えを感じずにはいられなかった。
――勝った。
ダンス自体は我ながら今までで最高の出来。これなら本当にニコニコにUPしてもまったく恥ずかしくない。
事前のアピール合戦も明らかに私が優勢だったし、これで負けても悔いは……いいえ、これで負けるわけがないわ。
隣を見ると、日向も何だかやり切った表情をしている。
この子のこんな表情を見るのも何だか久しぶりだわ。
「…準備はいいかしら?」
「あ、あたしはいつでもいいよ?」
お互いの意思を確認し、私たちは同時に叫んだ。
「「先輩(高坂くん)!どっちのウマウマが好き?」」
シ~ン。
…………………………あら?返事がないのだけれど…
726 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage] 投稿日:2011/03/20(日) 07:51:49.40 ID:7Ik+G17h0 [7/8]
「ちょっと!高坂くん、話聞いてる?」
「まさか、この後に及んで『決められない』と言うわけではないでしょうね?」
「えっ!?あっ!いやっ!えーと、そのっ」
彼は私たちに詰め寄られてかなり焦っている。明らかによく見ていなかった様子だ。
この人は嘘が苦手だからすぐわかるわ。
わざわざ『余所見をしないで見ていてね』って言ったのに…。
「い、いやぁ~……ふ、二人ともすごいよかったよ!うん!か、可愛かった!」
何なの?この投げやりなコメントは?こんなにわかりやすい棒読みは久しぶりに聞いたわよ。
「…それで?早く私たちの質問に答えて頂戴。『どっちが踊りをUPするべきではないか』今すぐに決めなさい」
「そうだよ!当然あたしだよねっ?」
「い、いや、それは、その、あの、えーと…」
もう!こんな時くらいはっきりして欲しいものだわ。
いくら先輩が恋人だからって私にも限界というものが………それにしても、彼はやけに落ち着かないわね。
それに、よく見ると彼の目が別の方向をチラチラ見ているような…。
そう思って先輩の目線を辿っていくと…………………………
なんとその先には、私たちの踊りを頑張ってマネしている下の妹・珠希の姿があった。
「おにぃちゃん…わたしのおどりもおじょうずでしたか?」
「ああ!とっても可愛いぞ!まあ……強いて言うならもうちょっと腰の動きを………」
そして私たちを無視して妹の問いかけには即答する先輩。
こ、この男ッ……………
「先輩………?」
「高坂くん………?」
私たちの鋭い視線に気がついた先輩は慌ててフォローに走った。
「い、いや!もちろんお前らも可愛かったぞ!うん、惚れ惚れした!…それでさ、も、もしよかったらなんだけど………」
またテキトーな返事を……って、今度は何かしら?
なんだか……また厭な予感がするわね……………
そして、私の悪い予感は再び的中してしまった。
「もしよかったら………今度はこの子も入れて3人d「「この…ロリコンッ!!!!!」」
(終わり)